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1987/07/28 第109回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第109回国会 社会労働委員会 第1号
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1987/07/28 第109回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第109回国会 社会労働委員会 第1号

#1
第109回国会 社会労働委員会 第1号
本国会召集日(昭和六十二年七月六日)(月曜日
)(午前零時現在)における本委員は、次のとお
りである。
  委員長 堀内 光雄君
   理事 稲垣 実男君 理事 戸井田三郎君
   理事 長野 祐也君 理事 丹羽 雄哉君
   理事 浜田卓二郎君 理事 池端 清一君
   理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君
      粟屋 敏信君    伊吹 文明君
      小沢 辰男君    大野  明君
      大野 功統君    片岡 武司君
      木村 義雄君    古賀  誠君
      佐藤 静雄君    自見庄三郎君
      高橋 一郎君    戸沢 政方君
      中山 成彬君    野呂 昭彦君
      藤本 孝雄君    三原 朝彦君
      箕輪  登君    持永 和見君
      伊藤 忠治君    大原  亨君
      河野  正君    田邊  誠君
      永井 孝信君    村山 富市君
      新井 彬之君    大橋 敏雄君
     平石磨作太郎君    吉井 光照君
      塚田 延充君    児玉 健次君
      田中美智子君
―――――――――――――――――――――
昭和六十二年七月二十八日(火曜日)
    午前十時一分開議
出席委員
  委員長 堀内 光雄君
   理事 稲垣 実男君 理事 戸井田三郎君
   理事 長野 祐也君 理事 丹羽 雄哉君
   理事 浜田卓二郎君 理事 池端 清一君
   理事 沼川 洋一君 理事 田中 慶秋君
      粟屋 敏信君    伊吹 文明君
      小沢 辰男君    大野  明君
      大野 功統君    片岡 武司君
      木村 義雄君    古賀  誠君
      佐藤 静雄君    自見庄三郎君
      高橋 一郎君    戸沢 政方君
      中山 成彬君    野呂 昭彦君
      藤本 孝雄君    三原 朝彦君
      持永 和見君    大原  亨君
      永井 孝信君    新井 彬之君
      大橋 敏雄君   平石磨作太郎君
      吉井 光照君    児玉 健次君
      田中美智子君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 平井 卓志君
 出席政府委員
        労働大臣官房長 岡部 晃三君
        労働省労政局長 小粥 義朗君
        労働省労働基準
        局長      平賀 俊行君
        労働省職業安定 
        局長      白井晋太郎君
        労働省職業能力
        開発局長    野見山眞之君
 委員外の出席者
        文部省初等中等
        教育局教科書管 
        理課長     福島 忠彦君
        厚生省保健医療
        局結核難病感染 
        症課長     草刈  隆君
        厚生省保険局医
        療課長     谷  修一君
        運輸大臣官房国
        有鉄道改革推進 
        部業務課長   羽生 次郎君
        社会労働委員会
        調査室長    石川 正暉君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月十日
 辞任         補欠選任
  片岡 武司君     宇野 宗佑君
  古賀  誠君     小渕 恵三君
  自見庄三郎君     小坂徳三郎君
  高橋 一郎君     田中 龍夫君
  戸沢 政方君     原田  憲君
  中山 成彬君     細田 吉藏君
  野呂 昭彦君     村山 達雄君
  三原 朝彦君     山下 元利君
同日
 辞任         補欠選任
  宇野 宗佑君     片岡 武司君
  小渕 恵三君     古賀  誠君
  小坂徳三郎君     自見庄三郎君
  田中 龍夫君     高橋 一郎君
  原田  憲君     戸沢 政方君
  細田 吉藏君     中山 成彬君
  村山 達雄君     野呂 昭彦君
  山下 元利君     三原 朝彦君
    ―――――――――――――
七月六日
 北海道旧土人保護法及び旭川市旧土人保護地処
 分法の一部を改正する法律案(戸井田三郎君外
 四名提出、第百七回国会衆法第七号)
 雇用対策法の一部を改正する法律案(村山富市
 君外六名提出、第百八回国会衆法第七号)
 雇用保険法の一部を改正する法律案(池端清一
 君外六名提出、第百八回国会衆法第八号)
 雇用保険法に基づく失業給付等についての臨時
 特例に関する法律案(中沢健次君外六名提出、
 第百八回国会衆法第九号)
 短期労働者及び短時間労働者の保護に関する法
 律案(永井孝信君外六名提出、第百八回国会衆
 法第一〇号)
 国立病院等の再編成に伴う特別措置に関する法
 律案(内閣提出、第百七回国会閣法第一一号)
 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、第百八回国会閣法第五七号)
 精神衛生法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、第百八回国会閣法第六四号)
 厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内
 閣提出、第百八回国会閣法第六五号)
 職業安定法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出、第百八回国会閣法第六六号)
 後天性免疫不全症候群の予防に関する法律案
 (内閣提出、第百八回国会閣法第九〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国政調査承認要求に関する件
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○堀内委員長 これより会議を開きます。
 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 厚生関係の基本施策に関する事項
 労働関係の基本施策に関する事項
 社会保障制度、医療、公衆衛生、社会福祉及び人口問題に関する事項
 労使関係、労働基準及び雇用・失業対策に関する事項
以上の各事項について、その実情を調査し、対策を樹立するため、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中調査を進めたいと存じます。
 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○堀内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○堀内委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永井孝信君。
#5
○永井委員 前の第百八国会で、異常な国会でありましたから一般質問をする時間がございませんでした。そういうことで若干問題が多岐にわたりますけれども、ひとつ要領よく御答弁を願いたいと思うわけであります。
 まず初めに、現在の雇用情勢の現状と見通しなどについてお伺いをしていきたいと思うわけでありますが、今我が国の雇用失業情勢というのは本当に悪化の一途をたどっているわけですね。総務庁の発表によりますと、ことし五月の完全失業率は三・二%、これは昭和二十八年以来の現行の統計調査で最悪の数値を記録しているというふうに私は思うわけであります。経済成長の鈍化やあるいは技術革新の進展などによりまして雇用情勢がどんどんどんどん悪化してきたところへ、例の一昨年秋のG5以来の急激な、そして大幅な円高が追い打ちをかけたからだと私は思うわけであります。もちろん当時のそのG5に出席をいたしました大蔵大臣も大きな責任がありますが、これはやはり中曽根総理の責任だと私は思うわけであります。
 まず、この点について、中曽根内閣の閣僚として、労働大臣の所感を初めにお伺いしておきたいと思うわけであります。
#6
○平井国務大臣 円高の急激な進展のもとで雇用情勢の悪化が進んでおりますことは、これは御指摘のとおりでございます。ある意味で経済の流れも変わりつつあるかなと思っております。
 政府としましては、六十一年度におきまして、三次にわたる経済対策を実施いたしますと同時に、六十二年度予算におきましても、公共事業の拡大等内需の拡大、さらには御案内のような三十万人の雇用開発プログラム等の雇用政策を盛り込む機動的な対応に努めてきたところでございます。また、加えて先般六兆円を上回ります財政措置を伴う内需拡大策等から成る緊急経済対策、これも決定いたしたわけでございます。
 最近、これらの各種の施策の効果も出つつございまして、内需関連業種を中心とした求人の増加など、雇用動向の一部ではございますが、改善の動きも見られておる。今後とも政府は一体となってこれら施策の着実かつ機動的な実施に努めて、雇用の確保、改善に全力を挙げて取り組まなければならぬときである、かように考えております。
#7
○永井委員 端的に言えば、労働大臣としては、雇用の拡大といいますか、三十万人の雇用創出を今言われたわけでありますが、緊縮財政から積極的な財政に転換をさせる、その立場で労働大臣としても取り組んでいく、こういうふうに受けとめていいわけですね。
 そこで、次にお伺いしたいと思うわけでありますが、先日発表されました通産省の産業政策局長の私的な、こう言われておるわけでありますが、その研究会である中期マクロ経済政策研究会というのがございます。座長は宮崎さんでありますが、その報告書によりますと、「現在の緊縮財政を継続させた場合は、成長率は二%台半ばにとどまり、失業率は四%まで上昇する。」と指摘をしているわけです。
 また、先日発表されました昭和六十二年版の労働白書、この労働白書はかなり膨大なものでありますが、読ませていただきました。円高による相対的な賃金コストの上昇で、製造業では、昨年はアメリカの六八%だったものが一ドルを百四十円だと換算いたしますと一一六%とアメリカを上回る、その結果、人件費の負担から見て、いわゆる過剰雇用だとする企業がふえて、製造業では百七十万人分にもそれが相当するというふうに労働白書で分析をしているわけですね。これをすべて雇用削減、企業生き残りのために人件費を節約するということで雇用削減で解消するということになってまいりますと、現在の労働人口からいきまして、我が国の失業率というのは一挙に六%近くになるというふうにこの数字は示しているわけです。またこの白書は、円高圧力のもとで海外の直接投資がふえている、そうして産業の空洞化が促進されているが、昭和五十六年から六年間でそのことによって五十七万人もの国内雇用が失われている、今後十年間は毎年四万から五万人分が減りそうだと分析をしているわけであります。これは労働白書であります。
 ところで、政府の第五次雇用対策基本計画によりますと、昭和六十五年度の完全失業率二%程度を目安としているわけでありますが、現状では二%程度はおろか、政策的な対応を誤りますと、我が国も今後高失業社会を迎えることになってしまう、こう言って差し支えないと私は思うのであります。
 今申し上げましたように、この我が国の雇用をめぐる状況や情勢は実に厳しいものがありますね。労働行政の任務は、そういう立場からいきますと、極めて重大だと私は思うわけでありますが、所管大臣として、大臣は雇用情勢をどのように受けとめて、どのように対処されようとしているのか、基本的なお考えを聞かせていただきたいと思います。
#8
○平井国務大臣 まさしく現下の雇用情勢、全体的に見ますると、予断を許さないような状態でございまして、これはもう御指摘のとおりで、御案内のように、不況業種、また地域全般について、これからの抜本的な対策、現在施行いたしております制度その他についても、これは間断なく見直しをして、雇用面に不安のないそれなりの措置をやっていかなければならぬというふうに考えております。
 もう既に政府としては、緊急雇用対策、その他当面考え得る手は、それなりにお認めいただいてやっておるわけでございますが、御案内のように、雇用情勢というのは、本来的に非常に流動的なものでございまして、やはり制度、政策が効果的に働かなければいかぬということにかんがみました場合には、常にその制度の中身、また施行に当たっての弾力性、そういうことに注意をして、やはり柔軟性を持って、緊急、機動的に今後対処すべき非常に重要なときである、こういうふうに私は考えております。
#9
○永井委員 流動的になっていく今の雇用情勢から、場合によったら緊急的な対策もと、こう言われておるわけでありますが、極めて展望としては明るいものを持つことができない状況でありますだけに、ひとつ労働省として思い切ってこの対応をしていただきたいことを重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
 もう一つは、その雇用情勢の認識の問題でありますが、認識しているだけでは御承知のように事態は変わっていかないわけですね。ですから、実際にどのような対策を講ずるかということが問題でありまして、それを雇用不安におののいている労働者もあるいはその家族も、実は熱い視線をもって見詰めているわけですね。この後順次質問してまいりますが、まずここでは早急に第五次雇用対策基本計画というものを見直して、深刻な雇用不安や生活不安に陥れられている数百万人、家族を入れて一千万人にもなるでしょうか、その人たちの期待にこたえられるような基本計画を改めて策定する必要があると思いますが、どうでございましよう。
#10
○白井政府委員 お答えいたします。
 基本的には、今大臣が御答弁申し上げたとおりでございまして、第五次雇用対策基本計画におきましても、高齢化や産業構造の転換等各般の構造変化に的確に対応するための施策を計画にのせているわけでございまして、現在におきましても妥当なものだというふうに考えております。
 しかし、これも最近の円高その他に伴います急速な変化、その他業種や地域におきますそれぞれの格差等に対応をするために今いろいろな施策をそれぞれ講じているわけでございますが、中長期的な観点に立ちましても、これらの施策の今後の進め方等については、施策の充実を図りますとともに、十分計画を練っていかなければならないというように考えております。それらの問題につきましては、今後の雇用情勢、経済情勢の推移を見ながら、十分念頭に置いてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#11
○永井委員 今の御答弁でいきますと、私が質問しましたように、第五次雇用対策基本計画を根本的に見直して、そして現状の深刻な雇用不安にこたえていくために基本計画を改めて策定する必要があると思うかどうかという私の質問に対して、その辺のところはもうちょっと明確になっておりませんので、もう一言お答えいただけますか。
#12
○白井政府委員 お答えいたします。
 今申し上げましたように、基本的には第五次雇用対策基本計画の線に沿って、その中身を充実しながら現在進めているというところでございまして、緊急対策その他計画の中身をさらに充実しているわけでございますが、全体的に今先生御指摘になります第五次基本計画を今後どうするかという問題につきましては、これは政府全体の経済計画との連関もございますので、それらの政府全体の対応とも関連しながら、労働省としても十分検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
#13
○永井委員 満足する答弁とはいきませんけれども、ひとつ積極的に対応してもらいたいことを重ねて申し上げておきます。
 さて、初めから今ずっと指摘してきましたように、今日のこの深刻な雇用情勢というのはいろいろな要因があるのでありますが、経済成長の鈍化、技術革新の進展、これらも大きな原因ですね。そこへ最前申し上げましたように、G5以来の急激にしてかつ大幅な円高が追い打ちをかけた。そして貿易摩擦問題に端を発しまして、国際競争力が低下をし、輸出企業だけではなくて国内産業や企業全体がそのことによって大きな打撃を受けてきました。このような状況のもとで、各企業は人件費を中心にしてコスト削減を図り、雇用削減や生産拠点の海外移転の動きがそのことから活発になってきたわけですね。言いかえるなら企業生き残りのために労働者がその犠牲にされているというのが今の間違いのない現実だと私は思うわけであります。
 だからこそこの円高不況を招いた政府の責任は極めて重いと思うのでありますが、同時にこの円高を招くについては、もともと我が国の経済産業構造あるいは貿易構造そのものにも私はその要因があったと思うのであります。これに対して政府が有効な対策を講じないままにヨーロッパ、とりわけアメリカからの円高誘導を迫られて、今日の事態を招く結果となったと思うのでありますが、この点については大臣、どう御認識されていますか。
#14
○平井国務大臣 御指摘のように、六十年秋以降の急激な円高でございますが、我が国の貿易収支の大幅な黒字、またその対極をなすアメリカのよく言われます双子の赤字と申しましょうか、財政と貿易収支の赤字でございますが、これが背景となっておるわけでございまして、こうした不均衡の解消に向けて先進諸国が経済政策の協調を強化する、そしてまた中長期的に努力を重ねていくことがこれは不可欠であるというふうに認識をいたしております。
 当面、急激な円高は、御指摘のように、これは雇用情勢に非常に重要な影響をもたらすわけでございまして、為替相場のより一層の安定を期待いたすわけでございます。最近におきましては、為替安定で各国に共通の認識ができつつございまして、言うなれば一定の安定した状態にただいま入りつつあるのではないかと認識いたしております。
#15
○永井委員 一日も早く、今申し上げましたように、円高あるいはこの経済構造の持っている問題が常に働く者にしわ寄せになってくるようなことのないような政策の推進が必要だと思うのであります。
 さて、経済大国ということがよく言われるのであります。金持ち日本とも言われているわけでありますが、我々が金持ちになったわけではないのですね。働いている国民からすれば、金持ち国家とか経済大国と言われてみてもぴんとこないと思うのです。
 例えば新前川レポートが出されましたけれども、その中における国民の生活実感という関係についてちょっと調べてみますと、このように言っているわけですね。「これまでの経済成長の成果が生活の質の向上に反映されているとは言い難い」ことを認め、その象徴として低い居住水準、高い生計費及び長い労働時間を挙げているわけです。
 OECDの報告によりますと、一九八六年の円の購買力の平価は一ドルが二百二十三円だと言っています。平均の市場レートの一ドル百六十九円は、購買力平価から見て加盟諸国の中で最も過大評価されていると、その当時触れているわけですね。さらに同じその一九八六年の一人当たりの実質GDP、いわゆる国内総生産の水準も、米国を一〇〇とした場合、日本は七一で、西ドイツの七五を下回って先進工業国では第八位だ、高所得国と中所得国の中間にあるというふうに、このOECDの報告は触れているわけです。
 一時は円が一ドル百三十円台に突入しました。最近は百五十円前後で、今大臣が言われましたように、若干の落ちつきは見せております。
 もう一度お伺いいたしますが、こういう実情からいって、円の現在のレートというものは正しいのだろうか、あるいは実力不相応だと思われるか。簡単に大臣の率直なところをお聞かせいただきたいと思います。
#16
○平井国務大臣 今委員は消費購買力平価、この問題について触れられたわけでございますが、御指摘のように、昭和六十年で日本・アメリカ間で一ドル二百三十円程度ではないかという試算が出ております。この為替相場には種々の要因が作用いたします。したがって、消費購買力平価のみをもって一概に何が妥当かということを申し上げるのはいささか困難であろうかと思うわけでございますが、いずれにしても、急激な円高というのは、御案内のように、雇用情勢に極めて悪影響をもたらすということでございますので、これはとにもかくにも為替相場の安定、そして均衡のとれた経済成長というのはすべての政策の前提になっておるわけでございまして、やはり安定を期待するわけでございます。
 いま一つ、生活実感から申し上げて、そのための種々の要因がございますけれども、やはり今後とも、言われておりますような円高でございますが、我が国の円が高くなるということは、一口に申したら、外国に対して購買力が強くなる、決してその現象自体は悪いことではございませんけれども、余りに急激にまいりましたため、やはり方々にひずみが出てまいった。そういう意味で、物価その他の諸条件を合わせて生活の豊かさの実感がないということでございますから、そういうためには、やはりより一層の円高差益の還元というところには政策としてかなり力を入れなければならぬのではないか。ただ、円が今お尋ねになりました百五十円程度が適当かどうかということになりますると、何と申しましょうか、貿易面から見ましたドルの価格というものと、また一面、金融資本が移動するときのドル建ての価格というもの、これはおのずから別のものでございまして、幾らが適当か、私の実感としては、百五十円前後でもやや円が高いかなという感じが率直なところであります。
#17
○永井委員 最後の率直な感じというのが私はずばりそのものだと思うのですね。どう考えてみても、もちろん為替相場で決まっていくのですけれども、一昨年のG5から急激に高くなってきたということは、円が高くなることについて国際間における政策的なインパクトというものが大きな影響を与えたということは間違いないと思うのですね。だから、あえて私流に言うなら、つくり上げられた円高である、実力不相応である、こう言わざるを得ないと思うのでありますが、しかし、実力不相応と思われる円高が産業界に重くのしかかってきているわけですね。したがって、国際競争力の強い特定の産業や企業がある反面、国際競争力の非常に弱い産業や企業を多く抱えておることも事実でありますから、その産業構造というものにも労働行政の立場からもメスを入れてもらいたい、私はこう思うわけであります。
 だから、そういう考えからいきますと、円高を早急に是正しなければならない、実力相応のものにしなくてはいけない、こう思うのであります。現在経済大国と言われ、金持ち日本と言われ、現実国民はそれと全く感覚が合わないというゆがんだ経済大国、国民生活不在の経済大国となっていることについて、やはり労働省が、雇用を守る、雇用を確保するという立場から、より積極的に関係省庁とも政策の推進について大きな役割を果たしてもらいたい、こう思うのですが、その関係についてひとつ決意を言ってくれますか。
#18
○平井国務大臣 これはまさしく御指摘のとおりでございまして、我が国の大幅な経常収支不均衡の背景には、我が国経済に見られます輸出志向と申しましょうか、そういう経済構造上の要因がある。そのことの是非論は別にいたしまして、こういう大きい転換期に参ったわけですから、経済構造調整とも言われ、産業構造の転換とも言われ、これはもう不可避な問題でございまして、そこで一番心すべき問題が、こういう時期に行われる産業構造の転換につきましては、雇用問題、雇用の確保、安定ということ、これはもう最重点に考えませんと、なかなかここのところがスムーズにいかない。委員おっしゃいましたように、今後の労働行政としておまえは一体どうするんだということになりますと、個々の制度、対策等々も含めまして、やはり各経済官庁、全般の産業政策等と一体となってやりませんと、御案内のように、各個ばらばらでは有効な効力を発揮しないと考えておりますので、今後とも各省庁とより一層連携をとって、それなりの効果のあるような政策に取り組んでまいらなければならぬ、かように考えております。
#19
○永井委員 次の問題に入ります。
 先月発表されました通商白書というのがあります。労働省相手に通商産業省のことに触れて恐縮でありますけれども、この通商白書によりますと、我が国の輸出依存体質について問題を提起しているわけです。それはそれとして、我が国の産業の下請構造も私は問題だと思うのです。
 例えば中小企業白書というのが別にあります。この中小企業白書を見ますと、あるトップメーカーの場合、一つのトップメーカーの一次下請社が百六十八社、二次下請社が四千七百社、三次下請社が三万一千六百社というふうに出ております。例えば自動車の一企業でいいますと、三万六千数百社にも上る下請企業を抱えているのです。これは欧米諸国ではちょっと見ることができない実態だと思うのです。私は、下請企業に支えられている今の産業構造というもの、今のように円高で、貿易摩擦が起きて、企業が防衛するために勢い下請、一次、二次、三次のところに集中的なしわ寄せがいく、この産業構造そのものをここで根本的にメスを入れて改善していかないと、今のような雇用不安の状態になったときには弱い者ほど大きなしわ寄せを受けると思うのですが、これは一言でどういうふうにお感じになりますか。
#20
○白井政府委員 お答えいたします。
 我が国の産業構造の場合、下請分業構造と申しますか、独特の生産システムで、今先生御指摘のようなそういう下請構造が行われていることは事実だと思います。これにつきましては、そういう生産方式によりましてメリットもあるわけでございますが、最近のような急激な円高の進展等では、景気の変動等に応じまして、それらに対する親会社からの受注量の減少とかコストダウンの要請とか、いろいろ厳しい環境に置かれているというのも事実だ、こういうふうに考えております。
#21
○永井委員 局長、認識だけでは困るわけですよ。共通の認識を持つことができるのであれば、政策的にそういう産業構造も改善をする、そういうのが政府の姿勢でなければいかぬと思うわけです。これは答弁は要りませんけれども、私はあえてそのことを指摘しておきたいと思います。
 もう一つ、かんばん方式というのを御存じでしょうか。かんばん方式というのは、公正取引委員会が昭和六十年から六十一年にかけて実施した調査によりますと、これは貨物運送業者を対象に言っているのでありますけれども、ちなみにこのかんばん方式というのは英語の単語にもなってしまっているわけですね。それはある運送業者が運送を受け持っている生産企業に指定された物品を納入先業者に、定められた日、定められた時間に届けるという方式をかんばん方式というのだそうであります。このかんばん方式を貨物運送業者の大部分の人が大変なことだと言って問題にしています。
 例えば、指定場所に指定の時間に物品が到着しないと、その企業からペナルティーが課せられるとか、あるいは運転回数の増加、予備車の用意などで経費が大変かさむとか、運転手の労働時間が物すごく長くなってしまって、これは大変だというふうなことが言われているわけであります。これは公正取引委員会の調査で明らかになってまいりました。いわゆるこのかんばん方式というのは、最前申し上げた多重下請構造のもとで、トップメーカーが経費を節減し要員を削減をして、そしてより生産性を高めるためにとられた純日本的な知恵から出てきたものだと思うのであります。このかんばん方式に見られるような二重構造が結果的に安上がり労働力というものに支えられる結果になっている。これはやはり私は労働行政にとって大変な問題だと思うのでありますが、このかんばん方式に対してどのような認識を持っていらっしゃいますか。
#22
○平井国務大臣 私もかんばん方式というのは余りよく具体的に承知しておりませんが、今委員のおっしゃったことでおおよそのところは理解いたしたわけでございますが、企業が自社の企業活動を直接的に経営するか、あるいは下請等外部委託するか、これは一般的に申し上げて当該企業の判断であろうかと思うわけであります。
 また、今御指摘ございました当該企業において人員の合理化、また解雇と申しましょうか、こういう問題につきましては、やはりこれも一般論で申しわけございませんが、具体的事情に応じて、労使当事者間において話し合いにゆだねることが私は一応適当ではないかというふうに考えております。
 また、経済事情の変動等に伴う事業規模縮小等につきましては、これは御案内のように、失業予防のための各種助成措置が講ぜられておるわけでございます。その活用、促進について労働省としては努力いたしておるわけでございますが、昨今の状態、私は率直に申し上げると、やはり企業も、実情さまざまではございますが、企業それ自体の社会的責任というのも十分に認識をすべきである、かように考えております。
#23
○永井委員 何回も同じことを繰り返すようですが、私は、これは今の大変な雇用情勢のもとで、何がそうさせているのか、どこに問題があるのかということを、やはり行政の側とも共通の認識に立って対応していかなくてはいけないという立場で執拗に状況の認識について今お伺いしているわけでありますから、この認識を持つということと、具体的な政策に結びつけるということをひとつきちっとしてもらいたい、このことをあえて私は申し上げておきたいと思います。
 時間がどんどんたちますので、幾つか準備しておりましたものは省略をしておきたいと思いますが、いずれにいたしましても、多重構造の中で、いわゆる下方に合わせていくといいますか、そういう産業界の動きというものを私はやはり問題にしなくてはいけないと思いますので、これはそういう面でさらに認識を持っていただきたい、このことを申し上げておきます。言葉で言いますと、下方柔軟性というのですか下の方に合わせていく、そういうことが結果的に、今の雇用問題でいうと、企業を守るために安易に労働者を解雇するということにつながっていくのではないか、こう思うわけであります。
 そこで、この労働白書によりますと、円高のために人件費負担から見て過剰雇用だとする企業は、製造業だけでいきますと百七十万人分にも達する、こう言っているわけですね。これをすべて雇用削減で解消するとすれば、失業率は一挙に六%になるということを私は最前申し上げました。これは労働白書から引用しているわけであります。
 そうなりますと、こういう多重構造の中で、不況の中で、企業が安易に労働者を解雇することのないような有効性を持った規制措置を講ずべきだと思うのですが、これはどうでございましょうか。
#24
○白井政府委員 お答えいたします。
 これは先ほどからのお話にもつながるわけでございますが、企業が従業員を解雇するかどうかという問題につきましては、やはり労使話し合いの上でやっていくべきものだと我々としては考えております。
 特定不況業種、その他につきましては、大量に失業者、離職者が出る場合、安定所に一応の届け出その他をされることにしておりまして、それらをもちまして、安定所自体としては就職活動その他についての指導をしていくという体制をとってまいりたいというように思っております。
#25
○永井委員 そこで、今までずっといろいろな問題提起もし、御意見も伺ってきたわけでありますが、今の労働行政というのは、端的に、歯にきぬ着せずに言いますと、対応は後追い的なんですね。だから、労働省所管事項という範囲内に閉じこもることではなくて、もっと積極的に関係省庁との関係で労働省がリードする、そういうことを私は求めていきたいと思うのです。
 まず、雇用対策の基本というものを我が党でも検討してまいりました。政府は三十万人の雇用創出ということを言ってきましたけれども、わずか二十万しか違わないと言えばそうなのでありますが、私どもは五十万人の雇用創出と言ってきました。その私どもの提起しましたのは、まず円高を是正すること、そして積極的な財政政策を展開すること、そうして急激に労働者や国民に犠牲を求めるような経済産業構造の転換を避けること、企業は安易に労働者を解雇することのないようにすること、そうして不幸にして離職のやむなきに至った人は、再就職先の確保やあるいは再就職のための行政の側の援助、こういうものを措置をしなくてはいけない。そうして、そういう立場に立って、新規事業の開拓とかあるいは地域雇用機会の創出とかあるいは自治体による臨時雇用の創出事業の実施であるとか完全週休二日制の確立による雇用機会の創出であるとか、とりわけ年金制度との関連におきまして、中高年齢層の対策の強化であるとか、いろいろなことを私どもはこの五十万人の雇用創出プランということで提起をしてきたわけでありますが、我々が求めている、提起をしている五十万人の雇用創出ということについて、どのような所感をお持ちになっていらっしゃるか、ちょっと一言っていただけますか。
#26
○白井政府委員 お答えいたします。
 先生の御提出になっております五十万人雇用開発プランにつきましては、私たちも見せていただいておりまして、その中身につきましては敬意を表しているわけでございますが、三十万人雇用対策を柱にしていただきまして、その点では一致していると思います。そのほか労働時間の対策とか、この労働時間につきましては、基準法の改正等で今お願い申し上げておりますし、さらに中高年者の対策につきましては、一部七月から年齢を下げる等によりまして、五十万人雇用開発プログラムの施策も実行させていただいております。
 大きな点では、地方自治体との、基金を出すという面が違っておるわけでございますけれども、これにつきましては、自治省その他との関係もございますが、労働省としましては、地域雇用開発等促進法によりまして、地域の雇用開発、かなり思い切った助成策でこれを実施していくということで対応いたしている次第でございます。
#27
○永井委員 そこで、地域の雇用開発ということについてちょっとお伺いしてみたいと思うのですが、この地域雇用開発等促進法が施行されましたね。その施行後まだわずかしか日にちはたっておりませんが、現状はどうなっていますか。
#28
○白井政府委員 お答えいたします。
 この地域雇用開発等促進法につきましては、先般の国会におきまして、先生方の御協力も得ながら早期に通させていただきました。四月一日から施行させていただいております。新規の施策でございますので、その中身のPR、それから全国実施についてのいろいろな指導その他緊急に実施いたしたわけでございますが、現在これに基づきまして、地域は御存じのとおり、雇用開発促進地域百十二地域、それから特定雇用開発促進地域四十三、それから緊急雇用安定地域百三十一市町村を指定させていただきまして、これらの地域におきまして、それぞれ会議その他を持って計画を練っていただいているところでございます。最近あれに基づきまして、事業所設置、整備及び雇い入れ計画書等の手続を既に各地域において開始されてきておりますが、六月三十日までに計画書を受理したのは全国で約六百五十件、その雇い入れ労働者数は約一万人というところまで来ております。
#29
○永井委員 わかりました。まだ日にちがたっておりませんから、積極的に進めてもらいたいと思いますが、ただ、この地域雇用開発を強調しながら雇用対策の政府の責任というものが結果として地方に転嫁されてしまうというものであってはならぬと思うのですね。
 例えば、国の直轄雇用というものもつくり出していく、創出する、そういう方法も私は当然考えられてよいと思うのでありますが、例えば失対事業について見ますと、失対事業そのものを廃止することによって、現在の失対事業が持っている問題点を結果としてなくしてしまう、このような政府の動きのように私は受けとめているわけでありますが、これを例にとりますと、これは後ろ向きの姿勢なんですね。例えば失対事業でいうと、今までのままで制度がよいとは言いませんけれども、国の直接責任による雇用創出制度というものも、やはり維持しあるいは新たにつくり出していくということが基本でなければならぬと思いますが、一言で言ってどうでございますか。
#30
○白井政府委員 お答えいたします。
 直接国が国営事業を興こす、その他につきましては、今先生御指摘のようにいろいろ問題点があるかと思います。そういう点を深めながら各地域、各市町村、それから各民間団体、労働組合等のそれぞれの御意見等も伺いながら雇用創出についての地域におきます開発を図っていくということで、この法律をつくらせていただいたわけでございまして、これらにつきましては、決して地方へ責任を転嫁するわけではございませんで、賃金助成、それから新増設その他に伴います資金に対する助成等を含めまして、国によるそういう大幅な援助をすることによって、それぞれの地域の開発を図っていく。しかし、どういう仕事ができるか、どういう産業が興せるかということにつきましては、それぞれ国が押しつけるだけではできないわけでございまして、各地域での会議その他を持ちながら、地域の英知を生かしてアイデアをいただきながら開発を図っていこうという考え方でございます。
#31
○永井委員 その次に、地域における雇用開発につきまして、四月施行のこの法律によりますと、地域雇用開発会議は、法律の条文そのものになっておりませんけれども、施行するに当たって触れているわけですね。この地域雇用開発会議というものは運用上のものとなっているわけでありますが、やはりこれは制度上位置づけを明確にして対応すべきではないか、こう思うのですが、どうですか。
#32
○平井国務大臣 この地域の雇用開発のあり方でございますが、関係市町村、関係労使も含めた地域の関係者が地域の実情に応じて主体的にその方向を話し合っていくということが重要であると考えております。そういう意味から、地域の関係者の主体的な取り組みを促していくために、雇用開発促進地域として指定されました地域すべてに関係市町村、関係労使団体等を構成員とする地域雇用開発会議を設置することとしたわけでございまして、現在、既にほぼすべての関係道府県において地域雇用開発会議の設置が終了いたしております。地域雇用開発計画に沿って地域内の産業、雇用動向の把握、雇用開発の具体化の方向及びその方策に関する検討等の諸事業を行う予定になっておるわけでございまして、今後ともこの会議の活動を通じて、関係者の意見を反映させながら、地域の実情に即した実効ある雇用開発に努めてまいりたい、かように考えております。
#33
○永井委員 その次に、外国人の労働問題について一言触れておきたいと思うのですが、せんだって労働団体から政府に対して外国人の労働者対策ということを要請されているはずであります。聞くところによりますと、建設や土木関係の現場では、不法に外国人労働者が多数就労していると言われています。どこまで実態が把握されているかわかりませんけれども、仮にそこで労災問題が起きたとしても、それはやみからやみへ葬られていくということになっていくわけですね。あるいは不法に外国人労働者が就労して非常に低い労働条件で働いているということになりますと、それが結果的に全体の労働者の労働条件を引き下げることになってしまう。これについて法務省とも協力して、その実態把握を図って善処すべきだと思いますが、どうですか。
#34
○白井政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、最近外国人労働者が観光ビザその他で入ってきて就労しているという不法就労の実態がございます。なかなか実態把握は難しい面があるわけでございますが、我々としましては、法務省、警察庁、外務省等と連絡をとりながら、この不法就労についての指導その他を実施いたしているところでございますが、今後なおそれらの実態把握等については、四省一緒になりまして強化してまいりたい、こういうように考えております。
#35
○永井委員 そこで、今まで雇用問題をかなり重点的に私も意見を申し上げ、質問をしてきたわけでございますが、その雇用に関連をして、障害者の関係について一言聞いておきたいと思うわけでありますが、障害者の雇用促進等に関する法律が前の国会で成立をし、この七月一日から一部施行をされているわけですね。その法律の中身には、企業が障害者を雇い入れる場合に雇用率に精神薄弱者をカウントすることになっているわけです。精神薄弱者はそういうふうにカウントされることになりましたけれども、精神障害者については、雇用促進という立場からすると、法的にその保障も行政の側の援助もないに等しいのが現状であります。精神障害者の社会復帰を理解してくれとか、あるいは社会復帰のために企業も市民も自治体もあらゆるところで協力をしてくれとかいろいろなことは言われているわけでありますが、精神的な対応だけではこれはしゃれにもなりませんね。精神障害者に対して、その社会復帰を促すようにみんなが協力せいと言いながら、それは精神的に終わっているのですからしゃれにもならぬわけですが、一体これはどのようにしていこうとされているのか、お伺いしたいと思います。
#36
○平井国務大臣 ただいま精神障害者に対する施策が十分でないじゃないか、精神条項だけではいかぬともできぬじゃないかという御指摘、まさにその意味におきまして、私は現在の精神障害者に対する施策が十分であるとは考えでおりません。ただ、精神障害者と申しました場合に、なかなかその把握が難しい問題、またプライバシーの問題、さらには医学的な観点から見た現場の管理の問題等々につきまして、まだまだこれは十二分に検討しなければならぬ問題がございまして、今後の非常に重要な課題である、かように考えております。
#37
○永井委員 そこで、せんだって参議院で障害者の関係に関して、ILOの勧告や条約について我々の同僚の議員から問題が提起をされました。ここにその議事録を持っているわけでありますが、精神障害者に対するいわゆる行政の姿勢というものが、身体障害者と比較をしてかなり初めから及び腰であったのではないかという気がするわけであります。そのことを一つの勧告や条約の仮訳文で見ましても、そのように受けとめるわけですね。
 例えば、ILO九十九号勧告ですね、これと百五十九号条約について精神障害者に関する部分については原文が同一であります。「disabled」というふうに書かれているわけでありますが、この同じ「disabled」という単語について、その解釈が全く違っている。これはもう既に参議院の段階でも提起をされているわけでありますが、例えば第九十九号でいいますと、「身体障害者の職業更生に関する勧告」というふうに訳文がなされ、そして引用の関係についてもわざわざ「身体障害者」というふうに解釈をしているわけであります。そして同じく百五十九号の条約で見ると、同じ原文が今度は「障害者」というふうに変えられている。そしてその中でわざわざ一九五五年の九十九号勧告について「身体障害者」というふうにそのときの訳文をそのまま引用し、そして条約の本文の関係ではきちっと「障害者」というふうに今度は解釈がされているわけです。一体これはどういう意図からこのように同じ単語が訳文をするときに変わった訳がされていくのか、何かそこに特別の意思があったのか、あるいはこれが間違いだとすると、正しいように訂正をすべきじゃないかと思うのですが、どうでございますか。
#38
○岡部政府委員 ILO九十九号勧告と、それから百五十九号条約の中に同じ「disabled person」という表現が使われていることは先生御指摘のとおりでございます。そして九十九号勧告の仮訳におきましては、これを「身体障害者」と翻訳いたしました。また一方、百五十九号条約の仮訳文におきましては「障害者」と訳している。同じ言葉を二通りに訳されているという点の御指摘、そのとおりでございます。
 この経緯につきましては、必ずしもつまびらかではございませんけれども、九十九号勧告が採択された当時、つまり一九五五年でございます。昭和三十年でございますが、そのときには身体的な障害を有する者及び精神的な障害を有する者を包含する言葉としての「障害者」という用語は確立しておらなかったわけでございます。それで「身体障害者」という言葉に精神的な障害を有する者も含めて表現するということが一般的であったわけでございます。その後三十年たちまして、一九八三年の百五十九号条約、この時代におきましては、両者を包含する意味における「障害者」という言葉が我々の中に確立されるに至った、こういう経緯であったと思うのでございます。
 それで、百五十九号条約の中で、同じ言葉を「身体障害者」とそれから「障害者」と二つに分けて訳しているのはおかしいじゃないか、御指摘のとおりでございます。
 ただ、これは国会にもこの仮訳を提出してございますので、九十九号勧告をそのまま、いわば法令的に正確に引用したというほどの意味合いでございまして、その言葉が二通りございまするけれども、しかし、その意味、内容は、我々の間では両者を意味するものであるということでは確立して理解をしているわけでございますので、行政的な点の姿勢の後退ではない、単に時代の推移によって用語の推移もあるというふうに御理解を賜れば幸甚と存ずる次第でございます。
#39
○永井委員 三十年という時間の経過はありますけれども、やはり原文を訳文にするときに、どこか精神障害者に対する、極端なことを言えば差別意識があったのではないかとか、あるいは積極的な対応をとることに及び腰であったのではないか、そういうことが結果としてこういうことにつながったのではないかと私は思うのですね。私の推測ですよ、そうでなければいいのでありますが。それだけに、仮に仮訳文であったといたしましても、そのことを土台に置いていろいろな政策の立案を進めていくわけでありますから、今回のこの仮訳文の違った訳し方、こういうものについては、今後もひとつきちっと整合性を持つようにしてもらいたいし、少なくともこれから精神障害者の方々の社会復帰を進めるために、別途精神衛生法の改正もありますけれども、具体的な問題はその中で触れてまいりますが、精神障害者の社会復帰を身体障害者と同じように行政の側も積極的に取り上げていく、こういう姿勢を強く求めておきたいと思うわけです。大臣、一言で答えてください。
#40
○平井国務大臣 第九十九号勧告の訳文は、当勧告の採択当時において国会の御参考とするために作成したものであるというふうに考えております。その当時の用語例から見て、格段不都合なものではなかったと私は考えておりますが、労働省としましては、第九十九号勧告に言う「身体障害者」には精神的な障害を有する者も含まれておるということで理解したところでございまして、「障害者」という訳文を用いなかったからといって施策の展開が異なったということはなかった、こういうふうに考えております。そしてこの九十九号、また百五十九号条約の訳文はあくまでも仮訳でございまして、最終的に確定した正文ではございませんが、条約に関しましては、その批准について国会に承認を求める際に、あわせて和訳を提出しておりまして、承認後、この和訳が正式の訳文となるものでございます。したがって、御指摘の訳の訂正につきましては、第百五十九号条約の批准の際にあわせて検討したい、こういうふうに考えております。
#41
○永井委員 もう今度は答弁は要りませんけれども、仮訳だと言っても、それが国会に出されて議員にも配付をされて、外国語に堪能でない我々は、政府の仮訳文をもとにいろいろなことの政策を考えていくわけでしょう。だから私は問題にしているのですよ。ここはもう答弁は要りませんけれども、ひとつきちっとこれからも仮訳をしてもらいたいし、間違った理解を与えるようなことだけは厳に慎んでもらいたい、このことをあえて申し上げておきます。もっと詳しく言いたいのですが、時間がありませんので、はしょります。
 その次に、実は五十九年の三月二十七日にこの委員会で賃金の遡及是正通達について私が触れました。いわゆる基発第百十号であります。労働基準法の第百十五条では、賃金の遡及は二年間にさかのぼって遡及するということになっているわけでありますが、この基発百十号によりますと三カ月でよい、こうなっているわけですね。そんなばかな話があるのか、一体どこに労働者の立場に立った行政が存在すると言えるのかと、多くを言いませんけれども、私はここで厳しく追及したことがありました。そのときに、当時の基準局長は、今後、御指摘の点もよく頭に入れて通達の検討を考えてみたい、こう答えられているわけでありますが、今あちこちで賃金の不払いが起こりまして労働争議になっているわけでありますけれども、そこで調べてみると、私が取り上げてから、もうこれは三年たつわけでしょう、三年以上たつわけですね、いまだにこの基発百十号は生きている。これは一体どういうことですか。
#42
○平賀政府委員 御指摘の通達は、賃金不払いの取り扱いについて部内での取り扱いを指示したものでございます。
 御指摘のように、割り増し賃金の取り扱いについて証拠書類等をどうそろえるかという関係で、部内の取り扱いとして、取り扱いの限度を普通のものと異なった決め方をしております。ただ、先生御指摘の点は、部内でいろいろ検討いたしまして、基準法関係の通達について、今度改正案を提出しているということも含めて、全面的に見直しをしたいということもございますので、私どもとしては、新たな取り扱いについて基準を定めるという方向で方針を固めております。
#43
○永井委員 もう一度伺いますが、内部通達といえども現在生きている基発百十号は、中身を私どもから言うと正しいものに変えるということですか。そこは明確にしてください。
#44
○平賀政府委員 中身を変える方向で方針を決めております。
#45
○永井委員 ぜひひとつよろしくお願いしておきたいと思います。
 その次に、ついでのことでありますから、高齢化社会を迎えて雇用不安におののいている現状から、中高年齢者がとりわけ今直面している問題でひとつ触れておきたいと思うのですが、固定資産税の評価がえの問題であります。
 勤労者財産形成促進法が四十六年六月から施行されまして、前の国会でも改正がされました。来年は三年に一度の固定資産税の評価がえの年になるわけですね。ところが、皆さん御承知のように、今異常な土地の高騰でありまして、マネーゲームと言われていることがそういう原因でありましょうけれども、大都市圏に住む勤労者やあるいは年金生活者という者はもう戦々恐々の状態です。それだけではなくて、固定資産税がこの見直しによって、評価がえによって大幅に増加することを大変恐れているわけですね。年金は上がらない、そして固定資産税だけが大変な金をかけなければいかぬ、こうなると、せっかく大都市圏で住居を確保しておっても、それを放棄せざるを得なくなってくる、これが今の実情ではないかと思うのですが、これについてきのうも何か労働界と経済界が土地の暴騰を食いとめるためにこれからも一緒にやっていこうということを話しをされたということが新聞やテレビ報道もされておりましたけれども、現行のこの固定資産税を労働者の生存権にかかわる財産に限って凍結をするとか、あるいは固定資産税について全面的な改革を行うべきだと思うのですが、せっかく三十年、四十年勤めてきてやっと手に入れたマイホームなどが維持できないようなことになっていかないように、ひとつ労働大臣、政府の中で先頭に立って努力してもらいたいと思うのですが、どうですか。
#46
○平井国務大臣 おっしゃることは私も十分理解できるわけでございますが、本問題に関しましては、昨年十月の税制調査会答申を踏まえまして、ただいま御案内のように、自治省において検討中というふうに聞いておるわけでございますが、勤労者の生活の安定という点から考えまして、私としても重大な関心を持ってその検討をただいま見守っておるところであります。
#47
○永井委員 その次に、時計とにらめっこでしゃべっているのですが、新前川レポートも言っている長時間労働の関係から、ちょっと時間短縮について申し上げてみたいと思うわけであります。
 労働基準法の改正問題が政府から出されていることは承知しておりますが、本格的な議論はその中でするといたしまして、今の年間総労働時間の二千時間という目標でありますが、八年前に既に政府は目標を設定しているわけですね。本来ならば二年前に達成されていなければいかぬわけです。ところが達成されていない。現在の労働時間というのは世界でも類を見ないほど長時間労働。とりわけびっくりしたのですが、トラック労働者などの長時間労働というのはもう異常なものでして、全トラック協会が調べたものによりますと、路線の大型トラックを運転する人の労働時間は三千時間を超えています。一番少ないところでも二千五百時間は超えている、こういう実態であります。ですから、労働時間の短縮について、今までからもっともっと積極的にやられていなくてはいけなかったのでありますが、労働大臣はこの労働時間短縮に非常な決意を今までから燃やしておってしかるべきだと思うのですが、大臣どうですか。
#48
○平井国務大臣 労働時間の短縮については、もうおっしゃるとおりでございまして、私は一言申し上げるとこういうふうにとらえております。
 時間短縮は一つの手段でございまして、この時間短縮の最終目標と申しますのは、前川レポートにもございますように、やはり国民の生活パターンを大きく変えていかなければいかぬ、そして質の高い生活、そういうところに持っていかなければならぬということが目標でございまして、そのための労働時間短縮というのは必要不可欠な一つの手段である。しからば、労働時間を短縮するには一体どういう手だてがあるかということになりますと、これは本来的に私よく申し上げるのでございますが、やはり基本的には労働条件の極めて重要な柱でございまして、労使間でとことん十分その方向で話し合っていただく。二番目には、御案内のように、長年にわたって労働時間短縮は実際に進んでおりません。そういう意味では、一つの有効な手段として、この基準法の改正というのも一つの柱である。さらには公務員等、これは人事院勧告を見守っておるわけでございますが、日本には従来からややお上意識というものがございまして、公務員、ひいては金融機関、商店街、非常に波及効果が大きい、そういうふうな中で基準法の一部改正もあわせて国民の方々に幅広いコンセンサスを得た中で、これは着実にやっていかなければならぬということで、このたび基準法の一部改正をお願いいたしておるわけでございまして、もうくだくだしい理由は申し述べませんけれども、もう既に今日的に申して時代の要請と申しましょうか、内外ともにどうしても達成しなければならぬというふうに私自身は理解をいたしております。
#49
○永井委員 法律案の審議のときに本格的な問題提起や議論がなされていくわけでありますから、きょうはその労働基準法の審議の問題に触れようとしているわけではないのです。労働時間の一%の短縮というのは雇用を〇・四三%増加させる、これは経済企画庁の「内需拡大と成果配分」というレポートに出ています。前川レポートでもその長い労働時間を問題にしています。とりわけ今私が申し上げましたように、トラック業界などは三千時間を超えるような長労働時間であります。だから中央労働基準審議会でも検討の場というものは設けられているわけですね。この検討の場で、とりわけこういう世界にも類を見ないような長時間労働を解消するために、私は産業構造の問題も前段で触れましたが、そういうものにもメスを入れながら積極果敢に他の官公庁にも働きかけて推進をしていくということを約束してもらいたいと思うのですが、どうですか。
#50
○平賀政府委員 先生御指摘のように、中央労働基準審議会の建議に基づいて、自動車運転手の労働時間の問題については関係業界の労使の代表も入る形で検討の場を設け、既に小委員会は発足しております。御指摘のとおり、この問題につきましては、運輸省、警察庁、その他関係各省庁ございますので、十分連携をとって対応していきたいと思っております。
#51
○永井委員 大臣、もう一つだけ長時間労働について申し上げますが、現行の制度における有給年休、こういうものを仮に完全に消化するだけでもかなり時間短縮できるのですね。あるいはワークシェアリングの関係からいきますと、雇用の分かち合いということもできるのですね。しかし、今、現行のそういう年休制度でも十分に消化できないような企業の実態なんですよ。企業の頭がおくれているのかあるいは労働行政ということについて積極的な姿勢を持とうとしないのか、あるいは一部に言われるように、労働組合の存在そのものが何か悪い団体が存在するかのように思い込んでいる経営者もいまだに存在するという。こう考えていくと、この労働時間短縮は労働基準法の改正もさることながら、積極的に企業にそういう時間短縮をやらせるという気持ちと実践をさせることが大事ですね。ひとつ大臣、積極的にリーダーシップをとってもらえませんか。
#52
○平井国務大臣 いずれ正式に当委員会において御審議をいただくと思うわけでございますが、その中でやはり今後のあるべき姿としては、今御指摘にございましたような年次有給休暇を完全に消化するという方向では、私はもう万全の措置をとって大いに推進したい、こう考えております。
#53
○永井委員 そこで、最近の不況、雇用不安が大変なときに、路頭に迷っている労働者が多いときに、今までも何回も問題にしてきたのでありますが、労使の関係についてぜひひとつ触れておきたいと思うわけであります。
 きょう参考までに、私の手元に幾つか、いわゆる不当労働行為であるとか、あるいは労働組合をもともと認めようとしない経営者の実態とか、いろいろなことが私のところに訴えられてくるわけです。きょうはこの二カ月ほどの間に私の手元へ参りました不当労働行為を訴える労働者からの手紙をこれだけ持ってきました。ここだけでもこれだけあるのですね。これは全部同じところじゃないのですよ。企業がこれだけの不当労働行為を働いているのに何の手も打ってもらえないのだろうか、こういう訴えがこれだけやってまいりました。あるいは国鉄が分割・民営化されるときに、この委員会で私は何回も取り上げてきたのですが、労働組合を否定をしてみたり、組合によって差別があってはならぬと指摘をするにもかかわらず、そういうことが後を絶たなかった。今JRのある事業所、わずか五百人程度の事業所で、不当労働行為事件で百七人もの人が地労委に提訴している、こういうものも現実に存在をしております。まあ言葉では不当労働行為はしていません、そういう事実はありませんと幾ら言ってみても、そういうことが今の近代国家、先進国と言われておる日本で数限りなく続いていることだけは事実なのです。その不当労働行為に対して適切な手を打つことができない。例えば地労委や中労委で不当労働行為と認定されても、経営者はその認定を受け入れようとしない、裁定を受け入れようとしない、中労委の裁定に対してでもそれを受け入れることができないということで、改めて法廷に持ち出すということも後を絶っていないわけですね。これはもう一つや二つの企業ではありません、随分あります。そして裁判で判決が出た、不当労働行為を救済するための判決が出た。その判決が出ても、なおかつそのことが実効を持つようなことになっていかない。まさに歯ぎしりする思いですね。こういう全体的な不当労働行為が続発しているという現状について、労政局長はどのように認識されていますか。
#54
○小粥(義)政府委員 本来、不当労働行為はあってはならないことであるというふうに考えております。しかしながら、現実にはいろいろな産業あるいは企業においてそうした事案が出ているわけでございまして、現実にそうした不当労働行為の救済は、先生御承知のように、労働委員会制度という中で迅速かつ効率的に処理をするという仕組みになってはおりますが、実際の不当労働行為の事案の処理がかなり時間を要する、さらには不当労働行為についての命令が出ても、それが裁判所の方でさらにまた相当時間がかかる、そのために実際の救済はなかなか受けられないということも私どもよく耳にいたしますし、そうした事案もつかんでいるわけでございます。したがって、今後の問題でございますけれども、不当労働行為事案の迅速な処理という点について、さらに現在の労働委員会制度のあり方についての検討をする必要があるということで、今その検討に着手をしているところでございます。
#55
○永井委員 古い話で恐縮ですが、昭和五十二年三月一日に基発第百三号というのが出ています。これは「監督指導業務の運営に当り留意すべき事項」こうなっているわけですね。説明を聞けばいろいろなことを局長も言うでありましょうけれども、私なりに問題になるところをちょっと触れてみますと、処理の原則として、労使紛争に絡むことでありますが、「事案が労働協約の効力にかかるもの又は不当労働行為とみなされるものなど労使間の問題である場合、あるいは純然たる民事上の問題などについては、監督機関は関与すべきでないこと。」こう書かれているわけです。もちろん地労委があり中労委がありあるいは裁判所があるわけでありますから、民事事件として争われる場合に直接関与しないことがあっていいと私は思うのです。しかし、監督機関は一切こういうものに関与してはならぬよということの解釈で進んでしまうわけですから、これが結果として不当労働行為を続発させる一つの背景にもなっているのではないかと思うのですが、どうですか。
#56
○平賀政府委員 労使紛争が監督署の事案になって申告されるという事態がよくございます。この通達につきましては、そういう事案について監督官の中立性を担保する、特に労使が非常に関心を持っている事案について慎重に取り扱うということを通達をしたものでございます。
#57
○永井委員 少ない監督官で現場は大変だと思うのですが、少なくとも不当労働行為を起こさせないように、あるいは起きた場合は不当労働行為が一日も早く解消されるように、監督署などがむしろ積極的に努力をすべきではないか、後ろ向きになってはいかぬ、このことを私は強く申し上げておきたいと思うのです。
 ところで、先日、ことしの五月十四日でありますが、私が広島にある第一学習社の労使紛争に関して質問主意書を出しました。これは当時社会労働委員会が国会の事情によって開くことができない状況でありましたから、あえて私は質問主意書で出したわけであります。
 その第一学習社というのは、もう御存じでありますけれども、相次いで不当労働行為事件が起きまして、労使の関係で言うと特徴的なところでしょうね。そういう意味では悪い方のサンプルみたいなものでしょうね。企業がですよ、労働者が悪いのじゃなくて企業の方が悪い。サンプルみたいなものです。もう何回も何回も地労委が裁定を出し、中労委が裁定を出し、あるいは事案によっては地裁で判決が出て、その判決に従わないために過料まで取るというようなことまでずっと繰り返してきた学習社であります。
 その学習社で、昨年の三月、最高裁でこの不当労働行為問題について判決が出されました。いわゆる不当労働行為として認定をされて、言えば身分の保全を命じた判決なんですね。これについてその質問主意書で私が出しますと、労働省は、政府は「従来、広島県等関係機関において、紛争の早期かつ円満な解決という観点から、関係者からの事情聴取や会社に対する指導及び助言が行われてきたところであるが、政府としては、今後とも適切な指導及び助言が行われるよう、これらの機関と連絡を密にして対処してまいりたい。」こう答えているわけでありますが、その後どうなっておりますか。
#58
○小粥(義)政府委員 先生の質問主意書に対しまして、政府としての答弁書を出しまして以降、私ども、広島県を通じまして、その後の推移の状況等を把握しているところでございますが、さらに最近の事態としては、広島県の労政主管部におきまして、相手方の会社の責任者を呼んで、また事情聴取をするという予定にもなっております。そうした場を通じて、私どもとしての気持ちを、県当局を通じて対応していきたいというように考えているところでございます。
#59
○永井委員 ひとつ基本的に私の考えていることを申し上げたいと思うのでありますが、地労委に持っていって一定の救済命令が出てもどうにもならぬ。中央労働委員会に持っていって救済命令が出されてもどうにもならぬ。せっかく苦労してきたけれども、また改めて第一審から裁判で争われる。不当労働行為を受けた側からすると、一審で勝ち、二審で勝ち、最高裁まで何年もかかって、この学習社の場合十二年かかっておる。十三年かかって最高裁でまた不当労働行為を受けた側からすると勝利をした、判決で勝った、勝ったけれどもどうにもならぬ。これは法治国家として一体どうしたらいいのだ、これが私は実感だと思うのです。幾ら裁判で勝っても何ともならぬのだったら、国会でひとつ取り上げてくれということになってくるのは当たり前の話でしょう。局長そうでしょう。
 そこで、その最高裁の判決を受けて、その後団体交渉しましたときのテープを私はここに持っている。もしよろしかったら後でお渡ししますので、一遍聞いていただきたいと思うのですが、この最高裁の判決を見ますと、広島高裁の判決を支持して控訴人の訴えを棄却したわけでありますが、どのように判決文の中に触れているか。たくさん不当労働行為があるのですが、ちょっと参考までに問題のところだけ、御承知だと思うのですが、あえて読み上げてみたいと思います。
 これは何回も配転されているわけですね。最高裁に控訴をしたのは企業の側でありますから、被控訴人らが組合の役員として組合活動を熱心に行っていなかったならば、そういう配転はしなかっただろう、会社の側の被控訴人らの正当な組合活動に対する嫌悪、組合弱体化の意図が各配転の決定的動機であったと言える、こう言っているわけです。そして「信義則」難しい言葉ですけれども、「信義則に反し組合嫌悪を推認させるものであった。」と断定をして、解雇を受けたその人ですが、「特段の事情のない限り、原職に復帰させ、他の職種に配置させる場合には原職と著しい変動のない同じ事務職を選び、被控訴人らをその係員として配置するのが相当である。」このように断じているわけであります。「会社が被控訴人らの原職復帰を信義則に反して拒否するなど組合活動に対する異常な対策から派生したものが多分に存するのであり、彼此考量すると、本件解雇の決定的理由は前記の点にあり、」というのは、この組合活動をやっておったということですね。「換言すれば、解雇の決定的動機は不当労働行為意思にあったということができる。」したがって、労働組合法七条一号、三号の不当労働行為として、この解雇は無効である、これが最高裁の判決であります。日本ではこの最高裁の判決以上のものはありません。
 ところが、その判決を受けて労使で交渉をした。この中でどういうことが言われているかというと、名前まで言って恐縮でありますが、もう申し上げます。会社の労務担当の森中という常務がこのテープの中で言っていることは、極めて重大なことを言っているわけです。すなわち、最高裁の判決が出たけれども、もう一回繰り返しますが、地労委、中労委、一審、二審、最高裁と十三年かかっておるわけです。そしてその判決を受けて労使間で不当労働行為をなくするための団体交渉をやろうとしたときに、団体交渉にまともに応じてこない。どういうことかというと、その解雇された本人が原職に復帰することがあっては困るのだ、原職に復帰するということは会社の秩序を乱す、どうせおまえらは原職に復帰したらまた組合活動をやるんだ、組合活動をやらないと約束するか、あるいはもうそこへ――そこには仕事はあるのですよ、もとの職場は人が足らぬわけですから。人が足らぬで今パートなんか雇い入れているわけですから。もともと職場は残っているわけですから、編集課は。地方へ、広島から遠い地方へ配転することをあらかじめ認めるのなら団体交渉に応じよう、こんなことがあっていいのですか。もともと組合活動をしたことを理由に解雇したことでここまで十三年間争われてきた。そしてすべてで勝ってきた。解雇された者からすれば勝ってきたわけですが、その団体交渉をやる場合に、組合活動をやらないと約束するか、地方へ飛ばすことを承知するか、しないと交渉に応じない。これでは何のために争ってきたのですか。何のための法治国家ですか。何のために労働省が存在するのですか。これについてどう考えられますか。
#60
○小粥(義)政府委員 先生今読み上げられました判決の趣旨、私どもも承知をいたしております。正確には広島高裁の判決を引用した部分だろうと思いますが、問題は、今私ども承知いたしておりますのは、地位確認の問題について最高裁の判決が出たにもかかわらず、なお労使間の紛争が続いているというところにあるわけでして、その職場復帰をめぐって労使交渉が行われ、その中で具体的にどういう話が行われているかは私どもつまびらかにいたしておりません。先生はテープ等をお持ちでございますが、私どもその点はまだ承知いたしておりませんけれども、今お話を伺っておりましてまず言えることは、要するに組合活動をやらないことを前提に云々ということでありますと、これは現在の労働組合法七条で言っております不当労働行為、幾つか要件がございます中のそれに該当するおそれもなしとしないといった点が出てこようかと思っております。そうした組合活動をしないことを約束させる、あるいは正当な組合活動をしたことを理由として不利益な取り扱いをするといったようなことになりますと、これは明らかに不当労働行為といった問題が生じてまいりますから、そうしたことのないように、私どもとしては今後指導を徹底したいと思っております。
#61
○永井委員 もう一回繰り返して言いますが、不当労働行為だと断定をされて判決が出た、その判決に基づいて労使間で話し合いをするときに、不当労働行為が前提になっている、これが今の実態なんですよ。これは私は単に第一学習社だけではないと思います。私の知る限り、今も申し上げましたようにいろいろなものが来ておりますけれども、公企業、民間を問わず、今企業が生き残りのために労働者の削減を図っているということを最前私は状況認識の議論の中で申し上げましたが、そういう周囲の環境もあるからだろうと思うのでありますが、今企業の側では不当労働行為しほうだいという状態なんですよ。まさに戦後四十年たって、民主主義の看板を掲げてきて、今ほど激しい不当労働行為のしほうだいの時代はないのではないかと思うのです。
 時間が余りありませんから、ついでのことにちょっと文部省にお伺いいたします。
 同じくこの質問主意書の中で、文部省、政府に質問いたしました。その質問の趣旨は、第一学習社というのは、業界第三位の大手でありますけれども、高校の社会科の教科書をつくっていて、その教科書の中身というのは、憲法に基づいて、いろいろな法律に基づいて、民主主義を説き、社会秩序を守っていくことを説き、ましてや労使間の関係では不当労働行為があってはならないと教科書に記述して、それを高校に納入している企業なんです。その教科書をつくるような企業が十三年間も、今回の最高裁の判決だけでなくて、いろいろな不当労働行為で地労委や裁判所で争っているのでありますが、教科書をつくる企業にふさわしいのか。そんなところのつくる教科書は、幾らいい言葉を並べておっても、そんなものは魂が入っていない。そういうところは本来なら教科書を納入させる業者から外すべきではないかという意図も込めて私は質問したのですが、文部省、政府の回答というのは、労使の紛争によって教科書の発行に支障のないようにしたい。そんなことを聞いているのじゃないのです。物をつくって出せばいいというものではない。
 文部省にあえて聞きますが、文部省は、この教科書をつくっている出版社において、こういう教科書の中身と相反するような不当労働行為が日常茶飯事に行われていることについてどう思われているか、もう一回、この場所でお答えください。
#62
○福島説明員 先生御指摘のとおり、教科書会社というのはそれ相応の信用というのも必要でございますし、社会的責任というのは非常に大きいものと考えております。私も、この教科書会社のうちで第一学習社の問題は心配の種でございまして、去る四月にも松本という副社長に来ていただきましたし、六月の質問主意書の後には、今の森中常務取締役に来ていただきまして、事情を聞きますとともに、これはどうするんだということで、最高裁の判決も出ているので、早急、円満な解決をぜひやってもらいたい、そういうふうに要請したところでございます。先方は、二人ともどもこの解決の難しいことをるる申すのですが、私は、やはり社会科とかそういう教科書を出す会社ですから、そういう教科書会社という立場を考えて、これは最大限の努力をしてもらいたいと言っている最中でございますので、今後ともぜひこれを続けていきたいと思っております。
#63
○永井委員 時間がなくなってしまいました。労働大臣、繰り返して恐縮でありますけれども、イギリスのように労働裁判所でもあれば別ですけれども、日本にはそういうものはないので、地労委、中労委、公労委などがその仲裁機関としての役割を果たしているわけですね。本来なら、地労委や中労委で一定の答えが出されました場合には、それに従うのが本来の姿でしょう。しかし、今私どもが手元に持っているのは、この第一学習社だけではなくて、地労委や中労委で一定の答えが出されても、その答えのままでおさまるケースがむしろ少ないと思われるほど不当労働行為の関係については法廷闘争に持ち込まれるわけですよ。法廷闘争というのは、御存じのように、民事事件でありますから非常に時間がかかる。時間がかかっている間にもう回復措置がとれないほどの打撃を働いている側は受けてしまうわけですよ、今回の事件じゃありませんけれども。だから、ここはひとつ地労委や裁判所そのものの判決を含めて従わないという、たくさんあるのですけれども、今回はこの第一学習社に集中して申し上げているのですが、あとはもう政治的にこの不当労働行為をなくさせることをやる以外にないと私は思うのです。労働大臣も政治家ですから、私今ここまで申し上げたことを、短時間でありましたけれども、何も企業をすべてスケープゴートにしてというつもりはありませんけれども、民主主義の世の中でここまでしたいほうだいされたのでは法治国家の名が泣く、民主主義の看板が泣く。大臣として、たくさんある中でもとりわけこの第一学習社の問題は、一罰百戒じゃありませんけれども、大臣みずからが乗り出してくれませんか。どうですか。
#64
○平井国務大臣 本事案につきまして私詳細すべてを承知いたしておるわけではございませんけれども、おおむね拝聴いたしましたところでは、私が改めて申し上げるまでもなく、労使間において不当労働行為というのは絶対に排除しなければならぬ問題でございまするし、この第一学習社の問題につきましては、広島県の労政部局を通じまして早急に強力に指導いたしたい、かように考えております。
#65
○永井委員 広島県で御協力いただくことは、それはそれで当然のことだし、ありがたいことなんですが、ひとつ場合によっては社長に直接話してくださいよ、社長を呼び出してでも。過去にそういう例がないでもない。私の質問に対して、翌日大臣が社長を呼び出して解決したことも、五年ほど前でしたがありました、名前は申し上げませんけれども。ここはひとつこれだけ問題になっていることを労働省は大臣の責任において解決してみせる、そのことが今全体が不況の世の中で労働者が路頭に迷うような高失業時代に、企業の生き残りのために弱い者にだけしわ寄せを持ってくるようなことを是正させることに大いに役立つだろう。あるいは随所に出てきている不当労働行為問題について、そのことが大きなインパクトになっていくだろうと思うのですね。そして労働省自体はそのことを一つの契機にして、不当労働行為事件の起きないように、あるいは地労委や中労委や公労委などに係っている不当労働行為問題は、裁定が出されたらできるだけ速やかにその段階で問題の処理を図るように指導してもらいたいと思うのです。
 大臣、もう一回最後に決意を聞かせてください。
#66
○平井国務大臣 一般的な問題といたしましては、今後さらに強力な指導をいたしたいと考えておりますが、今御指摘の問題につきましては、今後県部局の対応等も十分に検討の上、委員御指摘の会社直接云々も考慮に入れて対処いたしたい、かように考えております。
#67
○永井委員 よろしく頼みます。
 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
#68
○堀内委員長 大橋敏雄君。
#69
○大橋委員 私も一時間の持ち時間の中で、今我が国が直面しております内需拡大の推進ということを根っこに置きながら、十数点にわたってお尋ねしてみたいと思っております。
 まず初めに、先週成立いたしました大型補正予算、この予算が具体的に配分されていくことになるわけでございますが、予算が成立する数日前に、労働大臣は建設大臣と、また労働省、建設省の幹部を交えて、予算の重点配分について相談をなさったということが新聞報道にありました。実は、のどを渇かしている人々の前に水が出てきているわけでございますが、公平といいましても、やはりのどの渇きの強いところにはたくさん水をというのが公平な配分だと思うわけです。したがいまして、その重点配分の相談の中身について具体的に説明していただきたいと思います。
#70
○平井国務大臣 このたびの緊急経済対策、その中身で、特に公共事業でございますが、従来から不況地域に対する配分につきましては、傾斜配分という形で建設省当局も大変御配慮いただいておったわけではございますが、その上にさらなる御配慮を願えぬかということでお願いをいたしたわけでございます。
 具体的な数字というわけにはまいりませんけれども、特に私どもの念頭にございましたのは、札幌を中心とした北海道地区、さらに北九州を中心にした九州地区、俗に圧倒的に不況地域、不況業種の集中している地域について格段の配分をお願いいたしたわけでございまして、建設省当局また建設大臣も相応の御理解をいただいたものと私は理解をしております。
#71
○大橋委員 今のお話では、いわゆる特定不況地域、そういうところに重点的に配分していただきたいということを建設大臣と相談なさった。北海道や北九州、福岡県――福岡県はやはり石炭の問題、鉄冷えの問題で想像以上の不況地域になり、あるいは失業者が続発しというような状況になっているわけでございますが、そこには特段の配分がなされるというお話を伺って意を強うしたわけでございますが、それは大体いつごろ施行されるのでしょうか。
    〔委員長退席、稲垣委員長代理着席〕
#72
○白井政府委員 お答え申し上げます。
 先日補正予算が通過しましたので、事業官庁は直ちにその配分その他に入ると思います。その事業の種類その他によりまして、いつ、どういうとしろで施行するかということは、これから査定されるものだと思いますが、そういう作業に直ちに入られるもの、こういうふうに理解いたしております。
#73
○大橋委員 執行の時期は非常に重要だと私は思います。やはり早ければ早いほどその効果は出てくるわけですから、少なくとも下期にはそれが十分間に合うように執行していただくように強く要望しておきます。
 それでは、問題を次に移したいと思いますが、勤労者の財産を形成しようということで財産形成法という法律があるわけでございます。この中には住宅取得の持ち家政策が組み込まれているわけでございます。したがいまして、この財形法における財形貯蓄というものについては、その財形法本来の趣旨あるいは目的あるいは意義からいいまして、これにかかわる利子については非課税措置を講ずるのが当然であろうと私は思うわけであります。しかしながら、前国会に提出されました財形改正案の中には、危うく財形年金には一〇%、一般財形には二〇%の課税をしようという内容が盛り込まれておりました。これは売上税の廃案と同時に廃案になったので安心したわけでございますが、私は、今申しましたように、財形法の本来の趣旨からいって、これに、つまり財形貯蓄には課税すべきではないということを主張したいわけです。
 ここで、なぜそうでなければならないかという理由を大臣と一緒に考えてみたいと思うのでございます。
 まず初めに、財形法の第一条に、「この法律は、勤労者の計画的な財産形成を促進することにより、勤労者の生活の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」こう明確に示しているわけでございまして、財形法は決して小さく縮こまっていては意味がないぞ、大きく羽ばたいていって初めてその目的を達していくんだ、そして国民経済の健全な発展に寄与していかねばならぬわけでございます。
 また、五月十四日に総理大臣あてに建議されたいわゆる新前川レポートの中にも、内需拡大と住宅建設の重要性が述べられているわけでございますが、それをちょっと拝読させていただきますと、「第T 内需拡大一住宅(一)住宅の質的改善は内需拡大の柱であり、国民生活の質の画期的向上をもたらすため、この分野に政策資源を特に重点的に配分すべきである。(二)これまでの住宅政策は、主として最低居住水準未満世帯の解消等社会政策的観点から行われてきたが、今後は良質なストック形成のための援助等、より高次のニーズにも積極的に対応するよう経済政策的観点を加味する必要がある。」ここが非常に大事なんですね。これまでの住宅政策というものは、主として低所得者層を対象に、外国人からウサギ小屋と批判されるような小さな家を建て、そういう人々に確保させていく政策であったけれども、今後は違うぞ、あくまでも経済政策的観点を加味したものでなければならない、つまり豊かでゆとりのある住宅取得が大事だぞ、そうすることがまた内需拡大を推進させる大きな役割になるんだということを主張しているわけですね。またその次に、「(三)需要面の住宅対策としては、今回の住宅減税の拡充等に加えて、今後、住宅金融等各種インセンティヴについて、一層の拡充・強化を図るべきである。」こう示しているわけでございます。
 そういうことで、前国会で委員長提案によって改めて財形法の改正案が提出されて成立したわけでございますが、それには融資条件を大幅に緩和した、大改善をした。財形貯蓄期間の三年間という条件を一年に短縮しましたね。あるいは融資額が積立金の五倍から十倍にということで、積立金五十万円以上から百万円未満までは五百万円、それから積立金二百万円以上については二千万円を最高に融資をいたしましょう、このように大きな改善がなされました。貸付利率も四・二五%。これは変動金利でございますけれども、こういうことで大幅な改善を図ってきたわけでございます。
 それで前川レポートの内容の中には、特にインセンティブの重要な柱というべきものがこの財形の利子非課税措置であると私は認識しているわけでございますが、こういう点について大臣はどのようなお考えを持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
#74
○平井国務大臣 新前川レポートを御引用になりましていろいろ御指摘ございましたが、原則的に委員のおっしゃるとおりでございまして、この財形制度におきましては、持ち家を初めとする勤労者の資産形成を援助するために貯蓄について税制上の優遇措置を講じており、またこれを原資として勤労者に低利の住宅融資を行っておるわけでございまして、このうち融資制度に関しましては、御案内のように、さきの国会で財形法を改正していただきまして、制度の拡充が行われたわけでございます。
 財形貯蓄に対する優遇措置の具体的内容につきましては、これも御案内のように、税制、金融政策等の施策を勘案しながら検討すべきものであると私は考えております。そういう意味では、いずれにしましても、内需拡大の観点から、今後とも財形につきましては、優遇措置を講ずることが絶対に必要である、かように私は認識をいたしております。
#75
○大橋委員 財形貯蓄はその性格から一般貯蓄あるいはマル優等々とは次元を異にしたものだと私は思います。したがいまして、財形貯蓄の利子に対する非課税措置は当然のことだと思います。この点についてもう一度大臣の基本的な考えをお尋ねしたいと思います。
#76
○平井国務大臣 財形貯蓄制度は立ちおくれております勤労者の資産形成を促進するためのものでございまして、勤労者の計画的な年金資産の保有、さらには持ち家の取得を助成する制度でございます。そういう意味で、単なる貯蓄優遇制度とは基本的に異なる独自の政策的意義を有するものと認識をいたしておりまして、優遇措置は今後とも堅持すべきものと考えております。
#77
○大橋委員 今の御答弁では、財形貯蓄の利子に対しては非課税措置を堅持していきたい、こうおっしゃっているわけですが、大臣は昨年の夏、財形年金単独なら非課税枠を五百万円から一千万円に引き上げたい、今おっしゃったように、非課税措置はもう将来とも堅持したい、こういうふうに言っておりましたけれども、実際提出されてきた財形法の改正案の中には、先ほど言ったように、一〇%、二〇%の課税の内容が盛り込まれて出てきたわけですね。幸いに廃案になったので、それはなくなったわけでございますが、今回またぞろ税制改革の中でマル優廃止の論議とともに、この財形貯蓄に対する課税問題が見え隠れしているわけでございます。年金あるいは住宅の財形貯蓄については、何が何でもこれは非課税ということで頑張っていただきたいと思いますけれども、大臣の決意をお尋ねしたいと思います。
#78
○平井国務大臣 勤労者の年金資産や持ち家などの資産融資の促進、これは先ほどから申し上げておりますように、今後の高齢化の進展、さらに厳しい経済環境のもとで勤労者の生活の向上を図るという上では、もう不可欠な問題だと私は考えております。そのために、財形制度につきましては、今後ともその充実に努めていきたいと考えておるわけでございます。
 今お話の出ました利子課税の問題でございますが、この問題につきましては、これも委員御案内のように、現在その取り扱いがいろいろ議論されておるところでございまして、そういう検討を踏まえて財形貯蓄についても極力前向きに検討いたしたい、かように考えております。
#79
○大橋委員 前歴がありますから、私はくどいように確認しているわけですが、これまで申し上げましたように、財形貯蓄の性格あるいはその内容というものは非課税措置を講じていくことが当然の措置であるということを改めて認識していただいて頑張っていただきたいと思います。
 そこで、私は今度労働省の実態調査の資料を眺めながら、ああこれはいかぬな、財産形成法を大幅に改善、充実強化をしていく必要があるのじゃないか。というのは、財形貯蓄をしていっても、現実には持ち家というものは非常に困難だ、あるいは老後の生活資金ができないで不安でいっぱいという。つまり老後資金というのが現在価格で一千五百万円ぐらいが必要であるということが試算されているわけでございますが、その大半が、半数以上がまず不可能であろうということを示しているわけでございますね。
 この労働省の調査というのは、人生八十年時代の勤労者生活に関する調査研究会報告書です。六十二年三月に出たものでございます。これを見てまいりますと、一つの例を取り上げるのですけれども、三十七歳で年収が六百八十万円ないと三千百万円の家を買うことができない。これは資料にそうあるのですよ。子供二人を大学に入れて、結婚させて、老後生活に必要な資金、現在価格で一千六百万円というものはとても残せない、こう言っているわけです。つまり年収六百八十万円というと月収四十万から四十五万程度のものでしょうし、大会社の社員以外にはまずこういう人もいないでしょう。その人だって今言ったような状況になる。ましてや三十七歳で年収五百四十万円の人は千九百万円の家しか買えないし、年収四百五十万円の人は千百万円の家しか買えない。つまり年収四百五十万円以下の人は住宅取得は不可能ということがこの研究発表で出ているわけですね。
 それから、特に東京で持ち家をしようとすれば、これは絶望的であるということなんですよ。というのは、不動産経済研究所というところの実態調査なんですけれども、首都圏のマンション価格調査、これは一都三県平均が出ているわけでございますが、ことしの六月現在の調査ですよ。一戸当たりの価格が四千三十三万円です。前年同月比で四九・四%も上昇しております。また一平米当たり価格は六十二万五千円、前年同月比で五五・九%も上昇しております。また都区部の一月から六月の平均のマンション価格というものは、一戸当たりの価格が何と四千四百四十三万円だそうです。これも前年同月比で三八%も上昇しております。また一平米当たり価格が七十四万円、前年同月比が三五・二%、大変なことですよ。まず一般の勤労者は東京で家を持つことは無理だという状況が示されているわけでございます。こういう労働省の実態調査あるいは民間のそうした首都圏の状況は今示したとおりでございますけれども、こういう内容を聞かれて、大臣はどんな感想を持たれるか、お尋ねしたいと思います。
    〔稲垣委員長代理退席、委員長着席〕
#80
○平井国務大臣 御指摘を待つまでもなく、この住宅問題というのは現下非常に大きい政策問題になっておりまして、地価の高騰、都市集中、もろもろの原因をもって一般勤労者が住宅を取得することは非常に難しくなっておる。このことは私はもう総合政策をもって強力に推進しないとなかなか解消できない非常に難しい問題だと思っておりますが、今後の高齢化社会の進展に伴いまして、財形年金貯蓄を初めとして財形制度の役割は一層高くなったなあというのが私の実感でございまして、税制さらには金融政策、住宅政策、いろいろな関連がございますけれども、他の施策と密接な関連がございますので、労働省としても、今後ともこれらの施策に十分配慮しながら財形制度のより一層の充実を図っていかなければならぬ、かように考えております。
#81
○大橋委員 今御答弁にありましたように、財形制度だけで対応できる問題ではございませんけれども、勤労者の持ち家制度の具体的な法律は財形法でございますので、これをさらにさらに充実強化、大改善をしていただきたいことを強く要望しておきます。
 次に、内需拡大と賃金、労働時間短縮問題に関しまして若干お尋ねしてみたいと思うのでございます。
 内需拡大の対策は種々あるわけでございますが、何といいましても、その主役はGNPの約六割を占めております個人消費の拡大を図っていくことだと私は思うのでございます。そのためには勤労者の可処分所得の増大が肝心だということです。その可処分所得の増大というのは、大幅な所得減税あるいは賃金のべースアップが必要になるわけでございますけれども、大幅減税は臨時国会の最大の問題として今論議されているわけでありまして、マル優廃止問題と絡めまして微妙な動きを示しておりますけれども、ぜひ今国会で大幅減税を実現したい、このような思いでございますが、問題は賃金でございます。六十二年の春闘の賃上げ率は何%であったか、お尋ねしたいと思います。
#82
○小粥(義)政府委員 ことしの春闘におきます民間主要企業の賃上げ額は、いわゆる定期昇給分込みにしまして額で八千二百七十五円、賃上げ率にしまして三・五六%、これはいずれも加重平均でございます。これを前年の数字と比べてみますと、額にして千八百七十一円、率にして〇・九九ポイント、いずれも前年より下回っておりました。過去、春の賃上げの率としては、いわゆる春闘というものがずっと行われるようになりましてからは、最低の数字になっているわけでございますが、一方物価が非常に鎮静化したという状況にございますので、過年度の物価上昇率で割りましたいわゆる実質賃金は、最近、昭和五十年以降では一番高い三・六%という数字になるわけでございます。
#83
○大橋委員 大臣、今聞かれましたように三・五六の引き上げ率、これは史上最低だということでございます。賃金問題は労使協議が原則ではございますけれども、これまでの賃上げ率を私なりに調べてみたところが、五十六年度は七・六八%、五十七年度も七・〇一%、その次の五十八年度からがくんと下がるのですね、四・〇四%、五十八年なんというのは企業の収益が最高だと言われるくらいに景気がよかったのですよ。にもかかわらず落ち込んでおります。五十九年度も四・四六%、六十年になってちょっと上がって五・六三%、六十一年が四・五五%で、ことしが今言われる三・五六%だということでございます。
 先ほど申しましたように、賃金は労使交渉が原則とはいいますものの、このような賃金の抑制あるいは労働時間は実は逆に伸びているわけでございますが、こういう実情というものは実に時代逆行だと私は思うのであります。それが証拠に、内需拡大は一向に進まないし、未曾有の貿易黒字を生み出した、円高不況を誘発して失業者を増大せしめた、このような現実を、結果といいますか、見て、大臣はどう感じておられるか。私はやはり労使交渉とはいうものの、労働省が労働行政の立場から適切に指導教育を行っていくべきではないかと思います。したがって、労働行政にも重大なミスがあるのではないかと私は思うのでございますが、その点、大臣どうお感じになりますか。
#84
○平井国務大臣 経済発展の成果を賃金、労働時間に適切に反映させるということは、これはもう申すまでもなく勤労者福祉の向上、また内需拡大による均衡のとれた経済成長の達成という面からも大変望ましいわけでございます。労使が国民経済的観点から、産業、企業の実力に見合って適切に対応することを私ども期待いたしておりますし、また政府はそのための環境整備に努力をいたしてきたところであります。
 ただいまこの春闘の結果について御指摘ございましたけれども、今春の賃金交渉の結果につきましては、もうおっしゃるように、名目の賃上げ率は史上最低でございました。ございましたが、先ほど局長もちょっと触れましたように、物価は極めて安定しておるために、実質で見た賃上げ率は必ずしも低くなかったというふうに理解をいたしております。そしてまた、こうした成果配分が円滑に進むためには、適切な経済成長、これが達成されまして雇用の安定が確保されるということは、極めて重要であるというふうに私は考えております。
 したがって、今回の内需拡大を中心とした緊急経済対策、これはこうした効果があると認識をいたしております。私ども労働省としましては、本対策に盛り込まれております一連の三十万人雇用開発プログラム等々、こういう雇用対策、さらには労働基準法の改正と労働時間短縮、こういう方向で積極的に一層の努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
#85
○大橋委員 産業、企業の実力に応じた賃上げが労使交渉のもとで行われることが妥当であるというお話でございますが、確かに円高不況ということで問題でありますけれども、逆に円高で非常に利益を得た企業もあるわけでございますが、相対的にそれではそれがその労働者の賃金にはね返ったかといえば、そうじゃなくて、その成果が労働分配にならないで、逆に財テクに回ったり、あるいは合理化のための施策に使われたりということでさっぱり労働者の方には回ってこないわけですね。ここに問題があるわけです。
 そこで、近藤経済企画庁長官が三月の三日でございましたか、春闘を前にして経済界、いわゆる産業界に対しまして異例の積極介入をなさったようでございます。それは消費支出の増加による内需拡大を進めるために、支払い能力のある企業は賃金を上げてほしい、また円高で潤っている企業は高目のベースアップをしてほしいということで頑張られたわけであります。先ほどから労使交渉が原則だとはいうものの、我が国の経済全体をどうリードしていくかということは政府の責任でございます。このように一生懸命に経済企画庁長官も努力なさったわけでございますが、結果的には先ほど言ったように、史上最低の賃上げ率にとどまったわけです。私は、この最大の原因は、日経連の生産性基準原理の方針に問題があるのではないか、こう思うのでございますが、大臣はどうお感じになっておりますか。
#86
○小粥(義)政府委員 ことしの春の賃上げが確かに史上最低という数字になったわけでございますが、ことしの春闘の動向を見てまいりますと、幾つかの特徴点がございます。その最たるものは、いわゆる業種間の格差というものが非常にはっきりとあらわれてきた。先生御指摘のように、円高のメリットを受けた企業、これはかなり高い数字、一方で円高のデメリットをもろに受けた産業は極めて低い、例えば定昇のみにとどまるといったようなところがございました。そういうような、言うならば三極に分化したような形の春闘の賃上げの実績であったわけでございまして、総体としては確かに史上最低の賃上げ率になったわけでございますが、その原因は、今申し上げた円高メリット、デメリット等、いろいろな要素がございまして、先生御指摘の日経連の生産性基準原理、これは確かに一つの考え方ではあるのですが、これがどちらかといえば、ある程度の物価上昇がある場合に労働分配率を低くする傾向にあるという点は率直に言ってあろうかと思いますけれども、これがあるために全体の賃上げ率が史上最低になったというふうに直ちに断じ得るとは考えないわけでございまして、やはりそれぞれの産業が置かれた事情、また物価の動向といったようなことがもろもろ総合されて三・五六といった春闘の数字になったのではないかというふうに考えております。
    〔委員長退席、長野委員長代理着席〕
#87
○大橋委員 私は従前からこの日経連の生産性基準原理に基づく賃上げの実態について疑問を抱いてきた一人でございますが、経済企画庁も五月十八日、生産性向上による賃上げ、労働時間短縮の効果の実態を調査しまして、その結果を発表いたしております。その内容が丸めて新聞にも報道されておりましたので、ちょっとこれを読んでみます。
  賃上げ・時短進まず企画庁調査企業利益、設備投資に
 第一次石油危機をはさんだ四十五年度から五十年度にかけて労働生産性の伸び以上に実質賃金が増えたものの、五十年代以降は賃金の伸びが下回り、国民所得に対する雇用者所得の割合(労働分配率)は先進五カ国中最低にとどまっている。同庁は今後内需拡大、対外不均衡是正を進めるには積極的に賃上げや労働時間短縮を進める必要があると強調している。
 企画庁によると、四十五−五十年度に労働生産性が年平均三・九%上昇、実質賃金はこれを上回り年六・三%増えた。ところが五十−五十五年度、五十五−六十年度には生産性の伸びがそれぞれ年平均三・七%、二・九%だったのに実質賃金は一・五%、一・六%ずつしか増えなかった。
 また一人当たりの総労働時間も三十五年に二千四百三十二時間だったのが五十年には二千六十四時間まで減ったのに、その後増え、六十一年に二千百二時間になった。
 こういうふうに経済企画庁直言っているのですが、実はもう既に六十年の十二月に経済審議会もその調査をいたしまして、昭和六十年度のリボルビング報告というもので、生産性、賃金、労働時間等の推移を昭和四十年から五年刻みにグラフに明示して、それを指摘しているわけでございますが、それらによりますと、五十年度以降は賃金は生産性上昇率以下に抑えられております。労働時間は短縮どころか伸びているわけですよ。さらに労働分配率は低下の一方です。こういうことを指摘しているわけでございます。また、先ほどの主要五カ国の労働分配率も示されておりますが、日本は六八・九%、アメリカが七三・九%、イギリスは七五・三%、西ドイツ六九・九%、フランスは七三・二%で、五カ国の中では日本が最低なんですね。この欧米並みの労働分配率の確保やあるいは労働時間の短縮は、今後日本経済にとって極めて重要な問題だと思います。これをリードしていくのが労働省の役割であり使命であると私は思うのでございますが、ここでも大臣の所信を伺っておきたいと思います。
#88
○平井国務大臣 ただいまおっしゃいました労働分配率の評価につきましては、各国の経済活動の特徴との関連で総合的に判断することが必要であると考えております。我が国は欧米諸国に比べますと、設備投資比率が高い、このことが結果的に労働分配率の水準を低くしておるんだと言われておるわけでございますが、一面、この設備投資の強さが経済発展を支え、それが一面労働条件の改善につながる側面も私は見逃せないと思うわけです。またこの労働分配率につきましては、景気との関連もございまして、いろいろな動きが見られるところでございます。したがって、その動きのみをもって勤労者生活の状態を判断することは、私は一概にはできないのではないかと思いますけれども、昭和六十一年以降労働分配率は必ずしも下がっておらないと思います。
 いずれにしましても、経済発展の成果を賃金等に適切に反映させることは、これは申すまでもなく、勤労者福祉の向上、内需拡大による均衡のとれた経済発展の達成という面からも極めて望ましいものであるというふうに認識をいたしております。
#89
○大橋委員 今大臣いろいろと御説明なさいましたけれども、ここで私は賃上げと交易条件の改善との関係について若干お尋ねしたいと思うのです。
 というのは、先ほどの大臣の答弁の中に、実質賃金はそう下がっていないんだというようなお話があったわけでございますが、我が国の交易条件は円高あるいは原油安で大幅に改善されてきたわけであります。したがいまして、生産性上昇率を上回る賃上げが可能になったのではないかという説が実はあるわけでございます。
 雑誌「ESP」の一九八七年三月号、その中に「八七賃上げ闘争の課題」と題しまして、経済・社会政策研究会代表の佐々木孝男氏の論文が出ているわけでございますが、これは非常に貴重な論文でございます。ぜひ大臣も熟読していただきたいと思うのでございますけれども、その論文の中に、「円高に伴う交易条件改善は、生産性上昇を上回る実質賃金の伸びを可能にしよう」こう言っております。そしてOECDの事務局のデータをそこに掲げまして、実質賃金、生産性、交易条件の数字を並べまして、我が国の賃金がいかに抑制されているかを明確に指摘しているところがございます。その表の中で一番わかりやすいところは、一九八三年から八六年の欄でございますけれども、日本の生産性、交易条件、実質賃金の数字が、生産性の増加率が三・三%、交易条件の利益は一・一%。ですから、それを合わせますと四・四%になる。この四・四%というのが保証された実質賃金になるということなんですね。これに対しまして、実際の春闘で決められた実質賃金は平均一・九%にとどまっているということですから、実質賃金のギャップというものはマイナスの二・四%だということがここに数字になって示されております。そこで日本はヨーロッパの各国あるいはアメリカと相対して賃金抑制が非常に厳しい、著しいということを実はここで指摘しているわけであります。だから、単なる生産性基準原理の考えで進んでいっていると、私は、日本の経済は誤っていくのではないか、こう思うわけでございます。
 そこで、これは新聞報道でございますけれども、「賃上げ抑制修正へ動く?」これは六十二年五月十九日付の日経新聞でございますが、途中から読み上げますと、
 新生日経連は賃上げ抑制一辺倒の路線の修正を迫られている。内需拡大のために高めの賃上げを誘導してはならない、という日経連の主張に疑問を感じる政財界人は増えてきた。日経連の賃上げ抑制理論である生産性基準原理に対し「国際的な視点が欠けている」との批判も強まっている。
ということで、ずっと厳しい内容が報道されているわけでございますが、私は、これを見ながら私の疑問が少し晴れてきたような思いがするわけでございます。
 先ほどから何回も言っておりますように、賃上げ決定は労使協議の原則ではございますが、我が国の置かれております国際的な経済情勢にかんがみまして、産業界、労働界に積極的な指導教育を行っていく必要があると私は考えるのでありますが、労働大臣の所感を伺っておきたいと思います。
#90
○平井国務大臣 この賃上げの決定につきましては、ただいま委員御指摘ございましたけれども、日経連が提唱する生産性基準原理、また経済・社会政策研究会が提唱する逆生産性基準原理、また先生御指摘の、何と申しましょうか、保証された実質賃金尺度等、これも種々の考え方が議論されておりますことは、私もおおよそ承知いたしております。たびたび繰り返して申しわけありませんけれども、労働省としてどうかというお尋ねでございますると、やはり春闘における個々具体的な賃上げの決定というのは、あくまでも労使が自主的にお決めになるものでございまして、労働省として、そのいずれの考え方が望ましいということは、当面差し控えさしていただきたい、かように考えております。
#91
○大橋委員 答弁すべき内容であろうかと思いますけれども、いずれにしましても、産業界、労働界合わせまして、やはり正しい方向に善導していく、その使命と役割は労働省であり、労働大臣の責任だというくらいに感じて、積極的な指導教育をしていただきたいことを強く要望しておきます。
 それでは、もう時間も残り少なくなってまいりましたので、少し観点を変えまして、低肺機能患者に関しまして若干質問したいと思います。これは厚生省の方、来ておられると思うのですけれども、結核等の後遺症で大変に悩んでおられる低肺機能患者が非常に増加傾向にあると聞いているわけでございますけれども、全国的にどのくらいの人数になっているのか、お尋ねしてみたいと思います。
#92
○草刈説明員 昭和五十八年度の厚生省特定疾患呼吸不全調査研究班の調査によりますと、四万ないし五万人であると推定されております。その後、六十一年度にも同研究班が国立療養所入所者を中心とした調査により全国の推計を行っているところでございます。
#93
○大橋委員 今の話では、もう既に調査したし、さらにまだふえているようだから、その調査を続行していると理解していいかと思います。私も患者の皆さんに実際にお会いして感じたことは、想像以上に気の毒な生活実態にあるわけでございますので、是が非でも実態調査をして適切な対策を行っていただきたい。
 そこで、労働省にお尋ねをするわけでございますが、身体障害者雇用率の対象となっております呼吸機能患者というのがあるわけでございますが、その中に今言う低肺機能患者は含まれているのかどうかということでございますが、いかがでございますか。
#94
○白井政府委員 お答えいたします。
 含まれております。
#95
○大橋委員 恐らくまだ積極的な立場でそれを観察しているあるいは掌握しているということではないと思いますけれども、先ほど言いましたように、現実には携帯用の酸素ボンベをいつも背負ったりあるいは手にしてお勤めに行く、あるいはそういう状況だからなかなか雇用機会がないということでございまして、特別の配慮をもって応援をしていただきたいと思うのであります。
 そこで、これは労働省の仕事というわけではございませんけれども、厚生省の方にもぜひ聞いていただきたいのですが、携帯用酸素ボンベは患者の生命線でございます。したがいまして、交通機関への持ち込み、しかもただ酸素を持ち込むだけじゃなくて、やはり吸わなければなりませんから、吸大使用を認めてほしいという非常に強い要望があるわけでございます。自治体によっては既に認めているところもあるようでございますが、関係省庁に働きかけて、ぜひこれが実現できますように、そうすれば通勤あるいは通院あるいは外出、生活領域はそれによってぐっと広まるわけでございますので、是が非でもその働きかけをしていただきたいということでございます。どうでしょうか。労働省、厚生省、ともに一言ずつ。
#96
○平井国務大臣 低肺患者が酸素療法に用いる携帯ボンベは、もう私が申すまでもなく、まさしく生活に必要なものでございまして、交通機関への持ち込みについては、医療用ボンベとして認められておると私は承知をいたしております。
 労働省としても、その障害者の雇用の促進、さらには確保という観点からも、これは今後さらに必要に応じて対処いたしたいと考えております。
#97
○草刈説明員 携帯用酸素ボンベの件につきましては、関係団体すなわち低肺機能の愚者の団体の意見を伺いながら実態を踏まえ、関係機関に必要な働きかけをしてまいりたいと存じております。
#98
○大橋委員 今労働大臣は、原則的には、基本的にはそれは認められているということでございますが、運営面において、実態面においてはなかなか難しいようでございますので、関係省庁から適切な行政指導がありますように強く要望しておきます。
 時間の関係がございますので、私ちょっとまとめて厚生省の方に質問しますので、まとめて答弁を願いたいと思います。
 低肺患者の入院時と在宅療養時とはケアの質も量も余りにも格差が大き過ぎると思うのであります。再入院の頻度が高いというのも在宅療養の貧困のあらわれではないかと私は思うのでございますが、ちなみに入院治療費は一カ月間に約二十七万円、同量の酸素を自宅で二十四時間吸入したとしましても、すなわち在宅療養の費用の約三倍に当たっているそうですね、入院の方は。そういう額になっているわけでございまして、どうしても訪問看護等の施策を実施していただいて、在宅ケアシステムの充実を図っていただきたい、これが一つ。
 それから、離婚その他の理由からひとり暮らしの女性低肺患者が多いと聞いております。しばしば生命の危機にさらされるような事態が生じるようでございますが、極めて不安な生活を送っておられますので、国立療養所、病院等に、これは仮称ですけれども、低肺ホームを設置していただけないかという強い要望があります。これが一つです。
 もう一つは、国立療養所並びに病院におきまして、在宅酸素療法の保険適用病院が六十二年四月一日現在で、国立療養所は百三十九病院のうちに六十三病院、四五%、国立病院は百病院のうちに三十病院、三〇%しかございません。さらに問題なのは、国立療養所で適用がゼロという県がまだ十県もあるということを聞いておりますが、早急に指導整備を進めてほしいということでございます。
 以上ですが、厚生省の方、よろしくお願いいたします。
#99
○谷説明員 低肺機能患者の医療の問題につきましては、私ども、先生先ほどからおっしゃっておられます在宅医療の必要性というようなことから、六十年三月から在宅酸素療法ということを診療報酬の中で取り入れて鋭意その改善を図ってきているわけでございますが、現在まで約千の医療機関においてこの在宅酸素療法がやられているというふうに承知をいたしております。
 さらに、在宅における低肺機能患者の医療ということで訪問看護についてお尋ねをいただいたわけでございますけれども、御承知のように、現在老人ですとか精神障害者については、訪問看護の制度を医療費で診療報酬において手当てをいたしておるわけでございますが、この訪問看護全体の問題といたしまして、現在訪問看護のあり方ということにつきまして、医師の指示の問題あるいは医療機関以外の看護の機関がそういったようなことはやれるかどうか、また広く在宅ケア全体の問題といたしまして、訪問看護ですとか介護を含めた総合的な地域ケア対策というようなことについて検討を進めておるところでございまして、その結果を踏まえまして、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
#100
○大橋委員 時間があと残り七分になったわけでございますが、最後に労災脊損患者に関する問題を取り上げたいと思います。
 実は、労働災害で脊髄を損傷されて車いすという気の毒な生活を送っている方があるわけでありますが、その労災脊損患者が死亡した場合は、その原因が余病にあったとしても、その病因をずっとさかのぼっていきますと、結局労災による脊損ということに行き着くわけでございますので、労災脊損愚者の死亡というものはすべて労災扱いとして遺族補償の対象にしていただきたいという要望でございます。労災愚者は自分亡き後の家族の生活の不安をいつも抱いているわけでございまして、強い要望でございました。
 また、これは厚生省にも関連するわけでございますが、基準看護病院の労災脊損患者の看護の給付支給要件が地域区分があって、支給額に格差がつけられているわけでございますね。この地域区分が人事院規則によるものと聞いているわけでございますが、どうもこの辺がちょっと納得いきませんので、説明を願いたいと思います。
 もう一つ、労災脊損患者が一時的に基準看護病院に入院する場合は、規則によりまして、それまでのなれた介護人が切り離されることになっていくわけでございますけれども、重篤な特殊な脊損患者の平素からの病態というものは、常に介護をしている人しか理解できない複雑微妙なものがあり、かつ精神的な影響も強いのであります。看護婦ならだれでもよいというわけにはいかないのであります。そこで、特別な配慮で、一時的に入院する場合は、従来の介護人の介護が認められるようにぜひ検討していただきたい。
 以上でございます。まとめて答弁をお願いしたいと思います。
#101
○平賀政府委員 お答えをいたします。
 まず、労災の基準看護の料金について、人事院規則に連動しているのはどうかということでございます。この点につきましては、労災の看護の料金は基本的に健康保険に準拠して決めております。健康保険の料金の算定について地域区分を設けておりまして、その地域区分を、一般職の給与法による調整手当の支給地の地域区分、これは人事院規則で定められております甲、乙、その他となっておりますが、その甲、乙、その他という地域区分を健康保険に用いているので、結果として労災保険に連動している、こういうことになっております。
 それから第二点は、非常にお気の毒な脊損患者、長く療養しておられる方が亡くなった場合にどうなるのかということでございます。労災保険というのは、御案内のように、やはり労働者の亡くなっているということが業務に起因するということが明確な場合に、その遺族に対して遺族補償を給付するという制度になっております。
 そこで、脊損で長期に療養している方々が亡くなった場合についても、やはりその解釈で行かざるを得ないということになります。したがって、脊損患者が療養中に病気にかかりまして亡くなった場合についても、その病気が業務上の要するに脊損とその因果関係があるかどうかということをやはり個々に十分に調査しなければいけませんので、そういうことになるわけでございます。いずれにいたしましても、この問題については、やはり専門的な検討が必要だと思いますので、労働者の保護に欠けることのないように考えつつ、そういう検討にまちたいと考えております。
 それから三番目に、特別看護といいますか、基準看護病院に入院することとなった労災患者について、新しい看護人になるということをどうかというようなことでございますが、一定の要件のもとには外側からの付添看護を認めているというのもありますけれども、実は特別看護の取り扱いにつきましては、本年四月から、その対象医療機関については、対象傷病労働者を常時十人以上収容している医療機関、それから看護担当者については、やはり特別の要件ということになっておりますので、いずれにしても、その実情に即して考慮していきたいと考えております。
#102
○大橋委員 今私が申し上げました種々の要望については、実情に即して対処していきたいというお話があったわけでございますけれども、ぜひその実情を正しく把握していただきたいのであります。労災脊損患者の生活実態というものは想像以上にお気の毒な内容でございまして、そこから出てくる要望というものは切実な問題でありますので、ぜひそれは前向きに検討をし、実施していただきたいことを強く要望いたしまして、質問を終わります。
#103
○長野委員長代理 午後二時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十六分開議
#104
○浜田(卓)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。田中慶秋君。
#105
○田中(慶)委員 労働一般について政府すなわち労働大臣にそれぞれ質問をさせていただきたいと存じます。
 最近、日本が国際国家日本あるいはまた国際化の時代、こういうことをとみに聞くわけでありますし、またそれぞれが定着している日本の実態だろうと思います。そういう中で、貿易摩擦解消を含めた国際的な役割として労働行政というものをどのようにとらえていらっしゃるのか、それらに対する見解をお伺いしたいと思います。
#106
○平井国務大臣 今日の我が国の経済社会環境は、御案内のように、非常に大きい変化が見られるわけでございまして、高齢化の進展、女子の職場進出、さらには技術革新の進展、経済のソフト化、サービス化等労働力需給の両面にわたって大変大きい変化をいたしておるわけでございます。さらに、現在我が国は国際経済社会において言うなれば歴史的な転換期を迎えておるわけでございます。貿易収支の不均衡の拡大、急速な円高等を背景に、国民生活の質的な向上を中心とする俗に言われます内需主導型の経済成長、均衡ある成長を図らなければいかぬ。よって、国際協調型経済構造への転換を図ることが重要な課題だ。こうした中で、従来から労働省はさまざまな変化に伴う課題に取り組んでおるわけでございます。
 今後、労使との十分な話し合いを行いますとともに、産業政策、社会保障政策等の連携を図りながら、産業構造の転換等に伴う雇用の安定、さらには御案内のような労働時間短縮の積極的推進によりまして、将来にわたって勤労者の生活の安定と充実、これを図りますと同時に、さらには発展途上国を中心とする技術協力の推進等により、我が国の国際的な地位にふさわしい労働外交も推進していかなければならぬ、かように考えております。
#107
○田中(慶)委員 そこで、第一にお伺いしたいのは、現在円高の影響で一つには大変な雇用の不安あるいはまた産業構造の変化を招いている、これらの実態を大臣としてどのように考え、どのような打開策を持たれているのか、まず一つお伺いしたい。
 もう一つは、円高で逆に国民所得は少なくても一万五千ドルに達したと言われ、アメリカを抜いて日本は現実的に世界一だと言われておるわけであります。しかし、現在の対外純資産残高を含め一千八百億ドルとも言われており、二年続いて世界一の債権国となっているわけであります。しかし、現実に日本の国民の生活水準や実態は、これらに比較してほど遠い感がしますし、また中身を考えても、住宅費を考えてみれば、少なくても対アメリカと比較しても一・五倍、二倍、こんなことを言われておりますし、さらにはまた住宅を入手をするにしても、欧米と比較すれば六倍から十倍と言われているわけであります。土地は百倍とも言われております。食料費は少なくても二倍、三倍と言われているのが実態であります。こういう環境とあわせて、現実には日本の教育費にかける比率というものが家計の中では一番高い、こういうことになってまいりますと、生活そのものが厳しい、こういう環境であろうと思いますが、大臣はこれらについてどのように認識をされ、考えられているか、お伺いしたいと思います。
#108
○平井国務大臣 ただいまアメリカ等との比較において世界一と言われておる我が国の給与所得、しかしながら現在の生活実感との落差等々についてお尋ねがあったわけでございますが、一つには賃金の国際比較にはいろいろ方法がございまして、最近の一ドル百四十円ないし百五十円の為替レートで換算いたしますと、我が国の製造業、生産労働者の賃金水準はアメリカと同程度になると承知をいたしております。これは御案内のように、ここ二年足らずの急激な円高によりまして、我が国の賃金のドル換算額が急上昇した結果でございます。円の対外価値の上昇を示しておるわけでございますが、それが直ちに国内における賃金の購買力の増大を意味しておるわけではないということでありまして、消費購買力等で見ますると、アメリカで一ドルする消費財と同種のものを国内で購入いたします場合には約二百三十円程度、これは昭和六十年の推計でございますが、そういう試算がございます。労働者の生活面から見ますると、賃金水準はいまだアメリカをかなり下回っているものと私は認識をいたしております。そういう中で今後ぜひとも必要だと思われますのは、円高差益の一層の還元、さらに割安な消費物資の輸入拡大などを通じて賃金の実質的な購買力を高めることが重要であると考えております。
 その他、御案内のように、労働省はもろもろの雇用対策、その他現行制度の枠内で、さらに新しくお認めいただいたものもございますけれども、基本的にはやはりある程度の、中程度の均衡のとれた経済成長を前提といたしまして、その中で組まれている制度、政策でございますので、やはり為替の安定と適度な経済成長というのはもろもろの政策にとって不可欠なものである。私はかように考えております。
#109
○田中(慶)委員 大臣も日本の実態なりあるいはまた生活の実態というものはそれぞれ認識をされているものと私も思いますし、現実には雇用あるいはまた円高不況、さらにはまたこれらの生活実態を考えてみますと、今日本において労働行政を初めとするあらゆる分野で、今大臣が言われたように、経済政策等の問題を含めて考えるならば、例えば減税問題もその一つであろうと思います。減税を大幅にする。政府は一兆円の減税の問題――一兆円以上と言っておりますけれども、しかし全体的な今みたいな認識に立つと、具体的に購買力を拡大する必要があるであろうし、さらにはもっと突っ込んで言うならば、それぞれ厳しいからこそ、あるいはまた将来雇用不安や老後の暮らしが心配であればあるほど、それは預金や貯蓄というものを、どうしても日本人は過去の厳しい状態から脱皮するために、これは経験をされておるわけでおりますから、そういう点では現実に日本が貯金率が高いというのはそういうところにあろうと思うのです。それが今回マル優の廃止という問題等々も含めて、総理あるいはまたこれから具体的にこのことが検討されているということを承っているわけでありますけれども、労働大臣という立場、あるいは政府の一員という立場でこれらに対する見解を伺いたいと思います。
#110
○平井国務大臣 ただいま日本国民の預貯金に対する一つの考え方、従来の経過、また今後の諸問題ということについて御発言がございましたけれども、直接的にマル優をどうすべきかという問題は、これは御案内のような経過でございますので、私自身なかなか明確に申し上げにくいことでございますが、やはり全体的に見て、ある程度、老後保障ないしは勤労者、高齢者の置かれた環境等々から見て、貯金が全く必要でないという社会環境に日本はございません。そういう意味では、社会保障のさらなる強化、住宅政策また雇用政策を含めて、そういうふうな方々が大きい不安を持たないでやっていけるような環境の整備等々の中に今委員の御指摘になった預貯金問題もあろうか、それ自体切り離す問題でない、私はかように考えております。そういう意味では、労働省としましては、今申し上げたような環境整備について今後とも全力を挙げていくべきものと考えております。
 ただ、マル優問題につきましては、御案内のように、ただいま税制協議会、その結果がどうなりますか、また政府の考え方がどういうふうに決まりますか、ただいま私は言及を差し控えさしていただきますが、労働省としましては、例の財形問題等々もございまして、非常に関心を持って見守っているところであります。
#111
○田中(慶)委員 大臣も政府の一員でありますから、総体的な労働者の雇用なり生活の安定なりあるいはまた老後の保障、勤労者福祉という面を含めて、それらに対する労働省としての立場としてぜひ御尽力を賜りたいと思います。
 実は私ども社労で先般外国を視察する機会をちょうだいして行ってまいりました。確かに厳しい経済環境で、それぞれの雇用の問題やあるいは失業率の問題、大変深刻な状態であったことも調査をさせていただいてわかったのですけれども、そういう中でお年寄りの人たちが非常にゆとりといいますか生きがいというか、そういうのが見られたわけでありまして、そんなことを考えてみますと、やはり労働行政なり将来の雇用なりあるいはまた老後の福祉なりというものがすべて一連のものであるということを、私は私なりに認識させていただいているわけであります。
 そんなことを含めて考えてみますと、例えば今日の労働時間の問題、私ども五月の太陽と緑の週間という問題について具体的に提唱し、これらの扱いの問題について過去にも御提言を申し上げてまいりました。あるいは、今日の労働時間一つ考えても、貿易摩擦解消と言われ、国際国家日本と言われている日本が現実に世界一長い二千百六十時間、あるいはまたアメリカが一千八百時間台、さらにはまたドイツを初めとするEC、ヨーロッパのそれぞれが約一千七百、一千六百時間、こういう時代に入ってきている。なぜ日本が、もう既に労働時間短縮、八時間労働ということが提唱されて八年、こういう形でたっているにもかかわらず、現実問題としてこれらに対する取り組みというものが、片方においては国際国家日本とかいろいろなことを、貿易摩擦解消とか内需拡大とかそういうものが提唱されているにもかかわらず、具体的に数字としてあらわれている労働時間を見たって何にもその対策が打たれてない、こういう結果ではないか、こんなふうに認識しているわけですけれども、これらに対し大臣としてどのようにお考えになっているのか、これを伺いたいと思います。
#112
○平井国務大臣 まさしく労働時間短縮の問題について御指摘があったわけでございますが、私、午前中にもちょっとこの問題に触れましたように、時間短縮自体が今目指すところの理想的な社会の中で最終目的ではございませんで、やはり時間短縮を行うことによって国民の生活パターンを大きく変えていく、その中で質的向上を目指す。新前川レポートにも、将来の展望に立って国民生活のあるべき姿を明示いたしておるわけでございまして、時間短縮のためのさらなる手段の一つが基準法の改正ということで私はとらえておるわけでございます。無論こういうふうな基準法の改正だけで強権的にすべて横並びでやれるわけでございませんで、従来から申し上げておりますように、公務員等の完全週休二日制の波及効果等を考えました場合には、これらをあわせ、金融機関さらには商店街等々にも応分の御理解をいただく、そして国民的なコンセンサスの中で時間短縮を着実にやっていくということは、今後の日本のあるべき姿としてこれはもう不可欠な問題である、かように考えておりまして、既に提案もいたしておりますように、時間短縮のための非常に有効な一つの手段でございますので、できるだけ早く御審議を賜りたい、こういうふうに考えております。
#113
○田中(慶)委員 それは時間短縮というものが一つの手法であるという、確かにそうかもわかりません。現実に日本の過去の歴史、文化、いろいろなことを含めて生活のパターンを急に変えようといっても無理だと思うのです。しかし、その中で片方においては、国際国家日本とかあるいはまた貿易摩擦の解消とか内需拡大、これらの原因の一つにも日本の労働時間が長いからと言われているわけですから、生活パターン、文化とか、そういうことも大切でありますけれども、私が今観点を変えて申し上げているのは、やはり先進国あるいはまた国際国家としての日本の役割から、もっと時間短縮に対する積極的取り組みが必要だろう、こんなふうに申し上げているわけであります。そういう点について、大臣は午前中確かに述べられておりますけれども、その観点と全然変わった形で私は今申し上げているわけでございまして、貿易摩擦、世界に対する日本の役割というものについて、もっと積極的に、だからこそこれをやらなければならないんだという強い姿勢を打ち出さなければならぬと思う。あれだけいろいろな形でたたかれている、次々とたたかれる。私たちが日本の品物はいいと言っても、日本のいろいろなことに対して評判のいい面と、貿易摩擦の問題、アンフェアの問題、いろいろなことを含めて大変日本がたたかれている問題、その一つに労働時間というものが大きくあるわけでありますから、それらの認識をまず踏まえてやっていただきたい、こんなふうに思います。
 例えば今あなたがおっしゃる生活パターンなり潤いのある生活、こんなことを考えるのだったら、せっかくこっちから五月のゴールデンウイークを太陽と緑の週間として要求したのだから、メーデーはもう既に全国の労働者の六割以上が休みになっているのですから、そこを思い切ってちゃんと総理に助言をして、先般の答弁のような形で、いや、それはできない、中小零細企業がどうのこうの、こういう形じゃなくして、思い切ってやることが、現実問題としていろいろなことができるんだと思います。
 例えば、夏休みを見てください。日本の夏休みは今平均して四・六日であります。アメリカあるいはヨーロッパにしても、先進国と言われている国の人たちは思い切ってバカンスなりレジャーなりここに集中しております。これを法的にやれといっても大変無理かもわからないけれども、こういうことはどこが今リーダーシップをとってやらせるかといったら労働省しかないじゃないですか。もっとその辺を提言して、余暇の利用なり、せっかく日本にはお盆なり正月というすばらしい文化、歴史といいますか、そういうものがあるのだから、ほかの面でできなかったらそういうところからでも思い切ってやらせるような習慣をつけたらどうなんでしょう。私はこれからの時短のいろいろな形における大きな役割というものがそういうところにも出てくるような気がしてならないわけでございますので、その辺の考え方をちょっとお聞かせいただきたい。
#114
○平井国務大臣 私が先ほど申し上げましたことと委員の御指摘になっておられますことは、最終的に結論は違わないわけでございまして、今緑の週間等々の御提言がございましたけれども、私は今後これは真剣に検討すべき課題だと思っております。
 ただいま労働省といたしましても、遅いということでおしかりを受けるかもわかりませんが、夏場におけるほっとウイークの問題とか、ゆとり月間とか、さらには有給休暇等をまとめてとる。御案内のように、長い間の生活習慣の中でなかなかそういう経験がございませんし、やはり近代化、民族の歴史も違いますし、さりとて一日も早くそういう形に持っていかなければならぬということになりますと、これはもう官民一体となってこのことの理解をし、皆さんの協力の中でやらなければ、時間短縮の現実というのはなかなか進まない。そういう意味では、御指摘のように、労働省が先頭に立って、当然他省庁の問題がございます、これはもう総務庁から、産業政策をやっている通産省、大蔵省、すべてございますけれども、そういうところともさらに協議を密にいたしまして、この問題は実現に向けて積極的に努力をいたしたい、かように考えております。
#115
○田中(慶)委員 今大臣も触れられたわけでありますけれども、労働時間短縮、雇用の問題あるいは労働行政全般の問題というのは、労働省だけではできない、他省庁の問題もある。しかし、考えてみますと、大臣、本当に縦割り行政がいいのか悪いのか、セクショナリズムになり過ぎているような気がしますね、こういう問題を含めて。大臣から今出た言葉ですから労働省は積極的にやられていると思いますけれども、現実にあらゆる問題を追っていきますと必ずぶつかるのはそこなんですね。ですから、現在の労働行政の問題、雇用の問題を含めてもっと横の連携をぜひとっていただきたいと思いますね。例えば雇用の問題は、労働省だけの問題じゃなく、やり方によって通産省も建設省も全部がかってくると思います。こういう問題を含めて、大臣はおやりになっていると思いますけれども、もっと積極的に、もっとロスタイムをなくして短く、回転のきくような形でやっていかなければいけないと私は思うのですね。今それが要求されている新しい時代じゃないかな、こんなふうな気がしますけれども、いかがでしょう。
#116
○平井国務大臣 御指摘の方向で積極果敢にやらせていただきます。
#117
○田中(慶)委員 そこでお伺いしたいのは、実は産業構造の発想の転換といいますか、今非常に大きく変わっているような気がします。例えば首都圏における地価の高騰もその一つでしょうし、そういう点では中小企業が税負担もできなくなる。そんなことをして雇用の不安も招きながら、現実にはそこを離れていくような状態もつくっているわけであります。そういう点で、私は今あらゆる問題に対してここで発想の転換を求められているような気がしてならないわけであります。
 実は、今まで重工業をやられていた造船メーカーが最近は健康食品産業をぼんぼんやられて進めている。そんな新聞の広告を見て、大分変わっているな。それだけではありません、鉄鋼は鉄をつくっておりませんし。そういう点での認識というものは、労働省が先取りして先般も雇用促進の問題なり、あるいはまた例の職業訓練法なりいろいろなことをやられておりますけれども、しかしもっともっと現場というものは深刻な気がいたします。そういう点では、今の景気なり雇用なりすべてをもっと創出するためには、行政改革といいますか、行政の簡素化が必要なのだと私は思うのです。もっとスリムになり簡素化する、これがないと、あらゆる大きな事業をしようとしても、それにぶつかってなかなか思うような回転ができない。これが現実に私どもが地域の中に入ってぶつかってきている、真剣な取り組みをされている問題です。ですから、そういう点では労働省として、これらの問題について各省に呼びかけをして、ぜひこの発想の転換を含めた行政改革手法というものをもっと推進していかなければ、ここで大変大きな問題が雇用問題やあらゆる産業問題に出てくるような気がしてならないわけで、こういう点について大臣の見解をひとつお伺いしたいと思います。
#118
○平井国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、現下の雇用問題、さらには産業政策、経済運営等、これは一省庁でやれる問題ではございませんので、これはもう全くおっしゃいますように、各省庁さらに連携を密にして、一丸となりました総合政策でないと、雇用対策一つをとってもなかなか十分に対応できかねるというのが現状認識でございます。そういう意味では、さらに一層各省庁間の連絡を満にして、一致協力して、現下の非常に大きい転換期でございますから、おっしゃいますような、言うなれば発想の転換、これも必要であろうと私は思いまするし、場合によっては果断な決断も必要であろうか、こういうふうに思います。おっしゃいます趣旨に沿いまして、今後積極的にさらにやってまいりたい、かように考えております。
#119
○田中(慶)委員 時間も余りありませんから最後にお伺いしたいのは、最近の労働情勢といいますか、労働組合も今民間産業を含めて一本になろうとしております。そういう点では、あらゆる形で労働行政なり、あるいはそういう面で大変な転換期を迎えているんじゃないかな、こんなふうに思います。先ほど申し上げたように、経済もそうであります。そういう点では労働省そのものが従来のやり方といいますか、従来のやり方が悪いと言っているわけじゃないですけれども、しかし、どちらかというと、あらゆる問題を含めて石橋をたたいて渡るような傾向があるように思います。それはやむを得ないと思いますね、いろいろな実績なり経過なり踏まえてやらなければいけない問題ですから。しかし一つ一つが本当に今大きく転換期を迎えている。先ほど申し上げた労働組合を指導するに当たっても、今申し上げた、十一月には民間の大連合が成り立っていく。こういう問題一つとっても変わってきております。そういう点では、労働省としてこれから二十一世紀に向ける労働行政のあり方、あるいはまた大臣としておれはこうしたいんだという労働行政に対する一つのロマン、そういうものがあるならばお聞かせをいただきたいと思います。
#120
○平井国務大臣 就任一年でございまして、まだまだ未経験でございますので、私なりに率直に申し上げて、先生御指摘になりましたように、従来やはり一つの労働行政というある枠組みの中で物を考え、対応し、制度をつくり、やってまいったわけでございますが、おっしゃいますように、労働組合関係も再編統一という大きな転換期、日本の経済そのものも産業構造転換、内需型ということで、またかつてない歴史的な転換期でございますので、十分に言わせていただきましたら、これからの労働行政のあるべき姿というのは、やはり産業政策、経済運営に対して労働省自体としてどれだけ物が言えるか、私は、これが今後の労働行政をさらに有効に進める、さらには幅広くするための一つの大きな試練でないか、かように考えております。私としては、産業政策に従来の枠組みを超えた労働省なりの強力なくさびとまでは申しませんが、それなりの筋を通した意見を調整してやっていくべきではないか、かように考えております。
#121
○田中(慶)委員 どうか今大臣が言われたように大面な変わりようでありますから、自信を持って堂々と発言をしていただきたいし、また労働大臣というもののバックに日本の雇国産業、そこに働いている多くの人たちがあなたに対する期待というものが大きいわけですから、ぜひ頑張っていただきたい。お願いといいますか要請を申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#122
○浜田(卓)委員長代理 児玉健次君。
#123
○児玉委員 日本で働くすべての人がそれぞれの職場で労働者としての権利を十分に保障されて生き生きと活動する、これはすべての国民の共通の願いだと思いますが、現状はそれにほど遠い、そのように私は思います。好ましい方向に進めていく、その点で労働行政が果たす役割は極めて重要です。きょうは時間がありませんから、端的に、働く人々の職場の模範となるべき国や自治体など公務員の職場、JR、NTTなどの職場、そういったところで働く人々の権利の保障という点で具体的に問題を取り上げてみたい、こういうふうに思います。
    〔浜田(卓)委員長代理退席、長野委員長代理着席〕
 まず職場の衛生と安全という点です。これは運輸省おいでになっていると思うので、運輸省にお聞きしますが、JR北海道における具体的な事例ですが、四月一日からJRが発足して、北海道の各地で検査修理の職場と結びついている場所以外ではふろが閉鎖される、こういうことが起きております。札幌市の桑園にある札幌保線区、ここは約三十人の労働者がおりまして、ことし三月三十一日まではふろが使用されておりました。このふろは五、六人が同時に入浴することが可能であった。ところが四月一日からふろの使用がとめられて、シャワーが一つしか使われていない。順番を待つのが大変ですから、このシャワーが利用できるのはせいぜい数名または十名程度、体は洗わずに帰るという状態が生まれている。この状態について運輸省は事実関係を知っているかどうか、まず伺います。
#124
○羽生説明員 お答えいたします。
 今先生御指摘の札幌保線区におけるおふろの問題でございます。この問題につきましては、私どもに報告が来ておりまして、御指摘のとおり、経費節減を図るために札幌保線区においては、この一環といたしまして、既存設備の見直しを図りまして、その結果おふろが廃止されました。
 なお、その後五月中旬よりJR北海道といたしましては、社員の衛生面を考慮いたしまして、シャワー設備の使用を再開したと私ども聞いております。
#125
○児玉委員 そこで労働省に伺いたいのですが、この札幌保線区というのは、函館本線、千歳線、札沼線などをその範囲にしております。現在特急列車などではタンク式のトイレがふえておりますが、依然としてここを通行している車両の約二割が開放式の便器槽を持っている車両でございます。そういった状態の中で、労働安全衛生規則六百二十五条「事業者は、身体又は被服を汚染するおそれのある業務に労働者を従事させるときは、」云々という部分がありますが、この保線区の場合、六百二十五条に該当するのではないか、その点についてお答えをいただきます。
#126
○平賀政府委員 お尋ねの施設、お尋ねの事業場が六百二十五条の「身体又は被服を汚染するおそれのある業務」に労働者が従事しているものであるかどうかというのは、具体的な実態に即して判断しなければいけないと存じております。
#127
○児玉委員 そこで、今局長がおっしゃった具体的な事実ですが、旧式の車両で開放式の便器槽の車両がここを通行している。そこで保線の業務に当たるわけですから、まさしく六百二十五条に該当するんじゃないですか。お答えいただきます。
#128
○平賀政府委員 作業の態様の詳細を存じておりませんけれども、その事業場については身体等を汚染するおそれがある施設と判断する可能性があると思っております。
#129
○児玉委員 そうであれば、三月三十一日までは六人が一度に使用できるふろが使われていて、そして三十名程度の労働者が一応体を洗って帰ることができた。ところが先ほど運輸省がおっしゃったように、シャワー一個しか使われていない。これでは多くの人が、言ってみれば開放式便器の垂れ流しの状態で一日仕事をして、そしてふろで体を洗うことなく帰宅する、それが多数になっている、こういう状態について、労働省としては改善するように指導すべきではないかと思いますが、いかがですか。
#130
○平賀政府委員 六百二十五条の体を洗う施設というのは、私どもの解釈ではふろ場でなければいけないということはございませんで、シャワーでも十分であるというふうに解釈しております。
#131
○児玉委員 局長、もうちょっと率直に答えなさい。シャワーがもし五つ、六つあったら、そのことについて私はとやかく言わないのですよ。三十何人労働者がいて一つしかない。そして勤務が終了した後、みんなが一刻も早く帰りたいというのでそこへ殺到する。数個あるならともかく、一つしかない。三月三十一日までは立派におふろがあったのですよ。そういう状態の中で、労働者の権利を守ろうとする労働行政として、今のような答えでは納得できませんよ。やはり三十名が全体として洗えるように改善すべきではないですか、どうですか。
#132
○平賀政府委員 具体的な事業場、現場の実態というのは詳細には承知しておりませんけれども、私は少なくともそういう現場において洗浄の施設が十分でないという報告は受けておりません。
#133
○児玉委員 では、何らかの報告を受けておるのですか。あなたがお受けになっている報告を聞かせてください。
#134
○平賀政府委員 率直に申しまして、本日質問があるということで、そういう条文の解釈等について私は資料を整えてまいっております。具体的な現場の状況につきましては、ただいま運輸省の方が把握している事実以上のことは承知しておりません。
#135
○児玉委員 このことだけずっとというわけにはいきませんが、労働省では、この六百二十五条の該当職場の一つの事例として、保線業務に当たる労働者の場合に、その線区で開放式便槽をいまだに使用している列車が運行している場合に、この該当職場の一つと見ているんじゃないですか。
#136
○平賀政府委員 先ほどお答えしたとおり、そういう洗浄の必要のある現場という可能性があると判断しております。
#137
○児玉委員 では、この点は早速皆さんで調査をしてくださって、改善してくださるように私は強く要望します。
 次の問題です。今JRの全国で行われておる増収活動に関連してでございます。
 私は今ここにJRの近畿圏運行本部長、営業支店長の名前による「「フレッシュ24キャンペーン」の実施について(通達)」というのを持っております。それによれば、第一期が昭和六十二年四月一日から同年五月三十一日まで、そして目標額が社員一人当たり二十四万円。販売対象商品はフルムーン夫婦グリーンパス、そのほか例えばオレンジカード、こういったものがありまして、営業支店長の通達という形でそれが出されております。この通達の対象になるのはすべての社員なのかどうかという点が一つ。それからここでいう「フレッシュ24キャンペーン」への参加の度合いが勤務の評価の対象となっておるのかどうか、この点について運輸省にお尋ねします。
#138
○羽生説明員 お答えいたします。
 先生今御指摘のございました「フレッシュ24キャンペーン」でございますが、この通達の対象となる社員というのは、私どもは社員全員ではないかと聞いております。
 それから、人事考課への影響についての御質問かと存じますが、御承知のとおり、各企業における社員の勤務評価というものは、会社の経営者がその社員の勤務実績あるいは能力、識見等を総合的に判断して行うものでございまして、本件増収活動の実績がどのように評価されるかということは、これは専らJR各社の経営者の判断される問題ではないか、かように考えておりまして、私どもとしてどの程度どう判断されるかということについては把握しておりません。
#139
○児玉委員 今の資料と一緒で、同じようにJR西日本の資料ですが、「夏季手当成績率(増率、減率)適用候補者調書」、そしてそこでは「社員コード」、「氏名」が書かれていて、昭和六十二年四月一日から五月三十一日の間、夏季手当を査定する成績率の第一に「オールセールス」何件、何千円というのが出ておりまして、そのほかに「提案」、論功行賞の「行賞」、「賞罰」、「欠勤等」、こういうふうになっております。だとすれば、今のお答えの中で、西日本について言えば、この「フレッシュ24キャンペーン」への参加は夏季手当成績率の考課の対象になっている、こういうふうに思いますが、いかがですか。
#140
○羽生説明員 お答えいたします。
 先ほどの答弁の繰り返しになってまことに恐縮でございますが、私どもとしては、西日本においてこのキャンペーンについてどのように考課の対象にするかということについて、その報告を得ておりません。
 また、これは一般論でまことに恐縮でございますが、一般的に申し上げますと、一つの営業活動へ一生懸命従事いたしまして、その結果多大な貢献をなされた職員に対し一定の評価がなされる、これは各企業とも十分考え得ることではないか、かように考えております。
#141
○児玉委員 それでは、今の答弁に関連してもうちょっと聞きますけれども、JR東海大阪東車掌所です。ちょっと遠いから見えにくいと思いますけれども、これはその職場の一般掲示板に総務関係の掲示というところで出されて、そして「営業科長」の名前で書かれています。その中にオレンジカードの販売「みんなでつくるオレンジカード≠ノついて」こう書いてあるのですね。「JR東海大阪東車掌所が発足して二ケ月余りが過ぎました。」云々、「一枚三百四十五円の製作費は」これはオレンジカードのことです。「一枚三百四十五円の製作費は自己負担になりますが、これを所員一丸となって成功させ、次のステップヘの足がかりにしたい」こういうふうに出ておりまして、私たちが調べてみると、一人一人の社員はオレンジカードをつくる製作費三百四十五円をみずから負但して、それを千円で売って、売上額は全額JRに入れております。こういう事例が一つあります。
 それから、もう一つの事例は、六十二年五月十二日、札幌の苗穂駅の駅長がそこの職員に対してある訓示をした。その訓示の中身は文書にされて全員に配付されたわけです。これまた増収活動に関連してです。その中でこう言っているのです。ことしの前期四月から九月、目標金額は一般社員十五万円と定める。「常に増収を心がけ、ノルマを達成されたい。未達成者は天引きしてでも、達成させることを今後検討して行く考えもあるので、承知されたい。」こういう言葉でこの文書は締めくくっております。
 そこで、運輸省にお聞きしたいのですけれども、その職場の管理者がオレンジカードの三百四十五円は自己負担になりますという形で一方的な強制力を持ってオレンジカードの製作費の社員負担を求める、そういった労働協約、就業規則がJR西日本にありますか。
 それからもう一つ、駅長がノルマ未達成の職員に対して天引きしてでも達成させることを今後検討する。労働基準法九十一条で言う就業規則がこのJR北海道にあるのですか。あるかないかの事実だけ答えてください。
#142
○羽生説明員 お答えいたします。
 今先生御指摘になりましたオレンジカードの三百四十五円自己負担になりますという掲示、私ども見ておりません。私どもが昨日JR西日本及び北海道について、オレンジカードを製作する場合、社員負担を求めるのかどうかということについて報告を求めましたところ、JR西日本及び北海道の両社とも、オレンジカードについては本社及び支店において製作しているものであり、JRが販売するオレンジカードについては、その製作費は会社が負担しており、社員に求めることは一切ないとの報告を得ております。ただし、このほかに企業のPRとか個人的な引き出物としてオレンジカードを自主製作する場合や社員が自主的に協力する場合はあるかもしれませんが、私どもとして把握しておりません。
 それから第二点目、先生がお聞きになりました就業規則の有無でございますが、その点についてはまことに申しわけございませんが、JRに聞いておりませんけれども、当然就業規則というものは北海道会社にもあるのではないかと考えております。
#143
○児玉委員 天引きをすることを許すような就業規則があるのかどうか。
#144
○羽生説明員 天引きを許すような就業規則というものは、私どもはないと考えております。
#145
○児玉委員 ちょっとお許しをいただいて、労働大臣にこれを見ていただきたいのです。――労働大臣、そこに「営業科長」というちょっと読み取りにくい字が右下にございまして、左に記名投票を求める締め切りの日付が「六月八日十七時〇〇分」と書いてあって、真ん中に先ほど私が言いました「三百四十五円の製作費は自己負担になりますが、」そう書いてあります。御確認いただいたと思います。
 そこで、労働省にお聞きします。仮にその職場の管理者が一方的、強制的に今のようなオレンジカードの売上目標未達成の分を天引きする、またはその製作費の負担を求めるということになれば、それはゆえなき賃金不払いとして労働基準法二十四条、労働基準法九十一条に違反する疑いがあるのではないかと思うのですが、いかがですか。
#146
○平賀政府委員 私どもは先ほど運輸省の方がお答えいたしました以上のことは把握しておりませんし、いずれにしても、この件については、使用者としての強制というかそういうことではなくて、自主的な活動ではないかと理解をしております。
#147
○児玉委員 あなたは全国の労働者の職場における権利を大きく保護する立場にある重要なお仕事をなさっている方ですよ。局長、現にあなたがごらんになった文章の中で、先ほどの三百四十五円は自己負担になりますがという言葉が読めるでしょう。読めませんか。
#148
○平賀政府委員 このコピーにはそういうことが書いてございます。
#149
○児玉委員 それはある自発的な小グループの職場における任意の掲示とは違って、総務関係の職場の掲示に出されているものです。そしてその営業科長は、オレンジカード、三通りの図柄の中のどれが一番いいか、記名投票で六月八日の十七時まで、場所も明示して、そこに投票しろと言っているのですよ。これは明らかに職場の管理者が、その職場に所属する職員に対して、そういう行為を一つの職務として求めているのじゃないですか、どうですか。
#150
○平賀政府委員 具体的な実態は全く理解できません。営業科長という人がどういう職務権限を持っているか、どういう立場でやっておられるのかわかりませんが、オレンジカードを売るという立場で社員の方々に公告をして、そういうデザインなどを選ばせているのではないかと、この資料だけでは理解しております。
#151
○児玉委員 そこまで理解してもらえば大変なものでして、そういう仕事をその営業科長はやっているんですよ。そしてその仕事の中に三百四十五円は自己負担になりますがと書いているじゃないですか。もしそれが実施されたら労働基準法二十四条との関連でどういうことになりますか。仮にもしそのようにされたらということで答えてください。
#152
○平賀政府委員 仮にもしそういうことにされたら、それは労働協約ではないというふうに考えます。
#153
○児玉委員 局長、あなたはそれを仮にということですから、私がこれほど事実、日時、場所を挙げて言っているのですから、労働省としてその実態を調査されたらどうですか。
#154
○平賀政府委員 監督官庁である運輸省の方で、御調査されているので、その状況をお聞きしたいと思います。
#155
○児玉委員 大臣にこの後お伺いしたいのですが、現在国鉄で行われている増収活動は任意性、自発性が強調されています。そしてその労働については所定時間の内外で行われる、こういうふうに言われているのですね。例えば新幹線の運転士はハンドルを握っているときオレンジカードを売ることはできません。そうすると、業務が終わってからオレンジカードの販売に参加することになります。それでどのくらい実績を上げたのかというのが、先ほど私が指摘した資料からも明らかなように、夏季の手当、ボーナスの考課の筆頭に来ているんですよ。これが黙示の承認による行為というふうに言えるのか。これは明らかに職場の管理者が明示された職務命令にほとんど準ずるものとしてそういう仕事に駆り立てている、私はそういうふうに見ざるを得ないのですけれども、こういう実態を速やかに直すことが大量交通機関であるJRの安全輸送の前提になるのではないか、こう思うのですが、大臣の考えを聞きたいと思います。
#156
○平井国務大臣 ただいま事例をお挙げになって逐一の御指摘がございましたけれども、今御指摘の問題が社命によるものか自発的か、また一部自発的によるものか等々の判断によりまして、いろいろお話しございました基準法違反ということに明確になるのかどうか、そこらあたりの判断が今の時点では私にはつきかねる問題でございますので、そこのところはちょっとただいまのところ私自身明確に申し上げかねるということであります。
#157
○児玉委員 そうであれば労働行政を担当する労働省として必要な調査をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
#158
○平賀政府委員 労働基準法に関係する問題であれば調査をいたします。
#159
○児玉委員 局長、私がさっきから議論しているのは全部そのことに関連した問題ですよ。
 労働基準法の三十二条に「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四十八時間を超えて、労働させてはならない。」こう明記されているんですよ。ところが、先ほど私がちょっと示しました札幌の苗穂駅の駅長さんは、職員に対する指示の中で、「個別訪問販売、団体募集等々、個々のアイデアを持ち寄り、さらには小集団グループ活動を通して企画をねり、」増収を図られたい、こう言っているのです。「札幌近郊各駅では、一般社員が非番、公休日に夕刻まで増収活動をしており、一人平均一八〇%の勤務をしている。」当駅の実態はまだそこにほど遠い、こう言っているのですよ。そうなりますと、これは労働基準法で言う先ほどの三十二条、そういったものとの関連を疑わしめるに十分ではないですか。その点についての調査を私は重ねて求めますが、いかがですか。
#160
○平賀政府委員 労働基準法に関係する問題であれば調査をいたします。
#161
○児玉委員 では、その調査を求めて、私の質問を終わります。
#162
○長野委員長代理 三原朝彦君。
#163
○三原委員 総務庁の発表によりますと、ことし五月の完全失業率は三%を超しまして三・二%にまで上がった、こういうふうに言われております。いろいろおたくからいただいた資料を見ておりましても、十年前あたりから一%台から二%台、とうとう三%になってしまった、最悪の状態であります。経済不況だと言われたオイルショックのときでも、失業に関してはそこまではいかなかったようでありますけれども、この三・二%という失業率の問題に関しまして、主管官庁の労働省では、これから先の雇用失業情勢、どういうふうに予見しておられるか、ちょっとお話しいただきたいと思うわけであります。
#164
○白井政府委員 お答えいたします。
 今先生御指摘のように、ことしの五月、完全失業率三・二%で、これは調査以来最高の数字になったわけでございますが、これはもちろん雇用失業情勢が非常に悪い情勢にもございますし、いろいろとあるかと思いますが、一つには最近の産業構造の転換その他、また労働市場でもいわゆる出向、派遣、パート、その他いろいろ雇用形態が変わってきておりますし、そういう面で失業率自体のボトムが上がる傾向にあるということも一つあるかと思います。その点がオイルショックのときと違う点かと思いますが、それに加えまして、円高その他によります最近の雇用失業情勢の悪化があるというふうに理解いたしております。しかし、有効求人倍率は五月〇・六五ということで、ことしの一月〇・六一であったわけでございますが、毎月〇・〇一ポイントではございますけれども上がってきて求人が増加しているという状況。それから製造業におきまして、先ほどからいろいろお話がございますように、雇用過剰感がまだ残っておりますが、わずかながら最近低下の傾向にあるというような兆しも見えております。その辺の乖離がどうしてかという問題もございますが、一つには、完全失業率の指数は、経済が仮に回復基調になってまいりましても、従来の傾向から見まして、九カ月ないし一年のタイムラグがある。まず所定外労働時間がふえてくる、それから求人がふえて、またその間に離職者以外の転職希望者等もふえてくるというような状況から、そういうタイムラグがあるという点が一つあるかと思います。
 それからもう一つは、最近の情勢は、もうこれも先生御存じのとおり製造業が非常にやられておりますが、しかし第三次産業ではなお雇用がふえているという状況にあるわけでありますけれども、オイルショックのときには製造業の一部、自動車とか電機等はなお雇用についての余力があったというような点がございましたけれども、製造業全体がやられてきているというような状況から、そのミスマッチとか、その他いろいろ言われておりますが、業種間の移転その他について、なおスムーズに移っていくにつきましては、対策を要するという点があろうかと思います。
 今後の情勢につきましては、今御説明申し上げましたように、求人その他明るさは増してくると思いますが、一方、石炭その他でなお離職者が今後発生してくる。それから業種別、地域別になお厳しい状況が続くということで、今年いっぱい、さらに来年にかけましては、なお予断を許さない状況にあるものと我々は考えております。
#165
○三原委員 今局長さんの話でミスマッチの話もありましたけれども、地元の方で回っておりますと、ことしの四月から民営化したJR内でも西日本とか東海とか東日本あたりは人を雇えます、しかし私のような九州とか北海道あたりでは余ってしようがない、どこかへ動いてくださいというようなことがありまして、就職のお世話あたりも我々させられますから、そんな陳情に来られたこともあったのですけれども、しかし仕事を離れると、田舎の人というのは、大体狭いながらも土地も安いしというようなことで、私たちの年齢ですともう家も持っているということで、そうなると、家族を置いて出ていくか、または売っちゃって新たな職場のために今までのささやかながらもの家庭生活を犠牲にするかということもあるわけです。
 もう一つ、北海道、北九州あたりの鉄鋼、特にそういうところでは二次産業の重厚長大で働いている人が、やはり企業の縮小で第三次産業にも行かされるようなことになるのかもしれません、今局長さんがおっしゃいましたけれども。しかし、去年私実は議員で出していただく前にアメリカを視察しまして、昔かつての鉄の都であったピッツバーグあたりを見ましても、あそこでもやはり鉄鋼業、鉄に関係することからサービス業へという流れがスムーズにいけばある程度失業率も抑えられるのですけれども、まさかUSスチールから今度はマクドナルドのハンバーグを売るような仕事もできないという人が結構多いのですね。余りに違った環境でも、鉄鋼業あたりでも、そういうサービス業でも人事や経理をやっている人あたりはいいかもしれませんけれども、鉄をつくっていた人にハンバーグを売れといってもなかなかできない。また年齢が高いとさらにやりにくくなる。こんな事情の人が特定不況地域だけではなく日本国じゅうに今たくさんあるわけです。
 そこで、大臣にお伺いしたいのですけれども、今後の産業構造の調整過程で、産業や職業間、そしてまた地域間、年齢間のミスマッチによる失業問題が重要になると考えますが、その解消のためにどのような対策みたいなことをより今から先やっていただけそうかということをちょっとお話しいただければと思うわけであります。
#166
○平井国務大臣 まさしく御指摘のように、今年度発表いたしました労働白書によっても、他の産業から二次産業に百六十六万ぐらい向こう七年間で流入する、そこからさらに第三次産業に対して二百二十万ぐらい出ていくというふうに書いてございますけれども、実際に今委員が言われましたように、生産業に従事しておった方、なかんずく高齢者、中高年の方々がそのまま抵抗なくすっと三次産業の方に移れるか、ここのところが今後の雇用対策のまさしく主眼ではないかというふうに私は考えております。
 基本的には、やはり私が先ほど来申し上げておりますように、節度ある、内需を中心にした一つの経済成長、中程度という表現をいたしておりますが、そういうふうな前提の中で我々の雇用対策が生きてくるということでございますから、産業政策、雇用対策、さらには経済運営も打って一丸となって対処しなければ、今後まさしく大きい転換期でありますから、なかなかそこがスムーズにいかない。特に景気低迷時における構造転換というのは、何と申しましょうか、雇用問題がもう最優先課題になってくるということであります。
 そういうことでございますから、地域、業種等々の雇用動向を十分に踏まえまして、一番には、職業転換のための訓練、また出向等に対する助成、産業雇用安定センターへの援助等を通じた労働移動の円滑化、これは何としてもやり遂げませんと、さらなる雇用不安を招くということでございますから、御案内のように、最近は就業構造も多様化し、高度化し、現在やっております訓練、さらに能力開発等々が現状に合って効果的に動いておるかどうかということも、雇用情勢そのものが本来非常に流動的な問題でありますから、常に見直していかなければならぬ問題でないかと思っております。
 さらに、従来から労働省がやっております雇用調整助成金制度の拡充、これももうかなり拡充をいたしております。これによってできるだけ失業を予防し、また雇用の維持を図る。
 いま一つは、御指摘のように、今後も非常に広域化してくるわけでございますから、求人求職を中心とした雇用情報の広域的な提供ですね、これも本年度中に全部オンラインに乗せて全国ネットを完成するという予定になっております。これができました暁には、全安定所を挙げてこのことに全力を尽くさせるというふうに指導いたしております。
 いま一つは、御案内のように、四月にお認めいただきました地域雇用開発等促進法、これに基づきまして総合的な地域雇用対策を行う。これも私は折に触れて御答弁で申し上げておりますが、法律、制度、枠組みをつくっただけで決して事足れりとしておるわけでございませんので、やはりこういうふうな極めて情勢の悪い緊急時でございますから、特にこういう運用に当たって機動的、弾力的に、かつきめ細かく、親切に対応すべしというふうに、これも指示をいたしておるわけでございます。
 そういうことで、産業構造の転換に対応した雇用対策を今後とも強力に推進してまいりたい、かように考えております。
#167
○三原委員 今大臣からは三十万人雇用開発プログラムの内容を含めてのいろいろなお話をいただきましたけれども、確かに地元に帰っていろいろな地元の人の話を聞いてみますと、三つに分けてあった最初の教育訓練、出向を活用して円滑な産業間、企業間の移動を促進させるためのプログラム、教育訓練とありますけれども、あれも初めからあなたは三カ月たつとここの職場に行ってこの仕事をするんですよというようなことがわかっていますと本人もやる気があるのですけれども、ただ、こういう言い方をすると、努力しておられる労働省の方には申しわけないような気もしますが、今ちょっとこの職場では仕事が余っている、家で休ませるよりも、ちょっとプログラム組むからそこへ出てきて訓練受けなさい、受ければ私のところも企業だって助成金いただけるから、そうすると助かるんですからというような感じでやらされると、本人もなかなかやる気が起きないらしいのですね。もちろん、そのためには我々も今から何とか新しい職場が生み出せるような環境づくりをみんなでやっていかなければならないと思いますけれども、そういうことでなかなかあれもシステムといいますか制度としてはいいんでしょうけれども、その中で組み込まれてやっている本人は笛吹けど踊らずというような感じもあるような気もする、そういう印象を私は受けました。
 また、二番目の失業の予防、雇用の維持のための雇用調整助成金制度ですね。あれは企業の方では大いに助かってありがたい、今特にこの時期我々が生き延びるためにと、特に中小の人が言われていました。
 また、三つ目の雇用機会の開発ですが、これは通産省あたりと、産業の雇用機会をつくるための産業政策あたりが大いに絡んでくるでしょうけれども、これも地元の方では、自分たちも知恵も出すけれども、労働省さんやら通産省さん、地元にある労働省の出先、通産省の出先あたりの人ともっと我々も話し合って、新規とか増設の事業所をつくるために努力しますから、このプログラムをより長く――もちろん雇用が回復すればいいですけれども、これですと、三年、特定地域だと五年、こうなっていますけれども、これがもし回復しないような状況だともっと長くできるような形で、長期的に見てください、お願いしますという状況がありました。そのことを少しお伝えしておくわけであります。
 次に移りますけれども、不況に陥って、過剰な労働力、アンダーエンプロイメントを大企業が支え切れなくなりますと、一つの手段として、労働力を関連企業とか下請とかにおろしていくような形になるわけです。この結果、関連や下請がそれを抱いておかなければならない。そうすると、今度は関連や下請で、より生産性の落ちたような、特に高齢の方とか女子の社員あたりに、申しわけないけどというようなことで職場を去っていただくような形にならざるを得ない。またそれと同じような状況で、弱者に対する思いやりみたいなものを我々は考えなければいけない、こう思うわけです。卑近な例で、今度のマル優の廃止に関しましても、例えば政府は老人とか寡婦とか母子家庭あたりには特別なことをやりますよというようなことを言っているわけですけれども、産業構造の転換の中で、こうしてともすれば最も被害を受けそうな、押し出されてしまうような、中小下請企業に働く人とか高齢者により手厚いことをしていただければな、こう思うわけですけれども、そのことに関して労働省側はどうでしょう。
#168
○白井政府委員 お答えいたします。
 業種、地域等の問題がありますとともに、今先生御指摘のように、中小企業で働く人々、また高齢者等につきまして厳しい状況というのが一方ございます。特に中小企業の場合は、下請の問題もございますが、一方では輸出比率の高い産地等の中小企業がこの円高によって非常に厳しい情勢にある。また最近、希望退職その他につきましては、高年齢者に集中しやすいというような問題点があるわけでございます。
 これらにつきまして、それぞれの立場での対応その他を図ってまいっておりますし、中小企業につきましては、中小企業庁と連絡をとりながら転換その他についての対応を図っているわけでございますが、労働関係の面につきましては、先ほど先生御指摘になりましたいろいろな施策、雇用調整助成金を初めとしまして、いろいろな施策につきまして、例えば賃金助成につきましては、中小企業についてはより高率の助成を行うというような措置をとってまいっておりますし、それから同一業種、同一地域の中小企業が集団で能力開発をするための新たな助成金等も創設いたしております。
 それからさらに、高齢者につきましては、産業転換していく中で非常に就職その他厳しいわけでございますけれども、特に今度の三十万人雇用対策の中でも、特定求職者雇用開発助成金ということで、高年齢者と、それから特定不況業種従事者につきましては、さらに年齢を若干引き下げておりますけれども、中高年齢者につきまして特別の賃金助成を行うやら就職の促進を図っているということで進めているわけでございます。特に特定求職者雇用開発助成金の場合は、本年四、五月で、助成金制度によりまして一万四千人を超える求職者の就職を進めているというような状況にある次第でございます。
#169
○三原委員 私ども見てみますと、どこでも寄らば大樹の陰という言葉は当たっているようでありまして、名前が日本国じゅうに知れたような企業で働いている人は、休職しても何だか落ちついたようなところもあるのですね。ところが働いている人が何十人という規模のところでは、休職というと本当に悲惨な状況を目の当たりにするものですから、今いろいろ特定求職者のことや助成金の話をしていただきましたが、さらにこれからもそっちの方の人のために大いにいろいろなことを知恵を出して考えていただきたいと思う次第であります。
 それで、先ほどもお話ししましたけれども、不況業種であります重厚長大型の企業城下町を抱える地域の雇用問題は特に深刻です。だからこそ特定不況地域、いろいろやっていただいておるわけです。私の地元の北九州あたりですと、有効求人倍率〇・二、その話をしていましたら、北海道の室蘭の御出身の同僚が、いや、おれのところは〇・一八だ、もっと悪いというようなことで、お互いに苦しさを分かち合って今からまた頑張ってやろうというようなことを言っていたのですけれども、全国平均の一二分の一ですか、今さっき〇・六五ぐらいまで上ったということですから三分の一以下、もっと悪いのです。大企業に特に保護されてきた労働者は、その企業を離れて危険を冒して移動する意思はなかなかない。もちろん企業内で転勤だというようなことになりますと、こういう状況ですから仕方ない。マルSですと、北九州から君津に移れ、大分に移れというようなこと、これも仕方ないやということで移るかもしれませんけれども、なかなかそう簡単にはいかない。こうなりますと、地元の生活、自分たちがふるさとを離れないで何とかやりたいというようなことで、雇用機会を我々みんなで考えて創設しなければいけないと思うのです。これは今さっき申しました通産省あたりと話をしていただいてということになるのでしょうが、さらに今さっき言われた三十万人雇用開発プログラムで事業所の新設や増設あたりのいろいろなことも考えておられますけれども、今から先また何かこういうアイデアもありますよというようなことが少しありませんか。何かあればそういうことをちょっと教えていただきたいと思うのです。
#170
○白井政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘の企業城下町問題でございますが、これももう既に御存じのとおりの地域雇用開発等促進法に基づきまして、四月以降いろいろとPRその他に努めているわけでございますけれども、六月末までにそういう計画を実施した件数が約六百五十件ありまして、それに雇い入れ計画で予定されている労働者数が約一万人という状況に、既にと申しますか現在達しております。
 先生御指摘のように、地域指定をしていろいろな計画をつくっていただきまして、それに我々としては非常に大幅な賃金助成、特定地域につきましては三年の賃金助成、さらに新設の施設等に対する資金のための助成としまして五百万から一千万の助成を行う、かなり思い切った助成だと思っております。しかし、これには先生のおっしゃるようなプランが伴わなければならないわけでございまして、いろいろなところで今模索されているようでございます。
 大体考え方としては三つぐらいのタイプがあるようでございまして、一つは造船なり鉱山、今鉄鋼もそうでございますが、そういう大企業の城下町であって、その大企業が工場閉鎖その他をやらざるを得ない、その場合には、今までいたそういう企業がある程度の資金を残しまして、そこで新たな企業を興していくというような考え方、これらにつきましては、北海道におきます鉱山、砂川での企業とか、それから鉄鋼におきましても、新日鉄で日鉄ビジネスプロモートというような会社ができまして、これを各新日鉄の企業城下町にその会社を興して、今後雇用の拡大を図っていく、そういういろいろな施策があるようでございますが、やはりそれまでいた大企業に対して、そういうことで現地にいろいろな雇用の場をつくってもらっていくというのが一つのタイプかと思います。
 それから、もう一つは、不況地域全体に網をかけているわけでございますが、そういう地域につきましては、一村一品運動を初めとしまして、小さな雇用拡大の業種ではあっても、その地域での特産品その他を選びながら、そういう雇用開発を興していくということが必要だと思います。
 もう一つは、企業誘地その他で、電機関係その他ソフトウェア関係の企業誘地が行われれば、これまた非常にいいわけでございますが、これはかなり長期の計画も要するわけでございますが、そういうことで進めていく。
 それぞれの地域によりまして、それぞれの地域の知恵を出しながら検討されているようでございまして、労働省としましても、それらの企業その他に働きかけながら、新たな雇用の場を創設してまいるべく現在努力しているところでございます。
#171
○三原委員 やはり北海道や九州なんかで生まれ育った人は、ちょっと働きに、東京へ出稼ぎのような気持ちで来るのはいいでしょうけれども、あんな自然の多いところだと職住近接ならそれが一番いいのです。東京へ出てきて、平均子供二人の家族で二DKのアパートなど狭いところに住むよりも、一割、二割給料が減っても、田舎にいれば、働くときは苦しくても、家に帰ればのんびりとした庭もあって畑もあってという感じでやりますからね。今三つ言われましたけれども、何とか仕事を互いにつくり出せるようなことをやっていただかなければいけないな、やっていただきたいなという気持ちでおるわけであります。
 次に移ります。
 田中先生も先ほど縦割りのお話をされましたけれども、僕もいろいろな話を聞きますと、いや、それは他省庁の管轄ですからうちではどうもというようなことがよくあるのです。今度の雇用のことでも、産業政策というのは通産省ですから、通産省とすぐ何か当たるかもしれません。また今から何年か先になると、どういう職種がより必要になる、特に第三次産業が今からふえますから、そういうことを今度は教育しなければならない。それはもう今度は文部省の管轄です、こういうことになります。また地元のインフラストラクチャーやいろいろなことをやらなければいけない、それがまた雇用の創設を図るための一つの武器になりますというと、それは運輸省の管轄です、こういうふうになります。そういうことで、関連したところの密なる連携がもちろん必要だ、これは私の言わずもがなのことでありますけれども、そういうことで、雇用の開発をするために、各省庁の集まり、各省庁の意見の出し合い、知恵の出し合いみたいなことが必要だと思うのですけれども、それはどうでしょう。そういうことでいつも連係プレーはしていらっしゃるのですか。
#172
○白井政府委員 お答えいたします。
 最近では通産省との協議会、それから先ほど、午前中お話ございましたが、建設省との話し合いとか、いろいろな中央レベルでの対策、対策本部も総理が本部長になられてありますし、そういう話し合いは進めているわけでございます。それから施策の面につきましては、それぞれ各省の所管に基づきまして、各省知恵を出し合ってやっているわけでございますが、これは積極的な所管争いと消極的な所管争いとあるわけでございますが、我々としては、積極的な所管争いはあっても、雇用の網目が切れるようなことのないように進めてまいりたいと思っております。
 しかし、先ほど先生のお話しの直接企業城下町その他での問題となりますと、これはやはり地元が一番問題でございますので、指定させていただきました地域につきましては、市町村が主体になるわけでございますけれども、それぞれの出先の公共機関、それから労働団体、使用者団体等が一体になりまして会議体をつくっていただいて、そこで協議を進めながら、その地域にどういうものを持ってくればいいのか、長期的に見てどういうふうに考えればいいのかということも協議していただいております。中央、中間、地方、これら脈絡一貫進めていくことが必要だと思いますが、今まだ十分だとは思っておりませんけれども、そういう体制で進めてまいりたいというふうに思っております。
#173
○三原委員 もうおしまいですから、あと一つだけいいですかね。今局長さん言われたこと、学問でも、このごろインターディシプリナリーといいまして、学際的といいますかね、一つの問題点があると、それを政治学から経済学から社会学から人類学からいろいろやってみる、こういうのがありますから、プロジェクト別でやるような形を大いにこれから先もやっていただきたいと思うわけであります。
 最後になりますが、話が今度は三十万人雇用開発プログラムの方から移りますけれども、これも今さっき田中先生からですか、質問がありましたが、日本人は働き過ぎの批判があります。それでまた失業率が増大している、日本では。これを解決するための一助というのは、一人一人の働く時間を減らす、ワークシェアリングをやるというようなこと、また余暇を今よりもっと楽しんで人生を謳歌しよう、そういうような考えがあるわけでありますけれども、このために今から労働省あたりでは労働時間短縮を早急に進める。今度労基法あたりも出されてやられますけれども、労基法改正を必ず成功させなければいけないと私は思うわけでありますけれども、大臣の心構え、心づもりといいますか、そういうところを最後に聞かせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。
#174
○平井国務大臣 このたびお願いしております労働基準法の一部改正法につきましては、一日も早い御審議をいただいて早く成立をさせたいと考えております。
 ただ、御理解をいただきたいのは、時間短縮というのは長年の経過がございまして、率直に申し上げて、この十年来中小企業等においてはほとんど進んでおらないのが実態でございます。したがって、この労働基準法の法定時間の短縮という問題だけで、所定外労働も含めて総実労働時間というのがすぐに短縮できるとは私は思っておりません。やはり一つの有効な手段でございますと同時に、相当部分を占める中小企業の方たちの過度な負担、これもまた避けなければならぬというのが現実でございまして、先ほど来田中委員の御質問にもお答えしましたように、基準法も段階的に縮小していく、これは一つの有効な手段である。同時に間もなく、八月に人事院の勧告等が出ると思いますけれども、非常に波及効果の大きい公務員問題、これも早晩法律改正によって当面何としても完全週休二日、この実施を急ぎたい。よって金融機関、商店街等々、こういうところの御理解を得ることによって、また国民的なコンセンサスもできてくる、こういうことができませんと、所定内労働時間を切りましても、所定外労働というのがございますし、委員御案内のように、現行の給与をそのままにして時間短縮ということは、言葉をかえればコストの問題でございまして、中小企業等がぎりぎりの商売をやっておる中で、やはりこういう方たちがコストアップに耐えられないような形でやるべきでない。しかしながら、諸般の事情、時代の要請、まさしくどなたも反対なさる方はございませんで、この時間短縮というのは、当面の内外にこたえ得るための最大の課題である、かように考えておりますので、労働基準法改正も含めまして、今後ともよろしく御理解を賜りたい、かように考えております。
#175
○長野委員長代理 次回は、明後三十日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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