くにさくロゴ
1985/04/25 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 本会議 第13号
姉妹サイト
 
1985/04/25 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 本会議 第13号

#1
第104回国会 本会議 第13号
昭和六十一年四月二十五日(金曜日)
   午後三時三十二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十三号
  昭和六十一年四月二十五日
   午後三時三十分開議
 第一 扶養義務の準拠法に関する法律案(内閣
  提出)
 第二 天皇陛下御在位六十年記念のための十万
  円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第三 東京湾横断道路の建設に関する特別措置
  法案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一より第三まで
 一、研究交流促進法案(趣旨説明)
     ―――――・―――――
#3
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
 日程第一 扶養義務の準拠法に関する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。法務委員長二宮文造君。
    ━━━━━━━━━━━━━
   〔二宮文造君登壇、拍手〕
#4
○二宮文造君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 本法律案は、我が国が扶養義務の準拠法に関する条約を締結することに伴い、国内法上、所要の措置を講ずるため、夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養義務の準拠法に関し必要な事項を定めようとするものでありまして、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、扶養義務は、原則として、扶養権利者の常居所地法によって定めるものとすること。第二に、傍系親族間及び姻族間の扶養義務については、扶養義務者は、一定の要件のもとに、扶養権利者の請求に対して異議を述べることができるものとすること。第三に、離婚をした当事者間の扶養義務は、その離婚について適用された法律によって定めるものとすること。第四に、公的機関の費用償還を受ける権利の準拠法、扶養義務の準拠法の適用範囲等について所要の規定を設けるものとすること等であります。
 委員会におきましては、ヘーグ国際私法会議の構成とそこで採択された諸条約の批准状況、扶養義務等に関する渉外事件数とその内容、常居所地の意義、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約との関係、各国民法の定める扶養義務者の範囲と扶養の程度、公序の具体例等について質疑が重ねられましたほか、参考人の意見を聴取するなど慎重に審査を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終わりましたところ、別に討論もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#6
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(木村睦男君) 日程第二 天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長山本富雄君。
    ━━━━━━━━━━━━━
   〔山本富雄君登壇、拍手〕
#8
○山本富雄君 ただいま議題となりました天皇陛下御在位六十年記念のための十万円及び一万円の臨時補助貨幣の発行に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、天皇陛下御在位六十年を記念するため、金を素材とする十万円及び銀を素材とする一万円の臨時補助貨幣を発行できることとするほか、それらの法貨としての通用限度及び量目等についての規定を設けようとするものであります。
 委員会におきましては、記念貨幣の発行目的、経緯及び公平、安全な引きかえ方法、退蔵が予想される記念貨幣発行の貨幣制度上の問題、金地金調達に伴う金価格高騰の懸念等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録に譲ります。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して近藤忠孝委員より本法律案に反対する旨の意見が述べられました。
 討論を終わり、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#10
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#11
○議長(木村睦男君) 日程第三 東京湾横断道路の建設に関する特別措置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。建設委員長小山一平君。
    ━━━━━━━━━━━━━
   〔小山一平君登壇、拍手〕
#12
○小山一平君 ただいま議題となりました東京湾横断道路の建設に関する特別措置法案につきまして、建設委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、民間の能力及び資金を活用して東京湾横断道路の建設を図るための特別の措置を定め、その建設を促進しようとするものでありますが、その主な内容は、第一に、日本道路公団は、東京湾横断道路の建設及び管理に関する事業を行うことを主たる目的とする株式会社と東京湾横断道路の建設、管理について、建設工事は会社が行い、公団がその費用を長期間に分割して会社に支払うこと等を内容とする協定を締結し、これに従いその業務を行わなければならないこと。第二に、政府は、公団と締結した協定に従い事業を行う会社に対し、無利子の貸し付け、債務の保証等を行うことができるとともに、割引債の発行等を認めること等であります。
 委員会におきましては、現地調査、参考人の意見聴取、大蔵委員会、運輸委員会との連合審査を行う等慎重な審査が行なわれましたが、その詳細は会議録により御承知願います。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党の浜本委員より反対、自由民主党・自由国民会議の工藤理事より賛成、日本共産党の上田委員より反対の意見が述べられ、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し、工藤理事より、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案に係る附帯決議案が提出され、多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(木村睦男君) 本案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。上野雄文君。
   〔上野雄文君登壇、拍手〕
#14
○上野雄文君 私は、日本社会党を代表して、内閣提出の東京湾横断道路の建設に関する特別措置法案に対し、反対の意向を表明するものであります。
 民間活力、略して民活、中曽根総理就任以来、私どもはこの言葉を耳にたこができるほど聞かされてまいりました。地方公共団体の固有の仕事である清掃や給食の仕事を下請に出すのも民活ならば、公的な健康保険や年金の給付率の引き下げにより、その分を民間会社の保険や年金によりカバーさせるのも民活、住民運動によって生まれた建築規制の緩和による民間企業に好きなようにビルを建てさせるのも民活、そして、国民に理解しがたい事業実施形態によって、かつてない大型の道路を海の中にまでつくってその支払いを国民に回そうというのも民活、それがただいま議題となっているこの法案であります。
 さて、民活の名のもとに国民経済に対する政府の役割を放棄し、何でもかんでも市場経済に任せてしまえばうまくいくという、そういう信念によって政策を進めてこられた総理の考え方に対して、私は大きな疑問を持っているのであります。
 その象徴的なものとして、為替相場を挙げることができましょう。介入を控え、市場経済に任せた結果は、ついに一ドル百六十円台になるという大変な事態に立ち至っているではありませんか。今や、輸出関連中小企業を中心として、倒産や失業におびえるという状態が出ています。今から先進諸国に協調介入を求めたとしても、非常におくれたタイミングと言わざるを得ないでありましょう。このように、政府がやるべきことをやらずに後からあわてふためいても後の祭りであり、これが民活の正体と言うべきでありましょう。そして、今回の東京湾横断道路に関しても同様であろうと言わざるを得ないのであります。
 さて、改めて反対の理由を申し上げます。
 本法律案に直接関連するところのいわゆる新会
社の事業形態が極めて非合理的であるということであります。簡単に言うならば、事業のリスクはすべて公団が背負い、新会社はリスクを負わないまま、ぬくぬくとした環境の中で事業を行うことができるということであります。これで果たして総理が期待をされているような民間活力が生まれてぐるのでありましょうか。私は、その結果は、あなたの期待を裏切るものとなるものと考えます。臨調が指摘している特殊法人の悪い面が強く出てくることは、火を見るよりも明らかであろうと思います。
 さらに、工事に当たっては、その経費の水増し、工事の手抜きなどが行われないという保証はどこにもありませんし、しかも新会社による事業の発注は随契でありますから、新会社に出資する民間企業は、自社もしくは関連会社に発注するよう便宜を図ることも可能であります。これでは、これまで幾つもの汚職、疑獄の事件がありましたが、この反省なしに金権腐敗の温床をつくることになりかねません。この面からも、せめて競争入札を原則とする公団主体方式が強く望まれていることは当然と言うべきであります。新会社は、リスクを負わず、うまい汁を吸うという、文字どおりこんなうまい話はありませんから、民活の名による事業形態を公団によるものと見直すよう強く求める立場から、反対の第一の理由とするものであります。
 第二の反対の理由は、東京湾横断道路そのものの価値に疑いを持つものであります。
 千葉県木更津沖の磐津干潟におけるノリ、アサリを初めとする水産業への影響、人工島、橋脚などによる航行安全への影響、潮流の変化に伴う水質への影響、そして川崎−木更津間のカーフェリーへの影響などなどを考えるとき、果たしてこれらの犠牲を出してまでやるのかという疑問であります。ましてや、建設省と道路公団による二十年来の調査の最終結果がいまだに公表されておりませんし、判断材料が決定的に不足しているという中で着工に踏み切るにはどうしても納得がいかないのであります。
 反対の第三の理由は、急速な円高によるデフレが懸念されている今日、この事業がどれだけ内需拡大につながり、国民生活の向上に貢献できるかということであります。
 事業費総額一兆一千五百億円、その資金調達には周辺地方自治体などが六百億円の負担をさせられるのでありますが、さらにつけ加えなければなりませんことは、横断道路が有効に活用されるためには、周辺関連道路網の整備のために、新たに現時点での見積もり七兆八千億円以上が必要とされると言われています。これらを見ますと、一大巨大都市集中型の大型プロジェクトであります。国民全体が望む、急を要する減税や福祉増進の内需拡大に結びつく政策と比べ、余りにも大企業優先の事業であると言わざるを得ないのであります。貿易黒字解消、国際的な孤立化を避けなければならないこの時期にこの事業を選ぶ理由は、対外的な見てくれのものであると言われてもいたし方ないではありませんか。
 私は、重ねて、このような偏った事業はその実施を見送り、国民大衆に利益を及ぼす内需拡大政策を実行すべきであると強く主張をいたしまして、反対の討論を結ぶものであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(木村睦男君) これにて討論は終局いたしました。
#16
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#17
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#18
○議長(木村睦男君) この際、日程に追加して、
 研究交流促進法案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。河野国務大臣。
    〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(河野洋平君) 研究交流促進法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 資源に乏しい我が国が、科学技術の振興にその立国の基盤を求めることが不可欠であることは申すまでもありません。特に、創造性豊かな科学技術の振興が重要な政策課題となっており、この点で国の果たすべき役割が大きいこともあって、国の研究に対する期待はますます増大をいたしております。
 一方、今日、研究が高度化するにつれて多分野にまたがる研究が多くなっており、国の研究の促進に当たっては、研究組織の枠を超えた研究交流を積極的に推進し、資金、人材等の研究資源の効率的かつ効果的な活用を図ることが極めて重要となっております。
 国の研究は一般行政事務と異なる特質を有しておりますが、これについても公務員制度、財産管理制度等の一般原則よって律せられるため、国の研究に関する交流の促進を図る上での条件が十分整っているとは言えない状況にあります。
 このような状況を踏まえ、昨年七月、臨時行政改革推進審議会が取りまとめた行政改革の推進方策に関する答申では、国立の試験研究機関及び大学と民間等との間の研究交流を円滑に促進する上で必要な諸制度の整備、改善に努めるよう求めております。
 本法律案は、以上にかんがみ、国の研究に関し国以外の者との交流を促進するために必要な法制上の新たな措置について定めることにより、国の研究の効率的推進を図ることを目的とするものであり、以下の事項をその内容といたしております。
 第一は、試験研究機関等において研究に従事する研究公務員に外国人を任用できるようにすることであります。
 第二は、研究公務員に職務専念義務の免除による学会等への出席の道を開くことであります。
 第三は、国の委託研究及び国と国以外の者との共同研究の効率的推進のため、研究公務員を休職により当該研究の相手方である民間企業等の研究に従事させる場合、退職手当上の不利益をなくすことであります。
 第四は、国の受託研究の成果から生まれた特許権等に関する取り扱いを改善することであります。
 第五は、外国政府等との共同研究の成果から生まれた特許権等について、当該外国政府等に対し
無償または廉価による使用を認めることができるようにするとともに、外国政府等との共同研究の実施に伴い生ずる当該外国政府等に対する損害賠償の請求権を放棄できるようにすることであります。
 第六は、研究交流の促進を図るため特に必要がある場合で、試験研究機関等が行っている研究と密接な関連を有し、その推進が特に有益であると認められる試験研究を行う者に対し、試験研究機関等の施設を廉価で使用させることができるようにすることであります。
 第七は、国は、本法律案により、国の研究に関し国際的な交流を促進するに当たっては、条約その他の国際約束を誠実に履行すべき義務並びに国際的な平和及び安全の維持について特別の配慮を払うものとすることであります。
 これらの措置を講ずることにより、国の研究に関し研究交流が促進され、研究がこれまで以上に効率的、効果的に進められるものと確信しております。
 以上が研究交流促進法案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○議長(木村睦男君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。稲村稔夫君。
   〔稲村稔夫君登壇、拍手〕
#22
○稲村稔夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました研究交流促進法案について、総理並びに科学技術庁長官に質問したいと存じますが、本論に入ります前に、総理にぜひお尋ねしておきたいことがございます。
 それは、先ほどのニュースで、自民党の稻村佐近四郎衆議院議員が撚糸工連の問題で任意出頭を求められ、取り調べが始まったと報ぜられております。この撚糸工連の問題については、我が党も予算委員会でこれを鋭く追及をしてきたところでございますけれども、こうした政治家への波及というものは、それこそ議員として襟を正していかなければならない問題だというふうにも思います。同時に、これが表面化いたしましてからもうかなりの日時が経過をしているわけでありますが、同議員は、総裁派閥にも所属をしているそうでございますし、これまでの経過の中でも、私は、襟を正したきちんとした対応を本来しておられれば、もっと早く問題が処理できたのではないかとも考えられるわけであります。そういう意味で、自民党総裁を兼ねておられます総理、この問題をどのように考えておられますか、そのお考えを聞きたいわけであります。
 私は、念のために申し添えておきますが、遠い先祖ではあるいはつながっておるかどうかわかりませんけれども、私も名字が同じでありますから大変迷惑をしております。そのこともひとつよろしくお願いしたいと存じます。
 そこで、法案の内容について御質問申し上げる前に、またさらに総理に伺っておきたいと存じます。
 それは、我が国における科学技術の研究について政府としてはどのような基本的観点を持っておられるかということであります。
 私は、我が国においては、学問としての科学、あるいはその学問を利用して社会に貢献するために行われる科学技術の研究というものは、平和目的と利用の範囲のもとに、研究者にその研究の自由が保障されるというのが我が国の原則であると思いますが、その点、総理はどのように考えておられるか、まずお聞きをしておきたいと思います。
 そこで、提案をされた法案についてであります。
 まず第一は、本法案がその対象としている国立試験研究機関の研究職の取り扱いについて、整合性を欠いているのはなぜかという点であります。
 一方では、教育公務員特例法の適用を受ける大学関係の研究者がその対象から除外されておりまして、もう一方では、防衛庁設置法による自衛官の研究者が適用の対象に加えられているわけであります。もしも、大学を除く理由が、身分法第三条及び第四条については既に特別立法があり、第五条については臨教審答申を待って検討することを予定しているということにあるとすれば、大学の場合とは全く違うといたしましても、特異な身分にある自衛官について、なぜ本法案から除外して別の対策が立てられなかったのか。別に法案を用意して国会に提出するなど、もっと他に適切な方策がとられてしかるべきだったと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
 マスコミの報ずるところでは、科学技術庁における原案検討の経過の中で、初めの原案の段階では一般職の研究者のみを対象にしたものだったようでありますけれども、なぜか最終案には自衛官の研究者が対象に加えられたということであります。そしてそれは、総理の制服組を排除する理由はないとの判断によるとも伝えられているわけであります。総理、それがもし事実であるとすれば、あなたはなぜ、特別な身分の公務員について一方は除外し、もう一方は加えて、あえて法案の整合性を欠いたのか、その理由を明確にしていただきたい。
 また、科学技術庁長官は制服組を含むことには反対だったとも伝えられておりますが、整合性を欠いているという観点も含めて、自衛官の研究を行う者というものを対象に加えたことをどうとらえておられるのか、科学技術庁長官の御見解が伺いたいのであります。
 次に、自衛官である研究者の行う研究の性格についてどう考えているか、伺いたいのであります。
 私は、自衛官の行う研究というものは、そもそもが平和目的と利用という範囲からはみ出すものにほかならないと思います。そうであれば、本法案が科学技術庁所管で提案されるのはおかしいと思います。科学技術庁設置法の趣旨にも反するということになると思うからであります。自衛官という身分と職責は、軍事目的あるいは軍事的応用に全く関係ない研究に従事することができない立場にあるはずだからであります。もし軍事に全く関係のない研究を進めようとするときは、自衛官という身分と職責を離れなければならないということになるのではないでしょうか。もし基礎的な知識を身につけ、基礎的技術を習得するという範囲であれば、それは学習であり、訓練と言うべきであります。いわゆる研究の範囲には入らないものだと思うのであります。
 さらに、もしこれが外国との共同研究に自衛官が参加できる道を開くとすれば、問題はもっと重大だと思うのであります。平和目的と利用という
我が国と同じような制約のない外国において、自衛官の研究者の参加を受け入れる共同研究というのはどういうものでありましょうか。必ず軍事目的と結びついていると言えましょう。この場合、軍事目的と関係のない自衛官との共同研究とか、あるいは基礎技術を身につけるだけの共同研究などというものは事実上あり得ないのではないでしょうか。とすれば、外国との共同研究が我が国憲法に反しかねない、ゆゆしき方向に道を開くものになりかねないという危惧を持つものであります。この点について、科学技術庁長官並びに総理の御見解を伺いたいのであります。
 第三は、これも原案にはなかったと言われておりますが、第十条の「配慮事項」なるものは、これが閣議によってつけ加えられたと言われていることであります。
 それでは、もし自衛官の研究者とともに一般職の研究者が加わって外国との共同研究に参加した場合に、一体どうなるでありましょうか。自衛官の参加する共同研究、軍事目的があるとすれば、その国の軍事機密の網にその一般職の研究者も取り込まれてしまうという可能性が多分にあるのではないでしょうか。極めて重大だと思うのであります。
 その場合、さらに、「条約その他の国際約束を誠実に履行すべき義務」とこの「配慮事項」には書かれているわけでありますが、それとのかかわりで、我が国の憲法、諸法律に優先をして外国の機密保護義務が生かされるとしたら、これも極めて重大であります。この条文の後段で、たとえ国際平和と安全について特別の配慮ということがうたわれているといたしましても、それが意味のない空文句になってしまう危険があります。なぜならば、平和と安全ということに関しては、時の権力者に都合のよい解釈が間々されるからであります。かつて東条英機が、東洋平和のためという口実で戦争を推し進めたという歴史的事実を考えていただき、総理の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
 総理、これまで私がそれぞれお伺いしてきた点は、自衛官の研究者をあえて本法案の対象者として加えられたことに由来する懸念に基づく疑問にほかなりません。それでもなお制服組を排除する理由はないとおっしゃるならば、それこそこの法案は、アメリカの要請にこたえて、SDI計画に参加するための布石ではないかと言われてもやむを得ないのではないでしょうか。
 SDIについて言えば、これへの参加は我が国の憲法にかかわる問題でもさえありますし、宇宙開発にかかわる平和利用に限定した国会の意思にも反することであります。さらに、国民世論に背を向けるものであると断ぜざるを得ないのであります。日本学術会議平和問題研究連絡委員会が、SDI研究と日本の参加に反対する約千七百人の物理学者の署名で、同委員会が検討したことそのこと自体、そしてその委員会の報告の中で、深い憂慮の念を披瀝するとしていることを初めといたしまして、今多くの反対、憂慮の声が上がってきているのであります。
 また、SDI研究についてのアメリカと西ドイツ間の協定は、我々にSDI研究参加の意味するものを教えてくれていると思います。研究協力に関する協定と技術移転に関する協定というこの二つの協定が両国間で結ばれていると言われますけれども、しかし特許権、利用権についてはすべてアメリカの側に属するということになっていると言われております。そして、それがさらにアメリカの軍事機密の厚いベールに包まれてしまうということになれば、こう考えてまいりますと問題点は明らかではありませんか。そこで総理、ここで明確にSDI研究への参加はないということを明らかにしていただけませんか。さもなければ、あなたの答弁が能弁であればあるほど心配はますます高くなってくる、こういうことになるのではないかと思います。いかがでありましょうか。
 最後に、国と民間との共同研究、委託研究について科学技術庁長官の見解を伺います。
 この法案によって、国及び国家公務員が特定の私企業の利益のために奉仕する傾向が生まれませんでしょうか。確かに、研究に従事をする人たちが自由に、民間、国立を問わず交流することというのは大切なことでありますけれども、同時に、もしこうした私企業の利益のために奉仕するなどという傾向が今度の法案によって起こるといたしましたら、憲法に規定をされました、「公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」としている公務員の基本的任務にかかわる重大問題になると思うわけであります。法案提出の直接の責任を持つ科学技術庁長官の御答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(中曽根康弘君) 稲村議員にお答えをいたします。
 まず、撚工連事件が稻村議員に波及いたしましたことはまことに遺憾でございまして、再びこのようなことが起こらないように深く反省し、戒めていきたいと思います。
 次に、科学技術に関する研究についての基本的視点の問題でございます。
 科学技術の振興は我が国が二十一世紀に向けて発展する上での重要な課題であります。科学技術の研究については、憲法上の平和国家の理念のもとに、進んで世界の科学技術の発展と国際平和の維持、人類の福祉の向上に資するように推進していくべきであると考えます。また、研究の推進に当たっては、研究者の創意ができるだけ自由に生かされることが肝要であると考えております。
 次に、法案の内容の問題でございますが、本法案は、国と民間等との研究交流を促進する上で、国側において法制上の隘路となっている点を改善し、国の研究の効率的推進を図ることを目的とするものであります。したがって、国の研究機関において研究を行っている者すべてを対象とすることが検討されましたが、国立大学の教授等については、既に教育公務員特例法等において別途ほぼ同様の措置が講じられていることなどのため、本法案の対象外としたと理解しております。
 次に、自衛官の問題でございますが、本法案は、自衛官が参加する国際共同研究を含め、国として現在行うことができる国際共同研究をさらに円滑化するため、法制上の隘路をなくすことを一つのねらいとするものでございます。科学技術を研究する国の公務員である自衛官を差別することが適当であるとは思いません。したがってまた、憲法上何ら問題を生ずるものではないと考えております。
 次に、国際約束の履行義務と平和、安全への配慮の問題でございます。
 第十条は、外国との研究交流活動の促進に当たっては、条約その他の国際約束の誠実な履行及び国際的な平和及び安全の維持という我が国が当然負っている国際的責務を果たすという要請との調和を図る必要があることを規定しているものであり、御指摘のような問題が生ずることはないと考えております。
 SDIとの問題でございますが、本法案は、一般的に国と産業界、学界及び外国との研究交流の促進を図る上での法制上の隘路を改善することをねらったものであり、特定の研究の推進を意図したものではございません。
 SDI研究参加問題については、今般の官民合同調査団の調査結果をも踏まえ、我が国の対応ぶりにつき、今政府内部において慎重に検討しておるところでございます。
 残余の答弁は科学技術庁長官からいたします。(拍手)
   〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(河野洋平君) お答えをいたします。
 まず最初に、本法案において自衛官の研究を行う者を対象に加えたことに関するお尋ねがございました。
 今も総理から御答弁がございましたけれども、本法案は、国と民間等との研究交流を促進する上で、国側において法制上の隘路となっている点を改善し、国の研究の効率的推進を図ることを目的としており、本法案の検討の初めから、防衛庁の研究機関も含めて、国の研究機関において研究を行っている者すべてを対象とすることを検討したものでございます。
 特別職の防衛庁の研究者については、いわゆる一般職の研究者と分けて別の法体系で措置することも一つの方法ではございますけれども、研究業務に従事するという点で特に区別する必要もございませんから、立法技術上同じ法律で措置することとしたものでございます。
 一方、今も御答弁がございましたけれども、本法案のうち、国立大学の教授等にかかわる身分上の特例措置につきましては、既に教育公務員特例法等において別途ほぼ同様の措置が講じられていることなどのため、本法案の対象外とすることが適当と考えたもので、整合性は十分ある、こう考えておる次第でございます。
 次に、この法案を科学技術庁がまとめる設置法上の根拠は何か、こういうお尋ねでございました。
 この法案は、国の研究を効率的に推進する観点から、幅広く国の研究を対象といたしておりまして、このため、自衛隊員である研究者の行う研究も対象としておるわけでございます。なお、自衛隊員である研究者の行う研究は、憲法の平和国家の理念のもとに行われていると承知をいたしております。科学技術庁は、科学技術の振興を図り、国民経済の発展に寄与するため科学技術に関する行政を総合的に推進することを主たる任務といたしておりまして、専ら防衛のための技術に関する研究を推進する立場にはございませんが、本法案の対象となる主たる部分を科学技術庁が所掌しておるということでございますので、今回この法案の取りまとめを行ったわけでございます。
 次に、この法案が特定の私企業に奉仕することになりはしないかという御疑問に関するお尋ねがございました。
 今回の措置は、国が行う民間との共同研究及び民間への委託研究について、相手先の研究に研究公務員を、休職により従事させる場合、退職手当の算定上の不利益をなくそうとするものでございまして、これは従来の共同研究、委託研究の仕組み自体をこれによって変えるものではございません。これらの国の研究の効率的推進を図るための措置でございますが、しかしその際、特定の私企業の利益のために奉仕するとの批判をいやしくも受けることのないよう、十分注意してまいる所存でございます。(拍手)
#25
○議長(木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十七分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト