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1985/02/25 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 予算委員会 第4号
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1985/02/25 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 予算委員会 第4号

#1
第104回国会 予算委員会 第4号
昭和六十一年二月二十五日(火曜日)
   午前十時一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月十五日
    辞任         補欠選任
     石井 道子君     村上 正邦君
     工藤万砂美君     金丸 三郎君
     矢野俊比古君     田中 正巳君
     神谷信之助君     上田耕一郎君
     宇都宮徳馬君     田  英夫君
 二月十七日
    辞任         補欠選任
     大木  浩君     秦野  章君
     曽根田郁夫君     林 健太郎君
     真鍋 賢二君     土屋 義彦君
 二月十八日
    辞任         補欠選任
     土屋 義彦君     真鍋 賢二君
 二月二十四日
    辞任         補欠選任
     原田  立君     刈田 貞子君
     上田耕一郎君     近藤 忠孝君
     抜山 映子君     関  嘉彦君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         安田 隆明君
    理 事
                遠藤 政夫君
                志村 哲良君
                桧垣徳太郎君
                降矢 敬義君
                水谷  力君
                和田 静夫君
                太田 淳夫君
                佐藤 昭夫君
                井上  計君
    委 員
                安孫子藤吉君
                岩動 道行君
                石本  茂君
                長田 裕二君
                海江田鶴造君
                金丸 三郎君
                北  修二君
                坂元 親男君
                関口 恵造君
                田中 正巳君
                竹山  裕君
                林 健太郎君
                真鍋 賢二君
                宮澤  弘君
                宮島  滉君
                柳川 覺治君
                稲村 稔夫君
                粕谷 照美君
                久保田真苗君
                佐藤 三吾君
                高杉 廸忠君
                安恒 良一君
                大川 清幸君
                刈田 貞子君
                高桑 栄松君
                中野 鉄造君
                近藤 忠孝君
                関  嘉彦君
                田  英夫君
                下村  泰君
   政府委員
       大蔵政務次官   梶原  清君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        桐澤  猛君
   参考人
       前駐日英国大使  ヒュー・コー
                 タッツィ君
       前駐米大使    大河原良雄君
       日本長期信用銀
       行調査部長    竹内  宏君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和六十一年度一般会計予算(内閣送付、予備
 審査)
○昭和六十一年度特別会計予算(内閣送付、予備
 審査)
○昭和六十一年度政府関係機関予算(内閣送付、
 予備審査)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(安田隆明君) 予算委員会を開会いたします。
 昭和六十一年度一般会計予算、昭和六十一年度特別会計予算、昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
 本日は、内外経済問題について、お手元に配付いたしております要領で三名の参考人の方々から順次御意見を拝聴してまいりたいと存じます。
 一言ごあいさつ申し上げます。
 ヒュー・コータッツィ卿におかれましては、極めて困難な御日程の中、参考人としてわざわざ本委員会のために御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚くお礼申し上げます。
 本日は、忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考してまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、四十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただく要領で行いたいと存じます。
 それでは、コータッツィ参考人お願いいたします。
 なお、御意見は着席のままお述べください。コータッツィ参考人。
#3
○参考人(ヒュー・コータッツィ君) 本日、この重要かつ権威ある参議院予算委員会に出席を要請されましたことは、私にとって大変光栄であり、この機会に極めて重要な問題につき意見を述べますことを大変うれしく思います。
 まず、最初に申し上げておきたいことは、これから私が申し上げる意見は私の個人的意見であり、必ずしも欧州の政府や団体の意見を代表するものではないということです。
 第二に、私が日英間の友好関係の発展を極めて重要視しており、また日本に長年生活していたことの結果として、日本文化に大変高い熱意を持っているということを念頭に置いていただきたいということであります。私は、正直にずけずけと自分の意見を申し上げるつもりですので、多少耳が痛いところがあるかもしれません。あけすけな言い方をするのは日本の習慣に反するかもしれませんが、どうぞお許しください。
 第三には、日本の多くの方々が外国との関係で直面している問題を理解し、また日本の膨大な貿易収支黒字を減らそうと努力していることを、私は大変評価しているということを明確にしたいと思います。この問題で努力をしておられるすべての関係者の名を挙げることはできませんが、特に中曽根総理と経団連の稲山会長といった方々の努力に賛辞を呈したいと思います。
 しかし、その一方で英国そして欧州の多くの人々が、日本の対策は小規模過ぎるし遅過ぎると
考えていることも申し上げなければなりません。この場合は「日本政府の市場行動計画に対する英国商業会議所の見解」を少し述べたいと思っております。「計画の短期的利益は非常に少なく見える。実施されるスピードは遅すぎるように思われる。日本が輸入促進に真剣であると外国人に納得させるような思い切った特徴がこの計画にはない。今回が初めての市場開放措置でないことも重大である。今回で八回目である。」同じように、「市場行動計画は一連の有用な措置ではあるが、これだけでは充分ではない。」、そういうことが英国商業会議所の見解であります。
 さて、日本の貿易黒字の大きさについてはよく知られているので、改めて申し上げる必要もないでしょう。しかし、私はここで欧州、とりわけ英国が直面している幾つかの経済問題、それは日本の黒字を我々にとって深刻な問題としているわけですが、これらにつき簡単に説明したいと思います。
 私どもの最も深刻な政治的、経済的、社会的問題というのは失業の問題です。英国では今三百万人を優に超える人々が失業中です。これは労働人口の一四%に当たります。英国の一部地域では四人に一人が失業中というありさまです。また百万人以上の人は、もう一年以上職がなく、職を見つけることに絶望しています。英国では失業手当が非熟練工の賃金と同じぐらい高いので、失業者は職を探そうとしないとか職を探そうというインセンティブがないのだという議論が時々出されます。確かにそういうことが一部少数の人々には当てはまるかもしれませんが、大多数の失業者については、ただただこの人たちのための職がないから失業しているのです。この関係でいろいろ社会問題も起こりました。
 近年の英国の失業率急増には多くの原因があります。その中で最も大きなものは、製造業における競争力の欠如です。その原因の中には、ポンドの為替レートが高過ぎたこと、企業マネジメントの弱さと独占的労働組合による賃金上昇、投資の不適切さ、そして生産性向上の不足などが含まれます。
 近年、英国ではこれらの問題を解決するために大変な努力が払われてきており、インフレは五%以下になり、残念ながらまだ日本のインフレ率よりも高いんですが、前と比べては大分減りました。生産性も急上昇しました。労使関係もがらりと改善しています。英国の製造業の競争力はひところよりぐんと強くなっています。ただ、失業率が上がる一方でなかなか下がらず困っています。私は、日本からの輸入増加が英国の失業率の大きな原因となっていると申し上げようとしているのではありません。しかし、日本との競争に敗れた業界からほうり出された失業者が日本を責めがちになるのは免れ得ないのです。
 私は、英国の人々が日本の産業はレーザー光線のようなマーケティング戦術で英国産業を一つ一つ破壊しているという話をするのをしばしば聞いております。英国では、私は、日本が英国市場を乗っ取ろうという陰謀を持っているという議論に対して強く否定しております。日本からの輸入の一部は輸出自主規制の対象となっていること、また英国産業が打撃を受けているのは、オートバイ産業の例に見られるように、その産業内での日本企業間の競争により、これら日本企業の競争力がさらに向上することにより、その結果であることが多いということを指摘してきております。また私は、日本からの高品質で適度に安い輸入品が英国の消費者に大きな利益をもたらしていることも強調しておりますが、そのような議論は無視されがちです。
 英国を含む欧州の雰囲気は日増しに保護主義的になってきています。自由かつ公正な貿易を信念として英国産業の競争力を高める必要があると考える現サッチャー政権がほかの政権に取ってかわれば、英国はもっと保護主義的になるでしょう。しかし、現サッチャー内閣の中で新任のアラン・クラーク貿易担当閣外大臣は、大臣就任前に保護主義的言動を行っていたことを指摘したいと思います。また英国議会においても、日本の貿易政策はしばしば批判的質問、コメントの対象となっております。皆さん御存じのように、英国ではあと二、三年の間にもう一度総選挙があると思いますが、そのときに保守党は政権をまたとることができるかどうかということははっきりしていないんですが、そういう場合は、野党が政権をとるなら保護主義的政策がだんだんと強くなるのじゃないかと思いますが、ところどころ野党では輸入制限をつくらなければならないという話ですから、今の英国政府は、本当に我々が今まであった政府の中で一番自由貿易を信じている政府であると私は申し上げなければならないのです。
 英国そして私の知る限り欧州内では、日本の貿易政策は一般的に公正なものではないと見られていると申し上げなければなりません。日本企業は欧州市場ではダンピングを行い、第三国ではコストを下回る価格で契約を獲得しているとしばしば非難されています。これらが日本は失業を輸出しているという非難のもととなっているのです。私は、日本が失業を輸出しているという非難には賛成できませんが、ダンピングやコストを下回る価格での入札については幾つかの話を聞いています。
 委員会とされては、自由貿易体制を維持しつつ日本の長期的利益を保護するためにどのような政策をとるべきかについては、多数の提言を聞いておられることと思います。外国人が提言を行っても、自分のことをまず考えるべきであり、国内事項には干渉しないでほしいと言われるかもしれません。しかし、私が貿易摩擦の減少に貢献するために幾つかの積極的な提言をすることをお許しいただきたいと思います。これらの提案には幾つかの例外的な方策が含まれておりますが、現在のような厳しい危機においては、そのような例外的な方策も正当化されると思います。
 第一に、海外への製造業投資についてちょっとコメントを申し上げたいんです。昨年中に私は英国に進出している日本企業の工場をほとんどすべて訪問し、日本企業がいかによくやっているかを知り、大変うれしく思いました。全体として、これら日本企業は英国の労働者が積極的で協力的であると見ています。進出企業は、労働者側と労働組合なし、または単一組合でストライキなしの合意を結んでいますし、また日本式経営は歓迎されております。また地方公共団体と中央政府は、日本企業の進出を円滑にし、資金的援助を提供するためにできるだけのことを行っています。
 私が現在働いているヒル・サミュエルのようなマーチャントバンク、日本語の翻訳はないらしいです、商業銀行は間違っている翻訳ですが、マーチャントバンクは、皆さん御存じのように、証券会社や普通の銀行と一緒のをやっているものですが、さらに追加的な資金貸し付けを行うことに大変熱心です。しかし、英国に産業投資をしている三十社を超える日本企業が行っている失業問題に対する貢献は限られたものであります。日本企業による直接雇用は恐らく一万人程度です。したがって私は、日本企業が対英投資をさらにふやすことが保護主義圧力を削減し、また英国の労働コストは今では日本よりも低いのですから、日本企業の利益にもなると確信しております。
 しかし、ここで申し上げたいのは、単なる組み立て工場ではなく、より総合的な投資を行っていただきたいということです。自由市場経済のもとでは、日本政府が今申し上げたような英国への投資を促進するには限界があることはよくわかっておりますが、私は次のような提案を行いたいと思います。
 イ、日本の指導者が中心となり海外投資を促進するキャンペーンを行うこと。この中には、個別の企業及び産業界団体との会合、生産的な海外投資に対するマスコミによる好意的紹介の奨励も含まれます。
 口、海外投資に関するジェトロと日本輸出入銀行の役割の強化。
 ハ、海外での雇用創出に最も貢献した日本企業に対する何らかの形での表彰。
 これについてちょっともう一度英国商工会議所
の見解を申し上げたいんですが、「日本の対ヨーロッパ投資の増加を我々は望んでいる。その場合、生産のローカル・コンテント率を高くして欲しい。八〇%が適当である。又、日本の対ヨーロッパ技術導入の増加も望んでいる。これによって雇用を増進し、輸入品を国産化し、ヨーロッパの産業基盤を強化できる。又、日欧間の第三市場における協力を、ヨーロッパからの第三市場向け輸出を増やすという形で、強化したい。」
 二、日本の輸国政策。
 私は個人的には輸出自主規制は嫌いですが、現状では集中豪雨的輸出はどうしても避けるべきですし、したがって日本の輸出のレベルを注意深く監視する必要があります。私は、日本の政府当局がダンピングとコストを割った価格での入札を許さないとの姿勢を今以上に明確に打ち出すことを提案したいと思います。十分な証拠がある場合には、このような行為を行う企業名を政府当局が公表し、公然と非難することはできないでしょうか。
 また、第三国市場における国際入札に際しては、日本政府当局が、日本企業に対し欧州企業と協力してより国際的なコンソーシアムを形成することを奨励することも提案したいと思います。第三国において英国や他の欧州企業との合弁企業を行うことは、日本企業が低価格による入札で欧州企業の犠牲のもとで市場を獲得しているという非難を減らすのに役立つと思います。
 三、欧州からの輸入。
 日本が輸入促進、関税引き下げ、非関税障壁撤廃のために大変な努力をしてきていることは理解していますが、日本が欧州からの製品輸入を大幅にふやさない限り欧州側は満足しません。現在行われていること以外にできることとして、私は以下の点を提案したいと思います。
 (a)、政府調達。
 公的資材調達に際して、政府は調達当局に対し、外国からの入札に対しても十分考慮を払ったことを書面で確認させ、さらに外国からの調達の比率、また外国からの調達が含まれていない場合にはその理由を報告するよう要請することはできないでしょうか。英国では、新関西国際空港建設のような大プロジェクトの資材調達に強い関心を持っております。防衛機器の分野では、ハリアーやトーネードといった戦闘機はその優秀性、信頼性は既に立証済みであり、日本のニーズにマッチしていると思います。民間航空機等の分野では、欧州はエアバス320やBAe146のような非常に競争力のある製品をたくさんつくっています。日本がこういった製品をどんどん購入してもらうと日欧貿易関係はぐんと改善することでしょう。
 (b)、関税の問題。
 砂糖菓子、ビスケット、チョコレート、ワイン、ウイスキーなどの関税率は必要以上に高いので、これらを近い時期に大幅に引き下げるのは可能だと私は思います。
 (c)、輸入割り当て。
 英国では、日本の皮革、靴製品輸入割り当て制度は評判が悪いものでしたが、このたび妥協が成立したことをうれしく思います。
 (d)、非関税障壁。
 アクションプログラムの中には、残念ながら、非関税障壁撤廃が実現するまでに不必要に長い期間がかかる品目が多く含まれるように思われます。一例を挙げますと、化粧品と石けんです。私は、たまたま三越の顧問をしておりますが、昨年の秋に、大変美しく包装した英国製の香りのある薬草化粧石けんの輸入を三越デパートでの英国製品販売促進のために提案したことがありました。皆さん御存じのように、去年は三越が各デパートで英国フェアをなさいました。デパートの仕入れ部はその化粧石けんはよく売れるだろうと考えたのですが、厚生省の許可を得るための時間とコストを考えると、残念ながらそのアイデアをあきらめざるを得ないという結論に達しました。日本人の肌は英国人の肌と大して差があるわけではないのに、なぜ英国で自由に売られている製品がこのような保護主義的規制の対象にならなければならないのでしょうか。このような官僚的な許認可手続を迅速化することはできないものでしょうか。
 (e)、流通。
 私は、ここで日本の複雑な流通機構につき議論しようとは思っておりませんが、日本政府が日本で流通網を広げようと努力している外国企業をもっと手助けすることは可能だと思います。そのような観点から、以下のような指摘を行いたいと思います。
 (イ)、私が非常勤役員をしているオースチン・ローバー・ジャパン社のような外国自動車メーカーが抱えている問題は、日本の自動車メーカーがまだ国内市場が保護されている時期に国内に流通網を張りめぐらしてしまったため、外国自動車メーカーがよい流通業者を見つけるのが難しいという点です。
 (ロ)、日本に進出しようとする外国企業にとっての第二の問題点は、優秀な日本人管理職員を見つけるのが困難であるという点です。私が日本市場に関心を持つ英国企業からしばしば受ける質問に、どうしたら優秀な日本人スタッフを雇えるかというのがあります。この質問に対して私は、日本は英国のように管理職員が給料と将来の見通しが今の会社よりよければ喜んで外国企業に転職するような状況にないから、日本で外国企業が優秀なスタッフを獲得するのは大変難しいと答えざるを得ません。日本の国内の状況は変わりつつありますが、ただ求人広告を出すだけでは意味がないとも言っております。合弁企業の日本側パートナーや日本の銀行が手助けをしてくれるかもしれませんが、英国では日常茶飯事のことですが、企業の乗っ取り、買収は日本では一般的に不可能です。外国企業が日本市場で活動する際に必要な優秀な日本人スタッフを護得できるように手助けしてもらえるように、また外国企業がもっと簡単に日本企業と合弁したり合弁企業を行うのを容易にするように、日本側でもう少し何とかできないものでしょうか。
 (ハ)、第三の問題は、コストの問題です。
 現在、日本への投資のコストは大変高くつきます。東京や大阪での展示場や倉庫は世界でも最も高いコストがかかります。人件費も極めて高いです。日本市場での流通拡大を計画している外国企業に一層の援助を行うことはできないでしょうか。
 (f)、並行輸入。
 日本政府当局の中には、輸入品価格を下げるために並行輸入を奨励すべきなどの議論をする人々がおります。しかし、特に奢侈品の売り上げの面から申し上げると価格の安定が必要であり、また販売拡大のためには広告が不可欠であります。ところが並行輸入は、価格の安定を崩しますし、広告には何の貢献も行いません。さらに並行輸入は製品のイメージを傷つける可能性もありますし、保証、サービスの面が欠落すれば大変危険であります。
 (g)、誤解を招く表示。
 昨年、輸入ワインをめぐって日本ではスキャンダルが起きましたそうですが、日本では、いまだに低品質のワインに国産のグレープジュースをまぜた粗悪品を高級ワインとして高い価格で売っている例があると私は聞いています。ウイスキーについても同様で、日本のメーカーはモルトやグレーンといった原酒の含有率の表示義務が課されていません。日本の消費者は中身が何であるか知らないで飲んでおられるのではないかと私は思いますが、私は、消費者に対しては、飲んでいるウイスキー、ワインの中身が何であるかわかるようにしてやるべきだと思います。それ以外の分野では日本の表示基準ははるかに厳しいでしょう。
 それからもう一つ、四番に、貿易外取引についてちょっとコメント申し上げたいのです。
 日本は貿易外取引では赤字国ですが、現在、日本の銀行、証券会社、保険会社はロンドン金融市場における一大勢力になってきています。原則として日本からの競争は歓迎しますが、その際、日本の金融市場でも競争が行われるべきだと考えるのは正当だと思います。私は、日本国内で証券業
務と銀行業務を別扱いにすると定めている銀行法第六十五条について議論するつもりはありませんが、ここで本委員会の皆様に念頭に置いていただきたいことは、ロンドンの金融市場では、現在行われつつある規制緩和により、日本の金融機関に、より大きな参入機会が与えられようとしている見通しのもとで、英国金融当局と英国の金融機関は、次第に重要性を増している東京市場で外国機関の参入の機会が改善されることを強く望んでいるということであります。
 これまで私は、日本と取引する欧州のビジネスマンの立場に立って、主にミクロの問題を取り上げました。マクロの日本の経済政策については一外国人がとやかく言うべきことではないと思いますが、現在、日本の貿易相手国は、日本の大幅貿易黒字が自由貿易体制にとって大きな脅威になっていることの認識が日本国内に高まってきていることを大変歓迎しています。
 前川前日銀総裁が座長を努めておられる中曽根総理大臣の私的諮問機関である国際協調のための経済構造調整研究会では、現在、新しい国際経済環境にふさわしい日本の貿易、通貨政策などの今後のあり方を検討しておられます。この研究会が、こういった問題に国際的視野に立って、広い心を持って取り組んでおられ、特に日本の経済構造を内需中心に転換することや直接投資の交流をもっと活発にすること、後進国援助、市場開放、金融の自由化などに力点を置いて検討されていることは非常に心強いです。欧州は、前川研究会の報告書が出たら大きな関心を持ってそれを読むことでしょう。
 私は、今まで申し上げましたコメント、批判、提案が委員会の皆様の気分を害するようなものではなかったことを望んでいます。また同時に、私が皆様既に御存じのことを繰り返したことで退屈なされなかったことを望みます。私の真意は、私の意見を委員会の審議の参考に供し、また日本が現在直面している深刻な問題と危機を解決しようと努力している政府、非政府諸機関の皆様を応援したいというものであります。
 私は、以上のような提案を行うに当たりまして、日本政府当局が直面している真の政治、経済問題を念頭に置いたつもりであります。そして私の限られた知識の範囲で、現状のもとで日本が行い得ると思われることについて実現可能な提案をしようと努力したつもりであります。
 最後にもう一度、委員会の皆様が私に発言の機会を与えてくださり、また私の意見に耳を傾けていただいたことに感謝いたしたいと思います。
 それでは、委員の皆様の間に御質問がありましたらばお答えいたしたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
#4
○委員長(安田隆明君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○岩動道行君 サー・ヒュー・コータッツィさんの大変貴重な御意見と御提言を、私は大変敬意を払って伺いました。
 まことにそれぞれの項目について具体的であり、かつまた我々も考えなければならない点が多々あると思うわけでございますが、一番最初に私、コータッツィさんに伺いたいのは、失業問題というのは大変大きい、これはどこの国でもそうでございますが、特にイギリスにおいて三百万人、一四%、これはもう異常な失業率であろうと思います。ところが一方、イギリスにおいてはかなり高い失業保険を出しておられる。これは社会保障の最も進んだ国で、ビバリッジの提案以来、世界の模範的な社会保障国家なんでございますけれども、そういう社会保障が進んでいけばいくほど、これは表現がちょっといかがかと思いますが、怠け者が出てくるという、そういう反面がないとは言えないわけでございます。
 働きたいという気持ちはもちろん当然あると思いますし、それが当然であろうと思うんですが、そこら辺の失業者の働く意欲と、失業保険でもとにかくたっぷり暮らしていけると、これは日本にも実はありまして、例えば生活保護の金額がどんどん上がっていって、そして地方の住民の方が、失業保険をもらう人よりも所得が低くても税金を払う、こういう矛盾がありまして、私ども毎年税制改正ではそこの調整をやっているんです。あるいは田舎で未亡人になった、ふらふらしていないで働きなさい、保育所に働きに行きなさいと言って村長が勧めても、いや生活保護をもらった方が楽だし、おしゃべりして歩くのにいいんだ、こういったようなことが社会保障の一つの反面として出てきて、日本でも今財政赤字の中で生活保護に対しては厳しい対応をしなければいけない、こういったようなこともやっているわけでございます。
 そこで、私は失業問題には産業構造の問題があると思います。特に重厚長大の産業構造から軽薄短小の産業構造に世界的に変わってきている、それに果たしてイギリスあるいはヨーロッパが対応してきているのかどうか。IC産業等いろいろあると思うんです。しかしまた、重厚長大産業も捨てるわけにいきません。大きなプロジェクトがあります。あるいは英仏海峡のトンネルの問題もありましょう。あるいは先ほどお話のあったように航空機の問題もありましょう。あるいは原子力の問題もございましょう。そういったような意味で、私は必ずしも軽薄短小だけがもうこれからの産業構造だとは思いませんけれども、しかし全体として情報化時代であり、そういう新しい産業構造の革命的な時代に入ってきた。ライフサイエンスの問題、バイオテクノロジーの問題等々、そういうものに対応するような対策はヨーロッパ、英国において、もちろん努力しておられると思いますけれども、果たしてその点においていかがなものかという感じを私持っているわけでございます。
 そういうようなことで、失業問題は大変大きい。そしてまた、日本が輸出をし、あるいはまた向こうで産業を興せば逆に雇用の数もふえるということでございますが、日本の進出によってわずか一万人程度しかないということは、これはもっと努力をしなければならないと思います。
 日本が一番心配しておったのは、何といいましても労使関係の問題、特に労働組合が非常にイギリスにおいては強くて、しかもそれが縦のストライキとかそういうことでなくて、横に広がってしまって、非常に産業活動に大きな影響があったんです。それが非常に私はサッチャー政権によって改善されてきたと思います。一年前であったと思いますが、ウェールズ担当大臣が私のところに見えたときにも、私の方は、労働組合も日本の企業が進出するのは大歓迎だ、もうすっかりさま変わりしました、だからぜひウェールズにも日本の企業が来るようにお願いします。そういったようにイギリスもあるいはその他の国もそういうふうになってきたと思いますので、御提案のように、日本の企業の進出あるいはコンソーシアムというようなことは大変立派な御提言であり、またそういうことに努力しなければならない、かように思っているわけであります。
 おっしゃった中に一つ、ダンピングということをいろいろおっしゃっているんですけれども、ダンピングということはなかなか難しい問題でありまして、アメリカでもダンピング法がありまして、日本もたびたび訴えられて、そのためにはいろんな資料を出して結局はシロになっていくということなんですけれども、日本は半導体で若干そういったようなことが一時あったかもしれません。しかし、ダンピングをしてまで自分の企業が成り立っていくわけではございませんので、やはり企業というものは資本をあれし、しかもそれは一般の人の資本から成り立っているわけで、配当もしなきゃなりませんから、私はダンピングということはやってはならないし、また日本としてもその点は節度を持って、もうかる商売、適切な利益でもって貿易をやっていく、この精神は変わっていないし、現実は私はそうだろうと思うんです。もしもそういうのがあれば私どもも注意しなければなりませんが、皆さんの方からも十分に根
拠のある御指摘をちょうだいしたいと思うわけでございます。
 サッチャー政権が保護主義に対しては厳しくこれを抑えてやっていこう、こういうことは大変私どもも結構でありますし、サミットの場合でもこれが大事な課題であります。そういうようなことで、これからもやはり自由貿易主義体制ということをお互いに努力していかなければいけない。そのためにはやっぱりイコールフッティングで、公平にフェアでやっていこう。日本がアンフェアと言われることは大変に私は残念であります。
 この間もハワイで日米欧等の会議がありましたが、そのときにも私は、アメリカにもいろんな関税障壁、非関税障壁があるじゃありませんかということを申し上げました。これは、ECの方からもアメリカに対して二十数項目について関税障壁、非関税障壁についての注文をつけておりますね。例えば日本は乗用車については関税はゼロです。ところが、アメリカは二五%かけている。一体これでイコールフッティングの貿易ができるのか、こういうこともあります。あるいはバイアメリカンという制度がある。これもイコールフッティングの観点から、イギリスにおいてもバイ英国だなんということを言わないようにお互いにやっていかなければいけない。そういうイコールフッティングの精神というものを私は生かさなければいけないと思うのでございます。
 それと、市場開拓の努力をやはり日本は大変やっていると思うんですよ。言葉も使い、それから市場調査も非常に細かくやっているんです。ところが、どうもヨーロッパの方はその点において、サー・コータッツィさんのように立派な日本語を使う方が大使をおやめになって今度は大きな会社で立派に営業の面でも活躍される、こういう方が来られたらイギリスの商品はどんどん日本に入ってくるんじゃないでしょうか。そういう人をひとつ養成していただきたいと思うんです。そういうようなことで、言葉の問題等もございますので、どうかひとつそういう点にも留意をして、私は、日本とイギリスあるいはEC、ヨーロッパというものがアメリカだけに目を向けないで、やはり日欧関係というものに重点を置いていかなければいけないと思っております。
 特に、失業問題について社会保障との関係でどうなのかということ。それから、関税は日本はいっぱいに下げました。この間のアクションプログラムで千八百品目を繰り上げてやりました。日本が世界で一番低い関税国になっている。それが、下げてもなかなか商品というものはそう簡単に来ない。効果もなかなか上がらない。むしろ為替相場の方の大きな影響で、逆に今度は日本で中小企業が困るというふうな状態にもなってきているわけなんです。そこら辺で私は、基本的なイコールフッティングでやっていくということについて、また売り込みの努力について、コータッツィさんの御意見をこの機会に伺わせていただきたいと思います。
#6
○参考人(ヒュー・コータッツィ君) 先生ありがとうございました。できる限り御返事申し上げます。
 最初は失業保険の問題でございますが、本当に英国の失業保険はそれほど高くないのでございます。まあそれぐらいの失業保険をいただいている家族は餓死しないのですけれども、ぜいたくに生きることはできません。そして英国でも、社会保障制度の改造をいろいろ考えております。英国のファウラー厚生大臣が新しい法律を提案しておりますが、このもとで、子供のいる家族に手当を与えるとか、若い独身者の場合は少なくするとか、そういうような法案を出しております。できる限り改善しようとしておりますが、しかしどうしても失業している、職がない場合は、私たちは何とか手当てをしなければならないわけでございます。それで、怠け者は数名いるかもしれませんが、しかし一年以上も職が全然ないとすれば、働きたい気がなくなるおそれがあるんです。こういう意味で社会的な問題が起こってきました。
 第二のポイントの産業構造の件でございますが、英国もできる限り産業構造改造を考えております。IC産業とかいろいろなプロジェクト、おっしゃったとおりに英仏海峡のトンネルをつくるとか、我々も原子力にも力を入れている。それから英国では基礎研究が大分発達していると思います。英国の大学では基礎研究がいいんですが、しかし日本は基礎研究もしておりますけれども、それ以上に研究をほかに応用しているわけなんですから、こういう場合は英国と日本と手を結ぶ方がいいんではないでしょうか。英国の基礎研究と日本の応用研究開発と協力する方がいいと思います。もちろん、おっしゃったとおりに、今情報時代に入って、バイオテクノロジーの時代に入って、英国のバイオテクノロジーの会社も大分力も持っていると思います。そして研究もやっておりますが、これも同じように日英の合弁、協力するチャンスがあるんじゃないかと私は思っております。
 そして、先生がおっしゃったんですけれども、労使関係を日本では大変心配しておりました。もう私が大使のときによくわかりました。いつどこへ行っても英国では労使関係がだめだという話を聞きました。しかし、この五、六年の間にサッチャー政権のもとで大分それは変わってきました。昨年と一昨年、御存じのように炭鉱のストライキが続きました。しかし、それはもう終わりまして、今は炭鉱の方はうまくいっていると思います。今一番問題になっているのは英国の新聞です。残念ながら英国の新聞では印刷労働組合がとても保守的で、新しい技術を導入したくありませんでした。
 先週の月曜日に、朝日新聞のロンドンでの衛星版のパーティーがございまして、社長がいらっしゃいまして、私が簡単な祝辞をしたときに、英国では残念ながら朝日のように何もストライキなしで、トラブルなしで新しい技術を導入しなかった、これは残念でございますと。しかし、解決になると思いますが、将来は我々もその新しい技術を使うことになっております。タイムズ新聞はワッピングで印刷しております。
 それから、ダンピングの問題でございますが、これはもちろんダンピングという言葉は大変難しい。そして調べるのも大変難しいということは、私はよくわかっております。しかし、残念ながら英国だけでなくてヨーロッパでは、ある物をヨーロッパ市場で日本の会社がダンピングをしているという感じがあるんです。私はそう言っておりませんけれども、もちろんその証拠を私は十分研究しておりません。しかし、一例を申し上げますと、電子タイプライターの件もありますが、油圧掘削機械でございますが、そういう例もあるらしいです。それはもちろんフェアトレード、公正貿易ということはちょっとそれを定義するのは難しいんですが、残念ながらそのフェアトレードの場合に、日本の評判はそれほどよくないと申しますか、私は、英国で日本は大体フェアトレードしているということをできるだけ宣伝しておりますけれども、一般の人を納得させることができないんです。
 非関税障壁の問題でございますが、おっしゃるとおりにどこの国にも非関税障壁があるんです。英国にもあるということを率直に白状しなければならないんです。私は、昨年のいつでしたか、サンケイ新聞の「正論」コラムに一つの記事を書きましたときに、官僚主義は英国と日本とどっちが悪いか、両方とも官僚主義がだめだと。残念でございますが、役人でありながら、どこの国にも官僚主義的な方がいるらしいですから、いろいろ障壁をつくります。申しわけありません。
 それから、バイアメリカン、バイブリティッシュのお話が出ましたのですが、私はそういうようなことは大嫌いです。これは我々が買うときにバイシャパニーズでなくて、バイアメリカンじゃなくて、適当な品目を買う方がいいんです。それは品質がいいとか、そういうようなことが大切であると私は思います。
 そして、最後におっしゃったんですが、日欧間が日米間と同じように大切であると、私はもちろん賛成でございます。ぜひ英国のこと、ヨーロッ
パのことを、日本もアメリカだけに目を向けてはいけないと私は思っております。
 先生、そのぐらいでどうでございますか。
#7
○久保田真苗君 私、社会党の久保田でございます。
 コータッツィさんには非常に長い間、そして非常によく日本とおつき合いいただきまして、今もまたおつき合いをいただいていることを感謝いたします。
 最近、今お述べになりましたように、欧州からの貿易不均衡の問題が提案されておりまして、例えば輸入目標を設定しろとか、あるいは監視グループをつくれとかと非常に厳しい注文がついております。今お述べになりましたようないろいろな建設的な御提案等は、事がもっと本当に悪くなってしまう前にぜひいろいろな建設的な御提案をいただきたいと思っておるものです。
 ところで、私どもの立場としましては、幾つかのこれについての提案をしているところでございます。大変にこの状況を心配しております。一つは、マクロ経済のレベルに属することかもわかりませんが、これを今の御提案と結びつけて御質問したいと思います。
 今、内需拡大というのは、国内でもそれから海外でも、もうほうはいたる声になっております。これにつきましては、日本の財政と経済のアンバランスということがございまして、よく政府の側から、政府は貧乏だけれど国民は金持ちであると、こういうことを言われます。だから国民が何とかしろということなんです。しかし、私の立場から見ますと、国民という中にいろいろございまして、これはいわゆる勤労者階級のごとではないと思うわけです。つまり勤労者階級である国民は、この数年来、生産性を下回る労働の分配率しか得ていない。つまり賃上げがうまくできないということなんです。それから、例えばヨーロッパはどうでしょうか、アメリカなんかは生産性を上回って消費しているということでございます。したがいまして、可処分所得というものが減少してまいりまして、私どもにとりましては、輸入品を買うように、個人消費の面でやるようにと、こういうことを呼びかけられましても、なかなかそれができないわけです。もちろんそれには関税障壁、非関税障壁、いろいろな理由があります。
 ただ、消費者の立場から一言申し上げますと、例えば、今御指摘になりましたアルコールの問題です。ウイスキーの問題。大変有名なスコッチウイスキー、日本でも愛好者がたくさんおります。しかし、自分でジョニーウォーカーの黒を買って飲む人がどれだけいるでしょうか。これはイギリスから輸出されまして、CIFの値段で一本七百円から九百円だということです。まあ平均八百円。これが私どもの手に入るとき一万円になります。その間には酒税があります。それから輸入業者のマージンがあります。それから卸売業者、小売業者のマージンがあります。この中で特に多いものは、もちろん関税、酒税ですね。酒税と、それにも増して輸入業者のマージンだと思います。三千五百円から四千五百円。この段階で大体ジョニーの黒は六千五百円から七千三百円になる。そして卸売、小売をまぜましてちょうど一万円になると、こういうことです。
 今コータッツィさんが御指摘になりましたように、この中には輸入業者の広告宣伝費というものが確かに含まれます。また総代理店という制度で、並行輸入に対して疑問をおっしゃっておられますけれども、しかし、この一万円という価格では私どもはとても買いにくいわけです。そして、他の商品についてもそうです。輸入の靴が三万円台以上というようなことではとても買えない。一体どこが悪いのか、こういうことになるわけです。確かに、流通機構の問題は第一にあります。それから関税、それから酒税、こういったものも問題になります。しかし、酒税については国産品と同じ扱いを受けるんだと思います。そうすると、一つの大きな違いというのは、やはり輸入業者のマージンでございます。これをこのままにしておくのかどうかということなんですね。
 そうしますと、私は、これは輸出をされる英国の側にむしろ注文をつけなきゃならないんじゃないか。例えば、日本が海外へ行ってやっているような広告宣伝をなぜみずからなさらないのか。それから、総代理店という契約を結んでブランドイメージを大切にすることは必要です。しかし、それは一億二千万という人口を抱えている日本の市場、この市場のどの層に対してどれだけの物を売るのか、こういうことをお考えいただかなければこれはなかなか解決できない問題じゃないか。私ども自身が流通機構の改善をすることは必要でありましょう。しかし、これは私はなかなか政府もやらないと思うし、一朝一夕に解決ができないんじゃないか。いろいろな商品すべてにわたってそういうことが言えるのじゃないか、こう思うわけです。したがって、ぜひ日本に、例えばマークス・アンド・スペンサーのような質のよい物を大衆値段で売る、こういうものがなぜ出てきてここでお売りにならないか、そしてPRをなさらないか、こういうことを思うわけです。この点について、私としては、もっと宣伝をしたらどうか、そして流通機構の問題をイギリスの側から解決する方法はないのかということを御質問します。
 第二点目ですが、内需拡大に関連しまして、今自民党の委員から御質問があったこととちょっと逆になるんですけれども、私どもはビッグプロジェクトを日本が幾らか計画していることは承知しております。これに外国の企業が参入する機会があるということも賛成いたします。けれども、財政難であるために民生面の内需というものが少しも拡大されない。今度、福祉の予算、教育の予算というものがちっともよくなっていないということを、私どもは一億二千万の勤労大衆の立場から問題にしないわけにいかないんです。そういたしますと、この民生面について、恐らくコータッツィさんも日本国民の生活状況が万全であるとは思っておられないだろう。そういう面でどういう貢献をイギリスならイギリスがなされるか。つまり、イギリスは高齢化社会については私どもの先輩に当たるわけですね。そういう意味でもっと御提案があるんじゃないかと、こういうことを思うわけです。
 第三点目としまして、労働時間の短縮の問題です。これは御存じのように、日本は平均二割欧州より多く働いています。そして寝食を忘れて仕事に打ち込むということは、日本の長年の美徳でありました。ですから、これを直すということについて今私どもは非常に強く主張しておりますけれども、しかし生活構造の変化を伴うので、この生活構造の変化に何か欧州から貢献していただけることはないのか、こういうことを思うわけです。問題は、日本人に、自分が多く働けば働くだけ、残業をたくさんすればするだけ欧州人の雇用機会を直接ではなくても減らす影響があるんだという自覚が非常に薄く経過してきたということです。そして関係者も、私は本気であるとは思えないんですね。これに関して、例えばコータッツィさんのようなお立場から、そういう状況を広く日本の社会に問題を指摘するというようなPRがもっとおできにならないか、そんなことを思うわけです。
 そして私は、時間が過ぎますのでこれでやめますけれども、全般的に言いまして、関係者が、日本の側もそれから外国の側も、世界経済が重大な問題を持っているんだということをもっともっと強く広めていくということが必要だと思うわけです。
 そして、特に英国について申し上げますと、英国はECには重大な関係をお持ちになっている、英連邦には伝統的に非常に関心をお持ちになっている。しかし、日本の市場には興味が余りないんじゃないか、そういう感じを受けるわけです。なぜかといいますと、今言ったようなもろもろのことがイギリスの側から余りなされていないと思うわけです。日本の場合は、ヨーロッパに製品を輸出するということは、それはいい悪いは別として、非常に自分の商品がスタンダードが高くて受け入れられた、そのことを光栄に思っているわけ
です。ですから意気込みが違うんですね。イギリスの場合、本当に日本に関心がおありになるのかどうか、そしてこの一億二千万の市場に対して国内におきましてももっと関心を高めていただく、ECや英連邦と変わらずに非常に重要な相手なんだという自覚をひとつ企業家も持っていただきたい、こんなふうに思います。
 演説して済みません。以上述べました三つ、四つの点につきましてコメントをいただげればありがたいと思います。
#8
○参考人(ヒュー・コータッツィ君) できる限り申し上げます。
 先生のおっしゃったことは大変よく耳に入れました。いろいろの点についておっしゃいましたのですが、輸入も英国、ヨーロッパの輸入目標とか監視ということですが、どのくらい輸入目標をつくることができるかどうかということは私はわからないんですが、しかし、ぜひ輸入のレベルを監視して、それが実質的にふえるように日本の役所に頼みます。それが大切であると思いますが、もちろん内需拡大とか財政と経済とのアンバランスとかいうことについて、私は一外国人としてコメントしない方がいいと思います、申しわけありませんが、これは内政問題であるから。
 これだけは申し上げることができると思いますが、もちろん日本の内需がふえてくるなら我々は歓迎いたします。そして同じようなことは、日本の国民が金持ちであるか貧乏であるかということは、それもちょっと判断は私はできないんですけれども、大体、一般の日本人の生活水準、賃金が英国よりも高いということで、それは大変日本にとっていいことで、そしてどこの国も所得税を縮小したいと思いますが、日本は特別に所得税を低くする方がいいかどうかということは、それは内政問題であるから私何もコメントしませんが、私は英国だったら英国の所得税が低くなるということはもちろん祈っております。
 それから輸入品のことに移りますが、アルコール問題であります。私は、残念ながら、ウイスキーの今の消費が少なくなっているという理由の一つは、しょうちゅうというものを日本人が飲むようになりましたと聞きました。それで私は、余りしょうちゅうというものは、鹿児島の人がいらっしゃれば失礼でございますが、私は余り好きではないんです、必要ならいただきますが。しかし、こういう場合は、私の印象でございますが、しょうちゅうはアルコールコンテントはウイスキーよりは少し薄いんですが、しかし、アルコール分量と同じように平等に税金をかければ、平等にウイスキーとしょうちゅうを取り扱ったら、ウイスキーの消費が多くなるんじゃないかと思います。そして日本人のウイスキーを飲む人の健康のためにいいと私は思います。申しわけありません。
 そして、ジョニ黒の問題でございます。大変複雑な問題でございますが、私はこういうことを英国の輸出業者に言いますが、これは一般の消費のために輸出する場合は値段は安い方がいい。しかしギフトだったら、それは大切であるんですが、私こういう場合は、残念ながらジョニ黒の消費がそれほど伸びていない理由の一つは、日本人がギフトとして差し上げて、それからどこかの棚の上に目玉の商品として置いてあるんじゃないかと心配しております。幾つほどの手を通ってどこかの棚の上に残るんじゃないか、残念でございますが。しかし、日本人は英国人よりもブランドが好きらしいです。
 それから、値段が変わると売ることが難しくなるとおっしゃいますが、私はデパートの方に聞くと、それを安くすることはできますけれども、安くすると日本人は買わない。おかしいですよ。英国と逆だそうですが、奢侈品の場合はそうらしいです。そして土産物をだれかに贈る場合は、それを見て、ああこれが一万円の物であるから、そのくらいの物だ。それをデパートで九千五百円にしたら余り売れないらしいです。まあ私は専門家ではございませんが、私はデハートの人にそう聞きました。もちろん、でき得れば大衆的な商品を日本にも売りたい。マークス・アンド・スペンサーの名前が出ました。とても英国で有名な会社でございますが、ああいうようなブランドは私が大使のときにダイエーと提携を結んだらしいですが、もう少し日本でマークス・アンド・スペンサー商品が売れるようにと私は希望いたしております。
 しかし、本当に大量に売る場合は、どうしても日本で設備投資しないと売ることはできないんです。ちょっとオランダと英国の会社の名前を申し上げますと、ユニリーバ、日本では日本リーバというあの会社が、今もう御存じのように、マーガリンとかそういうような大変いい物を売っているんです。それは日本でつくっているんです。日本の会社にもなりました。大量消費財を売る場合は、どうしてもそういうような設備投資をしなければならないんです。もう一つの会社の名前は、オーステン・ローバーという会社が御存じのように本田技研といろいろ技術提携をしておりますし、これが日本でもオースチン・ローバーの車をどんどんと売りたいんです。こういうように提携する方が売り上げが多くなるんじゃないかと私は思っております。もちろん、スコッチウイスキーの場合は別です。スコッチはスコッチだけで、英国のスコットランドの水だとかスコットランドの材料だけで本当のウイスキーをつくることができます。失礼でございますが、日本のウイスキーの悪口を言いたくないんですけれども、本当のスコッチと違います。
 それから、失礼でございますが、最後の労働時間とか残業、私も日本人と同じようにワーカホリックになっているらしいですが、そして私は英国ではロンドンでウサギ小屋に住んでおります。英国では労働時間と残業が問題でありますが、それをどういうふうに短縮するか、これは難しいんです、いろいろ会社によることですから。英国でそれほど残業がないのは、それは残念ながら需要が十分ないんですから、製造業で十分需要があれば、もちろん英国人も残業に残ります。それは問題ではないんです。
 そして最終に、失礼でございますが、時間オーバーになっているらしいですが、英国では日本の市場に興味が薄いとおっしゃったんです。私も前はそうでございましたが、だんだんと英国側の会社が日本に興味が深くなって、私もいつもは英国へ回って商工会議所で、日本の市場にぜひどんどん来てください、輸出してくださいと言っております。それから英国の貿易省の中でエクスポート・ツー・ジャパン・ユニット、日本輸出向けの一つの部門があります。あそこで毎日毎日英国の会社と話して、ぜひ日本の市場を考えてください。しかし残念でございますが、日本の市場は英国人の目で見ますと、市場は難しいです。進出するのは大変難しいし、とても金がかかると思っているらしいです。そういうわけで、私は発言の中で少しその流通について提案をしたのでございますが、しかし将来もできる限り英国での日本に対する興味を深くするように努力いたします。
#9
○中野鉄造君 きょうは参考人の先生には大変御苦労さまでございます。
 これから私が行います質問に対してのお答えは、先ほどの御提言でほとんど言い尽くされたかと思いますけれども、同時にまた私たちも、ただいまの御提言を実行さえすれば、今日の日本は諸外国とのいろいろな摩擦というものも円満な解決が実現できるであろうということを十分推察できます。しかし、それらがすぐできることと、これはもう長い間の単一民族という国柄から出てきた慣習といったようなことで急にはできない問題が横たわっていると思いますが、先ほど述べらたような日英官僚主義を比較すればという参考人の「正論」に寄せられた記事も、私興味深く読ませていただきました。参考人は長年日本で生活されたわけですから、十分に日本人の国民性だとかあるいは社会構造だとか、日本の歴史的な経緯は御承知と思います。
 その辺から二、三お尋ねいたしますが、御承知のように近年我が国はもう大変な経済摩擦、貿易摩擦を背景にしつつ、とみに国際化という言葉に
象徴されるように、すべての面で国家の開放型的なあり方を求め始めているわけでございますが、これは我が国の歴史にも先例を見ない時代に入りつつあるということが言えるんじゃないかと思います。つまり未経験なだけに、万事手探りで進みつつあるというのが今日の日本の姿じゃないかと思います。すなわち日本の本質的な国柄から考えてみるときに、日本は戦後のある時期まで、長年にわたって常に国際社会の存在を意識してはおりました。そしてその国際社会との関係については、開放型としての選択と閉鎖型としての選択との間のバランスを実に巧妙に使い分けてきた、そういう自在にとり分けてきた国であるということが言えるんじゃないかと思います。
 ところが、今申しますように、今日かつて経験したことのない経済大国となった最近の日本は、もう今や経済的にも政治的にも国際的な相互維持の、相互依存の道しか残されていない、こういうように思うわけでございまして、もはや過去の開放と閉鎖を使い分ける御都合主義的なことはできなくなった、こういうふうに私も認識しておりますが、そうした観点から見て世界の先進国、経済大国の仲間入りはいたしましたものの、残念ながら半面、国際化という点では極めて未熟な後進国ではないかというような気もするわけですけれども、このような意味から経済大国となった今の日本、そして世界の中の日本のあり方をどのようにお考えになりますか。
#10
○参考人(ヒュー・コータッツィ君) 先生ありがとうございました。
 私は、もちろん日本の国際化についてスピーチの中で触れたこともありますが、日本の明治時代を見ますと、明治時代に日本は特別に国際化したかったらしいです。英国からいろいろ技術を導入しましたし、ヨーロッパからも、あれは日本の鉄道の場合とか日本の灯台に英国人が役立ったということ、それからもちろん宮内省もいろいろヨーロッパの儀式も取り入れたとか、そのときは日本の政治家はよく外国の公使館に行ったりして、食事したりして意見交換が盛んであったと思います。これがある意味で、日本で一番国際化された時代ではないかと私は思っております。
 戦後はもちろん大分変わってきました。私の印象でございますが、残念ながら日本の会社の中で、大手会社の中で本当に国際会社はありますか。シェル石油のような国際会社、あるいはIBMのような国際会社、トップレベルにいろんな国の方が任命される、そういうような会社は残念ながら余りないんでございますね、日本では。日本の銀行、日本の総合商社の場合は、トップレベルのポストは全部日本人が占めておるんです。私は、もちろん日本の会社と相談する場合はいつも日本人と相談しなければならないんです。英国は逆に、日本で英国の貿易会社の社長は日本人が多いんです。
 それから、私は英国で大変歓迎していたんですが、ICI、インペリアル・ケミカル・インダストリーズという会社が、佐波さん、東芝の前は社長、今会長になった方が英国のICIの非常勤取締役になったこと、これは大変歓迎すベきであると思います。これは国際化するために、どうしてもこういうようなビジネス上の交流が必要であると私は思っております。もちろん私は、人間交流とか、それはビジネスだけでなくて、役所でも時々交流することができるんじゃないかと思いますが、ああいうことは我々が熱心に奨励しなければならないと私は思います。
 英国では日本人はロンドンの近くに二万人ほどおります。残念ながらそれほど英国人が東京にはおりませんが、それは多分コストの問題があるんです。それからロンドンは、もちろんヨーロッパの中心地であるからロンドンにそのくらいの方がおりますが、そういうような人たちは英国人とつき合うようにできる限り奨励しております。私はロンドンのジャパンソサエティーの理事長を務めておりますが、できる限りそれをやっております。我々がそれをどうしても一生懸命にしなければならないと私は思っております。
 どのくらい先生の御質問に対して返事したかどうか存じませんけれども、このぐらい申し上げたいと思っております。
#11
○佐藤昭夫君 同僚委員の質問とできるだけ重複を避けまして二つの点で質問をしたいと思いますが、一つは、英国も我が国と同様に長期構造的な不況に悩んでいるわけでありまして、そういったもとで、景気回復の一番の道として内需拡大という問題が内外ともに強調をされておる昨今だと思いますが、内需拡大の具体的な方策、これについて英国ではどのような取り組みになっておるのか。その中で、こういう点では既に成功をおさめている、こういう点ではなかなかうまくいかない、失敗の繰り返したといったような、そういう角度から少し具体的に御説明をいただきたいということが一つです。
 それから二つ目は、今日世界共通の、そして最も緊急の政治的な課題、それは核戦争を食いとめる核兵器の全面禁止、核兵器の廃絶を実現するというこの問題が緊急かつ中心的な世界政治の焦点じゃないかというふうに思うわけでありますけれども、長年外交官をやってこられましたコータッツィさんとしてこの問題についてどのようなお考えをお持ちかということと、あわせて、とりわけ長年日本に駐在をしておられたわけでありますけれども、日本の国民というのが世界でただ一つ広島、長崎のああいう体験をした、世界で唯一の被爆体験を持っておる、こういう点でとりわけ核兵器全面禁止、核廃絶という問題については非常に鋭敏なそういう悲願とも言うべき願いを持っている国民だと思うんですけれども、こうした点で、日本国民がそういう世界の焦点、核兵器廃絶という課題の実現に向けて世界のひとつ先頭に立とう、こういう運動が長年起こっておることも日本に駐在の期間よく御存じだと思いますけれども、この日本国民の役割と申しますか、こうした点についてどのように常日ごろお考えになっているかということを含めまして、以上二つの点お尋ねをします。
#12
○参考人(ヒュー・コータッツィ君) 先生ありがとうございました。
 最初は、長期不況に悩んでいることは英国もそうでございます。しかし、英国と日本との違いがあります。一つは、日本ではインフレ率が、もちろん第一次石油ショックとか第二次石油ショックの後でインフレ率が高かったんですが、日本ではこの七、八年ぐらいの間はインフレがとても少なかったんです。それから日本では失業率も低かったんです。英国では残念ながら、今の英国政府が政権をとったときにインフレ率はとても高かったんです。二〇%台でございました。それが今、前に申しましたとおりに、インフレ率が大分下がりまして五%以下になりました。英国政府にとって一番大切なことは、インフレ率を低くすることであったんです。インフレ率が上がれば、もちろん不況を克服することはできないと私は思っております。
 今は英国政府は、長期不況を解決するために特に若い人の訓練を考えております。失業者を少なくするために適当に訓練して、英語で申しますとユース・トレーニング・スキームを特にして、それからもちろんでき得ればこういうような大きなプロジェクトとか、特に民間の金で、融資でやること、英仏海峡の下のトンネルをつくるとか、ああいうことは大変役に立つと私は思います。それから、インフレ率が上がらないうちに道路をつくるとか、ああいうことを考えておりますが、もちろん英国ではいろいろ議論があります。もちろん労働党は、英国の野党は英国政府は十分やっていないと言って、まあ政府側にも与党側にもいろいろ議論がありますが、どういうふうになるかということは私はもちろん政治家ではございませんから申し上げることはできませんが、今ごろは税金を低くするよりもパブリックワークス、公共事業に金を使う方がいいと思っておるんです。そういうことでございます。日本と違いますから、我々はインフレが一番問題であったんです。
 その次に核戦争のことでございますが、もちろ
ん私は日本の被爆者に対して同情を感じておりますし、戦後、昭和二十一年に広島まで参りまして、大変な印象が今まだ私の頭の中に残っております。しかし、我々が核兵器の廃絶をどういうふうにするかということは私ははっきりわからないんですが、レーガンとゴルバチョフとの間の合意を望んでおります。今、レーガン大統領は新しい提案をしているらしいですが、このジュネーブでの交渉が成功することを私は希望しております。しかし、もちろん我々の防衛、それは英国だけでなくて日本のことをも考えなければならないんです。SS20が東洋に残るなら日本人も大変心配すると私は思います。しかし、私は本当に、今は役人ではないからはっきり詳しいことは存じておりませんが、将来米ソの交渉が成功することをみんな祈っていると私は思っております。英国人もそうでございます。
 このぐらいで返事は満足でございますか。
#13
○関嘉彦君 民社党の関嘉彦でございます。
 ヒュー・コータッツィさんは、長い間日本とイギリスとの間の友好関係の増進に努力されてこられました。それを私は心から感謝申し上げたいと思います。また、きょうはお忙しいところここに来ていただきまして、あけすけな話をしていただきまして、それも感謝しております。我々は、我々にお世辞を使う人よりも、率直に我々のことを批判していただく人を心から歓迎したいと思っております。
 日本は貿易によってでなければ生きていくことができない国でございますので、自由貿易を維持していくということに対しては、日本は何よりも大きな関心を持っている。またしかし、その自由貿易というのは同時にフェアでなければならない。コータッツィさんのお国の経済学者であるアダム・スミスが国富論の中で言っていることも、自由であると同時にフェアでなくちゃならないということを言っているわけでありまして、フェアでなければ自由貿易は維持することは私はできないだろうと思っております。その意味におきまして、日本がアンフェアだと言われるようなことがあれば我々としてもできるだけそれを除去していきたい、取り除いていきたいというふうに考えております。
 今まで日本が何回か外国の圧力によって、残念ながら私はそういうふうに感ずるんですけれども、外国の圧力によって少しずつ門戸を開放してきた。これは私は非常に残念に思いますけれども、しかし昨年のアクションプログラム、私はかなりこれによって日本の門戸は開放されたんじゃないか。先ほども岩動委員から話がありましたけれども、関税率におきましてはチョコレートであるとか砂糖とかというのは多少残っておりますけれども、製品に関する関税率については私は日本は決して外国に劣っていない、むしろある意味においては進んでいるんじゃないか。
 それからまた、いわゆる非関税障壁と言われるものにつきましても、その調整に時間がかかるという点は確かに御指摘のとおりでありますけれども、かなり努力しているように思うのであります。またその点、足らない点があれば我々も努力していくつもりでございますけれども、それに関連いたしまして、先ほど第三国市場においてコストを無視した、コスト以下の価額でプロジェクトなんかに入札をしているという話がございましたけれども、このコストをどういうふうにして算出するかということはこれは極めて難しい問題で、何がコスト以下であるかということは極めて難しい。また、ある市場においては別な市場と違う値段で物を売るということは、これは多くの国でやっていることじゃないかと思うんですけれども、先ほど言われました第三国市場でコスト以下の価額で入札をしているというふうな具体的な例があれば教えていただきたいと思います。
 それから、それに関連いたしまして、昨年、トルコの第二ボスポラスの橋の入札の問題で、日本とイギリスとの間に多少やりとりがございまして、サッチャー首相を初めイギリスの議会の方、かなりエキサイトされたように思うんですけれども、あの日本の第二ボスポラスのブリッジを入札したこと、あれの手続について日本のやったことにアンフェアであったと思われる点があったとお考えでございますかどうか、その点が第二点。
 それから第三点は、私は決してイギリスの内政に干渉するつもりはないんでございますけれども、現在、日本の企業がイギリスに進出してイギリスの労働組合の慣行とは違う契約を結んで、例えばストライキのない契約であるとか、あるいは労働組合を認めないとか、私は労働組合を認めないというふうなやり方は正当なやり方ではないと思いますけれども、しかし同時に、イギリスの今までの労働組合のやり方もいろいろ改善すべき点があるんじゃないかと思う。私は、イギリス、お国でオックスフォードで勉強させていただいたことがあるんですけれども、イギリスで感じましたことは、コータッツィさんは否定しておられるようですけれども、やはりイギリスというのは階級的な社会であって、例えば労働組合あたりの会合なんかに行きましても、生産性の向上であるとかというふうなことはそれは彼らのゼアビジネスであって、アワビジネスではないんだというふうな議論なんかをよく聞くことがあるのであります。やはり国家が、国民が経済的に繁栄していくためには生産性を高める努力をしなくてはいけない。それは経営者、労働者ともにやるべきことだと思うんですけれども、それに必要なのは、やはり労働者が経営に対して発言権を持つということじゃないかと思うのであります。
 たしか一九七七年だったと思いますけれども、ロイヤルコミッションでインダストリアルデモクラシーについての報告がございました。労働党内閣のときです。しかし、その後それは余り実行されていないように思うんですけれども、やはり労働者の参加意欲を高めていくことが生産性を高めることにつながっていくんじゃないかと思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。その三つをお尋ねいたします。
#14
○参考人(ヒュー・コータッツィ君) 先生ありがとうございました。
 最初おっしゃったことは、自由貿易の場合は日本の関税が割合に低いということはよく私はわかっております。残念ながら私、英国人にとって、高い関税が英国商品に二、三残っております。チョコレートとかビスケットとかウィスキーとか、そういうものはぜひ、できる限り早く低くしてもらいたいということは確かでございますが、それはもちろんビスケット、チョコレートとウィスキーだけで貿易インバランスを解消することはできないということ。私はもう一つ、日本でこう言いました。ウイスキーだけで解消すれば、日本人はみんなワーカホリックでなくてアルコホリックになるんじゃないかと。しかし、それでも大変役に立つと思います。
 それで、非関税障壁の場合は大変難しいということをおっしゃって、いろいろ日本側が努力したということは私も認めておるし感謝しておりますけれども、英国のチェンバー・オブ・コマース、英国商工会議所のものをいろいろ見て、それからアクションプログラムも私は全部読んだのですからね、英文もありましたから。その中にいろんなところで三年以内にとか、二年以内に解決するとか、それほど完了に時間が必要でしょうか。それで、私はちょっとこういう意味でアクションプログラムが不十分であるという印象を持っております。
 その次に入札、第二ボスポラスのことを先生が触れましたんですが、私は第二ボスポラス事件について私の発言の中で触れなかった理由は、大変日本人がそれについて怒ったということを聞いたので触れたくありませんでした。しかし、残念でございますが、英国ではサッチャー首相がおっしゃったことは英国の世論を反映していたと思います。それがいろいろと大変複雑であるということは、私はもちろん認めております。しかし、こういう場合は発展途上国の援助も含んでおるから、でき得れば発展途上国に我々の援助は高くしなければならないと私は思っております。多くしなけ
れば、どこの国も、日本も英国も、でき得るなら。しかし、そういう場合はできる限りフリーにして、自分の商品に取りつけないでいただきたいと、私はそう思っております。
 入札の場合は、安く入れたとか、日本がコストを下回るということですか、そういう証拠ということは大変手に入れにくいです。しかし、英国での、私が大使になる前にいろいろ英国の会社と話した、それから大使の間にいろんな英国の会社と話しまして、いろいろ嫌疑があったんです。特に東南アジア、アフリカ、中近東で大きなプロジェクトを獲得するために、日本の入札が本当にコスト以下であるという印象がありました。ヨーロッパの入札と比べると三割低いということ、それはああいう場合は英国の会社にとってちょっとわかりにくいことでした。それはもちろん私は証拠を持っていません。こちらではこういうところであったとか、こういうような会社がやったとか申し上げることはできません、もちろん私、今もう引退してからそういうような証拠も手に入れることも難しいから。しかし、そういう印象は確かに英国にあると申し上げなければならないです。
 それから第三のポイントでございますが、イギリスに進出していることでございますが、労働組合の関係。英国で労働組合の態度は大分変わりました。特に英国ではエレクトリッシャンズ、電気、それからEPTUと言いますが、電気関係とそれからプラマー、先行する労働組合が特に経営者と協力いたしたいと。そして私の印象ですが、この労働組合が一番何といいますか進歩的で、保守的でない。残念ながら英国の労働組合の中で保守的な労働組合が多過ぎた。保守的と言えば、それはもちろん保守党と関係ないんです。しかし、英語で申しますと、保守的は何も新しいものを入れたくないということ。英国の労働組合が、残念ながら少し日本から勉強する方がいいと私は思っております。
 しかし、インダストリアルデモクラシーの場合は余り進んでいないとおっしゃったんですが、それは会社によって違いますが、ある会社は大分発達していると思います。特に日本の会社、英国へ進出している会社で大分進んでいるらしいです。それで英国人が反対しているというわけではないです。もちろん先生が英国は階級制度が厳しいとおっしゃったんですが、私は大使の間に何回もこういうことを否定したんです。もう一度英国の階級制度についてこの場所で議論するなら、時間はオーバーになりますけれども、後で何とか階級制度について意見交換いたしましょうと私は思っております。申しわけありません。
#15
○委員長(安田隆明君) 以上でコータッツィ参考人の意見聴取は終了いたしました。
 一言お礼の言葉を申し上げます。
 ただいまお述べいただきました貴重な御意見は、先刻申し上げましたとおり、今後の総予算審査の参考にいたしてまいりたいと存じます。
 本日は、大変お忙しい中、本委員会に御出席いただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして重ねて厚くお礼を申し上げます。(拍手)
 午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#16
○委員長(安田隆明君) 予算委員会を再開いたします。
 昭和六十一年度総予算三案を一括して議題といたします。
 午前に引き続き、内外経済問題について参考人の意見聴取を行います。
 大河原良雄参考人に一言ごあいさつ申し上げます。
 大変お忙しい中、貴重な時間をお割きいただき、本委員会のために御出席を賜りましてまことにありがとうございます。委員会を代表して心から厚くお礼申し上げます。
 本日は忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、四十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただく要領で行いたいと存じます。
 それでは、大河原参考人お願いいたします。
#17
○参考人(大河原良雄君) 参議院予算委員会に参考人としてお招きをいただき、最近の日米関係につきまして申し上げる機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。
 私、昭和五十五年から昨年、昭和六十年までちょうど五年間ワシントンに勤務いたしまして、その間、国会の諸先生方にはお目にかかる機会を得ておりますが、私、ワシントンに勤務いたしまして最も強く印象づけられましたことは、アメリカが最近日本に対して非常に関心を深めてきているということであります。もちろん、長い日米の関係でございますけれども、この数年来、アメリカ人一般の日本に対する関心の度合いはかってに比べると格段に深まってきているというふうなことを私は実感として感じておったわけであります。
 これまでアメリカ人が日本を見ます目は、自動車でありますとかカラーテレビあるいはカメラ云々という、いわゆる日本から輸出されるハードウエアを通じて、とかく冷たいイメージを持ち続けておったというふうに言われておりました。ハードウエアでありますがゆえにどうしても非常に冷たい、かたいイメージしかなかった日本から、最近アメリカ人の対日関心がふえるに伴いまして、やわらかいものがアメリカ人の日常生活に入るようになったということが言われております。やわらかいものと申しますと、もちろん最近アメリカを訪問いたしました相撲とか歌舞伎とか、そういうことも思い出されますけれども、日常生活の上でも、アメリカ人一般が大変日本食を好み、一種の日本料理のブームが生まれているというふうなことにも代表されるということが言えようかと思います。と申しますことは、やわらかいものが入り込むことを通じまして、アメリカ人が日本を見る目がやわらかく、そして温かいものになってきた、また人間味の通うものになってきたということが言われるわけでありまして、この点がかつて、一時代前に比べてアメリカ人の日本を見る目が明らかに変わってきているということが言える一つの原因であろうかと思うわけであります。
 同時にまた、この関心の深まりを反映いたしまして、アメリカ人に日本をアメリカにとって信頼できる国だという意識が生まれてきているということが世論調査の上で現実に出ておるわけであります。と申しますのは、外務省は毎年アメリカのギャラップという世論調査の専門機関に委嘱いたしまして、アメリカ人が日本に対してどのような意識を持っているかという調査を行ってきております。その調査の一項目として、日本はアメリカにとって信頼できる友好国であるかどうかという質問の項目がございます。これに対して、昭和五十五年には四九%のアメリカ人が信頼できると答えておりましたものが、五十七年には五三%という数字が挙がり、五十八年には四四%と大幅に落ち込みましたけれども、明くる五十九年には五七%とまた大幅にはね上がり、昨年一月、つまり六十年にはこれが五六%という数字が出ております。恐らくことし六十一年の調査の結果も春先ごうには出てくるのではないだろうかという期待を私は持っております。このような信頼感が半数以上のアメリカ人の間に生まれてきているということを背景といたしまして、アメリカにとって日本という国の重要性という認識もアメリカ人一般の間に逐次広まってきたということが言えるというふうに感じております。
 これも別の世論調査の機関でありますけれども、ワシントンにポトマック・アソシエーツという民間の世論調査機関があります。この機関の調査の中で、アメリカの同盟国が敵性国の武力攻撃を受けた場合に、アメリカは米軍を派兵してその救援を行うべきであるかどうかという質問が出て
おります。これに対して、七六%のアメリカ人がヨーロッパの場合に派兵に賛成いたしておりますけれども、日本の場合には、オーストラリアと並んで七〇%のアメリカ人が米軍の派兵に賛成をいたしております。
 このような信頼感あるいは重要性の認識と申しますものは、結局、日本が経済大国として世界じゅうにその経済力を印象づけてきたということももちろんありましょうけれども、この数年来、日本が自由陣営の一員として西側の連帯強化のために積極的な役割を果たすという姿勢をとるようになってきたということも反映しているものだと申してよろしいかと存じます。さらにはまた、アメリカの政府がこの数年来、アジア・太平洋地域への関心を強め、アジア・太平洋地域の重要性を事あるごとに強調しているということも反映しているかと思われますけれども、経済的に見ましても、アメリカの太平洋を越える貿易は、既に一九八〇年代の初めからアメリカの大西洋を越える貿易量を凌駕しているという事実もあって、これがアメリカがアジア・太平洋地域への関心を深めている一つの原因であるということも言えようかと存じます。
 こういうふうに申し上げますと、アメリカが非常に日本に対して好意的な明るい気持ちを持っているのにかかわらず、なぜ最近のように経済摩擦が激しくなっているのだろうかという疑問が当然出てまいります。これに対するまた答えを世論調査の上で拾ってみたいと思うわけであります。
 ギャラップが昨年行いました調査の中で、アメリカは日本と経済関係を持つことが利益になっているか、それとも別の考えがあるかという質問が出ております。これに対しまして六六%のアメリカ人が利益であると答え、二三%のアメリカ人が脅威であると答えております。
 しかし、これも別の調査で、ポトマック・アソシェーツの調査でありますけれども、どの国の商品の輸入がアメリカ人の労働者の雇用に脅威を与えているかという質問が出ております。これに対しまして八〇%のアメリカ人がまず日本を挙げております。ずっと下がりまして、二番目が台湾の五二%、三番目が中国の二二%、二一%がメキシコで、その次に韓国が挙がってまいりますけれども、ずっと下がりまして、ドイツは一七%という数字が出ております。この数字で言えますことは、消費者の立場から見るならば、日本と経済関係を深めていくことは、アメリカの消費生活を豊かにするという意味で非常な利益をもたらしており、現にアメリカ人の消費生活は日本からの輸入によって非常な豊かなものになっているという事実があるわけでありますけれども、身近な雇用という立場に立って日本からの輸入を考えた場合に、これは雇用への大変な脅威だという意識がそこに出てきているわけでありまして、これが経済摩擦の底流にある問題点であるというふうに言ってよろしいかと思います。
 最近の摩擦を考えます際に、もう一つの特徴点と申しますか注意しなければいけない点は、この二、三年来の日米の経済摩擦がアメリカの景気が回復し、拡大し、好景気が続いている状況の中で生まれているという点であります。このようなアメリカの国内景気の好調を反映いたしましてアメリカの失業率は毎月のように低減いたしておりますけれども、日本との経済摩擦はこの数年来、毎年のように激化いたしております。六〇年代、七〇年代に私どもが経験いたしました日米の経済摩擦と明らかに違う側面がそこにあるように思われるわけであります。
 一九八〇年にアメリカは日本との間に百二十二億ドルの貿易の赤字を持っておりましたけれども、一九八五年、すなわち昨年はこれが四百九十七億ドルという数字に広がったということは一月の末に商務省が発表したとおりでありますけれども、この数字で見られますことは、八〇年から八五年の五年間にアメリカの対日貿易赤字が四倍に広がっているということ、そして一九八一年、レーガン大統領が政権を担当して以来、第一期政権の間にアメリカの対日貿易赤字は約倍に膨らんだという事実があるわけでありまして、この対日貿易赤字の膨らみという事実、しかも急速な膨らみという事実が摩擦を激化させている一つの大きな要因でもあるわけであります。
 さらにまた注目されますことは、七〇年代以来、私どもは絶えずアメリカとの間に経済摩擦を経験してまいりました。繊維問題、鉄鋼問題、カラーテレビの問題等相次ぎましたし、また七〇年代のおしまいごろにはオートバイ、工作機械という問題も登場いたしましたし、第二次石油ショックを直接の契機として自動車問題も深刻な問題でございました。そしてまた、最近は先端技術の先端に立つという意味において、半導体の問題が日米の摩擦の一つの焦点になっておりますけれども、かつてと異なっておりますことは、特定の商品をめぐる摩擦ということではなくして、今日の日米の経済摩擦はアメリカの目から見た日本の通商行動による問題であるということで、その局面が非常に広がっているということであります。
 裏返して申しますならば、半導体なら半導体の問題を一つ片づければ当面の摩擦が解消されるという事態ではなくして、アメリカの目から見た場合に、日本の通商行動そのものに対する大変な批判が生まれ、非難の声が生まれているということであります。その裏にありますものは、結局アメリカの産業界が、そしてまた労働界が日本の競争にさらされて非常な恐怖感を味わい続けてきているということ、そしてまた、そのような恐怖感を背景として、日本の競争を今日のままの状態で放置しておく場合には、アメリカの産業の基盤そのものが揺るがされることになるという非常な危機意識が生まれてきているということであります。
 今日までアメリカの産業界は、そしてまた労働界もそうでありますけれども、外国との競争、その中でも特に日本との競争に対して絶えず救済の措置を求め続けてまいりました。それがある場合にはダンピングの提訴でありましたし、ある場合には不公正競争の提訴でありましたけれども、産業界並びに労働界の目から見ますならば、これまで与えられております法律手続に基づく救済措置は余りにも不十分であり、不満なものであるという意識が絶えずあったわけであります。このような立場に立つ産業界、労働界は、次々と議会に対して保護主義的な新しい法律の制定あるいは法律の改正を求める働きかけを活発に行ってきたわけでありまして、例えば自動車産業の場合に、アメリカの国内部品を使用することを強制する内容を持った、いわゆるローカルコンテント法案が下院の本会議を通るというふうな状況にまで行ったことがこれを雄弁に物語っているわけであります。
 同時にまた産業界、労働界は、外国との競争に対しまして、為替の問題を絶えず訴え続けてまいりました。具体的にアメリカの産業界は、日本との競争に対して、日本は輸出競争力を不当に高めるために円安の操作を行っているという非難をし続けたことがございました。あるいはまた、その円安操作論が政府の機関によりまして事実無根ということになりました段階では、為替にかわるものとして輸入課徴金の導入を求めたということもあったわけであります。しかし、この輸入課徴金の考え方に対しましても、アメリカの大統領府経済諮問委員会あるいは議会の予算用が、いずれも輸入課徴金という考え方はアメリカの経済にインフレ要因を持ち込み、消費者に物価上昇という負担を負わせるだけで、アメリカ経済にとっては全くマイナスである。しかもまだ、アメリカ産業界の企業の体質の強化に何らつながらない全くの愚策であるという内容の報告が出るに及びまして、この課徴金の考え方も声を潜めるようになっていったわけであります。
 ただ、議会の立場から見ますならば、財政赤字問題に取り組んでおるさなかにおいて、課徴金の導入を通じて数十億ドルの新しい歳入源が見つかるという意味において非常に魅力のあるものでありますだけに、依然としてこの課徴金という考え方は完全に影を潜めたという状況ではないわけでありまして、昨年の秋に民主党のベンツェン上院議員を中心として二五%にも上る輸入課徴金をか
けるべきであるということを内容とする法案が提出されたのも、そのようなことを裏づけるものと言ってよろしいかと思います。
 アメリカの議会並びに産業界あるいは労働界が、日本の競争をそのように意識して何らかの対抗策を講じなければということを考え続け、また主張し続けたわけでありますけれども、同時にまた彼らの目から見ますならば、日本の競争のやり方が汚いという非難が生まれてきておったわけであります。競争そのものを非難することは到底できないわけでありますけれども、競争のやり方が汚い、フェアでないという非難が生まれてまいっておったわけであります。
 端的に申しますならば、日本という国は、輸出は物すごい勢いで努力をするけれども、輸入はあらゆる障壁を構えてこれを抑圧し、妨げようという姿勢をとり続けてきている。これは本来、輸出と輸入が相伴わなければいけない貿易の姿をねじ曲げている非常におかしな汚いやり方であるという非難が生まれてまいりましたし、本来、貿易というゲームは平らなグラウンドの上で行われるべきものが、日本との関係においては絶えず日本側に有利な形で、グラウンドが傾いた形で貿易が行われているという非難であったわけであります。
 現実にアメリカの産業界は、日本の企業がアメリカ市場に参入するために価格のダンピングその他あらゆる手段を講じて市場に参入し、そうして市場のシェアを広げてきているということに対する激しい非難を繰り広げてきたわけであります。このような産業界、労働界の働きかけに対しまして、昨年来、議会が日本に対して極めて激しい非難を浴びせ、保護主義の動きがますます高まっていったわけでありましたけれども、レーガン政権はこれまで一貫して輸入制限に反対する、そして保護貿易に反対し、自由貿易を維持するという姿勢をとり続けてまいりました。
 しかし、その自由貿易の姿勢に対しましては、現実にアメリカの対外貿易が毎年のように悪化していくという状況のもとに、議会並びに産業界において、逐次自由貿易に対する非難の声が高まっていったわけでありました。これに対してレーガン政権の答えは、昨年の九月二十二日に発表されました新貿易政策に強調されておりますように、貿易は自由でなければならない、同時にまた公正でなければならない、こういう主張でありまして、自由かつ公正な貿易ということでアメリカは対外交渉を行い、また対外通商政策を進めるという姿勢で議会にこたえようとしてきたわけであります。
 二月の六日に、レーガン大統領は議会に対する立法教書を送っておりますけれども、その中で、外国の不公正貿易と闘う決意とともに保護主義立法に反対するとの姿勢を再確認いたしておりますけれども、レーガン政権のこの姿勢に対して議会がどのようにこたえるかということが、保護主義と自由貿易との闘いという形をとっている現在のアメリカ国内での問題点であろうというふうに思われるわけであります。
 もう一つ、また先ほど申し上げました産業界が問題視しておりました為替面での措置につきまして第一期レーガン政権におきましては、強いドルすなわち強いアメリカという考え方に立ちまして、ドルが円を含める主要国通貨に対して高いレートで推移していくことに対して、むしろこれを容認するどころか、強いアメリカの具体的なあらわれであるという姿勢をとり続けておったわけでありますけれども、為替面で一〇%、二〇%以上の開きが出るという状況で、アメリカの産業界は到底競争力を確保することができないという国内的な強い動きも出てまいりましたし、また特に昨年来、アメリカの農業不振という状況の中で、アメリカの農産物の対外輸出市場確保という至上命令も生まれてまいりましたし、レーガン政権は第二期に入りましてから、強いドルすなわち強いアメリカという考え方を明らかに変えていったように思われるわけであります。
 それが具体的に表明されましたのが、昨年九月二十二日の五カ国蔵相会議におけるドル高の是正並びにそれを定着させるための主要国によるマクロ経済政策の調整という考え方であったわけでありまして、アメリカは明らかに今や弱いドル、そして強いアメリカを目指しているということが言えるわけであります。昨年の九月二十二日のG5、二十三日の新貿易政策の発表ということに見られますように、レーガン政権は、これまで為替の問題と貿易の問題がばらばらに取り扱われておった状態はアメリカの対外貿易を考える場合に明らかに適当ではないという判断に立ち、為替と貿易と両面を総体的にとらえなければいけないという考え方を持って、九月二十二、二十三日の措置を講じたということが言えようかと思います。
 日米関係について申しますならば、昨年の秋以来、アメリカの議会は表面的には比較的静かに推移してきているように思われますけれども、今まで申し上げました基本的な問題が解決されたということでは決してないわけでありまして、表面的な静かさと申しますのは、結局、アメリカの議会が現在、財政赤字問題、そしてそれをめぐる税制改正という大きな政治的な課題に没頭されており、ほかの問題に十分時間を割くだけの余裕がない状態で推移してきているということを反映しているものだと言うべきではなかろうかと考えております。
 同時にまた、アメリカの議会は貿易の不均衡、その中でも日本との貿易不均衡の事態を考えます際に、昨年の秋以来の円高の動きをもう少し見定めてみたいという空気があるようにも思われるわけでありまして、為替のレートの調整、変動によってアメリカがどのように競争力を回復することができるのか、そしてそれが貿易の数字の上に具体的にどのように反映していくのかをもう少し見定めてみたいという動きがあるように思われます。同時にまた、アメリカのレーガン政権は、先ほど申し上げましたような自由かつ公正な貿易、そして為替面でのドル高是正という措置を通じて議会の保護主義の動きに対応してまいりましたけれども、行政府の立場から見ますならば、昨年一年かかって日本との間に交渉をまとめ上げましたいわゆるMOSS方式による日本市場の開放の成果というものを大きな材料として議会に立ち向かってきたわけでありますし、今後ともそのような形で日本市場開放の実を上げる、現実にそれが成果をおさめるという形で議会の動きに対応していこうというのがレーガン政権の考えであるというふうに思われるわけであります。
 今申し上げましたような状況のもとで、今日、日米経済摩擦が極めて深刻化している状況にさらされているわけでありますけれども、しからば、日本側としてどのような対応をしていくべきであるかということにつきまして私の考えを申し上げさしていただきたいと思います。
 アメリカがこれまで日本に対して絶えず求め続けてまいりましたのは市場開放の促進であり、内需の拡大あるいは円高の定着ということであったわけでありますけれども、このような面において日本は自由貿易維持のために積極的な対応を自分自身の手でやっていくべきであるというふうに考えております。
 市場開放の問題につきましては、昨年の夏に行動計画が発表され、昨年の暮れには臨時国会におきましてこれを実施するための法律の制定を見ていただいたわけでありますけれども、アメリカの目から見ますならば、このような形で逐次前進は見ているけれども、なおかつ日本の市場には、非関税障壁という形でもろもろの輸入の障害が張りめぐらされているという意識が強いわけでありまして、非関税障壁という問題になりますと、例えば基準・認証制度をもっともっと緩和してほしいという要望もございますし、あるいは流通面におきまして外国の企業がもっともっと日本の市場に入りやすい実態を確保してほしいという強い希望もあるわけであります。恐らくアメリカが言っておりますMOSS方式による新しい分野での交渉という点につきましても、このような面での問題点を米側は提起してくるのではないだろうかという感じを私は個人的には持っております。
 内需の拡大という問題につきましては、これまで日本経済に内在いたしております黒字体質と申しますか、輸出主導型の経済構造をこの際思い切って改め、内需主導、輸入拡大の体質に変えていく努力がぜひ必要であると思うわけであります。
 この三年間にアメリカは日本との間に一千億ドルの貿易の赤字を抱え込むことになったわけでありまして、先ほど申し上げましたように、五年間に対日貿易が四倍にもなったというだけではなくして、現実にそれほど大きな赤字をアメリカは日本との間の貿易で持っております。そして、従来この貿易面での赤字を貿易収支の面である程度補ってくるという状態が続いておりましたけれども、最近におきましては、貿易外収支の上におきましても逐次アメリカの黒字幅が狭まり、経常収支という形では日本側の黒字状態が続いているわけでありますし、世界じゅうにおきましてもこれほど大きな黒字を抱えている国はかつてなかったという状況は明らかに不自然であるわけでありますから、国際的な調和を図りながら日本経済の運営を図り、そしてそれを通じて自由貿易の恩恵を引き続いて受け続けるという目標のためには思い切った内需の拡大を必要とすると思いますし、またそのためには、規制の緩和ということも大幅に実現していただきたいものというふうに考えております。
 内需の拡大との関連におきましてアメリカが絶えず問題にいたしておりましたのは、ドル高・円安という事態が長く続いたということでありました。それは日本の経済の中にある高い貯蓄性向から生まれる余剰の資金が国内で消化されずに、アメリカの資本市場に非常な勢いで資本投資の形で流れ込み、それが円価格を下落させる大きな要因の一つであったというとらえ方があるわけでありまして、そういう意味からいいますならば、円高を定着させていくということ、そしてまた日本に存在する余剰の資金が国内で消化される、すなわち国内投資または国内消費に向けられるべきである、こういう考え方につながってくるわけでありますから、内需の拡大並びに円高の定着という問題はその面においてとらえられてしかるべきものというふうに考えるわけであります。
 同時にまた、国内で生まれます余剰の資金を積極的に活用するという見地から申しますならば、アメリカに対する証券投資という形ではなくしてアメリカに対する直接投資を積極的に推進すべきものというふうに考えるわけであります。アメリカ各州の知事は、いずれも自分の州の経済発展を図るためにぜひ日本からの企業誘致を図りたいという極めて強い意欲を持ち、そのために数多くの知事が相次いで東京を訪門いたしております。アメリカに対する直接投資を進めますことはまさにそのような各州の強い希望にこたえることにつながっていくだけではなくして、現地生産が進めばその分日本からの対米輸出も減っていくことになるわけでありますし、さらにまた重要なことは、アメリカの労働者に新しい雇用の機会を与えることができるという大きな意味を持ってくるしとになろうかと思います。昨年までの統計で、日本からのアメリカ向けの直接投資は約百五十億ドルであり、約十五万人の職場をアメリカ人の労働者に与えてきているという数字が出てきておりますけれども、最近の円高という状況のもとに対米直接投資がさらに推進されますならば、アメリカ人に雇用の機会を与えることがより多くなってくるという効果も期待できようかと思います。
 同時にまた、日本といたしましては、今申し上げましたような政策を進めると同時に、発展途上国からの輸入拡大あるいは発展途上国への経済協力の一層増大ということを通じて、日本がいわゆる南北問題に対して積極的な役割を果たしてきているということを世界じゅうに示していく必要があろうかと思うわけであります。そして、このような努力をすることは、すなわち日本が国際的な責任を十分分担するという意味での積極的な姿勢を持つようになってきたということが印象づけられるわけである、それが日米経済摩擦の上におきましても大きな効果を持つことにつながってくるというふうに考えるわけであります。
 アメリカの議員がよく言っておりますことは、アメリカはアメリカ国内で抱える種々の問題がありながら、累積債務問題を抱える途上国との関係に留意して、途上国からの製品輸出の中で大きな輸入市場を提供してきている、それに比べて日本は途上国からの製品輸入が余りにも少な過ぎるということを絶えず非難し、具体的にはアメリカは五八%、日本はわずか八%しか途上国の製品輸出を引き受けておらないという議論があるわけでありますから、こういう点にこたえることもまた今日我々が抱えております日米経済摩擦問題にこたえる一つの対応策であろうというふうに考えるわけであります。
 国内で今申し上げましたようなもろもろの措置を講じてまいるに当たりまして、アメリカの議会がこの秋の中間選挙を控えて絶えず選挙区に対する配慮ということを考え、そしてその中で貿易不均衡、そしてまたその中で一番大きな数字を持っている日本の問題について保護主義的な動きに出がちな形勢が続いておりますけれども、これに日本非難そして保護主義への傾斜という口実を与えないための努力をしていく必要があろうと思いますし、また日本がこれだけの大きな黒字を抱えている国として、黒字体質を脱却すべくあらゆる努力を払っているということを明確に示す必要があろうと、こういうふうに考えるわけであります。
 以上申し上げましたことを突き詰めて申しますと、日本は国際的に極めて巨大な経済大国であるというふうに映っているわけであり、それほど大きな経済力を持ちながら、日本が国際的にそれにふさわしい十分な責任を果たしていないという非難が生まれてきており、それがまた日米の経済摩擦さらにはヨーロッパ諸国の対日非難という動きの根源にある問題であるというふうに考えられるわけでありまして、その意味において、突き詰めて申しますならば、日本が経済大国にふさわしい国際的な役割を十分果たしていく必要が今日ほど強まっていることはないというふうに考えているわけであります。
 以上で、私が冒頭申し上げさしていただきたいことを終わらしていただきます。
#18
○委員長(安田隆明君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#19
○海江田鶴造君 ただいまは大河原前大使から、五年間の大使としての御活躍の御経験に立たれた貴重なお話をいただきまして、大変ありがとうございました。大変有益で得るところがあったと思いまして、この点感謝申し上げます。
 若干御質問を申し上げたいと思うんですけれども、先ほどお話がありました昨年の九月二十三日のアメリカの新貿易政策で、台頭しておった保護主義というものをレーガン政権がはっきりこれはいけないということで、自由貿易を推進するという、自由と公正ということでこれからアメリカの貿易を進めていくんだと、こういうことでございますが、お話の中にちょっとありましたけれども、アメリカの保護主義的な動きというものが若干はあっても大体これで抑えられて、これからは自由貿易で特に公正ということを求めていくことになる、このように理解してよろしいんでしょうか。あるいは私ども今ずっとアメリカの動きを勉強しておりますと、やや保護主義的なものがなくなって、むしろこれからどんどん先ほどのMOSS協議みたいに市場開放その他で公正ということを盛んにこれから一生懸命言ってくるんじゃなかろうか。これに対して日本はどう対処していくかということが大事になりますので、この点についての大使のお考え等をお聞きしたい。
 それからもう一つは、去年の末にできましたグラム・ラドマン法という、収支均衡法というんですか、あれに基づいて今年度のアメリカの予算等が組まれておって、ことしの二月のレーガン大統領の立法教書等でもそれが言われていると思うんですが、この財政赤字をこれから一九九一年まででしたかにゼロにするということでございまし
て、これが今後憲法違反ではないかということでいろいろ争われるということも聞いておりますけれども、何かグラム・ラドマン法に従って若干これから当分は予算その他の線がいくんではなかろうか。そうすると、計画どおりには財政赤字は減らないにしても、かなりアメリカの財政政策というものが赤字是正の方に進む。そうなりますと、やはりアメリカの今まで世界経済に果たしてきた大きなインパクトといいますか、力というものが財政赤字を減らす方向へいきますと、かなり影響が出てくるんではなかろうか。それが特に、また日本の経済に対してもかなりな影響を与えるんではなかろうかという点、まずこの二つをちょっとお教えをいただきたいと思います。
#20
○参考人(大河原良雄君) 最初の新貿易政策に盛られております自由かつ公正という貿易、通商政策の考え方でございますけれども、レーガン政権といたしましては、この自由かつ公正な貿易という政策と、もう一つ、ドル高の是正という為替面での政策、この二つをもって議会のみなぎっております保護主義の動きに対抗をしていこうと、こういうことを考えているわけでありまして、今日までのところ議会は、果たして行政府、レーガン政権が言っているような形でアメリカの貿易不均衡問題に対処できるのかどうかということについて厳しい目でまだ見続けてきていると、こういう状況であろうと思います。ただ、日本の立場から見まして注意しなければならないと思いますのは、公正な貿易という考え方に対して、日本の対米輸出についてあるいは日本の通商政策について極めて厳しい要求を次から次へ出してきておりますし、またこれからもそういう状況が続くのではないだろうかという点でございます。
 九月二十三日にレーガン大統領は新貿易政策を発表すると同時に、日本との関係におきましては革並びに革製品の輸入の問題を取り上げ、そしてまたたばこ問題についても、これを不公正貿易の対象として取り上げているわけであり、革の問題につきましては十二月に非常に苦しい交渉を経て日本側が代償を提供し、また一部日本の革製品の対米輸出については米側が相殺関税をかけるということでおさまりましたけれども、まだたばこの問題がこれからくすぶっていくわけでありますし、同時にまた、アメリカの国内において日本の対米輸出が不公正であるという立場に立って提訴が相次いでいるわけでありますから、日本の対米輸出について、公正な貿易という立場に立って、極めて厳しい対応が見られ続けるであろうということを十分日本側は注意していかなければいけないであろうというふうに思います。
 第二の財政均衡法の問題でございますけれども、御指摘のとおりに、現在グラム・ラドマン法についてはこれが違憲であるという訴訟が議員から提起され、既にワシントンの第一審においてこれが違憲の判決を下されております。現在これが上訴中でありまして、最高裁において審理を受けているわけでありますけれども、結果は予断を許しませんけれども、違憲という判決がおりる可能性はあるというふうに見られているわけであります。ただ、レーガン大統領も、先ほど申し上げました立法教書の中で触れておりますように、グラム・ラドマン法の制定に伴いまして、予算の編成の過程またそれに伴う財政不均衡是正の具体的な方策について従来とは変わった新しい道が踏まれることになるであろうというふうに言われているわけであります。
 最近のワシントンの状況をいろいろ聞いてみますと、議会の中にも、グラム・ラドマン法というものを通したけれども果たしてこれでよかったんであろうかという反省の声が見られるということでありまして、いわば議会として最大の権限である予算の編成権を自分自身の手で放棄する形で、グラム・ラドマン法に基づく機械的なあるいは自動的な予算削減ということが果たしてよかったのであるかどうかという反省が生まれているということが言われているわけでありまして、グラム・ラドマン法が最終的に違憲であるか合憲であるか、どのような判決が出るかということを別にいたしまして、議員の立場から見れば、何とかグラム・ラドマン法によって機械的に予算削減という方途がとられるのではなくして、自分自身の手で政策目的を十分反映した形での予算を組みたいという強い希望があるように思われるわけであります。
 したがいまして、本来の規定に基づきますならば、ことしの八月の二十五日までに来年度の予算編成が法律の規定に基づくとおりの措置がとられているかどうかということが判定され、もし法律の規定に基づいた措置がとられない場合には、国防費において二百五十億ドル、国防費以外の問題について二百五十億ドルの自動的な削減という措置がとられることになるわけでありますけれども、恐らく議会もそしてまた行政府も全力を尽くして、この機械的な削減ではなくして、政策目的をある程度織り込んだ形の予算編成を行うべく努力を払うことになるであろう、そういう感じを持っておりますし、特にことしの秋の中間選挙を控えて、議員の立場からは共和党、民主党を含めてそのような考え方が強いように思われます。
#21
○海江田鶴造君 ありがとうございました。
 先ほど大使のお話で、日本が円安を操作しているのではないかということについては、いろいろ誤解を解く努力をしたところが大体わかっていただいたというようなお話でございましたが、昨年初めごろから、どうもアメリカの中に日本に対する誤解、よく実情を知らないで言っておられる向きがある。よくパーセプションギャップといいますが、そういうものがあるので、もう少しよく日米間が話し合ってやったらどうだろうかと。大使はアメリカ全土を随分回られていろいろお話をされたようでございますけれども、また非常に大きな成果を上げられたと思いますが、我々の方でも二階堂さんを初めとして、お互いに議員の交流をするとか、そういうことによって日本の実情というものをよく知らせるということをやらなくちゃいかぬということになっておるわけでございます。
 今お話を聞いておりまして、そういう誤解に基づくものがこの日米の経済摩擦あるいは保護貿易論といったようなものにかなりウエートを占めておるのか、あるいはもうちょっとそんなものじゃなくて、本質的にやはり日本の今の通商政策というものに原因がある、率直に言って基準・認証制度とか、いろんなその他の点についてアンフェアと言われてもしようがないものがある。むしろ、その辺に我々は一生懸命努力してそういうものを改善することが大事で、そういう誤解的なものはもうかなりなくなったのか。先ほどのお話で、ギャラップの世論調査その他では日本に対する理解は相当深まっているように承ったんですが、その辺について大使の御見解を承りたいと思います。
#22
○参考人(大河原良雄君) まず、円安操作論という議論でございますけれども、これはアメリカのビジネス・ラウント・テーブルという有力企業の集まりが特に強調しておった点でございましたけれども、先ほど申し上げましたように、アメリカの国内においては権威ある機関がそのような事実はないということを否定したわけでありました。
 しかし、例えば昨年の夏、二階堂副総裁がワシントンで開かれました全世界民主同盟総会でございますか、これに出席されました際に、イギリスのサッチャー首相が日本の円安操作はけしからぬという非難の声を浴びせたということを新聞で承知いたしておりますけれども、それほどに円安操作という議論は一般の耳に入りやすく、また一たん入った議論というのはなかなか抜け出しにくい、こういう実情があろうかと思います。もちろん、サッチャー首相の議論は、日本が円安を操作しているということではなくして、円安という事態を放置しているのはけしからぬということに最後的にはなったようでありますけれども、そのような考え方の食い違いがあるわけであります。
 認識のずれという点の御指摘ございましたけれども、確かにいろんな面において認識のずれがあろうかと思います。その際に問題なのは、アメリカの企業なら企業が、ある段階において日本と取
引を行い、あるいは日本市場への参入の努力を行って結局失敗に終わった、その記憶、経験、知識というものが、仮に五年前、十年前のものであっても、依然として今日妥当しているかのごとくの議論が横行しがちであり、またそのような失敗談ばかりがアメリカの議員の耳に入りやすく、日本市場で成功しているケースも多々あるわけでありますけれども、そのような成功語というのはなかなか議員の耳に届かないということもあり、とかく日本は悪いことをしているという趣旨の話ばかりが多く議員の耳に入り、それが日本非難の声につながってきているという点も多々あるように思うわけでありまして、まことに残念であります。
 ただ、一般的に言えますことは、残念ながら、日本側が従来行ってまいりました市場開放措置というものがそれにふさわしい十分な評価を得にくい状況が続いておったということであります。
 それは、第一回の市場開放措置から一昨年の十二月までに日本政府は合計六回の市場開放措置を発表したわけでありましたし、その都度基準・認証制度の大幅改善という措置を盛り込んでおったわけでありました。この開放措置が発表されます都度、アメリカはこれによって日本の市場に存在する貿易上の障壁が、関税面であろうと非関税面であろうと大幅に除去されていくであろう、そしてアメリカの対日輸出が伸びていくであろうという大きな期待を持ってこの市場開放措置を受けとめたわけでありましたけれども、結果的には、一九八一年に百八十億ドルでありましたアメリカの対日貿易の赤字が八四年には三百六十八億ドルと倍に膨らんだわけでありまして、アメリカは期待に反しただけではなくして、その間にこのように大きな貿易の赤字が膨らんだのは、結局、日本政府の市場開放措置というものがどうも小刻みたな、そして痛みの伴わない程度のその場しのぎのものであったんではないかという疑いの面あるいは不信の気持ちを持つようになってしまったということがありまして、まことに残念なことであったわけです。
 しかし、日本側としては真剣な努力をし、またそのような努力の跡をあらゆる機会を通じて米行政府、議会その他に説明をし続けたわけでありましたけれども、現実の貿易の赤字の急速な大幅な拡大という事実の前にそのような事実関係というものがなかなか正しく評価されないような空気が生まれてしまったということであったと思います。したがいまして、誤解を逝くための努力、そしてまた認識のずれを埋める努力というものを今後ともますます強力に進めなければいけないと思いますけれども、一たんそのような印象を持たれてしまいますと、よほど思い切ったことをいたしませんと、また日本は痛みの伴わない程度のことしかやらないのかなという疑問の気持ちがまず先立ってしまうということになるおそれがあろうかと思います。
#23
○海江田鶴造君 ありがとうございました。
#24
○稲村稔夫君 ただいまは、駐米大使という大変貴重な体験をお持ちになり、その体験をまた十分に踏まえながらの大変私どもにも参考になります御意見をいろいろと伺いまして、大変ありがとうございました。
 そこで、私は四点ほどを教えていただきたい、このように思っておりますが、順序は本来だったら後の方で伺おうと思っておりましたが、今それこそ大変大きな関心事にもなっておるし、ただいまの参考人のお話の中でも、今後途上国への援助あるいは途上国の製品の輸入拡大というような努力も我が国に課せられた一つの重要な課題であろうと、こんなふうに言われたわけでありますが、フィリピン問題というのが今それこそ世界の注視の的となっているということなんであります。
 私も、実は昨年の九月にフィリピンにわずかの時間でありましたが寄りました。そのときに、治安の問題であるとかいろいろ、短い間でもこれでいいのかなという感じを幾つかの面で持ったりしてきましたが、また今回のあれでも、安倍外務大臣も今後の援助のあり方についてもまた新しい事態の中でいろいろと考えられるやの御発言もニュースなどで伝わっております。
 いずれにしてもこの問題は、我々の耳には極めて突然にあらわれた形に見えますけれども、いろいろと長い間の経過もあったのではないだろうか、その辺あたりはアメリカが一番よく知っているのではないだろうか、こんなふうにも思いまして、アメリカはこの問題をどういうふうに見ているのだろうか、こんなふうにも思っておりましたので、今後の行き方いかんによって我が国のまた対応の仕方もいろいろ考えなきゃいかぬ問題にもなってくるということになりますが、その辺の参考人のひとつお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。アメリカがどういうふうに考えているのか、歴史的なものも少しあるのかもしれないと思いますが、よろしくお願いいたします。
#25
○参考人(大河原良雄君) 冒頭申し上げましたように、アメリカはこの数年来、アジア・太平洋地域に対する関心を大変深めておりますけれども、その中におきましてもASEAN諸国の安定、繁栄ということを非常に重視する項目の一つとして考えてきたと思います。それで、その中におきまして、ASEANの中ではフィリピンがアメリカの軍事基地を持っているという観点におきまして、政治的に安定しまた経済的にも安定をしていくということに対して強い期待を持ち続けてきたわけでありますけれども、この二、三年来のフィリピンの国内情勢は、アメリカの目から見ましても非常に憂慮すべき状態が続いてきたというふうにアメリカは考えてきたと思います。
 しかし、最近シュルツ長官が、フィリピンの軍事基地はもちろん大事であるけれども、それ以上にアメリカが重視するのは自由と人権であると、こういうことを述べておりますことが物語っておりますように、アメリカはやはり自由世界の盟主として世界じゅうに自由と人権が確保されることを最大の政策目的として政策を進めてきているということが言えるでありましょうけれども、そのような立場に立って考えた場合に、現在のフィリピンの情勢がどのように展開していくことになるのか、そしてまた、自由と人権を強調しながらも、その関連においてフィリピンに存在いたします政権が対米関係を将来どういうふうに考えていくであろうか、そしてその中において、スビック並びにクラークの基地というアメリカにとって極めて重要な軍事基地が将来どのように位置づけられることになっていくのかということに対して強い関心を持ち続けてきたし、今後ともそうであろうというふうに申し上げるのがよろしいかと存じます。
#26
○稲村稔夫君 基本的には今おっしゃったようなことかもしれませんが、アメリカの態度そのものが初めのころと後の方というか最近といいましょうか、その辺のところが私たちがニュースに接している限りは大きく変わったような感じもするわけですね。最初マルコスもやむを得ないというふうな態度だったように見受けますけれども、今度は積極的にアキノ支持というような形でニュースが伝えられておるんですけれども、こうした動きというのは何か特別なものがあるんでしょうか。
#27
○参考人(大河原良雄君) 今私申し上げましたような基本的な考え方のもとにアメリカはフィリピンの国内動向を見続けてきたわけだと思いますし、またフィリピンの政権のあり方については、フィリピンの民意が十分反映された形での政権の登場が望ましいという考え方のもとに対処してきたということが言えるんではないだろうかというふうに思うわけでございます。そういう意味におきまして、民意の動向ということを見定めるのにあるいは若干途中で戸惑いがあったのかもしれないなという感じはいたします。
#28
○稲村稔夫君 日米関係について勉強させていただいているわけでありますから、この辺はその程度にさせていただきまして、私どももまたいろいろとこの面では推移を見守っていきたいというふうに思っております。
 そこで次に、先ほども同僚委員からの御質問ございましたけれども、アメリカの財政収支均衡法
が非常に問題になったわけでありますけれども、私はアメリカの今の我が国との貿易摩擦のかかわりの中で、アメリカの国家財政に大幅な赤字が続いたことの重圧が加わっているというその問題と切り離して考えていくわけにもいかないのではないだろうか。やはり財政再建という経過の中で、我が国とのかかわりというのがかなり今後問題になるんではないだろうかというようなことを気にしているわけでありますが、その辺のところをどのようにお考えになっておられるでしょうか。そしてまた、そういうことにはどう対応していったらいいというふうにお考えになっているか、お聞かせをいただければありがたいと思います。
 次に、我が国の場合は特に対米貿易の中で、今のお話のように四百億ドルあるいは五百億ドル、場合によってはもっとになっていく、そういう我が国の黒字というものを今後解消していくというのは、これはなかなか貿易収支の面だけから追及していっても本当に困難なことではないだろうかというふうに思うわけなんでありまして、その辺のところを本当に有効な対策というものはどういうふうにしたらいいんだろうと、これは関係者のみんな一様に頭を悩ましているところだと思うわけであります。
 その辺のところを踏まえながら、特に我が国の産業構造そのものは経済二重構造と言われているわけでありますけれども、例えば先ほどの海外への直接投資というものが進んでまいりますと、そういたしますと、アメリカでの雇用を創出していくという点では非常に重要な役割を果たしましょうが、今度は我が国の国内で子会社、下請関係、こういったものに重大な影響を及ぼしてくる、こういうことにもなってくるわけでありまして、その辺の相関関係に大変難しいところがあろうというふうに思うわけであります。
 そこで、アメリカ側からは今度は、中小企業の製品に特に関税障壁だとかあるいは日本の習慣ということもなかなか難しさがあるとか、いろいろ困難があるので、中小企業の製品もかなり積極的に開放するようにというような意見なども最近はよく聞くわけでありますが、それだけに、今アメリカが我が国の経済構造あるいはそういう中で果たしている中小企業というようなものに対してどういうふうに見ているのかというようなことについても、おわかりでございましたらお教えをいただきたいというふうに存じます。
 それからもう一点は、農畜産漁業、こういうものについての摩擦でありますけれども、これはまだ私見でありますけれども、アメリカの国家財政の赤字というものがアメリカ国内の農畜産業に対するいろいろなそのための支出というものを大幅に絞り込んでいっている、このことが大変厳しい状況になって、また我が国に対する輸出への圧力というような形を招いているんではないかというふうにも思うわけでありますけれども、その辺のところはいかがなんでございましょうか。
 また、漁業関係が今大変厳しい状況になっておりまして、これも私どもにとっては何か突然、日米漁業関係というのが緊迫化を急速に生じたような感じを受け取るわけでありますけれども、この辺のところは今までの間にそういう兆しはなかったのでありましょうかということもございますし、また特にこれはアラスカとのかかわりがいろいろとあるというふうにも言われたりしているわけでありますけれども、そうした関係をどのようにごらんになっているでありましょうか。
 特に漁業関係ということでいきますと、アメリカとの漁業関係が妙な形になっていきますと、日ソ漁業交渉の方にもすぐに響いてくる。向こうの方もまたそれを見ているわけであります。そして、その結果いかんによって、それこそ我が国の漁業が壊滅的な打撃を受ける、こんなことにもなりかねないという危惧をしておりますので、それだけにこの事情がどういうふうになっているのかというようなことをお聞かせいただければありがたいと思います。以上です。
#29
○参考人(大河原良雄君) まず財政問題でございますけれども、御指摘のとおりに、アメリカはかねて財政の赤字と貿易の赤字が双子の赤字というとらえ方をしてきておったわけでありますが、いずれに対しましてもこれといった決め手がないことに対するいら立ちがアメリカの議会に非常に強い状況が続いてきたと思います。そのいら立ちが、まさに日本非難という形で昨年の春から夏ごろ非常に激しい感情的な議論につながっていったんだろうというふうに私今考えますけれども、もう一つ言えますことは、これまでアメリカは財政赤字問題と例えば高金利、ドル高とは直接何らつながりがないという議論をし続けておりました。これがレーガンの第一期政権時代の姿勢でありました。
 しかし、最近になりましてから、明らかにG5に見られますように、財政赤字問題も高金利もドル高も全部帰するところはアメリカが抱えている膨大な財政赤字にある、したがって財政赤字問題に本格的に取り組まない限り、アメリカは当面する双子の赤字はもちろんのこと、アメリカ経済が抱える問題に対する十分な答えにはならないという考え方が強く生まれてきたわけであり、先ほど御質問ございましたグラム・ラドマン法という極めて革命的な財政再建法が生まれた背景もそこにあるというふうに考えてよろしいと思います。
 そして、私最近の動きを見ておりまして感じますことは、一昨年ぐらいまでアメリカは日本なりヨーロッパの諸国がアメリカの抱えているドル高、高金利、そしてそれの原因となっている財政赤字問題について幾らこれの是正を求めても聞く耳を持たないという姿勢であり続けたと思います。しかし昨年来、明らかにその考え方、姿勢に変化が見られまして、アメリカ自体がまず財政赤字問題の解決策を見出さなければいけない、そして税制改正の問題にその観点から取り組まなければいけない、同時にまた、世界経済の活性化を図るためにアメリカは独力でこれに対処することはできない、どうしても日本並びにEC諸国がこれに協力してそれぞれの問題の解決に当たってもらう必要がある、こういう姿勢に変わってきていると思うわけでありまして、そういう脈絡の中で日本の円の問題あるいは内需拡大の問題に対する要請が生まれてきているということであろうと思うわけであります。
 それから、対策の点につままして、日本側がいかなる努力を行いましても、現在見られます五百億ドル近くの対米貿易黒字という数字はすぐにはなかなか是正できない問題であろうと思います。この点は、アメリカ側の議員たちと話をいたしましても、例えば円高という事態が現実に貿易の数字にはね返るのには若干の時間がかかる、そしてまた日本側が昨年来鋭意進めております内需拡大という措置にいたしましても、これが現実に内需の拡大が図られ、産業構造の変革という措置がとられるにしても、それが貿易の上に反映するにはかなりの時間がかかるということについてはよくわかるということを言うわけであります。
 したがって、それじゃ一体何を求めるのだということになりますと、自由貿易を支持しておりますアメリカの議員たちが申しますことは、日本の市場が十分開かれ、アメリカの製品が日本の市場で十分に自由に競争する機会が与えられることである、こういう答えが返ってくるわけでありまして、貿易の数字がこれほど大きい赤字になるということはもちろん望まないし、これをぜひ下げなければいけないけれども、要するに競争の機会を自由に与えるということ、そしてそれを通じて貿易の姿が変わってくるという先の展望が開けることが必要だということに尽きるかと思うわけであります。
 その過程におきまして、御指摘のとおりに、産業構造の改変あるいはそれが国内の中小企業にどのような影響を及ぼすことになるのかという問題が出てくることになろうかと思いますけれども、アメリカは日米の競争という観点に立って、かねて日本側の産業政策を問題にしてまいりました。産業政策の中でも特定産業の振興ということを通じて、日本政府の不当な支持政策によって日本の企業が不当な競争力を蓄えることになるのは到底
見過ごすことはできない、こういう考え方をとってきたわけでありまして、アメリカが日本の産業構造に対して持っております問題意識はそういうことであるわけであります。
 また、対米直接投資に伴って日本の国内における雇用の機会の減少あるいは喪失という点について御指摘があったわけでありますけれども、結局、日本は周辺諸国いわゆる新興工業諸国からの追い上げに既にさらされているわけでありまして、アメリカを考えあるいはヨーロッパを考えるだけではなくして、アジア周辺の新興工業諸国との強烈な競争という問題に対しても十分配慮していかなければいけない段階になってきていると思います。そういう観点から、やはり日本の産業構造というものを十分将来を展望しながら考えていくべき重要な時期に現在我々際会しているのではないだろうか、こういうふうに考えるところでございます。
 それから、農業の問題につきましては、アメリカの農業が直接当面しております問題は農業不況という全体の中で輸出不振という問題、特にECの共通農業政策にさらされてアメリカの伝統的な輸出市場がECに奪われているというところに最大の問題意識があるわけでありまして、農業に関します限りは、私は、アメリカの農業界はより強くより多くECとの競争を問題にしている、こういうふうに考えております。
 漁業の問題につきましては、種々御議論がございましたけれども、かねて入漁料の問題あるいは二百海里水域内での操業の問題について毎年のようにアメリカとの間に難しい交渉をやってまいり、その都度現実的な解決策を見出してきたわけでありますけれども、この数カ月来でのサケ・マス漁業あるいは北洋での底魚操業という問題につきまして全く新しい局面があらわれてきているように思いますけれども、これはアメリカの国内に生まれてまいりました新しい産業としての水産業が、外国との競争にどのように立ち向かうかという国内的な問題がその根源にあると思われるわけでありますし、特に北洋底魚の問題につきましては、地元アラスカとアメリカの例えばワシントン州等、カナダの南側にあるアメリカの本土でございますね、それとの関係、いろいろな難しい側面があるように思いますけれども、やはり長年この地域で伝統的な操業をやってまいりました日本としましては、何とかしてアメリカが急激に現在の体制を変えるというふうな方向に走らないように辛抱強い話し合いを続けていく以外には手はないんではなかろうか、こういうふうに考えております。
#30
○大川清幸君 参考人の貴重な御意見、大変ありがとうございました。
 お話の中で、市場開放ないしは内需拡大、円高の維持、それから開発途上国に対する援助の拡大など、これらの項目についての御意見は共鳴するところが多々あるわけでございますが、レーガン政権としての議会に対するというか、議会に対する姿勢だけじゃありませんが、自由貿易といいますか、公正な貿易ということで、議会側には防衛の立場に立って大分頑張っているような状況が続いているようでございます。例えばダンフォース上院議員に代表されるような大変厳しい見解を持っている人たちも多いようですし、また産業界あるいは労働界含めまして、日本の通商行動そのものについての深刻な脅威感もこれは薄れていない。
 こういう状況を考えますと、やはり国際社会の一員として日本がこれから生きていく上で大変これは深刻な問題だというふうに受けとめざるを得ないわけですが、この中で、先ほどお述べいただいた例えば内需拡大の中では、お話がありましたように、産業構造の改善等も含んでこれから対処していかなきゃならぬということは十分わかるわけです。これは御説明のとおり時間はかかりますが、しかし日米関係の改善ということでいうと、時間がかかってもできるだけ早い時期にアメリカの方も希望が持てるような日本の産業構造に対する対策なり政策というものが打ち出せないものかどうかというようなことが一つ課題としてあると思うんです。先ほどのお話の中で基本的なお話は大体伺ったんですが、これらについての何か具体的な御意見があればひとつ伺いたい。
 もう一つは、お立場上大変お答えがしにくいかもしれませんが、例えば今審議中の政府の六十一年度予算案でございますが、その予算案の中でも特に貿易摩擦等に絡んだ内需拡大の問題は、何も貿易だけではなくて日本経済そのものを考えても重要課題だと思うんですが、こうした観点から考えますと、六十一年度の予算案につきましては、経済、財政、金融面で、極端に言えば、そうした当面要求される重要課題についてほとんど対応ができていないではないかという財界あるいは評論家等の厳しい批判もあるわけでございますけれども、こうしたゼロシーリングで三、四年続けてきた金融財政政策というのは、もう限界だろうと私個人は思っておるんですが、その辺で内需拡大等一つ取り上げても、新しい観点に立った財政運営や経済対策というものをやらざるを得ない時期に来ているんだろうと思いますが、この辺に対する御意見がもし例えれば大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
#31
○参考人(大河原良雄君) 産業構造の改変の問題でございますけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、そもそもアメリカ側との関係で出てまいりましたのは、産業政策なるものは一体何であるか、どうあるべきかということと、それからアメリカ自体が一体産業政策を持っているのか持ってないのか、持つとして一体どういうものであるべきかということがアメリカの国内で大きな議論になってきたということを私思い出すわけであります。むしろアメリカの国内で出てまいりました議論は、どちらかといいますと民主党サイドの方から、アメリカは産業政策を持ってない、それはおかしいじゃないか、もっとアメリカが対外的な競争力を強めるために産業政策を持つべきであるという議論が出てまいりましたのに対して、共和党側は、そもそも小さな政府、そして政府の介入を最小限にとどめる、また政府の介入を逐次廃止していくという基本的な哲学に立つ共和党の立場から見れば、そのような民主党の、政府による産業政策という考え方は全く哲学的に逆である、相反する、小さな政府と逆だ、こういう議論が出てまいりまして、アメリカの国内では、産業政策の議論というのは実はそこでとまってしまったということだろうと思います。
 日本側は、OECDの中で積極産業調整政策というものが議論され、それに基づいた対応をしてきているという議論をしてきたわけでありますけれども、アメリカの目から見るならば、日本がこれまで持ってきましたアメリカの目から見ての産業政策というものが日本の輸出企業に不当な競争力を与えているというとらえ方があり、それを問題視してきたということであるわけでありまして、さっき申し上げました特定産業の振興というのは、その意味からいって到底容赦するわけにいかないという議論が今日に及び、その点について日本側はあらゆる機会に日本の政府と企業との関係についての説明を行い、アメリカが非難しているようないわゆる産業政策なるものは日本には存在しないんだという議論をしてきたわけでありますけれども、なかなかアメリカは十分な納得を得ない状況で今日に及んできているということであります。
 ただ、日本の市場の実態を彼らがだんだんに調べてまいります場合に、例えば不況カルテルというのがございますが、この不況カルテルが結果的には日本の市場を閉鎖的なものにしている一つの理由だというとらえ方も生まれてきておりますし、また種々のカルテル行為が本来あるべき競争と離れた形で日本の企業に競争力を与えているというとらえ方もあり、それが問題視されてきているわけでありますから、今後ともその面でのアメリカの日本への批判というものが続く状態ではないだろうかというふうに考えております。
 第二番目の問題につきまして、私の経験から申し上げられますことは、例えば昭和六十一年度に
つきまして政府は四%成長という経済見通しを立てております。そして、その中で内需が四・一%、外需はむしろマイナス一という数字を一応の見通しとして挙げているわけでありますけれども、私ワシントンに勤務いたしておりますころに毎年のように、政府の翌年度の経済見通しというものが発表され、それをもとに米側に説明をしたことがあるわけでありますけれども、結果的には、その成長の数字は別として、内需、外需の寄与度が多くの場合に食い違っておったということがあり、それが非常に現地で勤務する立場の人間としては苦しい問題であったということを申し上げさしていただきたいと思います。
#32
○大川清幸君 ここではそうした延長線の論議をする時間もありませんし、しますので、最後に一つだけ。
 大使の立場でアメリカにもずっと長くおられたし、今日の状況も観測等持たれておるんではないかと思いますが、先ほどお話しになりました日米関係の不均衡をどうするかという問題では、今のところ円高がG5の後こうした状態で続いておるんですが、この円高の方向を見きわめようというか、少し見守っていこうというような傾向が米国内にあるそうでございますし、しますので、ちょっと御専門とは違う分野かもしれませんが、ちょうど今の為替相場は百八十円前後ですか、これは、アメリカ経済と日本経済の実力関係といいますか、そういう関係でいうとどの辺が適当なレートなんだろうかというのが私たち一番関心を持っておるところなんですが、その辺の感触はいかがでございましょうか。
#33
○参考人(大河原良雄君) 経済の専門家はいろんな議論をいたしておりますし、比較購買説によると幾らというふうな議論もございますが、最近の百八十円前後というレートに関してアメリカの直接の責任者が議会の証言その他でいろんなことを言っておりますのを私注視しているわけでございます。
 例えば二月の十八日にベーカー財務長官は議会の証言の中で、もし秩序正しく行われるならば、もう少しドルが安くなっても自分は不愉快に思わない、こういうことを言っておりますが、明くる十九日にボルカー連銀議長は、もう大体いいところへ来たんではないだろうかという趣旨の発言をいたしておりますし、また一方、通商代表部のヤイター代表は百七十五円程度まで円は高くならなきゃいけないという趣旨の発言をしているわけでありまして、三人三様それぞれの立場を物語っているように思いますけれども、その中でヤイター代表の発言は恐らくアメリカの産業界の立場を一番強く反映したものではないだろうか、こういうふうに考えるわけであります。
 言ってみますならば、アメリカの産業界としてみるならば、日本との競争に当たって為替がかなり大きなウエートを占めてきている、そういう立場から見るならば、円が高ければ高いほどいいということになるわけでありますけれども、ボルカー議長あるいはベーカー財務長官という立場でアメリカ経済の全体を眺め、そしてまたそれが世界経済全体に及ぼす影響ということを考えていった場合に、円がしゃにむに高くなればいいという筋合いのものでもないという見方が当然生まれてきているのであろうというふうに思うわけであります。
 ただ最近、アメリカの国際経済研究所の所長をしておりますバーグステンというカーター政権時代の財務次官補をやっておりました人が、恐らく比較購買という立場に立っての議論でありましょうけれども、百九十円の場合にアメリカの対日貿易は約百八十億ドル程度の改善を見るということを言い、そして日本の市場が完全に開放されてアメリカの日本向けの輸出が伸びる度合いが恐らく七、八十億ドルであろう、そうすると、合計して為替面と市場開放とを通じて二百五十億ドル程度の貿易収支の改善を期待し得るのがせいぜいであるという議論をしているのを私、目にいたしましたので、つけ加えて申さしていただきたいと思います。
#34
○大川清幸君 どうもありがとうございました。
#35
○佐藤昭夫君 二つほどの点でお尋ねをしたいと思いますが、大河原さんのお話の中でもちょっとありましたけれども、国際国家日本論というか、日本はこれだけ経済大国になったのだから他の分野についてももっと大きな役割を果たすべきだという、そういう意見がアメリカの中にはかなり強まっている、こういうお話がありましたけれども、これに呼応するかのように、日本の中では政府を初めとして、だからもっと防衛費をふやそうとか、事実上軍事援助といいますか、戦略援助ともいうべき対外経済協力費、こういうものをふやしていこうという、こういう傾向が強まっていると思うのであります。
 しかし、こういう防衛費の増大というのは当然のこと国会の中でも強い批判があり、その増大に対しては一定の限界がある、また多少ふやしてみたところで今日の日米経済摩擦の構造的矛盾がそれで解消されるものではない、本当に日本が国際的にどういう役割を果たすべきか、こういった点で、例えば社会保障の水準にしても、いろんな住宅、生活環境、生活基盤、そういう社会資本などを見ても、あるいは労働者の低賃金、長時間労働、教育の問題で言えば先進国の中でも大変おくれておるすし詰め学級、こういったものをもっと進んだ形に、国際的にむしろ日本が一定のリードの役割を果たすような方向に改善充実をすべきじゃないかという、こういう議論が国会の中でもつとに起こっておることは大使もよく御存じのことだと思います。こうした点で、大使という仕事を通していろんなアメリカとの接触も多々あったと思うんです。御意見というと聞きにくいかと思うんですけれども、本当に日本が今国際的にどういう役目を果たすべきかという問題について感想のようなことがありましたら、一つはお尋ねをしておきたいと思います。
 それからもう一つは、例のニカラグアの問題でありますけれども、大使の在任期間中にもアメリカがこのニカラグアに対して内政干渉的軍事攻撃を加える、今も反政府軍に対して援助の予算化をしているところでありますけれども、この問題についていろいろ議論あったのですけれども、日本の政府としてはコンタドーラグループ、この和平努力を支持して平和解決を望んでいくという態度をとってきました。そこで大使の在任中、機雷封鎖が起こった時期、経済封鎖がやられた時期、こういう時期に大使という仕事を通してどんな対応をされてきたか、今だから言えるというような話があったら、そんな点も含めて少しお聞かせいただきたいと思います。
#36
○参考人(大河原良雄君) 国際的に日本がどういう役割を果たすべきかという点でございますけれども、まず防衛の問題について若干御言及があったわけでございます。
 アメリカは、最近の例えば経済摩擦の問題について、これが防衛問題とリンクの形で取り上げることだけはぜひ避けるべきだという姿勢を貫いてきているように思います。例えばワインバーガー国防長官は、議会で激しい日本非難が経済摩擦という形をとって行われている段階におきましても、終始一貫、防衛問題については一切これとリンクさせることはしないという姿勢を貫いてきているわけでありますから、我々現在の問題を考えます際に、日本が経済大国として何をなすべきかという観点に立った考え方をすべきであろうというふうに私は考えております。
 そういう意味から申しますと、よく言われます議論は、例えば日本は研究開発ということを一生懸命やってきている、しかしその研究開発は結局は企業が企業化をするための商業上の開発あるいは応用開発にすぎなくて、日本は基礎研究の分野において何ら見るべき国際的な貢献をしていないではないかというふうな非難をよく耳にするわけでありますから、例えば研究開発の分野において日本はもっともっと基礎研究の分野に力を注ぎ、それを通じて国際的な貢献をするというふうなことをぜひ考えていただきたい、こういうふうに私思うわけであります。
 それから、ニカラグアの問題について米国の基本的な姿勢は、中米の一角にニカラグアという共産政権が誕生し、それがひいてはメキシコその他周辺諸国に広がっていく場合に、アメリカはまさに自分の庭先に共産政権が誕生という大変な危機を迎えるという意識で対処してきたわけでありますし、その間、軍事介入をすべきか否か、いろいろアメリカの国内でも議論がございましたし、アメリカの議会におきましてもそのような観点に立った議論が共和党、民主党を通じて繰り広げられてきたわけでありました。日本といたしましては、これも今お話がございましたように、コンタドーラグループの動きを支持しつつ事態が平和的に解決されることが望ましいという基本的な態度で終始してきたわけでございますから、アメリカ側との接触におきましても絶えずそのような考え方を伝え、アメリカが過激な軍事介入のような措置を講じ、それがまたこの地域での紛争の激化あるいは事態の不安定化につながらないような積極的な努力を求める、こういう姿勢で対処してきたということを申し上げさせていただきたいと思います。
#37
○関嘉彦君 民社党の関でございます。
 大河原さんには駐米大使時代はもちろん、その後も日本と外国の間、特に日本とアメリカとの間の友好の増進のために牛場さんの後を継いで日夜努力しておられることを感謝いたします。
 私に割り当てられた時間は十分でございますので、質問したいことはたくさんあるんですけれども、まずとりあえず二つほど質問いたしまして、もし時間があればその他の問題にも移りたいと思っております。
 第一は、日本とアメリカとの間の政治制度の違いから起こるところの摩擦と申しますか、紛争なんかがあるのではないか。つまり日本の場合は、議会制民主主義ですから国会の中で与野党が分かれているわけです。それで政府は大体与党ですけれども、アメリカの場合は大統領民主制でありますために、場合によりましては、コングレスが全部ホワイトハウスに対して野党の立場をとる場合があるわけであります。両者の意見が食い違う。それに対して日本はどう対処したらいいか。
 例えば、昨年の自動車の輸出の自主規制の問題であります。百八十五万台を二百三十万台でしたかに自主規制するという問題。コングレスの方は自主規制を要求していたんですけれども、ホワイトハウスの方は自主規制というのは自由貿易に反すると。それでたしか結局自主規制した後においても遺憾であったというふうな意見を表明した、多分大河原さんの在任中の出来事じゃなかったかと思いますけれども。こういう場合に、ホワイトハウスが自主規制は困ると言うのは、それは建前として言っていたんですか、やっぱりそれは本音として言っていたのか、そのことが第一点。結局二百三十万台の自主規制になったわけですけれども、一応建前として自主規制というのは困る、自由貿易の原則に反するから困るというふうに言っていたのか、本心からそういうふうに言っていたのか、それが第一点。
 それから、あの場合に、いろんな不必要な誤解もあったと思うんですけれども、あるいは日本の政府の方のアメリカのホワイトハウス並びにコングレスに対する根回しが不足していたために不必要な摩擦が起こってきたのかどうか。私の伺っているところによりますと、あの自動車の自主規制の問題で東京にあります。アメリカ大使館の方は、その前の日になって初めてあのことを知ったということを言っておりました。もう少し早く通知してくれればいろいろな話し合いの余地もあったんではないかというふうなことをアメリカ大使館の人から聞いたんですけれども、どういう点にそういった不必要なフリクションを起こした原因があったのか。
 それからそれに関連しまして、一般的に、コングレスとホワイトハウスとがそういったふうに意見が対立したような場合に、日本政府としてはどの程度コングレスの意見を、交渉するのはホワイトハウスと交渉するわけですけれども、コングレスの意見をどの程度参照してやっていくべきであるというふうにお考えであるか。そのことが政治制度の違いに関する第一の質問でございます。
 第二の質問は、先ほどから同僚委員からの質問もございましたけれども、為替相場の問題であります。これは昨年の九月のG5の協力によりまして、それ以来ドルが下がってきて円が上がってきたわけですけれども、昨年の九月と、それから昨年の一月にもG5が開かれたように思うんですけれども、その当時と比較いたしまして、経済のファンダメンタルズであるところの失業率であるとかインフレ率であるとか国際収支の問題とかほとんど変わっていないのに、一月にはそういう対策をとらずに九月に対策をとったらたちまちにしてドルが下がってきたわけですね。日本が円安を操作していないまでも、円安を放置したことに対してサッチャー首相が日本を非難したそうですけれども、私に言わせると、アメリカ政府はそれまで円高を放置してきた責任があるんじゃないか。
   〔委員長退席、理事桧垣徳太郎君着席〕
つまり、そういった為替相場の上下というふうなものは、これは国際貿易に非常に大きな影響を与える。その問題を一財務長官の考え方、リーガンだったと思いますけれども、一財務長官の考え方によって左右されていいものかどうか。
 私は昔の固定相場に返れなんというようなことを言っているわけじゃないんですけれども、やはり国際的な協力によって為替の相場を、購買力平価説なり、それに多少のファンダメンタルズの要素を加えて、ある程度の幅を持たせて、これは長期にわたってやるということは不可能かもしれませんけれども、ある期間やはりある幅の中に抑える、そういう国際的な協調をするべきじゃないかというふうに考えるんですけれども、アメリカの方がそういうふうな考え方になっているのか。今、たまたまベーカー長官であるためにそういうふうな政策をとっているけれども、これは財務長官がかわればまた考え方は変わってくるのかどうか。その点は私は大変心配だと思うんですけれども、前大使のお考え、アメリカと接触されて、アメリカの為替政策に対する考え方がどうも一つのプレジュディス、偏見に基づいているような気がいたしますけれども大河原さんの印象はどうであったか。その二つの点を質問申し上げたいと思います。
#38
○参考人(大河原良雄君) 第一の、昨年春の自動車の対米輸出自主規制の問題でございますが、これは私が離任して帰ってまいりましてからのことで、詳しい経緯を私は必ずしも承知いたしておりません。ただ、その後アメリカ側といろんな機会に接触して浮かび上がってまいりました問題点は、日本側の措置の発表のタイミングではなかったかという議論がございます。
 御記憶のとおりに、昨年の三月の末ごろ、ちょうど日米の電気通信分野でのMOSS交渉が、いわば極めてせっぱ詰まった激しい様相を呈している段階でありまして、MOSS交渉の中の電気通信交渉が、四月一日、日本の電気通信事業の民営化に十分間に合うかどうかという極めて重要な段階を迎えておりまして、行政府も議会も非常に神経をとがらしておった段階に自動車の対米自粛措置というものが発表されたということで、彼らの非常に繊細に研ぎ澄まされておりました神経をさらにいら立たしたということがあったというふうにその後聞いているわけでありまして、恐らく発表のタイミングに結果的には問題があったというふうに考えた方がよかったんではないだろうか。そして、この二月に発表されました来年度の対米輸出の規制の問題につきましては、昨年の経緯にもかんがみ、細心の注意が払われた措置が講じられたということであったと承知いたしております。
  〔理事桧垣徳太郎君退席、委員長着席〕
 第二の為替の問題につきましては、御指摘のとおりに、レーガン第一期政権までの間では、先ほど申しました強いドル、強いアメリカということで、アメリカは為替市場への介入に対して極めて微温的な態度をとり続けておりました。もちろ
ん、サミットその他の場におきまして、為替の乱高下がある場合には介入をするということを言ってはおりましたけれども、積極的に協調介入という考え方はとられておらなかったわけであります。それが昨年のG5では、単に協調介入という姿勢が明確に打ち出されただけではなくして、主要五カ国の間にマクロ経済政策の調整ということについても合意が見られ、このマクロ経済政策の調整によって協調介入の実をさらに固めていくという姿勢が明確にとられたという点が昨年一月のG5の際の状況と明らかに変わっているわけでありまして、そのような五カ国の共同歩調というものを市場が敏感に受けとめて、最近のドル高の是正という方向に事が動いてきている、こういうふうに私考えているわけでございます。
#39
○委員長(安田隆明君) 以上で大河原参考人の意見聴取は終了いたしました。
 一言お礼を申し上げます。
 ただいまお述べいただきました貴重な御意見は、先刻申し上げましたとおり、今後の総予算審査の参考にいたしてまいりたいと存じます。
 本日は、大変お忙しい中、本委員会に御出席いただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして重ねて厚くお礼を申し上げます。どうぞ御退席ください。(拍手)
    ―――――――――――――
#40
○委員長(安田隆明君) 竹内宏参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 大変お忙しい中、貴重な時間をお割きいただき、本委員会のために御出席を賜りましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。
 本日は忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方でございますけれども、まず、四十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただく要領で行いたいと存じます。
 それでは、竹内参考人お願いいたします。
#41
○参考人(竹内宏君) ただいま御紹介賜りました竹内でございます。
 内外経済関係というようなテーマをちょうだいいたしまして、それで、現在日本経済の置かれている国際的な立場みたいなものを御報告申し上げたいと思います。失礼でございますけれども、時間があれでございますので黒板を使わしていただきます。
 やや長い観点でございますけれども、オイルショックで世界各国ともインフレに巻き込まれるわけでございますけれども、御案内のとおり、日本政府は直ちに財政金融を引き締めまして、インフレを抑えにかかったというような状態でございます。アメリカもややおくれ、西ドイツもおくれて同じような政策をとりました。西ドイツを除くヨーロッパ諸国は、油の値上がりによる所得の産油国への移転による不況をカバーいたすために財政の拡大政策に走ったと、御案内のとおりでございます。それで三国はインフレを解消いたしますと同時に、猛烈な景気刺激政策に財政拡大から走っていった、まあこういうような状態であります。このとき、御承知のとおり前回は円高になり、それで政府は財政の拡大と金融の緩和によって景気刺激政策に走る、アメリカも一緒でございます。
 ここで五十四年に第二次オイルショックを迎える、こういうようなことでございます。ここで再び景気抑制政策に入っていく。西ドイツを除くヨーロッパ諸国はここでデフレ政策をやりませんで、その結果、経済が肥満したままで進んでしまったというような弱い経済になりましたので、それを踏まえまして、ここでも同じように景気抑制政策を展開した、こういうような事情でございます。
 五十七年には世界同時不況に転落する、こういうようなことでございますけれども、ここで一応インフレを解決いたしまして、再びアメリカは力強い財政刺激政策に走っていく、このような展開でございます。日本は、ここで多額の国債を発行しておりましたから、刺激政策ではなくて、何といいますか財政再建に入っていく、このような傾向を現在まで続けてきた、まあこういうようなことでございます。この時点で、日本とアメリカとかあるいは他の国との関係を一応貯蓄・投資バランスで御報告さしていただきたいと、こう思うわけでございます。
 日本のGNPは三百三兆で約三百兆ございます。三百兆の中で日本は八十兆を貯蓄する、こういう経済でございます。物の面で見てまいりますと、これは毎年三百兆の物を生産いたしまして、二百二十兆の物をその年に食べてしまって八十兆を将来のために残しておく、このような経済で、御案内のとおり貯蓄率が日本は二六%、工業国の中では世界最高の貯蓄でございます。貯蓄が高いというのは、平たく申し上げれば、我々は大変何といいますか子供思いといいますか子孫思いで、我々はつましく生活し子孫のために大量のものを残しておく、このような経済かなと、こういうように思われるわけでございます。高度成長のときには、この約二六%のものがほとんどすべて、何といいますか工場とか道路とか生産に寄与するものに使われていった、このような経済でございます。ところが現在は、御案内のとおり過去のように燃えるような技術進歩がございませんし、我々の心を明るくし人生を明るくするような消費財、耐久消費財はなくなってしまった、こういうような事情があろうかと思います。過去でございますと、テレビとか自動車を買いますと、何かそれで生きがいを感じたような時代もございましたけれども、現在はそういう面ではなくなった。
 現在、確かにマイクロエレクトロニクスなどは大変目覚ましい技術進歩をしておりますけれども、日本経済の規模から比べますとそれほど大きくないというように思われるわけでございます。と申しますのは、ちょうど比喩的な例で恐縮でございますけれども、マイクロエレクトロニクスとかそれらの最もすばらしい性能を発揮する機械は産業用ロボットとか〇A機器などがそれでございますけれども、産業用ロボットの生産額は約一千億円、OA機器もコンピューターを除きますと約六千億、七千億のレベルでございます。七千億といいますと、ちょうどみそとしょうゆの生産額とほぼ同じでございますし、コンピューターの生産額は三兆六千億と言われておりますけれども、これは自動車の十八兆には遠く及びませんし、こういうところで失礼な比較かと思いますけれども、例えばパチンコの売上高五兆にも達しないというような状況でございます。でございますから、ちょうどエレクトロニクス関係の設備投資でも約一兆、流通サービス業の設備投資が三兆でございますから、今現在はいろんな目覚ましい技術進歩はございますけれども。それは過去のように国土を揺り動かす、日本経済を揺り動かすような力がなくなってしまったというような時代に差しかかってきたというふうに思われるわけでございます。
 では、八十兆をどう使うか、こういうことになりますと、現在は十五兆が住宅に使われている、約五十兆が設備投資に使われているわけでございます。そうなりますと、十五兆円売れ残っているというような計算になります。この十五兆円の売れ残りをどう処分するか、こういうことでございます。これが売れ残ったままでございますと、来年の経済はこれだけに縮小してしまいますし、日本経済は不況に入っていくわけでございますから、ぜひともこれを売りさばかなければならないということでございます。
 昭和五十三年ごろでございますと、大量の国債によってこれを処分していったというふうに思われるわけであります。つまり、大量の建設国債や、あるいは地方でございますと地方債を発行されまして、それによって道路や橋やいろんなものをおつくりになったということでございます。その結果現在は、地方に参りますと、不遜な言い方でございますけれども、自動車がほとんど通らない山の上まで美しい舗装道路ができ上がっておりますし、村々には壮大な公民館もでき上がった、
こういうようなことで確かに豊かなゆとりある生活ができたわけでございますけれども、御案内のとおり、それによって国家財政は見事に破綻した、こういうようなことであります。そこで十兆を売り、残りは輸出に向けていった、こういうようなことであります。
 一昨年の数字を見てみますと、約九兆が輸出で六兆が財政の赤字で埋められている。地方財政を含めますと、地方財政は黒字のところがございますから九兆と六兆だと、こういうようなことであります。つまり財政で買って、刺激といいますか、買い上げていただき、それからさらに海外に売り飛ばした、このようなことであります。この結果、日本の経常収支の黒字は五百億ドルを超し、海外から激しい非難を浴びているというようなことかなと思われるわけでございます。
 これに対しましてアメリカの経済は、二百円で換算いたしますと約六百九十兆の経済でございます。このうち約百三十五兆が貯蓄されている。貯蓄率がちょうど二〇%でございます。アメリカは個人の貯蓄率は大変低うございますけれども、法人貯蓄を足しますと百三十五兆になるわけでございます。こちらで並べてみますと、三十二兆が住宅に使われておりますし、それから八十兆が設備投資に使われている、こういうような状態でございます。ここにあと三十二兆財政赤字で使われている、こういうことであります。アメリカも、軍事費を支出いたしましたり社会保障で支出したりいたしまして、三十三兆財政赤字を持っている、こういうことであります。
 これは一昨年の数字でありますけれども、これを足してみますと、貯蓄百三十五兆に対しまして、住宅、設備投資と財政赤字を足してみますと約百四十六兆になる、つまり十一兆はみ出ている、こういう計算になるわけでございます。現在でございますと、これが三十兆ぐらい昨年ですと膨れ上がっている、こういうことでございますけれども、一昨年ですとちょうど十一兆の膨れ上がりだと、こういうことであります。非常にこれも粗っぽい言い方をいたしますと、アメリカではこれだけ物が生産されている、六百九十兆、それに対しまして需要は七百一兆ある、こういう計算でございますから、アメリカは大変物不足の経済だ、こういうことになるわけであります。捨てておきますと物価が上昇いたします。言ってみますと、政府は財政から刺激し続けている、こういうような経済でございます。
 そうなりますと、世の中のマーケットが拡大ぎみでございますから、企業は設備投資をいたしましたり在庫投資を拡大したりいたしますので、そうなりますと、元来物不足でございますから物価が上がりやすいというような経済でございますから、それをコントロールいたすために通貨量をコントロールした、こういうことであります。つまり財政を緩め金融を引き締めた。その結果金利が上昇いたします。金利が上昇いたしますと、世界からアメリカの高金利に向かって大量の資金が流入いたします。その結果ドル高になるというようなことでやってきたわけであります。ドル高になりますと日本から輸出が一層うまくいくというようなことで、日本の余り物をアメリカの不足部門に充当することによってバランスした、こういうような経済かなというふうに思われるわけであります。
 例えば、お隣の韓国ですと、日本の十五分の一ぐらいの経済でございますから、どのぐらいになりましょうか。ここで韓国は三〇%近い貯蓄率だと。ここで燃えるような設備投資がございます。高度成長期のように韓国の経済は爆発期でございますから、投資が大変多い。これだけ物不足でありますから、この物不足に向かって日本の余っている物が流出していく、こういうような経済で五十七年以降やってきたというふうに思われるわけであります。この結果、大変一昨年まではうまくいったということであります。つまり、アメリカは財政で刺激を加えておりますから経済は順調に上昇し続ける、こういうことであります。それから金利を高目に引き締めておりますから、物価がコントロールできる上に、ドル高でございますから輸入価格が下がっているということでありますから、物価が安定しながら順調に成長できた、こういうようなことであります。アメリカはこのように財政で刺激をして、これだけ物不足でございますから、この物不足に向かって日本の物が流れていく。日本でいきますと、財政で今まで余り物を買ってきたやつが、輸出でだんだん拡大できる。つまり、財政を立て直しながら、輸出の増大によって順調に成長できたという意味では大変喜ばしいことであります。
 韓国は、日本から大変機械や工場施設を買う、こういうことであります。その買ってつくった物をアメリカに売った、こういうことでありますから、これも大変うまく工業化政策が、工業化といいますか成長できた、こういうような事情であったというふうに思われるわけであります。つまり、一昨年まではこのバランスがうまく成り立っていたということでありますけれども、昨今になりますと、御案内のとおり、このバランスが成り立たなくなってしまった。つまりアメリカがこの部分、経常収支の赤字が耐えがたいほどの大きさになったということであります。
 現在アメリカは、既に債権国から債務国に転落いたしまして、千三百億近い対外債務を抱えている。その上、毎年経常収支の赤字が千三百億とか乗っかっていきますと、このままでいきますとアメリカは大借金国になって、ドルがいつ暴落するかわからないというような事態に差しかかったというようなことであります。つまり、経常収支の赤字が耐えがたい大きさになったというような状態でございます。その上にドル高でございますから、これだけが入ってくればよろしいわけでございますけれども、内需をじわじわと輸入品によって食われていく。つまり、アメリカは景気がよくなって人々の所得が上がり自動車を買う、それは日本からの輸入品になってしまう、こういうことであります。
 アメリカ人は、バーに行ったりゴルフに行ったり、レジャーをやります。それは輸入品でカバーできませんから、その面だけ内需に向いていく。つまりアメリカ経済は急ピッチで経済のサービス化が進んでいく。製造業の雇用がマイナスに転じ、サービス業の雇用だけ拡大していく。つまりアメリカ経済は空洞化の道を走り、しかも、景気は上昇しても、日本に食われてしまって景気が上昇できなくなってしまったというようなことで、昨年の春以来ドル高不況に入っていく、こういうようなことであります。その上、ドル高でございますから、アメリカの主たる輸出産業である農産物輸出の伸びがとまりますので農業が崩壊していく、あるいは油が値下がりでございますから、油を掘る産油産業がぐあいが悪くなっていく、こういうようなことであります。その結果、アメリカの銀行は一昨年、昨年も七十行程度倒産していくというような事態に巻き込まれてきたということでありますから、つまりアメリカ経済がこのバランスでは成り立たなくなってしまったというようなところが昨年の後半からあらわれた出来事だった、こんなふうに思われるわけであります。
 韓国も、あるいはアジア諸国も、台湾はそんなことはありませんけれども、これによって経常収支の累積赤字に苦しんでくる、こういうようなことでございますから、こういうようなバランスが成り立たなくなった、こういうふうに思われるわけであります。つまりアメリカも景気が低迷する、こういうことになるわけであります。その結果アメリカは、財政赤字を減らす、輸入をストップするというような政策が当然必要であるというようなことであります。特に日本は、この経常収支の赤字の中に占める比率が日本の責任は三六%程度でございますけれども、専ら対日批判が高まってくるというようなことかなと思われるわけであります。
 と申しますのは、日本製品は目立ったところにございます。比喩的でございますけれども、アメリカ人がハイウエーを運転しておりますと、前を見ますと日本車がことごとく並んでいる、横を見
ますと日本車が抜いていきますし、後ろを見ると日本車だ、どうも日本にやられたかなと、こういうような感じを持たれても仕方がないわけで、今何時かなと、こうやって時計を見ますとSEIKOなんて書いてあったりするわけでございますから、非常に目立ったところに日本製品があふれているというようなことであります。その上、日本は輸入制限品目が二十二品目もあるわけでございますし、それからさらにアメリカ人から見ますと非関税障壁が至るところに見られるというようなことになってくるわけでありますから、先ほど大河原前駐米大使も触れられたと思いますけれども、アメリカでは耐えがたいほど、抑えがたいほどの対日批判が盛り上がり、これが政治的な論争点にもなってくる、こんなようなことかなと思われるわけであります。
 こういう席でこういうことを申し上げるのは不遜でございますけれども、例えばアメリカでは、何かオレンジの自由化を認めないとここの選出の代議士さんの政治的生命がなくなりますし、日本側は認めますと政治的生命がなくなるというような意味の、お互いの激しい対立点になってきた、こういうようなことが現状かなと思われるわけであります。それと同時に、アメリカは、まあ憲法違反だというようなこともございますけれども、実際にレーガン政権は財政赤字を財政均衡法によって減らすという決意を示した、こういうことになるわけであります。
 こんなようなことになりますと、一番無難な解決の方法というのは、言うまでもなくドル高を引き下げるというようなことであります。こういうことをやりますといろいろ問題が出ますので、当然のことながらドル高を訂正して円高に持っていきますと、それだけ日本の輸入がふえ輸出がとまりますから、外枠を決めてやれば、中を揺すれば産業構造がうまく国際的に適応できるようになるに違いないというように思うのが普通ではなかろうかと思われるわけであります。先ほど大河原さんも言われましたように、アメリカはドルが高いのは今までアメリカの経済の強さであると、こう言われておりましたけれども、現在はそれが、あのG5によってアメリカはこれが欠点であるということを大いに認めたと、こういうようなことになるわけであります。その結果、為替市場に介入して二百二十円まで持ってくる、こういうことであります。
 そこで、昨年の十一月は日銀は短期金利を高目に誘導する、景気の動向からいって下げた方がいいというようなときでも高目に誘導してくる、こういうことでございます。これで日米長期金利差を二%台にいたしましてドルの流出を防ぐ、つまり日本政府はあるいは日米当局は、本気になって為替相場を管理するというような姿勢を内外に示した。これによって為替の相場感が一挙にさらに変わりまして二百円台に持ってきた、このようなことでありますから、この動き方はあるいは歴史に残るような見事な操作であったとも言えるかもしれません。
 それによって、さらにここで油の値段が急速に下がってまいりまして、原油の価格が下がってまいりますとアメリカも得でありますけれども、日本の方がさらに得である。これは円高要因として作用すると、こういうことになりますし、油の値段が下がりますとメキシコは大変経済危機に落ち込むに違いない。あるいはアメリカの南部のテキサス州なんかも危機に陥るに違いない。そうなりますと、アメリカは産油国を救うために、金を大変産油国は借りておりますから、金利を引き下げざるを得ないだろう。その上に財政をカットする。カットしますと景気が低迷いたしますから、金利を下げざるを得ないだろう。こういうようなことでアメリカに対する金利の先安感が働きましてドルが百八十円台まで入ってくる、こういうようなことで現在やってきた、こういうようなことでございますけれども、ともかくといたしまして、現在は先ほど申し上げましたように、日本の貯蓄過剰分を海外に投資して海外に輸出するというようなことはほぼ不可能になったというようなことで、現在は非常に重要な時期であるというように思われるわけであります。ここから入ってくるお金をさらに大量に海外に投資するわけでございます。
 この海外の投資は、相手国に大変役に立つわけであります。でございますけれども、これも例えば日本で約百億ドルぐらいは面接投資であります。自動車も間もなく、あと四、五年のうちアメリカで百三十万台つくられるようになる。百三十万台といいますとちょうど三兆四千億ぐらいになりますか、コンピューター工業ぐらいはそっくり抜けて日本からアメリカに移っていく。こういうことでございますから、それはアメリカ経済に対するプラスである。しかるに、アメリカもそれを許してくれるんじゃないか、このような考え方もあるわけでありますし、アメリカの州政府はいろいろ日本にやってきて投資を勧誘する、こういうことでございます。
 日本の企業も今までどんどんアメリカに出ていく。なぜかと申しますと、例えば日本で工場をつくりますと、最低坪当たり五万円はするだろうというように思われます。アメリカの南部に行きますと坪当たり千円ぐらいで買えるわけであります。南部と日本の労働者の賃金はほとんど変わらないわけでありますし、南部に行けば優秀な人材がいるわけであります。北部と違いましてモラルも高いというように思われます。その上に、募集いたしますと二百倍ぐらいの労働者が集まるわけでございます。ですから、労働者の質も悪くないということでありますし、その上、日本で操業して収益を上げますと法人課税、地方税も含めまして実質五二%は税金に取られますけれども、アメリカで操業すれば三三%ぐらいの税金になる。つまり日本の企業の多くも、あのステンマルクのように、母国を捨てて続々としてアメリカに出ていくというようなことになるわけで、これがアメリカにとってプラスでございますから、この点はアメリカも文句を言えない、こういうような話もあるわけでございますけれども、一方、サミュエルソンのような高名な学者でも、日本の企業がやってきて、あのビルも日本企業だ、あの宅地開発も日本企業だ、この工場も日米の合弁だと、こういうことになれば当然ナショナリズムを耐えがたいほどくすぐるに違いない、刺激するに違いない、ほどほどにしろよと、こういうことになるわけでございますから、現在のところこれが巨大過ぎて日本経済はバランスできなくなってしまう。
 ですから、今までの国際化と申しますのは、口幅ったいようでございますけれども、輸出をどんどん伸ばす、対外投資を伸ばす、これが国際化でございましたけれども、日本経済は大変大きくなり、しかも例えば、アメリカがイギリスに追いついて追い抜くときにはアメリカは経常収支がバランスしていた。ですから、憎まれないで追い抜いていったわけでございますけれども、日本はアメリカに接近するときに経常収支は大黒字だ、世界の工業製品の中で輸出の中に占める比率は日本製品は一八%、世界最大でございますけれども、輸入はたった二%だ、これで追い抜いていくというのはなかなか無理な話である、こんなふうに思われるわけでございます。
 そういう点からいきまして、国際化と申しますのは世界全体とのバランスを考えないと日本は大き過ぎて、もういかんともしがたいというようなことでありますし、別の言い方をいたしますと、今までの国際化というのはよく言う、何か失礼な言い方ですけれども、アメリカではとか、フランスではとかすぐ言われる方は、出羽守なんて言われておりましたけれども、今までアメリカではの出羽守であった人が国際人でございましたけれども、現在は、日本の文化とか伝統をアメリカ人にしゃべるというような人が国際人になる。日本ではの出羽守に変わったというような話もございますし、あるいは英語を大いに習うことも国際化でございますけれども、外国人に日本語を教えるということもこれも非常に重要な国際化だ。現在はアメリカ人も、みそもしょうゆも喜んで食べるようになったということでありますし、我々はこれ
は外国人には通用しないと思っていたものが食べてみたらうまい、西洋人、アメリカ人もおふろに入るようになったということでありますし、日本語は言葉としては案外易しい言葉であったというように言われているわけでございます。我々は、外人は無理だと思ったらかなり易しいんだ、母音が少ないというせいもございます。そのようなことが大体国際化と言われるようになってくるということが、経済的に見ますと対外的なバランスを考えないと成長できなくなった、このようなことかなと思われるわけであります。
 そうなりますと、ここでこれを国内で処理する、つまり我々はあり余る物とお金を持っているわけでございまして、これが今まで海外に投入されて、ちょうど日本、東京は非常に、何といいますか、住宅事情が大変悪うございますけれども、その住宅事情の悪い国が海外で宅地造成をやり住宅建設をしている。これは考えてみれば大変ばかばかしいことでございます。ですから、島国根性かもしれませんけれども、十兆円を国内に投入してやれば我々ははるかに豊かな生活ができる。ですけれども、現在は我々よりももっと豊かな国に持っていって投資している。これは大変惜しいわけでございますから、これを国内に投入できるようなメカニズムをつくり上げるということがあるいはこれからの国際的な責務かなと、口幅ったいようでございますけれども、そんなふうに考えさしていただいているわけでございます。
 ところが、なかなか内需拡大も御案内のとおりできないわけであります。例えば日本人とアメリカ人と比べてみますと、財産の大きさは一緒であります。約一世帯当たり三千万円持っている、豊かさはほぼ一緒であります。国富統計を見ますと、アメリカの国を全部買いますと約五百兆円であります。日本の国を全部買いますと七百兆円でありますから、言うまでもなく地価が高い、こういうことであります。資産内容を見ますと、国民の六二%の人は住宅と土地を持っておりますから、平均いたしますと三千万円になり、そのうちの日本でいえば千五百万円が住宅であります。その上に九百万円のウサギ小屋が乗っかりまして、六百万円の金融資産を持って豊かな生活を営んでいるわけでございます。アメリカは二百万円が土地でありまして、この上に千八百万円の堂々たる住宅が建ち、一千万円の金融資産をお持ちになっている、こういうようなことでございます。
 ですから、我々といたしまして、言うまでもなく土地が最大の資産でございますから、この横に高速道路ができるとか飛行場ができるということになれば、だれでもむしろ旗を立てて反対するに違いない、こういうことになるわけでございますし、日本は例外的に、国家やあるいは地方自治体に土地を売りますときには、法外な値で売っても一向道徳的に欠点にならないというような、非常に便利な国のような気もいたしますのですけれども、そうなりますと、高地価の上にバランスしていかんともしがたい、このようなことかなと。じゃ土地を下げたらどうか。土地はなかなか下がりませんけれども、もし下げましたら国民の六二%の人が貧しくなりますから、これは社会不安が起きるかもしれないという意味で、高地価の上にバランスしていかんともしがたいということになりますから、当然大型プロジェクトを政府もいろいろお考えになりますけれども、大型プロジェクトは土地と関係のないところのプロジェクトができてくる。つまり橋であります。橋とか沖合の人工の島とか、そういうものしか大型プロジェクトはできにくいというような事態であるということでございます。
 その上、民活と申しましても、国鉄さんとかあるいは電電さんも、確かに民間になられてこれで活力が出てくる、こう思うわけでございますけれども、成長率が鈍いときには民間企業はなかなか立ち上がらないということでありますから、現在はむしろお役所がプロジェクトをお立てになり、それからそれぞれの思惑から民間企業はそこに出資して新しいプロジェクトを立てられる。そうなりますと、民間活力ではなくて官僚活力、民間全力かなと、このような感じもいたすわけでございます。
 規制撤廃でございましても、規制を撤廃いたしますと、どの業界さんでも規制撤廃の総論は賛成でございますけれども、各論になりますと高い参入障壁がございまして、ここで安定的な利益を確保されているわけでございますから、これを撤廃するということは非常に反対である。個別業界になりますと反対になる、これも仕方がないことでございます。そうなりますと、内需が拡大するようなうまい仕組みはなかなかすぐにはでき上がらない、こういうことになるわけであります。でございますけれども、現在のところ、それをやらないと経済はバランスしないということになるわけでありますし、ドル高になります。ドル高になりますと、多分日本の企業は一〇%ぐらいドル建て価格を引き上げますから、景気が低迷して輸入がふえませんから経常収支の黒字はさらに拡大する、こういうようなことが目先あるわけでございます。
 その上に、アメリカだけではございませんで、韓国なども激しく対日貿易収支のアンバランスを主張している。このような状態でございますので、まさに現在は、内需拡大をするためには大変大きな新たなコンセンサスづくりであるとか、あるいはよく存じませんけれども、財政支出や、特に財投の中には相当むだなものがあるような感じがするわけでございますけれども、それを成長率が高い将来の成長に寄与し、しかも投資を刺激したり、住宅建設を刺激したり、そのような方向に使われていくというような仕組みをつくり上げることがこれからの最大の問題かなと、こんなふうに思われるわけでございます。
 ですけれども、余分なことでございますけれども、成長率が鈍化いたしますと、どういたしましても活力が出ないわけであります。先ほど申し上げましたように、人々は燃えるような、私どもの子供のころでございますと、カメラなんか買いますと、若いころですと買った日は嫌がる両親を追いかけて写しますし、夜は大事に枕元に置いて寝まずし、トイレに行くときには何か磨いてみたりしますし、朝起きたときにはそれをまた手に持ってみる。こういうような心が浮き浮きするような財がございましたけれども、現在はそのようなものがさしあたってない、こういうことでございます。
 それからハイエクによりますと、民主財というのがございます。民主財と特権財の分け方がございます。民主財というのはお金を出せば買えるものでありますし、特権財というのはだれかが占めれば他の人が占められない。ちょうど代議士さんのポストなんというのは特権財に当たるわけでありますし、それからさらに社長とか部長とかあるいは工場長とか、そんなものが特権財でございます。高度成長のときには十年たてば経済が三倍ふえる、ですから会社の規模も三倍、工場も三倍、特権財の供給量は三倍だと、こういうことになるわけでございます。つまりだれでも容易にプロモーションできた。その上に、目の前に大変心を明るくする耐久消費財がございましたので、だれでも親子の対話もなく、夫婦の対話がなくても、働き続けて安心だったと、こういうことでございますけれども、猛烈な変化にも耐えられた。
 現在はそういうものは社内にはございませんので、会社の外に求められていく。福祉活動であるとか住民運動であるとか、いろんなことに参入されていくわけです。できれば分裂すればするほど財がふえますので、えてして分裂しがちになる。こういうことでございましょうし、それからもう一つは、文化的な財の中にもそれがあります。カラオケとかゴルフとか、それから俳句とか、そういうものに熱申されて文化がずんずん深まっていく。こういうことでバランスするわけでございますけれども、これではなかなかうまく大型プロジェクトが出ていくような機運も出ないわけであります。
 そのように低迷したといたしましても、若い人でございますと、差別品を手にすることによって
生きがいを発見していく。このようなことでございますから、ちょっと人と変わったようなレストランに入りましたり、それからちょっと変わったような服装をして、変わったような缶ビールを飲んだりして、これで感性に生きてパフォーマンスをすると、こういうことになるわけでございます。そんなような低迷したフィーリングでございますから、ここで何か道路をつくるとか飛行場をつくるとか、こう言ってもなかなか映えないわけであります。ですけれども、長期的に見ますと、将来情報化社会がやってくる、ニューメディアがやってくると、こういうことでございますけれども、ニューメディア社会でこそ交通網の拡大は一段と必要だと、こういうように思われるわけであります。
 口幅ったいようなことでございますけれども、ベルという人が電話機を発明して、弟子のワトソン君と多分言ったと思いますけれども、この方に直通電話を引かれた。蚊の鳴くような声であったんですけれども、ベルがかけた用事のほとんどすべては、「ワトソン君、用事ができた、すぐ来たまえ」というのが彼の用事の内容であった。これはメディアの本質をよく物語っているわけであります。東京−大阪の即時ダイヤル通話ができた。これによって出張者が減ると思ったら激増した。現在でもニューヨーク、ロンドン、東京の間でリアルタイムで情報が乱れ飛んでいる。こういうことで、それに伴って出張者が激増していく。こういうことでありますから、情報が乱れ飛びますと、それにつれて人々が往復する、それによって経済が成長するというように思われるわけであります。
 例えば、将来ホームコンピューターか、あるいは女性の時代になりますと在社コンピューターになるかも、ショッピングになるかもしれませんけれども、ホームショッピングや在社ショッピングが行われて、ぽんとはじきますとビールとかなんとか届けてくれる。このような時代に仮になったといたしますと、日本の道路という道路は宅急便であふれかえるに違いないと考えるのは普通でございますから、新しいメディアの時代がやってきますと、どうしても交通網とかそういうものが必要でございますけれども、現在のフィーリングからいきますと、なかなかそれが合わないといいますか、マッチしないと、こういうようなことになってくるわけであります。つまり低いところでバランスしまして動けなくなってしまったと、こんなようなことが現在かなということであります。
 どうもよく存じませんけれども、経済成長率が鈍化して経済が低迷していく要因は、一つはガバナビリティーがなくなるというようなことで、むしろあるいは、政治のシステムがうまくいくかどうかということが経済の成長とか発展とか所得の拡大とか、あるいは対外的な摩擦を解決するとか、こういうこととはどうも深い関係にあるのかなと、こんなふうな感じがいたしているわけでございます。そのようなちょうどターニングポイントに現在はやってきて、今までのような輸出主導型の成長は困難になってきた、こういうふうに思われるわけであります。
 そうなりますと、多分現在の百九十円ぐらいの為替レートで管理するといいますか、そんな状態にせざるを得ないかなと。それを管理いたしませんとがんがんアメリカからやられますし、私もアメリカやなんかで講演する機会が大変多いわけでございますけれども、これはアメリカの私の言うことに対するコメントは、通産省のような強い役所をつくって直ちに輸入制限すべきだと。日本が非関税障壁を撤廃いたしましたり、輸入制限二十二品目を大幅に減らす、そういうことをやったときに輸入制限を解除してやればいい。それを解除してやって、そのときは日本も障壁がございませんから自由貿易だと。つまり、真の自由貿易体制をつくるためには、直ちに対日輸入制限をし、直ちに保護貿易に転ずることがこれが自由貿易の道であるというようなことが、アメリカでは御案内のとおり堂々と言われてくるようになった。
 こういうようなことでございますから、それを逃げると言いますか、避けるためには、長期的な展望を持った内需拡大しかどうもありそうもない、こういうことであります。もちろん貯蓄を減らすということも内需拡大であります。ですから、ちょうど現在貯蓄率が二〇%でございますと、産出係数といいますか、二〇%も物が残る。工場に使われれば一〇%だけ物がたくさん出てくる、こういうことになるわけであります。で、労働人口が二%ふえる。生産性が八%伸びれば一〇%、こういうことで、これは生産性が伸びれば物がたくさん出てくる。働く人が多ければ物がたくさん出てくる、こういうふうなごく当たり前の話でございますけれども、これを仮に一〇%に減らしてこれが五%になる。これが五%になりますとこれが三%にならなければならない。それでないと失業がふえるということでありますから、消費を拡大して貯蓄を少なくするということは、同時に成長率が鈍化して日本経済の発展のレベルを落とす、これは当たり前のことでありまして、その年にできた生産物をほとんど食ってしまえば発展しないわけでございますから、消費の拡大は同時にそのようなものを持っているわけでございます。
 でございますから、その面でも消費を拡大していくか。こういうことになりますと、日本の社会資本が国際的に見て大いに充実しているかとか、我々の日常生活が大変何かゆとりがあって豊かになった、我々はもう悔いのないような豊かさになっているというようなときには多分これでございましょうし、まだまだレベルが低いということになりますと、せっかく貯蓄率が高いわけでございますから、これを前向きの発展のために使っていくというようなことが、この辺はそれぞれの何といいますか趣味ではなかろうかというふうに思うわけでございますけれども、私は昭和一けたでございますから、もうちょっと頑張ってみたらどうかというような一種の趣味を持っている、こういうようなことでございます。
 甚だまとまりませんけれども、四十分ほどたちましたので、日本の内外における状態を、大変失礼かと思いましたけれども、黒板を使って御報告させていただきました。
#42
○委員長(安田隆明君) どうもありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#43
○竹山裕君 自由民主党の竹山裕であります。
 きょうは、竹内さん大変お忙しいところを御苦労さまでございます。
 いつもながら大変的確な明快な比喩を交えたお話で内外経済、国際比較の問題を取り上げていただきまして、うろこが落ちるような思いの部分もございましたが、とは言ってこのままで済まされない。内需拡大につきましての問題は官僚活力、民間全力でございますので、こういった面で大変具体的なテーマについては大きな課題があるわけでございます。夢を追うような大型耐久消費財は望むすべもないというのでは、大変これまた寂しいわけでありますが、全体的に国民押しなべて中流意識という中で現状維持肯定型というのでしょうか、活力が失われてきている。その点では竹内さんなんかは絶えず啓蒙思想でいろいろな面で叱咤勉励をしていただいて、我慢の哲学ではいけないんではないかというようなところを間々お見受けするわけでありますが、GNPの大きな部分であります個人消費の問題、これはいろいろ階層別に訴求対象を限定してといいますか、ターゲットを絞ったアプローチのやり方、ちょっと前にはニューファミリーとかあるいはお年寄りを目がけたシルバーゾーンというのでしょうか、そうした対象を目がけての消費拡大に大分努力はしたようですが、いまひとつその辺が反響がないように思えてならないのであります。
 もちろんマーケティングの時代でありますから、大変ないろいろな調査をして皆さん方がお考えになった上での施策、キャンペーンを展開している、それがやっぱり何か国民全体にすぐに戻ってこない。最近は大衆とは言わないそうで、細分
化の公衆というのでしょうか、個性化、多様化といった部分では、やっぱりこのままやむを得ないのだ、夢のある物は出てこないから別の場面での内需の振興を目がけなきゃいけないんではないかというふうにも聞こえますが、やっぱり個人消費の部分でもう少し手法的に消費に活性化を与えるような手法というものは考えられないのだろうか。この辺についてちょっとお伺いをしたいわけであります。
#44
○参考人(竹内宏君) 御指摘のとおりでございますけれども、ただ現在のところ、分衆と先生おっしゃいましたけれども、まさにそのような事態でございます。特に中流から申し上げますと、大都会に住んで住宅のない方、土地をお持ちでない方、この方は大変惨たんたる生活をされている、こういうような状態だろうと思いますし、それからそれ以上の方になりますと、いろいろございましょうけれども、ただ何と申しますか、それに応ずるようなうまい供給力がないような感じがいたします。例えば老人の方、六十五歳以上の方、平均いたしますと、いろんな統計がございますけれども、一千万円に近い預金をお持ちになっている。ところが、老人の方々を見ますと何か裏庭みたいなところでゲートボールをおやりになっているわけでございますから、このようにそれぞれに応じたうまい商品供給といいますか、あるいは町づくりがうまくできていないのかなというような感じがいたすわけでございますけれども、この町づくりもなかなか難しいわけでございます。先祖代々土地をお持ちになっている方は、思い切った投資をされるよりもそのままそれをずっと経営されていて、そして五十五歳ぐらいになったら、お子さんが大学を出ておりますので、それを長男は参議院の事務当局とか次男は長銀とか、そういうところで大体解決できるわけでございますから、なかなか思い切ったものはできにくいかなというような感じがするわけでございます。そうなりますとどうしてもリーダーが必要だと、こういうことになるわけでございます。
 それから、ちょっと口幅ったいようでございますけれども、ちょうど従来ですと自動車を欲しいから買う。そうなりますと、自動車の操業度が上がり、ボーナスが出、残業手当が出る。部品工場も同じようにボーナスが出、残業手当が出る。これで所得が上がりますと自動車の需要になる。こういうことでございましたけれども、現在は我々は自動車もテレビも持っておりますから、所得が上がりますと多分カラオケバーに憂さ晴らしに行くだろう。カラオケバーに行きますと、バーテンの方やオーナーの方の所得がふえます。彼らも自動車やテレビを持っておりますから、多分ゴルフに行くだろう。ゴルフに行きますと、キャディーさんやクラブハウスの方の所得がふえます。彼らも自動車やテレビを持っておりますから、多分カラオケバーに行くんじゃないかというようなことで、サービス業の中で所得が循環いたしましてサービス業がぐんぐん拡大していく。こういうようなことで、現在はそういう意味で大変美しい都会、東京は美しくなったというようなメリットがございますけれども、地方全体でそのような魅力ある消費を拡大するような町づくりみたいなものはどうもまだまだできていないのではなかろうかと、こんなふうに考えさしていただいているわけでございます。
#45
○竹山裕君 ありがとうございました。
 今、都会と地方のお話が出ました。特に東京、巨大過密都市、首都圏の状態ですが、確かに均衡ある地域の発展というテーマ、スローガンはいつも話に出るわけでございますが、現実の問題は、土地のまさに破天荒な価格上昇、銀座がまたベストワンになったというような状態の中で、果たして本当に東京を中心にした首都圏のあり方がこのままいって、それこそ小松左京さんの「首都消失」が近未来の小説で終わればいいんですが、警鐘で終わらないような、夜安心して寝られないような場面も最近は見られる。しかし一方では、世界の都市東京というような価値観のアップもある。この辺については、特に地域開発ということに御関心の高い竹内さんからちょっと御意見を伺いたいと思います。
#46
○参考人(竹内宏君) 私は、東京は世界の東京になってショッピング街とかいろいろ大変美しくなっておりますけれども、ただ東京に住んでいるサラリーマンはどうも生活水準は日本最低である、こういうふうに思われるわけであります。地方の方々の方が生活水準ははるかに高いわけでございまして、そのような意味で現在は地方の時代だと言えるわけでございますけれども、成長率からいきますと東京の方が圧倒的に高いというような意味でとっくに地方の時代は去った、このように思われるわけであります。
 問題は、東京の経済力を地方に分散する、こういうことでございますけれども、ニューメディア、情報化時代になりますとますます東京に集中する力が働く。なぜ東京に住んでいるかというと、多分原宿、六本木があったり国会があったり内閣があったり、そういうことで非常に刺激が多うございますから、どうしても東京に生活水準が低くても人が集まってしまう、こういうことになるわけであります。これを散らすためにはやっぱり土地の供給力をふやす。供給力をふやすというのは、道路網、新幹線網、そういうものを拡充するというような感じがするわけであります。
 よく存じませんけれども、竹山先生の選挙区の方でも例えば東名のインターチェンジができる、そのインターチェンジができまして十数年たちますと見事な成長が達成されるというような気がするわけであります。ですから、そのようなことで、長期的に見ますとこの周辺の発達といいますか成長速度が速い、こういうことでございますから、その意味でいきましても、やはり交通網の拡充というようなことがどうも東京の過密を防いで地方との過密過疎といいますか、地方に経済力を波及し東京に住んでいる人々の生活水準を上げて地方の人々の文化水準を上げる、このためにはぜひともこのようなことが必要かなと、このように考えさしていただいているわけでございます。
#47
○竹山裕君 大蔵大臣竹下さんの日本列島ふるさと論というのもありますが、確かに今おっしゃった我が家を愛しふるさとを慈しみ、ひいては日本列島すべてを愛そうという発想から出たコミュニティーづくりという問題でございますが、実際になかなか社会資本の充実という点ではいま一歩というか、まだ数段おくれている。その地方の開発についていろいろな御見識をお持ちですが、建設国債の増発などを含めた地域開発という点について御見解を伺いたいと思います。
#48
○参考人(竹内宏君) 私は、建設国債はある程度発行してもいいというような感じを持っておりますし、それからさらに国家財政と関係のない資金の集め方、つまり第三セクターをつくりましたり、あるいは民間企業で合弁会社をつくったりいたしまして長期の社債を発行する、こういうことになれば国家財政と関係がないわけであります。ただ問題は、回収をしなければなりませんので、そのときの回収のタームは多分、建設国債も六十年でございますが、大変長いということでありますけれども、ただその回収のメカニズムをつくっておかなければならないというような感じがするわけであります。つまり、インターチェンジの周辺で地価が上がりましたら、その地価に対してちゃんとした固定資産を評価いたしまして、それによって税収という形で回収していくというような回収のメカニズムをしっかりしておくというようなことが非常に重要ではなかろうかというように思われるわけであります。
 この回収のメカニズムなしに建設国債を発行いたしますと、これは財政にとって非常な問題になるわけでございますから、非常に長期的な、つまり五十年とかあるいは八十年とか、そのような展望のもとに何かそのような資金調達とそれから回収のスケールを考えるべきではなかろうかというようなことを素人ながら考えておりますけれども、多分実際にはなかおか難しいことかなというふうに存じております。
#49
○佐藤三吾君 社会党の佐藤ですが、きょうはな
かなか軽妙な比喩を交えてのお話ありがとうございました。
 でき得るなら中曽根総理、竹下大蔵大臣も一緒に聞くともっと自信を持つのじゃないかと思うのですけれども、きょうは不在ですから、ぜひひとつそういう意味で竹内さんからもっと何というのですか、すっきりしてずばっとそういうような御指摘もいただければいいんじゃないか、こういうように思います。
 そこでまずお伺いしたいと思うんですが、一つは、先ほどお話しの中で円高への動き、そして日本の言うならば貿易収支の黒字等を含めて非常に国際的にも大きな器になっただけに、国際的な非難、摩擦というのが起こりやすい環境にあるというお話がございました。そのために産業構造の国際化が必要である、こういうお話のように思ったんですけれども、国際化の具体策について、もし竹内さんの方でお考えがあればお聞きしておきたいというのが一つ。
 それからもう一つは、お話の中の官僚活力、民間全力というくだりの中で、財投にも非常にむだが多い、こういう御指摘もございまして、私どももそのお考えには賛成の部分がたくさんあるわけですけれども、竹内さんが考えている財投の中のむだの多い部分は一体どういう観点で御指摘なのか、これもひとつ参考のためにお聞かせ願いたいというふうに思うのです。
 それから第三点の中で、民活で、今お話をお聞きしますといわゆる第三セクター方式がいいんじゃないか、こういう御指摘もございました。総理の方も民活民活ということを盛んに言っておるわけですが、世界の潮流というか、実際見ると、例えば土地問題一つ見ても、いわゆる土地をできるだけ公有化していくという方向が私は流れじゃないかと思うんです、国有、公有化というのが。ところが民活という中で今度は逆に国有、公有を売りさばいてやっていくという、今民活という中にこういう色が出てきておるわけでございますけれども、この点について民活と関連してどういう考えを持っておられるのか、この点もしお持ちならばお聞きしておきたい。
 四番目に、先ほどからお話がございましたように、やはり内需の一番基本は個人の消費の拡大に私はあると思うのでございますが、この消費の拡大をやっていく上で今の日本の政治のどこに問題点があるのか、こういう点でもしお気づきの点があればお聞きしたい、こういうふうに思います。
 以上四点です。
#50
○参考人(竹内宏君) 第一番目の点でございますけれども、やはりアジアの諸国に対してできるならば産業の技術移転といいますか、を進めていって日本でつくるよりも安い物を買う、この方が日本の方は得でございますけれども、ただどの産業をどう変えるということはなかなかこれはできませんので、何といいますか、円高の中で輸出が困難になり、円高になりますと、例えば近国でいきますと、韓国でございますとウォンがドルにリンクしておりますから、韓国のウォンも対日レートは三〇%下がったと、こういうことで強力な輸出力を持ってくるわけでありますから、百九十円ぐらいのレベルで横にはいますと、自然に日本の産業構造は変わっていくというようなことで、これはある程度市場に任せるということになるかなということであります。
 ただ、産業構造を変えるということは、御指摘のとおりまさにきれいな言葉でございますけれども、それは一方、やめていっていただくという産業が出るわけでございますから、これをどうするかということが非常に難しい問題である、こういうことになるわけでございますけれども、これはやはりそれぞれの企業の転換能力といいますか、それによりまして高級品に転化していくとか、それから海外で工場をつくられるとか、あるいは何といいますか、転換能力をお持ちになれば拡大できるのかなと、そういうことでございますけれども、いずれにいたしましても大変な血が流れるということは覚悟しなければならないということでございます。これはもう先ほど、外国に血を旅させた分だけといいますか、それに対して日本もそうならざるを得ないというようなことで、その面では被害のギブ・アンド・テークみたいなことでございます。
 それから第二番目の問題で財投の問題でございますけれども、この中には、例えばよく存じませんけれども国有林野事業特別会計とか、あるいはかっては国鉄さんもそうでございましたけれども、元来は一般会計から支出すべきものが財投から支出されてしまっていて、もし一般会計から支出されておればどれだけ赤字が出ているかということが非常にはっきりするわけでございますけれども、これは元来返ってきそうもないものを財投でおやりになっているわけでございますからどうしても財投に全部しわが寄って、言ってみますと、こんな比喩的な言い方は失礼かと思いますけれども、財投全体は頭取のいない銀行のような感じがするわけでございます。
 そのような点でこれは非常に大きな問題がございますし、財投の規模は今回でも二十七兆ということでありますから、一般会計の中で国債の償還分とか地方交付税とか引いてみますと多分三十三、四兆でございますから、それに匹敵するようなことが、何といいますか、言い方は大変悪うございますけれども、適当にと言っては悪うございますけれども、何かそのようなものに使われてしまっているのかなと、このような感じがいたすわけでございます。ただ日本は現在貯蓄過剰の経済でございますから、財投がすっきり財投になりましたら多分使い道がないかもしれないというようなことで、これは内需を拡大いたしませんとそれの使い道がなかなか出てこないかな、このような問題も同時にあるような感じがするわけでございます。
 それから第三番目は、まさに御指摘のとおり、特に大都会でございますと土地の私的所有に対してかなり制限を加えていかないと成立しないというような感じがするわけであります。特に東京都心部に住んだら日照権もすべて完全に確保できるということは無理でございますから、その面では当然私的所有に対しまして幾つかの制限が過密都市では当然加わっていくべきだというようなことであります。そうなりませんと生活水準が上がらないというふうに思うわけであります。
 ただ、現在売り払いといいますか、土地の売却をやっておりますけれども、何かお役所でお持ちになっていて有効利用できないという点が多々あるわけでありますし、例えばお役所も非常にしっかりしてはおられますけれども、幾分民間企業とは違いますし、その上にさらに、何といいますか、公務員は専業規定がございますから、ちょうど林野の問題のように専業は他の者が兼業できませんから、暇になりましてもそこでずっといなきゃならないような非常にかたい仕組みになっているわけでございまして、仕事がなくなってもほかのことをやってはいけない、こういうことは非常にこれは御本人にとっても大変つらいことではなかろうかなというようなことで、もう少しこれが弾力的に動くようになればもっともっとよくなるのかなというように思いますけれども、そのようなシステムがこの土地の上に乗っかっていたら余り有効利用できないのかなという感じがするわけであります。
 民間企業から常識的に言いますと、国鉄さんでもいろいろなところに土地をお持ちになって、赤字でございますから一刻も早く売らないと金利の負担が大変でございますから、民間企業で言えばもう一日も気が気じゃないわけでございます。できるだけ早く売って、そしてその分だけ金利が回収できますから、そういう面で、何といいますか、都心の中で有効利用されてない土地は有効に利用していって、経済の成長に寄与するような、あるいは全体の環境をよくするようにやっていくべきだ、こういうように思われるわけであります。
 ただ、これも最後の政治との関係がございますけれども、政治はよく存じませんけれども、何か建前で動く面が多々あるわけであります。ですか
ら私はよく地方で、先ほど竹山先生からの御指摘もございましたけれども、地方でございますとどこでもそうですけれども、例えば「ふれあいの森」で木をたくさん植えよう、こういうことになるわけでありますけれども、どうも日本人は自然が大変嫌いのような気がするわけでありますけれども、建前上は好きでございます。例えば日本の子供たちを見ましても、ハエが嫌、カマキリが嫌、毛虫が嫌、何もいない自然がいい、こういうことでありますから、これはどうも自然が好きではないらしいようでありますし、自然が好きだったら東京から単身赴任される方もいないわけであります。奥さん方が一緒に行かれて御主人が東京に来るときに単身赴任だったら自然を愛するというわけでありますし、私どもはアメリカ人やヨーロッパ人のように山へ行って朝から晩まで山ばかり眺めているわけにいきませんで、我々の自然の楽しみ方というのは、ドライブに行って峠に来て景色がよくなりますとストップと言って二、三分見て、次と言ってそれからまた二、三分見て、夜はホテルでどんちゃん騒ぎする、それできょうは自然に親しんだと、こういうので、ですから、何かよく存じませんけれども、白雪姫は森によって幸せになりますけれども一寸法師は都に上って幸せになる、こういうわけでございます。そんなようなことではございますけれども、建前は自然が好きだ、こういうことでございますから、その建前に乗らないといかんともしがたい。ですから「ふれあいの森」を幾らつくられても全然人が集まらない「ふれあいの森」ができ上がるというようなことかなというような感じがいたすわけであります。
 これは一例でございますけれども、そのように、何といいますか、そういうようなことに乗っからないとぐあいが悪いというようなシステムができ上がっている、こういうことでございますし、もう一つは、現在は余りにも、金融界もそうでございますけれども、利権が多うございます。この利権というのは制限されていろいろ行政の中で安住するわけでございますけれども、利権が大変多くなりますと、まあ農業なんか大変多いわけでございますけれども、そういうことになりますと、その利権をお持ちの方が利権を持つことこそ正義であるというように確信されてしまうということが非常な問題であるような気がするわけであります。そのように、それぞれの権利をまずお持ちになるといいますか、国家から保護されることが当然の権利であるということをすべての人が思われて、それを主張されるときに何かガバナビリティーが失われまして経済の効率を失う、それはどこの国でも経済が衰退していくときは多分そうなって衰退していくというような感じがするわけでございますから、その辺のところの秩序づけみたいなものが、政治家の方といいますか、政治の中にはぜひ必要かなというような、口幅ったいようでございますけれども、そんな感じを持たしていただいているわけでございます。
#51
○大川清幸君 竹内参考人のお話を聞いておりまして、日本の当面の経済構造の特徴である高い貯蓄率、この状況から見て、高度情報化社会が訪れる将来を展望した場合には、参考人もおっしゃっておりました、いわゆる経常収支の大幅黒字を資本収支の赤字の方でバランスをとるというような、こういう状況を是正するためにもそうでしょうし、それから内需拡大のためにも効果がある、いわゆる貿易摩擦等にも一助になるのではないかというようなお考えがあるのだろうと思いますが、竹内参考人のおっしゃっている六十年代情報化社会を目指した大型のインフラストラクチャー投資、こういうようなものがどうしても必要だというようなお考えをお持ちのようでございまして、先ほどのお話の中でも橋梁の建設その他でも多少具体的なお話が出ておったのですが、この辺に対するもう少し具体的な方策なりお考えと、それから、現在の日本の制度、経済の構造上問題点がおありになればそれもあわせて御指摘願いたいと思います。
 まず第一問、その辺をお願いいたします。
#52
○参考人(竹内宏君) 御指摘のとおりで、もう一つは、日本が物と金が余っているのにまだまだ社会資本とかいろんな点が貧しいからそっちに投入すべきだ、こういう点が一つでございますし、もう一つは、間もなく高年齢化社会が確実にやってくるわけであります。現在女性の出産数が一・八人でございますから、私、大ざっぱに計算いたしますと二千年後の日本の人口はたった千二百人になる。すさまじいスピードの人口の減り方であります。同時に、高年齢化していきながら人口が減っていくわけでございますから、長期的な展望をいたしますと寒々とした将来が展望できるというような気がするわけであります。常識的に考えましても、ゲートボールが成長産業で産婦人科が構造的不況業種で悩んでいるというのは、どう見てもおかしな社会であるというように思われるわけであります。
 そうなりますと、多分これから、具体的に言えば日本経済は、一人っ子同士の御夫婦もふえるに違いない。その方が私の年配になりますと惨たんたる生活が待っている。寝たきり老人を確実に四人持つだろうと、こういうようなことでありますから、非常に暗いわけであります。その時代が間もなくやってくる。やってくるときに四十年代の前半に投資しました社会資本の更改期がやってくる。これが同時に重なるに違いないというようなことでありますから、現在、出生率を高めるためにはいろいろ保育園とかお子さんをお持ちになった女性の方々の地位を上げるといいますか、住みやすくする。お子さんが生まれても社会的な地位も変わらないというようなシステムが必要でございますけれども、それがすぐには間に合わないといいますか、すぐには出生率が高まらないといたしますと、どういたしましても早目に社会資本を充実して経済の活力をつけておきませんと、四、五十年先には間に合わなくなるというような気がするわけであります。
 そのときにもう一つの方法は、外人労働者の移民を認めるというようなことで、ヨーロッパのようにいわば多民族国家になるというようなことかなというように思われるわけであります。そんなような意味で、社会資本は差し迫った必要性があるというように長期的な展望から見ると思われるわけであります。
 こうなりますと、現在でもそうでございますけれども、いろいろ反対が多いわけでございますから、一つの方法は、反対が多いところは直ちにやめるということであります。反対が少ないところを通せばいい、こういうようなことであります。反対が多いところは何かそれで損したと思われたら後からつければいい、このようなことで、計画をはっきり決めないというようなことで、コストができるだけ安いところからやっていく、こういうことが非常に必要だというように思われるわけであります。
 それから、社会資本を投入いたしますと当然のことながらそこの地域の人々が得をするわけでありますから、さっきもちょっと申し上げましたけれども、そこからの税収を引き上げるといいますか、税収を拡大するというようなメカニズムをしっかりつくるというようなことかなと思われるわけであります。私企業ベースでいきますと、先行的に土地を買収しておいて、そこを社会資本が充実してから高く売って、それによって投資資金を回収する、こういうようなことが私企業ではできるわけでありますけれども、国家においても全体的に回収ということを中心にかなりウエートを置いた考え方といいますか、そのようなコンセンサスづくりが必要かな、このような感じがしているわけでございます。
#53
○大川清幸君 参考人は日本長期信用銀行の常務さんをなさっておりますので、ちょっと角度を変えて参考のためにお伺いをしておきたいのですが、六十一年度の政府の予算編成も御承知のとおりゼロシーリングで、大蔵大臣を初めみんなえらい御苦労なさってこれが数年続いておるわけですが、この新年度の予算の構造をごらんになりまして、一般経済評論家の中でもデフレ効果のことを
いろいろおっしゃる方がおりますが、予算から出てくるところのデフレ効果のようなものについてはどのような感触をお持ちだろうかということですが、どうでしょう。
#54
○参考人(竹内宏君) その点につきましては、何かことしの前半は大変な円高不況がやってくるというように思われるわけでありますから、ぜひとも財政が出動するということが必要でありますし、ドルのといいますか、円の価格を見ながら金利を引き下げるというような努力も必要であるというようなことで、財政金融の総力を挙げて経済の刺激をすべきだと、このようなふうに考えております。
 でございますけれども、一方、財政といいますか、行革がここまで進んで、ここの手を緩めることはなかなか難しいだろう、こういうふうに思われますので、例えば問題はございますけれども財投を二兆円ふやすとか、それから公共事業を前倒しに七五%やられるとか、一般会計支出を前倒しにやられる、当然補正予算になるだろうということであります。何か最初からふやしますと、せっかくやってきたのが活力が鈍るような、勢いが鈍るようなことでございますから、景気上仕方がなくやった、後からお金がないから補正を組むと、このようなことでせっぱ詰まってやっていくという方があるいはいいのかなと。この辺が政治的な判断にかかわるわけでございますけれども、何か現在はそんなことで進んでいるような感じも持っているわけでございます。
 もっとも、これは長銀の常務じゃなくて、一評論家としての考え方ということでございます。
#55
○大川清幸君 次に、御承知のとおり、OPEC諸国はなかなか足並みがそろいませんでオイル価格が急激な低下現象を示しておりますが、これは日本経済にとっていい面でも悪い面でもいろんな問題があるわけですが、先ほど申し上げた政府のゼロシーリングの予算編成上からの日本経済に対する効果、あるいはオイル価格の低下、こういうような材料を考えてみますと、長銀でも恐らく六十一年度の我が国の経済成長についての観測のデータをお持ちになっていると思いますが、今申し上げた幾つかのデフレ効果、原油の価格低下等が最終的には我が国の名目成長率についてかなりな効果が出てくるんではないかなという予測も実は個人的には持っておるわけですが、その辺の試算なり観測をお持ちでしたら聞かしていただければ大変ありがたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
#56
○参考人(竹内宏君) 御指摘のとおり、原油価格の引き下げは大変プラスになるわけでございます。昨年よりも仮に原油価格が三〇%下がったといたしまして、現在そんなものかなと。それによりますと、GNPは一年目で〇・五%のアップ、二年目で〇・九%のアップ、このようなことで効果がございます。さらに、アメリカの経済も原油価格の引き下げによってよくなりますから、アメリカの経済の立ち直りが早いので輸出の伸びもやや伸びるかなと、こういうことでプラスであります。
 ですけれども一方、為替相場が一〇%円高になりますと、私どもの計算では一年目経済成長率はマイナス一・二%、二年目マイナス一・七%、それだけの効果を持っているわけでございますから、現在のように急激な円高になりますと、円高の効果は原油引き下げの効果を明らかにキャンセルして為替相場の上昇部分が大変マイナスにきく、こういうふうなことで、できるだけ早く刺激政策をとった方が、あるいはそんなような環境もございますのでとった方がいいのではなかろうかと、このように思っているわけでございます。
 ただ、原油価格の低下は、日本経済といいますか、金融にとりますと大変な問題でございます。メキシコとかそれらの産油国が破綻してまいりますから、そうなりますと借金が返ってこない。こういう点でアメリカにとりましてももちろんそうでありますけれども、日本にとりましても、世界の金融にとりますと原油価格の引き下げというのは大変大きな問題を抱えている、このように存じております。
#57
○佐藤昭夫君 私も幾つかお尋ねをしたいと思いますが、先ほど来出ております経済摩擦解消のためにも、また景気浮揚のためにも内需拡大の問題がいろいろ御質問でも重ねて出ておったと思うのでありますけれども、その内需拡大の一番の柱といいますか、国民の購買力をいかに高めるかという問題でありますが、それでちょっと私お話聞いていまして気になるのは、黒板の板書にまだ残っていますけれども、購買力が高まってもカラオケバーへ行ったり、ゴルフへ行ったり、そういう今やレジャー世界に、そこをぐるぐる金が回るだけだという、確かにその現象は一部あるかと思うのですけれども、そういう現象をもって、しかしこの内需拡大のための国民の購買力向上、このため政府としてのそういう施策を積極的に講ずると。例えば労働者の賃上げとか労働時間の短縮とか減税とか、こういうものにもっと力を注いでいくというこの重要性はいささかも否定されるものではないだろうと思うのですが、念のためにちょっとそこをお聞きしておきたいというふうに思います。
 それから、内需拡大に当たっての公共事業における中小企業の位置づけの問題でありますけれども、これはいろんな機関が、最気波及効果について大企業中心の公共事業、中小企業の公共事業、いろいろな試算がありますけれども、特に日本の場合、産業の中で大きな比重を占めております中小企業に仕事が回り、そこが潤っていくような、この方が一倍半ぐらいラフな話で景気浮揚効果があるといったような試算なんかも出されていますけれども、その点、御専門の点で何か御見解がありましたらお伺いしたいと思います。
 それからもう一つは、今焦点になっています円高差益還元の問題でありますけれども、国民的要求として、これだけ輸入をする原油が下がるんだから、当然電力、ガスなど値下げがされてしかるべきという要求が今非常に強いと思うんですけれども、前回の昭和五十三年ですか、あのときにも料金値下げをやったそのことに照らしても、そしてまた、前回の料金値上げをしたときに企業の側が、言うならば多少もうけ過ぎた、こういうことも言われておることをつけ加えるならば、当然料金値下げという形での差益還元をすべきだというふうに私は思うのでありますけれども、御見解を聞いておきたいと思います。
#58
○参考人(竹内宏君) 第一番目の点でございますけれども、これは労働者といいますか、国民の長期的な福祉なのか短期的な福祉なのか、この点が重要な観点ではなかろうかと思うわけであります。東京とか過密都市になりますと、長期的な戦略をとりませんとどういたしましても豊かにはならない。先ほど先生が御指摘のような、何といいますか、私的所有もある程度制限するというようなことと同時に、長期的な投資をやっていかないと豊かにならないというような感じもいたすわけであります。そんなことで現在は金と物が余っておりますから、そんなものに使った方がいいんじゃなかろうかな、こういうふうな感じもいたしているわけであります。
 それと同時に、ちょっとまた図で恐縮でございますけれども、グラフを書いてよろしゅうございますか。
 今、日本の輸出は五十兆でございます。三〇%円高になっておりますから、三〇%円高といたしますと、今輸出企業はドル建て価格を引き上げております。三〇%損するところを一〇%引き上げておりますから二〇%の損だ、こういうふうに思われます。一〇%引き上げて輸出量がほぼ横ばいだと、このようなことで打撃が加わるわけでございますから、損得でいいますと二〇%損いたしますから、輸出で十兆損いたします。それから輸入総額は四十兆でございますから、これはほとんどドル建てですから三〇%得いたしますから計算上じゃ十二兆得する、こういうことになるわけであります。輸出産業が低迷するから日本経済の勢いがなくなりますけれども、差し引きいたしますと円高では損をしない。というのは、つまり御指摘
のように輸入価格が円高に伴って順調に下がっていけば物価が安定して、我々の実質所得は上がるというような計算にもなるわけでございます。そういう意味からいって、さしあたってその面から個人消費は幾分出るのではなかろうかということでございますけれども、御指摘のようになかなかこの勢いかないわけでございます。
 ここで減税とかそういうことをやって、短期的な豊かさを求めるのか長期的な投資に向けていくのか、これも一種のトレードオフの関係でございまして、短期的にも豊かになり長期的にも豊かになるというのは、これはなかなか数学的に成り立たないものでございますから、このあたりも一種の趣味といいますか、見識といいますか、そんな点にかかってくるのかなというような感じがいたすわけであります。
 それから第二番目には、中小企業、特にこれはマイナスシーリングで、建設業は四十年代に数が三倍もふえておりますから非常に苦境なところがございますし、輸出産業も苦境である。ですから、衝撃が加わるところにはどういたしましても一種の保護的な政策が必要だと思われるわけでございますけれども、原則といたしましては、生産性が高いところに発注していくというようなことが日本経済の活力かな、こんなような感じもいたしているわけでございます。これは業種によってその度合いが違うわけでございますけれども、原則はやはり生産性の上昇したところに発注して、つまり値段が安いところに発注していくというような建前をとりませんと、財政といいますか、そういうものがいつまでたってもよくならないのかなと、このような感じも持たしていただいております。
 それから第三番目は、これもトレードオフの関係で政治的な関係だと思います。電力さんなんかは特にこれから、金利が既に下がっております。金利収入で収益の減と、それから原油価格と円高によりまして大変な収益増がございます。この収益を実質五二%を税金でちょうだいいたしましてこれで公共投資に向けていくということなのか、それでも電力さんはもうかっておりますから、もう多少むだであっても前倒しに投資してくれと、これによって景気の刺激をするか、それとも円高分を消費者に還元するか、この三つの方法があるというふうに思われるわけであります。この方法のどれを選択するかということは、どうも国民に対してどれが一番納得できるかとか、あるいはこんなことを言っちゃ失礼ですけれども、どれが一番文句が出ないとか、そんなような感じで決められていくことかなというような感じがいたしているわけであります。
 実際に、御指摘のように電力料金が、差益がそのまま還元して下がっていくというようなことも一つのやり方だと思います。そのかわり逆の場合には、電力料金を機動的に上げていくというようなことが可能だという前提で、そうなりますとどんどん輸入原材料が下がる、電力料金も下がる。そうなりますと、間もなく輸出産業への電力料金もすぐ下がってまいります。原材料価格も下がりまして、輸入産業だけに集中していたところが輸出産業にも広がっていく、そのようなことでは電力料金の引き下げみたいなものは非常にいいやり方だというように存じておりますけれども、ただ、かわりに今度は投資をしていくときに、電力さんが前倒しに投資してくれないとどこが投資をしてくれるのかな、個人消費よりも設備投資の方が波及効果がはるかに大きいというようなことではなかろうかというように思っているわけであります。オーソドックスに言えば、正論から言えば、御指摘のような引き下げというのが非常な正論だろうと思うわけでありますけれども、その後にいろんな事情をつけ加えますと、若干見送って、電力さんもうかっているから多少無理しても前倒しにしてくれとか、今効率的じゃなくても投資をしてくれとか、そんなようなことを要求していくというのも一つの方法かなというような感じもしております。
#59
○関嘉彦君 竹内さん、きょうはお忙しいところわざわざ来ていただきまして、いつに変わらぬ竹内節で大変有益なお話をお伺いいたしまして感謝しております。
 お話をお伺いしておりまして、建設国債に対する考え方でありますとか、あるいはそれによる公共事業によって値上がりしたときの土地価格の値上がりした分を吸収する回収の方法をよくしなきゃいけないというふうなお考え私も全く同感で、私の考え方を補強していただいたと思って喜んでおります。
 ここでお伺いしたいと思うことが二つほどあるのでございますけれども、一つは、日本は過剰貯蓄である、アメリカは過少貯蓄である。日本が過剰貯蓄であるために外国に対する証券投資であるとか、あるいは国内においてはマネーゲームであるとか、いろいろなことが行われているわけですけれども、果たして現在のように貯蓄を人為的に税制上奨励する、こういう政策を続けていく必要があるかどうか。もちろん人為的にディスガレージする必要は少しもないんですけれども、人為的にエンカレージするような政策を続けていく必要があるかどうか。いろいろなメリットとデメリットがあると思いますけれども、それについての竹内さんのお考えをお伺いしたい、それが第一点でございます。
 第二点は、大河原さんのときにも質問したんですけれども十分的確な返事が得られなかったんですが、為替相場の問題。つまり為替相場が今日のように円安から急激な円高に変わってくる、こういうことがしばしば行われるとすると、これはどんな産業政策をとっても私はだめじゃないかと思うんです。為替相場を固定相場に戻せというふうなことは私は決して申しませんけれども、各国政府の合意によりまして購買力平価であるとか、あるいはそのほかの経済のファンダメンタルズを考えてある幅のゾーンを決めて、その範囲内にとどめていく。これも長期には不可能だと思いますけれども、ある期間は私は可能じゃないかと思うんですけれども、そういうことは果たしてできないものかどうか。
 その二つお伺いしたいと思います。
#60
○参考人(竹内宏君) 第一番目の御指摘でございますけれども、御指摘のように、現在の貯蓄過剰の状態から申し上げて税制上貯蓄を刺激する必要があるかどうか、かなり疑問に思っております。これは私の立場では大変言いにくいわけでございますけれども、やはり全体を考えますと、これは経済のレベルが低い、急速に先進国をキャッチアップしていくときの制度でございますから、成熟段階になりますとそのようなことが果たして必要かどうかという点は、国家機関といいますか郵便貯金も含めまして、全般的に再検討しなければならない重要な問題かなというふうに思っているわけでございます。
 ただ、ここでも、平均寿命が延びていきますし、将来確実に年金は破綻するに違いないというような状況でございますから、これからの老齢化社会に対しましてどのような政策を準備するかということが、私年配だから特にそう思うわけでございますけれども、その点が必要かなというように思われるわけでございます。
 それから第二番目に、関係先生から今御指摘の点はまさにそのとおりだというように思うわけであります。為替相場が乱高下いたしますと、輸出産業はまじめに働く気がしなくなりますし、どうしても何といいますか、全体が投機的といいますか、財テクといいますか、そんなぐあいに走っていくわけであります。言ってみますと、オーバーな言い方で恐縮でございますけれども、額に汗を流さないで収益が上がってしまう。これはどうしても、額に汗した人が損をするわけでありますから、だれかが得をしてだれかが損をするわけでありますから、そういう点は必ずしも芳しくございませんし、経済に変動を及ぼす、こういうことでございますから、できますれば為替相場を安定化する。それから、あるターゲットゾーンの中におさめるような国際的な協力が必要だ、御指摘のとおりであります。
 現在、それに向かっていっているんじゃないかというような感じもするわけであります。G5、続いて国家の、日本の政府でいきますと国内的な政策に反して、対外的な均衡を保つために十一月には短期金利を高目に誘導し円高に持っていった、こういうことでありますから、既にそのようなことで日本も為替相場を安定化するために血を流した、こういうことになるわけで、相手の国がやってくれるかどうかわかりませんですけれども、大体そんなような方向で合意ができつつあるのかなというような感じもいたすわけでございます。もちろんこの中には失敗していくのは多々あるわけでございますし、一種の国内政策を対外均衡のために犠牲にしていくわけでございますから、なかなかすぐにはまいらないと思いますけれども、世界的な合意はそちらに向かっているのではなかろうか。
 アメリカも、先ほど大河原さんも御指摘になったような、まさにドル高はアメリカの欠陥だと認めていった。このようなことも大きな変化ではなかろうか、こんなふうに存じているわけでございます。
#61
○委員長(安田隆明君) 以上で竹内参考人の意見聴取は終了いたしました。
 一言お礼を申し上げます。
 ただいまお述べいただきました貴重な御意見は、先刻申し上げましたとおり、今後の総予算審査の参考にいたしてまいりたいと存じます。
 本日は、大変お忙しい中、本委員会に御出席いただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして重ねて厚くお礼を申し上げます。(拍手)
 明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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