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#1
第108回国会 法務委員会 第1号
昭和六十二年三月二十六日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
  委員氏名
    委員長         太田 淳夫君
    理 事         名尾 良孝君
    理 事         林  ゆう君
    理 事         猪熊 重二君
    理 事         諫山  博君
                梶木 又三君
                斎藤 十朗君
                下稲葉耕吉君
                鈴木 省吾君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                秋山 長造君
                安永 英雄君
                宮本 顕治君
                関  嘉彦君
                瀬谷 英行君
                西川  潔君
                藤田 正明君
    ―――――――――――――
   委員の異動
 一月二十六日
    辞任         補欠選任
     諫山  博君     橋本  敦君
 三月二十五日
    辞任         補欠選任
     梶木 又三君     寺内 弘子君
     鈴木 省吾君     宮崎 秀樹君
     徳永 正利君     小野 清子君
     秋山 長造君     小山 一平君
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     中西 一郎君     田辺 哲夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         太田 淳夫君
    理 事
                名尾 良孝君
                林  ゆう君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                小野 清子君
                下稲葉耕吉君
                田辺 哲夫君
                土屋 義彦君
                寺内 弘子君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                宮崎 秀樹君
                小山 一平君
                安永 英雄君
                関  嘉彦君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  遠藤  要君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官司   清水  湛君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省訟務局長  菊池 信男君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   櫻井 文夫君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  上谷  清君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   早川 義郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    小杉 修二君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    古川 定昭君
       自治省行政局行
       政課長      濱田 一成君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○国政調査に関する件
#2
○裁判所職員 定員法の一部を改正する法律案(
 内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#3
○委員長(太田淳夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る一月二十六日、諌山博君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君が選任されました。
 また、昨二十五日、梶木又三君、鈴木省吾君、徳永正利君及び秋山長造君が委員を辞任され、その補欠として寺内弘子君、宮崎秀樹君、小野清子君及び小山一平君がそれぞれ委員に選任されました。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(太田淳夫君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に橋本敦君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(太田淳夫君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、検察及び裁判の運営等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(太田淳夫君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
#9
○国務大臣(遠藤要君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事執行決に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、判事の員数を八人増加しようとするものであ
ります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件並びに簡易裁判所における民事訴訟事件及び督促事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を四十五人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十八人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を七人増加しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#10
○委員長(太田淳夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#11
○安永英雄君 ただいま提案がございました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。
 今、提案されましたように、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件、破産事件の処理というものが非常に多くなったということで増員が提案されているわけでありますが、特に地方裁判所における不動産競売事件、債務の強制執行の事件、破産事件が増加しているというふうなことも聞いておりますが、これらの事件をどのように把握されているか、まずお伺いいたしたいと思います。
#12
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 今、御質問のございました、まず民事執行事件でございますが、お手元の資料の第十一表にここ五十八年から六十年までの数字の概要が記載して、ございます。ここに掲げましたとおり、それぞれの事件はいずれも年々増加の傾向をたどっておるわけでございますが、その後さらに昭和六十一年、これは最近速報で集計いたしましたので細かい数字は若干誤差があるかもしれませんが、さらに増加をいたしております。ちなみに数字を申し上げますと、不動産等の競売事件の合計は七万七千二百二十八件、六十年度が七万六千二百四十四件でございますから、さらに増加しておるわけでございます。
 それから、債権及びその他の財産権に対する強制執行及び担保権の実行でございますが、これが十二万一千五百九十四件、やはり六十年に比べて増加いたしております。
 それから、事情届に基づく執行裁判所の配当等の手続でございます。これが昭和六十一年度で四万八千二百三十三件、やはり昭和六十年の四万七百十件に比べて大幅な増加をいたしております。
 一方、破産事件でございますが、この資料の第十二表に表がございますとおり、昭和五十九年に二万六千三百八十四件、非常に大きな数字で、これは数年前に比べまして数倍という数字でございますが、こういうピークを記録いたしました後、昭和六十年は一万六千九百二十二件、かなり減少いたしました。さらに、昭和六十一年で見てみますと、これも推計でございますが、一万三千七百三十九件という数字が出ておりまして、ようやく昭和五十八年の水準をやや下回るというところにきたわけでございますが、これも数年前に比べますとはるかに多い件数でございまして、全体としては大変事件量が多くなっておる、こういう現状でございます。
#13
○安永英雄君 今後の見通し等についてちょっとお伺いしたいんですけれども、これはやっぱりふえる方向にいくというふうに把握されておりますか。
#14
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 今申しました数字から見まして、破産事件の方はかなり落ち着きを示してきたというふうに言えるかと思います。これは委員既に御承知と存じますが、いわゆるサラ金破産が一時期急増いたしたわけでございます。その後、貸金業等の規制法ができました結果やや事件が減少してきたというところでございますが、それにしても数年前に比べますと非常に高い水準でございますし、今後ともそう急激に減少するかどうか、ちょっと予断を許さないところがあると思います。
 一方、強制執行、それから競売の事件でございます。これはこの表でもごらんのとおり、それから今申しました六十一年の数字から申しまして年々増加の一途をたどっております。これはいろんな要因があるようでございまして、私ども正確に調査するわけにもいきませんので、必ずしも十分な原因分析はできていないかもしれませんが、全般的な不況が続くということで企業の倒産に絡む不動産競売事件がふえております。それから、いわゆるマイホームをローンで購入したが、その後支払いができないために競売になるというのもふえております。
 それから、債権執行とか配当手続でございますが、これは簡易裁判所に激増いたしておりますいわゆるクレジット関係の事件が、結局給料の差し押さえというような形で執行事件の増加に反映してきているように思われますので、今後とも消費者信用取引がふえてまいりますとどうしてもふえてくるのではなかろうか。
 全体として民事執行法ができまして以来年々増加いたしておりますので、今後もなお増勢が続くのではなかろうか、そういうふうな観測をいたしております。
#15
○安永英雄君 これはダブるかもしれませんけれども、一応分けて、簡易裁判所の民事訴訟事件あるいは督促事件、この処理の現状、特に簡易裁判所の督促事件、調停事件の増加が特に多い、こういった点についての現状と、それから今も多少触れられましたけれども、原因、対策等についてお伺いしたいと思います。
#16
○最高裁判所長官代理者(上谷清君) 簡易裁判所の事件につきましては、この資料の第九表に六十年までの数字が挙がっております。この数字をこらんいただきますとおわかりのとおり、訴訟事件、それから督促事件、それから即決、和解、いずれも年々増加を示しておるわけでございます。昭和六十一年につきましては、一審訴訟、督促とも前年度に比べましてはんのわずか減少いたしましたが、全体的には数年前に比べて非常に多い件数になっております。
 それから調停でございますが、ここの数字にもございますとおり、昭和五十九年に十五万四千七百四十六件という大変大きな事件数を記録いたしましたが、昭和六十年にはかなり事件が減少いたしまして八万七千五百五十七件。ここには挙がっておりませんが、昭和六十一年にはさらに若干減少いたしまして六万四千八百五十五件というふうな数字になっております。この調停事件が急激に減りましたのは、先ほど御説明申し上げました地方裁判所の破産事件と同じような要因がございまして、いわゆるサラ金で支払いができなくなった債務者が調停に救済を求めておったのがここ二、三年急激に減少したということでこういう数字になっておるわけでございます。
 ただ、訴訟事件、それから督促事件につきましては六十年まで年々急増を続けておりました。六十一年がやや減少いたしましたので、一応峠を越えたのかなとも思いますが、これは先ほども申しましたとおり、消費者信用関係の信用供与額が年々増加しておりますので、今後ともなお増勢に転ずるかもしれません。六十一年に若干落ちつきを見せたからといって必ずしも楽観はできないというふうに私ども考えております。
 こういう事件増に対する裁判所の取り組み方と申しますか、対策でございますが、一つは今回もお願いいたしておりますとおり増員をお願いするということのほか、私どもといたしましては例えばこういう事件は利息、損害金の計算等の計算事務が非常に多うございます。そういう事務をできるだけ合理的に処理するために、例えばパーソナルコンピューターでありますとか、あるいはポケットコンピューター、そういうようなものを大きな簡易裁判所に配布いたしまして、できるだけ計算事務を短時間にかつ正確に行われるようにと
いうふうなことを考えております。
 それから、訴状でありますとか、あるいは判決書きでありますとか、さらにはまた調停等の場合の調停条項なども類型的な事件が多うございますので、当事者の方からもできるだけ定型的な形できちっとした主張をしてもらうようにする、裁判所の方でも要所要所をきちっと押さえた書式を完備いたしまして、漏れなく記載をし、かつ記載を合理的にするというふうな方向で事務の改善を図っていく、そういうふうな努力を続けているところでございます。
#17
○安永英雄君 現状はよくわかりましたけれども、今回提案されております増員の問題は裁判官が八名と職員が七名、こういうことになるわけであります。今もお話があったように、対策としてはいろいろ事件が増加していく、事務の煩雑、そういったものを何とかカバーしながらやっていって、かつ足らないということでこれだけの定数の増加をするという提案でありますけれども、私なんか全くの素人ですけれども、それぞれの地方の裁判所に行ったり、あるいは簡易裁判所とか、そこらをある程度回ったことがあるんですが、現在の八名と七名を加えましても、今お話がありましたようないろんな事件が増加しておるというので、とてもじゃないがこなし切れるのかなという感じが素人でもするわけです。特に、私が会ったのは一般の職員が多かったからかもしれませんけれども、とにかく職員の事務の増加、こういったものは非常に目に見えるような気がするわけでありますが、果たしてこれだけの増員で賄えるかというふうな点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
#18
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) ただいま民事局長が御説明申し上げましたように、受件数がかなり増加の傾向を示しておるわけでございます。そのような中で、これに対する対策といたしましては、増員が一つの重要な対策になるわけでございます。御指摘のとおり、今回増員をお願いいたしておりますのは、裁判官八名、裁判官以外の職員七名の増員でございますが、法律案関係資料十五ページにございますように、地方裁判所における執行事件処理あるいは破産事件処理、さらには簡易裁判所における民事訴訟事件あるいは督促事件処理のためには、ここに掲げておりますように裁判部の職員合計四十五名の増を図るつもりでございます。他方、ここに記載しておりますように、司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員がございまして、差し引き純増七ではございますけれども、私どもといたしましては、裁判部の職員の充実を図りまして、事件の適正、迅速な処理に支障のないように対応してまいりたいと考えているわけでございます。
 御指摘のとおり、これだけで十分かというふうに仰せられますと、これで十分だというふうには必ずしも申し上げられませんけれども、それぞれ財政事情その他を勘案いたしまして、事件の適正処理に対する対策といたしましては、増員のほかにも、ただいま民事局長が御説明申し上げましたような事件処理上の工夫というものも考えられるわけでございまして、それらを組み合わせながら適切な処理に遺憾のないよう図ってまいりたいと思っております。今後また事件の動向も見まして随時必要な増員措置はまたお願いしなければならない、かように考えております。
#19
○安永英雄君 十分ではないということは是認されておるわけでありまして、先ほどのようなコンピューターを入れたり、あるいは裁判の要所要所を締めるというのは私よくわからないんですけれども、要所要所を締めていくとか、こういうことをやりながら何とかやっていきたいということなんですが、裁判官とか書記官、事務官の方々の日夜の努力、この点については私は非常に敬意を表するわけで、一生懸命やられております。しかし、後でも触れますけれども、裁判の遅延というのは現実の問題なんですよ。確かにおくれてきている。裁判官を増してもらいたいというのは私どもだけじゃなくて、国民の願いじゃないかと思うんです。後で触れますけれども、二十年もかかるような裁判をやるんですからね。
 裁判官が多ければそれで早いというわけでもないし、多いほどいいというのでたくさん裁判官を置いたらどうだということではない。しかし、現在の実情を素人目から見ましても、やっぱり我慢するときではないんじゃないか。確かに十分ではないということはもうわかるけれども、いろんなことをやってそれをカバーしていきたいというその気持ちはわかりますけれども、現実の問題としては許されないんじゃないか、こういうふうな気持ちを持つものでございますが、再度そこらのお考えをお聞きしたいと思うんです。
#20
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 安永委員御指摘のとおり、裁判官をふやせばそれで足りるという問題ではございませんし、裁判官の場合にはやはり給源の問題もございまして、一定のレベルを保つ必要がございますので、大幅に一挙に増員を図るということはなかなか困難なわけでございます。しかしながら、ただいま御指摘のとおり、裁判の遅延ということは各方面から指摘されているところでございます。ただ、平均審理期間だけで見てまいりますと、ひところに比べますとかなり短縮してまいりましたし、我が国の裁判が諸外国との比較において大変おくれているという状況ではないだろうとは思っております。しかし他方、御指摘のとおり長期にわたる事件もあるわけでございまして、私ども事件の適正、迅速な処理に遺憾のないように諸般の事情を勘案しながら適切な措置を講じてまいりたい、かように考えております。
#21
○安永英雄君 この点、多いほどいいというわけでもないけれども、現実の問題としては足らないということは確かなんで、あなたの方も十分ではないというふうにお考えであるわけでありますし、これは法務委員会でいろいろ毎たび出たことでありますけれども、裁判官あるいは職員の適正数といいますか、こういったものは難しい問題であることはわかります。先ほどもお話がありましたように裁判制度そのものにかかわってくる問題で、多ければ多いほどいいといっても全国に裁判官がたくさんおるというのも異様な状態でありますし、少なけりゃいいというわけでもありませんし、これはもうずっといつも問題になっているんですけれども、ある程度の、ここらが大体適正な数なんだというのは握れませんか。
#22
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 私どもも定員設定をいたします際にどのような規模が適正かというものを始終考えるわけでございます。ただ、裁判所の職員の定員の場合は何と申しましても事件を基礎にするわけでございます。この事件と申しますものが、時によってその種類、内容が異なってまいります。したがいまして、事件によりましてあるときは非常に重い形になる、あるときはまた非常に軽い負担になる、こういうことも、ございます。これは事件処理上のやり方によって変わってくるわけでございまして、例えばひところ、三十年代におきましては道路交通法違反事件、これは通常の略式手続でやっておりました。だんだん事件が非常にふえてまいりましてその処理の方法を考えなければならないということで、警察、検察、裁判所が一堂に会しまして即日で処理する、こういうふうな体制をとったわけでございます。
 そういたしますと、事件の負担が非常に軽くなる嫌いがある、こういうこともございますし、同じ損害賠償事件でございましても、代金の支払いがおくれたことによる損害賠償と非常に複雑な不法行為による事件とではかなりウエートが違ってまいります。そういうことがございまして、ある時点の事件数何件でもって一人というふうに割り出すわけにもまいらない面がございますので、過去数年の実績をもとにしながら近い将来の定員を考えていく、こういう手法をとらざるを得ないわけでございまして、ここのところは御理解いただきたいと思います。
#23
○安永英雄君 だから、なかなか適正な数字というのがつかみかねる、こういうことでしょうけれども、今もおっしゃったように適正、迅速な処理
というのが裁判所の一番のモットーですから、こういったところからやはり検討は深めてもらわなきゃならぬと思いますね。毎たび質問されておるようですけれども、この点は今のような答弁を繰り返されておってなかなか難しいという結論だけなんですが、難しい中でも大体これくらいはここ数年間の間は要るんだと。一年一年ぷつりぷつりやらずに相当の期間をとった間の、私は永久に定数法をがっちりしたものをつくれと言っているわけじゃないんでありまして、ある期間の間はこうなんだという見通しを立てた中におけることしの予算要求なり定数を出しているんですという、そういった形を、難しいことであるけれども検討していただかぬことにはいかぬのじゃないかという気が私はいたします。
 そこで、今、一人当たりの件数がなかなか難しいんだとおっしゃいますが、最近の裁判官一人当たりの持ち件数、あるいは平均どれくらいか、こういったことをお教え願いたい。
#24
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 裁判官一人当たりの持ち件数と申しましても、これは裁判官が訴訟とそれ以外の事件を担当いたしております場合、それから民事事件も刑事事件あるいは家事、少年もあわせて処理いたしております場合もございますし、全国的に一律に平均幾らということはなかなか申し上げられないわけでございます。ただ、東京、大阪あるいは神戸等のように民事と刑事とはっきり分かれておりまして、訴訟事件だけやっておる、こういう裁判態勢について申しますと、単独事件について申し上げますと民事部で二百件前後、刑事部では一係八十ないし百件程度でございます。それから甲府、鳥取、徳島というような小規模な地裁におきましては民事、刑事それぞれ一カ部ずつございまして、裁判官は訴訟事件のほかに保全とか令状等の事件も処理いたしております。こういう小さな裁判所の民刑の単独係について見ますと、民事部で百五十から二百件ぐらい、刑事部で五十ないし八十件程度、かような結果になっております。
#25
○安永英雄君 余り時間もございませんが、先ほどちょっとお触れになりましたけれども、財政上の問題もあるというふうなお話がございました。これはもちろん裁判所も国家機構の中の機関ですから、国の財政事情がかかわりがあることは間違いないんでありますけれども、ちょっとつつましやかな毎年の要求で私ども何かいらいらするような感じがするわけであります。裁判所には二重予算の制度というものがわざわざ設けてあるわけなんで、聞くところによりますと、この制度をまだ一遍も使ったことがないというお話でございますけれども、裁判所の方で二重予算の制度というものを使っても、現状からいけば国民の合意は得られるというふうに私は思うんですよ。これはまあいつも使うわけにはいきますまいが、今までやっていないのなら一回ぐらい思い切ってやったらどうですか。
 私は、教育関係等をやっておりまして、かつての教育委員会法、旧法の方ですけれども、教育の特殊性、重大性ということからこの二重予算の制度というものは入っておったわけです。公選制がいわゆる任命制に変わったときにこの制度も消えたわけですけれども、期間的に言えば終戦後から三十年くらいの教育で一番問題のあったところ、特に教員の定数、それから校舎の建築、こういったときには地方教育委員会あたりはもう一斉にこの制度を使った。私の大体あの当時の認識からいけば、教育委員会の方から提案した予算が議会でほとんど通っていって、言いかえますと、あの戦後の教育の立て直しあたりで非常に大きな二重予算、あの当時は対立予算と言っておりましたけれども、今振り返ってみると、日本の教育というのはやっぱりこの期間が一番大事なときであったわけで、立て直ったというふうな感じを私は持っておるわけです。
 今は、先ほどからお聞きします裁判所の裁判官あるいは一般職の皆さん方も非常に努力されておるし、かつそれで追いつかないといった状況を解決するためには、国の予算というものに強硬に取り組んでいく決意が必要ではないかというふうに考えますが、どうですか。
#26
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 安永委員御案内のとおり、裁判所に二重予算が認められておりますのは、憲法上認められた特別の機関といたしまして行政府に対し独立の地位を有するということを前提にいたしまして、ただ予算編成権が内閣に属していることとの関連で、裁判所の司法府としての機能の十分な発揮が予算面から不当に制約されることがあってはならない、こういう趣旨から設けられているわけでございます。二重予算権を行使いたしまして、国会の御判断を最終的に仰いだという例はございませんが、二重予算権を行使した例はないわけではございません。最終的に国会の御判断を仰ぐ前に決着がつきまして、国会の御判断を仰がずに済んだということはございました。
 私どもといたしましても、裁判所のこういう特殊性につきましては財政当局にも十分主張いたしておりますし、財政当局もそのことについて理解をしながら私どもの要求にこたえていただいてきたわけでございます。今後の予算要求に当たりましても、裁判所の二重予算制度を十分念頭に置きまして、その特殊性を十分強調しながら、必要な予算が獲得できますように努めてまいりたいと思っております。
#27
○安永英雄君 裁判所の特殊性を強調しながら今日までやってきたということでございますけれども、例えば、提案されるまでのことしの予算折衝、これを見ますと、裁判官の当初予算要求が八、最終的には八名で法案に出てきている。その他の職員というのは、当初予算で四十一要求して、不思議なことに最終の決定は復活要求で四十五という、これはどういうふうに判断していいのかわかりませんけれども、これはちょっとおかしいんじゃないか、ふがいないじゃないかという気がするんです。
 わずかな数ですけれども、初め裁判所の自主性と特殊性というものを強調しながら、そして現在の苦しいことも、今さっきの現状も述べられて、四十一という要求をぎりぎりいっぱいされたと思うんですけれども、それが向こうの方で四十五で、四名つけてくれたというのは、こんなのは他省では余り見られないですね。とにかく削られるのが普通である。四十五とにかく当初要求されておいて結果が四十一というんならこれは私もわかりますけれども、ここらあたりに裁判所の予算要求、特に定数の要求というものの姿が出ているような気がするんですが、これは評価しているんですか。どういういきさつでこういうことになるんですか、説明してください。これは一つの例です。
#28
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 確かに、御指摘のとおり当初要求は四十一名を要求いたしまして、最終的には四十五名を認めていただいたわけでございます。これにつきましては、概算要求をいたします時点が八月の末でございまして、その後いろいろな事件の変動というようなものがございまして、その辺のところを十分御認識いただきましたのと、国鉄の分割民営に伴いまして、国鉄の職員の受け入れというような問題もございました。そのような点もまた配慮していただきまして、結果的には四十五名という数を認めていただいたわけでございます。
#29
○安永英雄君 これは要望ですけれども、先ほど私が二重予算の方式を一回やってみたらどうだと言ったのは、私の希望でありますが、そう荒立てることもないし、予算要求を低目低目にやると、結果的には要求よりも上の結果が出てくるんで、今の手法をそのまま続けていこうという気持ちでもなかろうと思うんですよ。これは頑張ってもらわにゃいかぬですよ。ただ単に裁判官、職員の問題だけじゃなくて、国民に大きく直接影響してくる問題なんです。この点は直接の関係はないのですけれども、予算取りのうまい法務大臣あたり、こういった点について協力をされたらどうかと思うんですが、立場は違うけれども、どうですか。
#30
○国務大臣(遠藤要君) 今、先生のお話をお聞きしておって、先生のあれはただ単に予算の問題、
人員の増加というのみでなく、やはり国民が期待している裁判の早期処理ということを頭に描いての御発言のようでございますので、法務大臣としては関係ないのではございませんので、やはり所管の点からいっても、先生の御意見というのを頭に入れて今後努力したいということを申し上げておきます。
#31
○安永英雄君 次に、裁判所と法務省の人事交流の問題についてお聞きしたいと思うんです。
 昨年の六十一年度で裁判所から法務省へ、あるいは法務省から裁判所へどのようなポストからどのようなポストに入っていらっしゃるか、それぞれお聞きしたいと思います。
#32
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官が検事になって法務省へ行っておるケースというのは以前からあったわけでございますし、またそういう人たちが裁判所へ戻ってくるというのは毎年行われているわけでございます。昨年、昭和六十年現在ということで見てみますと、裁判所から法務省へ行っているもの、一番主なところは法務省の訟務局でございます。そのほかに法務省の民事局、それから刑事局といったところへある程度の数の裁判官が検察官に転官して行っております。それからさらに、検事の身分を得て内閣法制局、国税不服審判所、公害等調整委員会といったところへも行っております。それから、法務省から裁判所へ帰ってきているケースといたしましては、今申しましたようなところにそれまで勤務していた人が一定年限を経過して裁判所へ戻ってくるというのが実態でございまして、その帰ってくる場所は東京だけではなく、各地の裁判所へ戻っていくというのが実態でございます。
#33
○安永英雄君 これはもう随分古くから行われておるわけでありますが、裁判所と法務省というのは、その成り立ちからいって明確に一線を画しているところなんですけれども、この交流の目的を改めてお聞きしたいと思うんですが、どういうメリットがあるんですか。
#34
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 今、委員が仰せられましたように、この交流は戦後ずっと行われております。もうずっと以前から行われているものでございますが、なぜ行われているのかということを申しますと、一番の理由は、先ほど申しましたように、裁判官から法務省へ行っているので最も数が多いのは訟務局及び訟務局関係の各地の法務局の訟務担当検事でございますけれども、訟務局が取り扱う事件と申しますのは民事事件でございます。司法修習生を終えまして検事に任官した人は通常は地方検察庁等において刑事事件を取り扱うわけでございます。そういうことで、法務省としては、その訟務局において民事事件を取り扱うということには、もともとの検察官出身者というのは必ずしもなれておられないというようなこともあり、裁判官で民事裁判にある程度経験のある者が検察官に転官して、そしてその訟務担当の検事として民事事件を取り扱うということになってきているというのが一番大きな理由であろうと思います。
 ただ、それが実質的な理由ではありますけれども、そうやって裁判官が訟務検事として事件を担当したということは、今度は裁判官として経験できないような仕事をするということになるわけでありまして、そのことがまた裁判官として戻ってきた場合にそれはそれで一つの大きな役に立つ経験というものになる。法曹として他の法曹分野を経験するというのはそのような意味合いもあるというふうに理解いたしております。
#35
○安永英雄君 後で申しますけれども、メリットとしては、今おっしゃるのを要約すると、訟務関係あたりで刑事事件に弱いのでこれへ持ってくるということだろうと思うんです。それからまた、裁判官については検事の仕事あたり等もやってみて、これは教育のためにやっていくんだと、今のお話を聞いていますと、交流の目的は大体そういうところにあると言うんですが、それは全然してはならないとか不必要だというわけではないんですけれども、これが今、つい最近まで公判で検事の席に検察官として座っておる方が裁判官の席に座っていらっしゃる。裁判官であった人が国側の指定代理人として法廷に座っていらっしゃる。これは私は異常な形だと思うんですよ。
 私は、このことは、特に長い間今みたいな考え方で交流をされていっていますから、現在のところでは制度まではいかないにしてもそれに近いような交流が今の目的でもってやられておるとすれば、裁判官の意識の中にはいつの間にか一体感、それから同質感といいますか、そういったものが自然自然にたまってきちゃって、司法権の独立、確立、こういつたものを侵害するというところまで行きやしないか、行っているんじゃないかというふうに私は感じるんですが、そういう交流のことについて私が言ったようなことはありませんか。
 あなた方内部の問題としてはないとおっしゃるかもしれないけれども、実際に裁判に直面する国民、こういう者にとってはこれは気持ちのいいものじゃありませんよ。先ほどまで検事の方におったのが裁判官の方におる。裁判官でやっておった人が検事の方におる。訟務検事さんの仕事に裁判官が行っていて大体三年ぐらいするとまたもとに帰るとか、こういう交流は先ほど言ったメリットよりも、今言ったように司法権の独立というふうな問題等々を比べ合わせますと大したメリットじゃないというふうに私は思うんですけれども、どうでしょうか。今おっしゃったようなことは、例えば、民事に弱いので持ってきているんだとか、あるいは裁判官の勉強をさせるためにそういう検事の仕事もちょっとさせておった方がいいんだというふうな、そういうことは研修とかなんとかということで他に手段はありませんか。
 国民の目からそういった目で見られるような、極端に言うならば司法と検察がとにかく癒着している。これはほとんどそういう状態が来たら裁判官は忌避しましょう。また、裁判所の方も同一事件あたりでそんな形をとるはずはない。しかし、実際に裁判を受ける側には、検事だった人が裁判官になり、裁判官でやっていた人が検事になっている、こういったことが不信を招くのは人情じゃないでしょうか。そういった点が長い間に生まれてきていますよ。私なんかも時々相談を受けたりなんかしますけれども、あの裁判官の前歴をちょっと聞いてみてくれぬか、調べてみてくれぬか、こういうふうなこともよくあることなんですけれども、そのときに必ずこの問題が出てくる。それくらいに、両役所の関係で勉強させるとか民事には弱いからと、こういったぐらいの理由で今みたいな雰囲気をつくるのは私はいけないと思うんですよ。
 この点、特に今の訟務検事の問題等につきましては、ごく最近国民が国を相手取っての訴訟が次々次々増加してきておるという状態から考えるなら、これはもう考えなきゃならぬ時期に来ているんじゃないか。研修とかなんとかでかわるべき、今の目的を達するためには、裁判官に検事の立場からいった勉強をさせるとかいう方法は別にないか。民事に弱いからといって持ってくるのは、これは何とか内部で片づければ片づく問題でしょう。こういった制度化しつつある裁判所と法務省の人事の交流というのは見直しの時期というふうに私は思うが、この点それぞれの立場から御意見を願いたいと思うし、法務大臣のこの点についてのお考えをお聞きしたいと思うんです。
#36
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) まず、裁判所の方の御説明を申し上げたいと思いますが、私どもといたしましては、先ほど説明いたしましたように、この交流というのを裁判官の勉強のためにしているというふうに考えているわけではないのでありまして、これは現実の必要があってやっているものであります。ただ、それが裁判所にとってもマイナスではない、同時に、裁判官が多様な経験をするという効果も持っているということを申し上げたまででございます。
 それから、私どもの考えでおりますところでは、大体法律家というのはそれぞれその置かれたその立場立場での活動をすることができるというのが法曹というものの本来のあり方であろうとい
うふうに考えているわけであります。検察官や弁護士の経験を持っている者でもそれが裁判官になった場合には、今度は例えば国の利益、あるいは弁護士であった者なら依頼者の利益というものを離れて、そして公正中立な立場で裁判官としての判断を下すことができる、それが法律家というものであろうというふうに考えているわけであります。現在の制度も、検察官であった者も弁護士であった者もすべて共通の資格で裁判官に任命され得るということが制度上前提となっているわけでございます。
 ただ、今おっしゃいましたように、それじゃ裁判官にそれ以外の経験をさせる何かほかの方法はないのかとおっしゃる点につきましては、今年度から裁判官に裁判所外の仕事の体験をさせるという新たな研修も企画いたしまして、一年なり二年なり民間企業や法律事務所、あるいは行政省庁へ出向させて、そしてさらに今までよりも多様な体験をさせるというようなことを考慮していくことも企画いたしているわけであります。
 それからまた、裁判所は他の世界から裁判官を得て、そしていろいろな考え方の人に来ていただくということもこれはもう当然必要なことであろうと思っておりますし、残念ながら、今まで必ずしもほかの世界からの裁判官への任官者というのは多くはございませんけれども、さらにそういうことにも努力をして、広い範囲から多様な経験を持った人に来ていただけるようにいたしたいというふうに思っているわけでございます。
#37
○安永英雄君 時間がありませんので、それぞれ私の申し上げました交流の問題については御検討をしていただくということを要望しておきたいと思います。
 時間がありませんから、定数から外れますけれども、豊田事件についての問題についてお伺いをいたします。
 詐欺罪適用で今度逮捕されたわけでありまして、警察、検察ともに非常に苦労されてこられたことはわかるんでありますが、警察庁にお伺いしたいと思うんですが、逮捕までに至りました経過等、概略、言えるところがあればおっしゃっていただきたいと思います。
#38
○説明員(古川定昭君) お答えいたします。
 大阪府警察におきましては大阪地検と協力の上で、全国各地を舞台にして純金地金売買を仮装し、老人や主婦等多数の被害者から現金を詐取した豊田商事の幹部らによる組織的な詐欺事件につきまして、三月二十一日、事件検挙に着手しまして、同社の元取締役社長ら幹部五人を詐欺罪で逮捕するとともに、同日、銀河計画代表取締役社長を同罪で指名手配したという状況でございます。
 本件につきましては、昭和五十八年七月から六十一年四月までの間、全国の十八府県警察におきまして三十三件の詐欺等の告訴、これは告訴人が七百五人に及んでおりますが、被害額約四十五億でございますが、その告訴を受理し、大阪府警察等関係府県警察におきまして捜査を進めて今日に至ったものでございます。その詐欺罪の検挙に至るまでの間に、各地の警察におきましていろいろな罪種によりまして豊田関連の事件の検挙もございましたが、それはさておきまして、今日、詐欺罪の適用に至ったその背景といたしまして、大阪府警察等においての関係告訴人、さっき申しました七百五人からの被害調書等の作成等、被害実態の解明、大変これに手数をかけて、大変困難をきわめたわけであります。
 さらに、一万二千点に上ります押収書類の分析、検討、それから数千人に上ります関係者の取り調べ等によりまして、豊田商法の営業システム、役員の財務状況の認識の状況、それから意思決定等のメカニズム等を解明して詐欺罪の適用に至ったというものでございます。
#39
○安永英雄君 時間がありませんので簡単にお答え願いたいと思うんです。
 私のお聞きしたいのは、彼らがかき集めた資金の半分はもう人件費に使っている。そして悪らつなセールスマンがそれをどんどんやっていっているわけですが、セールスマンの方も詐欺罪としての適用がされるべきだと私は思うんですが、あるいはまた脱法行為を指導した顧問弁護士あたりも政治責任、詐欺罪教唆とか幇助とか、そういったもので追及すべきだと思うんですけれども、そういった方向は持っておられますか。
#40
○説明員(古川定昭君) 現時点におきましては、幹部五名、逃走しております者を含めて六名でございますが、それらの刑事責任の追及ということが重点でございまして、セールスマン、それから顧問弁護士とおっしゃいましたが、それ以外の者の詐欺罪についてはなおまだ検討をしておりまして、そこまで至っている段階ではございません。
#41
○安永英雄君 今申したこと、これは刑事局長はどんなふうにお考えですか。
 今のセールスマンの問題の追及、それから顧問弁護士の追及、それからごく最近の抵当証券をめぐる一連の事件、あるいは霊感商法等の事件等もこれは相当現在も問題になっていますが、今後の問題としてそういった点についてのお考えなり、方向なりが示されるものならお知らせ願いたいと思います。
#42
○政府委員(岡村泰孝君) 豊田商事のセールスマンやあるいは顧問弁護士の問題でございますが、こういった者が詐欺事件にどういうようなかかわりをしたかということによりまして刑事責任が問えるかどうかということになってまいるわけでござい産して、その辺は捜査を尽くしてみませんと、かかわり方が解明されない段階におきまして将来の見通しにつきましてまで具体的には申し上げかねるところでございます。ただ、そういった問題も含めまして事案の解明のために検察当局としても鋭意捜査をいたしておるところでございます。
 また、その他の御指摘のありましたような事案につきましても、犯罪行為があるならばそういった問題につきましても適切に検察当局としては対処するものと承知いたしております。
#43
○安永英雄君 時間がありませんので、またこの次にでもさしていただきます。
 もう一つ、これだけは大臣にお答え願いたいと思うんですが、いわゆる油症事件の問題です。これは今、最高裁判所の方のお世話で一応和解というところまでいっていますが、残っておりますのは国との和解という問題で、これは係争中ですし、高裁の方としていろいろまだ言える段階じゃないと思うんですけれども、国との和解の問題について実際、時間があれば私は現状をよく説明をして、そして大臣にとにかく早急に手を打ってもらいたいという気があるんです。そのためには農水大臣とか厚生大臣とかいろいろ私も会ってみました。しかし、国との争いになってくると、代表的な立場にあるのは法務大臣なんです。
 したがいまして、法務大臣は、カネミ油症事件の国との和解という問題について今どういうふうな御心境なのか。どこに行きましても非常に冷たいし、あくまでも裁判でその結果を待つんだとか、あるいは免責を貫いていくんだとか、こういう声があるかと思えば、そうでもない。どこに参りましても、行き着くところはこれは法務大臣に話さないととてもじゃないけれども解決できないし、それぞれのセクションのところだけのことばかりしか考えていないので、国との和解なんというような考え方になりますとあなたのところの責任だろうと、持っていくところは法務大臣だと思ってきょうはよくお願いをしようと思っていたんですが、今カネミの油症事件で和解になっているけれども、残った国との和解、こういった問題について大臣のお考えをお聞きして終わりたいと思います。
#44
○国務大臣(遠藤要君) ただいま、先生から油症訴訟についてお尋ねがございましたが、私としてまず被害者の方々には心から同情を申し上げておきたい、こう思います。
   〔委員長退席、理事林道君着席〕
 国との和解の問題については、今先生からお尋ねがございましたけれども、現状としてはなかなか和解ということは困難な状態にあるんじゃないかな、こういうふうな感じでございます。いま少
し私としても先生なんかともよくお話を承知して決断をしたい、こう思っておりますので、御了承願います。
#45
○安永英雄君 終わります。
#46
○長谷川信君 大臣に、初め二、三の点についてお伺いいたしたいと思います。
 今、定員七名増の件につきまして、これはやむを得ないことと私も存じておるわけでございますが、さっきも安永委員からお話がございましたように、これはほんのささやかな要求だと思うんですよ。そしてもう一つは、七名をふやしたから最高裁判所の膨大な事務量、膨大な組織があすから急にうまく回転するとも思えない。そういうことをいろいろ考えますと、私ども素人の分野外でございますが、これからコンピュータ化、OA化あるいはパソコン化、そういうものについて私は政府、各省ずっと比べてみると、私どもの知識だから定かではございませんが、そういう面では各省の中で法務省並びに最高裁判所というのはどちらかというとおくれておるのではないかというような印象を受けておるわけであります。
 したがいまして、人員増ということだけでなく、やはりそういう面からも積極的に対応して、今さっきもお話がございましたように、一つの裁判が二十年もかかっておる、あるいは十五年もかかっておる、ほかの国の例は私ども存じませんが、恐らくそういう例は余り数はないのではないかと思います。そういう面について旧陋を打破するというと大げさでございますが、新しいものを取り入れて合理化、事務の簡素化、そういうものにつなげていただきたいと思うわけでありますが、御担当から御答弁をお願いいたします。
#47
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 最高裁といたしまして、OAにつきましては基本的には裁判所におきましても事務の合理化、効率化を図れる部門がございまして、積極的にOA機器を導入していかなければならないと考えております。
 現状について申し上げますと、裁判所の中でも事務局部門、司法行政事務でございますが、これにつきましてはOA化になじむ事務が多々ございますので、現在までに裁判統計処理のためのデータベースを最高裁で置いておりますほか、高裁、地家裁の事務局部門に文書作成用といたしましてワープロを約二百台、それから高裁の人事部門に給与計算用のオフィスコンピューターを七台、それから高地裁の会計課に会計事務用のパーソナルコンピューター約二十台を導入いたしまして、事務の効率化を図っているところでございます。
   〔理事林道君退席、委員長着席〕
 裁判事務につきましては、裁判事務の特殊性にかんがみまして慎重な考慮が必要であるわけでございますが、ただ、裁判手続の中でもOAに親しむ面もあるわけでございます。例えば、執行事件における配当計算用といたしましてパーソナルコンピューター九十台を配布いたしておりますし、簡裁の民訴事件の利息計算用といたしまして同じくパソコンを四十台配布しております。今後ともOA化につきましては積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
#48
○長谷川信君 法務大臣、前に参議院の議運の委員長をおやりになっておられましたときに、やはり参議院のコンピューター化あるいはその他電動化というか、機械化を非常に御熱心に御主張なさいまして、私ども賛意を表しておったわけでございますが、今いろいろ、るる申し上げましたような、いわばもう少し導入をしていただいて合理化、簡素化、そして事務の促進化、そういうものについて大臣の年来の考え方であるそういうものを最高裁、法務省の中にも入れていただきたいと思いますが、希望を兼ねまして、御答弁簡単にお願いします。
#49
○国務大臣(遠藤要君) 今、最高裁ももろもろ機械化に向かっております。しかし、人員の増員も、先ほど来お話がございましたけれども、国自体が今御承知のように行革だ、人員の削減、国の財政云々を言っているときに、やはり人を裁く者がまず徹することだという点で、我々から見ても最高裁は予算の要求や何かについてどうしても遠慮がちになってきているのではないかなと、そういうような点もございますので、今、法務省も登記事務やなんかについてはコンピューターの導入というようなことで近代化し、できるだけ国の財政と余り鉢合わせをしないようにもろもろの問題で改善して皆さんの御期待に沿うような敏速な措置を講じたい、こう思っておりますので、御了承願いたいと思います。
#50
○長谷川信君 きょうは自治省おいでになっていますか。――ちょっとお尋ねをいたしたいと思いますが、昨今見ておりますと非常に急激な円高の傾向がございます。そして、不況産業も本当に深刻な様相になっておる、あるいは景気浮揚の対策もなかなか思うようにいかない、雇用の関係も悪化して、これもかなり深刻な様相を呈しておるわけであります。そういう中で残念ながら国会の議論が進んでおらない。私ども遺憾に思っておるのでございますが、そういう中で国会の議論を促進していただかなきゃ困ります、予算も早く御審議をいただいて執行を早くしていただかないと、これはもう今の不況の大きなあらしの中で支えることができませんという声が国民の中から非常に強く出ておる。そのうち神奈川県とか新潟県から、議会で審議を促進していただいて予算の執行を早くやっていただきたいという請願ですか、決議案ですか、出ておることは御承知のとおりだと思います。
 そういう中で、先般二十四日の日でしたか、衆議院の法務委員会の中でいろいろ御質問があったのを私も新聞で拝見いたしておったのでございます。若干御説明申し上げますと、促進するということについて自治省の濱田課長の説明、答弁で、国会審議の状況に関する記述を含む決議案の採択に当たっては、国会が国権の最高の機関であることにかんがみ、地方公共団体の公益に関するものであるかどうか当該地方議会において慎重に検討の上、対処されるのがしかるべきであるというような御答弁をなさっておるわけであります。
 今申し上げたのがいろんな意味に解釈をされまして、そういう決議案は行き過ぎであるというふうな県内の御批判も、県内というか御批判も出ておる。私どもからすれば一日でも一時間でも早く審議を進めていただいて、そして予算の執行を早くやっていただかなければ、今の状態というものは、お役所の方は御理解いただけるかどうかわかりませんが、私ども現場を回ってみると本当にあすの日にも困るような状態になっておる。そういう者に対して若干不安と焦燥の念を与えておることは事実であります。そういうことで慎重に対処しなければならないということがいろんな意味に解釈をされておりますが、一部においては行き過ぎであるというふうな解釈もいただいておる。この点について担当の濱田課長から御答弁をお願いいたしたいと思います。
 なおもう一つは、地方議会がそういうことをやってはいけないんじゃないかというふうな、国会が最高の機関であるから、そういう取り決めをすることがいいのか悪いのかという議論も出ているようでありますが、私は憲法は全く素人でございますけれども、憲法の中にはそういうことは余り、例えば国会で何を議論しようが、地方議会でそれに対する批判とか、あるいはそれに対する意見というものが幾ら出てもそれは一切国会のことだから口出しもできないし、要望もしてはいけないというふうなそういうものではないと思うのであります。
 きょうは、法制局を呼んでありませんのでわかりませんが、後で法制局とも打ち合わせをしていただいて御報告をお願い申し上げたいと思うのであります。時間があと五分しかないから答弁は簡単に。
#51
○説明員(濱田一成君) 去る三月二十四日の衆議院法務委員会におきます私の答弁について新聞報道がなされていることは、ただいま先生からお話があったとおりでございます。
 同委員会におきまして、私は次のようにお答えをいたしたわけでございます。「新潟県議会の事例を挙げてお話がございましたが、一般論として
お答えをさせていただきたいと存じます。 地方議会は、地方公共団体の公益に関するものである限り、その自主的な判断に基づきまして決議を行うことはできるわけでございますが、国会の審議状況に関する記述を含む決議の採択に当たりましては、国会が国権の最高機関であるということにもかんがみまして、その決議の内容が地方公共団体の公益に関するものであるかどうかにつきまして、当該地方議会におきまして慎重に検討した上で結論を出されることが適当であると考えております。」。
 以上のとおりでありまして、新潟県議会の決議につき行き過ぎであるという趣旨のことは申しておらないわけでございます。一般的に申しまして、自治省が地方議会の具体的な決議について是非を述べるのは差し控えさせていただくべきではないか、このように考えているわけでございます。
#52
○長谷川信君 今、行き過ぎでないという御答弁があったのであります。また、その公益性の問題、私は国会の予算の執行並びにそれがこれほど公益性のものはないと思いますよ。これほど県、市町村と関連性の深いものはない。それが公益性があるかないかよく見てからやれということに、今の予算問題に関して国会審議の問題についてこれほど公益性に関係のあるものはどこを探してもないでしょう。五十三兆円の予算がうなるようにこれから回転していろいろもろもろの対策をやろうというんだから、公益性を考えながら十分慎重にということはこれこそ公益性だ。その辺自治省さん、それは法理論的な解釈はわからないわけではございませんが、今本当に血の出るようなことで予算の配分を待っておるんですよ。
 その中で、自治省のしかも担当のあなたがこれは慎重にやらなきゃならないと、そういうことをおっしゃれば、世論も、慎重と言うのは裏から見れば行き過ぎじゃないかというふうな解釈をされるのも、何というか必ずしも的を得なかったことではなかったかもわからない。そういう今の緊急事態だから、本当に緊急事態ですよ、今の状況というのは。このままでいったら百四十円まで上がっちゃうかもわからない。こんなになったら日本の国はひっくり返るかもわからない。そういう中であなたの御答弁が、私は理論からすれば間違っているとは申し上げませんが、もう少しそういう面から考えていただいて御指導いただかないと困ると思いますので、この点は強く御要望申し上げておきます。
 なお、神奈川県もきのうだかおとといやったようでございますが、これはこれからどんどん各県からあるいは市町村からも出るかもわかりませんよ。この種のお願い御要望は私はほうはいとして出ると思う。そういうときにやはり慎重にやって、おまえらまだいろいろ研究しなさいよ、慎重にやりなさいよということだけの答弁だと私は政府の御答弁としては必ずしも適切でないと思うので、その辺は十分ひとつ検討の上、まだこれからの対応を考えていただきたいというように強く御要望申し上げておきます。ちょっと感想だけ。
#53
○説明員(濱田一成君) 国の予算がその相当部分につきまして地方公共団体を通じて執行される、そしてその地方の経済の振興あるいは地方住民の福祉の向上等に影響をもたらす場合が多い、これはそういう事情があることは事実でございます。そういうことでございますので、その国の予算の成立に関する決議につきまして、当該地方議会でこのような関係を踏まえて結論を出されるということは当然あり得るというふうに考えております。
#54
○長谷川信君 残念ながら時間でございますが、今本当に緊急事態で、あなた方東京にいらっしゃるとおわかりかどうかわかりませんが、地方は本当にもう参っているんですよ。だから、そういう面でいろいろ御答弁その他につきましても十分ひとつ民意を察知して、考えて御答弁、御説明をお願いするように私から強く御要望申し上げておきます。
 以上。
#55
○猪熊重二君 審議中の法案について最初に一点お伺いしたいと思います。
 いただいている参考資料の十六ページによりますと、六十一年の十二月一日現在で判事の欠員は二十八名あるというふうに記載してありますが、間違いございませんか。
#56
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この資料にございますとおり、昭和六十一年十二月一日現在の判事の欠員は二十八名で。ございます。
#57
○猪熊重二君 そうすると、判事が二十八名欠員していて現在裁判所が運営されているということになるわけです。今回の改正法だと判事をさらに八名増加するということを内容としているわけですが、この八名の増員という問題と二十八名の欠員があるという問題とを考えあわせてみますと、実質的に、もし今回の定員増を含めて、それから欠員も埋めてということになると三十六名の判事が増員になるというふうなことになると思いますが、いかがでしょうか。
#58
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事の欠員と申しますのは、年度の途中で次々とできてくるものでございます。その次々とできてきました欠員が昨年の十二月一日現在で二十八ということになったわけであります。その後もずっと判事の欠員、具体的には願いによる退官であるとか定年とか、そういったものがずっと追加されていきまして、さらに欠員はふえていくわけでございます。
 それで、どうするかと申しますと、年度の初めに判事補から判事に任命される者がございます。四月の初めに大体任命されるわけでございまして、これでもってその年度途中でできた一年分の欠員を埋めることになるわけでございます。ただいま御指摘がありましたように、今回お願いいたしております判事の八名の増員、これがこの欠員に加わりましたその全体としての判事の欠員をこの年度の初めに埋めさしていただく、こういうことでございます。
#59
○猪熊重二君 それでは、定員の問題は直接にはそのくらいにしまして、この定員法の改正に関連して、判事補の研修に関して少々伺いたいと思います。
 ことしの二月十九日の新聞報道によると、最高裁判所は判事補をことし四月から官庁や民間企業に一年ないし二年長期研修に出すというふうな記事が出ております。この記事の内容を時間の関係で私の方で先に申し上げて、その記事の真実性についてお伺いしたい。
 まず、新聞報道によりますと大蔵省、厚生省、農水省、通産省、運輸省の五省に各一名を二年間出向させる。それから民間企業三社、具体的な名前は別にしまして、これに各一名を一年間出向させる。それから法律事務所に一名を一年間出向させる。このような一年ないし二年という長期間の研修というか出向は今回が初めてのことである。従前からマスコミや民間企業での研修は実施しているけれども、その期間はせいぜい二、三日ないし一週間前後である。このような記事が載っておりますが、この記事の内容はほぼ正確でしょうか。
#60
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) ただいま委員が申されました記事の内容はおおよそ正確でございます。事実に合致しておるというふうに思います。
 ただ、今まで行われておりました民間企業等の研修は短いもので十日程度、長いもので三、四週間ということでございます。
#61
○猪熊重二君 最高裁が今回このような研修ないし出向を決定するに際して、判事補のこのような研修に関する規定というか規則というか、そういう基準となる準則はあらかじめ定められているんでしょうか。
#62
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事補の研修につきましては裁判所法の第十四条で、「裁判官その他の裁判所の職員の研究及び修養」「に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に司法研修所を置く。」という定めがございまして、そのほかに最高裁判所の規則といたしまして司法研
修所規程というのがございます。この司法研修所規程で司法研修所の研修としては、例えば、合同研修であるとか個別研究であるとか、あるいは対象に応じて今度は裁判官の研修、司法修習生の修習、裁判所事務官の研修というようなそれぞれを取り扱う組織を置くとか、あるいはそのような研修によっては研修の期間、場所、研修に参加する者等については最高裁判所が定める、そのような定めがあるだけでございまして、それ以上に、例えば、今回のような研修をやるという場合に何か改めて準則をつくるというようなことはございませんで、今申しましたような裁判所法の定めと司法研修所規程による定めの範囲内でその都度研修の計画が定められていくというものでございます。
#63
○猪熊重二君 私がお伺いしたいのは、裁判所法で判事補の研修に関しては司法研修所が事務をつかさどる、こういうことが規定されているわけです。今回のこのような研修についても司法研修所の研修事務の一環としてやられたのか、それとも司法研修所を抜きにして最高裁の事務総局において、一口に言えば何らの準則もなしにいきなりやったものなのか、その辺の区分けをお伺いしたい。特にもしこの研修が司法研修所の計画としてなされたものであるとすれば、司法研修所でそのようなものを企画、立案してやったものかどうか、その辺を明確にしていただきたい。
#64
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 当然、今申しましたような司法研修所の事務の分掌になっておりますので、今回のこのような研修は司法研修所がその企画の衝に当たるわけでございます。
 ただ、ちょっとつけ加えて説明申し上げますと、今回の研修の中でも行政官庁への出向といいますのはこれも研修的な色彩は持っておりますけれども、しかし、行政官庁へ参りますときには検察官の身分になって参りますので、その段階では既に裁判官ではなくなるわけでございます。そういう意味で行政官庁への出向というのは司法研修所の研修というものからは外れるわけでございます。そこで司法研修所が取り扱いますのは、今回報道された中の行政官庁への出向を除く分であるわけでございます。
 それからもう一つは、裁判官の研修といいますのは司法研修所がこれを分掌するわけでございますけれども、最高裁判所が研修の主体であることには変わりございませんので、この企画に当たっては司法研修所のみならず最高裁判所ももちろん一緒になってこれを検討し、そしてその案の作成を行ったものでございます。
#65
○猪熊重二君 そうすると、今のお話だと、行政省庁に対する二年間の研修出向については、司法研修所の研修の枠から出ているということで最高裁判所自体として決められたことである。民間企業ないし法律事務所に対する一年間の出向の方は、これは裁判官の身分を保有したままで行くために司法研修所の研修事務分掌の中に入っているというようなお話だと思いますが、そのとおりでよろしいわけですか。
#66
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) そのとおりでございます。
 ただ、例えば行政省庁への出向にいたしましても、これが研修と全く無縁ではないという意味において事実上司法研修所がこれに関与し、そしてその案の作成にももちろん関与はいたしますが、ただいま申しましたように、裁判官の身分を離れた後はこれは司法研修所の所掌事務からは外れていく、こういう意味で申し上げたわけでございます。
#67
○猪熊重二君 私が申し上げたいのは、法律で裁判官の研修について司法研修所という制度を規定してある。この司法研修所という制度を抜きにして裁判所自体が、事務総局がこのような研修を、まあ言葉は悪いけれども独自に勝手にできるんだとすれば、それの法的根拠はどこにあるんでしょうかということを伺いたいんです。
 というのは、裁判所法に司法研修所ないし司法研修所長というものの規定がきちんとあるわけですから、研修所の研修計画とは無関係に最高裁の事務総局が何らの基準なしにこのような長期間の出向を決めるということの妥当性を非常に疑問に思いますので、その根拠を伺いたい、こう申し上げている。
#68
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判所法第十四条で司法研修所に裁判官の研究及び修養に関する事務を取り扱わせるということを定めてはおりますが、これは司法研修所を最高裁判所の一部局としてそのような事務を取り扱わせるために設けたわけでございまして、この裁判官の研究及び修養に関する事務というものが本来最高裁判所の事務であるということは、これは疑いのないところであろうと思うわけでございます。
 規定の根拠と申されますと、例えば司法研修所規程でございますが、司法研修所規程の第三条で、前条の「研修の組織を左の三部に分ける。」といたしまして、その中の一つとして、「第一部 裁判官の研修」という定めがございます。そうして第四条で、第一部、つまり今申しました「裁判官の研修」でございますが、第一部の研修については、「研修の期間、場所及び研修に参加する者その他の重要な事項は、最高裁判所がこれを定める。」ということになっておりまして、最高裁判所が司法研修所を設けておりましても、すべてについて司法研修所が全部独自で決めるというシステムにはなっていないことをあらわしているわけでございます。
#69
○猪熊重二君 その点はそのくらいにしまして、五つの省の問題を別にして、私はまず特に民間企業を研修対象に選んだことについてお伺いしたい。
 民間企業を研修対象に選んだ理由として、新聞報道によると、判事補が世間知らずだとか、あるいは視野が狭いという批判にこたえるためにこのような研修を計画、実行しようとするものだというふうにありますが、間違いありませんか。
#70
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この点は、まあ報道機関ではそのように表現いたしているのが多いようでございますが、私どもの方ではそのような説明はいたしていないわけでございます。私どもは報道機関に対しては、裁判官が裁判以外の職務を体験することは、その視野を広げ、識見を高める上で有益であると考えられる。今回、より多くの分野に裁判官を派遣して、そして派遣先の業務を現実に体験させることにより、裁判官の資質の一層の向上を図ろうとするものであるということを説明いたしました。
 それは、裁判官が世間知らずだからと、これはある意味じゃわかりいい表現ではございますけれども、そういうことを、裁判官についてよく言われる批判、これにこたえるために、そしてこうやって出せばすぐに裁判官の世間知らずがなくなってしまう、そんなつもりで出すわけではないということは常に説明しているつもりでございます。
#71
○猪熊重二君 そうすると、ほとんどの新聞に今のような記載があるけれども、裁判所としての説明はそういうことじゃなかったんだと、こういうわけだそうでございますから、じゃそう伺って……。
 ところで、今おっしゃられたような、裁判官が裁判業務以外の世の中のいろんな出来事あるいは仕組み、こういうものを研修することは有益なことであるという理由に立った場合にしても、この世の中には裁判官が行って研修してみるのにふさわしい社会的な組織、団体というものはいっぱいあると私は思うんです。この中から民間企業、しかも一部上場、日本の企業の中でもトップクラスの企業三社を選んだ理由はどこにあるんでしょうか。
#72
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 委員御指摘のとおり、この世の中に裁判官が見るべき組織がたくさんあるというのは、これはもうおっしゃるとおりでございます。
 この点につきまして、私どもの考えをちょっと説明さしていただきますと、私たちは、裁判官のふだん扱っております仕事は訴訟でございます。訴訟といいますのは社会のいわば病理的な現象を
相手の仕事なんでございます。実際の世の中の業務というのはそういうふうには普通は動いていないわけなんですが、何かそれがいびつな形で、ゆがんだ形で出てきたものが訴訟という形に出てくるというふうに一応は考えられるわけでございます。裁判官は病理現象を常に見ながら仕事をいたしておりますので、もう少し一般的な現象、いわば生理現象と申しますか、そのような意味での社会における現象を知ることが必要なんではないだろうかというふうに考えたわけでございます。通常の生理的な現象としての経済生活、社会生活というのは一体どういうふうに動いているか、一体どういう問題がそこでは生起しているか、それでまた、そこで働いている人たちは一体どういうふうに考えているのかというような、いろんな点を知ることが裁判官の視野を広げる上で効果があるだろうというふうに考えたわけでございます。
 裁判所から出す研修員の数にも非常に限りがあるわけでございますし、またそれを受け入れて相当期間そのような体験をさしてくれるという受け入れ組織というものにもどうしても限界が出てまいります。今回選びました大きな企業といいますのは、やはり社会の生理現象としての経済生活あるいは社会生活のかなり広い部分を代表しているものというように一応は言えるのではないかと思うわけであります。まずそういう意味でこのような企業を選んで、そして経済生活あるいは社会生活の実態を知らしめるというふうに考えたわけでございます。
 ただ、ことしはこの制度発足の年でございます。研修先も決して固定的なものとは考えておりませんで、ことしの研修の成果も見ながら、さらに幅広く検討を加えていきたいというふうに思っているわけでございます。
#73
○猪熊重二君 もう少し問題をはっきりさせるために申し上げれば、要するに、私が伺いたいのは、このような大企業三社に研修に行くことが裁判官の社会をよく知るということのために必要なのか。それとも、国民の大多数を占めるサラリーマンの組織である労働組合であるとかあるいはそれの連合組織であるとか、あるいはまた観点を変えて社会的弱者、特に身体障害者とかあるいは老齢者とか生活困窮者とか、そういう方々のための社会福祉施設であるとかその団体であるとか、あるいは第一次産業に従事している人あるいはその団体、こういうふうな団体に行って研修するならともかく、今、局長がおっしゃったように、裁判というのが一つの病理現象であるとした場合に、その病理現象に対応する言葉として局長は生理現象と、こうおっしゃられたわけですが、まあ一般的に大企業には、病理現象、生理現象といったならば、生理現象はあるかもしれぬけれども、余り病理現象はない。
 そのようなところへ行って、一口に言えば、健康なことを一生懸命勉強することが裁判官の研修に必要なのか。それとも病理現象が――裁判は病理現象だと、こう言っておられるわけですから、そういう病理現象が発生してくる根拠となるような人だとか職業だとか団体だとか、そういうところへ研修に行く方が研修としてふさわしいんじゃありませんかというふうに私は考えるわけです。
 いずれにせよ、今回の研修の対象を選ぶについて、今私が申し上げたような各種団体等は研修の対象として少しでも話の中に上ってきたんでしょうか。
#74
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 今回の研修を企画する過程においては、さまざまな意見交換を私どもの部内で行いました。もちろん、ただいま委員が挙げられましたようなさまざまな組織、こういうふうなものを見る必要性、意味等についてもいろんな意見が出ております。ただ、先ほど申し上げましたように初年度のことでありますし、また研修員の数の問題もありますし、受け入れ態勢等の問題もございます。そういったようなこととそれから今までも非常に短期間の民間企業への派遣の際に、例えば、その会社の労働組合との懇談の機会を持つとか、単にその企業の運営だけではなくていろんな経験をさせてもらっておるわけでございます。仮に大企業へ派遣いたしましても、その企業のいろんな活動の面を見る過程において、中小企業の実態あるいは消費者の実態等を見る機会あるいはその労働組合の主張、活動方針、日常活動等についても知る機会は十分あるわけでございます。
 そのようなことからも、今年度はこのような形で発足し、この実績を見た上で、さらに将来いろいろと考えるべきものであろうということになったわけでございます。
#75
○猪熊重二君 申しわけありませんが、私の質問に対して結論だけ答えていただきたい、時間がありませんから、今回のこのような研修を決定するについて、最高裁判所以外に他の法律関係団体とかあるいはそれ以外の団体、そういうところについて意見聴取をされましたか。答えだけ言ってください。
#76
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 部外の多くの方から御意見は伺いましたが、部外の組織に対して公式に意見を求めるということはいたしておりません。
#77
○猪熊重二君 昭和三十九年の八月に臨時司法制度調査会法に基づく臨時司法制度調査会の意見書が提出されていますが、この意見書には、裁判官の教育等に関しても裁判官、検察官、弁護士及び学識経験者等による司法協議会を設置すべきものと提案しているわけです。私が伺うところによると、このような司法協議会というふうなものは全然今日まで設置されていない。常設の機関は設置されていないとしても、二年間も国費をかけて調査会がいろいろ検討して出た結論として司法協議会というものを設けてやることが妥当だ、そうしなさいという意見が出ているのに何もそういうことはやっていない。
 今回のこのような決定に対しても、何ら他団体の意見、特に日本弁護士連合会であるとかあるいは学識経験者の意見等は聞かずに、最高裁だけでこういうことを決定するということは非常に妥当性を欠くと思いますが、いかがですか。
#78
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) ただいまも申しましたように、司法協議会というものは設けられていないわけでありますし、私どもとしてはフォーマルな形で部外の機関、例えば、日本弁護士連合会あるいは学識経験者の何らかの組織、そのようなものに意見を求めるということはいたしてはおりませんが、企画、立案の過程で広い範囲の法曹関係者等からの意見は十分聞いたつもりでございます。
#79
○猪熊重二君 ところで、民間企業三社に一年間行く判事補は資格はどういう資格で行って、一年間の出向先での業務内容はどういうことを予想しておられるわけでしょうか。
#80
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 民間企業への出向者は判事補の身分のままで行くわけでございます。そして、行った先で研修員といいますか、研修生といいますか、そのような立場で、裁判官としての身分それから研修員の立場と矛盾しない範囲内で、そして研修の目的という範囲内で可能な限りのいろんな体験をしてもらうつもりでございます。
 各社と協議してそのスケジュールを組んでおりますけれども、大体各社での予定は、一つの部局に身を置いて、そしてそこを中心としていろいろな仕事を一定期間ずつ経験をしていく、経験と申しますか見聞していく、そしてできる限度で実務のいろいろな経験を行う、そのようなやり方での研修を企画してもらっているところでございます。
#81
○猪熊重二君 今回のように、一年間民間企業に行って銀行業務だとかあるいは商社の商取引の実態を見てくるとか、見てくるというよりも商取引そのものに携わる、こういうふうなことを一年間判事補がやったとしても、それは直接の裁判業務とはほとんど無関係であると私は考えるわけです。
 ところで、裁判所法四十二条には、判事の任命資格として、判事補十年を経過した者は判事の任命資格がある、このように書いてあります。特に
私が申し上げたいのは、その四十二条の二項に、判事補を十年やったら判事になれるけれども、しかし判事補を十年べたっとやらなくても、三年以上判事補の職にあった場合は裁判所事務官、法務事務官または法務教官の職にあった場合であってもこれを判事補十年の中に通算できる、判事補の職に在職したものとみなす、こういう規定がございます。
 私は、なぜこんなことを申し上げるかというと、この裁判所法の四十二条の規定は、判事補が判事補としての仕事、すなわち裁判官としての仕事、これを十年間やれば判事になる資格がある、こう原則として規定して、ただし直接的に判事補としての裁判官の仕事をしていなくても、まあ親戚みたいなところの仕事ですね、裁判所の事務官あるいは法務事務官あるいは法務教官、これは判事補じゃないんだ、裁判官の仕事じゃないんだ、だけれども、まあ近いところだから判事補の十年の中に勘定に入れるということを法律が二項にわざわざ規定した趣旨は、判事補として、裁判官として十年やったのでなければ判事の資格がないということが前提になっていると私は思うんです。
 特定の民間企業へ行って、一年間銀行の貸し出しの仕事をやったとか、あるいは不良貸し付けの回収をやったとか、あるいは商社の利ざやが多いとか少ないとか、あるいは生産会社へ行ってこういう商品が売れるとか売れないとか、こんなことを一年間やっていた人間がこの四十二条二項の趣旨からしても判事補十年の期間には私は通算され得ないと思いますけれども、いかがですか。
#82
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この出向で出かける者は、判事補の身分をそのままで保持しているわけでございます。その意味でその裁判所法四十二条の関係では判事補としての期間を満たすというふうに思うわけでございますが、その前提としましては、結局これは研修の期間でございます。判事補の研修というのは、裁判官に求められる知識や技能を修得させたり、その他裁判官の職務に求められる資質、能力の向上のために行われるわけであります。そのようなために行う研修であるということで、これは裁判官の職務の一部分であるというふうに考えられるものであろうと思うわけであります。
 したがって、もし研修といいながら、それはおよそ研修の名に値しないというような期間を一年、二年過ごしたというような場合に、これは果たして判事補としての在職と言い得るのかどうか、これは大変難しい問題であろうかと思うんでございますが、今まででも例えば三週間、四週間の企業での研修もございますし、あるいは海外へ行きまして大学に留学する場合とか、海外での司法関係機関で研修する場合とか、そのようないろんな場合がございます。そのような場合はいずれも判事補の資質、能力の向上ということから有意義であるというふうに認めて、そしてそれは判事補としての在職期間と考えられているわけであります。今回のものも同様に判事補としての在職期間と言い得る研修であるというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
#83
○猪熊重二君 それじゃ伺いますが、具体的に名前を挙げれば、ソニー、三井物産、富士銀行、こういうところに一年間行っているのが研修だと。三年はどうですか。五年行ったらどうなんですか。判事補十年というふうに法が定めているのに、一年ならいいだろう。三年ならどうなんですか。五年ならどうなんですか。十年ならどうなんですか。裁判所法、国会が決めた法律を実質的に脱法することじゃありませんか。私はそう思う。法の番人たる最高裁判所が実質的に裁判所法を脱法するようなことを、第三者の検討も経ずに事務総局だけで勝手に決めるということはまことに不穏当です。
 それでは、人事局長にお伺いする。二年だったらどうなんだ、三年だったらどうなんだ、この研修期間が八年だったらどうなんだ。答えてください。
#84
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事補の在職期間としてふさわしいというふうに見ていただけるというふうに申しましたが、それは中身の問題のみならず、やはり期間の問題もあるわけでございます。これが五年、八年であったらどうなるかというのは、これは大変難しい問題でありますが、少なくとも今回のは一年ということで、これがこのような形の研修をするにはふさわしい期間であろうというふうに考えたわけであります。
#85
○猪熊重二君 私が心配するのは、もしこんな、一年間行って、判事補十年のうち一年なり二年なりそんなところへ、企業に行って、ただ企業の利益獲得のための仕事をしている人に判事補の仕事だということで判事資格を認めた場合に、もしその判事補が十年たって判事になって裁判したときに、あんたは判事の資格がないじゃないかと、私も弁護士の一人として法廷に立ったらそう言うつもりなんです。あなたは十年間裁判事務をやっていやせぬじゃないか、八年しかやっていないじゃないか、七年しかやっていないじゃないか。あとは商社に行って商社の利益向上のためにあなたば仕事していただけだ。だとしたら、判事補を十年やったという判事の資格はあなたないと。こういうことになったら、その裁判官がやった裁判は一切合財が無効になってしまうんだ。判決も無効になってくる。こんな重大な問題を引き起こしかねない問題だと私は申し上げているんです。それは裁判所の事務総局だけでこちよこちよ決めるような問題じゃないでしょう。
 最後にもう一つ。もう時間がないから一つだけ申し上げると、このような企業に行って一年間研修した裁判官が戻ってきて台の上で裁判しているときに、例えば、今申し上げた企業が当事者になっている裁判について、先ほど安永先生もおっしゃったけれども、一年間も民間企業へ行って、一口に言えばその中で利益獲得のために働いた人を裁判官として台の上に仰いで富士銀行との裁判をやる、ソニーとの裁判をやるといったときに、当然裁判官としてこれは除斥されるべきだ。しかし、現在の民事訴訟法、刑事訴訟法にはこういう場合について除斥するなんていう規定はない。じゃ、忌避の申し立てをする。忌避の申し立てをして、裁判所が忌避申し立てを認めないということになったら、裁判を受ける国民としては裁判所に対して憲法で言う公平な裁判所の感覚とは全然異なってくる。こういうふうな一年間民間企業と癒着するような状況の研修、出向というものをやったときに、裁判の公正というものがどこまで保たれると考えておられるのか、これをお答えいただいて、時間がありませんので……。
 ただ、私はきょうはそのほかに、いわゆる二月二日の伊東政調会長の各省官房長を集めての売上税に関する問題についていろいろ質問を予定したんですれども、法務省の官房長だけでなくして官房長全員が集まるところでいろいろやった方がよろしいというふうな見解もありましたので、いろいろ申し上げておきましたけれども、きょうはそれをやらないために法務省には御質問も、お答えもいただけないので申しわけないんですが、そういうことでその件は一応おわびしておきます。
 いずれにせよ、最終的な除斥の問題に関して一言でいいからお答えください。
 以上です。
#86
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この点につきましては、今、委員御指摘のように、除斥についてはそのとおりの、このような場合を定めたものはないわけでございます。ただ、もしその研修中に会社のために直接に関与したような事項があります場合には、これはあるいは公平を妨げるような事情というふうに考えて、その回避の措置をとる場合はあり得るだろうと思います。しかし、ただその会社にいたからということだけでこの事件を外れるという措置はこれはなかなかとり得ないものと思いますが、その点は、裁判官というのはそこに籍を置いたからといってその判断を曲げるというようなものではないということをひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
#87
○橋本敦君 いよいよ二十二日から全国で知事選挙が始まったわけでございますが、この二十三日
の未明に、県知事選挙に立候補する候補者の事務所が午前三時二十分ごろ放火によって全焼させられるという重大な事件が発生したわけであります。これは茨城県の知事候補に出ております我が党の奈良たつお選挙事務所のことでありますが、場所は水戸市にあるわけであります。
 かつて、自民党本部にも火炎弾が投げ込まれるという、いってみれば許しがたい政治への暴力介入があったわけですが、選挙の始まるその当日に候補者の選挙事務所を全焼させる、こういった事件が発生したということは我が国の民主政治の基本を維持するという法秩序維持のみならず、民主主義の観点から見ても絶対に許すことのできない重大な事犯だと、こう思うわけであります。
 現に、この放火によりまして、私どもは放火と疑っておりますが、知事選挙用のポスターが焼失したことは言うまでもありませんけれども、候補者ポスター六百枚、それから法定一号ビラが十五万枚、選挙用はがき五百枚が焼失したという重大な結果を及ぼしているわけであります。およそ民主主義の社会においてこういった暴力によって政治活動を妨害するというようなことが絶対に許されないことは言うまでもないのでありますが、茨城県においてはこれまでもいろいろな政治に対する暴力介入事犯が発生しておりました。ともかく選挙の当日選挙事務所を焼失させるというこういった建物の放火事犯あるいは公然たる選挙妨害事犯、これについては断固たる捜査と犯人の検挙が必要である、こう思いますが、法務大臣のこの点の御見解をまず伺って、あと具体的な質問に入りたいと思います。
#88
○国務大臣(遠藤要君) ただいまの、先生のお尋ねの件について現在警察において捜査中と聞いておりますので、その中身についてはきょうは差し控えたい、こう思いますけれども、一般論として申し上げますると、正当な政治活動や選挙運動に対しての妨害活動ということ、そして今のようなお話でございますると民主主義を破壊するような暴挙だと、こう申し上げても差し支えないと思います。そのような点で、法の秩序確立のためにやはり厳重な措置を講ずべきだと、こう思っておりますが、これは一般論として御理解をちょうだいいたしたいと思います。
#89
○橋本敦君 まさに大臣がおっしゃったようなことだと思いますが、各紙の新聞を見ましても、許せぬ政治への暴力ということであると同時に、続発する政治暴力については政治の場にここまで暴力がまかり通る風潮がまさに頂点に達した感じだということで厳重な捜査と犯人の検挙を要望している記事が一連の記事としてあるのは当然だと言わなくてはなりません。
 ところで、こういった茨城県における政治暴力について言うならば、我が党に対するこういった暴力介入だけではなくて、これまでも重大な事犯が続発しているのであります。例えば、放火事件について言いますと、八六年二月に平和運動を進める日本山妙法寺百里道場が丸焼けになりました。それからまた、労働組合の県労連の県南地方労働組合事務所、これは千代田村というところにありますが、これが同年の十月に全焼させられる、こういう事件がありました。それから、昨年一月には谷田部町で町長の義弟宅の板塀に散弾銃が撃ち込まれる、それから、助役宅玄関に灯油がまき散らされる。こういった事件が続発しておりますが、八月になると今度は町長選に立候補していた町議の飼い犬の首が切られる。さらには、去年の暮れでありますが、七会村というところで反村長派の有力者が何者かに襲われて百七針も縫うという重傷を負う。そして、ついにことしの三月にはその村長宅が全焼するという、こういう事件が茨城県下に続発しているわけであります。
 警察に伺いますが、今、私が指摘した一連の事件で犯人検挙はどの程度できておりますか。御存じですか。
#90
○説明員(小杉修二君) 今、御指摘の事件につきましては、大変残念ながら、鋭意捜査をしておりますけれども、検挙に至っておらないところであります。
#91
○橋本敦君 我が党に対する暴力介入について見ましても、今回の奈良氏の選挙事務所へのこういったとんでもない放火ということ以前に、四年前の八三年三月十六日、そのときの知事選の告示日でも奈良事務所が襲撃をされまして、看板二枚、入り口のガラスが破壊されるという事犯が発生しております。それだけではなくて、我が党の街頭宣伝に当たっては、八六年十月十七日に修魂学舎茨城県本部と名乗る右翼集団が高橋県会議員が街頭宣伝中、その車に駆け上がって暴行を加え、そして現行犯で私どもが突き出して逮捕させるという事犯があり、八六年十月二十二日には共産党県委員会前に駐車して置いてありました宣伝カーが放火され、看板が焼けるという事犯があり、そして八六年十一月二十六日、今度は県委員会事務所に火炎瓶が投げ込まれるということで襲撃されるという事件がありました。これも今お話をした現行犯で暴力事犯が逮捕された以外に犯人検挙はまだなされていないと思いますが、間違いありませんね。
#92
○説明員(小杉修二君) そのとおりであります。
#93
○橋本敦君 ですから、こういったことを考えますと、まさに政治の場への暴力介入は無法地帯と言ってもいいほど大変な状況になりつつある。ですから、県民世論としても政治の場へのこういった暴力は断固許してはならぬ、単に共産党だけの問題だけではなくて、という強い世論があるのは当然であります。だから、新聞の論調も、未検挙がこういった犯行を助長し、続発する政治への暴力を助長しているではないか、こういった評価をするのもまた無理からぬ事情があると言わなければならぬと思うのであります。こういった犯行に対しては、大臣もおっしゃったように、一般的に徹底的な捜査、犯人検挙が当然必要でありますし、具体的な事犯に即しての捜査の徹底、これまた当然であります。
 ところが、この件について昨日、我が党のこの放火をされた建物の所有者である日本共産党茨城県東部地区委員会の委員長綿引氏が告訴人となって、この建物に現に人が居住しておりましたから、現住建造物放火罪で告訴をし、同時に、先ほど指摘したように選挙用の法定ビラ十五万枚あるいははがき五百枚が焼失するという重大な選挙妨害の事実にかんがみ、現に告示の日に選挙事務所が焼かれてなくなってしまうということは、そのこと自体選挙妨害の極端な結果そのものでありますけれども、それについて奈良たつお選挙事務所の事務長である伊藤日出夫氏が告訴人となって昨日十一時過ぎに水戸警察署に赴いて、この件について告訴状を提出して告訴の手続をとりに赴いたのであります。ところが、警察署の態度は、こういう重大な事犯に対して驚くなかれこの告訴を受理しないということであります。私はこういう警察の態度がまさに今指摘した未検挙ということと直接結びつくとは言いませんけれども、この事犯を徹底的に捜査すべき責任ある警察の責務から見てまことに許しがたいと思うのであります。
 そこで、そもそもの議論として私は刑事局長にお伺いしたいのですが、告訴というのは刑事訴訟法に規定された国民に付与された公法上の重大な権利だと私は理解しておりますが、どうお考えでしょうか。
#94
○政府委員(岡村泰孝君) そのとおりでございます。
#95
○橋本敦君 したがって、この告訴については検察官及び司法警察員、警察官はどう対応すべきかということは国民の重大な権利をどう理解するかということとまさに不可分のことであります。例えば、警察官の職務を規定しております犯罪捜査規範によりますと、その六十三条では、告訴があったときはこれは「管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。」、こう書いてあります。当然であります。つまり、告訴がなされた場合、正当な告訴権者が犯罪事実を特定して処罰を求める意思を明確にした告訴状を提起したならば、それを受理するかどうかはその当該捜査官憲の裁量に属することではなくて、「受理しなけ
ればならない」というのは、これは告訴権を尊重する建前から見て当然だと思います。そういう理解に検察庁はお立ちになっていらっしゃいますか。
#96
○政府委員(岡村泰孝君) 適法な告訴がなされました場合はこれを受理しなければならないというふうに考えて運用いたしておるところでございます。
 ただ、問題は告訴状が適法であるかどうか、例えば、告訴状の中身になっております犯罪事実が明確になっておるかどうか、告訴人が被害者であるかどうか、そういった点につきまして補正するような点があるならば補正してもらう、そういったことはあるだろうと思いますけれども、適法な告訴状でやる場合にはこれを受理することといたしております。
#97
○橋本敦君 補正の問題その他は後でまた触れたいと思いますが、基本的には当然受理すべきであるということは今おっしゃるとおりであります。
 私の手元に、増井清彦検察官がお書きになった「告訴・告発」という本を念のために持ってきておりますけれども、この本を読みましても、この告訴については適法な告訴がなされた場合は捜査官憲はその受理を拒むことはできない、こういうことをはっきり書かれております。その理由は適法な告訴がなされた場合、その告訴については、まず第一に、警察官に告訴した場合、その告訴事件については刑事訴訟法二百四十二条によって「検察官に送付しなければならない」ということがはっきり定められている。これはもう必ず送付しなきゃならぬ。
 そうして、検察官においてその告訴を受けて不起訴あるいは起訴あるいは移送その他のいろんな処分がありますが、そういう処分をした場合には、告訴権者の請求があればこれを告知しなきゃならないというようにして告訴権者の権利を守る立場を貫いている。そして不起訴処分に不服があるならば告訴した者は検察審査会に不服の申し立てができる、こういう一連の手続を通じて告訴権というのは慎重に保障されている。したがって、その趣旨から見れば告訴というのは重大な国民の権利の行使ですから、これは捜査官憲によって必ずこれを受理するという立場を基本的には貫いて扱うべきだというのは当然だと思うのですが、間違いありませんね。
#98
○政府委員(岡村泰孝君) 御指摘のとおりでございまして、適法な告訴状につきましてはこれを受理しなければならないと考えております。
#99
○橋本敦君 警察庁に伺いますが、この見解については警察庁も異論がないんじゃありませんか。
#100
○説明員(小杉修二君) 異論ございません。
#101
○橋本敦君 ところで、これが受理されなかった状況を調べてみますと、水戸警察署で応対に出た刑事課長はこれについて一つはこう言うのであります。既に被害届が出されていて捜査が進行しているから今出された告訴は、これは受理の必要がないと言うのであります。しかし、これは根本的に間違っておる。いかに捜査がなされていようとも告訴権者が告訴の意思を明確にして告訴するという公法上の手続をとった以上は、今私が指摘したように、公法上の手続が進行して告訴権者の権利が保全される。告訴を受理されなければ、例えば、検察審査会に不服の申し立てもできないじゃありませんか。したがって、被害届が出されているから告訴の受理が必要でないというのはこれは全く法律的に間違った見解と言わなければならぬ。刑事局長いかがですか。
#102
○政府委員(岡村泰孝君) 被害届が出されているから告訴状受理の必要がないということにはならないかと思います。ただ、運用の問題といたしまして、告訴されると否とにかかわらず、現に捜査をしておるというようなことは、あるいは告訴状を持ってこられた方との間の話の中では出るかもわかりませんけれども、いずれにいたしましても、告訴人が告訴状を提出する意思というものがかたければこれは受理しなければいけないと思っております。
#103
○橋本敦君 当然だと思います。この点について水戸警察署は既に被害届が出されているからという理由で受理しなかったという点は重大な誤りであることは認められますか。
#104
○説明員(小杉修二君) 結論といたしましては、昨日お持ちいただいた告訴についてはこれを受理しております。
#105
○橋本敦君 受理した。
#106
○説明員(小杉修二君) はい、受理しております。
 それで、ちょっと申し上げさせていただきますが……
#107
○橋本敦君 それはおかしいな。いつ受理した。それじゃ、きょうの質問せぬでもいいようなことを今ごろ言ったってだめじゃないか。
#108
○説明員(小杉修二君) それで、告訴人主張によるところの現住建造物放火罪及び選挙の自由妨害罪という事実で告訴状を出していただいたわけでありますが、その間に警察としては本件の火災事件がいまだ放火か失火のいずれであるかという判断ができなかったので、今できない状態でありますが、そういう状態の中で受理するかどうかということについて係官と若干やりとりがあったようでございますが、結果的には告訴状を置いていかれましたので、これを午後三時過ぎに受理をいたしております。
#109
○橋本敦君 そこなんですよ。置いていったというのは、なぜ置いていったかというと、私ちゃんと弁護士から事情聴取した。どうしても受け取らないから、被害届が出ている、捜査やっている、もう進行中だから必要ないと、こう言う。そして公選法違反の選挙の自由妨害については、妨害された疎明がないから、こういうことを言う。冗談じゃない。現に、今私が指摘したようにポスターから法定ビラから全部焼かれている。これが選挙当日の日に焼かれて、妨害の事実の疎明がない、それは何を言うかということですからね。そんなものは理屈にならぬということで押し問答したのに、結局のところ受理しないと言う。
 そこで、傑作な話なんだ。もうこれは置いていくから処理せいと、こう言って弁護士が怒って帰ろうとすると、その刑事課長安氏はどう言ったかというと、置いていってもらったら困る、これは受け取れない、置いていくなら拾得物としての取り扱いをするしかない、こう言っている。拾得物、これはひどい話ですよ。本当に国民の告訴権を何と考えておるかということですよ。
 それで、その後これを受理したというのは、私が質問通告をしてやるぞということになったから受理したかどうかそれは知りませんよ。しかし置いていったものを受理したというのは、これは警察の態度としては許せぬです。それならちゃんと受理すべきだ。今おっしゃったように放火かどうか断定しがたい、これは捜査の問題じゃないですか。そうでしょう。この日の状況から見て、午前三時二十分ごろ突然ガーンというガラスの割れる音、そしてドーンという音がして駆けつけてみると窓の下に一部燃焼物が燃えておった。そして一階の火の気のないところから火柱が立ち上り始めた。これはもう放火以外にない。もともと火の気のないところだというので現住建造物放火で告訴した。
 それで、この告訴についてはこれはもう判例、通説からみても、告訴について特定する犯罪事実は犯罪となる事実を特定すればいいんで、犯罪構成要件を具体的に細かく規定しなくても告訴状として有効だというのは当然でしょう。だから警察が放火かどうかはこれから調べればいいんで、その時点で放火の疑いがあるということで告訴状を持ってきたら受理して調べればいいんですよ。調べた結果放火でないということだってこれは世の中にはあり得る。だが、それは告訴状を受理しない理由にならない。だから、少なくとも置いていった告訴状を受理したというその受理の仕方は全くけしからぬと同時に、そういう状況でしか受理しなかったという警察の態度、その行為は告訴権を踏みにじってそれ自体違法ですよ、不法ですよ。この点についてははっきりしなさい。どうですか。
#110
○説明員(小杉修二君) 実際、実務上、御案内のように、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示であるということが告訴でございます。犯罪事実ということについて詳しいやりとりは私ども聞いておりませんが、現場では若干のやりとりがあったやに聞いております。細かい内容は聞いておりません。そういうことで置いていかれたので、それじゃ置いていかれた告訴状について検討した結果これは受理すべきである、こういうことの判断が出まして午後三時過ぎに受理をした、こういうことでございます。
#111
○橋本敦君 だから、置いていかれたので判断したというよりも、ちゃんと受け取って見たらいいんじゃないですか。そういう警察の態度は、告訴人に対して誠実な捜査官憲として告訴権を尊重した態度と言えませんよ。置いていったのを受理した、そんなことで許せる問題じゃない。警察のとった態度は少なくとも誠実でなかった、告訴権を尊重するという趣旨を正しく踏まえたものでなかったと。これははっきり私はあなたに陳謝してもらわにゃ困りますよ。どうですか。あくまで正しかったと言い開きますか。警察の態度は適切を欠くところがあったと、これは警察庁としても認めるべきじゃありませんか。どうですか。
#112
○説明員(小杉修二君) いろいろやりとりがあったようでありますが、そこに若干の見解の相違があったか、その具体的な状況はわかりませんけれども、私どもは少なくとも今おっしゃられるように適正な告訴については基本的に受理すべきであるということを指導し、今後とも指導していくつもりであります。ただ、実務の場でどういうやりとりがあったかはよく存じませんけれども、犯罪事実という問題で若干の見解の相違があったかもしれません。そういう点で、基本的には適正な告訴については受理をするという指導方針を堅持し、また今後とも指導してまいる所存でございます。どうかその点は御理解をいただきたいと思います。
#113
○橋本敦君 まず、謝らなきゃ理解できぬ。置いていかなかったらどうなる、また持ってきてくれと言うんですか。こういう態度は、私は警察として絶対に正しい態度とは思いませんよ。今後とも指導するとおっしゃったけれども、少なくともこの件について誠実な対応を欠いたということは、これはやっぱり反省すべきでありますよ。どうですか。この点だけもう一遍答えてください。反省の必要はないと言うのなら徹底的にやります。
#114
○説明員(小杉修二君) おっしゃられるようなやりとりの内容、現場の状況等も今後参考にしながら指導してまいりたいと思うわけでありますが、結果的には、一時過ぎかにお帰りになったわけでありますが、すぐ検討をして三時過ぎには受理をいたしておりますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
#115
○橋本敦君 十一時から行って一時ごろまでやりとりしたんです。それであなた誠実に検討せぬと何という態度ですか。絶対に承知できぬ。しかし、これは幾ら押し問答してもしようがありません。警察はもっと誠実に対応すべきです。現場とのやりとりだなんだとおっしゃったけれども、正確に事実を聞き取ってもらいたい。そして私は、私の方で正確に事実を聞き取って、国会でいやしくも質問する限りは調査していますよ。警察の対応については厳しく反省を求めて、受理されたという限りは徹底的に捜査をして、犯人検挙はもちろん、こういった民主主義への政治暴力の介入を絶対許さないということで徹底的な捜査をやるという決意をもう一度聞いておきたいと思います。
#116
○説明員(小杉修二君) 本件につきましては、ただいま総員約八十名の体制で準捜査本部体制で鋭意捜査をしております。それで、発生と同時に現場検分も終わりまして、三人の方から事情聴取も終わっておりますので、今後は現場周辺の聞き込み、あるいは関連情報の収集等を鋭意進めてまいりまして、ぜひ検挙にこぎつけてまいりたいと考えておりますので御了承願いたいと思います。
#117
○橋本敦君 それでは、現場への調査と指導を改めて要求してこの質問は終わります。警察庁御苦労さまでした。
 次の質問に移りますが、先ほども豊田商事事犯に関する質問がございまして、この問題については本当に全国で被害者三万人、二千億、中坊管財人の言葉をかりれば、まさに豊田商事は会社ではなくて、犯罪構成集団の犯罪機構そのものであったということ宣言われておるような状況でありまして、かねてからこの問題については詐欺あるいは違法の取り締まりをかねて要望しておったんですが、ようやく詐欺罪での検挙ということになりました。刑事局長に、この検挙された詐欺罪での今後の立件の見通しについて、今お話しいただければどういうことなのか聞かしてほしいと思います。
#118
○政府委員(岡村泰孝君) 豊田商事に関連いたしました詐欺事件につきまして、当時の社長など五名を現在勾留して取り調べ中でございます。こういった事件につきましては、被害者も多数でございますし、被害金額も多数でございますので、当然に大阪地検といたしましては全力を挙げまして事案の解明に努め、厳正な処理を行うものと承知いたしております。
#119
○橋本敦君 これは、会社が赤字になって以後も被害者への資金供与、回復、支払い、それはもう不能だという状況に陥った状況が明らかであるにもかかわらずなおかつ金を集めるという意味で、当初から客観的に返済意思がないと見られる状況になって初めて詐欺罪の構成ということで捕らえられたというような状況が一つはあると思うんですが、大体立件の方向としては、そういう事実が、赤字がはっきりして以後ということになっていますか。
#120
○政府委員(岡村泰孝君) 現在捜査中でございますので、具体的なことは申し上げかねるのでございますが、豊田商事側の経営が破綻しておって、ファミリー契約という名義のもとで純金販売の代金を受け入れましても、約束に従ったようにしてはもう到底返済できないというような事実を前提といたしまして詐欺罪が構成されるわけでございます。
#121
○橋本敦君 そういう観点からいいますと、豊田商事の破産状況というのは天下に明らかですから、個別的捜査は大変でしょうけれども、詐欺罪としての立件、つまり犯罪が当然構成するという見通しはもう十分じゃないですか。
#122
○政府委員(岡村泰孝君) 逮捕勾留という強制捜査に踏み切っているのでございまして、検察当局におきましても、本件の詐欺罪が構成する疑いが極めて濃厚であり、また公訴の維持もできるであろうという考えのもとに捜査をいたしておるものと承知いたしております。
#123
○橋本敦君 そこまで来ておるわけですが、実際は、世論を見ますと、もっと早く捜査のメスを入れてほしかった、そうすればこんなに被害が広まらなかったのにということで、捜査の苦労は私なりにわかりますけれども、もっと早く検察庁が捜査に乗り出してくれればという、こういう世論が随分あります。
 そこで、今この問題だけではなくて、抵当証券に関する問題、それからさらには霊感商法に関する問題、いろんなことが問題になっておることでございまして、この教訓を生かして国民を被害から守るために、法務省としても積極的に手を打っていただくことがあれば手を打つという方向で努力してほしいということがこの質問の私の立場であります。
 霊感商法について言いますならば、伝えられる被害だけでも何と五十七億円、一万人以上の被害者だと、こうなっております。しかもその犯罪の手口が、あなたが不幸なのは祖先の怨霊がある、あなたがこのつぼを買って折らなければ家系が絶えますよとか、まさに、暗い、人の不幸につけ込んで、しかも脅迫まがいに強要するという、そういうことですから陰惨な商法だと言わなくちゃならない。しかも、それは高価なものを売りつけるわけですね。
 ここに、統一協会、勝共連合がやっておりますハッピーワールドという取り扱い商品の卸元があ
るんですが、内部告発で私が手に入れました文書があるんです。これを見て驚きますことは、「以下にグループのトータルとして原価率を示します。」、こう書いて、問題の印鑑は原価率が一二%、つまり十倍から十二倍に売る。ニンジンのエキスは六倍から八倍に売る。つぼに至っては原価率は〇・二五%、四百倍に売る。多宝塔に至っては〇・二%、五百倍に売る。こういうことを公然と書いておるわけですね。ですから、多宝塔に至っては五百万あるいは五百万を超えて何千万という金をそこから取るということも行われている。印鑑は一個が十数万。つぼに至っては原価の四百倍以上で、一つが何十万は安い方で五百万というのも出てくる。こういうような状況になっているわけであります。
 実際、人の不幸につけ込んで、このつぼを買えば祖先の霊が慰められる、あなたがそういった家系の滅亡から救われる、ありもしない虚偽の事実を申し立てて五百倍もの品物を売りつけて、人の不幸につけ込んでこういう商いをするという商法はもう絶対許せぬと思うんです。現に、青森の方では恐喝罪で犯罪が確定したということもあるんですが、被害者の皆さんが政府に対して厳しい対応を求めるのは当然であります。
 しかも、この資料を見てみますと、「お客様のウイーク・ポイントをつかむために」、こうあって、どういうことを調べると書いているかといいますと、自殺者はいないか、精神病者はいないか、どういう病気で死んだか、そしてまた、水死、転落死、こういうような事故因縁はないか、あるいは水子がいないか、家運衰退ではないか、あるいは短命の家系ではないか、あるいは結婚運はどうか、こういうことで、本当にもう不幸のどん底にある人たちの不幸を逆なでするようなことをまず入り口にして、ここから話に入っていく。初めは安い印鑑などを買わして、これは見込みがある、こうなると、この資料にもありますが、ヨハネトークとこう申しまして、セールスマンが特定の先生と称する人を介して販売をする。そして、その先生と称する者は、本当にあなたが導かれるためには神の啓示として貯金を含めて全財産をはたいて幸せになれるんだ、こういう暗示にかける。大変なことですね。
 こういうものを厳しく取り締まるということは本当に必要ですが、方法としては、一つは通産省に訪問販売法の厳しい規制の要求は出ています。警察庁には日常窓口相談から、さらには刑法犯に類するものがあれば厳しく取り締まれ、法務省にもその旨の要求は出ている。あるいは、薬事法違反ということで厚生省に対処してもらいたい、こういうことも出ている。こういう状況です。
 そこで、私は大臣にお願いしたいのは、豊田商事のあのような大きな被害、捜査のメスが遅過ぎたという国民の批判もあるのですが、こういった霊感商法に見られるような悪とい陰惨な商法については、政府として国民を救う対応として各省庁でいろいろな何らかの課題があると思いますので、事務レベルを含めて一遍検討をしてもらう会議を持ってもらいたいと私は思うのですが、いかがでしょうか。
#124
○国務大臣(遠藤要君) 今、橋本委員の御発言の内容でございますると、大変我々としても遺憾だと、こう思っております。きょうの新聞でも訪問販売等についていろいろ出ておりますけれども、各省にもまたがる問題もあるようでございますので、何らかの方法で御相談をしてみたい。そうして、もし犯罪があるような場合は警察当局が対処されることと思いますけれども、検察当局にもそれこそ敏速に、適宜適切な措置を講じさせたい、このような気持ちでございますので、御了承願います。
#125
○橋本敦君 その点は大臣に御尽力をお願いしておきますが、刑事局長に考え方として二点だけ聞いておきたいと思います。
 今言ったように、初めから原価の五百倍に売れというような指示をして、これで五百倍に売るということですね。しかも、これを買えば家系の断つのがおさまる、あるいは幸せになれる、こういうことで、ありもしない不幸で欺罔してやるということになりますと、詐欺罪の可能性があるのではないかということが一つ。あるいは、もう一つは、人の不幸につけ込んで威迫をして、そういう心理状態に陥れて多額の金を取るということになれば恐喝ということにもなる。こういった刑法犯罪を成立せしめる可能性がある商法だと私は思いますが、この点はどうお考えですか。
#126
○政府委員(岡村泰孝君) 個々のケースに基づいてどういうような欺罔行為、あるいは脅迫的な行為があったのかということが判断されるべきでございまして、どこまで証拠が集まるのかということになろうかと思いますが、一般論といたしまして、人を欺罔して財物を騙取した場合は詐欺罪に当たるわけでございますし、また畏怖させて財物を喝取いたしました場合は恐喝に当たるということになるわけでございます。
#127
○橋本敦君 この問題について、私は念のために勝共連合の政治資金の届け出を自治省で調べてもらったんですが、五十九年は総額三千三百八十九万円を政治献金しておりますが、そのうちの三千百四十五万円、圧倒的部分がスパイ防止法制定促進国民会議へ出している。六十年も総額二千四百九万、九割以上の二千三百八十万をスパイ防止法制定促進国民会議へ出している。まさに善良な国民を惑わして、不法に金を取り上げて、それを彼らの国家機密法をつくれという政治目的にどんどん使っていく。私は本当にこういった勝共連合、統一協会の活動というものは我が国の民主主義の観点から見ても問題だと、こう思っております。この点はまたの機会で質問いたします。
 最後に、法案に関連をして、最高裁に速記官の増員について、時間がありませんので一、二問でありますが、要望の質問をして終わることにいたします。
 といいますのは、速記官が不足して弁護士の皆さんからも大変強い要望がありまして、ぜひ裁判所の速記官をつけてほしい。これがなかなか届きませんので、やむを得ず当事者負担で、大阪では年間五百時間ぐらい当事者が費用を出して外部の速記を入れてお願いしている。東京でもやっぱり外注速記がある。横浜あたりではテープにとっておきまして、そしてその事件が終わって、当事者が控訴しないと確定したら証人の証言したテープは翻訳に起こさないでそのままにして、控訴して上へ行くときに急いでそのテープを翻訳して調書につくって出す、こういう便法までやっておるという状況があると聞いておるんです。そういう意味で、速記官の人員不足というのは裁判所としても重視していただかなくちゃならぬ問題だと思っておりますが、どうお考えでしょうか。
#128
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 現在、速記官の定員が九百三十五名でございまして、現在員が八百七十二名でございますので、六十三名の欠員がある状況でございます。委員御指摘のとおり、東京あるいは大阪におきましては外部速記が活用されている状況も承知しているわけでございます。それから横浜におきまして録音テープの引用ということもなされておることも承知しております。録音テープの引用につきましては、橋本委員先刻御案内のとおり、西ドイツあるいはアメリカにおきましてもそういう制度がございまして、供述録取の一つのあり方だろうとは思います。ただ、今申しましたように、速記官は現在欠員を抱えているような状況でございますので、何とかその欠員を埋めるために努力してまいらなければならないとは考えているわけでございます。
 ただ、この充足につきましてはこれまでも努力しておりますけれども、一方では近来の録音機あるいはワープロの普及等、速記に代替する機能を持つ技術が普及しつつあるわけでございまして、その間にあって相当の資質を有する速記官志望者というものを確保することがなかなか困難になってまいっております。そういう事実もあるわけでございまして、私どもといたしましては、今後このような状況を踏まえながら逐語録作成につきまして十分な対処ができますようにいろいろ努めてまいりたいというように考えておるわけでござい
ます。
#129
○橋本敦君 今おっしゃった実人員ですが、私の理解では八百二十一名、こう理解しておりますが、八百七十二に間違いございませんか。
#130
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 私どもの方で算定いたしておりますのは、現在書記官研修所におりまして速記研修生として養成中の者も含めてこれまで算定しておりますので、多少数字のそごがあるかもしれません。
#131
○橋本敦君 わかりました。
 養成というのは難しい問題で、養成が終わって全部採用されるかどうか、途中でやめる人もあるものですから、養成中の人を人数に入れるとちょっと狂ってくるんですね。ですから、実際は六十三以上のマイナスだと、こう見なくちゃならない。せっかく九百三十五の予算定員があるわけですから、しかも、この九百三十五はもとをただせば三十年前に速記官制度が発足したときの予算定員というのはもっと多くて、千名あるいは千名を超えておったんじゃないですかな。だんだんそれが減って、それでも九百三十五というのは昭和四十九年以降すっと予算定員続いているわけですから、全然これが充足されない。したがって、いろいろな困難はあるけれども、予算定員は少なくとも充足するという、そのことは、機械化その他の問題は別としても、最大限の努力を今後していただきたい、こういうことを要望しておきたいと思うんですが、いかがですか。
#132
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) ただいま御説明申し上げましたように、現在の状況と申しますのは、例えば、民間におきましても速記の養成というものがだんだんしりつぼみになっている状況でございます。そういう状況も踏まえながら欠員の補充に努めてまいる、かように考えております。
#133
○橋本敦君 きょうは時間が参りましたので、終わります。
    ―――――――――――――
#134
○委員長(太田淳夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、中西一郎君が委員を辞任され、その補欠として田辺哲夫君が選任されました。
    ―――――――――――――
#135
○関嘉彦君 本日の議題になっております裁判所職員の定員の増員の件については異存ございませんけれども、それに関連いたしまして、裁判官並びにそれに伴う事務職員の量的並びに質的な充実についてきょうは質問したいと思っております。
   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
 これは、昨年の十二月に私が質問したものの補充、そのときも質問いたしましたけれど、それの補充としてお聞き取り願いたいと思います。
 まず最初に、判事、判事補の定員が過去においてどういうふうに増加してきているか。細かな年度は必要ございませんけれども、大体昭和三十五年以降大体十年ごとぐらいで結構ですから、わかっておれば数字をお示し願いたいと思います。
#136
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 三十年におきまして、これはその当時沖縄は本土復帰いたしておりませんので、以下の数字も沖縄を除外して申し上げさせていただきますが、判事が千百二名でございます。それから判事補が四百七十二名、簡裁判事が七百三十名でございます。四十年になりますと判事は千二百十、判事補は五百二十七、簡裁判事は七百三十一でございます。五十年に入りますと判事は千二百六十八、判事補は五百七十三、簡裁判事は七百七十九。六十年に参りまして判事千三百四十四、判事補六百三、簡裁判事七百七十九ということになっております。
#137
○関嘉彦君 私の持っている数字も大体同じようなんですけれども、私の数字で申し上げますと、確かに三十五年から五十五年、二十年間に判事で大体一割程度、判事補で一割五分ほど定員がふえておりますけれども、この二十年間における事件の増加数ということから比較しますと、とてもそれに追いつくか、追いつかないか、むしろ追いつかないぐらいではないかというふうに考えるんですけれども、
   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
この前のときも申し上げましたように、一人の判事が持っている事件が多くなりますと、どうしても遅延して、それが裁判の不信、裁判に頼らずにやっていこうというふうな考え方になってくると思うんであります。そのために、やはり判事、判事補、あるいはそれに附帯して事務職員、今の速記者の問題も同じですけれども、事務職員を、一方において機械化なんかで合理化はしますけれども、ふやしていく必要があると思う。
 そのことは、昭和三十九年の臨時司法制度調査会の意見書でも述べられております。その意見書の中では、例えば「法曹人口が全体として相当不足していると認められるので、」「質の低下を来たさないよう留意しつつ、」「漸増を図ること。」。特に、裁判官については、絶対数が不足して訴訟遅延の主要な原因となっているので、「相当程度増加すること。」、こういう意見が出ているんですけれども、これについてどういう御意見をお持ちですか。
#138
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 臨時司法制度調査会で述べられております御意見は傾聴に値する御意見だというように考えております。
 ただ、訴訟遅延の原因と申しますのはいろんな原因がございまして、例えば、非常に当事者の多数をなす訴訟であるとか、あるいは非常に複雑、困難な公害事件であるとか、そうふうに事件そのものに内在する原因もございますし、裁判官あるいは一般職の人員が足らないというような裁判所側に起因する原因もございます。それから、当事者の訴訟追行が熱心でないとか、あるいはほかの事件の関連で少し進行をとめておいてもらいたいというような当事者サイドに起因する原因もございます。さらには訴訟制度に起因する原因もございます。そのような原因が複雑に絡み合って訴訟遅延を来しているわけでございまして、裁判官あるいは裁判所職員の増員と申しますものは、裁判所サイドに起因する原因をカバーするのには役立ちますけれども、その他の原因につきましてはなかなかカバーできない面がございます。
 もちろん、私どもも増員が訴訟促進のために必要な措置、施策であるというように考えておりまして、これまでも、わずかながらではございますけれども毎年のように増員をお願いしてきたわけでございます。もっと訴訟を、審理を短期化するために抜本的に大幅な増員を図れという御意見もあろうかと思いますが、現在の裁判官の制度でございますと、司法修習生になりまして二年の修習を終えて判事補になった方々、これが主たる給源でございますものですから、一挙に裁判官の大幅増員を図るということはなかなか困難な状況ではないかというように考えております。したがいまして、今後とも事件の動向を十分検討しながら、これまでと同じように訴訟の適正、迅速な処理に支障を来さないように、わずかずつではございますが、増員の措置をお願いするように考えてまいりたい、かように考えております。
#139
○関嘉彦君 確かに、裁判の当事者に起因する遅延というものもあるだろうと思います。あるいは弁護士なんかの、忙しくて日にちがうまく合わないというようなことももちろんあるだろうと思いますが、しかし、この意見書に書いてありますように、絶対数の不足が訴訟遅延の主要な原因であるという診断が正しいとしますならば、やはりこれは早急に増員する必要があるんじゃないかと思います。先ほど安永委員からも同じ趣旨の質問がありまして、裁判官の適正規模というふうなものは考えられないかという質問がございました。
 確かに、何が適正であるかということはなかなか難しいと思いますけれども、しかし、例えば訴訟の受件期間を短縮するために、今平均して民事では一年かかっているとすると、これをできるだけ短縮するために裁判官を例えば今後十年間なら十年間にわたって一割なり二割なり、事件もふえてまいりますから、その事件のふえる率以上に増員するんだというのであるならば、私は国民の支持は受けられるのじゃないかと思うんです。そういう増員計画といいますか、将来に向けての増員
計画、これは外務省なんかでは在外公館の職員の増員計画みたいなものを持っているようですけれども、そういう増員計画というふうなものをお立てになる考えはございませんですか。
#140
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 長期的な増員計画を立てたらどうかという御指摘はこれまでもたびたびいただいているところでございます。私どもといたしましても、そういうような長期計画が立てられるものであるならば、そういう長期計画のもとに逐次増員をお願いしたい気持ちでございます。しかしながら、私どもの定員の基礎になりますのは将来における事件数でございまして、この将来における事件数の予測というものがなかなか困難なわけでございます。
 ときどき申し上げますように、これまで消費者信用に関連する事件がここ数年急増いたしました。それは、その事前にはなかなか予測できなかったわけでございます。消費者信用の金額はだんだん上がっておりましたけれども、それが事件となって反映してきましたのは急激な現象でございます。そういうふうに、経済的あるいは社会的な原因に関連いたしまして急に事件がふえたり、それから今度は制度を改正いたしまして、急に減ったりすることがございます。
 今回、道路交通法の改正に伴いまして、道交事件というものはかなりの程度減ってくるんじゃないかということも見込んでいるわけでございますけれども、そういうふうに五年あるいは十年先における事件のありようというものを予測することは非常に困難なものでございますから、長期的な計画を立てられずにこれまでやってまいりましたのは、過去二、三年の事件の傾向を見ながら、近い将来の傾向を予測して、それに応じた増員をお願いするという手法をとってこざるを得なかったわけでございます。
 ただ、御指摘のように、現在の平均審理期間と申しますのも、十年あるいは二十年前と比較いたしますとかなり短期化はしておりますけれども、長期未済事件等も種々ございますので、できる限り迅速処理が図られるように、裁判官を含めました裁判所職員の増員についても今後とも必要な措置をとってまいりたい、かように考えております。
#141
○関嘉彦君 私が増員を言いますのは、この前も申し上げましたけれども、どうも日本の社会では正規の裁判によって争うというのではなしに、町の親分であるとか暴力団であるとか、そういうふうな正規のルート以外の方法で事件を解決する気風が日本には強いように思うんです。
 言葉じりをとらえるようですけれども、先ほど人事局長が裁判に持ち込まれる、裁判というのは社会の病理現象で、会社あたりは生理現象だというふうなことを言われましたけれども、刑事事件は確かに病理現象だと思いますが、私は民事裁判で争うのは必ずしも病理現象ではなしに、人間が神様でない限りは争いがあるのは当たり前で、それを正規のルートで解決しようとしないで、正規のルート以外で解決しようというところに私は社会の病理現象があるんだと思うのです。したがって、裁判に対する国民の信頼をもっと高める、そういう意味から裁判官を増員して少しでも迅速化する、そういう趣旨なんです。十分御検討願いたいと思います。
 大臣、いかがでしょうか。
#142
○国務大臣(遠藤要君) 先ほどもお話にもございましたとおり、先般の衆議院の法務委員会でもこのような議論が繰り返されたわけで、やはり言葉は悪いことかもしれませんけれども、暴力団であるとか町の有力者とかがいろいろ争いの中に入って処理するということは、やはり裁判に持っていくと長期的な日時を要するというような点にもあるのではないかというような点で、私もなるほどな、こう感じております。やはり裁判官は裁判官個々に判断する時間も与えなければならず、そういうような点を考えると、現状よりも先生のお話のように、やはりもっと多く増員をするということも必要ではないかな、こう感じております。
#143
○関嘉彦君 きょうは、量だけじゃなしに質の問題を取り上げる予定でおったんですけれども、時間が五分になってしまいました。質の向上の問題として司法試験の問題もありますでしょう、これもこの前取り上げましたけれども。きょうは司法研修所における司法修習制度、これを取り上げたいと思うんです。
 先ほど申しました意見書の中にも、「いわゆる二回試験では、ほとんど不合格者が見られないが、この考試は法曹としての不適格者を排除するよう十分厳正に行なわれているかどうかという問題がある。」というふうに書かれております。いわゆる二回試験で不合格になった人、普通の言葉で言えば落第ですけれども、落第した人は毎年どのくらいおりますでしょうか。
#144
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 私ども二回試験と申しておりますけれども、二年間の修習を終えた後で行われる司法修習生に対する試験でございますが、過去五年間をとってみますと、昭和五十七年に九名、五十八年に七名、五十九年に三名、六十年に三名、六十一年に四名、これだけの、二回試験の際における私どもの申します合格判定留保者でございますが、出ております。
#145
○関嘉彦君 合格留保された者は、結局どうなりますか。追試験みたいなことをやるんですか。そして、結局最終的に排除される人がいるのかどうですか。
#146
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 合格判定留保になりますと、追試験が行われます。大体、二月程度後に改めて不合格の科目について試験を行うわけでございます。多くの場合はこれに合格いたしまして、そして、そのころ修習終了ということになるわけでございますが、中にはそのときに合格できなくて、今度は翌年のまた試験を受ける、このようになる人もございます。そうやってその翌年の試験にも受からないというケースもございますけれども、最終的には翌年の試験さらにはまた追試験というのを受けて、最後は何とか合格しておられるというのが普通でございます。
#147
○関嘉彦君 翌年の追試験ですね。そうすると、三年町いるわけなんですけれども、残りの一年間も給与は出るんですか。
#148
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 追試を受けまして、これに合格しなくて卒業が一年延ばしになる人の場合は、これは司法修習生の身分が継続いたしますので、その間も給料は支給いたします。
#149
○関嘉彦君 給与をもらって勉強できるんだったら、私はなるだけ長く留年したいと思うんですけれども、不合理だとはお考えになりませんですか。――私は、別に法律のことを聞いているわけじゃない。常識としておかしいとお思いになりませんかということを聞いているわけです。
#150
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 司法修習生には、その修習期間中に国庫から給与を支給するということが裁判所法の定めにございまして、これはその身分が続く間は支給することになっているわけでございます。
 常識的におかしいと思わないかどうかという点につきましては、これは余りに長期間試験に受からないがために長期間の給与を受けるというのは、これは不合理であると感ぜられる場合もあり得るであろうというふうに思います。
#151
○関嘉彦君 私は、絶対に不合理だと思います。
 もともと司法修習生に給与を出すこと自体にいろいろ意見を述べている人があります。奨学資金の貸与制にしたらどうかというふうな意見もありまして、私ももっともだと思いますが、そのこと自体はきょうは触れません。もっと時間のあるときにゆっくりやりたいと思っております。しかし、今の問題はおかしいんじゃないですか。つまり、だっこにおんぶで手とり足とりして、卒業するまで金も出しますから何とか勉強してくださいというのは少しおかしいんじゃないですか。
 大臣、どうお考えですか。
#152
○国務大臣(遠藤要君) これは何と申し上げたらいいか、おかしいといえば確かにおかしい点があると思うんですが、なぜそうしなければならぬかということを、これは我々として考えていかなけ
ればならぬということで、法曹界のこれからの司法試験制度や何かも改善していこう。もっとやはり法の担い手が情熱の燃やされるような、そして環境をもっとよくしなければならぬ。そうでないと受験する人自体の、何と言ったらいいか、ABCでやればなかなかAの人がこの試験を受験してくれぬというようなことであっては、何回受けてもそれこそそれにいろいろやっていなければならぬというようなことになったのでは大変だ、こう思いますので、法の確立を期していくのにはもっとやはりこれからの人に、自分は司法官の担い手になるんだというような抱負を、情熱を持ってもらうような環境づくりに努力したいと思いますので、御了承願いたいと思います。
#153
○関嘉彦君 時間がなくなりましたから、最後に一言だけ。
 大臣としてはそういうふうにお答えになる以外に方法はないだろうと思いますから、これ以上追及いたしませんが、これはある意味では司法研修所だけではなしに日本の大学も同じなんですね。入るのは非常に難しいけれども出るのは非常に簡単で、これでも大学を卒業したかと思うようなのが堂々と学士を持って出ているのが日本の実情ですから、これは日本の社会全体として考えなければならない問題だと思います。私はむしろ、入るはもう少し緩和して易しくして、出るのを難しくしていく、司法研修所の場合でも。それでどんどん落としていく。そして、もう方向転換されたらどうですかと、そういうふうにするのが私は本当に日本の司法の権威を高め、その質を高めていくことになるんじゃないかと思います。
 最後に、大臣の御意見をお伺いして、質問を終わります。
#154
○国務大臣(遠藤要君) いろいろの御意見もございます。今先生のお話も、なるほどなと感じられます。そういうふうな点で、今、大臣として基本問題の懇談会をつくって、いろいろの人の御高見を聞いて改善していこうというようなことで進めておりますので、御了承をちょうだいいたしたいと思います。
#155
○関嘉彦君 終わります。
#156
○委員長(太田淳夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#157
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより本案に対する討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   一賛成者挙手一〇委員長(太田淳夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#158
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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