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1985/01/27 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 本会議 第2号
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1985/01/27 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 本会議 第2号

#1
第104回国会 本会議 第2号
昭和六十一年一月二十七日(月曜日)
    開 会 式
 午後零時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午後一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午後一時一分 衆議院議長坂田道太君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  天皇陛下の御臨席をいただき、第百四回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
  現下、わが国をめぐる内外の諸情勢は誠に厳しく、国民の国会に寄せる期待は極めて大なるものがあります。
  このときにあたり、われわれはわが国の現状と将来を広く展望し、外に対しては、諸外国との相互理解と協力を一層深め、世界の平和と繁栄に寄与するとともに、内にあつては、当面する諸問題に対処して、政治、経済の各般にわたり、適切な施策を講じ、もつて国民生活の安定向上に一段の努力をいたさなければなりません。
  ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。
 次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
   おことば
  本日、第百四回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。
  国会が永年にわたり、国民生活の充実発展、世界の平和と繁栄のため、たゆみない努力を続けていることは、深く多とするところであります。
  ここに、国会が、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。
   〔一同敬礼〕
 衆議院議長は、おことば書をお受けした。
 午後一時六分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
 次いで、一同は式場を出た。
   午後一時七分式を終わる
     ―――――・―――――
昭和六十一年一月二十七日(月曜日)
   午後四時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  昭和六十一年一月二十七日
   午後四時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、元議員羽生三七君逝去につき哀悼の件
 以下議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
 さきに院議をもって永年在職議員として表彰されました元議員羽生三七君は、昨年十二月三十日逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
 同君に対しましては、議長は、既に弔詞をささげました。
 ここにその弔詞を朗読いたします。
   〔総員起立〕
 参議院はわが国民主政治発展のため力を尽くされ特に院議をもつて永年の功労を表彰せられさきに農林委員長懲罰委員長の重任にあたられました元議員羽生三七君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます
     ―――――・―――――
#4
○議長(木村睦男君) 日程第一 国務大臣の演説に関する件
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、平泉国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。中曽根内閣総理大臣。
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(中曽根康弘君) 第百四回通常国会の再開に当たり、内外の情勢を展望して施政の方針を明らかにし、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと思います。
 私は、国政の重責を担って以来三年間にわたり、「戦後政治の総決算」を唱え、行財政改革を中心とする諸改革を推進し、世界に開かれ、世界とともに歩む国際国家日本を実現するため、全力を尽くしてまいりました。
 この間、国民の皆様の幅広い御理解と御支援を得てきたことに対し、深く感謝するものであります。
 「戦後政治の総決算」は、戦後四十年間の成果を積極的に評価し、同時に、これまでの基本的な制度や仕組みについて、新しい目で見直してそのひずみや欠陥を是正し、二十一世紀に備えようとするものであります。
 戦後の四十年間は、廃墟の中から立ち上がり、自由と平和、民主主義と基本的人権の尊重を基本理念とする現行憲法のもとで、かつてない繁栄と発展を実現してきた時代であり、日本の歴史はもちろん、世界の歴史においても例のない、誇るべき時代であったと言えましょう。この間、我が国土には平和が続き、国民の生活水準は飛躍的に上昇するとともに、社会の流動性は高まり、貧富の格差は縮小して中流意識が広範化し、教育の普及は進み、中央、地方の格差は平準化し、そして自由と人権を基調とする市民社会の確固たる基盤が構築されたのであります。
 私は、この誇るべき成果を築いた先人の努力と国民の英知に心から敬意を表しつつ、それをさらに前進させたいと考えるものであります。同時に、新たに露呈してきているひずみや欠陥については、これを是正すべく諸般の改革を断行し、さらに、国際化や情報化を初めとする技術革新を積極的に進め、長寿社会に対する対策を整え、来るべき二十一世紀に向けて、新たな飛躍と繁栄の軌道を設定したいと考えるものであります。
 行財政改革は、このような諸改革の中心となる、国の基本にかかわる重大な仕事であります。その完遂には、以前にも申し上げましたように、いわば三代の内閣、十年間にもわたる、精魂を込めた努力を続けることが必要であります。今や、行財政改革は胸突き八丁のときを迎えており、これまでの成果の上に立って、粘り強く全力を挙げて国鉄改革の断行などに取り組みます。
 また今年は、国民の期待にこたえて教育改革を実施に移し、シャウプ勧告以来の税制の抜本的改革に取り組んでいく決意であります。
 さらに、世界とともにある日本として真の国際国家を実現するためには、対外経済摩擦の克服は当面の喫緊の課題であり、これに着実に取り組んでまいります。
 私は、このような政策を進めるに際し、問題の所在を国民にわかりやすく説明し、国民の理解と協力を得て、国民とともに歩んでいくことをさらに心がけてまいります。
 昨年創始百周年を迎えた内閣制度は、今新たな百年に向かって一歩を踏み出しました。戦前の政治のあり方を謙虚に反省し、戦後の発展を顧み、清潔な政治を目指すとともに、議会制民主主義の充実とその健全な発展を期するものであります。
 衆議院議員の定数是正は、議会制民主主義の根幹にかかわる問題であり、昨年の最高裁判所判決によって違憲とされた異例の状態を一日も早く解消し国民の信託にこたえることは、立法府全体に課せられた責務であると考えられております。さきの国会における衆議院議長見解及び衆議院本会議の決議に基づき、今国会において定数是正が速やかに実現し、国会の責務を一日も早く果たすよう強く期待するものであります。このため、政府も最大限の努力をしてまいります。
 法秩序の尊厳を守り、これを確固として維持していくことは、民主政治の健全な発展を図るための基盤となるものであります。この観点から、極左暴力集団によるテロ・ゲリラ事件に関しては、政府は、その予防に万全を期し、さらに厳正に対処してまいります。
 以下、国政の各分野について、私の基本的考え方を申し述べます。
 今日の国際情勢には依然として厳しいものがあり、世界の平和と繁栄なくして我が国の平和と繁栄はあり得ないとの認識のもとに、我が国の地位にふさわしい役割を主体的に果たしていく所存であります。
 特に、対外経済摩擦を克服し、世界経済の発展に貢献することは、現下の緊急課題であり、全力でこれに取り組んでまいります。また、「南の繁栄なくして北の繁栄なし」との信念のもとに、開発途上国の健全な発展に積極的に貢献してまいります。
 本年五月には、東京で第十二回目の主要国首脳会議が開催される予定でありますが、主要先進国の首脳が一堂に会し、現下の世界の諸問題を解決するための方途を探る機会として、極めて重要な意義を持っております。私は、この会議がアジアで開かれることの意義を十分踏まえ、これまでに築き上げてきた首脳間の相互理解、信頼関係を基礎に、世界経済の新たな発展と、平和の維持及び軍縮の促進に貢献し、さらには東西両文明の相互理解、相互協力を増進することにより、世界の平和と繁栄への明るい展望を示し得る実り多い会議とするため、万全の準備を進めてまいります。
 昨年十一月に開催された米ソ首脳会談において、両国の立場に大きな相違点を残しつつも、軍備管理交渉の促進が合意されるなど、世界の平和と軍縮に向け話し合いのスタートが切られたことは、真に有意義であったと考えます。我が国は、米ソ両国が今後も実りある対話を継続するよう引き続き働きかけるとともに、自由民主主義諸国の結束を維持しつつ、米国の努力を支援していく考えであります。
 世界の平和を確実なものとするためには、核を含む力の均衡により今日の世界の平和と安全が維持されている現実を踏まえ、この均衡の水準を有効で確実な保障のもとに可能な限り引き下げることが急務であります。私は特に、米ソ両国に対し、このかけがえのない地球を死の天体と化し得る核兵器を、適正な均衡と安定を維持しつつ大幅に削減し、ついに廃絶するよう求めるものであり、また、核拡散防止条約に加盟していない諸国に対しては、その参加を強く訴えるものであります。
 厳しい国際情勢の中で、我が国自身の存立を守るためには、総合的な安全保障政策を推進することを基本とし、そのもとにおいて、日米安全保障体制を堅持するとともに、自衛のために必要な限度において、国際情勢などを考慮しつつ、重点的、効率的な防衛力の整備を図ることが必要であります。
 政府は先般、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準の達成を図ることを目標とする中期防衛力整備計画を策定し、さきの国会で御報告いたしましたが、今後、そのときどきの経済財政事情を勘案し、他の諸施策との調和を図りつつ、この計画の着実な実施に努めてまいります。
 その際、平和憲法のもとで専守防衛に徹し、非核三原則と文民統制を堅持し、近隣諸国に軍事的脅威を与えないことは、もとより当然であります。
 国際国家としての重要な責務の一つは、開発途上国への協力であります。開発途上国は累積債務問題などの諸困難を抱えておりますが、我が国は、さきに設定した第三次中期目標の誠実な実施を通じ、政府開発援助の量及び質の拡充に最大限の努力をしてまいります。
 さらに本年は、国際平和年であり、我が国の国連加盟三十周年にも当たりますので、この機会に、国連外交をさらに強化すべく、決意を新たにする次第であります。
 次に、各国との関係について申し述べます。
 米国との同盟関係は、我が国外交の基軸であり、この一層の発展は、アジア・太平洋地域、さらには世界の平和と安定の重要な礎石となるものであります。政府は、貿易、経済問題など、日米間の諸懸案の解決に最大限の努力を傾注し、相互の友好、信頼の上に、両国関係の一層の発展を図ってまいります。
 我が国は、過去の歴史に謙虚に学び、アジア諸国との間で、円滑な経済関係を含め真の友好関係を築き、これら諸国の安定と発展に協力してまいります。
 韓国との関係は、昨年国交正常化二十周年を迎え、一層強固、かつ、成熟したものとなっておりますが、私は、南北間の対話がさらに進み、朝鮮半島における緊張が緩和するよう、全斗煥大統領の努力を評価し、支援するとともに、一九八八年のオリンピックが成功するよう協力してまいります。
 また、中国との間で、良好で安定した関係を維持発展させていくことは、我が国外交の一貫した主要な柱の一つであります。今後も、日中共同声明、日中平和友好条約及び平和友好、平等互恵、相互信頼、長期安定の四原則を踏まえ、また、胡耀邦中国共産党総書記の「四つの意見」を評価しつつ、貿易の拡大均衡を図ることを含め、日中関係をさらに発展させるべく努力してまいります。
 さらに、ASEAN諸国の開発努力に協力し、これら諸国との友好関係強化に引き続き努力していく考えであります。
 インドとの間では、ガンジー首相が初めて訪日され、政治、経済、科学技術などの広範な分野において、二十一世紀に向けた新たな協力関係を築く基礎を固めることができました。
 大洋州の諸国とは、近年緊密化している関係をさらに強化してまいります。
 また私は、さきにカナダを訪問し、マルルーニー首相との間で、世界のために貢献する新しい日加協力関係を築くことができました。
 自由と民主主義という基本的価値観を共有している西欧諸国との関係強化は、我が国外交の基本であります。このたびドロールEC委員長の訪日を得ましたが、私は今後とも日欧関係の幅広い分野における緊密化を図るべく努力してまいります。
 ソ連との間では、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的関係を確立するため、種々の対話の努力を進めてきております。今般、シェワルナゼ外相の訪日により、ほぼ八年ぶりに日ソ外相間定期協議が行われ、領土問題を含む平和条約交渉が再開されるとともに、私とゴルバチョフ書記長との間の相互訪問を含む政治対話の強化について合意を見たことは、今後の日ソ関係を進めるに当たって意義深いものがあります。我が国は、日ソ間の真に安定した関係を構築するため、今後とも粘り強く交渉と対話を続けてまいります。
 各国国民との間で、文化、スポーツ、芸術などの各分野における交流を充実させることは、相互理解を増進し、長い信頼関係を確立するために不可欠であります。
 昨年の国際青年年を契機に、二十一世紀を担う青少年の間に社会参加や国際協力についての関心や活動が高まったことは、まことに喜ばしいことであります。私は今後も、青年交流の一層の推進を図るとともに、留学生交流の充実に努めてまいります。また、この一助として外国青少年のホームステイに対する施策を充実させることとしております。
 さらに、人類生存の基盤である地球環境の保全についても、我が国は積極的に貢献していきたいと考えます。昨年は、国際森林年でありましたが、その成果を踏まえ、地球森林資源の保全、涵養に引き続き努めてまいります。
 世界経済の現状を見ますと、欧州諸国を中心として雇用情勢は依然として厳しく、また大幅な経常収支の不均衡などから、欧米諸国における保護主義的な動きは根強いものがあります。これに対して我が国は、自由貿易体制の維持強化に向け率先して努力するとともに、調和ある対外経済関係の形成と世界経済の活性化への積極的貢献を行うことが必要となっております。
 このため政府は、引き続き市場の積極的な開放、輸入の促進など、市場アクセスの改善を推進するとともに、金融・資本市場の自由化及び円の国際化を、そのための環境を整備しつつ、促進してまいります。
 また、経済の拡大均衡を通じて対外経済摩擦の解消を目指すため、物価の安定を基礎としつつ、内需を中心とした景気の持続的な拡大を図ることが必要であります。政府は、円高傾向の定着と安定を前提とし、その国内経済への影響にも慎重な配慮を払いつつ、引き続き適切、かつ、機動的な経済運営に努めるとともに、民間活力が最大限に発揮されるよう法制度を含めて環境の整備を進めてまいります。
 昭和六十一年度予算においては、このような観点から、財政投融資等の活用により一般公共事業費につき前年度以上の伸び率を確保したほか、住宅減税や設備投資促進のための税制上の措置を講じ、また、東京湾横断道路や明石海峡大橋の建設並びに技術革新、国際化の進展などに対応した公共的施設の整備などに民間活力を導入するための措置を講ずることとしたところであります。
 一方、我が国経済は、技術革新などの新たな進展により、新しい成長の時代に入っております。この新たな動きを一層促進するため、基盤的、先端的分野の創造的技術開発を推進するとともに、高度情報社会への移行のための適切な環境整備を進め、また、経済発展の成果を適切に配分すべく労働時間の短縮などを推進し、消費の拡大、国民生活の向上を図ってまいります。さらに、先端的技術分野を初めとして国際協力を積極的に促進し、世界経済の活性化に貢献してまいります。
 また、我が国経済が国際経済と調和していくためには、我が国の経済構造にかかわる基本的な諸問題にも立ち入って検討することが必要であり、現在、このための研究を進めているところでありますが、私は、このような中長期的な視野を持って適切な改革を行いつつ、今後の政策運営に当たる考えであります。
 近年、自由主義諸国の間に、世界経済の運営をめぐって政策協調の機運が高まりつつあることは歓迎すべきであり、我が国も、貿易、通貨、科学技術、途上国援助等に関し、この動きを一層進展させるため、積極的役割を果たすべきであると考えます。
 ガットでは、今年九月の新ラウンド交渉の開始に向けて準備が始められていますが、我が国としても新ラウンドの成功に全力を尽くす考えであります。また、国際通貨制度の改善を図るため、各国とも密接に協力してまいります。
 私は、東京での主要国首脳会議において、このような国際的協力の上に、全体としての政策的調整や調和のとれた国際経済システムの確立のため、努力を重ねる決意であります。
 さらに、円高を初めとする環境変化に中小企業が的確に対応し得るよう、きめ細かな中小企業対策を強力に推進することといたしております。また、厳しい環境変化の中で、バイオテクノロジー等の技術開発を進めるなどにより、生産性の向上を中心とした農林水産業対策にも一層努力してまいります。
 他方、情勢の変化に即応して、失業の防止、再就職の促進を図り、雇用の安定に努めてまいります。
 政府は、行政改革を国政上の最重要課題の一つとして位置づけ、臨時行政調査会、臨時行政改革推進審議会の提言を最大限に尊重しながら、計画的、かつ、着実にその推進を図ってきております。
 さきの国会では、共済年金制度の改革、民間活動に係る規制の緩和など、関係法律の成立を見ました。また、昨年末、行政組織の再編合理化、国家公務員の定員四千五百二十八人の縮減、特殊法人等の整理合理化などを盛り込んだ行政改革大綱を決定したところであります。
 行政改革の推進を図る上で、当面の最大、かつ、緊急の課題は、危機的状況にある国鉄の改革であります。もはや問題の解決を先送りすることは許されません。政府は、昨年十月に決定した基本的方針に基づき、昭和六十二年四月における国鉄の分割・民営化に向けて、今国会に関係法律案を提出することとしております。
 これとともに、余剰人員対策の円滑な実施に万全を期し、また、長期債務等の適切な処理を図りつつ、国鉄事業の再生を目指した改革の実現に全力で取り組んでまいります。
 また、内閣の総合調整機能の強化のための体制整備、科学技術振興のための産学官等の研究交流の促進、機関委任事務及び国、地方を通ずる許認可権限等の整理合理化などを進めることとし、所要の法律案を今国会に提出することとしております。
 さらに、地方行革大綱に沿って、地方公共団体における行政改革が自主的、総合的に推進されるよう、政府としてもその積極的な促進を図ってまいります。
 政府はこれまで財政改革の推進に全力を傾注してきたところでありますが、財政を取り巻く環境にはなお一段と厳しいものがあり、二十一世紀に向けて我が国経済社会の基盤を確固たるものとしていくためには、引き続き財政改革を強力に推進し、その対応力の回復を図ることが緊要の課題であります。
 昭和六十一年度予算においては、このような視点に立ち、まず歳出面において、既存の制度、施策の見直しや補助金等の整理合理化を推進するなど、すべての分野にわたり歳出の徹底した節減合理化に努め、一般歳出の伸びを四年連続で前年度以下としたところであります。
 他方、歳入面においても、税制の抜本的見直しとの関連に留意しつつ、税負担の公平化、適正化などの見地から必要な見直しを行い、また、税外収入についても可能な限り収入の確保を図ったところであります。
 なお、地方財政についても所要の措置を講じ、その円滑な運営を期することとしております。
 このような歳出歳入両面にわたる努力の結果、昭和六十一年度予算においては、公債を前年度当初発行予定額に比し七千三百四十億円減額することといたしました。
 税制については、最近における社会経済情勢の著しい変化から生じたさまざまなゆがみ、ひずみ、税に対する重圧感等の問題を解決すべく、税制全般にわたる抜本的見直しのための検討を精力的に進めてきております。
 税制調査会においては、まず、重税感の軽減や、ひずみの是正等の適正化に沿うものから取りまとめをお願いし、次に、財源措置等を含め一体としての指針を本年秋ごろまでにいただきたいと考えております。
 税制改革は、喫緊の国民的課題であります。政府は、国民の意見、要望を広く承り、国民の理解を得ながら、その推進にかたい決意で取り組んでまいります。
 教育改革は、二十一世紀に向けて、我が国が創造的で活力ある社会を築いていくために、個人の尊厳を重んじ、我が国の伝統文化を継承し、日本人としての自覚に立って国際社会に貢献し得る国民の育成を図ることを目標とするものであります。
 政府は、臨時教育審議会の第一次答申に示された具体的改革提言については、既に大学入学資格の拡大を図るとともに、大学入試制度の改革の推進を初めとして、その具体化のための施策を進めてきております。
 臨時教育審議会は、本年春を目途に第二次答申を行うこととしており、政府は、この答申を受けて、教育改革の実現のため全力で取り組んでまいります。
 子供たちが心身ともに健やかに成長することは、子を持つ親の切実な願いであります。いじめや非行の問題に対しては、まず学校において適切な対応がなされることが何より重要であり、また、学校、家庭、地域社会が連携してこの問題に取り組むよう施策を充実させてまいります。
 私は、国民が生きがいを持って日々の生活を送ることができるよう、心の触れ合う、豊かで美しい地域社会、誇りと愛着の持てる郷土の建設に力を尽くしてまいります。
 生活の基盤であり、家族の団らんの場である住宅については、地価の安定を図りつつその建設を促進し、また、身近な生活環境施設などの社会資本の整備、緑化の推進などにより、快適で潤いのある生活環境の実現を図ってまいります。さらに、地方の芸術、文化、スポーツの振興に意を用い、地域経済の活性化を図ることにより、個性豊かな、魅力ある地域社会づくりを進めてまいります。
 また、本年秋には、二十一世紀に向けた豊かな国土づくりの指針を明らかにすべく、第四次全国総合開発計画を策定することといたしております。
 今日我が国は、古来の夢である長寿を実現し、人生八十年の時代を迎えており、国民の一人一人がこの長い人生を安心と生きがいを持って過ごすことのできる社会全体のシステムをつくり上げることが必要となっております。
 社会保障については、制度を効率的なものにすると同時に、給付と負担の両面において公平を確保することが求められております。さきの国会で成立を見た共済年金制度の改革により、公的年金制度全般にわたる改革が図られましたが、政府は今後も、さらに必要な制度間の調整を進め、制度の長期的安定と整合性ある発展に努めてまいります。
 また、すべての国民が生涯を通じて健康な生活を送ることができるよう、総合的できめ細かな保健医療対策を推進してまいります。特に、死因の第一位を占めるがんについては、その制圧を図ることが人類共通の夢であり、私は、「対がん十カ年総合戦略」に基づき、総合的、かつ、重点的な施策の推進を図ります。また、長寿社会にふさわしい高齢者の保健医療制度を確立するため、老人保健制度について所要の改革を行うための法律案を今国会に提出することとしており、さらに、難病の克服などにも万全の努力を払ってまいります。
 一方、寝たきり老人や障害者のように、社会的、経済的に弱い立場にある人々に対しても、きめ細かい配慮を行ってまいります。
 さらに、高齢者の雇用については、六十歳定年を基盤として、雇用、就業の場の確保に関する法的整備を図ることとしております。
 政府は、人口の急速な高齢化に対応するため、本年半ばを目途として包括的な長寿社会対策大綱を策定し、年金、医療、雇用等に係る施策を加え、教育、住宅、生活環境等に係る施策をも総合的に推進する考えであります。
 婦人の地位向上を図ることも重視しなければなりません。政府は、国連婦人の十年の成果の上に、昨年七月に開催されたナイロビでの世界会議の決定事項を踏まえ、各分野にわたる施策を引き続き推進してまいります。
 国民生活の安全を確保することは国の基本的責務であり、治安の確保、災害対策や交通安全対策の充実に努めてまいります。
 特に、市民生活と公共の安全を脅かす悪質なテロ・ゲリラ事件は、平和と民主主義に対する重大な挑戦であり、政府は、国民の協力を得て、このような集団暴力を排除するための諸施策を推進し、国民が安心して日常生活を送ることができるよう努力してまいります。
 戦後四十年の歴史が経過し、世界全体の政治的、経済的、社会的枠組みに、ようやく大きな変化の兆しがあらわれてきております。我が国もまた、好むと好まざるとにかかわらず、そのような変化の渦中にあり、今後の新しい枠組み形成の一つの支柱となることが期待されております。
 我々がこれまでのたゆみない努力により築き上げてきた高い生活水準の社会は、いま一段の脱皮と飛躍を迫られています。すなわち、真の豊かさを求める国民の期待にこたえて、フローの豊かさからストックの充実へ、物の時代を越えて心の時代へと前進し、また、社会、経済等の各分野にわたり真の国際化を実現することが必要となっております。
 行政の肥大化を防ぎ、民間の自由な創意を発揮させようとする行政改革も、次代を担う青少年の健全な成長を願う教育改革も、きわまるところ、国際社会において名誉ある地位を占めようとする、真の国際国家日本を実現するための一つの重要な礎石であると考えるものであります。
 国際間の緊張を最大限に緩和し、核兵器を廃絶して、真の恒久平和を実現し、人類社会の繁栄を享受するためには、各国、各民族が独善と偏見を排し、善意と協調のもとに相互に尊重し合い、人類文明を分かち合う共存意識を基本とした新しい地球倫理を生み出すことが必要になっております。我々は、この面でも世界に貢献し得るものを持っていると確信するものであります。
 この数世紀の間、科学技術の発展に支えられたヨーロッパ文明は、極めて強い活力を保持して、世界のすべての地域に圧倒的にその影響を及ぼしてきました。しかし、今世紀も深まるにつれて、世界の人々は、人類がその何千年の歴史において世界の各地域でつくり上げてきた思索と倫理と社会体制は、それぞれが人間の英知と尊厳性の刻まれたものであり、独自の価値を持つことを知るようになったのであります。
 さらに重要なことは、核戦争の脅威や、遺伝子操作が提起する人間の尊厳にもかかわる問題のように、科学技術の発達のみでは必ずしも人間の幸福を保障し得ないことがはっきりしてきたことであります。
 こうしたことは、我々が今後考えるべき二つのことを暗示しています。第一は、科学技術が人類文化を覆い尽くすのではなくて、科学技術を人類文化の一部分として適正に位置づける必要性であります。第二は、科学技術以外の人間の精神文明について、科学技術がその同価値性を認め合ったように、相互間における理解を深め、共通の価値評価の基盤を広げることであります。
 釈迦は、既に二千五百年ほど前「天上天下唯我独尊」と喝破し、また仏教思想においては、「山川草木悉皆成仏」ということが言われております。これが東洋哲学の真髄であります。
 我々日本人は、大自然は人間のふるさとであり、人間はこれとの調和の中で、動物、植物、生きとし生けるものすべてと共存しつつ生きていると考えてきました。調和と共棲、すなわち「共存の哲学」こそ、日本民族が長い歴史の中で育ててきた生き方の基本であると思います。私は、世界が直面している精神と物質の乖離の断崖に立って、我々が祖先から引き継いでいるこのような思想をさきの国連創設四十周年記念総会において強く主張してきたのであります。それが人類の平和と各民族共存の基礎原理であり、国連精神の原点に通ずると信ずるからであります。
 我が国はこれまで、外国の文化を吸収し消化するという、文化の「受信」に熱心な余り、文化の「発信」のための努力が不十分であったことを謙虚に反省しなければなりません。そして日本の文化を世界に伝え、日本をよりよく知ってもらうことに思い切って力を入れる必要があると思います。そのためには、今日こそ、日本がみずからの文化について客観的、科学的に研究し、みずからがみずからを知る努力をしていかなければならないのであります。
 東京における主要国首脳会議は、日本の姿を世界じゅうの人々に伝え、その正しい理解を得るまたとない機会と考えます。また、この会議は、太平洋、大西洋を取り巻く主要先進国の首脳が一堂に会するものであり、私は、この会議をぜひとも成功させ、両洋協力時代の幕あけにすると同時に、二十一世紀にかけて、東西両文明の融合による新しい人類文明創造の希望をもたらす第一歩にしたいと念願するものであります。
 動乱と変化の二十世紀もようやく終わりに近づこうとしております。この歴史の大きな転換期に立って、私は、生起する国政の諸課題を一つ一つ着実に解決し、平和な緑の地球の上に、世界とともに歩む、豊かな、黒潮のたぎるような活力に満ちた日本を建設すべく、国民の皆様とともに、一日一日、誠意と勇気を持って時の糸車を回し、二十一世紀に向けて希望の歴史の糸を紡いでいきたいと念願するものであります。
 重ねて、国民の皆様の御理解と御協力をお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(木村睦男君) 安倍外務大臣。
   〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(安倍晋太郎君) 第百四回国会が再開されるに当たり、我が国外交の基本方針につき所信を申し述べます。
 私は、外務大臣就任以来三年余り、諸外国と協力して我が国の平和繁栄を全うし、ひいては世界の平和と繁栄に貢献するという我が国外交の課題に取り組んでまいりました。こうした努力はそれなりに成果を上げつつあると思いますが、我が国をめぐる国際情勢には依然厳しいものがあり、また、今年五月には、東京サミットという重要な外交日程を控えております。私は、これまでの三年間の経験を踏まえ、こうした外交課題に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 今年五月のサミットを控え、国際経済面では、昨年九月の五カ国蔵相会議を契機とするドル高の是正、新国際ラウンド交渉開始に向けての動きなど、国際協調の面で歓迎すべき進展が見られます。しかし、主要国の経済成長が総じて鈍化傾向を示す中、世界各国は、財政赤字、経常収支不均衡、深刻な雇用情勢、増大する保護主義的圧力、累積債務問題など引き続き多くの課題を抱えております。また、国際政治面では、昨年の米ソ軍備管理交渉の開始、六年半ぶりの米ソ首脳会談の実現など、東西関係の大きな動きを受けて、今年予定されている第二回目の米ソ首脳会談を控える重要な局面を迎えております。他方、中東、アフリカ、中米、インドシナなどの諸地域では、今なお紛争や混乱が続き、さらに、国際的テロリズムの増大は国際情勢を不安定化させております。
 こうした状況のもとで行われる東京サミットにおいては、中曽根総理と各国首脳との間で世界経済の安定的発展に向けて各国間の協力について話し合うとともに、会議がアジアで開催されることの意義も踏まえつつ、世界の平和と安定に向けて忌憚のない意見の交換を行い、サミットが実り多いものとなるよう最善を尽くす考えであります。
 これまで我が国は、とかく国際社会の受益者としてとどまり、国際的な貢献については、他の主要国並みとなることを目標と考えがちでありましたが、今や多くの分野で世界の平和と繁栄維持のために率先してその責任と費用を負担すべき段階に至っております。
 我が国は、昨年「市場アクセス改善のためのアクション・プログラム」を決定し、その操り上げ実施に努めるとともに、円高の定着、内需の拡大にも大きな努力を払ってまいりました。我が国としては、今後ともこうした努力をさらに進め、対外不均衡の是正に努めつつ、関係諸国と協調して保護主義を克服しなければなりません。
 新ラウンド交渉の推進はその重要な一環をなすものであります。自由貿易体制の将来に確固たる展望を切り開いていくためには、現在準備が開始されているこの交渉を成功させることが不可欠であります。交渉を通じて各国間の貿易障害の一層の軽減、撤廃を図り、サービス貿易の重要性の増大など新たな状況に対応するための国際的ルールを確立するとともに、ガット機能の強化を図るために各国の協力が今ほど求められているときはありません。我が国としては、この目的の達成のために全力を尽くす所存であります。
 我が国の経常収支黒字は年間五百億ドルにも達しようとし、諸外国との経済摩擦は厳しさを増しており、このような事態が続くことは、諸外国との関係で到底受け入れられないところであります。我が国としては、積極的に外からのものを受け入れ、経済的にも社会的にも、かつ意識の上でも世界に開かれた国を目指すことが急務となっております。我が国の国際化を推進するに当たっては種々困難もあり得ましょうが、我が国として、大胆に発想の転換を図ってこの課題に取り組まなければならないことを改めて強調したいと思います。
 アジア・太平洋の地、東京で開かれるサミットを前にして、私は、我が国がアジア・太平洋地域の一員であり、したがってこの地域の諸国との友好協力関係なくして我が国の平和と繁栄もあり得ず、我が国とこれら諸国とは強い相互依存の関係にあることを改めて痛感いたします。近年アジア・太平洋諸国との関係は広がりと深さを増しておりますが、国と国との関係だけでなく、人と人とのつながり、心と心の触れ合いを大切にした外交を進めてまいりたいと考えます。
 特に、私は、これまでの我がアジア外交の成果を踏まえつつ、これら諸国の人々と積極的な対話を重ねて相互理解を深めるとともに、各国が進めている経済発展、民生向上の努力に対して貢献すべく、従来にも増して官民協調の実を上げていきたいと考えます。また、歴史とその教訓に学ぶという我が国の対アジア外交の原点を踏まえた平和友好の促進を重視してまいります。
 我が国と韓国は、昨年、国交正常化二十周年を迎えました。両国の友好協力関係は一層強固で成熟したものとなっておりますが、さらに国民各界各層の相互理解や交流を基盤とする両国関係の拡大と深化に努めてまいりたいと考えます。
 北朝鮮との間で、経済、文化等の交流を積み重ねていくとの基本方針は、今後とも維持していく考えであります。
 我が国は、朝鮮半島における最近の南北対話継続の動きを歓迎するものであり、このような動きが一層促進され、この地域の緊張緩和、ひいては朝鮮半島の永続的平和が実現するよう引き続きその環境づくりに努めてまいります。
 近年、中国の経済発展には目覚ましいものがあります。また、日中両国の関係は、着実な発展を遂げてきており、既に安定した友好協力関係の基礎が築かれております。昨年は、私自身、中国を訪問し、日中外相定期協議を行うとともに、中国首脳、要人と会談しましたが、今後ともこのような不断の対話を通じ、日中共同声明、日中平和友好条約及び平和友好、平等互恵、相互信頼、長期安定という日中関係を律する四原則を踏まえ、長期的に安定した日中関係の構築のため一層の努力を傾けてまいります。
 ASEAN諸国と我が国との関係は、日・ASEAN経済閣僚会議やASEAN拡大外相会議の場などを通じ、着実な発展を遂げております。我が国としては、各分野での交流を通じ、ASEAN諸国との関係強化に努めるとともに、これら諸国の安定と発展のための努力を支援していく考えであります。
 我が国は、カンボジア問題の包括的政治解決へ向けてのASEAN諸国の努力を引き続き支援するとともに、ベトナムを含む関係諸国との対話を通じ、この問題の解決のための環境づくりに努力してまいります。
 南西アジア地域との間では、インドよりラジーブ・ガンジー首相の来訪を得て、二十一世紀に向けて新たな日印協力関係を築く基礎を固めました。アフガン問題の影響を受けているパキスタンに対しては、今後とも同国の立場への支援を続けてまいる考えであります。また、昨年末発足した南アジア地域協力連合に対しては、この地域の安定にとり好ましい動きとして支援と協力を行ってまいります。
 我が国は、豪州及びニュージーランドとの友好協力関係の強化を図るとともに、南太平洋島嶼諸国の発展のために一層の協力を行ってまいる考えであります。
 現在、太平洋地域の調和のとれた発展を目指して、政府、民間の各レベルで太平洋協力のための話し合いが進展しつつあることは歓迎すべきことであり、今後ともASEAN諸国などの意向を尊重しつつ、協力を推進してまいりたいと考えます。
 世界の平和と安定のために貢献することは、我が外交の課題であります。
 現在の世界の平和が、力の均衡により維持されているということは冷厳な現実であり、自由民主主義諸国としては、平和を確保するための十分な抑止力を維持しつつ、ソ連を初めとする東側諸国との対話と交渉を進め、この均衡の水準をできる限り低い水準で安定させることが重要であります。このため、我が国としても、国連、軍縮会議などの場を通じ、核実験の段階的禁止提案を行うなど、実効的かつ具体的な軍縮措置の実現に貢献するため行ってきた努力を今後とも積極的に推進していく考えであります。
 世界の平和と安定にとって特に大きな責任を有する米ソ両国の間で、昨年、六年半ぶりに首脳会談が実現し、真剣かつ充実した話し合いが行われたことはまことに有意義なことであります。また、この会談で米ソ両首脳間の相互理解が深められ、種々のレベルの対話の強化と維持が合意されたことなどを歓迎するものであります。米ソ軍備管理交渉に関する両国の立場の隔たりは依然大きく、交渉の先行きは楽観を許しませんが、我が国としては、両国間の交渉が世界の平和の達成と軍縮の促進に向けて永続的かつ実効ある成果を上げるよう希望し、このため働きかけていく考えであります。
 世界の平和と安定の問題に対処するに当たっては、自由民主主義諸国との緊密な協力関係を維持することが重要であります。
 日米安保体制を基盤とする米国との友好協力関係は我が国外交の基軸であり、この関係が良好に保たれ発展することは、アジアひいては世界の平和と安定にとっても重要な要素であります。我が国としては、必要最小限の質の高い防衛力の整備と並んで、我が国の安全保障の基盤である日米安保体制の信頼性を向上させるため、さらに努力していく考えであります。
 日米両国は、昨年初めの日米首脳会談を受けて、電気通信など四分野の協議を精力的に行ってまいりましたが、先般の訪米において、私とシュルツ国務長官の間でこれらの問題につき大筋の解決を確認しました。しかし、日米経済をめぐる全般の状況には依然厳しいものがあり、今後とも両国間の経済関係の健全な発展を図り、日米関係を円滑に保つべく一層の努力を重ねてまいる決意であります。
 私は、今般、総理とともに太平洋を挟む重要な友邦であるカナダを訪問しましたが、このたび合意された日加協力の基本テーマを踏まえ、同国との友好協力関係の一層の増進を図っていく考えであります。
 自由及び民主主義という基本的価値観を共有している西欧諸国との関係は、我が外交の重要な柱の一つであります。近年、日欧間の協力関係が幅広い分野において着実に強化されてきている中で、容易に改善の見られない貿易不均衡をめぐり、欧州側の対日姿勢には依然厳しいものがあります。私は、今般訪日したドロールEC委員長と会談し、また、英国及びドイツ連邦共和国を訪問しましたが、今後ともこのような日欧間の対話と努力の積み重ねにより、経済摩擦の解決を図るとともに、政治対話や文化、科学技術等の分野での交流を一層促進してまいる考えであります。
 我が国とソ連との間では、今般シェワルナゼ外相を迎えて八年ぶりに日ソ外相間定期協議を行いました。シェワルナゼ外相との忌憚のない意見交換を通じ、同外相との間に、領土問題を含む平和条約交渉が再開され、さらに、これを継続することが合意されたこと、及び最高首脳レベルをも含めて日ソ間の政治対話の一層の強化につき合意を見たことは、今後の対ソ政策を進めるに当たって重要な第一歩であったと考えます。領土問題の内容についてのソ連の立場には依然非常に厳しいものがありますが、今後は、この成果を新たな出発点として、国民の総意に基づき、北方領土問題を解決して日ソ平和条約を締結するという我が国の不動の方針を貫くべく、粘り強い努力を続けてまいる考えであります。
 東欧諸国との関係促進は、東西間の緊張緩和の達成の観点からも重要であり、引き続き、東欧各国の政策と国情を十分勘案の上、きめ細かい施策を重ねていく考えであります。
 今日の国際社会において、中東、中南米、アフリカなどの開発途上地域の平和と安定及び経済的発展は、世界の平和と繁栄のために欠くべからざる要件であります。中東地域については、このような立場から、私の中東訪問を通じ関係当事者への働きかけを行うなど最大限の努力を行ってきており、かかる我が国の努力は国際的にも高く評価されております。
 イラン・イラク紛争については、その早期平和的解決に向けての環境づくりのため、今後とも、国連や関係諸国とも協議しつつ両国へ粘り強く働きかけていく考えであります。
 中東和平問題については、昨年来の和平への動きが一層進展するよう希望するとともに、関係当事者に柔軟かつ現実的な対応を示すよう働きかけてまいります。
 アフガニスタンでは、ソ連が、軍事介入以来六年余りを経て、今なお駐留を続けていることは極めて遺憾であり、ソ連軍の全面撤退を含む政治解決のため、志を同じくする諸国と協力しつつ努力していく考えであります。
 中南米諸国においては、近年、民主化の進展が見られる一方、累積債務問題を初めとする経済社会困難の克服のため多大の努力が払われていますが、我が国としては、このような努力をできる限り支援していく考えであります。
 不幸にも、昨年、メキシコとコロンビアでは相次いで大災害が発生しました。私自身、大地震の直後、見舞いのためメキシコを訪れましたが、これら二国に対する迅速かつ適切な援助は所期の目的を達し得たと考えます。
 このような海外における緊急事態に対し、我が国としても、経済的支援のみならず、医療関係者、救助隊員などの速やかな派遣による総合的な協力体制を整え、我が国の善意を行動をもって示すべく、このたび国際救助隊の新設を含む国際緊急援助体制を整備することといたしました。
 いわゆる中米問題については、その平和的解決のためのコンタドーラ・グループを初めとする域内の和平努力を強く支援するとともに、中米・カリブ地域の発展のため、協力していく考えであります。
 アフリカでは、多くの国が、依然、構造的食糧不足を初めとする経済困難に直面しております。我が国は、この窮状に対する緊急援助を継続しつつ、中長期的観点から、我が国が提唱する「アフリカ緑の革命構想」を推進するとともに、人材の育成やアフリカの人々との触れ合いといった面でも協力関係を拡充し、相互理解を深めていく考えであります。
 我が国は、南アフリカにおける情勢の悪化を憂慮するものであり、一貫してアパルトヘイトに強く反対する立場から、今後とも国際社会と一致して、アパルトヘイトの撤廃と問題の平和的解決のためにできる限りの協力を行ってまいります。
 開発途上国の安定と発展への協力は、我が国が果たすべき重要な国際的責務であります。
 このような観点から、政府は、政府開発援助を引き続き拡充すべく、昨年九月、ODA第三次中期目標を設定しました。この初年度に当たる六十一年度予算においては、対前年度比七・〇%増のODA予算が計上され、目標達成に向けてよきスタートを切るものと考えます。
 同時に、厳しい財政事情のもと、効果的、効率的援助の実施がますます重要となっております。この観点から、私は昨年四月以来、各界有識者から成るODA実施効率化研究会を開催してまいりましたが、研究会におけるこれら有識者の意見も参考にして、一層効果的、効率的援助の実施に努力していく考えであります。
 開発途上国は、累積債務問題や一次産品価格の低迷など、多くの経済困難に直面しております。我が国としては、国際的な協力のもと、問題解決に取り組んでいく考えであります。また、我が国は、一千万人以上にも上る世界の難民に対する資金及び食糧援助、あるいはインドシナ難民の受け入れなどを通じて、今後ともこの問題に鋭意取り組んでまいります。
 本年は我が国の国連加盟三十周年に当たります。国際連合は、幾つかの問題を抱えながらも、創設後四十年を経て、国際社会全体にかかわる普遍的な国際機構として成長するに至りました。しかし、今日、真に実効性ある国際協力の場とするためには、国連みずからが行財政改革等の努力を通じて、機能の活性化を図ることが急務であります。この観点から、私は、昨年の国連総会で国連効率化のための賢人会議の設置を提唱し、今般、その設置が決定されました。我が国は提唱国としてこれに積極的に協力してまいる考えであります。
 本年はまた国際平和年であり、我が国は国連への協力を通じ、国際平和の達成に一層の努力を払いたいと考えます。
 昨年の国連総会では、頻発する国際的テロ事件に対応して、あらゆる形のテロを非難する決議が全会一致で初めて採択されました。テロ行為は国際社会に対する挑戦であり、我が国はいかなるテロに対しても断固反対の立場をとってきており、市民の平和と安寧を確保するための国際協力を推進していく考えであります。
 諸外国との摩擦が生じ、我が国に対する認識のずれが指摘される現在、諸外国との正しい相互理解のための努力は重要な課題であり、人物交流、日本語普及事業などの文化交流の充実に努めてまいります。
 また、地方自治体や民間団体などが行っている国民レベルの国際交流活動、そして地方の国際化への動きに対して積極的に協力していく考えであります。
 以上申し述べましたように、我が外交は多くの重要かつ厳しい課題を抱えております。このような外交を先見性を持って強力かつ機動的に推進していくためには、外交実施体制を強化拡充し、すぐれた情報機能を持ち、国際交渉力を高めることが急務であります。特に、対外経済協力、文化交流の実施、及び国際情勢のより的確な把握のための分析研究体制の整備に努めてまいりたいと考えます。
 また、年々増加する海外渡航者や在留邦人の生命、身体、財産の保護、海外子女教育などにつき十分な配慮を払っていくことも必要であります。
 今日の厳しい国際環境のもとで、来る二十一世紀へ向けて、世界の平和と繁栄のために果たすべき我が国の責務は重大であります。私は、かかる認識のもとに我が国の外交の諸課題に創意をもって能動的に行動する外交を展開してまいる決意であります。
 このためには、国民各位及び同僚議員の力強い御支援が不可欠であり、これまでの御協力に感謝申し上げるとともに、今後一層の御支援をお願いするものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(木村睦男君) 竹下大蔵大臣。
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(竹下登君) ここに、昭和六十一年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。
 我が国経済は、二度にわたる石油危機を初めとする幾多の試練を乗り越え、今や世界経済のほぼ一割を占めるまでに発展を遂げ、国民生活の着実な向上を見ました。その背景としては、我が国経済が自由貿易体制の恩恵を享受しつつ民間の創意と柔軟性を最大限に活用してきたことによるところが大きいと考えます。
 今後の我が国の進むべき道を考えてみますと、我が国経済がなし遂げた成長の成果をもとに国民生活の一層の向上を目指すとともに、現在我が国の占める国際的地位の重要性を考え、国際社会においてその地位にふさわしい役割を果たしていくことが必要であります。
 これらの目標の達成のためには、まず第一に、我が国経済の安定成長を確保していくことが肝要であります。
 そのためには、まず財政の対応力の回復を図らなければなりません。高齢化社会の到来など今後の社会経済情勢の変化に弾力的に対応し、我が国経済の安定成長を確保していくため、財政の対応力の回復は緊急を要する国民的課題であると考えます。
 また、市場経済を基本とする我が国経済におきましては、民間活力の活用を図っていくことが重要であり、そのための環境を整備していく必要があります。これまでにも民間活動の円滑化のための規制緩和等の施策を推進してきたところでありますが、今後とも、このような施策を一層推進し、我が国経済の安定成長の基盤を一層強固なものにしていく必要があると考えております。
 第二に、対外面におきましては、我が国経済が世界経済に占める重要性を一層自覚し、調和ある対外経済関係の形成を図っていく必要があります。
 そのためには、我が国みずから率先して自由貿易体制の維持強化を図り、経済摩擦の解消に取り組んでいかなければならないと考えます。経済摩擦の解消は、我が国経済のみならず、世界経済の安定と発展にも不可欠のものであります。
 以上の考え方に立って、私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、次の五つの課題を設定し、政策目標としてまいる所存であります。
 それらの課題とは、インフレなき持続的成長の確保、財政改革の強力な推進、税制の抜本的見直し、世界経済発展への貢献、金融の自由化及び円の国際化の促進、この五つであります。
 まず第一は、引き続きインフレなき持続的成長の確保を図っていくことであります。
 現在、我が国経済は、戦後最良の物価の安定が続く中で、民間設備投資を中心として緩やかな拡大を続けております。
 インフレなき持続的成長の確保は、さきに申し述べましたように、国民生活の向上を目指す上で必要不可欠なものであります。今後とも民間活力の一層の活用を基本としつつ、その確保に努めてまいる所存であります。
 このため、厳しい財政事情のもとで、昭和六十一年度予算におきましても、一般公共事業の事業費につき前年度以上の伸び率を確保し、また住宅減税を行うなど景気の維持拡大にはできる限りの配慮を払っており、昨年末には、これらの予算、税制等に係る内需拡大のための措置を取りまとめたところであります。今後、昨年十月の対策と今回の対策とをあわせ、その着実な実施を図ってまいる所存であります。
 金融面では、我が国金融は、現在、量的に緩和しており、長期金利も低い水準で推移しております。今後の金融政策の運営につきましては、従来同様、物価、景気、内外金利の動向、為替相場の状況等を見守りながら、適切かつ機動的に対処してまいる所存であります。
 第二は、財政改革を強力に推進することであります。
 財政改革の目的は、できるだけ早期に財政の対応力を回復することにより、我が国社会経済の活力を維持し、国民生活の安定と充実を図っていくことにあります。
 このため、政府は、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」において、昭和六十五年度までの間に特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めるという努力目標を示し、それに向けて懸命の努力を重ねてきたところであります。
 昭和六十一年度予算におきましても、昭和五十八年度以降四年連続で一般歳出を前年度以下に圧縮する等、歳出歳入両面にわたっての厳しい見直しに最大限の努力を払い、公債発行額を前年度の当初発行予定額に比し、七千三百四十億円減額することといたしております。
 しかしながら、このような努力を行ってもなお、昭和六十一年度予算においては、国債費が歳出予算の二割を占めるに至り、また昭和六十一年度末の公債残高は百四十兆円を超えることとなるなど、財政事情は極めて厳しいものとなっております。
 このため、政府は、今後とも財政改革を引き続き強力に推進してまいりたいと考えます。その際、中長期的視野に立ち、国、地方を通ずる行財政の守備範囲の見直しを進め、既存の制度、施策について、その改革にさらに努めていくことが肝要であります。これらの改革を進めていくに当たっては種々の困難が伴うものと思われますが、それに憶することなく、さらに一層の努力を払い着実にその歩を進めてまいる所存であります。
 第三は、税制の抜本的見直しを行うことであります。
 税制につきましては、税制調査会において、公平、公正、簡素、選択並びに活力といった見地に立って、シャウプ税制以来の抜本的見直しの御審議、御検討をいただいているところであります。これまで各税目につき一わたり御審議をいただきましたが、今後さらに検討を深めていただき、本年秋ごろには包括的な指針をいただく予定となっております。
 税制は、国民経済全体はもとより、国民生活や企業活動に密接な関係を有しており、その見直しに寄せられる国民の期待と関心は多大なものがあります。各方面から指摘されている税制のゆがみ、ひずみ及び重圧感を除去し、産業、就業構造の変化、所得水準の上昇と平準化を初めとする最近の社会経済の著しい変化と将来の我が国経済、財政の展望を踏まえた望ましい税制を確立することは、ぜひともなし遂げなければならない重要な課題であります。税制は歳入の根幹をなすものであり、国民各位の御理解と御協力のもとに、その幅広い支持に基づく新しい税制を確立し、安定した歳入構造を確保することを目指して検討を進めてまいる所存であります。
 第四は、我が国がその国際的地位にふさわしい責務を果たすため、世界経済の発展に貢献することであります。
 ここ数年、我が国の貿易、経常収支は、米国の財政赤字に基づく高金利等を原因とするドル高や、一次産品価格の低迷等を背景として大幅な黒字を続けております。この不均衡を是正するためには、基本的には国際的な経済環境の変化が必要であると考えられ、私としては、このため国際的な協調行動をとるべく努力してまいりました。この結果、昨年九月に五カ国蔵相・中央銀行総裁会議が開催され、為替レートの適正化のためのより密接な協力を図ることなどが合意されました。以来為替レートはドル高是正の方向で推移しており、今後貿易、経常収支の不均衡の是正に資するものと期待しております。
 他方、我が国としては、自由貿易体制の維持強化を図るとの見地から、新ラウンドを推進するとともに、率先して市場の開放と輸入の促進に努めることも重要と考えております。
 このため、政府は、昨年七月、「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」を策定し、千八百を超える品目の関税率の引き下げ、撤廃を本年一月一日から実施する等各般の施策の着実な実施に努めているところであります。
 さらに、昭和六十一年度関税改正におきましても、引き続き諸外国の関心の強い品目の関税の引き下げ等を措置することとしております。
 新ラウンドにつきましては、本年九月に開催される閣僚会議に向けて、交渉の早期開始のために鋭意努力してまいる所存であります。
 また、国際通貨制度につきましては、ウィリアムズバーグ・サミットの指示を受けて、十カ国蔵相会議及び代理会議において徹底的な検討が行われました。これに基づき、昨年六月の十カ国蔵相会議東京会合において、私は議長として、国際通貨制度をよりよく機能させるための現実的かつ漸進的な改善策の取りまとめに当たったところであります。そして、本年四月のIMF暫定委員会においては、この改善策の本格的な検討が行われることとなっております。
 我が国といたしましては、今後とも、諸外国と密接に協力して、国際通貨制度の機能の改善に積極的に貢献してまいる所存であります。
 一方、開発途上国の自助努力を支援し、もって世界経済の安定と発展に資することも我が国の大きな国際的責務となっております。経済協力につきましては、厳しい財政事情のもとではありますが、昨年九月に策定された第三次中期目標に沿って政府開発援助の着実な拡充に努めているところであります。
 また、累積債務問題につきましては、債務国において中長期的観点に立った調整政策を一層推進するとともに、それを支援する国際機関、債権国政府及び民間銀行の協調した真剣な努力が引き続き重要であると考えております。
 第五は、金融の自由化及び円の国際化の促進であります。
 経済構造の変化や経済全般にわたる国際化の進展等に対応して金融の自由化及び円の国際化を進めていくことは、我が国経済の効率化と発展に資するものであると同時に、我が国が世界経済の発展に貢献していく上で有意義なものであると考えております。
 このような考え方に立ち、金利の自由化、短期金融市場の整備、外国金融機関の我が国へのアクセス改善、ユーロ円市場の発展のための措置を逐次とってきたところであり、昨年七月に策定した「アクション・プログラムの骨格」においても、預金金利の自由化等可能な限りの金融の自由化及び円の国際化のための措置と実施スケジュールを盛り込んだところであります。
 また、いわゆるオフショア市場についても創設に向け準備を進めております。
 他方、このような金融の自由化を進めるに際しては、信用秩序に混乱を来さないようにするための方策を整備する等、金融自由化の環境整備を図っていく必要があります。このような観点から、金融機関の健全経営確保のための方策の充実、金融機関の経営危機に対応するための預金保険制度の拡充等各般にわたる措置を講じていきたいと考えております。
 我が国の金融の自由化及び円の国際化に対しては、諸外国から強い期待が寄せられており、米国を初め、英国、西独、EC委員会とも金融協議の場を設け、意見交換、意思疎通に努めているところであり、今後とも、相互の協調と理解の増進に努めてまいりつつ、金融の自由化及び円の国際化を積極的に進めてまいる所存であります。
 次に、昭和六十一年度予算の大要について御説明いたします。
 昭和六十一年度予算は、引き続き財政改革を一層推進するため、特に歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本とし、あわせて歳入面についてもその見直しを行い、これにより公債発行額を可能な限り縮減することとして編成いたしました。
 歳出面におきましては、既存の制度、施策の改革を行うなど徹底した節減合理化を行い、全体としてその規模を厳に抑制したところであります。
 概算要求の段階から、引き続き厳しい要求基準のもとに、各省庁において、それぞれ所管の予算について根底から洗い直し、優先順位の厳しい選択を行ったところでありますが、その後の予算編成に当たりましても、あらゆる分野にわたり経費の節減合理化に努めるとともに、社会経済情勢の推移に即応した財政需要に対しましては、財源の重点的、効率的配分に努めることといたしました。
 補助金等につきましては、引き続きその整理合理化を推進するとともに、事務事業の見直しを積極的に進めながら、補助率の総合的見直し等を行うことといたしております。また、厚生年金の国庫負担の繰り入れにつきましても、所要の特例措置を講ずることといたしております。なお、これらの措置につきましては、別途、国の補助金等の臨時特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 なお、国家公務員の定員につきましては、定員削減計画を着実に実施するとともに、新規増員を厳しく抑制いたしました。この結果、行政機関職員について四千五百二十八人に上る大幅な縮減を図ることといたしております。
 以上の結果、一般歳出の規模は三十二兆五千八百四十二億円と前年度に比べて十二億円の減に圧縮いたしております。これは昭和五十八年度以降四年連続の対前年度減額であります。
 これに国債費及び地方交付税交付金を加えた一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ、三・〇%増の五十四兆八百八十六億円となっております。
 次に、歳入面につきまして申し述べます。
 歳入の基幹たる税制につきましては、現在進められている税制全般にわたる抜本的見直しとの関連に留意しつつ、昭和六十一年度改正において、住宅取得者の負担の軽減、民間活力の活用等を通じ、内需の拡大等に資するため所要の措置を講ずるとともに、最近における社会経済情勢と現下の厳しい財政事情にかんがみ、税負担の公平化、適正化を一層推進する観点から租税特別措置の整理合理化等を行うほか、たばこ消費税の税率を臨時措置として引き上げることとしております。
 税の執行につきましては、今後とも、国民の信頼と協力を得て、一層適正、公平な税務行政を実施するよう、努力してまいる所存であります。
 また、税外収入につきましては、極めて厳しい財政事情にかんがみ、可能な限りその確保を図ることといたしております。
 公債につきましては、以上申し述べました歳出歳入両面にわたっての最大限の努力により、その発行予定額を前年度当初予算より七千三百四十億円減額し、十兆九千四百六十億円といたしました。その内訳は、建設公債五兆七千億円、特例公債五兆二千四百六十億円となっております。この結果、公債依存度は二〇・二%となり、前年度当初予算の二二・二%より二・〇ポイント低下しております。特例公債の発行等につきましては、別途、昭和六十一年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 また、昭和六十一年度においては、十一兆四千九百二十四億円の借換債の発行を予定しており、これを合わせた公債の総発行額は二十二兆四千三百八十四億円となります。これらの公債につきましては、国債引受団による引き受け、資金運用部資金による引き受け及び公募入札により円滑な消化を図ることといたしております。
 財政投融資計画につきましては、内需の拡大、地方財政の円滑な運営など、政策的な必要性を踏まえ、積極的かつ重点的、効率的な資金配分に努めることとしております。
 この結果、昭和六十一年度の財政投融資計画の規模は二十二兆一千五百五十一億円となり、昭和六十年度当初計画に対し六・二%の増加となっております。
 次に、主要な経費につきまして申し述べます。
 極めて厳しい財政事情のもと、昭和六十一年度予算におきましても、あらゆる経費にわたり経費の徹底した合理化、効率化を図っておりますが、他方、限られた財源の中で質的な充実に配慮することとし、特に、真に恵まれない人々に対する施策等については、きめ細かな配慮を行うとともに、中長期的観点から対応を図る必要があるものについては重点的に配意したところであります。
 まず、社会保障関係費、文教及び科学振興費につきましては、今後における高齢化社会の進展等社会経済情勢の変化に対応して、今後とも各種施策が長期的に安定的かつ有効に機能するよう、制度面、運営面において不断の見直しを行うことが必要であり、かかる観点から、老人保健、失業対策事業について制度の改革を行うほか、医療保険、年金及び公立文教施設費等についてその合理化、効率化を進めることとしております。また、特に、老人や心身障害者に対する在宅福祉施策の充実、高齢者の就業機会の確保、教育環境の整備、基礎科学研究の充実などの施策の推進に努めております。
 経済協力費につきましては、昨年九月に策定された第三次中期目標を踏まえ、政府開発援助予算の増額について特段の配慮を行い、防衛関係費につきましても、中期防衛力整備計画を踏まえつつ、他の諸施策との調和を図りながら、その質的充実に配意いたしております。また、エネルギー対策費につきましても、中長期的な需給見通しを踏まえ、各種施策を着実に推進することとしております。
 中小企業対策費につきましては、最近の中小企業を取り巻く国際的な環境変化に対応し、その近代化、構造改善を促進していくための各種の措置を講ずることとしております。また、農林水産関係費につきましては、需要の動向に即応した生産の再編成を行いながら、生産性の高い農業の実現を図ることを基本に、施策の重点的、効率的な推進に努めることとし、また、食糧管理費の節減合理化をさらに推進したところであります。
 国鉄財政につきましては、新経営形態への円滑な移行に資するための特別の措置を講ずるとともに、経営の合理化等をさらに推進することとしております。
 公共事業関係費につきましては、厳しい財政事情にかんがみ、総額として前年度を下回る水準としておりますが、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備に重点的に配意するとともに、内需の拡大に配慮し、一般公共事業の事業費につきましては、民間資金の活用など種々の工夫を行うことにより、前年度以上の伸び率を確保することといたしております。
 昭和六十一年度の地方財政につきましては、補助率の見直しによる影響等を織り込んで一兆一千七百億円の財源不足が見込まれますが、国、地方のたばこ消費税の引き上げにより所要の財源確保を図る等の地方財政対策を講ずることとし、その適正な運営に支障の生じないよう配慮しております。地方団体におかれましても、歳出の節減合理化をさらに推進し、より一層有効な財源配分を行うよう要請するものであります。
 この機会に、昭和六十年度補正予算につきまして一言申し述べます。
 昭和六十年度補正予算につきましては、災害復旧費の追加、給与改善費、国民健康保険特別交付金、義務的経費の追加等、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となったやむを得ない事項について措置を講ずることといたしております。
 まず、災害復旧につきましては、建設公債三千五百三十億円の発行によりその財源を確保し、復旧の促進を図ることといたしました。
 その他の経費につきましては、既定経費の節減、税外収入の増収等その財源の捻出に最大限の努力を払いましたが、なお財源が不足するところから、やむを得ず、前年度の決算上の純剰余金千七百五十五億円について、臨時異例の措置ではありますが、その全額を一般財源に充当することとし、さらに税収が当初予算額を四千五十億円下回ると見込まれることから、同額の特例公債の発行により対処するのやむなきに至りました。
 この結果、昭和六十年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し七千二百三十二億円増加して、五十三兆二千二百二十九億円となっております。
 なお、一般会計及び特別会計において、内需拡大に関する対策の一環として、一般公共事業に係る国庫債務負担行為三千九百八十七億円を追加計上し、これにより事業費として六千億円を確保することといたしております。
 また、今回の一般会計補正予算において所得税及び法人税の収入見込み額を減額いたしておりますが、地方交付税交付金につきましては、特に立法措置を講じてこれを減額しないこととし、地方財政の運営に支障を生じることのないよう配慮しているところであります。
 以上、昭和六十一年度予算及び昭和六十年度補正予算の大要について御説明いたしました。御審議の上、何とぞ速やかに御賛同くださるようお願いを申し上げます。
 我が国は、戦後、英知ある先人たちの努力と忍耐の結果、現在の繁栄を築き上げることができました。今、我々の責務は、冒頭にも申し上げましたように、内外の調和ある一層の繁栄を築き、これを我々の子孫に伝えていくことであります。
 そのためには、これまで申し述べました諸課題を一歩一歩着実に実行していく必要があります。財政改革や税制の抜本的見直しを初めとするこれらの諸課題は、一朝一夕には解決しがたいものではありますが、今我々が創意と忍耐をもってこの解決に取り組むことは、未来における我が国社会経済の一層の発展のために大きな貢献をなすものと確信をいたしております。
 国民各位の一層の御支援と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(木村睦男君) 平泉国務大臣。
   〔国務大臣平泉渉君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(平泉渉君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について所信を申し述べたいと存じます。
 我々は、今、大きな時代の変化を認識し、日本の経済構造を一層高次なものに発展させることによって、世界経済の最も主要な構成員の一人としての責任を担おうとしております。このときに当たって、国民も企業も政府も、我が国経済の現段階の位置づけを確認しておく必要があると考えます。
 我が国経済は、戦後の復興、高度成長を実現した後、石油危機とインフレの十年という調整過程を経て、今、新しい情報・通信技術の進展、消費のサービス化、国境を越えた経済活動の展開に代表される新しい成長の時代を迎えつつあります。
 この新たな展開に即応して、政府の政策努力と相まって、国民全体がその柔軟な適応力を生かし、活力と創造性に富んだ経済と、豊かで安定した国民生活をつくり育てていくことが今や時代の要請であると痛感するものであります。このような新しい成長の成果を、国際的に立ちおくれている社会資本ストックの充実、今後迎える高齢化社会への準備等に結びつけるなど的確に対応していくことが肝要であると考えます。
 ここで、内外経済の現状について申し述べたいと存じます。
 世界経済は、アメリカ経済の拡大速度が一昨年半ば以降鈍化したものの、総じて緩やかな成長を続けております。
 しかし、現在の世界経済には、アメリカの財政赤字と経常収支の赤字の拡大、EC諸国等における高失業の継続、我が国の多年にわたる財政赤字と経常収支の大幅な黒字、発展途上国の累積債務問題、一次産品価格の低迷等、種々の困難な問題が存在しております。
 最近に至り、これら諸問題の解決に向けて実効ある国際的な政策協調の機運が高まりつつあります。特に、為替レートについては、昨年九月の五カ国蔵相会議における合意を契機として、ドル高修正が急速に進みました。
 特に、我が国経済については、物価の安定が続く中で、昭和五十八年春以降、景気は上昇を続けてきました。当初、輸出主導型で始まった今回の景気回復は設備投資を初めとする国内需要の拡大に及ぶようになり、第一次石油危機後、最も息の長い景気上昇過程となっております。最近は、先端的技術革新等に伴い設備投資が総じて着実に増加し、個人消費などその他の国内需要も緩やかに増加するなど、景気動向にはばらつきが見られるものの、全体として緩やかな拡大を続けております。
 このような内外経済動向を勘案し、政府は、対外経済対策、内需拡大に関する対策等、機動的な経済運営に努めてきたところであり、昭和六十年度の実質成長率は四・二%程度になるものと見込まれます。
 このような内外経済情勢のもと、政府は、特に次の諸点を基本として、今後の経済運営に努めてまいりたいと考えております。
 まず、第一の柱は、内需を中心とした経済の持続的成長を図るとともに、雇用の改善を図ることであります。
 政府は、昨年十月、「内需拡大に関する対策」を決定し、その実行に努めてきておりますが、昨年末、昭和六十一年度予算決定と同時に、予算、税制措置を伴う施策について再び「内需拡大に関する対策」を決定したところであります。すなわち、財政投融資等の活用により、一般公共事業の事業費につき前年度以上の伸び率を確保することとしたほか、住宅減税を行い、設備投資促進のための税制上の措置を講ずるとともに、いわゆる大規模プロジェクトの着手等、民間活力の活用を図ることとし、所要の措置を講ずる等を中心として諸施策を行うこととしました。
 今後、内需振興を図るに当たっては、機動的な経済運営に努める一方、民間活力が最大限発揮されるよう環境整備を行い、設備投資等積極的な民間投資の喚起を促すとともに、特に、その根幹であるとつとに指摘されている国民の住生活及び住環境の整備改善について、地価の安定等を図りつつ、さらにその促進に努めてまいりたいと考えます。
 また、昨年九月以降、適切な円相場の定着を図るとの基本方針のもとに金融政策の運営を行ってきているところでありますが、今後についても、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、金融政策の機動的な運営を図る必要があります。
 今後は、物価が引き続き一層安定するもとで、円高による交易条件の改善を通じた実質所得の増加が好影響を与え、さらには、技術革新投資等の独立的な設備投資や減税等による住宅投資の増加も期待できることから、内需の寄与度が上昇するとともに、これまで緩やかな増加であった個人消費等家計部門が徐々にその伸びを高め、内需の各項目はよりバランスのとれた姿になるものと見込まれます。他方、外需の成長率への寄与度は、円高の影響でむしろマイナスとなると見込まれます。
 最近の急速な円高傾向については、経常収支の黒字の縮小のために望ましいとの基本的認識がありますが、その我が国経済に及ぼす効果には、当面、プラスとマイナスとの両面があり、円高の進行の過程で生じる国内経済への影響を十分考慮しつつ、円高のプラスの面が国民全体に及ぶよう適切な経済運営を行ってまいる所存であります。
 このような政府の諸施策と民間経済の活力とが相まって、昭和六十一年度の我が国経済は実質で四・〇%程度の成長を達成するものと見込まれます。
 第二の柱は、世界経済の成長と安定への積極的な貢献と、経済摩擦の解消に向けての調和ある対外経済関係の形成であります。
 戦後、我が国が、世界の自由貿易体制のもとで、その経済規模において世界経済の一割を占めるに至った現在、我が国経済の動向いかんが世界経済の発展に対して大きな影響を及ぼす実情にあります。このような我が国経済の国際的責任の重大化に呼応して、我が国のあらゆる政策運営は、世界的視野に立ち、世界経済の成長と安定に対して主要な責任を分担するとの立場から進めていくべきであると考えます。
 我が国は、世界経済の各面にわたり次々と新たな問題が生じ、ひいては各国間において経済上の摩擦が激化している現状を深刻に受けとめ、各国と協力し、その国際的地位にふさわしい効果的な対策をとっていく決意であります。
 このような事態の中で開催される次回の東京での主要国首脳会議は、今後の世界経済の発展にとって極めて重要な会議となるものと考えます。我々としては、世界経済の問題点を十分に把握し、そのインフレなき持続的成長を共通の目標とした国際協調が増進されるよう、あらゆる準備を進め、意義ある主要国首脳会議とすべく最大限の努力を払っていく考えであります。
 特に、我が国の経常収支の大幅な不均衡については、政府は累次にわたり新しい対策を決定し、その推進に努めてまいりました。昨年は、四月の「対外経済対策」の決定、七月の「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」の策定、九月の五カ国蔵相会議における為替レート適正化のための合意、十月及び十二月末の「内需拡大に関する対策」の決定と、切れ目なくあらゆる努力を傾注してまいりました。
 今後とも、その規模においてアメリカに次ぐ我が国市場の一層の開放、なかんずく、製品輸入の拡大に向けて一段の取り組みを行うほか、適切な円レートの維持に努めるとともに、内需振興に努めてまいりたいと考えております。
 翻って考えれば、我が国経済社会のこれまでの発展過程が欧米諸国と比べて大きく異なったものであったため、彼我の制度、慣行の相違等に根差したさまざまな経済摩擦を招くことが少なくありません。我が国としては、基準・認証等非関税障壁の面においても、国民の合意を得ながら、世界各国が十分納得する制度、慣行をつくり上げていくための不断の努力が必要であります。これまで我が国経済社会に深く根の張った制度、慣行であっても、我が国の国際的立場にふさわしいものとするため、その抜本的な見直しを行うことが求められていると考えます。
 加えて、新たな多角的貿易交渉の開始に向け、率先して着実な準備進展に貢献するとともに、発展途上国の経済社会開発等に資するため、昨年九月に政府開発援助の第三次中期目標を設定し、その初年度に当たる昭和六十一年度予算においても重点的な配慮が行われたところであります。今後とも経済協力については一層の拡充と効果的な推進を図ってまいる所存であります。
 第三の柱は、国民生活の安定と向上を図ることであります。
 最近の我が国の物価動向を見ますと、世界的に物価の安定化が進む中で、特に我が国の物価が極めて安定しております。また、最近の急速な円高傾向は物価の安定に一層寄与するものと考えております。
 今後の物価動向については、全体として安定基調で推移し、昭和六十一年度は、卸売物価が一・八%程度の下落、消費者物価が一・九%程度の上昇にとどまるものと見込んでおります。
 政府としては、今後とも物価の動向に細心の注意を払いながら、機動的な政策運営に努めるとともに、公共料金についても、物価及び国民生活への影響と、最近の円高傾向の及ぼす影響をも十分考慮して、厳正に取り扱ってまいりたいと考えております。
 さらに、国民生活の一層の安定と向上を実現していくためには、今後、特に、人生八十年時代にふさわしい豊かな長寿社会を築いていくことが重要課題であり、そのための総合的方策を明らかにし、その推進に努めてまいる所存であります。
 また、高齢者の増加、サービス産業、情報産業の発展、国境を越えた経済活動の進展など新たな事態のもとで生じる消費者問題に適切に対応するとともに、悪質な商取引への対応を含め、各般の消費者保護施策の充実を図ってまいりたいと考えます。
 最近、我が国における製品輸入の増大と外国企業の活動の拡大とが各国から大きく期待されており、輸入品流通のあり方が重要な問題となり始めております。今後とも、流通にかかわる実態を常に注視しつつ、輸入促進の体制整備を図り、外国製品と外国企業とに対して広く門戸を開放するよう努める必要があると考えます。これは、消費者にとっての選択の幅を広げ、国民生活を豊かにすることに通ずるものと考えます。
 次に、中長期の経済運営について申し述べたいと存じます。
 昨年暮れには、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」について第二回目の見直し作業を行い、その結果を「経済審議会報告」として公表いたしました。
 同報告は、対外経済摩擦への対応を初めとする一九八〇年代後半の重要な政策課題を新しい成長の中で解決していくことが必要であるとして、「拡大均衡の下での新しい成長」をうたっております。
 こうした新しい成長の動きを一層促進するためには、規制緩和を初め民間活力を最大限発揮させるための環境を整備するとともに、基礎的・先端的分野での創造的技術開発の推進、高度情報社会の建設等を図ることが必要であります。また、このことは、我が国産業の新たな中核となるべき産業の発展を促し、高次の国際分業を形成する上でも重要なことであると考えます。
 このようにして新しい成長の成果を豊かで余裕のある国民生活の形成に結びつけるべく、住宅・社会資本の計画的整備、健全なレクリエーション産業の発展、長寿社会の到来に対応した経済社会システムの構築等を行うことが肝要であると考えます。
 特に、我が国のみならず、先進工業国にとって共通の極めて重要な課題は、高度に発展した豊かな工業社会の成果をいかにして大都市だけでなく、地域社会全般に均てんさせるかであります。このような観点から、多極分散型の国土の形成等に留意しつつ、住宅・社会資本の整備に努めるとともに、個性豊かな地域づくりと交通、通信ネットワークの整備等を進めるなど、地域経済の活性化を図るための総合的な施策を明らかにし、推進していくことが重要であると考えます。
 今後とも、情勢の変化に弾力的に対応しつつ、適切な中長期の経済運営に努めてまいりたいと考えております。
 以上、我が国経済の当面する課題と経済運営の基本方向について所信を申し述べました。
 日本経済は、二度にわたる石油危機という激動の波に洗われつつも、その試練を経て、現在、情報・通信を初めとする技術革新のうねりと、これらを背景とする高度情報社会への動きが急速に進展しつつあります。これらを牽引力として日本経済の新たな成長と発展を求める期待が高まっております。
 この新しい成長と発展の過程において、国民生活の一層の充実向上を図っていくことが経済運営の基本目標であると考えます。
 我が国経済が、その潜在力を最大限発揮させることにより、世界経済の成長と安定に大きく貢献していくことは十分に可能であると確信するものであります。
 私は、こうした認識のもと、今後の我が国経済のかじ取りを行っていく所存であります。
 国民の皆様の御支援と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
#12
○議長(木村睦男君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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