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1985/04/10 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第6号
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1985/04/10 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第6号

#1
第104回国会 法務委員会 第6号
昭和六十一年四月十日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十日
    辞任         補欠選任
     林  ゆう君     柳川 覺治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二宮 文造君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                大坪健一郎君
                土屋 義彦君
                秦野  章君
                柳川 覺治君
                橋本  敦君
                抜山 映子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  鈴木 省吾君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房審
       議官       稲葉 威雄君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       外務大臣官房審
       議官       斉藤 邦彦君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   猪瀬愼一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       長        片岡 定彦君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○扶養義務の準拠法に関する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、林ゆう君が委員を辞任され、その補欠として柳川覺治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二宮文造君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 扶養義務の準拠法に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(二宮文造君) 扶養義務の準拠法に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明につきましては、去る三月二十七日の委員会においてこれを聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○寺田熊雄君 まず、この法律の基礎になっております扶養義務の準拠法に関する条約、これがヘーグの国際私法会議で合意を見たようでありますが、ヘーグの国際私法会議の歴史、それから我が国のこれに対する関与度、国際私法統一を目指して採択されました条約の数、内容、我が国が既に批准したもの、随分多岐にわたりますけれども、これを御説明していただけますか。
#8
○政府委員(枇杷田泰助君) ヘーグの国際私法会議と申しますのは、国際私法に関するいわば統一的なものを取り決めようという目的でできたものでございますが、これは一八九三年、明治二十六年でございますが、オランダ政府の発議によりましてできたものでございます。当時は十三カ国がその会議に参加をして発足いたしたわけでございます。さきの大戦までの間には不定期的に会議が開かれておりましたけれども、戦後、昭和二十六年、一九五一年に開催されました第七回会期におきまして国際私法に関するヘーグ会議規程というものが採択されまして、そこで名実ともに確立した会議としてさらに再発足することになったわけでございます。その後いろいろな活動をずっと続けておりまして今日に至っておるわけでございますが、現在この国際私法会議の構成国は三十四カ国でございます。日本は、一九〇四年、明治三十七年からこの会議には参加をいたしておりまして、戦後の会議には原則として日本からも出席をするということにして積極的な活動をいたしております。
 この会議におきましては、戦前におきましても若干の採択された条約があるようでございますけれども、既にそれは若干古典的な存在になっておりまして、現在でも残っておるといいましょうか、取り上げるに足るものは約三十の条約がございます。その条約は、お手元に配付申し上げております参考資料にその一覧表を載せております。ページ数で申し上げますと五十二ベージでございます。この五十二ページに戦後に採択されたものを掲げておりまして、三十ございますが、この三十の条約はここに題名が掲げられておりますので、この題名によって大体内容は御推察いただけようかと思います。
 この中で既に日本が批准をいたしております条約は、一番の、民事訴訟手続に関する条約、七番の、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約、十番の、遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約、十一番の、外国公文書の認証を不要とする条約、十三番の、民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約、以上の五つを既に批准をいたしておるわけでございます。今回御審議をいただいております法律のもとになります条約と申しますのが二十三番に掲げられております扶養義務の準拠法に関する条約ということになるわけでございます。
 以上がただいま御質問のありましたことの概要のお答えとさせていただきたい次第でございます。
#9
○寺田熊雄君 大変細かいことをお聞きしますが、こういう国際私法会議を主管する官庁としては、もちろん外務省もこれは関与せざるを得ないのですが、外務省と法務省とどっちが重いというか、ウエートを占めていますか。
#10
○政府委員(枇杷田泰助君) これはまさに外務省と私どもとの方が共同して当たっておることでございまして、どちらにウエートがあるというのもちょっと言いがたいわけでございますが、中身の法律的な問題などにつきましては、私どもの方でも法制審議会の国際私法部会の御意見もその都度伺いながら関与してやっておるという意味で、若干法作的な内容の面につきましては私どもでございますが、外交的と申しましょうか、そういうふうな面につきましては外務省が主だということになろうかと思いますが、全くこの点につきましては本当に協力をしながら当たっておるというふうに申し上げた方が正確であろうかと思います。
#11
○寺田熊雄君 この法律を調べてみて、いろいろと思いがあちこちに及ぶわけですが、この条約の中で、例えば十五番の、民事及び商事に関する外国判決の承認及び執行に関する条約であるとか、十六番の、追加議定書であるとか、そのほかの条約でこういう批准済みあるいは今批准しようとしている条約と深い関連を持つ条約があるように思うんです。そういうものは、批准する御意思は全くないわけですか、あるいはそれとも内容が批准するに値しないというのか、現行法で間に合うというのか、その辺はどうなんでしょうか。
#12
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもの感覚といたしましては、批准するに値しないということは考えておらないわけでございます。ただ、これらの条約につきましては国内法とかなり整合的に考えた始末をしなきゃならぬという問題があります。国内法を制定をしていかなきゃならないという問題があるわけでございますけれども、これがなかなか難しい問題がございまして、民訴関係の担当の方でいろいろ検討する要素が多いということで、いわば作業がなかなかはかどらないという面がございます。
 それからもう一つは、我が国の民訴の規定から申しますと、ただいまお挙げになりましたような条約の関係は、実際上はある程度賄えるという要素があります。厳密な意味では、先ほど申し上げたように、いろいろ調整しなきゃならぬ面がございますけれども、大まかには現在のところでもそう困難はないというふうなことはございますので、そういうようなことから作業がおくれておるわけでございますが、最初に申し上げましたように、批准するに値しないというふうなことは考えてはおりません。
#13
○寺田熊雄君 たしか五十九年の五月十七日のこの法務委員会におきまして民事局長に法例について改正を求めて、住法務大臣も、この「法例の問題はそれこそ本格的に取り組んでいかなければならぬ、こういうように考えておりますので、高い立場で引き続き検討をしてまいりたいと思っております。」というように、それから民事局長は、「ここで国籍法が解決いたしますと、次には法例の方に移って、ただいまおっしゃったような問題点を十分に研究しながら改正案をまとめていくようにいたしたいと思っております。」と、こういう答弁をなさいましたね。その後この法例の改正作業はどういう進捗状況でしょうか。
#14
○政府委員(枇杷田泰助君) 法制審議会の国際私法部会が中心になって現在検討を進めておるわけでございますが、法例の中で財産法関係の部門については問題が現在少ないというふうに思われますので、身分法関係、法例の第十三条以下でございますか、この部分につきまして全面的な見直し作業をいたしております。そして、目標といたしますと、二年後ぐらいの国会にはその全面改正の法律案が提出できればいいというつもりで作業を進めておるところでございます。
 かなり検討が進んでおる段階でございますが、もしそのようなことができました晩には、現在の法例はかなり古いスタイルでございますので、これをもちろん平仮名の条文にいたしまして、そして法例という題名もなかなか一般におわかりしていただけない表題でございますので、何か国際私法典というような形の表題にして一つにまとめられたらどうだろうかというような構想を持ちながら現在鋭意作業を進めております。
#15
○寺田熊雄君 非常に難しい問題を含んでおりますね。諸外国の身分法について十分なやはり調査ができませんとなかなか難しいでしょうが、あなた方のお見通しで、大体これは今後何年間ぐらいの作業でそれが成就するだろう、そういう見通しを持っておられますか。
#16
○政府委員(枇杷田泰助君) この作業は、ただいまおっしゃいましたようにいろんな問題がありますので、詳しく検討すればするほどいろいろな問題が出てくるので限りがないようなことでございます。しかし、ある程度のところで決断をしてまとめなきゃならぬ要素がございますので、そういうことを考慮に入れながら、あと二年ぐらいの間にまとめ上げられたらばいいというつもりで作業をやっておる次第でございます。
#17
○寺田熊雄君 この法案を審議するに当たりまして、私どもの疑問とするところは、一体この身分関係の渉外事件というのはどの程度我が国の裁判所に出てくるのだろうか、どんな稲類の事件があるのだろうか、一体それはどのぐらいあるのだろうか。そして、そういう裁判所にあらわれてくる事件の当事者はどういう国籍の人であるだろうか。また、それがどんな解決の方法がとられているのだろうか。そういうふうなことについての疑問を持つのであります。
 なかなか最高裁の方もお忙しいのでありますから、今私がお尋ねをしたすべての問題について完全なデータがお手元にあるというわけではないでしょうけれども、また法務省の方もやっぱり同じだろうと思いますけれども、できればそういう点を十年ぐらいさかのぼって御説明いただければと思うんです。現在お手元にあるだけで結構ですから説明していただけますか。
#18
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 渉外家事事件につきまして昭和五十九年に家庭裁判所に申し立てられました事件の総数は二千七百七十四件であり、そのうち審判事件は千三百十二件、調停事件は千四百六十二件となっておりまして、全体としまして、ここ十年間で約一・六倍程度の増加となっております。
 事件の種類別に比較的多いものを拾い上げてみますと、婚姻中の夫婦間の調停事件であるとか、また養子縁組審判事件などが挙げられるところでございます。また、増加傾向の著しいものとしましては、婚姻中の夫婦間の調停事件や子の養育費請求事件などの扶養関係に関する調停及び審判事件が挙げられます。
 ところで、渉外家事事件全体における当事者の国籍につきましては、統計がございませんのでその実態把握が正確にできないわけでございますが、御参考までに統計のとれます渉外婚姻関係事件で見てみますと、夫または妻いずれもその外国籍についての分布は、最も多いものが朝鮮でありまして、次いでアメリカ、中国の順序となっております。
 正確なことは申し上げられないわけですが、渉外家事事件全体でも大体似たような傾向があるのではなかろうかというふうに思われます。
 それから、渉外家事事件の処理結果につきましては統計がございませんので、その内容の把握ができておりません。
 それから、今回問題となっております扶養義務関係の事件でございますが、この種の事件は夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養義務に関する渉外家事事件としまして、婚姻費用の分担事件、それから子の養育費を中心とします子の監護に関する処分事件、それから離婚後の扶養を含んでおります財産分与事件、さらに、その他の親族の扶養事件がございまして、これらを一まとめにしまして扶養関係事件として若干御説明申し上げますと、これらの事件の昭和五十九年に家庭裁判所に申し立てられました総数は百四十件でございまして、最近十年間でこの種の事件は約二・四倍の増加を示しております。そして、これらの事件のうち最も多いのが子の養育費請求を中心とします子の監護に関する処分事件でございまして、昭和五十九年には扶養関係事件全体のうちの約六五%を占めております。
 それから、扶養関係事件についての当事者の国籍につきましては、やはり統計がございませんので正確なことは申し上げられませんが、今婚姻関係事件について申し上げましたのと同様な傾向が見られるのではなかろうかというふうに思います。
 さらに、この種渉外事件の処理結果につきましても統計がございませんので把握ができませんが、ちなみにこの種の事件は家事審判法の九条一項乙類事件に属しておりまして、審判または調停いずれの申し立てもできる事件でございます。そして、調停事件につきましては、調停が不成立となれば特段の手続を必要としないで、そのまま審判手続に移行しまして審判がなされることになっております。
 統計等に基づきまして把握ができますのは、大体以上のようなことでございます。
#19
○寺田熊雄君 もう一つ私どもが疑問とするところは、そのような調停でありますとか審判、時には判決もありましょうけれども、そういうようなものの履行状況はどうなんだろうか、完全に守られておるのだろうか。また、それを守らせるような裁判所の努力というものはどういう実を結んでおるのだろうかというようなことであります。その点はどうでしょうか。
#20
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 渉外扶養関係事件の調停、審判の履行状況につきましては、統計がございませんので、その実態が私どもも把握ができないでおります。
 ただ、御参考までに、婚姻費用分担事件や養育費請求を含みます扶養料請求事件全体について昭和五十九年に家庭裁判所になされました履行勧告の申し出件数、これは統計がございまして、その申し出者件数は七千百三十八件でございます。そして、そのうち全部履行されたものが約三〇%でございます。これは、その申し出に基づきまして家庭裁判所において履行関係の調査をし、不履行の場合には履行勧告をした結果履行されたのが約三〇%ございます。それから、一部履行されたものが約四〇%、全く履行されなかったものが約三〇%というような状況でございます。
 それから、これは家庭裁判所における履行勧告という手続に基づいた結果でございますけれども、さらに履行がなされていないで、強制執行の申請をした件数は、昭和五十九年には六百三十九件ほどございまして、ここ十年間で見ますと、強制執行の申請も約一・六倍くらいにふえてきておる、こういう状況でございます。
#21
○寺田熊雄君 これは裁判所も法務省もなかなかお忙しいようですから、いろいろなデータを収集して統計をつくられるというのは難しいのでしょうけれども、さっきお尋ねをした条約の批准などとも関連をして、やっぱりこういうものに関してどういう現実が法の世界にあるのかという実態をつかまないと、条約の批准であるとか立法作業であるとかというようなことははかどりませんね。ですから、お忙しいとは思いますが、やはりそういう地道な調査もこれから続けていただいた方がいいと思うんですが、その点はどうでしょうか、最高裁も法務省も。
#22
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) できるだけ努力したいと思っております。
#23
○政府委員(枇杷田泰助君) ごもっともなお話でございまして、私どももなるべく社会的な動きという実態をつかまえた上での立法あるいは条約の批准ということを考えていかなければならないと思っておりますが、なかなかその渉外関係の事件というのは今まで余り統計の上にあらわれてきておらないということがございまして、御満足いただけるような資料がないのを大変申しわけなく思っております。
 ただ、この条約を批准し、また国内法を制定した方がいいというふうに考えましたのは、既にいろんな案件が裁判所にも出ておるということよりも、最近、国際結婚も非常に多くなってくる、そしてまた外国人が日本にも大勢居住するようになってくるというふうなことから、国際私法の中の身分関係についていろんな問題が提起される可能性をたんたんと帯びてきた、これからまたさらにふえていくであろうということが予想されますので、なるべくそういうふうな問題についてはハーグ条約もできたことでございますので、早目に手当てをした方がいいだろうというふうな観点からしておるわけで、現在差し迫った状況があるからということで今度の批准をするとか国内法をつくるとかいうふうなことではございませんで、そういう意味でまた実態的な資料が乏しいということにもなろうかと思いますので、その点御了承いただければ幸いでございます。
#24
○寺田熊雄君 これは私ども在野法曹の者にも共通の現象なんですが、判決に勝つということには異常な執念を燃やして得意になっているけれども、その判決が現実に守られているかどうか、執行されているかどうかというようなことには全く無関心な弁護士というのがおるんです。当事者としては全く不本意な結果になるのです。しかし、執行なんというのは何か弁護士の品位を害する卑しむべき仕事であるというようなことを考えておる弁護士も現実にはあるんですね。ですから、皆さんもいい判決をなさる、いい調停をなさる、あるいはいい審判を得るということも大事だけれども、それが現実に実行されているかどうか、大衆の生活を守るゆえんのその目的を果たしているかどうかということも、やっぱり大切なことだというふうにお考えいただいた方がいいと思うんですね。
 それから、これは今ちょっと気がついたことだけれども、そういう裁判所の判決というようなもの、これを全く無視して従わないという民事上の関係について、それは裁判所を侮辱するものだということで、それに刑事的な制裁を加えるような法制が世界のどこかにあるでしょうか。もし御存じだったら、ちょっとおっしゃっていただきたいと思いますが、それはどうでしょうか。
#25
○政府委員(稲葉威雄君) アメリカにはそういう裁判所侮辱的な考え方はございますし、あるいはドイツでも、これは刑事罰則ということではございませんけれども、義務を履行しない場合には拘束をして強制するという制度があるように承知しております。
#26
○寺田熊雄君 これは今そういうことを承りますと、余り判決などが守られていない、審判も不履行のものが多いということになりますと、そういう方面から履行を強制するということが得策かどうかというような点もひとつ将来の検討事項として考えていただいた方がいいようにも思うんですが、これはどうでしょうか、法務省の民事局長。
#27
○政府委員(枇杷田泰助君) それも一つの考え方であろうとは思いますが、ただ日本の国民の考え方といたしまして、私的な紛争の関係についてそこまで強制をすべきものだというふうな、そういう機運と申しますか、そういう考え方が歴史的にもないということがございますので、一つの研究課題ではあろうかと思いますけれども、今の国民の意識の中でそこまで持ち込むことはそう即断できないような要素があるような考え方でおります。
#28
○寺田熊雄君 最高裁はどうですか。家庭局長は。
#29
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 私どもの所管しております家庭裁判所関係で、比較的小額の継続的給付の性質を持っておりますこういった扶養関係の給付につきましては強制執行になかなか乗りづらい面もございますので、寺田委員も御承知のように、履行確保制度というものが昭和三十年代につくられまして、それに基づいて履行勧告等によってそれなりの成果は上げてきているように認識しております。ただ、これも任意的な要素がございますので、その運用には限界がございます。したがいまして、この点についてさらに効果的な方法ということについては私どもも関心を持って研究をしていきたい、こう思っておりますが、ただいま法務省の方からも御答弁ございましたように、いろいろ国民の意識との問題とか難しい問題もあろうかと存じます。
#30
○寺田熊雄君 民事責任と刑事責任を混同すべきでないという基本的な思想というものは確かにありますね。否定しがたいものがある。しかし、民事的な法が全く守られない。裁判が非常に多額の費用や日時を消費して、そして得られたものは全く機能しない。それが非常に多くなってきておるということになりますと、やっぱり司法の分野におられる方々は何とかしなきゃいかぬのじゃないかということを考えてしかるべきだと思うんですね。何にも手がありませんというのは、どうもちょっとどうかと思うので、これは大臣どうでしょうか。これはその方法がどういうものであれ、判決であるとかそれから審判であるとか、そういうものが余り守られない、いわゆる裁判が現実に機能しない、そういうことについては何らかの手を打たなきゃいかぬのじゃないかと思うのですが、大臣の御所感はどうでしょう。
#31
○政府委員(枇杷田泰助君) 大臣がお答えする前にちょっと私どもの考え方を申し上げておきたいと思います。
 おっしゃるような問題は私どもも十分に認識をいたしております。したがいまして、余り費用がかからない、時間がかからないような形で債務名義を得るというふうな方法をどうしたらいいかという問題と、それから履行確保と申しましょうか、債務名義をもらってもいざ強制執行しようと思っても財産がないとかというふうなことでは困るというようなこともございます。そういう面でいろいろな角度から検討いたさなければならないことでございますけれども、現在私どもが考えておりますものは、まず実際上の執行を確保するための保全処分の関係についてもう少し現在よりも弾力的に速やかに効を得るような方法を考えていくことが履行確保につながるのじゃないかというふうなこと、それからまた、御承知のとおり、保全処分という形で紛争が早期に解決をするということも実際上あるわけでございます。そういう面から非常に簡易に迅速にやれるような保全処分制度というものを考えてみようということで、現在法制審議会の民事訴訟法部会で保全処分に対する全面的な見直しをしております。
 そういうようなことで、どれか一つでの特効薬ということはないと思いますけれども、あらゆる分野からただいま御指摘ありましたような考え方で改善を加えていくというふうな努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
#32
○寺田熊雄君 大臣はいかがでしょうか。
#33
○国務大臣(鈴木省吾君) ただいま先生の御意見、まことにやはり傾聴すべきものがあると思いますが、いま政府委員からも御答弁申し上げましたように、いろいろまた問題点も、きちっとやるのには問題があるのじゃないかというふうな意見もあって、それもまた一理だというふうに考えております。幸い法制審議会等でいろいろ御議論をいただいて結論を出していただきたい、こういうふうに考えてお願いをいたしておるところでございます。
#34
○寺田熊雄君 今家庭局長の御答弁によりますと、勧告制度等いろいろなことを努力をなさって、ともかく四〇%が一部履行で、三〇%が完全に履行を見た、そういうことのようでありますが、これは外国人が扶養義務者の場合に強制執行が現実にどんなふうに行われておるのでしょうか。例えばアメリカのGIが沖縄の婦人に子供を生ました、そういうようなものが仮に判決があったとしても、まずそのアメリカ人に対する判決というようなものがあった実例があるのかどうか、私も調べたわけじゃありませんが、あるいは韓国の人間、そういう者に対する債務名義が外国で執行された事例がもしあれば、どんなふうに執行されているのか、これを御説明いただけますか。
#35
○政府委員(枇杷田泰助君) 私どもの方は、そのような事件がなくはないと思いますけれども、統計があるわけでもございませんので、具体的にどうかということは存じませんが、時々法律関係の報道といたしまして、日本の判決が向こうで執行できなかったとかできたとかというふうなことを聞く程度でございますので、そういう日本の判決が外国で執行できなかったということでのクレームと申しましょうか、そういうものは私ども余り耳にいたしておりません。一、二、新聞報道等ありますけれども、余り耳にはいたしておりませんので、ケースも少ないだろうと思いますが、それほど問題になっていることはないのじゃないかという観測でございますが、本当のところはよくわかりません。
#36
○寺田熊雄君 家裁で例えば調停になった問題で、扶養義務者がアメリカ人のような場合ですね、それが実現されているかどうか、執行されたかどうかというふうなことで何かあなたの方にデータがありますか。
#37
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 残念ながらその点についての資料がございません。
#38
○寺田熊雄君 逆に外国判決が我が国で執行されている、そういう実例のデータお持ちでしょうか。
#39
○政府委員(枇杷田泰助君) 私ども統計的にそのような資料は持っておりませんが、ただ判例集などで外国判決の承認をするとかしないとかというようなケースが出てまいりますので、そういう面ではある程度、外国の判決が日本の裁判所に持ち込まれて承認を受けあるいは執行するというふうなケースが相当あるのだなという感触は持っておりますけれども、統計数字としては持っておりません。
#40
○寺田熊雄君 最高裁の民事局長はきょうお出になっていないから、これはちょっと家庭局長に聞くのは何だが、あなたの方でやっぱり何らかのそういうデータが最高裁にありますか。
#41
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) それは民事局の所管かと思いますが、その点について統計はないというふうに聞いております。
#42
○寺田熊雄君 先ほど民事局長が言われましたこの資料の五十五ページの二十二番に、扶養義務に関する判決の承認及び執行に関する条約というのがありますね。これは我が国としてはどういうふうに対応しているか、それからこの条約の内容等についてちょっと説明していただけますか。
#43
○政府委員(枇杷田泰助君) この条約の内容はまさに表題のとおりでございまして、扶養義務に関する判決の承認及び執行が円滑にいくようにという趣旨でできているものでございますけれども、ただ中身といたしますと、判決だけですと余り問題ないわけでございますけれども、そのほか、判決に類似するような和解的なものとかあるいは行政処分的のようなものも外国ではありますので、そういうようなものについて我が国がどう受けとめるかという問題があるものでございますから、実はこういうものもあわせて批准をし、国内法的にも受けとめるということが必要かと思いますけれども、ちょっとそういう訴訟法的な問題があるものでございますので、検討しなきゃならぬということで、同時にということを考えておらないわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、ひとつこの関係については十分な検討をした上で処理をしなきゃならぬと思います。
 ただ、実際問題といたしますと、我が国の民訴の考え方といたしますと、わりかた広く外国判決の承認などについても考えておる立場をとっておりますので、少なくとも外国の裁判所の判決については、この条約を批准しなかったからといって不都合が生ずることはないだろうという感じを持っております。
#44
○寺田熊雄君 それから、この法案の条文の中にもちょっと出てくる問題でありますが、例えば本法第三条二項とか条約の十八条とか出てまいりますけれども、この条約なり法律というのはなかなかわかりにくいところがありますので、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約(五十二年条約第八号)、これと本法との関係をわかりやすく説明してくれますか。
#45
○政府委員(枇杷田泰助君) 子に対する扶養義務の関係、私ども簡単に子条約と呼んでおりますけれども、その子条約というのはまさに未成年の子に対する扶養義務の準拠法を決めたものでございます。今度の条約は、子であると成人であるとを問わず、全般に扶養義務の準拠法を決めたものでございますので、いわば子条約はこの条約によって包含されてしまったというふうに御理解いただければと思うんです。内容的にも常居所地法を中心として構成されておりますので同じでございますが、子条約に関しましてはもう少し幅広く保護しようというところで若干の食い違いがある。実際問題からいたしますと、子条約の方は傍系親族の関係については触れておりませんので、したがいまして直系姻族だけがこの条約とそれから子条約というところで違ってくることで、早く申しますと、子条約の場合には直系姻族間についてこの本法で言う三条のような異議の申し立てというものは認めないというところに違いがあるわけでございます。ただ、そういうことでございますので、三条の関係で今度全部を律するということになりますと、子条約を締結している相互の国の間では、その場合に直系姻族の場合の扶養義務に関してこの異議の申し立てを認めるというふうなことになりますと、相手国に対する条約違反のような関係に立つということになる。そういうような関係に立つ場合には、やはりその条約優先でございますので、したがって三条の一項は適用しないということを明記しておく必要があるだろうということから三条の二項の規定を設けておる、いわばそういう関係になるわけでございます。
#46
○寺田熊雄君 三条の二項、これがちょっとなかなか私読んで頭にピンと来なかったんだが、傍系親族であるとか姻族間の扶養義務に急に「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約が適用される場合には、適用しない。」、一体傍系親族や姻族間の扶養義務について、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約が適用される場合があるのだろうかといろいろ考えたのだけれども、これは結局こういうことですか、婚姻外で生まれた子供、それの母親に対する男性の扶養義務を認めようと、こういうことなんでしょうか。つまり、婚姻外で性的な関係を持って子ができた、そして性的な関係を持った女性に対して、それはその子供の母親だから、おやじたる者はその子供の母親も扶養しなきゃいかぬ。こういう思想ですか、そこのところがわからぬのだ。
#47
○政府委員(枇杷田泰助君) 子条約の方は、要するに未成年の子供、未成年と申しましても、条約上は二十一歳未満ということでございますけれども、その子供については全般的にこの条約でカバーするということになっておるわけでございます。
 ただ、その場合に傍系親族については外すということになっておりますので、残りますのは血族関係と、それから直系姻族だけが残るわけでございます。その直系姻族と申しますのがただいまもおっしゃいましたようなことでございますが、直系姻族でございますので継親子関係がここで問題として残るということになるわけでございます。まま母さんと子供、あるいは連れ子とその父親とかというふうな父子関係というふうなことが問題として残るわけでございます。そういうふうな関係についての扶養の義務が問題になるという場合には、これはこの本条約におきましては、共通本国法で例えば扶養義務がない場合にはないということにしようということになっておるわけでございますけれども、子条約の方は、そのものについても異議を申し立てられるというふうな制度はございません。したがいまして、子条約を締結している国、しかもこの扶養条約の現在御審議いただいている関係の条約に入っていない国、そういう国との関係では、なおかつ三条の一項で言う異議権を認めることになりますとずれが来るということからこの三条二項を設けておるわけでございまして、問題として残るのは要するに継親子関係でございます。子条約そのものは継親子とか何とかということを問わず、要するに二十一歳未満の子供に対する扶養の関係一般についての準拠法を決めるという条約でございます。
#48
○寺田熊雄君 どうもよくわからないので、これはまたもう一度よく考えてみて、また別の委員会でもう一回お尋ねをすることにします。
 これは、今の子条約と本法との関係をお尋ねをしたわけだけれども、本条約と子条約との関係、それから子条約の三条というのも英文で読んだ方がわかりやすいような感じがするのだけれども、なかなかわかりにくい表現なので、これをちょっと外務省の方で説明してもらえますか。
#49
○政府委員(斉藤邦彦君) 子条約の第三条は、子の常居所地の法律によればその子の扶養を受ける権利が認められない場合には、事件の係属する当局の属する国の抵触規則、すなわち国際私法、我が国の場合で申せば法例でございますが、このような規則が指定する法律、これを準拠法とするということを定めているわけでございます。
 なぜこういう規定を置いているかと申しますと、法廷地の国際私法の規則によって準拠法とされます法律によればその扶養を受ける権利があるはずなのにこの条約が、この条約というのは子に関する条約でございますが、それが指定する子供の常居所地の法律、これが扶養の権利を否定している場合、これは子供に関する条約を締結した結果といたしまして子供がかえって不利な立場に立つことになるわけでございます。したがいまして、子の扶養義務に関する準拠法条約の一つの目的は子供の保護ということにございます。その条約の目的に反する結果になりますので、ただいまのような場合には例外といたしまして法廷地の国際私法、我が国で言えば我が国の法例、これが指定する準拠法を適用することにする、そういう趣旨で定められている次第でございます。
#50
○寺田熊雄君 「事件の係属する当局の属する抵触規則」というのは、我が国で言えば法例になるわけですね。こういうややこしい表現をとらないとそうならないんですか。
 それから、本条約と子条約との関係、これはわかりやすく言いますとどういうことになりましょうか。
#51
○政府委員(斉藤邦彦君) その点、先ほど民事局長から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、子供の条約、これは子供に対する扶養義務の準拠法だけを定めたのに対しまして、今回のこの条約は親族関係から生じます扶養義務全般についての準拠法を定めているわけでございます。その間の調整というのは、新しい方の条約、扶養義務の準拠法に関する条約の第十八条に規定がございまして、「この条約は、締約国の間の関係において、」今既にできております「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約に代わるものとする。」という規定がございます。したがいまして、この扶養義務の準拠法に関する条約を締結した国同士の間におきましては、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約にかわりまして、この新しい方の条約が適用される、そういう関係になっております。
#52
○寺田熊雄君 その第二項を見ますと「もっとも」なんといって、これはなかなかおもしろい表現で、普通日本の法律では「ただし」とあるのだろうが、これは第二項だから、ただし書きではないだろう。「もっとも、第十三条に定める留保により、婚姻をしたことのない二十一歳未満の者に対する扶養義務につきこの条約の適用を排除した国については、前項の規定は、適用しない。」これをわかりやすく説明してくださいますか。
#53
○政府委員(斉藤邦彦君) この新しい方の条約でございますが、扶養義務の準拠法に関する条約第十三条によりまして留保を行いまして、子条約の適用対象である「婚姻をしたことのない二十一歳未満の者に対する扶養義務」につきこの条約の適用を排除した場合、そのような留保を行った国につきましては、そもそも子条約の適用対象であります事項については本件条約の適用を受けないことになります。したがいまして、子条約との競合関係というものは生じないことになりますので、この一項で定めておりますような両条約間の調整を図る必要はないということになるわけでございますので、そのような場合にはこの一項は適用されないということをこの二項で定めてあるわけでございます。
#54
○寺田熊雄君 それから、子条約第二条に「前条の規定にかかわらず、各締約国は、次のすべての条件が満たされる場合に自国の法律を適用することを宣言することができる。」というのがありますね。この「宣言」というのはどういう法的な形をとりますか。
#55
○政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御指摘の規定におきましては、この宣言がどういう形式をとるかということは定められておりません。したがいまして、どのような形式でこの宣言をやるかという点につきましては各締約国の御判断にゆだねられているというふうに考えられます。しかしながら、この規定の趣旨からいたしまして、いずれにしてもその宣言というのは裁判所を拘束し得るようなものでなければならないというふうに考えられます。
#56
○寺田熊雄君 我が国で裁判所を拘束するようなものといいますと、法律ないし法律の委任を受けた政令、省令等になるのでしょうね。これは、民事局長どうですかな。
#57
○政府委員(枇杷田泰助君) もしこの宣言をしようとするならば、我が国としてはまさにそのような法律を制定することが必要であろうと思います。したがいまして、この子条約を批准をいたしました際に国内法を制定すべきかどうかということも検討したわけでございますが、その際の一つの要素としては二条の宣言をする必要があるだろうかということも検討の対象になったわけであります。その必要は我が国ではないだろうということも含めて、いわば宣言をしないままの状態に置くというようなことで国内法の制定をしなかった。それも国内法の制定をしなかった一つの理由になるわけです。
#58
○寺田熊雄君 それから、この条約の十九条ですね、これが非常にわかりにくいのでありますので、これをちょっと説明していただけますか。十九条の意味。
#59
○政府委員(斉藤邦彦君) ここに書いてあるとおりということでございますけれども、本件条約、新しい条約の締約国が、扶養義務の準拠法に関するほかの国際文書、通常の場合条約でございますけれども、それの当事国である場合には、その当事国の間においては、他の国際文書、この条約でない方の条約が優先するということを定めているわけでございます。
 ただし、子条約に関しましては先ほどの十八条の規定がございますので、子条約の場合は別でございますが、それ以外の扶養義務関係の条約がほかにあったとした場合には、この扶養義務の準拠法に関する条約ではなくて、別の条約の方が優先するということが定められているわけでございます。
#60
○寺田熊雄君 その条約の意味は今あなたの御説明でわかりましたけれども、こういうものが何か具体的に、例えばこういう場合がありますというような具体的な事例があったら、ちょっと説明をしていただけますか。
#61
○政府委員(斉藤邦彦君) この第十九条はスカンジナビア諸国の要求によって規定されたというふうに承知しておりますけれども、スカンジナビア諸国の間におきましては、婚姻・養子縁組及び後見に関する条約というのがあるそうでございます。スカンジナビア諸国といたしましては、この扶養義務に関する条約の当事国になる場合でも、既にこれら諸国が締結しております婚姻・養子縁組及び後見に関する条約、こちらを優先して適用したいという希望がございまして、その旨を一般論の形でこの第十九条に規定するということを要求して、それが受け入れられたというふうに了解しております。
#62
○寺田熊雄君 その婚姻及び養子縁組に関する条約というのは、先ほど法務省民事局長から御説明のあった、この資料の五十二ページから五十六ページの中にありますか。ヘーグの国際私法会議諸条約の中の分ですか、それとも別個の分ですか。
#63
○政府委員(斉藤邦彦君) これはヘーグ国際私法会議で採択された条約ではございませんで、スカンジナビア諸国の間のみで交渉して作成したというふうに承知しております。
#64
○寺田熊雄君 それから、本条約の批准国、特に私どもは一番渉外事件で登場してくる国であるアメリカとか韓国とかいうようなものが果たして本条約を批准しておるのだろうかどうかという疑問を持ったんですが、この点はどうでしたかな。
#65
○政府委員(斉藤邦彦君) 扶養義務の準拠法に関する条約の締約国は、現在のところ、フランス、イタリー、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、スイス及びトルコの七カ国でございまして、ただいま御指摘の米国及び韓国はいまだこの条約の締約国となっておりません。
#66
○寺田熊雄君 アメリカが割合にこういう国際的な感覚を持っておるのに批准をしてないというのは、各ステートでみんな私法関係が違いますね、ややこしいそういう関係があるので批准を見送っておる、あるいは調印を見送っておるということなんでしょうか。韓国は余り国際的な舞台に登場をしないから、これは大体わかるけれども、アメリカについてはそういう理解でいいのでしょうか。
#67
○政府委員(斉藤邦彦君) 御指摘のとおりと承知しております。
#68
○寺田熊雄君 以上で大体総論の質問終わりまして、今度は本法の解釈でいろいろお尋ねをしたいんですが、第二条の「常居所地」というこれは英文で拝見はしておるのだけれども、我が国の法律で言うと、どういうことになるんでしょうね。これは今まで住所とか居所とかいうものが民法の規定に出てくるけれども、それとの関連はどうなんでしょう。
#69
○政府委員(枇杷田泰助君) 日本の法律では民法に規定ございますけれども、住所とか居所とかというふうな言葉といいますか、概念が法律概念としてあるわけでございます。ただ、そういうふうな概念でなくて、今度は国際私法的な意味での常居所地という概念を取り込んできたわけです。これは、まずどうしてそういうことかと申しますと、実質的には住所とそんなに変わらないわけでございますけれども、住所という表現を使いますと、国際私法の分野から申しますと、要するに各国の国内法で言う住所ということになっては、これは客観性がなくなるわけです。したがいまして、国際的な共通の概念と申しましょうか、そういうものとして何か住所みたいなものをとらえる必要があるということで、各国内法とは縁が切れた意味での客観的な概念としての常居所地という概念をつくってきているわけです。
 この内容は、日本で言う住所とそんなに変わらないわけでございますが、日本の場合には、住所については御承知のとおり客観説、主観説ございまして、意思が問題になるというふうな見解もあるわけでございますが、そういうふうな意思的なものは一応除きまして、客観的に継続して生活をそこで営んでおるという状況に着目したそういう土地といいますか、そういうものを常居所地という概念でつかまえておこうということでございます。
#70
○寺田熊雄君 第三条の第二項は、またお尋ねすることにして、今度は第四条に関連をしまして「離婚をした当事者間の扶養義務」、これは例えば我が国の財産分与あるいは慰謝料の場合もちょっとそれに当てはまる場合があるかもしれませんが、それで金銭の給付を命ずると、それが事実上の扶養に役立つということは考えられるのだけれども、離婚してしまって無縁の同士の間の扶養義務、それを法律で認めている国々があるのだろうかという疑問があるんですが、これはどういうふうに理解したらいいのでしょう。
#71
○政府委員(枇杷田泰助君) 離婚をした後、なおその相互に扶養義務を負うというふうな法制をとっている国がはっきりした形であるかどうかよくわかりませんけれども、アメリカの州にはそういうような法制をとっているところがあるように聞いております。
 もう一つの問題は、ただいまちょっとお触れになりましたけれども、離婚した当事者間の扶養義務というものの中に財産分与みたいなものが入るかどうかという、いわば性質決定の問題があるわけです。
 我が国では財産分与の場合には、これは扶養的な要素もあるというふうに観念されておりますけれども、扶養義務直接の問題ではないというふうなとらえ方をいたしておりますが、国によってはそれを扶養義務の問題だとして、我が国で言う財産分与的なことを扶養義務の問題としてとらえているところもないわけではないと思います。あり得る話でございます。ですから、そういうふうな一切の問題については、これは離婚の関係を律した法律の国の法律でやるのが適当であろうということでくくっておりますので、結局は問題がここに集まってまいりますので、その問題解消の意味にもなるという規定というふうに解されるわけでございます。
#72
○寺田熊雄君 第二項の方はどういうふうに御説明になります。
#73
○政府委員(枇杷田泰助君) これも、我が国ではこういう観念はないわけでございますけれども、要するにある程度長い間共回生活をしてきた者が別れた、それは取り消しの場合も無効の場合もありましょうが、そういう際に何か扶養関係の実質的なものを決めている法制がないとも限らない。それから、法律上の別居という制度も日本にはございませんが、まだ法律上の婚姻関係は継続しているのだけれども、いわば実質上の離婚と申しましょうか、そういうふうな別居制度というものを設けているところもございます。そういう場合の扶養義務というものももちろんあるわけでございます。
 そういう場合のことを準拠法については同じように、別居を律した法律、それから婚姻が無効とか取り消したとか、そういう効力を発生させた法律の国の法律でその扶養関係も律するのが適当であろうということで置かれたわけでございまして、我が国の法制自体から申しますとこのような観念は出てまいりませんけれども、よその国ではそういう観念でやっている国もないわけではないので、このような規定を置いているわけでございます。
#74
○寺田熊雄君 我が国ではない、それをあえてこの条文の中に盛ったというのは、それが国際私法たるゆえんなんだろうかという、そんな考えもする。そうすると、これが現実に適用になるのは我が国の国民と外国人との間の扶養関係にのみ適用があると、こういうことになるのでしょうか。我が国では全然こういうものはないですね。それをあえて条文に盛った、それが国際私法たるゆえんであると、具体的にこの条文の適用があるのはどういう場合ですか。
#75
○政府委員(稲葉威雄君) 例えば法律上の別居でございますと、こういう制度はイタリーにあるわけでございます。
 イタリー国人同士で本国で別居している、しかし両方とも日本へ来ていて居住しているというような場合に、本国法によりますとその間に扶養が問題になるということは考えられるわけでございまして、それが日本になりますと、両方とも外国人同士であっても日本の裁判所で裁判を受けられるわけでございまして、そういう場合もございますし、それから片一方、例えば夫がイタリー人で妻が日本人という状況の場合にもそういう問題は起こるわけでございます。
#76
○寺田熊雄君 そうすると、その扶養義務を認める実体法というのは、もう一に外国の法律になるわけですね。
#77
○政府委員(稲葉威雄君) そのとおりでございます。
#78
○寺田熊雄君 第七条の「当事者が、地域的に、若しくは人的に法律を異にする国に常居所を有し、又はその国の国籍を有する場合には、第二条第一項及び第三条第一項の規定の適用については、その国の規則に従い指定される法律を、そのような規則がないときは当事者に最も密接な関係がある法律を、当事者の常居所地法又は本国法とする。」で言うこの「規則」というのはどういう法的な存在なんだろうか、これをちょっと説明していただけますか。
#79
○政府委員(枇杷田泰助君) これは実質的なルールという意味でこういう言葉を使っておるわけでございますが、その国においては恐らく法律で定められていることだろうと思いますが、ここでの表現といたしましては、実質をつかまえましてルールという意味で使っている。条約の方でもルールという言葉を使っておりまして、そういうふうな使い方は遺言の方式に関する準拠法の国内法におきましても既に使っておることでございまして、いわばそういうルールがあればそのルールでやるというような感じで御理解いただければと思います。
#80
○寺田熊雄君 これは外務省にお尋ねするけれども、こういう場合の英語はやっぱりルールですか、それともレギュレーションですか。どっちですか。
#81
○政府委員(斉藤邦彦君) ルールもレギュレーションも英語の意味としてはさほど違いがないと存じますけれども、この場合、この条約におきましてはルールという言葉が使われております。
#82
○寺田熊雄君 それから、第八条に言う「公の秩序に反するとき」、これは私もいろいろ考えて、例えば私どもが戦争中司法省から派遣されたインドネシア、あれはフイフイ教の国ですから、フイフイ教の法律によると四人までは奥さんが持てる。ですから、大統領のスカルノさんでもデビ夫人という日本人の夫人を持ちましたね。そういうようなものは我が国の法律では、これは公序良俗に反して許されない。そういうことを言うのだろうかなといろいろ考えたのですが、これをちょっと説明していただけますか、どういう具体的な場合か。
#83
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまのようなケースもあろうかと思いますが、実際上問題になっておりますのは、例えば法例で問題になりますのは離婚を認めない国がございます。フィリピンだとかアイルランドとか、カソリック系のところでございます。そういうところの人と日本の人とが結婚をして離婚をしようというときに、それは離婚を認めないというのはおかしいじゃないかということで、いわばそういう特殊な国はあるけれども、国際的には一般的にそういうものは認めてしかるべきだというふうな大勢になっているような場合には、それは公の秩序に反する規定だということで、日本でもそういう場合には日本の裁判所で離婚を認めるというふうな扱いにしておるケースが実際上の適用としてはあるわけでございます。
#84
○寺田熊雄君 これは、外務省の方では何かそのほかに具体的な事例お持ちですか、この適用について。
#85
○政府委員(斉藤邦彦君) 今、私特に承知しておりません。
#86
○寺田熊雄君 これで終わります。
#87
○委員長(二宮文造君) 本案に対する質疑は、午前はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時二十一分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#88
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を再会いたします。
 休憩前に引き続き、扶養義務の準拠法に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#89
○飯田忠雄君 このたびの扶養義務の準拠法は国際私法を焼き直したものだというふうに言われておりますが、国際私法というのは、結局は私法の国際的統一をするための準拠法でありまして、その性質はむしろ公法ではないか、私法と言うけれども、結局、裁判所を拘束する民事訴訟法の特則ではないかというふうに思われる節があるのでございますが、このことについて御見解を承りたいのです。
 といいますのは、民事訴訟法の特則であれば、日本の民事訴訟法というものを改正しなくとも措置ができるけれども、もし訴訟法とは関係がないものだということになると、また別の方途を考えなければならぬということも生ずるかもしれませんので、国際私法なるもの、殊に扶養義務の準拠法に関する法律なるものの法理上の性質をお尋ねをするわけでございます。
#90
○政府委員(枇杷田泰助君) 国際私法と申しますのは、改めて申し上げるまでもございませんけれども、渉外的な事件につきましてどこの国の法律を適用するかということを決める法律を国際私法と呼んでいるわけでございます。
 我が国ではそのような内容を持っておりますのが法例ということになるわけでございまして、したがいましてその内容といたしましては、やはりどういう私法を適用するかということを決めるという性格のものでございますから、私法的な要素も実質的には持っておるわけでございます。しかしながら、どのような法律の適用関係にするかということの一般を定めているものでございます。そういう意味で、法例という表題の法律の中に規定されておるのは、まさにそういうふうなことを意味しておるものであろうと思います。そういう面で申しますと、いわば憲法に非常に近い形での、法律一般の適用関係を決めるということでございますので、公法といえば公法的な性格もあるということが言えようかと思います。
#91
○飯田忠雄君 この問題について議論を進める気持ちはございませんので、次に移ります。
 外国法を我が国の裁判所で判決の理由に引用する場合に、その扶養義務の準拠法によりまして、外国法が日本法と見なされることになるのか、あるいはそういうものではなくて、外国法も事実でおるということで、事実として判決理由に引用されるのか、その点の御見解はいかがでございますか。
#92
○政府委員(枇杷田泰助君) いわば国際私法を通じて、法規として日本の裁判所が外国法を適用するという関係でございます。そういう意味ではまさに法規でございます。
#93
○飯田忠雄君 それでは、次の問題に移りますが、外国で行いました扶養義務に関する判決の執行を日本で行う場合、その外国判決を強制執行の基礎とすることができるか、こういう問題がございますが、またその逆の場合、日本の裁判所の判決の執行を外国にいる義務者に対して執行できるか、こういう問題もございます。外国が締約国の場合にはどうなるのか、あるいは外国が締約国になっていない場合にはどうなるのか、この問題につきまして、それぞれどのように執行手続をとることになっておるのかという問題につきまして法律の根拠は十分完備されておるだろうかということが考えられますので、この点について御質問をいたします。
#94
○政府委員(枇杷田泰助君) まず最初の、外国裁判所の判決を我が国で執行する場合には、民事執行法の二十四条の規定によりまして、その手続で執行することが可能だということになります。
 それから、我が国の判決を外国で執行するという場合には、当該国の民事訴訟法あるいは民事執行法というような内容を持つ法律でどのように決められているかによるわけでございますが、多くの国におきましては我が国と同じような外国判決の執行の手続を持っている国が多うございますので、それによって執行が可能であろうかと思います。
 そのような関係は、今度の扶養義務の準拠条約が締約されている国であるかどうかということとは別平面の問題であろうというふうに理解をいたしております。先ほども申し上げましたように、この国内法によりまして、あるいは条約によりまして準拠法が決まりますと、その準拠法がいわば実体法になって判決等の判断のときの法令の適用の問題として考えられるものでございまして、その結果出てまいりましたところの判決、それの執行というのは準拠法の問題とは違いまして、外国の裁判をどのように執行するかということだけの問題として処理されることになろうかと思います。そしてまた、その処理の方法は先ほど申しましたような形になるわけでございます。
#95
○飯田忠雄君 それでは、現実にはそういう問題は、例えば外国におる義務者に対して日本の裁判所が行った判決、これを執行する場合の手続としましてはどういう方法を具体的にはとられるのでしょうか。
#96
○政府委員(枇杷田泰助君) これは先ほども申し上げましたけれども、民事執行法の二十四条に規定がございまして、外国判決についての執行判決を求める訴えというのを日本の裁判所に提起するわけでございます。そこで、日本の裁判所で執行判決をいたしますと、そこで執行力が出てくるということで、国内で執行が可能になるということになるわけでございます。
#97
○飯田忠雄君 ちょっと私の質問の仕方が悪かったかもしれませんが、外国で執行する場合のことをお尋ねしたわけですが、どういう手続をとりますか。
#98
○政府委員(枇杷田泰助君) 外国で執行する場合には当該外国でどのような手続を予定しているかということによって違ってまいりますけれども、先ほども申し上げましたように、大体日本の制度に近いものをとっているところが多いのじゃないかと思います。したがいまして、その国の裁判所に申し立てて、日本の裁判所でした判決に執行力を持たせるようなそういう訴えとか申し立てとかいうふうなことをして、そして執行力を付与してもらうということになろうかと思います。
#99
○飯田忠雄君 民事及び商事に関する外国判決の承認及び執行に関する条約というものとかあるいは民事訴訟手続に関する条約というものができておるようでございますが、これについては批准はなされていない。結局、こういうものについて批准をしないということは何らかの理由があってではなかろうか。つまり、外国の国内事情、我が国の国内事情等がありまして、こういう条約の内容そのものが承認しがたいものがあるからではないかというふうに想像されますが、私はこの内容を知りませんので、この民事及び商事に関する外国判決の承認及び執行に関する条約だとか、それから民事訴訟手続に関する条約、こういうものの大体の内容と、それがどういうわけで我が国では批准ができないのか、その背景となっている事実ですね、御質問いたします。
#100
○政府委員(稲葉威雄君) まず、民事及び商事に関する外国判決の承認執行条約でございますけれども、これは条約の締約国の裁判所がした民事または商事に関する裁判を、先ほど局長が申し上げましたように、ほかの国でどういう要件のもとに受け入れてそれを効力あるものとして承認するか、さらにそれに基づいて強制執行を許すかどうかというようなことを定めているわけでございます。そして、日本につきましては、民事執行法の二十四条、さらにそのもとになります民事訴訟法の二百条という規定があるわけでございますけれども、そこで一般的に外国判決の承認、執行の要件というものを決めているわけでございます。
 それで、この条約を批准しますに当たりましては、当然そういう現在の日本法との整合性というものを考えなければいけないわけでございまして、そういう整合性の範囲に入っているかどうか、つまり批准して日本の今までのやり方というものに悪影響を及ぼさないかどうかということを考えなければいけないわけでございます。
 特に、この承認執行条約では管轄を定めております。つまり、この条約に従って管轄を持っている裁判所でないとその裁判の承認、執行は許されないということを定めているわけでございます。この国際的な裁判管轄というのは非常に難しい問題でございまして、ある紛争が起こった場合にどこの国の裁判所で処理することができるかということでございますが、これはいろいろの考え方があって、しかもそのケースが非常に多岐にわたるわけでございまして、それが果たして日本の国益と申しますか、あるいは私人間の利益も含めまして、そういうものに合致するかどうかということを少し検証してみないと、果たしてこの条約に加盟してもいいものかどうかという問題が起こるわけでございます。
 ただ、抽象的に申しますと、国際裁判管轄にしろあるいは承認、執行にいたしましても、国際的な統一が図られるということは望ましいことでございまして、その方向で努力はしたいと思っておりますし、私どももその方向で考えたいというふうに思っておりますけれども、いろいろの検討課題が多くございまして。まだそこまでは手が回っていない。もう少し、法制審議会で申しますと、国際私法部会とそれから民事訴訟法部会の二つの部会の手がすいたときにあわせて検討させていただきたいというふうに思っております。
#101
○飯田忠雄君 実は私こういう質問を申し上げましたのは、国際条約が批准にならない理由として我が国との法律の関係があるという御説明でありますが、そのとおりだと思いますが、そうであるなら、現状において一体外国との間で外国判決の承認とか執行に関して行動がとれるかどうかという問題を疑問に思わざるを得ないわけです。それで御質問を申し上げたんですが、そういうところはどうなんでございますか。条約を認めるだけの体制はできていない、しかし条約はなくったって条約に書いてあるぐらいのことは事実行為としてできるんだと、こういう御意見でございますか。
#102
○政府委員(稲葉威雄君) 条約ができるということは、その条約の内容に従って各国が同じような法制をつくるということを意味するわけでございますけれども、それぞれこういう渉外事件というのはどの国でも持っているわけでございまして、それを解決するための一応の基準というものは持っているわけでございます。そして、例えば日本の外国判決の承認、執行の関係で申しますと、相互の保証がない国の判決は承認、執行しないという扱い、法律上の規定になっております。
 そこの相互の保証と申しますのは、日本の判決が同じような条件で相手の国に行ったら承認、執行がされるという、そういう保証がない限りはその国の裁判の承認、執行はしない、こういう趣旨でございまして、それはある意味では若干国際的な協力という面からは制限することになるわけでございますけれども、一方では、そういう規定があるから承認、執行してもらえるということにもなるわけでございまして、そういうこともこれあり、完全な形で国際的な協調関係に入るような形にはなっていないといううらみはございますけれども、一応の処理はできているというように考えております。
#103
○飯田忠雄君 これは一般的には、あるいはおっしゃるように、非常に難しい問題があって解決できないので条約の批准ができない、しかし扶養義務については合意が達しておると、こういう御見解なんでございますか。
#104
○政府委員(稲葉威雄君) 扶養義務の関係につきましてもその裁判の承認執行の条約というのが別にあるわけでございます。しかし、この条約につきましても、今回の条約批准に合わせて、同時に批准するかということを検討したわけでございますけれども、この中身が例えば裁判所がやるものだけではなくて、扶養義務を宣告すると申しますか、扶養義務があるということを宣告する外国のいわゆるこの条約の対象としている裁判の中には、日本で申します裁判所がやるものだけではなくて、行政庁がやるようなものも入っているわけでございます。そういうものの扱いを果たして裁判と同じような条件で認めることが可能かどうかというような問題もございまして現在のところ見送っているという経緯がございまして、この扶養義務の関係の裁判の執行、承認につきましてもなかなか難しい問題があって、必ずしも解決がされていないという状況にございます。
#105
○飯田忠雄君 それでは、扶養義務のこの今度の法律はできたのだけれども、実際には国際条約うまくいかぬような状態で、現実の解決にはいろいろ障害があると、このように理解をしてよろしいですか。
#106
○政府委員(枇杷田泰助君) 扶養義務を認めるか認めないか、またその扶養の程度、方法をどうするかというふうな実体的な判断をする基準としてどこの国の法律を用うべきかということを決めることだけでも私どもは意義があると思います。現在でもそのような関係については法例に規定があるわけでございます。その法例を条約に従って直していくということはそれなりに前進だろうと思っております。ただ、その後の執行関係につきましては、おっしゃったように条約はいろいろ問題があるので乗れませんけれども、しかし現行法のもとにおきましてもある程度のことは予定があるわけでございますし、ほかの外国においても手続規定があるわけでございますので、実体的によりよいものが判決として出てくるならそれだけでもいいし、そして執行は従来どおりの形でやるということでもかなりの前進ではないかというふうに考えておるわけでございます。
#107
○飯田忠雄君 それでは、この問題は今後の政府の御努力をお願いするということで先に進みます。
 準拠法の第二条の第一項によりますと、扶養権利者の常居所地法によれば、つまり日本の法律では扶養権利者となり得ない場合に日本の裁判所に日本の民法を根拠に異議申し立てをした場合にはどうなるか、こういう問題があるわけですね、第二条の第一項から。つまり、日本の法律では扶養権利者とならないのだと、それで日本の民法で異議申し立てをしたと、こういう場合にどうなるか、こういうことですが。
#108
○政府委員(枇杷田泰助君) 二条一項の場合には扶養権利者の常居所地法によって定めることになります。したがいまして、もしその扶養権利者が日本人であって日本に常居所地があってそして日本法では扶養の権利が出てこないという場合には、これは第二段階に参りまして、ただし書きの方にいくわけでございます。その義務者との共通本国法でやるということになるわけです。ただ、その場合に片方が日本人であればもちろん共通本国法というものはないわけでございますので、これもよらない。そうすると、最後には二項に参りまして日本の法律によって定めるということになりますと、その場合にも日本の法律では扶養義務が生じないという場合には扶養義務は結局認められないという結論になろうかと思います。
#109
○飯田忠雄君 次に進みます。
 第五条、どうも読んでも何のことかわからないんですが、わかりやすく具体的に御説明を願いたいんです。
#110
○政府委員(枇杷田泰助君) 第五条は公的機関の給付についてのいわば求償関係を決めている条文でございます。
 この法律は、その冒頭にもありますように、親族間の扶養義務に関する規定を設けておる。その設けるということが本来でございますけれども、ただここで言えば特則といたしまして公的機関、例えば我が国で申しますと厚生省関係で生活保護を生活困窮者にいたします。ところが、その生活保護を受ける者には親族があって、それが扶養義務を負っておるという場合には、本来扶養義務者が扶養すべき関係に立ちます。
 したがいまして、一たん社会保障の意味から公的機関が生活保護で給付をいたしますけれども、その場合には扶養義務の範囲内で扶養義務者から求償するということがあるわけです。その場合の求償関係は実質上は扶養義務というものを根拠にして求償していくわけでございますので、その場合の求償関係についての準拠法はどうするかという問題が出てくるわけです。そのことを規定している条文でございまして、この第五条ではその機関、例えて申しますと日本の厚生省がやっているものならば日本の厚生省が従っている法律、したがって日本の法律ということになるわけでございます。そういうことを規定しておる条文でございます。
#111
○飯田忠雄君 それでは、それに関逃しまして、日本に滞在しておる扶養権利者に対しまして公的機関が給付を行った場合に、その義務者は外国におるわけですが、その外国におる扶養義務者に費用の償還を求めるということになりますと日本の公的機関はどういう方法でその権利の似行をやるのかという問題、また日本の公的機関が外国で権利執行をすることを外国の法律は許すだろうかという問題、何かこれは主権を侵害するようなふうにもとれるのですが、こういうような問題につきましてはどのようにお考えでしょうか。
#112
○政府委員(枇杷田泰助君) この条文は、何も扶養義務者が外国にいるという場合だけを規定しているものじゃございませんで、国内にいる場合でもあり得るわけでございます。例えば外国人の親子が日本にいる、そして子供が生活困窮しているので生活保護を与えたという場合にその親の方に求めるということもあるわけで、そういうふうなことでございますが、それは御設問のように義務者が外国にいるというケースもなくはありません。そういう場合には、主権の問題といたしまして、日本の行政庁が外国へ行って直ちにその求償の手続をするということは、これはなかなかできない話でございまして、それは国際的な関係の国際公法的な問題かとも思いますけれども、ここではそのことには触れていないわけでございます。
 外国の方で公的機関が給付したものを日本にいる扶養義務者に対して求償しようという場合には、日本の国内において何らかの手続をとる。例えば日本の裁判所の方に訴え出て、そして給付判決をもらってやるというふうなことは、これはできるわけでございますけれども、そのほかに行政機関の行政行為として直ちにできるかどうかについてはかなり問題だろうと思います。
#113
○飯田忠雄君 それでは、扶養権利者がまだ条約を結んでいない国に住んでおる場合に、扶養権利者の主張は日本に対してどういう方法をとることになるでしょうか。例えば自分の住んでおる国の裁判所に訴え出てするかどうか、訴えた場合にその国はこの条約に入っていない、こういう場合にどれだけのことができるのであろうかという疑問が生じますが、いかがでございますか。
#114
○政府委員(枇杷田泰助君) 外国がこの条約に入っているか入っていないかということは、直接関係はないことではないかと思います。
 この条約に入っている国は普遍主義をとりまして、その国では、いわば相手国がといいますか、関係国が条約に入っていようと入っていまいとこの条約の趣旨に従った準拠法で処理をするということが条約の内容になっておるわけでございます。そして、この御審議いただいております国内法もそのような形でできておるわけでございます。したがって、もっぱらこの国内法の立場から申しますと、日本の裁判所に訴えが提起された場合にはどういうふうな準拠法で判断をしていくかということを決めているわけでございますので、ただいまの御質問の直接のお答えにならないかもしれませんけれども、締約国であるかどうかということは直接関係がないように考えます。
#115
○飯田忠雄君 それでは、次の問題に入りますが、扶養義務者が外国に住んでおる場合、その外国はこの条約に入っていない、こういう場合に、日本に住んでおります権利者の提訴裁判所である日本の裁判所の裁判手続は一体できるだろうかということですね。
 つまり、なぜかといいますと、裁判をするに当たりましては被告の方へいろいろ書類を送ったり通知したりしなきゃならぬわけですが、裁判をするに当たっての書類の送達ですが、その書類の送達手続は日本の民事訴訟法を根拠でできるだろうかという、これが私ははっきりしたことがわからないのでお尋ねするんですが、この場合はどうでございますか。
#116
○政府委員(枇杷田泰助君) 外国に住所を持っている者につきまして日本の裁判所に訴えを提起した場合にどうなるかということがまず問題になるわけでございますが、その場合に考えなきゃなりませんのは、日本の裁判所が国際裁判管轄権を持っておるかどうかということが問題になるわけでございます。
 民事訴訟のもとでは、外国に住所を持っている者についての裁判管轄権は一般的にはないのだというふうに解されておるわけであります。したがいまして、今の御説明の場合には、いわば被告の立場に立つ者、審判手続で言えば相手方になるわけでございますが、その者が外国にいる場合には日本の裁判所としては裁判管轄権を有しないということで、いわばその申し立てなり訴えなりは却下ということになるわけでございます。したがいまして、送達とかそのような手続ということが生ずることはないだろうと思います。
 ただ、そういうようなことがまず第一番目に問題になりますし、裁判管轄権の問題でございますので、相手方がこの条約の締約国であるかどうかということとはちょっと問題の平面を異にするのではないかと思います。
#117
○飯田忠雄君 実は私がお尋ねしたかったのは、せっかくこういう法律をおつくりになったのでありますから、外国との間に裁判の執行もできるような条約、そういう条約を早くおつくりになって、せっかくつくったこの法律が生きてくるように血とか肉を備えつけるようにしていただく必要があるのではないか、こう考えましたのでお尋ねしたわけです。
 このような外国で執行できるような条約というものを我が国は締結する気持ちがあるのかどうか、あるいはそういうことはしたいと思っても事実上できないかどうかという問題につきまして、見通しはどうでございますか。
#118
○政府委員(枇杷田泰助君) その裁判管轄権についての国際的な合意ができるというふうなことがまず前提になるわけでございます。そういうふうなことは、これから非常に国際的な関係が深まっていく中では当然必要になってくるだろうと思いますが、ただ裁判管轄権をどうするかということは非常に主権にかかわることでございますので、なかなか合意ができないということがございますけれども、何とかそれをできる範囲で認め合っていこうではないかというふうな動きもございますので、そういうふうなことについては私どもも積極的に取り組むべきではないかと思いますし、それからその後、裁判の場合の手続とかそれから執行の関係につきましても相互にうまくやっていくような仕組みというものは望ましいことだと思います。
 そういう面で、ハーグの国際私法会議におきましても今いろんなことを検討しておるわけでございますので、私どももそういうふうな方向で我が国でも、国内の法体系に余りそぐわないものは別でございますけれども、できるだけ尊重して条約も批准し、国内法も制定するという方向で進まなければいけない、一般論としてはそのように考えております。
#119
○飯田忠雄君 それでは、具体的な例をもってお尋ねいたしますが、現在、アメリカとか中国とか韓国とか、あるいは朝鮮とか台湾、こういう方面にいるところの人たちの中に、扶養権利者であり、あるいは扶養義務者でありする者が相当あると思われます。米国の場合は、御承知のように終戦後の米軍と日本婦人との間の問題、それから現在、扶養義務あるいは扶養権利というものが年をとるに従って変わっていくということですね。扶養権利者であった者が扶養義務者になるとかいうふうに地位が変わっていきますが、そういう問題につきましてこのたびの法律はどのくらいの効果がある法律でございますか、お尋ねいたします。
#120
○政府委員(枇杷田泰助君) 国際的な扶養関係というものがいろんな国との関係でふえていく傾向にあろうかと思います。したがいまして、そういうものによりよく適応するために今度の条約を批准し、国内法の制定もお願いをいたしておるわけでございますけれども、現在よりもどのように違うかということは一概に言えない面がございます。
 しかしながら、この法律の二条の一項、二項にもございますように、今度の国内法はできるだけ扶養権利者のその権利が認められるようにというふうな形で考えておるわけでございます。現行法で申しますと、大体、扶養業務者の方の本国法によるということになっておりますので、その本国法が扶養義務を認めてない場合にはもうそれっきりだということになるわけでございます。今度の法律の場合には、まず権利者の常居所地法で扶養義務を考えていこう、その場合に扶養義務がない場合には共通本国法で考えていこう、それでも扶養義務が出てこない場合には日本の法律でいこうというふうな三段階で考えておるわけでございますので、そういう面では扶養権利者の権利が現行法よりは一般的に保護されるというふうなことになろうかと思います。
#121
○飯田忠雄君 今度の法律によりまして、いろいろ外国の法律を研究しなければやっていけないようなことになっておると思いますが、特にアメリカの各州の法律、連邦法、それから中国の法律とか、韓国とか朝鮮とか台湾の法律でございますが、こういうものについて我が国の裁判所がどの程度理解できるような体制になっておるのでしょうか、お伺いいたします。
#122
○政府委員(枇杷田泰助君) 裁判所におきましても、また法務省におきましても、各国の実質法、民法等の規定を用意をしておくということは必要でございます。したがいまして、できる限りそのような法令を、在外公館などにもお願いをいたしておるわけでございますけれども、収集をいたしまして、そして図書館等にも備えつけております。また、その中で使用頻度の多いようなものから翻訳の作業もいたしておるわけでございます。
 ただ、世界非常にたくさんの国がございまして、しかもそれぞれ法令の改正が行われますので、十分にフォローしていっているかということになりますと自信はございませんけれども、できるだけ資料の収集と翻訳に努めておるということでございます。
#123
○飯田忠雄君 そうしますと、現実にはまだ十分な体制ができていないので、これによる裁判というものには相当支障があるというふうに考えられますが、殊に中国、韓国、朝鮮、台湾の法律は余り我が国でも研究されておりませんので問題があるのではないかと思います。
 そこで、そういうものをこれから研究するということになりますと大変なことですが、そういう法律を研究して裁判官なり弁護士なりに教育するような場所というものをお考えになっておるのでしょうか。それともそういうものは考えておられないのでしょうか。
#124
○政府委員(枇杷田泰助君) 法律家一般が外国の法律についても知識を持つということは必要なことだと思いますけれども、世界じゅうの各国の法令について熟達するということは実質上は不可能なことだと思います。したがいまして、またそういう研修的なことを考えておるわけではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、資料は十分に備えつけておく、できるものは翻訳しておくというふうなことを努力いたしております。
 また、現実問題といたしますと、訴訟等になった場合にはいわば権利の主張者がその準拠法として指定された外国法については立証するということになりますので、その当事者、具体的にはその代人となっている弁護士の方だろうと思いますけれども、それが個別事件に関連して勉強される、それについては、いろんな大学とかあるいは私どもの方でも御照会があれば応対をするということにいたしております。また、日本に駐在している外国の公館などにも問い合わせたりしながらその準備をして、裁判所に資料を提供するという形で行われておるわけでございまして、そういうことでいくよりしようがないのじゃないかというふうな感じもいたしております。
#125
○飯田忠雄君 そこで、さきに返りまして、もう一つ今の問題に関連しまして気になる点をお尋ねいたしたいんですが、外国の法律を当事者がこれを提示して有利になる判決を求めるというのでありますならば、むしろ外国の法律というものは法ではなくて事実ではないか。我が国の法律としてみなすのか、つまり今度の準拠法によって外国法を我が国の法律とみなすというみなし条文なのか、あるいは事実として援用するのか、あるいは日本の法律そのものとして外国法を認めていくのかという問題が当然起こってくるわけなんですが、現在の訴訟法の建前からいきますとやはりこれは事実の援用ではないか。もし、そうでないように扶養義務準拠法によって改めたのだということであるならば、改め方はみなし規定として改めたのかどうかという問題があるんですが、そういう点ほどのように御理解なさっておるでしょうか。
#126
○政府委員(枇杷田泰助君) 国際私法の議論の中で、適用される外国の法律というのは法規なのか事実なのかというふうな議論がなくはないのでございますけれども、これは最終的には、先ほど申し上げましたように、我が国で申しますと裁判所が法例を通じ、また扶養義務に関しては今度の国内法を通じて決められた法律を適用していくという形では法規になるわけでございます。したがいまして、当事者からの主張、立証がなくてもそれを適用してやるということは別に違法ではないわけでございますが、実際問題といたしましては、裁判所でも各国の法規というものがわかっているものではないということは事実としてあるわけです。そういう場合にどうするかということの最終的なことになりますと、先ほど申しましたように、ここでは当事者側がそのこととを出して立証しなければ不利益を受けるという意味で、原告と申しましょうか、その準拠法の内容を出すことが利益になる側が資料を収集して出すということで運営されるわけでございます。
 この条約とかあるいは国内法によってそのような外国の法規についての性格を何ら変えているものではございません。従来から法例で決められておりますいろんな事柄についてすべて同じようなことでございまして、この国内法は適用されるべき外国法の扱いについての性格を何ら変えるものではないというふうに考えております。
#127
○飯田忠雄君 では、念のためにもう少しお尋ねいたしますが、結局、間違えた場合には事実の認定を誤ったのかあるいは法令を誤ったのかという問題になるわけですが、局長のお考えですと事実の認定の誤りでなしに法令の適用を誤った、こういうことになるわけでございましょうか。
#128
○政府委員(枇杷田泰助君) さようでございます。
#129
○飯田忠雄君 次に内縁関係ですが、内縁関係にあった配偶者と子供を残して帰ってしまった日本人あるいはアメリカ人、こういう人たちとの間の扶養義務関係の問題ですが、内縁関係というものは我が国では夫婦と認めておるのかどうか、まことにあいまいもこたるものがありますが、こういう場合には扶養権利、扶養義務というものは生ずるのか生じないのでしょうか、どのように御理解なさっておるんでしょうか。
#130
○政府委員(枇杷田泰助君) 日本におって日本人の女性と内縁関係を持っていた外国人の男性が外国に帰ってしまったという場合には、日本の裁判所でどう考えるかというまず問題があるわけでございますが、その場合には先ほど申し上げましたように裁判管轄権の問題がございますので、日本の裁判所としてはその内容に入るまでもなく裁判ができないということになろうかと思います。
 ただ、そういう場合に当該外国へ日本人の女性が出かけましてその国の裁判所に訴えた場合にはどうなるかという問題があります。その場合には、その扶養関係につきましてその国でどのような国際私法を持っておるかということによって変わってまいります。そして、その国際私法によって指定されるところの法律の中身がこういう場合にどのような扶養義務を認めるのか認めないのかということによってその当該外国の裁判所は判断するだろうと思いますので、一概には言えないとは思いますが、日本法的に申しますと、確かにおっしゃるとおり、その内縁関係の解消後の扶養の関係については権利義務関係はないというふうに解せられるわけでございます。
#131
○飯田忠雄君 内縁の問題につきまして、例えば日本で内縁の夫婦関係にあった人が外国へ行ってしまいまして外国で別の人と結婚した、この場合も、結婚といいましても日本の結婚じゃありませんので、日本から見れば内縁ではないか。同じ内縁と内縁との関係ですが、この場合に日本におる内縁の人は扶養権利者になることができるかどうか、こういう問題なんですがね。
#132
○政府委員(枇杷田泰助君) 外国に相手がいるということになりますと先ほどの裁判管轄権の問題がありますので、仮にその男の方が日本の国内にいると仮定して実体関係を申し上げてみたいと思いますけれども、その場合には外国人の男性がどこの国の人でもいいのですけれども、婚姻をしたという場合にはこれはその婚姻は日本の法例の規定に従って有効に成立しているものならば婚姻は有効でございますし、そうでなければ無効だという扱いを日本の裁判所ではすることに、なりますが、いずれにいたしましても、もう既に前の内縁関係が切れておるということが、次の結婚あるいは結婚に近いような形のものが既にできているということになりますと、もう内縁関係は切れておるというふうに評価さるべきだろうと思いますが、そのような場合には、もし扶養の権利があるのだということで日本の女性が裁判所に申し立てたといたしますと、その扶養の権利があるかどうかということを決めるのにはこの法律で処理をされることになります。
 そうしますと、扶養権利者の常居所地法でまず考えてみると、そうすると日本に常居所地があるわけでございますから日本法ではどうかといいますと、先ほど申し上げましたように、内縁解消後の扶養関係というものは日本法では認められないということからだめになる。ところが、二条一項のただし書きで、その次には、本国法ではどうかということになりますと共通本国法というものはありませんから、これは適用の余地がない。そして、二条の二項に参りまして、最終的には日本法ということにまた戻るわけでございますけれども、日本法では扶養の権利がないということになりますと、扶養の権利が出てくることはないという結論になろうかと思います。
#133
○飯田忠雄君 それでは、内縁関係にあった人の子供が、外国へ行った前の男との間にできた子供、これが小さいときは扶養権利者ですが、大きくなると扶養義務者になるわけですが、外国に行った人は常に血縁関係にあるということで日本におる子供に対して扶養義務を負うたり扶養権利を持ったりするという関係は理屈としては成り立つわけですが、そういう場合にこの子供が日本の裁判所に裁判を提起するということは裁判管轄権が日本にあるからできるわけですが、アメリカに行った人がもしアメリカの裁判所へ提起すれば、アメリカの管轄がありますからそこでもできるわけですね。その裁判管轄権というものはそういう意味において余り問題ではない。ただ、執行する場合に裁判管轄権というものができてくるということでありますれば、先ほどお願いしておきました執行に関する裁判管轄の調整に関する条約がなければ、どうもこのたびの準拠法に関する法律は無意味になるのじゃないかという気がするんです。
 日本の国内で二人とも住んでおる場合は当然日本の法律によってやるのだから、この扶養義務の準拠法に関する法律などというものがなくたっていいわけです。これが必要なのは、権利者と義務者が別の国におる場合にやはりこれが必要になってくるのではないかと、こう思われるのですが、その点はいかがですか。
#134
○政府委員(枇杷田泰助君) この国内法でもそうでございますし、法例でもそうでございますけれども、それは何も当事者の片方が外国にいるということを前提にしているものではございません。外国にいる場合もあるし、それから両方とも国内にいるという場合もあるわけでございまして、日本に当事者が住んでいる場合には当然に日本法ということではないわけでございます。片方が外国人であるという場合には、それは何が問題になるかによって違いますけれども、この国際私法の規則を通しまして適用すべき法律がどこの国の法律であるかということが決められて、そこで判断をされるということになるわけでございます。
 したがいまして、現在のように外国人がかなり日本に入ってきておる、それからまた日本人がかなり外国へ出て国際結婚などもしたりしているというふうなことからいたしますと、何も裁判管轄権の問題が解消しない限りは意味がないということではないわけでございます。日本に居住をしていも外国人同士の離婚の訴訟ということもあるわけでございますし、また片方が外国人、片方が日本人という場合のいろんな身分関係の訴訟とか審判とかということも多々あるわけでございますので、その裁判管轄権の問題と切り離しましても、この準拠法についての規定を合理的なものに整備していくということはそれなりに意味のあることであるというふうに考えております。
#135
○飯田忠雄君 現在、中国からいわゆる孤児と称する人がたくさんこっちへ来ますが、この人たちを養ってくれた養い親は中国におられるわけですが、この関係ですね。養い親に対して子供は扶養義務を負うておる、だからそれを果たせということが中国側からも言われておるし、日本におる人もそういうことを言っておりますが、この場合にこの扶養義務の準拠法に関する法律は適用になるのでしょうか。
#136
○政府委員(枇杷田泰助君) 中国の残留孤児とそれからその養い親との関係の扶養義務をどう判断するかという場合には、日本の裁判所で判断するときにはこの国内法、扶養義務の準拠法に関する法律が適用されて判断されることになるわけでございます。
#137
○飯田忠雄君 最後に一つだけ別のことをお尋ねいたしますが、ヘーグ国際私法会議というものがあって、このたびの条約をつくっておる、こういうことですが、この会議の運営はオランダの国家委員会がやっておる、こういうことでございますが、そういうふうになったのは歴史的な根拠があってのことかどうかということと、それから常設事務局の現在の構成はどうなっておるか、その構成者である人たちはどういう国籍の人がなっておるか、それから常設事務局との連絡機関に法務省が指定されておりますが、それはどういう理由で法務省を指定されたのか、この問題について最後に取りまとめてお答えを願いまして、私の質問を終わります。
#138
○政府委員(斉藤邦彦君) 第一点でございますけれども、このヘーグの国際私法会議というのは、そもそも歴史的にオランダの国際私法学者それからオランダ政府が中心になって発足したものでございます。第一回の会議もオランダ政府の招請によって招集されております。こういうような歴史的経緯がございましたために、国際私法会議自体の運営を、この今の規程に定まっておりますとおり、オランダ国家委員会とするということになったというふうに承知しております。
 それから第二点につきましては、常設事務局の構成でございますが、事務局長が一人、次長が一人、それから事務局員が二人おります。国籍は、局長がフランス、次長がスイス、事務局員はアメリカとオランダという形になっております。
 それから三番目に、常設事務局との連絡機関といたしまして我が国が法務省を指定した理由でございますけれども、我が国におきまして国際私法であります法例、これの主管官庁が法務省でございますし、それから民法を初めといたします私法につきましての専門知識を有しておられるのはこれも法務省でございますので、そのようなことを考慮して法務省が指定されたというふうに承知しております。
#139
○飯田忠雄君 終わります。
#140
○橋本敦君 今回の法律の最大の眼目の一つは第二条で、扶養義務、これについて扶養権利者の常居所地法によって処理する、これを原則とする、その関係で法例二十一条は廃止するということであります。このこと自体は扶養権利者の利益を守るという意味においても妥当だと思うんですが、従前この法律が出る前、つまり法例二十一条で処理されていたころから、我が国の有力な学説では、この立法は問題がある、扶養権利者の常居所地法によって処理するのが妥当ではないかという意見がかなり有力であったのではないかと思いますが、そこらあたり、法務省はどうお考えになっておられますか。
#141
○政府委員(枇杷田泰助君) 従来から余り国際的な扶養関係ということが問題になったケースがございませんので、現行の法例の規定では実態にそぐわないというふうな指摘はなかったと思います。ただ、一般的な国際私法の考え方といたしまして、本国法主義というものを原則に置くというのはいろんな意味で問題があるのじゃないか、むしろ生活実態があるところの常居所地というものを国際私法を考える場合の連結要素としてとらえるべきではないかというふうな意見が各分野について言われるわけです。その一環として、扶養義務に関しても常居所地とかあるいはもっとその扶養権利者を実質的には保護するような準拠法の決め方がしかるべきじゃないかというふうな意見はかねてから出ておったと思います。
#142
○橋本敦君 今私が指摘したのは、例えば澤木さんがお書きになった「国際私法入門」の中でも「法例二一条は、扶養義務者の本国法によるとする。これは権利者の立場より義務者の立場を重視するものであり、立法論としては権利者中心とすべきであるとする立場が有力である。」というような記述もございます。ですから、私は今度の改正というのは有力な意見にも沿い、あるいは国際化という時流と民主的な方向にも沿っているというように見ておるわけですが、そういう認識は法務省も同じでしょうか。
#143
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございまして、いわゆる子条約がもうかなり前からできておりますけれども、それは常居所地主義をとっておるわけでございます。したがいまして、それを我が国も批准をしたというのは、そのような考え方が当然だということで子条約についても批准をいたしたわけでございます。その延長として今度は扶養全般について及ぼすという考え方でございますので、ただいま御指摘のような考え方に基づくものでございます。
#144
○橋本敦君 したがって、子条約の批准から、当然整合性を持つという意味でも今度の法改正は必要だというように私はなっているのだと思うんです。
 そこで、最近の国際化の問題ですが、国際結婚は近年ふえているのか減っているのかよくわかりませんが、そういう傾向については資料ございますか。
#145
○政府委員(枇杷田泰助君) 国際結婚は近年ふえておりまして、昭和四十年当時には五千件に満たなかったのでございますが、五十八年には、妻が外国人である場合と夫が外国人である場合とがございますが、それを合計いたしまして一万五百四十一件になっておりますので、ほぼ二十年もたたないうちに倍増しておるということが言えようかと思います。
#146
○橋本敦君 わかりました。
 それともう一つ関係があるんですが、先ほども議論に出たのでありますけれども、この条約に限らず、この資料にもありますけれども、日本が未批准である条約がまだかなりある。そういうことの中で国際私法との整合性を国内法との関係できっちり詰めていく上で必要だと考えられるのは、先ほども議論のありました子に対する扶養義務に関する裁判の承認及び執行に関する条約、これもありますが、そのほか私の見たところ、遺産の国際的管理に関する条約だとかあるいは扶養義務の準拠法に関する条約、夫婦財産制の準拠法に関する条約、婚姻の成立及び効力の承認に関する条約、こういった一連のものがあるわけです。
 これらの個々についての議論はここでする余裕もございませんけれども、先ほど稲葉さんのお話でも、いろいろ国内法との整合性や悪影響を及ぼしてはならぬ等の検討で若干の時間も要るのだというお話もありましたが、それは早急に検討をしていただいて、批准すべきものは批准するという方向ではっきりさせるのがいいのではないかと思っておるのですが、考え方としてはどうでしょうか。
#147
○政府委員(枇杷田泰助君) ヘーグの国際私法会議でできております条約は、その会議の目的から当然のことでございますけれども、少なくともいろんな準拠法に関する統一規則をつくりたい、あるいは手続等についても統一的なものをつくっていきたいということでございまして、そのことは非常に望ましいことでございます。したがいまして、我が国といたしましてもできる限り検討を加えて、そしてそれを批准しあるいは国内法を制定していくという方向が望ましいということは当然言えるわけでございます。
 ただ、国内法との整合性の問題等とか非常に難しい問題がございますので、私どもとしてはそのほかにもいろんな分野の法律改正問題を山のように抱えておりますので、これにのみ集中できないということもございまして、思うようにはかどっておらないのは大変申しわけないのでありますけれども、逐次これからの国際化の方向に向けまして、御指摘のようになるべく早く検討をして、できるものから批准し、国内法を制定していくという方向でやるべきだろうというふうに考えております。
#148
○橋本敦君 そこで、一般論はそこまでといたしまして、個々の条文に関連をしてお尋ねをしていきたいのでありますが、まず第一条で「この法律は、夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務」、これの準拠法だと、こうなっておりますが、「その他の親族関係から生ずる扶養の義務」というのは、日本の民法から考えられる諸関係ということだけの理解でいいのか、国際私法という立場でもっと広くとらえるという立場で考えるべきなのかはどうなんでしょうか。
#149
○政府委員(枇杷田泰助君) これは、日本の民法の問題といいましょうか、日本の民法で概念されるものだけに限らないわけでございまして、親族関係というのも、どのようにとらえるかによっては各国の法制も違うわけでございますので、したがいまして具体的な形で申し上げますと、権利の主張者が相手方に対して親族関係をもとにした扶養の権利があるのだという主張があった場合に、その権利があるかどうかということを判断するときにはこのような形でやるのだということを定めた法律でございます。したがいまして、ここで表現しております「夫婦、親子その他の親族関係」というのは日本の民法の概念とは違うというふうにお考えをいただきたいと思います。
#150
○橋本敦君 第二条に進みますが、この常居所地というのが民法の住所というのと実質的に異ならないというお話がございました。異ならないけれども、民法の言葉である住所という言葉を使わないで常居所地という言葉を使うというのは、国際的共通概念としてこういう言葉を使っている、こういう御説明がございました。国際的共通概念ということで言うならば、英語ではどういう言葉でどういうように一般的に国際的に通用しているのか、あるいは英語じゃなくて、国際的通用概念としてどういう言葉があるのか、それはどうなんですか。
#151
○政府委員(枇杷田泰助君) 常居所地というのは、英語で申しますと、ハビチュアルレジデンスという言葉で表現されておるものでございまして、内容的には、客観的に継続して生活本拠として住んでおるところということになるわけでございます。
#152
○橋本敦君 そうしますと、それは日本の民法で言う住所というのも客観的な事実に即応した概念ということも入っておるわけですから、とりたてて常居所地法という言葉を使わなくても、国内法化する場合には住所という言葉を使っても特段の差し支えはないようにも思うんですが、いかがですか。
#153
○政府委員(枇杷田泰助君) 実質的には一致するという意味では住所という言葉を使ってもいいかと思いますけれども、いわばこれは国際私法的な概念からくるものだということでやはり考えるということが条約との整合性からいってもいいだろうと思いますし、また実は先例といたしましては、遺言の方式に関する国内法の場合にもこういう常居所地法という言葉を使っておるわけでございます。どちらかと申しますと、そういうふうな言葉を使った方がいわば国際私法の講学上はより理解ができるという面もございますので、内容的には日本の民法で言う住所とそう変更があるわけではございませんけれども、むしろその方がある面では理解がしやすいことがあるということで、今先例もあることですのでこういう言葉を使っておるということでございます。
#154
○橋本敦君 それは、そういうことでいいという話は講学的にもあるかもしれませんが、法律の適用を受け、国民がこの法律を読むわけですから、そういう国民の立場から見れば、日本語としてもなかなかなじまない常居所地なんということよりも、住所という方が整合性があるのじゃないかという気はいたしますね。これは工夫が要ると思います。
 次の問題で第三条に参りますが、ここで扶養義務者が異議を述べたということになりますと、これは扶養権利者の常居所地法ということではなくて、今度は扶養義務者を中心にした法体系に急にかわっていくという感じがするんですが、その点はどうですか。
#155
○政府委員(枇杷田泰助君) それは、ある意味ではそういうことになるわけでございます。
#156
○橋本敦君 したがって、せっかくの第二条が第三条でまた戻って逆転するということになっているという感じを受けるんですが、第二条をもっと貫くというわけにはいかないんですか。
#157
○政府委員(枇杷田泰助君) それも一つの立法政策としては可能だろうと思います。ただ、この三条に当たる内容が条約の中に盛り込まれたといいますのも、世界各国の傾向といたしまして、比較的縁の薄いと申しますか、そういう親族関係についての扶養義務というものはだんだん薄まりつつあるといいましょうか、むしろ社会保障的な分野で処置をされるという傾向にある。昔のように大家族的に相互に扶助し合うことによって処置をしようということから今大分変わってきたという要素がございます。したがいまして、そういう縁の薄いものについては、これはどちらかといえば扶養義務者の側の立場も尊重してしかるべきではないかという考え方があるわけでございます。そういうことも、日本の考え方にいたしましてもわからないわけではないという面がございますので、このような条約も承認することにし、国内法もそれに合わせてつくるということにいたしたわけであります。
#158
○橋本敦君 その場合に、扶養権利者の常居所地法によって考えても私は扶養義務を負わないんですよという主張をするならば、扶養権利者の常居所地法を基本にして法展開をしていくということの一こまになるんですね。ところが、そうじゃなくて、今度は扶養義務者が自分の異議を述べるその根拠を自分の本国法、そこを基準にして主張できる、こうなりますと第二条との整合性がどうも私は法体系として理論的にうまくいかない感じがするんですね。
 それで、局長がおっしゃるような実際の扶養権利者と扶養義務者との間の調整とバランスを合理的にとってやる必要があるという意味で設けられた規定という、その趣旨はわかるんですが、法律の構造として急に転回するということは、どうも法律家としてもう一つ腑に落ちない、合理性がないような気がしてしようがないんですが、その点、もう一遍お考えを聞かせてほしいんです。
#159
○政府委員(枇杷田泰助君) 同じようなことの繰り返しになるわけでございますが、民法の概念、考え方といたしましても、広い意味での扶養の中に生活保持的なものと生活扶助的なものがあるわけでございます。その生活保持的なものはあくまでも権利者を保護していくという立場を貫かなきゃいけない。しかし、生活扶助的なものについては、これは義務者の立場も考えなきゃいけないということがあるわけでございます。
 現在の法例の立場から申しますと、これはむしろ義務者の方に主眼を置いているわけでございます。ですから、考え方によりましては、現在の法例の立場から、生活保持的なようなものに近い親族の者については常居所地法の方に転換した。国内法的にそういうことも言えようかと思いますので、そうここで急激な大転換というふうには私どもは考えておらないわけであります。
#160
○橋本敦君 これは理論的にはまたいろいろ検討してみたいと思いますが、これと同じように、関連をして第八条の第二項との関係ですね。この第八条の第二項も扶養義務者に過大な扶養義務を負わせないための調整機能を持つ法律になっているわけです。
 つまり、第八条二項によれば、扶養の程度は、これは扶養権利者の需要だけじゃなくて、扶養義務者の資力、これも考慮して定めると、こうなっているわけですね。だから、この第八条第二項も権利者と義務者との間の調整ということで働く機能を持っている、こういうこと自体私は決して否定はいたしませんが、せっかく第二条で権利者に対する扶養を重く法律的にも位置づけていこうという建前が、第三条及び第八条二項でだんだん後退をしてしまうということになり過ぎても立法の趣旨に反すると、こう思うんですが、その第八条の第二項の趣旨について御説明をいただきたいと思います。
#161
○政府委員(枇杷田泰助君) 我が国の民法の場合には、御承知のとおり、扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮して家庭裁判所が扶養の程度を決めるということになっておるわけでございます。そのような考え方は非常に合理的だと思われるわけでございますが、この準拠法の適用を考えてみますと、適用されたことになった外国法によっては、例えば定額で決められているもの、そういう国があるかどうか実は私承知しておりませんけれども、例えばそういうものがある、ところが扶養義務者の方は非常に資産があるという場合に、どうもそれだけではおかしいじゃないかというふうなことが出てくるわけでございます。
 したがいまして、この八条の二項は、理論的には扶養義務者の方にあるいは不利益になる場合、それはないという形にはなっておりませんけれども、この条文が置かれましたのは、むしろ扶養権利者について保護しよう、外国法を適用することによって扶養権利者が不利を受けるようなことになってはいけないという意味で置かれているわけでございます。
 この国内法でもそういう意味で八条のところの見出しに「公序」というふうにしておりますけれども、要するにそのこと自体が公の秩序にずばり当たるかどうかということは議論があろうかと思いますけれども、要するにそういうバランスのとれた形で扶養権利者が扶養を受けられるようにするということでないと公序に反するという思想を織り込んでここの規定が置かれているわけでございます。
 したがいまして私どもは、結果としては扶養権利者の権利が後退をするという方向で働くということはない、むしろその逆の場合であり、まさに条約でもそういうことを想定して置かれた条項であるというふうに考えております。
#162
○橋本敦君 非常に大切なことをお話しいただきまして、この八条の立法趣旨が第一項との関係で一層明確になったというように理解いたします。
 この第八条が出たついでにお聞きをしておきたいんですが、第一項の「明らかに公の秩序に反するとき」云々と、こうありますが、ここで言うところの公の秩序というのは、法例三十条にも「外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定カ公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スルトキハ之ヲ適用セス」と、こうありますが、この法例三十条に言う公序とこの法律第八条に言う公序とは同じなのかどうか。
 それからもう一つ、民法九十条も「公序良俗」と、こう言っておりますが、国内法でこれまで国内法の規範として通用しております公序、これとの関係はどうなのか。その点はいかがでしょうか。
#163
○政府委員(枇杷田泰助君) ここに「公の秩序」と書いてありまして、法例の方では「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」というふうになっておるわけでございますが、私どもといたしますと、法例の三十条あるいは法例の二条にもそういう言葉がございますが、それとここで言っております公の秩序というものは内容としては全く異ならないというふうに考えております。
 もともと民法のただいま御指摘ありました九十条の解釈でもそうでございますけれども、公の秩序とか善良の風俗とかというのは、あわせて公序則と言っておりますように、一本で考えられておりまして、その中に区別をつけようと思ってもつけられないものでございます。したがいまして、ここでは内容的には公の秩序または善良の風俗と書いてもいいわけでございますけれども、条約の方で公の秩序というふうな形でできておりますので、それと違うことを国内法であらわしたものではないという意味で公の秩序という言葉でここには表現をいたしておりますが、内容的には異ならないと思います。
 それから、民法の九十条との関係でございますけれども、これも私は原則的には違う概念ではないと思いますが、ただ一つ、国際私法で言っております公の秩序という中には国際的な視点というものが加味されるということがあるということでは多少違おうかと思っております。
#164
○橋本敦君 今の民法九十条との関係も、なかなか学説でもいろいろ問題、議論されているところですね。だから、本当の公の秩序、これを国際主義を貫いていきますと、例えば先ほども議論が出ましたが、一夫多妻主義、これはやっぱり近代文明諸国に通用する倫理観念なり道徳観念ということから見て、公序に反するというように考えられるのは当然だということになる。そういう国際主義を貫くという意味で、この国際私法で言う公の秩序を徹底さしていくということになりますと、これはそこまで国際私法の分野でできるのかどうか、なかなかやっぱり当該の国との関係で難しい問題も出てくるわけですね。
 先ほど、離婚を認めないフィリピンその他あるようですが、これは日本の国内法の関係では無効だというのは、民法九十条ということに照らしてそうだという判決が出ているんですが、この場合、無効判決が出てくる根拠は民法九十条なのか法例三十条なのか、あるいは国際的に通用する近代文明国家あるいは国際社会という観念から観念される公の秩序、こういう理念からなのか、そこらは厳密に言えばどこをどうとっていらっしゃるのか、裁判所のお考えをどう理解しておられますか。
#165
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまの場合には、公序則としては法例の三十条を念頭に置いている判断であろうかと思います。その場合には、内容的には九十条と私はそうそごはないと思いますけれども、一つの視点という関係としては、国際的な通用する考え方というものが念頭にないとやはり国際私法としては一つ足らないのではないかという気がいたすわけであります。したがいまして、公序則に反すると言って、あるものを無効だとかあるいは適用しないとかいった場合に、国際間の一般的なところで、そんなむちゃな話があるかというような非難を受けるような、そういう判断ではいけないという視点が一つあろうかと思います。
 しかし、日本で考えられる場合には、それはそういう視点から見ても九十条的に見ても、私は結論は変わらないと思いますけれども、理論的な視点としてはそのような視点が法例の三十条には加味されることがあるのじゃないかというふうに考えております。
#166
○橋本敦君 私も同感であります。
 次の問題として、この「公ノ秩序」の法例三十条あるいは今度の場合は第八条一項ですが、これによって外国法の適用を排除した場合に、今度は適用規範となる法規はどうなるのかということが次の問題ですが、これはどうですか。
#167
○政府委員(枇杷田泰助君) これは、排除する場合がどういう場合かによっても違うかと思いますが、外国法によった場合に、そのある部分だけが公序に反するということでそこが適用がなければ、それが適用がない状態で外国法を適用すればいいわけなんです。ところが、全体としてその外国法を適用できないという場合に何によって埋めていくかという問題があろうかと思いますが、そういう場合には、これははっきりした考え方が確立しているわけではありませんけれども、いわば法理とか、最終的には法廷地法とかというふうなことが考えられようかと思います。
#168
○橋本敦君 従来の通説的見解によれば、やっぱりその場合は内国法適用という以外にはないのじゃないかという考え方が強いようですけれども、私もそうならざるを得ないかなと思っておるんですが、国際関係が複雑になってまいりますと、今局長がおっしゃったように、外国法規それ自体が全部許されないということはなかなかないので、この八条一項を適用した後の法律関係で、一部排除した外国法と日本国内法との今度は整合性ということも出てまいりまして、解釈論としてはなかなか難しい理論問題が出てくるだろうと思うんです。これは今後の課題だろうと思うんです。
 時間がありませんので次に参りますが、共通の本国法とかあるいは権利者の常居所地法あるいは義務者の法律、いろいろありますけれども、今日の国際社会の中で、一つは分裂国家の問題がある、もう一つは承認国、未承認国との関係がある。こういう関係で、承認国、未承認国との関係はこれは公法関係ですけれども、国際私法の適用についてはどうなるのか。あるいは分裂国家という不幸な事態に陥っている朝鮮の北と南、これは国が別ですと、こうなっております。ドイツははっきり国が別々である。それ以外に分裂国家という状態になっているそういう国との関係で法適用はどうなるのか。ここらはどうでしょうか。
#169
○政府委員(枇杷田泰助君) 本国法と申しますのは、申し上げるまでもありませんけれども、当該本人の国籍を有している国ということでありますが、ドイツのようにこうはっきりと分かれておりまして日本がそれをそれぞれ承認しておるというふうな場合には、それぞれの国籍を持っている国の法律というのが本国法になるということで比較的問題は少ないのじゃないかと思いますが、朝鮮半島のような問題を考えますと、これは形式的な国籍というのでもまたいろいろとらえ方の問題がありますので、私法の立場から申しますと、いわば形式的な国籍だけではなくて、実質的に国籍とも言えるような、非常に密接関連がある地域を支配している法律が本国法だというふうに考えていいのではないかというふうに思っております。
#170
○橋本敦君 今私が指摘した次の承認あるいは未承認という公法上の関係は左右されますか、されませんか、これはどうですか。承認している国、承認していない国。
#171
○政府委員(枇杷田泰助君) それは、我が国で今承認しているという場合には比較的実質論に入らなくても済むケースがあろうかと思うんですが、その未承認とかいう場合には実質論に入っていかなきゃならぬ。実際上、ある地域について法律が違っておるということが厳然とした事実としてある場合には、そこで形式的な国籍云々ということよりも、実質的な国籍に準ずるような非常に密接なつながりのある地域を支配している法律による、それが本国法だという扱いにするのが適当ではないかというふうに考えております。
#172
○橋本敦君 わかりました。
 時間が参りましたので最後の質問ですが、これはこの法律から離れます。離れますが、この機会に法例だとかなんとか古いのを当たってみたのですが、なるほど古い法律がそのまま残っているなということを痛感したんです。
 法例、明治三十一年ですが、この一条の二項では、「台湾、北海道、沖縄県其他島地ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ施行時期ヲ定ムルコトヲ得」、こうなっています。勅令がまだ生きておる。それから「台湾、北海道、沖縄県」、これは一定の差別的扱いと見られてもしようがない規定が残っておる。
 それから、外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造反模造ニ関スル法律というのがあるんですね。これを見ますと「帝国官府発行ノ証券」と、帝国という言葉が残っているんですね。それから十条を見ますと、裁判によって没収するというのを「官没」、官が没収すると、こう言う。
 それから、印紙犯罪処罰法によりますと、これもまた第一条、第三条等で「帝国政府ノ発行スル印紙」、こうなっております。第四条では「帝国外ニ於テ」、こうなっているんですね。
 これを見まして、やっぱりこれは古い法律も整理をしなくちゃいかぬなということを痛感をしたわけですが、「帝国」とかあるいは法例一条の二とか、こういうのは早くなくすようにするのが新しい憲法のもとで大事じゃないかという気がいたしておりますが、この点、法務大臣のお考え、もしおありでしたら伺いたいと思うのであります。
#173
○国務大臣(鈴木省吾君) 今お尋ねの件、条文を見ましたら確かに「台湾」とか、それから本当に御指摘のようないろいろなものが残っております。現状に合わないことを承知をいたしておるわけでございますが、ただいま法制審議会で改正の全般検討をしていただいておりますので、それが成案を得た段階で改正をお願いすることになると思いますので、その機会にそういう実態に合わないものは改正してまいろうと考えております。
#174
○橋本敦君 じゃ、きょうはこれで終わります。
#175
○抜山映子君 このたびの扶養義務の準拠法に関する法律、一読いたしますと、従来の法例の基本的考え方、すなわち扶養義務者をどちらかといえば保護する考え方から転じて、扶養権利者を保護する立場に変わったということが概括的には言えると思うのです。このように変わりましたが、時期的にいつごろ変わって、どういう経過で変わって今回ここにその条約の方を批准し、かつこの法律を制定するに至ったか、ちょっと経過を御説明ください。
#176
○政府委員(枇杷田泰助君) 現在の法例は非常に古い法律でございまして、戦後特にこの問題につきましても世界各国でいろんな議論が出ております。先ほど橋本委員から御指摘ありましたように、法例についていろんな立法意見が出ております。扶養に関しましてもいろんな意見が出ておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、ヘーグの国際私法会議で扶養の関係についても検討していこうじゃないかということになって、まず手がけられたのが扶養としての典型例であります子に対する扶養義務について統一的な規則をつくりたいということで議論をされまして、そのときに、ただいま御指摘のように、大陸法系と申しましょうか、そういうことではどちらかと申しますと扶養義務者に焦点を合わせた準拠法の決め方をいたしておりますのに対する反省がありまして、そして扶養権利者に焦点を合わせた準拠法を考えていくべきじゃないか、しかもその場合に常居所地というものをとらえていくことが生活実態との絡みで適当であろうというふうな機運が出てまいりました。
 そして、まず子条約が成立をし、我が国もそれを批准いたしたわけでございますが、それに引き続きまして、扶養一般についての準拠法を決めようということから継続的な作業が行われて、そしてただいま申し上げましたような方向で扶養権利者に焦点を合わせ、しかもその生活の実態と合うような常居所地を中心とするという方向で議論がまとまって、私どもとしてもそれは正しい方向であろうという観点から条約をこのたび批准し、国内法を制定いたしたいということになった次第でございます。
#177
○抜山映子君 この扶養義務の準拠法に関する法律の第三条ですけれども、二行目に、「異議を述べたときは、」とございます。技術的な問題ですけれども、この異議は裁判上の異議、裁判外の異議両方を含むのか、その形式、そしてその効果ですね、ちょっと御説明ください。
#178
○政府委員(枇杷田泰助君) これは、この異議は裁判上だけのことではありませんで、裁判外におきましてもそういうことで扶養義務を負わないというふうな態度をとることができるわけでございます。
 効果といたしましては、これはいわば裁判上のような表現になりますけれども、いわば準拠法の変更の申し立てというふうなことになるわけでございますが、実質的には、裁判外のレベルで申し上げますと、お互いの本国法じゃ扶養義務は生じてないのだから、私は扶養義務を負担することはないのだというふうな態度を示すということで、その態度を示して扶養義務を覆行しなかったことについて責めを負わないという、そういう事実上の関係が裁判外では出てくることであろうかと思います。
#179
○抜山映子君 先ほど同僚委員から質問ございましたのですけれども、第三条の第二項でございますね。「前項の規定は、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約が適用される場合には、適用しない。」、御説明を伺ったんですが、この後ろの方にございます扶養義務の準拠法に関する法律案参考資料の扶養義務の準拠法に関する条約の方の十八条を見ますと、「この条約は、」「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約に代わるものとする。」、こう書いてあるわけです。英文の方を見ますと、この条約は、シャル・リプレース子条約である、子条約に取ってかわるものである、こういうように書いてあるわけでございまして、このたびこの条約を批准するわけでございますが、そうすると、前の子条約に取ってかわる。それなのに法律の方を見ると、こういうように「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約が適用される場合には、」と、こう書くということは、これは立法技術上いかがなものであろうか。非常にわからないんですね。
 先ほど専門の同僚委員の先生お聞きになって回答を受けたけれども、何かもう一つよくわからない。私も法律の専門家でありながらもう一つよくわからない。継親子関係が残るとか何かそういうお話でしたら、そういうような取ってかわられてしまったそういう条約をここに書くのじゃなくて、具体的に書いていただけばもうちょっとわかりやすい法律になるのじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#180
○政府委員(枇杷田泰助君) 子条約と本条約との関係については大変わかりづらい面がございまして大変恐縮でございます。
 ただいまの御指摘いただきました条約の十八条をごらんいただきますと、取ってかわるというのは締約国の間においてでございます。本条約の締約国の間では取ってかわるわけでございますが、本条約の締約国でなくて、そして子条約だけの締約国の間では取ってかわらないということを同時に意味しているわけでございます。
 子条約に入っているものが全部本条約に入っていればいわば全部取ってかわったことになるわけでございますけれども、それが一致いたしません。将来は一致するかもしれませんけれども、現に一致しないわけでございます。そうしますと、取ってかわるという効果を生じていない締約国との関係では、子条約というものは、我が国でも相互にその条約を遵守していくという義務が残るわけでございます。そういう前提でいきますと、子条約と今度の本条約との間の抵触する部分は子条約の方を優先させませんと、子条約の締約国に対しては条約違反ということになるということが残るわけです。したがいまして、本条約と子条約との締約国にずれがあるというところに問題の発端があるのだということに御理解いただきたいと思います。
#181
○抜山映子君 そうすると、大変細かい質問なんですけれども、新しい六法全書ができると子条約は残って、ちゃんと六法全書にも載ると、こういうように了解していいわけですね。
#182
○政府委員(枇杷田泰助君) 六法全書の編集者がどう扱うかわかりませんけれども、少なくとも子条約を破棄するとかという効果はこの条約ではないわけでございますので、したがいまして子条約というものはずっと我が国でも一つの条約として拘束力を持って存続することになるということでございます。
#183
○抜山映子君 ちょっとくどいようですけれども、それでは、先ほど御説明いただいたような文章で具体的にこれに取ってかわる表現では立法技術上不可能である、こういうふうに了解してよろしいわけですか。
#184
○政府委員(枇杷田泰助君) もっと詳しく長い文章で書けば、あるいはもう少しわかりやすい表現ができたかもしれませんけれども、簡潔に書けばこういうことで表現が足りているのじゃないかというふうには考えます。その中身を長い文章で書いても、果たしてそれで本当にわかりよくなるかどうかも自信がございませんけれども、これが一番簡潔にして表現できているというふうに考えております。
#185
○抜山映子君 もう少し検討していただければ法律家にもわかりやすい条文になるのじゃないかなという気がするんですが、もうちょっとお考えください。
 それでは、先ほど常居所地という概念がいろいろ質問の対象として出ました。例えば日本には四カ月ぐらい住んでいる、あとはもう転々とビジネスで諸外国を飛び歩いているというような一つの例ですけれども、これは当然常居所地になると思うんですけれども、大体月数でこれぐらいまでというようなことをお考えになっていますでしょうか。
#186
○政府委員(枇杷田泰助君) 具体的な月数とか年数とかということではお答えしにくいわけでございますが、継続してそこの場所にいるということが現にある、それからまた、いろいろな諸事情からそういうことが予想されるという場合には常居所地になるわけです。ただいまのお話の、日本に四カ月いてあと外国に行っているといいましても、それはまた日本に戻りながら、またいてまた出ていくというふうな関係に立つのか、あるいはAからB、BからCというふうにして、ずっと関係がないかによっても違うわけでございましょうが、ともかく扶養義務が問題になるその時点、その時点での生活環境の本体がどこかということで考えていくより仕方がないことでございますので、それはその人の職業とかそういうようなこともいろいろ勘案しながら、どれくらいいれば常居所地として認定できるかということで評価が違ってまいろうかと思いますので、四カ月ならばいいとか半年ならばいいとかというふうなことは、ちょっと一概には申し上げられないことだろうと思います。
#187
○抜山映子君 扶養義務者の範囲につきましては各国の立法によっていろいろだと思われます。大家族主義の国では扶養義務者の範囲が広い、個人主義の国では狭い、こういうことになるかと思いますが、主な傾向としてこうであるというところをお聞かせくださいませんか。
#188
○政府委員(枇杷田泰助君) ちょっと諸外国の立法をつまびらかにしておりませんけれども、大体、直系血族につきましては、これは基本的に扶養義務関係があるということは各国共通であると思います。傍系の関係で申しますと、兄弟姉妹まである一定限度で認めているという国もありますし、それから親族全般、その親族の範囲も我が国では六親等でございますが、そういうふうなもの全般に認めているところもあるし、また日本のように三親等までは、これは裁判所の判断で義務を負わせるようなことができている国もありますし、一概には言えませんけれども、ともかく直系血族関係とかそういうものについては基本的に扶養義務関係を認め、傍系関係についてはどちらかというとだんだんと狭めていくという傾向にあるのじゃないかという感じがいたします。
#189
○抜山映子君 ハーグの国際私法会議の諸条約でございますが、先ほど同僚委員も質問したのですけれども、もう一つ回答がすっきりとしていなかったので、再度お尋ねいたしますけれども、扶養義務に関する判決の承認及び執行に関する条約ですが、先ほどの回答では、これがなくても、現状のままでもそれほど支障は生じない、こういうようなお話がございましたけれども、扶養義務に関する判決の承認及び執行に関する条約の各条文を当たってみると、現状で解決できるよりさらに踏み込んで細かく扶養権利者を保護するような規定が散見されます。したがいまして、この条約の批准の方も急いだ方が望ましい、こういうことが言えると思いますが、いかがですか。
#190
○政府委員(枇杷田泰助君) 御指摘のような面があること、私ども否定するわけではございません。ただ、実際問題といたしまして、扶養の関係の渉外事件が日本の裁判所なり公的機関で判断されるというのは、両当事者が日本に住所があるというケースが多いわけでございます。外国の裁判所が日本で執行しなきゃならぬような関係にあるものというものはそれほどまだ多くないように思いますし、また日本の裁判所の関係が外国で云々というふうなことも、これまた裁判管轄権の問題にも絡んでまいりますので、それほど多くはないのじゃないかという意味で、多くこの準拠法は日本に在住している当事者間での渉外事件ですね、国籍を異にする人たちの間の問題というものを解消するのに役に立つわけでございます。したがって、そういう実体法の整備というものはかなり意味があるけれども、承認、執行の関係についてはその実体法的なことほどは需要がまだないという意味で、大方間に合っているというふうに申し上げたわけでございます。しかし、おっしゃるとおり、これからだんだん渉外関係出てまいりますので、外国との関係で相互に承認、執行が円滑にいくようにするという方向で考えていくべきことは、おっしゃるとおりだと思っております。
#191
○抜山映子君 先ほども同僚委員の回答に、国際結婚の数がここ二十年で二倍を超したというような数字もございました。そしてまた、その国際結婚した人たちが、地球も狭くなりまして、非常に世界的に動きも激しくなり、外国にいる扶養権利者が日本にいる扶養義務者に執行を求めるケースもふえてきつつあるということは当然想像されるわけでございます。したがいまして、やはりこの扶養義務に関する判決の承認及び執行に関する条約も検討を急いで、批准する日を早めねばならないと思いますけれども、再度御回答はいかがですか。
#192
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御指摘のような傾向にございますので、できるだけ早く検討を済ませて、こればかりじゃございません、ほかの関係もございますけれども、検討を進めてまいりたいと思っております。
#193
○抜山映子君 ただいま、ほかの条約もございますとおっしゃいました。並んでいるのを見るうちに、確かに国内法を即いじらないと動きのとれないものもあるようではございますけれども、例えば民事及び商事に関する外国判決の承認及び執行に関する条約とか外国における民事又は商事に関する証拠の収集に関する条約、これなどはそれほど国内法の検討に手間を要するものではないのでないかと思われますが、この点はいかがでしょうか。
#194
○政府委員(枇杷田泰助君) 身分法の分野におきましても、国際結婚等が多いし外国人の日本に在住する方が多くなったという面の変化がございますが、また財産的な取引の分野につきましても、国際的な取引が非常に活発になっておりますので、それに合わせまして、ただいま御指摘になったようなものについては必要性がかなりあろうかと思います。したがいまして、これらについてもできるだけ早く検討して批准をし、国内法を制定するという方向で進めなきゃいけないというふうに思っております。
#195
○抜山映子君 先ほど、アメリカ合衆国について、この条約の方が批准されていないのは各州によって法律が違うからだという御回答がございましたが、ヘーグの国際私法会議の構成国のうち、余り条約を批准していない国を見ますとカナダなんかが一つであるし、オーストラリアなんかも一つです。これもアメリカと同じ理由と了解してよろしいですか。
#196
○政府委員(稲葉威雄君) そのとおりでございまして、特にカナダはアメリカ以上に州権が強くて、外交的な関係での条約の締結については州の同意が要るというようなことになっておりまして、非常に条約締結が難しいということでございます。
#197
○抜山映子君 生活保護法の「保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。」と、こういうふうに書いてございますが、実際にこのようなケースがどれぐらいあるのでしょうか。これが一つ。
 それから、その第二項において「協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、保護の実施機関の申立により家庭裁判所が、これを定める。」、この家庭裁判所が定めた実際のケースはどれぐらいあるのでしょうか。これは予告してなかったかもしれませんが、もしそれがわかりませんでしたら、後で御回答いただけば結構かと思います。
#198
○政府委員(枇杷田泰助君) 私ども実態を必ずしもつまびらかにしておりませんが、厚生省に聞いたところによりますと、日本人である場合には若干例があるようでございますけれども、外国人が扶養義務者であるという場合に請求したという事例はないというふうに聞いておりますし、それから家庭裁判所に渉外事件として出てきたというケースはないというふうに聞いております。
#199
○抜山映子君 終わります。
#200
○中山千夏君 細かいことばかりになりますけれども、少し幾つかお伺いします。
 最初に、第二条を拝見しますと、「扶養義務は、扶養権利者の常居所地法によって定める。」というのが最初に出てきまして、それに続いて、そうやっても扶養を受けることができないときには「当事者の共通本国法によって定める。」、こういう順序になっていますね。これは何となく、まず当事者の共通本国法を先に持ってきて、本国法では扶養が受けられない場合に扶養権利者の常居所地法によるとした方が自然な感じがしますし、それから当事者にとって公平なのではなかろうかという気もするんですが、条約でもやはりこの順序になっていますね。この順序になっていることの意味というのが多分あるのだろうと思うんですが、それを聞かせていただけますか。
#201
○政府委員(枇杷田泰助君) これは、考え方によりまして、御指摘のように共通本国法を第一順位といいますか、第一段階で考えるというのも一つの考え方としてはもちろん成り立ち得ようかと思います。
 ただ、それよりも常居所地法をまず第一順位に持ってきたというのは、これはつまり、いわば生活に困っておる方が扶養を受けるという内容の権利でございますので、したがいましてその人が住んでいる地域、そこでのいわばレベルといいましょうか、考え方とかいうもので処遇をするのがその社会の中では一番妥当するのではないかというふうな考え方がありまして、そういういわば社会の中での生活実態、そういうものを第一次的に尊重すべきだということから常居所地法というのを第一段階に持ち上げた。ただその場合に、例えば経済的に豊かでないから扶養義務なんというものが余り認められていないというふうな、例えばそういう国があったとしたときに不利益を受けてはいけないから、だから第二段階、第三段階というものを考えていこうということでございます。
 したがいまして、本国法というよりもむしろ扶養というものの性質から、生活している社会、その中で妥当するそういう法律で規整するのが一番ふさわしいというのが共通認識としてあったというのがこういう条約になった理由であろうかと思います。
#202
○中山千夏君 なるほど、よくわかりました。
 それから次、第三条に移りますが、これは条約の方の第七条と関連をしているわけですね。この七条は「扶養権利者の請求に異議を述べることができる。」というところで言い切ってありまして、これが第三条の方にまいりますと、「異議を述べたときは、前条の規定にかかわらず、その法律によって定める。」と、その先に一歩踏み込んだ形になっていますね。これはどういうことなんでしょうか。
#203
○政府委員(枇杷田泰助君) 内容的には全く同じことでございますけれども、条約の方では異議を述べた場合にどうなるかということが書いてありませんので、したがいましてこの条約締結の中での議論でも、当然、述べた場合にどうなるかということは議論されておりますので、そういうふうな中身を国内法としては明らかにしておいた方がわかりがいいといいますか、明確になるであろうということで、その効果を決めたというだけのことでございまして、別に条約と違うことを決めたとかつけ加えたとかというつもりはございません。
#204
○中山千夏君 そうすると、条約を締結したほかの国では、国によって一歩踏み込んだ先の方法が違うというようなことも出てくるわけでしょうか。
#205
○政府委員(枇杷田泰助君) それは、その国でどういう国内法をつくるかという問題でございますけれども、一歩踏み込んで条約の趣旨に違うような国内法をもしつくったとすれば、これは条約違反になるわけです。我が国は条約の解釈と違わないことを国内法としてはわかりやすく書いたということでございまして、したがって我が国での国内法でございますので、殊に裁判所を最終的には念頭に置くわけでございますけれども、その裁判所でこういうふうなことでやるんだよということを決めておるわけでございまして、恐らく外国も、この条約の締結国については条約を守るという気持ちがある以上は、そう条約の趣旨と違うような形での効果を規定することはないだろうと思います。
#206
○中山千夏君 先ほどもちょっと橋本委員の御質問の中に出てきたことと関連するかもしれないんですけれども、ここに「異議を述べたときは、前条の規定にかかわらず、その法律によって定める。」とある、「その法律」というのは、扶養義務を認めていないところの当事者の本国法なんでしょうね。
 そうすると、現実に扶養が行われていれば訴訟は起きないのじゃないかと思うんですね。扶養がどうも行われていない、そのことに不満を持ったという場合に訴訟になるのだろうと思うんです。その場合、当事者の共通本国法には扶養義務がないというふうに規定してありますと、当然被告側はそれをもとに異議を述べるだろう、述べないということはまずないだろうと思うんです。ところが、扶養権利者の方は、常居所地法によれば扶養請求権があると認められているので訴訟を起こすわけですよね。そうしたところが、その人にはなじみの薄い当事者の共通本国法というのに基づいて異議を述べられて、そして扶養が認められなくなってしまう。それではちょっとこの扶養請求権利者の期待に反するのではないかという気がするわけなんです。
 ここはむしろ、傍系親族間または姻族間の扶養義務の準拠法については当事者の共通の本国法による、それがないときは日本の法律によるというぐあいになっていた方が合理的だという気がするのですけれども、いかがでしょうか。
#207
○政府委員(枇杷田泰助君) 扶養権利者の保護を貫きたいと思えば、もともとこの三条の規定は要らないわけでございます。ただ、縁の遠い親族間においては扶養義務者の立場も考えながら均衡をとろうということでこの規定を置いているわけでございますので、ただいま御指摘のように、まず第一義的に共通本国法にして、だめな場合に日本法によるということでは、やはり義務者に最後まで義務を負わせようという形になるわけで、ちょっとその点では三条の立法趣旨とは違うのではないかと思います。
 この異議の関係については、御指摘のように訴訟になれば、それは払っていない者に対する請求でございますから、任意の扶養をしない者でございますから、多分異議の申し立てをするだろうと思いますけれども、ただ、その裁判外で考えますと、そういうことで自分は共通本国法でいけば扶養義務がないのだから負わないよと言ってもそれは違法ではないし、それからまた、そういうことの主張をしないで何年間か扶養して、毎月幾らか出していたという場合がありますが、その場合に、後になって共通本国法からないのだと言っても、その前に払ったものが法律上の理由がない給付だから、不当利得として返還請求権が出てくるかというと、それはないわけです。
 それは前に、異議といいますか、そういうことを言わないで任意に払ったものについては、それはもう常居所地法によって義務があるものを履行したということになれば、これはもう不当利得の関係にはならない、返還はできないということに
もなるわけでございます。ですから、全くこれは意味がない規定とも言えないと思います。
#208
○中山千夏君 それから、次に第四条なんですが、この一項と二項の関係がややこしくて私よくわからないのです。これの二項の方ですが、別居した夫婦間、婚姻無効または取り消しの当事者間の扶養雑務、これは前項を準用するということですね。そうすると、例えば婚姻無効の場合、婚姻無効の当事者間の扶養義務は、離婚について適用された法律によって定めると、こういうことになるわけですか。
#209
○政府委員(枇杷田泰助君) それは婚姻無効について適用された法律という意味でございます。要するに、前項、第一項の場合には、離婚した当事者間の扶養義務はその離婚について適用された法律ということに決めておりますので、それを二項で準用しておりますということ。要するに、法律上の別居した夫婦間というのは、法律上の別居したその法律、それから婚姻が無効とか取り消しとかという場合には、その無効とか取り消しの根拠になった法律の国の法律という意味で書いておるつもりでございます。
#210
○中山千夏君 結構法律というのは、いつも拝見していると、しつこく間違いがないように細かく書いてありますよね。だから、これももうちょっと字数をけちらないで、どういうふうなのがいいか私はわかりませんけれども、扶養義務はそれぞれの適用した法律によって定めるとか、もうちょっとこう長く書いた方が親切じゃないかと思うんですね。確かに、「離婚について適用された法律によって定める。」、これ考えるととてもおかしなことになってしまうんですね。だから、常識で言えばそういうことはなかろうとは思うんですけれども、法律ですから、いつものように少ししつこく書いてもいいのじゃないかという気がしますが、どうでしょうか。
#211
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かにそういう面もあろうかと思いますし、法律はだれが読んでもすぐわかるような書き方ということが要請されるわけでございますが、一つには、妙な言葉でございますけれども、条文づくりの美学のようなものがございまして、大げさな表現でございますけれども、やっぱり法律の一つのスタイルもございますものですから、なるべく簡潔に書くという要請もございましてこういうことになっておるわけで、ただいまお話ございましたように、読み違えることはないだろうという、要するに離婚の法律を持ってくるというふうに、読み違えることはないだろうというふうな一つの気持ちがここにあらわれておるわけでございます。
 しかし、御指摘のような要素は、これから立法する場合に一つの重要な要素として心がけていかなければならないというふうには思っております。
#212
○中山千夏君 そうしますと、婚姻の無効の場合には、その婚姻を無効とした法律によって定めると、こういうことですね。
 そうすると、無効とした法律が一つの場合はいいと思うんですけれども、場合によっては、例えば男性の側の法律でも無効であった、女性の側の法律でも無効であったそういう二人が婚姻をしてしまったというような場合には、無効とした法律が二つできてしまうことにならないかと思うんです。その辺はどういうふうに考えておられるのでしょうか。
#213
○政府委員(枇杷田泰助君) 大変な難しい問題を提起されましたんですが、前提としてちょっと申し上げておきたいのは、我が国の法例では、その婚姻の無効とか取り消しとかというのは、婚姻の効力の関係での準拠法によって決するということになっておりまして、これが配分的適用主義に立っておるわけなんです。ですから、例えばA国の人とB国の人との婚姻が無効だとか取り消したとかという場合には、両方の法律を一応見まして、それで片方の法律で無効あるいは取り消し事由があれば、日本の裁判所はそこで無効の判決をしたり取り消しの判決をしたりするということに、なる。
 ところが、ただいま御指摘のように、両方の国で無効だという事実があるということになりますと、その場合にこの四条二項では、じゃ、そのときの扶養関係についてはどちらに行くかということになりますと二つの法律が問題になるわけでございます。実際問題といたしますと、その場合の無効判決とか取り消し判決とかというものがありまして、その判決の中でどっちかの法律によるというふうに書いてあれば、それによるということが実際上の処理としてはあり得るだろうと思います。どちらの法律でも無効ならば無効ということになりますので、実際の訴訟の形態から申しますと二つともそうだということは言わないで、片一方で無効だと。例えば片一方が日本法だという場合には、日本法の無効原因があるということを主張して無効判決をもらうということになります。
 そういう場合には、裁判所は日本の法律に基づいて無効判決をしたのだということが一応言えますので、その場合には扶養の関係も日本の法律だということが言えようかと思うのでありますが、たまたまその両方の法律を引っ張ってきて、いずれからしても無効であるというふうな判決をするとか、判決がなくていろんな客観的な状況から両方とも無効だということになった場合にどちらかということになりますと、これは大変難しい問題でございまして、実はこの国内法の場合でもその点についての手当てはいたしておらないわけでございます。解釈にゆだねるということになるわけでございますが、その場合の解釈といたしましていろいろな考え方が出てこようかと思います。
 一つは累積的適用説という考え方、これはA国、B国の両方の扶養関係の法律を突き合わせまして、そこで最大公約数といいましょうか、共通する部分、そういうもので考えていくべきだという考え方が累積的適用説ということになる。ただ、その場合には、どちらかといいますと、権利者にとっては不利に働くわけでございますね、最大公約数でございますから。ですから、それは条約とか国内法の考え方にはそぐわないのではないか。
 したがって、この国内法の考え方の基本には扶養権利者の立場に焦点を合わせて準拠法を決めていこうという思想があるのだから、そういう場合には要するに扶養権利者側の法律というふうに考えるべきではないかという説も十分に成り立ち得ようかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、この点については立法上の手当てをしておりません、なかなか立法するというのも難しい問題ございますので。したがいまして、こういう問題が起こるのは、一つはそういう配分的適用主義というものが起こる場合に生ずるわけであります。
 ですから、これからの国際私法の条約とかあるいは立法の傾向として、なるべく配分的適用主義というものをやめて、単一法の適用主義というものに切り変えていくべきではないかという考え方があるわけです。それが我が国の法例の全面改正の際に直ちに採用できるかどうかはわかりませんけれども、そういうふうな方向で行けば前提問題が消えてしまうということにもなるでありましょうし、そういうことをにらみながら考えていくべきじゃないかということでございまして、実は御指摘の問題は解釈にゆだねておるということで、明確でないということを申し上げざるを得ないわけでございます。
#214
○中山千夏君 わかりました。
 どうもありがとうございました。終わります。
#215
○委員長(二宮文造君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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