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#1
第108回国会 予算委員会 第10号
昭和六十二年五月十二日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     北  修二君     本村 和喜君
     鈴木 貞敏君     林田悠紀夫君
     寺内 弘子君     宮崎 秀樹君
     吉岡 吉典君     下田 京子君
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     田沢 智治君     杉元 恒雄君
     名尾 良孝君     福田 幸弘君
     広中和歌子君     中西 珠子君
     秋山  肇君     野末 陳平君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         桧垣徳太郎君
    理 事
                佐藤栄佐久君
                原 文兵衛君
                降矢 敬義君
                村上 正邦君
                吉川 芳男君
                野田  哲君
                峯山 昭範君
                沓脱タケ子君
                橋本孝一郎君
    委 員
                石本  茂君
                梶木 又三君
                金丸 三郎君
                坂野 重信君
                坂元 親男君
                下稲葉耕吉君
                杉元 恒雄君
                関口 恵造君
                竹山  裕君
                名尾 良孝君
                永田 良雄君
                野沢 太三君
                鳩山威一郎君
                林 健太郎君
                林田悠紀夫君
                福田 幸弘君
                増岡 康治君
                松浦 孝治君
                宮崎 秀樹君
                本村 和喜君
                吉村 真事君
                稲村 稔夫君
                粕谷 照美君
                福間 知之君
                矢田部 理君
                安恒 良一君
                山口 哲夫君
                高桑 栄松君
                鶴岡  洋君
                中西 珠子君
                近藤 忠孝君
                下田 京子君
                勝木 健司君
                野末 陳平君
                喜屋武眞榮君
                青木  茂君
   国務大臣
       内閣総理大臣   中曽根康弘君
       国 務 大 臣  金丸  信君
       法 務 大 臣  遠藤  要君
       外務大臣臨時代
       理
       国 務 大 臣
       (内閣官房長官) 後藤田正晴君
       大 蔵 大 臣
       通商産業大臣臨
       時代理      宮澤 喜一君
       文 部 大 臣
       農林水産大臣臨
       時代理      塩川正十郎君
       厚 生 大 臣  斎藤 十朗君
       運 輸 大 臣  橋本龍太郎君
       郵 政 大 臣  唐沢俊二郎君
       労 働 大 臣  平井 卓志君
       建 設 大 臣  天野 光晴君
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    葉梨 信行君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官)  山下 徳夫君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (沖縄開発庁長
       官)
       (国土庁長官)  綿貫 民輔君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官)  栗原 祐幸君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       近藤 鉄雄君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)      三ツ林弥太郎君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  稲村 利幸君
   政府委員
       内閣法制局長官  味村  治君
       内閣法制局第一
       部長       関   守君
       警察庁刑事局長  仁平 圀雄君
       総務庁長官官房
       審議官      勝又 博明君
       兼内閣審議官
       総務庁人事局次
       長        田中  史君
       兼内閣審議官
       総務庁行政管理
       局長       佐々木晴夫君
       北方対策本部審
       議官       船津 好明君
       防衛庁参事官   瀬木 博基君
       防衛庁参事官   古川 武温君
       防衛庁参事官   児玉 良雄君
       防衛庁参事官   筒井 良三君
       防衛庁長官官房
       長        友藤 一隆君
       防衛庁防衛局長  西廣 整輝君
       防衛庁教育訓練
       局長       依田 智治君
       防衛庁人事局長  松本 宗和君
       防衛庁経理局長  池田 久克君
       防衛庁装備局長  鎌田 吉郎君
       防衛施設庁総務
       部長       平   晃君
       防衛施設庁施設
       部長       岩見 秀男君
       防衛施設庁建設
       部長       田部井博文君
       防衛施設庁労務
       部長       西村 宣昭君
       経済企画庁調整
       局審議官     田中  努君
       経済企画庁国民
       生活局長     横溝 雅夫君
       経済企画庁総合
       計画局長     及川 昭伍君
       科学技術庁研究
       開発局長     長柄喜一郎君
       国土庁長官官房
       長        清水 達雄君
       国土庁長官官房
       会計課長     佐々木 徹君
       国土庁計画・調
       整局長      星野 進保君
       国土庁土地局長  田村 嘉朗君
       国土庁地方振興
       局長       澤田 秀男君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       外務大臣官房外
       務報道官     松田 慶文君
       外務省アジア局
       長        藤田 公郎君
       外務省北米局長  藤井 宏昭君
       外務省欧亜局長  長谷川和年君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    恩田  宗君
       外務省経済局次
       長        池田 廸彦君
       外務省経済協力
       局長       英  正道君
       外務省条約局長  斉藤 邦彦君
       外務省国際連合
       局長       中平  立君
       大蔵省主計局長  西垣  昭君
       大蔵省主税局長  水野  勝君
       大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君
       大蔵省国際金融
       局長       内海  孚君
       文部大臣官房総
       務審議官     川村 恒明君
       文部省初等中等
       教育局長     西崎 清久君
       文部省学術国際
       局長       植木  浩君
       文部省社会教育
       局長       澤田 道也君
       厚生大臣官房総
       務審議官     長尾 立子君
       厚生省保健医療
       局老人保健部長  黒木 武弘君
       厚生省社会局長  小林 功典君
       厚生省保険局長  下村  健君
       厚生省援護局長  木戸  脩君
       農林水産大臣官
       房長       甕   滋君
       農林水産大臣官
       房予算課長    上野 博史君
       農林水産省経済
       局長       眞木 秀郎君
       農林水産省構造
       改善局長     鴻巣 健治君
       農林水産省農蚕
       園芸局長     浜口 義曠君
       農林水産省畜産
       局長       京谷 昭夫君
       食糧庁長官    後藤 康夫君
       通商産業大臣官
       房審議官     末木凰太郎君
       通商産業省通商
       政策局次長    吉田 文毅君
       通商産業省貿易
       局長       畠山  襄君
       通商産業省産業
       政策局長     杉山  弘君
       通商産業省基礎
       産業局長     鈴木 直道君
       通商産業省機械
       情報産業局長   児玉 幸治君
       工業技術院長   飯塚 幸三君
       労働大臣官房長  岡部 晃三君
       労働省労働基準
       局長       平賀 俊行君
       労働省職業安定
       局長       白井晋太郎君
       労働省職業能力
       開発局長     野見山眞之君
       建設大臣官房長  高橋  進君
       建設大臣官房総
       務審議官     渡辺  尚君
       建設大臣官房会
       計課長      市川 一郎君
       建設省建設経済
       局長       牧野  徹君
       建設省住宅局長  片山 正夫君
       自治大臣官房長  持永 堯民君
       自治大臣官房審
       議官       森  繁一君
       自治省行政局選
       挙部長      小笠原臣也君
       自治省税務局長  津田  正君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        桐澤  猛君
   参考人
       日本医師会常任
       理事       吉田 清彦君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○昭和六十二年度一般会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和六十二年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)
○昭和六十二年度政府関係機関予算(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(桧垣徳太郎君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和六十二年度一般会計予算、昭和六十二年度特別会計予算、昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(桧垣徳太郎君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 昭和六十二年度総予算三案審査のため、本日、日本医師会常任理事吉田清彦君を参考人として出席を求めることについて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(桧垣徳太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(桧垣徳太郎君) それでは、これより昨日に引き続き、総括質疑を行います。
 まず、過日留保をいたしておりました矢田部理君の残余の質疑を行います。矢田部君。
#6
○矢田部理君 ただいまお配りをいたしました「中期防衛力整備計画の所要経費内訳」、これは、私が防衛庁から提出をいただいた資料並びに直接聞いた事実をもとにして作成をしたものでありますが、この程度の内容ですら明らかにするのに相当の骨が折れる。国会が一たんストップしてからしか出ないということ、大変問題だと思うんですが、いかがでしょうか、防衛庁。
#7
○国務大臣(栗原祐幸君) 防衛上の問題につきましては、ほかの事柄と性質が違いますので、なかなか提出できにくいものもあるということは御案内だと思います。しかし、その中でできる限りの努力をしておるというのが現状でございまして、その点は御了承を賜りたいと思います。
#8
○矢田部理君 わずか三行か四行追加するのに三日も四日もかかる。とりわけ、十八兆四千億というのはもう六十年のときに既に内容として、あるいは数字的には明らかにしたものでありますが、内容が明らかにならなかったのであります。しかしこの資料によってもまだまだ幾つかの問題点があるわけであります。例えば、後方というのに六兆五百億かけることになるわけでありますが、この計算の基礎を明らかにしていただきたいと思います。
#9
○政府委員(西廣整輝君) 御承知のように、後方経費と申しますのは、大きく分けますと、各種装備品等を維持運営していくための修理費が一つございます。これは御存じのように、それぞれの機種について、それぞれの機材について何時間稼動するかというようなことで決まってまいりますので、非常に積算的にこまごまとしたものでございます。さらに基地対策経費、施設整備費といったような施設関連の経費、そのほか被服であるとかといったもの、あるいは水道料、電気料その他もろもろのものが入っておりますので、これを一々積算することは困難であります。
 当初、私どもの要求としては、五カ年間のこれらのものを一応積算して要求いたすわけでありますが、その後、先ほど来お話のありました正面装
備等について財政当局と調整をしていく段階でだんだんに正面装備も減っていくということで、最終的には後方経費については個々に五カ年間のものを積み上げることは困難でございますので、全体的な正面との比率なりあるいは後方についての過去の実績等からにらみ合わせて、総額としてこの程度でということでお決めいただいたというものでございます。
#10
○矢田部理君 今の説明でも明らかなように、言うならば計算の基礎が極めて不明であります。大ざっぱであり、どちらかというとつかみ的につくった金額と言っても言い過ぎではないような中身になっています。
 正面について今度新たに弾薬七千百億という非常に大きな数字が計上されています。後年度負担まで含めますと、何と一兆円を超えるのであります。過去五年間の弾薬の支出を見ますと、大体四千億ちょっとであります。なるほどアメリカから継戦能力の向上を言われておりますが、それにしてもこの計上は強め過ぎるのではないかというふうに思われるし、余りにも巨額であるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
#11
○政府委員(西廣整輝君) 弾薬類につきましては、二次防以来、昭和三十六年、五年以来でございますが、一カ月分の備蓄ということを目標に営々とやってまいりましたが、御承知のように、逐次弾薬類というものが砲弾、銃弾からミサイル類にかわってくるというようなことで、現状は一カ月に達しておるものはほとんどない、特にミサイル類については非常に少ない備蓄しかない状況でございまして、我々としては継戦能力の向上のためにまだまだこの面においては力を入れなくちゃいけないというふうに考えております。
#12
○矢田部理君 問題になっておりますエイジス艦ですが、防衛庁長官、この中期防衛力計画の所要経費の中でどこに織り込まれているかわかりますか。――防衛庁長官がわかるかと聞いているのです。その認識を。いや、あなたに聞いているのじゃない。あなたには聞かなくてもわかっている、説明を聞いているから。どの程度に対応しているかということ。
#13
○国務大臣(栗原祐幸君) エイジス艦は入っていないのでございます。
#14
○矢田部理君 大蔵大臣、いかがでしょうか。
#15
○国務大臣(宮澤喜一君) 防衛庁長官の言われたとおりと思います。
#16
○矢田部理君 それでは防衛局長。
#17
○政府委員(西廣整輝君) 中期防衛力整備計画の中におきましてはエイジス艦というものを購入するということで決まっておりませんで、この中期防衛力整備期間中にミサイル護衛艦、従来のターター艦を二隻つくるということにまずなっております。
 さらに、中期防衛力整備計画の閣議決定の中に、そのほかに、「護衛艦の対空ミサイル・システムの性能向上について検討の上、必要な措置を講ずる。」ということで、いわゆる護衛艦のミサイルシステム向上ということで別途金額が計上されてございまして、それと合わせまして何をするかということになりますので、仮にミサイル向上の検討の結果ターター艦をエイジス艦にすることがいいということになりますと、先ほど申し上げたターター艦を買うべき二隻分とそのミサイル向上経費と合わせてエイジスならエイジスを選択するというような形になろうかと思いますが、これらはいずれも、今後の検討によってどういう形で対空ミサイルシステムの向上をするかという結果にかかわるものと思っております。
#18
○矢田部理君 その検討結果によってはエイジス艦に充当する、転用するのはどこの項目に幾らずつ入っておりますか。
#19
○政府委員(西廣整輝君) 先生の方に提出いたしました資料のうち「救難ヘリコプター、救難飛行艇、支援船等」という「等」の中に入っておりますが、その中にいわゆるDDGといいますか、ミサイルシステムの近代化のための経費といたしまして、歳出予算で三百億円、後年度負担で千二百億円というものが組み込まれております。
#20
○矢田部理君 そのほかにターター艦、見込みで三千四百億円、二隻分、それから後方の研究開発費の中にその関係費として一千二百億含まれていると言われますが、そのとおりでしょうか。
#21
○政府委員(西廣整輝君) 御質問のエイジス関連といいますか、対空ミサイルシステム向上関連としては後方経費の方には入っておりません。ターター艦といいますか、護衛艦の建造費として二隻分入っていることはおっしゃるとおりでございます。後方経費の方にはこの集計費は組み込まれておりません。
#22
○矢田部理君 きのう千二百億入っていると言われたじゃないですか、後方の「その他」に。
#23
○政府委員(西廣整輝君) いや、それはエイジス艦ではないというように思いますが。OTHとお間違えではないでしょうか。
#24
○矢田部理君 いや、私が聞いただけじゃないんです。後方の「その他」の研究開発費の中に千二百億含まれていると言いませんでしたか。
#25
○政府委員(西廣整輝君) 後年度負担と後方とのお間違えではないかと思うんですが、千二百億というのは。後年度負担として、先ほど申し上げた救難ヘリコプターその他のところに二千八百億という後年度負担額がございますね、そのうちの千二百億円が後年度負担経費としてミサイル向上経費として入っておるということを申し上げましたので、後方と後年度ということで、ちょっとお間違えになっているのじゃないかと思います。
#26
○矢田部理君 いずれにしても、ターター艦二隻分の中に込められている、それからエイジス艦三百億と。そうしますと、少なくとも二千億以上のお金がこの防衛計画の中に盛り込まれている、後年度も含めて、そういうふうに伺ってよろしいですね。
#27
○政府委員(西廣整輝君) ミサイル向上経費として、先ほど申し上げたように、千五百億、そのほかにターター艦の建造経費二隻分として、歳出、後年度負担合わせまして約千五、六百億のものが入っているというふうに御理解いただきたいと思います。
#28
○矢田部理君 合わせて幾らになりますか。
#29
○政府委員(西廣整輝君) 合わせて三千億強だと思います。
#30
○矢田部理君 ちょっと見ただけではわからないわけですが、そういうことで、エイジス艦の検討が中期防でなされるわけですが、いろんなところに三千億を超えるお金が盛り込まれていて、いつでも転用可能という状況になっているんです。こういう計画なんです。私は大変問題だと思いますね。
 それからOTHレーダーの所要経費はこの中にどんなふうに位置づけられているでしょうか。
#31
○政府委員(西廣整輝君) 後方につきましては内訳はないわけでございますが、閣議決定の方で、OTHレーダーにつきましては「その有用性等に関し別途検討の上、必要な措置を講ずる。」というように具体的に明記されてございますので、本件に関連した経費を申し上げますと、後方経費の中に歳出予算として約三百五十億円を陸海空に案分して配分されております。
#32
○矢田部理君 OTHレーダーについても、まだアメリカですら実戦配備をしていない、研究開発中のもの、しかも値段としては五百億という値段でありますが、そのうち三百五十億を検討中と言いながら実はこの予算の中に潜り込ませている、所要経費の中に計上をしている。これもやり過ぎじゃないでしょうか。
#33
○政府委員(西廣整輝君) この三百五十億円と申しますのは、OTHレーダーというのは非常に広い用地と平らな用地が必要でございますので、そのためのもろもろの調査費、それから用地の買収費あるいは造成費といったものとして三百五十億円というものが一応計上されておるわけでございますが、これらはいずれにしましても今後検討の結果によってそれを使うか使わないかということが決定されることになると思います。
#34
○矢田部理君 それからP3CとかF15でも、大体期間内の経費と同額あるいはそれ以上のものが
言うならば後年度負担に回されている、さらにはFSXについてもその後方の一部に入れられているということで、個々の問題を取り上げれば切りがないのでありますが、その種のものが果たして本当に必要なのかどうか、その是非や適否について論ずるためにはその前提となる能力見積もりがどうしたってやっぱり必要なんです。そこを明らかにせずして、閣議でもほとんど議論らしい議論もしないまま買い物計画だけを承認し、このずさんな所要経費を了解して次の防衛力計画の財政論にしていくということに大変問題があると思うのでありますが、どうしても能力見積もりは出せませんか。
#35
○政府委員(西廣整輝君) 中期能力見積もりは、先生御案内のように、将来の周辺諸国の軍備の動向なり、あるいは軍事技術の動向というものを見詰めまして、そういった状況下における日本に対する小規模限定侵略というものがあった際に、我が防衛力がどの程度の能力を発揮し得るものかどうか、現在の防衛力に改善すべき点がありや否や、どういう欠陥があるかというようなことを検討するものでございまして、まさに我が方の防衛の手の内を出すことになりますので、事柄の性質上、提出することは控えさせていただきたいと存じております。
#36
○矢田部理君 私から指摘をすれば、その能力見積もり、その前提となる脅威の見積もりとか、こちらの能力の積算とかが少しく、例えば脅威についてどうも過大な見積もりがあり過ぎるということをひとつ感ずるわけであります。
 さきに提出をしました「極東ソ連軍の海軍力」という資料がございますが、これに即して申し上げてみたいと思うのであります。これはソ連脅威論を過大に見積もった一つの事例なのでありますが、ソ連の太平洋艦隊についてはどのぐらいの艦隊数であるか、まず説明をいただきたいと思います。
#37
○政府委員(瀬木博基君) 先生からお示しになりました表に即して申し上げますと、総隻数につきましては、防衛白書では八百四十隻という数字を挙げて、ございます。
#38
○矢田部理君 主要水上艦艇や潜水艦についても記載をしておりますが、このとおりでよろしいですね。
#39
○政府委員(瀬木博基君) この先生からお示しいただきました主要艦艇の中で八六年九十隻とございますが、これは九十五隻でございます。
#40
○矢田部理君 八五年。
#41
○政府委員(瀬木博基君) 八六年でございます。これは防衛白書に書いてございます。それ以外は先生のお示しの数字で、防衛白書には記載してございます。
#42
○矢田部理君 そこで潜水艦でありますが、シーレーン防衛を盛んに皆さん言われるわけでありますが、それにかかわると思われる潜水艦は弾道ミサイルの潜水艦ではなく通常目的型の潜水艦だと思いますが、いかがでしょうか。
#43
○政府委員(瀬木博基君) これはいわゆるミサイル潜水艦並びに通常型の潜水艦、また推進力といたしましては、核のものも通常型のものも在来型のものもすべて含んでおります。
#44
○矢田部理君 SSBNとかと言われる弾道ミサイル潜水艦は、これはアメリカ本土向けのものであって、直接的にシーレーンにかかわるというふうには考えられないのですが、そのとおりでいいでしょうか。
#45
○政府委員(瀬木博基君) SSBNにつきましては、先生がおっしゃられましたように、主として米ソ関係の中におきましてアメリカ大陸をねらっているものと考えております。
#46
○矢田部理君 そこで、防衛白書ではそういう分け方をなぜかしないのでありますが、他の「ソ連の軍事力」、アメリカの国防総省が出しているわけであります、それからミリタリー・バランス、ジェーン海軍年鑑などを見てみますと、シーレーン関係の通常目的の潜水艦というのは、この表でも明らかなように年々減っているんです。その事実は認めますか。
#47
○政府委員(瀬木博基君) 先生が御指摘の各種資料におきましていろいろな数字が出ております。これらの資料がどういう根拠に基づいてどういう基準で計算をいたしておるか我々は定かでございませんので、この数字がどういうふうな趨勢をたどっておるのか、この点については私ども確認し得ないというところでございます。
#48
○矢田部理君 防衛白書でいろんな隻数の指摘などをするに当たっては、この種の資料はかなり重要な資料として参考にするのではありませんか。それでもわかりませんか。
#49
○政府委員(瀬木博基君) 防衛庁といたしましては、入手可能な各種資料、もちろんここに先生から御指摘がありましたような公開の資料も参考にさせていただきまして、総合的に判断させていただいております。
#50
○矢田部理君 ですから、資料には当たっているわけでありますから、その資料によれば、通常目的の潜水艦はいずれも減少傾向をたどっているのではありませんか。もう一回ちょっと。
#51
○政府委員(瀬木博基君) ただいま申し上げましたように、この「ソ連の軍事力」でありますとか、ミリタリー・バランスでありますとか、そういう資料がどういう基準に基づき、またどういう統計に基づいて数えておるかわからないということでございますので、それが果たして本当の意味でソ連のそういう型の潜水艦が減っておるかどうか、これはわかりません。ここにある数字そのものを見てみれば、これは一つの傾向を示しておるということは言えると思います。
#52
○矢田部理君 それから二番目の問題でありますが、防衛白書が年々挙げているソビエトの艦艇の数でありますが、総隻数がいずれの他の資料よりも、この三つ挙げた米英の資料よりも数が上回っている、各年次とも上回っている、これが特徴なのでありますが、その事実は認めますか。
#53
○政府委員(瀬木博基君) 軍艦の隻数を数えますに当たりましてそれぞれ基準がございます。我が国といたしましては伝統的に一つの基準を持っておりまして、その基準に従いまして数えるということでございます。これは必ずしもソ連の艦隊ということに限られたことではございませんで、アメリカの艦隊についても数えております。我々の基準は同じでございます。この基準によりますと、米国の全体の艦船の数というのは、アメリカの数え方によりますと、八六年度で五百五十五隻という数え方をいたしております。他方、防衛庁の数え方では八百七十隻という数え方をいたしております。これはどこに基準を置くかということでございまして、別に過大に評価をするためにわざわざやっておるということではございません。一つの基準を持ってやっておるということでございます。
#54
○矢田部理君 基準にも常識的なものがあるのでありまして、アメリカやイギリスで計算した基準と違って、もう廃船寸前のものや、はしけまで入れれば数がふえるかどうか知りませんが、日本のやつは少しく数を出し過ぎるということがかねてから指摘されておるわけでありまして、こういうことで、水上艦艇、シーレーン防衛にとっては非常に対潜能力をつけるべしということで重要な問題なのでありますが、その脅威の見積もりについてだってこんな他の国に例を見ない過大な認識をしている。これが前提で見積もりがつくられ、買い物計画が出されたのではたまったものじゃない。だから能力見積もりを出しなさい、その前提となる脅威についてどんな認識をしているのかを出しなさいと言うのは当然の話じゃありませんか。長官、いかがでしょうか。
#55
○国務大臣(栗原祐幸君) 我が国の防衛計画の整備というのは、限定かつ小規模の侵略に対応するということでございまして、それ以上の何物でもない。その線にまでまだいっていないから、軍事技術の動向あるいは国際情勢を勘案していわゆる装備品の近代化をしておるということでございまして、御懸念は要らないと思います。
#56
○矢田部理君 さらに、中期防と所要経費の総体的な問題を申し上げておきたいと思うのでありま
すが、中期防が出した十八兆四千億とそれ以前の五カ年間の防衛費との比較はどのぐらいになりますか。どのくらいの伸び率になりますか、五年、五年で対比をしますと。
#57
○政府委員(西廣整輝君) 突然のお尋ねでございますので、すぐ計算して後ほどお答えいたします。
#58
○矢田部理君 私が申し上げますが、十八兆四千億に対して過去五年は十三兆八千億、その伸び率は何と三三%を超えるわけであります。後年度負担の比較をしてみますと、中期防の中に入り込んでくる前の負担分とそれから中期防から六十六年以降にはみ出す金額の比較をしてみますと、伸び率は何と四四・九%、四五%ですよ。飛躍的にこの軍拡予算の中期防が事実上やっぱり先行していくというやり方は防衛庁長官いかがなものでしょうか。
#59
○国務大臣(栗原祐幸君) 先ほど来から申し上げているとおり、防衛計画の大綱水準の達成を期するということで防衛力を整備しているのでございまして、それに必要な経費でございまして、それ以上の何物でもない、そういうように御理解いただきたい。
#60
○矢田部理君 答えにはなっていません。例えば正面と後方の比率は、過去五年間と今度の中期防ではどんなふうになりますか。
#61
○政府委員(池田久克君) 正面と後方の比率の過去五年間ということでございますが、まず歳出ベースで申し上げますと、これは先般先生の資料にもございましたが、五十八年度が一対一・四七、五十九年度が一・四〇、六十年度が一・三九、六十一年度が一・三七、六十二年度が一・三一。なお、これを契約ベース、実際の仕事の量で申し上げますと、五十八年度が一・五八、五十九年度が一・一九、六十年度が一・一四、六十一年度、六十二年度と上がっておりまして、一・一五、一・二九と後方に重点を志向しておるところでございます。
#62
○矢田部理君 その五年間ではなくて、中期防の期間の五年とその前の五年との比較はできますか。
#63
○政府委員(池田久克君) 計算する必要がございますので、ちょっとお時間をいただきたいと思います。
#64
○矢田部理君 時間の関係で私から申し上げますが、私の計算によりますと、中期防以前の五十六年から六十年までの正面対後方の対比はずっと下がってきているわけでありますが、一対一・五四であります。そうすると、中期防になりますともっと下がりまして一対一・二七になります。
 長官、大変大綱を大事にされるように言われますが、大綱は後方のおくれが大変ひどい、後方を重視しなければ全体としての力はつかないということを繰り返し防衛白書などで述べておるのに、依然として正面を重視、さらに正面を強化して後方をずっと狭めていく、その特徴がまた中期防でも決定的に出ているのでありますが、その事実は認められますか。
#65
○政府委員(西廣整輝君) 今先生の申された線は、後方、正面の全体額の比率で言われましたけれども、私どもとしましては後方、正面のそれぞれの伸び率というものを念頭に置いて考えております。今回の中期計画によりますと、後方の実質平均伸び率というのは七・四%ということで、過去三年平均の四・一%、過去五年平均の六・〇%と比べて後方の経費の伸び率というものは非常に重視されているというように考えております。
#66
○矢田部理君 それはことしだけ一%突破の口実として伸ばしたけれども、総枠がさっきの費用の関係で決まっているわけであります。それなら後は、今度はもっと減らさなきゃならなくなるでしょう。
#67
○政府委員(西廣整輝君) 私が今申し上げた数字は、六十一年度以降の後方経費の伸び率、五カ年間の中期防衛力整備計画で定める後方全般経費の平均伸び率というものを申し上げたわけでありまして、それと六十年以前の過去五年間あるいは過去三年間と比べまして、中期防では後方経費の重視というものが明確にあらわれているということを申し上げたわけでございます。
#68
○矢田部理君 正面対後方の比率の関係はどうですか。私の言ったのは間違いでしょうか。
#69
○政府委員(西廣整輝君) 正面と後方の関係について申し上げますと、例えば修理費のようなものは正面の装備品がかわってくる。したがいまして、例えば航空機がF4からF15にかわるということで高価なものになってまいりますと当然のことながら修理費の部品費も上がるということで、正面とスライドするものもございます。一方、例えば隊舎であるとか被服であるとか、そういった後方経費というものは人員が特段にふえなければ正面経費と比例して上がっていくものではないということで、正面経費の総額と後方経費の総額というものを直ちに比較してお比べになるという点はいささが問題があるのではないかというように考えておる次第であります。
#70
○矢田部理君 改めて指摘するまでもありませんが、五十二年度防衛白書は、「正面に比して後方関係の整備の遅れが目立ち、全体としての能力は意外に低い水準にある。」、これをこのまま私はいただくわけではありませんが、大綱大綱と言いますが、結局は後方を犠牲にして、うんと縮めて、正面を全面的に重視する政策をとってきたし、防衛力整備計画はその傾向を一段と強めている。そして後年度負担に大量の金額を予定している、後方が縮んでいることも一つの理由にして。恐らくポスト中期防というのは大変な軍拡予算にならざるを得ない。その下地づくりが既にこの中期防で行われているというふうに指摘せざるを得ないのでありますが、長官いかがでしょうか。
#71
○国務大臣(栗原祐幸君) 私はさように考えません。今防衛局長からお話があったとおり、後方の中で隊員の宿舎とか隊舎とか、いわゆるそういうものは一たん建てれば毎年毎年どうこうというものじゃないわけです。一方、正面装備については、技術水準の向上、国際情勢等によってやっていかなければならない、そういうことでございますので、今言ったように正面と後方のバランスを今までの後方の傾向で見るというのは正しいのであって、直ちに正面と後方とが何対何になっているということでやるべきではない、それをもって軍拡につながるという御議論はいただけないものではございます。
#72
○矢田部理君 問題は、なぜかくも正面が重視をされてきたかということが、私は率直に言うと今度の一%突破の最大の理由だと思うのでありますが、結論的に申し上げますと、やっぱり大綱の水準達成だと言いながら実は大綱の上に、大綱を超えてガイドラインの体制がつくられつつあるというふうに言わざるを得ないのであります。
 そこで、政府はガイドラインというものをどのように位置づけ、認識をしているんでしょうか。長官いかがですか。――では外務大臣にお伺いします。
#73
○国務大臣(後藤田正晴君) 例のこのガイドラインの問題については、この前でしたか、野田さんからもたしか御質疑があった問題だと思います。閣議の中で資料を提出して、報告をして了承せられておるという性格のものでございます。
 やや詳しく申し上げますれば、閣議のあり方というのは、政府全体としての、行政府全体としての意思決定という必要のあるような重要政策については閣議そのもので決定をする、こういうことですね。いま一つは、重要な各省の施策であって、他の省にも関係がある、それだけに閣議でそのことの説明をして了承を得ておく必要がある、これが閣議了解事項と言われております。もう一つは、それぞれの省の施策であるが、やはり重要性から見て閣議の席にそのことの報告をして了承を求めておくといった閣議報告。この三種類があるわけでございますが、たしか御質問の御趣旨は、書類がないではないか、これはいかなる取り扱いをしておるかと、こういう御質疑であったと理解をしておりますが、閣議の形式はそれ三つだけではございません。その三つは、今言ったように閣議の正規の手続を経ておりますから文章できちっ
と残っておるという場合でございますが、それ以外に、当然のことながら、全体の施策の重要性にかんがみて各省の所管大臣あるいは国務大臣としての立場から種々の発議がございます。
 今の日米のガイドラインの問題については、防衛庁からきちっとした資料の提出があり、その資料に基づいて説明が行われて閣議で報告をせられておりますから、私は、閣議としてのやり方としては従来の慣例に従ったやり方をとっておる性格のものである、したがってそれなりの重要性のある性格だと、こう考えておりますが、御質疑がありましたように、書類にないのはおかしいではないか、こういう質問ですね。これは私は確かにそういう御疑念もあり得ると思います。しかし、政府としては従来からこういう扱いをやっておったわけでありますから、これについて今さらこれは欠陥があるとかといったようなことはいささかも考えておりません。しかし、疑念の生じないようにこれから先もう少し行政府は、おまえたちは考えろ、こういう御忠告である、かように理解をいたしまして、これは将来の検討はいたしておきたいと、こう思います。
#74
○矢田部理君 生まれの問題については後で野田議員がやることになっておるので、それも大変出生の問題があるわけでありますが、私はそうではなくて、伺ったのは、日本の防衛政策上ガイドラインはどのように位置づけて機能しているかという実質論を聞いているんです。
#75
○政府委員(西廣整輝君) ガイドラインの性格につきましてはたびたびお答え申し上げていると思いますが、日本に対する武力攻撃がなされた際におきます日米安全保障条約、これに基づく日米間の防衛協力のあり方、これについて研究協議をする、その研究協議をするに際しての指針となるべき事項を定めたものがガイドラインであるというように私どもは考えております。
#76
○矢田部理君 これは、ガイドラインが大綱にかわって、あるいは大綱を超えて日本の防衛政策のやっぱり極めて大きな意味を占めてきている、これはアメリカの要請もむしろここを通して行われている。その結果が、言うならば日米共同作戦の研究、シーレーン防衛へと発展をしていくというのが事の成り行きなのでありまして、だからこそ正面装備が重視をされて、高価な買い物を兵器体系として用意をし、そしてそれをやっぱりシーレーン等に配備をしていく。ここにまさにこの一%突破の重要な意味、内容があると私は思うんですが、いかがですか。
#77
○国務大臣(栗原祐幸君) いわゆるガイドラインは今政府委員から述べたとおりでございまして、このことと大綱と全く離れてガイドラインでどんどんどんどん日本の防衛力が増強していく、そういうものじゃない。有事の際に日米がどのように有機的に共同対処をするか、そういう戦闘作戦等の研究をするということでございまして、行政措置を伴うものでないと、そういうのでございますので御疑念の点はないものと思います。
#78
○矢田部理君 矢崎防衛庁の事務次官が、「国防」ということしの一月号の雑誌にこう言っているんです。日米関係で非常に重要だったのは六〇年安保である、その次に重要だったのはこのガイドラインを決めたことだ、これは安保条約に魂を入れたものだと、こう言っているんですね。そんな指針とか軽いものじゃないんですよ。ここから言うならば、シーレーン防衛とか洋上防空という話が出てきて、そして正面装備を重視して、まさに今までの一%以内では賄い切れなくなった。本格的に一%問題を突破させて軍拡への道に進むという基本的な背景があるのじゃありませんか。
#79
○政府委員(西廣整輝君) ガイドラインで定められております研究協議の基本的な枠組みというものは、ただいま防衛庁長官からお答え申し上げたように、大綱の枠組みと全く同一のものでございまして、例えば、「日本に対する武力攻撃がなされた場合」というところに明確に、「日本は、原則として、限定的かつ小規模な侵略を独力で排除する。侵略の規模、態様等により独力で排除することが困難な場合には、米国の協力をまって、これを排除する。」云々とあるように、いずれの場合も、私どもが防衛力整備のための大綱として持っております防衛計画の大綱、これとガイドラインというものは裏腹になっておりまして、決してガイドラインによって新たな防衛力整備の必要性が出てくるとかそういったものではございませんので、その点御理解を賜りたいと思います。
#80
○矢田部理君 竹田五郎という元統幕議長が、大綱の思想の中には周辺海域の防衛までは入っておったが、一千海里というような広大な太平洋のシーレーン防衛というような思想は入っていないと統幕議長が言っているんですよ。そしてその思想が入ってきたのはまさにガイドラインである。そこからシーレーン防衛とか洋上防空というのが出てくる。ここにこの一%突破の問題があり、日本の防衛政策の重要な変更がある。ガイドラインによってなされたというふうに私どもは受け取っているのでありまして、今の説明では納得できません。
#81
○政府委員(西廣整輝君) シーレーンの防衛、言いかえますと海上交通の保護というのは、自衛隊発足以来の主として海上自衛隊の主たる任務でございまして、決してシーレーン防衛がガイドラインによって新たに生じた自衛隊の任務ということではございません。
 また、今竹田元議長の話がありましたが、シーレーン防衛と申しますのは、決して広大な海そのものを守るということではございませんで、海の上にいる我が国の船舶、この安全を守るということでございまして、広い海そのものを守るということではないことを御理解いただきたいと思います。
#82
○矢田部理君 そういう形式的な説明では納得できませんし、その意味で私どもはいろいろ一%問題を論じてきました。いろんな意味から見て一%突破というのは断じて私どもとしては認めるわけにはまいりませんし、中期防そのものが歯どめになるなどというのは大変なうそでありまして、むしろやっぱり防衛力拡大の大きな土台づくりをやろうとしている危険な道であるから、ぜひこれは撤回をして再検討していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。
 それから中期防衛力整備計画をつくるときもそうだったのでありますが、軍事大国にならないとか文民統制をよくやるとか専守防衛に徹するとかということを防衛政策の基本にして、しばしばその言葉が繰り返されるわけでありますが、どうもやっぱり文民統制の前提となるべき情報の公開が極めてひどい、物すごく秘密を拡大しているということが現状でありますが、その秘密の現状についてまず御説明をいただきたい。点数及び数です。
#83
○政府委員(西廣整輝君) お答え申し上げます。
 現在、防衛庁で保管しております秘密、これは防衛秘密と庁秘と二種類ございますが、防衛秘密について申し上げますと昭和六十一年度末現在の状況で十三万一千百七十六件、それから庁秘につきますと百四十六万三千九百八十五件ということでございます。
#84
○矢田部理君 この十年間で件数にして一・五倍、それから点数にして七十四万点から百四十六万点。どうして管理するんですか。
#85
○政府委員(西廣整輝君) ちょっと私、今件数と申し上げましたが、点数の間違いでありましたので、改めて訂正さしていただきます。
 なお、秘密の数、非常に多いようでございますが、御承知のように、この秘密の中には文章等もございますが、例えば装備品そのものというものが秘密になっております。それも例えば航空機というようなことで一点ではなくて、航空機の中のそれぞれのコンポーネントあるいは部品、そういったものも含めて例えば防衛秘密になったりあるいは庁秘になったりするものもございますので、それらが逐次累積をしていくということはやむを得ない点もありまして、現在のところ先ほど申し上げたような数字になっておるということでございます。
#86
○矢田部理君 庁秘がこの十年間で二倍などなど
物すごくふえているわけですが、このふえた理由、それぞれについて述べてください。
#87
○政府委員(西廣整輝君) 先ほどお答え申し上げた点と重なる点もあろうかと思いますが、防衛庁が扱っております仕事といいますのは、その任務からいいましてかなり厳格な秘密の保全が要求される分が多いわけでございます。したがいまして、防衛庁の業務に関連した各種の作業の中で秘密の事項、例えば物事の性能であるとかあるいは外に出してはならない数量その他が書かれたもの、そういったものについての文書、図画、そういったものが秘密になりますので、新たにそういった文書が作成されるごとに秘密の件数がふえていく。もちろん古いもの、文書等については逐次不要なものから廃棄をしていくわけでございますが、どうしても累積する傾向にある。特に、先ほど申し上げたように、装備品関係につきましては、例えばF15が導入される、それに関連してF15に相当数の秘密というものがあるわけでございますが、それらの機数がふえていけば点数はおのずからまたふえていくというようなことで、装備品関連の秘密の件数あるいは点数が増加していくということについては御理解を賜りたいと思うわけであります。
#88
○矢田部理君 秘密だけを我々に見せないんじゃないんですね。そのほかに取扱注意文書というのがあります。これが膨大にあるんですが、その数と基準を示してください。
#89
○政府委員(西廣整輝君) 取扱注意と申しますのは、秘密の範疇に入るものではございませんけれども、これは部内でいろいろ作業をする上で部内限りにとどめておくべきものが適当と考えられるものでありまして、部内の個々の作業の資料等についてみだりに外部に出すことは好ましくないので、取扱注意という形で文書管理しているものがあると存じております。
#90
○矢田部理君 数を言ってください。
#91
○政府委員(西廣整輝君) 取扱注意につきましては、秘密文書とか物件等と違いまして、個々の管理者を決めて登録するようになっておりませんので、数は私どもは把握をいたしておりません。
#92
○矢田部理君 このようにして防衛庁は膨大な百数十万件の秘密、そのほかにその外堀として膨大な取扱注意文書。これで我々にも出さないんですよ。一、二の例を申し上げますならば、つい数年前までは出しておった例えば教範類ですね、最近になったらこれは出さなくなった。今までは売っておったんです、町で。それから防衛庁の略語集、これも出さない。これでどうして文民統制ができるんですか。情報を一切秘密主義で抱え込んでしまって、場合によっては国家秘密法でそれを守ろうとしておる。
 これは総理に伺いたいと思うのでありますが、今まで出しておったものすら、そして秘密でないというんです、しかし、都合が悪いから差し控えさせてくれ、こういうことでいいんでしょうか。教範類全部出しませんでした、私が請求したのを。用語集も出さない。つい数年前までは売っておったんです、防衛庁の売店で、この教範類などを。
#93
○委員長(桧垣徳太郎君) 矢田部君、時間が参りました。
#94
○矢田部理君 はい。
 こんなばかなことがあるか。総理及び防衛庁長官の認識と、これから少なくともこの秘密を本格的にやっぱり整理し直す、出すべきものはもう少し出して論議に供するという約束だけはしてもらわなきゃ困ると思うのでありますが、いかがでしょうか。
#95
○国務大臣(栗原祐幸君) いわゆる防衛という性質上、いろいろと公開できないものがあるということはよく御案内かと思います。まあ世の中がなかなか複雑になっておりますので、我々から見ますと何でもないというようなことがあるいはほかの者からすると大変なヒントになるということもあり得ると思うんですよ。ですから、そういう意味合いでこの防衛の資料というものにつきましては、やはりある程度の配慮をしなきゃならぬ点があると思います。
 ただ、おっしゃるとおり、いわゆる情報をどうコントロールするかというのは、まさにシビリアンコントロールの大きな観点であります。そういう意味合いではいろいろと御指摘の点につきまして我々としても考えるところがないかどうか、これはよく検討してみたいと思います。しかし、防衛上どうしても出せないものもある。それはいろいろの環境といいますか、いろいろの状況をも勘案しながら考えていかにゃならぬということをも御理解いただきたいと思います。
#96
○矢田部理君 もう一点だけで終わりますが、五十八年に筑波で関東の都道府県の人たちを集めて自衛隊の募集のための集まりを持った。何の変哲もない資料を配った。その資料を埼玉県の情報公開条例に基づいて請求したら、請求した前日に引き揚げていった、引き揚げ命令が来た。それすらも見せない。こんな秘密主義をとっているんですよ。今の説明じゃ説明になりませんよ。一回再検討を厳重に求めて、私の質問を終わります。総理。
#97
○国務大臣(中曽根康弘君) 情報公開は、政府としては前向きに今真剣に検討しておるところであります。防衛情報につきましては、一般の情報と特殊性のある点もあると思いますが、国民に理解を求めるためにもできるだけ公開の方向へ努力してまいりたいと思います。
#98
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で矢田部理君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#99
○委員長(桧垣徳太郎君) 次に、野田哲君の質疑を行います。野田君。
#100
○野田哲君 まず、大蔵大臣とそれから防衛庁長官に伺いたいわけですけれども、政府の方で新しい防衛関係費の歯どめとして、中期防衛力整備計画、十八兆四千億円程度を新たな歯どめとして決定をされたわけでありますけれども、この十八兆四千億円は昭和六十五年度末で中期防が完了する時点ではどの程度の金額になっているのか、こういう点、その推定額を検討されたことがありますか。
#101
○国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のようにこの十八兆四千億には毎年毎年の年次割というものはございませんし、さらに政府の長期計画がその時期までをカバーしておりませんので、いろいろな意味で物価と申しますか、あるいはデフレーターといったようなものもはっきりいたしませんので、そのような計算を公にいたしたことはないと思います。
#102
○国務大臣(栗原祐幸君) 今大蔵大臣の言ったような理由で、そういう計算はしておりません。
#103
○野田哲君 経済見通しては、六十五年までの経済見通しがあるわけですね。
 そこで、参考のために私が検討した仮定計算例を資料としてお配りをしておりますので、この点について触れながら質問させていただきたいと思うんですが、十八兆四千億を六十年度価格で計算をされているわけでありますけれども、この十八兆四千億から、六十一年度と六十二年度、この差額、つまり残った年度を均等配分した後、名目GNPデフレーター、六十三年から六十五年度平均伸び率二%で名目価格を推定したわけであります。
 これによると、政府が新たに歯どめにしようと考えている中防十八兆四千億円は最終的には十九兆三千億円、こういうふうになるわけで、防衛費の今後の伸び率は七・五%から九・五%という高率になるわけであります。そしてGNPに対する比率は、名目成長率四%、実質成長率二%、ケース(c)で見ていくと六十三年では一・〇五七%、六十四年は一・〇九二%、六十五年には一・一二九%、こういうふうな数字が出てくるわけでありますけれども、この計算例をいかが御判断なさいますか。
#104
○政府委員(西廣整輝君) この表をただいま拝見したところで、過去といいますか、六十一年度防衛予算、それから現在御審議をいただいております六十二年度防衛予算、この名目伸び率はここに書かれておりますように六・六及び五・二でござ
いますが、これが実質的にどの程度のものであるかということについて、先生は実質をどう思われたのかわかりませんが、恐らく一般のデフレーターを引かれたのが実質であろうということで、以後残った実質分を等比で伸ばしていくという御計算をされたのではないかというふうに理解するわけですが、防衛費が実質でどのくらいであるかというのはなかなか、防衛デフレーターというのは特段つくっておりませんので難しい点はございますが、私ども毎年予算を編成いたした後に、それが実質的にどの程度のものに上がるかということを一応精査いたしております。
 例えば六十一年度について申しますと、名目伸び率六・六%の伸びでございましたけれども、いろいろな面を勘案しますと、やはり当時のデフレーター、六十一年度の一般のデフレーター一・一ぐらいがデフレーターとして防衛庁についても効いてきているので、ほぼ五・四ぐらいの伸び率に相当する、実質的には。それから六十二年度につきましては、油の値下がりとか円高等が効いてまいりまして、デフレーターとしてはマイナス〇・二ぐらいに効いてくる。いわゆる一般の経済見通しのデフレーターのように大きな、ものではなくて、逆にマイナス〇・二ぐらい。したがって、実質的には五・四ぐらいに相当したというように考えておりますので、実質的な中期防の進捗率と申しますか、それは先生のこの表でのお見込みよりも若干現在高いところにある、いずれも平均伸び率の五・四ぐらいを消化しているのではないかというように理解しておりますので、必ずしもこのような伸びに引き続きなっていくというようには考えておりません。
#105
○野田哲君 防衛庁長官、そういたしますと、私が仮定計算例で出した資料、十九兆三千億という最終的な金額を超えることは絶対にない、こういうふうに確約できますか。
#106
○国務大臣(栗原祐幸君) あの中期防衛力の整備のやつは、新たな歯どめは、これは六十年度価格でおおむね十八兆四千億、実質ですから。ですから、実質十八兆四千億、これは変わらないということであります。
#107
○野田哲君 実質十八兆四千億、六十年度価格を、私はいろんな係数によって、デフレーターで推定をすると六十五年度末に十九兆三千億になるんじゃないか、こういう数字を示しているわけです。ここまでは行かない、こういうことなんですか。
#108
○国務大臣(栗原祐幸君) これは野田さんの一つの計算でございまして、これが客観的にそれ以外の何物でもないということが認められているわけではございませんので、一つの試算として承っておきます。
#109
○野田哲君 私は政府のいろんな計算例をもとにしてこういう数字を出したわけなんです。ではこの計算が、そういう計算の方式は間違いなら間違いで、こういう計算ならこうなるんだという例があれば示していただきたいと思います。
#110
○政府委員(西廣整輝君) 先ほど申し上げた点と若干ダブる点もあろうかと思いますが、十八兆四千億につきましては、先ほど大蔵大臣からお答えいただきましたように年次計画というものがございませんので、単年度で高さがどうなるかということは我々としてもなかなか申し上げられないわけでございまして、五カ年間の面積として十八兆四千億、それが仮に等比的に伸びていくとすれば実質五・四%ずつ伸びていくということになろうかと思います。
 さらに申し上げれば、六十一、六十二年度はたまたま、実質的に言いますと、先ほど私申し上げたように五・四、五・四というような進捗をいたしておりますので、引き続き等比的に伸びていく、あるいは等比的に伸びないにしても面積として残りの分が消化されるということになりますと、仮に一般の経済の方が政府の長期見通しのとおり実質四%というものであるといたしますと、面積として一・〇二%になるというように私どもは理解をいたしております。
 なお、名目につきましてはどういう形にその際なるかということについては、先ほど来申し上げているように、デフレーターの動向等も不明でございますし、また、単年度的にどの高さになるかということは申し上げられない点は先ほど初めに申し上げたとおりでございます。
#111
○野田哲君 そういたしますと、金額的な歯どめはこれはない、こういうことなんですか。昭和六十五年度までの私が試算をしたような方式の計算をしたことがない、こういうことであれば、総額の中防の十八兆四千億というのはあくまでも六十年度の価格によるものであって、六十五年度までの計画についての金額的なものはない、こういうことなんですか。これはやっぱり大臣明確にしてくださいよ。
#112
○政府委員(西廣整輝君) 先ほど防衛庁長官もお答え申し上げたと思いますが、中期計画というのは六十年度時点の価格を前提にいたしまして十八兆四千億という五カ年間の総額としてそういう金額が定められておりますので、金額的な歯どめといたしましては六十年度価格に換算して十八兆四千億が限界であるということで、それ以下であるということは申し上げられると思います。
#113
○野田哲君 だから、六十五年度終了時点における金額的な歯どめはない、こういうことですね。今後の経済の推移によってこれはどこまで膨れていくか、これは今は見込めない、こういうことなんですか。
#114
○国務大臣(栗原祐幸君) 名目成長率と実質成長率がございますから、いわゆる新しい歯どめは実質価格で、昭和六十年度の実質価格で十八兆四千億ということを決めておるのでございまして、名目価格で云々は決めていない、そういうことでございます。
#115
○野田哲君 それでは一体金額的には何が歯どめになるわけですか、この十八兆四千億、六十年価格、これだけが歯どめなんですか。
#116
○国務大臣(栗原祐幸君) 金額的にはまさにおおむね十八兆四千億、そういう実質価格であります。
 政府の計画というのは、大体実質価格でやっているわけですね、それに倣っているわけであります。
#117
○野田哲君 だから、最終完了時点におけるものは幾らという歯どめはないと――ないんですね。
#118
○政府委員(西廣整輝君) 先ほど申し上げましたとおり年次計画というものがございませんので、最終年度の高さがどうなるかということについては特に歯どめというものはございませんが、総額として実質十八兆四千億というのが決まっておりますから、仮に執行が前倒しになれば最終年度は低目に出てくるし、おくれおくれになると、最終年度が仮に一〇〇%達成しようと思えば丈の高いものになるということを御理解いただきたいと思います。
#119
○野田哲君 総理、そういうあやふやなことで一体歯どめになるんでしょうか、国民に納得いくような説明ができるでしょうか。
#120
○国務大臣(中曽根康弘君) やはり防衛というものは国の大事でございますから、内容が非常に重要であると思うのであります。
 諸般の国際情勢、及び科学兵器、科学技術力の発展等々も見合いながら一定の水準で五カ年計画を策定いたしましたが、そのよりどころとなる、いわゆる定点ともなるべきものというものはやっぱり実質価格であらわさぬと、インフレになったりデフレになったり、あるいは円が変動したり、いろいろのさまざまな変動要因が将来は出てくるわけでありますから、そういう意味においては、やはり昭和六十年度の実質価格というものを定点にしてそれを基準にするということが、国民の皆さんに対する信頼度をつなぎとめる私は妥当な方法であると思うんです。そういうような考えから、将来におきまして名目成長率が変動する、物価が変動する、さまざまな変動要因によりまして名目的には十八兆四千億というものが動くことは当然あり得ると思いますが、実質的には動かさない、しかもリボルビング制度というものもやめる、そういう定点をはっきりさしておりますの
で、これは歯どめになると考えております。
#121
○野田哲君 これは歯どめにならない、こういう点を指摘しておきます。また、金額的にも、政府委員に答弁させた答弁が最終的な歯どめはないと、こういうことであったわけでありますから、それでは私どもはこの政府が決定をした歯どめを納得するわけにはいかない、こういうふうに申し上げておきます。
 それでは、中身で法制局長官に伺いますが、憲法九条で我が国が保持しない、こういうふうに規定をされている陸海空軍その他の戦力、この戦力というのは具体的にどういうふうに解釈をされているわけですか。
#122
○政府委員(味村治君) 憲法九条二項に言います戦力は、これは政府は従来から憲法九条の一項が自衛権、我が国の固有の自衛権は否定しておりませんので、その自衛権の裏づけとなります自衛のため必要最小限度の実力というものは、これは戦力に該当しない、それを超える実力が戦力であると、このように従前から申し述べているとおりでございます。
#123
○野田哲君 近代戦遂行能力あるいは近代戦争を遂行するに足りる装備編成、こういう見解を出されている経過がありますね。
#124
○政府委員(味村治君) 吉田内閣当時は、先生のおっしゃいますように、憲法九条の禁止しております戦力というのは近代戦遂行能力であるという説明をいたしておりました。しかし、昭和二十九年十二月以来はそのような説明は政府はいたしておりませんで、先ほど申し上げましたように、自衛のため必要最小限度の実力を超えるものが戦力である、このように申し上げておるわけでございます。
#125
○野田哲君 昭和四十七年の十一月十三日、当予算委員会で当時の吉國法制局長官が、今長官が言われたように、自衛のための必要最小限度を超えるものが戦力だ、こういう見解を表明されているわけです。ただ、その場合にも、最後に、言い回し方が違うといたしましても、吉田内閣当時以来の近代戦遂行能力、これを間違いであるとか否定するものではない、こういう点も補足して述べておられるわけですね。間違いありませんね。
#126
○政府委員(味村治君) 先生の御指摘の昭和四十七年十一月十三日の参議院予算委員会におきまして吉國内閣法制局長官が、御指摘のように、近代戦遂行能力という定義は、それが戦力であるという政府の見解は昭和二十九年十二月以来はとられていないということを御説明申し上げまして、その理由といたしまして三つ挙げているわけでございます。
 一つは、およそ憲法の解釈の方法としては、戦力についても、それが我が国が保持を禁じられている実力を指すものであるという意味合いを踏まえて定義する方がよい。そういう意味合いからいうと、近代戦争遂行能力というのは、ただ戦力という言葉を単に言いかえたのにすぎないのではないかと言われる面もあって、必ずしも妥当とは言いがたいということが一つの理由でございます。
 第二に、近代戦遂行能力という表現が具体的な実力の程度をあらわすものであればそれも一つの言い方ではあろうと思うけれども、結局は抽象的表現にとどまると。
 それから第三には、そういうように考えますというと、先ほど私が申し上げましたように、憲法は自衛権を否定していないわけでありますから、自衛のための必要最小限度の実力という、自衛権の裏づけとなる実力、これは憲法九条二項の戦力ではないという解釈の方がいわばもっと端的である、論理的である。
 こういう三つの理由を述べられているわけでございます。
 それで最後に、委員のおっしゃいましたように、昭和二十九年十二月より前には近代戦遂行能力という言葉を用いていたが、そのような意味であれば、言い回し方は違うとしても一概に間違いであるということはないと存じますと、そういう答弁をいたしております。
#127
○野田哲君 ですから、今までの政府の統一見解としては、憲法九条が保持することを禁じている戦力について二つの見解が出ているわけです。一つは近代戦遂行能力を持つもの、そしてもう一つは自衛のために必要な最小限度を超えないもの。
 そこで、総理に伺いたいのですが、総理は一昨年九月十八日に中期防衛力整備計画を閣議決定するに当たって、先ほど矢田部委員も指摘をしたわけでありますけれども、近代戦遂行能力を持つものかどうか、あるいは自衛のために必要な最小限度を超えるかどうか、この判断をするためには防衛庁の統合長期防衛見積もり、統合中期防衛見積もり、中期能力見積もり、これを見なければ判断できないと思うんですけれども、総理はこれらの統幕の見積もりについて説明を詳細に受けた上であの決定をされたわけですか。
#128
○国務大臣(中曽根康弘君) 中期防衛力整備計画をつくるときには、たしか夏であったと思いますが、たしか八回近く、少なくとも五回以上ぐらいの国防会議懇談会あるいは会議を開いて、能力及び客観情勢等々に関する説明を受けました。その結果、これで妥当であるという線で決着したのであります。
#129
○野田哲君 これは、そうすると閣議の席で全員が説明を受けたわけですか。あるいはその前の国防会議でも全員が説明を受けたわけですか。
#130
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、国防会議あるいは国防会議議員懇談会等で説明を受けたわけで、閣議は、それらの国防会議の構成員等は説明を受けた内容を是認した、もちろん閣議のときにも大体の計画の概要についての説明はあったわけであります。
#131
○野田哲君 私は、どうも防衛のもろもろの計画、方針が国防会議や閣議を素通りしている、あるいはうのみにしている、こういう懸念がされてならないんです。その一つが、先ほど矢田部委員も指摘をした、その前に峯山委員も指摘をした、私も暫定予算審議のときに指摘をしたわけですが、先ほど後藤田外務大臣臨時代理がいろいろ説明をされたわけですが、今、日本の防衛政策の中で大きな比重を占めているあのガイドライン、閣議でいかにもちゃんとやった、こういうふうに説明をされましたけれども、昭和五十三年の「閣議及び事務次官等会議付議事項の件名等目録 内閣官房内閣参事官室」、この一覧表があるわけです。これは私は図書館でちゃんと調べたわけです。この中にあのガイドラインの決定の経過は一言半句触れられていないです。これがどうして閣議決定をされたものになるんでしょうか。
#132
○国務大臣(後藤田正晴君) これは先ほどお答えをしたとおりでございますが、ガイドラインの性格そのものが外務大臣及び防衛庁長官が処理すべきものであって、政府としての具体的行政措置等を定めるものではないので、閣議書をもって付議する閣議決定あるいは閣議了解としていない、こういうことでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、その内容上日米防衛協力のあり方にわたるものであるということから、シビリアンコントロールの確保という極めて重要な面がございまするので、昭和五十三年の十一月二十八日の閣議で、その席上に資料として配付をし、そして所管大臣から報告、説明があり、各閣僚がそれを異存なしということで認めたわけでございまするので、先ほどお答えいたしましたように、閣議の中のやり方についていろんな方法がある、こう申し上げましたその一つの方法をとっておるわけでございますから、おっしゃるように、閣議抜き云々でこういう重要なことを決めたというわけではございません。
 この点はひとつぜひ理解をしておいていただきたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、峯山さんなりあなたなり先ほどの矢田部さんなりのような御意見もあろうかと思います。事柄の重要性というようなことを考えますれば、やはり私どもとしても検討、勉強はこれはしなければならぬ課題であるなということは、率直に私はお答えをしておきたいと思います。しかし、あのやり方が違反である、閣議抜きに重要なことを決めておるということは甚だもってけしからぬ、こう
いうことであるならば、それは従来のやり方から見てそういうことではありませんということをお答えいたしておきたい、こう思います。
#133
○野田哲君 幾ら力んでもだめなんです。この目録に詳細に件名が書いてあるわけです。そして、閣議決定を要するものは決定、了解は了解、報告は報告、こういう形でちゃんと扱い別に説明されているんですよ。その中にないんですよ。これはないんです。結局事実はどうなんだといろいろ調べてみると、文書を閣議の席で配っただけで何の発言もされてない、こういうことらしいんです。こんなことで、ガイドラインが麗々しく毎年毎年防衛白書に一項を起こして――章ですよ。そして、昭和五十三年何月何日閣議において報告され決定をされた、こうなってるわけです。こんな扱いで一体いいんでしょうかこれ、栗原さん。
#134
○国務大臣(栗原祐幸君) 私はそのときの責任者でございませんので状況をつまびらかにしませんが、ただ、要するに、このガイドラインというものは、私は防衛庁長官の責任でちゃんと実施をしていくということだろうと思う、本質は。そういうものです。それを閣議にかけなきゃならぬとかなんとかというものじゃないと思いますよ、これは。だから、ある意味で、閣議に報告するとかなんとかというのはシビリアンコントロールの質を高めるという意味合いでやったんだと思います。指針そのものは防衛庁長官の責任でやるべきだ。作戦計画等の問題でございますから、行政措置を伴わないものでございますから、これは当然だろうと思います。ですから、その点につきまして、これが何か防衛白書に書いてあることと実態的に違っているじゃないか、それなるがゆえにガイドラインそのものの有効性がなくなるというようなものではないと思います。
#135
○野田哲君 五十四年以降の毎年の防衛白書にはこう書いてあるんですよ。「昭和五十三年十一月、「日米防衛協力のための指針」が、第十七回日米安全保障協議委員会で了承され、ついで国防会議及び閣議に報告され、了承された。」と。これからずっと八年間こういうふうに、閣議で報告され了承されてこうなっているんです、こういうことで一項でずっと報告されているわけです。それに基づいてシーレーン防衛が出てきているわけじゃないですか。そして、中期防衛力整備計画ができているんじゃないですか。それを、閣議にかける必要がないものだ、こう言うんじゃ、ここに書いてあることとまた違うじゃないですか。どうですか。
#136
○国務大臣(栗原祐幸君) 私の申し上げているのは、このガイドラインというのは防衛庁長官の責任でやるべきものだ、これはもう本質的なものです。ただ、それをどのように取り扱うかというのは、いろいろの今までの形式があってやった。官房長官からも話があったとおり、閣議決定とか閣議了解とかいろいろある。閣議報告というものもある。私はそのときの状況はよくわからないけれども、私が現在の閣僚とした場合、報告事項という場合に、いわゆるこういうことをやりますよと言ってそして報告をするということはあるわけです、これは。ですから、閣議の内容そのものをよく精査して、これは手続上間違いがないということを官房長官は言っているんじゃないか、こう思うわけであります。
#137
○野田哲君 後藤田官房長官は、閣議にはちゃんとかけております、こういう説明をされたわけだ、書類がないだけだと。栗原さんは、こんなものほかける必要はないことなんですと。それじゃちょっと違うんじゃないですか、お二人の話が。統一した見解を出してくださいよ、これは。
#138
○国務大臣(栗原祐幸君) かける必要がないというのはいささか言葉が過ぎたと思いますけれども、かけた方がいいと思いますよ、これは。かけなければならないという性格のものかどうかということになりますと、これは防衛庁長官の責任でやるんだ、そこに重点を置いて、その上でシビリアンコントロール上どうするかということからそのときには報告をしたのではないか、こう思います。
#139
○野田哲君 閣議に報告され決定をされて、それでそれから後のことは防衛庁長官でやれ、こう言われた、こう書いてあるわけだ。こうなっているんです。ちょっと違いますよ、これは。
#140
○政府委員(藤井宏昭君) ただいま後藤田官房長官・外務大臣臨時代理からも御説明がありましたように、本来この案件は、ガイドラインと申しますものは、一般的な日米の研究のための大まかな研究作業などのガイドラインということで、指針ということでございまして、具体的な行政措置を定めるというものではございませんので、防衛庁長官あるいは外務大臣、特に防衛庁長官の権限の範囲内で行えるということでございますけれども、事の性格、シビリアンコントロールというような見地から、五十三年に「閣議に報告され、了承された。」、これが先ほど委員もお読み上げになりました防衛白書の文章でございますけれども、決定という言葉は使っておりません。閣議に報告され、了承されたということでございます。
 その意味は、先ほど官房長官・外務大臣臨時代理がお答え申し上げましたように、閣議の正式な書式といたしましては、私の範囲外でございますけれども、三つあると。一つは閣議決定、もう一つは閣議了解、それからもう一つが閣議への報告というのがございますが、そのいずれの手続もとらなかったわけでございますけれども、それ以外にも、現実に資料を配付いたしまして、そこで防衛庁長官及び外務大臣から口頭でガイドラインの説明を行ったということでございます。
 先ほど、発言がなかったんじゃないかという御指摘がございますけれども、やはり外務大臣及び防衛庁長官は閣議の席上で発言をしていらっしゃいまして、その際、これはまた防衛白書にも書いてございますように、防衛庁長官はその内容の説明が終わったところで、「この指針に基づき自衛隊が米軍との間で実施することが予定されている共同作戦計画の研究その他の作業については、防衛庁長官が責任をもって当たることとしたい。」ということで、さらにそういう意味での発言をなさっております。
 さらに、その報告し了承されたという意味には、報告を閣議で資料を配付の上口頭で行いそれに対して特に異議がないということで了承をされたと、こういうことでございます。
#141
○野田哲君 このガイドラインが決定をされた翌年の防衛白書では、こういうふうに書いているんですよ。「国防会議及び閣議に報告され、了承された。」と。そして、「これは、日米安全保障体制を基調として自国の平和と安全を維持することを国防の基本方針としているわが国にとって、極めて重要な意義を有するものである。」と。極めて重要なことなんだと、こう書いているんですよ。それで、白書ではずっと今日まで一貫して、何月何日の閣議で報告し了承されたものであると、こう言うんです。ところが、いろいろ調べてみると、政府はまず、我が党の志苫委員の質問に対して、ガイドラインについては閣議書はありません、こう答えているわけです。そして、何回かここで議論になったわけです。私、図書館で資料を調べてみると、この目録の中にないんですよ、これは。これでは幾ら後藤田さんがここで、閣議で報告し了承された極めて重要な事柄であると力説されても、これになければ説明はつきませんよ、これは。
 いろいろ今、官房長官と防衛庁長官、政府委員、説明がありましたが、それぞれニュアンスが違うわけですから、これはひとつ総括質問が終わるまでに、政府としてこの扱い、見解について統一的な見解を示してもらいたいと思うんです。委員長、いかがでしょうか。
#142
○委員長(桧垣徳太郎君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#143
○委員長(桧垣徳太郎君) 速記を起こして。
 ただいまの政府側の答弁に関しましては、理事会で協議の結果、政府の統一見解を総予算審議中に明示されることを求めておきます。
#144
○野田哲君 中身について具体的な点を何点か聞きたいと思うんですが、先ほど矢田部委員の質問の中でも若干の説明がありましたが、中期防衛力整備計画について、その中で、OTHレーダーに
ついて別途検討の上必要な措置を講ずる、こうなっているわけですが、現在どのような検討が行われているのか、配備の予定時期はいつなのか、そして必要額はどのくらいの金額なのか、それから十八兆四千億円の中での金額の扱い、これらについて説明をいただきたい、
#145
○政府委員(西廣整輝君) OTHレーダーにつきましては、ただいま先生お尋ねのように、中期防衛力整備計画の中におきまして、その有用性等を検討して所要の措置を講ずると書いてございますが、有用性につきまして、現在、米側から提供された資料等を通じては、我が国のもろもろの情報の入手あるいは本土防空、洋上防空等について有用ではなかろうかという考え方に立っております。
 ただ、実際に米側が言うがごとき性能がそのままあるのか、さらに、それを整備した場合に電波の干渉等が起きないかどうか、そういったような点につきましては、実は我が方が検討の対象にしておりますROTHと申しますのは、現在米側でも開発中、実用実験中でございますので、そういった実用実験等の成果も私どもは十分調べた上で、なお慎重に検討して採否を決めたいということで、実は現在御審議いただいております六十二年度予算におきまして、米側に調査のグループを出しまして、現在実用実験中のOTHレーダーについての性能なりあるいはもろもろの諸元というものを入手のための調査を行いたいというふうに考えております。したがいまして、いつの時点でこれを整備するかとか、そういった点についてはまだ未定でございます。
 なお、中期計画における経費面では三百五十億円というものが、先ほど矢田部委員にお答え申し上げましたけれども、もろもろの調査及び用地の取得、造成等の経費として三百五十億円が計上されております。
#146
○野田哲君 その程度のまだ漢としたものであるのに、なぜ鹿児島県の馬毛島へ、平和相互銀行の関連のじゃないんですよ、あれではなくて、防衛施設庁が具体的に地方自治体を通じて用地の取得などについて工作をしているんですか。
#147
○政府委員(西廣整輝君) あるいは施設庁からお答えがあるかと思いますが、私どもとしては、馬毛島等に用地取得の要請をしたことは全くございませんので、そのような事実はないというふうに考えております。事実、馬毛島等に私どもは調査に行ったこともございません。
#148
○野田哲君 あなたがないとおっしゃるならそれで結構ですがね。
 もう一つOTHレーダーで聞きたいのは、もしこれを設置するということになるとアメリカ側から共国運用の条件がつくんじゃないか、こういう懸念があるわけですが、この点はいかがですか。
#149
○政府委員(西廣整輝君) 先ほどお答え申し上げたように、まだ採否も決めておりませんので運用についてまで詰まった考え方を持っておるわけではございませんが、いずれにしましても、我が防衛費で防衛庁、自衛隊としてこれを整備するということになりますれば、これは自主的に我が方が運用できる体制というものを前提として考えております。
#150
○野田哲君 これはもう長官、はっきりと答えていただきたいんですが、共国運用の計画はない、こういうことで明言できますか。
#151
○国務大臣(栗原祐幸君) 自主的に運用をいたします。
#152
○野田哲君 今の実質的運用というのはどういうことですか。
#153
○国務大臣(栗原祐幸君) 我が国の自主的な判断でやります。
#154
○野田哲君 「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する研究を推進する。」、こういうふうになっておりますが、これはどういう検討がされておりますか。
#155
○政府委員(西廣整輝君) 空中給油機につきましては、空中警戒待機をする航空機の時間が延伸できるとかそういったことで、近代化されつつあります航空技術の進歩による低高度侵入あるいは高高度の高速侵入機に対応できるとか、もろもろの利点があろうかと思います。そういう点で我々としても空中給油機についての研究はしなくちゃいけないということで、中期防衛力整備計画におきます閣議決定でもこの研究をするということになっておりますが、現在のところまだ空中給油機の研究についてまで研究は進んでおりません。ただ、一方、防衛庁の中で現在洋上防空機能とかそういった一般の防空面の研究をいたしておりますので、その中であるいは今後空中給油機についての研究に進んでいくこともあり得るかもしれませんが、現在のところまだ何もいたしておりません。
#156
○野田哲君 この空中給油機の検討ということは、当委員会で田中角榮内閣総理大臣が、空中給油機は採用いたしません、これは明言されておりますが、それとの関係はどうなるんですか。
#157
○政府委員(西廣整輝君) 空中給油につきましては、その後政府といたしまして、将来における空中給油機の保有の可能性は否定をしない、田中内閣におきまして言いましたのは現状においてはそれを持つ気持ちはないということで、将来について、軍事技術の進歩等があった場合の将来における空中給油機の保有についてまで否定したものではないということで、過去数度お答え申し上げておると思います。
#158
○野田哲君 今の中期防衛力整備計画の中心になっている洋上防空体制、これが中心になっていると思うんですが、この洋上防空体制の行動範囲というのはどのぐらいの広さを予定されているわけですか。
#159
○政府委員(西廣整輝君) 洋上防空には幾つかの種類がございますが、ただいま先生御質問の件は遠く洋上離れたところにおける防空体制ということだと思いますので、これらはいずれも海上交通の保護に関連した防空ということになりますので、船舶の護衛なり哨戒といった行動の中の一環としての防空ということになろうかと思います。ということになりますと、従来申し上げておりますように、海上交通保護についての防衛力整備の枠組みとしては周辺数百海里、航路帯を設けた場合には一千海里というものを前提として防衛力整備をいたしておりますので、それが一つの枠組みになろうと思います。
 それから、もしお尋ねがオペレーション、運用の面ということになりますと、運用は状況により千差万別であろうかと思いますけれども、いずれにしましても、整備の対象としておりますのが今申したように周辺数百海里、航路帯を設ける場合一千海里ということで防衛力整備がなされておりますので、おのずからその能力の範囲内で行うということになろうかと存じます。
#160
○野田哲君 大綱は「防衛の態勢」について具体的に次のように示しているわけです。「警戒のための態勢 わが国の領域及びその周辺海空域」、こういうふうに示しているわけです。OTHレーダーは三千キロなんですよ。我が国の領域及びその周辺海空域の警戒監視、情報収集、これが実施し得る態勢だ、こう言っているんですけれども、三千キロ先までやれとは大綱には書かれていない。海上自衛隊は「海上における侵略等の事態に対応し得るよう」、それから「沿岸海域の警戒及び防備を目的とする」云々、それから「必要とする場合に、重要港湾、主要海峡等の警戒、防備」「周辺海域の監視哨戒及び海上護衛」、こういうふうになっているわけです。航空自衛隊は「わが国周辺のほぼ全空域を常続的に警戒監視できる航空警戒管制部隊」を有する、周辺のほぼ全域の空域、これが示されているわけです。
 そして、長官、大綱を決めたときの防衛白書ではちゃんと図面まで防衛白書につけて説明されているんです。(図を示す)これがレーダーの空域なんです。それから、これが海上の示した区域なんです。今、中期防衛力整備計画で検討されているものはこれを明らかにはみ出しているじゃないですか、予定としては。大綱を超えている中期防衛力整備計画、こういうことになっているじゃないですか。いかがですか、これ。
#161
○国務大臣(栗原祐幸君) 私も大綱を何度も見たんです。結局、いわゆる作戦機能というものにつきましては、大綱では、防衛に必要な各種の機能を備え、後方支援を含めて組織、配備に均衡をとるということになっているんですね。それと別表というものがある。それで限定かつ小規模という一つの大きな制約がある。その中で作戦行動を、作戦計画を立てる、これが一緒でなきゃならぬ。というのは、例えば潜水艦に対する対潜機能あるいは戦車に対する対戦車機能あるいは防空機能、そういうようなもの、それはもう機能としてそういうものをしなけりゃ意味をなさぬわけでございまして、それと同じではないかと。
 あとの問題につきましては政府委員の方から説明をさせます。
#162
○政府委員(西廣整輝君) ただいま防衛庁長官からお答え申し上げたように、洋上防空というのは防空という作戦機能の一つの態様であろうと思います。
 防空機能について申し上げれば、国土全般の防空を担任する航空自衛隊ばかりでなく、陸海の部隊につきましても、自分の部隊を守る、あるいは自分が守っておるその拠点地域を守る、あるいは護衛している船舶等を守るというようなことで、それぞれの陸海空の部隊の不可欠な機能であるというふうに私どもは考えております。したがいまして、例えば艦艇部隊について申しましても、随分古い時期から対空火器であるとかあるいは対空ミサイルの装備といった形で洋上における防空機能というものが維持されてきておるわけでございます。
 近時、洋上における防空機能というものが特に問題になりましたのは、二つの理由があろうかと思います。一つは、非常にスピードのある航続距離の長い飛行機というものが出現して、数多く出てきたということが一つでございます。もう一つは、航空機から発射する対地ミサイルあるいは対艦ミサイル、そういったミサイルの射程が非常に長いものが出てきて、これが多用されるようになったということだろうと思います。
 そういったような状況、軍事技術の進歩というものに対応して国土防空をどうやってより従来のように万全なものにしていくか、あるいは船団等を攻撃する航空機からいかにして船団を守るかというために、従来のままの装備で果たしていけるだろうか、何らかより効率的な装備はないだろうかというのが洋上防空について最近研究されている主たる課題になっておるわけでございます。
#163
○政府委員(平晃君) 先ほど委員から御質問のありました、防衛施設庁で馬毛島の調査をしているのではないかというお尋ねでございますが、そのような調査はしておりませんのでお答えいたします。
#164
○野田哲君 ほかの島にもやってないね、鹿児島県の。
#165
○政府委員(平晃君) OTHについてはしておりません。
#166
○野田哲君 総理ね、防衛計画の大綱が決定をされてそしてその翌年出された防衛白書では、私が示した図面をつけて防衛白書で説明したわけですよ、図面をつけて。それがこの大きくしたこれなんです。そして、レーダーの監視する区域はこの範囲ですよと、こういうことで説明したわけです。それから、海上自衛隊の行動範囲はこの範囲ですよと、こういうことでちゃんと説明してあるわけなんです。ところが、この図面をつけたことがその後で防衛庁の部内で大問題になって、図面をつけなことは後でまた大変なことになるよということで、五十三年の防衛白書からは図面が一切つけられなくなったんですよ。しかし一遍つけたんですから、これを越えることはできないはずじゃないですか、防衛大綱を守るというんだったら。総理、いかがですか、これ。
#167
○国務大臣(中曽根康弘君) 大綱のときから、先ほど栗原長官がお答えしましたように、海上警備活動という関係において周辺数百海里、それから航路帯を設けるときは千海里云々と、そういうことはあのころから言われておりまして、そういう意味において、最近の情勢を見ますとミサイルの距離が非常に長く延びてきた、あるいはそのほか、兵器技術の進歩によりまして重爆撃機の航続距離が非常にまた延びてきた。そういうことになりますというと、やはり船団護衛というような問題につきましても有効性を確保していかなければならない、そういう科学技術上の変化等もあり、そのことはそれに即応できるように防衛計画大綱の文章の中にも変化に対応できるような文章がちゃんとできておるわけでございます。そういうような意味におきまして、今すぐやるという意味ではないけれども、OTHレーダーもエイジス艦もそういう状況変化に即応して検討をする、そういうことで今措置されておるものなのであります。私は、これは大綱の範囲内の行為であると考えております。
#168
○野田哲君 大綱の中では、行動範囲もはっきり文書でも我が国の近海、領海、空域はどうだ、こういうことで示して、そしてそれを素人にもよくわかるように図面をつけているわけなんです。それを今、総理、大綱を守る大綱を守ると言いながら、科学技術の装備の進歩によって行動範囲は変わっていくんだというようなことを言われたのでは、これは大綱を守るということにならないんです。
 時間が参りましたので、最後に総理にもう一つ聞いておきたいと思うんですが、中期防衛力整備計画に組み込まれている、今総理も言われたOTHレーダー、エイジス、空中給油機、そしてF15の百八十七機、P3C百機、こういう装備は、憲法九条で政府の解釈によっても禁じられていると言われる近代戦争遂行能力、あるいは近代戦争を遂行するに足る装備編成、こういう見解があるわけでありますけれども、この近代戦争遂行能力、あるいは近代戦争を遂行するに足る装備編成ではない、こういうふうに否定されるわけですか、いかがですか。
#169
○国務大臣(中曽根康弘君) あくまでこれは防衛目的、日本の本土防衛を目的とする装備であると考えます。
 あのころからずっと言われておりますように、他国に対して侵略的脅威を与えるような、他国に対して壊滅的打撃を与えるような攻撃的兵器は持ってはならない、そういう意味において航空母艦であるとかあるいは長距離ミサイルであるとか、そういうようなものは持たないとはっきり我々は言明しておるところでありまして、OTHレーダーにしてもこれは防御目的であります。あるいは今の空中給油機にいたしましても、これは例えば戦闘機の迎撃能力を増進する。F15にしても、一たん舞い上がって油がなくなってきて着陸してまた飛び立つというのを、空中給油によって給油しておけばそのまま滞空ができる。したがってそれは、何機F15をふやすに値するぐらいの能率が出てくるわけであります。そういう意味の防衛目的等々を考えて行われておるものであり、エイジス艦にいたしましても船自体を守る、そういう意味において攻撃性を別に持っておるわけではございません。そういう観点から、これは大綱の範囲内の装備であると考えております。
#170
○国務大臣(栗原祐幸君) 総理の御答弁のとおりでございますが、我が国はいわゆる限定かつ小規模の侵略に対応する、そのために必要最小限度の防衛力を整備する、そういう観点から出ている。ただ、いろいろのものが整備されますのは、先ほど来申しているとおり、軍事技術の問題とかあるいは周辺諸国の環境等がございますから、それに応じて整備するのは私は当然だと思います。
 それからもう一つ、先ほどのいわゆる総額明示方式、これはもう歯どめがないじゃないかというお話でございましたが、この点はもう一回明確に申し上げます。十八兆四千億という、これはもう明確な歯どめだと思います。ただ、昭和六十五年度はどうなるんだというのに対しまして、防衛局長は六十五年度のやつはそのときに組んでみなければわからない、こういう意味の話なんです。それは六十四年度も六十三年度も同じなんである、計画そのもの、総額明示方式そのもので十八兆四
千億がきっかりした歯どめである、このことを申し添えておきます。
#171
○野田哲君 総理、私が聞いたのは、攻撃のためなのか防御のためなのかということで聞いたんじゃないんです。自衛隊が発足のときに、政府の憲法解釈として、戦力とは何かといえば、憲法九条の戦力とは近代戦争遂行能力なんだ、こういう見解が政府の方から出ているので、今のもろもろの私が指摘したような装備はこれは近代戦争遂行能力を持つことになるじゃないですか、いかがですかと、こう聞いたんです。
#172
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほど法制局長官が説明しましたように、政府は必要最小限の防衛力、しかもそれは限定小規模、非核攻撃というものを前提にした必要最小限の防衛力を持つ、自衛権の範囲内で行う、そういうしっかりとした歯どめを持っておるのでありまして、それに値する防衛力、装備力というものを考え、その範囲内であると考えておるわけであります。
#173
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で野田哲君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 午後一時から再開することとし、休憩いたします。
   午後零時一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#174
○委員長(桧垣徳太郎君) 予算委員会を再開いたします。
 昭和六十二年度総予算三案を一括して議題といたします。
 これより中西珠子君の質疑を行います。中西君。
#175
○中西珠子君 総理は日米経済摩擦が非常に激化しているさなかに米国を公式訪問されまして、大変御苦労さまでございました。
 総理が訪米中に、日本をねらい撃ちしているという評判のございますゲッパート条項を含むオムニバス・トレード・ビル、包括貿易法案ですね、これが米国の下院で可決を見たということでございますが、総理は御自身の訪米の成果をどのように評価していらっしゃいますでしょうか、お伺いいたします。
#176
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本の貿易黒字が巨大になり、特に対米黒字が改善されない、またアメリカ側におきましては、日本の市場が閉鎖されている、そういう議論が非常に強うございまして、今度の貿易法案につきましても、心の中には日本が一つの対象に描かれておる、そういう情勢であったと言われておりました。したがいまして、我々が今まで努力してきたこと、それからこれから努力すること、これをはっきりさせまして、またアメリカが責任を負わなければならないこと、これも明らかにはっきり言いまして、そしてお互いのもやを解いて、そして新しい希望をよみがえらせて問題決着に向かって努力を続ける、そういう訪米にしたいと思いまして努力をしてきたつもりでございますが、必ずしも御満足を得ない結果になりまして恐縮に存じております。
#177
○中西珠子君 アメリカ側が努力しなければならない部分も言ったとおっしゃいますけれども、アメリカ側は、みずからの主体的努力に関する部分では為替安定だとか、財政赤字の削減だとか、競争力の強化などということに関しましては全く抽象的な表現で日米共同発表をしておりますが、日本側は非常に細部にまで立ち入って貿易不均衡の打開策として対米公約を羅列したような感じを受けております。
 すなわち、短期金利の低目の誘導とか、予算の裏づけや国会の審議もないままで五兆円を上回る財政支出によって景気を刺激し内需振興を約束したなどというほかには、金融市場の自由化の推進だとか原料炭の輸入、関西新空港の入札、第二KDD問題などもお話し合いになられたらしいですが、日本側の対米公約のうちで農産物の自由化問題については、ウルグアイ・ラウンドにおける話し合いの対象とするということで留意したとのみ発表されておりますけれども、これを契機に、現在開かれておりますOECDの閣僚会議や来月のベネチア・サミットで日本の農業保護政策のあり方や市場開放問題をめぐる論議がますます高まってきて、日本が国際舞台で苦境に立たされるのではないかとの懸念が高まっておりますが、総理はどのようなお考えでいらっしゃいますか、お聞かせいただきたいと思います。
#178
○国務大臣(中曽根康弘君) 農業問題は各国がみんな今困っておる問題であります。特に世界的に農産物が過剰ぎみになってきまして、インドネシアにしてもあるいは中国にしてもインドにしても、食糧不足国がむしろ食糧を増産性向に導いたという結果も出てまいりまして、そしてヨーロッパとアメリカ等との間では輸出補助金あるいは可変課徴金というような制度まで設けて輸出競争が激甚に行われておる。それに対して、そういう補助金を与えていないオーストラリアあるいはアルゼンチン等の国々が非常にこれに対して文句を言う。日本は輸出はしておりませんが、国内的にはほぼかなりやっておるところで、これは国会決議等もありまして、また農村というものの社会的重要性を考えて我々はやってきたわけでございますが、外国に対して我々は攻勢的な障害は与えていないけれども輸入について我々はブロックしておる、そういう非難は受けておるわけです。
 そういうような各国おのおの条件がございますが、その中にやはり農業の特殊性という点はみんな認識しておるわけであります。そういう農業の特殊性をお互いに尊重し合いながら、各国が持っておる政策というものを、おのおのの理由あるいは独自性というものをまた理解を示しつつ、しかも世界的協調を図ってそして合理化していく、そういうようなことがこれからの課題であり、たしかきょうあたりからOECDの閣僚会議が始まったと思っております。
#179
○中西珠子君 日本の農産物の自由化問題につきましては、日本が食糧の自給度が非常に低いということをお考えいただいて慎重に対処していただきたいと思います。
 それから日米経済摩擦の象徴とも言えます半導体問題でございますが、これにつきましては、制裁措置の可及的速やかな解除が可能となることを希望していると、レーガン大統領は全く時期を明示せずに玉虫色の表現を発表の中でしているわけでございますが、対日報復措置の撤回の見通しについて総理にお伺いしたいと思います。
#180
○国務大臣(中曽根康弘君) この点については声明の中で、ベニス・サミットもある折からというような表現がありまして、そして条件が整い次第可及的速やかにこれを撤回する、そういう条件つきの意思表示が行われておりまして、我々は三月あるいは四月等の実績等を考えますと、これは必ずいい結果が出ているはずでありまして、これは撤回されるであろうと確信を持っており、また期待しておる次第であります。
#181
○中西珠子君 日米問題の非常に大きな象徴的な焦点となっておりますこの半導体問題が、ベネチア・サミットの前に制裁措置が撤回されることを強く要望いたします。引き続き御努力願うようにお願い申し上げます。
 また、日米共同発表の中で、米政府がこれ以上のドル安は逆効果になるとして、為替レート安定促進のために引き続き緊密に協力することを再確認したとありますが、円ドル為替レートの安定の具体策と見通しについて総理と大蔵大臣にお伺いいたします。
#182
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびのレーガン大統領・中曽根総理大臣の共同発表の中で、確かに今中西委員が言われましたように、これ以上ドルが下落することはアメリカ自身の経済にとって、またアンバランスの是正にとってよくないということを大統領自身が自分でそう認められたというところに私は意義があると思います。
 この発表以来、従来必ずしもそう言っていなかった人々あるいはそう考えていなかったと思われるアメリカの有力者が、この大統領の発言と同じように見解をやや改めておると申しますか、そういう傾向が幾つか見えますことは、この問題につ
いてのアメリカのいわば朝野の認識が固まってきたことを示すのではないかと思います。そういうことは、今後、ここに述べられておりますような米国の政策努力、一つは財政赤字の削減でございますが、もう一つは国際競争力の向上、これは貿易赤字のことを言っておると思います。そういう政策努力がさらに強められるであろうということを期待できるかと思います。
 そこで、そのようないわゆる政策協調並びに時に応じましての乱高下の場合の共同介入でございますが、これは従来からもいたしておりますが、そういうことの中でここまでドルが下がりましたので、やがてアメリカの貿易収支も改善の兆しを見せるのではないかということを半ば期待しつつ、とにかくただいまの円の水準はここで安定いたしましても我が国にとりましては非常に厳しいものでございますので、アメリカの貿易収支の改善を期待しておるところでございます。
#183
○国務大臣(中曽根康弘君) 今大蔵大臣がおっしゃったとおりでありまして、アメリカの大統領自体が、今のようなドル安というもの自体がアメリカ経済、日本経済の成長に害がある、それから貿易の不均衡是正のためにも障害になる、そういう明確な意思表示をして、そして両者でこれ以上の下落を防止しよう、そういう決意の表明を政治的に行ったということはこれは初めてでありまして、我々はこれをぜひとも実現していかなければならぬと、そう思っております。
#184
○中西珠子君 これはぜひ実現していただきたい問題でございまして、為替レートが安定しませんで円高にどんどん推移いたしますと本当に倒産もふえますし、円高デフレというものが解決しないわけでございますから、この点での御努力を倍増していただきたいと思います。
 それから総理はまた米国に対し、新前川リポートに基づく内需拡大、経済構造調整の実施を公約されましたけれども、経済構造の調整は口で言うことは大変易しいけれども、大変な痛みを生ずるものだと考えます。新前川リポートでは、「構造調整過程における内需拡大は、単に量的な需要拡大にとどまってはならない。」「国民生活の質の画期的な向上を目指すものでなければならない。」と言っております。GNPや対外純債権ではかられている日本の豊かさというものは、国民生活の実感としては全然結びついていません。国民生活が豊かになったという感じを持っている人は多くないのではないか。もちろん戦前に比べますと生活水準は上がりましたけれども、とにかく世界のGNPの一割国家とか、対外純債権が世界一多い、本当に金持ちの国だと言われておりましても、国民生活にはこれが結びついていない。それから、国民生活はいろんなまだまだ居住水準が低いとか質的な向上を図らねばならない面がたくさんございますが、総理はどのような具体策をおとりになって内需の拡大が国民生活の質的向上に結びつくようになさるのか、具体策をお示し願いたいと思います。
#185
○国務大臣(中曽根康弘君) この点は、自由民主党はさきに、四月の初句に方針を決め、また四月の下旬、私が訪米する前にその要綱を決めまして、そしてその内容を盛ったものを発表いたしました。それを私受けまして、予算が成立したらという条件つきでこれこれのものをやる用意がある、そういう意思表示をしてきたところでございます。
 やはり、社会資本の充実あるいは公共事業費の拡充、そういうものを通じまして質の向上へ持っていく、そして輸出に使っているエネルギーを内需の方向に転換さして、そして失業も防止し不況も防止していく、そういう考えに立った政策を充実さしていきたいと考えております。
#186
○中西珠子君 内需拡大は、何が何でも間に合わせ的にお金を出して公共事業さえやればよいという印象を政府は与えていらっしゃるわけなんですが、二十一世紀に向かって国民に本当に夢を与え、国民生活が豊かさを加えていくような、そういった政策をとっていただきたいし、また、社会資本の充実は今おっしゃったとおりでございますが、下水道などの普及率は非常におくれておりますし、そういった生活環境をよくしていく新しい都市づくりや、また均衡のある国土の発展というふうなビジョンを持って計画的に国民生活の質的向上を図る内需の拡大、構造調整というものをやっていただきたいと思います。
 総理はまた訪米中に、今後三年間に新たに二百億ドル以上の完全にアンタイドの資金を累積債務で苦しんでいる諸国を中心とする開発途上国に還流すると約束されました。これは、さきに表明された資金と合わせると合計三百億ドル以上になりますけれども、これは具体的にどのような方法をおとりになって実現なさるおつもりですか。
#187
○国務大臣(宮澤喜一君) まず、二百億ドルについてでございますが、そのうち八十億ドル程度は、世銀、それから地域銀行、アジア開銀でありますとか米州開銀等でございますが、それに対する出資並びにそれらの銀行が発行いたします債券の消化についての民間資金による協力等々が八十億ドル程度見込まれます。それから我が国の海外経済協力基金、それから輸出入銀行あるいは民間銀行等が世界銀行などと協調融資をいたしまして、発展途上国に対して基金が追加的な借款をいたしますのに協力をするという分を九十億ドルほど考えております。なお、輸銀自身が自分だけの責任におきまして開発途上国への直接融資、アンタイドでございますが、これらを三十億ドル程度見込むことができると思いますので、都合三年間、大体二百億ドルというふうに考えております。
#188
○中西珠子君 総理はさらに、七カ年で政府開発援助額を倍増するという第三次ODA倍増計画の目標達成を二年繰り上げて実施するということもお約束になりました。また、アフリカ諸国などの後発開発途上国に対して積極的な支援を行うということもお約束になっておりますが、ことし一月のDACの対日審査でも、アジア諸国への援助の比重が高い日本のODAをもっとアフリカにも向けるように、また、後発開発途上国に重点を置くようにということが要望されているところから見ましても、これは大変結構なことだと思います。しかし、日本の援助は要請主義に基づいているということでございますので、アフリカや後発開発途上国からたくさんな援助の要請が来ているのでございましょうね。この点が一つお伺いしたいことでございます。
 これはまた、私の最近の経験からお伺いするのでございますが、私はIPU、列国議会同盟ですか、これの会議に出席するためにニカラグアに行ってまいりまして、最近帰ってきたばかりでまだ頭がぼやっとしているんでございますけれども、ニカラグアで外務大臣や駐日ニカラグア大使に会いました。それで、日本はとにかく援助は要請主義に基づいているというので、二年前にニカラグアが日本に対して人道主義的な援助、主として医薬品の援助を要請したそうです。それにもかかわらず日本政府からは何の返事も来ていない、これはなぜでしょうと言われたわけですね。私は困ってしまいまして、なぜか理由を言うわけにはいかなかったわけでございますけれども、これはアメリカ、殊にレーガン大統領に対する遠慮からでございますか。遠慮からニカラグアに対しては援助要請に対して返事もしないということだったのでございましょうか。
 この二点についてお聞きいたします。
#189
○政府委員(英正道君) 日本の援助は、アジアに位しているということでございますので、アジアに向けているものが多いということは事実でありますし、それも理屈があることと思いますけれども、最近はその他の地域にも援助をふやしていくということで、現在のところ、例えばアフリカなどにつきましては無償資金援助の三〇%が向けられているということでございます。今度の総理の御訪米の際にも、アフリカ諸国を含む後発途上国に対しては特別のさらに措置をとるような努力をしたいという御発言がございました。アフリカ諸国からは、最近非常に経済的な困難、累積債務の問題と、さらにはやはり食糧援助が一部の国で非
常に深刻になっているということで要請がございます。
 加えて、従来アフリカの国は大きなプロジェクトをやるとか、そういう考えがあったんですけれども、最近は、経済全体を立て直す、そのためには相当つらい国内経済政策をとっても実現していきたい、いわゆる構造調整を図っていくということになってまいりまして、世銀、IMF等の国際機関も、そういうアフリカ諸国の動きに対しては積極的に構造調整援助を供与するというようなことで対応してきております。日本にもそういうことで援助の要請が多数来ております。
 それから最後のニカラグアについての援助で、私ちょっと突然の御質問で具体的にそのケースを承知していないのでございますけれども、調べて後刻御連絡させていただきたいと思います。
#190
○中西珠子君 この二年間回答しなかったというニカラグアの援助の問題は、調べたらすぐ報告していただきたいと思います。
 第三次ODA倍増計画の二年繰り上げということは大変結構なのでございますが、ODA倍増目標を五カ年で達成して、そしてODA総額を五カ年で四百億ドル以上にするということになるのだと思いますけれども、これは国民の血税で賄われる資金でございます。ODA資金の使途を国民の前に明らかにして、ガラス張りの中で行われるODAにしていただきたいという要望が国民の中でも高まっておりまして、最近は市民団体でもODAを問い直そうという動きが出ているわけでございますが、ガラス張りの中で行われるODAにすることが望ましいという点につきまして、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
#191
○政府委員(英正道君) 先般総理の御訪米の際に、中期ODAの増強の計画のうちの最終年度の一九九二年に七十六億ドルの実績を達成するという計画を二年早く九〇年に達成するように努力をしたいということをおっしゃられ、私どももできる限りそういう方向で努力をしていきたいと思っておるわけでございます。
 それからいわゆる情報公開の点でございますけれども、政府開発援助の拡充は日本が国際的に取り組まなければいけない重要な責務でございます。そういうことで従来から拡充をしているわけでございますが、やはりそういう努力を国民の広範な御支持、御理解のもとに進めていくということが一番望ましいわけでございまして、そういう意味で、援助に関する情報の公開につきましては従来からも努力をしているところではございますけれども、今後とも、そういう必要にかんがみ、ますます可能な限り公開に努めていくというふうに努めたいと思います。
#192
○中西珠子君 ODAに関しまして、資料の提供とか評価報告書の公開とか、それから情報の公開という抽象的な表現で申しますと、そういった面が非常に欠けているわけですね。国民の理解があって、国民の支援があって初めてODAは立派にやっていけるのであるし、また資金が国民の血税であります。また、財政投融資というものは国民の年金積立金だとかそういったものから、また郵便貯金の中から使われているわけでございますから、概して国民の血税と言っていいと思うのでございますが、そういった面で、何がどのように使われているのか、果たして開発途上国の草の根の人々にそれが役立っているのかどうかということに非常に国民としては疑念を持っているわけでございますね。ですから、このODAに関する情報の公開ということはあくまで原則として貫いていただきたいと思うわけでございますが、総理、いかがでございますか。
#193
○国務大臣(後藤田正晴君) 外務大臣の代理としてお答えを申し上げます。
 中西さんがおっしゃいますように、これだけの経済的に大きな国になった以上は、やはり開発途上国の民生の向上という意味合いがち、私はできるだけこういった援助はしなきゃならぬと思いますが、それはおっしゃるように確かに国民の勤労の結晶の結果であることは間違いありません。ならば、どういうような国に対してどのような理由で何を対象にして援助をし、そしてそれがどのような効果を上げておるのかといったようなことは、私は、それはやっぱり納税者である国民の皆さんにできる限りは公開すべきが筋道であろう、その努力はさせていただきたいと思うんです。
 ただ、一つ申し上げておきたいことは、相手の国の中でどのように使われたのかなといったようなことになると、相手方の国の内政との関係、内政干渉になっちゃいけませんから、そこらの点での制約がやはりあるのだということだけはひとつ御理解をしていただきたい。傾向としては努力をすべき筋合いのものであると、かように考えます。
#194
○中西珠子君 総理はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#195
○国務大臣(中曽根康弘君) 後藤田さんが申し上げたとおりであります。
#196
○中西珠子君 相手国の内政干渉になるような情報の公開をしていただきたいと言っているわけではないのでございまして、国民の税金がどのような国でどのような援助の目的に使われたかということについても、まだまだその情報の公開が足りないわけです。
 それで、評価報告書というふうなものもいただきたいといいましてもなかなか入手ができないような状況でございますし、そして、海外援助なんというものをやらなくたっていいじゃないか、この不況の中で我々の困っている産業を助けてくれ、そういうふうな面でお金をもっと使った方がいい、海外援助なんかしなくてもいいんじゃないかという極論さえ今生まれているわけですね。ですから、国民の皆様の間に、やはり開発援助というものは必要なのだ、相互依存性という意味からも人道的な立場がらいってもこれは必要なんだと、また貿易黒字というもので世界じゅうから今日本がたたかれて孤立の状況にあるときに、開発援助をふやしていく、また質的にも向上さしていくことが必要なんだということを国民にわかってもらうためにも、できる限りの情報の公開は必要だと思うんです。それはどうぞお約束いただきたいと思います。
#197
○国務大臣(後藤田正晴君) おっしゃるように、そういった方向での努力はこれはやはり私はすべき事柄であると、こう考えております。
#198
○中西珠子君 日本のODA、開発援助というものが国際的にも国内的にも残念ながら評判が余りよくないわけでございます。日本の援助は日本の貿易の振興のためにだけやっているのじゃないかとか、また日本のODAの費用の大部分、少なくても七〇%と言う人もいますが、そういったものは日本の企業に還流していると、こういう批評をする人もいるわけでございます。日本の有償、無債の開発援助費の中で国内の民間企業に還流されているものがあるとすれば、その割合はどのくらいですか、お伺いします。
#199
○政府委員(英正道君) 日本の経済協力、ODAは、円借款のような有償のもの、それから無償のものとあるわけですが、そういう全体の一般のアンタイ化率、どこからも調達していいという率は八五年で六七・六%、これは主要な援助国の中では非常に高い水準でございます。ちなみにOECDの開発援助委員会、DACの平均では五三・五%ということでございます。
 日本の援助が日本の輸出振興につながっているという意見は欧米で散見いたすわけでございますけれども、政府といなしましては、これは若干事実の認識不足による面があるのじゃないかということで御説明をしておりますけれども、統計で申しますと、日本はそういう意味ではむしろ進んでいるという国でございます。ただ、膨大な経常収支の黒字を抱えているのにもかかわらず、援助資金で日本がさらに輸出が伸びているという点についてはいろいろな注意をしていかなければならないと思いますが、一般的にアンタイドの促進の方向で努力をするということかと存じますが、統計的に申しますと、日本の企業が円借款での受注実績というのは八五年で約六八%でございます。
#200
○中西珠子君 アンタイドの比率が大変ふえてい
るということは大変結構なことでございますが、日本の企業の円借款における資金の還流というものは六八%だそうで、日本のODA費の相当な部分が、殊に借款の相当な部分が日本企業に還流するというふうなあり方が続く限りは、ODAの支出増が貿易の黒字減らしに役立っているという論理が成り立たなくなりますので、この点は大いにアンタイドに向かって努力していただきたいと思います。
 日本のODAの費用が第三世界の国々の経済社会発展に役に立ち、また非常に貧しい住民層の生活向上とか福祉の増進につながるものであってほしいと思います。支配層ばかりを潤すのではなくて、そういった最下層の住民の生活の向上、福祉の増進というものにもつながる援助であってほしいと思いますけれども、日本の援助はとにかく要請主義に基づいていて、被援助国から要請が来て初めて対応するのだから、向こうが非常にシンボリックな近代化のモニュメント的なものを建ててほしいと言ったり、経済インフラストラクチャーを強化してほしいという要請があった場合はそれにこたえるということになっているので、必ずしも民生の安定、福祉の向上というものに役立つ援助ばかりにはならないということをおっしゃっておりますけれども、これはやはり何とか日本の援助の基本理念というものを明らかにしたり、基本原則というものも確立していく必要があるのではないか。
 また、援助予算も十五省庁に分かれておりますね。そして円借款に関しては四省庁体制でありまして、とにかく総合調整という機能が少し足りないのではないかという感じがしているわけです。また、総理や外務大臣が途上国を訪問されたり、途上国の要人が日本にやってきましたときにお土産的に援助をふやすということも多い。行き当たりばったりの感じを持たないわけではないのですけれども、やはり総合調整をやるためには援助行政の一元化というものが必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 この点と、それから日本の援助の基本原則、基本理念を明らかにして、そして総合的に計画を立てて効果的に実施していく必要があるのではないか。そういうことを盛り込んだ援助基本法というものが必要なのではないかと考えておりますが、この点に関しまして総理のお考え、外務大臣、通産大臣、大蔵大臣、経済企画庁長官のお考えを伺いたいと思います。
#201
○国務大臣(宮澤喜一君) 前段に言われました、とかく援助を受ける国の政権がいわば見ばえのする金の使い方をしたいというような傾向は、一九六〇年代、七〇年代にかなりございました。したがって、必ずしも本当に民衆の草の根まで援助が行っていない。むしろ逆に今度は民衆の反感に転ずるといったような例が皆無であったわけではないと思いますが、ただ、それもやはりおのおのの受ける側の結局国民の進歩というのでございましょうか、こちら側から向こうの政権を乗り越えてあれをするこれをするということは、よく中西委員が御承知のようになかなか難しいことでございましたが、大分そういうこともしかし最近は変わってまいったように、地道な援助の受け取り方というのは出てきたように思います。心すべきことだと思います。
 それから援助が各省庁に分かれているということについて、実はこれは私の個人的な感じでございますけれども、私はたまたま外務省、経済企画庁、通産省、大蔵省、四つとも経験をいたしまして思いますことは、なかなかこれを一つにするということは難しい。そして無理にしてもなかなかうまく動かない。ここ十年ぐらいの経験の中から、かなり今各省庁がうまくこういう体制で協調的に動き始めておるというふうに私自身は感じておりますので、この体制を円滑に動かすような努力を続けていく方がいいのではないかということを個人的には考えております。
#202
○中西珠子君 もう一つ、援助基本法についてはいかがお考えですか。
#203
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本法のことも、今のような理念ということはよくわかるわけでございますけれども、法律をつくりますことがどれほどのプラスの意味があるか、ちょっと十分に私判断ができずにおります。
#204
○国務大臣(後藤田正晴君) 今大蔵大臣からお答えなさったとおりだと私も思います。今御質問の中に、一部の政権を担当している者の要請を受けてやるのだから、本当に援助の手を差し伸べなきゃならぬ人のところまで援助が行かぬではないかという批判、私も時々聞きます。しかし、それは今大蔵大臣が、そこらはやはり十分心してやりたいと、こうお述べになりました。私も同じ考え方でございます。
 それから四省庁体制、それから基本法の問題、これはいずれも四省庁の大臣を経歴なさった宮澤さんの経験に基づく御発言なんです。私も文字どおりそう思う。こういうものは形の上だけ整えればうまくいくというものではない。これはやはり仕事の性格にかんがみて、各省庁が本当に協力をし合う、そういう協力体制をどう組んでいくかということに政府としては努力をするのが一番肝心だ。制度の改正は後回してはないのかというのが私の考え方でございます。
#205
○国務大臣(近藤鉄雄君) もう両大臣からお話がございましたように、現在も四省庁体制で施策の総合調整を行っておりますので、これでいいのではないかなと思っておりますし、基本法の問題につきましても、そういうことで今実行されておりますので、特に基本法の制定意思はない。ただ、いろいろ改善することがございましたら、それはまた四省庁で御相談しながら改善をしてまいりたい、こういうことでございます。
#206
○政府委員(吉田文毅君) 宮澤大臣が大蔵大臣としてお答えになられたようでございますので、念のために私からもお答えさせていただきたいと思います。
 今の案件につきましては三大臣のお答えのとおりでございます。
#207
○中西珠子君 通産大臣がお留守ですから仕方がないです、あんな御返答でも。
 四省庁体制で総合調整ができない場合、意見が一致しない場合、それはやはり総理がなさるべきだと私は思うんですけれども、総理府というふうなところに、開発協力を専管的に担当する官庁というか省庁というか、とにかくそういったものをおつくりになってはいかがでしょうか。お伺いいたします。
#208
○国務大臣(中曽根康弘君) 実務を見ますと、水道関係は厚生省に、かんがい用水は農水省に、教育関係は文部省に、みんなそういう専門家がおるわけですから、その方々の手をかりなければ正確ないいことはできない。そうなるとふろしきが要るというわけで総理府ということをおっしゃるかもしれませんが、ふろしきよりも実体が大事だ、そういう意味で連絡調整をいかにうまくやるかということだと思っています。そういう面から見ますと、大体企画庁を中心にしまして連絡調整は最近はかなりうまくいっているようでございまして、この様子をしばらく見たらいいと、そう思っております。
#209
○中西珠子君 連絡調整がうまくいっているかどうか時々疑問に思うことがあるんです。それで各省の力関係で決まっているのじゃないか。そこに総理が何かツルの一声でおっしゃって決まっているのじゃないかというふうな感じが非常にしておりまして、もう少し計画性、総合性のある援助を効果的にやっていただくためには援助行政を一元化しなくちゃならないのではないかといまだに私は思っているわけでございますが、意見の相違ということもございますので、これはこれで、一応時間の関係もございますから深追いはいたしません。
 ちょっと問題を変えまして、一九八六年の十二月四日に、国連総会で開発の権利に関する宣言というのが採択されました。この開発とは、人間の福祉の絶えざる向上を目的とする経済的、社会的、文化的並びに政治的な過程であり、すべての人間は開発の積極的な参加者であり、受益者であ
るべきだと。また、開発の権利というものは不可譲の人権であるとしておりますが、この宣言の採択に当たりましてアメリカ合衆国は反対しました。日本はアブステーン、棄権したわけですね。なぜ棄権したのか、この理由をお教えいただきたいと思います。
#210
○政府委員(中平立君) お答えいたします。
 我が国は開発途上国の開発の重要性を十分認識しておりまして、この観点から経済協力を積極的にやっておるということは中西委員御高承のとおりでございます。
 御質問の開発の権利に関する宣言ということでございますが、この問題は、従来から国連の人権委員会というところで審議しておるわけでございますが、この発展の権利に関する宣言を、昨年の国連総会におきまして必ずしも十分議論を尽くさないという段階で投票に付された、そういう経緯がございます。この問題は、開発に関する国家間の関係を法的な権利及び義務というような観点からとらえようとするものでございまして、従来からこの発展の権利というのは一体どういうものだと。むしろ逆に言いますと、義務とは一体どういうものだということについて必ずしも関係国間の議論が十分尽くされていないという経緯がございまして、それにもかかわらず開発途上国の方が一方的に数を頼んで投票に付そうと、こういうことになりましたので日本としては棄権した次第でございまして、日本といたしましては、今後ともこの問題につきましては十分に関係国間で議論を詰めていかねばならないと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#211
○中西珠子君 開発はやはり人間の福祉の向上を目指さなくちゃいけないという点では、私は今おっしゃったような事情はよくわかりますけれども、開発に関する宣言というものはやはり正しいのではないかと思うわけです。
 とにかく、開発援助におきましては、最近は民生の安定、福祉の向上ということを目指した日本の援助がふえているとおっしゃっておりますけれども、なかなか被援助国の最貧層の人たち、そういった人たちのいわゆる人間としての基本的ニーズ、BHNを目指すための援助、そういったものが本当に草の根の人々に届くためには、もっと日本の民間団体を利用なすったらどうかと考えるわけでございます。
 欧米先進国では、御承知のように、民間団体を非常に開発援助に利用いたしておりまして、コファイナンシングのシステムを既につくっているところが非常に多くて、DAC加盟国中でコファイナンシングを民間団体とやっていないところは日本とイタリアだけ。日本はまだなかなか難しい段階ではございますけれども、イタリアは自国ではやっていなくても、ECとの間でコファイナンシングシステムを実施しているわけでございますから、民間団体を大いに活用していないのは日本だけということになるし、コファイナンシングシステムを持っていないのは日本だけということになるわけでございますけれども、もっと民間団体を開発援助に使って、そして草の根の貧民層の人々にやはり援助が届くようにするということをお考えにならないかどうか。この点総理、外務、大蔵、通産、経済企画庁長官にお伺いしたいと思います。
#212
○政府委員(英正道君) 委員御指摘のように、いわゆるNGO、非政府団体の途上国における民生の向上発展、経済の発展のための役割というのは重要でございまして、政府としてもこの点については多大な関心を持っているわけでございます。現に日本の民間団体の現地における活動に協力をするいろいろな手段を講じております。例えば民間のそういう機関の方が海外で協力活動をされる際に、確かに途上国のいろんな問題であるとか、注意する点であるとかいうようなものを海外技術協力事業団におきまして、JICAで研修を催すとか、具体的な組織が現地で活動するのを支援するとかやっております。
 ただ、欧米と日本と違う点は、欧米の場合には、例えば慈善、宗教の観点から途上国においてかなりグラスルートのネットワークを持っておりまして、その上に本国からお金が集まったり人が出たりという形になっているわけですが、日本の場合にはそういう基盤がないものですから、これからそういう方向でむしろ積極的にやっていかなければいけないというふうに今感じている次第でございます。
#213
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生御指摘ございますように、日本の発展途上国に対する経済協力というものは、当然ODAのような政府による援助が中心になるわけでございますが、しかし民間の方々のそれなりの立場でのイニシアチブ、協力というのはやっぱりできるだけこれをお願いをしていくべきだというふうに考えますので、そういう観点について、どういうような体制また措置を講じたらそういった民間の方々がより積極的に活動していただけるのか、こういった問題についても御指摘がございましたので、いろいろ勉強させていただきたいものだと思います。
#214
○国務大臣(宮澤喜一君) 最近は我が国でも随分民間の方でそういう関心を持ってやってくださる方が出てきましたし、JICAも必要があればそういう方々のお手伝いといいますか、講習をしたりトレーニングをしたりもしておるわけですけれども、向こう側に日本のいわば受け取れる、受け取ってくれるものがないという、先ほどちょうど政府委員が言われたのと同じ問題がございますので、それをだんだんつくっていくということが大事なのではないかと思います。
#215
○中西珠子君 外務大臣代理どうぞ。
#216
○国務大臣(後藤田正晴君) それはもう答えている。
#217
○中西珠子君 それじゃ総理お願いいたします。
#218
○国務大臣(中曽根康弘君) 日本でもオイスカとかあるいはいわゆる平和部隊、産業開発協力隊、ああいう方々が立派にやっておりますですね、ああいうものをさらに助長して応援していきたいと思っております。
#219
○中西珠子君 アメリカのフォーリン・エード・アクトは総理御承知と思いますけれども、民間団体に対するコファイナンシングのシステムとしてODA資金の昨年までは一二%を割り当てるということだったんですが、ことしは一四%を割り当てることにするということになっているそうでございます。
 日本におきましても、やはり民間団体に対するコファイナンシングのシステムを前向きでお考えいただきたいと思いますが、総理いかがでございますか。
#220
○政府委員(英正道君) NGO活動に対する政府資金によるコファイナンシングの問題、確かに非常におもしろい考え方でありますし、恐らく有効な考え方なんだろうと思います。これは検討課題として引き続き検討させていただきたいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、日本の場合ちょっと欧米とまだ事情が違うということが基本的にあるわけでございます。
 それで、やはり先ほども御議論が出ておりましたように、国民の税金という観点から具体的にどういうふうに実施し得るのかどうかですね、その辺はやはりかなりシビアにやっていかないとまた問題も起こるということもありますから、検討課題としてひとつ取り上げていきたいと思います。
#221
○中西珠子君 一九八五年にナイロビで開かれました国連婦人の十年の最終年の世界婦人会議ですね、そこで採択されました「二〇〇〇年に向けての婦人の地位向上のための将来戦略」の中でも、婦人の開発への積極的な参加というものを大いに奨励しているわけでございます。必要と認めているわけでございますが、日本の開発援助における婦人の役割、また開発援助における女性向きのプロジェクトの割合というものはどうなっているか。青年海外協力隊員中の女性の割合と活動分野、ODA専門家中の女性の割合と専門分野、それから女性向きプロジェクトの割合、どこにそれが行われているかという地域、そういったものについてお答え願いたいと思います。
#222
○政府委員(英正道君) 六十一年の数字でござい
ますが、青年海外協力隊の派遣隊員の数は全体で八百二十一名、このうち女性の隊員は二百名、全体の二四・四%でございます。それから、国際協力事業団の専門家でございますが、この方は年間に千九百六十九名の人が出ておりますけれども、女性は六十四名、三・三%でございます。それから、途上国からの研修買受け入れについても、六十一年度で約六千名強の受け入れを行っておりますけれども、女性研修員は千百五十三名、全体の一九・二%ということでございます。
 それから婦人関係の分野におけるいろいろなプロジェクト方式などの協力でございますが、母子の保健、看護教育、家族計画、婦人研修、そういう分野についていわゆるプロジェクト方式の技術協力、それから無償の資金協力等を行っております。ちなみに、日本で主として婦人を対象とする代表的な研修コースとしては、集団コースとして、婦人関係の行政セミナー、それから生活改善普及のセミナー、それから専門看護のセミナーということでございます。それからプロジェクト方式の技術協力は、家族計画についてのものが中国、フィリピン、タイ、コロンビア、それから母子の保健については韓国、コロンビア、それから看護教育についてはタイ等がございます。
#223
○中西珠子君 青年海外協力隊員として活躍する女性も大変ふえているようで、アフリカなんかで数学や化学を教えている女性にもお会いしましたけれども、まだまだ数が少ないし、これをふやしていただきたい。また、ODA専門家として、人口問題だとか看護婦の養成コース、そういったものに従事している女性もだんだんふえているということでございますけれども、やはり方針として日本から女性を多く海外援助に出していくということ。それからまた、途上国の農村女性などを対象にした援助プロジェクトというふうなものも、開発から取り残される傾向にある特に農村の女性などを対象にしたものをふやしていただきたいということを要望したいと思います。
 米国のAIDは、婦人に関するODA政策というのを発表しておりますけれども、日本でも開発援助における女性の役割を強化していく、また女性を対象とするプロジェクトもふやしていくという方向で御検討を願いたいと思いますが、総理と外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
#224
○国務大臣(後藤田正晴君) 私も実はせんだって、この海外協力の関係で外国から来る婦人の数がどれくらい研修に来ているのか、こちらからまた出かけているのがどの程度の数が総数の中で婦人が占めているのかという説明を聞きまして、率直に思いましたことは、婦人が非常に多いなというのは本当に私の印象でございました。しかしながら、今、中西さんおっしゃるように、まだまだやはり、よく考えてみればもう少し婦人の活躍してもらう場面も相当多いのではないかという気は、率直にこれまたいたしております。そういう点については、御要望の点を踏まえまして今後とも政府としては推進をいたしたい、かように考えております。
#225
○国務大臣(中曽根康弘君) 私も海外で、現地で協力隊の皆さんにお会いしましたが、御婦人の皆さん非常にけなげにおやりになっていると思いました。ぜひこういう方々をふやしていきたいと思います。
#226
○中西珠子君 ODAは第三次倍増計画を二年前倒しにしまして、量的には非常にふえるわけでございますけれども、質の向上というものをぜひ図っていただきたいと思うわけでございます。
 DACの加盟国中、ODAの質を示す贈与比率におきましても、グラントエレメントにおきましても日本は最下位でございますね。また、ODAの中で技術協力が占める割合というものもDAC平均の半分以下でございます。日本はハードには強いがソフトには弱いと言われるゆえんでございます。技術協力をふやしていくには人材の育成が急務だと思いますが、日本はODAの質の向上と技術協力の割合をふやすために、政府としてはどのような対策を考えておられますか、お伺いいたします。総理と外務大臣にお伺いいたします。
#227
○国務大臣(後藤田正晴君) 先ほど来のお話の中で、日本の海外援助がどうも日本企業がそれを受けておる、つまりタイドの援助が多過ぎる、アンタイドにすべきであるという点については、私は最近は非常に改善になっておる、こう思いますね。しかし、今お話のグラントエレメントについてはどうも成績が悪いではないか、こういう御批判がございましたが、政府としてはやはりその拡充に努力はしておりますが、結果としては今日まだ極めて不十分であるということは、これは申し上げなければならぬと思います。したがって、その改善は我が国のこれからの海外援助の課題の中の大きな一つの問題点であると、かような認識を持っておるわけでございます。そういう認識のもとに、質の面でも、量の面もちろんありますけれども、今後とも一層改善に努力をしたい、かように考えております。
#228
○中西珠子君 人材の育成についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。技術協力をふやしていくにはやはり人材の育成が必要だと思うのでございますけれども、その技術協力の専門家をふやすということばかりでなく、DACの対日審査でも指摘されておりますように、どんどんプロジェクトやなんかがふえて、援助の総額がふえているにもかかわらず、日本は人材がやはり少なくて、援助管理能力がまだまだ足りないということを指摘されているわけでございます。ですから、技術協力専門家をふやすばかりでなく、その援助を企画立案して、そしてそれを実施する、それからまたフォローアップもしていくというふうな、そういった専門的な人材というものがやはり育たなければいけないと思うわけでございますが、そういった面での人材の育成についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#229
○国務大臣(後藤田正晴君) 先ほど婦人の問題についてお答えいたしましたときに申し上げようと思っておったのですが、ああいった数を調べてみますと、やはり今おっしゃるような技術的な面での、これは私はまだまだ不十分だなと、こう思います。それだけに、おっしゃるように海外援助といったって非常に農業面から相当な程度の高いものまでいろいろなものがありますから、それぞれに適応したやはり、何といいますか技術者とでもいいますか、専門知識を持った人間の、お互いの受け取り側とそれからこちら側と双方の人材養成ということについては、これは当然進めなければならない施策であると、かような理解でございます。
#230
○中西珠子君 総理はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#231
○国務大臣(中曽根康弘君) 後藤田大臣と同じであります。
#232
○中西珠子君 援助の管理能力が十分でないと言われていることにつきましては、援助のプログラムがふえているにもかかわらず、必要な人材が確保されていないということもあると思うのでございますけれども、その面でやはり予算の重点配分というものも必要なのではないかと思いますが、大蔵大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#233
○国務大臣(宮澤喜一君) 大事なことだと思いますので、要求がございましたらよく注意して考慮をいたします。
#234
○中西珠子君 要求がございましたらとおっしゃいますけれども、毎年要求しているのになかなか実現しないという話を聞いております。
#235
○国務大臣(宮澤喜一君) 十分に考えさせていただきます。
#236
○中西珠子君 とにかく、何回もDACから指摘されているわけですね、管理能力が非常に劣っていると、不十分であると。ですから、その点は前向きに御配慮いただきたいと思います。
 ODAのプロジェクトの評価ということにつきまして、私はもう参議院に出てまいりまして以来、客観的な、第三者的な評価が必要だというふうなことを申し上げてきましたけれども、最近は援助実施機関の自己評価ばかりでなく、第三者的な人に委嘱する評価もふやしておられるようでご
ざいますけれども、評価の基準というものをどのように設定していらっしゃいますか。
 それからもう一つは、先ほどもちょっと情報公開のところで申しましたけれども、評価報告書は国民に公表するべきだと考えておりますが、その点とあわせてお伺いいたします。
#237
○政府委員(英正道君) ODAの評価につきましては、まずプロジェクトの形成それから運営、維持管理、これらが適切に行われているかどうか、一また、そのプロジェクトが所期の目的どおりの効果を上げているかどうか、こういう点に重点を置いて評価をしております。また、プロジェクトがその周辺の地域へ経済的、社会的にどういうような波及効果を持っておるか、日本との関係でどういう影響を持っておるかというようなことについても調査しております。
 それからもう一点御指摘のあった点の評価報告書の件につきましては、私ども毎年評価報告を出しておりますので、ぜひ今度はお届けいたしますので、よろしくお願いいたします。
#238
○中西珠子君 最近、国別の研究班を組織なさいまして、フィリピンやなんかは国別で経済社会情勢からまた援助とのかかわりというものを研究なすって、またその報告書もお出しになったらしいんですけれども、国別のそういった経済社会情勢の分析というふうなものも絶えずやっていただきたいと思うのでございますが、これに関しましては外務大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#239
○政府委員(英正道君) まさに委員御指摘のように、国別の分析というのがやはり経済協力の一番基本のスタートだと思います。先ほど要請主義という話が出ておりましたけれども、要請主義というのはやはり途上国の自助努力に対する日本の側面的な支援ということで、相手の国がまず要請してくるという意味で申し上げているわけでございますけれども、実際には、例えば政策対話というような機会をしばしば被援助国の関係者と持ちまして意見交換をしながらプロジェクトの選定を行っているということでございますので、ただ要請が出てくるのを待って対応しているというわけではございません。
 先ほど御指摘のありましたフィリピンの評価でございますが、これは、御案内のように昨年政変がございまして、新しい政権のもとで新しいプライオリティーを持つ六カ年計画というものができておりますので、やはりそういう節目の時期に今後の対フィリピン協力のあり方をどうすればいいかということで、これは東京大学の高橋教授以下八名の、フィリピンを非常によく勉強していらしている専門家の方にお願いして、フィリピンの開発の現状、それからどういう方向の協力をしたらいいかということの検討をしていただいたわけでございます。
 このような企ては余り例がないんじゃないかと思いますけれども、国際協力事業団にタスクフォースをつくりまして、かなり日本に存在するデータ、これはアジア経済研究所でありますとかいろいろな機関、研究機関にある資料等を、それから国際機関で出している資料等を全部一応洗い直して、その基礎の上で御検討願ったわけで、かなり手間暇のかかる話でございますので一挙にすべての国というわけにはまいりませんけれども、こういうことを今後やっていって、日本としても主体的にこういう方向の援助ということを考え、これをペースに相手の国の政府と話し合いをしていくというような形で進めていくことができたならば、一つの新しい援助のやり方ではないかというふうに今考えている次第でございます。
#240
○中西珠子君 今おっしゃいましたように、国別の研究、分析を大いに進めていっていただきたいと思いますが、政策対話をやっていくに当たりましてはやはり外務省の中にも専門家の養成が必要なんじゃないかと思いますが、いかがですか。
#241
○政府委員(英正道君) 援助の専門家、確かにマクロ経済分析でございますとかセクター分析でございますとか、そういう専門家というものと、それから二国間の関係を強化する経済協力を実施する面でどういうふうにやるべきかという意味の二通りの専門の人がいるかと思いますが、前者の方につきましては、外務省の内部にそういう人を多数置くということはできませんけれども、アジア、アフリカに非常に知悉している人でございますとか、また農業問題を勉強している人、漁業問題を勉強している人、そういう人は育成する努力をしております。
 それから外務省の場合には途上国の勤務も非常に多うございますし、現在、途上国との外交関係の相当部分は経済協力問題でございます。これはいわばいや応なしにそういう問題を担当しておりますので、何がしかの経験は持っている人がおりますので、そういう基礎の上にできる限りの努力をして勉強してやっていこうという態勢で臨んでおります。
#242
○中西珠子君 どうぞ前向きに努力していただきたいと思います。
 それから海外の広報活動についてお伺いいたしますが、今欧米と日本との間の経済摩擦が非常に激化しているわけでございますけれども、日本の国内の事情とかそれから経済社会情勢、また歴史、文化、そういったものを理解してもらうという努力がまだまだ足りないのではないか、日本への理解の不足といういわば文化摩擦の面も経済摩擦の中にはあるのではないかと考えるわけでございますが、日本への理解というものを高めるためには、やはり海外における広報活動というものがますます重要になっているのではないかと思います。
 日本の海外広報活動の予算というのは欧米に比べるとまだまだ少ないのではないかと考えます。欧米の先進国はそれぞれ全世界に百四十から二百以上の広報や交流の拠点を置いておりますけれども、日本は政府の広報文化センターというものが世界じゅうに幾つくらいあるのですか。また、国際交流基金の海外駐在員事務所だとか日本文化会館というふうなものは幾つくらいあるのですか。また、大使館の広報担当官は平均何名ぐらいいるのですか。こういった点についての御答弁を願います。
#243
○政府委員(松田慶文君) 御質問の第一点、外務省の広報文化センターの数でございますが、現在時点で二十八カ所でございます。また日本文化会館は二カ所、それから国際交流基金の海外事務所が十カ所、合わせまして四十カ所でございます。他方、お尋ねの在外公館の広報担当官は、ただいまの定員が百六名でございますので、一在外公館一名未満という数となっております。
#244
○中西珠子君 こういったものはやはり増設、そして広報担当官は増員ということが必要だと思います。しかし、とにかく急に予算をふやすということも難しいのではないかと思いますが、今円高になるにつれて海外での外交関係の経費というものは円建ての予算においては削られていると聞いておりますが、こういう削ることばかりやらないで、円高の差益を広報活動にお回しになってはいかがかと思うんですけれども、大蔵大臣いかがでしょうか。
#245
○政府委員(松田慶文君) 事務的に数字の御説明を先にさしていただきたいと存じます。
 御指摘のとおり、海外広報予算は円貨建てと外貨建てとございまして、支出官レートの円高による是正によりまして、表面額が変わらずとも実質的に伸びてまいります。その部分を調整しているわけでございますが、本年の場合はその円高の利益を享受さしていただいておりまして、九・五%の実質伸びとなっております。ただし、これも額面的に言いますと、先生御指摘のとおり一・四%の減となっております。
#246
○中西珠子君 減としないでふやしたらいかがですかと言っているんですよ。外務大臣代理、お願いいたします。
#247
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は本職が調整役でして、こういうような予算の少ない多いというのを答弁させられるのはまことにつらいんですが、外務大臣臨時代理であるという立場でお答えをいたしたいと思います。
 それはやはり、今後の日本の国際社会における活動を活発化するという意味合いにおきましては、特に日本のような文化的基盤がまるきり違っている国でしょう、こういう国は何といったって、日本の真意というものを外国に理解してもらうのにはこれは大変な人並み以上の努力が必要だと私は思いますね。それには、中西さんが今おっしゃるような海外の広報活動、こういうものについての予算あるいは人員というものは、率直に言って、先進国と比べてみますと日本はもう問題なしに少ないです、これは。したがって、今後これは真剣に政府全体としては、しかし今行政改革のさなかですからね、そこもあるんですよ。そこもあるので私は実際答えにくい。答えにくいのだが、しかしおのずからなる軽重というものは政府の中にあるはずでございますから、そういうことを考えますと、外交活動というものに必要な予算と人員は私は増強していく必要があると、かように考えております。
#248
○中西珠子君 大変いいお答えをいただきました。行財政改革のために一律に予算を増大することは困難、しかし海外における広報活動、外交活動は非常に重要ですから重点的な配分をしていただくと、こういうふうに受けとめます。ありがとうございます。
 それから人員のこともおっしゃいましたけれども、私ちょっとあちこち回ってみますと、もうソ連とか欧米先進国は本当に人員がすごく多いのですね。その上に広報活動の予算も数倍も使っているという状況でございます。そのようなことでございますので、ただいま後藤田外務大臣臨時代理がおっしゃいましたことはしかと私は覚えておりますから、どうぞよろしく重点配分をお願いいたします。
 それからもう一つ、国際社会の中で数少ない、二十八しかないという広報文化センターがフルに利用されているかどうかということがちょっと疑問な点もあるわけでございます。一般の人に聞いてみますと、どこにあるか知らない、それからまた限られた人しかそこに招待されない、そして一般の人が近づきにくい、こういう批評も先進国の中でもあるわけでございますね。名前を挙げると語弊がございますから言いませんけれども、欧、米両方にまたがってそういう国があるわけでございますが、やはりこの広報文化センターを、本当に数は少なくても、これはもちろん増設していただかなければならないのですけれども、現存のものをもっとフルに一般人にも開放して使ってもらうということが日本に対する理解を深めることになるのではないかと思いますので、既存のものの内容の充実並びに現地の一般人へのサービスの拡充ということをお考えいただきたいと思いますが、総理、いかがでございますか。
#249
○政府委員(松田慶文君) 御指摘の文化広報センターは、大使館本体と離しまして、町中のできるだけ皆様の御便利のいいところに設けているのが常でございますが、やはり私どもさらに心して窓口を大きくし、明るくし、皆様の応接をより丁寧にし、数限られているだけにその運用に心してまいりたいと考えております。
#250
○中西珠子君 運用の改善をお願いいたします。
 それではちょっと目先を変えまして、あと三分しかなくなりましたが、今度は長寿社会です。
 もう御承知のように、我が国は世界でも類例を見ないスピードで人口の高齢化が進んでおります。政府は昨年の六月に長寿社会対策大綱をまとめられました。これはもちろん、実効あらしめるためには財政的な裏づけが必要なわけでございますが、昭和六十二年度からは各省庁歩調を合わせて施策に取り組もうとしておられるところでございますが、六十二年度の長寿社会対策関係予算案、とれに関しまして予算配分のポイントを御説明ください。
#251
○国務大臣(山下徳夫君) 本格的な高齢化社会時代を迎えまして、御指摘のとおり、これらに対する施策をさらに強固にしていかなきゃならぬことは当然でありますし、今お話ございましたように、昨年定められました長寿社会対策大綱に基づきまして関係省庁は格段の努力を払っておるところでございます。
 何と申しましてもやっぱり予算が一番でございますから、それぞれの省庁は予算の獲得にまた努力をいたしておるところでございますが、なかなか高齢化のための予算と区別できない面もありますけれども、特掲すべきものだけを申し上げてみますと、総額において五兆三千二百四十五億円でございますから、これは前年度比で三・一%の増と、これは今日の窮屈な国家財政の中で非常に格段の配慮がなされたと言うことができると思うのでございますし、これらの予算に基づきまして適切なる執行をいたしてまいりたいと思います。
#252
○中西珠子君 長寿社会対策の大綱に基づく予算というものは厚生省が大部分だと思うのでございますが、厚生省の管轄で、こういう長寿社会対策に関するビジョン、それから殊に高齢者対策企画推進本部の報告書などに書かれたビジョン、こういったものがどのように反映されておりますでしょうか。
#253
○政府委員(長尾立子君) お答え申し上げます。
 厚生省の所管で申し上げますと、経費の大きな部分を占めますのが年金と老人医療でございます。
 年金につきましては、御承知のように年金制度の改革を仕上げました後の状況にあるわけでございますが、六十二年度の予算におきましては、物価スライドを予定いたしておりまして、これにつきましての国庫負担ベースで申し上げまして二・九兆円を予定いたしております。
 次の老人医療でございますが、これが一・八兆円ということでございまして、これを中心といたしまして約五兆円の予算を計上いたしておるわけでございます。
 そのほか、特別会計、財政投融資につきましても所要の措置を講じておるわけでございます。
 先生からいろいろな長寿社会対策の考え方の具体的な内容ということでございますが、年金、老人医療につきましては今申し上げたわけでございますが、そのほかの保健、福祉対策について若干申し上げさせていただきますと、まず福祉につきましては、在宅福祉の充実ということを考えておりまして、デイサービスセンターの増加、ショートスティ事業の対象人員の増加、ホームヘルパーの数の増加を内容といたしまして百二十億円を、また老人のヘルスの問題、保健事業につきましては、基本健診の導入、肺がん、乳がん検診の導入など、老人保健事業の第二次五カ年計画を推進するために三百六十九億円の予算を計上いたしておるところでございます。そのほか、保健、医療、福祉サービスの連携を図る観点から、高齢者総合相談センター運営事業、高齢者サービス総合調整推進事業等の予算を計上いたしております。
#254
○中西珠子君 老人介護の問題では一応在宅介護ということをお考えになっておりまして、老人福祉は在宅福祉というものに重点を置いていらっしゃるような印象を受けるのでございますけれども、もちろん老人にとっては可能な限り住みなれた地域で家族とともに生活することが好ましいことは言うまでもございませんけれども、やはり老人介護の問題というのは相当心身ともに疲労をするものでもございます。また、婦人の職場進出などによってその介護の問題もなかなか困難な場合も多くなっておりますが、在宅介護というものを可能とするためには、ホームヘルプサービスの充実、それからデイケアセンター、ショートステイホーム、そういったものの充実を考えなければならないわけでございますが、こういったものに対して厚生大臣はどのような基本姿勢でお臨みになるのですか。
 また、在宅福祉の推進ばかりでなく、必要なだけの施設というものも整備する必要があると思うのでございますけれども、老人保健法の改正によりまして、老人保健施設というものも今モデル実施段階と伺っております。また、特別養護老人ホームというものも非常に不足しておりまして、長いウエーティングリストがあってなかなか入れないという状況があります。家庭の介護だけではど
うしても解決のできない問題として、老人夫婦の心中だとか、また、子供が親を見ていたのに、余りにも肉体的、精神的な疲労に耐えかねて親を殺してしまったというふうな悲劇なども起きているような状況でございます。
 このような問題がこれからもっとふえてくるのではないかという懸念を国民のみんなが感じているわけでございますが、厚生大臣、どのような基本姿勢でこの老人の介護の問題、殊に重介護を要する、援護を要する老人の問題については臨む、こういう基本姿勢を持っているんだということをはっきりと国民の前にお示しいただきまして、そして総合的なバランスのとれた政策をとっていただきたいと思うのでございますが、いかがですか。
#255
○国務大臣(斎藤十朗君) 本格的な長寿社会を迎えまして、お年寄りが明るく健やかに、そして安心して御生活をいただけるような、そういった環境づくりをいたしてまいらなければならないと考えております。できれば、お年寄りが住みなれた御家庭で、また地域で、社会の中で元気に過ごしていただくということが大事でございまして、そういう意味から、もちろん施設福祉も大事でありまするけれども、在宅福祉に重点を置きながら進めてまいりたいと考えております。
 特に、ただいま御指摘のございました要介護老人等に対する対策等につきましては、先ほどから先生からも御指摘がございましたが、家庭奉仕員の増員とか、またデイサービス事業の本年の予算におきましては倍増をするようにいたしております。またショートステイ事業等につきましても拡充をいたし、この辺に非常に大きな重点を置いておるところでございます。
 同時にまた、お年寄りのいろいろな相談に供するいわゆるシルバー一一〇番、こう言っておりますけれども、総合相談センターというものを各県に設けてまいりたいというのをことしの新しい予算といたしておりますし、またもう一つ大事なことは、福祉のみならず医療、保健という三位一体の連携の中にこの施策を進めていかなければならないというような観点から、そういった政策の総合調整事業というようなものを県や市町村において行えるような予算も新しく計上をさしていただいておるところでございます。
 また、やむを得ず在宅ではおれない方につきましては、施設につきましても一層充実をいたしてまいる。特に寝たきり等の要介護老人につきまして申しますならば、特別養護老人ホーム、現在十二万人ぐらいを収容できるキャパシティーがあるわけでございますが、これから二十一世紀、すなわち昭和七十五年へ向けてこれを倍増して、二十四万人ぐらいが入っていただけるように着実に整備をしてまいろう。また、この間の老人保健法でお認めをいただきました老人保健施設、いわゆる中間施設というものが非常に有効に働いてくると思うわけでございますが、これも昭和七十五年を目指して二十六万から三十万床を整備をしてまいろうということで、施設福祉と在宅福祉と両々相まって長寿社会の明るい老人福祉政策を推進いたしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
#256
○中西珠子君 時間が参りましたので。
 私は老人問題というのは婦人問題でもあると思っているわけでございます。老人介護をやっている者の九割近くが婦人であるという意味と、それからまた、婦人の方が平均寿命が長くて、ひとり暮らしの女性老人も多いわけでございますので、婦人問題即老人問題、老人問題即婦人問題と言ってもいいぐらい婦人とのかかわりの深い問題でございます。が、女ばかりでなく、男性もこれからの高齢化社会において生きがいを感じ、また幸せに健やかに生きることができるように総合的な長寿社会対策を推進していただきたいということを、これは二十一世紀に向けての本当に重要な課題でございますので、総理を初め皆様方にお願い申し上げて、たくさん質問のテーマを差し上げましたけれども、残念ながらこれで時間が参りましたので終えますが、とにかく長寿社会の対策に基づきまして大いにやっていただきたいということを、総理から一言お話し願いましてこれで終わりにいたします。
 総理の御決意をお願いいたします。
#257
○国務大臣(中曽根康弘君) 私は本部長でございますから、一生懸命努力いたします。
#258
○中西珠子君 ありがどうございました。
#259
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で中西珠子君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#260
○委員長(桧垣徳太郎君) 次に、下田京子君の質疑を行います。下田君。
#261
○下田京子君 近藤企画庁長官にお聞きします。
 きのうの日経の朝刊それから朝日の夕刊に、経企庁長官の現職大臣が肩書入りで、写真入りで杉山商事株式会社の広告に登場されているわけです。「内需拡大−住宅投資の方法論」、こういうことでお出になっているわけなんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。
#262
○国務大臣(近藤鉄雄君) お答えいたします。
 実は、民間活力を活用いたしまして内需を拡大するために何かいい考え方はないか、こんなことで二月以来いろんな方々の御意見をずっと承ってまいったわけでございますが、杉山社長にもそういう機会にお会いいたしました。そして私の方からも、私が最近ずっと推奨しておりますキッチンリフォームについて、こういうことをできるだけ大勢の方々に知っていただいて、奥さん方の生活改善を通じて内需の拡大を進めていきたいんだ、こういう話をいたしましたら、それは大変いいアイデアなのでどなたかしかるべき人と対談をしてくれれば自分としてもPRに協力をしますよ、こういう話でございました。そんなことで黒川紀章さんと対談をしたわけでございますが、結果として私企業のPRに多少かかわった、こういうような印象をお与えいたしましたことは、私の気持ちと全く異なることではございますけれども、大変遺憾なことでございますし、深く反省をしている次第でごございます。
#263
○下田京子君 よくわからないんですよね。深く反省をしている、それから私的企業に肩入れしたような格好になって結果としては申しわけなかったという意味ですが、対談形式とおっしゃいますのは日経の方です。朝日の方は対談じゃないんですよね。しかも私は問題だと思いますのは、この杉山商事株式会社あるいは杉山不動産、ワンルームマンションを建設してあちこちで問題になっているわけです。私は問題だと特に思いたいのは、アイデアまで提供しているわけですね。内需拡大でもってワンルームマンションをおつくりなさいと言わんばかりじゃないか。というふうに問題があるわけなんですが、一体何が問題だ、何が軽率だったとおっしゃるんでしょう。
#264
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私は対談をしたわけでございますので、その対談でない記事は、対談の中の私の言葉をまとめてつくったのではないかと思うわけでございます。私は、当委員会でも申し上げておりますけれども、現在マネーゲームでお金が実体的な投資に回っていない面もございますので、そうしたマネーゲームに遊ばせておかないで、具体的なアパートの建設とか住宅の建設とか、そういうことに積極的に回すことが内需の拡大でもある、こういうことで、そういう趣旨のことを対談で話をした次第でございます。
#265
○下田京子君 趣旨と違うというのなら、どこが違うんですか。
#266
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私の話をしたことは、大体そのとおり文章になっているわけでございます。
#267
○下田京子君 そのとおりなっていたら、言っていることと違うじゃないですか。こう言っているんですよ。「杉山社長とお話したんですが、遊んでいるお金を集めて、ワンルームマンションめ建築をはじめ、様々な事業に活用する。素晴らしいアイデアですね。」ということで、お褒めになっているんですよ。で、これは軽率だったというような意味を言われた。どうされるんです。
#268
○国務大臣(近藤鉄雄君) いろいろな形の建築投
資にお金を使っていただきたい、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございますので、先生の御指摘のようなとられ方をされるような面もございますので、こういう場をおかりいたしまして、申しわけないと反省を申し上げる次第でございます。
#269
○下田京子君 総理、どうされます。今、私的企業に現職大臣が肩書入りで、写真入りでやったということで、これは間違いを認めた反省の御発言だったかと思うんですけれども、閣議了解の中には、私的企業への肩入れ、これは問題だということを明確にお述べになっていると思います。それから政治倫理の中には、政治不信を招く公私混交を断ち、国民の非難を受けないようにしたい、すべきだと、こうなっているわけですね。こういう点から見まして、どうされるんです。
#270
○国務大臣(中曽根康弘君) 大臣としては思慮不足の点があったと思いまして、厳重に訓戒して、以後注意ということであります。
#271
○下田京子君 閣僚として適当かどうか大変私は問題ではないかと思うんです。ですから、厳重注意ということで果たして国民が納得されるんでしょうかということを私は申し上げておきます。
 次に、特に農産物の貿易摩擦問題。首脳会談でレーガン大統領が、最重要課題の一つとして農産物の市場開放問題を繰り返し言われておったと思います。特に、お米の市場開放が今大きな問題になっているんですが、その点で御質問します。
 私ども共産党がどうしてこの問題を重視するかといいますと、言うまでもありません、国民の主食です、日本農業の根幹です。穀物自給率が三二%という状況の中で、本当に国民の胃袋までアメリカやその他の国に任せていいんだろうかという問題がございます。そして、多くの消費者も言われているように、おいしいものを安定して安全に、できるだけ安いという希望にこたえていく上でも、農業を重視してつり合いのとれた経済の発展を図る、こういうことが大事だと思うんです。とすれば、従来から国会でも決議がされ、言われておりましたけれども、お米の一〇〇%完全自給を堅持する、こういう立場で総理もこの会談に臨まれたのかどうか。
#272
○国務大臣(中曽根康弘君) もとより国会決議を尊重して会談に臨んだつもりでおります。
#273
○下田京子君 農民団体はもとより、消費者十八団体も訪米前、総理あてに、米の輸入自由化はいかぬよと申し入れをされておったと思うんです。で、総理はこのお米の一〇〇%自給方針というものをちゃんと守られるのかどうか、明確にお答えください。
#274
○国務大臣(中曽根康弘君) ですから、国会決議を守るという考えで参りました。
#275
○下田京子君 国会決議を守るという考えで対応されたというなら、お米は絶対に輸入しないという立場だと思うんです。ということなら、どうしてアメリカで総理は、米問題は他の包括的な問題と一緒にウルグアイ・ラウンドでやる場合には日本も話し合いに応じる、こういう態度をおとりになったんでしょうか。
#276
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、関係各国でいろいろ農業問題について話しておりまして、今も、きょうあたりOECDで農林大臣が集まって話をしておる。そのいろいろな予備的な話のときに、やはり今各国から激しい農業問題の論戦があります。そういう意味でこれはもう全世界的な問題として、各国が補助金問題から輸出問題からあらゆる問題、あるいは生産過剰問題あるいは途上国に対する救済問題、あるいはオーストラリアやアルゼンチンのように補助金を使わない国の立場、もう全部を包括的に農業問題としてガットニューラウンドで話をしよう、そういう話が進んでおりまして、日本だけがその場所で私は参加しませんというわけには国際国家の日本は言えません。いわんや、今十二品目については、ガットのパネルで話をして、第三国がそれに対して判決を下そうという立場にあるわけですから、話し合いに応じないというかたくなな立場は日本としてとることは非常に不利な条件にもなります。そういういろんな情勢を考えて判断したわけであります。
#277
○下田京子君 私はかたくなな態度で臨めと申し上げているのではないんですね。お米の一〇〇%国内自給の方針という態度を貫くなら、今までも繰り返し言われていたんですよ、日米間の二国の間であろうと、あるいはウルグアイ・ラウンドの場であろうと、話し合いの余地がないんですよということを前もって説明すべきだと思うんですよ。ECだって課徴金問題なんかではテーマにすることは問題だとおっしゃっていますでしょう。どうなんです。
#278
○国務大臣(中曽根康弘君) 近ごろはECも態度は変わってきまして、補助金をやり過ぎた結果、ワインの洪水、バターやチーズの山ができてしまった、それがために関係各国から苦情が出ておる情勢もあります。そういうような点から、やはり話し合いをするという態度に変ってきておるわけです。
#279
○下田京子君 農水省、ちょっとECの態度のことを詳しく報告してください。
#280
○政府委員(池田廸彦君) 農業交渉に臨みますECの態度でございますが、ECはいろいろな種類の農産品につきまして共通農業政策のもとで、あるいは可変課徴金でございますとかあるいはリファンドシステムと申しますか、輸入に際してせきどめ価格を、輸入に際して一定の金額を徴収して、その金額を今度は輸出する場合には補助金として給付する、こういうような制度を持っているわけでございますが、こういうものすべてにつきましてガットの農業貿易交渉では話し合いには応ずるという姿勢をとっております。タイミングとか、その場合にほかの国がどういう制度をテーブルの上にのせるか、それはそれで相談さしてもらう。
 それからもう一つつけ加えておきますが、アメリカは農産物につきましてガット上の義務免除を早い段階から取得いたしております。しかしながら、アメリカ自身、これは義務免除は取得しておるけれども、今度のガットの交渉のテーブルの上にはその義務免除の対象になっている品目もテーブルの上にはのせる、こういう態度で臨んでおります。
#281
○下田京子君 ECは、話し合いに応じることと、いわゆる農業の基本目的やメカニズムについて譲るという態度はとってないということをはっきり区別しなきゃいけないと思うのですよね。
 私はそこで聞きたいのですが、総理は昨年の十月三十一日、私の質問に同じようなことについてこう言っているんです。今後テーマについては参加国間で決める問題だ、日本は自給の方針で誤りなきよう対応していく、こう言われているんです。この態度は変わったのですか。
#282
○国務大臣(中曽根康弘君) 国会決議を尊重して一生懸命努力いたしますと申し上げているとおりです。
#283
○下田京子君 さっぱりわからぬですよ。態度が変わったのか変わらぬのかと聞いているんです。
#284
○国務大臣(中曽根康弘君) 衆参両院において国会決議が行われて、米は自給の方針でいくと、そういう方針が明らかにされておる。それを尊重していきたいと申し上げているとおりである。
#285
○下田京子君 お米は完全自給の方針だということを尊重してやるということ、と同時に、じゃなぜそのテーブルにのせるということで合意したのか。私は、そのときに少なくともみずからそういうことを言うべきではなかったのじゃないか、このことを申しているんですよ。
 次に、そういう態度で次々といきますと、問題なことは、レーガン大統領が繰り返し要求されております農産物問題、お米も含めて早期決着ということ、いわゆるアーリーハーベストですか、これに応じられるようなことはないでしょうね。
#286
○国務大臣(中曽根康弘君) これは、ニューラウンドの交渉はどういうふうな形で展開しますか、日本は日本の立場を堅持しながら話し合いをやっていく、そういうことになると思います。
#287
○下田京子君 日本の立場をどう説明されるの
か、そしてその結果として早期決着なんということは絶対にありませんね、明確に。
#288
○国務大臣(中曽根康弘君) 政治や国際関係には絶対という言葉はないので、大体すべて相対的に動いておる、さもなきゃ生きられない世界の情勢になっておる。絶対という言葉を言うのは、大体共産主義的、独善的な考え方が絶対という言葉が使いやすくなるのではないかと私は思うのであります。やはりお互いさまでありますから、自分だけが正しい、あとは悪であると、そういう考えを私はとりたくはないのであります。
#289
○下田京子君 総理、そんなことを言っていませんよ、私。完全自給の国会決議を尊重していくということになれば、当然これは早期決着云々ということにはいかないんですよ。つまり、現在のような状況では絶対に輸入なんというのは――共産党だけじゃないですよ、皆さんそういう立場をとるのは当たり前じゃないですか。もう一度確認します。早期決着ということでみずから譲ることはありませんね。
#290
○国務大臣(中曽根康弘君) 農林大臣にはよく話してあります。
#291
○下田京子君 ウルグアイ・ラウンドの問題は農相が出席されるんですが、私は今総理に伺ったんですよね。中曽根内閣としてどう臨むかということを伺っているわけなんです。
 次に、レーガン大統領は、輸入制限は今の時点では残してもやむなしで、最低でも輸入枠を設定してもらいたいというようなことを繰り返し言われています。ということでは、お水もその一〇%程度加工用のものを輸入するというふうなことはあるんですか。
#292
○国務大臣(中曽根康弘君) 私はレーガンさんから直接そういう数量の話というのは聞いたことありません。
#293
○下田京子君 数字を言っているんじゃありません。最低輸入枠を設定するということで仮にということを言っているんです。そういうことで譲歩されるんですか。
#294
○国務大臣(中曽根康弘君) 農林大臣に話してあるとおりだと今も申し上げたとおりです。
#295
○下田京子君 総理自身がどうなのかということを言っているんですよ。譲るようなことございませんね。
#296
○国務大臣(中曽根康弘君) 国会決議を尊重すると私は前から申し上げていると思います。
#297
○下田京子君 非常に問題ですね、総理に伺っているのに総理自身の言葉で語らない、語れない。私はそれが本当だと思うんです。そうですね。違ったら総理の言葉で語ってくださいよ。
#298
○国務大臣(中曽根康弘君) それが独善だと言うんです。私の言うことをよく聞き分けていただきたいと思います。
#299
○下田京子君 いや、聞き分けられないわ。総理自身の言葉で語れないというのはお聞きになっていてもおわかりいただいたと思います。
 私はアメリカに二月十七日から約十日間行ってまいりまして、合しきりにアメリカが日本のお米は過保護の象徴のように言われておるんですけれども、一体アメリカではどうなんだろうかということなんです。まさに補助金でアメリカのお米生産は成り立っているということが実感でした。
 そこで農水省に聞きたいんですけれども、アメリカの米生産額に占める政府の直接補助金の割合、どうなっておりますでしょうか。詳しく五十六年と六十年度を比較して御説明ください。
#300
○政府委員(後藤康夫君) 昨年の九月にアメリカの農務省が、アメリカの農場段階の米の生産額、それから米関係の補助金と申しますか、政府のダイレクトペイメント、それとそれを合計しましたトータルインカムというようなものを表にして報告書に載せております。それによりますと、五十六年ということでございますから一九八一年のクロップイヤーで見ますと、米の生産額が十六億五千四百万ドル、それから米関係の補助金が二千百万ドルということで一・三%でございましたが、昭和六十年度、一九八五のクロップイヤーにつきましては、九億一千四百万ドルの生産額に対しまして米関係の補助金が六億九千九百万、比率といたしましては七六・五%ということで非常にふえております。これは需給が非常に過剰の状態になりまして、市場価格が低迷をし、また生産調整もふやしたというような結果、このような増大が見られたものというふうに考えております。
#301
○下田京子君 直接補助割合が一・三%だったのが七六・五%になっているんですね。
 日本はどうですか。
#302
○政府委員(後藤康夫君) 我が国につきまして同じ年次の数字を申し上げますと、昭和五十六年度、これは不作の年でございましたが、米の総産出額が三兆二千九百九十四億、それから先ほどのアメリカの方の補助金にはやはり生産調整も入っていましたので、食管繰り入れに我が国の水田利用再編対策関係の予算も全部含めまして一兆百四十一億ということで三〇・七%の比率でございます。昭和六十年度は豊作年でございましたので生産額がふえております、三兆八千六百十六億。それに対しまして食糧管理費の方が六千九百五十二億ということで一八%、こういう比率になっております。
 ただ、ここで一つちょっと申し上げておきたいことは、アメリカと日本ではちょっと価格支持の仕組みが違っております。アメリカではローンレートによります価格支持と不足払いの二階建てのシステムになっておりますので、我が方は政府買い入れ価格なり自主流通米価格の実現した価格というものをもとにして生産額を比べておりますので、算定ベースが異なりますので、補助金比率というものを日本と直接比較することにはちょっと問題があるというふうに考えております。
#303
○下田京子君 いずれにしても、どちらが保護が厚いかというと、アメリカが七六・五%、日本は一八%ということですね。それで、マーケティングローン制度になると直接農家の手取りが七割という実態なんですが、今の数字で、OECDの閣僚理事会が現在開かれているわけですけれども、その数字が使われていると思うんですね。その数字というのはいわゆる一九八一年、昭和五十六年の古いもの、このことについては問題があると思うんですけれども、その辺どういうふうに説明されておりますか。
#304
○政府委員(眞木秀郎君) OECDの作業の数字で、保護水準というものが、生産者保護の相当額あるいは消費者保護の相当額というような数字で出ておるわけでございまして、これに五十六年、一九八一年の数字が使われておるわけでございます。八〇年以降、世界の農産物需給状況が相当に変化をいたしまして、アメリカあるいはECにおきましては農業関係予算、特にその支持に要する予算が大幅にふえてきておるという状況にあるわけでございますが、この間、我が国の方は農業予算あるいは価格支持制度につきましても抑制的な運用が図られてきたところでございます。
 こういう意味で、新たな時点でのPSE等を試算し直しますと相当数字が変わってくるということは御指摘のとおりであろうかと思いますが、また逆に、最近におきます為替レートの変化、特に急激な円高が進行しておりますために、またあわせて農産物の国際価格も一層低下しておるということで、この計算の一つの要素になっております内外価格差というものがさらに拡大する傾向にあるということでございます。
 OECDが作業を進めておりますPSEあるいはCSEにつきましては、そもそも多くの問題点と限界があるわけで、我が国もその点を主張し続けてきておるわけでございますが、最近年の数値により計算をいたしましても、以上申し上げましたような状況にありますので、我が国の値が相対的に低下するかどうかということは必ずしも明らかではない、こういう事情でございます。
#305
○下田京子君 農水省、もう一つなんですけれども、OECDで加藤農相が生産者米価の引き下げを何か表明したという報道があるんですが、事実どうですか。
#306
○国務大臣(塩川正十郎君) 加藤農水大臣が現地で記者会見で意向を示したと報じておりますが、
その新聞記事を読みますと、引き下げるというようなことは一言も言っておらない。加藤農水大臣は就任以来この米価の問題については、農民の方々は血のにじむような努力もしてほしい、そしてまた農業団体も農業救済のために農民と一体になって努力してほしい、こういうことをしょっちゅう繰り返しております。
 そこで、あのパリの会談におきまして、血のにじむような努力をする必要があると言ったことがすなわち米価引き下げ、イコール米価引き下げにとられたのではないかと私たちは判断しておりますが、いずれにいたしましても、もう三、四日で帰ってくるのでございますから、真意は聞きたいと思っておりますが、私は直接引き下げるということは言明しておらぬと思っております。
#307
○下田京子君 中身がどうかということも問題なんですけれども、米価というのは米審で決めるということをないがしろにするという点になるとこれも問題なんだということを私は申し上げたいんです。
 総理、今お聞きになって、御承知だと思うんですが、今の数字は資料にあるんです。ちょっとごらんください。
 さらに、この「自由民主」の一九八六年、昨年の十月号なんです。総理よろしいですか。ここで自民党の農林部会の皆さんもこう言っているんですね。アメリカの保護の実態、これを解説して、こうまで農業を守っているのだから、アメリカの食料費が安いのは当たり前だと。また、それほど農業は重要な産業なんだなと、こういうふうに述べられているんです。総理はどう思いますか。
#308
○国務大臣(中曽根康弘君) 農業はどの国でも大事にしている産業で、あにアメリカのみならんや、日本も大変大事にしていると思います。
#309
○下田京子君 今のようなアメリカの過保護ぶりと、それから日本の状況とを踏まえた上で説明されましたでしょうか。
#310
○国務大臣(中曽根康弘君) レーガン大統領と私の話は、割合に大きい世界的な米ソ・レイキャビク以降とか、そういう話をしておるので細かい話はしませんが、事務レベルの段階では、また農林大臣とリン農務長官との間の話では激しいやりとりがありまして、アメリカはウエーバーで先天的に免除されている品物はたしか十七か二十二ぐらいあったはずです。そういう問題で例えばピーナツがあるけれども、ピーナツを自由化しろとあなた方は言っているが、アメリカ自体はピーナツは入れないというふうにウエーバーに入れておくと。それを日本に要求するというのは矛盾じゃないですかという話を農林大臣も相手方にやっておる。事ほどさようになかなか頑張っていてくれているのであります。
#311
○下田京子君 総理は言わないけれども、事務方の方は頑張ってくれていると。事務方が頑張っているのを総理が変な方向で約束されないように。あるいはもうされているのかもわかりませんが。
 申し上げたいことは、アメリカの米の補助金、言ってみれば輸出補助金ですか、これは大変なものです。一経営体当たり二十五万ドル、約四千万円を一定の限度にしているんですけれども、実際には経営者だということで大学に通っている学生まで含めましてトータルで七十五万ドル、つまり一億数千万円というような補助金も出ているというような実態も明らかになりました。そういう、中でレーガン大統領がことしの一般演説でもおっしゃっておりましたけれども、農業予算を何とか削っていきたい。しかし、その背景には何かというと財政赤字それから貿易赤字、それに核戦争準備のための大軍拡予算というものがあるということが大変明らかになったわけです。
 そこで、お聞きしたいんですけれども、日本にお米の輸入をねらっている、いろんな方々がおられるんですけれども、全米精米業界の副会長をしておりますギャバートさん、この方にも会ってまいりましたけれども、この方はアメリカの下院の公聴会でいろいろ証言されているんです。公聴会の会議録をいただいてまいりましたけれども、農水省、この会議録で特にお話ししていた部分についてどのように言われているか、ちょっと報告してください。
#312
○政府委員(眞木秀郎君) お答え申し上げます。
 このRMAのギャバート証言、米下院の公聴会、昨年の十月一日でございますけれども、ここでギャバートが証言いたしました内容は、非常に口語的な表現となりまして、正確には日本語の訳をつけるということがなかなか難しい文章なんでございますけれども、またその要点といたしましては、一つは、日本の企業から我々、これはRMA、ギャバート個人ではなくてRMA全体のことだと思いますけれども、の行動を支持する電話がかかってきているということが一つ。それからまた、日本の業者から米の実際の取引についての照会が来ておるということがこの証言の中で述べられておると承知をいたしております。
#313
○下田京子君 ちょっと詳しく御紹介します。「私たちは、日本企業からの呼び掛けに圧倒させられてきました。彼らはなによりもまず、私たちにこう言うのです。「ヘイ(いいぞ)、君たちのやり方は正しいんだ。そのままで続けなさい。この状態が変わるのは、アメリカの圧力によるしかないんだから。」」と。違いますか。そうですね。
#314
○政府委員(眞木秀郎君) 英語には自信ございませんけれども、おおむねそのようなことでございます。
#315
○下田京子君 日本の財界、経団連、日経連も米を輸入せよと提言していると思うんですが、どのように言われていますか。
#316
○政府委員(後藤康夫君) 経団連が提言をいたしました米に関する提言の中で、米の輸入につきましては、加工原料用米について一部輸入を認めたらどうか。それからもう一つは、将来の米の管理、米の政策のあり方としまして、段階的に、部分管理という言葉を使っておりますが、そういうところを目指すべきではないか。その場合に、市場安定のために必要な米が不足をする場合の輸入とか、あるいはまた消費者の多様な嗜好の変化にこたえるような米の輸入ということは考えるべきではないかという趣旨のことが含まれておるというふうに理解をいたしております。
#317
○下田京子君 米の完全輸入をという提言もございます。
 総理、財界のこういう米を輸入せよという提言、しかもアメリカの圧力まで利用しようというようなことはギャバートさんの発言なんかでも明らかになっているんですけれども、総理はどう思われますか。
#318
○国務大臣(中曽根康弘君) 国会決議を守って大いに努力していきたいと思っています。
#319
○下田京子君 都合悪いことは全部国会決議の中に逃げ込んでいくということで、みずからの言葉で言われないというのはますますこれは問題だなということだけが大変わかりました。ただ、言えることは、お米の自由化を要求しているのがアメリカ政府である、そしてまた日本の財界である。日本の国民、特にまた消費者も含めて、本当においしいお米を安全に安定的にできるだけ安くと、こういうことを言われていることはわかるわけで、それに総理が責任を持ってこたえていかないとこれは大変問題だということを私は申し上げたいと思うんです。いいですね、それで。問題です。問題だと思いませんか。
 特に、いつも言われてくるコスト問題なんですけれども、十倍価格差があるんだと。総理自身も蛇が棒をのんだように硬直した内外価格差は是正しなければならないみたいなことをよくおっしゃいます。実際に十倍の値段云々ということなんですけれども、現実には日米間の生産者米価の比較、消費者米価の比較、どうなっていますか。農業白書等でできるだけわかるように答えてください。
#320
○政府委員(後藤康夫君) 一般に農産物の価格の内外比較というのは大変難しゅうございますけれども、品質格差だとか銘柄格差だとか、どういう流通段階のものをとるかというようなことがございます。
 しかし、こういった問題はございますけれど
も、仮に消費者価格で日米の米の価格を比較いたしてみますと、国際的な統計としてはILOの各国の小売物価の生活物資の統計がほとんど唯一のものでございますが、これで申しますと、一九八六年に我が国は米国の二倍というふうな数字になっております。ただ、アメリカの消費者米価も東海岸、西海岸、お店によって、また銘柄によって、大袋、小袋でいろいろ違っております。
 たまたま先月リン農務長官が訪日をされまして、そのときに事前にワシントンの近郊のスーパーマーケットを図られて農産物の価格を調べられ、それを日本円に換算したものをパネルに抱いて写真を撮られて、それを我々にもお示しになりました。アメリカの農務大臣が我々にお示しになったものでございますので、これをベースに仮に考えるといたしますと、キロたしか二百十九円というふうに書いてございました。標準価格米はキロ三百八十七円でございますし、これと比べれば我が国は一・八倍ということでございますが、上米、いわゆる自主流通米の銘柄米からつくりました上米の全国平均価格が五百二十二円、東京あたりですと五百五十円ぐらいはしていようかと思いますが、これでございますと二・四、五倍ということで、なかなかとり方によっていろいろございますが、ILOによれば二倍、いろいろなとり方によって二倍ないし三倍というようなところではないかと思います。
 それから生産者価格につきましては、我が国の政府買い入れ価格とアメリカの目標価格を比較いたしますと、昭和五十三年に我が国の価格はアメリカの五・八倍でございました。その後、我が国は非常に需給ギャップがございまして生産調整をやっているというような状況の中で、私どももできるだけ米価の抑制的な運営に努めてまいりました。昭和六十年には四倍というところまでどうにか縮小をしてまいったわけでございますが、六十一年につきましては、一年間の急激な円高の進行ということで、たまたま六十、六十一年は日米ともに政府の保証価格のようなものは据え置きでございましたけれども、生産者価格水準からいたしますと再び五・六倍に開いた、こういうことでございます。
#321
○下田京子君 最近の異常円高でまた格差が広がったということが言われたと思うんですけれども、いずれにしても、総理、十倍なんというような数字は出てこないわけですね。そこは正確に説明しなきゃいけないと思うんです。実際に格差があることは事実だと思うんです。それなりのまた理由があるということもわかったと思うんです。
 私たちは、お米のコスト引き下げということは大変重視はしているんです。そこで大変重要な問題は何かといいますと、コストの六割を占めるのが農機具、農薬等資材費なんです。トラクターなどの資材費をどうやって引き下げることが可能なんだろうかということがやっぱりポイントになると思うんです。
 農水省、トラクターの国内価格、それと輸出価格を比べてどうなっているのか。
#322
○政府委員(浜口義曠君) トラクターの価格等につきまして国内価格と輸出価格の単純な比較というのはなかなか困難な面があります。農林水産省の農林物価賃金統計によりますと、六十年の一台当たりの国内価格、三十五馬力内外のものでございますが、これが二百六十九万二千円でありまして、一方、六十年の暦年でございますけれども、輸出価格については大蔵省の通関統計というのがございまして、これから一台当たりの平均単価を算出してみますと、これは単純な計算でございますが、三十ないし五十馬力のものにつきましては百二十八万四千円となっております。六十二年につきまして両者の方の数字でございますが、国内価格二百七十六万円、輸出価格百八万二千円となっております。
 これらの価格の数字でございますけれども、いろいろ条件がございまして、まず第一に、国内価格は農家の購入価格でありますが、輸出価格は輸出港渡しのFOB、その価格であるということ。あるいは第二番目といたしまして、輸出品には一般にタイヤであるとかバッテリーであるとか、そういったものが装着されておりません。したがいまして、輸出価格にはこれらの部品費あるいは組み立て経費、あるいは輸出先での流通経費等が含まれてないというようなこともございます。また第三番目といたしまして、輸出品には、一般向けに国内向けのものに装てんされております水田用のロータリーというものも含んでおりません。そういったようなこと等々を考えてみますと、両者の間の比較というものをもう少し慎重にやってみなきゃいけないと思います。
 ただいま申し上げましたけれども、これらの条件等を考慮いたしますれば、内外格差はほぼ、大体機械については同等であるというふうに考えてよいのではないかと思っておりますが、輸出品につきまして、その出荷の馬力構成、月別にいろいろ構成が違っております。一概に言うことはできませんが、ここへ参りまして円高の影響により輸出価格は低落傾向にあるということも事実でございます。
#323
○下田京子君 いろいろ条件をお述べになりました。しかしいずれにしても、三十五馬力のトラクターにありまして、国内向けのものが輸出向けより二・六倍も高いというようなことがはっきりしているわけです。そのほか肥料、これは硫安についても尿素にしても、国内よりも輸出向けの方がはるかに安い。これは資料をごらんいただければわかると思うんですが、こういう状況になっているんですね。
 なぜ日本がこうして高いんだろうかという点で、農林大臣、まあ代理大臣でしょうけれども、肥料、農機具、これら、今のお話にもおりましたが、再度調査をして引き下げのために指導いただきたい。
#324
○国務大臣(塩川正十郎君) ただいま事務当局から詳細説明いたしましたが、なお疑問をお持ちのようでございますので、日を改めまして、できるだけ早く調査をいたさすようにいたします。
#325
○下田京子君 調査するだけじゃないんです。これは通産大臣にもあわせてお聞きしますけれども、同じ日本の農機具メーカーが国内向けには高い、輸出向けには安いと。これは、輸出入価格というのは国際価格なんですよ。ですから国際価格に比べて日本のものが高いという点は一体何なのか、ぜひ調査をして指導しなさいと。コスト軽減の大事な部分ですから、この資材費の引き下げのためにきちっと実効あるものをやりなさい、こういうことなんです。
#326
○国務大臣(塩川正十郎君) 私の理解しているのもそのように理解しております。
#327
○下田京子君 通産大臣。
#328
○政府委員(児玉幸治君) トラクターの国内の農家への販売価格と……
#329
○下田京子君 トラクターだけじゃない、肥料も言っている。
#330
○政府委員(児玉幸治君) 肥料も含めますが、私は実は担当が機械の関係でございますので、肥料につきましてはまた後ほど担当の者から答弁を申し上げたいと思います。
 先ほど農林省の方から説明がございましたように、輸出はFOBでございます。それから先生が引用されました国内の農家向けのものは、これはいわば小売価格でございまして、取引の実態等が、あるいはその機械の中身もいろいろ違っているということで比較はなかなか難しゅうございますけれども、全体で判断してみますと、別に輸出物と国内物とで価格に特段の差があるというふうには思えないというのが私どもの認識でございます。
 ただ、いずれにいたしましても、先ほど農林水産大臣代理からお話がございましたようなことでございます。なお一層実態の解明には努力をしてまいり、必要があればそれなりの対応をさせていただきたいと思います。
#331
○政府委員(鈴木直道君) 硫安あるいは尿素の価格の問題でございますが、お示しございました数字につきまして申し上げますと、やはりちょっと対象はそれぞれ違っておりまして、一方は消費地
最寄りの駅での渡し価格でございますし、一方はFOB価格であるということで、実際上は、先生御存じだと思いますが、運賃とかあるいは包装経費とかいろんな経費を加算して比較するのが正確だと存じますけれども、いずれにいたしましても私どもといたしましては、御存じのとおり、肥料価格安定臨時措置法に基づきまして生産者と販売業者との間で共同で価格の取り決めが現実に行われておりますので、その際に適正な価格決定が行われるように、かように私どもも考えているわけでございます。
#332
○下田京子君 代理大臣でもいいですよ、指導していただきたいし、最後に、そのために政治的に総理が責任を持って対応いただけるかどうかということを聞きたいんですが、今事務方の答弁では、必要があれば指導しますと。必要があるから今言っているんでしょう、指導しなさいと。そして、輸送コストがどうのこうのといったって三倍も高いんですよ。問題だから指導しなさいと言っているんですよ。だから、通産大臣の御答弁を求めます。
#333
○国務大臣(宮澤喜一君) よく事務当局にも申しておきます。
#334
○下田京子君 聞こえなかった、もう一度済みません。(「事務当局に言うとく」と呼ぶ者あり)事務当局に言うときますといったって、それは大臣が責任を持ってやれということを言っているんです。ちゃんと答えてください。何言っているんですか。それはふざけていますよ。
#335
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま申し上げましたとおり、よく御趣旨を徹底いたします。
#336
○下田京子君 趣旨を徹底するということは、実効ある引き下げのために努力するということだと理解させていただきます。
 次に、コスト引き下げで大事なのが、生産性向上の問題の中で農用地の基盤整備なんかの事業量を拡大する問題なんです。かなり工期がおくれています。そのために、特別会計でやってきたものだと今建設利息がかさんで農民負担はもう限界に来ているんです。こういう状況の中ですから大蔵大臣、これは大蔵大臣として、内需拡大策を今総理がいろいろ言われておりますけれども、この基盤整備のための予算を確保すること、あるいは金利の引き下げなど十分な対応をとられるように。
#337
○国務大臣(宮澤喜一君) 予算は随分確保をしてございますし、金利もこれは非常に低い金利まであるわけでございますし、農林漁業金融公庫の利子補給も随分しておるわけでございますから、これは最大限の努力を私はしておると思います。
#338
○下田京子君 農水省、今予算は十分づいているとか、工期のおくれがないみたいなことを言われていますけれども、御説明ください。
   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
#339
○政府委員(鴻巣健治君) 私ども土地改良の長期計画に基づきまして土地改良事業をやっておるのですが、今の厳しい財政事情の中での公共事業の抑制ということ、これはどこでもそうなんですが、そういうものの壁にぶつかりながら必要な予算の確保に努力をいたしておるところでございます。
#340
○下田京子君 数字を挙げて御説明してください。特に特別型の国営かん排事業が五十四年当時がどうで六十一年からどうなっているか、五十九年ですか。それから、それを五年間早めたら一体どのくらいの事業費が必要なのかなとです。
#341
○政府委員(鴻巣健治君) 昭和五十四年の国営かんがい排水事業、特別型の事業費は八百七十六億三千九百万円であります。これが六十一年度は千四十二億九百万円、これが事業費でございます。国費に直しますとこれが、五十四年が五百五十九億三千六百万、六十一年度は六百六億五千百万円になるわけであります。
 工期は、平均的に申しますと、五十四年は国営かん排の特別型で十年、六十一年度は十二年、これはいずれも当初の予算ベースでございまして、補正がついていますとこれよりも期間は短くなっているという実績がございます。
#342
○下田京子君 額そのもので絶対額そのものがそう伸びてない、むしろ事業量からいったらおくれていて工期がおくれている、これは事実なんですよ。ですからそれを促進して早くにその基盤整備を進めてほしいということを言ったんですよ。大蔵大臣、少しは理解できましたか。
#343
○国務大臣(宮澤喜一君) わかりました。
#344
○下田京子君 おわかりいただけたということなんですが、総理、今内需拡大五兆円ということをしきりに言われていますでしょう。この基盤整備を進めていくということは非常に内需拡大に効果がある、よろしいですね、それへの対応。
#345
○国務大臣(中曽根康弘君) 補正予算の問題については慎重にしないといけないと言われておりまして、だから申し上げられないんです。
#346
○下田京子君 それはそのとおりなんですが、決意はどこにあるかというその気持ちはお述べになったっていいと思うんですよ。
 次に、先ほど総理が言われましたが、ウェーバーの問題なんです。アメリカが日本は落花生やなんかもっと自由化せよとこう言っていますが、アメリカが一方でウエーバーという品目を持っていまして規制しているんですね。このウエーバーって一体どういうものなんでしょうか、わかりやすく農水省。
#347
○政府委員(眞木秀郎君) ガットにおきましては、その規約の第二十五条におきまして、一定の手続のもとに各国がガット上負っておる義務を免除することができるということを定めておりまして、この義務の免除のことを一般にはウエーバーと呼んでいるわけでございます。
 アメリカの場合、先ほど引用されました落花生を初めといたしまして酪農品等十四の品目につきまして輸入数量の制限の一般的廃止義務を定めましたそのガットの十一条の義務免除、それからまた関税、課徴金の譲許を定めたガット第二条第一項の義務免除等取得しておりまして、これがいわゆるアメリカのウエーバーというものでございます。
#348
○下田京子君 アメリカの国内法に基づいて、国際的に輸入制限措置を効果あらしめているものだと思うんです。お話の落花生の輸入制限なんですけれども、日本に対してけしからぬと言っていて、アメリカでは実際どういう状態になっていますか。
#349
○政府委員(浜口義曠君) 米国農務省発表の一九八四年、八五年の確定値によりまして米国における落花生の消費量について申し上げますと、百二十四万トンでございます。これに対しまして国内生産量二百万トンということでございまして、輸入量は一千トンという数字になっております。
#350
○下田京子君 今の御説明のものは総理、皆さんに資料はもう配ってあるんですよ。アメリカは九九・九%が国産だということですね、日本はどうですか。
#351
○政府委員(浜口義曠君) 我が国におきます落花生の消費量でございますが、六十一年の豆年度、六十年の十月から六十一年の九月でございますが、八万七千トンとなっております。一方、輸入につきまして同年度におきまして六万二千トンの輸入となっておりまして、我が国の落花生消費量の三分の二程度を輸入しているという状況でございます。
#352
○下田京子君 まさにどっちがけしからぬかということがわかると思うんですね。
 次に乳製品です。アメリカのバターの輸入、これはどうです、チーズとあわせて。
#353
○政府委員(京谷昭夫君) アメリカにおきますバターの輸入状況でございますが、昭和六十年、暦年でございますけれども、年間の消費量が五十八万二千トンに対しまして、輸入はほとんどないという状態でございます。
 それからチーズでございますが、年間の消費量が二百四十五万四千トン、これに対しまして、輸入量は十三万七千トンと承知をしております。
#354
○下田京子君 アメリカにおけるバターの輸入はゼロ、チーズはわずか五・三%。日本はどうかといいますと、これは生乳に置きかえまして二百七十五万トン、約四割を輸入しております。一方、
 国内の酪農家はもう生産調整ということで乳を搾るな、川に捨てるというようなことも出ているわけです。つまりこれはどういうことか。アメリカは国産のチーズを大切に育てている、日本では世界じゅうのチーズを食べられるけれども、日本の独特のチーズは育てようとしない。どう思いますか、総理。目をつぶって、聞いているかどうかわからぬからですよ、今まで。
#355
○国務大臣(中曽根康弘君) 国によってはいろいろ事情があるけれども、しかし我が国は我が国の立場を厳然と主張しなければいかぬと、そう思っています。
#356
○下田京子君 我が国の立場を主張していく、その主張の観点がどこかということが問題なんですよね、先ほどから申し上げておりますように。本当に日本のお米にしても、あるいは今言ったチーズにしても、日本のものを育てていこうという姿勢があるかどうかということなんです。世界最大の輸出国、そのアメリカですらこうしてウエバーというような形で保護しているんです。ECもそうなんです。日本の総理として本当に日本の農業をしっかり守って発展させていく、その意思を御自分の言葉で語ってくださいよ。
#357
○国務大臣(中曽根康弘君) 下田さんは、私は国会でいつも農は国のもと、農業は生命産業であって普通のトランジスタラジオをつくるような工場とは違う、民族の苗代でもある、そういうことを言って、農業を大事にしなければならぬ、そう言ったのをぜひもう一回思い出してもらいたいと思うんです。
#358
○下田京子君 私は今聞いているんですから、今具体的に答弁を繰り返し求めていたんです。ですから総理の立場、これが非常に基本的な姿勢のところで問題だというのが全体の中で私は明らかになったと思うんです。その点を申し上げておきます。
 そして、何度も申し上げておりますけれども、自給率の向上をやっていくこと、これが今本当に大事なんだ、日本経済のつり合いのとれた発展を図っていくこと、これがまさに行政の責任なんだということを私は最後に申し上げておきます。
 次に移ります。去る四月十五日、生活の実態を無視した中で悪質滞納者扱いをされまして、金沢市の四十七歳のお母さん、主婦が死亡するという事件が起きております。厚生省、事件の概要について説明してください。
#359
○政府委員(下村健君) お話のありました金沢市の問題でございますが、家族構成が五人、夫の方が五十七年に別居をいたしまして、その時点で世帯が分離されたわけでございます。その後、夫については、恐らくこれは友人の借金の保証人になりまして、債権の取り立てを免れるために行方不明になったという格好でございますので、市内を転々としておられたのではないかと思いますが、夫の方は登録の住所におられませんで、被保険者の資格がはっきりしないまま続いていたわけでございます。
 残された家族の方は妻子だけで、これも五十八年、五十九年と市内を二回ばかり転居をしているわけでございますが、五十九年度の保険料については、全部ではありませんがかなりの程度を納めると。六十年に入りまして保険料の滞納がひどくなったために、おおむね二カ月に一回程度訪問をいたしまして納付の指導に出向いたけれども、留守がちであったために実際に面談ができたのは年二回程度であったということでございます。その後長女、これは社会に出て就職されているわけでございますが、長女の方と一緒になったり、あるいは実際上は所在がわからなかった夫の方とも連絡があったんじゃないかと思いますが、いろいろ指導をいたしまして、市の職員の方から、そういうふうな事情であれば簡易申告というふうなことをいたしまして保険料の減免手続なんかをとったらどうかというふうなことをいたしましても、払いますというふうなことで、実際には払われないという状態が続いていたまま今年に至ったわけでございます。
 その前に昨年の十月、これが被保険者証の更新時でございますので、一度市役所の方においでくださいというふうなことをいたしましたけれども、通知は受領されていてもなかなかおいでにならないということで六十一年は終わっておるわけでございます。ことしの三月に市の職員が訪問したところ、たまたまその奥さんの方がおられまして、法律改正の趣旨などを説明いたしましたところ、その段階で分納をいたしますというふうな約束をされて、三月の末までに窓口にいらっしゃいという話をしましたら、そのときには特に病気の様子はなかったようでございます。それ以前も六十年あたりでは病院には普通にかかっておられたようでございます。それてそのまま四月になりまして、市役所に全くおいでにならないままで、分納の約束をしておられたんですけれども、それも履行されないということで国民健康保険の資格証明書を郵送した。
 それで、その後四月十一日になりましてその奥さんの方が高血圧で倒れて、これは救急車で入院をされたようでございます。その段階に至りまして病院のケースワーカーから、特別の事情、こういう事情になったので被保険者証を交付できないだろうかという問い合わせが金沢市にありまして、金沢市は、病気の内容等いろいろ事情を伺った上で検討いたしますと回答をいたしております。その後、入院後二日たった四月の十三日に、それまで行方不明であった夫の方がケースワーカーと一緒に市役所に来られて滞納保険料の一部約一万円を納付いたしまして今後の納付を誓約したということで、その段階で改めてもとの家族と、御主人だけ別になっていたわけですが、一つの世帯として認定をした上で被保険者証を交付した。その後四月十五日になりまして奥さんの方が亡くなられた。こういう経過になっているわけでございます。
#360
○下田京子君 一、二正確に確認したいんですが、大変お気の毒だったと思うんです。今のお話を伺っていると、生活に困っていた、支払う意思もあった、保険証をいただけない中で医者に行けなかったという経過が明らかになったと思うんですが、同時に、Aさんの病気がいつごろからどういう形で進行していたか御存じでしたら……。
#361
○政府委員(下村健君) 五十七年と思いますが、五十七年にその入院して亡くなられた病院において高血圧と肝臓病の診断を受けておられるというふうに聞いております。
#362
○下田京子君 亡くなられる直前に意識不明で救急車で病院に運ばれたということなんですが、Aさんは、保険証がないので病院にも行けないと言い残して亡くなられたと言われます。なぜ保険証を渡さなかったんでしょう。
#363
○政府委員(下村健君) これはことしの一月から老人保健法の改正という中で国民健康保険制度の改正が行われまして、この方の場合には、保険料納付について約束をしながら払わない、また、お話をしたいと言っても市役所の方にも全くお見えにならないというふうな状況が続きましたので、亡くなられた時点においては被保険者の資格証明書というものが交付されたわけでございます。
#364
○下田京子君 生活に困っている方あるいは支払う意思があるのに支払えないという方には、保険証を渡さないということでよろしいんですか。
#365
○政府委員(下村健君) 支払うということは確かに口頭ではおっしゃったのではないかと思います。ただし、実際にはその約束は一回も守られなかったということで、市役所の方では、これは支払う意思がない、まじめに約束を守ってもらえないということで資格証明書を交付するという格好になったんだと思います。当然、こういうケースで本当に払えないということであれば、保険料の減免措置、分納ということについてもいろいろやり方があるわけでございます。その面について、簡易申告をして保険料の軽減手続をとったらどうかというふうなことも市役所側は勧めているようでありますが、それにも応じられなかったということで、単純に支払う意思があったんだというふうにおっしゃられることは、ちょっと事実から見ますと、市役所側としては尽くすだけの手を尽く
した上でこういう結果になっているというふうに私どもは考えております。
#366
○下田京子君 今の尽くすだけ尽くしたというのは事実と違いますね。生活に困っているという事実をどう認識したか。それから、連絡をとったけれども居住不明のために本人と会えなかったとか、そういう報告が出されていると思いますけれども、どうですか。
#367
○政府委員(下村健君) 二カ月に一遍程度連絡をとるような形で金沢市の場合はやっているようでございますが、留守がちであって、実際に面談ができたのは、六十年度におきましては五月二十三日、同じく九月二日、六十一年につきましては七月八日、それから八月二日、それからことしに至りまして先ほど申しましたように三月二十二日と、大体年に二、三回はお目にかかって話をしているわけでございます。それで、その際に今回の法律改正の趣旨でありますとか、あるいは簡易申告をしてはどうかというふうな説明をいたしておりますが、その手続をとられなかったということでございます。
#368
○下田京子君 私は、厚生省を通じていただいている資料によりますと、六十一年十月一日、実際の居住不明のために直接連絡不能というのをいただいているんですね。間違いないですね。
#369
○政府委員(下村健君) 六十一年の十月一日には、被保険者証の更新の時期に当たりますので居所あてに通知をいたしまして、以後再三同様の通知を行ったわけでありますが、文書の返送はなく、受領されたわけでございます。同じ場所でその後にお目にかかっているわけですから、当然文書は届いていたというふうに考えております。
#370
○下田京子君 そうすると、報告そのものがこれは事実と違うということを今御答弁になったと思うんです。
 それで問題なんです。払う意思がある。しかし払わない。それはなぜなのか。生活に非常に困っている。この事実をどう解決するか、これが市納付相談だと思うんです。ところが、「国民健康保険法の改正について」ということで文書を出している。チラシですね。何と言っているか。「保険料の滞納のあるかたについては、今後保険証を交付致しません。かわりに資格証明書をお送りします。」、こういうふうな形での指導ではこれは行き過ぎだと思いますが、厚生大臣どうですか。
#371
○政府委員(下村健君) 被保険者の方で保険料を納めない場合に被保険者証の交付がなされない場合がある、これはそのとおりであります。ただ、金沢市の言い方が正確にその事実を書いていたかどうか、その点については検討の余地があろうかと思いますが、全く法に反する、あるいは事実に反するということはないと考えております。
#372
○下田京子君 市当局と生活と健康を守る会の方やその関係者がいろいろとお話し合いしているんです。厚生省にも来ているんですね。市当局は、これは行き過ぎだったと言って認めて、以後改善を約束されているんですけれども、その事実はつかんでないんですか。
#373
○政府委員(下村健君) 特別の事情について記述のない問題の文書につきましては検討の上修正をするということで、まだ金沢市において具体的にどういう形にするかということを検討中であるというふうに報告を受けております。
#374
○下田京子君 私どもは、九十九世帯に同じような資格証明書を送った方々に対して近日中に全部訪問して、その方々にできるだけ滞納の支払いの意思があるかどうか確認して、滞納分の支払いの意思がある人には保険証を渡すような方向でやりたい、こういうふうに受けているんです。私はこれが当然だと思うんです。厚生大臣どうですか。意思があっても実際に資金余力がない、こういう場合、即悪質だとはみなさないということが確認されていると思うんですが。
#375
○国務大臣(斎藤十朗君) 下田先生の御指摘の点につきましては、その事実関係等についてただいま保険局長からるる申し上げたとおりでございまして、おわかりをいただけたことと思うわけでございますが、いわゆるAさんが四十七歳で脳出血でお亡くなりになられたということについては大変お気の毒に思っております。しかしながら、先生が御指摘のように資格証明書であったがゆえにお亡くなりになったということではない、そうは言えないのではないかというふうに思います。四月の十一日に倒れられて医療機関に運ばれ、そして診療を受けられたわけでございまして、その後四日目にお亡くなりになられたということでありまして、医療は適正な医療が施されたというふうにまず考える次第でございます。
 もう一点は、国保の改正に伴います措置につきまして、今るる御説明を申し上げましたように、それなりの手だてを非常に熱心に数多く踏んでおるということの報告を受けております。そして、その間におきましては、たび重なって滞納保険料を支払うということをおっしゃりながらお持ちにならないというようなことがたび重なっておるということも事実でございます。また、一番あれでございますのは、Aさんが倒れられて二日目には行方不明の御主人があらわれて出てこられて、そしてこれまでの滞納の一部を支払われ、これからの支払いについても誓約をされ、そういうことによって保険証を交付したという事実を考えてみますると、そのようにいよいよ大変になったらあらわれてきて支払っていただくということではちょっと困るのではないかというふうに思うわけでございまして、こういうようなことをずっと総合的に勘案いたしますと、金沢市初め保険者のこの問題についての取り扱いは非常に適正に行われていたというふうに私は考える次第でございます。
 一般論といたしましては、保険制度は、国民皆保険ではありまするけれども同時にみんなが拠出し合う保険ということでありまして、まじめに非常に苦しい中でも保険料を支払っていただいている方のことを考え合わすならば、この支払いについてみんなが責任を持っていただくということがすなわちみずからの健康と生命にも責任を持つということになるわけでございまして、そういうような意識の高揚ということが今回のこの国保の改正の趣旨でありますとともに、この趣旨を生かすように今後とも丁寧に相談や指導に保険者が当たるように厚生省としては十分指導をいたしてまいりたい、こう考えております。
#376
○下田京子君 なぜ資格証明書だけで医者に行けないんだという話がありましたが、この資格証明書というものが一体どういう意味を持つかなんです。大臣、保険料滞納者は即悪質滞納者、そして保険証の交付をしない。そのかわりに、あなたは悪質ですよというレッテルを張られたようにこの被保険者資格証明書というものを出しているわけですね。こういう証明書の交付に当たっては、慎重を期すということで随分法審査の際議論されたと思うんです。ところが、実際に運用はそうなっていないという点でこういう悲劇が出ていると思うんです。違いますか。
#377
○国務大臣(斎藤十朗君) 先ほど御指摘のありました金沢市の文書で、滞納者即資格証明書であるという趣旨の書き方がしてあったということにつきましては、これは必ずしも適当ではないということで改善の余地があろうというふうに思います。
 しかし、今先生の御指摘がございましたAさんの件につきましては、るる申し上げましたとおり、それなりの手順を丁寧に親切に踏んでおるというふうに思わしていただいております。
#378
○下田京子君 Aさんの例については、懇切丁寧にやられているという事実は全く逆です。これだけは、今の報告が間違っているということを私は言っているんです。ですから、もう一度調査をしてほしいこと、これは約束してほしいんです。再調査です。これは大臣に申し上げます。事実と違う。
#379
○政府委員(下村健君) 私どもといたしましては、石川県並びに金沢市、それぞれ直接に照会をいたしまして調べましたので、御報告を申し上げた点に相違はないと考えております。
#380
○下田京子君 繰り返し申し上げますけれども、その事実経過については正確でないところがある
んです。ですから再度御調査をいただきたいと言っているんです。
#381
○政府委員(下村健君) Aさんのケースにつきましては、前年につきましては例えば減免の手続をとって保険料も軽減されているわけでございます。ところが、問題の六十一年それからことしについてはそういう手続を一切とっていない。市役所側からおいでいただきたいというお願いをしても、会って払います、こうおっしゃるだけで払っていただけない。こういう状況が続いたわけでございますので、事実について基本的な事実は申し上げたとおりでございますので、なお、さらに細部について私どもとしても調べてみますが、基本的な事実については申し上げたところに相違はないと考えております。
#382
○下田京子君 調べると言いましたから、疑問な点はお調べいただく、それでいいんですよ。そして、こういう悲劇が起こらないようにしていくというのが政治の務めだと思うんです。
 参考人、お忙しい中をおいでいただいて、お待たせして恐縮でございます。二、三お聞きしたいんです。
 第一に、今問題になっております被保険者資格証明書の交付の問題と医療機関との関係なんです。医療機関の窓口で、資格証明書をお持ちになってきた方とのトラブルというものが大変起きるのではないかと心配なんですが、この点いかがでしょうか。
#383
○参考人(吉田清彦君) 私どもは、トラブルが起こるかどうかということについては、やはりこういう制度を導入いたしましたので若干の懸念は持っております。ただ、医療機関といたしましては、医療の給付の方を担当している立場でございますから、保険料の納入ということについて、本来これは被保険者と保険者の問題だ、こういうふうに思っております。しかし、医療というような特別な性質と申しましょうか、そういう問題から、こういったことに巻き込まれると言ってはなんでございますが、そういう懸念もございますので、いろいろ今までも厚生省当局にもそのトラブルを防ぐようなできるだけの相談、申し入れ等はしてきたつむりでございます。
   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕
#384
○下田京子君 その結果、現実に今時点で具体的なトラブルのそういう事例というのはお耳にしていませんでしょうか。
#385
○参考人(吉田清彦君) 今回の金沢市の事件も実は私どもは新聞紙上等で知った次第でございまして、日本医師会の組織的ないろいろ報告等は県の医師会というのを通じていただいておりますけれども、現在までそういう窓口でのトラブルということについては私どもは報告を受けておりません。
#386
○下田京子君 窓口でのトラブルの報告がないということなんですが、私たち二、三のことは伺っています。ですから医師会としてもぜひお調べもいただきたいなと思うのですが、実際に資格証明書の交付を受けた被保険者が窓口に行って、全額支払う意思があるけれども払えないというような事態が起きたときにはどういう対応をされるんでしょう。
#387
○参考人(吉田清彦君) 日本には国民健康保険制度あるいは健康保険制度がもちろんあるわけですが、そのほかにもいろいろな福祉制度といいましょうか、そういう制度的なものもやはりあるわけでございますので、私どもはこういうような事態が生ずるということは甚だ遺憾とは存じておりますけれども、そういったほかの医療の受けられるような福祉的な制度を十分理解していただければ相当その部分については防げるのではないか、こういうふうに思っておりますし、ですからその交付の際にはできるだけ行政側には患者さん等に、患者さんといいますが被保険者に十分な指導を、一回だけではなくて何回も重ねて指導をお願いするということと、それでもなおかつ未納、自己負担分が徴収不能というときには、現在の国保法でもたしか四十二条の二項に保険者の最終的な責任というのが規定されておりますけれども、そういった法文の趣旨、精神を十分体得して、これを生かすように厚生省当局とは今日まで話をしてまいりましたし、そういう了解をいただいておりますので、そういった場合にはこの趣旨を生かして、保険者と十分連絡をとった上でいろいろな未払い問題というようなものについては解決するように、そのように各県医師会には連絡しております。
#388
○下田京子君 ただいまの御連絡されているという文書、三月十六日付のものですね、私も読ませていただいたのですが、現実に診療費を支払えない場合あるいは支払おうとしない場合というような事例が出たときに、具体的にはどういう対応をするんでしょう。
#389
○参考人(吉田清彦君) 普通、医療機関というのは、日本医師会に所属しておる場合でも各郡市医師会というのが、県医師会の下と言っては変ですけれども、同じ法人格ですけれども、そういう組織的な問題として郡市医師会というものがございます。そこにはそれぞれ、いろいろこういう保険問題等について医師会として各行政側と折衝の役を担っている担当者がいるはずでございますので、そういう方を通じて個々の医療機関から連絡して、市町村、それぞれの保険者側と相談した上で処理する、こういう方策をとっております。
#390
○下田京子君 現実に診療費が払えないということでもって、これは医師法上診療拒否ということはできないわけですね。そういう場合にもどんな対応をされるんでしょう。
#391
○参考人(吉田清彦君) もちろん個々の医療機関によっては多少の違いはあるかもしれませんけれども、大体の医療機関では、直ちに市の福祉課と連絡して、あるいは生活保護の適用を受けるなり何なり、あるいは減免措置を受けるなりというように、そういうように指導しているのが一般的だと、こういうふうに考えております。
#392
○下田京子君 参考人、お忙しいところ本当にありがとうございました。
 今お話しされました、現実に支払おうという意思があっても窓口で払えないようなときにそれなりの減免の指導等が必要なんだというこの減免なんですが、義務減免のみならず、法律に基づいて条例をつくって申告で減免という、そういう制度があると思うのですが、この点についてどのような指導をなされていますか。
#393
○政府委員(下村健君) 一般的な例としては災害等の場合の減免についての定めをしているのが通例であると考えておりますが、今回のようなケースについて言いますと、先ほど医師会の吉田先生の方からもお話がありましたけれども、医療機関側と保険者と相談をいたしまして解決をする。今回のケースも最終的には保険料の一部を納めるという形で、医療費の方は払わない形で決着を見ているわけでございます。それぞれのケースに応じて保険者と医療機関の話し合いによって解決をするという形になろうかと思います。
#394
○下田京子君 大臣、御指導をいただきたいのです。法改正により、悪質者とみなして資格証明書を出すというようなケースが多々起きていくようなことがないように十分配慮してもらいたい。これはやるべきでないと言いたいのですが、これが一点。
 もう一つは、今言った申請に基づく減免条例ですが、条例はつくっても現実には適用する基準もつくってないというのがほとんどなんです。福島の場合には九十市町村あるうち実際に条例をつくっているのが五十六、現実には基準がない、こういう状態なんです。ここをきちっと指導してください。
#395
○国務大臣(斎藤十朗君) 資格証明書を発行するに至りますまでにはいろいろ懇切丁寧な指導、相談を行ってまいることになっておりまして、そういう中には、軽減措置がある、減免措置がある、また生活保護の措置もあるというようなことも当然いろいろ指導、相談をいたしてまいるべきでございます。
 また、減免につきましてその制度がないところが多いということでございますが、全体的に見れ
ば、全体の国保保険者の中の八五%が減免措置をとっておるというふうに報告を受けております。
#396
○下田京子君 時間で終わりますが、ただ、条例があるかと実際に適用しているかというのは現実が違うので、そこを再指導をと申し上げたところです。
 終わります。
#397
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で下田京子君の質疑は終了いたしました。(拍手)
    ―――――――――――――
#398
○委員長(桧垣徳太郎君) 次に、橋本孝一郎君の質疑を行います。橋本君。
#399
○橋本孝一郎君 私は初めてこの席に立つものであります。そういう立場で今の百八国会を見てみますると、異常とも言える事態がたびたびありました。今も当委員会におきまして六十二年度予算が整々と審議されておりますけれども、異常な部分が私はあると思います。
 それはまた後ほどに指摘することにいたしまして、さて総理、円はわずか一年半で約六七%も上昇いたしました。貿易黒字は世界全体の約六〇%を日本が占めています。それが円高の最も大きな原因であると私は思います。にもかかわらず、日本の政策当局は市場介入という一本のさおだけで乗り切ろうとしてきました。G5、G7などで各国協調を申し合わせてもその都度円高が加速されているという状態です。そうなるとそのときいつも大蔵省、日銀当局は、異常な相場形成だ、こう話ってこられたのであります。異常なのは私は相場ではないと思います。日本経済が世界経済の舞台において他を圧するマンモスとして登場しながら、互恵の原則に立った政策を編み出せないでいる日本を世界市場は冷たく突き放し、厳しい審判を下しているのではないかと私は思います。それらについて総理の御見解を賜りたいと思います。
#400
○国務大臣(宮澤喜一君) せんだっても申し上げたことでございますけれども、非常にドルの高い時代、一九八〇年から八五年、ころでございますが、この間に日本の貿易黒字が非常に伸びまして、また国内がしたがって過度に輸出依存体質に変わっていったと思われます。しかし、その間また油が非常に高かったものでございますから、我が国としては石油を買うためにどうしても輸出をしなければならないという意識がなかなか頭から去りません。そういうこともございました。しかし、その後にいわゆるプラザ合意がございまして、それからきょうでもう二十カ月でございますが、これだけ今度はドルが下がりましてもアメリカの貿易赤字というものは一向に減らない。
 これも異常と言えばまことに異常なことで、我々としてはつまり今から顧みますとそういう原因がわかるわけでございますけれども、言ってみればそのときそのときの事態に日本経済がいわば一生懸命対応した結果としてどうもこういうことになってしまった。でございますから、やはり前川リポートの言いますように過度の輸出依存体質を改めて、そして社会資本を充実して、先ほど介入ということをおっしゃいましたが、これは乱高下を防ぐためのいわば補助的な手段でございますから、各国の政策協調というものがどうしても基本でなければならないと思います。
#401
○橋本孝一郎君 私のお尋ねしたい趣旨と若干ずれておるのでありますが、しかしそれにしても、先ほどのお話を聞きましても、たしか一年半のこの間で段階的に円高になっていく、その時点その時点で六百億ドルとかあるいはその次は九百億ドルになっていくだろう、こうなれば大変なことになっていくということはその都度その都度の段階で報道され、そしてまた国民はそのことを知りながら早くなんとかしてもらいたいというのがこの一年半の経過だと思うんです。それに対して政策当局は政策としてどうこたえたのかということをお聞きしたいわけなんであります。
#402
○国務大臣(宮澤喜一君) 昨年秋にかなり大きな補正予算を組みましたり、またこの六十二年度予算におきましても公共事業は事業量において五・二%の、これは特別にそういうことをやったりして対応をいたそうとしておるわけでございます。が何分にも、日本経済の体質が八〇年から八五年の間に変わってしまったということはこれは一つの補正予算、一つの予算ではなかなか簡単に戻りませんで、やはり努力を積み重ねていくことが大事だと思います。
#403
○橋本孝一郎君 そこで、私申し上げたいのは、そういったいわゆる変化に対して六十二年度予算はどのようにこたえたのか、お聞きしたいと思います。
#404
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま申し上げましたように、やはり公共事業の事業量をできるだけ確保するということは大事なことだと考えまして五・二%の増になっておりますが、また同時に、ここへ参りますと雇用そのものに不安が出てまいりましたので、三十万人の雇用造出計画も予算に盛り込んでおりますし、前川報告に申しますように、やはり産業転換ということがどうしても大事である、これが基本であるということでございますから、産業転換の円滑化法を国会に提出いたしまして、産業基盤整備基金を設けるといったようなことで産業の転換を促そうといたしております。
#405
○橋本孝一郎君 産業転換は、産業自体としてそのような変化の中で産業みずからが労使努力してきておるわけです。もちろんそれに対する容易な変換あるいは救済、それを国家のいろいろな救済法律、政策によってやられてきたことは私はこれは結構だと思うんです。問題は、そういうふうな変化をしていく中で政策として、例えば今内需拡大と言われるのでありますけれども、その中で社会資本の充実と言われますけれども、今やらなきゃならないのは私は社会資本の充実そのものが目的だと思うんです。それはどういうことかといえば、非常に日本は今経済力がついておる。国としては一番、あるいは別な言葉で言えば発展しておる段階であります。そういう段階でありますときにこそ社会資本の充実をやらなければできる時期がないと思うんです。イギリスにしてもあるいはアメリカにしても、それぞれそういう発展期においてヨーロッパ諸国はそういうものを充実し、今日のいわば社会資本の充実した国になっておるわけなんです。その国だってもう百年も栄えていたわけじゃないのでありまして、せいぜい二十年か三十年なんです。日本もようやくその力がついてきた、ここ数年前から。だから、そういう政策を予算の中に組み込んで進めていくことが私は必要じゃなかったかと思うわけでありますが、今までのいろいろなお話を聞いて大体わかりますので、次へ進みます。
 そこで、私は異常な部分と言いたいわけなんでありますけれども、補正予算というのは本来の性格はもう御承知のように、景気の予想以上の不振だとかあるいは災害の発生など、当初予算の編成段階では予期できない事態が発生したときに補正する性格のものだと思います。それを、今審議しておる当初予算の成立する以前から補正予算の必要性が叫ばれております。私は中身に入るというんじゃありません。これももう厳然たる事実であります。しかもその成立は七月までとする、こういうことになってまいりますと、その性格は現在審議している本予算案の実質的な修正案とみなすべきではないのかと思うんですが、いかがでしょうか。
#406
○国務大臣(宮澤喜一君) 普通でございますとこの時期にはもう昭和六十二年度の予算の執行が始まっておりまして、恐らくは真っ先に公共事業の前倒しが決定され実行に入っておったと思われるその時期にもうなっておりますが、いろいろな事情で予算の成立がまだできていない。そこで、やはり本予算というものがまずございまして、それを執行して、そうして次の段階としての入り川ならば補正という、そこはどうしてもそういうやはり手順が必要でございます。それを一つにまとめてということにはなかなかまいりません。したがいまして、今回補正予算を先々考えるといたしましても、やはりまずこの本予算を執行させていただくということが前提であろうと思います。
#407
○橋本孝一郎君 本予算作成の段階で、そういう
ものは近時点として見通せなかったはずはないわけなんです。ですからそういう段階で、もちろん予算編成要綱というのはあるんでしょうけれども、それ自体もそういった実績、予測のもとにやはり編成されて、そしてそれに基づく予算を組んでいくというのが普通のあらゆる予算を組む場合の私は手順だと思います。
 総理にお聞きしたいんですけれども、そういうものが見通せながらも、しかも六十二年度予算の中で売上税という問題が出てまいりました。しかもこれは公約違反である。それでそういうものを持ってくればどうなってくるのかということも十分見通されたと思います。私そこでちょっとついでにお聞きしておきたいんですけれども、総理がよくおっしゃいます、多段階、網羅的、普遍的、縦横十文字に投網をかけるような間接税が大型間接税だ、こうおっしゃるんですけれども、この地球上に存在する文明国家でその類例があるのかどうかお尋ねしたいと思います。
#408
○政府委員(水野勝君) 御承知のように間接税には一般的に、個別の物品、サービスを特定いたして課税をいたします個別消費税と、サービス、物品等を限らず一般的に課税をお願いする一般的な間接税とがございます。また、一般的な間接税につきましては、それが蔵出しの段階、それから小売の段階というそれぞれ単段階でお願いをする課税もございますし、各段階ごとに、いろいろ各段階を通じまして課税をお願いする多段階のものもございます。
 現在、単段階のものといたしましては、カナダにございます製造者の卸売税でございますとか、スイスの卸売税とかがございます。それからまた単段階と申しましても小売の段階のものもございます。その典型的な例はアメリカの州におきますところの小売売上税でございます。それから多段階のものといたしましては、ヨーロッパにございます御承知のような付加価値税がございます。
 そういった大きな方向のものとしてはヨーロッパ型の多段階の付加価値税、アメリカの小売売上税、カナダの製造者消費税、こういった分類になろうかと思うわけでございます。
#409
○橋本孝一郎君 講義をありがとうございました。私は、そういうことなんじゃなくて、一般的な国民が見た場合に、いわゆる大型間接税というものの定義もありましょうけれども、EC型付加価値税というのはこれこそが私は大型間接税だと思うんです。売上税というのは名前こそ変えても丸々これはコピーなんでありまして、でありますから例外を設けなければ大型になるとかならぬとか言うんですね。結局例外を設けるということは大型の大型たるゆえんだと私は思うんです。まあこの論議はさておきまして、いずれにしてもこういういわば非常事態の中で先ほど申し上げましたように六十二年予算ではそういう困難なものを持ち出して、結局異常な事態になった。そしてまた今、この六十二年度予算を審議しておる段階において補正予算という、今までかつて補正予算というのは、何か私も初めてですが、お聞きしましたら大体九月ごろに出たのが一番早いのだそうでございますね。ある程度執行を見ないとわからないわけですから、夏に出たというのはこれは異例です、初めてです。ですから私は異常だと言う。だから、一般国民から見ればこれはまさに実質的な修正だということになります。それは言えない言葉かもしれませんけれども、と思います。
 さて、総理に今度はお聞きしたいんですが、二刀流発言についてですけれども、総理は当委員会において、これからは内需拡大と行政改革路線の二刀流で対処すると述べてこられましたが、二刀流という意味からすれば相手によって対処の仕方を変えるとも受け取ることができるわけでありますが、その真意はいかがでしょうか。
#410
○国務大臣(中曽根康弘君) さっきの話ですが、自民党が内需振興の補正予算を組むと、そういうふうに決めておりますのは、これは急激な円高等に伴う経済の変化に対応するための補強である、そういうふうにお考え願っていいと思うんです。修正というよりも補強ですね、そういうふうにお考え願いたいと思うんです。
 それから二刀流と言いますけれども、それは一方においては行革を断行していく。これは後退すべきではない。しかし、片方においては社会資本の充実や内需の拡大というのも、今申し上げたような、今の時代の非常に急激な必要として登場してきた。それもこなさなけりゃならぬ。そういう二つの方法を同時に成立させるやり方でいこう。そういう考えで、それは大槻新行革審においても認めておるところで、やってよろしいということであると思っています。
#411
○橋本孝一郎君 総理、御承知のように我が党は以前から国の財政赤字を、景気の循環に伴う循環赤字とおっしゃられます構造的要因に基づく構造赤字とを明確に区別して、前者に対しては経済拡大策で対処し、後者に対しては行革の徹底で対処する。このことを主張し、過去の国会論議やあるいは党首会談においても政府に申し入れてきたのであります。総理はこの事実をお認めになりますか。
#412
○国務大臣(中曽根康弘君) 民社党の皆さんがそういう御主張をお申し越しになったことはよく心得ております。いよいよそういう時代が来たと、そういうふうに考えます。
#413
○橋本孝一郎君 いよいよその時代が来たというのは私はもっと早く悟るべきだったと思うのでありますが、総理の二刀流というのは、結果として我が党のこの主張を私は認めたということになるのではないかと思います。
 問題は、野党の主張が幾ら正しくてもそれを聞かずに、言いたくないんですけれども、米国から言われて初めて政策の転換を図るというそういう姿勢は、私は国会を軽視するものである。それは、とりもなおさず健全なる民主政治の発達を阻害するものだと思います。たとえ少数意見であろうとも、それをいいものは受け入れていくという与党なり多数党の雅量が必要だと私は思います。そういうことについて総理の御見解をお聞きしたいと思います。
#414
○国務大臣(中曽根康弘君) 六十二年度予算におきましても、公共事業費は五・二%増で、特に注意をしておるわけであります。しかし、さらに円高が最近進んでまいりましたので、これはさらに強化しなければならぬ、そう思っておるところです。
 私自体の個人的な考えでは、六十二年度の当初予算の編成においては、行革審の答申を割合強く受けて今までどおりの原則でやると。しかし、六十二年度予算が成立した後は、六十三年度のいよいよ概算要求その他の場面に当たっては、もう時代は少しずつ変わりつつあるから違う原則をここに参加させてそしてやるべきであるということは、十二月ごろから考えておったところです。しかし、六十二年度の当初予算を御審議願っているときに、そんなことは夢にも言うべきことではありません。情勢の推移を見ながらそれはずっと胸の中にためて見ておったところですが、そういう時に入ってきたと、そう思って、新行革審というものにつきましてもいろいろ総務庁長官を通じてお考えを願っておるところでもございます。
#415
○橋本孝一郎君 六十三年度はまだわかりませんけれども、しかし二刀流を使うということになりますと、六十三年度予算はまだ先でありますけれども、マイナスシーリングの設定の際には、これまでのような例外項目を設けるのですか。それとも設けるとすればどのような項目なんですか。大蔵大臣に聞きたいと思います。
#416
○国務大臣(宮澤喜一君) 実はその点を昨年の暮れ、六十二年度の予算編成が済みましてすぐから検討を事務方にしてもらっておりまして、まだ私その中間的な報告を聞いておらないのでございますが、近く聞くつもりでおりますが、今までと同じことをどうもやっておるわけにもいかないと。殊に投資的な経費につきましては、御指摘のような状況でございますから一工夫要るであろう。ただ、他方で御承知のような財政事情というものは少しもよくなってはおりませんものですから、それであればあるほど今度は経常的な経費、やつは
りきつくするところはきつくいたさなければ緩めるところの財源が出てまいりませんといったようなことあたりをいろいろ考えまして、ひとつ新しい発想でやらなければならないだろうというふうに考えつつございますけれども、まだもう一つ具体的に申し上げる時期になっておりません。
#417
○橋本孝一郎君 まだ決まっていないというようでありますけれども、しかし事務方ではそれぞれもう準備の時期が来ておると思うわけなんであります。いずれにせよ、経常経費にマイナスシーリングが設けられるとすれば、今までの実績を見てまいりますと、その多くを占める文教あるいは福祉にそのしわ寄せが行くわけであります。また、それをできるだけ避けようとすれば、政府が従来やってきたように地方自治体に負担を転嫁することしかないのではないか。こういうことが過去の実績からも類推できるわけでありますが、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。大蔵大臣。
#418
○国務大臣(宮澤喜一君) それは橋本委員のおっしゃるとおりだと思います。そうかといって、そうこれ以上地方に幾らでも負担をしてもらえるわけでもございませんし、福祉の方でももう随分無理をしてもらっておりますし、大変にどうも難しい予算編成になることは覚悟しなければならないと思っておりますけれども、何とか各方面の御協力をいただいて工夫をしてみたい。もう一つ具体的に申し上げられる段階でございませんのでその点は御理解をいただきたいと思いますけれども、まさにそのような問題意識は持っております。
#419
○橋本孝一郎君 まだ未確定でありますけれども、非常に問題としては行き着くところはそこに来るような感じが強くするわけであります。したがって、この補助率変更というのは、地方自治体も大変現在それぞれ苦労している段階でありまするから、そのような事態がないようにひとつお願いをしておきたいと思います。
 次に、先ほど総理からも少しお話の出ました新行革審と総理の姿勢についてお尋ねしたいと思います。
 総理は、七日の当委員会において、新行革審の大槻会長談話で、臨時緊急の措置として公共事業や社会資本充実のためには従来の考え方にとらわれなくてもよいというお墨つきをもらったと述べておられます。これは、お墨つきをもらったのではなく、政府があらかじめ素案を用意して、それを行革審に押しつけたんじゃないでしょうか。いかがですか。
#420
○国務大臣(中曽根康弘君) 大槻会長独自の御見解であります。
#421
○橋本孝一郎君 行革審の審議は訪米前までに数回行われました。実際議論されたのは、これは新聞報道にも出ておるわけでありますけれども、四月二十四日、わずかの時間で開いたにすぎず、しかも、これは新聞報道ですけれども、行革審の担当官庁である総務庁の幹部も、会長談話は政府側や自民党が取りまとめた総合経済対策を後追いする内容の談話を首相訪米前に発表してほしいと要請したのが発端と述べていると、こう書いてありますが、これでも明らかなように、私は歴然としておると思うんです。いかがでしょうか。
#422
○国務大臣(山下徳夫君) 先ほど総理から御答弁なさいましたとおりでございまして、御案内のとおり内外非常に大切な時期を迎えております、内需の拡大あるいは貿易の不均衡。したがいまして、新行革審の皆さん方はこのことを非常に御心配なすっておることは私も漏れ承っております。したがいまして、そういうことをお考えになりながら、独自の判断で談話を出されたということは間違いございません。
#423
○橋本孝一郎君 都合のいいときはお墨つきで、いろいろと使いこなすわけでありますけれども、大事なことは、権威ある政府の審議会を政府の都合のよいように利用するというそういうやり方は、行革審議を初め各種審議会の権威を失墜させ、ひいてはそれが国民の目から見九は政府の御用機関化するということに見えてくるわけであります。こんなことでは、行革という本当の国民の期待する大事業を推進するのは非常に難しいだろうと思います。そういう意味で、明確にこのことを申し上げたわけであります。
 次に、減税の問題について、総理の訪米中でのお話についてちょっとお尋ねしたいと思います。
 総理は訪米されまして、大変御苦労さまでございました。いろいろとまさにトップとオップの重要な約束が決められまして、本当に大変御苦労さまだったと思います。そこで、減税という問題はこれは選挙公約でありまするし、そしてまた多くの国民あるいはまた法人を含めて期待しておるわけであります。総理は訪米に際して、レーガン大統領との会談におきまして、五兆円以上の緊急経済対策の実施にあわせて、所得・法人税の減税の先行実施を約束されましたのですかどうでしょうか。もしされたとするならば、いつまでに実施すると約束されたのでしょうか、お尋ねいたします。
#424
○国務大臣(中曽根康弘君) 四月の二十四日に自民党は新しい経済対策の要綱を決めまして、その中で内需の振興とそれから税制改革を実現する、そして所得税、法人税の減税も実行する、そういうふうに自民党は決めたので、そのことも紹介をいたしまして、予算が成立したら自民党のこの趣旨に沿ってこれを実行したいと思うと。それで、自民党の案に書いてあるように五兆円を超える実のある補正予算を編成するということにいたしたい、ただしこれは今予算審議中であるから、これは予算成立が条件である、その後の話ですと。それから減税を実行するという場合も、全体の税体系の一環として減税というものが位置づけられる、そういう場合には減税先行もあり得る、そういうふうに申し上げたのであります。
#425
○橋本孝一郎君 総理並びに大蔵大臣は、この減税問題に当たりまして、減税の先行実施は恒久財源のめどが立った上で実施すると述べられております。売上税をめぐります国会情勢や、税制改革をめぐる与野党協議がこれからという国内情勢を見まするに、恒久財源のめどが早急に立つ情勢に私は今ないような気がするのであります。総理はこのような情勢を踏まえて減税先行の実施をやられるのでありますか、お尋ねいたします。
#426
○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、ただいま総理大臣もお答えになられましたし、衆議院議長のあっせんにおきましても、いわゆる協議機関は税制全体について御検討願うということになっております。その場合、我が国の財政の現状が御承知のようなものでございますので、協議機関におかれても、恐らく減税部分についても御検討があると思いますが、その財源につきましても当然のことながら御検討があると考えるべきものと思います。そういたしますと、何がしかの減税案を協議機関がお考えになられるにしましても、それは税制改正全体の全貌をお考えの上でその中から、多少の時間的な前後ということはこれは幾らもあることであろうと存じますけれども、しかし全体の整合性の中から減税案をお考えになられるということであろうと、私ども協議機関のこれからの御検討をそういうものとして期待をいたしております。また、おっしゃいますように、実は減税もなるべく急がなければならない状況でございますにつきましては、全体の税制改正の協議機関における御検討もできるだけ早くお願いをしたいと念願いたしておるわけでございます。
#427
○橋本孝一郎君 先ほどのお話で、いわゆる六十二年度予算では十分でないから補正予算、これはあくまでも補正で現在のこの難局を乗り切っていく、こういう話からいくと、内需拡大という緊急課題とそれから税制改革、これはどう見たって中長期的に見ていかをきゃならない。性格を私は明確に区別していかなければならないと思うんです。確かに大蔵省はそういう責任の省でございますから帳じり帳じりと言われますけれども、これはいわば家計簿的発想であって政治的発想じゃない。だから私は、そういう意味で、内需拡大という緊急課題、これはもう首相みずからおっしゃってみえるわけでありまするし、そのための異例の補正だともおっしゃってみえる。しかも一方、税
制の方は、これは協議機関ができるんですから協議していかなければならないと私は思います。しかしそれは、簡単にぴしっと帳じりが合うように出てくるということを期待することは、余りにもちょっとこれは軽率ではないか。そうすれば、当然先行しなければならないことははっきりしてくるわけであります。
 総理はこういった日本の実情をアメリカに紹介されたと言いますけれども、こういったいわば国際的に日本はこうやっていますよということは、向こうが恐らくそれを聞きそれを理解しておるということは、公約とまではいかぬけれども非常な期待をしておる、公約に準ずるような期待だと私は思います。そうなってまいりますると、臨時措置としていろいろな、よく言われておりますNTT株とかその他行財政政策ですか、等によってとりあえず財源を見出して、そしてまず減税を先行実施する恒久財源については先ほどからおっしゃられていますような与野党協議の場で我が国の将来の財政のあり方等を踏まえて慎重に検討してその結論を待って具体化していくというのが、今までのずうっとおっしゃってみえた御答弁から来る筋論ではないでしょうか。いかがでしょうか。
#428
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま橋本委員のおっしゃいましたことは、注意深く伺っておったつもりでありましたが、政府は減税ということをまずやってそうしてあとの問題は協議機関の協議、これは時間がかかるであろうからそれを待って処理すべきである、こうおっしゃったかと思いますが、そういうことになりますと実は、協議機関がこれから税制全体について御協議をなさるというに先立ちまして政府がその先取りと申しますか、その一部を勝手に、という言葉が表現がいいかどうかわかりませんが、実施するかということにならざるを得ません。しかしそれは、協議機関が議長のごあっせんによって税制全体を御検討になるというやさきでございますから、そういうことはやはり政府としては慎まなければならないのではないかというふうに私はどうも感じております。
#429
○橋本孝一郎君 私から今さら申し上げなくてもいいと思うんですけれども、GNPのいわゆる政府目標あるいはそれ以上の経済発展を期待しようとすれば、最終末端消費、六〇%を占めるいわゆる消費の拡大を図らなきゃならないというのは、これはもうどなたもみんな認めていることなのであります。それが非常に今期待されておるときでありまするし、繰り返しませんけれども、いずれにしても余り帳じりにウエートを置くとこの問題は進行しないし、そして今期待するGNPも私は期待できない。結局時期おくれ。タイミングというのがすべて大事でありますから、そういう意味でひとつ、これは何も野党が言うだけでなくて、協議する野党にも私は責任があると思います。そういう立場で申し上げておるわけであります。
 次に、ちょっとこれはNHK報道に関連して、貿易摩擦関連で、これは一回出ただけだと私の記憶で思っておるんですが、五月七日の日に、これは通産関係になるかと思いますが、日米貿易摩擦を解消する手だての一つとして政府が一つの方途を検討中であるとの報道がNHKの七時と九時のニュースで放映されました。
 その内容は、自動車、電気機器等の輸出企業大手五十社に対して、輸出増加分に対し一定の割合で輸入を義務づけるというのであります。当然、その基準年を昭和六十一年とすると。これは六十年九月のプラザ合意の直近の翌年で、六十一年とする。この基準年に比べて上回った部分の一定の割合を強制力を伴って輸入させる、ごく大ざっぱに言ってこういう内容でございまして、この措置を政府は検討中とのことであるが、その事実は一体どうなのかお尋ねしたいと思います。
#430
○政府委員(畠山襄君) 確かにNHKでそういうニュースが流れたことは事実でございますが、私どもとしてそういうことをやるということで正式に検討しているというようなことはございません。結論から申し上げるとそういうことでございます。
 ただ、輸入をできるだけふやしていくということは今日求められている最大の政策の一つだと考えておりまして、そうした観点から民間企業になかんずく製品輸入をふやしてもらうように再三要請をいたしております。具体的には、四月七日にも田村通産大臣から主要三百二社に対して製品輸入をふやしてくれというお願いを申し上げました。その中で、その一環といたしまして、特に輸出額の大きな企業におかれては、輸出のみによって貿易の拡大ができるというわけではない、調和ある対外経済関係の形成ができるというわけじゃないんだから、したがって輸入も重要なんで、格段の決意で輸出の特に大きな企業は製品輸入もなかんずくふやしてくださいという要請を申し上げた事実はございます。
#431
○橋本孝一郎君 検討した事実がないとすればそれでいいんですけれども、今後こういう措置というものは、やはり自由貿易主義に私は反すると思います。そういう意味で、アイデアの一つかもしれませんけれども、非常に危険なものを持っておるということを通告しておきたいと思います。
 次に、労働大臣に雇用対策についてお尋ねしたいと思います。
 円高経済を根本的に是正するには、輸出主導型の我が国の経済構造を内需主導型の構造に転換することが不可欠である、これはもうだれでも認めるところであります。それに伴って産業構造の転換が不可避となりますけれども、この場合に最大の課題は地域間、業種間に発生するミスマッチの防止だろうと思います。政府はかかるミスマッチの防止のためにどのような手だてを講じようとしておるのかお尋ねいたしたいと思います。
#432
○国務大臣(平井卓志君) 低成長の中での構造転換というのは、一口で申したら簡単なようでございますが非常に困難を伴うわけでございまして、特にその中で、委員が御指摘になりましたような労働力の移動その他を含めましてのミスマッチというのが大変大きな政策課題になっております。
 ただいまのところ労働省といたしましては、雇用対策におきまして、業種また地域等々の動向を踏まえまして、一つには職業転換のための訓練、さらに出向等に対する助成、また御案内のような産業雇用安定センター等々の援助等を通じまして労働力の移動の円滑化を図っていこうと。また、基本的には雇調金等によりまして、従来からの政策でございますけれども、失業の予防、また雇用の維持、こういうことを図っていく。
 いま一つは、総合的な雇用情報システムの導入による職業紹介機能の強化ということでございまして、やはりできるだけ豊富に職業に関する情報を広範に収集いたしまして、即時にこれが理解できるということでその機能の強化を急いでおります。
 また、最後には、俗に三十万人雇用開発と言われておりますけれども、地域雇用の開発等促進法、この制度を十二分に御理解願いまして、とにかく安定に全力を挙げてまいりたい、かように考えております。
#433
○橋本孝一郎君 ミスマッチ対策として情報あるいは各種施策のお話をされましたけれども、これはやっぱり私は的確に情報とかあるいは各種施策を実施していく上においても、労働省がもちろん主管でありますけれども、縦割りの労働省だけでは大変でありまして、各省の枠を越えて通産、運輸などの関係行政機関――私は最も大事なものは、特に出先は、労働省だけの出先というんじゃなくて、地方公共団体と一体となった雇用情報の伝達あるいは施策が大事ではないか。何といっても、いわゆる市役所にしても町役場にしても、住民のことを一番よく知っているのはそこなんでありますし、住民もまた一番気楽に入りやすいのがそこなんであります。そういう面からいって、そういうモデル等もあるかと思いますけれども、そういったものをもう少し、これはもう既に諸外国の例も御存じかと思いますけれども、イギリスあたりなんか特にそういう点は非常にオープンにやっておりますから、そういうこともひとつお考え願っておきたいと思います。
 時間がありませんが、もう少し言います。
 それから職業訓練についてでありますけれども、結論から先に言っておきますと、今の既設の職業訓練施設だけでは人員を含めて不十分だ。どんどん技術は変化していきますし、要求される労働の質も変わってくるわけであります。ところが、実際そこにおる人、それに対応するような技術者、一人で幾つもできないわけでありますから、そういうものを補完する意味合いにおいても、私は民間の活力をもっと入れるべきだ。これもモデルがあると思いますけれども、民間の労使あるいは路一線技術者を導入して、委託なんかをやっておられるようでありますけれども、そういうきちっとしたものをつくっていただきたいと思いますが、ひとつお考えをお聞きしたいと思います。
#434
○国務大臣(平井卓志君) まず最初に御指摘ございましたこのミスマッチの防止の方法でございますが、地方公共団体等をもっと活用したらどうかということ、これはおっしゃいますとおりでございまして、現在も、ただいま御答弁申し上げましたように、情報機能の一層の充実強化、特に全国の公共職業安定所をオンラインで結びまして、広域的な雇用情報を即時に提供できる総合的なシステムの導入を準備いたしておるわけでございます。やはり地域のためまた働く人たちのために便宜を供さなければなりませんので、地方公共団体の問題でございますが、ただいま十万から上の都市には高齢者対策相談という既存のネットもございますし、さらにまた今後一層の地方公共団体との連携も図っていきたい。また、商工会議所等もございまするし、さらにこれは今後整備してまいらなければならぬと思っております。
 いま一点の職業訓練、これも大変重要な御指摘でございまして、ミスマッチの解消、さらにおっしゃいましたような就業の非常に技術的な高度化、多様な変化に対しまして、やはり職業訓練というのが政策の非常に重要な課題になっております。
 民間の活力等々をいま少し導入したらどうかと。これはもうそのとおりでございまして、現在公共職業訓練施設の指導員につきましては民間企業の人材を外部講師として活用いたしております。また、必要に応じまして、これは主に第三次産業関連職種の職業訓練でございますが、この充実のためには専修学校等への訓練の委託を行うなどの施策を従来からとっておりまして、この点は予算面で申しますると六十二年度の場合約三万六千人余りを用意いたしておるわけでございます。さらに、今後の発展的な職種という意味から申し上げましたらビルメンテナンス、情報処理、このような関係へさらに働きかけて、今後一層の強化を図ってまいりたいと、かように考えております。
#435
○委員長(桧垣徳太郎君) 関連質疑を許します。勝木健司君。
#436
○勝木健司君 時間も大分あるみたいですけれども、早目に決められた時間で終わりたいというふうに思います。
 内需拡大と大型店規制の問題についてでございますが、現行の大店舗法に基づく規制によりますと、売り場面積の大小を基準といたしております。また閉店時刻、休日日数等も調整項目となっております。これらの諸規則というものは、円高による差益還元を望む消費者であります国民のニーズに対応し得なくなりつつあるんじゃないかというふうに思います。さらに、大店舗法が外国企業の我が国市場への新規参入を妨げる阻害要因となっているとの海外諸国よりの強い指摘もなされております。貿易摩擦の解消、内需拡大振興という観点からも大店舗法の規制緩和をすべきであるというふうに思いますが、大店法の見直し問題につきまして政府の取り組み姿勢をお伺いしたいというふうに思います。
#437
○政府委員(末木凰太郎君) 大店法の規制を緩和いたしますれば、大型店の店舗建設に関する投資意欲を刺激することになるでしょうし、あるいはまた大型店における消費者の買い物がふえるという形で内需振興につながるということは言えると思います。しかし、一方におきまして、最近の厳しい経済環境のもとで、中小の小売商業への影響ということも考えなければならないと思うわけでございます。私どもといたしましては、現在の大店法が消費者の利益の保護に配慮しつつ中小小売業の事業活動の機会を適正に確保するという、この二つのバランスをとることを基本とした調整制度になっておりますので、内需振興という面にも十分配慮をしつつこの法律の基本精神に沿って適切な運用をしていきたいと思っております。
 また、海外の企業の日本の流通業への進出を大店法が妨げているのではないかという点につきましては、海外のいろいろな法制も研究しておりますけれども、現在の法律の基本は届け出制を軸としておりまして、届け出制に基づく調整制度でございますので、適切な運用をしていけば国際化時代におきましても国際的な批判に十分たえられる制度だと私どもは考えておりまして、要は運用が硬直的にならないこと、法律の本来の精神に照らして運用していくということが大事だろうと思っております。
#438
○勝木健司君 次に、自民党の要人から福祉目的税構想なるものが幾つか今出されておりますけれども、中曽根総理はこの点についてどのように考えておられますか。
#439
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもの党内にもそういう意見のございますことは承知をいたしております。ただ、この問題につきましては税制調査会でも取り上げられまして、まあ一般論ではございますけれども、目的税というのは、因果関係いかんにもよりますが、一般的な財政の見地からいうと資源あるいは資金のひずみを生ずる場合があるということを言っておりまして、ただいまといたしましては、政府はそういうことを考えてはおりません。
#440
○勝木健司君 中曽根総理はいかがですか。
#441
○国務大臣(中曽根康弘君) 大蔵大臣と同じです。
#442
○勝木健司君 今後の税制改革につきましては、与野党から成ります協議機関によって新たに出直すことになっておると思います。中曽根総理は、増減税同額で財源確保という観点から、直間比率の見直しのみを特に強調しておられるように思います。クロヨン問題、トーゴーサンピン問題等の現行税制の不公平是正には積極的な姿勢を示しておられないように思われますが、この点いかがでございますか。
#443
○国務大臣(中曽根康弘君) この間の選挙の私の公約の第一は、減税をやりましょうと。所得税、法人税の大型減税をやりたい、そういうことを申し上げて、それに対する税源として間接税と、そういう形になってきているので、今でも減税をやりたいという熱意は少しも落ちておりません。特に、クロヨン問題、トーゴーサン問題等については大きな関心を持っておるわけであります。
 ただしかし、減税をやるについては、今回は議長さんのおとりなしで、そして税制改革全般の一環として減税というものもとらえられることになりましょう。そういう場合に、やはり全体の体系、システムの一環として減税が先行してくる、そういうことは十分考えられる。しかし、体系の中で位置づけられておらなければそれはいけませんと、そういうことをさっきも申し上げたとおりです。
#444
○勝木健司君 時間がありませんので次に進みます。
 厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 私ごとでありますけれども、私自身も四歳のときに中国の大連から引き揚げてきた者であります。それだけに、中国残留孤児の問題というものは本当に他人事ではありません。強い関心を持っております。中国残留孤児の集団による肉親捜しにつきましては、六十一年度末の今回で一段落したわけでありますけれども、今後の調査はどのように進められますか、お聞かせを願いたいというふうに思います。
 また、時間の関係でこのまま続けさしていただきますと、帰国した残留孤児の社会参加について
でありますけれども、さまざまな問題を抱えておるように思います。現状はどうなっておりますでしょうか。特に、帰国センターでの研修が終わった後のフォロー体制が不十分であり、国や地方自治体が責任を持ってケアしていく必要があると思いますが、どうなっておりますか。
 また、日本語教育を初め子女の受け入れ態勢につきまして、現状はどうなっておりますか、もっと充実を急いでいただきたいというふうに思いますが。
#445
○国務大臣(斎藤十朗君) 訪日自身捜しにつきましては、今勝木先生がおっしゃられましたように、一通りこの三月でその調査を概了することができたわけでございます。しかしながら、未判明孤児もまだかなり多くあるわけでございますので、言うならば最後の一人までその調査を継続いたしてまいりたいということでございます。
 過日訪中をいたしましてこれまでのお礼を申し上げました際にも、中国政府に対して、なお引き続き調査を行いたいのでよろしく御協力をいただきたいと申し上げましたところ、中国の外交部長も、また実質担当されます公安部長も、快くこれを引き受け、ともに協力してやろうと、こういう話でございました。
 また、帰国孤児につきましては、四カ月の定着促進センターを卒業する際に、できるだけ就職を決め、もしくは就職の見通しを立てて卒業をしていただくということに一番力点を置いていくべきではないかということを考えております。
 同時にまた、自立後の生活等についても、自立のためのいろいろなお世話をしていただく方々の配置を、これまで一年間でございましたが、ことしの予算から二年間に延ばして、そしてこの充実をさしてまいる。また、その他ボランティアの方々、関係者の方々の全面的な協力も得ながら、一日も早い日本社会における自立を期すために全力を挙げてまいりたいと考えております。
#446
○勝木健司君 文部大臣はこの件についてはいかがですか。
#447
○国務大臣(塩川正十郎君) 文部省におきましては、帰国されました方々が一刻も早く日本になじんでいただくために、そのためにはまず日本語の研修をしていただかなければならないということで、さしずめ協力校というものを指定いたしましてそこで先生を、上手に中国語から日本語を教えていく先生の集中的教育をしております。
 さらにまた、教材等につきまして、なじみやすく、なれていただくための特別の教材をつくり、これを日本語の学習とあわせてやっていただいておるということでございます。
#448
○勝木健司君 あと、もう簡単に終わりたいと思いますが、北方領土返還問題でございますが、国内世論の喚起、また、国内の北方領土返還運動のいろいろな統一運動というものをもっと強く図って国際世論に訴えていく必要があるというふうにも思いますけれども、それについての見解をお聞きしたいと思います。
 また、北方周辺振興基金というものがありまして、五十億程度しかないということで、これを百億まで増額するように議員立法の延長が予定されておるようでありますけれども、このことは根室市を初め周辺地域に対する政府の努力というものが不足していたからではないかというふうに思われます。今後この地域の振興にどのような方策を講じられますのか、外務大臣、関係大臣にお聞かせいただきたいと思います。
#449
○国務大臣(山下徳夫君) 北方領土の一括返還を実現いたしましてそしてソ連との間に平和条約を樹立する、そしてソ連との間に真に友好関係を樹立するということが私どもの政府としての一貫した方針でございます。
 したがいまして、この方針に従って北方領土の返還を求めるべき運動を今日まで強力に推進いたしてまいりました。年間を通じていろんな運動が行われておりますけれども、やはり政府といたしましては一つの山場をつくると申しましょうか、そういう意味におきまして二月七日を北方領土の日と定めまして、同盟等の御協力もいただきながら、御協力いただく団体が大体百ぐらいございまして、それによって一つ会をつくっていただいて、それと政府が共催をいたしまして、これには内閣総理大臣、両院議長、各政党の代表、あらゆるトップクラスの方にお出いただきましてやっているわけでございますが、また各都道府県は都道府県でおやりになる。それから北海道は八月を月間としておやりいただく。また同盟も独自にいろんなことをおやりいただいているわけでございまして、こういうことで国民の総力を挙げて今後とも粘り強く強力にやってまいりたい。なお資金につきましては、今お話しのとおり委員会でもって延長をお決めになるということも伺っておりますが、議会の意思を尊重しながら努力をしてまいりたいと思っております。
#450
○政府委員(長谷川和年君) 国際的な世論喚起でございますが、政府としては北方領土に関する日本の立場あるいは主張につき広く国際的な理解を得ることが重要と考えて従来から種々の措置をとってきています。具体的には、例えば国際連合における外務大臣の一般討論演説におきまして、昭和五十五年以来毎年北方領土問題に関して言及しております。また、外務省のいわゆる海外広報活動におきましても、北方領土問題に関する啓発、これが一つの重点事項になっておりまして、活発な啓発活動を行っております。
#451
○橋本孝一郎君 では次に、選挙制度に関する質問をいたしたいと思います。
 昨年五月、衆議院の議員定数の格差の是正をめぐって国会が紛糾しました。議長裁定と国会決議によって国勢調査の確定値が出次第議員定数の抜本改正をすることとされていましたが、いまだに何ら是正の動きが見られません。政府はどう対応するつもりなのかお尋ねしたいと思います。
#452
○国務大臣(葉梨信行君) 昨年五月に定数是正が行われましたが、その際衆議院議長のあっせんによって実現したわけでございますが、衆議院で決議が行われまして、昭和六十年の国勢調査の確定値が出ました場合にはその確定値をもとにしまして定数是正を行うべきである、こういう内容でございました。確定値も昨年の暮れ発表されたわけでございます。定数是正というのは国会におきますあり方の基本を決める問題でございますので、各党間における御審議を待って政府としても対応していきたい、このように考えております。
#453
○橋本孝一郎君 選挙制度の根本的見直しのために、現在休眠中であります選挙制度審議会を活用させるべきであると考えますが、政府の見解をお尋ねしたいと思います。
#454
○国務大臣(葉梨信行君) 選挙制度審議会は休眠中ということはございませんで、また具体的に諮問をすればいつでも御審議いただける、こういうことであると思います。
#455
○橋本孝一郎君 では、先ほどの一番との関連において、諮問する御意思がありますかどうか。
#456
○国務大臣(葉梨信行君) 先ほども申し上げましたように、役所がいろいろな案を立てるというよりは、まずやはり各政党間の御意見を調整していただきまして、その結論を待って選挙制度審議会にお諮りするというのが順序ではないであろうか、このように考える次第でございます。
#457
○橋本孝一郎君 もう一つ選挙に関連しましてお尋ねしたいと思いますが、過去一たん提案されました在外日本国国民に選挙権を付与する法案を再提出するつもりはありますかどうか。御案内のように大変日本人が多く国外に出ているわけでありますから、そういう点についてお伺い申し上げます。
#458
○国務大臣(葉梨信行君) 在外日本人に選挙権行使の道を開きます在外選挙法案は百一国会に提案されましたが、ちょうど衆議院の定数是正の問題が論議されておりまして、各国会次々と継続審議となり、百五国会におきまして解散をいたしましたために廃案となったものでございます。この間委員会におきましては御審議がなかったわけでございますが、各党並びに各方面からいろいろな御意見が寄せられまして、これらにつきまして今後協議をしてさらに検討を重ねてまいりたいと思っ
ております。
 つけ加えて申し上げますと、いろいろな問題点並びに御意見の主なものは、一つは選挙が実施されることや候補者の氏名、政見をどのようにして在外の選挙人に周知徹底させるか。例えば、選挙公報を国内ですと印刷しますが、それを届けている時間的な余裕がないということがございます。第二には、永住者にも在外選挙を認めるべきではないか、こういう御意見がございます。第三には、在外公館から遠距離に居住する選挙人や、もう一つは在外選挙を認めない国に居住する選挙人のために郵便による投票を認めるべきではないか、こういうような問題点、御意見が指摘されておりまして、こういう点も含めましていろいろ検討してみたいと考えておるところでございます。
#459
○橋本孝一郎君 選挙制度あるいはそういったそれぞれの選挙権付与、定数改正、なかなか口では言いやすく難しい問題ではありますけれども、しかし国民の目からすればいろいろと改正なり、期待があるわけです。そういう中で、民間団体でありますところの社会経済国民会議、これは御案内のように労使、消費者も入ったまさに国民の各界代表が集まっておる会議であります。御承知かと思いますけれども、ブロック制に近い案が出されました。この点についてどのように評価されておりますか、お尋ねしたいと思います。
#460
○国務大臣(葉梨信行君) 先生が今言われました社会経済国民会議の案は衆議院の定数是正に関するものでございますね。これにつきましても、先ほどと同じように国会のあり方を決める基本的な問題でございますので、まずいろいろ各党間で御論議をいただくということが順序ではないであろうか、このように考える次第でございます。
#461
○橋本孝一郎君 衆議院の問題でありますけれども、参議院の比例代表制について、これは参議院の政党化を促進すると多くの批判が過去ありまして、この比例代表制の見直しについて、過去の経緯もあるわけでありますけれども、政府はどのように対応するつもりなのかお尋ねしたいと思います。
#462
○国務大臣(葉梨信行君) 比例代表制につきましては過去二回実施されたわけでございまして、二回の実施の間に各党ごとにそれぞれ御意見が出てきたようでございます。しかし、それを法改正に持っていこうというところまでまだ具体的な動きになっていないようにお見受けいたしますが、いずれにいたしましても各党間の御意見をひとつ闘わせていただき、その過程でまた政府として検討したい、こう考えておるわけでございます。
#463
○橋本孝一郎君 時間もありませんので、最後に超電導技術の開発についてお尋ねしたいと思います。
 最近、超電導技術というのが新聞をにぎわわし始めました。簡単に言いますと、これは一定の条件のもとで物質の電気抵抗がゼロになるという現象のことを超電導と言うのでありますが、従来、マイナス二百七十度という特殊条件が要求されましたけれども、それが昨年IBMチューリヒ研が二百四十度付近でも超電導を起こすセラミックス系の物質を発見して以来、より高温での超電導の可能性をめぐって激しい開発競争が既に国際的に行われております。もし仮にこれが常温で超電導を起こす物質が見つかれば、例えば家庭用モーターから核融合に至るまで広い分野での応用が期待され、いわば新しい産業革命をもたらすと言われております。しかもそれが非常にスピードが上がっておりまして、ある人に言わせれば、エイズとともにことしのテーマだなんというぐらいに言われてきておるわけであります。
 それで、この実用化が図られると多岐にわたって、例えば交通輸送、情報通信、医療、宇宙、海洋、先端加工と大変な変化をもたらしますし、これがまた非常な経済的競争力をつけることにもなると思います。現在、アメリカではもう既に超電導の法案が提出されております。八月には上院、下院とも法案が通過するだろうと言われております。そういう中で、日本においてもいろいろと構想が出ておりますが、どの程度政府として考えているのか。これは科技庁の方からひとつお尋ねいたします。
#464
○国務大臣(三ツ林弥太郎君) お話のように超電導は極めて重要な技術でありまして、内外の注目を今浴びているところでございます。すなわち、超電導は磁気浮上列車、超電導送電、超高速コンピューターなど広範囲な分野の応用が期待されている極めて重要な技術と認識をいたしておりまして、従来からその研究開発を積極的に推進してきたところでございます。特にセラミックス系の新しい超電導材料に関しましては昨年から現在まで重要な世界的発見が相次いておりますが、この新しい材料を用いた超電導技術が経済性等の面で飛躍的にすぐれていると見込まれることから、実用化されればその応用が急速に広がり、社会経済にはかり知れないインパクトをもたらすことが期待されているところであります。
 我が国は現在超電導研究開発におきましては世界のトップレベルにありますが、国としても今後ともこれを強力に推進していく必要があると考えておりまして、関係省庁との連携、産学官の協力を図りつつ積極的に研究開発を推進していく所存でございます。
#465
○橋本孝一郎君 それではもう時間がありませんから最後に。
 今長官がおっしゃられましたように進んでおるわけでありますが、日本の技術力を結集すれば私は他国に負けないと思うのであります。今後とも、これは各省にまたがりますから、各省の協力、プロジェクトに対する政府の支援体制の強化を切望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
#466
○国務大臣(塩川正十郎君) 御承知のようにこのセラミックスのアイデアということは日本の大学で考えたのでございまして、それが今日本で一番この研究が進んでおります。各大学が今ばらばらで研究をやっておりますので、御存じのとおりです、これをどうして集中するかということが問題でございます。そこで文部省としては、できればこれを超電導だけではなくして、この種の新素材研究のための共同利用機関のようなものをつくってそこに集中すべきではないか、こう思っておるのでございます。ちょうど六十二年度予算をこの件に対して要求いたしましたときに、大蔵省は大幅に六十一年度よりはふやしてくれました。それはやはり集中研究をするということが一つの条件にあるように思いまして、そういう体制をとって進めていきたいと思っております。
#467
○委員長(桧垣徳太郎君) 以上で橋本孝一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)
 明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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