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#1
第108回国会 本会議 第8号
昭和六十二年二月二十六日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第九号
  昭和六十二年二月二十六日
    午後零時三十分開議
 第一 資金運用部資金法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 日程第一 資金運用部資金法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 宮澤大蔵大臣の帰国報告についての発言及び質
  疑
 坂井弘一君の故議員玉置和郎君に対する追悼演
  説
    午後零時三十二分開議
#2
○議長(原健三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(原健三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 佐々木良作君から、海外旅行のため、三月一日から八日まで八日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 資金運用部資金法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#5
○議長(原健三郎君) 日程第一、資金運用部資金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長池田行彦君。
    ―――――――――――――
 資金運用部資金法の一部を改正する法律案及び
  同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔池田行彦君登壇〕
#6
○池田行彦君 ただいま議題となりました法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、最近における内外の経済金融環境の変化に対応して、資金運用部資金の機能を円滑に発揮し、国民経済の要請に一層的確にこたえるため、資金運用部預託利率について、市場金利の動向に対応し、弾力的に変更を行うとともに、資金運用部資金の運用対象を拡大しようとするものであります。
 その主な内容は、
 第一に、資金運用部預託金については、国債の金利その他市場金利を考慮するとともに、預託者側の事情に配慮して、資金運用審議会の意見を聞いた上、政令で定める利率により利子を付することとしております。
 第二に、資金運用部資金を外国政府、国際機関及び外国の特別の法人の発行する債券に運用できるものとし、その金額は、資金運用部資金の総額の十分の一を超えてはならないこととしております。
 そのほか、資金運用審議会の権限等について所要の規定を設けることとしております。
 本案は、昨二月二十五日宮澤大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、質疑終了後、直ちに採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対して附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#8
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の発言(帰国報告について)
#9
○議長(原健三郎君) 大蔵大臣から、帰国報告について発言を求められております。これを許します。大蔵大臣宮澤喜一君。
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#10
○国務大臣(宮澤喜一君) 私は、去る二月二十二日パリにおいて開催されました主要国蔵相・中央銀行総裁会議に国会のお許しを得て出席してまいりました。
 このたびの会議には、サミット参加七カ国のうちイタリアを除く六カ国の蔵相及び中央銀行総裁が参加いたしましたが、この機会に、会議後発表されました声明の概要等につきまして御報告を申し上げたいと存じます。
 まず、東京サミットの経済宣言の枠組みの中において行ういわゆる多角的監視の一環といたしまして、各国の経済動向及び見通しの吟味が行われました。
 その結果、インフレなき持続的成長、金利低下等、先進国経済の積極面が評価される一方、経常収支不均衡に対する懸念が表明されました。また、保護貿易主義の防圧への決意と新ラウンドの貿易交渉に対する支持、開発途上国の債務問題解決のための協調的努力の重要性等が確認されました。
 各国の政策協調につきましては、より均衡のとれた世界経済の成長を促進し、現在の国際的不均衡を是正するため、政策協調の努力を強めることが合意されました。経常収支黒字国は、物価の安定を維持しつつ、内需を拡大して対外黒字を縮小するための政策をとることを約しました。また、経常収支赤字国は、国内不均衡及び対外赤字を縮小しつつ、インフレなき安定成長を促すための政策をとることを約しました。そして、その目的のため、各国がそれぞれ具体的な政策を行うことに合意をいたしました。
 我が国は、次の四点を表明いたしました。第一に税制全般にわたる抜本的見直しが我が国経済の活力の維持増進に資するものであること、第二に昭和六十二年度予算の速やかな実施を確保するため、その成立に全力を傾注すること、第三に総合的な経済対策が、経済情勢に応じ、予算成立後準備されることとなろうこと、第四に公定歩合を二月二十三日から引き下げることであります。
 一方米国は、財政赤字の削減を表明いたしました。具体的には、財政赤字の対GNP比を一九八七会計年度の三・九%から一九八八会計年度に二・三%に削減するとの観点から、一九八八会計年度における政府支出の伸びを一%未満に抑制することを表明いたしました。また、競争力改善のための広範囲の政策の導入等をも提案いたしております。
 我が国と同様経常収支黒字国である西独は、民間部門の活動と投資に対するインセンティブの強化を目的とした包括的税制改革により、個人及び法人の税負担を軽減する政策を遂行すること等を表明いたしました。
 その他の国々も、インフレなき安定成長を持続し、国内及び対外均衡をもたらすような政策運営を行うことを表明いたしました。
 為替レートにつきましては、プラザ合意以来の為替レートの変化が今や基礎的な経済諸条件におおむね合致したという各国間の共通の認識をベースとして、為替レートがこれ以上大きく変動することは各国における成長及び調整の可能性を損なうおそれがあること、したがって、現状においては各国は為替レートを当面の水準の周辺に安定させることを促進するために緊密に協力することが合意されました。
 これは、私が昨年の秋以来ベーカー米財務長官との間で行ってきた為替安定についての二国間の話し合いを多国間に広げたものであり、極めて有意義なものと考えられます。この合意が為替相場の安定に資することを強く期待をいたしております。
 東京サミットの経済宣言では、政策協調のため、経済指標を使用して経済の多角的監視を強化することとされております。今回の会議では、この多角的監視のやり方について経済指標の使用を一層改善していくことについても合意されました。この多角的監視は、他国に特定の政策をとることを強制するものではございません。ただ、経済の相互依存関係が緊密になってきていることから、各国が自国の政策の国際的影響を考慮しつつ政策運営を行うことが望ましいという共通の認識がますます強くなっていることが、これらの合意の背景になっております。
 なお、世界経済における新興工業国、いわゆるNICSの役割の重要性についても話が出ましたが、NICSが貿易障壁を削減し、自国通貨が基礎的な経済諸条件をより一層反映できるような政策をとることにより、開かれた世界貿易体制を守るためのより大きな責任を果たすことが重要であるとの認識が示されました。
 今回の会議は、為替の安定の重要性につき各国が合意に達し、為替レートを安定させるために緊密に協力することが明確に合意された点で、意義深いものであったと考えます。今回の合意により、我が国経済にとって大きな課題である為替レートの安定が実現されることを強く期待いたしております。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の発言(帰国報告について)に対する質疑
#11
○議長(原健三郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中島源太郎君。
    〔中島源太郎君登壇〕
#12
○中島源太郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、このたびパリで行われた主要国蔵相・中央銀行総裁会議についての宮澤大蔵大臣の帰朝報告に関しまして、若干の質問を総理並びに大蔵大臣に行いたいと存じます。
 我が国が国際経済面で直面をいたしております最大の課題は、為替レートをいかにして安定させるかということであります。為替相場に関しましては、一昨年の五カ国蔵相会議、いわゆるG5のプラザ合意以降、ドル高是正が進展をいたしました。このプラザ合意が当時のアメリカ国内の保護主義の動きをある程度鎮静させる役割を果たしたことも評価できると思うのであります。また、こうしたドル高修正の進展は、今後とも必ずや貿易不均衡の是正に貢献していくものと考えられます。しかしながら、他方で、急速な円高の進展は、製造業あるいは中小企業を中心といたしまして、企業に相当な打撃を与えました。また、雇用への影響も憂慮されるに至ったのであります。こうして、為替相場の安定は我が国経済にとりまして喫緊の政策課題となったわけであります。
 こうした状況の中で、宮澤大蔵大臣は、昨年十月三十一日にアメリカのベーカー財務長官との間で、両国間の為替安定等について共同発表を行われました。円相場は、それまでの直線的な円高基調から転じまして、百六十円台での安定状態が昨年末まで続いたわけでありますが、しかしながら、本年一月に入りまして、西独マルクやフランス・フラン等の欧州通貨の不安定等から市場に思惑的な動きが出てきたこともありまして、円相場は再び不安定な状況に陥りました。一月十九日には、瞬間的にではありましたけれども百五十円を割るというように、円はその史上最高値を更新するに至ったのであります。
 こうした事態を受けて、宮澤大臣は一月二十一日再度訪米をされ、ベーカー財務長官との間で協議を行い、為替市場の諸問題について協力を続けていく意向を再確認されたわけであります。このような大臣の御努力の結果、その後の円相場はおおむね落ちついた動きを示しております。私どもは、企業の投資意欲を減退させず、また、日本経済の内需拡大を着実に図っていくためには、為替相場の安定が極めて重要であり、そのためには、これまでの日米二国間での合意がさらに欧州諸国を含めた多国間に拡大することが望ましいと考えておりましたが、今回の会議における為替安定についての合意はまさに時宜を得たものとして評価するものであります。
 そこで、大蔵大臣に伺いたいのでありますが、まず、今回の会議の成果を大臣はどのようにお考えでありますか。ただ、今回の主要七カ国会議、いわゆるG7にイタリアが参加しなかったことはまことに残念に存じます。今回のイタリア不参加が本年六月に予定されておりますベネチア・サミットに影響を与えることはないと信じておりますが、また、何よりも、これからの国際経済の運営につきましては、主要七カ国がさらに相互理解を深め、相互協力を進めることを願うものでありますけれども、この件について大蔵大臣の御所見を伺っておきたいと思うわけであります。
 次に、このたびの会議で、昨今の為替レートはおおむね各国経済の実勢を反映しているとの合意が行われたと伺っておりますが、果たして現在の為替レートは実勢を反映していると言い切ってしまえるものかどうか、この点について率直に伺いたいのであります。大蔵大臣、かつて活況を呈しました我が国の造船業界は今や音もなく、家族とともに住みなれた職場を去らなければならない数多くの方があります。炭鉱は閉山され、中小企業は輸出のめども立たず、日本を支えた基幹製造業さえ国内での生産を見直さざるを得なくなっております。潜在失業率は予測を上回るものがあろうと思います。このような現状を見て、今の為替レートが我が国の実勢を反映したものと果たして言えるかどうか、重ねて率直に伺いたいのであります。
 次に、変動相場制について伺いますが、主要国が変動相場制に移行しておよそ十五年が経過をいたしました。この間、国際通貨制度のあり方につきましてはさまざまな議論が行われました。確かに、変動相場制が石油危機等の困難を乗り越えて経済の均衡を回復する上で有用な役割を果たしたことは事実であります。他方、現実には為替相場の不安定や経常収支の不均衡が見られるなど、変動相場制の問題点もまた浮き彫りされてきたわけであります。このような変動相場制の評価につきまして、大蔵大臣はいかがお考えになっておられますか。大臣の所見を伺いたいと存じます。
 次に、各国の政策協調についてお伺いをいたします。
 今回の会議におきまして各国が具体的な政策意図表明を行ったことは極めて有意義なことと存じます。さらに、声明には、東京サミットで合意された政策協調のための多角的監視の手続について改善していくことが合意されたと書かれておりますが、これはいかなることを意味するのか、この点で今回の会議で新たな進展がありましたのかどうか、大蔵大臣にお伺いをいたします。
 次に、我が国の経済政策について伺いますが、今回の主要国蔵相・中央銀行総裁会議の声明では次のように書かれてあります。
  日本国政府は、内需の拡大を図り、それにより対外黒字の縮小に寄与するような財政金融政策を続ける。今国会に提出した税制全般にわたる抜本的見直しは、日本経済の活力の維持・増進に資するものである。一九八七年度予算の速やかな実施を確保するため、その成立に全力を傾注する。内需振興を図るため、総合的な経済対策が、経済情勢に応じ、予算成立後準備されることとなろう。日本銀行は、二月二十三日から公定歩合を〇・五%引き下げることを発表した。
とされておりますが、このうち「内需振興を図るため、総合的な経済対策が、経済情勢に応じ、予算成立後準備されることとなろう。」とされております点について、この意味と、今後具体的にはどのように取り組まれていかれるのか、大蔵大臣の御見解をお伺いいたしたいと思うのであります。
 次に、六十二年度予算について伺います。
 昨年来、総合経済対策、円高不況地域対策に全力を挙げまして、特に中小企業対策、緊急融資への対応等にも、補正予算を通じましてでき得る限りの手は尽くしてきたつもりでございます。ただ、今待たれますのは、新しい六十二年度予算の早期成立、確実な執行こそが国民生活を支える重要な課題であるはずであります。新予算案には、昨年を上回る公共事業の事業費の伸びを確保するほか、住宅対策、雇用対策の拡充、第八次石炭対策等の施策を講じており、その円滑な執行は、景気の下支え、地域経済の活性化に必要不可欠なものであります。新年度予算の早期成立は国民の強い要望でありますと同時に、我が国に求められている重要な国際的責務であろうと思います。この点について、総理、大蔵大臣の御所見及び決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。
 最後に、今後の財政運営について伺います。
 我が国財政は、このところ連年にわたります国債の大量発行の結果、今回の会議に出席した他の主要先進国と比べましても、極めて悪化した姿となっております。すなわち、公債依存度は昭和五十年度以降二〇%以上の水準を続けておりまして、近年の行財政改革努力の結果、六十二年度は特例公債発行下で初めて二〇%を割る一九・四%となっておりますものの、なお諸外国に比しまして高い水準にあるわけであります。また、長期政府債務残高の対GNP比、利払い費の歳出総額に占める割合を見ましても、我が国はこの十数年の間に急増しておりまして、特に後者は二〇%以上を占めており、政策的経費に充て得る財源を著しく制約しているのが現状であります。
 一方、我が国の経済運営におきましては、内需の拡大が内外から強く求められているところでありまして、財政政策につきましても、これまでの緊縮路線一辺倒ではなく、積極財政へ転換すべきとの声が強くなっていることも事実であります。このような厳しい状況の中で、今後我が国の財政を果たしてどのように運営されていかれるのか、総理大臣、大蔵大臣の御見解をお伺いを申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 中島議員にお答えいたします。
 まず、六十二年度予算の問題でございますが、六十二年度予算の執行に当たりまして大事なことは、内需の振興、それから為替の安定、それから雇用対策であると考えております。内需の振興につきましては、公共事業費について五・二%の伸びを確保いたしましたほか、住宅対策あるいはさらに雇用対策につきましても、三十万人の雇用開発計画を約一千億円の資金を用意して進めようとしておるところでございます。経済情勢に適切に対応するためには、今後予算の早期成立、早期執行が必要でありまして、予算並びに関係法案の早期成立を念願しておる次第でございます。
 財政政策の問題でございますが、我が国の財政事情は極めて厳しい情勢にあるということは認識しております。できる限り早く財政の対応力を回復することがまた大事であります。今後とも、引き続き財政改革を強力に推進する必要があると思います。しかし、内需振興等々も考えまして、予算成立後におきまして、この予算を執行する上について総合的な経済対策を確立いたしまして、強力な内需振興策を展開してまいりたいと考えており、この点は、パリの先般の大蔵大臣・中央銀行総裁の会議でも日本側はみずから言明したところでございます。しかし、財政経済施策の基本的な線といたしましては、いわゆる臨調路線の線をやはり維持し、臨調路線のもとに、私がここで申し上げました諸原則というものはやはり守ってまいりたい。その上に立って緊急、応急の措置を適切に実行していきたいと考えておる次第でございます。
 残余の答弁は大蔵大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#14
○国務大臣(宮澤喜一君) まず、このたびの会議をどのように評価するかということでございますが、このたびの会議で、各国間の政策協調及び為替の安定の重要性につきまして合意があったということ、そして、その上で為替レートを安定させるために緊密に協力をしようということについて明確な合意がありましたことが会議の基本的な成果であると考えております。
 次に、イタリアがこのたびの会議に参加いたさなかったことにつきまして、詳細な事情は実は不明でございますが、東京サミットで合意されました東京サミット宣言の中で七カ国蔵相会議と五カ国蔵相会議、G7とG5というものがどういう関係に立つかということにつきましての理解の行き違いが不参加の大きな原因であったというふうに想像をいたしておりますが、いずれにいたしましても残念なことでございます。ただ、このたびのイタリアの動きの中に、最近イタリア経済が非常に好調でございまして、大いに主導的な力を発揮しております、それについての自負というものがやはり一つの要因であったと聞いておりますが、そうであればあるほど、このような会議につきましてイタリアがさらに積極的に参加されることがもとより望ましいことでございます。いわんやベネチア・サミットの主催国としての立場を継続されることはもとより大変に望ましいことでございまして、強くそれを期待いたしております。
 それから為替相場、いわゆる変動相場制というものをどういうふうに考えるかということ、それに関連いたしまして現在の我が国の為替レートというものをどう考えるかというお尋ねもあったわけでございますけれども、変動相場というのは、七〇年代初頭以来の不安定を乗り越える過程で今日まで大きな機能を果たしてまいりました。ただ、それはそれでいろいろな欠点も指摘をされておるわけでございますが、今のところこの変動相場にかわる新しいシステムというものをどうも現実には発見しておりませんために、変動相場制の機能をできるだけ改善していくということがいわば次善の策であろうということで、このたびもそのような努力が行われたわけでございます。
 したがって、このたびの考え方は、プラザ合意以来、大体もう経済の基礎的条件が為替相場に反映するようになったということでございますから、そのような基礎的条件というものが、中長期的に見ますとこれは各国の相対関係で動いていくことは、固定相場でございませんからむしろ当然のことでありまして、このたびの安定の努力は相場を固定するということをもとより意味するものではございません。現在の我が国の為替レートが我が国の経済の運営につきまして非常に厳しいものであるという声がありますことは、私もよく承知をいたしておりますが、このたびの合意は、ともかくこのあたりの水準で一応の安定を図ろうということの協力の約束でございまして、長きにわたって永久にこれを固定しようということでないことは申し上げるまでもないことでございます。
 次に、サーベイランスにつきましては、御指摘のように、これからこのサーベイランスの内容をさらに具体的に改善をしようという合意がございまして、将来その努力を継続していくことになるわけでございます。
 さらに、これからの経済政策につきましてお尋ねがございましたが、せんだって総理大臣から経済企画庁長官に対しまして、将来に向かってのいろいろな準備を考えるようにという御指示があったと承知をしておりますが、このたびの声明におきましても、予算成立時の経済情勢を勘案しつつ、内需を中心といたしました景気の持続的な拡大をより一層確実にするための具体的な施策を考えてまいらなければならないというふうに思っております。
 六十二年度予算の早期成立につきまして御指摘がございましたが、非常に苦しい財政事情の中で公共事業を五・二%伸びを確保いたしておりますし、住宅対策、雇用対策あるいは産業構造調整の円滑化等につきましてもいろいろ配意をいたしておるところでございますので、この予算及び税制改正を初めとする予算関連法案につきましては何とぞ早期に成立をさせていただきまして、政府といたしましてもできるだけ早く執行をいたしたいと念願をいたしておりますので、よろしくどうぞお願いを申し上げます。
 なお、これからの財政の問題についてお尋ねがございました。総理のお答えもございましたが、財政の窮状はまさに御指摘のとおりでございます。将来何かありましたときに弾力性、対応力を欠いておりますことはまことに残念なことで、何とかこれを早く正常化いたしたいと考えますが、同時に、国の内外からただいまのような内需の拡大、社会資本の充実の要請が高まっております。したがって、そのような財政の将来を考えつつ、いわばいかにして一般的な歳出を抑えながらそのような内需拡大、社会資本充実に優先権を与えて、全体としては抑制ぎみながらアクセントをつけるという、そのような基本的な合意、枠組みをこれからどうやってつくっていくかということがただいまの当面の財政の一番大事な課題ではないかと考えておりまして、そのように努力をいたしたいと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(原健三郎君) 伊藤茂君。
    〔伊藤茂君登壇〕
#16
○伊藤茂君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいまの宮澤大蔵大臣の報告に対し、質問をいたします。
 先般開催されましたG5並びにG7、主要七カ国蔵相・中央銀行総裁会議について、私は、単にその内容の事実を問うだけではなくて、この会議を焦点にして、深刻な状況にある我が国の経済、国際経済との対応を政府はどうするのかを率直に問いたいのであります。
 なぜならば、一昨年九月のプラザ合意以来の急激かつ歯どめのない円高によって深刻な不況に陥った各産業は、暗い厳しい状況に置かれております。かつてない高水準の倒産に直面している中小企業の皆さんは、政府は一体何をしてくれるのかと悲痛な叫びを上げております。急速に拡大する失業、雇用不安の中での勤労者は、怒りを込めてしっかりした対応を求めております。G7という会議を中心に、政府はこの切実な求めに明確に回答する責任があります。さらに、今我が国の経済は、景気循環的視点とは違った構造的な転換に迫られております。これからの日本経済、世界経済の中で大きなポジションを占める我が国の将来への軌道をどう敷いていくのかが問われております。それはまさに今政府に問われている課題であります。
 我が党は、六十二年度予算案などに示された政府の政策を、あえて「増税・軍拡・円高不況と失業傍観型」と評価をいたしました。一昨年九月以来の深刻な円高不況に対して、政府は何ら効果的な対応をしなかったばかりか、公約破りの売上税を導入して不況に拍車をかけようとし、軍事費だけは歯どめなく拡大しようとしているからであります。私は、このような視点から、G7の内容、特に今後の対応について、中曽根首相と関係大臣の御所見を伺いたいのであります。
 まず第一に、今回のG7の内容と評価についてであります。
 共同声明には、「今や各通貨は基礎的な経済諸条件に概ね合致した範囲内にあるものとなった点に合意した。」と書かれております。つい先日発表されましたOECDのレポートには、日本の昨年の購買力平価は一ドル二百二十三円であり、OECD加盟国の中で最も過大評価されていると書かれております。経済、産業の各分野から日本経済の条件を超える円高という強い声が上がっているのも事実であります。現在の水準をG7の成果として政府は評価されているのでありましょうか。
 また、「為替レートを当面の水準の周辺に安定させることを促進するために緊密に協力することに合意した。」と書かれております。それは協調介入などさまざま具体的な裏づけがあるのでありましょうか。特にアメリカに対して、財政赤字、国際収支赤字の打開を強く求めるべきでありますが、どうなっているのでしょうか。また、レファレンスレンジやターゲットゾーンなどの構想が報道されておりますが、今後の国際通貨安定のための構想を大蔵大臣はどうお考えになっておりますか。
 ベネチア・サミットの開催国であるイタリアが参加を拒否して六カ国会議となりましたが、どうお考えですか。
 以上、大蔵大臣の答弁を求めます。
 これらの点を見ましても、また一昨年九月以降の経過を見ましても、政府には円レート安定のための確たる総合的政策戦略が欠落しているのではないでしょうか。総理、いかがでしょう。
 第二に伺いたいのは、内需拡大を中心とする今後の経済政策についてであります。
 内需拡大についての政策は、中長期を展望する総合計画、構造政策でなければならないのに、政府の対応は場当たりに終わっていると思います。私は、国民生活向上と消費の拡大、そのための減税の先行、福祉型の都市建設を中心とする市民参加の公共事業、地方財政の強化を含む積極財政、平和軍縮の経済が政策の中心だと思いますが、政府のやっていることはすべて逆であります。経企庁長官、内需拡大の大きな展望、総合計画をどのように考えておりますか。それらに取り組む決意がありますか。
 まず当面する問題として、六十二年度政府予算案を内需に効果あるものに今抜本的に組み替えるべきであります。(拍手)今の予算案では、当面の景気や内需にプラスする内容にはなっておりません。総理も、まず予算を成立させ、その後に景気対策を考えるとしておられるようであります。しかし、例年、予算成立の後で公共事業の前倒し執行、若干の景気対策、補正予算というコースをとってまいりました。それでどれだけ効果があったのでしょうか。六十一年度も経済見通しは大幅下方修正、六十二年度も政府経済見通しの実質三・五%成長は不可能であり、民間二十八機関の平均は二・四%であります。総理、あなたの公約否定の売上税など税制法案のおかげで、暫定予算の準備が必要になっております。この際、予算案を大幅に修正し、暫定予算にも必要な事業経費も組み込む措置をとるべきであると思います。差し迫った総理の決断にかかっていると思いますが、いかがでしょうか。
 第三に、これと深くかかわり合いを持つ財政政策の転換について伺います。
 G7の共同声明には「内需の拡大を図り、対外黒字の縮小に寄与するような財政金融政策を続ける。」と書かれております。しかし、第五次公定歩合引き下げによって、金利水準は究極の低金利という状態になりました。日銀総裁も言っているように、あとは財政の出番であります。今まさに政策転換の決断のときであります。中曽根首相が目標としている六十五年度赤字公債脱却の可能性を信じている者はだれ一人いないと思います。総理御自身が、政治責任をかけた達成目標というのではなく、精神的努力目標と言われているではありませんか。それは売上税の創設と同様に不可能なのであります。
 私の主張は、財政再建を軽視しているのではありません。不可能な目標ではなく、確実な目標、すなわち、目標年次を延ばし、円高不況を打開し、経済を活性化させることによって、確実な目標を立てようというのであります。今政府・与党内部でも財政政策転換の大合唱が起きていると報じられておりますが、日本経済の深刻な現実がそれを求めていると思います。総理、いかがでございましょうか。
 困難な財政運営を担当されている宮澤大蔵大臣に私は率直にお伺いしたいと思います。この数年間の大蔵大臣がイージーゴーイングでやってきたツケが回りまして、大きな決断があなたに求められていることは事実であります。しかし、その決断をせずに従来どおりのマイナスシーリングを続けていたら、経済は、国民生活は、福祉はどうなるでありましょう。財政再建を放棄するとか中断するとかではない、新しい方程式、計画を提起すべきときだと思いますが、いかがでございましょうか。
 第四に、私は、当面する深刻な経済情勢と売上税導入を初めとする政府の税制改革との重大な矛盾について、厳しく政府の態度を問わなければなりません。
 経企庁は、極めて複雑な算式によるマクロ計算で、中期的には政府の税制改革によって、わずかではあるが年率〇・一%経済成長にプラスすると試算したようであります。私どもの試算、民間調査機関の試算とは全く逆であります。経企庁の算式プログラムとコンピューターは国民の生活実感、経済の実態とは逆に回転する構造になっているのではないかとしか思えません。(拍手)
 売上税の導入によって必ず物価は上昇します。業者の負担も増大します。消費にはマイナスに作用します。政府は所得税減税があると言うでしょう。しかし、増減税の実態を一番確実な家計費調査で試算してみますと、年収六−七百万円以下の人はすべて増税であります。明らかに景気にマイナスに作用するこの売上税について、私たち四野党と会合した経済界、流通業界の代表は、今ブドウ糖注射かカンフル注射が欲しいときにエイズを注射されるのと同じだと訴えましたが、今求められている経済政策にまさに逆行するこれら税制改革案は直ちに撤回されるべきであります。
 政府の税制改革案が出されて以来、かつてない状況が広がっていることは、総理が身にしみて御承知のとおりであります。内閣支持率の急激な低下、与党内の混乱、集団脱党、支持勢力の離反が連日大きく報道されております。今とるべき方向はただ一つであります。法案を撤回し、民主的な国民参加、例えば税制改革国民会議を結成して、納税者の立場に立った税制改革の議論を改めてやり直すことだと思います。いかがでしょうか。(拍手)政府がそのような決断をするとき、私たち野党も不公平是正を初めとする税制改革の具体的、建設的提案をもって真剣に議論をしていくことは言うまでもありません。
 質問の最後に私は申し上げたい。
 今日の経済、社会は余りにもゆがんでおります。土地の異常な高騰によって、日本列島の土地の総価格は、二十五倍の面積のアメリカ合衆国のそれの二倍になろうとしているそうであります。一人当たりGNPでは一万六千ドル余りとなり、世界ナンバーワンになりました。しかし、そういう生活実感を持って暮らしている勤労国民はいないと思います。一昨年末、日本は純対外債権において世界一となり、膨大なジャパン・マネーが世界を駆け回っております。金余り現象の中で株と土地が異常な高騰を示しております。その金は生産や社会資本充実には回っておりません。このような異常な状況は、中曽根さん、あなたの内閣の政策のもとで発生しているのであります。これをどうするのですか。一万六千ドルの時代にふさわしい国民生活、社会をつくるために日本の設計を考えるのが政府の大きな責任ではないでしょうか。時代に問われている責任だと思います。その意欲と努力を失っているならば、中曽根内閣の政治生命は終わったと言うべきでありましょう。総理、どうお考えでしょうか。(拍手)
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 伊藤議員にお答えをいたします。
 まず、為替の安定策でございますが、今必要なことは、ともかく円高進行に歯どめをかけること、そして長期持続的な、安定的な、合理的な相場を維持するということ、これが重要でございます。そういう意味において、先般来パリで行われました蔵相・中央銀行総裁会議におきましてあのような合意ができましたことは、私は成功であると考えております。今後とも、政策協調及び為替安定の合意に沿いまして、我が国も懸命の努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
 次に、内需拡大と予算の問題でございますが、今回の予算におきましては、先ほど申し上げましたように、公共事業費は五・二%も昨年に比べて拡充しておりますし、あるいはそのほかの住宅対策、その他中小企業対策等についても遺憾なきを期して努力しておるところでございます。したがいまして、我々はこの予算を最善のものと考えておるのであります。我々の念願しているところは、組み替えとか暫定とかということよりも早期成立こそ重大ではないか、国民が待っている、このように考えております。(拍手)
 次に、六十五年度特例公債依存体質脱却の問題でございますが、やはり政府の肥大化を防いで行政改革の実を上げていくというためには、厳しい状況のもとにはありますけれども、従来守ってきた財政改革の諸原則は守ってまいりたいと考えておるところでございます。
 売上税は景気に逆行するではないかという御議論でございますが、税制改革は、改革全体を見てこれは論ずべきものであります。今回の改革におきましては、思い切った所得税、法人税の減税を断行しておりまして、これによる勤労意欲あるいは経済の活性化等によりまして、売上税の創設による消費に対する影響、これを殺してさらにプラスがある、そう考えておるところであります。企画庁による四年間の中期試算によりますと、GNPの押し上げ率は〇・一%、名目〇・六%の押し上げ率を持っておると報告しておるところでございます。六十二年度におきましては、四月一日から所得税、法人税の大減税を実行しようと提案しておるところでありまして、この減税先行というものは景気に対して甚だいい影響を持つと考えておるところであります。
 売上税を撤回したり廃案にする考えはございません。
 次に、経済構造のトータルプランでございますが、経済政策はやはり内外均衡を保つことが大事であります。一面におきましては国内的な均衡、それから一面におきましては調和ある対外的経済政策の遂行、こういうような点が要望されておると思います。内需の面におきましては、国民生活の質の向上を中心とする内需主導型経済成長へ強力に転換させていく、また、供給面におきましても、需要の変化に見合いました産業構造の転換や輸入の拡大を図って、貿易収支の均衡を図っていくということが大事であります。それと同時に、我が国は最大の債権国と今はなりつつありまして、世界経済全体に対して資金の循環を円滑に行うべき責任もあると考えております。このような認識に基づきまして、昨年十二月の経済審議会報告、いわゆるリボルビング報告というものを実践してまいりたいと考えておるところでございます。
 地価の高騰対策につきましては、東京の一部等において著しい上昇が認められておりますが、全国的には安定しております。東京の地価上昇は、旺盛な事務所需要とか投機によるものがあると考えておりまして、国土利用計画法の的確な運用や、あるいは東京都条例による小規模の土地取引の届け出制等々の規制によりまして対処しておるところであり、また、内閣といたしましても閣僚会議をつくりまして、地価対策に真剣に取り組んでおるところでございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#18
○国務大臣(宮澤喜一君) このたびの会議におきましては、プラザ以来の為替レートが変化いたしました結果、各国の基礎的な経済的諸条件、いわゆるファンダメンタルズがおおむね相場に表現されるようになった、したがって、この水準をみんなで守ろうではないか、そういう意味での合意でございますので、市場に対する不安を除去するという意味で、これは非常に効果があると考えておるわけでございますが、ただ、御承知のように、これは変動制のもとにおいてでございますので、各国の経済のファンダメンタルズ、つまり、基礎的な諸条件が変わってまいりますと、その間に、中長期的にはその関連は変わり得るものであって、当然のことでございますが、固定を意味しておるわけではございません。
 現在の為替レートが我が国の経済運営にとって非常に厳しいという声がございますことは私もよく承知をいたしておりますが、このたびの会議でアメリカがどういうことを約束したかというお尋ねとも関連をいたしまして、いわゆるグラム・ラドマン・ホリングズ法等に基づく財政赤字削減については相当具体的な約束をいたしております。そのようなことからアメリカの経済が立て直っていく、いわゆるファンダメンタルズがよくなっていくということから、それが将来の円に対してもいい影響があるであろうといったようなことは、変動制のもとにおいては当然考えてよろしいことではないか。これは一般論でございますけれども、決して固定を意味しておることではないということを申し上げておきたいと思います。
 それから、イタリアのことについてお尋ねがございまして、これは昨年の東京サミットの宣言で、いわゆるG5というものに対して、重要な政策検討をするときは他の二カ国を加えよという首脳の指示があったわけでございます。したがいまして、このたびG7が予定され、また行われたわけでございますけれども、その間の解釈をめぐりまして、イタリア側と私どもとの間に食い違いがあったのではないかと考えております。私は、しかし、この点は、イタリア経済が非常に力強くもなっておりますので、こういう機会をイタリアがみすみす今後放棄するということは、恐らくイタリア自身のためにも、ないことであろう、また、そうであることを当然期待をいたすわけでございまして、ベネチアのサミットの主催国である立場というものは当然イタリアは維持されるでありましょうし、また、近い将来の蔵相会議にも出席をするということを私は期待していいのではないかと思っております。
 次に、いわゆる財政、予算編成の考え方についてお尋ねがございました。
 現在のような財政状態でございますので、過去五年間、政府はいわゆる一般歳出をゼロに抑えてまいったわけでございます。これはやはり非常な国民各位の御努力の結果でありますし、また、その結果として財政ばかりでなく、いろいろ制度上の改善もございました。また、受益者負担というような考え方も国民にもわかっていただいて、私は大変な効果があったと思いますが、それでもなお、今日の財政は御指摘のように非常な苦しい状態でございますから、この努力を放棄していいということにはならない、将来の財政の対応力、弾力性を考えますと、どうしてもこれは続けていかなければならない努力でありますが、ただその中で、内需の振興であるとか社会資本の充実であるとかいう、内外の期待をどうやって実現していくかということになってまいります。一般的な歳出の削減、抑制はどうしても必要であるが、そのような内外の期待というものをその中でどう実現するかという基本的な合意、そのための枠組みというものをどうやっていくかということがこれからの課題でありまして、そのために衆知を集めてまいらなければならないと思っておるわけでございます。(拍手)
    〔国務大臣近藤鉄雄君登壇〕
#19
○国務大臣(近藤鉄雄君) 我が国の経済にとりましては、調和ある対外均衡と国内均衡の実現という内外均衡の同時達成を図ることが極めて重要でございます。このため、需要面におきまして、国民生活の質の向上を中心とする内需主導型経済成長への変革を図るとともに、供給面におきましては、こうした需要の変化に見合った産業構造の転換や輸入の拡大を積極的に図っていかなければなりません。これらを達成するために、先生から御指摘もございましたように、海外に流出しております資金を国内において有効に活用し、内需を拡大することが必要でございます。また、世界のGNP一割国家、世界最大の債権国と目されております我が国は、世界の資金循環の円滑化等国際的貢献を拡大することが不可欠でございます。
 このような認識に基づきまして、昨年十二月に経済審議会報告、昭和六十一年度リボルビング報告が取りまとめられました。さらに、経済審議会におきまして、昨年九月に経済構造調整特別部会を設置し、国際協調を図るとともに、国民生活の安定と向上を確保するための整合性のとれた中長期的な経済構造調整のための施策について検討を行っておるところであり、昨年十二月一日に中間報告を取りまとめましたが、今後一層検討を加えまして、今年四月を目途に最終報告を取りまとめる予定でございます。
 政府見通してございますが、六十二年度の経済については、外需は円高の影響等から引き続きマイナスの寄与度を続ける一方、内需は物価の安定のもと、家計部門の需要が着実に増加するとともに、また、住宅建設も引き続いて好調が見込まれるのであります。企業分野におきましては、非製造業を中心に着実に推移をすると見込まれますが、特にかつてない低金利の状況のもとでございますので、年度を通じて基調としては着実に増加する見込みでございます。
 そこで、六十二年度予算の編成に当たりましては、このような経済情勢に適切に対応するため、公共事業について、厳しい財政事情のもとでございますが、国費は抑制しつつも、財政投融資等の活用、民間活力の活用、補助・負担率の引き下げ等により、一般公共事業の事業費については、総理、大蔵大臣の御指摘がございましたが、前年度を上回る伸びを確保する等の努力を行ったところであり、内需の着実な増加に寄与するものと期待をするのであります。したがいまして、国際収支の不均衡を是正しながら、全体として内需による実質三・五%程度の着実な成長を見込んでいるところでございます。
 最後に、先生が御指摘ございましたマクロモデルによる試算でございますが、これは当庁の計画局で経済計画策定に参考にしております中期多部門モデルによって試算したものでございますが、今回の税制改正は、税収中立性の原則のもとで実施されるものであり、マクロ経済に大幅な影響を生じないものでございますが、税制改正全体として、総理も申されましたように、六十二年から六十五年度の四年間、期間平均をとってみますと、実質〇・一%(年率)程度の成長促進的な効果がある、そういう試算になっているわけでございます。物価につきましては、売上税導入時においては一時的に上昇はいたすものの、その後上昇率は落ちついた動きになり、ならしてみると、消費支出デフレーター上昇率は、六十二年から六十五年度の四年間で年率〇・五%程度の小幅なものとなるという結果が出ております。
 先生も御指摘ございました民間調査機関が発表いたしました税制改正の影響の試算でございますが、それぞれモデルの構造が異なりますほか、影響をはかる期間や前提条件等々異なりますので、両者を単純に比較することにはいろいろ問題がございます。しかし、民間調査機関の試算におきましても、売上税だけを単独に取り出して計算したものは別といたしますと、税制改革全体をパッケージとして実質GNPに与える影響を試算したものは、総体としてはプラスの効果を示すものが多いようでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(原健三郎君) 坂口力君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔坂口力君登壇〕
#21
○坂口力君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、主要国蔵相会議、いわゆるG5、G7の報告に対しまして、総理大臣並びに大蔵大臣に質問を行いたいと存じます。
 現在、我が国経済は依然として深刻な円高不況に陥ったままにあります。輸出産業は言うに及ばず、産業界全般が円高のあおりを強く受けておりまして、操業短縮、雇用調整を余儀なくされております。こうした現状を見るにつけまして、一昨年九月、ニューヨークで開かれましたG5を振り返ってみる必要があります。政府が調整幅も調整期間もあいまいなままにドル高是正に合意をし、急激かつ大幅な円高を招いた責任は極めて重大であります。まず、総理から、今日の円高不況が発生した経緯をどのように認識されているかお示しをいただきたいと思います。また、円高という為替レートの調整は、これだけ日本経済を窮地に陥れながら、我が国の貿易黒字は縮小どころか拡大し、アメリカの貿易収支の改善も進んでいません。私は、調整幅も調整期間もあいまいのままに合意された一昨年のG5での対応は余りにも不用意であり、中曽根内閣の致命的な政策ミスだったのではないかと強く疑問を持たざるを得ません。(拍手)総理の率直な御意見を賜りたいと思います。
 私たちは、かねてから日本政府がG5あるいはG7の開催を他の主要国に働きかけ、円相場の高値行き過ぎを是正し、適正水準に回復できるよう努力すべきであると主張してまいりました。その意味では、このたびG5、G7が開催され、ドル高是正という路線を見直そうとする合意ができたこと自体、評価するにやぶさかではありません。大蔵大臣の労をねぎらうものであります。しかし、合意の内容について少なからず疑問を持っております。
 第一に、今回の合意は現状の是認であります。日本経済の実態からすれば、現状の円相場は明らかに適正水準を超えていると言わざるを得ません。産業界は一様に一ドル百七十円ないし百八十円、それ以上の水準を望んでいることは周知のとおりであります。現在の円相場の水準は明らかに行き過ぎであると私は考えますが、総理のこの点に関する認識をお聞かせいただきたいと思います。また、宮澤大蔵大臣がどのような政策スタンスで今回の会議に臨まれたのか、お伺いをするものであります。
 第二は、それにも増して、二十二日に発表されました共同声明は、「この声明に要約された政策コミットメントを前提とすれば、」という前提条件の合意であるという点であります。これでは、日本にとって最大の関心事であります円相場の安定は各国の政策次第ということであります。総理並びに大蔵大臣は、約束された内需を拡大し、これ以上の円高は起こさないと確信を持って断言できるか、お答えをいただきたいと思います。
 第三は、先進諸国間における為替相場の急激な変動を避け、安定させるための協力関係についてであります。日本を初めアメリカ、西ドイツを中心として主要国政府が為替市場に機動的に介入することは、為替相場を安定させるために心理面も含めて必要な措置かもしれません。しかし、率直に申して、これまでは介入による効果は余りなかったし、時には逆効果の場面も生じていると言わざるを得ません。今後どの程度期待をすべきものなのかどうか、伺いたいのであります。
 また、これまでの経緯の中で見過ごしにできないのは、アメリカ側がドル下落を容認する発言を絶えず繰り返し、円高をこれまで加速させてきたという問題があります。協調介入よりもむしろこちらの方の影響が大きかったのであります。投機を誘発するような言動が今後も続けば、機動的な介入も無意味となり、厳に戒めなければなりません。日本政府としてアメリカ側に率直な苦言を呈したことがあるのか、この点について総理並びに大蔵大臣の所信を伺いたいと思います。
 今回のG7にイタリアが参加しなかったことにつきましては、先ほども議論がございましたが、主要先進国の足並みをそろえるという点から見ましてまことに残念であります。政府は、G7へのイタリア不参加をどのように見ておられるのか。今後の協調の限界を示すものではないのか。本年イタリアで予定されているサミット開催にも影響が出るのではないか。先ほども議論がございましたが、もう一度所見を伺いたいと思います。
 アメリカが考えていますレファレンスレンジ、すなわち参考相場圏、いわゆる為替相場に一定の変動幅を設けまして政策協調、市場介入を通じて相場を一定範囲内に維持する構想を掲げましたが、合意に達しなかったと報じられています。私は、為替レートが国際収支改善に必ずしも有効でないという現状もあり、円高安定が必至であるということから当然だったと考えますが、総理の考え方をお聞きをしたいと思います。
 さて、総理、今回の共同声明は、為替相場を安定させ、世界経済のより均衡のとれた成長を図るために、各国がとるべき政策についての合意がなされたことだと思います。相場の安定のためには各国の政策協調が必要であり、私は、このような合意成立には大きな意義があると考えております。特に、アメリカが「競争力を改善し、経済の力と柔軟性を強化する広範囲の政策を導入する」ことを明確にしたことは、高く評価できるのであります。そこで、各国のとるべき政策として合意された内容はどのようにフォローされていくのか。会議に出席された大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
 私は、我が国が共同声明の中で、内需拡大と対外経済黒字削減のための財政金融政策を続け、六十二年度予算成立後、総合経済対策を準備すると合意したことは、日本政府の苦衷をあらわしたものと思わざるを得ません。それは、この合意が国内的に新たな問題を生じさせているからであります。それは、第一に、共同声明によって内需拡大と黒字是正を改めて明確に国際的公約としたことであります。第二には、現在、昭和六十二年度予算案は予算委員会に付託されておりますが、その六十二年度予算案にはそれに足り得る政策が準備されていないことを政府みずからが告白した形になったことで、これは重大な問題であります。申すまでもなく、補正予算は当初予算作成後に生じた事由に基づいて編成されるべきものであります。私は、このようにみずから内需拡大のための不足を認めた以上は、予算を組み直し、再提出するのが筋であると思いますが、総理の見解を求めます。
 内需拡大の必要性は、一昨年のG5以来最大の課題になっていたはずであり、六十一年度も内需拡大を叫び続け、補正予算を組み、アクションプログラムをつくりながら、その実績は遅々として進まず、予算の構造的欠陥が指摘されたわけであります。それにもかかわらず、政府は、六十二年度予算においてもまた同じ轍を踏もうとし、我々の積極財政への転換を求める要求にも耳を傾けずに参りました。六十二年度予算には過去の反省が生かされていないと断言せざるを得ません。私は、今回の共同声明に合意した以上、明確に積極財政に転換し、六十五年度赤字国債脱却の旗をおろし、着実な財政再建の道を進めるべきだと思いますが、明確な答弁を求めます。(拍手)
 また、宮澤大蔵大臣は、六十二年度予算編成に関して、マイナスシーリングを続けることは困難であるとの意向を示しているようでありますが、大蔵大臣の方針をお伺いをしたいと思います。
 最後に、内需拡大に関連して売上税導入の問題についてお伺いをいたします。
 政府は、さきに、今回の税制改革が経済全体に与える影響を実質GNPで〇・一%、名目GNPで〇・六%と発表いたしました。恐らく今回の共同声明におきましては、こうした我が国の試算をもとにして、「税制全般にわたる抜本的見直しは、日本経済の活力の維持・増進に資するものである。」との内容になったと思われます。しかし私は、この試算について疑問を持たざるを得ません。各民間研究機関の試算は、先ほど言われましたように、総理の言われますように税制全体を考慮いたしましても、新税制で、平年度におきましてGNPがマイナスになることを指摘しているわけであります。総理は、五兆八千億円の税収を上げる売上税が我が国経済にどのような影響を与えるのか、謙虚にその見通しを明らかにする責任があります。
 また、アメリカの有力議員からは、「日本は西ドイツと並んで内需を刺激すべきだ」、そして売上税については、「もし自分の政府の出来事なら、私は強く反対するだろう」とか、さらには、「所得税率を下げても売上税を導入すれば、内需拡大という望む方向とは逆の結果を生む危険がある」と、まことに厳しい批判が寄せられております。総理は、このような見方に対してどう反論されるのか、お答えいただきたいと思います。
 最後に、もう一言総理に申し上げ、見解を伺いたいと思います。
 総理は、今国会において売上税を強引に成立させようとしていられますが、世論調査でも八割以上が公約違反と決めつけ、七割以上の人が導入に強い反対を表明をいたしております。特に、産業界が強い抵抗を示していることは御承知のとおりであります。政府・自民党内から産業界に対する力で抑え込もうとする動きが見えることは、まことに遺憾であります。このような動きは、民主政治を破壊するものであると言わなければなりません。総理の所見を求めます。
 さらに、昨日来のマスコミ報道によりますと、売上税法案に対して、自民党内に法案を再検討するための小委員会が設置される動きのあることが伝えられています。この法案に対して、自民党の税調副会長も含めた人々から再検討の必要ありとする声が出ていることが事実であれば、売上税法案の審議入りはもはや不可能であります。世界に公約した内需拡大とは裏腹に、個人消費を停滞させ、輸出奨励効果があり、対外不均衡を拡大する売上税は、現在の日本に最も不適当な税制であり、自民党内に再検討の声が出るのは至極当然のことと言えます。(拍手)与野党共通の合い言葉であります内需拡大のために売上税法案の撤回を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 坂口議員にお答えをいたします。
 まず、円高不況の実情でございますが、我が国経済は、国内需要は緩やかには増加しておりますが、円高の進展等によりまして輸出が弱含みであること等から、鉱工業生産は基調として停滞ぎみに推移してきており、景気は底がたさはあるものの足取りが緩やかなものになりつつある、こういう点を認識しております。特に、製造業を中心にして停滞感が広まっているという点を大いに重視しておるものであります。このためにも速やかに予算を成立させ、そうして、内需振興の政策を推進していきたいと考えております。(拍手)
 円高の問題でございますが、円高の原因は、日本の産業の生産性が非常にすばらしい、いい品質の物を安く輸出できる、このような輸出力が非常に強いという点から起こっているものと考えております。そして、この円高及び為替の乱高下に対しまして、政府としてはこれを放置することはできないと考えております。二度の宮澤・ベーカー会談、あるいは今回のパリにおける蔵相・中央銀行総裁の会議等も、この問題を中心に日本が積極的に参加して行われたものであります。これらの成果を実践いたしまして、合理的な為替相場の長期的安定に向かって努力してまいるつもりであります。
 いわゆるレファレンスゾーンはどうであるかという御質問でございますけれども、やはり今回の措置を忠実に各国が実行することが適当である、当分の間、この情勢を見守るということが必要であると考えております。
 次に、イタリアの問題でございますが、これは大蔵大臣から御答弁があると思います。
 さらに、G5、G7のフォローアップの問題についても、今回の合意内容は、今後開催される七カ国蔵相会議やサミットにおきましてそのフォローアップが行われると思います。先般の合意にもありますとおり、我が国としては六十二年度予算の早期成立に全力を傾注する、また、予算成立後、経済情勢に応じて総合経済対策を準備するということを言明しておるのでございまして、この方針に沿って全力を注ぐ考えております。
 次に、経済対策と予算の問題でございますが、以上のような景気状況にかんがみまして、本年度は公共事業においても昨年を上回る五・二%の伸びを確保し、あるいは住宅政策等についても大いに力を入れておるところでございます。そういう考えに立ちまして、予算につきましては暫定とか組み替えということは考えておりません。早期成立ばかりを考えておるということであります。(拍手)
 次に、積極財政への転換の問題でございますが、やはり内需拡大を図るということは前から言明して、実行して、逐次総合経済政策をやり、また、公定歩合も昨年以来五回にわたって下げてきておるところでありまして、このように機動的に経済政策を運用してまいりたいと思っております。特に、この予算が成立いたしましたら、その執行につきまして、内需拡大を中心にする総合経済対策を強力に推進してまいりたいと思っております。
 六十五年度特例公債依存体質脱却ということは、政府の肥大化を防ぐためにもこの旗はおろさない方がいいと考えております。
 次に、売上税の経済に対する影響は、先ほど申し上げましたとおり四年のスパンで考えてみますと、GNPを押し上げる力は一年ごとに実質〇・一%、名目的に〇・六%あるというのが経済企画庁の試算でありまして、我々はそれらの成果を生むようにさらに努力してまいりたいと思っておるところでございます。特に、昭和六十二年度におきましては、四月一日から所得税、法人税の大減税を行おうとして提案しているのでありまして、これは売上税のマイナスを、これを相殺する力を十分持っていると考えておるところでございます。
 売上税に対するいろいろなお考えがあることは十分承知しておりまして、我々も謙虚に耳を傾けまして、聞くべきものについては十分聞く用意を持っております。これを弾圧するとかなんとかという考えは持っておりません。しかし、政府がその政策を周知徹底させ、あるいは政党は自己の政策を国民の皆さんの御理解を得るように努力することは当然のことでありまして、我々は当然のことをやっているということを申し上げるのであります。
 次に、売上税の問題でございますが、前から申し上げているように、シャウプ税制以来三十七年、日本の税体系は非常に大きなゆがみ、ひずみを生じてまいりまして、今の税体系でいったら日本の財政や日本の経済は袋小路に入って、にっちもさっちも動きがとれない情勢になる、そのことを申し上げておるのであります。日本経済の拡大や活性化を考えておりますと、今ここで税の仕組みその他について相当な改革を行わなければならないという時代に入っておるのであります。特に、現在の税制は所得税、法人税を中心にしております。地方に対するお金も所得税、法人税、酒税から捻出しておる。交付税がそういう状況にございます。しかし、所得税、法人税を増税するわけにはまいりません。これは減税すべきものであります。(拍手)そうなりますれば、どこから財源を得るか。地方に対するお金を何とかして確保して、公共事業費を増大していくということは非常に重要なことであります。そういう面を考えてみましても、地方に対する財源、公共事業費の確保等を考えてみますと、将来的に見まして、今の所得税、法人税のみに頼るということは極めて困難な状態になっておるのであります。(拍手)
 第二番目は、やはり社会福祉の問題でありまして、老齢化あるいは長寿社会の現出に伴い、将来これらの御老人の面倒を見るお金をどこから出すかという問題があります。やはり所得税、法人税から出すことは、将来極めて困難でありましょう。そういう意味におきましても、長期的展望に立った考え方を必要としていると申し上げるのであります。(拍手)
 さらに、海外の情勢を見ますと、各国は今みんな減税をやっております。イギリスも減税をやり、アメリカは減税をもう既に実行しております。ドイツも減税を繰り上げてやろうとしております。そういう面から見ましても、日本は国際的な水準に合わせる必要があるのであります。(拍手)そういう内外の情勢から見まして、税制の大改革をやることは、私は、国民経済のためにも、国民に対しても我々の責任であると感じておるところであります。(拍手)どうぞ、野党の側におかれましても、野党の統一代案を出していただきまして、我々とここで、国民の前で審議していただきたいと強く念願する次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#23
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、一昨年のプラザ合意以来、非常に通貨の変動がございまして、我が国などは大変に大きな影響を受けたわけでございますが、今回の合意は、そのプラザ以来の動きというものがもう一つの目的を達した、したがって、これ以上大きな通貨の変化があることはかえって有害である、それは我が国や西ドイツにとって有害だというばかりでありませんで、アメリカ自身にとって有害だということをアメリカ自身が認めだということが今回の合意の基本にあるということでございます。したがって、そういう意味で市場に対する不安を除去することに役立つ。ただ、それは固定を意味するものではないことはもちろんでございます。
 で、もう一つの御指摘は、しかし、各国が政策努力を約束していて、それが崩れればこういう合意は崩れるだろうという御指摘であったわけですが、各国が政策努力をあそこへ表明いたしますまでに、実はかなり長いこと各国間で舞台裏の折衝がございまして、各国としても随分あそこは詰めてあるところでございます。そして、為替の安定は、やはりただの売り買いというよりは政策協調が基本だということは広くみんなが認めておるところでございますから、あれがやはり基本の背景になる。そして、それはしかし、すぐ前言を翻すことはないかということにつきましては、そのためにサーベイランスがございますし、蔵相会議が何回か行われ、また、サミットも行われてレビューをする、そういう仕組みであるわけでございます。
 なお、そのレビューはどうするかというお尋ねが少し後でございましたが、それは何回かの七カ国蔵相会議、あるいはやがてサミット、そういう場合がフォローアップの機会であるわけでございます。
 それから、アメリカがいろいろなことを言って、それで随分迷惑をした、それについて苦言を呈したことがあるかというお尋ねでございまして、実は何度も苦言を呈したことがございます。ございますが、アメリカ側の話は、これについて権威を持って言えるのは大統領と財務長官だけであって、そのほかの者が言うことはいわば不規則発言である、こういう説明であるのでございますが、それはしかし、何を言いましても市場ではそれがすぐ響くわけでございますから、実際そういうことが過去にございました。思いますのに、問題はそういうことですぐ市場が動くというそのあり方の方にやはり問題があったのであろう。今度のようなことで、ちょっと人が何か言っても簡単に市場は揺れないというような協調体制がやはり必要であったのではないか、このたびそれをつくり得たと考えておるわけでございます。
 イタリアにつきましては、先ほども申し上げましたが、東京サミットの五カ国と七カ国の関連についての誤解がもとであったと思われますが、これについては、このたびの主催国であるフランスがすぐに修復に動いておりまして、恐らくは御心配のようなことは将来起こらずにイタリアが復帰してまいるのではないかと期待をいたしております。
 それからなお、レファレンスレンジのお話がございましたが、実はこれは私どもの会議で正式に話題になったことは一遍もございませんで、いろいろ報道はございましたけれども、一遍もございませんでした。現実にはこのたびのような、当面この水準で安定をさせるという考え方にアメリカ自身も含めまして全部が合意をいたしたということでございます。
 それから最後に、明年度の予算編成に関しましてマイナスシーリング云々というお尋ねがございました。実はただいま私どもは、明年度の予算編成にまで思い至りませんで、つまり、六十三年度まで思い至りませんで、当面の予算をぜひひとつ成立をさせていただきたい、それに実は専ら心を痛めておるところでございます。それにいたしましても、六十三年度予算編成に関しましても、現在の財政の非常に困難な状況、財政再建の必要がなくなってしまうということは、これはあり得ないことで、問題は依然あるわけでございますから、そういう中で、内需拡大であるとか社会資本充実であるとかいう内外の期待をどういうふうにいわばアクセントをつけて実現をするか。一般歳出はやはり抑えていかなければならないという現実に変わりはございませんから、そのような基本的な合意と枠組みをどのようにつくるかということがその課題であろうと考えておるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○副議長(多賀谷真稔君) 米沢隆君。
    〔米沢隆君登壇〕
#25
○米沢隆君 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、ただいま御報告のありました先般のG5、G7の共同声明に盛られた合意事項に関し、今後の我が国の対応策等を含め、政府の見解をただしたいと存じます。
 御承知のとおり、今回の一連の会談では、これ以上の大幅な為替レートの変動は、各国の成長と経済構造の調整を阻害するおそれがあるとして、各国は為替相場を現状程度の水準で安定させるため緊密に協力するということで合意されたとあります。言うまでもなく、一昨年来の急激で大幅な円高によって我が国経済が深刻な打撃を受けている今日の姿を見るとき、この認識は、甚だ遅きに失したとはいえ、緊急避難的措置としてはまずは妥当であり、これで未曾有の円高に一応の終止符が打たれるとするならば、歓迎すべきことであるかもしれません。
 しかし問題は、かかる合意ができたとはいえ、もしドル相場が今後もなお下がり続けた場合、為替相場の安定に向けて、参加各国はお互いに一体どのような方策で対応することが約束されたのか、具体的な政策調整や協調介入のあり方が不透明なことであり、また、どのような状態になったときそれが発動をされるのか、その手続さえ全くわからないということであります。一部には、協調介入についての合意は得られなかったとの報道もありますが、一体約束事の具体的中身はどうなっているのか。その内容いかんによっては、この合意がどれだけの効果を持ち得るのか、懸念の方が先に立ちます。
 顧みれば、G5の歴史は、プラザ合意からの経緯を見てもおわかりのとおり、我が国にとって、注文を受けるだけで、円相場にとっては失敗の歴史であったと言ってよく、我が国経済外交の軟弱さを痛感するこの十六カ月でありました。この際、政府が今回のG5を求めた意図は何であったのか、また、その成果をどのように踏まえているのか、基本的な問題への所信と、あわせて約束事の中身につき大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。
 また、今回の合意内容を見ますと、アメリカは決してドル安路線を放棄したわけではない。ただドルを低目の水準に安定させるための暫定的取り決めの色彩が強く、情勢が変化すれば、いつでももう一段のドル安容認に切りかえる余地を巧妙に残していると思われるのでありますが、大蔵大臣の受けた感触はいかがなものでありましょうか、御見解を求めます。
 さて、第二の問題は、今回の共同声明によりますと、現在の為替相場は、おおむね各国の経済の基礎的諸条件を反映した範囲にあるとの点で合意したとありますが、これはちょっと解しかねます。まさか日本の国益を代表する大蔵大臣はこのくだりに素直に頭を縦に振られたわけではないのでしょうね。善意に解釈するならば、この部分については、遺憾ながら頭を無理して縦に振らないと今回のG5合意が成立しそうになかった、すなわち、これ以上の円高に歯どめをかけるためには、不承不承このくだりを認めざるを得なかった、よって、この部分の合意は大蔵大臣の本意ではなかったと解釈したいのでありますが、真意はどうであったのか、この際、本音のところをお聞かせいただきたいと思うのであります。
 既に現行の円水準は百五十円台に大きく切り上がっております。ために、鉄鋼や造船を初めとする我が国の基幹産業は、構造不況に円高が加わって大幅な合理化を余儀なくされ、いまだかつてない大量の離職者を前に雇用不安はその極にあります。また、二月の中小企業庁の調査でもおわかりのように、円が百五十円台で推移するならば、輸出型中小企業の六割が廃業に追い込まれるとの結果さえ出ているのでありますが、このような事態が続出する状況で、どうして百五十円台が我が国にとって妥当な水準だと考えられましょうか。いかに日本が肩身の狭い貿易黒字国であるとはいえ、今日の円高水準は余りにも異常であるとの認識こそ必要ではなかったのか。そのことを主張されることこそ日本国の大蔵大臣の役目ではなかったのかと申し上げたいのでありますが、この点につき、今回の会談での大蔵大臣の全発言内容を御披露いただきたいと思います。
 しかし、既に共同声明は発表されました。政府が認めてしまった当面一ドル百五十円台という高値圏のところで円相場が推移するならば、既に現在の円相場の水準が採算ラインを大きく突破している産業界にとっては、今回の共同声明は、倒産もやむなしの宣告、いわば死刑宣告と同じではありませんか。その上、今回の合意で政府みずからが百五十円台を公式に妥当だと認めた点において、政府の責任は重大であります。総理、あなたは、この急激かつ大幅な円高を今日まで放置し、産業界に構造調整のいとまも与えず、今またこの耐えがたい円水準を是認なさるとは、一体どのような経済感覚をお持ちなのでしょうか。日本の産業をどうしようとなさっておられるのか、この際、篤と承りたいのであります。私は断じて承服できません。
 以上の観点に立って、以下次の四点につき、関係大臣の所見を求めます。
 第一に、まず大蔵大臣。
 現在の百五十円台の円水準が我が国のファンダメンタルズを適正に反映しているというならば、それはどのような計算によるものか、その具体的根拠をお示しいただきたい。
 第二に、通産大臣にお伺いいたします。
 今回の合意、一ドル百五十円台で推移するならば、我が国の産業は一体どのようになっていくと分析されておられますか。百五十円台で生き残れるのはどの産業でしょう。衰退させられる産業にはどのような対策が用意されておりますか。今後産業の空洞化はどのように進展するのでありましょうか。その対策はお持ちでありましょうか。
 第三に、経済企画庁長官並びに通産大臣にお尋ねいたします。
 我が国経済が今日トータルとして耐え得る適正な円水準は、当面どれくらいの水準だと思われておりますか。また、これは国際公約でもありますが、我が国経済が外需依存型から内需主導型へ、そして、国際協調型の経済構造にソフトランディングするためには、ほほどれぐらいの期間とどれくらいの円水準が確保されるべきだと考えておられるのか。百五十円台では、産業界に混乱と、国民にいたずらな犠牲を強いるのみだと私は考えますが、御所見をいただきたいのであります。
 第四に、総理並びに大蔵大臣にお尋ねいたします。
 政府が内需拡大策を怠ったばかりに対外経済摩擦を拡大させ、結果的に異常な政治円高を招来せしめたというあなた方の政治責任はまことに重大でありますが、あなた方がいささかでもその責任を痛感され、日本の国益を重んじていただくならば、当面、この合意を守っていかざるを得ないと言われるかもしれませんが、政府は、近い将来速やかにせめて百七十円から百八十円ぐらいの円レートに是正していく努力目標を放棄してはならないと私は考えますが、私どもの要請は、百円高に苦しむ全産業界の要請は是とされますか、非とされますか、責任ある御答弁をいただきたいと存じます。
 さて次は、今回の共同声明において、我が国の政策課題として国際公約されたと言われる今後の金融財政政策の問題についてお伺いをいたします。
 今回の合意では、黒字国は、物価の安定を維持しつつ、内需を拡大し、対外黒字を縮小する政策をとることとし、日本はその目的に資する財政金融政策を続け、予算成立後、内需振興を図るため、総合的な経済対策が経済情勢に応じ準備されることになろうということでありますが、この合意文書を見る限りでは、今回の会談において、我が国の財政金融政策に関し何が議論され、参加各国が何を要請し、我が国が何を約束してきたのか、具体的には何もわかりません。要するに、我が国は内需を拡大し、対外黒字を縮小するために、従来の緊縮財政運営の枠内で従来どおりのびほう策をとり続けることを表明してきただけのことなのか、それとも、所期の目的達成のためには、従来のパターンを変えて、積極財政運営に方向転換することを含めて、何か新しい決断、約束をしてこられたのか、まずその点について大蔵大臣の明快な御答弁をいただき、この合意を受けて約束した政策課題をこなしていこうとされる場合、今から何があなたの課題なのかをお示しいただきたいと思います。
 あわせて総理に、今後の我が国財政金融政策の基本方針に変わりありや否や、特に、我が国の緊縮財政路線自体の見直し、ひいては財政再建目標年度の見直しに着手される用意があるかどうか、総理の勇断を求めて、答弁を求めます。
 さて、今回の合意で目新しいことといえば、経済情勢に応じてという条件つきではありますが、内需振興を図るため、予算成立後、総合経済対策を準備することが早々と表明されております。これは、政府みずからが六十二年度予算が内需振興策としては欠格予算であることを証明するようなもので、それもいわば外圧によって我が国経済財政政策の欠陥修正を余儀なくされることは甚だ遺憾と言わざるを得ないところでありますが、過ちを改めるにはばかることなかれということで、その素直さには、この際、敬意を表したいと存じます。
 ただ問題は、その中身として、一体どのような総合経済対策が用意されようとしているのかという点であります。もし昨年度におけるようなものであれば、それは完全に今回の国際公約を踏みにじることになることは明らかでありましょう。なぜなら、昨年は四月の総合経済対策、五月の当面する経済対策、九月の第二次総合経済対策と盛りだくさんに対策を発表し、実行したにもかかわらず、政府公約の四%成長さえ達成できない。しかも、貿易収支の黒字は激増するという、全く力不足の総合経済対策で終わっているからであります。
 そこで、経済企画庁長官、昨年の総合経済対策の実効性についてどのような評価をなされておりますか。もしそれと同様なものの延長線上に今回の総合経済対策が考えられているとすれば、それは再び異常な円高を許し、ひいては国際的信用を失うことになりますが、ことしは何か大胆な内需拡大策が考えられているのでありましょうか。この際、新しい総合経済対策の需要創出規模をどう考えるのか。できればベースとなる考え方、その編成に当たっての決意等につき、大蔵大臣、経済企画庁長官の答弁を求めたいと存じます。
 次に、政府は、この一連の会談でアメリカに対しどのような注文を行ってこられたのかという点につき、大蔵大臣にお伺いいたします。
 一昨年秋以来、我が国は円高に振り回され続けておりますが、それはまた、アメリカが自国の財政赤字、貿易赤字のツケを我が国並びに西ドイツに転嫁し、理不尽に為替相場に政治介入し続けた十六カ月でもありました。今回のG5においては、アメリカが約束した政策課題は財政赤字の圧縮ということだけでありますが、アメリカに対しこの程度のオブリゲーションを負わせるだけで果たして為替相場は安定に向かうのでありましょうか。今や、為替相場だけでは貿易収支の不均衡の改善は達成できないことは自明の理でございます。我が国としては、アメリカに対し、アメリカ自身の再生を図るための経済産業構造の転換策、いわば日本とは逆に、輸入依存型経済を是正することを要求し、その決断を迫ることこそ重要ではなかったかと考えますが、大蔵大臣の所見を求めます。
 同時に、アメリカで燃え盛っております一連の保護貿易主義法案の行方につき、政府はどのような情報を持って対応しておられるか。それは、どのようにまた決着するとお思いか、これは総理の御答弁をお願いします。
 最後に、今回のG5合意による待ったなしの内需拡大の要請と売上税の関係についてであります。
 今や、国内においては、公約違反の天下の悪税売上税導入反対の声は燎原の火のごとく広がりつつありますが、アメリカにおいても、我が国の税制改革に対する関心が高まりつつあると言われます。先般訪米いたしました民社党の春日調査団に対し、ことごとく面接するアメリカの要人は、こちらから言及する前に、「日本の売上税については、日本のように貯蓄率の高い国で、消費に課税するのは内需拡大に逆行するもので問題だ。また、今のタイミングで実施することは不幸だ」との見解を述べていたとの報告を受けましたが、かくのごとく、アメリカ等においても売上税導入には失望しているのが実情であります。当然のことでありましょう。
 政府は、この際、今までの行きがかりはお捨てになって、対外公約である内需拡大の要請に誠実にこたえる意味においても、売上税の導入を撤回すべきだと考えますが、総理の見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#26
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 米沢議員にお答えをいたします。
 まず、適正な為替レートの問題でございますが、これは、やはり相場は相場に聞けと、こう言われておりますように、長期的に見たら経済のファンダメンタルズを反映する相場が適正である、こういうことになると思うのです。現在の日本の立場としては、円高進行にともかく歯どめをかけるということ、そして長期的な、安定的な相場を持続させるということ、それが合理的なものであるべきである、そういう考えに立って努力してきたところであります。先般のパリの会議におきまして、「当面の水準の周辺に安定させる」よう、そういう合意が成立いたしましたが、我々はこの考え方に同調しておるわけであります。
 次に、経済運営の結果の問題でございますが、やはり円高のもたらす日本に対する不況をできるだけ回避するために、我々も全力を振るってきたのでございます。昨年の九月十九日の公共投資等の拡大を中心にする約三兆円の事業規模を持つ総合経済対策を今実行しておりますし、昨年から今回にかけまして五回にわたって公定歩合を引き下げる、あるいは宮澤・ベーカー会談を二回行う等々、そのたびごとに全力を尽くしてきておるところでございます。
 また、今回の予算におきましても、一般公共事業の事業費の確保、あるいは地方財政との協力、住宅金融公庫融資の拡充、雇用対策の充実等々を行い、また、二月二十三日には五度目の公定歩合引き下げを実行し、消費者金融の利子の引き下げ、所得税、住民税減税の先行実施等々、大いに努力しておるところでございます。今後もこのような考えに立ちまして努力すると同時に、予算の早期成立を図り、そしてその後、さらにこれを実施するための総合的な経済対策を推進してまいりたいと考えておるところでございます。
 次に、経済構造の転換の問題でございますが、プラザ合意以来の為替レートの変化は、我が国経済を内需中心型の経済構造に変えていく上でやや役割を果たしていると思いますし、また、アメリカの保護主義を抑制する力も一面において持ってきたと思います。しかし、最近の事情等にかんがみまして、主要先進国の為替レートを基礎的な経済諸条件におおむね合致する方向に持っていくために先般のパリにおける会議が行われ、我々はこの合意を誠実に守って実行してまいりたい。それと同時に、内需振興につきましても、そこで約束したことを私たちは実現してまいりたいと考えておるところであります。
 積極財政の問題でございますが、私は、やはり非常に厳しい中にはありますけれども、いわゆる臨調路線と言われておるあの財政改革、行政改革の基本線は、これを守っていかなければならない。予算成立後のいろいろな実施上の問題につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。やはりちょっと気を緩めますと政府は肥大化されまして、そして赤字公債が累積する、そういう状況を我々は全力を振るって回避していかなければならない現状にあると考えております。
 次に、補正予算の問題につきましては、本予算審議中補正を言うことは不見識であると考えております。
 売上税につきましては、先ほど申し上げておりますような理由に基づいて、撤回する考えはございません。政令や省令等につきましては、今後国会の論議等も踏まえまして、よくその声も聞き、また、よりよきものをつくるために御意見を参酌いたしまして、政令、省令等について万全を期してまいりたいと考えておるところでございます。
 アメリカに対しましては、財政赤字の縮減、輸出努力等々につきまして累次にわたって努力を要請してきたところであります。アメリカ側も、今回の大統領の一般教書におきまして財政赤字の縮小について真剣に取り組むということもやり、アメリカ議会におきましても、グラム・ラドマン法等の制定等もありまして、真剣に取り組んでおるところでございます。この問題は、やはり日米双方がおのおの引き受けてやるべきことを誠実に実行するということが大事ではないかと思っております。
 アメリカの保護主義の傾向については非常に憂慮しているところであり、アメリカ議会に対しても幾つかの貿易関連法案が提出されておりますが、アメリカ政府は、競争力を向上するということを主眼にしつつ三〇一条を発動するということも内容にした法案の用意を整えております。これらの議会と政府の関係がどういうふうに推移するか、我々はむしろ政府の方法の方がモデレートであると考えておりますが、ともかく我が国の正しい国益を守るために、今後アメリカの政府あるいは議会に対しましてできるだけ説明もし、努力もしてまいりたいと考えております。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#27
○国務大臣(宮澤喜一君) 最初のお尋ねは、このたびの合意の結果、市場に万一のことがあったときに各国は具体的にどうするのかという大変に核心をついたお尋ねであったわけでございますが、当面の水準の周辺から為替レートが大きく乖離するというような状況になりますと、当然各国間で緊密な協力を行う、ここまでは文章に出ておりまして、その点は明快でございますが、その具体的な内容について、いわゆる介入の問題も含めまして、具体的にどのような方法でどうするかということにつきましては、事柄の性質もございまして、また、外国との関係もございますから発言を差し控えさせていただきたい、お許しをいただきたいと存じます。
 ただ、御参考になるかと思って申し上げることでございますが、この部分をどういうふうに声明に表現するかということについてはかなりの議論がございまして、ある国は、もっと明快に、具体的に、とるべきアクションを述べるべきであるという主張もございました。しかし、いろいろ議論をしておりますと、結局市場の受け取り方からいいますと、余りこういうことは直接に言わない方がむしろ有効なのではないかという考え方の方が多数になりまして、ただしかしながら、我々の意図を市場が間違って受け取るような、そういうことがあってはならない、そこだけははっきりさせておこうということでこのような表現になりましたことを申し上げておきます。その間、何かの不合意があったかということについては、一切ございません。
 それから、おまえは日本代表としてどういう主張をしておったのかということにつきましては、やはりプラザ以来の動きというものは、ここまでくれば我が国にとっても非常に困った事態であるということは、これは昨年の九月から言っておったことでございます。それはアメリカもわかっておる。しかし今回は、それは日本にとってばかりでなく、アメリカ自身にとっても、これ以上の急激なドル安ということはアメリカ自身のためにならないということをアメリカ自身が認め、それによって合意が生まれたというところが今回の合意の本当の意味であったと思います。したがいまして、アメリカはそういうことになってもむしろそれを放任するのではないか、歓迎するのではないか、何のアクションもとらないのではないかということは、今回の合意の背景から見ますと、従来とそこは変わってまいったと思います。
 それから、それにしても今のレートでいいのかという、どの水準がいいのかということは、これはいろいろ議論のあるところでございますから発言を差し控えさせていただきますけれども、現在の水準が我が国の経済にとって非常に厳しいということは私もよく承知をいたしております。そして、先ほど申し上げましたとおり、今回の合意は変動相場制における当面の水準を安定させるということで、それは経済の基礎的条件、ファンダメンタルズに従って動くということでございますから、こういうふうにドル安になり、それももうプラザ以来一年半近くなります。アメリカの国際収支が好転すると期待することは無理なことではないと私は思います。そういう意味で、ファンダメンタルズの間に変化があって、それから為替の水準が変わってくるということは十分考えられることだというふうに思っておるわけでございます。
 それから次に、この予算の成立を待って云々ということはどういうことかというお尋ねでございましたが、予算が成立いたしまして、その経済情勢を勘案しながら、いわゆる内需振興あるいは社会資本の充実を中心に景気の持続的な拡大をより一層確実にするための施策を考えなければならないということを申しておるわけでございまして、それにつきましては予算の早期成立、早期執行をぜひさせていただきたいということをお願い申し上げたいと存じます。(拍手)
 それから、アメリカにいろいろ注文しておるのか、アメリカはどういう考えなのかということにつきましては、このたびの会議でもいろいろございまして、アメリカの財政赤字削減について、グラム・ラドマン・ホリングズ法のこともありまして、恐らく大百億ドルあるいはそれより幾らか多い削減を、行政府としてはかなり具体的にあの中で努力を約束しておるわけでございます。そのほかに、最近言われております、いわゆる行政府の包括通商法案と伝えられておりますけれども、むしろアメリカ社会に競争体質をよみがえらせるための法案というふうに呼ばれておるという説明がございましたが、そういう意味での、これは経済だけでなく教育、科学技術等々を含めました、そういう決心をしているという説明が会議の席上で財務長官からございまして、これは、アメリカの行政府に関しましては確かにそのような事態の深刻な認識があって、改善の努力を大いにしようとしておりますことは間違いないことであろうと感得をいたしたわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣田村元君登壇〕
#28
○国務大臣(田村元君) 我が国の経済実態から見て円レートは幾らが妥当であるかというお尋ねでございます。これは本来、業種あるいは業態等によりましてさまざまなものでございます。幾らかということを一概に言い得ない難しい問題で、非常に微妙なものでございます。また、私としては、我が国経済の基礎的な諸条件を反映し、かつ産業界の合理化努力を前提として、その健全な発展を可能とするようなレートが望ましい為替レート水準、こういうふうに考えております。
 それから、現在、通産省は、我が国の産業構造が国際的に調和のとれたものへと円滑に転換していくように産業構造転換円滑化施策等各般の対策を講じてきておるところであります。今後とも、我が国経済がその活力を維持しながら国際的に調和のとれた産業構造への転換を実現していくためには、これら対策の充実強化等に加えまして、経済の基礎的条件を適正に反映した為替相場が安定的に推移することが必要であると考えております。産業構造の調整がいかなるテンポで進捗するかにつきましては、これら対策の効果、為替レートの安定度にもよりますけれども、できるだけ、調整が急激な混乱を生ずることなく円滑に進むよう努力してまいる所存でございます。
 それから、一昨年来の急激かつ大幅な円高の進展は、輸出の減少、輸入の急増、国内市況の下落等を通じまして、各企業の懸命の経営努力にかかわりませず、鉄鋼、非鉄金属等を初め製造業を中心に、特に、下請中小企業等、我が国産業に深刻な影響を与えております。今後一ドル百五十円台で推移した場合の影響につきましては、一概には申し上げられないものの、円高の影響を直接に受ける産業を中心に、厳しい対応を迫られることを予想いたしております。当省といたしましては、このような事態に対処するために、雇用、中小企業及び地域への影響を重視した産業構造転換円滑化対策等を講ずることとしておりまして、先般、円高等により影響を受けている事業者に対する支援措置、地域の活性化措置等を内容とする産業構造転換円滑化臨時措置法案を国会に提出したところでございます。今後とも、これら対策の積極的展開により、設備処理の円滑化、新規産業分野の開拓、地域経済の活性化等に努めてまいる所存でございます。
 それから、産業の空洞化問題でございますが、大幅な対外不均衡の是正を図り、我が国経済の中長期的発展基盤を確立していくためには、我が国産業構造が国際的に調和のとれたものへと転換していくことが必要でございます。しかしながら、この過程で雇用問題の発生、地域経済の疲弊などのいわゆる空洞化が生じる懸念もございます。今後一ドル百五十円台で推移した場合には、より厳しい状況が生じることも予想されます。したがって、これらの状況に対応するため、内需中心の高目の経済成長を図りながら、産業構造転換円滑化対策等によりまして新規産業分野の開拓、地域経済の活性化、雇用創出等を積極的に行っていくことが必要であると考えております。
 それから、今回のG7、あれはG6――G7だと思いますが、G7では、各通貨は基礎的な経済諸条件におおむね合致した範囲内にあり、為替レートを当面の水準の周辺に安定させるという相当な幅を持たせた合意がなされております。また、固定相場制ではありませんから、今後我が国やあるいはアメリカ等の自主的な努力等々でどのようにフロートしていくか、これは今、宮澤大蔵大臣から御答弁があったところであります。すなわち、円高の防止及び為替レート市場の安定を図ることにつきまして各国間で合意を見た点におきまして、一層の円高が懸念されていた近時の為替レートの動きから見れば、これは評価できることと思います。しかしながら、例えば中小企業の輸出型産地においては、中小企業庁の調査にもあるように、輸出額の大幅減少、休業、廃業、倒産の増大など、円高による深刻な影響に悩まされているところであります。これらに対応すべく中小企業の事業転換の円滑化対策、特定地域の中小企業対策、下請中小企業対策等を柱として、きめ細かな対策を強力に推進してまいる所存であります。
 また、中小企業を守る立場の通産大臣として申し上げれば、昭和六十二年度予算が早期に成立しない場合には、特に中小企業に甚大な影響を生ずる懸念がございますので、早期成立が最も重要であると考えております。(拍手)さらに、G7声明では、内需振興を図るため、総合的な経済対策が、経済情勢に応じ、予算成立後準備されることを明記しておりますので、総合経済対策を策定する際には、実効の上がるものとなるよう全力を尽くしていく所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣近藤鉄雄君登壇〕
#29
○国務大臣(近藤鉄雄君) 為替レートの水準につきまして私にも御質問ございましたが、為替レートの適正水準については一概に申し上げることは困難でございます。総理や大蔵大臣の御答弁にございましたように、今般の会議では、各国は為替レートを当面の水準の周辺に安定させることに協力をすることが合意されたものと理解しております。
 外需型から内需型へソフトランディングの問題でございますが、プラザ合意以来の為替レートの変化は、我が国経済を内需中心型の経済構造に変えていく上で重要な役割を果たすものであり、我が国としては、円高のデメリットを極力少なくするとともに、そのメリットを生かし、同時に内需拡大、総合的雇用対策等を推進することにより、内外均衡の同時的達成を図る考えでございます。しかしながら、内需主導型経済構造への円滑な移行には中長期の調整過程が必要であり、このための適切な施策の着手とともに、息の長い努力を継続してまいることが必要であると考えております。
 今まで行ってきた総合経済対策でございますが、昨年の四月の総合経済対策は、公共事業の上半期大幅前倒し、電力、ガス料金等の引き下げ、円高差益の還元を中心にしたものであり、また、五月の対策は、中小企業国際経済調整対策等を含むものでございます。また、昨年九月の総合経済対策は、公共投資等について補正予算を含む総額三兆円の事業規模を確保するとともに、民間活力を最大限に活用し、内需振興を図るための規制緩和、インセンティブの付与といったものでございます。これらの対策の六十一年度における効果につきましては、年度区分の問題等によりなかなか定量的にお示しすることは困難でございますが、しかしながら、急激な円高のもとにおいて、六十一年度において、少なくとも内需については当初見通しをわずかながら上回る程度の伸びが期待されることを考えますと、相当の効果があったものと考える次第でございます。
 最後に、先日、予算成立を前提として、予算成立後に総合的な経済対策の準備のための検討につき総理から御指示を受けたところでございます。あくまでも内需を中心とした景気の積極的な拡大を確実なものとする。ため、今後の内外経済動向、国際通貨情勢等を注視しつつ、予算成立時の経済情勢等を踏まえて、関係閣僚の御協力を得、適切かつ有効なものをつくり上げてまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○副議長(多賀谷真稔君) 工藤晃君。
    〔工藤晃君登壇〕
#31
○工藤晃君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、宮澤大蔵大臣の帰国報告について、幾つかの点でただします。
 今回のパリ合意は、一昨年秋のプラザ合意以来、ドル安・円高などを誘導した結果、各国間の為替レートは経済の基礎的条件を反映したものとなったなどとして、今日の異常な円高の現状を評価しているのであります。とんでもないことであります。一体、この一年半の急激な円高で、国民の生活、日本経済はどうなったでしょうか。円高倒産は前回の円高時と比べて三倍の勢いでふえ続けている。輸出関連産地中小企業は、中小企業庁の調査によっても、輸出額、生産量はともに大幅に減少し、休業、廃業、倒産が多発し、人員整理が急ピッチで進行している。そして、いわゆる企業城下町における住民生活の破壊はいよいよ深刻であります。
 昨年十二月下旬、我が党の現地調査によると、広島県因島地域では、日立造船因島工場の生産中止で、地域の有効求人倍率〇・〇五という最悪の失業地帯となり、一昨年退職した七百七十人のうち再就職できたのはわずか六十人だけ、そして、多くの方がこの――三月に雇用保険の期限切れになろうとしているのであります。大手鉄銅五社は、高炉の休止、生産設備の縮小とともに、四万五千人に及ぶ人員削減を打ち出しました。協力会社を含めれば約十万人が職を失うことになり、製鉄所のある地域の住民生活、経済は崩壊に直面しております。加えて、今大企業は、一斉にこの円高を利用して、国内の労働者、下請中小企業を切り捨てながら海外現地生産を急速に拡大しております。こうして産業の空洞化が急速に進み、大量失業時代は眼前に迫っているではありませんか。
 宮澤大蔵大臣、この異常円高は政治災害だ、政府の責任で何とかしてほしいという労働者、中小企業者の血の出るような叫びがあなたには届かないのでしょうか。国民の生活、経済がこのような事態にあるとき、あなたは一昨年秋以来の円高をなお高く評価されるのかどうか、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 我が国の中小企業はもとより、国内で生産活動を進めるどの産業分野も、今日の一ドル百五十円といった水準は異常円高であり、破壊的な為替相場であり、少なくとも二百円といった適正な水準に戻すことを共通して要求しております。ところが、パリ合意の声明は、「現状においては、大臣及び総裁は、為替レートを当面の水準の周辺に安定させることを促進するために緊密に推力することに合意した。」としているではありませんか。これは、日本政府が一ドル百五十円という最近のレートを長期にわたり続けさせる意思を積極的に表明したものであり、我が国経済を一層の破綻に追い込む許しがたい重大決定であります。
 国民経済の立場から見て、適正な為替相場の水準は購買力平価であることは言うまでもありません。よく言うファンダメンタルズというのは、アメリカがアメリカにとって都合よく使う物差しにすぎないのであります。昨年十一月発表された労働省の調査は、消費購買力平価を一九八五年一ドル二百三十一円であるとし、最近の百五十円といったレートがいかに異常円高であるかをまざまざと示しました。今月発表されたOECDの調査も、購買力平価が八六年一ドル二百二十三円であり、同年の平均市場レート百六十九円は、購買力平価から見れば加盟国中最も過大に評価されているとしているではありませんか。
 ところで、総理は、昨年三月二十二日、参議院予算委員会で、百七十四円、五円というのは行き過ぎであると述べられました。宮澤大蔵大臣も、昨年十二月三十日、ある新聞社との会見で、円相場はさらに十円ぐらい安くしないと、つまり、百七十円台に戻さないと企業は苦しいとの見解を示されたと伝えられております。また、新聞報道によると、二月五日に安倍自民党総務会長も、日本経済の安定条件は百八十円、百九十円との見解を示されたとのことであります。
 総理並びに大蔵大臣、あなたたちは、国内では今の円高は行き過ぎだ、是正しなければならないと発言されながら、なぜアメリカとの協議やあるいはG5・G7の協議に参加すると一ドル百五十円を認めてしまうのですか。国内向けと外国向けでイエスとノーの使い分けは許せません。さらにまた、そもそも百五十円を日本経済にとって適正な水準と考えているのかどうか。お二人の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 周知のように、アメリカの深刻な財政の赤字、経常収支の赤字の大もとは、レーガン政権の核軍拡による軍事費の大膨張、アメリカ多国籍企業の国境なき利潤追求活動に伴うアメリカの産業空洞化と貿易収支赤字の拡大であります。プラザ合意はアメリカ経済の苦境を救うための協力として進められてきたものであり、しかも、アメリカ政府にこの大もとにメスを入れるという最も肝心な責任を確認させなかったのであります。それゆえに、その後の大幅なドル安・円高にかかわらず双子の赤字はそのまま続いてきたではありませんか。
 今回のパリ合意も、アメリカ政府にそのような責任を確認させてはおりません。これでは、今後アメリカが赤字の改善が進まぬことを理由に、日本に一層の円高やその他の無理難題を持ち出すことは必至であり、アメリカの身勝手路線が続くことになるではありませんか。この点でも、今回のパリ合意は日本国民にとって有害なものと断ずるものであります。中曽根内閣の一貫した対米追随姿勢が我が国の経済に破壊的な異常円高を招いたし、今回のパリ合意もその繰り返しでありませんか。宮澤大蔵大臣の見解を求めるものであります。
 さて今日、売上税導入、マル優制度の廃止は、自民党・中曽根首相の主権者を欺く公約違反であり、直ちに撤回せよとの国民の声が全国的に沸騰し、大きな運動となっております。もとより、日本共産党・革新共同は売上税導入、マル優制度の廃止の撤回を強く求めるものであります。(拍手)
 ところが、パリ合意の声明は、驚くべきことに、日本政府のやることとして「今国会に提出した税制全般にわたる抜本的見直しは、日本経済の活力の維持・増進に資するものである。一九八七年度予算の速やかな実施を確保するため、その成立に全力を傾注する。」とうたっております。圧倒的多数の国民が反対を表明していることからも、また、そもそも税制は純然たる内政問題であることからも、それを、まず外国との間で方針を決め、今度は対外公約だなどといって国民に押しつけることは絶対に許せません。(拍手)日本の税金をどうするか決めるのは国会であり、主権者国民であります。あたかも決着済みの方針であるかのように日本政府の対外公約とするのは一体何事ですか。宮澤大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 さて、輸出ラッシュで日本の大きな貿易黒字をつくり出してきた大企業は、円高にどう対応しようとしているのでしょうか。一ドル百五十円あるいはそれ以上の円高でも十分にもうけが出る体制にするため、大規模な人減らし計画を打ち出し、人権じゅうりんの退職強要も横行させ、下請中小企業には一律の大幅な単価切り下げを押しつけるなど、我が国労働者、中小企業に大きな犠牲を押しかぶせております。このように、大企業は一ドル百五十円を当然のこととして合理化を進め、それが数年のうちに百万人という規模で雇用機会が失われると予測されるような日本経済の大変動を起こしているとき、宮澤大蔵大臣、あなたが百五十円に合意したことは、大企業のこのような合理化を正当化し、激励することではありませんか。宮澤大臣の答弁を求めるものであります。
 私が冒頭に触れた大手鉄鋼五社の新合理化計画の内容は、過去のみずからの過剰投資の経営責任を不問にしている点でも、一ドル百五十円あるいはそれ以上の異常円高を長期的な前提としている点でも、さらに、円高で賃金水準が日本のわずか六分の一と格差の開いた韓国浦項製鉄所の低賃金、その労務費を合理化の目標とし、それに見合うコストダウン、人員削減をやろうとしている点でも、社会的に受け入れることのできない不当きわまりないものであります。(拍手)また、大手自動車メーカーは、異常円高を利用して、これまで輸出で稼ぎため込んだ巨額の内部蓄積で今度は競って海外への脱出を図り、あるいは部品の供給先を韓国、台湾などに切りかえるなどして、これまた身勝手なやり方で空洞化と大量失業時代を推し進めております。
 総理に伺います。日本の勤労者の労働条件を絶えず押し下げることで大企業が輸出ラッシュを推し進め、貿易摩擦を激化させ、アメリカからの円高圧力を招いてきたのに、なぜ今なお彼らが労働条件を一層押し下げ、悪循環を続けることを許しているのですか。日本の賃金は、購買力平価でアメリカの五四%、西ドイツの六四%にすぎないという低賃金、年間労働時間では、アメリカより二百四十四時間、西ドイツより五百九時間も長いという長時間労働など、こういう劣悪な労働条件を改めるどころか、日本の六分の一と格差の開いた韓国の低賃金、その労務費に近づくことを目標とするような大企業の企業戦略になぜストップをかけようとしないのでしょうか。今行われている大企業による大量の人減らし、人権じゅうりんの首切りに対し、彼らに社会的責任を果たさせる立場から規制すべきでありますが、以上の点について、総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 今日の異常円高と深刻な円高不況、そして空洞化は、明らかに中曽根内閣の大失政であります。日本共産党・革新共同は、中曽根内閣のこのような経済政策と対決し、対外経済政策で何よりも自主性の確立、産業空洞化と大量の失業をつくり出す大企業へ社会的責任を果たさせるため国民の立場からの規制、このような基本方向に立って国民の生活を守り、日本経済を立て直すため一層奮闘する決意を述べ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#32
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 工藤議員にお答えをいたします。
 私に対する質問は二つであります。
 まず、適正レートの問題であります。これは、先ほど来申し上げておりますように、経済のファンダメンタルズを反映した為替相場が長期的に安定することが望ましい。現在の状況におきましては、ともかく円高進行に歯どめをかけるということ、そして、長期的な相場の安定を図って、我が国経済が持続的な成長が維持できるように図る、こういう目標を持ちまして今後とも努力してまいるつもりであります。幾らが適正であるかという金額を明示することは適当ではございません。
 次に、人減らしと合理化の問題でございます。
 我が国の産業は、円高によりまして厳しい状況にあり、雇用面にも影響が生じていることは我々も認識し、これに対する対策を真剣に確立してまいらなければならぬと思っております。このような情勢に対応するためには、やはり一面において安定的な為替相場の実現を図ること、それから内需の拡大を図って、雇用政策を円滑に進めるようにすること等が必要であると思い、なお、失業等が生じた場合に備えまして三十万人の雇用開発プログラムを実施しようとしておるところであります。労働条件の問題あるいは雇用条件の問題等は、これは労使関係でみずからお決めになることでありまして、政府が介入することは適当ではございません。政府といたしましては、先ほど申し上げましたように、失業等の問題につきましては真剣に努力してまいる用意をしておるところでございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔副議長退席、議長着席〕
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) 現在の円の水準が我が国の経済にとって厳しいものであることは私もよく存じておるわけですが、さりとて、このたびのような国際会議で日本は百七十円あるいは百八十円でなければ嫌であるということを申しましても、相場というものは現実にあるものでございますので、嫌であるから、したがってこの会議はもうやめようというのであれば、それは一つの立場でございます。この会議はもうまとまらない。それは一つの立場でありますが、さて、そういうことが日本の経済のために本当になるかならないかということになりますと、私は、やはりここで一つの安定を認める、ともかく一応の安定をつくり出すということは、何もないよりはいい、私はそう思います。(拍手)
 それから、日本政府がこのたびの会議でいろいろ政策意図を述べてきた。国内でできないことを外国で約束するのかとおっしゃいましたけれども、このような会議は、各国が政策協調をする、それが為替安定のために一番大事なことであるということを何度もサミットで確認をしておりまして、各国が自分の政策意図を述べておるのであります。できないことを約束したことはございません。(拍手)
#34
○議長(原健三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#35
○議長(原健三郎君) 御報告いたすことがあります。
 議員玉置和郎君は、去る一月二十五日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る一月二十七日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は 多年憲政のために尽力された国務大臣議員玉置和郎君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員玉置和郎君に対する追悼演説
#36
○議長(原健三郎君) この際、弔意を表するため、坂井弘一君から発言を求められております。これを許します。坂井弘一君。
    〔坂井弘一君登壇〕
#37
○坂井弘一君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員、総務庁長官玉置和郎君は、去る一月二十五日逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。
 先生は、昨年七月、総務庁長官に就任以来、病魔と闘いながら、自己の政治理念を具現すべく、英邁な資質と幅広い見識をもって国政に挺身されておられました。しかし、病重くなり、病床に伏す身となられた先生は、御家族の懸命な御看護のかいもなく、薄れる意識の中から「閣議に……、閣議に行くから……」との切々たる言葉を最後に不帰の客となられたと聞き及んでおります。国を愛する政治家の実に壮絶な最期ではないでしょうか。(拍手)
 私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、ここに謹んで哀悼の辞を申し述べたいと存じます。
 玉置先生は、大正十二年、和歌山県御坊市に五人兄弟の三男として生をうけられ、中学進学を目前にして御尊父を亡くされ、以来、御母堂に育てられたのであります。塗炭の生活苦の中で小さな心を痛められた先生は、一刻も早く自立するため、御坊商業学校を卒業後、単身大陸に渡り、華北交通の給費学生として北京中央鉄路学院に進まれました。昭和十八年、卒業と同時に満鉄に入社されましたが、終戦とともに故郷へ引き揚げられ、戦後の混乱の中で筆舌に尽くしがたい辛酸を余儀なくされたのであります。
 そのころ、質素な日常生活を送りながらも、高適な理想を選挙民に訴えておられた元本院議員故早川崇先生の演説に深い感銘を受け、みずから政治への道を歩み出されました。保守合同後の昭和三十年、自民党本部に奉職し、党青年部のオルガナイザーとして東奔西走されていた先生は、昭和四十年、第七回参議院議員通常選挙に勇躍立候補し、持ち前の行動力と真摯な姿勢をもって弱者救済、政界の浄化を強く訴え、これが選挙民の信頼と力強い支援を受け、全国区第三位で初当選の栄冠をかち得たのであります。(拍手)
 参議院議員になられた先生は、昭和四十二年、農林政務次官に就任されたのを皮切りに初代の沖縄開発政務次官を歴任し、米の生産調整の本格的な実施や本土復帰後の沖縄県の振興開発に取り組み、大きな足跡を残されたのであります。第九十五回国会では、先生は、行財政改革に関する特別委員長として、行革関連特例法案の審議に際し、卓越した政治手腕によって円満な委員会運営に当たられました。その成立が今日の行政改革の基礎となったのであります。先生は、また、参議院予算委員会において十年間連続して総括質問に立たれ、防衛、教育等国の基本にかかわる問題について、その識見を遺憾なく発揮されたことは衆目のひとしく認めるところであります。
 政界の師と仰ぐ郷土の大先輩早川崇先生の逝去に際し、郷党の懇請を受け、昭和五十八年、第三十七回衆議院議員総選挙に和歌山県第二区から立候補されたのであります。県の後進性からの脱却と明るく豊かな郷土づくりを強く訴えられた先生は、見事最高点で当選を果たされました。(拍手)本院に議席を得られた先生は、地域の振興を図り、国土の均衡ある発展を目指して半島振興法を提唱されました。財政逼迫の折から実現不可能と見られていたこの法律案の早期成立に渾身の力を込めて当たられたのでありまして、その手腕は高く評価されるところであります。この法律制定のため、玉置さんと私は同じ紀伊半島に住む者として互いに協力し合った間柄でありましたが、私は、先生の法案成立にかける熱意と執念に圧倒されたことをいまだに忘れることができません。これからは、この法律を実りあるものにすることが残された者の役目であると信ずるものであります。
 昨年成立した第三次中曽根内閣において、総理のたっての要請により総務庁長官に就任された先生は、「行革に聖域はない。タブーに挑戦する」と行革推進の決意を吐露され、農協経営、海外援助資金等の行政監察を行う方針を次々に打ち出し、国の最も困難な事業にあえて取り組まれたのであります。この積極果敢な活動こそ先生の面目躍如たるものであり、我が国の行政史上に残る大きな業績と言えましょう。一方、先生は、自由民主党にあっては十七期十三年周連続して党総務につき、党の重要施策の決定に参画され、また、司法の公正、幼児問題等幅広い分野で活躍し、党の発展に貢献されました。
 玉置さんは、また郷土の発展にも骨身を惜しまず尽力されました。近畿高速自動車道の紀南への延長、白浜空港のジェット化、日高港の整備、過疎対策のための工場誘致等、郷土の産業、経済の振興のために奔走され、とりわけ同和問題には力を入れておられました。郷土の後進性を憂えた政治家として、そして激しいまでに故郷を思い続けた一人の人間として、「空青し。山青し。海青し。」とうたわれた美しい紀伊半島に偉大な功績を残されたあなたのことは、末永く郷土の人々の間で語り継がれることでありましょう。(拍手)
 かくして玉置先生は、衆参両院の議員として在職すること二十一年五カ月の長きに及び、我が国政に残された足跡はまことに大なるものがあると言わなければなりません。先生は、自己の信念を剛直に貫かれた政治家でありました。みずからの政治理念を実現するためには、何物も恐れず、大胆率直に事の道理を説かれたのであります。この毅然たる姿勢とその気迫こそは、後に続く政治家に対する永遠の警告であり、不滅の教訓であると言うべきでありましょう。
 先生の言動についてややもすると一面のみが強調され、「政界の暴れん坊」と批評されることもありましたが、反面、涙もろい人情味豊かな性格であり、また、人間関係をだれよりも大切にする人でありました。昭和五十一年十二月、先生は、スパイ容疑を受けて韓国に抑留をされた三邦人の救出に貢献されましたが、これは単に人道上の問題ばかりでなく、「人間の偉大さは、その人の愛の偉大さによって決まる」と日ごろ言っておられた先生の人間味あふれる心情が発露された一こまでありました。まさに一人の政治家として、また、一人の人間としての生きざまに人々は強く心を打たれたのであります。
 先生は、敬愛する人はと尋ねられると、だれはばかることなく御母堂の名前を挙げておられます。御母堂ひろさんは、いかなる困難に遭遇しても一言の不満も漏らさず、難儀に耐え、おのれの行為をもって不一言実行を子供たちに訓導し、「男はどんな逆境にあっても弱音を吐くな」と常に諭されたとのことです。先生が生涯を通じて不屈の魂と旺盛な行動力をもって事を処せられたのも、その淵源は御母堂の御薫陶によるものでありましょう。
 総務庁長官に就任された先生は、刻一刻と病魔に体をむしばまれながらも、全身全霊をもって職務に精励され、その執務姿勢には鬼気迫るものがありました。周りの者が気遣っても、先生は、「政治家は国家国民の消耗品であり、国にささげた命である」と平然としておられたと聞き及んでおります。我々政治に携わる者にとってはまことに含蓄に富む言葉であり、敬服すべき政治姿勢と言うべきでありましょう。(拍手)
 私は、昨年十二月二十日、玉置先生をお見舞いかだがた二人で語り合う機会がありました。先生は、「戦争がなければ平和だというわけではない。人間の尊厳が真に守られてこそ平和な社会、平和な国家と言える。弱い立場の者に対し義憤に燃えるのは政治家の使命であろう。私はこの方針で政策を進めたい」と淡々と語っておられました。死に直面し、死と闘いつつ身を賭してなおやまない烈々の気迫は、鬼神も泣かんまことに崇高な姿でありました。そのときの玉置先生が、いまだきのうのことのように私の脳裏に深く刻み込まれております。先生は、おのが身を焼き尽くし逝かれました。先生のあの舌鋒鋭い論説も、もはやお聞きすることはできません。この痛恨、この寂蓼、何をもっていやすべきでありましょう。
 志半ばにして壮烈な人生を閉じられた先生を思うとき、先生の無念さと御家族の悲しみはいかばかりでありましょうか。察するに余りあるものがあります。先生が愛された日本は、今や未曾有の難局に直面しており、先生のような練達した政治家を失いましたことは、自由民主党のみならず、本院にとっても、国家国民にとっても大きな損失と言わなければなりません。(拍手)
 その生涯を理想と信念のために燃え尽くし、みずからのために片時も休むことを求めず国務に殉じられた玉置先生の御遺徳をしのび、心から御冥福をお祈りし、今はただ幽界において、生前敬愛されてやまなかった御母堂の温かな胸でどうぞ安らかにお休みくださいと申し上げて、追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#38
○議長(原健三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十一分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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