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1985/03/06 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第2号
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1985/03/06 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第2号

#1
第104回国会 法務委員会 第2号
昭和六十一年三月六日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十二月二十四日
    辞任         補欠選任
     柳澤 錬造君     抜山 映子君
 一月二十二日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     林  ゆう君
     河本嘉久蔵君     大坪健一郎君
 二月二十四日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     神谷信之助君
 二月二十五日
    辞任         補欠選任
     神谷信之助君     橋本  敦君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二宮 文造君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                大坪健一郎君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                秦野  章君
                橋本  敦君
                抜山 映子君
                阿具根 登君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  鈴木 省吾君
   政府委員
       法務政務次官   杉山 令肇君
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  岡村 泰孝君
       法務省矯正局長  石山  陽君
       法務省保護局長  俵谷 利幸君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       草場 良八君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
 (派遣委員の報告)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十二月二十四日、柳澤錬造君が委員を辞任され、その補欠として抜山映子君が選任されました。
 また、去る一月二十二日、石本茂君及び河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として林ゆう君及び大坪健一郎君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二宮文造君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 法務行政の基本方針について、鈴木法務大臣からその所信を聴取いたします。鈴木法務大臣。
#4
○国務大臣(鈴木省吾君) 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。
 私は、昨年末、図らずも法務大臣に就任いたしました。内外ともに極めて厳しい問題が山積しているこの時期に当たり、その職責の重大であることを痛感いたしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 この機会に、法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 申し上げるまでもなく法務行政の使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあるのでありますが、国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利がよく保全されていることが肝要と存じます。私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じます。
 以下、当面の重要施策について申し述べます。
 第一は、最近の犯罪情勢とこれに対処する検察態勢についてであります。
 最近における我が国の犯罪情勢を見ますと、犯罪発生件数が漸増の傾向を示しているだけでなく、内容的にも、保険金目当ての殺人・放火事件、身の代金目的の誘拐事件、流通過程にある食品への毒物混入や組織暴力団の対立抗争に起因する銃器による殺傷事件などの凶悪事犯が多発しているほか、一般大衆を被害者とする経済取引を仮装した詐欺事件、地方公共団体の首長による汚職事件、大規模かつ巧妙な租税通説事件その他の不正事犯もその後を絶たず、また、覚せい剤を初めとする薬物の乱用が引き続き一般国民の間に拡散しつつあると認められるのであります。さらに、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止等を呼号し、過般の国鉄関係施設に対する同時多発ゲリラ事件に見られるように、各地で法と社会への挑戦ともいうべき不法越軌事犯を反復敢行し、一方、右翼諸団体の動向もなお予断を許さない状況にあるのであります。加えて、次代を担うべき少年の非行は減少に転ずる状況になく、今後における犯罪の動向には引き続き厳戒を要するものがあると申さなければなりません。
 私は、このような事態に的確に対処するため、検察体制の一層の整備充実に意を用いるとともに、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいる所存であります。
 なお、刑法の全面改正につきましては、これが国の重要な基本法に関するものでありますため、国民各層の意見を十分考慮しつつ、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典の制定を目指し各般の努力を重ねてきているところであり、引き続き所要の作業を進める所存でありますが、殊に、コンピューター犯罪等新たな類型の罰則の新設など、緊急に法整備の必要性があるものにつきましては、その早期実現を図りたいと考えております。
 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更生保護活動についてであります。
 犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、広く国民の理解と協力を得つつ、刑務所、少年院等における施設内処遇と保護観察等の社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。
 そのためには、まず施設内処遇につき、時代の要請にこたえ得る適切な処遇の実現に努めるとと
もに、仮釈放のより適正妥当な運用を図り、また、保護観察等の社会内処遇において、保護観察官と保護司との協働態勢及び更生保護会における処遇態勢を一層充実強化し、関係機関・団体との連携をさらに緊密にするなど、現下の情勢に即した有効適切な更生保護活動を展開してまいりたいと考えております。
 なお、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第九十六回国会に提出しましたところ、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となったのでありますが、同法律案は、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更生に資する制度を整備するなど、被収容者の処遇全般にわたって大幅な改善を行おうとするものであります。
 同法律案につきましては、昭和五十八年二月から同五十九年十一月までに、日本弁護士連合会との間に二十二回の会議を開催し、意見の交換を重ねてきたところであり、この意見交換の結果等を参考にし、法律案の各条項について慎重に検討を加え、必要な修正を行った上で、第百二回国会に法律案を再提出すべく準備を進めてまいりましたが、同時提出が予定されていた留置施設法案について関係省庁との意見調整がつかず、刑事施設法案の提出を断念せざるを得なかったのであります。
 しかしながら、監獄法の全面改正は急務であり、その早期成立を必要とする事情にはいささかも変更がなく、引き続き事務当局において鋭意関係省庁との意見調整を行っており、調整が整い次第今国会へ再提出したいと考えております。
 第三は、一般民事関係事務の処理についてであります。
 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化、事務処理の能率化・省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところであります。特に、我が国経済の発展に伴って逐年増加を続けている登記事務の関係では、昨年度登記特別会計が創設されたところであり、その趣旨に即して、事務処理の適正、円滑な遂行を図るため、登記事務のコンピューター化を初め、登記事務処理体制の抜本的改善に努めてまいる所存であります。
 なお、民事関係の立法につきましては、扶養義務の準拠法に関するヘーグ条約の締結に伴い、夫婦、親子その他の親族関係から生じる扶養義務の準拠法に関し必要な事項を定めるため、扶養義務の準拠法に関する法律案を今国会に提出すべくその準備を進めているところであります。
 次に、人権擁護行政につきましては、国民の基本的人権の保障をより確かなものとするため、各種の広報活動によって、国民の間に、広く人権尊重の思想が普及徹底するよう努めるとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じ、関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいる所存であります。
 中でも、最近大きな社会問題となっておりますいじめの問題及び教育職員による体罰の問題、さらには部落差別を初めとするもろもろの差別事象の問題につきましては、それぞれの所管分野における施策を通じてその根絶を図るべきものでありますが、当省といたしましても、関係省庁と緊密な連絡をとりつつ、国民の人権意識を高め、その根絶に寄与してまいりたいと考えております。
 さらに、訟務事件の処理につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、近時における複雑多様化した社会経済情勢と国民の権利意識の変化を反映して、例えば選挙訴訟、環境関係訴訟、原子力関係訴訟、水害訴訟あるいは薬害訴訟等の例に見られるように、社会的、法律的に新たな問題を内包する事件が増加しており、その結果いかんが直ちに国の政治、行政、経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものが少なくありませんので、今後とも事務処理体制の充実強化を図り、事件の適正、円滑な処理に万全を期するよう努めてまいる所存であります。
 第四は、出入国管理行政についてであります。
 国際交流の活発化に伴い、我が国に入出国する者の数は逐年増大し、また、我が国に在留する外国人の活動の範囲や内容も一層複雑多様化しており、出入国管理行政の重要性はますます高まっております。このような情勢を的確に踏まえ、国際協調の一層の推進を図りつつ、我が国の出入国管理行政に関する事務の適正迅速な処理に努めてまいる所存であります。
 第五は、外国弁護士の日本国内での活動の問題についてであります。
 この問題については、米国政府及びEC委員会等が貿易摩擦問題の一環として取り上げて以来、国際化の度を深めつつある社会経済情勢の中で法律サービスの国際交流の必要性が認識され、いかにこれを実現するかについて、政府においても真剣に検討を加えてきたのであります。
 ところで、この問題は、司法制度の重要な一翼を担っている弁護士制度に直接かかわる問題であるところ、弁護士制度は、国民生活と深い関連を持ちつつ各国それぞれの歴史的背景のもとに独自に発展してきた制度となっているのでありますから、単に経済的観点のみから処理すべきものではなく、我が国の司法制度の枠組みの中で対処すべきものであると考えてまいったのであります。
 また、この問題は、現行弁護士法のもとで広範な自治権を認められている弁護士の職域に関係するものでありますから、これに対しては、日本弁護士連合会(日弁連)の自主性を尊重しつつ対処することが必要不可欠であり、政府は、従来一貫してこの方針のもとに、日弁連の自主的な意見が適正かつ迅速に形成されるよう全面的な協力をしてまいったのであります。また、昨年三月、日弁連が一定の条件のもとに外国弁護士を受け入れるとの基本方針を決定して以来、日弁連との累次にわたる協議を重ね、その結果等を踏まえて、昨年七月、政府・与党対外経済対策推進本部で決定された「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」において、日弁連の自主性を尊重しつつ、本通常国会における法律改正を目途に、国内的にも国際的にも妥当とされる解決を図る旨宣明したところであります。
 日弁連は、昨年十二月に開催された臨時総会において、一定の条件のもとに外国弁護士を我が国の弁護士の仲間として受け入れる旨の議案を圧倒的多数をもって採択し、この決議に基づいて細部にわたる検討を遂げ、本年二月六日、臨時理事会において外国弁護士制度要綱を策定し、同月七日付で、法務省に対し同制度要綱に基づく立法化の要望をいたしました。
 政府といたしましては、この要望を受け、外国弁護士制度の立法作業に着手したところでありまして、日弁連の古制度要綱の趣旨及び米国政府やEC委員会等から出されております意見や要望を参酌しつつ、国内的にも国際的にも妥当と認められる最終案を策定し、本通常国会において委員各位の御審議をいただくべく、最大限の努力を継続しているところであります。
 最後に、法務省の施設につきましては、昨年に引き続き整備を促進するとともに、事務処理の適正化と執務環境の改善に努めてまいりたいと考えております。
 以上、法務行政の重要施策について所信の一端を申し述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
#5
○委員長(二宮文造君) 以上で鈴木法務大臣からの所信聴取は終わりました。
 ただいまの鈴木法務大臣の所信に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(二宮文造君) この際、杉山法務政務次官及び草場最高裁判所事務総長から発言を求めら
れておりますので、順次これを許します。杉山法務政務次官。
#7
○政府委員(杉山令肇君) このたび法務政務次官に就任いたしました杉山令肇でございます。
 時局柄、大任ではございますが、鈴木法務大臣のもとに、よき補佐役として、時代に即応した法務行政の推進のため、微力ではありますが、最善を尽くしてまいりたいと存じております。何とぞよろしく御指導、御鞭撻のほどお願い申し上げます。
 簡単ではございますが、ごあいさつといたします。
#8
○委員長(二宮文造君) 草場最高裁判所事務総長。
#9
○最高裁判所長官代理者(草場良八君) 名古屋高等裁判所長官に転出いたしました勝見前事務総長の後を受けまして、一月十七日付で事務総長を命ぜられました草場でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 改めて申し上げるまでもございませんが、裁判所は、裁判を通じ、基本的人権を擁護し法的秩序の維持に当たるという重い責務を負託されております。この裁判所の使命を果たしますために、司法行政の面において微力を尽くしてまいりたいと存じております。
 幸いに、今日に至りますまで当委員会の皆様の深い御理解と力強い御支援によりまして、裁判所はいろいろ運営の面におきまして逐次充実が図られてまいりました。どうか今後とも一層の御支援を切にお願い申し上げる次第でございます。
 簡単でございますが、ごあいさつとさせていただきます。
    ―――――――――――――
#10
○委員長(二宮文造君) 次に、去る一月十六日から十八日まで当委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。小島静馬君。
#11
○小島静馬君 去る一月十六日から十八日までの三日間、二宮委員長、海江田理事、寺田理事、飯田理事、橋本委員、中山委員と私、小島の七名は、検察及び裁判の運営に関する調査の一環として、最近における司法行政及び法務行政に関する実情等につき調査のため、和歌山県、三重県に行ってまいりました。
 派遣日程の第一日目は、和歌山地方裁判所において、和歌山地方裁判所、和歌山家庭裁判所、和歌山地方検察庁、和歌山法務局、和歌山刑務所、和歌山少年鑑別所及び和歌山保護観察所の各機関から管内概況につき説明を聞き、懇談を行い、第二日目は和歌山刑務所の実情を視察し、第三日目は津地方裁判所において、津地方裁判所、津家庭裁判所、津地方検察庁、津地方法務局、三重刑務所、宮川医療少年院、津少年鑑別所及び津保護観察所の各機関から管内概況につき説明を聞き、懇談を行った次第であります。
 今回の委員派遣におきましては、第一に司法行政及び法務行政に関する管内概況、第二に裁判所及び法務省関係の庁舎施設及び宿舎の営繕状況、第三に委員会に対する要望事項及びその他参考になる事項を主要な調査項目といたしました。以下その概要を御報告いたします。
 まず第一に、司法行政及び法務行政に関する管内概況についてであります。
 裁判所関係では、昭和五十七年から同五十九年までの三年間の各種事件の処理状況について見ますと、和歌山、津両地方裁判所及びこれらの支部での民事訴訟事件は漸減の傾向を示しております。しかし、民事事件のうち執行事件は民事執行法施行以後増加の傾向にあります。また、和歌山地裁におきましては、破産事件の増加が著しいということであります。
 刑事訴訟事件の新受件数につきましては、和歌山地裁本庁では横ばい、同地裁支部では増加の傾向にあるのに対し、津地裁本庁、支部においては増減はまちまちであるものの、全体としておおむね減少傾向であります。なお、最近の刑事訴訟事件では暴力団関係の抗争事件が目立ち、今後の動きが注目されるところであります。
 和歌山、津両地裁管内の簡易裁判所の民事訴訟事件は、和歌山管内におきましては漸減の傾向にありますが、津管内においては全体として増加傾向にあり、特に四日市簡易裁判所、鈴鹿簡易裁判所においては急増しております。また、調停事件の新受件数については、和歌山管内では和歌山簡易裁判所の新受件数が減少したため全体として激減しておりますが、一方、津管内における調停事件は全体としてかなり増加の傾向にあり、これは債務者からサラ金関係の会社を相手として債務額確定を求める調停事件が著しく増加したためであります。このほか顕著な例として、和歌山管内簡易裁判所において信販会社等による督促事件が年々増加の傾向にあることが挙げられます。
 一方、刑事訴訟事件は、和歌山管内では各庁各年により増減はまちまちでありますが、津管内では桑名簡易裁判所、四日市簡易裁判所を除いて減少傾向にあります。略式事件については、その多くが道路交通法違反事件でありますが、和歌山管内では増加傾向を示すのに対し、津管内では緩やかな減少傾向を示しております。
 次に、家庭裁判所でございますが、家事事件の新受件数は漸増の傾向が見られますが、和歌山家裁では、審判事件は漸増傾向、調停事件は横ばい、津家裁では、審判事件は増加、調停事件は漸減の傾向を見せております。家事事件では、社会の情勢を反映して、離婚や離婚に伴う子の氏の変更事件が多くを占めており、また少年事件については、一般保護事件並びに道路交通保護事件とも漸減ないし横ばいの傾向であります。
 なお、両地方裁判所並びに両家庭裁判所とも、既済件数については新受件数の増減の推移に従った傾向を示しております。
 次に、検察庁関係でございますが、和歌山地方検察庁管内では、最近三年間の事件数は増加の傾向にありますが、交通関係事件が非常な高率を示していることが目立っております。一般刑事事件の特徴としましては、暴力団の抗争事件や覚せい剤事件が挙げられます。一方、津地方検察庁管内におきましては、事件数は逐年減少しておりますが、これは交通関係事件の減少によるものであり、一般刑事事件においては増加ないし横ばいの傾向であります。同管内でも暴力団の対立抗争に伴う殺人事件や拳銃の発砲事件が発生しており、犯罪の凶悪化、広域化の傾向も見られ、楽観は許されない状況にあります。
 次に、法務局関係でございますが、登記事件は年々増加の傾向にあり、国籍事務も昭和五十九年の改正国籍法の施行により帰化事件、国籍取得事件等の事務はふえている一方、供託事件及び人権侵犯事件数は横ばいの状況にあります。訟務事件については、その内容が社会の情勢を反映して複雑、多様化の傾向にあり、津管内では増加の傾向にあります。なお、先に述べましたように、登記事件数は県内の開発事業や大都市のベッドタウン化により今後ますます増加が予想される状況であります。
 次に、矯正関係につきまして簡単に御報告いたします。
 和歌山刑務所は、現地に赴き実情を視察してまいりました。同所は女子受刑者を収容する施設でありまして、現在約五百五十名が収容されており、その大部分が覚せい剤事犯者であります。同所は、規律及び秩序の維持と女子収容者にふさわしい処遇の推進という運営方針に基づく処遇がなされており、刑務作業においても婦人服、エプロン等の縫製が中心になっております。また、三重刑務所は、昭和五十二年からA級収容施設となり、現在、未決、既決合わせて約七百名を収容しております。運営方針としては、職場並びに処遇環境の整備と美化、東海大地震等に対する警備体制の確立などを掲げ、刑務作業の木工部門では特色ある製品づくりに実績を上げております。
 また、非行を犯した精神薄弱者や情緒障害児を収容する宮川医療少年院は、教育の重点目標に個々の少年の問題性に対応した処遇の充実と生活指導の徹底等を掲げ、対人関係の改善に重点を置いた指導を実施しております。少年鑑別所につき
ましては、和歌山少年鑑別所及び津少年鑑別所とも精度の高い鑑別に努め、昭和五十九年の入所人員は、和歌山少年鑑別所で百五十四名、津少年鑑別所で二百四十六名であります。
 なお、女子受刑者の矯正の現場に臨んでつぶさにその実情を見て、少ない人数で多くの受刑者の改善と社会復帰のために精励努力する職員の姿に接して、我々は改めてその労苦に感銘した次第であります。
 次に、更生保護関係についてであります。
 最近の保護観察対象者には、犯罪、非行の罪質等にその複雑、多様化が進んでおり、これらの対象者に対しては実態の把握に努め、それにふさわしい措置と処遇が必要であります。特に和歌山保護観察所では覚せい剤乱用者が高い率を示しており、これらの処遇には保護観察官が直接これを担当するなどして、的確な実態把握による適切な処遇に努めております。また、津保護観察所におきましても、中学生等低年齢対象者や暴力組織関係者及び覚せい剤事犯者が増加する傾向にあり、これらの処遇困難者に対しては、その類型別処遇の充実を図り、保護観察官の直接関与を強めるとともに、ファミリーケースワークの導入や集団処遇を実施いたしております。
 以上の保護観察官の仕事に対する民間側の協力体制としては、保護司、更生保護会、更生保護婦人会、BBS会等の組織がありまして、保護対象者の更生援助、地域における非行・犯罪防止活動、更生保護会収容者に対する慰問、激励等に多大の御努力がなされております。
 第二に、裁判所及び法務省関係の庁舎施設及び宿舎の営繕状況であります。
 まず、庁舎施設でありますが、裁判所関係では全体として鉄筋ないしはコンクリートブロック建築で整備された状況にありますが、和歌山管内の海南、橋本、串本各簡易裁判所、津管内の亀山、鳥羽簡易裁判所は昭和二十年代に建築された木造建物であり、今後改善の検討が必要かと思われます。
 検察庁の庁舎施設につきましては、現在建築中の和歌山管内田辺支部と老朽、狭隘のため新営要求中の津管内松阪区検を除き、おおむね整備されております。
 次に、法務局の庁舎施設でありますが、逐年整備されつつあるとはいえ、なお経過年数から老朽の著しい庁舎や登記事件数等の増大に伴う事務量の増大と能率器具の導入により狭隘となっている庁舎があり、早急な解決が望まれています。特に和歌山では早急に新営で対処すべき序として、湯浅、橋本、串本、岩出の各出張所が挙げられており、津では、急速なベッドタウン化により事務量がふえ、事務室が狭隘となった桑名出張所の増築の必要性が挙げられておりました。
 次に、宿舎の営繕状況でありますが、おおむね整備改善が進められています。しかし、一部には大正時代に建てられた木造建物も残っており、また和歌山地方法務局の職員宿舎の場合は宿舎戸数が少ないため、宿舎割り当てを受けられない職員は高額な借家家賃を支払い、また遠距離通勤を余儀なくされている状態にあり、人事管理上にも大きな支障を来しているなど、未整備な状況が見られました。
 第三は、本委員会に対する要望事項及びその他参考になる事項についてでありますが、裁判所、検察庁、刑務所、少年鑑別所及び保護観察所等からは特段の要望事項はありませんでした。
 一方、和歌山地方法務局、津地方法務局からは、人員、施設、宿舎について要望がありました。それらをまとめますと、一、社会情勢の発展に伴って逐年事務量が増大しており、その適正、迅速な処理を図るため、また、職員の健康管理から、事務量に見合う職員の増員。二、事務室の狭隘化と駐車場の不足による利用者への不便等を解消するため、庁舎の改善及び新営の実現。三、職員の転勤に伴う住宅の確保難解消のため、宿舎の設置を図るしとを挙げることができます。
 以上、調査の概要を御報告いたしましたが、詳細は会議録末尾の委員派遣報告書に譲りたいと存じます。
 なお、調査に当たり、現地の各関係機関等から終始懇切な御協力を賜りましたこと、並びに最高裁判所及び法務省から種々の御便宜をお取り計らいくだされたことを厚く感謝いたします。
 以上であります。
#12
○委員長(二宮文造君) どうもありがとうございました。
 これをもって派遣委員の報告は終了いたしました。
 ただいまの報告に関し、法務省及び最高裁判所側から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木法務大臣。
#13
○国務大臣(鈴木省吾君) 委員各位には平素から法務行政の運営につき格別の御尽力をいただき、感謝申し上げます。
 このたびは和歌山県、三重県の法務省所管各所を視察され、ただいま小島委員からその結果についての御報告を拝聴いたしましたが、法務省所管各所の業務及び職員に対し温かい御理解をいただき、ありがとうございました。私も、ただいま御報告されました種々の問題について今後とも必要な措置を講じてまいりたいと考えておりますので、よろしく御指導、御支援をお願い申し上げます。
#14
○委員長(二宮文造君) 草場最高裁判所事務総長。
#15
○最高裁判所長官代理者(草場良八君) このたびは和歌山及び津の裁判所につきまして親しく御視察をいただきまして、まことにありがとうございました。
 ただいま小島委員から詳細な御報告及び種々の御指摘をいただいたところでございます。御指摘にございましたとおり、これらの裁判所におきましては、地域によりあるいは事件の種別によりまして増減変動がございます。裁判所職員一同といたしましては適正迅速な裁判の実現のために努力を重ねているところでございます。私ども司法行政を担当いたします者といたしましては、ただいま御指摘の点を十分念頭に置き、なお一層裁判所の運営面で充実を図ってまいりたいと、かように考えております。どうか今後ともよろしくお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#16
○委員長(二宮文造君) お諮りいたします。
 ただいまの小島君による口頭報告のほか、別途詳細な文書報告が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日の調査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十時三十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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