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1987/07/08 第109回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第109回国会 本会議 第2号
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1987/07/08 第109回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第109回国会 本会議 第2号

#1
第109回国会 本会議 第2号
昭和六十二年七月八日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  昭和六十二年七月八日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時二分開議
#2
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑
#3
○議長(原健三郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。岡田利春君。
    〔岡田利春君登壇〕
#4
○岡田利春君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、一昨日行われた総理の所信表明に関して質問を行うものであります。
 総理、あらかじめはっきり申し上げておきますが、私の質問の立場は、国政の今後の方向とありようについて、あなたに期待をしたり求めたりするものでは全くありません。もはや国民は、中曽根内閣に何らの期待も抱いていないのであります。今国民が求めているのは、政局と施策の思い切った転換のため、一日も早いあなたの退陣にあると確信いたします。中曽根内閣が続いておる限り、国民は政治に希望を持つことはできないと申し上げなければなりません。
 その端的な実例は、昨年の売上税の導入、マル優制度の廃止をめぐる問題であります。この問題について詳しく述べることはいたしませんが、総理のうそが国民に見抜かれてしまい、国民の総反撃の前に、ついにあなたは立ち往生いたしたのであります。中曽根政治に対する国民の不満がいかに厳しいものであるか、総理自身が身をもって体験し、証明されたではありませんか。総理、違いますか。違うというのであれば、国民が納得できるように説明していただきたいのであります。
 中曽根総理は、我が党の土井委員長が指摘したように、国民にとって実に恐ろしい人であり、しかも、したたかな人であります。あれだけ圧倒的な国民世論に反撃をされ、虚構の皮をはぎ取られたのにもかかわらず、統一自治体選挙の後も臆面もなく政権の座に居座り、あまつさえ、ベネチア・サミットでは、マル優制度の廃止について言及いたしたのであります。国際舞台での公約とも見られるこの発言は、国会に対する重大な背信行為であり、世論への公然たる敵対と言わなければなりません。総理は、その政治責任をどのようにとられようとしているのか、まず明らかにしていただきたいのであります。
 総理、あなたのこの五年にわたる政治とは一体何であったのでありましょうか。日本列島不沈空母論に始まり、防衛費の対GNP比一%枠突破につながる軍備増強政策をとり続け、歴代内閣の軍事費よりも経済という路線から大きく踏み出し、軍事大国化の道を切り開いたことなのでありましょうか。かつて福田内閣が選んだ全方位の外交を退け、ロン・ヤスのみつ月とうたいながら、結局は、貿易摩擦の激化、米国の対日要求の熾烈化を招いたことでありましょうか。農業、素材産業を初め、不況の産業と地域を見捨て、強者優遇、格差助長のいわゆる民活路線を進めたことでありましょうか。また、中曽根行革の効果を上げられず、財政再建に失敗をして売上税等の大衆増税の強行を図ったことにあるのでありましょうか。
 今総理に求められていることは、これまでの五年にわたる政治を真剣に反省をされ、我が国政治が二度と同じ誤りを重ねないよう、みずからの路線を完全に清算されて潔く退陣されることであります。
 私は、このような立場から、以下具体的に中曽根内閣の施策を追及し、総理みずからがその責任をいかに償うのか、お尋ねをいたしたいのであります。
 中曽根総理は、総理大臣に就任されて初めての所信表明演説において、当時、国債発行残高、つまり借金残高が九十兆円に上っている重大な事態に言及され、できるだけ早期に特例公債依存の体質から脱却することが必要であると強調されました。以来、中曽根内閣は「増税なき財政再建」を最優先の課題と位置づけ、昭和六十五年度に赤字国債依存の体質から脱却することを中曽根公約の第一号とされたのであります。
 ところが、中曽根内閣のその後今日に至る実績はどうであったでしょうか。今年度末の国債発行残高は百五十三兆円、総理が財政再建を公約されてから、実に六十三兆円も借金がふえるというのが財政当局の見通しなのであります。この借金残高は、年度予算の三年分にも当たる異常な金額で、極めて深刻なサラ金財政と申し上げなければなりません。庶民の場合なら一家心中をするか夜逃げをするしかないのでありますが、総理は、この財政再建公約の破綻に対する政治責任をどうなさるおつもりか、しかと伺いたいのであります。(拍手)前任の鈴木総理も、その責任をとって辞任されておるのであります。
 中曽根内閣は、今日まで五回の政府予算を編成されました。私はここで、その総括的なバランスシートに注目したいと思います。
 国民福祉にかかわる社会保障関係費は、一九八三年度においては九兆一千四百億円でありましたが、今年度は十兆九百億円であります。この五年周、年率二・〇八%の伸びにすぎず、通算でも約一〇%の増でしかありません。文化・教育関係費は全く横ばいであります。また、中小企業・農業関係予算は大幅に減額をされ、公共事業費さえも一〇%近く縮減されておるのであります。しかるに、防衛関係費だけは、この五年間に二八%という異常なふえ方であります。口では軍縮平和を唱えながら、内閣の顔ともいうべき政府予算案では、軍事費を聖域扱いして突出をさせる。逆に国民が切実に求めている民生関係費などは、中曽根行革の名によって圧縮をする。総理は、この露骨な軍拡志向、国民生活圧迫のバランスシートをどのように反省をされるのか、ぜひ伺っておきたいのであります。(拍手)
 次に、経済の運営についてであります。
 我が国の経済は、一昨年のG5以来、急激な円高、貿易摩擦の中で、かつてないほど深刻な事態に陥っております。石炭や非鉄金属を初め、鉄鋼、造船、海運など、これまでの基幹産業から、電機、自動車などの部門にも不況の影が差し、とりわけ中小地場産業の実情は惨たんたる状況にあります。
 その象徴ともいえるのが北海道であります。北洋漁業の減船、大幅減反や農畜産物の価格の引き下げで農家の離農が続き、国鉄の分割・民営化では、現在も四千人を超える人々の再就職のめどが立っていないのであります。円高の影響をもろに受けて木材関係の操業中止が相次ぎ、鉄の町室蘭では高炉の休止が決定をされ、さらに第八次石炭政策によって炭鉱の雪崩縮小国山が現実のものとなっておるのであります。有効求人倍率は現在でも全国平均の半分以下にとどまり、この数年の間にさらに二万人もの失業者の発生が予測されるなど、まさに国の政策によって北海道は不況と失業の海におほれかけておるのであります。北海道のみならず、全国的な地域経済の崩壊と雇用問題は、一日も放置できない重要な社会問題であります。
 この円高不況は、中曽根内閣の経済運営の失敗が大きな要因であり、その責任を問わなければならないのであります。(拍手)すなわち、総理は、内外の批判にもかかわらず、輸出主導、内需抑制緊縮の経済路線をとり、国際的には、アメリカのドル安政策を是認し、G5やG7による国際協調に際しても何ら有効な手を打つことができなかったのであります。そこに今日の異常な円高を招いた原因があることを厳しく指摘しなければなりません。総理はこの責任をどう感じておられるのか、お伺いいたしたいのであります。
 我が国の貿易黒字は、昨年一千十四億ドル、十六兆円という巨額に達し、世界一の債権国になったと言われます。しかし、これは、円高不況下の雇用不安、生活不安におののく勤労国民の生活実感には到底なじめない数字であります。こうした統計の数字と国民の実感との差を埋め、国民生活の真の豊かさ、生活の質の向上を実現するためには、国際公約でもある内需拡大に向かっての抜本的な政策転換が必要であります。ところが、内需拡大のためと称するこのたびの緊急経済対策を見ても、依然として旧来の延長線上で発想された場当たり策にしかすぎず、余りにも不十分と言わざるを得ません。そこには何よりも可処分所得の向上を第一とする観点が欠落しておるのであります。
 総理は、一体、労働省推計の購買力平価でアメリカが一〇〇、西ドイツが七〇、日本が五五という我が国の賃金水準をどう考えるのか、その積極的な引き上げが不可欠であるという所見をお持ちなのかどうか、お伺いをいたしたいのであります。また、すべての労働団体と野党一致の要求である二兆円規模の減税実施の緊急性についても、あなたはここに再考されることを強く求めるものであります。(拍手)
 政府の労働白書によれば、完全週休二日制の実施で約五兆円の消費拡大、五十万人の雇用増が見込まれるとしております。また、新前川レポートも、他の先進国より年間数百時間の長い労働時間の格差を埋めるため、一九九〇年までに二千時間の目標を掲げています。このように内需拡大の効果がはっきりとし、摩擦解消にも役立つ週休二日制や労働時間短縮について、労働基準法改正案が極めて不十分な内容でしかなく、この問題に関する政府の腰が重いのは一体どういうわけなのか、その理由を明確にしていただきたいのであります。(拍手)
 中曽根内閣の緊縮政策のもとで、生活関連社会資本の整備、これもまた大きく立ちおくれてまいりました。今回の緊急経済対策も、従来型の契約前倒し、民活依存の道路、住宅建設など、枠組みが狭く、発想が貧困であります。欧米諸国より著しく立ちおくれている下水道、公園、縁の対策を初め、生活の質の向上を目指す文化、スポーツ、医療サービス施設などの大幅な拡充が急務であるのにもかかわらず、政府の取り組みがはかどらないのは一体なぜなのか。私はこの怠慢の責任を問うものであります。
 それだけではありません。中曽根内閣は今、円高不況を利用して衰退産業の切り捨てを強行しているのであります。産業構造の変動は避け得られないとしても、一次、二次、三次産業の調和ある発展のビジョンを示し、同時に、海外への資金や生産設備の急激な移動に適切なコントロールを加え、雇用問題を中心に労使合意制度を確立するなど、政策対応が必要不可欠でありますが、中曽根内閣はその努力を怠ってまいりました。財テクや海外投資に回る資金を国内産業基盤整備に向ける誘導政策についても、極めて消極的な態度に終始をしてきたのであります。私は、この血も涙もビジョンもない政府の産業調整、切り捨て政策の責任を厳しく問わなければなりません。(拍手)
 また、最近の東京など大都市の地価の急騰には異常なものがあります。なぜ急騰しているのか。その根本は、もともと有限の土地を商品として扱い、市場メカニズムだけにゆだねる矛盾に根差しており、したがって、所有権と利用権の分離なと思い切った政策対応について国民的合意を求める積極的な姿勢が必要であります。しかるに、中曽根内閣はこれに手をつけず、逆に民活依存によって、住民生活を脅かす地上げや土地転がしの横行など、地価急騰の火に油を注いできたのであります。総理は、中曽根内閣の政策の失敗に責任ありとした最近の建設大臣の発言をどのようにお聞きか、素直な所感をお伺いいたしたいのであります。
 私は、ここで、新行革審に土地臨調を設けるといった国会無視のやり方ではなく、国会にこそ土地問題のための特別委員会を設置すべきであるという我が党の主張を明らかにするものであります。(拍手)
 総理、あなたが政権を担当されてからこの五年近くの間、我が国の社会はこれまでにもないテンポで荒廃しています。その原因は、中曽根内閣のもとで、利潤追求を至上の営みとし、効率と競争を第一義とする風潮がつくり出され、その一方で、人間の生命と基本的人権を軽視する政治が進められてきたところにあります。また、総裁のいすをめぐって巨額の資金づくりが競われたり、有罪確定の議員が国会に平然と居座るような政治の腐敗にも責任があります。総理の見解はいかがでありましょうか。
 総理、戦後四十年間、我が国社会の発展と進歩を促し、支えてきたのは今日の高齢者であります。社会の中で弱い立場にあるこの人々にこそ最も政治の光が届かなければなりません。しかしながら、総理は、私たちの強い反対にもかかわらず、老人保健法の改悪を重ね、一般病院から病気療養中の高齢者を締め出し、受益者負担を押しつけ、福祉水準を大幅に後退させておるのであります。
 東京の松寿園で火災が発生したとき、入所者七十人に対して救助活動に当たった当直者は二人でしかなかったことを総理はどうお考えになりますか。これは一施設の責任にとどまらない問題であります。中曽根内閣の福祉政策が問われていると思うのであります。この際、大規模な施設に数多くの人を収容するようなあり方を改め、同時に、だれもが生きがいを持って生きられるような抜本的な福祉政策を追求しなければなりません。働けるうちは無理のない仕事が確保され、体が弱ってどうにも働けなくなったなら、年金、医療、そして介護に全く不安がないようにする、いわゆる社会のナショナルミニマムを打ち立てることにあります。
 利益追求と競争のすさまじさは教育にまで及び、国民はひとしく胸を痛めておるのであります。子供は、学歴偏重の社会にあって受験体制に組み込まれ、偏差値で輪切りにされ、本人の希望しない進路決定があたかも正常であるかのごとく行われておるのであります。昨年の高校中退者は四万五千九百六人、この生徒の多くは、高校生活が自分に合わないと訴えています。偏差値のもたらす子供たちの人格破壊の姿が如実に示されておるのであります。
 臨教審は、このような現実に全くこたえていません。特に今年度の国公立大学の入試は、大学の序列化、大量の入学辞退者などで大混乱となりました。大学入試制度の改革については、関係者、各界各層の代表による国民合意の機関を設置して検討すべきであります。それ以上に私は、人間の尊厳を掲げた憲法と教育基本法の精神を踏んまえ、平和と人権を重んじ、他者への思いやりに満ちた人格を形成するという教育本来の姿を取り戻す努力こそ根本であろうと思うのであります。中曽根内閣の教育行政は、それとは異なる方向を選んでいるように思われるのでありますが、総理の見解を求めるものであります。(拍手)
 総理、国民の心理的不安をついた霊感商法あるいはまた新聞社襲撃事件、住民運動に威圧を加える暴力事件、反ユダヤ主義の台頭など数々の危険な社会現象は、日本経済社会の体質のゆがみと決して無関係ではありません。これらの事件に共通しているのが、人間の生命の軽視と基本的人権の無視であります。
 総理は、かつて、日本は単一民族であると発言され、我が国に存在する少数民族をあえて無視されました。また、プエルトリコ人、黒人、メキシコ人などに対する差別と偏見に満ちたいわゆる知的水準発言が、国際的に大きな反発を招いたことも記憶に新しいところであります。真に尊敬される国際国家日本になるためには、今日百二十四カ国も批准している人種差別撤廃条約を早急に批准する必要がありますが、総理の決意をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 また、部落問題に関しても、本年四月一日より地対財特法が制定されておりますが、およそ一千地区にも達すると思われる未指定の地区の改善を排除して、果たして部落問題の解決が達成できるのかどうか、総理の見解をお聞かせ願いたいのであります。
 次に、私は、中曽根内閣の外交、防衛政策に関して質問を進めたいと思います。
 さきのベネチア・サミットにおいて、中曽根総理が、アメリカの百弾頭の中距離核兵器をアラスカに配備されるよう提案され、このことが広く報道されました。私は、この記事を読んで唖然とするとともに、胸中操然たるものを覚えたのであります。我が国は、非核三原則を国是として、核拡散防止条約にも加盟して、これまで核の廃絶を目指し努力をしてきた世界最初の被爆国家であります。その日本の総理大臣が、核兵器を新たに配備せよと受け取られかねない提案をなさいました。これは国民の意思を全く踏みにじるものであります。この提案がソ連のアジアにおけるSS20撤去を迫る切り札になるというような言いわけなどは、到底受け入れられるものではありません。(拍手)
 総理、あなたは、一昨年十月の国連四十周年記念演説で、核保有国は核追放を求める全世界の悲痛な合唱に謙虚に耳を傾けるべきである、とりわけ米ソ両国の指導者層の責任は重いと述べたのであります。我が国としては、米ソ両国に対し粘り強くアジアのINF全廃を求めていくことが本筋であります。我が国の国是である非核政策の根幹にかかわる問題であり、その発言に関する責任を私は問うものであります。(拍手)
 この五年間、中曽根外交とは一体何であったのでありましょうか。結論から申し上げれば、いわゆるレーガン・中曽根・全斗煥枢軸と呼称されるように、緊張緩和ではなく緊張激化に手をかし、平和軍縮ではなく軍事同盟の強化に走り、人種差別、民族対立の拡大をもたらし、世界の潮流に逆行してきたものと断ぜざるを得ないのであります。
 総理、あなたは、就任直後の最初の訪問に韓国を選び、全斗煥大統領との岡に新次元に合った日韓関係をうたいとげました。そして、総額四十億ドルの対韓援助を約束し、一方、朝鮮民主主義人民共和国の存在を政治的に否定し続け、朝鮮民族の統一の悲願に背を向けてきたのであります。しかし、韓国における民主化を要求する国民の爆発的エネルギーが高まる中で、政府・与党は、憲法改正による大統領の直接選挙の実施、政治犯の釈放などを国民に約束をする結果となったのであります。今こそ、次期オリンピックの成功に向けて、これまでの誤れる朝鮮政策の転換が強く求められておるのであります。総理の所見はいかがでありましょうか。あわせて、第十八富士山丸問題についても見解を伺いたいのであります。
 総理、あなたは、対米外交の基礎が日米運命共同体にあるとして、日本列島不沈空母化、対米武器技術供与、日米共同作戦計画、SDIへの参加、アメリカのペルシャ湾安全航行確保への協力、INFのアラスカ配備の提案など、いわゆるアメリカの対ソ海洋核戦略を中核とする軍事協力関係の強化を進めてまいりました。この道は、憲法が否定している集団自衛権の行使と日米安保体制の世界安保化に事実上つながるものであります。この国民の不安に対し、あなたは明確かつ正直に答えなければなりません。
 今年度当初予算における防衛費は極めて意図的に、三木内閣以来の公約である対GNP比一%枠を突破して計上しました。最近、防衛庁の来年度予算の要求の動きは、国民のこの懸念を一層かき立てておるのであります。洋上防空のためのものとして超水平線レーダー、新型ミサイルシステム積載のエイジス艦の導入を積極的に検討するというものであります。この動きは、憲法上許される範囲として政府自身が規定をした専守防衛と防衛大綱の枠さえ踏み出すものと言わざるを得ません。(拍手)私は、ここに、洋上防空構想の中止を強く求めるものであります。
 ことしは、悪夢のような盧溝橋事件から五十周年の年に当たります。私は、最近の日中関係を強く憂慮する一人であります。中曽根内閣のもとで、教科書問題、靖国神社公式参拝、防衛費一%枠突破、光華寮問題、いわゆる雲の上の人発言問題など、両国間にきしみが目立つようになってまいりました。中国は一つという原則と、日中不再戦、子々孫々の友好を確認した日中間の諸条約の精神に立って、特に光華寮問題は、誠意を持って速やかに解決を図るべきであります。総理の所信を私は重ねて求めるものであります。
 総理、世界の目は、今米ソ両国による中短距離核兵器廃棄交渉に注がれていると思います。問題は、アジア・太平洋における中距離核の撤廃であります。我が党は、東北アジアにおける非核地帯の創設を初め、アジア・太平洋における核軍縮交渉を提唱してきたところでありますが、米ソ交渉の進展に加え、中国の核問題への新たな対応、朝鮮半島情勢の変化、ASEAN諸国の非核化の動きなど、今やその条件は徐々に成熟しつつあります。今こそアジア・太平洋地域の非核化を目指して、緊張緩和並びに信頼醸成措置の努力など、非核日本がその役割を果たすべきときであると考えますが、総理の見識を伺いたいのであります。
 総理は、サミットにおいて二百億ドルの資金還流計画を提唱されましたが、南北の経済格差は拡大する一方であり、発展途上国の一兆ドルを超える累積債務問題の解決を図るために、我が国は率先して最大限の努力を続けるべきであります。政府の経済援助は、発展途上国の民生の安定、経済的自立を目標に、アンタイドローンの拡大を初め、技術協力、人材育成、国際機関を通ずる協力援助への転換など、質的見直しを急ぐべきであります。我が国のひもつき援助に対する批判、また戦略援助、安保援助という性格に反発する被援助国の民衆の声にも謙虚に耳を傾ける姿勢がなければならないのであります。古くて常に新しい課題である対外経済援助のあり方について、改めて見解をお伺いするものであります。(拍手)
 総理、私は、五年近くにわたる中曽根政治について厳しく述べてまいりました。我が国を代表する総理大臣を弾劾することは、極めて不幸なことであります。しかし、私の指摘は、我々野党や多くの国民が共感するだけでなく、与党の心ある諸君も内心賛同願えるものと確信いたすものであります。(拍手)
 二十一世紀を目前にした今日、我が国は文字どおり国際化時代を迎えています。政治も、経済も、社会も、そして文化も、変転きわまりない国際関係を度外視して考えることはもはや不可能であります。とりわけ我が国が、貿易収支、対外資産、外貨準備高において世界一となり、国民一人当たりのGNPがアメリカを追い抜いた今日、我が国の一挙手一投足が世界の注目を浴びる時代となったのであります。その意味でまた、中曽根内閣とは内容の異なる国際国家日本の役割が問われておるのであります。
 ドル暴落の不安が象徴するように、戦後のアメリカを中心とする政治経済の秩序は根底から揺らいでおります。米ソ核廃絶交渉の背景には、軍拡競争による軍事費の重圧を見逃すことはできません。しかも、今日の世界は、発展途上国の累積債務が先進諸国の政治経済を脅かし、国連を初め国際機関において大国の覇権が通用しない時代を迎えておるのであります。世界はまさに新しい時代の劈頭に立っていると言えるのであります。
 総理、あなたは総理大臣としての最初の演説で、「政治を支えるもの、それは国民の信頼であります。」と、この壇上で高らかに宣言いたしました。恐らく初心はそこにあったと信じたいのでありますが、退陣を目の前にした今、あなたは手を胸に当ててみずからを省み、どのように自己採点をなされるのか、国民とともにお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 総理、あなたは政治家として、四十年の蓄積を背景に、数多くの政治的命題を提起されました。すなわち、「戦後政治の総決算」を唱え、その一環として、行財政、教育、税制の三大改革を打ち出し、あるいは国際国家日本の課題と責任などを強調されたのであります。しかしながら、そのときどき、個々の分野における中曽根パフォーマンスは、一見見事なものに映るのでありますが、総体としてみれば池に映った月のように実体がなく、社会の進歩や世界の潮流に反する結果が生じておるのであります。後に残されたものは、国民の政治不信と国際的な対日批判だけてあります。
 私は、平和憲法を持つ日本が真に国際的責務を全うするためには、戦後四十年の自民党政治にかえ、もう一つの価値体系と政策路線を国内的、国際的に確立すべきであると強く確信をいたすのであります。(拍手)我が国の政治のありようが国民生活の前途にかかわるばかりでなく、世界人類の平和と安定と幸福の追求に大きく影響する時代であることを直視しなければなりません。我が党が提起する「もう一つの日本と世界」の意義もそこにあることを強く訴え、私の代表質問を終わるものであります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 岡田議員にお答えを申し上げます。
 まず、売上税関係法案が廃案になりましたことでございますが、まことに遺憾であります。国民の皆様に十分御理解を得られなかったことはまことに残念であると申し上げたとおりであります。
 しかし、税制改革の必要性は、最近国民の皆さんにも非常に広く広まってきたように考えております。やはり最近は、与野党の税制協議会に対して国民の皆様も非常に注目をしておりまして、この真摯な作業を見守っておるという状態でございまして、私は、今後、この税制協議会の結論について大いな期待を持っておるものなのでございます。
 しかし、売上税関係の問題につきましては、御迷惑をおかけして大変恐縮でございましたが、やはり日本の将来を長期的に見まして、今の若い人たちが我々の年になっても年金を安心して受けられるような大きな体系を今つくっておかなければならない。そのような国家的に正しいと思ったことは、やはり不屈不撓の精神でやらなければならぬと考えております。(拍手)
 次に、マル優についての考え方でございますが、サミットにおける私の発言は、税制改革実現への願望を私が述べたものなのであります。マル優につきましては、これは外国から非常に強い批判が今までございました。言いかえれば、貯金に補助金を与えているという制度である。ほかの国でやっていないのに日本だけがこれをやっておるから、貯金が非常にたまって、結局それが円高の原因になっておる。したがって、世界的水準に円ドル関係や外国為替関係を安定させるためには、日本も外国と同じような水準に移ってもらわなければ困るというのが外国の考え方でございます。
 このマル優制度は、考えてみますと、昭和十六年以来、その前からもございましたけれども、戦時中の貯蓄増強の一つの政策として実は行われてきた経緯がございます。しかし、やはり国の、あるいは未亡人であるとか、あるいは身体障害者であるとか、あるいは御老人であるとか、そのような弱い方々に対してはこのような制度は十分機能し、意義もあると考えておりますが、国民一般に対して、外国から非難あるいは批判をされておるような制度を日本がこのまま続けていいかどうか、これは考えていただかなければならぬところなのでございます。日本人にとったはいい制度であっても、外国から見たらこれが大きな貿易摩擦、経済摩擦の原因になっているといわれるようなものは、やはり検討を要すると私たちは考えるのでございます。そういう意味におきまして、現在、衆議院議長のあっせんのもとにできました税制協議会の御審議を大きな関心を持って見守っておると申し上げるのでございます。
 次に、財政再建の問題でございますが、財政再建につきましては、国民の皆様の御協力を心から感謝申し上げます。私は、かなりの成果が生まれてきたと思っております。例えば五十八年以来、マイナスシーリングあるいはゼロシーリングをやってまいりましたが、あのまま放置しておけば十兆数千億円のお金が余計要ったのを、各省節減してもらいまして、それを抑え込んだという実績がございますし、政府の公務員にいたしましても、約二万九十人、実績で実人員を削減してきておるわけでございます。そのほか、例えば民有化が進みましてNTTの株式、これをいよいよ売却して使えるという形にもなりました。これらはいずれも財政再建や行政改革の成果でございまして、これらを国民の皆さんにいよいよ還元するときが来た、そう私は考えておるのでございます。(拍手)
 今のような、現在の経済の情勢を維持し、一面において経常経費を節約しつつ、一面においてはこの緊急事態に対応するような社会資本の充実等の政策を行いつつも、これからの財政のやり方いかんによっては、いわゆる六十五年赤字公債依存体質脱却へ近づいていくということは、必ずしも望みなきにあらずである、そう考えておる次第で、そのような旗をおろすことは行政経費の乱費を招いて適切でない、私はそう考えておる次第でございます。(拍手)
 防衛の問題でございますが、これは諸経費との調和を図りながら、我々は漸増方針でふやしてきたわけでございます。しかし、十年前に三木内閣のときにできた「防衛計画の大綱」水準の達成という目的は、十年たってもまだできていない。そこで、やはり今まで我々の防衛努力は、過去、中期的な過去を考えてみても、外国から見れば非常に不足していると言われておったものでございます。少なくとも十年前につくった大綱水準まではできるだけ早く達成したいというもとに中期防衛の五カ年計画ができまして、それを今実現しているという過程なのでございます。この点は国民の皆さんにも深い御理解をいただきたいと思っています。
 社会保障関係経費との調和も図っておりまして、予算におきましては、社会保障関係経費の三分の一が防衛関係の経費になっておるわけでございまして、このような努力も御認識願いたいと思うのであります。今後もそのような経費の調和を図ってまいるつもりでございます。
 次に、地域経済、雇用問題でございますが、現在雇用の安定及び失業対策というものが政策として非常に重要になってきたと思っております。今回緊急経済対策を実行いたしまして、六兆円を上回る財政措置を伴う内需拡大策及びそれに伴う補正予算の御審議をお願いいたしておりますのも、そういう考え方によるものでございます。今後は、不況地域あるいは不況業種に対しまして十分な配慮を行い、適切な措置を行います。三十万人雇用開発プログラムを推進いたしまして、一千億円以上の予算も用意しておるわけでございますから、経済政策と相まって、このような失業対策に力を入れてまいるつもりでございます。
 経済政策の責任を御質問に相なりましたけれども、ただいま申し上げましたように、懸命の努力をいたしまして景気の回復に努めております。最近はようやく円レートが安定してきまして、きょうは百五十円台に戻ってまいりました。さらに引き続き機動的な経済政策を必要に応じて実行してまいるつもりでありまして、このような円レートの安定化あるいは経済回復への曙光等を見ますれば、補正予算を成立させていただきまするならば、底を打って上昇気流に乗ろうとしているときでございますから、非常に有効に作用するものと考えております。財政に力を回復させるという目標は、一歩ずつ回復しつつあると考えております。
 次に、円高の責任の問題でございますが、このような為替相場の動きというものは、さまざまな要因が作用しているのでございまして、一つの単純な要因ではないのでございます。特に国際関係の力でこれが動いているということは御承知のとおりであります。すなわち、貿易あるいは金利、あるいは財政状況、あるいは物価、そのほかさまざまな要因が大きい。それに投機関係の力も作用してくるというところでございます。したがいまして、統制経済でもやっていない限り、自由経済のもとにおきまして為替相場をある定点に固定するということは極めて困難でございます。
 しかし、これを長期的に安定させるということは重要でございますから、我々はさまざまな国際協力をやり、ある場合にはG5、ある場合にはG7、あるいはサミットにおける最高首脳部の強力な意思決定等を行いまして為替相場の安定に努めておるところであり、先般のベネチア・サミットにおきまして大統領、総理大臣が強固な安定意思を表示しました結果とも相まちまして、今日の為替相場というものが実現してきておると考えておるものであります。(拍手)
 次に、可処分所得の増大の問題でございますが、国民生活の質の向上を中心とする内需主導型経済成長へ変革することが大事でございます。そこで、税制改革の一環として、昭和六十二年度におきましては、総額一兆円を下らない規模の所得税等の減税先行の確保、総額五兆円の公共投資等の追加による住宅、社会資本の整備等を盛り込んで、そして今充実させようとしておるところでございます。
 所得税減税につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、減税先行は税制改革の一環として恒久財源を確保しつつ実施することがぜひとも必要であると思い、税制改革協議会における協議の状況を見守ってまいりたいと思っておるところでございます。
 週休二日制の問題でございますが、労働時間の短縮は、今日の日本にとって非常に重要な政策になってきていると認識しております。これは、労働者の福祉の向上あるいは内需の拡大、雇用機会の増大ということ以外に、やはり国際水準の社会経済条件に日本も持っていくという大きな仕事の一環でもあるわけでございます。したがって、法定労働時間を週四十時間制にするという目標をつくりました労働基準法の改正法案を国会に提出しておりますが、この新しい法制度のもとで労働時間が着実に短縮されるように期待し、努力してまいりたいと思うところでございます。このいわゆる時短の問題につきましては、政府も真剣に、積極的に努力してまいりたいと考えておるところでございます。
 次に、社会資本の重点的配分の御質問でございますが、公共事業費の追加に当たりましては、NTT株式売却収入の活用を図りつつ、地域の開発整備に寄与する事業に配慮することといたしまして、特に関連する下水道あるいは公園等の生活関連公共事業費に重点的に考えてまいりたいと思っております。
 貿易黒字削減の問題でございますが、やはり為替相場を安定させるということ、それから内外の経済不均衡を是正するということ、これが我々にとって目下大きな仕事で、この点を今努力しておるところでございます。緊急経済対策や補正予算の提出もそういう意味において行っておるものでございます。また、国際協調のための経済構造調整の推進も重要でございます。そういうようなさまざまな政策を複合させつつ努力しておりますが、さらに、市場アクセスの改善以下を含む対外関係の摩擦解消もまた大事でございます。我々は、六十二年度の関税改正におきまして、特恵関税制度の改善を初め、そのような市場アクセスへの努力も今懸命にいたしておるところでございます。このような改革は若干時間を要するものでございますが、一歩一歩着実にやりましてこのような国際摩擦を解消してまいりたいと考えておるところでございます。
 経済構造調整のビジョンの問題は、対外均衡、国内均衡、これを同時に実現していくという目標のもとに今進めておるものであります。需要面におきましては、国民生活の質の向上を中心とする内需主導型経済成長へ変革する、供給面におきましては、需要の変化に見合った産業構造の転換、輸入の拡大を図る、これが政策の大きな目標でございます。そのような目標に向かいまして、例えば国内炭の生産規模縮小とか、オフショア市場の開設であるとか、金融・資本市場の自由化、国際化に向けるとか、あるいは法定労働時間を短縮するとか、さまざまな政策を今推進しております。さらに今後は、規制の緩和、財政の活用、住宅の供給改善、輸入の拡大、情報基盤、高速交通ネットワーク等の社会資本の整備などに重点的に力を入れてまいります。
 地価の高騰対策につきましては、先般関係閣僚会議におきまして、土地取引規制の強化、国等が土地売買等の契約を締結する場合の特別の配慮、例えば転売の期間を十年以内は認めないとか、あるいは所有者が住まなければならないとか、そういうさまざまな規制も今行わんとしており、さらに土地税制の見直し等も今実行しつつあるところでございます。
 土地取引規制の強化につきましては、前国会で国土利用計画法の一部改正の法律が成立いたしました。監視区域制度を積極的に活用するよう地方公共団体を指導してまいりたいと思いますし、税制につきましては、税制改革協議会の審議の情勢を見守ってまいりたいと思います。先般、新行革審に対しまして、地価等土地対策に関する基本的かつ総合的な改革方策について御提言願いたいと要請したところでございます。そのようなさまざまな政策を組み合わせまして努力してまいるつもりでございます。
 次に、国会に特別委員会をつくったらどうかという御質問でございますが、これは国会のことでございますから、国会内部において各党で御審議願いたいと思うのであります。
 政治倫理の問題につきましては、政治は国民の信頼の上に成り立つものでございますから、やはり道徳性を持って一貫しなければならぬと思います。そういう意味におきまして、我々国会議員は率先して、この政治倫理の実践につきましては、これを厳守していかなければならぬと思いますし、そのような行為規範も決められておるところでございます。大いに自粛自戒してまいりたいと思います。
 なお、官庁の綱紀粛正につきましても、政府として責任を持って処理してまいりたいと思います。
 松寿園の火災につきましては、十七名の犠牲者を出しましたことはまことに遺憾で、謹んで哀悼の意を表する次第でございます。このような事件が再び起きないように、原因の調査、分析、なお社会福祉施設に対する防火対策等について、さらに徹底的に政策を進めてまいりたいと思います。
 なお、中曽根内閣の福祉に対する姿勢について御質問をいただきましたが、やはり高齢化社会を控えて揺るぎのないこのような制度をつくるということが重要であると思います。昨年六月政府が策定いたしました長寿社会対策大綱に従いまして、一歩ずつ前進させつつあります。所得保障あるいは保健医療、福祉サービスの充実等について、基本的方向に沿いながら、今前進させつつあるところでございます。
 大学の入試改革等の問題でございますが、共通一次テストの改革、それから大学の入試改革、これは実行しつつあるところでございます。このため、臨時教育審議会においても、各方面の意見を聞きまして、大学入試制度改革の提言も行っておるところでございます。
 私は、やはり受験生の立場というものを十分考える必要があると思っております。先般の改革は、複数受験の機会がふえたということ、また、受験の内容も大学によって個性を持って改革しつつあるということ等を考えますと、一歩前進していると思っております。今後、国大協等とも十分連絡をとりまして、さらによき制度へ前進するために努力を傾注してまいるつもりであります。
 人種差別撤廃条約の問題は前から御質問いただいておるのでございますが、この条約では、処罰義務に関して、表現の自由等憲法の保障する基本的人権との関係で調整することが困難な点があるのでございます。すなわち、条約第四条の中には、思想のあらゆる流布あるいは扇動とか、あるいは援助資金の提供とか、そういうものについて処罰を行えということが書いてあるわけです。しかし、思想の流布というものについて処罰が行われるということは、やはり基本的人権に抵触する問題を含んでまいるのであります。そういう意味におきまして、今引き続きこれを検討しているという状態にあるのであります。
 部落問題の未指定地区の問題でございますが、本年四月一日に施行されました地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律では、旧地域改善対策特別措置法の期間中に対象地域として事業が実施された地域のみを対象地域といたしております。これは、昭和四十四年制定の旧同和対策事業特別措置法以来十八年間に対象地域として確認されたものとして、それはすべて確認されて入れてあるわけでありまして、その他の地域については一般対策で対処するのが妥当であると考えております。
 INFアラスカ配備の問題でございますが、私が申し上げましたのは、まず第一に、日本は核兵器は全世界的規模でゼロにしなければならない、アジアとヨーロッパにおいて不平等があってはならない、アジアの犠牲においてヨーロッパの問題が解決されてはならない、これがもう大原則でありまして、終始それを私は強く主張してきたものでございます。
 しかし、このINFの交渉というものは、カテゴリー別に、その範囲内でやっているわけであります。言いかえれば、中距離INFについては中距離INF、また、通常兵力の場合でも戦車に対しては戦車、同じ対象でやっているわけです。そういう意味で、レイキャビクにおきましてレーガン大統領とゴルバチョフ書記長がやりましたいわゆる幻の合意と言われるものにおきましては、ソ連側がどうしてもシベリアに百置くということを主張した由であります。それに対して、アメリカはアラスカを含むアメリカ本土に百置く権利を留保する、そういう趣旨の主張を持ってアメリカはやったと私は聞いております。
 このINF問題、核兵器の削減問題は、今歴史的な転換点に来ております。言いかえれば、今までは核兵器はふえてはかりきておったわけです。今度はこれを減らそうというわけであります。したがって、この減らすという方向へできるだけ前進させるということが、今日の転換点において我々は大事であると思います。減らす方法が進めば、一歩進んでも、それは大きな数歩に次は展開していく可能性があるからであります。(拍手)
 そういう意味におきまして、同じカテゴリー別にやっているものでありますから、ソ連がどうしてもシベリアに百置くと言って、それを認めざるを得ない。さもなければこの核兵器を減らしていく交渉は全部飛んでしまう。そういうようなことになった場合どうするかという問題をアメリカも考え、我々も考えた場合で、しかし、核兵器をゼロにするという、INFをゼロにするという目標のためにソ連と交渉する場合に、アメリカが交渉過程においてこれを相殺する道具を持つということは、交渉のテクニックとしても必要であると私は考える。
 そういう意味におきまして、もし万一そういう場合に、アメリカは本土に百という権利を留保すると言っているわけでありますから、ゼロにするためにそういう交渉上の道具をアメリカが持つということを私は容認してしかるべきである、そういう考えを表明はいたしました。しかし、あくまでこれはゼロにするための道具であって、今回の交渉妥結に際しては、シベリアもゼロ、ヨーロッパもゼロ、それにぜひしてもらいたい、その目的のために言っているということを申し上げた次第なのでございます。(拍手)
 韓国の政情の問題でございますが、現在韓国では、大統領直接選挙制への移行を含め与野党間の話し合いが進められております。政治的な問題でありました憲法改正等の問題について、平和的な形で国民合意を形成するための努力が行われることを歓迎いたしております。
 私は、先般来韓国の情勢を見ておりまして、与党の方も野党の方もよく勇断を奮って合意点を見出しました、非常に高く評価しておる次第なのでございます。願わくはこれが立派に、平和的に結実いたしまして、来年のオリンピックが大成功に終わるように心から念願をしておる次第であります。(拍手)
 朝鮮半島の政策につきましては、これはやはり南北両当事者間でまず行うべき問題である、これが基本的立場であり、それは平和的に行われなければならないということでございます。我が国は、北朝鮮との間に外交関係はございませんが、朝鮮半島に対するこれまでの基本政策のもとで、今後とも経済、文化等の分野における民間レベルの交流を積み重ねていく考え方であります。
 第十八富士山丸事件につきましては、早期釈放のためにあらゆる手段を使って今まで実は努力してまいりました。最近、関係者が御病気の由情報がございまして非常に憂慮しておるところであり、御家族の御心配さぞかしと御同情申し上げておるところでございまして、今後とも全力を振るって努力し続けてまいりたいと思うところでございます。
 洋上防空と憲法との問題でございますが、中期防における洋上防空のあり方についての検討は、近年の経空脅威の増大にいかに効率的に対処するかという観点から行われております。この検討は、当然ながら憲法及び専守防衛等の基本的な防衛政策の枠内で行われるものであります。
 護衛艦の対空ミサイルシステムの性能向上、いわゆるエイジス艦の問題とも関連いたしますOTHレーダーにつきましては、中期防に従い、それぞれ我が国防衛の観点から検討を行い、必要な措置を講ずることといたしております。あくまで、これらの兵器等は防御的な兵器でございまして、いわゆる憲法が禁止し、あるいは我々がそれを装備しないと言っておるような攻撃的性格のものではないのでございます。しかし、六十三年度の取り扱いについてはまだ未定で、調査中というところでございます。いずれにせよ、政府としては節度のある防衛力整備に今後とも努力してまいります。
 次に、日中関係の問題でございますが、日中関係は私は良好な状況にあるとは思いますが、幾つかの問題が生じておることも否定できません。しかし、我々は、日中共同声明あるいは日中友好平和条約、日中関係四原則の上に立って、日中友好協力関係をさらに発展強化するために努力をしてまいります。
 いわゆる光華寮問題は、現在司法手続によって争われておる民事事件でありまして、三権分立、司法の独立が確立している我が国におきまして、裁判中のこのような事件について行政府として介入したり論評することは差し控えるべきであると考えております。
 次に、アジア・太平洋非核化という社会党の御提案でございますが、我が国は従来から、核兵器というものは究極的に地球上から追放さるべきものであり、これは廃絶しなければならぬと申し上げておるところでございます。一般的に、アジア・太平洋地域において真に実効性のある軍備管理・軍縮が実現することは我々も歓迎し、長期的な目標であると考えております。しかし、これらの問題は、あくまで現実的観点から安定的な枠組みが長期にわたって実行されるということが必要なのでございます。観念論や理想論ばかりでは現実の平和は維持されないのであります。
 現在、北方領土において、まだ北方領土問題が解決していない、そこには軍事力の撤退もまだ行われていない。こういう実情が今我々の周りにある実情なのでありまして、こういうような冷厳な現実の上に立って我々は深く考えていかなければならぬのだ、そういうことも申し上げる次第なのでございます。(拍手)
 次に、ひもつき援助の問題でございますが、我が国は、南北問題の根底にある相互依存と人道的考慮を基本理念として、開発途上国の経済社会開発に対する自助努力を支援する、もって民生の安定と福祉の向上に貢献するという趣旨で経済協力等を行っております。また、相手のニーズを十分考えて相談もいたしておるところでございます。今後もそういう考えに立って実行していくつもりでありまして、我が国のODAの資金協力においては、他の国にも調達先を開くいわゆる一般アンタイドを基本原則として実行いたしております。
 戦略的観点からの援助というのは何を意味するかわかりませんが、我が国の援助は、やはり福祉あるいは民生向上というものを中心に考えていくべきであると考えております。
 新しい日本の役割につきましては、これは所信表明でも申し上げましたが、やはり国際国家日本として国際社会に名誉ある地位を占める、そういう対外目標を持ちまして一歩一歩前進していく、そして内政を充実し、国民生活の質を高めていく、そして自由と民主主義を確保していくということが我々の目標ではないかと思うのでございます。
 中曽根政治についていろいろ御批判をいただきましたが、やはり私は、仕事師内閣ということを目標にいたしまして、いわゆる総決算という名のもとに行政改革、それから国際関係の打開、そういう点に重点を入れまして微力を尽くしてきたつもりでございます。一生懸命努力をしたつもりではございますが、成果の少ないことを省みるのみでございます。
 私は、国民の皆様方のこの間における御協力、野党の御協力に対しまして心から感謝する次第であります。(拍手)しかし、政治家の仕事はやはり後世歴史家が批判し判定すべきものであり、政治家の業績は歴史の判定にまつ、短期的な評価にとらわれることは邪道である、そのように考えております。(拍手)
#6
○議長(原健三郎君) 伊東正義君。
    〔伊東正義君登壇〕
#7
○伊東正義君 私は、自由民主党を代表し、中曽根総理の所信表明演説について質問を申し上げます。
 中曽根総理、日本経済は今日まことに重大な岐路に差しかかっております。先年来国際社会で問題化している我が国の対外不均衡は、縮小の兆候を見せ始めてはいるものの、その規模は極めて大きく、世界諸国の我が国に対する批判はなお厳しいものがあります。また、国内経済は緩やかな拡大を続けているものの、急激な円高の進展によって少なからぬ企業が打撃を受け、完全失業率が三%を超えるなど、深刻な影響があらわれております。景気については、底入れしたとの見方はありますが、なお今後の動向を慎重に見きわめていくべき状況にあります。我が国経済を発展の軌道に乗せて内外の要請にこたえるものとすることができるか、それとも低迷のまま推移させて破綻を招来するか、それはまさに我々自身の選択にかかっているのであります。
 このような状況を踏まえまして、我が党は先般総合経済対策要綱を打ち出し、政府はそれにあわせて財政措置を伴う六兆円を上回る規模の緊急経済対策を決定いたしました。今後にとって最も重要なことは、内外から日本は言うだけで実行が伴わないとの批判を受けることのないよう、これをいかに実施していくかであります。本国会は、そのための補正予算など重要な事項を審議する国会であり、その意義は極めて大きいと言わなければなりません。
 ます、私は、総理に対して、この緊急経済対策と補正予算が日本経済の成長にどれほど寄与するかを含め、その基本的な考え方をお伺いしたいと存じます。
 総理は、所信表明演説において、行政改革の上に残された課題はあたかも連山を望むがごときであると重ねて強調されました。私も同感であります。我々は、時代の変化の中で、行革を日常の仕事として長期にわたり推進していかなければなりません。また、財政改革も依然として国政の緊要の課題であります。高齢化社会の急速な到来、国際社会における日本の責任の増大等を考えると、安易な財政運営は決して許されないのであります。このような見地から、私は、今回の補正予算において特例公債の増発が避けられたことを高く評価するとともに、今後とも特例公債からの脱却の努力を続けなければならないと考えるものであります。
 今後、時々の経済情勢に適切に対応しつつ、財政の対応力を回復していくという困難な課題に向けて、総理はどのような方針をお持ちであるか。とりわけ、私は、昭和六十三年度予算は、今次補正予算の方針を踏襲して内需拡大の方向を維持すべきものと思いますが、緊縮と積極をどう調和させるか、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 総理、我が国の税制は、社会経済情勢の著しい変化の中でさまざまな問題点を抱えております。各種の世論調査を見ましても、国民の多数が現行税制に不満を表明しており、これが国民の活力の展開を妨げることにもなりかねません。政府及び我が党は、この状態を改めるため、売上税を含む税制改革案をさきの国会に提出しましたが、国民各位の御理解を得ることができませんでした。
 しかし、衆議院議長も言われるとおり、「税制改革問題は、今後の高齢化社会に対応する等、将来のわが国の財政需要を展望する時、現在における最重要課題の一つ」であり、「従って直間比率の見直し等今後できるだけ早期にこれを実現できるよう各党協調し、最大限の努力をはらう」という必要があると思うのでございます。(拍手)
 現在、税制改革問題は、本院に設置された税制改革協議会において与野党間での検討が行われておりますが、税制改革の緊急性にかんがみれば、衆議院議長の要請のとおり、できるだけ速やかに国民の立場に立った整合性のある改革案を明らかにするよう努力をすべきであると思うのであります。とりわけ、所得税減税に対する国民の要望は極めて強く、所得税の減税先行はこのような改革全体の一環として早急に実施されなければなりませんが、同時に、国民に対して責任を持つ我が党としては、恒久的な財源を確保する道を講ずべきであると考えます。税制改革についての総理の御所信をお伺いいたします。
 総理、私は、円高や経済・産業構造の転換等を背景として、不況業種やその関連地域を中心に一時休業、人員削減等の深刻な問題が生じていることを、大きな政治課題として極めて重視しておるのであります。その解決は決して容易ではありませんが、基本的には、内需の拡大による景気の着実な浮揚を図りつつ、業種や地域の動向に応じて雇用を積極的に創出していくことが必要であります。我々は、各種の政策努力を重ねて、産業構造転換により、地域、業種、年齢等によって生ずる雇用の過不足を調整するよう努力するとともに、経済社会の新しい方向に沿った発展分野への円滑な労働移動を進め、失業に苦しむ人をできるだけ少なくしなければなりません。
 雇用情勢をどう認識し、円高、産業構造の転換等に対応した雇用対策をどう進めていかれるのか、とりわけ労働時間短縮の問題をも含めて、総理の御見解を伺います。
 東京がニューヨークと並んだ一大国際情報金融センターへと進む中で、都心商業地に端を発した地価高騰は、周辺の一般住宅地にも波及し、極めて憂慮すべき事態を呈しています。都内の一部の地域では、一年間に土地の価格が二倍以上になったところすらあります。かかる異常な地価の高騰は、民間の建設意欲を鈍らせ、住宅取得や居住水準の向上等を阻むばかりでなく、道路、公園等への公共投資を非効率化させるなど、内需主導型の経済運営に重大な支障となるものであり、このまま放置しておくことはできないのであります。
 このような事態に対処するため、総理は、所信表明演説において、各種施策を総合的に実施するほか、臨時行政改革推進審議会に諮問する旨の方針を明らかにされました。しかし、事態は急を告げており、土地の供給、投機的な土地取引の抑制の両面からの効果的な対策を強力かつ速やかに講ずることが必要であります。特に投機的な土地取引については、地方公共団体とも協力しつつ、土地取引規制、土地税制、金融規制等、各種の施策を総合的に実施すべきだと考えますが、いかがお考えでありましょうか。
 最近の物価動向の特徴は、卸売物価と消費者物価の動きの乖離であります。すなわち、本年一月の前年同月比をとってみると、総合卸売物価が一〇・三%下落しているのに対し、消費者物価はわずか一・一%の下落でしかありません。このことは、円高と原油価格の低下のメリットがまだ消費者に十分還元されていないことを意味しております。経済企画庁の試算でも、本年三月までに輸入価格の低下によって水際で発生した差益は合計約十八兆円であるのに対し、国内物価上昇率の低下を通じて経済全体に還元された分は、そのうち約十兆円であり、約八兆が還元されずに残っているとのことであります。政府は消費者への還元に一層努めるべきではないでしょうか。
 一方、我々は、今後の物価動向にも注意していかなければなりません。最近は円高傾向も一服の感があり、さらに原油価格も上昇してきております。加うるに、都会の地価の急騰と内需拡大策の推進は今後物価に影響するおそれもあり、警戒を怠るべきではないのであります。これら物価の問題について、総理はどのような御見解をお持ちでしょうか。
 中曽根総理、最近、日本の農家の多くは、農産物の内外価格差、農業保護のあり方等についての社会の関心の高まり、諸外国の市場開放要求などにより、農業の将来に不安を抱くようになりました。我が党は、農産物の全面自由化を承認するものでは決してなく、他の先進諸国と同様に、農業にはある程度の保護が不可欠と考えているのであります。稲作等の生産性向上に取り組んでいくべきことはもちろんでありますが、農政審議会の昨年十一月の答申を踏まえ、我が国農業の役割や国土条件の制約等につき諸外国の理解を得つつ、農家が希望を持って農業に取り組むことができる農政を展開していかなければなりません。将来に向けては、経営感覚のすぐれた担い手を育成し、これらの人々を中心として生産規模の拡大を進める施策を強化することが必要でありましょう。
 なお、日本農業の主産物である米について言えば、米価だけでなく、米の需給均衡にも強い関心を払うべきであります。そのためには、生産面での調整のみならず、米の消費拡大策を積極的に推進しなければなりません。農政に対する総理の御所見をお伺いいたします。
 我が国の治安は世界でも最高水準にあります。低い犯罪発生率と高い検挙率は、警察関係者が平素から心血を注いでいる結果であり、その努力には心から感謝しております。
 しかし、最近、兵庫県西宮市と静岡県浜松市において、許すべからざる暴力事件が相次いで発生しました。西宮の事件は、暴漢が朝日新聞阪神支局を襲い、いきなり銃をもって記者を殺傷するという悪質な犯罪であります。また、浜松の事件は、暴力追放運動の先頭に立っている地域住民や弁護士等を脅迫あるいは襲撃して危害を加えるというものであり、平穏な生活を営む善良な市民に著しい不安感を与えております。言論機関や市民団体に対するこのような攻撃は、自由と民主主義に対する挑戦であり、我々は絶対にこれを看過してはなりません。
 私は、この種の犯罪に対する警察当局の徹底的な取り締まりをこの上とも強化することを望むとともに、こうした世相についての総理のお考えをお尋ねいたします。
 次に、対外政策についてお伺いいたします。
 今次ベネチア・サミットは、国際経済及び政治の両面で極めて重要な時期に開催されました。世界経済は、この一年間、大幅な対外不均衡の継続、保護主義の圧力の高まり、為替レートの動向の不確実性増大など、東京サミット開催時より困難な状況下にありましたが、サミット参加国は、世界経済の安定的かつ力強い発展のため政策的協調の努力を行っていくとの立場に立って建設的な討議を行い、その結果ベネチア経済宣言が発せられました。
 総理は、かかる政策協調の一環として決定された我が国の緊急経済対策の内容につき各国首脳に説明を行い、高い評価を得られたとのことであります。世界経済は、今日、相互依存の度合いを高め、一国のみの繁栄はもはやあり得なくなっており、先進諸国は世界の繁栄のために緊密な協調行動をとっていくことを求められております。中でも、世界一の債権国家となった日本は、この政策協調を積極的に推進する責務があると考えます。私は、その意味から、ベネチア経済宣言で、我が国が開発途上国への資金供与を増加させるとの新たな措置を打ち出したことを歓迎する旨表明されたことを喜ぶものであります。
 以上の諸点に関し、総理は、今次サミットでの成果をどう評価し、今後政策協調の推進に際し、我が国が果たすべき役割をどう考えておられるのか、お尋ねを申し上げます。
 今次サミットの政治面での最も重要な点は、米ソ軍備管理・軍縮交渉、なかんずく、INF交渉が重要な局面を迎えつつある状況下において「東西関係に関する声明」が発せられたことだと思います。そして、この声明後の六月十五日、レーガン大統領はダブル・ゼロオプション提案を発表しましたが、これこそINF合意の実現に向けた重要かつ有意義な第一歩でありましょう。
 私は、米国が、我が国を初めとするアジア諸国の立場にも十分配慮しつつ、INFのグローバルな全廃を実現すべく努力してきたことを承知しております。一方、ソ連は、遺憾なことに、SS20をアジアに残すというこれまでの立場を変えておりません。核軍縮を率先して行うとのソ連の日ごろの発言からは理解に苦しむところであります。しかし、米ソ双方のINFを百弾頭ずつ、ソ連はアジア部に、米国は米国内に保有するとの暫定案は、協定の早期締結のためにはやむを得ざる措置であり、アジア部のSS20を一基たりとも減らさないとの立場だったソ連をここまで譲歩させたという意味では、それなりの前進があったと言えましょう。もちろん、我が国としては引き続き最終目標たるグローバル・ゼロを求めていくべきであると考えております。
 これに関連して、一部報道で、総理が、米国がソ連のSS20に見合う百弾頭をアラスカに配備すべきだと述べたと伝えられましたが、私の聞くところによると、総理は、米国がアラスカを含む米国内に配備する権利を主張したことを支持すると述べられた由であります。ただいま岡田議員にお答えがありましたが、この点を含め、重ねて総理の御所見をお聞かせいただきたいと存じます。
 日米関係は我が国外交の基軸であり、そのことは今後も毫も揺らぐものではありません。にもかかわらず、貿易不均衡問題を中心に両国間のきしみが次第に大きくなっていることは、まことに残念であります。特に懸念されるのは、我が国の一部に、みずからの経済的成功についてのおごりを感じさせるような米国批判の言論が見られることです。
 もとより我々は、いわゆる日本たたきのごとき米国の行動には自制を求め、米国に対しその財政赤字の削減を要請するなど、言うべきことは言うとの姿勢は堅持すべきでありますが、私は、我が国の今日の繁栄が、戦後米国から受けた温かい支援の上に築かれており、また現在も、ペルシャ湾における船舶航行の安全確保を初め、各分野における米国の協力に感謝することを忘れてはならないと思うのであります。また、我々は、米国に対してのみでなく、世界のあらゆる国々の国民に接するに当たり、謙虚な態度をもって節度と自制を重んじ、これらの国々の国民から信頼される言動をとらなければなりません。
 総理は、国際国家日本を主唱してこられましたが、私は、国民と国民同士のつき合いが深まってきた今、国際国家日本の核となるものは国民一人一人の心の国際化に求めるべきだと思います。総理の御見解をお伺いいたします。
 総理、私は、我が国にとって日米関係と並んで重要なのは日中関係だと思います。日中友好協力は、両国の繁栄と安定はもとより、アジア並びに世界の平和のかなめでもあります。日中関係が盧溝橋事件により戦争に突入したのは、今から五十年前の昨日、すなわち昭和十二年七月七日のことであります。また、今年は、両国がその不幸な関係に終止符を打ち、国交正常化の共同声明を発して十五年になります。この歴史的な意義ある年に当たり、過去を顧み、両国間の子々孫々に至るまでの友好協力の大切さを改めて銘記することが必要であります。
 我々は、日中共同声明の原点、すなわち、第一に、日本が戦争を通して中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省すること、第二に、日本は中華人民共和国が中国を代表する唯一の合法政府であることを理解することという二点を想起しなければなりません。幸いに日中両国は、この十五年間、歴代内閣を初め官民の努力によって基本的には良好な関係を維持発展させてきました。しかるに、最近、教科書問題、光華寮問題を初めとして日中友好関係に暗影を投げかけるような事態が起こっております。まことに憂慮にたえません。私は、かかる問題の解決に当たっては、「大事を化して小事となし、小事を化して無事となす」との精神をもって対処すべきだと思います。
 特に京都の中国人学生寮の光華寮をめぐる訴訟そのものについては、最高裁判所の判断にまつべきものであります。しかし、裁判所がもし上告理由書に基づいて民事訴訟法により政府に調査嘱託を行うような場合には、政府としては日中共同声明の原点に立って意見を述べられることを期待するものであります。総理の御所見をお伺いいたします。
 また、私は、朝鮮半島の緊張緩和がアジアのみならず世界の平和にとって有する意義を極めて重視しており、最近韓国が世界注視の中で立派に民主化の路線へ進むとの意思を明らかにしたことを喜び、その決断を高く評価するものであります。これによって韓国が安定と繁栄の大道を進み、来年のソウル・オリンピックが真の民族の祭典として世界の祝福の中に実施される見通しとなりました。我が国としては、同オリンピックの成功のためにあらゆる協力を行うべきであります。総理は、この韓国の決断についてどのようにお考えでありましょうか。
 また、私は、韓国と朝鮮民主主義人民共和国との間の対話がこれによって積極化され、朝鮮半島の平和的統一に向けて大きく一歩を進める契機となることを強く期待するとともに、我が国としてはこれへの環境づくりの意味からも、朝鮮民主主義人民共和国との間で民間レベルの経済、文化面における交流を増大させるべきであると考えるものであります。総理のお考えをお伺いいたします。
 私は、本年一月、さきの国会における代表質問において、「国民の信任を受け、国政を担当する政治家の倫理観が一般国民よりも一層厳しくなければならない」と申し上げました。私は、重ねて訴えます。政治にとって最も必要なものは国民の信頼であり、政治の浄化はそのための重要な条件であります。そのため、我々政治家は、おのれを省み、私心を去り、恐々としてみずからを持し、国を憂い、国民を思うことこそ政治家の使命であることを改めて認識するものであります。(拍手)
 政治の浄化に当たっての大きな問題は、同僚議員諸君も御承知のとおり、政治に金がかかり過ぎることであります。また、そのために議員個人は励ます会のような催しを行わざるを得なくなり、各方面から批判を受けております。この種の催しは一般庶民の感覚とはおよそほど遠いものであり、政治が国民の信頼を失うようなことにもつながりかねないのであります。政治倫理の問題を風化させてはなりません。私は、政治家個人の心構えとともに、選挙及び政治資金に関する諸制度の改革を真剣に検討すべきであると思います。(拍手)総理の御所見をお伺いしたいと思います。
 中曽根政権が誕生してから既に四年半以上が経過しました。本年十月末には、自由民主党の党則によって総裁の任期が終わることになります。したがって、本第百九回国会が現政権の最後の国会ということになるかと思われます。このような観点から、私は中曽根政権の業績を振り返ってみたいと思います。
 第一に、外交面であります。
 中曽根総理は、国際国家日本を唱えられ、日本の国際的地位をその経済力にふさわしいものに向上させるため、文字どおり東奔西走されました。総理就任直後の日韓関係の修復のための電撃的な訪韓と、日米関係強化充実のための第一回訪米を初めとする外遊の回数は、本日まで二十一回、訪問された国は二十八カ国に及んでおり、これは現職総理としての最多の記録であります。(拍手)
 この間に、総理は、世界の諸国の首脳との間に、経済面の話し合いのみでなく、政治対話、文化対話を進められ、軍縮・軍備管理の促進、自由貿易体制の擁護、開発途上国への支援を推進し、平和国家日本の立場を世界に明らかにされました。(拍手)また、五回のサミットにおいて、みずから積極的なイニシアチブをとって会議を推進されましたし、また、日米欧首脳との間には緊密な友情関係の構築に努められ、さらに、開発途上国に対しては政府開発援助の倍増に努力されるなど、その国際的な指導力は内外ともに認めるところであります。(拍手)
 第二に、内政面であります。
 中曽根総理は、「戦後政治の総決算」を標榜して、勇敢に各種の改革に取り組まれました。すなわち、前鈴木内閣の行政管理庁長官としてみずから着手された行財政改革を断行し、歴代内閣では初めて、省庁の統合や国鉄、電電、専売の民営化を初め、各種の堀難な改革を達成されるほか、財政赤字の克服に努め、財政の国債依存度の低下を実現されました。また、シャウプ税制以来という税制の大改革にも手をつけられ、それは現在、衆議院内に設けられた税制改革協議会において与野党間で審議が続けられております。同時に、総理は、二十一世紀に向けての人材育成を初め、教育改革にも着手されました。今やこの中曽根改革路線はとうとうたる大河となっており、何人もこれを逆流させることはできないのであります。(拍手)
 第三は、政治面であります。
 総理は、就任以来、常に政局の安定を念願し、そのために心を砕いてこられましたが、昨年夏の同日選挙において、自民党総裁としてついに三百四議席の獲得という結党以来の成果をおさめられ、いわゆる五十五年体制に終止符を打たれました。これによって与党は、多難な時代を乗り切っていく国民的基盤を固めることができたのであります。
 以上、内外にわたる中曽根総理の功績はまことに大きく、輝かしいものがあると言えましょう。
 中曽根総理、今日、時代は二十一世紀への大きな節目を曲がろうとしております。内外の政治的、経済的変動の荒波は、日本の社会にさらに一層大きな衝撃を与えつつあります。そして、このようなとき、我が国は政権交代のときを迎えます。
 「克く終りあること解し」とは中国の古い詩の一節であります。私は、総理がその任期の最後まで全力を振るってその職責を尽くし、有終の美を飾られることを切望するものであります。また、その後継者が政治的混乱や空白を生ずることなく誕生し、総理と同じく先人たちの業績を立派に継承して、これを発展させるよう心から期待いたします。(拍手)
 ところで、総理、理想的な宰想像とはどのようなものであるとお考えでありましょうか。最後にこの点をお伺い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#8
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 伊東議員にお答えをいたします。
 まず、緊急経済対策と補正予算の寄与度でございますが、伊東議員にお世話になりましたこの緊急経済対策の効果は、大体において我が国GNPの一・八%に相当する大規模な今度の経済対策である、そしてそれは我が国のGNPを二%程度押し上げるものと期待をいたしております。今後とも主要国との協調経済政策あるいは我が国内部の内需の拡大、円レートの安定化、失業対策等を充実させまして、さらに機動的な経済運営に努めてまいりたいと思います。
 次に、財政運営の基本方針でございますが、御指摘のように六十二年度末で我が国の公債残高は百五十三兆に及びます。一刻も早く財政の対応力を回復するため、引き続き財政改革を強力に推進する必要がありますと同時に、経済情勢に適切に対処する政策もまた必要になってきていると思います。
 これからの経済政策といたしましては、来年度の概算要求の問題等がございますが、やはり経常経費は厳しくこれを節減していく、投資的経費あるいは公共事業費は例外を認める、そういう考えに立って、NTT株等を最大限に活用して財政運営を考える。そして我々の目標は、公債依存率をできるだけ引き下げるという従来の方針を堅持する。公債依存率は、昭和五十八年に予算の中における依存率は大体二七%くらいであったのが、一九%台まで下げたわけでございます。しかし、これが昨年の補正予算によりましてまた二一%程度まで戻りました。やはりできるだけ二〇%を割るように今後も努力していくべきであると思いますし、赤字公債依存体質からの脱却という意味におきまして、赤字公債をできるだけまた削減していく。これらを来年度の概算要求等についても我々は考うべきではないかと私個人は考えております。
 次に、税制改革の問題でございますが、税制改革はぜひともやり遂げなければならない喫緊の課題であると信じております。衆議院議長のあっせんが、税制改革問題は「現在における最重要課題の一つ」であり、「直間比率の見直し等今後できるだけ早期にこれを実現できるよう各党協調し、最大限の努力をはらうこと。」と書かれておりまするのは、全く同感でございます。
 この中で「直間比率」という言葉が書かれておりますが、間接税をふやしていくという考え方の基本には、やはり日本は高齢化社会が目前に迫ってきておりまして、今我々が財政的な対策を講じておかなければ、今年金の掛金を払っておる若い人たちが私らの年になっても年金をもらうことができない、そういう危険性が出てこないとは言えないのであります。そういう意味において、今の若い人たちが我々の年代になっても安定的な安心した年金を得るように、財政的な措置を今しておこうというのがこの直間比率の問題なのでございまして、この点につきましては、ぜひとも国民の皆さんの御理解をいただきたいと思っておるのでございます。(拍手)
 なお、税制改革問題につきましては、税制改革協議会において検討が進められておりまするので、その審議の結果を見守りたいと思いますが、緊急経済対策に盛り込まれた所得税等の減税先行は、税制改革の一環として、恒久財源を確保しつつ、ぜひとも実施したいと念願しております。そのため、政府は、税制改正法案を本国会に提出して御審議をいただきたいと念願をいたしております。いずれにせよ、税制改革協議会の審議の状況を見守ってまいるつもりであります。
 雇用情勢につきましては、最近の統計が三・二%の失業増大を伝えておりまして、心配をいたしております。いろいろ統計を見ますと、有効求人倍率は〇・六五でふえておる。また、就職者も流通業等を中心にしてふえてきておる。しかし、失業率は非常に上がっている。これはどういうわけであるかと、いろいろ議論がなされました。
 労働省当局の報告によりますと、これは失業者が次に就職を得るまでの周のいわゆるミスマッチ、摩擦的失業の期間が長くなってきたのではないか。あるいは御老人で定年退職した方々、今までならばもう隠居されるという方々が、働きたいという意欲を持っている方が非常にふえてきておる。そういう意味において求職をする方々がふえてきておる。あるいは女性で職場に出たいという方々がまた奥さん方でも相当ふえてきておる。こういうものが原因ではないかと労働当局は説明しておりますが、いずれにせよ、不況業種あるいは関連地域を中心に、またさらに、業種、地域あるいは全体の情勢を踏まえまして有効、的確な政策を打っていく必要があると思います。
 三十万人雇用開発プログラム等の対策をまずとりあえず着実に実施し、職業転換訓練の活用とか、あるいはそのほかの有効な対策を実行していくつもりでございます。また、今の状況にかんがみまして、円滑な労働移動という問題も真剣に取り上げなければならないのではないかと思っております。
 労働時間短縮の問題は、労働者の福祉の問題あるいは雇用機会の確保等の問題から見ましても今や重要な問題でございまして、緊急経済対策にも盛られ、あるいは既に私が所信表明演説の中におきましても今回述べたところでございます。
 そこで、法定労働時間を週四十時間制にする労働基準法改正法案を今回提出しておりますが、ぜひこれを早期に御成立願いたいと思うのであります。成立した暁におきましては、やはり中小企業に配慮しつつ、できる限り早期かつ段階的にこの時間短縮の目標に向けて前進し得るように、私たちも具体的に努力していきたいと思っておるところでございます。
 公務員につきましては、四週六休を今試行しておるところでございますが、この制度化あるいは年次有給休暇の確実な消化あるいは土曜閉庁、こういう問題がございます。人事院におきましてこれらの問題についていかなる所見を持たれるか、人事院勧告等において注目し対応してまいりたい、そう考えておるところでございます。
 地価の高騰対策につきましては、東京等一部の地域におきまして、オフィス等に対する需要から暴騰している部分が出てまいりました。したがいまして、地価対策関係閣僚会議において、土地取引規制の強化、国等が土地売買等の契約を締結する場合の特別の配慮、規制、先ほど申し上げましたように、十年間転売を禁止するとか、本人でなければそれは買えない、そういうような関係にいろいろ配慮いたしていくということ、あるいは土地税制の見直し、土地関連融資の適正化等を内容とする対策を今実行しつつあるところでございます。
 この規制強化につきましては、前国会で国土利用計画法の一部改正法が成立いたしました。監視区域制度を積極的に活用するよう地方公共団体を誘導してまいりたいと思いますし、税制につきましても、税制改革協議会において検討がどう進められるか見守りたいと思います。また、先日、新行革審に対しまして、地価等土地対策に対する基本的かつ総合的な改革の方策について提言願いたい旨を要請したところでございます。いずれにせよ、規制、税制、金融、総合的にこれから強力な対策を進めてまいりたいと思います。
 円高差益の還元の問題につきましては、昨年来、累次にわたる政策を行いました。本年一月からの年間約二兆円の規模の電力、ガス料金の引き下げ、輸入牛肉の展示販売における小売目安価格の引き下げのほか、円高メリットに関する消費者等への広範な広報活動も実施してまいりました。昭和六十一年度の消費者物価は、前年度に対して横ばいになる。昭和三十三年度以来、二十八年ぶりの物価安定を実現しておるわけであります。政府としては、円高差益等の経済全体への一層の浸透を図るために、引き続き公共料金等について差益の発生状況を見きわめつつ適切に対応してまいる等、円高差益等の還元に努める所存でございます。
 今まで、電力、ガス料金の引き下げあるいは輸入牛肉、畜産物安定価格帯の引き下げ、小麦の政府売り渡し価格の引き下げ、国内航空運賃の割引制度の拡充、国際航空運賃の方向別格差の縮小、国際通信料金の利用者の負担軽減あるいは外国郵便料金の引き下げ、石油製品の価格動向の監視、配合飼料価格の引き下げ、輸入消費財価格動向等の調査、あるいは百貨店やスーパーにおける円高活用プランの実施、並行輸入等に関する調査の実施等を実行いたしておりまして、最近ようやく消費財につきましても円高還元が普遍的に浸透してきつつあります。この傾向をさらに厳重に監視してまいりたいと思います。
 物価の安定につきましては、今後は、為替レートあるいは原油価格等の不透明な要因もございますが、やはり円高メリットが経済全体に浸透していくことを考えますと、引き続き物価は安定的に推移するものと考えております。物価の安定は経済成長の基盤であり、国民生活の基礎をなすものでありまして、最近の大都市圏の地価の動向等も我々は注視しつつ、物価の安定については今後とも積極的に努力してまいりたいと思います。
 農政につきましては、農業は国のもとであり、その役割は、食糧の安定供給等々極めて重要な役割を果たしております。今後、農業を産業として自立させ、担い手が明るい希望を持って農業に取り組めるようにすることが必要でございます。このために、サミットにおきまして、経済宣言の中にも、日本側の強い主張によりまして、食糧供給の安定、それから国情に応じた政策の弾力性、さらに環境問題に対する配慮等々の文章を挿入していただいたわけであります。これらの政策を実行いたしたいと思っております。
 さらに、二十一世紀に向けての農政の基本方向に関する農政審議会の報告を尊重いたしまして、農協の皆さんと一致して協力しつつ、構造政策を積極的に進め、生産性向上を図り、農業の体質強化に努力してまいりたいと考えております。米の消費拡大につきましては、日本型食生活の維持定着を図ることを基本といたしまして、米飯学校給食の計画的推進を初め、各般の施策を実行してまいりたいと思います。
 朝日新聞阪神支局襲撃事件は、極めて反社会性の強い凶悪な犯罪でございます。犯人が早期に検挙され事件の全容が解明されるよう、今全力を挙げてやらしておるところであります。また、浜松市における住民、弁護士等に対する暴力事件も、同じようにこれは反社会的な凶悪な犯罪であります。今後とも徹底した取り締まりと関係者の保護の万全を期してまいる所存でございます。
 サミットでの経済面での成果。このサミットの問題につきましては、今回のベネチア・サミットは歴史的な分岐点にある。一つは、国際経済におきまして通貨の安定がこれで確保され、成長への大きなステップがとられるかというその大きな転換点に来ておる。もう一つは、米ソ核兵器の削減交渉に向けて西側陣営の結束を図って、レーガン・ゴルバチョフ会談を早期に開いて、核軍縮を着実に前進させる発射台にしたい。そういう意味においてベネチア・サミットは重大な意味を持っておったと思います。この二つの問題について成功裏に終わったと思うのでございます。
 そのほか、経済政策については、為替相場安定の共通認識、重要性、政策協調と多角的監視の強化、構造政策の重要性、保護主義圧力への憂慮とウルグアイ・ラウンドの重要性、そして自由貿易の推進、中所得債務国への支援と最貧国の抱える諸問題への対応の促進等、意見の一致を見まして、協力してこれを推進していくということを決めた次第でございます。今後とも世界経済の立ち直り、繁栄のために努力してまいりたいと思う次第でございます。
 INFアラスカ配備問題につきましては、先ほど来申し上げているように、日本の基本的立場は世界から核兵器を追放すること、言いかえればグローバル・ゼロを達成するということ、それからアジアとヨーロッパで不平等であってはならない、特にアジアの犠牲においてヨーロッパがゼロになるということを我々は黙視することはできない、平等でなければならない、これが我々の基本的立場でございます。
 しかし、レイキャビクのいわゆる幻の合意と称するものの中に、ソ連はシベリアに百基、どうしてもSS20を置きたいという強い要望を出し、アメリカは、しからばアラスカを含めてアメリカの本土に百基置くという権利を留保する、そういうような駆け引き、交渉は行われたやに聞いておるわけであります。今後、軍縮交渉におきましては、やはり核兵器はゼロにする、SS20は全廃する、そういう方向で我々は強く推進してもらいたいと、レーガン大統領その他の皆さんにも私は強くお願いしてきたところでございます。
 今後の推移を見守るわけでございますが、交渉の過程におきまして、ソ連がどうしてもアジアに百置かなければならぬと強く主張した場合に、これをゼロにするためには、アメリカがそれに対応する相殺の材料を持たなければ、ソ連は百やめないという危険性が出てくる、そういう悪い状況の想定もせざるを得ない。もしそういう状況が出る場合には、ともかくゼロにするために、アメリカが交渉の材料としてそのような考えを持つということを容認し、これを支持する、そういう趣旨のことを私は申し上げて、ただし、これはシベリアの百をなくすための交渉ですよ、その材料ですよ、そのことを強く言明しておいた次第でございます。(拍手)
 そういうような意味におきまして、やはり軍縮交渉を有効に成立させるためには、我々は今後とも関係各国と接触して積極的努力をしていかなければならないと思うのです。最近の情報によりますと、やはりSS20におきましても全部ゼロがいい、そういうような議論が関係国の中に出てきつつあるやに聞いております。これは、一つは国際世論もございますし、もう一つはやはり検証の問題がございまして、百残すとその検証が非常に難しくなる、いっそゼロにしてしまった方が検証がやりやすい、そういうような意味におきまして、全部ゼロにしようという機運が少しずつ生まれつつあるやに聞いております。私は、この機運を実らせまして、ぜひともアジア・ゼロも実現したい、今後とも努力してまいるつもりなのでございます。(拍手)
 次に、今伊東議員がここで御演説をなさいました心の国際化という問題は非常に重要な問題であると、私も今非常な感銘を持って承った次第でございます。やはり何といっても、国家を形成し世界を形成しているのは人間であり、結局人間の心でございます。ユネスコ憲章にもありますように、戦争は人間の心で始まると書いてありましたが、国際化も人間の心から始まります。特に日本のように長い間閉鎖社会であった国におきましては、いろいろ外国になじまない制度や問題も残っております。できるだけ速やかにこれらを検討し、改良を加え、そして直すべきものは直していくという大乗的な心構えが必要であります。
 私は、先般、この議場におきまして、マッキーバーの黄金律と孔子の言葉を引用いたしましたが、やはり世界の人と同じように喜びも苦しみも平等に分かち合う、そういう心ばえが国際化への心である、そのように強く考えて国民の皆様方にもお願いいたしたいと存じておるところでございます。
 光華寮の問題につきましては、いろいろな経過がございますが、光華寮問題は現在最高裁判所において争われておる法律問題でありまして、司法権独立、三権分立下の我が国におきましては、我々がここで裁判に介入することは避けなければならないのであります。しかし、我々はあくまでも、先般来申し上げました、この議場でも、我が国の国家意思は、中国は一つである、二つではない、厳然として中国は一つであると認識していると申し上げたとおりなのでございます。
 民事訴訟におきまして、最高裁からこの問題について調査嘱託を行うか否か、これは専ら最高裁判所が判断する問題でございますが、適正な法手続に従って最高裁判所からそのようなことが行われるようになる場合におきましては、政府としては、その嘱託事項につき回答し、対応することとすることは当然であると私は考えております。いささかもちゅうちょする必要はないと思うのであります。その場合におきましては必要に応じて、そのときの状況によりますけれども、日中平和友好条約あるいは共同宣言等の締結の経緯、そのときの政府の考え方、取り扱い方等について説明することになることもあり得る、そのように考えております。それ以上の段階、それ以上の問題につきましては、現段階において仮定の質問に具体的にお答えすることは、係争中の裁判にかかわる問題でありますので差し控えたいと考えます。
 韓国の政情につきましては、与野党があのような勇断を奪った妥協案を行いましたことについて、最大限の敬意を表する次第でございます。こいねがわくは、このような合意のもとにオリンピックが成功裏に終わることを念願してやみません。
 日朝関係につきましては、朝鮮半島問題は、第一義的には南北両当事者の対話により平和的に解決すべき問題であると考えております。政府としては、南北間の対話が再開され、さらに前進することを期待いたしております。我が国は、北朝鮮との間に外交関係はありませんが、今後とも、経済、文化等の分野における民間レベルの交流を積み重ねていくつもりであります。
 政治倫理の問題につきましては、政治浄化とおっしゃいましたが、まさに国民の信頼の上に政治は成り立ち得るものでございますから、道徳性というものは基本的な命題であり、政治浄化はぜひとも行わなければならないことであります。既に国会におきましても我々の行為規範が制定されておるわけでございますから、これらを遵守し、いやしくも誤解が生まれるようなことは防ぐように、戦々恐々として努力していかなければならないと思います。
 このような意味から、金のかからない選挙制度あるいは政党運営というものを我々はさらに追求し、改善を図っていかなければならないと思います。参議院議員選挙における比例代表制の導入も、実はそういう考えから行われたものでございました。また、選挙法の改正という問題も、さらに金のかからない合理的な選挙制度へ進むように与野党で十分土俵づくりを行ってまいりたいと思い、この点につきましては野党の皆様方にも御協力をお願い申し上げたいと思う次第でございます。
 政治資金の問題につきましても同様でございますが、やはりこれは、一つは各党のよって立つ財政基盤がそれぞれ異なっているところもございまして、各党の政治活動に直接影響する部分がございますから、各党間で十分論議を尽くして、そして合理的な、清潔な政治資金制度をさらに我々は得るように努力したいと思います。
 総理の理想的宰想像いかんという御質問でございますが、私のような程度の者がそういうことをここで申し上げる資格はないと思うのであります。
 しかし、伊東議員のせっかくの御質問でございますからあえて申し上げますれば、やはり総理大臣になる者は、国境を越えた人類愛を持たなければならない。(拍手)さらに、あふれるばかりの同胞愛と愛国心の強い者でなければならない。(拍手)そして、見識と人材活用の能力を必要とする。さらに、千万人といえども我行かんとする強固な意志と実行力が必要である、このように考えます。(拍手)このような人材は、この議場にも自民党にもたくさんいると考えております。
 以上で答弁を終わりにいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○副議長(多賀谷真稔君) 石田幸四郎君。
    〔石田幸四郎君登壇〕
#10
○石田幸四郎君 私は、公明党・国民会議を代表し、さきの政府演説並びに当面する課題に関して質問をいたします。
 総理、私どもは、一昨日、恐らくこれが最後であろうと思われるあなたの所信表明演説を伺ったのでありますが、この約四年半にわたった中曽根政治は、一体どんなものであったのか、本当に国民に貢献することができたであろうかと疑問を抱かざるを得ません。
 中曽根内閣のもとで貿易アンバランスは拡大し、ジャパン・バッシング、いわゆる日本たたきを招き寄せ、経済政策の失敗は円高不況による大混乱を招きました。また、GNP比一%枠の突破、日本列島不沈空母論、INF配備発言問題など、我が国の平和政策を大きく後退させたと批判せざるを得ません。国民生活を見れば、高齢化社会の到来が予測されながら福祉政策の立ちおくれが目立ち、不公平税制の中に国民が呻吟してきたというのが実感です。この約四年半の中曽根政治は、功罪相当はするどころか、国民の要望にこたえることが余りにも少なかったのではないかと思わざるを得ません。(拍手)
 総理、とりわけ選挙の公約違反ともいうべき売上税は、国民的反撃を受けて、あげくの果て廃案となってしまいました。この責任をどう受けとめておられるのか、所感を伺いたいと存じます。
 経済政策、経済運営の基本的姿勢について伺います。
 さて、総理、これだけの円高を余儀なくされて、なお六十一年度の貿易黒字は千億ドルを突破、経常黒字も九百億ドルであります。民間研究機関では、六兆円の緊急経済対策をもってしても黒字削減は期待できないといたしております。我が国の黒字体質の転換はどうすればできるのか。世界の中の日本として生きていくためには、経済運営、産業構造等の歴史的な転換点に立っているとの認識が必要であります。政府はいかなるビジョンを国民に提示しようとしているのか、国民はそれを知りたいと求めています。しかとお答えをいただきたい。
 ビジョンなき金余り時代を象徴するのがマネーゲームです。株価の高騰は大変な状況であります。
 六十一年度決算で製造業の経常利益は、急激な円高のため、前年度比二二・三%減の約三兆九千億円、これに対して金融機関の経常利益は四六。四%増の約四兆七千億円、製造業に対して初めて金融機関の経常利益が上回りました。これは金で金を買うマネーゲームがもたらした結果であります。日銀総裁も金融機関に警告を発していますが、マネーゲームに向かった余剰資金に対し、何らかの誘導策が必要であることは論をまちません。政府はいかなる対策をお持ちであるのか、伺うものであります。
 次に、内需拡大への政策転換について伺います。
 総理は、今ごろになって内需拡大を柱とした拡大均衡型積極財政への転換の必要性をお説きになります。私どもは、昨年の党首会談を初め、再三再四この内需拡大策を訴えてきたのでありますが、総理はことごとく否定されてきたのであります。しかるに、本予算も成立していない前通常国会中に内需拡大のための補正予算が議論されるなど、まことに醜態のきわみであります。党首会談での我々野党の要求や国民の声に、もっと謙虚に、もっと早く耳を傾けるべきであったとは思われませんか。所見を承りたいと存じます。
 内需拡大についてさらに具体的に伺います。
 この内需拡大は、今年度の補正予算だけにとどまるような及び腰では何の意味も持ちません。中期的な展望が必要と思われるが、六十三年度予算編成の方針とあわせて見解を承りたいと存じます。
 また、減税とともに、事業費ベースで二兆四千五百億円の公共事業が内需拡大の柱となっておりますが、この公共事業は、質的向上を基本とする住宅、居住環境整備が中心となるべきであるにもかかわらず、住宅建設は融資制度に偏り、公共事業の配分は従来の方針と余り変わっていないと言わざるを得ません。土地購入の不必要な公営住宅建てかえ促進などはもっと積極的に推進すべきです。中でも、災害事業予算として、災害が起こることを前提として三千四百億円を計上していますが、これでは単なる見せかけの予算が含まれているとの批判を招かざるを得ません。総理の見解を伺いたい。
 また、人口過疎県の不況に対する重点配分、中小企業への不況対策は甚だ不十分であります。さらに、昨年、政府は住宅減税に対し欧米諸国と比較して積極的な姿勢を示されたにもかかわらず、まだ本格的対策が打ち出されていないのはいかなる理由か。また、公団住宅では、二LDKの家賃が東京で二十五万円、分譲で七千万円というのでは、公団は公的使命を放てきしたのかと疑いたくなります。すべての国民に住宅権を保障する住宅基本法を早期に制定すべきだと考えます。見解を承りたいと存じます。
 さらに、内需を拡大するためには、民間活力を積極的に活用すべきであり、この障害となっている必要以上の規制についても大胆に見直すべきでありますが、方針を伺いたいと存じます。
 内需拡大と個人消費との関連について伺います。
 さて、個人消費は、GNPの六割を占める最大の内需項目でありながら、ここ数年間停滞のままにあります。これは可処分所得の減少によるもので、この施策なくして何が内需拡大かと言わざるを得ません。
 そこで、第一に、生産性上昇に見合った賃金引き上げが行われることが必要であります。最近の賃上げが生産性上昇を大きく下回っていたことは政府さえも認めている問題であります。生産性の向上を賃上げに適正に配分することによってさらに個人消費の拡大を図るべきであり、このために政府はどのように努力されるのか、明らかにされたいと思います。
 第二には、物から心の時代と言われる中で、消費も物中心からサービス、レジャーなど、時間消費型へ転換、拡大されつつあります。そのためには、労働時間の短縮、週休二日制の普及促進が基本的に必要であります。
 これらの課題にどのように対処されるのか、お答えをいただきたいと存じます。
 次に、雇用対策並びに地方財政対策について伺います。
 この五月の完全失業率は最悪の三・二%を記録し、失業者二百万時代を迎えようとしております。雇用の安定を図るためには、為替レートの安定とともに産業構造、雇用構造の転換が必要でありますが、この対応をどうされるのか。
 また、鳴り物入りの三十万人雇用開発プログラムも、雇用機会の開発は十一万五千人にすぎず、計画の約三分の一にとどまっております。しかも、雇用調整助成金等は十分な予算執行が行われておらず、弾力的な運用が伴わなければ実質的な効果は期待できないのであります。さらに、職業転換に対する広域的な情報交換、機構の整備がおくれているが、どう対処されるのか。
 また、公共事業を円滑に執行するために、地方負担については六十一年度決算の剰余金などによる地方交付税の特別加算を行うべきでありますが、所見を承りたい。あわせて、六十二年度地方財政対策をどのように講じていかれるのか、明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、六十二年度の所得税減税と税制改革問題について伺います。
 税金について、サラリーマンの八割以上が不公平と感じておることが明らかにされております。この大多数のサラリーマンの不公平感は、シャウプ税制以来四十年を経過する中で、資産所得、事業所得に対して優遇措置がとられ、所得税の課税ペースが、本来の総合所得から著しく労働所得へ偏ったことに起因しています。加えて、累進税率構造がもたらす負担の累増感や教育費、住宅費の重圧がサラリーマンに重税感を抱かせている、このように考えるべきであります。
 総理、不公平を是正し、中堅サラリーマンを中心に税負担の軽減を図るため、所得税減税は一兆円規模ではなく、個人消費の拡大を図るためにも思い切って二兆円規模にすべきでありますが、政府の再検討を求めたいと存じます。(拍手)
 その際の財源は、六十二年度分は一兆七千億の六十一年度決算の剰余金、NTT株式の売却益を充てるべきであり、恒久財源については税制全体の見直しの中で検討すべきで、マル優廃止など、取りやすいところから取るという安易な財源対策は慎むべきであります。住民税の減税問題とあわせ、どう考えているのか、お答えをいただきたいと存じます。
 さて、今回の所信表明演説を聞いても、政府・自民党の税制改革への取り組みには、どうしても、初めに直間比率の見直しありきと聞こえできます。この姿勢は、売上税廃案に見られた国民の大型間接税反対の意思を踏みにじるものであり、強く反対せざるを得ません。(拍手)我々政治家が今取り組むべきことは、個人消費拡大に足る大幅な所得税減税の実施と、同時にまず公平な税制の確立てあると私は思います。
 税制改革の基本的視点は、不公平税制の是正とそのための総合所得課税の徹底を図ることであります。当面は、キャピタルゲイン課税の強化、事業所得における各種の特例措置の見直し、利子配当所得の総合課税化を進めることなどであります。
 キャピタルゲイン課税について、政府の姿勢は極めて消極的であります。その理由として、一つには、捕捉が困難、二つには、アメリカの背番号制に近い捕捉方法も、背番号制反対の日本の実情から困難であるとしておられます。
 しかし、いろいろな論文を見るにつけ一様に指摘されていることは、どのような所得に対しても、程度の差こそあれ捕捉の困難さはつきまとう。現在、有価証券の取引は記録が残っており、情報処理技術が発達した現代では困難ではない。現に銀行には、預金者の本人確認、利子支払いについての支払い調書の提出義務があります。証券会社も、投資信託の収益分配金の支払いについての本人確認、支払い調書の提出義務づけが行われている現状からしても十分に可能であるとするのが支配的であり、政府の答弁は既に論破され、反対理由としての説得力がありません。
 キャピタルゲイン課税になぜ消極的なのか、その理由を改めてお示しをいただきたいと存じます。
 地価高騰に関連し、さらに税制の問題で伺います。
 現在、東京都心部は異常なほど土地の価格が高騰し、世界的な情報産業の中心地としてオフィスが不足し、住宅がビルに変化しております。問題は、企業の買収攻勢だけではなく、庶民の間に税負担の増大が起こり、固定資産税等は、まさに貧乏人は大都市に住むなの追い出し税に変化してしまっている点であります。企業の進出あるいは投資、情報の集積度あるいは都市構造の変化によって自分の住む土地の評価が上昇し、居住者は、本人の所得の増減に関係なく、三年ごとに見直しされる評価額によって、固定資産税や都市計画税の税率変化がなくとも、固定資産税等は容赦なく増額となる結果になっております。このままでは、都市に住むサラリーマンや年金生活者は、固定資産税等の増額にたえられなくなってしまいます。
 総理、出ていけ貧乏人では政治ではありません。一定規模以下の庶民の居住用の土地、建物だけでも断じて軽減をすべきであります。イギリスの固定資産税は、還付金制度によって所得との関係が配慮されており、このような検討がなされてしかるべきであります。しかと御答弁をいただきたい。
 一方、今日までの地価や株価の著しい上昇が、特に大法人の含み資産を膨脹させ、社会的不公平を拡大させております。この現状を是正するため、大法人の所有する土地や株式を再評価し、例えば十年分割などで納税する再評価税を創設すべきであると考えます。総理のお考えを承りたい。
 次に、土地対策と四全総問題に関連して伺います。
 先般政府が閣議決定した第四次全国総合開発計画は、我が国の二十一世紀を目指した国土づくりの基本となるものであり、それによると、多極分散型国土の形成が柱となっており、均衡ある国土の発展を図るとのことですが、具体策が明示されておりません。中でも、四全総の推進に際して最大のネックと危惧されている土地対策、地価対策については、従来のものを列挙したにとどまり、期待できそうな新たな対策は見当たりません。
 今や、経済の国際化とともに、東京都内の地価は激しい値上げ攻勢のあらしの中に立たされ、四LDKのマンションが十七億九千五百万円で売りに出されるなど、国民の精神構造さえ破壊しかねない状況にあります。世界経済の中における東京の重要性の高まりの中で、需要があるからとして、空間利用中心の本格的な再開発に乗り出すというだけで、果たして東京は確固たる未来を描けるのであろうかと素朴な疑問を持たざるを得ません。上下水道、交通機関の推移を見ても、水源確保の困難さ、解消されない通勤地獄、そして低速道路と化した都市部の高速道路や一般道路の渋滞、生活圏とビジネス圏との乖離等、問題は山積みしています。
 このような見方を後ろ向きの議論と一蹴する人々もおります。しかし、マンションが億ションに化けていくような状況下で、安定的な住宅を確保し、昼間人口千五百万時代の都市の機能が発揮できるのかという疑問は、どうしても払拭することができません。この東京の地価問題を解決するためには、地価対策や建物の高層化にも当然積極的な取り組みが必要でありますが、この際、思い切って、アメリカのニューヨークとワシントンの関係のごとく、政治行政機能と経済機能を分離させる必要があるのではありませんか。大規模な都市機能の分散こそ考えるべきであります。
 また、どんな構想を持つにしても、財源的措置が問題になります。我が党の矢野委員長は、相続税との関連で無利息国債を提案いたしました。なお、公共事業のための土地国債も検討してみてはどうでしょうか。与党の中にも、無利子の土地債券構想論議もあるやに伺います。
 今や、日本の個人貯蓄は五百五十四兆円を超えました。その一〇%を新首都建設の投資に回す工夫をすれば、実に五十五兆円に及ぶ財源調達の可能性があります。現在の延長線上に都市を再開発する場合、巨大な投資が必要であり、その多くは土地代に食われてしまうことは目に見えております。したがって、新しい都市機能を新しい地域につくるべしとの考え方は、経済効率の上でも十分整合性を持つものと思います。政府は、まさに思い切った国家百年の計に立つべきだと思いますが、総理の御所見を承りたいのであります。(拍手)
 平和問題に関連して伺います。
 総理、あなたは、しばしば核兵器及び運搬手段を含めた米ソ軍事力の均衡によって平和が維持されていると主張してきました。しかし、この軍事均衡論は、地球をダモクレスの剣の下に置き、地球上のすべての人々に恐怖を与えていることをあなたは否定をしないでしょう。このオーバーキルの核兵器の使用に歯どめがかかっている最大の理由は、軍事均衡論以上に、歴史の実証としての広島、長崎の惨状の重さなのであります。
 戦後四十年を経過して、亡くなった方も多く、被爆者の声はそれに従って小さくならざるを得ません。原爆被爆者特別措置法によって各種医療、手当が支給されていますが、戦争の惨劇を一身に受けた人々に救済されるべき国家補償の基本的制度がない矛盾は、被爆者だけではなく、私たち国民にとっても苦痛であります。確かに、すべての戦争被害者の立場を考えれば対応は困難かもしれませんが、まず原爆被害者を救済するといっても、それを非難する人はいないと私は確信をいたします。被爆者援護法の制定問題について、総理の所信をお伺いいたします。
 次に、外交問題について伺います。
 過日、我が党の矢野委員長を団長とする公明党第十六次訪中団が中国を訪問し、ケ小平中央顧問委員会主任を初め、中国の最高指導者の方々と会談をいたしてまいりました。中国側は、日中復交十五周年を迎えた今日、両国関係は一定の順調な進展を示しているとの認識と配慮を示しながらも、日中共同声明、平和友好条約の諸原則がなし崩し的に空洞化しつつあるのではないかとの強い懸念を示しております。
 我が党訪中団は、光華寮問題について、当然、三権分立、司法の独立、不介入の日本の政治、法律制度について、また、この件について中曽根内閣も苦慮している事情について、矢野委員長より繰り返し強く説明したところであります。にもかかわらず、教科書問題、靖国神社公式参拝、ズ・ダン号事件、防衛費のGNP比一%突破など、配慮を欠いた一連の問題が中国側の危惧を生ぜしめていることを十分に認識すべきであります。
 我が国外交にとって今必要なことは、我が国から見た世界や中国という視点だけではなく、他国から見た日本という視点、つまり世界や近隣諸国から見た日本という視点は、我が国の自己点検に際してますます必要であり、とりわけ、歴史の上で傷跡を今なお心に残している諸国から見た日本という視点と心情を忘却してはならないと思います。
 総理、この点をどう考えておられるのか。対中国政策並びに私が指摘した一連の問題に対する見解を伺いたいのであります。
 また、従来懸案となってきた在日外国人に対する指紋押捺制度の全面撤廃問題は、日韓両国首脳間の合意事項であり、放置されて済まされるべき問題ではございません。見解を承ります。
 さらに、さきのベネチア・サミットでは、総理はアラスカへのINF配備を容認するとの提案を行ったと報じられております。これは、平和憲法、核被爆国として我が国が従来から主張してきた核兵器廃絶という国の基本方針に反するものであり、国民世論とは全く異なっていると指摘せざるを得ません。核兵器全廃を前提として発言したと言いわけをされていますが、全廃と配備とは全く異なった次元の考えであるべきでありまして、私どもはこれを容認することはできません。総理の提案を撤回するよう要求いたします。
 次に、防衛の問題について伺います。
 その第一は、売上税相当額分百十六億円が不用となり、なおかつ大幅な円高差益による不用額の算出が明らかになった今、補正予算で減額修正をすれば、六十二年度の防衛費は文字どおり一%枠内であり、総理に守る御意思があれば、今からでも五十一年十一月の閣議決定を遵守することができ、一月二十四日の新閣議決定は不必要であり、これを撤回すべきであります。総理の明快な見解を承ります。
 その第二は、六十三年度防衛予算概算要求づくりに際し、コンピューターとミサイルの塊と言われているエイジス艦の予算化を初要求する動きがあります。平和憲法に基づく専守防衛の基本軸を守るのであれば、艦艇の性格から見て、日本の防衛に千五百億円以上と言われるエイジス艦の必要は考えられません。我が国において六十三年度になぜエイジス艦導入を計画し、シーレーン防衛を強化しなくてはならないのか、その理由を明確にしていただきたいと存じます。
 第三に、こうしたシーレーン洋上防空の行動範囲の拡大、それに伴うシーレーン洋上防衛費の拡大は、一%どころか、際限なく日本の防衛費が拡大するのは目に見えております。また、昨年末、日米で調印された初の有事シミュレーション、シーレーン日米共同研究などは、憲法第九条の個別的自衛権では説明でき得ないことは明らかであります。総理の御見解を承りたい。
 質問の最後に、昭和五十七年からスパイ容疑で朝鮮民主主義人民共和国に抑留をされている第十八富士山丸の紅粉船長ら二名の安否が心配されておりますが、この問題に政府はどのように取り組んでおられるのか。御家族の方々も困難な生活を強いられていると聞いております。事件の早期解決と家族への援助を政府の責任において行うべきことを人道的見地から強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#11
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 石田議員にお答えをいたします。
 まず、中曽根政治の国民に対する貢献度という御質問でございますが、これは、点数は先生がつけるものでありまして、我々は受験生でありますから、国民の皆さんや国会議員の皆さんにおつけ願いたいと思うのでございます。ともかく一生懸命やらしていただいておりましたが、そう成果もなく、反省をしておるばかりでございます。
 次に、売上税の問題でございますが、所信表明演説においても申し上げましたように、国民の皆さんの十分な御理解を得られなかったのは甚だ残念でございます。しかし、最近におきましては、やはり税制改革は必要である、そういう国民の世論は非常に広範囲に広がり、深まってきたと考えられます。やはり一月以来の苦労もそうむだではなかった、そういう気もいたすのであります。(拍手)どうぞ税制協議会におきまして与野党で適切な案をつくっていただきまして、国民が欲しておる税制改革をぜひとも実現さしていただきたいと念願いたしております。
 次に、黒字体質の転換の問題でございますが、我が国は対外均衡と国内均衡という二つの均衡を同時に達成しなければなりません。したがいまして、需要面においても供給面においてもさまざまな構造改革を行っておるところでございまして、今後とも経済審議会の建議を踏まえ、規制の緩和、財政の活用、住宅の供給、輸入の拡大、労働時間の短縮、情報基盤、高速交通ネットワーク等の社会資本の充実に努めてまいります。
 マネーゲームの問題でございますが、六十二年度予算及び今回の補正予算においても、民間資金の活用について工夫しているところでございます。NTT株売却収入の活用、民間都市開発推進機構の創設等でございます。いわゆるマネーゲーム的な動きについては、いたずらに投機的なものにならないように、大蔵省を通じて随特注意もしているところでございますが、今後とも監視を強化してまいりたいと思います。
 金融機関の土地関連融資につきましては、金融機関の公共性を自覚し、いたずらに投機的なものに融資することのないように指導してまいりたいと思います。
 内需の拡大策につきましては、緊急経済対策によりまして補正予算をお願いしておるところであり、早期に成立さしていただきまして、内需拡大に資したいと思っております。同時に、円レートの安定化につきましても今後努力してまいります。
 中期展望の問題でございますが、内需拡大のために公共事業等を拡大するということは、臨時・緊急の措置として許されるべきものであり、今回のように財政出動による経済対策が要請されるという状況のもとでは、今後におきましても積極的に、必要に応じて継続的に対応することが必要であると考えております。
 六十三年度予算編成の方針につきましては、これは概算要求等を通じてこれから努力するところでございますが、経常経費はやはり昨年どおり厳重な節減を行う、公共投資あるいは投資的経費等につきましてはこれの例外を認める。いずれにせよ、行革の目的を達するように、今後とも引き続き基調としては努力していくべきであると考えております。
 次に、公営住宅の問題でございますが、公営住宅の建てかえ等は、居住水準の向上及び土地の高度利用を図りつつ、今後とも積極的に推進してまいりたいと思います。
 次に、災害復旧費の予算の件でございますが、これは過去の経験則等から見まして発生されると見込まれる災害等について、その早期復旧と内需拡大を図る見地から三千四百三十五億円を決めた次第でございます。
 経済対策の不況地域への配慮についてはお示しのとおりでございまして、工業再配置促進法あるいは産業構造転換円滑化臨時措置法等に基づく特定地域の追加指定、あるいは一般公共事業の事業費の追加に当たってもそれらの地域に充当するように努力していく。それらのことを今やっておる最中でございます。
 中小企業への不況対策につきましては、六十年十二月以来、新転換法、新地域法の制定を初め、数次にわたり中小企業の構造転換対策を推進いたしております。親企業の構造調整に伴い影響を受ける下請中小企業の新分野進出等を円滑にするために、低利融資及び技術開発助成制度を創設いたしました。今回の緊急経済対策におきましても中小企業対策の拡充を決定して、補正予算案においては約四百五億円を計上しているところでございます。
 住宅減税につきましては、六十二年度の税制改正において、住宅取得促進税制の税額控除の対象期間を従来の三年から五年に延長するなと思い切った拡充を行いました。最近における住宅の情勢は、年間百五十万戸の水準で順調に推移いたしております。
 住宅基本法につきましては、国民のコンセンサスに基づいて制定さるべき性格のものでありますが、現時点においてはまだ過早ではないかと考えます。
 規制の見直しについては、引き続き強力にこれを推進してまいるつもりでございます。
 内需拡大と賃上げの問題でございますが、経済成長の成果を賃金等に適正に配分する必要があるという御指摘は正当であると思います。しかし、賃金については労使が自主的に解決することが原則でございまして、政府としては、物価の安定、雇用の確保、勤労者生活の改善向上等に必要な環境整備等々を実行してまいりたいと思います。
 労働時間の短縮、週休二日制の促進等につきましては、先ほど来申し上げているとおり、政府としては、この点につきましても誠実に努力してまいりたいと思います。労働基準法の改正法案を提出しておりますので、どうぞ早期成立をお願いいたしたいと思います。
 雇用の安定につきましても同様でございまして、三十万人雇用開発プログラムを中心といたしまして、事業転換対策あるいは地域活性化対策等も織り込みまして、雇用対策に万全を期してまいりたいと思います。
 追加公共事業等と地方財政対策でございますが、本年度は追加公共事業に係る地方負担が極めて多額に上ることから、事業の円滑な実施に支障が生じないよう適切な財源措置を考えることが必要であると考えております。具体的な方針は、今後関係省庁で協議し、税制改正の取り扱いいかんにより必要となる地方財政対策の見直しとあわせて決定する予定でございます。
 所得税減税については、総額一兆円を下らない規模の所得税の減税を政府は考えておりまして、税制改革の一環として、恒久財源等も確保しつつ実行したいと思います。税制協議会の協議の推移を見守っておるところであります。
 減税の財源につきましては、先ほど来申し上げておりますように、やはり恒久財源というものを確保する必要があると思っております。NTT株式売却益は、国民共有の負債である国債償還に充てることとしております。この原則は、今回の補正予算に盛り込んだ無利子貸付制度の導入によっても変わるものではございません。やはり一時的な財源であるNTT株式売却益を恒久的な財源をもって充てるべき減税に使うことは不適当である、こう考えております。
 住民税の減税については、六十二年度については、住民税の仕組み上、課税事務の全面的やり直しによる市町村、給与支払い者の事務処理量が膨大となる等の問題がありますが、いずれにしても、減税の内容、実施方法、実施時期等について、現在衆議院税制改革協議会において審議しておりまして、その審議の推移を見ながら地方税の問題も検討すべきであると考えます。
 直間比率の見直しについては、先ほど来申し上げているように、年金問題を考えますと、若い人たちが安心して、現在の換金が続けられ、自分が老後になっても年金がいただけるようにするという意味におきまして、この財源を直接税に求めることは困難でありまして、やはり間接税によりまして恒久的な安定的な財源を確保して、若い人たちの年金財源を確保するという意味の直間比率の見直しということもぜひお考え願いたいと思うのであります。衆議院における協議会を見守っておる次第でございます。
 税制改革の基本的視点につきましては、個人所得課税は総合課税を基本とするものでありますが、利子所得や有価証券譲渡益について適正公正な課税の執行を図るためには、補足、管理等のための実効ある措置が不可欠であります。現在の納税環境にかんがみまして、これらの所得を直ちに総合課税の対象とすることは現実的でないと考えております。
 なお、租税特別措置については、従来から厳しい見直しを行ってきております。いずれにしても、協議会を見守ってまいりたいと思います。
 キャピタルゲイン課税につきましては、有価証券譲渡益課税についても恐らく税制協議会においても御審議が行われるでしょう。推移を見守っておる次第でございます。
 地価の高騰と固定資産税の問題でございますが、六十三年度の固定資産税に係る土地の評価がえについては、目下自治省において全国的な視点から評価の基準となる地点について適正な評価が行われるよう調整を行っておるところであり、この場合、異常な地価高騰の状況にも十分配慮しながら課税団体と調整を図っておると聞いております。既に、住宅用地については課税標準額を二分の一、さらに、一定規模以下の小規模住宅用地については四分の一とする軽減措置等を講じてきておるところであり、居住用資産に対してこれ以上の特例措置を講ずることは、市町村の財源に与える影響等がありまして問題であります。
 なお、固定資産税の負担については、昨年の十月の税制調査会の答申において、「多くの納税者に対し毎年課税されるという固定資産税の性格を踏まえて、負担の急増を緩和するためなだらかな増加となるような配慮が必要である。」とされているこの趣旨を踏まえて対処してまいる所存であります。
 土地、株式に対する再評価税でありますが、御提案の大法人の土地、株式に対する再評価税については、所得課税として考えますと、未実現のキャピタルゲインに対する課税となって、適当であると思いません。なぜ大法人の土地、株式だけを再評価の対象とするのかという指摘もございます。さらに、企業の土地への課税は、今不況にあえぐ、例えば鉄鋼とか造船とかという装置産業等に極めて重大な影響を与えるという問題もございます。それらのことを慎重に考えなければならぬと思っております。
 東京の地価問題解決につきまして機能分散を図るべきであるという御質問は私も同感でありまして、多極分散型国土の形成を図る今回の四全総を実行してまいりたいと思います。
 土地国債の問題につきましては、相続税との関連で提案されている無利子国債につきましては、矢野委員長にもお答えしましたとおり、税負担の公平、財政コスト、金融市場への影響等の面で問題があります。したがって、適当でありません。
 公共事業のために土地国債を発行してはどうかということについては、既に現行の建設公債の対象とされておりまして、新たにこのような公債を発行する必要は考えておりません。
 被爆者援護法につきましては、原爆被爆者対策について、被爆者の受けた放射線による健康障害という他の戦争犠牲者に見られない特別の犠牲に着目して、広い意味における国家補償の見地から、被害の実態に即した措置を講じておりまして、今後とも現行の原爆二法により対処する考えでおります。
 我が国の外交姿勢、対中国関係でございますが、過去の歴史に謙虚に学び、一層の友好協力関係の強化に努める所存でございます。安定的な友好協力関係を発展させていくことは、我が国外交の揺らぐことのない基本的な柱の一つであります。そして、日中国交正常化に当たり我が国政府が表明した過去の戦争に対する認識や一つの中国との立場は、今後とも不変不動であるということを強調申し上げたいと思います。
 さまざまな問題については、今までもその都度中国側に説明をいたしまして御理解をいただいてきておりますが、今後ともそのように努力してまいるつもりであります。
 指紋押捺制度については、昨年九月に全斗煥大統領に私が説明をいたしまして、この姿勢を評価していただいた次第であります。既にさきの百八通常国会に外国人登録法の一部改正法案を提出しており、今国会においてぜひ成立するようにお願いいたしたいと思います。
 INFアラスカ配備問題につきましては、ここで先ほど来何回も申し上げましたようにグローバル・ゼロ、アジアとヨーロッパを平等にする、そういう方針のもとに、米ソ交渉の際にこれをぜひ実現するがための一つの材料としてそのようなこともあり得べしという可能性を認めたということで、あくまで目標はシベリアの核もゼロにする、INFをゼロにする、そういう目標であるということを申し上げる次第であります。
 防衛費の対GNP比の問題でございますが、今回の補正予算において、防衛関係費の外貨関連経費については、これまでの為替レートの推移を踏まえて四十一億円を減額してあります。売上税関連部分については、衆議院議長のあっせんによって今協議が続けられているところから、防衛関係費においても他の経費と同様、補正を行いません。これにより、補正後の防衛関係費は対GNP比一・〇〇三%となります。今後も慎重に節度ある防衛力を考えてまいりたいと思い、一月二十四日の閣議決定を撤回する考えはございません。
 エイジス艦導入でございますが、これは中期防において、洋上防空体制のあり方に対する検討結果を踏まえて、護衛艦の対空ミサイルシステムの性能向上を検討の上、必要な措置を講ずることとしておるのであります。エイジス艦を導入するか否かは今後の検討にかかっておりまして、六十三年度導入は未定でございます。
 シーレーン洋上防空と防衛費の問題でありますが、我が国は従来から周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域において、有事の際、我が国の海上交通の安全を確保し得ることを目標としております。洋上防空についてはこのような従来からの考え方のもとに、近年の経空脅威の増大にいかに効率的に対処するかという観点から検討しております。いずれにいたしましても、中期防の所要経費の枠内で今後とも節度ある防衛力を行うという方針は変わっておりません。
 次に、自衛権との関係でございますが、「日米防衛協力のための指針」に基づき、日本に対する武力攻撃がなされた場合に、自衛隊及び米軍が日本防衛のための整合性のとれた作戦を円滑に、かつ効果的に行うというのがこのシーレーン防衛の共同研究なのであります。本研究は、我が国の憲法上の制約に関する諸問題は研究の対象とせずとの指針の前提条件に従い、憲法上認められている個別的自衛権の範囲内で研究したものでありまして、御指摘の点は当たっておりません。
 さらに、第十八富士山丸問題については、本件を日朝間の最大懸案の一つとして重視し、あらゆる方途を尽くして二名の日本人の早期釈放、帰国のために北鮮と話し合いをし、努力してまいりました。遺憾ながら実現せず、御家族の御心労いかばかりかと心痛にたえない次第でありますが、今後とも一刻も早く釈放、帰国が実現するように努力する次第でございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#12
○国務大臣(宮澤喜一君) 財政と税制の問題につきましては総理大臣がほとんどお答えになりましたので、一、二点補足をさせていただきます。
 まず、昭和六十二年度に減税先行をいたしますとしました場合の財源でございますが、六十一年度分の剰余金はかなり大きなものが出ておりますので、この純剰余金と、それから六十二年度の財政の歳出歳入を幾らかやりくりをいたしまして減税財源をつくれるのではないかというふうに考えております。
 それで、NTTの売却益を減税財源にするかどうかということの考え方でございますが、先ほど総理がお答えになりましたとおりで、やはり過去の国民の努力の蓄積でございますので、この売却益は、過去の負債の償却であるとか、あるいはこれからの資産の形成であるとか、そういうことに使うべきではないか。かたがた、これは一遍限りのというか、何年間かは続きますが、恒久財源でございませんので、やはり減税財源にすることはいかがかというふうに私どもは考えております。
 それからもう一点は、利子所得、有価証券のキャピタルゲインにつきましてのお尋ねでございまして、確かに、個人のすべての所得を原則としては総合して、累進で総合課税をするというのが私どもも理想だというふうに考えております。ただ、現実の問題として見ますと、過去の経験から、利子所得や株、有価証券の譲渡益というのは、公平、公正に捕捉をし管理をするということが、実際上の税務執行体制から見でなかなか容易でないということがございまして、この点は、したがって体制を強化していかなければならないというふうに思っております。
 現実に、前国会に御提案いたしました政府の税制改革案におきましては、有価証券の譲渡益課税につきましては課税対象を大幅に拡大する、行政の耐え得る範囲で拡大をするということを御提案をいたしたところでございましたが、今後ともそのように行政の努力をいたしてまいりたいと考えております。
 以上、二点補足をいたします。(拍手)
    〔国務大臣平井卓志君登壇〕
#13
○国務大臣(平井卓志君) 雇用問題についてお答えをいたします。
 最近の雇用失業情勢は、求人の増加等一部に若干改善の兆しが見られておりますが、不況業種またその関連地域を中心に全体として依然厳しい状況であります。経済また産業構造の転換のもとにおいて雇用の安定を図るためには、もう既に御案内のように、経済また産業政策と一体となった総合的な雇用対策を強力に推進することが重要であると認識をいたしております。
 このために、三十万人雇用開発プログラムの着実な実施に努めると同時に、特に職業転換訓練の活用による、失業を経ない企業間、産業間移動の円滑化、地域雇用開発等促進法に基づく地域の雇用開発の促進等、産業構造の転換に対応した雇用対策を推進し、失業の予防、雇用機会の開発に最大限の努力をいたしたいと考えております。
 いま一つは、雇用調整助成金制度の弾力的な運用が不可欠でないか、また、職業転換に必要な広域的な情報交換等の体制整備はどうかというお尋ねでございますが、最近の厳しい雇用情勢の改善を図りますためには、やはり失業の予防や雇用機会の開発を含めて、各種施策の大幅な拡充強化が必要であろうと考えております。
 こうした観点から、三十万人雇用開発プログラムにおきまして、雇用調整功成金等の助成率を大幅に引き上げたところでございまして、これは四月から実施をいたしております。こうした制度が十分に利用されますように努力していく考えでございます。さらに、制度の効果的な利用が図られますように、先般決定されました緊急経済対策におきましても、各種助成金制度等の要件緩和等を含めまして改善の措置を盛り込んでおります。これは七月から実施をいたしております。これら制度の周知徹底と機動的また弾力的な運用につきましては、既に重ねて全国安定所に指示をいたしております。
 また、産業構造が急速に変化する中で円滑な職業転換を図っていくために、求人、求職を中心とした雇用情報の広域的な提供、また、職業安定機関と職業能力開発機関との密接な連携による雇用対策の推進等に努めてまいる考えであります。なお、広域的な雇用情報、求職情報等のオンライン化でございますが、飯田橋安定所では、既に一都四県において発足をいたしまして、本年度中に全国ネットが完成する予定でございます。
 以上であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#14
○谷垣禎一君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明九日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#15
○副議長(多賀谷真稔君) 谷垣禎一君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十六分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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