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#1
第108回国会 本会議 第4号
昭和六十二年二月三日(火曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第五号
  昭和六十二年二月三日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(藤田正明君) これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 広中和歌子君から海外旅行のため十四日間の請暇の申し出がございました。
 これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(藤田正明君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可するしとに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(藤田正明君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 内閣総理大臣から発言を求められております。発言を許します。中曽根内閣総理大臣。
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(中曽根康弘君) 私が一月二十六日の施政方針演説において述べました「間接税制度の改革」は売上税の創設を含めたものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(藤田正明君) 国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。安永英雄君。
   〔安永英雄君登壇、拍手〕
#8
○安永英雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、さきに行われました中曽根総理の施政方針に対し、質問をいたします。
 中曽根総理は、政府を担当して以来五カ年目に入り、十月までの任期を迎えようとしています。総理としていわば最後の国会に臨むに当たり、私は、中曽根内閣四年間の総決算を行うものであります。その総決算を一口で言えば、戦後四十年間かつて見ざる独裁強権政治であり、今や国民は、上辺の繁栄に疑念を抱き、政治への不信と未来への不安を強くする世紀末状況を迎えていると指摘すべきであります。
 まず、その政治姿勢であります。私は、これを次の三点において特徴的に見るのであります。
 第一に、内にあっては、日本憲法下、議会主義になじまぬ大統領的首相と称する直下型政治手法の乱用、第二に、外にあっては、ロン・ヤス関係を過度に強調する独善密室型の対米一辺倒外交、そして第三に、ついに噴出した経済失政を軸とする政策破綻を大衆の犠牲負担の加重によって切り抜けようとする強行姿勢であります。
 これは、一見、すべてのタブーへの挑戦として粉飾されつつ、実は戦後政治の総決算として民主主義に逆行し、戦前への回帰を思わせる復古主義、国家主義を目指す方向へと集約されているのであります。最重要課題とする行財政改革、教育改革、税制改革も、臨時行政改革推進委員会、臨時教育審議会、国鉄再建監理委員会等の総理の個人的ブレーン機関を重視する手法によって、まことに恣意的に独善的に戦後四十年の大転換がなされようとしているのであります。
 総理は、新内閣発足早々の訪米で、「日米運命共同体」、「日本列島不沈空母化」等の発言を連発し、ソ連に対する日米軍事同盟路線を鮮明に描き出した姿勢は、内にあっては、建国記念日式典への参加、靖国神社参拝となり、その総理の政治姿勢が一連の教科書問題、果ては藤尾発言を生み出したものであります。
 また、一貫性を欠いた経済政策は財政再建を全く不可能なものとし、大型間接税の導入による大増税は今や自明のことであり、福祉後退、軍事費優先のいびつな日本の姿は、すべて総理の政治姿勢によるものと断じなければなりません。この政権晩節に当たり、総理はこれまでの独善強行の姿勢を改め、多数におごらず、民主主義の本道に返るべきであります。四年間を謙虚に振り返り、反省と決意をお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、この機会にとりわけ憲法についての考えをただしておきます。
 改憲問題をめぐって、総理は、「この四十年の憲法政治の実績を検討し、よき成果は伸長させ、あしきものは是正する」と言い、「明治憲法のように不磨の大典と思うのは旧思想だ」とも言っているのであります。いずれも改憲志向を明確にしておられるのであります。世界希有の恒久平和を願う現憲法の精神を堅持し擁護する確固なる総理としての信念なくして、二十一世紀へ向けての外交、内政の実は上がらぬのであります。この国の過去四十年間の平和と繁栄は憲法を抜きにしては考えられません。総理の憲法に対する率直な見解をお示しいただきたいのであります。
 次に、外交姿勢の矛盾についてお伺いします。
 一九八七年が「国際化の年」と言われるとき、総理の国際化姿勢が極めて不安定であります。あなたはインターナショナリストとナショナリストの二つを混然と表向き同居させた政治家であります。真の国際国家を実現するそのための緊急課題として、対外経済摩擦の克服を訴え国際国家日本の建設を提唱するかと思えば、一方で国家意識の醸成をあなたは強調するのであります。この二面性が「知的水準」発言となり、総理が掲げる国際協調主義が言葉だけのものとの不信を抱かせるものであります。このような姿勢がアメリカだけでなく、アジア近隣諸国に大きな、そして新たな不信を濃くさせているのであります。今さら地球村の住民でもありますまい。私たちは、一面では日本経済の空洞化の問題と絡んで今後の日本の生きる道筋として国際化のあり方に大きい関心を払わなければなりません。この際、偏狭なナショナリズムは極めて有害と考えます。
 総理が昨年、中韓両国に対して払われたおわびの中身は、単に過去の戦争責任の重いツケというものではありません。真に今後の日本の新しい国際化に向けての相互理解と友好を深めるものであるべきです。私は、総理の相手の国民感情を尊重するという国際協調主義と、中曽根政権そのものからにじみ出る国家主義の色彩が、今後の矛盾となることを憂えるものです。これは我が国の国内にある少数民族への問題意識でもあります。日本の国際化と民族問題について、総理の基本の外交姿勢を伺いたいと存じます。
 総理の政治姿勢をただすに当たり、最後に強く指摘しなければならないのは、いわゆる大型間接税についての言行不一致であります。これはまさに国民に対する政治モラルそのものの問題であります。
 総理は、昨年七月の衆参同時選挙に際し、選挙公約として、「国民や自民党員が反対する大型間接税と称するものは導入しない」、「政府税調が答申してもやらない」と言明されたのであります。また、自民党の候補者のほとんど全員が同趣旨を約束され、それによって三百余議席の多数を得たのであります。その舌の根も乾かぬうちに今回示された税制改革案は、売上税の新設と少額貯蓄非課税制度の廃止であり、その内容を見る限り、いかに詭弁を弄しても、また施政方針で売上税に言及せず糊塗しようとも、紛れもない大型間接税であります。
 大型間接税を売上税と名称を変え非課税を設けるなど、大型消しの工夫をいかにしようとも、約三兆円規模の金額であり、これを犬型と言わないで何をもって大型と言えるでありましょうか。明らかに公約違反であります。私は、あえてここで、税金という国民と政治の最大課題について、総理のうそのない言明をはっきり伺いたいのであります。それというのも、国民は総理の大型間接税の導入についてうそをついたと思っているからであります。自民党内でもその声があります。総理は、一億円の免税点を設け小魚までかかるような投網にはしなかったから問題はないと言うのでしょうが、この際、選挙公約がうそでないという論拠を総理からはっきり伺いたいのであります。
 第二に、総理は増減税同額を強調されますが、これは明らかに増税案であります。総理、そうでないと言えますか。
 所得税減税の財源を売上税とマル優廃止に求めるというのでありますが、売上税は消費税であり、税負担は国民全体にかかり、大多数の国民が減税分を上回る負担となり、低所得層ほど逆進的増税になるのであります。今回の税制改革の大きなねらいは、中堅給与所得者の負担を軽減することとされていましたが、減税案そのものについて見ても、他に比べ優遇されているとは言えず、マル優廃止と売上税を加味すれば、低所得者はもちろん約八百万円までの所得者に対し増税になるのであります。
 また、事業者も非課税業者は税額控除票を発行できなくなるため、納税事業者の道を選択する人がふえ、納税事業者が拡大することは目に見えています。また、八七%の事業は非課税になると総理は強調されますが、税収は九一・三%も確保できるではありませんか。一億国民がまなじりを決して反対する姿をあなたはどう受け取りますか。また、資産に対する課税強化や総合課税の強化等、不公平是正がなされないまま累進構造の緩和がなされたため、高額であればあるほど有利になり、これでは不公平がますます拡大するばかりであります。また、法人減税も大企業に有利な内容になっており、不況に苦しむ中小企業に対する配慮は全くありません。売上税は明らかに増税であります。
 総理、あなたは本気で減税を考えているのか、否、軍拡への増税こそ意中にあると思われますが、どうですか、お伺いをいたします。
 第三に、売上税はあらゆる段階の物やサービスの販売に課税され、巨額の税収が上げられるのであります。大蔵省では平年度で五兆八千億の税収になることを明らかにいたしております。税率を一%引き上げると一兆一千六百億円の増収が見込めるわけであります。金の卵をねらっているわけであります。売上税は本来、税率を引き上げることを含みとするものであります。将来、税率の引き上げはしないと言明できますか。うそのない総理の答弁を求めます。
 第四に、公約を破り強行するマル優廃止は預貯金の多い金持ちにとっては利率三五%から二〇%への軽減になり、多くの国民にとっては二〇%の課税であります。庶民のとらの子をむしり取られる苦痛が総理にはわかりますか。マル優廃止を撤回すべきであると思いますが、総理の考えを伺いたい。
 今回の税制は、子供の教育や老後の生活のための庶民のささやかな計画をたたきつぶすのであります。弱い者いじめの改悪であります。我々は国民の皆さんとともに重大な決意を込めて速やかな撤回を要求します。
 次に、経済問題についてであります。
 一九八六年度の国民一人当たりのGNPでは、アメリカを抜いて世界一になる見通しであります。今年中には対外純資産二千億ドル、世界最大の債権国になるのであります。貿易収支の六十一年黒字は八百六十億ドル、史上最高を記録するのであります。このような世界一の生産性を誇る生産国、金持ち国、これにふさわしい国民生活水準が世界に誇るべきものになっているかといえば、まさにほど遠いのであります。むしろ、急激な円高で輸出関連の中小地場産業が衰退して地域経済は疲弊し、構造調整下にある石炭、非鉄金属を初め鉄鋼、造船、海運、自動車、電機など基幹産業でも輸出減退と生産停滞を生み、雇用情勢も深刻化しつつあるのであります。
 円高と原油価格の値下がりによる差益にしても、十四兆円に達するにもかかわらず、還元はわずか七兆円程度で、国民生活に一向に返ってこないのであります。他面では、経済低迷と低金利による過剰資金が投機化し、国民が総財テク化するという極めていびつな状態を現出しつつあるのであります。金があり余っているのに不況という不思議な状況の中で国民生活を苦しめているのであります。国民の生活を豊かにするためには金は使われていないのであります。政府の経済政策の破綻であります。総理はこの経済失敗をどのように認識し、現状克服のためどのようなお考えか、所見をお聞かせいただきたい。
 なお、円高差益について経済企画庁長官並びに通産大臣にお伺いします。
 差益還元は、電力、ガス、石油製品を中心に行われているが、消費財や食品等、他の分野でも積極的に取り組むべきだと思いますが、いかがですか。あわせて差益還元の対策と現状はどうか、説明を願いたい。
 次に、財政についてであります。
 中曽根内閣は、昭和六十五年度に赤字国債依存から脱却するという虚構の財政再建策を優先させ、臨調・行革路線のもとで五年連続のマイナスシーリングを強行し、行財政の縮小均衡に固執しているのであります。六十二年度の国債残高は実に百五十一兆円の巨額に上り、これでもなお六十五年度赤字国債脱却の旗はおろさないという無責任さは許されません。この政府方針が内需拡大をおくらせ、円高不況を加速させている要因であるのであります。このまま移行すれば、輸出主導型から内需拡大への構想転換は水泡に帰することは必至であり、高失業と長期的不況に突入することもまた必至であります。その結果、対外貿易摩擦が一層深刻化することは火を見るよりも明らかであります。
 私は、従来型の発想を根本的に改める時期に来ていると存じます。日本経済の新たなリーディングセクターの育成、投資等構造的転換を目指し、中期的に展望し、本年度が出発点であるとの認識のもとに積極型予算を組み、財政出動を基本に福祉充実、生活関連の社会資本の投資と抜本的な雇用対策、自治体財政の確立等を初めとする内需拡大を優先させた積極拡大型の予算編成こそ急がなければならない時期であります。総理並びに大蔵大臣の御意見を承ります。
 さらに、今回の円高高進は、政府の提出した予算案の前提から大きく乖離するものであり、円高デフレ回避のための予算修正案を当然必要とすると考えますが、いかがですか。あくまで修正に応じないと言い張るのであれば、今日の円高問題にいかなる効果的な対応策を打ち出そうと考えているのか、総理並びに大蔵大臣の御意見を伺います。
 次に、こうして今日かつてない深刻な状況に立ち至った雇用問題について労働大臣に伺います。
 円高不況、産業構造の転換、企業の海外進出など産業空洞化が進む中で、先月の完全失業者は百六十万一人に及び、雇用情勢はますます深刻化しているのであります。政府は総合的な雇用対策が必要であります。新たな中期的雇用対策を確立し、これに伴う経費の確保こそ緊急の課題でありますが、その用意がありますか。
 特に、産業構造の調整に当たって、深刻な産業や地域の実情を踏まえ、構造対策についての拡充整備を行うとともに、労使協議義務の明確化など雇用確保を優先させるべきだと思いますが、どうですか。また、特定不況業種や中小企業に対する雇用の創出と地域振興を図るため、第三セクターの設立等、自治体との協力により政府は積極的に出資助成の援助措置が必要と存じますが、労働大臣の所見と施策の実情をお聞かせいただきたい。
 次に、外交問題についてお伺いします。
 日本外交は今重要な転機を迎えています。このときに当たり、日本外交がバランスをもって重視すべきは対ソ外交であります。
 七十三歳の鳩山一郎首相が政治生命をかけてモスクワを訪問し、日ソ共同宣言をまとめて国交回復を実現してから三十年目に当たります。総理はソ連外交について積極的な意欲を示されていると聞き及んでおりますが、総現在任中のソ連外交の締めくくりは、当面ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長の来日の機会であろうかと思います。
 来日は四月以降ということでありますが、それが確定しない理由として、仄聞するところ、日ソ首脳会談に向けた準備の不足や、訪日をめぐる日本側の雰囲気が好ましくないとしています。日本が、経済面での協力は北方領土問題解決が先行する政経不可分の原則を貫く、そういった会談の方針を早々に掲げる態度を表明すれば、ソ連もまた政経不可分の原則を行使する構えた態度がうかがえるのであります。書記長訪日の目標は、相互的立場に立って、政治、経済すべての面で今後の日ソ関係発展のために真っすぐなコースをつくることだと言っているのであります。
 現在、日ソ間には領土問題を初め経済、文化、科学技術、漁業等多くの懸案があります。どれ一つとってみても、両国間の対話が進み、友好的関係が実現しなければ解決が難しいものばかりであります。
 総理は、中国や、最近、東欧を訪問の際、北方領土問題の前進が日ソ関係にとって不可分と強調して回られましたが、政経不可分を前面に出すべきではありません。我々は平和条約を締結することにより、隣人であるソ連との間に真の相互理解に基づく安定的関係を築かなければなりません。そのためには粘り強く両国の関係を打開する努力が必要であります。
 我が党は、ソ連の脅威をことさらに強調することなく、また、いたずらに我が国の軍事増強と軍事同盟強化の道を進むことなく、その関係改善に努力してきたのであります。総理の対ソ外交についての考えをお聞きしたいのであります。
 この際、あわせて、中国外交について、胡耀邦総書記辞任後の対中政策を明らかに示してもらいたいのであります。
 次に、防衛問題について伺います。
 防衛費はGNPの一%以下とする国の方針が中曽根政権に至って撤廃されるという事態に立ち至っておるのであります。戦後の防衛政策の重大な変更であり、大きな転換点と言わなければなりません。
 一%枠を守ることは既に十年以上にわたって遵守され、国民の間に定着しているし、諸外国に対して国際的公約の役割を果たしてきたものであります。昨年七月の衆参同日選挙では、政府・自民党は一%枠撤廃は党の選挙公約に掲げておらず、総理は「一%は守りたい」と言い続けてきたのであります。予算編成のどさくさに紛れるかのように、抜き打ち的になぜ今一%枠は撤廃されなければならないのか。その理由をまず篤とお聞きしたいのであります。
 昨年十二月にアメリカのワインバーガー国防長官は、一%を超えたことについて、「中曽根総理の国防強化の並々ならぬ努力のあらわれであり、我々は非常な喜びをもって歓迎する」と異例な表現で最大限の賛辞を述べているのであります。また、アメリカは中曽根総理が公式に受け入れた義務を認識したものであるとの評価をし、これからますます防衛面での一層の努力を期待しており、一%枠突破は日米協力が新段階に入ったことを明らかにしているのであります。
 これらのアメリカの一連の一%枠問題についての動向を見るとき、今回の一%枠撤廃決定は対米配慮そのものであり、今日まで中曽根総理のとってきた対米武器技術の供与を初め日米防衛研究、SDI参加、在韓米軍との日米共同統合実動演習、シーレーン防衛の日米共同研究等を見れば明白であります。まさに米国の戦略機構に埋没し、米軍の言うままに軍備を整える作為にほかなりません。
 政府は、防衛関係費について白々しく三木内閣の閣議決定の精神を尊重すると言い、総額明示方式という歯どめにならない歯どめを発表しているが、三木内閣の閣議決定を安易に破り、今さら新しい歯どめと言っても、国民はだれ一人として信用はしないのであります。ましてや、中国を初めアジア近隣諸国が強い懸念を表明し、警戒を既に強めているのであります。
 日米協議でも明らかなように、一%枠という定量的規制の撤廃は、戦略的能力の強化という形で定性的規制まで押し流すのであります。一%に軍事的合理性はないと言うけれども、ほうっておけばふえ続ける軍事費の性格を考えたとき、軍事的合理性だけで防衛費を決められません。歯どめは政治的、国際的なもので、一%枠は重みがあるのであります。中国のケ小平氏も「突破という文字がやはり問題だ」という強い懸念もこのことを示していると考えます。
 集団的自衛権の否認や専守防衛という枠まで超える引き金になる一%突破は断じて許されません。速やかに撤回し、平和憲法に立脚した平和国家の理念を明快に世界に示すべきだと考えますが、総理の決意をお伺いいたします。
 ここでもう一点看過できないのは、SDIの研究参加についてであります。
 昨年九月、SDIの研究に参加する決定が政府でなされました。宇宙の開発を平和目的に限るとした昭和四十四年五月の国会決議をじゅうりんすることは明瞭であるにもかかわらず、政府は、国会決議は国内のことのみと述べるありさまであります。我々は全く容認することはできません。
 臨時国会の審議の中で、政府は、すべてこれからの研究であると逃げる一方であります。さらに、我が党の追及に対して、核爆発をSDIのエネルギー源として使う場合、政府は、間接的利用であり、SDIが非核兵器系という一方的判断を示し、さらに追及されると、研究開発の過程でSDIが核兵器であることが明確になった場合、同研究への参加を見送るというのであります。まことに確信のない論拠による政府の独断で研究参加が決められ、目下政府間取り決めについて折衝が進められていることは、我が国が既にアメリカ核戦略体系に組み入れられていることを示しています。あえて国会決議を無視し参加を急ぐ理由はどこにあるのか承りたい。
 また、SDIは我が国を含めた西側諸国全体の防衛システムとして共同で研究し、開発し、配備する、このことは憲法九条の禁止しておる集団自衛権の行使であることは明白であり、断じて許すことはできません。直ちに参加を中止すべきであると存じますが、総理の明快な答弁をお願いします。
 次に、教育改革について伺います。
 臨教審の設置が提案された際、我が党はその危険性と問題点を指摘して強く反対したところであります。その予想どおり、否、予想を超えて、その失敗が広く危惧されるに至っております。臨教審発足当初の国民の関心も今日ではすっかり薄れ、第一次、第二次の答申や、その後の審議状況は教育関係者や国民の期待を大きく裏切るものであり、もはや臨教審に期待できないと感ずるに至っているのであります。このまま推移すると、我が国の教育の一層の深刻化をもたらすことが心配されるところであります。
 そこで、ます臨教審の教育改革案が本当に国民の支持を得て成功すると今日でも考えているのか、また、それが失敗に終わった場合どう責任をとるつもりか、総理の率直な気持ちを伺いたい。
 次に、今後の教育改革を考えるために、今日までの失敗の原因を指摘してみたいと思います。
 まず第一は、今回の教育改革構想が教育の本質や論理とその改革の難しさについての認識に欠け、教育改革を目前の政治目的に利用しようとする不純な動機から出発したことであります。
 第二には、当然に危惧されたこととはいえ、委員の選任が適切を欠いたことであります。教育改革は、何よりも子供の人権を基本として考えなければなりません。現在極めて厳しい状況に追い込まれている子供たちを真に理解する立場にある者も、さらに教育を専門に研究し高い教育的識見を持つ者も委員に加えられていないのであります。これは諸外国に例を見ない異常なことと言わなければなりません。
 第三には、臨教審そのものが当面の政治目的に利用しようとする圧力に屈し、余りにも拙速に対処したことであります。したがって、底の浅いありきたりの検討に終わっておるのであります。それは、第一次答申の目玉であった学歴社会の是正が何らの効果を発揮できないことにもあらわれているのであります。
 第四には、総理直轄の審議会こそが取り組むべきであり、また縦割り行政の弊を正すため、国民から切実に求められている幼保一元化や障害児教育の充実などについては全く熱意は見られないのであります。また、教育関係者の切実な願いである大規模校の適正化、四十人学級の早期実現など教育条件の整備についても熱意は見られません。
 もともと教育は困難な仕事である上に、今日の社会状況の中で一人一人の子供に行き届いた教育を保障するためには教育諸条件の整備がいかに重要であるかを明らかにするとともにその実現策を示し、そのことによって現場教師を激励する姿勢こそ臨教審に求められていたのであります。
 そこで、以上指摘した諸点に対する見解と、今後少しでもこのような問題点を是正する意思があるか伺いたい。
 最後に、石炭政策について通産大臣にお伺いしたい。
 戦中戦後の日本経済の中核的役割を果たした石炭産業が、昨年十一月第八次石炭鉱業審議会答申を受けて以来、政府は国内炭をつぶす方向を明確にしました。今後、山の閉山に伴う離職者は一万人を超えると予想され、地元商店街など間接雇用を含めると大量の失業者が出るのであります。閉山は地域経済の崩壊につながるのであります。あえてこのような予見される状態を迎えて、石炭の位置づけの基本を安全保障とする見地から、第七次石炭政策として生産維持のための政策的支援を今日なぜ急に転換するのか、その真意を伺いたいのであります。
 次に、端的に伺います。
 第一に、残る炭鉱が将来的に操業を続けるよう歯どめの策を明示してもらいたい。第二に、政府がとるべき資金的、財政的援助を具体的に示してもらいたい。第三に、需給を一元的に調整する機構についてお示し願います。第四に、賃金、雇用について明示してもらいたい。
 次に、産炭地振興の柱である炭鉱離職者臨時措置法並びに石炭鉱業合理化臨時措置法、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計法について最後に伺います。
 昭和三十年、エネルギー政策の転換により、九州筑豊地域の石炭産業は一挙に崩壊し、その結果、残されたつめ跡は想像をはるかに超えたもので、今なお残る鉱害や多くの失業者の滞留など、解決し切れない問題を依然として抱え、しかも各自治体は、その対応に要する経費の増大により、その財政運営に苦慮しているところであります。
 このときに当たり、三法が期限切れを迎えようとしているのであります。三法が失効すれば地域振興の道は閉ざされ、地域浮揚はおろか地盤沈下に拍車がかかることは明白であります。三法の延長は当然必要であると考えますが、今後の振興策を含め、労働大臣、通産大臣の考えを伺いたい。
 以上をもって質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(中曽根康弘君) 安永議員にお答えをいたします。
 まず、独善強行を改め、民主主義の本道に返るべきであるという御質問でございますが、私はこの議場でも申し上げましたが、戦後の日本は平和と民主主義によりまして、日本の歴史でも偉大な時代をつくったと高く評価しておるわけでございます。そのためには、常に世論をくみ上げて、衆議を尽くして対話と協調を重視するということが大事であると考えております。そして、民主主義の政治機構の頂点にあるものは国会でございますから、国会で十分審議を尽くして、また、我々といたしましては、謙虚に野党の皆様方の御発言でも合理的なものには耳を傾けるべきであると考えております。
 ただ、政治でございますから、官僚的なものではなく、やはりその時代の必要に応じて個性に満ちた政治をするということが私は大事ではないかと思っておるわけであります。
 そういう意味におきまして、今後とも皆様方の御意見をよく考え、検討を加え、また、みずからも反省しつつ政治にいそしんでまいりたいと考えております。
 憲法に関する御質問がございましたが、憲法改正を私の内閣では政治日程に上せないと申し上げておるのは一貫しておる態度でございます。しかし、民主主義の長所は、前からここで申し上げますように、常に反省を行い、柔軟な対応力があるということが民主主義の長所であると申し上げました。憲法も含めて、諸制度というものは完璧なものではないのでありますから、タブー視することなく、常にこれを見直し、研究するということは発展のために大事ではないかと思うのであります。そして、一面においては、我々は長い間の伝統と文化を持っておる民族でございますから、その文化的伝統や個性を尊重しつつ、しかも独善的利己主義、あるいは独善主義による国家主義というものは排撃しなければならない、これは我々は肝に銘じなければならない、このように考えておる次第なのでございます。
 それから、国際社会における日本の姿勢でございますが、最近における日本の地位あるいは責任の増大にかんがみまして、世界に貢献する日本という方向に積極的に進んでいくべきであると考えます。
 その場合には、世界に存在する多様な生活信条あるいは異なる文化というものをよく認識し、理解し、積極的に相互協力を進め、新しい世界文明の創造にみんなで協力し合うという態度が必要ではないかと、このことも施政方針で申し上げたところであります。
 我が国の場合は、固有の民族的特徴、伝統というものと近代科学を補完結合させるという独自性を持っておりまして、これは維持発展さすべきであると考えております。
 次に、少数民族問題でございますが、私は、これらの関係者の生活や信条や文化を尊重して、これを擁護していくべきは当然であると考えます。また、生活や福祉につきましても、十分配慮すべきであると考えており、差別がごときは厳重に禁止しなければならないと考えております。
 それから、売上税の問題でございますが、いろいろ議論を呼んで恐縮に存じておりますけれども、私がこの国会におきまして約束いたしましたいわゆる大型間接税とは何であるかという定義は、公明党の矢野書記長、それから民社党の大内書記長の両先生に答弁したその答弁が定義になっておるわけであります。それは、いわゆる大型間接税というものは、多段階、包括的、網羅的、普遍的で、縦横十文字に投網で全部ひっくるめるような、そういうものはやらない、これが大型間接税の定義でございます。そういうものにかからないように今度は非常に注意をいたしまして、政府の税調におきましても、あるいは自民党の税調におきましても、そのために大幅な限定を持った税制に変えたわけでございます。
 今回の売上税につきましては、前に申し上げましたように、免税点が一億円でありまして、小売業、サービス業を中心にした全事業者の約九割が免税対象になる、それから食料品、医療、教育、住宅、一般の旅客輸送など国民生活に密着した重要な関連するものにつきましては非課税措置をとる、それで消費者物価指数の計算対象となる物品、サービスのうち、課税されるもののウエートは約三五%である、六五%は課税されない、そういうような結果になります。そのほかに、税率が約五%と極めて低い水準であること。こういうような観点からいたしまして、公約で導入しないと約束した大型間接税には該当しないと私は考えておるものなのであります。
 次に、今回の税制改革は増税ではないかという御質問でございますが、これは平年度におきまして約四兆五千億円の増減同額、いわゆるレベニューニュートラルという考えに立って行っておるのでございます。特に本年度におきましては、我々は四月一日からサラリーマンの給与源泉課税の減税を実行したいと思っておりまして、いわゆる売上税は来年の一月からかかります。また、いわゆる源泉利子課税というものも十月からということでありまして、ではその税金を何で補完するかと申し上げますと、これは例えばボーナスに対する特別留保金であるとか、あるいは土地課税であるとか、登録税の増強であるとか、そういう面でその分を補完する。言いかえれば、割合に今、金をもうけている株式とか土地というものに対して課税をしている、そういうような関係になるのであります。
 特に我々が考えましたことは、前から皆様方から御注文を受けておる中堅サラリーマンの減税を実行せよと、そういうような考えに立ちまして、例えば年収平均三百万の給与所得者、夫婦子供二人の場合、この場合には所得税と住民税を合わせた負担額は約三六・三%軽減されます。また、年収九百万の場合は二一・四%軽減されまして、おおむね二けた台の軽減になるわけであり、法人税につきましても、企業活力を増大するために税率の引き下げを行っておるところでございます。これらは世界的な税制改革の状況を見まして各国との並びというものを十分考えておるわけです。しかし、この場合でも、我が国の所得税の累進構造はまだ高いわけでありまして六五%になります。外国で六五%の最高税率をとっている国はございません。先進国には少なくともないのでございます。そういう意味におきましても、金持ち優遇ということは当たっておらない。
 あるいは非課税貯蓄制度というものも、実際にはお金持ちは限度いっぱいこれを適用しております。したがいまして、非常にこの恩典を受けている額は大きいわけであります。そういうような面から、それらの人々も一律に二〇%の源泉課税を受けるわけでございますから、出費は前よりもぐっと多くなると予想されております。これがいわゆる節税とかあるいは不正利用をやっている方々もなきにしもあらずでありまして、それらの方々が今度は一網打尽に二〇%がかけられてくるわけであります。そういう意味におきまして、これは不公平税制の是正である、このように我々は考えておるわけでございます。
 それから、売上税の税率の引き上げの問題でございますが、これは法律で五%と法定しておりまして、これを改正するためには国会の議決が必要であります。したがいまして、軽々に行われるものではございません。これはほかの税と同様でございます。
 しかし、外国の例を見ますと、売上税の税率を上げるとか自然増収がある、そういう場合には割合に所得税等の減税に用いられている場合が多いのであります。我が国におきましても、将来もし自然増収というものが多額に出てくるというような場合には、目的税的なものではなく、運用上、減税とかあるいは社会福祉の方に充当することが適当であると私は考えております。
 次に、今回の税制改革は弱い者いじめではないかという御質問でございますが、先ほど申し上げましたような理由によりまして、むしろ金持ちがこの税制によって余計影響を受ける、そう考えております。この利子課税にいたしましても、老人とか母子家庭とか身体障害者に対する利子非課税制度はそのまま存置する、そういう配慮も行ったのはそのためでございます。
 次に、円高不況対策でございますが、私は、現在の経済の状況から考えまして一番大事なものが三つあると思っています。一つは内需の振興です。もう一つは為替相場の適正な長期的安定であります。第三番目は雇用対策である、そう考えております。
 そういう意味におきまして、内需の問題等につきましては、今までも数次にわたって努力をし、また公定歩合も引き下げて三%という一番安い公定歩合にまで持っていったところでございます。
 また、六十二年度予算におきましても、一般公共事業費につきましては、これを五・二%増ということで昨年よりかなり上げてきておるわけでございます。そのほか地方財政との協力、あるいは住宅金融公庫融資の拡充等々も行いまして、できるだけ景気回復に資するために予算の早期成立をお願いいたしたいと考えておるところでございます。
 さらに、産業構造の転換の円滑化という問題も、今回我々は特に重点を入れまして、それにより地域経済の活性化、あるいはさらに失業対策、いわゆる三十万人雇用開発プログラムの実施等々によりまして、内需の問題と雇用の問題というものをあわせて努力してまいりたいと考えておるところであります。
 次に、予算編成と予算修正の問題でございますが、我が国の財政はなお一段と厳しい状況にありまして、六十五年度赤字公債依存体質脱却を延ばせという議論もございますけれども、子孫に過大な負担を残さないように現在の我々が汗を流すことはできるだけ流さなければならない。もしこれを安易に緩めるというと行政経費の肥大化を招く、子孫に対してまた大きな負担を残す、そういうような危険もなきにしもあらずであります。我々としては、もう根の限り努力をいたしまして、その方針を守ってまいりたいと考えておるところでございます。
 しかし、一面においては、福祉政策というような問題については、財源を重点的、効率的に使用しておるところでございます。
 円高対策につきましては、為替相場の安定については今後とも努力してまいりたいと思いますが、これは一国だけではできないことでありまして、各国との政策協調及び政策協調に基づく実行が必要であります。昨年の十月末、宮澤大蔵大臣がベーカーと会い、また本年一月二十一日にもあわせて為替市場の諸問題について協力を続けていく意向を再確認いたしました。長期的な、合理的な安定に向けて、今後とも各国と協力しつつ対話及び政策協調を推進してまいりたいと考えております。
 対ソ外交につきましては、日ソ間の最大の懸案である北方領土問題を四島返還実現により解決して平和条約を締結し、我が国の重要な隣国であるソ連との間に真の相互理解に基づく長期的な安定的関係を確立すること、これは一貫した方針で、今後もこれに従っていくつもりでおります。無原則な政経分離政策はとらない方針でおります。
 政府としては、今後とも今の原則に基づきまして、あらゆる機会を通じてソ連との間に対話を持続し、あるいは拡大し、できるだけ日ソ関係を打開して、善隣友好関係を確立するために粘り強く努力してまいるつもりでおります。
 次に、中国における政治情勢の問題でございますが、隣国中国との間には長期にわたる良好にして安定的な関係が維持発展されており、さらにこれを我々は推進してまいりたいと思います。
 先般の中国における政治情勢につきましては、経済政策、特に対外開放政策や近代化については不変であると、そういう方針が宣明されております。先般、日本に参りました田紀雲副総理と会談をいたしましたが、中国指導者は、日中関係を含む中国の内外政策は不変であると強調しておりました。
 政府といたしましても、先方の対日政策が変わらない限り、引き続き日中共同声明、日中平和友好条約及び日中関係四原則を踏まえまして、中国との間の友好協力関係の一層の増進に努力してまいりたいと考えております。
 防衛費の問題でございますが、政府は、前から一貫して大綱水準の達成に努力いたします、そういうことを申し上げ、かつ三木内閣の一%の目途はぜひ守りたいと、こう申し上げてきたところでございます。
 六十二年度予算の編成に当たりましては、円高とか石油価格の下落であるとか、そういういい条件も十分考え、また一面においては、中期防の中でおくれている部分の補完というものも考えたわけであります。
 結局、現在の状況を見ますと、自衛隊員の待遇の問題、訓練の充実度の問題、それからさらに円高に基づく労務費の問題、それから通信機能の充実強化の問題、こういうような問題からやむを得ず一%をやや上回る結果になったことは残念であります。
 しかし、この事態を踏まえまして、政府は閣議決定をもって、まず第一に今までの憲法のもとに非核三原則を守って、そして専守防衛あるいは文民統制を行って、外国に脅威を与えるような防衛力にはならない、節度ある防衛力を堅持する、その原則をまず引き続き確認をいたしまして、そして新しい歯どめといたしましては、中期防の約十八兆四千億円、つまり六十年度価格で固定したその枠をつくっておるわけでございます。この中に、言いかえれば閉じ込めるようなものであります。そして、じゃその計画が終わった次の六十六年以降はどうであるかといえば、今までどおり節度のある防衛力という原則は引き続いて行う、特に三木内閣の一%決定の精神をあくまで尊重していく、そういう方針を明定いたしたのでありまして、私は防衛に関する継続性というものは維持されている、このように考えておるのであります。
 一%の問題について、対米配慮があるのではないかという御指摘でございますが、あくまで我が国の防衛は憲法及び我が国の国策に基づいて自主的に決定しておるものであります。
 次に、SDIの問題でございますが、アメリカは軍備管理・軍縮交渉努力と並行しながら、非核による高度の防衛システムについて研究を行い、究極的には核兵器を廃絶しようという基本的理念のもとに、現在SDI研究を推進しております。それは我が国の平和国家としての立場と矛盾するものではありません。SDI研究計画への我が国の参加は、また一面において日米安全保障体制の効果的運用に資するものであり、加えて、我が国の関連技術水準の向上にも影響を及ぼす可能性もあります。かかる観点から同計画への参加を円滑なものとするよう、今所要の具体的措置につき米国政府と協議中でございます。
 宇宙の開発利用に関する国会決議につきましては、国会決議の有権的解釈は国会でお決めなさることであると考えますが、政府といたしましては、この研究計画への参加は国会決議に触れるものではないと解釈いたしておるものであります。
 集団的自衛権の問題でございますが、SDI研究計画への参加は実力の行使に当たるものではなく、憲法上禁じられている集団的自衛権の行使には当たりません。
 次に、教育改革の問題でございます。臨教審においては広く国民各層の御意見を承り、また委員の専門知識を動員いたしまして審議を進めております。
 現在、第三次答申に向けて今審議が進められておりますが、国民の理解と協力が得られるような答申が行われることを期待いたしております。
 教育の現状の問題でございますが、先般、京都で、私が東京サミットで提議いたしました各国の教育会議を行いました。約二十数カ国、四十余人、二国際機関から参加をいただきましたが、各国とも現代文明の急速な推移と、それから、これに対する教育の対応が極めて複雑で難しいということで苦悩しております。日本もその一つであると思います。その苦悩についてみんなで話し合いまして、皆さん非常にいい勉強になったと言って喜んでお帰りになったのでございますが、やはり初中教育、それから高等あるいは大学、あるいは成人教育、あるいは職業教育、そういう全分野についてみんな重大な問題を抱えているように思いました。特にヨーロッパにおきましては、割合に職業教育的観点が強いようであります。しかし、我が国におきましては、総合的な普遍的な教育体系を目指して今やっておるわけでございまして、臨教審のせっかくの御努力を期待しておるところでございます。
 幼児教育や障害児教育については、第三次答申に向けて今審議が進められております。
 それから、四十人学級等の問題でございますが、臨教審においては、多様な個性に応じて適切な教育が受けられるように、教育諸条件を整備することを重要な問題と認識いたしまして、昨年四月の第二次答申でも提言がございます。現在、この答申の実現に向けて鋭意努力しておるところでございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(宮澤喜一君) 現在の経済情勢の中で財政をもっと積極化すべきではないかという御指摘であったわけでございます。
 お話の中にもございましたが、六十二年度末の国債残高が百五十二兆円になるというような状況の中で、利払いが一般会計の二〇%を超えておるわけでございます。これはしかも年々増大してまいります。これから近い将来に向けまして、高齢化社会等々いろいろ新しい社会の需要を考えますと、財政がいかにもこれに対応する弾力性を欠いておりまして、そのことを実は心配いたしておりますがために、財政改革というものを一生懸命やろうといたしておるわけでございますが、とは申しましても、当面の経済情勢というものは、内外からの理由で内需の拡大を必要とするということもそのとおりでありまして、いわはそういう矛盾した二つの要請の中で最大限の努力をいたしました結果が御審議をお願いいたします来年度の予算であるというふうに考えておるわけでございます。
 先ほど総理も言われましたが、その第一は公共事業を五・二%経済の名目成長率よりも伸ばしておるということ、第二に住宅金融公庫の貸付枠を拡大する等の住宅需要への対策を講じておること、第三に三十万人雇用の開発等、また、その他産業構造の調整でございますとか、あるいは御指摘もございましたが、石炭対策であるとか造船対策であるとか、与えられました状況のもとで最善を尽くしておるというふうに考えておるわけでございますので、どうぞこの予算につきまして一日も早く御審議を賜りまして、成立、施行さしていただきたいということを念願いたしておるわけでございます。
 それから、為替の問題について御指摘がございましたが、昨年の十月の末に宮澤・ベーカーの共同声明をいたしまして、ほぼ二月間為替が落ちついておったわけでございますが、一月になりまして、ヨーロッパ情勢あるいはアメリカの国際収支等のことからいわば市場に乱れが生じました。この状況はかねて私とベーカー長官との間で協議を必要とする状況であると考えましたので、改めまして一月二十一日に会談をいたしました。その結果は新聞発表いたしましたとおりでございますが、これはいわば市場が不安定である、したがって、それに対して積極的な協力行動を必要とするという意味での合意であったわけでございます。
 今後とも、日米間はもとより、関係主要国の間で積極的にいわば政策協調を行う、また必要があれば、為替相場の安定のために話し合っていくということが一番大切なこれからの政策であろうというふうに考えておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣近藤鉄雄君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(近藤鉄雄君) 一昨年のいわゆるG5プラザ合意以来、円高そして原油価格が低下いたしましたので、この二つの現象から輸入支払い額が節約になったわけでございますが、これを当庁で計算をいたしますと、先生も御指摘ございましたように、十四兆円ばかりになるわけでございます。
 こうした円高差益等を還元いたしますために、昨年来、例えば電力・ガス料金の再引き下げ、これは二兆円近くなる計算でございますが、同時に、先生も御指摘ございましたが、食料品につきましては、輸入牛肉の小売目安価格を約二〇%下げるようにいたしましたし、さらには小麦の政府売り渡し価格、これも平均五%下げております。その他、国内航空運賃や国際航空運賃、さらには国際通信料金等々を下げる努力をしておりますし、一方におきましては、輸入消費財価格動向等を調べまして、競争条件を整備することによって、こうした物の価格を低下するようにいろいろ指導している次第でございます。また、百貨店、スーパー等によって円高活用プラン、これを積極的に促進してまいっております。
 こうした諸施策を実行いたしました結果、六十一年度の物価上昇率は、昭和三十三年以来二十八年ぶりで一%を切るというような物価の安定をもたらしておりますし、こうした円高等のメリットの還元、消費財、投資財、輸出各分野で行われておりますのを当庁で計算いたしますと、還元率は四−六月期四一%、七−九月期五八%、そして十−十二月期は七七%、累積率で申しますと五四%還元した計算になっておりまして、総額約七兆五千五百億円と計算されておるわけでございます。
 こうしたこの円高等のメリットをさらに国民の皆さんに還元をすべく、政府といたしましても、為替レート、また原油価格等の推移に注意しつついろいろ努力をしてまいるつもりでございますが、特に市場原理の一層の活用を図ることによって、その競争条件を通じての価格の安定、低下、そして公共料金についてはコストの低下が速やかに反映されるように、さらに検討し見直しを進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣田村元君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(田村元君) まず、差益還元問題からお答えをいたします。
 電力、ガスでございますけれども、いろいろと意見がございました。四月からという意見が非常に強くございましたけれども、私ども、同じやるなら元旦からということで、ことし一月から年間約二兆円に上る電力、ガス等の暫定料金引き下げを初めとして差益還元に積極的に取り組んでおります。石油製品につきましても大幅な価格低下が見られます。
 それから輸入消費財につきましても、差益還元が早期かつ円滑に進むように、関係者に対する働きかけ、また消費者に対する価格情報の提供等の努力を行っております。
 具体的には、昨年八月に主要百貨店、スーパーの代表に対し、私から、インポートフェアの開催とか小売価格の引き下げ、開発輸入の推進等を内容とする第二次円高活用プランの策定を要請いたしました結果、各社とも積極的な取り組みを行っております。例えて申しますならば、インポートフェアは、昨年一年で実に二万三百カ所で行われたのであります。また、中小スーパー、商店街等に対しましても、輸入品フェアの開催要請等を行っております。さらに、主要輸入消費財等の価格動向について調査を行い、適宜結果を公表してきております。今後とも、これらに関しまして引き続き努力を行ってまいる所存でございます。
 次に、お尋ねの石炭でございます。
 第七次石炭政策以降のエネルギー需給の緩和、円高の進展を背景とした内外炭価格差の拡大、需要業界の動向等国内炭を取り巻く諸情勢の変化及び今後の見通しを踏まえますれば、国内炭のエネルギー政策上の役割は従来に比べまして変化してきております。このような変化を踏まえまして、昨年十一月、石炭鉱業審議会の答申が取りまとめられたところであります。
 この答申におきましては、地域経済、雇用への影響を緩和しながら生産を段階的に縮小し、最終的にはおおむね一千万トンの供給規模とすることが適当であると提言されております。
 このため、六十二年度からの第八次石炭政策におきましては、短期集中閉山を回避しながら円滑な生産体制の集約化を図っていくために、需要業界のそれこそ本当に文字どおり「ギリギリの協力」を仰ぎながら、政府としても適切な支援を行うこととしております。
 また、現在、我が国石炭鉱業につきましては、主要十炭鉱を中心に約二万二千人の労働者が従事しているところでもあります。雇用問題及び地域の問題にも十分配慮していく所存であります。
 具体的に申しますならば、一時的な需給ギャツプにより生ずる過剰貯炭に適切に対処するため、需給調整を行う機構として、過剰炭の購入、売り戻しを行う貯炭管理会社を設立いたしました。新エネルギー総合開発機構を通じて、同社に出資及び無利子融資を実施することになっております。円滑な生産規模縮小を促進するため、一定以上の縮小を行う炭鉱に対し、石炭鉱山規模縮小交付金を交付いたします。閉山交付金制度のうち、退職金限度額を実態を考慮して四百万円から六百万円に引き上げます。このような措置を講じてまいりたいと思っております。
 これらの施策を円滑に実施するために、六十二年度石炭勘定におきまして所要の予算を確保するとともに、石炭鉱業合理化臨時措置法、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計法、いわゆる石特会計法を含め四本の法律につき、期限の延長等所要の法改正を行ってまいる所存でございます。
 どうか一日も早くこの結論を出していただきますようにお願いを申し上げまして、答弁といたします。(拍手)
   〔国務大臣平井卓志君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(平井卓志君) まず、雇用問題からお答えをいたします。
 円高、産業構造の転換等に対応しまして、雇用の安定を確保するためには、内需を中心とした景気の持続的拡大を図りながら、関連諸施策との密接な連携のもとに総合的な雇用対策を積極的に推進する必要があると考えております。
 このために、六十二年度におきましては、三十万人雇用開発プログラムの実施、雇用開発を中心とする総合的な地域雇用対策の整備等、雇用対策の格段の強化を図ることといたしまして、総額二兆三千七百億円、これは前年度比一〇・三%増でございますが、雇用対策費を計上いたしておるところでございます。
 次に、産業構造の調整に当たりましては、深刻な雇用問題が生ずることのないように、雇用確保を優先に取り組むべきことが必要であると考えております。
 このために、雇用確保に向けた労使の自主的な努力と相まって、政府の各種雇用対策が関連諸施策との密接な連携のもとにその実効を上げるよう、機動的な施策の運用に努めているところでございます。これによりまして、関係労働者の雇用の確保のために万全を期すことといたしておるところであります。
 次に、地域振興の問題でございますが、地域における厳しい雇用失業情勢に対応するため、今国会に地域雇用開発等促進法案を提出することといたしております。その法案においては、第三セクターを初めとした地域の雇用開発を行う事業主に対する大幅な助成措置を創設するなど、各種の助成措置を拡充することとしておりまして、今後、地方自治体の協力も得ながら地域の雇用開発を積極的に推進してまいる所存でございます。
 先ほど通産大臣からお答えもございましたが、炭鉱離職者臨時措置法につきましては、本年三月三十一日までに廃止するものとされておりますが、今後とも炭鉱離職者の発生が予想される状況にかんがみまして、石炭鉱業の合理化に関する他の施策との関連も考慮し、法律の廃止期限を五年間延長するための改正法案を既に今国会に提出をいたしております。
 また、産炭地域における雇用機会の確保のために、関係省庁と十分連携を図るとともに、労働省といたしましても、産炭地域を含め、雇用機会の不足している地域における雇用開発を促進するための法案を今国会に提出することを予定しております。これに基づきまして、地域における雇用機会の確保に努めたいと考えております。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#14
○議長(藤田正明君) 井上吉夫君。
   〔井上吉夫君登壇、拍手〕
#15
○井上吉夫君 私は、自由民主党を代表して、当面する内外の重要課題につき、総理ほか関係閣僚に若干の質問をいたします。
 中曽根政権は既に五年目に入りました。この間、外にあっては世界の首脳外交を堂々と展開し、経済協力などを通じて世界の平和と繁栄に積極的な貢献を行ってきました。また、内にあっては三公社の民営移行を初め各般の行財政改革、社会保障や教育などの諸改革を着実に進め、今、二十一世紀を展望した税制改革などに真剣に取り組まれておりますが、どうか、我が国の明るい未来を開くために不退転の決意でこれら課題の克服に御尽力いただきたいと存じます。
 総理は、このたびの施政方針演説において、民主政治の改革と議会政治の新たな前進に挑戦する意欲を強調されました。行財政改革を初めとする諸改革が一歩一歩実現を見ている中で、より基本的かつ重要なことは政治そのものにあるとの思いを訴えられたものでありましょう。行政改革が叫ばれ始めてから今日まで、まず国会がみずから範を示すべきだとの根強い声に対し、謙虚に耳を傾けなければなりません。形式主義や漫然たる前例の踏襲がかえって政治をわかりにくくし、あるいは能率を損ねている点のあることを率直に認め、勇気ある自己改革に取り組む必要を痛感する一人であります。
 立法府と行政府相互間の適正な牽制と協力についても言及されましたが、現在、総理大臣として行政府の長であるあなたは、自由民主党の総裁でもあり、四十年にわたり立法府の一員としての経験を積んでこられました。その長い経験と真摯な政治への取り組みの中から、しかも、中曽根政治の総決算ともいうべき今期国会の冒頭に、あえて政治改革の必要を力説されたことは千金の重みをもって受けとめるべきものと思います。単なる演説として終わらせてはなりません。本院においては、既にその方針を決定した常会の一月召集問題とあわせ、総理の御見解を改めてお聞かせ願いたいと存じます。
 まず、国際国家日本の責務について伺います。
 我が国経済力の著しい伸長と国際社会における地位の向上に伴い、我が国の国際的責任や役割に対する世界の期待と関心はますます高まっております。それだけに、我が国は、狭い視野から目先の利益のみを追求するのではなく、相互依存の国際的観点に立って諸外国との調整を図り、世界の平和と繁栄に協力していかなければなりません。
 総理は、就任以来、二十一世紀への基礎づくりの一つとして「国際国家日本」の建設を提唱され、国際国家の中で我が国がその国力にふさわしい積極的貢献を行っていく必要性を強調されております。今後どのような分野に重点を置いて我が国の国際的責務と役割を果たしていくお考えか、御所見を承りたいのであります。
 次に、外交問題について伺います。
 新春早々、百年ぶりの寒波襲来の中、総理は日本の首相としては初めて、フィンランド、ドイツ民主共和国、ユーゴスラビア、ポーランドの四カ国を公式訪問されました。まことに御苦労さまでした。従来、この地は我が国の首相がなかなか訪問し得なかっただけに、今回の歴訪は、日本外交の幅を広げるという意味で太いに意義があったと思います。総理の訪問された四カ国は、それぞれ東西関係の中で重要な地位を占めており、またレイキャビク後の米ソ会談の不透明な時期だけに、総理はこれら諸国の最高首脳との会談を通じ、二国間関係の発展及び東西間の政治対話の促進の面からいかなる成果があったとお考えになるか、お伺いしたいと思います。
 昨年は、八年ぶりに日ソ外相間定期協議が行われ、また領土問題を含む平和条約交渉が再開、継続されるなど、最近の日ソ関係の推移は私も評価いたします。しかし、ソ連側は依然として北方領土問題に対する我が国の正当な主張を認めようとしないことは極めて遺憾であります。日ソ間の最大の懸案が依然として未解決であるという状況を踏まえ、政府は今後いかなる方針で対ソ外交に臨まれる所存か、改めて総理の決意をお聞きいたします。
 また、ゴルバチョフ書記長の来日問題について、昨年来、日ソ間の外交ルートで話し合いが行われていると承知しておりますが、その見通しについてあわせてお尋ねいたします。
 次に、安全保障問題、特に防衛費の新しい歯どめについて伺います。
 六十二年度予算において防衛費が対GNP比一・〇〇四%となりました。これは中期防衛力整備計画の第二年度目として、立ちおくれの目立つ練度の向上や隊員施設等の後方部門の回復を図るほか、在日米軍経費の日本側負担など必要最小限の経費を計上した結果、GNPの鈍化傾向もあって一%枠を超えましたが、これはまさしく既定計画の積み上げによる当然なる帰結であります。
 申すまでもなく、一%枠それ自体は軍事的合理性はないにしても、五十一年以降防衛力整備の当面のめどとして果たしてきた意義はそれなりに評価できると思います。今回、政府は、防衛費の新しい歯どめとして、我が国防衛の基本方針の堅持、中期防衛力整備計画による総額明示方式の採用、三年後の見直しの廃止、三木内閣の決定尊重を決めましたが、私は節度ある防衛費の見地からしても、この新しい決定は現実的対応として妥当なものと思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
しかし、国民サイドにおいては、防衛費が青天井になる懸念はないか、また、これまでのGNP一%というわかりやすい物差しに比べ、新しい歯どめは理解するのが難しいとの指摘がありますので、今回の決定に至る経緯及びこれらの意見について御説明いただき、さらに、中期計画終了後の六十六年度以降についてどう対処されるのか、あわせて御答弁願います。
 私は、一国の防衛と治安の確保は国の独立と平和の基本であり、何物にも優先する国政の重要課題であると思います。どうもこれまでの国会における防衛論議は、GNP一%枠が先にあって、これを超えるか超えないかということに余りにも論議が集中し過ぎ、我が国の置かれている軍事情勢をどのように把握し、西側の一員としての国際協調や責務をどう果たすかといった我が国防衛政策のあるべき姿に対する論議が不足していたのではないでしょうか。私は、国会において防衛問題の本質論を徹底的に議論することこそ国民の負託にこたえるゆえんだと信じます。そのことが、日本が軍事大国への道を歩まない最大の歯どめであり、シビリアンコントロールの堅持に通ずるものと考えます。総理の御所見を伺います。
 次に、経済問題についてお伺いします。
 まず第一にお尋ねしたいことは、当面の景気動向と今後の見通しであります。
 昨年の経済は、まさに円高不況で苦悩した年でありました。六十一年の経済成長率は、一−三月期では前年比三・一%、四−六月期及び七−九月期では二%台、さらに十−十二月期では一%台に落ち込んだと推定され、仮にこの趨勢が続くとすれば、昭和六十一年度の実質経済成長率は、政府が下方修正した三%の達成も困難と思われ、企業倒産の増加と雇用情勢の悪化が懸念されるのであります。政府の御見解を伺います。
 今、我が国経済にとって一番の問題は、急激な円高にあり、特に重大なことは為替レートの不安定にあると思います。昨年十一月以来、宮澤・ベーカー会談の合意により小康状態を保っていた為替レートは、本年に入ってさらに円が急騰し、一月十九日にはついに一時百四十円台の最高値を記録しました。早速、渡米された宮澤大蔵大臣の御努力により、昨年の合意が再確認され、一定の成果をおさめられたことを多とするものでありますが、これで安心していいものでありましょうか。合意の内容を含め、大蔵大臣の今後の見通しについての御見解を承りたいと存じます。
 私は、総理の言われる「国際国家日本」が調和ある対外関係を実現して、世界経済の活性化へ積極的に貢献していくためにも、国内における地域経済の活性化を図り、雇用の安定を促進するためにも、今実施しなければならない緊急かつ最重要な政策手段は思い切った内需振興策をとることだと思います。
 来年度予算では、苦しい財源の中で、公共事業量を前年度化五%増を確保しているほか、民間活力発揮のため、産業基盤整備基金の創設等きめ細かな対策を講じていることは評価できますが、私は、六十二年度経済を内需主導の三・五%の実質経済成長率を確実なものにするには、速やかな予算の成立を図ることであり、昨年を上回る公共事業予算の前倒しを実施することが必要であると思います。そして、景気の動向に応じては財政投融資の追加等、必要な財政措置をためらうべきではないと思います。いかがでありましょうか。
 特に、大蔵大臣には、このたびのベーカー米財務長官との交渉を通じ、対米貿易収支の大幅な黒字減らしの必要性を痛感されたことと思います。そのためには、まだまだ内需拡大策が必要だとはお考えにならないでしょうか、御答弁を願います。
 続いて、雇用問題でありますが、円高、産業構造の転換等のもとで業況が一層悪化していることから、造船、非鉄金属、鉄鋼を初めとして大量の過剰人員が生じております。このため、出向、配転、一時休業の実施、さらには希望退職の募集等の雇用調整が進められており、特に不況業種等における雇用調整は地域の雇用情勢を急速に悪化させ、輸出関連の中小企業産地、造船等に関連した不況地域、さらには産炭地域等においては極めて深刻な雇用問題が生じております。こうした状況を考えると、雇用問題の解決は喫緊の重要課題でありますが、今後の雇用情勢の見通し及び雇用対策の方向についてお伺いいたします。
 また、円高の長期化の中で中小企業が新たな活路を開拓していくためには、事業転換等を通じて構造転換を進めていくことが肝要であります。とりわけ円高の影響を集中的に受けている輸出型産地や、いわゆる企業城下町の中小企業が構造転換を進め活路を開拓していくことは、地域経済の活性化にとっても不可欠であります。政府は、これまでにも特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法など円高関連中小企業対策を講じてきておりますが、今後、これらの法律の着実な実施を図りつつ、中小企業の構造転換対策を重点的に進めていく必要があると考えます。
 さらに、関連の下請中小企業に深刻な影響が生じています。このような下請中小企業が、自立化または親企業の多角化を通じ、新しい企業活動の方向を見出し得るよう下請中小企業対策に万全を期す必要があると思います。これらに対しては、特にきめ細かな対策が必要と存じますが、政府の決意をお尋ねいたしたいのであります。
 次いで、財政の問題であります。
 政府は、六十二年度予算の編成に当たり、五年連続の超緊縮型予算を編成し、臨調行革路線を踏襲し、財政再建に対する強い姿勢を示されました。国債残高が百五十二兆円にも達しようとするときでありますから、子孫に過大な負担を残さないため、借金に依存する財政の膨張を極力抑えんとする努力に対しては敬意を表するものであり、今後ともその基本姿勢は堅持しなければなりません。
 しかし、一昨年来の急激な円高による不況は、経済の失速による税収の低下を招き、かえって財政再建をおくらしかねません。この際、財政再建の手法及び目標年次の見直しを含め、大胆な内需拡大と黒字減らしを検討すべきだと思いますが、政府の見解をお伺いいたします。
 次は、国債管理政策についてであります。
 五十年以来の大量の公債発行によって、六十二年度末の公債残高は百五十二兆円、その利払いのための国債費は約十一兆円に達し、歳出予算の二一%と最大の支出項目となっております。この際、国債費の効率的支出の観点から、従来の国債管理政策を根本的に見直し、低金利時代にふさわしい弾力的な国債借りかえ政策に踏み切るべきだと思いますが、いかがでしょうか、大蔵大臣の御答弁を願います。
 次に、経済摩擦について伺います。
 我が国は、戦後一貫して自主的な市場開放に取り組み、特に一昨年七月には、中曽根総理の強力なリーダーシップのもと、市場アクセスに関するあらゆる制度を総点検し、改善策を集大成したアクションプログラムを策定し、現在その着実な実施に努めているものと承知しております。しかしながら、依然として史上最高の水準にある我が国経常収支黒字を背景に、各国からの我が国の市場開放に対する要求は後を絶ちません。もとより「国際国家日本」として、我が国経済社会の一層の国際化を進めることは避けて通れぬ責務であります。
 他方、急速な円高の進行は、国内産業の一部に極めて深刻な打撃を与えております。かかる情勢のもとで、市場開放問題に今後どのように取り組まれるのか、基本的なお考えをお伺いしたいと思います。
 特に、農産物の市場開放については、昨年の米をめぐる動き、対米十二品目問題等、状況は厳しさを増しております。対外経済関係の円滑な推進という困難な課題が一方にはあるものの、食糧の安定供給、国土の保全、地域社会の活力の維持等の面で農業は重要な役割を果たしており、単に経済性のみの観点だけで論ずるべきではないと考えるのであります。
 さきに国連が発表した人口予測では、本年中に世界人口は五十億人に達し、わずか二十三年後の二〇一〇年には七十億人にも急増すると見込まれており、食糧問題はまさに地球的視点でとらえるべき人類全体の課題であります。日本人の食生活に占める米の重要性を考え、また農業にとってそのシンボルとも言うべき米問題は、その取り扱いについて特に慎重な配慮が必要と思うのであります。この際、食管制度の今後について総理の明快な答弁をお伺いいたします。
 続いて、農業問題についてお尋ねいたします。
 農政審議会は、「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」を発表しました。その中で、穀物等の国際需給は当面緩和しているが、中長期的には楽観を許さない状況にあることを指摘し、与えられた国土条件の中で最大限の生産性向上を図り、極力国内の供給力を確保することが必要であると述べ、さらにそのためには、稲作を初めとする土地利用型農業部門における構造改善を可能な限り加速することが基本的に重要であることを力説しております。
 しかしながら、必要な土地改良などの予算はむしろ縮減傾向にあり、経営の規模拡大も思うように進まないのが現状であります。日本農業の将来はどのように展開するのか、先行き不安に包まれている農家に自信と意欲を取り戻させることの今ほど大事なときはありません。本年は、日米農産物十二品目問題、米問題、牛肉、かんきつ協議問題等が山積しております。これら外圧に対しどのように対処されるおつもりか、その所信をお聞かせ願いたいのであります。
 さらに、国内対策としては、さきの農政審議会から報告された今後の農政の基本方向及び水田農業確立対策の骨子につき御説明をいただき、日本農業の将来展望について明確な指針をお示し願いたいのであります。農林水産大臣の答弁を求めます。
 今、日本農業を取り巻く厳しい環境は、先ほど述べた諸外国からの農産物の輸出攻勢であり、国内的には農産物輸入の拡大を歓迎する風潮の強まり、いわゆる外圧、内圧の高まりであります。日本農業の生き残りのために大事なことは、外圧もさることながら、むしろ内圧に対してであります。言葉をかえて言えば、国民的合意を求め、消費者が納得する価格に向けての農業の努力が成功するか否かでありましょう。この際、農業団体と政府とが腹を割って話し合い、共通の認識を持つことが必要であり、農業団体の主体的取り組みが今一番大事ではないでしょうか。政府もまた、今後の農政を進める上で農業団体の受け持つ役割を一層明確にし、相協力して農業と農村の未来を築いてほしいのであります。政府の答弁を求めます。
 国土面積の約七割を占める日本の山は、そのほとんどが急峻な地形で道路事情もよくありません。そのような劣悪な条件のもとで、全面積の四割に当たる一千万町歩が人工造林として育ちつつあることはすばらしいことであります。せっかくのこの山を荒廃させてはなりません。除伐や間伐などの有効な手入れさえ実行されるならば、二十一世紀は間違いなく国産材時代を迎え、外材に頼らなくても木材需要のほとんどが自給可能になるに違いありません。
 しかしながら、外材と価格面で肩を並べるためには林道網の整備が絶対条件であり、当面、森林総合整備事業や間伐促進対策事業が欠くことのできない政策手段であります。
 いま一つは、木材需要の拡大であります。手ごろな値段で木が売れさえすれば造林意欲はよみがえります。木材需要の大宗は何といっても住宅用材でありますから、住宅建築の促進、とりわけ木造建築の推進に特に力を入れていただきたいのであります。
 ことしは国際居住年。経済大国日本で一番見劣りのするのが住居であり、住宅政策は内需振興の目玉でもあります。この際、政府を挙げての取り組みを強く要請いたしたいのでありますが、総理並びに農林水産大臣の御答弁を願います。
 次に、四全総について伺います。
 近年における中央と地方の現状を見ますと、一時減少傾向にあった中央と地方の所得間格差は再び拡大する傾向を見せております。特に、急速に進みつつある産業構造の転換の流れは、東京のように懐の深い経済を持たない地域経済に大きな影響を与えつつあり、一昨年の秋以降の円高の進展は、このような変化を急激に力速させております。
 政府では、現在、国土の均衡ある発展を図る観点から四全総を策定しているところであると伺っておりますが、今後、活力ある日本経済を維持発展させ、豊かな社会を構築していくためには、東京などの大都市の問題に対処するだけでなく、地域間の格差の是正を図り、国土のあらゆる資源を有効に活用することに努力を傾注すべきであると考えますが、政府としての見解を伺いたいと思います。
 また、地域を活性化させ国土の均衡ある発展を図るためには、その原動力たる産業の振興を図ることが重要であると考えますが、今後の産業立地政策の展開について、政府としての基本的考え方を伺いたいと思います。
 次いで、四全総の問題でありますが、三全総は地方の時代を提唱し、その定住圏構想において、地方の生活環境、生産基盤、就業機会などの基礎的条件を改善し、若い人々にも魅力ある健全な地域社会の形成の必要を強調いたしました。地方の努力とも相まって、都市への人口流出、過疎化の進行に歯どめがかかり、地方に新しい活力がよみがえるかに見えましたが、最近再び東京を中心とする都市への集中が目立ち始めました。狂乱とも言うべき東京の地価の高騰はまさにこの象徴と言えましょう。東京にとって大事なことは地価対策であり、土地政策であります。四全総は、したがって三全総の足らざるところを補い、あるいはより強力な政策手段をもって地方の活性化を促進するものでなければならないと信じます。総理並びに国土庁長官の御所見を伺います。
 整備新幹線の建設、高速道路網の整備等、高速交通体系の充実整備が最重要戦略として求められていると思うのでありますが、あわせお答え願います。
 なお、四全総において、計画策定の視点の冒頭に「世界に開かれた国土」をうたい、「特に東京は、環太平洋地域の拠点」としての位置づけを強調されております。
 新春早々の一月六日、国土庁長官の鹿児島における懇談会では、九州各県の知事を初めとする出席者から、東京中心の一極集中ではないかとの不満が続出し、地方活性化への強い主張と具体的要望が提起されたと聞いております。この際、各地の懇談会で出された意見を積極的に取り入れ、施策に組み入れるべきだと思いますが、四全総の基本政策並びに策定の時期等につき、総理並びに国土庁長官の御見解を承ります。
 次に、教育改革について伺います。
 教育は、国家社会の発展の基盤を培うものであり、次代の日本を担う青少年の豊かな個性を伸ばし、その可能性を最大限に発揮させる使命があると考えます。今日の我が国の発展は、教育に対する先人の努力によってなし遂げられたものでありますが、どうも戦後教育はともすれば知識偏重、功利主義に走り過ぎ、倫理観や思いやりの心がおろそかになったようであります。先年来、校内暴力や青少年非行の増加、学歴偏重による偏差値教育重視の風潮、画一的教育に対する反省などの指摘がなされておりますが、今こそ教育は、国家百年の大計の観点に立って二十一世紀を展望し、教育者のあり方など教育制度全般にわたる新しい見直しが強く要請されております。
 特に私がお願いしたい人づくりの目標は、豊かな心と創造力に富み、社会的連帯感と強い責任感を持つこと、日本のよき文化と伝統に対し深い理解を持つこと、国際社会において信頼される倫理性の高い日本人であることを目指していただきたいのであります。幸い総理の熱意により、教育改革が三大改革の一つとして取り上げられ、五十九年以来、臨時教育審議会において精力的な審議が積み重ねられており、近く第三次答申が示される予定であります。
 そこで、まず伺いたいのは、今までの答申をどう受けとめ、教育改革に取り組んでおられるのか、また、いよいよこの八月には審議会の任期が到来いたしますが、今後の教育改革の視点をどこに置き取り組んでいかれるおつもりか、総理の所信をお伺いいたします。
 さて、さきの第二次答申において教員の初任者研修制度が提言されました。教育は人にあると申しますように、究極のところ、学校教育の成否は一に教員の力、資質にまつところ大であります。それだけに、教員が意欲と使命感を持って堂々と教育活動を展開することが大切ではないでしょうか。私ごとで恐縮ですが、私の娘三人ともかつて教職に身を置いた時期がありましたが、彼女らが共通して言うには、新任教員としてこれからスタートする際、教育に対する愛情と意欲は十分持ってはいるが、実践力、指導力については未経験で何となく自信がない、不安がつきまとうということでありました。
 今回、政府が考えている、新任教員に対し採用後一年間、指導教員の指導のもと、教育活動の実務研修を義務づけることは、教育者としての使命感や子供に対する教育的愛情、豊かな教養、実践的指導力を養う上で効果あるものとして評価いたします。どうか新任教員に対する指導は、画一的、固定的なものではなく、後継者を育成する立場とあわせ、指導教員と新任教員がともに学び研修するという触れ合いの気持ちで、成果が上がることを期待いたしたいのであります。六十二年度はとりあえずの先導試行であるようですが、今後この制度の導入にどう取り組まれるのか、総理の所見をお願いいたします。
 次に、高齢化社会への対応について伺います。
 我が国の人口の高齢化は急速に進展し、平均寿命は男性七十四・八四歳、女性八十・四六歳、二十一世紀前半には四人に一人が六十五歳以上という超高齢化社会が出現すると報ぜられております。今後、安定し、かつ質的にも充実した人生八十年時代に対応したライフスタイルを構築することは、国内政治における最大の課題であり、活力ある長寿社会を実現するためには、将来を見据えた長期的視点に立って安定した社会保障制度の構築を目指す必要があると考えます。
 政府はこのような見地から、既に医療、年金制度の改革を行い、前国会においては老人保健制度の改革を見ました。さらに、政府は、昨年六月、長寿社会対策大綱を決定し、経済社会の活性化を図り、活力ある長寿社会を築くこと、社会連帯の精神に立脚した地域社会の形成を図り、包容力ある長寿社会を築くこと、生涯を通じ健やかな充実した生活を過ごせるよう、豊かな長寿社会を築くことを基本方針として掲げております。高齢者が長年培った知識と能力などを雇用、就業を通じて積極的に活用するとともに、職業生活から老後生活へなだらかな移行策を考えるべきだと思いますが、具体的対応策を伺います。
 先般公表された厚生白書は、明るい長寿社会へ向けて社会保障はどうあるべきかについて総合的かつ具体的に論じておりますが、一部に福祉後退との論評もないわけではありません。しかしながら、社会福祉は各世代間における公平な給付と負担の国民的合意が大前提であります。この際、将来の社会保障負担はどうなっていくのかお示し願いたい。
 なお、我が国の風土、伝統に立脚したいわゆる日本型福祉社会をどのように構築されるおつもりか、お尋ねいたします。
 関連して、福祉サービスの問題でありますが、医療、年金と並んで長寿社会において重要なのは、寝たきりや痴呆性のお年寄りと、その家族が安心して託すことのできる福祉サービスであります。高齢者や障害者のニーズには多様なものがあり、これに対応するためには総合的な施策の展開が必要でありますが、今、何よりも望まれているのは、住みなれた地域で家族や近隣の人々とともに暮らしていける条件の整備であると思います。このため、各種在宅福祉サービスの充実が急務であると考えますが、どのように取り組まれますか。
 以上、総理及び厚生大臣の御所見を伺います。
 最後は、税制改革についてであります。
 申すまでもなく、税制は国民生活に密接に関連するものでありますから、社会経済が変化するに伴い、税制についても絶えず見直しを図るべきことは当然であります。シャウプ税制からことしで三十七年が経過しました。この間の我が国経済社会の変化には目覚ましいものがあります。長期に及んだ高度成長と二度にわたる石油ショック後の安定成長を経て所得水準は大きく上昇し、世界のトップレベルに達しました。当時と今日では、一人当たりの国民所得は約五十倍に増加し、アメリカとほぼ同じ水準となりました。他方、貧富の差は先進諸国の中でも極めて小さなものとなっております。就業構造においてはいわゆるサラリーマンが増加しました。また、消費においては多様化、サービス化が進行しています。豊かな社会のもとで人口の高齢化、経済取引の国際化も進展してきております。
 現在の我が国税制は、このような戦後四十年間にわたる社会経済情勢の著しい変化に十分対応し切れておらず、数々のゆがみ、ひずみが生じ、これらを放置しておくことは国民の税に対する信頼感を失わせかねません。したがって、この際、現行税制の抱える問題点を解消するため、税制全般にわたる根本的な見直しが必要であると思うのであります。総理の御所見を伺います。
 以下、私は現行税制の問題点について申し上げます。
 第一は、働き盛りの中堅サラリーマンを中心に高まっている所得税の負担感の問題であります。
 この人たちはまさに我が国経済の担い手でありますが、住宅、教育などへの支出がかさみ、生活にゆとりがない一方、所得税の強い累進構造により、所得が増加するに伴い税負担が大きく増大することに不満を持っております。この状態を放置していれば、彼らの勤労意欲、事業意欲に悪影響を与え、ひいては我が国経済の活力を損なう結果になりかねません。今回の税制改革において、中堅サラリーマンの負担軽減を中心に所得税の思い切った減税が行われることは、まさにこのような状況に即応した措置であると考えます。
 経済の活力に関して言えば、法人税の問題も重要であります。法人税については、その税負担水準が国際的に見てかなり高くなっていることが指摘されております。経済社会の国際化の進展のもとでこの状態を放置していれば、我が国企業の活力が失われ、いわゆる経済の空洞化現象が生じるおそれも否定できません。今回の改革では、法人税の税率の段階的引き下げが図られておりますが、この措置により我が国企業に新たな活力が生まれることを期待するものであります。
 以上の観点から、所得税、法人税及び住民税の思い切った減税を実施することが必要であり、当然それに見合う税源を何かに求めざるを得ないわけであります。既に数年前から、政府税調における論議の過程で直間比率の見直しの必要性が強調されており、また、非課税貯蓄制度についても、少額零細な貯蓄の奨励がその本来の目的であったものが、現状では巨額の利子が課税対象から外れ、かえって高額所得者がより多く受益する結果もあらわれており、この際、見直しの対象としたものであって、これらにかわるべき適切な代案は考えられないと思うのでありますが、政府の見解を求めます。
 特に、今回の改正が所得税、法人税の減税と切り離しての増税議論に陥りがちでありますので、相関連して御説明を願います。
 さて、今回実施しようとする売上税についてでありますが、選挙公約との関係について総理にお尋ねいたします。
 総理は、いわゆる大型間接税と称するものは導入しないと公約され、国会答弁を通じて、それは多段階、網羅的、普遍的、投網をかぶせるようなとの表現を使われております。我が党税調における議論でも、特にその点に配意してまいったところでありますが、この問題は政治の基本姿勢にかかわる重要問題でありますので、国民の理解が得られるよう、特に総理の明確な御答弁をいただきたいのであります。
 以下、今回改正の個別問題について、数点大蔵大臣にお伺いいたします。
 少額貯蓄非課税制度及び郵便貯金非課税制度を廃止して、老人、母子家庭等に対する利子非課税制度に改組しようとされておりますが、その考え方及び内容について御説明願います。
 今回導入予定の売上税実施に伴い、従来の物品税が廃止されることになりますが、その改正理由と内容をお答え願います。
 売上税については、流通、サービス業界など課税業者の側は、価格に転嫁できないため経営圧迫につながると心配し、一方、消費者の方では、物が値上がりして家計を圧迫すると、それぞれ自分の方への影響を心配しております。さらに、売上税は一たん導入したら安易に税率を引き上げ、増税路線に歯どめがかけがたいとの心配があります。これらの諸点につき明確な御答弁を願います。
 売上税という新税が導入され、関係者は新たな税負担がかかることになります。この制度は初めてのものであるだけに、徹底した制度の周知及び広報が必要であり、また、納税者に対しては手厚い親切な指導と相談が必要と思います。これらにどう対処される方針か伺っておきたいと存じます。
 今回の税制改革が、現代に生きる者の子や孫に対する責任として、今、我々は何をなすべきかの高い視点に立って、真剣な議論を闘わし、国民皆様の御理解と納得が得られるよう念願するものであります。
 中曽根総理は、さきの自由民主党大会において、今や安定と満足は改革の中に生まれ、そこに日本の未来の希望が生まれると声を大にして述べられました。我が国を取り巻く内外情勢は極めて厳しく、我々に課せられた責任の今ほど重大なときはありません。我が自由民主党は、光輝ある責任政党として、転換期の大きな苦痛と試練を乗り越え、今ここに必要な改革を断行し、二十一世紀へ向けての限りない前進に全力を傾倒する決意であります。国民各位の御協力を切望して、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(中曽根康弘君) 井上議員にお答えいたします。非常に広範な御質問でございますので、要点を申し上げて、詳細は担当大臣にお願いをいたします。
 まず、戦後の民主政治の改革、国会の改革の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、私は戦後の日本の平和と民主主義による大きな発展について非常に高い評価を持っておるものでございます。しかし、四十年間の日本の民主主義の過去の歩みを考えてみまして、さらによきものへ前進することが我々の子孫に対する責任であると考えています。その中には、政党人として考えてみますと、国会改革も当然含まれると思うのであります。国民の世論をよくお聞きし、また各党で協議いたしまして、よりよき国会へ前進するために協力いたしてまいりたいと思っております。
 参議院におかれまして、さきに御提案をいただきましたが、私はあれを拝読いたしまして非常に貴重な立派な御案であると敬意を表した次第でございます。衆議院におきまして、この参議院の案につきましていろいろ御検討もいただいておると思いますが、両院協力いたしましてよりよき改革へ前進してまいりたい、このために各党の円満な協議を期待しておる次第でございます。
 次に、国際国家としての日本の役割でございますが、我が国の地位と責任が非常に増大してまいりました。そういう意味におきまして、より積極的な役割を果たさなければならぬと思いますが、世界に多様な生活信条や異なる文化が共存している、そういうことを認識いたしまして、世界の新しい文明の創造に向かって我々は前進をし、東西南北の対話促進にさらに努めてまいらなければならないと思っております。
 防衛問題に関する井上議員のお考えには、全く私は同感でございます。国会が文民統制の最高の機関であり、この国会を中心にして防衛問題というものは論ぜられ、審議されなければならぬと考えておりまして、内容につきまして十分な御審議をいただくように期待をいたしておる次第でございます。
 経済につきましては、内需と為替の安定と雇用の問題が大事であると申し上げました。これらにつきましては、全閣僚挙げましてこの対策に充実、十分を期してまいりたいと思っております。
 六十二年度の予算におきましても、先ほど来申し上げましたように、一般公共事業の事業費の確保、地方財政との協力、住宅金融公庫融資の拡充、あるいは雇用対策の充実などを行い、さらに先般の公定歩合の引き下げ寺とも相まって、これからの景気の振興についても努力してまいりたいと思います。
 為替レートにつきましても、できるだけG5あるいはG7を早く開きまして、そして各国の協調の実を上げるようにいたしたいと思っておりますが、これは我が国の国会の関係もあり、あるいはまた各国の都合もございまして、それらの適当な時期をできるだけ早期に見出すように努力すべきであると考えております。
 さらに、公共事業の前倒しにつきましては、今、六十二年度の予算を御審議していただくところでございますが、まず予算の一日も早い成立をお願いをいたしまして、その執行に当たりましては、機動的、弾力的に運用してまいりたいと考えております。
 雇用対策につきましては、先ほど申し上げましたように、ことしの雇用問題というものについては重点政策を推進していかなければならぬと思っておりまして、特に三十万人の雇用開発計画を着実に推進いたしたいと思います。
 また、それと同時に、各地域における問題を具体的に解決する必要がありますので、中央で行うと同時に、全国八ブロックにおのおの地域との雇用の協議会を設けまして、一つ一つの問題について着実に推進してまいりたいと考えておるところでございます。
 中小企業対策につきましては、中小企業の構造転換等を支援するために、一昨年十二月以来、個々の中小企業者の事業転換の円滑化、産地等特定地域の中小企業者の新たな活路の開拓等に関して所要の立法措置を行い、資金面、指導面、人材養成面等につきまして総合的対策を講じたところであります。
 さらに、今後、親企業の生産縮小等に伴い対応を迫られている下請中小企業の構造調整を支援するため、昭和六十二年度において新分野進出等に関する低利融資を導入する等、きめ細やかな対策も引き続き強力に推進してまいります。
 財政再建の問題でございますが、六十五年度特例公債依存体質脱却、この目標達成は容易ならざるものでございますが、政府の肥大化を防ぎ、子孫に負担を残さないように、我々は歯を食いしばって最大限これが実現に努力してまいりたいと考えておるところでございます。
 市場開放問題等につきましては、自由貿易の恩典を最大限に享受している国は日本であります。そういう意味におきまして、自由貿易をできるだけ普遍的に力強く推進するということが我々の重大国策でございまして、それには、日本みずからが範を示して前進する必要がございます。そういう意味におきまして、今まで累次の政策を行ってまいりました。
 最近は、内需の拡大に対する要請も非常に強くなってきており、あるいは国際協調のための日本の経済構造改革についても非常に大きな注目を浴びておるところでございますが、これらにつきましても着実に前進させてまいります。
 六十二年度予算におきましては、産業基盤整備基金を設けるなどして、これらの構造改革にもさらに弾みをつけようと思っております。
 市場アクセス等の改善のためには、六十二年度関税改正における特恵関税制度の改善を初め、アクションプログラムの着実な推進を心がけております。
 食管制度の問題でございますが、食管制度については、国民の主食である米を政府が責任を持って管理するということによって、生産者に対してはその再生産を保障する、消費者に対しては安定的な供給責任を果たすという制度の基本は今後とも堅持すべきであると考えております。
 しかし、ある程度農業についても市場原理の導入は必要でありまして、過度の価格政策依存は農業の停滞を招く危険があります。先般の農政審議会の報告を尊重いたしまして、農協あるいは農業者と一体になりまして、ともに改善に向かって努力してまいりたいと考えておるところでございます。
 農産品の市場開放問題については、私は前から農は国のもとと言っておりますが、農業は国民生活にとって大事な食糧の供給源であるということ、国土、自然環境の保全等極めて重要な役割を発揮しているということ、さらに地域社会における就業機会の提供など、地域経済社会の健全な発展を図る上でも重要な基盤になっておるということをよく認識する必要があると思っております。
 日米農産品十二品目問題あるいは米の問題等、農産物市場開放問題への対応に当たりましては、関係国との友好関係に留意しつつ、国内農産物の需給動向等踏まえまして、我が国の農業の健全な発展と調和のとれた形でこれを行うように農政審議会の報告を尊重して努力してまいります。ガットの新ラウンド交渉との関連も一面においてよく注意する必要があると考えます。
 昨年の農政審議会の報告の内容は極めて立派なものでありまして、これについて先般、農協系説組織が決定した水田農業確立対策への主体的な取り組みや価格政策から構造政策への農政運動の転換の方向は、この基本方向とも極めて合致しておりまして、評価しておるところでございます。
 今後、行政と農業者及び農協系統組織が一体となりまして、我々も農業者や農協のことを親身になって考えまして、我が国農業及び農村の発展に努めてまいる考えでおります。
 林業につきましては、木材供給のみならず、国土の保全や水資源の涵養や、そのほか公益的機能をたくさん持っております。林業の活性化を図る等、森林の健全な育成は国政上の重要な課題であります。
 昨年十一月の林政審議会の報告等を踏まえまして、木材需要の拡大、林業生産基盤の整備等を進め、森林資源の充実、林業の振興並びに木材産業の活性化に努力してまいります。
 さらに、住宅政策につきましても、住宅建設促進のための税制、金融上の措置の拡充等を今回も行っております。
 特に木造住宅につきましては、従来からその振興のための施策を推進しているところでありますが、来年度、優良な木造住宅団地の建設を促進するウッドタウン・プロジェクトの創設等、一層施策の充実を図ります。
 なお、木造建築物に関する建築基準法の制限の合理化を検討いたしております。今後とも、木造建築の推進には全力を尽くしてまいる考えでおります。
 地域間の格差の問題でございますが、大都市圏、地方圏を通じて地域の特性を生かし、国土の均衡ある発展を図ることが国土政策の基本でございまして、四全総もこのような考えに立ちまして今、立案中でございます。
 地価の問題については、全国的には一応安定しておりますが、東京等一部に著しい上昇が見られます。
 この地価上昇は、基本的には東京においては事務所の需要が非常に増大していることと、投機的な取引が拍車をかけている、そういう原因によると思います。
 これに対しては、業務機能の適正な配置、分散を図るほか、事務所用地等の供給策とあわせ、投機的な土地取引を抑制するための国土利用計画法の的確な運用に努めておるところであります。
 官房長官を中心に、関係行政機関相互の緊密な連絡を確保いたしまして、効果的かつ総合的な地価対策を推進するために閣僚会議を設置いたしました。今後この閣僚会議を活用してまいるつもりであります。
 四全総につきましては、三全総は、人口の地方定住が徐々にかなり進んできていると認識しておりますが、依然十分でない点もあり、一層の地方の活性化が必要であります。
 国土の均衡ある発展を図るために、四全総においてその諸施策を鋭意検討中でございます。いわゆる多極分散型というのがその目標としているところであります。
 高速交通体系の問題は、二十一世紀へ向けて地域間の交流を促進して均衡ある発展を図る上で、高速交通体系の整備が非常に重要であると認識しております。
 四全総においても、各種高速交通機関の特性を踏まえ、総合的な観点から高速交通体系のあり方を明らかにしていく考え方でおります。
 さらに、東欧等の歴訪の成果でございますが、我が国の総理としては初めてこれらの四カ国を公式訪問いたしましたが、これは答礼の意味と、各国指導者と率直な意見交換を行いたいという考えから行ったものでございます。
 平和と軍縮の推進のため東西間の対話をさらに強化する、南北問題の解決に積極的に貢献する、あるいは経済、文化等種々の分野での二国間関係の発展のために努力する。特に、レイキャビク以後の米ソ関係の打開につきまして、我々は側面から協力しようという点において意見が一致いたしました。
 対ソ交渉につきましては、日ソ間の最大の懸案である北方領土問題を四島返還実現により解決して平和条約を締結し、我が国の重要な隣国たるソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することが、一貫した外交の基本方針であり、無原則な政経分離はとらないという考えであります。
 今後とも、あらゆる機会を通じて、我が国の基本方針を堅持しつつ日ソ関係を打開し、善隣友好関係を確立するために粘り強く努力していく考えであります。
 ゴルバチョフ書記長の来日の見通しについては、既に相手側が決める段階になっておりまして、その出方を待っておるところであり、おいでになれば歓迎したいという考えは一向変わりませんし、有意義な訪問にいたしたい、我々も相互的に協力し合うべきであると考えております。
 さらに、防衛費の新たな歯どめの問題でございますが、政府は大綱水準の達成を図ることを目標として努力し、一昨年、五カ年計画をつくった次第であります。
 六十二年度防衛予算の編成に当たりましても、円高とか油価格の低下とか、そういう問題で片方では圧縮に努める一方、片方では中期防の着実な実施を図る必要もありまして、両者の調和のぎりぎりの努力を払ったところでございますが、GNP一%をやや上回るものになったという結果になりました。
 この事態を踏まえまして、安全保障会議等で慎重かつ十分な議論をいたしまして閣議決定を行った次第であります。
 従来持っておった我々の専守防衛以下の基本原則、それから中期防における五年間で約十八兆四千億円、昭和六十年度価格、この枠の範囲内において行うということ。さらに、リボルビングという考え方を今度はとらない、見直しを行わない、そういうような形によりまして、固定した歯どめがしっかりと今度はできておるわけであります。
 そして、この計画が終わった次の段階におきましても、三木内閣の五十一年十一月の閣議決定の節度ある防衛力整備を行うという精神は引き続き尊重するという考えを持ちまして、依然として防衛に関する節度ある継続性というものは持続されておるのであります。
 国会におきまして、この防衛問題の中身について、特に我が国周辺の軍事情勢とか、あるいは防衛のいろいろな中身等につきまして充実した論議が行われることは、いわゆる文民統制の上から見ても極めて有益であると思っております。我々は、その意味において国会の御論議を期待しておるわけであります。
 教育改革の問題については、教育改革は現内閣の最大重要課題の一つでございます。先般も、京都におきまして専門家の国際会議を開催いたしましたが、非常にいい勉強をさしていただきました。臨教審の方々もこれらを参考にしてくださることとなっております。
 臨教審の今までの答申を受けまして、初等中等教育については、徳育の充実等教育内容の改善や教員の資質向上、高等教育については、大学入試の改革や多様で個性的な大学の実現等の具体化に今努力しておるところです。また、学歴社会の弊害の是正、生涯学習社会の建設にも積極的にこれから取り組んでまいります。
 いずれにせよ、国民の御理解と協力なくしてはできない問題でございますから、答申を得まして、国民の皆さんに御理解をいただいて強力に推進する考えでおります。
 初任者研修制度につきましては、現在、教育職員養成審議会においてその具体策を検討中でありますが、来年度におきましては、初任者研修の試行を実施することとし、予算を提出しております。
 この結果を踏まえまして、将来の問題については適切に対処してまいりたいと思い、有意義にいたしたいと考えておるのであります。
 次に、老後生活への移行の問題でございますが、高齢者の知識や能力というものを雇用や就業を通じて積極的に活用していくことは大切であります。
 このため、職業生活から老後生活へなだらかな移行を図るという観点から、雇用の機会の確保に努めるという点も我々は十分考えなければならぬと思います。前に申し上げましたように、老人に大事なものは年金と仕事と孫である、そういうことを申し上げましたが、やはり仕事というものが非常に重要な意味を持っておるのであると考えております。
 さらに、社会保障負担の問題でございますが、人口の高齢化や年金の成熟化に伴いまして、社会保障負担は増大することは避けられない状態であります。
 不確実な要因の多い現行制度を前提とした場合、二十一世紀初頭の社会保障負担の水準は、現行水準の一・五倍程度になるものと推定されております。
 我々は、日本人の持つ自立自助の精神、思いやりのある人間関係、相互扶助やそのほかの社会連帯の仕組みを維持しつつ適切な行政施策を講じて、来るべき高齢化社会における着実な福祉社会づくり、老人が快く人生を終えることができるような社会づくりに邁進してまいりたいと思っております。
 在宅対策につきましても、高齢者や身体障害者の方々が地域や家庭で安心して生活できる条件を整備していくことは我々の責任であります。
 長寿社会対策大綱に沿いまして、在宅対策を重点的に推進してまいります。
 税制につきましては、シャウプ税制以来三十七年を経まして、一面において所得水準が上昇し平準化が行われ、消費が多様化してまいりました。また、税制に関するひずみ、ゆがみというものも出てまいりまして、重税感に対する御指摘も多々出てきておるわけでございます。さらに、最近、各国が税制の大改革をやりまして、国際的にも均等条件を整備するということは我が国企業等のためにも重要な時期に入ってきておるわけであります。
 今回の税制改革は、このような期待にこたえるために行ったものでございまして、ぜひともこの時期になし遂げなければならない重要な課題であると考えておるのであります。
 特に、今回におきましては、中堅サラリーマンの負担軽減を中心とした個人所得課税の思い切った軽減合理化、あるいは企業活動の活性化を推進するための法人課税の見直し等を図るために財源措置を講じたわけです。それらにつきまして、売上税の創設を含む間接税制度の改革や、巨額の利子が課税ペースから外れて高額所得者により多くの恩恵を与えるという事実上の欠陥を起こしている現行非課税貯蓄制度の見直しを行うこととしたものであります。
 今回の税制改革においては、改革全体としても、また六十二年度においても増減税同額を堅持することといたしておりまして、増税面のみを論議することは片手落ちではないかと思う次第でございます。
 公約との問題でございますが、私が国会でお約束いたしましたいわゆる大型間接税というものは、矢野書記長や大内書記長に対する御答弁で明確にいたしておりまして、多段階、包括的、網羅的、普遍的で、縦横十文字に投網で全部ひっくるめて取る、これが大型間接税であると私は言ってきておるわけでありまして、この約束には違背していないと考えておる次第でございます。
 残余の答弁は関係大臣から申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(宮澤喜一君) 円の問題につきましてお尋ねがございましたが、十一月、十二月と為替は安定をいたしておりましたが、一月の中旬近くなりまして、ヨーロッパの事情あるいはアメリカの貿易収支等を受けまして、相場が一時非常な不安定な状況になりましたことは御承知のとおりでございます。これは十月の末に日米蔵相が合意いたしました、いわば協議を要する場合と考えまして、米国で協議をいたしまして、このような状況は不安定であるということで、共通の認識に立ちまして積極的に協力をしていくことを確認いたしたわけでございます。
 今後とも、このような二国間ばかりでなく、先進多国間におきまして、政策協調あるいは為替の安定につき協力いたしますことはサミットにおきましても合意しているところでございますので、有意義なことで推進をしていくべきものと考えております。
 それにいたしましても、やはり中心はアメリカの国際収支が改善してもらわないと困るわけでございますが、昨年の八月ごろから少しずつ改善の兆候がございましたが、十一月に急に悪化いたしました。しかし、十二月にまた大変に改善した、ややジグザグのコースをとりながら少しずつ改善が定着していくのではないかと見ておりまして、我が国としても、市場開放等の措置によりまして、協力をいたすべきところはいたさなければならないと思っております。
 次に、そのような私とベーカー財務長官との会談等を背景にして、内需振興についていよいよその必要を感じているのではないかと言われますことは、そのとおりでございます。
 財政再建の大枠の中ではございますが、このたびの予算におきましても、例えば公共事業について五・二%の上積みを行う、伸びを確保する、あるいは住宅金融公庫の貸付枠の拡大をする、三十万人雇用開発でありますとか、産業構造調整、石炭、造船等の個別対策につきましては精いっぱいのことをやらせていただいたつもりでございます。
 次に、国債管理政策につきまして大変に示唆に富んだ御意見の御開陳がございました。
 国債費の効率的な支出という点から、時々の金融・経済情勢に応じてなるべく財政負担を重くしないように、いわば金利というものの考え方を国ももう少し考えるべきであるということは、私はおっしゃるとおりであると思うのであります。
 現実の問題といたしまして、今日非常に低金利になりましたので、既発国債はかなり高い金利で発行いたしております。したがって、その価格は額面を上回っておる。そこでこれを繰り上げ償還いたしますとしますと、時価で償還をいたしませんと保有者に損害を与える、債権者に損害を与えるということになろうかと思います。その場合には不測の不安要因を市場に与えることになりますし、それであるならば時価で買い入れ消却をするかということになりますと、これはかなり高いものを買うということになります。どの辺のところが国に有利か不利かという微妙な問題が実はございます。
 でございますが、しかしそれはそれとしまして、このようなときに長期的な展望に立って、少し長い国債を発行しておくべきではないかということは、私どももそう思っておりまして、二十年ぐらいの国債を実は昨年から発行し始めておるところでございますが、今後ともいろいろ工夫をいたしてまいりたいと思います。大変示唆に富んだ御意見であると拝聴をいたしました。
 次に、総理がお答えになりましたところと重複を避けまして、売上税との関連で物品税を廃止したことはどういうことかというお尋ねであったわけですが、物品税も、かつては非常にたくさんの品目を網羅しておりましたわけですが、だんだん簡素化と申しますか、それを縮めてまいりまして、今になりますと、極めて少ない品目が非常に大きな税を背負っておるというような、大変にいわば不自然な姿になってまいりました。それから、もともとサービスというものをこの場合には取り入れていないという問題がございます。
 そういったような観点から、思い切ってこの際、サービスを含めまして消費一般に課税をさせてもらうことの方が合理的なのではないかというふうに考えまして、物品税の方は廃止することにいたしたわけでございます。したがいまして、その関連で物品によりましては減税になるものが幾つかございます。例えばカラーテレビでございますとか、乗用車でございますとか、あるいはステレオ等は事実上減税になりますし、ジュース、コーヒーのたぐいは免税になることになるわけでございます。
 それから、売上税が経営者と家計に与える影響はどうかということでございますが、消費者は財貨・サービスの価格が上昇するという形でこの税を事実上負担するわけでございますから、その限りにおきまして、財貨・サービスの価格が上昇いたしますことは、これはそのとおりでございます。
 ただ、この場合に、これは一遍のことでございまして、毎年毎年そういうことが繰り返し起こるわけではございません。それから、個々のものが時をばらばらに上がるといいますよりは、恐らく大体税実施のときに一様に上昇するというふうに考えられますので、そういう意味では事業者の立場からいえば消費者に転嫁しやすい環境であろうと思われます。
 なお、税額票を用いることにいたしておりますから、業者間取引における転嫁はそれによって容易になるものと考えております。
 さて、そのような消費者に対する影響は、一回限りではございますが、これは避けられないと思いますが、試算をいたしますと、消費者物価で平年度ベースで申しますと、大体一・六%ぐらいと試算されております。それはこのたびの売上税が消費者物価を構成いたしますすべての品目の中から加重平均でほぼ六五%を免税にいたしております。それが食料品等々が免税になっておりますから、非課税になっておりますから、そういうことになりまして、結局、平年度フルに施行されまして一・六%程度という試算でございます。
 ただ、これは現在、円高等のことがございまして、消費者物価が非常に落ちついております。生鮮食料品も落ちついておりますから、これだけのものがネット乗せられるかどうかということは、これはまた別でございますが、一応試算としてはそういうふうな試算をいたしております。
 最後に、この売上税を施行するに当たりまして十分納税者の理解と納得を得なければならないと言われる点は、私どもも十分注意をいたしております。しょせん、納税者の理解と協力がなけれはこのような税は有効に施行することができませんので、制度を導入いたしましてから三年ぐらいの間は、広報あるいは納税相談、指導等々を中心として運営を行いまして、国民の間にこれが摩擦なく定着して受け入れられるように、私どもとしても最大限の努力をいたさなければならないと思っております。(拍手)
   〔国務大臣加藤六月君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(加藤六月君) 大部分総理よりお答えになりましたけれども、それ以外の部分についてお答え申し上げます。
 井上議員とは農政に対してはかねてより憂いをともにいたしておるわけでございまして、ほとんどお答えする必要がないのではないかと思いますが、改めてお答えをいたします。
 まず、農産物の輸入自由化圧力についてでありますが、まず、農産物十二品目につきましては、今後のガットのパネルの場での審査におきまして、できる限り現実的かつ公平な解決策が導かれるよう努力してまいる所存であります。あわせて、二国間協議による現実的な解決についても努力してまいりたいと考えております。
 次に、米の輸入自由化問題でございますが、我が国の米の問題をガット新ラウンドの場において取り上げたいとの米国側の意向につきましては、ガット新ラウンドの交渉の具体的内容等は、今後多数国間で決定していく問題であると考えております。
 我が国といたしましては、今後とも国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体し、米の国内自給という基本方針のもとに、米国側の理解をさらに深めるよう全力を傾注するとともに、今後の対応について誤りなきを期してまいる所存であります。
 また、牛肉・かんきつ類につきましては、一九八七年度、すなわち本年度の都合のよい時期に関係国と協議する予定となっております。今後とも、牛肉・かんきつ類をめぐる我が国農業の実情等につきまして相手側に十分説明し、その理解を求めていく考えであります。
 その次に、日本農業の将来展望でございますけれども、昨年十一月、農政審議会から御報告をいただいた「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」は、農業の持つ食糧の安定供給等の基本的かつ多面的な役割を踏まえつつ、今後の経済社会の変化に対応した農政のあり方を示すものであり、私はこれを高く評価するものでございます。
 この報告による提言は、我が国農業の基幹である水田農業を中心として、生産性が高く、産業として自立し得る農業の確立を目指すことが重要であり、このため、構造政策等を強力に展開し、これにより国土条件等の制約のもとで最大限の生産性向上を図り、国内の食糧供給力の確保に努めること、国民の納得し得る価格で食糧を安定供給していくことが重要であり、このため、農業の生産性向上等により農産物の内外価格差の縮小に努めること、このような観点から、価格政策については構造政策の助長等に資するよう見直しを行うこと等が農政審の御報告の骨子となっておるわけでございます。
 この報告を踏まえまして、昭和六十二年度から水田農業確立対策を実施することとしておりますが、本対策は、稲作及び転作を通ずる水田農業の生産構造を転換していくため、水田を活用して生産される作物の生産性の向上、地域輪作農法の確立及び米の計画生産を一体的に推進するものであります。
 今後とも、この報告を踏まえまして、具体的な施策の展開に全力を傾注し、農業を担い手が希望を持って取り組める産業として育成してまいりたいと考えております。
 最後は、林業振興施策の強化についてでございます。
 我が国林業は、木材需要の停滞とこれに伴う価格の低迷、人件費等の経営コストの増加による収益性の悪化など、極めて厳しい状況にあります。
 農林水産省といたしましては、このような状況に対処するため、昨年十一月いただきました、今後の林政の進むべき方向に関する林政審議会の御報告等を踏まえ、モデル木造施設の建設等木材需要の拡大、造林、林道等林業生産基盤の整備、間伐等森林整備の推進等、森業振興のための施策を強力に推進してまいる所存でございます。
 以上、お答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣綿貫民輔君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(綿貫民輔君) 第四次全国総合開発計画につきましていろいろとお尋ねをいただきましたが、総理からお答えいただきましたように、それぞれの地域の特性、多様性、それらを踏まえた地域の機能分担を持った多極分散型国土というものを目指して策定をしてまいりたいと考えております。
 なお、この策定に当たりまして、今後の産業立地政策の展開についての基本的考え方についてのお尋ねでございますが、最近の産業立地の動向を見ますと、先端技術産業を中心にいたしまして地方の立地が進展してはおりますけれども、これまでのところ、地方における産業立地はまだ十分な状況とは言えないと思います。
 一方、これらの先端技術産業の立地に当たっては、用地、用水、高速交通等のいわばハードの産業基盤に加えまして、技術、人材、情報といった試験研究機関、データベースなどいわばソフトの産業基盤の役割が高まってきておるわけでございます。
 こうしたことから、四全総の策定に当たりましては、地域の主体性と創意工夫を生かしました産業興しの流れを一層強化いたしまして促進するとともに、ハード、ソフト両面の産業基盤を地方において重点的に整備することが重要と認識しておる次第でございます。
 それから、三全総の定住圏構想からさらに一歩踏み込んで、四全総において強力な政策手段を講ぜよということでございますが、今後地域間の交流を活発にするということが極めて重要な問題だと考えておる次第でございます。
 特に、交流を活発化させるための都市と農山漁村との広域的交流、あるいは余暇・レクリエーション空間の整備等の各種施策や交通・通信体系の整備が重要と認識をいたしております。
 国土の均衡ある発展を図るため、四全総においてはそのための施策を鋭意検討いたしておるところでございます。
 なお、一月六日に、鹿児島におきまして、鹿児島地方振興懇談会を開かせていただきました。その後、各地区におきましてブロックごとに地方振興の懇談会を開催させていただき、地方振興に対するいろいろ貴重な御意見を多々承ってまいったところでございます。これらを初め、各界各層からいろいろの四全総に対する御意見を承っておるところでございまして、これらの貴重な意見を生かしながら、国土の均衡ある発展を盛り込む四全総を今春をめどに内容を固めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣斎藤十朗君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(斎藤十朗君) 最初に、長寿社会への取り組みでありますが、国民が健康で充実した生活が送れるよう、国民生活の基本的ニードについては、今後とも国民皆年金、皆保険体制などを通じて公的部門で対応することを堅持いたしてまいります。
 この場合、人口の高齢化や年金の成熟に伴い、社会保障にかかわる負担が増加することは避けられないところであります。負担と給付の公平といった観点から見直し、長寿社会にあっても安定した、そして信頼される社会保障制度として構築し、発展させてまいりたいと、引き続き努力をいたしてまいる所存でございます。
 また、最も重要なことは、健康で楽しく長寿を全うしていただかなければならないということであり、御指摘のように、住みなれた家庭、地域で暮らしていたいというお年寄りや障害者の方々の御希望に沿った形で、保健、医療、福祉の連携のとれた総合的、きめ細かい対策を進めてまいりたいと思います。国や地方公共団体等の公的な福祉にあわせて、国民の自助勢力や相互扶助が行われることが望ましく、両者が相まって国民福祉のより一層の向上が図られるものと考えております。
 また、シルバーサービスなど民間の創意工夫を生かした福祉のサービスが活発になるよう、民間活力の適正な振興にも配慮する等、多様なニードに対応いたしてまいりたいと存じます。
 特に、在宅サービスの充実を図る観点から、昭和六十二年度予算においても、在宅の寝たきり老人等に対し、入浴、食事等のサービスを提供するデイサービス事業等の大幅な拡充を図るほか、高齢者の各種の心配事に対応する高齢者総合相談センターの設置、就労の機会の少ない重度障害者のための軽作業施設への助成等の新規施策を講ずることといたしております。
 また、在宅でお世話することの困難な要介護老人等に対しては、老人病院、特別養護老人ホームに加え、新たに設置される老人保健施設の一体的な整備を図って対応いたしてまいりたいと存じます。
 なお、痴呆性老人対策については、発生予防に関する研究を初め、総合的対策を進めてまいりたいと存じます。
 先般発表いたしました厚生白書では、その副題を「未知への挑戦――明るい長寿社会をめざして」といたしたのでありますが、まさに明るい長寿社会へ向けて挑戦し、積極果敢に取り組んでまいりたいと存じます。(拍手)
#21
○副議長(瀬谷英行君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○副議長(瀬谷英行君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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