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1985/05/22 第104回国会 参議院 参議院会議録情報 第104回国会 本会議 第19号
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1985/05/22 第104回国会 参議院

参議院会議録情報 第104回国会 本会議 第19号

#1
第104回国会 本会議 第19号
昭和六十一年五月二十二日(木曜日)
   午後一時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十九号
  昭和六十一年五月二十二日
   午後一時開議
 第一 昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算、
  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算、昭和
  五十八年度国税収納金整理資金受払計算書、
  昭和五十八年度政府関係機関決算書
 第二 昭和五十八年度国有財産増減及び現在額
  総計算書
 第三 昭和五十八年度国有財産無償貸付状況総
  計算書
 第四 国務大臣の報告に関する件(昭和五十九
  年度決算の概要について)
 第五 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案(内
  閣提出、衆議院送付)
 第六 安全保障会議設置法案(内閣提出、衆議
  院送付)
 第七 松くい虫被害対策特別措置法の適用期限
  延長に関する請願
 第八 農用地開発公団の存続に関する請願(三
  件)
 第九 森林・林業の活性化に関する請願(四件
  )
 第一〇 法務局、更生保護官署、入国管理官署
  の大幅増員に関する請願(四件)
 第一一 義務教育費国庫負担制度の堅持に関す
  る請願
 第一二 学校給食制度の根幹堅持に関する請願
 第一三 公立の小学校及び中学校における事務
  職員、学校栄養職員の人件費等の義務教育費
  国庫負担制度の維持に関する請願
 第一四 私学助成の充実に関する請願
 第一五 私学助成の大幅拡充に関する請願
 第一六 過大規模学校の分離促進に関する請願
 第一七 学校事務職員及び学校栄養職員につい
  て現行の義務教育費国庫負担制度維持に関す
  る請願
 第一八 現行学校給食制度の維持に関する請願
 第一九 私学助成制度の充実強化に関する請願
 第二〇 保育所制度の充実に関する請願(二十
  九件)
 第二一 腎疾患総合対策の早期確立に関する請
  願(二十九件)
 第二二 国立腎センター設立に関する請願(十
  二件)
 第二三 車いす重度身体障害者の健康保険法改
  善に関する請願(二十四件)
 第二四 重度身体障害者の脊髄神経治療技術研
  究に関する請願(二十三件)
 第二五 車いす重度身体障害者の終身保養所設
  置に関する請願(二十四件)
 第二六 小規模障害者作業所の助成に関する請
  願(十一件)
 第二七 高齢者福祉の充実に関する請願(二件
  )
 第二八 精神障害者福祉法の制定に関する請願
 第二九 中小企業・下請企業に対する円高緊急
  対策に関する請願
 第三〇 中小企業の円高不況対策に関する請願
  (四件)
 第三一 運転代行業のタクシー類似行為撲滅に
  関する請願
 第三二 韓国漁船の取締り強化等に関する請願
 第三三 車いす重度身体障害者の運輸行政改善
  に関する請願(二十四件)
 第三四 台湾出身元日本軍人軍属補償に関する
  請願(八件)
 第三五 シベリア抑留者の恩給加算改訂に関す
  る請願(六十九件)
 第三六 台湾出身元日本軍人軍属補償のための
  立法措置に関する請願
 第三七 台湾出身元日本軍人軍属の補償に関す
  る請願(三十一件)
 第三八 石川県の寒冷地手当改善に関する請願
  (十二件)
 第三九 新潟県朝日村の寒冷地手当改善に関す
  る請願(四件)
 第四〇 新潟県下田村の寒冷地手当改善に関す
  る請願(四件)
 第四一 長野県木祖村の寒冷地手当改善に関す
  る請願
 第四二 長野県楢川村の寒冷地手当改善に関す
  る請願
 第四三 栃木県の寒冷地手当改善に関する請願
 第四四 長野県諏訪郡富士見町の寒冷地手当改
  善に関する請願
 第四五 兵庫県宍粟郡千種町の寒冷地手当級地
  引上げ改善に関する請願
 第四六 兵庫県宍粟郡波賀町の寒冷地手当級地
  引上げ改善に関する請願
 第四七 岐阜県の寒冷地手当改善に関する請願
 第四八 元軍人軍属恩給欠格者に対する恩給の
  支給等に関する請願
 第四九 兵庫県の寒冷地手当改善に関する請願
 第五〇 台湾出身元日本兵等に対する補償及び
  救済制度の早期確立に関する請願
 第五一 傷病恩給等の改善に関する請願(二十
  六件)
 第五二 富山県宇奈月町の寒冷地手当是正に関
  する請願
 第五三 台湾人元日本軍人軍属に関する請願
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一より第六まで
 一、公職選挙法の一部を改正する法律案(衆議
  院提出)
 一、参議院規則の一部を改正する規則案(遠藤
  要君外七名発議)(委員会審査省略要求事件
  )
 一、日程第七より第五三までの請願及び北方領
  生返還促進に関する請願
 一、委員会の審査及び調査を閉会中も継続する
  の件
     ―――――・―――――
#3
○議長(木村睦男君) これより会議を開きます。
 日程第一 昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算、昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算、昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和五十八年度政府関係機関決算書
 日程第二 昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書
 日程第三 昭和五十八年度国有財産無償貸付状況総計算書
 以上三件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。決算委員長丸谷金保君。
    ━━━━━━━━━━━━━
   〔丸谷金保君登壇、拍手〕
#4
○丸谷金保君 ただいま議題となりました昭和五十八年度決算外二件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。
 昭和五十八年度決算は、昭和五十九年十二月二十一日国会に提出され、同六十年五月三十一日当委員会に付託となり、また国有財産関係二件につきましては、同六十年一月二十九日国会に提出され、同日当委員会に付託されました。
 当委員会では、昭和五十八年度決算外二件の審査に当たりましては、国会の議決した予算が法規に基づき厳正かつ効率的に執行されたかどうかについて審査し、あわせて政府の施策全般について広く国民的視野から実績批判を行い、その結果を将来の予算策定及びその執行に反映させるべきであるとの観点に立って審査を行ってきたのであります。
 審査のため委員会を開くこと十七回、別に述べるような内閣に対する警告にかかわる質疑のほか、決算審査の充実、会計検査院法改正、財政再建、行政改革、外交、防衛、教育に関する問題を初め、平和相互銀行問題、豊田商事事件及び冠婚葬祭互助会の解約をめぐる問題など行財政全般について熱心な論議が行われましたが、それらの詳細は会議録によって御承知願います。
 昭和六十一年五月十六日質疑を終了し、討論に入りました。
 議決案の第一は本件決算の是認、第二は内閣に対する六項目の警告であります。
 討論では、日本社会党を代表して梶原理事、公明党・国民会議を代表して服部理事、日本共産党を代表して橋本委員、民社党・国民連合を代表して関委員、またサラリーマン新党を代表して木本委員から、それぞれ本件決算は是認できないが、内閣に対する警告案には賛成である旨の意見が述べられ、自由民主党・自由国民会議を代表して掘江理事から、本件決算を是認するとともに、内閣に対する警告案にも賛成である旨の意見が述べられました。
 討論を終わり、議決案を採決の結果、本件決算は多数をもって是認すべきものと議決され、次いで内閣に対する警告案については、全会一致をもって警告すべきものと議決された次第であります。
 昭和五十八年度決算にかかわる内閣に対する警告は、次のとおりであります。
 (1) 最近、日本道路公団横浜管理事務所及び海洋科学技術センターにおいて、収賄事件あるいは背任事件が発生し、また公務員等が、いわゆる国鉄ゲリラ事件に見られるような破壊行為に参加して逮捕されるなど、公務に携わる者として、厳しく非難されなければならない行為が発生していることは極めて遺憾である。
 政府は、公務員等に対する国民の信頼を損なうこのような事件の再発を防止するため、厳正な綱紀の粛正を図るとともに、関係機関に対しても指導を強化すべきである。
 (2) わが国の政府開発援助は、年々増加し、その額は膨大なものとなっているが、援助の目的が十分に達せられていないとの指摘が決算審査の過程において行われたことは遺憾である。
 政府は、政府開発援助の原資が国民の税金等であることにかんがみ、同援助が相手国国民の生活向上と民生安定に資するため、適正かつ有効に使用されるように援助の実施手続及び評価体制の改善を図るべきである。
 (3) 一部の精神病院において、同意入院患者の保護義務者の選定に必要な手続きを踏んでいないまま入院させていた事例、あるいは病院内における調査請求制度の周知方が十分になされていないため、患者が同制度を活用し難い事例などがあったことは、精神病院における入院患者の人権擁護の見地から遺憾である。
 政府は、同意入院制度の見直しをはじめとして精神衛生法を整備し、精神病院に対しては、各都道府県を通じ入院患者に調査請求制度を周知徹底するなど一層指導監督に努め、もって精神障害者の人権の確保を図るべきである。
 (4) 農林水産省の国営かんがい排水事業の中には、設定された工期をたびたび変更し、着工以来長期間を経過しているにもかかわらず未だ完了に至らないため、これに要した国の財政資金及び事業の完了後受益農家が負担する総償還額が増嵩している事業も見受けられる。
 政府は、同事業が相当の年月を要するものであるとはいえ、所期の工期を大幅に超過することは、その間に農業を取りまく社会経済情勢に著しい変化を生じること、受益者が高齢化すること等にかんがみ、また投下された巨額な財政資金の効果の速やかな発現を図る観点から、継続中の事業を一層促進し、その早期完了に努め、受益農家に事業の遅延による過大な負担を及ぽさないよう格段の努力をすべきである。
 (5) 中小企業事業団が行っている撚糸機械の設備共同廃棄事業に係る資金貸付けを受けている日本撚糸工業組合連合会の不正経理に端を発し、同連合会の監督官庁である通商産業省の職員が収賄容疑で逮捕されたことは、極めて遺憾である。
 政府は、この種事態の再発防止のため、実効ある綱紀粛正策を一層推進し、行政に対する国民の不信を招くことのないよう厳正を期すとともに、設備共同廃棄事業については見直しを含め、指導の適正化を図るべきである。
 (6) 建設省が、通商産業省総合庁舎建設に伴う空気調和設備工事の施行に当たり、自動制御設備の機器材料費を重複して積算したため、契約額が過大になり国損を招く事態が発生したことは遺憾である。
 政府は、このような単純な積算誤りを防止するため、積算体制の全面的見直しのほか、職員の教育、訓練の充実等を図り、官庁営繕工事の予算執行に厳正を期すべきである。
 次に、国有財産関係二件については、採決の結果、いずれも多数をもって異議がないと議決された次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 初めに、日程第一の昭和五十八年度決算について採決をいたします。
 本件の委員長報告は、本件決算を是認すること及び内閣に対し警告することから成っております。
 まず、本件決算を委員長報告のとおり是認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#6
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本件決算は委員長報告のとおり是認することに決しました。
 次に、委員長報告のとおり内閣に対し警告することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#7
○議長(木村睦男君) 総員起立と認めます。
 よって、全会一致をもって委員長報告のとおり内閣に対し警告することに決しました。
 次に、日程第二の国有財産増減及び現在額総計算書及び日程第三の国有財産無償貸付状況総計算書を一括して採決いたします。
 両件は委員長報告のとおり異議がないと決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#8
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、両件は委員長報告のとおり異議がないと決しました。
     ―――――・―――――
#9
○議長(木村睦男君) 日程第四 国務大臣の報告に関する件(昭和五十九年度決算の概要について)
 大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。竹下大蔵大臣。
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(竹下登君) 昭和五十九年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計におきまして歳入の決算額は五十二兆千八百三十三億円余、歳出の決算額は五十一兆四千八百六億円余でありまして、差し引き七千二十七億円余の剰余を生じました。
 この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計の昭和六十年度の歳入に繰り入れ済みであります。
 なお、昭和五十九年度における財政法第六条の純剰余金は千七百五十四億円余となります。
 以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額五十一兆五千百三十三億円余に比べて六千七百億円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額六千百九十一億円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、歳入の純増加額は五百九億円余となるのであります。その内訳は、租税及び印紙収入、雑収入等における増加額千三百四十六億円余、公債金における減少額八百三十六億円余となっております。
 一方、歳出につきましては、予算額五十一兆五千百三十三億円余に、昭和五十八年度からの繰越額六千百九十一億円余を加えました歳出予算現額五十二兆千三百二十四億円余に対しまして、支出済み歳出額は五十一兆四千八百六億円余でありまして、その差額六千五百十八億円余のうち、昭和六十年度に繰り越しました額は四千九百六十五億円余となっており、不用となりました額は千五百五十二億円余となっております。
 次に、予備費でありますが、昭和五十九年度一般会計における予備費の予算額は千七百億円であり、その使用額は千二百八十七億円余であります。
 次に、昭和五十九年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十九でありまして、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。
 次に、昭和五十九年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は三十五兆六千五百七十六億円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は三十五兆六千四百六億円余でありますので、差し引き百七十億円余が昭和五十九年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。
 次に、昭和五十九年度の政府関係機関の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。
 以上が、昭和五十九年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書の概要であります。
 何とぞ御審議のほどお願いを申し上げる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(木村睦男君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。梶原敬義君。
   〔梶原敬義君登壇、拍手〕
#12
○梶原敬義君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度決算について、中曽根総理並びに関係大臣に質問いたします。
 決算事項についての質問に入る前に、総理が強引に挙行しようとしている衆参同日選挙問題について、次のことを質問いたします。
 第一に、総理は円高対策を理由とした臨時国会の召集を決意しているようでありますが、真意をお聞きしたいのであります。第二に、もしそうだとすれば、今会期中に、時間も十分あったにもかかわらず、立法措置を含めた中小企業対策を何ゆえもっとしっかりやらなかったのですか、お答え願いたい。第三に、衆参同日選挙は、憲法の趣旨に反し、参議院の独立性を侵すばかりでなく、全野党の反対を押し切って強行することは国民と国会を軽視した不遜の態度であります。党利党略、派利派略、中曽根総理の個人の思惑解散は断じて行うべきではありません。総理の明快なお考えを求めます。
 さて、昭和五十九年度は、アメリカの好景気に依存し、我が国経済は前年に続いて拡大を続け、経済成長率も当初の見積もりを上回り五%に達し、第一次オイルショック以来の最高の伸びを示しました。中曽根総理にとって二年目の経済運営は、前年度に引き続き一見順風満帆に見えたのであります。しかし、日本経済を根底から揺るがしている円高旋風の危険な芽を五十九年度決算から見ることができるのであります。すなわち、経済成長率五%のうち、内需は三・七%とほぼ当初見積もりどおりだったのに対し、外需は当初見積もり〇・五%を二・六倍も上回る一・三%の伸びを示しました。したがいまして、五十九年度の経常収支の黒字幅は前年度の五兆七千億円を六〇%も上回る九兆円と過去最高を記録し、さらに六十年も十二兆一千億円と拡大しました。これは、中曽根総理の経済見通しに甘さがあり、経済運営のバランスを欠いた結果であると言わざるを得ません。
 政府は、五十九年度は七年ぶりに住民税を含む一兆一千八百億円規模の所得税減税を実施しましたが、その結果を見ますと、所得税減税も自然増税分で帳消しになり、しかも社会保障料などの公共料金のアップや酒税などの大衆課税により勤労者の生活は改善されず、内需拡大を促すほどの消費行動にならなかったのであります。また、政府の公共投資も抑制されたため、公的資本形成は前年度比マイナスを示しており、先進諸国に比べて劣っている上下水道、道路、住宅、公園等の生活環境基盤は少しも改善されておりません。
 このような中曽根内閣の極端な輸出依存型の経済運営に対して、当然の結果として、アメリカを初め海外貿易摩擦は増幅され、ついに昨年九月のG5為替協調介入をきっかけに円高基調が急速に進み、東京サミットにおいて激変緩和のための政府の努力も水泡に帰し、円はG5当時の二百四十円台から現在百六十円台まで急騰いたしました。これに伴い円高倒産は既に全国的な広がりを見せており、今後、日本経済全体が危機に直面しかねないと危惧されているのであります。中曽根総理の民活導入や、小手先、口先だけの内需振興策はことごとく失敗し、時期を失し、国の内外から不満と批判が渦巻いています。
 一方、中曽根内閣の「増税なき財政再建」の公約は完全に破綻しました。政府が公約した五十九年度赤字国債脱却の目標が崩壊し、中曽根総理はそれにかわるものとして「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を閣議決定し、これに基づいて財政再建期間を七年間延長して、六十五年度赤字脱却の公約を国民に示し、そのため毎年度一兆円の赤字国債発行減額を約束しました。しかるに、初年度の五十九年度は五千二百五十億円、六十年度は七千二百五十億円、六十一年度は四千八百四十億円と、いずれも一兆円の減額目標を大幅に下回ったため、今後は向こう四年間、毎年一兆三千億円以上減額しなければ公約は果たせません。もはや、だれが考えても六十五年赤字国債脱却は夢のまた夢であります。にもかかわらず、できないことをできるかのごとく振る舞い、強弁する総理には、かつての大本営の姿が想起されてなりません。真実を国民に知らせ、国民とともに歩き、国民に状況打開の道を相談する姿勢をとるべきではないか、お尋ねをいたします。
 さらに、今日この急激な円高を招き、国民経済を混乱に陥れた中曽根総理のバランスを欠いた経済運営について、総理の率直な反省の弁を開きたいのであります。
 次に、五十九年度決算検査報告についてお伺いします。
 本検査報告によれば、件数が百八十件、金額で二百二十五億八千六百万円余の不当事項が指摘されており、前年度に比べて件数で二件少ないものの、金額では三二%ふえております。検査院の実地検査率が九%となっていることから、これらの指摘件数及び指摘金額は氷山の一角と言わねばなりません。行政改革を中曽根政治の目玉にしているにしては、巨額なむだ遣いが一向に減らないのはどういう理由によるものでしょうか。五十九年度決算報告に対する総理大臣並びに大蔵大臣の所見を承りたいのであります。
 次に、政界、官界を渦巻く汚職と政治倫理の確立、政治の浄化についてお尋ねします。
 住宅公団、道路公団、海洋科学技術センター、国鉄、建設省近畿地建などにおいて収賄事件が続いて発生しております。特に日本撚糸工連事件では、政官業の癒着と利権の構図が明らかにされ、構造汚職へと拡大し、通産官僚の逮捕に続いて、中曽根内閣の元閣僚であった稻村佐近四郎代議士等も五月一日に受託収賄罪で起訴されました。また、今月十四日には、ロッキード事件の控訴審で佐藤孝行代議士には一審どおりの有罪判決が下りました。そこで総理にお尋ねしますが、自民党の総裁として、また中曽根派閥の長として、この問題をどのように受けとめておられるのか。両代議士に対し議員辞職を勧告すべきと思いますが、総理の姿勢をお尋ねします。
 次に、海外援助に対する政府の基本姿勢をお伺いします。
 言うまでもなく、開発途上国に対する援助は、被援助国の国民生活の向上と民生の安定に寄与するものでなければなりません。しかるに、我が国の援助の実態は必ずしもその目的を十分果たしているのか疑問であります。我が国のフィリピン援助が、マルコスの巨万の蓄財と民衆抑圧の独裁政権延命に手をかしたことは否定することはできないのであります。逆にまた、マルコス側からブラックマネーが日本国内に還流して、日本の政治家に渡ったといううわさもあります。政府は、真相究明のため、またこの疑惑を晴らすためにも、フィリピン政府と協力して、国会に積極的に資料提供をすべきではないか、総理並びに外務大臣の答弁をお願いします。
 また、海外援助プロジェクトの一つ一つが当初の目的どおり実施され、効果を上げているかどうかの事後チェック機能の不十分さが目につきます。本院におきましても、五十八年度決算の警告事項として、「政府は、政府開発援助の原資が国民の税金等であることにかんがみ、同援助が相手国国民の生活向上と民生安定に資するため、適正かつ有効に使用されるように援助の実施手続及び評価体制の改善を図るべきである。」とただいま決議されました。この警告決議を総理並びに外務大臣、大蔵大臣はいかに受けとめておられるのか、伺います。
 さらに一歩踏み込んで、相手国と共同して我が国の会計検査院の検査ができるような道を開くべきと考えるが、重ねて総理、外務大臣、大蔵大臣の所見をお伺いします。
 次に、国会における決算審査のあり方についてお尋ねします。
 決算委員会の重要性はこれまでにもたびたび指摘されました。例えば、昭和四十三年三月七日の衆議院本会議において、時の佐藤総理大臣は、決算の重要性について触れ、編成前の予算審議は大変論戦が交わされ、また非常に大事に扱われるが、一たん執行した後はこれらは等閑に付されている、そういうことは国民に対しても相済まない、予算の執行が政策目的を果たしているかどうか、また不正、不当がないかどうか、こういうことを事後においてトレースすることは大変大事なことであると答弁しております。佐藤元総理大臣の高い識見をうかがい知ることができます。本院においても、五十七年二月に参議院改革協議会から議長あてに、審査日程の確保、総括質疑の充実、警告決議に対する事後措置の三項目にわたる改善事項が答申され、今日に至っておりますが、これらの事項はいずれも内閣の協力なくしては実現できません。
 しかるに、決算委員会への総理の出席は、五十八年度では審査回数十七回のうちわずかに締めくくり総括審査のときの一回だけで、しかも三時間程度というありさまであります。さらに、決算審査を通じて感じたことは、質疑者に対して、捜査中とか企業の信用問題を盾に答弁や関係資料の提出を拒む等、問題の解明に当たって極めて非協力的な態度であり、政府は決算審査の重要性を口にしながら、実際の行動は国会の決算審査を軽視していると言わざるを得ません。決算審査の重要性を一体どのように考えておられるのか、内閣の協力姿勢もあわせて総理並びに大蔵大臣にお尋ねいたします。
 以上、私は、五十九年度決算に関して質問を行いましたが、最後に、三年半にわたる中曽根政治の総決算をしてみたいと思うのであります。
 まず、中曽根政治に対する世論の高い支持率であります。かつてヒトラーがラジオを宣伝の武器に使ったように、中曽根総理はテレビを使っての大衆受けを意識したスタンドプレーがやたらに目につきます。総理御本人が一番よく知っておられることでございましょうが、高い支持率は、総理の格好よさ、口先のうまさ、外国語が話せる等の知的行動派の印象を映像を通して国民に植えつけることによる計算され、つくり出された人気であると断じても間違いありません。
 一方、政治実績を振り返ってみますと、まず私的諮問機関を多用し、議会の形骸化をねらった国家主義的な手法が目につきます。また、与野党で合意した減税には誠意ある態度を示さず、昨年の都議選では総理みずから大型減税を大衆に公約しておきながら、大型減税はいまだ実施されず、増税なき財政再建の公約もさきに述べたとおり実現不可能。その場限りの無責任な公約の乱発は、一国の総理のすることにしては目に余るものがあります。
 さらに、健保及び老人医療費の本人負担の強化や、消費者米価、国鉄運賃など生活関連公共料金の値上げ、大衆課税の強化など、歴代政権さえもやらなかった国民生活の圧迫政治が矢継ぎ早に行われたのであります。国民生活の切り下げを図る一方、防衛費だけは異常に突出させたばかりでなく、日本列島を不沈空母と名づけてアメリカの戦略にがっちりと組み込み、次々に憲法九条を空洞化させてきたのが中曽根政治であります。これによって日本の置かれた軍事的危険性は戦後最も高まってきたと言わざるを得ません。
 ロン・ヤスを売り物にした中曽根外交も、内需振興策をとらずして国際収支の大幅黒字を放置したため、日本は国際社会で孤立化を招き、有史以来の円高というしっぺ返しを受け、国民は大きな痛手を受けています。このように国民が苦しんでいるときに、総理派閥の政治家が起訴されたり、現閣僚が次々に問題発言をするなど、政権は末期的な症状であります。
 以上、三年半にわたる中曽根政治は、虚々実々の虚で塗り固められた政治であるといっても言い過ぎにならないと確信するものであります。このことを後世の史家が必ず明らかにすることを予見し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(中曽根康弘君) 梶原議員にお答えをいたします。
 まず、臨時国会の召集や解散、中小企業、円高対策の問題でございますが、目下通常国会の会期中でありまして、重要法案を審議している最中に臨時国会云々と言うことは不見識であると前から申し上げているとおりであります。
 中小企業対策は既に四月八日の総合経済対策によって実施しておりますし、また今国会におきましても円高に対する特別措置法も制定されて、今実施しておるところであります。なお、さらに円高情勢にかんがみまして中小企業対策を強化するために、サミットの前に私は各省大臣にその検討を指示しておるところでございますが、今その取りまとめをやっておるところで、どしどし実施していくつもりでおります。
 同時選挙の問題は、前例もありまして、違憲ではないと確信しております。解散は考えておりません。
 次に、財政再建の問題でございますが、六十五年度特例公債依存体質脱却という努力目標、これは容易ならざることでありますが、旗をおろすわけにはまいりません。今後、歳出歳入、税外収入、国有財産の処理、民間活力の援用、金融の弾力的運用等総合政策を実施しつつ、所期の目的に向かって邁進する決心でおります。
 次に、円高と内需拡大策でございますが、先ほど申し上げましたように、四月八日の総合経済対策を着実に実施しており、今後とも、内需を中心とした景気の持続的拡大を図るため、内外の経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、機動的な経済運営に努めてまいります。
 五十九年度決算報告に対する所見でありますが、政府としては従来から厳正かつ効率的な予算の執行に努めておりますが、多くの不当事項等の指摘を受けておることはまことに遺憾であり、申しわけないと思います。不当事項等については、その周知徹底を図るなど、再発防止に努めるとともに、予算の執行に当たる者のモラルの一層の確立に努めます。現下の厳しい財政事情にかんがみ、今後とも一層予算の厳正かつ効率的な執行に努めてまいります。
 稻村、佐藤両議員への処理でございますが、これらは政党間の協議を見守っておるというところでございます。国会議員の進退の問題は、これは選挙によって出てくるという特別職でございますから、選挙民との関係が第一義であると思います。その意味におきまして、これは本人がみずから決定するということが適当であると考えております。
 次に、資料の国会提出の問題でございますが、政府としては可能な限り資料の提出のための努力を行っておりますが、公表し得ない資料があることは御理解を願いたい。例えば、我が国の援助に係る事業の実施主体は被援助国でありまして、有事業は先方政府が民間企業との間で契約を締結して実施するものであり、契約の当事者でない我が国政府は、契約内容に係る事項を公表する立場にはないのであります。
 なお、経済援助の実施手続等の改善でございますが、効果的、効率的な実施を行うべく努力してまいります。事前調査の充実、交換公文における援助資金の適正使用及び施設、機材等の適正な使用、維持の義務づけ、評価活動の充実等の措置を講じており、御決議の趣旨に沿うように努力してまいります。
 次に、会計検査の問題でございますが、援助にかかわる政府各省庁並びに国際協力事業団及び海外経済協力基金は従来より会計検査院による会計検査を受けております。他方、相手国に対する会計検査は、相手国の自助努力を支援するとの我が国援助の基本的考え方や相手国との関係等から見て、これは適当ではないのであります。
 次に、決算審査に対する内閣の協力の問題でございますが、国会の決算審査は、予算の審査と同様、極めて重要であります。政府としても、決算審査の重要性にかんがみ、その審査についてはできる限りの協力を行ってきているつもりであります。また、その結果は、将来の予算編成や予算の執行に当たり十分留意し、反映させるよう努力いたします。政府としても、今後、決算の国会審査の重要性を十分認識して、決算審査の協力についてもできる限り努力してまいる所存でございます。
 中曽根政治に対する総括をお聞きいたしましたが、参考としてお聞きする次第であります。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(竹下登君) 私に対する第一問は、五十九年度決算報告に対する所見いかに、こういうことであります。
 政府は、従来から予算の厳正かつ効率的な執行につぎましては十分留意してきたところでございますが、多くの不当事項等の指摘を受けたということはまことに遺憾至極であります。これらの不当事項等の原因の主なものは、予算執行に当たる職員等のモラルの欠如、そして関係者の不注意、これらによるものと考えられます。各省庁においては常に業務の適正な執行に努めてきておられますが、特に指摘を受けた官署においては速やかに是正措置を講じ、また指摘を受けなかった官署においても、同じような指摘を受けることのないよう他の省庁の同じ事例の存否を点検するなどして、不当事例の再発防止に努力をしてきたところであります。本年度も各省庁の予算執行、そして決算担当者の会議、担当者の会計検査院の指摘事項の周知徹底、それから関係職員の資質の向上、綱紀素乱の防止について努力をしなければならないことは当然のことであります。
 次は、警告決議についての所見であります。
 まさに、委員会でもお答え申し上げましたごとく、御決議の趣旨に沿うよう今後とも万全の努力をしてまいる、このようなつもりであります。
 次が、他国との共同検査の問題であります。
 この問題は、総理からもお答えがございましたが、いわゆるそれぞれの国の主権の問題がございますので、非常に難しい問題ではなかろうかというふうに考えております。
 それから最後のお尋ねは、いわゆる決算審理の重要性に対する佐藤元総理のお考え方を引用しての御質問でありました。
 決算は予算執行の実績でありまして、国会におけるその審査は、予算の執行が所期の政策目的を果たしているのかどうか、これらについて審理検討をいただくものでありまして、まさに重要なものであります。政府としても、決算審査の重要性にかんがみて、従来からその審査についてはできる限りの協力を行うという基本姿勢で対処してまいりました。そして、その審査結果は、将来の予算編成や予算の執行に当たって十分留意して、これを反映せしめなければならないというものであろうかと思います。総括して、今後とも決算の国会審査の重要性を十分認識いたしまして、決算審査への協力については可限な限りの努力を続けてまいる、いわば所管大臣としてそのように考えております。(拍手)
   〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(安倍晋太郎君) 梶原議員の御質問にお答えをいたします。
 フィリピンに対する経済協力関係資料の国会提出の問題でございますが、いわゆるリベート問題の本質は、我が国企業が支払ったとされるところのコミッションがフィリピン政府高官に渡ったものか否か、また、それがフィリピン国内法に違反するか否か等の問題であります。したがって、第一義的にはフィリピン政府が主体的に真相究明すべきであり、その過程でフィリピン政府より正式の手続に基づいて協力要請があれば我が国としてできる限りの協力を行いたいと考えております。他方、政府としては、対比援助を正規の手続に従って処理をしてまいっております。その実施は適正に行われておると信じておりますが、いわゆるマルコス文書の公表により我が国援助との関連で種々の指摘もなされておるところから、事実関係の調査に可能な限り努力してまいっておるわけでございまして、その結果、改善すべき点があれば積極的に改善してまいりたいと考えております。
 政府としましては、これまでも可能な限り国会への資料提出に努めてきておるところでありますが、我が国援助に係る入札等実施企業の選定及び契約の締結等は、あくまでも事業実施主体である先方政府の責任において行われるものでありまして、右入札及び契約の当事者でない我が国政府は、入札の結果及び契約内容につき公表をする立場にない点はひとつ御理解をいただきたいと思います。次に、政府開発援助に関する参議院決算委員会の決議につきましては、我が国は、援助の適正かつ効果的、効率的な実施のため種々の措置を講じておりまして、これによって我が国の援助は全体として所期の目的を達成しておると考えておりますが、御決議につきましては、その趣旨に沿うよう今後とも努力してまいる所存であります。
 また、我が国の会計検査院による検査につきましては、援助にかかわる政府各省庁並びに国際協力事業団及び海外経済協力基金は従来より会計検査院による会計検査を受けております。他方、経済協力は開発途上国の経済開発のための自助努力に対して行われるものでありまして、その実施主体は相手国政府であって、援助資金の使用は基本的には相手国自身の責任において行われるべきものでございますので、相手国に対して会計検査を実施するとの考え方は、援助のあり方としては不適当であります。また、相手国との関係において経済協力の円滑な実施に支障を来すおそれもある、こういうふうに考えておりまして、不適当ではないか、こういうふうに思っておる次第でございます。(拍手)
#16
○議長(木村睦男君) 服部信吾君。
   〔服部信吾君登壇、拍手〕
#17
○服部信吾君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十九年度決算について、中曽根総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 決算議題に入る前に、総理の政治姿勢について若干お伺いいたします。
 まず初めに、昨日総理は、各野党との党首会談を行ったわけでありますけれども、その内容と感想を率直に述べていただきたい。野党側としては、去る五月十二日、円高における影響が余りにも大きく、早急にこの対策を練るべく総理に党首会談を要求したわけでありますが、総理は打ちひしがれていて要求に応じなかったわけであります。もしその時点で応じていれば、総理の言われる円高立法も会期中において成立していたわけであります。会期末を一日に控えて応じたということに対して総理はどのように弁明するのか。総理の考え方は、円高対策を犠牲にしておくらせ、会期末ぎりぎりまで持っていき、総理の望んでいる衆参同日選挙を行い、自分自身の三選、延命を図るものだとの一部批判があるわけでありますが、総理はこの批判に対してどのように答えるのか。
 また、我々は、総理が意図する同日選挙は憲法に定められた二院制に反し、参院の緊急集会に支障を来し、さらに参院の独自性を破壊し、参院無用論を助長するもので、断固反対するものであります。
 また、総理は円高立法を考えていると言われておりますが、その内容について述べていただきたい。また、仮に円高立法を提出するなら、行政指導で徹底的な救済策を行い、解散含みの臨時国会に出すのではなく、参院選後、時間をかけてしっかりとした対処をすべきであると考えるかどうか。政局不安定の中、ここで衆参同日選挙ということにでもなれば、かえって円高に苦しんでいる中小企業の方々に大きな影響を与えるのではないか。総理の御見解をお伺いしたい。
 次に、総理は、定数是正法案が国会を通過した後、総裁談話を発表するようであります。新聞報道によりますと、定数是正がなされ、速やかに合憲の国会が実現することが望ましいとの内容となっておるようでありますが、このような談話を発表する理由は何か。もし総理が考えている臨時国会を召集し衆参同日選挙を行うためのものであるならば、これは党利党略以外の何物でもないとの批判は免れないのであります。また、違憲の疑いのある同日選挙で合憲の国会をつくることは矛盾すると思うかどうか。総理の明快なる答弁を求めるものであります。
 次に、五十九年度の経済運営についてお伺いいたします。
 我が国経済は、現在このような急激かつ大幅な円高に見舞われ、産業界を中心に厳しい状況に追い込まれております。私は、今日のような事態は、ここ数年政府が内需拡大を怠り、外需依存の経済成長を放置してきた結果であると言わざるを得ません。円高の背景となっている我が国の経常黒字は、五十八年度において政府見通しの九十億ドルを大幅に上回る二百四十二億ドルに達し、本来であれば、五十九年度予算において積極的な内需拡大策を実施し、経常黒字の縮小に取り組むべきであったのであります。
 ところが政府は、五十九年度の税制改正で七年ぶりの本格的な所得減税と喧伝したものの、その見返りにそれを上回る増税を行い、しかも公共料金の値上げ、さらに健康保険の被用者本人の給付率の引き下げ等福祉の後退を強行し、国民は厳しい生活を強いられたのであります。これでは消費拡大につながらず、内需拡大に弾みがつかないのも当然であります。私は、五十九年度政府の財政、経済運営は極めて問題があったと指摘せざるを得ないのであります。外需依存型経済をさらに拡大させた五十九年経済運営について、総理の御所見を伺うものであります。
 次に、円高対策について具体的にお伺いいたします。
 昨年九月以来、余りにも急激に高騰する円相場は、我が国の輸出関連企業、特に中小零細企業に対して大きな打撃を与えているのが現状であります。そこで、我が党は、かかる深刻な事態を重視し、本年三月から四月にかけて全国の中小下請企業千社における実態調査を行ったところですが、その結果に基づいて若干質問を行います。
 調査結果によると、中小企業において大変厳しい金融事情と、仕事がない、何とか仕事を確保してほしいとの要請があったわけですが、そこでまずお伺いしたいことは、政府系中小企業金融機関の融資限度額の引き上げ、金利の一層の引き下げを図るとともに、既往貸付金の返済条件の緩和、信用保険法に基づく普通保険、無担保保険及び特別小口保険の付保限度額の引き上げを図るべきであると思うかどうか。
 円高差損を理由に親企業から不当な圧迫を受けている中小企業を守るため、親企業に対する監視指導を行い、下請代金支払遅延等防止法の運用強化、下請企業振興協会の下請あっせん業務を強化し、公共事業等に係る元請業者への代金支払いについては現金で支払うよう指導監視すべきと思うかどうか。国及び地方公共団体は、中小企業の仕事量を増加するため地元中小企業への優先発注、官公需適格組合の積極的活用に努めるべきと思うかどうか。
 最後に、円高問題の相談窓口を地方通産局、地方自治体、商工会等に設け、円高から中小企業を守るべく、きめ細かな経営の相談事業を早急かつ適切にすべきと思うかどうか。この点についてお答えを願いたい。
 次に、行政改革について若干お伺いいたします。
 第二次臨時行政調査会の後設置された臨時行政改革推進審議会の最終答申も間近でありますが、この改革審解散後、これにかわる行革の推進を監視するための第三者機関の必要性を含め、総理の考えをお伺いしたいと思います。あわせて、今後の大きな課題であります国と地方との職務権限及び財源の再配分にどのように取り組まれていかれるのか、方針をお伺いいたします。
 次に、マルコス疑惑の解明についてお伺いいたします。
 この疑惑解明については、衆参両院において特別委員会を設置し、当初、政府は積極的な取り組みの姿勢を示したわけでありますが、いざこの委員会を開催してみると、その積極姿勢は全くかけ声倒れのポーズにすぎないのであります。重要質問に対しては何ら解明のための前向きの答弁はせず、我が国の疑惑企業に対する資料要求に対しては企業秘密等の理由によって何ら提出しておらず、何のための特別委員会かと言わざるを得ません。そこで、ここでお伺いしたいことは、現在我が国において一兆円以上の国民の血税を海外援助に投入していることを考えるなら、早急に会計検査院法を改正し、これら援助に対する実りある検査ができるようにすべきではないのか。また、現在進められているODA開発援助による第三次中期目標四百億ドル計画について見直しをしないのか。また、政府開発援助基本法の制定を急ぐべきではないかと思うが、あわせてお伺いをしておきます。
 最後に、スポーツのあり方が教育に与える影響を総理及び文部大臣にお伺いいたします。
 最近のアマチュアスポーツ界の傾向として、従来のあり方とは根本的に異なるような商業主義の台頭とアマチュアリズムの急激な後退という現象が見られているのであります。例えば、日本陸上競技連盟の選手への出場料、賞金の還元や日本サッカー協会の賞金つき大会の実施決定もこういう流れの一例でありますが、このような傾向が今後強まることにより、物質的利益や名声を追い求めないというアマチュアリズムの精神が失われていくことを危惧するのであります。特に、我が国のスポーツが学校教育を中心に発達し、心身育成のための教育の重要な方法として取り入れられてきた側面を考えても、商業主義の台頭によって金のためのスポーツという金権主義的考え方が中学、高校生などを初めとする青少年へ波及し、教育に非常な悪影響を及ぼすのではないかと思うのであります。これらの点に対してどのような対応策を講じていくつもりなのか、お伺いしたい。
 また、このようなアマチュアスポーツ界の流れの中で、今回、日本体育協会が制定したスポーツ憲章は、全く現状を追認しただけのものと言ってよいのであります。この憲章によれば、体協加盟の各種競技団体の競技者規程は各団体に全く任されており、選手の金品受領やプロ選手登録の是否について体協が口を挟まないことになっているのはアマチュアスポーツ界の総本山と自負する体協の形骸化であり、責任放棄と言ってよいと思うのであります。この点の歯どめ措置は必要と考えますが、文部大臣の見解をお伺いいたします。
 次に、体育、スポーツ関係の補助金についてであります。
 近年の文教関係予算の抑制傾向の中でスポーツ関係の補助金も圧縮されており、例えば日本体育協会に対する補助金もこの五年間、毎年度一億円程度削減されている状況であります。こういったことがアマチュアスポーツ界の商業主義への接近の一要因となっているとしたら、政府の施策がこのような方向を助長しているとも言えるのであります。教育を看板に掲げる中曽根内閣としても、青少年の育成、スポーツ振興からもこれらに対する予算の重点配分を行うべきではないかと考えますが、総理、文部大臣の見解をお伺いいたします。
 また、今回のスポーツ憲章の制定に当たっては、体育協会に加盟していない団体、特に国民の関心のある全国高校野球連盟などに対しては及ぼす影響が非常に大きいのではないかと心配するものであります。これら体協に加盟していない諸団体に対し、今後どのような話し合い、指導を行っていくのか、大臣のお考えをお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(中曽根康弘君) 服部議員にお答えをいたします。
 まず、党首会談の内容に対する所見でございますが、有益な御意見をきのうは拝聴いたしました。御意見は参考にいたしたいと考えております。なお、今は定数是正などの重要法案の成立をただひたすら神仏に祈っておる次第でございます。
 次に、円高立法との関係でございますが、これはサミットの前から円高に伴う中小企業対策を研究するように各省に指示しておったところであり、今そのまとめの段階にあります。必要なものからどしどし実行してまいりたいと思っております。本日は円が少し安くなりまして、百七十円台に手がかかったというところでございます。
 次に、同日選挙の問題でございますが、私は解散という言葉を一回も言ったことはないのであります。通常国会中に臨時国会に対する言及ということもこれは不見識であるといって、このことも一言も言っておらないのでございます。一切は白紙であるとお考え願いたいと思うのであります。
 円高立法につきましては、四月八日に決定した中小企業対策を含む総合経済対策を着実に進めております。さらにその後、国内産業、特に輸出関連中小企業に与える影響等を注視しつつ、所要の対策を検討するようにして、今取りまとめている最中でございます。
 解散権に関する声明云々ということでございますが、声明を行うということを指示したということは私ありません。けさ新聞を見ましたが、あの記事は誤りであります。
 それから五十九年度の財政運営でございますが、五十九年度予算においては、厳しい財政事情のもとで民間資金の活用等による事業費の確保等、内需拡大にはできる限りの配慮をいたしました。税制面においても、適切な財源措置を講じつつ、本格的な所得税減税と投資減税を実施いたしたのであります。五十九年度においては、物価の安定が続く中で内外需のバランスのとれた景気拡大が持続したものと考えております。
 次に、ポスト行革審の問題でございますが、これまで行政機構の整理合理化、国家公務員の縮減、電電、専売両公社の民営化、医療保険、公的年金の制度改革、地方に対する国の関与の整理合理化、地方行革の推進など、着実に行革審や臨調答申を受けて推進してきていると思います。今後は国鉄改革や地方行革のさらなる推進等行うべきことが多々ございます。そして、行革審の今後のあり方につきましては、最終意見の取りまとめに向けて今精力的審議が行われている行革審におきましてみずから検討していただく、こういう考えております。
 国と地方間の職務権限の再配分の問題でございますが、行政の簡素効率化及び地方自治の尊重の観点から、できるだけ国、地方の役割分担と費用負担のあり方について検討を行う、そして地方自治の本旨に沿うような方向でこれを推進してまいりたいと考えております。今国会に機関委任事務及び国、地方を通ずる許認可権限等の整理合理化を行うための法律案を提出したところであり、今後とも整理合理化には努力してまいります。なお、国、地方の役割分担等については、臨時行政調査会、臨時行政改革推進審議会、地方制度調査会等の御意見を踏まえて処理してまいります。
 いわゆるマルコス疑惑の問題でございますが、対比援助は正規の手続に従って処理しておりまして、その実施は適正に行われているものと信じておりますが、いわゆるマルコス文書公表により我が国援助との関連で種々の指摘もあるところから、これらの事実関係の調査に可能な限り努力しておるところであります。その結果、改善すべき点があれば今後改善していく所存でございます。政府としては、可能な限り資料の提出のための努力を行っておりますが、公表し得ないものもあることは御理解願いたいと思うのでございます。
 海外援助に対する会計検査の問題でございますが、援助にかかわる政府各省庁並びに国際協力事業団及び海外経済協力基金は、従来より会計検査院による検査を受けております。他方、相手国に対する会計検査は、相手国の自助努力を支援するとの我が国援助の基本的考え方や、独立国家としての双方との関係等から見まして適当ではないのであります。
 アマチュアスポーツの問題でございますが、今回の日本体育協会のスポーツ憲章は、アマチュアスポーツ発展のための精神を基調として、最近の一連の国際的動向を踏まえ、慎重審議を重ねた上で制定されたものと承知しております。アマチュアリズムの後退や、教育に悪影響を及ぼすことのないように、商業主義に過度に汚染されないようにやはり十分注意する必要があると思い、日本体育協会を指導してまいる所存であります。
 体育、スポーツ関係の予算につきましても、これらの施設の整備、指導者の養成、海外派遣等については大いに協力してまいりたいと思っております。現下の厳しい財政事情を踏まえながらも、体育、スポーツの振興に努めますが、特に市民野球場とかテニスコートとか、あるいはゲートボールの用地とかプール、こういうようなものはできるだけ地方団体と協力しまして整備するように努力してまいりたいと思っております。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(竹下登君) まず、所得税減税問題からお答えをいたします。
 去る五月二十日の自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、社会民主連合の政調・政審会長会談におきまして、所得税減税については継続して協議するという内容のお話があったということは承知いたしております。政府といたしましては、税制調査会において、公平、公正、簡素、選択並びに活力といった見地から、所得税負担のあり方を含め、シャウプ税制以来の税制全般にわたる広範な検討が進められて、去る四月二十五日には、個人所得課税及び法人課税の軽減合理化の方向についての中間報告が取りまとめられた、これが現段階でございます。秋に示される包括的な指針を待って適切に対処してまいりたい、このように考えております。
 それから次が為替問題でございます。
 為替相場は、基本的には各国の経済ファンダメンタルズを適正に反映することが望ましいわけでございますが、具体的にどのような相場が適正かということにつきましては種々議論のあるところでありますし、また為替市場への影響もありますので通貨当局者が言及するわけにはまいりません。いずれにせよ、相場の安定、これが何よりも重大でございますので、政策協調を進めると同時に、必要に応じた適時適切な介入ということで対処すべきであると考えております。
 それから公共事業のいわば下期における不足分についての対応の仕方についての御意見がありました。
 まずは、これから前倒し執行、こういうことが行われてまいります。そうして次には、いわゆる交易条件の改善に通じますところの内需拡大効果がいわば円高のプラス面によって出てまいります。それから三次にわたる公定歩合の引き下げ、これが十九日から稼動しておる。さらに、原油価格が下落いたしまして三月入着分からかなりの低下をもたらしておる。そういうようなことを勘案いたしますならば、いわば内外需のバランスのとれたインフレなき安定成長、これが持続をされるものであろうというふうに考えております。
 それからODA目標を見直すべきだ、こういうことでございますが、財政事情を勘案しながら、今後とも第三次中期目標を踏まえてODAの着実な拡充を図ることとしているところであります。したがって、究極的には負担する国民の納得を得なければならないわけでありますので、ODAが適正かつ効果的また効率的に実施されることが必要であるという基本的考えでもって最大の努力を払ってまいりたい、このように考えております。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(渡辺美智雄君) 政府系中小企業金融機関の融資限度額の引き上げ、貸付金利の引き下げ、既往貸付金の返済条件の緩和、あるいは信用保険法に基づく普通保険、無担保保険、特別小口保険の付保限度額の引き上げを図れということでございますが、これは従来から中小企業の資金調達の円滑化を図るために、政府関係の金融機関の今言ったような問題は、それぞれ御趣旨の線に沿って枠を拡大したり、金利を下げたりやってまいりました。
 金利の点は、御承知のとおりだと思いますが、例えば中小公庫、国民公庫の貸出基準金利は十二月二日に七・五だったものを十二月二十八日に七・二に下げて、ことしの二月二十八日に六・九に下げて、三月の二十八日に六・四と、たった四カ月以内に三回も引き下げをやっております。したがいまして、現在の引き下げといっても、預金金利があって貸出金利があるわけですから、それを無視してまではできない。もっと下げろということになれば、財政措置を講じるか、法律を改正して、そして政府に預ける金利をもっと下げるかということでございますが、総理大臣が言っているように法律改正の話は今はできませんから、だからこれは今はもう限界までやっておりますということです。
 信用保険の付保限度額も、これは二倍にこの間引き上げたばかりでございます。既往の貸付金の返済をもう少しまけてやれというお話なんですが、これは個別、個別によりまして中小企業者の経営状況を見ながら十分対処しなさい、一律というわけにいきませんから、したがって非常に困っているようなものについては十分配慮しなさいということを通達を出して指導いたしております。
 それから円高差損を理由に親企業が不当に中小企業を圧迫しているのじゃないか、だから支払遅延等防止法の運用をもっと強化して指導せよと。まさに御趣旨のとおりでありまして、これは通達を発しまして御趣旨のような指導をいたしております。また、通達なども、親企業者には三月十四日付で、一千万円以上の親企業四万五千四百九社に対して、ともかくそういうようなことをしなさんなという通知を出しております。
 それから支払い代金について親企業者がいじわるするなという話なんですが、これも今言ったようなことでちゃんと指導をいたしております。
 それから官需、これをもっと拡大せよと。これもしょっちゅう官需の拡大につきましては指導をいたしておりまして、年々実績が実は上がっております。例えば、昭和四十一年ごろは約二六%弱の官需の中小企業の受注率であったわけですが、だんだん、だんだん上がってまいりまして、五十九年の統計では三六・八%というようなことで上がっておりますし、六十年は三九・五%、さらに時節柄中小企業に官需をもっとやれという指導をいたしております。結果はまだ出ておりませんが、御趣旨のようにやっております。
 それから窓口相談をもっと商工会を通してやりなさいということなんですが、これもことしの二月に中小企業庁と各通商産業局に相談室を設けました。また、四月八日の総合経済対策において商工会、商工会議所の相談窓口の拡充強化、これをやるように各都道府県に通達を出して指導をいたしております。だんだんに末端でも利用者がふえてきたということでございます。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(安倍晋太郎君) 服部議員の政府開発援助基本法の制定に関する御質問。政府開発援助基本法をつくれという御質問でございますが、我が国二国間いわゆるODAのうち、円借款につきましては四省庁体制、すなわち外務省、経企庁、通産省、大蔵省、この四省庁のもとで、外務省が対外的な窓口となりまして、海外経済協力基金を通じて実施をしておるわけでございます。また、無償資金協力につきましては、国際協力事業団の協力を得て外務省が実施をし、さらに技術協力につきましても、外務省が案件ごとの関係省庁と協議しながら、JICA、すなわち国際協力事業団を通じて実施をしておるところであります。
 以上のように、外務省を中心とする現在の実施体制は全体としては順調に機能しておると考えておりますが、今後とも現行体制の運用面での改善強化を通じ必要な措置がとれると考えておりますので、新たに援助法の制定は必要ない、こういうふうに思っております。また、援助の細目につきましては、現行法令以上の規定を法律で決めることはむしろ外交上必要な弾力性を失わしめることにもなりかねない、こういうふうに思っておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(海部俊樹君) お答えをいたします。
 アマチュアスポーツに賞金が出るようになった、それを体育協会が認めるような憲章をつくったという点に関しての先生の幾つかの御心配に基づく御質問でございますが、これは御承知のように一九八二年国際陸連が規定を改正いたしましてから、ボストン・マラソンにおいても、ことしのロンドン・マラソンにおいても賞金の出るレースが行われるようになった。こういう国際的な風潮をとらえて判断をいたしますと、有力選手が参加しなくなるようなレース、あるいは参加しなくなってしまうと我が国の選手が海外の選手と交流する機会がなくなってしまうということ等も踏まえて、国際的な大きな流れの中で体育協会はこのスポーツ憲章を制定したものと聞いております。
 しかしながら、御指摘のようにアマチュアスポーツの純粋性は守っていかなければなりませんし、賞金目当てのアマチュアスポーツになったのでは、その趣旨や精神がいずこにありやということにもなりますので、私どもは、日本体育協会を通じ各競技団体に、適正な内部基準をきちっと決めて、このような風潮に害されないように、あくまでアマチュアスポーツの精神を貫いていただきたいと強く期待をしておるところであります。
 二番目に御質問の、競技会に賞金が出ることによってアマチュアリズムが失われることのないように文部省は積極的に指導をしろということでありますが、全く同感でありますので、この趣旨に沿って努力をしていきたいと思います。
 第三点の予算の点につきましては、日本体育協会に対し今年度十二億八千三百万円の予算を組んでおりますが、今後とも体育振興のためにはできるだけ努力をいたしたいと考えます。
 第四点の、青少年の育成のためにスポーツ振興の上からスポーツ関係補助金予算を取れというお考えてありますが、私どもも、結果として青少年の健全育成のためにスポーツの果たしておる役割は極めて大きいわけでありますので、従来も施設の整備とか指導者の養成、国際競技力の向上、またスポーツ振興を通じて健全に育成するように政策的努力を続けてまいりましたが、これからも御質問の趣旨に沿うように努力をしてまいりたいと思います。
 最後の、スポーツ憲章の制定に当たって、体協に加盟していない例えば高校野球連盟などに対してはどのように指導するかという御指摘ですが、憲章は体育協会に加盟しておらない団体には及ばないわけでありますけれども、体育協会加盟の団体の主催する競技会などに児童生徒、学生が参加する場合には、悪い影響が及ばないように教育的な配慮から十分な指導をしてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(木村睦男君) 立木洋君。
   〔立木洋君登壇、拍手〕
#24
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十九年度決算に関連し、総理並びに関係閣僚に質問します。
 冒頭にただしたいことは、総理は円高対策を講ずるために臨時国会を早期に召集する意向だと伝えられていることであります。
 これは口実にすぎず、実は臨時国会で衆議院を解散し、総理自身の党利党略に基づく衆参同時選挙を強行するためであることは衆目の一致するところであります。自民党政府自身が、国民の苦しみのもとになっている円高をつくり出し、しかもそれをみずからの党利党略に利用するなどということは断じて許されないことであります。総理は、この演壇で、憲法の二院制度の精神に反する衆参同時愚挙は行わないと明言すべきではありませんか。
 今日重大化している急激な円高に至った責任の所在と円高対策について、次に質問をいたします。
 言うまでなく、アメリカの財政赤字や貿易赤字の最大の原因は、レーガンの大軍拡や多国籍企業の海外活動など、アメリカ自身の問題にあることは明白であります。このことを総理はアメリカに率直に指摘をすべきであります。アメリカみずからの政策の誤りやそのために生じた困難に対して日本が責任を負う必要は毫もありません。今、中小企業や産地は、当面せめて二百円に戻してくれと痛切に訴えております。政府はこの当然な要求にこたえ、円高を是正する毅然とした態度を内外に公にし、対外的にも必要な措置を求めるべきであります。答弁を求めます。
 政府は、昨年九月以来、アメリカのドル高是正策を積極的に促進してきました。レーガンの、円高は貿易収支調整に役立っているとの主張を受け入れ、一方的に我が国の輸入拡大や農業、中小企業、石炭産業などの切り捨てを進める産業構造調整を約束し、サミットでは我が国への内政干渉を認める相互監視機構の設置までが合意されました。総理や蔵相は、今日、行き過ぎだとか緊急事態などと述べていますが、これまでレーガンの言いなりになってきて生じたこの円高の責任についてどう考えているのでしょうか。アメリカ経済の責任を他国に転嫁するレーガンに追随するのではなく、輸入大国化や産業調整の対米公約、相互監視機構の設置合意はすべて破棄するよう求めます。
 また、膨大な貿易黒字を招いた大企業による輸出ラッシュについていえば、トヨタ、松下など、この五年間に二倍に輸出を伸ばしてきました。その根源には、低賃金、長時間超過密労働、下請中小企業の締めつけがあることは周知のとおりであります。抜本対策は大企業のこの横暴を規制することであります。少なくとも労働時間短縮、賃上げ、下請工賃引き上げ、減税など真の内需拡大にすぐ着手すべきではありませんか。答弁を求めます。
 次に、中小企業対策についてであります。
 中小企業への緊急融資については、政府にやる気さえあれば、利子補給によって産地中小企業への融資は激甚災害並みの金利三%を適用できるではありませんか。しかもこれに要する経費は六十億円、日立製作所一社への補助金七十億円にも満たない額であります。直ちに実施するかどうか明確にしていただきたい。
 さらに、円高差益の還元の問題ですが、今回、通産省の認可した電力、ガス料金の引き下げは余りにも企業寄りのものであります。それは、現状を無視した為替レートや原油価格の見直しという点でも、算定基準を前回認可時ではなく八四年度に置いたことでも、全額消費者に返すべき差益であるにもかかわらず三分の一を電力、ガス会社の利益として留保したことでも極めて不当であります。公正な試算をすれば、さらに一兆円以上の国民への還元が可能であります。私は、政府に再検討を強く求めるものであります。
 次に、漁業の問題です。
 二百海里時代が十年目を迎えた今日、とりわけ我が国の北洋漁業は深刻な苦境に陥っております。これは、政府が根本的対策を怠り、資源の乱獲、浪費の体質を改める施策を実施せず、ただ既得権の確保にのみきゅうきゅうとしてきた結果であります。特に中小漁業者、沿岸漁民の安定した操業の育成を怠ったことは重大であり、大手水産会社本位、遠洋漁業優先の漁業政策、対米追随外交、対ソ非友好的外交を改めるべきであります。政府は、速やかに二百海里時代に対応できる我が国の漁業政策を確立し、必要な対外措置を講ずべきであり、当面、既に出漁予定日を過ぎた日ソサケ・マス交渉の早期妥結を図るべきであります。また、一月以降の交渉遅延や今次交渉結果生じた事態についても、政府の責任において漁業・水産関係者に完全補償することを求めます。
 次に、金権腐敗の一掃について伺います。
 ロッキード裁判の二審でも佐藤孝行、橋本登美三郎両被告に有罪判決が下され、判決は被告に対して、自己の非を全く省みない態度に終始しているとさえ指弾し、二階堂進、加藤六月両議員にも金が渡されたこと及びそのわいろ性も明白としています。ロッキード疑獄の真相究明と政治的道義的責任の明確化のために政府・自民党は一体どんな自浄能力を発揮したというのでしょうか。田中議員辞職勧告決議をあくまで拒否し、証人喚問を棚上げしたまま航空機調査特別委員会も解散しました。総理、あなたが本当に有終の美を飾りたいのであれば、わいろを受け取ったことの明らかなこれらの議員に対して毅然として辞職を迫るべきであります。
 撚糸工連汚職についても同様であります。改めて言うまでもなく、この事件は、構造不況にあえぐ中小繊維業者の弱みにつけ込んでわいろを受け取るという政治家として恥ずべき行為であります。総理、あなたは、この事件についても、稻村佐近四郎議員が自民党を離党すればそれで責任を免れたとお考えなのでしょうか。
 マルコス疑惑についても、その解明はほとんど進んでおりません。その原因が政府・自民党にあることは全く明らかであります。フィリピンに対する借款について、個別企業の契約内容を示す資料を国会に提出し、関係者の証人喚問を行うことが真相の究明を進めるかぎであることは明白ではおりませんか。フィリピン政府自身が協力を明言しているのに、なぜ日本政府がそれを渋るのでしょうか。私は資料提出と証人喚問の実行を強く要求するものであります。
 マルコス疑惑は、我が国の対外経済協力が関係企業の悪徳商法と結びつき、マルコス独裁政権延命に利用されていたことを示すものであり、我が国の対外経済協力のあり方の根本的見直しを迫っております。我が国の対外経済協力について、経済協力計画や実施状況など、国会での審議制度も含めてその抜本的改善を行うべきだと思いますが、総理の見解を明らかにされたい。
 最後に、今日、人類にとって緊急の課題である核兵器廃絶についてであります。
 本年一月のソ連の核兵器廃絶の提案に見られるように、核兵器廃絶の課題が国際政治の日程に登場し、核兵器廃絶を求める世界の世論がますます高まっているとき、東京サミットの宣言が、日本国民の願いと世界の核兵器廃絶の世論に背を向けたことは極めて重大であります。これは核兵器廃絶のゴルバチョフ提案を棚上げしたレーガン米大統領の態度を評価するという合意に端的に示されています。総理が核兵器廃絶を口にされるのなら、世界で唯一の被爆国で開いたサミットでなぜ堂々と主張しなかったのですか。
 以上、責任ある答弁、見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(中曽根康弘君) 立木議員にお答えをいたします。
 まず、臨時国会や解散、同日選挙のことでございますが、ただいまは通常国会開会中で重要法案を審議中であります。このときに、臨時国会のことを言及することは不見識であると前から申し上げておるとおりであります。解散は考えておりません。
 次に、アメリカの財政赤字、貿易赤字の問題につきましては、私はアメリカ大統領との会談あるいはサミットの場等も通じて、これが是正方を強く今までも要望してきておるところでございます。
 円高の問題につきましても、サミットの場におきましては、長期的に為替相場を安定させることが望ましい、そういう意味で一般論として合致したのであります。そのために主要国間で相互監視を行うことを合意いたしました。また、有用な場合には為替市場に介入するとのウィリアムズバーグ・サミットの合意も再確認してきておるのございます。
 円高の責任の問題でございますが、これは市場というものは思惑やあるいは経済の動向によって常に流動しておるもので、相場は相場に聞けと言われているとおりで、簡単にいえば相場の責任は相場にあると、こう言わざるを得ないのであります。しかし、我々としては、長期的に見て経済のファンダメンタルズに合うように安定的な適正な相場を維持するということが経済政策としては望ましいので、そういう点については十分注意しつつ努力しております。次に、産業調整等の問題でございますが、この国際経済に調和する日本経済の構造改革等をうたったいわゆる経構研報告は、まことに時宜を得た、適切かつ貴重な報告であると評価しておるところであります。アメリカに対しては、これを公約として約束したというようなことは全くありません。政府は、先般、経済構造調整に関する具体的な検討項目、時期、手続等を定めた要綱を決定して、その着実な推進を図っておるところでございます。
 次に、内需拡大のための時短、賃上げ、減税等の問題でございますが、やはり長期的に見ますと、国際協調型経済推進のために内需主導型の経済成長を図るというようなことや、あるいは時短の問題等も、これは考えなければならぬという課題にはなっておると思うのであります。この観点から、五月一日に経済対策閣僚会議において経済構造調整推進要綱を決定しました。この中で、賃金については、産業労働懇話会等さまざまなレベルで、経済成長の成果が賃金にも適切に配分されるよう労使のコンセンサスの形成を図っていくこととし、労働時間の短縮については、夏季における一週間以上の連続休暇の普及に努めることや、労働基準法の改正の検討等について決定したところでございます。労働時間の短縮については、昨年十月に内需拡大に関する対策。中で既に週休二日制の拡大のための対策を決定し、それの実行に努めております。
 なお、減税については、今税調で審議して、秋の包括的な答申を待っておるところでございます。
 ロッキード問題に関する議員の問題でございますが、目下裁判が係属中でありまして、これを見守っておるということでございます。
 政治倫理の問題については、各党で協議をして、いろいろと御議論を願いたいと思っておるのでございます。
 議員の進退の問題は、選挙民との関係が最も重大でございまして、本人が選択すべきものであると考えております。
 資料の国会提出、証人喚問の問題でございますが、可能な限り資料の提出のための努力を行っております。しかし、できないものもあるということは申し上げたとおりでございます。企業関係者等の証人喚問については、国会において検討される問題であると考えております。
 経済協力については、援助が適正かつ効果的、効率的に行われていると信じておりますが、改善すべき点があればもちろん改善しなければならないと思います。本年二月、対外援助のあり方について、総理大臣の諮問機関である対外経済協力審議会に対し、今後の経済協力を進めるに当たり留意すべき基本的事項について諮問をいたしました。なお、具体的な協力計画や実施状況の国会による審査、承認は、事前に我が方考え方が相手方に明らかになるということ、外交交渉上必要な機動性が失われるということ、援助の円滑かつ迅速な実施に支障を来す等の問題点があると考えております。
 次に、東京サミットにおける核廃絶問題でございますが、今次東京サミットにおきましても、東京宣言にあるように、米ソ軍備管理交渉に関し、米国の交渉努力を評価するとともに、ソ連もまた積極的に交渉するよう呼びかけることで合意いたしました。私自体も、核兵器の廃絶に向かって具体的に平和と軍縮を前進させるよう、特に第二次米ソ首脳会談を必ず行うように、これは継続するというところに意味があるということを強調いたしまして、大いに力説したところでございます。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(竹下登君) まず最初は、急激な円高、この責任、こういうことであります。
 総理からも既にお答えがございましたが、国際的対外不均衡が依然として大きい。したがって、やはり為替相場の安定が何よりも大事でございますから、政策協調、そしてさらには適時適切な介入、これが必要であるというふうに考えております。
 それから次が、私に関する守備範囲から申しますと、いわゆる主要国間のサーベイランスの強化というのは内政干渉のおそれがないかと、こういう御趣旨の御発言でありました。
 各国と協力して、お互いが相互干渉を行うということは、これはまさに経済政策の協調の基礎ともなるべきことでありますので、非常に重要なことであって、内政干渉とはほど遠いものであります。
 それから次が、二百円という数字を出しての為替レートに対する御意見がございました。
 この問題、いわゆる産業界におきましては業種別に種々議論がございます。しかし、具体的にどのような相場が適正かということは、これは通貨当局者は発言を差し控えるべきものである。いずれにせよ、安定が重要でありますから、政策協調等々これからも十分進めてまいりたいと思います。
 それから北洋漁業の問題等についての御意見を交えての御質問がありました。
 今後は、中長期的な展望に立って、我が国漁業全体の再編整備を推進することが必要ではなかろうかというふうに考えておりますが、基本的には、今回の交渉の結果に伴って影響を受ける漁業者等について講ずべき対策ということは、これは農林水産大臣とよく御協議申し上げて検討してまいりたいというお答えにとどめておきます。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(渡辺美智雄君) アメリカのドル高是正にこたえて輸出関連中小企業が困っている、だから面倒を見なさい。これは、輸出が増大したのは、大企業が中小下請それから労働者をいじめて稼ぎ出したというようなお話ですが、私はそう思いません。これはみんなが協力をして輸出が伸びた。特に去年の決算のときに、ある大手の会社の社長が、数千億の史上初めての巨額な利益を上げたことについて、これは皆さんの御努力もさることながら、思いもかけない円安によって生じた利益ですということを去年言いましたよ、新聞に載っていました。ですから、そういうようないろいろなものがあって出たものである、そう思っております。したがって、中小企業の金利問題等については、先ほどもお答えいたしましたように、極力下げてまいりました。長期プライムは大企業向けの最優遇金利ですが、それよりも中小企業事業転換等に関する法律に従って貸し出す金利は一・四とか一・一とか低い金利になっておりますから、そのこともひとつ頭に入れていただきたいと存じます。
 それから電気、ガスの再還元。私はこれは適切に、思い切りよくやったと思っているほどよくやったのですが、それが民間に三分の一ぐらい、三割ぐらいまだ残しておくのはけしからぬ、皆吐き出せ、そういうお話でございますが、これは円レートを百七十八円に見たと。しかし、幾らに見たらいいのかと言われましても、幾らになるかわかる人はこれはいませんね、したがって三カ月間の平均で見た、それしか見ようがないということですよ。それじゃまた、今百七十円が八円ぐらいげたを履いているのじゃないかと。げたを履いていると言えばげたを履いた格好になるかもしれないが、これは別な面もあるんです、実際は。
 どういう面があるかというと、例えばガス会社なんかは、大手は七五%天然ガスなんですね。天然ガスは石油換算で一バレル今二十七ドルなんです。にもかかわらず二十三ドルで見込み発車をしているわけです。まだ下がってないんですから、下がってないものを四ドルも下げちゃって、これは見込んであるわけです。石油がもう少しでも下がってくれるかと思ったら、何だかきのうあたりから少し高くなって、一バレル十六ドルとか七ドルとかという、私は心配している、実際は。天然ガスがまだ下がってない。それを下げちゃっているんです。それで見ているんですから、かなり危険な、危険といっては何ですが、それは思い切って還元しようということをやっているわけですから、多少の安全係数を見ないと危なくてできない。途中でまたすぐ三カ月もしないうちに値上げだ、そんなことはできません。したがって、極めて大胆、適正、思い切ってやったものであるということを御承知願います。(拍手)
   〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(羽田孜君) まず、二百海里時代の漁業施策につきましてお答えを申し上げます。
 昭和五十二年、米国、ソ連、これらの国が二百海里体制をしかれて以来本格的に二百海里時代が到来したというふうに認識しております。そのような環境変化の中にありましても、我が国の長く続けてまいりました遠洋漁業、これを存続するために今日までも粘り強い交渉を続け、存続を図ってきたところであります。それと同時に、やはり二百海里時代が到来したという中で、みずからの二百海里というものを大切にする必要がある。その意味で、とる漁業からつくり育てる漁業への転換をということで、我が国周辺水域内の水産資源の維持培養と高度利用、新資源及び新漁場の開発、漁業の構造再編など、二百海里時代に対応すべく諸施策の推進に努めてまいったところでございます。今後さらにこれらの施策の拡充を図りまして、魚たんぱくの確保と漁業の振興を推進するために最善を尽くしてまいりたい、かように考えます。
 次に、日ソサケ・マス交渉の見通しでございますけれども、本年の北洋サケ・マス漁業の操業条件について協議する日ソ漁業合同委員会第二回会議は、去る十二日から東京で開催されています。ソ連側は、これまでのところ、日本側サケ・マス漁業に対する評価を基礎として、今後三年の間にソ連系サケ・マスの沖取りを禁止することもあり得べしという趣旨の声明を行うなど、非常に厳しい姿勢を見せております。今後の見通しにつきましてはいまだ予断を許しませんが、政府といたしましては早期妥結のためにさらに最大限の努力を続けていきたいというふうに思っております。しかしながら、協議は極めて厳しいことを率直に御報告を申し上げておきます。
 最後に、日ソ漁業交渉に伴う関係漁業者等の救済対策でございますけれども、先ほど大蔵大臣からもお答えがございましたが、今次の日ソ漁業交渉に伴う対策につきましては、農林水産省ばかりではございません、関係省庁にまたがる幅広い対策を講ずる必要がありますので、北洋漁業対策に関係のございます十一人の閣僚の皆様方にもお集まりいただいて会議を開催するなど、政府といたしましてこれに挙げて取り組んでおるというところであります。まず、関係漁業者の救済対策、水産加工業等の経営安定対策、漁業離職者の雇用対策、地域振興対策などにつきまして、できるものから速やかに実施してまいる、その所存でこれから努めてまいります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○議長(木村睦男君) 井上計君。
   〔井上計君登壇、拍手〕
#30
○井上計君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度決算に関連して質問を行います。
 去る五十九年二月、第百一国会の冒頭、中曽根総理は施政方針演説の中で次のように述べられました。
 「我々を取り巻く内外の環境や時代の潮流には、最近顕著な転換の兆しがあらわれております。我が国も、政治、経済、文化、教育、福祉、外交、安全保障等各分野をさらに総合的に再点検し、適切な改革を強力に推し進め、転換期のハードルを乗り越え、日本の未来を開くべき時期に来ていると確信いたします。 しかしながら、その実現は決して容易なものではありません。それは、」「もろもろのひずみを是正することであり、また、二十一世紀という未知の世界への挑戦と準備のための軌道を敷設することであるからであります。これらの改革と挑戦は、早晩日本民族が遭遇しなければならない宿命の試練であり、これを乗り越えてこそ、我が国の希望とさらに偉大な繁栄と発展があると確信いたします。私は、国民の皆様とともに手を携え、謙虚に国政の衝に当たっていく決意であります。」
 私は、この格調高い総理の演説を聞いたとき、国民の一人として強い感銘を受け、同時に大きな期待を抱き、その後の総理の政治姿勢に対し重大な関心を持ってまいったのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 また、竹下大蔵大臣は財政演説で、「我が国の貿易・経常収支は、」「米国を中心とする世界景気の回復を主因として大幅な黒字を続けており、諸外国では、我が国に対しその不均衡の是正を求める声が高まってきております。」と認識をされながら、続いて、「為替相場の動向につきましては、昨年十一月以降、ドイツ・マルク等の欧州通貨は、米ドル金利の反騰懸念や国際政治情勢などを反映し記録的な安値となっておりますが、円相場は昨年十月以降比較的堅調に推移しております。今後、円相場につきましては、さきの対策に盛り込んだ資本流入の促進等を初めとした各般の措置の着実な実施と相まって、我が国経済の良好なファンダメンタルズを十分反映したものとなるよう期待しております。 今後とも関係諸国と密接な協調を保ちながら、円相場の安定に努めてまいりたいと考えております。」と述べておられます。
 当時の円相場は二百三十五円前後でありましたから、この演説からすると、この程度が我が国経済の実態からして適正と考えておられたものと思われるのであります。とすると、五十九年度の予算の編成方針と財政の見通しは明らかに誤りであったと言えます。
 さらに、昨年九月のG5の合意とその後の円高政策は、自由貿易体制を守り、国際協調の立場からやむを得ない政策とするならば、政治の要諦である先見性からして当然予測される事態を考慮して円高対策を確立し、並行して政策転換を実施すべきであったと考えます。ところが、政府の対策はすべてが後手後手と回り、いわゆる泥棒を見て縄をなう式の失政と強い非難がありますが、大蔵大臣はどのように認識しておられますか、お伺いをいたします。
 さて、この数日間、円相場はやや落ちつきを見せておりますが、依然、先高感、先行き不透明感の異常な事態にあります。新聞報道は連日、円高不況による息切れ倒産を伝えております。円高が原因による倒産は既に百件を超え、さらに広がりつつあります。また、輸出関連企業のみでなく、円高による輸入原材料の価格低下のため、極端な売れ行き不振となり、危機に陥っている業種、企業が増加しつつあるのであります。これらの原因は、円高のスピードが余りにも速過ぎて、企業に対応する準備時間が全くなかったことにあります。今さら言っても仕方がないとはいえ、せめて五十九年度あたりから緩やかな円高政策がとられておれば、このような混乱や悲劇は防止できたものと思われます。したがって、政府は改めてその責任を痛感し、適切な緊急対策を速やかに確立して対処しなければなりません。
 私は、以上のような観点から具体的に対策を提言して、総理並びに関係大臣にお答えをいただきたいと思います。
 第一に、去る二月に実施された特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の拡充であります。特に融資条件の緩和、融資枠の拡大と信用保険法本法の改正に加え、保証協会への補助金の追加を行い、保証枠の拡大と無担保保証枠の拡大を速やかに実施し、さらにその金利を三%程度の低利にすべきであります。大蔵大臣は、現在の財投金利からして不可能とお考えかもしれません。しかし、去る四月二十四日、私が補助金等特別委員会で提言したように、現行の財投金利は高金利時代に定められたものであり、低金利時代となった今日においては甚だしい矛盾が生じていることは明らかであります。
 この矛盾は、昭和五十九年度において既に表面化しております。すなわち、五十九年度の財政投融資の使い残しが約五兆円となっておりますが、特に政府系金融機関の未消化が目立っていることがそのあらわれであります。もちろん、資金運用部資金法の改正は時間を要するでありましょうから、その間は予備費等から利子補給を行う等、政府はあらゆる方法を講ずべき責任があります。また、三%の金利は難題ではありません。既に政府は二百海里漁業規制の際三%の低利融資を実行していることを考えると、円高非常対策として低利融資を行うことについては当然であります。また、円高不況による解雇、円高倒産による離職者が増加しつつあります。政府はこれらの対策として、職業転換給付金の支給、あるいは雇用調整助成金の助成率の引き上げ等を実施すべきと考えますが、いかがでありましょうか。
 さらに、これらの対策と同時に、硬直化した従来の財政政策を反省し、財政出動によって速やかな内需拡大、景気の振興を図る政策転換を即時行うべきであります。また、当然のことながら、所得税の減税、投資減税等の拡大、公共事業費の追加、民間住宅建設の促進政策等々の積極政策に転換をしなければ、民間活力の促進は空念仏に終わり、財政再建どころか、反対に、元も子もなくなるという破綻の憂き目を見るようになることは明らかでありましょう。
 同時に、我が風の産業構造の転換を進める施策を確立すべきは当然であります。しかし、その場合、多くの事業者に転廃業の指導を行うことになるでありましょう。それが弱者を切り捨てる政策であっては絶対なりません。そのためには、現在の特定産業構造改善臨時措置法を見直して、新たに「特定企業転廃業対策措置法」のような法律を策定し、設備の買い上げ、債務の肩がわり、長期低利の融資等、特定企業が進んで転廃業のできる環境と条件づくりが必要であります。また、流通業、サービス業等の新分野の開拓、拡大も政治の責任として創出する政策が必要と考えます。
 さらに、中高年齢労働者の職種転換のために、職業訓練制度の改正、拡充も必要であります。労働大臣はいかがお考えてありますか、お聞きをいたします。
 以上申し上げましたが、この異常、非常事態の中で苦しんでいる多くの人たちに対し、きめ細かい、そうして温かい施策を速やかに実施してこの難局を乗り切り、ともに手を携えて二十一世紀へ向かって力強く挑戦することができますように、中曽根内閣の有終の美を飾るため、総理の決断と勇気を期待し、さらに要望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(中曽根康弘君) 井上議員にお答えをいたします。
 御所論は傾聴いたしましたが、私も中小企業政策については本当に大事な政策であると考えておるところでございます。
 まず、貿易摩擦と円高の問題でございますが、我が国が国際経済社会に占める地位にふさわしい役割と責任を担い、自由貿易体制の維持強化、調和ある対外経済関係の形成及び世界経済活性化への積極的貢献、これを行うことが日本には必要であると考えております。そのために既に、市場アクセス改善のためのアクションプログラムを初め関税の引き下げ、基準・認証の改善等、着実に各分野においてかなり広範囲に政策を推進しているところでございます。今回の円高の定着を背景に、今後とも内需の拡大を図る中で、我が国市場の開放、輸入の促進、市場アクセスの改善等を推進してまいり、国際協調のための経済構造の調整を実施してまいりたい、中長期的な努力を継続していきたい、こう考えておるところであります。
 為替相場の問題につきましては、長期的安定が重要でございます。そのためには、各国との政策協調が何にも増して重要でありまして、今回のサミットにおきましても、特に政策協調の点について強い合意を行ったところであります。相場の動きが急であり過ぎ、乱高下と判断される場合には適時適切に介入をいたしたいと思っており、既に実行もいたしております。今後とも、為替市場の動向には十分注意を払って、機動的に対処してまいる考えております。
 中小企業に対する対策につきましては、昨年秋口以降の急激な円高に対処いたしまして、中小企業の事業転換、経営安定等を図るために、立法、金融その他の特別措置等を強化してまいってきているところであります。円高がさらに進展した現在の状況にかんがみまして、私はサミット前に関係各大臣にこれに対する対策を急ぐよう指示しておるところであり、今その詰めを行っておるという状況でございます。
 預託金利の引き下げでありますが、預託金利については、時々の金利情勢のもとで、預託者側の事情、それから財投機関の事情等を総合的に勘案して決めておるものであります。現在は、長期金利の推移を注意深く見守っておるというところでございます。
 抜本的な産業構造の転換の問題でございますが、我が国は中長期にわたり一層内需中心の成長を図り、国民生活水準を高める、そして世界経済の発展に貢献していく、こういう方向が正しいと思います。国際協調のための経済構造調整研究会の報告におきまして、「国際協調型経済を実現し、国際国家日本を指向していくためには、内需主導型の経済成長を図るとともに、輸出入・産業構造の抜本的な転換を推進していくことが不可欠」としておるのであります。政府は、五月一日の経済対策閣僚会議において経済構造調整推進要綱を決定し、その着実な実施に今入っておるところでございます。
 財政による内需拡大につきましては、六十一年度予算は、厳しい状況のもとでございましたが、公共事業費については昨年は三・七%増がことしは四・三%増としておることは前に御報告したとおりであります。経済の安定成長の確保のためにも、財政改革を推進し財政の対応力の回復を図ることが必要であります。そのためには、やはり金融政策あるいは経済政策、景気の動向等を見守りながら、適切かつ機動的な経済運営に努めながら、財政改革に全力を挙げていく必要があると思っております。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(竹下登君) 御意見を交えての御質疑に対して傾聴をさせていただきました。
 まず、いわゆる我が国の経常収支の動向から見まして、五十九年ごろから貿易摩擦解消策をやっておったならば今の急激な円高というものを招かないで済んだではないか、こういう御質問でございます。
 我が国の経常収支の動向について見ますと、これはやはりアメリカの大幅な財政赤字、それから高金利に伴う昨年秋までのドル高、そしてアメリカの急速な景気拡大、一方、原油等一次産品価格の低迷、これらの要因によるものが黒字の大宗であるというふうに言えるわけであります。したがって、これから市場開放あるいは輸入の促進、そういうことに鋭意努めていかなければならぬというふうに基本的にはまず考えております。
 そして、円高誘導の問題についても御意見がございましたが、これはなかなか誘導というようなもので本来決まるべきものではありません。しかしながら、円高による打撃を受ける輸出産業等の中小企業に対しましては、いずれ通産大臣からもお答えがあろうかと思いますが、もろもろの施策を行い、なお関係省庁で今日検討しておるというのが実情でございます。
 次は、いわゆる本当の安定はどこにあるかということになりますと、やはり適正なファンダメンタルズを反映する状態、それは何としても政策協調、それがためのいわゆる相互監視、これが基本的には最も大切ではなかろうかというふうに考えておるところであります。
 それから財投金利引き下げのことは総理から詳しくお答えがございました。いわゆる預託者側の事情と財投機関の事情等、こういうものは確かにかなり時間をかけて議論すべき課題だというふうに考えております。
 それから内需拡大のための積極的な財政出動等々の御意見もございました。
 目下、六十一年度予算一般公共事業の事業費について前年度を上回る四・三%増を確保して、なおかついわゆる前倒しの効果というものをこれからまさに慎重に見きわめるべきものであろうというふうに考えております。
 それからもう一つ、財投資金の使い残し等についてのいわゆる金利問題と連動して御意見がございました。
 確かに五十九年度は、私も反省してみまして、いわゆるプラント輸出の不振とか資源需要の低迷によるところの開発実施のおくれ、あるいは債務累積問題等によってプロジェクトそのものがおくれたという、言ってみれば予見できない多くの事情があったというふうに考えております。しかし、それらの不用はほとんど六十年度財投の原資に入れて、そうしてなお政府関係金融機関の財投の伸び率を、住宅公庫は別といたしまして、八・一%減ずるというような措置をその後とることによって対応をいたしてきておるということでございます。
 以上でお答えを終わります。(拍手)
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(渡辺美智雄君) 中小企業に対する緊急措置をとれという中で、先ほども御質問がありましたが、緊急融資枠の拡大、信用保険法改正で無担保融資の枠の拡大、それから新転換法の見直し、拡充、金利の引き下げというようなことは、実は続けてこの間やったばかりなんです。やったばかりで、この国会でとてもできるわけはない。私は金利を一段下げというようなことはどうかなと。しかし、これも法律事項にどうしてもならざるを得ない。あるいは設備の買い上げというようなことも、転換する場合、企業がやめるという場合、そういう場合も予算措置、法律措置が必要。そうなりますと、これは法律を出すということになると、国会がなければ出せないし、臨時国会は開くなと言われているし、これはどういうふうにしたらいいのか、ここのところ私もよくわからぬ、実際は。わからぬですが、できるだけ今の法律の中でやれるものはやります。それからなるべく、もう参議院選挙後になるかどうかわかりませんが、準備はしなければなりませんから、いろいろ勉強を合しておることは事実でございます。
 それから特定企業転廃業対策措置法というものをつくってはどうかというお話でございますが、これは現在の法律で、特定産業構造改善臨時措置法、これで構造改善はずっとこれまでも順調にやってきました。これが期限が切れますということになっておりますが、いずれにしても構造改善ということは必要なことでございます。ですから、これも今の法律で十分だと思うけれども、もし、足りないのかどうか、もう少し推移を見守った上で決めてまいりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣林ゆう君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(林ゆう君) 井上議員の御質問にお答えいたします。
 円高の急速な進展が雇用に及ぼす影響につきましては、輸出比率の高い産地を中心にヒアリングを行うなどその実態把握に努めてまいっているところでございますが、その結果によりますと、特定の地域、業種について雇用への影響があらわれてきております。このような状況を踏まえまして、特定不況業種・地域法や雇用調整助成金制度を機動的に活用いたしまして、休業や教育訓練等に対する助成によりまして失業の予防を図っているところでございます。また、雇用保険の失業給付の延長等の措置を講じますとともに、中高年齢労働者の職業の転換に必要な職業訓練等の積極的な活用によりまして、離職者の早期再就職の促進に努めているところでございます。今後とも、これらの施策の実施に当たりましては、業種や地域の実情に即しましてこれらの制度が十分生かされるよう努めてまいる所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣平泉渉君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(平泉渉君) もう総理初め各大臣から御答弁がございましたので、特に私からつけ加えるべきこともございませんが、先生の問題提起というのは、全般的に見まして私ども賛成するところが非常に多いわけでございます。
 今般の円高は何せ非常に急激であったということ、それから速かった、こういうことで大変御迷惑をおかけをしておる面があるわけでございまして、私ども経済企画庁といたしましても、各地の企業の実態というものは十分調査をいたさせておりまして、現況を十分把握をいたしたい、そしてその結果を行政に反映させる必要がある、こういうことで関係の各省庁とは十分に協議を連日続けておる状況でございます。
 対策につきましては、法律を必要とするものもあり、それから行政措置でやれるものもあるのではあるまいか、この両面から見まして、これに対する対策は大体合成案を得る方角に向かっておると私どもは理解をいたしております。法律を必要とするものには、先ほど大蔵大臣から答弁もございましたが、なかなか複雑な問題を含むものもございますけれども、しかしそういった全体の方角については関係各省庁とも問題意識は一致をいたしておるのではあるまいか、その辺今後の努力を一層続けてまいりたい。なお、緊急の問題につきましては、各地の実際の行政機関の行政措置というものをさらに督励をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
#36
○副議長(阿具根登君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#37
○副議長(阿具根登君) 日程第五 特定外航船舶解撤促進臨時措置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長鶴岡洋君。
   〔鶴岡洋君登壇、拍手〕
#38
○鶴岡洋君 ただいま議題となりました特定外航船舶解撤促進臨時措置法案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本法案は、外航海運をめぐる経済的事情の著しい変化にかんがみ、船腹量が過剰となり、かつ、老朽・不経済化している特定外航船舶の解撤を促進するための措置を臨時に講じようとするもので、その主な内容は、第一に、運輸大臣は、特定外航船舶の解撤を促進するための基本指針を定めなければならないものとするとともに、特定海運事業者は、基本指針に定めるところに従って、特定外航船舶の解撤を行うよう努めなければならないものとすること。第二に、特定海運事業者は、特定外航船舶の解撤計画を作成し、運輸大臣の認定を受けることができるものとすること。第三に、産業基盤信用基金は、認定を受けた解撤計画に係る特定外航船舶の解撤のため必要な資金等の借り入れに係る債務の保証業務を行うものとすること。第四に、特定海運事業者及び国は、解撤が行われる特定外航船舶の船員について、雇用安定措置を講ずるよう努力するものとすること等であります。
 委員会における質疑の詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終わり、討論に入りましたところ、日本共産党橋本委員より反対の意見が述べられ、採決の結果、本法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#40
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ―――――・―――――
#41
○副議長(阿具根登君) 日程第六 安全保障会議設置法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。内閣委員長亀長友義君。
  〔亀長友義君登壇、拍手〕
#42
○亀長友義君 ただいま議題となりました安全保障会議設置法案につきまして、内閣委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、内閣における総合調整機能強化についての臨時行政改革推進審議会の答申の趣旨に基づき、現行国防会議の任務を継承するとともに、あわせて、重大緊急事態への対処体制の整備を図るため、内閣に安保保障会議を設置しようとするものであります。
 安全保障会議は、国防に関する重要事項のほか、重大緊急事態が発生した場合において、内閣総理大臣の諮問を受け、当該重大緊急事態への対処措置について審議することといたしております。また、この安全保障会議は、これらの事項について必要に応じ、内閣総理大臣に対し意見を述べることができることといたしております。安全保障会議の議長は、内閣総理大臣をもって充てることとしております。議員は、現在の国防会議の議員である内閣法第九条の規定によりあらかじめ指定された国務大臣、外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、経済企画庁長官及び新たに内閣官房長官及び国家公安委員会委員長を加えることといたしております。また、国防会議事務局を廃止し、安全保障会議に関する事務につきましては、内閣官房において処理することといたしております。以上のほか、関係国務大臣その他の関係者の会議への出席等につきまして所要の措置を規定いたしております。
 なお、本法律は、昭和六十一年七月一日から施行することといたしております。
 委員会におきましては、中曽根内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど熱心な審査が行われました。その主な質疑の内容は、安全保障会議設置の必要性、名称の当否、閣議との関係、重大緊急事態の内容、これまでの緊急事態対処体制との関連、安全保障会議の設置とシビリアンコントロール、本改正に伴う内閣官房組織再編の是非等のほか、中期防衛力整備計画、SDI研究参加、スペースプレーンの戦略的影響等広範多岐にわたっております。その詳細は会議録により御承知願いたいと存じます。
 採決により質疑を終局することを決定いたしました後、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して穐山委員より反対、自由民主党・自由国民会議を代表して曽根田理事より賛成、公明党・国民会議を代表して太田理事より反対、民社党・国民連合を代表して関委員より反対、日本共産党を代表して内藤委員より反対の旨の発言がありました。
 討論を終わり、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#43
○副議長(阿具根登君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。野田哲君。
   〔野田哲君登壇、拍手〕
#44
○野田哲君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました安全保障会議設置法案に対し、反対の討論を行うものであります。
 政府は、いわゆるミグ25戦闘機亡命事件や大韓航空機撃墜事件などの経緯を踏まえて、行革審に危機管理のための政府の仕組みなどについて検討を要請し、その答申に基づいて今回国防会議を廃止し、内閣に安全保障会議を設置しようとしております。しかし、そもそもこれらの事件自体が我が国にとって危急存亡を問われるような問題であるという政府の認識そのものにも問題があると思うのであります。
 第二臨調は、国防会議の活性化方策について具体的な提言を行っておりますが、行革審が、第二臨調答申の実施を監視するという本来の任務を超えて、内閣の総合調整機能の強化を図り、その一環として、国防問題を初め重大緊急事態への対処という国の最高方針にまで言及をしたことは、私どもは断じて認めることができません。本来、国防問題や重大緊急事態への対処など国の安全保障に関する問題は、国権の最高機関である国会で論議すべきであって、政府の一審議会で論議すべきものではないのであります。このように一諮問機関に国会や政党の機能を代替させることは、議会制民主主義を空洞化させるものと言わなければなりません。
 私は、まず、本法律案のこのような基本的な問題を指摘した上で、以下、本法律案に反対をする主な理由を申し上げます。
 まず第一は、安全保障会議の任務についてであります。
 安全保障会議は、現行国防会議の任務を継承するとともに、重大緊急事態への対処などを任務としておりますが、国防事態を除き、現在の通常緊急事態への対処体制を超えるものが一体いかなる事態が、依然として不明確なのであります。政府の説明を聞く限り、従来どおり、内閣の指導性をより発揮し、各省庁間の緊密な協議と責任において行えば十分であり、わざわざ法律で安全保障会議を設置する必要性は全くないのであります。したがって、安全保障会議設置のねらいは、国民の生命財産への脅威に対処するというより、総理の超法規的権限の発動を中心に据えた危機管理体制の強化でああという疑念を持たざるを得ません。本法律案は、我が国に戒厳令発動の道を開こうとする危険な発想によるものであると断言せざるを得ないのであります。先般の四月下旬から五月上旬にかけての東京都心部や羽田周辺の厳戒体制は、そのことを如実に示しているといっても言い過ぎではないと思います。
 第二は、シビリアンコントロールの観点であります。
 政府は、安全保障会議が設置されればシビリアンコントロールが一層機能するとして、その理由に、国防会議の任務継承、有事に発展しかねない事態への有効適切な対処方針の決定、独立法での設置などを挙げておりますが、全く理解できません。シビリアンコントロールは、軍隊に対する文民の統制、軍事に対する政治の統制という現代民主主義国家における基本的な必要条件でありますが、その中心となるのは国民の代表者で構成をされる国会によるチェックであるべきであります。本法律案による措置は、国会のチェック機能を弱めこそすれ、決してシビリアンコントロールの機能を強化するようなものではありません。
 また、政府部内の機構をいかに変えようと、その運用が誤ったものであれば何にもならないのであります。中曽根内閣は発足以来、日米安保体制の強化と効率化を前面に押し出し、従来、歴代内閣が国会論議を踏まえ、憲法及びその精神に基づいていると主張してきた防衛基本政策さえも、みずから踏み出す解釈を次々と打ち出してきたのであります。政府みずからが、まず憲法の条項と精神をいま一度しっかりと認識することが大切であると考えるものであります。
 第三は、国民及び国会に対する情報の秘匿の問題であります。
 安全保障会議で審議され、決定された事項は、既存の法律で定められている一部分を除いては国会にも報告されず、ましてや承認も受けないということが明らかになっています。有事に至るおそれのある事態も含め、重大緊急事態についてはその情報も決定過程も明らかにされず、行われた措置等についても国民及び国会はその結果を知らされるのみでありましょう。国防問題はもちろんのこと、重大緊急事態の名のもとに情報の秘匿を行おうとしていることは、国家秘密法制定の動きなどとあわせて考えれば明らかであると指摘せざるを得ません。また、安全保障会議の設置と同時に行おうとしている内閣官房の組織改編においても、情報調査室及び合同情報会議の設置もこの方向を目指すものであり、断じて容認できるものではありません。
 第四は、行き過ぎたトップダウンによる弊害であります。
 安全保障会議は、国防に関する重要事項と重大緊急事態に対処するため、内閣総理大臣が直接指揮する機関として設置されるとなっておりますが、このことは、ボトムアップによる論議を積み重ね、コンセンサスを得ながら進めるという方式を無視をして、総理の権限を強化し、トップダウン方式で決定していこうとするものであります。国政は、一人の有能な指導者による強力なリーダーシップで運用される体制よりも、多くの議論の中でコンセンサスを徐々に形成し、確実に安全が担保された体制の中で行われることが大切であります。まして、重大緊急事態に当たっては、国民、主権者の代表としては慎重に対処することが緊要であります。緊急性を強調する余り、民主的な手続をないがしろにし、拙速に行動した結果、後顧の憂いを残してはならないのであります。
 以上、私は、本法律案に反対する主な理由を述べてまいりましたが、今回の安全保障会議の設置は、平時においても国家機構の戦時体制化を図り、内閣総理大臣に権限を集中して、大統領的内閣総理大臣として強権支配体制を築こうとするものであり、さらには、重大緊急事態への対処などを口実に超法規的措置をとり得ることをも含んだ極めて危険なものであり、憲法の平和的、民主的条項を無視したものと言わなければなりません。
 国の平和や国民の安全にかかわる重要事項は、国権の最高機関である国会が第一義的に審議し、決定すべきものであります。この権能を内閣総理大臣が直接指揮する機関に全面的にゆだね、事実上国会の上に立つ国権の最高機関扱いをすることは、議会制民主主義をじゅうりんし、憲法の原則を無視するものであります。このような政治手法と今回の改革には重大な危惧の念を持たざるを得ないということを表明して、私の反対討論を終わります。(拍手)
#45
○副議長(阿具根登君) 太田淳夫君。
   〔太田淳夫君登壇、拍手〕
#46
○太田淳夫君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました安全保障会議設置法案に対しまして、反対の討論を行うものであります。
 我が国の安全保障の問題は、今日の国際社会における相互依存関係の進展を考えるとき、単に軍事的側面にとどまらず、資源エネルギー、食糧等幅広い視野と長期的展望に立って検討されなければならない最重要の課題であります。我が党は、こうした観点に立ち、総合的な安全保障政策の確立のため、現在の国防会議を解消し、総合安全保障会議を政府部内に設置すべきことを提言してまいりました。今回提案されている安全保障会議は、名称こそ我が党の総合安全保障会議に似通っておりますが、その視点、内容は全く異なるものであります。
 政府は、現在ある総合安全保障関係閣僚会議を活性化する努力すらせず、国防会議を改組し、それに加えて重大緊急事態対処という極めて問題の多い任務を持つ機関を設置しようとしているのであります。このような法案は、国民合意の総合安全保障政策の確立にはほど遠いものと言わざるを得ず、まして軍事力増強、戦前回帰型政治を目指す中曽根内閣の一貫した方針に基づいて提出されたことに、多くの国民は強い危惧を抱いているところであります。
 こうした立場に基づき、以下、本法案に反対する主な理由を申し述べたいと思います。
 まず第一に、重大緊急事態についてであります。
 法案の条文は、重大緊急事態を極めて抽象的な形でしか定義しておらず、具体的に何がそれに該当するのか全く不明確であります。政府は、将来どんなことが起きるかわからない事態を具体的に書くことは困難だとして、重大緊急事態が予見できないことを明らかにしております。ところがその一方で、予見できないはずの重大緊急事態に対し、対処方針のマニュアルを平素から準備するとしていることはまことに理解に苦しむのであります。このことは、政府の言う重大緊急事態の概念がいかに矛盾に満ちたものであるかを端的に示しております。重大緊急事態とは一体何か、政府は責任を持って国民の納得のいく定義を示すべきであります。
 第二に、重大緊急事態への対処措置の問題であります。
 政府は、大規模地震の場合も重大緊急事態に該当する旨の答弁を行っておりますが、人為的要因に基づくものと自然的要因に基づくものとを統一的に一つの組織で検討することが果たして適当かどうか、大いに疑問であります。この点については、昭和五十五年に内閣審議室が取りまとめた「国の総合安全保障に関する行政の仕組み」によれば、「危機管理といっても、災害の場合、外部からの侵略がある場合等、種々のケースがあり、」「それぞれ別個の危機管理体制が整備されていなければならない性格のものである。」と指摘されております。
 現在の我が国においては、既に自然災害については中央防災会議があり、エネルギー危機については国民生活安定緊急対策本部があります。したがって、そういった個別の対処制度の整備をすることこそ本来のあり方であると思うのであります。政府は事改めて重大緊急事態という考え方を強調しておりますが、過去の例から、どうしても政府の対応に当たって不都合な点があったとは思えないのであります。そのような事態に際しても通常の体制、通常の対処、すなわち閣議あるいは事態に応じた関係閣僚会議を機動的に行うことによって十分対応できてきたのであります。ゆえに、重大緊急事態対処という新たな体制を設ける必要は全くないと思うのであります。
 第三に、シビリアンコントロールの問題であります。
 現在の国防会議は、シビリアンコントロールの重要な一翼を担うものと位置づけされておりますが、臨調初め各方面からの批判もあるように、その機能を十分に果たしているとは到底言いがたい現状であります。その国防会議の任務に重大緊急事態への対処を加えただけの安全保障会議が、シビリアンコントロールをどう高めるというのか甚だ疑問であります。むしろ、わずかな人数のスタッフで、何が起きるかわからない事態を想定し、その対処方針を作成するという困難かつあいまいな任務をあわせ持つことによって、従来以上にシビリアンコントロールを低下させるおそれすらあるのではないでしょうか。
 また政府は、重大緊急事態という有事に至る前の段階から対処することによりシビリアンコントロールは高まるとしておりますが、では、現在の国防会議の有事に至る前のシビリアンコントロールとどう異なるのでしょうか、政府は何ら説明できないのであります。政府は、シビリアンコントロールを具体的な形で一層充実させるよう最大限の努力を払うべきであり、シビリアンコントロールの低下につながりかねないこの安全保障会議の設置には納得できないのであります。
 最後に、総理への過度の権限集中の問題であります。
 重大緊急事態というあいまいな概念を用いることによって、トップダウンの意思決定機構をつくる真のねらいは、いわゆる大統領的首相を目指すものであることは明白であります。再三再四批判されている私的諮問機関による総理のブレーン政治とともに、議会制民主主義をゆがめる危険な考えであると指摘せざるを得ません。
 また、内閣機能強化の一環として、安全保障会議の設置に伴い、内閣調査室を情報調査室に改組するとされており、さらに外務省情報調査局、防衛庁防衛局、警察庁警備局、公安調査庁の合同情報会議の設置も提起されております。こうした情報機関の強化や合同情報会議の設置は、総理による情報の一元的管理であり、憲法に保障された国民の知る権利の侵害につながるのではないかとの批判と危惧が強まっているのであります。このような国民の心情にこたえるためにも、同時に、我が党が主張してまいりました国民合意に基づく安全保障政策の形成のためにも、政府はより一層の情報公開を具体的に打ち出し、そうした目に見える現実的対応によって国民の理解を得るべきであると思うのであります。
 以上、本法案に反対する主な理由を申し述べましたが、国会審議を通して、総理みずからが安全保障会議の設置について、有事法令制定への一歩前進だと認めたことは問題であります。有事体制の強化、国民の監視や管理強化につながりかねない本法案は、絶対に国民の理解が得られないことを強く指摘しておきます。政府は、平和憲法の精神を最大限に尊重し、軍事的側面のみに偏することなく、政治、経済、そして文化をも包含した総合的な安全保障政策を確実に遂行すべきことを強く要求し、私の反対討論を終わります。(拍手)
#47
○副議長(阿具根登君) 内藤功君。
   〔内藤功君登壇、拍手〕
#48
○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、安全保障会議設置法案に対する反対の討論を行います。
 本法案に反対する理由の第一は、安全保障会議が、アメリカの戦略に従属した自衛隊参戦態勢づくり、すなわち防衛出動下令以前の平時の段階から戦時国家体制を築き上げようとしていることであります。
 政府は、安全保障会議設置の目的について、現行国防会議の任務を継承するとともに、通常の緊急事態を超える重大緊急事態に対処するためと説明しております。しかし、政府が重大緊急事態の例として挙げているミグ事件などは全くの口実にすぎず、安全保障会議設置の理由とはなり得ないのであります。安全保障会議でなければ対処できない重大緊急事態とは何か。我が党などの再三にわたる追及、質問にもかかわらず、政府は想定して申し上げるのは困難などと答弁を拒否し、終始あいまいなままに推移してきたのであります。
 国防事態への対処につきましても、衆参両院の政府答弁を深く検討いたしますと、安全保障会議は、総理大臣の判断いかんによっては、アメリカの公式戦略として表明された海洋戦略に沿ってアメリカが行う軍事行動への日本の支援協力と自衛隊の参戦を決めようとするものであります。また、防衛出動下令以前の段階における日米共同の作戦準備行動など、現行日米安保条約や自衛隊法の枠の外の各種作戦行動を行うことを決めようとしているとの疑念を否定し得ないのであります。
 さらに、昨日の中曽根総理大臣の答弁によりますと、日本の領域にはいまだ武力攻撃がなされていないのに、いわゆるシーレーン有事と称しての防衛出動不合、さらに、公海上で艦船が攻撃を受けた場合の日米共同対処、これをもこの安全保障会議で総理の判断によっては決定しようとしているのであります。さらに、有事立法や国家機密法などの反動立法とのかかわりについても、政府は、自衛隊法第百三条に基づく政令の具体化や有事の際の戦死者の取り扱い、野戦病院の設置、航空、船舶の運航統制など有事法制全体を安全保障会議で取り上げ、担当省庁の決定などの総合調整を行うとも答弁し、総合調整の名のもとに有事立法研究、有事体制を一層促進する企図を表明したのであります。
 反対理由の第二は、内閣総理大臣が安全保障会議の結論をてこに、政府の政策に反対する大規模な国民運動を重大緊急事態と判断して、国民に対する権利抑圧を組織的に実行するおそれがあることであります。
 本法案では、防衛庁長官に加えて国家公安委員長が新たに正式メンバーとなります。また、政府の答弁によれば、自衛隊の治安出動の可否もこの会議の議題とされることになります。大災害に伴う社会不安も重大緊急事態に当たるとされております。これはまさに安全保障会議が国民の大規模な集会やデモなどの自由、権利に対して武力と警察力で抑圧、規制する機関となることを示しているのであります。しかも政府は、安全保障会議の結論をてこに超法規的措置をとることについては、安全保障会議は既存の法律が予定していない不測の事態へ対処するためにつくるものであるとか、あるいは超法規的措置をとることもあり得ると答弁するなど、実定法を踏み越えたいわゆる超法規的措置を行う意図を否定しなかったのであります。
 さらに政府が、安全保障会議の設置とあわせて、アメリカのCIAなどを念頭に、内閣調査室の情報調査室への改組、強化を初め、合同情報会議や内閣広報官の設置などを行い、内閣官房を中心にあらゆる軍事、外交、警備、公安情報の収集と秘密の保全や報道統制と世論操作の体制を強化しようとしていることも重大問題であります。同時に、今回のこの情報体制の整備は、現在、警察庁や公安調査庁などを中心に行っている、すべての団体と国民を日常的、系統的な監視下に置く体制を一段と強化するものであり、絶対に容認することができません。
 反対理由の第三は、本法案が、大統領的首相になりたいという中曽根総理年来の願望に沿いまして、総理の権限行使機能を格段に強化し、国会からも内閣からもコントロールされない政府の中の政府をつくろうとしていることであります。
 安全保障会議の設置は、政府の中に総理を長とする一部少数の閣僚のみで構成する機関をつくり、ここに行政権の重要なる部分を担わせようとするものであります。この点について政府は、安全保障会議は緊急事態に対するトップダウンの政府の意思決定の際の間違いのない仕組みをつくるもので、総理が重大緊急事態であると認めれば、安全保障会議に諮って行政各部を指揮監督して対処措置を実行することがあり得るとしております。これは、行政権が合議体たる内閣に属すると定めた憲法六十五条、さらにこれを受けた内閣法四条の「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」、同法六条「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」、これらの条項に照らし明らかに違反、抵触するもので、到底容認することができません。
 また、安全保障会議は、内閣法十二条四項に基づく合議体たる内閣の補助機関であることを政府は認めながら、一方、内閣総理大臣を補佐することを任務としているなどと全く矛盾したことを答弁しております。これは内閣と内閣総理大臣とを同一視して、総理大臣をあたかも行政権の主体であるかのごとくに思い込んでいるいわば思い上がった見解に立つものであって、内閣法に明白に違反するものであります。
 最後に、本法案の重要性に照らし、我が党が内閣委員会におきまして関係各委員会との連合審査など徹底した審議を求めてきたにもかかわらず、我が党の質問要求を封殺し、わずか三日間の委員会質疑のみで、広範な国民の不安や疑問を十分解明しないまま質疑を打ち切り、採決を強行したことに私は強く抗議の意思を表明するものであります。我が党は、戦後政治総決算路線を具体化し、国家機密法、有事立法あるいは政党法制定、小選挙区制実現を企て、議会制民主主義を形骸化する日本型ファシズムの路線、日米安保条約を憲法の上に置く軍事同盟体制国家づくりの路線、これらを推進する中曽根内閣の政治と対決して闘うことを表明して、反対討論を終わるものであります。(拍手)
#49
○副議長(阿具根登君) 山田勇君。
   〔山田勇君登壇、拍手〕
#50
○山田勇君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となりました安全保障会議設置法案に対しまして、反対の討論を行うものであります。
 我が党は、従来から、シビリアンコントロールを強化するために、現在、内閣に置かれております国防会議を改組、充実強化して、国家安全保障会議を設置することを一貫して提唱してまいりました。シビリアンコントロールが適切に行われるためには、そのコントロールを行う内閣と国会の指揮監督機能が十分働いてなければなりません。とりわけ、大規模災害や有事などの緊急事態においては、内閣は速やかに判断を下して事態に対応しなければならず、そのためには、日ごろから国の安全保障に関する問題の審議や情勢の分析を総合的に行う体制が内閣に整備されていることが不可欠であると考えます。
 ところが、現在の国防会議は年に数回招集されるだけで、しかもそこにおいて実質的な討議はほとんど行われず、閣議にかけられる直前に防衛庁が立案した業務計画や予算を追認するだけであり、極めて形骸化したものとなっていると言わざるを得ません。このような理由から、民社党はシビリアンコントロールの核となるような国家安全保障会議の設置を機会あるごとに政府に対して要求をしてまいりました。
 ところが、今回の法案で政府が設置しようとしている安全保障会議は、このようなシビリアンコントロールの強化の視点からではなく、内閣の総合調整機能の強化という行革審の答申に基づいたものであります。もちろん、国の安全保障に関する内閣の総合調整機能が強化されることや、国防会議が防衛庁設置法に基づいていることとは異なり、今回は単独の設置法によって設けられることとなっており、これに異議を挟むものではありません。しかし、シビリアンコントロールの強化につながるような措置は何ら見出せず、我が党の主張とは形式的には似ているように見えても、根本的には異質のものであります。
 以下、本法案の具体的な問題点を申し述べます。
 その第一は、この会議の名称についてであります。
 すなわち、本法案においては、国家安全保障会議ではなく、単に安全保障会議という名称が用いられることであります。政府は、何ゆえをもって国家という文字を省いたのでありしょうか。そもそも政府が取り組むべき安全保障政策の目的は、国民の生命と財産や、そして国民が現に営んでいる経済や生活を守ることにあります。国民生活全体にかかわる安全保障であるがゆえに国家安全保障と呼ぶのであります。しかしながら、それを担当する政府機関の名称に対し、国家という字をつければいかめしいということでそれを省くというのは極めて遺憾であります。単に安全保障会議というのでは、ややもするとその会議の目的が極めてあいまいなものになってしまうおそれがあります。
 第二点は、安全保障会議の構成員についてであります。
 本法案では、国防会議と同様に、正式メンバーとして経済企画庁長官が加えられております。その理由は、防衛計画に関連する産業等の調整計画が審議事項として挙げられているからであるとされております。ところが、同時に、今回の法案の重要な目的の一つに、重大緊急事態が発生した場合においてそれへの対処措置について審議することが挙げられております。重大緊急時においては、そのような調整計画よりもむしろ海上保安庁の協力や通信機能の管理の方がはるかに大切ではないでしょうか。したがって、経済企画庁長官よりも、海上保安庁や通信をそれぞれ監督する運輸大臣や郵政大臣を正式メンバーとして加えておくべきであります。さらに、審議項目に挙げられております産業等の調整計画も、殊さらとりたてて明記する必要はなく、このことは安全保障会議が従来の国防会議とは何ら変わりのないことを示すものにほかなりまぜん。
 第三点は、安全保障会議の事務局についてであります。
 現在の国防会議事務局は総理の直属に置かれております。それに対し、新たに設置される安全保障会議の事務は内閣官房の中の安全保障室が担当することとされています。つまり事務局は、総理、官房長官及び官房副長官の下に位置づけられているわけであります。これでは事務局が格下げをされたような印象を受けることはぬぐい切れず、シビリアンコントロールの強化のための中心的機関となるどころか、それに逆行するものであると言わざるを得ません。
 民社党は、以上の問題点について、政府に対し再考を促し、その修正を強く要求してまいりました。しかしながら政府は、それらの修正に対し一切応ずることなく、その要求を無視し続けてまいりました。本法案がこのままの形で成立するならば、新しく設置される安全保障会議は空洞化し、形骸化する結果となり、国防会議と同じ轍を踏みかねません。したがいまして、我が党はかかる観点からこの法案に反対するものであります。
 最後に、国の安全保障は極めて重要な問題であり、このことに対する政治の責務の重さは改めて申すまでもありません。民社党は国家の安全保障政策に従来から積極的に取り組んでまいりましたが、今後ともその姿勢に変わりのないことを言明し、私の反対討論を終わります。(拍手)
#51
○副議長(阿具根登君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#52
○副議長(阿具根登君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#53
○副議長(阿具根登君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
 これにて休憩いたします。
   午後三時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後十時一分開講
#54
○議長(木村睦男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 公職選挙法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
 まず、委員長の報告を求めます。選挙制度に関する特別委員長原文兵衛君。
   〔原文兵衛君登壇、拍手〕
#56
○原文兵衛君 公職選挙法の一部を改正する法律案について、委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
 本法律案は、当面の暫定措置として、衆議院議員の総定数は一人増員して五百十二人とすること。また、議員一人当たりの人口の著しい格差を是正し、三倍未満とするため、八選挙区において各一名増員し、七選挙区において各一名の減員を行い、三選挙区の区域について隣接選挙区との境界変更を行うことを内容とするものであります。
 なお、法律の施行日は、公布の日から起算して三十日に当たる日以後初めて公示される総選挙から施行するものとしております。
 委員会におきましては、衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員長三原朝雄君より趣旨説明を聴取した後、質疑を行いました。質疑の過程では、総定数一名増は行政改革に反するのではないか、抜本改正の時期、内容及び二人区、六人区の解消についてどう考えているか、改正案による格差二・九九倍は憲法の要求する選挙権の平等に反しないか、衆議院の選挙区は郡市を単位としているのに、挟間町のみを大分県第二区に編入したのはなぜか、衆参同日選挙は憲法に違反しないかなどの問題が取り上げられました。
 これらの論点のうち、総定数増の問題につきましては、違憲状態を速やかに解消するためやむを得ない暫定措置であり、増員数がたとえ最少数の一人であるとしても、現在、国、地方を通じ行政の効率化、減量化が推進されている時期に増員されることは甚だ遺憾に存ぜられるところでありまして、国民の批判は強いものがあります。委員会においても、この点の改正は遺憾であるとの指摘があったところでありますが、これに対しては、提案者より、今回の改正は暫定措置であるので、御指摘の点については、抜本改正を行う際定数の増員は行わないということで努力をしてきた経緯を踏まえ、議員総定数の見直しに当たりたい旨の決意の表明がありました。
 質疑を終局し、次いで、日本共産党提出の修正案について提案趣旨の説明が行われました。
 討論に入りましたところ、日本社会党を代表して上野委員、民社党・国民連合を代表して井上委員より、原案及び修正案に反対、自由民主党・自由国民会議を代表して金丸委員、公明党・国民会議を代表して多田委員より、原案に賛成、修正案に反対、日本共産党を代表して山中委員より修正案に賛成、原案に反対の意見がそれぞれ述べられました。
 討論を終わり、採決を行いましたところ、修正案は賛成少数により否決され、本法律案は賛成多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告いたします。(拍手)
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#57
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#58
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
     ─────・─────
#59
○議長(木村睦男君) この際、お諮りいたします。
 遠藤要君外七名発議に係る参議院規則の一部を改正する規則案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#60
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
 まず、発議者の趣旨説明を求めます。遠藤要君。
   〔遠藤要君登壇、拍手〕
#61
○遠藤要君 ただいま議題となりました参議院規則の一部を改正する規則案について、提案の趣旨を御説明いたします。
 本案は、今般の国会法の一部改正に伴い、参議院の調査会に関し、所要の規定の整備を行おうとするものであります。
 以下、その内容を申し上げます。
 まず第一に、調査会の設置時期について、調査会は、参議院議員の通常選挙の後最初に召集される国会において設置するものとしております。
 第二に、調査会の公聴会は、調査のため必要があるときに、これを開くことができることとしております。
 第三に、法律案提出の勧告について、調査会は、調査事項に関し、法律案の委員会提出を勧告することができること、この場合、調査会長は、勧告の趣旨及び内容を記載した文書を議長に提出しなければならないこと、議長は、これを適当の委員会に送付することとしております。
 以上のほか、調査報告書、議院への報告、専門的知識を有する職員の配置について、それぞれ規定を置くとともに、調査会の組織、運営等について、委員会の理事、小委員会、参考人、委員派遣等所要の規定を準用することとしております。
 なお、附則において、本改正は国会法の一部改正施行の日、すなわち、第百五回国会の召集の日から施行することとしておりますほか、行為規範及び参議院政治倫理審査会規程について所要の整備を行うこととしております。
 以上が本案の趣旨及びその内容でございます。
 何とぞ御賛同くださるようお願い申し上げます。(拍手)
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#62
○議長(木村睦男君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#63
○議長(木村睦男君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。
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#64
○議長(木村睦男君) 農林水産委員長外六委員長から報告書が提出されました日程第七より第五三までの請願及び本日、沖縄及び北方問題に関する特別委員長から報告書が提出されました北方領土返還促進に関する請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
#66
○議長(木村睦男君) これらの請願は、各委員長の報告を省略して、各委員会決定のとおり採択することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#67
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
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#68
○議長(木村睦男君) この際、委員会の審査及び調査を閉会中も継続するの件についてお諮りいたします。
#69
○議長(木村睦男君) 本件は各委員長要求のとおり決することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#70
○議長(木村睦男君) 御異議ないと認めます。
 よって、本件は各委員長要求のとおり決しました。
     ―――――・―――――
#71
○議長(木村睦男君) 今期国会の議事を終了するに当たり、一言ごあいさつを申し上げます。今国会におきましては、幾多の重要案件の審議を行い、本日をもって百五十日間にわたる会期を平穏かつ円満に終了することになりました。これひとえに各党会派が小異を捨て大同につく大局的見地に立って円滑な運営に努力されたたまものでありまして、議員各位の御協力に対し、心から感謝を申し上げる次第であります。
 本年は、本院議員の改選期に当たり、諸君のうち半数の方々は来る七月七日をもって任期を終えられます。多年名誉ある本院議員として国家国民のため国政の審議に尽力され、数々の功績を残されましたことに対し、心から敬意を表するものであります。
 今回の改選を機に勇退される方々には、まことに惜別の情禁じ得ないものがございます。国事なお多端な折から、くれぐれも御自愛の上、今後は本院の先輩として、国家のため、また我が国議会政治発展のために御支援、御活動くださいますようお願い申し上げます。
 また、来るべき選挙に重ねて立候補される方々におかれましては、再びこの議場において相まみえることができまするよう善戦御健闘の上、御当選なされますよう心からお祈り申し上げます。
 この際、本年七月の任期満了の日をもって引退される旨承っております阿具根副議長に対し、皆様とともに特に御礼を申し上げたいと存じます。
 阿具根副議長におかれましては、第三回本院通常選挙に当選されて以来、五期三十年の長きにわたり、参議院議員として国政審議に参画せられ、多大の功績を残され、我が国民主政治発展のため貢献せられました。特に、昭和五十八年七月副議長に当選されてからの三年間は、院の円満な運営、参議院改革など本院の権威を高めるため、高い識見とすぐれたお人柄をもって献身的な努力をされ、議長を補佐されました御功績は極めて大きく、衷心より感謝を申し上げるとともに、今後ますます御自愛、御健勝の上、我々のため御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
 なお、参議院が二院制度の一院としてその本来の使命を達成するため、議長就任以来広く国民の声に耳を傾け、各位とともに参議院改革に取り組んでまいりましたが、その道はなお遠く、今後ともさらに努力を続けなければならないと存じます。
 ここに議事を終了するに際し、議長として三年間にわたり重責を大過なく果たすことを得ましたことは、副議長を初め議員各位の御協力のたまものでありまして、深く感謝の意を表する次第であります。
 以上をもちまして私のごあいさつといたします。
   〔拍手〕
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#72
○議長(木村睦男君) 副議長阿具根登君から発言を求められております。発言を許します。阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#73
○阿具根登君 今般任期を満了する議員を代表いたしまして、一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 ただいまは、木村議長より私どもに対し、御丁重かつ真情あふれるごあいさつをいただきまして、まことにありがとうございました。
 私どもは今日まで本院議員として、微力ながら誠心誠意その使命達成に努力を尽くしてまいりました。この間、議長を初め同僚議員の皆様から賜りました幾多の御厚情を顧みるとき、まことに感慨ひとしおであり、深い感謝の念を禁じ得ないのであります。ここに謹んで厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 現下多端な情勢の折から、国会に対する国民の関心は高く、特に参議院改革に寄せる期待は大なるものがございます。第十四回通常選挙を迎えるに当たり、選挙に臨まれる皆様にはそろって御当選を果たされ、引き続き在職される皆様とともに、本院の権威高揚と民主政治発展のため一層御奮闘くださいますよう心からお祈り申し上げるものであります。
 私どものうち幾人かはこのたびの選挙をもって議席を離れることとなりますが、これからも研さんにいそしみ、国家社会のためさらに精励する所存でありますので、変わらぬ御指導と御鞭撻のほど、切にお願い申し上げる次第でございます。
 なお、私ごとでございますが、副議長の大任を仰せつかりましたこの三年間、木村議長より御懇篤なる御指導を賜わり、また、同僚議員の皆様の温かい御支援をいただき、この重責を果たさせていただきました。先ほどは議長から身に余るお言葉をちょうだいいたしましたが、ただただ恐縮いたすのみであります。何分にも非才の身、議長の補佐役として御期待に沿い得なかった面が多々あったのではないかと、内心じくじたるものを感ずるのであります。
 ここに、改めて議長を初め同僚議員の皆様に対し、長年にわたる御厚情に深甚なる謝意を申し上げますとともに、皆様方の御健勝と御活躍を衷心より祈念いたしまして、簡単でありますが、御礼のごあいさつとさせていただきます。本当にありがとうございました。
   〔拍手〕
#74
○議長(木村睦男君) これにて散会いたします。
   午後十時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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