くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第108回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号
昭和六十二年五月十五日(金曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 加藤 万吉君
   理事 上草 義輝君 理事 小渡 三郎君
   理事 中村正三郎君 理事 上原 康助君
   理事 玉城 栄一君 理事 和田 一仁君
      岡島 正之君    北村 直人君
      佐藤 静雄君    鈴木 宗男君
      武部  勤君    中川 昭一君
      野中 広務君    鳩山由紀夫君
      船田  元君    五十嵐広三君
      江田 五月君    井上 和久君
      小谷 輝二君    大矢 卓史君
      児玉 健次君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (内閣官房長官)後藤田正晴君
        国 務 大 臣
        (総務庁長官) 山下 徳夫君
 出席政府委員
        北方対策本部審
        議官      舩津 好明君
        北海道開発庁計
        画監理官    大串 国弘君
        外務省アジア局
        長       藤田 公郎君
        外務省欧亜局長 長谷川和年君
        外務省条約局長 斉藤 邦彦君
        外務省国際連合
        局長      中平  立君
 委員外の出席者
        議     員 上草 義輝君
        法務省民事局第
        三課長     田中 康久君
        特別委員会第一
        調査室長    木村 俊之君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十三日
 辞任         補欠選任
  瀬長亀次郎君     児玉 健次君
同月十五日
 辞任         補欠選任
  鳩山由紀夫君     岡島 正之君
  藤原 房雄君     井上 和久君
  林  保夫君     大矢 卓史君
同日
 辞任         補欠選任
  岡島 正之君     鳩山由紀夫君
  井上 和久君     藤原 房雄君
  大矢 卓史君     林  保夫君
    ―――――――――――――
五月十四日
 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置
 に関する法律の一部を改正する法律案(上草義
 輝君外二十名提出、衆法第一三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
四月八日
 沖縄軍用地の早期返還等に関する陳情書(那覇
 市泉崎一の一の一那覇市議会内屋宜宗一)(第
 一〇三号)
 沖縄における米軍海兵隊クラブ従業員の大量解
 雇等合理化計画の撤回等に関する陳情書(那覇
 市泉崎一の一の一那覇市議会内屋宜宗一)(第
 一〇四号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置
 に関する法律の一部を改正する法律案(上草義
 輝君外二十名提出、衆法第一三号)
     ――――◇―――――
#2
○加藤委員長 これより会議を開きます。
 上草義輝君外二十名提出、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 提出者から趣旨の説明を求めます。上草義輝君。
    ―――――――――――――
 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置
  に関する法律の一部を改正する法律案
   〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○上草議員 ただいま議題となりました北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。
 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律におきましては、北方領土問題が未解決であることによる特殊事情に起因する諸問題の解決に資するため、北方領土隣接地域の市もしくは町または北海道の区域内の公共的団体等が行う国庫補助の対象とされていない地域振興等のための事業、世論の啓発に関する事業及び元居住者の援護等に関する事業に対し助成することを目的とする北方領土隣接地域振興等基金を北海道に設置できることとしております。また、国はこの基金の造成に関しまして、その資金の一部を補助するものとし、当該補助金の交付は、昭和五十八年度から五年度以内を目途とすることとしております。
 ところで、この基金の総額につきましては、その運用収入から補助すべき対象として見込んでおります事業量等にかんがみ、立法当時において百億円を想定しておりましたが、現実には厳しい財政事情のもとで、造成開始後五カ年を迎える昭和六十二年度においても基金の規模は五十億円程度にとどまる見込みであります。
 このため、本案は、当初想定された規模の基金の実現を図るため、基金造成に係る国の補助金の交付年限を五年度延長しようとするものであります。
 以上がこの法律案の趣旨とその内容であります。
 何とぞ慎重審議の上速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
#4
○加藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#5
○加藤委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐広三君。
#6
○五十嵐委員 この機会に二つ三つお聞きしたいと思いますが、今御提案説明になられた北方領土隣接地域振興等基金の交付年限を五年延長するということでありますが、過去五年間これが実施をされてきているわけでありますが、この機会に、年々の平均の利回りといいますか、どのくらいの利率で運用してきているか、結局はその果実を事業に使っているわけですから、それをちょっともしわかれば。それから、今なかなか大変なこういう低金利の時代ですから、ことしなんかどんな見込みになりそうなのか。その辺も含めてもしわかればちょっとお知らせ願いたい。
#7
○舩津政府委員 五十八年度から申し上げますと、五十八年度におきましては三・二%であります。五十九年度におきましては四・七%、六十年度におきましては五・五%、六十一年度におきましては五・一%、ここで下がっております。六十二年度につきましてはまだ明確な数字はわかりません。以上でございます。
#8
○五十嵐委員 恐らくことしはなかなか去年やおととしのようなぐあいにはいかぬのではないかというふうに思います。問題は、運用の利益でそれぞれ仕事をしていくということになるわけです。ですから、初めこの制度がつくられる折には、大体百億で七・三%だとか七・五%だとかというようなことを期待してみんな言っておったわけですね。どうもそういう期待から見ると、実際に使える金としては、先ほど御説明がありましたように額もまだ五十億ちょっとぐらいのものである、しかも利率としては予想をはるかに下回っている、今年なんかは初めの予定から見ると、半分ではなくとも三分の二かそのぐらいになりそうだということになってまいりますと、一体これでいいのかなという感じはするんです。まず少なくても当面交付年限を五年延ばすということであっても、前倒しで、ここもう二年ぐらいの間にはぜひひとつ当初の目標の百億というものは達成するということぐらいでなければ、その果実を実際に、当初期待していたような利用というものがなかなかできないのではないかと思うのですが、これにつきましては、どうですか、長官でもお答えいただければ。
#9
○山下国務大臣 この基金につきましては、従来から地元の関係の皆さん方が非常に強い期待をしておられるということは私も承知をいたしております。したがって政府といたしましても、そういう要望によってできたこの措置法の立法の趣旨というものを十分踏まえながら目的の達成に今日まで努力してまいった次第でございますが、諸般の事情によって今日なお半ばに達しているという現状でございます。
 そこで、今回議員立法によって法案が提出されまして、この法案が成立いたしますならば、さらにこの五年以内に皆さん方の御決議の趣旨を尊重しながら、さらに総合的な、過去におけるいろいろな情勢を踏まえながら今後政府としても基金の達成にさらに格段の努力を払ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#10
○五十嵐委員 北海道全体が非常にむしろ地域格差が拡大するような格好で、地域経済も非常に落ち込んでいるのは改めて言うまでもないのでありますが、根室管内で水産一つを見ましても、二百海里以降大変な打撃を受けている。二、三の例をとると、底刺しで百五隻が六十四隻に減っている。そのために離職者が五百三十五人出ている。小型サケ・マスが百七十九隻が六十六隻の減、中型サケ・マスが五十六隻が十四隻、ここで離職者が三百五十七人及び二百二十人出ている。その他母船式サケ・マスにいたしましてもあるいは洋底にしてみても、いずれにしてもこういう状況がある。あるいは加工場にしても同じような打撃を受けている。この間聞きましたのでは、根室の漁協で、漁協の職員が二百人ぐらいいるそうですが、その二百人のうち五十人整理しようという話です。大変なことです。これなんか承知をしているのではないかと思うのです。
 そういう大変な落ち込みがこの制度が設けられて以降出てきているというような状況もぜひお踏まえいただいて、しかも一方では非常に金利水準が下がってきて、運用の果実というものが大変乏しくなっているということ等を考え合わせ、やはり地域のお話を聞くとなかなか活用されているということで喜んでおられるわけでありますから、ぜひそういう点からいうと、果実を当初予定していたように何とかやはり早期に実現してほしい。逆算をすれば、本当は当初言っていた百億というのをこの際百五十億なりに上げてでもというような感じがいたしますが、しかし当面は、まず百億を一日も早くということで、まあせめて二年くらいで目標達成をしていくことが望ましいというふうに思うのですが、いま一度、ひとつ長官、御決意のほどを前向きに。
#11
○山下国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたとおり、今回の議員立法による御決議がございますれば、その御決議の趣旨を尊重して最大の努力を払う。五年間という延長になっておりますから五年間で達成すればいいという考え方ではなくて、今おっしゃるとおり、できれば少しでも縮めてこの目標が達成されるようにひとつ努力する、当然のことでございますし、また私も担当の大臣としましてその趣旨で今後とも精いっぱい努力をしてまいりたいと思います。
#12
○五十嵐委員 ありがとうございました。ぜひひとつ、それを期待したいというふうに思います。
 この機会に少しアイヌ問題に触れて御質問したいと思うのですが、北方領土にはもともとアイヌの人たちが先住していたことは、だれしも認めているところであります。北方領土にアイヌの人たちが、徳川時代の開発以前から既に先住をしていたという、この明らかな事実についてはもちろんお認めになられますな。
#13
○山下国務大臣 おっしゃるとおりで、これは定説になっております。
#14
○五十嵐委員 それはもちろん、当時は北方領土の面だけではなくて、北海道本島についてもアイヌが先住していたということは、これもまあ否定すべきこともないと思うのですが、いかがですか。
#15
○舩津政府委員 それもまた定説であると認識しております。
#16
○五十嵐委員 北方領土に居住なされていて北海道に戻られた方等も含めて、ウタリ対策が先年来とられているわけであります。既に第一次ウタリ対策、これは七年であります。それから第二次も七年、それぞれ相当な成果が上げられてきているわけでありますが、第二次対策というのが今年度で終わるわけですね。来年から新しい計画に入っていかなければいけないということで、そこで北海道知事の諮問機関としてウタリ問題懇話会というのがあるのでありますが、ここで三月の末に、これに関する答申を知事に出しているわけであります。
 この答申の中で、第三次対策を来年からやはり七年という、大体従前の期間で実施をすべきではないかというような内容の答申になっているのでありますが、これを受けて今北海道知事は、鋭意計画策定の作業に入っているわけであります。策定でき次第、国に対しても要請があろうというふうに思うのであります。この福祉対策の取りまとめは開発庁がやっているわけでありますので開発庁からでも、この第三次対策についての要請が道側からあったときに、従前の経過から見て当然前向きに積極的に対応するものであろうと思うのですが、いかがですか。
#17
○大串政府委員 北海道の調査は六十一年六月に実施されまして、現在北海道の方で鋭意検討中と聞いております。概括、我々としましても実態調査の内容を聞いておりますけれども、生活保護世帯等の割合が相変わらず高いということ等もございまして、恐らく第三次福祉対策を北海道の方で要請されるであろうと考えております。
 そういうことで、我々としましてもウタリの方々の生活水準の向上並びに一般道民との格差是正ということを考えれば、積極的にそれをお受けして強力推進を図らなければならぬ、このように考えておるわけでございます。
#18
○五十嵐委員 また、このウタリ懇話会で実は別に新法に関する分科会のようなものがあって、ウタリの皆さんからいろいろ要請のある新法問題について、諸外国の例などを含めて鋭意、かつ多くの国民の理解を得られるような説得力のある内容にしなければならぬわけでありますから、そういう立場での検討が続けられているようであります。この問題はなかなか大変な問題でありまして、国会でもしばしば今日までの論議を見ているところであります。
 殊に、例の旧土人保護法があって、これにかわる新法問題に関していろいろ議論がおる。ちょっと調べてみますと十五年ぐらい前にもあるわけで、関係の大臣等からぜひ政府内に審議機関のようなものを設けていろいろ勉強したい、こういうような答弁もしばしば今日まで行われてきているわけなんです。ところが、一向にそういうことが行われる気配がなかった。常にやはり期待が裏切られ通してきているのではないかというふうに思うのです。
 最近では、例の人種問題等に関する中曽根発言というようなものもありまして、この問題についてかなり関心が集まっているわけで、中曽根総理自身も答弁の中で検討中であるというような話をなされているわけなんでありますが、しかしどうもいろいろ聞かしてもらうと、総理のお気持ちに反して、実際にそういう審議が機関を持って行われておるというようなことにはなっていないように見受けられるわけなんであります。非常に残念に思う。
 私はこの間、三月二十七日に総理あてに質問主意書を提出したのでありますが、これに対するお答えも非常に誠意のない内容になっているわけですね。
 まず、この内容について一、二ちょっと伺いたいと思うのでありますが、私どもの質問としては、その第三項に、国連に対する人権「報告書の作成の基本となる次の点についてどのような考えか簡潔に示されたい。 1 日本に少数民族は存在するか否か。 2 日本にB規約第二十七条にいう権利を否定されている少数民族は存在するか否か。」こういう御質問に対する答えとして、答弁書はこうなっています。「昭和五十五年に提出した前回の報告においては、市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十七条全体の趣旨に照らし、同条に規定された権利を否定された少数民族は我が国には存在しないとの趣旨を報告したところであるが、更に、御質問の各事項を含め、第二回報告の内容全般にわたって検討作業を継続中であり、その内容につき申し述べる段階にない。」こういうお答えになっているわけです。
 そこで、後藤田長官はきょうは外務大臣の代理ということでありますが、しかし長官はもともとこの問題では大変な権威者で、いつもお答えをいただいておりますので、ぜひ後藤田長官にお答えいただきたいと思うのです。
 ここで言うように、「同条に規定された権利を否定された少数民族は我が国には存在しないとの趣旨を報告した」というのでありますから、したがって権利を否定されていない少数民族はいるということだろうと思うのです。権利を否定された少数民族はいない。これは後藤田長官が記者会見あるいは答弁等でも、少数民族はいないというものではないのだというような御発言等も何回かしているのも承知しておりますし、ここにもその記録等もあるわけであります。そこで、そういう少数民族自体は存在しないというのではなくて、二十七条に規定された権利を否定された少数民族はいないという意味なんだ、そういうことにそのまま受け取ってよろしゅうございますか。
#19
○後藤田国務大臣 私が従来から一貫してお答えしておるのは、日本民族そのものがこういった地理的な環境のもとで、南からあるいは北から西から東からというような、海流等の関係でこの島に日本人というものが長い歴史の過程の中で血の混交ででき上がったものだから、そういうような意味合いにおいて、日本人というものはもともと一体のものである。しかしながら、こういった歴史の流れの中でも今問題になっておるウタリの諸君、これは二万とも三万とも言われますけれども、その方々が北海道におる。これは少数民族である。特殊の習慣、言語等も今日持っておるということであれば、これはやはり日本には少数民族は存在する、こう言わざるを得ません、こう私は申し上げているのです。
 しかし、御質問の国連の人権規約二十七条でございましたか、我が国の憲法上あるいは法律上いわゆる差別をされておるような二十七条で言う意味の少数民族がおるかと言えば、これは私は、それはこの前の国連への日本の報告書のとおりおりません、こう申し上げているわけです。そこが議論の分かれるところで、そうではないではないかという御主張の方もいらっしゃる。この国連の二十七条による少数民族有無の問題についての回答を近くまた出さなければならない時期になっておるわけです。そういうことを控えまして、そしてついせんだって来のいろいろな問題もありますから、政府としましては今外務省を中心に国連当局等とも連絡をしながら検討しておるというのが実態でございます。
 ただ、現時点で言えることは、まだ結論を出しておりませんけれども、二十七条に言う意味合いの少数民族であるならばこれは日本にはおりません、こう私は言わざるを得ない。
 それから、先ほど来の審議会をつくれとか法律をつくれ、これも私は確かに一つのお考え方だろうと思うのですよ。しかし今日ウタリの問題を考える場合には、やはりウタリの諸君のまずは生活の問題ですね、あるいは生活を取り巻くいろいろな環境の問題。それは教育の問題とかいろいろな問題があるでしょう。こういう問題について、北海道の他の道民との間に格差があるということであれば、私はそれこそ各省の間で、今福祉の問題等が中心になっておるようですが、開発庁を中心にして十ぐらいの省庁の連絡会議で検討しておりますね。この面の仕事こそ私はもう少し充実をして、実態的な意味においてのウタリ問題を解決をしていく。
 余りやれ法律をつくれ、審議会をつくれ、そうすればそれによってどうこうといったような主張そのものの物の考え方は、私から言えばそれはむしろ反対だ、逆転している。実質面をもう少し本当に、ウタリの諸君の環境をよくするという意味における各省庁の活動を強化をする、北海道庁を中心にしてそれを助けていく、これが本当の意味でのウタリ問題の解決に通ずるのではないかということを考えておるのが私の今日の考え方でございます。
#20
○五十嵐委員 今のお答えからいうと、まず一つは具体的には第三次ウタリ対策、さっき開発庁の意見を聞いておりましたが、第二次に引き続いて来年から始まろう、これについては従前より増して内容を充実する。つまりいろいろな施策を金額、ボリュームの上でもあるいは質的にももっと広げて充実をして対応していこう、前段の部分についてはそういうぐあいにまず受け取っていいですか。
#21
○後藤田国務大臣 私のお答えしているのはまさにそのとおりなんです。実質面をもう少しきちんとしたらどうだ、こういうことでございます。
#22
○五十嵐委員 それから後段の方なんですが、これは私はちょっと理解が違うのですね。長官お話しのように少数民族だ。そうとすれば、少数民族の皆さんの民族としての自主性といいますか、こういう主体的な発想を尊重していかなければいけないわけです。そんな意味では、ただ国がやればいいということだけ、行政でやればいいということだけでなくて、そういう主体的な意思の発揚というものを大事にしながら、民族的な誇りとか文化とか、こんなものも、それは施策の面でのいろいろな補助がどうだとか何だとかということもなるほど大事かもしれないが、しかし人間というのはパンだけではないわけで、もっと大事な心の問題があるわけですから、そういう意味では少数民族としての誇りのある生き方や施策というものがやはり必要だというふうに思うのですね。そういうところへの配慮が十分なされてこそ民主的な国家形成であろうと僕は言えると思うのですが、どうですか。
#23
○後藤田国務大臣 そこが五十嵐さんと私の議論の分かれるところなんですよね。それは確かに一億二千七百万のうち何名、あるいは五百五十万のうちに二万五千とか三万名といったような場合に、本当にそういう法律をつくり制度的にも別のものにして、それで確かにそれは民族の誇りとかいろいろなものがあるでしょう。それはそれなりに私は尊重してやっていくことはいいけれども、それを特段に際立たせてやることが本当の意味でのウタリの諸君の幸せに通ずるのか、それともそうでなしに、実際の生活を取り巻くいろんな環境面をよくしてあげるということが幸せに通ずるのか、そこらはよほど真剣にひとつお互いに、考え方は違いましてもお互いに話し合ってどの道を選ぶのが一番いいのかということを検討すべきなんじゃないでしょうかね。私はそこを申し上げているわけでございます。
#24
○五十嵐委員 見解はかなり違うような感じがしますけれども、しかし際立たせるとか際立たせないとかいうのはこれはまあ問題ではないので、しかしやはり物の考え方の基本にそういうものをしっかり据えておかなければ、これから日本が単一民族国家なんということを、それはもうこの時代に言ったり思ったりしている人は、何かいるんじゃないかという説もないわけではないが、しかしまあないだろうと思います。やはりもっと、しかも新しくどんどんいろいろな民族を受け入れていかなきゃいけないわけだし、国際的な日本の近代国家というものを考えれば、私はぜひその考えについては再検討してもらいたい。今御検討いただいているようでありますから、十分にその点は検討して、長い間のウタリの皆さんの期待というものもしっかり受けとめてやってほしい、こういうぐあいに思います。
 そこでこの機会に、これはちょっと通告してなかったものですから、お答えとして十分なものでなくとも結構です。しかしお願いをしたいということなんです。
 御承知のように北海道旧土人保護法というのがあるわけですね。これは常に問題になっているところでありますが、この第八条にこういうのがあるんです。「前条二要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益ヲ以テ之ニ充ツ著シ不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス」この場合の前条というのは何かというと第七条ですね。「北海道旧土人ノ保護ノ為必要アルトキハ之ニ関スル施設ヲ為シ又ハ施設ヲ為ス者二対シ補助ヲ為スコトヲ得」こういうのがあるんですね。それを受けて今の八条で、これに要する費用は旧土人共有財産の収益をもって充てる、それで足りないときには国庫からこれを充てるということになっているんですね。突然の質問ですからおわかりいただけないと思いますが、この北海道旧土人共有財産というものは今日あるのかということなんですよ。わからなければわからないというぐあいに答えてください。
#25
○大串政府委員 先生御案内のように、旧土人保護法の所管庁は厚生省でございますが、きょうは厚生省の方はお見えになっていないようでございます。私どもも、突然のお話なものでございますので、ちょっとお答えいたしかねるわけでございます。
#26
○五十嵐委員 わからないのは仕方ないと思います、なかなか普通わからないことなものですから。ところが実際は、いつもトラブルが起こっているわけですよ。
 はっきりしているのは、知事のところに、金額でいいますと九十一万ばかり金が金庫に入っているのです。これは旧土人の共有地を貸したりなんなりしたときのものだとか、いろいろまあ御下付いただいたものだとか、そんなものでわずかな金額ですがそれだけのものは金庫に入っているようですよ。
 それから、共有地というのがあるわけですね。この共有地が実はいろいろな変転を経て、殊に戦後の農地改革なんかで、なくなっちゃったというのが多いんですけれども、しかし現にやはりあっちこっちあるんですよ。しかも、それをめぐっていろいろなトラブルがあるわけなんです。
 例えば釧路管内の厚岸で、厚岸小島それから門静などにアイヌ共有地が点在しているのですね。これが個人に売却をされたりあるいは鉄道の用地だとか道路用地にされているとかこういうことがあったり、あるいはこれは私はよく確認しておりませんけれども、伊達市の小さな島がありまして、それなんかも共有地になっていて、実際にはしかしほかの人が使っているのですけれども、そういうさまざまなことがある。旭川でも昔から実はこれをめぐって問題がずっとありまして、明治三十三年にアイヌ地払い下げ反対運動だとか、昭和七年のアイヌ地返還運動だとか、こういうようなものがずっと続けられております。あるいは最近も、もとアイヌ共有地というようなものに建っていた公共的な建物が移転をした跡を、これは経過からいうとアイヌの何か共同の施設にならぬかとかそんなような要望なんかも出てきたり、いろいろなことが実はあるわけなんですが、これはどうも山下長官の方になるのではないですかね、こういうようなことの点検や調査というものは。
 お願いしたいのは、今わからないのは当然だろうと思うわけですが、調べてほしい。このアイヌ共有地について追跡の調査をしてほしい。それで、どういうことになっているんだ、どういう経過なんだ、それで多くの関係する人たちが疑念が晴れたり、これはこうなんだなとか、やはりその追跡の調査を一遍してほしいという要望なんです。いかがですか。
#27
○山下国務大臣 突然の御質問で、所管すら私は実は心得ておりませんが、多分北海道開発庁ではないかと思われるのでございますけれども、早急に政府として対応いたしまして、あるいはまた道庁、北海道とも話し合って、御趣旨の点は進めてまいりたいと思います。
#28
○五十嵐委員 つまり、追跡調査していただけるということですね。
#29
○山下国務大臣 ただいま申し上げましたように、まず所管がどこであるかということを話し合わなければいけません。それは北海道開発庁じゃないかと思うのでございます、まず政府としての所管は。ですから、まずそれがよくわからずには……。
#30
○大串政府委員 旧土人保護法に関する共有財産ということでございましたら、これは所管は厚生省とはっきりしております。この問題につきましては、私もはっきり存じてはおりませんけれども、恐らく北海道庁の方でそういう調査等は委任等を受けましてやれることになっているんじゃないかというふうに考えております。
#31
○五十嵐委員 後藤田長官、今お聞きのようなことでして、いつものとおり所管がこんなことになるんですね。ここらが非常に無責任体制で、この間来、国会でもいろいろ指摘されているとおりでありますので、ここのところも後藤田長官のところで責任を持ってお決めいただいて、道がどうとかというのではなくて、道に報告せいということを御指示いただいてやらせるようにすればいいのです、これはやはり国が責任を持って把握をしてもらわなければいけないことでありますから。後藤田長官よろしゅうございますね。
#32
○後藤田国務大臣 いずれにいたしましても所管さえどうもはっきりしないといったようなことではこれは申しわけありませんので、これは政府内で検討をいたしたい、こう思います。
#33
○五十嵐委員 後藤田長官、時間がないようでありますからもう一問で。
 この間、参議院の予算委員会で山口哲夫議員からの質問もありまして、そのときのお答えもいただいておるようでありますが、国連の人権委員会、そのもとに人権専門委員会というのがあってそこへ報告を出すわけでありますが、このこと一つにしてみても所管がどうも非常に不明確で、あそこの協議会を、連絡機関を持っているというようなことなんか総理答弁であったのですが、しかしこれも明確でない。窓口についても今のようなありさまがそのままこの前も実は答弁であるわけですよ。これは非常にうまくないというふうに私思うのです。このときの答弁というのは、早速責任持って早く決めますということになっているようですよ。もうお忘れになったんではうまくないですけどね。
#34
○後藤田国務大臣 それは人権規約の問題ですね。これはこうなっているのです。あのときは関係省庁なんというようなことで、関係省庁が何かよくわからない、こういうお話であったと記憶しておりますが、これは外務省中心でございます。外務省が中心で北海道開発庁、環境庁、法務省、文部省、厚生省、農水省、内閣官房、これで打ち合わせを行って作業をする、こういうことになって極めて明確でございます。したがって、これについてはいつごろまでかかるかわかりませんが、多少まだ時間がかかると思いますが、外務省を中心に回答案等については責任を持って政府として対応する、こういうことにいたしたいと考えております。
#35
○五十嵐委員 いわゆる人権問題の窓口は外務省、これでいいわけですね。中平さんよろしゅうございますね。
#36
○中平政府委員 今官房長官が言われましたように、外務省といたしましては人権規約上の義務といたしまして国連に報告書を出さなければならない、そういう立場にございます。したがいまして、その人権規約に基づく報告書の作成という面につきましては外務省が現在取りまとめてやっておる次第でございます。
#37
○五十嵐委員 報告書の作成といったって書くだけが外務省というものじゃないわけでしょう。そういう方針、内客を決めることの取りまとめは外務省が責任を持ってやるということでしょう。後藤田長官のお話はそうじゃないですか。あとの書くことだけはおれのところでやるんだといったら、じゃどこで決めるかということになるでしょう。それはうまくないですよ。
#38
○中平政府委員 おっしゃるように取りまとめをやっているわけでございまして、非常に多岐にわたっております。したがいまして、そういう意味では全省庁と相談しているわけでございますが、先生御指摘のいわゆる二十七条の関連におきましては先ほど官房長官が言われた省庁を中心としてやっている、こういうことでございます。
#39
○五十嵐委員 二十七条についてはわかりました。二十七条についてはわかったけれども、しかしアイヌの人権問題あるいは少数民族の人権問題等、さまざま出てくるわけですから、後藤田長官、今のようなことだけではなくて、当面今やっている作業としてはその作業だからわかりますが、基本的にこの種の問題はどうだということを、方針をぜひなるべく早く、何が出てきても問題のないようにしておいてほしいというぐあいの要望をしておきたいと思います。
 後藤田長官、予定があるところをどうもありがとうございました。
 そこで、その人権委員会に提出する第二回の報告書の問題ですが、これを御審議いただく人権専門委員会というのは年何回開かれているのですか。
#40
○中平政府委員 先生の質問の御趣旨は国連の人権委員会のことでございますね。それは通例、年に三回行われております。
#41
○五十嵐委員 しかし去年は二回しかなかったのですよ。一回分ずれ込んだ格好になっているわけですけれども、一体なぜ報告書がおくれているのですか。
#42
○中平政府委員 我が国がおくれている理由といたしましては、実はその背景がございまして、その背景を御説明させていただきたい、こう思うわけでございます。
 国連人権委員会、B規約人権委員会が採択いたしました決議に基づきまして五年ごとに提出するということになっているわけでございますが、我々が事務局を通じて調査したところによりますと、現在、期限が来ているにもかかわらず出せないという国が四十一カ国ございます。それは、ほかの国の事情はわかりませんが、日本といたしましては、国連事務局がこれだけたくさん未提出国がある、したがってそう慌てて出してもらっても困るというような趣旨もございますし、しかも私たちは、もう御説明したとおりできるだけ最新の情勢を踏まえて報告書を出したいということが我々の念願でございまして、そういうことから去年の十月が期限でございましたけれどもややおくれておる、こういうことでございます。
#43
○五十嵐委員 あなた今非常に重大なことを言ったんだよ。国連事務局側で、そんなに慌てて出すことない、余り早く出されても困る、本当にそういうことを言ったのですか。いいですか、あなた、これは大変なことですよ。冗談じゃないですよ、あなた。もう一遍答えなさい。
#44
○中平政府委員 今申し上げましたように四十八カ国でございますか、そういうあれがたまっておるわけでございまして、そういう状況にかんがみましてそれを今直ちに出してくれというようなことは要望しない、そういう感触でございます。
#45
○五十嵐委員 四十八カ国がたまっているというのは何ですか。それは報告書を出したものが人権委員会の事務局に審議をしないで四十八カ国分たまっている、これを次々に審議しなければだめだからそれで早く出されても困る、こういうことですか。あるいはまだ報告が出ていないのが四十八カ国ということですか、どっちですか。
#46
○中平政府委員 たまっておるのが七カ国で、出しておりませんのが四十一カ国でございます。
#47
○五十嵐委員 いいかげんなことを言ってもだめですよ。出てたまっているのは七カ国でしょう。七カ国の国名、私はきのう通告してありますから、国とそれはいつ提出されたということ、ちょっと知らせてください。
#48
○中平政府委員 七カ国につきまして、まずコンゴという国がございますが、これは提出いたしましたのが八六年、昨年の二月でございます。それからイラク、昨年、一九八六年四月でございます。それからルーマニア、一九八六年一月、それからエクアドル、一九八六年八月でございます。それからデンマーク、一九八六年七月です。それからコロンビア、一九八六年十一月です。それからザイール、一九八七年二月。以上七カ国でございます。
#49
○五十嵐委員 さっき言いましたように、去年は、例年三回あるべきところが、国連の財政的な理由で二回しか行われなかった。ことし三回やるようですね。そこで、我々の情報では、今出せば十月の秋会期には論議できるんじゃないかと言われているんですね。この間一回目終わった、二回目七月ですか、我々の情報では。あなたはこの間参議院予算委員会での答弁で、今出したって、ことしはできないで来年になるんじゃないかというようなことを言っておったようですが、どこでそういう情報をお入れになりましたか。そうして、今お聞きしますと八六年十一月と八七年二月、二カ国出ていますね。予定どおり去年十月に出していれば、この間のところに入っていたわけでしょう。そうですね。
 そこで、なるべく新しい情勢の中で出した方がいいと思う、そんなことを言っていたら、ことしより来年、来年より再来年というように、いつまでたったって切りがないじゃないですか。そんな詭弁を言ったってうまくないですよ。それはやはりきちっと、もうとにかく七カ月も予定期限よりおくれているのですから。私らが国連事務局に聞いているのでは、まあ二、三カ月はいろんな状況からいっておくれるのは普通、やむを得ないだろう。おくれたところについて、今何か国連の事務局では遅延しているところの名簿を発表するんですね。余りそんなところに名前の出るようなことではうまくないのじゃないですか。どうですか。
#50
○中平政府委員 御指摘の点は理解するところでございまして、昨年の十月の段階でも、昨年の秋の臨時国会でも今のような御趣旨をお答えしたわけでございますが、その後、外部の専門家の方の御意見を伺うとか、従来以上にこの問題について慎重にいろんな検討をしておるという事情もございまして、おくれている事情は御理解いただきたいと思うわけでございます。
 確かに昨年の十月の段階で出していれば、それ以後に二カ国出しておるではないか、こういう御指摘はごもっともでございますが、例えばザイールはことし出したわけでございますが、実はザイールは四年前、八三年に期限が来ておりまして、これも大分せっつかれたと見えまして、ことし出したわけでございますが、確かにおっしゃるように長いリストがございまして、リストに名前が載るのは芳しくないではないかという御指摘は私どももそのとおりだと思いますが、実はこの報告書並びにその他国連の条約に基づく報告書がございますけれども、やはり各国はその提出に当たりまして非常に難しい問題を抱えていると見えて、このB規約だけでなくて、いろんな報告書が滞っておるということも事実でございます。それにもかかわらず、我が国としてはできるだけ早期に提出すべきであるという考え方には変わりはございませんので、今後ともできるだけ早期に提出すべく努力してまいりたい、こう思うわけでございます。
#51
○五十嵐委員 そうしましたら、この前、参議院の予算委員会でお答えになった、まあ来年くらいでないかとかというようなことはこの際撤回して、やっぱりできるだけ早く、僕はできれば十月の秋会期には少なくとも間に合うようにきちっと出してもらいたい。もちろんそれまでにいろいろ検討作業は要るわけですから、そういう作業もしながら間に合わすようにしてほしい。こういうぐあいに思うのですが、よろしゅうございますか。
#52
○中平政府委員 ただいま委員御指摘の点は十分私ども念頭に置きまして、できるだけ早期に提出したい、こう考えております。
#53
○五十嵐委員 これは中平さんのところでお取りまとめになっておるわけだろうから聞きますが、この前の質問書に対する総理名による答弁書なんですが、外務省の姿勢というのはいつもこうだから僕は最後に指摘しておきたいのですよ。僕の方からの質問では、今の問題に関してこう言っているわけですね。「人権報告書を作成するに当たって関係行政間相互の協議はどのようになされているか。窓口である外務省国連局は、他のどの省庁とどのような経過で協議を打つできたか、明らかにされたい。」二つ目は「人権報告書を作成するに当たって、政府はアイヌ民族についての独自の調査を行ったか。」こう具体的にお聞きしているわけですよ。これに対するお答えは「報告は、政府として作成するものであり、第二回報告については、専門家による検討を含め、検討作業を鋭意継続中である。」これだけでしょう。これは全然答えになっていないでしょう。まあそれでもぼあっと、なかなか上手にかわされたなというようなことならまだわかるけれども、全然見当違いだものね。答えにも何にもなってないでしょう、これ。改めて答えてください。手元にありますか。
#54
○中平政府委員 私もここに持参しておりまして、御指摘の点はわかりますが、外務省を中心としてやっておるという点につきましては、先ほども官房長官がお答えしましたように、現在はこの二十七条関係につきましては外務省を含めて八省庁で協議しておるということでございます。
 確かに非常に木で鼻をくくったようなあれではないかとおっしゃりたいと思うわけでございますけれども、この問題に外務省としてお答えする、全体としてお答えする立場にはございませんのでこういうことになったのではないかと思いますが、先ほどから官房長官がいろいろ御説明したとおりの情勢でございまして、私どもとしてはこの実態面につきましては関係省庁が関係しているところでございまして、国連の方からこういう形式で方向を出せということで、そういう説明とか後の取りまとめとかというところで私どもは中心となってやっておるということでございます。その点につきましては御理解いただきたい、こう思うわけでございます。
#55
○五十嵐委員 御理解いただきたいと言ったってだめだね。こんな答えはないでしょう。今後もあるから僕は言っているのですよ。やはり適当でなければ陳謝してくださいよ。それから内容について改めて出すのなら出してくださいよ。今度あなたのところが責任ということに決まったわけでしょう、さっき。そんないいかげんなことでなくて、きちんと出してください。お答えください。
#56
○中平政府委員 先ほど、これは三月二十七日付で四月に出しました回答でございますが、これは内閣が中心となって書いた回答書でございまして、人権規約に基づく報告書に関連する部分につきましては、外務省としては今後中心となってやっていかねばならない、こう考えておるわけでございますが、このウタリ問題全体につきましては、先ほどから官房長官が言っておりますように私どもはその一部を担当しておるということでございます。
#57
○五十嵐委員 時間が来たからきょうはもうこの程度にしますが、要するに深く反省を求めておきたい、こう思うので厳しく言わせていただきました。ぜひひとつ今後――何かあるのですか、どうぞ。
#58
○中平政府委員 委員が我々の誠意が足りないのではないかとおっしゃる点につきましては、我々十分念頭に置いて今後気をつけたいと思います。
#59
○五十嵐委員 では終わります。ありがとうございました。
#60
○加藤委員長 児玉健次君。
#61
○児玉委員 この件の質疑に入る前に一言私たちの基本的な考えを述べておきたい、こう思います。
 言うまでもなく歯舞、色丹、これは北海道の文字どおり一部であって、それが現在ソ連によって不法、不当に領有されている、これは戦後処理の極めて不適切なそういうことの結果である。それから千島全体について言えば、これは日本が平和的手段で取得したものでありまして、すべての千島、それを速やかに返還してほしい、これは当然全国民の願いでもあります。
 昭和五十七年に成立した本法の場合、サンフランシスコ平和条約二条(c)項、その枠の中で北千島の放棄を固定化しようとしておりますし、それから歯舞、色丹と国後、択捉を同列に置くという誤りを犯している。しかし、私たちとしてはこの四島返還が速やかに実現することについてはもとより異論があるわけではなく、かつ旧千島居住者への援護措置の強化及び根室地域の経済振興等にこの法律が一定の役割を果たす見通しがある、こういう立場から賛成したわけでして、その態度は今も変わりがありません。
 そこで注意を喚起したいのは、昨年の十月、日ソ共同宣言締結三十周年に衆議院が全会派一致の決議を採択いたしましたが、その中で「我が国固有の領土である歯舞、色丹及び国後、択捉等北方領土」こういうふうになっている。これは明らかにこの法律の中身を大きく前進させているものであって、昭和五十七年八月六日の本特別委員会における我が党のP長委員の主張したことと極めてよく重なっているわけでして、この点については皆さんの注意を改めて喚起したい。それをまず最初に述べておきます。
 そこで、提案の苦労をなさっている上草議員にお尋ねをしたいわけですが、北方領土隣接地域振興基金、当初百億が見込まれておりましたが、現在それが約五十億にとどまっている。なぜそうなったのか、その点についてお伺いをしたい。
#62
○上草議員 五年間で目標が達成されなかったということについてはまことに遺憾に存じているところでございます。一律カットという厳しい概算要求基準のもとで政府も自民党も最善の努力をしてまいりましたが、このような結果になっていることについては非常に残念に思っておるところでございます。
#63
○児玉委員 北方対策本部長でもいらっしゃる山下長官にこの機会にお伺いしたいのですが、今回の提案によれば、向こう五年間約四十億程度の経費が見込まれておりますが、政府としてこれの達成の見通しについてお伺いをしたい、こう思います。
#64
○山下国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、この議員立法が通過いたしましたならば、その立法の御趣旨を踏まえて、ひとつ一日も早く達成するように、さっき申し上げましたように、これは時限立法で五年間ということになっておりますけれども、五年間のうちにやればいいやという気持ちは持っておりませんと申し上げたとおりであります。
#65
○児玉委員 そこで、この法が成立してから五年間経過したわけですが、これは北海道開発庁にお伺いしたいのですが、この地域、一市と四町のこの五年間における生活にどのような変化があったか。もちろん部分的な法律が成立したからといってその地域全体が大きく変わるということは望むべくもありませんが、しかしこの間、例えば根室管内で言えば、昭和五十七年の人口が九万九千百三十一名だった。それが昭和六十年国勢調査の段階で九万六千五百二十五人、二千六百六人人口が減っている。これは減少率で二・六%であって、私たちは小さいものだとは思いません。
 それからその地域の住民の暮らしに決定的な役割を果たす医療の状況、例えば人口十万人当たりの医師の数、全国の平均は百五十・六人、北海道は百三十五・三人、根室管内は五十三・六人。私たちの調査によれば、根室管内全体で今活動している医師の数は五十二人である。そういう状態の中でこの地域の特に暮らしの問題、それが全体として前進をしているのか、それとも残念ながら依然として過疎化の進行とかかわって生活の困難が進んでいるのか、そのあたりについてお伺いをしたい、こう思います。
#66
○大串政府委員 北方領土の返還につきましては、これは国政の基本方針でございます。そのため返還運動の拠点でございます当地域の社会的な発展、これを図ることは極めて重要な問題だ、このように考えております。
 政府としましては、先生御案内のように昭和五十八年から施行されました北方領土特別措置法に基づきまして策定されました振興計画に沿って事業を施行しておりますけれども、この結果、道路、空港、港湾などの産業開発基盤、さらには社会開発基盤等も一段と進んできておるというふうに考えております。
 しかしながら、先生御指摘のように地域の基幹産業の一つでございます水産業は、二百海里の漁業規制の一層の強化等もございまして非常に厳しい状況にございます。さらに、農業につきましても生乳の生産調整、乳価の抑制等、この地域の産業経済を取り巻く状況は一段と厳しいものがあるというふうに考えております。したがいまして、今後関係省庁と連携を図りつつ、この地域についてより一層の活力の維持発展を図るということで努力をしていく覚悟でございます。
#67
○児玉委員 この一市四町の暮らしを前進させていく、そして人口の過疎化傾向を食いとめていく、これはこの法の趣旨にもかなっていると思うのですね。例えば有効求人倍率、昭和五十七年根室管内は〇・二一、六十一年が〇・二四、ことしの三月はちょっと上がって〇・三一、ただし、全体として過疎の進行、特に若者がなかなか一市四町に残らない。一番大きな問題は地元で仕事が十分に見つからないからではないか、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
#68
○大串政府委員 先ほど先生から御指摘のございました人口の推移、これをちょっと調べてみましたけれども、先生のお調べになったのとちょっと時点が違うかもわかりませんけれども、五十八年三月から六十二年三月までに大体二千五百人減じております。その中で特に根室市が二千四百人近く減となっております。これは水産関係の例の国際漁業関係によるものだというふうに考えております。それから、農業生産額、漁業生産額につきましては若干上がっております。
 過疎につながるのではないかというお話でございますが、そのようにならないためにも、地域の活性化を図るために特に一・五次産業等を中心に人口減に歯どめをかけていきたい、このように考えておるところでございます。
#69
○児玉委員 ちなみに、さっき私が言った数字は国勢調査の昨年の段階の数字です。九万六千五百二十五人。
 基金の運用について北海道や、それから政府がなかなかよく御苦労されているし、知恵も出されている、そのことは今度調べてみてかなりよくわかりました。例えば昭和六十一年度に根室市の青少年センターの前庭の整備、金額自身はそう大したものではないけれども、どこからも補助が出ないから、これに対してこの基金から支出が行われて、それが地元業者の仕事となり、雇用にもつながっていく。それから、先ほど言った医療の問題について言えば、根室の市立病院の医療機器の購入に対して一定の基金が払われている、これも私たちは結構なことだ、こう思うのです。
 そこで、この後の運用についてなんですが、できるだけ現在の政府や北海道の補助制度とかかわりのないところという一つの限定がありますが、地元の業者に仕事を確保するような、そして結果として地元での雇用が前進していくような事業について関係市町、そして北海道と協議して進めていただきたい、こういう強い希望を持つのですが、いかがですか。
#70
○大串政府委員 根室地域におきましての雇用情勢は厳しいところでございまして、私どもといたしましては、この基金の運用に限らず、開発事業全般につきましてもそのような雇用情勢に配慮するべく北海道並びに地方公共団体等に対しまして御指導を申し上げているところでございます。
#71
○児玉委員 次に、法務省にお伺いしたいのですが、千島の土地と建物の登記簿が現在どのようになっているか、そのことについてお答えをいただきたいと思います。
#72
○田中説明員 お答え申し上げます。
 今、千島列島の登記簿関係はすべて釧路地方法務局の根室支局に全部保管してございます。これは貴重な資料でございますので普通の登記簿と同じように厳重に保管してございます。
#73
○児玉委員 すべてとおっしゃいましたが、その範囲はどこからどこまでですか。
#74
○田中説明員 千島列島の中で南の方の四島分はもちろんのことでございますが、そのほかに得撫以北の分、これについても一応根室の方で保管してございます。
#75
○児玉委員 私は地元からそのことを聞きまして大変驚いたのです。かつ、率直に言って感動しました。敗戦時のああいった混乱の中で、確かに一部は敗戦時根室の裁判所にありましたが、しかし登記簿のかなりなものは千島に存在していましたね。それが今課長がおっしゃったようにすべて十分に保全をされている。大変な御苦労があったと思うのですが、どんな経過でそうなったのか、これを聞かしていただきたいと思います。
#76
○田中説明員 これは登記所の管轄の関係がございますけれども、北方四島のうち、国後についてはその中の泊というところに出張所がございましてそちらの方で登記事件をやっていたわけでございます。それ以外の島の部分については、いろいろな経過はございましたけれども、終戦直前に根室の方で保管する事態になりました。国後では今申しましたように終戦時まで登記所がございましたのでそちらで仕事をやっていたわけでございますけれども、終戦になりましてソ連軍が泊地域に進駐するということになりまして、その前日に泊出張所の職員が登記簿を全部漁船に積んで根室の方に運んだという経緯がございます。
#77
○児玉委員 泊出張所の関係者の御努力はある意味では命がけだった、そういうふうに私たちは聞いているわけです。これは、当然日本の固有の領土である千島についてその将来を見通しながら、当然のというか、非常にすばらしい責任感を発揮されたものだ、こう考えているわけです。
 そこで今、歯舞、色丹及び文字どおりすべての千島について完全に保全されている登記簿、それについてもし関係者から申し出があれば保管されているすべての登記簿について記載事項の証明を発行しているというふうに伺うのですが、そうでしょうか。
#78
○田中説明員 そのとおりでございます。
#79
○児玉委員 それでは、択捉、国後までだけでなく、得撫島から占守島に至るその関係で登記されている部分がある。ただし、件数は非常に少ないわけですが、それについてももし申し出があれば課長の今のお答えのとおり当然証明を出すということですね。
#80
○田中説明員 今私どもが把握している限り、択捉の先の得撫以北の土地でございますが、得撫それから幌筵というところの登記簿がございます。この分についても記載事項の証明書が欲しいという申し出があればそちらの方は応ずることになると思います。
#81
○児玉委員 関係の登記簿について土地及び建物の所有名義人の変更があった場合に、どのように処理されているのでしょうか。
#82
○田中説明員 現在、得撫以北の土地については実はちょっと問題があるわけでございますけれども、択捉、国後、色丹、歯舞、この土地、建物について相続があったということの申し出がありましたら、登記法そのものの施行はこの地域について現在のところされておりませんけれども、将来この四島が日本に返ってくるときのために、一応相続がありましたということを、登記簿と同じような格好で記載したものを保管している帳簿の中につづり込んで、将来に備えております。
#83
○児玉委員 いつから、どんな経過でそのようになったのでしょうか。
#84
○田中説明員 四十五年五月一日からそういう扱いをいたしております。
#85
○児玉委員 私たちが調べたところによれば、今法務省のお答えもありましたが、得撫島について土地が一筆、建物が四件ある。それから占守島について建物の登記が七つあるというふうに聞いているのですが、その点事実かどうかお聞きをしたい。
#86
○田中説明員 御指摘のとおりでございます。
#87
○児玉委員 そうしましたら、確かに件数は少ない。得撫島以北についてはほとんどが戦前国有地でしたから当然そういうことになるわけですが、先ほどの記載事項証明を発行するという点についてはすべての千島に及んでいるのですから、相続人の扱いについても同じにすべきではないか、そう思うのですが、いかがですか。
#88
○田中説明員 この点については私どもの所管外でございますので、私どもの方から答えるのがいいのかどうかわかりませんけれども、私どもが理解しているところでは、サンフランシスコ条約によって日本が放棄したのは南樺太と得撫以北の千島列島ということでこざいまして、いわば得撫から以北の占守までの間は一応現在では私どもの国土ではないという理解を私どもしております。その関係で、貴重な資料として残してはございますけれども、一応それが将来登記の対象になるような土地ではないという理解をしておりますので、得撫等について申し出があっても、今の時点では処理をしてないということにしております。
#89
○児玉委員 この点、私納得できないのです。今法務省のお話のあったサンフランシスコ条約、それはもう昭和二十六年、昭和二十七年、その時期のことですね。そして先ほど法務省からお答えのあった「北方領土地域に所在する不動産の所有名義人の相続に関する暫定的取扱いについて」法務省民事局長の釧路地方法務局長に対する文書、これは昭和四十五年四月十日ですよ。その間についてはどうだったのですか。
#90
○田中説明員 その間は相続の登記の申し出があっても処理をしておりませんでした。先ほどから申し上げておりましたように、どういう記載があったかという証明は出していたはずでございます。
#91
○児玉委員 今の点は確かでしょうか。
#92
○田中説明員 確認はしておりませんが、たしか確かだと思います。
#93
○児玉委員 たしか確かだというのはなかなか確信のある答弁ですか、この点、私たちいろいろ調べているのです。この法務省の民事局長の通達では、「北方領土地域に所在する土地又は建物の登記簿又は台帳上の所有名義人に関する相続関係」云々、こうなっていて、昭和四十五年四月十日の民事局長のこの文書が契機になって、得撫以北について、所有名義人の相続についてだけそういう限定ができた。それまでについては何ら法務省からの特段の指示その他はなかったというふうに私たちは承知しているのですが、どうでしょうか。
#94
○田中説明員 この四十五年以降、今説明いたしましたように、相続の申し出がありますと、将来の、名義が変わったということの資料をつくっておくために登記簿の中に登記と同じようなことを書いたものを差し込む扱いを始めたわけでございます。ただそれ以前から、先ほど申し上げましたように根室の方では帳簿類を保管しておりますから、これについての閲覧とかそういうことに応じていたと思っております。
#95
○児玉委員 この点は私は重ねて強く要望しておきますが、記載事項の証明その他について千島全体に及んで、根室に今保管されている登記簿が現在の特殊な状況のもとで一定の利用がされているわけですから、所有名義人の変更についても同じ扱いがされて当然ではないか。この点は私は強く求めておきたい。
 そこで、今釧路地方法務局根室支局に保管されている登記簿ですが、土地関係が百八十二冊、建物の関係が七十一冊、どのように保管されているのでしょうか。
#96
○田中説明員 これは普通の帳簿と同じように、例えば登記の場合には、今登記簿冊をバインダーということでつづっておりますが、普通の登記簿と同じような状態につづりかえをいたしまして、棚に並べて厳重に保管しております。
#97
○児玉委員 法務局の皆さん方が登記簿を命のように大切にされているという点は承知しております。そして普通の状態であれば、これが十全にこの後も保全されていくであろう、こう私たちは思っております。
 そこで法務省に伺いたいのですが、一般の登記簿と同じようにということなんですが、一般の登記簿は万一のことがあった場合、その復元が可能です。ところが、この土地について百八十二冊、建物について七十一冊、これは私たち日本国民にとって、残念ながら今の段階では極めて貴重な歴史的書類ですけれども、私たちはできるだけ早い将来にこの登記簿が再び活用されるような状況がぜひ実現されなければいけない、こう思って努力をしてきているものなんです。
 そこで、この千島の関連の登記簿について万一の事態に備えて、例えば念のためにマイクロフィルムにおさめておくなど、文字どおり万一のために念には念を入れた保全の措置をとるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#98
○田中説明員 私どもも今根室で保管しております帳簿類それからいろいろそのほかに資料がございまして、例えば図面の関係、土地の図面の公図というようなものがございますが、こういうものは貴重な資料だと思っております。ですから、これの保管については今でも厳重に保管しておりますが、先生御指摘のような事態を考えますと、やはり二重保管ということも検討した方がいいかもしれないということもありますので、私の方でも少し検討させていただきたいと思っております。
#99
○児玉委員 では、今根室にあるこれらの登記簿が、私たちの先輩の大変な努力の結果一〇〇%保全されているという点については皆さんよく御存じです。それが持っている価値の大きさについても、これはもう皆さん御存じなわけですから、よく認識されているわけですから、今法務省が言われたその検討をできるだけ早く、できるだけ具体的に、十全なものにしていただきたいということを重ねて要望して、私の質問を終わります。
#100
○加藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#101
○加藤委員長 この際、本案は予算を伴う法律案でございますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べをいただきたいと存じます。山下総務庁長官。
#102
○山下国務大臣 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、北方領土問題の重要性にかんがみ、政府としてはやむを得ないと考えます。
 なお、御可決いただいた場合には、その趣旨を体し、引き続き努力をしてまいる所存であります。
    ―――――――――――――
#103
○加藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決をいたします。
 北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#104
○加藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りをいたします。
 ただいま議決をいたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#105
○加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#106
○加藤委員長 次回は、公報をもってお知らせをすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十二分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト