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#1
第108回国会 法務委員会 第3号
昭和六十二年五月二十六日(火曜日)
   午後一時三十八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十五日
    辞任         補欠選任
     抜山  映子君    関  嘉彦君
 五月二十日
    辞任         補欠選任
     斎藤 十朗君     山本 富雄君
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     宮本 顕治君     諫山  博君
     関  嘉彦君     柳澤 錬造君
 五月二十六日
    辞任         補欠選任
     徳永 正利君     石井 道子君
     安永 英雄君     一井 淳治君
     諫山  博君     吉川 春子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         太田 淳夫君
    理 事
                名尾 良孝君
                林  ゆう君
                猪熊 重二君
                橋本  敦君
    委 員
                石井 道子君
                梶木 又三君
                下稲葉耕吉君
                鈴木 省吾君
                土屋 義彦君
                中西 一郎君
                長谷川 信君
                秋山 長造君
                一井 淳治君
                諫山  博君
                吉川 春子君
                柳澤 錬造君
                西川  潔君
   国務大臣
       法 務 大 臣  遠藤  要君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  清水  湛君
       法務省民事局長  千種 秀夫君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省保護局長  栗田 啓二君
       法務省人権擁護
       局長       野崎 幸雄君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局人事局長   櫻井 文夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第一課長    小杉 修二君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    古川 定昭君
       法務大臣官房参
       事官       米澤 慶治君
       厚生省社会局庶
       務課長      瀬田 公和君
       自治省税務局市
       町村税課長    小川 徳洽君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○夫婦別氏の選択を可能にする民法等の改正に関
 する請願(第九八号)
○外国人登録法の一部改正反対、指紋押なつ制度
 完全撤廃等抜本改正の実現に関する請願(第一
 八三七号外二件)
○法務局、更生保護官署、入国管理官署の大幅増
 員に関する請願(第三六九八号外五三件)
○外国人登録法の抜本改正に関する請願(第三八
 二五号)
○非嫡出子の相続差別廃止に関する請願(第六六
 二七号外一件)
○治安維持法等による犠牲者に対する国家賠償に
 関する請願(第六七一四号外三七件)
○刑事施設法案の早期成立に関する請願(第七一
 三四号外一件)
○継続調査要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(太田淳夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る二十日、斎藤十朗君が委員を辞任され、その補欠として山本富雄君が選任されました。
 また、昨二十五日、宮本顕治君及び関嘉彦君が委員を辞任され、その補欠として諫山博君及び柳澤錬造君がそれぞれ委員に選任されました。
 また、本日、安永英雄君が委員を辞任され、その補欠として一井淳治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(太田淳夫君) 刑法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。遠藤法務大臣。
#4
○国務大臣(遠藤要君) 刑法等の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
 第一は、電子情報処理組織に関連する不正行為に対処するための刑法の改正であります。
 電子情報処理組織の普及の結果、各般の事務の処理が電子計算機によって行われるようになり、その形態が大きく変化しつつあることに伴い、このような新たな事務処理の形態にかかわる不正行為が少なからず発生するとともに、今後その増加が懸念されるところ、これらの不正行為の中には、現行刑法により的確な対応が可能な従来の事務処理形態のもとにおける不正行為と同様の行為でありながら、現行の諸規定ではこれを的確に処罰することが困難なものあるいはその被害の重大さにかんがみ現行の法定刑では必ずしも適切に対応しがたいものがあるものと認められるのであります。
 そこで、このような状況にかんがみ、電子情報処理組織において用いられる電磁的記録について、その不正作出及び供用並びに毀棄を処罰する規定を設けること、電子情報処理組織による大量迅速な情報処理によって行われる業務を妨害する行為を処罰する規定を設けること、債権、債務の決済等が電磁的記録を用いて自動的に行われる事務処理の形態を利用して財産上不法の利益を得る行為を処罰する規定を設けることの三点につき、緊急に刑法の整備を行う必要があると考えたものであります。
 これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
 その一は、人の事務処理を誤らせる目的をもって、権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作出する行為並びに不正に作出された権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を供用する行為及びその未遂を五年以下の懲役または千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により二十万円)以下の罰金に処するものとし、不正作出に係る電磁的記録が公務所または公務員により作出されるべきものである場合については十年以下の懲役または二千円(同法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するほか、権利、義務に関する公正証書の原本たるべき電磁的記録に不実の記録をさせる行為及びこれを供用する行為を現行刑法の公正証書原本不実記載及びその行使と同様に処罰するものとし、また、公務所の用に供する電磁的記録及び権利、義務に関する他人の電磁的記録を毀棄する行為を現行刑法の文書毅棄と同様に処罰するものとする点であります。
 その二は、人の業務に使用する電子計算機もしくはその用に供する電磁的記録を損壊し、もしくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与え、またはその他の方法で、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、または使用目的にたがう動作をさせて、人の業務を妨害する行為を五年以下の懲役または二千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するものとする点であります。
 その三は、電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与えて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作出し、または財産権の得喪、変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得る行為及びその未遂を十年以下の懲役に処するものとする点であります。
 第二は、近年、外交官等の殺害、在外公館の占拠、人質をとる行為等の事犯に対処するための国際的な協力体制の確立が国際的課題となっていることにかんがみ、政府は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約及び人質をとる行為に関する国際条約を締結することとし、今国会にその承認を求める案件を提出しておりますが、これらの条約のうち、前者は国際的に保護される者に対する殺人、誘拐等を、後者は人質をとって第三者に不法な要求をする行為を、それぞれ一定の場合にはその国外犯をも含め、これを処罰し得るようにすることを主な内容とするものでありますので、これらの条約の実施上必要な刑法等の整備を行おうとするものであります。
 これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
 その一は、刑法を改正して、刑法第二条から第四条までの場合のほか、同法第二編の罪につき条約の要請に従ってその国外犯を処罰するものとする点であります。この改正は、主として国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約の実施のための措置であります。すなわち、同条約は国際的に保護される者の身体または自由を侵害する行為等を犯罪とすべき旨定めておりますが、これらの行為の処罰については国外犯の処罰の点を除き既存の罪で対応することにより同条約の要請を満たすことができますので、国外犯に関して条約の要請の範囲内でこれを処罰することを可能とする措置をとり、条約上の義務を履行しようとするものであります。なお、この改正は、一般に、条約上要請される範囲で刑法各則の罪の国外犯を処罰し得ることとすることにより、将来、国外犯の処罰義務を定める条約の締結が必要となる場合に、その早期締結に資する効果をも有するものであります。
 その二は、人質強要行為等の処罰に関する法律を改正して、人を逮捕し、または監禁し、これを人質にして、第三者に対し、不法な要求を行った者を六月以上十年以下の懲役に処するほか、人質強要目的による逮捕、監禁及びその未遂を処罰するものとし、さらに、これらの罪について、国民の国外犯を処罰するとともに、条約の要請に応じてその一の例に従って国外犯を処罰するものとする点であります。この改正は、人質をとる行為に関する国際条約の実施のための措置であります。
 その他、暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第一項及び第二項の銃刀を用いる傷害に関する罪についても、国民の国外犯に加え、その一の例に従ってその国外犯を処罰する趣旨の改正を行うこととしております。
 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#5
○委員長(太田淳夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○一井淳治君 まず、法務行政の方から質問をさしていただきたいと思います。
 私は昨年の七月まで弁護士の方の仕事をしておりまして、時々法務局の俗に言う登記所の方に参っておりましたけれども、どうも最近は登記所に参りましても何か大変慌ただしいような感じがいたします。それから、登記簿謄本をとりましても、昔はそうではありませんでしたけれども、最近は時には誤記があるというふうな状況もあるわけでございます。私ははたから見ておりましてどうも人員が非常に不足しているんじゃないかというふうなことも感ずるわけでございますけれども、最近の人員配置の状況についてどういうふうになっているのか、お尋ねいたしたいと思います。
#7
○政府委員(千種秀夫君) まず、法務局、特に登記行政につきまして御理解を賜りまして、ありがたく感謝しております。
 法務局の仕事のうち、特に登記関係は経済情勢を反映いたしまして非常に繁忙をきわめておりまして、戦後今日まで事件は増加の一途をたどってまいりまして、去年からことしにかけまして、また都市部におきましては事件が急増している状況でございます。
 もちろん、政府部内におきましてもそういうことは十分理解していただいておりまして、増員にはそれなりの努力をしてまいったわけでございますが、事件の急増というのは、例えば謄抄本などは過去二十年の間に十六倍にふえる、こういった極端なふえ方をしておりまして、人員もさることながら、十年前に都市部において理想的な庁舎ができたばかりのところへ、もう今日では人があふれているというような状況がございます。全国的に申しますと、繁閑の度合いは違うんでございますが、概して言ってそういう状況でございますので増員もなかなか追いつかない、こういう状況でございます。
 私ども、今増員につきましては、得られた増員はなるたけそういう超繁忙庁を中心に重点的に配置をしている状況でございますが、ここ一、二年の間にさような増加の傾向もあるために、なおまた不十分な点が多々あるかとおそれておる次第でございます。
#8
○一井淳治君 登記申請というものは、景気が悪くなればなるでまた抵当権の設定等でふえますし、景気がよければもちろん所有権の移転等の登記申請がふえるわけで、どちらにせよ毎年事件数がふえていっていると思います。特に最近は、外部から見ておりましても、大都市では土地の値上がりが大変ですから転売の登記申請も随分多いでしょうし、国鉄用地の切りかえの問題、大規模な住宅団地やマンションがどんどん建てられておりますので、特に昨年の後半からことしにかけては大変な事件数の激増ではないか、もう爆発寸前ではないかということも外部から見ておって思うんですけれども、人員増に対する手当てといいますか、そのあたりはどういうふうになっておるんでしょうか。
#9
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のとおり、昨年からことしにかけまして、都市部におきましては地価の暴騰あるいは金利の低下によるためか、抵当権のつけかえというようなことで事件が大都市中心に大体一四、五%伸びております。
 そういう次第でございまして、これは急に単年度で人手が手当てできませんものですから、今までやってまいりました方策というのは、まず、単純な謄抄本の作成のような仕事は外部に委託するということを進めてまいりまして、そちらの方の増員あるいは手当てを含めて手当てをしてまいりました。また、そういう事務につきましては、謄抄本の作成機という能率機具の手当てもいたしました。また、昨年ではございませんけれども、最近、マンション法と言われる区分所有権に関する法律を改正いたしまして、制度として手間がかからないようにするというような方策もしてまいりました。そして、先ほど申しましたように、増員につきましては特に繁忙庁に重点的に手当てをするということも考えてまいりました。また、例えば残業にいたしましても、集中的に繁忙庁で残業をするというような超繁忙庁に対する特別対策ということも最近協議をし、実行に移しつつある次第でございます。
 増員につきまして一般のお尋ねでございますが、増員は毎年そういうことで、省内におきましても、あるいは他省庁に比べましても御理解をいただいておりますが、政府全体としまして定員抑制の方針もございますし、財政問題もございます中で、なかなか私どもが期待するほどの増員は得がたい実情にございます。それでも、その中で毎年、削減を含めまして純増の増員をいただいておりまして、ここ数年の間、大体四十人に近い増員、そのほかに配転などもございまして、そういう増員を特に繁忙庁に配置するように努めている次第でございます。
#10
○一井淳治君 登記事項というものは間違いがあったら絶対いけない、これは前提だと思いますけれども、しかし現実には登記簿謄本に誤記があらわれておる。登記申請書が法務局に保存されておりますと職権で変更ができるでしょうけれども、登記申請書の保存期間が経過しておりますとまた新しく、迷惑を受けた人が費用負担をして訂正の登記をしなくちゃいけないというふうなことが起こりますし、また恐らく内部で働いておられる、毎日席に着いておらなければならない登記官などの方々は病気を押して出勤しておられるんじゃないかというふうな気もいたします。
 とにかく、非常に深刻な事態が起こりつつあるように思いますので、どうか適切迅速な登記事務を守るために、予算確保のために一層御努力をいただきたいというふうに思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
#11
○政府委員(千種秀夫君) 大変御理解をいただいてまた感謝の次第でございます。
 登記事務は、目下のところ人によって仕事をしておりますために申請の段階からいろいろと過誤がございまして、それを訂正することに努めておるわけでございますが、遺憾ながら最近は繁忙に紛れて故意に悪いことをする人間もふえてまいりました。なかなか監視が行き届かないということで非常に困った事件も最近は何件か出てきております。また、それをなくそうといたしますと、申請人が大勢待っている中で急いでやろうとすることで緊張の度が増すということもございまして、そういうことがいろいろと身体的な要件に悪い影響を及ぼしているのではないかとおそれております。繁忙のために特に病気になった、こういう例はなかなか区別がしにくいために把握しておりませんけれども、そういう状況が恒常的にあるということは私ども常に心配しておりまして、今後ともそういうことの対策として人員要求のほか、いろいろな諸設備、制度の改善に努めてまいりたいと考えております。
#12
○一井淳治君 登記事務についてコンピューターを導入するとか、あるいは機械化とか、そのあたりの計画、御予定はどのようになっておるのでしょうか。
#13
○政府委員(千種秀夫君) 先ほど申し上げましたように、機械化できるものにつきましては、かなり能率器具を導入し、開発してそれに努めてきたところでございますが、何分にも最近の事件の急増あるいはそれに対応する手当ての仕方が十分にいかないという現状にかんがみまして、最近コンピューター技術もかなり進歩いたしましたので、これを何とか導入できないかということで現在その検討を進めているところでございます。これは十年以上前から研究をしてきたところでございますが、ここ一、二年の間、かなりコンピューターの導入についての対策が進行いたしまして、現在はコンピューター化する場合のシステムの開発がかなり進んできております。
 ただ、この問題は、結局法務局の職員が行わなければなりませんから、新しい制度を導入すればすぐ解決するということではございませんで、やはり関係の申請人とか司法書士とかそういう人たちにも十分の理解を得なければなりませんし、職場環境もまたコンピューターならコンピューターらしく改善をしていかなければなりません。やはり技術とともに人の心も改善していかなければならないということから、これは長期的な作業であろうと考え、慎重に事を進めている次第でございます。
#14
○一井淳治君 ただいま先回りしての御回答もあったわけでございますけれども、通産省あたりでは、工業所有権の申請等につきましてペーパーレスを進めるということで進めておられるようでございますけれども、コンピューターを導入される以上はよいところを十分生かすような方向でやっていただきたいと思います。その場合にも職員の方々がこれを扱うわけですから、十分に職員、労働組合の意見を照らすとか、あるいは登記事務については何といいましても司法書士の方々の協力が大前提でございますので、司法書士の意見も尊重しながらやっていただきたい、そのように要望を申し上げたいと思います。
 それから、コンピューターを導入されますと、既存の登記事項を全部コンピューターの方へ移しかえられると思うんですけれども、一つ気になりますのは明治時代の、例えば三円とか五円というふうな非常に安い抵当権等が現在依然として登記簿上に残っておる。そしてこれがあるために、例えば最近は地方の民活ということで田舎の人たちも随分自分の不動産を銀行の担保に入れることもふえておるようでございますけれども、銀行では明治時代の三円、五円の抵当権でも設定されておってもこれを受けつけないというようなこともあるわけでございます。ですから、コンピューターに移しかえる作業をなさるときに、だれが見てもこれは不合理だというふうな登記事項を整理していくという作業もなさってはいかがかと思うんですけれども、このあたりについてはいかがでございましょうか。
#15
○政府委員(千種秀夫君) 御指摘のとおり考えますが、一般に申しまして、コンピューター化していく場合に既存の登記事項を全部移記いたしますと、やはりそれだけの手数なりコストがかかります。そういう意味で、移行作業でいかにコストを少なくするかという観点から考えましても、現に効力を有しないものはなるべく移記しないようにしていきたい、こういう方針で臨んでいるところでございます。
 その一つの問題として、ただいま御指摘のようにもう時効でなくなっているような抵当権は何かこの際処理できないだろうかということが私どもの検討課題にもなっておるのでございますが、時効の問題になりますとこれは中断の可能性があるとか、要するに、登記官の判断だけでは一律に決められないような要素がございまして、これを何か申請人の方から消してもらう手続はないだろうかと。一番厳重な手続は判決手続でございますが、そうでなくても、簡易な手続として公示催告の手続などがございまして、現在その公示催告の手続は割合に使われているようでございます。しかし、それ以外にも、債務者がこんなわずかな金額のものでございますれば供託をして消すような方法はないかとか、今そういうことを事務的に検討をしておりまして、うまくいけばそういうものはなるべく落としていきたいと考えております。
 ただ、これは実際に落とす段階でだれが判断するかといいますと結局登記官の問題でございますから、登記官が誤ってそれを落としてしまいますと、何か新しい法律問題を巻き起こすというような危険がある場合はなるべくそのままにしておいた方がいいということもございまして、ただいま御指摘の古い抵当権については何らかの措置を考えたいと思っておりますが、すべてにわたって古いものを全部抹消するということについては横並びでいろいろと検討していきたいと考えております。
#16
○一井淳治君 現在、さっきお話しくださいました公示催告制でございますけれども、これは関係者が行方不明という場合でございまして、関係者の所在がはっきりわかっておる場合にも、最近は非常に権利意識が高くなりまして、相当な判つき料を差し上げないと登記申請に協力いただけないという場合が多いわけでございますので、何らかの簡易な方法、登記所の方へ申し出て何らかの手続をして、相手方の意見を聞いた上で抹消する。できなければもう最終的には法廷ということになるんでしょうけれども、何らかの簡易な方法をお考え願いたいと思います。そうしないと、現在のように全部裁判所へ持ち込みますと非常に不便でございますし、そのためにいろんな費用もかかって困りますので、法制度の立案を要望申し上げたいと思います。
 それから質問を変えまして、法律扶助協会の関係で質問をさせていただきたいと思います。法律扶助協会は刑事における国選弁護に対応するものとして経済的余裕の乏しい人たちが権利侵害に対する救済を裁判所に求める場合に扶助を受けることのできる団体と聞いておりますけれども、最近のように世相が悪く、人情が薄くなってまいりますと、扶助件数が増加しているんではないかと思います。最近の全国での年間統計数字で結構でありますけれども、年間の合計扶助件数はどのようになっておものか、推移はどのようになっておるのか、御説明いただきたいと思います。
#17
○政府委員(野崎幸雄君) 過去三年間の扶助決定件数の推移を見てみますると、昭和五十八年度が二千七百七件、五十九年度が二千七百五十六件、六十年度は二千九百二十七件となっております。六十一年度につきましてはまだ事業報告を受けておりませんが、六十年度よりは増加しておるというふうに聞いております。
#18
○一井淳治君 扶助協会では、事件を処理するに当たりまして弁護士を依頼しておるというふうに聞いておりますけれども、弁護士に対して払う報酬は一件当たり現在ではどのようになっておるんでしょうか。
#19
○政府委員(野崎幸雄君) 委員も御承知のとお法律扶助制度は資力の乏しい者のために民事、または行政事件の訴訟に関する諸経費――訴訟費用でございますとか、弁護士の手数料でございますとか、弁護士謝金というものを立てかえるものでございます。
 昭和六十年度におきますこの支出の関係でございますが、これは事件の難易でございますとか、訴額でございますとか、そういったものによって差をつけておるのでありますけれども、六十年度の支出された金額を事件数で割ったつまり平均金額を出してみますると、弁護士手数料としては五万七千円、弁護士謝金としては十万八千円というものが支出されておるようでございます。
#20
○一井淳治君 非常に低い額で担当の弁護士さんが奉仕をされておるということがわかりますけれども、扶助費の会計でございますが、この扶助費に充てる財源、いわゆる収入の部に上がるものは償還金と国からの補助金、これが大部分を占めておるというふうに聞いておりますけれども、そのとおりでございましょうか、
#21
○政府委員(野崎幸雄君) そのとおりでございます。
#22
○一井淳治君 今後、法律扶助協会の扶助費が不足して、そのために人権侵害が救済されないまま泣き寝入りになるというふうな事態が心配されますけれども、そういうことが決して起こらないように、大変厳しい財政事情であること、そしてその中でこれまで大変御努力くださっているということはよくわかっておりますけれども、一人の人権侵害でも放置されることがあってはなりませんので、国庫からの補助の増額についてなお一層の御努力をいただけるというふうにお聞きしてよろしいでしょうか。
#23
○政府委員(野崎幸雄君) 貧窮者に対する訴訟援助というものは極めて重要なことでございます。法律扶助協会に対する補助金につきましては法務省としましては常に最大限の努力を払いまして、その充実に努めてまいったところでございます。法律扶助事業の重要性にかんがみまして、真に扶助を必要とする者が救済されないような事態が生じることのないよう、今後とも私どもといたしましてはこの制度の安定、充実にさらに努力を続けてまいる所存でございます。
 ところで、この補助金というものは、貧窮者に対する訴訟費用の立てかえということを目的としておるものでありまして、その立てかえた費用が償還されますとそれがまた次の扶助費に回っていくということになっておるわけでございます。そういうことでございますので、今後扶助協会におきましても扶助決定に際してはその点をよく御理解の上慎重に審議をして、真に立てかえなければならないというものに立てかえを決定していただく、また債権管理についても万全を期していただきたい。また扶助協会は大蔵省に交渉をいたしまして免税団体に指定をされておるわけでございます。したがいまして、扶助協会自体も自己資金の充実というものに今後努めていただきたい、かように考えておるところでございます。
#24
○一井淳治君 扶助協会の方も本気で努力をすると思いますので、法務省におかれましても一段と扶助費の確保について御努力願いたいというふうに要望申し上げます。
 それから、保護司さんに関連して質問をさせていただきたいんですが、保護観察中の少年とか、仮出獄中の受刑者とかいわゆる一号から五号までの観察をその任務とされておるようでございますけれども、大変な苦労が多いというふうに私はたから見ておって思います。しかし、日陰の仕事でございまして、非常に立派な仕事なんですけれども余り報いられない、特に処遇がよくないということがあると思いますけれども、保護司さん一人当たり、人数的でございますけれどもどれくらいの人が平均常時担当しておるのか、それから処遇はどのようになっておるのか、その他についてまず御説明願いたいと思います。
#25
○政府委員(栗田啓二君) 更生保護の分野におきまして最も重要な活躍をしてくださっておられる民間協力者である保護司に対し、大変深い御理解を賜っておりましてまず感謝申し上げる次第でございます。
 ただいま御質問ございましたように、保護司の方が一号から五号までのいわゆる保護観察を担当してくださっておられますが、ごく大ざっぱに算術計算いたしますとお一人一・七件ぐらいの割合で事件を持っていただいております。ただ、非常にお忙しい方は八件、九件と、あるいは中には二けたに上る数をしょい込んでくださる方もございますし、それからまた御健康状態あるいは御本業の方がお忙しいということでしばらくの間事件をちょっと待ってくれという方もございますので、ただいまは本当に算術平均で申し上げた数字でございまして、おおむね皆様がこの程度持っているというふうにはちょっと言いかねる点がございますので、御了解いただきたいと思います。
 それから、まさに御指摘のとおり保護司さん方に対しましての処遇といいます点、私ども常に心苦しく申しわけなく思っておるところでございます。御案内のように保護司さんに対しましては給与というものを出せないという法律の建前になっておりますので、実費弁償という形で事件一件につきということでお金をお渡しするという仕組みになっております。この実費弁償と申しますのも大変ささやかなものでございますが、保護観察一件をお引き受けいただきますと月に四千六十円以内というのが保護観察の場合のいわゆる補導費としての実費弁償でございます。そのほかにまだ保護観察に至っておりませんが刑務所あるいは少年院等から仮出獄等をする人たちを果たしてその地域や家庭が引き受けられるかどうかという点をいろいろ調査いたさなきゃなりませんので、その地域の保護司さんにいろいろ御検討いただき、地元の実態調査をしていただく。これは私どもの方で環境調整という言葉で申しておりますが、この環境調整をお願いいたしましたときにはその報告書一回について九百円というような金額を実費弁償ということでお払いしているわけでございます。
 その他、細かくなりますと交通短期保護観察、御案内のとおり交通事犯が非常にふえまして交通事犯を起こしました少年につきましてごく短期間集中的な保護観察をやろうということで交通短期保護観察ということをやっておりまして、この対象者につきまして状況調査していただくというような場合には報告一件につきまして四百三十三円という金額を支給いたしております。このほかにやはり保護司さんにもいろいろ専門的なテクニックを御勉強いただくというようなことでケース研究というようなことをやっていただきまして、研究会等に御出席いただきましたときには一回に六百五十円でございますとか、あるいは単に事件を起こしてしまった後ばかりではなしに、各地域におきます犯罪予防につきまして保護司さん方に大変な御活躍をいただいておるわけでございますが、この犯罪予防に御活躍いただきました保護司さんに対しましては年額で六千六百円犯罪予防活動協力費ということで差し上げるというような手順になっております。実情を報告いたしました。
#26
○一井淳治君 私が大ざっぱに聞いているのは、大体一件当たり二千円少々、これが大部分なんだというふうに聞いておりますけれども、実情はそうじゃないんでしょうか、
#27
○政府委員(栗田啓二君) 事案によりましてやや細かくいろいろ申し上げましたが、例えば環境調整などでございますと九百円ということになってしまいます。これも一件は一件でございますし、それから交通短期の対象者を見ていただく、これも実は四百三十三円、いろいろやっていただきますのであるいは保護司の方々がお受け取りになるお感じとしまして今、先生御指摘のような数字という感じになろうかと思います。これは地元に保護司さんがおられ対象者がいるときはよろしいんでございますが、地元に保護司さんがおられませんと対象者に会っていただくために交通費をかけていただかなきゃならない。本当に単に時間をつぶすというだけではなしに現金をも御支出いただくということが随分あるわけでございます、そういうものを考えていただきますと実感としてそういうような実感をお持ちになられるのではないかと存じます。
#28
○一井淳治君 きょうは厚生省の方においでいただいているわけですけれども、民生委員に対する支払いでございますが、これはどういうふうな計算をなさっておるのか。それから、これは地方自治体の方から直接的には払われるというふうに聞いておりますけれども、この地方自治体が国から出るものにある程度加算をしているのじゃないかというふうに思いますけれども、そのあたりわかりましたら御説明いただきたいと思います。
#29
○説明員(瀬田公和君) 民生委員は民間の奉仕者として自主的な民間の福祉活動をしておりまして、主として一人暮らしの老人等の援護活動とか心配事の相談活動などに従事しております。全国平均いたしまして大体二百世帯ごとに民生委員が一人というふうな状況になっておりまして、総数としては現在約十八万人ほどです。
 手当ということでございますが、現在、国といたしましては民生委員に対する手当という形で昭和六十二年度には一人当たり四万四千円という額を都道府県の地方交付税の交付金という形で算入をいたしております。先生おっしゃいましたように、各市町村におきまして実際に民生委員に支給をいたします費用の額でございますけれども、これにつきましては各都道府県におきまして地方交付税の交付金に実はそれぞれ上積みをしているところが多数ございまして、市町村ごとに異なっているというのが実情でございます。例えば、先生の御郷里でございます岡山市でございますと、この四万四千円という額に大体五千円という額を上積みしているというふうに聞いております。
#30
○一井淳治君 実費弁償という基本原則でございましょうけれども、実際問題として忙しい方の場合にタクシーを利用するとすれば一回のタクシー分でそれが消えてしまう。自分の車で行っても駐車料金で大半が消えるというのが実情ではないかと思います。本来からいえば保護観察官がすべきところを民間の保護司さんがかわって奉仕的にやっているという側面もないことはございませんので、どうかこの処遇についての改善に一層御努力いただきたい、このように思いますけれども、いかがでございましょうか。
#31
○政府委員(栗田啓二君) まことにありがたいお言葉をいただきまして、私どもといたしましても少しでも多く、また少しでも早くこういった方々の処遇の改善に努めてまいりたい、全力を払ってまいりたい所存でございます。よろしくお願いいたします。
#32
○一井淳治君 もう一つ、私非常に気になっておりますのに更生保護会というものがございます。これは民間の施設でございまして、刑務所の刑を終えてどこへ行こうにも引取人がいないような人がお世話になる団体と聞いておりますけれども、この更生保護会も最近非常に経営が苦しくなっている、もうどこも大変困っておるということが言われておりますけれども、補助金はどういうふうな計算になっておるのか、お尋ねしたいと思います。
#33
○政府委員(栗田啓二君) これまた御指摘のとおりでございまして、保護会の中でもいわゆる宿泊保護、直接宿泊保護をいたすことになっております保護会が全国で百一ございます。そのうち四つの保護会が火事に遭って焼けてしまったとかなんとかいうことで施設がないというようなことで今業務をとめておりますので、九十七の保護会が現実の活動をいたしているわけでございます。
 この保護会に対しまして、被保護者を一人一日預かっていただくたびに、やや細かい数字を並べますが、国の方から補導費として百十円。それから食事を出していただいて泊めていただく場合は千七百七十一円七十四銭。食事抜きで、ただ宿泊だけをお願いする場合には宿泊費として六百二十四円一銭。このほかに、保護会の人件費でございますとか運営にかかる費用としまして一人一日預かっていただくたびに千三百五十六円七十八銭七毛、大変細かい数字まで申し上げましたが、この程度の金額を差し上げるということでやっていただいております。それから、近ごろまた御案内のように覚せい剤でございますとか、暴力団とか扱いに大変困難な人がふえてきております。そうした場合にはいろいろ御苦労も多いことであろうということで、いわゆる処遇困難者を収容したという場合の、割り増しと申すとおかしくなるんでございますが、委託事務費、特別の上積みが二百五十円特別加算ということであれしていただいております。
 このようなことでやっておるわけでございますが、現実には今御説明したところでおわかりいただきましたように、収容していただく、預かっていただいたときにその人数に応じまして補助金を出していくという建前になっております。ところが、これは地域によって大分ばらつきがございまして、全国的に見ますと定員に対しまして現実に保護会へ入る人の率が五十数%ということになっております。ということでございますと、それに見合います補助金しか支払うことができないというようなことで、まさに御指摘のように各保護会非常に苦しんでいるということでございます。
#34
○一井淳治君 私は、この種の施設は、外国のように民間の慈善団体が強い力を持っている場合は民間団体でもいいですけれども、日本の場合には国の施設にすべきであるというふうに思います。すぐにそういうふうにもならないでしょうから、何とかその予算を確保して、思い切った改善をするような御努力をいただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、財政難の折から大変な困難でございましょうけれども、更生保護会以外にも再生保護婦人会とか協力雇用主というふうな広い民間の協力者の団体がございます。こういう団体に対してももう少し予算を確保して、活力ある行動ができるようにいろいろ御支援をいただきたいと思います。特に更生保護婦人会などについては、地域で非常に有力な御婦人が入っておられるんですけれども、ちょっと方向づけが足りないというんですか、もう少し引き立てをするようになさったらいいんじゃないかというふうに思います。
 とにかく、再犯者が非常に多いわけでございまして、私が言うまでもなく犯罪者の大部分が再犯者でございまして、その再犯者の検挙等のためにお金を使うよりは、こちらの方へお金を回してもらった方がうんと安上がりじゃないかと思います、何とか更生ということについても予算を使ったり、いろいろ民間団体の引き立てということも配慮いただきたいと思うわけですけれども、そのあたりについて御意見をお聞きしたいと思います。
#35
○国務大臣(遠藤要君) 先生御指摘の点についてお答え申し上げたいと思いますが、更生保護関係の方々には大変な御苦労をおかけいたしております。私はそのような点で、今すぐに金でと言われても予算措置の問題もございますので、その心、皆さん方の心を大きく尊重しながら一層御努力を願いたい。それは御承知のとおり、今日刑事政策といいましょうか、また社会政策といいましょうか、その担う点が大変大きゅうございまして、これが法務省で全部扱えということになったならば大変な出費だと、こう思います。私はそのような点で、中曽根総理がよく民活という自分だけの専用用語みたいなお話をされておるけれども、これが本当の民間の協力によって、民間活動によって進められているなとしみじみ感じ。させられており、先般の予算折衝の際にも、その気持ちを私なりに強調申し上げて、いささかではございますけれども増額させたという点がございますけれども、さらに、きょう委員会で先生からの御発言等も十分私は身につけて、この趣旨にのっとるように、そしてこれからの社会復帰の問題とか、仮釈放されている問題とか、犯罪防止のために一層ひとつ御努力をお願いするような方途を講じたいということを申し上げて、お答えといたします。
#36
○一井淳治君 大臣みずから御回答いただいたわけでございますけれども、ぜひとも一段と御努力をお願いしたいというふうに思います。
 それから、刑法の改正の問題についてお尋ねさしていただきます。
 四条ノ二の改正の関連でございますが、国際的に保護される者に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約と、人質をとる行為に関する国際条約、この二条約との関係で今回の四条ノ二の改正が出てくるというふうに思いますけれども、この両条約の世界各国の締結の状況はどういうふうになっているのか。簡単で結構でございますので御説明願いたいと思います。
#37
○政府委員(岡村泰孝君) 本年五月十四日現在の締約国数について申し上げます。
 国家代表等保護条約につきましては六十九カ国、人質行為防止条約につきましては三十八カ国でございます。
#38
○一井淳治君 その締結国ではそれぞれ国内法の整備をされておると思いますけれども、実際にされておるのかどうかという点が第一でございます。
 そして、整備の方法とすれば、個別的に列記する方法と、今回の四条ノ二の包括主義の二種類があるんじゃないかと思いますけれども、大体その二種類の形で国内法の整備がなされておるんでしょうか。
#39
○政府委員(岡村泰孝君) まず、人質行為防止条約について申し上げます。
 これにつきましては、我が国におきましては人質強要行為処罰法に新たに人質強要罪を設けるなどの対応をいたしましたほか、刑法四条ノ二で国外犯の処罰に関します包括規定を設けたところでございます。ドイツにおきましては、刑法の人質強要罪がこれに適用されることになるわけでございますが、国外犯の処罰に関しましては我が国と同じような包括規定を設けることによってこれに対応いたしております。イギリスにおきましては、人質強要罪につきまして国外犯を処罰する趣旨の新たな法律を設けてこれに対応いたしております。アメリカにおきましても、人質強要に関します罪を設けて、また国外犯に関します処罰規定も設けて、新しい規定を設けることによってこれに対応いたしております。
 次に、国家代表等保護条約の関係でございますが、我が国では現行の刑法各則の罪で対応いたすことにいたしまして、さらに、刑法四条ノ二で国外犯の処罰に対応することといたしております。これに対しまして、ドイツでは我が国とほぼ同じでございまして、既存の刑法上の罪で対応し、かつ国外犯処罰に関しましては包括規定で対応するということになっております。イギリスでは、既存の刑事罰則で対応いたしますが、国外犯に関しましてはその裁判管轄を持つという趣旨の規定を設けて対応いたしております。アメリカにおきましては、国際的に保護される者に対します殺人、誘拐等の罪を新たに設けますとともに、国外犯処罰に関しましても条約上の義務に対応できるような裁判管轄権を設けることによってこれに対応しているところでございます。
#40
○一井淳治君 我が国では、従来の国外犯の処罰は刑法の二条から四条にもはっきりしておりますけれども、個別列記の方法をとっておるわけでございます。それで、条約を引用いたしますと条約中の文言が明確に割り切れないことが起こるような弊害がございますし、包括主義でいかなければならないほど今後条約がふえるというふうにも思えないので、列記主義の方が我が国の国情にも合致しておるし、そしてまた包括主義でいきますと白地刑罰法規ということになりますので、そういったものは回避した方が賢明でありますので、我が国の立場からすれば列記主義の方が正しいのではないかというふうに思いますけれども、その点はいかがでございましょうか。
#41
○政府委員(岡村泰孝君) 国家代表等保護条約に関して申し上げますと、この条約上処罰すべき行為といたしましては、外交官等国家代表の生命、身体に対する侵害行為などでございまして、これに適用されまするところの我が国の刑法各則の罰則は相当数に上るわけでございます。したがいまして、この相当数に上ります刑法各則の罪を刑法の二条に掲げるといたしますと、本来この刑法の二条は内乱罪あるいは公文書偽造寺我が国の国益に大きく影響いたします犯罪につきまして何人を問わず日本国外において犯した罪についても刑法を適用するということにしているところでございまして、それとのバランス上、刑法各則の相当の部分の罪をこの二条に盛ってまいりますことはいたずらに二条の範囲を拡張するということにもなりかねないわけでございます。
 一方、条約の義務といたしましては、何人を問わず日本国外において犯した行為についてまですべて処罰せよということではないわけでございまして、締約国等の関係でおのずからその範囲が条約上絞られてくるわけでございます。そういたしますと、裸のままでと申しますか、例えば、殺人、傷害等が刑法二条に当たるというふうにいたしますと、条約上の義務よりも広い範囲で刑法二条が適用されるというような問題もありますし、そうかといって条約上の範囲内で、具体的には国家代表等に対する殺人等についてのみ二条を適用するというような規定をいたしますとかえって煩瑣になるわけでございます。そういうような点で、例えば、ドイツなどにおきましても我が国の四条ノ二と同じような包括規定でもって対処するのが相当であるということになっておるわけでございまして、我が国におきましてもそのような趣旨で四条ノ二を設けて対応したいというふうに考えておる次第でございます。
#42
○一井淳治君 それでその四条二の「条約」という字句の意味でございますが、どの範囲のものを指すのでしょうか。
   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
 それからもう一つ、今後締結を予定しておって、これに関連するような条約があるんでしょうか。
#43
○説明員(米澤慶治君) とりあえず現在四条ノ二で想定いたしております「条約」は、今局長が申しましたように、国家代表等保護条約を当面考えております。しかしながら、刑法改正が成立いたしまして刑法四条ノ二が実行されることになりますと、その後我が国が締結いたしますいろいろな条約もそこに入ってくる余地はございます。ただし、私どもの考えでは、ここに言う「条約」は当然国民の権利、義務に深いかかわりを持つもの、つまり、刑法に掲げるわけでございますので権利、義務に深いかかわりを持っておりますから、憲法に定められておるところによりまして国会の御承認を得て、その結果、条約が官報によって公布されるという厳格な意味での条約を想定いたしております、
 それから、今委員の御質問の、さしあたり将来の条約としてということでございますが、まだ締結するかどうか決まっておりませんが、仮に考えますと、例えば、拷問禁止条約とか核物質防護条約といったものが当面想定されるかと思います。
#44
○一井淳治君 条約の内容を見た場合に、犯罪類型が一義的に特定されると言えない場合が少なくないように思います。特に、外国語で本文がつくられてそれを翻訳するわけですから、その点で一つの問題が発生してまいりますし、それから、日本の風土と外国の風土は異なるので不明確な文言というものがどうしても避けられないように思うわけでございます。例えば、先ほど来の条約の第二条の一の(a)でございますけれども、「身体又は自由に対するその他の侵害行為」というふうな非常に漠然とした、私は漠然と思うんですけれども、漠然としな言葉が使われる、これに対するもとの外国語は私わかりませんけれども。そういうことで罪刑法定主義に反するのかどうか、これは学説上の問題でございますけれども、少なくとも罪刑法定主義の精神に反するのではないかという心配が非常に強いわけでございます。そのあたりはいかがでございましょうか。
#45
○政府委員(岡村泰孝君) 刑法四条ノ二は、既に刑法上犯罪として規定されております行為につきまして、その国外犯を処罰するにすぎないのでありまして、罪刑法定主義の関係で問題はないものと考えているところでございます。
 また、国外犯が処罰されます範囲につきましては、委員御指摘の国家代表等保護条約の二条の一項(a)、(b)等に具体的に掲げられているところでございまして、外交官等に対します殺害行為、誘拐行為、これは具体的に例示されておるわけでございまして、そのほかに「その者の身体又は自由に対するその他の侵害行為」というふうな規定で規定されているところでございまして、これらの者の身体なり自由を侵害する具体的な危険が類型的に認められるものについて国外犯を処罰すべきものとしているのでございまして、一般人にとりましてもこの表現でもってその範囲は明確であるというふうに考えている次第であります。
#46
○一井淳治君 それで、この法律が成立いたしますと、刑法の改正部分だけではなくて、関係の条約の方もあわせて周知徹底してもらわないと弊害が起こると思いますけれども、そのあたりのことについてはいかがでございましょうか。
   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
#47
○説明員(米澤慶治君) 確かに委員御指摘のとおり、条約の内容も明確かつ正確に訳され、かつ条約自体も内容も明確でなければならないと思います。その点につきましては、従来からこの規定を策定いたします作業の過程の中で外務省の当局とも話し合いをいたしまして、この条約以外に今後締結する条約につきましては、ドラフトの段階から法務省の刑事局の法律家が参画し、我が国の国内法との整合性のある条約となるように努力するとともに、翻訳に際しましても我が方が関係することによりましてその明確性、正確性を期したい。かつ条約承認案件の御審議を国会の外務委員会で御審議いただきます場合にも、その典型的な刑法の罪を一応審議資料として出していただきましてそこで御審議願うというようなことも、外務省の御了解を得て今回もそれを実施させていただいておるところでございます。
#48
○一井淳治君 次に、人質強要罪の関係について質問いたしますが、昭和五十二年に現在の人質強要罪が新設されたときに、今度新設されるところの単純人質強要罪は新設するかどうかということが検討されたが、結局見送られたという経過があるようでございます。参議院の法務委員会でそのあたりのことが論議をされておりまして、議事録を見ますと、単純人質強要罪まで処罰することになると、そのような構成要件を取り込んでくるということになりますといささか範囲が広くなり過ぎるというふうな答弁もあったわけで、その段階では、この単純人質強要罪で処罰することは、そこまでしない方がいいんじゃないかという見解が強かったわけでございましょうか。
#49
○政府委員(岡村泰孝君) 現行の人質強要行為の一条でございますが、これは御承知のように、当時発生いたしましたダッカ事件等を念頭に置きまして、過激派によって犯されることの多いこの種の暴力的要素の強い行為、それだけに人質の生命や身体に対します危険度の大きい特定の行為類型を取り上げることといたしまして、そこで「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」云々というような要件を設けたところでございます。したがいまして、こういった非常に悪質な行為であるだけに、現行法の一条につきましては、いわゆる何人がどこで犯した犯罪であっても処罰するという世界主義をとっているのでございます。
 ところで、今回批准いたしますところの人質行為防止条約は、人質の解放と引きかえに第三者を強要する目的で人を逮捕、監禁し、人質の殺害等をもって第三者を強要する行為を人質行為といたしまして、その未遂及びこれに加担する行為を犯罪としているところでございます。ところで、現行の法律によりますと、人質強要目的の逮捕、監禁の未遂、あるいはまた人質の親族以外の第三者に対します強要行為、こういったものについて一般的に処罰規定が欠けているところでございます。そこで、この条約を批准するに当たりましては、条約上こういう行為を処罰しなさいと言っているその条約上の義務に対応するためには今回のような改正が必要であると考えて提案いたしておる次第でございます。
#50
○一井淳治君 今回の単純人質強要罪が条約上の必要から立案されているということはわかるわけでございますけれども、加重人質強要罪の審議の過程を見ますと、その中で市民運動や労働運動に対する不当な介入の手段として使われはしないだろうかということが問題になっておるわけでございますけれども、この加重人質強要罪ですらそういったふうなことが問題になったわけでございまして、今回の単純人質強要罪の場合にはそういうふうなおそれというものはなお一層拡大するわけでございます。今回の新しい法律の制定をされた場合に不当な人権侵害が行われないように十分な配慮をいただけるのかどうか、そのあたりについてお尋ねしたいと思います。
#51
○説明員(米澤慶治君) まず、今回つくります一般類型的な人質強要行為につきましては、委員御承知のように、逮捕、監禁という基本的犯罪をまず手段として行われるわけでございまして、現行刑法にも逮捕監禁罪というのはございますので、今おっしゃいますような乱用の危険ということは共通して言えるわけかもしれません。しかしながら、我々、刑法を適用して事件を処理いたします任に当たります者といたしましては、当然のことながら刑法を乱用してはならないといいますか、そういった今おっしゃいますような問題を起こしてはならないのでありまして、本来の制定目的に合致した観点から解釈し適用していく、こういうふうに考えております。
#52
○一井淳治君 加重人質強要罪に関しましては参議院で附帯決議がありまして、その際、「正当な労働運動や、農民連動、市民運動などに対して濫用することのないよう万全の配慮をなすべき」ということが決議されておるわけでございます。今回、この件についても同じように十分な注意をお願いしたいというふうに要望するものでございます。
 それからあと、コンピューター犯罪について一つだけお尋ねいたしますけれども、百六十一条ノ二に「不正ニ作リ」という言葉が出てまいりますけれども、これはどういう意味なんでございましょうか。
 特に、具体的例を申し上げますと、悪い例でございますけれども、脱税をしようということで二重帳簿をつくる、そういったものもこの「不正ニ作リ」ということにはまるのかどうか、そのあたりのことをあわせて御説明願いたいと思います。
#53
○政府委員(岡村泰孝君) 「電磁的記録ヲ不正ニ作リ」という点でありますが、これは違法に電磁的記録を存在するに至らしめるということを言うのでありまして、当該行為者について申しますならば、記録の作出過程に関与するあり方に違法があるというふうに一般的に言えるのであります。
 例えて申し上げますと、データ入力の権限がないのにデータを入力して記録をつくり出す行為、あるいはデータ入力の権限は一応ありましてもこれを乱用して虚偽のデータを入力して記録を作出する行為、さらに、記録を作出するためのプログラムをほしいままに改変して設置者の意図しない記録を作出する行為、こういったものが挙げられるのであります。要するに、「不正ニ」といいますのは、権限がないのに、あるいは権限を乱用して、権限を実質的に逸脱して記録を作出することであるというふうに言えるのであります。そういたしますと、ただいま御指摘のありました事例は、自営業者といいますか、その業者がいかなる内容の電磁的記録をつくるかという、そういう権限を持っているのでありまして、そういう権限を持っている者が内容虚偽と申しますか、そういった脱税目的での電磁的記録をつくるということになるわけでございまして、この場合は「不正ニ」という概念には当たらないということになるわけでございます。
#54
○猪熊重二君 最初に、本日付朝日新聞の報道に関連してお伺いします。
 朝日新聞の報道によると、名古屋高検検事長豊島英次郎氏が、就任の記者会見に際して「検察からみると、再審請求が多少、流行しすぎているようにみえる。」との発言をされたような記載がございますが、この記事内容の真偽について法務省、どなたでも結構ですが、お伺いします。
#55
○政府委員(岡村泰孝君) 私も新聞報道で見ている限りでございまして、直接に、どういう意図ないし真意のもとに、具体的にどういう発言をされたかまでは承知していないところでございます。
#56
○猪熊重二君 それは、私としては非常に心外です。私は、この新聞をけさ見るなり早く、とんでもないことを言う検事長がいるということで、法務省に対して、事の真偽を明らかにするように、直ちに事実調査していただくように、このように申し上げておいたんです。ところが、事の真偽はわからぬというふうなことじゃ話が進まない。
 私が早速法務省の方に申し上げたのは十時十五分か二十分です。どうしてその間、今までこれが何ら調査できないんですか、お答えいただきたい。
#57
○政府委員(岡村泰孝君) 私自身は、午前中ずっと衆議院の法務委員会に入っておったわけでございまして、私自身そういったものを調査する時間的余裕もなかったわけでございます。
 ただ、その結果として、極めて概略的なことは聞いておりますので、それではお答え申し上げることにいたします。
 先ほど申し上げましたように、どういう意図なり真意かということにつきまして私自身責任を持ってお答えするには至らないわけでございますが、豊島検事長は五月十八日付の異動で名古屋に着任されまして、恐らくそのときの記者会見での発言がこのように報道されたのではなかろうかと思います。
 最近の再審事件でございますが、委員御承知のように、件数的には増加しておるということが言えるわけでございます。また、再審請求事件の中にはもちろん再審無罪というような重大な結果になっているものもあるわけでございます。しかしまた、再審の請求自体理由がないとか、あるいは再審請求書に添付されております書類とか証拠物あるいは確定記録を見ただけで再審請求が理由がないという事例も統計上決して少なくないわけでございまして、むしろその方が多いわけでございます。そういったような一般的な傾向と申しますか、そういったものを念頭に置かれて、一般論として述べられたものであるというふうに推察するものでございまして、個々の具体的事件についてどうこうということではないというふうに考えるものでございます。
#58
○猪熊重二君 法務大臣にお伺いしたい。
 刑事被告人の立場が過ぎて、現に刑務所において受刑している人間が再審請求するということはどのような権利であるとお考えになるのか。特に憲法三十二条の裁判を受ける権利との関係で大臣の所見を承りたい。
#59
○国務大臣(遠藤要君) 今の刑事局長のお答えと同じで、私も午前中は法務委員会、その前は閣議ということで、大変残念ながら新聞は読んでおりません。しかし、先ほど来この話を耳にしておりますので、その折感を申し上げて、お答えにしたいと思います。
 記者会見での模様、現況は承知いたしておりませんけれども、いずれにしても、再審請求というのは、先生から御指摘もあったように、裁判確定後の救済手続としては最も重要な問題である。そういうふうな点で、件数が多いとか、はやっているとかという言葉は、事務的に最近再審請求の数が多いというようなことをお話しすることはやぶさかじゃないが、流行し過ぎているとか何かという言葉はちょっと余計なことであったなと、こう思っております。
 再審請求に当たっては、今申し上げたとおり裁判確定後の救済手続として最も重要なことでございますので、恐らく検事長としては、再審請求のないような捜査なり裁判が行われるようにお互いに努力しなくてはならないなという気持ちでお話しになったのではないかなと、これは承知しているわけではありません、私の所感でございます。
#60
○猪熊重二君 受刑者の中に仮に一人でも無罪の人間がいるとすれば、その人間が再審請求するのは命がけのことなんです。そして、再審の理由があるかないか、これを決めるのは裁判所であって、検事が決めるような問題ではないんです。それにもかかわらず、これを再審請求がはやっている、流行だと。スカートが長くなった、短くなった、流行だと、そんなことと同じ程度に考えているとしたらとんでもない間違いだと私は思うんです。怒り心頭に発する、こんなことを検察官が言うことは。
 先ほどの平沢死刑囚の場合じゃないけれども再審請求が確かに何回もなされる。しかし、刑事訴訟法は、仮に同じ理由によって何回でも再審請求してきた場合についての措置はしているはずなんです。刑事局長、いかがですか。
#61
○政府委員(岡村泰孝君) 同一の理由によっては再審の請求ができないことになっているところでございます。
#62
○猪熊重二君 同一の理由で何回も蒸し返して再審請求してくるとすれば、それは裁判所において再審の請求は理由がないということで、一口に言えば簡単に幾らでも棄却できるわけです。ただ、言ってきたことが同一であるかどうか、その辺は裁判所としては慎重に審理しなければならない。しかし、別個の理由で持ってきても、何回持ってきてもそれはやっぱり受刑者の権利なんです。裁判を受ける権利なんです。
 ですから、法務大臣が、前回のこの委員会において再審の回数制限に関連するような御発言をされましたけれども、私は同一の理由に基づく再審請求についての御発言と、こう考えてお聞きしていたんですが、その辺について法務大臣いかがでしょうか。
 要するに、刑事訴訟法では同一の理由で再審請求してはならぬと書いてある。しかし、別個の理由だったら百回でもいい――百回でもいいと書いてあるわけじゃありませんけれども、その辺の問題について、前回の発言に関連して法務大臣の御意見を承りたい。
#63
○国務大臣(遠藤要君) さきの法務委員会で、再審請求の問題についてのお尋ねがございましたときに、三十何年間放置しておくということはどうかということから、怠慢かどうかというような感じに私として聴取をしたわけでございまして、その間に御承知のとおり十七回の再審請求、恩赦出願が五回というようなこともあるのでということでお話をしておるわけでございます。
 しかし、そういうふうに、怠慢のそしりを受けるようなことであっては、そういうようなことも考えなければならぬのかなというようなことを私は申し上げたわけでありまして、それはやはり今先生御指摘のとおり、再審請求の中身が同じで引き延ばしのためだということであればというようなことを、これは私は検討するとか何かということは申し上げておりません。そういうようなことも考えなければならぬのかなということを申し上げたということで御理解願いたいと思います。
#64
○猪熊重二君 このことに関連して、保護局長にお伺いしたい。
 再審請求をしている受刑者が仮出獄の申請をしてもなかなか認められない、むしろ、仮出獄をやってもらうんだったら再審請求なんていうふうなことはせぬ方がいいというふうなことが世間一般に言われているが、このような世間で言われていることの真偽、当否について伺いたい。
#65
○政府委員(栗田啓二君) 御案内のとおり、仮出獄と申しますのは、釈迦に説法でございますが、悔悟の情とか更生の意欲、それから再犯のおそれの有無、もう一つ社会環境等総合的に判断いたしまして本人の社会復帰のために最も適当な時期に許される、こういう原則に従いまして各地にございます地方更生保護委員会におきましていわば慎重に審査検討いたしまして、これは先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、帰住環境などにつきましてもいろいろ検討いたしまして仮出獄の許否というものが決定されるという仕組みになっておりまして、今御説明を申し上げましたように、再審請求しているからといって仮出獄を許さないとか、あるいはそれをおくらせる、そういうことはないと私ども承知いたしております。
#66
○猪熊重二君 再審請求について、流行であるというふうな感覚を持っている検察官のその同じ仲間の人から見れば、再審請求なんかしているやつはなかなか出さぬ方がいいという発想と非常に近づいてくると私は思うからあえて伺ったんです。
 要するに、再審請求をしていることを理由に仮出獄の判定について何ら差別はないんだということについて確認しておきたいと思いますが、よろしいんでしょうか。
#67
○政府委員(栗田啓二君) 私どもの方の所管いたしております仮出獄審査におきましては、ただいま申し上げたような立場で、本人の更生のためのという見地から審査いたしております。
#68
○猪熊重二君 法務大臣に最後にお願いというか、お伺いしておきたい。
 名古屋高検のこの検事長の発言の真偽について、よく調査した上でまた後日お伺いしたいので、よろしく取り調べておいていただきたい、そして適切な処置をとるべきものなら適切な処置をとっていただきたい。この件に関してはこれだけ要望を申し上げておきたいと思います。
 次に、別な問題についてお伺いいたします。
 去年の夏ごろからいわゆる地上げ屋による土地の所有者や借地人、借家人に対する不当な人権侵害あるいは犯罪行為が行われている。大手不動産業者が広い土地を買い占めてビル等を建築しようとしたけれども、中に言うことを聞かないのが一人いる、そしてそれが売らない、出ていかない、こういうことに関して非常に悪質な嫌がらせがあるというふうなことが新聞報道に非常に出ております。
 御承知のとおり、憲法三十五条では「住居の不可侵」ということが言われている。各人がその住まいにおいて居住することは憲法の基本的人権の中でも中核なんです。住んでいる家がぐらぐら揺すぶられるような状況になったら憲法など吹っ飛んでしまう。こういうことに関連して、まず警察庁にお伺いしたい。
 暴力団絡みの不動産取引のトラブルについて、ある適当な期間、適当な場所でよろしいですが、こういう暴力団絡みの不動産取引のトラブルについてどのぐらい相談等がありましたか。
#69
○説明員(古川定昭君) 最近、不動産取引に暴力団が介入して困っているという市民からの相談件数が急増していることは、先生御指摘のとおりでございます。昭和六十一年中に全国の警察が受理しましたこの種の相談件数は千九百九十三件に及んでおりまして、東京におきましては百九十三件あるという数字でございます。
#70
○猪熊重二君 そのような相談件数を具体的に捜査したものもあるだろうし、あるいは相談だけで終わったものもあるかもしれませんが、居住者に対する具体的な違法行為、犯罪行為的な累計で見るとおおよそどんなものがありましたか。
#71
○説明員(古川定昭君) 地上げに絡みまして暴力団幹部等が居住者を追い出すためにいろいろな手段方法をとっておるわけですが、特に目立ちましたのは、ビルの屋上にハンマー等で穴をあけたり、建物に放火したりあるいは居住者に暴行、脅迫を加えるなどの悪質な事犯を検挙しておるところでございます。
#72
○猪熊重二君 新聞報道によると、昭和六十一年十一月、神奈川県では建物に放火して居住者を追い出したというふうな事件が発生しているようですが、これについての事件の概要、捜査の結果、あるいは捜査した後の犯罪処罰としての結果をごく簡略に御説明いただきたい。
#73
○説明員(古川定昭君) 今お尋ねの件につきましては、暴力団の組長等が、被害者の住居が所在します土地を所有する不動産業者から、居住者を立ち退かせるように依頼を受けまして、昨年十一月十五日に家族が就寝中の被害者方に侵入して、風呂場の脱衣所の床に灯油をまいて放火し、同家屋のほか隣接の作業員宿舎を全焼させたということで、昨年神奈川県警におきまして被疑者三名を現住建造物等放火罪で検挙して、現在公判中でございます。
 なお、被害者でございますが、現在別の場所に住みながら本件土地に新たな建物を建設中ということで、被害弁償等につきまして不動産業者との間で示談交渉中というふうに聞いております。
#74
○猪熊重二君 要するに、放火してまでも居住者を追い出そうというふうなことだとおちおち寝ちゃいられないという事態になっているわけです。
 次に、同じく新聞報道によると、同じころ町田市でやはり暴力団地上げ屋による嫌がらせによる追い出し事件というふうなものがあったようですが、これについても事件の概要、捜査の結果等を簡略に御説明願いたい。
#75
○説明員(古川定昭君) ただいまのお尋ねの件でございますが、これは右翼標榜暴力団幹部が、被害者Aさんが居住します借家を購入した不動産業者から、Aさんを追い立てるように依頼を受けまして、昨年九月中旬ごろから十一月にかけまして、Aさんの自宅玄関、近所の車庫、電柱、電話ボックスなどに、こういう文言でございますが、「町内の皆さんに告ぐ。極悪非道なAを町内から追放しましょう。」などと印刷したビラを無差別に張りつけた上、さらにAさんの勤務先前路上で従業員に対して、「貴社のAは現在の家に居住し、こね得を狙っている。皆さんAに常識というものを教えてやってください。」という文言を印刷したビラを無差別に配布したという事案でございます。これは昨年、警視庁におきまして名誉棄損罪で被疑者を検挙し、罰金刑が確定しておるという次第でございまして、Aさんは現在、当該建物に居住をそのまま続けておるというふうに聞いております。
#76
○猪熊重二君 似たような事例でございますけれども、やはり新聞報道によると、ことしの二月二十八日、まだ二、三カ月前、世田谷で、住んでいる家をぶち壊し始めたというふうなことが報道されていますが、この件についても事件の概要、捜査の結果等について簡単に御報告ください。
#77
○説明員(古川定昭君) この件につきましては、暴力団組長等が、世田谷区内の住宅を取得した不動産業者から、居住している二世帯の立ち退き交渉を三千万円で依頼されまして、その交渉に当たったところがこれに失敗し、本年一月下旬ころ連日にわたり宣伝車で乗りつけ、軍歌を鳴らしたり火をつけてやるなどと脅迫して、さらに二月下旬に解体業者をしてパワーショベルやハンマーで天井や壁を破壊したという事犯でございます。これは本年四月に警視庁におきまして建造物損壊罪等で被疑者四名を検挙し、現在公判中でございます。
 本件の被害者の方については、その後この不動産業者と示談が成立したようでございまして、別の場所に移り住んでいるというふうに聞いております。
#78
○猪熊重二君 今私は、たまたま新聞報道にあるものの中から余りにひどそうだというふうなことについてピックアップしてお伺いしたわけですが、それ以外の新聞報道にも多数嫌がらせあるいは放火と見られるような事件というものが報道されております。
 警察庁として、いろいろそのような現場へ行ってみたけれども結局刑事事件として立件はできない、警察としては行ったけれども引き下がってこざるを得ないというふうな事件もあろうかと思いますが、その辺の、具体的な数字ではございませんが、状況はどうなっておりますか。
#79
○説明員(古川定昭君) 地上げに絡みましたいろいろな事件ということになりますと、その事件を検挙をしませんとなかなかそれが地上げに起因していたかどうかということは把握しかねるところでございます。しかし、現在のところ私どもで把握しております検挙したものとしましては、例えば、地上げに絡んだ嫌がらせ事件というような形態で見ますと、これまでには四件ほど報告が来ておるというようなことでございます。また、地上げに絡んだ建造物損壊というような事件につきましては、三件ほど検挙しておるという報告が来ておる次第でございます。
#80
○猪熊重二君 要するに、私が警察に申し上げたいのは、このような民事絡みの事件になってくると、警察は直接暴行、傷害あるいは損壊という具体的に外形的に見える犯罪がないと、行ったけれどもまた帰ってきてしまう、こういうふうなことだと非常に困るわけなんです。直接的な刑法犯だけでなくして、私から言わせれば、たとえ軽犯罪法でもいい、やくざは引っ張ってきてもらいたい。あるいはちょっと回り道かもしれませんけれども、宅建業法の免許がなくしていろいろそういう不動産取引に関与しているんだとしたら宅建業法違反でも構わない、あるいは弁護士でないのにそういう他人間の法律紛争に関与するなら弁護士法違反というふうなことでも、要するに、具体的に目に見える侵害行為がある、そうすれば刑法犯で処理できるけれども、それ以外のものはどうもということで現場から帰ってきてしまうんじゃなくて、あらゆる法規を駆使してこのような暴力団による不当な犯罪行為、侵害行為というものに対処していただきたい。
 警察庁として、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
#81
○説明員(古川定昭君) 地上げ等に暴力団が介入した事案につきましては、先ほど申し上げました幾つかの事例がございますけれども、そのほかにもあらゆる法令を駆使してこれに対して積極的に対処し、徹底した検挙に努めてまいりたいというふうに考えておりまして、警告、制止等の措置も含めて違法行為を許さないという姿勢で臨んでまいりたいと思っております。
#82
○猪熊重二君 これに関連して、人権擁護局にお伺いしたい。
 今申し上げたような事例は、直接刑法犯に該当するしないにかかわらず、市民の基本的人権の立場から見れば非常な侵害行為で、人権擁護局ないし東京法務局等で、このような地上げ屋による人権侵害事件というふうなものについて、何らかの申し入れ等があって調査に着手したとかいうふうなことはございますか。
#83
○政府委員(野崎幸雄君) 最近、都心におけるビルの需要というものが非常に高まってまいりまして、新しくビルを建てようという企業がふえてまいりました。このことに関連いたしまして、事業の用地を確保しなければならない、そこでその敷地として適格であると思われる土地の購入でございますとか、借地人から借地権や建物の買い取りをいたしますこと、あるいは借家人に立ち退き要求をするといったことを請け負ういわゆる地上げ業者というものが活躍するようになりまして、その行き過ぎが悪質な地上げ行為ということで一つの社会問題になり、ただいま委員がお取り上げになりましたような事件については新聞で大きく報道されるというようなことになっておることは私どもも承知をいたしておるところでありまして、人権局としても非常に関心を持っておるところでございます。
 地上げ行為の内容というものは、適法なものから非常に違法なものまでさまざまあるわけで、一概に申すわけではありませんけれども、宅建業者の監督機関でございます建設省におきましては、その是正についてこれまでもいろいろな行政措置をとってきておられるようでありますし、今後ともそういった措置をとられるというおつもりのようでございます。また、犯罪を構成するものについては警察も、ただいま御答弁がございましたように、いろいろ対応をなさっているところでございます。
 私どもの方としましては人権相談などでこういったものを受け付けることになっておりますが、東京法務局にはこれまで現実に相談があったケースはないということでございます。ただ、昨年暮れに、ある弁護士さんから、東京都内の土地、これは借地でございますけれども、その借地権を売れということで地上げ業者が非常にしつこくその売り渡しを迫り、だんだん犯罪的な手法を用いて脅迫するようになってきた、こういうことについてどうすればよいかということの相談がございました。そこで警視庁とも連絡をとりましていろいろ対策を練りまして、警視庁の方でいろいろな手当てをしていただいて解決したという事案がございます。
 私どもといたしましては、建設省、警察の対応というものを見守るとともに、事案によっては、人権侵犯として処理することが適当であると考えられるものについては人権機関として調査立件をしていく。また、その内容によっては民事的な対応をするのが望ましいという場合もあるわけであります。私どもの方では、今、えせ同和行為などとも関連いたしまして、日弁連の民暴の委員会といろいろ関係があるわけでございますが、事案事案に応じまして弁護士会の方に御相談申し上げ、もし訴訟費用などについて援助の必要があるものについては、私どもとしては法律扶助のあっせんをするといったことで、司法的な解決をするのが望ましい事件につきましても我々のできる限りの努力はしていきたい、かように考えておるところであります。
#84
○猪熊重二君 要するに、私が質問申し上げたのは、地上げ屋の人権侵犯的なことについて申し立てがありましたかという質問に対して、答えとしては一件あったというお答えのようにもお伺いします。
 しかし、私が言いたいのは、これは毎日新聞のことしの四月三日なんです。この新聞を見るとこれだけの大きな字で、「地上げ屋暗躍」「「デテイケ」夜中に電報」、こんな活字、私は活字の大きさ知らぬから言えないけれども、居眠りしながら見てもわかるぐらい大きな字で書いてあるんです、それから同じく四月二十二日の読売新聞には、「人がいる家までブッ壊す」「高級住宅地 地上げ屋、暴力団グル」、これも居眠りしても見えるぐらいでかい活字で書いてある。こういうふうなことがあったら人権擁護局として、人権擁護局長として、あるいは局の担当者として、あるいは法務局の人権擁護の担当者として、これはひどいことが起きたというぐらいのことはお考えになったらど
うなんだろうか、そしてこれに対する調査等を始めてみたらどうなんだろうかと私は思うわけなんです。こういうふうな新聞記事はこれだけじゃないんですよ。
 こういう新聞記事にあるにもかかわらず、警察がやることだとかあるいは建設省の行政指導の問題だということでおさまっているとすれば、人権擁護局とは一体何なんだと私は思うわけなんです。ここにもちゃんと書いてある。私は初めて見た、人権擁護局というのはどうなっているんだと。法務省組織令の五十四条には、人権擁護管理官という方がおられるそうです。この人権擁護管理官という方は、その職分として、「人権に対する侵害の排除及び被害者の救済に関する事項」についての事務をつかさどると書いてある。人権擁護局として、こういうふうな問題に対して人権侵害の申し立てがないから私のところの仕事でないというふうな態度であったとしたら非常に困ると思うんです。
 それで伺いたい。東京都内に人権擁護委員は何名ぐらいおられますか。
#85
○政府委員(野崎幸雄君) 人権擁護委員の全国の総数が一万一千五百人、東京都が三百四十四人でございます。
#86
○猪熊重二君 本省の人権擁護事務担当者、法務局の担当者、また、三百何人の人権擁護委員という方がおられながら、こういう問題について考えておられるのかどうかしらぬけれども、何ら動かぬとしたら、人権擁護委員をこれだけ法務大臣として委嘱していても私としては委嘱している価値が非常に少ないんじゃないかと思う。要するに、地上げ屋の人権侵害問題に関して、法務大臣として、人権擁護事務の中核をつかさどるお立場において、現在の人権擁護局ないし人権擁護運動について法務大臣の所見を伺いたい。
#87
○国務大臣(遠藤要君) 今、新聞紙上でも、すべての報道においても、政治面においても人権擁護ということは大きく取り上げられていることはあえて私が強調するまでもございません。そのような点で法務省並びに人権擁護委員の方々は、大変熱心に人権擁護に対しては御努力をいただいており、差別問題であるとかいじめの問題であるとかもろもろ各般にわたって努力をしております。そういうような点で、たまたまこの地上げ屋の問題については、先ほど局長からお答え申し上げたように、直接人権擁護局としてそれを取り上げてはおらないようでございますけれども、今後、捜査当局である第一線に活躍されている警察当局なりまたは建設省なりと緊密な連携をとって、万全を期していきたいというように御了承願います。
#88
○猪熊重二君 よろしくお願いしたいと思います。
 私の言うことはどうも人の悪口ばっかり言っているようで非常に気が引けるんですが、さらにまた、次の問題も同じようなことなのでまことに申しわけありませんが、最高裁判所にお伺いしたい。
 最高裁判所において、司法修習を修了した任官希望者に対する任官拒否問題についてお伺いしたい。本年度の司法修習生から裁判官に採用されたいという申し出があったにもかかわらず、結局不採用ですよということになった方は何名おられますか。
#89
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 今年度司法修習生から判事補への採用を希望して不採用になった者は三名でございます。
#90
○猪熊重二君 この不採用者三名について、不採用の理由は本人に告知されているようなことはありましょうか。
#91
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 不採用の理由は、本人に対しては告知いたしておりません。
#92
○猪熊重二君 告知していない理由はどういうところにあるんでしょうか。
#93
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事補に限りません、裁判官の採用一般について言えることでありますが、今年度に関しましては修習生から判事補への採用の問題であるわけでありますが、私どもは、任官を希望する者の中からなるべくいい者を採用したい、裁判官としてなるべく適任な者を採りたいということから人選をするわけであります。その場合に、さまざまな資料と申しましても、二年間の修習成績あるいはいわゆる二回試験の結果あるいは面接の結果、そういったものを総合いたしまして、各候補者の実務処理の能力であるとかあるいは人柄であるとかあるいは裁判官への向き不向きであるとか、そういったようなものを総合的に判断して、最終的にこの者を採用していいかどうかということを判断するわけでございます。ただその場合に、さまざまな人間の持っております能力や人柄等々につきましてのいろんなファクターがございますけれども、そのファクターについて算術的に点数を決めてどうこうするということはできる性質のものではないように思っております。総合的に見ましてこれは適当であるかないか、このような判断になるものでございます。
 今度は、採用に至らなかったという場合に具体的にこれこれこうこうであるから採用できなかったということを述べることは、事柄の性質上かえって無用の誤解を引き起こしたり紛議を呼び起こしたりすることとなりますので、これはもうずっと以前から、採用に至らない場合には採用できないということを申すのみにとどめまして、その不採用の理由についてはお知らせはしていないという扱いになっているわけであります。
#94
○猪熊重二君 不採用の理由を告知しないことについて、後で申し上げますように、非常に法曹界において問題になっている。なぜ問題になっているかというと、まず、司法修習生は二年間司法研修所においていわゆる司法修習をします。司法研修所というのは最高裁自身が管理運営しているものなんです。そして、二年間の修習が終わって、司法修習生として修習課程を修了したと認められるか認められないかのいわゆる二回試験、この二回試験も最高裁判所が管理運営してやっているわけなんです。そうすると、最高裁判所が司法修習を二年間修了したよと認めるということは、自分が管理運営している司法研修所において二年間修習させて、そして試験をやってこの試験に合格したんだよということで、裁判官、検察官、弁護士のいずれになるにもふさわしい能力と品位と特性があるということで認めて卒業させているんです。そうじゃありませんか、どうでしょうか。
#95
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 委員御指摘のとおり、いわゆる二回試験といいますのは、最高裁判所に置かれた司法修習生考試委員会が考試の事務に当たっているわけであります。そこで、その考試に合格したということになりますと、その合格者は裁判官、検察官、弁護士のいずれにもなれる資格を備えたということになるわけであります。それは御指摘のとおりであります、
 ただ今度は、そのように資格を有している者が、それでは裁判官、検察官等に採用され得るかということになりますと、これは裁判所にいたしてみますと、今度は裁判所自体は一つの組織体でありまして、そのようななり得る資格を持っている者の中から少しでも適任な者を選び出すということによって毎年の人事を行っているわけであります。裁判官といいますのは独立して国家意思としての公の判断を下すという責務、重要な職責を担っている官職でありますので、裁判官として採用された者は若年の者であっても重大な職責を果たしていかなければならない。そのような仕事につけるということのためには、裁判官が他の官職に比してどうこうという問題ではなく、その組織を維持する責任にある者といたしましては単に資格を備えているということだけではなくて、その中からできる限り適任な者を採用したいという考えでもって今まで運営されているわけであります。
#96
○猪熊重二君 結局、裁判所は片方において判事、検事、弁護士になるだけの資格、能力、品位があるといって卒業させておきながら、採用に際してはおまえだめだというこの矛盾というか、この取り扱いの違いはどういうことなんだというところが一番問題点だろうと私は思うんです。
 だから、確かに年齢だとか、あるいは身体的ないろんな状況で裁判官としての職務執行に差し支えるとかというふうな、だれが見ても納得できるような外的条件によっての不採用ということならばそれはだれもが納得する。ところが、そういうことがなくして、一方で資格があると言いながら、一方でおれのところへは来るな、おれのところへ来ないで弁護士でも検事でもやっていろということだとすると、なぜ採用しないんだということについて日本弁護士連合会において、その理由を明らかにしない限り、思想、信条、団体加入による差別じゃないかというふうに疑われるという指摘が昭和四十六年からもう十年以上、十数年なされているわけなんです。それにもかかわらず、いつになっても今人事局長が御答弁になったようなことをやっておられるから、その疑念はいつになっても吹っ切れないんです。
 私は、不採用、それは不採用ということも組織体とすればあるのは当然だから、しかしそれについてはだれもが納得するような客観的な理由による不採用ということに限定されるべきだし、そのような理由は本人に告知されても当然だと思うんですが、最後に、本人への告知に対する問題についての御見解を承りたいと思います。
#97
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 不採用の理由について告知するのは適当ではないということについては、先ほど申し上げましたとおり、そもそも採否の基準というものがそのようにいろんなファクターの総合であり、算術的にどうこう言えるという性質のものではないということから適当ではないということを申し上げたわけであります。
 それでは、本人に言うということにつきましても、結局本人に伝えることによってさらにその本人以外のところに広がるということによって、いろいろな誤解あるいは紛議が生ずるおそれがありまして、その点については日本弁護士連合会から指摘があるということは承知はいたしておりますけれども、公開、公表する、あるいは本人に対してのみ告知するということは相当ではないというふうに考えるわけでありまして、そのような不採用といった人事上の理由について、それが適当でないということを日本弁護士連合会にも理解をしていただきたいというふうに思っているわけであります。
#98
○猪熊重二君 以上、最高裁判所に対する質問は終わります。
 続いて、法案についての質問をさせていただきます。先ほど一井委員の方からもいろいろお話があったんですが、私も改正法の四条二項は非常に問題があるんじゃなかろうかと思うものですから、それに関連してお伺いしたい。
 まず、国家代表保護条約の二条の1の(a)に規定されている行為のうち、身体に対するその他の侵害行為の中には刑法二百八条の暴行罪は含まれておりますか。
#99
○政府委員(岡村泰孝君) 含まれております。
#100
○猪熊重二君 ところが、右条項の(b)によると「これらの行為の未遂」、すなわち今のことに関連して言えば、暴行未遂罪も処罰の対象となっているようですが、我が国の刑法においては暴行罪の未遂は処罰されることになっていない。この条約上の処罰規定と刑法の暴行未遂不処罰との関係はどういうことになるんでしょうか。
#101
○政府委員(岡村泰孝君) この国家代表保護条約は、各国がそれぞれ持っております刑罰法体系が異なっているということから、殺人、誘拐ということにつきましては具体的にこれを掲げているところでございますが、それ以外の犯罪につきましては、各国においておおむね普遍的に犯罪とされている行為の範囲内で各国が犯罪とすべき義務を定めているものと解されるのであります。したがいまして、我が国の現行刑法上暴行未遂の処罰規定はないわけでありますが、本条約は殺人、誘拐以外についてはどういう罪名で対応するかということにつきまして国内法に一任しているものと解されるのであります。
 したがいまして、我が国の現行刑法の定めております多罪は世界の主要な各国とほぼ同じレベルに達していると言えるのでございまして、世界各国の基準に照らしましても基本的な犯罪を類型化尽くしたものであるというふうに言えるのであります。そういう点から見まして、暴行未遂の点についてまでこれを処罰するような立法措置を設けることまでをこの条約は要請しているものではないというふうに解されるのであります。
#102
○猪熊重二君 そうすると、この条約が効力を生じた場合であっても、要するに、刑法に規定のない暴行未遂罪なんというものは処罰されることはあり得ないということは明らかである、こう伺ってよろしいわけですね。
#103
○政府委員(岡村泰孝君) そうでございます。
#104
○猪熊重二君 ところで、先ほど新しく設けられた刑法第四条ノ二の、条約による国外犯処罰規定に関連してお伺いしますが、先ほどの刑事局長の御答弁によると、法律専門家が刑法を知っていて、さらに条約の内容をよく知った上で、しかも、その条約の文言が先ほど一井先生が言われたように、外国語の翻訳だから日本語とちょっとニュアンスが違うけれども、ともかく条約の文言でこれは処罰されそうだとかされそうでないとか、そういうことをよく知った上で、さらに今回この四条ノ二が新設されることになると、これは国外でも処罰されるんだと、こういうことになってくるわけですが、いかがですか。
#105
○政府委員(岡村泰孝君) そのとおりでございますが、要するに、条約が処罰すべき行為として掲げておりますのが「身体又は自由に対するその他の侵害行為」ということでございまして、これ自体が明確であるというふうに言えると思うのでございます。
#106
○猪熊重二君 ちょっと私の質問を誤解されたらしくて、国家代表保護条約だけでなくして、四条ノ二が新設された場合に、今後締結される条約すべて一般に関連して例えば今のようなことになると。そうすると、この四条ノ二の新設というのは、国民に対して、刑法もよく知って、条約の翻訳でよくわからぬけれども、これも処罰されそうだとかされそうでないとかいろいろ考えて、それでこの条約上の処罰条項を日本刑法に当てはめて、ああこれは日本刑法に外れているからいいとか、いや、日本刑法に入っているからまずいとか、そこまで全部考えた、検討した上で、それで国外犯が処罰されると、しかも、国民にとっては条約というものが公布されるだけで、いわゆる刑法典的な意味では刑事手続的には何らの告知もなしに条約だけで国外犯が処罰されるということになるわけです。
 要するに、この四条ノ二を新しく制定することによって国民が知らぬ間に国外犯という範囲ではあるけれども処罰規定が拡大する、こんな白地刑法的なものは罪刑法定主義に反するというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#107
○説明員(米澤慶治君) 先ほども刑事局長がお答えいたしましたように、四条ノ二のような包括的国外犯処罰規定を置きました場合に、直ちにこれが罪刑法定主義の精神に反するということではないと私ども考えております。
 もっとも、今、委員御指摘のように、各条約の内容につきましてそれぞれその内容が明らかであって、かつそれが国民に十分周知徹底していることを前提にしておるわけでございますので、さきにもお答え申しましたように、条約の承認を国会で御審議いただきます場合に、外務委員会で審議資料といたしまして、これからそれぞれ次々仮に承認されるような条約があったといたしますと、その条約の承認案件の審議資科に、その当該条約が処罰を予定、要請しておりますところの範囲を明らかにした審議資料を出していただくように外務省に折衝し、これが了解されておりまして、今回の外交官等保護条約に関しましてもそれが既に実行されているところでございます。
 したがいまして、どのような多数国間条約が今後承認案件として俎上に上りますかどうか私どもつまびらかにはいたしませんけれども、刑法四条ノ二との絡みで条約承認案件が問題になります場合には必ずそういった御審議を国会でしていただくことではありますし、さらにそういった条約が承認された暁には、官報に英文の正文のほかに日本語訳を必ず公布するということが既に行われているところでございますので、法律の公布とその点では実質的に何ら異なるところはない、そういったような点も考慮いたしますと罪刑法定主義の精神にはもどるところはないと確信しているところであります。
#108
○猪熊重二君 条文のつまみ食い的な質問で申しわけありません、第七条ノ二の「電磁的記録」について。
 この電磁的記録というのは、まあある物というか物体というか、物体の上につくられた記録そのものを言うのか、この記録が表示されているものを言うのか、あるいはその両者を含んだ概念なのか。いかがでしょうか。
#109
○説明員(米澤慶治君) 簡単にお答え申し上げますと、現行刑法の「文書」というのと横並びで私ども「電磁的記録」というものを考えておりますので、単なる磁気ディスクとかあるいは磁気テープという媒体、要するに、情報を保存する媒体そのものではなくて、その媒体の上に一定の情報が載っている状態、その情報を指して私ども電磁的記録と考えておるわけでございます。
#110
○猪熊重二君 今の説明でも私にはよくわからない。要するに、保護されるのは、それは物体を離れて記録というか、物体の上につくられている記録自体というものはちょっと考えにくいんではあるけれども、要するにここで「電磁的記録」と言っているのは、その上の記録自体なのか物体も含んでいる概念なのか。
 なぜこれをお伺いするかというと、百五十七条で「電磁的記録ニ不実ノ記録ヲ為サシメ」というのがございます。この「不実ノ記録ヲ為サシメ」というのが、もし記録そのもの、要するに物体を抜きにした記録そのものだとすれば、何にもないところに新しくつくるのはこの「不実ノ記録」をつくったことになるのか、あるいは従前の記録を消去することは「不実ノ記録」をつくったことになるのか、その辺の問題をお答えいただきつつ、もう一度その上の記録等、その記録が載っている物体等、その辺の問題についてもう少しお答えいただきたい。
#111
○説明員(米澤慶治君) 非常に簡単にお答えいたしましたので、さらに敷衍して申し上げますと、七条ノ二の定義にございますように、人が通常認識することができないような方式で一定の記憶媒体に載せられておるといいますか記録されておるそうした情報、そういった情報を「電磁的記録」というということで一応定義してございますので媒体そのものではないと。磁気ディスクとか磁気テープという物体、それではないということをまずおわかりいただけるかと思うわけであります。
 それで、そういうことを前提にいたしまして、今委員の御指摘の、例えば白地の磁気テープの上に勝手気ままに客観的事実と違うようなことを権限のない者が書いた場合に不正作出になるのかと、こういう御下問でございますが、その点はまさに、まあそれが権利、義務または事実証明に関するものでございましたらその情報が原則として当たる、こういうお答えになると思いますし、それから先ほど、既に存在するものを抹消してしまったらどうかと、こういうふうな御下問もございました。場合によりましては連続する記録の中の一部分を抹消したということを考えますと、それはそこを抹消されることによって記載の内容が不実のものになったとしますと、それもまた「不実ノ記録」をつくったということにもなりましょうし、他方その抹消部分だけを端的に一つの、一個の独立した記録だと考えますと、今度は電磁的記録の毀棄ということで一応文書毀棄に並びまして一つ条文を改正させていただくようになってございますが、そちらの方に当たる場合もある、そういうふうにお答えできるかと思います。
#112
○猪熊重二君 最後に、二百三十四条ノ二に関連して、人の業務の用に供する電磁的記録を損壊したけれども、業務を妨害するに至らなかった場合、この場合は何条によって処罰されますか。そして、もしこれが文書毀棄の方で処罰されると、業務妨害でいくのに比べて、未遂というか、どこまでを業務妨害の実行の着手にするかは別にして、未遂だとした場合に未遂の方が重く処罰されるという結果になって、刑の均衡を失するような状況はありませんか。いかがでしょうか。
#113
○説明員(米澤慶治君) 委員御指摘の事例は非常に難しい事例でございますので、正確にお答えできるかどうか自信ございませんけれども、まず、二百三十四条ノ二に関しまして申し上げますと、これはいわゆる現行刑法の二百三十四条に既に規定のございます業務妨害罪の言うなれば特別類型でございますので、必ずしも業務妨害の結果が発生することはまず必要はないわけでございます。そこは当然御了解の上で御下問いただいたと思いますが、少なくとも二百三十四条の現行法の業務妨害罪に言うところの業務妨害というのが成立したといいますか、それが既遂になっておるというような状態がございません限りは、この二百三十四条ノ二もまた成立しないわけでございます。そういう前提でお答えできるかと思います。
 そこで、その電磁的記録を損壊しただけで、業務妨害という要件に当たらないようなところでとまった。その場合に、確かに委員御指摘のように、私的電磁的記録の場合には、例えば、一定の範囲内で私文書の毀棄罪と同じような法定刑を適用することに今回改正させていただく、あるいは公文書の毀棄罪と同じような意味で公務員がつくりますような電磁的記録につきましては非常に法定刑の重いところへ差し込むということになってございますし、それらに当たりません場合は、一般の器物毀棄罪と、こういうことになるわけでございます。これは非常に難しい法律的な問題がございますが、刑法全面改正作業におきましてもこの点が問題となりました。
 それは、どういう点で問題になったかといいますと、相当古いことでございますが、公文書の毀棄罪に絡みまして、その公文書毀棄罪の法的性格といいますか、これは何だという議論が刑法改正作業でございました、全面改正でございますが。そのときにも、端的に公務妨害的な側面を持つんじゃないかというようなお話もございまして、刑法改正草案ではあれはたしか公務妨害のところへ公文書投棄罪を移行されていくというような構成をとったと記憶いたしております。
 私の言いたいところは、すなわち、例えば文書投棄罪でも反社会的行為の側面を分けてみますと業務妨害的なところが含まれておる、場合によりまして文書毀棄にいったり、業務妨害にいくということはこれは当然あり得ることでございます。文書毀棄的な電磁的記録の損壊を非常に重視いたしますと、それはまた文書毀棄罪と横並びで法定刑を盛るのが反社会性において同じであるとすれば、それは当然のことであろうと私ども考えておるところでございます。
#114
○猪熊重二君 どうもありがとうございました。
 終わります。
#115
○諫山博君 福岡県の苅田町が今大揺れです。住民税の徴収に絡んで裏金づくりが暴露されている。具体的に申し上げますと、苅田町に居住している住友金属の従業員百四十一名について住民税が徴収されています。ところが、これが町の財政には繰り入れられていません。収入役が福岡銀行苅田支店に裏口座をつくって保管していたのであります。その金額は、現在衆議院議員をしている尾形智矩氏が苅田町長時代であった九年間に約二億円、同じ町長の最後の四年間に約一億七百万円と言われています。企業の裏金づくりというのはしばしば問題になりますけれども、自治体の裏金づくり、税金の裏金づくりは初めてではないかといって大問題なっているわけです。
 この問題を自治省は調査されているのかどうか、そしてこういう前例があったのかどうか、御説明ください。
#116
○説明員(小川徳洽君) ただいま御質問のございました苅田町の件でございますが、私ども自治省におきましては、新聞等でこの報道を承知いたしまして、それによりまして福岡県の方へ事案の経緯、概要、今後の対応方法等々につきまして聞き取りをいたしたところでございます。福岡県の方からの報告によりますと、現在検察当局において捜査中ということもございまして、県の段階におきましても事件の詳細を十分把握できていないという段階にございます。私どもといたしましては、今後福岡県を通じましてできるだけ速やかに事実関係を掌握するように努めますとともに、検察当局の捜査結果をも踏まえて問題の所在を明らかにしていきたいというふうに考えておるところでございます。
 またもう一つの、住民税の一部分をこのような扱い、仮にそういうようなことといたしました場合の過去の例でございますが、どのような内容をもって同じような件といいますか、その辺若干ございますが、過去において住民税の収入がそのまま正規のルートに乗らなかったというふうにとらえますと、わずかでございますが、例はございました。
#117
○諫山博君 膨大な裏金の一部は苅田町の県民税の納入に当てられたそうです。実際は町民から一〇〇%の徴収はされていないのに福岡県に対する納入、納付率は一〇〇%、奇妙な処理が裏金の一部についてなされています。裏金の中の六千五百万円は初め使途不明と言われておりましたけれども、だんだんこれが明らかになりまして、マスコミの報道するところでは、衆議院議員の尾形智矩氏の選挙資金に使われている。これが約五千万円だと言われております。数百万円は尾形智矩代議士の町長時代の交際費に使われているということが広く言われていますし、きょうの朝日新聞の北九州版にはこれが特別大きく取り上げられております。町民の税金が政治家の政治献金的な選挙資金に使われる、こういうことが許されていいはずはありませんけれども、これは既に東京地方検察庁の特捜部が捜査中だと聞いております。
 どういう端緒で東京地検特捜部がこの事件を捜査するようになったのか、法務省御説明ください。
#118
○政府委員(岡村泰孝君) 苅田町長からの告発を受けたことによるものでございます。
#119
○諫山博君 告発の罪名、被疑者、さらに共犯者の有無、被疑事実の概要、これらの点についてできる限り説明してください。
#120
○政府委員(岡村泰孝君) 罪名は業務上横領でございまして、被告発人は花房前収入役でございます。多数回にわたりまして保管中の公金合計数千万円を横領した疑いがあるというのが告発事実の要旨でございます。
#121
○諫山博君 告発状の中には、この金の使途について触れられていませんでしょうか。
#122
○政府委員(岡村泰孝君) 正確ではございませんが、そういう使途等について具体的な記載はなかったと承知しているところでございます。
#123
○諫山博君 本件を東京地検の特捜部が取り調べるというのは、私たちから見ますと非常に特異な処理のように見えますけれども、どういう事情で福団地検にやらせずに東京地検の特捜部が取り上げたんでしょうか。
#124
○政府委員(岡村泰孝君) 本件につきましては、東京地検に告発が提出されたことによるのでございまして、それをさかのぼりますと、告発人がなぜ東京地検を選んで告発したかという問題になるわけでございますが、その辺は承知していないところでございます。
#125
○諫山博君 花房前収入役は五千万円は尾形智矩氏の選挙資金として同人に渡したという供述をしていることがしばしば報道されていますけれども、この五千万円の使途については今捜査中ですか。
#126
○政府委員(岡村泰孝君) そういう供述を花房前収入役がしているかどうかも含めまして現在捜査中でございますので、お答えいたしかねるところでございます。
#127
○諫山博君 現職の政治家を名指しで、この人に五千万円を渡したんだということが広く報道されています。特にきょうの朝日新聞なんかは非常に内容が具体的です。これだけ世間で騒がれていますから、この五千万円がどのように使用されたのかという点については、私は本人の名誉のためにもできる限り説明していただいた方が適当だと思いますが、いかがでしょうか。
#128
○政府委員(岡村泰孝君) いずれにいたしましても捜査中でございますので、私の口から何とも申し上げかねるところでございます。
#129
○諫山博君 この五千万円が前収入役の個人的な消費に充てられたのか、それ以外の消費に充てられたのか、もちろんこの点は重大な関心事だと思います。そして、この五千万円の使いようによっては当然共犯者が出てくるという筋だろうと思いますけれども、どうでしょうか。
#130
○政府委員(岡村泰孝君) 捜査中でございまして、今の段階では何とも申し上げかねるところでございます。
#131
○諫山博君 自治省にお聞きします。
 長期間にわたって町民から徴収した税金が裏口座に振り込まれる、これは収入役一人ではできないことだろうと思います。十年にもわたってこれが発覚しなかったというのは、それなりの協力者がいたというふうにしか考えられません。この点は行政の仕組みから見ていかがでしょうか。
#132
○説明員(小川徳洽君) 住民税の賦課徴収、一連の事務という観点から申し上げますと、市町村におきましては通常住民税の賦課徴収は税務課でやっておりまして、税を含めました公金の出納は収入役の方で取り扱うということになっております、住民税につきまして税務課が税額を決定をし、住民税として収入すべき額を確定いたしますとともにその額を納税義務者へまず通知をいたします。同時に収入役に通知をするわけですが、収入役は納税義務者から納められました税を指定金融機関等を通じまして収納し、その額をみずから管理しますとともに、また逆に税務課の方へ通知をする、こういうふうになっております。税務課はこの通知に基づきまして納入済み税額、未納税額を仕分けをして管理を行います。収入役の方は収納結果に基づきまして決算の調整をいたしましてやるというようなことが一連の手続になっておるわけでございます。
#133
○諫山博君 苅田町で問題になっているのはこの裏金づくりだけではありません。職員の採用をめぐってさまざまな手かげんがなされている。数百万円の金を使わなければ町職員として採用されないというようなことがうわさされております。そしてこれを裏づけるものとして、大事に関する膨大な書類が焼却されたということが公式の百条委員会で議論され、そして町職員は永久保存の人事関係の書類を焼却したことを認めております。焼却した書類の目方は二百二十キロだと言われております。当然これは公文書毀棄その他の犯罪になるわけですけれども、この点は検察庁は捜査しておりますか。
#134
○政府委員(岡村泰孝君) 東京地検において捜査中であるということは申し上げたところでございます。捜査の内容にわたることにつきましては申し上げかねるわけでございまして、ただいまの御質問の点につきましても何ともお答えいたしがたいところでございます、
#135
○諫山博君 一般論としてお聞きしますけれども、町が保管している人事関係の文書、そしてまた保存期間が残っている文書、これを勝手に焼却すればどういう罪になりますか。
#136
○政府委員(岡村泰孝君) 一般論といたしましては、刑法で「公文書毀棄」という罪があるわけでございまして、公務所の用に供する文書を毀棄した者がこれに当たるわけでございます。要するに、これらの構成要件を充足する事実関係が認められればこれに当たるということになろうかと思います。
#137
○諫山博君 職員の不正採用も当時の町長との関係が現地では大変問題になっております。この問題については検察庁よりか警察の方が捜査を進めているとも聞いておりますけれども、警察はいかがですか。
#138
○説明員(古川定昭君) お尋ねの件につきましては現地におきます新聞報道で承知しておりますが、既に東京地検において告発を受理して捜査中であるとのことでありまして、警察としてはそれらの捜査の推移を見守りたいということでございます。
#139
○諫山博君 今の御説明によりますと、警察は検察庁の捜査の推移を見守っているという説明です。となりますと、検察庁の責任というのはひときわ大きいと思いますけれども、この公文書毀棄についても検察庁は本検的な捜査に取り組んでおりますか。
#140
○政府委員(岡村泰孝君) 先ほど来同じ答弁を繰り返しておりまして心苦しいわけでございますが、何分捜査中でございますので、御質問の点につきましてはお答えいたしかねるところでございます。
#141
○諫山博君 苅田町の百条委員会で問題になっているのは、公文書毀棄のほかに霊園建設に絡む不正があります。
 町営の霊園をつくった、まあつくったと称しているわけです。そして昨年の五月、一億一千七百万円が支払われました。ところが、実際は霊園は完成していないんです、のり面が崩壊して霊園として使用できない。分譲する予定でしたけれども売り出しに提供することさえできないという状況です、ところが、竣工調書を見ますと、「設計書どおり竣工と認める」「概況 良好」と書かれております。これは虚偽の記載であったということを町当局者自身が認めております。つまり、霊園の工事が竣工もしていないのに竣工したように虚偽の文書をつくって、そして一億一千七百万円の金を支払った。ところが、これは全く使用できないというので大問題になっています。当然これは公文書を偽造したという犯罪のほかにさまざまな疑惑が出てくるわけですけれども、この点は警察は捜査していますか。
#142
○説明員(古川定昭君) お尋ねの苅田町に関する一連の事案につきましては、福岡県警が捜査を行っているという報告は受けておりません。
#143
○諫山博君 福岡県警が捜査していないというのは、公文書毀棄の場合と同じように東京地検特捜部が捜査しているからですか。
#144
○説明員(古川定昭君) 一連の事案につきまして、福岡県警の対応が今申し上げたような状況であるということで御了解をいただきたいと思います。
#145
○諫山博君 苅田町の三つの大きな事件について指摘しましたけれども、福岡県警は余り本気で調べていないようです。これは東京地検特捜部が乗り込んで調べているからだというのが一番大きな理由です。
 そうなりますと、東京地検特捜部は、私が指摘した三つの事件について、第一次的な責任を負いながら捜査を続けているんでしょうか。
#146
○政府委員(岡村泰孝君) 第一次的責任を負いながらという御趣旨がよくわからない点もございますけれども、いずれにいたしましても、東京地検といたしましては、告発を受けましたのでそれを受理して捜査をいたしておる、こういうところでございます。
#147
○諫山博君 きのう、尾形代議士の側近と言われる人が死亡しました。新聞では焼身自殺と書かれております。大体、大きな汚職事件のときにはかぎを握る人が途中で亡くなるという例が多かったと思います。この人のいわゆる焼身自殺にもそういう疑惑が広く持たれているわけです。新聞によりますと、尾形代議士の側近であり、金庫番だった、そして裏金の一部がきのう焼身自殺したと言われている人のところに渡ったという報道もされております。
 この問題について、司法解剖がされたでしょうか。されたとすればその経過、できれば結果を御説明ください。
#148
○説明員(小杉修二君) お尋ねの件は、委員御指摘のとおり、いわゆる司法解剖を実施いたしました。司法解剖と申しますと、裁判官の鑑定処分許可状を得まして、それに基づいて大学の医学部教授に委嘱をしまして解剖を実施したわけでございます、
#149
○諫山博君 司法解剖をした理由と、それから死亡した人の周辺をいろいろ調べているという話も聞きましたけれども、この点はいかがでしょうか。さらに、司法解剖の結果は出ていませんか。
#150
○説明員(小杉修二君) 司法解剖をした理由は、本件事案が、発見された経緯等からしまして、必ずしもはっきりとした犯罪死体であるということでは当初断定はできなかったのでありますけれども、その死因が犯罪に起因するのか否かがはっきりしない。したがいまして、いささかなりとも犯罪の疑いがあろうではないかということで鑑定処分許可状をとって司法解剖をしたわけでございます。
 司法解剖の結果は、まだ鑑定書ができておりませんので確たることではございませんが、私どもの判断として、いただいた分につきましては、いわゆる解剖所見と申しますが、これによりますと他殺ではないであろうという内容でございました。
#151
○諫山博君 法務大臣にお聞きします。
 苅田町の一連の不正の事実を聞いて多くの人はあきれています。税金で裏金づくりをした、そしてその相当な部分が国会議員の選挙資金に使われたのではないかと報道されているわけであります。こういう疑いを持たれること自体が政治家としては大変不名誉なことだと思いますけれども、とにかく、きのうの新聞などを見ると、政治家が逮捕されるXデーはいつかというようなことまで言われております。
 すべての事件について迅速、厳正な捜査が求められますけれども、特に政治家に対してそういう疑惑がかけられている、これが今度の苅田町の事件の大きな特色です。そして、政治家に対してはなかなか厳正な捜査が行われないじゃないかということを一般に国民は考えております。
 共産党の緒方国際部長宅の盗聴事件で、中曽根総理は、犯人がだれであろうとも厳正、公平に処理するということを言われましたけれども、まさにこの事件でも同じような処理が望まれると思います。とりわけ、この問題については警察よりも東京地検が全面的な責任を負って捜査をしているようですけれども、法務大臣としての決意のほどをお聞きしたいと思います。
#152
○国務大臣(遠藤要君) 東京地検が告発によって捜査を開始したということでございまして、その捜査に当たってだれそれがこうであるからこうだということを法務大臣がお答えするということもどうか、こう考えております。検察当局としては、政治家であろうとだれであろうと厳正、公平な措置をとっていく姿勢でいるということを承知いたしております。そのような点で御理解願いたいと思います。
#153
○諫山博君 最後に、刑事局長にお聞きします。
 私が現地で聞きますと、検察庁が調べているから警察は余り動かないというふうに言われておりました。きょうも大体そういう趣旨の警察の御説明のように思います。そうすると、東京地検特捜部が乗り出しただけにやはり東京地検の責任は極めて大きいと思います。そういう立場で迅速に厳正な捜査を行うように要望したいと思いますけれども、いかがでしょうか。
#154
○政府委員(岡村泰孝君) 検察といたしましては、常に厳正、公平に捜査を行い、処理を図るよう努めているところでございます。
 本件につきましても、東京地検が告発を受けましたので、所要の捜査を行っているということでございます。
#155
○諫山博君 終わります。
#156
○委員長(太田淳夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、諫山博君が委員を辞任され、その補欠として吉川春子君が選任されました。
#157
○橋本敦君 今の問題は非常に重大なので、私からも法案に入る前に二、三ただしておきたいと思います。
 伊藤検事総長はかつて、巨悪は眠らせないということでロッキード事件等についても毅然とした
態度で捜査を行われたわけであります。本件についても、今、諫山委員から要請しましたように、検察庁の毅然たる捜査と厳正な処断が要求されるわけでありますが、東京地検がこれを受理されて、東京と現地といえばかなり距離があって、捜査を迅速にやる上ではなかなか事務的には大変だというようにも予測されるわけです。
 したがって、そういうような状況で、東京地検はこの件を福岡に移送されるということも可能ではあるんですが、依然として東京地検として最後まで捜査を遂げられる、こういう御方針なのかどうか。その場合に、今言った距離あるいは関係人の捜査への協力を求める問題あるいは呼び出しの問題、いろいろな問題をクリアしていかなくちゃなりませんが、それは十分できるというお考えなのかどうか、いかがですか。
#158
○政府委員(岡村泰孝君) 現在、東京地検におきまして所要の捜査を進めている段階でございます。
 捜査の進展に伴いまして将来の方針がどうなるかという点でございますが、この点につきましては何ともお答えいたしがたいところでございます。
#159
○橋本敦君 ということは、事案の捜査が進むにつれて担当検事の増員あるいは現地へ移送して現地での態勢をさらに強化する、そういうことも態勢としては考えられるわけですね。
#160
○政府委員(岡村泰孝君) 要するに、現在捜査を進めておる段階でございまして、将来のことまで申し上げがたいのでございます。
#161
○橋本敦君 話は変わりますけれども、数千万円の公金横領ということが実際被告発人である収入役によってなされたとして、そこに膨大な使途不明金がある。そうしますと、業務上横領という犯罪の構成要件の具体的事実を追求する上でも、その金の使途については徹底的に明らかにする大事な捜査のポイントであることは間違いないと思いますが、間違いないでしょうね。
#162
○政府委員(岡村泰孝君) 一般論として申し上げれば、そういうことになろうかと思います。
#163
○橋本敦君 業務上横領されたと認定されたその金を受け取って、もらって費消している事実が明らかになりますと、法律関係としては事案によっては共犯ということにもなるでしょうが、仮に共犯でないとしても教唆犯ということにもなる可能性もあれば、あるいはそうならない場合でも、金をもらった場合にその金が不正に裏帳簿から横領された金であるということを知っておれば、刑事責任はどうなりますか。
#164
○政府委員(岡村泰孝君) 具体的事実関係が明らかになりませんと何とも申し上げがたいところでございまして、一般論で強いて申し上げますれば、共犯等になる場合もあるし、ならない場合もあると言う以外にお答えのしようがないのではないかと思う次第でございます。
#165
○橋本敦君 そこで、刑事局長、私が聞きたいのは、告発をされた事件を鋭意捜査中である、その捜査を遂げる上で不明金の使途は重大な捜査のポイントになる。そうなりますと、前町長、尾形氏でありますけれども、その町長時代に町長の権限と収入役の権限、その関係、そういうことも含めてなぜこういう裏金がつくられたか、それがどこへどう渡されたか、これについて被告発人である収入役は、この事案を捜査する上において犯罪の成否、捜査について重要な知識を有する者と考えられる一人であることは、捜査の常道からして間違いありませんね。
#166
○政府委員(岡村泰孝君) 大分捜査の中身に入るお話でございまして、何とも申し上げかねるところでございます。
#167
○橋本敦君 いや、それは何ともというよりも、当然そうでしょうというんですよ。だから、捜査犯罪事案でも何でも、参考人としてであれ犯罪に関して欠くことのできない知識を有する者と認められる者については、参考人として捜査協力を要請することもできる。検察官は呼び出すこともできる。これは当たり前ですよ。だから、この捜査を遂げる上でまさに尾形氏については、犯罪になるかならないかはこれからの捜査の問題であるとしても、告発された事案について重要な知識を持っている関係人の一人として将来検察庁は事情を聞く可能性のある状況であることはこれはもうだれが見てもはっきりしているじゃありませんか。そういうことですよ。これは否定できないでしょう。
#168
○政府委員(岡村泰孝君) 何回も同じような答弁を繰り返すわけでございますが、どうも同じような質問でございますので同じ答弁になるわけでございますが、いずれにいたしましても捜査を進めている段階でございまして、具体的なことは申し上げかねるところでございます。
#169
○橋本敦君 私が一般論で聞いたらあなたは具体論で逃げる。しかし、これはだれが聞いていても私の言っている趣旨はおわかりいただけるように、尾形氏は重要な知識を有する者として、本当に真剣に捜査するなら、捜査の視野から全然ネグレクトしてしまうような状況であり得ないということははっきりしていますから、いずれ私は参考人としてであれあるいはその他の関係であれ、重要な関係で捜査をお遂げいただく上で調べてもらわなくちゃ困る。政治家であるといっても遠慮することは絶対に許されぬ、こういう立場で聞いているんですが、どうですか。
#170
○政府委員(岡村泰孝君) 検察側は常に厳正、公平な立場で捜査に努めているところでございまして……
#171
○橋本敦君 政治家だからといって遠慮しちゃいかぬということですよ、私の質問は。政治家だからといって遠慮しては困りますよという質問です。
#172
○政府委員(岡村泰孝君) 厳正、公平な立場で捜査を進めているということでございまして、それが検察の方針であると承知いたしておるところでございます。
#173
○橋本敦君 これで終わります、法案の関連の時間がなくなりますから。
 今回、刑法の一部改正ということでコンピューター犯罪について新たな構成要件が設定されたわけでありますが、この背景として考えますと、我が国では電算化が非常に進みまして、汎用電算機は六十一年末で二十二万三千台、それからまさに六十五年にはコンピューター設置の金額が十二兆を超えるだろうと言われるくらいに今日情報経済社会の中核的な状況になっているし、また大衆化している側面もある。そういう中で犯罪件数を調べてみますと、CDカードによる犯罪は、六十年までが九百二十九件あったようですが、六十一年だけで、一月から六月までの半年で早くも五百十一件、警察庁の調べによりますと、コンピューター犯罪は昭和四十六年から六十一年までで七十一件、こういう傾向になっている。
 こういうわけですから、確かにこれらを取り締まる必要があるという必要性は出てきているという社会事情がありますが、さりとて在来の刑法の拡張解釈にも限度があるとすればやっぱり新しい構成要件の設定が必要だということも理解ができる。しかし問題は、刑罰規定の拡張、それが刑法が本来補完的でなくちゃならぬという社会秩序の維持との関係での役割を超えて、国民に対して刑罰規定の拡張と重罰体制を強化するということになりますとこれは人権上大きな問題になる。
 そこで、今度の刑法改正に当たってこの原則的な問題をどう踏まえられたのか。この点まずお話しいただきたいと思います。
#174
○説明員(米澤慶治君) 今、委員御指摘のように、刑法が基本的に謙抑的なものでなければならないということはまことにごもっともなお考えだと思いますし、私ども、今回の刑法等の一部を改正する法律案を策定するに当たりましても、そういった基本的態度でいかなる構成要件をつくっていくか、どのような法定刑を盛るかというようなことを考えてまいりました。その際考えましたことは、コンピューターに関します反社会的行為の防止ということが社会のニーズであるとすれば、どういった面からこの防止をするかという点でございます。
   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
 その一つには、もちろんのことながらユーザーの方々がコンピューターを使われるに当たりまして、セキュリティーの面で十分準備をされ、不正行為の起こらないように、まあ自発的にといいますか、ユーザーみずからが注意をすることが大切であろう。もう一つは、ユーザーの中にあってコンピューターにかかわりを持つ人たちのモラルの向上といいますか、そういったものも各営業単位、あるいは個人でも同じでございますが、そういったところでの十分な教育の徹底というものが必要でありましょう。しかし、その二つが仮に完全に実施されたといたしましても、御承知のようにこれを打ち破って反社会的行為に出る者のいることもまた当然のことでございますので、最善を尽くしましてもなお反社会的行為に出る場合につき現行刑法で果たして十分捕捉できるかどうかという観点から洗い直してみたのであります。
 それで、コンピューターが出現いたしました結果として、明治四十年にできました現行刑法にどのような穴があいてくるかというところを検討いたしました結果といたしまして、今度の法律案に盛られておりますように三つのポイントが重要であろうということで、文書偽変造あるいは機器関係に見合う電磁的記録の不正作出等、それから業務妨害もいろいろ、対人攻撃じゃなくてコンピューターを直接に攻撃する対物攻撃の形で業務妨害が出てくるだろうというようなことからそういった形での構成要件化が必要であろう。それから、人をだましませんで、また財物を取らないで、コンピューターをだましまして財産上不法の利益を得るということは現行刑法の財産罪ではちょっと賄い切れません、処罰し切れませんので、そういった点も看過できないであろう。そういった観点から現行刑法に穴のあきます部分だけをとりあえず手当てをしておけばいいのではないかという基本的態度で今回の改正案をつくったものであります。
#175
○橋本敦君 今のお話がもう少し具体的に進んでまいりますと、今度犯罪類型として規定されたコンピューター犯罪の、コンピューターにかかる不正使用を全部網を広げて、犯罪類型、犯罪対象にしたということではない、つまり構成要件的に絞りをかけているということが一つありますね。例えば、単なる情報データの入手、これは構成要件化しない。日弁連あたりでもこれによって重罰体制が広がる、処罰体制が広がるという問題にプラスして、単なる情報データののぞき見といったことが犯罪類型化されれば秘密保護法的な状況になるではないかという危険を指摘しておりましたが、その点はどういうふうにお考えになって、どうされたか、説明していただきたいと思います。
#176
○説明員(米澤慶治君) 今、委員御指摘の情報の関係につきまして、例えば、単純なハッカーに対処するための新たな構成要件というのは書いておりませんし、あるいは他人の情報をのぞき見まして、これを例えばコピーしてその情報をとってしまうというようなことは今回の構成要件では考えていないわけであります。
 その理由は、コンピューター化された情報とコンピューター化されていない情報との間で保護のあり方がどうあるべきであろうか、情報がコンピューター化された途端に、その情報だけが重い、手厚い保護を受けるというのはどうであろうか、あるいは情報、つまり秘密を保護します場合につきましても、プライバシーの観点から考えるのかあるいは財産価値あるものという考え方、企業秘密もそうでございますが、そういった観点から考えるか、あるいは公的な機密あるいは秘密といったものも保護の対象にするか、線切りといいますか輪切りの仕方が非常に難しい問題があって、いろいろな利害関係が衝突するところでもあろうと考えますので、情報の保護という観点からします、それを打ち破ります反社会的行為の中には当罰性のある反社会的行為のあることは当然ではございますが、そこは十分に関係者や、あるいは学者の方々、あるいは日弁連を初めとする一般識者の方々等の御意見を十分賜って、そして国民の大方の合意があったところで判断するのが相当だということで今回見送ったわけであります。
 それから、無権限使用につきましては、これまたいかなる法益侵害があるのか、ちょっとなかなか定かでないというような点もございます。したがいまして、さきに申しましたように、基本的には現行刑法に穴のあくところを少なくとも手当てをし、コンピューター出現によって現行刑法の秩序維持機能に欠けるところがあってはならない、こういう考えで立案したものであります。
#177
○橋本敦君 コンピューター犯罪の特質として言われていることは、一つは隠密性の問題がありますね。なかなか外形的に行為的に犯罪態様として出てこない。それからもう一つは、専門性がありますね。やっぱりコンピューターを扱うという特殊な専門技術と知識が要る。だから、そういう専門性がある。それからもう一つは、何といっても外部から直接にコンピューターを壊すことはできますが、そういう単純な犯罪類型でないわけですから、そういう意味じゃ内部性ということが言われる。確かに今までの犯罪の摘発、捜査状況を見てみますと、被疑者とされる人あるいは犯罪者は企業内部の人が圧倒的に多いですね。八割ぐらいそうじゃないでしょうか。そうなりますと、こういうせっかくの刑法の一部改正で新しい犯罪規定をこしらえましても、企業内部が隠してしまう、外部に漏れると企業の名誉にかかわるからということで内部だけで処理してしまったということになりますと、社会的には十分機能しないという面がある。
 ところが一方、しかしすべてのものを何でもかんでも処罰すをというのが刑法の規定ではありませんから、ちょっと米澤さんおっしゃったように、企業みずからがセキュリティーを考える責任もあるだろうし、あるいは企業みずからが従業員のモラルを育成して、専門性あるその事業を扱っている人がつい誘惑にかられて不正使用をやるようなことのないように教育する必要もあるでしょうし、刑罰はたくさんの人を処罰するのが目的ではないけれども、このコンピューター犯罪の特性を考えますと、私は企業のモラルということは非常に大事だと思うんですね。その点について法務省はどうお考えでしょうか。
#178
○説明員(米澤慶治君) 委員御指摘のように、モラルが十分向上されなければ問題であろうという点、私さきにもお答え申し上げたとおりであります。ところで、セキュリティー絡みでも、あるいはモラル絡みでも一応各ユーザーの方々に対しまして日ごろからその辺の向上をお願いしたり、あるいは万全を期していただくようにお願いすることも法秩序の維持の観点から我々にも責任があろうかと思いますので、日常の交流の中でそういうことを申し上げていくことによりまして、今申されました犯行の内部性によるその犯罪の非顕在化といいますか、外へ出てこない暗数化ということもできる限り避けられるようにしたいというふうにも考えております。
 なお、つけ加えさせていただきますと、現段階では我が国では確かに専門家による内部犯行が非常に多うございますけれども、コンピューターに関します教育が例えば初等教育の段階まで普及いたしますと、多分一般市民の方々も容易にこういった種類の反社会的行為をやろうと思えばやれるような技術をお持ちになるようになるだろう。
   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
そうなりますと、必ずしも専門的であるとか、内部的であるという問題に限られないんだろうと思います。アメリカやヨーロッパ諸国の一部に見られる傾向を御了解いただければおわかりと思います。
#179
○橋本敦君 このコンピューター犯罪についてはなかなか概念規定が難しくて、例えば、第七条ノ二が置かれているようなことにも見られるのですが、コンピューター犯罪の構成要件にどういうようにきちっと明確な解釈と絞りをかけていくか、まず、いうところの電磁的記録とは何か、これ自体がなかなか大変ですね。そういう意味で乱用されないということを国民の立場でチェックしていくためには、いわゆるコンピュータ犯罪と一般に言われているような漠然とした言い方ではなくて、今度の刑法がコンピューター犯罪として処罰しようとしているコンピューターあるいは電磁的記録とは何か、そしてどういう行為が犯罪とされるのかということを明確に言ってもらう必要があると思うんですが、そこらあたりはどうですか。
#180
○説明員(米澤慶治君) 委員御指摘のように、コンピューター犯罪として私どもが今回刑法で構成要件化いたします場合に、そこで用いられますそれぞれの用語が明確であることが必要であることは言うまでもないと思います。したがいまして、最も多用されます電磁的記録につきましては、第七条ノ二という定義規定を一応置かせていただこうとしているわけでございます。そこでは例示的にいろいろ「電子的」「磁気的」と、こういうふうに書いてございますが、結局は日進月歩の先端技術の問題でございますので、完全には制限列挙的には書けませんので、包括的に「其他」ということで、まあ直接知覚でもって認識することができないような方式でということで、一応は電磁的記録の範囲を明らかにさせていただいているんじゃなかろうかと思います。
 具体的にはどんなものが入るかということでございますが、ICメモリーとか、それから磁気テープ、磁気ディスクあるいは光ディスクというようなものが考えられるかと思いますが、将来的にはバイオテクノロジーを使いました記憶媒体が使われるというふうにも承っておるところでございます。
 それから、電子計算機あるいはコンピューターの定義といいますか、意味でございますが、これにつきましても作業過程の中では定義を置いてみてはどうかという考えもあったのでございますけれども、いろいろな場面で使われていますコンピューターを一概に書くことはかえって非常に複雑になりまして、その場合に完全に捕捉できればいいんですが、実際は漏れが出てくるかもしらぬ、あるいは科学技術の進歩では特異なものが出てくるかもしらぬというようなことがございます。
 一つは、いろいろな計算あるいは情報の伝達を行う電子機器類を指すのだと一応観念しておきまして、それぞれの各構成要件とのはね返りで、例えば、業務妨害というのは業務に用いられる電子計算機だ、あるいは電磁記録の不正作出ということになりますと、権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を使うようなコンピューター、そうなりますと、パーツでありますようないろいろなコンピューター的な機器類は関係がなくなるとか、いろいろそれぞれの構成要件ごとにその構成要件の定め方とのはね返りで具体的に明確にできているのではないかという考え方をとったわけでございます。
#181
○橋本敦君 大臣お聞きのように、なかなかぴしゃっと言うのは本当に難しいんですね。
 それで、コンピューター犯罪として今度は何もかも不正使用を処罰するんじゃなくて、おっしゃるように限定をして構成要件としては文書の毀棄罪に該当する部分あるいは業務妨害罪に該当する部分あるいは詐欺罪に見られるような財産上不法利得に該当する部分というように一応構成要件の絞りをかけてきた。そういうことではありますけれども、言葉自体が難解で、日進月歩ですからこの法律が将来乱用されないということは非常に大事なんですね。そこのところで将来の乱用を慎まなくちゃならぬということは私も痛切に思いますが、大臣はその点についていかがな御見解でしょうか。
#182
○国務大臣(遠藤要君) ただいま先生のお尋ねでございますけれども、私は乱用のおそれはないとこう考えております。その運用に当たっても、きょうの法務委員会のやりとり等も十分やはりこの法制定の大きな資料になってくることであり、いやしくもそのような点から考えても乱用の批判を受けることのないような操作処理に適正を期していくということで、刑罰法令の運用のあり方としては正しく当然のあり方でやってまいりたい、こう思いますので御了承願いたいと思います。
#183
○橋本敦君 それでは次に進みますが、時間がないのですべての問題でお尋ねできませんので、二百三十四条ノ二の業務妨害に関連をして若干質問をさせていただきます。
 この二百三十四条ノ二によりますと、これも規定が大変難しいのでありますけれども、まず業務妨害の手段の例示、列挙として一つには不正の指令をコンピューターに与える、これがございます。その次に「其他ノ方法ヲ以テ」ということになっておりまして、手段の列挙がある中で特に「不正ノ指令」とはどういうものを言うのか、また「其他ノ方法ヲ以テ」とはどういうことを考えられているのか、この点ちょっと説明していただけますか。
#184
○説明員(米澤慶治君) まず、「其他ノ方法ヲ以テ」というところから御説明申し上げますが、これは委員御承知のように、電子計算機と申しますのは非常に繊細な機器類でございまして、一定の室温、一定の湿度を保持しない限りは機能いたさないのであります。
 ところで、その前段階に具体的に例示いたしましたのは物理的損壊と書いてございますけれども、その物理的損壊との兼ね合いで今度はその機能だけを一時的に機能しないようにするというようなことがもう一つあり得ますので、この損壊との見合いでそれがまず入ってくるだろうということであります。それからもう一つは、大型の電子計算機を用いております場合には通電停止というのが非常に困るわけでございます。例えば、CPU中でいろいろ情報をプロセスいたしている段階でだれかが電気をとめるかあるいはにわかに停電するというようなことになりますと、その情報処理がそこではじき飛んでしまいまして一からもう一回組み立てるというようなこともしなければならない。そこで大型コンピューターを使っております会社等では、地下室にバッテリーを置きまして自家発電ができるように常に備えておるような状況がございます。したがいまして、通電停止をすることも「其他ノ方法」に入るかもしれないと自分たちは考えているわけでございます。
 それから、「不正ノ指令」でございますが、これ具体例で恐縮でございますが、この指令と申しますのはプログラムを組み込むのもありますし、それからキーをたたいて一定の電子計算機に動作をさせる、こう動けと、一足す一は二だという計算をしろというようなことをキーでたたいてやるものでございますが、この「不正ノ指令」と申しますのは、設置者が業務に使っております場合を想定いたしますと、例えば、ロボット制御に使っておりますコンピューターを例にとりますと、正三角形の鉄板をつくる工場があったといたしまして、そういう指令を電子計算機にプログラムなりキーをたたいて与えまして、そしてその電子計算機がロボットを操作して自動的に正三角形の鉄板をつくっていく場合に、この正三角形の鉄板をつくらせないために、例えば正四角形の鉄板をつくるようにロボットに電子計算機が指令すべくそのプログラムを違うものと差しかえてしまう、あるいはそういう正四角形をつくるようにキーをたたいて指令を与える、そういうふうなことを観念しておるわけでございます。
#185
○橋本敦君 そうすると、「不正ノ指令」というのはキーをたたいてやるという直接の指令伝達つまりコマンドと呼ばれるもの、それからいまおっしゃった三角、四角のソフトのプログラムの中に組み込んだものの変更という、これはインストラクションと呼ばれる部分になるのですが、両方入るという考えですわ。どうですか。
#186
○説明員(米澤慶治君) 両方入ると思います。プログラムの中のインストラクションも、それからキーをたたいて作動させるという動作をさせるものも入ると思います。
#187
○橋本敦君 そこで、「其他ノ方法ヲ以テ」というのが乱用されちゃならぬけれども、例示的列挙に類推をしてかなりの範囲のものが入ってくるとなりますと、これも刑罰法令ですから適用の場合には本当に厳格に解釈されなくちゃ困るということを言っておきたいと思うんです。
 その次に、そういう結果として本来の電子計算機をして使用目的に沿うべき動作をなさしめない
あるいは使用目的と違う動作をなさしめる、今おっしゃった三角、四角の問題、こうなりますね。そうなりますと、これは業務妨害の結果の発生として具体的にどの範囲のそごあるいは使用目的との違いを言うのか、これは非常に私は問題があると思うんですね。例えば、一般的に電算機の汎用性の機能そのものが損なわれたというのはこれは毀棄でしょうが、ここで言うのはそこまで広く言っちゃ困るわけでしょう。そこの限界的解釈は成り立ちますか。
#188
○説明員(米澤慶治君) ここで「使用目的」と申しておりますのは、今、委員御指摘の汎用コンピューターの機能とか性能とかいう問題ではございませんで、具体的にある男が汎用コンピューターを設置いたしまして自分の業務を遂行している場面を御想定いただきたいのですが、その場合に業務といいましても個々具体的な業務があるわけでございます。先ほど申しましたように、三角形の鉄板をつくるのだという業務、それに使っているんだというような具体的な個別の使用目的を指しておると理解いたしておりますので、「使用目的ニ副フ可キ動作ヲ為サシメズ」といいますと、これは三角形の鉄板をつくらないようにシステムダウンで動かないようにしてしまう。そうしますと三角形はできないわけでございますし、それから先ほどの例で言いますと、使用目的にたがう動作をなさしめるというのは三角形をつくるはずであったところ不正の指令を与えて四角形の鉄板をどんどんつくらしてしまったというようなことを具体例としては考えるわけでございます。
 なお、念のために申し上げますが、最終的には「業務ヲ妨害シタル者」、こういうふうな構成要件になっておりますので、現行の業務妨害罪と状況は同じようなものが出てこないとこれに当たらないということにもなってくるかと思います。
#189
○橋本敦君 そこで、これに関連してもう一つ聞きたいのですが、さっき電気をとめた場合の話がありました。これは意図的にとめるのじゃなくてうっかり過失でとめる場合も起こり得るんですね。この二百三十四条ノ二は、過失犯は処罰しないということははっきりしているんですか。
#190
○説明員(米澤慶治君) 故意犯のみを処罰する予定で書いてございますし、また、構成要件の読み方もそれぞれ手段あるいは途中の結果あるいは業務妨害という書き方で故意犯であることは明白であろうと思います。
#191
○橋本敦君 そこで、故意の内容ですが、具体的な認識としては今参事官がおっしゃったように、具体的な業務プログラムの機能についてそれを損なうということの意図あるいは確定的な具体性を持った範囲とこう解すべきで、一般的に電子計算機その他の機械の機能を低下させてやろうというような程度では明確な範囲とは言えないのではという問題があるのですが、そこはどうですか。
#192
○説明員(米澤慶治君) 非常に微妙な問題を委員御指摘なさいましたので、具体的に事件が起こってまいりまして事実関係を定かにしてみない限りはちょっとお答えがしにくいわけでございます。委員御承知のように、未必の故意という理論が当然のことながらございますので、その辺でどうなるかということですから、結論を一刀両断には申し上げかねるのでございます。
 しかしながら、その乱用の危険という点は、私どもといたしましても、故意犯であり、かつ少なくとも未必の故意がなければこれは処罰しないんだという限度におきまして、乱用しないよう厳重に考えつつ適用していきたいというふうに考えておるところであります。
#193
○橋本敦君 今の点は、大体そういう結論に行ったんですけれども、具体的に、コンピューターのプログラム、ソフトの作成というのは非常に難しくて、これに従事している労働者はたくさんいるんですが、依頼されたプログラムあるいはソフトをつくるということもなかなか難しくて、これで大丈夫だと思って出したものが実は十分機能しなかった。今おっしゃったように、三角だというインストラクションが三角じゃなくて二角ぐらいになったとか四角に近くなったということもあり得るんですね。そういう場合に業務妨害ということで未必の故意があるとされたら、これはもう営業をやっている皆さんは大変だし労働者も大変なんですが、こういう問題についてはどうお考えですか。
#194
○説明員(米澤慶治君) 今、委員御指摘の事例では、私は未必の故意が認められないんじゃなかろうかと思います。これは証拠を見たわけじゃございませんけれども。
 ただ、例えばプログラムなりを開発いたしますソフトエンジニアの心境といたしましては、当然自分の信用等もございますから、納期の関係で非常に急いで、若干の落ち度があるかもしらぬと思いますと、それは当然のことながらその製品についていきまして、相手方のところへ仮に泊り込んででも修復するといいますか、チェックするというようなことが日常行われているやに承っておるところであります。そういう状況でありますと、未必の故意を適用してそういう人たちを処罰するということはあり得ないのではないかと私ども考えております。
#195
○橋本敦君 乱用の危険がないということを構成要件の解釈適用の具体的問題として尋ねていったわけで、そういう方向でぜひ乱用がないことをこれからの運用でも保障してほしいと思います。
 最後に、問題の提起ですが、今まで捜査をやりますと、文書投棄罪ですとその文書の押収、あるいは不実記載罪ですとその原本との関係で不実記載された文書の押収ということでとれたわけですね。文書というのは、これは可視性、可読性がありますから一見明瞭ですが、今度、電磁的記録となりますと可視性、可読性が即時に出てこないんですね。そうなりますと、裁判所で証拠調べをするときに一体どうするのか。その証拠調べに出すまでの証拠収集として一体何を持っていくのか。電子計算機を丸ごと持っていけるわけありませんしね。電磁的記録のディスクそのものを全部持っていったら、該当部分以外たくさん入っているんですからこれはもう大変なことで、業務妨害にもなるし、国民の権利侵害にもなるでしょう。
 そういう意味で、今の刑訴の手続を考えますと、さてこの刑法はできたけれども、実際の運用でそこらあたりはどうするのか、法務省はどうなさるお考えなのかなという疑問を私は持つんですが、その点はいかがでしょうか。これを伺って質問を終わります。
#196
○説明員(米澤慶治君) いろいろな精密機械類が発達して日常生活に用いられるようになりますと、確かに現実の捜査技術の中でいろいろな支障が生ずるのは、例えば、マイクロフィルムが非常に多用されるようになりました一時期、やはり捜査官側から見て技術的にどうするのかという問題が出たことはございます。しかしながら、その問題も十分克服されまして何とかなっておりますし、私の考えでは、コンピューターが出てきましても伝統的な捜査方法で一応何とかなるだろうとは思いますけれども……
#197
○橋本敦君 何とかなる。
#198
○説明員(米澤慶治君) はい、いろいろな隘路が出てくる可能性は出てくるかもしれません、そういった問題も意識下に置きまして、今後とも十分検討して、万全を期するようにしてみたいと思っております。
#199
○橋本敦君 終わります。
#200
○柳澤錬造君 法務大臣、大分もうお疲れだと思うんだけれども、朝から続いているんですから、もう少し御辛抱いただきたいと思います。
 私が最初にお聞きをするのは、極めて初歩的なことからまずお聞きをしていきます。
 コンピューターの普及、発達が目覚ましいということはもうだれもが承知をしているわけで、アメリカに次いであるわけなんですけれども、それだけに犯罪がふえていく、またその犯罪のスケールが大きくなっていく、それが今回の法改正になったと思うんです。
 そこで、お聞きしたいことは、いわゆるCD機、今郵便局ももう大分これを据えつけましたんで、このCD機が今何台ぐらい稼働しているのかということ。それから、それに使うキャッシュカードが何枚ぐらい発行されているのか、これはもう推定しかないと思いますから、その程度で結構です。あわせて、クレジットカードが物すごく今はんらんをしているわけだけれども、これも推定で結構ですから、どのくらい使われていると御判断なさっているか、そこからお聞かせいただきたいと思うんです。
#201
○説明員(米澤慶治君) まず、CD機の設置台数でございますが、六十二年三月末現在で六万一千八十三台使われております。
 それから、CDカード発行枚数でございますが、これも同じ時期で、これは推定でございますが、約一億三千九百六万枚でございます。それから、クレジットカード発行枚数でございますが、これちょっと古い資料しかなかったものでございますから、一年前の六十一年三月末現在でございますけれども、約九千七百五万枚発行されております。
#202
○柳澤錬造君 次にお聞きしたいのは、今銀行がオンラインシステムをどんどん採用して別な銀行とまでも使えるようになり、そういう点では大変便利になったことは事実なわけだ。しかし、その反面犯罪が本当に複雑になってきているのは、例えば、前は人質とか誘拐とかして身の代金を要求して、最終的にどこそこの銀行のこの口座に振り込めということで必ず犯人はそこへ取りにくるわけですから、そこへ警察が網を張っていれば捕まえることができたわけでしょうが、今度はこのオンラインシステムができちゃったので、東京のA銀行に振り込めと言っておいて、その時間の直後に、極端に言えば大阪のB銀行からすぐそれを引き出してしまうということをやれば犯人を捕まえられないわけでしょう。そういう点を考えたときにどうなさるおつもりなんですか。この程度の法改正でその犯罪防止ができるんですかどうか。その辺のお考えをお聞きしたいんです。
#203
○説明員(米澤慶治君) 今、委員御質問の点は、構成要件の点よりはむしろ何か犯人検挙の点がまず問題のようにおっしゃっておるわけでございますが、この点につきましては、基本的には防犯関係でございまして、法務省刑事局の者がお答えするのが妥当かどうかは存じ上げませんが、一般論として聞いているところに即して私なりに申し上げさせていただきたいと思います。
 銀行のオンライン化が進みますと同時に、警察の指導があったんだと思いますけれども、御承知のように銀行ではカメラを設置いたしまして、それぞれのCD機の前にあらわれる人物が特定できるような方法をとって、委員が先ほど御指摘のような万一A銀行で何かをし、同時に仲間がB銀行、遠く離れたところで現金をとってしまうというような事態にも一応対処しようということで万全を期しているところではあります、
 なお、その構成要件との絡みで、これでコンピューターにまつわる反社会的行為について十分かどうかという御下問でございますが、現行刑法の秩序維持機能という点から見ますと、コンピューターが出現しました結果として現行刑法の秩序維持機能にやや問題が生じたところは少なくともそれぞれ手当てをするという法律案でございますので、その限度では、現行刑法秩序維持機能を維持し続けるという観点から犯罪防止にプラスする有益なものだと考えております。
#204
○柳澤錬造君 よくわからないです。
 それで、その点はさておいて、次の質問をしていきますが、また後でまとめていろいろお聞きもしていきたいと思うんです。
 コンピューター犯罪というのは金銭的なことだけじゃないんですね。現実にもうこれは起きていることだし、言えば産業スパイ事件のような企業活動を妨害するとか、あるいは企業活動から盗み出すとかというふうなことがコンピューターを使って現実に行われているわけなんです。この場合の事件の性質なんていうものは、人質で一千万よこせとか二千万よこせとかなんというものではなくて何億、何十億の損失をその企業が受けるわけなんです。
 今度の刑法改正でいけば、そういう場合には五年以下の懲役か四十万円以下の罰金が妥当ですというのがこの刑法改正の判断だ。その辺のところが、金銭的な面からいくとバランスがと言っちゃおかしいですけれども、それぞれ懲役何年以下、罰金幾ら幾らというようなことになっていますけれども、企業活動の妨害行為、こういうことになったら、こんな五年以下とか四十万円以下の罰金なんかで済むような内容でないんであって、その辺の判断はどのようになさったんですか。
#205
○説明員(米澤慶治君) 先ほどの委員の御質問についてもお答えいたしましたように、今、委員の御質問の企業秘密と申しますかあるいは産業スパイ的なものについて真正面からこれを取り上げて処罰する規定というものを今回つくったわけではないわけであります。もちろん、その中には業務妨害的なものが入ってまいりますので、その場合には今、委員御指摘の五年以下云々という法定刑になるわけでございますが、それならなぜ産業スパイについて正面からこれを取り上げなかったかという御下問かと思いますので、それについてなお念のため申し上げさせていただきます。
 さきにも申しましたように、秘密の探知を含む秘密の侵害行為につきまして現行刑法は処罰規定を持っていないわけでございます。したがいまして、コンピューターの出現に伴いましてそのような秘密侵害といいますか、そういったものをこの際刑法に盛り込むとすれば新しい処罰範囲の拡大ということになるわけでございます。その場合に何を検討しなければならないかと申しますと、これもさきにお答え申しましたが、プライバシーの観点からそれを見るか、今、委員御指摘のように、産業スパイ的に財産価値ある秘密を重点的にやるのか、あるいは公的な国家秘密といいますか、国家機密といいますか、そういったものも含めて一般に秘密というものを探知したりあるいは侵害したものを大きくとらえてこれを処罰することにするのか。
 それからもう一つ重要な問題は、電子計算機に組み込まれた秘密だけが保護されてしかるべきなのか、そうじゃなくて企業秘密の中には電子計算機を使わない秘密というものがたくさんございますので、それとの兼ね合いをどうするのかというような非常に複雑で難しい問題、あるいは刑法の基本的な立て方の問題にも深くかかわりますので、それらの点につきましては今後とも十分検討して、それなりに各界の御意見がある程度一致していった場合、再度その罰則をつくるべきかどうかを議論してみたい、検討してみたい、そういう基本的態度をとったのであります。
#206
○柳澤錬造君 米澤さん、そうするとこれは欠陥刑法だとお認めになるんですか。泥棒を捕まえたら、おまえさん人の物を取ったんだから、じゃ懲役一年以下の云々だとか、人を殺したらそれは最高刑は死刑だとか、いろいろあらゆる犯罪のそうした場合にはどうするかということを決めているのがこの刑法だと私は思うんです。私なんかどっちかというと素人の方だけれども、その程度の理解はしているわけです。今ただいまの時点で判断ができるのがこの辺だというふうな御判断でもしもこれをなさったんだとすればどうも理解がいかないんです。
 それで、これはこういう場で言っていいかどうかあれだと思いますけれども、数年前に日立とどこだったですか、半導体でアメリカからおとり捜査でやられたでしょう。あのときなんか私、新聞を見てすぐ直観的に思ったことは、文句があるなら何で専売特許の申請をしないんだといって開き直らないのかと。今半導体なんかは、先ほどから米澤さんも、もちろんそれはコンピューターのことをいろいろ御存じでちゃんと何して答えられているというふうに思っているんですけれども、時々疑問に思うから何ですが、専売特許の申請をして特許の許可がおりるときにはその製品はもう過去のものになっている。だからあのときだって、私から言わせれば、おまえさん方文句があるんだったら専売特許をちゃんと申請して特許を取っておけばいいじゃないかと。それならもう特許権侵害でこれは明らかに犯罪になることである。
 それを、結局はあのときの日本とアメリカの力関係がああいう結果でもって、日本が謝ってお金を払ったかなんかしたんですけれども、その辺が、将来の仮定のことを予想して、刑法でもってこの場合にはこうするということは決めかねることはわかりますけれども、現実に今の時点で想定のつくことは、せっかく刑法改正をなさるんならばやっておかなきゃいかぬことである。
 それで、もう一回聞きますけれども、今私が言ったようないわゆる産業スパイのような、これは大変なことなんです。まかり間違えば企業がつぶれるわけなんです。そうした場合に該当させられるのが五年以下の懲役、四十万以下の罰金という判断の根拠は何だったんですか。
#207
○説明員(米澤慶治君) まず、委員が冒頭おっしゃいました欠陥刑法だということを認めるのかというお言葉に対しまして、あえて反論するようで恐縮でございますが、私ども立案当局といたしましては、まさに現行刑法がコンピューターの出現によってやや欠陥を生じております部分を、少なくとも手当てすることによりまして現行刑法の秩序維持機能というものを今後とも保持したいということをまずやらせていただいたということでございますので、私どもの判断といたしましては欠陥刑法だとは思っていないと申し上げさしていただきたいのでございます。
 なお、企業秘密に対する産業スパイ的なものでございますが、これも委員御承知かと思いますけれども、刑法全面改正作業でやはり企業秘密漏示罪というものを新しく規定を設けようといたしました。その中で賛否両論非常に対立が厳しゅうございました。賛否両論対立が激しくても、当然当罰性のある反社会的行為であって、法秩序維持の観点から断固としてやるべきものがあればそれは当然やるべきだと私も思いますけれども、御承知のように、刑法は国の基本法典でございますし、国民のそれぞれの人権とも深いかかわりを持つものでございますから、できることならば大方の合意のあるところでつくっていくといういわゆる謙抑的な姿勢というものも堅持しなければならないかと思うわけでございます。
 もっとも、秘密を侵害するような反社会的行為が当罰性がないとか、それについて罰則が要らないと私申し上げているわけではございませんで、当然のことながらいろいろな反社会的行為が出る予想もありますので、その点につきましては関係当局やあるいは識者の方々のいろいろな御意見を徴して、最終的には大方の合意のあるところでその秘密をどこで限定するか等を決めていきたい。要するに、今後の検討課題の一つであろうという理解をしておるわけでございます。
#208
○柳澤錬造君 米澤さんね、今あなたがおっしゃっていもような悠長な状態で半導体の進歩というものはしていないんですよ。半導体の方がはるかにスピードが速いんですから間に合わなくなっちゃうわけ。だからもうこれ以上言わぬから、その辺はもう少し御理解をしていただいて、その時代に対応したような刑法にしていかなきゃならないことだと思うんで、十分考えておいていただきたいと思います。
 次には、しばらく前になりますけれども、世田谷でNTTの火災事故があった。あのときもあそこの三菱銀行ですか、オンラインがそのためにストップした。あれは火災事故でしたけれども、だれかが故意にあの配線を切断した、そうして今言ったようなオンラインシステムが使えなくなったというような事故になったときは、どの程度のあれが適用になって処罰を受けることになるんですか。
#209
○説明員(米澤慶治君) 世田谷区のNTTのケースが仮に故意に惹起されたということを前提にお答えいたしますと、かつ、火災が起きておりますので火を放って仮に燃やしたといたしますと、建造物等以外の放火という刑法の規定がございますが、それが一年以上十年以下の懲役になるだろうと思われます。それから、これも委員御承知と思いますが、電気通信妨害をいたしますと有線電気通信法というものがございまして、この十二条違反が成立する。これは五年以下百万円以下の罰金というような法定刑が決めてございます。それから、今回つくります電子計算機損壊等による業務妨害が仮に成立するような要件がございますれば、これまた五年以下ということで三つの罪が成立する。
 それぞれにつきまして、これがどういう罪数関係になるかというのが非常に難しゅうございますが、有線電気通信法違反の方は業務妨害とはどちらかと言えば別なような取り扱いをするのかなと直観で思いますけれども、今判例を覚えておりませんので、大体一番重いもので十年以下ぐらいでいくのではないかと考えております。
#210
○柳澤錬造君 わかりました。
 次には、刑法全般について、これは先進国のことだけで結構ですけれども、日本の刑法というのは国際的な水準に比較してかなり進歩した刑法になっているのか、まだおくれた状態にあるのか、その辺の御判断は法務省としてどういうお考えをお持ちなんですか。
#211
○説明員(米澤慶治君) これは、刑法がおくれているか進んでいるかというのは、基準というものをどこに設定するかなかなか難しい問題がございまして、刑法というのは各国ごとの文化的なあるいは社会的な歴史的な諸条件によって非常に異なるものでございます。特に人を処罰するというようなこと、あるいは犯罪かど一ついうふうにして起こってくるか、どの種の犯罪が多いかというのは各国によって違うものでございますから、その規定ぶり、構成要件のとらえ方あるいは法定刑の盛り込み方というのは各国によって違うと言っても過一言ではないと考えております。
 しかしながら、そういった難しさはさておきましても、御承知のように、必要な都度、戦後も多数回にわたり刑法の各則あるいは総則に関しまして所要の改正を実施してきていただいたところでございますので、ざっくばらんに申し上げて、我が国の刑法が例えば、ドイツなりアメリカなりあるいはイギリス等に劣っているとは私ども決して考えておりません。もちろん今のコンピュータークライムに関しましては、ドイツもイギリスもアメリカも我々よりは数年先にやっておりまして、その程度のおくれはあったかもしれませんけれども、その都度我々は刑法に所要の改正をさせていただいたところであります。
#212
○柳澤錬造君 なかなかお答えにくいことを聞いたんですからあれですけれども、そういう理解をして。
 次に私が聞きたいのは、今度は、国際テロ防止条約。条約の方は批准しましたから、いよいよこちらも変えるわけです。バングラデシュであったときなんかでもそうですけれども、時の内閣総理大臣は、人命は地球よりも重いと言って十六億何がしの金を持たせて、それまでつかまえておいた犯人も解放してやって、それであの金をめぐって当時バングラデシュでは革命が起きるかどうかの騒ぎになったんだけれども、その辺について、この国際テロ防止条約批准を機に、先ほど国際的な水準とどうなんですかと聞いたこともそこに意味があるんですけれども、従来のような、わかりやすく言えばだらしがないことではなくて、国際正義というか社会正義というかその辺は毅然とした態度でもってそういうふうな犯罪に臨む御決意をお持ちになったのかどうか。
 先ほどからいろいろ御答弁をお聞きしていますと、刑法の乱用はいたしませんということで、もちろん刑法の乱用はしちゃいかぬと思うんです。しかし、刑法の乱用はいたしませんというその言葉の陰でもって、先ほど言った、今の国際的な水準の中における日本の取り組みとはいかがなものかというならば大変おくれた取り組みしかしていないんですから、それは従来のようなやり方を変えます、もっと毅然としてやりますといって、そういうことをお答えいただけるんですか。どうですか。
#213
○政府委員(岡村泰孝君) ハイジャックの問題といたしましては、要するに、人質の生命の尊重ということと法と正義の貫徹という二つの両立しがたいものをいかに調和させるかということに難しい問題があるわけでございます。そういう意味で、ハイジャック等のテロ対策につきましては我が国といたしましても毅然たる態度をとるべき必要があることは申すまでもないところでございまして、制度的なものといたしましては、現在、政府にハイジャック等非人道的暴力防止対策本部というものを設置いたしておりまして、テロ防止の関係でいろいろな施策を進めておるところでございます。
 また、こういったテロ対策の基本といたしまして、人質の安全救助のため最大限の努力を払うと同時に、法秩序維持のため犯人の不法な要求に対しては断固たる態度をもって臨むという方針も定めているところでございます。今後こういう方針で対処してまいりたいと考えているところでございます。
#214
○柳澤錬造君 刑事局長、今までの答弁の中で一番はっきりしていたような気がする。
 それで次には、これもそういう意味でのややこしい関係のある質問をするんですから、明確にお答えいただきたいと思います。
 ついこの間、アメリカの有力な大統領候補に予定をされておった方が、女性問題が明るみに出たといってとうとう立候補するのをあきらめたことを、これは新聞で皆さん方も御存じだと思うんです。日本の場合はその点はどうですかということです。
 日本では、例えば裁判なんかでもそうですけれども、お酒の上での事故だというとやれ精神鑑定しろとかどうとか、そうしてあのときは精神状態が正常ではなかったといって大変軽い刑にするというのが日本の場合の一般の司法のあり方なんです。その辺の判断はそういう国際的な考え方になさるんですか。それとも今までと同じように、精神的におかしかったといって刑を軽くするような従来の踏襲をなさるんですか。どちらですか。
#215
○政府委員(岡村泰孝君) 酒に酔ったというだけで特にその者の犯罪を軽く処罰しているというようなことではないと思うのであります。しかしながら、一方におきまして、酒に酔った結果といたしまして判断能力を著しく低下させるとかあるいは失うとか、要するに、刑法に言いますところの心神耗弱なり心神喪失という状態に陥っていたとするならば、それはやはり刑法上減刑されるかあるいは不可罰になるということになるわけでございますが、これは責任能力の問題でございまして、世界的にも同じような責任能力の問題というものは刑法で規定しているところでございます。ただ、一般的に申し上げまして、酔っぱらっているから軽いということではないと考えているところでございます。
#216
○柳澤錬造君 刑事局長、さっきは非常にいい答弁したと言ったんだけれども、今の答弁はまるきりなっちゃいない。そんな答弁をよくなさると思うんです。そういうことを言われると、これはもうやはり法務省でもってお調べをいただきたいと思います。
 今日までどれだけの事件でもっていろいろなにしたときに、弁護士の方は精神鑑定をしてください、あのときは精神が正常でなかったんだからと言ってなにした。それで最終的に裁判長もそういう場合の判決というものは、普通の人が犯した判決よりかも精神が正常でなかったんだということで軽い判決をする。私に言わせたら、それは枚挙にいとまがないと言ってもいいほど日本の今までの判決の中であるわけなんです。
 最後に申し上げておきたいことは、御答弁はしていただいてもいただかなくてもいいんですけれども、きょうもずっといろいろ各委員が御質問なさって、その答弁を私も聞いておりまして感じた点で申し上げるんです。
 捜査中だから言えませんと、こうすぐあなたたちは言う。特に、岡村刑事局長の答弁はその大部分でもって、まともに質問をした方に対してのお答えが――それは捜査中は言えないことがたくさんあることは事実だと私も思うんですよ。しかし、もう少しやはり物の言い方があったんじゃないかと私は思うんです。何だと言うと、それは捜査中でありますから言えませんと言ってくる。それはそれでもって私も認めてもいいと思うんです。
 しかし、それを言うならば、そのかわり、あなた方がいろいろ事件でもって参考人だ何だと引っ張られる、そうしたらその人たちの人権も守ってやってほしいと思うんです。まだ犯罪を犯したかどうかもわからない、その人たちが新聞に書き立てられたり、そういうことにならないように、極秘のうちにそういう人たちを調べるなら調べる、何されても結構。
 しかし、現実に犯罪を犯した、この人は有罪です、罪ですという結論が出るまでの間においては調べられたということが明るみに出ないような、そういうふうな人権の保護ということについてもあなた方責任を持たなければ、こういうふうな公式の国会の場でもっていろいろ質問されると、それは捜査中でありましてただいま答弁はできません何がし。それでは法務省としての役を果たしていない。だから、それをやるならば、検察庁にも警察庁にも、取り調べに対してもその辺が明るみに出ないように、極秘のうちに扱えということをきちんと言明していただかないと不公平だと思うんです。
 そのことだけ私は要望して、御答弁がいただければお聞きいたしますし、御無理があれが無理にとは言いませんけれども、それだけ申し上げて、終わります。
#217
○政府委員(岡村泰孝君) ただいまの最初の、酒に酔っぱらって心神耗弱になった場合、これは法律上減刑事由に当たりますので、罪が軽くなるということにはなるわけでございます。
 それから第二点でございますが、検察といたしましては、捜査中の段階におきましてだれを調べたとか、だれがどういうことをしゃべったとかいうことは公表しないようにいたしておるところでございます。それはやはり、そういったことを公表することによりまして関係人等が傷つけられることのないように十分な配慮をいたしているところでございます。
 しかしながら、一方におきまして報道の自由と申しますか取材活動の自由と申しますか、そういったものもあるわけでございまして、検察がまあ本当に陰でこそこそ調べるような調べもできないわけでございまして、何となく目についていくような面もあるわけでございます。
 ただ、検察といたしましては、あくまで捜査中の段階は秘密を守って関係人等にも迷惑をかけないように最善の努力をいたしているところであると承知しているところでございます。
#218
○柳澤錬造君 了承しない、そんな答弁では。
 終わります。
    ―――――――――――――
#219
○委員長(太田淳夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として石井道子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#220
○西川潔君 どうぞよろしくお願いいたします。
 もうほとんどの先生方にお聞きしていただきましたので、最後は本当に質問が難しいなと痛切に感じております。これからもまた勉強していろいろと質問さしていただきたいんですが、またきょうは大阪弁で何でやろと思うことを素人考えですが、お伺いしたいと思います。
 まず、刑法の百五十七条の改正についてということですが、「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」とは、土地の登記簿とか建物の登記簿がこれに該当すると思われますけれども、具体的にはこのほかに該当するのはどんなものがあるんでしょうか、ひとつお願いします。
#221
○説明員(米澤慶治君) 例えばと言われますので一例だけ挙げさせてもらいますと、住民基本台帳がそうでございます。
#222
○西川潔君 住民基本台帳に基づく住民票の原本という……。
 道路運送車両法に規定するコンピューターによる自動車の登録ファイルというのがあるんですけれども、これは僕も何でやろと思うんですけれども、刑法に言う公正証書の原本であると言われているんです。軽自動車の課税台帳とか電話の加入申し込みの原本などは公正証書の原本ではないという、僕らにしたら似通ったような法律と思うんですけれども、これはどういうところに違いがあるんでしょうか。
#223
○説明員(米澤慶治君) それは、今委員がおっしゃいました課税台帳でございますが、これは税金を課するために当該税務署なり何なりがつくっております台帳でございます。
 他方、公正証書と申しますのは、公証人が例えば公正証書をつくるというのも一つございますけれども、役所がある一定の権利関係を公証するといいますか、外に対して証明するというような台帳関係、それが公正証書だと考えられておるわけでございます。公に証明すると。税金の場合は、課税するための基本、計算する土台にしておるということで、別に証明するためにあるわけじゃないということでございます。
#224
○西川潔君 次に、プライバシーのことでお伺いしたいんです。
 本当に、コンピューター時代ですばらしい時代にはなったんですけれども、ここで今回の改正案はプライバシーの保護というのをどういうふうに配慮されているのか僕ら物すごく不安に思うんです。家に帰っても、うちは年寄りが三人もおるんですが、もうみんな八十近いんですけれども、なかなかうまいこと説明できぬもので、お願いします、
#225
○説明員(米澤慶治君) プライバシーの問題につきましては、コンピューターが出てまいりましたためによりプライバシーの侵害される可能性が大になったということは言い得るかもしれませんけれども、プライバシーにかかわる事項がすべて電子計算機の中に情報としてインプットされているということではございませんで、プライバシー一般を考えなければならない。要するに、電子計算機の中に組み込まれる情報にもございましょうし、電子計算機と無関係に存在するプライバシーというのがあります。
 そこで、そのプライバシー問題につきましては、私の知る限りでは総務庁を中心といたしましていろいろ今検討が行われております。諸外国ではプライバシーを保護するための特別の法律を持っている国ございます、それは刑罰とは関係ございませんけれども。そういった関係上、総務庁を中心に関係省庁集まりまして、どう対応をなすべきか、国としてどうすべきか、議論がなされておるところでございます。
#226
○西川潔君 日本ではこういうところが難しい、ここが難問やというようなところはあるんでしょうか。
#227
○説明員(米澤慶治君) 一言でプライバシーと申しましてもなかなか幅がございまして、例えば一般私人、例えばいろんな企業が得意先台帳としていろいろな資料を集めておるとか、民間企業が集めておるプライバシーにかかる資料もございますし、あるいは国または地方公共団体が、今の課税台帳もそうかもしれませんけれども、いろんな意味合いで個人のいろんなデータを集めている場合もございます、いわゆる公的な資料とか。そういった面がございまして、国としてそれらすべてのプライバシーについてどういうかかわりを持つべきか、どういうふうに規制すべきか、あるいはどういうふうにして保護すべきかという点が非常に難しいのではなかろうか。自由主義経済の中にあって民間企業の持ちますプライバシーにかかる情報をどう見るかという難しい問題があろうかと思います。
 私は刑法等の専門家ですので、それは完全に自分の所管外ではございますが、御質問でございますので、私が日ごろから見聞きしていることを申し上げた次第です。
#228
○西川潔君 お年寄りの方々がいろいろ情報収集されまして、住所とか年齢とかそれと財産、こういうのが全部コンピューターに収集されて蓄積されて、これがまた豊田商事とか抵当証券とかという悪徳業者と言われるような人たちに売り渡されたりして再び悲劇が起こり得るかもわからぬということは僕はあると思うんです。ですから、販売そのものを取り押さえるということも大変大切なことなんでしょうけれども、その前にこういうようなプライバシー、その根本をまず保護してもらうというようなことを、本当に毎日生活しておりまして不安に思うんですけれども、今後そういうことではどういうふうに考えていらっしゃるかというのを、法務大臣に最後にお伺いしたいと思います。
#229
○説明員(米澤慶治君) お差し支えなければ私から。
 私ども法務省も、先ほど来お話のありましたように人権局を持っておりますし、そうしたプライバシー問題に当然無関心ではございませんで、先ほど申し上げましたような総務庁を中心とする検討をしております会議に関係者が出まして、私らなりに御意見を申し上げておるところでございますので、遅かれ早かれ総務庁の方で何らかの御結論をお出しになるように自分たちは期待しておるところでございます。
#230
○西川潔君 どうもありがとうございました。
 きょうは、これで終わらしていただきます。
#231
○委員長(太田淳夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#232
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより本案に対する討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 刑法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#233
○委員長(太田淳夫君) 挙手全員と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#234
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#235
○委員長(太田淳夫君) これより請願の審査を行います。
 第九八号夫婦別氏の選択を可能にする民法等の改正に関する請願外百件を議題といたします。
 今国会中本委員会に付託されております請願は、お手元に配付の付託請願一覧表のとおりでございます。
 これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第三六九八号法務局、更生保護官署、入国管理官署の大幅増員に関する請願外五十三件は採択すべきものにして内閣に送付するを要するものとし、第九八号夫婦別氏の選択を可能にする民法等の改正に関する請願外四十六件は保留とすることに意見が一致いたしました。
 以上のとおり決定することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#236
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#237
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#238
○委員長(太田淳夫君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存
じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#239
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#240
○委員長(太田淳夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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