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1985/05/15 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第11号
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1985/05/15 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 法務委員会 第11号

#1
第104回国会 法務委員会 第11号
昭和六十一年五月十五日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     岡野  裕君     星  長治君
     名尾 良孝君     工藤万砂美君
     宮田  輝君     藤田 正明君
 五月十五日
    辞任         補欠選任
     小笠原貞子君     橋本  敦君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二宮 文造君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                大坪健一郎君
                工藤万砂美君
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                藤田 正明君
                星  長治君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                抜山 映子君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  鈴木 省吾君
   政府委員
       法務政務次官   杉山 令肇君
       法務大臣官房長  根來 泰周君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  井嶋 一友君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡 定彦君
   説明員
       法務大臣官房司
       法法制調査部参
       事官       但木 敬一君
       外務省経済局次
       長        池田 廸彦君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特
 別措置法案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨五月十四日、岡野裕君、名尾良孝君及び宮田輝君が委員を辞任され、その補欠として星長治君、工藤万砂美君及び藤田正明君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二宮文造君) 前回に引き続き、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○寺田熊雄君 最初に、外務省の方にお尋ねをしますが、ことしの五月十二日に在日米国商工会議所から、五月十二日付中曽根総理あての書簡が来ておりますね。それから、同じく五月二日、EBC、ユーロピアン・ビジネス・カウンシルの方からやはり書簡が来て、それには四月三十日付の意見書みたいなものが貼付されておりますが、これは外務省としては承知しておられますか。
#5
○説明員(池田廸彦君) お答え申し上げます。
 ただいま先生御指摘のように、二件の総理あての書簡が発出されたということも承知しておりますし、写しを私どもの安倍大臣のところまで送付を受けております。したがいまして、事実関係としてそのようなことが行われたということは、これは承知いたしております。
#6
○寺田熊雄君 そういたしますと、これは外交機関を通じてのじゃなくて、この二つの機関が直接総理に送り届けた。で、写しをあなた方の方に送付したと、こういうことですね。
#7
○説明員(池田廸彦君) 御指摘のとおりでございます。いわゆる政府ベースの外交ルートと申しますか、アメリカの政府から日本の政府へ、あるいは欧州共同体の委員会から日本政府へ、そういうルートではございません。在京のそれぞれのビジネスカウンシル及びアメリカの商工会議所、そこがみずからイニシアチブをとって提出したものでございます。
#8
○寺田熊雄君 それでは、この二つの書簡について、外務省としてはどういう御意見をお持ちでしょうか。
#9
○説明員(池田廸彦君) 当然なことでございますが、この外国法事務弁護士制度、これをつくるに当たりまして、これは別に外務省でございますとか法務省でございますとか、そういう違いは全くございません。政府として一体として取り組んでまいったわけでございます。したがいまして、御審議願っております法案にかかわる在京のアメリカ及びヨーロッパ諸国のビジネスの方々の意見書に対する考え方、これにつきましても法務省と協議いたしまして、政府として考えておるところでございます。
 詳細は法務省からお答えがあるかとも思いますけれども、中に含まれております点は、これは既に外国法事務弁護士制度をつくるに当たって、アメリカ政府及び欧州共同体、これとたびたび議論を重ねた点でございます。私ども政府といたしましては、日本側の考え方についてるる説明いたし、それについて先方の理解を得たと、かように考えております。
#10
○寺田熊雄君 本法案によります外国法事務弁護士制度の創設、これは現実には貿易摩擦解消という目的に役立ちますか。貿易の自由化を推進するという観念的なイデオロギッシュな要請に奉仕するというだけのことじゃないかと思うんですが、あなた方はどういうふうに考えておられますか。
#11
○説明員(池田廸彦君) そもそも論で恐縮でございますが、いわゆる貿易摩擦、経済摩擦というものは厳然として存在いたします。それから、貿易摩擦、経済摩擦と申しました場合に、これは非常に多面的な問題でございまして、御審議願っております法律案の外国法事務弁護士制度の創設、これは各種ございます貿易摩擦、経済摩擦の一つの側面を扱うものでございます。とは申しますものの、貿易摩擦を取り扱っていくに当たって、やはり常に二つのことが重要なんだろうと思っております。
 第一は、やはり先方の、外国側と言ってもよろしゅうございますが、先方の要請、要望というものに対して虚心坦懐に耳を傾けるということでございます。それから二番目は、同時に我が国の制度及びその制度がよって立つ伝統と申しますか、あるいは基本的な考え方、こういうものにつきま
して労をいとわず誠実に相手側に説明し、その理解を求める、この二つが相備わらないといけないのじゃないかと思っておるのでございます。と申しますのは、いずれか一方でございますと、限りなく先方の要望に応じていくだけということでは、これはおのずから限度がございますし、また筋の通らない話でございます。さりとて、初めから聞く耳持たぬということでは、これはもう話にもなりません。摩擦はますます激化する一方でございます。したがいまして、その二つの姿勢が要るわけでございます。
 この外国法事務弁護士制度、これをつくるに当たりましても、まさに今申し上げましたような二つの点を踏まえまして当初から対処してまいりました。先方の要望というものについては、これは耳を傾けました。それから先方は、例えばアメリカは主としてこれを経済的な次元でとらえてまいりました。やはりアメリカ企業の進出がこれから盛んになる、それに伴う法律事務というものはふえるのだ、だから何とかしてくれろと、こういう議論でやっているわけでございます。これに対しまして私どもは、それは一つの側面だ、しかし問題はそういう経済の次元だけでとらえるというわけにはいかないのだ、事は国際的法律事務がふえてきている、それにどういうふうに対応していくのが最も妥当かという日本の司法制度、なかんずく弁護士制度の問題としてとらえていかなきゃいけないんだと、それで日本の司法制度、なかんずく弁護士制度というものはこういう考え方に立っておるのだということを十分に説明いたしたつもりでございます。
 もちろん私どもの能力の及ばない点はあったかと思いますけれども、私どもといたしましては先方の主張にも耳を傾け、同時に日本側の考え方も説明し、理解を得たと考えております。こういう意味におきまして、言葉の正しい意味で国際的にも国内的にも妥当な解決を志向してまいった、したがいまして、結果として貿易摩擦の一つの側面である弁護士問題について摩擦解消に役立つのではないかと、かように考えております。
#12
○寺田熊雄君 確かに貿易摩擦の一角といいますか、ほんの一側面ではありますけれども、ある意味では非常に注目を集める問題ではあると思うんです。ただ、こういう厳しい規制のもとで制度を設けますと、あちら側の考えておりますような、ローファームが大挙して日本の法律業務の市場に乱入するというか、例えばケンタッキーフライドチキンあるいはマクドナルドハンバーガーですか、ああいうように、日本の食品業界あるいは外食産業といいますか、そういうものに大挙して押し寄せて日本の市場を荒らし回るというようなことは到底考えられないですね。恐らく何人かあるいはせいぜい何十人かの外国人の弁護士が来て細々と事業をやるのじゃなかろうかというふうに考えられるんです。そうすると、どうもいわゆる貿易摩擦を解消するとかあるいは為替相場に何らかの影響を与えるとか、そういうようなことはとても考えられない。本当にこれはイデオロギッシュなものにすぎない。
 しかし、初めて外国人弁護士が日本に来て業務を開始するという制度的な変革ですから、それは我々法律家にとっては大きな意味を持つし、確かに注目に値するとは思うんですけれども、今のあなたのおっしゃった経済的な側面、そういう側面から考えると大したものじゃないというふうに思うんですが、これはどうでしょう。
#13
○説明員(池田廸彦君) 実際の問題として何人の外国法事務弁護士さんがお見えになるか、どの程度の規模のビジネスと申しますか、お仕事をなさるか、これを計量的に掌握することは、これはもうほとんど不可能と申し上げてもよろしいのだろうと思います。
 しかしながら、ただいま先生御指摘のように、やはり我が国の司法制度、弁護士制度を踏まえました上で、ここで外国法事務弁護士制度というものを新しくつくっていく、こういう考え方はやはり非常に重要な転換を示すものだろうと思います。こういう考え方をそもそもとっている例というのは、そう多くはないわけでございます。その意味では、やはり我が国としてこういう弁護士制度という制度の中に国際的な視点というものも加えていくというこの意義は極めて大きいものがあるだろうと思います。
 それから、実際の事務の仕方にいたしましても、これは厳然としてアメリカ及び欧州その他の諸国の事業の進出が行われているわけでございますから、実需というものは相当ございます。それが幾らかというのはちょっと申し上げられないということは御理解いただけると思うのでございますが、そういうことで、もともと諸外国、アメリカ、欧州が中心でございますが、そちらから、ビジネス機会が目の前にふえているのであるから日本としてもその点に対して配慮してほしいということで要請が参ったものでございます。
 私は、実際の経済的効果が決して少ないとは思いません。ただ、御指摘のように、それでは全体としての貿易摩擦、経済摩擦、これに対する影響はどれくらいあるのかと言われますと、それはこの点も先生御指摘のとおり、例えば貿易額の大きい特定の産品の取り扱いでございますとか、そういうものに比べれば、それは金額としてはそれほど多くはないかもしれません。しかし、もう一つここで新しい意義は、物の貿易についてはいわゆる自由化、開放化というものは非常に進んでおります。それからまた、さらに推し進めなきゃいけない状況にございます。
 しかしながら役務、サービスでございますね、知的な生産活動に関する相互交流、これは国際的に見ましてもそろそろ始まりかけてきたところでございまして、これを統一的に扱う国際ルールというのはまだ存在しておりません。これから実はガットの新ラウンドでそういう点も視野に入れて扱っていこうということでございます。それに先がけて我が国は、サービスの重要な部門でございます弁護士制度、これについて新しい考え方を示す。ここでも私は大きな意義というものを認めて差し支えないのじゃないかと、かように存じております。
#14
○寺田熊雄君 ありがとうございました。もう結構です。
 じゃ、個々の外国法事務弁護士たらんとする者が外国から日本の方にやってくる。そして、その後法務大臣の承認を受けてその資格を取得した者が日本に長いこと滞在して、そして業務を開始する。その場合、これはどういうふうな入管関係の手続を経て在留権といいますか、あるいは永住的な権利といいますか、そういうものを取得するのでしょうか。それをちょっと順次説明していただけますか。
#15
○政府委員(小林俊二君) これから新たに我が国に、先生御指摘のような目的、すなわち外国法事務弁護士の資格を取得する目的で入国をしようという場合におきましては、出入国管理法に定める短期滞在の目的のための在留資格、すなわちコードナンバーで言いますと四−一−四と言っておりますけれども、この資格を与えるということにいたしております。
 ただ、既に我が国に何らかの目的で在留しておる外国人が我が国で新たにこの資格を申請するという場合におきましては、現在認めている資格をそのまま継続させる、すなわち資格を取得するまではその現在保有しておる資格をそのまま継続させるということにいたしております。
 そこで、その申請が認められまして外国法事務弁護士の資格を取得した後におきましては、同じく出入国管理法に定める、コードナンバーで申しますと四−一−一六−三、通称その他と言っておりますけれども、四−一−一六−三という資格を与えるということを原則にいたしております。
 ただ、この場合にも若干例外がございまして、既に永住資格、特例永住であるとかあるいは一般永住であるとか、いずれにせよその従事する業務に制限のない資格を持っている者につきましては、この弁護士資格を取得した後におきましても、現在持っておる在留活動に限定のない資格をそのまま保持させるということは考えておるわけ
でございます。
 また、永住につきましては、一般の永住申請と何ら区別をするつもりはございません。すなわち、出入国管理法に定める永住許可を受ける要件を満たす場合には永住の許可を与えることになろうということでありまして、この点につきましては、外国法事務弁護士資格を持っているかいないかということは何らの影響も及ぼさないという立場をとっております。
 以上でございます。
#16
○寺田熊雄君 わかりました。もう結構です。
 それから、今度は法第七条の法務大臣が承認をする場合です。この場合に、事前に日弁連の意見を聞くことになっておりますね。これは、意見を聞く場合に法務省の方が持っているデータを全部日弁連に渡して、こういう者でありますがいかがでしょうかというふうな扱いをなさるのでしょうか。それとも、日弁連は日弁連で独自の調査をするということを前提にしておられるのか、その点をちょっと明らかにしてくださいますか。
#17
○政府委員(井嶋一友君) 法務大臣が資格の承認をいたします場合あるいは取り消しをいたします場合に日弁連の意見を聞くという規定になっているわけでございますけれども、この規定のそもそもの立法趣旨は、法務大臣が資格の承認をし、日弁連が登録以降、外国法事務弁護士に対する指導、監督を行うというふうに、事務といいますか、手続と申しますか、それが相互に関連し合う形に制度がつくり上げられておるわけでございますので、そういった事務が円滑に適正に行われることを期待して、意見を求めるという制度を設けておるわけでございます。
 そういった趣旨から考えますと、今御質問のようなケースの場合に、当然、私どもが承認につきまして意見を求めるにつきましては、法務省に提出されましたいろいろな申請書類その他すべて日弁連に提供いたすわけでございます。通常の場合はそれでもって判断をされるということになろうかと思いますけれども、他方、日弁連も日弁連として独自に、外国の制度なりあるいは当該申請者個人についての情報とか、そういったものもお持ちになっている場合もあろうかと思うわけでございまして、もちろん日弁連がそういった手持ちの情報あるいは独自にお調べになる資料等に基づいて、さらに検討され、意見を述べられるということになろうかと思うわけでございまして、要するに双方円滑に事を処理するために設けておることでございますので、画一的に律していくというつもりはないわけでございます。
#18
○寺田熊雄君 今お話伺うと、事実上協議をするようなことになると思うんです。それはそれで結構だと思います。
 それから、この法案は非常に用心深くあらゆる点を考えて立案されておるわけであります。第十条第一項三号を見ますと、「誠実に職務を遂行する意思並びに適正かつ確実に職務を遂行するための計画、住居及び財産的基礎を有するとともに、依頼者に与えた損害を賠償する能力を有すること。」、これは日本の医師、弁護士にはない制度です。もちろん我々弁護士は司法試験を受けて二年間の修習を受けるというのでありますから、「誠実に職務を遂行する意思」とか「適正かつ確実に職務を遂行するための計画」とか、それはおのずからやっぱり心の中にちゃんとできてしまう。だから、あえてそれを公表しなくてもいいわけです。住居ももちろん持つ。ただ、「財産的基礎を有する」――すかんぴんの者でも日本の場合は営業できるが、この場合は財産的基礎を持たなければいかぬ。それから、「依頼者に与えた損害を賠償する能力」を持つ、これが日本の弁護士にないものであります。
 日本の弁護士なり医師にしましても、非常に我々が損害賠償を求められても仕方がないと思うような事例にぶつかるわけであります。殊に私は、もう二、三年前になるけれども、相談を受けた事件で、これはちょっと弁護士が方針を誤ったなと思われるような事件で依頼者に十億円以上の損害を与えた事例にぶつかったわけです。しかし、その弁護士がそれじゃ方針を誤ったことによって損害賠償の請求を受けたかというと、そんなことは全くない。依頼者も仕方がないと思っておるのでしょう。第一、それが弁護士の過失に基づくものかどうかという認識を依頼者が持っているかどうかも疑問で、我々がそういうことをたきつけるわけにもいかないから、あえて私どももそこまではアドバイスしなかったわけでありますが、そういう事例がある。
 それから、医師の場合には、私どもも日常どうもこれは医者のミスだと考えるような事例がある。しかし、医者が営業許可を受ける場合に、国家試験に合格するための条件として損害賠償能力というようなものを求められるわけではない。ひとりこの外国法事務弁護士の場合にこれをあえて制度化したというゆえんのもの、これをちょっと説明していただけますか。
#19
○政府委員(井嶋一友君) 具体的なケースにおいて損害賠償の責めに任ずるかどうかということについて、個別の事件につきましてそれぞれ認定があろうかと思うわけでございますから、それほどたくさんの例はないといたしましても、我が国の医師あるいは我が国の弁護士につきまして業務上過失があった場合に損害賠償の責めに任じなければならないということは、これは当然のことだろうと思うわけでございまして、現実に弁護士の場合でもあるいは医師の場合でもそういった訴訟がある、あるいは訴訟に至らないまでもそういった形で法廷外で解決をされておるというようなケースがあるということを間々聞くわけでございます。
 それはそれといたしまして、我が国の医師あるいは我が国の弁護士の場合でございますと、この資格は我が国が与えるものでございますから、当然、そういった不法行為と申しますか、そういった事件を引き起こした場合にはやはり資格そのものの喪失といった問題が一つのテーマになりましょうし、さらに会内における懲戒でございますとか、そういった制裁も受けるし、さらにもっと広い意味で社会的な制裁も受けるというようなことがあって、我が国の資格者の場合には、そういった業務上の過失に基づく賠償といったものに対しては保険会社が販売しておりますいわゆる医師の賠償保険でございますとか弁護士の賠償保険とかといったようなものに入るといったような形で、できるだけそういった事態を未然に防ぐという措置をとられることになるだろうと思います。
 しかし、外国法事務弁護士の場合には、外国法事務弁護士の資格そのものが、そういった非違行為があった場合あるいは不法行為があったような場合に、これはその資格そのものはあるいは取り消されるかもしれませんけれども、そもそもその人たちは原資格国の弁護士資格を持っているわけでございますから、この人たちが我が国において今言ったような社会的な制裁を受けるとかといったようなこともなく国へ帰ってしまえば、引き続き原資格国における資格は保持し得るわけでございますから、そういった形で我が国の資格者とその点において趣を異にするのではないか。したがいまして、特に外国人である外国法事務弁護士について考えれば、やはり我が国において十分そういった賠償責任に応じる資力といったものを備えさせておかなければ我が国における依頼者の方には十分でない、こういう考え方から、特に本制度におきましてこの賠償能力ということを明文でうたったわけでございます。
 言うなれば、我が国の資格者の場合には我が国自身で働くことができないという非常に大きな犠牲を払わなければならぬわけでございますから、明文の規定がなくてもそれなりの手当てはするだろう。しかし、外国人の場合には、今言ったような形で帰ってしまえばどうしようもないということから、それを防ぐという趣旨で規定を設けておるということでございます。
#20
○寺田熊雄君 なるほど、それは帰ってしまえばもう追及できないという点は確かにありますね。
 じゃ、依頼者に与えた損害賠償義務を生ずる事例というのは、何かティピカルなものがありまし
たら、一、二おっしゃっていただけますか。
#21
○政府委員(井嶋一友君) これはこれから開く制度でございますから、頭の中で考えるような事例ということになるわけでございますが、しかし我が国の弁護士に間々起こる事例などを参考にして考えますと、まず我が国の弁護士の場合でも、裁判所における訴訟の手続におきまして、例えば過失によりまして敗訴してしまったとか、あるいは過失によって控訴期間を徒過してしまったとかいうような形でそれが依頼者の損害につながったといったような場合に、これはやはり一種の過失による損害賠償責任が生ずるのだろうと思いますが、外国法事務弁護士の場合にも、日本における訴訟はできませんまでも、外国の裁判所に対する訴訟手続はできるわけでございますから、そういった意味で、同じような手続上の過失といったようなもので依頼者に損害を与えるといったようなものが一つ考えられるかと思います。
 また、例えば外国へ輸出をしたいというような我が国の依頼者があった場合に、当該輸出先の国の輸入規制といったようなルールについて鑑定を求められた場合に十分な調べもしなくて、過失によって十分な鑑定ができなかった、逆に誤った鑑定をしてしまった、こういうような場合に、輸出業者がその鑑定に基づいて物品を製造したところが、いざ輸出する段階になって規制にかかって輸出できなかったというようなことを考えますと、これもやはりこの外国法事務弁護士の鑑定が一種の損害発生との間で因果関係があるというようなことになりますれば、これまた理屈の上では賠償責任を生ずるのではないかというようなことで、やはりいろんな意味で正確な法律情報と申しますか、そういったものが根っこになったビジネスでございますから、その点についてのやはり過失があれば、そして損害が発生すれば賠償ケースということになるのではないだろうかと思うわけでございます。
#22
○寺田熊雄君 私どもも考えますと、例えば特別な法律があるのを知らなかった、法律家としては当然そうした立法があるのを知らないでいることを許されないのに、そういう特別な立法があるのを忘れておった、気づかなかった、そういうような場合は、これは明らかに過失であろう。我々弁護士の場合は、当然出すべき証人を出さないから訴訟に負けたとか、あるいは非常に有効な法律的な主張をすべきものを落としたとかいうようなのは過失になるだろうかと考えるのでありますけれども、ただ、準備書面に法律上の論点に気づかないでその主張をしなかった、だから有効な攻撃、防御の方法を怠ったといいますか、そういうような場合は、確かにそれは過失になるのだろう。しかし、当然負けても、その場合に損害賠償の訴訟になったというようなことは余り実例を聞かぬのですね。
 それから、今司法法制調査部長のおっしゃった控訴期間の徒過というのは、この外国法事務弁護士は訴訟業務できないから、この場合には余り適用がないんじゃないでしょうか。いや、それはそうじゃないとおっしゃるのだったら、また御説明いただくことにして、次に移りたいと思うんです。
 問題は、この外国法事務弁護士の職務範囲の上の制約です。これは先ほど外務省の方にお尋ねをしたところでありますが、日本における米国の商工会議所、ジ・アメリカン・チェンバー・オブ・コマース・イン・ジャパンとあるけれども、この在日米国商工会議所の五月十二日付の総理大臣に対する書簡、それからEBC、ユーロピアン・ビジネス・カウンシル、この団体のやはり総理大臣あての五月二日付の書簡ですか、これは四月三十日付の意見書を添付してありますが、これによりますと、非常にいろいろな苦情を述べておりまして、今外務省の方や、それから今まで司法法制調査部長がるる御説明になった、とうにかアメリカなりECは納得したのだとおっしゃることが果たしてそのとおりなのか。それとも、代表としては納得したけれども、なお一部にくすぶっているという現象なのか、それはちょっとわかりませんけれども、今回の法案では真の市場開放措置とは認めませんよというようなことを言っておるように思うんです。
 第一、その資格の問題でも、五年の実務経験に対する非常に強い異議を申し立てておるんです。ただ、これはアメリカのニューヨーク州であるとかワシントンDCなんかも、いずれも五年以上の実務経験を要件としておりますね。ミシガンは三年以上ですか。だから、これは余り文句を言うというのも、実は私どもにとって合点がいかない面もあるのであります。それから相互主義に対して、ちょっと相互主義を余り大上段に振りかぶっておるじゃないか、相互主義というのは原則として認めるけれども、しかし特定の事情があれば認めないというような、もうちょっと消極的な拒否事由の意味でうたった方がいいのじゃないかという趣旨のようにうかがえるわけですけれども、相互主義に対する異議を述べておる。アメリカの商工会議所が五年以上の実務経験に対して抗議をしておるというのは、ちょっと私も理解できなかったのでありますが、言っていることは間違いないんです。
 それから、日弁連の監督というのが、これは同業者あるいはライバルによる監督を受けるというのはおかしいじゃないかというような言い方をしておる。
 それから、もう一つは今問題にしておる職務範囲。EBCの抗議意見書ですか、その中には、EC諸国の中では特定のつまり原資格国法だけじゃなくて、広く外国法及び国際法一般についての法律業務を取り扱う資格を認めておる。しかし本法案の場合は、例外的に許可を得た第三国法については法律業務を行うことができる、非常に狭いじゃないか、これが第一点です。
 それからもう一点は、つまり今の国際経済関係を考えますと、これは非常に多くの国々の法律にまたがる事案が多いから日本の法律にも関係をおのずから生ずる。その場合、日本の法律家と共同の事業を営んでおればその難関をたやすく突破できるのに、日本の法律家との間の雇用関係、外国人弁護士が日本の弁護士を雇うことはできない、それから共同営業もできない、これじゃ余り縛り方がきついじゃないかというのがその職務範囲に関する主要なオブジェクションですね。これは何とかならないものか。私どももよく考えてみて、説得をされればなるほどという、うなずけないこともないけれども、第一印象としては、これは少しきついのじゃないかという感じは確かにおりますね、この法案の与える印象というのは。これはどうでしょうか。
#23
○政府委員(井嶋一友君) いろいろの問題点を申されましたけれども、職務の範囲というところに限って御質問ということでお答えを申し上げます。
 確かに在日米国商工会議所の書簡あるいはユーロピアン・ビジネス・カウンシルの書簡におきましては、職務の範囲について御指摘のような観点から不満を述べておるわけでございますが、私どものこの法案の考え方につきまして当委員会でも御説明申し上げましたし、また諸外国の政府あるいは弁護士さんたち、あるいはこういったビジネスサークルの方々にも従来いろいろ説明をしてきておるわけでございますが、いまだに納得はしてもらえないという問題であるわけでございます。
 職務の範囲につきましての考え方でございますが、御指摘のように外国法一般を取り扱わせるか、あるいは原資格国法に限るかという、この二つのアプローチがあるわけでございます。現に諸外国の制度を見ました場合に、アメリカとかイギリスとかフランスといったような国々では前者の考え方、つまり外国法一般を外国から来た弁護士に取り扱わせるという考え方をとっておるわけでございますが、ドイツは逆に原資格国法、つまり本国法を中心とした事務を認めるというような形で整理をしておるわけでございます。
 私どもこの制度をつくります場合に、こういった二つのアプローチの仕方があった、選択肢があったわけでございますけれども、日弁連及び私ど
も政府がとりました考え方は、やはり我が国に導入をして国際的な法律事務の増大に対処するために何を求めるかということから、結局、言うならば良質な法律サービスを求めようということを基本としたわけでございまして、良質な法律サービスというのは、言葉をかえれば、その当該外国法事務弁護士が持っている知識について弁護士資格の試験を通ったという意味において制度的に保証されている、そういった制度的な保証のある知識を基礎とした法律事務、法律サービスを我が国において行ってもらおうという選択をすることにしたわけでございます。したがって、この二つの選択肢のうち、原資格国法を中心とした法律事務に限るという考え方を採用したわけでございます。
 ただ、原資格国法に限ると申しましても、非常に厳しいいわゆる狭い考え方ではございませんで、もちろん自分の国の法律は扱えるわけでございますが、それにプラスいたしまして国際法あるいは国際取引の慣習法にまで高まっておるような慣習、そういったものはもちろん原資格国法として取り扱えるわけでございますし、アメリカにおきますれば、州の法律に限らず、連邦法とかアメリカ全土に行き渡ります判例法でございますとか、あるいは統一法典といったようなものを取り扱えるわけでございまして、またヨーロッパにおきましては、それぞれの国の法律のみならず、EC関係の法律といったものも当然原資格国法の法律としてみなすといいますか、原資格国において効力がありますもの、そういったものももちろん取り扱えるのだと、こういう考え方でございまして、言葉から受け取ります印象ですと原資格国法に限るというふうに受けとめられやすいんですけれども、効力があります法律が使えるわけですから、現在のように国際化が進んでおる諸国間においては、自国の法律に限らず国際的な幅のある法律がいろいろ効力を有しておるわけでございますから、そういったものも当然取り扱えるのだというふうに解釈をしておるわけでございます。
 そういったところをよく御説明いたしますと、なるほどということで、ある程度納得をしていただけるわけでございますが、条文自体を見ますと原資格国法と書いてございますので、どうも非常に狭くお考えになるということが一つあると思います。
 いずれにいたしましても、私どもはそういった二つの選択肢のうちの原資格国法を主としたものに限定をしたわけでございますが、それでもなお狭いと申しますか、より広くやはり扱えるようにするというアプローチが必要だ、調整が必要だということを考えまして、一つの国の資格のみならず他の国の資格を持っているような人については、やはりその知識が制度的に保証されているのだという考え方から、法務大臣による指定法という制度を設けまして、例えばフランスの弁護士が他の国の資格を取っているというような場合には、フランス法に限らず、その資格を取っている国の法律を指定法として、その国の法律を扱って結構ですというような制度を設けることとしておるわけでございます。
 この指定法の要件としては、そういった意味で、他の国で弁護士となる資格を持っている者のほかに、資格を持たないまでも、当該特定の外国の法律について当該国の弁護士と同程度の知識があって、そして、かつ当該国の法律について五年以上の経験を持っていたというような場合には、自分の国の法律にプラスしてそういった国の法律も扱えるという指定制度を設けるわけでございます。
 そういったことで、要するに基本は良質の法律サービスを取り入れようという考え方にのっとりまして、そういったより広く認めるというアプローチも制度としてつくられておるわけでございます。したがいまして結果的に、外国法一般とまではいきませんけれども、ある程度知識が制度的に保証されている中でできるだけ広く扱えるようにしようという考え方をとっておりますので、それほど非難をされるということではないだろうというふうに思っておりますし、今まで同様、今後もそういった立場で諸外国に説明、説得をしていきたいというふうに思っておるわけでございます。
#24
○寺田熊雄君 今の司法法制調査部長の御説明を伺って、多少私の考えが補足し得た部分もあるんです。例えば国際法とか、それから法まで高められた商慣習というようなものは原資格国法の範疇に入るのだということのようでありますが、国際法というと、これは非常に莫然たる法概念ですからね。例えば条約なんかで元首がサインもし、それから議会が批准もしておる、有効にその国を縛っている条約というようなものはその国の法であると見ていいでしょうけれども、そうでない国際法一般もやっぱりその国の法律と見て差し支えないのだと、それはそういうふうに解釈してよろしいんですね。
 それから、例えばEC諸国の弁護士が日本に来た場合に、EC全土に適用になる法律というようなものはその国の法律だと把握できますけれども、そうじゃなくして、例えばフランスの弁護士が日本にやってきて外国法事務弁護士になる場合に、ドイツ国だけに適用になる法律をこの原資格国法だと認め得ないことは当然だと思うんですね。そういう点、ちょっとあなたの御説明を補足していただけますか。
#25
○説明員(但木敬一君) 原資格国法の考え方は、本法案の第二条の「定義」にございます。第二条の第五号で「原資格国において効力を有し、又は有した法をいう。」ということになってございます。したがいまして、国際法と申しましても当該原資格国において効力を有していない国際法につきましては、これは原資格国法とは言えないということになろうかと思います。
 ただし、条約の直接の締約国でなくても、既にそれが国際公法上の慣習法に近いものとなっている場合がございます。例えば海洋法などというものがございますが、それが国際的な公法上の慣習法として当該原資格国を事実上拘束しているような場合には、その条約もその原資格国において効力を有している法ということになろうかと思います。したがいまして、条約等の成文法でありましても、あるいは慣習法でありましても、当該原資格国において有効に法として機能しているものはすべて含む、こういう趣旨でございます。
 したがいまして、御指摘のフランスから来た外国法事務弁護士はドイツ国のみに適用されている法を扱えないではないかという点は、そのとおりでございます。
#26
○寺田熊雄君 それから、第三国法について法務大臣が承認すれば、その法律業務ができますね。ただその場合、やはり部長もおっしゃったし法案にもあるけれども、その法に関しても五年以上の実務経験が要ると、こうありますね、これは十六条の一項一号ですか。ですから、やっぱりその絞り方が非常に窮屈である、厳しいという点が、ヨーロッパやアメリカから見ますとちょっと厳し過ぎやしないかというオブジェクションが出るということがやっぱり当然のように思うんです。私どもも、それにはやっぱり若干共感を覚えるわけです。これは今すぐこれをどうこうということはありませんけれども、やはり一つの検討課題としていってほしいと思いますが、どうでしょうか。
#27
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のとおり、諸外国でもそういった外国法一般を扱うという制度があるわけでございますから、我が国におきましても現法案の制度でスタートをいたしまして、やはり実際に実務を開始した場合に国際的な法律事務に適正に対処するのに不都合があるというようなことになれば、これはもう職務の範囲に限らず、いろんな点についてやはり再検討は加えられるべきであるということは当然だというふうに私ども思っておりますし、日弁連もその点においては同様であろうと思います。
 しかし、当面これでスタートいたしまして、相互の信頼も深まり、かつ現制度におけるいろいろな配慮といったようなものが出てまいるというようなことがございますれば、当然会内における議論もそれなりに変わってまいるだろうと思うわけでございまして、将来の課題としては御指摘のよ
うな問題はあろうかと思います。それについて全く柔軟性を持たずに対処するという姿勢でないことは申し上げるまでもないと思うわけでございます。
#28
○寺田熊雄君 それから、これは法務省におかれても、最高裁におかれても既にお気づきのことと思いますが、衆議院における参考人の意見聴取において、かなり強力に日本においては法曹人口をもっとふやした方がいいのじゃないかという議論がありました。
 法曹人口といいますと、弁護士に限らず、裁判官も検察官も含むわけですけれども、この場合は主として弁護士をふやすべきではないかという点に重点が置かれておったように思うんです。この法曹人口、私どもが司法科試験を受けたときは大体二百五十人から三百人ぐらいの合格者であったわけです。それが今五百人になっておる。これは増大する法律業務の需要といいますか、これを考慮してとられた措置だろうと思うんです。ただ、試験のレベルを低くすると余り能力のない法律家ができ上がるのでという配慮ももちろんあるんでしょうか、その辺の調和点として今五百人になっておる。裁判官、検察官ももう非常に高度の素質を求められますから、やたらにふやせということを私も言うわけじゃないのだけれども、一体こういう議論に対してはどういうふうに法務省は考えていらっしゃるのか、また、最高裁はどういうふうに考えておられるのか。また、ふやすことが、例えば財政的な見地あるいはそのほかの施設上の問題点などから、早急にその実施が可能となり得るのかどうか、こういう問題について包括的に説明していただけますか。
#29
○政府委員(根來泰周君) 先日の参考人の意見聴取の際にも、参考人から法曹人口をふやすべきではないかという積極論もございましたし慎重論もございました。仰せのように、衆議院の法務委員会の参考人の三ケ月参考人は、相当強力に法曹人口をふやせという御意見でございましたし、またいろいろ著書を見ますと、例えば東大の田中英夫教授なんかは、法廷実務家は五万五千人ぐらいが適当だと、こういうふうに言われておるわけでございます。私も、こういう特に外国弁護士に門戸を開くということになりますと、やはりよい質の弁護士あるいは多くの弁護士ということが社会から要請されることになりまして、好むと好まざるにかかわらず、弁護士をふやせという意見が出てくると思うわけでございます。
 ところが問題は、法曹の職域というのをどういうふうに考えるか、あるいは社会の法曹に対する需要がどのぐらいあるのか、さらに今御指摘のありましたように、司法試験制度を含めて法曹の養成制度というのをどういうふうに考えていくのか、これは端的に申しますと、今五百人の合格者を得ておりますけれども、実務修習なんかはもうこれが精いっぱいだというふうな声もあるわけでございまして、質の問題もございますけれども、そういう点をどういうふうに考えていくのか、あるいは都会とそれから地方への法曹の分配をどういうふうに考えるのかというふうないろいろな問題がございまして、こういう問題はやはり長期的な展望のもとに裁判所と弁護士会とその他の学識経験者を加えまして検討すべき問題だと思いますので、そういう姿勢で私たちはこれから検討して解決を図りたいというふうに考えております。
#30
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) 裁判所といたしましては、適正迅速な裁判を実現するに足る法曹人口が必要であるということを抽象的に申し上げることができようかと思いますが、現状が果たしてそれで足りているのかということになりますと、裁判官にいたしましても、検察官にいたしましても、弁護士にいたしましても、必ずしも十分であるとは考えていないわけでございます。しかし、寺田委員御指摘のとおり、司法の公正を担保いたしますためには法曹の素質、能力を一定水準に保つ必要がございますわけで、それとの絡みで法曹人口も一挙にふやすということはなかなか困難な問題ではなかろうかと思います。
 法曹人口の増加につきましては、ただいま法務省から御指摘のございましたように、もろもろの角度から慎重に検討を要する問題ではなかろうかと思っておりますので、私どもも法務省の方と十分御相談申し上げまして、長期的な展望に立ってこの問題に対処してまいりたい、こういうように考えております。
#31
○寺田熊雄君 結構な御意見だと思うんですけれども、ただその場合、現実にふやすべきだという御意見になった場合に、かなり財政的に、あるいは施設面における隘路があります。三ケ月さんが衆議院でおっしゃっておることですが、例えば司法研修所などは修習生が五百人ぐらいということで講堂なんかはできているのだと思います。これをふやしていくと新たな講堂をつくらなきゃいかぬということなんでしょう。それから、二年間の修習の場合に毎月俸給を受ける、それは国家が一般会計から支出しており、ふやすことによって大蔵省の抵抗も予想されないことはない。だが、内外の世論が高まって、あなた方の御努力でその予算がとれないという道理はないので、これはあなた方の御努力を期待するほかはないのだけれども、一挙に私どももふやせということを言っておるのではないんです。
 ただ、漸進的に少しずつでもいいから、ふやしていくような努力はできるのじゃないだろうか。例えばこの五百人のうち一番びりっかすの平均点が六十五点だと、それを六十点にして例えば五十人をふやしたって、六十点の五十人が六十五点以上の例えば八十人に法曹として著しい遜色を持つということはないわけですから、かなりこれは政策的な扱いで処理できるのじゃないだろうかというふうに私は考えるのですね。これは大臣の御所見もあるけれども、やはりあなた方事務当局が一定の方針をお決めになれば、恐らくそれが実現すると思うんです。ですから、できるだけふやすという方向で、それも一挙にというのじゃないけれども、ふやすという方向で御努力を願ったらどうかと思うんですが、どうでしょうかな。
#32
○政府委員(根來泰周君) 御承知のように法務省は司法試験の管理をやっておりますので、その見地から申しますと、司法試験の合否決定というのは司法試験考査委員会議がやるわけでございまして、司法試験考査委員会議が諸般の事情を考慮いたしまして、この辺の水準でということで足切りをやるわけでございます。そういう意味で、事務当局がその際にいろいろ意見を申し上げて参考に供するわけでございますが、私どもはやはり素質のある若い人を採りたいというのが基本でございまして、そのために試験問題をいろいろ考えてもらうということをいろいろ申し上げているわけでございまして、素質のある若い者がそれじゃどれぐらいおるかということに帰着するわけでございますけれども、そういう観点も踏まえまして、今御指摘のありましたように、ふやす方向がいいのじゃないかということで意見を申し上げておりますので、今後もそういう方針でやりたいというふうに考えております。
#33
○寺田熊雄君 最後に、民事局長にお尋ねしますけれども、私ども壬申戸籍というものが存在するということは前から知っておったけれども、現実にどうしても私の壬申戸籍を見たいのですが何とかなりませんでしょうかという市民から相談を受けてみて、私は初めてそれの本質なり扱い方の難しさということを知ったわけですが、これは今どういうわけで大衆に見せないのか、将来にわたってもそれは見せるべきでないのか、そういう点、ちょっと説明していただけますか。
#34
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまお話ございました壬申戸籍と申しますのは、明治五年に日本で全国的に初めてできた戸籍でございます。その明治五年がみずのえさるの年ということで、通称壬申戸籍と呼んでおりますが、正式には明治五年式戸籍というふうに私どもは呼んでおります。
 この戸籍は、現在の戸籍と同じような各人の氏名であるとか生年月日であるとかというものが書いてあることは当然でございますけれども、そのほかにいわゆる族称、華族とか士族とか平民とかというような族称が記載されております。それか
ら職業、それからお寺さんの名前、それから氏神さんの名前というようなものまで書いてあるわけでございます。そういうふうなものができておるわけでございますが、これが保存規定をもう既に徒過をいたしまして、法律的にはもう保存する必要がない対象になっておるわけでございます。
 ただ、そのようなものにつきまして、いろんな学術的な意味もあるのでございましょうし、歴史的な非常に重要な事実を示すものとして私どもは保管をいたしておるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、その壬申戸籍には族称が書かれておる、その族称の書かれ方といたしまして、いわゆる賤称でございますね、新平民というような言葉で書かれているものもございますし、もっと極端な形でその賤称を書かれておるというようなものもあるわけでございます。したがいまして、そのようなものは部落差別等、いろんな差別につながることが記載されておりますので、もともと公開に適しないというふうに考えております。したがいまして、既に文書といたしましても戸籍法のもとにあるものでもございませんしするので、これにつきましては公開は一切しないということで、ただ文書として保存する値打ちはあるだろうということで、法務局がほとんどでございますけれども、法務局と一部は市町村で厳重にごん包いたしまして、そして封印をして保管をいたしておるということでございます。
 そういうようなことでございますので、かつて昭和四十年の初めのころでございましたでしょうか、部落差別問題に絡みまして壬申戸籍の扱いというものがかなり問題になったことがございます。そういう経緯もございまして、厳重に保管だけはしておるけれども、公開は絶対しないというふうな取り扱いをしている、そういう文書でございます。
#35
○寺田熊雄君 なるほど、よくわかりました。
 結局は、そういうような身分的な差別といいますか、それを戸籍の上にあらわすという行政行為は憲法十四条にも違反する、こういうことになりますね。したがって、それは存在を許すべからざるものである、だから何人にもそれはもう公開しない、さりとて全部廃棄してしまうというのも、学問的な見地とおっしゃったんですが、学問的見地から多少の疑念がある、それゆえ厳重にこん包して何人にも見せないようにして今保存してある、そういうことですね。これは今の局長の御説明をそのまま受け入れて、きょうはそれ以上に御質問しないことにします。
 それから、最後に大臣にお尋ねをしたいと思うんですが、今まで外国人弁護士法に関する質疑を衆参両院でお聞きになりまして、殊に法務大臣は居眠りなんか全くなさらずに熱心にお聞きになっていらっしゃる。それで、今お話ししましたように、これはいわゆる国際経済といいますか、貿易面の自由化を推進するそういう作業の一環としての意味がありますね。しかし、同時にそういう国際経済面上の要請を満たしていく、殊にそれが強くアメリカやECからの要請を受けとめて、そして国際的な要請を満たしていくという一つの立法作業であったわけです。と同時に、我が国の弁護士制度の建前といいますか、それを崩してはいけない、これは司法制度の根幹にかかわる問題だから、我が国の司法制度、とりわけ弁護士制度との間の調和を大切にしていったそういう立法でもあったわけです。
 しかし、そうして法案ができて今や我々の審議も終わらんとしておるわけですけれども、それに対してアメリカの商工会議所、それからユーロピアン・ビジネス・カウンシルですか、こういう方面からのこれに対する異議というものもかなり強烈に中曽根総理大臣に直訴するというような形で起きている。その中心点は、これは完全な意味において自由化の要請を満たすものではないんだ、第一、資格条件が厳し過ぎるし、日本において取り扱い得る法律業務の範囲というのは著しく狭い、これでは困ると、こういう国際的な批判が今現実にあるわけです。それから一面にまた、法曹人口をふやせという国内の意見もあります。そういうものをやっぱり全部総合して、大臣としてはそういう問題についてどうお考えになりますか、またどうなすべきであるとお考えになりますか。最後に大臣のそういう点のお考えを伺って、あるいは御抱負を伺って質問を終わりたいと思うんです。
#36
○国務大臣(鈴木省吾君) お尋ねの件でございますが、御案内のように、この外国法事務弁護士法の提案に至るまでには、動機として貿易摩擦の問題もございましたけれども、それ以前から、国際的な交流が盛んになっておる、経済的な交流が非常に盛んになっておるということで、アメリカなりあるいはヨーロッパから要求もございますし、また要求あるなしにかかわらず、現在のような世界的なそういった交流の中で、いずれ必要であろうというふうなことで検討いたした次第でございますが、先生野にお述べになられましたように、とりわけ日本の司法制度あるいは特に自主権を持っております日本の弁護士制度との関連というものを十分考慮しなければなりませんので、そういう観点から十分時間をかけて、しかもまだ日弁連等の協議はもちろんのこと、アメリカとの協議あるいは一部ヨーロッパ等との協議も踏まえながら進めてまいったわけでございますが、現在の段階といたしましてはこれが最良の案であると、こういうような考えのもとに特に日弁連等の協議を経まして、日弁連としましても、こういう形でひとつ政府提案でやってくれないかと、こういう御要望もございましたので、今回提案をいたして皆さん方に御審議をいただいておる次第でございます。
 さような考えでございますから、現在の段階としましては、いろいろ協議の過程においてアメリカ政府からもこれじゃ不十分だと、ヨーロッパの方からも不十分だという意見はありました。しかし、先ほど申し上げましたように、日本の司法制度、大きくは日本の諸制度、文化的な問題まであるわけでございますが、それとの関連において、現在の段階ではこれが最良で、これよりほかにないのだということで大筋において御了解をいただいておるわけでございますが、民間団体等においてはなお不十分だと、総理それから私のところへも実は来ております。そういうことは承知をいたしておりますが、現在の段階では、何回も申し上げますが、これが最良の案であると、こういうふうに考えております。
 しかし、今後ますます国際交流が高まってまいりましょうし、さらにまた国内で、先ほど来御質問等ございました案件等も考慮いたしますと、いずれまた、この実施の実績を見ながら、将来改善すべきところが出てくるのかなというふうな感じもいたさないではございません。率直にそういった感想を持っておる次第でございます。
#37
○寺田熊雄君 法曹人口はどうですか。
#38
○国務大臣(鈴木省吾君) 法曹人口の点も、いずれこういうものがインパクトになったり、あるいはまた、日本でも単なる法廷における法律活動だけでなくて、アメリカ等で盛んに行われておりますいわゆる法律の相談というものが日本でもだんだん多くなるのじゃないかなというような感じもいたします。そういうことを考えますると、法曹人口もこれからやはりそういうことを見通しながら考えていかなきゃならないのではないかなというふうに考えておる次第でございます。
#39
○寺田熊雄君 ありがとうございました。終わります。
#40
○飯田忠雄君 本法案から受けます感じは、どうも現在の憲法の前文において言っておる国際主義、それから経済の自由化の方向というものに逆行するような性格があるような気がしてならないのであります。そういう問題について少しくお尋ねをいたしますが、その前にこの法案自体についてわからない点がありますので御説明を願いたいんです。
 それは、第三条の第一項の三号、四号でございますが、なぜこれを職務から外さねばならぬのかという点で、どうもその理由づけがはっきりわからないんですが、どういうことでしょうか。
 例えば三号では「原資格国法以外の法の解釈又は適用についての鑑定その他の法的意見の表明」ですから、これは原資格国法以外の外国法というものはたくさんあるわけですが、そういうものに
 ついて意見を表明してもいけないのだということなんですが、それから「外国の裁判所又は行政庁のために行う手続上の文書の送達」もいけないと、こういうことになっておりますが、これは大変意味がわからないわけです。といいますのは、外国で弁護士をやっておられて外国の法律に通暁しておる人を日本の企業で職員として採用をいたしまして、そしてその職員として採用した人に外国法についての職務の内容のことを実際に行わせるということまでなぜ禁止しなきゃならぬのかという疑問でございます。もし、それは禁止していないのだということであればまた別なんですが、その辺のところがどうもあいまいもことしておりますので、御説明をお願いいたします。
#41
○説明員(但木敬一君) お尋ねの第三条一項三号、四号についてでございますが、まず三号について御説明いたしたいと思います。
 三号は、外国法事務弁護士が原資格国法以外の法の解釈または適用についての鑑定その他の法的意見の表明をすることはその外国法事務弁護士の職務外であるとした規定でございます。
 まず、先ほどの寺田委員の御質問に対する答弁の中にもございましたが、本制度におきましては、外国法事務弁護士の能力が制度的に保証されている限度においてそのサービスを日本で行わせることといたしたわけでございます。したがいまして、例えばアメリカのニューヨーク州の弁護士がフランス法につきましてその法の解釈または適用についての鑑定その他の法的意見の表明をすることは当該ニューヨーク州弁護士の能力として保証されているものではないと考えたわけでございます。したがいまして、このような法的意見の表明は許されないというふうにいたしたわけでございます。
 ただ、もともとこれは職務外ではないか、つまり原資格国法以外の法律についての法的意見の表明というのはもともと職務の範囲外ではないかという御疑念もあろうかと思うんですが、例えばニューヨーク州法とフランス法とを比較して、その比較の結果を鑑定してほしいというような事例の場合におきましては、ニューヨーク州の弁護士がこれを依頼されますと、ニューヨーク州法についての解釈、適用もするわけですが、同時にフランス法についての解釈、適用についても鑑定書の中ではっきり書くというようなこともあろうかと思うわけであります。
 しかし、このフランス法の鑑定部分につきましては、先ほど申しましたとおり、制度的にその能力が保証されているわけではございませんので、あるいは誤った鑑定がなされる危険性があるわけでございます。したがいまして、その部分につきましては、フランスから来た外国法事務弁護士、あるいはフランス法について法務大臣による指定を受けた外国法事務弁護士、ないしはフランスにおりますフランスの弁護士、こういう者からリーガルオピニオンを取り寄せまして、そのリーガルオピニオンと自己がなしたニューヨーク州法についての鑑定とをあわせて、そしてその比較検討をした結果を依頼者に伝達する、こういうふうにしてほしいということでこの規定を設けているわけでございます。
 なお、先ほど一定の企業が外国の弁護士を雇った場合どうなるのかという御質問でしたが、これについてはいろいろな場合があろうかと思います。一番典型的な場合ですと、例えば日本の商社が外国の弁護士を社員として雇用するということがございます。そして、専らその商社のため、すなわち商社本人の手足として活動させる場合がございます。これは、現在の商社で法務部というものがございまして、その中でやっている活動と同じでございますので、それについては別段の制約はないわけでございます。しかしながら、外国法事務弁護士という資格に基づきまして第三者の法律事務を取り扱うということになりますと、ここにございます職務の制限があるということになろうかと思います。
 次に、第四号の関係について御説明したいと思います。この第四号の趣旨は、端的に申しますと、外国の公権力の行使を外国法事務弁護士が担うことはできないという趣旨でございます。すなわち、日本におきましては国内の裁判所の訴状の送達あるいは召喚状等の送達は、これは国家権力の行使として考えられております。その送達の担当者も原則として裁判所の執行官または郵送による。この場合の郵送する者は郵送吏員とみなすということでございまして、いずれにせよ国家権力の行使として考えておるわけでございます。国際的に申しましても、外国の裁判所の文書の送達というものは、領事条約等によりまして、いわゆる国際的な取り決めに基づいて互いの公権力の行使として取り扱っておる次第でございます。
 しかしながら、諸外国の中には、日本では裁判所から直接に被告に参ります訴状の送達ですとかあるいは召喚状の送達につきまして弁護士がやっている国がございます。厳密に申しますと、その弁護士が後から宣誓供述書を作成するとかいろいろな手続がございますが、諸外国の中にはこれを必ずしも公権力の行使として見ていない国もある。そうしますと、そこから来た外国法事務弁護士は、訴状の送達は当然国家権力の行使ではないだろうということでこれを行う危険性があるということから、第四号で明示的にこうした行為を職務外といたし、職務外とされますと、本法案の第四条で「前条第一項の規定による職務の範囲を超えて法律事務を打ってはならない。」と定めておりますので、結局禁止されるということになるわけでございます。
 「行政庁のために行う手続上の文書の送達」も同じような問題意識でございまして、これにつきましては、例えば日本で申しますと公正取引委員会のような委員会がございまして、裁判所と同じような機能を果たしている、すなわち公権力の行使として行われているというようなこともございまして、これも職務外といたしたものでございます。
 したがいまして、逆に外国法事務弁護士が自分で訴状を書いて自分の国の裁判所にその訴状を提出するような行為は、これは四号のかかわるところではないわけでありまして、四号がかかわりますのは、裁判所または行政庁のためにいわば裁判所または行政庁にかわってと申しますか、そうした行為のみを禁止しておるわけでございます。
#42
○飯田忠雄君 ただいまの御説明で一つわからない点は、外国の裁判所または行政庁がその文書を送達する場合に、これをある特定の資格を持った自国の人に委任するという制度がもしあるといたしますと、その場合には、こういうように一般的に禁止されますとそれができなくなるわけですが、そういう点はどうなりましょうか。
#43
○説明員(但木敬一君) それは、外国の公権力として、つまり外国の制度として、自国内において私人を介して送達するということを許す制度は、世界的にはございます。ございますが、我が国はそういう制度をとっておらず、そのような行為は公権力の行使として考えているわけでございます。
 したがいまして、我が国において外国の公権力の行使と考えられるような行為につきましては、これを禁止することも当然ある。現に、例えば宣誓供述書を作成する場合ですとか、あるいは裁判所からの訴状を送達する場合ですとかにつきましては、現在でも日本で領事館を経由して行わせているところでございます。
#44
○飯田忠雄君 その点はわかりましたが、結局、政府の方の御見解としては、現在、世界じゅうのいかなる国も自国の権力を行う機関を我が国に置いておる、こういう御見解というふうに受け取ってよろしいですか。
#45
○説明員(但木敬一君) それは諸外国の間で取り決めがございます。取り決めに基づきまして、外国の裁判所の送達を公的なルートによって行うこ
とができる制度を持っております。
#46
○飯田忠雄君 つまり、いろいろ外国の外交機関が日本にある場合は、それを通じて送達すればいいですわね。ところが、それがない場合に特定の例えばある個人に依頼するということが外国の制度でできる制度がある場合に、日本に来ておる個人にはそれができないということになってしまうわけなんですが、そういう場合のことについてはどうお考えでしょうか。
#47
○説明員(但木敬一君) あるいは私、質問の意味を取り違えているかもしれませんが、日本に在日公館というのはほとんどございます。したがいまして、その公館を経由して適正に送達が行われておるということになります。ですから、外国におきましては民間の個人を使って送達できるような制度を持っておる場合であっても、その外国の裁判所が日本にいる個人に対して訴状を送達する場合には在外公館等の公的なルートによって送達するということが行われており、それ以外の方法というのは直接認められてはいないということでございます。
#48
○飯田忠雄君 例えば、例を挙げますと北鮮、朝鮮人民何とかという国がございますね、いわゆる略して北鮮と言いますが、北鮮の方の政府の行政庁が在日の北鮮の国民に対して文書を送達する場合に、これは日本に在外公館がありませんので、したがって、例えば総連の事務局におるところの、向こうの法律を勉強した人に依頼するということになるのかもしれませんが、そういうことは我が国では一切認めないと、こういうことでございましょうか。
#49
○説明員(但木敬一君) 非常に難しい幾つかの要素がございます。原則として申しますれば、国家間の取り決めによってお互いの公権力の行使の程度を決めているわけでございまして、したがいまして国家間においてそのような相手方の公権力の行使を認めるシステムがない場合には、これはできないということになろうと思います。
 ただ、事実上例えば訴状が送達されたという場合に、これを外国の裁判所が有効な訴状の送達と見るかどうかというのは当該外国の問題になろうかと思います。ただ、日本側から見た場合には、それは公権力の行使であって、適正でない。もしそのような行為をするとすれば、お互いに国際的な取り決めをすべきだということになろうかと思います。
#50
○飯田忠雄君 それでは、この問題はこの程度にしまして、次の問題に移ります。
 外国法のサービスというものは、我が国の弁護士法に書いてあるところの弁護士の固有の業務ではないのではないかというふうに思われるわけですが、もしこれが弁護士の固有の業務だということになりますと、我が国の弁護士は外国法のサービスができる資格を持たねばならぬということになりまして、そのためには、やはり弁護士というものは、裁判官とか検察官とかとは違いまして、特別な資格認定の試験が必要ではないかと、こういうことになってくるわけでございます。こういう問題についてはどのようにお考えでしょうか。
#51
○政府委員(井嶋一友君) 我が国の現行の弁護士法の解釈といたしましては、具体的には七十二条の解釈になろうかと思いますけれども、弁護士に独占を認めております法律事務は、我が国の法律に関する法律事務のみを指すのではなくて、外国法に関する法律事務も含まれるという解釈が通説と申しますか、多数説であろうかと思っております。もちろん、委員御指摘のように、外国法に関する法律事務は弁護士の独占でないという有力な学説がございまして、それも一つのお考えだということは私どもも承知をいたしておりますが、現在、実務的に解釈されております通説的な考え方は、先ほど申しましたように外国法も含まれるというふうな解釈になっておるわけでございまして、私どももそういった立場を前提として考えておるわけでございます。
 そこで、そういった固有の業務範囲であるとするならば外国法に関する資格がなければならないと、こういう御指摘でございますが、御案内のように現在の司法試験法におきましては、外国法に関する試験科目はございません。しかしながら、この試験制度を考えてみますと、試験科目、現在七科目であったかと思いますが、日本の基本的な法律についての試験をするわけでございますけれども、逆に言えば、すべての法律についての試験をするわけではないわけでございますけれども、その考え方はやはり法曹となる資質、能力を試すための試験でございますから、一定の基本的な法律の解釈、適用についてのテストをすることによって、広く一般の法律の適用の問題あるいは解釈の問題、それから社会に生起いたします事実に法律を当てはめる能力といったようなもの、そういったものの一般的な資質、能力を試験によって試すというようなことが前提となって考えられておる試験科目であろうと思うわけでございまして、そういった意味で、いわばリーガルマインドといったようなものの有無を試験によって認定して資格を与えているということであろうと思います。
 そういった意味では、外国法につきましてもやはり外国語の知識と、それからそういったリーガルマインドがあればそれなりに解釈、適用ができるものだという前提であろうかと思います。もちろん、すべての弁護士が現在外国法に関する事務をやっているわけではございませんので、一部外国法を中心に仕事をしております渉外弁護士はもちろん独力でさらに外国法に関する勉学もいたしておりますし、それから、さらに外国に留学をしたり、あるいは外国のローファームで勉強してくるというような形でもって、それなりにみずから外国法に関する知識を高めておるわけでございますが、一般的にすべての弁護士にこういった外国法に関する理解と申しますか、知識と申しますか、といったものを要請していないからといって、制度的に非常に不都合であるかということになりますと、私は必ずしもそうではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 また、渉外弁護士の仕事のやり方を見ますと、もちろんみずからわかる部分はみずから処理いたしますけれども、弁護士の倫理といたしまして、わからない外国の法律につきましては当該外国の弁護士に相談をするなり、リーガルオピニオンを求めるなりといった形で処理をするのが弁護士倫理とされておるわけでございますから、そういった形で実務を処理する上におきましても、特段一般的な資格として外国法に関する知識なりをテストする、あるいはそれを一般的な要件として必要であるということまでは言えないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
#52
○飯田忠雄君 「法律事務」という法律上の言葉なんですが、法律というものをどう考えるかということで、日本の裁判を中心として法律を考えまするならば、これはもう言うまでもなく日本法に限られる。そうしますと、裁判官は、日本法と憲法だけに拘束されますから、ほかの外国の法なんというものは、事実として認定することはありましても、法として取り扱うことはないはずなんです。それから検察官の場合も、おのずから刑事事件というものの成立は、罪刑法定主義からいきまして、我が国の刑罰法規に触れるというものに対する取り締まりあるいは検挙、取り調べでございますので、外国法に触れたからといって、それを問題にするということは検察官としてもあり得ない。ところが、弁護士だけは法律観念が違いまして、裁判官とか検察官とは別の法律観念で法律事務というものを考えるのだ、いや弁護士法ではそうなっているんだ、こういう御理解であると理解してよろしいか、どうでしょうか。
#53
○政府委員(井嶋一友君) 現在の司法試験法あるいは法曹の養成のシステムにおきましては、まさに裁判官、検察官、弁護士、三者合一に一元的に行うという形をとっておるわけでございますから、そういった中において、その試験の科目なりあるいは研修における履修科目といったようなものは三者共通の考え方ででき上がっておるわけでございます。もちろん、裁判官といえども、あるいは検察官といえども、外国法に関する知識といいますか、理解がなくていい、弁護士だけ必要だ
というようなことはないわけでございますけれども、三者共通の養成制度の中におきましては、先ほど申しましたように、リーガルマインドを養成するということに重点を置いてやっておるわけでございます。
 ただ、もちろん先生御案内のとおり、司法試験を受けます前提となります大学教養課程履修というものが一つの資格になるわけでございますが、これは御案内のとおり、第二外国語、つまり二つの外国語を履修することが必要でございますし、それから、そういった教養課程終了といったコースを通らない方に対して行っておりますいわゆる司法試験の一次試験におきましては外国語のテストもあるわけでございますから、そういった外国語の素養といったものも、一般的な教養としては法曹人には求められておるわけでございますが、さらに研修所の研修におきましては、英法、独法、フランス法といったような法律につきましての科目が、選択科目ではございますけれども、定められておりまして、そういったものも履修するということも行われておるわけでございまして、法曹三者共通にそういった外国語に関する教養としての資質は要求されておるわけでございます。
 しかし、実務につきました場合に検察官は、これは御案内のとおり外国法に関する犯罪を捜査するわけではございませんから、実務においては関係ないと言えるかもしれませんけれども、渉外弁護士の場合にはもっぱら外国法を中心として実務を行うわけでございますから、その点につきましては、そういった法曹人としてのリーガルマインドと一般的な教養を基礎として、さらにみずからが磨き上げて現在の実務のニーズに対応していっているという制度ではないだろうかと思います。
#54
○飯田忠雄君 私は大変心配をするわけですが、七十二条の解釈の中の、「その他の法律事務」というものを、日本国の法律事務ではなくて、世界の国々どの国の法律事務も全部含むのだという解釈をおとりになることは大変危険ではないかと思うわけです。そこまでなぜ広げなきゃならぬのか。
 例えば中国の人が我が国に参りまして中国の法律を日本人に教える。もちろんこれは報酬を得る目的で教える。そういう場合に、なぜこの弁護士法七十二条によって、してはいけないと言わねばならぬのか、大変理解に苦しむところであります。例えば大学の先生がいろいろな外国の法律を知っている、それを町の人に教える、この場合に教えてもらう人は報酬を払う。これはもう法律事務を取り扱っていることになるわけですが、そういうことまでなぜ禁止しなきゃならぬのか。日本の法律の手続の問題であれば弁護士に任じているのだから、弁護士の領分を侵すなということは、一つの保護主義の思想から言い得ると思いますが、そうでない外国のことまでなぜそのような縛り方をしなきゃならぬのかということで、私は非常に疑問に思うわけです。
 七十二条の解釈の問題で大変疑問に思いますが、もし、特に弁護士を保護しなきゃならぬから、外国法についても弁護士でない者はやってはいけないのだ、こういうことであるなら、弁護士というものをそこまで保護しなきゃならぬのなら、弁護士の資格をもっと厳重にしていただきたい、こういうことなんです。弁護士にも、中国法関係の弁護士、英国法関係の弁護士、いろいろつくって、そういう資格を得るためにはその外国法の試験も通ってもらう、そういうことでなければ大変不公平なことになると私は思います。
 裁判官とか検察官はその試験は要らないのであります。弁護士がもし外国法までやるということであるならば、それが事務として一般法だということであるならば、弁護士も堂々とその試験を受けていただきたい、そういう制度をつくらなければ余りにもおかしいではないかというのが私の疑問であります。外国法サービスというものは何も日本の弁護士がやる必要はない、外国の弁護士に任じたっていいではないか、なぜそこまで保護主義を貫いていかねばならぬのかということが私の一番大きな疑問とするところでありますが、そういう点についてはいかがでしょうか。
#55
○政府委員(井嶋一友君) 弁護士法七十二条が目的としておりますところについて最高裁判所の判例があるわけでございますけれども、それによりますと、結局、弁護士資格のない者がみずからの利益といいますか、営利のためにみだりに他人の法律事務に介入することを放置いたしますと、当事者その他関係人の権利あるいは利益といったものを損ね、ひいては法律生活の公正かつ円滑な営みを妨げる、法律秩序を乱すことになるというのがこの制度の趣旨であるというふうに最高裁判例は述べておるわけでございます。
 そういった観点から、我が国の制度におきましては、厳格な試験を通った法曹人、弁護士にその職務を独占させることとしておるわけでありまして、その弁護士はもう申すまでもなく高度の法律知識が要求され、かつ高度の倫理基準の維持が要請されるわけでございます。そういった一定の資格者にこういった事務を取り扱わせることによって大きな意味での法律生活の安定と申しますか、法律秩序の安定を図るのだという政策をとったわけでございます。この点、この問題は日本法の問題に限らず、外国法についても私は同じであろうと思います。
 外国法について、確かに当該外国から来た人はその当該国の法律について十分な知識を持っておりましょうし、あるいは大学で特定の外国の法律を勉強された学者は、それは大変な知識を持っておられるだろうということは言えるわけでございますが、我が国の弁護士法の考え方は、知識があるからやってもよろしいという考え方ではなくて、知識にプラスいたしましてといいますか、むしろ弁護士としての一定の資格を取り、そしてその弁護士会に強制加入させ、そして高い倫理基準を保持させるということが制度的にきちっと成り立っている人たちだけに認めようという制度でございますから、これはそういった外国の知識があるからといって、それだけでこれを認めるという制度にはなっていないのだろうと思います。
 そういった意味で、御指摘のように、理想的には私はおっしゃることも理解できるわけでございますけれども、やはり最高裁が言っておりますような、他人の法律関係、他人の権利関係に介入する仕事でございますから、それなりに国の施策として一定の資格を創設し、それの保持を擁護していくということはそれなりの政策であろうというふうに思うわけでございます。
#56
○飯田忠雄君 外国法につきまして多様なサービスが競争的にあることが望ましいと、こういう先般の参考人の御意見を承りました際の陳述がございます。企業の国際化という観点から見ます場合に、外国法の弁護士がそれぞれ自分の国の法律についてサービス業務を我が国に来て行う、しかもその自国法のサービス業務を行ってもそれは日本の弁護士に何ら不利益を及ぼしていないにもかかわらず、そういうことをなぜこの法律でもって統制しなきゃならぬのかという根本的な疑念があるわけでございます。この点についてはいかがでしょうか。
#57
○政府委員(井嶋一友君) 確かに、現在のような国際化の進展に伴って国際的法律事務が増大しております現状を考えますと、いろんな意味でいろんな国の外国法についていろんな資格者が外国法のサービスをするということが重要であるし、有益であるということは御指摘のとおりだろうと思います。確かにそれは望ましい方向であるし便利ではあろうと思うわけでございますが、だからと申しまして、やはり無資格者までそういった仕事を扱ってよいというふうに我が国の国内の司法制度はなっていないということを前提として先ほど来申し上げているわけでございます。
 そういった前提で現在考えてみますと、外国法に関する我が国におけるサービスは、まず我が国の弁護士が行うことが従来どおりできるわけでございます。それにプラスいたしまして、今度法案で考えております外国法事務弁護士が同じような意味で外国法に関するサービスを行います。さらに、これは現在もございますし、将来この法案ができ上がっても禁止されるものではございません
が、諸外国から来ております若手弁護士によるいわゆるトレーニーあるいはクラークといったような人たちもやはり一種の外国法に関するサービスをしておる。さらに、先ほど御質問がございましたが、一つの企業の中に社員として雇われて当該企業のために外国法のサービスをしている、いわゆる社内弁護士と称します者もあるわけでございます。これも、この法案ができましても、やはりそういった形での活動は認めるわけでございます。
 そういった意味で、今挙げましただけでも四つの類型の多様な資格者がそれぞれサービスができるという形になるわけでございます。だからと申しまして、先ほど先生がおっしゃるような意味で、そういった資格のない人たちに一般的に我が国内で他人のために法律事務を行うということまでも認めるということまでは踏み切れないのが我が国の現状じゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
#58
○飯田忠雄君 ただいまおっしゃいました資格というのは日本の国の司法試験のことであろうと理解をいたしますが、日本の国の司法試験では外国法のことは試験をしておりません。したがって、司法試験を合格したからといって外国法サービスの有資格者だと言うことはできないと思います。ところが、外国法弁護士となる人は外国でその国の法律を勉強し、その国の法律の試験に合格して資格を取ってきた人でありますから、我が国に参りましても、形式上はなるほど日本の司法試験を通っていないから資格がないかもしれぬけれども、実質的からいいますと日本の弁護士の方が資格がないのであって、外国人弁護士の方が資格があると、こう言わざるを得ないわけです。
 それで、立法する場合に、実質をもって立法するか形式をもって立法するかという問題があることは当然でありますが、こういう点について考えますと、どうもこのたびの法律では問題があり過ぎるのじゃないかと思うわけでございます。まだ時間がありますから、こういう問題についてひとつ御答弁を願いまして、その次に入ります。
#59
○政府委員(井嶋一友君) この法案ができる前、現行の我が国の弁護士制度におきましては、外国法に関するサービスは我が国の司法試験を通った弁護士と、それから先ほど申しましたトレーニー、クラークあるいは社内弁護士といったような形で参っております外国弁護士がサービスを提供しておるということになるわけでございますが、今度新たに、今御指摘のように当該外国で当該国の法について試験を通った外国法事務弁護士をそういった我が国の現在の制度の上にさらに乗っけまして、付加いたしまして、そして当該外国の法律サービスをしてもらおう、そういった国ができるだけ多くなるようにたくさんの国からおいでいただけるようにしていこう、こういう制度を現在の制度の上に付加する制度をつくるわけでございますから、御指摘のような意味では多様なサービスといったものがそれだけふえていくということになるのだろうと思います。
 だからと申しまして、その当該外国法事務弁護士はやはり当該国の法律についての優良なサービスの提供者ではあっても、それ以外の国については、それは保証されていないということで制限はいたしますけれども、我が国の立場から見ますれば、それぞれの有資格者の外国法事務弁護士がそれぞれの国から参るということは、それなりに現在の社会情勢に合致したものだろうというふうに考えるわけでございます。
#60
○飯田忠雄君 私、なぜこんな質問をするかといいますと、それは外国人弁護士と我が国の固有の弁護士とは職務内容が違うのではないか、職務内容が違うのになぜこれを弁護士として扱わねばならぬのかという根本的な疑念が存在するからであります。外国人弁護士は、外国人弁護士会というものをつくって、そこで自治をやらしたらいいじゃないか。このところまでなぜ弁護士の自治を及ぼさねばならぬのかという点では、仕事の内容が違いますから、疑念が生ずるわけです。
 例えば司法書士については司法書士の仲間で司法書士会をつくらせておる、それから税理士は税理士でつくらせておるというように、これは弁護士が当然できる仕事であっても、なおそういう特別のものは特別扱いをしておるわけなんですが、外国人弁護士に限ってそういう扱いができないという理由は一体どこにあるだろうかという疑念が出てまいるわけでございますが、こういう疑念についてはどのようにお考えでしょうか。
#61
○政府委員(井嶋一友君) 外国法事務弁護士が取り扱います職務の範囲は、確かに日本の弁護士と比べて制約されておるわけでございますが、外国法に関し一般的に法律事務を行う。つまり、契約の交渉を行いますとか契約の代理をいたしますとか、あるいは契約書を作成するといったような法律事務でございますが、例えばそういった事務を行うについて外国法に関して行うことができるわけでありますが、その部分というのはまさに、特定の法律に関し法律事務を行う税理士とか弁理士とかいったような職種とは違いまして、一般的に外国法に関してであれば、刑事であれ、民事であれ、商事であれ、一般的に行えるというところがあるわけでございます。その部分というのは、実は我が国の弁護士の業務そのものであるということでございます。そういったところから、職務の範囲は狭うございますが、その狭い範囲の部分というのはまさに我が国の弁護士の職務と全く同じである、同質であるということでございます。
 これを弁護士としてとらえずに、何かほかの職種としてとらえるという考え方も、それはあろうかと思いますけれども、我が国の現在の弁護士制度の考え方からすれば、やはりそれは我が国の弁護士と同質であると考えざるを得ない。だとすれば、我が国の制度としてあります弁護士と同質として弁護士会に加入させ、弁護士会の監督に服させるという形で規律し合っていくという制度が我が国の制度としてとり得る唯一の道ではないのだろうかというふうに考えておるのが私どもの立場でございます。
#62
○飯田忠雄君 それでは、最後に相互主義の問題に入りたいと思います。
 相互主義というのは、元来これは国際社会における一つの報復主義から生まれたものでありまして、ナショナリズムに基づくものであることはもう明らかでありますが、我が国の憲法の前文では国際主義を採用しておりまして、国際主義の立場からいく限り、各国の協力を得て物事をやっていくのだという考えですから、相互主義というのは元来なじまないものであるはずであります。
 そこで、相互主義をとった結果、外国人弁護士が我が国において活躍し得る範囲の問題についてお尋ねするわけですが、相互主義をとった場合に我が国で外国人弁護士となり得る国の弁護士はどういう国の者に限られるのか、お尋ねをいたします。
#63
○政府委員(井嶋一友君) この法案で考えております相互主義は、我が国の弁護士を受け入れる制度を持っている国の弁護士を我が国で外国法事務弁護士として受け入れるという点において相互主義をとっておるわけでございますけれども、その目的は、一条に書いてございますように、我が国の弁護士が外国に進出する可能性をより広めようという考え方、つまり我が国の法律に関する外国における我が国の法律のサービスの充実を図るというところに目的を持っておるわけでございます。そういった意味でこの法案は、この法案をてこといたしまして諸外国に門戸を開かせることになって、我が国の弁護士の職域が拡大し、かつその結果、我が国の国際社会におけるいろいろな立場が法律的な意味で擁護され、さらに我が国の諸外国とのつき合いも広まると、こういうことにねらいがあるわけでございます。
 それはさておきまして、現在、じゃ相互主義をとった場合にどういう国が入ってこれるかという御質問でございますが、これは制度としてそういう我が国の弁護士を受け入れる制度を持っておりますのは、アメリカについて申し上げれば、現在はニューヨーク州とミシガン州とワシントンDCでございます。その上、一昨日でございますが、
ハワイ州が開いたという公電が入っておりますので、プラスいたしまして、ハワイ州も日本の弁護士を受け入れることとなっておるわけでございます。さらにカリフォルニアが現在検討中でございまして、間もなく開くであろうという情報がございます。そういたしますと、現時点で申し上げれば、アメリカであきました以上四つの州の弁護士は我が国で受け入れることが可能となるものでございます。
 それから、ヨーロッパにおきましては、フランスと西ドイツがやはり外国の弁護士を受け入れる制度を持っておりますので、我が国の弁護士が申請をすれば開業ができるということになりますから、当然フランスと西ドイツの弁護士が我が国の外国法事務弁護士となる道は開かれます。さらに、イギリスあるいはベルギーといった国は制度としては持っておりませんけれども、これは御案内のとおり、だれでも法律事務を行うことができるというお国柄のところでございますから、それは外国の弁護士といえども同様でございますので、外国の弁護士が行って弁護士業務を行うということが自由でございますから、そういった意味で、イギリスあるいはベルギーの弁護士も、逆に我が国に参って外国法事務弁護士となる道は開かれておるということでございます。
 主なところはそういったところでございます。いずれにいたしましても、それは制度として、あるいはそういった運用としてあるわけでございます。
 しかし、今回の法律におきましては、実質的に我が国の弁護士を受け入れて、実質的に同等の取り扱いをしているということを要件としておりますので、制度は制度として、運用が違っておりますれば意味もございませんので、法案成立後、そういった制度及び運用につきましては十分調査をいたしまして、その上で具体的な申請に対処してまいるつもりでございますが、抽象的に申し上げれば、今言ったような国は一応制度的にあるいは運用的に我が国が入る道が開かれておるということが言えるわけでございます。
#64
○飯田忠雄君 現在、経済的には大変自由化が叫ばれておりまして、我が国の立場は経済の自由化が根本でありまして、もし保護主義が起こるならば大変なことになることは御承知のとおりであります。すべての政策において保護主義を排除していくという傾向は今後の傾向であろうと思います。日本における産業でも現在保護主義をある程度とっておりますけれども、こういうものについても自由化を各国は要求しておるわけであります。殊に弁護士業務の外国法サービスのごときは、これは自由化をしたからといって、別に我が国の弁護士を圧迫することにはならない、そういう分野であるわけなんですが、形式論から、自由化を阻害して統制主義にいく、保護主義にいくということをとらえておるような気がしてなりません。こういう点については将来のやはり御検討が必要ではないかと思います。
 殊に中国とかソ連とか、あるいは西アジアあるいは中近東とか東南アジア、こういう方面についての取引というものは今後相当活発になってまいります。経済的協力にしろ、あるいはいろいろの問題で起こってくる。そういう場合に、そういう国との法律関係というものが非常に大切でありまして、中国の法律関係を知らぬために日本の企業が大変損をしているという事例もなきにしもあらずです。外国法の問題はそうであります。
 そこで、そういう開かれた経済、自由化された経済ということが今日の課題であるならば、それに伴ういろいろの文化的な制度もそうあらねばならぬのでありますが、それにどうもこのたびの法案は逆行しておるように思われてなりません。しかしこれは、私は本法案に反対するという意味ではないんですよ。本法案というものは要請に応じてできた、しかしこういういろいろの問題がありますよということを私は申し上げておるわけでございます。
 そこで大臣、こういう問題があるのだが、このことについてはどう思いますか。もう時間が来ましたから、最後です。
#65
○国務大臣(鈴木省吾君) 先生は非常に法律にお詳しい方でございますから、そういう専門家から見れば、いろいろそういった不備やあるいは疑念ということもお考えかと思いますけれども、全般的に考えまして、先ほども御答弁申し上げましたように、いろいろの観点からして、現在の段階ではこれが最良の案だというふうに考えておる次第でございます。
#66
○委員長(二宮文造君) 本案に対する質疑は、午前はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
#67
○委員長(二宮文造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、小笠原貞子君が委員を辞任され、その補欠として橋本敦君が選任されました。
    ―――――――――――――
#68
○委員長(二宮文造君) 休憩前に引き続き、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#69
○橋本敦君 私からお尋ねをさせていただきますが、衆議院及び当委員会で多くの課題について既に各委員から議論がなされておりますので、大きな観点と、それから重複することもあるかもしれませんけれども、それをお許しいただきまして、数点の問題について質問をしたいと思います。
 まず第一点の問題でありますが、この外国弁護士の受け入れということについて基本的に日弁連の考え方としても、また同時に私どもの考え方でもありますけれども、第一点は、やっぱり相互主義の原則を尊重してこれを貫く、第二点の問題といたしましては、長年培われてきた我が国の弁護士制度の根幹を変えるようなことは許されないので、弁護士自治の原則、自律権を尊重するということ、こういった二大原則を基本としてこの問題を処理していくべきだという見解が強かったわけでございますが、この見解自体については法務省ももちろん御賛同していただいておると思いますが、いかがですか。
#70
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のとおりでございまして、この問題が起こりました発端から、終始、この日弁連の二大原則、これについては十分尊重してまいったつもりでございます。具体的には、ただいま委員御指摘の二大原則は、昨年の三月十五日の日弁連の理事会におきまして受け入れの基本原則として定められたものでございますが、これを受けまして、我が国政府の経済対策閣僚会議あるいはアクションプログラムにおきましても、日弁連の自主性を尊重しつつ、国際的にも国内的にも妥当な解決を図るということを鮮明にしておりまして、そういった日弁連の基本方針を尊重しつつこの問題の解決に当たるということは、もう従来一貫しておるわけでございます。
 私どもは、その後、委員御承知のとおりの経過を経まして、日弁連の制度要綱が確定をいたしましたことに伴いまして、それを受けて本法案を作成したわけでございますが、その間一度も、そういった原則につきましては双方に意思のそごがあったというようなことは全くなかったというふうに言っていいと思います。
#71
○橋本敦君 交渉の直接の相手になったアメリカ側の見解でありますが、アメリカ側としては、今御答弁いただいた二つの原則についてはこれを異議なく受け入れるという状況だったですか、それとも幾つかのクリアしなきゃならない問題が起こっておったということですか。その点はいかがですか。
#72
○政府委員(井嶋一友君) アメリカを含めました諸外国ともこの問題に関しまして私ども協議を尽くしたわけでございますけれども、その間、特に今御指摘の二点につきましても種々の論議をいた
しました。
 まず相互主義について申し上げれば、外国の要求は、本来この問題を経済摩擦、貿易摩擦といった経済的観点からとらえておりましたために、そういった通商分野における相互主義というものはとるべきではない、こういう要望が強かったわけでございます。しかしながら我々は、あるいは日弁連もそうでございますが、この法案の「目的」にも書いてございますように、要するにこの問題は経済摩擦の問題が契機ではあっても、やはり現在のような国際的な法律事務の増大に対処するために、司法制度、特に弁護士制度はいかにあるべきかという観点から対処するのだということで考えてまいったわけでございます。
 そういった観点からすれば、やはり我が国の国内に外国の弁護士を受け入れて我が国の国内におけるそういった国際的法律事務の向上を図るというのみならず、外国においても我が国の日本法に関する法律サービスの需要というものが高まりつつあるし、これからもやはり高まっていく、具体的に申し上げれば、法人もたくさん出ておりますし、我が国の企業もたくさん進出をしておりますから、そういった観点から、やはり国内に受け入れるだけじゃなくて、諸外国における我が国の日本法に関するサービスも充実させるべきだということから、この相互主義をとって諸外国に門戸を開かせようという政策も必要であるということでございまして、そういった観点で私どもは諸外国に対応いたしまして、その点につきましては異論がございましたけれども、最終的には相互主義をとることについての了解をとったわけでございます。
 ただ、特にアメリカ側でございますが、相互主義の考え方については、我が国の法案で考えておりますような形ではなくて、むしろ我が国の弁護士が具体的にその当該州なり国へ行って申請をして拒絶された場合に、拒絶されたというクレームを日本側につけたときに初めて日本側が外国からの弁護士の受け入れを拒絶するというような形での相互主義をつくるべきだと、こういう主張が最後まであったわけでございます。しかしながら、これも考えてみますと、我が国の弁護士が、制度を開いているというか、受け入れる制度を持っていない国へ出かけていってわざわざ拒絶されてくるというようなことを前提として相互主義を適用しようなんというのはおよそナンセンスな議論じゃないかというようなことで議論をし合いまして、結局我々の考え方を最終的には了承させたわけでございます。
 それから、弁護士制度、特に我が国独特の弁護士制度との関連では、諸外国は日本の弁護士会、日弁連の所管に入るということについて非常に強く抵抗をいたしました。現在もまだ一部そういった不満が残っておるわけでございます。しかし、これにつきましては冒頭の段階で相当議論をいたしましたけれども、やはり我が国の司法制度が、特に弁護士制度が日弁連の独特の自治という制度のもとに戦後長い間培われてきておるということについての我々の説明に納得をいたしまして、最終的には、日弁連の所管に入ることはやむを得ないとしても、いろんな点で公平に扱われるようにしてほしいと、こういうようなことに論点が変わってまいったわけでございまして、冒頭の段階では非常に激論でございましたけれども、現時点ではその点についての理解は十分あると思います。
 ただ、最近でもまだ残っておりますけれども、諸外国におきましてもいろいろな考え方の違いがございます。そういったやはり一部に依然として制限的過ぎるという考えの方はまたいろいろの行動を起こされるということももちろんあるわけでございますが、我々が協議をいたしました政府あるいは主なローヤーの方々との関係では、現法案につきましては大局的見地から了承を得ておるというふうに理解をしておるわけでございます。
#73
○橋本敦君 そこで、今も御答弁の中にございましたが、実質的な相互主義ということを実現していく社会的な基盤というものが実際にできておるかどうかということになりますと、日本の企業がアメリカにもどれくらい進出しているかということも一つの判断をするメルクマールになってくるわけでございまして、その点で、今私の手元に「日本企業の米国進出状況」、こういう資料がございます。この資料は昨年の週刊東洋経済の臨時増刊の「海外進出企業総覧」というのがございまして、これに基づいて、日本企業が資本参加している米国企業を州別に集計したものであります。
 これで見ますと、アメリカの全部の州に平等に行っているということではございませんで、集中して特徴的に多いところが出ておりますので申し上げますと、カリフォルニア州が五百二十一社で三三・七%、それからハワイ州が九十六社で六・二%、それからイリノイ州が百二社で六・六%、ニュージャージー州が百九社で七・〇%、それからニューヨーク州が三百八十二社で二四・七%、それからテキサス州が四十八社で三・一%、それからワシントン州が四十九社で三・二%、それからワシントンDCが十六社で一%、こうなっております。
 ワシントンDCを除きまして、今申し上げましたところにかなりの日本企業が進出しておるわけですが、相互主義を考える上で、今私が指摘をした多くの企業が進出しているうち、州として今度の外国弁護士との関係で相互主義の立場で門戸を開いていくという立場に立っているのはどことどこでしょうか。
#74
○政府委員(井嶋一友君) アメリカにおきましては、現時点ではニューヨーク州がまず一つございます。これはもう一九七一年に制度をつくったわけでございまして、それ以外に、この問題が起こりまして我が国との協議などが行われる過程で、我々の方からもできるだけ多くの州を開くべきだというような要望をした結果も反映しているとは思いますが、昨年の十一月の段階でミシガン州が開きまして、本年三月の段階でワシントンDCが開きました。それから、一昨日公電をいただいておりますが、ハワイ州がオープンしたということでございます。したがいまして、現在四州が開いております。
#75
○橋本敦君 そういう傾向が広まることは相互主義の観点からいいわけで、例えば相互主義の立場に立ては、我が国の場合は州制度をとっておりませんから、アメリカ側あるいは外国側は日本の国内のどこででも要件を満たせば仕事ができるわけですね。ところが、アメリカへ行った場合は、その州が相互主義の立場で門戸を開かないことには仕事ができないという関係ですから、せっかく相互主義の原則を確立しながら、事実上それが貫徹できないという不合理が起こるということは、これは問題があるわけです。
 今そういう観点で見ますと、一番大きなカリフォルニア州、これは今言ったように五百二十一社で三三・七%あるわけですね。これが一つ問題があります。それからもう一つは、ニュージャージー州が百社を超えておりまして、ニュージャージーはニューヨークのすぐそばでございますから、経済圏はニューヨークとほとんど近いですね。イーストリバー、ハドソンを含めた経済圏に入りますから、このニュージャージー州も一つは問題であるということ。それから、西部は地理的に太平洋をまたいですぐですから、ワシントン州も航空産業、電機産業含めてふえる可能性がありますから、このワシントン州も問題である。
 こういうことで大きな大事なところが残されているという事態は、今後この点についてはやっぱりアメリカ側に積極的に要請をしていくという姿勢を持って善処しなくちゃならぬ、こう思うんですが、その展望あるいは具体的な方針はどういうことになりましょうか。難しい問題ですが、現在の時点でのお考えをお聞かせください。
#76
○政府委員(井嶋一友君) 相互主義の、特にアメリカ連邦との関係での相互主義の実現ということにつきましては、日弁連の会内におきましても非常に強い要望と申しますか、意見がございます。
 御案内のことでございますが、日弁連の昨年十二月九日の臨時総会の提案理由の中に触れておりますけれども、アメリカとの間におきましては、
ニューヨーク州、カリフォルニア州、ハワイ、ミシガン、ワシントンDCなどを含む相当数の主要な州が我が国の弁護士を受け入れる制度を持つべきであるということを言っておるわけでございまして、冒頭に具体的な州名を五つ挙げておられるわけであります。これは当時の段階でこの五州が受け入れ制度のドラフトを検討しておったというような前提がございまして、また、ということのみならず、我が国の企業の進出状況から見ましても非常に多いところの州であるということもございまして、これらの州を挙げておられるわけでございます。
 私どもは、もちろん日弁連と同様、少しでも多くの州が開くべきであるという立場に立って日米交渉もやってまいったわけでございますけれども、それが功を奏して、先ほど申しました五州のうちの四州は既にあいたということでございます。カリフォルニアにつきましては、現在やはり州の最高裁判所で検討がなされておりまして、情報ではこの夏までにはあくだろうということでございます。もうハワイ州もあきましたので、恐らくカリフォルニアも間もなくあけるだろうということを期待いたしております。
 それ以外に日弁連からは、具体的な州名は資料としては挙がっておりませんけれども、具体的に私どもとの間の検討会等の場面で指摘されました州、つまり日弁連が関心を持っております州としては次の五州が挙げられておるわけでございます。それは、一つはイリノイ州でございます。その二はテキサス州でございます。それから、さらに今御指摘のニュージャージー州、ワシントン州、オハイオ州、この五州を挙げておりまして、これらの州についても、やはり我が国の企業の進出も多いところであるということから、できるだけ近い将来においてあけるべくアメリカ側は努力をすべきだということを言っておられまして、私どもは日米協議の場面でもその点は先方に毎回要望をしております。
 ただ、具体的にはイリノイ州は、一昨年でしたか昨年でしたか、一たん規則の改正ができましたが、裁判所でリジェクトされた、拒絶されたというようなことがございますので、すぐ復活するかどうかという問題はございますが、テキサス州あたりはもう弁護士会が少し検討を始めておるという情報を得ております。その他の州につきましては必ずしも動きがあるというふうには承知をいたしておりませんけれども、カリフォルニアもあきまして五州という形になりますと、やはり他の州もそれぞれ追随してそういった動きが早まってくるのじゃないだろうかというふうに思っております。
 もちろん、私どもはこれからも引き続きアメリカ側にそういった要望を伝えるつもりでおります。外務省ともどもそういう交渉をしてまいるつもりでおりますし、特に我が国の弁護士会あるいは国会内の議論もそういった点に非常にウエートがあるのだということもアメリカ側に伝えておる。わけでございますので、必ずやそういった反応は出てまいるだろうというふうに思っております。しかし、これは私どものみでできることではないわけでございまして、日弁連なども同じ法曹人同士というようなことで、今後もそういった動きをしていただきたいということも我々は要望をしておるわけでございます。
#77
○橋本敦君 日弁連への御要望の御趣旨も、私もよくわかります。ともどもにやっぱりこの点についてはひとつ責任を持って実現のために進めていかなくちゃならぬと思うんですが、具体的にこの法律は附則で「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」ことになっておりますから、この政令がいつごろどういうようにつくられるか、これからの課題ですが、いずれにしても二年以内につくられるわけで、この政令がつくられ、いよいよ施行されるという段階までには、今よりも一歩も二歩も前進するということはやっぱり期待しておきたいと思うんですが、その目標に向かっても一層の努力をお願いしたいと思いますが、異議ございませんですね。
#78
○政府委員(井嶋一友君) 御指摘のとおり要望を続けてまいりたいと思うわけでございます。
 施行期日の関係に触れられましたけれども、もちろん、国内的な政省令の整備でございますとか日弁連の会則の整備といったようなもの、その他諸外国との細則にわたる調整といったものが今後残っておるわけでございますけれども、そういった段階におきましても常に諸外国に要望したいと思います。そして、施行の段階というのは、そういった国内的な整備のほかに、そういったアメリカも含めた諸外国の国際情勢といったものも十分見きわめた上で施行期日を定めるということを考えておるわけでございますので、そういった点は十分配慮しながら対処してまいりたいと思います。
#79
○橋本敦君 それから、次の論点に移りますが、先ほども御答弁の中にありましたように、確かに我が国の弁護士制度というのは、制度的にも内容的にもそれなりのやっぱり特徴と伝統を持っておるわけでございます。法曹一元という考え方から出発して、弁護士自治という制度的な方向、それから弁護士法そのものの定めで、在野法曹として日本の弁護士の職務としては社会正義の実現ということを法的にもはっきり目的を置いておるというような状況、それからさらに弁護士自治を貫いておるというような状況、いわゆる弁護士会に所属して登録するという制度になっていること、それから、そもそも司法試験の合格が大変厳しくて少ないということで、法曹人口もアメリカに比べて比較にならないほど少ない、いろんな特徴があります。
 その特徴のすべてが外国と共通するということになかなかならぬわけでありますが、相互主義ということはそれぞれの法曹の伝統や立場を尊重し、これを損なわない、この根幹を変えないということも非常に大事なわけでありますから、資格付与の要件もそういう意味から厳しく見ていかなければならぬという側面、これは当然あるのではないかというふうにこの法案を見て考えておりますが、法務省のお考えはいかがですか。
#80
○政府委員(井嶋一友君) もちろん諸外国の弁護士制度は、それぞれの国の歴史的な背景でございますとか倫理観と申しますか、いろいろなファクターを背景としてでき上がっているものでございますから、それぞれにおいて違いがあるわけでございますけれども、今回我が国が受け入れようとするものは、それぞれの国においてやはりその国の最高の法律専門職であるという形で認められている人たち、これを受け入れようということでございまして、客観的に公平にそれぞれの国の弁護士を比較すればそれは優劣が出るかもしれませんけれども、それぞれの国における一つの最高の資格者ということを前提として受け入れようという考え方から外国の弁護士資格者のみを受け入れるということにしたわけでございます。
 これは、ある意味におきましては非常に厳しい一つの考え方だろうと思います。のみならず、この十条に書いてございますように、法務大臣が資格を承認いたします場合の基準も、弁護士法にはないものも含めまして厳しく書き上げてあるわけでございます。さらに、相互主義の要件もこの資格承認の要件として考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、これはそれぞれ我が国の司法制度との整合性の中で考えられたものでございます。
 私どもは、資格の承認につきましては、この法律に掲げられております要件を厳密、適正に適用いたしまして承認をしてまいるということによって、本制度が目的としております適正な国際的法律サービスの提供を得られるようにしたいというふうに考えております。
#81
○橋本敦君 その一つの問題として十六条をちょっと御検討いただきたいのでありますが、特定外国の外国弁護士となる資格を持っている者が特定外国法の指定を受けたいということに関連をして二つの問題がある。一つは、「同程度に当該特定外国の法に関する学識」を有すること、これが一つ。
それから「かつ、その法に関する法律事務の取扱いについて五年以上の実務経験」を有することという要件が付されている。この要件は一つ満たせばいいのか、この二つの要件がそろってなくちゃならぬという厳しい規制を考えていらっしゃるのか、どうですか。
#82
○政府委員(井嶋一友君) 今の御質問は十六条の一項二号の関係でございますね。一項二号の関係は「かつ」ということでつなげてあるわけでございまして、一号のように資格はないまでも、資格を持った人と同程度の学識があって、かつ、当該外国の法について自分の事務所なりでスペシャリストとして五年程度やっていたと。具体的に申し上げれば、ニューヨークの弁護士がフランス法について前段のような学識があるといたしまして、そのニューヨークの事務所でその人がフランス法のスペシャリストだというようなことで特に実務的にそういったものを五年やっておったというような場合にこの二号が適用されるだろうということでございます。
#83
○橋本敦君 そこで、その五年以上の実務経験というのは、その外国法を使ってコンサルタントあるいはクラークといったような立場で会社あるいは事業所で働いておったということも五年の経験の中で通算されるのか、やっぱりそれを扱う権威のあるローファームあるいは事務所で五年という経験が要るのか、そこの解釈はどうなんですか。
#84
○説明員(但木敬一君) ただいまの御質問は、十六条二号における五年間の実務経験についてのお尋ねということでございますが、これにつきましては当然、その法律事務の取り扱いというのは弁護士としての取り扱いということでございますので、その個々のケースでいろいろ違う点もあろうかと思います。例えばアメリカの場合ですと企業内弁護士も弁護士の一種ということでございますので、そういう場合には企業内でフランス法をやっていた人ももちろんこの五年の実務経験の中に入ってくる場合があろうと思いますが、種々のケース一括して申しますれば、当核外国の弁護士として、フランス法といいますか、他の外国法について実務をやっていたというようなことを考えているわけでございます。
#85
○橋本敦君 だから、その点が客観的基準の定めぐあいがちょっとなかなか難しいんですね。例えばアメリカの弁護士というのは企業に入ってそこの取締役になったりして、企業活動に積極的に入っていきますよね。そういうことですから、それがたまたまフランスとの間で盛んにトレードやっているというようなことで、法律的な対策もその人がやるということでフランス法が非常に堪能になってきたというような場合は、自分のローファームでなくてもそれに通算されるということになりますと、それはちょっと甘いのじゃないかなという気もしますね。
 それからもう一つは、その外国法に関する学識を十分有するかどうかは、これはこちらの方でテストするわけじゃないでしょう。ペーパーテストだとかオーラルテストするわけじゃない。だから、それもやっぱり客観的に何らかの基準と資料で認定しなくちゃならぬという困難な状況になりますね。そういった場合は何によってその学識の有無を認定する、スタンダードにできるのか、そこらあたり、お考えありますか。
#86
○説明員(但木敬一君) お尋ね二つございました。
 第一点は、例えば弁護士の資格を持っている者がある一定の企業の社長になって専らマネージメントをやっているというような立場である、そのときにたまたまフランスとの契約交渉があるというような場合にどうかというお尋ねかと思います。
 確かに基準というのは極めて画一的につけにくうございます。したがって、個々のケースで法務省の意見を形成し、または日弁連の意見を聞いて相協議しつつそれぞれ認定するという話になろうかと思いますけれども、基準というのは何かと申しますれば、当該外国において当該申請者が行っていた活動が弁護士としての活動と見られるかどうかというのが基準になろうかと思います。したがいまして、例えばニューヨーク州の企業に入っている弁護士資格を有する者のうちで、リーガルセクションにおりまして専ら当該会社のためにリーガルサービスを行っているというような状況でございますと、それは弁護士ということになろうかと思います。これに反しまして、専ら会計といいますか、あるいは資金の借り受けとか、そういうことに従事していたローヤーが果たして弁護士と見られるかどうかというようなのは、やはり個々のケースで、やってきた内容が何であるかということに基づいて認定していくということになろうかと思います。
 それからもう一つのお尋ねの、同程度の学識というのをどのような基準で考えているかというようなことでございます。典型的な事例を申しますれば、例えばニューヨーク州の弁護士がフランスに留学いたしましてフランスのロースクールを出た。しかしながら、フランスでは現在でも弁護士については国籍要件がございますので、司法試験を受けることができない。しかし合格率はかなりの合格率でございますので、ロースクールを出れば大体有資格者と同程度と見てよいというような場合は、これは同程度の知識があるというふうな認定はできようかと思います。
 その他の事例でどういう事例があるかというのは、実は個々の具体的な申請を見て検討いたしまして、そして幾つか出てきた中で恐らく一つの類型化というようなものができるのではないか。それまでの間は個々のケースで法務省と日弁連との間で意見を闘わせていくというようなことになるのじゃないかなというふうに考えております。
#87
○橋本敦君 わかりましだ。実際は今おっしゃったようなことである程度蓄積をしていきませんと、実際の基準とか判断要件というのはなかなか難しいと思います。
 そこで、この七条による法務大臣の承認、これについては日弁連の意見も十分聞きながら、今おっしゃったように、承認するかしないかについてもそごを来さないようにやっていくということで、日弁連の見解も尊重されるということは聞きましたが、大臣の承認を受けても、今度は外国法事務弁護士は登録しなくちゃなりませんね。その登録については日弁連が裁決権を持っているわけで、日弁連が登録しないという、リジェクトすることもあり得るということになりますと、最終的には日弁連が結局は判断権を持っているということがやっぱり最終のかぎになっている、ここに一つは日弁連の自律機能を尊重している面があるのかというように解釈もされるんです。私はそう見ておるんですが、そういう解釈でよろしいでしょうか。
#88
○政府委員(井嶋一友君) もちろん、日弁連が登録を拒絶することができるというのは現在の我が国の弁護士法も同様でございまして、今回の法案も同じような考え方でございます。ただ、これはもう委員御案内のように、登録を拒絶する理由というのは法律で定められておるわけで、弁護士法でも定められております。本法におきましても弁護士法と全く同様の定め方をいたしておりまして、もちろんそういった拒絶理由がなければ拒絶はできません。しかも、拒絶するにつきましては、弁護士法の場合は資格審査会、本法におきましては外国法事務弁護士登録審査会の議決を経て行うということになっておりまして、この審査会には外部委員も入るという形になっておるわけでございまして、それなりに公正な判断、公正な理由のもとに登録拒絶がされるということでございますけれども、制度として拒絶できる制度があることは御指摘のとおりでございます。
#89
○橋本敦君 私も、みだりに拒絶することは許されないということは当然だと思います。ただ、今言ったように、承認ということにかかわっての日弁連との意見交換ありますが、要件が具体的事例によってまだ熟しませんのでいろいろ動きがある、そういう場合に、そのことを理由に登録拒絶というのは法的要件としては難しいのですけれども、日弁連の意見をよく尊重してもらいたいとい
う趣旨の一つとして今私が指摘したようなことを申し上げたというように御理解いただきたいと思うのです。
 もう一つの問題として、懲戒ということが当然外国法事務弁護士についても自治機能の一つとして出てくるわけで、その場合は私ども弁護士が綱紀委員会、懲戒委員会ということで関係をするのと違って、特別の懲戒委員会というものがつくられる、これは私は制度的にはあり得ることだと、こう思いますが、問題は、その懲戒委員会の委員の中に政府職員を加える必要があるだろうか。この問題はかなり議論があったと思うんですが、委員の中に政府職員が入っておるわけですが、これはどういうことで入れるのが相当だとお考えでしょうか。
#90
○政府委員(井嶋一友君) 確かに御指摘のとおり、弁護士法の現行制度と本法の制度上は、懲戒委員会に関して申し上げれば、外部委員として政府職員が入るというところが特異なものになっております。この点につきましてはもちろん弁護士会内、日弁連内におきましてもいろいろ議論がございました。しかし、結局これが採用されたわけでございますが、その考え方は、やはり弁護士法の場合でもそうでございますが、一つの委員会に外部の委員を入れて構成するという考え方の基本というのは、いろんな分野からの代表が入って物事を審議するというのがより公正、公平なものになるだろうと、こういうことだろうと思うのでございます。
 今回制度をつくりました外国法事務弁護士は大部分の者が外国人でございます。で、我が国の風俗習慣も必ずしも十分承知していない。もっと申し上げれば、あるいは日弁連というものの実態もよく知らないというような人たちが多いということでございます。そういった外国人を主として取り扱うこの懲戒委員会でございますから、できるだけ国内のみならず外国に対してもやはり公正、公平と申しますか、よりオープンなものであるということを示すということが一つ国際社会において必要だったろうというふうに思います。そういった観点から、より広い分野ということで政府職員を入れていただくことになったわけでございますが、具体的にはこれは法務省と外務省の職員を考えるということで提示しておりまして、この点につきましても既に日弁連とは合意が成り立っておるわけでございます。
 法務省の職員が入りますということは、この制度上も法務大臣の資格承認という制度もございますし、その承認に基づくいろいろな調査報告徴収権といったようなものも法務大臣が持つわけでございますので、そういったものとの関連におきまして、より法務省の立場というものからこの審議に参加するという必要があるだろうということでございます。
 外務省につきましては、やはり事がほとんどの場合外国人であるということから、やはり外国との関係あるいは外国のいろいろな制度の調査とか、あるいは制度の比較とかいったような問題点、あるいはまた個別的には外国の法曹団体とのコンタクトをとる必要もあるというようなこともあるかもしれませんし、いずれにいたしましても外国人を主として取り扱う審査会であるという観点から、やはり外務省の外交という分野からの意見を参考にすべきじゃないかということでございまして、そういった意味で、より分野を広げるということによって、より公正さが担保されるという考え方が採用されたわけでございます。
#91
○橋本敦君 裁判官がお入りになるという構想はないんですか。
#92
○政府委員(井嶋一友君) 現行弁護士法も、外部委員としては、弁護士のほかに、裁判官、検察官、学識経験者となっておりまして、本法でもその点は踏襲いたしております。
#93
○橋本敦君 御趣旨はわかりましたが、実際にそういうような事例が起こらないことが望ましいわけでありまして、アメリカ側のいろんな意見や要望ということがその外務省職員を通じて公正に反映されればいいのですが、弁護士自治とは関係なくて、国際的なプレッシャーをアメリカ側がかけるということで外務省職員を使ってやりやすくなるというようなことに向こうが理解するような状況があれば、これは困った話になりますので、そういうようなことがないように、運用については十分政府としても検討をもちろんされると思いますが、やっていただきたいわけです。
 なぜ私がそういうことを言うかといいますと、最近の新聞でごらんのように、在日米人弁護士の訴えとして、日本の商社がアメリカへ行って仕事をしておりますが、そこで法学部出身の商社マンは仕事をさせるなというようなことをアピールしている記事がございますね。これなんかは私はとんでもないことを言っているなと、こう思うんですけれども、何が出てくるかわからぬところがあるわけです。だから、そういう意味で、筋の通った話ならよろしゅうございますけれども、我が国の法制度や弁護士自治といった歴史的な特異の制度を理解しないまま、あるいは国際関係の当然あるべき相互の立場を尊重するということを抜かして、自分の利益だけでこういったことが懲戒委員会の場を通じて入ってこないとも限らないという心配をしたものですから、その点についての危惧として質問をしたわけであります。法務省の御見解としては、そういうようなことではなくて、広く意見を聞いて公平、公正に処理していくと、そういうことでやっていくということですから、それはそうお聞きしておきたいと思います。
 それから、最後に二点だけ小さな問題を聞いておきます。
 共同経営ということができないということですが、それぞれの外国法事務弁護士が事務所を共同でお互いに経費を出し合って使用するということで、あるいは共同経営じゃなくて共同で協力し合っているだけだというようなことで、限界が難しいことが起こりはせぬかなというようなことも一つ考えるんですが、これはどうでしょう。
 それから、名称問題として、ローファーム名を付記するということができるというふうにしたわけですが、私は付記すること自体は異存ありません。ありませんが、日本の弁護士は広告を自主的に規制しておりまして、みだりに広告しないようになっておりますので、これが名刺やらあるいは看板あるいは一般広告等に使われるということについての規制は可能なのかどうか、この点を伺って質問を終わります。
#94
○説明員(但木敬一君) まず共同経営の点でございますけれども、共同経営の禁止につきましては二つの異なった観点から規制する必要があったわけでございます。一つは、外国法事務弁護士は日本法に関する法律事務を取り扱えないわけでございまして、その外国法事務弁護士が日本法の法律事務取扱に介入することを防止しなければならないという視点が一点でございます。もう一つの視点は、今度は依頼者から見た場合に、国際的な法律事務の場合には必ず日本法と外国法の絡まった問題となっているわけでございます。したがいまして、完全に日本の弁護士と外国法事務弁護士とを分けてしまいましていかなる共同も許さないということになりますと、今度は依頼者の面から極めて不便であるという面があろうかと思います。この二つの観点から規制いたしましたのが本法案の四十九条の一項と二項でございます。
 御指摘のように事務所の共同使用をした場合にその区別が難しくなるのではないかというような問題は、確かに否定しがたい点があろうかと思います。しかしながら、本法案では、端的に申しますと、外国法事務弁護士が日本の弁護士の収益に依存するような形態はすべて禁止したということでございます。それによって外国法事務弁護士がみずからの利益のために日本法に介入するというような心配を取り除いたわけでございます。逆に申しますと、それ以外の形態の共同は法が禁止するところではない。事務所の共同使用もその一形態でございます。これにつきましては、お互いに適正な事務所経費を出し合いまして一つの事務所を共用するというようなことは法が禁止するところではないという建前で本法案をつくったもので
ございます。
 次の御指摘は、ローファーム名の使用の問題でございます。
 これにつきましては、委員御案内のとおり、本法案では一定の条件のもと、つまり日本における法律事務の主体は当該外国法事務弁護士であって外国にあるローファームではないということをはっきりさせること、すなわち、自己の氏名とそれから日本の事務所、この名称を出した場合に限ってローファームの名称をいわば個人の属性として表示することを許すという制度にいたしたわけでございます。
 確かに日本の弁護士の場合には広告規制がございます。しかしながら、逆に申しますと、日本の弁護士の場合には法律事務所名についての規制というのは一切ございません。どのような名称を使ってもいいわけでございます。したがって、もし外国法事務弁護士を日本の弁護士と同等に扱えということになりますと、ローファーム名をそのまま事務所名として使用したっていいではないかという問題が起ころうと思います。
 しかしながら、日弁連と法務省あるいは外務省を含めた政府といたしましては、外国のローファームの支店の設置を日本で許すというようなことはやはり適当でないということで、外国法事務弁護士の使用する外国法事務弁護士事務所の名称につきましては一定の制約をかけております。言ってみますれば、それの見返りといいますか、その逆の問題として、やはり外国において極めて重要な作用をしておりますローファーム名というものを一定の条件のもとに表示することを許した、こういうことになっております。
#95
○抜山映子君 本日は審議の最終日でございますので、多少細かい点に立ち入りましてお伺いしたいと思います。
 本法律によりまして外国法事務弁護士と、こういう名称になったわけでございますけれども、先般来経団連の方のお話も伺いまして、クライアントはほとんど外国から進出してきた企業になるであろう、こういうお話がございました。そうしますと当然、ネームカード、名刺に使う場合に外国法事務弁護士と書けばそれで問題ないわけなんですが、恐らく英語があるいは自国語の外国語で表示することになろう、そういう場合の外国法事務弁護士の翻訳の言葉としてどういう言葉を使うのならばオーケーなのか、あるいはあたかも法廷活動もできるような弁護士という翻訳の名称を使えばこれは懲戒の対象になるのか、この点をお伺いしたいと思います。
#96
○政府委員(井嶋一友君) 本法案上は、外国法事務弁護士は職務を行う際には外国法事務弁護士という名称を用いなければならないということにしておるわけでございまして、この考え方は、日本語を使う場合でありましても、外国語を使う場合でありましても、やはり基本になるだろうと思います。特に外国法事務弁護士という名称が決まりました経緯は前回も御説明したと思いますけれども、やはり現在まだ国民一般も含めて耳なれない言葉でございますから、これを定着させるということも含めて、やはり職務を行う際にはこういった名前を用いるべきだというのが基本だろうというふうに考えております。
 したがいまして、どうしてもローマ字で書くという場合にはローマ字つづりで書いてもらうというのが原則であろうというふうに考えるわけでございます。
 しかしながら、御指摘のように、外国人にはその意味がわからないというものもございますから、そういった場合にはこの外国法事務弁護士という名称が持っております要素を当該外国の言葉に翻訳した名称を用いることは必ずしも禁止をすべきものではないというふうに考えておるわけでございます。
 具体的に申し上げれば、外国法事務弁護士は外国法の事務のみを取り扱うという要素が一つございます。それから、事務弁護士という言葉の意味は法廷活動ができないという意味であるということでございます。この二つの要素を取り入れた翻訳語であれば、これはやはり実質的な表示として外国法事務弁護士という名称を表示しているとみなし得るわけでございますから、それが法によって禁止されており、さらにそれが懲戒になり、あるいは日弁連の指導の対象になるというのは若干厳格過ぎるかなというふうに考えておるわけでございます。
 ところで、じや、どういった名前ならいいのだろうかということでございますが、例えば英語で申し上げれば、ソリシター・アト・フォーリン・ローといったような場合は、ソリシターという意味合いに法廷弁護士でないという意味合いがございますから、それはパスするだろう。あるいはアメリカ大使館が今度の法案を訳しておりますのを見ますと、フォーリンロー事務弁護士とローマ字で書いておりまして、こういったものももちろん、それが定着するならば、それも一つの使用し得る言葉であろうというふうに思います。逆に、アトーニー・アト・ローといったように、アメリカでは弁護士という意味になるような言葉、これは訳語としては適切ではない。それはやはり日弁連の指導の対象になるかもしれない、こういうふうに考えております。
#97
○抜山映子君 ローファームの名称でございますけれども、恐らく向こうの大きなローファーム、例えばベーカー・マッケンジーのような大きなローファームが日本にローテーションを組んで次々派遣してくると、本法案によりますと在留義務が年百八十日ということになっておりますから、ローテーションを組んで次々に派遣してくるということは当然想定されるわけです。
 ですから、現実に一人の人だけがずっと来てローファームの名前をつければ、それはそれでよろしいんですけれども、例えばブラックという人とホワイトという人が最初に来てブラック・アンド・ホワイトというローファームの名前でしておったところ、途中でホワイトさんが帰って、今度はイエローという人が来て、ブラック・アンド・イエローと名前を本来ならば変えなくちゃいけないのを、そのままブラック・アンド・ホワイトの名前でずっと継続していったと、こういうような場合は、すなわち既に離日した者の名称を引き続き使うような表示は懲戒の対象になるのかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
#98
○政府委員(井嶋一友君) 外国法事務弁護士事務所の名称につきましては四十五条に規定をしておるわけでございますが、ここにございますように、「事務所の名称中には、当該事務所を設ける外国法事務弁護士の全部又は一部の者の氏名を用いなければならず、」ということにしておるわけでございまして、「かつ、他の個人又は団体の名称を用いてはならない。」ということにしてございます。したがいまして、御指摘のように、ブラック・アンド・ホワイトのホワイトさんが帰国したという場合には、やはり事務所の名称としてはホワイトの名称は消していただくというのがこの法律の建前であるというふうに考えております。
#99
○抜山映子君 そうすると、引き続きブラック・アンド・ホワイトの名前を継続していたときには懲戒の対象になると、こういうように理解してよろしいわけですね。
 というのは、私が思いますのは、よく向こうの慣習では、クライアントに対して、ファームとしての一体性、継続性を表示するために、亡くなった人の名前もそのまま残しておく場合が多いわけです。ですから、どうしても依頼者に対する関係で、ホワイトさんが離日してもブラック・アンド・ホワイトという名前を継続して続ける方がむしろ向こうのファームとしては非常に都合がいいということから、そういう事例がたくさん出てくるのではないかと、こういうように思うわけなんですけれども、懲戒の対象となるのかどうかの点については、いかがですか。
#100
○政府委員(井嶋一友君) ただいま申しましたように、形式的にはこの法律の考え方に触れることになるのだろうと思いますので、日弁連の指導の対象になるだろうと思います。その指導に従わな
いというようなことになった場合に懲戒まで発展するかどうかということになろうかと思いますけれども、一応法律的にはそういう理解をいたしておるわけでございます。
 御指摘のような継続性の問題でございますが、冒頭にお述べになりましたように、やはり大部分の場合、米国のローファームからローテーションを組んで派遣されてくるというような形になるのが多いだろうと思います。そういった場合には、先ほど御説明しましたように、一定の要件のもとに、事務所の表示も含めて自分の国の本国のローファーム名が付加できるわけでございますから、ブラック・アンド・ホワイトであっても、ローファーム名は付加できるわけでございますので、そういった意味では同一のローファームからの個人の外国法事務弁護士が来ているのだということがはっきりするわけでございますから、そういった両方の併用によりまして継続性といったものもある程度カバーできるのだというような考え方で整理をしておるわけでございます。
#101
○抜山映子君 一応確認を取っておきたいのでございます。
 まず、ローファームの名前として千代田とか港だとか地名をつけることは許されない。また、共同だとか平和だとか正義だとか、こういう抽象名詞を付するローファームも許されない。また、周辺の業務領域との関係で、特許だとか税務だとか、そういうような名称をローファーム名として取り入れて使うことはできない。こういうように確認しておいてよろしいですね。
#102
○政府委員(井嶋一友君) むしろ法案の考え方は、先ほども申しましたように、四十五条二項で、その事務所の所属の「外国法事務弁護士の全部又は一部の者の氏名を用いなければならず、かつ、他の個人又は団体の名称を用いてはならない。」ということにしているわけでございまして、地名とが御指摘のような抽象名詞とか、こういったようなものにつきましては、法案上は使用の禁止をしておらないわけでございます。
 しかし、法案で言っておりますように、その者の所属しております外国法事務弁護士の全部または一部の氏名はどうしても必要であるわけでございますから、その氏名が出ておれば、それに御指摘のような地名とかあるいは共同とかいったようなものが付加されておりましても、そのこと自体でこの法律の考え方に触れるというふうには考えておらないわけでございます。
 それから、特許とか税務とかいったような文字をつけたらどうかと、こういうことでございましたけれども、これも、そういった意味で、その外国法事務弁護士の氏名とともに用いられておるのであれば法律上は禁止にはならないというふうに考えますが、他方、特許とか会計、税務といったような名称を付加いたしますと、我が国における税理士事務所あるいは特許の弁理士事務所といったようなものとの混同を来すことがございます。我が国の税理士法なり弁理士法なりがそういった無資格者に事務所の表示を認めておりませんから、それに触れるような実態になる名称であれば、もちろんそういった関係の法律の違反になるということになるだろうと思いますが、この外国法事務弁護士法案上は、抽象名、地名、そういったものは禁止の対象にはされていないということでございます。
#103
○抜山映子君 この法案上許されないということができるのじゃないでしょうか。第三条一で、国内の裁判所、検察庁その他の官公署における手続についての代理はできない、文書の作成はできない。すなわち、この条文から、特許庁に対する関係、通産省に対する関係、法務局に対する関係、これはできないということが出てきますから、ここからそういう表示はできないという結論が出るのじゃないでしょうか。
#104
○政府委員(井嶋一友君) 我が国の国内における税務事務あるいは特許事務を行うという趣旨の表示であればもちろんそれぞれの法律に触れるわけでありますし、当然でございますが、税務とか特許とかという文字を書いたとしても、それは専ら外国に出願するもの、外国における税務事務だ、外国法に関する、あるいはもっと厳密にいえば、原資格国法に関する税務事務をやりますよというような表示をする場合には、そのこと自体は禁止されてないわけでございます。
 ですから、そういった表示は許されますが、その表示の仕方によって我が国の税務会計事務を行うのだというようなことが出てくるような表示であれば、それはもちろん禁止になるということでございます。
#105
○抜山映子君 第四十条でございますけれども、「日本弁護士連合会に入会するものとする。」と、こういうようになっております。一方、弁護士法の三十六条では「入会しようとする弁護士会の会員となり、」と、こういう「会員となり、」という表現を使っておりますので、弁護士会に入会してからの資格は、弁護士自治の範囲で、これは準会員か、そういうようなことになるか、そういうようなことで弁護士会とお話は詰まっておるのでしょうか。
#106
○説明員(但木敬一君) この法案におきましては、御指摘のとおり「入会するものとする。」と書いておりまして、弁護士会内あるいは日弁連会内の資格の名称については何ら触れるところではないわけであります。これに対しまして、弁護士法におきましては、我が国の弁護士は「弁護士名簿に登録又は登録換を受けた者は、当然、入会しようとする弁護士会の会員となり、」というふうになっておるわけでございます。現行の弁護士法は、この会員となるということに基づきまして、弁護士法上のさまざまの規定の適用対象にしておるわけでございます。したがいまして、仮に本法案で会員となるという言葉を使った場合には、当然この弁護士法上の会員と同じような規定が全部適用になるということになろうかと思います。
 しかしながら、外国法事務弁護士は、その職務範囲におきまして日本の弁護士とは異なって、原則的には原資格国法に関する法律事務のみを取り扱うものでございます。また、そのほとんどの者は外国人であろうかと思われます。したがいまして、そのような特殊性に応じた取り扱いが会内で行われることになることは当然のことでございまして、一般の弁護士会員と全く全部平等というわけにはまいらぬだろうと思われるわけであります。
 どの程度の権利義務をこの外国法事務弁護士に与えるかという点につきましては、外国法事務弁護士に関する会則の制定、改廃の議決権というのは法律上これを保障しておりますけれども、その余のことにつきましては、言ってみれば外国法事務弁護士が入った弁護士会、日弁連の自治にゆだねたわけでございます。その先例といたしましては沖縄弁護士に関する政令というものがございまして、これも同様の規定をしております。これに基づきまして弁護士会では、この沖縄弁護士につきましては、これを沖縄特別会員というような形にしていると聞いております。
#107
○抜山映子君 要するに弁護士自治の範囲で資格は決められる、こういうように了解していいわけですね。
 それでは、第十条についてお伺いいたします。
 第十条の第一項三号ですね。ここに「財産的基礎を有するとともに、」とございますが、この「財産的基礎」というのはどのようなものを想定しておられるのでしょうか。
 それから、その後に「依頼者に与えた損害を賠償する能力」とありますが、これはどのようなものをお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
#108
○説明員(但木敬一君) 御指摘の第十条一項三号では、適正かつ確実に職務を遂行するための財産的基礎というのを要件の一つにしております。この要件をどのようなものが充足するかという点につきましては、その申請者の地位によって大分異なってくると思います。
 例えば当該申請者が日本の弁護士あるいは既に日本にいる外国法事務弁護士に雇用されるという身分で参ります場合には、その適正かつ確実に職務を遂行するための財産的基礎というのはむしろ
雇用主の方の問題になるわけでございまして、言ってみれば、その雇用主から一定の定額の給与を支払われるなり、あるいは歩合制でもらうなりいたしまして、それが日本において適正かつ確実に職務を遂行できる程度の保障があるということであれば、それでよろしいかと思います。また別の形態を考えますと、既に日本にある外国法事務弁護士と共同経営をするというような身分で申請してくる場合もあろうかと思います。その場合には、共同経営者たる既におります外国法事務弁護士の財産的基礎というようなものがかなりその要件の充足について評価されることになるのではないかと思います。
 それから、自分一人が我が国で事務所を開設いたしまして外国法事務弁護士として活動するという目的で申請してきた場合には、我が国で事務所を開設し、これを適正に運用できるだけの資金的な基礎があるかどうかというような点を審査するということになります。具体的には、例えば既に事務所は借りているのか、借りていないとすればどのような財産的な裏づけがあってこれを借りる、あるいは買うことができるということを考えているのか、これは同号の確実な計画とも密接に関連するわけでございますが、それらの点を結局総合勘案するということになろうかと思います。
 それから、次に「依頼者に与えた損害を賠償する能力」という点でございますが、これにつきましてもいろいろな場合があり得る。例えば今の幾つかの具体的な態様に分けて申しますれば、雇用される外国法事務弁護士につきましては、その雇用主が損害を一切賠償するというような保証がある場合には、その雇用主の言ってみれば賠償能力というようなものに依存してくることになろうと思います。これに対して、自己が一人で日本で事務所を開設して外国法事務弁護士として活動するということになりますと、その人自体ということになろうかと思います。この場合には幾つかの方法があろうかと思いますが、その一つの方法としては、現在弁護士について既に保険会社で売り出しております弁護士賠償責任保険というようなものが外国法事務弁護士にもその対象として向けられるというようなことになれば、保険というような制度もその一つの要件を充足する事実ということになろうかと思います。
#109
○抜山映子君 それじゃ、一人でプラクティスやるという場合に、その損害賠償能力というのは、保険なら保険で結構ですけれども、どれぐらいのものを賠償する能力、金額的なものは今お考えのうちにあるのでしょうかということが一つ。
 それから、三項の「法務大臣は、承認をする場合には、あらかじめ、日本弁護士連合会の意見を聴かなければならない。」、このように書いてございますが、これの立法趣旨、それから日本弁護士連合会の意見の及ぶ範囲、これをお答えください。
#110
○説明員(但木敬一君) 二つお尋ねでございましたので、まず第一の点について私から御説明いたしたいと思います。
 依頼者に与えた損害を賠償する能力というのはどの程度かというお尋ねでございますが、残念ながら、その基準というようなものは現在ございません。これにつきましては、現に弁護士がどの程度の保険に入っているか、あるいはどのような事件でどの程度の損害賠償を求められたか等につきまして弁護士会等の意見を十分に聞きながら、今後定めていくというようなことになろうかと思います。
#111
○政府委員(井嶋一友君) 第二点のお尋ねの点でございますが、法律上は、十条三項によりまして承認をする場合に日弁連の意見を聞くというのが一つございます。それから、十四条の第四項でこれを準用いたしておりますが、これは承認の取り消しをする場合に日弁連の意見を聞くということになるわけでございます。いずれも、法務大臣が資格を承認いたしましても、外国法事務弁護士はその後日弁連に登録をし活動を始める、活動を始めれば日弁連が指導監督をする、こういうことで、一連の手続の流れとして双方が共同し合って処理をしていくということになるわけでございます。そういった手続的なものもございますので、それが適切に運用され、円滑に運用されるためには、やはり双方がそれぞれ意見を調整し合うということが必要であろうということから、そういう立法趣旨でこの意見を聞くという制度が設けられたわけでございます。したがいまして、及ぶ範囲も、承認に関する事項と承認の取り消しに関する事項ということになるわけでございます。
#112
○抜山映子君 終わります。
#113
○委員長(二宮文造君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#114
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。寺田熊雄君。
#115
○寺田熊雄君 私は、日本社会党を代表して、本法案に賛成の立場から討論をいたします。
 本法案は、アメリカ及びECからの市場開放を求める国際経済上の強い要請に基づいて作成されたものであります。中曽根内閣はこの強い外国の要請にこたえて、五十九年四月二十七日、対外経済対策を、次いで六十年七月三十日、いわゆるアクションプログラムを発表し、それらの要請を満たす努力を約束せざるを得なかったのであります。
 それは、弁護士業務という特異の知的業務の自由化を求める点で、従来見られなかった新しい制度に門戸を開いたものでありましたが、私は、本法案の作成に当たり、法務省と日弁連が緊密なスクラムを組んで作業した点を評価したいのであります。これほどまでに完全に日弁連の意向が法案に反映されたことは珍しいことでありました。もっとも、それは前述の二回にわたる政府の方針の表明にも見られたことではありましたけれども、外国人弁護士の事務所の開設、その恒常的な業務運営を認める新しい制度の創設であります以上、我が国の弁護士制度との調和を図りつつ実現せらるべきことであることは当然の事理であったのであります。これによって法務省は外圧をかわし、弁護士という知的業務の市場開放、我が国の市場は閉鎖的であるという非難をかわすことなどに成功いたしましたし、日弁連はこの新しい制度を完全に自己の傘下におさめ、弁護士制度が統一せられ、弁護士業務の運営が無秩序に陥ることを防ぐという成功をおさめたのであったのであります。
 しかし、この法案にはなお幾多の問題点があり、アメリカ及びECの経済団体は、これによっては到底真の市場開放は得られないという厳しい批判をいたしておりまして、この法案の審議中に中曽根首相に直訴したことも事実であります。これらの経済団体は、例えば何百人もの弁護士を擁するローファームが、あたかもケンタッキーフライドチキンやマクドナルドハンバーガーなどが我が国の外食産業に殴り込みをかけ、高い市場占有率や収益を獲得いたしましたように、ローファームが大挙して日本の外国法に関する法律業務に参入してそれを支配することを夢見ていたのかもしれません。しかし、その期待はこの法案によって完全に裏切られたと言っても決して過言ではありませんし、もともとそうした要求自体が無理なものであると言えないこともありません。それを許さなければ真の市場開放ではないと考えるのであれば、それは余りにも極端な資本主義的自由主義に堕するものであると私は考えます。
 しかし、この法案の内容を子細に点検いたしますと、これらの経済団体の批判には共感を覚える点がないではないのであります。
 これらの批判の主なものは、外国法事務弁護士の資格取得条件として五年以上の実務経験を設けたこと、その職務範囲が原則として原資格国法に限定せられていること、日本の弁護士との共同事業は許されないこと、それが日弁連の監督下に置かれたことの四点であります。
 五年以上の実務経験を資格取得の条件としていることは、アメリカのニューヨーク州、ワシント
ンDC等にもその例があるのでありますが、また一面、イギリス、フランスなどEC諸国にはなく、一つの問題点であることは疑いありません。
 また、外国法事務弁護士を日弁連の監督下に置いたことは我が国の弁護士制度が弁護士会の自治権、自主的規律のもとにあり、外部からの介入を許さない独特の制度であることに対する理解の欠如によるものでありますし、また、日弁連に設けられました登録審査会、懲戒及び綱紀委員会の構成について一定数の裁判官、検察官などを委員中に含めましてその審査の公正さを担保しようとした努力をしている点を看過したことにもよるものであります。
 しかし、その運用、とりわけ綱紀及び懲戒委員会の運用が余りにも外国法事務弁護士の業務運営に対して厳し過ぎたり、懲戒の乱用にわたったりすることのないよう戒心を要することは論をまちません。とりわけ、外国法事務弁護士が多少職務範囲の規制を逸脱したり、我が国の弁護士と業務処理の仕方や倫理観念を異にする関係上、広告の扱いや報酬の取り方等について多少日本の弁護士と異なる処置をとったといたしましても、直ちにそれを綱紀違反として糾弾することには慎重さが求められると考えます。
 次に、職務範囲の点でありますが、許される法律事務が原資格国法に限られ、特定の第三国法が許されることはあっても、それについては五年以上の実務経験を要件としていること並びにアメリカ、イギリス、フランス等が広く外国法一般及び国際法に関する法律業務を外国弁護士に認めていることなどを考え合わせますと、この点に関する本法案の制約は厳し過ぎるという非難には合理性がないとは言えません。
 また、アメリカ等の経済団体は外団法事務弁護士が日本における外国企業の日本に対する事業なり投資なりに貢献することを期待しているのに反しまして、我が国の経済団体は日本企業の外国への進出や投資、外国企業の合併等に外国法事務弁護士を利用することを本制度のメリットとしているというその違いがあるのであります。
 アメリカ的な考え方によれば、外国法事務弁護士の業務の遂行には日本の法律に対する知識とその運用についての経験を必要としますので、どうしても日本の弁護士との共同事業によることが不可欠となりますが、これが第四十九条によって禁止せられており、彼らに欲求不満が生ずるのは当然であると考えられます。
 これらの点については、法務省当局の今後における公正かつ慎重な検討が望まれるのであります。
 最後に、法曹人口の増加の必要性について言いたしたいと思います。
 諸外国に比して日本の法曹人口が少なきに失するという批判には十分な理由があります。もっとも、これは法曹にはできるだけ十分な法的な教養が必要であるとするという考え方が一つの基礎になってもおりますし、また一面、弁護士の過当競争を恐れる点にも一因があると考えられるのであります。しかし、増大する大衆の法律生活上の需要、殊に大都市以外の地域におけるそれを考えますと、現在の弁護士数で十分であるとは到底言い得ません。
 また、国際経済の進展に伴い、国際的法律知識や経験を持つ法曹の養成が必要であることなどを考え合わせますと、法曹人口を漸進的に増加せしめることが望ましいと考えられますので、法務省、最高裁及び日弁連の法曹三者がこの問題を真剣に検討せられるよう希望するものであります。
 以上の諸点の希望を述べまして、本法案に賛成をいたします。
#116
○委員長(二宮文造君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#117
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#118
○委員長(二宮文造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#119
○委員長(二宮文造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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