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1985/05/08 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第9号
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1985/05/08 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第9号

#1
第104回国会 法務委員会 第9号
昭和六十一年五月八日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十四日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     安武 洋子君
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     水谷  力君     藤田 正明君
     久保田真苗君     安永 英雄君
     安武 洋子君     橋本  敦君
 五月六日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     小笠原貞子君
 五月七日
    辞任         補欠選任
     小笠原貞子君     橋本  敦君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二宮 文造君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                大坪健一郎君
                土屋 義彦君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                抜山 映子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  鈴木 省吾君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  井嶋 一友君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   説明員
       法務大臣官房司
       法法制調査部参
       事官       但木 敬一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特
 別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る四月二十五日、久保田真苗君及び水谷力君が委員を辞任され、その補欠として安永英雄君及び藤田正明君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二宮文造君) 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は四月二十四日の委員会において既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○寺田熊雄君 この法案の第一条は相互主義の原則を冒頭に掲げております。相互主義が司法の分野でどの程度支配をしておるのかということを考えてみますと、まず国際犯罪の捜査共助法もやはりそういうものの一環ではないかと思うのです。この委員会で先般審議をいたしました扶養義務の準拠法に関する法律の基礎になっておりました準拠法に関する条約、これなどは相互主義の原則をむしろかなぐり捨てたというのを先般私どもこの委員会で経験したのでありますが、この際ちょっと法務当局の方で司法関係の分野で相互主義がどの程度適用されているだろうかということを御説明いただければと思います。
#5
○政府委員(井嶋一友君) この法案では、ただいま御指摘いただきましたように、相互主義の原則を採用しておるわけでございまして、この「目的」にもございますように、我が国におきまして外国の弁護士を外国法事務弁護士として受け入れる制度をつくりますことによりまして、そしてかつ相互主義をとることによりまして、諸外国において我が国の弁護士を受け入れる制度をより多く開かせようという趣旨でこの相互主義を採用しておるわけでございますが、ただいま御質問の、司法の分野において相互主義をとっておるのはどのくらいあるかという御質問でございます。
 ただいま御指摘がございました国際捜査共助法は、まさにその一つでございます。それ以外に司法の分野で相互主義をとっておりますのは、御案内のことと思いますが、まず民事訴訟法の二百条の規定がございまして、外国判決の効力を承認するかどうかという問題につきまして二百条におきましては、相互の保証があるときに限り外国判決の効力を承認するという規定がございます。
 それから、これと似たようなものでございますが、外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法という法律がございまして、外国裁判所の嘱託によりまして民事、刑事の訴訟事件に関し書類の送達あるいは証拠調べの嘱託ができることとなっておりまして、この嘱託がございますと日本の裁判所がその嘱託の趣旨に応じた事務処理を行うということになっておりますが、この法律におきましてもやはり一条ノ二におきまして、我が国の裁判所が当該国に嘱託をした場合には同じような便宜を与えてもらえるという条件がある場合に限り嘱託を受けるという規定になっておりまして、これもやはり相互主義を採用しておるわけでございます。
 それから、御指摘の国際捜査共助法と関連いたしますが、逃亡犯罪人引渡法という法律がございますが、これも外交ルートを通じまして逃亡犯罪人の引き渡し請求がありました場合、外務大臣がこの書類を法務大臣に送付するということになって、それから手続が始まることとなっておりますけれども、この規定におきましても、我が国が当該国に対して引き渡し請求をした場合に同じように引き渡しをしてもらえるという相互の保証があるときに限り外務大臣はその事件の処理をすることができるという規定になっておりまして、これもやはり相互主義を採用しておるわけでございます。
 そのほか、国家賠償法におきましてもやはり同じような相互主義がございまして、外国人が被害者である場合には、相互の保証のある場合に限り、国家賠償法を適用するということになっておりまして、これも相互主義を採用いたしております。
 さらに、破産法におきまして「外国人又ハ外国法人ハ破産ニ関シ日本人又ハ日本法人ト同一ノ地位ヲ有ス但シ其ノ本国法ニ依リ日本人又ハ日本法人カ同一ノ地位ヲ有スルトキニ限ル」という規定がございまして、これも同じような意味での相互主義を採用しておるものだというふうに理解をいたしております。
 その他に直接司法に関係しないものも多数ございますが、ただいま御質問は司法の分野でということでございましたので、その程度にとどめておきます。
#6
○寺田熊雄君 本法案は、当初はニューヨーク州のバーアソシエーションが日弁連の方に、リーガルコンサルタントが日本で営業ができるように何とかしてもらえないかという提案がなされたようでありますが、その後は直接、本法案ができます前は、もっぱらアメリカのUSTRが法務省の方と御折衝になったようであります。アメリカの方は、弁護士資格を各州が付与することになっておりますところ、ニューヨーク州でありますとかワシントンDCでありますとかミシガンでありますとか、何か三州しか日本の弁護士資格を持つ者がアメリカでそうした法律事務に従事することができないというようになっておるように私ども見ておるのでありますけれども、アメリカの州の中でわずかに三州しかそういうふうに門戸を開いていない合衆国が日本に対してそういうサービス業の自由化を求める資格が果たしてあるのだろうかというような感じもしないわけではないのであります。
 しかし、現実にはUSTRが法務省との間の折衝の相手方になったようであります。その点はどうでしょうか。わずかに三州しか門戸を開いていないその国が日本に自由化を求めるどうも余り資格はないように思うんですが、それはともあれ、この法案の内容につきましてはアメリカのUSTRが、職務範囲でありますとかあるいは共同経営等の問題を禁止しております問題とか、そういうことに関して了承をしたのでしょうか。やむを得ず了承したとしても、余り快く了承したのではないのじゃないかというふうにも思われるのであります。
 それで、日弁連のこれは百四十七号、六十一年四月一日付の「日弁連新聞」を見ますと、EC駐日代表部オランダ大使ローレンス・ヤン・ブリンクホルスト氏の意見が載っております。このブリンクホルスト氏の方は三つの点について不満を述べておるようであります。第一点は、五年以上の実務経験を要求するという制限について。第二点は、日弁連が外国弁護士を恣意的に扱いはしないかという懸念を覚えるという点。第三点は、日本の弁護士と外国弁護士との共同経営を禁止している点。日本の弁護士を雇用し得ないという点。さらに職務範囲が原則として自国法に限定されている点。そういう点が不満だというような意見を述べておるようであります。そうすると、ECの方は本法案についてかなり不満があるのではないかというふうにも思われるのでありますが、それらの点をちょっと御説明いただけますか。
#7
○政府委員(井嶋一友君) 幾つかの点に言及をされましたので、言及されました点につきまして御説明を申し上げます。
 まず、アメリカにおきます現在の状況が三州しか開いていないということでございますが、御指摘のとおり現時点ではニューヨーク州、ワシントンDC、ミシガン州、この三州が外国弁護士を受け入れる制度を持っておるという州でございます。そういった背景の中でUSTRが自由化を求めるのはいかがなものかと、こういう御指摘がございましたけれども、USTR自身少しでも多くの州がやはり外国弁護士を受け入れる制度を持つべきであるという考え方を持っておりまして、私どもも当然のことといたしまして、アメリカ合衆国との関係におきまして相互主義を適用するにつきましてはできるだけ多くの州が開くことが必要であるという主張を基本に据えまして交渉に当たってまいったわけでございます。その点につきましてはUSTRも十分理解をいたしておりまして、弁護士資格は各州単位で定められておるものでございますので、連邦政府といたしまして権限がないことは仰せのとおりでございますけれども、やはり連邦政府としての責任におきましてできるだけ多くの州があくように努力をするということを私たちにも表明をしておったわけでございます。
 そういった努力が最近におきましてミシガン州あるいはワシントンDCが開いた一つの理由であるというふうに思っておるわけでございますが、現在アメリカにおきましてはこの三州以外にカリフォルニア州それからハワイ州、この二州が現在受け入れ制度のドラフトを裁判所、弁護士会等で検討をいたしておりまして、私どもが得ております情報では、もう間もなく、恐らく夏前にはこの二州が規則を改正して門戸を開くのではないかと言われておるわけでございますが、これなどもやはりそういった私どもの要望を受けました米国政府の努力の一つのあらわれかとも思いますし、さらに私どもがこの受け入れ法案を作成して国会に上程しておるというこの状況が一つのインパクトになってアメリカにもそういった動きが出ておるということのあらわれではないかというふうに考えておるわけでございます。
 それから、米国あるいはECがこの制度につきましていろいろ要望をしてまいったことは御指摘のとおりでございます。
 米国の要望につきましては非常に多岐にわたっておりますけれども、主な点を申し上げますれば、まず相互主義は採用すべきではない、もし採用するとすれば米国のような連邦政府の場合には州単位の相互主義とすべきである、こういうような主張。それから、外国法事務弁護士の資格要件として五年の実務経験を要求することは厳格に過ぎるというような主張。あるいは資格の付与をする機関は日弁連では困る、やはり政府が所管すべきであるというような主張。さらには、外国法事務弁護士を監督する機関としても日弁連では困る、政府がするべきであるという主張。さらに職務の範囲につきましては、原資格国法に限るという我々の日本側の考え方は狭さに失する、日本法とまでは言わないけれども、外国法全般をやらせるべきだという主張などがございます。
 さらに、我が国の弁護士との関係と申しますか、雇用あるいは共同経営の禁止といったものもいわゆる法律サービスの向上を図るという見地からすれば逆行ではないか、もっと共同してやれるようなシステムにすべきだ、こういうような主張でございます。さらに、アメリカにおきましては弁護士の業務形態がローファームという一つの組合形式の大きな事務所によって運営されておるという形態がございますが、こういったローファームの名前を日本における活動の際に使えるようにしてほしいというような主張。あるいは日弁連内において登録審査あるいは懲戒といったようなものが行われるについてはできるだけ公平性あるいは透明性が確保できるようにしてもらいたいといったような主張。その他たくさんございますが、そういったさまざまな主張があったわけでございます。
 私どもは、このアメリカの主張につきましては実務者協議を通じましてとれるものはとる、とれないものはとれないという基本的な態度で協議に臨んでおったわけでございまして、他方日弁連との間におきましても取り入れるべきものは取り入れようという形で日弁連との検討会で協議を尽くしたわけでございまして、日弁連が策定しました制度要綱あるいはそれを受けてつくりましたこの法案におきまして、そういったアメリカの要望につきまして幾つかの点におきましてこれを取り入れ、制度化しておりますが、とり得ないものはだめだという形で最後まで説得を続けたわけでございまして、そういった意味で彼らの要求は十分満たされてはいない点がございますけれども、委員御指摘のように、やはり大局的見地からできるだけ早く制度を開くことが大事だというような観点であろうと思われますが、この法案を国会に上程するにつきまして、実務者協議はこれで終了しようという点で合意ができたわけでございまして、いわば不満を残しつつも大筋において大局的見地から了承したというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。
 それから、ECの関係におきましては、ただいま委員御指摘になりましたように、実務経験を五年以上という要求は厳しい、あるいは日弁連の所管に入るのは困る、さらに雇用、共同経営を認めるべきだ、それから職務の範囲がやはり外国法全般について認めるべきだ、こういう四つの主張があるわけでございまして、これは現在でもこの点につきましては本法案につきまして不満を表明しておるわけでございます。しかし、この四つの点につきましては先ほど御説明しました米国の要望の中にも含まれておるわけでございまして、そこは重なっておるわけでございますけれども、この四つの点はいずれも、日本の制度として今回策定いたしましたこの法案の考え方というのはまことに法案の基本をなす部分でございまして、これを要望どおりに取り入れるということは、日本の司法制度との整合性あるいは日弁連の総会の意思といったもの等を考えまして、とてもとることができないという結論に達したものばかりでございますので、そういった意味でそれぞれの合理性を説明しながら説得をしておるわけでございます。
 ECにつきましては、法案を策定しました後にECの八カ国の大使館の代表を招きまして法案の説明会などもいたしたわけでございます。その際、若干誤解に基づく不満といったものもございまして、そういった点につきましては説明によってある程度解消した部分もございますが、基本的にはやはり四点について不満を表明いたしております。しかし、これは私どもとしては、この法案上重要な骨格をなす部分でございまして、動かすわけにはいかないという形で突っぱねておるというような状況が現在の状況でございます。
 しかし、施行するまでにつきましては、摩擦があってはいけませんので、できるだけ日本の制度の真意と申しますか、制度の考え方といったものをもっとPRし、説得し、スムーズな施行に移りたいというふうに考えておるわけでございまして、そのための努力はさらに続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#8
○寺田熊雄君 よくわかりましたけれども、ただ一つだけなかなか私どもの考え方に合わない面があるのは、アメリカの方が日弁連の監督下に外国法事務弁護士を置くという点についてオブジェクションを出したこと。普通に考えますと、例えば弁護士は自治の制度を持っておる、ところが司法書士は法務大臣の監督を受ける、税理士は大蔵大臣の監督を受ける、そういうのはむしろ業界としては自治権の方を希望するように日本人的感覚では思われるのでありますが、かえってアメリカの方が、しかも民主主義的な権利を大いに主張しがちなアメリカが外国法事務弁護士について日弁連の監督よりもむしろ法務大臣の監督を望むというのは何か理解しがたいものがあるんですが、これはやはり日弁連が同業者意識でいびってくるのじゃないかというようなことを考えて恐れたのか、その辺のところをちょっと御説明いただけますか。
#9
○政府委員(井嶋一友君) 米国におきまして弁護士の資格の認定あるいは業務の監督といったものは、御案内のとおり各州の裁判所が行っているのが大半の州でございます。弁護士会といいますか、つまり自治的に相互に監督し合うというような形をとっている制度はアメリカにはございません。そういった意味で、まず我が国独特の弁護士会の自治といったものに対する理解がなかなかいかない。やはり委員仰せのように、弁護士会あるいは日弁連というのは一つの業界団体ではないかと、こういうふうに映るのではないかと思うわけでございます。
 言うなれば、彼らが協議の際に申しましたけれども、競業者である、競業者の団体に監督されるというのはおかしいと、こういうような考え方でございますが、その背景には恐らく、米国の制度から見まして、どうも自治でもってお互い自律し合って職務の規律をし合おうというような考え方には非帯に奇異な感じがするのではないか。そういったことが根っこになって、御指摘のような懸念もなかったわけではないとは思いますけれども、日弁連の所管に入るということについては当初相当抵抗したわけでございます。
 しかし、これも日本の司法制度の中、特に弁護士制度というものが戦後、弁護士会の自治ということで形成されてきておる、これは弁護士の問題というのは弁護士自治で処理するのが日本の司法制度であるということをるる説明し説得をしました結果、それはわかったということで了解をしたわけでございまして、おっしゃるように当初は相当強い異論を持っておったということでございます。
#10
○寺田熊雄君 それから、本法案の成立によって我が国の弁護士の外国への進出が果たして今後に期待し得るであろうかどうか。そういうようなねらいもあるのだというような御説明がありました。しかし、どうでしょうかね、目下の情勢でそういうような期待がありますか。近き将来、日本人が大いに外国にリーガルコンサルタント、西ドイツはレヒツバイシュタントですか、それからフランスはコンセイユ・ジュリディック、いろいろそういうようなものとして進出する可能性がこの法案によって開けるのかどうか。その点、御説明いただけますか。
#11
○政府委員(井嶋一友君) この法案を策定いたしました趣旨は、この資料の提案理由説明にも書いてございますとおりでございまして、近年におきます我が国と諸外国との人的、物的交流の活発化に伴って国際的な法律事務が増大をしておる、今後もこの傾向がますます増加拡大するであろう、そういう情勢に対応いたしまして我が国における外国法のサービスの充実を図るとともに、諸外国における日本法のサービスといいますか、日本法の正確な普及と申しますか、そういった観点から外国へも我が国の弁護士が進出するということを制度的につくり上げて、国際的な法律事務の増大、拡大に対応すべきであるという考え方からこの相互主義を採用して本制度をつくり上げたということでございます。
 そういった意味でこの法律は二つの目的を持っておるわけでございますから、諸外国における日本法に関するサービスの充実向上といったものも目的としておるわけでございますが、御指摘のように、それではそのような需要があるのだろうか、将来見通しはどうかと、こういう御指摘でございます。
 現在、我が国の弁護士で外国におきまして活動している者はどのくらいあるだろうかということを考えてみますと、これは五十九年の外務省の調査でございますので若干古うございますけれども、米国の弁護士資格を取得して米国で活動しておる我が国の弁護士、これは当時の調べでは六名でございます。さらに、米国の弁護士のトレーニーあるいはクラークとして活動している者が約十名おりました。それから、我が国の弁護士資格は持っておりませんけれども、米国に留学をいたしまして米国の試験を受けまして米国の弁護士資格を取って活動している日本人が当時十一名おりまして、ニューヨーク州とかカリフォルニア州とかワシントンDCとかで活動をしておるということが調査結果で判明しておるわけでございます。
 それから、ヨーロッパにつきましても、これは数は少のうございますけれども、英国あたりに数名活動している人がいるというふうに承知をしておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、現在の状況はそのような非常に微々たる状況でございまして、外国における日本法に関する法律事務の取り扱いといったものが、日本人の手によってほとんど処理されていないという現実があるわけでございます。しかし、先ほど申しましたように、国際的法律事務が増大いたしますれば、当然外国におきましても日本法に関するサービスと申しますか、法律事務の需要といったものがないはずはないわけであります。また、それがこれからも拡大していくだろうと考えます。そういった場合、どういった人たちが現在その担い手になっているのだろうかと考えますと、結局は外国の弁護士あるいは外国に進出している我が国の企業の法務部といったもの、そういった人たちが中心になって外国において日本法のいわゆる法律サービスをといいますか、法律情報の提供と申しますか、そういったことをやっておるのが現実の姿だというふうに考えられるわけでございます。
 しかし、我が国と外国との人的、物的な交流といったものは、数値的に見ましても近年どんどん拡大をしておるわけでございます。また、我が国の法人が外国に行っております数も相当数に上るわけでございます。しかも増加をしております。さらに、外国に進出しております企業に勤務する職員として外国に出かけるという人員もふえておるわけでございまして、そういった邦人の増加に伴いまして、当然その人たちを取り巻く法律関係の中で日本法に関する事務といったものが必要な場面といったものも起こっておるはずでありますし、またこれからも起こるであろうと思われるわけであります。
 そういった意味で、そういった国際的な法律事務の増大に対処するためには、やはり今のような現状では不十分である。したがって、相互主義を採用いたしまして、外国が我が国の弁護士を受け入れる制度をより広くつくらせるということによりまして制度的に弁護士が出ていける道を開くということがまず大事であろう。そこで、外国に出かけた我が国の弁護士が今言ったような外国における日本法のサービスの需要にこたえるべく活動してもらうことがこれからの国際社会に対応するについてはぜひ必要なことではないかということでございますし、また、これからそういった道が開かれれば現在の弁護士がすぐ何人行くかということはなかなか想像しにくうございますけれども、そういう道があるということで、これから法曹を志す人につきましてもそういった道の選択もできるわけでございますし、いろんな意味でその制度を構築することがまず大事だろうというふうに考えておるわけでございます。
 さらに、外国に出ております我が国の企業あるいは我が国の邦人は申すに及ばず、外国から我が国に進出したい企業にとりましても、外国におきまして日本の弁護士による日本法のサービスを受けるということが必要であるということも言われておるわけでございます。そういった外国の企業あるいは外国の個人の要望といったものにもこたえるという意味からもこの制度はぜひ必要であるし、またそういった制度を構築することがまずファーストステップとしては大事なことではないかというふうに考えて立案をしておる次第でございます。
#12
○寺田熊雄君 本法案は外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用することを禁じております。しかし、日本の弁護士が外国法事務弁護士あるいは外国の弁護士それ自体を雇用しても一向差し支えないというふうに思われるんですが、これはこういうふうに解釈していいのでしょうね。
 それから、これによって四十九条第二項を事実上骨抜きにすることも可能ではないだろうかというふうにも考えられるように思いますが、この点どうでしょうか。
 それから、これは衆議院で法制部長が答弁しておられるところを見ると、事務所の共同使用や事務所間の恒常的提携関係は別段禁止されておりませんというような答弁をしておられる。これも私は結論としては大変結構だと思いますが、これも場合によっては四十九条第二項を事実上骨抜きにすることも可能ではないだろうかというふうに考えますが、その点どうでしょうか。
#13
○政府委員(井嶋一友君) この法案の四十九条の第二項におきましては「外国法事務弁護士は、組合契約その他の契約により、特定の弁護士と法律事務を行うことを目的とする共同の事業を営み、又は特定の弁護士が法律事務を打って得る報酬その他の収益の分配を受けてはならない。」と規定しておるわけでございまして、仰せのとおり、我が国の弁護士が外国法事務弁護士を雇用することを禁止はいたしておりません。これは、むしろ我が国の弁護士が外国法事務弁護士を雇用いたしまして共同した形で国際的法律事務に対処することがやはり現在のニーズによりマッチしたものだろうというふうに思うわけでございまして、これを禁止する理由も必要性もないというふうに考えておるわけでございますが、それが骨抜きになるのではないかという御指摘でございます。
 おっしゃる意味は、要するに日本の弁護士が外国法事務弁護士を雇用するといっても、実態は逆転して外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用したような格好になって、結局外国法事務弁護士に禁止しております雇用の脱法になるのではないか、こういう御指摘ではないかと思うわけでございますが、それは確かに懸念としてはそういった懸念がないわけではないと思います。また、現に日弁連内での議論におきましても、そういった懸念が表明された場面もございました。しかし問題は、こういった外国法事務弁護士あるいは弁護士の業務の監督は日弁連が行うわけでございますけれども、日弁連がそういった業務活動について監督をしっかりすればよいという話になるわけでございます。
 特に、御質問の場合は弁護士が外国法事務弁護士を雇用する形でございますから、我が国の弁護士がしっかり主体性を持っておやりになれば、そういった骨抜きになるような実態にはならないというふうに思いますし、さらに当該弁護士に対する監督といったものは日弁連がしっかりおやりになれば、それなりに効果を発揮するのではないか。むしろそういったペアを組ませることによるメリットの方が大きいということで、日本の弁護士が外国法事務弁護士を雇用することを禁止しなかったわけでございます。
 外国法事務弁護士に禁止をしておりますのは、今申しましたように、四十九条二項の共同経営と、それから一項の雇用と、この二つでございまして、それ以外に例えば適正な経費分担によります一つの事務所の共同使用でございますとか、あるいは恒常的な形での独立した事務所同士の提携関係と申しますか、そういったものは禁止をしていないわけでございますが、これも要は運用の問題だと思います。やはりそれぞれ独立した事務所同士がそういう関係に入って事務をスムーズにするために行う形態でございますから、それぞれが独立性を保ってお互いを尊重し合いながらやっていけば、骨抜きになるような実態にはならないだろうというふうに思っておりますし、またそう期待をしておるわけでございます。
 さらに、その点につきましては日弁連の監督も十分行わなければならないという点はもちろんございますけれども、相互の信頼によって適正に行われ、そしてそのメリットを活用するということの方がより大事なことではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
#14
○寺田熊雄君 第三条一項三号の必要性の問題でありますが、外国法事務弁護士が原資格国法または特定第三国法以外の法について、殊に日本の法について法的意見の表明を現実に行う場合、これは当事者間の問題だから事実上制約することは到底不可能だと思われるんですね。私ども知り合いの弁護士にどうだろうかと聞きますと、実際上はこれはもう制約が不可能だと自分は思うと言うのであります。法制部長のおっしゃるのには、日弁連の監督が十分であれば何とかできるのじゃないだろうかというお話のようでありますが、日弁連の監督もそこまではなかなか事実上及ばないだろうと考えるのであります。この点どうでしょうか。これは、法的意見の表明まで、殊に文書によらざる法的意見の表明まで禁止する必要があったのだろうかというような懸念を持ちますが、その点どうでしょうか。
#15
○政府委員(井嶋一友君) 法案の細かい解釈に関連する御質問でございますが、この法案につきましては、その主任として法案作成に当たりました参事官がここに同席いたしております。私が説明いたしますより、さらに細かくと申しますか、行き届いた御説明ができるかと思いますので、参事官に説明をさせることをお許しいただきたいと思います。
#16
○説明員(但木敬一君) 委員御指摘のとおり、本法案の第三条一項三号では「原資格国法以外の法の解釈又は適用についての鑑定その他の法的意見の表明」を禁止しているわけでございます。委員の御質問の趣旨は、そういう禁止があってもその禁止を外国法事務弁護士が遵守するかどうか疑わしい、また遵守しなかった場合にこれに対するチェックということが非帯に難しいのではないか、こういう御指摘かと思われます。
 まず、これを禁止いたしました理由でございますけれども、これはいわゆる制度的に保証されている法律サービス、その法律サービスが制度的に良好であることが保証されている法律サービスを日本で提供させる、こういう趣旨でございます。いわゆる原資格国法以外の法につきましては外国法事務弁護士の能力について何ら制度的保証がない、特に御指摘の日本法というようなことになりますと、全くこれについては保証がない外国法事務弁護士が誤った日本法の解釈、適用に基づいて法的意見を表明し、依頼者を混乱させ、あるいは相手方を混乱に陥れるというようなことになった場合には、やはり外国法事務弁護士を受け入れたことによって生ずる弊害というものが出るのではないか。そこで、本法ではこれを禁止したわけでございます。
 まず我々が考えましたのは、外国法事務弁護士に対してこうした禁止規定をはっきり明示しておけば彼ら自身が法を遵守することを期待することができるということがまず第一でございます。やはり外国において弁護士資格を持っておるわけですから、それなりの倫理基準というものも持っておりましょうし、法に対する遵法精神というものもやはり一般人よりは高いことが期待できるのじゃないか。そういたしますと、こうした禁止規定を設けることによって外風法事務弁護士が原資格国法以外の、自分が何らオーソライズされていない第三外国法あるいは日本法について法的意見を表明しないであろうということを期待しておるわけでございます。
 万一この禁止に違反いたしまして外国法事務弁護士が日本法等につきまして法的意見を表明した場合には懲戒の対象となり、あるいはそれが書面による鑑定というようなことでございますと罰則というようなことにも及ぶわけでございますが、その端緒といたしましては、やはり現にそうした法的意見の表明によって混乱しあるいは混乱させられた当事者からの訴え、あるいはその交渉に立ち会いました我が国の弁護士あるいは他の外国法事務弁護士、これらの者が把握した事実によって調査が開始されるのではないか。調査が開始されますれば、懲戒手続あるいは刑事手続それぞれにのっとって適正な調査がなされ、懲戒、刑罰を科す等の諸権限の行使が適正になされるのではないかということを期待しているわけでございます。
#17
○寺田熊雄君 あなた方のおっしゃることはよくわかるんです。原則としてそういうふうにしないと、余り日本法についてうんちくのない者がたやすく依頼者の質問に応じて答えられちゃ困ると考えられる。間違ったことを教えて大変な被害を依頼者に与えるようなことがあっちゃ困ると、そのお気持ちはよくわかるんです。
 ただ、外国法事務弁護士でも長い間日本におって日本法について勉強をした人間は、民法の大原則などというようなものはたやすくこれは修得することができる。外国法について、本国法についていろいろと質問を受けて答える間に、はて日本法はどうなっておりましょうかという場合に、日本法については一切私は発言できませんと言って口を閉ざしてしまうというのもちょっとどうも余りしゃくし定規なんで、日本法ではこうなっておりますと言ったって、それで捕まえられちゃかなわない、余り厳し過ぎはしないかということがあるんです。
 これは、例えば日本でも僻遠地に行きますと、あなた方も御存じだと思いますが、司法書士なんかがよく民衆の法律相談に応じますね。それは本当はいけないのかもしれないけれども、弁護士のところへ駆けつけていくいとまがない、費用もない時間もないというような場合に司法書士がある程度弁護士の代役を務めるということも、我々としても目をつぶらなければならない場合もあるわけで、弁護士がそう言うとちょっとおかしくなるけれども、しかし現実はそうなんです。この場合でも余りしゃくし定規にこの意見の表明を禁止するというのはどうだろうかというふうに考えたんです。どう思われます。
#18
○説明員(但木敬一君) 委員御指摘のような事実上の問題というのは確かに起こり得ると思われます。ここで禁止しておりますのは、例えば日本法の解釈または適用についての法的意見というものにまで高められたものを禁止しているわけでございまして、一般人でも直ちにできるような、例えば六法全書の民法の条項を指し示して、日本法ではこういうことが書いてあるようですねということが果たして法的意見の表明になるか、解釈、適用について法的意見を表明したことになるかというようなことにつきましては、確かにその場その場のその状況とかあるいはどの程度の解釈、適用というところまで踏み込んでいるのか、それが法的意見の表明として受け取られるかどうかというような事実上の認定の問題はあろうかと思います。
 ここで禁止しておりますのは、あくまでも日本法等、原資格国法以外の法の解釈または適用についての法的意見という認定ができるものについては禁止をいたします、こういうことでございまして、具体的にある行為がそれに当たるかどうかはやはり個々具体的な事実関係で決まっていくものと考えております。
#19
○寺田熊雄君 それはその程度にしておきましょう。
 それから、この三条の一項の四号、これがちょっとわかりにくいので、説明していただけますか。
#20
○説明員(但木敬一君) 委員お尋ねの第三条第一項第四号は、これは外国の公権力の行使の一態様を禁止したものでございます。我が国におきましては、例えば民事訴訟法百六十二条では「送達ハ執行官又ハ郵便ニ依リ之ヲ為ス」、また二項では「郵便ニ依ル送達ニ在リテハ郵便ノ業務ニ従事スル者ヲ以テ送達ヲ為ス吏員トス」というような形で、はっきり送達業務というようなものは公権力の行使として考えておるわけであります。ところが、諸外国におきましては、必ずしも日本と同じ考え方ではありませんでして、例えば弁護士等の私人が訴状の送達をし、あるいは場合によっては召喚状の送達をするというようなことが認められている国もあるわけでございます。これらの国から来た外国法事務弁護士は、それが一体公権力の行使であるのかないのかわからないのではないか。もし仮に公権力の行使であるとすれば、一般原則によって当然外国法事務弁護士はそれを行使することはできないわけでございますが、国によってはそれが公権力の行使ではないように扱われている国もございますので、注意的にこれを書いたものでございます。
 したがいまして四号は、外国の裁判所または行政庁が発する手続上の文書の送達を外国法事務弁護士が行ってはいけないという規定でございまして、例えば外国法事務弁護士が依頼者のために外国の裁判所に訴状を提出するというような行為を禁止しているものではございません。
#21
○寺田熊雄君 それから、第三条の本文、「外国法事務弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、原資格国法に関する法律事務を行うことを職務とする。」、この法律事務の範囲がちょっとやっぱり私も疑問に思ったんです。例えば税法に関する解釈、適用に関する問題、あるいは税法に関する鑑定、特許あるいは特許問題そのものに対していろいろの相談を受けるあるいはその鑑定をすると、これは日本では弁護士は税理士の職務を行い得る、当然に特許の事務も行い得るということで、これは問題は全くないですね。それから、税法に関する鑑定をすることもやはり法律事務であることには間違いない、特許法またしかり、そういうふうに考えますと、この法律事務所というのは非常に概念内容が広いのじゃないだろうかというふうに考えられる。そこで、そういう点ちょっと説明していただくとありがたいんです。
#22
○説明員(但木敬一君) 法律事務という言葉でございますが、これは現行弁護士法の第三条第一項あるいは第七十二条、第七十四条の第二項等において使用されている言葉でございますし直接これを定義する規定は弁護士法自体にはございませんが、昭和三十九年九月二十九日の東京高裁の判決では、鑑定、代理、仲裁、和解のほか法律上の効果を発生または変更する事項の処理を指すというふうに定義づけられておりまして、極めて広い概念であろうと思われます。したがいまして、委員御指摘のとおり、我が国の税法に関する解釈あるいは鑑定、特許法についての解釈等はもちろん法律事務に当たってくるのではないかというふうに考えられます。
#23
○寺田熊雄君 そうしますと、外国法事務弁護士は外国法に関するあらゆる個域の法律について法律相談、鑑定等を行い得ると、こういうことになりますね。
#24
○説明員(但木敬一君) そのとおりでございます。
#25
○寺田熊雄君 それから、複数の国の弁護士資格を持つ者は当然に外回法事務弁護士として複数の国の法律に関する法律事務を扱い得ると、こういうことになりますね。
#26
○説明員(但木敬一君) 複数の国の弁護士資格を持つ者は、結論としては複数の国の法律事務を取り扱い得ることになろうかと思います。ただ、その道筋はいろいろ考えられるわけでございまして、例えば資格を有し、かつ二つの国でそれぞれ五年間づつ実務経験があるというような非常にまれなケースかと思いますが、そういうケースの場合には承認が二つというようなこともあり得るかもしれません。ただ、実際問題としては、恐らく資格を有し、かつ実務経験五年以上を踏んだその国を原資格国としての承認申請がございまして、それを承認いたします。そして、もう一つの資格を有する国につきましては第五条にございますいわゆる法務大臣の指定を受けて、そして日弁連に備えられた外国法事務弁護士名簿の登録にその指定法を付記するという方法で、指定法を取り扱うことができる。指定法によって取り扱える範囲は原資格国法とほぼ同一の範囲でございますので、それによって、申請者の原資格国法とそれから指定法というものによって二つのそれぞれの国の法律事務が行えるようになるのではないかと、かように考えております。
#27
○寺田熊雄君 ただ、そうしますと、何か非常にまれに見るような優秀な法律家が例えばイギリスのバリスターの資格を持っておる、それからフランスのアボカの資格を持つ、それで日本にやってきてアメリカ法についても非常に造詣が深いと、イギリス法、フランス法、同時にアメリカ法もやりたいという場合に、今のあなたのお話だと何か制約を受けるような感じもするんですね。
 もともと弁護士資格を持って五年以上それぞれやれば当然に日本で外国法事務弁護士もやれる、それからアメリカ法の造詣が非常に深いのだというならば、第三国法としてアメリカ法を――アメリカ法といってもそれはどこかの州になるだろうけれども、そういうあれを許してやってもいいのじゃないですか。
#28
○説明員(但木敬一君) その点につきましては本法案の第十六条に法務大臣による指定法の基準がございます。十六条の一号「特定外国の外国弁護士となる資格を有する者であること。」ということが一つの基準でございます。これはどういうことかと申しますと、例えばイギリスのソリシターとして五年以上の経験を積んでいる者が同時にニューヨーク州のバーエグザミネーションを受けて合格しているというような場合には、この十六条の一号によって法務大証がニューヨーク州法を指定するわけでございます。
 別の基準は二号にございまして、これが委員御指摘の、造詣が深い者に対して法務大臣による指定を可能にしているものでございます。二号は、「特定外国の外国弁護士となる資格を有する者と同程度に当該特定外国の法に関する学識を有し、かつ、その法に関する法律事務の取扱いについて五年以上の実務経験を有する者であること。」とされております。これは、例えばニューヨーク州の弁護士でここで五年以上の経験を持っている者がフランスに留学しておった経験がございまして、そこのロースクールを出た。ところが、フランスでは弁護士となるのが国籍を問題といたしますので、残念ながらニューヨーク州の人間ではフランスのアボカになることはできない。そこで、そのニューヨーク州の弁護士が、私はフランスのある大学に留学してロースクールを卒業しました、私の成績程度の者はみんなフランスの司法試験に受かっておりますというようなことが証明されたような場合には、そのニューヨーク州の弁護士がニューヨークにおいてフランス法を五年ぐらい扱っているという実態がありますれば、法務大臣はこのニューヨーク州の弁護士に対してフランス法の指定をするという仕組みになっておるわけでございます。
#29
○寺田熊雄君 今あなたのおっしゃるようなことだと、特定第三国法の指定というのが二つ以上にわたるということも考えられるということになりますか。
#30
○説明員(但木敬一君) もちろん考えられることになります。
#31
○寺田熊雄君 それから、特定外国法じゃなくて、原資格国法として二つ以上のものを認めるということはどうでしょう。
#32
○説明員(但木敬一君) これは冒頭に申しました極めて希有な事例かと思うんですが、ニューヨーク州でまず司法試験に受かりまして、ニューヨーク州で五年間実務経験をした、それから次にイギリスに参りまして、イギリスのソリシターの司法試験を受けまして、ソリシターとして五年間実務経験を積んだということになりますと、イギリスのソリシターの資格でも法務大臣の資格承認を受けることができますし、それからニューヨーク州の弁護士としても資格承認を受けることができるということになろうかと思われます。
 その場合には、観念的には法務大臣による二つの承認ということになろうかと思いますが、これはまた日弁連への登録の段階では、もちろん登録は対人的なものでございますから、これは一本化されるということになろうかと思います。その段階では一人の外国法事務弁護士が二つの原資格国法を持つというような事態も生じるであろうということになろうかと思います。
#33
○寺田熊雄君 我々の聞くところによると、東京では非常に渉外弁護士が多いということを聞いております。本法案が可決され施行された場合に、そうした渉外弁護士への影響はどういうものだろうかということを考えますが、これはどうでしょう。
#34
○政府委員(井嶋一友君) 我が国の弁護士の中でいわゆる国際的な法律事務を取り扱っておりますグループを渉外弁護士というわけでございますが、この数は三百人とも言いますし五百人とも言われておりますが、いずれにいたしましても、ここ十数年、数は伸びてきておるわけでございます。
 この渉外弁護士は、事柄の性質上大都市に集中をしておるわけでございまして、東京、大阪といったようなところに主に事務所を構えて活動しておられる方々でございます。しかし、いずれにいたしましても三百ないし五百という数でございまして、これは全体から見ますれば、やはり現在の国際的法律事務の需要といったことを考えますと、まだまだ不十分であるというふうに言われておるわけでございますけれども、まずそういった現実の中へ外国法事務弁護士が入ってまいるわけでございます。
 どのような影響があるだろうかという御質問でございますけれども、まず外国法事務弁護士がどのくらい入ってくるだろうかという、この数の予測というのはなかなか難しゅうございまして、私ども正確な数を予測することは困難なわけでございますけれども、それと同時に、今まで門戸を閉ざしておりましたために、日本におりますこの外国法に関する法律サービスのユーザーと申しますか、そういった人たちが今は日本の弁護士あるいは外国にいる外国弁護士を通じてそういったサービスを受けているわけでございますけれども、そういった実態がこの外国法事務弁護士を受け入れることによりましてどのように変化していくかということもまた一つ予測が難しい問題でございますが、やはり手近に外国法事務弁護士が参っておりますれば、ユーザーの立場といたしましては日本の弁護士よりも外国法事務弁護士に直接サービスを受ける方がよりベターだというような考え方からそちらへ移行していくということも十分予測されるということでございます。
 そういった非常に不確定な要素がございますので、正確な見通しというものはなかなか立てにくいわけでございますけれども、やはり弁護士会内におきましては渉外弁護士に対する影響といったものが非常にシビアに受け取られておりまして、会内におきましていろいろ議論された過程におきまして、この問題、一つの大きなトピックスであったということを聞いておるわけでございます。
 ところで、外国法事務弁護士あるいは日本の渉外弁護士が取り扱います事務というのはいわゆる渉外的法律事務でございますから、そういった関係でどの程度の影響があるかということになるわけでございますけれども、さしあたり、会社の買収でありますとか合弁あるいは合併あるいは技術援助あるいはライセンス契約といったような、いわゆる渉外的法律事務の契約交渉あるいは契約の代理、契約書の作成といったような事務が主な事務になるわけでございますけれども、そういった事務は確かに外国法事務弁護士制度ができ上がりますれば、それなりにそのシェアが外国法事務弁護士に移っていくということが予測されるわけでございますから、そういった意味で日本の渉外弁護士に一つの影響を与えるということはあろうかと思います。
 しかし、聞きますところによりますれば、例えば金融でございますとか証券でございますとかいったような分野におきます渉外的法律事務につきましては、日本の渉外弁護士と外因の弁護士との間で現在でもある程度のシェアの分担ができておるというようなことも聞いておるわけでございますが、そういったような分担が確立されておるような分野におきましてはそれほど影響がないという意見もありますし、いや、それでもやはり影響があるという意見も会内にはあるというふうに承っておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、この外国法事務弁護士が入ってまいりますれば、それなりに渉外弁護士に対する影響があるということは避けがたいことだろうというふうに考えるわけでございますが、他方、外国法事務弁護士が入ってまいりますといろんな意味で日本の弁護士の仕事がふえる。外国法事務弁護士が入ってまいりますれば訴訟もふえますし、さらに日本法との関連におきましては外国法事務弁護士が取り扱えないということから、必然的に日本の弁護士の助力、援助を求めなければならないという事務もふえてまいるわけでございまして、そういった意味で逆に日本の渉外弁護士の需要が拡大する、言うならばパイが大きくなるというような議論も中にはあるわけでございまして、その点は確かに一つのメリットだというふうに考えられております。
 さらに、もっと実質に着目いたしますれば、そういった共同して業務を処理していくというような過程あるいは提携して仕事をしていくといったような過程におきまして、日本の渉外弁護士がより国際的法律事務に習熟をし、さらに外国の企業といったような外国のユーザーに対する顔と申しますか、窓口も広くなるというようなこともございましょうし、また外国語に関する能力も向上するでありましょうし、いろんな意味で、そういった実質的な意味では渉外弁護士が受けるメリットというのもあるということだろうと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、メリット・デメリットがあるわけでございますが、要は双方の弁護士と外国法事務弁護士が共同し合って事務を処理していくというような形態がより促進されますならば、それなりに将来の我が国における法律サービスの充実向上に資することになるのではないかということに着目いたしまして、弊害論もございますけれども、日弁連が大勢としてこの受け入れに踏み切られたという事情があるわけでございまして、私どももそういった方向性を大いに促進していくべく、協力を申し上げなきゃいけないというふうに考えておるわけでございます。
#35
○寺田熊雄君 外国法事務弁護士の資格要件として第十条一項一号で五年以上の実務経験を含ませたという点の批判、これは先ほどちょっとやっぱり話に出まして、ある程度調査部長の御答弁があったけれども、先ほどのECの日本における代表部、これが、五年も経験がある人間が第一日本に来ますかなんと言って、妙な反対論を述べておるようでありますが、この点はどういうふうに考えられます。どうしても絶対に必要なものかどうか。
#36
○政府委員(井嶋一友君) この外国法事務弁護士制度は、御案内のように外国における弁護士資格を有する者を試験あるいは選考を経ることなく、その資格をそのまま外国法専務弁護士となる資格として承認をして、国内において弁護士と同様の活動をさせるということを認める制度でございます。
 そういった意味におきまして、やはり当該申請者の資質と申しますか、能力と申しますか、そういったものにある程度の保証がありませんと、これは我が国の制度として受け入れるわけにはいかないというまず基本的な問題がございます。そういった観点から、少なくとも原資格国におきまして五年程度の弁護士としての実務経験を有し、そして当該国の弁護士会あるいは監督機関の監督を受けて、弁護士倫理としても何ら問題なく過ごしたというようなやはり能力、資質といったものをそういった観点から見ようというのがこの五年の実務経験の要求でございまして、これは一つの国の司法制度として制度をつくります上におきましては合理性のある必要最小限度の要件であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 こういった立法は何も私どもの今度の法案だけが突出しているというわけではございませんで、御案内と思いますけれども、アメリカのニューヨークルールあるいはミシガン州、ワシントンDCにおいてもそうでございます。アメリカにおきましていずれも、ニューヨークにおきましては申請の直近七年のうちの五年間の実務経験を要求いたしておりますし、ワシントンDCのルールでは申請直前の八年間のうちの五年間の実務経験を要求しておるということでございまして、ミシガンは三年という実務経験を要求しているわけでございます。さらに、現在ドラフト中のハワイは一年というようなドラフトで検討しておるというふうに聞いておりますけれども、いずれにいたしましてもその考え方の根っこには、それ相応の実務経験を踏んだ者をやはり認めるのだという考え方が根っこにあるのだろう。
 そこで、一年がいいのか三年がいいのか五年がいいのか、あるいはもっと長いのがいいのかという議論になろうかと思いますけれども、私どもはこの諸外国の例を考えまして、日弁連の御意見も五年ということでございましたので、これも合理性があるということでこの五年の実務経験という要件を採用したわけでございます。
 ただECは、先ほども申しましたように、この点につきましては非常に強く抵抗しておるわけでございます。ただ、EC諸国の中で例えばフランスでは実務経験としては三年間の実務経験を要求しておるわけでございます。しかも、三年のうちの十八カ月はフランスにおける経験を要求しておるわけでございます。そういったことで、ECの中におきましてもそういった立法を持っている国もあるわけでございますが、イギリスなどの場合は、今度は逆にそういう条件は一切ないわけでございまして、本当に弁護士になりたての人でもイギリスにおきまして弁護士活動ができるという制度になっているわけでございますから、そういった国から見ますれば五年といったような要件は、非常に奇異に感ずると申しますか、シビアに過ぎるというふうな受け取り方をされるわけでございます。
 しかし、英国においてソリシターになったばかりの人が全く本国において経験もなく、倫理的なチェックも受けない人がいきなり日本に受け入れられるかということになると、それはやはり幾ら何でも無理じゃないかという議論で私どもは応対をし、説得をしておるわけでございまして、これはそれぞれの国の制度が持つやはり違いからくる不満といいますか、要望であるわけでございますけれども、私どもとしてはそういった諸外国の情勢を踏まえながらも、やはり五年程度の経験を要求するのは決して酷ではないという選択をしたわけでございますので、これは断固そういった形で今後説得を繰り返してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
 ただ、いずれにいたしましても、世界の大勢がまた逆にもっと変わってまいりまして、もっと簡便にと申しますか、もっとフリーに弁護士交流というものを認め合うというような時代が参りますれば、もちろんこれを撤廃するにやぶさかではないわけでございまして、やはり時代の推移に応じて対応してまいる必要があろうかと思いますが、現段階におきましてはこれは絶対に譲ることができない最低限度の条件であるというふうに答えておるわけでございます。
#37
○寺田熊雄君 日本の弁護士は、弁護士としての業務を行うのに当たって何年間の実務経験というのが必要ない。二年間の司法修習生の修習を必要とするというだけであって、弁護士資格を取得してしまえばもうそれで一人前の弁護士になり、法廷においては我々を瞠若たらしめるような弁論をするような若い弁護士もおるので、余り経験のない者が来て仕事をすると依頼者が損害をこうむるのじゃないだろうかという、何か非常に老婆心が過ぎるような感じも少ししないではないですね。ただ、そういう規定が、外国の扱いもそういうような扱いがあるということになりますと、やはり何らかの条件は設けてもやむを得ないのじゃないかというふうにも考えられるんです。これは部長の言われるように将来の課題としておいた方がいいのかもしれませんが、その程度にしておきましょう。
 それから、いずれにしろ少し資格要件が厳し過ぎはしないか、職務範囲の制限も広さに失することはないかというふうな批判がないではないですね。これは、衆議院の会議録などを見てもそういうふうなニュアンスが時として出てくる。それはEC代表部の批判だけに限られているわけではない。これは一体、今も部長の言われたようなことによるのかあるいは弁護士の職域擁護がそこに暗々裏に働いていることによるのだろうか、いろいろ考えられるのであります。最もこれに人を納得せしめるに足る合理的な理由というのは何なのだろうかと考えるんですが、これをちょっと説明していただけますか。
#38
○政府委員(井嶋一友君) 資格要件につきましては、そのうちの実務経験五年の要件につきましては今御説明したわけでございます。要は試験選考を経ることなく外国の資格をもとに我が国における活動を認めるわけでございますから、それなりに合理性がなければならないということは当然でございます。やはり外国法事務弁護士は、職務を行いますと当然他人の権利義務に関して重要な役割を果たすわけでございますから、それなりに資質、能力、知識といったようなものが十分に保証されたものでなければならない、こういう観点から、どこの胴も外国弁護士を受け入れる制度を見ましてもその広さ狭さの差はございますけれども、やはり要件を課しておるわけでございまして、それはそれぞれの国の司法といいますか、制度の物の考え方に根差しておるのだろうというふうに思っておるわけでございます。
 資格要件のところは御説明いたしましたので、職務範囲の制限につきまして若干合理的な根拠といったものを申し上げたいと思いますが、これも先ほど参事官の説明にもございましたけれども、やはり選択の方法としては、世界には二つの方法があるわけでありまして、いわゆる外国法一般を扱わせるということを認めている国、それから我が国の法案のように原資格国法、言いかえれば自国法に限定して職務範囲を認める、大きく分けますとこの二つの流れがあるわけでございます。イギリスとかフランスとかアメリカの考え方は外国法一般を認めるという、どちらかというと広い考え方をとっておるわけでございます。それに対してドイツなどは我が国と同様、原則的には自国法の事務を取り扱わせるのだという考え方になっておるわけでございます。
 そういった意味で、この職務範囲を考える場合に選択する選択肢としては二つあるのだろうと思うわけでございますが、我が国の法案では自国法に限るという選択肢をとったわけでございます。その考え方の根っこは、やはりその知識が試験をクリアした、試験に合格をしたということによって制度的に保証されているということ、言いかえれば我が国において導入しようとする外国法に関するサービスは質のいいものを導入しようと、こういう考え方でございまして、当該国の試験に合格をしたということのゆえをもってその知識が制度的に保証されているということで保証されている範囲の法律サービスをしてもらおう、できるだけ多くの国の人たちに入ってきてもらってそういう形で仕事をしていただければ、より広くより多くの国の法律についてのサービスの提供が受けられるではないかという考え方を採用したわけでございまして、これはそれなりに我が国の制度としても十分合理性があるし、また我が国におりますユーザー、これは日本人に限りません、日本企業に限りません、外国の企業についても同様でございますけれども、我が国において外国法事務弁護士を使いますユーザーの立場の保護と申しますか、法的生活の安定と申しますか、そういったことを確保するという観点からもこの選択の方が正しいというふうに考えてこの制度を採用したわけでございます。
 ただ、これはあくまで自国法に限るわけでございますので、できるだけ多くの国の人たちが外国法事務弁護士になって入ってきてくれることが大事であります。したがって、そこで相互主義を採用してできるだけ多くの国に門戸を開かせると同時に、門戸を開いた国の弁護士が入ってこれるようにするという制度も他方に打ち立てておるということでございまして、それが相まって主要な国の自国法といいますか、法律に関するサービスがそれぞれの外国法事務弁護士によって受けられるという制度を構築するということにしておるわけでございます。
#39
○寺田熊雄君 それから、この法務大臣の承認に非常に厳しい条件がたくさんある。禁錮以上の刑に相当する刑に処せられたる者であるとかといういろいろ欠格条項的なものは、これは当然だと思われますが、問題は第十条第一項の三号なんです。「誠実に職務を遂行する意思」、これはなくちゃいかぬ。ただ、「適正かつ確実に職務を遂行するための計画、住居」、まあ住居はなくちゃいかぬが、「財産的基礎を有するとともに、依頼者に与えた損害を賠償する能力を有すること。」、つまり日本の弁護士と比較いたしますとはるかに厳しい要件を必要としておる。これはやはり外国にもこのような制度を設けた国があるのでしょうか。
 それから、職務遂行上の計画、財産的基礎、損害賠償能力というようなものですが、これは実際あなた方が承認を与えるかどうかに当たってどの程度の具体的なものを考えておられるのか。例えば損害賠償能力という場合にどの程度の金額を下限と考えておられるのか、財産的基礎といってもこれの下限としてどのぐらいのものを考えておられるのか、そういうところを承れば大変参考になりますが、これお願いしたい。
#40
○説明員(但木敬一君) まず、御指摘の十条一項三号に当たるような条項が他の外国で見られるかという御質問でございますが、依頼者に対する損害を賠償する能力を要求している因は幾つかございます。例えばニューヨーク州とかあるいはワシントンDCなどはやはり依頼者に与えた損害を賠償する能力を要求しております。また、前段のいわゆる「適正かつ確実に職務を遂行するための計画、住居及び財産的基礎を有する」というような規定と同じような規定はドイツの法律相談法の施行令にございまして、出願者の資産状態及び経営方法を考慮した結果、依頼者の利益を害するおそれのある場合にも許可を拒否しなければならないというような規定がございます。
 諸外国では、このような問題につきましてはさまざまな観点からの規制が考えられております。例えばイギリスですと、これは専ら入管行政によるチェックということになろうかと思いますが、その際にやはり十条一項三号とはやや異なる観点から同じような審査があろうかと思われますし、またアメリカ型ですと、いわゆる裁判所の自由な裁量にゆだねられておるものですから、許可の際にさまざまな条件というものを考慮することができるようになっておるわけでございます。あるいはベルギーにおきましては中小企業貿易局というようなところが許可しておるわけでございますが、そうした際にも別の観点から同じようなチェックが行われているようであります。いずれにいたしましても、ある国が、外国人といいますか、外国の資格を持った者を受け入れて国内での活動を認める際には、やはりそれなりに国内活動が適正に行われるということを一応チェックして、そして受け入れるということになるのは大体世界共通ではないかというふうに思っております。
 一体、ここに書かれている条項は、現実的にはどのような条件を要求しているのかというお尋ねでございますが、これは外国法事務弁護士がどのような形態で入ってくるかということにかなりかかわっております。例えば外国法事務弁護士が日本の弁護士に雇われるという身分で入ってくる場合、あるいは日本に既にいる外国法事務弁護士に雇われるという形で入ってきます場合には、ここで言っております条件はほとんどその雇い主の証明によって補われてしまうということになろうかと思います。また、既に日本にいる外国法事務弁護士とパートナーシップを組むというような計画で入ってくる場合にも、既に日本の国内にございます。その外国法事務弁護士事務所がしっかりしていればいいわけでありまして、その証明によって足りるのではないか。
 一番問題になりますのは、日本でみずからが外国法事務弁護士事務所を開設する、それの施設を設けて自分が経営するというようなものについてであろうかと思います。この場合には、一体どこに事務所を定めるのか、事務所を定める客観的な資力があるのかというような点がやはり問題になってくると思われます。
 それから、依頼者に対する損害を賠償する能力につきましては、委員十分御案内のとおり、近時、保険会社は各種の業務保険をつくっておりまして、弁護士につきましても弁護士業務に際して他人に与えた損害を賠償する保険というようなものが日本でもございます。したがいまして、こういう保険によってこの条項を満足させるというような場合もございましょうし、あるいは雇われるというような場合は雇い生あるいは特殊な場合にはアメリカのローファームの保証というようなさまざまな形態でこの十条一項三号の要件を証明することができるというふうに考えております。
 ただ、保険金額は幾らでなければならないかというような点につきましては、まだ十分煮詰めた議論がなされておりませんので、それらの点につきましては詳細これからの検討に待つということになろうかと思います。
#41
○寺田熊雄君 そうすると日本の場合は、あなたが言われるようなイギリスやベルギーのような入管の段階でチェックするということは全くせずに、専ら法務大臣が承認を与えるかどうか、その段階で条件を満たさせると、そういう方法をとるわけですね。
#42
○説明員(但木敬一君) 在留資格の点につきましては、日弁連に登録されるまでの間はさまざまな資格で入国するのではないか。一番典型的なのは四−一−四と言われている短期ビザがございます。これは観光ですとか商用ですとか、あるいは留学生が大学の試験を受けに来るとか、いろいろな理由で発行されるわけですが、この四−一−四という資格で登録までの間は在留しているのではないかと思います。登録をされますと、今度は四−一−一六−三といういわゆる法務大臣が特に在留を認めた者という資格に変わることになろうかと思うわけですけれども、既に法務大臣が承認をしております場合には、いわゆる法務大臣がその外国法事務弁護士が日本に入ってきても十分適正に職務を遂行できる能力というのを既に認定しているわけでございまして、もちろん入管当局は入管当局の独自の権限によって審査するわけですから理論的には全く別でございますけれども、既に大臣の承認がおりている場合にはかなり迅速な判断が下せるようになっているだろうということは言えるかと思われます。
#43
○寺田熊雄君 これも衆議院の会議録に出てきている問題ですが、第十条三項の日弁連の意見は参考とする趣旨であるか。もちろんそれは尊重はするのでしょうけれども、これに従わないという場合も法的にはあり得るのじゃないかと思います。これは弁護士法の削除された第七条第六項にもやはり最高裁が「日本弁護士連合会の意見をきかなければならない。」という規定がかつてありましたけれども、これはどういうふうに考えますか。法的にはやはり従わなくてもいいということになるのでしょうが、現実にはやはり尊重して対処するということになるんでしょうね。この点どうでしょう。
#44
○政府委員(井嶋一友君) こういった「意見を聴かなければならない。」という規定は、この承認の規定のところ以外に、承認の取り消しをする場合にもやはり同じような規定になっているわけでございますが、いずれにいたしましても今度の制度では、法務大臣が資格を承認いたしまして、その後日弁連に登録をいたしますと、その後は外国法事務弁護士に関する指導、連絡、監督は日弁連が行うということになるわけでございまして、この承認と登録の制度は相互に関連し合うものでございます。
 承認の登録の取り消しがありますれば承認の取り消しをするというような制度もございますし、承認がなければ登録ができないというのが前提でございますし、相互に相関関係になるわけでございますから、そういった意味で、この外国法事務弁護士に関する事務処理を円滑適正に行いますために、やはりそれぞれ分担しております権限の行使につきまして円滑に行えるようにするという趣旨のもとに意見を聞くという制度が設けられておるわけでございます。
 これは、ただいま御指摘のように、旧七条におきましても同じような規定があったわけでございますが、その規定ぶりそのままを規定したということになるわけでございます。その法律的な意味合いにつきまして、今御指摘ございました法律的な意味におきましてはおっしゃるとおりかもしれませんけれども、私どもは、そういった趣旨でつくられておる規定でございますから、日弁連の意見につきましてはもちろん十分にそれを尊重し、事務に反映させていく必要があるというふうに考えているわけでございます。万が一意見が対立したといたしましても、これは十分意思の疎通を図っていくという基本的な立場で運用してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
#45
○寺田熊雄君 この法務大臣の承認には条件を付することがありますか。また、それは法的にはできるのでしょうね。法的にはできるのであろうけれども、現実にはどうでしょう、条件を付すことが予想されますか。
#46
○政府委員(井嶋一友君) 法的にあるいは理論的にできるかというお尋ねであれば、あるいはできるということになろうかと思います、一般論といたしまして。しかし、この法案で考えております法務大臣の承認につきましては、条件を付するということは考えておりません。
#47
○寺田熊雄君 それから、法務大臣の不承認の処分あるいは承認取り消し処分等に対する不服申し立ての方法、これはどうなっておりますか。
#48
○政府委員(井嶋一友君) 法文上は明白に規定はされておりませんけれども、法務大臣の承認あるいは承認の取り消しは一般のいわゆる行政処分でございますから、一般の行政処分と同様の救済手続が適用されるわけでございまして、行政不服審査法によりますいわゆる異議の申し立てが当然できますし、さらに行政事件訴訟法によります行政訴訟の提起もできるわけでございまして、その場合は東京地裁第一審から始まるわけでございますけれども、一般の行政処分と同様に救済手続が発動できるというふうに理解をいたしております。
#49
○寺田熊雄君 四十九条の規定の趣旨、それから立法理由、あわせて外国にも同種の立法があればそれをちょっと説明していただけますか。
#50
○政府委員(井嶋一友君) 四十九条では、一項で雇用を禁止し、二項で共同経営を禁止しておるわけでございますが、外国法事務弁護士は、職務範囲としては日本法を取り扱えないということになりますので、そして法廷活動ができないということになっておるわけでございますから、そういった意味で職務範囲が限定されておるわけでございます。
 そういった職務範囲の限定されております外国法事務弁護士が例えば我が国の弁護士を雇用いたしますと、我が国の弁護士は今申しましたような制限はないわけでございますので、いわばフルパワーの職務範囲を持っているわけでございますが、そういった制限された職務範囲の者がフルパワーの者を雇用いたしますと、この外国法事務弁護士が収益の増大を図るために、雇用しております日本の弁護士の業務に介入をするという事態が予測されるわけでございます。そういたしますと、当然、日本の弁護士の業務と申しますのは日本法に関する事務あるいは法廷活動に関する事務も含まれるわけでございますから、そういった介入によりまして、外国法事務弁護士が本来取り扱えない事務に介入したと同様の結果を招来するというような危険性があるわけでございますので、そういった意味で外国法事務弁護士による弁護士の雇用を禁止するという考え方が出ておるわけでございます。
 それから、共同経営の禁止は、御案内のとおり、組合契約等の形態によりましてパートナーシップを組むという形の共同経営を禁止するわけでございますけれども、これもこのパートナーである日本の弁護士が収益を上げることが当該ファームにとりましては、組合にとりましては利益になるわけでございますから、やはり雇用の場合と同様に、この収益の増大を図る上におきましてそういったパートナーの事務処理に介入する危険性がある。したがって、あらかじめそういったものを禁止して、そういった介入を防ごうという考え方、さらには、日本の弁護士が得た収益を共通の収益として後でそれを配分するというような形が共同経営でございますから、そういった形で日本の弁護士の日本法による収益あるいは日本の法廷活動による収益といったようなものが組合に帰属をし、それが外国法事務弁護士に分配されるというふうな形はやはり職務範囲が限定されておる趣旨を潜脱することになるということから、これもそういった危険を防止し、法律の本来の筋を通すためにはこういった制限もやむを得ないということになろうかと思うわけでございます。
 諸外国におきましては同様の取り扱いをしておるのが非常に多うございまして、アメリカにおきましては必ずしも規定上は禁止というような明確なものはないようでございますけれども、ヨーロッパにおきましては、フランスにおきましてもドイツにおきましてもイギリスにおきましても、あるいはベルギーにおきましても、当該国の弁護士と受け入れました外国の弁護士との雇用あるいは共同経営を禁止いたしております。これは、それぞれの国の物の考え方によってそれぞれの理由は違うかと思いますけれども。共通して言えますことは、やはり当該国の弁護士の独立性と申しますか、倫理と申しますか、そういったものをきちっと守るというような観点から、やはりそういった形態での共同の活動は認めないというルールになっておるというふうに理解をいたしているわけでございます。
 ただ、これも先ほど来申しますように、昨今のような国際的法律事務の増大に対処するのにはやはり非常に不便ではないかという議論も他方にあるわけでございますので、そういった観点から、アメリカあたりはこの制限につきましては非常に不満を述べておりますし、アメリカとしてはヨーロッパのそういった制限についても同様の不満を持っておるはずでございます。そういった声がだんだん大きくなって、国際社会においてやはりもっと門戸を開く、もっと自由化するというような傾向が出てまいりますれば、我が国もそれに追随することになろうかと思いますけれども、現時点におきましては、諸外国においてそういった制限を持っておりますので、その制限にやはり従うと申しますか、それが現在の趨勢であるという理解のもとにこの制度を取り入れたということでございます。
#51
○寺田熊雄君 終わります。
#52
○委員長(二宮文造君) 本案に対する質疑は、午前はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
#53
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#54
○飯田忠雄君 まず最初に、大臣の提案理由の御説明がございましたので、その中で少しくわからないところがありますのでお尋ねをいたしますが、「我が国の現行制度は、外国法について専門的知識を有する外国の弁護士が我が国において事務所を開設して法律事務を行う道を閉ざしており、」と、こういうふうに御説明になっていたわけですが、弁護士法を見ますと、どうもこういうことが弁護士法には書いてないのではないかというふうに思われるわけです。弁護士法の七十二条に「非弁護士の法律事務の取扱等の禁止」の規定がございますが、この規定は今問題にしておるところの外国法事務弁護士の事務所開設を禁止した規定であるかどうか、大変疑問なんですが、それでこのことについてちょっとお尋ねをいたします。
 まず、弁護士法の七十二条に言われておる「法律事務」というものですが、これはやはり日本の法律事務のことであると思われるわけですが、そうであるならば、外国の法律についてこれを取り扱うという問題とは関係がないのではないかということがまず一点ございます。
 それから、いろいろの外国の法律というものがございますが、我が国において外国の法律を扱う場合に、これは法として扱うのではなくて事実問題として扱うのではないかと、こういうふうに考えられるわけです。といいますのは、もし外国の法律が法律であるということで日本の裁判官がこれを用いることができるということになりますと憲法に反するのではないかという疑いがあるからでございます。
 憲法の七十六条の第三項によりますと、すべての裁判官は、この憲法及び法律にのみ拘束されると、こうありまして、外国法に拘束されるとは書いてないわけでございます。そこで、外国法というものは、いかなる場合でも我が国においてこれを援用したりする場合は、必ず我が国にそのことができるとする法律があって、その法律において認めておるからできるのだということになりますと、それはやはり外国の事実を我が国の法律で用いることを認めておるということではないかというふうに考えられるわけであります。
 そうなりますと、弁護士法の七十二条が非弁護士の法律事務の取り扱いを禁止しておりますけれども、その規定では、外国法を取り扱うという問題は、これは法律事務じゃなくて事実の事務なんでございますから、該当しないのではないかと、こう思われるわけであります。そこで、大臣の御説明の我が国において外国の弁護士が事務所を開設して法律事務を行う道を閉ざしておるという、そのおっしゃった意味は、また別の何かの法律でそういうことが決めてあるのではないかと思われますので、その問題につきましてどのように御理解になっておるか、お伺いをするわけでございます。
#55
○政府委員(井嶋一友君) まず、弁護士法七十二条に言うところの「法律事務」には外国法に関する法律事務は含まないのではないか、こういう御意見でございます。
 確かに、この七十二条の解釈といたしまして、外国法を含まないという解釈をする考え方がございまして、それが有力に主張されておることは承知をしておるわけでございますが、多数と申しますか、私ども考えております考え方はそういう考え方ではございませんで、弁護士法七十二条に言うところの「法律事務」は日本法に関する法律事務に限らず、外国法に関する法律事務も含まれるものだというふうに考えておるわけでございます。そういたしますと、この弁護士法七十二条によりまして、外国の弁護士が我が国において我が国の資格を持たずに外国法に関する法律事務を行うことをやはり禁止をされておるというふうに考えるわけでございますので、この提案理由説明にございますように、「事務所を開設して法律事務を行う道を閉ざして」いるという表現になるわけでございます。
 ただいま委員御指摘のように、外国法に関する事務は禁止していないのじゃないかという説は、確かに我が国の弁護士につきましても外国法に関して制度的な保証といいますか、つまり試験をしていないという意味におきまして制度的な保証がないのではないかというようなこと、それから逆に外国の弁護士は当該国の外国法に関しては試験を受けておるというような意味で制度的に保証がある、日本の弁護士と比べれば我が国内において外国法に関する法律サービスとしてはより良質なサービスができるではないかということ、あるいは外国の弁護士も本国で弁護士の資格を持っておる以上は本国の弁護士会の監督を受け、その倫理に従うという意味において規律されておるではないか、そういった観点から、活動を認めることはこの弁護士法七十二条の禁止の法意に触れないのではないか、こういう立論になるのではないかと思うわけでございますが、確かにこういった御意見は一つの御意見として傾聴すべきものだと思うわけでございます。
 しかし、考えてみますと、昭和八年の旧弁護士法でこの七十二条の規定ができ上がって、日本におきましては法律事務の取り扱いを弁護士独占としたわけでございますけれども、そのときに考えられました考え方というものは、やはり弁護士の業務というものが他人の法律事務、法律関係、権利関係に介入するものであるというようなことから、高度の学識を有し、かつ高度の職業的な倫理基準に服させるべきだ、また服しておるものだからこそ独占を許すのだ、こういうふうな考え方ででき上がったものでございまして、我が国において他人のために法律業務をするという仕事を行う以上は、我が国の制度といたしましては、やはり我が国の弁護士と同様に高度の職業倫理あるいは規律に服するものでなければユーザーの法益を守ることができないという観点が考えられるわけでございまして、そういった意味で、外国法については自由にできるという考え方もありますけれども、それはやはり完全に自由にできるという考え方はこれらの伝統的な我が国の弁護士法の考え方にマッチしないのではないかということから、伝統的には、先ほど申したような七十二条には外国法も含むのだという考え方が定着しておるのだというふうに理解をしておるわけでございます。
#56
○飯田忠雄君 憲法との関係はまだ御答弁いただいていないんです。つまり私の質問は、憲法の七十六条三項で、裁判官は憲法及び法律だけに拘束されるとある、この場合の法律というのは日本の法律ではないか、つまり外国の法律ではあり得ないのではないかという質問なんです。
 そうしますと、法律という言葉を統一的に解釈しますと、やはり憲法、法律全体にわたって日本の国で法律というのは日本国の法律のことであろう、こういうふうに考えますがいかがでしょうかと、こういうことなんです。
#57
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のように憲法には、裁判官は憲法と法律のみに拘束されるということになっておりまして、御指摘のようにその法律は日本の法律ということになろうかと思います。
 しかし、この渉外的法律関係について裁判所で事件を処理する上におきましては、当然、準拠法によりまして外国法が準拠法に指定され、外国法がその裁判の裁判規範になるというケースが間々あるわけでございますから、そういったものは日本の法例という準拠法を通して外国の法令が裁判規範になっておるという意味におきまして、やはり法律のみに拘束されるという憲法の規定に適合する処理がなされておるものだというふうに考えるわけでございます。
#58
○飯田忠雄君 この問題は、もうきょうは議論しようと思いませんが、非常に疑念がある点ですね。準拠法自体が実は疑念があるんです、この憲法の七十六条三項の問題の関連においてですね。しかし、きょうはこれはやめておきます。
 それで、きょう一つ御質問いたしたいのは第三条でございますが、第三条のただし書きの意味がどうもはっきりしない表現でありますのでお尋ねをするわけです。
 この後のところを見ますと、第一項の一号から六号までのことは一体どういうことかわからないんです。第二項を見ますと、「前項の規定により職務として行うことができる法律事務」と、こうありますので、この一項の各号は法律事務として外国法事務弁護士が取り扱うことができるという意味にとれるのですが、そういうふうにとってもいいものでしょうか。つまり、はっきりしないのは、「ただし、次に掲げる法律事務を行うことは、この限りでない。」とあるわけです。「この限りでない。」の「この」とは一体何を指すかということなんです。
 第三条を読んでみますと、「外国法事務弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、原資格国法に関する法律事務を行うことを職務とする。」と、こうあります。そうして、ただし書きで「この限りでない。」とありますが、「この限り」というのは外国法に関する法律事務ということなのか、職務ということなのか、あるいはどれを指すのかということがどうもはっきりしない。したがいまして、この一号から六号までのことは、一体外国法事務弁護士が行うことなのか、行ってはいけないことなのか、それがはっきりしないわけです。ただ、第二項によって、どうもこれはできることを指しておるのではないかというふうに受け取れるというだけなんです。それで、この表現の仕方が大変あいまいもことしておりますのですが、「この限りでない。」の「この」は一体何を指すかということについてお尋ねいたします。
#59
○政府委員(井嶋一友君) 法律の文言につきましての御指摘でございますので、立案を担当いたしました主任の参事官がおりますので、行き届いた説明ができるかと思いますので、説明させていただきたいと思います。
#60
○説明員(但木敬一君) 委員御指摘の第三条第一項、本文でございますが、これは「外国法事務弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、原資格国法に関する法律事務を行うことを職務とする。」ということでございます。ただし書きにおきまして「次に掲げる法律事務を行うことは、この限りでない。」と定めましたのは、「行うことを職務とする。」というものに対する例外を規定しているものでありまして、したがってその意味は、「原資格国法に関する法律事務」であっても「次に掲げる法律事務を行うことは、この限りでない。」、つまり職務ではないという定め方をいたしたものでございます。
 したがいまして、二項で「前項の規定により職務として行うことができる法律事務であっても、」と書いてあります意味は、一項の本文柱書きで書きました「原資格国法に関する法律事務」のうち一号から六号までを除いたもの、すなわち外国法事務弁護士の職務内容となっているものであってもという意味でございます。
#61
○飯田忠雄君 御説明を承ると、なるほどそうかと思いますが、この規定を読んだ限りでは、なかなかそう読むのは難しい。素人にはわからないんですね。もう少しわかるようにならなかったものかと思います。本を発行してちょっと注釈を加えてもらわぬといけませんね。
 それでは、次に行きます。
 この外国弁護士による法律事務の取り扱いを必要とするということになってまいりました必要性というものはどこにあるかという点で疑念が持たれるわけですが、先ほどの御説明だけではちょっと足りませんので、もう少しその点を補足していただけませんか。どういう必要性があって外国弁護士による法律事務の取り扱いについて決めたのかということですね。
#62
○政府委員(井嶋一友君) 提案理由説明にも記載されておりますように、最近の世界経済の発展と国際社会の緊密化に伴いまして我が国と外国との人的、物的交流が活発化していることは御案内のとおりでございますが、数字的に見ますと、昭和四十年と五十九年を比較いたしますと、輸出額におきまして十三倍、輸入額におきまして十一倍と増加をいたしております。さらに、日本人の出国数を見ますと三十倍、そのうち海外支店に勤務する者ということで海外に出国いたしますのは十五倍ということになっております。さらに、外国人が我が国に入国する数も八倍というようなことで、数字的にも人的、物的な交流の拡大が示されておるわけでございます。
 このような人的あるいは物的な交流が活発化いたしますと、必然的にそういったことに伴いまして、例えば輸出入契約でございますとか、あるいは代理店契約あるいは合弁事業契約あるいは特許その他のライセンス契約等、要するに各種の国際的な契約、つまり渉外的な法律事件に関する契約の締結の量といったものが増大をしてまいるわけでございまして、それに伴いまして、この契約締結の代理でございますとか、あるいは契約文書の作成でございますとかといったような、いわゆる弁護士が処理をいたします法律サービス事務が増大をする。さらに、外国のいろいろな法律、会社法でございますとか税法でございますとか為替管理法でございますとか独占禁止法でございますとかいったような外国の法令の解釈あるいは適用についての鑑定と申しますか、法律相談といったような事務も国際取引の拡大に伴って当然増大をするわけでございます。
 さらに、法人の出国あるいは外国人の入国といったことに伴いまして、それらに関連する親族関係あるいは身分関係といったような法律事務もやはり数値的にはふえてまいっておるわけでございます。今後これらの傾向が増大すればするほど、こういった国際的な法律事務の拡大を伴うことは容易に推測されるわけでございます。しかも、最近におきましては、単に二国間だけの取引ではなくて、多国間の取引あるいは多国籍企業に見られますような多くの国の法律知識を必要とする法律事務がふえてまいっておるわけでございまして、一個人の法律知識のみをもってしては対応できないというような事態になりつつあるわけでございます。
 そういった状況に対応するためには、どうしても専門化した弁護士の法律知識、ノーハウを活用するということがこの現在の状況に対応する必要不可欠なものではないだろうかというようなことが言えるわけでございます。
 ところが、先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、我が国の理状を振り返ってみますと、我が国の弁護士は個人経営を原則としておりまして、アメリカのローファームのような大きな事務所、そしてかつ専門化した事務所、弁護士をたくさん抱えているような業務形態といったふうなものは我が国には存在をしないわけでございまして、個人経営を原則としておるわけでございますから、そういった意味で、一部渉外弁護士等が生まれつつありますけれども、やはり専門化は必ずしも十分でないと言われておるわけでございます。
 さらに、こういった国際的な法律事務、渉外的法律事務というものは外国語によって処理をされなければなりませんけれども、その辺のところにつきましても必ずしも日本の弁護士は十分でないと言われておるわけでございます。さらに、そういった国際取引の場面における交渉能力といったようなものも、これはまた今までの伝統がなせるわざではありましょうけれども、必ずしも十分に対応できるだけの人がそろっていないというようなことも言われておるわけでございます。
 そういったことから、提案理由説明にございますように、やはり我が国においてそういった事務を処理する弁護士は必ずしも十分でないということを言わざるを得ないのではないかということも、これは現実であろうと思うわけでございます。
 そういったことから考えますと、我が国の現状を直ちに改善してこれに対応できるかというと、なかなか難しゅうございます。したがいまして、これから進むべき道としては、外国の弁護士資格者を我が国に外国法事務弁護士として導入をいたしまして、そういった人たちの専門的知識を活用することによって、そして我が国の弁護士と共同してそういった事務を処理することによって、拡大し増大する国際的法律事務に対処するというのが現在最も好ましいあるべき姿ではないかというようなことから必要性を見出しまして、日弁連もこの受け入れを決められた、それに基づいて私どももその考え方が妥当であるということで法案として提出をさせていただいた、こういうことになるわけでございます。
#63
○飯田忠雄君 よくわかりました。
 それでは、この法案をつくられる過程におきまして貿易摩擦の関係だということをしばしば目にしたことがございますが、これは貿易摩擦とどういう関係があるのでございましょうか。
#64
○政府委員(井嶋一友君) 若干経緯について触れながら御説明させていただきますが、御案内のように、この問題は最初ニューヨークルールができました年に、ニューヨークの弁護士会から日本弁護士会に対して、ニューヨークが門戸を開いたので日本も門戸を開いたらどうかと、こういう申し入れがあったことに端を発しておるわけでございまして、これは昭和四十九年であったと思います。
 それ以後、アメリカの弁護士会と日本の弁護士会同士の話し合いというものが継続されたわけでございまして、専ら弁護士の内部の問題ということで対応されていたわけでございますが、その両者の話し合いがうまくまとまらないという経過をたどりました結果、昭和五十七年にアメリカ政府から、弁護士業務といったものを法律サービスの、つまりサービス業務の自由化の問題というような形でとらえ、さらに日本の市場へのアクセスの問題としてとらえて、貿易摩擦問題ということで日米貿易委員会の俎上にのせてまいったのでございます。それが昭和五十七年でございます。それから二年おくれて昭和五十九年にEC諸国から同様の要求がございまして、それ以後政府がこれの対応を強いられることとなったわけでございます。その契機となりましたのは、今申しましたように貿易摩擦の解消という意味でございました。
 ここで言われております貿易摩擦の意味でございますけれども、二面あるだろうと思います。
 一つの面は、外国の企業が我が国に進出するにつきましては、どうしても当該国の弁護士のいろいろな法律サービスを受けなければ進出するについて十分な法律問題の解決ができない、したがって自分の国の弁護士の法律サービスを受けることが我が国の市場へ参入する不可欠な要素である、こういう考え方から、我が国が外国弁護士の受け入れをすることによりまして日本に進出したい外国の企業が日本の市場へのアクセスが容易になるという観点が一つでございます。
 それからもう一つの観点は、外国の弁護士業務自体、これがやはり保険とか銀行とかいったようないわゆるサービス業務と同種のものであるということで、そういったサービス業務の自由化の一つとして弁護士業務といったものも自由化をすべきであるという、これは弁護士業務自体の自由化の問題ということで日本に対して開放を迫ってまいった、こういうことでございまして、こういった二面が貿易摩擦の意味合いであろうというふうに思うわけでございます。
 しかしながら、そういったものが契機とはなりましたけれども、従来何度か御説明いたしましたが、我が国の政府といたしましては、それを解決する手段は結局弁護士の国際交流でもって解決することになるのだ、弁護士の国際交流で解決するということになれば、これは我が国の司法制度の重要な一環を担う弁護士制度の変革の問題ではないかということから、これは単に経済摩擦の問題ではなくて、司法制度の重要な変革の問題であるということからこの問題をとらえまして、そして我が国において弁護士自治という独特の制度を持っております弁護士会の職域に影響するところ大でありますので、その弁護士会の自主的な意見を尊重するという態度、この二つを二本柱といたしまして今日まで対応してまいったということでございます。
 もし貿易摩擦という点からだけ解決するとするならば、これは外国が当初主張しておりましたように、例えば企業のコンサルタントとか国際取引コンサルタントとかいったような名称、資格のもとにそういった業務に関してのみ我が国において活動を認めるというような制度が構築できたのかと思いますけれども、やはりその中身は弁護士活動そのものであるということから我が国政府はそういう対応をしなかったということでございます。
#65
○飯田忠雄君 また別の点からお尋ねいたしますが、憲法の二十二条は、公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を認めるということになっております。そこで、この現定は在日外国人にも適用されると思われますが、これが適用になるということを認めるならば外国弁護士が日本国内で自分の国の法律事務を行うということが一体公共の福祉に反することになるだろうか、それが日本の国益をどのように侵害することになるのか、こういう問題が起こってくるわけでございます。公共の福祉に反しておれば外国人弁護士に日本の国内で営業をやらせることを禁ずるということは当然でございましょうが、その点のところがどうもはっきりいたしませんので、御説明を願います。
#66
○政府委員(井嶋一友君) 憲法の第三章に規定されております各種の基本的人権の保障は、権利の性質から我が国の国民のみを対象としているというものを除きまして、我が国に在留する外国人に対してもひとしく適用されるものだというふうに考えておるわけでございまして、そういった前提で第二十二条の権利を見ますと、「居住、移転及び職業選択の自由」ということでございます。これはその権利の性質上我が国国民のみを対象としているものとは考えられないわけでございますから、当然基本的には我が国に在留する外国人にもこの規定が適用される、つまり外国人にも保障されているというふうに理解をいたしておるわけでございます。
 ただ、御指摘のように「公共の福祉に反しない限り」ということがこの条文においてわざわざ書いてあるわけでございまして、その意味合いは、憲法上いろいろ議論されておりますけれども、やはり外国人にも保障されておりますけれども、合理的な理由がある場合には制限があるということも当然であるというふうに考えておるわけでございます。
#67
○飯田忠雄君 私が質問しましたのは、外国人弁護士が日本の国内で法律事務を行うことが公共の福祉に反するかという質問なんです。
#68
○政府委員(井嶋一友君) 先ほど申しましたように、七十二条の解釈論として外国法を含むか含まないかという議論が一つあるわけでございますが、その点は、先ほど申しましたように私どもは外国法も含むのだというふうに考えておるわけでございまして、その理由は先ほど申したわけでございますが、御指摘のように外国の資格をそのまま認めて自由に自分の国において外国法に関する法律サービスを認めている国というのもございます。まさに委員のお考えに沿った国であるわけでございますけれども、例えばフランスでございますとかイギリスでございますとかベルギーでございますとかいった国は、当該国の弁護士に独占をさせております事務以外の一般の法律事務につきましては一般人だれでもできるという考え方の国でございますから、したがって外国において資格を取った外国弁護士につきましても当該国において自由に外国法についての法律サービスができるという考え方をとっておるわけでございます。
 ただ、私どもの国と申しますか、日本ではそういった考え方がとられなかったわけでございまして、その沿革は先ほど申した昭和八年の旧弁護士法にさかのぼるわけでございますけれども、我が国の司法制度の中におきましては、やはり他人の権利義務に重大な影響を与える弁護士についてはそれなりに高い倫理基準を要請するというようなことの反面といたしまして、弁護士の事務独占を認めるという形で今日まで推移をしておるわけでございます。その中において外国の弁護士資格者につきましてもやはり七十二条の対象になるのだということで今日まで規律をしてまいっておるわけでございます。
 したがいまして、そういう状況下において無制限に何らの規制もなく自由に外国の弁護士に我が国において外国法の事務を取り扱わせるということはやはり弁護士法の現在の精神に反する、言いかえれば弁護士法が考えておりますユーザーの保護と申しますか、いわゆる本人の権利義務に重要な影響を与える職務を行う弁護士でございますから、そういった依頼者の権利保護といったような観点からこれを禁止するのは、やはり公共の福祉といったような観点あるいは日本の国益といったような観点から当然であるのだというふうに理解をされて今日まで来ておるのだというふうに承知をしておるわけでございます。
#69
○飯田忠雄君 外国法事務弁護士というのは日本の法律を取り扱わない。それから、このたびできました法律によって見ますと、第三条の中で一号から六号までのことは職務としない。この内容を見てみますと、これは裁判に関する代理事務とかあるいはいろいろの書類の手続、こういうもの全部、一応書いてあります。外国法事務弁護士というのは日本の法律は取り扱わない、それから日本の法廷事務は一切取り扱わない、また法廷事務に関連するような書類は一切取り扱わない、そういうものは職務でないと、こう書いてございます。そうしますと、外国法事務弁護士の職務というものは弁護士法による弁護士の職務とは一致しない、重複するところはほとんどないと考えられるわけであります。
 そうでありますならば、なぜそれを弁護士とみなして日本の弁護士会の統制下に入れなきゃならないのか、その必要性はどういうところかという疑念が生じてまいるわけでございますが、その点についてどのように御見解を持っておるでしょうか。
#70
○政府委員(井嶋一友君) 委員御指摘のとおり、外国法事務弁護士と弁護士の職務範囲を比較いたしますと、確かに外国法事務弁護士は狭いわけでございまして、そういった意味におきまして弁護士ではないのではないかという御指摘もまたその面においては当たっておると言えるかと思うわけでございます。
 しかし、外国法事務弁護士が職務といたしますのが原資格国法あるいは指定法に関する法律事務でございますれば、これはもう無制限に、刑事であろうが民事であろうが行政法であろうが、要するにすべての法領域について一般の法律事務ができるということになるわけでございまして、その部分をとってみますと、これはまさに我が国の弁護士が今日まで独占してやってまいった業務と完全に重複する部分であるわけでございます。この事務は、今後国際的な法律事務の増大に伴いましてこういった分野の法律事務がますます拡大されていくということでございまして、いわば日本の弁護士と外国法事務弁護士がまさに競争関係になる分野であるわけでございます。
 そういった意味で、この職務範囲は限られてはございますけれども、我が国の弁護士と同質性を有するものであるということがその限りでは言えるのではないかと思うわけでございます。そのような限りはございますけれども、業務は他人の権利義務に重大な支障を与えるわけでございますので、やはり我が国の弁護士と同様に極めて厳格な規律に服すべきものであるということも当然であろうかと思うわけでございます。また、その使命職責につきましても我が国の弁護士の使命、職責とおおむね変わるところはないはずだ。また、そういうものとして活動してもらわなければならないということも必然のことではないだろうかと思うわけでございます。
 ところで、委員御案内のとおり、我が国におきましては、弁護士の使命、職責にかんがみまして、弁護士自治という制度を昭和二十四年以来持っておるわけでございますけれども、その意味は、やはり基本的人権の擁護とか社会的正義の実現といったような高適な職務を遂行する弁護士がその機能を十分に発揮できるために、政府、裁判所等の監督に服さず、弁護士の自浄によって自律的に規律し合っていくことが国民の利益になるということ、そういった合理性からこういった自治の制度が認められたというふうに言われておるわけでございますが、我が国の弁護士と同質である外国法事務弁護士につきましても、やはり同質である以上は、日本弁護士と同様に弁護士会の自治のもとに入れまして、そこで自律的に規制し合うというシステムがまさに日本の司法制度そのものではないかということ。さらに、実質的に申し上げれば、政府がこれを行うということはまことに困難でございまして、日常的に接触をする弁護士が外国法事務弁護士の職務を規律する、お互いに規律し合うということの方がより実効性のある規律の仕方であろうというようなこと。これが実質的な理由。
 そういったことで、日本弁護士連合会の基本的方針として、やはり外国法事務弁護士は弁護士会の自治に入れるという基本方針を採用されたわけでございまして、これは今申しましたような意味合いから合理性が十分あるというふうに我々も考えたわけでございまして、そういった考え方をもとにでき上がった制度要綱を基礎として法案にしたということになるわけでございます。
#71
○飯田忠雄君 ただいまの御説明、わかったようなわからぬようなことになってしまったんですが、実は第三条で実に厳しく外国人弁護士の職務でない分野が決めてございます。例えば四号などもおかしいと思うんです。「外国の裁判所又は行政庁のために行う手続上の文書の送達」なんですが、外国の裁判所とか行政庁のために行う手続上の文書を送達するといったようなことまでやってはいかぬぞと、こう決められておるんですね。実に厳しい制限があるわけです。そうしますと、どう見ても外国法事務取扱の弁護士というのは、名前は弁護士だというけれども、その実体はおよそ弁護士とは言い得ないような者、つまり我が国における司法書士よりももっと力が弱い者のように見えるんですね。それで、こういう者がどうして弁護士の自治を侵害するだろうかという点に疑念を持つわけです。
 弁護士の自治といいますのは弁護士自体の自治でありまして、弁護士以外の者に対して影響を及ぼす自治ではないはずなんです。そういうところから見まして、やはり疑問が出てくるわけなんです。これは、私は反対するという意味じゃありませんよ。疑問が出てくるので、その疑問を説明していただきたいと、こういうわけなんですが、今の私の質問わかりますか。外国法事務弁護士は、およそ弁護士と名はついておるけれども弁護士らしからぬ者で、内容を見ますと司法書士よりももっと力の弱い者じゃないか、そういう者がどうして弁護士の自治を侵害することになるのかと、こういう質問なんです。
#72
○説明員(但木敬一君) 委員御指摘のように、本法案の三条一項一号から六号まで各種の行為を制限しておるわけでございます。旧来型の日本の弁護士はいわゆる法廷中心の弁護士であると言われておりまして、その意味では委員御指摘のような評価もあり得るかと考えるわけでございます。
 ただ、最近になりまして法廷外活動というものが弁護士の業務の中でかなりのウエートを占めつつあるわけでございます。特に渉外関係の弁護士の場合には法廷活動をほとんどいたしません。主な活動は渉外的な、つまり国際間の契約におきまして相手方と代理人としての資格で交渉し、契約内容を定め、契約書を作成するというような事務を専らにしているわけでございます。したがいまして、こうした分野での弁護士の活動という意味では、今般の外国法事務弁護士の業務もまさに同じ内容になるわけでございます。その場合に外国法事務弁護士が仮に弁護士とは全く異なった規律に服するということになりますと、例えば双方代理の禁止、つまり当事者双方の代理人になって自分の都合のいいような事件処理をする、契約内容を定める、あるいは汚職の禁止、つまり自分の依頼者の反対当事者から金をもらって、そして自分の依頼者の利益に反した契約内容を定めるというような行為はやはり禁止されなければならない。つまり、その意味では弁護士の倫理基準というものと外国法事務弁護士の倫理基準というものは全く同じ基準でなければならない、かように考えられるわけでございます。
 こうした弁護士の当然あるべき倫理基準というのは、日本では弁護士会自身が維持するという制度が昭和二十四年以来続けられておるわけでございます。したがいまして、こうした職務上の倫理基準を効果的にかつ十分になし得るのは、現在までそうした倫理基準を設定し維持してきた弁護士会なり日弁連なりの中に外国法事務弁護士に入ってもらって、そしてその中で全く同じ倫理基準に服するものとして弁護士及び外国法事務弁護士の倫理基準というものを今後も維持してもらいたい、このような考えから外国法事務弁護士を弁護士自治の中に、取り込んだわけでございます。
 なお、委員御指摘のように、弁護士法上の弁護士自治は弁護士にだけ適用されるのであって、その他の職種まで及ぶものではないという御指摘がございます。その御指摘もごもっともであると思います。
 ただ、これまで説明いたしましたように、外国法事務弁護士のその業務の内容が弁護士の業務の内容と一致し、また倫理基準というものも全く一致しているというようなことで、いわば弁護士の一種として弁護士自治の中に組み入れたわけでございまして、いわゆる全く異種の倫理基準に服するような異職種を弁護士自治の中に取り入れたという趣旨ではないと考えております。
#73
○飯田忠雄君 それでは、それで了解いたしまして次に行きますが、この法案では相互主義をとっておると書いてありますが、相互主義をとるということは憲法の第二十二条に反するのではないか。憲法の二十二条は何人に対しても保障されておるのに、外国における事情によって在日外国人を差別するということは憲法二十二条違反となりはしないか、こういう疑いがあるんですが、いかがでしょうか。
#74
○政府委員(井嶋一友君) まず、本法案におきまして相互主義をとった理由でございますけれども、これはもう御案内のことだと思いますが、御説明申し上げますと、この外国法事務弁護士の制度が創設されますと、当然のこととして外国弁護士が我が国において活動することになるわけでございまして、我が国の国民のみならず、我が国に在住いたします外国人あるいは外国企業に対しましても良質の法律サービスを提供することができるわけでございます。さらに、企業側にとりましてもそういったサービスを受けられるという大きな利益があるわけでございまして、そういった意味で、この制度が創設されますと外国の弁護士にとっては大変大きな利益になるわけでございます。さらに、先ほど御説明しましたように国際的な法律事務が今後ますます増大していくであろうということを考えますと、この利益といったものはますます拡大され、多大な利益になっていくということであろうかと思います。
 そういった利益を供与するわけでございますから、当然この制度におきましては国際的な互恵という考え方から相互主義を採用いたしまして、我が国の弁護士に対しても利益を与えてもらいたいという制度をとることとしたわけでございますが、その意味合いは、外国において我が国の法律、日本法に関する法律サービスの充実向上を図る、そのことによって外国におります我が国の企業あるいは我が国の法人あるいは日本に進出したい外国企業といったものに対するメリットがあるということから、この相互主義の採用によりましていわゆる弁護士の国際交流の促進を図ろうというような一つの政策を掲げてこの国際法上の原則を採用したということになるわけでございます。
 そういったことで本法案では相互主義をとったわけでございますので、委員御指摘のように、我が国の弁護士を受け入れていない国、あるいは連邦国家の場合は州に当たりますが、そういったところの弁護士は我が国において外国法事務弁護士になれないということが反射的に出るわけでございまして、それが委員御指摘のようにイコール憲法二十二条の職業選択の自由に反するのではないか、こういう御指摘になるのではないかと思うわけでございますけれども、私はこの憲法二十二条は、先ほど御説明いたしましたように、外国人に対しても原則的には保障されるものではございますけれども、やはり「公共の福祉に反しない限り」ということでございまして、それぞれ合理的な理由がある場合には制限がされるものだというふうに基本的には考えておるわけでございまして、これまでにもいろいろな形において制限がされておることは御案内のとおりでございます。
 例えば資格制限もそうでございますし、あるいは公共の秩序安定を維持するために制限するといったような趣旨の制限もございます。さらにもっと進んで、社会経済のより調和した発展を目的とした一つの政策的な判断から、営業の自由と申しますか、職業選択の自由といったものの制限をしておる制度もあるわけでございますが、そういった制度が今日まで憲法二十二条に反しないという形で理解されております。そのゆえんというのは、やはり今申しましたように、そういった大きな社会的、経済的な、あるいは積極的な政策目的といったものがある場合、言いかえれば合理性がある場合にはそういった制限もやむを得ないのだというようなことで理解をされておるものだというふうに私は考えておるわけでございます。
 そういった意味でこの相互主義の問題を考えますならば、冒頭に申しましたような必要性からとりました政策でございまして、そういった政策のゆえをもって反射的に外国の弁護士の中で相互主義をとらない国の人たちは我が国において活動ができないということになるのはいたし方がないこと、つまり憲法二十二条に違反するものではないのだというふうに理解をしておるわけでございます。
#75
○飯田忠雄君 そうしますと、国際関係の政策というものの方が一応国内問題よりは重大だから憲法の問題に国際関係の方が優位するというお考えで、国際関係の障害になるようなものは公共の福祉に反するのだ、こういう御解釈をおとりになったというふうにとっていいのですか。その点どうですか。
#76
○政府委員(井嶋一友君) 今申しましたように、相互主義をとりますことはすなわち弁護士の国際交流を促進するということでございます。それが現在の我が国のみならず世界の需要と申しますか、そういったものにマッチする政策であるというふうに考えるわけでございます。そういったものがあります反面としてそういった制限が加えられることになる、結果としてそういうことになるということはいたし方がないのだというふうに理解をするわけでございます。
 なお、同じような形で職業選択の自由と関連するかと思いますけれども、委員御案内だと思いますが、銀行法でございますとかあるいは弁理士法でございますとかいったような法律ではやはり外国の企業なり外国人にそれぞれ営業なり資格を与える制度を持っておるわけでございますが、これもいずれも相互主義を採用しておるわけでございますが、こういった制度につきましても現在までのところ憲法二十二条に違反するというような議論というものがなされていないという理由というのは、私が先ほど御説明したようなことではないのだろうかというふうに考えておるわけでございます。
#77
○飯田忠雄君 それでは、別の観点から御質問申し上げますが、外国法事務弁護士が今度の法律では弁護士を雇用することを禁止しております。そこでお尋ねするわけなんですが、外国の個人とかあるいは外国の企業が日本に事務所を持っておる場合に、そういう人が弁護士を雇用することができないのだろうか。つまり、企業のお抱えの弁護士というものは禁ぜられておるか、こういう問題なんですが、いかがでしょうか。
#78
○政府委員(井嶋一友君) 現行の弁護士法によりますれば、外国の個人あるいは外国の企業に限らず、我が国の個人あるいは我が国の企業であっても同様でございますけれども、自分のために法律事務を処理させるために弁護士を雇用することは禁止をしておりません。つまり、いわゆる社内弁護士というような形で存在をしておる現実があるわけでございますけれども、専らその弁護士を雇用しておる会社のためにのみ法律事務を取り扱うという形のものは禁止をされておりません。ただ、それは現行弁護士法の三十条によりまして日弁連の許可を要するということになってはおりますけれども、許可を得ればそういった形で雇用されることはできるわけでございます。
 ただ、これはあくまで当該企業なり個人なりが自分のためにのみ事務を処理させるということでなければならないわけでございまして、そういう限定ではなくて、弁護士を雇用して他人のための法律事務を処理するということ、そういう営業をするということになりますれば、これは弁護士法の七十二条でございますとかあるいは二十七条といったような規定の趣旨から考えまして、そういったものは当然非弁活動に当たるということで規制の対象になるというふうに理解をいたしております。
#79
○飯田忠雄君 それでは、外国法事務弁護士が、日本法の弁護士じゃなしに、外国法の弁護士を雇うということは禁ぜられていないと解釈できるでしょうか。つまり、外国法事務弁護士でありましてもそれの国籍が外国であるとは限らない、日本人である場合、日本国籍である場合もあるわけです。それで、日本国籍の日本人の外国法事務弁護士が外国人である外国法事務弁護士を雇うということなんですが、事務弁護士と弁護士というものは同じだというふうに理解しますとそれもできないということになるのだけれども、その点は別物と考えてよろしいのでしょうか。
#80
○政府委員(井嶋一友君) 外国法事務弁護士同士が雇用し合うあるいは共同経営を行うということは、本法案上は禁止をいたしておりません。したがいまして、原則的には可能でございます。ただ、御案内のように、外国法事務弁護士はそれぞれ原資格国法に関する法律事務を行うということとされておるわけでございますから、例えばイギリスの外国法事務弁護士同士が雇用され、あるいは共同経営をするといいましても、職務範囲は一致しておりますから、その限度においては何ら問題はないわけでございますけれども、例えばイギリスの弁護士とアメリカのニューヨークの弁護士が外国法事務弁護士として参りまして双方が雇用し合うあるいは共同経営をするということになった場合に、その実質によりますけれども、本来イギリスの弁護士はイギリスの法律に関する事務しかできないのに、アメリカのニューヨークの弁護士を雇用することによってニューヨークの法律に関する事務を処理するというような実態が出てまいるというようなことになりますと、これはやはり職務範囲を超えた事務処理をしたという形になるわけでございますから、そういった実態がある場合にはやはり規律の対象になるということになろうかと思いますけれども、そういったものがない限りは本法上はそういった関係は禁止になっておらないわけでございます。
#81
○飯田忠雄君 事務所の共同経営ということも禁止しておるわけですね。それで、外国法事務弁護士が日本の弁護士と事務所の共同経営をすることは禁ぜられておるわけなんですが、外国法事務弁護士同士、国を異にする者が集まって同じ事務所で仕事をするということまで禁止しなければならぬ合理的理由はあるでしょうか。
#82
○政府委員(井嶋一友君) 今申しましたように、外国法事務弁護士同士が雇用し合いあるいは共同経営することは本法上禁止しておりません。したがいまして、それは合理的な範囲でそういった共同の形態で事務所を運営することは認められるわけでございます。ただ、それが脱法にわたるような形に運用をされていきますと規律問題が起こるということを敷衍させていただいたわけでございます。
#83
○飯田忠雄君 次の問題に入ります。
 この法案の四十八条に在留義務を課しておりますが、なぜこんなことになったかということがどうも理解できないんです。日本人がアメリカに行きまして、アメリカの法律を勉強して、アメリカの弁護士の資格を取って日本に帰ってきて、そしてこちらで仕事をするという場合、この四十八条のようなことが一体起こるだろうかということになりますが、いかがでしょうか。
#84
○政府委員(井嶋一友君) 四十八条によりまして在留義務を課しました趣旨でございますけれども、これはやはり、今度の制度では外国弁護士に外国法事務弁護士として我が国に事務所を設け、我が国内において外国法に関する法律サービスをしてもらうということのために開いた制度であるわけでございますから、制度本来の趣旨から申せば、我が国に住居を設け、事務所を設け、我が国の中におりますユーザーに対して十分のサービスをしてもらうということが理想の形であるわけでございます。
 もしこの在留義務といったようなものを課しませんと、当該外国法事務弁護士が頻繁に国外に出るというようなこと、あるいはほとんど事務所にいないというような事態が起こるわけでございまして、そういったことになりますと我が国の中におりますユーザーに対して不測の危険を与えるというのみならず、連絡も十分とれないというようなことで非常に不便になる。さらには、不在がちであるということになりますれば、当該外国法事務弁護士事務所の事務員とかあるいはトレーニー、クラークといったような、いわゆる弁護士業務ができない人たちが非弁活動をするおそれも出てくるというようなこと、さらには外国法事務弁護士は弁護士会あるいは日本弁護士連合会の監督に服するわけでございますが、そういった監督の機能も十分に発揮できないというようなこと、いろいろ考えますと、やはり本制度上、一年のうちにせめて半年ぐらいは日本に在留して法律サービスをしてもらうということでなければ、本制度の目的と申しますか、意味がないというような観点からこういった規定が設けられたということになるわけでございます。
#85
○飯田忠雄君 今のような御趣旨でございまするならば、外国法事務弁護士の事務所に課する義務でいいではないか。個人に課さなくても事務所に課せばいい。例えば事務所に二人おれば一人交代でよそへ行っていても問題ないじゃないか、こういうことになりますが、その点いかがでしょうか。
#86
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、事務所単位に業務形態が行われておるという実態があれば、委員御指摘のような考え方もとり得るのではないかと思いますけれども、我が国の弁護士の業務自体は基本的には個人が個人の責任において依頼者から事件を受任するというシステムでやっておるわけでございます。今回の外国法事務弁護士制度もそのひそみに倣いまして外国法事務弁護士個人にこの資格を承認し、個人の登録を認めるという形をとっておるわけでございまして、やはりユーザーと当該外国法事務弁護士の個人の関係という日本の伝統的な事務処理の形を原則として維持するということを前提としておるわけでございます。そういった理屈との整合性から、やはり事務所単位に物事を考えるというところまでには踏み切れなかった、こういうことでございます。
#87
○飯田忠雄君 それでは、時間の関係で先に進みます。
 外国法事務弁護士に対しまして懲戒とそれから刑罰と両方決めておるわけですが、外国法事務弁護士に対しては、その職務の性質上、刑罰を科する必要がないのではないか、懲戒だけでいいではないかと思われますが、特に刑罰を科さなきゃならぬ合理的理由はどういうところにあるのでしょうか。
#88
○説明員(但木敬一君) 委員御指摘の事項は恐らく、本法案の第六十三条で外国法事務弁護士に対しその業務に関し各種の行為を行ったときはこれに対して二年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するという罰則についての御質問であろうかと思います。
 委員御指摘のように、外国法事務弁護士というのは、やはり外国において資格を持ち、また日本の外国法事務弁護士としての審査に言ってみればパスした者でありまして、この者に対して原則懲戒でよいではないかというお考えは非常に首肯し得るものであると考えます。したがいまして、外国法事務弁護士の職務規律違反につきましては弁護士と同様の刑罰を科しているものはもちろんございます。例えば汚職行為の禁止であるとか、あるいは双方代理の禁止であるとか、そういうものに対しては弁護士と全く同等の刑罰を科しておりますが、外国法事務弁護士に対する特別の刑罰につきましてはその範囲を極めて限定いたしておるわけでございます。
 すなわち、例えば原資格国法あるいは指定法以外の一般の法律事務を取り扱っただけでは、これは単なる懲戒の対象である。しかしながら、その中の特定の行為、例えば六十三条で申しますと、裁判所における訴訟事件の手続の代理であるとか、あるいは刑事手続についての代理であるとか、あるいは国内の行政庁に対する異議申し立て等の不服申し立て事件の手続についての代理であるとか、あるいは日本法に関する解釈、適用についての書面による鑑定であるとか、極めて限定した範囲で刑罰を科することといたしたわけであります。すなわち、違法性の極めて強いものに厳選いたしまして、これに対して刑罰を科する、原則は懲戒で対応するという考え方でつくったものでございます。
#89
○飯田忠雄君 ただいまの御説明ではどうも納得しがたい点があるわけです。といいますのは、ここに六十三条の一号、二号、ずっと書いてありますが、この内容を見ますと、これは訴訟事件以下裁判所に関連する問題であって、結局日本の弁護士が代理して行うことでありますが、そういうことをもし外国法事務弁護士がやったとしてもそれを裁判所が受け付けなければいいではないか、こう考えられるわけです。また、行政官庁が受け付けなければいい問題でありまして、それを受け付けて刑罰に処するというのはどうも犯罪を誘導するように思われるわけなんです。こういうことが果たして必要かということです。むしろ間違って裁判所が受け付けた場合は裁判所を罰すべきであって弁護士を罰すべきじゃないじゃないか、こういう考え方も起こるんですが、いかがですか。
#90
○説明員(但木敬一君) 恐らく委員御指摘の問題は、こういうケースが大体起きるのかという問題が一つあろうかと思います。
 確かに、自分は外国法事務弁護士であると名のって裁判所に行きまして、そして代理人として出頭した場合には裁判所が、外国法事務弁護士では法廷に出られませんということで、実際上は出頭してきても一切の訴訟活動はさせないであろう。したがって、こういう例えば一号のような事態が起きることはまずないではないか、それは御指摘のとおりであろうと思います。ただ、例えば外国法事務弁護士が、自分が受任した事件に関連してどうしても訴訟で代理人として行為したいという場合に、自分は弁護士であるというふうに名のって法廷に出てくることが考えられる。そのような場合に外国人ですと割合一見しておかしいなというふうに裁判所は思って詰問するかと思うんですが、日本人である場合もあるわけで、これが弁護士だというふうに名のってきた場合に裁判所が弁護士であろうということで例えば弁論を許してしまうというようなこともあろうと思われるわけであります。
 ところで、委員御承知のとおり、本法案では七十二条の適用は外国法事務弁護士に対してはしないということにいたしております。したがいまして、仮にそういう事態が生じた場合には実は罰則としては弁護士と名のったというだけの罪になってしまいまして、罰金二十万円ということだけになってしまうわけです。そこで、どうしても、仮にそういう極めて悪質な、希有な事例だと思いますが、悪質な事例が出た場合にはやはり懲役二年以下というような形で、あるいは罰金百万円以下というような形で処罰をせざるを得ないということで最後の担保を設けたというふうに考えておる次第でございます。
#91
○飯田忠雄君 最後に一つ、時間が来ましたけれども、お尋ねします。
 六十三条四号、これの内容を見てみますと、「書面による鑑定」と、こう書いてあるわけですが、これはどうなんでしょうね。こういうことを外国法事務弁護士がやればすぐわかるのじゃありませんか。こういうものであれば例えば弁護士何々というふうに名のって書面の鑑定をした場合に罰する、こういうわけでしょうけれども、そういうことは注意すればわかることなので、やはり裁判所の方でもう少し見きわめる努力をすべきではないかと思うわけです。私が非常に納得いかぬのは、六十三条というのはどうも必要のないようなことについて刑罰をつくっておられるような気がするし、もしこういうことが起こったとしても、先ほど御答弁があったように、懲戒でいいのではないか、わざわざ刑罰を科する必要はないのではないかと思われるわけです。
 そこで、最後のお尋ねですが、「書面による鑑定」というのは裁判上の鑑定を言うのか、そうでないのか、どういうものをおっしゃるのですか、お尋ねいたします。
#92
○説明員(但木敬一君) ここに書いてございます「鑑定」というのは、裁判上の鑑定というよりは、むしろ一般的な鑑定でございます。すなわち、国際間の取引の場合におきましてはかなり用いられている法律事務なんでございますが、いわゆる日本の弁護士がアメリカ法について何かわからない点があるという場合にはアメリカの弁護士に対しまして鑑定を依頼するわけでございます。で、そのリーガルオピニオンをとりまして、そのリーガルオピニオンに基づいて法律事務を処理するというような制度がかなり定着しておるわけでございます。したがいまして、ここで言っております「書面による鑑定」というのは、今言いましたように、渉外的な法律事務において特定外国等自分の非専門分野について何か聞きたいということで弁護士あるいは外国法事務弁護士に鑑定依頼をして、それに対する書面による鑑定書をつくること、あるいは依頼者、これは弁護士でない依頼者から月本法のこの点の解釈はどうなっているでしょうかというようなことを外国法事務弁護士が受任いたしまして、そして日本法についての鑑定をするというような場合とか、いわゆる裁判外の鑑定を指してここで「鑑定」という言葉を使っておるわけでございます。
#93
○飯田忠雄君 一番最後に一つ。
 今御説明ありましたので大体お考えはわかったんです。しかし、そういうことであれば、二年以下の懲役といったような重刑を科する必要はないのではないかと思われます。百万円以下の罰金なら我慢できるでしょうが、少し刑罰が重過ぎるのではないかと思いますが、この点についての御見解はどうですか。
#94
○説明員(但木敬一君) 先ほどのまず一号から三号につきましては確かに事例は極めて希有であると思いますが、仮に外国法事務弁護士というような地位に基づいて第三者から事件を受任してその業務の過程でこのような行為をするということになりますと極めて悪質な行為であると言わざるを得ないわけでございまして、事例は少ないでしょうが、最終的担保としてはやはり厳罰に処する必要があるのではないか。すなわち、非弁護士による法律事務の取り扱いと少なくとも同程度の刑罰を課さなければならないのではないかと思っているわけでございます。
 四号につきましては確かに委員御指摘のような考え方もあろうかと思いますが、国際間の取引では、やはり鑑定、通常用いられている言葉を申しますればリーガルオピニオンというのは法律事務処理にとってかなり決定的な役割を果たして、それを指針として法律事務の処理がなされる。したがいまして、そのリーガルオピニオンが日本法に関する問題についてのリーガルオピニオンを書いた書面ということになりますと、やはりその影響するところは非常に重大で、依頼者とかあるいは相手方に与える損害というものもかなり大きいものがあるのではないかというような観点から、一号から三号までと同程度の違法性があるという考え方に立ちまして、少なくとも非弁護士による法律事務の取り扱いに対する刑罰と同程度の刑罰を科そうと、かような考えからこのような規定を設けた次第でございます。
#95
○飯田忠雄君 終わります。
#96
○抜山映子君 本法律は、日弁連と政府間とで何回もすり合わせを行った結果こういう形で出てきたわけですけれども、昭和六十年十二月九日議決の臨時総会議案という弁護士会のがございます。これからこの法案が後退している点は、どのような点がありますでしょうか。
#97
○政府委員(井嶋一友君) ただいま御指摘のように、昨年の十二月九日に日弁連が臨時総会でもって、この総会議案に掲げておりますような四項目の方針につきまして圧倒的多数で承認をしたわけでございますが、その第四項にございますように、「その余の具体的な諸条件については、理事会の定めるところによる」ということになっておりまして、その後理事会が定例、臨時を含めまして数回持たれまして、その中で二月六日に最終的に確定をいたしました制度要綱が策定されたわけでございますが、法案は御承知のとおりこの制度要綱に基づいて立法をしてもらいたいという日弁連の要望を受けまして、政府としてこれを受けとめ、本法案にまとめ上げたわけでございます。
 そういった経緯があるわけでございますが、お尋ねはこの臨時総会決議から後退したものがあるかということでございますが、私どもはこの臨時総会の決議あるいはそれを受けてその後策定されました制度要綱に基づきまして本法案を策定したつもりでございまして、基本的にこの方針が後退しているというような事項はないというふうに考えておるわけでございます。
#98
○抜山映子君 では、表現上の差は多少あっても後退点はない、こう了解してよろしいですね。
#99
○政府委員(井嶋一友君) お手元の参考資料に制度要綱もつけてございますけれども、これと見比べていただければおわかりのように、立法技術上の問題として、法律の条文化の問題あるいはその条文の配列の問題といったようなことで異なっている部分はございますけれども、実質的には、この制度要綱の精神と申しますか、基本的なフレームは本法案においては十分維持しておるつもりでございます。
#100
○抜山映子君 御存じのように、日本は弁護士自治の制度をとっておるわけでございます。一方、アメリカの弁護士制度といいますか、それは州の固有権になっており、アメリカン・バー・アソシエーションは日本の弁護士連合会とは違いまして任意団体で代表権がない、こういうことになっております。したがいまして、本来、外国弁護士の事務取り扱いの問題に関する交渉は政府間交渉には適しない、日弁連が自主的に決定すべきものではないのかと、こういう基本的な姿勢をどのようにお考えになっていますか。
#101
○政府委員(井嶋一友君) 先ほど飯田委員の御質問に対してお答えいたしましたように、本問題の経緯の中では、当初御指摘のようにアメリカの弁護士会、これはABAと申しますけれども、ABAあるいはニューヨーク弁護士会と日弁連との間でこの問題が討議をされたわけでございます。それが数年にわたって双方の協議があり、意見の交換が行われたわけでございますが、当時の状況下において日弁連はまだ外国の弁護士を受け入れるということは時期尚早であるというような基本的な事情から、必ずしもこの話し合いがうまくいかなかったというその経過の中で、外国政府から五十七年以来政府間レベルの交渉というものに持ち上がってきたという経緯があるわけでございます。
 しかし、その段階以降におきましても私どもは、この問題は弁護士制度の変革をもたらす問題であるということから、日弁連の自主性を尊重するという立場でないとこの問題は解決できないということを基本方針として持ちまして、以後今日までこの基本方針を堅持してまいったわけでございまして、先ほど御指摘の昨年十二月九日の臨時総会に向けての日弁連の会内における意見の調整につきましても私どもは、政府の立場といたしましては側面から、こういった意見の形成がスムーズにいくように、さらに内外の事情についても十分踏まえていただいて結論を出してもらいたいという趣旨から、いろいろ情報の提供もするというような形で協力をしてまいったわけでございますが、基本はあくまで日弁連の自主性を尊重するという建前を貫いたわけでございまして、その結果、総会を乗り切られ、さらに制度要綱案というものを策定されて、それによって法案をつくってほしいという要請を受けたことからこの法案を政府で提出をすることとしたわけでございまして、終始一貫この方針を維持したわけでございます。
 そういった意味で、御指摘のように、本来この問題は弁護士同士の問題であるということから政府の交渉になじまない問題だということは御指摘のとおりだと思いますけれども、経緯がございましたので、そういった経緯も踏まえつつ、やはり我が国の司法制度としての基本原則を私どもは守ったということでございます。
 今後も、これからこの法律ができ上がりますればこれを施行してまいるわけでございますけれども、そういった段階におきましても、やはり基本は弁護士の問題であるということから、この日弁連の自主性の尊重という基本方針は引き続き維持をしてまいるという考え方でございます。
#102
○抜山映子君 それではお伺いしますが、この外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案をつくったその基本的な政府の取り組みの姿勢でございますけれども、貿易摩擦の関連でアメリカの強い要求があってやむを得ずやったのか、それともこの国際化する社会の中で法律情報もあり方としてやはり国際化する必要がある、こういう認識のもとでやったのか、そのあたりはいかがでしょう。
#103
○政府委員(井嶋一友君) これもただいま御説明したことに尽きるわけでございますけれども、要するに貿易摩擦の問題というのは契機にはなりましたけれども、やはりそれを解決する手段というものは弁護士の国際交流の促進であるという観点から、これをむしろ現在の司法界に課せられておる課題であるという形で受けとめ、そして司法制度の枠内においてこれを解決するという形で今日に、推移をしておるわけでございまして、私どもは、その結果外国企業の市場アクセスが増加し、あるいは我が国の輸出が増大するというようなことで国際取引に裨益する部分が結果として出るかもしれませんけれども、目的はあくまで現在置かれている司法界、つまり弁護士業務に対するニーズといったようなものに対応する必要ということを正面に据えまして司法制度の枠内で解決をするという形でまいったということでございます。
#104
○抜山映子君 御存じのように、司法試験の受験科目の中には英語とかその他の話学というものはないわけでございます。したがいまして、日本の企業の中に外国弁護士の補完的な活動を認めてもらった方が日本の企業として大変望ましいのだというような意見もあったように伺っております。このあたりの企業サイドの要請と申しますか、そういうものをどのように把握してこられましたでしょうか。
#105
○政府委員(井嶋一友君) 現行の制度上は、御案内のように、外国の弁護士が我が国において事務所を設けて恒常的に外国法に関するサービスができないという制度になっておりますために、外国に進出する我が国の企業といったような我が国国内でのユーザーの立場からすれば確かに不便があった。日本の制度はその点で不十分であったというような御意見があるわけでございます。そういった御意見は、実は私どもがこの立案をします過程におきまして、昭和五十八年だったかと思いますけれども、会社のいわゆる法務部と言われておりますセクションで働いている人たちに集まっていただきまして意見の交換をするというような機会を持っておるわけでございますが、そういった機会にそういった要望が表明されておるわけでございます。
 やはり司法試験に語学が入っていないということのみがその理由ではないと思います。むしろ我が国の外国語の教育の仕方といったようなものがネックであるのではないかと思います。しかし、我が国の弁護士は非常に優秀な方もおられますけれども、一般的に申しますれば、外国語能力も必ずしも十分でない、また国際的取引における交渉能力も十分でないというようなことがやはり隘路として指摘されておるわけでございまして、そういった問題を今回の制度によって相当程度解決できるということはユーザーにとっては好ましい姿であるというふうに評価を受けておるわけでございます。過般、会社法務部の主要な方々にお集まりいただきまして本法案につきましての説明会を行ったわけでございますけれども、その場面でもやはりこういった門戸開放を歓迎するというような形で評価をいただいておるということでございます。
#106
○抜山映子君 他方、弁護士会サイドで非常に気にしておることだと思われますが、日本の司法試験が二%を切るような非常に競争の激しい司法試験でございまして、合格者のレベルも極端に高いわけです。ところが、諸外国におきましてはロースクールを出まして試験も受けないで弁護士になれるという国もございますし、また、そのバーエグザムを受けても九十数%通るというような国も多いわけです。
 したがいまして、これはこれからの問題なんですが、日本人であって日本の司法試験を回避して外国のロースクールを出て、そしていわゆる外弁になって日本で登録する。もちろん顔の色も、言葉も話せるわけですから、一々私は外国人弁護士でございますなどと言わないで、私は弁護士です、こう言われますとたくさんの日本人の依頼者が普通の弁護士と同じように認識する。もちろん、先ほど御説明ございましたように、日本の官庁ですらが間違って書類もたくさん受け付ける、こういう事例が出てきて、結局日本の司法の根幹が揺らいでしまうというようなおそれもなきにしもあらずだ、こういうように思われるわけです。この点はいかがでしょうか。
#107
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のような議論が日弁連内の議論として行われまして、一つの問題点であるという指摘があったわけでございます。しかし、本法案におきましては、資格を承認するというのはあくまで外国で取った資格を承認するということでございまして、国籍といったものは一切無関係に処理をするという基本原則を採用したわけでございますので、御指摘のように日本人が外国で弁護士資格を取って五年間以上当該国において弁護士としての実務経験を重ねてまいりますれば、理論上は本法によりまして外国法事務弁護士の資格の承認を得ることができるわけでございます。
 ただ、その前提として、諸外国では司法試験が容易であるというようなことあるいは養成制度もそれぞれ区々であるというような御指摘もございましたけれども、確かに諸外国におきまして弁護士の資格制度といったものは区々に分かれておりますけれども、やはりそれぞれの制度がそれぞれの国において法律専門家として最高の地位を与える資格試験としてそういった制度が確立されておるわけでありますから、それはこの制度を運用していきます上におきましてはそれぞれ尊重しなければならないというふうに考えております。
 したがって、日本人がそういった外国へ出かけていってそれぞれの国の試験を通るということは、それなりにその国においては最高の資格を得たことになるわけでありますし、さらに実質的に考えますれば外国語をマスターしなければなりませんし、日本人にとりましては、この試験に合格してくるということは、合格率が低いとか高いとかということではなくて、やはり大変な努力であったのではないだろうかと思われるわけでもあります。さらに、この方が五年間以上弁護士として活動し、当該国の弁護士会なり監督機関から何ら倫理上問題がないというオーソライズされる人たちであるわけでございますから、そういった人たちを我が国に受け入れて外国法事務弁護士として活動させることを制限するということはいかがなものかというような議論も会内にもございましたし、私どももいたしたわけでございまして、その結果本法におきましてはそういったものの制限をしないこととしたわけでございます。
 もちろん、そういった形で日本人が外国法専務弁護士となってUターンしてまいります数というのは、私は正確に予測することはできませんけれども、昭和五十九年段階でアメリカの資格を取ってアメリカで活動している日本人は十一名ぐらいであるというようなデータもあるわけでございまして、やはりそんなに大量の人たちがそういった道を通るということはないだろうと思いますし、またそういった人たちの中で日本にUターンしてくるといった人たちがさらにどれぐらいあるかということを考えますと、それほどの懸念はないのではないかと思うわけでございます。
 そして、さらに本邦において外国法事務弁護士として活動されます場合には、当然本法に従った活動をしていただくことになるわけでございますので、もし御指摘のような違反活動があった場合に日弁連があるいは弁護士会が適切な監督権を発動するということによってそれはチェックされるべきでありますということでございまして、制度の基本といたしましてはやはりこういった考え方をとるというのは必要不可欠なことではなかったかというふうに思うわけでございます。
#108
○抜山映子君 さらに、外国人弁護士が日本で違反行為をしたり、あるいは依頼者を被害に遭わせるようなことをして、海外に逃亡という言葉は大げさですけれども、海外に行ってしまった場合に依頼者を泣き寝入りさせるような事例が出るのではないかというのも一つの不安の種であったわけでございます。そこで、お伺いしたいんですが、過去の日本のいわゆる外国人で準会員としての資格を与えられた弁護士ですが、このような音あるいは沖縄の準会員になった者、こういう者が日本で悪事を働いていたというのが事例としてあったというように聞いておりますけれども、こういう人たちが弁護士会で懲戒にされたという事例はございますでしょうか。
#109
○政府委員(井嶋一友君) お尋ねの準会員あるいは沖縄準会員に対する監督は御案内のとおり最高裁判所が行っておるわけでございますので、私どもが所管をしておらないわけでございますが、お尋ねがございましたので、最高裁に問い合わせをいたしました結果に基づきまして御説明申し上げますと、我が国におきまして準会員及び沖縄準会員に対して非違行為を理由といたしまして承認を取り消した例というのは今までにはなかったというふうに聞いております。ただし、弁護士会あるいは日弁連の会費を滞納したという理由で承認の取り消しをされた者、これが準会員については十五例、沖縄準会員については五例あるというふうに報告されております。それから、さらに沖縄の準会員につきまして、この人は米国人でございますが、本国において非違行為があったために本国の弁護士資格を取り消されたということによって我が国の準会員の承認を取り消されたという例が一例あるというふうに報告されております。
#110
○抜山映子君 本法では一たん資格を与えますと永久資格を与えたようになっておりますけれども、これはやり方として、承認に一定の期間を限って、入国管理法なんかも一緒に連動してその監督を行った方がよかったのではないかと思うんですが、このあたりは検討されましたでしょうか。
#111
○政府委員(井嶋一友君) この問題も日弁連の会内におきまして議論のあった点でございます。御案内のことと思いますが、五十九年の十二月の構想試案というのを日弁連が作成いたしておりますが、そのころの議論としては、やはり承認制度につきましては更新制度を設けるべきだという議論があったわけでございますが、最終的に私どもとの議論あるいは会内の議論を踏まえて、この更新制度はとらないという形になったわけでございます。
 それは、確かに一つの資格を与える場合に期限を定めて更新をしていくというシステムが一つ考えられるわけでございますが、我が国の制度としてそういった制度を検討いたしました結果、機械的な労働と申しますか、あるいは肉体的な労務と申しますか、そういったようなことが資格の基準になっているような資格、こういったものには比較的そういった更新制度といったようなものがあるようでございますけれども、弁護士資格といったような知的な資格、こういったものにつきましてはそういった一定の期限をもって更新するというようなシステムをとっている例が見当たらなかったわけでございます。その考え方は、恐らく知識、学識、能力に基づいて資格が与えられるわけでございますから、二年とか三年とかの期限を切って更新して、そこでチェックをしなきゃならないというようなことはないのだろうというようなことが基本にあったのだろうと思われるわけでございます。
 そういったことで本法では更新制度をとらなかったわけでございますけれども、しかし制度的にはいつでも日弁連がこの業務の活動につきましては監督もできるわけでございますし、また法務大臣は外国法事務弁護士の資格を承認いたします反面といたしまして、その承認の基礎となった事実関係につきましては常に外国法事務弁護士に対して一定の事項について報告を求めるというようないわゆる報告徴収権を認めておるわけでございまして、そういったものの適正な運用によりまして、更新制度にかわって、そのときそのときの状況に応じたチェックをしていくという制度を構築しておるわけでございます。
 更新制度を設けますと、更新拒絶という場合には結局、更新拒絶をする理由というものをやはり法定しなければならないわけでございますが、その理由というのが懲戒事由と恐らくダブるであろうというようなこともございまして、結局、適切な監督とそしてその懲戒権の行使といったようなことが行われれば更新制度にかわる十分なチェックができるだろうという考え方を採用したわけでございます。
#112
○抜山映子君 西独とかイギリスとかベルギー、シンガポール、ニューヨーク州、いずれも関係法上あるいは入国管理法の運用面から外国弁護士の人数を制限しているか、また制限することができると、こういうようにしておるそうですけれども、日本でもそういうことを考える必要性があったのではないでしょうか。
#113
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、御指摘のような外国におきましては入管行政上のチェックといったようなものあるいは需要考慮といったようなものが外国弁護士活動を認める際の判断事項にされておる国があるわけでございます。しかし、我が国におきましては、法文上はそういった観点からのチェックは法定いたしておりません。労働事情というようなものではなくて、むしろ外国法事務弁護士が適正に専務を処理し得るかどうかというような観点から個々の申請者の申請について判断を下すということによって適正な外国法事務弁護士の導入を図ろうという考え方で立案をしておるわけでございまして、正面から数を制限して承認をするというような考え方はとっていないわけでございます。
 それは、各国それぞれ国の制度としての事情があるわけでございますが、御指摘のようなイギリスとかベルギーとかいったようなところは、外国法事務弁護士の受け入れ制度自体を持たずに、ただ要するに自由に外国の弁護士が自分の国で活動することを認めている国でありますけれども、やはりそこにはおのずからそれぞれの国の国益と申しますか、労働事情と申しますか、そういった入管行政上の観点からこれをチェックしなければ歯どめがないというようなことでそういう制度がつくられている国もあるわけでございまして、やはりそれぞれの制度の生い立ちを考えますと、それぞれ合理性を持って考えておるのではないかと思います。しかし、我が国におきましては、先ほど申したように、実質的に適正な外国法事務弁護士を受け入れるという観点から承認を判断するという形でそういった問題に対処してまいりたいというふうに考えた次第でございます。
#114
○抜山映子君 それでは、相互主義の観点からお伺いいたしますけれども、英国、西独、フランスでは労働需要証明というものを出させて、ですから、この場合ですと日本法に対する需要ということになると思いますが、そういう需要証明を出させて外国弁護士を認める、こういうことになっておるそうですけれども、そうしますと、実質的には日本人が向こうで外国弁護士として活動することはできないという実情ではないかと思います。そういう意味で、これらの国は日本との関係におきまして相互主義の状況を満たしていない、こういうように了解してよろしいですね。
#115
○政府委員(井嶋一友君) 法案の十条の第二項におきまして、法務大臣が承認をする場合に、「外国においてこの法律による取扱いと実質的に同等な取扱いが行われているときでなければ、承認をすることができない。」という規定をいたしまして、いわゆる相互主義の判断をこの条項に基づいて行うという制度にしておるわけでございます。
 今御指摘のようなケース、つまり、それぞれの胴が外国弁護士を受け入れる制度を持っているといたしましても、その制度が制度として運用上全く受け入れられないというような、もしそういう運用があるといたしますれば、それはまさにこの法律に言う実質的に同等な取り扱いが行われていないということに当たるわけでございますから、そういったケースでありますればこの相互主義の要件を満たさないということで受け入れを拒否する、承認を拒否するということになろうかと思います。
#116
○抜山映子君 第三条の一項一号でございますけれども、確認しておきたいと思いますが、「その他の官公署における手続についての代理及びその手続についてこれらの機関に提出する文書の作成」、こうございますから、特許庁の関係では弁理士、それから通産省の関係では行政書士、あるいは法務局の関係では司法書士、まだほかにもたくさんあるかもしれませんけれども、こういうものについてその文書の作成はできない、こういうように確認させていただいてよろしいですね。
#117
○説明員(但木敬一君) 本法案第三条第一項第一号の「国内の裁判所、検察庁その他の官公署」という意味は、「その他の官公署」の中には各種の行政官庁あるいは地方公共団体のいわゆる役所というようなものも全部含まれます。したがいまして、委員がただいま御指摘のありました特許庁あるいは法務州、通産省その他の行政官庁あるいは税務署というようなものはすべてこの官公署に入るわけでございます。したがいまして、官公署における手続についての代理及びその手続についてこれらの行政官庁その他の官公署に提出する文書の作成は、すべて禁止されているということになろうかと思います。
#118
○抜山映子君 懲戒手続についてお伺いしますが、日本の弁護士の懲戒手続は御存じのように二審制度をとっておるわけです。外国人弁護士についてはそうでなくて、一審制度といいますか、そういうことになっておりますが、このように違いが生じた理由はどういうことでございましょうか。
#119
○政府委員(井嶋一友君) これも実は日弁連会内におきまして大いに議論がなされた点でございまして、最終的には日弁連の一本で懲戒をする、日弁連に懲戒権を専属させるということで解決されたわけでございます。
 また、その議論では、当然に我が国の弁護士と同様に、懲戒につきましても単位弁護士会の懲戒権を確保すべきであるという御議論もございましたし、逆に、外国人が主体となります外国法事務弁護士の懲戒事務というものをそれぞれ単位会で処理するということになりますれば、言葉の問題、資料の問題その他いろいろ負担が過重過ぎるというようなことで、やはり日弁連にゆだねるのがいいというような御議論も他方にはあったというふうに承っておるわけでございますけれども、最終的には、そういった各地方に分散いたしますと、外国法事務弁護士の懲戒事務が非常に日本の弁護士と比べますと煩瑣でございますので、そういった意味で負担を軽減するという観点、それから、物事は外国人を主体とする人たちが対象となる事柄でございますからできるだけ迅速に結論を出すということが要請されるケースであるということ、さらに、外国人が相手でございますから、全国的に公平にと申しますか、整合性を持って処理するのが望ましいというようなことでございますとか、そういったような理由が結局了承されまして、日弁連の最終的な理事会におきまして日弁連の懲戒に専属させるということが決まったわけでございまして、私どももその考え方に合理性があるというふうに考えまして、本法案上もそれをそのまま取り入れたということでございます。
#120
○抜山映子君 本法によりますと、外国弁護士が日本の弁護士を雇うことは禁止、それから外国弁護士と日本弁護士が共同して事務所を経営するパートナーシップ契約を結ぶことも禁止、許されているのは日本の弁護士が外国弁護士を雇うことあるいは事務所を共同して借りてやるというようなやり方はいい、こういうようになっておるわけなんですけれども、アメリカのローファームというのは大変巨大な組織力、資本を持っておりまして、日本の弁護士に雇われている形をとっても実質内情はその反対であるというような事例も出てこないではないのではないかということが懸念されるのでございますが、このことは検討されましたでしょうか。
#121
○政府委員(井嶋一友君) この問題も、日弁連内で検討されましたし、私どもも検討いたしました。ただ、雇用する日本の弁護士が要するにしっかりしておられれば事柄はいいのだということになるわけでありまして、むしろそういった形で共同の形態をとってこの国際的法律事務に対処していただく方がメリットが大きいということに着目をいたしますれば、やはり個々の日本の弁護士の自覚のもとに適正に運用されることによって追求できるメリットをとろうというのが私どもの考え方でございまして、また日弁連もそのように考えたわけでございます。したがいまして、おっしゃるような懸念が確かにございますけれども、それは当該弁護士の専ら個人的な良心の問題だろうというふうに私どもは割り切っておるわけでございます。
#122
○抜山映子君 終わります。
#123
○中山千夏君 きょうは全体的な問題についてお伺いしたいというふうに思っております。
 一番最初に、今後の弁護士制度全般の展望といったようなものをお伺いしたいのです。といいますのは、この法律案は、成立して運用されるということになりますと門戸開放の法律だと言われていますけれども、実際は小さな門戸開放なんだと。だけど、小さいけれども、先々のことを考えますと、質的に物すごくやっぱり大きな制度の改正につながるのじゃないかという感じがすごくするのです。ですから、当然この法律をおつくりになるときに今後の弁護士制度全般、例えば司法試験のあり方にしましても、それから修習生の研修のあり方にしましても、今の法廷を中心としている日本の弁護士の制度というものに対していろいろな影響が出てくるに違いないと思うんです。ですから、その辺も含めて、今の制度を将来どっちへ持っていったらいいのか、あるいはどうなっていくであろうかというふうに考えていらっしゃるか、そこをお聞かせください。
#124
○政府委員(井嶋一友君) ただいま御指摘いただきましたことはまことに当を得た御見解でございまして、確かに今回の門戸開放は、将来の姿といったものを考えました場合には、まずファーストステップであるということが言えるかと思うわけでございまして、そういった意味で、しかしそれが将来もっと大きなものになっていくべきだというような今の御指摘はまことに正しいのではないかと思うわけでございます。
 長い間、我が国の司法制度、特に弁護士制度といったものが外国に向けて門戸を閉ざしておったというような状況下に今日のような国際的法律事務の増大といったような現象が押し寄せてまいりまして、日弁連自身もこういったものにどう対処するかということについて当初はやはり相当戸惑いがあったというふうに思うわけでございます。それが証拠に、当初の話し合いもなかなか進まなかったということになるかと思います。
 しかし、やはりそのころから考えますと十年たっておるわけでございまして、その間に会内の議論ももう随分進歩をしております。と同時に、国際社会と申しますか、我が国の置かれている状況も随分進展をしておるわけでございます。そういった状況判断のもとに今回、最初の第一歩としての門戸開放を決断したということでございまして、その意味合いと申しますのは、小さな門戸開放かもしれませんけれども、非常に大きなものであったということをまずもって申し上げたいと思いますし、また日弁連がそういう決断をされたということについては、政府としてはかねてから敬意を表しておるわけでございます。
 ところで、そういったファーストステップではございますけれども、やはりいろいろ風俗習慣あるいは物の考え方が違う外国の弁護士がいろいろな国から入ってまいりまして、我が国の弁護士と仕事を競争する、あるいは共同して仕事をするというような事態がこれから生まれてくるわけでございますから、当然我が国の弁護士にとっては画期的な影響が出るだろうと思うわけでございます。
 その一つは、御指摘がございましたけれども、まず業務のやり方の問題だと思います。
 我が国の弁護士は従来個人を主体とした業務を原則としておりましたし、さらに法廷中心主義と申しますか、紛争が起こってから弁護士が活動するというような形態が伝統的な業務形態であるというふうに言われておったわけでありますけれども、そういったところへ、いわゆる紛争以前と申しますか、予防法学的な意味での法律事務といったものを主体とする外国法事務弁護士が入ってまいりますれば、当然弁護士の活動分野といったものが変わってまいるだろうと思います。
 さらに、御指摘のような大きなローファームを背景としたような外国法事務弁護士が入ってまいるわけでございますから、業務のやり方あるいは特にその形態といたしましては、日本の弁護士の事務の仕方、法人化の問題あるいは組合化の問題といったような問題にも波及してまいるだろうと思います。さらに、外国における広告の関係といったようなものも、我が国の弁護士会ではまだ広告規制というようなものがとられているわけでございますけれども、そういったような物の考え方にも影響が出てまいるだろうと思います。いろんな意味でこの業務のあり方につきましては相当なインパクトを与えるだろうというふうに思うわけでございます。
 しかしながら、そのことのゆえをもって我が国の弁護士の本質が見失われるようなことになるかということになりますと、私はそういう危惧は持っておりません。やはり各国の弁護士はそれぞれ独立性を高く保持して仕事をするという人たちでございます。そういった意味で、むしろその独立性を保持しつつ切磋琢磨して新しい社会の需要に対応していく弁護士像ができ上がっていくのじゃないかというふうに考えておりまして、その点につきましてはそれほど心配はしていないということを申し上げておきたいと思います。
 それから、さらに試験の制度あるいは研修のあり方ということにも敷衍されましたけれども、やはり外国法事務弁護士が外国から入ってまいりますと、当然これに対応しまして我が国の弁護士が資質、能力を高めなければ対応できないということは一般論として言えると思いますが、その個人の資質、能力だけでは十分対抗できない、やはり量的なもので対抗しないと負けてしまうというような御議論も日弁連内にあるわけでございまして、そういった観点から申し上げれば、例えば法曹人口といったものをこれからもっとふやしていくべきなのかどうかというような問題点、あるいはいわゆる渉外的法律事務といったようなものの分野が拡大していくことに伴いまして、研修制度のあり方といったような問題点につきましても必然的に検討を迫られる問題だろうというふうに思うわけでございまして、その他幾つかやはり影響するところがございますし、展望としても申し上げなきゃならぬことはあるかと思いますけれども、そういったことを中心といたしまして申し上げましても、やはり将来相当まだ大きな変革をしていかなければならないものだというふうに思います。
 しかし、ファーストステップとしては、現時点ではこの法案の持っております意味合いといったものは非常に重要であるし、諸外国も一応それなりに評価をしておるということで、一部に不満を残しつつも満足をしておるわけでございますので、未来といいますか、展望は、私は洋々たるものがあるというふうにお答えをしたいと思うわけでございます。
#125
○中山千夏君 次に、この法案の形について専門家の御意見を伺いたいんですが、内容を拝見しますと弁護士法の一部改正というような形でもいけたのじゃないかという感じがするんです。それをこういう一つの特別措置法というふうになすったのには何か理由があられると思うんですが、それはどうでしょうか。
#126
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、今度の法案は実質的に見ますと弁護士法の改正であるということが言えるかと思います。したがいまして、立法の手段といたしまして弁護士法の一部改正ということで対処することは十分可能でありましたし、それは問題はないわけであったわけでございます。
 しかし、でき上がりました条文をごらんいただきますとわかりますように、やはりいろいろな資格の承認でございますとか登録あるいは指定法の制度でございますとかいったような、日本の弁護士にない新しい制度もつくらなければならなかったわけでありますし、さらに職務の範囲も弁護士と違いまして相当克明に規定をいたしませんと将来の円滑な施行ができないというような点もあったわけでございます。また、さらに事柄は主として外国人を対象とする法案でございますので、いろんな意味での透明性、公平性といったようなことに対する配慮も法案上しなければならなかったというようなこともございます。したがいまして、ここに提出いたしましたような六十八条というような大きな法案になってしまったわけでございますが、こういった形のものになりますと、ちょっと弁護士法の一部改正というような形で立法技術上処理することはいかがなものかということが一つございました。
 それから、これは提案形式の問題でございますけれども、弁護士法は御案内のとおり議員立法で昭和二十四年にでき上がった法律でございます。また、その後の実質的な改正につきましても議員立法で行われているものでございますから、本来的に申し上げれば、弁護士法の改正というような形で、あるいは議員提案という形でつくられるべきだったということも言えるかと思います。現にまたそういう選択肢を最後まで我々は持っていたわけでございますけれども、最終的に日弁連が議員立法に関する運動をすることは断念するというような形で政府にいわばげたを預けられた形になったわけでございますので、それを受けて法案化をした。法案化をするについては、先ほど申したような専ら立法上の理由で特別措置法とせざるを得なかったということでございます。
#127
○中山千夏君 それから、余りいろいろな法律そうたくさん知らないので、これが特色と言えるかどうかわからないのですが、非常に準用規定とか読みかえの部分が多いということを私は感じたのですが、これは何かそうならざるを得ない理由といいますか、そういうものがあるのでしょうか。それから、いわゆる士法というようなものでこんな形をとっているものがほかにあるのだろうかというふうに思うんですが……。
#128
○政府委員(井嶋一友君) 立法の専門家が来ておりますので、参事官に答弁させます。
#129
○説明員(但木敬一君) まず、本法案で御指摘のように準用規定あるいはみなし規定というようなものが非常に多うございます。そこで準用されている法律あるいは適用についてみなし規定を置いている対象法律は、ほとんど弁護士法でございます。本法案の第一条の目的にございますように、「その法律事務の取扱いを弁護士の例に準じて規律する」ということが本法案の非常に大きな中核をなしております。したがいまして、例えば弁護士に課せられました権利義務というようなものがございまして、依頼者の秘密を保持する権利と義務を有するというような規定とか、あるいは先ほど来申し上げているような、汚職の禁止ですとか双方代理の禁止ですとか、あるいは係争物権の譲り受けの禁止ですとか、そういうような弁護士に課されている諸規律はそのまま外国法事務弁護士に対する規律として作用させるということが本法案の一つの目的になっているわけでございます。
 また、監督機関というようなものも、先ほど来説明してまいりましたように、現行弁護士法上の弁護士自治というようなものの中に外国法事務弁護士を組み込みまして、その自治のもとでの監督、指導、懲戒というようなことを行わせるというようなことになっているわけでございまして、そのような関係から弁護士法を準用するということが極めて大きな意味があったわけでございます。
 他の士法で準用規定、みなし規定があるものがあるかと申しますれば、本法案のような形で多くの準用規定、みなし規定を持っていると法というのはほとんどないと思います。
#130
○中山千夏君 それからもう一つは、この外国法事務弁護士という名前について伺いたいんです。これは、私はすごく言いにくくて仕方がないんです。外弁法なんと言うと言いやすいんですけれども、素人考えですと、外国法弁護士という言い方でも少しも困らないのではないかと思うんですね。ちょっと伺ったところによると、いろいろ考えていらっしゃる中で弁護士会の方からもいろいろな名前の提案があったそうですけれども、なぜこういう言いにくい名前に落ちついたかというところをちょっと聞かせていただきたいのです。
#131
○政府委員(井嶋一友君) 今度の制度で資格を承認いたします外国弁護士に対してどういう名称を与えるかということは、日弁連内においては大変大きな問題でありました。と申しますことは、弁護士という言葉は我が国においては法廷活動を含めたすべての法律事務を取り扱う資格者であるというような形で定着をしておるわけでございますから、そういった社会情勢の中へ、外国法といったような限定がつくにいたしましても、弁護士という名前を使った資格を認めることはやはり国民一般に誤解。混同を招くのではないかというようなことが一つ大きな議論の柱になっておったわけでございます。
 しかしながら、先ほど来申しますように、この外国法事務弁護士は結局弁護士と同質の仕事をする人たちであります。そして、弁護士と同様の倫理基準を守ってもらわなければならないということも、我が国の国益上必要なことでございます。そういったことから考えますと、結局我が国の制度として確立しております弁護士自治のもとに外国法事務弁護士を取り込んで、そこでお互いに自律し合いながら適正な職務をやっていただくというような必要性もあり、またそれが我が国の制度として唯一とり得る方法であったわけでございます。
 そういたしますと、日弁連のあるいは弁護士会の自治に入れるということになりますと、これはどうも弁護士という名称を用いない他の職種であるように国民に映るような名称を用いることはいかがなことか、やはり自分たちの仲間である、仲間であるからこそ国が自治権を認めてお互いに自律し合うことを認めているわけでありますから、そこへ名前、看板の違う人たちが入ってきて果たして自治が認められるのだろうかというような議論が他方にございまして、その理論と申しますか、筋道を通せばやはり名実ともに弁護士の仲間であるということをあらわす名前にする必要があるということが最小限度の基本的な要請であるというふうに理解がされまして、結局、弁護士という名称を使うことはやむを得ないという結論に至ったわけでございます。
 さて、その際、先ほど申し上げましたような国民の誤解なりあるいは混同を招くというようなことのないようにするためにはいかにすればよいかということになるわけでございますが、外国法事務弁護士の職務を見ますと、これは外国法に関する法律事務を取り扱うものであるという意味合いが一つございます。それと同時に、法廷活動ができないという意味合いがございます。法廷活動ができない弁護士というのは、実はイギリスにおきましてソリシターという資格があるわけでございますが、これは原則的には法廷活動ができない弁護士ということでございます。このイギリスのソリシターの訳語といたしまして我が国におきましては、これはもう辞書にも出てまいりますけれども、事務弁護士という訳語をつけておりまして、反対に法廷のみを行いますバリスターにつきましては法廷弁護士という訳語になっておるわけでございます。
 そういったことで、事務弁護士という名前が法廷活動ができない弁護士という意味で我が国においてもある程度定着をしておるという現実がありますので、外国法しか扱えないものであり、かつ法廷活動ができない弁護士であるというようなことの組み合わせと申しますか、ということで外国法事務弁護士という選択が最終的に行われたわけでございまして、今言ったような意味合いから、私どももその名前に妥当性があるというふうに考えて、本法案におきましてもこの名称を用いることとしたわけでございます。御指摘のような外国法弁護士というような呼称をつけるということを言っておった時代もございますけれども、最終的には今申したような名前に落ちついたということでございます。
#132
○中山千夏君 なるほど、落ちついたところの事情はよくわかりましたけれども、一般の感覚からすると、外国法事務弁護士と書いてあっても、何だこれはという感じがすごくすると思うんです。先ほどからの質疑の中にも、それから今のお話にもありましたけれども、一般の弁護士と活動内容を一般の人たちが混同するおそれがあると、それは確かに非常に困ると思います。つまり、外国法事務弁護士というものが今度できて、そしてこの人たちはどういう活動を専らするのであるということを一般の人に知らせる役割はどこにあるというふうに考えていらっしゃるのか。あるいはその一端をこちらで担うということであれば、どのような方法でそれを実現しようとしていらっしゃるか。そのあたりを聞かせてください。
#133
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、御指摘のとおり現時点におきましては外国法事務弁護士という呼称は奇異に受け取られると申しますか、一般的にはそういう印象だろうと思います。しかし、今申しました経緯に基づきまして妥当性のある名称としてこれを採用したわけでございますから、おっしゃるとおり、今後国民の皆様に外国法事務弁護士というものの名称とその職務の範囲といったものは周知徹底をさせる必要があるというふうに思います。
 その事務をどこがやるかということでございますが、もちろん日弁連、弁護士会もおやりになることでございますけれども、私どもも政府の責任において機会をとらえてそういったことのPRはやっていかなきゃならないだろうというふうに思っております。法案上、この外国法事務弁護士が職務を行うにつきましては、今申した外国法事務弁護士という名称を用いなければならないというふうに義務づけております。これもやはりユーザーに対して誤解、混同を招かないようにするために我が国において職務を行う際にはその名称を使えということを義務づけるわけでございまして、この義務づけも逆の意味では一つのPRになっていくんではないかというふうに思うわけでございまして、御指摘の点はまことにもっともだろうと思います。
#134
○中山千夏君 それから、公布から施行までの間に二年という期間を置いてありますけれども、これは大変長いように思うんですが、これだけの期間を置かれた理由をちょっと聞かせていただきたいんです。
#135
○政府委員(井嶋一友君) 法案が国会で通過をいたしましたといたしましても、本法を施行するまでにはいろいろの諸準備を行う必要がございます。
 まず申請者はほとんど外国から来るわけでございますから、外国の制度、特に相互主義との絡みにおきまして我が国の弁護士を受け入れている制度といったようなものにつきまして、私どもは現時点では法律自体でありますとかあるいはそれを紹介した文献といったもので承知はいたしておりますけれども、実際の運用といったようなものにつきましてはやはり十分調査をいたしませんと正確な本法の適用ができないという問題がございますので、まず諸外国のそういった制度あるいは運用の実情といったものについての調査を行いたいと考えておるわけでございます。
 それから、当然でございますが、法律を施行するにつきましていろいろな細則を定めなければなりません。これは政令あるいは省令といったような形で決めるわけでございますけれども、これを策定する作業といったものもやはり大変な作業でございます。同じような意味合いにおきまして、本法の施行のためには日弁連あるいは弁護士会におきまして会則、会規を定めなければなりません。これにつきましても、日弁連内での会内手続におきましては総会決議事項ということになっておるわけでございますので、それなりの時間と手数がかかるということでございます。
 それから、そういった形式的な細則ができ上がりましたといたしましても、さらにそれを適用して現実に運用していくにつきましては、日弁連と我々法務省とも当然詳細なすり合わせをする必要もございますが、さらに諸外国から申請してくる人たちに対しても十分なPRをする、あるいはマニュアルといいますか、そういったものをつくって配付するというようなこともやらなければなりません。そして、細則の実行につきましても、そういった意味での諸外国との調整作業といったものも必要になってまいるわけでございます。
 そういったことをいろいろやらなければなりませんので、そういったことがどのぐらいの期間にできるかという問題とかかわってくるわけでございますけれども、私どもは最大限度を見積もって二年ということを法案上明記したわけでございます。しかし、二年間かかってゆっくりやるという趣旨では決してございませんで、現在のような法律事務の状況から弁護士の国際交流を進めるという必要性といったことを考えますと、少しでも早くそういった準備作業を終えまして本法を施行する必要がございますので、できるだけ早く進めるということを考えております。
 もし理想どおり行けば、私どもは来年の四月からにでも施行できればいいなというふうに思って、そういったことを目途に作業を進めてまいりたいというふうに思っておりますし、日弁連の方ももう既に会則をつくるための機関もでき上がっておりまして、既に会合も数度持っておられるというふうに聞いておりますので、日弁連も同じような気持ちでそういった諸準備に着手しておられると了解しておりますので、そう遠くないところで本法を施行したいというふうに考えておるところでございます。
#136
○中山千夏君 そうすると、詳しい調査もこれからだということですけれども、今の段階で大体ざっと承知していらっしゃるところでは、どの程度その受け入れの相手国あるいは州があるものか、あるいは検討中のそういう相手国、州があるものか。
 それから、施行して最初の年にどのくらいの件数登録があるというふうに予想していらっしゃるか。
 それから、その場合に、日本人で外国で資格を取られてこの外国法事務弁護士になる方というのもあるわけですよね。で、その方たちがどの程度登録なさるか。
 それから、外国法事務弁護士の事務所が日本にできた場合に、そこに大体どの程度の受任件数というのでしょうか、どの程度の仕事が来るだろうかというふうに予想していらっしゃるか。これは、ちょっとまだ今の段階では予想もないかもしれませんけれども、お考えがあったら聞かせてください。
#137
○政府委員(井嶋一友君) まず現時点で私どもが把握しております諸外国の制度を前提といたしまして、相互主義を適用して我が国に参入できる弁護士の所属国という問題を御説明いたしますが、アメリカにおきましては現在ニューヨーク州とミシガン州とワシントンDCが開いておるわけでございますので、制度上はこの三州の弁護士は我が国に受け入れられるであろう。また、我が国の弁護士もそれらの三州に行けるであろう。それから、現在カルフォルニアとハワイが検討しておりますので、これがあきますればやはりこれらの州にも行けますし、これらの州の弁護士も受け入れることになります。
 それから、ヨーロッパにおきましてはイギリス、西ドイツ、フランス、ベルギー、こういったところが外国弁護士を受け入れる制度を持っておる、あるいはそういう制度を持たないまでも自由に活動させておるという国でございますので、そういった国々も我が国の弁護士が受け入れられるという制度がある以上、形式的には我が国において受け入れられる可能性のある国であるというふうに考えております。
 さらに、アジアでは香港あるいはシンガポールといったようなところも外国の弁護士を受け入れる制度を持っているというふうに文献上は承知をいたしておりますので、そういったところが運用上もそういうものであるとすれば、これは調査結果によりますけれども、やはり受け入れが可能ではないかということでございまして、いずれにいたしましても我々は、調査をした結果、そういったところを実質的に決めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
 それから、どのくらいの外国法事務弁護士の承認件数があるだろうかという予測ということでございますが、これもなかなか難しい問題でございまして、例えばアメリカには現在六十五万人の弁護士がいる、日本は一万三千人である。したがって、彼我比べますと大変な差があるので、アメリカの弁護士が大量にどっと来るのではないかというような議論もあるわけでございますけれども、じゃ、現在開いております各国へアメリカの弁護士がどのくらい行っているかということを調べてみますと、イギリスには大体百名から百五十名程度、西ドイツには十五名程度、あるいはフランスでコンセイユ・ジュリディックとして登録されておりますのは現在八十八名、その他既得権でもって入っておる人たちを入れましても百から百五十ぐらいというふうに言われておりますし、ベルギーでは二十六名程度というふうに言われております。これらの数字はいずれも日弁連が昭和五十八年にヨーロッパ調査をされたときの数字でございますから、その後若干変動はあるかと思いますけれども、大体そのくらいの数のアメリカの弁護士がヨーロッパへ進出しておるわけでございます。
 そういった数字を下敷きといたしまして考えますならば、御懸念のように大量に我が国に流入してくるというようなことはないのではないかというふうに思っておるわけでございます。特に我が国におきましては、事務所を設置するというようなことあるいは住居を構えるということは大変コストのかかることでございますので、そういったような経済的理由からも、そう大量に来て我が国で適正な事務処理ができるというようなことは考えられないわけでございますので、強いて申し上げれば多くて二、三百ぐらいというようなところではないかと思っておりますけれども、これも全く根拠のない推測でございます。
 それから、日本人の申請者がどのくらいあるだろうかというお尋ねでございます。これは先ほども申しましたけれども、日本人で外国、特にアメリカの資格を持っておる人というのは今までにもそれはございます。しかし、アメリカの資格と申しましてもやはりロースクールを三年間やる必要もございますし、バーエグザムを通る必要もあるわけでございますから、そうだれでもかれでもできるということでもございませんので、五十九年のデータでも十一名ということでございますから、そんなにたくさんの人が資格を取っているとは思えないわけでございます。しかも、その人たちが向こうで五年間やってこちらへ戻ってくるということはさらに予測としては絞られるわけでございますので、そんなに多くの人が日本に帰ってきて事務弁護士の申請をするということはないのではないか、せいぜい数名程度かなというふうに思っております。ただ、こういう制度ができますと今後若い人たちがこういった道を選んでやっていくということは当然考えられるわけでございますので、そういった意味でも将来の予測は非常に難しいということが言えるかと思います。
 それから、外国法事務弁護士の事務所にどの程度の仕事があるだろうかということでございますが、これは現在我が国の渉外弁護士が活動しておりますエリアでございますが、先ほど来申しますように、企業サイド、ユーザーサイドから見ますと必ずしも十分でないというような声もあるわけでございまして、こういった活動エリアにつきましてはまだまだ需要があるというふうに見られているわけでございますし、これからもこの需要はふえていくだろうというふうに考えられるわけでございます。そういったところへ外国法事務弁護士が入ってまいるわけでございますから、いわば処女地を開拓するというような面もあるわけでございますので、相当量の事務がそういったところへ入っていくのではないかと思うわけでございますが、これも数字でもってお示しすることは非常に困難なことでございますので、この程度でとどめたいと思います。
#138
○中山千夏君 それから、最後にもう一つお伺いして、そろそろ時間ですので、おしまいにしたいと思います。
 運用に当たって実質的に調査をする機関というようなものが必要ではないかと思われるようなところがありますね。例えば第十四条の三項ですか、これは「弁護士となる資格を有する者に対し外国においてこの法律による取扱いと実質的に同等な取扱いが行われなくなったときは」という、これが行われなくなったか行われているかというようなこと。それからもう一つ、四十八条「一年のうち百八十日以上本邦に在留しなければならない」そのうち、やむを得ない事情のときにはいなかったところに算入しないというような、これもやっぱりなかなか調べるのは大変だろうと思うんですが、そこはどういうふうに対応していかれるのか。
 それからまた、私が気づいた以外のところでそういう何らかの調査機関みたいな、システムみたいなものを置かなければならないところがあったら、そこの説明もお願いしたいと思います。
#139
○説明員(但木敬一君) 委員御指摘のまず十四条関係でございますが、これは法務大臣の承認の取り消しということでございまして、この点に関する調査というのは原則的には法務省が責任を持つということになろうかと思います。
 ただ、実際には、現実に日本の弁護士がある一定の国に申請したところそれが拒否されてしまったというようなときに初めて問題が露呈するといいますか、初めて問題になるのではないか。その意味ではやはり弁護士会の御協力ということが一つのキーポイントになるのではないか。そのほか、在外公館を通じましてその制度の変革とか、そういう問題ももちろん政府サイドで調べなければならないということになろうかと思いますが、事実上の問題としては、恐らく日本の弁護士が現実に拒否されるというような事態を契機として、実質的に同等な取り扱いが行われなくなったのかどうかという調査に入るのではないかと思います。
 ただ、これらの点につきましては、十三条等で法務大臣は承認を受けた者に対しまして報告を求める権限を有しておりますので、必要があればそれらの者に対して報告を求めることもできますし、また十三条の二項では「必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」ようになってございますので、例えば在外公館であるとか、あるいは日本にあります私的な団体、例えば外国法事務弁護士のおります原資格国のビジネス協議会とか、そういうところに対しての照会権もございます。これらを駆使して調査するということになろうかと思います。
 もう一方の四十八条の問題は、これはいわゆる弁護士会の業務監督の一部でございますので、原則的には弁護士会、日弁連がこれを調査するということになろうかと思います。ただし、現行弁護士法の同じ四十八条では、日弁連は必要があるときは公務所等に照会する権限を持っております。これは弁護士の監督に関してなんでございますが、本法上、弁護士法四十八条については、外国法事務弁護士は弁護士とみなすとなっておりますので、外国法事務弁護士の監督につきましても公務所に照会する権限を日弁連は持っているわけでございます。
 そこで、この現行弁護士法四十八条を活用していただいて、法務省の入管当局等にその調査依頼をしていただければ、法務省としてはこれに協力するという姿勢でございます。
#140
○中山千夏君 ありがとうございました。終わります。
#141
○委員長(二宮文造君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#142
○委員長(二宮文造君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#143
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#144
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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