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1986/05/08 第108回国会 参議院 参議院会議録情報 第108回国会 予算委員会 第7号
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1986/05/08 第108回国会 参議院

参議院会議録情報 第108回国会 予算委員会 第7号

#1
第108回国会 予算委員会 第7号
昭和六十二年五月八日(金曜日)
   午後一時一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月七日
    辞任         補欠選任
     斎藤 文夫君     上杉 光弘君
     田辺 哲夫君     坂元 親男君
     上田耕一郎君     佐藤 昭夫君
     勝木 健司君     柳澤 錬造君
 五月八日
    辞任         補欠選任
     橋本孝一郎君     山田  勇君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         桧垣徳太郎君
    理 事
                佐藤栄佐久君
                原 文兵衛君
                降矢 敬義君
                村上 正邦君
                吉川 芳男君
                野田  哲君
                峯山 昭範君
                沓脱タケ子君
    委 員
                青木 幹雄君
                石本  茂君
                上杉 光弘君
                梶木 又三君
                金丸 三郎君
                北  修二君
                坂野 重信君
                坂元 親男君
                下稲葉耕吉君
                杉元 恒雄君
                関口 恵造君
                竹山  裕君
                名尾 良孝君
                永田 良雄君
                野沢 太三君
                鳩山威一郎君
                林 健太郎君
                林田悠紀夫君
                増岡 康治君
                吉村 真事君
                稲村 稔夫君
                粕谷 照美君
                福間 知之君
                矢田部 理君
                安恒 良一君
                山口 哲夫君
                塩出 啓典君
                高桑 栄松君
                鶴岡  洋君
                佐藤 昭夫君
                内藤  功君
                柳澤 錬造君
                山田  勇君
                野末 陳平君
                喜屋武眞榮君
                青木  茂君
   国務大臣
       内閣総理大臣   中曽根康弘君
       国 務 大 臣  金丸  信君
       法 務 大 臣  遠藤  要君
       外 務 大 臣  倉成  正君
       大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君
       文 部 大 臣  塩川正十郎君
       厚 生 大 臣  斎藤 十朗君
       農林水産大臣   加藤 六月君
       通商産業大臣   田村  元君
       運 輸 大 臣  橋本龍太郎君
       郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君
       労 働 大 臣  平井 卓志君
       建 設 大 臣  天野 光晴君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    葉梨 信行君
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 後藤田正晴君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  山下 徳夫君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (沖縄開発庁長
       官)
       (国土庁長官)  綿貫 民輔君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  栗原 祐幸君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       近藤 鉄雄君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)      三ッ林弥太郎君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  稲村 利幸君
   政府委員
       内閣法制局長官  味村  治君
       内閣法制局第一
       部長       関   守君
       警察庁刑事局長  仁平 圀雄君
       総務庁人事局長  手塚 康夫君
       総務庁行政管理
       局長       佐々木晴夫君
       防衛庁参事官   瀬木 博基君
       防衛庁長官官房
       長        友藤 一隆君
       防衛庁防衛局長  西廣 整輝君
       防衛庁教育訓練
       局長       依田 智治君
       防衛庁人事局長  松本 宗和君
       防衛庁経理局長  池田 久克君
       防衛庁装備局長  鎌田 吉郎君
       防衛施設庁総務
       部長       平   晃君
       防衛施設庁建設
       部長       田部井博文君
       防衛施設庁労務
       部長       西村 宣昭君
       経済企画庁調整
       局長       川崎  弘君
       経済企画庁調整
       局審議官     田中  努君
       経済企画庁国民
       生活局長     横溝 雅夫君
       経済企画庁物価
       局長       海野 恒男君
       経済企画庁総合
       計画局長     及川 昭伍君
       経済企画庁調査
       局長       勝村 坦郎君
       国土庁長官官房
       長        清水 達雄君
       国土庁長官官房
       会計課長     佐々木 徹君
       国土庁計画・調
       整局長      星野 進保君
       国土庁土地局長  田村 嘉朗君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       外務省アジア局
       長        藤田 公郎君
       外務省北米局長  藤井 宏昭君
       外務省欧亜局長  長谷川和年君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    恩田  宗君
       外務省経済局長  渡辺 幸治君
       外務省経済協力
       局長       英  正道君
       外務省条約局長  斉藤 邦彦君
       外務省国際連合
       局長       中平  立君
       外務省情報調査
       局長       新井 弘一君
       大蔵省主計局長  西垣  昭君
       大蔵省主税局長  水野  勝君
       大蔵省証券局長  北村 恭二君
       大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君
       大蔵省国際金融
       局長       内海  孚君
       大蔵省国際金融
       局次長      畠中 杉夫君
       文部大臣官房会
       計課長      野崎  弘君
       文部省高等教育
       局長       阿部 充夫君
       農林水産大臣官
       房長       甕   滋君
       農林水産大臣官
       房予算課長    上野 博史君
       農林水産省経済
       局長       眞木 秀郎君
       農林水産省農蚕
       園芸局長     浜口 義曠君
       通商産業省通商
       政策局次長    吉田 文毅君
       通商産業省貿易
       局長       畠山  襄君
       通商産業省立地
       公害局長     加藤 昭六君
       通商産業省機械
       情報産業局長   児玉 幸治君
       運輸省国際運
       輸・観光局長   塩田 澄夫君
       運輸省航空局長  山田 隆英君
       労働大臣官房長  岡部 晃三君
       労働省労政局長  小粥 義朗君
       労働省職業安定
       局長       白井晋太郎君
       建設大臣官房長  高橋  進君
       建設大臣官房総
       務審議官     渡辺  尚君
       建設大臣官房会
       計課長      市川 一朗君
       建設省建設経済
       局長       牧野  徹君
       建設省住宅局長  片山 正夫君
       自治大臣官房長  持永 堯民君
       自治省行政局長  大林 勝臣君
       自治省財政局長  矢野浩一郎君
       自治省税務局長  津田  正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        桐澤  猛君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和六十二年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和六十二年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和六十二年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(桧垣徳太郎君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和六十二年度一般会計予算、昭和六十二年度特別会計予算、昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 
 昨日に引き続き、総括質疑を行います。柳澤錬造君。
#3
○柳澤錬造君 最初に総理に若干御質問していくんですが、総理が内閣総理大臣になられたのが五十七年、それでその十二月に最初の臨時国会が開かれましたときに総理が言われた演説の中で大変私が感銘を受けたのは、わかりやすい政治を心がける、思いやりの心を政治の基本に置くと言って、大変いいことを言ってくださったというのを今でも覚えているんです。総理はそれをいまだに覚えていらっしゃるか。お忘れになったんじゃないかなと思うのは、あの昨年のダブル選挙のやり方、ことしの売上税をめぐってのあの強引き、どう見てもあそこには総理が言うそういう国民のわかる政治というものはないし、思いやりの心なんてどこにもないんです。したがって、特にことしの一月二十六日以降の国会の運営というものは異常なんというものではない異常だったわけであります。その辺をめぐって総理は今どういう御心境でいらっしゃるのか、その辺まずお聞きをしたいんです。
#4
○国務大臣(中曽根康弘君) 忘れておりません。わかりやすい政治ということを心がけ、またやはり政治に温かみが必要である、そういうことも申し上げましたが、また一面において、波に向かってへさきを向けてエンジン全開で突進をいたします、困難だからといって逃げるようなことはいたしませんと、そういうことも申し上げているということをここでまた思い出していただきたいと思います。
#5
○柳澤錬造君 思い出していただきたいだけではなくて、今の御心境がどうなんですかと私は聞いているんです。
 なぜそういうことを言っているかというと、売上税の問題でもって、あの四月の二十三日の夜、原衆議院議長が調停をされて収拾されたわけです。言葉、文章はいろいろ書いてありますけれども、結論的に言うならば、与野党が合意をしない限り売上税は廃案にするんだということは、ここははっきりしているわけです。人間で言うなら、医者がもう御臨終ですと言ったようなものでしょう。あとは、医者は死亡診断書を書かなきゃいかぬから、何月何日何時何分死亡と、こう書かなきゃいかぬ、その手続が残っているだけなんですよ。その辺のところを、総理はまだ売上税は生きているとか、何でそんなことを言われるんですか。それよりか、むしろこの際、この国会は五月二十七日で終わるんです、その時点で売上税は廃案になりますと、こうはっきりおっしゃったらどうですか。そうしてむしろ、まだたくさん法案が残っているんですから、それらの法案をやはり国民生活に支障を来しちゃいかぬからどうか一日も早く上げるように御協力をいただきたいと、こう言われたらいいと思うんだけれども、その点いかがですか。
#6
○国務大臣(中曽根康弘君) 政治は生きておりますから、皆さん方各党おのおのの御理解で御判断していただいておると思いますが、政府の私としますと、今予算を提出しておりまして、参議院で審議をしていただいておる。その中には売上税が入っておるわけであります。そういう意味におきまして、これが死んでいるというようなことは責任者としては言えないわけであります。そういう苦衷もひとつ柳澤さん御認識願いたいと思うんです。しかし、政治は生きておりますから、ですから政治的判断というものと法律的判断というものはまた別のものもございましょう。
 議長さんがお出ましになって、そして与野党で租税の問題、税制改革の問題は真剣に取り組んで、そして間接税と直接税の比率の問題も真剣に取り組んでやるという合意ができておるわけでございますから、それを見守ってまいりたいと思います。
#7
○柳澤錬造君 政治は生きているというのもこれは総理の口ぐせで、その言葉がいい場合もあるけれども、だから別に私は死んだと言っているんじゃないんですよ。医者は御臨終ですと言ったんですよと。あとは、いつ心臓がとまるかを見て、何時何分死亡と死亡診断書を書くだけのことでしょう。それをあえてここでもって生きているなんて言わないで、今たくさん残っておる法案を早く上げてもらうためにどうしなければいかぬかということをお考えになるのが私は内閣総理大臣でしょうと言うんです。だからそういう意味において、事実上においてはこれはもう生き返りませんですということをはっきりお認めになったらいかがですか。
#8
○国務大臣(中曽根康弘君) やっぱり親族としては、最後まで生きでいてほしい、そう考えておるんです。
#9
○柳澤錬造君 そういうことを言っておると、あと残された期間の国会がおかしくなるんですから、総理はよくそこのところはあれしてくださいよ。
 それから、これは私は大蔵大臣というよりかも大蔵省の方に聞きたいことなんですけれども、大蔵大臣、大蔵省のお役人さんというのは私に言わせると頭がよ過ぎる。頭がよ過ぎるからああいう難しい売上税なんというものをつくり出すんですよ。そして、みんなからちょぴっとずつ取るのだから大したことないんだと、こうやっているんだ。しかしその複雑さ、煩雑さがどうかという、これは昨年暮れも総理に、徴税コストがどのぐらいかかるか御存じですか、だれかに計算させましたかと聞いた。だからそういう点で、大蔵大臣、大蔵省がこの時点になって、もう売上税がだめだということはこれはだれもが皆さん全部承知の上なんだ、どういう御反省をなさっておりますかということをお聞きしたい。
#10
○国務大臣(宮澤喜一君) やはり一番思っておりますことは、国民にもう少しこの税の実体を知っていただきたかったと言うと過去になりますが、いただくことができましたら、それは国会もまたその一つのある大切な実は場でございますけれども、それによって、いかにも法律だけをお読みになりますと難しいという感じがございましょうと思いますが、現実にやることになりますと、そう難しいことが書いてあるわけではないように思います。
 よく、これは課税でこれは非課税だ、その差は何だというような話はクイズのように言われます。それは確かにそういう議論をすれば理論的にどうだということがありますけれども、そういうことにしょっちゅう出会うわけではないわけでございまして、ほとんどの国と言えば言い過ぎですが、ヨーロッパの国も我が国の周辺の国々も現実にやっておることとそう違うことを御提案したわけではございませんでしたので、やってみればこういうことかという、その間の、十分国民に知っていただく、そういう期間が少なかったし、私どもの努力もまた足りなかったということであろうかと思います。そういう反省をいたしております。
 確かにこの組み立てそのものは法律を見ますと難しいようでございますが、実際やってもらえばそうではなかったのではないかと思いますが、残念ながらそこまでのことを国民に本日に至るまで十分にわかっていただけなくて、いろいろ難しい点についての議論が先行をして、一種の拒否反応にそれが発展したという点を反省材料と思っています。
#11
○柳澤錬造君 大蔵大臣、大蔵大臣も肝心なポイントのところが外れているんですよ。国民にもっとわかってもらうようにというそういうことよりかも、もっとわかりやすく言えば、これは税金を取る立場の側の考え方しか入ってない。税金を納める国民の側の気持ちを少しもくんでないのが今度の売上税なんですよ。だから、余り大蔵省のお役人さんたち頭のいいのばかり集めるものだから、これをうまくやって、そしてやろうとああいうものをつくっちゃうんですよ。だから、その税金を納める国民の側がやはり、うん、なるほどと、これやらにゃいかぬなという気持ちになるようなものをつくらにゃいかぬです。その辺の反省をもう一回お聞かせください。
#12
○国務大臣(宮澤喜一君) いわばなるべく納税者の数を少なく、また生活に非常に密接なものを非課税にしようというようなこと、それがかえって大変に複雑だという印象を与えることになったかと思います。ただ、思いますことは、それならばすべてのものに一律にだれでも課税だと、これでございますと簡単でありますが、それはそれなりにまたそういう批判を受けたのかもしれない。しかし、その辺のところはいずれにしても反省すべき点だと思っております。
#13
○柳澤錬造君 まあ、あとはお葬式を出すだけだからそれ以上は言いませんが、その点だけはちゃんとしておってください。
 これは総理、昨年の十二月十八日、あの臨時国会があと二日で終わるというときに、内閣委員会においでになったときに私はこういうことをお聞きしたんですが、思い出していただきたいんです。総理が、アメリカ人は知的水準が低いという発言をされた。それでアメリカが大問題になって、大騒ぎになったら早速謝ったでしょう。私もあの知的発言はいいとは思いません。しかし、内閣総理大臣というのは国家の最高権力者ですよ。一国の最高権力者が外国へ向かってわび状を書くなんて、そんなみっともないことありますか。それは外交を知らない者のやることですよ。それでアメリカが騒いだらすぐわび状を一札書きながら、売上税の問題で国民に何で謝らないんですかということを言ったわけ。そのとき総理は、あれはパーソナルメッセージですと、こういう答弁をなさったんですよ。今でもそういうお考えなのか、それとも、いや、あのときはああいうふうに言ったけれども違うというふうにお答えになるのか、その辺の点をお答えいただきたいんです。
#14
○国務大臣(中曽根康弘君) あれはパーソナルメッセージであるとそのときから言っておるわけであります。今でもその気持ちは変わりません。パーソナルメッセージという意味は、あれは自民党の講習会の私の総裁としての発言で、それで中に誤解されたりして御迷惑をおかけした点もあるというところで、私の真意をあれで申し上げた、そういう意味でパーソナルメッセージと、そういうことで松永大使も申し上げて先方も了解された、そう解釈しております。
#15
○柳澤錬造君 外務大臣にそれじゃ次にお聞きしますが、外務省でもそういう扱いをあのときのメッセージはなさったんですか。あれは公式な謝罪メッセージということで新聞にも出たし、至るところでそういう扱いを受けたのであって、今のようなパーソナルメッセージの扱いではなかったはずですけれども、外務省、どうだったんですか。
#16
○国務大臣(倉成正君) ただいま総理からお答えしたとおりでございます。
#17
○柳澤錬造君 私が聞いているのは、外務省としてどういう扱いをしたんですかと聞いているんです。
#18
○国務大臣(倉成正君) ちょうど昨年の九月二十三日の朝、総理発言が米国で報道されたことを知りまして、在米大使館初め我が国の在米公館、また日系企業等に多くの抗議電話が寄せられたという報告を私受けた次第でございます。
 ちょうど総理発言が報道されたときには私は国連総会に出席をいたしておりまして、ニューヨークにおりまして、各国の代表と会ったり国連の演説をしたりいたしておったわけでございます。したがいまして、この総理発言の真意につきまして早速照会をいたしまして、この真意を米国の行政府、また関係方面にも伝達いたしました。アメリカの国務省及びそのスポークスマンは、二十四日、日本政府の説明を額面どおり受け入れる、そういう発表をいたしました。しかし、米議会においては、黒人、ヒスパニック両議員連盟が松永大使あてに総理発言の公式のクラリフィケーションを求める内容の電報を発出したり、またさらに二十五日には下院に総理発言を非難する決議案が上程された次第でございます。
 そこで私、二十六日夜、もうちょうど日本に帰ってまいりましたので、総理官邸に参りまして、総理に現地の情勢を御報告申し上げまして、そして米国議会、米国の行政府はこうだけれども、こういう動きがあるので、率直に総理のお気持ちをお伝えになったらどうかということを申し上げた次第でございます。総理がパーソナルメッセージとしてそういうことでお話しをいただいたそのお気持ちを、それぞれ米国の議会指導者、あるいは黒人、ヒスパニック議員連盟会長等にお伝えしたということでございまして、かかる努力で、黒人議員連盟は総理メッセージを誠実に受け入れまして、そして総理発言非難決議案表決を推進しないことを松永大使を通じて申してきたわけでございまして、非難決議案は上程されなかった、表決はされなかった、推進されなかったというのが事実関係でございます。
 以上でございます。
#19
○柳澤錬造君 外務大臣、それでその黒人指導者がどういう声明を持ってきたか、これも御存じだと思うんです、今おっしゃられたようにあのときアメリカにおられたのですから。中曽根総理がああいう考え方をじゃなくて、日本人全体がああいう考え方を持っているんだろう、だから広島、長崎に原爆を落とすようなああいう事態にもなったんだぞという声明を突きつけられたでしょう。外務大臣、あのときに、お帰りになるときも、大臣が乗られる飛行機は、爆弾を仕掛けたとおどかされて三時間以上も出発がおくれたはずです。
 だから、私は外務大臣に申し上げたいのは、あのことによってアメリカ人がどれだけ傷つけられたかということはおわかりでしょう。こんなパーソナルメッセージというようなことで片がつく問題ではありませんよ。そのことで片がつくのならば、今の貿易摩擦の問題なんかは、また総理に一枚書いてもらって片がつくじゃないですか。何もわざわざアメリカまで行くことはないんですよ。
 だから、その辺が、むしろ私が言いたいのは、さっきも言ったとおり、何だかんだ言ったって、内閣総理大臣といったら国家の最高権力者ですよ。その人にわび状を書かせるなんというのは外務大臣として恥ずかしくないですか。ましてや、自分がアメリカのあそこにおったんだから、それはアメリカの政府へ乗り込んでいっても、何と言ってでもそのことについてやはり解決をする、私はそれが外務大臣だと思うんです。そういう点でもって、もう一度外務大臣のそういうことについて御見解をお聞きしたいと思います。
 ただ、外務大臣、いいことは、褒めてというか、あれだけれども、フィジーへ行かれたことについては私は敬意を表するし、いいことをしてくれたという、だからそれはちゃんと申し上げておきますけれども、そのほかの点はちゃんとしてください。
#20
○国務大臣(中曽根康弘君) これは私に関することですから私からお答えいたしますが、やっぱりあの発言というものがアメリカの市民の心を傷つけた、特に黒人と言われる方々、ヒスパニックと言われる方々を傷つけたということは事実でありますから、これは率直に謝った方がいいと私はもう率直にそう感じまして、それでやはり、自民党総裁としてやった演説ではあるけれども、中曽根個人としてこれは甚だ申しわけない、そういう意味のことを率直にやった方がいいと、そう思ってパーソナルメッセージという形でやったわけです。そうしましたら、松永大使がその黒人のコーカスという議員団のところへ行ってそれを持っていったら、ああそうか、よくわかった、そういうことで子としてくださった。やっぱりそれは率直に悪いことは悪いと、こっちが反省した意思表示をしたのでかえって男らしいじゃないかと、そういうような逆の評価を受けたのではないかと松永大使も言っておりました。それで、やっぱりああいうときにはアメリカ人に対しては自分の真情というものを隠し立てなく言う方が私はいいと思うんです。
 現に、今回参りましても、デモがあるとか何があるとかと言われましたけれども、そういうことは一切ございません。むしろ私はそれから日本へおいでになる黒人の方、例えばアトランタのヤング市長であるとか、あるいはアメリカの黒人議員連盟の会長であるダイマリー議員であるとか、そのほかジェシー・ジャクソン師であるとか、おいでになれば必ずお会いして、いろいろ日本とそういう人たちとの接触を密にしましょうという話もしますし、今度もこっちの方から申し込みましてそういう代表の方とお会いしたい、ぜひ集めてくださいと、そう言って私のホテルにリーランドという、ダイマリーさんはテキサスヘ行っていなかったので、リーランドという前の会長さん、あるいは実業界の方々、ジャーナリストのそういう方々七、八人お集まりいただいて懇談をしてきた。
 日本の社会もやはりこれを一つの教訓にしまして、私自体も一つの教訓になったと思いますが、教訓にしまして、黒人の雑誌やあれに広告をどんどん出すとか、あるいは就職の問題その他についても機会平等にやるとか、あるいは現地において接触の機会を増すとか、そういう努力を実はしておるわけです。また、私も政府をしてそういう方向に誘導させておるわけです。そういう実績もありまして、黒人系の雑誌に対する日本商社等の広告がうんとふえてきている。そういうことを見て向こうも誠意を感じてくれまして、今回のように非常に和気あいあいとして話が持たれたということです。
 この機会に一つ申し上げたいのは、黒人という言葉を英話でどういう表現をするかという問題ですが、まあブラックとかブラックコーカスとかという言葉を使っていますが、その言葉あることはあるんです。しかし、あの人たちが自分でお使いになっている言葉はアフリカンアメリカン、アフリカ系アメリカ人、そういう言葉を使われているので、私はそういう言葉を使う方がこれは今後礼儀にかなうなと、そういうことを感じまして、日本へ帰ったらそのことを日本の国民の皆さんにお知らせしようと、そう思っておったので、いい機会を与えていただいたので、むしろこれからは我々はアフリカ系アメリカ人、アフリカンアメリカン、そういう言葉を使う方がいいのではないかと思いました。
#21
○柳澤錬造君 同時に、総理、日本も単一民族でないということも御理解しておいていただきたいと思います。
 次に、日米首脳会談の関係の点で若干お聞きをするんですが、経済問題に関する共同発表、大統領と総理は、これ以上のドルの下落は、両国経済の力強い成長と不均衡の削減に向けての相互の努力にとり逆効果となり得ることにつき意見の一致を見たと。あの中の大事な点ですけれども、総理はこの為替レートを幾らぐらいのところが妥当だとお考えでこういう合意事項をなさったのか、そこをまずお聞きしたいです。
#22
○国務大臣(中曽根康弘君) 幾らという金額を決めるということは適当でないと、ここで何回も申し上げたとおりであります。しかし、ドルの下落を防止する、そういう観点に立って、これ以上のドルの下落というものは経済成長に阻害となる、あるいは貿易の不均衡是正を阻害する、そういう意味において緊密に連絡を今後とり合い協力する、そういう意思表示を行ったわけでございまして、そういう意味で、これ以上の下落を防止するというところ、それから国際通貨関係の安定、ドル及び円の安定、そのために密接に協力し合う、そういう文章になっておるはずでございまして、それで御理解いただきたいと思うのであります。
#23
○柳澤錬造君 総理、またこれは、円の方は後の方で大蔵大臣にもお聞きしていくんですが、続いて、この日米首脳会談の共同発表の中で、五兆円を上回る財政による景気刺激策をとることをお約束なさってきたわけなんです。レーガンさんはそれに対してどういう約束を日本にしたのかどうかが一つの点。
 それから私がどうしてもこの点で我慢がならないのは、昨年末に党首会談がございました。そのときに我が党の塚本委員長が、予算編成について公共事業の大幅追加、縮小均衡型から拡大均衡型へ財政運営の転換を求めたはずなんです、要求したはずなんです。しかし、そのときは総理はあっさり、にべもなくそれをお断りになっている。それで今になって、アメリカからこれは圧力があったかどうか知りませんけれども、しかし五兆円のというのだから何らかの圧力があったと思うんですが、そうしたときには何の反省もなくて政策転換をなさるわけなんですけれども、私はその点極めて遺憾だと思うんです。何のためにあの党首会談をお開きになったのか。これでは党首会談というものを侮辱したことになりませんか。その点について総理の見解を求めます。
#24
○国務大臣(中曽根康弘君) 五兆円を上回る補正予算の内容につきましては、この予算が成立しましたら、できるだけ早期に緊急経済対策を党及び内閣で決定しまして、それに基づいて至急補正予算を今の目標に向かって編成したいと思っております。その内容については、今せっかく努力中でございます。しかし、その主なものは、この間自民党が発表しました要綱、たしか四月二十四日でございましたか、発表した要綱に盛られているものが中身になるであろう、そう考えられます。
 それから第二に、予算編成につきましては、六十二年度予算、当初予算につきましては、去年概算要求が行われ、そして十二月に予算編成が行われましたが、党、内閣を通じて予算編成方針というものを正式に決定しまして、それに基づいて編成したものなのでございます。それは大体財政再建あるいは行政改革というものの延長線上においてやるということを言っておりまして、そういうことをやったわけでありますが、この六十二年度予算、当初予算が終わりましたら、次の段階についてはそのときの情勢に応じて次の段階に対応するものをつくろうと、そのときから私は思っておったわけであります。
 そういう意味で、来年度予算編成あるいはこれからの追加予算、補正予算編成というものは、六十二年度予算においてやったと違う要素、内容が出てきていいんだ、むしろ内需刺激という面で一歩踏み出す予算を実はつくろうと私自体思っておりました。しかし、そういうことは、今六十二年度予算を編成しておる最中、あるいは審議していただいている最中でございますから、そう軽々に言うべきことでないのでありますが、柳澤さんから御質問がありましたから、私の意図はそういうものであったということを申し上げます。
 そして、塚本委員長からそういうお話をいただきましたけれども、六十二年度予算はこれでやらしてください、そしてそれ以後の問題については、新行革審の答申にも臨調答申にも、緊急非常事態あるいは臨機の処置をとり得る、そういう点があるからそういうものを援用して考えていきたい、そういうふうに考えておりまして、そして今そういう段階になったからそういう方向に移行していこう、そう考えて、一方においては、行政改革は一般経費については依然としてやるが、一方においては、社会資本や公共事業費についてはこれを膨らませて従来の例によらないでやる。そういう二刀流でやるということを申し上げまして、そういう考えで進もうと思っておる次第なのでございます。
#25
○柳澤錬造君 総理、数年前にもこの予算委員会の場で、いわゆる不景気で公共投資の前倒しをするということがあって、そのとき私は、そういうふうにやっていったならば、それは前倒しもしなくちゃいかぬ、不景気だから、しかし、そうしたら年末になったころにはもう息切れしちゃうじゃないか、当然今から補正予算のことを考えて、そのときは補正予算を組むんだろうなということを質問したんです。そうしたらそのときの政府答弁は何かといえば、今本予算を審議中です、本予算を審議中で本予算も決まらないのに補正云々なんということを口にするのは、それは適切ではございませんと言ってにべもなく断られた。にべもなく断られたといったって、物の考え方からいえばそれはそのとおりですよね。予算は最善のものとして出したんだから。わずか数年前に私がここで聞いたときには政府はそういう答弁をして、今の総理の答弁をお聞きをしているとそれと違うわけなんだから、そういう点に立って、それでは内閣としての政策を変更したのかどうか。
 続いて私お聞きしたいのは、これは私の個人的な考えたけれども、この間アメリカへ、もちろん日米首脳会談のああいうスケジュールもあったと思うんです。しかし、予算が決まらないこの状態の中で、ひょっとしたら総理はアメリカの方にお断りをして、それで一日も早く予算を上げてくれと言って、今やっておるこの予算委員会を早いところやってくれというふうにおやりになるかと思った。ところがそうではなしに、この予算委員会を中断をしたまま総理はアメリカに行かれたんです。実質的には三日間吹っ飛ばしたわけですよ。日本の国会よりもアメリカのレーガンさんにお会いする方が大切だとお考えになっているんですか。しかも、本予算が成立する前に大型予算を今のように口にするということは、そうすると、総理みずからが今ここでもって審議をしている五十四兆千十億というこの予算案は欠陥予算案ですということを認めたようなことになってしまうんじゃないですか。そういうことでよろしいんですか。
 それならば、ここでもって予算案をもう一回組み替えて、その五兆円を含めた、五十四兆何がしを五十九兆何がしの予算案に修正してもらわないと審議できないですけれども、その辺はいかがお考えですか。これ以上審議できません。
#26
○国務大臣(中曽根康弘君) アメリカへ行くにつきましては、やはり一つの緊急課題は円ドル関係を安定させるという緊急課題がありました。これ以上ドルが下落することはもう絶対いかぬと自分は考えておったわけです。そういう緊急の要務を処理する、それが日本の内需を刺激し、景気を回復するという大事な大事な仕事である。これは私と大統領で直接話しして、それを文章にして世界に見せる、それが大事だ、そういう考えが一つあったのと、半導体の制裁解除の問題についてもこれは直接大統領に談判する必要がある、そういう緊急の問題がありましたので国会のお許しをいただいて伺った、こういうことであります。
 それから予算につきましては、これは本予算を審議中ですから、補正予算のことを申し上げられないということはずっと今までやってきたわけで、それは筋はそのとおりだろうと思います。ただ、自民党として要綱を決め、自民党としては、予算が成立したらという条件つきでこれこれのことをやるという政策のことも要綱として決定してもらいました。そこで、この予算が成立したらという条件つきで、そしてこれこれのことをやりたい、そういうふうに申し上げておるわけなのであります。ああいう自民党の内容まで出てきているところで、それについてもかたくなな態度をとって申し上げないというのは、かえって私は誠実でない、まあ柳澤さんのことだから正直に申し上げれば理解していただけるだろう、そう思って申し上げた次第なんです。
#27
○柳澤錬造君 今ここで審議をしている予算案、五十四兆何がしというものは欠陥予算案だということは、それは総理お認めにならなきゃいかぬですよ、それならばね。
 それからさらにつけ加えて申し上げたいことは、総理は何かにつけて日本の国会で物を言わぬで、アメリカに行ってはばかっとやる。昨年の前川レポートがそうですよ。あれも私は国会で質問したんですよ、でき上がったときに。そうしたら、これは総理の私的諮問機関ですから私どもには答弁する資格がございません、総理に直接聞いてくださいというのがそのときの政府答弁です。それで総理はアメリカへ行って、あそこで前川レポートを発表したわけでしょう。
 何かにつけてそういうことを総理はおやりになるんで、やっぱり自分で犯した過ち、犯したというふうな言葉も適当ではないと思うけれども、政策のミスというか失敗、そういうことについては余りごまかさないで、きちんとお認めになってそしてやっていただかないと、恐らくきょうもこれテレビでもって国民は見ているんだけれども、今までの総理が物を言っておること、あのハワイ発言なんというのもそうですけれども、国民から見ると総理は政権の延命策にきゅうきゅうとしているんじゃないかというふうに、そういうふうに目に映りますよ。そういうことが国民の政治不信になり、またアメリカの対日不信をそういうところから生み出すんじゃないんですか。ですから、もう一度そういう点について総理の謙虚なお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
#28
○国務大臣(中曽根康弘君) 前川リポートにつきましては、私、アメリカへ行って、こういうリポートが出ましたと、そういう中身も説明を一部いたしました。いずれこのリポートは内閣として検討して、そしてこれを取り上げて、いいものは実行したい、そういうことで、これをそのまますぐ取り上げるとは言ってないんです。こういうリポートが出た、それを検討した上で、自分たちはいいものは実行する、そう言って、五月一日に正式に内閣であの内容を検討した上で、内閣独自であの内容を相当盛った方策を決めまして、そして推進本部を決めて、私が本部長になり、それで正式に出発した、そういうことで動いておるわけであります。
 それから私の海外における発言についていろいろ御批判をいただきましたが、発言については十分注意したいと思いますが、ハワイにおける発言というのは臨時議会とか会期の延長ということは一言も言わないのです。ただ、いろいろ質問があった中で、補正予算をやるのかやらないのかという質問が出まして、それは自民党はもうやるという方針でおる、内閣も自民党の方針に従ってやることになると思う、その場合には議会が要りますねと、そういうことを一言言っただけで、それ以上は何も言っておりません。
 それから私の進退に関しては、前から変な俳句も申し上げましたが、「くれてなお命の限り蝉しぐれ」と、これが私の心境であると申し上げたとおりです。
#29
○柳澤錬造君 ハワイ発言の中の会期の大幅延長云々の問題は、私が知る限りでもそのものずばりでは言ってないということは私も聞いておりますですよ。ですから総理、それはやはりちゃんと新聞に言って訂正させてください、それは間違いたって。そうすればみんな納得するわけですから。
 それから前川レポートの問題、私が言ったのは、まだほかにもあるけれども、ああいうことをなさるならば、国会なら国会の場でもって、そういうことについて国会を通じて国民に知らして、それからアメリカへ行ってこれこれしかじかだとおっしゃったらということを言いたいんですけれども、それは時間もなんですから先に進みます、政策の方の、さっきの少し円高の方に。
 大蔵大臣、一昨年九月に前の竹下大蔵大臣が日銀総裁とニューヨークのG5に出られたときに、たしか一ドルが二百四十円ぐらい。それから何だかんだやっているうちに二百円になって、昨年九月、宮澤・ベーカー会談をおやりになったら百六十円ぐらいになった。ことしの二月、パリヘ行かれたら、今度は百五十円になった。ワシントンで百四十五円。今百三十円だ。会談を持ったり、大蔵大臣が出かけていくたびに円高になっちゃうわけでしょう。だったら、大蔵大臣、私は行かない方が円高にならないでいいと思う。何のために行かれるんですか。大蔵大臣が自分としては一ドル幾らくらいが妥当だというふうに御判断をお持ちになって行っているのか、その点をまずお聞きをしたいですよ。
#30
○国務大臣(宮澤喜一君) どの水準が適当だというようなことを私のように直接に関係のある者が申し上げることは適当でないと思いますが、現在の水準は我が国の経済にとっては極めて厳しいものである。殊に上昇が非常に急速でございましただけに、対応は大変に難しい水準であるということはよく存じております。
 それから何度かアメリカにも参りましたし、パリにも参りましたが、それは各国間のいわば協調的な介入体制というものを基本的な政策協調の上に築き上げるという努力を私なりにいたそうとしたのでございます。
#31
○柳澤錬造君 大蔵大臣に言えと言っても答えられない点もあると思うけれども、では日本政府としては一ドル幾らくらいが妥当な水準だというふうにお考えになっているのか。何にも持たないでまさか行くわけにいかないでしょう。
 それで、この前OECDが発表したのは、昨年の年間平均で、円の価値というものは購買力平価で一ドル二百二十二円と発表した。実績はどうかといえば一ドル百六十九円。世界の中でこれほど開いている、乖離のあるのはないというのがOECDの発表でしょう。このOECDの発表があったときに政府なり大蔵大臣はどういう受けとめ方をなさったのか。そしてもう一回、最初に言いましたように、政府自体が日本の円は幾らぐらいのところが大体のあれかというようなものはお持ちであるのか。もしもそれをお持ちになっていないでG5だG7だといって出て行っておったとしたら、それは本当にナンセンスですよ。どう考えているんですか。
#32
○国務大臣(宮澤喜一君) 購買力平価というのは昔からの一つの考え方でございますけれども、こういう状況になりまして、私は余り意味のあるものとは思っておりません。
 それからどの水準が適当かということは、政府といたしましてもそれは申し上げることは適当でない。ただ、現在の水準は日本の経済にとって非常に厳しいものであるということはよく存じております。
 それで、申し上げるまでもないことでございますけれども、為替というのは二つの国の二つの通貨の間の関係でございますために、こちらが仮に一走の位置にいましても向こうが一定の位置を動きますと関係が変わってくるという、そういう相関関係にあるものでございますから、それで、どれがいい、どうでなくちゃならないということをこちら側だけのことで言えない性格を持っておるということでありまして、やはり基本的には政策協調が多少時間がかかっても各国間で行われ、そして乱高下に対しては協調介入をするということで、時間をかけて安定の水準を探っていくというのが変動相場というものではないかと思っておるわけでございます。
#33
○柳澤錬造君 大蔵大臣に言えと言ったって無理だから、大臣いらっしゃるから、だれか勇気ある人が出てきて、私は一ドル幾らくらいが妥当だと思うという人、だれか勇気ある人は言ってみてください。――通産大臣だな。いや、だれでもいいですよ。そのぐらいのことが言えないんじゃしようがないんだな。今度またOECDへ行かれるんでしょう。言わしてください。
#34
○委員長(桧垣徳太郎君) どなたも御起立になりません。――田村通産大臣。
#35
○国務大臣(田村元君) 御指名があればもっと早く御答弁申し上げたのでありますが。
 幾らがいいかというのは、これは業種業態によって違いますから、一概にはちょっと断定しにくいと思います。我が国経済の基礎的諸条件、これを反映して、かつ産業界の合理化努力を前提として、その健全な発展を可能とするようなレート、これが望ましいレートというふうに私は思います。いずれにいたしましても、現在の百三十円台というのはこれはもう問題にならないわけでございまして、製造部門、とりわけ輸出型の中小企業あるいは下請等においては非常に苦しい姿だと思います。あらゆる努力をして適正な水準に戻さねばならないというふうに思っております。
#36
○柳澤錬造君 田村通産大臣に心から感謝申し上げます。この中で一番勇気ある大臣です。
 それであと、委員長、関連質問で円高不況の問題を、私もですけれども、関連質問をちょっとやらしてください。
#37
○委員長(桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。山田勇君。
#38
○山田勇君 短時間でありますが、近ごろの庶民の声、ちまたの声を率直に質問をいたしますので、簡潔な御答弁をいただきたいと思います。
 総理、「ラブユー貧乏」という歌が今大変はやっているのでございます。御存じであるかもわかりませんが、この歌は、一昔前ロス・プリモスが歌ってヒットしたあの「ラブユー東京」のかえ歌でありますが、忘れかけていた貧乏という言葉がはやるというのはどういうことなんでしょう。要するに、経済大国、世界一の債権国、国際収支の黒字は一千億ドルを突破するという金持ち日本でありながら、一般国民の実生活は住宅ローンに追われ、高い食料費に悩まされ、自動車の保有費や教育費は米国などと比べて非常に高い。そしてベースアップは低額回答、構造不況による企業倒産、失業者の増大など、国民一般の実感としては、米国やEC諸国から強い非難を受けるほどに富める日本、経済大国日本という姿にはほど遠いものがあります。「ラブユー貧乏」というかえ歌に象徴されている国民の感情を総理はどのように受けとめておられますか。
#39
○国務大臣(中曽根康弘君) そのように、日本に黒字が累積するのに我々の方にそう恩恵が来ないのはどういうわけだろうか、生活は必ずしも楽じゃない、そういう声があることは私もよく知っておりますし、その点については胸も痛めておるところでございます。
 しかし、一面におきましては、十分ではありませんが、円高利益の還元という面で電気料、ガス料を下げる、あるいはガソリンなんかもかなり一時は下がりました。あるいはそのほか一般物価も安定しておりまして、対前年比世界で一番安定している、横ばいという状態。これは皆さんにとっては一番大事なことで、物価安定というものは維持されておる。そういうような点で恩恵もある。けさほどでしたか、企画庁長官が御答弁しましたが、大体十七、八兆の円高の結果出てきたお金のうち十兆か十一兆ぐらいは還元されていると、そういうようなたしか説明を記憶しておりますが、牛肉も安くするとかあるいは小麦も安くするとか、あるいはそのほか輸入品のウイスキーも安くするとか、そういう面で通産省、各省が一体になって今安くさせようと思って努力しておるところでございます。それがまた必ずしも十分行き渡っておりませんが、しかし、これは今後とも牛肉とか国民の皆さんに大事な問題は積極的に努力してまいりたいと思っております。
 それから一体お金はどこへ行ったんだろうかと、そういうことでありますけれども、やっぱり輸出する会社、自動車の会社であるとかテレビの会社であるとか、事務機械の会社であるとか、あるいはお金が行ったり来たりしているところ、そういうところの利益として会社として積もる。その積もったものは一部は株式の配当になったり、あるいは借金の返済になったり、あるいは一部が財テクと称して外国との間のいろいろな金融関係に使われる、そういう形で使われておる。国がもうかったわけじゃないんです。輸出している会社がもうけておる。国としてはそれから法人税が得られればそれでいただく。そういう関係なので、国はだからといってうんと富んでいるというわけでもないのでございます。
#40
○山田勇君 円高差益、それから海外流出金については、徐々にちょっと簡潔ですがお聞きをします。
 そこで、内需拡大についてはもう耳にたこができるほど聞かされているわけですが、ここに来て、政府も国際的な公約として、先ほど柳澤委員の方からも申し上げました五兆円以上の財政措置を伴う内需拡大、減税先行の税制改革を積極的に推進することを決断したと思いますが、内需拡大の一つの柱として国民の個人消費を伸ばすことも重要な課題であります。
 そこで大蔵大臣の、個人消費をどう伸ばしていくのかの御所見を伺いたいと思います。
#41
○国務大臣(宮澤喜一君) 一般的に物的な消費、殊に多少資産的なと申しますか、いわゆる家庭におきます資産的な消費は、物離れとか申しましてかなり充足されたと言われておりますけれども、しかしなおもっと大きなもので言えば、住宅という問題が、これは消費に勘定できないかもしれませんが、大事な資産としてこれは甚だ不十分でございますし、それから物的でないレジャー等々の消費、あるいは旅行とかいろいろなものがございますが、そういうものは、サービスを対象とするものはまだこれから幾らでもあるだろうと思います。
 そのもとになりますのはやはり所得ということになりますから、一つには所得水準が順調に毎年毎年伸びていくということはどうしても大事なことだと思います。それからその中で可処分所得の部分が多いということが大事であると思います。それは一つはできれば減税というものが望ましいことである。それから生活習慣としての消費性向と申しますか、これはちょっと一概に申し上げにくいかと思いますが、我が国の場合には貯蓄性向がかなり際立って諸外国よりも高いという問題がしばしば指摘されます。これは一概には言えないことでございますけれども、消費性向の問題もあるだろうと思います。
#42
○山田勇君 いわゆる前川リポートの中で、経済成長の成果を賃上げ、労働時間の短縮などにあらわすように勧告をしておりますが、国民の実生活を豊かにして消費を伸ばすためにはまず国民の懐ぐあいを豊かにすることが先決であると思います。日経連あたりは、景気がよければインフレを招くから賃上げをほどほどにと言う。また、不景気なら賃上げよりも雇用をと、毎年勤労者、サラリーマンには金を余り出したがらないのが通例であります。もちろん賃上げは労使の交渉で決めるものでありますが、日本では中小企業や個人経営などが広範に存在し、また労働組合の組織化もおくれており、これらに対して政府としても政策的な後押しで所得の向上を図らなければならないと思いますが、総理はこういう点についてどうお考えでしょうか。
#43
○国務大臣(平井卓志君) ただいまお話ございましたように、賃上げにつきましては労使の自主的な決定というのが原則でございます。また、その具体的な水準の決定について行政が介入をすることは適当でない、これはもうおっしゃるとおりでございます。ただ、政府としましては、物価の安定、また雇用の確保と勤労者の生活の改善、向上に必要な環境整備に努めておるところでございます。今、時短の問題が出たわけでございますが、経済審議会、リボルビング報告でございますが、並びに同審議会の経済構造調整特別部会報告、これは新前川レポートと言われておりますけれども、経済成長の成果の賃金、労働時間に対する適切な配分というふうな御指摘はまことに適切なものと、かように認識をいたしております。ただ、労使が国民経済的な観点から円満な解決を図るとともに、やはり産業、企業の実力に見合った適切な賃金決定を期待いたしております。
 いま一つ御指摘ございました労働時間短縮でございますが、ただいま週休二日制の普及を基本に、年次有給休暇の消化促進及び連続休暇の定着、また所定外労働時間の短縮等に重点を置きまして行政指導をいたしております。ただ、実態を考えてみますると、この十年間時短の問題はかなり進んだようで進んでおらないというふうなことでございまして、これは非常に大きい労働条件の柱でございますから、本来的には労使の間で十二分にお話しいただくということではございますが、現在の実態を考えました場合、ある種国際的な協調という面も含めまして、中央労働基準審議会の公労使各側一致した建議に沿いまして、週四十時間労働制を目標に法定労働時間を段階的に縮小してまいろうということで、ただいま本国会に労働基準法の改正というものをお願いいたしておるわけでございまして、一日も早い御審議をいただきまして御決定を賜りたいというふうに考えております。
#44
○山田勇君 ことしの春闘も山を越したと思いますが、結果的に見て、賃上げが内需拡大、消費増大にどのぐらいつながると思いますか。
#45
○国務大臣(近藤鉄雄君) お答えいたします。
 春闘のベースアップは雇用者所得の全部ではございませんで、その他いろんな所得を合わせたものが消費の拡大になるわけでございますので、現段階で今度の春闘がどれくらいの消費の拡大になるかはっきり申し上げる段階ではございません。
 ただ、先生御指摘のように、実は消費は内需拡大の大きな柱でございまして、いわゆる円高不況と言われながら最近も非常に堅調な伸びを示しておりますのは、総理のお話もございましたように、円高の還元が相当進みまして、消費に関しては五兆円程度の円高の還元がなされている。これは二百兆円の消費に対して約二、三%でございますので、今後円高差益の還元を政府が進めてまいりますればある程度の消費の伸びは期待できるものと、私はかように考えております。
#46
○山田勇君 公務員の給与については、今後人事院勧告との関連もありますが、内需拡大の立場から政府としても民間を逆にリードするぐらいの気持ちで取り組む姿勢が必要ではないかと思いますが、総理いかがですか。
#47
○国務大臣(平井卓志君) 公務員給与につきましては、今御指摘ございましたが、それなりの機関で交渉いただき、また御決定いただく。また四現業等は、御案内のように、昨日一応の方向づけが出たわけでございまして、原則的にはやはり民間賃金準拠ということでございますから、その立場立場の方々の間で十二分にお話しいただいて適切に決定していただくということが原則であろうかと考えております。
#48
○山田勇君 関連の最後に質問します。
 六十一年における国際収支黒字は一千億ドルを超え、そのうち対米黒字は五百八十五億ドルとなり、半導体に見られるような制裁措置まで受けることになりました。とにかくもうかり過ぎて金がだぶつき、株式相場に三百兆とも言われる金が流れ、ばくちのような投機相場になり、大都市圏の地価はこれまた地上げ屋と言われる者が介在し暴騰を続けております。一方、海外では土地や不動産の囲いあさり、外債などに多額の金が流出し、まさに経済大国なのでありますが、しかし、さきにも申し上げましたとおり、庶民の貧乏感覚からはこれらのことは全く別世界の出来事のように映るのであります。乏しい家計をやりくりし、不安な老後のために貯蓄もしなければならない一般家庭にとっては、財布のひもはかたく、消費を伸ばして内需拡大に協力しようとしてもなかなかその気になれないのが現状でございます。経済の仕組みは複雑で、快刀乱麻の施策は早急には難しいとしても、お役人任せだけではなく、総理自身が国民サイドの、消費者サイドの政治を推進する決意を持たなければ、さきの売上税反対に示したように、国民の怒りはまだまだ続くものと思います。
 最後に、総理はこの問題についてどのようなお考えを持っておられるか御答弁をいただきまして、私の関連質問を終わらしていただきます。
#49
○国務大臣(中曽根康弘君) 消費に関する山田さんのお考えに私も賛成です。やはりGNPの内部に占める消費の率というのは六〇%近くでありまして、ほかのいろいろな要素を押し上げでもとても消費をふやすという力には及ばないのであり、民間設備投資にいたしましても在庫積み増しにいたしましても同様であります。そういう意味において、六〇%前後である消費をちょっと刺激すればそれだけ景気にはプラスになるという要素があります。
 したがいまして、先般来経企庁長官とも相談をして、できるだけ消費者ローンを下げるようにとか、あるいは金利を下げるようにとか、一面においてはまだ金利を下げるということは老人等には困る面もございますが、それは適当にやらなきゃいかぬ。しかし、そういうわけで消費者ローンというものをできるだけ下げるようにしよう、そのほか消費を刺激する、一つは輸入物資の差益還元を徹底する、そういういろんな面についてこれからも努力してまいりたいと思います。
 とにかく御趣旨には全く賛成であります。
#50
○柳澤錬造君 大蔵大臣、貿易収支の問題は割合に話題になっているから、私がきょうここで取り上げたいのは長期資本収支のことなんです。ここ三年間を見ましても、昭和五十八年が二百四十二億ドルの赤、五十九年が四百九十六億ドルの赤、六十年が六百四十五億ドルの赤、この三年間だけでも千三百八十三億ドルという金が流出をしちゃっているんです。その年のあれは何ですか、大ざっぱに言って二百四十円で、現在の百四十円だということのレートで考えれば約十四兆近くのお金が消えてなくなっちゃったんですよ、外国へ投資をしたがために。そういうことについて大蔵省としてどういうお考えをお持ちなのか。あるいは経済企画庁としてどういう御判断をお持ちなのか。
 言うならば、もうけた、もうけたと言われるけれども、日本の国民は少しも利益の恩恵に浴さないで、それはみんな外国へそういうふうに出て行ってしまって、それで今言うとおり、日本のお金でいうなら約十四兆近くわすか三年間で消えてなくなっちゃったんですよ。それについて政府としてどういう指導をなさるんですか。
#51
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる長期資本収支、我が国はここのところ大きな流出超過でございます。昭和六十一年度、終わりました年度でございますが、暫定数値でちょうど千十四億ドルとなっております。
 今おっしゃいますのは、そのような長期の資本流出というものが為替差損にあっただろうと、こう言われたのだと思います。それはしかし、その限りで間違いではないと思いますけれども、投資家の立場からいたしますと、当然のことながら、あり得べき為替リスクと、それから投資いたしました対象、多くの場合証券でございますが、その証券なり債券なりの利子、我が国とアメリカとの間における利子の差がただいまでももう五ポイント以上ございます。したがいまして、その利子の差と生ずべき為替差損との損得、あるいは対象の証券、株式の値上がり益と生じ得べき為替差損の損得、それは当然投資家としては計算をしてやっておられるところと思います。
 機関投資家なんかの場合に、確かに昨年度の場合もかなり大きな為替差損を計上いたしました。いたしましたが、しかし他方で、投資物件から生じる我が国における投資の場合との金利差によるいわば利得、あるいは証券価格の上昇による利益、それと為替差損との損得ということになりますと、それは投資家は十分に考えてやってきておるというふうに見ております。
#52
○国務大臣(近藤鉄雄君) 金融的な面の分析はまさに大蔵大臣がお述べになったとおりでございますけれども、国民所得計算の貯蓄投資バランスから考えますと、それだけ日本の貯蓄がアメリカに流れておるわけでございます。昨年末で二千億ドルの対外債権があるということは、現在の為替レートに換算いたしまして約三十兆でございますから、まさにGNPの一割近い価値のものが海外に流れておるわけでございますので、これをもう一回換物をいたしまして国内に戻すということを考えますと、少なくとも物的には日本の私どもの生活を一割物的には上げることになるわけでございますので、そういうふうに国際収支を調整いたしまして、外へ向かっておった日本の物資、商品を国内でもって私ども国民の生活の向上に役立たせよということがまさに産業構造調整であり、内需拡大の基本的な理念であると私どもは考えて努力をしておる次第でございます。
#53
○柳澤錬造君 それが、経企庁長官、さっき総理が言った生きた政治のあり方だと思うんですよ。
 大蔵大臣、今のあなたの答弁なんてものは何ですか、あれは。あの豊田商事でもって紙切れ一枚でみんなお金を出した、あれと同じでしょう。リスク覚悟でもってやったかやらないかはさておいて、あれと同じようなことの答弁ですよ、今の大蔵大臣の答弁は。政府は国民のためにあるんですからね。それは片方でもうける者がいればリスクを受ける者もいたりするけれども、それをリードするのが政府じゃないんですか。そんな人ごとみたいなことを言って何ですか、あなた。
 それで、今も六十一年度申し上げたからあれですけれども、私は六十一年度のはむしろ日本円の数字で申し上げようと思うんだけれども、貿易収支の黒は十六兆二千二十二億、長期資本収支の赤は二十三兆一千二百八億円。貿易でもうけた、もうけたというそのお金はどうなっちゃったんですか。国民の何の利益にもなっていないんですよ。そのことについて手をこまねいている。だから今経企庁長官が言われたとおりなんですよ。それを指導するのが政府じゃないんですか。もうけたのならば、それを国民が恩恵に浴して生活が豊かになるようにしてあげるのが政府の仕事でしょうと言うんです。何でそのことをアメリカにはっきり言わないんですか。アメリカの金利が高いから、みんなお金を持っている人はアメリカに投資するのは当たり前のことですよ。
 きのうの晩のニュースでも、アメリカの方は金利を上げろ、日本の日銀は下げろと言っているじゃないですか、今でも差があるにもかかわらず。それを、G5なりG7なりおやりになる、あるいは日米首脳会談をおやりになったら、何で金利を同じにしろと言わないんですか、何でおまえらだけ高い金利でそうやっておると。それだから、おまえら日本がもうけた、もうけた言うけれども、そのかわりみんなおまえらの国に行っておまえたちの国の役に立っているんだぞということをなぜはっきり言わないんですか。もう一度明確にお答えいただきたい。
#54
○国務大臣(宮澤喜一君) 今のは為替差損のことをおっしゃったと思いましたが、そうでないことがわかりまして、それですとそういうふうにお答えを申し上げなければなりませんが、政府の役割は、国民の一人一人が、法人にしろ個人にしろできるだけ自由な経済活動ができるように、それは国内的にも国際的にもそういうふうにできるようにすることが政府の大切な仕事であるというふうに心得ております。
 そこで、我が国は貿易で大きな黒字が出ておりますが、そのかなりのものが海外の証券あるいは不動産等々の投資に向かっております。これは自由でございますから、国民は自分の責任においてやっておられることでありますが、その結果、我が国はそういう国に対して相当の債権国になりつつあるわけでございます。それらの投資は利を生みますので、それが送金になって返ってきておる。統計的に申しますと、だんだんそれが貿易外収支の黒字になってきておるということでございまして、確かに、我が国のそのような長期投資が例えばアメリカの市場におきまして大きな資本の供給になっておることは、そしてそれがアメリカの国内的な金融の非常な助けになっておりますことはおっしゃるとおりでございますが、それは何も先様のためを思ってやっておるわけではありませんので、向こうの金利が高いから、投資が有利だからやっておることでございまして、向こうが便利をしておるから我が国の投資家が損をしておるかというと決してそういうわけではございません。
 私どもは実は別の観点から、これだけ大きな海外投資があるようならば、国内にいろいろしたいこともあるので、国内でいわば社会資本の充実でも民活でもしてくれればという気持ちをいろいろ持ちますけれども、これだけ金利差がございますと、それはやはり高い方の金利に向かうということは市場経済としては自然なことであろうと思います。それを国内にとどめておくとすれば、国内においてそういう利子補給とかなんとかいう、特殊な仕事に対してそういう魅力ある条件を出しまして、この資本が国内で仕事をしてもらうようにする。そういったような工夫は幾つかあろうかと思いますけれども、現実には高い金利を求めて行っておる。これはしかし投資家の自分の責任における投資の方法でありまして、政府はそれに対して干渉すべきものではないであろうと思っております。
#55
○柳澤錬造君 総理はサミットに行かれるからあれだけれども、しかしむしろこれはやっぱり私は大蔵大臣だと思う。今度はG5なり、あるいはアメリカとてもいいです、そのときには、金利はお互いに同じにしよう、それはこっちもありがた迷惑だと、そのことははっきり主張してくれますか。
#56
○国務大臣(宮澤喜一君) それは主張できることではないと思います。お互いの金のマーケットの需給が違うわけでございますから、金利が同じになるというわけにはまいらぬだろうと思います。
#57
○柳澤錬造君 では、何のためにG5をおやりになるんですか。何でそこでもって円は幾らだ、どうだこうだ、そういうことの話をしてくるんですか。
#58
○国務大臣(宮澤喜一君) 金利が違いますからお互いの間の資本の移動が行われておるわけであって、そういう資本の移動と貿易の赤字、黒字等々の関係で為替というものが生じている、こういうことと理解しております。
#59
○柳澤錬造君 これ以上言ったってしようがない。アメリカの大蔵大臣なのか日本の大蔵大臣なのかわからぬのだ。
 それで、これはもう総理の方か通産大臣かにお聞きしてお考えいただきたいんですが、我が党の専門家に私計算さしたんです。一兆円の公共投資をすれば就業者が三十万人ぐらいできるというんです。一年ではそれほどすぐになにしたからといって税金は来ないけれども、三年間でトータルすれば五千億かの税収が得られますというんです。そうしたら、公共投資をやっていかなきゃいけない。公共投資だけではなくて、やっぱり民間の活力というものをこの際得るようにしなけりゃいけない。
 そこで私が御提案してお考えいただきたいというのは、民活懇談会というか、この国会の中でも、与党や野党の代表も入って、さらに言うなら学識経験者も入れて、それでどの程度のメンバーにするかはそれはさておいて、そして民間のプロジェクトをどういうところへどういうことをやるかというものをその懇談会のような場でもって御検討をしてそしてやっていくということ。民間の活性化、そういうことについてお取り組みをするお考えはございませんか。お取り上げをするお考えはございませんか。
#60
○国務大臣(近藤鉄雄君) 御指摘のとおり、公共事業一兆円が相当な内需拡大効果を持つことは私認めたわけでございますが、いかんせん、全部借入金となりますと、相当将来にわたって現在ございますような国債をさらに増すということで、長期的財政負担になります。
 そこで、実は私ども総理の御指示を受けまして、何としても民活で景気をよくしたいということでいろいろ検討しておりますのは、まあ一兆円という大きな金をまとめて使うのではなしに、それこそしかるべき将来性ある事業に利子補給という形で使うとか、既に昨年発表いたしました総合対策にございますように、特定のプロジェクトに助成金を出すとか、時間を切って、そういう形でいたしますと国の持ち出しが少なくて、より相当何倍かの民間資金の活用ができる、こういうことでございますので、そういったきめの細かい対策を今一生懸命検討しておる現状でございます。
#61
○国務大臣(中曽根康弘君) おっしゃるように、民間資本もできるだけ民活で動員して、それが民生に役立ち、あるいは長期資本投下になるように、社会資本の充実になるように今後も大いに努力したいと思います。
#62
○柳澤錬造君 そして、総理なり、これは大蔵大臣の関係もあるし、さらには通産大臣も考えていただきたいと思う。
 それは民活をやっていく上について、何というんですか、特定のプロジェクトを限定してもいいですからいわゆる免税債、利子所得に対して非課税にして、民間が持っている資金を集めていろいろ大きなプロジェクトをやる。それで、さっきも言ったように海外へどんどんどんどん、大蔵大臣によれば金利が高いからあっちへ行っちゃうのは当たり前だというふうなことではなくて、そういうお金が日本の国内でもっていろいろの事業を興して、そのかわりそこへ資金を出した人たちには免税債でもって税金はかけないよというふうな、そういうことをやって海外に流出するのを食いとめて、日本の国内でもっといろいろと事業を興すということ、そういうことをお考えできませんか。
#63
○国務大臣(近藤鉄雄君) 大蔵大臣はお立場がございますので、私今いろんな対策の準備をしている立場でお答えいたしますと、まさにこれも民間資金活用の大きな対策の一つとして、いろいろ議論がございますが、経企庁では検討さしていただいております。
 要は、株や投機や土地やまた海外の為替に回っているような、マネーゲームに回っているお金、私は今そのお金が天国に遊んでおると思うわけであります。余りお金を天国に遊ばしておきますといずれ地獄へ落っこっちゃいますので、何とか地上に、まともな地上の仕事に天国に遊んでおるお金を軟着陸させる、そして日本のストックの形成に汗をかいてもらう、これがまさにこれからの内需拡大政策の根本になきゃならぬ。そのためには利子補給とか免税債とかいろんな措置を、これはいろんな議論が過去においてございますけれども、もう一回いろんな形で知恵を絞ってみょうじゃないかということで検討中でございます。
#64
○柳澤錬造君 私、民活懇談会と例を挙げて言ったんですが、総理、名前はどうでもいいですから、これはぜひお考えいただいてお取り組みいただきたいことが一つ。
 それから、これは通産大臣にお願いしておきたいんですけれども、さっきも御答弁いただいたときにあったように、中小企業で、いろいろ公共事業が政府からおりてだんだん下へ行くと、なかなか大企業からお金がうまく払ってもらえない。もうこのごろは六カ月手形だ。ですから、その辺の点が、もうとてもじゃないけれども中小企業やそういう零細企業の人たちはやっていけなくなっちゃうので、何とかやっぱり、国からお金がおりてきたら大手はそれに準じてお金を払うようにちゃんと指示をしてください。建設省も関係があるけれども、ぜひ公共事業の関係についてはお願いをしておきます。
 それから総理の方は、先ほど言ったように、民活懇談会の実現ということについて、ぜひとももう一回やりますという御答弁を聞かせていただきたいと思うんです。
#65
○国務大臣(中曽根康弘君) 民活懇談会は、金丸副総理に大体民活をやっていただいて、副総理の諮問機関みたいな、個人研究機関としてそういう有力者を集めて勉強さしてもらっておるのです。その民活関係の研究機関を大いに活用して努力してまいりたいと思っております。
#66
○国務大臣(金丸信君) ただいま総理が御答弁申し上げたとおりでございますが、民活ということで推進懇談会というものをつくりまして、座長を経団連会長の斎藤さんにやっていただいて、メンバーは二十人、学者も入っていますし、あるいは下河辺君というような人も入っておるわけでありますが、もう今までに四回か五回、朝の八時から二時間あるいは二時間半懇談を続けておりまして、非常にこの民活という問題については関係者が熱意を持って、欠席者もほとんどないということで、今鋭意努力して民活をスムーズに、ただいま先生がおっしゃっているような考え方で進めてまいりたいと思っております。
#67
○柳澤錬造君 勇気ある通産大臣、建設大臣は大変だから、下請について代表して答えておいてください。
#68
○国務大臣(田村元君) 今の御質問の御趣旨は建設大臣がお答えするものだと思います。しかし、下請そのものにつきましては、幅の広いものでございますし、私どもで担当いたしておりますが、これは公取なんかと十分打ち合わせをいたしまして、実態調査などをし、また厳しく監視をして不当な処遇を受けないようにやってまいる所存でございます。
 建設業に関しましては、これは建設大臣が専門でございますからそちらからお答えをしていただきたいと思います。
#69
○国務大臣(天野光晴君) お答え申し上げます。
 大手が仕事を請け負って、下請が細かいところまであるのが現実です。非常に難しいことではありますが、その資金の流れが順調に行くように、公共事業はもう御承知のように三分の一は契約と同時に支払いをしますから、そういう点で、末端で現実に仕事をする下請業者に対しては、それが潤沢とはいかなくても必ず回るように、先ほどお話のあったような半年の手形を書くというようなことは避けるようにいたしたいと考えております。
#70
○柳澤錬造君 通産大臣、建設大臣、ありがとうございます。ぜひそういう指導をしてあげていただきたいと思います。
 次に、土地の問題で若干触れておきたいと思うんです。
 この間の国土庁の発表で、特に東京都の場合は平均で五三・九%、あの地価狂乱と言われた昭和四十八年ですら三三・八%の値上がりだった。異常なんというものではないわけなんです。それで、坪一億円といえば、あの小さな切手、普通我々が使う四十円、六十円のあの切手一枚分で一万四千円になるんです。だから、切手一枚が一万四千円もするようなそんな土地で成り立つ産業というか、商売があるのかどうか、あったら教えていただきたいと私は思うんですが、いかがですか。
#71
○政府委員(加藤昭六君) 先生御指摘の地価高騰の著しい大都市におきます産業の動向でございます。例えば情報産業、ファッションデザイン産業などの一部のサービス産業あるいは企業本社などの高度な管理機能の一部につきましては、依然として需要が存在するもののようでございます。しかし他方におきまして、土地の高度利用の程度の低い産業、これがかなりあるわけでございますが、事業活動を行うことが非効率的になってきておりまして、こうしたものがふえてきているものと考えております。
#72
○柳澤錬造君 今の答弁を政府は認めるの、あんな答弁をさせていて。よろしいですか。
 ニューヨークのあのオフィスビルの一番最高級のところで坪千三百万円なんですよ。いかに日本の土地が高いかということ。住宅地に至っては、私が調べたときにニューヨークの、もちろん住宅地で郊外へ行くんですが、坪三万五千円というんです。東京の中を探して、どこへ行ったら三万五千円の土地がありますか。サラリーマンが家を持とうといったって持てやせぬのでしょう。だから、そういう点に立って政府が本気になって今この土地政策をとらなければ、いかに一生懸命貿易をやって何やったってみんなもう土地に食われちゃうんです。それで、きのうもだれか知らない人、東京の人が私のところへ電話をかけてきて、死んだって遺産相続できませんと言うんですよ、自分が持っている家を売らなきゃいけなくなっちゃうから。どうしてくれますかと。
 ですから、そういう点でもってお願いしたいことは、これも言葉が適当かどうかなんですけれども、これは私ども民社党が前から考えでいたんですが、土地臨調のようなものをつくって、もちろんメンバーは学識経験者や地方自治体の代表や民間の経営者とかいろいろ、そういうメンバーはあれですけれども、それで緊急に土地の抑制のためのいろいろの政策やそういうことについて相談をするようなことをやっていただきたい。これは緊急を要することなので、そういう意味では、官房長官いなくなっちゃったので、大変大事な点ですから総理から御答弁いただければと思います。
#73
○国務大臣(中曽根康弘君) 土地臨調の構想は、柳澤さんからもう前から承って私よく考えておるところなんですが、そうにわかにイエスと言えないようなそういう難しい問題があるのであります。土地の問題といえば大体東京中心、大阪とか、大都会が今のところは問題なので、それでやはり供給をふやすという基本的なことをやらぬというと、単に法的規制だけでやると、事態がもうよじれたりねじれたりするばかりになる。そういうような、いかに土地の供給量をふやすかという基本的なことを考えますと、これは建設省とかあるいはそのほかの仕事になりまして、ですから、東京駅の上へ大きな高層を建築したらどうかとかあるいは東京湾の埋め立てであるとか、アイデアは幾つも実はもうあるんです。
 しかし、実際問題として今度はやるという形になりますと、東京都というものあるいは区というものがございまして、みんな利害関係が複雑にかみ合っております。したがって、一片の上からの法律や何かだけでは必ずしもうまくいかない、そういうものがありまして、普通の行政における臨調みたいなものあるいは教育における臨調みたいなものと性格が違うんです、実際は。そこで閣僚協議会をつくっておりまして、これは建設省も各省もみんな入って、法制的な面も検討しつつ、官房長官が取り仕切りつつ、今のような土地問題をどう処理するかと責任者が集まって今実際やっておる。ある程度これは処方せんが出ております。一番極端なのは新・国富論の大前君が書いたようなものもありますね。あるいはそのほか幾つか出てきております。竹村健一君が書いているのもあります。いろいろあるんです。
 しかし問題は、それらのものを実行するについて具体的にどういう配慮が必要であるかという、今や実行の問題になってきて、アイデアの問題よりもむしろ実施手続をどうするかという問題になっておる。それは行政の分野に入ってきております。そういう意味において、やはり内閣やら閣僚協議会というものを活用していく方がいいんじゃないかなと実はそう思いまして、しかしこれは非常に大きな難しい問題がありますから、いろいろ何回も会合を重ねながら進めていきたいと、そう実は考えておるのであります。
#74
○国務大臣(田村元君) さっき私どもの局長がお答えをしたのは、あれは、実は柳澤委員から、こんな坪一億円以上の土地で問題にならぬが政府の無策じゃないのか、しかしこれだけ高い土地で、それでもなお何とか成り立つというものがあったらどんなものだと、こういうお尋ねがあったというので、実際にこんなばかな高い土地で合うものがあるだろうかと。そこが役人というのは愚直でございますから、それで一生懸命になって探して、ようやくサービス産業の一部とか高度な管理ということで、大会社の本社とかというところかなあということで善意でお答えをしましたので、あれだけ探すのは大変だったようです。どうぞあしからずお許しを願いたいと思います。
#75
○柳澤錬造君 その努力は敬意を表して認めましょう。だけれども、一坪に私が一万円札を並べたら二百七十枚しか並ばないわけなのよ。だから、ファッション産業だろうが何だろうが、結局それは売り値に転嫁をできる産業だということなんです。普通の産業がそんなもの、コストが高くて何にもできるわけがないんです。だからそういう意味で言ったんだけれども、今大臣が言われたとおり、その努力は大いに敬意を表して認めましょう。
 それから時間もなにしちゃったからあれですけれども、総理、これは去年も私言って、そこに農水大臣もいて、また何だかんだあれだけれども、土地を、コシヒカリやササニシキのうまい米のとれるところを減反でもってカットするんじゃなしに、東京都のようなところはもう全部農地をやめさして全部宅地に提供させる。そうすれば、先ほど総理が言ったように、提供されてきたらばかなそういう値上がりもとまると思うんですから、そういうふうなことを考えてやっていただきたいということ。その点でことしは農水大臣は少しお考えが変わりましたか。
#76
○国務大臣(加藤六月君) 去年もおっしゃいました。
 実はことしから水田農業確立対策というものをやるようにいたしております。これは水田農業といいますか、水田農業の生産性の向上とか地域輪作農法の確立ということを目指しておるわけです。そしてこの本当のねらいは農業、稲作を担う地域、担う人々、これにしっかり配慮していこうということでございます。
 ただ、先ほど総理も土地問題の難しさについてお話しになりましたが、私は大都市及びその周辺などの市街化区域内の水田については、この水田農業確立対策の趣旨、今一生懸命我々やりよるときですが、趣旨並びに都市計画法による線引き政策との整合性に配慮しながら、転作等目標面積の傾斜配分を強化することとしております。都道府県別の配分に際しましては、市街化区域等面積の要素を重視したところでございます。ただ、市街化区域内にある農家は、一言の言葉で言いましたら零細な飯米農家、自分のうちで食べる分だけをおつくりになる農家が多いわけでございますから、実際上転作の実施ということは労働力、技術水準、資本整備等の面で困難を伴うことが非常に多いというのがある面では現実でございまして、こういう農家に傾斜配分をより多くしましても実際はその実施が困難ということでございます。
 先ほど来のいろいろな議論を承っておりましたが、もう少しレジャーを楽しむ気持ちを持って週休二日制二日制で実施をしていきますと、その週休二日制は小さい田んぼで農業をやろうか、不景気になってきて雇用問題でいろいろな問題が起こってきますと小さい田んぼで農業をやろうか。今の国の政策は世に言う二種兼業農家あるいは市街化区域内における農家に引き続き農業をやってくださいということになるような感じも時にはいたすわけでございまして、ここら辺が非常に難しい問題でございますが、とにかく私の立場としたら水田農業確立対策というものを着実かつ的確に推進してまいりたいということでございます。
#77
○柳澤錬造君 またそれは宿題を残しておいて、時間もございませんので次に進みます。
 大変重要な事件が去る五日に起きているんです。東京タンカーが運航している秀邦丸といって二十五万八千重量トン、相当大きなタンカーです。ペルシャ湾内を航行中に、イラン国籍らしいと言わなくちゃこれはぐあいが悪いから、ですけれども、高速ボートが右舷の五、六十メーターのところへ接近してきてロケット砲を撃ち込まれたのです。機銃掃射を浴びた。それで、早速船ではSOSを発信して汽笛を鳴らしたら、またそれを聞きつけて再度やってきて攻撃したというふうな事件が起きたんです。
 これは、今日ペルシャ湾のところで二百六件もそういう事故が起きているんですけれども、日本船だけの被害というものは被弾を食ったのが五隻、拿捕されたのが二隻、臨検が五隻、さらにはアルマナック号なんというのは人命まで失うような事故が起きているんですが、これについて、運輸省の方もあれだし、それから外務省の方なんかも、日本船が安全に運航できなければ困りますので、万全の対策をおとりいただきたいと思うんですが、いかがですか。
#78
○国務大臣(橋本龍太郎君) 今柳澤委員のお話の中で、実は被害の出ております船の数はもっと多いのでありまして、三月十六日までの時点で、ロイズの調査によりますと二百二十三隻の船が被弾をいたしております。
 我が国の全原油輸入量のほほ五〇%がホルムズ海峡を経由しておりまして、ペルシャ湾水域における船舶の安全航行というものの確保が極めて大きなものであることは申し上げるまでもありません。それだけに、先般の事件は我々にとりましても極めて大きなショックでありました。イラン・イラク紛争が勃発いたしましてから、ペルシャ湾における商船攻撃まで発展をし、我が国の船籍の船として白昼攻撃を受けましたのはこれが初めてのことであります。
 今御指摘になりましたように、よく火災が起きなかったと思いますし、よく死傷者が出なかったと思う被害の状況でありますが、運輸省の立場としては、従来から本当に外務省に対して、外交ルートを通じた湾内の安全航行の確保に向けての措置を要請するという以外に外に向けての方法を持ちません。また、海運の労使に対しましても安全対策というものの実施を指示してまいったところでありまして、これからもペルシャ湾内外の日本関係の船舶の動静把握あるいは当該地域情勢に関する情報の関係者への迅速な伝達といったような処置をとりながら、ペルシャ湾内外における日本人船員及び日本の商船隊の安全確保に対して努めてまいる所存でございます。
 今回の事件につきましても、改めて外交ルートを通じて、紛争当事国に対し日本人乗組員及び日本商船隊を含めた湾内の安全航行の確保について働きかけるように外務省に対してお願いを申し上げているところでありますが、これは海運労使の不安というものは非常なものでありまして、昨日も予算委員会中に運輸省の方には、海運労使それぞれの立場から、もう我々の手によって安全対策を講じられる限界は超えている、国として何とかこれに対して手を打ってもらいたいという悲痛な叫びが届けられておりますことをも申し添えて、御報告にかえます。
#79
○国務大臣(倉成正君) 今運輸大臣からお答え申し上げましたが、外務省としては、かねてからイラン・イラク紛争の平和的解決のためにその環境づくりに最善の努力をいたしているところでございます。国連の場を通じて、またあらゆる外交ルートを通じて両国に対して働きかけているわけでございます。
 ただいまの問題は、御承知のとおりちょうど現地時間の五日十一時二十分ころ、アラブ首長国連邦のシャベルターナで原油積み取りの後カフジ向けの航行中だった日本籍タンカー秀邦丸の事件でございます。これは、国籍不明のガンボートから二回にわたりロケット砲及び機関銃掃射による攻撃を受けて被弾しておるということでございます。先ほどのお話のように、人命に異状がなかったのは幸いだったと思います。ペルシャ湾内で日本籍船が、他国籍で日本の船員の乗っている船は多数受けておりますけれども、日本籍船が被弾したのは、本年については一月のコスモジュピターの被弾に続き二度目でございます。
 したがって、外務省としましては直ちに事件発生後、本船が修理のため立ち寄ったバーレーン駐在の我が方の大使館をして同船との連絡その他に当たらせる一方、イラン、イラク両国政府に対してハイレベルで今回の事件につき遺憾の意を表明するとともに、事件の事実関係の調査を要請して、また湾内の安全航行確保のための配慮を強く求めておる次第でございます。
 このカフジの付近の状況は、私どももカフジに十日ぐらいおりましてペルシャ湾の状況はよく存じておりますので、この問題については深い関心を持って、先方から関係者が参りますごとに注意を喚起いたしておるというのが現状の次第でございます。
#80
○柳澤錬造君 こういうことだからなかなかいい決め手がないと思うんだけれども、ともかくこれは総理、見ておいてください。(資料を示す)秀邦丸からすぐファックスで送ってきたものです。こういうボートなんですよ。それで、スウェーデン製だ、そのくらいのことはいいと思うんだけれども、前に積んであるのがロケット砲、後ろに機銃を積んで、それで五、六十メーター近くまでやってきて、横っ腹に大きな日の丸がちゃんとかいてあるんですから、それを確認して、それで、前はよく誰何されたからそれをされるかなと思っていたら、何も言わないで少し離れていった。そしたら、どかんといってぶち込んできたというのです。真っ昼間でしょう。
 それで、専門のところで調べたのによると、こういう船を大体五隻ぐらい持っているようです。そしてここ最近六週間の間にもう、三月十一日、十六日、四月十一日、十三日とやはり攻撃されているんです、たまたまこれは日本船じゃなかったわけなんだけれども。
 これは、何だかんだ言っても、ちゃんと日の丸をなにしてやっておるんだし、言うならば主権の侵害ですからね。だから、そういう点からいくならば外務大臣、もうちょっと、国連をなんというのんびりしたことではなくて、何らかの手を打てないんですか。もし打てなければ、全部あの近辺を航行するのをストップさせるか何かしなかったら安心して乗っていられないんです。
#81
○国務大臣(倉成正君) 御案内のとおり、今イラン・イラク戦争が不幸にして非常に続いているわけでございますから、我が方としては、イラン、イラクの双方の大使を通じて、また現地の我が方の大使館を通じて先方の政府に厳重にこういうことのないようにということを申しております。また、先方からいろいろ次官が参りましたり高官が参りました際にも、問題の注意を喚起しておるというのが実情でございます。あわせて、国連において、こういうことがないようにということを国連の代表より指示をいたしておるというのが現況でございます。
 なかなか決め手がないというのは大変残念なごとでございますけれども、最善を尽くしてこの問題に当たっておるということは御理解いただきたいと思うのでございます。
#82
○柳澤錬造君 総理、本当に指揮をとっていただきたいと思います。
 それから領空、領海侵犯のときも私は言ったことがあるけれども、これも同じように主権の侵害なんですから、そういう点に立って外務大臣にお願いしたいことは、イラン、イラクからどういう返事が来たのか、来たらやっぱり教えていただきたいのです。
 これも言っていいかどうかわからぬけれども、ここに書いてあるのはイラン革命防衛隊というのですから、イラン政府の支配下にあるのかないのかもこれはわからないでしょう。だから、その辺の点なんかもよほど本気になって扱っていただかなければ、とてもじゃないけれどもみんな安心してあそこを船に乗って走れませんので、その点、もうちょっと明快にしていただきたいのです。
#83
○国務大臣(倉成正君) 先方から、我が方の船が攻撃したというようなそういう回答は参っておりませんので、その辺のところが非常に難しいわけでございます。したがって、これをどういう形で我が方として、この地域から石油の大部分を入れておるというような実情のもとにおいて日本の船員の生命を保護していくか、安心して航行できるかということについて心を砕いているところでございまして、私もあらゆる外交ルートを通じていろいろな機会にこの問題の注意を喚起しておるというのが実情でございます。もちろん、イラン、イラクのみならず他の国々の政府にもこのことの実情は申し上げておるところでございます。
#84
○柳澤錬造君 ともかく乗組員の安全のために、それなりの政府として処置をとってください。
 それから次に、総理、よく戦後政治の総決算と言われるんで、私は、戦後政治の総決算といったら今の日本にとって何かといったら、やっぱり北方領土の問題を解決することだと思うんです。
 昨年も、盛んにソ連のゴルバチョフ書記長に早く来てくれと御執心だったし、それで、来たら今度は総理もソ連を訪問したいということを漏らしておったわけですが、日ソ首脳会談をお開きになったらこの北方領土の問題が解決する見通しがおありでいろいろそういうことの御発言をなさったかどうか、そこからまずお聞きしたいです。
#85
○国務大臣(中曽根康弘君) 北方領土の問題は我が国の最重要問題の一つでありまして、歴代内閣相受けて強い主張を今までやってき、私もまた強い主張を継続してやっておるわけであります。日ソ首脳会談ということがあれば、当然この領土問題というものについて我が方の見解を強く言うべき筋合いのものであって、これを避けては通れない、そう私は考えております。
#86
○柳澤錬造君 そこで、外務大臣にお聞きするんですけれども、あれは四十七年ですか、当時の田中総理が行かれて、田中・ブレジネフ会談。その後帰られて、当時の田中総理は未解決の諸問題という中に歯舞、色丹、国後、択捉が入っているんだということをブレジネフがちゃんと確認したということを国会で答弁された。ところがソ連の方では、領土問題は解決済みであって再検討することは何もない、妥協することも一切ないとはっきり言っているわけなんだ。
 私は、五十五年の三月のこの予算委員会で、この問題をずっとその前の経過から取り上げてやって、それだけ食い違っているなら外交ルートに乗っけて何で明らかにしないんですかと言って、やりなさいと言っている。あれから七年たっているんですから、当然それについて明確になったと思うんですが、どういう結論に一致したんですか。
#87
○国務大臣(倉成正君) ただいまのお話でございますが、四十八年のことだと思いますが、昭和四十八年に田中・ブレジネフ会談の結果、日ソ間におきまして第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結すべき旨が共同声明で規定されることとなり、さらに、未解決の諸問題の中には北方四島の問題が含まれているとの確認が両首脳の間で行われた。しかしその後、ソ連側が一方的に領土問題は解決済みとの態度をとり、我が国との話し合いに応じてこなかったというのがその後の経過でございます。また、この会談に同席した職員が現在外務省にもおるわけでございます、ダーダーというような答弁を先方がいたしたというのに現実に立ち会った職員がいるわけでございます。
 昨年に至りまして、二度にわたる日ソ外相定期協議の際に、我が方から北方領土問題を日ソ間の最重要懸案として提起し、ソ連側と話し合い、領土問題を含む平和条約交渉が再開され継続されることとなりまして、その旨が昭和六十一年一月十九日及び五月三十一日付の日ソ共同コミュニケに明記されておる次第でございます。
 ソ連側の本問題に対する立場は、私がニューヨークにおきましてシェワルナゼ外相と会談をいたしましてゴルバチョフ書記長の来日を招請した際にも、この問題を必ず解決することを強く主張した次第でございますけれども、先方は極めて厳しい立場をとっておりまして、政府としては今後とも、首脳会談、外相定期協議を初めあらゆる機会に、国会の御決議があることでもございますし、歯舞、色丹、国後、択捉の北方四島一括返還実現のため粘り強い交渉を続けていく覚悟でございます。また、あらゆる中立的な諸国が参りました際にも、この問題の存在を提起しておる次第でございます。
#88
○柳澤錬造君 外務大臣、そのことはわかっているんです。そのことのやりとりを昭和五十五年の三月の予算委員会で私がしたんです。それで、食い違っているんだから、その食い違っている点を外交ルートの方へ乗っけて明らかにしなさいよと言ったんです。それで明確にしてくださいと言ったのが、そのままそれから七年たっている。今同じことを聞いている。一致しなかったのかどうなのかです。
#89
○政府委員(斉藤邦彦君) ただいま大臣から申し上げましたことを若干敷衍して御説明させていただきたいと思いますが、昭和四十八年の田中・ブレジネフ会談において先ほど大臣が御説明しましたような合意があったことは御承知のとおりでございますが、その後数年を経まして、そのような合意があったにもかかわらずソ連側は、領土問題は解決済みであるという態度をとるに至ったわけでございます。我が方は、もちろんそのようなことを認めるわけにはまいりませんので、あらゆる機会をとらえまして、あらゆるレベルで田中・ブレジネフ合意の存在ということをソ連側に伝えていたわけでございますが、昨年に至りまして、当時の安倍大臣とシェワルナゼ外相の会談が行われました際に、その共同コミュニケにおきまして、一九七三年付の「共同声明において確定した合意に基づいて、」、これは田中・ブレジネフの合意でございます、「日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を行った。」という文言が入るに至ったわけでございます。
 それで、事実の問題といたしましても、安倍大臣とシェワルナゼ外相の間で数時間にわたりまして領土問題の交渉が行われたということでございます。
#90
○柳澤錬造君 私が聞いているのは、その四十八年の田中・ブレジネフ会談に対する認識が日本政府とソ連政府で違うんです、何でそれを外交ルートできちんとしないんですかということを七年前に聞いている。今までの事実経過を言っているだけじゃないですか。その違う点を何であれしないんですか。
 それで、それ以上言ってもしようがないから、この北方領土問題では、外務大臣、この間山下総務庁長官が現地視察されたこと、本当に敬意を表するし、感想があればお聞きしたいと思いますが、感謝を申し上げたいと思うんです。まだ恐らく外務大臣も行っていないと思うんだ。
 それで、やっぱり北方領土返還の一番のあれは、国連の舞台に行ったときに、毎年行かれるんだから、世界に向かって世界の世論を動かさない限り、日本とソ連の外務大臣が会ったって片づきはせぬのです。国際世論をどうやって動かすかということが第一。それから、こういう状態になったことについてはアメリカも責任があるのだから、アメリカも説得すること、そのことをおやりいただけますかどうですか、この二点。
#91
○国務大臣(倉成正君) 政府としては、北方領土の問題は基本的には日ソ二国間の問題であり、両国間で話し合いで解決すべき問題であると考えておる次第でございます。しかし、先生のお話のように、この問題は、なかなか平和条約締結の三つの条件、戦争の終結、賠償そして領土問題、そしてその最大の問題の一つである領土問題が片づかない限り平和条約の締結はできないわけでございますから、この点については北方領土問題に関する国際啓発には一生懸命努めているわけでございまして、国際社会において北方領土問題に関する我が国の正当性についであらゆる機会をとらえて申し上げております。
 それでは、これをどういう形で国連の場において、あるいは国際社会の場において取り上げたらよいかということは、いろいろと知恵を絞っておりますけれども、しかしながら、やはり原則的にはこの問題は日ソ二国間で解決するというのが正しい方向ではなかろうかということでこの問題を取り上げておるわけでございまして、ゴルバチョフ書記長の来日を要請しているのもまさにこういう角度からいたしておる次第でございます。
#92
○国務大臣(山下徳夫君) 先月の三十日と今月の一日、二日間にわたって北方領土を視察してまいりました。率直な私の感情としては、巡視艇で参りましたところが、ソ連の巡視艇が近づいてくる、何か監視されるべきでないものに監視されているという非常な不愉快さを持って私は帰ってまいりましたし、同時にまた厳しさも感じました。
 また、北方領土から帰ってこられた方々のいろんなお話をお聞きして、とにかく私ども決意を新たにしてこの問題に取り組んでいかなきゃならぬ。そのためには、内外の世論をさらに結集して、末長く根気強くやっていかなきゃならぬと決意を新たにした次第でございます。
#93
○柳澤錬造君 総務庁長官、ありがとうございました。
 外務大臣ね、何十年たつんですか。これは日ソ両国の問題だから、それで片がつくなんというふうなお考えをお持ちだというところにまず認識の誤りがある。
 それで、世界の各国の地図がどうなっているか御存じなんですか。何年か前に我が党の小沢、今国対委員長をやっているのが、沖縄北方特別委員長をやっているときに、世界の地図を集めて調べたんです。北方領土を日本と同じ色に区分してくれていたのは、そのときは韓国と中国と西ドイツだけだったんです。それで外務省が各国になにして、トルコがすぐ修正してくれた。毎年のように私この問題をやっているからあれだけれども、昨年やったとき、そのとき今度はパナマが修正してくれたんです。それで、アメリカはと言えば、アメリカは今までずっとソ連領にしておったのが、やっと言って何をやったかといったら、日本領とソ連領とチャンポンにしま模様の色をつけたという。あとは全部まだソ連領になっているんですよ。世界の各国の地図さえも修正させられないようなことで、そんなことでもって何で北方領土が返ってくるなんと思うんですか。日ソ両国だけで片がつぐんですか。その世界の地図を直すことをおやりになる御決意はございますか。
#94
○政府委員(長谷川和年君) 各国の地図の改訂に関しましては、どうも毎年行われているようではなくて、数年間に一度行われている国もあるということのようでございまして、またその地図の出版等につきましては、出版会社の中には地図は現実の支配を示す、そういう考えがあるようでございます。こういうことから必ずしも、こちらの方は在外公館を通じて厳しく申し入れているんですが、この申し入れが直ちに訂正にはね返る、そういうわけではないようでございます。
 現在各国におけるいろんな状況を調べてみますと、先生御指摘のとおりトルコほか五カ国、新たにクウェートが加わっていますが、地図における北方領土の記載ぶりが日本領となっている、こういうことを確認しております。米国におきましては、先生が言及なさいましたが、アメリカの政府が作成する地図、その記載に当たっては、北方領土を記載する場合には、一九四五年以来ソ連が占領、日本が領有権を主張している、そう注釈をつけるなどの決定を行っており、米国の民間の地図会社が今後地図を改訂する場合にはおおむねこういった方針で改訂するであろうと、そういうふうに承知しております。それからインドネシア、これは小学校の地図でございますが、小学校の地図もこのような注釈がついていると承知しております。
#95
○委員長(桧垣徳太郎君) 時間が参りました。
#96
○柳澤錬造君 時間が来ましたのでもう終わりたいと思います。
 最後に、本当に外務大臣真剣になって取り組んでください。それで、今言うとおり世界の各国の、もちろん印刷があれだからです、しかし私が国会で取り上げてからでももう六、七年になるんですよ。世界の地図すらも修正され得ないものが、ソ連のゴルバチョフさんとやったってそんなものは片づくものではないんです。そういう点で何としてでも、国民の願望であるし、戦後政治の総決算ということになれば、それは一番やっぱり北方領土の問題を片づけることから最優先して取り組まなきゃならないんですから。せめて地図ぐらい速やかに各国に、厳命を下して、それぞれの大使がやるようにさしてくださいということを希望申し上げて、答弁があればお聞きして終わりたいと思います。
#97
○国務大臣(倉成正君) まことにごもっともでございます。御激励をいただきまして、そのとおりに努力いたしたいと思います。
#98
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で柳澤錬造君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#99
○委員長(桧垣徳太郎君) 次に、林田悠紀夫君の質疑を行います。林田君。
#100
○林田悠紀夫君 五月の連休には成田空港は若者でいっぱいであったそうでございますが、総理は重い荷を背負われてアメリカへ旅してこられ、レーガン大統領との間に相互理解を進めてこられまして、まことに御苦労さんでさいました。
 ちょうど訪米前の四月二十七日であったと思いまするが、当委員会におきまして訪米の目的として、第一に平和と軍縮の問題、それから第二に世界経済の停滞打破、保護主義の防圧のための二国間問題の解決を挙げられました。そして、日米首脳間の合意を促進されたわけでありまするが、そこで第一に核軍縮の問題につきまして質問を申し上げたいと存じます。
 昨年十月のレイキャビクの米ソ首脳会談におきましては、INF削減などで潜在的合意に達しましたが、SDIの問題で物別れになりました。その後、本年二月になりましてゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が、INFをSDIと分離してINFは欧州では全廃して、アジアでは弾頭百発、そしてアメリカは同数を本土に保有する、こういう分離合意を提案いたしました。その後、シュルツ米国務長官が訪ソいたし、またこの四月二十二日以後ジュネーブで米ソのINF交渉が再開をされております。総理は、レーガン大統領との会談におきまして、INF削減交渉について、アジア配備のSS20についてはあくまでもグローバルゼロを最終目標とするように求められたと、かように聞いております。INFの軍縮交渉につきましてアメリカ側の感触はいかがなものであったか、まずお伺いいたしたいと思います。
#101
○国務大臣(中曽根康弘君) 米ソのレイキャビク会談におけるいわゆる潜在的合意と言われるものを、ぜひ実のあるものにするように努力をしていただきたい、首脳会談はできるだけ早期に開催されることが望ましい、そのためには我々自由主義諸国が団結してレーガンさんを支持し激励する、その前には政策調整というものが必要であろう、特にヨーロッパ側においてはいわゆるSRINFという問題もございます、短距離のINFの問題もございます、そういう意味においてベネチア・サミットまでにできるだけそういう政策調整も行って、ベネチア・サミットにおいては大いに結束して実のあるそういう会にしていきたいと、そういう趣旨のことも私は申し上げました。
 アメリカ側は今懸命の努力をしてアメリカ案を出し、ソ連もまたソ連案を出してきたようであります。今ジュネーブにおいてその詰め作業を行っておる。それで弾頭あるいは検証の問題、あるいはいわゆるSRINF等はどういう影響を持つか、そういうような問題がやはり一つの問題点です。我々としてはアジアの犠牲においてこのSS20の問題が処理されてはならない、これは一貫した私の主張であり、世界的規模においてこれは解決されなければならない、そういうことを強く強調しまして、仮に暫定的に妥協が行われるという場合においてもそれは期間をごく短い時間にして、そしてあくまでゼロを目指していくべきである、そういうことを強調しまして、レーガン大統領もその方法については賛成してもらったと考えております。
#102
○林田悠紀夫君 この核兵器の問題は、人類が今背負わされておりまする最も大きな脅威であります。そこで、少しでも核兵器を削減していく、これが非常に重要な問題で、これは各国の指導者の人類に対する大きな使命でもある、かように考えるわけであります。
 今回の米ソ会談というものはまことにチャンスでありまして、この時期を逃したならば再び核兵器の軍縮というものはなかなか困難であろう、かように考えます。そこで、総理の大きな外交的な力を発揮していただきまして、六月のベネチア・サミットにおいて各国が集まるわけであり、ヨーロッパにおいては今おっしゃいましたようないろいろな問題がまだ残っております。ぜひ、グローバルゼロになるように大いに努力をしていただきたいと思いまするが、よろしくお願い申し上げます。
 次に、為替レートの水準についてでありまするが、もう今まで各議員がいろいろと質問をされております。それで私はできるだけ重複を避けまして御質問を申し上げたいと思うのでありまするが、為替レートの水準は、経済の先行きについての見方でありまするとか、あるいは経済摩擦の改善策がどういうふうになるか、有効か否か、あるいはまたそれに投機的な考え方が加わっていく、こういうような非常に複雑なものであると思うんです。特に、貿易統計にあらわれまする輸出入の額が問題にされております。しかし、現代は企業が多国籍になりまして、国境を越えて人や金や物が動いておる時代であります。米国ではドルの異常高が続いた時代に米系企業は利益を求めまして他国に工場を立地いたしまして、我が国にも多くの企業が進出をしてまいっております。この米系企業の進出先の生産額とそして本国への輸出額の大きいことを考えますると、米国の経済力というものはもう相当大きいものであると、かように思わざるを得ないわけであります。
 そこで、現在の為替レートが構成される要素だけでは律することができないわけでありまして、そのほかに、例えば日本からの輸出がありましたならば、その輸出額と在米日系企業の生産額を合計したものと、それから米国の日本への輸出額と在日米系企業の生産額を合計した計数、こういうものも比較しなければならぬと思うんです。これは大前さんも唱えておられるわけでありまするが、昭和五十八年、昭和五十九年の数字を見てみますると、その合計額の差は極めて僅少であります。それから六十年、六十一年でも、貿易額の差は大きくなっておりまするけれども、これを入れますると大いにその差は縮小されるはずであります。我が国製造業の海外における生産比率はアメリカや西独の現在の水準の四分の一程度である、かように言われておるのでありまするが、こういう比較論を今までの日米会談の当事者同士の間でなさっておるのかどうか、この問題をまずお伺いいたしたいと思います。
#103
○国務大臣(田村元君) おっしゃるとおりでございまして、一九八三年統計で試算しますと、日本の対米輸出額及び在米日系企業の売上額の合計は五百七十億ドルでございます。また、米国の対日輸出額及び在日米系企業の売上高の総計は五百四十二億ドルでございます。この数字を眺めてみますと日米双方がおおむね均衡いたしております。このような考え方は、日米経済関係を考える際に貿易面のみならず投資面にも着目する必要があることを示唆しておるものであります。政府といたしましても、この点を十分認識しておりますと同時に、これまでも投資交流の促進が日米経済関係の一層の緊密化、多様化に資するものであるとの観点から、その重要性を日米構造対話等の場において米側に主張してまいったところでございます。ただ、米側はこうした考え方に理解は示しておりますものの、日米間の大幅な貿易インバランスに対する政治的あるいは感情的ないら立ちというものがございまして、この考え方がそのまま通用しない面があることは事実でございます。
 先ほどおっしゃいましたとおりでありまして、八三年の日本の対米輸出が四百二十八億ドル、在米日系企業の売上高が百四十二億ドルで、合わせて五百七十億ドル、米国の対日輸出が二百四十六億ドル、在日米系企業の売上高が二百九十六億ドルで、合わせて五百四十三億ドルということになっております。そこで、在米日系企業の売上高というものはこれはアメリカにおける営業ということになりますし、在日米系企業の売上高は日本の国内における営業ということになりますので、貿易面では対米輸出、対日輸出というものが単純に数字として出てまいります。
 でございますから、八三年時点では対米輸出が四百二十八億ドル、対日輸出が二百四十六億ドルという数字が出てきて、非常なインバランス、今はもっとひどうございますけれども、というようなことでございまして、今おっしゃいましたように、アメリカのいら立ちももちろんありますが、こういうトータルをこれからもなお強く訴えて、そして現実にはいわゆる質的にはこういうふうに買っておるんですよ、しかも日本の場合は人口が半分ですよ、それでなおこれだけ買っておるんですよということを今後も強く主張し続けたいというふうに思っております。
#104
○林田悠紀夫君 ぜひ、そういう問題を考えていただきまして、今後御主張をお願い申し上げたいと思います。
 それから、そういう比較論のほかに、購買力平価とかありまして、特に我が国の生活水準あるいは住居とか環境、こういうものは極めて劣悪であります。そういうものをあわせて考えた場合に、円が余りにも過大評価されておるのじゃないか、かように私は思うのでありまするが、大蔵大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
#105
○国務大臣(宮澤喜一君) 実際上の生活実感といたしまして、ただいま林田委員の言われましたような、殊に社会資本を中心としました蓄積が我が国は乏しゅうございますので、仮に年間の国民所得を現在の為替レートで割りまして、そうして米国あるいはヨーロッパの先進的な国より日本の国民所得の方が上であるということを言ってみましても、生活の内容がしたがって上かということになれば、どうもそうだということには多くの国民が実感をしておられないということは事実であろうと思います。それは、一つは為替のレートの上がり方が非常に急であったということもあるかと思いますが、他方で、フローはフローといたしましてストックが乏しいというところが、生活実感からしてそれほど豊かでない、先進のそれらの国ほど豊かでないという感じを持たせるのではないかと思います。
#106
○林田悠紀夫君 最近のアメリカの様子を見ておりますると、通産大臣もおっしゃいましたように、非常にいら立っておるようです。それでゲッパート条項とかシューマー条項を盛り込んだ包括通商法案が下院を通るとか、あるいはまたその前には半導体摩擦で報復を実施する、こういうことになったわけでありまして、こういう様子を見ると、アメリカは日本を敵視しておるんじゃないかということまで考えられるわけでありまするが、しかし、今も申しましたように、アメリカの企業は日本で自由に活動をしております。また、我が国は多額のアメリカの財務省証券を購入して米国の財政赤字を補っておる。そういうことでありまして、特に今問題になっておりまするのは、この五月の五日から六日、七日にかけまする米国債の購入についてどういうふうになっておるかという問題であります。
 この購入状況が、特に三十年物国債の買い入れで日本勢が二〇%を切るというようだと激しいドル売りが起こるのじゃないかと、こういうようにも言われておりまして、もうきょうは八日の午後でありまするから、どういうようになっておるか、わかっておりましたらお伺いをいたしたいと思います。
#107
○国務大臣(宮澤喜一君) 非常に正確ではございませんが、概略のことはわかっておりまして、まずまずの応礼状況であったと。まずまずと申し上げます意味は、二月が非常に実は高うございました。その前は昨年の十一月でございましたが、昨年の十一月程度のことはあったようでございますので、我が国の企業による応札がむしろ一般に言われました予想よりは意外に高かったというふうに聞いております。
   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
#108
○林田悠紀夫君 まずまずの程度でありましたら結構であったと思いまするが、ドルが著しく下がりますると財政赤字の大きいアメリカ自身が困りまするし、アメリカの利子は上昇をいたしましてアメリカに対する債務国が困り、ひいて世界経済に大きな打撃を与える。また一方、日本の円の著しい上昇も日本産業に大きな打撃を与えまして、ついにはアメリカの国債を買うことも不可能になるわけであります。
 そういうように極めて今相互補完関係にあるわけですが、現在特にアメリカ議会においてとっておる政策と申しまするか、まあこれはもちろん政府がとっておるわけでありまするけれども、ドル安円高政策であります。このドル安円高政策は米国の輸出を増加させるためにとっておると思うのでありまするが、これが果たして有効かどうかということであります。もし、日本の産業が大きな打撃を受けておる円高にもかかわりませず米国の輸出が伸びないといたしますると、米国側に大いに問題があるということになると思いまするが、いかがでございましょうか。
#109
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの中曽根首相とレーガン大統領との共同声明の中で注目すべきところは、これ以上のドルの下落がございますとそれは我が国にとって、日本にとって困るというばかりでなく、アメリカにとっても困る、両国経済の力強い成長及び不均衡の削減に逆効果となるという点でございまして、我が国が困るということは従来何度も言ってまいりましたが、米国の最高責任者が、アメリカ自身にとってもそれは実は逆効果である、カウンタープロダクティブであると申しましたのは注目すべきことだと思います。これは今林田委員の言われましたような、まさしくアメリカ自身の、こうなりますと金利を高目誘導しなければならない、それはインフレになりやすい、企業意欲も阻害しやすい、そして累積債務国にも類を及ぼせやすい、こういったようなことを総合しての判断であると思います。
 それでございますから、おっしゃいますように、アメリカの貿易赤字というものが早く減ってほしい、それがこの問題解決の一番のかぎになるわけでございますが、ただいままでのところ、確かにその兆候がもう見え始めたと断ずるにはどうも十分な傾向は見えておりません。いっときそういうことがちょっと見えかかったと思いますとまたどうもそうでないというような、一進一退を繰り返しておるようなところでございまして、しかしこの声明の中で大統領が米国産業の競争力を向上しなければならないと言われましたのは、言葉をかえて言いますとこれは国際競争力、すなわち貿易赤字の改善ということを言われたと、明確にそうであると思いますが、アメリカ自身もそのための努力を約されたと期待をしておるところでございます。
#110
○林田悠紀夫君 今大蔵大臣がおっしゃいましたように、数字で見ますると一九八五年の米国の対日輸出は二百五十八億ドルであります。それが八六年は二百九十一億ドルで、三十三億ドルより伸びていない。その間に円は大いに上がってきておるわけです。だから、日米ともに貿易上の問題を解決するということはなかなか簡単ではないことを考慮しなければならぬ。いたずらにアメリカが日本を敵視するという態度はとるべきではない、かように思うわけでありまするが、これからの日米交渉におきまして十分そういうことを話し合っていただきたいと存じます。これは希望であります。
 次に、総理のおっしゃいますように日米両国は自由主義を守る最も緊密なパートナーでありまして、我が国としては、なすべきことは早急に実行しなければならぬことは当然であります。そこでこのたび総理も、我が国が早急に実行すべきことを必ず行動として起こそうと、こういうことで帰国をされたわけでありまして、当然のことであると存ずるのであります。
 そこで、我が国に課せられました第一の問題は、この経済構造の内需への転換であり、急速な内需の拡大であります。速やかに大型補正の具体的な骨格を明らかにいたしまして、国としての積極的な内需拡大の意図を内外に明示しなければならぬと思うのであります。総理は日米首脳会談で、リアルマネーをつぎ込んで補正予算を速やかに組むことを約束されたのでありまするが、これをどのように具体化されるおつもりでありまするか、総理の決意をお伺い申し上げたいと思います。
#111
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は、党が編成してくださいましたいわゆる経済政策の要綱を持ってまいりまして、予算が成立しましたら速やかにこの要綱を中心に党と内閣で一緒になって緊急経済対策をつくり上げて、それを予算化して補正予算として提出したいと、もとより予算成立が条件であると、そういうことで申し上げてきて、内容としては党が掲げてあるような内容のものを、言いかえれば公共事業費、社会資本の充実等を中心にして、そして実のあるものにする。向こうが前に批判したのは、オフセットするという言葉を使いまして、後の予算で相殺できるように見せかけの予算めいたものが多少あった、そういうことを批判しておったものですから、後で相殺することがないように実際実のある財政的な支出を中心にやる、そういうことを言ってまいりました。
 そのほか、約二百億ドルに及ぶ資金の還流、発展途上国に対する還流、昨年の分を入れて三年間で約三百億ドルになります、そういうものとか、あるいは日米間の個々の、関西空港であるとかそのほかの具体的問題がございましたが、これらに関する当方の所見、解決案というものも申してまいりました。それらの考え、特に予算等の問題等につきましては、プレスクラブにおきまして世界じゅうの新聞記者団約五百名、未曾有の集まりでありましたが、それが集まったところでも鮮明にしてきたわけで、これはやはり世界に対して我が国がこういうことをやるということを正式に総理大臣として発表してきたと、そういうことでこれは誠実にやらなければならぬと思います。
 したがいまして、緊急政策が内閣、党一体でできましたら、速やかに補正予算の編成に入りまして、できたら六月中にはもう補正予算の骨格やら内容はつくって、けさも閣議で建設大臣から強い要望があったのでございますが、もう七月中には成立するくらいにしてくれ、さもないと積雪地帯に間に合わなくなる、そういう御注文がございました。何しろことしは八〇%以上に及ぶ最大限の下期の事業を上期に繰り上げるわけでございますから、下期の手当てを早目にやる必要が実はあるわけです。そういうことも含めまして建設大臣から強い要望がありまして、これらも党と相談をしてやることですが、私は可及的速やかに編成を行い、成立を行わせるようにしたい、夏までには成立を完了するようにやりたいと、そう考えて、建設大臣の要望をできるだけ満たすように党と相談をして努力したいと考えてやっておるところであります。
#112
○林田悠紀夫君 非常に事は急を要するわけでありまするから、現在予算審議が長引いておりまするけれども、十分もう既に考慮をされるということは大いに必要なことと思いまするので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 次に、従来、公共事業につきましては各省庁の利害が絡んで、道路とか河川とか農水など目的別に予算配分が固定をいたしまして、用地費の負担が重くなり、内需拡大効果が余り期待できない事業がふえるなど、むだが多かったと思います。そこで、これは新聞で見たのでありまするが、大蔵省は一般の予算配分とは別に、別枠で内需拡大効果の大きいプロジェクトに重点配分して、別枠方式を中心に検討を進めておるというように言っております。
 そういうことで、できるだけ、土地手当てが進んでおる例えば下水道事業でありまするとかあるいは地下鉄の延伸でありまするとか、既に土地手当てのできておりまする研究所などの、効果の上がるところの事業に優先投入してやっていただきたいと考えます。大蔵大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
#113
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、公共事業を御担当であります建設大臣初め各省庁の閣僚におかれて公共事業の効率的な選択執行については十分にお考えになっておられるところでございますから、私どもも今の御指摘の点を踏まえながら十分そういうことに注意をしてやってまいるつもりでございます。
#114
○林田悠紀夫君 この内需の拡大をやっていこうという場合にネックになります問題は各種の規制があるということでありまして、その緩和が必要であります。
 例えば、私がぶつかりました問題でも、工場区域には学校を建ててはいかぬという規制があります。その学校は工場の技術者の養成の専修学校でありまして、工場に必要なものであるにかかわりませず、学校ということで原則として許可されないというような不合理な規制が依然として残っておるわけです。こういう規制は緩和をされまするかあるいは府県知事の判断に弾力的に任していただく、そうしませんと民活が進みませんので、建設大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#115
○国務大臣(天野光晴君) 規制の緩和につきましては、ここ二、三年来大いに勉強しまして、地元の地方自治団体等の意見を聞きまして、弾力的に運用するようにいたしておりますが、個々の問題についてはまだ法律改正等もございますから、そういう点で行いかねているものもありますが、十二分に検討をして御期待に沿うようにいたしたいと思います。
#116
○林田悠紀夫君 ぜひよろしくお願いをいたします。
 次に、経済企画庁長官にお伺いしたいんですが、ニューヨークで記者会見をされまして、五月下旬にまとめる政府の総合経済対策に大規模な住宅減税を盛り込むように大蔵省と建設省と調整を急ぐ、こういうように語っておられます。我々はウサギ小屋に住んでおる日本人でありまして、内需拡大対策といたしましても住宅建設は最大の柱であり、欧米諸国が実施しておるような住宅ローン金利の全額所得控除が必要であると思います。
 また、現行の住宅促進税制は新築と新規の取得に限定をされておりまするが、これを増改築にも対象範囲を拡大すべきではないかと思うのであります。昨日も塩出議員が質問をされまして、大蔵大臣、経済企画庁長官は前向きの答弁をされましたが、これらの問題につきまして既に各省で話し合いが行われておるんじゃないかと思うのでありまするが、経済企画庁長官、お考えをお願い申し上げたいと思います。
#117
○国務大臣(近藤鉄雄君) 内需拡大の大きな柱の一つは、お話にございましたように公共事業の推進でございまして、社会資本整備が欧米におくれておりますのをこの際回復したい、追いつきたい、こういうことでございますが、民間の個人の内需拡大の項目の中でやはり一番大きなのは住宅でございます。衣食住と言われますが、衣食は十分足りましたけれども住がおくれておりますので、これを何としても充実しなければならない。現に党でおまとめいただきました総合経済対策要綱の中にもこのことは触れてございますし、また経済審議会の特別構造部会の報告の中にも、ここ両三年に早急に取り組む事項の一つとして住宅問題を取り上げておるわけでございます。
 政府といたしましては、従来も住宅金融公庫の金利、また融資枠の改善の問題等、さらには借入金の一%相当額を、いろいろ条件はございますけれども税額控除する、こういう措置を講じておりまして、それなりに効果のあったものと思いますが、私は、今のこういう内需拡大の時期に、もっともっと広範囲な方々がこの住宅建設に積極的に取り組むし、また金融機関におきましても、住宅金融公庫に限定しないで、現在も借入金の税額控除措置がございますけれども、もっと大幅に都市銀行、地方銀行、信託、相互銀行、信用組合、農協等々、いわば日本の全国の金融機関が挙げて当面の間は住宅建設に積極的に参加をする、力を尽くす、こういう体制をつくるためには、アメリカ等で見られておりますような利子の所得控除の措置は一つの大きな示唆に富むものではないかと、かように考える次第でございます。
 ただ、これはいろいろ税制上の問題もございまして、解決しなければならない問題もございますし、また、建設省のお話もございましたけれども、そういういろいろ調整を待つ問題もございますので、現実には経済企画庁の事務局にこうした問題で事務的に詰めると、こういう指示をしてございます。急を要することでございますし、まさに日本が民活で内需拡大に踏み込んだという、そういうことを示すためには、お話ございました補正予算と並行してこれを進めたい気持ちでございますが、いろいろ議会におきまして税制問題の与野党協議の期間もございますし、その他いろいろな問題がございますのでありますが、とにもかくにも関係の方々の御了解を得ながらできるだけ早い機会に実行いたしたいというのが私の気持ちでございます。
#118
○林田悠紀夫君 さらに短期的な内需の拡大といたしまして、消費をふやしていくということが必要でありまするが、現在、公定歩合は史上最低の二・五%という水準であります。しかしながら、消費者ローンの金利は非常に高くて一〇%以上だというように聞いておりまするが、この消費者ローンの金利や住宅ローンの金利引き下げということが緊急に必要だと思いまするが、大蔵大臣いかがでございましょうか。
#119
○政府委員(平澤貞昭君) まず消費者ローンの金利でございますけれども、消費者ローンの約半分を占めますカードローンの金利ですが、二月、四月と引き続き下げまして、合わせて二・四%を下げてきております。今後も市中の金利が下がってまいりましたら、民間金融機関においてこの金利を下げるということになろうかと考えております。
 それから住宅ローンの金利でございますけれども、民間金融機関の住宅ローンにつきましても、ことしに入りましてからも二月、四月と下げております。過去最低の水準に既になっておるわけでございます。そして政府金融機関の方でございますけれども、住宅公庫の金利もこのところ引き続き下げておりまして、現在四・七%と、これも非常に低い金利になっております。
#120
○林田悠紀夫君 ちょっと局長、消費者ローンの金利は二・四%下がったということですか、それで幾らぐらいになっているんでしょう。
#121
○国務大臣(宮澤喜一君) 一一・一です。カードローンですね。
#122
○林田悠紀夫君 一一・一ですか。それでも一〇%以上で安くありませんから、これはひとつまだもっと下げる余地があるんではないでしょうか。
#123
○国務大臣(近藤鉄雄君) ちょっと住宅に関係いたしますけれども、先般来リフォームローンを住宅と並んで積極的に民間の金融機関にお願いしてございまして、特に台所とかバス、トイレ、水回りを中心として非常に安いローンに現在都市銀行を中心に各銀行が積極的に取り組んでおられます。現実に有担保で、変動利率の場合にはプライムレートで貸していただけると。こういう思い切ったリフォームローンの優遇措置を民間の金融機関が既にやっていらっしゃいますので、これをどんどん利用していただいて積極的な内需拡大、国民生活の充実を図っていただきたいと希望する次第でございます。
#124
○林田悠紀夫君 以上申しましたような内需の拡大でありまするが、これはアメリカのためとか、あるいは他人のためにやるのではなくて、全部国民の生活水準を豊かにすることであります。特に将来に備えた社会基盤の整備というものは経済力が強いうちにやっておく必要がありまして、内需拡大のための国債、建設国債でありまするが、国債の増発は子孫にツケを残すというような議論もありますけれども、やるべきことを今やらずに日米摩擦が激化をいたしまして国際的な孤立を広げていくということになれば、取り返しのつかないもっと大きなツケを子孫に残すことになると思います。ぜひ、予算の編成に当たっては国債の問題も御考慮をいただきたいと思います。大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。
#125
○国務大臣(宮澤喜一君) 林田委員が先ほども言われましたように、もともと社会資本の大変に十分でない我が国でございます。国際的な要請がございませんでも、これは老齢化社会になります前に処理しなければならない問題だと思っておりますし、今や国際的なこういう状況になりますとなおさらさようでございますから、こういう財政の状況ではございますが精いっぱいの努力をいたしまして御指摘のような方向を実現いたしてみたいと考えております。
#126
○林田悠紀夫君 時間がありませんので、経済問題はこの程度にいたしまして、次に行政改革の問題につきましてお伺いをしたいと思います。
 明治四年に廃藩置県がありましてもう百十数年が経過をしておりまするが、府県の区域は明治二十二年以降基本的な変更はありません。しかし我が国の経済的社会的条件というものは、その間に非常に大きな変化を遂げてきております。このたび新しい行革審が構成をされましてさらに行政改革が進められるということになっておりまするが、国、地方を通ずる効率ある行政を推進していく必要があると思います。
 それで、第一に、国の中央官庁と府県間に広域行政を行う国の機関があるわけでありまして、地方は国とその機関両方へ陳情に行っておるのが現状であります。今のように交通やあるいは情報が発達をしておるときに、そういう地域的な機関というものが必要かどうか、総務庁長官にお伺いをいたしたいと思います。
#127
○国務大臣(山下徳夫君) 御説のとおり、我が国の行政におきまして国と地方、いわばこれは車の両輪のようなものでございまして、一体となって推進していかなければなりません。行政改革におきましてもしかりでございまして、そういう意味におきましては、地方公共団体の御協力を得ながら行政改革の実を上げていかなけりゃならぬ、かように考えておる次第でございます。
 御指摘の地方支分部局の整理合理化につきましては、これは累次の行革大綱においても常に示されておるとおりでございまして、現在までそれに基づいて各般にわたる改革を順次進めてまいっておるところでございます。こういうことで今後とも私どもは地方支分部局、特に各県都と東京の間は今はとんと、航空機も発達いたしておりますし、おっしゃるとおり、地方支分部局に陳情に行ってその足でまた東京に来るというようなことも全くないとは言えません、そこらあたりにも十分配慮しながら今後さらにこれらの行革については取り組んでまいらなければならぬし、また新行革審にもこの点については特にお願いをいたしておきたいと思います。
#128
○林田悠紀夫君 第二の問題は、都市が急速に発達をしてまいりまして、府県の中に指定都市というのがあるわけです。これは二重行政になっておりまして、府県も指定都市も困っておるわけです。これを救いますためには、もちろん地方住民の自治的な考え方が必要でありますけれども、府県合併などの地方団体の区域の変更、こういうことは考えられないものでしょうか。自治大臣にお伺いをいたします。
#129
○国務大臣(葉梨信行君) ただいま先生御指摘になられましたように、都道府県の区域につきましては、明治初年に発足いたしましてから基本的な変更がないまま今日に至っております。その間、社会経済情勢が変化してまいりまして、府県制度の改革につきましてもいろいろな御意見が寄せられてきているところでございます。地方制度調査会におきましても累次議論の的になってきたところでございますが、最近行われました第十八次地方制度調査会の小委員会におきまして報告が出されております。ちょっと御披露してみますと、現在の府県制度は長年の歳月を経て既に国民の生活及び意識の中に強く定着し、その間において府県の地位も重要性を増すに至っていることから、府県制度については、住民意識や行政需要の動向、大都市制度の今後のあり方とも関連させながら、慎重に審議の上結論を得べきものである、こううたっているわけでございます。
 いずれにいたしましても、府県の規模につきましてどう考えていったらいいかということは、地方制度の基本的構造にかかわる大きな問題でございますので、引き続き地方制度調査会を中心といたしましてこれからも慎重に研究を進めていきたいと考えているところでございます。
#130
○林田悠紀夫君 次に、大学の入学試験の問題、入試問題についてお伺いをしたいんですが、スケジュール的に見まして五月末にこれを固める必要に迫られておると思います。六十一年度に実施しましたグループ分け複数志願制は、受験生が複数の国公立大学を受験できるメリットをもたらしましたけれども、一方、足切りとかあるいは受験資格を失うとか、初めての経験から来る幾多の混乱がありました。
 そこで、今回の六十二年度の方法につきまして、総理は昨日、複数受験を続ける旨答弁されましたが、私も、入試制度は毎年変更するというようなことでは困るので、また受験機会の複数化というものは続けるべきであると考えております。しかし、技術的な問題は改善をしなければならないと思っておるわけでありまして、また一つ、このABグループ分けに関しまして関東地区と関西地区ではアンバランスが生じまして、高校側からも改善要望が出されております。東大と京都大学、この試験日程は同日にいたしまして、ともに優秀な学生が入学できるような調整ということが考えられないだろうか。総理大臣並びに文部大臣の御意見をお伺い申し上げたいと思います。
#131
○国務大臣(塩川正十郎君) お尋ねのABグループの来年度における編成替えでございますけれども、このことにつきましては、全国の各ブロックごとの国大協会議におきましてはぼ意見がまとまってまいりましたが、関西地区だけがまだ、あす会議をいたして最終的な意見の交換をする、こういうことでございまして、今何とも申し上げられない段階でございますけれども、しかし他のブロックと申しましょうか、地域におきましては、ほぼ本年度実施いたしましたのと同じ組み合わせに準じてやっていこう、こういうことでございます。
   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
 ただ、先生非常に御心配しておられます。そういういろんな、初めての問題でございましたので問題がございまして、つきましては、この九日の関西ブロックの国大協学長会議が終わりましたら、すぐに国大協の懇談会をやっていただきまして、そこで国大協全体としての意見を統一していただいて、その上で来年度の取り組み並びに編成というものを正式に決定していただきたいと思っております。
 しかし一方、高校生の方からの意見といたしましては、この複数制に対してやっぱり一つの希望を持ってきておる者も芽生えてきておりますので、これをうまく育てていかなきゃならぬ。したがって、改善すべき問題点は大体出尽くしてまいりましたので、それを改善して本年よりはいいものに誇っていきたいと思うでおります。
#132
○国務大臣(中曽根康弘君) 複数受験のチャンスを与えることは大事だと思います。したがいまして、できるだけ何回も受けさしてあげたい、それは私の願望であります。しかし、これらはいずれも国大協の先生方に征してあることでありますから、ABどういうふうにするかということも含めて国大協でお決めいただくことが適当であると思いますが、我々といたしましては、もうできるだけチャンスをうんとふやしてあげる、そういうことが望ましいし、それからいわゆる足切りの問題が今度は出てきますが、これらについても少し大学の先生方ができるだけ汗をかいてもらって、そしてできるだけ生徒、受験者の希望をかなえる方向でもう一息汗をかいてもらうようなやり方はできないものだろうか。それから受験者数のアンバランスの問題で定員との問題が出てきますが、これらについても補充試験を何回もやってもいいと思うんです、足りなけりゃ補充試験を。そうすればまたチャンスの出てくる子供も出てまいりますね。
 そういう意味において、学校側がもう一息汗をかいていろいろ努力していただいて、受験生に幸あれと、そういう方向へ持っていっていただければありがたいと思っております。
#133
○林田悠紀夫君 ありがとうございました。
#134
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で林田悠紀夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#135
○委員長(桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
 暫時休憩いたします。
   午後四時四分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時五分開会
#136
○委員長(桧垣徳太郎君) 予算委員会を再開いたします。
 この際、委員長から申し上げます。
 総予算審議中に六十二年度予算の補正を予定するがごとき発言は穏当を欠くものと思われる。また、会期延長問題は、国会が決定すべきものであって政府がこれに言及すべきではないということで理事会で意見の一致を見ました。
 中曽根内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣。
#137
○国務大臣(中曽根康弘君) ただいまの委員長の御発言に対しまして、これを守るように努力をいたします。
    ―――――――――――――
#138
○委員長(桧垣徳太郎君) それでは、これより矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
#139
○矢田部理君 時間がおくれましたので、質問の順序を変えたいと思います。
 防衛費GNP一%枠突破問題について入ります。
 政府は、今年度の予算で、三木内閣以来あるいはそれ以前から長きにわたって続いてきましたGNP一%枠を突破して軍事予算、防衛予算を組みました。その理由をまず説明いただきたいと思います。
#140
○国務大臣(栗原祐幸君) たびたび申し上げておりますとおり、経済成長がこのところ非常に鈍化してきた、昭和六十一年度が実績で四・四、昭和六十二年度の見込みが四・六と。そういうふうに見込まれますと、前年度の防衛費に対するGNP一%の天井が四・八%しかない。今までは大体七%とか八%とかいうふうにあったわけでございますが、四・八%だ。
 そこへもってきまして、いわゆる中期防衛計画の第二年度でございまして、正面と後方とのバランスをとっていく。特に後方方面でいいますと、指揮通信機能の充実、それから練度の向上、隊員の宿舎、隊舎等の整備、そういうものはどうしてもやらなきゃならぬというものをやってまいりますとどうしても一%を超えざるを得ない、そういう状況でございまして決定をいただいたわけでございます。
#141
○矢田部理君 二つの理由を挙げられたのでありますが、第一の経済成長が鈍化をしているということにつきましては、もともと経済成長を前提とした一%論ということでは即なかったと私は理解をしております。事実、大綱ができましたときには、防衛力の整備に当たっては経済財政事情等を勘案し、他の諸施策と調和を図りながらやりなさいということを大綱自身が言っているのでありますし、またその時期に出ました防衛白書におきましてもそのことはやっぱり強く主張しているのでありまして、そういう経済調和条項といいますか、勘案してやるべしということを大綱自身もあるいは防衛白書自身も言っているのでありまして、それを突破するということに経済成長の鈍化を挙げるというのは私はおかしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#142
○国務大臣(栗原祐幸君) 御案内のとおり、防衛計画の大綱ができたときにはいわゆる成長率が非常に大きかった。そういうときでございますから、節度のある防衛力の整備をするというのに大体一%程度でよかろうということだったと思います。そのときには非常に窮屈であるということは予想されなかった、こういうふうに思います。
#143
○矢田部理君 ちょっと違うんですね。大綱ができたのは、オイルショック後、日本の経済成長がとまって新しい状況に立ち至ってから大綱ができたのでありまして、そういう時期でありますだけに財政経済事情をよく勘案して軍事費は仕切りなさいというふうに言っているのでありまして、今の認識はちょっと違うんじゃありませんか。
#144
○政府委員(西廣整輝君) 五十一年当時の話でございますので事務当局からお答え申し上げますが、防衛計画の大綱が決定されました当時、大体同時期に政府の長期見積もり、五カ年間の経済見積もりが出たわけでございますが、当時の見積もりでは約一三%程度の経済成長があるという見込みの経済見積もりでございました。
#145
○矢田部理君 大臣どうですか。
#146
○国務大臣(栗原祐幸君) そのときの一%という問題は閣議で決めたわけでざいまして、その閣議の決定の中で一%という問題について、財政事情その他を考慮するということのほかに、今防衛局長から話しましたとおり経済成長率というものが非常に高かった、そういう中でございますので、おおよそ一%程度でよかろうじゃないかというようなことから一%というものが浮上した。しかも、これは当面、めどというふうになっているのでございまして、これが流動性のないものでないというふうな認識には私どもは立っておりません。
#147
○矢田部理君 大綱にも防衛白書五十二年版にもそのことは繰り返し書いてあるわけでありまして、少しくやっぱり認識が違うということを指摘しておきたいと思います。
 同時に、もう一つの理由として、後方がおくれた、後方の整備が進んでいないということもまた一%突破の理由にされているようでありますが、これもおかしいのであります。大綱自身はもともと、後方を重視しなさい、後方と正面とがバランスのとれた形で防衛の体制をつくりなさいということで、当時の防衛白書などを読みますと後方重視の立場をとっておるわけでありますが、残念ながら防衛庁がとってきたこれまでの対応は、後方を軽視して正面優先の防衛力整備をやってきた。そこに後方のおくれの問題点があるのでありまして、大綱の方向に従ってこなかった責任を一%枠突破に転嫁するのはこれまた間違っていると思うのでありますが、いかがでしょうか。
#148
○国務大臣(栗原祐幸君) いわゆる大綱水準の達成という場合に、限られた防衛費の中で正面装備の充実というものが急であったということは事実であると思います。そのために後方のおくれたこともこれは事実でございます。しかし、正面の装備というものは、防衛計画の大綱水準の達成という意味からいたしますと、決してこれは不要なことをやっているものじゃない。ただ、それに財政的な意味で後方が追いつかなかったということだけは事実であります。したがって、昭和六十二年度の予算を組むときには、そのおくれはどうしてもここら辺で取り返さないと中期防衛計画の整備ができない、こういうことでございます。
#149
○矢田部理君 この大綱というのは、いつまでに仕上げるべしとか水準に到達すべしということはもともと書いてないのでありますから、したがって正面を重視しなきゃならぬという考え方にも少しく議論があるわけでありますが、お配りをした資料一を見ていただきたいと思うんです。
 大綱ができましたのが五十一年でありますが、五十五年あたりから正面の経費が後方の経費の伸びを一貫して上回っている。そして後方の伸びはずっと小さくなってしまった。一番最後の方の正面対後方の割合を見てみますと、通常、正面対後方の割合というのは一対二というのが一般的な受けとめ方にされているのであります。大綱ができた当時は一対一・九六でありました。その後ずっと後方が落ち込んでしまいまして、最近では一・三程度、四程度というところまで落ち込んでしまった。その責任はかかって防衛費の割り振りをしてきた防衛庁側の責任あるいは政府側の正面重視の問題にあるのでありまして、それを、後方がおくれたからしたがって一%突破なのだという議論にすりかえていくのはこれは自家撞着、自己矛盾ではないかと私は思っていますが、いかがでしょうか。
#150
○国務大臣(栗原祐幸君) 問題は正面装備をやるということ、これを急いだということ、それは防衛計画の大綱水準を達成する、そういう意味合いでやったんです。その場合に後方の方もあわ世でやればこれはいいわけでございますが、これは財政事情その他でできなかったということだろうと思います。
#151
○矢田部理君 大綱は、やっぱり後方を重視しなさい、防衛白書もそう言っている。それから少なくともバランスをとってやりなさい。バランスをとってこなかったのはあなた方じゃありませんか。
#152
○国務大臣(栗原祐幸君) 過去のことについて反省すべき点はあったと思います。
#153
○矢田部理君 なぜ後方を軽視し正面を重視してきたかは後ほどまた問題点を指摘してまいりますが、もう一つ、一%突破論の経過に即して申しますと、どうも初めに一%突破ありきという印象を否定することができないのであります。
 そこで、宮澤大蔵大臣に伺いますが、もともと大蔵省側の考え方では、四%台の伸びで十分中期防衛力整備計画は達成できる、仕切れるというふうに考えていた節があるんですが、いかがでしょうか。
#154
○国務大臣(宮澤喜一君) 最初の内示の段階でそういうことを内示いたしました。
#155
○矢田部理君 その四%台の伸びで仕切れるという判断が大蔵省側にあったにもかかわらず、どうしてそれを超えることになっちゃったんでしょうか。
#156
○国務大臣(宮澤喜一君) これは、それで全部決着するであろうと思っておったわけではございませんで、いわば予算の折衝でございますので、多少そこにそういう要素もございました。
 それで、ただ、栗原防衛庁長官から、先ほどのお話のように、この際は後方を重視したいというお話がありまして、それは二段ベッドであったり手洗い所が非常に非衛生であったりすることは決して自衛隊の士気に好ましいことではありません。自衛隊の諸君といえども国民並みの生活をしてもらわなきゃならないわけでございますから、ことしは幸いにして比較的円高もあり、燃料費も幾らか安くなっておるということもございますから、やはりそういう後方を充実したり、それから燃料がないから訓練時間を半分にしなきゃならないなんということはいかにも申しわけないことであって、経済大国にふさわしくないことでございますから、そういうこともある程度はやっぱりやってもらわなければ自衛隊としてはそれは責めを果たせないだろう、私はそう思いました。
 そこで、何とかそういう御要望に応じなきゃいけないと思いましたが、そういうことをやってまいりますと、どうもこれは一%というものを突破する可能性が高い。そこで折衝をやめまして、その一%問題につきましての安全保障会議等々の了承を得るために交渉を中断いたしたのでございますが、結局その段階で追加いたしました経費は三百七十九億であったと思います。これでまず後方の充実がある程度でき、後方は実は契約ベースでいいますと前年対比で一五%伸びております。これはそういう努力がはっきりあらわれたのでございますけれども、それでなお防衛費全体の伸びとしては前年対比で五・二%でございましたので、これは昭和三十五年以来の低い伸び率でございました。したがいまして、円高あるいは燃料安等々の事情に幸いされまして、長年の懸案であった後方の整備が幾らか進められた、私はこれは大切なことであったというふうに考えております。
#157
○矢田部理君 今大蔵大臣の答弁に幾つかのうそがあるんですね。
 十二月二十九日の夜に記者会見をしておられまして、そのときの大蔵大臣の談話では、円高がある、油が安くなっている、だから後方を入れても一%以内でおさまるはずだとかなり声高に言っていたはずなんですが、いかがですか。
#158
○国務大臣(宮澤喜一君) それはやはり、一つは予算折衝の駆け引きと言っては言葉がちょっと俗かもしれませんけれども、いろいろございまして、後方といってもどの程度までであるかといったようなことは、要求側と大蔵側とでおのずから多少の違いもございます。事実としては、かなり早い段階で、これは一%にさわるかもしれないということで折衝を中断をいたして、その方の問題の処理をしていただいたわけでございます。
#159
○矢田部理君 今の大蔵大臣の発言ですが、やっぱり防衛庁との予算の駆け引きでそう言ったんだというのでは、一%枠に対する物の言い方としては少しく不見識に過ぎませんか。
#160
○国務大臣(宮澤喜一君) 大変俗な言葉を使いまして申しわけございませんでしたが、いわばそれでは折衝と申し上げておきます。
#161
○矢田部理君 駆け引きや折衝でそういう重大な問題が動かされたのでは国民はたまったものではないのであります。
 もう一点だけ指摘をいたしますと、いろんな防衛関係の経費を積み上げていって結果として突破するのならばやむを得ない、そうではなくて初めから一%突破ありきでは困るということをあなた盛んに言っておられたんですが、それも飛んでしまったんでしょうか。
#162
○国務大臣(宮澤喜一君) いや、そうではございませんで、先ほど申しましたように、三百七十何億を積み上げる前の段階は一%におさまっておるわけでございますから、それで後方についての要求が栗原長官からございましたときに、それをこの際充足しようとすれば一%を突破する可能性が高い、そう思いまして、交渉を一遍そこで中断いたしたわけでございます。
#163
○矢田部理君 栗原長官に伺いますが、栗原さんの方ではもう一%の頭が先にありますから、そんな積み上げなんか困る、まず一%突破するのかしないのかをはっきりせい、それがはっきりしないうちは積み上げなどはできないというふうに言われたとも伝えられているんですが、いかがでしょうか。
#164
○国務大臣(栗原祐幸君) 私の一%を超えるというやつは、何が何でも一%を超えようというのじゃないんです、これは。私は一%突破にそんなに、何といいますか、やる気を持っておったわけじゃないんです。ただ、経済成長その他から見ますと、後方方面を積んでいくとどうしても超えざるを得ないと、そういうことは予算の折衝の前からこれはあったんです。そういうことでございますから、一%の枠の中で大蔵省が抑えると言ってもそれは困ります、私どもとしては一%を超えたところでないとこれはおさまらない、こういう主張をしたことは事実でございます。これは我々の方からすれば積み上げでございます。
#165
○矢田部理君 もともと正面を重視し過ぎてきたから出てきたおくれでありますから、正面をちょっぴり切りさえすればその程度のことは賄い切れるのでありますし、またいろんなやり方は方法論としてはあるわけでありますが、結局後藤田さんが引き取って、官房長官と党四役に任せる、そして五・二%で仕切った、御一任申し上げますと言って大蔵大臣と防衛庁長官が預けた。そこで一%突破が決まって、言うならば積み上げてきてやむを得ず突破ということではなくて、突破を先にして、後で突破した金額について割り振ったというのが事の真相じゃありませんか。後藤田長官、いかがでしょうか。
#166
○国務大臣(後藤田正晴君) 当時を思い起こしますと、防衛庁の防衛予算の主張と大蔵省の主張の間には二%以上の開きがあったと記憶をいたしております。そこで、事務当局同士の折衝では話が決まらぬということで、昨日も申し上げましたように、議院内閣制のもとにおける政治慣行として、重要なそういう政治課題の解決は政治折衝にゆだねられるという慣例みたいなものがあるわけでございますが、そこの政治折衝の場でも話がございました。そしていろいろ甲論乙駁あった結果、今矢田部さんがおっしゃったように、一任をいたしましょうといったような話があったことも事実でございます。そこでまたお互いの間ですから遠慮のない厳しい話がございます、これは。
 しかし、結論として、これはやはりこの際何としても、立ちおくれておるのは後方整備ではないのか、後方整備は今のままの案ではとても無理であろう、やはり後方整備がどの程度金がかかるのか、それを積み上げてみたらどうであろうか、あるいは積み上げの結果これは一%の問題との関連があるかもしらぬなという議論もそれはもちろんございました。しかし、いずれにせよ一%の突破が前提としてあったというのでなくて、立ちおくれておる後方整備をどれだけ積めば何とか六十二年度の防衛予算がまとまるのかということの積み上げ作業を命ずることにしたわけでございます。その結果、一任を受けておりましたから、こういう結論にございますので両事務当局の間でひとつ再度折衝を開始してもらいたいということで、その後両省の間で積み上げた結果が一・〇〇四という結論になったと、これが経緯でございます。
#167
○矢田部理君 一%枠をどうしても超えさせなきゃならぬような事情もなかったし、それからどうしても後方を重視するということであるならば、あるいはほろの隊舎を直すということであるならば幾らでもその方法はあったはずであります。そういうやりくりなり対応をせずに、何としてもこの際一%を突破してしまおうと、そこにやっぱり頭が強くあったのではありませんか。
 総理、お眠りのようですが、ちょっとお聞きしますが、かつて公務員の給与、人事院勧告に対応して自衛隊員のベースアップをしなきゃならぬと、これを突破の契機にしようとした。それが失敗したら今度は自衛隊員の隊舎が傷んでおるとか後方がおくれておるとかいうことを突破の契機にして何としても突破しようと、その頭の方が先走ったのではありませんか。総理はこれについてはどんな対応をしたのでしょうか。
#168
○国務大臣(中曽根康弘君) この点は栗原長官と一貫して申し上げておりまして、後方、それから練度の向上、隊員宿舎、そのほか待遇の改善、こういうことを挙げて、私、内閣総理大臣としても努力してきたところなのでございます。
#169
○矢田部理君 正面を先行させ、優先させてきた結果のツケを一%突破で賄おうというやり方には私は何としても納得ができませんが、以下さらに問題点を幾つか指摘をしていきたいと思います。
 一%を突破した後、中期防衛力整備計画を歯どめとするということになったわけでありますが、これも少しくおかしいと私は思っているんです。もともと中期防を格上げして閣議決定をした、そしてその際の所要経費の見積もりとして十八兆四千億が経費として出されるわけでありますが、そのとき、政府の経済見通しとの比較で言えばGNP一%枠を超えて一・〇二%というような数字が出まして、それがかつてこの予算委員会等でも問題になったことがあります。そのとき政府は何と言っておったかといえば、一%枠は単年度の防衛費を対象としたものであって、五カ年計画である中期防とは関係がない、一%問題は年々の予算で仕切るのだから御心配なさるなといってあの説明をしておった。そうですね。
#170
○政府委員(西廣整輝君) 当時申し上げたのは、三木内閣当時のお決めになった一%枠というものは年度予算について決められたものであるので、五カ年計画、いわゆる中期計画についてそれを拘束するものではないので、五カ年計画が超えておるからといってその時点で三木内閣の一%枠の閣議決定を変える必要はないというように申し上げておると思います。
#171
○矢田部理君 同質のようにも聞こえるわけでありますが、そういうことで一%問題は年々の予算で仕切るのであるから心配されるな、こう言ってきたのでありますが、今回は中期防の所要経費を優先させて一%枠を突破する数値としてしまった。これは従前の政府の説明と統一性を欠く、前言を翻したものというふうに指摘せざるを得ないのですが、いかがですか。
#172
○国務大臣(栗原祐幸君) それは整合性を欠いていないと思います。というのは、昭和六十二年度の予算を組むときに、一%を超えざるを得ないということで一%についてはこれを見直すというふうに決めて、その後どういうふうな新しい防衛力の整備をするかというところで出てきた問題でございますから、別に整合性を欠いておるという問題ではないと思います。
#173
○矢田部理君 従前の答弁では、十八兆四千億というのは買い物計画だ、五年にわたる所要経費だ、それが仮に一%を突破しておったとしても予算に直接影響を及ぼすものではないから、単年度ごとに一%問題は仕切るのであるから関係がないと言ってきた。その関係がない十八兆四千億を一%に置きかえるというやり方は、いかにも政府の見解としては不統一じゃありませんか。
#174
○国務大臣(栗原祐幸君) 私が今申したとおり、一%を超えるときに新たな防衛力の整備をどうするかということでございますから、もうそこで一応切れているわけですね。それで、新しい歯どめにつきましては、いわゆる中期防の六十年度価格で十八兆四千億というのがございますけれども、その総額方式でいきましょうというふうに決めたわけです。しかもこれはローリングをしない、こういうことでございますから、新たな歯どめになっておる、こういうふうに思います。
#175
○矢田部理君 どうも各方面で矛盾が出てくるわけであります。
 次の問題点を出しますと、大綱は、四次防までの言うなれば年次防総額明示方式というのを否定して、それまでは五カ年ないしは三カ年計画で防衛力増強をやってきた。ところが非常に倍々で防衛費が伸びてきた。それに対して国民のいろんな批判や不満が出て、反省を込めて、この三年ないし五年という年次防総額明示方式ではなしに単年度方式に改めたんですね。その単年度方式に改めたのに、もう一回四次防以前に逆戻りをさせるというのは、大綱の水準達成と称して、大綱の示した内容に反することをやっているんじゃありませんか。
#176
○政府委員(西廣整輝君) 大綱ができた当時に、当時まで続いておりましたいわゆる五カ年計画方式から単年度方式に変わっておりますが、これは、今先生が申された五カ年計画方式では倍々になるから単年度方式ということではなくて、そういう五カ年計画方式にかわるものとしては大綱というものができたわけであります。それは、五カ年計画では、五カ年計画の継ぎ足し継ぎ足しては防衛力というものがどこまで整備されるかという目標がどうも明確に出ていないといういろいろ御批判がございまして、いわば平時から持つべき防衛力の行きどまりといいますか、目標をより明確にするために大綱をつくるということに変わったわけでございます。
 一方、年々で防衛費を決めていくということは、当時の経済情勢その他が必ずしも五カ年間を見通すほど安定していないという事情もございまして、当面の間は一%ということで年度年度で防衛予算を組もうということに変わったわけでございます。
#177
○矢田部理君 防衛庁長官、五十二年度の防衛白書に、従来の四次防までとってきた方式を反省し、なぜ大綱をつくって五カ年方式ではなく単年度方式にしたかという理由が書いてありますから、読んでごらんなさい。
#178
○政府委員(西廣整輝君) 繰り返すようでございますが、当時一番問題にされておりましたのは、防衛力の目標というものが明確に示されないという、五カ年計画方式では示されない嫌いがある、買い物計画になってしまうという点の改善ということで、目標明示ということで大綱をつくられたということが主たる理由であります。
 それから年度年度の予算ということにつきましては、先ほど申したように、五カ年計画というものが必ずしもできる状況になかったということで、これは大分論議がされました、大綱をつくった後一週間にわたっていろいろ論議がありました結果、単年度方式でいこうというように決まったわけでございます。
#179
○矢田部理君 私が言っておりますのは、五十二年度の防衛白書八十一ページ、「基盤的防衛力の整備は「五か牢固定方式」をとらずに、年々必要な決定を行ういわば「単年度方式」を主体として行うこととなった。」、その理由はとして三点挙げておりますから、読んでください。
#180
○政府委員(西廣整輝君) その理由の第一は、前に述べたとおり、基盤的防衛力の観点に立って防衛力の現状を見ると、規模的には、すでに目標とするところとほぼ同水準にあると判断されるため、目標に至る過程を示す意義ないし必要性が乏しくなったことである。第二の理由は、防衛力が規模的に概成すれば、じ後の整備は防衛力の量的増強よりも、装備の更新近代化等質的な面における充実、向上を図ることが主体となるが、質的な充実、向上は、そのときどきにおける諸外国の技術的水準の動向等情況の変化に柔軟に対応しつつ実施すべきものであることである。更に第三に、転換期にあり流動的な要因の多いわが国経済財政事情からしても、従来のような「五か牢固定方式」の整備計画を決定し、あらかじめ防衛費の大わくを決めることは適当でなく、年々の経済財政事情等を勘案しつつ、弾力的に対処しうる方が適当であると考えられることである。以上であります。
#181
○矢田部理君 ということで大綱は単年度方式をとったんでしょう。その大綱の自己批判を越えて四次防以前の方式に逆戻りしているじゃありませんか。大綱の方針と違うじゃありませんか。長官。
#182
○国務大臣(栗原祐幸君) 大綱をつくったのは、今言ったように二次防、三次防、四次防というのは買い物計画でやって、防衛思想というか、防衛哲学がない、そういう意味合いで一応のこういうものだというものをつくった。それに基づいて単年度方式でやる。しかし同時に、それはそういうことなんだけれども、中業という、中業方式に変わってきた、防衛庁内部だけで業務を計画するというふうに変わってきているわけです。ですから、それをやっている間に今度は中業よりもむしろ格上げをして、これを防衛庁内部でなくて閣議決定をして防衛計画というものを文民統制の上からさらに権威づけようというふうに変わってきた、こういうふうに考えております。
#183
○矢田部理君 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。
 大綱はもともと今まで、四次防までは五カ年方式でやってきた、これを今度は単年度方式にする、それは先ほど読み上げられた三つの理由からだというふうにして大綱ができ単年度方式をとったのに、今度の中期防衛力整備計画はまた五カ年計画方式にやっぱり逆戻りさせたわけでしょう。大綱をつくった理由と違うじゃありませんか、大綱のとった方針と違うじゃありませんかと聞いている。大臣、大臣。
#184
○政府委員(西廣整輝君) 年度年度の防衛費について単年度方式をとるか、五カ年計画方式をとるかということは、大綱とはまた別物であると私どもは考えております。
 先ほど来申し上げておりますように、大綱というのは、その当時まで続けられておったいわゆる五カ年計画方式、それでは買い物計画に陥りやすい、そして防衛力整備についての基本的な考え方なり目標なりというものが十分示されていない、示すのに十分でないということで大綱というものができたわけであります。それをどのように整備していくかという予算についての考え方というものはまた大綱とは別途の考え方でありまして、それが単年度方式でいくか、五カ年方式でいくかというのはまたそのときどきの判断があろうかと思いますが、今回五カ年計画方式といいますか、中期計画を準拠とするという考え方になったのは、当時に比べれば物価その他も安定し経済的に安定した状況になったからということも勘案されたものと思われます。
 なお、白書につきましては、先生の言われました五十二年度白書の四十八ページ等に私が今申し上げているようなことが記述されておると思います。
#185
○矢田部理君 全然説明になっていませんよ。
#186
○国務大臣(栗原祐幸君) 今言ったように、単年度方式、それが防衛計画大綱の前提である、私はそういうふうには見ません。
 大綱というものをどういうふうに実行していくかという場合に、いわゆる五カ年方式になるかあるいは単年度方式でいくかという問題がある。しかも単年度方式の場合でも、やはりある程度中長期にわたって見通しをしなきゃならぬということで業務計画をつくっているわけでございますから、そういう意味合いでは一つのこれは方法、手段でございまして、大綱実現のための。ですから、その前提を変えたからしたがって大綱そのものを否定するんじゃないか、その精神に反するんじゃないかという御議論には私はいささかくみし得ない、こういうことです。
#187
○矢田部理君 私が言っているんじゃないんですよ。あなた方が書いているこれに反するんじゃないか、こう言っているんです。
#188
○国務大臣(栗原祐幸君) それに書いてあることと今やっていること、書いていることが今やっていることを否定している、そういうものじゃないと思います。
#189
○政府委員(西廣整輝君) 繰り返しになって恐縮な点もございますが、先ほど先生が言われた八十一ページ、これは白書の件でございますが、八十一ページに書かれている点は、大綱そのものではなくて、大綱の実施といいますか、基盤的防衛力をどう整備するかというやり方についての問題であろうと思います。したがいまして、大綱そのものを私どもは変えたということではございませんで、大綱は現に現存をしておる。ところが当時、大綱をどう年度年度の予算で実施をしていくかという点につきまして、五カ年計画をつくりたいという希望もあり、あるいはつくった方がいいんじゃないかといういろんな意見もございました。しかしながら、当時の状況から見て、ここに書いてあります理由も含めまして単年度でいこうという決定を見たわけであります。
 ただし、その間中期計画というものがないと困りますので、防衛庁限りの中期計画というものをつくり、単年度で閣議決定していくという形で予算を組んでまいったわけでありますが、その後、国会その他におきましても、やはり中期業務計画等は防衛庁限りのものではなくて政府決定に格上げをすべきであるというような御意見も、これは与野党を含めてそういう御意見も出まして、寄り寄り国防会議等に御了承を得た時代もありますし、それが六十年度時点で政府計画というものに格上げをする、できることになりました。そういった結果、現在の防衛力整備というものは、大綱の枠組みの中でつくられておる政府決定の五カ年計画に基づいて予算がつくられていくという五カ年計画方式に戻るというものでございます。
#190
○矢田部理君 そんなことは聞かなくたってわかっているんですよ。私はそこを言っているんじゃない。今の状況を説明せよと言っているんじゃなくて、大綱が基盤的防衛力の整備を掲げたその段階ではもう量的には概成をした。したがって、何カ年目標というようなことを立ててやる必要はないということが第一です。
 それから二番目には質の問題がある。それは、ときどきで相手方が変わるから五カ年固定方式は望ましくない、それから財政事情をいろいろ考えなきゃならぬということで、五カ年方式ではなくて単年度方式に変えるんだ、そのことが基盤的防衛力の整備や大綱の実現にいいんだということを言ってきた、理由をわざわざ挙げて。今度は違うんだと言うのなら違うんだという説明がなきゃならぬし、少なくともみずから書いた文書ですから、このまま結構ですと言うわけにはいかないんですよ。
#191
○政府委員(西廣整輝君) たびたび繰り返すようで恐縮でございますが、大綱はそのまま閣議決定として残っておりますし、大綱に示された防衛力整備の実施につきまして、当面の整備についてはということで五十一年三木内閣当時の閣議決定、その枠の中でやっていこうということで十年間ほどやってきておるわけでございますが、その後六十年に政府決定の五カ年計画が復活をし、さらに今年度の予算編成に際しまして一%を超えざるを得ない状況になった。その段階で閣議で改めていろいろ御審議いただいた結果、五カ年計画というものに準拠して年度年度の予算をやっていくということに閣議で決定されたということでございます。
#192
○矢田部理君 全然違うんですね。三つ理由があるんですから、一つ一つ反論して、こういう理由で変わったんだと言ってください。
#193
○政府委員(西廣整輝君) 現在の時点、現在の情勢では、政府決定の五カ年計画に準拠して年度年度の予算をつくり、防衛力を整備していくのが最善であるという判断がなされたということでございます。
#194
○委員長(桧垣徳太郎君) 矢田部君。
#195
○矢田部理君 いや、答えてないでしょう。
#196
○委員長(桧垣徳太郎君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#197
○委員長(桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
#198
○政府委員(西廣整輝君) 閣議決定の点について防衛庁から申し上げるのは大変恐縮でございますが、六十年度の閣議決定で中期計画が政府計画に格上げされたというふうに申し上げましたが、その際にと申しますか、過去五十二年度以来年度方式で進めてきたわけです。それは御理解いただけると思いますが、年度方式でやってきた。しかしながら、先ほど来理由として白書にも書いてありますように、例えば質的な変化に柔軟に対応するためには年度年度の方がいいのではないかということで大綱の実施のやり方を進めてきたわけでございますが、なかなかそれだけでは長期的な見通しを年度年度では立てにくいということで、部内限りでこれは防衛庁として中期業務見積もりというものをつくっておったということも御承知いただいていると思います。そうして、そういったものによって初めて見通しの立った年度予算というものができるということで実行してまいったわけでございますが、ということになりますと、やはり五カ年計画というものがより権威のある場で決定される必要があるという御意見が方々から出てまいりまして、そういった点も含めて六十年度に中期防衛力整備計画というものが政府計画に格上げをされたわけでございます。したがいまして、大綱決定時に考えた単年度方式というものを十年間ほど実行してみた結果、現在のやり方がよりすぐれておるという御決定があって現在の方式に変わったものでございます。
#199
○矢田部理君 三つについてそれぞれ具体的に答えてくださいよ。
#200
○政府委員(西廣整輝君) 先生の御質問は、白書の八十一ページにあります理由の第一及び第二、これらは基盤的防衛力という観点に立つと、規模的に非常に大きなものをつくっていくのではないから、余り長期的な見通しが必要でないのではないかというような判断に当時立っていたと思います。もう一つの第二の理由は、規模的に概成しているとすれば、質的な近代化というものが中心になる。したがって、年度年度にフレキシブルにできる方がよりいいのではないかという判断が当時あったと思います。
 そこで、その二点についてまず申し上げますと、それらについて言いますと、たとえ規模的にある程度概成されておりましても、ウエポンというものは古くなると入れかわってまいります。そういったものが単年度単年度で入れかわるというものではなくて、例えば航空機なり艦艇にしますと、一隻の、あるいは一機の航空機をつくるにも三年なり四年はかかるというようなこともございます。それから質的な面につきましても、装備品というものは一年一年でくるくるくるくる変わるというものではございませんで、かなりの期間研究をして、そして長期的な見通しに立って変えていかないと余りにも行き当たりばったりになってしまう、そういったような反省もございまして、やはり五年程度の中期的な見積もりは必要であろうということで変わったというふうに私どもは理解をいたしております。
 それから第三番目の点は、当時の経済、財政事情等が転換期、恐らく高度成長から当時安定成長と言われたと思いますが、そういう状況にあって、五カ年計画はつくれない状況にあったというふうに私どもは理解をいたしております。当時、防衛庁としては五カ年計画を引き続きつくってほしいという希望もございましたけれども、全般の御判断では現在、といいますのは当時、五十一年当時でございますが、五カ年計画はつくれる状況にないという御判断がありました。それが今六十年度時点で政府決定に格上げになった時点では、五カ年計画が改めてつくれる状況になったという御判断に立っておるというように考えております。
#201
○矢田部理君 今の説明に率直に言って納得できないわけですからこの問題は少しく留保をさせてもらいますが、四次防までやってきたやり方が必ずしも適切でないという判断で単年度方式に変えた。今度は単年度方式が適切でないと。したがって、また四次防レベルの方式に戻すと。そんなふうに防衛政策なりやり方が次から次へと便宜主義的に変えられたんじゃたまったものじゃないのでありまして、その点でもどうもこの中期防問題というのは大変疑義があるということだけはまず指摘をしておいて、次の方に移りたいと思います。
 それから中期防では十八兆四千億というふうに財政見積もりといいますか、所要経費の試算がなされておるわけでありますが、これ自体が膨らむ要因を幾つか持っているんじゃありませんか。その辺はいかがでしょうか。
#202
○政府委員(西廣整輝君) 御案内のように、閣議決定された中期防と申しますのは、まず金額において十八兆四千億という上限が定められております。それは六十年度価格ということで定められております。あわせて、その十八兆四千億で実施すべき個々の事業の中の主要なものについて閣議で決定されております。今申し上げたように、まず経費的な上限というものが定められておりますから、そういう点では、先生がおっしゃるような膨らむ要素というものは経費的にはないというように考えております。
#203
○矢田部理君 公務員のペースアップは含んでおりますか。
#204
○政府委員(西廣整輝君) ただいま申し上げたように、経費というのは六十年度価格で申し上げておりますので、その以後におきますノミナルなものといいますか、そういうベアがあったとか、あるいは物価の高騰があったとか、逆に物価の値下がりがあったとかいうものは、それぞれ足すなり引くなりして、六十年度価格に引き画したところで超えたか超えないかという判断をいたすことになると思います。
#205
○矢田部理君 ですから、ベースアップは当然想定をされるわけですから、膨らむ要素を多分に持った内容になってはいませんか。
#206
○政府委員(西廣整輝君) おっしゃるとおり、人件費につきましては、六十年度時点における人件費ということで積算いたしておりますから、それ自体は仮にペースアップ等があれば膨らむ要素がございます。なお、つけ加えて申しますれば、例えば円高なりということ等で物の値下がりがすればその分は滅ずる、マイナスになる要素であるというふうに考えております。
#207
○矢田部理君 新たな支払いとして思いやり予算といいますか、地位協定の特別協定をつくって、その分として百六十五億ぐらいの予算が計上されようとしているわけでありますが、これは十八兆四千億のどこに位置づけられますか。
#208
○政府委員(西廣整輝君) 中期計画作成以後の特殊な状況によって出てまいったもの、それを仮に年度予算で入れていくということになりますれば、それは十八兆四千億という全体経費の規模の中でやりくりをしてそれを賄っていくということになろうかと思います。
#209
○矢田部理君 やりくり論だけではいかない金額のような感じもいたします。
 いずれにいたしましても、中期防の十八兆四千億はそれ自体かなり膨らむ要因を持っておりまして、率直に言って歯どめにならぬということが一つでありますし、同時に、単年度の予算に対しての歯どめ措置というのはあるんでしょうか。
#210
○政府委員(西廣整輝君) 中期計画は五カ年間の総額で事業なり金目が決まっておりますので、年次計画ございませんので、単年度についての歯どめという形では存在いたしておりません。
#211
○矢田部理君 それから巨額の後年度負担、この中期防は六十一年から六十五年までですから、六十六年以降に、頭金だけ払って後に回すお金が相当の額、巨額のものに上りはしないかと思うんですが、これは幾らになりますか。
#212
○政府委員(西廣整輝君) 後年度負担につきましては、必ずしもすべての項目について詰められておるのではございませんが、正面装備について考えればおおむね二兆五千五百億ぐらいというように推定をいたしております。
#213
○矢田部理君 その点で、いわば十八兆四千億というのは後年度負担が入っていないという意味でしり抜けになっているという点でも大変なお金が後に持ち越されるわけでありますが、同時に、中期防の期間である六十五年度までは仮にこれが一応のめどだといたしまして、それ以降の考えは何ら示されていないわけでありますから、制度的、定量的な歯どめにはこれまたなっていないという問題もあるわけですが、その点はどう考えられますか。
#214
○国務大臣(栗原祐幸君) まず、後年度負担がしり抜けになるというのは当たらないと思います。というのは、今の中期防衛力整備計画の中にも、その前からのいわゆる後年度負担が正面装備でたしか一兆七千億ぐらいだと思います、ありますから、そういうものを含めて中期防衛力整備計画をつくっているわけです。今度六十六年度以降については、この二兆五千億というものを含めて新たなものをつくるわけですから、これはしり抜けになるというのは当たらないと思います。
 今のお話のとおり、六十六年度以降については何にも決めてないじゃないかということでございますが、これは閣議決定をするときに、やはりこれからの問題でありますから、そのときの軍事情勢とかあるいは財政状態とかいろいろなものを勘案して時の政府がやるべきことだ、したがってこれについて今の段階で言及することはいかがなものかというふうに私は受け取りましたけれども、しかし基本的にはいわゆる昭和五十一年度の閣議決定の節度ある精神、それを踏襲していこうということでございますから、いわゆる六十六年度以降のものが無原則になるということはないと思います。また私はそういうことをさせてはいけないと、こう考えております。
#215
○矢田部理君 私は今幾つかの点を指摘しましたが、結局のところ、中期防の言う十八兆何がしが歯どめだと言っておりますが、全く歯どめの役割を果たしていないというのが現実の中身なんですね。単年度の予算のけじめにもならないし、それから巨額の後年度負担、前の負担も一部抱え込んではおりますが、それがさらに大きな形で六十六年以降に突き出していく。これについては枠はめもない。まして五年後については何らの歯どめにもなっていない。そのときどきの政府が考えていくというんじゃ歯どめになっていないということになるのでありまして、そう考えてみますと、いわばその一%枠を突破して新たな歯どめだと言うが、これは歯どめたり得ないということが指摘できるのでありますし、そのことは政府自身も、国防議員懇談会が昨年末に開かれたようでありますが、そこで配られた資料に新たな歯どめはつくらないということが明記されておったというんですが、どうですか。
#216
○国務大臣(栗原祐幸君) 新たな歯どめをつくらないというのは、私が言うのが適当であるかどうかわかりませんが、一%というようなという意味だろうと思いますね。
 それから今言ったように十八兆四千億、昭和六十年度価格における。これが歯どめにならないと言いますけれども、名目的なものはそれはもういろいろな関係で変わるんですね。したがって、計画としては実質価格でやらにゃならぬ。いわゆる政府計画というのはみんな実質価格でやっているわけでございますから、そういう意味で昭和六十年度の実質価格でおおむね十八兆四千億というのは私は立派に歯どめになると、こういうふうに考えております。
#217
○矢田部理君 こんなずぶずぶの制度を置いて一%にかわる歯どめだと言うこと自身がとんでもない話なんでありますが、その十八兆四千億自体にも大変な問題が含まれているんです。
 そこで、その中期防と十八兆四千億の前提となる中期能力見積もりというのが防衛庁にあろうかと思うのでありますが、閣議ではその文書は報告されているんでしょうか。文書として提出をされているんでしょうか。
#218
○政府委員(西廣整輝君) 能力見積もりにつきましては防衛庁の訓令によってつくることになっておりますが、この件につきましては、安全保障会議には御説明いたしましたが閣議では御説明いたしておりません。
#219
○矢田部理君 もともとこの中期防衛力整備計画は、五九中業というものの作業がずっと進んできておる。五九中業というのは御承知のように買い物計画。今度防衛計画に格上げをされた買い物計画。その前提となる中期能力見積もりというものがあって、それが前提、基本になるわけです。それについて閣議ではどんな論議がされたでしょうか。宮澤大蔵大臣に伺いましょうか。
#220
○国務大臣(宮澤喜一君) これは閣議に出ておらないのじゃございませんか。閣議で議論の記憶はございません。
#221
○矢田部理君 じゃ、国防会議ではいかがであったでしょうか。――いやいや、大臣の方々が、とりわけこの国防会議のメンバーである大臣の方々がこの問題にどんな認識をし、どんな議論をしてこの防衛計画をまとめ、決めたのかということを伺いたいのですから、役人ではなくて直接お答えいただきたい。
#222
○国務大臣(宮澤喜一君) 私はたしかそのときに国防会議のメンバーになっていないと思います、記憶が正しければ。
#223
○矢田部理君 じゃ後藤田官房長官に聞きましょう。
#224
○国務大臣(後藤田正晴君) 私はずっとこの内閣で閣僚をやっておりますが、遺憾ながらあのときは国防会議のメンバーにあらざる閣僚でございましたので承知しておりません。
#225
○矢田部理君 じゃ総理に伺いましょうか。
#226
○国務大臣(中曽根康弘君) 国防会議は何回かやりまして、たしか四、五回やった、懇談会まで入れますと四、五回、四回ぐらいやったと思います。その過程におきまして能力見積もりの話もありまして、図表をもって西廣君ですか、専門家が説明して我々はそれを聞いたという記憶がありますし、若干の質問を私はした記憶もあります。
#227
○矢田部理君 中期防衛力整備計画の一番基本になるのは能力見積もりなんですね。これをずっと防衛庁は内部的に今までやってこられた。それはいわば一つ対をなすものでありまして、その能力見積もりを外して買い物計画だけを上げて防衛力整備計画にしたということだと私は受けとめているんです。肝心の能力見積もりというのは閣議に文書などでは出されていないものでしょうか。――閣議の報告を聞いているんだから。
#228
○政府委員(西廣整輝君) 先ほど申し上げたと思いますが、中期能力見積もりというものは中期業務見積もりをつくるための前提となるものでございまして、中期業務見積もり、中期能力見積もり、いずれも防衛庁訓令の部内的な中期業務見積もりをつくるためのデータでございますが、たまたま六十年度には中期防衛力整備計画ということで閣議決定をお願いすることになりましたので、その際に安全保障会議、当時は国防会議であったかと思いますが、三回ないし四回国防会議の席上で私の方から能力的に現状のままでいけばどうなるか、この整備をするとなればどういう形になるかという御説明をいたしたわけでございます。なお、閣議には御説明をいたしておりません。
#229
○矢田部理君 それはどういう資料を出しておりますか。
#230
○政府委員(西廣整輝君) 資料としてその場でお配りしましたが、同様のものをチャートといいますか、トラピアという幻灯機のようなものを使いまして私から御説明をいたしました。
#231
○矢田部理君 率直に言って、大変心もとないんですよね。私は、シビリアンコントロールの最前線におられる方、その方々に肝心の、買い物計画というのは結果なんでありまして、そのもとになる今の脅威の見積もりとか、それに対する能力とか、そういうものが必要であるのかないのか、それからこれはいかがすべきかということについての基本的な議論がないまま、飛行機を幾らとかこういうレーダーを買うとかということだけが先行することに問題があるわけでありまして、その点閣議でも当然このことは、中期防衛力整備計画というのは議論になったはずですから、全部この前提を欠いた議論をしているのであります。それを心配しているのですが、いかがですか、防衛庁長官。
#232
○国務大臣(中曽根康弘君) その点は、私の記憶では四回でありましたと思いますが、いろいろな想定をまずやってみて、それに対する我々の方の力の状況というものの説明を受けて、そしておのおの陸、海、空等に対する我々の方の対応能力等の説明を受け、それに対していろいろ質問もありまして、国防会議の構成員の間ではいろいろそういう議論もありました。これはやはり国防会議の構成員はそれだけの責任を持ってやっておるわけで、それで大体そこで了承したところを、結果を今度は閣議の方へ閣議決定のための案として持っていくので、閣僚全員にはそういうことはやりませんけれども、責任ある閣僚についてはやってきておるので、私はそれで適当であると思います。
#233
○矢田部理君 率直に言って大変心もとないのでありまして、それから私どもも中期能力見積もりについては再三にわたって提出を求めているのでありまして、これは後でまた防衛庁の秘密文書との関係で申し上げますが、そういう全体像を明らかにし、それを少なくとも国防会議なり閣議で論議をして防衛計画をつくるということならばともかくとして、そういうやつが欠落をして、今度もまた四次防時代の買い物計画だけが先行しておる。これでは制服組なり防衛庁の説明を本格的に吟味したりすることなしにうのみにしてはいまいかという心配が多いから私は言っているのでありまして、そこで、中期防衛力整備計画の所要経費として出てきた十八兆四千億の内訳は、宮澤大蔵大臣、御存じでしょうか。
#234
○政府委員(西垣昭君) 正面、後方、人種に分けて申しますと、正面が歳出額で四兆七千五百億でございます。それから、後方が六兆五百億、人種が、人件糧食費でございますが、七兆六千億、合わせまして十八兆四千億でございます。
 内訳は、必要がありましたらまた御説明申し上げます。
#235
○矢田部理君 資料二で「中期防衛力整備計画の所要経費内訳」というのをお配りしておりますが、ごらんをいただきたいと思うのでありますが、この積算根拠をまず御説明いただきましょうか。
#236
○政府委員(西廣整輝君) この資料二を見ますと、正面につきましては各種の装備品が書かれておりますが、これらは主として閣議で数量まで御決定をいただいたものでございますが、それらについて過去調達したものについては六十年度の調達価格、新たに調達するといいますか、いまだかつて調達していなかったものにつきましては、その時点における見積価格を前提にして積算をいたしております。
#237
○矢田部理君 大蔵大臣、こういうものは見ておるでしょうか。今のそういう資料は見ておられますか。――いやいや、そうじゃなくて、以前に見ておられますかと聞いているんです。
#238
○国務大臣(宮澤喜一君) いや、こんなに詳しくは実は見ておりませんでした。
#239
○矢田部理君 官房長官、十八兆四千億の内訳というのはどの程度御存じでしょうか。新しい歯どめだと言っている十八兆四千億というのは。
#240
○国務大臣(後藤田正晴君) 私も詳細は承知しておりませんが、今主計局長が説明をしましたように、正面が幾らで、後方が幾らと、こういった程度のことはおおよそのことは承知をいたしております。
#241
○矢田部理君 前提となる能力見積もりについてもいま一つ心もとない。それをもとにしたこの整備計画の所要経費、新歯どめだというからにはもう少し各大臣がしかとしてもらわなきゃ困るわけでありますが、この内訳を言ってください。
#242
○政府委員(西廣整輝君) 御質問の趣旨が聞き取りかねたんですが、内訳と申しますと…。
#243
○矢田部理君 もう少し詳細な内訳を説明してください。
#244
○政府委員(西廣整輝君) 先生の方から参っております資料の内訳でございますか。――について申し上げますと、例えば戦車二百四十六両というふうにございますが、これらは師団で、甲師団であれば現在六十両、乙師団であれば四十八両というような師団の編成定数というものがございます。それに対して欠落しておるもの、現にまだ充足されていないものということでそれを埋める、あるいは、今後五年間といいますか六十五年までの間に損耗していく戦車というものがございます。それらを埋めようというものでございます。
 なお、陸上自衛隊につきましては、この五カ年間の間に戦車の持ち方について、本土にあります師団と北海道にあります師団との戦車の持ち方等を変えますので、そういった関係の出入り、そういったものも相殺いたしまして所要分を調達しようというようなことでございます。
 以下、全部そのように申し上げますか。――大変時間がかかるので恐縮なんですが、地対艦誘導弾につきましては、道北地区を中心に、着上陸、着陸上陸侵攻しようとする敵を撃破する、水際まででできるだけ撃破をしたいということで、国産の地対艦誘導弾を最終的にはこの五年間で三個隊整備をしようというものでございます……
#245
○矢田部理君 途中ですが、主なものだけで結構です。
#246
○政府委員(西廣整輝君) それでは、護衛艦に移らせていただきますが、護衛艦は大綱で約六十隻というように決められております。これは全体で六十二隻ほどになりますが、現在まだ欠落している部分及びこの期間内に損耗していく、期間内といいますか、六十八年ごろまでに損耗していくものの補てんのための護衛艦でございます。潜水艦も同様でございます。
 それから航空機について申し上げますが、要撃戦闘機部隊、これは大綱作成当時は四百数十機ございましたが、大綱で戦闘機については約三百五十機ということで、当時持っておったより低い目標を定めておったわけでありますが、以後、逐次減耗いたしておりまして、現在三百五十機を割り込んでおります。それを補てんするもの及び今後減耗するものを補てんしようというものであります。
 以上、御説明を申し上げます。
#247
○矢田部理君 何度かの資料要求をしてようやくここまでは出てきたんですが、この内容を見ますと、新規分、正面の新規分が二兆九千九百億なんですが、今局長が述べられましたのを全部足しましても一兆七千九百五十億円なんです、依然として一兆一千九百五十億。その後、火砲などで千七百億ばかりは明らかになりましたが、一兆円以上のお金が不明なんでありますが、その中身はどうなんですか。
#248
○政府委員(西廣整輝君) 中期計画は、御承知のように、閣議決定いたしましたのは十八兆四千億という総額と主要な装備について御決定いただいた。以後のものにつきましては、これをつくる段階で細部の計画をつくり、財政当局といろいろ折衝したそのときの事務的な資料というものはございますが、これを個々に決めておるというものではございません。ということは、個々に決めてしまえば、年度予算の財政当局の予算編成権というものも全部手足を縛ってしまうということになりますので、そういうものではございませんので、細部これが決まっておるというふうに申し上げるわけにいかないわけでございます。
 今お尋ねの約一兆円ほどございますが、その大宗を申し上げれば、弾薬、ミサイル等のものが約六千億、それから陸上自衛隊のトラックその他、ブルドーザーとか、工兵部隊、施設部隊のブルドーザー、そういったいわゆる乙類装備品と申しますものが千五百億ほどございますし、そのほかの細々した火器なり、あるいは艦艇、航空機の救難機であるとか捜索機であるとか、そういったものが入っております。
#249
○矢田部理君 十八兆四千億というふうに明示をしたわけですから、金額をね。どういう種類のものをどういう格好で積み上げてそうなったのかの中身をやっぱり明らかにしてしかるべきだと思いますが。
#250
○政府委員(西廣整輝君) ただいま申し上げたように、この中期計画を作成する段階で細部の資料で財政当局と詰めたわけでございますが、現在まで確定をしておるものということは総額と閣議決定の別表で掲げておるものの数量でありまして、自後のものは年度年度の予算でさらに精査をして決定をしていくということになろうと思います。
#251
○矢田部理君 数字が結論的に出ているわけですから。その出した数字はつかみですか、あるいは適当に決めたんですか。
#252
○政府委員(西廣整輝君) 繰り返すようになりますが、細部の積み上げの資料というものはございまして、それについて財政当局とこれは必要であろうということで折り合いのついたものというものもございますし、なおかつこの範囲でおさめてほしいという形になっているものもございますが、最終的には実際の減耗状況なりそういうものを見て決めるものもございますし、そういったことも含めて年度予算にゆだねられている部分があるということでございます。
#253
○矢田部理君 それは年度予算で決められるものもあるでしょう、最終的にはですよ。また決められなきゃならぬものですが、しかし、十八兆四千億というお金を出した以上は、それの計算の基礎、積み上げの中身があるはずだから、それを出しなさい、全部。
#254
○政府委員(西廣整輝君) 繰り返すようになりますが、細部については個々に積み上げたものが一応ございますけれども、それを現段階で出すということは適当でないというように考えております。それはやはり年度の予算でさらに精査されるということも前提といたしておりますので、その点御理解をいただきたいと思います。
#255
○矢田部理君 これは何も正面だけに限りませんで、後方も非常に簡単な記載しかございません。さらには後年度負担の内訳等についても定かでない部分が相当あるし、後方の後年度負担のごときは複雑で出せないと言ってきているのであります。こんなものが歯どめだと、しかも一%を超えた歯どめだと言われんじゃ国民はたまったものじゃありませんので、全面的に資料の提出を、先ほどの能力見積もりとあわせて改めて要求したいと思います。
#256
○委員長(桧垣徳太郎君) 矢田部君の残余の質疑は後日に譲ります。
 明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時三十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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