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1985/05/16 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 科学技術特別委員会 第10号
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1985/05/16 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 科学技術特別委員会 第10号

#1
第104回国会 科学技術特別委員会 第10号
昭和六十一年五月十六日(金曜日)
   午後一時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十五日
    辞任         補欠選任
     福間 知之君     菅野 久光君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         馬場  富君
    理 事
                岡部 三郎君
                志村 哲良君
                稲村 稔夫君
                塩出 啓典君
    委 員
                岩動 道行君
                長田 裕二君
                後藤 正夫君
                成相 善十君
                林  寛子君
                安田 隆明君
                穐山  篤君
                菅野 久光君
                伏見 康治君
                佐藤 昭夫君
                山田  勇君
       発  議  者  稲村 稔夫君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       河野 洋平君
   政府委員
       科学技術庁長官
       官房長      矢橋 有彦君
       科学技術庁原子
       力局長      中村 守孝君
       科学技術庁原子
       力安全局長    辻  栄一君
       科学技術庁原子
       力安全局次長   堀田 俊彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        野村 静二君
   参考人
       日本原子力研究
       所理事      宮永 一郎君
       一橋大学経済学
       部助教授     室田  武君
       成蹊大学法学部
       長        谷川  久君
       元日本原子力研
       究所労働組合中
       央執行委員長   角田 道生君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関
 する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○原子力基本法及び核原料物質、核燃料物質及び
 原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法
 律案(稲村稔夫君外三名発議)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(馬場富君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、福間知之君が委員を辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(馬場富君) 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案及び原子力基本法及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。
 これより参考人の意見聴取を行います。
 本日は、参考人として日本原子力研究所理事宮永一郎君、一橋大学経済学部助教授室田武君、成蹊大学法学部長谷川久君、元日本原子力研究所労働組合中央執行委員長角田道生君に御出席を願っております。
 なお、室田参考人におかれましては、途中事故のため到着がおくれておりますので申し添えます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には御多忙のところ、貴重なお時間をお割きくださいまして、まことにありがとうございます。
 本日は、まず、お一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、宮永参考人から御意見を承ります。宮永参考人。
#4
○参考人(宮永一郎君) 原子力研究所の宮永でございます。
 私は、本法案の施行によりまして実施されることになります低レベル放射性廃棄物の陸地処分の安全性に係る技術的な側面について述べさせていただきたいと存じます。
 まず、陸地処分と申しますのは、今回の場合対象が主として原子炉の運転等で発生いたします廃棄物でございまして、いわゆる低レベル廃棄物と申しております。実施の方法でございますが、その低レベル廃棄物、ドラム缶に詰めたものが大部分でございますが、それを浅層約十メートルくらいの地層の中に人工の構築物を設けまして、その中に収納し、いわゆる人工バリアと、その周辺の土壌なんかを天然バリアと呼んでおりますが、その二つの組み合わせによって放射性廃棄物の流出を防ぎ、時間の経過による減衰によりまして最終的に無害化するという方法でございます。
 まず、人工バリアでございますが、これは目的が地下水の浸入の防止でございます記さらに、その中に入れますドラム缶のすき間には砂などの充てん物を施しまして、ドラム缶の腐食を防ぐために空気の接触をできるだけ防ぐといったことをいたします。さらには、上に土を数メーターかぶせましていわゆる外部被曝を防止する、人工バリアの役割はそういうことでございます。しかしながら、経年変化によりましてドラム缶も腐食いたしましょうし、いわゆる地下構造物も長い間には亀裂が入ったりいたしまして、そこからもし水が浸入して放射性廃棄物が若干でも漏洩いたしますと、それは天然バリアの中に入ることになります。土壌などの天然バリアはこういった化学元素、ここでは放射性核種でございますが、そういうものを吸着して地下水に乗って動くことをとめるというような性質でございますので、そういう天然バリアの作用を利用いたしまして人間にまで至ってまいります経路をできるだけ遅くして減衰を稼ぐ、こういうのがいわゆる陸地処分の方法でございます。
 安全性に関しましてこの問題を見てみますと、まず第一の人工バリアの健全性でございますが、これがどのくらいもつかという推定は、現在の土木技術で十分可能でございます。さらに固化体に水が接触いたしましてどの程度漏洩するか、あるいはドラム缶がそういった状況のもとにどのぐらい腐食するかといったことも研究調査によりまして十分わかっております。
 さらに、天然バリアの中でのこれら問題になります放射性核種の挙動も、例えば原研でやっております環境シミュレーション装置など、これは現地のその土をそのまま壊さずにそのままの形で持ってきて、そしてその中での核種の移行を調べる装置でございますが、そういったものによって十分その挙動を調べることができます。こういったデータを中心にいたしまして解析いたしますと、実際に埋設いたしました放射性物質がどの程度の時間人工バリアによって保護され、その後天然バリアによってどのくらいの期間我々の口に入るところまでの時間が稼げるかということが計算できることになりまして、それによってもし我々が受けるといたしますと、受ける被曝というのは十分推定できることになります。
 今回の安全委員会の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方は、今申し上げたような方法によります管理の仕方で、放射能が減衰していく段階を四つに分けまして次第に管理のやり方を簡便にしていこうというのが趣旨でございますが、そこで用いられる技術も、すべて我々が現在十分な経験を持った技術ばかりで放射能の確認というのは確実にできると考えております。
 すなわち第一段階では、これは地下建造物が健全な間のことでございますが、この場合には施設からもし出てまいりましたら、その放射能漏洩を検出いたしましてぐあいの悪いところを補修するという段階でございます。第二段階は、相当な時間経過があって地下建造物に亀裂が若干はある、しかし天然バリアで十分その放射性物質を阻止できるといった段階が第二段階でありますが、そういう場合には、いわゆる周辺の住民が住む環境におけるモニタリングをやってこれを確かめる、こういった技術が必要でございます。第三段階では、もう掘り返しでもしなければ十分安全でございまして、単にそういった行為を禁止し、最後の第四段階では、放射性物質が全然規制の対象にならないレベルになるというところで管理をしなくてもいい状態に至る、こういうわけであります。
 ここで、今管理をしなくてもいい放射性廃棄物のレベルということに関して申し上げましたが、こういうレベルが一体あるのかということに関しましては、最近では国際的な議論も十分進みまして、その基準は国際放射線防護委員会あるいはIAEAといった国際機関で一応のコンセンサスが各国の間で得られるまでになっております。具体的な数字は年間一ミリレムという数字でございまして、この放射線レベルは我々が普通いつでも浴びております自然の放射線レベル、平均的に約百ミリレムと申しておりますけれども、その百分の一であります。
 さらに申し上げますと、雨が降りますと若干自然放射線がふえますけれども、そのふえ方が、大体年間の雨によってふえる放射線量の割合が年間一ミリくらいでございまして、ほとんどこれは無視していいレベルである。先ほど申し上げた管理しなくてもいいレベルの放射能というのは、この放射線量を濃度に換算したものを使う予定でございます。
 今まで申し上げましたように、今回の陸地処分と申しますのは、具体的にそういった説明申し上げたようなことをやるわけでございますが、そこに問題になる技術あるいは確認のモニタリングの技術その他、すべて十分経験のある技術でございますし、私は、この法案によって原子力委員会が我が国のいわゆる放射性物質の処分の一形態である陸地処分が安全に行えるということを確信するものでございます。
 以上でございます。
#5
○委員長(馬場富君) ありがとうございました。
 次に、谷川参考人にお願いいたします。谷川参考人。
#6
○参考人(谷川久君) 本日は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、いわゆる炉規制法の改正案に関しまして、特にその責任体系との関連について意見を申し述べさせていただきます。
 この問題につきましては、今回の炉規制法の改正案成立の前段階におきまして、原子力委員会のもとに設けられました放射性廃棄物対策専門部会におきまして議論がなされております。その結果は、昨年十月八日付の同部会の「放射性廃棄物処理処分方策について」と題します報告書の中に明記されております。私もこの放射性廃棄物対策専門部会の委員としてこの問題の審議に参加いたしました。特に責任の問題を中心に議論をいたしました同専門部会の中に設けられました基本問題小委員会のメンバーとして、同専門部会におけるこの問題の議論に深くかかわったものであります。そこで本日は、専門部会及び小委員会の議論も踏まえまして、今回の改正案における責任体系の問題について。意見を申し述べたいと思います。
 さきに申しました専門部会の報告書におきましては、その第一章において「放射性廃棄物処理処分の実施体制及び責任分担のあり方について」と題しましてこの問題を取り扱っておりますが、この部分が基本問題小委員会で主として議論された部分でありまして、一昨年八月七日付の専門部会の中間報告では議論が詰め切れなかった部分でございます。
 さて、この小委員会における議論におきまして最も問題となり、また繰り返し議論されました点は、放射性廃棄物の処理処分を専門に行う廃棄物処理事業者というものを認めるとした場合における責任のあり方に関する議論であります。特にその場合における発生者の責任、国の責任との関係をどう位置づけるかという問題でありました。小委員会の議論を通じまして明らかとなってまいりましたことの一つとして、日本語における「責任」という概念の多義性の問題がございます。
 私どもが法律家として責任という用語を使います場合には、それぞれの問題の対象となっている分野について生ずる責任の態様を意識いたしまして、その場その場で固有の意味を持った用語として使用しており、また、そのことについて特に限定ないし定義をしなくても、共通の認識があるとの前提でそれぞれの場合に適した意味内容を有する概念としての責任という用語を使用いたしております。もっとも、議論のためだけにあえて概念のすりかえとして使用されることもないとは言えませんけれども、それは極めてまれなことだと思います。
 責任という概念は極めて多義的に使用されておりまして、例えば私法上の責任、特に損害賠償責任の意味で使用されることもあり、また契約上の義務をあらわすという意味で責任と言うこともあります。さらに行政的コントロールに対応する責任、すなわち規制の対象としての責任の意味で使用されることもあります。後で出てまいります安全確保の責任というのはこの種の責任かと思います。さらに、国の行政責任の意味でも使用されますし、場合によれば政治的責任やいわゆる社会的責任の意味でも使用され、また経済的負担義務の意味でも使用されます。さらに言えば道義的責任であるとか、時には、こうなったのはおまえの責任だぞといったような極めて漠然たる内容の概念として使用されることもあります。
 このように責任の概念は極めて多義的でありますから、一つの事象につきまして面が異なれば異なる主体に異なる意味での責任が生じ得るといったように、責任という概念であらわされる意味内容は同時に多重構造を持っていると言えるわけであります。このように責任概念が多義的に使用されますので、個々具体的な場合の責任という用語の使用については内容を明確にしておく必要があるわけでありまして、特に法律上でこの概念が使用されるときにはその概念内容が明確であることが要求されるわけであります。
 ところで、さきに申し上げました専門部会の報告書におきまして、この点について基本的な考え方として、発生者と国との責任分担、発生者と廃棄事業者との関係に仕分けをいたしまして、まず、放射性廃棄物の処理処分が適切かつ確実に行われることに関しましては、原則的には発生者たる原子力事業者の責任と考えるといたしております。国もまた、処理処分の研究開発、安全規制等
を行う責任があり、処分の実施面においても適切な役割を果たすべく、特に高レベル放射性廃棄物の処分が適切かつ確実に行われることに関しては国が責任を負う必要があるといたしております。
 また、発生者と廃棄事業者との関係につきましては、発生者がみずから放射性廃棄物を処理処分する場合には、当該発生者が処理処分の安全確保に関する法律上の責任を負うことになる。そして、経済的、技術的に十分な能力を有する専門の廃棄事業者にこれらの廃棄物の処理処分を集中的に行わせる方がより効率的かつ合理的である場合には、その専門事業者が処理処分を行うということになりますが、その場合には処理処分の安全確保に関する法律上の責任は廃棄事業者が負うこととするのが、安全確保の責任集中、効率的処理処分の観点から適当であるといたしまして、その場合において発生者の責任はどうなるかということに関しましては、発生者は処理処分に必要な費用を負担するのはもちろん、処理処分が円滑に実施されるよう廃棄事業者に対して適切な支援を与えていくことが重要であるというふうにいたしております。
 報告書はさらに、低レベル放射性廃棄物について重ねて、その処理処分が適切かつ確実に行われることに関しては、原則として発生者の責任とすることが適当であること、それから、国は安全基準、指針の整備を含む安全規制を行うことを要するとした上で、廃棄事業者に処理処分を行わせる場合には、廃棄事業者に安全確保に関する法律上の責任を負わせるべきこと、この場合に、原子力損害賠償法上の賠償責任も廃棄事業者に負わせることが適当であると指摘いたしました上で、廃棄事業者が長期にわたり事業を行っていくことを確保する必要上、事業の継続性確保のための措置を講ずべきことを要求しております。この点で、発生者も廃棄事業者の事業が円滑に推進されるよう適切な支援を与えることが重要であるとしております。
 高レベルの放射性廃棄物の処理、貯蔵につきましては、原子炉を運転する電気事業者等及び再処理事業者が責任を負うことが適当であるが、その処分が適切かつ確実に行われることにつきましては国が責任を負う必要があるとした上で、すなわち発生者であります電気事業者等は処理、貯蔵、処分の費用を負担するほか、その処理、貯蔵、処分の実施主体に対して適切な支援を与えることが重要であるといたしております。
 報告書におきましてこのような責任分担の問題に踏み込んだ議論をいたしました背景といたしましては、一方において、当時廃棄物処理処分に関する法制を炉規制法の改正で行うのか、特別の法律をつくって処理するのかということが決まっておりませんで、特別の法律で処理するとした場合には、責任関係の全体をフォローする形式も考えられるという事情もありましたが、他方におきまして、炉規制法体系の中で規制するにしても、責任の関係を明確にしておくことが、責任概念のすりかえによって責任を無用に免れようとする意図が出てきた場合に、これをあらかじめ防止しておくというような意味で必要であるという認識があったからであります。
 廃棄事業者を独立の事業として認めるとした場合には、処理処分の安全確保に関する法的規制は当該事業の実施主体である廃棄事業者を対象として行うことが適当であるということは、安全確保に関する規制が施設規制、行為規制であること、及びそのような安全行政規制は一元的に行うことが効果的であること等を考えれば当然のことだと思われます。特にこれらの規制を炉規制法体系の中で行う場合には、他の原子力事業者に対する規制が、個別の事業者にその事業者を規制主体として行われていることと整合するということになります。しかし、これはあくまでも処理処分の安全確保に関する規制に対応する法律上の責任に関することでありまして、そのことがあらゆる側面、あらゆるレベルにおける責任の問題を廃棄事業者に集中すべきであるということを意味しておりません。このことはさきに申し上げました報告書にも明記されているところであります。
 すなわち、いかなる場合にも放射性廃棄物の処理処分が適切かつ確実に行われることに関する責任は発生者に属し、安全規制を行う行政責任は国に属するということは基本的に存在しているわけであります。したがいまして、安全確保に関する行政法上の直接的な規制を受ける責任と、報告書も適当であるとし、今回の法改正でも廃棄事業者に負わせることとされております原子力損害賠償責任と、この二つの責任の点を除きましては依然として発生者に残されているわけであります。その内容の主要な一部として、廃棄事業者の存続を前提として、報告書には、処理処分に必要な費用の負担と処理処分が円滑に実施されるように適切な支援を行うこととを取り上げて、これが重要であるとしているわけでありますが、これで尽きるというわけではありません。例えば、不幸にして廃棄事業者の事業が立ち行かなくなったというような場合には、結局発生者がみずからまたは新たな廃棄事業者をして処理処分を継続していく責任があるわけであります。
 このような責任の関係をすべて法律上も明確にするためには、現在の原子力法制の全体系を組みかえるか、あるいは放射性廃棄物の処理処分について現行法体系とは異なった視点に立った独立の新立法を用意する必要があります。少なくとも現行の原子力法制体系の枠の中で、なかんずく現行の炉規制法の枠の中でこれを処理することは無理であろうと思います。炉規制法改正の形式で廃棄物の処理処分についての規制を行うとすれば、他の業種についての規制と同様に、安全確保に関する事項の規制を行う、すなわちこの点についての責任を規定する形式とならざるを得ないと思います。その範囲においては、今次改正法の立て方は内容的にもやむを得ないものと思います。
 なお、報告書で指摘いたしました「廃棄事業者の事業の継続性の確保」に関しましては、改正法案では事業廃止の場合の廃棄物の移管措置義務とそれを可能とするための譲渡、合併等に関する根拠の規定を設けておりますが、これも炉規制法の体系の中で措置する限りにおいてはやむを得ないことかと思います。
 以上で私の意見を終わります。
#7
○委員長(馬場富君) ありがとうございました。
 次に、角田参考人にお願いいたします。角田参考人。
#8
○参考人(角田道生君) 角田と申します。日本原子力研究所労働組合の委員長を何回か務めました。それから仕事の方は、原研の東海研究所でこの二十年間ぐらい、環境における放射性物質の移行拡散というようなテーマの研究をやっております。
 今回の規制法改正の主要点は、廃棄事業の規制とそれから施設検査体制の二つであるというふうに聞いております。私は、このうち、放射性廃棄物の処分について幾つかの疑問点と意見を述べたいと思います。
 今回の法改正は、政府の提案理由にも述べられていますように、原子力委員会及び原子力安全委員会の提言に基づいて準備されたとされております。その両委員会の専門部会報告書を見てみますと、原子力委員会の放射性廃棄物対策専門部会報告書の、これは五十九年八月の中間報告の序文で、「低レベル放射性廃棄物の処分に関しては、陸地処分の推進が従来にも増して早期に実現すべき状況に至っている。」と述べております。また、安全委員会の放射性廃棄物安全規制専門部会の報告書、昨年の十月の序文では、「現在、その対策が喫緊の課題となっている低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分については、」云々と述べられております。
 そこで、私の疑問の第一点は、両委員会がそろって言う緊急性のとらえ方であります。私は、低レベル廃棄物の陸地処分を急ぐに至った背景は二つあると思いまう。その一つは、一九八三年二月のロンドン条約締約国会議で、日本を含む海洋投棄主張国が国際表決で敗れたということ、さらに、日本の海洋投棄計画が南太平洋諸国の反対に
遭って挫折したことがあったと思います。もう一つは、電力会社の貯蔵施設が足りなくなってきたということであろうかと思います。資源エネルギー庁の五十九年度末の統計で見ますと、発電所別に固体廃棄物の貯蔵施設容量に対する累積保管量が、原電敦賀が九〇%ともう満杯に近く、また七〇%を超えるものに、東電福島第一、原電東海、中電浜岡、関電大飯、九電玄海があります。固体廃棄物陸地処分の緊急性というのは、このような電力会社からの要請がしきりであったということであって、国民にとって敷地外処分が特に緊急要請として出てきているということは言えないかと思います。むしろ、今緊急に検討しなくてはいけないのは、例えば、海洋投棄計画がなぜ国際的に孤立して挫折したのかというようなことに根本的な分析と反省を加えることが必要ではないかと思います。
 廃棄物処分問題でさらに原点に立って検討されねばならない最重要の課題は、私は、低レベル固体廃棄物でなくて高レベル廃棄物だと思います。一万年を超す長半減期の放射性物質が、最大許容人体負荷量に比べると天文学的膨大さで発電量に比例して蓄積されつつあるわけです。しかも、固有の半減期で減少する以外、その減少化を図る技術的な展望が見出されておりません。これは、従来の人類の環境問題で遭遇したことのない新しい汚染質であるということだと思います。この点がちだけ見ましても、また、原子力災害が起こったときの被害の規模と質から見ましても、発電や廃棄物処理を含む核燃料サイクル事業を民間企業に任せてよいのかという疑問を抱かざるを得ないのであります。
 二番目の疑問は、法改正は極めて定性的で、肝心の部分は政令、告示に任され、国会の討論、議決を経ずに行政的に決められていく、あるいは行政的にその数値が改変されていくということです。今回の改正では、陸地埋設処分を開始すること、それから廃棄物のレベルに応じ、これまでの管理よりも軽便な管理、処分を行い得るようにすること、つまり規制を従来より緩めることが定性的に規定されているだけで、レベルの区分の仕方、それぞれの管理の方法は省令以下の行政措置にゆだねられております。私個人としては、レベル区分した廃棄物管理の考え方自体には反対ではありませんが、無拘束限界値とか、極低レベル上限値などのレベルの設定に当たり、業界の当面の都合とか、内外政治動向の反映など、科学の論理が貫かれないことが出てきはしないかと心配いたします。原子力船「むつ」の扱いなどで、私はしばしばこういうことがあったと痛感いたしております。
 それから、別な例でありますけれども、原子炉の安全審査につきましても、基本はこの規制法で決め、審査の具体的基準は政令や指針、手引などで運用されておりますけれども、例えば仮想事故の災害評価、つまり技術的見地からは起こり得ない大きな事故を想定して安全を事前に評価することがなされております。百万キロワット級原発でなされた放射能放出レベルは希ガスに関して言いますと、先だってのTMI事故の現実の放射放出量よりもずっと少なかったし、沃素では今回のソ連事故の放出、これはまだ確定しておりませんけれども、多分間違いなくその放出よりもずっと少ない想定で評価されている、そういう審査システムというのが省令、指針、手引というようなことで量的に指導されているわけです。
 第三の問題点としまして、廃棄物の管理区分を決めるときに必然的に不確実性、任意性が入り得るという問題です。区分値の基本は、先ほど宮永参考人も言っておりましたように、人間への影響、つまり個人及び集団の被曝レベルで決めるということからスタートするんだと思います。しかし、現実には、じゃどういうふうに規制していくのかということでは、この値を個々の廃棄物について全数測定することは不可能であります。そこで、恐らくドラム缶などの外側から放射線、ガンマ線の空間線量率をはかって管理することになると思われます。この二つの量をつなぐのは計算になりますが、その計算には例えばドラム缶の腐食の仕方とか、地中、地下水、植物、動物などへの順次移行に伴う数多くの経路を想定し、またはそれぞれの移行の数値パラメーターというものが仮定されるわけです。そのあちこちにちょっと手かげんを加えますと、数量関係というのはたちまち大きく変わってくるという問題があります。このような計算による評価の不確実さのほかに、廃棄物の外側からはかった放射線と中に入っている放射能との対応の問題があります。例えば人体の内部照射という点で重要であるアルファ放射能の混在があったとしても、それは外側から放射線で管理していくという方法では検出されず、検出されない結果、無拘束限界値以下、あるいは通常廃棄物扱いというような形に回される可能性もあるということです。
 以上三点、時間が限られておりますので三点だけについて疑問、それから意見を申し上げました。
#9
○委員長(馬場富君) ありがとうございました。
 それでは、室田参考人、御苦労様でございました。十分程度で御意見をお述べ願います。室田参考人。
#10
○参考人(室田武君) おくれて失礼しました。室田と申します。
 経済学の観点から一言申し上げます。
 今回のソ連の事故がソ連国内のみならず、欧州全域に汚染を広げている。そういう状況の中で今回の法改正、なぜ急ぐ必要があるのかというふうに考えます。
 不確実性の経済学という分野がありますけれども、何か将来に大きな不利益があり得るかもしれないということが予想される場合に、今それを決めてしまわないと少しの不利益があるかもしれない。だけれども、将来大変なことが起こり得るという場合に、決定を少し先に延ばすということから生ずる非常に大きな利益ということが指摘されているわけです。今回の事故がまだ進行中で原因さえも解明されてない、あるいは単に言われている炉心溶融ということだけでなくて、核暴走というような最も恐れられている事態が起こったんじゃないかという疑問もあるわけです。そういう状況の中で今回の法改正を急ぐ必要がどこにあるのかということをまず考えるわけです。既に発生者責任の原則がそこでうたわれているわけですから、それをどう見てもあいまいにしているというふうにしか思えない法案を今急いで決めて、後に非常に大きな汚点を残すということがないような措置がぜひ必要だろうというふうに思います。核廃棄物の保管に関しては、まだ日本で事故評価といったものが十分になされてないんじゃないかというふうに思うわけです。
 原子炉の仮想的な事故、あるいは仮想的な規模を上回るような事故の可能性ということについてはある程度の分析がなされ、またそれに基づいて原子力損害の賠償に関する法律ができているわけです。しかしながらそれはあくまで原子炉についてであって、核廃棄物について十分な、特に事故が起こった場合の分析も含めた評価がなされていない。ところが、実際にはアメリカの場合、軍事用の核廃棄物ですけれども、ワシントンのハンフォードであるとか、そこではプルトニウムの再臨界寸前というような事故もあったというように伝えられております。それから一九五七年ですか、昭和三十二年、ソ連においてはウラルの核災害ということで知られているような非常に大規模な核廃棄物貯蔵庫における事故が起こっているということもわかってきておるわけです。ですから、そういった歴史的な事実も踏まえて核廃棄物の事故災害、そういったものの評価がまだなされてない段階で発生者責任がどうしてもあいまいになりかねない。既にきちんと発生者責任の原則がうたわれているものが、なぜこの時期に改正されなければならないのかというところで、再度根本的にこの問題を考え直す必要があるのではないかというふうに思うんです。
 これが出てくる背景というのは、御承知のとおりに、日本でも既に廃炉が具体的になってきてい
る、百万キロワット級の原子力発電所一つを廃炉にした場合、大体六十万トンぐらいのさまざまなレベルの核廃棄物が生じてくる。その処理処分に要する費用は、最近のいろいろな意見が分かれるところでしょうけれども、一基について四千億円ぐらいはかかる、あるいはそれ以上かかるんではないかということで、その原子力発電所の建設費そのものに匹敵するか、あるいはそれを上回るような費用がかかる可能性があるということが言われているわけです。
 アメリカの場合は、既に一九七八年ですか、下院の政府活動委員会だったと思いますけれども、ニュークリアコストという報告書を出しまして、その中で、廃炉が建設費を上回るようなコストをもたらす可能性があるということも既に指摘されているわけです。日本においてもそういった過去の経験あるいは諸外国でのいろいろな試算といったものを十分に検討した結果、こういう現行の法律をもし改正が必要だったらどういうふうに直していくのかということの、かなり根本にさかのぼった再検討が必要ではないかと思うんです。
 核廃棄物というのは何の経済的価値も持たないわけですね。その辺が原子力発電の場合は放射能の危険性はもちろんありますけれども、少なくとも電気ができるから、売った電気が収益にはなるということがあるわけですけれども、核廃棄物の場合はそういう意味で何の価値ももたらさないわけです。したがって、その事業が経営的な経理的な基礎をどこまで持ち得るかということが最初から疑問なわけで、そういった意味では電力を売ってそこで利益を上げている、その利益の一部を回して確実に電力会社が責任をとるようなそういう現行の法律の方がむしろ今回の改正案よりもまさっているのではないかというふうに思うわけです。
 核廃棄物の問題の少し前に再処理の問題がありますけれども、その再処理の場合は若干のプルトニウムが取り出せる、したがって、それが核燃料として使えば経済的な価値を少し生むということですけれども、この再処理についてさえ、既に一九八一年ですか、通産省の料金制度部会が使用済み核燃料一トンの再処理に要する費用が約二億一千百万円、それに対して再処理から生み出される燃料の価値、プルトニウム並びに減損ウランの価値はその評価の仕方によって違いますけれども、一トン当たり三千四百万円ないしあるいは六千百万円程度ということで、いずれにしろ一トン当たりの再処理に伴って千二百億円ないし千四百億円程度の正味の損失が生じるということが通産省の試算においても明らかにされているわけです。
 ですから、若干の燃料が取り出せると言われている再処理でさえ経済的には何の利益にもならない、正味の莫大な損失が生じる事業なわけです。ましてや核廃棄物の場合は、それ自身に何の価値もないわけですから、そういった事業がとても経理的、経営的に見て成り立つはずがないわけです。そういったことで、現在これだけ世界を騒がしているソ連の事故が進行中の今、この問題の検討を少し先に延ばして考え直してみるということから生じる利益は非常に大きいんじゃないか。逆に、今これを急いでしまうことで、日本の原子力開発の将来に非常に大きな汚点を残す可能性があると思うんです。広島、長崎、ビキニと三回の被爆体験を日本は持っているわけです。広島の場合、過ちは二度と繰り返しませんということをそこで誓ったはずで、それにもかかわらずビキニの事件が起こり、そして今ソ連の事故が起こっているわけです。
 ソ連の事故の場合、炉型が日本と違うとか、格納容器がソ連の場合ないとか、そういった問題はある意味で非常に瑣末な問題でして、今回のような規模の事故が起これば、相当頑丈な格納容器をつくっておいたところでそれは完全に吹き飛んでしまうわけです。炉型の違いの問題でもなく、内蔵されている放射能の量とそこで発生する莫大な熱、その二つが原因になってこういった事故が日本でも十分に起こり得る。いろいろな報道なんかで、アメリカのスリーマイルアイランドで起こったわずか七年後にソ連のチェルノブイリで起こっているということで、原発保有大国、その次はフランスと日本ということになるわけですから、次はフランスか日本かということもささやかれているわけです。
 そういう状況の中で、この法改正を急いで決着をつけてしまうということは非常に危険で将来に大きな禍根を残すというふうに、私自身経済学者の一人として強く感じているものです。
 時間だと思いますので、失礼します。
#11
○委員長(馬場富君) どうもありがとうございました。
 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○志村哲良君 まずもって、大変御多用中のところを本日我々の審議のために御来駕を賜りました先生方には厚くお礼を申し上げます。まことにありがとうございました。
 ただいまお話を拝聴いたしておりまして、それぞれの先生方にお伺いしたいことが多々あるような思いがいたしましたが、限られた時間でございます。私は宮永先生と谷川先生に幾つかの問題をお伺いしたいと存じます。
 我が国にとりましてはもとよりでございますが、私は原子力の研究開発、あるいはこれらをもとにいたしました原子力の平和利用というような問題は、全人類にとりまして時には単なる経済性の問題に限らず、これを乗り越えまして全人類の課題であるというように実は考えておるものでございます。このような状況の中では、先ほど来レクチャーをいただきました放射性廃棄物の処理処分の問題ということが私どもにとりまして不可避な問題、まことに重要な問題であると考えられますし、このたびの委員会におきましても、この廃棄物の処理にかかわる法案の審議を実は行っておるところでございます。
 私は、この放射性廃棄物の処理処分に当たり申しては、何よりもまず安全性の確保ということが抜き差しならずに大切な問題であると実は考えるものでございます。先ほど来、宮永先生の御説明を拝聴いたしておりましても、例えば人工バリアあるいは天然バリアの問題等を含めましていろいろとお教えをいただきました。現に各原子力発電所の廃棄物がドラム缶換算で七十二万本の貯蔵能力があると言われておりますが、既に四十二万本のドラム缶換算ですが廃棄物が発生しておる。地元ではこれらに対する適切な処理の大きな要望が出ておるのが現状でございます。このような現状に立ちましても、今回の審議に当たっております法案の速やかな審議、検討を私どもは願っておるわけでございます。
 このような中で先ほど宮永先生が、まず低レベル廃棄物の埋設処分に関しまして、例えば地下水のかかわる問題、時には酪農あるいは漁業等に影響があるというようなことも、先生の場合は地下水の御説明でございましたが、一部にはこれらのことにかかわる主張も実は私どもの耳に入る現状でございます。これらの点に関しまして、宮永先生は先ほど我々には経験を踏まえて一つの見通しがあるという御説明をいただきましたが、もしお聞かせいただけるんでしたら、国際的な諸経験等も踏まえましてこれらの問題に関する御意見をお聞かせいただけたらまことにありがたいと考えております。
 同時に、先ほど低レベルの固体廃棄物の埋設処分は放射能の減衰に応じて管理を軽減していくことができる、あるいは最終的には管理を必要としないような状況にも相なるというような御説明がありました。放射能のレベルが極めて低い廃棄物は放射性物質としての管理の必要がないというようなことに関しましても、先ほど国際的な議論の展開を踏まえ、一ミリレムというような一つの基準、あるいはモニタリングの技術等にもお触れになりましたが、この点に関しましてもう一度、先ほどの問題とあわせて国際的な経験をもしお示しいただけるんだったらありがたいと考えているものでございます。
#13
○参考人(宮永一郎君) お答え申し上げます。
 まず第一番目の点でございますが、陸地処分につきましては我々はこれからこの法令のもとに慎重に実施することになりますけれども、原子力の先進国、特にアメリカ、イギリスでございますが、これらはもう低レベルにつきましては既に二十年以上前から実施いたしております。その実施の仕方は、確かに現在の我々の知見から申し上げますといささか乱暴であるというような点もございます。具体的には、相当高いレベルの放射性物質を含んだドラム缶その他の汚染物質を、ただアメリカの場合は砂漠というようなところがございますけれども、一応雨が降らない、できるだけ降雨量の少ない地域を選びまして、そこに縦百メーター、横二、三十メーター、深さもやはり二、三十メーターというような大きなピットを掘りまして、先ほど申し上げた地下構造物というようなもの一切なしに、その中へただ埋めるというようなやり方をしてきたわけでございます。そういう乱暴なやり方をしましても、確かにある場合にはある核種の若干の汚染が環境に見出されたことはございますけれども、それでもいわゆる人体に影響が及ぶといったレベルの汚染を起こしたことはございません。
 フランスは、先進国の中では先ほど御説明申し上げたような我々と同じような慎重なやり方で対処いたしておりまして、放射性物質の高いものについてはより頑丈な構築物で囲うといった方法をやっております。したがってこれには現在のところ全然問題はございません。今申し上げたように、低レベルにつきましては既に先進国初め相当量の実施の経験がございます。これらの経験を踏まえて我々が慎重にやれば、先ほど申し上げましたように十分安全に実施できるというふうに思うわけでございます。
 それから第二番目の極めて低い放射性物質、これはもう規制する必要がないというような考え方について意見を申し上げたいと思います。
 我が国ではこれを無拘束レベルというふうに呼んでおりますが、アメリカではピロー・レギュラトリー・コンサーン、つまり規制的な関心を必要とする以下のレベル、こういう意味でこういう呼び方をいたしております。我々は放射線管理という立場から、職業人に対しても一般の住民の皆さんに対しても被曝をできるだけ低くするという、いわゆるALARAの精神と申しておりますが、できるだけどんな場合でも低く実際的にできるレベルでやるということを考えておりますが、それを突き進めていきますと、どこまで行っても切りがないことになります。限られた費用とマンパワーで効果的な危険の管理、リスクの管理をやりますためには、もう余り小さいレベルというのを、やはり考えなくてもいいレベルというのを決めた方が効率的でありますし、より高い危険のレベルというのを管理することが十分できることになるわけであります。
 したがって、そのレベルの決め方が問題になりますが、これは先ほど申し上げましたように一ミリレムというレベルで決まっておりまして、国際的に合意が得られそうでありまして、このレベルは極めて低いレベル、先ほども申し上げましたように自然放射線レベルの百分の一、関東、関西の自然放射線レベルの差のさらに数十分の一といったレベルでございまして、これは問題にするに足りないであろう、そういったところはもう規制の関心の外にするということは非常にいいことであると私は思っております。
#14
○志村哲良君 これも宮永参考人にお伺いいたしますが、先ほど角田参考人も若干お触れになりました例の高レベルの廃棄物に関してでございます。
 将来、使用済み燃料の海外再処理に伴いまして、発生した高レベル廃棄物が我が国にも返還され、処分されるまでの間にこれを貯蔵することになっておるわけでございます。高レベル廃棄物などの貯蔵の安全性につきましてはこれは先ほどお触れにはなりませんでしたが、宮永先生はいかにお考えになっておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
#15
○参考人(宮永一郎君) お答え申し上げます。
 高レベル廃棄物につきましては、現在我が国ではまだその貯蔵その他に経験はございません。と申しますのは、動燃事業団が再処理をいたしておりますが、その廃棄物は液体のままでまだタンクに貯蔵しております。今御指摘のお話は恐らくその最終的な形態、すなわちこの廃液を現在では国際的に硼珪酸ガラスという一種のガラスに閉じ込めまして、それをステンレスのキャスクに封じ込めたものを貯蔵するということにいたしております。したがって、現在我が国にはまだ実際にその硼珪酸ガラスにしたキャニスター詰めのものはございませんけれども、既にガラス固化体の作成の実験、あるいはそれからの浸出率その他研究は行われております。貯蔵につきましてはしたがって海外の経験しかないわけでございますが、これに関しましては、先ほどの先進国に加えてカナダその他いろいろなところでこの硼珪酸ガラスの空気中の貯蔵が十分できるということを立証しております。現在のところまだ強制空気冷却でございますが、将来は設計によって自然循環でもできるようにしたいと考えているようでありまして、こういったことから高レベルのガラス固化体を空気中で十分の長さ保管するということは確実にできるというふうに私は考えております。
#16
○志村哲良君 次に、それでは谷川参考人にお伺いいたします。
 私は平素、先ほど先生の御説明にございました発生者責任という概念に関しまして、殊に原子力の平和利用という点におきましては理解しづらいものである、なじみづらいものであるというような実は受けとめ方をいたしておるものでございます。これは全く個人的な見解でございますが、ただ法律のことにも嫌うございますので、まことに幼稚な発想でありますし、したがって質問もまことに初歩的な質問になるかと存じますが、お許しをいただきましてひとつお教えを願いたいと思っております。
 過日、ソビエトの原発の事故を見ましても、例えば原子力発電所の事故一つを見ましても、これの損害賠償その他既に、これがよしんば官であるにせよ民であるにせよ一業者、一国だけの問題ではないのではないか、あまねく全人類と深いかかわりのある問題ではないかと実は考えるものでございます。
 先ほども質問の冒頭に、原子力の平和利用という問題は単なる経済性という問題だけに束縛されることなく、私は全人類の課題であろうということを申し上げましたが、既に現段階におきましては洋の東西あるいは南北を問わずに原子力の平和利用という問題が全人類の問題であるのと同様、これによって起こるいろいろな事故その他もあまねく人類と深いかかわり合いを持っておるものであると実は考えておるものでございます。このような状況の中では、せんだっての事故等に生々しく触れてみましても、発生者責任というような言葉がどうも、非常に率直に申し上げて極めてうつろに私には響くわけであります。発生者や発生国がその責任は極めて重大であるということは、これはもとより論をまたないと実は考えるものでありますが、何かもっとせんだっての経験にちなみましても、この問題を深く掘り下げるその認識の中でこの問題を検討できないものだろうかというような実は思いがしてならないものであります。
 そんな中で、このたびの改正の一つの重要なポイントであります廃棄業者を原子力損害賠償法上の原子力事業者にするという点がうたわれておるわけでありますが、これらに関して谷川先生の具体的な御意見を拝聴できたらありがたいと考えるものであります。
#17
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 発生者責任の問題をより高次元の問題との関連でどう考えるかということの御質問であろうかと思いますが、これは確かに原子力平和利用についての責任をどう位置づけていくのがよいか、また、国際的な広がりの中でどう位置づけていくのがいいかという極めて基本的な困難な問題に関するものだと思いますけれども、先ほど申し上げま
したように、原子力の平和利用といいます場合に利用をする主体、その利用の結果の利益を受ける主体は非常に広がりがありますが、それを直接的に利用してそのことによって何らかの利益及び企業活動をする、あるいは研究上の成果を得る、こういうような利益を得ている者は、それなりに当該自分の行っておる行為についての基本的な責任は負わなければならないのです。
 ただ、その場合に、責任といいましても、先ほど申し上げましたように、この場合の責任というのはどの範囲の責任、どういう内容の責任であるかということが問題になろうかと思います。しかし、基本的にはそのすべての側面、といいましても行政的な責任あるいは政治的な責任の問題はそれぞれ国なり行政機関が負うことになるかと思います。それは極めて監督的なものになるかと思いますが、そういう部分を除きますと、一応原則的には発生者のところにそれを集中しておくのがいい。ただ、そうはいいましても、全部が例えば発電を行っております発生者のところで関連する行為が行われるわけではございませんで、炉規制法の体系を見ましても、燃料の製錬であるとか加工であるとかあるいは再処理であるとか、それぞれその固有の専門の知識を持った者にその関連する業務を分担させることができるようになっておる。
 それらの業務を分担しておる者は、それなりに規制上の責任、行政監督に対応する責任というものは負わされるわけでありまして、廃棄の業務に関しましても、この廃棄を効率的、合理的に行うについては、一つの場所にそれを集中的に行うことが合理的であるという判断がされます場合には、そこで行わせることもまた適当であろう。そうなれば、その行為を行う者についてはその者の行政監督に対応する責任というものを負わせる必要がある。しかし、それだからといって全体について、そういう個々の関連する業者が対応しておる責任以外の部分も含めてすべて発生者が免れてしまうということになるわけではない。全体としては、やはり基本的に発生者のところに責任のベースがあるという前提で考えるのが至当なのではないか。
 これの責任の問題につきまして、国際的な分散の問題になりますと、これはごく限られた一部でありますが、損害賠償責任の問題につきましては、損害賠償責任に関する強制保険という制度を取り入れておりまして、その強制保険にそのリスクを転嫁しているわけでありますが、その転嫁されたリスクは国際的に分散をするということによって国際的に、どこかで事故があった場合に、それを結果的には関連する業者がみんなで分担をした格好になる。保険のスキームを通じて分担をした格好になる。そういう意味では、責任の国際的な分散も図られておると私は理解いたします。
 これでお答えになりましたかどうかわかりませんが、以上お答え申し上げました。
#18
○志村哲良君 まことにありがとうございました。
 もう時間もあと三分ほどでございますので、谷川先生の冒頭のレクチャーにございました原子力法制の全体系の場合によっては組みかえ、あるいは新立法の措置等もというお話を実は私は大変興味深く拝聴いたしましたし、国際的なただいまの御説明にありました相互扶助の精神等も、これこそが原子力の平和利用への大きな道しるべではないかと、実は大変に印象深く伺っておった次第でございますが、全体系の組みかえというのはこれはもう大変先の話でございますが、何かございましたらひとつお聞かせをいただけたらと思います。
#19
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 私は、全体系の基本的な組みかえということが必要だというふうに申し上げたわけではございませんで、もしこの責任の問題を正面から全体についてフォローしようとすれば、それをやらなければできないだろうと申し上げたわけでございます。ただ、いろいろな考え方がございまして、現在の施設規制、行為規制のような形でやるのがいいのか、あるいは核燃料物質、核原料物質の流れに応じた、物の流れに着目した規制をするのがいいのか、いろいろな考え方があると思いますけれども、現時点におきましては、炉規制法の規制体系というものが定着してきておりまするので、これをいたずらに組みかえますと、どこかでまた混乱が起きることも考えられます。もし基本的な組みかえを考えるとすれば、その辺の影響も十分に慎重に考えた上でないとこの問題は処理することができないというふうに思います。
 以上でございます。
#20
○志村哲良君 ありがとうございました。
#21
○稲村稔夫君 本日は、それぞれお忙しい中を参考人として御出席をいただきまして、貴重な御意見をお聞かせいただきましたことを私も感謝を申し上げながら、また若干の御質問を申し上げましてなおお教えをいただきたい、このように考えておりますので、よろしくお願いをいたします。私、社会党の稲村と申します。
 そこで、最初に原研の宮永理事さんにお聞かせをいただきたいんでありますが、特に低レベル廃棄物の埋設処理を考えていった場合、先ほども全然無拘束限界値以下のものはもう考えないでもいいだろうというお話で、それの特に放射線量についてのお話などもございました、年間一ミリレム程度というお話で。ただ、その放射線の量の問題はそれなりに理解はできるわけでありますけれども、同時に、この中には人工的につくられたそういう放射線、いわゆる人工放射性物質というんでしょうか、というものになってまいりますと、これらのものの中には核種によっては今まで天然に我々が経験したことのない、そういうものが含まれるということにもなると思うわけでありますし、その辺のところ、核種というものをいろいろと検討、特に人体とのかかわりというものを検討をしてごらんになっているんだろうか。もしあれば、それをどういうふうに見ておいでになるんだろうかという点が一つ。
 それから、先ほど諸外国の例でということで、志村理事さんからの御質問の中で、諸外国の例を言われまして、今までの経験の中で人体に重大な影響は例えばアメリカの例などではないということで言われましたけれども、私はこれは今までなかったということではないかと思って伺ったんでありまして、これは放射線の中には、減衰に随分時間のかかる、気の遠くなるような長期間の半減期間のものもあるわけでありますし、我々の代々という、将来までということは体験としてはないわけであります。またさらに、それが医学的にもあるいは生物学的にも、遺伝子に与えるいろいろな影響だとかなんとかというような問題も、放射線という形での研究もいろいろとされ始めてきておりますけれども、核種によってのことというのも、まだ未開の分野というのはかなりございます。というようなことでいきますと、人間に与える影響というのは、今までのところなかったということで理解をしてよろしいんだろうか、こんなふうに思ったものですから、その辺のところをひとつお教えをいただきたいというふうに思います。
 順番に聞かせていただきまして、それぞれ持ち時間というのがございまして、その中でお伺いする形になりますので、聞かない先生が出ても困りますので、順番に最初に皆さんにお聞きをいたしまして、また時間があれば再質問させていただくというような形にさせていただきたいと思っております。
 次に、室田先生にお教えをいただきたいと思います。
 原子力発電所の問題につきましては、コストの問題につきましては、こうした廃炉の経費であるとか、それから廃棄物処理のための経費であるとか、そういった経費の問題というのはどの程度に初めのころ考えられていたであろうか、そしてそれが、その当時に考えられていたものよりも現在はかかるというふうになってきているんだろうか、あるいは意外にかからなかったということになるんだろうか、さらに、これから先のことを考
えていったときに、そうしたものはどうなるんだろうかというようなことでございます。特に、私がこんなことを気にいたしますのは、最近はアメリカ等では、建設中のものもございますけれども、また原発の新しい建設がキャンセルになっている例などもいろいろとあるものですから、特にコストということを考えて、将来の見通しなども含めて教えていただければ大変ありがたいと思います。
 なお、先ほどちょっとお触れになりましたが、プルトニウムを再生産するときのコスト等についての通産省の試算のお話ございましたけれども、これらのものは、フランスの計画でも大変高速増殖炉の経費がなかなか思ったよりも多分にかかるという、そういう大変大きなものになってきているようでありますが、これは経済性として、今の段階の試算のお話は伺いましたけれども、今後こうした核燃料の再利用というようなことで、もっと経済性というものが期待できる側面を持っているんだろうか、どうだろうか。そういうものも期待できませんと、何かこれからの原発計画というようなものにいろいろと考えなきゃならぬ問題というのが出てくるんじゃないだろうか、そんなふうにも思うものですから、その辺のところをお教えいただければ大変ありがたいと思います。
 また、谷川先生にお願いをいたします。
 先ほど志村理事から、特に事故などが起こった場合の責任というのは、個というものを考えただけでは不十分なんではないだろうかと、そんなふうに言われたように私は受け取ったんです。要するに言ってみれば、全人類的な共通の責任である、子孫に対してもですね、そういう観点をお持ちになっているんじゃないかなと私も伺いながら思い、それだけに今私たちがこうやって法律をいろいろと審議をして物を決めていくという、そのときに、もう後で取り返しがつかなかったというようなことにできるだけならないように最大限の努力をしなきゃならない、それこそこれも責任という範囲の中でいけば一つの責任だというふうに思っているわけでございます。
 そうした観点から、私もちょっと小さな都市で責任ある地位に座ったりしたことがありまして、そのときに、いろいろと人間関係、人間の集団というものの難しさというのを思い知らされた感じがするわけでありまして、例えば責任なら責任を負うということを一つの体制の中で決めていきますと、ここに責任があるというと、その責任について、特に日本人がそうなのかもしれませんが、それについての、キャッチボールと呼んでおりましたが、そのキャッチボールが起こりがちでございます。したがいまして、この今の法案の中でいきましても、私は例えば、廃棄業者に原子力損害賠償法による責任があるというふうにして明記をされますと、そうすると、そうなったんだからという形で、逆に今まで責任をしょっていたところが、キャッチボール的にそちらへ投げ返すということも起こり得る、人間の集団というのは何かそんなものを心理的にも皆持っているんじゃないだろうか。その辺のところをきちんと歯どめをしなきゃいかぬのだが、そこの責任体制という、そういったときに、私はどういうふうにしたらいいんだろうか。まさにその発生者責任というのは確かに大事なことでありますから、その発生者責任というもの、間違いを起こしてからでは遅いわけですから、起こさせないためには、やっぱり責任感があるところに起こらないという、そういう側面も持っておりますし、その辺のところもあわせてどういうふうにお考えになっておいでになりましょうか、お教えをいただきたいと存じます。
 それから、角田さんに次に教えていただきたいと思います。
 外から見た放射線と内部の核物質の違いというようなことをちょっと言われましたんで、そこの辺のところですね、特にこれから廃棄をしようと、そういうことをやったときに、外で放射線をはかって、それでチェックしたということにならないということになると、これはどう考えたらいいんだろう、そんなことも心配に気になってくるもんですから、その辺のところをもう少し詳しく教えていただきたい。
 以上でございます。
#22
○参考人(宮永一郎君) お答えを申し上げます。
 まず、人工放射性物質というのは、天然の放射性物質がございますが、それとは大分違うのではないかという御趣旨の御質問であろうかと思いますが、放射線の影響といたしましては、あるミリレムなんかであらわされます放射線のレベルが同じであれば、反応は遺伝子に対しても、がん発生に対しても同じだというふうに現在は放射線生物学で考えられております。したがいまして、人工放射性物質とそれから天然放射性物質、つまり核種による人体内での違いと申しますのは、結局はメタボリズムと申しますか、取り入れられた場合に、その核種が一体体の中でどういう行動をするか。したがいまして、生物学者は少なくとも新しい核種については、すべて動物実験その他でそのビヘービアを追っているわけでございます。
 例えばストロンチウムというのは化学的にはカルシウムと同じ族にございまして同じような行動をする、すなわち両方とも骨に集まりやすいということがございます。そういう場合にはカルシウムの摂取量とストロンチウムの摂取量が相拮抗いたしまして、カルシウムをたくさんとる人はストロンチウムが入りにくいといったこともわかっておりまして、結局はそういった各核種の体の中での行動がわかりますと、そこに沈着してどれだけの放射線をどこの臓器に与えるかということで影響が決まるというふうに我々は考えております。そして、現在わかっておりますいろいろな核種の実験はほぼデータがそろっているのではないかというふうに考えます。御指摘のように、学問的にもっと詳しいところ、恐らく今はわからなくて将来わかるであろうというようなことが重々あることはもちろんでございます。
 それからもう一つ、今の廃棄物の中で非常に長半減期のものがあったら無拘束レベルなんというものの関連でどうなるんだというような御質問だったと思いますが、今低レベルの放射性物質と考えておりますものの中には、長半減期のものはそんなにたくさん入ってまいらない経路を考えております。もしそれが相当量入っておりまして、大体現在低レベルで考えております二百年ないし四百年後でも無拘束のレベルにならないようなものは、これを排除しなければなりません。幸いにいたしまして、今の一番たくさん出てまいります原子炉の運転での最長半減期のものはセシウム、ストロンチウムの約三十年でございます。ただ、廃炉のときにコンクリートの中から出てまいりますユウロピウムとか、それから鉄鋼材の中にニッケル63といった相当長いのがございますが、これが相当量入ってまいりますとこの浅層処分からは省かなければならないというふうに考えております。
 以上でございます。
#23
○参考人(室田武君) 主にコスト問題を中心にお答えいたします。核廃棄物であるとか、あるいは廃炉のコストについての御質問だったと理解しますけれども、日本の原子力開発の初期の段階では、実際問題としてまだつくる段階ですから、廃炉のことをどうするかというようなことは、本当はすべきだったんでしょうけれども、余り真剣にされていなかったんじゃないかというふうに思います。したがって、とりあえず廃棄物の処理ということで下請の労働者の方が使っている上着とか下着だとか、そういったたぐいのものをどうするのかというようなことで、比較的核廃棄物に対するコストがどのくらいかというのは大したことはないというふうに思われていたように思います。
 それから廃炉問題についても、実際に電気出力が百万キロワット級というふうに言われるような今日の原子炉、そういったものを廃炉にした事例がないわけです。小規模な実験炉の解体とかそういうのはありますけれども、そういうのがなかったということで、初期の意見としては、廃炉が例えばどのくらいのお金になるのかということで、それは建設費の一、二%程度だろうというような
意見さえあったわけです。ところが、実際にアメリカあたりで廃炉の例が少しずつ出てくるという中で、廃棄物の問題というのももちろんあるわけですけれども、廃炉の方は、先ほど申し上げましたように、一説によれば全体で六十万トンぐらいのものが出てくる。その中にはレベルの低いものももちろんまざっておるわけですけれども、それぐらい膨大なものが出てきて、これが原子力発電全体のコストを大幅に押し上げることになるのではないか。
 今回の原子炉等規制法の改正案が特に電力業界の多分強い意向を反映して出されてきているというのも、非常にお金が、どうやらうっかりすると建設費も上回りそうだというぐらいな廃炉が出てくる。それに対して何らかのそれの処理処分を簡素化するような手段を今から講じておかないと、原子力発電のコストが非常に高くなってしまうというところからきていると思うんです。ですから、従来の建設費の一、二%を見込んでおけばよいというようなことでは全くなくて、莫大なものになっている。したがって、先ほどからもお話が出ていますように、ある程度低いものは無拘束というような形で核廃棄物として扱わなくて、産業廃棄物並みに扱ってしまおうというような話も出てくるわけで、そういった意味で今非常に経済問題が微妙になってきているというふうに思います。
 原子力発電が安いということがずっと言われてきているわけですけれども、現在逆オイルショックということも言われまして、原子力発電が実はそれほど安くない。あるいは安くないところか、かなり高いということで、そのあたりは実際に電力会社の電気料、原子力発電に使っているコストというのは比較的わかりにくいわけですけれども、単独で原子力発電を行っている日本原子力発電株式会社、原子力で電気を起こしていわゆる九電力に電気を売っているわけですけれども、そういう原子力専業の会社あるいは全国に幾つか共同火力と言われるように火力発電専業で電気をつくっている会社、あるいは都道府県で水力発電をやっている、あるいは電源開発株式会社のように火力と水力だけしかやっていないというような、いわゆる卸売専業の電力会社はたくさんありますけれども、そういうところの売電単価などを見てみますと、例えば日本原電の東海一号炉なんかになりますと、一キロワットアワー当たりの値段が十七円とか十八円とか、そんなふうにもうはるかに火力、水力より高くなっているわけです。それから同じく日本原電の敦賀にも原子力発電所がありますけれども、そこの売電単価なんかを見ましても、やはりひどいときには一キロワットアワー当たり二十六円なんていう年もありましたけれども、これは一九八一年だったと思います。そんな形で実は原子力というのは単独で取り出してみると非常に高くついているわけです。
 ただ、今の日本の電気料金の供給システムが独占という形をとっていますから、しかもその買う電気は、今例えばこの部屋たついている電気は、これは原子力発電所の電気なのか火力発電所の電気なのかわからないというようなことで、何が幾らかというようなことがわからない。一まとめにしてある一つの電力会社から売られている。そういう構造の中で原子力は安いと言われますけれども、実際のデータを見てみますと高くついて、しかも現在のような石油需給が緩和しているような状況の中で非常に原子力が高い。それにもかかわらずいよいよ東海一号とか敦賀とか美浜一号とか福島一号ですとか、この間ずっと事故続きで運転も正常に行われていない。そういうものがだんだん廃炉の時期に入ってくるわけです。それが非常に原子力のコストを押し上げる可能性がある。そういった中で今回の法改正案が出ていることに私は非常に危惧を覚えるわけです。
 集中的に管理した方が安全度が高められるというようなことでは実はなくて、放射能に対する人間の感覚が少しずつあいまいになりつつある。広島とか長崎の経験が次第に風化されつつあるような中で、何か簡単にこれを扱ってしまおう、そうしないとまた経済的に原子力産業が成り立っていかないというような状況が今だと思うんです。ですから、非常にこの点についてコストの面から見てもこれから高くなっていく。増殖炉というふうなことも言われますけれども、これもいつ完成するかわからないし、また完成したところで増殖炉を本格的に動かそうとしますと、現在でも難しいと言われている再処理に加えて、高速増殖炉の使用済み核燃料の再処理というような、今までほとんど経験のない新しい問題もあるわけです。そういうことで、再処理の再処理をしてできた核燃料をまた増殖炉で使って再々処理というようなプロセスもまた次に必要になるというようなことをやらないと増殖炉というのは意味がないわけで、全体として非常にお金がかかるようなものになってくる。ですから、やはりこの辺で、ソ連の事故を踏まえて原子力の問題全体に対して根本的な再検討をする必要があるんじゃないかと、そんなふうにコストの面から感じております。
 以上です。
#24
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 いただきました問題、三つぐらいあったかと思いますが、最初に、個々の個体の責任だけでは不十分なので、より共通の責任といったような次元からも物を考える必要があるのではないかという点でございますけれども、そういう面があることは否定できないと思います。ただ、いわば個々の事業を行っております者の責任と共通の責任という場合の責任の内容というのは多分に異なってくることになろうかと思います。特に諸外国との関係におきましては、原子力発電を実行しております政策を遂行しておる国の責任というような、国と国の責任の関係というようなものも出てまいりましょうし、またそれも含めまして、そういう政策遂行の面からの政治的な責任ということ、あるいは安全についての研究開発をすべき面での行政的責任、あるいは監督を十分に行うべき行政的責任といったようなものも含めてこれらの問題は論じられなければならないのではないかと考えております。
 そして、先生御指摘のように、将来取り返しがつかないようなことになるような制度をつくるべきではないという基本的なスタンスについては、私も同感でございます。したがいまして、例えば先ほどの専門部会の報告の中におきましても、特に高レベルの放射性廃棄物の問題に関しましては、途中までの手法は示しておりますけれども、将来の問題については問題点の指摘にとどまっておるというスタイルにもなっておるわけでございます。
 それから、最後の人間関係における責任のキャッチボールの問題、これはもう本当に現実の問題としてそういうことはしばしば起こっているわけでありまして、先ほど私は責任概念のすりかえの問題という言葉で表現いたしましたけれども、しばしばそういう場面では責任概念のすりかえの問題が行われるわけでありまして、だれかに例えば司法的な損害賠償責任が生ずると、すべての責任がそこに集約されて、ほかの者は責任を免れてしまうんだという論理につながる。そのおそれが多分にあるわけでありまして、したがいまして、仮に炉規制法の中での責任を決めるにしても、基本的な責任の体系の考え方というものは示しておく必要があろうということを強く言いまして、それは報告書の中にもあらわれておるところでございます。
 御指摘のように、責任が所在することによる予防的効果というものは法律的に十分考えられます。しかし、それは責任集中、特に原子力損害賠償の場合には責任集中の考え方がございまして、これはいわば被害者の利益のために責任集中をしておるという面がございます。その点を考えますれば、責任集中で責任を負った者でおしまいになるわけではなくて、その原因をつくった者に求償をしていく道というのは法的に残されているわけでございます。しながいまして、当面の直接的責任の主体にならなかったからといって、予防的効果が及ばないというものではないという建前にな
っていると私は理解しております。また、その責任を負い得るための経済的な裏づけとしての強制保険ということを用意しております。これにはコストがかかります。そのコストは、本件で言いますと廃棄物の処理処分を委託する側で最終的コスト負担をするということになりますから、そこで保険計算上非常にコストがかかってくるということになれば、そのしりは結局は発生者のところに戻ってくるということになり、その面でも予防的な効果はある程度期待できるのではないかというふうに考えております。
#25
○参考人(角田道生君) ドラム缶のような低レベル固体廃棄物の中に長寿命のアルファ放射体が混在していたとしますと、実際にこれは通常の手法での技術モニタリングで発見することはほとんど無理だと思うんです。その場合どうするかといいますと、それがつまり発生源である電力会社から集中箇所に送られてくるときに、これにはアルファ放射体が入っていないというふうにラベルが張られているかどうかということで判断されていくんではないかという気がするんです。だから、発生源で入っていないと言うから入っていないというような処理にならざるを得ないところがあるんではないかということで、ちょっといろいろな問題が出てきそうな気がします。
 と申しますのは、じゃ具体的にはどうなのかと考えますと、その廃棄物の履歴、ヒストリーですね、どこでどんなふうなことで発生した廃棄物であるかという情報をたどっていくしか推定ができないことが起こり得るということだと思うんです。例えば使用済み燃料プールを池に水で冷やしておきまして、そこを清掃して廃棄物を出した、しかし、後からその燃料をいろいろ再処理か何かの際に調べてみたら穴があいておった、そこから何か内容物がずっと出ていたかもしれない、こうなりますと、燃料のタンクを掃除したときに出てきた低レベル固体廃棄物の中に入っているものの中に、アルファ放射体が入っているかもしれない。こういうような形で、後になって追跡していかなくちゃならないというようなことがあるかと思うんです。ですから、私は、放射性廃棄物の氏素性が明らかであるということ、その中のいろいろな情報を将来使い得るかもしれないというようなところが非常に大切なことだと思うんです。ですから、それが発生源から、全国の十数カ所の会社から一カ所に集まってくると、次々とバトンタッチされていって、最後に、同じ形ですから、それぞれの氏素性がだんだんわからなくなってくるという状況にいく際の問題というのが一つありそうな気がしております。
#26
○伏見康治君 まず宮永先生にちょっと御質問申し上げますが、先生のお話の中にALARAという言葉が出てきたわけなんですが、昔は、相当長い間その思想で放射線は低ければ低いほどいいというような感じであったんですが、その思想というものと今度の一ミリレントゲン・パー・アワーという考えとはどういうふうな折り合いになるんでしょうか。
#27
○参考人(宮永一郎君) お答え申し上げます。
 従来まで、放射線の影響というのは、放射線防護的には、幾ら小さいレベルの放射線でもそれだけの影響がある、いわゆる直線関係のエフェクトを仮定しているわけでございます。これはICRPが、実際にはそうでないかもしれない、つまり、あるところまでは影響がない閾値を持っているかもしれないけれども、いわゆる安全側に見るためにそういう仮定をしている。そういたしますと、結局いわゆるALARAという考え方、精神をもとにしてやれというのが原則として出てまいるわけでありますが、その場合にやはりALARAというのは結局、できるだけというだけでは不十分でございまして、実際のあれにはエコノミカルあるいはソーシャルに考えて、いわゆる最適化をするという意味で低くという意味があるわけでございますが、それをやる場合にどこまでいけばいいのかというのが必ず出てまいります。そういった場合に、やはりここから先はもうALARAも考えなくていいのであるというレベルが合理的あるいは安全という観点からきちんと決まっておりますと、少なくとも放射線防護をやる側、あるいはいろいろな施策をやる場合に非常に有益であるという趣旨でございます。
 以上でございます。
#28
○伏見康治君 以前、非常に低線量のところが、実はその作用がどうなるかということがわからないから直線で零点まで引いたというそのフィロソフィーが、より安全側の判断として欠いていたわけですね。
 しかし、私は専門家ではないので間違ったことを伺うかもしれませんが、先日近藤宗平先生が阪大を定年退職される御講演を伺ったところが、人間の体というものは放射線に対して予想外に強い、その強い原因は、人間の細胞の中に修復能力というものがあって、弱い放射線に当たって壊れたものは修復されてしまうから、要するに何ともないんだといったような意味合いのお話を聞いたように思うんですが、そういうことがあるとすると、それが科学的にはっきりした根拠あるものならば、そのことをもっと、その根拠の上に基づいた理論というものがあってしかるべきように思うんですが、そこまではまだいっていないということなんでしょうか。
#29
○参考人(宮永一郎君) お答えいたします。
 そのとおりであると私は理解しております。
#30
○伏見康治君 次に、谷川先生にお願いいたしますが、責任という言葉に非常に多義性があるということはおっしゃるとおりだと思うんですが、その多義性というものをちょっと分類していただくと、例えばどういうふうになるんでしょうか。
#31
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 先ほどアトランダムに申し上げたわけでございますけれども、どうもいろいろな局面で責任という言葉が出てまいりますので、学問的な形で分類をするということは非常に困難かと思いますが、先ほど例に申し上げましたところから申しますと、一つは私法上の責任というものがございます。これは特に本件の場合に関連して言いますと損害賠償責任、被害者に対する不法行為上の損害賠償責任という意味で責任という言葉が使われます。それから、私法上ではさらに契約上の義務、債務をあらわす意味で責任という言葉が使われることもございますが、そのほか、物の所有者としての管理責任というような、それがどこへ出てくるか、損害賠償の面に出てくる場合もありますし、またそのほかの面で問題とされることもあるかもしれません。
 それから、それとはまた別に公法的な面で、公法的な行政的コントロールに対応する責任、規制を受ける主体としての地位に基づく責任というものが出てまいるかと思います。これは本件の規制の対象としております部分の責任というのは、安全確保の責任と言われておりますものはこういう種類の責任かと思います。
 それから、一方で国の側にも責任があると先ほど申し上げました。これは国の行政責任の問題であります。安全を確保するための研究開発を促進していくというような責任、あるいは行政監督を行っていくというような意味での責任というようなものもございます。
 そのほかに、先ほどちょっと稲村先生のあれにも関連して申し上げましたけれども、政治的な責任であるとか、あるいは行政全体の責任も政治的な責任に入るのかもしれません。
 それから、国際的に言えば国の責任、これがまた漢として、損害賠償責任なのか、国同士の間におけるどういう意味の責任なのか、余りはっきりしない形で使われる国の責任というものもございます。
 それから、法的評価まで上がってくるかこないかのグレンツのところで、社会的責任であるとかあるいは経済的負担、特にPPPの原則などと言われております場合には、主として経済的負担の側面から責任という表現で言われるものだと思います。これは一部はもう法体系の中に取り入れられて、法的評価の段階まで入り込んでいるものでございます。
 さらに、法的評価の中には入ってきませんが、道義的責任といったようなものもあるかと思います。
 今考えられるところでちょっと羅列をいたしまして一応の区分をいたしますと、そのようなものが考えられるかと存じます。
#32
○伏見康治君 二、三日前の新聞ですか、カネミ油症事件の裁判の話がございまして、PCBをつくった会社は責任がないんだというお話が出て、私も実はその説に賛成なんですけれども、つまり、別に食料品としてつくったわけではない、冷却材としてつくったものがどこかで混入したことになるんでしょうけれども、その混入の責任は製造者の責任ではないと思うんですね。でも、何か非常に広い意味からいえば、とにかく食べてはいけないものをつくって、その食べてはいけないという警告を十分に発しておかなかったといったような意味の責任はあるいはあるのかもしれないというような感じがするんですが、その場合の責任というのは、先生のお考えではどうですか。
#33
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 カネミ油症の事件の問題、現在裁判で係争中でありますので断定的なことは申し上げられませんし、私、その判決を見ておりませんので、どういう理由に基づいてそういう判断をされたかはわかりませんが、PCBを製造したというだけで、それが使われた結果について責任をダイレクトに負うことになるというのは、従来の私法的な損害賠償責任、裁判で問題になっておりますのは私法的な損害賠償責任の問題だと思いますので、その側面から言いますと、直接的にそういう条件的な因果関係で責任を負うということはないというのが原則だと思います。
 ただ、製造者が製品を利用者に、この場合には油の製造者である利用者に供給する場合に、そのものの持っている特性、あるいはそういう特定のものに触れるような形で使うと危険であるというような特性を全く知らせないで、しかもそういう可能性があることを認識しながら供給していたというような場合には、私法的な損害賠償責任の問題も生じ得るかというふうに思いますが、本件の場合に、その問題となっておりますPCBの製造者がどういう地位でそれを供給していたか、どういう状態で供給し、どういう状態で買った者が受け取ってそれを利用していたかということについて私つまびらかにしておりませんので、これ以上具体的事件に即してどうだと言うことは差し控えさせていただきます。
#34
○伏見康治君 もう一つついでに教えていただきたいんですが、無過失責任という言葉がございますんですが、それはどういうことか、ちょっと教えてください。
#35
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 無過失責任という場合には、通常これは特に民事上の責任、不法行為責任、損害賠償責任に関して言われることが多いわけであります。もちろん債務不履行責任に関しても無過失責任ということは言われることがありますけれども、不法行為責任の面から申し上げますと、通常の損害賠償責任を負うのは行為者に、加害者に故意または過失がある場合に責任があるんだというのが一般原則でございます。
 それに対しまして、そういう状態では被害者の救済として十分でなく、かつ加害者の行為についてより重い責任を負わせることが正義の面からいってもいいしという判断が加わりますと、これに対しまして、最初は請求をする側が相手方に故意、過失があったんだということを立証しろと言うのが原則でありますが、その立証責任をひっくり返すということをやります。さらに高度の責任を負わせるべきだという場合には、その免責される場合を、故意。過失がないということを立証しただけではだめだという形で減縮をしてまいります。
 それは、例えば自動車の損害賠償責任の場合などはそういう形になっておりますが、さらにいきますと、およそ免責の抗弁を認めないという形で責任を負わせるということがございます。これはもう絶対責任でありまして、いかなる場合についてもそれを認めないというわけであります。ただ、一般に無過失責任と言われております場合に、絶対責任とイコールかというと必ずしもそうではないのでありまして、ある程度の免責は認める、これはどうしようもない不可抗力であるという場合に免責を認めるとか、特殊な不可抗力について免責を認めるというような場合がございます。それもひっくるめて無過失責任と言い、場合によれば結果責任とも言っておるわけでございます。ほとんど免責は認められない形でその発生した結果について責務を負わされる、これを総括して無過失責任、結果責任と一般的に呼んでおります。
#36
○伏見康治君 次に、角田さんにお伺いいたしますが、先ほどTMIとかあるいは今度のソビエトの事故とかいうのをお挙げになって、日本の原子炉の安全性を審査するときに使う概念で、仮想事故という概念があって、その仮想事故のけたをはるかに上回るものであるというお話があったわけです。実は私自身が昔仮想事故という概念をつくったものですから非常にショックを覚えるわけですけれども、もう少し数字的にちょっと教えていただきたいと思うんですが。
#37
○参考人(角田道生君) 手元に資料がございませんので、記憶で申しますから後で訂正になるかもしれません。
 現在の日本の百万キロワットの例えばBなどですと、仮想事故のときの希ガスの放出量がたしか三十万から七十万キュリーぐらいだったと思うんです。それに対してTMIの評価が、これはNRCでも幾つか分かれていますけれども、大体百二、三十万から千三百万キュリーというようなことですから数倍である。それから、そのときに評価した国民遺伝有意線量というのがございますね、日本のあれで二百万人レムというのを一事故当たりに想定して、これが先ほど申しました手引の中に入っているんですけれども、現行の評価方法でいきますと、クラウド、ガスの移行速度というのはかなり速いものですから、恐らく放出量に比例して国民遺伝有意線量の評価値も変わってくるというふうに思われるわけです。これはサイトの人口分布によって違いますけれども、三十万人レムぐらいの評価が福島第一原発とか東海なんかで出ていたかと思うんです。そうしますと、結果的には、例えばスリーマイルのような事故があそこで起こったら、二百万人レムを超しているというようなことになるわけですね。
 それから、沃素の方は、重大事故で数百キュリー、それから仮想事故でも二、三万キュリーの放出だったと思うんです、現在やられている審査で。それに対して、今ソ連の事故で伝えられる放出量は、私も仕事でそれをやっておりますから、推定をいろんなことでやっていますけれども、ウィンズケールのときに二万キュリー出ましたけれども、それを多分上回っているんじゃないか。そうしますと、明らかに十万キュリー以上、場合によっては百万キュリーのオーダーでというようなことも考えられるわけですね。
 そういう点で、じゃその数値を告示か何かでもって、この原発はこれだけ出るということを言っているかというと、そうではなくて、こういう基準で計算しなさいということを言っているわけです。例えばコンテナの、格納容器の格納の程度が〇・五%パー・デーという指針で評価されているわけですね。それで計算した結果そうなっている。スリーマイルの場合には、格納容器はちゃんとあるんですけれども、横の穴から補助建屋の方に行ってしまいますから、コンテインメントが機能しないというような現象も一つは出るというようなことで、がなりたくさん数を経ますと、基準がひとり歩きをしていく。指針がひとり歩きをしていく。先行例に倣うという解析が起こってきて、何となく、実際にどんな事故が起こってもあれ以上になるという感覚が、これは行政当局者だけじゃなくて科学者の中にも出てきそうだということを言いたかったわけです。
#38
○伏見康治君 塩出先生にあとをお譲りいたしま
す。
#39
○塩出啓典君 それでは、谷川先生にお尋ねをいたします。
 先生はいろいろ責任の問題について言われたわけでございますが、特に原子力委員会が、やっぱり廃棄物の処理に関して廃棄事業者の事業の継続性の確保ということを言われておりますし、それと特に発生者が事業者に対して適切な支援を与えていかなければいけない、こういうことが書いてあるわけで、私たちもそのとおりだと思うんですが、ただ、法律の上にはそういう点が何ら明記はされていない。そういう点で、これはもちろん法律的責任はなくても、道義的責任とかいろいろな責任があるから心配ないのかどうか、この点の御意見を承りたいと思います。
#40
○参考人(谷川久君) お答えいたします。
 事業の継続性の観点からは、基本的には廃棄事業者の事業の認可の場合に、その経済的な基盤、技術的な能力といったようなものを審査をして、それが十分将来の廃棄物事業を継続していくに適している能力があるという判断をするということは法律の中にも書かれております。それから我々が心配をいたしましたのは、万が一の場合にどうするかということでございますけれども、それは、そのためにこれを引き取れとかいうような形では今の炉規制法の体系のもとでは書けないということから、廃止をする場合に、それはその事業を引き継ぐ者が出てくる、あるいはクリーンにしてしまう、問題がなくなればいいんですが、そうでない限りは事業を引き取らせるというような措置を講じなければ廃止もできないという形、これは六十六条の改正の中でそれを入れようとしていると見られるわけであります。
 そしてそういう場合に、その者から譲渡を受けることも可能にするような面での手当てというものが五十一条の十二、あるいは相続といったものも含めてそういう目的があると考えれば五十一条の十三、あるいは五十一条の十九といったようなところ、十二、十三は合併、相続でありますが、十九がその譲渡の問題、そういうふうにして引き継がせることが可能であるような制度的な受け皿を設けておる。それだけにとどまっておるという形でありますが、この炉規制法の体系の中で書けばその程度しか書けないのかということで、やむを得ないというふうに申し上げたわけでございます。もちろん基本的には、本件の場合のみならず、例えば再処理の場合でありましてもその他の場合でありましても、物の移動に伴って前の者の責任がどうなるかといったような問題の点には本法の体系は直接的には触れていない体系になっておる。先ほど申し上げました施設規制、行為規制という形で行われておりますので、手当てをすればこの程度のことがとりあえず最小限度の手当てとしてなされている。そこから、先ほどの継続性についても、発生者に責任を負わせているその一部のあらわれだというふうに見ることができるのかなというふうに考えているわけでございます。
#41
○塩出啓典君 宮永参考人にお尋ねしますが、先ほど角田参考人の方から、いわゆるアルファ線とかそういうものを持っている放射性物質は外からわからない、そういうものが結局第四段階以下になりますと、もしこれが人間の体に入るとか、そうなると非常に心配だが、その点は心配ないのかどうか。いわゆる外部から識別できないアルファ線を持つ核種等の判別はどうするのか。その点御意見をお伺いしたいと思います。
#42
○参考人(宮永一郎君) お答え申し上げます。
 外からそのアルファ廃棄物を、しかも一番最後の段階ではかろうというのは、これは確かに無理でございます。しかしながら、例えば原子炉の運転の場合にどこから出てくる廃棄物かということと、それから燃料の管理その他から、大体この廃棄物の、さっきもお話が出ましたが、履歴と、それから最終的にコンクリートあるいはアスファルト固化する前にはかる、そういったものから大体の組成というのはまずわかるものでございます。
 それから、アルファ廃棄物といえども決してアルファ線だけを出して――ベータでも同じでございますけれども、この中に必ずアルファ崩壊をしてガンマを出すという核種がございまして、こういう核種でございますと、外からでもガンマをはかることによってアルファ核種の存在を知ることもできます。しかしながら、低レベル廃棄物の場合には、要するにリアクターの運転ですとか、あるいは原子炉の解体で出てくるあるこの種類のものというものの中にはそんなに心配するほどのアルファというのは入ってまいりません。したがって、いろいろな廃棄物の種類からこれは確かにアルファが入っているというのは、この低レベル廃棄物の中には、先ほども申し上げましたように排除していかなければなりませんが、それは最初の固化体をつくるときにやらなければいけないというふうに思っております。
#43
○佐藤昭夫君 参考人の皆さん、きょうは御苦労さまでございます。
 初めに、角田参考人に二つほどお尋ねをしますが、今日まで廃棄物の処分を行って環境汚染が広がった例、またそういったことからどういう教訓が得られるのかという問題が一つです。
 それからもう一つは、廃棄物の処分について外国の方針と、もし日本で行う場合の条件といいますか、考え方の前提といいますか、そういったものの違いはどういうところにあるのかという、こんな点で御説明願いたいと思います。
#44
○参考人(角田道生君) お答えいたします。
 廃棄物の処分で、低い方はみんなきょうの議論では固体廃棄物で始まっておりますけれども、原子力発電所の煙突からはもっと低いガスの放射性物質も出ているし、それから排水口からは多少の放射能のまじった排水が沿岸にも出るというようなことがあります。それら全体をくるめて考えますと、イギリスのセラフィールドの再処理工場から海岸にパイプを出しまして沿岸放出をしているものによる汚染の広がりというのが、当初専門家を想像していたものよりもはるかに大きくて、持続するというようなことが報告されております。
 例えば、ルテニウム106というような放射性物質が、今も海底土の中に幾つもの等値線が描けるような形で蓄積されている。それからセシウム137という三十年ぐらいの半減期の核種ですけれども、これの濃度が、十年ぐらい前のレポートですが、核実験によるフォールアウトの海水中濃度に比べて、海水中濃度がアイリッシュ海全体でほぼ百倍ぐらいの値を示していて、さらにこれがずっと北上しまして、スコットランドの北端まで行って、北海の方までぐるっと還流して追跡されておりますが、北海に注ぎ込むあたりで、バックグラウンドの十倍の値、アイリッシュ海では百倍の値ですけれども、そこでは十倍ぐらいの値というような形で広がっているわけです。
 それからもう一つはハンフォードで、これは有名な事故ですけれども、高レベル廃液の地下タンクに貯蔵中のものが漏えいしたという事故がありまして、これは一九七三年の六月八日に発見されたものですが、漏出容積は四百五十三立方メーターで、問題はやっぱり非常にたくさんの放射性物質が出るということ。この場合にはセシウム137が四万キュリー地面に出ていったわけです。ハーフライフ、半減期が五年以下のものの合計で三十万キュリーといいますが、これらの追跡は多分今も続けられておりまして、地中という自然バリアの中でどう移動しているかということもはっきりしたトレーサーとして追跡されていると思います。
 それから、アメリカでしばしば問題になりましたのが鉱山の鉱滓といいますか、ウラン鉱山で掘り出して製錬した残りのボタ山みたいなものを再利用しようということで道路工事などに使うということがありまして、初期のうちは小学校に通う通学路のところへそれを敷いてみたけれども、非常にレベルが上がっていることに後で気がついて全面撤去したとかいうような種類の話もあります。
 ただ、今申しましたようなことは御質問の第二点にちょっと関係してまいりますけれども、軍用廃棄物といわゆる民間廃棄物というものが廃棄物それ自体としては区別ができないという問題と、
それから世界の圧倒的な部分で原子力の利用というのは今日でも軍用であるし、そのスタートにおいては核爆弾を製造していくということで始まっているということに深い関係があるかと思うんです。
 一九八二年現在のアメリカの低レベル廃棄物の累積量で、国防総省とDOE関係が容積でもって民間の二倍以上と報告されておりますし、高レベルの累積量で見ますと、その容積では民間発生は一%弱、それから放射性物質の量、放射能で見ますと民間が三%弱ということで、ほとんど大部分が軍事利用の中でできてきた廃棄物である。軍事利用の中でできてきた廃棄物というのはいろいろな形でもって当初から処理されておったわけですけれども、大体は基地の施設の中で簡単な素掘りのトレンチを掘って埋め込むというようなことが人目につかずに割にやりやすかったという歴史があったと思うんです。
 廃炉の問題にしましても、今廃炉が一番たくさん出てくるのは、もう現に出ようとしているのがアメリカの原子力潜水艦その他各国の原子力潜水艦で、これは原発と違いまして技術更新を競っておりますから、耐用年数というのは非常に早いわけです。だめになった原子炉をどうするのか、それを解体するのかという問題がもうかなり前から出ているわけです。
 そういうようなことを中心として各国の廃棄物あるいは核燃料サイクルというものが構成されていて、そこでいろいろな議論がされている。その末端の報告が日本にやってきて、それを日本でただうのみにしていくということじゃなくて、日本は平和利用に徹した国というのにふさわしい核燃料サイクルと廃棄物政策というのをむしろ世界に提起していくような必要があるんじゃないかと思うんです。そういう点で、軍事利用廃棄物というもののインパクトが、原子力全体を世界じゅうに覆っているという中で、その一番大きな中心であります。アメリカについて一つ日本が学ばなくちゃいけないと思っておりますのが、この廃棄物を含めていろいろと、先ほど最初の発言で申しました指針とか法律によらない規制ガイドというような部分に関連してのことです。それについて我が国では、審議中のものが、審議の生の材料、数値、データをもとにして多くの人が、各分野の専門家、国民がそれを検討するということがなかなかできない。実際上は委員会でもって結論だけがレポートとなってみんなが読めるようになるということだと思うんです。
 ところがアメリカの場合には、各種の原子炉等に関するレギュラトリーガイドですとかいろいろな規制案などについて、これがドラフトの段階で、下書きの段階でずっと積極的に配布しているわけです、数値データなんかもつけまして。私も、日本のそういうデータは読めませんけれども、アメリカのものについては原研の図書館で環境基準的なものの審議状況は非常によくわかります。そうしまして、そういうレポートを見ていますと、表紙の次のところに、このレポートは以下の諸団体に配布していついつまでにコメントを求めているところであるというようなことで、ずっといろいろ団体が出ております。その団体の中に例えばザ・フレンド・オブ・ザ・アース、大地の友というんですか、そういう環境団体ですとか、それからいわゆる反原発団体ですとか、それから婦人の団体、消費者団体というようなところにもそういうレポートを配布し、それについてのコメントを積極的に公募しているということは、これは我が国も少し学んでいかなくちゃいけない点じゃないかというふうに思います。特に最近では原子炉の事故など含めまして、すべての国民とそれから特にいろいろな分野の、政府委員会に任命されない各種専門家のデータへのアクセス権というようなことをちょっと真剣に考えなくちゃいけない時期に来ているという感じがいたします。
#45
○佐藤昭夫君 そこで、宮永参考人にお伺いをしたいんでありますけれども、安全委員会の専門部会の主査なんかもなさっておったんじゃないかというふうに承知しておりますけれども、今の角田参考人のお話の中にもありました原子力関係諸機関の審議の模様、その中でのいろんな記録やらデータ、資料、こういうものについて、専門家はもちろん、市民団体などにもアメリカでは公表をして、いろいろとそれを目で確かめ、また意見を述べる、そういう機会がかなり広く開放されておるということと比べてみて我が国の場合どうか、こういう点で実際に専門部会なんかに参加をされておられまして、それを公表したらどうしてもまずいということが絶対にあるのか、そういう外国の例なんかと比べてみて我が国の原子力行政のあり方について改善すべき点なしとしないか、こういった点についてはどうでしょうか。
#46
○参考人(宮永一郎君) お答え申し上げます。
 大変難しい御質問で、どういうふうにお答えするかよく私にもわかりませんが、非常に細かい数字的なことと申しますのは、専門部会の下にさらにワーキンググループを設けまして、各研究所の相当若手グループも動員して審議をやっております。私が最近関与をいたしております廃棄物の問題に関しては、残念ながらまだそんなにいろいろな数字が出てまいりませんけれども、現在、先ほど申し上げた無拘束のレベルあるいは浅地処分をする低レベル廃棄物の上限値、それからさらにはいわゆる簡易な処分と申しますか、素掘りのピットに入れてもいいレベルの極低レベルをどうするか、そういった数値の問題が現在審議されておりますが、そういったものが出てきた場合にこれを公表して差し支えがあるかという御質問に対しては、私はないと思います。ただこれは、先ほど角田参考人が申しましたのは全くそのとおりでございまして、アメリカのやり方というのがそういうふうになっていると申しますか、非常にオーブンにNRCがやったことは我々のところにも伝わってまいります。したがって、そういうことがもし日本のやり方としてもできるのなら、もちろん見習うことは非常に好ましいと私も思います。
 以上です。
#47
○佐藤昭夫君 あともう少し時間がありますので、角田さんにもう一つお尋ねをいたしたいと思いますが、言うまでもなく、今下北半島、あの地域に、核燃料サイクル基地ということで、濃縮ウラン再処理の施設を含めてつくるということでいろんな議論を呼んでいるところでありますけれども、専門家の立場でこうした問題について何か御所見がありましたらこの機会にお聞かせ願いたいと思います。
#48
○参考人(角田道生君) 私は二つの立場で申しまして、一つは環境の安全研究という立場ですけれど、ただいまの六ケ所村近辺の自然条件ということを私は詳しく知りませんので、そっちの側面からの意見はきょうは差し控えさしていただきまして、労働組合の委員長なんかもやったというところでの体験を通じて心配なことが一つありますので、そのことで意見を述べさしていただきます。
 それはいわゆる三点セットと申しまして、ウラン濃縮それから再処理、廃棄物処分ということになるわけですけれども、廃棄物処分を除く他の二つはいわゆる核兵器生産のときに最初にアメリカが手がけた部分です。それを使うために原子炉をむしろつくったというようなものですが、それだけに核弾頭製造に直結しておりまして、核拡散という問題で国際的に一番重大な対象施設となっているわけです。この前フランスから返還プルトニウムが日本に輸送されました。物々しい警備とそれから情報非公開というような中で輸送されましたけれども、あれがそういう核不拡散、核物質防護という具体的なあらわれの一つです。そうしますと、六ケ所村というのが一番シビアな核物質防護対象施設ということになりますから、物々しい警備とそれから情報管制ということがしかれてくる、そういうところに廃棄物が、つまり国民がふだんずっと監視していくというようなことがしにくいところに置かれるというのはちょっと将来何か問題をはらんでいる。言ってみますと、かつての例えばアメリカやイギリスで基地の中に処分場をずさんな形で置いたというのに近いような社会環境のもとでという問題が起こり得るというふう
に思います。
 核物質防護というのは私どものところでもしばしば問題になっているんですけれども、例えば東京サミットのときに朝日新聞社に、二十四時間以内に東海の原発を爆破するという電話があったという理由で、原子力研究所の門が一斉に閉められまして、それから以降二十四時間以上もずっとたっているんですけれども、正門のところの門が半分閉じられまして、自動車がクランク状に行かないと通れないという、何となく自由に出入りする研究所、開かれた研究所というようなものと違う異様な雰囲気が現在まだ続いております。そういうような状況で、核物質防護ということで、例えば研究所の服務管理とか時間管理とか入出門監視ということが行われているというような点で、労働組合ではこれにしばしば抗議をしておりますけれども、六ケ所村の廃棄物でそんなことが起こらなければいいというふうに思っております。
#49
○佐藤昭夫君 ありがとうございました。
#50
○山田勇君 持ち時間が大変少のうございますんで、端的に素朴な質問をさしていただきます。
 まず、四参考人、大変御苦労さまでございました。
 室田参考人にお尋ねをいたします。
 先ほど来、室田参考人の御意見を聞いておりますと、まず原発というものは経済性としては成り立たないというふうに承っております。また、廃棄物質、核燃料物質の投棄、廃棄ということになれば、なおそれはもうコスト、採算性に合わぬということでございますので、その素朴な疑問からお尋ねをいたします。
 これは、今こそ石油の供給はやや安定をいたしておりますが、一時期石油供給の安定が非常に悪い時期がありました。そういう形の中で著しく代替エネルギーとしてこの原発というものが考えられ、そういう中に、非常に高速といいますか、急速といいますか、科学の進歩があったわけです。そういう中で、御承知のとおり、何といいましても平和利用という形で限定されております。言うならば長い歴史から、未来の歴史から見ると、我々は今、人類はパイオニア的な存在であると言っても過言でないと思います。そういうものの安全性を確認しながら、電力業者は努力しながら今電力を供給している。供給をしているが、室田参考人のお話を承りますと、これは採算性に合わない。合わないものをなお三十三基の原発をもって今の日本の経済といいますか、日本の電力の供給を続けていっている。未来、原発にかわるまた代替エネルギーというものが出てくるかもわかりません。そういう中で、採算性の合わないこの原発をなお続けていかなければならない。もっと端的に言いますと、この三十三基の原発を仮に稼働を一斉にとめたら日本の経済はどうなるかということ。これは大変難しい抽象的な質問になると思いますが、その点をちょっと聞かしていただきたいと思います。
#51
○参考人(室田武君) お答えいたします。
 三十三基というのは、これは、いつ全部とめなきゃいけないかもわからない。あしたにもソ連とかスリーマイル級の事故が起こったら即刻全部とめなきゃいけないわけですね。ところが、即刻とめてもいいように電力会社の方は供給設備を準備しているわけです。ですから、その三十三基を今とめたらどうなるかというと、ほかの遊休している火力発電所とか水力発電所が動き出して、それは短時間の停電はあるかもしれませんけれども、供給は十分に間に合う。そういうふうに原子力というのはもともと、さすがにソ連でも今回チェルノブイリ四号炉がとまったということで、同型の十幾つですか、全部とめましたけれども、日本の場合は恐らく一つでも事故が起これば全部当然世論としてとめることになるわけです。とめてもいいように原子力発電所というのはもともと、それほど危険なものですから、そういうふうに電力会社としても考えているはずです。ですから、とめたらそれで経済全体が大混乱に陥るということでは全くないということを御理解いただければというふうに思うんです。
 それで、では長期的にずっと凍結したらどうなるかということですけれども、その場合には原子力の研究をされている方とか、それからそこで働いている技術者の方とか、そういう人の転職ということが当然問題になると思います。でも今のうちならそういうことはできるんじゃないか。これは日本原子力産業会議の最近出た報告書なんかを見ますと、今回の事故にもかかわらず、まだ原子力をどんどん増設していく必要があるということですけれども、それを続けていけばいくほどとめにくくなってくる、あるいは廃炉の数が十年、二十年後にどんどんふえてくるということでますます問題が大きくなってくるということだと思うんです。
 それで、代替エネルギーとして原子力はどうかというような問題ですけれども、私いろいろな機会に申し上げているように、原子力自身がやはり石油がないと動かない技術なんですね。ウラン鉱石を掘るところからしてパワーシャベルとかブルドーザーとか石油を使って掘って、その鉱石をまた工場にトラックで運んでいるということで、原子力発電はどこからどこをとっても石油ないし石炭がないと進まないわけですから、その石油のかわりというわけにはこれは残念ながら、期待されている方には残念ながらと言うしかないわけです。そのかわりにはならないわけで、やはり石油とか石炭が潤沢に使える現代社会に出てきた技術である。しかも、その原子力を作動させる原理が核分裂によって放射能が出てくるときに生み出されてくる副産物であるその熱で、要するにボイラーのお湯を沸かしてタービンを回すということで、湯沸かしの技術にすぎないわけです。そんなところから見ると、原子力というのは技術のレベルとすれば、私の技術経済的な視点からすれば、これは蒸気機関と同じなわけです。ですからそういう意味では大した、大したというか、全くの技術の進歩がない。
 人間社会というのは、蒸気機関の後にさらに内燃機関という技術もつくり出して、そのことによって自動車とか飛行機が飛んだりしているわけです。ところが、原子力というのは何のことはない、蒸気機関ですから、いわゆるSLの世界に逆戻りしている。ただ、何が新しいのかというと、核反応ということについて従来よく知られていなかったようなことがわかってきたというだけのことで、技術のレベル自身は特に何も新しいものはないわけです。したがって、三十三基をとめるということに関して、経済的にはむしろそれだけ放射性物質が運転すればするほどできて、それが価値を生まない、むしろ負債をふやす。日本経済に対して非常に大きな負担を、一時間原子力発電所が動くたびに大きな負債を残しているわけです。ですからそのあたりをぜひ御検討いただければと思うんです。
 それから、一つ先ほどちょっと間違いがありましたので、この機会に訂正させていただきます。
 再処理のための使用済み核燃料等の再処理に当たっての正味の損失は、先ほど間違いました。正しく通産省のデータに従いまして言いますと一億五千万円程度ですね。それで、六ケ所村で予定されている再処理工場の場合、一応計画によりますと、一年間に八百トンの使用済み核燃料の再処理をするというふうに書かれておりますので、トン当たり一億五千万ぐらいだとすると、年八百トンということがもし仮に実現した場合、私は実現しないと思いますけれども、もし仮に実現したとすると、単純に一億五千万掛ける八百で年間千二百億ないし千四百億円ぐらいの正味の損失が出てくるということで、問題の立地予定地はむつ小川原開発株式会社が結局国家石油備蓄基地以外のものを立地できなかった。そのために累積赤字がずっとたまって、これまで十何年間にわたる累積赤字が千三百億円ぐらい昨年度ぐらいまでになっているというふうに言われますけれども、この再処理工場がもし仮にうまく動きますと、今までのむつ小川原開発株式会社の累積債務にちょうど匹敵するぐらいのものが一年で出てきてしまうということで、どう考えてもこの再処理というものが経済
的に意味を持たない。
 なぜ再処理ということが技術として、フランスとかイギリスとかアメリカで、歴史的には開発されたのかというと、言うまでもなくこれはプルトニウム爆弾をつくるための技術として開発されて、それを何かエネルギー利用にも使えないかということで提起されているだけのことでして、経済的には合わない。ただ、経済的に合わないものがなぜ日本でこれだけたくさん原子力発電所ができたのかというと、これはやはりアメリカと違って日本の場合、九電力が電力の供給を独占している。日本は建前として商品経済、市場経済をやるということになっていますけれども、事電気に関してはこれはソ連の社会主義と同じことでして独占になっているわけですね。
 したがって、独占の中での、これは電気料金の仕組みとかそういうことをお話ししないとあれで、そのための時間がありませんのでしませんけれども、アメリカのように市場経済のメカニズムを電力についても生かしていくという場合、アメリカには私の読んだ本の範囲では約三千五百の電力を小売できる会社ないし事業体があって、お互いの間である程度の競争、切磋琢磨というのがあるわけですけれども、日本の場合は北海道から九州までの九電力、それに沖縄電力が加わって、一億人もの人口がいる日本でわずか十社しか電力の卸売ができない。したがって実はお金のかかる原子力を推進するわけですけれども、独占ですから電力会社としては料金に高い費用を転嫁できる。料金が高かったら消費者が文句を言って、別のもっと安い電気を売ってくれる会社から買おうと思っても、一ブロック一社ですから、それがない。そういう日本の非常に特殊な電力供給の仕組みの中で、費用がかかればかかるほど、むしろブロックを独占している電力会社にとっては有利になってくる、あるいはそこに融資する都市大銀行にとってもそれが有利になってくる、そういう特別な構造があるわけで、そういったことも含めて日本の原子力開発全体をもう一度見直ししてみる必要があるんじゃないか。特に、原産会議の有澤廣巳会長がことし四月の年次大会で、日本の原発はもう安全過ぎる、オーバーデザインというようなことで、ECCS、緊急炉心冷却装置なんかもある程度簡素化してもいいんではないかというような、私なんかから見ますともう驚くべきと言うしかないような御発言をされている。そういう中で日本の原子力開発を、核廃棄物の問題も含めて続けていきますと、本当に日本がソ連と同じような事故に見舞われるという可能性を私は心の底から恐れております。
 以上でございます。
#52
○山田勇君 角田参考人にお尋ねをいたします。
 先ほどレベルの管理の区分のことをお話しされました。いわばドラム缶の外側と内側とのレベルの違い云々がありましたが、これは今回のこの法律の中でも、「廃棄物埋設事業者は、棄物埋設を行う場合においては、埋設しようとする核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物及びこれに関する保安のための措置が総理府令で定める」、いわゆる政令で定める「技術上の基準に適合することについて、総理府令で定めるところにより、内閣総理大臣の確認を受け」る。ですから、先ほど来言ったようなヒストリーが、いわゆる歴史が必要だということになりますと、電力会社から出てきて一定のところへ集まるときに、それについてきちっとしたヒストリーを持っておりますとそれなりの管理体制ができるし、ドラム缶に入れてから、外からのチェックも中のチェックも、入れる前のチェックという形の中で、技術的にこれはどのレベル、どのレベルというふうに区分ができないんでしょうか。
#53
○参考人(角田道生君) 最初にも申しましたように、私は、区分をつけて、その区分に応じて一定の軽減化というふうなことはあり得るという意見です、個人的に。ただし、そのときにいろいろな問題を総合的に見ておかないと、数値だけを、この切り方を何レムにする、何レムにするならまだいいんですけれども、それで検査方法としてこういうことにする、例えば大変難しいのは、先ほど参考人意見として、アルファ放射体が入っていても、ガンマを出すものもあるわけです。これについては、そのガンマの特質から、アルファが入っているかどうかということを確かめる方法もあるかもしれない。しかし、それをやろうと思いますと、波高分析器というふうな形でどんな線質のガンマが出ているのかということを見るということになりますと、そうするとどさっと来るやつを波高分析器に一個一個かけるのかということになると、必ずそこに省略も起こるでしょう。ですから、実際にはかなりルーチンの区分というのが機械化されてくるおそれがあって、片方、専門部会の方で喫緊のあれだとか緊要だとか、急げ急げというのが来ますと、そこのところでもって非常に機械的なルールができてしまって、それで今言いましたような廃棄物の履歴とかいろいろの諸問題を検討して日本流の廃棄物処理処分法をそこで練り上げていくということにならないで、処分の機械的な実行だけが起こってしまうんではないかということを申し上げたわけです。
#54
○委員長(馬場富君) 他に御発言もなければ、本日の参考人意見聴取を終わりたいと存じます。
 この際、参考人の方々に御礼を申し上げます。
 本日は、当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#55
○委員長(馬場富君) 速記を起こしてください。
 それでは、前回に引き続き両案について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#56
○菅野久光君 私は、動燃が高レベル廃棄物貯蔵工学センターを立地しようとしている幌延のある北海道出身でありますので、核廃棄物の問題につきましては前々から深い関心を持っております。当委員会におきましても幾度かこの問題を取り上げて質問をしてきたところであります。
 この原発の関係ではスリーマイル島の事故があり、そしてさきのチェルノブイリ原発の事故がありました。そしてまた、チャレンジャーの爆発事故だとかあるいは日航機の墜落事故等、科学の粋を集めてつくられたものが相次いで事故を起こして、チェック機能も十分だから安全だ、そういう神話がこういったたび重なる事故によって崩れているということが言えると思うんです。本日の新聞にも、アメリカやイギリスで放射能の事故があった旨が報道されておりますし、オーストリアではただ一基の原発、これはつくっただけで稼働していなかったようでありますが、これはもう稼働させないで解体をするというようなことが報道されております。原発あるいはこの廃棄物についての事故は一つ間違えば確実に人命に、また子孫に影響を与えるような問題だというふうに私は思うんです。
   〔委員長退席、理事志村哲良君着席〕
現実的にそうなっているからこそ、大きな騒ぎになっているわけであります。
 そこで、取り扱いによっては生命に、あるいは子孫に影響するような内容を持つ法律が今回のこの核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案だというふうに思いますが、この辺の認識はいかがでしょう。
#57
○政府委員(辻栄一君) 原子力発電、原子力の開発利用につきまして安全確保ということが最も重要である、これなしには原子力の開発利用の推進はできないということであろうと思いますし、私どもの行政としてもそれが最も重要なことであるというふうに考えております。諸外国におきまして、これまでいろいろ、スリーマイルアイランドの事故その他幾つかの事故がございましたが、それらにつきましてもその結果を検討いたしまして、これまでも我が国の原子力施設の安全規制に反映させるというような努力をしながら、一方においてはこの原子炉等規制法の運用面において、安全審査あるいはその他の諸規制に全力を挙げる
という方法をもちまして安全確保に私ども全力を尽くしてきているところでございます。
 その中にありまして、核燃料サイクルの確立、それに関連する放射性廃棄物の処理処分という問題の対策、これはかねて原子力開発利用を始めたころからの懸案事項であったわけでございますが、これについても具体的には昭和四十七年以降、原子力委員会が廃棄物の陸地処分というものを具体的にその方針に取り上げて以来、いろいろな安全研究を進めてきまして、さらに原子力委員会あるいは原子力安全委員会において安全規制の仕方、仕組みというようなものについての議論をし、両委員会決定等をいただきまして、この廃棄物の処理処分対策に関連する安全規制をどういうふうにしていくかとか、現行法を改良いたしまして、そしてこれらの廃棄物に関しましての安全規制を従来よりよりよくしようということで、私どもこの案を検討し提案させていただいたところでございます。この法案を成立させていただきました上は、この法律の運用に万全を期して廃棄物の安全確保を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#58
○菅野久光君 時間が余りありませんから端的に、そして私は専門家じゃありませんから、小学校の五、六年生の子供にもわかるような言葉で言っていただければ国民の人たちは理解してもらえるというふうに思うんです。そのことをひとつお願いいたしたいと思います。
 私は、生命にあるいは子孫に影響するような内容を持つ法律だと思うかどうか、こう聞いているんです。ですから、そのとおりであればそのとおり、あるいはそうでなければそうでないと端的に答えてください。
#59
○政府委員(辻栄一君) 今後の安全規制に関連いたしまして、これは将来の子孫に影響を及ぼさないようにやるための法律であるというふうに考えておる次第でございます。
#60
○菅野久光君 余り回りくどく言わないで、及ぼさないようなではなくて、及ぼしてはいけないからそういう意味でのこの法律を提案したんだと、もっと端的に答えてください。
#61
○政府委員(辻栄一君) 御指摘のとおりでございます。
#62
○菅野久光君 他の一般的な法律とはそういう意味では性格の違う法律だというふうに言ってもいいと思うのです。生命に、あるいは後代の子孫にこの法律の運用によっては影響を与える、そういうような法律だという意味ではいわゆる一般的な法律とは違うというふうに思うんですが、この点はいかがですか。
#63
○政府委員(辻栄一君) 一般的な法律と違うという御趣旨が私にはちょっとよく理解できませんが、少なくともこの規制法の関連でいきますれば、他の各施設とも各原子炉あるいは再処理等のものにつきましても、将来子孫に禍根を残さないようなための安全規制の法律である、
   〔理事志村哲良君退席、委員長着席〕
そういうような意味においては、この法律も今回の改正案も同じものであるというふうに理解しております。
#64
○菅野久光君 ですから私、前段で言ったのですよ。直接これの運用いかんによっては命や後代の子孫にも影響を与えるような法律ではないかと言ったら、そのように思うということでしょう。ですから、そういう意味で一般的な法律とは性格が違う法律ではないかというふうに私は言っているのです。それが違わないということであれば、先ほどの答弁とは完全に矛盾するんじゃありませんか。
#65
○国務大臣(河野洋平君) 最近に起こりましたチェルノブイリ原発の事故等を考えましても、放射能の恐ろしさといいますか、そういうものは国民の皆さんが過去の恐怖を思い出したりしていることであろうと思うわけでございます。
 この今回御審議をいただいております法律案が、そういう意味で核原料物質あるいは核燃料物質、そういったものを取り扱う原子炉の規制法の一部の改正でございますから、そういう意味でこの放射能の問題という、先生の御質問の趣旨がそういうことであれば御質問のとおりであろうと思います。
#66
○菅野久光君 やっぱり長官は、正常な感覚の持ち主だというふうに思うんですよ。余り局長、事実を何か横の方から曲げてわかりづらくするような答弁はやめてください。これじゃ国民は何を答えているのかわからないんです。今の長官のような答弁であれば国民は納得しますよ。そうじゃないですか、私はそう思います。恐らく聞いておられる方もそういうふうに思うと私は思うんです。
 そういう問題であるだけに、具体的な問題はいつも政令や府令でということとなっていて、これでは何をどのようにしようとするのか、その具体的な、またその科学的な点がこれだけではわからないわけです。ですから資料を出せ、どのように政令や府令を出すのか、その内容を示せと言ったら、項目的なものが出されてきました。しかし、これもまだこういったようなことでしか今の段階はないのか。もっと具体的にいろいろ考えられているところがあるのではないか。そうすれば、国民の生命やそれから子孫にまで影響を与えるような放射能の問題をどうするかというような法律でありますから、具体的にどのようにその政令や府令を定めていこうとするのか、その内容を決め、そして先ほど参考人の意見の中にもありました、これは安全局長も聞いておりましたね。国民的な理解を得るような準備をしてからこういう法案を出すべきではないのか、なぜ急ぐのか、その理由がわからぬのです。どうしてもこの国会でこの法案を決めなければならないという、その理由を端的にわかりやすくおっしゃってください。
#67
○政府委員(辻栄一君) 先ほども申し上げましたように、この廃棄物の処理処分問題というものは、昭和四十七年以降政策的にもあるいは科学技術的にも研究が進められてきたものでございまして、最近に至りましてそれについての成果がまとまってまいりましたので、今回この法案を提出している次第でございます。
 御指摘のように、政令にゆだねておりますところの埋設事業等に対する、埋設を可能とする廃棄物のものにつきましての政令の具体的数値というものは、先般のこの委員会でも御説明いたしましたとおり、ただいま原子力安全委員会においてこれまでの研究に引き続き検討が進められておりまして、近くこの夏までにはその数字が出る、そしてそこの対象となるものは、低レベル廃棄物の中でもこの数値がこれから決められます数値の範囲内にある極めて低いレベルの放射性廃棄物の固化体であるというふうに御説明してきたわけでございまして、この作業と並行しつつ、この法律案の御審議をいただきまして、今後の廃棄物の安全規制を厳格にやってまいりたいということでございます。
#68
○菅野久光君 昭和四十七年から今日までかけていろいろやってきた、それであれば政令や府令の中身の問題についていろいろもっと細かくあるんじゃないでしょうか。それも言われて言われてやっと出してきたのがこの紙四枚に印刷されたものです。これは国民はとても納得できない。本当に具体的にどうなのかというところがこの政令や府令にゆだねられるわけです。だから北海道では横路知事は、五百七十万道民の命にかかわる、そしてあのきれいな北海道が汚されてはたまらないということで、幌延に高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センターをつくることには反対をしているんです。
 それじゃ具体的な問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前にバートランド・ラッセルが、核は人類が我が手で文明を破壊させる引き金になりかねないと言っているんですね。あの有名な哲学者バートランド・ラッセルはそのような言葉を言われております。私もそのことを非常に恐れます。
 具体的な問題でお尋ねをいたしますが、TRU元素を含む廃棄物は動燃事業団に何本あって、どこに置かれておりますか。
#69
○政府委員(中村守孝君) TRU廃棄物は主とし
て再処理の工程から出てまいるものでございます。あと、プルトニウムの利用ということでMOX燃料の加工とかそういうものの研究、そういったもので出てまいりますので、現在三万三千本、六十年九月の時点でドラム缶に換算いたしまして約三万三千本程度ございまして、これは動燃の東海事業所とそれから大洗工学センターの方にございます。
#70
○菅野久光君 それじゃ、同じく動燃にTRUを含まないとされる一般低レベル廃棄物は何本あるのでしょうか。
#71
○政府委員(中村守孝君) それ以外の低レベル廃棄物というものが必ずしも東海、大洗ということでなくて、人形峠だとかいろいろな事業所にございますが、全体で同じ程度、約三万本程度あろうかと思います。
#72
○菅野久光君 TRU元素を含む廃棄物も、含まない、いわば一般低レベル廃棄物も大体同じ程度ということであるわけですね。何かいろいろ計画を聞きますと、これらの廃棄物は、幌延に貯蔵工学センターを立地するとすれば、そこに持ち込んで一般低レベル廃棄物は埋設廃棄する予定ということになるのでしょうか、その辺のお考えを聞かせてください。
#73
○政府委員(中村守孝君) 現在、貯蔵工学センターという形で計画しておりまして、今幌延を候補地といたしまして調査をしたいということで計画を進めているものといたしましては、これはあくまでも低レベル廃棄物につきましても立派なコンクリートづくりの建物をつくりまして、その中に貯蔵保管をするということを考えておりますので、今回の法改正によります区分でいいますと、管理の事業に相当するものを考えておるわけでございます。
#74
○菅野久光君 それでは、TRUを含まない一般低レベル廃棄物も管理の事業に当たるものだということで建物をつくってその中に管理をする、埋設をするという予定はないというふうに理解をしてよろしいですね。
#75
○政府委員(中村守孝君) 動燃事業団の中でも、例えば敦賀にございます発電所等から発生します低レベル廃棄物は、幌延に今持ち込むということを考えておるわけではございませんで、あくまでも貯蔵工学センターとして考えておるのは、TRU廃棄物がまじったそういった種類の低レベルのものを考えておるわけでございますので、これはあくまでも埋設ということは私ども考えておりません。
#76
○菅野久光君 一般低レベル廃棄物はそれでは幌延には持ち込まない、TRUを含む廃棄物だけを幌延へ持ち込みたいというのが今のお考えだというふうに理解してよろしいですね。
#77
○政府委員(中村守孝君) お答えいたします。
 貯蔵工学センターに持ち込みますものはいわゆるTRUと同じようなものでございますが、ウランもかなり長半減期のものでございます。このウランで汚れたものもございますが、一般的に原子力発電所、動燃事業団の場合で言いますと、敦賀にございます「ふげん」の発電所から出てまいります一般的な作業衣とかそういった種類のものまでも貯蔵工学センターに持ち込むというようなことは考えておりません。
#78
○菅野久光君 それでは、そういうものは今は約三万本ぐらいあるわけですね。それはどんどん運転していけばふえていくわけですが、それは将来どうなさろうとするお考えでしょうか。
#79
○政府委員(中村守孝君) お答えいたします。
 現在「ふげん」の発電所等で発生している廃棄物につきましては、まだ倉庫の貯蔵容量あるいは倉庫の増設等に対する敷地の余裕といったものはございますので、行く行くは長期的にはサイト外処分ということも考えなきゃならないと思いますが、現在のところまだそこまでの具体的な検討には入っておりません。
#80
○菅野久光君 電事連でやり始めた六ケ所村に持っていくというような考えも今の段階では持っていないということですか。
#81
○政府委員(中村守孝君) そういうことでのまだ事業者の方と、動燃事業団のものも預かってくれよというような形でのお話し合いは何もいたしておりません。
#82
○菅野久光君 低レベルの廃棄物の問題でございますから、ちょっとこれに関連して、六ケ所村にこういったようなものができますと、今冬原発サイトにある一般低レベル廃棄物をそこに持ち込むということを考えて、六ケ所村に今施設をつくろう、こういうことなんですか。
#83
○政府委員(中村守孝君) これは電気事業者が共同していわゆる発電所の中で発生いたします廃棄物を集中貯蔵しようという計画で始められたものでございまして、そこへ持ち込むものにつきましては、今ここで考えております規制法の改正によりましていろいろそこに持ち込むものについては必要な条件というものが付されるわけでございますので、その必要な条件を充足するものについては六ケ所村の最終貯蔵場に持ち込みまして埋設処分されるということになろうと思います。現在、発電所にございます低レベル廃棄物を何でもかんでも持っていくということではないというぐあいに承知いたしております。
#84
○菅野久光君 一定の条件というのは、考えられているのはどのような条件でしょうか。
#85
○政府委員(辻栄一君) 基本的には放射能濃度でございます。この点につきまして、先ほど御質問ございましたように具体的な数字につきましては、原子力安全委員会でことしの夏ごろまでに決めるということにいたしております。その他の廃棄物についての条件も幾つかございますけれども、それは廃棄物固化体の強度でございますとか、表面線量率でありますとか、そういったようなものでございます。基本的には放射能濃度で区分されるということでございます。
#86
○菅野久光君 放射能の濃度で基本的には区別されるということですが、今、原発サイトで貯蔵されている一般低レベル廃棄物はそういうことでもう五十何万本ですか、約六十万本に近いものがそれぞれの原発サイトで貯蔵されている。それらの放射能の濃度というのは、今貯蔵されているもので区別されるようなことになっておりますか。
#87
○政府委員(辻栄一君) 区別できるような記録のきちっと残っているものと残っていないものとございます。音といいますか、原発が始まったころには、固化体をつくるときにそこの内容物の核種分析等を余りやっておりませんでしたので、固化体の一部にはそういう素性のわからないものもございます。これは埋設に適しているものとして認めるか認めないかということになりますと、認める材料がございませんので、これは適するものとは認めない。したがいまして、そういったものは埋設に適さないものとして取り扱いたいと思います。発電所によりましていろいろ違いますけれども、昭和五十二、三年以降はそれぞれ製作の過程で分析をやってきておりますので、そういったようなものが記録に残っており、かつは何らかのサンプリング検査等の手段によりましてその資料が正当化されるというものに限りましてこれの埋設を認めるということにいたしたいと思います。この点につきましては、前回の委員会でも稲村先生から資料提出の御要求がございまして、ただいま提出資料を作成しているところでございます。
#88
○菅野久光君 衆議院の方で聞きますと、今原発サイトにあるものも何か無差別に持っていって埋設にするのかどうするのか、いくような話があったように聞いておるものですから、履歴が確かでないものをそういうふうにするということは、これはやはりだれが考えてみてもおかしいのではないかというふうに私は思いまして、それで今お聞きいたしました。履歴の確かなものだけを持っていく、もっと端的に言えばアルファ放射体の問題が一番やっぱり問題になってくるわけですが、それが中にきちっとなっているかどうかということは、もうそれぞれのサイトで、低レベル廃棄物を置く場合にそういうものは仕分けして置いてあるというふうに理解してよろしいんですか。
#89
○政府委員(辻栄一君) 原子力発電所から出てまいります低レベル固化体につきましては、発電所
の施設の機構から見て、基本的にはアルファ核種のものは入っていないというのが原則でございます。しかし、中には、これは衆議院でも議論がございましたけれども、美浜の原発のように、事故がありまして燃料棒が破れたというようなことがありますれば、そこが破れてアルファ核種のものがまじってくることもあろうかと思います。そういう点はこれまでの原子力発電の運転の記録を調べればはっきりしてくるということでございます。
#90
○菅野久光君 原子力運転の記録を調べればわかるということなんですが、一般の国民からすれば、このアルファ放射体が果たして十のマイナス六乗から十のマイナス五乗マイクロキュリー以上含まれていないものかどうかということをきちっと確認をしなければ安心できないというものがあると思うんです。本来的には、行政と国民との間にきちっとした信頼関係があればいいんですけれども、残念ながら幌延のあのやみ討ち的な調査などに見られるように、全く信頼がないんです。信頼がないから、果たして、そうは言っても本当に信頼できるのかな、信用できるのかなというのが率直な気持ちなんです。そういうものをどこかでチェックしたいといった場合に、どのような方法があるでしょうか。
#91
○政府委員(辻栄一君) これは、原子力発電所において廃棄物をつくるわけでございますから、これに対するいろいろな保安規定その他の規定によりまして記録義務あるいは固化体の製造の仕方について規制を加えているわけでございまして、基本的にはそれに従わせる。これに違反してやった場合には、これは罰則あるいは営業停止等の処分があるわけでございますから、そういうことをベースといたしますが、そのほか、途中、適宜立入検査によりまして所要のチェックを行うというやり方をとってまいりたいと思っておるわけでございます。
 なお、そういったものの結果というものは当然記録されますし、この五十一条の六のところに確認という規定がございますので、実際に埋設をするという段階にいたしましては、この確認の規定の活用によりましてそういうものの中にTRU廃棄物が含まれていないというようなことを確認してまいりたいということでございます。
#92
○菅野久光君 その確認の方法が、確認ということがあるから確認するんだということだけでは、これは納得できないわけです。
 私はちょっとお聞きしますと、非破壊測定は目下開発途上だということでまだ未確実だということでありますが、この測定法で測定しても、外側からではせいぜい十の二乗マイクロキュリーまでが検出限界であって、十のマイナス六乗以上含まれていても検出されないというのが現在の技術水準というのですか、検査水準というのか、そういう測定の今の技術水準だというふうに聞いておりますが、それはいかがですか。
#93
○政府委員(辻栄一君) それは、先生御指摘のとおり、また先ほど宮永参考人の意見陳述にもありましたとおり、外側からアルファ廃棄物を確認しようという技術はまだ実用の段階に達しているとは思われません。したがいまして、我々が確認する場合には、やはり固化体につくる前の廃液等についてのそれの核種分析をやるというやり方でチェックする以外には方法はない。それからあるいは既存のものについてどうだということがあろうかと思いますが、これは非破壊検査ではできませんので抜き取りにならざるを得ませんけれども、抜き取りによって破壊検査をして、中から試料を取り出して分析をしてみる、こういうことによってチェックをすることが可能であるというふうに思っておるわけでございます。
#94
○菅野久光君 後段の方で言われたように、ドラム缶を幾つかサンプル的に破壊して、いわばアスファルトを溶かして測定するということなんですね。しかし、そうやって測定するとしても、何か測定限界は五掛ける十のマイナス三乗程度であって、とても十のマイナス六乗までは検出できないというふうに言われておるんですが、この点はいかがですか。
#95
○政府委員(辻栄一君) この点においては、原子力研究所で今いろいろ研究をしておりますが、現状の技術レベルでピコキュリーのオーダー、つまり一兆分の一キュリーのオーダーまで分析によれば検出することができるというふうに聞いております。
#96
○菅野久光君 分析はできる。それじゃ私が聞いているのは間違いですね。そこのところは確認をしておきます。私が聞いているのは五掛ける十のマイナス三乗程度であって、十のマイナス六乗まではできないというふうに聞いているんですが、それができるというのであれば、そこのところは確認をしておきます。一般の住民サイドでは確認ということが書いてあったとしても、本当に安全かどうかということを確認することはまず技術的には私は不可能ではないかというふうに思うんです。ですから、ドラムに詰める前、あるいはアスファルト固化する前の段階で、きちっとそれが測定されて、これはこっちこれはこっちというふうに仕分けされるその段階のものであれば、それは確認できますね。これも何か民間に委託するとかなんとかという話もありますから、果たして本当にそういうことでいいのかどうかという問題は別にしても、ドラム缶に入れる前であれば、これはある程度信頼ができるのではないかと思いますが、詰めてしまったものについては、これはなかなか私は確認することができないと思うんです。
 次に、高レベル廃棄物でありますが、高レベル廃棄物についてはガラスと流し込んでから後、溶接する部分は検査のしようがないのではないかというふうに思うんですが、それはどのようにお考えですか。
#97
○政府委員(中村守孝君) 現在、ガラスを溶かし込みまして後ふたをして、それを溶接で本体とつなぐわけでございますが、うまくつながったかどうかという検査につきましては、現在では溶接した後の目視検査、それからその前に通電したときの電圧、電流、それから通電時間、そういった溶接の過程の記録を見まして、うまくつながっているということを確認するわけでございます。このつながっているか、つながっていないかの確認の通電時間とか、そういったものにつきましては、これはもう事前の研究で十分いろいろな資料につきましてやっておりますので、その点は問題ないという確信を持っているわけです。
 ただ、一般によく溶接で問題になりますピンホール的なもの、こういったものまでそういったことだけで確認できるのかという御疑問があるのではないかと思うわけでございます。このキャニスターの役割でございますが、これは内部を気密構造に保つということを必ずしも目的としたものではございませんで、何分にもガラスというのは機械的強度の弱いものでございますから、そういう意味で一つにはガラスを保護する、それから当然熱いガラスを溶かし込むわけでございますので、容器として必要な強度あるいは耐熱性といったものを保てるようなものでなければいけないということからこのキャニスターができておりまして、万が一ピンホールがあったといたしまして何が問題になるかというと、もし内部が危険な放射能を持ったガスでございますと、ピンホールといえどもこれは放置することができないわけでございますが、そういうガスは発生しない、表面から理論的には極めてわずか出るわけでございますが、これは濃度的に問題にならないものでございます。
 それから、外部からの水の浸入等につきまして、浸入して何が問題になるかということでございますが、ガラス固化体がどっぷり水につかりますと、その表面から若干ずつでもガラスと一緒に内容物が溶け込んでいくということが考えられるわけでございますが、ピンホール程度のものでございますと、大体がキャニスターの表面温度が貯蔵状態におきまして百度程度のものでございますから、空気中にある水分程度でございますと、そもそも、その表面にも露点、露点というか、露になってとまるということもないわけでございまして、外部からの水の浸入という、たとえ浸入した
としても、溶け込んで外に出るという可能性は考えられないわけでございまして、そういう意味から、そこまでの精密な溶接検査といったものは必要がないということで、現在考えられている方法で確認は十分であるというぐあいに私どもは考えておるわけでございます。
#98
○菅野久光君 大分、原子力局長は何か苦しい答弁をされているように私は思えてならないんです。テレビで目視できちっとなっているかどうかを確認する、あるいは通電テスだとか、そういうことで確認する、しかしピンホールということになれば、ちょっとわからないということなんです。本当に強いガンマ線等のために、例えば本当にこれは大丈夫かということを破壊して検査したり、あるいは気密テストなどというものをやることも、キャニスターに実際に詰めて溶接した後、できないんでしょう。それはいかがですか。
#99
○政府委員(中村守孝君) 例えばエックス線調査とか、よく溶接の検査に使うわけでございますが、これは内部から放射線が出てまいりますので、それは使えません。音波探査というようなものが使えるかどうかということはあろうかと思いますが、その前に私どもは、このキャニスターが気密構造である必要はないということでございまして、そういう意味で、そのような精密な検査は必要はないという認識でございます。
#100
○菅野久光君 そうしたら、動燃が「ガラス固化体について 九つの質問」で、三ページに、「最後に容器は溶接され、密封されます。」、こう書いてあります。密封という意味はどういう意味ですか。
#101
○政府委員(中村守孝君) お答えいたします。
 どこまで厳密な意味で申したかわかりませんが、通常、密封ということで、中のものを閉じ込めるという意味で使ったんだろうと思います。わかりやすくそういう言葉を使ったのじゃないかというぐあいに思いますが、全く我々が技術的に考えている気密構造というものである必要はないというのが関係専門家の意見でございます。
#102
○菅野久光君 もっと社会常識的なことでいかないと、これは科学技術庁なんですよ。今の答弁なんて極めて科学的じゃないですよ。いつだったか北海道議員団で行ったときも、科学技術庁じゃなくて政治技術庁じゃないかということを言いましたけれども。
 これを見まして、今のような答弁のわからない道民は、随分何か危険だから持ってきたらだめだ、だめだと言うけれども、キャニスターという容器の中へ入れて、密封されて中に入ったものは出てこないんだからいいじゃないかというふうに思うのが、私は普通の人たちだと思うんです。これをちゃんと出しているんです、五十九年の七月に。それじゃ、ここに書かれている「最後に容器は溶接され、密封されます。」という説明は間違いだということですか。
#103
○政府委員(中村守孝君) 私が申し上げたのは、ガラス固化体が密封されているということにおいては事実上変わりないと思うんですが、厳密な意味でピンホールがあるかどうかということになりますと、それは内部が放射能を有するガス体である場合に問題になるわけでございまして、たとえピンホール程度のものがあっても、中のガラスの固化体が外に出るわけじゃございませんし、通常は精密な、先ほど申しましたように厳密な意味での密封の検査をしなければそれはわからないのかもしれませんが、通常の状態であれば密封されておるわけでございまして、誤りであるか、先生の御解釈のような厳密な意味で言葉を使えとおっしゃるんであれば、そういう意味での誤解、通常の方がどの程度の誤解をするかという問題ですが、先生のおっしゃるような厳密な意味でその言葉はどうか、こう言われれば、必ずしも適切なものであるということは言えないかもしれません。
#104
○菅野久光君 通常の人がどうのこうの、私は通常の人間だと思っているんですよ。私はこれを見て、今のようなピンホールの話が出るとは思わなかったんです。だけど局長自分からピンホールの話を出されましたから、まあ出さなかったら私も聞こうとは思ったんですがね。
 それで密封という言葉の持つ意味、社会常識的にですよ、それを私は聞いているんです。だから、こういう厳密な意味ではということになれば、私は決算委員で先日もやったんですが、建設省の河川局が流水占用料、あれが法律も決めもしないうちから、もうできたようなパンフレットを出しているわけです、立派なカラーのやつで。それから、ついこの間は検察庁が「検察の素顔」ということで、今まさにまだ事件が集結してない撚糸工連事件の問題を取り上げて、いかにも検察の宣伝をやっておるわけです。
 動燃というのは政府が金を出しているわけですから、今のようなそういう説明であれば、これも正確さを欠いている宣伝の資料ではないか、パンフではないか、そういうふうに思わざるを得ないんですが、いかがですか。
#105
○政府委員(中村守孝君) 密封という言葉は、例えば溶接をされておりまして、中にガラス固化体が入っていて、そのガラス固化体が容器の中から出てこないという意味で、まさにその程度の溶接というのはきちっとできるわけでございまして、あるいは溶接の中に巣があるとか巣がないとか、そういう検査まではできないということでございます。事実上、中に入っているガラス固化体が外には出ないよという意味においては密封という言葉の方が一般の方にはわかりやすい、そういうぐあいに私は思います。
#106
○菅野久光君 もっと厳密にこの種のものはやらなければならないんですが、それでは聞きますけれども、動燃で出しております「高レベル放射性廃棄物地層処分技術開発成果報告」というのが出ておりますが、その三十ページの「固化体容器」の中で耐蝕性ということが出されているんです。「従って」「耐蝕性」など「において優れた材料であることが要求される」、こうありますね。「耐蝕」というのはどういうことなんですか。
#107
○政府委員(中村守孝君) 先生御指摘のところに書いてございます「耐蝕性」、これは最終処分をしまして、深層に埋め込んだ場合の状況を考えておるわけでございまして、その状況においては当然水分とかいろいろな外的条件の中にさらされるわけでございまして、金属を腐食しやすい条件の中に置くわけでございます。
 それで、これが周辺の水分とガラス表面体が接触いたしますと、そのガラスの接触する面積が多くなれば、その部分から溶け出る量も少しずつではございますが、面積が多くなれば多くなるわけでございますから、そういう意味でやはりガラスの表面ができるだけ水分に接しないようにする必要がある。そういうことで腐食しやすい材料は使わないで、腐食しにくい材料を使ってガラス固化体ができるだけ水分や何かと接触しないようにしようということで、それで少しでも時間を稼ぐ、時間という意味は何十年、何百年という時間帯でございますが、そういう時間を稼いで、その外に人工バリアを設け、さらには自然バリアを設けて、人間界に戻ってくるまでには放射能がもうほとんど問題ないようなものにしてしまおうということです。そういう意味での腐食に対する耐力、そういったものが必要であるという意味で、ここで耐蝕性という言葉を使っておるわけでございます。
#108
○菅野久光君 キャニスターの容器は人工バリアの一つで、耐蝕性というのは、そこがむしばまれて、それこそ腐って穴があかないということが耐蝕性、簡単に言っていけばそのように考えていいわけでしょう。
#109
○政府委員(中村守孝君) ここで考えておりますのは、ピンホールだとかあるいは小さな穴程度のことということで問題にしているわけじゃございませんで、キャニスターが長い間にはいずれはぼろぼろになっちゃうわけですね。そうすると、そのガラスの表面が直接周辺の、人工バリアがなければ、あるいは人工バリアがあっても水分がそこへくれば水と接するわけですから、そういうガラス固化体が水と接する表面積をできるだけ少なくする、時間もできるだけ長く水と接しない期間を
保ちたい、そういうことのためにやっているんであって、発電所でいろいろ問題にされているような厳密な意味でのピンホールだとかクラックだとか、その程度のものでの意味ではないわけでございます。
#110
○菅野久光君 しかし、ピンホールがたとえ本当に小さなものであっても、そこは腐食の際にほかのところよりもそこのところから腐食が先に進むということはあり得ませんか。
#111
○政府委員(中村守孝君) そういうことは十分あり得ることでございます。
#112
○菅野久光君 最も常識的な答えだというふうに思うんです。そうですよ、だから心配するわけなんです。完全に密封されていなくてもいいんだ、必ずしもそうでなくてもいいんだと原子力局長は言いましたけれども、しかし今までの説明はそうじゃないわけでしょう。密封されます、密封されるということは、そういうピンホールもとにかく含めて完全に密封されるというふうに、少なくともこういう危険なものでありますから、そう思うのは自然じゃないでしょうか。
#113
○政府委員(中村守孝君) 先ほど来の腐食の問題、御指摘の三十ページの話は、先ほども申し上げましたように、深層中に最終的な処分をした場合のことを申し上げておったわけでございます。いわゆる三十年ないし五十年貯蔵しておくという期間につきましては、乾燥した空気で冷却する部屋の中に入れて貯蔵しておるわけでございまして、そういう意味でピンホールがたとえあっても、しかもガラス固化体だとか内部にガスがあるわけじゃございませんので、外に危険な放射能が漏れるということではないわけでございます。極めてわずかのガスが表面から揮発するものが理論的には考えられるわけでございますが、これは建物の中の放射線モニタリングをやるわけでございますので、そういった点で十分に管理される、こういう性格のものでございます。
#114
○菅野久光君 放射線モニタリングをやるから十分にわかる、それじゃ、入れ物の中に何本入れるんですか、キャニスターを。放射線が仮に漏れたときには放射線モニタリングがあるから十分にそれで対応できるような今のお答えですから、それではキャニスターを入れておく、そこの中には何本のキャニスターを貯蔵するという予定なんですかと聞いているんです。
#115
○政府委員(中村守孝君) まず、先生の御質問から直接お答えしますと、今計画している貯蔵工学センターでは、その貯蔵建物全体で二千本のものを、それでモニタリングで監視すると言いましたのは、あくまでも先ほど来申し上げておりますように、ガラス固化体は外に出るものでもございませんし、それからガスが理論的には出てくるものがあるけれども、事実上はほとんどないということを申し上げておるわけでございますが、モニタリングというのはあくまでもいわゆる多重防護の観点に立ったものでございまして、何かそういう直接的な危険性があって、そのモニタリングでやるからそういう直接的な危険はない、こういう意味ではございません。あくまでもいろいろなチェックのシステムはできていますという意味で申し上げたわけでございます。
#116
○菅野久光君 じゃ、ピンホール程度じゃもう心配はないんだということなんですが、これは直径とのぐらいのものをピンホールと言われるんでしょうか。
#117
○政府委員(中村守孝君) どのぐらいのものをピンホールと言うかという厳密な意味の定義はございませんで、目視できないようなものから、いわゆるピンホールというからには通常言われているピンとかそういったものの太さ、そういったようなものを連想していただければと思います。
#118
○菅野久光君 極めて漠然とした話で、ピンと言ったって太いのから細いのまであるんですよ。そうであれば、太いものも大きな穴もこれもピンホールだということで見過ごされてしまうのではないでしょうか、今のような答弁だと。
#119
○政府委員(中村守孝君) お答えいたします。
 基本的にはふたが簡単には外れないようにきちっと溶接するわけでございますので、目視でわかるほどの大きな穴があいていればこれは溶接が不良だったなということでやり直しをすることになるわけでございます。問題になりますのは、先ほど先生から御指摘いただいている目視検査じゃわからないようなものをほうっておいていいのか、こういう御質問でございますので先ほど来のお答えをしておるわけでございます。
#120
○菅野久光君 その程度のものは大丈夫だ、大丈夫だということで見過ごしていく、その積み重ねが大事故を引き起こしていくわけなんです。これは飛行機事故の場合もそうですし、いろいろなそういったような小さい事故、そういうことの積み重ねが結果的に大事故を起こしていく、そういうことになっているというふうに思うんです。あのときにああだったらなというようなことを言ってももうそのときは遅いんです。しかも私は冒頭申し上げましたように、このことは命や子孫にまで影響する問題なだけに私はとても見過ごすことはできないんです。ですから、ピンホール程度のものは大丈夫だ、そしてモニタリングで放射能漏れなりなんなりがあればそこできちっととらえて対応できるからいいんだということでいけば、入れ物の中には二千本からある、もしもその中で何かの関係でキャニスターが脆化して破壊されたとか、何かそういうようなことが起こったときに二千本のもの、あるいはそうなる前でもいいですね、なる前に二千本のものを一本一本何かモニタリングで調べるということができるんですか。
#121
○政府委員(辻栄一君) ただいまガラス固化体の強度の問題でいろいろ御議論があるわけでございますが、先生御指摘のように、やはり溶接したからにはピンホールがあったりなんかするのは好ましくないわけでございまして、その点については、外からの目視検査でやりますればそんな大きなピンホールが発見できないというものではございません。エックス線検査等でそれを見るというのは、周囲が非常に放射線レベルが高いわけですからこれは実行不可能でございますが、一応外側からの目視検査ということで溶接については検査を行うということを原子力局長は申しているわけでございます。
 溶接の結果、その溶接検査のやり方にもピンからキリまでございまして、そういった目視検査だけでいい部分とそれから強度的に非常に重要な部分についてはエックスレイを撮るなりなんなりそういった検査もやらなきゃならぬ部分もあるだろう。その中でキャニスターのふたの溶接というのは、これは一応密封するということができておればいい程度であって、もともとガラス固化体の中には放射性の希ガスが正常の時点からもうほとんど入っていないということから、将来、放射性希ガスが発生することはほとんどないわけでございます。したがいましてキャニスターの中は圧力は高くはならない。動燃の試算によりますとアルファ崩壊によってヘリウムガスが出てまいります、これは非放射性のガスでございますが、五十年間の貯蔵で約一割増しの内圧になる、つくったときは一気圧ですから一・一気圧程度のものでございます。したがって溶接に少々のピンホールがあったからといって、溶接に非常に過度の応力がかかってそれがとれてしまうというような心配はまずないものであるから、したがってキャニスターのふたの溶接については外部目視検査で十分であろうということを先ほど原子力局長が申していたんだと思います。
 それで、私ども安全規制の立場ですとどういうことをやりますかというと、まず基本的には、キャニスターがありますと、その周りを原発や再処理と同じようにコンクリートできちっと固めた施設で管理をする、そして途中、冷却用の空気が流通するわけでございますから、そこから出てくるその空気に仮に放射性物質がまじっていると困るので、それについては排気ガスのところでフィルターをつけてこれを抑える、もちろんモニタリングをつけまして。多量のガスが出てくるメカニズムというのはまず考えられないんですけれども、念のためにそういうものをつけてモニタリングで
監視をする、こういうようなシステムを考えているわけでございまして、そういう意味でキャニスターのふたの溶接がエックス線検査をやることはできないわけでございますけれども、できなくても十分であるということを申し上げているんだと思います。
#122
○菅野久光君 今の答弁では納得できないです。目視なんですよ、どれだけ目のいい人が見るんでしょうか。人工衛星が宇宙を回ってそして何か地球上の自動車のナンバープレートまで見えるようなそのぐらいの精巧なカメラがあるような話は聞いていますけれども、目視なんです。ですから、それは常識的に言って目に見えるものと目に見えなくても穴が、いわゆるピンホールですね、そういうものがあるわけですから、だからいえば穴、いわゆるピンホールというか溶接の欠陥というものをこれは一〇〇%確認するということはできない。したがって、住民サイドから、自治体や依頼する機関が密封されているかどうかを検査するという方法は実質的にはないのではないか。それから、先ほどから答弁の中にほとんどという言葉が使われているんです。だけれども、ほとんどということはまだ可能性があるからほとんどという言葉を使われているわけです。私は冒頭にも言いましたように、事命にかかわったり子孫にまで影響のあるものだから、ほとんどというあいまいなことでこのことを処理してもらっては困るんです。
 それから、ついでに聞きますが、それじゃ二千本のキャニスターを貯蔵工学センターなら貯蔵工学センターに置いて、その中で一本か二本がとにかく何らかの形でキャニスターが破壊されて放射能が出たという場合にはどういう処置をなさるんですか。
#123
○政府委員(辻栄一君) まず、壊れるモメントが基本的にはないわけでございます。まず最初に、ガラス固化体で固化をしてしまう、したがってそれ自体壊れるものではないわけです。その外側をステンレスの筒で囲う、そしてそれをがっちりした施設の中に安置しておくわけですから、基本的にはそういうものが壊れて散らばるということは、そういうモメントが考えられないわけでございます。そういうことで、仮にそれでもし先生のおっしゃるようにどういうわけかしらぬけれども壊れたということであっても、問題は外側に放射線が出るか、あるいは放射性のガスが出るか、あるいはちりが出るかという問題であろうかと思うんでございますが、それについては先ほど申し上げましたように、周辺の遮閉体構造等についてきちっとしたものをやる。また、空気の流通につきましては、フィルターをもって何重にもこれを抑えるというような格好によりまして管理するわけでございますからして、その点の心配は無用であるというふうに考えるわけでございます。
#124
○菅野久光君 その辺の心配は無用だ、まあ局長が生きている間は、今局長の言ったようなことでいくのかもしれないんですよ。しかし、ソ連の原発だって見てごらんなさい。あそこだって恐らく安全だ、安全だと言ってきたと思うんです。スリーマイル島だってそうだと思うんです。日航機だってそうだ。スペースシャトル「チャレンジャー」だってそうです。まさかああいう形になるとは思わなかった。思わなかったことが現実にここずっと起きているじゃないですか。だから、そんなことが起こるはずがないということで今言われたって困るんです。もしもそういう事態が起きたときに、二千本のキャニスターを入れ物の中に入れてある、その中で今言ったようなキャニスターの破壊事故というのか、そういうものが起きたときにはどのようになさるおつもりですかと聞いているんです。
#125
○政府委員(中村守孝君) 先ほど来のキャニスターの役割が、ガラス固化体というものは密封といいますか、中のものを少しでも外へ出しちゃいけないという感じからいろいろな議論があるわけでございますが、貯蔵所に保管しているという段階におきましては、逆に言えばキャニスターは別に遮閉をしているわけでも、そこから出てくる放射線を鉛のように遮閉するとか、そういうことは全然というか、効果はないわけでございます。そんなことを期待しているわけではございません。先ほど来申しておりますように、ガラス固化体を機械的に保護するということが主体でございまして、ガラス固化体はキャニスターの中におさめられる。ある意味で密封されておるわけでございます。
 それで、先生のおっしゃるような、何かどういう原因がわからないけれども例えばキャニスターがぱっかり割れちゃった、割れてガラスの表面が露出した、そしたらどういうことになるか。ガラスの表面が露出しても貯蔵されている間においては何らそこから出る放射線に差があるわけでもございませんし、そこから急に放射能ガスが出るわけでもございませんので、そういう意味での問題はないわけでございます。それで、そのガラスの固化体がそれでは転げて下に落っこちて割れてしまった、そしたらどうするか。その場合でも建物の中、建物が外とは遮閉しているわけでございますから直接には外部の人に影響があるわけではございません。そのガラスの固化体、そういうことをどこまで考えるかというのはこれは安全審査の問題でございますが、そういうことを考えなければいかぬということであれば、例えばそれを遠方操作なりあるいはロボットというものを使いまして、それをまた新しいキャニスターなりしかるべき容器の中にガラス固化体を入れて、それで極端なことですが、もう一回東海に持ち帰って溶かしてキャニスターに詰めるとか、そういうことをやることで、保安上の問題、周辺に対する皆さん方への影響というのは全くないわけでございます。
#126
○菅野久光君 実際に貯蔵センターの中でそうなったときにはその中で今局長が言われたような作業はできるんですか。
#127
○政府委員(中村守孝君) これは遠方操作とかロボット技術は発達して、当然発電所でもいろいろロボットでの検査等も行っておるわけでございまして、そういう技術を活用することによって人間が一々中に入らなくてもそういうことは十分可能である。通常そのキャニスターの貯蔵状況がどうなっているかというような監視も、そういうリモート操作あるいはロボットで十分監視ができるというぐあいに我々は考えております。
#128
○菅野久光君 政令とか府令だとか、そういう中でそういうことまで想定しておりますかということをお尋ねいたします。
#129
○政府委員(辻栄一君) これは安全審査の基準で扱うべきものでございまして、政令あるいは府令で定めるものではなくて、事業の許可をするときに、施設の安全審査をする際に検討する事項でございます。
 それで、私ども高レベルの管理施設の安全審査のときに、先生のおっしゃったような事故のケースといたしましては、黙って置いているときに突然壊れたというのではなくて、取り扱いの操作中にクレーンから外れて落っこちた、それで不幸にしてキャニスターが落下して中のガラス固化体が壊れたというような場合を想定するということが今安全委員会のところで検討されておりまして、安全評価の面はそうした場合でも外部に放射能の影響が及ばないような設備にすることを安全審査の条件とするということを考えているわけでございます。
#130
○菅野久光君 今までいろいろそれこそあり得べからざることについてお尋ねをいたしました。先ほども言いましたように、あり得べからざることが現実的に起きてきているからいろいろな心配をするわけなんです。だからそういうことはあり得ない、考えられないということだけで国民は納得できない。とりわけさっき言ったパンフ、「密封されます。」という、これはどう考えてみたって道民としては書かれておることに偽りありと思わざるを得ません。だけれども、ピンホールぐらいはあったって仕方がないとか、完全に密封されるということを予定していないというか、そういう説明というのは今まで北海道の幌延あるいはその周辺の人たちにそういうことでしていますか。
#131
○政府委員(中村守孝君) 我々が日常で密封とい
う言葉をどの程度厳密な意味で使っているか、例えば瓶の中に密封するといったときに瓶に栓をする、その栓がどの程度の気密度を持っているかとか、そういうような厳密性では考えていないんだろうと思います。非常にわかりやすくガラスを容器の中に閉じ込める、そういう意味で密封という言葉を使って、これはいろいろ御説明するときに余り科学技術的に厳密に言っていきますと物事が非常にわかりにくくなる。わかりにくいというまさに御批判を受けることでもございますし、やはり一番直感的にわかりやすい言葉で御説明するのがいいのではないか。それで事実を誤認されて、そうなっているから危険だといったために、安全性を取り違えたという意味で申しますならば、先ほど来申しておるように多少の科学技術的に厳密な意味での密封性というものはなくても別段安全上差し支えない。そういう意味では私のその言葉が直ちに不適当であるというぐあいには申し上げられないわけでございます。
#132
○菅野久光君 それでは、必ずしもこう書いたことは、住民に理解をしてもらうためにはこう書いても、科学技術庁としては道民に対してうそを言っているという言葉は適切かどうかは別にしても、真実を曲げて言っているんじゃないということだと思うんです。しかし道民の気持ちからすれば、こんな危険なものだからキャニスターという入れ物に入ってしっかりもう封はされている。まさかピンホールぐらいはいいだろうなんていう今の局長の答弁を聞いて、ああそうだったのか、それはまたとんでもない話だということに私はなってくると思うんです。
 それで、今高レベル廃棄物は東海村にあるんです。幌延に立地するということになれば、私は前にも何回も聞いているんですけれどもはっきりしたことは出ないのですが、輸送する場合にはどのような形で輸送されるのですか。
#133
○政府委員(辻栄一君) これにつきましては、使用済み燃料の輸送とほぼ似たような大きなキャスクが使用されます。この輸送についての基準は国際原子力機関、IAEAというところが国際的な輸送基準をつくっておるわけでございまして、その線に従った規則をつくりまして、それで輸送するということにいたしたいと思います。
 基本的な概念といたしましては、大体使用済み燃料の輸送キャスクを御想像いただければいいんですが、寸法は実際の設計で多少違うとは思いますが、例えば十センチ程度の厚さの鉄の筒をつくりまして、多分長さは中にキャニスターが六個ぐらいこう星型に入る程度の直径のものになると思います。そして、その内側に鉛のライニングが施されまして放射線の防護をいたしますし、それから熱の放散のために外側にフィンがずっとつけられまして冷却をする、こういったような形のものになろうかと思います。
 それで、そういうところでIAEAによりまして強度基準やなんかが定められておりまして、高いところから下のところに落下させるその高さが決まっているとか、それから加熱試験等につきましても国際基準が決まっておる、そういったキャスクで輸送するということでございます。
#134
○菅野久光君 輸送する場合に、海から行くのか、陸から行くのか、空から行くのか、それはどうなんですか。
#135
○政府委員(中村守孝君) ただいまの段階でどうかという御質問でございますれば、常識的には海で行くということになろうかと思います。
#136
○菅野久光君 常識的には海です。もし万一海で事故があったときに、そういうピンホールといえどもそういったような穴があったときにどういうことになりますか。全然関係ないということになりますか。
#137
○政府委員(辻栄一君) 先ほどキャスクの中に入れるということを申し上げました。このキャスクは気密にするということになりまして、IAEAの基準では二百メートルの漬浸試験というのがございまして、水につけて二百メートルの深さのところに落っことして何日間か放置して漏れないというのが基本的な基準になっておるわけでございます。運搬につきましては、今度船舶の安全基準の点になるわけでございますが、これは私どもの所管ではなくて運輸省の所管になります。これについては運輸省は今安全基準の策定をやっておるわけですが、私の聞いておるところでは、ほぼ使用済み燃料の運搬船の基準と同じようなものができるんではないかというふうに聞いておるところでございます。
 使用済み核燃料の運搬船につきましては、今日本では日の浦丸という専用船があるわけでございますが、これは原子力船「むつ」と同じように船体内の区画がいわゆる区画可侵構造、二区画に水が浸水しても転覆もしないし沈没もしない。それから、仮に火災が起こりましても今度はホールドに水を注入するわけでございますけれども、ホールドいっぱいに水を注入いたしましても転覆もしない、沈没もしないといったような、かなり中の区画をきちっと区画した船を用いてある。また、耐衝突構造でございますとか、耐座礁性といいますか、そういうことについても特別な付加基準をつけて船舶がなるべく沈まないようにという配慮はしておるわけでございます。
#138
○菅野久光君 二百メートルの水深に耐えるようにということですが、東海村から例えば幌延に実施するとして行く場合に、どのくらいの海の深さ、全部二百メートル以内でしょうか。
#139
○政府委員(辻栄一君) これは航路によって違いますし、大陸棚のあたりを走っていけばこれは二百メートル以内で行けると思いますが、場合によれば横断することによってそれ以上の深さのところもあるかもしれません。ただ、漬浸試験の基準としては二百メートルでございますが、これについては相当使用済み燃料の運搬のキャスクのときにいろいろ試験が行われております。大体三千メートルに相当する深さまで沈没した場合に、つまりそのキャスクが三百気圧の圧力になった場合にどうなるかというようなテストも行われていますが、先ほどの遮へいの問題とか構造上の問題からその耐圧性が物すごく強くなってしまうわけです。それで絶対、絶対じゃない、絶対は困りますから、三千メートルでテストをやった結果つぶれない。かえってふたがぎゅっと締まりまして水密性が保持されるという試験結果が出ておりますので、まずは沈没した場合にそういった放射性物質が拡散するという心配はないんじゃないかというふうに思います。
#140
○菅野久光君 キャスクの気密性ということで三千メートルということが言われましたが、それは試験のときの結果であって、果たしてそれが何年もつのか、あるいは回収できない場合はどうするのか、その辺はどのようにお考えですか。時間が余りありませんから簡単にひとつ。
#141
○政府委員(辻栄一君) 三千メートルではちょっと回収できないと思いますが、逆に三千メートルになりますと相当の高い水圧でございますから、船内に保持されているということになりますし、あるいは裸で海底に落ちていても、キャスクが破壊されない限り外側の水圧でもっているわけでございますから、それで直ちに放射性物質が拡散してどうのこうのという話にはならないんじゃないかなというふうに思います。
#142
○菅野久光君 端的に聞きますが、キャニスターそのものは何メートルぐらいの水深の水圧に耐えるようにできているんでしょうか。
#143
○政府委員(辻栄一君) キャニスターそのものについての耐圧性の要求はありません。キャニスターは外側のキャスクでもって保護されるという考え方でございます。
#144
○菅野久光君 そこなんですね。キャスクの中に入れるから心配ないんだと、よくそういうふうに言われるんですよ。ところが、絶対こう密封したつもりのものが何かの手違いで密封されていない、されなかったという場合だって起きないとは言えないんです。重々そういうことのないようにいろいろ手順をしてやったとしても、何かのときにそれが完全に密封されていなかったということも起き得る可能性もないとは言えないんです。今までの科学的な大事故というのは全部そうです
ね。あり得べからざることが現実的に起きてきている。
 そういうことからいけば、先ほどのピンホールの問題も同じですけれども、キャスクの中に入れるからピンホールぐらいあったって大丈夫なんだということにはやっぱりなっていかない。水深三千メートルなりあるいはもっと深いところに行ったときに、そのピンホールから水圧でいろいろな状態が起きてくる、そういうこともあり得るわけであります。だから、私は先ほど密封ということの中で、大臣いらっしゃらなかったんですが、密封というのはいわゆる社会常識的な密封ということではないんだ、ピンホールぐらいあっても、その程度のことは安全性の上からいって問題がないんだという原子力局長からの答弁なんです。
 しかし、道民からいえば、動燃で出しているこのパンフの中に明らかにちゃんと、「最後に容器は溶接され、密封されます。」と、こう書いてあるんだから、密封というのは外界と中との間が完全に遮断される状態、これが密封だというふうに思うんです。ピンホールといえどもそれは完全に遮断されている状態ではない。いわゆる社会常識的な密封ということではない。だから、私は、こういうパンフレットであの周り全部回しているんですから、ですから誘致賛成の人たちはこういうことを言って、キャニスターという入れ物の中でガラス固化体は完全に密封されております、何が危ないんですか、だから私は誘致に賛成ですと、こういう人たちもいるわけです。これは道民にとっては全くこのパンフレットというのは、今の答弁を聞いたら私はびっくりすると思うんです。何ら科学的な知識のない者はびっくりするかもしれぬと局長は言われるかもしれませんけれども、一般的にそうじゃないでしょうか。
 では聞きますが、このキャニスターを製造して、そういう離れたところに貯蔵しているというところはどこかにありますか。
#145
○政府委員(中村守孝君) ガラス固化体を製作しているところというのは、今再処理工場に隣接しましてガラス固化体をつくっておりまして、その近くで現在のところは貯蔵するということになっております。
#146
○菅野久光君 ガラス固化体の先進国であるフランス、フランスでさえもガラス固化体をつくるその工場の、固化施設のすぐ隣の部屋に貯蔵しているわけです。日本よりは相当早くから何かやっておられると思うんですけれども、そうですね。ガラス固化についての先進国だ、そこでも今、ガラス固化体をつくっているところの隣接したところに置いている状況なんです。ですから、このキャニスターを貯蔵工学センターをつくって、これから何年か後にそこに持っていくというようなことを今から考えるということについては相当問題があるのではないかというふうに思いますが、その点はいかがですか。
#147
○政府委員(中村守孝君) ガラス固化体を貯蔵して、すぐそばに置いておくというというのは、そういう用地なり何なりあればそれで結構なことでしょうが、現実にそれじゃフランスなりイギリスに再処理を頼んでおる国、これは何も日本だけじゃございません、スイスその他ございますが、そういう国々におきましても、その再処理されましたときに出てきた廃棄物は返還されてくるわけでございます。そういう国々もやはりそういう独立した貯蔵庫といいますか、そういった貯蔵庫をつくらなければならないわけでございますので、日本だけが何か再処理工場と離れたところに独立の貯蔵庫をつくるという独得のアイデアをやっているわけではございません。
#148
○菅野久光君 今の返還されようという高レベル廃棄物、これは全部キャニスターの容器に入れられて戻されるというふうに理解をしてよろしいんですか。
#149
○政府委員(中村守孝君) 高レベルのものにつきましては、ガラス固化体という形で返還されるということに現在までのところなっております。
 それから、現在の再処理工場におきまして、廃液という形でまだガラス固化される以前のものがあるわけでございますが、これは今東海村におきましても再処理工場に隣接されている。しかし、それがガラス固化という形にすることによりまして輸送も容易になる、そういうことになれば、そういう単なる貯蔵庫を敷地の狭隘なところとか、ほかにいろいろ使い道のあるところに置いておくことは必ずしも必要ないわけでございますので、安全に輸送できる形態に、ガラス固化にすることによってなるわけでございますので、そういう形で別なところに貯蔵するということでございますし、返還廃棄物につきましても、海外に委託したものが返還廃棄物という形で来るにつきましても、ガラス固化体にすることによって輸送の安全が確保できるということが大きな因子になっているわけでございます。
#150
○菅野久光君 今のところということで、あちこち再処理工場についてはいろんな問題が起きているわけですね。ですから、あくまでも今のところということしか言えないと思うんです。
 それじゃ時間もございませんから、簡単に答えてください。
 三十年ないし五十年、一時貯蔵する間に放射線や勲等によってキャニスターがどの程度脆化するのか、データがあるなら示してもらいたいと思いますが、ありますか、ありませんか、あるかないかだけ言ってください。
#151
○政府委員(中村守孝君) 今、私の手元にはそういう資料を持ち合わせておりません。後ほど確認して御報告させていただきます。
#152
○菅野久光君 それじゃ後ほど確認して、あるなら委員会の方へでも出していただきますようにお願いをいたします。
 あと余り時間がございませんが、長官が戻られましたので。とにかくピンホールの問題一つとらえても、私が冒頭申し上げましたように、事命にかかわる問題であり、子孫にまで影響を及ぼすような重大な問題ですから、やはりこういうパンフをつくるときにも正確につくっていただかないと困るんです。これは後から表紙の方は直されたようでありますが、キャニスターのそばにこんな美人が立っているなんて、一遍に死んでしまうんですね。そういう宣伝のために正確でないことを書かれたり、あるいは写真にするなんということは、本来政府としてはあり得べきことでない、やるべきことではないというふうに思うんです。
 それで、さっきの密封されるということに絡めて、道民の中では、先ほど言いましたけれども、密封されているんだから安全だ、だから誘致いいじゃないかという人もいるし、あるいは本当に密封されているということになるんだろうか、密封そのものは余り意味がないことも言われておりますけれどもね。しかし、道民の一般の感情ということになれば、そういうことじゃないというふうに思うんです。そしてこの法案そのものが、こういう細かいことについてもっと国民にわかりやすいような政令あるいは府令の中身、そういうものを国民の間にやっぱり知らせて、みんなの合意を得て、それでやってこそ本当に政府が信頼されて行政が進んでいくんじゃないかというふうに思うんですが、最後に長官の御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#153
○国務大臣(河野洋平君) 今回の法案について、先ほど来局長からいろいろ御答弁を申し上げてまいりました。四十七年以来、いろいろと原子力委員会あるいは安全委員会等で検討を重ねて、原研その他の研究も進んで、一方で廃棄物の処理というものがきちっとできなければ日本の原子力開発利用というものは安心して進めないわけでございます。しかし、そうした廃棄物が一方ではたまってきている、こういったもろもろの事情もございまして、今回この法律案を御審議いただくという運びになっておるわけでございます。
 先生先ほどおっしゃったように、もうこの国会でだめならとんでもないことになるというほど逼迫しておるのかなと、こういう御質問もございましたけれども、逆に言いますと、この手の問題をどんどん先送りして、まだいい、まだいいといっていくわけにはいかない問題でもあろうかと思う
わけでございまして、十分研究が進み、十分皆様方の御理解をいただいて、こうした法律案を法律としてつくり上げて、そして本当の意味の核燃料サイクルを確立するということが我々に課せられた仕事だ、こう考えているわけでございます。
 ただ、先生から御指摘の、それならば政令その他の細かいところまで全部づくり上げてからでいいではないか、こういう御指摘もございました。私はそういう考え方もあるだろうと思います。しかし一方で、政令にいたしましても府令にいたしましても、この法律によって指示された中で政令をつくる、決してこの政令は白紙で委任するものではございません。上限値あるいは拘束限界値といったものを法律によって決めて、この範囲内だよという枠をつくってその範囲を政令にゆだねるということでございまして、考え方の枠組みを立法府できちっとお決めをいただいて、その先の細かい専門的な問題については専門家にゆだねる、私はこういうことでぜひひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
 また、お示しのパンフレットその他につきましては、私も、正確に皆さんにお示しをすることができなければパンフレットの意味をなさないというふうに思います。パンフレットをつくった人の気持ちも私は実は理解できるわけでございますが、いろいろと御指摘があれば、誤解を生む場合にはそれは直していかなければいかぬというふうに思っております。よく研究をさせていただきたい、こう思いますので、しばらく時間的余裕をおかしいただきたいと思います。
#154
○菅野久光君 理解はできないがやめます。
#155
○伏見康治君 伺っているだけでも疲れてまいりましたので、多分長官初め皆さんもお疲れだとは思いますが、しばらく……。
 今度の法律そのものよりは原子力一般についてのバックグラウンドのお話を少しやらさしていただきたいと思いますが、この前のチャンスにもチェルノブイリ原発事故についてのことを二、三お尋ねしたわけでございます。そのときからもう十日近くたちましたので、その後いろいろな資料が続々と入っていると思います。きのうでしたか、おとといでしたか、ゴルバチョフ書記長が公式の声明を出しておりますので、今の段階でもう一遍、あの事故はどういうことであったかということの総括をちょっとしていただけないだろうかと思います。
#156
○政府委員(辻栄一君) 御指摘のように十日ほどたったんでございますが、残念ながら資料が続々と入ってきておりませんで、状況はまだ前回とさほど大きな進展はないわけでございます。前回とあるいは重複する点があるかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。
 現在までのソ連政府の公表でございますとか、ソ連政府を訪れましたIAEAのブリックス事務局長の発表あるいはゴルバチョフ・ソ連書記長の発表等、今までに得られました情報の範囲内で事故の状況をまとめますと以下のようになろうかと思うのであります。
 まず第一に、事故は現地時間四月二十六日、キエフ市の北方約百三十キロにある発電所の四号機、これの予定された運転停止作業中に四号の原子炉の出力が突然増大した。大量の蒸気が噴出して続いて起こった反応によりまして水素が形成され、それがまた爆発をいたしまして原子炉を損傷させ、これに伴って放射性物質が放出された。なおこの際、原子炉の炉心の部分的な溶融が起こったと伝えられておるわけでございます。事故に至った原因の詳細は依然不明でございます。
 被害の状況といたしましては、十四日現在で二百九十九人が被曝ややけどで入院、治療を受けておりましたが、七人が死亡し、爆発の際死亡した二人を含めまして死亡者は合計九人になった。また、同発電所及び半径三十キロ以内の地域から約四万八千人の人が避難したと伝えられております。外部に漏れました放射能は北欧諸国、東欧諸国を初め広範囲な国々に拡散いたしまして、各地で環境放射線に異常値が観測され、牛乳あるいは野菜等の販売制限、それから影響地域への旅行制限等の措置がとられているわけでございます。我が国も五月三日以降十四日までに、二十九の都道府県で今回の事故が原因と見られます沃素131等が検出されておりますが、現在提出されているレベルでは健康に影響はないものと考えております。
 原子炉につきましては、現在までにヘリコプターで砂であるとか鉛、ボロン等を事故の生じた炉に投下しておる。そのほか事故炉の下にコンクリートが打ち込まれるといったような作業が行われているようでございまして、事故の影響の拡大防止のための措置がとられたという模様でございます。現状はこのようなところでございます。
 これらの点につきましては、実は本日、原子力安全委員会のソ連原発事故調査特別委員会を発足させたところでございまして、さらに先ほど申し上げましたようなブリックス事務局長等の活躍によって国際的な調査活動もこれから進められるかと思いますので、今後そういう場にもできるだけ参加したい、そういうことによって事故の教訓を酌み取るための努力をいたしていきたい、かように思っているわけでございます。
#157
○伏見康治君 今公式発表を主にして御報告をいただきましてありがとうございました。
 新聞を拝見いたしますと、成田へソビエトから帰ってきた方の測定を行ったとか、また日本の方で向こうから帰られた方があるとかいうようなことも承っているんですが、それについてはいかがでしょうか。
#158
○政府委員(辻栄一君) 五月三日に在モスクワ大使館から送付されました食品等の環境資料の放射能分析を実施しましたが、このときは微量でございました。数字が約四十ピコキュリー・パー・リッターという程度でございましたが、さらに引き続き四日にやはりモスクワ大使館からのものを調べてみますと、このときには千三百ピコキュリー・パー・リッターの検出が行われております。第三回目も行っておりますが、そのときの数字が約四百という数字でございました。
 それから、在留邦人につきまして、地元の方で放射能の影響についていろいろ心配されている方が多いというので、外務省の要請がございましたので、専門家をソ連及び東欧諸国へ派遣いたしまして、こういった放射線医学関係の知識をお教えした、集会を開きまして放射線というものはこういうものだ、この程度の影響のものだというお話をしてきていただいたわけでございまして、この二人の方はもう戻ってきておられます。ワルシャワ、ストックホルム、モスクワ、レニングラード、ブカレスト等を歴訪されまして、昨日記者会見をやっております。
 そのほか、帰国者対策といたしましては五月二日から、ソ連からの帰国者につきまして健康診断を実施いたしております。これは放射線医学総合研究所で、当初は成田の空港でチェックをいたしまして、多少レベルの高い方につきましては放医研に来ていただきまして、内曝のモニタリングもやっておるところでございまして、その結果はそう大きなデータではございませんでした。これにつきましては放医研だけでなくて、京都大学あるいは浜松医科大学の付属病院も協力してくださるということで、そちらの方にも希望者は行っていただいて、検査をしていただいているというようなことでございます。現在までの報告では、多少検出された方もおりますけれども、健康上何ら支障のあるような程度のレベルのものではなかったということでございます。
#159
○伏見康治君 いろいろなお話をありがとうございました。
 しかしその多くは、例えばモスクワにある日本の大使館から何か食料のサンプルを送ってこられてそれの分析をやったということで、ソビエト政府との交渉ではないわけですね。行かれたのは舘野さんですか、これは外務省を通じて何か向こうの政府と交渉された末行かれたわけですか。
#160
○政府委員(辻栄一君) これはむしろ現地の大使館の要請によりまして、在留邦人に対する指導ということで行ったわけでございます。
#161
○伏見康治君 そういうことを伺った上で長官に
もう少し積極的なソビエト政府との交渉といいますか、つき合いを始めていただけないだろうかということを考えるわけですが、まず、この前もちょっと申し上げてみたと思うんですけれども、こういう事故に対して、長官は原子力委員長でございましてある意味で同業者です。当然同情の念を表明すべきだと思うんですが、お見舞い状でも差し上げるというようなことはお考えになりませんか。
#162
○国務大臣(河野洋平君) 我が国とソ連との間では、アブラシモフ大使が中曽根総理に会われまして、いろいろなやりとりの中で、総理からは亡くなられた方々への弔意を表されたというふうに聞いております。しかし、当時は亡くなられた方がどの程度おられたかも定かでない時点でございますので、その弔意もそう明確な弔意であったかどうかということになりますと、私にも実はよくわかりません。
 今先生御指摘のとおり、ソ連のこのたびの事故はその事故の他国への影響などが非常に早く、つまりソ連の発表よりも他国で先に影響などが出てきたというようなことがございまして、この事故の性格がむしろ他国へ迷惑をかけたじゃないか、影響を与えたじゃないかということが先にきてしまったようなぐあいでございまして、どうも発表が遅い、通報してくれというような要求が先に立って、亡くなられた方々あるいは被曝された方々、まだまだ病床におられる方々、あるいは亡くなられた方の御家族に対するお見舞いといいますか、同情の気持ちを表するタイミングがどうも少しずれてしまったように思います。先生御指摘のように私もそうした方々へお見舞いを申し上げたい、それから私の御同情を申し上げる気持ちは何らかの形でお伝えしたい、こんなふうに思っております。
#163
○伏見康治君 実はこの五月の末、国会が終わった後でソ連のアカデミーに招待されておりまして行ってくるんですが、もし長官が何かお見舞い状を書かれるのでしたら私はそれを持っていって差し上げてもいいと思っておりますので、どうぞよろしく。
 そういうお見舞い状も大切だとは思いますが、先ほどの舘野さんのお話は、在留法人の庇護のために行かれたということなんですが、そうでなくて、新聞によりますというと、アメリカから日本の二世ですか、二世の方が骨髄移植の問題で何か向こうの放射線を浴びた方々の治療に当たられているといったような新聞報道がございますが、それに近いような本当の救援活動に我々も参加するといったようなことはお考えになりませんでしょうか。
#164
○国務大臣(河野洋平君) 私も、ポール・テラサキさんとおっしゃったと思いますが、アメリカから二名ですか、医師の方がいらっしゃっていろいろ救援活動に非常に活躍をされて、それに対してソ連政府も非常に感謝の意をあらわしているということを新聞だったと思いますが拝見をして承知いたしております。日本政府もソ連側に対して何らかお手伝いをもしする必要があれば、お申し出があれば援助、これは技術的なものあるいはその他機材でもという申し出をいたしたわけでございますが、その私どもの申し出に対しましては依然としてまだ明確な御返事はございません。ございませんが、あれだけの事故でございますから相当な機材も必要としておられるのではないかというふうに実は心配をいたしております。国対国のことでございますから、やはりソ連政府から何らかのお話を受けてこちら側が出ていくということでないと出にくいように思います。科学技術庁はもちろん外務省等とも御相談をしながらでございますが、何らかのお話があれば対応する心の準備はいたしております。できますれば公式のルートでそうしたお話があればというふうに実は思っております。
 先ほどのアメリカの医師の方は、恐らくこれは民間ベースでいらっしゃったのではないかというふうに思います。これは全く非公式でございますが、赤十字でございますとかそうしたことでのやりとりはあったらしいとかあるらしいとかということを漏れ聞いておりまして、先生のお話、先生流のせりふでいけば、同業者の一人としてそういうことがあって少しでもお役に立てればなという気持ちを持っていることは事実でございます。
#165
○伏見康治君 ゴルバチョフの声明を見ても、絶えず西側にいじめられているという一種のコンプレックスがあって、それが表現の端々に出ているような感じがいたしますが、私は、まず同情の手を差し伸べるということから始めて、そういうコンプレックスをできるだけ解きほぐしていくということが対ソビエトの外交として大事なことではなかろうかと思います。例えば援助の道具として即座に考えられるのは、放射線測定の機器類が恐らく非常に足りなくて困っていると私は思うんですね、そういう事故を想定していないでしょうから。そういうものを大量に送ってあげるといったようなことは非常にいいことではないかと、思いつきでございますが、考えるわけでございます。
 しかし、私は実はもう一つ下心がございまして、ああいう事故というものの詳細を知るということは原子力技術屋としては天から授かった例題みたいなものでございまして、それを徹底的に科学技術的に調べるということは日本の将来の原子力政策の上にも技術政策の上にも非常に大きな役に立つ知識だと思いますので、実はそういう知識をその後で獲得する方法はないだろうかということを考えるわけなんです。その点をひとつお心の中にとめておいていただきたいと思うんです。
 ところで、新聞によりますと、日本の軽水炉はソビエトの事故を起こしたグラファイト炉とは根本的に違うから、あちらが事故を起こしてもこちらのことをそう心配する必要はないという言い方を、私自身もしておりますし、ほかの方も言っておられると思うんですが、日本にもグラファイト炉というのがたった一つだけございます。それでそのグラファイト炉についてはどうだろうかという素朴な疑問も出てくるわけなんですが、それについてはお役所の方ではどういう説明をなさいますか。
#166
○政府委員(辻栄一君) 東海炉の安全性の問題でございますが、これは軽水炉と同列に論じる話ではなかろうと思います。東海ガス炉につきましての安全性については、説明するとすればいろいろな特徴があろうかと思います。
 まず第一は、出力密度が非常に小さい炉であるという点は、安全上は大きな利点であろうかと思います。ほぼ軽水炉の六十分の一、それからチェルノブイリ炉の五分の一程度であるということは、なかなか熱が加熱されにくいという性質がありますし、さらに炉心の熱容量も大きいわけでございまして、軽水炉の約三倍、それからチェルノブイリ炉の六倍といったような設計でございまして、万一冷却材喪失事故が起きましても、燃料温度の上昇はこれらの炉に比べて比較的緩やかで、その間にいろいろな措置をする時間的余裕が出てくるのではないかというような特性を有しているかと存じます。
 また、東海ガス炉は冷却材に炭酸ガスを用いておりますので、チェルノブイリ炉は軽水でございます。したがいまして、水素ガス爆発というような点あるいは水蒸気爆発というような点についてはやや安心かもしれないという面もございます。
 これらの安全装置といたしましては、電源が切れましても蓄圧窒素によりまして水圧駆動をいたします緊急時の原子炉停止装置と、さらに四系統の緊急時の炭酸ガス注入装置というものが備えつけられておりますし、これらによりまして原子炉の停止と冷却が行われる。これらを駆動する電源につきましても、外部電源系統二系統、それに予備一回線、さらに万一外部電源がなくなりました場合でも、非常用ディーゼル発電機二基、これに非常用の蓄電池二組がまたさらにそのバックアップとしてついておるというなど、幾多の多重防護がなされている設計になっているわけでございます。
 これは東海炉だけではございません。よくこれで東海炉は大丈夫かというようなお話があるわけ
でございますけれども、現在の段階では、ソ連の炉のいわゆるシークェンスなり事故原因というものがまだ明らかでございませんので、具体的にどう対応するというようなポイントは見出すことはできないわけでありますが、基本的にはこういった基本設計上の特性がございますし、これまでの安全審査あるいは定期検査等によりまして、国内炉として安全性は十分確保されているというふうに理解しております。今後のソ連の炉の原因の解明いかんによって対応すべき点があれば対応する、今直ちにどうのこうのという話ではないという考え方でございます。
#167
○伏見康治君 東海一号炉をつくっている最中にウィンズケールの事故というのがイギリス本国でございましていささか騒いだわけでございますが、あの方のウィグナー効果による話は今回の事故とは関係なさそうですか、どうですか。
#168
○政府委員(辻栄一君) この辺がまだソ連の事故情報がもう一つわかってないということで、今の段階ではウィグナー効果につきましても特段のことを言う段階ではないというふうに私ども思っております。
#169
○伏見康治君 そこで、ソビエトの事故も事故ですが、アメリカのTMI事故のことを考え合わせざるを得ないのでございます。TMI事故が起こってから、あれは七年前ですか、随分時間がたちましたんですけれども、コンテナの中の放射能が余り強過ぎて手がつけられないという状態が極めて長く続いたわけです。この二、三年になってやや中の様子がわかってきたように思うわけですが、あれの事故の状態がどうなっているかということについてはもちろんいろいろな手を尽くして調査されているわけでございますね。今どういう知識になっているかということをちょっと。
#170
○政府委員(辻栄一君) しばらくの間は手がつけられなかったわけでございますが、ここ二年ほど前から炉を解体いたしまして中を調べるという作業が行われているわけでございます。
 アメリカにおきましては、復旧作業から引き続きエネルギー省を中心といたしまして、GPUNC社、これはTMIの運転者、それからアメリカのEPRIでございますね、米国電力中央研究所、それからNRC、こういったものが参加をいたしまして炉内の検査それから除染技術の開発、プラントの維持及び復旧作業等を目的としてTMI二号炉の大規模な解体調査が進められているところでございます。この調査は一九八八年まで続けられることとなっておりまして、現在TMIの二号炉では一応の除染を終えまして圧力容器のふたが取り外されて、昭和六十年十一月から損傷燃料の取り出し作業が開始されまして、これらから重要なデータ、分析結果が得られると期待されているところでございます。
 我が国におきましては、五十九年四月から民間主体の十七の当事者がこのTMI二号炉の研究開発計画に、アメリカと共同研究ということで参加して研究をやっているというところでございます。
#171
○伏見康治君 チェルノブイリも大事ですが、TMIの事故も非常に我々の参考になる貴重なデータを提供してくれるはずだと思いますので、ひとつ今後も熱心にやっていただきたいんです。
 ところで、私の知っている二、三の原子力関係の事業者から不平を聞かされたんです。アメリカの団体と一緒に日本の幾つかの団体が参加して調べておられるその知識が独占されていて、ちっとも周りに出てこないという訴えを実は数回伺っているんですけれども、その辺のところはどういうふうになっているんでしょうか。
#172
○政府委員(辻栄一君) これにつきましては、電気事業者、メーカー等十七社がやっているわけです。これには原研も参加しているわけでございますが、この計画における研究開発で得られました知見や成果は現段階ではまとまり次第アメリカのエネルギー省が逐次報告書を出しております。これはGENDレポートという報告でございまして、取りまとめられまして逐次公表されてきております。
 それから、日本につきましても、日本の参加者から、ことしの五月末に研究開発計画に参加してこれまでに得られた知見についての発表会を行うことが予定されております。多分原子力安全研究協会が中心になりまして発表会を行うことになっております。今後とも得られた知見、成果等は適宜そういった形などで公表していくという方針であると私どもは聞いております。
#173
○伏見康治君 非常に大事な知識でございますので、できるだけ多くの方々に研究材料として公表していただきたいと思います。
   〔委員長退席、理事岡部三郎君着席〕
 少し事故から離れて、日本の原子力政策一般についての私の印象を申し上げて、河野大臣の御意見を伺ってみたいと思うんですが、どうも日本には原子力委員会という制度があるにもかかわらず、十分しっかりした原子力政策というものを立ててこなかったのではないかという疑問を私はしょっちゅう感じているわけです。先ほどイギリスから導入したグラファイト炉のことをちょっと申し上げましたが、これがそもそも日本で最初の発電炉でございまして、それを導入するかどうかということは、その後の日本の原子力発電をどういう方向へ持っていくかという哲学みたいなものがあって決められたんであろうと私は想像いたしました。
 そのとき正力さんが委員長で、新聞記者に言わせますと、正力さんは、職業野球を物にした、テレビを物にした、次は原子力を物にするんだと言われたそうなんですけれども、私はそれだから正力さんを別にさげすむわけではございませんけれども、正力さんなりのやはり先の見通しがあってイギリスのグラファイト炉を採用されたんだと思うんです。その中で一番大事な点は、ウラン燃料が天然ウランで済むという点であろうと思うんです。天然ウラン燃料で済むか、濃縮燃料で済むかということは非常に大きな差異ですね。つまり、日本がどこからかウラン鉱石を買ってきて自弁でやれるか、それともアメリカのような先進国の濃縮事業に頼らざるを得ないかという、その分かれ道を決めるわけですから、したがって天然ウランの道を選ばれたということは、一つの原子力政策をお立てになって、その第一歩としてイギリス炉を導入なすったと私は考えたわけです。
 むしろ感心したわけなんですが、その後入ってくるのは全部アメリカの軽水炉になってしまいまして、その最初のグラファイト炉というものは、いわば日本の原子力の中では何か鬼っ子みたいなことになってしまっている、少なくとも正力さんの立てた方針とその後の方針とは非常に大きな食い違いを見せていると思うのです。
 その後のいろいろな可能性の中で、例えば一番日本でも問題になったのは、カナダの重水炉を入れるか入れないかという問題で大論争が行われて、それは時期的に少し遅くなり過ぎて、軽水炉から重水炉に切りかえるということは非常に無理であったということで、それは捨てられたのだと思いますけれども、しかし、もう少し初期の段階で、実は重水炉にすべきか軽水炉にすべきかという議論も十分やっておくべきではなかったかというふうに、今になって思うわけです。
 ところで、現在でもプルトニウムをどういうふうに考えるかということについて、幾つかの分かれ道があるわけでございまして、現在軽水炉で使っている燃料の中にできてくるプルトニウムを再処理で一遍取り出して、それで新しく燃料棒の中に入れるという考え方と、とにかく再処理するということは今までも大議論がありましたように、とにかく放射能を相当散らすおそれが多いことをするわけですから、それはもうやめてしまって、要するに、中にできるプルトニウムも原子炉の中で燃えるまで燃やしてしまおうという考え方もあり得るわけです。その辺のところのポリシーが本当に十分原子力委員会の中でちゃんとやっておられるのだろうかどうかということを伺いたいわけです。
 特に、増殖炉というものが実は技術が非常に難しくて、それができればまことに理想的な体制に
なると思うのですけれども、非常に難しいものですからなかなか増殖炉はお金ばかりかかって成果が上がってこない。増殖炉なんかやめてしまって、ウランの鉱石も思ったよりはたくさんあるらしいから、もうそんな方はやめてしまっていこうではないかという考え方が電力事業界では相当重きをなしているといったようなことも伺っております。今原子力委員会ではその辺のところの原子力政策をきちんと立てるべき時期だと思うのでございますが、その辺どういうふうになっているかということを伺いたいと思います。
#174
○政府委員(中村守孝君) 先生から今るる御指摘あったわけでございますが、我が国に最初にガス炉が導入をされたことにつきましては、先生御指摘のような天然ウランが使えるという利点も確かに一つの利点だったと思いますが、その当時の世界の原子力発電の水準から申しまして、我が国に原子力発電の技術を導入するとすれば、このガス炉が一番進んでいたということで、それが適当であるという判断のもとに海外諸状況を調査の上導入されたというぐあいに理解しておるわけでございます。
 その当時も軽水炉との比較等ももちろん行われたと思いますが、そのころ軽水炉は経済性あるいは実績等の点でまだまだ十分なものがなかった。その後急速に軽水炉の技術が進展をしてまいりまして、世界的にも軽水炉の有望性ということが言われるようになり、我が国でも軽水炉の将来性というものは、このガス炉と並行して、いろいろな技術的な知見を得るということで動力試験炉、東海村にJPDRを建設するというようなことで、その軽水炉についての目も向けてまいったわけでございます。実体的に非常に性格上経済性、将来性という観点から見まして、軽水炉の方がはるかにいいというようなことから、具体的な商業発電のプラントとしては軽水炉が採用されるようになってきたわけでございまして、昭和三十六年二月の長期計画で軽水炉の路線というものが定着をしたわけでございます。
 それで、濃縮ウランに頼らず天然ウランを使っていこうという思想につきましては、その後の我が国の新型炉の開発ということで、新型転換炉の開発という段階におきまして原子力委員会でいろいろ議論があり、再処理の結果回収されるプルトニウムと天然ウランとを使った新型転換炉というものを開発しようという、そういったところに思想が受け継がれて新型転換炉の開発が始められたわけでございます。ただ、その後濃縮ウランの入手というものが当初考えられていたよりも非常に容易になってきたという事情も大きく反映いたしまして、この新型転換炉につきましても、やはり経済性の追求というようなことから、必ずしも天然ウランを使わない、低濃縮ウランを使うというような形で今日のATRの開発が進められてきておるわけでございます。そういったことでこの炉型の問題につきましては、決してぐらぐらしているということではなくて、その時点におきます最良の道の選択をしてきたと思っておるわけでございます。
 高速増殖炉の開発につきましては、現在、実験炉の開発から、今原型炉の建設、さらには実証炉の建設へ向けまして鋭意努力しておるところでございまして、軽水炉から高速増殖炉へという基本路線、こういったものを確立しまして、もう長いことその路線で進めてきております。
 電力会社におきまして何か高速増殖炉の開発にちょっと消極的じゃないかというような御批判があるわけでございます。いろいろなことを言われる方がありますので、あるいはそういう一部の電力の方からそういうことがお耳に入っているのかもしれませんが、基本的には非常に電気事業者も高速増殖炉の開発には積極的でございまして、今動燃事業団で開発しておりますものがいわゆるパイプタイプのものであるのに対して、電力はそれだけでいいのかというようなことからタンクタイプというものも研究していくというようなことで研究をしてきまして、今後の選択の道としましては、フランスでもいろいろ議論されておりますように、フランスもタンクタイプのままでいいのかなという反省もあります。そういったことについても、今後動燃と電気事業者、技術者あわせていい知恵を出していこうじゃないかということで今鋭意進めておるところでございます。
 さらには再処理、プルトニウムの利用の問題でございますが、再処理をしてプルトニウムを利用するというのは、これは原子力委員会の早い時期からの一つの政策でございまして、東海村に再処理工場のいわば現在のテストプラントをつくるというところから始めようかというのが、結果的には現在のような〇・七トンの規模のプラントの建設になったわけでございます。その当時、むしろ民間を原子力委員会が引っ張るような形で再処理の問題に取り組んでいったと思いますが、今日まで再処理をしてプルトニウムを再利用していくという考え方にはいささかの変更もないわけでございます。
 そういったことで私ども、先生の御指摘ではございますが、原子力委員会としては、いろいろ流れの移り変わりというのは確かにあるわけでございますが、考え方としては、基本的な考え方は首尾一貫し、ただその選択の問題については、そのときの全体の国際情勢あるいは技術の水準、そういったものをにらみながら最良の選択を行ってきたのではないか、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうふうに考えておるわけでございます。
#175
○伏見康治君 原子力の一つのプロジェクトをやりますのには、みんな大変時間がかかります。増殖炉の研究にいたしましてもすぐ十年や二十年たってしまいます。よほど先の先まで見通した基本的な路線を決めておきませんと、二十年先になってとんだむだをしてしまったといったようなことになりかねないものですから、その辺今後もひとつよろしくちゃんとしたポリシーのもとに、ポリシーというのは必ずしも細かいことを決めるということじゃなくって、大きな線を決めるということだと思うんですが、そういうところを見失わないようにお願いいたしたいと思います。
 ところで、原子力委員会のポリシーを立てるときに非常に大きな影響力を持っているのは九電力、要するに民間の電力会社の方々の考えだと思うんです。これは公式見解であるかどうかわかりませんが、有澤廣巳元原子力委員長代理とおしゃべりをしたときに、有澤さんの言われるのには、原子力委員会がやる一番大事な仕事は平和利用の担保である、つまり日本の原子力が軍事と結びつかないということを監視するのが原子力委員会の一番大事な役目である、その点は私、完全に意見が一致しているんですけれども、その後で、後のことは民間にできるだけやらせるようにするというお話でございまして、そこが私はいささかひっかかっているわけなんです。つまり、民間はそれぞれ自分の考えで行動するということはもちろんよろしいわけなんですけれども、原子力委員会というのは民間の動きを大きくとらえて、それが自分自身の立てた原子力政策の枠の外にはみ出さないようにみとってやるというのか、そういうお仕事をされるべきだと思うので、少しいろんなことが民間に振り回されているのではないかという、言葉は悪いですけれども、そういう印象を受けるわけです。
 それで、特に今回の法律改正の問題が非常に緊急であるというので、こういう一枚の紙をいただいたわけですが、「原子炉等規制法一部改正の緊急性」というのがございまして、「放射性廃棄物の処理処分の具体的プロジェクト(青森県六ケ所村)が、進捗しています。これに対応して安全確保の」云々という言葉がございまして、これは明らかに電力屋さんの方がいろいろな考え方を推し進めているということが先へできてしまって、法律をつくるという原子力委員会の方のお役目はその後を追っているという印象を非常に強く私は受けるわけです。その点どうお考えになりますか。
#176
○政府委員(中村守孝君) この廃棄物の問題につきましては、私ども早くから問題の解決といいますか、そういったものに取り組んでまいったわけ
でございまして、いろいろ原子力発電のシステムを考える場合、廃棄物の処理処分というものが一番おくれておるということで、これは一刻も早くそういった分野についての長期的な見通しを明らかにして、国民の皆さん方の御理解を得て原子力発電を推進していかなきゃならない。そのために処理処分はどうあるべきか、それを一刻も早く確立すべきじゃないかということで原子力委員会でも検討してまいり、かつ民間事業者に対しても督励をしてきたところでございます。
 原子力委員会でのいろいろな検討、科技庁、通産省等におきます検討、こういったものには当然のことながら実施主体である民間も一緒になってやりませんと、
   〔理事岡部三郎君退席 委員長着席〕
我々の、ただ役人の考えだけを押しつけるということではなくて、そういったところの御意見も聞きながら実効性のある方策というものを確立しなきゃいけないということで、従来からともども検討してまいったわけでございます。その検討した方針に沿って民間の方の準備工事がだんだん進んでまいっておるわけです。そういう意味で国としての役目からいえば、これは法制度の方をきちんと整備してやらなきゃならない。そういうことで私どもは法制度の整備、民間にやれやれと言っているだけじゃなくって、きちっとした法制度を整備しなければ、これは国として片っ方でやれと言っておきながら片手落ちなわけでございます。そういう意味で一刻も早くこの法整備も明確にしたいということでやっておるわけでございます。
#177
○伏見康治君 民間の考え方と、それからお役所の考え方とできるだけ緊密に連絡しながら仕事をするということ自身は大変いいことで、それが理想的に進むことを期待したいのですが、ただ民間の方の速度とお役所の方の速度とがやはりもう少しちゃんと合うべきだという感じを受けるわけです。
 今度のお話でも、日本原燃産業と原燃サービス、二つの会社が先にできてしまっている。できてしまってからそれをいわば規制する法律をつくっているというのはいささか泥縄式な印象をどうしても受けるわけですね。何か言いわけありますか。
#178
○政府委員(辻栄一君) 基本的にはただいま原子力局長が答弁したとおりでございまして、会社の方は先にできてしまいました。しかしながら、これについてはやはり会社の設立自体かねてから懸案の原子力開発利用長期計画に沿った方針のもとのものでございますし、そういう点からいって特に民間が主導して政府が方針を後から追いかけていったのだという話ではございませんので、原子力委員会の政策に沿った動きを民間にした、こういう意味におきましてはやや私どもの規制法の改正法の提案が実は遅きに失したというくらいの気持ちを持っているわけでございまして、ひとつ何分……。
#179
○伏見康治君 今までのところ新しい会社二つでやることの中には、高レベルの廃棄物の処理処分という方のところまでは踏み込んでいないわけですね。その段階ではどういうことになりますか。
#180
○政府委員(辻栄一君) 高レベルの廃棄物の本格処分につきましては、さきの昨年十月の原子力委員会決定におきましても高レベルは今後の研究課題ということになっておるわけでございまして、この報告におきましても高レベルの処理処分は国の責任において行うんだという基本方針を打ち出したにとどめておりまして、具体的なその実施体制等の仕組みについては原子力委員会で今後引き続き検討するということになっているわけでございます。こういった基本方針のもとに今後こういった体制問題についての議論が原子力委員会で検討されるわけでございまして、今回はしたがいましてこの点についての法律改正は手当てしていないわけでございます。
#181
○伏見康治君 その点についても、既成事実が先になって後から泥縄で法律をつくるということのないようにしていただきたいと思います。
 最後に、法律そのものに関連して少し伺いたいんですが、同僚議員からたびたび同じ質問があるんですが、私もやっぱり納得できませんので私からも伺いたいんですけれども、要するに電力会社という廃棄物を発生した方の責任が何かあいまいになって、処理事業者にだけ責任が移されてしまうという感じをどうしても免れがたいんですが、そこのところをもう一遍私にもよくわかるように説明していただきたいと思います。
#182
○政府委員(辻栄一君) 発生者の責任の分担でございますが、これは先ほど谷川参考人からも御説明こざいました安全規制をやっていく場合において、現在の原子炉規制法は加工事業者であるとか原子炉の設置事業者であるとか、再処理事業者であるとか、その事業ごとに規制をしておる。それで核物質の動きに応じてそれぞれを受け取ったところが安全確保の責任を持つんだ、こういう体系が基本的に一つあるわけでございます。
 そういうことと、もう一つ、原子力委員会におきましてもさんざん議論されたわけでございますけれども、発生者責任と廃棄物の責任者を二重にかぶせておくというようなことは少なくともこの安全確保に関しては適当ではない、そこのところはやっぱり物を引き受けたところで分けるべきだということが結論として出てきたわけでございます。そういうことから今回の規制法ではそこのところは分けておるわけでございますが、発生者につきましてはきちっとした廃棄物を製作することということを義務づけておりまして、この義務づけ、すなわちこれは原子炉等規制法の原子炉設置者に対しては、三十五条の規定でございますけれども、この規定によりまして発生者にきちっとしっかりした廃棄物の製作を義務づけておる。そして、これに違反した場合には罰則をかけるということにいたしておりますし、これを廃棄事業者に渡します場合にも、いいかげんな廃棄事業者ではなくてきちっとした廃棄事業者に渡しなさいという規定がかぶるわけで、そういう基準を定めようとしているわけでございまして、いわゆる安全確保についての発生者責任はこの法律においてもきちっと書かれておるということでございます。
 さらに、しっかりした廃棄物を製作するという基準は、これは発生者が廃棄物の事業者に渡した後でも消えるわけではないわけでございまして、もし事故が起こりましてそれが明らかに誤った廃棄物の製作過程において原因が出てきたということであれば、これは明らかに規制法の三十五条の違反でございますので、事業者に対して厳しい行政罰と同時に刑事罰をかけるという構成になって、おるわけでございまして、ただ渡せば発生者はもう責任を免れちゃうよという話の規定になっているわけではないのでございます。そういうことで、私はそう御心配をいただかないようにとお願いしたいわけでございますけれども。
 そういたしますと、あと残る部分は何かというと、やっぱり受け取った廃棄事業者が一体どのくらい経済的基盤が得られるかという問題であろうかと思いますが、この問題については、なかなか法律でびしっと書くという話ではなくて、むしろ原子力行政においてそういったようなものは取り組んでいくべき問題ではなかろうか、こういう考え方から、三月四日の原子力委員会決定におきましても発生者責任ということを委員会決定で政策的に位置づけて、そして今後の原子力における廃棄物政策の基本方針としてやっていくということでございます。そういうことで私どもは、廃棄事業者の経営安定性の問題については、適切な支援を電気事業者が行うようにという指導を今後ともこの原子力委員会の基本政策をベースとして進めていくという考え方でございますので、ひとつ御了承をお願いいたしたいと思うのでございます。
#183
○伏見康治君 先ほど参考人の谷川先生にも伺ったことなんですが、カネミ油症事件で、PCBをつくった会社は罰する必要がないというこの間の裁判官の判断、これはまだ係争中ですから最終的なものではないんでしょうけれども、私は責任の問題というのは、何か事故が起こったときにだれが賠償をするかといったようなそういう意味の法的責任の問題もございますけれども、我々が考え
ている責任というのは事故を起こさせないための責任だと思うんですね。そういう観点からいうと、PCBというものをつくった方は、PCBを冷却剤として使うんだけれども、もしそれが隣の食用油の方へまざったらどうなるかという心配をしてあげるべきであったと思うんです、つくった当人としてね。つまり現在の法律では、PCBをつくった人には何の責任もない、使い方を間違ったのがいけないんだと、そっちの方へ法的な責任としてはいくでしょう。しかし、普通我々が使う責任という意味では、やはり新しい物質をつくった人はその物質がどういうものであるかということを使用者に向かって懇切丁寧に説明すべきであったと思うんですね。それがされなかったということが私はエラーの起こった原因だと思うわけです。
 それで、発生者と再処理事業者との間の関係というものも、法的な意味の責任がどうなっているかということのほかにもう少し大きな意味での責任というものを感ずるという、それがないといけないと思うんですね。責任が二つになりますと、どうしても自分のところの責任は減らしてしまって相手の方へ責任を押しつけてしまおうとする心理が働くわけですから、そういう意味で発生者の責任というものは、どういう言葉で表現していいかわかりませんけれども、少なくとも道義的責任といったようなものはちゃんと明記されていなければならないというふうに考えるわけなんですが、どうでしょうか。
#184
○政府委員(辻栄一君) 前段の個々具体的な、例えば製作者がきちっと通知してやるというような問題につきましては、これは三十五条第二項の総理府令の中に、引き渡す場合にきちっとした内容物についての説明資料を渡すことという基準を私ども書くことにいたしたいと思っております。これに対しましては最高は事業停止までの行政罰を加えるような形の規定にいたしておくというのが基本でございまして、その点はあくまで少なくとも廃棄事業者に引き渡す際には発生者責任といたしましてきちっとした廃棄物をつくる、そのことについてはきちっとした責任を負わせる。これは渡しちゃった後、事故が起こったときもやはり発生者の責任は追及されることになるわけでありますから、そういった意味においての規制は今回の規制法の改正の中できちっと書くことになっておるわけでございます。
 残余の問題について、先ほど谷川先生がおっしゃった道義的責任あるいは社会的責任に近いお考えであるかどうか、ちょっと私正確に先生の御意向が理解できませんが、こういった問題のほかに、要するに先ほども私申し上げましたように電気事業者が廃棄事業者に対してきちっとした支援を今後とも続けていくというのは、これは原子力政策の基本として今後とも私どもそれで進めてまいりたいということでございます。
#185
○伏見康治君 ありがとうございました。
#186
○佐藤昭夫君 私も本日は法案に即して幾つかお尋ねをしておきたいのでありますが、まず管理と埋設の区分の問題であります。
 法案の第五十一条の二の一項、そこで廃棄物埋設処分、その他の最終的な処分がなされるまでの間の管理または処理であって政令で定めるものが廃棄物の管理だ、こういうふうに規定しているわけですけれども、どうも内容がよくわかりません。そこでもう少しわかりやすく説明してもらいたいのでありますが、ここに出てくる政令で定める内容というのは、具体的にこういう核種の入った廃棄物とかこういう放射能レベルの廃棄物という規定の仕方ではないのか、この点まずちょっと確かめておきたいと思います。どうでしょうか。
#187
○政府委員(辻栄一君) これにつきましては埋設が――管理でございますか。
#188
○佐藤昭夫君 管理と埋設の区分。
#189
○政府委員(辻栄一君) まず埋設の方から参ります。
 埋設につきましては、先ほど来申し上げておりますように放射能濃度、それから固化体の強度あるいは表面線量率、こういったようなもので具体的な決め方をしてまいる所存でございます。これにつきましての具体的な数字につきましては、先ほど来申し上げておりますように原子力安全委員会で検討中でございますのでまだ決まっていない、近く決められるというものでございますし、その数字を具体的に政令に書きます場合には、これは原子力安全委員会に諮問した上で決定するというやり方をとってまいりたいと思っております。
 それで、管理の方に参りますのは、この放射能濃度あるいは固化体の構造等が埋設に適しないものはこちらの管理の方に回すという基本的な考え方でございますが、その決め方につきましては、改正後の五十一条の二の第一項第二号の政令におきまして、この廃棄物の管理または処理であって、独立の事業として行うことが見込まれ、安全規制の観点から廃棄の事業として規制を行うことが必要と認められるものについてその事業の形態を書いていくとか、具体的には、当面、ガラス固化された高レベル放射性廃棄物の保管廃棄、それからアスファルト固化されたTRU廃棄物の保管廃棄、こういったものを政令で定めていくという考え方でございます。
#190
○佐藤昭夫君 そうしますと、この埋設可能な放射能の上限値が政令でどうなるか、これが実質的に管理の事業の対象物を決める、こういう関係になるんですね。
#191
○政府委員(辻栄一君) 基本的には先生のおっしゃるとおりなんでございます。管理の事業に回る資格のある廃棄物につきましては、資格のあると言ってはいけないんですが、埋設できないものはそこから上で、管理の二号の方に行くわけですが、その具体的な決め方につきましては、先ほど申し上げましたように、そういったプロジェクトが具体化されたようなものについて政令で個々、個別に規定していくという考え方をとっておるわけでございます。すなわち再処理工場から出てまいりますがラス固化された高レベル放射性廃棄物の保管廃棄であるとか、あるいは動燃から出てまいりますようなアスファルト固化されたTRU廃棄物の保管廃棄とか、こういったようなものを政令で列挙して対象物を決めていくという考え方でございます。
#192
○佐藤昭夫君 そうしますと、この五十一条で定める政令、これによって埋設可能な濃度上限値及び無拘束限界値、こういうものが決まってくる。そして埋設の事業の対象の何たるかが明らかにされるということでありますから、その政令の中身がいよいよ重大な位置づけになってくるということだと思います。
 同僚委員からも出ていますように、こうした重要な事項が法律上は何らの枠も規定されないままに丸ごと政令にゆだねている問題、しかもその政令の内容は目下検討中、今後引き続き検討するということでありますから、どういう内容のものに落ちつくのかという案も定かじゃないという問題が今日までの国会審議の中での大きな問題点として出てきているわけであります。
 科学技術庁から法律案の政令、府令等についての何といいますか、素案といいますかペーパーをいただいているわけでありますけれども、これを見ますと、濃度上限値及び無拘束限界値については、国際原子力機関(IAEA)等の検討も踏まえ、原子力安全委員会での検討結果に基づいて策定する、こういうふうにしているわけでありますけれども、この政令を策定するに当たってのIAEAの検討状況、これが重要な参考とされるということでありますが、この政令の予想される内容のペーパー、この末尾に参考資料としてIAEAでの検討資料、これが付記をされているわけでありますけれども、そこでは規制免除レベル、すなわち無拘束限界値についての考え方は出ていますけれども、濃度上限値については何も示されていない。これは一体なぜですか。
#193
○政府委員(辻栄一君) 濃度上限値の定め方につきましては、原子力安全委員会においては、まず第一番目に、基礎といたしましてこの無拘束限界値をベースにして導き出そうという考え方をとっ
ているわけでございます。すなわち、この資料の四ページの、先生先ほど御指摘になりましたIAEAの規制免除数値、このページの下の方にその考え方が書いてあるわけでございますけれども、埋設すべきコンクリート固化体は時間の経過とともに放射能レベルが低減していくわけでございまして、何年かの後には無拘束限界値に達するということでございまして、これは物理的にきちっと計算される数字でございます。そこで、逆に無拘束限界値が決まりますと、それから無拘束限界値に至りますまでの期間を何年かに定めることによって自動的に濃度上限値が決められる、こういうメカニズムでございまして、この期間につきましては現在いろいろ安全委員会で検討されております。大体二百年ないし四百年の間でどのくらいの数値にしたらいいかということが今検討されているところでございます。
#194
○佐藤昭夫君 ちょっと安全局長、余り怠けた答弁をなさらぬようにしてもらいたいですな。あなたがおっしゃっているのは、この資料の四ページ目の原子力安全委員会報告書におけるこの規制基準の定め方、その抜粋としての第三項目の最後の、末尾の部分で、こう言っておられるんでしょう。「このうち濃度上限値は、処分される廃棄体の放射能レベルが無拘束限界値以下に低減することが有意に期待できることを基本」とする。要するに、ずっと長い年数だったら、もう放射性を含んでおるというふうに考えなくてもいい程度にずっと低減をする、こういうことを念頭に置いて濃度上限値というものを決めていくという当たり前のことを言っているわけですね。ちょっとそれを言っておきましょう。
 私が聞いているのは、原子力安全委員会でIAEAの検討状況を踏まえて検討するというんでしょう、規制基準を。そのIAEAの何を今検討しておるかということについては、規制免除レベル、すなわち今、日本政府が言っている言葉を使えば無拘束限界値ですね。これについてはIAEAで検討しておおよそこんな数字が出ていますというのがここに紹介されている。ところが、濃度上限値の方についてはIAEAはどういう検討をしているんですかと、これを聞いているんですから、答えてください。
#195
○政府委員(辻栄一君) 濃度上限値そのものについてはIAEAは検討していないのでありまして、IAEAは規制免除できる放射能濃度という方の検討をしておるということでございます。この濃度上限値そのものにつきましては、既にアメリカ、フランス等は別のクライテリアを持ってやっているようでございまして、日本の原子力安全委員会の考え方よりはかなり高いレベルでこういったものを決めているというふうに理解しておるところでございます。
#196
○佐藤昭夫君 大臣、この濃度上限値並びに無拘束限界値を決めるに当たっては、IAEAで検討中だから、この検討状況を踏まえて日本の原子力安全委員会として必要な検討をやって将来政令で決めますというわけでしょう。ところが、大いに参考にするというこのIAEA自体は、無拘束限界値の方は検討しているというんですけれども、しかし濃度上限値の方は検討していないわけです。だから、大体そもそも政府の説明自身がそこで大変な一つの穴に落ちているんじゃないかということを言わざるを得ない。
 それで、各国それぞれの事情に即して検討しているんだということですね、今の局長のお話。検討して既に濃度上限値なるものを決めた国の例を紹介してみてください。
#197
○政府委員(辻栄一君) これについては米国及びフランスにおいて決めておるところでございますが、詳細については担当の室長から御説明させていただきたいと思います。
#198
○委員長(馬場富君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#199
○委員長(馬場富君) 速記を起こしてください。
#200
○政府委員(辻栄一君) それでは私から御説明しますが、アメリカにおきましては一〇CFRパート六一、これはコード・オブ・フェデラル・レギュレーションということで、アメリカの安全規制その他の規制についての省令集でございます。この一〇CFRのパート六一というのが、放射性廃棄物の関係の規制をやっておりますNRC、米国原子力規制委員会の定めた数値を規定しているわけでございますが、この規定によりましては、トリチウムとコバルト60については濃度上限値は定めておりませんで、ストロンチウム90を七千キュリー・パー・立米、それからセシウム137を四千六百キュリー・パー・立米という基準がございます。それからフランスにおきましては、ラマンシュの処分場に処分できます放射性廃棄物の濃度上限値といたしまして、トリチウムにつきましては7.4かける10の1乗、メガベクレル・パー・キログラム、それからコバルト60については4.8かける10の4乗、メガベクレル・パー・キログラム、それからストロンチウム90につきましては7.4かける10の2乗、メガベクレル・パー・キログラム、セシウム137につきましては4.8かける10の3乗メガベクレル・パー・キログラム、こういった数字を決めておるようでございます。
#201
○佐藤昭夫君 大臣もただいまお聞きのように、そういう濃度上限値なるものの基準を定めておるというのはアメリカとフランスと二つぐらいだ。しかも、よく内容を聞いてみますと、そういうことで核種によっては基準の定まっていないものもあるということで、果たしてそういうものをこれから日本で原子力委員会で検討して、政令で決めていこうという場合の大いなる参考に値するものと言えるかどうかというこの不安を私は持つわけなんですよ。ですから、一遍ひとつ既に決めているという国の例、それから今目下検討中という国の例、こういうのを、この法案の審議とも大いに関係をしますので、この委員会にひとつ資料として、当然原子力委員会でそういう資料が配られておるに違いないから、出していただきたい。どうですか。
#202
○国務大臣(河野洋平君) 委員御指示の資料、できるだけ集めて原子力委員会に相談をして提出するようにいたします。
#203
○佐藤昭夫君 そこで、原子力委員長でもあります大臣に基本的な考え方をお尋ねするのでありますけれども、そういういろいろな諸外国の例があるという際に、我が国はどういう基本的立場で検討するかというその視点ですけれども、それは砂漠のような国と日本のように極めて人口稠密な国、ここと同じ基準でいいということじゃないと思うんです。やっぱり一たん事故が起これば最も人間への被害が大きく予想される人口密度の高い我が国などの場合は世界の中でも最もシビアな基準を打ち立てるという、これを基本精神にして検討していく必要があると思うのでありますけれども、大臣どうでしょうか。
#204
○国務大臣(河野洋平君) 従来とも日本の原子力行政はそうした考え方をとってきたところでございます。今回の問題につきましても厳しい制限といいますか基準を設けてやっていきたい、こう考えております。
#205
○佐藤昭夫君 そこで、そういう濃度上限値、これが埋設処分とするのか管理という扱いをするのか、それを分ける仕切り値になるということでありますが、これが高目に設定をされてかなり高いレベルの放射性物質を含んだ廃棄物が埋設処分をされることはないだろうかという心配を私ども実は強く持っているということでありまして、同様のことは無拘束限界値の数値の定め方についても同じような心配があると。しかし、今回の法改正の枠組みのもとではそれがどう決まるかというのは政令にゆだねるんだということで全くそこがわからない。しかも、今資料を出してもらうことではっきりすると思いますけれども、さっきちょっとごくわずかお聞きしただけでも大変あやふやな世界各国の基準の決め方だと。こういうことになりますと、科学を名のる科学技術庁として、科学を名のる科学技術庁長官としてこういう法律の出し方、一体これでいいというふうに思われるんでしょうか、どうですか大臣。
#206
○国務大臣(河野洋平君) 法律をつくる上で立法府で御審議をいただきますのは法律の一つの骨格
についてしっかりと立法府で御議論をいただいて、まさに科学の数値の分野につきましては原子力委員会を初めとする専門家の判断というものを政令によって定めさせるという仕組みでいきたい、こう考えているわけでございます。
#207
○佐藤昭夫君 前回の委員会審議のときでしたでしょうか、政府委員のどなたかが大気汚染防止法などでも同じように具体的な規制基準の数値は政令で決める、そこで盛る、法律自体に余り詳しく盛らない、こういうことをおっしゃっていた方があるんですけれども、そういう考え方があるんですかね、もう一遍。私の聞き違いだったら……。
#208
○政府委員(辻栄一君) 何の法律であると特定したかどうか余り記憶ありませんけれども、こういった基準の数値につきまして政令あるいは府令にゆだねておる法律はかなりいろいろあると思っております。それから国際的に見ましても、この無拘束限界値等の数字は、アメリカにおきましてもアメリカ原子力法でやっているわけでございますが、原子力法に手続規定を書き、具体的な規制基準につきましてはNRCの出す規則でございますが、これは私どもの府令に相当するものでございますが、こういったもので決められている。フランスにおきましても同様に省令レベルで定められておる。先ほどのラマンシュの基準は省令レベルよりもう一つ下位規定でございますラマンシュの管理施設そのもので決まっておるというような状況でございまして、各国いろいろ状況は違いますけれども、こういったものを政令あるいは府令、省令におろすことは間々あることではないかと思っております。
#209
○佐藤昭夫君 アメリカの法律の例を言われましたけれども、私はそれは大いに異論があるんです。ただ、きょうはちょっと時間がもう残り少ないのでこの次少しまとめて申します。
 ただ、ここで言いたいのは、別に大気汚染防止法というわけじゃないけれどもということでありますが、ほかの法律と比べていろんなそういう規制基準の細かい数値は政令で決めるのが日本の法律の常だ、こうおっしゃっても私はにわかにそうかというふうには言えない。例えば大気汚染の関係で受ける人間の被害、これとこの放射性廃棄物処分等のいわゆる原子力による被害、人間の受ける被害、一たん事が起こったとき、これはけた違いに重大な内容を含むわけでしょう、放射性廃棄物、原子力による人体への被害が起こった場合には。だから、そういう点でほかの法律がどうだからという、この論法をもって今回の法律を推しはかるという私はそういうことでは納得できないんです。原子力のこの問題こそ最も厳格に、したがってそういう規制基準なんかも法律条項としてきちっと国会での審議もして決める、こういうやり方をとるべきだというふうに思うわけであります。
 何か最近の政府の提出をする法案が、例えば例は変わりますけれども、国鉄の運賃、かつてはその都度運賃の改定をやるときには法律条項としておった。これがもう大臣、政令への委任事項ということで変わってきておる。そんなようなことを、一例ですけれども、最近の政府の出す法律の対処というのがそういうふうにだんだんと肝心の問題を国会の審議事項から外していくという、こういう傾向になっているというその一つのあらわれだというふうに私は大いなる警告をしておきますので、ぜひ大臣、その点はしっかり念頭に受けとめておいていただきたいと思うのであります。
 そこで、もう少し話を進めますが、原子力発電所の廃炉の問題でありますが、当然廃炉に伴う廃棄物の処理処分基準、これも本法案で示す基準と同じような扱いでいくわけですね、廃棄物の埋設と廃棄等々。
#210
○政府委員(辻栄一君) 廃炉が具体的なプロジェクトになるのはまだ大分先のことと思いますが、廃炉から出てまいります廃棄物につきましても、基本的には廃棄につきましては今回の法律改正によって対応していきたいというふうに考えております。
#211
○佐藤昭夫君 そうしますと廃炉問題の検討で、通産省総合エネルギー調査会原子力部会、ここの報告というのが昭和六十年七月十五日に出ていますし、またこれをわかりやすく解説したパンフレット、こんなようなものもいただいておるわけでありますけれども、この中で廃炉に伴ってどういう廃棄物が出てくるかというので、百十万キロワット級の原子力発電施設で約五十から五十五万トンの廃棄物が出る。この中で放射能を含んでいるものとそれからほとんど含んでないというふうに見ていいもの、こういうものの分析をやっているんですけれども、安全貯蔵期間が五年の場合で廃棄物の約九八%は放射能レベルが十のマイナス四乗キュリー・パー・トン未満のもの、その大半はもう放射能がないと見ていい実質コンクリートと同じようなものだと、残り二%が放射能レベルが十のマイナス四乗キュリー・パー・トンの廃棄物で、その大半は金属だということで、十のマイナス四乗キュリー・パー・トンというこの数字をそういう判断の、放射能を含んでおる物質がまあまあほとんどないというふうに見ていいものかという、まさに一つの閾値として十のマイナス四乗というものを打ち出している。
 原子力研究所がやっています研究、これを見ましても、ちょっと数字は違いますけれども、大体似たようなところで研究をやっているということでありますが、そうしますと、私はここで疑問が出てくるのは、今回の法律でそういう濃度上限値あるいは無拘束限界値、こういうものは今後検討をして将来政令で決めていきます、まだ今の段階で確たるこういう数値だということを断定できる段階にありませんと、こう言うでしょう。そして、片一方では通産省の原子力部会でこういうことを言っているというのは、一体これはどういう関係ですか。
#212
○政府委員(辻栄一君) 規制免除といいますか、無拘束限界値以下の問題につきましては、これは近く原子力安全委員会が決めまするところの無拘束限界値の数字で安全規制は今後とも行われていくということでございまして、ほかのいろいろな委員会等でいろいろな数字を使ってはおりましても、実体的には安全規制はこの安全委員会の定めますレベルで規制されるということに相なります。
 ところで、先ほど私はちょっと言葉が足りなかったと思いますので、この際、先ほどの答弁についてつけ加えさせていただきたいと思います。
 無拘束限界値の問題については、こういうことで原子力安全委員会が定めました数値によりまして、原研が何と言おうと総合エネルギー調査会が何と言おうと、安全委員会の数字で決めていくということには変わらないわけでございますけれども、ただいま廃炉の安全規制全般のフレームワークをどうするかという問題につきましては、今後まだ検討しなければならない問題が幾つかあろうかと思います。
 具体的に原子力発電所の廃炉が実現するのはまだ大分先の話になるわけでございますが、それに先駆けてただいま先生ちょうど御指摘の原研のJPDRの解体というのが進められております。これに関する現行の規定は廃棄解体届という規定があるだけでございますけれども、このJPDRの解体を一つの将来の本格解体のサンプルといいますか、研究材料としてただいまとられておりまして、原研においては解体の研究をこれによって進めておりますし、原子力安全委員会におきましてもこの解体の進め方について一つの将来の規制への参考資料として慎重に取り組んでいるところでございます。
 それから、国際的にもまた解体問題についての規制のやり方については情報交換を進めようというスキームができておるわけでございまして、日本はこのJPDRのデータをひっ提げて国際会議に臨んで、こういった国際的な廃炉の規制の枠組みについての検討に参加していくということでございます。そういったような成果も踏まえまして、解体の安全規制についてはそういった成果があらわれた段階でもう一度法規制の問題を含めて洗い直してみなければならない問題ではないかと
いうふうに考えておるところでございます。
#213
○委員長(馬場富君) 佐藤君、時間が来ております。
#214
○佐藤昭夫君 もう一問。
 先ほど伏見議員の方から、電力業者の要求が先に立って、政府の対応、法律措置が後追いをしておるということになっているのじゃないかという批判がありました。私も今ここで廃炉の問題を例として取り上げていますけれども、この問題を通しても同様のことが言えるんじゃないか。通産省のそういう報告、これに安全委員会は拘束されるものじゃないというふうにはおっしゃっていますけれども、しかし九八%これはもう放射能をほとんど含んでいないからいい、二%が要注意だ、こういう形で、だから大部分はもう自由に普通のごみと同じように、コンクリートと同じように処理したらいい、こういうことの考え方が前面にあってそのために必要な法律措置をどうつくるかということと、今回出てきておるこの法案と深い関係があるというふうに私は思うのです。
 もう一つの批判点がありますけれども、もう時間ですから、きょうはこれでやめて次回やらせていただきます。
#215
○委員長(馬場富君) 両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 次回は、来る十九日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後六時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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