くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第108回国会 予算委員会公聴会 第1号
昭和六十二年三月十九日(木曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 砂田 重民君
   理事 今井  勇君 理事 野田  毅君
   理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君
   理事 吹田  ナ君 理事 上田  哲君
   理事 川俣健二郎君 理事 池田 克也君
   理事 吉田 之久君
      相沢 英之君    逢沢 一郎君
      愛野興一郎君    伊藤宗一郎君
      上村千一郎君   小此木彦三郎君
      小渕 恵三君    越智 通雄君
      奥野 誠亮君    海部 俊樹君
      片岡 武司君    小坂徳三郎君
      左藤  恵君    桜井  新君
      志賀  節君    田中 龍夫君
      西岡 武夫君    原田  憲君
      福島 譲二君    細田 吉藏君
      松野 幸泰君    村田敬次郎君
      村山 達雄君    井上 一成君
      井上 普方君    稲葉 誠一君
      川崎 寛治君    菅  直人君
      嶋崎  譲君    細谷 治嘉君
      坂口  力君    水谷  弘君
      山田 英介君    木下敬之助君
      楢崎弥之助君    石井 郁子君
      工藤  晃君    寺前  巖君
      矢島 恒夫君
 出席公述人
        社団法人経済団
        体連合会税制委
        員長      鈴木 永二君
        名古屋市立大学
        経済学部教授  牛嶋  正君
        慶応義塾大学法
        学部教授    神谷 不二君
        全日本民間労働
        組合協議会事務
        局長      山田 精吾君
        新潟大学経済学
        部教授     高橋 毅夫君
        税経新人会全国
        協議会理事長  関本 秀治君
 出席政府委員
        内閣官房副長官 渡辺 秀央君
        総務政務次官  近岡理一郎君
        北海道開発政務
        次官      高橋 辰夫君
        防衛政務次官  森   清君
        経済企画政務次
        官       島村 宜伸君
        国土政務次官  工藤  巌君
        外務政務次官  浜野  剛君
        大蔵政務次官  中西 啓介君
        大蔵省主計局次
        長       角谷 正彦君
        大蔵省主計局次
        長       篠沢 恭助君
        文部政務次官  岸田 文武君
        厚生政務次官  畑 英次郎君
        農林水産政務次
        官       衛藤征士郎君
        運輸政務次官  柿澤 弘治君
        郵政政務次官  小澤  潔君
        建設政務次官  東家 嘉幸君
        自治政務次官  渡辺 省一君
 委員外の出席者
        予算委員会調査
        室長      右田健次郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十四日
 辞任         補欠選任
  正森 成二君     東中 光雄君
同月十九日
 辞任         補欠選任
  宇野 宗佑君     片岡 武司君
  小坂徳三郎君     逢沢 一郎君
  宮地 正介君     山田 英介君
  永末 英一君     木下敬之助君
  金子 満広君     石井 郁子君
  東中 光雄君     矢島 恒夫君
同日
 辞任         補欠選任
  逢沢 一郎君     小坂徳三郎君
  片岡 武司君     宇野 宗佑君
  山田 英介君     宮地 正介君
  石井 郁子君     工藤  晃君
    ―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 昭和六十二年度一般会計予算
 昭和六十二年度特別会計予算
 昭和六十二年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
#2
○砂田委員長 これより会議を開きます。
 昭和六十二年度一般会計予算、昭和六十二年度特別会計予算、昭和六十二年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
 この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和六十二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌弾のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
 なお、御意見を承る順序といたしましては、まず鈴木公述人、次に牛嶋公述人、続いて神谷公述人の順序で、お一人二十五分以内で御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、鈴木公述人にお願いいたします。
#3
○鈴木公述人 鈴木でございます。
 本日は、このように貴重な時間をお与えいただきまして、大変ありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 それでは、昭和六十二年度政府予算案について、私ども経済界の意見を述べさせていただきます。
 予算案に触れます前に、私どもが現在置かれております経済環境と申しますか、事情について一言申し上げたいのでございますが、二言で申し上げれば、まことに厳しい環境の中に置かれております。
 一昨年から、急速なかつ急激な円高によりまして、今まで日本産業を支えてまいりました製造業、特に輸出産業におきましては、大変な大幅減収、減益という状態でございまして、そういったことが影響しまして、GNPも昭和六十年度の四%成長から六十一年度は二%台成長に落ちざるを得ないというのが確実になってきております。既に、素材、加工組み立て産業におきましては、雇用の問題が極めて深刻になっておりまして、御案内のように、ことしの一月には三%台という失業率を今あらわしておるわけでございます。円高はもともと申しますと、差益の還元などで円高による国内経済を下支えするというメリットもあるはずでございますけれども、その効果が今十分に出ておりませず、外需の減退をカバーするにはほど遠いという状態で、私ども苦しんでおるわけでございます。
 また、円レートにつきましては、G7で百五十円台を維持するということが合意されておりますけれども、製造業の立場からいいますと、このような急激なまた大幅な円高というのは、経済の空洞化ということが現実の問題になってきているように、厳しい状態でございます。また、円高にもかかわりませず、ドルベースの輸出額が一向に減らないということもございまして、市場開放や内需拡大など、日本に対する圧力や報復措置が一段と強まっている状況でございます。
 もう御案内のように、アメリカの下院では歳入小委員会で、この十二日に包括貿易法案を本会議に提出したという事態になってきております。
 そういうことで、目下産業界は危機克服のために懸命な努力をしておるわけでございますけれども、ただいま申しましたような環境、危機的様相につきましては、個々の企業あるいは産業界だけでは到底対応できかねる問題でございますので、ここのところは国におかれましても、あらゆる政策を傾注していただきまして、経済構造調整を円滑に進める環境づくりに大いに努力をお願いしたいところでございます。どうぞよろしくこの点はお願い申し上げます。
 このような経済情勢の中で、とりわけ重要なこと、特にここでこの席をおかりしてお願いしたいことは、六十二年度予算案の早期成立、早期執行ということでございます。景気対策という面から見ますと決して予算十分とは申せませんけれども、財政危機が深刻化し、財政の立て直しが急務とされておる中であるということを考えますと、財政投融資の活用とか公共事業量を五%伸ばすなどの最大限の努力と工夫がなされているものと私どもは評価している次第でございます。加えまして、内需拡大には民間活力を活用するということが非常に大事でございますが、この点につきましても、関西の新空港あるいは東京湾横断道の建設等各種の民活プロジェクトの促進がうたわれております。また、経済構造調整円滑化のためのいろいろな支援措置が講ぜられておることも御案内のとおりでございます。また、目下の不況対策の見地からは、中小企業への低利融資あるいは三十万人雇用開発プログラムの策定とか資金運用部資金への預託金利の弾力化等々、きめ細かい措置が行われておりまして、この点も高く評価できると思っております。このように、景気に配慮した予算案をどうか一刻も早く成立させていただきまして、できる限り前倒しをしていただいて、実施に移していただきたい、このようにお願いするわけでございます。
 現状を放置いたしますと、雇用情勢は一層深刻化し、日本経済全体にとって大変な事態を迎えかねない事態でございます。現在、企業が抱えております過剰雇用は九十万人を超える、こう言われております。日本の企業は、雇用に対する社会的責任と労使協調の重要性を非常に重んじておりますので、全力を挙げて失業ということを顕現化しないように最大限の努力をいたしております。しかし、このような私どもの努力も、このようなデフレ状況が続きますと、企業の体力にも限界がございますので、もはや現在の雇用水準を維持するということが大変難しくなってまいります。そうなりますと、失業率は、今三%台になったということで大変心配しておるわけでございますが、さらに四%、五%にとはね上がることも考えられるわけでございます。日本の経済をここまで支えてまいり、そして国際競争力をここまで増強してまいりました根源は、何といいましても、これまで労使一体になって経営に励んできたからでございます。この根幹がもし二十一世紀に向かいまして崩れるというようなことになりますれば、わが国のこれからの健全なる発展は期待することができないと思いますので、この点はどこまでも守り抜きたいという覚悟でおるわけでございます。
 この危機を打開しますには、また繰り返して申し上げますけれども、一刻も早く予算を成立させていただいて、実施に移していただくことが大変大事だということを重ねてお願いしたい次第でございます。何と申しましても、経済は生き物でございます。今のように予算の審議がおくれ、いつになったら成立するかということが私どもわからないような状態ですと、経済全体の不確実性が増幅してまいります。企業経営もそれだけ見通しがしにくくなるわけでございます。国としての政策の方向がはっきりして初めて、私ども民間人も、それを土台にして確固たる経営方針を確立して邁進することができるわけでございますので、この点ぜひよろしくお願い申し上げます。
 次に、当面の円高デフレを克服しながら、これ以上の円高による日本産業の壊滅を防ぐためには、輸出に過度に依存した経済構造を改めまして、国際的に調和のとれた産業構造、そのためには思い切って内需を拡大する必要がございます。それはまた、国際的要請でもございます。そのためには、中長期的な視点からわが国の経済力を国民生活の質的向上に向けることが必要でございます。そういうわけでございますので、よく言われますように、住宅環境の整備だとか都市の再開発と並びまして、私は地域のポテンシャルを生かすということが内需開発のこれからのキーポイントになるのではないか、このように考えておりますので、各地域の自主性に基づきました国土開発ということを積極的に進める必要があると思っております。
 なお、これは私見にわたるかもしれませんが、例えて申しますと、私どもが参加して高齢化対策、福祉対策、シルバーサービス振興会というのを官民でやっておりますが、このような自助努力による高齢者福利対策の促進、こういったことも国民の生活の質的向上を図るとともに、内需振興という意味におきまして大変意味があることだと私どもは思っております。
 こんなようなことを実現しますキーとなりますのは、いかにして民間の資金がそちらの方向へ流れていくか、民間の経営資源がうまく活用できるかということでございますので、私は、政府は思い切った規制緩和、抜本的な土地政策、そのための今の税制改革に次ぐ新しい税制の改革に早急に取り組む必要があるのではないか、このように考えるものでございます。
 今申し上げました内需拡大と並びまして財政が直面する課題は財政再建でございます。
 六十二年度予算案は大変厳しい経済環境の中で組まれましたために、予算規模、一般歳出を前年度並みに据え置いたものの、国債の減額は思うようには進んでおりません。目標の一兆三千億を大幅に下回る四千四百五十億にとどまっております。行政改革、歳出削減の一層の推進には多くの困難を伴うことと思いますが、国民負担率を欧州よりかなり低い水準にとどめおくこと、そして日本経済の活力を維持していくには、今後とも「増税なき財政再建」を基本哲学とし、国債減額に努める必要があると存じております。今、これを捨て去ることは、長期的に日本のためにならないと考えております。その意味では、六十五年度赤字国債依存からの脱却という目標を、困難だからといって安易に放棄すべきではないと考えております。
 行財政改革の課題はまだまだ数多く残されておるわけでございまして、受益と負担のバランスとか、内助努力と真の弱者救済といった観点からの農業、福祉、文教、国と地方の関係などについて一層の構造改善に取り組むべきでございます。特に地方につきましては、国との役割分担、費用配分のあり方について根本的に再検討すべきものと考えております。
 次に、最後になりますが、歳出と裏腹の関係にあります歳入、すなわち税制改革について経団連としての意見を申し述べさせていただきます。
 シャウプ改革以来三十有余年を経過しておるわけでございまして、その間に税制上のひずみ、ゆがみがたくさん出ております。また、経済社会構造の変化に対応した歳入構造というのを確立する必要もございます。そういった意味におきまして、今回の税制改革をぜひ実現していただきたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。売上税のみを取り上げまして、その問題点を追及するという議論だけが先行している現状は、私どもにとりましてまことに残念でございます。ぜひ根本改革の原点に立ち返って、冷静に判断していただきたいという気持ちでいっぱいでございます。
 そもそも今回の根本改革は、かねてから世論も望んでおりました問題でございますが、所得税、法人税の負担を軽減して、その財源としてマル優の見直し、売上税の導入により公平にして公正、そして広く薄く国民のそれぞれがその分に応じて国の税金を担いでいくという、こういった税体系を目指すのがねらいだと私は確信しております。また、国際化時代に欠かすことのできない国際的な税制のイコールフッティングを達成するということも極めて大事な問題でございます。私ども企業は、日本の企業にしましても海外の企業にいたしましても、企業がどこに立地するか、いわゆる国をどこに選ぶかということは、もう自由の時代でございます。
 そういう意味におきまして、今税制というものは、国際的競争力を決定する重要なる要素であるということを十分ひとつ御理解いただきたいと思います。部分的な損得とかあるいは自分の周辺のみとか、そういったことを考えるのではなくて、日本の将来を見据えての税制の根本改革全体として評価いたしますと、今度の税制改革は、いろいろ細かい点はあるかもしれませんが、極めて筋の通ったものだと私は考えております。特に就業者五千八百万人のうち四千三百万人を占めます給与所得者、いわゆるサラリーマンの所得税負担を軽減すること、またクロヨンに代表されます不公平税制を是正することが税制改革の大きな目的であるということを見失ってはならないと考えております。
 また、産業界の立場からは、企業増税が繰り返されてまいりました法人税でございますが、その法人税につきまして、改革案によりますと、法人税の基本税率はことしの四月から四二%、六十三年度に四〇%、六十四年度に三七%へ引き下げられるということでございますので、これは評価いたしたいと思っております。この結果、法人住民税、事業税を含む実効税率は、現在の五三%弱から五〇%弱へ下がることになります。経済界では、これまで政策税制による減税額を考慮した実質税負担率は、我が国が先進国の中で最も重いということで、また二十年間増税の歴史でございましたが、今回の改革案で二十年ぶりに法人税の減税という方向へ流れを変えていただくということになることに非常に期待しておるわけでございます。
 しかし、これだけの減税を行っていただきましても、実は五〇%弱の実効税率ということは、イギリスの三五%、アメリカの四〇%に比べますと、もう格段の差でございまして、先ほどの国際的なイコールフッティング、また国際的な競争条件といたしましては、まだまだ比較にならない状態でございます。国際的イコールフッティングという立場に立って、さらにこの点について御配慮をいただきたいわけでございます。円高の定着とともに、我が国企業の国際競争力の低下、産業の空洞化が懸念されますが、これを回避するためにも、せめて法人税だけでも国際的にイコールフッティングに近づけてやろうというお気持ちでお願い申し上げたいと思います。
 このような所得税、法人税の減税ということは、これは日本がただ単独に考えたわけでございませず、レーガン、サッチャーの税制改革、また社会党政権でございますフランスにおいても共通した考えであるということも御案内のとおりでございます。
 売上税の導入につきましては、所得税、法人税の減税、物品税の廃止による税体系の合理化、また不公平、不公正の是正など多面的な効果を持っておるものでございますので、あえて言わしていただきますと、木を見て森を見ない議論は国民を混乱に陥れるだけだと私は考えております。もとより、売上税の仕組み、運用につきましては、税額を別額で外形表示する、あるいは企業の会計システムを尊重した税務計算をするなどできるだけ産業の実態に即した弾力的な対応がぜひ必要だと思います。私どもも、実際に会社の計算の中に入れまして、これを検討しておりますが、今大蔵省が税額票ということをモデルとして言っておられますが、あれをそのまま、大福帳的なものを今のコンピューターに適用するということは大変な手間がかかります。これを今法人税を納めております会計システムに準用させていただければ非常に弾力的な対応が可能となり、公平なる納税もできるわけでございますので、ぜひその点は考えていただくわけでございますが、基本的には、広く薄く課税するということは税体系の見地からも最も望ましいものと考えております。所得税、法人税の減税は六十二年四月一日から先行して実施されることになっておるのでございますが、このままではその恩恵に授かれないのではないかと思っております。
 我々といたしましては、国会においてさまざまな角度から十分審議を重ねていただくことを期待しております。審議を通じて国民に十分な情報を提供していただき、説明を重ねていただければ、道は必ず開けていくものと確信いたしております。経団連といたしましても、及ばずながらこの大事な税制の根本改革の実現に対して協力してまいる所存でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
#4
○砂田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、牛嶋公述人にお願いいたします。
#5
○牛嶋公述人 初めに、このような機会をつくっていただいて、意見を述べさせていただくことを心からお礼を申し上げます。
 限られた時間でございますので、私は六十二年度予算案の審議の中で焦点になっております税制改革、特に売上税の導入について意見を述べさせていただきたいと思います。
 旧説は良税という言葉がございます。これについてはいろいろな解釈があるわけですが、私はこの言葉の中に税の経済活動全体に対する影響の大きさが意味されているのではないかというふうに思っているわけです。すなわち、税制は今の経済の機構、制度の中で極めて重要な部分を占めているわけでありますから、個人も企業も経済活動を行うとき何らかの形で税に深く関連することになります。普通、個人も企業も税制を与件として行動しているわけでありますが、したがって税制のわずかな変更も個人や企業の行動に大きな変化を与え、それが経済全体に課税の経済効果として波及することになるわけであります。
 したがって、旧説は良税という言葉と関連づけて税制改革の進め方を考えてまいりますと、部分的な改正を積み重ねて漸進的に改革を行っていく、そしてできるだけ税制の変更によってもたらされる経済全体に与えるインパクトを小さくしていくということが望まれるわけであります。それだけに、今回の抜本的税制改革を行う場合とかあるいは売上税のように新しい税を導入する場合には、かなりの動機づけあるいは必然性が求められることは言うまでもありません。結論から先に申し上げますと、今回の売上税の導入は、それがもたらすさまざまな形での経済への大きな影響を考えた場合、それでもあえて売上税を導入しなければならないような強い必然性は私は見出せないというふうに考えております。したがって、売上税導入に対しましては反対の立場をとらしていただいております。
 例えば、イギリスは一九七三年に付加価値税を導入しておりますけれども、その経緯を振り返ってみますと、付加価値税の導入がEC加盟の前提条件であったわけです。言うならば新税導入に対しまして非常に強い必然性があったというふうに考えられます。それにもかかわらずイギリスは、新税導入を決めてから三年間の期間を費やして、それがもたらす、経済に与えるインパクトをできるだけ小さくするように努めてきております。それから考えますと、今回の売上税の導入は私は拙速という批判が与えられてもやむを得ないのではないかというふうに思っております。
 また、一九六八年以降、西ヨーロッパにおきましてはフランス、西ドイツを初めといたしまして次々にEC加盟国を中心に付加価値税を導入しております。また東アジア地域でも、一九七七年に韓国が、それから昨年の一九八六年には台湾が付加価値税を導入しているわけです。これらの状況を見てみますと、導入前にいずれの国も、取引高税とかあるいは営業税という、すべての取引に対して一律に課税する非常に大型の税を持っていたわけであります。その税の代替として売上税と申しますか付加価値税を導入しているわけでありますから、したがって新税の導入というよりも、私は、既存税制に対する部分的な改正であるというふうに考えられるわけです。
 これに対して、我が国の税制で売上税の代替税を求めるとすれば物品税ということになりますけれども、御承知のように物品税は単一段階課税であります。しかもこの課税範囲は非常に限定されております。私はこの物品税は売上税の代替税にはなり得ない、このように考えております。したがって売上税を導入する場合には、これは全く新税の導入であり、極めて大きな改革であるというふうに考えざるを得ません。
 今回の税制改革におきまして売上税の導入の必然性あるいは売上税を導入しなければならない理由といたしましては幾つか挙げられておりますが、この中から三つの理由を取り上げて、それについて検討を加えながら、先ほど申しました私の態度、立場を明らかにしてまいりたいと思います。
 まず第一番目の理由でありますが、売上税を導入すれば、所得税の段階で捕捉漏れとなった負担を支出の段階で捕捉することができる、こういうふうな理由から、税制全体として見た場合に課税の公平、とりわけ水平的公平を期することができるのではないかという理由であります。
 しかし、この考え方は私は課税当局側の考え方と言うべきではないかというふうに思っております。税収を上げるために、所得の段階であれ支出の段階であれ、できるだけ捕捉漏れをないようにして税をかけて税収を上げていくということですから、これはまさに課税当局側の考え方です。私はこのような方法でもって納税者間の負担の公平は確保できないというふうに考えております。なぜなら、所得税の段階で我々サラリーマンのように完全に所得が捕捉されて、そしてきちっと税を払っている者が、売上税が導入されますとまた支出の段階で税がかかってくるわけであります。そういたしますと、所得税の段階で捕捉漏れの所得は、ここで税を払うといたしましてもやはりその不公平は残ってしまうわけであります。こういうふうに考えますと、水平的公平を確保するためには、やはり所得税の中に含まれている不公平税制、これを取り除いていかなければならない、こういうふうに考えます。
 二番目の導入の理由として挙げられておりますのが、今後我が国の社会におきまして進んでまいります高齢化の問題との関連であります。
 高齢化が進んでいく中で経済社会が一定の活力を維持して、例えば四%前後の成長率で経済を運営していく、こういうことになりますと、今の日本人の勤勉さを今後も持ち続けなければなりません。これは当然のことだと思いますが、その場合に所得税から受ける納税者の負担感がその労働意欲に対しまして悪い影響を与えるのではないか、こういうふうな考え方があるわけであります。これに対して、売上税といった間接税によって税を徴収する場合には納税者に対する負担感というのはかなり和らげられる、したがって売上税を導入することによって労働意欲、労働インセンティブを今の状態で維持することができるだろう、これが売上税導入の第二番目の理由になっているようでありますが、これに対しましても私は二、三のコメントが必要ではないかと思っております。
 所得税に対する納税者が抱いている重税感でありますけれども、これはもちろん直接税として税負担が明示的であるということも関係しておりますけれども、それ以上に、納税者が所得税に対して抱いている不公平感によるところが大きいのではないかというふうに私は考えているわけでありをする。例えば、ある納税者が所得税を納めるときに、自分だけがこんなに高い税負担を負っているのではないかというふうに考えたといたしますと、そのときは非常に大きな税負担を感じるのではないかと思います。そうであるといたしますと、幾ら所得税を減税して売上税の形で税収を上げていくといたしましても、所得税に不公平要因が残る限り、私は、労働意欲に対する抑制的な効果というのはやはり取り除くことはできないのではないか、こういうふうに考えております。
 それからもう一つのコメントは、税の徴収を所得税から売上税へ移す場合に考えておかなければならないもう一つの問題といたしまして、垂直的公平の問題がございます。売上税は、幾ら必需財を非課税といたしましてもやはりその税負担は逆進的であります。ですから、場合によっては低所得の階層におきまして所得税を含む税制全体としても逆進課税になるというおそれがあるわけであります。そうだといたしますと、これは活力を得るために公平を犠牲にするという結果になるかと思います。
 さらに、高齢化の進展の中で我が国の経済社会に一定の活力を保持していくためには、今の日本人の勤勉さを維持していくということは必要ですが、同時に、企業の経済活動に対するインセンティブ、特に投資インセンティブも保持していかなければならないと思います。その場合に、売上税の導入がそれに対して抑制的に作用するということになりますと、仮に労働インセンティブに対して売上税が中立的であったといたしましても、売上税の導入がむしろ経済社会における活力の維持を難しくするという状況が生まれてくるのではないかと思います。そして、このような状況が生まれる可能性はかなりあるわけでありまして、転嫁が非常にあいまいであるということ、それから納税事務の煩雑さから予想される納税事務負担の増大、そういったものを考えますと、かなりこの可能性は大きいというふうに思っております。
 売上税を導入するための三番目の理由として挙げられておりますのが、直間比率の見直し論であります。
 今回の税制改革の課題の一つに、現行税制が持っているひずみ、ゆがみを是正していくということがあることは明らかであります。この場合に、税制のひずみとかゆがみという場合に、一つには、税体系を構成している個々の税目、例えば所得税とか法人税が抱えている不公平要因を初めとする問題点、これがあると思いますが、いま一つには、直間比率の偏りといった形で示される税体系のひずみ、ゆがみ、そういったものがあるかと思います。
 これと関連して、我が国の現行税制は直接税に偏り過ぎているという、こういう批判といいますか考え方が根強くあるわけであります。例えば、現行法による六十二年度の収入見込み額で計算いたしますと、現在、直接税対間接税の比率は七四・七%対二五・三%となっております。すなわち四分の三が直接税、四分の一が間接税であります。このような税制からもう少し間接税のウエートをふやしてバランスのとれた税体系にすべきである、こういう考え方があるわけでありまして、そのためには売上税を導入して、そしてそのバランスをとっていく、すなわち間接税のウエートをもう少し高めていく、これが三番目の理由であるわけでありますが、この三番目の理由に対しましても幾つかの問題点が指摘されると思います。
 その一つは、直間比率というのは、その適正な水準というのは前もって決められるものではないということであります。むしろ、税制を構成する個々の税目について十分な検討を加え、租税原則に照らして望ましい税構造を組み立てていって、その結果として決定される直間比率、これが適正というふうにみなすべきではないかということであります。したがって、間接税のウエートをふやしてバランスのとれた税体系を確立するといたしましても、適正な直間比率が決まっていないわけでありますから、したがってその論拠というのは極めて薄いわけですし、感覚的な議論だというふうに考えることができるのではないかと思います。
 さらに、この直間比率見直し論の中には次のような危険な要素が含まれていることを指摘しておかなければならないと思います。今仮に売上税が導入されて間接税のウエートが高まったといたしましても、もともと直接税である所得税、法人税の税収弾性値の方が売上税のそれよりも大きいわけでありますから、すぐに直接税の構成比が高まって直間比率がゆがめられてしまう、こういう結果が想定されるわけです。ちなみに、過去の直間比率の推移を振り返ってみますと、先ほど申しましたように、六十二年度現行法でいきますと三対一というふうな比率になっておりますが、五十七年をとってみますと、直接税が七〇・八%に対して間接税が二九・二%、すなわち七対三というふうな比率であります。さらに昭和五十年をとってみますと、六九・三%対三〇・七%。さらに十年前の四十年をとりますと、五九・二%対四〇・二%、すなわち六対四というふうになっています。
 このように、経済が発展してまいりますと、その過程で所得税、法人税の伸びが間接税の伸びよりも大きいわけですから、必然的にこのような形をとるわけであります。そうだといたしますと、その都度この直間比率を手直ししていかなければならない。そうなりますと、売上税の税率をその都度引き上げていかなければならないという、そういう問題がこの議論の中には含まれている、こういうことでございます。
 さらに、このことと関連してもう一つ納税者の立場から懸念されることは、直間比率を一定水準に維持するために絶えず売上税の税率を引き上げることになるといたしますと、経済運営は、これまで経済運営の基本になっておりました「増税なき財政再建」の枠組みから外れて、なし崩し的に増税を考慮した財政再建の方向をたどることになります。しかし、これは納税者から見ますと重大な政策の転換でありますから、したがって、前もって納税者のコンセンサスを得ておかなければならない重大な問題ではないかというふうに思っておるわけであります。
 以上述べてまいりましたことから判断いたしまして、私は、現在のところ、売上税導入によって予想される経済に対する大きなインパクトから考えて、それでもあえて売上税を導入すべきであるという必然性あるいは強い動機というのは見当たらないのではないかという結論を得た次第でございます。したがって、初めに申し上げましたように、私の売上税導入に対します立場といたしましては、反対の立場をとらしていただいているわけでございます。
 今述べてまいりましたように、その動機が薄いあるいは必然性に乏しいといたしましても、売上税を導入するに当たりまして、先ほど韓国とか台湾の例を挙げましたけれども、それに代替し得る取引高税とかあるいは営業税があったといたしますと、これは部分的な改正で売上税に移行することができるわけでありますから、恐らくそれほど大きなインパクトを経済に与えることはないというふうに考えられます。ところが、我が国の場合は、先ほども申しましたように、今の現行税制の中には売上税にかわり得る代替税というのは見当たらないわけであります。したがって、今回の税制改革では、恐らく苦肉の策だと思いますが、増減税同額とかあるいは税収の中立性という手法を使って売上税の導入を図ろうとしてきたわけであります。
 しかし、納税者の側からいいますと、今後も我が国の税制の中で基幹税として位置づけられるであろう所得税、これが持っておりますところのゆがみ、ひずみ、特に水平的不公平の問題でありますけれども、これをやはり徹底的に取り除いていく、これが現在の我が国の税制を見た場合の税制改革の手順ではないかというふうに思っております。その上で、財政再建との関連も考慮しながら二十一世紀に向けての長期税制の確立に向かって時間をかけて検討をしていく、こういうことを納税者は望んでいるのではないかというふうに思います。その場合に、所得税、法人税の改革が仮に減税につながらなくても、このような税制改革に対しましては、私は納税者の大半のコンセンサスを得ることができるのではないかというふうに思っております。
 しかし、先ほども申しましたように、今回の税制改革は余りにも売上税導入が先行したために、もちろん形の上では所得税、法人税の改革が進められておりますけれども、特に納税者が求めております不公平税制、その中でも水平的な不公平税制に対しましては、むしろ今回の税制改革は後退の感がしないわけではございません。そのようなことで、売上税の導入に関しましてはできるだけ時間をかけて慎重な御討議をお願いいたします。
 これをもちまして、ひとまず報告を終わらしていただきます。(拍手)
#6
○砂田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、神谷公述人にお願いいたします。
#7
○神谷公述人 神谷不二でございます。
 昭和六十二年度の予算案は、防衛関係費及び対外援助、協力、その中核をなします政府開発援助の一般会計予算、この両部門に他の部門に比べて相対的に高い伸び率を与えております。私は、この方針、この政策を基本的に支持いたしまして、基本的に高く評価いたしまして、そういった立場から我が国の外交、防衛政策のあり方について所信の一端を披瀝いたしたいと存じます。
 我が国は国際国家と言われ、また、日本人も国際という言葉には大変プラスイメージを抱いて、大きな誇りを持って語るようになっております。主要原材料、エネルギーあるいは食糧の輸入、対外輸出、企業進出あるいは対外投資、さらには観光に至りますまで、昨今の我が国の対外依存率、つまり国際化というのは大変なスピードで伸びております。私ども、大学で学生諸君に、卒業後一体どういう仕事をしたいかということを尋ねますと、しばしば返ってまいります言葉は、国際的な舞台で働きたいあるいは国際的な色彩を持った仕事をしたい、こういう返事が返ってくるわけであります。
 事ほどさように国際という言葉が我々になじまれているわけでございますが、しかし、他面、我が国にとって国際化が十分なされているかということを考えてみますと、まだまだいまだしの感が深いのではないかと思います。物とか金とかそういった面ではいろいろ国際化の実績が積み上げられておりますけれども、一番肝心な無形のもの、目に見えないもの、つまり物の考え方、思考方法において我が国が本当に国際化しているかということになりますと、少なくとも外から、国際社会から見られて我が国はそれほど高くは評価されていないという現実を認めざるを得ないと思います。言葉をかえて申しますならば、国際的な責任と役割を積極的に分担していこうという考え方がまだ本当の意味で我が国民の間に大きく根づいていない、こういうふうに言わなければならないと思っております。
 さて、国際社会における我が国のあり方でございますけれども、ただいまも申しましたように、我が国は、国際社会との交流に大きく依存しながら、経済大国としての国家的存立とそれにふさわしい国民生活を維持いたしております。その前提になりますものは何といいましても世界の平和と安定であります。これが我が国の存立と発展にとっての最大の、最も重要な要件だということについては、先生方の間にも御異論はあるまいと存じております。
 今日の我が国の経済的繁栄がありますのは、とにかく世界の平和というものが何とか基本的に維持されてきたことによるものであります。我が国は今やGNPが世界の一〇%、一割を超す国家になっておりまして、いわゆる一割国家というふうに言われておりますが、その一割国家と呼ばれます経済大国性というものを今後とも維持していきますためにも、我が国は世界の平和維持に応分の責任と応分の役割を果たしていくことが不可欠である、このように考えるものであります。
 しからば、国際社会の平和と安定は何によって保たれているかという点が次に問題になるわけでありますけれども、もちろん、これについてはさまざまのエレメント、さまざまのファクターがございます。しかし、一番基本的なところは、米ソ、東西の間の力の均衡というものが基本的に保持されている。この東西間の力の均衡保持ということが世界の平和と安定のかぎになっているわけであります。だとすれば、我が国としては、そういった重要なかぎの一部分なりとも我が国が積極的に担っていく、こういう姿勢がぜひとも望ましいわけであります。
 そこで、世界の平和と安定にとって暗い影を投げかけている、そういった勢力が今日どこに存在するかというふうに考えてみますならば、あえて固有名詞を挙げさせていただきますけれども、やはりソ連の存在というものをどうしても深刻に受けとめざるを得ないと思います。ソ連の過去十年、十五年来一貫して行ってまいりました軍備増強政策、とりわけアジア・太平洋方面に対する軍備増強政策というのは大変なものであると言っても決して言い過ぎではございません。アメリカを初めといたしまして西側諸国は、そういったソ連の活発な軍事的活動、軍事的増強に対してさまざまな角度から防衛努力を行ってまいり、かつまた防衛協力を行ってまいっております。
 我が国はこれまで経済にとかく専念いたしまして、ともすれば世界の平和と安定ということに無関心でございましたけれども、数年来そういった声が高まっておりますように、これからはそういったあり方では許されないということは疑いのないところであります。したがいまして、我が国といたしましては自由主義諸国の有力な一員としての責任を自覚する、そういった立場から、少なくともみずからの防衛、自衛ということに対しては十分な責任を持つ態度が必要であるというふうに考えております。
 なお、ただいま申し上げましたことと関連いたしまして、最近の東西間、米ソ間におきます核軍縮ムードの高まりと私がただいま指摘しました点との関連に一言触れたいと思います。
 ナイーブな見方をする人は核と通常戦力、通常兵力との区別が必ずしもはっきりとつかない、そういうレベルでしばしば国民世論が形成されるおそれがないわけではございません。しかし、実際のところは、米ソ間に核軍縮、核軍備削減のムードが高まれば高まるほど、幸いにしてそういった合意ができればできるほど、通常兵力の方の重要性は大きくなるわけでございます。決して、核の軍備縮小、軍備制限の方が進めば自動的に通常兵力の方のウエートが下がるということではございません。その逆であります。
 そういった点を考えますならば、レイキャビク以後の世界情勢の中で米ソの間の核についての話し合いがだんだん実りつつある方向に向かっている、これは大いに歓迎すべきことでありますけれども、だからこそ我が国のような通常兵力、通常防衛力の整備ということは大いに必要になっている、こういうことを特に指摘したいと思うわけであります。
 このような観点から我が国の防衛力の現状を考えてみますと、改めて申し上げるまでもなく、昭和五十一年に策定されました「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準、これを早期に達成することが我が国の最大のターゲットになっております。「防衛計画の大綱」を策定しましてから既に十年以上を経過しております。「防衛計画の大綱」そのものが果たして我が国にとって十分な自衛力であるかどうかという議論さえなくはない現状におきまして、その達成のために十年以上もかかっているということはやはり国際的にも批判を免れないことではないかと思うわけであります。その意味で、大綱水準の達成を目標として一昨年九月に決定されました中期防衛力整備計画の着実な実施を図ることは極めて重要な国家的課題である、このように存じている次第であります。
 特にその中で重点を置かれなければならないと思われますのは、正面と後方のバランスでございます。我が国の防衛力整備は確かに過去十年、二十年来着々と行われてきたという面がございますけれども、ともすれば正面にだけウエートがかかりまして、後方の方がおろそかになっております。「防衛計画の大綱」策定以後におきましてもその点に十分な意が払われたとは言いがたいように思います。
 いささか細かくなりますけれども、具体的な例を挙げますならば、自衛隊の通信網は今日依然として単一ルートしかない、しかもまだディジタルになってない、アナログ通信を使用しているという現状でありまして、これでは本当の意味での安全保障上の脅威、危険というものに十分対処する基盤ができていないと言っても言い過ぎではないと思うわけであります。
 また、隊員の練度の方も大いに問題があるようでありまして、例えば陸上自衛隊にしろ、あるいは海上自衛隊、航空自衛隊いずれもそうでありますけれども、大づかみに申しますならば、今から十数年前の石油ショック以後、訓練時間等が大幅に減らされた、それがまた戻っていないという状況が今日至るところに見られるわけであります。したがいまして、そういった特にアメリカを初めNATO諸国に比べて自衛隊の練度という点で大いに落ちる訓練時間の不足等々につきましては、これを一刻も早く回復する必要があるのではなかろうか、このように思っているわけであります。
 戦闘機のパイロットにいたしましても、アメリカ、ヨーロッパ諸国では大体年間百八十時間くらいはゆったり訓練を積んでおります。しかし、我が国の航空自衛隊の場合にはようやく百四十時間ということでありまして、この四十時間の不足というのは、専門的な角度から見ますならば大変緊要で、かつ重要な課題である、こういうことになるわけでございます。
 また、細部は省略いたしますけれども、自衛隊の隊員の宿舎その他処遇が非常に見劣りしている、そのために自衛隊の募集が昨今困難になっているということも聞くわけでありまして、そういったことにつきましてもぜひこの機会に見直しをお願いしたい、このように思っている次第でございます。
 さて、昨年来、とりわけことしになりましてからいろいろ問題になっておりますいわゆるGNP一%の問題に少々触れてみたいと思います。
 このGNP一%の問題というのは、非常に奇妙な扱われ方をしているというふうに言わざるを得ません。もともと、一九七六年、昭和五十一年にこの枠が設定されましたときには、御案内のように、当面、一%を超えないことをめどとしてというような、いささか柔軟性のある仕組みから発足したわけでありますけれども、それがいつしか金科玉条視されるようになりまして、ひとり歩きをしている、これはゆゆしき問題ではないかと思うのであります。
 問題は防衛政策の中身でありまして、防衛政策のために幾らお金を使う、使わないというのは大体のめどとしてはあり得るのかもしれませんけれども、本当に重要なのはその中身である、もっと中身についての御議論をお願いしたい。あるいはそのシビリアンコントロール、一%の枠が外れた、それにかわっていわゆる総額明示方式、それで十分な歯どめになるかというような意見がいろいろあるわけでありますけれども、本当に大切な歯どめは国会における先生方の御審議であります。中身が一番重要でありまして、一%云々ということに基本的にこだわる必要はない、大幅にそれを超えれば問題でありますけれども、ことしの予算案程度であれば決して問題ではない。
 ということは、案外日本の防衛政策について客観的な議論をしておりますのは私はヨーロッパのマスコミであると思いますけれども、例えばスイスのノイエ・チューリッヒャー一月一日あるいはドイツのフランクフルター・アルゲマイネ十二月三十一日、ここいらあたりでは、ことし一%を超えることになったのは、日本の防衛予算がふえたからというよりは、むしろ日本のGNPが下がったところに本当の原因があるので、したがって日本の防衛政策が大きく変わったことを意味するのではないということをはっきり言っているわけであります。ひとつそういった角度から防衛政策の審議を格段念入りにお願いしたいと思うのであります。
 最後に、対外経済協力、特にいわゆる政府開発援助のことについて一言申し上げて結ばせていただきたいと思います。
 我が国の対外経済協力、特にその総額は、ことしの二月十三日の各紙朝刊にそのことが出ておりますけれども、OECD諸国の中で日本が去年初めて対外経済協力でもって第一位になったというふうに大きく書いてあります。しかし、それは要するにODAだけではない、政府開発援助だけではない全体の総額でございまして、本当に国際的な場面で勝負いたします場合には、ODAがイコール対外協力だ、それ以外は対外協力の中にカウントされないということになっていると言っても言い過ぎではない。そのODAの実績はどうかということになりますと、世界一ところか、まだまだ我が国は、GNPとの比率におきましてもあるいはその予算全体における比率におきましても十五位とか十六位とか、つまりDAC十八カ国のうち、ほとんど下から勘定した方が早いくらい低い率になっているわけであります。
 GNPに対する比率ということからいいますと、〇・三五%というのが今の国際的な平均であり、国際的な目標は〇・七%ということになっているにもかかわらず日本は〇・二九%にとどまっている、こういう事態をいつまでも放置しておくということはできない、すべてこういったことは我が国の、最初の発言に戻って申しますならば、国際的な責任に対する自覚の度合いのバロメーターになる、こういうことであります。
 我が国が、今後国際社会におきまして単に経済だけではなくて政治的にも何かと重きをなしていく、特に軍事的な貢献はそれほど大きくできないから、したがって経済の面で大きく貢献しようという意見が国の内外に非常にこう高まっているわけでありますけれども、もしそうであるといたしますならば、このODAのあり方というものについてもっと真剣な見直し、もっと積極的な政策建設というのをお願いしたいと思うわけであります。
 以上申しましたように、これからの我々にとって必要なことは、残された二十世紀そして来るべき二十一世紀を見はるかして、我が国が経済大国にふさわしいだけの防衛政策、外交政策を本当にとっているというふうに外から認められるかどうかというところにかかっていると言っても言い過ぎではないと存ずるわけであります。よろしく御賢察をちょうだいしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
#8
○砂田委員長 どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
#9
○砂田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 なお、鈴木公述人は都合により正午までの出席となっております。
 まず、鈴木公述人に対する質疑を行います。志賀節君。
#10
○志賀委員 志賀節でございます。
 私は、過般参議院の補欠選挙がございました岩手県の選出でございまして、岩手県では、今回の選挙の結果をやはりそれなりに大きな衝撃のもとにそれぞれが受けとめておるわけでございます。
 この選挙戦から選挙後にかけて私自身が直接体験をいたしましたことをちょっと申し上げさしていただきますと、若干のおばちゃん、おばあちゃんと私接触いたしましたところ、極めて素朴な表現でございますが、「志賀先生、国の金庫の中にはもうお金がないんだってねえ。知らなかったねえ。だから、やっぱり新しい税金は取らなきゃならないことになるんだねえ。」そういうような表現が形を変えて出てきております。これは非常に素朴な表現でございますが一つの核心をついていることでありまして、先ほど、木を見て山を見ないことはちょっと困るという鈴木さんのお話、私はさこそと承ったわけでございます。
 ところが、反面、同じような大衆のそれぞれの言葉の中に出てくるのは「それならそうで、なぜ中曽根さんはもっと正直に金庫の中、空だちゅうことを言ってくれなかったんだんべねえ。」こういうこともそれぞれ言うわけでございます。でありますから、これは選挙の中盤から終盤そして選挙後にかけての私自身が直接体験したことを申し上げているわけでございまして、この売上税の実現というものそのもの自体がいろいろな面で難しい問題をはらんでおるということを私痛感しておりますので、この機会にちょっと申し上げさしていただきたいのでございます。
 そこで、ただいまいろいろ承りました中でちょっとお触れになりましたように、現在、日本のこの予算案が成立をしないでこの状態でおるということは、もとより国民の苦しみを加速させる、加重させる、こういうことには当然なっておると思いますが、反面、日本の内需拡大等を通じまして、この国際社会において、特にアメリカ等が苦しんでいるその経済打開の道が、日本のこの経済打開を通じてよき影響をこうむると、これを期待しているわけでございますから、これが今ストップしていることをアメリカなどは特に深い憂慮の念で注目しておることも、私よくわかるのであります。
 そこで承りたいことは、この内需拡大等々を織り込んだ今回の予算案の高い評価あるいはそれなりの評価を鈴木さんにしていただいたこと、本当に感謝をいたしておりますが、ただ、早期に成立をしてほしいということはよくわかりましたが、それ以外に、まあきょう報道の伝えるところによりますと中曽根総理が訪米をなさる、訪米をした場合に、今回の予算案の内需拡大程度で果たしてアメリカが満足してくれるのかどうかということを私自身実は危惧しておりますものですから、経済界で、率直なお話として、もっと欲を言えば内需拡大はもしでき得べくんばこうであってほしかったなあ、こういうようなことももしありますれば、今後の問題として私は勉強しておく上において非常にありがたいことになると思いますので、そのことを承らしていただきたいのでございます。お願いをいたします。
#11
○鈴木公述人 御意見に対しまして私の考えを申し上げさせていただきます。
 たまたま今、岩手県のお話がございまして、あの選挙のすぐ後に私はお隣の山形県へ参りまして、山形県の経営者の方々三百人余りが、売上税について中央におっていろいろタッチしているおまえさんから話を聞きたいということがございまして、私と、隣に控えております経団連の理財部長とともども、日帰りで、手弁当で行ってまいりました。非常に熱心で、山形の酒田の方から全部お集まりいただいて、そこの方にはもちろん経営者協会の方もございますが、日本商工会議所の方も全部いらっしゃいまして、いろいろ御意見も承って大変私どもも参考になったのでございます。
 大体、お話は、理解したい、そして全体の中の、今の金庫の中に金があるかどうかということも含めて現在どうなっておる、これからもどうなるんだということも含めて理解したいというようなお話でございまして、私も、隣の岩手県の選挙のすぐ後でございましたので、どういう空気になるかわからずに参ったのでございますが、大変税制改正の必要性について議論が出まして、その中で、それじゃとにかく金庫の財源としては、状態も変わったんだし、国際事情も変わったんだし、だから新しい売上税というものが必要なんだな、その売上税というのが、形がいいのか、鼻が高いのか低いのか、そこら辺のことはいろいろあろうけれども、まずとにかくそういった代替の税金が要るんだということが理解できた、その上でもっとよく、世間に言われているように、徴税に時間がかかるとか、それから転嫁ができないかとか、いろいろな議論について細かくまた意見も聞きたいということで、お話をしてきたのです。
 私がそのときに申しましたのは、この売上税というものは、売上税という名前であり、それからECの付加価値税の日本版であるけれども、消費者が払うべき問題である、これが、広く薄くの精神なんだから、転嫁できるかとかできないということはちょっとおかしな話で、私が大蔵省にもっと望むことは、はっきり消費者に負担していただきたい、その意味で、物価が上がるということではなくて、物価は据え置きで、そのほかに税金をお支払いするということであるということを明確にしてもらうということが第一点。それに従った会計整理をすれば、仕入れだとか販売ということは、別に私どもが会社で源泉徴収をやっているのと同じことでございまして、それを委託しているということでございますので、それをそういうふうに考えれば、仮受け、仮払いで整理すればはっきりする。
 そして、先ほどもちょっと触れましたのですが、コンピューター制度にのっとってお預かりするという制度にしていただけば、今心配されているようなあんな計算は、全然変わらないわけでございまして、最初業界でも、私どもに、今私どもが計算している金額の十倍ぐらい、手数の十倍ぐらいのことを言っておられた会社も、そういうことにしてもらえばあなたが言っているような手数と費用で済みますということをはっきり向こうから言って、そのようにしてもらおうじゃないですかということの申し出もこの間あったくらいでございまして、それはもう何でもない、手続の問題でございますので、ぜひそこら辺のところは大蔵省に、大福帳式じゃない、いわゆるコンピューターを使った、OA機器を使った制度でやられるようにしてくださいということでございまして、そういった点はございます。
 ポイントの点についてお答えがおろそかになってはいけませんので、売上税の御質問がありましたらまたお答えすることにして、次の、内需拡大についてアメリカが満足するであろうかということにつきましては、率直に言いまして私は非常に危惧いたしております。先ほどわざわざ包括貿易法案のことを申し上げましたのはそういった意味でございまして、私どもはここまでやっているじゃないか、個々のことを申しましても、それは全体としてどうだということでございまして、売上税も同じことで、売上税をどうかといいますと、それはあばたもありますし、鼻の低いところもあります。それを言っていればみんなだめだということでございますけれども、我々、結婚するときでも、見合いで百点満点の相手を皆さんお選びになった方は何人おられますか、私は存じませんけれども。私は相当の減点を承知の上で結婚したわけでございますが、まあそんなものだろうと思うのでございます。
 それで、全体観からいいますと、アメリカが百五十円の円高ベースで満足してくれるのかどうかということは本当に心配しておりますし、これは私が心配しておるだけじゃなくて、ここでこういう人の名前を引用していいのかどうか知りませんが、大来さんあたりこの間も――簡潔に答えろということですから、今の点では、円高をもっと持ち出してちくりちくりやるということを非常に心配しております。それによって産業の空洞化というものがまた増幅されるという心配をいたしております。
#12
○志賀委員 ありがとうございました。
 私の持ち時間が何かあと五分程度だそうでございますので、すべての先生に承りたいのでございますが、次に神谷先生にちょっと……
#13
○砂田委員長 ちょっと志賀君、この時間は鈴木公述人のみにお願いをしてください。後でまだ時間がありますから。
 次に、稲葉誠一君。
#14
○稲葉(誠)委員 社会党の稲葉誠一です。
 鈴木さんにお聞きをいたしたいわけですが、お話を承っておりまして、率直に申し上げまして、それでは経団連としては、私も経団連というのはどういうのかよくわからないのですけれども、世間で言われている経団連というものですが、経団連としては売上税が導入されても、日本経済じゃないですよ、経団連としてはですよ、影響がないというふうにお考えなんでしょうか。
#15
○鈴木公述人 御質問の意味を的確にまだ私にはのみ込めておりませんが、今の状態、国際化の時代、それから古い税制のひずみというものを直すためには、これは売上税が一番いいと申しますか、それ以外に手がないというつもりでおりますので、経団連としては、広く浅くという原則に、政府から出された案の中では一番それが適しておるという考えで今もおるわけでございます。
#16
○稲葉(誠)委員 失礼なことをお聞きするかもわかりませんけれども、鈴木さんが政府の税調に参考人として去年の八月ですがお出になったことがございますね。そのときにいろいろお話をされたということを承っておるのですが、そのときの話の内容というのは具体的に言うとどういうことなんでしょうか。
#17
○鈴木公述人 あのときに、経団連は、それまでは広く薄くという税制を望むというところでございまして、その後にああいう三つ、四つの案が出たわけでございます。それを見ますと、当然のことでございますけれども、製造業者売上税は、売上税の対象に対しまして大体四分の一くらいなんですね、対象が。現在の、幅を狭められた今度の売上税に対しましても三分の一くらいの問題でございますので、広く薄くという点と、今後の財政の弾力性というような意味からいいましても、それから、言い漏らしましたけれども、シャウプ税制のひずみというのは、その後サービスということが日本の経済にも非常に大きなウエートを占めてくる、個人消費の六〇%がサービスである、そのサービスに対してほとんど課税がされてないという状態でございますので、広く薄く、そして皆さんがそれぞれに応じて負担をするという意味において、売上税がこの示された案の中では一番適しております、製造業者売上税は今までの物品税の変形にすぎない、ただそれをちょっと広めたくらいの問題ですという意味であのときに私ははっきり申し上げたのです。
#18
○稲葉(誠)委員 はっきり申し上げたというのは、去年の八月二十二日に政府税調の第三特別部会に参考人として御出席されまして、そこで、経団連としては、要約しますとこういうことでしょうか、メーカーだけに課税対象を限定した製造業者売上税は絶対に受け入れられない、日本型付加価値税がよい、こういうことと承ってよろしいでしょうか。
#19
○鈴木公述人 そういう意味で、いわゆる製造業者の段階にしか課税できないというものは課税対象が極めて狭いというもので、今度の改正の趣旨からいう広く薄くということに反します、ですからこれは、その当時は日本型付加価値税という名前でございましたが、それ以外にない、こういう意味のことを申し上げたわけでございます。
#20
○稲葉(誠)委員 今おっしゃった日本型付加価値税ということになりますと、お話の中にも出てまいりましたいわゆるサービス産業といいますか、そういうところに影響が大きいわけで、皆さんの経団連の製造業者の方々には影響は余りない、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
#21
○鈴木公述人 私は先ほども申し上げましたように、これは消費者が負担する問題だということで、流通業にしても、今度の売上税は、製造業者も卸売業者も小売業者も全部税の手続をするわけです、お手伝いするわけでございます。ですから、お手伝いをするという意味においてはみんな同じで、そして税を納めるのは最終の消費者がお納めするということですから、私は利害はないという考えでございます、利害がないということは不公平感がないという意味でおるわけでございます。
#22
○稲葉(誠)委員 先ほど何か税額票をコンピューターに入れて何とかかんとかというお話がありましたね、よく聞き取れなかったのですが。そのコンピューターというのは大蔵省というか税務署にあるコンピューター、こういう意味なんですか。どういう意味なのかちょっと、コンピューターがどこのコンピューターなのかちょっとよくわからない。どういう経過でそれが入ってくるのか、ちょっとわからなかったものですから。
#23
○鈴木公述人 どうも失礼しました。余り長くなりますと簡潔にやれという御注意がございますので、ちょっと。
 コンピューターとで一言で言いましたけれども、スーパーにありますキャッシュレジスターも含めて、また小学生がこれをやります手の上に乗るようなこともコンピューターの中に入れて私は思うのでございます。ですけれども、本質的に言いますと、私が先ほど申しましたのは、私どもの会社で検討しておりますということは、一応の製造業者、販売業者、スーパー、百貨店、そういうことで申し上げますと、それはいわゆるIBMを使いますか富士通を使いますかどこを使いますか知りませんが、コンピューターで売り上げも出荷も物の請求も全部やっておるわけでございます。
 その中の一環として売上税の計算をすればいいじゃないかということで、実は台湾にはうちの子会社もございますので、つい二、三日前に帰ってきた人間に、向こうで買い物をしたろう、それの伝票をよこせということで見せてもらいましたが、それは全部外形表示でございます。向こうは御丁寧に、これはお客様が買ったのは十円です、それに対して何銭の売上税がかかりますからこれはここに記載します、だからそれだけを下さい、こういうことでやっておる証票ももらっておりますけれども、そういうふうにしまして、仕入れは仕入れ、税金は税金ということで計算をして、その証票を税額票と、あれは一括で申請すればいいのですから、一つ一つの税額票を全部チェックして集めて、そしてそれを点検できるようにしてその税額票を全部置いておくということで、よく新聞、雑誌に出ておりますが、スーパーはそんなことを置いておいたら大変なことになるとおっしゃるのは無理からぬことだと思います。それで、法人税を納めているわけでございますね。
 法人税で脱税しているかどうかということを税務署が調べるのは本職ですから、それに基づいた五%ということで、それから課税品目とか非課税品目ということは、初めから暗号を組み込んでおけばみんなそれは区分して出てくるわけでございますので、私どもも医薬品もやっておりますし、食料に関係するものもやっております。全部やっております。ですから、今の制度が全部いいとは言っておりませんけれども、今それに対応する組織、ソフトをどんどん開発してやっております。
 ただ、念のため申し上げますが、御質問じゃございませんけれども、会社の大きいところも入れまして大体六カ月くらいはぜひ猶予期間をいただきたい、こういうことが常識的な要望でございます。
#24
○稲葉(誠)委員 消費者が払うのだからいろいろな中間の業者や何かに影響がないんだ、こういうような御意見のように承るのですけれども、人によりますと、例えば今中曽根さんがいろいろ相談のあれにしたり意見を聞いておられる大前研一さん、あの人のものを読みますと、日本の流通業者というのは千五百万人いる、そのうちの三割はこれによって影響を受けて、えらい失業時代が来るんだ、失業者に金を払うことを考えれば結局マイナスになるというような意味のこと宣言われているわけですよ。そうすると、今の鈴木さんのお話を承っておると、消費者に完全に転嫁できるのだ、こういうことのようなんですけれども、消費者はそれじゃたまらないんじゃないですか。そうお考えになりませんか。流通業者に与える影響はどうなんでしょうか。
#25
○鈴木公述人 消費者につきましては、これは私は税の全体論を議論して、売上税を導入するのがいいかどうかということをまず議論して、そして所得税を減税するか、それから売上税をどうするかということの議論があって、その上で売上税の詳細のものをまた検討していただきたいということを言っているわけでございまして、今度の政策のねらいは、中間所得層の四十代後半から五十代の所得の人は、非常に家族の進学だとか持ち家制度とか、そういったところに金が要るんだから、そこら辺について余り累進税率の細かな税率はやめたがいい、そして一〇%と一五%でその生涯課税が済むというように考えて、そのかわり財源としてみんなが同じように課税を受ける売上税ということは、もうこれは失礼な言い方でございますけれども、御案内のとおり所得が平準化して戦後の格差は今はない、そういうことでございますから、ひとつ全体として負担ができるかどうかということをお考えいただきたい、こう思うのでございます。
#26
○稲葉(誠)委員 今お話がありました中堅所得者層ということ自身が一体何をもって言うのか、果たしてそれに減税になるのかどうかというところが非常に問題なわけなんでして、むしろ増税になるということが考えられているところに問題があるわけなんですけれども、そこでおっしゃいましたね。国際的に法人税の場合イコールフッティングにするのだと言われましたね。考えてみると、日本の場合は法人が、特別措置というのがアメリカと比べれば少なかったわけですけれども、今でもありますね。例えばきょう問題になっています貸倒引当金にしても、大体三兆円以上ありますね、引き当てられているのが。実際に実損として損失で落ちるのは一兆円ぐらいのものですよ。そうでしょう。だから二兆円幾らというのは利益留保になるわけですね。退職給与だって九兆円ぐらいあるでしょう。賞与引当金は今度は順次廃止するという、これも約三兆円以上あるわけですね。引当金だけとってもそういうふうにある。ほかの特別措置はいっぱいある。アメリカほどでないにしても、アメリカは今度はっさりやりましたわけでしょう。それで、法人税というものをそれによって減税したなら減税したということがアメリカの場合はできてくる。そうすると日本の場合、そういう特別措置がこんなにも残っているところというのは珍しいのではないでしょうか。それについては一体どういうふうにお考えなんでしょうか。
#27
○鈴木公述人 貸倒引当金でございますが、おっしゃいますように全部が落ちているわけじゃございませんが、ただ一つこれをお考えいただきたい。
 これは金融業でございますが、今発展途上国に対してと申しますよりは累積債務国ですか、そこに相当の融資をしておられて、それが焦げついておるわけでございますね。それは何兆とあるというように私は聞いておりますし、そういったことを特別控除、そういうよその国では、いよいよアメリカは今度ブラジルの利払い停止ということによって、あれは三カ月過ぎましたら、利払い停止が続いたならば、それを債権放棄の手続をしなければいかぬといいますか、貸し倒れにしなければならぬということだそうで、今大変な問題にその点がなっておると聞いておりますが、日本にはそういったことはございませず、そのままになっているのです。大変私どもが驚くほどの融資を市中銀行でしておられるということでございますので、それは全体としては、私どもの事業会社の問題じゃなくて、そういった金融業の方の事情をどう解決するかということで、私どもはほとんど貸倒引当金による留保なんてございません。
 それから退職給与引当金は、あれは正直に言って年金制度になればそういうことになるわけでございます。
 そういうことでございますので、よく政策減税ということが言われますけれども、これはほとんどなくて、それを入れてあの実効税率というのが計算されるわけでございますから、その実効税率が今五三%弱ということでございますので、その点は誤解のないようにお願いいたします。
#28
○稲葉(誠)委員 最後にお聞きするのですけれども、お話によりますというと、売上税が導入されても、全部消費者に転嫁されるんだから流通業界には影響がないんだ、これが経団連の結論だというふうに承ってよろしいのでしょうか。
#29
○鈴木公述人 私どもは、流通業界が御心配になるようなことは、売り上げの点においても手数の点においても、それほど御心配になることはないのではないかと思っております。
 と申しますのは、円高デメリットを受けている事業は、それこそあすの命がわからないという状況であることは私が今申し上げることもないと思いますが、流通業界は、幸いなことに去年からずっと売り上げは増加して、成績もよろしゅうございます。ですから日本の個人消費というものは、そんなにこの売上税というものによって冷えるほど弱くない。幸い輸入物資が安い、そしてそれがまだ消費者物価に十分転嫁されない部分が相当あるという先ほども申しましたような環境でございますので、それほど御心配にならぬでいいというのが私どもの考えでございます。
#30
○砂田委員長 次に、坂口力君。
#31
○坂口委員 公述人には、きょうは大変お忙しいところをまことにありがとうございます。
 鈴木公述人にまず先にお伺いをしておきたいと思います。
 鈴木公述人は税制につきましては大変お詳しい方でございまして、先日私どももいろいろと御講義を受けたわけでございますが、非常に詳しい方でございますので、少し突っ込んだお話を一、二だけお聞かせをいただきたいと思います。
 一つは、今回の税制改革の中で大蔵省の方の試算として出されましたものの中に、法人税の減税というのは、これは個人に転嫁をされていく、こういう一項目がございまして、いろいろと意見の分かれているところでございます。先ほどから現在の法人の非常に難しい状況等を聞かせていただいたわけですが、これが本当に個人に転嫁をされていくものなのかどうか、この御意見をひとつお伺いをしたい。それが一つ。
 それからもう一つは、先ほどのお話で、実効税率を下げろ、こういうお話がございました。実効税率を下げよというお話がございましたが、各国の実効税率の比較というものを先ほど言われましたが、実効税率の比較だけではなかなか本当の比較にはならないのですね、御承知のとおり。先ほど議論がございますように、租税特別措置があるとかないとか、あるいはまた引当金がどうだとかといろいろな問題がございますね。ですから、実効税率を下げよというお話は、法人部門全体での負担を軽くしろという御意見なのか、そのほかの特別措置だとかあるいは引当金だとか準備金だとか、そのほかのところはいろいろ整合性のあるように変えでもいいから、とにかく実効税率は下げるという御意見なのか。
 例えば、アメリカは昨年税率を下げました。実効税率は確かに下げましたが、しかし、いろいろの特別措置その他は取っ払いました。ですから、法人全体といたしましては負担は多くなったわけですね、アメリカの場合。そういうことになりますね。だから、実効税率を下げよとおっしゃるのは、法人全体としての負担を少なくしてくれという意味なのか、実効税率は下げて、そのかわりにそうしたところは少々整合性があるように変えてもらっても構わない、こういうふうな御意見なのか。
 この二点、ひとつお伺いしたいと思います。
#32
○鈴木公述人 明確に簡単に申し上げられる第二の点から申し上げますと、私どもとしましては、税の方向からいいましても単純明快の方がいいわけでございますので、特別措置というようなものはもうどんどん小さくなってきておりますけれども、それは少なくなっても、実効税率あるいは実質税率と申しますか、本当に負担をするというのは低くなる、そのかわり今までいろいろな措置で特別の目的のためにやっていただいておったものがだんだんなくなってくるのはやむを得ないという考えで原則的にはやっております。
 ただ先ほど――ただと言うと何か条件をつけているようでございますが、今後の内需喚起あるいは内需型産業構造というものにつきましては、私は、今の一般論の税制改革ではなくて、民間資金をどのように特別の方向へ持っていくかという意味の、金の流れをどうするかというような対策については、例えば相続税の問題をどうするかとか、それから、昔からありますイギリスの、森林を保護するための協会へ金を出した場合には非常に税制の優遇をするとか、そういう特別目的の、今までとは違った国土開発というような意味の税制ということもまた考えなきゃならぬのじゃないか。これは新しい問題として考えておりますけれども、今の御質問の点で言いますと、全体の姿が単純になって、低くなって、国際的に比べられる、そして低いということを期待しております。
 それから第一の、法人税が個人にどのように影響するかということでございますが、非常に議論がたくさんあるところのようでございますけれども、私は、これは法人税というものがどのように個人の雇用そして賃上げというものに影響するかということを考えていただきますれば、直接それが現金でいつ払われるかという問題になりますとこれはなかなか難しい議論になりますけれども、原則的にそういうようにお考えいただければ、単純明快に御理解いただけるんじゃないかという考えでおります。特に今雇用の問題が一番大事な問題です。
 それから産業空洞化の問題でございますが、私どもは経営をずっと長くやっていまして、私も最高責任者として会社の経営をやってまいりましたが、そのときの一番のよりどころは税引き後利益でございます。税引き後利益があるかないかということによりまして、今のような国際資金、優良なる安い国際資金を調達できるかできないか。赤字であるか黒字であるかというぎりぎりの企業も大変そこら辺のところは大事でございまして、それは法人税が四〇%であるか五三%であるか三五%であるかは大変な差なんです。今度改正していただくのを、わずかという言葉を使うと失礼でございますが、わずか三%でございますが、それでも限界利益で困っております今の素材産業では、これで配当ができるかどうかということでございますので、配当軽課措置なんかでも原則的に、いろいろまた理論上も問題はありますけれども、今のようなぎりぎりの経営をやって何とか浮かび上がろうとしている企業にとっては、大変な問題だということでいろいろお願いもしてきたわけでございます。
 そういうことで、十分な御説明にならなかったかと思いますが、そういう意味で大変利益はあると思っております。
#33
○坂口委員 もう一言だけつけ加えていただきたいのですが、そういたしますと、いろいろ今お話がございましたが、法人税というものがそう右から左へ個人の月給袋の中に入ってくるというものではない、こういうことを今おっしゃったわけでございますね。もう一言だけ簡潔に。
#34
○鈴木公述人 それだけだと否定した意見になりますから、そうじゃございません。分析して三百万円の人、四百万円の人にどのようになるかというようなことになりますとそれは非常に明確にはいかぬでしょうけれども、とにかく企業が繁栄する、そして組合は、もう一国言わせていただきますと、今の日本の民間企業は、会社が繁栄することによって組合も栄え、従業員も生活が豊かになるんだという基本理念でずっとやってきております。これはどこの会社でもそういう理念でやっております。その点を知っていただければ、もう完全に法人税がいかに力があるかということを御理解いただけると思います。
#35
○坂口委員 もう一問だけお聞きしておきますが、売上税が経済成長率の足を引っ張るというデータが民間のいろいろの研究機関から出ておりますが、このことについてどうお考えになりますか、もう一つだけ簡単にお伺いいたします。
#36
○鈴木公述人 私は、民間のいろいろな見通しについてけちをつけるということは慎むべきだと思いますが、これはみんな推測でございますし、そして、自分の立場ということになりますとどうしてもそういったことに引っ張られますので、学者グループでもいろいろな数字を出しておられますけれども、冷静に考えていただくと、今度の税制改革では住宅に対する減税措置もありますし、それから物品税が大きな問題もございますし、これはよく見ていただきたい。
#37
○坂口委員 どうもありがとうございました。
#38
○砂田委員長 木下敬之助君。
#39
○木下委員 公述人の皆さん、御苦労さまでございます。
 最初に、円高についてお触れになりましたので少しお伺いいたします。
 これは大変な打撃が日本を直撃いたしておるわけでございますが、当初、このメリット・デメリットで、かなりメリットもあるようなことを中曽根総理も言ってこられて、現実にはメリットどころか、このままではやっていけない産業がたくさんあるという状態でございます。鈴木公述人は先ほど、差益還元効果が出てない、不十分なような御発言がございました。何か具体的にここが還元が不十分だとか、また今後そういったもので還元の効果が出てくるということを期待されておるのかどうか、まず最初にお伺いいたします。
#40
○鈴木公述人 御質問の点でございますが、なかなか難しい、還元がすぐできるかどうかという問題があり、それに対して大いに努力をしていただきたいという気持ちでおりますけれども、例えて言えば、農産物とか畜産物とかいうようなものも大きな一つの項目であろうと思っております。それから公共料金につきましても、やはりこれはいろいろな理由があるでしょうけれども、円高メリット還元ということには、我々としてはいささかもどかしい点がございます。
#41
○木下委員 それでは、我々は、今の円高の百五十円ちょっと、こういった数字はとても日本経済がそれを受け入れていかれない、必ずや産業が空洞化していくことが避けられない、こういう見通しを持って、やはり百八十円ぐらいのターゲットゾーンを持って政策のいろいろな点で当たっていくべきではないか、そういったターゲットゾーンを政府も明らかにしていくべきではないか、こういう考えを持っておるのですが、経団連の方はどのようにお考えでしょうか。
#42
○鈴木公述人 産業全体を見ますと、百七、八十円がいい相場だと私は思っております。経済のパフォーマンスからいいますとそういうところだと思っております。ただ、先ほど来国際化、国際情勢の問題がございましたが、日本がそう思いましても諸外国がそれで認めてくれるかどうかという現実の問題もございますので、我々といたしましては、そういった百七、八十円に対する希望も常に言いますが、やはり百五十円というのが定着する、あるいは下手をすればもっと低いといいますか、円高でつつかれるということも覚悟して、それに対する対応をしなければならぬ。そういたしますと、円高メリットが出るように何とか我々としては最善の努力をし、また国会の皆様にもお願いする。それをどのように軟着陸をしてそこへ持っていけるか。すべてのことが生き物でございますから、頓死するようなことがあったら大変なことでございますので、そういうことを前広に十分御検討、推進していただきたいという気持ちでございます。
#43
○木下委員 そういう意味で、内需拡大の上からも今回の売上税というのは大変大きな問題があると私たちは思っております。また、今公述の最初に売上税ばかりに論議が集中していることに対する御批判もございましたが、そういう意味からもやはり売上税が最大の課題であると私たちは思っておりますし、特にこの売上税が中曽根総理の公約の違反、こういった観点からやはりこれを中心に論議する必要があると思いますが、公述人は総理が売上税を導入することは大型間接税を導入しないと言った公約に違反すると思われますか、どう思われますか。
#44
○鈴木公述人 どうもその問題は、私どもの立場から、直間比率を是正する、それから間接税の立場から考えますと、これは大型間接税と言うには値しない中型あるいは小型間接税に相当するような問題ではないか、まじめに私はそう思っております。いわゆる税目的からいいましてですね。
#45
○木下委員 大型間接税の定義は総理がみずから言われて、みずから言われた定義との問題でも話しておりますけれども、一般的な常識から大型か中型か小型かというと、国民の目からいえば、これはいろいろな世論調査等でもう八割以上が大型であると言っているような状態がございますので、公述人が、御本人がどのように言われるかは御本人の自由ですけれども、やはりこれは大問題としてやっていこうと思っております。
 先ほどの話、もう一点お伺いしたいのですが、今回の税制改革がクロヨンの是正にもつながっているというふうな御発言がございました。今度の税制の改革のどこがこのクロヨンの捕捉の十分できていないところを捕捉できるような形に変わっておると思われるのか、お伺いいたします。
#46
○鈴木公述人 十分だとは思っておりません。ただ、その手がかりへ向かったという、例えて言えば、みなし法人の点についても申告だとか記帳義務というような点も若干変わっておりますし、それから、そちらが余り十分にいかないからサラリーマンに対して妻の控除制度を認めたというようなことも、不公平税制を若干でも直していこうということだと思いますが、クロヨンの是正にはほど遠い、私はそう思っております。
#47
○木下委員 じゃ、また後ほど。
#48
○砂田委員長 矢島恒夫君。
#49
○矢島委員 質問に入る前に、予算委員会における総括質問の問題で一言砂田委員長に申し入れをさせていただきたいと思います。
 それは、今日に至るも我が党の質問が行われていない。各党の質問が一巡しない中で本日公聴会が開かれるということは、極めて異常な事態である。すなわち、最小限各党代表の質問一巡の後、それを踏まえて公聴会を開き、公述人の意見を聞くというのは、二十四年来、ほぼ四半世紀にわたって行われてきたものでありますが、議会制民主主義の上からも当然のことであります。私は、このような異常な事態を改めて、我が党の金子満広委員の質問がきちんと速やかに行うことができるようにすべきであることを委員長に要求いたしまして、鈴木公述人への質問に入りたいと思います。
 昨年来、あなたの発言は売上税導入に対してしばしば重大な内容といろいろな影響を及ぼしているわけですが、そういう中で、私、時間の関係がありますのでまとめて質問いたしますので、簡潔にお答えいただきたいのです。
 その一つは、八月二十二日、政府税調の参考人として意見を述べられております。先ほども質問がありましたとおり、製造業童元上税は絶対受け入れられない、日本型付加価値税がいいんだ、こう言われたのですが、そういうのに対しまして、経団連に理事を送っていらっしゃいます日本チェーンストア協会の清水会長さんだとかあるいは日本百貨店協会の市原会長さんが、独断専行だというので抗議された。これは九月四日の朝日の夕刊に出ておりますけれども、そのときあなたは、どうしてものときは間接税の導入もやむを得ない、つまりどうしてものときはやむを得ない、こういうことを述べられたという報道が九月四日の朝日の夕刊に出ておるわけなんです。これは積極的な賛成ではなくて、まあいたし方ない、どうしてものときにはという発言だろうと私は思うのですけれども、売上税以外にもっとやるべきことがあると思うのですが、その点について一つ。
 もう一つは、同じ八月二十二日の税調で、あなたは不公平感の解消と、きょうも言われておりますけれども、こう言っていらしたわけです。ところが、十二月二十四日、朝日新聞ですが、あなたは千字に上る談話を発表していらっしゃいます。その中で、非課税業者をつくるとか非課税品目をつくったことで、これが新しい不公平を生むことになるのが心配だ、こう言っていらっしゃるのですが、この矛盾はどういうところにあるのか。
 その次に、同じ十二月二十四日の今私が取り上げました朝日の談話の中ですけれども、「前川リポートでも内需振興といっているのに、今回の税制は内需振興にほとんど役立つとは思えない。」こう言っておられます。三月八日の毎日の戸田経済部長との対談の中では、戸田部長が、軽減の「財源に関して、中曽根首相は当初、製造業者売上税を考えていた、それを経団連がひっくり返した、といわれています。」という問いかけに対して、いろいろ言われておりますが、その中でこういう部分もあるのです。「この税制改革は経済活動を刺激し、内需を拡大すると私は考えます。この点を私は一番強調したい。」こういうふうに言ってらっしゃる。どっちだかわからないのです。
 今までの発言をずっと見てみますと、あなたの発言は、あるときには入れてもいいだろう、あるときには今度はそれを否定するような発言が出てくる。そういう点についてまずひとつお答えいただきたい。
#50
○鈴木公述人 どうも私の発言をいろいろ詳細に御記録いただきまして恐縮しております。
 政府税調におきます発言でございますが、これは、今の税制改正としてこれ以外のいい税制改正があればそれはそれを考えることはできるであろうけれども、今としてはこれ以外にないんじゃないですかという発言をしたことは覚えております。また、あのときに、簡単に言わなければなりませんが、不公平税制あるいは行革ということも十分考えての上で、それでもどうしても必要であるというときにはこの売上税ということも必要になるんでしょう。これは、今まで経済団体もまず行革、不公平税制ということを税制改正の前提にして言っておりましたので、そういったところの説明に続いてそういったことを申したのが、売上税だけやむを得ないがしようがないというふうに伝わったんではなかろうかと私は思っております。その前にいわゆる不公平税制とか行政改革ということをやらなければいかぬが、それでも足らないときにはこういったこともやらなければいかぬという主張の流れでこう申したように記憶いたしております。そのように御理解いただきたいと思います。
 それから、不公平税制になってはいけないということは、今も私は思っております。クロヨンというものを改革するために税制改正をするわけでございますから、新しい税制が、クロヨンというものの別の形であらわれるということを極力防がなければいかぬ。そういう意味において、売上税につきましてもその点の御検討は十分していただかなければならないという立場で言っておるわけでございます。
 それから、最近、今の税制は経済刺激になると申しましたのは、私が前に申しましたときよりも、土地対策とか住宅減税だとかいろいろな政策が打ち出されております。そういったものを全部プラスいたしますとプラスになるということを前向きに言ったことと、それからもう一つ、税制というものが確立するということは、先ほども申しましたように、政府の政策がはっきりするということは我々にとっては非常に大事な問題でございますので、この税制がはっきりして進めば内需喚起になるということをまた申したわけでございますので、大変御理解に不足をしたような発言になったかもしれませんが、真意はそういうことでございますので御了解いただきたいと思います。
#51
○矢島委員 その内需の問題ですが、経団連が出しておりますパンフレットがあります。「今、なぜ税制抜本改革か」というパンフレット。そのパンフレットの中に、物価上昇、内需拡大に逆行がという質問に対して、「五%の値上がりがあるからといって消費が急激に落込むとは考えにくい」と書いている。この部分について、これを書いたと思われる経団連関係者がこういう発言をしているのです。「消費が落ちることは落ちる。しかし大きなマイナスではない」、つまり、内需をどんどんやるのか、拡大するのかというと、消費は落ち込む、しかしそれは大したことはない、こういうことを言っているのです。その点は答弁の中でも非常にはっきりしない点だと私も思うのです。
 最後に、あなたは法人税減税を主張した。その財源が製造業者売上税になるのではないかと言われた時期に猛烈な圧力をかけたということは、これは周知の事実で、新聞にたくさん書かれておりましたから。これが大企業にとって非常に転嫁しやすくて、しかも下請企業に税金分を負担させることができるという今度の売上税、こう考えて賛成しているという業界エゴとしか考えられない点、こういう点も私主張して、時間がもう過ぎているようでございますので、意見だけ申し述べまして終わりたいと思います。
#52
○鈴木公述人 一言。そういう意図では絶対ございませんので、御理解いただきたいと思います。
#53
○砂田委員長 これにて鈴木公述人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、申し上げます。
 鈴木公述人の御都合もあり、鈴木公述人に対する質疑を急ぎました結果、質問者並びに他の公述人に御不便をおかけいたしましたことをお許しいただきたいと存じます。
 鈴木公述人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。御退席いただいて結構です。
 引き続き、牛嶋公述人、神谷公述人に対する質疑を行います。稲葉誠一君。
#54
○稲葉(誠)委員 牛嶋先生のお話を承っておりまして、先生は売上税導入に対しての必然性は、動機としてないというお話でございましたね。これは経済的には私もそう思うのですよ。ところが、これが政治的にそれがあるというところに今度の問題があるわけでして、それは中曽根さんの軽井沢の研修会における演説があるのですけれども、そこから始まってくるわけですが、時間がかかりますからあれですが、私はそういうふうに思っておるのですね。そこで、極めて不完全な形というか、害が多いような形にして問題が起きてきておる、政治的な意図のもとに行われておるというところに問題があるという点だけちょっと御指摘させていただきたいと思うのですが、別な機会にまたあれさせていただきたいと思うのです。
 そこで、先生にお聞きをいたしたいのは、売上税の導入によって、先生の専門的な範囲のことでございますが、まず免税方式とゼロ税率がございますね。ゼロ税率をとらなかったわけ。免税方式をとったわけですね、今度の場合。それがどういう目的でとったんだろうか。それが税収の多い少ないといいますか、そういう形の面から考えたときに、どうして免税方式というものをとったんだろうか、こういう点についてまず先生の御意見といいますか、お伺いさせていただきたい、こう思うのです。
#55
○牛嶋公述人 非課税品目を見ますと、恐らくほとんど消費財が主でございます。その場合に、免税でいくかあるいはゼロ税率でいくかというのは極めて重要な意味を持っておりまして、ゼロ税率の場合には、消費財が原料からずっと加工されて、これまでかかってきた税がこれは全部免除になるわけでございます。ところが、非課税の場合には一番最後の小売段階だけの税が免税になるだけでありまして、その加工の段階で順次かかってまいりました税はそのままその非課税品目にもかかってくる、こういうことですから、課税当局からいいますと、ゼロ税率になりますと税収が落ちるわけでありまして、これは当然非課税というふうな方式でいくだろうというふうに考えられます。
#56
○稲葉(誠)委員 それから、ECの第六次指令で非課税の範囲というものを決めておるわけですね。あれは非常に狭いわけですが、たしか六種類でしたっけ、七種類でしたっけね。ところが今度の場合は、種類で言うと何種類になるかは別といたしまして、品目で言うと四十三が五十幾つになってしまった。こういうことで、非常に範囲が広がってきたわけですね。そこら辺のことについては先生としてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#57
○牛嶋公述人 これは先ほど私、意見を述べさせていただいたときに申しましたように、それぞれの国で付加価値税あるいは売上税を導入する以前の税制というのは非常に関連しているわけですね。イギリスの例を言いましたけれども、イギリスの場合には仕入れ税といった、日本の物品税と比べてやや税範囲が広い、そういった税目しかなかったわけですので、先ほど申しましたように必然性が非常に問題になったわけですが、ほかのEC諸国は取引高税ということですべての取引に対して、そして非常に課税範囲も広かったわけですから、今の第五次の指令でも十分それに対応できるわけですが、イギリスの場合は今申しましたように非課税範囲は広いということになっております。恐らく指令に基づきましてだんだん狭めていくというふうに思いますけれども、そうなっている。ですから、日本の場合もやはり売上税を代替税にして導入するというところに非常に無理があるわけでありまして、このまま議論していきますと、恐らく非課税はもっともっと広がるのではないかというふうに思っております。
#58
○稲葉(誠)委員 今イギリスのお話が出ましたですけれども、イギリスの場合はこれを導入したときに、制度が違うのは違うのですけれども、税務署の職員を約六千人ふやしたわけですね。アメリカの場合は、州にあるほかに、今度は連邦のあれをやろうとして、いろいろな理由で取りやめにしたわけですけれども、そのときに二万人ふやそうという計画がパートスリーに出ているわけですね。それから見ると、日本の場合は六百人プラス、外国関税なんか百何人ありますけれども、それで人数がどういうふうになってどういう仕事をするのか、この税額票がどこへどういうふうに行って何に使われるのかということに私は非常に疑問を持っているわけですね。今鈴木さんにもコンピューターの話をしたわけですが、コンピューターというのはどこへ備えつけてどういうふうにそれが利用されてくるのかということですね。ですから、そういう点について、例えば人数の問題、それからコンピューターの利用、税額票の私用とか、そういうことに関連をしてどういう問題点が出てくるのだろうか、こういうことについてのお考えをお聞かせ願えれば、こう思うわけですが。
#59
○牛嶋公述人 今のお話でもう一つ、私韓国のお話をしたいと思いますが、韓国も付加価値税を導入する場合にその問題が出てきたわけですが、先ほど申しましたように営業税というのがありまして、その営業税は非常に大型な間接税でしたから、もう既にそれに対して税務職員が配置されていたわけですね。ですから、そういった税務職員の数からいいましても、私はやはり税の改革というのは漸進的でなければならないというふうに思っております。
 アメリカの場合は、今の御指摘のように二万人と言っているわけです。日本の場合はそれじゃどうだろうかということですが、恐らくこれは非課税業者の範囲の問題が非常に絡んでくるだろう。一億円という話が出ておりますけれども、これによりまして企業の八〇%近くが非課税業者になる。そういうことから考えますと、納税に当たっての事務を受け入れる税務署の方もそんな一万とか二万というふうな数は要らないだろうというふうに思います。
 そういうことで、非課税業者の範囲をどこで決めるかということは非常に問題になるわけですけれども、しかし、そういうふうに非課税業者の範囲を狭めていく場合に、ひとつまた税の――私は売上税に関しましては公平という言葉は使わないわけで、公正というふうに呼んでおります。この売上税の場合の公正というのは、むしろ企業間の市場における経済競争、これにどういう影響を与えるかというふうなことで売上税の公正の問題は議論しなければいけないと思っておりますが、それからいいますと、そこにまた公正の観点から問題が出てくるというふうに思っております。
#60
○稲葉(誠)委員 公正の観点から問題ということで、今鈴木さんのお話をお聞きになられたと思うのですけれども、流通業界に影響がないようなお話だったのですけれども、人によっては流通業界に一番影響が出てくるのだ。いろいろな段階が日本の場合ありますね。それを非関税障壁だと言う人もおりますけれども、それに影響が出てきて、その合理化が結果として進むんだ、これは総理も長い目で見ればそういうふうになるんだという意味のことを言っておられるのですけれどもね。そうなってくると、流通業界に与える影響というのは非常に大きく出てくるのじゃないでしょうか。大前さんなんか非常に大きいと言っているわけですけれども、それをそのままとるわけじゃありませんけれども、そこら辺のところをどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。
#61
○牛嶋公述人 売上税とかあるいは付加価値税の説明をする場合に、税負担が最終的な消費者に転嫁していくプロセスを非常に単純な直線的な生産工程といいますか、原料が加工されてそして製品になって、それが卸売段階、小売段階を経て消費者にいく、こういう非常に直線的な取引形態でもって説明されているわけですね。しかし、我が国の流通段階を見ますと非常に複雑であります。ですから、そういった売上税で説明されているようなプロセスでは、私は、転嫁というものがストレートに先ほどのお話にもありましたように消費者にはいかない部分があるのではないか。そうだといたしますと、やはり実態をもう少しそこのところを詰めて、それぞれの業界あるいはそれぞれの取引段階でその売上税の負担がどうなっていくのかということを十分検討しなければならないと思います。
 今度は逆に、先ほど申しましたように、こういう税が出てまいりますと、それを与件にいたしまして企業は別な行動をとってまいります。これは当然なことだと思いますが、しかしそのときに起こる混乱というのは非常に相当なもので、これは一回限りというふうな表現もされておりますけれども、そんなことでは済まされないのではないかというふうに私は思っております。
#62
○稲葉(誠)委員 神谷先生、一%の問題で、日本の場合には奇妙な扱われ方をしたというようなお話だったように承ったのですが、それでひとり歩きした、こういうふうなお話のようにお聞きいたしました。私は、ひとり歩きという言葉はむしろちょっと当たらないので、国民の間に広く深くそれが定着した、こういう理解の方が正しいのだ、こういうふうに思うし、その定着したということについてはそれなりの理由があるのだというふうに私はとっておるし、私ども社会党全体そういう理解の仕方なんです。
 そこで、今の一%枠の取り外しといいますか、そういうふうな問題が、特に今の日本の置かれている立場からして、アジアの国々その他日本が過去において戦争した国々に与える影響といいますか、それが日本の外交的な立場なり政治的な立場に悪い影響を与えるというふうに私は考えるのですが、そこら辺についての先生のお考えをお聞かせ願えれば、こういうふうに思う次第でございます。
#63
○神谷公述人 一%という枠は国民の間に定着していたのではないかという御意見でございますが、確かにある意味では定着していたと思います。しかし、一%という枠が元来政策的合理性に乏しい枠であったということを考えますならば、やはり定着すべきは政策的合理性のある線に定着すべきであって、そうでない場合には修正、訂正される方が望ましいというのが私の考えでございます。先生も御記憶と存じますけれども、三木内閣のときの線が出てまいりましたその際、我が国の経済成長率は一三%台と大変高い成長率が予想されていた時代、そこから割り出しての一%でございますから、したがって今日のように三%も危ういという低成長の場合には大分事情が違うのではないか、このように思っております。
 それから、各国とりわけアジア諸国の受けとめ方ということでございますが、私は及ばずながらこの問題についての世界各国のマスメディアの議論を相当程度調べてまいりました。それによれば、本当に頭から一%の枠を外してけしからぬということを言っておりますのはソ連と北朝鮮、それから懸念を表明するという線にとどまっておりますのが中国、あとの国々はそれほど大きな反対ではない。特に先生御指摘のアジア諸国ということになりますと、例えばマレーシアとかあるいはタイ、インドネシア、シンガポール、そういった国々は歴史的には日本の防衛力というものが一定の線を超え過ぎはしないかということについていろいろ発言をしてきた国でありますけれども、今度の一%問題については大変慎重な態度で、特に批判がましい、非難がましい発言をしておりません。そういったことから考えまして、私は、この程度の線でありますならば、そうして我が国が近隣諸国に対して十分な説明をいたしますならば、十分それら諸国の納得が得られる線である、このように考えております。
#64
○稲葉(誠)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、神谷先生の御意見とは、遺憾ながらと申しますか、私どもの考えでいることと相当というか、根本的に違うところがあるということだけは申し上げまして、別の機会に十分討論なり何なりをさせていただきたい、かように思うことをつけ加えまして、終わります。
#65
○砂田委員長 坂口力君。
#66
○坂口委員 それでは引き続きましてお伺いをしたいと思いますが、まず最初に牛嶋公述人にひとつお伺いをしたいと思います。
 牛嶋先生は先ほど理論的な立場から売上税の問題をいろいろお話しをいただきまして、よく理解のできたところでございますが、その中で税の改革の手順という問題に触れられまして、まず不公平是正というものを挙げられたわけでありますが、先生がお考えになっておりますこの不公平是正、その手順からいきますとどこから手をつけていったらいいのかということをどのようにお考えになっているのかということが一つ。
 それからもう一つは、先ほど鈴木公述人にも少しお伺いをしたのですが、景気に対してこの売上税がどのような影響を与えるのかということを非常に興味を持っているわけでございますが、この六十二年度予算全体が内需拡大にどのような効果を持っているというふうに、あるいはどういうふうな位置づけでお考えになっているかということ、それをあわせてひとつ御答弁をいただければというふうに思います。
#67
○牛嶋公述人 まず最初の御質問でございますけれども、今回の税制改革で政府がその改革案をまとめていく場合にやはり一番最初にはっきりさせなければいけなかったのは、シャウプ税制以降の所得税を中心にした我が国の税体系というものをそのまま引き継いでいくのか、それともここでこれまでの我が国の税制を大きく変えていくのかということをまず議論すべきではなかったかと思っております。そこのところが非常に欠けておったために所得税に対する税制改革が極めて中途半端な形になっているというふうに思われるわけであります。
 私は、これはかなり個人的な意見ですけれども、これまで続けてまいりましたシャウプ税制以降の所得税中心の税体系というのはやはり今後も続けるべきであるというふうに思っております。そうだといたしますと所得税というのは基幹税であり続けるわけでありますから、それなりの体裁あるいは条件を整えていく必要があるわけでありまして、その一つといたしましては不公平是正の問題がありますけれども、もう一つはやはり総合課税というふうなものを徹底させるということではなかったかと思います。そういう意味で、マル優の廃止、またこれについては議論しなければなりませんけれども、その後の措置といたしまして、これまで分離選択課税でありました利子所得、これも一括一律課税二〇%というふうな分離課税になってしまったことは、先ほど申しましたように今回の所得税に対する税制というのはかなり後退したというふうに考えているわけであります。そういうことで、今後も所得税を基幹税というふうに位置づけるならば、まずここのところを不公平是正を初めといたしまして基幹税としての条件を整えるような形で税制改革を進めるべきである、こういうふうに思っております。
 それから、後の問題でありますが、非常に重要な意味を含んでおりますが、消費者に売上税が転嫁されていくということで、これは物価上昇という形をとるわけですけれども、私は、それによってそれほど消費が抑制されるというふうには思っておりません。むしろ問題はそこへいくまでの企業の、先ほど申しましたように企業活動に対するインセンティブが、税負担は転嫁されるとはいいましてもそこにあいまいな点もございますし、また徴税費の増高というふうなことも考えまして、そこのどころに抑制的な作用が働くのではないか。そうだといたしますと、内需の拡大というのは、需要がふえていくということもありますけれども、やはり企業の活動というふうなものも供給側も非常に重要でありまして、そこのところに抑制的に作用するということになりますとやはり問題が残るのではないかというふうに思っております。
#68
○坂口委員 ありがとうございます。もう少しお聞かせをいただきたいのですが、初めに少し時間をとり過ぎてしまいまして、私の持ち時間は既に超過をいたしておりますので、神谷公述人に御質問をする時間がもうなくなってしまいました。また機会がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。お許しをいただきたいと思います。ありがとうございました。
#69
○砂田委員長 木下敬之助君。
#70
○木下委員 牛嶋公述人にお伺いいたします。
 直間比率の見直しのことやらいろいろとお触れになりまして、直間比率のこういう比率がいいんだとかそんなものはないというお話と、また所得税中心であるべきだ、そういう先生のお考えもお伺いしました。結論として、直間比率見直しそのものは必要であるとかないとかいう論議にしますと先生どうお考えになっておられますか。
#71
○牛嶋公述人 先ほども言いましたように、直間比率が適正かどうかというのは結果として出てくるわけでありまして、それを最初に掲げて税制改革を行うということは間違いではないかというふうに私は思っております。
#72
○木下委員 売上税のことについてちょっとお伺いいたします。
 今、売上税をいろいろ論議している中で、最終的に消費者が負担するもので、価格は外枠表示にしようとどうしようととにかく次々とその分は次の段階に負担していただきながらいく、だから途中で価格転嫁しながらいくから業者そのものは困らないんだ、こういった論議もありますが、我々は、なかなかそういかない実情の中で、価格転嫁できずに経営が続けられない企業が出るのではないか、このように思っておりますが、その点先生どうお考えになりますか。
#73
○牛嶋公述人 先ほども言いましたように、形の上ではそうでありますけれども、経済の実態というのは非常に複雑であります。特に、市場におきまして、売り手市場であるかあるいは買い手市場であるかということは、価格を決定する場合に非常に問題になるわけであります。そこのところも、完全競争であればいいですけれども、相対取引のような場合、この場合には非常に微妙な問題が私は出てくるんじゃないかというふうに懸念しております。
#74
○木下委員 最後に、先生御専門ですからちょっと教えてください。
 税をいろいろ分類するのでしょうが、この売上税というのはやはり消費税なんでしょう。
#75
○牛嶋公述人 税の分類の基準はいろいろございます。例えば、だれに課税するかで分類いたしますと、この売上税も企業に対する課税でございますから、法人税と同じように企業課税というふうな分類もできようかと思います。しかし、その税負担がどういう所得源泉で負担されているかということになりますと、所得があるいは消費があるいは財産かというふうな分類になります。それでいきますと売上税は消費税であります。
#76
○木下委員 いろいろ制約もつけていますけれども、一般的な消費税と言えると思われますか。
#77
○牛嶋公述人 我々分類する場合に、消費税は全部ひっくるめて売上税というふうに―今使っておる売上税と違います、セールスタックスと言っておりますが、それをまた二つに分けまして、特定の商品に課税される個別消費税、それからすべての商品を一応課税対象にする一般消費税に分けます。それからいきますと、今度の売上税は一般消費税であります。
#78
○木下委員 神谷先生、お伺いいたします。
 先生、「防衛計画の大綱」、これは見直し論もあるようなお話も少し言われましたが、先生御自身はこの「防衛計画の大綱」で十分だとお考えになっておられますか、どうですか。
#79
○神谷公述人 「防衛計画の大綱」の水準を達成するのは一九九〇年、まだ大分先のことでありまして、その時点での国際情勢、とりわけ我が国をめぐる安全保障状況というものが必ずしもはっきり浮かんでまいりませんので、断定的に申すことはできないと思いますけれども、相当の線までいくのではないか。とにかくこの線までいかなければ、日本自身も、また外に対する申し開きといいますか説明という点を考えましても、どうにもならないのではなかろうか、このように考えております。
#80
○木下委員 もう少し詳しくお伺いしたいのですが、大綱の水準を別表に定めております。その別表を少しさわることは大綱全体を見直したことにならない、こういうことで、別表の見直しというものも大綱の変更じゃなくてやれるんだということも言われておるのですが、その点は先生どんなふうにお考えですか。
#81
○神谷公述人 大綱ないし大綱別表の見直しということは、私の承知しております限り、日本政府もその必要はないという線を崩しておりませんし、また、外から日本に対してもっと防衛努力をしてくれという意見が出ている場合にも、大綱の見直しというところまでいっていないのが現状だと思います。したがいまして、それほど大綱の見直しというのが近い将来における具体的な政策課題になるということはないというふうに私は考えております。
#82
○木下委員 GNP比一%のことで先生いろいろ言われまして、私たちも合理的な根拠のある考え方ではないとは思ってきております。ただ、これから中期防がまた進んでいって、その後に次期中期防のようなものをつくっていく、そのときに、その策定するに当たって今までGNP比一%の枠内でというのを最初に定めたころの精神はやはり継いでいくべきかどうか、またそれにどういった枠をかけるのか、こういったことも論議されていくと思います。先生も先ほど大幅にこの一%を超すことは問題だとも御発言なさっておられますので、この中期防の次に対して、今のうちから何か考えておく必要があるのか、またそれに対するお考え等がございましたらお聞かせください。
#83
○神谷公述人 現在の中期防、この基本線は中期防以後におきましてもそれほど簡単に変わるものではないであろうし、また変えるべきものでもなかろう、このように考えております。
 ただ、ことしの一月一日だったと思いますけれども、ロンドンのタイムズがこのことを問題にしておりまして、つまり日本はぜいたくだ。ぜいたくだという表現をしておるわけですね。少ししか西側の防衛体制に対して協力出資をしていない、こういうぜいたくは幾ら何でも日本には許されないのではないかということを言っている。その線を何とかしたい。そのためには、ただいまの中期防の基本精神で十分足りるというふうに私は考えております。
#84
○木下委員 どうも、時間が来ましたので。
#85
○砂田委員長 矢島恒夫君。
#86
○矢島委員 牛嶋先生にお聞きしたいのですけれども、経済への重大な影響があるこの売上税の導入をなぜ今必要としているのか、この点は私も全くそうだと思うのですが、一つ目は、先生が書かれた「説経通信」の十月号の中に「製造業者売上税の検討」という、その中のちょっと一部ですけれども、いわゆる納税義務者の事務負担の問題を取り上げていらっしゃるのですが、その辺についてちょっと、どれだけどういう状況になってくるだろうというあたりをお聞かせいただければと思います。
#87
○牛嶋公述人 私は、事務負担というのは売り上げ全体の額じゃなくて、売り上げの回数、取引回数が非常に問題になってくる、こういうふうに思います。したがって、大企業の場合にはもちろん売り上げ総額は非常に大きいわけですが、回数からいいますと、むしろ中小企業の方が多く回数がふえできます。今申しましたように、徴税費がそういった回数と関連しているということになりますと、徴税事務費が規模の小さな企業に相対的に大きくなってくる、こういうふうに解釈しております。
#88
○矢島委員 もう一つお聞きしたいのですが、これまた先生の論文ですが、エコノミスト二月二十三日のに地方自治体との問題を取り上げていらっしゃるのです。この短い時間に先生にこんな大きな問題を全部お答えいただくというのは、私ども質問する方が失礼なんですけれども、ただ一つ、「地方自治の後退招く税制改革」というこの表題の中で、売上税導入で地方税にいろいろゆがみが出てくるんだ、こういうことをおっしゃられているのですけれども、時間の関係で、申しわけございませんが、項目だけでも教えていただければと思います。
#89
○牛嶋公述人 私は、五十六年から行われております財政再建で一番大きな影響を受けたのは地方自治体ではないかというふうに思っております。私は、地方自治体というのは、五十年の地方財政の危機以降非常に内部努力をしてまいりまして、それなりの行政能力を高めてきていると思います。そういう意味では、国の方が今度は地方自治に対しまして自主財源をある程度与えていくべき、そういう段階ではなかったか。それが今まで延ばされてきているわけでありまして、今回の税制改革におきましても、地方自治の観点から申しまして自主財源の拡大ということはほとんどなされておりません。そして、先ほど申しました売上税の話も、形の上では売上譲与税というふうなことで地方に税源を配分しておりますけれども、これはあくまでも譲与税でありまして、自主財源から申しますと少し外れます。そういう意味では後退ではなかったかというふうな表現をさせていただいたわけであります。
#90
○矢島委員 地方自治体への大きな影響という点ではおっしゃるとおりだと思いますし、同時に、今年度の予算に関係することですけれども、昨年度一年限りと言った地方自治体への補助金の一律カット六千四百億円、今年度が一兆三千億円、さらに今度の来年度では一兆五千億ですか、大変な予算を組もうとしているわけなんですが、その点について。
#91
○牛嶋公述人 地方自治の観点から申しますと、そういった補助金等の依存財源というのはできるだけ少ない方がいいと思います。ですから、依存財源を削る、すなわち補助金を抑えていくということであれば、それだけ今度は自主財源、地方税の方で手当てしていけば、これは全体から見ますと地方自治は前進するわけでありまして、そのような方向でやはり検討をすべきではなかったかというふうに思っております。
#92
○矢島委員 終わります。
#93
○砂田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
#94
○砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 公聴会を続行いたします。
 この際、御出席の公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和六十二年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌弾のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
 なお、御意見を承る順序といたしましては、まず山田公述人、次に高橋公述人、続いて関本公述人の順序で、お一人二十五分以内で御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、山田公述人にお願いいたします。
#95
○山田公述人 御紹介いただきました全民労協の山田です。
 余り原稿をまとめましてかたい話をしましてもどうかと思いまして、ざっくばらんに私どもが今感じておることを申し上げたいと思います。いろいろなことをお話しする前に、先生方には釈迦に説法かもしれませんが、一体今勤労者なりサラリーマンというのはどういうような感じなり実態にあるのかということを一言だけ申し上げておきたいと思います。
 昨年、国税庁発表で、六十年分民間給与生活者の実態というのが公表されておりますが、一年を通して働いた民間の給与生活者というのは三千六百九十四万人ということであります。事業所の規模にしますと、五百人以上のところが二一・八%。平均給与、これを知っておいていただきたいのです。平均給与は三百五十二万円です。これはボーナスも残業手当も全部ひっくるめての国税庁で把握した収入金額ですが、三百五十二万円。平均年齢が四十・六歳、勤続年数が十九年。そのうち男子が四百二十八万円、四十・九歳の十二・一年、女子が二百七万円で四十・〇歳、八・四年。ですから、くどいようですけれども、三百五十二万円ということであります。そのうち五千人以上の規模のところで働いている人たちが五・一%ぐらいしかいないということで、圧倒的に中小企業、零細企業で働いている人が多いということは申し上げるまでもないと思います。そこで、年収三百万円以下の人たちが五〇・七%です。それから、年収が三百万から五百万以下の方が三〇・六%、年収五百万円以上という方は一八・六%しかいないということなんです。
 さらにまた、全民労協でも、六十年、六十一年、六十二年にわたりまして、中流意識のもとでの生活ということで、三部作で発表させていただきました。その内容を詳しく申し上げるような時間がございませんが、ただ共通していることは、中流意識というとらえ方についても、世間並みだというとらえ方が六〇%、世間並み以下だというとらえ方が四〇%というような状況です。特に、家計の中で負担が非常に重い、その内容については税金、社会保険が三七・六、住宅購入のための貯蓄返済が三二・四%、食費が三一・一%、子供の教育は二七・九%、こういうところがサラリーマン全体の共通した不満といいますか、非常に重さを感じておるということであります。
 それから、収入のことをちょっと触れましたが、正直言いまして、今勤労者の生活というのは本人の賃金だけではもうとてもやれない。それを支えているのはいわゆる時間外、残業です。それから共働きです。これがなかったら一体どういうことになるだろうかということも私どもは十分ひとつ考えてもらいたいと思います。昭和五十九年現在で、もし残業がなくなった場合どういうことか。暮らしてはいけないという方が二一・九%、大幅に切り詰める三〇・四%、貯金ができなくなる一三・四%、もともと残業がないというのが二二・二%というような数字が並んできます。円高によりまして輸出関連産業が今ずっと雇用問題まで引き起こしておりますが、ほとんど時間外が規制されております。私どもは労働時間短縮を主張する立場なんですが、一面でまたこういう矛盾も実はしょっておるわけでありまして、輸出関連産業のそれぞれの産業別組合がつい最近いろんな調査をしておりますけれども、大体七五%以上が、残業がなくなりますともう大変生活が窮屈になってくるというような調査結果も実は発表されておるということであります。最近は雇用の関連で、言うならばパートとかそういう関係もかなり減少しているような状況にあります。
 つい最近、個人消費がかなりマイナスを記録したということがありまして、何か政府の方ではお天気のせいのようにされておりますが、それは余りにも実態を知らな過ぎると思います。賃上げがなかなか思うようになってないということ、ボーナスが減るということ、雇用不安を引き起こしているということ、さらには今申し上げました残業手当、さらには共働きが非常に減少してきている、こういう点が非常に大きな個人消費に対する影響を来しておるというぐあいに申し上げておきたいと思います。
 それから、時間の関係でずっとはしょりますが、もう一つだけ申し上げておきますが、年金生活者の問題で、昭和六十二年度の予算でいきますと、三十二年掛けのモデル年金が約十八万四千円になっています。モデル年金が出ますと、世の中全体が何かモデル年金をもらえるような錯覚を起こしているわけなんですが、実はこのモデル年金以上もらえる人は二割強しかいない。八割近い人は、賃金の格差に大体比例しまして七割、七掛けてこの年金も見てもらったらいいということも正直に申し上げておきたいと思います。後で御質問があれば、それぞれまた内容を説明したいと思います。
 二つ目は、経済政策にかかわる問題でありますが、今回の政府の予算を見まして私どもが申し上げていることは、超縮小均衡予算だ。もっと厳しく申し上げますと、私どもは民間の労働組合の立場で合理化、雇用で非常に悩んでおるわけなんですけれども、円高不況、それから失業をむしろ促進するような予算の内容だということを申し上げたいわけであります。特に、防衛費の聖域化に伴う突出ということも、我々としては全体の予算が削減される中で、抑制される中で極めて不満を持っております。そういう中で、一律のマイナスシーリングもおよそ限界に来ておりますし、むしろそのことによって大きなひずみをあちらこちらに起こしているような受けとめ方もしております。そういうことで、結論的に申し上げたいことは、経済の実態に沿ったような形で機動的に予算もぜひひとつ対応してもらいたいということであります。
 円高不況からの脱却について。まず第一は、内需主導の高目の経済成長率五%程度をぜひひとつ目標に置きながら予算を組んでほしい。そのための潜在力は十分にあるということは、むしろ経済関係の省庁の資料からも明らかに実はされているところでありまして、十二月の段階で中曽根総理にお会いしましたときに私どもは積極的にこういうことを主張いたしました。政府の方は、六十一年度の経済成長率も四%程度は何とか確保できますということをつい十二月の段階で私どもに言われておったんですが、暦年でも二・五%というような数字ですから、まあだまされたとかだますとかいう言葉がありますが、何も税金問題だけでなくて、余り数字がかけ離れますと、非常に大きな政治不信にまで結果が及んでいくのではないかということであります。六十二年度の三・五%も、このままいきますと危ういというぐあいに私どもは見ております。そのためには積極的に財政政策の発動をしてもらいたい。
 議論をしますと、一番のポイントは財政再建であります。私どもは財政再建についても大事にしていきたいし、今日までもこの点については我々なりに対応した気持ちであります。ここで五年以上は先送りにして、一遍見直してやり直してもらいたい。それと同時に建設国債の増発もしっかりやってもらって、景気の後退、税収の伸び悩み、財政赤字の増大という悪循環をここで一遍逆転をさせてほしい、政策の転換をひとつやってほしいということであります。さらに円高メリットの還元、物価の安定、大幅減税、効率的でかつ重点配分による社会資本の整備、公共投資の推進、住宅投資の促進、設備投資減税、労働時間の短縮、週休二日制の普及なども内需拡大の極めて重要な柱になるということを申し上げます。
 特に、内需拡大、公共事業を推し進めるに当たりまして、地価の安定、土地供給の拡大などが土地政策としては大変重要だと思います。私は臨調にも参加をしておりましたが、この土地の価格の問題につきましては思い切って凍結をするぐらいの政策手段を打たないと、なかなか土地問題の安定は期し得ないというぐあいに私は判断をしております。利用法を初めいろいろな関係法律がありますが、もしそれが障害になれば、ぜひ皆さんたちの手で凍結に近いような手段が打てるような法律の内容に変えて対応してほしいと願っているわけであります。さらにまた、公有地の売却等に当たりましては、民間規制と同じような扱いでぜひやってもらいたいということであります。また、線引きの緩和につきましては、私どもは私どもなりにこれを受けとめてはおりますが、このことがむしろまた地価の高騰の引き金になるということを一面では大変おそれておりますから、その辺の両面からの対応をきっちりやる中で公共事業なり内需拡大に関する対応をやってほしいということであります。
 特に、住宅とのかかわり合いで宅地並み課税の問題もございますが、先ごろの経済構造審議会でも、特例措置を廃止して、原則として宅地並み課税を全面的に実施すべきだという答申も出されておるわけでありますから、この際、この問題についてもしり抜けのやり方ではなしに、ひとつきっちりやってもらいたいと思います。特に住宅政策につきましては、サラリーマンの一番の悩みどころでありますけれども、ウサギ小屋と言われる日本の住宅に対する金融なり税制面からの対応というのは極めて薄い。歳入に占める住宅減税額等はアメリカで四・九、イギリスで三・八、フランスで一・五、西ドイツで一・三、日本では〇・三、これは既に皆さん御承知のとおりであります。この辺の政策に対する発想の転換を思い切ってやってもらいたい。
 以上、経済にかかわる一つの面を申し上げました。
 さらに二番目は、適正な為替レートの安定を図ってもらいたいということです。
 生活水準、購買力、経済、産業の実態から見ますと、私どもは一昨年から百九十円から二百円ぐらいが適正な円レートだということを主張してまいりました。産業別にもその内容の数字を明らかにしてまいりました。ところが、最近のG5、G7の経過を見ますと、何か百五十円が当たり前のような雰囲気で推移をしていることに私どもは実は大変危機感を持っているわけでありまして、為替レート一本やりの対外調整だけでは非常に問題があるわけですから、くどいようですけれども、内需拡大等もあわせながらもっともっとわかりやすい積極的な対策を打ってほしいということであります。
 三番目には、海外政策との協調であります。これはもう説明の必要はないかと思います。
 それから、あとは雇用の問題でありますが、時間もありませんから一言だけ申し上げておきます。
 経済成長にかかわる雇用、構造不況、言うならば円高によって加速された雇用、内需拡大を中心にする経済体質転換に伴う企業の海外進出その他による産業の空洞化の問題、これらの問題が一つに絡みまして、今雇用不安が非常に大きな問題となっております。いろいろな手につきましては、政府の方でも、三十万創出の問題だとかそれから円滑法の問題だとかいうことを準備してもらっております。内容についていろいろな意見もあります。特に雇用については事前協議、事前合意をしっかりやるような仕組みにしてもらいたいということであります。あとはひとつ走りながら、対応しながら、問題があれば幅を持って機動的に直せるようなやり方で進めてほしいということであります。結論的に言いますと、五%程度の実質経済成長率を実現しないことには、半年、一年は間に合いましても、二年、三年を見通しますと雇用は極めて不安。成長率を高めるしかない、経済環境を明るくするしかないということであります。
 それから税制の問題ですが、私どもサラリーマンの立場からいいますと、減税という言葉が非常に誤って伝えられておる。今まで納めています税金をまけてくれとは一つも言っておりません。今から上がる分を緩和、是正してくださいというのが私どもの主張でありますから、正確に言いますと減税という言葉は当たらないということであります。
 昭和五十二年度から六十一年度までのサラリーマンの給与と税金の比較をしますと、一%賃金がふえますとちょうど二・五%税金が上がっております。申告所得者は一%の所得がふえて同じような状態、いわゆる一%ということであります。それから、長年私どもは税金問題を訴えてまいりましたが、昭和四十一年から五十年、十年間で三兆六千九百二十五億円の減税を政府はやっておられます。特に田中内閣当時、四十九年に一兆七千二百七十億、これを現在に換算をいたしますと、六十一年ベースで四兆六千億円に四十九年の減税は匹敵するということが言われております。ところが、五十一年から六十年の十年間を見ますと、わずかに一兆八百七十億円しか是正されていないということでありますから、サラリーマンにとっていかに過酷なことかということがこの資料だけでもはっきりすると思います。
 不公平税制で私たちが一番言いたい点は、申告納税者は消費者物価上昇分が必要経費で組み込まれながら、サラリーマンには全然関係しないということであります。これは諸外国の例にもありますとおり、物価調整、そういう制度がインデクセーションの形でアメリカでもイギリスでもフランスでも導入されておる、どうして日本でやられないのか。毎年毎年、私どもとしてはそれこそデモをやったり集会をやったり大変なんです。きちっと安定するように制度化してもらうと少しは落ちつくと思いますから、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 それから住民税です。生活保護法の支給基準よりも低い収入でありながら税金がかかるとは何事かと言っているのです。もっと働く人を大切にしてほしい。大蔵省の方は非課税限度額なんて言葉をかえまして面はそろえていますが、ちょっと上がりますと、制度は変わってないですから、水中まで潜って全部税金を持っていかれるような仕組みになっているのですが、私どもは何も無理なことを言っているわけではないので、その二点が実は不公平税制の一番言いたいサラリーマンの気持ちであります。
 それから財源はどうかということを聞かれるのですが、私は長いことこの問題をやってきておりますが、無理です。ちり一つないぐらいかき集めて予算を組まれた後におまえたちの対案はと言う。こんなばかなことはないので、むしろ政府の方がサラリーマンの減税を大切にするということであれば、その政策を最優先しながら政府の責任できちっと用意して、どうか、こう言われるのが当たり前だというぐあいに思うのです。私どもも、余り言われるものですから、あるとき持っていったことがあるのです。例の補助貨幣の積立金です。私が持っていったのです。そうしたら政府の方は、これは重要な制度だからなくするわけにいかない。これは明治時代にできた。日本だけです、残しているのは。一年たちましたら金不足になった、それをいわゆる雑収入に入れてちゃんと使っておられる。幾つかそういう例があるのですけれども、一つの代表的な例ですがね。いいかげんにしてもらいたい。知恵を出して持っていけば別に使われるということでは、対案持っていっても何を持っていったかわからぬということになってしまう。一つの例だけを正直に申し上げておきたい。
 それからさらに、私どもは、不公平の問題で、特にクロヨン、トーゴーサンという問題があるわけですが、このことについては記帳義務の問題だとか総収入申告制の強化だとか、これは臨調の答申にも実は入っているのですが、何か政府税調でもやりかかったのですが、自民党税調でしり抜けになってしまって、今度また復活しておるようですけれども、そういうことをやることによってどれだけの財源が出てくるか聞くのですが、教えてくれませんね。これは臨調の答申にも入っていることなんだ。だから、国民納税者カード、グリーンカード的なものも私どもはプライバシーの問題を侵さない範囲で出してほしい、そういうことでいうならば公平を図ってほしい。
 制度の面では資産所得、利子配当、キャピタルゲインの課税強化をやってほしい。世の中はマネーゲームの時代ですから、そういうところにやはり課税しないというのはおかしいというふうに私は思っておるのです。アメリカでも、レーガン税制の議論に当たりましては、不公平の問題を徹底的に直せばこれだけの金が出ますということを国民に明らかにしていますよね。どうしてそういうことが日本ではできないのか、私どもとしては納得できないわけです。
 さらにまた、脱税関係でありますが、日本だけがどうして時効が五年から七年ぐらいなのか。どの国を見ましても無期限がそれとも長期にわたる期限を定めておるのですが、そういう点では、時効については時効なしを含む延長をぜひ図って、きっちりするところはすべきじゃないか。どうしてこういう議論がまだ出てこないのかなというような感じであります。
 何でおまえたちはサラリーマンでありながら売上税を含むことについてかんかん怒っているのかとよく聞かれるのですが、私どもが言いたいことは、ここ何年間国会で与野党の合意メモが出ておりますが、メモだけです。やられたためしがない。前段に何回もだまされているわけです。今度の売上税だけじゃない。都会議員の選挙のときには、中曽根総理は、サラリーマン減税をやります、優先的に。これは都会議員の選挙です。非常に頼りにしましたが、今度のような結果。今回は大型間接税、売上税はだまされたのだ、それに関する人はそういう発言もしていますが、私たちから見ますと、もう一つ、サラリーマン減税は具体的にどうなったのですかということが言いたいのです。同額の増減税なんということを一言も言われなかったわけであります。
 それから、減税案については、中堅サラリーマンを大事にする。中堅サラリーマンとは何を指しておられるか、私どもにはわかりません。そういう点では、年収四百万円の人が一%年収が伸びますと税金が三・二%伸びておったのです、今までの制度では。今度の制度では三・四%にむしろ負担が増すというような階段づくりをやっておられるのですよね。そして、七百万円ぐらいのところからなだらかになっておる。完全にこれは高額所得優遇以外の何物でもないということを申し上げておきたい。これは間違った数字じゃございません。なお、共働きになりますと七百万以上もまたぐっと下に落ちできますから、そのこともつけ加えておきます。それから、配偶者の特別控除の問題ですが、これはかなり今回浮上しましたが、私どもとしては、みなし法人専従者給与に手をつけないまま中途半端な形で出ておるのは極めて遺憾だと思います。実額控除は、声ばかりで何も内容はありません。医療費控除の足切り限度額は五万から十万、これはもってのほかだというようなことを申し上げておきたい。
 まず、政府は、そういう点で何かサラリーマンの減税がありますよと言いながら、一方は全審言われないわけですが、私どもはつい最近、法人税の減税が国民に還元されるかどうか、これは企業を通じて調査をいたしました。それから見ますと、還元をしましょうというのは一割もない。現に、在来型産業で雇用で必死に今頑張っておるところでは、とてもじゃないがそんな余裕がない。産業によっては賃上げも要求していないところもございますからね。どこからそういうような計算が出てくるか、私たちにはさっぱりわからないということなんです。
 そういうことで計算しますと、増減税の分岐点は年収六百万円から七百万円のちょうど中間ぐらいになります。冒頭申し上げましたように、五百万円以上の方は一八・六ですから、推定ではおよそ一割もいない、実質減税になるのは。高校卒、中卒、これは全然だめです。大卒の定年前だけがちょっとひっかかる、そういうような内容だということも申し上げます。
 マル優の問題については、私どもは、結論からいうとこれはもう廃止してもらったら困る。昭和五十九年の全民労協調査、中央値で貯金は二百三万円です。貯蓄増強中央委員会は三百十万円と発表しました。百万円からの開きがある。どこの調査をやられたのかわかりません。私どもの調査は、大企業中堅サラリーマンを中心にした調査の内容ですから、中小企業が入りましたらもっとこれは下がるということになる。五十歳でようやく三百万円になるということです。マル優カードで限度管理でいいということなんです。カード代の予算がないと言われたのですが、私どもはカード代は二百円出しましょう、そういう建設的な意見も出したのですが、それに対してはいまだに返事もございませんでした。
 それから、汗水流して働いたお金に税金は現行でも七八%、不労所得への利子課税が現行でも三五%、それがまた二〇%に今度下がる。汗水流して働いている人たちを大事にするのか、どっちを大事にするのか、考え方をはっきりしてほしいなと思います。グリーンカードをつぶしたときには何か資金シフトが起こるからどうだのと言った、あの話は一体どこへ行っちゃったのか、それが一遍聞きたいわけです。私たちは総合課税、グリーンカードをやれと言う方ですから。
 それから売上税については、結論からいいますと大衆課税だということです。逆進性、物価上昇、安易な増税、納税コスト、そういう点で私どもとしては総合的に見てこれに反対ということで、物価上昇については政府の試算が私は甘いと思います。大和証券経済研究所での三%を初め民間調査機関で幾つかの発表がありますが、甘いと思います。
 直間比率の問題がいつも言われるわけなんですが、むしろ私どもが長年これは政府に対して主張をしてきました。その都度その都度やはり是正措置をしながら、余り極端な開きがないように日ごろからこれは努力するということが大事なことなんで、何か売上税を入れたらバランスがとれるという単純な問題ではないと思うのです。七三が七一になるぐらいのことを今度政府でも発表されておりますがね。もしもこれでもっとバランスをとるんだということになれば、もっと売上税を増税しなくちゃバランスがとれぬのだということを裏づけとして言っておられるような感じがしてならない。物品税のこの問題、コーヒー、紅茶の問題から始まっていろいろあるわけですから、そういう点をやってほしいなと思うのです。
 結論的に申し上げますと、私どもは、言うならば広く浅くという言葉が大嫌いなんです。広く浅くということは高額所得の方を削って、中堅、低所得の方に上積みをするという、そのとおりの言葉ですから、はっと聞いたときにはきれいごとで何か受けとめやすいような感じがするのですが、掘り下げてみると、その広く浅くということが税制全体の一つのまとめになっておるな、これは困る、絶対に困るということであります。
 そういうことで、ぜひ税制問題については国民の合意ということを前提にしながら税制の基本構想的なものを中心にまとめた議論をしてほしいと思います。何年かかってもよろしい。イギリスなんかグリーンペーパーで二、三年これを議論をして、かなりな国民の合意を取りつけながら税制の改正に乗り出したというようなことがありますから、できれば税制基本法的なものを中心にひとつ大いに議論して、一〇〇%は合意できないでしょうが、大方合意できるような考え方をひとつまとめておくということが大事だということを申し上げます。
 それからさらに、今回の場合は一律主義の方にずっと税制改正が流れていますが、私どもは応能主義を大事にしたいと思うのです。これについて政府の方は、言うならばそういう方向に転換をしたのかどうか。どうももやもやしておりますので、それを申し上げたい。今まさに所得格差が年年開いておるというような状態であります。
 もとに戻りますが、国税庁の調査によりましても、今賃金格差というのは大手企業を一〇〇としますと中小企業六三、ボーナスは一〇〇に対して一六というような実態もありますから、さらにこれを拡大するような税制のあり方というのは、私は重大な内容を含んでいるような気がしてなりませんし、ぜひひとつ今回の政府の税制改正は一から出直して議論を十分尽くしてほしい。当面する売上税については、もう絶対これは撤回するまで私どもは頑張りたい、こういうことを言う場所じゃありませんけれども、申し上げておきたいと思います。
 そのほか、社会保障の関係もございますが、これはひとつカットさせていただきます。
 それから、特に公務員の仲裁、人勧についてはぜひひとつ完全実施ということでやってもらいたいことを最後につけ加えまして、粗雑になりましたけれども、一応私どもの見解を申し上げておきたいと思います。(拍手)
#96
○砂田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、高橋公述人にお願いいたします。
#97
○高橋公述人 御紹介いただきました高橋でございます。
 私は、日本経済の前途を憂慮する国民の一人といたしまして、経済政策全般の観点から昭和六十二年度総予算について所見を申し述べます。
 一般に木を見て森を見ずという言葉がございますけれども、木という予算を見る前に、その前提となっている森、つまり日本経済とそれを取り巻く世界経済の現状と問題点、それを十分にわきまえておくことが何よりも肝要ではないかというふうに心得ております。そういう観点から考えましたときの第一の問題点は、申すまでもなく日本経済が当面する円高不況であります。
 例えば日本銀行の短期経済観測等によりますと、国内景気は一−三月が底で七−九月から上向くという見方が出されておりますけれども、それは円相場の安定を前提としたものでありまして、もしここで円相場が再び百五十円を突破して不安定化するということになれば、この期待は挫折せざるを得ないのであります。
 そういう観点から考えますと、現在の国内経済の状況というのは、その円高不況のもとになっている円相場の動向ということが非常に不安定であって、これは世間一般では何かG5とかG7とかということで申し合わせをして協調介入をすれば安定するかのごとくに考えられておりますけれども、現実はそのようなものではないのであります。つまり、変動相場制の現状におきましてはそういう協調介入はスズメの涙でありまして、その前に経済の実態が相場を動かしていくという内在的要因が潜んでいるのであります。そういう観点から考えますと、一昨年の九月下旬のG5によるいわゆるプラザ合意と呼ばれているものでありますけれども、これも協調介入によってドル安・円高が起こったというふうに一般に理解されておりますけれども、これは正しい認識ではございません。その前から実はドルが下がりつつあった。言ってみれば坂道をドル高で上って、上り詰めて、今度は坂道の下り坂に向かってきた、そういうところで後ろから背中を押したから協調介入の効果が上がったのが現実の姿であります。
 そういうことを考えてまいりますと、現在我々が直面しております円高不況というのは、非常に広い、世界経済全体にまたがる問題を実は含んでいると言わなければならないのであります。そして、そこが崩れますと円高不況からの脱却ということができなくなってしまう。つまり、我々の日本経済というのは薄氷を踏んでいる状況にあるのであります。
 そういうことでございますから、この円相場が再び円高に向かう、そういうふうに予測している為替のディーラーはたくさんいるわけであります。今もしそういうことになるとしたら、これは二月二十二日のG6の合意なんかがたちまち崩れてしまいかねない不安定な要素というのを含んでいるわけであります。だから、そういう意味で為替相場を安定させていくことがどうすればできるのかということを真剣に考えませんと、現実の政策対応というのが後手後手になってしまわざるを得ないということをここであえて申し上げておきたいのであります。
 私が冒頭に日本経済の前途を憂慮すると申し上げましたのは、そういういろいろな観点から考えてみましても、現在我々の経済が置かれている状況というのは非常に不安定であります。私があえてこういう公聴会の公述人を引き受けました最大の理由は、マスコミその他で言われておりますけれども、しかし皆様がお考えになっていらっしゃる現状認識というのが実は大変に難しいものだということを理解していただいて、そしてそこで問題の解決に当たっていただきたい。私が党派を超えて一人の国民としてこの公聴会の公述人として立つことを決意したゆえんであります。ですから、この問題がうまくいきませんと実は非常に難しい問題がいろいろ出てくるのだということを皆様に十分認識しておいていただきたいというふうに考えるのでございます。
 そうして、そういう観点から考えてまいりますと、円相場を取り巻く世界経済が今非常に難しい状況にございます。特に最近のドル安の背景にある一番基本的な問題は、アメリカの経済が実は対外資産・負債残高で見て、一九八五年末に一千七十四億ドルの純債務に転落したという事実であります。これは七十数年ぶりの出来事であります。そして、そういうことでございますと、毎年一千億ドル以上の経常収支の赤字が積み重なってまいりますと、これはアメリカの多くのエコノミストが現に指摘しているところでありますけれども、一九九〇年代初頭にはアメリカの債務残高は一兆ドルを超えると言われているのであります。そういうようなことを現在アメリカ人たちが深く認識しているがゆえに、今アメリカの第百議会におきまして非常な保護貿易主義の動きが強まってきているという背景があるわけでございます。私たちが私たちの経済を考える場合には、そのことを十分に認識してかからなければ近い将来に非常に難しい局面にぶつからざるを得ないということをあえて申し上げておきたいのであります。
 そして、そういう観点から考えますと、世界経済全体としては、アメリカの経常収支は赤字、昨年は約千五百億ドル弱の赤字でございますけれども、これは実は大変なことなのであります。そうして日本や西ドイツは黒字ということで、これをドル安ということでもって世界経済をバランスさせていこう、つまり世界経済の均衡化の方向を目指しているというのが今日の姿でありますけれども、しかし、こうした価格効果だけで世界経済の均衡を実現することは実は不可能であります。
 その意味におきましては、黒字国である日本とそれからヨーロッパ、なかんずく西ドイツの内需拡大が不可欠であります。これは単なる言葉ではなくて、日本や西ドイツは内需拡大を本当に真剣にやらなければ世界経済全体がバランスできないという問題が実は出てきているのであります。そして、もしそれが実現いたしませんといや応なしにドル安がさらに進行していくでありましょうし、そうなると世界経済が大不況に突入する危険性があります。
 我が国の経済について見ますと、昭和六十一年度の政府経済見通しにおきまして経常収支が八百八十億ドルの黒字というふうに予測されておりますけれども、これはこの年度の名目GNPに対して四・三%の大きさになります。これはまことに巨額な数字でありまして、ちょうど戦前の一九二九年の世界大恐慌の引き金を引いた背景にあったのはアメリカ経済の非常な黒字不均衡でありました。そういうアメリカの当時の状況に今日の日本の経済が似た状況にあるんだということを、実は十分御認識しておいていただきたいのであります。そして、日本の経済がこうした黒字を減らしていくためには、これは一年や二年でできません。八百八十億ドルの黒字というのは大変な黒字でありますから、これを減らしていくためには中期的な努力が必要であります。
 そして、既にアメリカの第百議会におきましては、下院において皆様が御存じのようにゲファート案というのが提出されました。これは、法案として出る段階では数字が削られたようでありますけれども、しかしこの当初の案によりますと、毎年一〇%ずつ黒字国が黒字を減らしていくことを義務づけよう、こういうねらいを持っているわけですけれども、もし仮にこのゲファート案が適用されたといたしますならば、日本は今八百八十億ドルの黒字でありますから、毎年一〇%ずつこれを減らしていくと五年間で五〇%減ります。そうすると、五年たってようやく四百四十億ドルの黒字になる、こういうことであります。
 これ自体も非常に大きいわけでありますけれども、そういうことを考えてまいりますと、内需を大きくしなければ、経常収支の黒字を中期的に減らしていかなければならないわけでありますから、そして経常収支の黒字というのはGNPのコンポーネントであります。つまり、経常収支の黒字を減らすことはGNPを引き下げる効果を持つのであります。そして、もしGNPがそれによって下がっていったとしたら、それは必ず失業の増加に結びつくのであります。
 例えば、昨年の昭和六十一暦年、つまり一九八六年の国民所得の速報が発表になっておるわけですけれども、それを見ますと、実質のGNPは二・五%であります。この二・五%がどうして実現したかという中身を見ますと、内需は四%なのです。ですけれどもGNPは二・五%ということは、経常収支の黒字減らしが急激な円高で進んでいるからそういう結果が出てくるわけであります。そうすると、現在でもJカーブ効果その他があって八百八十億ドルということであるといたしますと、これを中期にわたって減らしていくとすれば、GNP自体が引き下げられていかざるを得ないとすれば、それよりも高い内需をふやしていかなければ失業の増加は避けられないのであります。現在既に完全失業率三%ということになっておるわけでありますけれども、製造業の企業内失業者、もしこれが表面化するといたしますと、完全失業率は四%台に乗ることは不可避であります。
 そういうような状況から考えてまいりますと、今のような状況で二%台の経済の実質の成長率が続いていくということになると、失業増大の慢性化ということは避けられない。そこのところを十分にお考えいただいて、いかにすれば内需を高めることができるかということを本当に考えていかないと、日本経済はゆゆしき問題に直面するということをあえて申し上げたいのであります。
 日本とヨーロッパがそういう意味で内需拡大ということを、ある意味で課題を背負った。そして、アメリカは財政の赤字を減らしていくという課題を背負った。これがパリ合意の中身になっているわけでありますけれども、そういう観点から言えば、ヨーロッパにおきましては、例えば西ドイツでございますけれども、西ドイツは一九八八年の所得税及び法人税減税、これは既に九十億マルクを予定しているわけですけれども、これをさらに上積みをしまして百四十二億マルク、大体九十億マルクを一マルク八十五円で計算いたしますと七千六百五十億円でありますから、それが百四十二億マルク、つまり一兆二千七十億円になるわけでありますけれども、それを西ドイツは決めました。それから、イギリスも最近になりまして八七年度について、これは四月から三月でありますけれども、二十五億ポンドの、つまり約六千億円でありますが、所得税減税を実施することを決めております。ヨーロッパがそのような形で減税ということを軸にしながら内需拡大に真剣に取り組み始めているという状況の中で、日本の経済の現実があるんだということをお考えいただきたいのであります。
 そういう観点からわが国の昭和六十二年度の総予算案というものを見た場合に、私は次の三点を指摘いたしたいと思うのであります。
 第一点といたしましては、予算案の基本姿勢ということでありますけれども、これまでの財政再建一辺倒ということで、世界経済の中の日本経済の立場というものが維持できるのだろうかということに非常に大きな不安を感じるわけであります。新しい今後の方向としては、グローバルな国際協調と国内均衡の両立ということに重点を置いていくことが不可欠ではないかというふうに私は考えます。
 そういう点から見ますと、六十二年度予算案について、財政投融資は確かに当初予算案比で二二・二%の増とかなり伸びることになっておるわけでありますけれども、一般会計の公共事業関係費は前年度比減額が五十八年度以降続くわけでありまして、公共事業費全体として見た場合の事業費ベースでこれは前年度当初比で五%増にすぎないということでございます。こういう状況でございますと、昨年の九月に実は補正予算を編成されたわけでありまして、そこで事業費ベースで三兆六千億円強の公共事業費が上積みになっていくという状況であることを考えますと、六十二年度に当初予算比で事業費ベースで五%増ということであるとすれば、このままでいけば公共事業費の増加が失速する危険性を持っていると言わざるを得ないわけであります。
 そういうような状況から考えましても、つまり国際協調と国内均衡の両立、つまり国際協調という点でも内需を拡大しなければなりませんし、国内均衡という面から見ましても内需を拡大しなければならないわけでありますけれども、そういう観点に力点を置いて、しかもこれが今後中期にわたってそういうことを必要とする状況が生じつつあるんだということを十分御理解いただきたいというふうに考えるのであります。
 それから、第二点といたしましては、GNPの一%枠という問題がございます。もちろん細かい技術的な点になりますと、これを目安とすることについて非常に厳密なリジッドな議論はできにくいのが実際なのでありますけれども、私が特に申し上げたいのは、国際社会で十分納得できるような哲学を持たないと、国際社会でいろいろな疑問を生ずるということなのであります。そういう点で、日本が今世界で一番求められているのは対外経済協力の拡充でありますけれども、特に二国間援助、バイの援助の場合に、日本の防衛費の節度に対して国際的な信頼度があればいいんですが、もしそれが失われてしまいますと、二国間援助が防衛費の増強と結びついてしまって、非常にあらぬ疑いを招くようにもなりかねないということを私は憂慮するものであります。そういう点から、きちんとした哲学をここで、つまり国際社会に通用する哲学というものをつくっていただきたいということを切望するものであります。
 それから、第三点といたしましては、税制改革の問題がございますけれども、税制改革についていろんな議論が現在行われているわけでありますけれども、それはそれとして、日本経済の現状認識と日本がこれからやらなければならない税制改革とが、どういう形でどのように結びつくのかということについての配慮が感じられないように思えてならないのであります。アメリカは税制改革については増税先行型で、しかも中期で増減税同額ということを行いつつあるわけでありますけれども、日本は単年度主義での増減税同額という形になっているわけであります。まあアメリカと日本の制度上の違いがありますから一概に比較はできないにしても、日本経済の置かれている現状から考えますと、何らかの形でのそういういわゆる多年度にわたっての増減税同額方式ということがもっと具体的に考えられていいのではないかということを痛感するものでございます。
 以上、三点を申し上げたわけでございますけれども、国民の一人として、これらについて皆様が適切なる予算の編成を行っていただくことを切望してやまないものでございます。
 しかし、私は以上の理由から見まして、現状におきましては昭和六十二年度の総予算案については賛成をいたしかねるということを最後につけ加えさせていただきたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
#98
○砂田委員長 どうもありがとうございました。
 次に、関本公述人にお願いいたします。
#99
○関本公述人 税経新人会全国協議会の理事長をしております税理士の関本でございます。
 私は、昭和六十二年度予算案に対しまして反対の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。特に、私は税理士でございますので、税法の専門家といたしまして、そういう観点から昭和六十二年度予算案の基礎となっておりますいわゆる税制の抜本的改革について批判的な検討を進めてまいりたいと思います。
 本来ならば、各党の総括質問が終わりまして、その段階でそれを十分拝聴しかつ分析しまして意見を申し述べたいところでございますけれども、今回はそれができないということについては大変遺憾であるというふうに考えております。
 まず第一に、今回の税制の抜本的改革の基礎となっております売上税について申し上げたいと思います。これが中曽根総理が導入はしないと公約しておられた大型間接税であり、これは明らかな公約違反であるということを強調したいのであります。
 一九七九年十月の総選挙におきましては、一般消費税が最大の争点として争われたわけでございます。これに対しまして非常に厳しい国民的な審判が下されたことは、皆さん御存じのとおりでございます。これを受けまして、同年の国会では、一般消費税によらない財政再建の検討を進めるべきである、こういう旨の決議を衆参両院におきまして全会一致で行っておられます。この決議の中には、「一般消費税は、その仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかった。」こういうことが唯一の理由として掲げられております。私は、この点に注目されなければならないのではないかと考えております。今回の売上税は、この国会決議の結果、一般消費税という名称を用いることができなくなったという事情を背景にいたしまして、その後、大型間接税とか新型間接税あるいは日本型付加価値税などといろいろ言いかえられてまいってきているわけでございますけれども、最終的には今日提案されておりますような売上税と名づけられてきたという経緯がございます。
 しかし、これらの名称の変遷は、学問上は何ら意義のないものでございます。なぜならば、消費税といたしましては大別いたしまして、課税物品を特掲しましてこれに課税するという個別消費税に対して、原則としてすべての取引を課税対象として、課税しないものを法律で特掲し他のものについてはすべて課税する、これが一般消費税でありまして、この二種類があるだけでございます。
    〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
それ以外にいわゆる課税技術上の細かい分類はございますけれども、消費税の区分といたしましては、個別消費税と一般消費税の二種類があるだけでございます。売上税は、自民党税調さんが発行されました「税制改革Q&A」でも明らかにされておりますように、「原則として全ての取引を課税対象とする消費税」こう書かれております。でありますから、まさに中曽根総理が導入しないと約束された大型間接税、つまり学問上の一般消費税であることは明白でございます。
 また、売上税の構造も、税額票による転嫁という形で一九七九年の一般消費税と異なるだけでありまして、EC型付加価値税とも全く同一であると言えるわけでございます。一般消費税案が撤回された後に、EC型付加価値税の仕組みや構造について国民の理解が得られたということも考えられないわけでありまして、この売上税法案は単に公約違反であるというだけではなくて、一九七九年の国会決議にも違反するものであると言わなければならないと思います。
 第二に、今回の所得減税、つまり所得税と個人住民税の減税について意見を述べさせていただきます。
 今回の所得減税は、大蔵大臣の提案理由にも述べられておりますように「中堅所得者層の負担軽減を中心とした」そういうものでなければならないはずでございます。ところが、実際に提案されております減税案は、最高税率を一挙に二三%も引き下げるというものでございます。中堅所得階層と言われる年収五、六百万円のクラスの人々についての減税率はせいぜい五、六%。ところが、年収一億円とか二億円とか、こういう超高額所得階層に対しましては、私の試算によりますと二〇%近い大幅減税となるものでございます。このように上に厚く下に薄い、これが減税案の内容でございます。
 その上、いろいろな試算がございますけれども、年収九百万円以下の人々は、つまり国民の九割以上の方々が売上税の導入とマル優の廃止によりまして差し引き増税になってしまう、こういう内容を持ったものでございます。当初、法人に対する減税が配当や物価の値下げという形で一般国民に還元される、こういうような説明がされておりましたけれども、これは自民党さんの「Q&A」の新版では、この部分を削除せざるを得なかったというようなことを見ましても、こういう議論は全く科学的根拠のないものであると言わざるを得ないと思うのであります。
 第三に、法人に対する減税について簡単に触れておきたいと思います。
 基本税率は最終的には四三・三%から三七・五%に五・八ポイント引き下げられることになっております。一方、中小法人に対する軽減税率につきましては三一%からわずか三%しか引き下げられないわけであります。
    〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
これも、大法人に厚く中小法人に薄い減税であります。将来的には、大法人に対する税率と中小法人あるいは協同組合等に対する税率とを一本化すべきである、こういう方向が政府税調によって示唆されていることも指摘しておかなければならないところであると思います。
 以上の結果、法人に対する減税一兆八千億円のほぼ六割が資本金十億円以上の三千社にも満たない巨大企業によって独占されてしまいまして、円高や内需不振などによって疲弊しております中小企業に対しましてはほとんど恩恵がない、こういう次第になっているわけでございます。
 我が国における法人の税負担が国際的に見て非常に高い、そのために企業の海外逃避が行われ、いわゆる産業の空洞化の主要な原因の一つとなっている、こういう意見が一部で強く述べられております。しかし、これは全く科学的根拠のない主張でございます。我が国の場合は他の先進諸外国とは比べ物にならないほど多くの大企業優遇のための措置がございまして、大企業の実質的な税負担率は法人四税を合計いたしましても三〇%にも達していないという具体的な分析が示されているわけでございます。アメリカにおけるレーガンの税制改革におきましても、これは金持ち優遇税制であるという批判がございますが、レーガンの場合は、法人に対するあらゆる優遇措置を撤廃することによって法人税の課税ベースを大幅に拡大し、税率を引き下げると同時に税収を増大するという二つのことを同時に実現しまして、これを財源として所得税を五年間で現行レートで計算いたしましても二十兆円近い大幅減税を行っております。しかも、課税最低限を一挙に六三%も引き上げているわけであります。この点が我が国の今回の税制の抜本的改革と根本的に異なる点でございます。
 第四に、マル優廃止、一律二〇%の強制分離課税について申し上げさせていただきたいと思います。
 勤労者世帯の平均貯蓄高は、先ほどもお話がございましたけれども、政府の統計によりましても平均六百九十二万円、この程度でございますから、マル優を悪用するとか、あるいはそういう余裕すらないわけでございます。したがって、ごく一部の人がこれを悪用しているわけでありまして、その悪用は、現在の税務行政の調査能力からいたしますと十分対応できるものであります。しかし、それをあえて放置しておいて、マル優廃止により勤労者への負担を強化しようとする今回の改正には絶対に賛成しかねるものでございます。
 特に、今回のマル優廃止に便乗しまして、従来から不公平税制として批判されてまいりました利子の三五%の分離課税につきましては、これも廃止して、一律に二〇%の分離課税で済ましてしまおうという点も厳しく批判されなければならないと思うのであります。これは減税率でいいますと、実に四三%に近い大幅なものでございます。今回の減税の中ではこれが最大であろうと思います。ところが、この減税額を実はマル優廃止による増税一兆六千億の中に紛れ込ませてしまいまして、国民の目をごまかしている点も指摘しておかなければならない重要な点であるというふうに考えております。
 さらに、利子に対する一律二〇%の強制分離課税により、本来所得税や住民税を負担する義務のない低所得階層の方々も申告によってこれを取り戻すことはできない、こういう点も議論されなければならないと思います。少なくともこれは総合課税によって還付の道を開くべきである、このように考えるものでございます。
 以上、売上税を除いたどの項目を見ましても、それが大資産家、高額所得者、大企業優遇の税制であり、低所得者、中小零細企業いじめの改革であるということは明らかであります。しかし、高額所得者、大企業優遇、低所得者、中小零細企業いじめの最たるものが売上税であると言うことができると思うわけでございます。
 以下、売上税について個別的に検討してまいりたいと思います。
 第一は、売上税はすべての物品、すべてのサービスの提供等に対して課税する最悪の大衆課税であるということでございます。五十一項目に及ぶ非課税取引を設けているので家計への影響はそれほど大きくないという説明がされておりますけれども、非課税取引もすべて売上税の影響によって値上がりは避けられないということは自民党税調さんの「Q&A」でも率直に認められているところでございます。売上税によって直接的に物価が上昇するのか、あるいは売上税の影響によって間接的に物価が上がるのか、その違いだけでございまして、消費者が物価の上昇という形でこの税を最終的に負担しなければならないという点では全く同一でございます。結果的には、ゼロ税率を適用しない限りすべての取引が課税取引に取り込まれてしまうというのがこの税の第一の特徴でございます。
 第二は、売上税の逆進性の問題でございます。レーガン税制改革におきましては、所得減税の財源としてEC型付加価値税の導入が検討されたのでありますが、主として逆進的な負担が避けられない、これを理由といたしまして不採用とされております。アメリカ財務省の報告にありますように、この税は、どのような調整措置をとってみましても負担の逆進性を避けることはできないという、負担の公平とか民主主義に反する税であるということを銘記すべきではないか、このように考えるわけでございます。
 第三は、免税点制度の問題でございます。一億円の免税点により業者の九割近くが納税義務を免除される、このように説明されておりますが、免税業者も仕入れ段階で負担する売上税からは絶対に逃れることができません。もし転嫁に失敗すれば、消費者と同じ立場でこの税を負担しなければならないことになります。恐らく大部分がそうなるであろうと思います。「Q&A」では「売上税導入時には物価が皆一斉に上がりますから、非課税事業者の場合も転嫁に必要な価格の引き上げを行いやすいと考えられます。」このように書かれておりますけれども、政府や自民党さんが値上げを保証してくれるわけでは絶対にございません。また、免税業者は税額票を発行することができません。ですから、課税事業者からは敬遠される結果となるでありましょう。したがって、免税業者の課税事業者への移行が避けられないと思われます。つまり、免税業者を差別することによりまして課税事業者への移行を誘導する構造を持っているのがこの制度の特徴でございます。
 第四に、転嫁の問題について述べたいと思います。大企業は経済的に強い立場にありますから、転嫁が非常に容易でございます。これに対して、中小企業は経済的弱者でございます。マクロ的にはこの税の導入によりまして物価が上昇し、消費者の購買力はそれだけ低下するということは明らかでございますから、販売競争が一層激化して転嫁が困難となると考えられます。中小企業の大部分がこの税の負担により採算が悪化し、赤字に転落する危険性がございます。現在でも中小法人の六〇%程度は欠損法人でございます。ですから、この税の導入によりまして中小企業の淘汰が一層促進される可能性があると思います。
 第五点は、この税制は本質的に大企業優遇税制であるということであります。そもそも、EC型付加価値税の母国はフランスでございます。そのEC型付加価値税へ移行する前のフランスの付加価値税の誕生の歴史は、製造業者売上税を下請企業や材料メーカーへと後転させるためのものでございました。つまり、力の強い大製造業者が自分たちだけでこの税を負担するのは不公平だ、こういうことでこれを後転させ、つまり後ろへ転嫁させ、下請企業が負担した前段階税額を自分の売り上げにかかる税額から控除するという前段階税額控除方式を考え出したわけであります。これが前段階税額控除方式の始まりでございます。その後、一九五四年には付加価値税と名称が変わりまして、仕入れだけではなくて設備投資や経費に含まれる前段階税額も控除の対象に加えられました。一九八六年にはEC型付加価値税へ移行しましたが、それに伴いまして卸、小売の販売段階まで課税範囲が拡大されて、今日のEC型付加価値税の姿に至っているわけでございます。
 これは、中曽根総理が当初は製造業者売上税を考えておられたようでございますが、財界の圧力によりまして日本型付加価値税、つまり現在提案されております売上税に変更されたという経緯と時間的な長さの違い、つまりフランスでは数十年かかったわけでありますけれども、日本では数カ月という短い期間の間にこれがなし遂げられたという違いがありますけれども、全く似ている現象であるというふうに考えるわけでございます。その生い立ちから明らかでございますように、この税制は経済的強者がいかにして経済的弱者にこの税を転嫁していくかという知恵から生まれたものでありまして、そもそも大企業のために考案された税制であると言えるわけでございます。
 このことは、輸出戻し税の制度を見ればより明瞭でございます。輸出大企業はこの税制によって莫大な輸出戻し税を手に入れることになります。最近の決算に基づいて試算いたしますと、トヨタ自動車一社で年額にして実に一千百一億円、輸出上位十社で四千九百四十三億円もの輸出戻し税が転がり込むという仕組みになっております。これは、下請企業、孫請企業、さらにはそのまた下請企業、こういうところがいわば身銭を切って納めた売上税でありますが、それが一見合理的に見えるこの税のメカニズムを通じまして輸出大企業に利益をもたらすということを示しているわけでございます。
 下請業者は、これまでも円高その他を理由といたしまして毎年のように納入単価の引き下げを要求されてまいりまして、それをのまざるを得ないというような環境に置かれてまいりました。それが、売上税が導入されたからといって、税額票一枚で転嫁が保証されるはずのものではございません。結局、その立場上いろいろな形でこの税をしょい込まざるを得ないことになるだろうと思われます。
 第六に、売上税は職場の労働者に対しては二重の負担を強いることになるであろうということでございます。第一は一般消費者としてであり、第二はこの税が付加価値税であるというその性質によってでございます。企業が売上税の一部あるいは全部について転嫁できなかった場合は、付加価値の主要部分を構成いたします人件費を削減することによって生き延びようとすることは必至であろうかと思われます。これは人減らし、労働強化、賃下げ、こういう形で職場の労働者にはね返ってまいりまして、雇用条件を一層悪化させるとともに、中小企業の経営悪化による倒産などと相まって、失業問題はますます深刻になってくると思います。
 第七は、物価への影響の問題でございます。物価上昇は一回限りという説明は、単なる気休めにすぎないということは既に広く知られているところでございますけれども、EC諸国では、従来の一般消費税にかわるものとして付加価値税が導入されたわけであります。本来、物価は上がるはずはなかったのでありますけれども、多くの国で物価の上昇を招いております。我が国の場合は、従来から一般消費税を持っておりません。したがって、その影響は予測が非常に困難であります。最低、税金の分だけ物価が上がるということは間違いございませんけれども、導入前の売り惜しみ、買いだめによる物価の上昇については全く予測がつきません。この点につきましては、第一次オイルショック当時の狂乱物価のことを思い起こしていただければ十分であろうと思います。そのほかにもいろいろな要因が複雑に作用し合って物価を押し上げるわけでありますけれども、導入前後を通じてかなり長期にわたる物価の上昇が続くものと予想されるわけでございます。
 そのほかにも、売上税導入に伴う事務負担の増大の問題、つまり納税義務者の納税コストの問題、売上税を通じて財政の中央集権化が促進されるであろうという危険性の問題、売上税の導入によって国や地方公共団体の歳出がどれだけ影響されるかという問題、売上税の税収が五%で、大蔵省の試算のように果たして五兆八千億にとどまるのか、それとももっとはるかに多いのではないか。例えば五%でほぼ十兆円に達するであろうというような試算も出されておりますが、時間がございませんのでこれらの問題については割愛せざるを得ないことをお許しいただきたいと思います。
 最後に、一番重要な点について私の意見を申し上げて、私の公述を終わりたいと思います。
 政府税調の答申では、この税について、財政需要の増加に対応して安定した税収を確保できる課税ベースの広いそういう税制として位置づけておられます。政府の各種の答弁などをお聞きいたしましても、将来の税率の引き上げについては全く否定しておられません。売上税法案を子細に検討いたしますと、二十七条の「税率」のところの「百分の五」の「五」の一字だけを改正しますと増税ができるというように、条文も十分吟味して構成されていることがうかがわれるわけであります。つまり、法案の面から言いましても増税は非常に容易である、こういうことが言えるのではなかろうかと思います。
 問題は、この一%当たり一兆数千億円ないしは二兆円とも言われる超大型間接税が将来何のために使われようとしているのかという点でございます。
 ここに一つの資料がございます。これは防衛庁が購入された戦闘機の購入単価の推移についての資料であります。一九五七年、つまり昭和三十二年には、当時の主力戦闘機F86Fが一機一億九百八十万円でございました。これが一九六九年、つまり昭和四十四年になりますと、主力戦闘機F4EJですか、これが一機二十億二千九百万円にはね上がっております。昨年、つまり一九八六年になりますと、主力戦闘機でありますF15が百九億円にはね上がっているわけであります。つまり、わずか三十年足らずの間に戦闘機一機が百倍にもなっているわけであります。対米公約に従って日本の防衛力を強化するという政府の方針に従いますと、軍事技術の進歩と相まって防衛費は際限なく増加してまいります。
 しかも、これはただいまの例でおわかりいただけますように、幾何級数的に増加してまいります。このように急激に増大する費用を円滑に賄うためには、所得税や法人税の増税あるいは自然増収にまつということは不可能でございます。売上税のような一%当たり数兆円というような超大型の間接税でなければこれに対応することはできない、こういうことであると思います。売上税は間接税でありますから、担税者は税痛を感じないでいつの間にか取られてしまうという性格を持っております。これは間接税の宿命でございます。したがって、一たん導入されてしまいましたならば、EC諸国の例に見られますように際限ない増税に道を開くことになると思われます。
 以上のとおり売上税は国民生活を破壊するだけでなく、我が国の平和憲法の趣旨にも反するものでございますから、売上税法案はぜひとも撤回していただきたい、それを前提にした昭和六十二年度予算案もぜひとも組み替えていただきたい、このようにお願い申し上げまして、私の公述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
#100
○砂田委員長 どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
#101
○砂田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田毅君。
#102
○野田委員 それぞれのお立場から大変貴重な御意見を聞かせていただいて、ありがとうございました。
 時間の関係がありますので皆さんに十分お伺いできないのですが、まず山田公述人にお伺いしたいのです。
 いろいろな理由があったのですが、いずれにしても大変円高不況で困っている。公共事業も早く発注しなければならないということになると、やはり早く予算を通さなければならぬということに実はなるわけであります。それは石炭の問題あるいは鉄の問題、造船で困っているところ、そういったことを思いますと、確かに売上税はこの中の歳入に入っておりますが、少なくとも今予算委員会をやっておるわけですから、大蔵委員会でどうぞ売上税はじっくり検討してもらって結構ですが、この予算に関してはやはり早く通してほしいというのが、サラリーマンも含めて、そういう不況で困っている人たちも含めて大方の御意見だと私は思っているのですが、予算の早期成立ということの重要性についてあなたは賛成なのか反対なのか、ちょっと聞かせていただきたい。
#103
○山田公述人 円高に伴う雇用問題については本当に肌身に感じて私どもは毎日苦労しているわけなんですが、ただ私どもは非常に気になりますのは、今回の予算全体の内容、それから売上税とかマル優の我々自身に対する生活への影響、こういうところを総合的に見ますと、安易にそうだということは非常に言いづらい、正直な気持ちです。ですからお互いにこれは人質に取らぬで、ひとつ暫定予算なら暫定予算ですきっと整理をしてもらって、後、気持ちよくこの売上税の議論、税制の議論ができるように、ひとつ自民党の方も御協力をお願いしたいと思いますが、逆に。
#104
○野田委員 野党の皆さん喜んでいるけれども、ただ私は、やはり本格的な不況対策をやろうと思ったら暫定でできるわけないじゃないですか。そうでしょう。
 それがらさっき言ったように、本質的に税の問題は大蔵委員会に法案が付託されて大蔵委員会で審議する事柄なんです。先ほどからいろいろ税法の話を聞いているが、この売上税が入ろうが入るまいが、大体予算総額というのは増減収同額なんだから、本来的に歳出規模というものはそう変わるものじゃない。その点をやはり皆さん方はしっかりと、労働組合の皆さんも考えてもらいたい。
 それからもう一つは、時間がありませんので非常にはしょった質問しかできないのですが、こういうことを皆さんにお伺いしていいかどうかわからぬのだけれども、本当はこっちに聞かなければいかぬのだけれども、大体予算案が反対だから反対のためには審議拒否もやむを得ないのだ、何か最初からまず審議拒否ありきというようなそういう姿勢よりは、そういうよりは、そういうことでなければ幸いであるが、そうであるならばむしろ議会制民主主義から言うならば、堂々とこういう公の場で、国会の場で、その問題点があるなら問題点があるということをきちっとやってもらいたいと思うのだけれども、そういう考えもある。私は今予算の理事の立場だからそういうことをなかなか言いづらいのだが、これはあなたの口から、やはり正々堂々と議論した方がいいのだということをお考えになりませんか。ちょっと答えてください。
#105
○山田公述人 今、先生、この問題は国会だけでなくて国民全体が注目しておりまして、各所で議論されております。議論は何も私は国会だけでないと思います。そういう点でもっと国民の声を静かにやはり自民党は聞いていただきたいということが今の時期ではないかなというぐあいに思いますし、それから、正直言って私も自民党のいろいろな会合に、朝飯会も何回も呼ばれました。誤解があっては困りますが、やはりあれだけ聞いてもらったら半分ぐらいは聞いてもらうぐらいの度量がなければ――ほとんどないんですよね。それで、お話ししますと大分うなずいてくれる先生方も多いんですけれども、ふたをあけると全然違うものが出てきているものですから、私どもは何党がに党じゃなくて、もっとサラリーマンの今の実態というのを、あえてきょうは数字を申し上げましたけれども、やはりしっかりのみ込んで考えてほしいなということですね、多くの人たちがおるわけですから。
 何かわかったようなわからぬようなことを申し上げましたけれども、先生の言われるのもお気持ちはわかりますが、野党の皆さんたちにはどっちかというと私どもはハッパをかけておる方なものですから。去年もおととしも皆さんたちのところで合意メモをつくられたでしょう。私なんかあれ、普通の世間では、あれだけのメモであれば実行されると思いますよ。国会は別な世界ですから、あれはあれだということですから……。ですから、そういうようなことで何回も何回も、私どもはまじめに取り組んできてあんなだまされ方をしますと、またやられるんじゃないか。だから野党の皆さんたちに、もう中途半端なことはやめてくださいよ、白黒はっきりしてくださいよ、もう二度とだめだ、これで選挙はやりませんよと、実は怒っているんです。そういうような怒りも、私は、野党の方が結束されておると思いますが、頑張ってください。
#106
○野田委員 何か野党に激励をしておられるような感じでもあるんだが……。
 時間が大変、私、自民党でいながらえらい時間が短くて不満なんだけれども、次に、私は先ほどお伺いをしていて、これはちょっと意見を聞くわけにもいかぬのだが、大体今の山田さんの話はどちらかというとサラリーマンというか消費者という立場、売上税の問題もそういう角度からお話しになっている。だから、物価の値上がりがけしからぬという話があった。これはそれなりにわからぬでもない。一方で産業界、消費者でなくて納税事務を扱う納税業者の立場から、転嫁ができないからけしからぬと言う。これはこの立場で言われることもわからぬではないんだけれども、どうも先ほど関本さんの話を聞いていると一人で両方の話をされるものだから、片一方には物価がやたらと上がりますよ、片一方は値上げできなくてしょい込んだら大変なんですよと、これは一体どうなるんだろうかなという、私は、その辺は一人でお話しになったのは一体いかがなものかなという矛盾を感じておるということは申し上げておきたい。
 それからもう一つは、輸出戻し税で大企業云々の話もあったけれども、現在既に物品税で輸出還付が八千億もあるということをあなた御存じですか。そうでしょう。今度四千億になるのでしょう。だからそのことも、やはり都合のいいところだけ、間違ったことを余り宣伝すると私はよくないと、大変失礼だけれども、誤りだけは指摘しておかなければならぬ。
 それからもう一つは、アメリカでレーガン税制改革の中でこの付加価値税が検討されておった。その中で、いろいろな理由もあるけれども最大の理由は、現在アメリカで州税において小売売上税ができておる、その連邦税と州税との財源配分ができなかったという、これが最大の理由であるということもやはりあわせて言わないと、私は、国民は判断を間違える、こう思っております。
 それから、関本さんのお話によると、例えば所得が五百万から六百万は減税が五%ぐらいある、こう言うのだけれども、それから山田さんのお話では逆に、何か七百万近く以上でないと減税の影響がないんだ、こういう話になる。つまり、売上税と所得減税との影響についてはそれぞれの人たちが思い思いの計算をしている。だからそれぞれの形で減税の数字も出れば増税の数字も出るかもしれぬ。そういった中でやはり一番信頼できるのは総理府の年齢別の各世代ごとのもの、これをやるのが一番信頼ができるということだけは一言申し上げておかなければならぬ。間違った数字だけが、思い思いの数字だけがひとり歩きしては困るねということだけは指摘をしておきたいと思うのです。
 そこで、山田さんは今まで自分たちは所得減税をやってくれと言ったことないよ、こういう話があったのですよね。今までよりも安くしろとは言っていないんだ、今後上がるであろう分を上がらないようにしてほしいんだ、こういう話をしている。そんなこと言ったって、今まで減税春闘からあって、あなた方が一生懸命ハッパをかけられたおかげで、毎年毎年予算委員会は減税問題で修正論議があって、腹をたたいたの腹をたたかないので予算委員会はしょっちゅうストップしているんだ。それだけ所得減税の要求が強い。このことはやはり私どもは真剣に受けとめて一生懸命知恵を働かして財源を探しているわけです。そうでしょう。その中で、今回の所得減税そのものについてはあなたは賛成ですか、反対ですか。
#107
○山田公述人 減税の改正の内容の問題点を指摘しました。指摘しましたから、あれでは困るというのが私たちの基本的な考え方です。
 それから先生、ちょっと誤解があったら困るのですが、減税減税といって世間的な話の中の話題として聞いてほしかったのです。減税、サラリーマン結構だな、今財政再建で困っているときに。そんなことをずっと売上税のかかわり合いていろいろな政党の方も言われるものですからね。サラリーマンがくだらぬことを言うから売上税導入せないかぬとか、何かこっちのせいになって――いや、中にはそう言う先生もいらっしゃるのです。
 そういうことで私が申し上げたいのは、減税という言葉の性格から見ると、私どもが言っているのは是正、緩和ということなんですよ。是正、緩和措置というのが大体今までの主張でしたということを申し上げておったわけです。だから昔は私どもは――税制改革というのは私どもの言葉なんです。最近出た言葉じゃないのです。そういう点は誤解のないようにしてもらいたいと思うのです。賃上げが一%あれば二・五%十年間で上がりましたよと、ですからそういう面から見ると二・五じゃなくて二%なり一・八%にひとつ緩和をしてくださいということを言っているわけです。
#108
○野田委員 まあお気持ちはわかりました。だからその切実な要望におこたえをしよう、大多数のサラリーマンが大体定年でやめるくらいまでにはせいぜい一〇%から一五%くらいまでの刻みでおさまるようにしよう。今まで賃上げのたびにそれ以上に累進税率で取られてしまう、中身は何もないじゃないか、しかも子供たちの教育費にはどんどん金がかかるよ、親はつめに火をともしながら一生懸命仕送りしている、本当に大変だ。だからそういった教育費減税あるいは単身赴任の問題、そういった事柄をどうやって解消しようか、あるいは共働きをしなければ食っていけない、そういった人たちに対するパート減税、こういったものに本当にまじめにおこたえしなくちゃならぬ。しかしやはり金がかかるね、財源が要りますね、ということでしょう。で、先ほど高橋さんからもお話があったんだけれども、この際、世界経済という関係もあるから思い切って建設国債でもいいじゃないかということを山田さんもおっしゃった。私はそれは考え方としては悪くはないと思う。同じような考え方が実は十年前にあったということは、これは高橋さんも御記憶がある。当時機関車論というものがあった。日本はそのときに世界経済の要請にこたえなければならぬということで思い切って福祉水準も引き上げた。そして国債も発行した。そして行政でサービスレベルをアップした。その状態が今日まで続いてきているんじゃないですか。そのおかげで今日なおかつ世界の中で一番公債依存度の高い状態が続いてきておる。しかもこの国の予算総額の中で利払いが二割を超えるというのはやはり世界の中で日本だけでしょう。利払いですよ。元本返済なしですよ。そういうことが果たしていいんだろうかどうだろうか、我々は今日の飯のために子供たちにもっと借金を残していいんだろうかということもあわせて考えなくちゃならぬ。その点は山田さん、どうお考えですか。
#109
○山田公述人 行政改革につきましては、これは非常に個人的な発言になりますが、私自身が第二次臨調の専門委員に入っておりましたから、先生が言われるようなことは私は百も承知の上で審議にも参加した気持ちなんです。特に第一次オイルショックから第二次オイルショックにかけまして今指摘もありましたことがありました。私どもは民間の労働組合の立場から、雇用の問題が今と同じように非常に大きな問題になっておりましたから、積極財政を今と同じような主張をしたのです。たしか福田内閣当時だと思います。かなり積極的な手を打っていただきまして、雇用にはいい面で非常に大きな影響を与えて、私ども大変助かったわけです。
 そのときにもう一つ私どもが主張したのは、あわせて行政改革もやってください、二本立てで政府の方に迫ったのですが、積極財政はやられましたけれども、行政改革は役人に殺されるとかいうような発言もありまして横に置かれてしまった、そこに民間と官側との非常に大きなギャップが出てきた、それから臨調が始まる、こういうような仕組みですから、その辺の仕組みは私どもは百もわかっています。
 それからさっき数字のことを先生ちょっと言われましたが、私どもは間違った数字で言っているわけじゃないのです、六百万から七百万が増減税の分岐点ですよと。それから税率の緩和ということを言われますけれども、それはそうはなっておりません。例えば四百万円のところは一%年収が上がりますと、今まで三・二%が三・四%増税になります。だから税率の緩和をしてもらうならば、その辺のバランスのとれるような仕組みに変えてもらわないとだめだ。七百万円以上は少しそういう点で税率が緩和されますけれども、ところが年収五百万円以上の人は一八・六%しかいませんよ、七百万円以上になりましたら八%から七%の人が対象になるだけでほかは関係ありませんよということを、今度の改正案の税率構造で私どもは意見を言っているわけです。それに先生はどうお考えになるのかこっちが聞きたいような気持ちなんですがね。
#110
○砂田委員長 野田君、最後の一問。
#111
○野田委員 最後の一問ですが、これはまだまだ言わなきゃいかぬのですがね。今のお話、非常に大事なポイントなんですよ。というのは、私どもはそういう発想はしていない。それは、当然二段階の累進にしようと思えば、どこで一〇%から一五%になるかということは、これは大事なポイントですよ。これをもっと早い段階で一五にするのか、あるいはもっといわゆる課税算出所得が高い段階でやることにするのか、この辺は税収との絡みもあるでしょう。しかし、少なくとも今回は売上税の導入ということもある。少なくとも売上税によって物価は上がります。しかし、それを超える所得減税をやって、その結果、各世代ごとに見た結果必ず減税が出るような仕組みを我々は考えておるということ、その点は、算出の仕方によっていろいろ違うと思います。
 そこで、最後に一問ということでありますからあれですが、先ほどいろいろ大変大事なお話を聞いた。この点は国民の合意が得られるかどうかは非常に難しいと思うんですが、グリーンカード賛成だという話があった。私の記憶では、これは民社党を初め大反対があった問題であると思っております。
 それから念のために申し上げますが、なぜグリーンカードがいけなかったか。これは背番号制につながるという議論が一つです。それからそのときには、これがかかるのは民間の定期性の預金にしかかからない、だから郵貯と非定期性なものに全部資産がシフトした、こういう大問題があったということをあなたも御記憶を願いたい。あるいは株の売買益、これも我々は課税をしたい。ところが、そういったところは本質的にやはり背番号制度をアメリカみたいにやらないとどうしてもこれはできないということ、その納税者番号制度というものをあなたは賛成をするのかどうか。グリーンカードではなくて納税者番号制度、このことをやらなければ、私はクロヨンの是正もできないと思うし、それ以外にクロヨンの是正の方策があるならば教えてもらいたい。どうぞ。
#112
○山田公述人 納税者の番号につきましては、労働界は四団体、全民労協、全員賛成です。それに対して、何か別に反対意見が出ておるということを聞いておりましたから。先生も賛成の方ですね。
#113
○野田委員 大変時間を制約をされて不満でありますが、私は最後に、減税財源政府で考えるべきであるというお話があったが、やはり減税を主張しようというなら、あるいは歳出の増加を主張しようというなら、もう少しまじめな、責任転嫁論ではなくて、本当はきょうそのお話を聞けるものかなと期待をしておったんでありますが、またの機会があるかもしれませんので、残念ながら次に譲りたいと思います。
 終わります。
#114
○砂田委員長 井上普方君。
#115
○井上(普)委員 どうもお忙しいところ、お三人の公述人御苦労さまでございます。
 私は、このたびの公述人の方々に対して、今初めて御意見を承ったのでありますが、少しお三人にお伺いいたしたいと思いをする。
 その一つは、高橋公述人にお伺いするのですが、今、非常に憂国の情を高橋公述人は言われまして、これは、やはり経済政策の基本姿勢はグローバルな視点を持つべきだ、そしてまた、今までの政策が財政再建に重点を置き過ぎておるんじゃないか、これを積極財政に切りかえる、こういうお話でございます。しかし、私あるいは世の中におきまして一つの危惧がある。それは、御承知のように今のような金余りの状況のもと、すなわち、ちょうどニクソンショックの後のように過剰流動性が非常に高いときに、事によればインフレをあるいは狂乱物価を招くおそれもなしとしないと私は思うのです。そこらあたりをいかに調節するか。
 まことにここ四、五年は神風が吹いておるようなものです、日本は。といいますのは、この四、五年の間物価が安定している。しかし、この物価というのも高値安定なんです。第一次石油ショック、第二次石油ショックで、石油価格が基準になって大体物価というのは安定してしまった。ところがその後ここ四、五年余りは石油価格が非常に下がってきた。ために消費者物価というもの、卸売物価というものも安定しておる。これがたまたま中曽根政権の時期にかち合ったんで、中曽根さんというのは運の強い人だなと私は思っています。しかし、これは何らかのチャンスがあれば、チャンスといいますかあれば、必ずニクソンショックの後のような狂乱物価が来ないとも限らない、私はこう考えるのですが、これに対していかにお考えになり、その積極財政との関係についてどういうようにお考えになるか、ひとつお伺いしたいのです。
#116
○高橋公述人 お答えいたします。
 今、その問題については各方面から非常に論議されている問題でございますけれども、私はですから、インフレの危険性がない、可能性がないということは申しません。ですけれども、現在の状況において一次産品価格が要するに急落して、現在それがある程度底は打っておりますけれども、それが上昇していくという状況にはないということ。その背景にございますのは、先進諸国の産業構造が重厚長大型から軽薄短小型に変わってきて、要するにそういう一次産品の需要が伸びなくなってきているという問題が背後にあるんだ。だから、ここ四、五年はそういう問題が一次産品の方から起こる可能性は少ない。それから原油の問題についても同様です。
 ですから、今おっしゃったのは、それじゃ地価とか、要するにとにかく日本に特有の現象ですけれども、地価上昇の問題があるんではないか。現に東京の都心の地価が上がっておるわけですからそれはございますけれども、現在の状況というのは、日本の地価の動きというのは二極分化しておるわけですね。二極分化、つまり都心では上がっているけれども地方では上がっていない。地方でも上がっているところもあるけれども上がっていないところもある。つまり、その差が非常に大きく出てきているという状況にあると思うのです。
 だから、そういう公共投資をふやしていけば地価の上昇に結びつくんではないかという多分御指摘だろうと思うのですけれども、私はそれを否定するものではございませんけれども、一番問題なことは、公共事業をやっていく場合に、幾らなけなしの資金を投入してもそれが地価に食われてしまったんではどうにもならないわけであります。ですから、土地対策を伴わないで公共投資を拡大をしていくということは非常に危険であるというふうに思いますし、それからもう一つは、労働力の面から見ても、技能労働力が不足する可能性を持っているというふうに思います。だから私は、公共投資についてやみくもにふやせと言っているわけじゃなくて、ステディーに長期的な展望に立って、少なくとも二十一世紀を目指しての社会資本の充足という観点でやっていくぐらいのことはやってもいいんじゃないかということを私は念頭に置いて申し上げたわけです。
 特に、四全総で六百兆円の、二十一世紀までですね、累積の公共投資額をやれば先進国並みになるという試算をしておりますけれども、あれは大体年率実質五%ぐらいの増加ということになるわけですけれども、少なくともその程度のことは、やったからインフレになるというふうに私は思っておりません。
#117
○井上(普)委員 私は、単に一次産品が安定しておるからインフレにならないということは言えないのじゃないかと危惧をいたしております。もちろん、先生のおっしゃるように土地の高騰というのはございます。おそれはございます。既にもう、先生方は新聞なんかではともかく東京だけで土地が上がっているようにお考えになりますが、私の四国の果てにおきましても、やはり徐々にその傾向が見えつつあると私は思っております。御存じのように、公共投資が土地に食われて実際の景気回復に余りならない実情も私は存じております。しかし、これは土地政策に対する国の政策が余りにも無策であるからにほかならないと思っております。
 そこで、土地政策につきましてどういうようなことをやるか。私は、これは二十年来申し上げておるのでございますが、イギリスでやったような開発利益を吸収する方法をやれということを再三にわたって私はこの場でも申し上げたのだが、土地税制がもうその役割を果たしておるというようなことで今まで過ごしています。税金で道路をつくる、そうするとその付近の土地がぽんぽん上がる。税金で新幹線をつくる、そうしたうその付近の土地がどんどん上がる。まさに土地所有者は不労所得です。何もやらずに、ともかく土地が――不労所得を吸収するのこそ社会正義の根本じゃないか。これはイギリスにおきましてはもう六十年前、七十年前から開発利益の吸収ということが盛んに論議せられたのでありますが、我が国におきましては、残念ながら自由民主党の中におきましてはこのことを取り上げられずに今日に来っておるのであります。したがって、土地税制を、これを直せと言うのであれば、開発利益の吸収こそまず第一番ではなかろうかと私は思っております。
 それはともかくといたしまして、このたびの積極財政に転換した場合に、インフレになりはしないかという危惧も世の中に行われておる。あるいはその危惧なしとは私は考えないのであります。それゆえに一つお伺いするのでございますが、現在のこのマネーゲームの状況、製造業の法人におきましてもマネーゲームによって黒字を出している、こういう傾向が出てきている。これは非常に多いのであります。これが産業空洞化にも影響してまいりますし、しておるので、果たしてこれが今回のこの本予算案で抑えられるのかどうか、これについてはどうお考えになっておられるのか、ひとつ山田さんと高橋さんからお伺いいたしたいのです。
 それと同時に、この経済の投機化と申しますか、こういうものに対して税制としてはいかにあるべきであろうか、この点についてもひとつお伺いいたしたいと思うのです。
 第三に、関本公述人にお伺いしたいのでありますが、関本公述人は先ほどのお話の中で、法人の経常利益の三〇%しか実は法人に負担はかかっていないとおっしゃいました。その資料があるとおっしゃっておられましたが、私も不勉強にしてそれを見ておりませんので、これはどういうところにあるのかひとつお伺いをいたしたいと思います。
 さらにもう一つ、山田公述人にお伺いしますが、あなたのところの全民労協におきまして、法人税の減税が個人に還元せられないという大体の結論をアンケートでとられたようであります。先般の予算委員会におきまして、政府は法人税の減税は労働者に還元されるものだと言って大見えを切ったのであります。その後全民労協の皆さん方がアンケートを九十八社に対してとられたというので、まことに適切なる御処置じゃなかろうかと思っておりますので、この点につきまして詳細お答え願いたいと存じます。
#118
○山田公述人 最初のマネーゲーム、それから産業、企業との関係についての質問なんですが、たまたま今春闘といいますか賃闘といいますか、賃上げが開始をされているところでありまして、どこを攻め道具にするかということで、一つはやはり円高になれば泣きますし、円安になれば泣きます。笑うときがないわけです。我が産業、我が企業はいつ笑うのか、その適正な円レートというのをきちっとこの際、今日の賃上げに間に合うか間に合わぬかは別にして、押さえておこうというのが一つあります。
 それから二つ目は、これはいろいろな機会があるときに私どもは、言うならば九百億ドルに達しようとするいわゆる経常収支について、日本列島にあらわれず、どこにあの金は行ったのかということでいろいろ関係先にも捜査願みたいなのを出しておるのですけれども、いまだにそれがわからぬということです。わかるのはそれぞれの企業の労働組合が自分のところの企業のそういうような動向についてはわかるはずなんです。ですから、ぜひ今回の春闘を通じまして団体交渉の対象にしながら、まず、よそのこともいいけれども、自分のところがそういうような企業のあり方、経営の理念といいますか、そういうことについても大いにひとつ労使で議論をしてもらいたい。
 結論から言えは、こんなことになりましたら、まさに先生指摘のように産業空洞化にさらに輪をかけるような状況になるということを大変私どもは恐れているわけなんです。特に今回、日経連の方からはそういうような指摘をしながら雇用問題、賃金抑制というような手法でやってきておりますが、私どもとしてはきょう時間がなかったからこの際申し上げておきますが、そういうような対応については、MEを導入する際に政労使で実は五原則という共通認識を整理をしたのです。立場が違いますからやり方は違うと思いますが、認識だけは共通さしておこうじゃないかということで、非常にそれがその後のME導入の際に潤滑油的な役割を果たしたのですが、今度も企業の海外進出とかを初めとするそういう問題についてもやはり政労使で物の考え方を一遍整理をして、何か共通の基盤をつくりながらそれぞれの立場でひとついい方向にやれるような努力をしたいものだということで、十二月にも中曽根総理にその話をしましたら、直ちに大賛成だということで、恐らく労働省なんかでも準備をしておるのじゃないかと思いますが、その際、当然マネーゲームなんかについても、我々としてはなかなか言う場所がないものですから、対応を具体的にしていきたいものだなというぐあいに思います。結論から言うと、決していいことじゃないというような受けとめ方です。
 それから、先ほど先生の方から御指摘がありました、いろいろな数字が出ているという数字の一番の違いというのは、先生、あれなんです、法人税減税が国民に還元されるかどうか、これがもう一つは重要なポイントになっておるのです、増減税の関係につきましては。それで全民労協としては、余り抽象的な議論をしても仕方がない、大方いろいろ大手の組合を通じて、政府の方ではそういうことを言っているのだけれども、どうなんだろう。在来産業型は、今大変悪戦苦闘しておるところは、もうだれが見ても同じように、そんな還元するような余地はありません。先ほど述べましたように賃上げても遠慮しなければいかぬというところも現に鉄鋼とかいろいろなところを通じて出てきておるわけですから。そういうことで二百二十社ほどに私どもは組合を通じて企業の方にアンケートを山さしました。これは東証、大証一部上場企業のうち、資本金二十億円以上、かつ従業員千名以上の企業を対象としてやったわけなんですが、たくさんの設問はしておりません。もう一発型です。イエスかノーかの聞き方をして、さらに意見欄をつけたということで、九十八社の回答がありまして、「そう考える」と答えられたのは九社です、九・二%。「そう考えない」と答えたのが四十社、四〇・八%。「わからない」と答えたのが三十六社、三六・七%。「その他」と答えたのが十三社、一三・三%。「そう考える」九・二、「そう考えない」四〇・八、「わからない」三六・七、「その他」二千三。「そう考える」中には「長期的にみてそう考える」というのが三社あるのです。それから「料金認可制業種のため、減税分は原価として、個人に還元される」と回答された方が二社あるのです。九社の中に二社、そういうような理由が入っている。それから「そう考えない」中では、四十社ほど出ておりますが、「短・長期的に配当の増加、製品価格のダウンに必ずしも結びつかない」というのが十三社、「売上税導入による価格転嫁が困難であり、大きな負担となるため、法人税減税があっても還元できない」十社、「構造不況に陥っており、とても考えられない」八社、その他いろいろずっと説明を始めましたらこれはかなり時間をとりますから省略をいたしますが、今申し上げました中でさらに意見欄を整理して分析をしてみますと、「個人に還元される」というのは五・一%しかありません。「長期的・マクロ的にはそう考えるが、別の意見をもつ」というのが一四・三%、それから「理論的にはわかるが、別の意見をもつ」というのが二・〇%、「個人に還元されない」が四八%、「わからない」が二六・五、「その他」が四・一。「わからない」はどちらかというと個人に還元されない方向のわからないというような内容ですから、極めて円高でかんかん照りか相当差益があるか、そういうところを除いてほとんどそういう気持ちはないということがこのアンケートの結果で証明されたのではないか。
 それから配当、配当と言いますが、配当は、そんなに日本の場合は何かあったからその都度に配当を動かすというような慣習がありませんから、そういうことは外国とは全然日本の場合は違いますから、そういう点も織り込まないと何かとり方を間違うのではないかと思います。
#119
○高橋公述人 お答えいたします。
 先ほど先生が御指摘になったマネーゲームの問題ですけれども、これは確かに非常に問題であります。そのマネーゲームという現象の背景というものを考えてまいりますと、一つは実物経済が沈滞している、そして要するに金余りで金がだぶついていて、その中で今先物市場とかいろいろなものが出てきておりますけれども、要するにマネーゲームを引き起こすいろいろな装置がつくられてきているということがあるわけですけれども、しかし、基本的に考えなければならないことは、実物経済を抜きにしてマネーだけでひとり歩きしていけるのかという問題があると思うのです。実物の経済とマネーとがある意味で広い意味のバランスというのがとれていかなければ、いずれはそこに何らかの問題が出て、それはインフレに結びつくとか、例えばストックインフレという言葉がありますけれども、インフレに結びつくとかいろいろな不健全な問題が出てくるはずであります。だから、ここで一番大事なことは、実物経済を浮揚するということがあれば今のマネーゲームが健全化していく可能性を持っているんだということを私は申し上げたいわけであります。もし、実物経済が沈滞したままマネーゲームだけが進行していくとなれば、いずれそれは崩れます。実は一九二九年恐慌のときの過去を振り返ってみましても、あのときも株価は非常に上昇を続けたわけです。そしてある段階でそれが崩落したわけです。そしてマネーの世界での崩落が実物経済の沈滞に結びついていったわけです。ですから、今の状態は私は決して健全だと思っておりません。ですから、実物経済を正常に伸ばしていくという手だてができるならば、マネーゲームの方が私はある程度モデレートになっていく可能性を持っているんだというふうに思います。
 ただ、現状において一つだけ申し上げておきたいことは、アメリカの株価上昇がことしに入ってもずっと続いておるわけです。特にことしに入ってからの上昇は大きいですけれども、それが本当に不健全なのかあるいはそうでないのかというのは非常に意見が分かれているところでありますけれども、どうも実情から言うと、必ずしも不健全とばかりは言い切れない面があるようであります。そして、日本の株価の上昇はそれに引きずられているという状況であります。そして何よりも重要なことは、今の通貨の調整が十分行われていない、そしてアメリカのドルが非常に供給過剰に陥っている、こういう状態を何とかしていかないと問題が正常にならないというふうに考えられるわけであります。
 私は、基本的に申し上げたいことは、実物経済を健全に拡大させていくということを真剣に考えることがマネーゲームにある意味でピリオドを打つ一つの理由になるんだということを申し上げておきたいと思うわけであります。
 それから、投機資金に絡んで税制の問題のお話がございましたけれども、やはりアメリカの税制等に比べて日本の税制のおくれているのは、キャピタルゲイン課税が私は非常におくれていると思います。これはしかし非常に難しい問題があって、シャウプ税制以来この問題については随分検討されてきている問題でありますけれども、今度の税制改革でもこの問題は十分に取り上げられるに至っていないように私は思っておりますけれども、これは今後の課題として、日本におけるキャピタルゲイン課税というものをいかにやっていくかという点についての諸条件を検討していく必要がある、こういうふうに思っております。
#120
○関本公述人 先ほど巨大企業の実質税負担率が三〇%にも達しておりませんというふうに申し上げましたのですが、これは資料を、きょう原本を持ってきておりませんけれども、最近のものでは、自治労の大阪府本部が大阪市に本社のあります資本金十億円以上の上場会社の最近の決算期をとらえまして、十九業種六十六社について調査したところによりますと、法人四税の実質税負担率は二六%である、こういう調査の結果が出ております。これは総評さんとか、私ども税経新人会も参加しております「不公平な税制をただす会」というところが出しております「国民のための税制」という本の六十一年版の七十八ページ、七十九ページに載っておりますので、もしごらんいただければありがたい、このように思います。
 ちなみに、この法人四税の表面税率は法人税四三・三、法人事業税一二、法人住民税は四三・三%の一七・三%でございますから七・四四%、合計六二・七四%でございますけれども、これに比較するべき数字が二六%でしかない、こういう趣旨でございます。
#121
○井上(普)委員 関本さん、実は私らそういう数字を聞きますと、私自身がびっくりするのです。ですから資料の根拠をお伺いいたしたいのであります。
 最後に、時間がございませんので、お伺いいたしますが、このたびの売上税の導入によりまして、中曽根総理も、第三次産業の方に雇用は吸収せられる、サービス業の方に吸収せられる、こういうことを言われておりましたが、私はどうも疑問に思っておるのです。といいますのは、この間も二階堂さんがアメリカへ行ったときにだれかに会いましての新聞記事で、これは、これからの産業空洞化に従って第三次産業に人間は吸収せられるけれども、それは非常に数が少ないし、かつまた賃金の低い業種にしか入らないというようなことを言われたと私は聞いています。このたびのサービス業あるいは第三次産業に売上税をやられたら、そちらの方がふえるからと申されますけれども、私は、どうもそれは間違っているのじゃないか。事実、付加価値税を実施いたしております諸国におきましては、第三次産業は欧州、EC諸国を見ますと一七%から一八%、日本の第三次産業の従事者は二三%、あるいはアメリカもそのようになっています。こういうようなことを見ますと、産業空洞化があるいは第三次産業に吸収せられるということもなかなか難しいし、かつまた、特に流通機構なんかの業者において売上税ができますというと第三次産業がふえるんだという政府の答弁というものは、私はちょっと無理があるというように感じてならないのでありますが、山田さん、この点について御勉強になっていただいておりましょうか、どうでございましょう。
#122
○山田公述人 私は通産省の産業構造審議会の中の企画小委員会のメンバーで、「二十一世紀産業社会の基本構想」というのをまとめた中の一人なんですけれども、二十一世紀に向けていろいろな数字を出しております。ところがそのシミュレーションが、実はこれだけの円高に入る前のデータで計算したものですから、必ずしも現実に合わぬということになっていますので、まだそこまで私どもは数量的にも計算したところまで入っておりませんけれども、いずれ我々自身もそういうシミュレーションの方向も出したいと思いますが、ただ、感じとしては今先生が言われましたような方向で、いい影響を与えないということだけは明確になるのではないかなというような感じを強く持っております。
 数字の問題もありますけれども、やはりこの種の問題は精神的な面もあるのですね。これだけあくせくあくせく今円高不況の中で走っているさなかに、ややこしい問題を次から次へとほうり込まれて、それは国の事情もあるでしょうけれども、こっちの事情もあるのですよ。だから今困っている人たちをどうしてあげるのかということを優先的に考えて、もっと生きた政治というものをやってもらわないと本当に困るなというのが正直な気持ちです。
#123
○井上(普)委員 時間が参りましたので、これで失礼します。ありがとうございました。
#124
○砂田委員長 池田克也君。
#125
○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。きょうはお忙しいところをありがとうございます。
 いろいろとお話を承りましたが、サラリーマンの今度の売上税についての反応でございますが、総理はサイレントマジョリティーなんということをおっしゃっているようでございます。サラリーマン、私もサラリーマンの経験があるわけですが、忙しい仕事の中で、具体的な政治の動きについては直接行動するということはなかなか制約のある立場であろうと願います。自営業者の方々につきましては、それぞれ業界の集まりがあったり、あるいは御自分で時間をやりくりしたり、そうした自分の意思というものを直接的に表現するチャンスがあろうかと思うのですが、山田さんからごらんになって、サラリーマンの方々が今の税制改革にどういう思いでこれを見ていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
#126
○山田公述人 はっきり申し上げましてがっかりしたということです。ですから、何度も何度もサラリーマン減税を耳にたこができるほど聞かされておりましたし、それでやってもらえるのかなと思っておりましたら増減税同額で、また抱き合わせでやられて、何のことはない。私どもいろいろな計算をして、私どもの計算が間違いであれば、最近は組合員も皆学卒それぞれおるわけですから、そんなに労働組合の幹部のアジテーターの演説でだまされるような人たちでありませんよ。しっかり計算もわかっていますよ。そういうところから、くどいようですけれども、六百五十万くらいのところがやはり分岐点だなということはみんなわかっているのです。そうなってくるともう九割以上は実質増税で、全然これは関係なし。
 それから、一番楽しみにしておりました税率構造にしましても、何か少しは前よりもプラスになるのかなと見ておったところが、七百万円以上は若干の緩和がされていますが、肝心かなめな四百万円とか五百万とかそういうところになりますと、一%年収がふえれば三・二の現状が三・四になる。むしろ負担の増税感が一層あふられるというような実態ですからね。何をどういうような議論をされておるのか、中堅サラリーマンとは何を指して言っておられるのか、そういうような五%か七%ぐらいの人を指して中堅サラリーマンと言っておられるのか、その辺の見方、とり方が私どもと随分遣うんじゃないかな。それから、実額控除にしましても、必要経費の問題を前からサラリーマンはいろいろ言ってきました。最初は単身赴任からずらっと並んでおって何かやってくれるのかなと思ったところが、実際ふたをあけてみるともうほとんど関係ないというような内容になっていますしね。
 それから、配偶者の問題については、今度はそれの問題にさわられておりますけれども、我々はやはりみなし法人とあの関係で一遍それをチャラにして、そして新しく二分二乗なら二分二乗ということですっきりしたような形で改正なら改正をしないと、あっちこっちに傷のあるところにこう薬を張りながら、何かすっきりしないままああいうことをやられましても、せっかくの政府の気持ちでもすっきりそれは受けとめられないというような感じを非常に強く持っております。労働組合は砂の器かもしれませんけれども、何か甘く見られましたら、それは大変なことになると思いますよ。今まで労働組合が集会をやりましても、皆飽いちゃってなかなか集まりが悪かったのですが、このごろはちょっと呼びかけただけでも大動員できるあの姿を見てもらったらわかると思います。
#127
○池田(克)委員 ありがとうございます。
 私、東京の人間として、このごろ通勤時間が非常に長くなっている。二十三区内にはほとんど住めないという声も切実でございまして、一時間、二時間、非常に長時間の通勤をしていらっしゃるし、しかもサラリーマンの方々がそれらの家のローンの返済という問題に非常に苦労していることの実情を聞いております。そういう中で、これから春闘とか賃上げとかいろいろあると思うのですが、これからのサラリーマンの実質収入増というものがどんな見通しになっていくのか。そしてまた、こうした法人税の問題も国会で議論がこれから出てくると思いますけれども、これからのサラリーマンの暮らしの見通しという問題をどう見ていらっしゃるのか。
 それは収入の面ともう一つは雇用の面です。海外への産業の空洞化という問題が出てきておりまして私ども心配しておりますが、その両面、暮らしの見通しという問題についてもう一歩突っ込んで聞かしていただきたいと思うのです。
#128
○山田公述人 最近、私どもは内需拡大の問題と関連しまして、都市再開発に対する一つの政策というのを、素人は素人なりにまとめました。考え方の基本というのは、いわゆる大都市の人間化とそれから地方都市の魅力化ということで、やはり基本的には東京の集中化を地方の魅力化によって抑制するというような基本的な考え方に立っておるのです。
 私ども今からサラリーマンのいろいろな政策なり展望を示す上で大事なことは、今労働時間とか週休二日制というのが非常に大きな話題、課題になってきておりますけれども、都市政策自身が片方で時間を十分、二十分短縮する努力をしても、片方では通勤時間が一時間から一時間半、二時間ということになれば、何をやっておるかわからぬわけですよ、言うならばトータルとしましては。ですから、そういう都市政策自身がある意味では労働条件の一部だというような指摘をされる先生も実はおられまして、我々としては今後こういう都市政策については我々自身の問題として非常に重要だというぐあいに認識をしておりますから、まずとりあえず都市政策を中心にして、我々としての都市型サラリーマンの今後の一つの将来方向といいますかそういうものは、それをスタートにしながら随時まとめていきたいということで、今対応を進めておるというぐあいに理解していただいたら結構だと思います。
 とにかく東京の五十キロ圏内では、サラリーマンの五%しか持ち家を持てぬだろうというのが言うならば三年か四年前のデータですから、最近の土地の暴騰を見ますと、もう恐らく〇%じゃないかというぐあいに私どもは受けとめております。
 それからさらにサラリーマンのニーズなんですが、去年私どもは、今サラリーマンが何を一番求めておるのかということで、現状と今からの自分たちのニーズといいますか、それをかなり詳しく調査をいたしました。時間がありませんから多くは申し上げませんが、一つ、二つ御紹介しておきたいと思います。全民労協の組合は、言うまでもありませんけれども、そうはったりのきいた労働組合でなくて、大手、中堅どころでまじめなサラリーマンの集団みたいなところですから、割引をせずに聞いてもらったらいいと思います。
 三十代後半で、本人賃金のみで三十一万八千円、妻パートを入れますと三十三万二千円。三万一千円プラスになるんですね。いろいろなデータが出ていますが、ゆとりを持つためには月収四十万は欲しいということなんです。四十代後半は三十六万五千円、妻のパートを入れて三十九万三千円。四十六万円は欲しいなというのが正直な皆さんたちのサラリーマンの気持ちです。もう一度申し上げますと、三十代後半は、本人のみの賃金で生活しておる方は五一%です。それから四十代後半は、本人のみの賃金で生活しておるのは、びっくりしましたが二八%です。ですから、若いときよりも四十代の半ばから後半にかけていわゆる共働きがぐんとふえておるというのが実態だということです。
 それから住宅関係につきましては、三十歳代後半は五〇%の人がローンの返済中です。持ち家が六四%、住宅費用が月に八万三千円、広さは七十二平米というのが三十歳代後半の住宅事情であるわけです。その人たちのニーズは、せめて百平米、せめて百平米程度の家が欲しい、そういうことで持ち家計画をしておるのが二九%おられます。そういうことで、四十歳代の後半もありますが、時間の関係ではしょりたいと思います。そのほか、貯蓄の関係とかいろいろな関係でありますが、持ち家なんかで、今持ち家を持っていなくて今後どうするかということについても、ニーズはもうたくさんございます。これは住宅政策のやり方次第でぐいぐい住宅の方は伸びるというぐあいに私どもは受けとめております。それから、大都市関係の持ち家の人たちから出ているのは、増改築とか買いかえをやりたいという人たちが持ち家の中の五一%を超しているということも、ちょっと参考までに申し上げておきたいと思います。
#129
○池田(克)委員 いろいろと伺いたいことがたくさんあるのですが、高橋先生にお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中でいろいろと国際収支の問題が出ておりました。今度のGNP、あるいはいろいろ計算されておると思いますが、内需の振興ということが非常に海外から強く要請されているわけです。具体的に日本のこうした税制改革でどの程度内需の振興ということが伸びるか、あるいは減るか。これは前川レポート等もありましたが、非常に重要な問題だと思いますけれども、マクロ的にごらんになって何かお答えを持っていらっしゃるかどうか、お聞かせいただきたいと思うのです。
#130
○高橋公述人 税制改革が内需の振興にどういう関係があるかという御質問でありますけれども、一応今度の税制改革案自体は増減税同額ということを前提にしておりますから、個々の税目が個々の需要項目にどういう影響を与えるかということを通じて最終的にどうなるかということになりますと、また話は多少変わってくるわけですけれども、一応常識的には内需に対してはニュートラルだ、こういうことではないかと思います。ただその場合に、多少それが減税の方に傾くのか増税の方向に傾くのかというのは、その計算の仕方あるいは見方の違いによって出てくると思いますけれども、大ざっぱに言えば結局ニュートラルということではないかと思いますし、それがまた増減税同額ということの一応考え方の趣旨でもあるんじゃないかというふうに思っております。ですから、そういうことでお答えになるかどうかわかりませんが……。
#131
○池田(克)委員 時間がなくなってきましたが、山田さんにもう一問お伺いしたいのですが、教育減税の問題が前からテーマになっておりました。この教育費というものがサラリーマンにおける家計費支出の中で非常に重いというふうに私たちも考えておりました。しかし、なかなか実現しないままここに来ております。いろいろと御試算があろうかと思いますが、今度の場合には学校の授業料あるいは入学金等は非課税でありますが、参考書であるとかその他運動に関する諸施設あるいは道具、かなり広範に子供たちの経費も課税されるというふうな状況でして、私どもの試算でも学校に納める費用というものがかなり上がるだろう、こう予想されております。これはもう選択の余地のない出費でありまして、形を変えた税みたいなものだ、学校経費というのはそう理解をしておりますが、これについてどんなお考えであるか、最後にお聞かせいただいて終わりたいと思います。
#132
○山田公述人 教育費の問題につきましては、私どもの中流意識の調査の中でも、特に三十代後半から四十代の後半が大きな負担になっているわけです。
 例えば第一子の私立大学、それから第二子の私立高校で、大体私どもの調査で百五十六万円というような数字が上がっておりますし、国立大学とか公立高校で九十八万円、これは三年前の調査ですから、また変わってきておると思いますが。そういう点で、私どもは教育減税を今日まで非常に強くお願いをしておったのですが、きょう私は皆さんたちに聞いてほしいことが一つあるのです。
 何か中堅サラリーマン論争ばかりやっていますけれども、実は昭和三十年に就職をされた中で、学歴別に見ると六六・一%の方が中卒なんです。六六・一%の人が昭和三十年に十五歳で仕事に参加しておられるのですね。その人はちょうど三十二年たっているのですよ。そうしますと四十五から五十歳ぐらい、四十五歳以上は圧倒的に日本で働いている人たちを学歴別に見ますと中卒の方が多い。
 きょう私は冒頭に言いましたように、賃金の問題でも大企業と中小企業との格差ほど一つの企業内で学歴格差としてありますよと。そういうところが一番教育の問題とか住宅の問題で泣かされておるわけですよ。親が学校を出てないから、せめて娘や息子ぐらいは大の字でもつくところにでも入れるかというような調子で、本当に買いたいものも買わずに、苦労しながら子供さんなんか学校に出しているというのは皆さん御承知だと思いますよ。そういうところを当面、教育減税なんかで本当にどう救ってあげるのかということが私はあってしかるべきだと思うのですよ。仮にその人たちが世代が終わるまで十年間でもいいですよ、十年間でもいいから暫定的にやってやろうか、そういうような、これはイデオロギーでない現実の問題ですかう。本人が学校へ行きたくても当時は行けなかったのですから、そして今日の日本を支えてきたのですから。だから中堅サラリーマンも結構です。それもやらなくちゃならぬが、もう一つこっちの大変苦労している人を忘れては困る。先生の御質問がせっかくありましたから、余分なことですが、お願いいたします。
#133
○池田(克)委員 終わります。
#134
○砂田委員長 楢崎弥之助君。
#135
○楢崎委員 私は、公述人の方に御質問を申し上げる前に砂田委員長に要望があります。
 それは、きょうの朝刊、各社とも載せておりますけれども、金丸副総理の発言の内容であります。これからいきますと、「六十三年度から始まる本格減税を六十二年度に前倒しし、内需拡大を図る案が目玉=B現行の税制改革案では六十二年度の所得・住民税減税は暫定税率を適用して一兆三千億円弱にとどめ、二兆七千億円の本格減税は売上税など増税による財源がそろう六十三年度から実施することになっているが、これを一年前倒ししようというもの。その財源としてはNTTや日本航空の株式売却益などを充てるが、それでも不足する場合は赤字国債の発行もやむを得ない」これは、後藤田官房長官も御一緒だ。中曽根総理はその場におって聞いたか聞かぬか知らぬふりしておった。
 これは、予算を変えなくちゃだめですよ、もしこれが本当なら。副総理の発言ですよ。こんな失礼な話がありますか、公述人の方に来ていただいて。六十二年度の予算を変えるかもしれぬのですよ。それに対してまことに失礼だとおわびを申し上げたいと思うのです。これは笑い事じゃないですよ。これは副総理の発言ですからね。中曽根総理は、我々が何回でも言う、売上税を撤回して出直せと、六十二年度の予算にそれが入っているから。何と中曽根総理はおっしゃいましたか、予算委員会でも。これは最善のものである、撤回する意思はないとおっしゃった。副総理は修正ということを裏を返せば、これはまずいところがあるから、ずっと朝からいろいろ売上税の問題の御批判も出ている。だから、言うならば修正意見が出ているのですよ。これは我々の常識からすれば、副総理の総理に対する反逆である、不信任の表明である、閣内不統一ですよ、私に言わしたら。だから私は、あした二日目の公聴会が始まる前にぜひ御苦労ですけれども理事会を開いて、この辺をはっきりしておってもらえないと公述人に対して非常に失礼になる、このように思うのです。
 それで、私はもうばかばかしくて質問するのは本当に申しわけないと思うのですよ。こういう今の状態で本当にこの予算執行ができると公述人の方は思われておるかどうか、それだけまず次から次にお一人ずつおっしゃってください。失礼ですが、山田さんから。
#136
○山田公述人 それは国会でやられることですから、こちらが御質問したいことのような感じがしますが、今言われたように非常に難しいと思います。
#137
○楢崎委員 代表格で言われた、御同感だと思うのです。非常に失礼ですが、聞くのだけは別のことを聞きますけれども、まことにどうなるかわからぬような状態で聞くのですから申しわけないと思うのです。
 それで、どうでしょうかね。中曽根さんは自分で大型間接税の定義をつくられました。多段階で、網羅的で、一般普遍的で、包括的で、縦横十文字に投網をかけるようなもの、これが大型間接税の定義である。高橋先生、関本先生、これは国際的に通用しましょうかね、こういう定義は。どう思われますか。
#138
○高橋公述人 私は学者でございますから、そういう政治の世界の問題についてお答えするだけの能力がございませんので差し控えさせていただきます。
#139
○関本公述人 お答え申し上げます。
 私、公述で申し上げましたように、一般消費税といたしましてはいろいろな形態がございますけれども、総理の定義されましたような形の大型間接税というものは世界じゅうどこを探しても一国もございません。そういう意味では、これは後から大型間接税とはこういうものであると言うのは大変選挙民を愚弄したものではなかろうか、このように考えます。
#140
○楢崎委員 実は十三日に予算委員会で、世界じゅうどこか採用している国があるかと聞きましたら、中曽根総理も宮澤大蔵大臣も御返答がなかったわけですね。だから、これはどこにもない税のあり方で、ないものを持ってきて、自分はたから公約違反ではない、そういう論理でやられたわけですけれども、私は普通の一般的な、平均的な国民から見ますと、これは何と中曽根さんが詭弁を弄されようと公約違反だ、このように思うのが常識だ、そのように考えるわけです。
 それから、先ほど関本さんは重要な意見を述べられたのですけれども、私どももそういう感じがしますが、要するに本質的にはこの売上税は消費税である。つまりEC型の付加価値税である。しかもこれは一般的である。そうすると一般消費税、これは五十四年の国会決議に反する、本質的には。それで売上税と名前を変えられたんだと思うのですけれども、高橋先生はその点はどのようにごらんになりましょうか。本質的には一般消費税と変わらないと、この売上税は。
#141
○高橋公述人 付加価値税あるいは一般消費税、一般消費税というのは昭和五十四年に日本が一応取り上げたわけでございますけれども、そういう税の表現についての内容に即した定義というのはいろいろあいまいに使われている面が多うございますので、厳密な議論というのを私どもはそういう言葉に即して実はやっておらないのであります。したがいまして、今御質問の問題については厳密な意味で、では付加価値税というのはどういうものなのか、そして現実にそれが付加価値税に当たるのか当たらないのか、そういうことで議論をしていくしかないというふうに思っております。今御質問の点について言えば、厳密な意味での、要するにEC型の付加価値税ということではないというふうに私は思っております。
#142
○楢崎委員 では、付加価値税であるということはお認めになりますか。
#143
○高橋公述人 はい、付加価値税の一種です。
#144
○楢崎委員 同じく先生にお伺いしますが、単一税目としては戦後最大規模の新税である、それはお認めになりましょうか、この売上税は。
#145
○高橋公述人 今までの間接税というのは個別間接税でございますから、その個別間接税の概念から考えれば範囲が広うございますので、その意味ではより大きいということは言えると思いますけれども、戦後最大という意味が、どういう意味でお使いになったかよくわかりません。
#146
○楢崎委員 どうして政治家よりも政治的な御答弁をされますので、恐れ入りますが、あと一問だけ。
 この売上税ですが、これが二兆九千億を見込んでいるわけですね。本来ならば大蔵省は五%の税率で五兆八千億、それで既存の間接税の廃止や軽減分を除いて二兆九千億円、この積算基礎、よくわからないのですが、高橋先生、おわかりになりましょうか。
#147
○高橋公述人 私の専門分野は経済政策でございまして、財政学あるいは租税学でございませんので、実際問題として税制調査会その他にも関係しておりませんので、この問題に則しての厳密なお。答えはいたしかねます。
#148
○楢崎委員 問題は、我々の同僚委員も何回も指摘しておるとおり、今度の場合増減同額というところに問題があるのでして、それで先ほど問題になりましたとおり、法人減税がそのままそっくり個人に返るということが前提になっておる。だから同額になるのです。そんなことはあり得ないということは山田さんもおっしゃったとおりだと思います。そうすると、これはトータルとしては増税であることは間違いないのですね。しかも、今の五兆八千億の売上税の問題は、これは非常に見積もりが低いと大部分の専門家がおっしゃっている。そうすると、これは結論としては増減税同額じゃなしに増収超過、こういう結果になる。これは明確に予言しておってもいいと私は思いますが、関本さん、どうですか。
#149
○関本公述人 お答え申し上げます。
 今回の増減税が四兆五千億というふうに言われておりますけれども、この数字は実は正確ではないと思います。なぜかと申しますと、先ほどお話ございましたように売上税の導入による増税は五兆八千億でございます。それから先ほどのマル優廃止による一律二〇%強制分離課税によりまして三五%の分離課税分が、概算でございますけれども四千億円ぐらい減税になっております。したがって、マル優廃止による増税は一兆六千億ではなくて二兆円ぐらいになるはずでございます。そうしますと、増減税の総額は大蔵省の試算によりましても七兆九千億ですか、そういう数字になりますので、増税七兆九千億、減税七兆九千億、このように言わざるを得ないだろうと思います。
 なお先生の御質問のように、これが五%で五兆八千億というのは積算の基礎が私どもには全く示されておりません。したがって批判のしようがございませんけれども、他の試算によりますと十兆円近いというような試算も出ておりますので、恐らくその中間ぐらいが実際の実績になるのではないか、かように考えております。
#150
○楢崎委員 終わります。
#151
○砂田委員長 次に、工藤晃君。
#152
○工藤(晃)委員 共産党の工藤晃です。三人の公述人の皆さん、本当に御苦労さまです。
 さて、関本公述人にまず伺いますが、最初述べられましたように、この公聴会が各党すべて一巡した後に行われなかった、遺憾であると言われましたが、まことに同感であります。金子書記局長の質問は総括質問でありまして、総理の施政方針並びに予算全般に対して我が党の立場からこれを質問する、これはどの党にとっても当たり前のことであり、それからまた質問時間というのも既に決まっておりますから、これをおくらさなければならない理由はどこにもないわけであります。したがいまして、我が党としましては、予算委員長に対しましても早くこれが行えるようにすべきであるという立場を再三にわたってあらわしてきたということを冒頭に申し上げたいと思います。
 さて、私は、売上税の問題についてまず三問ばかり関本さんに伺いたいわけでありますが、一つは、先ほども言われましたように一般消費税は反対であるという決議の中に、仕組み、構造について理解が得られなかった。この前も中曽根首相が答弁されているのを聞いておりますと、一般消費税は一般消費税、今度の売上税は付加価値税と、何か違うかのように言っておりますけれども、これは全くばかばかしい話でありまして、付加価値税の中で税額を計算するときに仕入れ控除法がある、税額控除法がある、その二つの違いにすぎない、このように思うわけでありまして、その点が一点であります。
 第二に、大型間接税という言葉が出だしたのをよく調べてみますと、これはちょうど八〇年の十一月七日政府税調の中期税制答申が出たときに、広く消費に着目する新しい間接税あるいは課税ベースの広い間接税というのが出たときに、一斉に大型間接税、大型新間接税、大型新消費税という言葉が広がって、それから国会で使われるようになったわけであります。このことの意味は、明らかに個別消費税ではないということからはっきりとしているのは、先ほど関本さん言われましたように、これは一般消費税のことをいう。シャウプの財政学によりますと、一般売上税ということになっております。この一般売上税の中で、それこそ単段階のものがある。製造者売上税とか小売売上税がある、そして付加価値税がある。確かに税調もこういうのを並べまして、そのあげく政府は付加価値税というのを選び出したわけでありますが、この幾つかのタイプの中で付加価値税というのは一番税収を漏らさず取るという特徴があるというふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
 それから三つ目の点としまして、アメリカのいわゆる税制改革は付加価値税の導入をノーと言いました。私もあの総論のところに書いてある部分と各論のところもつぶさに読んでおりますけれども、主な理由というのは不公平である。不公平というのは二つの意味があります。貧困、最も貧しい層、そこに絶対的な負担をかける、だから不公平である。第二に、収入が少ないほど税負担が重い、逆進である、だから不公平である。それに加えまして、いろいろな納税コストがかかるということも強く指摘しております。あわせて、ヨーロッパとアメリカは違う。ヨーロッパの場合、長い間接税の歴史の上に付加価値税が出てきた国とアメリカの直接税中心と違うということを言っておりました。そういうことであります。それが主な理由だと理解しておりますが、その点いかがでしょうか。
#153
○関本公述人 お答え申し上げます。
 まず第一点でございますけれども、これが大型間接税というふうな呼び方がされたのはまさに七九年の国会決議で一般消費税、これは(仮称)とついておりますけれども、によらない財政再建ということが決議されたということと関連しまして、その後税調でも一般消費税という言葉は使えなくなったということで、その関係で出てまいりましたということだろうと思います。
 ただ、先ほど申し上げましたように、消費税の区別といたしましては、学問上はやはり個別に課税すべき品目を特掲して課税する個別消費税と、すべての取引に原則として課税する一般消費税、この二つしかございませんで、なおかつ一般消費税の徴収の仕方としまして製造業者売上税あるいは卸売売上税、小売売上税、それから各段階でかける取引高税あるいは最終的には四万式の中で示されました日本型付加価値税ということで、取引の都度かけますけれども、前段階税額を控除する方法、こういうようないろいろな方法があるわけでございまして、そういう意味ではまさにこれは大型間接税の言いかえであります一般消費税そのものであるというふうに思うわけでございます。
 これが、それでは他の形態の一般消費税と比べてどうかという点でございますけれども、製造業者売上税でございますと、製造業が何であるかという定義が非常に難しゅうございます。これは各国で採用されてきた経緯はございますけれども、例えばカナダでもこれを変更しようというような議論が起こっております。やはり執行上のトラブルがかなりあるということでございます。それからもう一つは、サービス業は課税範囲からドロップしてしまうというような問題がございまして、それでは小売売上税かということになりますと、やはり小売業者から非常に強い抵抗が出てまいる。こういうようなことで、間違いなくどこからも取れる、しかも形の上では非常に合理的な仕組みを持っているように見える、そういう意味ではEC型付加価値税が一般消費税としては最も進化した形である。これはフランスを初めとしましてヨーロッパ各国が数十年にわたって経験してきましたその結果としてでき上がったものでありますから、そういう意味では一般消費税の中で何が合理的かというふうに聞かれますとEC型付加価値税である、しかしこれは、まさに細大漏らさず課税の対象に取り込むことができるという点で、一般消費税の中では最も広範かつ大型のものであるというふうに考えるわけでございます。
#154
○工藤(晃)委員 アメリカの税制改革。
#155
○関本公述人 失礼しました。
 アメリカのレーガン税革におきましては、まさに所得税の減税財源といたしましてEC型付加価値税の導入が検討されたわけでございますけれども、これは一昨々年でございますか、リーガン財務長官のレーガン大統領に対する財務省報告の中で、先生御指摘になりましたように三つの理由を挙げて否定しておられます。
 まず第一点は、まさに負担の逆進性で、これは弱者に対する、つまり民主主義に反する税金であるという点であったというふうに記憶しております。それから第二点は、徴税コストが非常に高くつく、つまり大きな政府につながるものであるということと、それからもう一点は何でございましたか、まあ三つの理由を挙げましてこれは所得減税の財源として採用すべきではない、こういうことで財源は法人税の増税に求める、こういう結論を出しているわけでありまして、この点が我が国の今回の税制改革と根本的に違うという点で、私どもはこの点を非常に高く評価しているわけでございます。
#156
○工藤(晃)委員 それでは、今法人税が日本は税率が高いからアメリカに出ていくとかそういうことが盛んに言われておりますが、私は大変疑問に思っているわけであります。何となれば、表面的な法人税の税率四三・三%にしろ、実質的にどれだけ税金の負担をしているかというと、私も予算委員会で二度にわたり取り上げましたけれども、大商社などは法人税を一円も払ってない、こういう例が非常に多いわけであります。したがいまして、何かアメリカの方が低くなったからそれで出ていくというのはまことにおかしな話で、実はアメリカにあれほど出ていくというのは、異常な円高になっているということが一つと、それから大企業自身が既にもうお金を大変蓄積しているからこそ出ていけるわけであって、蓄積したという中には日本の税制が大企業に甘いということもあったんだと思うわけであります。それに加えまして、仮にアメリカで税金を払うとすれば外国税額控除という制度でこれは差し引くことができるわけでありますから、これはまたプラスにもマイナスにもならないということになります。それに加えて、アメリカの今度の法人税の改革なるものを見ても、確かに税率は下げるけれども、タックスエロージョンに手をつけるため五年間で千二百億ドル法人税の増収をするというこういう事実を見れば、日本の方で経団連なんかが法人税が安い安いと言うのはそこの税率のところだけを見ているので、まことに私はけしからぬやり方だと思います。
 そういうことを含めて、今の法人税のあり方について関本公述人からまたお伺いしたいと思います。
#157
○関本公述人 お答え申し上げます。
 現在の日本の法人税率は、基本税率が四三・三%、事業税等を損金に算入した場合の実効税率が五二・九二%でございますか、というふうに言われておりますけれども、これはあくまでもあらゆる特別措置を行った後の所得に対する税率でございまして、実質税負担率というふうに私どもは呼んでいるわけでございますけれども、実は大蔵省の発表しておられる数字というのは非常に限られておりましてなかなか実態はつかみにくいわけでございますけれども、最近発表されております数字を見ましても、資本金階級別に見ますと資本金が低い百万円未満とかあるいは五百万円未満というようなところは、軽減税率がございますので低くなっておりますけれども、五千万から一億円ぐらいのところをピークといたしまして、資本金階級別に見ますと資本金が高くなれば高くなるほど、つまり資本金百億円以上のクラスになると一番税負担率は実質的には下がっている、こういう実態があるわけでございます。
 特に租税特別措置の利用状況等を見ますと、これは最近私、本を書くために調べたのでございますけれども、大企業――私は大企業という場合に資本金十億円以上を大企業というふうに考えておりますが、この利用率が、租税特別措置の発表されている分だけで見ましても、例えば外国税額控除は九五・一%が十億円以上の大企業によって利用されている。あるいは退職給与引当金にしますと、これは六五%がそうである。あるいは受取配当の益金不算入につきましても七四・八%というぐあいに、特別措置のほとんど大部分が先ほど申し上げました三千社に満たない資本金十億円以上の大企業によって独占的に使われている。この結果、実質税負担率が非常に低くなっているということでございまして、決して日本の法人税の構造あるいは税率が日本の大企業の海外流出あるいは海外逃避といいますか、産業空洞化の原因になっているのではなくて、この原因はあくまでも安い労働力、安い原料を求めて、今この円高を契機といたしまして海外へ流出しているわけでありまして、これは決して法人税制のせいではない、このことははっきり言えるのではないかというふうに考えております。
#158
○工藤(晃)委員 最後に、山田公述人に一問お伺いします。
 先ほど、多くの経営者が法人税減税になってもそれを国民に還元するということはないだろうという調査結果だと理解しておりますが、それにつけても、大蔵省が我々に出している資料に、例えば第一分位は一万九千円法人課税が返ってきますよとか、第二分位は二万六千円返ってきますよとか、第三分位は三万一千円返ってきますよとか、大変麗々しく数字を挙げてこれは返ってくる、こういう計算をごらんになっていかがでしょうか。法人税が仮に間接税だとするならば、必ずこれはだれかほかのところが負担するということでこういう数字を挙げられるだろうと思いますが、法人税が間接税であるわけではない。それから、いろいろな還元があるとしても一年先か二年先かというのでも、それならすぐにあらわれるこの結果の数字になるわけがない。しかも現実問題として、多くはそういうことはないだろうと言っている。それにもかかわらずこういう数字が出てくるという問題。もちろんこれは私たち国会の中で追及することなのでありますが、公述人としてどうお考えか、それを最後の質問といたします。
#159
○山田公述人 調査結果は先ほど申し上げたとおりで、我々としては、大蔵省が主張しているいろいろな学説がございまして、それを丹念に今検討をしているさなかなんですが、短期的には法人税の転嫁は不明確だということと、長期的に見た場合に、法人税の税率引き上げが行われても法人の税引き利潤率は低下はしない、したがって法人税が転嫁されるというにすぎない、そういうことにしかこれはすぎないんじゃないか。
 それからもう一つは、法人税の転嫁が最近の学説の一般的傾向であることは否定できません。しかし、今回の増減税試算のような単年度の評価の中にすべて還元されるという形で算入するのは余りにも乱暴だということなんです。減税効果を極大化するための便法としか考えられない。特に、円高デフレの不況の中にあえぐ多くの産業、企業にとっては、企業力維持のための内部留保や企業生き残りをかけた新事業展開等への行動が当然予想されますから、配当還元については日本の企業は業績に応じた配当変動を嫌っております。そういうことで、安定的に配当維持をしようとする方が一般的であることから、実態を事実上は無視したものだというぐあいに私どもの見解としては大蔵省の考え方についてまとめをしております。
 以上、ちょっと申し上げておきます。
#160
○工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。
#161
○砂田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。公述人の皆さんに一言ごあいさつを申し上げます。
 各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 明日は、本日に引き続き午前十時より公聴会を開催いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十二分散会
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト