くにさくロゴ
1987/08/31 第109回国会 参議院 参議院会議録情報 第109回国会 本会議 第9号
姉妹サイト
 
1987/08/31 第109回国会 参議院

参議院会議録情報 第109回国会 本会議 第9号

#1
第109回国会 本会議 第9号
昭和六十二年八月三十一日(月曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第九号
    ―――――――――――――
  昭和六十二年八月三十一日
   午前十時 本会議
    ―――――――――――――
 第一 公害健康被害補償法の一部を改正する法
  律案(趣旨説明)
 第二 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正
  する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改
  正する法律案(趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(藤田正明君) これより会議を開きます。
 日程第一 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 本案について提出者の趣旨説明を求めます。稲村国務大臣。
   〔国務大臣稲村利幸君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(稲村利幸君) 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 公害健康被害補償制度は、汚染原因者の負担に基づき、著しい大気の汚染等による公害健康被害者について、その迅速かつ公正な保護を図ってきたものであります。
 我が国の大気汚染の状況は、近年全般的には改善の方向にあり、中央公害対策審議会において、三年にわたり、検討が進められた結果、昨年十月、公害健康被害補償法の第一種地域のあり方について答申が取りまとめられたところであります。
 この答申は、現在の大気汚染の状況のもとでは、原因者の負担に基づき個人に対する補償を行うことは、民事責任を踏まえた本制度の趣旨を逸脱することとなるため、現行の第一種地域の指定をすべて解除することが相当であり、今後は個人に対する補償を行うのではなく、総合的な環境保健施策を推進することが適当であるとしております。
 今回の改正は、本年度をより公正で合理的なものとするため、中央公害対策審議会の答申を踏まえ、第一種地域の指定がすべて解除された場合に対応できるようにするものであります。
 次に、法律案の主要事項について、その概略を御説明申し上げます。
 第一は、法律の題名及び目的の改正であります。
 今回の改正においては、新たに大気汚染の影響による健康被害の予防のために必要な事業を実施し、健康の確保を図ることとしているため、法律の題名を「公害健康被害の補償等に関する法律」に改め、あわせて目的について同様の趣旨をつけ加えております。
 第二は、費用負担に関する規定の整備であります。
 これは、第一種地域の指定がすべて解除された場合においても、解除前に認定を受けた患者に対する補償を継続することができるように、解除前のばい煙発生施設等設置者から賦課金を徴収することとするなど、その費用負担の仕組みを原因者負担の観点から整備するものであります。
 第三は、公害健康被害補償協会の業務などに関する改正であります。
 総合的な環境保健施策を推進するため、協会の業務に、大気汚染の影響による健康被害の予防に関する調査研究等の実施及び地方公共団体が行う健康相談等の事業に対する助成に関する業務を新たに加えております。あわせて、協会の名称も「公害健康被害補償予防協会」に改めることとしております。
 また、これらの事業に必要な費用に関し、大気汚染の原因者等から拠出される拠出金を財源とする基金を設けることとしております。
 この法律案の施行期日は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内の政令で定める日としております。
 なお、衆議院におきまして、水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する規定について所要の整備を行う等の修正がなされております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(藤田正明君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。丸谷金保君。
   〔丸谷金保君登壇、拍手〕
#6
○丸谷金保君 私は、ただいま趣旨説明がありました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党・護憲共同を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 総理、今、世界では毎年、日本国土の約半分の森林が伐採され、そのうち四国と九州を合わせたくらいが砂漠になりつつあります。さらに、さまざまな形で地球環境の破壊が進みますと、思いがけない異変が起こると言われております。例えば地表の気温が今よりも二、三度上がるとか、酸素の供給量が低下するとか、雨が降らなくなるとか、いろいろな問題が起こり、二十一世紀には地球上にいる生物のうち少なくとも二百万種が絶滅し、人類の生存自体を危ぶむ学者さえおります。
 地球村民として地球倫理を唱える中曽根総理は、もちろんこのような事実を十分御存じだと思いますが、地球の倫理に高い識見を持つならば、地球全体の酸素供給源であるアマゾン流域やその他の熱帯林を保全するために、先進諸国のなすべき手だては何か、お考えを承りたい。私は、先進諸国がお金を出し合って、いわば国際的なグリーンタックスとでもいうような制度をつくり、地球の縁を守るために、開発途上国が木を切らないでも済むように、財政援助をする必要があると思いますが、総理、いかがですか。
 次に、日本。森林の持つ公益的な機能を重視するのはもちろんですが、そのためにも植林や撫育が必要です。にもかかわらず、これを手抜きしてもっともらしく外材輸入を正当化しようとするのは間違いです。それに、本当に今、緑を必要としているのは大都市ではありませんか。
 総理、東京の大気汚染防止の抜本策についてお伺いしたい。
 あなたはよく日の出山荘へ出かけられますが、田舎出の私には、田舎出の総理が息苦しい東京から脱出したい、そういう気持ちがよくわかります。それほど東京の空気は汚れております。日の出山荘のあるところは山の中です。この東京の空気の汚染の根本原因は、政治、行政、経済、文化といったあらゆる機能が首都に集中しているからであります。そして、大気汚染や騒音、さらには交通渋滞や停電、水不足といった都市機能麻痺。このようなもろもろの問題を抜本的に解決するためには、東京の都市機能を地方に分散することが最も効果的だということはだれでも知っております。しかも、それができない。それは筑波学園都市程度の構想では東京という怪物はびくともしないからです。
 総理、人のまさに死せんとする、その言よし、中曽根内閣の最後に当たり、思い切って首都移転構想を打ち上げてはいかがですか。そして、国会や行政機関などが移転した跡地を貸しビルや公園、緑地にすれば、ビル不足解消を初め根本的な土地対策、公害対策になろうというものです。
 今、最も緑を必要としている東京で、国鉄用地や林野庁の土地を売ってビルを建てさせて何が土地対策ですか。それに、今度は防衛庁まで民間に売って何が大気汚染対策ですか。瀬戸内に三本も橋をかける財源があって、東京の大気汚染対策には金がないというような言いわけでは、総理の好きな二十一世紀が怒りますよ。総理、首都遷都というような決断をこの際求めておきます。いかがですか。
 次に、環境庁長官。
 政府は事あるごとに、これは権威ある中公審の公正で合理的な答申に基づいて立案したものであると言っておりますが、昨年十月の中公審答申は、昭和五十八年十一月、当時の梶木環境庁長官が諮問した「公健法第二条第一項に係る対象地域のあり方について」に答えたものとは言えません。環境庁は諮問に当たって、諮問の内容は、第一種地域の指定及び解除要件の明確化であるとし、その後も国会において同様の答弁を繰り返してきました。しかし、中公審は求められた解除要件を示すことなく、現行四十一指定地域の全面解除を答申したのであります。これは明らかに諮問事項を逸脱した答申であります。政府が諮問外の意見具申を政策に採用する場合、政治責任の所在はどこなのか、政府の見解をただしたい。
 中公審専門委員は、最近の大気汚染において特に注目される汚染物質は二酸化窒素と大気中粒子状物質の二つであると明言しています。また、東京都衛生局の複合大気汚染健康影響調査の総合解析報告書は、窒素酸化物の量と女性の肺がんによる死亡とは明らかな相関関係が認められたこと、幹線道路沿道の学童に肺機能の低下が認められること、さらには、乳幼児に呼吸器疾患症状が多発しているなど、二酸化窒素と健康の関係を示唆しました。しかるに、中公審は、二酸化窒素と大気中粒子状物質について未解明のまま指定地域の全面解除を答申しております。これは納得できません。
 また、専門委員会報告は、局地的汚染の影響と感受性の高い集団の存在に留意すべきであるとしていますが、中公審はこれらを無視して全面解除を答申しております。これでは大方の理解を得ることはできないと思いますが、いかがですか。
 また、答申は、現在の大気汚染状況のもとでは、新規に患者を認定し、原因者の負担に基づき個人に対する補償を行うことは、民事責任を踏まえた本制度の趣旨を逸脱するので、現行の第一種地域をすべて解除することが相当であると言っておりますが、「民事責任を踏まえた」とはどういう意味ですか。
 費用負担に当たっては、例えば賦課金の徴収方法、指定地域は関東以南にしかないにもかかわらず、北海道の事業所も徴収されております。北海道の工場の煙突から出た煙が、関東以南の指定地域に住む住民の健康に民事責任を問えるほどの影響を与えたというのでしょうか。被害者救済の側面においてのみ厳格な民事責任を要求し、行政の責任である原因究明についてはおろそかにしておきながら、未解明を理由に救済を打ち切ることは明らかに不当であります。明確な答弁を求めます。
 この補償制度は、四日市訴訟やイタイイタイ病訴訟などの画期的な判決を契機として制定されたものであり、その判例が現在も生きていることは言うまでもありません。法治国家である我が国の行政当局は当然司法判断に服さなければならないと思いますが、法務大臣の所見をお聞きいたしたい。
 また、現在、大気汚染による公害訴訟として川崎、西淀川、倉敷訴訟等が提訴されており、中でも千葉川鉄訴訟はこの五月に結審し、来春にも判決が予想されております。これらの判決前に、行政判断で一方的に民事責任を踏まえた救済措置を打ち切ることは時期尚早ではありませんか。万一、法案が通った場合、その後に出された判決はどうするつもりですか。これは民事だから会社が払う、こんなことでは行政責任は免れません。環境庁長官の所感を伺いたい。
 総理は昨年暮れ、関係する地方公共団体に対し意見聴取を行っていますが、東京都知事を初めとして全面解除には批判的な意見がほとんどであり、また、これらの意見書には現場自治体にしか書けない傾聴すべき指摘が数多く含まれております。
 自治大臣は、去る五月、衆議院本会議において「関係地方公共団体の意見はできるだけ尊重さるべきものである」と答弁しております。自治体が反対する中で全面解除を強行することは、民主主義と地方自治に著しく反する行為であります。環境庁長官、自治大臣の見解と、それに意見聴取を行った当事者である内閣総理大臣はこの問題をどう処理するつもりか、所見を伺いたい。
 総合的な環境保健施策については、立法化に当たって中公審委員が示唆した環境保健事業法によらなかったこと、公害保健福祉事業との関係、さらに、補償給付にかわるだけの実効性の有無などが問われております。公害健康被害補償協会が新事業に対応できる能力を持たないのは明らかで、事業が十分に成果を上げるためには抜本的な改組を要するではありませんか。また、昨年十月の答申の際、中公審会長は、今後の環境保健施策を早急に具体化するよう求めているにもかかわらず、事業メニューの開発充実に係る自治体との関係及び助成基準等、いまだに明らかにはなっておりません。
 さらに、指定解除後の固定発生源の費用負担に関し、軽減される費用負担の試算についてもまともな資料が公開されていません。新事業を支える基金の規模を五百億円とするというが、その事業ベースでの積算根拠については衆議院でも明らかになっておりません。このようなありさまでは、実質的な国会審議は不可能であると言わざるを得ないのであります。中公審答申ですら指定解除後の環境行政には厳しい注文をつけているのです。基金の運用益はたかだか年二、三十億円。補償給付にかわるべき事業として、この程度の予算で何ができるというのですか。これらの疑問点にお答えください。
 また、基金の拠出者については、汚染原因者と汚染関係者だと説明されていますが、汚染関係者とは具体的にだれを指すのですか。自動車業界は依然として拠出を拒んでおり、通産省は公費導入を画策していると伝えられています。五百億円をどうやって確保するつもりか。また、拠出の方式は協定か契約か。強制徴収を行わずに安定した基金を創設、維持できるのか。環境庁長官、通産大臣の答弁を求めます。
 最後に、このような財源確保に確たる保証もない基金の創設を含むいいかげんな法案を通すことになれば、国会の見識を疑われます。二十年前に比べて大気汚染の態様が変化し、汚染の主役が硫黄酸化物から窒素酸化物に移ってきたことは事実であります。しかし、それならば、工場にかわって、走る煙突、自動車は走る煙突ですが、ここから思い切って拠出金を出させる、こういう方法をとるべきであろうと考えますが、いかがでしょうか。
 こんな簡単な常識的な手法をとらないで、このような法案を提出し、ただいまの環境庁長官の趣旨説明の中でも、いつもはよくある、速やかに議決してくれということが一言もございませんでした。これはもうとても今国会では無理だと提案者みずからが考えているのですから、この際は思い切って、総理、こうした半熟の法案は撤回することを強く要望して、私の質問を終わりといたします。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(中曽根康弘君) 丸谷議員にお答えをいたします。
 まず、地球環境保全のための森林その他に対する先進国の手だてについては、御所論には全く私も同感でございます。特に、熱帯林の保全等の地球環境の保全は今や極めて重要な問題になっております。熱帯林は主として開発途上国等に分布しておりまして、その保全には御説のとおり先進国の協力が不可欠であると思います。
 我が国は、これまで二国間協力、さらに国連環境計画等の活動を通じて努力してまいりましたが、今後とも、より一層積極的に努力してまいるつもりであります。
 御指摘のありました、国際的なグリーンタックスのようなお考えについては、地球の緑を守るという基本的なそのお考えについて、貴重な御提案として今後検討してまいりたいと思っております。
 次に、大気汚染解消のための首都移転はどうであるかという御質問でございますが、郷土の清浄な空気を欲するというのは、私も丸谷さんと同じ気持ちがあります。かつて俳句をつくりまして、「ふるさとに澄める空あり雁わたる」、こういう俳句をつくったことがあります。「ふるさとに澄める空あり」というのは、やはり同じ考えを持っておるものであります。東京圏への諸機能の過度の集中により生じている過密問題、あるいは環境問題、あるいはそれから出る社会問題等に対処するとともに、国土の均衡ある発展を図るために、今回は、四全総においては多極分散型国土の形成を指摘し、念願しておるわけでございます。
 今後、東京圏への人口集中を抑制して、諸機能の分散を図るとともに、首都機能の移転等についても今検討しておるところであります。機能の分散でございます。
 いわゆる遷都につきましては、今回策定した四全総においても、国民的規模での議論を踏まえて引き続き検討するということにいたしておるところでございます。
 地方公共団体の御意見について、公健法第二条第四項の趣旨は、地域の実情をよく把握して、第一線におられる公共団体の長から意見を聞くことによって制度運営の適正を期するというものでありますが、関係地方公共団体の御意見は尊重していくべきものであるが、その御同意がなければ地域指定の解除ができないという趣旨のものではないと理解しております。今回の御意見を聞きますというと、反対あるいは留保、慎重あるいは賛成、いろいろ分かれておりました。しかし、慎重論というものはかなりあったように思います。
 地方公共団体は特に窒素酸化物による健康被害を懸念しておりまして、これに対しては大気汚染防止対策及び調査研究の推進並びに健康被害予防のための事業を実施し、万全を期するつもりでございます。
 費用負担につきましては、これは汚染原因者負担の原則に基づき賄っておりますが、今後とも汚染原因者負担の原則を踏まえて必要な費用を調達してまいります。今回、基金につきましても、NOx、窒素酸化物の発生源の移動的なもの、自動車の移動発生源からもこれを徴収する、そういうことにいたしてもおります。
 今回の改正案は、公健制度を公正かつ合理的にするために必要なものでありまして、撤回する考えはございません。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣稲村利幸君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(稲村利幸君) 丸谷議員にお答え申し上げます。
 まず、中央公害対策審議会答申は諮問内容の逸脱との御指摘であります。
 中公審への諮問事項は、公健法第一種地域のあり方についてであり、この点につき慎重に御審議いただき答申を得たものであり、諮問の逸脱ないし越権という御指摘は当たらないと考えております。環境庁としては、この中公審答申を十分尊重して、制度を公正かつ合理的なものとすべきと判断したものであります。
 第二に、中公審答申は専門委員会報告等を無視しているとの御指摘でありますが、答申は、専門委員会報告に示された科学的知見等を十分踏まえて取りまとめられたもので、妥当なものと考えております。
 第三、被害者救済の面においてのみ厳格な民事責任を要求した被害者救済の打ち切りを行うものではないかとの御指摘であります。
 公健制度は、民事責任を踏まえ、行政的な割り切りのもとに、汚染原因者の負担により被害者を補償する制度であります。現在の大気汚染の状況のもとでは、地域指定を継続していくことはこの制度の趣旨を逸脱することとなり、指定解除が適当と考えております。
 指定解除後に出された判決の取り扱いについてのお尋ねでありますが、係争中の訴訟については判決が出されていないので、お答えすることは差し控えたいと考えております。
 自治体が反対する中で指定解除を強行するのは問題であるとの御指摘でありますが、公健法第二条第四項の趣旨は、地域の実情を十分把握し、住民の健康確保と環境保全の第一線に立つ地方公共団体の長から意見を聞くことにより制度運営の適正を期するためのものであり、関係地方公共団体の意見は尊重していかなければならないが、その同意がなければ地域指定の解除ができないという趣旨のものではないと理解しております。
 地方公共団体は特に窒素酸化物による健康被害を懸念しており、これに対しては大気汚染防止対策及び調査研究の推進並びに健康被害予防のための事業を実施し、万全を期す所存であります。
 新事業の内容等についてのお尋ねでありますが、事業の内容としては、大気汚染による健康被害を予防するための調査研究、保健婦による健康指導等、さらには、低公害車の普及促進等を行うこととしております。御指摘の新事業の細目等については、法改正後に関係自治体とも相談し、効果的に実施されるよう努力する所在であります。御指摘のその他の点についても、環境庁において十分検討を行ってきたものであります。
 さらに、御指摘の基金については、拠出者から基金に協力するとの御了解をいただいており、新しい事業が安定的に円滑に実施することができる規模の基金を確保できるものと考えております。
 費用負担について、自動車から多く取るべきではないかとの御指摘ですが、公健制度に必要な費用は、汚染原因者負担の原則に基づき、その二割分は自動車に係る負担として自動車重量税収を引き当てているところであります。現状ではこの負担割合を変更する必要はないものと考えております。
 今回の公健法の改正は、現在の大気汚染の状況を踏まえ、制度を公正かつ合理的なものとし、今後は健康被害の予防に重点を置いた施策を積極的に推進しようとするものであり、改正案を撤回する考えはなく、今国会でぜひとも速やかに成立を期していく所存であります。(拍手)
   〔国務大臣遠藤要君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(遠藤要君) 丸谷議員のお尋ねの点について簡単にお答え申し上げます。
 国を当事者とする訴訟について司法判断が下された場合に、国がその司法判断に服さなげればならないことは当然でございます。(拍手)
   〔国務大臣葉梨信行君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(葉梨信行君) 関係地方公共団体の長からの意見聴取でございますが、制度の適正かつ円滑な運用を図るためのものでございまして、この意見はできるだけ尊重されるべきものであると考える次第でございます。
 改正に際しまして、関係地方公共団体の意見をも踏まえ、今後、大気汚染防止対策の一層の推進、新たな健康被害予防事業の実施等の施策が講ぜられることとしているところでございます。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(田村元君) 自動車業界としては、固定発生源としての拠出のほか、関連業界の一つとして応分の協力を行う所存と聞いております。
 なお、具体的な基金の拠出方法につきましては、当然所管の環境庁が今後拠出者と調整するものと承知しております。(拍手)
#12
○議長(藤田正明君) 高桑栄松君。
   〔高桑栄松君登壇、拍手〕
#13
○高桑栄松君 ただいま趣旨説明のありました法案につきまして、私は公明党・国民会議の立場から質疑をさせていただきたいと存じます。
 最初に、公害健康被害とその対応について、私の基本的な考え方を述べさせていただきます。
 一つは、健康障害は医学の対象であります。したがって、健康にかかわる行政は医学的判断に従うべきものである、こう思います。二番目は、公害による健康被害については、疑わしきは救済するというのが基本的な理念ではなかったのかということであります。三番目は、疾病と健康の関係は連続的スペクトラムであります。であるがゆえに、全面解除の前には少なくとも中間措置が必要である、こう考えます。
 この三つの項目は、第百七国会の予算委員会におきまして私が述べたことでありますが、これに対しては総理の御見解を承っております。さすが科学技術庁長官を二度もお務めになった中曽根総理の科学に対する認識の深さを示すものとして、私は敬意を表する次第であります。総理の見解というのは次のようなことであります。一番目の医学的判断については、当然のことである、こう申しておられます。二番目の疑わしきは救済する、これについては、よく検討したいということでありました。三番目の連続したスペクトラムで中間措置が必要であるということについては、一つの見識である、こう述べておられます。
 さて、本法案について私の考えをまず述べさせていただきますと、現状における地域指定全面解除は時期尚早であると私は思います。したがって、私は反対であります。
 その理由を次に述べたいと思いますが、まず最初に、医学的見地からであります。現状において環境基準は守られているかということでありますが、今日まで大気汚染の主役であった硫黄酸化物はここ十年間常に基準をクリアしております。その濃度は大体環境基準の二分の一です。しかし、低濃度にとどまっているということでありまして、長期慢性影響の問題があるわけであります。また、窒素酸化物はここ十年間横ばいであります。ということは改善が見られないということでありまして、特に自動車排気ガスが問題でありますが、その健康影響が懸念されるところであります。
 ところで、現在問題になっている大都市の大気汚染は、今や窒素酸化物が主役であるということは中公審の専門委員会がその報告で強調しております。特に注目すべきことは、幹線道路沿線の住民の健康影響であります。また、窒素酸化物、それに浮遊粒子状物質、並びに低濃度ではありますが硫黄酸化物、この複合汚染の健康影響が指摘されております。また、中公審の昨年十月三十日の答申には、現状において大気汚染の健康影響への可能性は否定できないと書いてあります。これは患者の発生を予測しているということでありまして、私は大変重要なポイントであると考えます。これについて環境庁長官の御意見を承りたいと思います。
 また、大気汚染による健康障害というのは、非特異的な症状でございます。非特異的ということは、因果関係が特定できないということであります。それを承知の上で患者の認定がなされておるわけであります。したがいまして、因果関係が成立しないということは地域指定解除の理由にはなり得ない、こう私は思います。これについても環境庁長官の御見解を承りたいと思います。
 ここで、前の公衆衛生院院長の鈴木武夫氏の去る二月の東京高裁のNO2訴訟における証言を引用したいと思います。
 地域指定全面解除を内容とした中公審答申についてでありますが、地域を指定し、補償給付を行うためには二つの条件が必要であるとしているが、この二つの条件を満たすようなことは事故以外にはあり得ない、これは病気の現実を知らない人の文章であろう、こう言っておられます。二つの条件とは何か。一つは、大気汚染の影響が定量的であるということであります。二つ目は、症状の因果関係の合理性であります。これらの医学的な知見を総括いたしまして、私は地域特性等を含めて大気汚染公害について見直しを検討する段階にあると考えます。しかし、見直し即地域指定解除ということにはなりません。ゆえに、現状における地域指定全面解除は医学的に疑問と言わざるを得ない、こう私は考えるのであります。
 ところで、総理に伺いたいと思いますが、地域指定解除についての意見聴取に対する地方自治体の回答が参っておりますが、アンケートは五十一、賛成六、反対が四十五、つまり約九割が反対の側であります。ここで自治体のコメントの二、三を引用いたしますと、神戸市は、科学的根拠に立って公正に、こう言っております。東京都は知事談話におきまして、納得できる内容とは言いがたい、こういうコメントがついておりますが、民意の尊重というのは政治の場において最も大切な点であろうかと思いますが、総理としてこれをどう受けとめておられるか、お伺いいたします。
 次に、予防医学の見地から私の意見を述べたいと思います。
 去る八月二十五日の衆議院環境委員会におきまして、公明党の春田委員の質問に対しまして、総理は次のように答えておられます。大都市の大気汚染並びにディーゼル車排ガス等は政府の取り組むべき重要な課題である、こう申しておられます。最近の研究報告を見ますと、局地汚染の進行していることが指摘されております。東京都の調査リポートは、幹線道路沿いの健康被害は深刻であると述べております。私は、局地汚染について十分に調査し、早急に対策を講ずべきであると思いますが、環境庁長官の御見解を承ります。
 また、複合汚染につきましては、健康影響の調査研究を進めて対策を急いでもらいたいと思います。あわせて環境庁長官のお考えを承ります。
 なお、自動車排ガス対策、特にディーゼル車についてでありますが、ディーゼル車の排ガスは窒素酸化物の発生源の主要なものの一つでありますが、そのほかに、最近問題になっております花粉アレルギー、これに対して排ガスの中の粒子状物質が大きな役割を演じているということが実験報告として学会に発表されております。これらにつきまして排ガス対策を通産大臣に具体的にどうお考えかを伺いたいと存じます。
 終わりに、結びといたしまして、私の考え及び提案を申し述べて総理の御見解を伺います。
 一つは、有吉佐和子さんが「複合汚染」という小説をお書きになったのが既に昭和五十三年、約十年前であります。我が国の複合汚染についての調査研究はおくれております。これは対策を急ぐべきであると思います。二番目、現状において地域指定全面解除は時期尚早であると考えます。三番目、疾病と健康は連続的な関係にあります。したがって、オール・オア・ナンということはあり得ないのであります。ここでもし指定解除を検討するとすれば、その前に少なくとも被害者救済のための中間措置を考慮すべきであると私は考えます。
 以上、三点について総理大臣のお考えを承りまして、私の質疑を終わらしていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(中曽根康弘君) 高桑議員にお答えをいたします。
 まず、三点の原則をお挙げになりました。私も大事な原則であると思っております。
 まず、医学的、科学的見地というものを重要視しろということであります。もとよりこの点は重要視したところでございまして、今回の中公審の委員の中にも九人お医者さんが入っておりまして、専門的な御見解も徴したところでございます。
 次に、疑わしきは救済せよという原則でございます。今回の解除を見ますというと、割合に環境浄化が工場その他については徹底してまいりまして、例えば四日市とか川崎とか、そういう都市における条件はクリアされてきた。むしろ最近は、御指摘のような浮遊粒子物とかあるいは自動車によるNOxというようなものが非常に重要視されてきておるわけでございます。そうなりますというと、この自動車の通過の激しいところというような、あるいは都会の密集地というような、そういうような場所、局地的な現象というものに分散されてきまして、それを見張る必要が出てきて、それに対する予防対策を十分で行おうという考えなのでございます。
 今まで認定を受けら九ました患者さんにつきましては、今後も前と同じように補償は継続していく。将来発生する問題につきましては、これは予防を中心に、そして国民の健康保持ということを中心に調査研究その他も十分で行おう、そういう考えなのでございまして、二点、三点については今のような考えに立って行おうと申し上げておるのであります。
 段階的取り扱いという御指摘もごもっとものようにも思いますけれども、ともかく今申し上げましたような状況で、川崎とかあるいは四日市というような、都市的な固まったものから分散的なものに来ておりまして、そういう面から予防、保健という面に重点を置く。しかし、今までの患者さんについては今までどおり面倒を見さしていただく、こういうことで進めさしていただきたいと考えておるところでございます。
 それから、調査研究の推進については全く同感でございまして、今後とも科学的基礎を中心に所要の調査研究をさらに一層推進していかなければならぬと思っております。
 段階的措置につきましては、ただいま御答弁申し上げましたように、新たに発生する患者のために特別の調査研究を行う、そして科学的データに基づいて著しく限度を超すという段階になれば、また新たに認定するということも将来辞すべきではない、そう衆議院でも御答弁申し上げておるのでありまして、あくまで科学的なデータに基づいて考えていくべきである、そのように考えておる次第でございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣稲村利幸君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(稲村利幸君) 高桑議員にお答え申し上げます。
 初めに、現在の大気汚染の健康影響についての認識についてであります。
 現在の大気汚染はNOx等を中心とするものであり、健康影響についてもなお懸念される状況にあると認識しております。これについては調査研究、大気汚染防止対策及び本法案に盛り込まれた健康被害の予防のための事業の実施により、国民の健康保護に万全を期してまいる所存であります。
 また、大気汚染と健康被害の因果関係についてのお尋ねでございますが、この制度においては、制度発足当初から大気汚染とぜんそく等の疾病との因果関係については、科学的知見に基づき、個々の患者についてではなく、人口集団全体に対する大気汚染の影響について判断してきたところであります。今回の中公審答申もこうした考え方に基づくものでございます。
 さらに、医学的見地から地域指定の解除に疑問との御意見であります。
 中央公害対策審議会では、専門委員会の医学的検討結果を踏まえ、NOxを含めた総体としての現在の大気汚染のもとでは、第一種地域をすべて解除することが相当との結論に至ったものであり、解除には十分な医学的根拠があると考えております。
 局地的汚染について調査を進めるべきとの御指摘であります。
 局地的汚染の健康影響については、環境庁においても局地的汚染健康影響調査に着手するとともに、新たに基金による事業の一環として、大都市における気管支ぜんそく等に関する研究調査を行う等、積極的に調査研究を進めてまいりたいと考えております。
 複合大気汚染についてでございますが、健康影響についての調査研究及び対策を推進すべきとの御指摘であります。
 調査研究につきましては、今後ともその総合的推進を図るとともに、環境保健サーベイランスシステムを構築することとしております。
 次に、これに対する対策でありますが、窒素酸化物による大気汚染については、自動車排ガス規制の強化、交通の抑制、分散等を図る自動車交通対策の推進、及び工場、事業場からの排出対策の強化を三本の柱として、今後とも諸対策を一層進めるとともに、浮遊粒子状物質対策としては、粉じん規制、ディーゼル黒煙対策を推進するなど、各種環境基準の達成に向けて積極的に対応してまいる所存でございます。
 よろしくお願い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(田村元君) 高桑議員にお答えいたします。
 通産省は、ディーゼル車の排出ガスの低減を図りますために、技術開発を推進するとともに、排出ガス規制適合車の早期導入を図るための税制上の特別措置を講じておるところでございます。
 今後とも、引き続きディーゼル車の排出ガス低減を推進するために、税制措置等諸般の措置を講じてまいる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(藤田正明君) 沓脱タケ子君。
   〔沓脱タケ子君登壇、拍手〕
#18
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 公害被害者の長期にわたる闘いの中で四日市判決を機会に生まれた公害健康被害補償制度は、汚染者負担の原則に立ち、被害者を迅速に救済する上で重要な役割を果たしてまいったのであります。公害は終わったなどという財界の言い分とは全く逆に、今日の大気汚染の実態は、幹線道路沿道の局地汚染のひどさ、毎年九千人もの公害患者の増加などに見られるとおり極めて深刻な状態であり、補償制度の一層の拡充こそが強く求められているところなのであります。
 ところが、政府は、加害者である財界の主張のみを受け入れ、無謀にも指定地域を全面解除し、新規患者の認定を打ち切ろうとしているのであります。このような実態を無視して被害者救済の道を再び閉ざすということは、公害患者の命綱を断ち切るに等しいことなのであります。これこそ財界奉仕の中曽根政治の本質を示すものではありませんか。そうでないと言うなら、本法案を撤回し、再諮問すべきであります。総理の公害問題に対する基本姿勢をお伺いいたします。
 そもそもこの法律が成立いたしましたのは、一九七三年でありました。公害発生企業、財界は、公害患者救済を敵視し、法施行直後から巻き返しを執拗に続け、二酸化窒素、NO2の環境基準犬幅緩和を初め、補償法つぶしを行ってきたことは天下周知であります。本改正案は、この加害企業、財界のこのねらいを完結するために提案されてきたものであり、年間八百七十億円の企業負担を大幅に軽減、縮小したいという要求を実現しようとするものであることは明白ではありませんか。
 このことを最も端的に示しているのが、指定地域全面解除をするための手順と内容であります。政府が指定地域全面解除の根拠として最大限に尊重するという中公審の運営と答申の内容は、まさに初めに指定地域全面解除ありきと言うべき不公正かつ非科学的なものであり、科学の名に隠れて真実をゆがめて結論づけるという許しがたいものであります。
 その第一は、中公審の構成と運営の問題です。加害者の代表である産業界の代表は入れるが、被害者である患者代表は入れないという極めて不公正な構成の上に、非公開と密室審議を前提とするというのでは、初めから財界の言い分を代弁する答申にしかならないのは当たり前ではありませんか。しかも、当初中公審に対して諮問されたのは、指定地域の指定または解除の要件の明確化であったにもかかわらず、物差しとなる解除要件は何も決めずいきなり全面解除を打ち出したのは、諮問内容を逸脱した越権的答申としか言えないではありませんか。いかがですか。
 さらには、四十一指定地域の大気汚染の影響については個々に検討されたのですか。地域ごとの大気汚染と健康への影響を調査しないでどうして大気汚染が主たる原因でなくなったなどと言えるのですか。お答えいただきたい。
 しかも、そのままで一括して指定地域を解除するなど全く言語道断であります。とりわけ、新規患者の打ち切りまでやると言うのです。再発患者や、健康保険制度に頼っている人、加害企業に勤務しているための未申請者、また、長期にわたって認定地域に居住しながらおくれて発病する人たち等に、認定申請の道まで閉ざすという根拠は一体どこにあるのですか。
 総理、こんなやり方で患者や関係者の方々の理解と納得が得られると思いますか。見解を伺いたいと思います。
 第二に、中公審答申は、幹線道路沿いの深刻な汚染やお年寄りや子供への影響を当然留意すべきだとした専門委員会報告の指摘を意図的に歪曲やすりかえをし、幹線道路沿道における汚染の健康影響などを解明した東京都の調査結果を無視するなど、科学的な検討材料を意識的に排除した上で結論づけを行った極めて非科学的なものであります。このことは、専門委員会の鈴木委員長を初め、審議に携わった委員の方々からも疑問が出されているほどであります。
 だからこそ、政府の全面解除方針に対し、公害患者や地域住民はもとより、日本弁護士連合会、日本医師会、日本環境会議など関係諸団体がこぞって反対し、関係自治体の大部分が反対や慎重論を述べ、無謀なやり方はやめるべきだと主張しているのであります。指定地域全面解除方針を撤回し、改めて科学的データに基づく検討が行われるよう中公審に再諮問し直すのが当然ではありませんか。答弁を求めます。
 また、関係地方自治体の意見聴取に対し、九割もの自治体が指定地域全面解除に反対ないし慎重な対処をと回答し、本法案の衆議院通過に当たっては、東京都など関係自治体がみずからの意見が尊重されなかったことに強い不満を表明いたしております。これは、住民の被害の実態や汚染状況を身近に知っている自治体として当然のことであります。しかるに、政令改廃は国の判断と権限でできると開き直って指定地域全面解除を強行するというのは、関係自治体の意見を尊重する立場からその聴取を義務づけた本法はもとより、地方自治の精神を真っ向から踏みにじるものではありませんか、総理並びに自治大臣の答弁を求めます。
 大都市部では、緩和された環境基準の達成さえおぼつかない中で、民間活力の名のもとに、関西国際空港、東京湾横断道路を初め、一層の大気汚染につながる大型プロジェクトがメジロ押しであります。このような中で、規制緩和ということで公害指定地域をしゃにむに解除し、汚染企業の責任を免罪するならば、公害発生への厳しい歯どめを失うことになり、大気汚染の一層の悪化と自然破壊を招くことはだれの目にも明らかであります。これでは、公害基本法から削除された悪名高い経済との調和条項を実質的に復活させることになるではありませんか。答弁を求めます。
 毎晩のようにぜんそくの発作に悩まされ、気管支を広げる薬を吸い続けたり、酸素の管をくわえて夜明けを待つ患者の不安、病院に運ばれたときには窒息死という人たちが後を絶たない被害者の方々。総理、この人たちの苦しみがわかりますか。この被害者の苦しみをよそに、加害企業、財界の利益のために指定地域全面解除の暴挙を行うことは断じて許すことはできません。
 我が党は、本法案の廃案のために最後まで奮闘する決意を述べて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(中曽根康弘君) 沓脱議員にお答えをいたします。
 まず、公害問題に対する基本姿勢でございますが、環境行政は、国民の健康の保護と生活環境の保全を使命とする極めて重要なものであり、政府としても重点施策として取り上げておるところでございます。
 公害健康被害補償法の改正案は、現在の大気の汚染状況を踏まえ、制度を公正かつ合理的にするものであり、改正案を撤回する考えはございません。
 中公審の運営についてでございますが、中公審の委員は、いずれも公害対策に関する学識経験者から選任されており、公正な審議が行われてきたところです。その結果に基づく今回の改正に対しては、国民の理解が得られるものと確信しております。
 認定しない理由でございますが、地域指定を解除して新規患者を認定しない根拠は、現在の大気汚染状況下で、さらに新規の患者を認定し補償することは不合理という中公審答申に基づくものであります。
 この指定解除の撤回の問題でございますが、中公審答申は科学的知見を踏まえ、三年にわたる慎重な審議の結果、中公審の総意として取りまとめられたものであり、適切なものとして判定しており、撤回する考えはございません。
 地方公共団体の御意見につきましては、第一線におられる地方公共団体の長から御意見を承ったところでございます。しかし、これは、尊重はしていくけれども、その同意がなければ地域指定の解除ができないという趣旨のものではないと考えており、特に地方公共団体は窒素酸化物による健康被害を懸念しておりまして、これに対しては、大気汚染防止対策、調査研究の推進並びに健康被害予防のための事業を実施して御期待にこたえる考えでおります。
 次に、今回の地域指定の解除は、現在の大気汚染の状況を踏まえて合理的かつ公正な判断であると思っております。
 政府としては、環境問題は重要な課題と認識しており、今後とも施策を積極的に推進して、国民の健康の保護、生活環境の保全につきましては全力を注いでまいるつもりでおります。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣稲村利幸君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(稲村利幸君) 沓脱議員にお答え申し上げます。
 まず、中公審の答申は諮問内容の逸脱との御指摘であります。
 中公審への諮問事項は、公健法第一種地域のあり方についてであり、この点につき慎重に御審議いただき答申を得たものであり、諮問の逸脱ないし越権という御指摘は当たらないと考えております。
 次に、個々の地域の調査についてであります。
 中公審では、現在の我が国の最高濃度レベルの大気汚染の影響についても検討したものであります。したがって、現在の大気汚染はぜんそく等の主たる原因とは言えないという評価は、四十一の指定地域を含め適切なものと考えております。
 さらに、指定地域全面解除の方針を撤回せよとの御指摘についてであります。中公審答申は、現時点で可能な限りの内外の科学的知見を集め検討を行った専門委員会の科学的評価を踏まえ、御指摘の留意事項も含め慎重な審議の上、その総意として取りまとめられたものであり、十分な科学的根拠を有するものであります。指定地域全面解除の方針は、制度を公正かつ合理的なものとするための必要なものであり、撤回する考えはありません。
 最後に、指定地域の解除により都市部の大気汚染の一層の悪化と自然破壊を招くとの御指摘についてであります。
 環境庁としては、今後とも窒素酸化物等の大気汚染防止対策を初めとする諸施策を推進し、国民の健康の保護と生活環境の保全に万全を期してまいる所存であります。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣葉梨信行君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(葉梨信行君) 関係地方公共団体の長からの意見聴取は、制度の適正かつ円滑な運用を図るためのものでございまして、この意見はできるだけ尊重されるべきものであると考えておる次第でございます。
 改正に際しまして、関係地方公共団体のいろいろな御意見がございまして、その御意見を踏まえまして、今後大気汚染防止対策の一層の推進、あるいは新たな健康被害予防事業の実施等の施策を講ずることとした次第でございます。(拍手)
#22
○議長(藤田正明君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#23
○議長(藤田正明君) 日程第二 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 両案について提出者の趣旨説明を求めます。栗原国務大臣。
   〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(栗原祐幸君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。
 これは自衛官の定数を、海上自衛隊二百三十九人、航空自衛隊二百六十七人、統合幕僚会議四人、計五百十人増加するものであります。これらの増員は、海上自衛隊については、艦艇、航空機の就役等に伴うものであり、航空自衛隊については、航空機の就役等に伴うものであります。また、統合幕僚会議については、日米防衛協力の推進等のためのものであります。
 次いで、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。
 これは自衛隊の予備勢力を確保するため、陸上自衛隊の予備自衛官千人、海上自衛隊の予備自衛官二百人、航空自衛隊の予備自衛官三百人、計千五百人を増員するものであります。
 次に、防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 この法律案は、予備自衛官手当について、その月額を現行の三千円から四千円に改定するものであります。
 現行の月額は、昭和五十四年に定められたものでありますが、その後の経済情勢の変化等にかんがみ、これを改定することといたしました。
 なお、この法律案の規定は、昭和六十二年四月一日から施行することとしておりましたが、衆議院において、公布の日から施行し、昭和六十二年四月一日から適用するよう修正されております。
 以上が防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(掛手)
    ―――――――――――――
#25
○議長(藤田正明君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。久保田真苗君。
   〔久保田真苗君登壇、拍手〕
#26
○久保田真苗君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 初めに、我が国の防衛政策についてお伺いします。
 まず、このたび発表されました防衛白書は、冒頭に「軍事力の意義」という一文を掲げております。これによりますと、「軍事力の役割ないし機能は、究極的には力によって相手に対する要求を充足」させることであるとか、あるいは「強力な軍事力を背景として相手を威圧することなどにより政治的な影響力に転化」するなどの説明がなされています。
 このような攻撃的な軍事力の意義づけは、平和憲法の精神に照らして、我が国としてはとても認めることのできないものだと考えますが、総理のお考えを伺います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 第二は、米国の前方展開戦略と日本との関係であります。
 白書は、米ソの対決する二極構造の視点から、米国の対ソ前方展開戦略の最前線として、ソ連の艦艇の出入口に位置する日本の戦略的な重要性を一段と強調しております。特に、そこからソ連のSLBMが米本土を直接攻撃できるとされるオホーツク海の重要性が高まる中で、白書は、北部日本の防衛を重視する侵略への対処の作戦を登場させています。
 これまでの総理の発言、日本列島は不沈空母、海峡封鎖、米国はやり日本は盾という日本の役割、あるいはペンタゴンから出た、日本は熊のおりのしんばり棒の役割をみずから買って出ているわけです。日本はだれのために国土を盾にするのでしょうか。このように日本を対ソ最前線の盾にすることが国民の大多数に支持されるものでありましょうか。総理の御認識を伺います。
 第三に、白書は、単純明快にソ連を一方的な悪者とし、その侵略を想定し、侵略への対処を展開していますが、米国と異なり我が国にとってソ連は隣国であります。隣国をこのように敵国扱いすることが、緊張の緩和に少しでも役立つのでしょうか。これでは対ソ外交の成果などは望むべくもないと思いますが、外務大臣はどうお考えですか。
 総理は、ソ連との平和的共存はお考えにならないのか伺います。
 第四に、洋上防空の意味と内容についてであります。
 当初、防衛庁は、洋上防空はシーレーン防衛における経済脅威が増大したこと、すなわち、主に航空機及びミサイルの進歩に対処するためのシーレーン防衛の一環である旨説明しましたが、さきの予算審議の際には、洋上防空は防空機能の一部であるとして、いわゆる本土防空の拡大であることを明確にしました。我が国国土上空における要撃を中心として対処するという従来の構想からの質的転換であり、防衛の範囲の拡大という重大な問題であります。洋上防空の内容につき防衛庁長官の明確な説明を求めます。
 また、このような重大な内容を、政府はいつ、どこで決めたのでしょうか。
 第五には、防衛計画の大綱についてであります。
 政府は、お題目のように、我が国の防衛力は、質的にも量的にも大綱水準にまだ達していないと言ってきましたが、果たしてそうでしょうか。量的には、四次防完成時に既に達成しているとされていた大綱水準が、毎年、莫大な国民の血税をつぎ込みながら、逆に量的には、減少してきたということは、政府が兵器の更新のたびに、ひたすら世界の一級品、すなわち最新かつ最強の高額な兵器の購入に奔走していたからではありませんか。
 しかも、中期防衛力整備計画においては、数量的にも増強され、その完成時にはF15戦闘機百六十三機、P3C対潜機九十四機など、能力面においては世界でも屈指の軍事力を持とうとしているのであります。これだけ第一級の兵器のみをそろえることが、どうして必要最小限の防衛力だと言えるのか理解に苦しむところであります。国民にわかるように御説明願いたいと思います。
 このように考えますと、政府は大綱水準の達成を目指すとして、いかにも小さな防衛力の整備をしているような説明をしながら、その実は、大綱の精神である基盤的防衛力構想すら無視した正面偏重の防衛力整備を続けて、みずから大綱水準からの後退を生じさせていると言わざるを得ません。そのような反省もなく、大綱水準に達していないのは防衛費が少ないからだと言わんばかりの姿勢で、これ以上の防衛力整備に走るのは筋違いも甚だしいと考えますが、総理の御所見を伺いたいのでございます。
 さて、これらの背景で破棄されたのが防衛費の対GNP比一%枠の歯どめです。この政府の決定に対しては、総理及び防衛庁長官の強気の姿勢にもかかわらず、国民及び近隣諸国からの懸念の声と批判は依然として強いものがあります。民意を反映せず、謙虚さを失った政治は恐ろしいものです。総理は本当に今でも、一%枠の撤廃が民意を反映し、かつ国民の支持を得ていると考えておいででしょうか。率直にお聞かせください。
 私は、重ねて今回の閣議決定の破棄と、今後も一%枠の遵守を主張するものでありますが、お答えをお聞かせください。
 もう一つの中曽根内閣の特徴は、日米安保体制の絶対的優先政策であります。総理は就任早々、武器輸出三原則に風穴をあける対米武器技術供与を決定し、我が国の技術力を米国の軍事力向上に役立てる道を開きました。この方向は、過日、日米間で署名されたSDI研究参加に関する政府間協定まで発展し、今や我が国の技術は米国の核戦略までも含む軍事力の全面的補完をする体制になってきております。国是である非核三原則についても、核搭載の疑惑がある艦艇の寄港を認めるなど空洞化を図ってきました。
 さらに、最近、核兵器事故に対処し得る爆発物処理第一グループ分遣隊が、横須賀、佐世保に常駐していることがアメリカの公文書で明らかになったのでありますけれども、核の通過、持ち込みの疑惑はますます濃くなっております。この際、改めて、長い間国会の論議で形成されたこのような基本政策について総理のお考えを伺いたいと思います。
 駐留米軍に対する思いやり予算は年々増加しましたが、ついに地位協定の枠外の経費までも特別協定を締結して配慮いたしました。しかも、その結果は、沖縄県における海兵隊クラブ従業員の大量解雇通告であったのですが、この点はどうなっているのか、関係閣僚の説明を求めます。
 防衛費についてまで、米国は内政干渉にも等しい赤裸々な増額圧力をだんだんかけてきており、政府童言葉では自主的にと言いながら、米国の顔色をうかがいつつ決定しております。
 総理、日米安保体制は我が国がこれほど卑屈なまでに遠慮しなければ成り立たないものなのでしょうか。また、我が国が利益だけをこうむり、・米国のお情けによって平和を守ってもらっている、そういう認識をお持ちなのでしょうか、御所見を伺います。
 さて、本法律案の内容に対し防衛庁長官に伺います。
 自衛官の定員は、今回の増員が認められれば二十七万三千二百七十八人となり、発足当初の一・八倍となります。しかも、過去十七回にわたりなし崩しに増員をしてきたのであります。政府は、自衛官の定数増の具体的な理由をもっと明らかにすべきです。防衛庁は、装備品の就役等に伴う増員としておりますが、非常に大ざっぱな説明で不十分であります。一般の国家公務員の定員については行政改革の名のもとに計画的に削減され、かつ増員は厳しく抑制されていることから、多くの官庁で純減を余儀なくされておるのです。一方、自衛官は必要だから増員すると言わんばかりの説明であります。各省並みに増員の具体的内訳を明らかにしていただきたいと思います。
 第二は、予備自衛官の増員理由であります。
 予備自衛官は、今回の増員で四万六千四百人となり、発足当初に比べ三倍以上となります。そして予備自衛官の将来規模については依然として何も明らかにしておりません。一体どのような構想のもとに今回の増員を行おうとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。
 また、昨年の増員の際に、自衛官未経験者からの予備自衛官採用を検討するかのようなお話も出ましたが、このような考えはきっぱりとおやめになったのか、伺いたいと思います。
 さらに、以上のことを背景としまして、最近特に問題となっている点について幾つか伺います。
 第一は、NLP訓練基地の問題であります。現在、政府は、その建設対象を一方的に三宅島に絞り、島民の強い反対にもかかわらず、建設への準備に着手したことはまことに遺憾でございます。そもそもこの問題は、空母ミッドウェーの母港化に端を発していますが、最大の問題は、我が国のように国土が狭く、人口密度が高いところで最前線の航空機部隊が訓練を行おうとすること自体が常識から外れていることでございます。政府が真に国民の生活を考えているならば、訓練の中止もしくは訓練の制限等にまず努力すべきだと考えますが、そのようなお考えは持てないのでしょうか。
 国はもう少し国民を愛してほしいというのが島民の痛切な叫びなのであります。これに対する粟原長官のお答えは、安保、これは日本の国是じゃないか、それよりも生活の方が大切という言い方の方がどうかしているという叱咤であったことを国会答弁が示しています。長官は正気でそうお考えなのでしょうか。もしそうならば、平穏な生活権を常住不断に奪われる国民にとっては、政府の存在意義などないに等しいものであります。
 このことは、現に存在する基地の騒音公害として差し迫った問題となっております。現在、我が国には、米軍及び自衛隊使用の飛行場は五十数カ所あり、大部分の基地周辺住民は耳をつんざく騒音に悩まされ続けています。嘉手納、横田、厚木、小松では住民による訴訟が提起されております。最近の横田基地公害訴訟に対する控訴審では、住民らに与える睡眠妨害、会話妨害、心理的不快など住民らの被害は特別の受忍限度、耐え忍べる限度を超えるものと判示しているのであります。判決は国に慰謝料の支払いを命ずる一方、侵害行為者は米軍であって国ではないから、国に米軍の使用規制を求めることは適当でないと門前払いをしておりますが、それならば、米軍の行為から被害を受けている国民はどうしたらいいのでしょうか。外務大臣に御教示願いたいのであります。また、米軍はこのような状態をどう考えているのでしょうか、あわせて御教示願います。
 そもそも外国の空母に母港を提供する基地も世界にためしがなくしかも、その艦載機が昼夜を分かたず首都圏の人家を圧して訓練飛行を続けるためしもないと聞きます。政府はなぜ日本国民をこうまでおとしめるのでしょうか。
 その一方で、政府は、横須賀と清水に商業、住宅、レクリエーション等の多目的大人工島をつくる予定と聞きます。米軍住宅に対しては、住民の声に耳もかさず、貴重な池子の森を犠牲にしようとしているのにです。政府は住民の悩む基地問題について、なぜもっと本腰を入れて解決しようとしないのですか。少しは国民を愛してという声に、総理、関係大臣はどう答えられますか。
 三宅島については、島民の理解を得ないで基地の建設強行を行わないことを確約していただきたいと思います。
 さらに、先日の奈良県におけるミッドウエー艦載機が起こした事故にも見られるように、地位協定上は訓練空域以外でも米軍機は自由に訓練を行っているという実態が明らかになっており、政府もそれを認めております。しかし、政府は、米軍に国内法の適用がないと言って、いつも事後対策を講ずるのみです。どこの飛行機であろうと危険は危険なのであります。抜本的な是正をすべきと考えますが、総理及び関係大臣のお考えを伺います。
 また、前回の本会議でココム違反事件について、総理はこれが極めて悪質な事件と断言されたのでありますが、政府が今奔走しているのは、ひたすらに米法案から東芝制裁条項を外すことであります。その代償は国民一般への高いツケとなってくるでありましょう。本来、我が国の憲法の精神と武器禁輸原則に従えば、武器及び関連技術の輸出はいかなる国に対してもなされてはならないのであります。しかし、当事者は国民に背を向けたまま、ひたすら米議会と米国民への陳謝を繰り返しているのであります。当事者が第一に謝罪すべきは日本国民に対してではありませんか。総理の所感をお聞かせください。
 最後に、私は総理に一言申し上げたいのであります。
 総理は、先日軽井沢からのテレビ放映で、日本人の生活はよい、高いのは住まいと食料だけだということを言われたのでありますが、食と住とは他のものに増して必要不可欠な生活の基本ではありませんか。食と住に安んじない社会は悪い社会ではないでしょうか。平穏な生活権の侵害が放置され、自国政府の手によって一層推進さえされる社会は悪い社会ではないでしょうか。労働分配率はいよいよ低く、土地の値段はいよいよ高く、労働時間の短縮についての法改正は外国向けのただの見せ金になり果てているのです。
 総理の一貫した軍事優先政策によって、国民の福祉は徹底的に切り詰められてまいりました。これが経済大国を築いた勤勉で有能な日本人の受けるべき報いでしょうか。このままでは、愛国心を説く中曽根内閣の五年間は一言で言えば、国民を愛さない政治だったということに尽きるのであります。総理はどうお考えでしょうか。
 対米一辺倒の我が国の政治、経済、軍事は、今そのために行き詰まりつつあり、世界から孤立した日本、友人を持たない日本の姿があります。米国との間にさえ険しい関係が存在します。この政治の大きな弱点を克服し、国民を愛する政治、諸外国から信頼される政治に生まれ変わることを念願いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(中曽根康弘君) 久保田議員にお答えをいたします。
 まず、軍事力の意義、防衛白書に書かれたところについての御質問でございますが、この白書の言及したところは、防衛力、軍事力の果たす一般的な機能を申しておるわけでございます。言いかえれば、均衡と抑止に基づく戦争防止力、そしてこの均衡と抑止のないところに生まれる空白地帯の危険性、それは今までの戦後の歴史に徴してみてそういうものを指摘して、それを述べているということなのでございまして、御理解いただきたいと思うのです。
 また、日本が対ソ最前線の盾ではないかというお話でございましたが、我が国は別に仮想敵国というものを設けているものではございません。専守防衛に基づいて我が日本列島を防衛するという基本に基づいて安全保障条約を締結して、その機能の中において、日本は専守防衛というものであるがゆえに受動的な防衛体制をつくっておる。他国に脅威を与えるような攻撃的な姿勢はとらない。そういう意味で節度のある防衛力を示しているということを御理解願いたい。これは社会党もよくわかっていただけるところであると思います。
 非核三原則を堅持することは、これはもとよりでありまして、我が国の国民世論に支持された重要な基本的な国是とも言うべきものであると考えております。
 武器輸出の問題については、従来から武器輸出三原則及び武器輸出に関する政府統一見解を支持して今後も厳格に行ってまいるつもりでおります。
 次に、昭和五十一年十一月の三木内閣の閣議決定の問題でございますが、この基本精神は、防衛費についていたずらな膨張を抑制しつつ節度のある防衛力の整備を行うとしておるのでありまして、我々はこの精神をあくまで尊重して今後とも防衛力を整備してまいりたいと考えておるところであり、この基本的建前は国民にも理解していただいていると考えるものなのであります。
 また、ソ連との間におきましては、できるだけ関係を改善して平和共存を行いたいというのはかねて申し上げているとおりである。北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、真の相互理解に基づく安定した関係を確立したいと考えておるところであります。
 基盤的防衛力につきましては、これは我が国が平時から保有しておくべき防衛力の水準を示した防衛計画の大綱に基づいて行っており、この大綱はこの思想に基づいてつくられておるものでありまして、中期防もそういうふうにつくられており、節度あり、かつ有効な防衛力の整備をこの基盤的防衛力を基本にして整備してまいりたいと考えておるところでございます。
 さらに、安保、米国及び防衛費の関係でございますが、今日の国際社会においては単独で防衛を全うするということは極めて困難な状況のもとで、アメリカとの安全保障条約を結び、必要最小限の自衛力を整備しているということであり、この日本の四十年の経過を見ますと、我々のこの選択が正しかった、私たちは国民が支持していただいていると考えておるのであります。今日の日本の経済的繁栄あるいは国際的地位の上昇あるいは節度のある防衛力の整備というようなものは、安全保障条約に基づくところが非常に大きいと私たちは評価しておるところなのでございます。
 次に、基地周辺住民との問題でございますが、安保条約に基づく米軍の駐留は、我が国の安全並びに極東の平和と安全に寄与する、そういう点で我々は評価しておるところであります。今後とも安保条約の目的の達成に必要と認められる施設、区域の円滑かつ安定的使用が確保されるように努力したいと思います。    ・
 しかし、周辺住民の皆さんの生活に対する影響も無視できず、十分なる配慮を行うべきであり、この障害の防止等については、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律等により十分な対処をしてまいりたいと思っております。特に、航空機騒音等についても、我々は慎重に、周到に努力してまいるつもりでございます。
 米軍の事故対策につきましては、安保条約及び地位協定のもとにおいて、一定のルールのもとに飛行訓練等を米国が行っておるものでありまして、どのような形でも自由奔放にやれるというものではないのであります。今後ともこの基本ルールの上に立って行うように、事故防止について、先方に対しましても、今までも申し入れを一逐次行っておりますが、今後とも十分の措置をとってまいりたいと思っております。
 東芝事件につきましては、これは偽りの申請によって不正な輸出を行ったということなのでありまして、日本の安全保障に対する大きな背信行為である。と同時に、自由世界に対する我々の合意を無視したやり方であって、それらについては、外為法の改正そのほかによりまして、管理体制の十分を期して、再びこういう事件を起こさないように努力しておるところでございます。今回の法改正につきましてもぜひ御了解をいただいて、御協力を願いたいと思うところでございます。
 中曽根内閣の五年間の軍事あるいは外交政策について御批判をいただきましたが、我々は一生懸命努力しておりますが、戦後のあの荒廃の中から立ち上がったその経過から見まして、今の状態では食と住というものに我々は最重点を注ぐべきときである。食費を安くすること、快適な住居を保障すること、これが今後我々としては全力を注ぐべき対象であると考えております。
 また、従来、私は政策を中心に国民の皆さんの御支持をお願いして、野党の皆様方の御鞭撻もいただきまして、時代に即応したような国際的関係の調和に努力をし、日本の安定とまた平和維持に努力してきたつもりでございます。平和と軍縮、各国との共存共生、あるいは途上国への配慮、そういう点についても十分目を配りまして、日本の地位の向上、さらに、国際社会に対する貢献等について今後とも努力すべきであると考えております。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(栗原祐幸君) お答えをいたします。
 まず、洋上防空についてでありますが、洋上防空は、航空機やミサイルによる空からの攻撃を洋上において撃破したり阻止する機能であり、防空機能の一部でございます。これは防空機能を、何を守るかという防護対象の観点からではなく、いわばその機能が発揮される場面に着目してとらえたものでございます。
 我が国は、従来から、我が国の国土、国民を初め、国民の生存に必要な物資などを輸送する船舶などを守るため、防空機能を初め我が国防衛上必要な各種機能の整備に努力してきたところでございますが、洋上防空のあり方の検討も、近年の経空脅威の質的変化にいかに効率的に対応するかという観点から行われているものでありまして、今まで述べたような防護対象を拡大しようというつもりはございません。
 これはまた、諸外国の技術的水準の動向に的確に対応して、最も有効かつ効率的な防衛力の整備を図るという大綱の基本的な考え方に従って進められているものでございます。
 なお、御質問の陸上への新装備が何を指すのかは明らかでありませんが、いずれにせよ、今後とも節度のある防衛力の整備に努めていく方針には変わりがございません。したがって、防衛費の大幅増を企図している、そういうつもりはさらさらございません。
 次に、大綱水準の達成についてでございますが、政府が従来から述べているとおり、我が国の防衛力が、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得ることを目標とし、量的には大綱の別表に示されている規模を備え、質的には諸外国の技術的水準の動向に対応し得る水準のものではなくてはならないこととしております。
 かかる観点から見れば、我が国防衛力は、量的にも大綱別表に定める規模に達していない、また、諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう装備の更新、近代化など質的改善に努める必要があるものと考えます。
 このため、政府としては、大綱水準の達成を図ることを目標とする中期防の着実な実施を図ってまいりたいと考えております。
 次に、装備の更新、近代化についての御質問でございますが、防衛力の整備に当たっては、今申しましたとおり、諸外国の技術的水準の動向に対応し得る、そういう観点から考えねばならぬものでございます。そういった点から、我が国が一級品の兵器のみをそろえておる、そういう御指摘は当たらないと思うのであります。
 次に、在沖縄の米海兵隊クラブ従業員の人員整理の問題についてお答えをいたします。
 この問題については、私もこの間の件は遺憾に思っております。そういうことで、米側の責任者に対しましても、沖縄の特別な立場も考え、もろもろのこと考えながらひとつ善処してもらいたいということで、今、強い要請をしておるところでございます。私は、この問題につきまして、私の責任において最善を尽くして対処いたしたい、こう考えております。
 次に、自衛官の増員理由についてでございますが、今回の自衛官の増員は、既に予算化された艦艇、航空機の就役等に伴う要員を確保するためのものであり、いずれも業務の省力化、合理化等による人員の削減に努め、また艦艇、航空機の就役、除籍に当たっては、厳格なスクラップ・アンド・ビルドを実施した上で必要最小限の所要でございます。
 具体的には、艦艇、航空機の就役等に伴う要員の増二千六百七十四人、その他の要員の増二百五十人に、艦艇、航空機の除籍等に伴う要員の減二千四百十四人を差し引いた五百十人の増員をお願いしているところでございます。
 次に、予備自衛官の員数増についてでございますが、予備自衛官については、陸上自衛隊は後方警備等の要員、海上自衛隊は後方支援等の要員及び航空自衛隊は基地防空部隊等の要員として整備しているところでございます。
 今回の改正法案においても、このような考え方のもとに、陸上自衛隊一千人、海上自衛隊二百人、航空自衛隊三百人の計一千五百人について増員をお願いしているところでございます。
 次に、自衛官未経験者からの予備自衛官採用の検討についてでございますが、自衛官未経験者からの予備自衛官採用の問題については、予備自衛官の適用業務の拡大の検討結果を踏まえ、応募資格、管理体制、訓練、処遇等につき引き続き検討しているところでございます。
 次に、三宅島における艦載機訓練場建設問題についてお答えをいたします。
 総理も触れられておりますけれども、訓練の必要性については、陸上における空母艦載機による必要最小限度の着陸訓練は、艦載機パイロットの練度維持、ひいては日米安全保障体制の効果的運用のために欠くことのできないものでございまして、米側にその中止等を申し入れる考え方はございません。
 また、私の安保は国是と言った発言についての御指摘でございますが、私は、日米安保体制が我が国の防衛、安全保障に緊要なものであり、その堅持が我が国の存立にとって必要不可欠であるとの認識を述べたものであり、この考え方にはいささかも変わっておりません。
 ただ、ここで御了解いただきたいことは、私がその際発言したのは、政府としても、三宅島の将来を考え、できる限りの御協力をいたします、民生安定に資すると発言しておる。このことをもひとつよく思い出していただきたいと、こう思います。次に、基地問題及び池子の問題についてもっと本腰を入れるべきではないかということでございますが、施設の必要性については総理大臣からお答えのあったとおりであります。
 池子の問題につきましても、神奈川県知事のお申し出がございまして、これを政治的にひとつ考えてもらえないかというお話がございまして、防衛庁といたしましても、私といたしましてはそれでいかなきゃならぬと思いまして、逐次連絡をとりながらやったのであります。また、富野さんも知事調停案については尊重すると言われたのでございまして、私どもは御指摘のような一方的なことをやっておるということでないことを御了解いただきたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣倉成正君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(倉成正君) 久保田議員にお答えを申し上げたいと思います。
 ソ連との関係は、総理大臣からお答え申し上げたところでございますが、ソ連は移転できない我が国の重要な隣国であります。ソ連との関係はできるだけ改善されたものであることが望ましいと考えております。
 北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、真の相互理解に基づく安定した関係を確立することが我が国の対ソ外交の不動の基本方針であり、我が国としては、今後ともかかる基本方針に沿って対処していく所存でございます。ソ連が、北方領土問題など日ソ間の基本問題に積極的な対応をとることを心から期待している次第でございます。
 次に、沖縄の米海兵隊クラブの大量解雇問題については、防衛庁長官からお答えございましたが、私からもそれぞれ米側の海軍長官あるいはマンスフィールド大使等に対しまして、本件の問題の重要性について重大な懸念を伝えてまいりました。米側も、本件問題の深刻さについて認識して再検討中でございます。その結果につき、近日中に回答もよこす予定でございます。
 政府としては、今後とも引き続き従業員の生活の安定と雇用の安定維持のため最大限努力する所存でございまして、本件の実質的な人員整理を極力圧縮するよう努めてまいりたいと思います。
 なお、久保田議員の御指摘の、米軍の施設、区域との関連でのお尋ねにつきましては、総理からお答え申されましたけれども、事柄の重要性にかんがみまして、若干の重複をお許しいただきたいと思います。
 日米安保条約に基づく米軍の存在は、我が国の安全並びに極東の平和と安全に寄与いたしているところでございます。我が国としては、安保条約の目的の達成に必要と認められる施設、区域については、今後ともその円滑かつ安定的使用及び米軍の円滑な活動を確保していくことは、日米安保条約の目的達成に緊要と存じます。
 他方、施設、区域の存在と米軍の活動に伴って生ずる周辺住民生活への影響を最小限にとどめる必要があることは御指摘のとおりでございます。
 政府としては、周辺住民の御理解と御協力には感謝しております。日米安保条約の目的達成と周辺住民生活との調和を図るべく最大限の努力を行っておりますが、今後ともかかる努力を継続してまいる所存でございます。特に、騒音対策については、今後とも騒音防止工事等の周辺対策事業を進めてまいる所存でございます。
 また、米軍も、周辺住民の生活への影響を最小限にとどめなければならない点について同様の認識であり、運用上できる限りの配慮を行っているものと理解しております。
 なお、本件横田基地騒音公害訴訟判決については、現在、事件がなお係争中のことでもございますので、法廷の場においてしかるべき手続に従って国の立場を明らかにしてまいりたいと思います。
 最後に、我が国に駐留している在日米軍の活動については、安保条約は特段の定めがある場合を除くほか、同条約目的のため、いわゆる飛行訓練を含め、軍隊としての機能に属する諸活動が一般的に行われることは当然の前提といたしております。
 他方、米軍の活動に当たっては、我が国の公共の安全が十分に図られるべきことは当然のことでございます。政府としては、このような認識で、累次、米軍との協議を行ってまいっております。
 政府は、これまで米軍の駐留目的達成上の必要性と我が国の公共の安全との調和を念頭に置いて、施設、区域の提供あるいは必要に応じた空域の調整、画定に努めてきたところであります。
 今回の事件につきましては、現在、事実関係を調査中でございますが、米側に対しては、事故原因の究明、事故の再発防止及び訓練の際の安全確保に万全を期すよう要請しているところでございます。今後とも米軍の行う諸活動の円滑な実施と住民の安全の確保との調和を図るべく努力する所存でございます。(拍手)
#30
○副議長(瀬谷英行君) 峯山昭範君。
   〔峯山昭範君登壇、拍手〕
#31
○峯山昭範君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 去る二十八日、防衛庁は六十二年度の防衛白書を発表いたしました。この白書を読んで私が率直に感じましたことは、防衛費のGNP比一%枠の撤廃を既定の方針として、中曽根内閣の進めてきた危険な防衛力増強政策を追認、既成事実化しているということであります。
 我が国の自衛隊が、平和憲法に基づく専守防衛や必要最小限の防衛力を定めた防衛計画の大綱を逸脱し、防衛費の大幅増額と防衛範囲の拡大をもたらし、ひいては軍事大国へと歩むのではないかとの危惧の念を禁じ得ないのであります。特にことしの白書において、防衛計画の大綱は、質的充実はもとより、別表の主要装備等の数量を変更しても構わないとしていることは、これまで何のための別表であったのか、我が国の防衛政策の基本とされてきた防衛計画の変質であり、事実上の改正、見直しと同じではありませんか。到底許されるべきではないと思うのでありますが、明確な説明を求めるものであります。
 今、国民が何よりも心配していることは、どこまで防衛力や防衛費が増強されるのかという不安であります。これにどう答えられるのか、明確な定量的、定性的な歯どめを国民の前に示すべきでありますが、総理の御見解を伺いたいのであります。
 また、ことしの防衛白書においては、「極東ソ連軍の顕著な増強どこれに伴う行動の活発化によって、わが国に対する潜在的脅威が増大している。」と述べているのでありますが、極東ソ連軍の実態と行動について、潜在的脅威の具体的内容を核戦力をも含めて御説明いただきたいのであります。
 私は、国会においてシーレーン防衛の問題を再三にわたって取り上げ、これが大綱を逸脱するものであると同時に、日本の防衛費を一段とはね上げるものであることを指摘してまいりました。ところが、政府は、これにとどまることなく、中期防衛力整備計画において洋上防空構想を示し、これを実現しようとしているのであります。この洋上防空構想を進めるとするならば、防衛費は際限なく膨らみ、我が国の防衛範囲は大きく拡大することは必至であります。既に政府は、OTHレーダー、AWACS、すなわち空中早期警戒管制機、空中給油機、エイジス艦等の導入を検討しており、その一部は来年度の予算要求で盛り込まれることになっているのであります。
 こうした重要な構想が十分に国民に説明されず、検討中と言いながらその一方で着々と既成事実を積み重ねようとする防衛庁の手法は、到底許されるべきではありません。こうした防衛庁の姿勢にこそ問題があり、国民の防衛に対する理解を阻害する要因であると思うのであります。
 私は、政府の言う洋上防空構想の全貌を明らかにすべきことを要求するものであります。
 また、次の点について明確な答弁を求めるものであります。
 第一に、洋上防空構想は防衛計画の大綱を逸脱するのではないかと思うが、大綱のどこにこの点が書かれているのか。また、OTHレーダーの導入は別表の枠をはみ出すことになると思うがどうですか。
 第二に、洋上とはどの範囲を言うのかということであります。特定される範囲なのか、あるいは世界じゅうの洋上なのかどうか。また、日米安保条約で言う極東の範囲との関係はどうなっているのかも明らかにしていただきたい。さらに、本土防空体制も変わるのかどうか。自衛隊の行動範囲が従来より大幅に拡大されることになるのではないかと思うが、これらについて明確な答弁をしていただきたい。
 第三に、この構想は総額でどのくらいの経費を予定し、いつまでの実現を目指しているのか、明らかにしていただきたいのであります。
 次に、政府が新しい歯どめとしている中期防は、六十二年度終了時点で達成率はどのくらいになるのか。我が国の防衛費の著しい増加、なかんずくGNPの一%枠の撤廃は中国を初めアジアの諸国から厳しい批判と不信を招いておりますが、これらをどう認識していますか。来年度の防衛予算はGNP一%以内に抑制するという方針を明らかにすべきであると思いますが、どうですか。政府の御見解を伺いたいのであります。
 過日、米軍は太平洋地域での核兵器事故の発生に備えて関係諸国政府との間で事故対応策を協議、調整することになっており、日本もその対象地域に含まれていることが公表された米軍の公式文書によって明らかにされました。これによりますと、米軍は日本への核兵器の持ち込み、トランジットを既に実施しているか、あるいは有事の持ち込みを前提にしており、在日米軍司令官が核兵器事故に備えて日本政府と協議する手続が存在しているのであります。このことは極めて重要であり、我が国の国是である非核三原則にもかかわる問題であります。米政府に照会するなど事実関係を明らかにすべきであります。
 また、ソ連軍の参謀本部のニコライ・チェルボフ軍縮・安全保障部長は、三沢基地の米核戦力はソ連にとって脅威であると述べるなど、我が国の非核三原則を否定していることなどを見ますと、今こそ国是としての非核三原則を内外に鮮明にし、疑惑、誤解に対しては納得できる対応をすることが政府の責務であります。総理のこの点についての御見解を承りたいのであります。
 今日の国際情勢で最も関心の持たれている問題は、ペルシャ湾情勢とINFをめぐる米ソ核軍縮交渉の成否であります。この二つの問題は、我が国にとっても極めて重要でありますが、総理はこれについていかなる見通しを持ち、我が国としてどのように対応しようとしているのか、明らかにしていただきたいのであります。特に、ペルシャ湾の安全航行と我が国の財政負担についての考え方を伺いたいのであります。
 最後に、総理は、今秋の国連総会に出席し、また、その際、レーガン大統領と日米首脳会談を行うことを検討していると伝えられるのでありますが、総理は、国連総会で世界に何を訴え、日米首脳会談で何を話し合うおつもりか、お伺いしたいのであります。
 総理に就任して以来、一貫して防衛予算を突出させ、軍拡との国民的批判を受けてきた中曽根内閣の防衛政策を今こそ根本的に転換すべきことを強く求めまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(中曽根康弘君) 峯山議員にお答えをいたします。
 まず、大綱別表の修正の問題でございますが、政府が従来から申し上げているとおり、大綱は、諸外国の技術的水準の動向等に対応するため、装備体系を変更する必要が生じた場合には、別表の修正を行うことも可能な仕組みとなっております。
 いずれにせよ、しかし、政府は、現在、大綱の基本的考え方の見直しはもちろん、別表の修正も考えておりません。
 次に、防衛力整備の歯どめの問題でございますが、軍事大国にならず、専守防衛あるいは他国に脅威を与えない、そういう基本理念に基づいて防衛計画の大綱に従って中期防を定め、これによってある程度量的規制も行っておるわけでございます。今後もこの三木内閣の閣議決定の精神を尊重して、節度のある防衛力に努めてまいるつもりであります。
 極東ソ連軍の問題でございますが、ソ連は、今日ではソ連全体の三分の一ないし四分の一に相当する核及び通常戦力を極東地域に配備し、引き続きこれを増強しております。これは、極東において独立の戦争は単独でできるという力を増強しつつあるのではないかと想像されております。我が国の周辺における行動も活発化しておりますが、これらのソ連軍の動向は、我が国に対する潜在的脅威を増大させるものと受けとめざるを得ません。
 洋上防空の問題でございますが、航空機やミサイルによる空からの攻撃を洋上において撃破したり阻止する機能でありまして、防空機能の一部であります。
 中期防に基づく洋上防空のあり方についての検討は、近年、航空機の航続距離の増大あるいは射程の長いミサイルの出現などにいかに効率的に対応するかという観点から検討しておるものであり、この検討やOTHレーダーに関する検討は、当然のことながら防衛計画の大綱の基本的枠組みの中で行われておるものであります。
 洋上防空の地理的範囲については、これは防衛上の有効かつ必要な範囲内、そして節度のある防衛力という、そういう基本的精神に沿った、そういうような従来からの防衛力整備の目標を前提にしてあることは申すまでもありません。
 洋上防空についての検討においては、具体的装備の導入を前提とした所要経費等についての検討は行っていないと承知しております。
 中期防の進捗率はおおむね三七%程度であると承知しております。
 防衛費に関するアジア諸国の反応でございますが、我が国が一貫して節度のある防衛力の整備に努めてまいったということは、我が国は関係各国にも常に説明しているところでございます。
 中国は、一%の水準を超えたことについて、これに注目し、またこれに鋭敏であり、不安と危惧を表明した、そして専守防衛、節度のある防衛力を希望していると、そういうことであります。その他のアジア諸国は、別に公式の見解を表明しておりません。
 我が国の従来の基本的方針については、関係各国に特に説明もし、理解を替るように努力しておるところであります。
 来年度予算とGNPの関係でございますが、昭和六十三年度の予算編成は今後の検討にかかわる問題でございまして、いよいよ概算要求を出す、そういうことであり、十二月の閣議決定で行うところでございます。
 いずれにせよ、本年一月の閣議決定に基づき、引き続き節度ある防衛力整備に努めてまいるつもりであります。
 核事故にかかわる米文書の関係でございますが、御指摘の文書については間もなくその全文を入手できる見込みであります。政府としては、その内容を確認した上で御説明いたしたいと考えておりますが、事実として御指摘のような協議は行われておりません。
 いずれにせよ、核兵器の持ち込みについては、事前協議という制度が厳然としてあることは先方にも説明しておるところであり、それについて我が方のこれを拒否するという考え方も説明しておるわけであります。
 非核三原則を堅持するということは、今後とも一貫して我々は努力してまいるつもりであります。
 ソ連側の発言について三沢云々という問題がありますが、我が国は非核三原則を堅持して、核兵器等はもちろん持ってはおらぬところであります。
 ペルシャ湾の情勢につきましては、我が国はペルシャ湾における安全航行の最大の受益国の一つであり、日本関係船舶の安全確保にできる限り努力するとともに、国際社会の責任ある一員として情勢改善のために応分の努力をしておるものであります。
 我が国の貢献は、非軍事的分野における役割、なかんずく外交的努力が中心でありまして、かつまた、イラン・イラク戦争の紛争を根本的に解決するという目標で両国に強く働きかけておるところでございます。
 財政負担については、具体的内容も明確でないままに立ち入った論は差し控えたいと思っております。しかし、これらの大きな受益国である日本がこれに全然無関心でおるということは適当でありません。将来、国連その他における枠組みができて、適当と思われるそういうような関係ができれば、我々も応分の財政負担は考えなければならぬ、そう申し上げておるところであります。
 INF交渉につきましては、過度の楽観は慎むべきであろうと思いますが、最近、いろいろな情勢を見ますと、これが成功する可能性がかなり出てきたと考えております。我が国としては、効果的な検証措置を伴ったINF協定が早期に締結されるように今後とも努力してまいりたいと思います。
 国連総会出席の問題は、現在のところ、そういう予定はございません。国際情勢とか、あるいは各国の動向とか、あるいは国会の模様であるとか、そういう問題を慎重に今見守っておるところであり、出席自体はまだ決定もしておりません。未決定でありますから、どういうことを言うかということももちろん検討しておりません。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣栗原祐幸君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(栗原祐幸君) お答えをいたします。
 私への質問は、大方、総理に対する御質問と重複していると思いますので、私からは、それに若干補足するという形でお答えをさせていただきたいと思います。
 ます、大綱別表についての政府の基本的な考え方でございますが、これは総理大臣からお答えになったとおりでございます。また、大綱の基本的理念に反しない限度で別表を修正することも可能となっていることにつきましては、ことし初めて出たのではございませんで、昨年の白書を初め、従来から述べているとおりでございますので、御承知おきをいただきたいと思います。
 次に、防衛力整備についての歯どめにつきましても、これも総理からお答えになったとおりでございますが、現在、五カ年間の防衛力整備の具体的内容、所要経費というものを明示しておる、いわゆる新しい閣議決定にも十八兆四千億ということを六十年価格で明示しておりますので、歯どめが明確にある、こういうふうに考えております。
 次に、極東ソ連軍についてでございますが、具体的には、核戦力の分野では中距離、短距離のミサイルやバックファイア爆撃機が増強され、また近代化されてきたこと、陸海空兵力についてもそれぞれ量的または質的に増強が進められていること、あるいは我が国固有の領土である北方領土への地上兵力の再配備が行われていることなどについては、今般公表した防衛白書において詳しくお示ししているところでございます。また、ソ連は、このような軍事力の増強に伴い、我が国周辺において艦艇や航空機の行動を活発化させております。このような極東ソ連軍の動向は、我が国に対する潜在的脅威を増大させておるものと受けとめざるを得ないわけでございます。
 次に、洋上防空についてでございますが、これも総理から御答弁されたとおりでございますが、洋上防空のあり方については、このほど、これまでの検討の結果を一応取りまとめたところでございますが、なお引き続き検討を行っていく必要があると考えており、全貌を明らかにできるような段階には至っておりません。
 次に、洋上防空と大綱との関係についてでございますが、これも総理からお答えになっておりますが、いわゆる洋上防空というのは、何を守るかという防護対象の観点からでなく、いわばその機能が発揮される場面に着目してとらえたものでございます。
 一方、大綱は、我が国が保有すべき防衛力等に関し、防衛の態勢、防衛の構想などの基本的な枠組みとなる事項を記述したものであり、個々の機能については、防衛上必要な各種の機能を備えることとし、個別には示しておりません。
 したがって、大綱は、防空機能についても、その一部である洋上防空機能を含め、防衛上必要な各種の機能の一環としてこれを保有することを当然の前提としているものでございます。
 次に、OTHレーダーと大網との関係についてでございますが、OTHレーダーは、遠方の航空機等の動きの概略についての情報を収集するためのものであり、情報収集部隊という性格のものであります。
 大綱は、これらの情報収集部隊については、その本文において、「わが国の領域及びその周辺海空域の警戒監視並びに必要な情報収集を常続的に実施し得ること」と定めております。したがって、OTHレーダーは、大綱に定める防衛の態勢等を整備し、諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう質的な充実向上を図るものとして、その整備が可能なものと考えております。
 次に、中期防の進捗率でございますが、これは総理からお答えになったとおりでございます。
 また、六十三年度予算についての御質問も総理からお答えになったとおりでございます。以上、お答えをいたしました。(拍手)
   〔国務大臣倉成正君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(倉成正君) 峯山議員にお答えを申し上げたいと思います。
 核兵器事故に関する米軍文書につきましては、総理からお答えされたとおりでございます。事実の問題として、御指摘のような協議が行われておりません。
 また、非核三原則を堅持する政府の方針については、総理からのお答えのとおりでございます。
 次に、ペルシャ湾の安全航行については、七月十四日以降、航空機、カンポートによる本格的な船舶攻撃は一時停止されておりましたが、八月二十九日、イラク側はペルシャ湾内のイラン側海上石油施設及びタンカーに対する攻撃を再開いたしております。さらに、ペルシャ湾内外で、七月から八月にかけて触雷事件が相次いで発生しており、我が国は、かかる情勢の緊張を深く憂慮いたしておるところでございます。
 我が国は、ペルシャ湾における安全航行の最大の受益国の一つであり、安全航行確保のために国際社会の責任ある一員として応分の貢献を行うことが必要であると思うのであります。こうした我が国の貢献は、非軍事的分野における役割、なかんずく外交的努力が中心であるべきでありますが、かかる認識のもとに、我が国はイラン、イラク両国に対して湾内における軍事活動の自制を強く働きかけ、また、ペルシャ湾情勢の緊張の背景にあるイラン・イラク紛争を解決するための外交的努力を鋭意行っているところでございます。
 財政負担問題につきましては、総理からのお答えに尽きておると思います。
 さらに、INF交渉につきましては、総理からお答えがございましたが、最終的決着に至る過程を注意深く見守る必要があると思いますが、このような合意達成の高まりを歓迎し、早期決着を期待するところでございます。
 以上です。(拍手)
#35
○副議長(瀬谷英行君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後零時十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト