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1985/05/13 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第10号
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1985/05/13 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第10号

#1
第104回国会 法務委員会 第10号
昭和六十一年五月十三日(火曜日)
   午後一時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     小笠原貞子君
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     林  ゆう君     岡野  裕君
     藤田 正明君     宮田  輝君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二宮 文造君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                大坪健一郎君
                岡野  裕君
                宮田  輝君
                安永 英雄君
                抜山 映子君
                中山 千夏君
   政府委員
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  井嶋 一友君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   参考人
       中央大学教授   小島 武司君
       前日本弁護士連
       合会事務総長   釘澤 一郎君
       経済団体連合会
       国際経済部長   糠澤 和夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特
 別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨五月十二日、橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二宮文造君) 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして御意見を伺うため、お手元に配付いたしております名簿のとおり、三名の方々に参考人として御出席いただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、約百分程度、委員の質疑にお答えいただきたいと、このように考えております。
 それでは、これより各参考人に順次御意見をお述べいただきたいと存じます。
 まず、中央大学教授小島武司参考人、お願いいたします。
#4
○参考人(小島武司君) 中央大学の小島でございます。
 本法案につきまして私の考えておりますことを述べさせていただきたいと思います。
 最近、世界的な傾向といたしまして、正義へのアクセスということが盛んに論じられております。そして、この正義というのは裁判所の判決ということでもあるわけでありますが、この正義に到達するためには何としても弁護士事務所の扉を通らなければならないということで、弁護士の法的サービスへの普遍的なアクセスを可能にする方策を各国が協力して講じなければならないと言われているわけでございます。そして、この正義へのアクセスのために裁判所における判決も極めて重要でありますが、同時に法廷の外での紛争の解決、さらにはそのような紛争が生じないようにするための予防法的なサービスということが核心的な重要性があると、そういうふうに考えられて、また論じられているわけでございます。このような世界的な潮流を考えますと、本法案は大変意義深い一ページを法律の歴史の中に記すことになるのではないかと思われます。
 ところで、世界は非常にコミュニケーションの発達と交流の発達によって縮みつつあると言われておりますが、その中で世界都市と言われるものが誕生しつつあります。それは、ある意味では古い歴史をさかのぼった世界都市にも匹敵するような都市が各国に生まれておりまして、東京もその一つであると言えるかと思います。このようなところでは世界各地の法律問題が集中的に論じられ、処理される必要がありまして、そのような集中的処理の機構が必要であるわけでございます。その意味で、東京は多重法域都市であると言うこともできるかと思います。このような都市においては、外国法サービスというものも、従来の形だけではなく、多様なものになり、そしてまた当事者の必要に応じて流動的なものになってこなければならないと考えられるわけでございます。
 このような競争的な異種サービスの併存という中で当事者のニーズに合ったサービスの選択がなされていくわけでございます。とりわけ、不透明な将来の法の予測とか、あるいは高度の法的プランニングというような領域になりますと、フェース・ツー・フェースの法的助言と深度のある総合的法律判断が重要になってまいります。企業がこのような分野に特にサービスの必要を痛感しているわけでありまして、従来の渉外弁護士の活動に対する不満の根底にあるものもこのような事態ではないかと思われるわけでございます。そこで、身近な原資格者によるサービスを受けたいという要望が強くなってくるのではないかと思います。
 ところで、ニーズということが弁護士業務では導きの星と考えられております。弁護士業務は利用者のニーズにこたえるということ、そういう目標のもとに設けられたものであり、弁護士の権利はその意味で、通常の権利ではなくて、単なる特権にすぎないとも言われるわけでございます。そしてニーズには、今回の問題においては企業サイドのニーズということが盛んに強調されましたが、長期的に見ますと、一般市民サイドのニーズというものも今後ますます大きくなるのではないかと思われるわけでございます。
 このようなニーズが多様に存し、そして今後増大していくであろうというように考えますと、この問題についてどのような考え方を持って臨んだらよいかということになりますが、これには二つの方向があろうかと思います。そして、現にこの二つの方向が論じられているわけでございます。
 一つは、利用者のニーズということを、絶対的な基礎と申しますか、根本に置きまして世界普遍主義的なアプローチをする。一部の学説がこのような考え方を唱道しております。もう一つの考え方は伝統的な態度でございまして、国内の有資格者の特権を重視して、国家が限定主義をとっていくということでございます。この後者の考え方は、国際交流の波の中で到底維持できないものになっております。そこで、前者の考え方が強く一部で主張されるわけでありますが、この考え方は、過去の歴史的な沿革ということを、あるいは世界の現実ということを考えますと、やや非現実的であると考えられます。そこで、プラグマチックな漸進主義がこの分野においてとられなければならないのではないかと思われますが、この意味において本法案の基調は妥当なものではなかろうかと思っております。
 本法案の基本的特徴について申しますと、一面において、外国法サービスというものを提供する専門家を国内の有資格者と基本的には同質性を有するものであると前提いたしまして、その上で外国法事務弁護士というような名称も付与し、そしてまた弁護士倫理を適用し、そして日弁連の監督下にこれを置くということになっております。しかし他面において、政策的な立場からこれに幾つかの限定を付しているわけでございます。共同経営の禁止等あるいは相互主義というのもこれに入ろうかと思います。
 これは、基本的には新たな試行としてこの法案が提案されているわけでございますから、それなりの慎重さを要するわけで、このような柔軟性を内に秘めた態度というのは極めて現実的なものであろうかと思われます。そしてこの法案は、絶対の基礎を構築したというように見るべきものではなく、長い試行錯誤の一過程として把握すべきものではないかと思われます。特に運用の実情を考えまして、時としては将来、本来的な理念を貫徹するために、立法上あるいは運用上相当思い切った調整も必要になってくるのではないかと思われます。こういうことを前提としたものとして考えるときに、出発点として法案が適切な一応の地点を形成しているのではないかと思われるわけでございます。
 ところで、このような法律が論議されます際に、ニーズというものが存在するのかということが議論されます。本格的な調査はまだなされておりませんが、企業等からの要望があり、また外国の弁護士からの進出希望があるということでありまして、一応そのニーズの存在が合理的に推測されるわけでございます。そして、このニーズは確証ないし証明が事前になければならないというものではなくて、本来的に門戸を適切に開きましたら、後は市場原理に任せておくのが筋でありまして、ニーズの存在をそれほど厳密に確定する必要はないのではないかと思われます。ただ、将来供給過剰から来る弊害が生ずるというようなことになれば、それについては調整が必要でありまして、インバランスが生じた場合にそれをコントロールすれば足りるということではないかと思われます。それについての手当ても、十条あたりに手がかりがあるとも考えられるわけでございます。
 ところで、このような外国弁護士の我が国国内における活動を許容するということになりますと、我が国の司法制度、我が国の法文化的な伝統との関係が問題になり、これも議論されてきたところでございます。このような観点から二つの問題が出てくるのではなかろうかと存じます。
 一つは、乱訴の弊害というようなことが裁判所に訴訟遅延を招き、また訴えられた者に不当な重圧を加えることになるのではないかと恐れられるわけであります。ところで、乱訴の弊という場合に、そこには幾つかの重要な要因がございます。一つは、権利者である人々の考え方あるいは社会的、文化的な伝統ということでございますが、そしてこれが往々に強調されるわけでございます。しかし、私の見るところでは、より重要な要因は法環境の違いということと弁護士活動の内実という二つの点であろうと思います。
 法環境の違いという点につきましては、我が国はアメリカ法と手続法その他で非常に大きな違いがございまして、アメリカの弁護士の影響によって訴訟が慎重に行われるという事態がそう簡単に変わることはないと思われます。具体的には提訴手数料などというものが全然違う形で定められておりますし、損害賠償の算定方法なども違います。その他もいろいろの違いがございます。それから、弁護士の活動様式という点について申しますと、今回外国の弁護士が我が国に入ってきましても、それは外国法の事務弁護士という限定された活動でございますから、訴訟の点に一定の歯どめもなされているので、好ましいからざる影響を及ぼすとは思われないわけでございます。
 もう一つの点は、弁護士業務自体に対する影響でございます。アメリカ等の、特にアメリカの弁護士の場合にその特徴が顕等でございますが、過度のビジネス主義といいますか、そういうものを持ち込んでくるのではないかという点であります。しかし、この点については、私の見るところ、プロフェッションの本質はビジネス性と正義の擁護者としての聖なる使命と二面性があるのであって、アメリカの弁護士等に顕著に見られます傾向が必ずしもそれ自体不健全であるとは考えられないわけでありまして、要はこの両面を調和させていくことが利用者のニーズにこたえるゆえんではないかと思われます。
 そこで最後に、このような立法措置がどのような大局的な影響を及ぼすであろうかという点を見てまいりたいと思いますが、プロフェッションの国際交流の推進ということは、日本やヨーロッパ、アメリカの弁護士の各特性がこの我が国の実務の中で衝突して、その間に競争が行われ、その長所がお互いに学び取られていくことになるのではないかと思われます。そういう意味でこの機会は異花受精による弁護士業務の豊穣化に寄与するのではないかと期待されます。
 それから、リーガルプロフェッションに対する影響として壊滅的な打撃が加えられるのではないかという危惧が一部で語られておりますが、我が国の渉外弁護士は相当優秀な方々でありまして、そして一定のこれらの弁護士活動に対する支援のための配慮が行われるならば、十分外国の弁護士との競争相当として有力な地歩を築いていけるのではないかと思われるわけでございます。具体的な措置としては、よく語られることに、法曹人口を充実して人的に渉外弁護士を強化していくということが望ましいことはもちろんでございますが、さらに具体策としては、比較法的な情報を整備するための一種のシンクタンク的なものを組織するというようなことも考えられるのではないかと思います。そして、この際には既に過去二十年以上にわたって蓄積されました我が国の企業の海外における経験が活用されるべきであろうと思います。その意味でこれらの経験が集大成されるということも有用ではないかと思われます。
 以上、本法案は若干の問題を我が国の法律実務に投げかけ、また、依頼者との関係でも若干の問題を生ぜしめるかもしれませんが、大局的に見るとメリットがデメリットを上回って望ましい措置ではないか、そして本法案がその正しい軌道に沿った措置であると確信するものでございます。
 御清聴ありがとうございました。
#5
○委員長(二宮文造君) どうもありがとうございました。
 次に、前日本弁護士連合会事務総長釘澤一郎参考人、お願いいたします。
#6
○参考人(釘澤一郎君) ただいま御紹介にあずかりました釘澤でございます。
 私は、昭和五十九年の四月一日から本年三月三十一日まで日本弁護士連合会、以下日弁連と略称させていただきますが、事務総長を務めておりまして、この外国弁護士問題につきましても、この二年間終始深く関与してきたものでございます。
 まず最初に申し上げたいと思いますことは、この外国弁護士問題は、我が国司法制度の一翼を担います弁護士制度の根幹にかかわります問題でございますが、一方におきまして、弁護士の受け入れは国内的、国際的な要請であり、しかも緊急を要するものとなっておりますことは御案内のとおりでございます。このため、日弁連といたしましては、その適正妥当な解決を図るべく、早期の会内合意の形成に努めてまいりましたが、会員の圧倒的多数によって可決されました総会の議決を経まして、ようやく本年二月に至りまして、理事会によりまして外国弁護士制度要綱が策定されたのでございます。
 ただいま本委員会で審議賜っておりますこの外国弁護士に関する特別措置法案は、今申し述べました日弁連の制度要綱に基づいて立法されたものでありまして、したがいまして、当然のことではございますが、日弁連といたしましては本法案に全面的に賛成しているということでございます。
 次に、外国弁護士問題についての日弁連の基本的立場、またこれまでの対応と立法の必要性についての認識などについて若干申し述べさせていただきます。
 御高承のとおり、この外国弁護士問題は、昭和四十九年に米国のニューヨーク州弁護士会から日弁連に対し、外国弁護士の受け入れ制度を創設する意向があるかどうかの打診がございまして、当初はニューヨーク州弁護士会と日弁連との間で意見交換が行われていた問題でございましたが、昭和五十七年三月、米国政府が本問題を貿易摩擦問題の一環といたしまして、すなわちサービス業の自由化の一つとして取り上げて以来、政府間レベルの問題となったのであります。この事態に直面いたしまして日弁連は、外国弁護士問題は自治権を認められている日弁連が自主的に解決すべき問題であり、日弁連の頭越し交渉を認めるべきではないとの基本的立場をとりまして政府の御了承を得たのでありますが、自来、今日までこの基本的立場を最大限尊重していただいてきたのでございます。
 ところで、昭和五十七年以来、日弁連会内の事情から若干の曲折はございましたが、昭和六十年の三月の十五日の理事会におきまして、相互主義と外国弁護士は日弁連の自治権のもとに入るとの二原則のもとに外国弁護士の受け入れを認めること、受け入れの具体的条件は内外の意見を参酌して、国内的にも国際的にも妥当とされる制度を創設するとの第一次基本方針を決定したのでございます。
 そして、六十年の四月から理事会内に小委員会を設置して、外国弁護士制度要綱の策定作業に着手したのであります。四月二十五日に法務省から外国弁護士制度についての検討会開催の提案がありまして、日弁連といたしましては、要綱策定に当たり、この検討会における法務省の意見は国内を代表する意見、批判として受けとめるとの方針のもとに右提案を受け、以来、隔意のないまことに率直な議論、意見交換を続けてまいったのでございます。本年二月五日までの十カ月間に、実に二十四回に及んでいるのでございます。
 まことに恐縮でございますが、この席をかりまして、法務省の並み並みならぬ御尽力、御協力に対し、深甚なる謝意を表する次第でございます。
 一方、会内におきましては、この検討会における意見交換の結果を踏まえまして、随時小委員会または理事会の審議を重ねてまいったのでございます。七月の十九日には外国弁護士制度素案を発表いたしまして、内外の意見を参酌して検討を加え、九月三日には外国弁護士制度要綱試案第一次案を策定、公表いたしまして、各単位会の意見をも求めたのでございます。
 このころから会内に総会招集の必要性を主張する意見が強くなってまいりまして、十二月九日開催の運びとなったのでございますが、ここにおきまして、この法務省の関係資料にもございますが、「国際的法律事務の円滑・適正な処理のための「外国弁護士」制度の基本方針承認の件」が圧倒的多数をもって可決されたのでございます。
 この総会議案の提案理由を見ますと、「政府は、貿易摩擦問題解消の経済対策の一環として、七月三〇日、市場開放のための「行動計画」を決定し、そのなかで、本問題については、「日弁連の自主性を尊重しつつ、次期通常国会における法律改正を目途に、国内的にも国際的にも妥当とされる解決を図る」とし、実現の時期として、具体的には次期通常国会に向けて明年三月中には法案提出をする」という緊迫した国内外の情勢認識に立ちますと同時に、国際交流が増大の一途をたどります現代国際社会、また国際経済におきまして我が国が大なる役割を担い、高い地位をも獲得するに至っております今日、同様に増大する国際的法律業務に対応する弁護士制度を整備し、これを充実、発展させていくことが我が国の国際的責務でもあるという自覚のもとに、「外国弁護士のわが国における業務活動をどのように認め、どのように規制するかは、わが国の司法制度・弁護士制度と深くかかわりをもつものであり、従って、自治権を有する日弁連が、全国弁護士の総意と責任において自主的に解決すべき」であるということでありまして、この決意がこの総会に結集されたものと考えるのであります。
 なおまた、提案理由書において日弁連の基本方針を次のように述べております。
  この外国弁護士制度は、現代の国際社会における経済的・文化的交流の進展という情勢下において、法の支配とこれを基調とする世界平和を追求すべき弁護士が、相互に自国法の実務の実践を通じて、国際交流または国際的取引のうちに、公正・衡平の理念を顕現し、また経済的・社会的及び文化的権利の擁護に資するための国際的・相互的な法制度の一として創設するものである。そして、この創設に当っては、弁護士制度は司法制度の重要な一環をなすものであり、いずれの国においても、それぞれ固有の歴史、文化に根ざす独自の伝統を有する制度となっているので、この外国弁護士制度もわが国の司法制度、弁護士制度の根幹をそこなうことなく、これとの調和において、その内容が定められるべきものである。
としております。
 その後、日弁連におきましては、この総会で提出されました疑問と意見を踏まえ、かつ年末年始における四日にわたります合宿による法務省との検討会を経まして、本年一月九日、外国弁護士制度要綱試案第二次案を策定、一月二十五日の理事会において、補正第二次案に基づく制度構想大綱及び立法形式につきましては単独特別法とすることを決定いたしまして、二月六日には外国弁護士制度要綱を、資格、名称を除き、決定いたしまして、翌七日にこれを法務省に提出いたしました。その際、三月中旬も迫る日時の関係からいたしまして、日弁連におきまして法案原案を策定した上に現弁護士法と同様の議員立法方式とすることはもはや不可能という考えのもとに、政府提案の立法とされたい旨をあわせて申し入れたのでございます。資格、名称につきましては、二月二十一日、外国法事務弁護士と呼称することを決定したのでございます。
 この間、法務省は立法作業を進められ、二月十八日に日弁連は法務省からその第一次案の内示を受け、検討会などの経過の後、三月の二十日、最終案の内示を受けたのでございます。
 以上の経過の概要からも御理解願えるところと存じますが、冒頭に申し上げましたように、本法案は日弁連会内の圧倒的多数の賛同する外国弁護士制度要綱に基づいて立法されたもので、いわばこの法案は法務省と日弁連との共同作業によってでき上がったものと申しても過言ではないと存じておるところでございます。
 なお最後に、最近の日弁連のこの問題の取り組みについて一言申し上げます。
 御案内のとおり、本法案においては日弁連の会則に定めるとする事項が少なからずございますので、これらにつき会則等を制定する必要がございます。そこで、三月の理事会におきまして、従来からの外国弁護士対策委員会を改組しまして、会長より会則等の立案方についての諮問を発しました。同委員会におきましては直ちに小委員会を設けて作業に入り、五月九日には第三回目の委員会が開かれております。また、新年度に入りまして、四月十八日の第一回理事会におきまして、右委員会の審議と並行して会則等の策定準備に当たるべく、小委員会を設置することを決定し、早期に会則等の制定を完了するよう万全の体制を整えておりますことを申し上げる次第でございます。
 以上で、私の説明を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
#7
○委員長(二宮文造君) どうもありがとうございました。
 次に、経済団体連合会国際経済部長糠澤和夫参考人、お願いいたします。
#8
○参考人(糠澤和夫君) それでは、本法案についての私どもの考え方を述べさせていただきます。
 まず初めに、基本的立場と、それから検討の経緯というところを申し上げます。
 外国法事務弁護士の問題につきましては、経団連としては主として法律サービスの受益者という立場から検討してまいりました。また、ガットにおける国際的なサービス貿易自由化の推進、ガット以外にOECDその他でもやっていると思いますが、そういった見地からこの問題に関心を持ってまいったわけであります。
 最近におきましては、昭和五十八年の九月二十七日の経団連意見書「自由貿易体制の維持・強化に関する見解と提言」という文書におきまして、相互理解あるいは人的交流の促進という見地から、「外国弁護士の日本における弁護士事務所の開設、活動を相互主義に基づいて認める等、各種の専門的資格の相互容認により交流を拡大し易くすべきである」というふうに主張をいたしております。
 次いで昭和六十年、昨年の二月の二十六日に発表いたしました経団連意見書「自由貿易体制の再建・強化に関する基本的考え方」においても、人的交流の促進という立場から「欧米諸国が強く求めている外国人弁護士の日本における事務所の開設、活動については、相互主義に基づいて双方の納得の行く解決を早急にはかるべきである。」としております。
 本年に入りまして、二月二十五日の経団連の意見書「世界経済の安定と繁栄を目指して」という題、副題で「国際社会におけるわが国の責務」と題しておりますが、その中でサービス貿易の自由化推進という見地から「わが国経済の国際化推進に伴い、外国法弁護士の参入は必然的方向としてこれを受けとめるべきである」と述べております。したがいまして、現在に至るまで経団連といたしましては本問題の積極的推進の態度で一貫しております。
 本年二月、先ほど申し上げました意見書の中で、特に「わが国経済の国際化推進に伴い」としておりまして、これは日本の金融・資本市場の自由化を含むサービス市場の自由化の進展、それから対外直接投資の拡大など、今後の我が国経済の国際化に伴う渉外的法律事務活動の需要が増大するであろうということを予定した表現でございます。また、法案提出の動きに伴い、それまで外国弁護士という表現をとっておりましたが、法案で書いておりますように外国法事務弁護士と言った方がよかったかもしれませんが、外国法弁護士という表現をことしから用いております。
 経団連としては、この間に、日弁連の方々あるいは法務省の担当の方々、それから外国のいろんな弁護士などと本問題について情報あるいは意見の交換を行ってまいりました。本年四月には経済界の実務担当者ベースで法務省から法案の内容につき説明を受け、懇談をいたしております。
 経済界のニーズはどこら辺にあるかということを次に述べたいと思います。
 今回の法案は渉外的法律事務に限って外国法弁護士の日本における営業を認めようというものでありますが、かかる渉外事務は外国企業との合弁、それから企業の買収、技術の提携、それから外国におけるあるいは国内における債券の発行、国際的な融資などの契約行為にかかわるものが主になるのではないかと思われます。
 我が国企業といたしましては従来から、例えば外国の中で米国に例をとれば、アンチダンピング法、それから相殺関税、アンチトラスト法その他、もろもろの我が国の輸生活動ないしは投資活動の関係で、米国通商関係法規等を中心とした面において、米国人弁護士をワシントンDCもしくはカリフォルニアその他各州等で雇用してまいっております。こういった準司法的な面のサービスのほかに、一部は司法的なものもありますが、そういった面のサービスのほかに、それから立法府、行政府に対するロビイングというのが特にアメリカの方では非常に多いのですが、ロビイング活動、情報収集、そういったことに弁護士の事務所を使うということが非常に今までも多いということは皆さん御承知のとおりと思います。
 さらに、日本の金融機関などの対外投融資活動の激増、我が国産業の対外直接投資の激増などに伴いまして、このような種々の面における外国弁護士の起用が一層多面的になって、かつ増加していくということは当然だと思います。もちろん今までのところを見ますと、こういう需要は相手の国において相手の国の弁護士を起用して大分満たされてきているわけです。事実、経団連のメンバー企業などに当たりましても、現在の状態、この法案ができる前までの状態でさほど不便を感じているという声は余り聞かないわけであります。
 しかし、今後の経済の国際化に伴ってだんだん需要がふえてくるのではないかという気がいたします。日本を中心とした国際的な企業活動というのはどんどんふえるわけでございますし、それから今進展中の金融の国際化、自由化、そういったものが進みますと、東京がロンドン、ニューヨーク、フランクフルトなどと並ぶ、あるいはそれを凌駕する国際金融センターとして成長していくというふうなことがあります。そういったことがありますと我が国内で外国人弁護士もしくは外国法弁護士のニーズが高まってくるのではないか。そういうことで、我が国に渉外的な法律事務の本拠を置いた方が顧客にとっても法律サービスの提供者にとってもお互いに便利であるという面もふえる傾向にあるのではないかというふうに存じております。現実に優秀な弁護士が多数存在するということが情報の集積都市としての一つの要因になっていくのではないかというふうに、ほかの国の観察上、思われます。
 我が国内の需要は、従来は我が国の法律事務所のトレーニーないしはコンサルタントの資格で法律事務に当たってきた外国人弁護士等の短期訪日のベースで活動していた方々、そういった方々によってほとんど満たされてきたわけでありますが、今我が国にあります外国企業は現実にいろいろ不便を感じてきたことであろうと思います。現に欧州の企業では、特に小さな企業の方は非常に不便をこれまで感じてきたのだということを言っている人が多いようであります。しかし、今度の法案が通過して施行されましても、顧客はまず日本国内の外国企業が主になっていくように観察しております。
 我が国の弁護士は、そういう需要に対しまして、日本法については非常に立派な専門的知識を持っていても、外国法についてまで習熟しているものは少数であるのが現状であろうと思います。それから、それぞれのいろいろな国の外国語できちんと形の整った法律的文書を作成するということができる弁護士もごく限られた数ではないかというふうに観察いたしております。
 こうして見ますと、我が国の現状では、外国法弁護士の専門的知識あるいは文書作成能力などを活用するのが企業としては当然の道であると思います。今次の法案では日本の弁護士事務所に対して外国法律事務弁護士を雇用することを認めておりますが、これを通じまして、あるいはその他のルートを通じまして日本の弁護士が渉外的法律事務について一層習熟されて、全体としての法律サービス、リーガルサービスの面での国際競争力が高められるということを希望いたします。日本の産業の国際競争力がかなりついているということは皆様御承知のとおりであると思いますが、そういったことに並んでリーガルサービスの面でも国際競争力が強められていけば非常にいいのではないかというふうに思います。
 現在ある弁護士の法律のもとでは、弁護士事務所の法人化並びに複数事務所設置といったような問題は認められていないようでありますけれども、外国から法人経営の大資本法律事務所が日本に進出することに対して、非常にそういった面から危惧を皆様抱いておられるというふうにこれまで聞いております。しかし、積極的に今後の日本の経済の国際化、企業の国際的活動の活発化といったことを前提といたしますならば、リーガルサービスの提供者の方の国際競争力を強化するといった面から、こういった制限についても再考の余地がありはしないかというふうに存じております。これはちょっと横道のようでありますが、付言させていただきます。
 それから、将来の展望といいますか、こういうふうになるのではないかなといったような問題をちょっと述べさせていただきます。
 今度の法案は、現段階としては非常によく整ったものであるというふうに拝見しておりまして、私どもとしては一日も早く通過することを希望しております。まだ、在日米国商業会議所ですか、それからEBC、ユーロピアン・ビジネス・カウンシルというのですか、そういったところから非常な不満が述べられておって、文書が私どもの方にも届いております。そういった点ありますが、そういった点もなるべく今後の政省令の段階でできるだけ吸収していただけるものと存じております。
 さて、やや遠い将来を展望いたしますと、事態の推移によっていろいろな問題点や便法といったものが出てくることが考えられます。例えば日本の大学においては法律教育を受けた者のほとんど、九八%が官庁あるいは企業に入って、ごくわずかが司法試験を経て弁護士になるというのが現状ですが、こういった事情もあって、むしろ企業の法務部などに、契約交渉の実務を通じて外国、特に英米の通商法等に精通し、また、たびたびの実際の訴訟経験を経て特許法、アンチダンピング、アンチトラスト法係争などに精通した専門家が多く生まれつつありますが、こうした人たちは我が国または外国の弁護士資格を持っていない場合が多いのでありますが、そういうふうになりますと、今度の仕組みですと定年退職後や中途転職などの場合にその専門的知識及び経験を社会のお役に立てるということが制限されるというふうな感じもいたします。
 しかし、こういった問題は、外国、特にアメリカ等の弁護士事務所あるいは欧州の弁護士事務所等でも同じですが、弁護士だけでなくてエコノミストなども雇用されておるようでありますし、コンサルティングというふうな方に進む手もありますので、そう大きな問題ではないのかもしれません。
 それから次に、日本の司法試験が難しいことから、語学に堪能な青年が日本の大学を卒業した後に、あるいはそれも省略して、欧米のロースクールで勉強してアメリカその他の国の弁護士資格を取って、現地で実務を数年行って日本に帰国して外国法事務の弁護士として業務を開始するという便法も考え得られるようであります。これは、外国人の弁護士を今度の外国法事務弁護士として予定していたのではないかというふうに拝察しておりますが、そういった事情から見ると、若干食い違う印象も生ずるかと思いますが、これはとりたてて日本弁護士との間の権衡を失するということにはならないのではないかと思います。
 また、外国法弁護士で新しい法律の規定する実務年数の足りない者は、日本の企業あるいは在日外国企業の法務部などにおいて社員などの形で、東京で別途サービスを提供するというふうな便法も考えられます。
 いろいろのことを御参考までに申し上げましたが、それもいずれも可能性の分野の問題でありまして、私どもとしては基本的に、どんな形をとっても多様なサービスというものを競争的に提供していただく形の方がお互いに技量の向上が期待できるものというふうに信じております。
 最後に、この法案は基本的に相互主義という立場で書かれておりますようですが、経団連としては、前二回の意見書におきましては相互主義の見地をとっておりましたが、本年の意見書ではその文言が取れております。これは他意はございませんで、相互主義について物の貿易の分野でもいろいろな経験を踏みまして、これが果たして交渉の準則としていいものかどうか、あるいは結果の公平さをはかる尺度としていいものであるかということについて私どもは今のところ必ずしも自信が持てないという理由によるものであります。
 御高承のように、ガットにおきましては、内国民待遇と最恵国待遇ということを貿易全体を律すべき基本原則として採用いたしておりまして、相互主義につきましては、各交渉における全体的相互利益の均等を図っているということで個別分野での相互主義というものを排除してまいったわけでございます。したがって、これからガット交渉が本格化していく、あるいはサービス貿易についてのガット交渉が本格化していくというふうな段階で、これはガット交渉があるいはOECDにおける交渉によるかまだわかりませんが、いずれにしろ国際交渉が本格化していくという段階で、相互主義を主とした態度で臨むべきだと主張するというところまで私どもとしては踏み切れないということでございます。もちろん、法務省がこの問題で相互主義の立場で応ずべきだと判断されたといたしましても、それはまた別問題でございます。
 以上、いろいろ申し上げましたが、これら単なる可能性の問題として申し上げた点を含めまして、今後実際の事態の発展を数年間見てみまして再び見直すようになるのではないかと思います。現在の時点で見る限りこの法案は望ましい方向にあると思いまして、一日も早く成立することを強く期待しております。
 以上でございます。
#9
○委員長(二宮文造君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#10
○寺田熊雄君 大変有益なお話を承りまして喜んでおります。
 この法案が日弁連の制度要綱に基づいて法務省が立案された、それで釘澤参考人からも法務省の努力を多とするというようなお話がございました。私ども、法務関係の法案を審議する場合には、日弁連の意思を全く無視したような法案はちょっと通しにくいので、常々、法務省当局にも日弁連の意向を極力尊重してほしいという要望を今までも出してまいりました。そういう見地からいいますと、今回の法案につきましては日弁連と法務省との呼吸が完全に合致した、その結果、何か法務省と日弁連との蜜月関係といいますか、そういうふうなものさえも感ぜられるのでありまして、これは一面におきまして大変喜ばしいことのようにも思うのであります。
 私ども、四十年代の後半には、日弁連と最高裁との間のすさまじい対立を経験しております。これは、特定の司法修習生の任官の問題であるとかあるいは特定の判事補の再任問題であるとか、そういうことをめぐりまして、今から考えましても、本当にその当時は日弁連と最高裁との間の対立が厳しかったんです。そして、日弁連のそのときには渡部会長の就任披露宴で、理事会の論議が沸騰いたしまして就任披露の宴の開始時刻をおくれて、帝国ホテルへ行ってみますと、もう石田最高裁長官初め、お客さんがぱくぱく料理を食べておるというような大変格好の悪い現象が起きました。私見ておりますと、石田さんと渡部さんがその食事の間一言も会話を交えないというような状態であったんですね。石田さんは、法務省それから最高裁、日弁連がそれぞれ分を守りというようなことを言って、余り最高裁のことに日弁連は口出しをしてくれるなというような、相手の目に指
を突っ込むようなあいさつをなさるというような現象さえもあったわけであります。
 それが終わりますと、法務省と日弁連が弁護人抜き法案で厳しい対立を来しまして、今度は法務省と日弁連との間の空気が険悪になった。最近でもやはり刑法の改正でありますとか監獄法の改正――刑事、留置両施設法案をめぐりまして大変厳しい対立があったりしましたので、それだけに、この法案で法務省と日弁連の呼吸が完全に合致したことは大変喜ばしいことであります。また、今までの歴史にかんがみて珍らかなことであるというふうな印象を持ったわけであります。
 ですから、日弁連の意向が完全に盛られたかどうかというふうな点が質問に当然出るはずなんですけれども、この制度要綱を見ますと、ほとんどその法案の内容と変わっておりません。したがって、日弁連の意向は完全にこの法案に取り込まれている、それ自体はもうはっきりしているわけであります。また法務省の方も、この法案を成立させることによって、法的なサービス業務の自由化を求める外圧といいますか、欧米の強烈な要求を満たし得るということにもなり、そういう意味では点を稼ぐといいますか、時代の要求にマッチされるということになったわけで、大変結構なことだと思うんです。殊に我々法律家から見ますと、法律業務というものが非常に今専門化を求められておりますが、外国法の適用ということにも関する分野では、こういうエキスパートを日本にどんどん取り込んで専門的な知識の活用というものを充足させていくことは大変利点があるわけであります。そういう意味で我々としても大変結構なことであると考えるのであります。
 しかし一、二点やはり疑問に思いますのは、外国の法律家というものは、今、小島先生ですか、ビジネス的な、ビジネスマンとしての性格が強いというようなお話がありました。それで、これは釘澤参考人にお伺いしたいんですが、そのビジネス的な要求から申しますと、広告の問題が日弁連でも強く求められておりますね。そういう面について、外国から参ります外国法事務弁護士の習性といいますか、それから来る広告の要求と日弁連の伝統的な品位を保持するという要求がありますが、そういうものとは完全にマッチできますでしょうか。
 それからもう一つは、報酬の問題がありますね。私ども、外国、アメリカの弁護士の事件を処理する場合の報酬の取り方なんというもので、あっと思うような問題があります。例えば成功報酬、成功したら五割取ってしまうというようなこともあるのだというような、これは当事者の契約に任されておるのでしょうか、そういう面の規制というものはこれからどういうふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。その点を釘澤参考人にお伺いしたいと思うんです。
 それから、糠澤参考人にお伺いします。
 大変おもしろいお話を承ったんですが、結局この外国法事務弁護士のクライアントといいますか、ユーザーといいますか、需要家と思われる人々、これがやはり大企業が主要なものになるのでしょうか。経団連としましてはそういうふうに見ていらっしゃるのでしょうか。余り国内の企業はそれほどこういう制度を強く求めていたわけではないんだ、むしろ需要というのは日本における外国の企業なんだというお話もありましたね。そういう点。
 それから、今大変興味を持ったのは、相互主義についての疑問を提示されましたね。これは、私どもがこの法案の前にこの委員会で審査をいたしました扶養義務の準拠法に関する法律に関連しまして、扶養義務の準拠法に関する条約の中に相互主義を放てきする規定が盛り込まれてあったわけですが、これは一定の経済的な弱者である扶養権利者を救済するためにはもうそういったようなものをかなぐり捨てることが正義といいますか、公平といいますか、そういう要請を満たすのだというような立場であったのだろうと思うんですけれども、あなたが相互主義に対する疑問を提示された点、これは経済の分野でそういう経済的な欲求からおっしゃったのでしょうから、もうちょっとその点を御説明いただけますか。
 それから、糠澤参考人のお話の中で弁護士業務の法人化の問題をちょっと触れられましたが、釘澤参考人に、これはどういうふうに私ども考えたらいいのか、日弁連においての御経験深いところからちょっと御意見聞かしていただきたいと思うんです。
 まずそれだけ、とりあえずお尋ねします。
#11
○参考人(釘澤一郎君) それでは、寺田先生からの御質問の第一、広告問題という関係のことをお答えいたします。
 日弁連におきましても個人広告をある一定の条件、制限のもとに許すという方向での検討を続けておりまして、昨年の総会では、執行部が提案いたしましたそのような会則関係の議案が承認されないで継続扱いになってしまいましたけれども、個人広告をある程度許すということは、その利用をなさる国民、消費者の方々の知る権利とのかかわりのございます問題でございまして、認めるのが当然であろうというように考えております。ただ、その細かい内容の点で意見が食い違ったために執行部提案のものが承認されなかったわけでございますが、この外国弁護士の受け入れに関連いたしまして、外国弁護士、特にアメリカあるいはイギリスのソリシターにおきましては広告が許されておりますので、当然に関連してこの問題が起こるだろうということは予想しておりまして、外国弁護士に関する会内の会則等を整備する際に、日本の弁護士及び外国法事務弁護士に適用されるやはり広告に関係する規制をする規定を設けるということを予定しております。一定範囲内では許すという方向であろうと考えております。
 したがいまして、御懸念のようなことはまずなかろうかと思っておりますし、私の若干存じておりますところからいたしますと、アメリカにおきましても弁護士の一〇%ないし一二、三%が広告をするということでございますけれども、むしろ大企業なり企業活動にかかわる大ローファームの弁護士の方々は広告はしないそうでございまして、やはり最高裁判所の判決で出ましたように、リーガルクリニックということでむしろ個人の細かい仕事をしてあげる方々の方が広告の必要があり、かつ広告をしておられるようでございまして、日本では大ローファームの弁護士が見えるようでございますので、さほど広告問題では心配はいたしておりません。若干の問題はあろうかと思いますので、それは会則等を整備する予定でございます。
 それから、報酬問題でございますが、これまた外国法事務弁護士は訴訟活動を認めないわけでございまして、日本の報酬規程は主として裁判所関係の訴訟行為報酬が主でございます。それ以外は時間制が採用されております。アメリカの弁護士は、今申しましたように訴訟活動ができませんとなると、主として時間制の報酬を取られるだろう。時間制の報酬につきましては一時間幾ら以上ということでございますので、それ以上は青天井でございますし、自由契約が許されておるということで、これもさほどの問題は起こらないと思いますが、これまた別途外国法事務弁護士の報酬規程にかかわる規定を日弁連では用意する予定でございます。
 それから、日本の弁護士の法人化の問題でございますが、これは日弁連でまだ十分な検討は済んでおりませんので、日弁連の意見とまでは申し上げられませんけれども、外国法弁護士が入る入らないにかかわらず、まあ医師につきましてはたった一人の法人さえ認められる状況でございますが、やはりプロフェッションといたしましては、先ほど経団連の方も言われたように、日本の弁護士が訴訟活動以外の業務をさらにすぐれたものにするためには法人化いたしまして内部保留を認めていただくようなことにいたしまして、物的、人的設備を拡充するという手段として法人化が望ましい、法人化を認めていただきたいという声が強くなっておりますことを申し上げておきます。
 以上でございます。
#12
○参考人(糠澤和夫君) 私の方に対するお尋ねは、需要の大宗が国内の大企業であるかどうかということが一点あったと思いますが、大企業の方は従来もいろんな便法といいますか、外国において例えば大企業がニューヨークもしくはカリフォルニアあるいはワシントンDC、そういったところで外国のローファームを雇うということで足りてきたわけです。それから、国内あるいは駐在の自分の法務部あるいは法規部といったところの優秀な職員、こういった者がかなりインハウスのリーガルサービスを行ってきたということがあります。それから、日本でこれまでトレーニーというふうな形で活動してきた外国人の弁護士、そういった者を使うということもこれまでやってきたわけです。
 そんなことで、今度のような玄関があかなくとも、いろいろ考えてやってきたわけですから、そんなに切実に感じてきたということではありません。経団連の方でも、何とかこの外国人弁護士法が通ってもらいたいんだ、そうでないと企業活動はもうにっちもさっちもいかないんだというふうな切迫した空気でもって臨んできているわけではありません。
 ただ、今後はわかりません。今後の経済活動の一層の国際化、それから金融サービス、資本市場、そういったものの自由化、国際化、そういったものを視野に入れますと、今後はやはり東京で外国法事務弁護士があった方がいいと、現実にいろいろ使ってみようかという企業がふえるのではないかというふうにも思われます。将来のことですから、そうはっきりまだ確信を持って言うことはできません。
 ヨーロッパを中心とした企業、それからアメリカ企業の一部、そういったところは非常に切迫した感じでもって我々に言っておりまして、とにかく自分の国の弁護士あるいはほかの国の弁護士でもいいんですが、そういったところがいると非常に助かると、今のように、隠れキリシタンということはありませんが、何か隠れみのを着たような活動をしているのじゃなくて、正々堂々といろいろ活動できるのだとありがたいがなと、そういった制度ができるとありがたいがなというふうな希望を前から言ってきたわけです。そういったことを我々は聞いてきたということです。
 したがって、国内の日本の企業のうち大企業が需要者になるかという点は、必ずしも大企業――大企業もありますが、むしろ中堅企業あるいは中小企業というようなところで、外国に自分の法務部等を駐在させて外国の事情、法的なデベロプメントあるいは情報収集、それから外国における係争、そういったものの処理に当たるということができない企業、あるいは外国で外国の法律事務所を雇うだけの資力がなくて、ここにいるので安ければこちらの方にいるのを使おうというふうなところが中小企業あるいは中堅企業というところで多くなるのではないかなという気もいたします。しかし、いずれにしろそう確信を持って申し上げるようなことではありません。
 相互主義の問題、これは、私の先ほど申し上げましたのは舌足らずであったかもしれませんが、これまでの経団連の意見に比べて、今回の経団連の意見が相互主義というところを、文言を落としているということについての説明をしたわけです。この法案に含まれた相互主義という考え方に疑問を呈したわけではありません。経団連としては相互主義の見地からサービス貿易に対処しようというふうに、一般的な交渉準則あるいは結果の平等性あるいは公正性をはかる尺度として相互主義を使うべきであるというふうに経団連が立場をとっているというふうに広く受けとられるというと自分の手を縛ることにもなりはしないかというので、まだ自信が持てないという状況であります。
 先ほど申し上げましたように、ガットにいたしましてもOECDにいたしましても大体、内国民待遇あるいは最恵国待遇というものを根幹としておりますから、そこに個別の問題についての相互主義というのが入っていないということを前提といたしますと、その見地からいたしますと、今全体のことを律する準則として経団連がそれを取り上げたくないということだけであります。この外国法事務弁護士の分野において相互主義でいいか悪いかというのは別問題であるということは、先ほど私が冒頭の陳述で申し上げたとおりです。
#13
○寺田熊雄君 大変ありがとうございました。参考になりました。
 それから、今の相互主義の問題で小島参考人の御意見を承れば大変ありがたいと思うんです。
 それからもう一つ、絶えず私どもがこの法案の審議に当たりまして少しどうかなと思うのは、外国法事務弁護士に対する職務範囲の絞り方なのであります。少し厳し過ぎる点はないかなというふうな考えを持っております。それで、特に第四十九条の「外国法事務弁護士は、弁護士を雇用してはならない。」、これは第一項でありますが、第二項「組合契約その他の契約により、特定の弁護士と法律事務を行うことを目的とする共同の事業」を営むようなことはしてはいけないというような規定が二項にありますが、これについてどうお考えになりますか。小島参考人にその二つの点をおっしゃっていただくと大変ありがたいと思うんですが、まずその点でちょっと。
#14
○参考人(小島武司君) ただいまの第一点、相互主義の点でございますけれども、相互主義をとった場合に、結局、その結果サービスが受けられなくなるのは一般の利用者ということになりますので、そこに問題がございます。
 ただ、この法案に限って申しますと、弁護士の利益にもかかわっておりまして、弁護士は極めて影響力の大きな政治集団でもございますので、相互主義が採用された結果、外国の弁護士が外国において門戸を開放する方向に向けて活発なロビーイング活動などをする可能性が大きいと思います。
 そう考えますと、究極的には、その結果外国の依頼者も恩恵にあずかれることであろう。ですから、一見聞接的に不利益なように見えて、実は実際的な効果という点から考えますと、あるいは相互主義が門戸開放、国際交流の促進ということに役立つかもしれない。しかし、それは可能性でございますので、どちらとも断言できませんが、一応のあるべき一つの選択として、この分野に限っては妥当性を否定できないのではないか、そういうふうに考えております。
 それから、第二点の職務範囲の絞り方でございますけれども、これは確かに大きな問題でございまして、活発な法的サービスの提供ということから見ますと、この点がネックになってくるおそれが多分にございます。ただ、本法案は新しい制度を未知の領域において導入したわけでございますので、実績を見ながら、究極的に依頼者のニーズが満たされるか否かを注意深く観察して、今後調整が必要であれば調整をしていくということにするならば、慎重な第一歩としてはあり得る選択ではないか、そういうふうに考えております。
#15
○寺田熊雄君 最後にお尋ねしたいのは、これはもう衆議院でも大変問題になったようでありますが、日本の法曹人口をもうちょっとふやすべきではないか。殊に民事訴訟法学者の三ケ月さんが衆議院ではそれを強く御主張になったようでありますが、これは今どう言いますか、昔は司法科の試験と、こう言いましたが、この試験制度のあり方とか、あるいは司法修習生に対する日本の財政支出ですか、一般会計から出ておるそういうものからくる制約というようなものもあるようでありますけれども、法曹人口をもうちょっとふやせ、今は少なきに失するぞと、こういう問題に対しての御意見を小島参考人と釘澤参考人、お二方にちょっと承りたいと思います。これを最後に終わります。
#16
○参考人(小島武司君) ただいまの法曹人口につきましては、多くの方が考えておられますように、私も現在の数字、一万三千程度は不十分ではないかと思っております。とりわけ弁護士の方々は難しい試験を長年勉強されて合格され、そして業務を始められますと、どうしても独立して業務を行いたいという強い希望がございまして、なかなか大きなチームの一員として専門的な分野をこなして共同作業をするということを終生行うということに抵抗があるようでございます。ですから、ある程度数をふやしていきませんと、そういうチームワークを一生続けてもよいという弁護士の方はふえてこないのではないかというように考えられるわけであります。
 問題は、ふやせという声はいろいろなところから上がっておりますけれども、財政上の問題がございまして、これは大変難しい問題であろうかと思いますが、これは発想いかんでは財政上の問題を解決する道がございますので、今後この点について、法曹人口を増加すべきであるということにコンセンサスが得られるならばいろいろな道があるわけでございまして、当面二万人ぐらいの目標を立てまして、これを実現するのは困難ではないと思います。そして、この程度の増員をしても決して弁護士の質が下がるということはないように思います。むしろ数がふえることによって競争が活性化し、そしてチームワークによる専門的な業務が発展いたしますから、弁護士業務全体として提供し得る法的サービスの質は向上する可能性があるのではないか、そういうふうに思われるわけでございます。
 ただ問題は、現在の弁護士業務の状況を考えますと、一面において弁護士による法的サービスの供給量が不足しておるという声がありますが、他面において弁護士業務が経済的な困難に直面しているという声もございます。この問題をどう考えるかということは、今後弁護士会の内部でも十分討議を尽くしていただく必要がありましょうし、また外部からもこの問題について的確な指摘をしていく必要があるのではないかと思われます。特に現在我が国の弁護士業務というのは伝統的な型に属しておりまして、その弁護士業務の活動形態が外国弁護士の進出などによって部分的に変わって、また競争が激しくなることによって活動が積極化し、活性化してくるならば、むしろ弁護士業務の総量はまだまだ拡大していく余地があるのではないか、まだ未開拓の分野が相当残されているのではないかというように思います。
 要するに、現在弁護士業務として顕在化している法的需要というものは潜在的なニーズの一部にすぎないのであって、この点、業務のあり方いかんでは弁護士活動の対象となる領域は相当拡大していくのではないかと、そんなふうに私個人としては考えております。
#17
○参考人(釘澤一郎君) 法曹人口の問題、殊に私、弁護士でございますから、弁護士の人口に若干限定して申し上げますと、日弁連の会員といいますか、日本の弁護士は、弁護士である人口をふやさない方がいいという意見が従来から圧倒的に強かったわけでございまして、昭和三十九年の臨時司法制度調査会の意見書においても、学者あるいは裁判所などの方々からはそのような意見が表明されておりましたけれども、弁護士会あるいは弁護士の委員はそれに反対をしておったわけでございます。そのような状況はかなり今日まで続いているというように見られないこともないわけでございまして、極端に意見が分かれる状況にございます。
 ふやさない方がいいというのは、今小島先生も言われましたけれども、やはり弁護士の業務のパイが少ないと、従来からやっている仕事の範囲内で物を考えておるわけでございますけれども、やはり仕事にあぶれるというか、生活に困窮する者がいることは事実でございます。しかし一方では、このような渉外的な事務以外の非訴訟活動の重要性、あるいは消費者問題その他いろいろ少額事件など、内容的には大きくはないけれども、時間を要することで弁護士の手が足りないという部分もございます。そういうことから、法曹人口、特に弁護士人口をもう少しふやさなければならないだろうという声が強くなっているという事実はございますけれども、相半ばするというように私自身は考えております。
 私自身は法曹人口をもっとふやすべきだと個人的には考えておりますし、専門家の見るような法律雑誌にはそのようなことを私書いたこともございますけれども、非常に難しい問題として、日弁連では結論が簡単に出ない問題と言ってよろしいかと考えております。
 以上でございます。
#18
○寺田熊雄君 どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
#19
○委員長(二宮文造君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、林ゆう君及び藤田正明君が委員を辞任され、その補欠として岡野裕君及び宮田輝君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#20
○飯田忠雄君 お三方の先生に御質問を申し上げますが、本日は四つの点でお尋ねをいたしたいと思います。第一は、外国法サービスの自由化の問題であります。それから、第二が先ほど問題になりました相互主義の問題。第三が共同経営禁止の問題。第四が、これは全部のお方ではないと思いますが、弁護士会でどういうことが実際には問題となったか。この四つの問題で順次お尋ねを申し上げます。
 まず最初の、外国法サービスの自由化の問題につきまして、先ほど小島先生とかそれから糠澤先生からお話がございました。現在、世界各地で各種の法律問題を取り上げる必要が生じておる、異種サービスの共存の時代になった、企業の国際化という問題、これは今日の姿であるが、殊にガット交渉では、個別分野では相互主義を排除してきておるし、それぞれ外国法弁護士に対してその制度を取り入れる状況にある、そういうお話がございました。
 そこでお尋ねをいたしますが、外国法サービスというものは今日の企業の国際化に伴いまして必要不可欠なものである、これが貿易摩擦との関係で外国法サービスの自由化ということが言われたのだろうと思いますが、そういうことが今日の必要性であるということになりますと、そのような方向へ向かって弁護士法の改正がなされるべきではなかったか。今度は弁護士法改正ではなくて、これは特別法でございますが、外国法弁護士の法律についてもその基本線がやはり背景にあるのが筋ではなかったかと、こういうふうに考えられるわけでございますが、実際にはそうはいっていない。こういう問題につきましてどのようにお考えになるかということでございます。特に小島先生それから糠澤先生は御異論があるように思いますので、お伺いをする次第でございます。
#21
○参考人(小島武司君) ただいまの御質問、我が国の弁護士業務の自由化を推進すべきであるという前提に立って、どのような具体的な方策をとるべきか、またその必要はどこにあるかというようなことについてお答えすればよろしゅうございますでしょうか。
 弁護士サービスの国際化ということは、伝統的な意味でのサービスのニーズが存在するということと並んで、最近少し新しい状況も生まれているのではないかというように考えるわけでございます。特に弁護士業務の基本的な内容につきまして、日本ないしはドイツなどに見られる比較的消極、慎重にリーガルオピニオンだけを出していくという限定的な業務の仕方と、時としてビジネスジャッジメントも含めた積極的かつ包括的な法的サービスを提供しようとするアメリカを中心とした弁護士業務のスタイル、こういう二つのものがあろうかと思います。
 私が日ごろ接触しております実務界の方々、特に企業の方々も多いわけですが、やはり今後の弁護士に期待するものはアメリカ型の相当包括的で積極的なサービスであると、そういうことになりますと、やはり間接的に日本の渉外弁護士を通じて外国の弁護士からリーガルオピニオンをとるというようなことでは不十分でありまして、企業の中枢のございます例えば東京において外国の弁護士とひざを交えて討議しながら法律的な戦略を考え、そしてまた法的な創造的な枠組みをつくり出していくというようなことが必要になってくるの
ではないかと思います。そういう意味で、弁護士の法的サービスの自由化というのは極めて必要なことになっているものであると思われるわけでございます。
 また、そういう観点からしますと、相互主義というのは一つの制約と考えられます。しかし、これは世界の法律の世界においてはいろいろなところで伝統的に採用されてきた方針でありますので、その点で、これをぜひこの際に排除しなければならないという強い論拠があるわけではない。そういう意味で消極的な是認と申しますか、それが私の考えでございまして、あとは世界各国の国際的な協力体制にまって弁護士業務の自由化が今後開けていくと期待するほかないのではないかと思われます。
#22
○参考人(糠澤和夫君) 今の小島参考人の御意見にそう変わったことをつけ加えることはございませんが、外国法事務弁護士のみならず、もっと広い分野で自由化してはどうかというふうなお尋ねであるとするならば、それについてはさらに国民的な議論がもう少し必要なのではないかという感じがいたします。その段階になりましても、その問題として提起されましても、そういうのは主として市場が判断する、マーケットが判断するもの。あるいはいろんな弁護士の質の問題については世論の風、社会の風というものに、もっと長い目で見て、信頼を置いてもいいのではないか。弁護士というのは社会の中で孤立した存在ではなくて社会の目にさらされているわけですから、そういった目を信頼していいのではないかというふうに思います。
 それで、そういうのに需要があるか、あるいは外国法事務弁護士に需要があるかという御疑問であれば、それはやはりどのぐらいの値段でサービスが提供されるのかわかりません。どのくらいのクォリティーの人が来るのかわかりません。そういったことで、今企業の方では、これから進出してくる外国法事務弁護士を使うか使わないかは値段と品質によるということでございます。外国に行って外国の法律事務所を雇うか、あるいは自分のところの法規部、法務部というものである程度その分を満たすか、そういったいろんなことを比較して考えるのが企業の方でありますから、そこら辺は相手の、相手といいますか、サービスの提供者の方がどういう態度に出るかがまだよくわからないということであります。
 いろいろこの問題を考えるときに、だんだんアメリカのような社会になってしまうのは困るからという御議論の方向から議論される方が多いのは、私も承知しております。訴訟の多いアメリカのようになっては困る。リチジアスソサエティーといいますか、訴訟好きな社会というものになっては困るというのを、日弁連さんの方の方から随分そういう御意見を伺いました。今次の法案に限れば、余りそこまで心配する必要はないように思っておりますが、やがて日本の経済が一層国際化されて、外国人が日本であるいは日本人が外国で活動が拡大するにつれまして、価値基準の異なる当事者というものが同じ社会の中で利害を異にしてぶつかる機会がふえてくるというのは当然であると思います。これらがすべて日本人同士の場合のように、話し合いあるいは行政の介入あるいは泣き寝入りという形で片がつくものとは想定しておりません。価値観の違う者同士の争いというのは裁判所で決着がつけられるというふうな方向は、将来の我が国社会の姿として一つの必然的傾向ではないかというふうに思っております。お答えになっておるかどうかわかりませんが……。
#23
○飯田忠雄君 この問題に関連しましてまた後で御質問申し上げますが、その前に相互主義について少しくお尋ねをいたしたいと思います。
 相互主義につきましては、憲法の二十二条との関係、職業選択の自由との関係で問題があるのではないか。これは我が国におる外国人についてはひとしく適用になる憲法問題でありますので、したがいまして我が国で相互主義をとるということは問題ではないかということが一つございます。これは小島先生にお尋ねするわけです。
 それから次に、企業の国際化との関係で、一体相互主義ということは正しいだろうかという問題でございます。先ほどもお話がございましたが、多様なサービスを競争的に得ることが望ましい、外国弁護士の国内業務というものについては十分にこれを活用したいというお話がございました。そういう関係から申しますと、保護主義をとったり相互主義をとったりすることは矛盾するのではないか、今日の企業の要求に反するのではないか、こういう問題がございます。この二点につきまして、それぞれの先生方のお話を承りたいと思います。
#24
○参考人(小島武司君) この相互主義等をとることが職業選択の自由等の関係で問題があるのではないかという御指摘でございますけれども、リーガルプロフェッションというのは、その名の示すとおり特別の職でございまして、高度の専門知識と適切な人格的資質を必要といたします。これが我が国の法律が採用した基本的な政策でございます。ただ、この政策がいかなる国でも妥当する絶対のものかということになりますと、確かに問題がございまして、国によっては、法律事務を行うのは、法律専門家に限らず、一般の市民もこれを自由になし得るという建前をとっておりますし、また同一の国家であっても歴史の流れの中でその政策を幾たびか変えております。
 そこで、例えばアメリカについて見ますと、一時アメリカではジャクソニアンデモクラシーということで、民衆の権利というものを非常に重視いたしまして、そこでは専門職制度についても相当限定的な否定的な見方がなされ、裁判官になる者、弁護士として活動する者についても広く市民に道を開くべきであるという考え方が強くなったわけでございます。
 そういうことで、時と所によりこの基本的な政策に違いはございますけれども、現在の世界の有力な国々は、徐々にではありますが、リーガルプロフェッションに関する限り高度の資格が必要であるという方向に流れておりまして、利用者である市民の権利を守り、これらの者に良質の法的サービスを提供するという公益的な目的のために、職業選択の自由もその限りで制限されざるを得ないと考えられているのではなかろうかと思います。
 いかなる者ももちろん司法試験を受けることはできるわけでありまして、これを通じて専門家として活動するということでございます。そうなりますと、外国弁護士の場合にはその資格をどう解すべきかということになってまいりまして、医師の活動のような普遍的な技術内容を持っておりますのはできるだけこれは世界共通に開いていった方がいいという考え方が強いように思われますが、法律の場合には各国の法制が異なりますので、国境を境にしてその資格の有効性が終わるということになろうかと思います。
 そして、外国の専門家に例えば我が国の外国法業務というようなものを許すということになりますと、それは特別の立法的措置であり、立法者の選択であるというように考えることもできるのではないか。これは、私は憲法の専門家でございませんので、憲法との関係ではなお問題もあろうかと思いますけれども、従来の考え方ですとそのように解されるのではないかと思われるわけであります。
#25
○参考人(釘澤一郎君) 大変難しい御質問に存じますが、結論的には、小島参考人が申されましたように、この法案で相互主義をとることと我が国の憲法の職業選択の自由との関係におきましては憲法に違反するものはないと考えるわけでございますが、今回受け入れる外国法事務弁護士は日本の参護士に同質のものでございまして、日本の弁護士自身が国家試験を受けてそれに合格した者がなるわけでございまして、弁護士に限らず、日本の公認会計士、税理士、弁理士すべて国家資格でございまして、そのような国家資格をある一定の範囲内で認めることはやはりその国の立法政策によるわけでございまして、職業選択の自由に弁護士自身が違反しないと同じように、この法案で相互主義をとることは憲法に違反しないと考える次第でございます。
 相互主義は、法律的な観点からいたしますと、アメリカとの場合に例をとりまして、日本全国とアメリカの各州という対応関係になるわけでございますけれども、やはり一つの国家といたしまして平等公平であるということから、日本全体とアメリカ一州というのはやはり公平を欠くのではないか。アメリカがよく使う最近の言葉ではフェアではないというように考えて、この制度を政治的あるいは政策的な考え方から採用して制度要綱に取り入れたわけでございます。
 たまたま、一九七一年になるかと思いますが、フランスにおきましてコンセイユ・ジュリディックという制度を法定化いたしました。その際、やはりフランスにおきましても相互主義のもとに各国の弁護士資格のある者を自国内において、その外国の、日本の弁護士なら日本の弁護士という名称のもとに活動を認めている制度を創設いたしておりますが、ここでも相互主義がとられているということを参考に申し上げます。
 以上でございます。
#26
○参考人(糠澤和夫君) 第一点の憲法違反ではないかという問題ですが、相互主義につきましては、サービス貿易の範囲ですと銀行法で、日本における外国銀行の支店設置等については相互主義で臨むのだということがたしか銀行法でうたわれていると思いますが、それが法制局で認められている限りこれは憲法違反ではないというふうに解しているのではないかと思います。
 次に、企業の国際化上、相互主義が正しいかどうかという問題と、それからその方が便利かどうかという問題と、二つの要素があると思いますが、私が先ほど申し上げました相互主義の問題については、全体のサービス貿易において相互主義が原則として取り上げられることが正しいかどうかについて私どもには疑念がある。要するに、内国民待遇、最恵国待遇というこれまでの国際ルールあるいは二国間の通商航海条約、そういったもので認められた点をさらに出て、相互主義というものまで一般的原則として認めてしまうのはどうかということに疑念を呈したわけで、この一つ一つの分野についてどうかというお尋ねであれば、これまでの経緯、昨年からの経緯、アクションプログラム、そういった点に至るまでの経緯から見て、今回のこういう法案の基本的態度はやむを得なかったものと判断いたしております。
 また、今回の考え方は、相互主義というものをてこに使って、特にアメリカに対して各州の市場を開放せよという態度に出るということが予測されておりまして、現にそういう交渉をしていると思いますが、そういった相互主義を使って世界のサービス市場における自由な度合いを高めるというふうに使うというふうに私どもは理解しております。そういった理解のもとであれば正しい方向にベクトルが向いているなというふうに思いますので、この場合は相互主義でもやむを得ないのではないか、あるいはそれなりのメリットがあるのではないかというふうに判断いたします。
#27
○飯田忠雄君 今の相互主義について私の質問の仕方がちょっとまずかったので御無礼いたしました。
 例えばアメリカの各州は、民事法ですが、法律を持っております。例えばニューヨーク州あたりでは日本の弁護士も認めておるようですが、しからばミシガン州ではどうだろうかということになってまいりますと、もしここで認めていればいいのですが、認めていないということになると、相互主義をとりますというと、ミシガン大学で勉強した日本の学生は向こうの資格をとって日本に帰ってきてもできないが、ニューヨークの大学を出た人はできるということになると、職業選択の自由を憲法が保障しておるにもかかわらず、やはりそこに法律で相互主義をとることによってそれを阻害することになるのではないか、こういうような意味で実はお尋ねをいたしたわけでございます。それで、そういう点についてお話を願いたいわけです。
 それからもう一つは、相互主義をとりますと多くの外国法のサービスが受けられなくなるのじゃないか。日本の企業は、現在世界各国の方に手を伸ばしまして貿易をやっておる、この場合に、世界各国の外国法のサービスを受けなければうまくいかない場合が多いのではないか。ところが現在、外国で日本の弁護士を受け入れているのはほんのわずかだということになりますと、実際の運用の上におきまして、せっかくの外国法事務弁護士法ができたにもかかわらず、企業の国際化という問題にそぐわないことになりはしないかということがあるわけです。
 それから、相互主義をとった理由が、外国が日本の弁護士を受け入れないので、これを受け入れさせるためにやるのだと、こういう御議論があったんですが、これはむしろ逆ではないか。日本が自由化をすることによって、外国に対しても日本に倣えということを言い得るのではないか。例えばアメリカの各州に対してはそういう見方もあるわけなんですが、この三点につきましてどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
#28
○参考人(小島武司君) アメリカの場合、現在外国法サービスについて、弁護士による外国法サービスを許容している州は非常に限定されているようであります。そして、その結果として、外国人弁護士にとってはどこの州の法律を学んだかによって日本でプラクティスができたりできなかったりするという不公平が生じてまいります。しかし、これは相互主義をとる以上はやむを得ざる結果ではないかと思われます。ただ、アメリカでは、先ほど例に出されましたミシガンではたしか外国法サービスも許容するようになっていると思いますけれども、それは別としまして、ミシガンの例で申しますと、ミシガンで資格をとりますと、ミシガン州の法律というのは大体全米に通用する法律と内容的には基本的部分において同じでありまして、ただいろいろの特性があるというだけでございますので、ミシガン州で合格した者は他の州で数週間の講習を受けて試験を受けますれば容易に合格するようでございます。そういう意味で、実際上はこの制限はそれほど実質的な制限にはならない。別の言い方をすれば、余り歯どめにもならないということではないかと思います。
 そして、先ほどちょっと申し忘れたわけでございますけれども、相互主義の意味内容の理解から申しますと、確かに連邦制国家についての適用が問題でございます。相互主義をとる以上は、その活動範囲の公平、バランスというものをある程度確保する必要がありますので、主要な州において外国法サービスへの道が開かれている必要があると思いますが、同時に、連邦制国家の場合、企業だけではない一般の利用者ということもございますので、地域的にもある程度のアクセス可能な州での開放ということが望ましいのではないかと考えております。
 それから、企業にとって、このような相互主義をとる結果、不利益は生じないかという問題でございますけれども、これは私の経験範囲を超える面もあって、正しい的確なお答えをすることができないかもしれませんが、不便ということは生ずるだろうと思います。ただ、実際上相互に緊密な取引があって、双方の法律家がお互い外国法サービスの効用というものを認識しているのであれば、徐々に相互がオープンするという形でそのような不便が解消されていくという可能性もあるわけでございます。この点は、おっしゃるような危惧の念、確かに存在すると思いますが、企業の立場としてそのような例えば日本と交流関係が持てないような状況にある国についてどの程度の御不便を感じられるか、私としてはその程度はちょっとうかがい知ることができません。
 それから第三点でございますけれども、第三点は私、少し趣旨が聞き取れなかったのでございますけれども……。
#29
○飯田忠雄君 相互主義をとりました場合に、すべての外国について法律サービスができませんので、結局、今日のように非常に国際的に弁護士について相互主義をとることの少ない段階におい
て、企業としては大変困るのではないかという問題があるわけです。
 それからもう一つは、今日相互主義をとりますというと、結局、企業があることをしようとする場合にできない。例えば中国なら中国、ソ連ならソ連と取引をした場合に、そのソ連とか中国との取引関係で向こうの法律を向こうの人に教えてもらうということができないということになった場合には、やはり相当の困る状況が生ずるのではないかという問題でございます。
 それから、相互主義につきまして先ほどのお話では、外国に対して日本の弁護士を受け入れろと、そういうことを要求できるわけなんだが、ところが、そういうことは逆ではないか。むしろこちらで自由化をしておいて、日本もお前の方のを受け入れているのだからお前の方も認めると、こういう方が本筋ではないか、こういうような点をお尋ねをしたわけでございます。
#30
○参考人(小島武司君) 第二点との関係で中国という例をお挙げになりましたが、世界各国の中には法律がはっきりと公表されていないような国もございます。それから、規定が非常にインフォーマルな形で存在する国もございます。例えばアラブ諸国などはコーランを基調にいたしますから、ルールをつくってもそれはコーランとの関係を考えて公表しないとか、先例も公表しないというような政策が基本的にとられるというところもあるようでございます。そういうような国についてその国の法律についての専門家によるサービスが受けられませんと、あるいはその利用が困難だということになりますと支障は非常に大きいのではないかと思われます。それはおっしゃるとおりだろうと思います。
 そこで、何らかの具体的な方策を各企業が講じておられると思いますけれども、さらにそのような場面について何か違った意味での国際協力のルートも別に聞いておく必要が出てくるのではないかと思われます。
 それから第三点でございますけれども、日本の方から自由化をして正々堂々と他国にも自由化を迫るというのが、これは大変理想主義的なアプローチでございまして、ある場面ではこうした方策をとることが正しいことであり、また終局的な理想を達成するために効果的であるということもあろうかと思います。私は国際関係の機微について通じておりませんので、この問題について基本的に何が得策なのかということを判断する能力がございませんので、これ以上のことは申し上げられませんので、お許し願えればと思います。
#31
○参考人(釘澤一郎君) 相互主義の問題におきましてまず申し上げたいのは、この法案、日弁連の制度要綱も同様でございますが、外国法事務弁護士の資格を与えるかどうかについての相互主義を申しているわけでございまして、その職務内容において細かく相互主義を申しますと、これはもう相互主義というのはとれないぐらい、あるいは全然機能しなくなってしまうような制度になりますので、職務内容については相互主義を言っているわけではございません。
 それで、先ほどの設例のようなミシガンで勉強してきた方は確かに、ミシガン州が開いてない限りは、いかにミシガン大学で勉強してきても日本での外国法事務弁護士の資格は取得できませんけれども、実際にミシガン州の法律が必要になる場合には、先ほど小島参考人も言われましたように、ニューヨーク州の弁護士が十分に代替するか、ミシガン州の細かい法令についてはミシガンのアメリカの弁護士に意見書をもらって、それを補足して依頼者に対するサービスをするということで、さほど問題は起こらないだろうというように考えるわけでございます。
 それから、日本の企業あるいは外国の企業にいたしましても、その依頼者が相互主義をとられると困るのではないかと言われましても、やはり担当するニューヨーク州ならニューヨーク州の弁護士である外国法事務弁護士は、もしそのケースが許せば、ミシガン州の法律は準拠法として選ばないはずでございまして、必ず自分の方の依頼者に有利なように、ニューヨーク州の弁護士であればニューヨーク州法を準拠法にするわけでございましょうし、日本側であれば、力があれば日本法を準拠法にするということで、各企業として特段困ることはないだろうというように考えます。
 それから、最後の点に関しましては、確かに韓国とかソビエトでも結構でございますし、中国でもそうでございますが、日本の弁護士を受け入れる制度を持っていない国との関係においては、向こうからも入って来れない、もちろん日本からも行けないわけでございますが、ただ事務所を設けて外国法事務弁護士としての事務がとれないだけでございまして、出張して旅行をしながら仕事をすることはお互いに差し支えないわけでございますし、現在の共産圏との取引においてもそのようなことで一応済んでいるわけでございましょうから、わざわざ日本からすべてを開放するということをしなくともよろしいのではないか。それでも一応国家間としては平等ではなかろうかというように考えるわけでございます。
#32
○参考人(糠澤和夫君) 先ほどニューヨーク州とミシガン州の例が挙げられましたが、アメリカと例えばエチオピア、アメリカとカナダというふうなところでも同じように、先生のお挙げになった日本の学生同士というところで見ると、職業選択の自由を妨げられるという疑念が出てまいります。しかし、そうは言っても、こういう法律でもって日本が臨むのだということになりますと、それなりにまた日本の学生も対応いたします。その点は心配余りないのじゃないかと思います。
 相互主義自体が積極的にも消極的にも使われるということは事実で、消極的に使うと、相手が非常に低いレベルの自由度であるから我が方も低い自由度にしようということになりますが、我が国の方が、例えば今度の法律ですと、少なくともカリフォルニアよりは進んでいるわけです。カリフォルニアの方はちっとも日本の法律家に対して市場を開放しておりませんから、それに比べて我が方の方が自由であるというので、カリフォルニアの市場を開放しなさいということを日本の方が今交渉していると思いますが、そういったことで、我が方のこの法律の施行を前提としていろんな交渉が行われつつありまして、外国の市場も次第にあいてくるのじゃないか、日本よりも制限的なところはあいてくるのじゃないかということが期待されると思います。
 相互主義だと企業はいろんな国のサービスを受けられないから損をしないかということはございます。確かに損はしますが、企業も現実の社会に生きている限り、頭を使いまして、ここの出島――まあ今度の法律は出島みたいなものですが、この出島でできないのならニューヨークでやったりあるいはフランクフルトでやったり、ほかの国に行ってやるわけですから、ほかの国の法律事務所をどんどん起用して進むわけですから、それなりの便法を講じます。したがって、そう死活の問題であるというふうに我が国の企業が判断しているわけじゃありません。
 ただ、日本にある外国の企業については、やはり本国の弁護士あるいは自分がよく話ができるアメリカの、あるいは自分のよく知っている国の弁護士、そういった者がここにいないと損失をこうむるであろうということは事実だろうと思います。そういう観点から、アメリカあるいはヨーロッパのビジネスの団体がいろんな不満を日本政府に対して言ってきているということのわけです。
 相互主義自体、全体の交渉の準則としての相互主義というものについては、従来のガットの内部で言われていた批判というのは、相互主義というのが非常に主観的、恣意的かつバイラテラルな観念だから困るというのが普通のガットの見方です。これは物の貿易におけるときに一番はっきりします。
 例えば、バイラテラルであると困るというのは、日本とアメリカとの間ではこのレベルが相互主義だといっても、今度は日本とフランスの間ではまた別な相互主義のレベルがありますから、そうするというと、日本がフランスに与えている待遇とアメリカに与えている待遇とが異なってきてしまうと、それは最恵国待遇違反なのではないかということになりますから、それが一番普通言われている相互主義に対する非難です。
 それから、主観的であるというのは、自分はこの待遇が相手の待遇と大体見合ったものであるというふうに考える場合に、相手がそう考えていないということがございます。卑近な例で言いますと、アメリカに行ったときに、アメリカでステーキディナー、これが一番いいディナーだとしますと、その待遇を与えられた、それで日本に来たときもステーキディナーを食べさせてもらえると思って向こうが来ると、それはだめで、日本の一番いいのは例えばすき焼きディナーであるというのだと向こうが満足するかしないかは、また向こうの主観の問題でありまして、お互いの事情を反映して、どこが相互的に見合った状態であるかというのが非常にその判断に苦しむと、そういうことだろうと思います。
 そういうことで、先ほど日弁連さんの方もおっしゃったように、職務の内容とかいろいろ法律の個別のファクターにまで相互主義を及ぼすと非常に複雑になってきてしまうというので、相互主義の及ぼす範囲を限られたのはそういう点じゃないかと思っております。
#33
○飯田忠雄君 どうもありがとうございました。
#34
○抜山映子君 最初に小島先生にお伺いいたします。
 先ほどこの法律については将来思い切った調整を迫られることもあろう、このように申されました。それで、先生はどの点に大幅な調整というものが加えられなくちゃいけないとお考えになっていらっしゃるのか、個人的で結構ですから、御意見を伺わしていただきたいと思います。
#35
○参考人(小島武司君) まず、基本的な考え方といたしまして、このような規制の背後にある考え方は利用者に最善のサービスを確保するにはどうしたらよいかということでございます。
 そこで、その目的のために今幾つかの規定が設けられたということでありますから、将来、実績を考えまして、非常に大きな不都合が出てきたということなら、やはり本来的な理想に背馳するということになりますので、手直しが必要になってくるだろうということで、また、それに対して日弁連として拒絶することも理念的には難しいだろうということでございます。
 具体的にどういう点が問題として上がってくるかということでございますけれども、やはり先ほどもお話に出ておりました共同経営のあたりが問題になりますでしょうし、それから諸外国の動向いかんでは、外国法の範囲などについてもあるいは考え直す可能性が出てくるかもしれないということでございます。
 その他いろいろございますでしょうが、そんなところでございます。
#36
○抜山映子君 次に釘澤先生にお伺いいたします。
 現在、日本にトレーニーとかクラークという名前で仕事をしておる人たちがいるようでございますが、こういう人たちの非弁活動があるのかどうか、また、それを弁護士会の懲戒委員会なんかで取り上げた事例があるのかどうか、それをちょっとお伺いしたいと思います。
#37
○参考人(釘澤一郎君) トレーニー、クラークと言われる方々は、むしろ法務省の方の入管のお調べの方が正確なわけでございますが、私どもが存じておりますのは、大体七、八十名ぐらいということでございまして、主として日本の法律事務所、それから日弁連の会則で申しますれば準会員の事務所におられる方々でございまして、非弁活動については、特段調査をしている案件は日弁連においてはございません。ただ、東京三会で時折問題にしている方がございますが、いわゆるトレーニー、クラークとしての在留許可を取り消されたという事例は、今のところまだ聞いておりません。そういうことでございまして、明確なお答えがしにくい部分がございます。調査している案件は、ただ正確には記憶いたしておりません。
#38
○抜山映子君 私がちょっと漏れ聞いておる範囲では、トレーニーということであるけれども、日本の弁護士さんと組んで、実際は日本の弁護士さんを雇う形にして業務をやっておるという例があるということを聞いておるんですが、先ほど東京三弁護士会で問題にしておる事例がある、このように言われましたけれども、その事例を明らかにしていただけませんか。
#39
○参考人(釘澤一郎君) その内容についてはまだ日弁連に報告が上がっておりませんので、内容は全くつまびらかにいたしておりません。
#40
○抜山映子君 そうですか。じゃ、何かの機会にまたお教えください。
 それから、先ほど先生も言われましたんですけれども、語学に堪能な日本人が外国でバーエグザムを通って、そして日本に戻ってくるという事例なんですが、目下のところは、もちろんそういう制度自体がなかったわけですから、余り大したおそれもないように思うんですけれども、実際に語学に堪能な日本人というのはざらにおりまして、向こうで九〇%以上も通るようなバーエグザミネーションをパスすることはそんなに難しいことではないということで、将来的に見ますとかなりの数の方が日本に戻ってくるんじゃないか。
 その関係におきまして、四十三条ですか、外国法事務弁護士の議決権というのがございますけれども、「会則の制定又は改廃を審議すべき総会を招集するときは、その総会に出席し、意見を述べ、及び議決に加わることができる。」、こういう条文になっておりますが、その関係からも、いつの間にか日本人の弁護士の数よりふえて、そういう規則の改廃にもどんどん加わって、どんどん変わっていく可能性がなきにしもあらずだというのは、私先般、どこでしたか、日本の海外子女の人たちが入学するフランスでの日本の学校を開校したところ、その学校に入ってそして日本の大学まで行けるというので、そこに殺到したという記事を読んだことがあるものですから、日本人というのは非常に回転が速いですから、そっちの方がいいと思うとだあっとそっちへ行かないかと、そういう関係で、私はそのあたりのことを弁護士会としてはどういうようにお考えになっていらっしゃるのかなと、この点をお伺いしたいと思います。
#41
○参考人(釘澤一郎君) ただいまの御質問のことを心配された会員は若干おりますが、それはごく少数の方々だろうと考えております。この法案におきましては、ただいまのような方々が外国法事務弁護士の資格を認められる要件を備えれば、すなわち、特にアメリカならアメリカの実務経験を五年以上経験してきて、その他の承認要件に当たれば認められるわけでございますから、その限りにおいては、そういう方々が若干は出てくるだろうとは考えております。
 しかしその方々も、日本人でございましても、その取得した国の法についての職務だけができるわけでございますし、いかに日本人でございますから外見上はわからなくても、日本法に関しては日本の非常に難しい国家試験を通り二年間の司法研修教育を受けた場合の日本の弁護士と自由競争をして、そのような者に日本の弁護士が負けるわけはございません。その限りにおいては外国法事務弁護士としての機能を発揮するわけでございますから、それなりに問題はないだろうと思います。
 それから、非常に人数がふえるのではないかということは、確かに日本は経済大国と言われるわけでございますし、お金持ちのお坊ちゃんという方もお嬢さんという方もふえているだろうと思います。しかし、今申しましたように、五年間の実務経験をしてくるということまでなりますと、そう多くはないのではないかというように見て、さほど心配してないのが日本の弁護士の大方の観測でございます。
#42
○抜山映子君 EC諸国では受け入れるのに労働需要証明というものを出させまして、日本法に対する需要があれば受け入れるということを採用しているそうですけれども、日本におきまして非常に数がふえた場合にやはり数の制限をする必要も出てくる、将来的に五十年とか百年とかいうことになりますとあり得るのじゃないかなと、こういう気がするわけなんです。
 それとの関連でお伺いしたいのですけれども、この法律の第十条の三項でございますけれども、「法務大臣は、承認をする場合には、あらかじめ、日本弁護士連合会の意見を聴かなければならない。」と、こういう規定を設けておられますが、これの背後にあるねらいはどういうことなんでしょうか。
#43
○参考人(釘澤一郎君) 人数がふえてまいりまして、その需要の考慮といいますか、そういうことをしなければならなくなるのではないか、あるいはそういうことのためにこの規定があるのではないかというような御質問でございますけれども、需要考慮というのは、現在大変問題になっておる貿易摩擦の中におきましては、経済問題について生産数量とか輸入数量とかというものを制限する、そういうための需要考慮でございますが、弁護士の問題はそういう経済問題ではないのでございますので、直接的に需要考慮ということを言うのは正しくないのではないか。
 この十条の第三項にございますような要件は、依頼者であります企業あるいは個人、内国民に限りませんが、そういう方々に対する関係においてはまず十条の一項の三号のような要件が必要でございまして、この全体に関して日弁連は意見を言うわけでございまして、この一項の三号に限定されておらないわけでございます。ただいまのお話のような点を含まないとは申し上げませんけれども、それだけを考えているわけではございません。
#44
○抜山映子君 三項の「意見」を言うのは、その一項の三号には限りませんと、こういうふうにおっしゃいましたのでしょうか。
#45
○参考人(釘澤一郎君) はい、そのように申し上げました。
#46
○抜山映子君 それでは、最後にお伺いしたいのは、経団連の参考人の方にお伺いしたいのでございますが、日本の企業で外国人の弁護士を社内弁護士として日本において雇用している事例はあるのでしょうか。
#47
○参考人(糠澤和夫君) 日本の企業といっても二百万ぐらい企業あるので、よくわからないんですけれども……。
#48
○抜山映子君 事例があるかだけでよろしいんです。
#49
○参考人(糠澤和夫君) 存じません。
#50
○抜山映子君 そうですか。
 私は、先ほど参考人の御意見で、日本の企業サイドとしては日本国内に外国人弁護士が事務所を設けてもらうことについてはそれほど需要があるわけではない、むしろ日本に進出している外国企業においてその需要があるように見受けられると、そのようにお話しなさったと思うんですけれども、聞くところによると外国の企業は、商社というものが日本のようにない、したがって日本の商社のような機能を日本に事務所を持つ外国人弁護士に期待している、こういうことを聞いたことがございますが、そのあたりはいかがでございましょうか。
#51
○参考人(糠澤和夫君) そういう点は私も聞いたことがあります。
 それから、先ほどの弁護士を雇っているかどうかという問題は、外国の弁護士の資格を持った者を日本の企業が雇用しているかどうかという設問であれば、そういうのは多分あるのじゃないかと思います。トレーニーとかコンサルタントとか、別の資格で雇っているのが多分あると思います。
 それから、今のちょっと後半の方の質問……
#52
○抜山映子君 日本の商社というものがアメリカにはない、諸外国にはない、商社的な機能を日本に事務所を設ける外国人弁護士に期待している向きがあるということを私聞いたことがあるのですけれども、その点はどのように実情を把握しておられましょうか。
#53
○参考人(糠澤和夫君) 商社の機能といっても非常に広いので、それのごく一部のところをアメリカの弁護士がやれるということを一つの論拠として、アメリカの弁護士あるいはアメリカのビジネスが理論立てをしているということですね。そういう理論立てをした文書は、幾つか私も見たことがあります。しかし、商社の機能全体をかわってやるということは、とてもアメリカの弁護士にはできない。
 商社の機能のごく一部に、外国の事情をよく把握し、外国の法制をよく把握し、それから外国のいろんな人たちに対するアクセスというものを利用して人を紹介したり、それからその人と日本のクライアントとのコネをつけてあげたりと、いろんなことを日本の商社がやりますが、それに似たことを、例えばいわゆるワシントン・ローヤーといいますか、人と人とをくっつけたり、それから情報を収集したり情報を提供したり、そういったことをワシントン・ローヤーと言われている人たちはむしろ主たる業務としていますが、そういうのは商社の機能のうちの一部と非常に酷似しているということは言えます。しかし、商社の機能というのは非常に広い包括的なものですから、それをアメリカの弁護士がごく一部かわってやることができるということを論拠として、商社の機能をアメリカの弁護士が持っている、あるいはアメリカでなくても、外国の弁護士が持っているということを言うのは少し強弁のような気がします。
#54
○抜山映子君 ありがとうございました。
#55
○委員長(二宮文造君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 本案に対する審査は、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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