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1985/03/07 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 予算委員会第二分科会 第2号
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1985/03/07 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 予算委員会第二分科会 第2号

#1
第104回国会 予算委員会第二分科会 第2号
昭和六十一年三月七日(金曜日)
    午前九時開議
出席分科員
  主 査 伊藤宗一郎君
      中島源太郎君    平沼 赳夫君
      大出  俊君    渡辺 嘉藏君
      近江巳記夫君    木内 良明君
      福岡 康夫君    吉井 光照君
   兼務 伊藤 忠治君 兼務 小林  進君
   兼務 左近 正男君 兼務 佐藤 徳雄君
   兼務 沢田  広君 兼務 関  晴正君
   兼務 松浦 利尚君 兼務 渡部 行雄君
   兼務 岡本 富夫君 兼務 山田 英介君
   兼務 岡田 正勝君 兼務 滝沢 幸助君
   兼務 岡崎万寿秀君 兼務 山原健二郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 鈴木 省吾君
        外 務 大 臣 安倍晋太郎君
 出席政府委員
        内閣法制局第一
        部長      工藤 敦夫君
        法務大臣官房長 根來 泰周君
        法務大臣官房会
        計課長     清水  湛君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 井嶋 一友君
        法務省民事局長 枇杷田泰助君
        法務省刑事局長 岡村 泰孝君
        法務省矯正局長 石山  陽君
        法務省保護局長 俵谷 利幸君
        法務省訟務局長 菊池 信男君
        法務省人権擁護
        局長      野崎 幸雄君
        法務省入国管理
        局長      小林 俊二君
        公安調査庁次長 田村 達美君
        外務大臣官房長 北村  汎君
        外務大臣官房審
        議官      福田  博君
        外務大臣官房審
        議官      松田 慶文君
        外務大臣官房会
        計課長     須藤 隆也君
        外務大臣官房領
        事移住部長   妹尾 正毅君
        外務省アジア局
        長       後藤 利雄君
        外務省北米局長 藤井 宏昭君
        外務省欧亜局長 西山 健彦君
        外務省中近東ア
        フリカ局長   三宅 和助君
        外務省経済局長 国広 道彦君
        外務省経済協力
        局長      藤田 公郎君
        外務省条約局長 小和田 恒君
        外務省国際連合
        局長      中平  立君
分科員外の出席者
        総務庁人事局企
        画調整課調査官
        防衛施設庁施設 山中 秀樹君
        部施設取得第二
        課長      志滿 一善君
        防衛施設庁施設
        部連絡調整官  芥川 哲士君
        科学技術庁原子
        力局原子力調査
        室長      今村  努君
        科学技術庁原子
        力安全局原子力
        安全課長    堀内 純夫君
        大蔵省主計局主
        計官      浅見 敏彦君
        大蔵省主計局主
        計官      秋山 昌廣君
        厚生大臣官房国
        際課長     佐藤 良正君
        労働省労政局労
        働法規課長   廣見 和夫君
        労働省職業安定
        局業務指導課長 矢田貝寛文君
        自治省行政局振
        興課長     小川善次郎君
        自治省行政局公
        務員部公務員第
        一課長     紀内 隆宏君
        最高裁判所事務
        総長      草場 良八君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  山口  繁君
        参  考  人
        (国際協力事業
        団総裁)    有田 圭輔君
    ―――――――――――――
分科員の異動
三月七日
 辞任         補欠選任
  大出  俊君     串原 義直君
  近江巳記夫君     木内 良明君
同日
 辞任         補欠選任
  串原 義直君     渡辺 嘉藏君
  木内 良明君     橋本 文彦君
同日
 辞任         補欠選任
  渡辺 嘉藏君     佐藤 敬治君
  橋本 文彦君    平石磨作太郎君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤 敬治君     大出  俊君
 平石磨作太郎君     近江巳記夫君
同日
 辞任         補欠選任
  近江巳記夫君     吉井 光照君
同日
 辞任         補欠選任
  吉井 光照君     木内 良明君
同日
 辞任         補欠選任
  木内 良明君     福岡 康夫君
同日
 辞任         補欠選任
  福岡 康夫君     近江巳記夫君
同日
 第一分科員左近正男君、山原健二郎君、第三分
 科員佐藤徳雄君、渡部行雄君、岡本富夫君、第
 五分科員小林進君、第六分科員沢田広君、松浦
 利尚君、山田英介君、滝沢幸助君、第七分科員
 岡崎万寿秀君、第八分科員伊藤忠治君、関晴正
 君及び岡田正勝君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和六十一年度一般会計予算
 昭和六十一年度特別会計予算
 昭和六十一年度政府関係機関予算
 (法務省及び外務省所管)
     ――――◇―――――
#2
○伊藤主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。
 昭和六十一年度一般会計予算、昭和六十一年度特別会計予算及び昭和六十一年度政府関係機関予算中法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。鈴木法務大臣。
#3
○鈴木国務大臣 昭和六十一年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 法務省は、法秩序の確保並びに国民の権利保全等国の基盤的業務を遂行しており、その停廃が許されないところから、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、適正円滑な法務行政を推進するため、所要の予算の確保に努めたところであります。
 法務省所管の一般会計予算額は三千九百二億二千七百万円、登記特別会計予算額は八百八十三億七千五百万円でありまして、その純計額は四千二百七十八億三千五百万円となっております。
 この純計額を昭和六十年度当初予算額と比較いたしますと、二百十億九千五百万円の増額となり、増加率にいたしまして五・二%となっております。
 何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
 なお、時間の関係もありますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれまして、会議録に掲載せられますようお願い申し上げます。
#4
○伊藤主査 この際、お諮りいたします。
 ただいま鈴木法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔参照〕
   昭和六十一年度法務省所管予定経費要求説 
 昭和六十一年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は、三千九百二億二千七百万円であり、登記特別会計予算額は、八竹八十三億七千五百万円でありまして、その純計額は、四千二百七十八億三千五百万円となっております。
 この純計額を昭和六十年度当初予算額四千六十七億四千万円比較しますと、二百十億九千五百万円の増額となっております。
 次に、重点事項別に予算の内容について、御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、昭和六十一年度末定員で申し上げますと、当省の総定員数は、四万九千九百三十一人で、昭和六十年度末に比較いたしますと純増十四人となっております。
 昭和六十一年度の増員は、新規に四百二十三人、部門間配置転換等による振替増員五十三人の合計四百七十六人となっております。
 その内容を申し上げますと、
 一 検察庁における特殊事件、財政経済事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、百一人
 二 法務局における登記事件、訟務事件及び人権擁護関係の事件に対処するため、登記特別会計の百五十八人を含め、百六十七人
 三 刑務所における保安体制及び医療体制の充実を図るため、百二十三人
 四 少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため、三十九人
 五 保護観察活動等の充実を図るため、二十八人
 六 出入国審査及び在留資格審査等の業務の充実を図るため、十八人
となっております。
 他方、減員は、昭和五十六年九月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第六次)の実施について」による昭和六十一年度定員削減分として四百四十三人、その他削減分として十九人、合計四百六十二人となっております。
 次に、主な事項の経費につきまして、概要を御説明申し上げます。
 まず、一般会計では、
 一 刑事事件の処理等検察活動に要する経費及び検察官の人材確保のため、検察官の初任給調整手当を増額する経費として、三十一億八千八百万円
 二 刑務所等矯正施設における被収容者の衣食、医療、教育及び作業等に要する経費として、二百四十五億三千七百万円
 三 保護観察に付された少年等を更生させるための補導援護に要する経費として、四十億二千六百万円
 四 出入国の管理及び難民の認定等に要する経費並びに在留外国人の登録等に要する経費として、二十二億三千四百万円
 五 破壊活動防止のための公安調査活動に要する経費として、十八億九千四百万円
 六 施設費としましては、老朽・狭あい化が著しい基幹の大行刑施設を含めた法務省の庁舎、施設の整備に要する経費として、百七億八千二百万円
をそれぞれ計上しております。
 次に、登記特別会計について御説明申し上げます。
 登記特別会計の歳入・歳出の予算は、八百八十三億七千五百万円でありまして、歳出の主な内容といたしましては、登記事務のコンピュータ化計画を推進するとともに登記事件を適正、迅速に処理するための事務取扱費として、七百八十七億七千六百万円を計上し、ほかに、登記所等の施設の整備に要する経費として、六十億三百万円を計上しております。
 以上、法務省関係の昭和六十一年度予定経費要求の内容について、その概要を御説明申し上げました。
    ―――――――――――――
#6
○伊藤主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#7
○伊藤主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
#8
○松浦分科員 朝早くから御苦労さまです。
 私は差別問題について法務大臣、法務省の見解を承りたいと思うのですが、まず「いのち愛人権」という小冊子をお持ちだと思うのですが、その五十四ページです。大変情けない、残念なことだと思うのですが、私の選挙区にあります産業廃棄物処理センターの敷地内で差別落書き用論が書いてあった。そしてまた、全国各地からの差別落書きが四十八ページからそれぞれ月日入り写真入りで編集されておりますけれども、政治家の一人として、我々の力不足というものを私自身も大変感じておりますし、私自身の選挙区でこういう事件があったということについてもじくじたるものがあるのです。戦後四十年たっておるわけですね。少なくとも我々は、平和憲法のもとで差別というのはなくなった、そういうふうに理解をしてきておるのですが、戦後四十年だった今日なおかつこういったことが公然と行われておる。何の目的で何のために行われておるかわかりませんが、後を絶たない。一体どこに原因があるというふうに法務大臣は思っておられますか。原因はどこにあるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
#9
○野崎政府委員 委員御指摘のような同和地区住民に対する悪質な差別落書きが今なお後を絶たない状況にありますことはまことに残念なことでございまして、心理差別の解消のための啓発を担当しております私どもといたしましてもその責任を痛感いたしておるところでございます。
 御承知のように昭和四十四年以来同対法、引き続き制定されました地対法によりまして、同和地区住民の生活実態、物的環境につきましては相当の改善を見たと言われておるのでございますが、心理的差別の解消につきましては、ある程度進んではいるものの、なお根強い差別が残っておるのであります。このことは、戦後四十年が経過したにもかかわらず、部落差別というものを生み出す土壌というものがなお国民の間に根強く残っておることを示しております。また、環境改善事業の進展の中で、行政の主体性の欠如などから、これらの事業に対する一部住民の不満を生じ、同和問題に対する理解不足と相まって、同和地区住民に対するねたみ意識が表面化しているということも昭和五十九年六月に地域改善対策協議会から出されました意見具申の中で指摘されております。差別落書きは、恐らくこのような状況のもとに多発してきているのではないかというふうに私どもは分析をいたしておるところであります。
#10
○松浦分科員 大臣、今の局長のお話を聞いていますと、その原因はこういうところだろうと言うだけなんですよね。どうやってなくすかということがないのですよ。こういうことが現実に残っておるというのは我々政治家の責任でしょう、行政の責任でしょう。こういうことが原因ではないかという、原因の釈明は今ありました。それでは問題は解決しないんじゃないですかね。問題はどうやってなくすかということです。戦後四十年たっておるのですよ。戦後生まれた世代が新しい憲法のもとに生きてきて四十年ですよ。その人たちが政治の中心舞台に座っておるでしょう。そういう中で、なぜこういうことがまだ依然として残ってきておるのか。原因は今言われた。それじゃ、どうやってなくすのですか。人権を預かる法務省としてどうやってなくすのですか、そのことを答えてくれなくてはだめですよ。
#11
○野崎政府委員 ただいまも申し上げましたように、部落差別というものが依然根強く残っておるということは、部落差別というものを容認する心理的要素というものが国民の中になお強く残っておる、つまりそういう土壌が強く残っておるということであります。
 私どもは人権局を創設以来、その土壌というものを変えていくために一生懸命の努力をしてまいりました。しかし、この土壌というものがなお非常に根の強いものでありまして、果たしてこれが今世紀中になくなるのかといったようなことが、なお運動団体の間で議論されているような状況であります。したがいまして、この問題というものは根気強く取り組んでいく必要がある。到底一朝一夕で根本的に改善するということは不可能であろうかと思いますが、毎日の努力によって一歩一歩その解消に向けて近づいていかなければならないというふうに考えておるのであります。それを達成するための唯一の手段というものは啓発であります。啓発以外の方法によることはできないわけであります。
 現在、同和問題の解消につきましては、国の責務であり、国民的課題であるという観点から、官民挙げてこの解消のための啓発に取り組んでおります。私どもも人権擁護機関として、差別というものが許しがたい社会悪であるということを国民に周知徹底させるための啓発活動をさらに進めてまいりたい。また同時に現実に起きてまいります差別事件につきましては、人権侵犯事件として調査し、厳正に対処する。また、地区の住民からいろいろ御相談があるときは、人権相談を通じてそれを解決していくという努力も今後とも続けてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#12
○松浦分科員 言葉はよくわかるのですよ。それは言われるとおりなんですね。しかし、現実はもう既に、減るというよりもむしろ拡大してきている、大っぴらに落書きするとかいう行為で。やはり今まで我々のしてきたことは、ハード部門については積極的だったけれども、ソフト面における精神的な面、人権のとうとさという面に対する差別とのかかわり合い、こういったものについての教育が不足しておったと思うのです。ですから、そのハードからソフトに変わるものとして一体どういうことを考えればいいのか。
 御承知のように、地対法は来年三月三十一日でなくなりますね。しかし、あなたも先ほど言われたけれども、今世記中にこういう問題がなくなるかどうかわからない。二十一世紀に残るかもしれない。何らかの手を打たなければならぬ。そうなればやはり部落解放基本法というような法律を制定して、国民全体がこうした問題について積極的に意識改革をする、そういう指導、リードを政府がする、そのための法律として基本法をつくる、これは当然の行き方だと私は思いますよ。そういう点について大臣、どうです。まさに基本法というのはつくるべき段階に来ておるのですよ。これは超党派なんですよ。差別という問題は野党とか与党とかという問題じゃないんだ、日本民族としての問題、憲法上の問題。私は、基本法をつくるべき段階にもう既に来ておると思う。法務大臣、どうでしょう。
#13
○鈴木国務大臣 戦後四十年たってまだこういう問題が起きておりますことを、担当大臣としてまことに残念遺憾に思っておる次第でございます。
 環境その他については、先生も既に御案内のとおり地対法等で相当改善されておりますけれども、本当に心の中の心理的なそういった偏見というものがまだなくならない。落書きや何かが起きたり、結婚のときいろいろな問題が起きたりして、こういうことを本当に残念に思っております。この心の中の心理的な問題を、一日も早くこんな状態をなくするためにどうすればいいかということを先生本当に御心配いただいているわけですが、私どもといたしましてもその点実は心を痛めておるわけでございます。
 それならば法律でそれをやってそういう問題がなくなるのかどうかということは、やはり一つは検討しなければならぬことでありますけれども、心理的な問題でありますから慎重に、本当にそれがなくなるような啓発指導、これは法務省を超えた政府全体の問題になってくると私は思います。この間も担当の江崎国務大臣の方からも、この件についてお答えがございましたが、政府といたしましても、そういう段階でございますので、十分検討してまいらなければならぬだろうと思います。とにかく国民の理解を得ながら啓発指導ということを根気強くやってまいらなければならないのじゃないかなというふうに考えておる次第でございます。
#14
○松浦分科員 教育というのは教育基本法というのがありますね。ですから、そういった意味では基本法というのをつくることに何もちゅうちょする必要はないと思うのですよ。部落解放基本法というものを政府、国会が一体となってつくり上げて、その基本法に従って全体が、ソフト面あるいは場合によってはハード面についても積極的に対策を講じていく。その根拠法として基本法をつくる。私は、人権を守っていくという意味からも決してちゅうちょするような内容じゃないと思うのです。この法律をつくってどこに障害がありますか。あくまでも基本法なんです。その基本法を中心にしてすべての差別に対する施策というものがつくられていくわけだ。
 ところで、法律あるいは人権を担当される法務省として何でちゅうちょするのかわからない。中心になって、政府、内閣に提起をして、それで議論を深めていく。基本法について内閣でもどんどん議論を深めていく。そのことも国民に対する啓発連動じゃないですか。何でちゅうちょするのですか。どこに障害があるのですか。一つも障害はない。どうです。これは我々にとって本当に今の重大な政治課題ですよ。そういうことは積極的に努力してくださいよ。大臣、どうでしょう。これは大臣の政治的な感覚による答弁しかないです。あなたは国務大臣であり、法務大臣なんだから、法の番人なんだから。もう一回答弁してください。
#15
○鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたように、法務省といたしましてもこの事業の重要な部面を担当し、啓発指導を行っておるところでありますけれども、総合的な主管は先生御承知のように総理府で行っております。さようなことで、先生の御意見は十分私も尊重をいたしまして、そして政府部内で検討してまいりたい、かように考えます。
#16
○松浦分科員 大臣は非常に立派な大臣ですから。それで、余りはったりを言われない、毛針などという発言をされない大臣ですからね。ですから、言われることはよくわかるのですけれども、やはり大臣、あなた個人としてはつくる努力をするお気持ちはあるのでしょう。どうでしょう。その点、大臣どうですか。一人の政治家としてどうです。
#17
○鈴木国務大臣 地対法も来年で切れるわけですから、そういう総合的な検討等も加えまして、そして次の段階をどうするかということは決めなければならぬことだと思います。さようなことで、先生の御意見は十分尊重いたしまして検討してまいりたいと思います。
#18
○松浦分科員 十分検討していくということですから……。
 さらに二十八ページです。大蔵住宅事件というのがあるのです。これは御存じない方もおられますから簡単に説明いたしますと、中村という人が大蔵住宅から土地を買った。ところが、その土地がたまたま被差別部落であるということが購入した後わかった。そうしたら、その購入した中村さんという人が、被差別部落の土地だから安く土地を買って高く我々に売りつけた、前もって被差別地域だということを教えずに私に購入させたのはけしからぬ。まさに差別的な文章をビラにいたしまして周辺に何十万枚と配って歩いた。それで今度は、こうした差別問題等について運動を進めておる団体がこの問題を取り上げて、福岡の裁判所の方に告訴した。ところが、逆に今度は、この中村さんという人がさらにそのことを取り上げてビラを配り歩いた。福岡の法務局の方でも再三にわたって本人に注意を促したけれども、本人は一向に改めない。むしろ意気軒高である。こうした問題について人権擁護局としてはどのように対応されようと考えておられますか。
#19
○野崎政府委員 御指摘の大蔵住宅事件につきましては、私どもも重大な部落差別にかかわる人権侵犯事件であるというふうに考えまして、早速事件につき調査をし、また配布をいたしております者に対しまして啓発を続けてまいりました。これは福岡で配布をいたしておりまして、居住地は東京でありました関係で、東京及び福岡の法務局がもう数え切れないほど本人に接触を試みまして、そのような差別文章の配布をしないようにということを説得し、また同時に配布されました地区につきましては、こういった文書が配布されておるけれども、こういうものは部落差別を助長する非常にけしからぬ文書であるので、その実態をよく見きわめて、こういう差別問題が生じないように付近住民としても協力していただきたいという協力文書をずっと配布してまいったのであります。
 しかし、本人は、この大蔵住宅に対しまして非常に粘着的な反感を持っておりまして、十万枚配布するまではやめないとかいうようなことを言いまして、最近では私どもの説得に応じない、会おうともしないという状況にあり、困難をきわめてまいったわけであります。ごく最近、実はこの者が四国の方に転居いたしましたので、ここしばらく配布活動がとまっておりますけれども、まだ恐らく、差別問題に深くかかわっておるという意識を必ずしも十分持っておらないこと、反省をしておらないことは、今委員が御指摘になりましたような手紙を弁護団の一人に届けておるということからも明らかであるようにも思われます。私どもは非権力的な啓発機関でございまして、任意的な説得をするという以外の方法を持たないわけでございますので、こういった確信犯的な人が出てまいりますと、その啓発には困難をきわめるわけであります。この事件を担当しております職員は、日夜何とかしないといけないということで非常に努力を続けてまいっておるのでありますが、いまだに何ともできないという状況にあり、まことに力不足であるということを痛感すると同時に、しかしこういったことが一日も早くやむように、なお積極的なそして根気強い啓発を続けていかなければならないと考えておるわけであります。今後ともその面についての努力はしていかなければならないというふうに考えておるところであります。
#20
○松浦分科員 今チラシ配布停止の仮処分を申請しておるところのようですが、こういうことを徹底的にやったら、法的に規制する措置がないのですね。本人に、やめてください、やめてください、そんな人権を侵すような行為はいけませんよと言って、一生懸命説得するだけ。行政は全く無能力ですよ。ですから、こういう事件が起こったら、起こった都度訴訟対象にしなければならない。そういうことでは、私は差別問題というのは改まっていかぬと思いますね。この一事をもってしても、やはりこういう思想の持ち主が現実におるということ、しかも行政側の説得を無視するということになりますと、大臣、何らかの手を打たなければいかぬということになってくるのですよ。口ではきれいに言うことは簡単ですよ。差別はいけないことだから人権を尊重しましょう、あなたのしておることは悪いことです、簡単ですね。しかし、この中村というのは、表面にあらわれてきておるにかかわらず、本人が確信犯であるにかかわらず、行政が何ら手を打つことができない。ましてや、先ほど言った差別用語などというのは、だれがどこでいたずらしたのかわからない。差別用語が吹きつけられる、書かれる。見つければ本人を説得することはできる。説得したその本人が言うことを聞かない。ということになれば、人権を守るという面からするなら、先ほど大臣からもちょっと前向きの御答弁をいただきましたが、事務当局自体もここで何らかの発想の転換をしなければいかぬ、何らかの法的根拠を持たせなければいかぬ。あなた方が後ろの方で大臣に、基本法をつくるなんて余り積極的に答弁したらいかぬ、いかぬと言って、あなた、引っ張るのでしょうが。あなた自身も、人権擁護を担当する局長がこういう点をもっともっと反省するなら、行政としてどうしようにも手の打ちようがないというなら、やはり考えざるを得ないのじゃないですか。今度は基本法についての事務当局の見解を承ります。
#21
○野崎政府委員 恐らく今の御質問は、こういうものについては法的規制が必要なんじゃないかという御趣旨であろうかと思うのでございますが、先ほども申し上げましたように、法務省の人権擁護機関は非権力的な啓発機関であるというふうに位置づけられておるのでありまして、法的規制の問題は私どもの所管の外にあるというふうに言われております。
 こういった差別に対する対処の仕方というものは幾つもやり方があるわけであります。例えば昭和二十三年に、当時の片山内閣のもとで人権擁護局というものは創設されたわけでありますが、そのときに、人権擁護局のモデルにまずアメリカの人権擁護課というものがとられたいきさつがございます。これは実はアメリカの司法省の刑事局の中にあるものでありまして、ある種の人権侵犯事件というものを刑事犯罪的なものととらえて、それについて告発をやり、刑事処分に付していくという機能を持っているところであったわけであります。しかし、それを参考にした結果、今の人権擁護機関はそれとは全く違う形の非権力的な啓発機関として実は組織されました。それは、確かに刑罰を科してやるというのも一つのことかもしれませんが、そういうふうにいたしますと、対象となる行為というものは、いわゆる構成要件該当の違法有責な行為というふうに限られてしまうわけであります。それよりもむしろ広く、憲法の定める基本的人権に反する行為はすべて人権侵犯事件になるという観点から、非権力的行為であったとしても根気強く啓発する、そういうことでやっていく方がより対象が広がり効果も上がるのではないかというお考えがそのときにあったというふうに聞いておるわけであります。
 以来、私どもは、非権力的な啓発機関であるということにむしろ誇りを抱いて、憲法の定める基本的人権を侵害するような事例が出たときは、それは許されないのだということで根気強く啓発によって対応してまいったわけであります。時には、今委員が御指摘になりましたような事件も出てまいりまして、我々の非権力的啓発機関であるという限界にぶち当たるわけでありますが、しかしこれを仮に刑事処分にしましたとしても、この人が果たして部落差別はなるほどいけないのだというふうに考え直すかどうかということになりますと、必ずしもそういうことにもならない場合もあり得るわけでございますので、やはり啓発によるべきではないか、これが私どもの基本的な考えでございます。ひとつその点をぜひ御理解いただければ幸いと思います。
#22
○松浦分科員 よくわかりますよ。私もそんなことをすぐ法によって取り締まれと言うつもりはない。しかしこの中村という男は、あなたが言ったって言うことを聞かないでしょう。この人が四国に帰って、また四国でビラを配ったらどうしますか。四国でまかないという保証は、あなた、中村という人からとれますか。そうでしょう。だからきれいごとならわかるのよ。きれいごとで言うのはだれでも言える、それは啓発機関なんだから。だからあなたが言うとおりで結構。しかし、そういうことをしてもなおかつこういう行為が改まっていかないんだ。それならもっともっと国民全体でこの問題を取り上げていこうじゃないか。ビラをまきに持ってきたら、あなた何を言いよるんだ、あなたがしている行為は、それは差別行為ですよという国民側の反撃が出るように、あなたどうやって対応している。ですから、私は基本法が必要だと言うのよ。国民全体がこの問題についてあなたが思って知るように考えれば、中村君がどんなに走り回ったって、国民が反発するからとめることは可能なんだ。私はそのことを言っておる。あなた一人が幾らやったって、国民全部がやらなければだめなんだ。
 だから、先ほど大臣が前向きに答弁されたけれども、後ろであなたが引っ張ってる。やはりあなた自身も基本法というのはあった方がいいでしょう。そして全部がその方向に従って、政治も経済も国民の思想も、全部がそこの方に一致協力して基本法のもとで努力をしていく。その積み上げがあって、二十一世紀にこういうことはなくなるんですよ、新しい世代に変わっていくんですよ。頑迷固陋な人は、あなたが言うように死ぬ以外にない。あなたと議論をしておるとむなしさを感ずるんだけれどもね。僕の言っておることはわかるでしょう。返事は求めませんよ。
 大臣、ぜひもう基本法を制定する時期に来ておる。もう一遍大臣から御答弁をいただいて、終わります。
#23
○鈴木国務大臣 局長の方から今御答弁申し上げましたように、法務省としての限界は指導啓発ということでございます。さようなことで対応ができないということでございますれば、政府全体として、先般も江崎国務大臣から答弁をされたわけでございますが、十分検討してまいりたい、かように考えております。
#24
○松浦分科員 終わります。
#25
○伊藤主査 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。
 次に、木内良明君。
#26
○木内分科員 急激な時代の進展と社会環境の変化の中で、保護司の方々の置かれた重要な立場と政府のこれに対する一層の対応の充実というものが必要であるという観点から、質疑を行います。
 まず、その使命については、保護司法第一条に「保護司は、社会奉仕の精神をもって、犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、もって地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、その使命とする。」とうたわれています。また同時に、保護司の推薦、委嘱に当たってのすべて具備すべき条件として、同法第三条に「一 人格及び行動について、社会的信望を有すること。二 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。三生活が安定していること。四健康で活動力を有すること。」とも明記されておるのであります。
 かような条件を具備した方々が保護司としての立場で活躍をしているのでありまして、この点を考えますと、それぞれの地域社会における保護司の立場はまことに重要であり、したがって、単に法文上言うところの使命だけにとどまらず、それぞれの地域社会における依怙依託とも言うべき存在になっている実情であります。
 そこで、まず法務大臣に、保護司の果たしてきた社会的使命並びに地域社会における普遍的な役割についていかなる認識を持っておられるか、お聞きをします。
#27
○鈴木国務大臣 保護司には、罪を犯した諸君の更生のために本当に犠牲的な精神で、ボランティア活動というようなことでしょうか御活躍をいただいておりまして、私は心から感謝を申し上げておるわけでございます。今後もこういう方々の御協力をいただいて立派に更生できますようにお願いをしたい、かように考えておるわけでございます。
#28
○木内分科員 保護司の定数は全国で五万二千五百人、さらに保護区ごとの定数は、法務大臣が、その土地の人口、経済、犯罪の状況その他の事情を考慮して決められることになっているわけであります。全国的な欠員状況、いわば充足率はここ数年どのように推移をしているか。また、充足に向けての対策はいかに講じられてきているか、この点の答弁をお願いいたします。
#29
○俵谷政府委員 保護司の定数は、ただいま御指摘ございましたように五万二千五百人でございますが、この充足状況を見てみますと、昭和五十三年には八八・二%でございました。これが逐年、保護観察所を中心といたします現地の努力によりまして、六十年度におきましては九一・六%ということでかなり充足率が満たされてきておる、こういう状況になっております。今後とも種々方策を講じまして保護司さんの充員を進めたい、かように考えております。
#30
○木内分科員 全国的に見ると、今も若干答弁がありましたけれども、昨年一月現在四万八千七十三人で九一・五九%、本年一月で四万八千四百五十四人で九二・二九%、こういう報告であります。地域的にあるいは社会的に、環境的に見た充足率の傾向というものもおのずから偏在をしていることと思われます。
 すなわち、大都市における充足率の例として、東京でありますが、新宿区では定数百七十に対しまして百三十六人、八〇%。同じく東京都の港区では定数百人に対しまして八十四人、八四%。千代田区では定数七十人に対して六十四人、約九〇%余り、こうなっているわけであります。
 そこで、大都市におけるこの充足率は全国平均を下回る傾向にあることが指摘されるわけでありますけれども、この理由をどう認識しておられるか、お尋ねします。
#31
○俵谷政府委員 大都市におきます保護司の充足率、これは必ずしも高くない、提言いたしますとかなり欠員がある、こういう状況につきましては御指摘のとおりでございます。これは東京都内に限りませんで、全国的に見ましても、例えば大阪、京都、神戸、名古屋、広島、こういった大都市でも同じような現象が見られるわけでございます。
 この充足率をさらに高めるということにつきましては、先ほど申し上げましたように努力いたしておるところでございますが、その原因というものをまず究明しなければならぬということになるわけでございますが、これらにつきましてはいろいろの事情が指摘されております。例えば最近進んでおります各個人の家庭の核家族化あるいは人口の都市集中化、さらにその中におきまして大型のニュータウンができる、あるいは大型のマンションができるということで、生活様式が大変変わってまいってきております。勢い、この地域におきます連帯感というものが大変希薄になっておる。さらに世帯の構成と申しまするか、年齢構成が大変変わってきておるということで、保護司の適格者がなかなか発見が困難になってきておる、こういう状況があるわけでございます。そういうことで、保護司活動は地域社会におきます連帯感に基づく奉仕活動でありますから、こういうところに着眼をいたしまして、さらに有能な方々の発掘をしなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
#32
○木内分科員 今いろいろ答弁がありましたけれども、例えば適格者の発見が困難になっている、同時に新たな更新のときにおけるチェックも厳しいということで、十分な対応が今後必要であろうかと思われます。
 これは答弁は結構でありますけれども、例えば、ある保護司の方が駐車違反を一回やった、これが実は審査の対象になって、今の状況ではこれをクリアすることができないということで、こうしたモータリゼーションの社会状況下にあっては不可抗力で駐車違反を犯して、いわゆる犯罪でない犯罪と言うと大変語弊がありますけれども、起こり得る可能性も社会生活の中では随所にあるわけでありますが、こうした厳しさというものについてもあるいは今後勘案されてよろしいのではないかということもまず指摘をしておきたいと思います。これは答弁は結構であります。
 毎年増加の一途をたどっている少年事件のほかに、昨年からの仮出獄積極化による三号観察事件に加えて、累犯、覚せい刑事犯、シンナー等有機溶剤乱用事犯、暴力組織事犯等の処遇困難者が著しく増加しているなど、最近における犯罪情勢が相当に多様化している実態をどう考えておられるか。
#33
○俵谷政府委員 御指摘のように最近の犯罪情勢が保護観察事件にも反映しておりまして、保護観察対象者の中にも処遇困難な人たちがふえているということであります。例えて申しますと、暴力組織関係者あるいは覚せい剤を犯しまして収容された音あるいは保護観察になっている者、さらには若い人に多いわけでありますが、シンナーなどの有機溶剤を使います薬物事犯関係者、それから最近特にいじめに象徴的に見られますが、年少者による犯罪事件、あるいは非行、こういうものが大変ふえておりまして、そのことが保護観察の仕事の上にも大変難しい対象者となってふえておるということで、保護司さんの方へのはね返りと申しまするか、仕事の面で質的に大変難しい問題を帯びておる、ひいては、これが仕事の負担を重くしておるのではないか、かように心配いたしておるところでございます。
#34
○木内分科員 今の答弁にもありましたように、犯罪情勢というものは多様化あるいは悪質化してきている状況の中で、保護司の方々の仕事の負担というものも増大してきている、こういう趣旨の答弁だったと思います。私も全く同感でありまして、新たなこうした時代的環境の中で保護司の方方に対する各部面における配慮がさらに行われてよろしいのではないか、こういう観点から、実は財政面について何点か指摘をしたいと思います。
 保護司法第十一条には、「保護司は、法務省令の定めるところにより、予算の範囲内において、その職務を行うために要する費用の全部又は一部の支給を受けることができる。」とされています。先ほどの説明にもあったように、この保護司制度は我が国の刑事政策の極めて重要な位置を占め、また保護司の方々の基本にあるのは社会奉仕の精神にほかならないわけであります。こうした現行制度自体は我が国の更生保護の特性を象徴しているわけてありますが、その運用の実態は、言ってみれば民間篤志家の日夜にわたる労苦に支えられているのが実情でありまして、こうした労苦に対する十分な財政的対応が行われているとは言いがたいと思います。もとより、保護司は、その職務とみずからの立場に誇りと使命を感じ、要求がましい主張をすることは、その特性にかんがみてふさわしくないと判断をされ、差し控えているのでありますけれども、いたずらにこの姿勢と発意を甘受し、必要最小限の活動費を抑制することは、いかに財政的事情の厳しい環境下とはいえ、全国保護司の方々の士気を喪失させる結果となってしまうことを私は危惧するものであります。その意味から六十一年度予算においては活動経費の改善増額が配慮されなければならないと私は考えます。
 犯罪の多様化、処遇困難者の増加等により、保護司の職務負担は質量ともにますます過重となってきている、これは今の答弁にあったとおりでありますけれども、この活動に要する補導費の一件当たりの月平均単価が昭和六十年度においては千七百円余りで、活動に要する諸経費としては余りにも少額であり、また活動に要する時間的、労力的な面に費やすものも考えると、十分な実費弁償がなされているとは言えないと思います。
 例えばA事件の支給額三千九百円が支給されるケースは全体のわずか五%から一〇%にとどまっているのが現状であります。まず一点、これについてどうお考えになるか。
 次に、この三千九百円の上限でありますけれども、この要求額自体が小さいのではないか。保護司実費弁償金は毎年増額されているとはいうものの極めて不十分であると私は考えます。すなわち、担当日数、接触回数、対象者宅との距離、処遇の難易等を勘案して算定されているわけでありますが、実際に上限額が支給されるのは極めてわずかでありまして、対象者への応対や援助にこの額以上を費やす保護司も多く、時には家庭生活を犠牲にして犯罪者処遇を行うなど、私も実は保護司の方々あるいは保護観察官の方々との懇談の場を多く地元地域で持っているのでありますが、その場で実情をお聞きするに当たり大変な御苦労があるわけであります。こうした精神的、時間的負担に対する経済的配慮に甚だしく欠けると私は考えるのであります。この点どう考えられておられるか、答弁を願います。
#35
○俵谷政府委員 保護司の仕事が全くボランティアで行われておりまして、法律上も給与を支給されない、要した実費を弁償する、こういったてまえになっておりますが、それにいたしましても、御指摘のように貴重なボランティア活動に対しまして応分のお報いをしなければならぬということにつきましては、私どもかねがね考えているところでございます。そのような観点から、財政当局にもできるだけ手厚く実費弁償がしていただけるようにお願いをしておるところでございます。したがいまして、今年度の予算案におきましても、補導費につきましては単価を約二%程度アップする、総額といたしまして三千五百万円程度の増額をお願いしておるというのが補導費の関係でございます。実費弁償金につきましては、同じ予算におきましては二十四億一千六百万円を計上させていただいております。これは前年度予算に比べまして約二%程度のアップでございます。金額にいたしまして四千八百万円に当たるという額でございます。これをもって十分とは考えてはおりませんけれども、財政事情困難な折から、この程度の要求をお認めいただきたい、かように考えている次第でございます。
#36
○木内分科員 環境調整は本人が矯正施設に入っている間に帰住予定地の環境を整える作業ということになりますが、これに要する環境調整費は、昭和五十八年度から現行の一件当たり八百円に据え置かれています。仮出獄の適正かつ積極化を図るためには、その前提となる環境調整を充実強化する必要がありますし、事件増加ということを勘案するならばこの増額が必要であると私は考えます。六十一年度より八・八%増加とはいうものの、その予算増額分はわずか八百八十一万二千円であって、定額分単価八百円が八百五十円になったにすぎない。この点認識が不十分なのではないか、こういうふうに思います。答弁を願います。
#37
○俵谷政府委員 在監者あるいは在院者の環境調整、これが仮釈放あるいは仮退院に当たりまして極めて重要な役割を果たすということは御指摘のとおりでございます。その仕事も最近は大変困難になっておりまして、例えば家族関係が大変希薄化しております、連帯意識が弱まっておりますが、そういう風潮が一般的になりつつあるように心配されます。この仮退院、仮釈放ということになりますと身元引受人を確保しなければなりませんが、そういう選択あるいは親族関係、居住しているところの近隣との関係あるいは就業先との関係、住民との関係、そういったところを細かい面にわたりまして本人が社会復帰をいたしますに備えまして調整しなければならぬ、こういう仕事でございますが、これがまた御指摘のように大変手間のかかる仕事でございます。したがいまして、できるだけ多くの予算をいただきたい、かように思っておることは当然でございますけれども、これもいろいろ財政事情がございまして、財政当局におかれまして可能な範囲で計上をしていただいておる、かように考えておりまするが、今度の予算案におきましては、御指摘のように単価一件当たり八百円のところを六%アップしてもらっておるということで、金額はわずかでございまするが、当面今度の予算ではこの程度のお認めをいただいて、自後累次増額に努めてまいりたい、かように考えております。
#38
○木内分科員 今言われたように、保護司の方々におけるお仕事の中で環境調整というのが大変に重要な位置を占めるわけでありますので、さらにこの増額が図られるようぜひ御努力をされるよう要望をしておきます。
 犯罪予防活動についてでありますが、犯罪あるいは非行を犯した者の改善更生のための活動と並んで同じく保護司の方の重要な業務になっているわけであります。その活動が地域に密着して日常的に行われるようになった現在では、保護司の方がこれに費やす費用、労力等も必然的に大きなものになっておりますが、昭和五十八年度からこの犯罪予防活動費というものも据え置かれているわけであります。この犯罪予防活動に対する認識と、予算の増額に対する御決意をまずお聞きしたいと思います。
#39
○俵谷政府委員 御案内のように、我が国の治安情勢というのは世界の先進諸国に比べまして大変良好であると言われております。実際に、例えばアメリカ合衆国におきましては殺人事件が人口十万人当たり九・八人という数字になっておりますが、日本の場合はわずかに一・五人、このような数字でございまして、犯罪情勢、治安情勢が大変によろしいということになっております。この原因は多々ございまするが、保護司を中心といたします社会内処遇によります再犯の防止あるいは一般的な犯罪予防活動によります国民全体の犯罪防止意欲の喚起、世論の啓発ということが大変大きな支えになっておるのではないか、かように考えておりますが、そういたしますと、保護司さん方の平素の再犯予防、犯罪者の保護更生に加えまして、犯罪予防活動にいたしましても大きな敬意が払われてしかるべきだ、かように考えております。
 この予防活動に対しましても、わずかでございまするが毎年予算をちょうだいをいたしておるわけでございます。今度の予算におきましては、保護司さん一人当たりにいたしますとわずかでございまするけれども、六千三百円の予算措置を講じていただきたい、かようにお願いしておるわけでございます。当面はこの実現をお認めいただきたいというように思っておりますが、これも将来にわたりまして可能な限り努力を続けたい、かように思っておる次第でございます。
#40
○木内分科員 処遇の問題でございますけれども、犯罪件数が依然増加傾向にあり、犯罪の態様も多様化、悪質化してきていることは先ほど指摘をいたしました。また、少年非行について申し上げれば、非行の低年齢化、一般化が顕著な傾向であります。かつての保護観察少年の類型別処遇への認識とは現今異なってまいりまして、今や現状を勘案しての各種事犯の対象者に応じた新たな類型別処遇が必要だと私は考えます。そのための処遇技術の開発など保護観察を充実強化するための方策の検討が必要であると考えますけれども、いかがですか。
#41
○俵谷政府委員 ただいまの点につきましては御指摘のとおりでございまして、従来種々犯罪者あるいは非行少年の保護更生という観点で効果的な処遇方策を検討してきたわけでございます。類別処遇につきましても、御指摘のように大まかに少年と成人を分けるといったような考え方ではなくて、対象者に応じた細かい分類、それに即した処遇を考えるということが大事な時代になってまいりました。したがいまして、現時点におきましてはこの類別処遇についても、無期刑で仮出獄になった者、これは重大犯罪を犯して長い刑期に服しておるわけでございますが、仮出獄になった場合に、さらに重大な再犯を犯さないように丁寧に処遇をする必要があるということで、まず無期刑仮出獄者を取り上げる。さらに最近の状況にかんがみまして暴力組織関係者あるいは薬物乱用者、あるいは最近の少年非行に見られる中学生等の低年齢の対象者、その他問題を抱える対象者を類型別に当ててこれを把握する、そして格別の処遇方法を適用するように現地にも指導しておるところでございます。
#42
○木内分科員 それから保護観察官の絶対数の不足の問題でありますが、例えば東京では一人の観察官で平均二百人の対象を持っておられ、八十人から百人の保護司の方との共同体制になっているわけであります。保護司の方から保護観察官の密接な指導助言を得たいと願っても、絶対数が足りないために、多忙等の理由もこれあり、充実した連携がなかなか難しいという意見が保護司の方からございました。また、保護観察官の方にじかにお聞きをしてみてもまことに指摘されるとおりでありまして、大変な御苦労と御努力をされている実態に私は接しているわけであります。今後保護観察官の増員が必要であると考えるわけでありますが、この点、いかがでしょう。
#43
○俵谷政府委員 保護観察官の定員定数でございますが、現在のところ、委員会あるいは観察所を含めて総計九百八人の定員となっております。御指摘のようにこの定数で十分とは言いがたいのが現状でございます。しかしながら、最近の行政改革の現状にかんがみて増員の要求はなかなか難しい状況にございます。しかしながら、先生御指摘のように観察官の数に比べて観察事件が大変ふえておるという実情を考慮していただいて、財政当局あるいは定員関係の官庁の御理解を得まして、本年度の予算案においては保護関係では十一名の増員を認められておる。大変わずかでございますけれども、これを一歩にして徐々に努力を続けていきたい、かように思っているところでございます。
#44
○木内分科員 既に触れたように、保護司の方々は、犯罪者、非行少年の改善、更生と地域社会における犯罪予防活動の推進を通じて、我が国刑事政策の極めて重要な一翼を担っております。こうした保護司の方々の多大な労苦と御努力とにこたえる意味からも、保護司の方々の活動というものはまことに地味でありますけれども我が国社会にとって欠くことのできない存在でありまして、政府としてはさらに今後活動しやすい環境づくり等十分な配慮をされるよう私は強く要望するものでありますが、最後に大臣の御決意を伺って、私の質疑を終了したいと思います。
#45
○鈴木国務大臣 先ほど来先生から御指摘をいただきましたように、大変重要な仕事をお願いしておるのにもかかわらず、本当にボランティア活動をしていただき、そのための実費さえ必ずしも完全に支給できていない、あるいは員数等の点においても非常に不足している。いろいろ今政府全体として財政的に厳しい折、あるいはまた行政改革等で定員等の増員が難しい折ではありますけれども、本当に重要な仕事をしていただいておりますので、極力努力をいたしてそういう充足を少しでもよくしてまいりたい、かように考える次第でございます。
#46
○木内分科員 以上で終わります。
#47
○伊藤主査 これにて木内良明君の質疑は終了いたしました。
 次に、沢田広君。
#48
○沢田分科員 大臣どうも連日御苦労さまでございます。大臣は、農林畑の方であります。しかし、水を治める者が天下を治めるということわざがあります。水を治める気持ちで法律関係、法務をやれば、これは十分可能だと思います。
 そこで、大臣に先にお伺いしますが、農林に詳しいと思いますから、土地改良区をやりましても、あるいは河川の改修をやりましても、土地の買収をやって相続や抵当権がありますとなかなか登記ができない。それが二十年なり三十年たって、恐らく大臣の地元においても昭和の初期にやったような土地改良や河川改修の台帳がそのまま昔の名義のままで置いてある、こういうことも多いし、時によれば、第三者の手に渡ればこれはまた買収しなければならなくなる、こういうこともあるだろうと思うのですが、こういう事実は御存じでいらっしゃいますか。
#49
○鈴木国務大臣 先生から御指摘いただきましたように、農林関係では土地改良とか圃場整備とかそういうものが、ずっと農業の生産増強の基本として盛んに行われております。また、御指摘のように河川改修等行われておるわけでございます。その場合の換地とか買収、そういう問題が大変たくさん起きておることは私もよく承知いたしております。そういう点で登記関係等が非常におくれておるということも私はよく承知をいたしております。
#50
○沢田分科員 それで、職権で公共団体が公共の福祉のために買収をしたわけです。しかし、インフレですから昔買った値段と今では大変違う。そこで、当面の登記の中で、いわゆる公共団体、公共事業で買収をした地籍についてはその証明を付することができるようにする。抵当権が入っておりましたり、あるいは相続が大勢であったりしてなかなかその分筆もできない、その登記もできない、こういうことが多い。言うならば国の財産が十分に確保できない、こういうことなので、前の分科会では、これに対していわゆる買収証明あるいは仮登記等の処置が講ぜられないかどうか、登記法の一部の省令なり政令なりで対応していくことが、いわゆる公共で処置をした証明を付する、こういうことが、売買の場合に第三者に不当な損害や、あるいはまた公共団体が不当な損害をこうむることにならないのではないか、こういう提言をしましたが、当時はだめでした。これは専門家に言わせると大体だめになるんじゃないかと思うので、大臣、そういう必要性はあるかないかだけひとつ答えてもらいたい。そうしろと言わない。そういう必要性があるかないかを、あなたの経験の中で答えていただきたい。
#51
○鈴木国務大臣 ちょっと私、その辺不勉強でございますけれども、確かに大変おくれたり何かしておるわけですから、検討させていただきたいと思います。
#52
○枇杷田政府委員 ただいまお話ございましたように、いろいろな問題がございます。そういう問題を解決する一つの方法といたしまして、そういう相続登記等の未済をきちんと整理をしてやれるようにするために、専門家である司法書士がそういう公共嘱託関係について関与できるような措置をまずとりたいということで、昨年の国会で司法書士法の一部改正をいたしまして、そういう事業を受けて専門的に請け負ってやる、間違いないことにしようというふうな方途を一歩踏み出しております。
 ただ、おっしゃるようなやり方というのは法律的にはいろいろ疑義がございますので、そこの点は踏み切れませんけれども、いろいろな角度からできるだけうまくいくような方途は今後も講じてまいりたいと思っております。
#53
○沢田分科員 もう戦後四十年たちましたが、このことによって、払いずれ会計検査院その他でこれは詰めてみたいと思いますが、私が県会の時分でも河川台帳というのはできない、そういうふうな現状にある。ですから、今のあなたのような答えのままでおけば、税金のむだ遣いになったりあるいは紛争をより一層激化させる、こういう要因になることを大臣は理解できると思うのでありますが、ひとつ内部でよく相談していただきたいと思います。
 では、続いて次に行きます。非常に突然の話ですから大臣も簡単にはお答えいただけないかもわからないのですが、一つは、印鑑を使うことを外国並みにサインで間に合わせる。これも法務省の中だって一々、今答弁した人が必ず全部判こを押しているかというと、そうじゃない。皆自分でサインして、重要な問題は三重も七重も判こを押すようなものが最後に大臣の手元に行くと思うのです。このサインで間に合わせるということ、間に合わせるというかその方に代行するということの方が、詐欺罪やその他を防いでいく上においてはよりプラスじゃないか。何とはなしに印鑑がそのまま利用されておりますけれども、近代国家になって文盲率なんというものは今はもうゼロなんでありますから、みずから署名することが、印鑑よりも正しいし一番間違いがない。私は、合しろとは言わない、そういう方に向けて検討してもらいたい、こういう提言なんですが、いかがですか。
#54
○枇杷田政府委員 手形などにつきましても、商法の一般規定でも大体署名が原則なんでございます。ただ、日本といたしましては昔から印鑑制度というものが定着をいたしておりまして、そして印鑑登録制度がございますために、その文書が本当にその本人によってつくられたものであるかということを照合するためには印鑑照合によることが一番手っ取り早い。署名ですと、署名の登録という制度がございませんので、手っ取り早く照合するということが難しいという問題がございます。そういうことから、むしろ商事的な取引の上では、法律の規定の上では署名が原則のような形になっておりましても、実際は記名押印といいますか、そういうものでかえられて行われているという実情でございます。ですから、結局、社会の取引の上でどちらの方がみんなが安心して用いられるようになるかということによって決せられるべき事柄であって、法律としては、どちらでなければならぬということにしますと、かえって混乱が生じるような問題ではないかというふうに考えております。
#55
○沢田分科員 やはり一応検討の材料にはなるし、いずれにしてもこれから世の中の慣行なり一つのルールというものの進展に応じて変化をしていく、そういう意味だというふうに理解してよろしいですね。――首を縦に振っていますからそうだということで、これは記録上そういうふうに言っておきたいと思います。
 それから先般、これはまた我が埼玉県で起きた事件でありますが、市長の選挙で経歴が、卒業しないものを卒業したと書いて無効の訴訟が起きたり、選管が訂正すべきものを訂正しなかったりという経歴詐称事件がありました。それで、これは無罪の判決でありました。それからもう一つの判決は、いわゆる労務契約、雇用契約を締結しておった者が前歴に犯罪があった、それを記載しないで雇用されたことは不当である、よって首にしたが、これは裁判では復活をされた。こういうことなどを含めて、今日日本ではやっておる履歴書の問題であります。
 履歴書には、解放同盟その他の問題もありますから、本籍は書かないようにというようなことも学校入学その他については指示されている事項もあります。ですから、刑が終了すれば、それは償われたものであるからすべて白地に戻る、判決はこういう解釈であります。でありますから、その雇用契約を破棄したことは無効であるという判決でありました。そういうようなことで、日本人が経歴を重んじあるいは過去の実績を重んずる風習は、それはそれなりの意味はあると思いますが、そのことによってその人の次の人生というものを著しく阻害するというおそれなしといたしません。今の質問の中にもありました保護観察などの子供たちの問題もあるいは大人の問題もそういう例を示すものです。 ・
 私はあえて法務大臣と労働省にこれはお答えいただくわけですが、現在の人物をどうテストしてどう採用するかは雇用者の一つの権利であると私は思います。しかしながら、過去にさかのぼってまでこれからの履歴カードの中にそれを全部書かなければいけないとかということを強要すべきではないのではないか、またそのことによって左右を決するようなことになってはならないと思いますが、こういうような意味で、これは人権の立場から労働省それから法務省からお答えをいただきたいと思います。
#56
○矢田貝説明員 お答え申し上げます。
 今先生御指摘のとおり、職業生活の全過程を通じまして、適性と能力に従って評価されていくということが極めて重要でございます。ただ、そういった過程で、選考の過程におきまして短時間の面接等を行います場合に一つの資料といたしまして履歴書等を出す場合がございますが、これにつきましても先生からお話がございましたように、不当な差別につながる前科とかそういったものを書かないようにということで、統一募集要領を定めて指導しているところでございまして、今後ともそういった指導を徹底してまいりたいと考えております。
#57
○根來政府委員 今職員の採用のことについてお話がございましたので、法務省の採用の際の実情を申し上げますと、法務省では仰せのように履歴書を徴収しております。これはやはり端的に言いますと適材適所という面から、本人の特技とか過去の経歴とかいうものを把握する必要から履歴書を徴収しておるというのが実情でございますし、また技術的には、初任給の決定等につきましてはその履歴が必要であるという見地から履歴書をいただいておるわけでございます。委員が御指摘のような瑣末な点まで履歴をいただこうということは一切考えておりませんので、その点付言いたします。
#58
○沢田分科員 ではアバウトな話として、憲法で保障された自白の強要の禁止ではありませんが、本人に不利益であるというようなものについて特に記載する義務はない、またそのことを強要されることはない、こういうふうに理解をしてよろしいですか。これは労働省と、やはり法務省からもお答えをいただきたい。
#59
○矢田貝説明員 お答え申します。
 御指摘のとおりでございまして、そういった不利益になるものを強制するといったことがあってはならないというように考えておりますし、それから例えば労働基準法で年齢を確認しなければいけないといったような問題がございまして、そういった場合に住民票等をとる場合がございますが、それもその合理的な理由をちゃんと本人に説明いたしまして提出を求める、あるいは求めた後は本人に返却するといったような配慮をしていくようにというような指導を行っておるところでございます。
#60
○根來政府委員 私どもの方は官庁の特殊性と申しますか、いろいろ犯罪を取り調べるというような見地がございますので、必ずしも仰せのように不利益な事実については記載しなくてもよいという取り扱いでもございません。いろいろ欠格事由もございますので一概には言えませんけれども、先ほど申しましたように余り瑣末な点については履歴を求めないという方向でやっております。
#61
○沢田分科員 これは法務省の採用とかなんとかという意味で聞いているのではなくて、一般論として、日本の全体的な企業あるいは全体的な現在の採用、履歴書という一つの制度を使用している中での一つのあり方というものを実は求めて、そういうものを問うていくという姿勢はこれからの時代にはそぐわないのではないか、余りそういうものを目くじらを立てて重箱の隅をほじくるという形はいい傾向ではないというふうに思って言ったわけで、これは大臣も専門ではないのかもわかりませんが、ひとつ素朴な一国民なり一国会議員としての立場からどうあるべきかでお答えいただきたいと思います。
#62
○鈴木国務大臣 ずっと歴史的なといいますか慣習といいますか、そういうものもあるわけでございますし、またそれぞれの企業なりあるいはまたそういう採用する方としての必要等もあってそれぞれの形式等もおのずと定着化しているのではないか、私はこういうふうに考えておりますが、特段必要のないようなことまで、瑣末なことまで、もっと言えば、かえって人権を侵すようなおそれのあることまでは必要はないのではないか。ただしかし、一般的に国とか法律でこれをこうしろなどということではないということで、それぞれの立場等においてやはりおのずから必要なものは必要であるかというふうに考えております。
#63
○沢田分科員 続いて、人権擁護委員の職務権限を強めていったらどうか。これは私の意見なんでありますが、行政には行政不服審査法がございます。ですから行政上の国民の権利なり不満、不平を述べるという場所はそこにある。ところが刑事の関係なりその方へまいりますと、なかなかそれを取り扱う場所がない。そこで人権擁護委員のところに飛び込む。こういうことになりますと、人権擁護委員はお互いの意見を聞くけれども、中身はもう承知だと思いますから言いませんが、拘束力が極めて弱い。だからもっとある意味において強制力を強める。こういう配慮をしながら人権擁護委員会というものの権威というものを強めていく。こういうことで、これもきょうやれと言っているのではないのでありますが、行政不服審査法と同じような意味における人権擁護委員会の効力なり力というものをより権威あらしめるという立場で検討していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
    〔主査退席、中島(源)主査代理着席〕
#64
○野崎政府委員 委員も御承知のとおり、人権擁護委員は、非権力的な啓発機関でございます法務省の人権擁護機関に協力するためのボランティアとしての性格を有するものでございます。法務省の人権擁護機関そのものが非権力的な啓発機関でありますところから、これに協力するボランティアである人権擁護委員の権限もおのずから限られてくるわけでございまして、その権限は、御承知のように調査、情報の収集に限られておるわけでございます。その権限を強化するということは、法務省の人権擁護制度そのものにかかわってくることでございますので、本日委員の御意見は承って帰り、また後ほどいろいろ制度そのものを考えるときの参考にさせていただきたい、かように考えております。
#65
○沢田分科員 きょうは追い詰めるつもりもありませんが、アメリカで言う陪審員制度というものもありますね。いわゆる市民の中から選ばれた人が有罪無罪を決めていく。そのいうことの意味まで発展させてはいないのですけれども、その中間的な存在としては、いわゆる些少な問題というようなものについてはある程度の効果を持たせながら、行政というか、それはここでは司法といいますかわかりませんが、その指導をしていくという効力を持たしていくという意味の権限を、少しずつでもいいですから、またその人格を持っている人が大勢なっておられると思うのですね、ですから、そういうことを強化してほしい、こういうふうに思いますので、これも大臣から御検討いただけるかどうか、その点。大臣の任期中にどうこうという問題でもないと思うのですよ。これはやはりある程度の期間をかけなければだめな問題だと思うのです。ただ、スタートしてくれるかどうか、そのまま後ろ向きに行ってしまったんじゃ困るので、一応前の方を向いてスタートしてくれるかどうかのほどだけ聞かしていただきたい、こういうふうに思います。
#66
○鈴木国務大臣 勉強させていただきます。
#67
○沢田分科員 それからもう一つは、これも突然の話なんでありますが、偶然きのうも大蔵委員会でクロヨンなりトーゴーサンの税制改革の中で二分二乗の議論が出ました。そのときに二分二乗が果たして妥当かどうかという議論で埼玉大学の暉峻先生が言われた言葉の中にあるのでありますが、共稼ぎをしている場合あるいはパートをしている場合には必ずしもそうはいかない、二分二乗が正当だとも言えないだろうという意見が実は出されました。
 そこで、戸籍も男女平等の立場というものの原則を考え、年金制度の改革、それから今後の職業の選択、いわゆる妻なるものは夫の附属物であるという位置づけではない、やはり一個の人格を持ち、一個の独立人として、あるいは夫婦生活を営む、家庭を営む、こういう立場に立つとすれば、それぞれの名前なり何かは戸籍に入れるとか出すとか、嫁にもらうとか、そういう言葉自身が男女平等の立場から見れば差別、従属的な存在として見ている言葉なんですね。ですから、そういう立場から見て、戸籍法の中でやはり独立人として相互が生活をしていくという立場、そういうものを尊重していく、そういう基本というものはこれからの日本の法の中で生かしていく必要性があるのではないか、こういうふうに考えます。
 これは、きょうは抽象論であります。細かい詰めは行いませんが、一般的な考え方としてそういうものへ向けて進んでいくことも必要なものではないか、こういうふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
#68
○枇杷田政府委員 男女平等の原則はあらゆる面で貫かれていかなければならぬことは当然のことでございまして、現在の民法あるいはただいま御指摘ありました戸籍法の関係につきましても、法律上はそのような建前が貫かれております。戸籍の上で、例えば夫婦がどのような氏を称するかという問題につきましても、これは当事者間の協議で決めるというふうなことになっておるわけでございます。ただ、社会一般の意識が必ずしもそういうことに伴っていないということはあろうかと思いますので、今後はそちらの方での意識の浸透というものが必要であろうかと考えております。
#69
○沢田分科員 続いて、外国人の押捺の実態、それからそれの是正について、法務省と外務省からお答えをいただきたいと思います。
#70
○小林(俊)政府委員 御質問は、外国人登録制度に基づく指紋押捺の問題であろうかと考えますので、この点について簡単に御説明申し上げます。
 外国人登録制度におきます指紋押捺制度というのは、外国人登録制度が始まりました昭和二十二年におきましては存在しなかったのであります。この制度が導入されましたのは昭和二十七年でございまして、その背景には、当時横行した密入国者による登録制度の混乱ということがあったわけでございます。したがいまして、その目的はあくまで外国人の在留あるいは入国を管理する行政上の必要に基づいて導入され、存在するわけでございます。
 こうした問題は、日本人の場合には適用されませんので、御質問の趣旨が外国人のみに指紋制度が適用される理由ということであるならば、これは本来導入され、存在する行政の目的が全く日本人の場合には適用がないということによって存在する差異であるというふうに、一言で申し上げれば御理解いただいてよろしいかと存じます。
#71
○沢田分科員 答弁はそれだけですか。
#72
○福田(博)政府委員 先生の御質問は、外国人に対する我が国の指紋押捺制度について、外務省としてはどう考えるかという御質問かと思います。
 指紋押捺制度につきましては、長期的かつ自主的な立場から内外の情勢を踏まえて誠意を持って努力をするということを安倍大臣なども申しておりますし、私どもそういう基本的な方針のもとで政府部内で研究、検討を続けておるわけでございます。
 この問題につきましては、外務省は直接所掌する立場にはございませんが、この基本方針に従って関係省庁とも今後引き続き努力をさせていただきたいと思っております。
#73
○沢田分科員 アジア諸国ばかりじゃなく、世界の中で日本が今後果たす役割はより大きいわけでありますから、無用の紛争なりあるいは摩擦を生じないように配慮されることを特に希望しておきたいと思います。
 最後に自治省、もう時間がありませんからこれは答弁は要りません。住民票の発行の取り扱いでありますが、この住民票がだれでも自由にとれる。住所と名前と生年月日ならば健康保険証でも間に合うのではないか、こういう気がいたします。あえて住民票をとらなければ役に立たないということは我が国ではほとんどないのではないかということで、これも行政の簡素化でありますけれども、本人を証明するものがあればそれをもってよしとするという判断に立っていただきたい、こういう気持ちを持っております。これは一分前でありますが、大臣、方向としてはそういう考え方、大臣でなければ担当の方で、ひとつそういう方向で、本人を証明するものは住民票でなくとも足りる。これはマル優もそうなんですから、そういうことでいいんじゃないのかと思いますが、いかがでしょう。イエスかノーか、それだけで私の質問を終わります。
#74
○枇杷田政府委員 目的によって、必ずしも住民票でなければならぬというものはありませんので、あらゆるものをその用途に従って使うことが考えられるべきだろうと思います。いたずらに住民票ばかりに頼るというふうなことは、目的に照らして必ずしも妥当でないということがあろうかと思います。
#75
○沢田分科員 一分前ですが、終わります。
#76
○中島(源)主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。
 次に、滝沢幸助君。
#77
○滝沢分科員 日々御苦労さまです。二十年前に県議会にお世話になりましたときに、議長さんと申し上げて親しくお仕え申し上げました先生を、ここに大臣とお呼びして質問申し上げることができますことを大変光栄なことまた喜ばしいことと存じまして、御健勝で頑張っていただきますよう、まず申し上げさせていただきます。おめでとうございます。
 さて、質問は三点でありますが、最近簡易裁判所の統合・再編成計画というものが進められておると聞いているのでありますが、どういうお考えなのか、簡単で結構であります、どうぞひとつおっしゃっていただきたいと思います。
#78
○山口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 御承知のように、簡易裁判所は、戦後の昭和二十二年に五百五十七というふうに全国に多数設置されたわけでございます。それから四十年経過いたしておりまして、御案内のように産業構造の変化等に伴いまして人口の都市集中化、交通事情の飛躍的向上というように社会事情が大きく変わってきております。しかしながら、簡易裁判所の設置は昭和二十二年当時のままほとんど動いておりませんので、それに伴いまして裁判所運営上いろいろな無理、むら、ひずみというようなものがあらわれてきてまいっております。例えば、郡部の小規模な独立簡裁におきましては、事件が管内人口の減少とともに大幅に減少してまいっております。片方では、都市部におきまして、サラ金、クレジット等の関係で事件が非常に激増してまいっております。現在五百七十五あります簡易裁判所のうち、上位の百庁で実に七五%の事件を処理しているわけでございまして、残りの二五%を四百七十五の簡易裁判所で分かち合っておる。下位の百庁はわずか一%に満たない事件しか処理していない、こういう状況にあるわけでございます。そのように事件数の非常に少ないところには裁判官を常駐させるわけにはまいりませんので、現在裁判官の常駐していない簡易裁判所というものが全国で百四十ほどございます。しかし、そういう裁判所におきましても、庁舎を構えております以上、二人、三人という職員は配置しなければなりません。現在、年間で見ますと、裁判官一人当たり大体三百四十件ぐらい処理しなければならないわけでございますが、年間に百件に満たない事件数のところが百五十ぐらいございます。
 そういうふうに、社会事情の変動にかかわらず裁判所の配置がそのままになっておりますので、この際配置の適正化を図るために見直しをしなければならない、こういうことで、実は一昨年の一月に三者協議会に問題提起をいたしまして、昨年の三月に日弁連におきましても、やはり配置の見直しを図る必要があるというふうにおっしゃっていただきまして、法務省、日弁連、最高裁で、その点につきましては基本的な了解がいただけました。
 配置の見直しには物差しが必要でございますので、昨年の五月に、事件数が百二十件以下で隣の裁判所まで一時間以内のところ、それから事件数が六十件以下のところで隣の裁判所まで二時間以内のところ、事件数が十二件以下のところでございますと日帰り可能の範囲までの庁につきまして、管内の人口であるとか人口動態、事件数の動向、家裁出張所の件数等々、簡裁の存置に影響を及ぼします地方の実情を十分踏まえながら集約を検討してはどうかというようなたたき台を実は出しました。この点についてはまだ意見の一致は見ておりませんけれども、一応法曹三者でいろいろ意見交換をしまして理解も深められてまいっておりますので、この二月二十七日に法務省の方にお願いいたしまして法制審総会を開いていただきまして、三角から司法制度部会というところでこの問題の御審議をやっていただく、こういう段取りになっております。
#79
○滝沢分科員 いろいろとこれから協議されると思いますが、今おっしゃったような、数学的、機械的でなくて、もっと弾力性のある立場でひとつ検討されて、この制度のよりよい効果を上げていただきますような基礎をつくっていただきたいと要望させていただきます。
 次に、外国人弁護士が日本で活動をしたい、またはさせるべきではないかというような議論があると聞きますが、しかし考えてみれば、よその国の法律に精通されまして、よその国で試験を合格された方が必ずしも日本の法律のすべてをマスターしていらっしゃるとは考えられない。聖徳太子の十七条憲法で事足りた時代もありましたが、今日本は世界でも最も複雑な法制度の国と聞いております。なれば、この地球上には数々の国がありまして、日本の大化の改新当時でありませんでも、少なくとも明治初年の法体系と同じような国もあるのじゃないだろうか、そういう水準等を考えますれば、私はにわかに外国人に日本で十分に活動していただくということが可能なものかどうか大変疑義を持っておるわけでありまして、時間も制限されておりますから今までの経過はよろしゅうございますから、今後の考え方を端的にひとつおっしゃっていただきたいと思います。
#80
○井嶋政府委員 現在のように経済あるいは社会活動が国際化してまいりますと、当然いろいろな法律サービスという面で国際化の必要があるということは御理解いただけると思います。そういう状況下の中で、我が国におきます法律サービスというのは、従来我が国の試験を通った弁護士に独占されておったわけでございますが、やはり国際化に対応するためにさらに外国の弁護士を我が国に導入をして、その活動を通じて国際化のより進展に対処をしていこうというのが基本的な考え方でございます。
 その場合に、外国から受け入れる弁護士はそれぞれ当該の国において試験を通った専門家でありますから、やっていただきます仕事というのは、あくまで試験を通った国の法律、例えばフランスの弁護士でありますればフランスの法律、アメリカの弁護士でありますればアメリカの法律、そういった職務の範囲の中で日本で活動していただくという形を考えているわけでございます。したがいまして、今委員が御指摘のような日本法につきましては、職務の範囲から除外をいたしてぶります。要するに、日本におきまして彼らの専門といたします法律を駆使して法律サービスをやっていただくことによりまして、日本の現状にない部分をさらに補うということを考えておるわけでございます。そうして導入いたしますと、日本の弁護士と外国の弁護士が相共同いたしまして法律サービスの処理をいたしますと、なおこのサービスが向上、充実するであろうということでございます。
#81
○滝沢分科員 時間がありませんからこれ以上の議論はいたしませんが、例えば国際法曹条約というようなものがありまして、それに基づいてなされているならばこれまたなにでありますが、非常に画期的なことであり、その後に予想される数々の問題もありましょうから、ひとつ賢明な処置を要望して、このことは終わらせたいと思います。
 ところで大臣、お孫さんは何人ですか。いや実は、私がかく申し上げるのは、戦後戸籍法並びにその施行規則が変わりまして、今のところでは二千百十一字の漢字を決めまして、それとイロハのあの平仮名、片仮名、これ以外の文字は使ってはならないとなっているわけであります。
 ところが、十人くらいの会合で私はこの話をしますと、これを改正して、お名前は自由勝手にどの文字を使ってもよろしいというふうにしたいのだと言いますと、その十人くらいの方に必ず、いや、私の孫が戸籍をつけようと思って行ったら、その字はだめだと言われて取りかえました、いや、私の子供がそうでした、ないしは、いや、自分の名前は今はこんな名前だけれども、名刺をつくるたびに印刷屋から文句を言われて割高に取られるのだというような話を聞くわけですよ。私がこの二年間、もうたびたび法務委員会でも、特に文教委員会で申し上げてきておりますことは、思想の原点は、終戦まで何らの不自由なく使われてきた日本の文字、またその言葉遣いを進駐車の注文によって隠したのですから、簡単にしたのですから、それを、独立して以来今日もなお四十年間そのままでいるのはいけないことではないのか。つまり、名字は手をつけられませんから、そして一方、株式会社の登録なんて勝手なんです。あるいは団体を結成しても、そういう難しい名前の団体をつくってはいかぬということもない。そうすると戸籍法でただ単に、滝沢は難しい名前を使ってもよろしいぞ、しかし幸助だけは二千百十一字にはまっているかという言い方では、何らの実際的効果がないのではないか。それを、制限を撤廃していくことによって国は何の負担、犠牲があろうか。全然ない。全然ないならばそれをやってあけたらどうなのか、こういうことであります。
 ちなみにこのことに法務省が踏み切られる前提は、当時の文部省が当用漢字を採用した、そのときは、これ以外の文字は、使って罰するのじゃありませんけれども、この範囲にするぞという千八百五十字でございました。それが、当用漢字をやめて常用漢字に拡大するということになったときは、これは一つの目安ではあるけれども、もうどれを使ってもらっても結構でございます、こうなったのでありますから、そうなれば、きのうも文部大臣に申し上げたのだけれども、文部省が法務省に注文してあの制限をしたというならば、文部省の姿勢が変わって拡大してきているわけですから、法務省に対してもそれをしたらどうですかと申し上げました。文部大臣に独自に会見して申し上げたときは、それはどうしたらできるのだ、文部省から通達でいいならばできる、いや通達ではだめだ、戸籍法を法律改正しなくてはだめなんだ、それほど深刻な課題になった、こう言っているわけであります。
 ちなみにここの家にはこういう文字を使う家というのがありますね。あるいはまた東京に出ている息子さん、そのお嫁さんが田舎に電話をよこしまして、いよいよ生まれましたけれども、お父さんの名前の一字をおかりして名前をつけたい、そして実家のお母さんの一字をかりてつけたいと言ったら、じいちゃん、ばあちゃん小躍りして喜びなさる。しかし午後また電話が来まして、いや、市役所に行きましたらだめなものでございますから実はこんな字に変えましたと言ったら、またがっかりということでしょう。どうしてこのようなことをするのか。私も二人の子供があります。十カ月間期待し、祈り、子供が生まれる、そしてその幸せを願って名前を選ぶんじゃありませんか。この親の願いをどうして法務省の一片の法律によって退けるのか。これはもう迷うことなく旧に復するべきである、私はこういう思想に立って申し上げるわけでありますが、いかがなものでございましょう。大臣、ひとつそれこそ温かい国民に対するサービスを決断されるようにお願いします。ところが大臣、役人さんの話はきちっと判こを押したように決まっているのですよ、どうかひとつ。
#82
○枇杷田政府委員 かねがね滝沢委員の御意見は伺っております。それから今お話が出ましたように、制限をすべきでないということを主張される方々もおられることは承知いたしておるわけでございます。かねてから御説明申し上げておりますように、戦前はどのような文字を使っても戸籍は受けるということでございましたけれども、そのために非常に読みづらい字が多用されまして、そして社会全般でもその人を呼ぶのにどう呼んだらいいのかわからないということがあり、また本人もそのことのために大変困るというふうなことがありまして、そういうことで……
#83
○滝沢分科員 ばかなことをおっしゃる。何回その話をしたのですか。本人が不幸になんかなりません。自分の名前が難しくて不幸になったというような話は全然私は聞いたこともないし、そうならば家庭裁判所が変えてくれるんじゃありませんか。むしろ、いつかも言ったでしょう。「一一一」と書いて何と読むんだと言ったら、読めなかったでしょう。「しもつきはじめ」と読むのです。読めないのが苦労なんだ。よく名刺をもらうと、失礼ですが何とお読みするのですかとお聞きすることはありますよ。だけれども、書けないなんということはないじゃありませんか。そういうのは詭弁というのです。それを何年間繰り返してきたんですか。きょうも日本のどこかには子供さんが生まれているはずだ。きょうで十四日になる人があるはずだ。きょう市役所に行って、この名前はだめです、この中から選んでくださいと言われている親御さんがあるんじゃありませんか。役人の立場に立ったそのような、二年も三年も同じような答えで議会が満足すると思いますか。
 重ねて申します。お名前の画数が多いことによって不幸になったという例を私は聞かない。株式会社はどうですか。さっきも言っているでしょう。株式会社はどうですか。しかも、画数が多い、二十画以上の文字はだめだと言っているならば、また話がわかる。非常に簡単な文字もないのですよ。いいですか。同じような返事を聞くためにたびたび出ているわけにいきませんから、だから大臣に政治家としての判断を願いたいと言っているわけです。そのような答弁ならば必要ありません。
#84
○鈴木国務大臣 滝沢先生がかねてからこの問題で非常に御勉強され、御熱心に主張されておることは私もかねて伺っておりましたし、いつでしたか先生の質問の速記録でございましたか何かも送っていただきまして、拝見いたしまして、本当に傾聴に値する御意見だなと考えておりました。図らずも私法務大臣の責を担うことになりまして、その担当に相なりまして、先生のその御熱心な御意見を今も承って、勉強しなければならない問題だなと実は考えました。さようなことでございますので、ぜひひとつ勉強させていただきたい、かように考えております。
#85
○滝沢分科員 制限を撤廃する法律改正をすることによりまして、法律改正のために、法制局の人件費がどうなのか知りません、印刷費がどうなのか知りません、しかし、それ以上に一銭も国費は要しませんからね。そして喜ぶ者が全国津々浦々にあるわけです。
 中曽根内閣が戦後の総決算、戦後誤り来った四十年が仮にあるならばこれを決算して出直そうと言っているわけですから、その一環として、これは憲法問題もあるでしょう、この議論はしばらくおくといたしまして、私が熱心に取り上げております国字、国語の問題がございます。あるいは教育制度のことがございます。数々ありますが、この戸籍法のごときもその一つでありますから、どうかひとつ、国民に真のサービスができて、日本の真の独立を回復したという姿、五代も十代もわたってこの文字を長男にはつけるという家があるわけですよ。それらのことをひとつ念頭に置かれまして、賢明な選択をなさいますように要望させていただきます。
 大変きついことを申し上げましたが、局長、そういうことなんです。読みにくいことで苦労したりしません。そして自分の名前が書けずに苦労して、いつも代書人に書いてもらうというような人はいないのですから、どうかひとつお役人のサイドの考えから出ていただきまして、といいますのは、あなたはどうか知りませんけれども、お役人の辞令が変われば、個人的にお会いすればお答えが違ってくるのです。ですから局長、課長という、その肩書きが言わせるお話では、これはとてもまじめに聞けませんから、そこら辺をひとつ御勉強いただきまして、過ちなき選択をお願いしたいと思います。
 大臣、どうも御苦労さまでした。ひとつ御検討いただきたいと思います。委員長、どうもありがとうございました。時間を残しますが、これにて質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#86
○中島(源)主査代理 これにて滝沢幸助君の質疑は終了いたしました。
 次に、小林進君。
#87
○小林(進)分科員 私の質問時間は十一時から十一時三十分までなのですけれども、やはり約束ですから、終わりは十一時三十分までやらせてもらいますから、主査、ひとつ間違いのないように時間の配分をお願いをいたしたいと思います。
 そこで、まず最高裁にお伺いいたしたい。それは、ほかでもありませんが、実はこれはちょっと国際問題になっているのでありまするけれども、京都の地方裁判所で二月四日に光華寮の問題について判決が出ました。私は素人ですから、裁判の内容についてとやかくは申し上げませんが、いわゆる手続の問題について若干腑に落ちない点があるものでありまするからお伺いをいたします。というのは、光華寮という寮の、これは学生寮みたいなものでありますけれども、その所有権等の問題が争いでございますが、その訴訟の原告が中華民国の代表者、財務部国有財産局長、こういうことになっているわけでございます。この中華民国財務部なんとかいう局長が、一体訴訟の当事者であり得るかどうかという、この一点であります。
 申し上げるまでもなく一九七二年とは、昭和四十七年の九月二十七日ですか二十九日ですか、当時の田中総理が中国北京に飛んで行って周恩来総理とともに日中の国交回復の調印をされた。国交正常化の問題。そのときには、台湾政府というものの存在を否定された。中国は一つだ、台湾は中国の領土の一部であるということに決定をいたししたわけでありますが、その日を期して中華民国というのは、対日本国及び日本政府、日本国民の関係においては、これは存在しない国になったわけであります。その後、また六年後には、福田内閣のときに、今度は日中平和友好条約というものが締結をせられて、そのときにもそのままの宣言が継承をせられて、中華民国は日本に関する限りは存在しない、こういう関係に来ているわけでありますね。ところが、日本の国並びに国家、国民、政府が承認をしない、認めない、その国を裁判所に、訴訟能力ありとしてこれを受けつけられて、原告ですか、行ったり来たりしているようでありまするけれども、これを裁判の当事者に認められているのは、これは国家の方針と、国の方針と少し違っているのじゃないか、こう思わざるを得ないのでありまして、それに矛盾がないのかどうか、その点だけひとつお伺いしておきたいと思います。
#88
○山口最高裁判所長官代理者 突然の御指摘でございまして十分準備はいたしておりませんが、事柄は訴訟当事者能力の存否、有無という裁判権の行使に絡む事柄でございまして、私どもは司法行政を預からせていただ意ます者の立場といたしまして、そういう当事者能力の有無に関する点につきまして論評できる立場にございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいというように考えております。
#89
○小林(進)分科員 これは重大な問題でありますし、国際裁判の問題でありますから、ここでこの問題をやかましく追及しようとか議論しようという気持ちはありませんが、しかし、問題は国際問題化しているということです。いま一つは、裁判所といえども日本という国の中に存在する一つの機関ですから、その母体の国家自体が認めていない国の裁判を、国の中の一つの機関にすぎない――機関にすぎないと言っては悪いが地方裁判所が、それを当事者能力ありとして受理するということが可能かどうかということは大変難しい問題だと思いますが、これは問題点だけ申し上げておきまして、あとはまた別の機会にお伺いしたいと思います。
 次に移りたいと思いますが、ほかでもないが中曽根総理は、最近実に国民に誤解や悪影響を及ぼすような発言を二つしておられるのです。この問題は予算委員会その他においても論議を尽くされておるからもういいじゃないかという意見があるかもしれませんが、しかし、国民の側から見れば、この国会の中でやられておる論議がちっとも反映していないし、このままでおくと大変誤解を生むおそれがあると思いますから、重複するかもしれませんが、また繰り返してここで質問をいたします。
 その一つは、三権分立を調整をする、司法はオーバーランのおそれあり、これが一つです。それからいま一つの問題は、最高裁の判決がどうあろうと総理大臣の解散権には影響はないんだ、おれは絶対的な解散権を持っているから、やりたいときには解放するんだという発言。これは二つとも、国民の側から聞くと大変誤解を生みやすいのですね。非常に誤解を生みやすい。日本という国の民主主強は、三権いずれも絶対最高の権力を持って、侵されずにいる。三つの柱の上に日本という国が立ち上がっておるにもかかわらず、総理大臣が三権は調整をしなければならないと言うことは、一体調整というのは何でございましょうね。時間がありませんからなにですけれども、私ども一般俗人という立場から見ると、調整というのは話し合うことだ、こういうふうにしかとれない。調整とは話し合うことだ。これは俗語です。それぞれ独立して侵されず、きちっとした体制でなければならない三つの最高の権力が、話し合いで物事を決めるなどということになったら、国の基本が大変にぐらつくようになるのではないか、こういうことを考えざるを得ないのであります。
 総理大臣の調整論についてひとつ、これはどこへお聞きしましょうかな。法務大臣も暇なようですから法務大臣にお聞きしましょうか。これはまず最高裁にお聞きした方がいいようですね。
#90
○草場最高裁判所長官代理者 私どもは、総理が記者会見で発言されました中身を正確に存じ上げているわけではございません。ただ、要旨として報道されたところあるいはその後の国会審議におきます御発言等を伺います限りにおきましては、全体的な御趣旨としては、一般的な御発言、一般的なことを言われたというふうに理解いたしております。したがいまして、その点につきまして裁判所としてとやかく申し上げる筋合いのものではない、かように考えております。
#91
○小林(進)分科員 最高裁というのは石橋をたたいても渡らぬところでございますから、そういう慎重な御答弁になるかと思いますけれども、これは国の基本に関する問題ですから、やはり一般論であろうとあらゆる機会を通じて国民に、この三権分立というものがどんなに崇高なものであり、なおかつ平等、対等であるかということを徹底的に知らしめておく必要がある。
 私は、中曽根さんの発言を聞いて地方を回ってみますと、やはり総理大臣というのは偉いんだね、立法も司法も総理の意向でどう調整もできるんだねという受け取り方を国民はしているのですね、全部じゃありませんけれども。これは大変恐ろしいことなんですな。これは我々立法府にいる者もみずから自粛自戒をしなければならぬ問題であります。行政府の長たる者が、行政府にいても小わっぱ者ならいいけれども、その最高の責任者である総理大臣が、三権を調整しようとかあるいは歩み寄ろうとか話し合いをしようとかというようなことを平気で言われたなら、国民の受けるショックは実に大きいですよ。へえ、総理大臣というのは偉いんだなと。それにまた言葉を次いで、どうも今司法はオーバーランのおそれありだと。オーバーランというのは何ですか。私は余りイングリッシュは得意じゃないのですけれども、オーバーランというのは行き過ぎだということなんでございましょう。一方の行政府の長が司法府の長に向かって行き過ぎだなどということを言い得る権限があるのか。これは失言にしても大変大きいのではなかろうか。私も、ここは立法府です。立法権は、憲法上では司法にもありません、行政にもありません。しかし、立法府は国の最高機関だ。最高機関などという言葉を与えられているのは三権の中でも立法府だけですからね。けれども、これも何も特別のランクの上の権利を立法府に与えたわけじゃない。ただ、これは皆さん方には釈迦に説法ですけれども、立法府が最高の権力者だということは、主権者たる国民から直接選ばれてくる、その点を指しているんだ。司法も、行政の長の中曽根さん、総理大臣も、何も直接国民から選ばれたわけじゃありません。しかし、立法府の我々は主権者たる国民から直接選ばれています。その意味において最高権力者というふうな条文が生まれたのでありましょうけれども、そこでやる権力の行使はみんな平等ですよ。総理大臣も最高裁の長官も衆参両議院の議長も、そこには一点の高低上下の差があるわけじゃありませんから、これは。その中でどうも行政府の長だけが少しだけぬきんじて力を持っているような誤解を国民に与えるということは国家の基本に関する重大問題だから、いま少し立法府もこの問題を徹底的に追及してもいいし、司法も一般論でやられたのだから我関せずというようなおおらかな気持ちじゃなくて、いま少しこういう問題は徹底的にPRをしてもらっていいのではないか。
 そこで申し上げるのです。司法のオーバーランとは何ですか。恐らく中曽根さんの腹の中では、いわゆる定数問題に関する最高裁のあの判決、違憲論に対する不満、不満といいますか、それを意味したのではないかと私は思いますが、その点いかがでございましょう。これは私の悪意の推定でしょうか。ちょっと法務大臣お答えください、オーバーラン問題についてひとつ。
#92
○鈴木国務大臣 総理のオーバーラン発言というのは伊勢神宮にお参りしたときの御発言だったというふうに承っておりますが、たまたま私はその節同行いたしておりませんでしたので、どういう御表現でどういう意味だったか理解をしなかったのでありますが、その後国会でたびたび御答弁されております御答弁によりますと、それぞれ三権のあり方を申し上げたんだ、こういうふうに実は受け取ったものですから、そういうことであるならば別に私も何も申し上げることはない、こういうふうに考えておるわけでございます。
#93
○小林(進)分科員 法務大臣、甘いですね。それは中曽根さんが各委員会で適当に言われているけれども、あの人は風見鶏といって、風の吹き方によって右へ行ったり左へ行ったり、実に変幻自在の人でありますが、この司法のオーバーランなどというものはそんな変幻自在で済む、風見鶏で処理できる問題ではないと私は思います。あなたは法務大臣ですから、特にあなたのお立場ではいま少し真剣に考えていただかなければならないと私は思うのです。どこまで追及しても追及し足りない重大問題だと私は思う。
 特に司法というものは、三権分立とはいいながら、立法の行き過ぎ、法案のつくり方、行政府の法律の執行の仕方、やり方をチェックする機関ですからね。このチェックする機関に対して、自分がチェックされたからおもしろくないからといってオーバーランなどと言ったら、これはとても三権分立の成立ができませんから、私はこの言葉を取り消していただく以外にないと思うのです。けれども、ここは分科会ですから総理を呼ぶわけにいかないし、だから私が行って予算委員会でやると言ったら、党の方で長老の君は出ないでくれ、若い者にやらしてくれと言うので、出る場所がないから、残念ながら私はこの総理のいない分科会へ来て大きな声を出しているのですけれども、こういうことは最高裁の方にもいま少し慎重に問題を考えていただきたいと私は思うわけでございます。これは重天ですからね。
 そこで私は、オーバーランの問題に関係いたしまして、先ほども質問申し上げました最高裁の判決と総理大臣の解散権は、これは、解散権は何も最高裁の判決によって左右されることはないんだ、総理大臣独自の権限だから解散しようと思えばいつでも解散できるんだということを言われておりますが、事実上これでよろしゅうございますか。この総理大臣の発言はこのままでよろしゅうございますか。これも最高裁にひとつお伺いいたしておきましょう。
#94
○山口最高裁判所長官代理者 事柄は憲法解釈にかかわる事柄でございまして、私どもの方といたしましてそのことについて論評する立場にはございませんので、答弁は差し控えさせていただきます。
#95
○小林(進)分科員 憲法解釈を正確におやりになるのは最高裁の仕事じゃないのでありますか。いかがでございます。
#96
○山口最高裁判所長官代理者 仰せのとおり憲法解釈が問題になりました場合、具体的な事件を通じて最高裁判所の判断が示されるわけでございまして、これは裁判権行使そのものでございますので、私ども司法行政を預かる者といたしましては、その点につきましては答弁はできないわけでございます。
#97
○小林(進)分科員 なるほど、具体的な提訴を待って問題を処理されるということでございましょうけれども、こういう重天問題は提訴を待って処置するなどといってのうのうとしておいでにならないで、最高裁は国民を教育する一端の責任もあるのですから、日本の民主主義の基本を守るという崇高な任務もあるのですから、そういうようなことはやはり積極的に最高裁の崇高な見解というものを出していただきたいと私は思います。
 どうも最高裁は消極的ですね。岡原とおっしゃった元最高裁長官なども実に肯綮に当たるような立派な発言をしていただいたのだが、それはもうおやめになった後なんでございまして、ああいう発言をむしろ現職のときに言っていただくと国民に対する影響力もさらに大きいのではないかと思っておりますが、いずれにしても、いま少しやはり正義に向かってとか公正に向かって、正しいことはひとつ勇気を持って御発言願えないかと思うわけでございます。これは希望いたしておきます。
 ところで、最高裁判所の判決に対して総理が、おれは解散権を持っているんだから裁判所の判決なんか何も関係ないというような言われ方でおっしゃるのだから、大変国民には悪影響を及ぼしているのです。先ほども言うように、ますます、三権の中では総理大臣というのが一番権力を強く持っているのだ、総理大臣というものは最高の権力者、大統領みたいなものだ、大統領よりも偉いのだ、そういう考え方が国民の間に大変浸透しまして、私も悪影響の大きいのに今さら驚いているわけですが、具体的な提訴を待たなければ最高裁の意見を述べられないとおっしゃるのだからやむを得ないのでありまするけれども。仮に中曽根さん側で一同時解散は後です、まだ時間があるから。同時解散もお聞きしますけれども、解散などをぶった場合にその結果はどうでありましょう。その結果について、これはおわかりでしょう、最高裁は違憲という判決をお出しになっている、その判決の前にわっとひとつ解散をふった、中曽根さんがおれは権力あるとぶった。その結果どうなりましょう。
#98
○草場最高裁判所長官代理者 今御質問の趣旨は、やはり具体的な裁判権の行使に関する事柄でございまして、私どもの立場でお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 ただ、司法行政を担当する者として一言申し上げられるかと思いますことは、御指摘のとおり憲法及び法律に従って誠実に審理、判断するというのが裁判所の職責でございます。したがいまして、そういう具体的な事件が起きました場合には、これは下級裁判所であれあるいは最高裁判所であれ、ただいま御指摘のような違憲立法審査権というものを十分に念頭に置き、認識して、憲法及び法律に従って誠実に審理、判断するというその職責が尽くされるものというふうに確信をいたしております。
#99
○小林(進)分科員 私は、若干政治論も入りますけれども、最高裁の判決が厳然として存する限りは現状のままでは総理大臣といえども解散はできない、そう解釈しております。間違っておるかどうか知りませんけれども、できない。
 ただ一つ総理大臣が、これは政治論になるかもしれませんが、できる場合がある。この最高裁の判決そのままに。それは何かと言えば、この立法府のあり方です。最高裁が定数是正をしなければ違憲だぞと言ったにもかかわらず、だからその定数を是正するために行政府が立法府の中に入って一生懸命苦労した、盛んに苦労したけれども、具体的に言えば野党その他の反対が強くて、裁判の判決に沿うように行政府が努力をしたけれども、どうも立法府が意のままに動かない、それで結果は最高裁判所の判決に沿えない、やむを得ず、それならば最高裁の判決を生かすためにも、どうも今のこの顔ぶれの国会議員じゃだめだから、ひとつ解散をふって国民に訴えて、本当に最高裁の判決に沿うべくために、このどうにもはしにも棒にもかからぬ現状の国会議員を、改めて最高裁の意に沿うような新しい議員に入れかえてもらうために解散を打ちましょう。こういう意味の解散権、立法府が最高裁の判決を生かさんがための解散というものは、私は許されるべきではないか。これは政治論かもしれませんけれども、あり得るのではないかということを考えている。これは間違っておりますかどうか。
 あわせて、そういう解散をふった。ぶった後に今度は各地区で、私も含めて、落選しちゃった。これはどうも違憲判決にもかかわらず解散した、この解散は無効だ。そう私は訴訟を起こしますよ、いわゆる下級裁判所へ。当選した者はやらぬかもしらぬけれども、落選した者はみんな、違憲選挙だから、最高裁のこういう判決に違反した解散であり選挙だからといって、地方裁判所に全国的に訴訟をいたしますよ。その場合どうですか。これは下級裁判所が受けることだから、最高裁は関係ないとおっしゃるか。しかしそれは、その提訴を受け付けないわけにはいかぬでしょう。いかがでございましょう。
#100
○山口最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、かなり政治論にも絡まる問題でございますし、仮定の問題でございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
#101
○小林(進)分科員 仮定とおっしゃるけれども、今すぐ、もう足元に来ている問題ですよ。中曽根さんが、同時解散をやるかやらぬかは五分五分、フィフティー・フィフティーだと言っているんだ。そのときは、もうこの六月、七月に解散を打っちゃう、選挙がありますよ。そうしたら、落選した者がみんな、違憲の選挙だからといってわあっと全国的に訴訟をする。私は、その先頭になって旗振りをやって訴訟を起こします。同内はそれは動乱のちまたになりますよ。混乱状態。
 私は決して恫喝をしているわけじゃない。法務大臣、恫喝しているわけじゃないのだよ。あなたは政府の高官だから中曽根さんとは連帯責任があるからあなたにも言っているんだけれども、そういうような解散をして、その解散の後に国が挙げて裁判闘争で混乱に落とすようなこともちゃんと見通しをつけてやってもらわなければいけませんよ。あなたはそれでもやりますか。中曽根さんにやれと言いますか。法務大臣、あなた法律に対する当面の責任者だから、ちょっと言いなさいよ。少し答えなさいよ。そんなばかな解散ができるかできないかだけの判断をしなさいよ。できると思いますか、あなた。
#102
○鈴木国務大臣 大変な御質問で、私の範囲内での答弁はちょっと難しいわけでございますが、政治論も絡みますし、法制局なり何なり、特に現実の問題としては総理の御判断でございますから、私の答弁は差し控えさせていただきます。
#103
○小林(進)分科員 さっぱり答弁にはならぬ答弁をおっしゃったということでひとつ理解をしておきましょう。
 それでは、やむを得ませんから次に申し上げまするけれども、これは同時解散の問題だ。同時解散も、日本の民主政治、憲法の建前からいって、これが一体可能かどうかという問題がある。法務大臣でも法制局でもいいが、戦後、衆議院選挙は十六回行われましたよ。二院制度に基づいて、参議院は期間が六年、衆議院は一応四年、実際にはもう二年ちょっとでみんな解散を繰り返しておりまするが、十六回やった。そのうちの十四回は、ともかく参議院は参議院の選挙で独立して選挙をやる、衆議院は衆議院で独立して選挙をやる、こういう建前でずっと選挙をやってまいりましたから、十四回の選挙が終わるまで衆参が同時に、同日に選挙するなんということはだれも考えていなかった。憲法の建前上、日本の民主政治の建前上、両院制度の建前上、まあ参議院の構成も違っております。全国区があったり地方区があったり、人数も変えてあったり、選挙区の地域も変わったりして、全く質が違う。質が違うからこそ両院制度の意味があるのです。同じものなら二つ要らない。それだから、今でも一院制なんという意見が出てくるのは意味なしとせずです。だけれども、性格を全部変えて政治の慎重を期す、立法の慎重を期す意味において両院にしている。だから、もちろん選挙のやり方、期日も変わるのが当然です。それぞれ独立した選挙方法をやってきた。だから、戦後独立して期日を変えてやってきてだれも不思議に思わない。これがいわゆる議会政治、これが憲法に基づく一番正しい方法であると国民にも全部定着していたのですよ。
 ところが、いよいよ十五回目の選挙の昭和五十五年ですよ。そのときになったら、大平内閣のときに、何でもない自民党内部の内紛です。いつでも世の中を悪くするのは、歴史をひもといてみると、大体権力者ですね。それが四十日抗争というものをやって、内紛を起こして、もみ抜いた。とてもこんなところでは日本の政治を任せておけないといって、野党が不信任案を出した。そういうふうにしてやったときに、自民党がいわゆるサボタージュをして不信任象採決に参加しなかったから野党の不信任案が成立したのでしょう。そこで大平さんは、みずからやめるか解散をぶつか、二者択一となったときに解散をふった。ぶったときがたまたま参議院の改選選挙が間近に近づいていたということなんだな。大平さんが解散を打つとき期日が偶然に一致したということなんだよ。偶然期日が一致したのに別々にということもということで、例外中の例外を認めて一回だけ衆参の同時選挙というものが行われた。そうでしょう。その後の五十八年にはもう衆議院は衆議院独自で選挙を打っているから、十六回の選挙の中で、同日選挙というのはいいも悪いもたった一回だ。その一回も例外中の例外です。そういう中で行われて、そこで打ってみたら、どうも自民党が多数を占めた。あの多数も、同日選挙だからじゃないんだ。大平さんが死んだから、大平正芳さんに対する弔い、香典でもやろうかということで、自民党が多数を占めて、そこで味をしめた。あなた今見なさいよ。みんなあなたのところから出てくるんだよ、また同時選挙をやろうか、同時選挙をやろうか。こんなことが普通にやり得るように宣伝したり利用されたりしていることは、私は民主政治の根幹に対する大きな誤りだと思うのですよ。
 中曽根内閣は、こんなわけで、憲法だ何だ、行き過ぎだと言ってみたり、オーバーランと言ってみたり、あるいはまた三権分立を調整するんだとか。今度は、選挙もまたそうして異常中の異常を取り上げて一般の選挙をやるような形で持ってくるなどというのは、実に私は黙視あたわざる独裁者だと思っている。大きな間違いだと思っているのですよ。一体こういうようなやり方、今の憲法、今の議会政治、二院制度のもとにおいて同時選挙というものが正当なやり方であるかどうか答えてもらいたい。
#104
○工藤(敦)政府委員 お答えいたします。
 今委員御質問の件でございますが、我が国において二院制をとっております理由というのは二つ言われていると思います。第一は、民意をより的確に反映させる、そして議事の公正と慎重を期する、こういうことが第一点だと思います。それから第二点は、いわゆる第一院が活動不能となった場合もできるだけ民主的に国務を処理する、こういう実際上の必要にこたえる、こういう二つのことがあると言われております。
 今委員御質問のように、参議院の任期満了によります通常選挙というのが予定されておりますときに衆議院の解散をする、その結果これらの選挙が同日に行われましても、それぞれ独立した別個の選挙でございますし、また民意を反映させる機会がそれで失われるということにはならないのではないか、私どもはこういうふうに考えております。また、参議院もその間におきまして活動は可能でございます。そういう意味で、二院制の意義がそれで失われるというふうには考えていない、かように思っています。
#105
○小林(進)分科員 法制局、差しさわりのない答弁で、あなたはそういうことを言えば御身お大事でいいだろうけれども、しかし我々は何も解釈だけ聞いているわけじゃない。本当に政治の根幹から立法措置――二院制度を設け、地域も選挙のやり方も全部別にした理由はどこにある。そういう本質から物を論じていかなければだめだと私は思う。これは、形式論で言いますれば、一院が休んでいても一院がちゃんとあって、国家のいかなる場合にもそこでできるというために二院制度の存在の意義があると私は思いますよ。二院が一緒に選挙になったら、最高機関である国会は空白になるじゃないですか。そういうときの問題の処理を一体どうするか。その意味において、事実、現実の面から見ても同時選挙というのはけしからぬと思う。
 しかし、最もよくないのは、選挙権というのは、主権者たる国民が持っている最高の権利ですよ。我々は民主政治を守る以上は、この権利を伸長する方向には持っていっても、これを縮小したり制限したりする方向はいけない、断じてやるべきじゃない、これが民主政治の原則だと私は思います。その国民が、参議院は参議院、衆議院は衆議院、一定の間隔を置いてみずからの代表を選ぶ意味において、慎重に冷静に選ぶために選挙制度というものはあると私は思うのです。それをさらに伸長し、さらに有効ならしめるために持っていくのが行政じゃないですか。それを、二回やるよりは一回の方が金がかからない、安上がりだ、そういうような便宜主義、しかもこれをやれば、権力者である政府の方が得だ、選挙も勝ちそうだ、主権者の持ついわゆる最高の権力を、その価値を無視して、一つも反省をしないで選挙を強要する、同時選挙をやるなんということは、断じて許されるべきことではないと私は思うのでありますが、皆さん方はいわゆる法律、立法に従事をしている人ですから、いま少しこういう問題を、国という立場に立って真剣に考えてもらいたいと私は思うのです。素人の私がこんな大きな声を出してしゃべらなくたって、本来皆さん方の方から問題の重要性や価値を我々に提示をしてくださらなければならない。税金で高給をはんでいて、そして今ここで答えられないとか言うべき場合じゃないとか言われたのではたまりません。どうかひとつ、主権者たる国民の立場から物を考えていただいて、今中曽根が進めようとしている同時選挙だとかいわゆる三権の調整だとか司法のオーバーランだとか、こういうようなことはひとつ明確な結論を出して、国民に迷いのないようにしていただきますことをお願いいたします。
 次に、最高裁判所のお方にお伺いいたしたい。これは最高裁じゃないのです。高裁の問題であります。東京都議会議員の選挙の問題に関してですが、一票を三倍以内にしなくちゃいけない、いわゆる一票の価値の問題です。三倍まではよろしい。私は最高裁じゃないかと思ってちょっと調べてみましたら、さすがに最高裁はそういう判決はお出しになっていないけれども、そこまで裁判が関与してくることは少し問題ではないか。厳格に言えば、一票は一票だ。どんなに沖縄の果てへ行こうと東京都の真ん中であろうと、いわゆる一票の価値というものは厳格に言えば一対一でなくちゃならぬ。それはやはり人間が動いたりなんかしているのだから、そうしゃくし定規のことは言えぬが、といって裁判所の判決として、一票は三倍までの間ならばよろしい、これまできめ細かく具体的に示すということは問題があるのではなかろうか、私はかように考えております。
 最高裁がお見えでございますからお聞きしますけれども、一票の格差はどの程度ならば合法でございましょうか、これを一つお聞かせ願いたい。一票は三倍まではよろしいのか、四倍まではよろしいのか。今この立法府の中でも、これはもめております。各政党によって、一票は三倍以内ならば定数是正の問題はいいじゃないかという意見があったり、やっぱり一票は二倍以内でなくちゃならぬという意見があったり、今相当議論が沸騰いたしておりますが、最高裁はこの点どのような御所見をお持ちになっているか。あなたの下級裁判所の判決のことを聞いているのですよ。三倍まではよろしいと言った下級裁判所の判決について最高裁はどうお考えになっているか、お聞かせを願いたい。
#106
○山口最高裁判所長官代理者 下級裁判所がある事件に即して下されました判断につきましては、上告の手続をとりまして上告審に係属いたしました場合に、その事件に対する上告審判決として最高裁の判断が示されるわけでございまして、特定の事件につきましては、将来予想される上告審判決で示される判断で御理解いただきたいとお答え申し上げるほかないと思います。
#107
○小林(進)分科員 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
#108
○中島(源)主査代理 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田英介君。
#109
○山田分科員 私は、最近国民の重大な関心を呼んでおります、最高裁から提起をされております裁判所の適正配置、統合廃止計画といいますか、この点につきましてお伺いをしたいと思っております。
 特に、最高裁の考えておられる簡易裁判所の統廃合につきまして、何をどうなされようとされておるのか、その概略を御説明をいただきたいと思います。
#110
○山口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所は、委員御案内のとおり昭和二十二年に発足いたしておりまして、その当時五百五十七というふうに全国多数設置されておりまして、現在、五百七十五存在するわけでございます。それから今日まで約四十年間経過いたしておりまして、その間におきまして、産業構造の変化に伴う都市への人口集中とか、あるいは交通事情の飛躍的向上、さらには広域行政に伴いまして市町村の行政区画がかなり広域化しておる、あるいは警察署の整理統合というような問題がございまして、社会事情が大きく変わってきたわけでございます。
 ところが、簡易裁判所の配置は旧来のままでございまして、社会事情の変化に伴いまして、裁判所運営上いろいろな問題が生じてまいりました。端的に申しますと、地方、郡部の小規模の独立簡裁における事件の減少、都市部の簡易裁判所における事件の急激な増加、私ども、事件の両極化現象というふうに呼んでおりますけれども、そのような状況が生じてきております。現在、五百七十五の簡易裁判所がございますが、上位の百庁におきまして事件数の全国の合計の七五%を処理し、残りの四百七十五が残りの二五%を分かち合う。下位の百庁におきましては、実に一%足らずの事件しか取り扱っていない、こういう現象が生じてきたわけでございます。
 事件数の少ないところに裁判官を配置するわけにまいりませんので、現在裁判官が配置されていない独立簡裁というものは約百四十ございます。しかしそういうところにも、庁舎を構えております以上、やはり職員は二人、三人配置しなければならないわけでございます。一方、住民サイドから申しますと、裁判官が常駐していない裁判所につきましては、月に一回、二回あるいは週に一回、二回裁判官が出張して事件を処理するということになりますので、裁判官が出張してくるのをお待ちいただかなければならないという不都合さが出てまいっております。職員の配置につきましては、裁判官一人分に満たないような庁につきましても二人、三人の職員を配置しなければならないという非効率性が出てきております。小規模の独立簡裁における問題点は、そのような問題でございます。
 他方、都市部の簡易裁判所におきましても、交通網の整備状況は目覚ましいものがございます。比較的狭い範囲内に多数の簡裁が散在してございますので、当事者サイドからいたしますと、自分の事件を管轄する裁判所がどの裁判所かというのに非常に図られる場合もございます。所によりますと、東京都なんかの場合でございますと、かえって都心に出向かれる方が便利な地域もかなり多くなってまいっております。そういうふうに社会事情の変化がございますのに裁判所の配置が旧来のままでございますために、裁判所運営上いろいろな点で、無理、むら、ひずみと申しますか、そういう点が見受けられるようになりました。
 そこで、私どもといたしましては、このような無理、むら、ひずみというのは、裁判所の配置が現在の社会事情、あるいは将来予想される社会事情にマッチしていないためではないか、このように考えまして、一昨年の一月、日弁連、法務省、最高裁で構成いたしております三者協議会に簡易裁判所の適正配置という問題提起をいたしました。昨年の三月に日弁連におかれましても、要するに社会事情の変化というものは現に存在している、簡易裁判所の配置の見直しも含めて簡易裁判所のあり方を検討すべきではないかというようにおっしゃっていただきまして、基本的な了解と申しますか見直しについての基本的了解は昨年の三月の段階で得られたわけでございます。
 配置の適正化を図ります場合には物差しが必要になってまいります。そこで昨年の五月に私どもから、小規模の独立簡裁の集約の基準のいわばたたき台のようなものといたしまして、裁判所の利用度を示します民事訴訟、刑事訴訟、民事調停の過去五年間の年間平均新受件数というものを取り上げよう。他方、裁判所に近づきやすいということが必要でございます。ある裁判所の所在地の市町村の中心地から最寄りの簡易裁判所まで、公共交通機関を利用いたしまして何分かかるか、これをもう一つの指標といたしまして、それで年間事件数が百二十件以下で隣の簡裁まで一時間以内の範囲の庁、件数が半減いたしまして六十件以下の場合には隣の庁まで二時間以内の範囲の庁、それから年間事件数が十二件以下になりますと日帰りの可能な範囲の庁までを前提にいたしまして、さらに管内人口あるいは人口動態、事件数の動向、家裁出張所が併設されております場合にはその事件数、管内面積、市町村の散在状況、あるいは管内における自家用車の保有台数、冬季における交通事情等々、地域における簡裁の存否に影響を及ぼすいろいろな事情を考慮して集約の実現に当たるというような考え方を示しました。
 それから昨年の七月には、都市部の簡裁につきまして、東京都の二十三区内の簡易裁判所は原則として、現在の高地簡の合同庁舎がございますが、その最寄りに集約してはどうか。それから大阪の市内の簡裁につきましても、現在の高地簡の庁舎の近くに集約してはどうか。名古屋につきましても、同じく市内の簡裁を現在の名古屋簡裁の周辺に集約する。北九州につきましては、折尾と門司の簡易裁判所を現在の小倉簡易裁判所に原則として集約してはどうかというような具体的構想をお示しいたしました。
 その後、日弁連におかれましては単位会でいろいろ御意見を求められたようでございます。ことしの一月になりまして一定の御意見が出たわけでございます。基本的には、事件数、所要時間というような一律の基準で考えていくのはいかがなものであろうか。しかし片方では、先ほど申しましたような管内人口あるいは人口の動態であるとか、あるいは家庭裁判所の事件数であるとかそういう地域のもろもろの事情をやはり考えなければならないというようなこともおっしゃっております。基準案のたたき台につきまして必ずしも意見の調整ができているわけではございませんが、法曹三者の意見がそれぞれ出され、お互いに意見交換もし、理解度もかなり深まったようである。
 私ども問題提起をいたしました段階で、この問題は国民の裁判所を利用する便につながる問題であるから単に法曹三者で決められる問題ではない、そこで法務大臣の諮問機関でございます国民の各層の代表を集められております法制審議会の場で幅広い見地から御審議いただくのが適当ではないかというふうに申し上げておりました。法曹三者の意見交換もある程度なされております段階に参りましたので、実は法務省の方にお願いいたしまして、二月二十七日に法制憲総会をお開きいただきました。法制審総会におかれましては、司法制度部会でひとつ審議していただいて、その結果を総会に御報告いただいてさらに審議しようではないか、こういうふうにお決めいただきました。三月から司法制度部会でこの問題を幅広い見地から御審議いただくというような段取りになっております。
#111
○山田分科員 ただいま御説明がありました年間事件数がおおむね百二十件で隣接庁まで公共交通機関で六十分以内のところ、またおおむね年間事件数が六十件で隣接庁までが百二十分、それから十二件以下で青二十分以上というところでございますが、ここは全体で何庁になるのですか。そして今局長がおっしゃった適正配置の結果、廃止もあるし統合もあるしということで、大体おおよそどのぐらいの序数になさろうとしておるのか。
 もう一点、大都市部につきましては、今東京、大阪、名古屋、北九州、この四つを計画をされておるということでございますが、現在それぞれの都市について何カ所あり、それを御答弁の趣旨から、ニュアンスからいたしますと一カ所にすべて統合集約をするというふうに聞こえるわけでございますが、この点について、時間がどんどん過ぎておりますので、数字だけで結構でございますので御答弁をいただきたいと思います。
#112
○山口最高裁判所長官代理者 まず。先ほどの基準案のたたき台の区画の枠内に入りますのは百五十ほどございます。私ども百五十をそのまま整理統合するというようなことは考えておりません。これはやはり地元の御理解をいただかなければならない問題でございますし、先ほど申しました地域の諸事情を考慮して集約の実現幸考えます場合、百五十から相当数が落ちるだろうとは考えております。しかしこれは法制審議会に基準についての御審議をいろいろお願いしている段階でございまして、法制審議会でどのような基準をお示しいただけるか、それにもかかわる事柄でございますので、この段階で私どもの方が幾ら考えているというようなことはちょっと申し上げられないというふうに思います。
 それから、大都市部の簡裁につきましては、東京の二十三区内には現在東京簡裁を除きますと十一の簡裁がございます。それから大阪市内には大阪簡裁を除きまして三つの簡裁がございます。名古屋市内は名古屋簡裁を除きますと二つの簡裁がございます。これらを原則として一カ所に集約したいというふうに考えております。
#113
○山田分科員 先月の二十七日に法務大臣から法制審議会の方へ簡裁の統廃合につきまして諮問をなさったわけでございます。その内容の骨子につきまして、ひとつ簡潔にお知らせをいただきたいと思います。
#114
○井嶋政府委員 お答えいたします。
 法制審議会は大臣の諮問に応じて審議をいたしますが、既に諮問九号ということで裁判所制度を改善する必要があるか、あるとすれば答申されたいという諮問が過去に発せられておりまして、この適正配置問題はまさにその問題でございますので、それを受けまして法制審議会において簡易裁判所の適正配置の見直しという趣旨の諮問事項を提示いたしまして、御審議をいただくということをお願いしておるわけでございます。
#115
○山田分科員 最高裁の規則の規定の見直し等につきまして、法律改正については、その改正案についてはいつごろ国会へ提出をなさる御予定ですか。
#116
○井嶋政府委員 今、将来の立法をする過程において法制審議会における審議が始まったばかりでございます。法制審議会の審議の日程と申しますのは、法制審議会そのものでお決めになって審議を進められるわけでございますので、私どもの方からその答申をいただける時期というものは現段階で予測できるわけではございませんが、いずれにいたしましても、答申を得ました上で最高裁判所とも協議をしながら法案の作成作業に入っていくということでございますので、現時点でいつの時期ということを申し上げられる立場ではございません。
#117
○山田分科員 最高裁判所事務総局が作成をされた「裁判所の適正配置」というパンフレットを読ませていただきました。二十五ページですが、簡裁の適正配置というのは、統廃合は「単に小規模な裁判所の集約化だけを考えているものではありませんし、また、簡裁などの担っている役割とか本質を変えようというものでもありません。」こういうふうにございます。
 この簡裁の担う役割あるいは本質については細かく論ずることは時間の関係で避けますけれども、昭和二十二年に簡裁が設置されたそのときにいろいろな論議がなされたわけでございます。軽微な事件について迅速にかつ簡単に解決が図れるように全国津々浦々といいますか、すべての国民にそのような司法サービスを提供する、それがまた我が国の司法におけるといいますか民主主義の極めて大きな土台づくり、それを支える機能を果たすことになるだろうなど、いろいろな議論がなされたわけでございますが、この簡裁の統廃合によって一つの、民衆裁判所というような言葉も使われておりましたけれども、そういう民衆裁判所あるいは駆け込み裁判所というような本来簡裁が持っておる役割、それから本質あるいは理念というようなものはどのようにとらえておられるのか、それは当時と変質をしていないのかどうか。これまた簡潔にお答えをいただきたいと思います。
#118
○山口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所は御指摘のとおり比較的少額、軽微な民事、刑事の事件を簡易な手続で迅速に処理する裁判所ということで発足しているわけでございます。特に非公開で、訴訟に比較いたしますと弾力的な手続で実情を把握して条理にかなった解決を図るという民事調停、それから簡易に債務名義が作成できるところの支払い命令手続、これらを専ら管轄するところから、国民に親しみやすい裁判所という性格は持っていようかと思います。そのような性格はこの集約を図ることによりまして変えようというつもりは毛頭ございません。
 今御指摘の駆け込み裁判所ということがよく言われるわけでございますが、この駆け込み裁判所と申しますことの意味するところは必ずしも明確ではないのでございますけれども、アメリカの少額裁判所のような手続、これは当事者双方が裁判官の前へ出頭して、訴訟法規に従った手続でやるわけではなくて、裁判官がいわば自由裁量で事実調べをやる。短時間のうちに結論を出しまして、判決も主文だけを言い渡して理由も告知しない、一定の場合には上訴も制限される、こういういわゆるラフジャスティスの裁判所を考えているのだといたしますと、簡易裁判所は発足当初におきましても、民事訴訟にいたしましても民事調停にいたしましても、やはり法規に従った適正な手続で進行していかなければならない、いわゆる適正手続の保障と申しますか、デュープロセスの要請の方が強かったわけでございまして、民事訴訟につきましても、地裁の民事訴訟と基本的には異ならない手続で運営される、こういう形になっておりますので、ラフジャスティスの考え方はとり得ないと思います。
#119
○山田分科員 要するに、簡裁の担う役割とかあるいは本質、理念というようなものを変えるつもりはない、このような局長の御答弁でございます。
 そこで私は、このパンフレットあるいはもう一つ時期をずらして適正配置についてのパンフレットを子細に読ませていただいたわけでございますが、全体のトーンとしてはいわゆる効率性ということで貫かれておるような気がいたします。統廃合する理由というのは効率性を追い求めておる。例えばそれは、事件数の少ない小規模庁を多数存在させることの非効率性とか、大都市簡裁への集約による効率性というようなことにあらわれております。いわゆる裁判所というのは国民の人権だとかあるいは民主主義のとりでなどというふうに言われているわけでございまして、その裁判所の配置をこの効率性という観点からのみとらえるというようなことであっては断じてならないと私は思うわけでございます。そしてまた、同じ国の機関でありますけれども、裁判所というのは、他の行政官庁とは基本的に異なる性格あるいは任務を持っておるという点も、これはしっかりと踏まえて対応していかなければ大きな過ちを犯すことになるということを私は申し上げておきたいと思います。そしてまた、そこから導き出されてまいりますが、採算ということとあるいは住民の、国民の裁判を受ける権利というものが一方においてあるわけでございまして、これを何か引きかえにするというようなベースであるいは考え方でこれをとらえていくということになれば、これまた言語道断のことでございまして、その点は最高裁におかれてもひとつしっかり踏まえた――適正配置で結構でございます。我々は統廃合といっておりますけれども、どういう言い方でも結構でございますが、それらを踏まえた慎重な、そしてまた国民の各界各層の意見をしっかりと踏まえて、日弁連、法務省そして最高裁の法曹三者会議だけで大体大まかな合意ができたからこれでいくんだというようなことがないようにひとつこれは対応していただきたい、強く要望をいたしておきたいと思います。
 それから、あともう時間が七分ぐらいしかありませんので、一々に御答弁いただくことはできませんけれども、例えばこの「総表」ですね。昭和五十五年から五十九年までの事件数と隣接庁との時間で、その中のどの部分を統廃合の対象にしようかという部分の事件数のところでございますが、これは特に最高裁の方では、大都市部と町村部といいますか小都市部との事件の偏在化をこれで明らかにしようとされておるわけでございます。ただ、この事件数の中身は、ここに注釈がございますように、独立簡裁の民事訴訟、調停、刑事訴訟、この三点の事件数なんですね。しかし簡裁の役割、性格というようなことからすれば、口頭で受理をする、あるいは相談という業務もある。いわゆる窓口事務というものも踏まえなければなりません。そしてまた潜在的な事件の存在というものもやはりしっかりと踏まえた統廃合の計画でなければならないというふうに私は思います。
 それからさらに、民事の督促事件あるいは刑事の略式事件などはこの事件数の中には入ってないわけです。それらいずれも、サラリーマン金融等にかかわる事件だとかあるいはまたクレジット問題にかかわる事件とかの激増、これが都市部に集中をしておるんだと、局長は先ほどそういう意味のことを御答弁なすっておられますけれども、いずれにしてもこういうその他の、簡易裁判所本来のといいますか、その最も中心的に取り扱うべき事件数がこの「総表」という資料の中には事件数として検討されていないということ、これは指摘をしておきたいと思います。
 それから、小都市、町村地域で年間の受け付け量が極めて少ない、年間十二件とか、そういうような簡裁につきましては配置の見直しは必要かもしれないと私は思っております。しかしその場合でも簡易裁判所設置の理念とか性格、役割というものを最大限踏まえるべきだと思います。加えて人口動態も見直しの根拠としてしばしば挙げられておりますけれども、例えばUターン現象であるとか、あるいは政府が言っておられる、これからは地方の時代だ、地域の時代だというような、そういう方向性からも、あるいはまた将来のその地域の開発計画などというものもしっかりと踏まえていかないと、これは単に事件数だけで判断をしていく――それだけとは言いません、先ほど御答弁がありましたように、いろいろな状況も踏まえてということでありますから、そういうことだけではないと思いますけれども、それらも踏まえてもらいたい。あるいはまた交通事情が非常によくなってきているといいますけれども、例えば赤字ローカル線の廃止問題一つとってみても必ずしも交通事情が従来と比べてよくなってきていると一〇〇%言える地域だけではないわけでございまして、これらも十分踏まえなければならないというふうに感じております。
 それで、私は最後になってしまいますけれども、弁護士が不在の独立簡裁が百八十六庁あると言われております。全体の六五・七%。検事、判事、弁護士の関係者の移動に費やす、そういう時間的ロスがいろいろ多いとおっしゃっておられます。しかし、元来簡易裁判所というのは本人訴訟あるいは調停、督促、略式ということで弁護士を必要としない事件が中心ではないのかという観点もあるわけです。
 それから、このパンフレットには全然触れられておりませんけれども、五十六年の統計でありますが、簡裁の民事通常訴訟等を見てみますと既済、既に済んだ事件が八万五千件からあるわけです。その中で弁護士が一方について争った事件の数というのは一万四千九百八十一件で一七%強しかないわけです。双方に弁護士を立てたのが四千九百九十二件、約五千件でわずか五・八%です。残りの本人訴訟が七万二百十七件ということで八二・四%、こういう状況があるわけです。ですから弁護士が不在だからということを根拠の一つに据えて簡裁は統廃合していくんだという姿勢は、私はおかしいのではないかというふうに思っております。今五十六年度の資料で申し上げましたけれども、今日に至るまでその基本的な傾向は変わっていないだろう、変わっていたとしてもさほど大きな変化はないはずだ、本人訴訟が非常に中心的な簡裁であるという性格には変わりはない、このように私は指摘をしておきたいと思います。
 それで、最後に御答弁いただきますけれども、簡裁の統廃合を小都市、町村部と大都市を同一の考え方、同一の視点からとらえて適正配置だ、統廃合だと言うのは間違いだと私は思います。要するにこの資料を見ても明らかなことは、中小規模の簡裁配置の問題点として、事件数が少ないから統廃合するのだ。しかし、大都市における簡裁の集約というのは、今度は事件数が激増しているのに集約する、こういう立場にすぐ立たれるわけです。これはおかしいのです。
 それからまた、裁判官を常駐させられない独立簡裁が二分の一もある、百四十庁もある。だから統廃合するのだと言っておきながら、大都市部の一千二百万人の都民が住む、そこにわずか十二、三カ所でしょう、先ほどの御答弁で明らかですけれども。しかし、簡裁の取り扱い事件がそこに激増している。それも集約をする、こう来るわけですね。これはおかしいです。
 それから、裁判官の非常駐のうち百三十庁は、管内に弁護士がいない。だから統廃合するのだ。じゃ、東京には弁護士ばっかりいるじゃないですか。それも集約をするのだ、こうなるわけですね。おかしいと思います。
 それで、事件数の少ない多数の独立簡裁について、庁舎の新営、維持管理、人員配置等において困難と非効率性が大きいから統廃合する、こうなっているわけですね。ところが、東京や大阪や名古屋、北九州にある、この大都市部における千何百万人、何百万人という大都市にある十二や四つや三つや二つのこの庁舎さえも集約をしようとする。それは確かに裁判所の事務処理においては、あるいは弁護士が動くという意味においては、これは非常に有利、便利かもしれませんけれども、利用する国民の立場に対する配慮がなされていない。私はこのことをきょうは明確に指摘をさせていただきたいと思っております。したがって、大都市部と小都市部といいますか、そういうところと一緒に統廃合を進めていくということについては、法曹三者会議あるいは法制審、それからまた鈴木大臣おいででございますが、法務省においてもこの点はぜひしっかりと念頭に置いて、そうして統廃合の問題を考えて進めていただきたいというか対応していただきたい、このように私は思います。
 最後に、せっかく鈴木大臣がおいでの分科会で質問をさせていただいておりますので、主査、まことに申しわけございませんが、大臣から一言ただいまの件につきましてお話を賜り、終わりたいと思います。
#120
○鈴木国務大臣 貴重ないろいろの御意見を承りまして、ありがとうございました。法制審議会の皆さんも広い視野の方ばかりでございます。そういう問題等も十分ひとつ御審議をいただけるものと考えます。御審議いただいた上で、御答申いただいた上で、また御意見等十分ひとつ参考にしながら法案作成に向かってまいりたいと思います。
#121
○山田分科員 終わります。
#122
○中島(源)主査代理 これにて山田英介君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
#123
○伊藤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 法務省所管について質疑を続行いたします。渡辺嘉藏君。
#124
○渡辺(嘉)分科員 「借地・借家法改正に関する問題点」という素案を法務省がまとめられまして法制審に諮問をせられたその改正指針は現在どうなっておりますか、まず承りたいと思うのです。
#125
○枇杷田政府委員 法制審議会の民法部会の中で財産法関係を取り扱っておりますのが財産法小委員会と申しておりますけれども、そこで幾つかの懸案事項を抱えておりまして、その中で借地・借家法を今度ひとつ検討に入ろうではないかということになりました。ただ、いろいろ問題は多うございますので、各界でどういうふうな問題意識を持っておられるかということをまずお聞きしたらどうかということで、昨年その問題点を一応整理をいたしまして、それについていろいろな考え方があるけれどもどうかというふうな照会をいたしておる最中でございます。ことしの四月の半ばごろにその意見が戻ってまいろうかと思いますので、それを受けた上でどういうふうな方向で検討したらいいかということを協議をするということでございまして、現在のところでは改正の方向性と申しましょうか、そういうものをきちんと持って審議に入っておるというわけではございません。
#126
○渡辺(嘉)分科員 そうすると、まだ小委員会は開いていない、こういうことですか。
#127
○枇杷田政府委員 委員会は開いております。ただ、その委員会では、先ほど申しましたように、各界にいろいろな問題についてどういうふうな形で御意見を伺ったらいいかということを整理するための検討をいたしただけでございまして、どういう方向が望ましい方向だというふうな議論はまだ全然いたしておらないわけでございます。
    〔主査退席、中島(源)主査代理着席〕
#128
○渡辺(嘉)分科員 それでは承りますが、民事局の参事官室が出されました説明書によりますと、「ここ数年来、借地方式による宅地の供給の促進及び都市における土地の有効利用のための建替えの促進といった観点から、借地法及び借家法の見直しをすべきである、との意見が強く主張されている。」こういうことですが、これはどの団体からどういうふうに出たものか。
#129
○枇杷田政府委員 これはかねがねデベロッパーと申しましょうか、そういうようなところからも声がございますが、一方、行革審の方で昨年の七月に答申が出ておりますが、その行革審の審議過程の中でもそういうふうな意見が出ておるということを指しておるわけでございます。
#130
○渡辺(嘉)分科員 そのデベロッパーの意見あるいはまた地主、家主の意見、これはここにあるのですが、昨年二回以上にわたりまして地主家主協会という名のもとに大々的なキャンペーンをやり、いろいろな連動を起こしていらっしゃることは御承知のとおりですね。その中にあるのです。彼らの、彼らという言い方は失礼ですが、この協会の趣意書によりますと、「人類の歴史は土地をめぐる紛争の継続であり、将来においてもこの宿命から逃れることは出来ない。狭小な国土に住む単一民族の日本人にとっては大きな問題である。」こう宣言をして、その中には「不動産関係諸法律は、自由主義社会の基本理念である私有財産権を侵食している借地借家法のもとに形骸化され、その制定機能をはたせない状態となっている。」だから、この「強くなりすぎた借主側の権利」これを改めるんだ、そして借地・借家法を改正しようではないか、こういうふうな大々キャンペーンを張っておるわけですね。これが地主、家主、デベロッパー等の動きなんです。こういう動きに刺激されたのかということになると甚だ不愉快なんです。不適当だと思うのです。
 と同時に、いま一つは、行革審にもなるほど出てくるのですね。臨時行政改革推進協議会がこの「行政改革の推進方策に関する答申」において土地の有効利用のために規制の緩和をうたっておる、今おっしゃったとおりです。少なくとも行政改革、規制緩和と借地・借家法という社会政策的な、それぞれ強さも弱さも富むも貧しきも同じように地球上に住む人間の居住権の基本である土地建物、これを行政改革の一環として扱うということが、果たして法務省が考えられてなじむのかどうか、この二つについて承りたいと思います。
#131
○枇杷田政府委員 私どもは、借地・借家法というのは、借り主からしますと生活の本拠になるような、そういう関係に立つ法律関係を決める法律でございますので、行政改革的な物の視点ではなくて、貸し主、借り主の間の長期的、安定的な法律関係というものをあらゆる観点から、社会情勢にマッチしたものであるべきだということで検討すべき問題だというふうに私どもは受けとめております。したがいまして、行政改革だからやるというふうな視点ではなくて、むしろ私人間の権利関係をどういうふうに調整したらいいかという問題があるなら、それは検討すべきだろうという視点からの問題意識を持っておるわけであります。
#132
○渡辺(嘉)分科員 これは後ほどまた触れていきますが、気をつけないと、貸し主対借り主、地主対借地人、こういう今までの私人関係が、土地の有効利用という行革審の考え方を織り込んできますと、今度はデベロッパー対借り主、デベロッパー対借家人、言うなら資本対自然人、こういう関係に置き直されてくる危険が多分に含まれ出したのですね、このことは。この点については十分御承知だと思うのですが、これについてはどう考えられますか。
#133
○枇杷田政府委員 私どもは、デベロッパー対借り主、あるいは大資本対個人というふうな観点での力関係でどうこうというふうな問題として借地・借家法の改正を取り組むという考え方は毛頭ございません。先ほど申し上げましたデベロッパー側にそういう意見があるとか、あるいは行革審で答申がなされておるとかということは、借地・借家法に対して一つの側面からそういう声があるということで、もちろんあらゆる声に耳を傾けなければなりませんので、それは視野の中にはもちろん入れるわけでございますが、基本的な考え方は、先ほど来申し上げましたように借地・借家関係というのは生活権にも及ぶ重大な関係で、長期的、安定的なバランスのとれた法律関係でなければならないという視点で常に見るという立場でいきたいと私ども思っておりますし、法制籍議会の委員の先生方もそのような観点で取り組むべきだというふうなことを言っておられるわけで、私どもとしては、資本がどうとかというふうなことはこの際は余り考えないという立場でございます。
#134
○渡辺(嘉)分科員 考えないと言っても、危険は生じてくるのです。嫌でもこれの因果関係の結果はそういうことが及んできます。そこでしからば、この改正の動きに対して借地・借家人関係の団体その他の意見は聞かれたかどうか。
#135
○枇杷田政府委員 先ほど申しましたように、この問題点につい元の御意見を伺うのは各界にお願いをいたしておるわけでございまして、各地に借地人、借家人の集まられました団体がございますので、私どもでわかっている団体については書面をお送りいたしまして御意見をお寄せいただくようにお願いをいたしております。
#136
○渡辺(嘉)分科員 私どもはそういうことをまだ聞いておりませんけれども、十分な手配をお願い申し上げておきます。
 そこで、この借地・借家関係は、私は前回にも質問したので、そのときにも明らかになっておるわけですが、約千五百万戸の影響がある。だから、仮に二軒に四人家族なら五千万人に影響を与える問題、大問題なんです。この点は御承知のとおりです。そこで、地代家賃統制令が昨年の国会で廃止議決ができた。そうすると、ことしの十二月三十一日までに廃止になるわけですが、地代家賃統制令の廃止と借地・借家法の改正は無縁だとおっしゃる。ところが、これは重大な関係があるのです。これは法務省の方で出された法案じゃないから別個なんですけれども、建設省の方で扱ったのですが、建設省の方から法務省に協議なり問い合わせはありましたか。
#137
○枇杷田政府委員 地代家賃統制令を廃止する法律は、たしか昨年の臨時国会で出されたと思いますが、法案を提出される前に私どもの方に合議はございましたけれども、私どもの方が問題点を整理しているという段階では、そのような動きがあることは私どもは承知しておりませんでした。
#138
○渡辺(嘉)分科員 そうすると、地代家賃統制令の廃止ということは承知していなかった、だからそういうふうな結果について意見は述べてない、廃止してもいいとか、オーケーだとかノーだとかということは何も言っていないのですか。
#139
○枇杷田政府委員 先ほど申しましたように、臨時国会に法案が提出される前には意見を聞かれておりますので、私どもとしても、現在の情勢下においては地代家賃統制令を廃止することも特には反対すべき理由はないという考え方から意見は申し上げております。
#140
○渡辺(嘉)分科員 そうすると、ちょっと問題だと思うのですが、地代家賃統制令の対象世帯は百二十五万戸ですね。だから、私はいつも言うのですが、四人家族だったら五百万人に影響を与える。ところが、この法が守られておらなかった、だから不必要だと言うのです。そうじゃないのです。知らない人が多かったということなんです。だから二割ぐらいしか適用がない。二、三十万戸しかこれの適用にならない。百万戸の人々は適用除外になっている。ところが、今になって知ったのですよ、ああこれがあるのだ、これで救済されるのだと。廃止になることを知って初めであることを知った。法治国家で、そしてこれには守られなければ罰則もあるのですね。
 これに入り込みますと時間がありませんので進みますが、それなら今度の借地・借家法の改正の要綱の中にも、地代、家賃を値上げ、値下げということはあり得ないから値上げに違いないのですが、これに対して迅速簡易化を図りたいと言っていらっしゃる。ここで地代家賃統制令を廃止すれば迅速簡易化ができることは当然のことですね。こういうような観点から、ではどういう機関をつくってこれを考えられるのか。
#141
○枇杷田政府委員 実はその点が大変大きな問題でございまして、現在では裁判所で訴訟の形によって増減額の請求が審理されることになっておりますけれども、その場合には、時間、経費も大変かかりますので、もう少し迅速な方法が考えられるべきだろう、これは貸し主、借り主、両方の立場からいってもそうだろうと思います。ただ、それをどういうふうな手続にするか、あるいはどういう機関にさせるべきかということは、いろいろな案が考えられると思いますけれども、いわば一長一短もございますので、そういうことについて各界からいろいろなアイデアを出していただぎたいというのが私どもの本音でございます。そういうことで、四月にいろいろな御意見が出てまいろうかと思いますので、それを見た上で一番合理的な方法を検討する必要があるだろうと考えております。」
#142
○渡辺(嘉)分科員 ここに地主家主協会の総会のときの講演の議事録というよりも講演要旨が載っているわけです。これによりますと、斎藤栄三郎参議院議員がこの演説の中で、「そこへもってきて規制緩和。きょうは皆様方にとって記念すべきことが二つあります。きょうの国会で地代。家賃統制令の廃止と規制緩和の法律が通るのです。」というふうに祝辞を述べていらっしゃるわけです。だから、ここで大変な拍手喝采なんです。こうなってきますと、地代家賃統制令とこの規制緩和は一体なんです。この規制緩和の中に借地・借家法の改正が入ってきたのです。おのおの別だと言う方が不思議なんです。一緒なんです。
 ということになると、しからば聞きますが、欧米諸国においてはどういうふうな仕組みでこの地代、家賃を、特にあちらは仕組みが違いますから、借地は非常に少ない、大部分は借家。不動産財産に対する観念が違いますから借家なんですが、その借家の賃料決定についてはどういうふうに理解していらっしゃいますか。
#143
○枇杷田政府委員 私どもは諸外国の制度を必ずしもつまびらかにいたしておりませんけれども、欧米の国では原則は合意で決めるということでございますが、それにつきまして、あらかじめ一定の改定のやり方を決めるということを認めておるところもありますし、一つの基準みたいなものを設けるという法制をつくっているところもあるようでございますし、またあるところでは、貸し主側と借り主側との代表が入った委員会で毎年一定の改定の方向を協約的に決めていくというふうな法制をとっているところもあるように承知いたしております。
#144
○渡辺(嘉)分科員 今それぞれお話があったわけですが、フランスにおいては、貸し主団体と借り主団体とが団体協約を結び一年に一遍ずつこれをやる。全国的な規模、地域的なもの、団体ごとといろいろやっていらっしゃるわけです。ドイツにおいては、大体市町村または貸し主団体、借り主団体で家賃基準を定めてそれに準拠する。イギリスにおいては、公的な家賃係員、それから簡易裁判所ですが家賃裁判所でやっておる。アメリカにおいても、大都市はほとんどが家賃の統制を地方自治体で行う。こういう方式をとっておるわけです。野放しにしておるのは日本だけなんです。そして今度、完全に野放しにしたのです。そして市場原理にほうり込んだのです。この日本だけなんです。
 そういうことから見て、今度のおたくたちが考えられた借地・借家法の改正は、いやでも地主、貸し主側に立った、そして地代家賃統制令の廃止を一体とした、まさに借地・借家人を苦しめるような、貸し手市場に逆戻りさせるような反社会政策的な素案ではないかと思うのですが、どうですか。
#145
○枇杷田政府委員 地代家賃統制令の対象になっておりましたものもかなりございますけれども、多くのものは昭和二十五年以降のものもかなりあるわけでございます。借地・借家法の立場から申しますと、そういう地代家賃統制令がある時代でありましても、その対象にならないところの賃料をどう決定するか、どのような手続で決定するかということに関心を持ってつくられている法律でございます。ですから今度の改正の場合でも、現在のあり方では訴訟まで持ち込んで家賃とか地代を決定することはなかなか大変でございますので、もっと迅速簡易に合理的に当事者が納得できるような決め方をするような方策を講じなければいけないだろう、それは法制度自体で決めていくかあるいは何かの行政的なことで決めていくか、そういうふうないろいろな案が考えられると思いますが、そういうことについて先ほど申し上げましたようにアイデアをひとつ寄せていただきたいということで御意見をお待ちいたしておるわけであります。
 私どもといたしますと、決して地主側あるいは家主側に肩入れするというつもりは毛頭ございませんで、両当事者が納得できるような客観的に妥当性がある賃料をどう決定するかという観点での手続なり決定する機関というものをどう考えたらいいか模索をしていきたいという立場でございます。
#146
○渡辺(嘉)分科員 そういう模索していろいろいい方向に持っていきたいという気持ちは、説明を聞いたらわかるのです。ところが、地代家賃統制令を廃止して、借地・借家法を改正して、そして簡易迅速に値上げができますよというようなことになれば、これは完全に市場原理にほうり込んだと一緒なんです。これはだめなんですよ。だから、私が言うことは、欧米ではこういうことをやっているのだから、それなら行政機関が妥当な一つの基準をつくってやる。そして、それによってコントロールさせる、上限幅を決めてやる。仮に一〇〇なら一〇〇として、上限はそのときの状況によって、両者の話し合いによって二割ぐらいの上限はいいですよとか、こういうことならいいんですよ。そうでなしに完全な市場原理にほうり込んだらだめなんです。これは弱者と強者の立場になるのです。まして、今度はデベロッパー対借地人なんです。だから、そういう点の配慮をぜひするような中身をもう一遍聞かしてもらいたいことと、時間がありませんので次に一緒にお聞きしますが、これが先ほど申し上げたデベロッパーの登場というのが正当理由の中に今度入ってきたのですね。入ってくる危険があるのですね。
 いわゆる土地の有効利用、高度利用、それは正当理由として、最初の存続期間以後はいつでも正当理由が生ずれば立ち退き、解約を申し込める、こういうような非常に不安定な立場に今度は置くわけですね。そこへデベロッパーが入ってくれば、これはもう先ほどから申し上げたような資本対いわゆる弱い立場の借地人、借家人という立場になるわけです。だから、そういうことになると、これは非常に危険なんですね。ですから私は、公的な機関で一つの家賃基準あるいはまた地価基準、そういうものを決めて、あとは自由にやりなさい。あるいはまたフランスその他、今のドイツでもそうですが、それぞれの団体をつくって団体協約をやりますね、団体交渉をやっておりますね。それならばそういう制度も導入して借地人、借家人を労働組合法的な次元に置いてやる。結局、これは円満な労使関係と同じように、円満な貸し主側と借り主側の状態をつくるために、いいですか、一方的なむちゃはだめなんですから、そういう円満な健全な関係をつくるためにそういうことを考えられたらどうですか。
#147
○枇杷田政府委員 確かに市場原理だけに任してしまうということになりますと、個々の借地人、借家人が不利益をこうむるということも多々あろうと思います。ですから、一定のガイドライン的なと申しましょうか、そういうようなものは何か客観的なものとして存在するということが望ましいことだというふうに私どもは考えております。
 ただ、それをどういう仕組みでそういうものをつくっていくかということにはいろいろな考え方があろうかと思います。ただいまおっしゃいました点は私ども十分に検討に値する考え方であろうと思いますので、今後の審議の際にはそのような御意見を十分に参酌しながら問題に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
#148
○渡辺(嘉)分科員 この改正の一つの理由づけに昭和三十五年の改正要綱が常に出てくるんですね。この中に第一番に出てきたのは、借地権の物権化ということなんです。「借地権者は、建物その他の工作物を所有するため、他人の土地を使用する権利を有するものとする」これは「借地権と称する物権を創設しこと、こう明らかにしたのです。ところが、これは消えてしまったのです。なぜかというと地主、貸し主側が猛反対したから消えたのです。この中の高度利用だけを今度拾ってきたのです。こういう片手落ちな改正の根拠というのは私はおかしいと思うのです。やるなら何もかも入れなければいけない。だから担保制度というものがちょっと入れられたけれども、こんなものでは全然違いますね。これはおわかりのとおりです。
 そういうような意味で、私は今度のこの改正に基づいて今どういうことが起きておるかということを申し上げますが、地代家賃統制令が廃止になった、値上げは自由ですよという空気がまずできた。借地・借家法が今度改正になりますよ、文句言うたらいつでも立ち退きがかけられますよということが出てきた。そしてもう一つは、だから今のうちに売りなさい、立ち退きなさいという底地買いが始まったのです。これはもう大都市、東京、大阪ばかりじゃないのです。私どものような中小都市にまでこういうのがぱっと今広まり始めた。これは大変なことが今現実に起き始めると思うのです。そういうようなために、今私が申し上げたような借地権を物権化するというなら、あくまでそれは貫くべきだ。そうしておきませんと、不安定な借地権というものは居住権の基本そのものを脆弱にいたしておることは、これは言をまちませんから、そこで今申し上げましたように、今の当面の対応をどうされるか。これに対して十分なPRと趣旨の徹底を図っていただかないと、これは非常に危険なことが各地に今起きておる。そのことが一つと、そうして今の地価の上昇の問題ですね。これによってむしろ地価は上昇し始めておる。いいですか、下がらないのです。むしろ金を使って立ち退かせるから、余計上がってきちゃったのです。これに対する対応も考えないといけない。
 いずれにいたしましても、基本的には時代の流れを反映して法を整備される、改正される、見直される、これはいいのですけれども、少なくとも都市計画の分野、行政改革の分野のことまで借地・借家法の中へ織り込んでくるというのは、これは基本的に私はなじまない、こういうふうに考えておりますので、今数点申し上げました点について局長から重ねて御答弁いただくと同時に、そういうことが今現実に起きておるので、大臣からこの法改正についての所見を承りたい。
#149
○枇杷田政府委員 私どもの借地・借家法の改正に着手したという点が何か誤解をされて伝わっておる、あたかももうあすからでも地主側の方がかなり強力になるのだというふうな誤解を生んでいるというようなお話も私、伺わないではございません。私どもは大変遺憾なことだと思っております。
 私どもは、常に両者の関係を客観的に妥当な状態でバランスをとっていくということが私どものとるべき立場でございまして、またそのつもりでやっておりますので、もしそういう誤解があるとすれば、あらゆる機会にそういうことをとらえて説明はいたしたいと思いますし、また近く各界からの意見が寄せられますので、その機会にまたいろいろ報道機関等でも報道されることになろうかと思いますので、その際にもそのことは重ねて強調するというふうなことをしてまいりたいと思っております。いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、借地人と借家人、要するに借り主側と貸し主側との関係を、生活の支える基盤になるような状態のものを長期的に安定的にこれを維持していく、両者のバランスをとりながら維持していくということがねらいの法律でございますので、狭い意味での行政改革とか規制がどうとかいうふうなこととはいささか次元が違う問題だというとらえ方を私はしておりますことを重ねて申し上げておきたいと思います。
#150
○鈴木国務大臣 先ほど局長から説明申し上げましたように、こういう方向でこうしたいというような諮問ではなしに、いろいろ説明しましたように、問題点があるのかないのか、あるとすれば、それをどういうふうな問題、どういうふうな方向で改正したらいいのかという、そういう立場で今諮問いたしておるわけでございます。法制審議会、各界の有識者でございますから、いずれ適当な答申をいただけるものと思いますが、その答申を受けて対処したいと思いますけれども、先生大変御心配いただいております借り主の方の大変不安定な状態、さらにまた現在借りておる方々が非常に現在のそういう条件に影響を与えるようなことは慎まなきゃならない、そういう考えで実は対処してまいりたいと思っております。
#151
○渡辺(嘉)分科員 以上で終わります。それぞれの御答弁についてははなはだ不本意でありますけれども、私も申し上げたわけですから、それを十分路んまえられまして、ひとつこれからの審議を進めていただきたい、こう思います。
 終わります。
#152
○中島(源)主査代理 これにて渡辺嘉藏君の質疑は終了いたしました。
 次に、岡田正勝君。
#153
○岡田(正)分科員 冒頭に、私は大臣におわびを申し上げなければなりません。この前二月二十一日の予算委員会におきまして、質問要求をさせていただいておりましたのに、ずっと御出席していただいておったのにかかわらず時間の関係でとうとう失礼なことをいたしまして、心から深くおわびを申し上げます。まことに相済みませんでした。実は法務関係、相当お聞きする問題がありまして時間がかかるものですから、きょうはこの分科会をおかりしたのでございますが、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げます。
 それはそうと、大臣は「鳥よ翼をかして」という一時間半ぐらいにわたる超大作の日本人妻里帰りの映画が今上映されておりますが、ごらんになりましたでしょうか。
#154
○鈴木国務大臣 残念ながらまだ拝見をいたしておりませんが、内田さんのかつて著された本はよく読ましていただきまして、それから映画の批評等も実は拝見はいたしております。いずれ見たいものだと思っております。
#155
○岡田(正)分科員 ありがとうございました。あの本をお読みになっておるのでございましたら、なおのこと、あの場面が出ておりますので、ぜひひとつごらんいただきますようにお願いをしておきます。
 それから、これは余談のことでございますが、あの映画の主演をしましたのは沖田浩之という若い青年であります。ギターも弾ける、歌も歌えるというなかなかすばらしい青年でありまして、それが主演をしておりますが、その沖田浩之君というのは欲得抜きで、銭勘定抜きで映画の作成のために熱演をしてくれまして、上映活動をやるのに体があく限り全国どこへでも飛んでいって、無償で会場においでになる皆さん方にこの里帰り運動の協力を要請してくれているという、近ごろ珍しい青年であります。その沖田浩之君が、今NHKの朝八時十五分から始まっております「いちばん太鼓」、あれに今度は出ておりますので、当分続くと思いますから、またそういう感慨を持ってひとつごらんいただきたいと思います。
 さて、数字的な問題を当局の方にお尋ねをさしていただくわけでありますが、北朝鮮の日本人妻里帰りの問題についての数字でございます。三十四年十二月十四日に第一船が出まして以来、今日まで累計何人ぐらいの方々が北朝鮮にお渡りになったのか、お教えいただきたいと思います。
#156
○小林(俊)政府委員 最初に全体像を御説明申し上げます。
 三十四年にいわゆる北朝鮮帰還というものが開始されたわけでございますが、今日までに百八十七回の帰還船が出航いたしておるわけでございます。これらの帰還船によりまして北朝鮮に向けて出国した者の数は、まず倉計が九万三千三百四十名であります。このうち、出航当時日本国籍を保有していた者の数は七千名足らず、すなわち六千六百七十九名、全体の七%ほどに該当いたします。さらにまた、この七千名足らずのうち日本人妻と推計される者の数は千八百三十一名を数えております。この推計と申しますのは、当時の出国の際の手続の上で必ずしも身分関係を明確に記載させることをいたしておりませんでしたので、例えば成年の男子が成年の日本人女性とともに子供を連れて出国するという場合には、これは妻であろうといった推計をしてその数に数えたという面がございます。あるいは独身女性が子供を連れていくといった場合も、日本人女性の場合にはこれは北朝鮮人の妻であろうといった推計もいたしております。そういうことで、これが身分的にすべて確認されたというわけではございませんけれども、まず千八百三十一名というそのものが、北朝鮮に帰った北朝鮮人の日本人妻であったという推計をしても間違いはないのではないかというふうに考えたわけでございます。
 そこで、少しお時間をいただくことになりますが詳しく御説明申し上げますと、この北朝鮮への帰還は御承知のように三回に分けて行われております。既に開始以来、第一段階が八年間、いわゆるカルカッタ協定による協定期間でございます。その後の十九年間においてさらにまた二段階にわたる帰還が行われております。二段階目はいわゆる暫定措置、三段階目が事後措置と呼ばれておりまして、この事後措置は現在でも続いておるわけでございます。その三段階とも日本赤十字社と朝鮮赤十字会との間の協定あるいは合意によって行われておるわけでございます。
 こうして既に開始されましてから合計二十七年を経過しておるわけでございますけれども、実際に帰還された方の数で申しますと、全体の九五%は第一段階、すなわち協定期間と呼ばれる八年間に帰還された方の数でございます。したがって、その後の十九年間を経過しておりますけれども、この間に帰還された方の数は全体の五%にすぎないということでございます。したがいまして、日本人妻と言われる方々もほとんどが九五%以上、これは比率で申しますと最初の協定期間で帰った方々に占める日本人妻の割合は、その後に帰られた方々の総数に占める割合よりも多いわけでございます。したがいまして、日本人妻の場合にはほとんど大半が最初の八年間に帰られておる。少し数で申しますと、最初は〇・八%であった、二段階目が〇・五%であった、三段階目は〇・四%であるということでその日本人妻の占める比率は減っております。したがいまして、全体で千八百三十一名と申し上げたほとんど大半は最初の八年間でお帰りになられておるという状況がございます。
 以上でございます。
#157
○岡田(正)分科員 非常に詳しく御説明いただいてありがとうございます。
 次に、日本にいらっしゃる北鮮の方が北朝鮮に訪問をしてまた日本に帰っておいでになる、これの累計が一体どのくらいになるものであろうか。それから、できましたら毎年度の数字をずっと並べていただくだけでも結構ですから教えていただけないでしょうか。
#158
○小林(俊)政府委員 在日朝鮮人の北朝鮮向けの再入国許可、日本から出ていって帰ってくることについての許可は、昭和四十年から始めたわけでございます。昭和四十年という年は、御承知のように日韓国交の正常化が行われた年でございます。ここで我が国と韓国との間の交流はかなり自由になったわけでございます。それとの平衡上、北半分との交流についての希望もございましたので、それとの平衡を図るという考え方から北朝鮮に対しても往復を認めるという方針を打ち出したわけでございます。
 そこで昭和四十年から北朝鮮向けの再入国許可の発給が始まったわけでございますが、それから今日までの間に、ちょうど二十年でございますが、三万二千六百六十五件、正確に申しますと昨年末まででございます。三万二千六百六十五件の再入国許可が発給されております。
 そこで各年別の推移を見ますと、昭和四十年当時はもちろん年間数件でございました。それが数十件となり、数百件となったのでございますが、昭和五十五年になりまして四千二百四十五件、四千件の大台に乗ったわけでございます。それ以降は大体四千件の大台で今日まで推移いたしております。五十五年が四千二百四十五件、五十六年が四千百一件、五十七年が四千二百十五件、五十八年が四千百三十三件、五十九年が四千七百二十八件、昨年一年間、六十年が四千四百二十三件ということでございまして、大体この六年ほど四千件台で安定いたしております。
#159
○岡田(正)分科員 それでは、北朝鮮の方が我が日本にお越しになってまた向こうへお帰りになるというのが同じようにやはり四十年から開始された、こういうお話でございますが、その方も累計と、できましたら各年度の数字を御発表願いたいと思います。
#160
○小林(俊)政府委員 お話のございましたように、北鮮からの北鮮人の我が国に対する入国も昭和四十年から同じような事情で始まったわけでございます。この点につきましては、政治的な色彩の多いものについてはなお一定の制約を付しておりますけれども、最初数名であったものが次第にふえて今日に至っております。現在まで二十年間の累計、すなわち六十年末までの累計は三千七十一名となっております。当初三人とか二人とかということであったものが、四十八年になりまして急に三百十六名とふえました。その後、百五十七名、八十四名、九十四名、百二十五名、二百六十二名、百九十一名、二百五十八名、二百七十名、二百四十六名、四百三十四名、これは五十八年でございます。というところで一つのピークに達したのでございますが、五十九年は御承知のようにラングーン事件を反映しての制裁措置ということで制約が付されまして、その結果百六十五名に減っております。しかしながら六十年の初めからこの制裁が解除された結果、六十年、昨年一年間は四百三名ということで、大体ラングーン事件前の水準に復しておるという現況でございます。
#161
○岡田(正)分科員 それでは、日本人の方が北鮮を訪問されましてまた我が日本へ帰ってくるというのも何年からか始まっておるのだと思うのですが、いつごろから始まって現在累計何ぼか、各年度は幾らかというのを教えてください。
#162
○小林(俊)政府委員 日本人の北朝鮮向けの出国は昭和三十九年に始まっております。そこで、現在まで累計で一万四百五十二名が北朝鮮向けに出国いたしております。過去十年間の推移を見ますと、昭和五十一年が四百三十名、五十二年が三百八十七名、五十三年が五百九十名、五十四年が七百五十三名、五十五年が七百四十六名、五十六年が八百四十一名、五十七年が七百五十五名、五十八年が八百七十六名、五十九年が七百九十八名、六十年がふえまして千二百九十一名となっております。合計いたしますと七千四百六十七名ということになるわけでございます。
#163
○岡田(正)分科員 そこでちょっと大臣にごらんいただきたいものがありますが、これをひとつごらんください。今大臣にお渡しをいたしました手紙に三枚つづりのがございますね大臣、その小さい分。その分は大村の一市民と書いてありまして、姓名はわからないのであります。しかし激励のお手紙でございますが、その傍線を引いてありますところだけ時間の関係で見ていただきたいと思いますが、「日本人妻が里帰りできないのは、あまりにも非人道的だと思います。」一般の国民でもこのように感じておられます。それから二枚目の傍線で「多くの北朝鮮の人々は日本と北朝鮮の間を往来しているのに、」ただいま発表のありましたように四千人を超える人が往来していますのに「日本人妻のみが里帰りできないのはあまりにも不合理です。」名もない国民でさえこのように強く感じて、感動の余り手紙を書かざるを得なかったと言っておいでになるのであります。
 それからその次のもう一つの手紙、これは長崎の一市民より、こういうことでございまして、これもお名前がわかりません。だが、この中には、私も全然知らなかったようなことが書いてありますので、傍線を引っ張ってあるところを読ましていただきますと、括弧のところから申し上げますと、「私は、かねてより北朝鮮と貿易をしようとして熱心になっている友人がいるものですから、自然のうちに北朝鮮のことについて友人を通じ聞く機会が多かったのですがこういうことを書いてあります。「どうも北朝鮮という国家は、日本船等が北朝鮮に入港した場合でも用務をはたすのに一週間も十日間も待たされてどうにもならないとか、港に上陸しても目出行動ができないとか、また、船内やその他で金日成主席を礼讃する宣誓をさせられる」というようなことがあって日本人の間では大変不満があるのですよ。こういうようなのを私、この手紙で初めて知りました。そしてこの方向身も、例の五十九年のラングーン事件、爆弾事件、こういうテロ事件の問題あるいは日本人の若い人たちを拉致いたしまして、それに成り済まして入り込んでくるというようなことがあるという灰色の事件、こういうのをいろいろ聞いておってどうもわからぬ国だと思っておったが、今回の新聞を見て「今日の国際社会のなかで、全く理解できないのが「北朝鮮在住の日本人妻の里帰り」問題です。」それで二枚目でございますが、この傍線を引っ張ってあるところで「どうか、異国の空で祖国の土地を踏みたくて泣いている人達、そして家族の人達のために、いや、日本人のために、」頑張っていただきたい、こういう激励の手紙を、これは長崎の方でありますが、無名の国民からこうやっていただいております。非常に感激をしておるのであります。
 さて、この問題につきまして大臣に感想を伺うのでありますが、今も局長さんの方からお話がありましたように、どの数字を見てみましても我が日本人妻というのは一人もお帰りになってないわけですね。まことに矛盾した状態でありますが、こういう状況をごらんになりまして、出入国管理をいたします担当の大臣としてどのような御感想をお持ちであろうか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
#164
○鈴木国務大臣 先般先生が、何日でしたか、二十一日でございましたか、御熱心に御質問並びに御意見を吐露していただいた場面に私も出席をさせていただいて、先生の熱心な今までの御活動に非常に感銘を受けまして胸が熱くなる思いでございました。
 実は十数年前、自分の村で私の近隣の者が北鮮に参りました。日本人妻として参りました。さようなことでございまして、今は町になっておりますが、そのとき村では、村長以下各団体の長が主催をいたしまして、家族親戚はもちろんのこと、知り合いの方、近隣の方、有志の皆さんに集まっていただいて盛大な送別会をいたしました。北朝鮮に行かれても日本にいるのと同じように幸せであってもらいたいな、そしてまたその幸せを通じて日朝関係の友好にもお役に立っていただければありがたいな、こういう気持ちで熱烈な送別会を行いました。私も実は発起人の一人でございましたから、今でもその状況を覚えております。こうして先生の御熱心なお話を伺いますと、今でも実は胸が込み上げ涙が出るような次第でございます。
 今局長から申し上げましたように、こちらからはできる限り訪朝の便宜を図っております。また向こうからもそれぞれの方が来られておるわけでございますが、先生おっしゃいましたように、残念ながら妻として行かれた方々がまだ一人も来られておらないということを聞きます。実は送別会をやったその家族も、何らの連絡もないということで不安がっております。まことにこういう状態は残念だと私は思っております。法務省としての仕事は出入国管理というようなことでございますが、その面でできることがありますれば、当然これはやってまいるつもりでございます。
 それだけでなくて、この間先生は非常に御熱心に外務大臣といろいろ応答されまして、ひとつ前向きに検討しましょうというような御答弁が外務大臣からあったことも私承知いたしておりますし、また、その後外務大臣は、外務省のその係の方ですか何かに検討するようにというお話をされたというふうにも聞いております。私も、単なる法務省という立場だけでなくて、やはりこういう人道的な問題に国務大臣として努力しなければならないというような考えております。今後とも先生の御指導をいただきながら努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#165
○岡田(正)分科員 大臣、ありがとうございました。
 これも初耳でございますが、私が大臣を存じ上げておりますのは、学校は最高学府の東大を卒業され、そして福島県会議長までお務めになりまして、その後三回も参議院の地方区を戦い抜いてこられたというまさに長老中の長老でございまして尊敬申し上げておるのでありますが、村で北鮮に行かれる人があって、村を挙げてみんなで盛大に送別会をしてあげたんだ、こういう経験を持っていらっしゃる国会議員の方は恐らく大臣以外にはないんじゃないかと思います。非常に感激的なお話を伺いまして、その方がその後全然音さたがないということで、今の日本人妻の自由往来の運動をやっていらっしゃる方々がこんな状態ですといって訴えたことは全くそのとおりだな、大臣みずから証明してくださったなと思いまして、私も非常にありがたく思っておる次第でございます。
 さて、甘えて申し上げるのでありますが、昭和三十四年八月十三日に、藤山愛一郎外務大臣が人道問題だからひとつ何とかしてやろうじゃないかということで閣議決定をなさったことが一つの動機となりまして例のカルカッタ協定ができ上がったわけでございます。それによって今発表があったような送還が行われたのでありますが、なかなかお帰りにならないというので、五十五年の九月、自民党のAA研の先生方が向こうに行かれまして金日成主席にお会いになったとき、日本人妻の訪日、つまり里帰りと日本の家族の朝鮮への訪問は歓迎しますよ、事務的なことは任せるからというお話がありました。それで玄という名前の対文協会の副会長さんと事務的な話をせよということでありましたから話をしたら、これは人道的な問題ですから相互主義でいきましょうやという非常にいい御返事をいただいたわけでありますが、その後、事態は全く進展しておらないのであります。
 それで、先般もお願いをいたしましたように、これは閣議決定で始まったことなんですから、閣議決定でアクションを起こしておるのですから、それが今日までずっと続いておるのですから、奥野前法務大臣が五十六年七月十七日の閣議で、この問題を見るに見かねて、人道問題だ、相互主義でやらなければいかぬ、もっとしゃんとしようじゃないかということの御発言をいただいたことが一回あるのであります。しかし、それから後も進展を見ておりません。それで、今自由往来運動の留守家族の皆さん方が考えておるのは、とにかく国連まで行き、中国まで行き、韓国まで行き、日本国内を飛び歩き、そして政府にもお願いをして、あの手この手と打てるだけの手は全部打ちました、もう手がないのです。だから、閣議決定で始まったことですから何とぞ閣議決定をして、人道問題だから、こんな世にも不思議なことが起きておるのですよ、何とかしてくださいという本当の愛の叫びを閣議決定してくだされば、これは世界のマスコミがほっとかぬと思うのです。そうすると、百六十五の各国が、一体何をしておるんだということになってくるわけでありまして、決して戦いをしかけるわけでもございません。感情的にやるわけでもございません。とにかく、人間の問題、人道問題として世界に訴える、こういうことをしていただければ世界のマスコミが取り上げてくれるのではないか、実はこういう願いを持っておるのであります。
 鈴木法務大臣は、御自分ではおっしゃいませんけれども、二月二十一日の予算委員会において私が一時間かかって質問させていただきましたときに大臣は、自分が質問を要求されて出てきておるのに一回も自分に質問をしないのに、それでもじっとお座りになって最後まで聞いていただいて、なおかつこの日本人妻の里帰りの問題に対して涙を流して共感をしてくれました。あれは新聞の各紙が取り上げてくれました。私は、この問題が日本国じゅうにばっと一斉に広がったのは、私の質問がよかったからでも何でもありません、まさに鈴木法務大臣の、あの人情大臣のあの涙を流す姿、大臣が涙を出しているじゃないか、これはだれもが信頼します、だれもが感銘を受けます。その涙を流してくれた人情大臣の鈴木さんに、閣議決定に何とか持ち込めるようにいろいろな手を尽くして、入管を預かっておる担当大臣として、この問題がどうしても進まぬというなら、いよいよ最後になれば、我が日本だけが一方的なリップサービスする必要ない、相互主義じゃないか、場合に上ったらおれは担当大臣として北鮮に対する往来は考えるぞというぐらいのドスのきいた交渉をやって、「戦後政治の総決算」と豪語しております中曽根さんを初め、安倍外務大臣を初め各大臣の胸を揺さぶっていただいて閣議決定に持ち込んでいただきたいと思うのでありますが、大臣いかがでございましょうか。
#166
○鈴木国務大臣 私に対する大変なお褒めの言葉をいただいて恐縮をいたしております。
 今お話のように、何回か外交チャネルを通じてやっておるわけでございます。それが一向実らないというのは本当に残念でございますが、しかし、こういう問題は、一つは粘り強くやることも必要であろうと思います。さようなことで、この間幸い外務大臣も前向きの御答弁をされたわけでございますから、主管は外務省になるわけでございますが、ただ、国務大臣として外務大臣とも十分相談いたしまして検討してまいりたい、このように考えております。
#167
○岡田(正)分科員 ありがとうございました。きょうは自由往来運動の副代表も、前回法務大臣のお答えを聞くことができなかった、まことに残念というので傍聴においでになっております。耳を澄まして聞いておられました。
 最後に、お願いを申し上げておきますが、この問題を進めていくのは国務大臣の中でも外務大臣と法務大臣しかいないのではないかと私は思っております。外務省はもう当然の所管でございますが、とにかくこの問題に対して力強い後押しをしていただけるのは法務大臣ではないかと考えております。入管事務を握っているのですから、そういう立場からぜひともひとつ格段の御配慮をいただきましてこの問題が解決されますように、一歩でも二歩でも前進いたしますように再度、繰り返し繰り返しお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。
#168
○中島(源)主査代理 これにて岡田正勝君の質疑は終了いたしました。
 次に、山原健二郎君。
    〔中島(源)主査代理退席、主査着席〕
#169
○山原分科員 私は、現在問題になっております学校教育におけるいじめの問題を中心にしまして、人権問題、特に子供の人権問題について法務省の考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
 それで、ちょっと振り返ってみますと、三年前ごろいわゆる校内暴力問題が起こりまして随分大きな社会問題に発展をしていったわけです。そしてこのときに私どもは実は体罰並びにあらゆる暴力というものについてはこれを否定する立場で、学校もあるいは教師も父母も一緒になって総力を挙げてこの暴力を特に教育の場から排除するという提案をしたことがございます。ところが、文部省のその後の対応を見てみますと、一つは、上からの管理主義の強化といいますか、あれ以来学校における規則あるいは校則というものが非常に厳しくなってまいりましたし、また生徒手帳を守らせるということで、守らない場合に体罰が行われるという事態がふえてまいりました。この体罰に同調しない教師があれば、教育に対して不熱心だというような、そういう風潮が出てきて、結局学校そのものは、暴力問題は鎮静化したように見えますけれども、実はそれが陰湿ないじめとなって今日、三年後に起こってくるというような経過があったと思うのです。
 そこで、法務省の人権擁護局が出されました今度の調査でございますが、これについてちょっと説明をいただきたいのですけれども、いわゆる体罰といじめの因果関係ですね。これを持ってまいりましたけれども、法務省人権擁護局の「体罰をなくそう」この三ページのところに、いじめの問題の背景に体罰があるということが指摘されているという表現があるわけですが、これを簡単に説明していただきたいのです。法務省としては調査の結果大体そういう状況にあると把握されているのでしょうか、まずそのことを伺いたいのです。
#170
○野崎政府委員 ただいま委員も御指摘になりましたように、いじめと体罰については深い関係があるんだという指摘が多くからなされております。私どもの調べました事案を見て。まいりますと、体罰というものはだんだんエスカレートしていく傾向がございまして、その内容を見てみますと、例えば忘れ物をした生徒に対してクラスの中から有志を募ってぞうきんを投げさせるとか、忘れ物をするとほっぺたにフェルトペンで、例えば草履袋を忘れたときには草履袋と書いて帰すといったような、内容的にまことに陰湿なものが見られまして、その内容そのものがいじめと全く変わらないと思われるものが多く見られるわけでございます。こういった体罰というものが先生によってなされたときに生徒がどういう影響を受けるかということを考えますと、体罰といじめの間には関係が深いという指摘を否定することは非常に難しいことではないかという考えに立っております。
#171
○山原分科員 私も、いろいろな事件が起こりましてこの実態を調査しますと、一年生のときに体罰を受けたとかあるいは小学校のときに体罰を受けたとかいうことが一つは背景にあるということがよくわかるのですよ。そういう意味では、人権擁護局の出されたこれは実態に即して書かれておるものだと思いますし、私はその意味では評価したいと思います。
 それと関連しまして幾つかの問題をお聞きしたいのですが、一つは三重県の白山町にございます日生学園の問題です。御承知のように今から十二年前にも学校内における殺人事件がありまして、これは先生が生徒を取り囲んで暴力を加えたことによって生まれたことなんですね。それがまた昨年来非常に大きな問題になりまして、私も現地の調査をしたのでございますけれども、現地の父母の間から三重県の弁護士会の人権擁護委員会に申し立てが行われました。それから本年に入りまして、二月二十八日に大阪地方裁判所に六千五百万円の損害賠償請求の訴訟が十四の家族からなされておりますが、この経過は御承知でしょうか。
#172
○野崎政府委員 承知いたしております。
#173
○山原分科員 その訴訟内容について簡単にお答えいただきたい。
#174
○野崎政府委員 訴訟が提起されたということは承知いたしておりますが、その具体的な内容は把握いたしておりません。
#175
○山原分科員 私のところへ父母の方から「訴状」が送られてまいりまして、これを拝見しますと、一つは学園内で暴力の危険にさらされ退学せざるを得なくなったことで受けた精神的苦痛に対しての慰謝料、それから二番目が暴力事件で入院したり、後道症に対する代償、三番目が学園側が退学せざるを得ない状況に追い込んだとして、入学金、寄附金、入寮金の返還を求める、この内容で裁判所に「訴状」が提出されておるわけでございますが、前々から問題になっておりまして、人権擁護委員会にも出され、恐らく法務省としてもお調べになっているのではないかと思いますが、一定の把握をされているでしょうか。
 また、この学園が大きな問題になりましてから三重県の教育委員会へ改善策を出しておりますけれども、その本質はほとんど変わっていないということで、今後も自殺者あるいは暴力による死亡者が出ないという保証はないんだ、また退学もこれからふえるのではないかという心配がなされているわけでございますが、人権擁護局としてどういう把握をされ、またこの学校の実態についてどのような判定をされておるのか、伺いたいのです。
#176
○野崎政府委員 御指摘の事件につきましては、現在所管の津地方法務局におきまして、人権侵犯の疑いがあるということで、関係者から事情聴取をするなどして目下調査中でございます。
 これまでの調査結果によりますと、幾つかのものについてはその疑いが濃い、また幾つかのものについては学校関係者の方がその事実を強く否定しておるという状況がございまして、なおその確定に時日を要するものもございまして、全体的な状況を把握するには今しばらくの時間が必要かと思われます。また、生徒の間にもいじめなどの私的制裁が行われた疑いがございます。
 そこで、津の法務局では未解明の問題につきまして調査を進めますとともに、こういった校内暴力あるいは学校による体罰、それから学校に見られるいじめというものが学校の教育方針と絡んだ構造的なものであるのかどうかといったことにまでメスを入れるべく今調査を進めているところでございます。
#177
○山原分科員 不審な死者が出るとか自殺者が出るということ、そして多数の退学者が出るというようなことは、本当に学園としてはあり得ざることなんですよね。それがしばしば問題になっているということで、この「訴状」の中にはどういう暴行が行われたかということが、これは私が一度他の委員会でつぶさに取り上げたことがございますけれども、一、二挙げますと、例えばこの「訴状」の中に、「暴力行為の態様の一例をあげれば次のようなものがあり、筆舌に尽くし難いものがある。」というふうに父母は訴えております。例えば、「ある教師は竹刀の先に鉛様のものを入れて、これで生徒の頭部を殴打する。」あるいは「新入生に対して上級生がホッチキスを全身に打ち込む。」「一日に何度も首をしめ気絶させる。」「一晩中殴る蹴るの暴行を加える。」「強い男になれとゴキブリやカブト虫を丸がじりさせる。」それから「「オールナイトアンマ」といって一晩中あんまをさせる。」「風呂に入っても湯を使わせない。」そのほかちょっと申し上げにくいことまであるわけでございまして、「このような中で、同学園に学ぶ生徒達はこれらシゴキやリンチに耐えきれず、「学園をやめたい」「家に帰りたい」などと父母に訴えると、教員らは「それは家に帰りたいために子供がいつもつかう口実だ。」「暴力事件はない。」「親はその手に乗ったらダメだ。」などと事の真相を隠し、しかも学園をやめたいと訴える生徒には、教員や上級生が暴力をふるい、二度と事の真相を親や他人に言わせないようにするなどであった。」というふうに書かれまして、その後へ、永井君とうい集団リンチを受けた子供、あるいは馬塚君という例の食堂の間仕切り電動シャッターで首を挟まれて窒息死するという不可解な事件、それから多田君、これは学校の時計台から落下して死亡するという、いわゆる自殺と判定された事件などが書かれているわけでございます。
 それで、今局長おっしゃいましたように、学校側はそういうことはないということをおっしゃると思うのです。しかし、これだけのことを父母が偽りを言ったり子供が偽りを言ったりするはずはないわけでございまして、そういう意味では人権擁護を所管する官庁としての法務省はもう少し事実の把握を適切敏速にやっていただかないと、これまた事件が起これば大変なことになるわけでございますし、また同時に、ここの場合の体罰というのは、教師が生徒に対して体罰を加えることもありますけれども、全寮制の中で上級生が下級生に対して行う体罰というのが、何となく上級生が学校側に任されて下級生たちをいわゆる教育するといいますか、その教育というのがしごきになったり暴力になったりするという一つの全寮制の持つ特殊な中身にいろいろ問題を感じているわけですね。だから、こういう問題については教育的立場で解決しなければなりませんけれども、しかし余りにもひどいこういう事態に対しては、私はもう少し適切な対応をしていただきたいと思うのでございますけれども、このことについて御意見を伺っておきたいのです。
#178
○野崎政府委員 教師が体罰を加えることはもとより、学校内におきまして上級生が下級生に対し乱暴するといったことが許されるべきものではないことは明らかなことでございます。今御指摘になりました事案も含めまして現在津の法務局で調査を続行中でございまして、あとわずかなところが残っておる状況にまで差しかかってきておるというふうに私どもは承知をいたしております。私どもは調査結果を踏まえまして、今御指摘になりましたような事実が事実としてもし確定されるようなことになりますれば、それに対して法務局として厳正に対応したい、かように考えておりますので、しばらく時間をおかしいただきたい、かように考えております。
#179
○山原分科員 今おっしゃいましたのでこれ以上のことはこの問題では申し上げませんが、ぜひよろしくお願いします。
 もう一つの問題は、警察行政と人権問題でございますが、例えば今度自殺が起こりました東京中野区の富士見中学校の場合は今学校を挙げて学校の再生のために努力をされておりますから、その事件そのものに私は触れるわけではありませんが、あの事件が起こりまして生徒を警察に呼び出して調書をとるあるいは指紋をとるなどということが起こっておるというふうに言われておりまして、これに対してはさすがに父母の間からも批判が出ておるわけでございます。私自身も生徒を犯罪者扱いするということは常軌を逸した警察権の介入でおるというふうに思っておりますが、この場合、区の教育委員会あるいは文部省に伺いますと余り内情はよく知らないということですが、クラスの約半分の子供を警察へ招致をして、そして指紋もとるということが行われたというふうに聞くわけでございますが、この事実はつかんでおられるでしょうか。もし事実とすれば、人権擁護の立場から見ましてそれは正当なことであるかどうか伺いたいと思います。
#180
○野崎政府委員 中野富士見中学校の問題につきましては、東京法務局でもゆゆしい人権侵害であるということで現在調査を進めてまいっておりますが、警察の方でも少年事件との閥係で捜査を進められておるということは私どもも承知をいたしております。ただ、現実にどのような捜査をどういった方法でなされているかということは私どもは承知をいたしておりません。
 ただ、少年事件につきましては、少年法を初め関係法令でその取り調べ等につきましていろいろの制限がなされておるのであります。指紋の採取等につきましても、例えば警視庁の少年警察活動規程というものを拝見いたしますと、「犯罪少年についての指紋の採取又は写真の撮影は、身柄を拘束されていない少年については、必要やむを得ない限度にとどめるものとし、あわせて少年の心情を傷つけることのないよう、その時期、場所、方法等について慎重に配意するものとすることいった規程が見られるわけでございます。それで、恐らく参考人まで指紋をとるといったことはちょっと考えられないのではないかというふうに想像いたしておるのでございますけれども、私どもといたしましては捜査当局が関係法令にのっとって子供の人権に十分配慮して事を進めていただきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
#181
○山原分科員 真相がよくわからない。きょう私はあえて警察の方は呼ばなかったのですが、これはうわさ話ではだめですけれども、そういうことが言われているのですね。鹿川裕史君が亡くなった事件で、その組の子供さんたちが大体半分以上は警察へ呼ばれているという区の教育委員会の報告をいただいたのです。これも事実が、果たして半分であったかどうかわかりません。全員という声もありますけれども、やはり児童生徒の人権を守り、少年法の本来の趣旨に沿って未成年者の保護と教育的扱いが原則的に厳守されなければ、これは警察行政の不当な介入になりかねないわけでございまして、ましていわんや子供を呼んで指紋をとるなどということになれば、保護者の承諾もなしに行われるとするならばこれはまさに恣意的な介入であるということで、これはまた改めて警察庁の方にその事実を伺いたいと思っておりますが、この点は今おっしゃったように十分注意をしていただきたいと思います。
 これに関連しまして、最近生徒の写真あるいはアルバム等が警察に渡されるという事件が全国各地で起こっております。中には顔写真まで提供しておるところ、これは日弁連の報告によりますと宮城、秋田、茨城、富山、静岡、岡山などの名前が挙がっておりますけれども、クラス名簿あるいはPTAの名簿、顔写真というようなものが警察に提供されるということであります。日弁連としては生徒及び保護者の基本的人権及びプライバシーの侵害ではないかというふうに報告書を出しておりますが、法務省としてはこの点についてはどういうお考えをお持ちでしょうか。
#182
○野崎政府委員 御指摘のように、学校内外における生徒の非行事案に対処するために学校当局が警察と協力し、これら生徒の非行を未然に防止し、あるいは非行があった場合に的確な生徒指導が行われるようにするために連絡を保ち、必要に応じて情報を提供するということも場合により必要であると考えておりますけれども、このことは同時に生徒やその父兄らのプライバシーを侵害する危険も非常に多いのでございまして、提供される情報というものは個々のケースに応じて必要最小限度のものにとどめられるべきものであるというふうに考えております。各地の状況につきましては具体的事由を十分把握いたしておりませんので、今ここで一般論を申し上げるわけにもまいりませんけれども、そういった最小限度を超えないように各方面において特段の留意をしていただきたいものであると考えておるところでございます。
#183
○山原分科員 この件に関しましては、今おっしゃったことは私もよくわかります。日弁連の方では、教育現場の一環としてつくったものを、承諾なしにそれを警察とか枠外のものに出すことは教育関係における信義則ないし信託義務違反だというふうな報告を出されておるわけでございまして、これはもともと子供は悪いことをするものだということが前提になってこういうことが行われる可能性を持ってくるわけですね。これはやはり今のいじめの問題、子供たちの置かれておる実態から申しまして余り適切なことではないと私は思います。これはその点だけ申し上げておきたいと思います。
 最後に、これも日弁連の方で指摘をしておりますが、さまざまな校則ですね。非常に細かく日常のことやあるいは学習のことや服装、まさに微に入り細をうがってこれが書かれておりまして、恐らく全世界にもこれだけの強烈な規則でがんじがらめに子供を縛るという教育体制をとっているところはどこを見ましてもないと私は思います。それを守らないと体罰ということで、結局人権上の問題が生まれてくるわけですね。
 局長もお読みになったと思いますが、日弁連が出しておられます幾つかの校則、手の挙げ方から、中には四十五度の角度で手を挙げなくちゃならぬ、七十度の角度で挙げろとか、給食の食べ方でもミルクが先で何が先で、こういう格好で食べなくちゃならぬとか、とにかく服装、髪の長さの問題から始めて、これは私どもだったら、今おったら学校に用のない落ちこぼれになると思いますけれども、こんなこと一私は戦前教師をしたのですけれども、こんな経験は今までなかったのですね。これらの校則が子供の人権を侵害する中身を持っているものではないかと思いますが、それらは検討されたことがあるでしょうか。
#184
○野崎政府委員 学校における校則につきましては、児童生徒の教育という観点からどの程度のものが必要なのかということを各学校の事情に応じて判断していくべき問題だと思いますが、それがいろいろな自由に対する制約になるものもございますので、必要最小限にとどめられるべきものであろうというふうに考えております。私も日弁連の報告書を読ませていただきましていろいろ考えさせられたのでございますが、先生などに伺ってみますと、生徒にいろいろ規則をつくらせるともっと細かいことをつくるような傾向が実はあるんだそうでありまして、また親からも非常にいろいろなことを要求される。そういうことがだんだん重なって、学校でそれぞれの校内事情に応じて定められる規則が非常に細かいところまでいくようになってしまっておるということのようでございます。
 ただ、最近いじめの問題、体罰の問題等に関連いたしまして、果たして現在の校則のあり方がいいのかという問題が各方面で提起されまして、以来校則の問題もそれを機会に考え直される時期に来ておるように伺っております。私どもといたしましては、各校の状況に応じて適正な範囲にとどまった校則というものができていくことを期待し、見守っているところでございます。
#185
○山原分科員 最後に大臣、お聞きいただいたと思うのですけれども、私は子供が本当に一つの人格として尊敬をされるという立場から見られないと、まるで子供は悪いことをするものだという前提のもとに犯罪者扱いするなどということは、これは許されないことでして、今のいじめの問題もそういうところから起こっているわけで、法務省としましても、法務大臣としてもこういう問題に対処するために基本的な立場をとっていただきたいと思いますが、私の質問を聞いておられましてどんな御感想をお持ちか、二言伺って、質問を終わりたいと思います。
#186
○鈴木国務大臣 子供であろうと何であろうと、基本的な人権は守らなければなりません。特にこれから日本を担っていく少年でございますから、基本的人権というものは非常に大事だという、そういう環境で教育をしていただくということ、これは大切なことだというふうに考えておりますので、法務省としても所管の事項につきましてはそういう考えで対処してまいりたい、かように考えております。
#187
○山原分科員 終わります。
#188
○伊藤主査 これにて山原健二郎君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井光照君。
#189
○吉井分科員 私は、山口県の平生町にあります特別医療少年院新光学院の移転の問題についてお伺いをいたします。
 当新光学院は、御承知のように平生町に二十三万七千平米、約八万坪という広大な敷地に昭和二十三年の十月より少年矯正施設として開設をされたわけでございますが、その後少年刑務所が廃止をされまして特別少年院となって、また医療少年院が併設をされまして、さらに昭和四十四年七月からは、将来海員として自立更生させることを目的とした海洋学校の開設も行われたわけでございます。しかし、こうして三十年間続いた当学院も収容業務を停止をされて閉鎖をされ、そして今日に至っているわけでございますが、まずお尋ねをしたいことは、業務が停止された理由、これについてまずお尋ねをしておきたいと思います。
#190
○石山(陽)政府委員 当院の開設経緯等につきましてはただいま吉井委員御指摘のとおりでございますが、前回に業務を停止しました主な理由、二つございます。
 一つは、当時少年院の収容少年の数が全国的に非常に少なくなっておったこと、例えて申しますと、新光学院が閉鎖当時、全国の少年院の在院生はトータルで三千名台でございました。現在は六千名ということに五十九年度末現在ぐらいでなって、約倍増しておるわけでございますが、当時はそれだけ少なかったということが一つ。
 それからもう一つは、当院の施設が旧海軍潜水学校施設等を受け継ぎ、さらに戦後たびたびありました風水害等の影響によりまして、部分的な補修を重ねましたけれども、老朽化が非常に甚だしい。そこで当院といたしましては、当時地元に御納得をいただいて、句とか本格的な増改築をいたしたいということをたびたびお願いいたしたわけでありまするが、当時からいわゆる払い下げその他の運動もございまして、なかなか地元の御承認を得る機会がないままに庁舎が既に危険の状態に達しました。子供たちの生命、身体の安全を守るという見地から、この施設において継続使用は不可能だというふうに判断して、やむなくこの業務停止を決定いたしたということでございます。
#191
○吉井分科員 次に、当学院が昭和五十三年四月より業務を停止してから約八年になろうとしているわけでございますが、また私も昨年夏現地を視察いたしました。建物も非常に老朽化して、現在ではもう使用にたえない、こういう状況でございます。これは今局長の方から御答弁があったとおりでございます。
 このような状況を踏まえて、また、先ほどもおっしゃった設置までの複雑な歴史的経緯を踏まえて、昭和五十八年の八月ですか、平生町長、それから町議会議長の連署をもって当学院の移転の陳情が行われた。そして、同年九月十三日に新光学院長から回答があったようですが、その回答の内容についてお知らせを願いたいと思います。
#192
○石山(陽)政府委員 昭和四十六年の九月十三日に平生町長からの移転要望書に対しまして、私どもの方から――要するにその陳情の内容と申しますのは、突端部分の方へ移転をして、そして、根元と申しますか、半島のような形をしておりますので、その部分につきまして払い下げによる建築交換という方式を申し出られておったわけでありまして、その際には、私ども、これを十分検討さしていただく、私どもは先ほど申しましたような事情で、当時から、風水害等の影響によって老朽化している施設をできるだけ早く堅固なものに建てかえたいという要望がありましたので、真剣に検討いたしました。
 ただ、これは委員もよく御存じのことだと思いますが、この地元との折衝の過程、非常に複雑でございます。旧海軍施設ができます際に強制買い上げを受けました旧地主さんたちのグループもおいでになりますし、地元の市町村の立場もございます。それで、私どもに対する御要望の緑も、一括無償払い下げという運動の時期もありますし、あるいは一部払い下げというときもありますし、あるいは移転というときもあるというふうにたびたび対応が変わってまいりますので、私どもとしては終始一貫、一部でもいいから業務を再開きしていただきたいが、残りの余剰地につきましてはしかるべくお話し合いで円満に地元と共存共栄を図りたいという方向でただいままでお願いをしておるわけでありますが、今のところまだ決着はついていない、こういう状況でございます。
#193
○吉井分科員 このときに、これは五十九年六月二十七日ですが、住民からの要請に基づきまして当町議会が全会一致でもって当学院の移転に関する決議を法務省に陳情した経緯がございます。この決議書について、法務省当局のお考えはどうなんですか。
#194
○石山(陽)政府委員 確かに五十五年の六月二十七日に、新光学院の所在地が平生町の発展に重要な場所であって、移転できないか、こういう主たる内容の御陳情をいただいておることは間違いございませんし、これに基づきましては、私どもとしては、従来から申し上げておりますとおり、新光学院につきまして、少年の海洋訓練施設としての再開という方向を従来から堅持しておるので、何とか一部だけでも御理解を得て再開の方向にお願いいたしたい、もちろん集約立体化とか新しい建築方法によりまして地元と共存共栄できるような立派な施設をつくり、そして、これまで、あの古い時代の施設でもこの施設は全国唯一の海洋少年院という形で活躍をいたしまして、海技免状所有者というのもわずか七、八年の教育期間中に二百名を超える出院生に資格を取らしたという輝かしい伝統のある施設でありますので、何とか地元の御理解を得て、ひとつ再開の方向をもあわせお考えいただきたいというふうに御回答申し上げておるところでございます。
#195
○吉井分科員 そこで、当学院の移転問題につきましては、歴史的経緯をちょっと申し上げておきますと、そもそもこの土地が戦時中における海軍省下の潜水学校並びに特殊攻撃隊、それから人間魚雷等の重要な戦略的基地にするために地元住民七十人を強制立ち退きの末強制収用したことからこの話が始まるわけでございます。そして終戦後は戦禍のためにこうした行刑施設が全風的に非常に不足しておった。ところが、戦禍を免れた当施設が臨時的、暫定的と申しますか少年院として開設されたというところから始まるわけです。ところが、この開設に当たって地元周辺自治体はもとより住民間においても相当強力な反対運動が展開されたわけですが、昭和二十三年の二月十日、司法省が地元関係民に二十三項目にわたるところの条件を呈してそしてやっと開設に踏み切ったという長い歴史的な経緯があるわけでございます。
 ところが、今一番大きいネックになっておるのが、この提案書と申しますか、これをめぐっていろいろ見解の相違があるわけでございまして、法務省とそれから平生町それから地元関係者とのいろいろな解釈の食い違いといいますか、そうしたものがございまして、なかなか難しい問題になってきておるわけですが、この提案書の法的な性格といいますかその効用といいますか、これについては法務省当局としてはどういう御見解なんですか。
#196
○石山(陽)政府委員 今御指摘のとおり、二十三年二月十日、当時の混乱した状況でただいま申しましたように行刑施設が各地で戦災を受けたということもありまして、国有の残存施設等を利用する刑務業務の再開、当時は激動期でございまして、犯罪者も急増しておるという時期でございましたこともありまして、GHQ等の強力な推進により本地にまず少年行刑施設ができたという経緯はおっしゃるとおりでございます。
 その際に、いわゆる二十数目にわたりますこの提案書というものが当時関係地元住民各位という名前で示されておることも事実でございます。これは恐らく委員もごらんいただいていることだと思いますし、私どももちろんその写し等を現在に至るまで保存しているわけでございますが、法的効果ということにつきまして真っ正面から御質問がありますと、いささかお答えに窮するわけでございますけれども、これは提案書という表題になっておりまして、二十数目のいろいろな諸条件が書いてあります。そして、これはいわば地元住民各位に対する、このような形で運営したい、このような形で地元と共存共栄を図りたいという項目を列挙したという格好になっておりますが、いわゆる法律上の契約文書としての体裁は実は整えていないわけであります。ですから、これが契約文書に当たるかどうかという点につきましてはいささか疑義がございますけれども、そしてまた現在、その条項の中で明らかに少年行刑施設ということを前提にしておりまして、少年院その他に適用される問題はもう既に終わってしまっているということもございます。
 ただ、私どもといたしましては、かつて司法省がいろいろ苦心をして適地を探したという経緯はございますけれども、その際にいろいろな反対がございます中で、地元関係住民各位に御理解を得たいためにした提案でございますから、むしろこの際は法的効果云々という正面論争よりも、この精神を道義的に尊重しながら、私どものお願いとあわせてできるだけ円満な解決を図っていきたい、このように私は申し上げておるところでございます。
#197
○吉井分科員 二十三年といえば終戦直後の混乱期ではございますけれども、司法省の方から地元住民にそうした提案がされて、そして無事といいますか一応の話がついたわけでございますが、少なくとも国家機関たる司法省の文書である以上は国民に対する信用保証という意味からいって非常に重要なことだと私は思いますし、また一般原則の信義則上からいっても十分尊重して守っていかなければならない、このように思うわけですが、大臣、いかがですか。
#198
○石山(陽)政府委員 申しわけありません。大臣にその書面の内容等をまだ御報告しておりませんので、事務的に私からお答えさせていただきます。
 今委員のおっしゃいましたことは、原則論としては私も賛成でございます。ですから、私どもも法律家の端くれではございますけれども、この際、民法的にこれが契約文書であるか、いわゆる集団に対するもので署名捺印のない文書が有効であるかとか、こういうことをあげつらって形式論理から法的有効性を云々する気持ちはないというふうに申し上げておるわけであります。ただ、その内容の中でいろいろ問題事項もございますが、私どもといたしましては、現在業務停止になっておりますこの海洋訓練施設というのは業務を廃止したわけではない、先ほど申しましたような事情によって、危険でもあり、収容少年の数も少ないし、とてもああいう危ないところに入れられないという事情でやむなく一時業務停止したわけでございますから、現在の少年非行の現状にかんがみ、非常に過剰収容となっている各施設の現状を見ますと、一部でもいい、何とか敷地の有効利用をさせていただいて再開させていただきたいということを改めてお願い申し上げておるというのが実情でございます。
#199
○吉井分科員 法務省としては、海洋学校という特殊性、こうしたものを生かして将来ぜひとも再開をしたい、こういうお考えのようですが、先ほどからいろいろと御答弁をいただいておりますように、老朽化した現施設というものはもう全然使えないわけで、これはどうしても新設しなければならない。新設するとなりますと、これはまた非常に経費がかかるわけでございまして、非常に難しい問題もあるわけでございますが、その新設するという前提条件として、先ほどからいろいろお答えいただいておりますように、やはり地元民とのいろいろな合意、そうしたものが大前提になるわけでございます。
 ところが、地元住民の意向または自治体の意向というものが非常に厳しい情勢にある以上、話し合いというものもなかなか前へ進まないのではないか、これが現実ではないかと思いますし、そうなりますと、今から例えば五年待っても十年待ってもこのまま放置されてそのまま事態が推移をしていくということも考えられるわけでございますが、一体法務省としては今後積極的に話し合いをされていくおつもりなのか、この点いかがですか。
#200
○石山(陽)政府委員 五年、十年、関係地元住民の御理解を得るのにもなかなか難しいと今委員おっしゃる点は、まさに他の少年院建設の事例においてもぴったりと当たっておるわけでございまして、今日、少年非行というものの現状を考えますとき、地域社会からあるいは各種のマスコミから、少年非行の現状にかんがみてこの子供たちの健全育成のための施設の増強ということが世論として大きく出ているのではありますが、実際にどこに建設するかとなりますと、必ず総論は賛成であるが各論は反対という声でなかなか建設できないというのが実情でございます。
 そういう意味におきまして私どもは、少年院のうち業務の停廃等により将来廃止しても構わぬというところは、速やかに関係地元市町村等を相手にしましてこれらを処分いたしますし、それらの財源によって今ある少年院の施設の建てかえ補強等を繰り返してきたわけでございます。ところがそれも種が尽きてまいりました。そうしますと、現在、この新光学院の用地というのは少年矯正の持っている施設予定地としては最大かつ最後のものと申し上げてもよろしいかと思います。そこで、ぜひ地元にも御理解いただきまして、少年施設の現況にかんがみて、残された土地の一部でも有効に利用する方法を考えさせていただきたいというふうに切なるお願いをしているわけでございます。
#201
○吉井分科員 話をふり返すようで申しわけないのですが、これは去る四十八年の三月六日の予算委員会の第一分科会で、この新光学院に関する国有地払い下げ問題についての質疑が行われたわけでございますが、当時の田中法務大臣からは、住民の心持ち、またこの土地の今までの経過からまことにごもっともな言い分である、法規の許す限りこのごもっともな言い分に沿うよう努力し、将来はこれをやるべきだと考える、こうした積極的な答弁があったわけです。また、たしかこれは昭和五十六年か七年と思うのですが、当時の広島の管区長も同様な趣旨の発言をされているわけですね。そのために旧地主、そういった連中は、この払い下げ問題について非常に明るい希望を持ち出したわけですよ。しかし、それから数年も経過したけれども、今日まで全然話が進展しない。こういうことですから、当時法務大臣がこのような積極的な答弁をされて以降、法務省としては何かこの問題について、払い下げについての努力をされたのかどうか、この点いかがですか。
#202
○石山(陽)政府委員 去る四十八年の三月、当時の山田耻目社会党議員からそのような趣旨の分科会における御質問がございました。ただ、そのときの質問の御要点は、当時町と旧地主との間に払い下げについて考え方の相違がございまして、どちらかといえば山田議員は、旧地主のグループを対象とする払い下げを行われたい、町の例えば工業団地として使いたいという利用計画については賛成しかねるというような御趣旨の御発言がございました。恐らく当時の田中法務大臣からの御発言の本意も、形態はどうあれ一番いい方法で何とか円満な解決を図りたいという御趣旨からそのような御発言になったものと、私ども事務局は受けとめておったわけでございます。
 それからその後、昭和五十六年の一月でございますが、当時の広島矯正管区長から、旧地主のグループでございまする平生町田名の旧海軍用地払下期成会という代表の方々等に対しまして一応の御返答を申し上げたということについての御指摘も正しいわけでございます。そこで、その際にはこういうお答えになっておるわけでございまして、去る二十三年、先ほど御指摘の司法省行刑局長のいわゆる提案書の第九項に関して、「同項にいう事態」、これは平たく申し上げますると、同項によって施設が不要になったときにはお返しするという条項でございますが、もしそういう事態になった生きには、法規の許す限りにおいて御意向に沿うようにいたしたいという私どもの表明はありました。ただし第二項に、「同院の海洋訓練施設としての過去の輝かしい業績及び同訓練が今後の少年矯正上乗すべき重要な役割にかんがみ、可能な限り早期に同院の業務を再開したい。」つまり、余剰地ができました場合に、その処分方法等につきましてはいろいろな方策がありますが、できるだけ誠意を持って対応いたします、それと同時に、この学院の再開についてはぜひ地元の御協力を得たい、こういう形で法務省としては終始一貫したお願いをしてきたつもりであります。
 ただ、現実問題といたしまして、地元の御意向はどういう形であれ早く固まり、それに対応する形でこういうふうにしてどれだけ必要であるかというような具体的な協議をしていただけるとむしろ話が進みやすいのではないか。私どもも過去の経緯にこだわりましたり、いろいろな法的措置等について、その後いろいろな経過があったことは実はあるのでありますが、これはあえて申し上げません。道義的に見て、私どもいろいろな事情を尊重いたして、可能な限りお話し合いに応ずるので、いいお話があったら持ってきていただきたい、こういう形であるわけでございます。
#203
○吉井分科員 いろいろと御答弁いただいたわけでございますが、結局地元住民においてはなかなかこうした細かい法務省とのいきさつ、そういったものが知られていないわけですね。そして最近盛んに言われておるところの行政改革、こういった面から見て、こうした膨大な国有地が何年も何年も放置されていて本当におかしいじゃないかというふうな町の声もあちらこちらで伺うわけでございます。そうした面から見て、結局先ほど局長がおっしゃいましたように、今後お互いに十分話し合いをなされて、そして法務省当局としては法務省としての態度をはっきりさせていくということが大事ではないかと私は思うのです。
 御承知のように、地元でも町当局と議会、旧地主から成るところの新光学院問題研究会、こうしたものができて、そして今までの経緯なりまたはその他の問題、または払い下げの問題、そうしたいろいろな問題についてひとつお互いに勉強していこうじゃないかというようなことで、非常に前向きにこの話が進みつつあるわけでございますが、いろいろな過去の経緯はあったにしろ、今後ひとつ新しい気持ちで相互の立場を尊重し合いながら、またいろいろな現状等もにらみ合わせて同研究会等も積極的に話し合っていただきたい、このように思うわけですが、最後に大臣のお考えをお聞きして、終わりたいと思います。
#204
○鈴木国務大臣 新光学院につきましては、大変特殊なものでもあり独特のものでもございますので、この地に法務省としては再建をしたい、こういう希望を持っているわけでございますが、今先生からるるお話を伺いましたとおり、大変長い歴史的ないきさつもありますので、今お話しのように、御当町の問題研究会、その会と誠意を持って交渉を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
#205
○吉井分科員 以上で終わります。
#206
○伊藤主査 これにて吉井光照君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#207
○伊藤主査 次に、外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。安倍外務大臣。
#208
○安倍国務大臣 昭和六十一年度外務省所管一般会計予算案の概要について御説明申し上げます。
 外務省予算の総額は、四千百九十三億一千百六十九万三千円であり、これを昭和六十年度予算と比較いたしますと、百八十二億四千六十四万三千円の増加であり、四・五%の伸びとなっております。
 我が国を取り巻く国際情勢は依然として厳しく、外交の役割はいよいよ重大であります。近年国際社会における地位が著しく向上した我が国は、世界に開かれた日本として各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していく必要があります。この観点から、昭和六十一年度においては定員・機構の拡充強化、在外勤務環境の改善等の外交実施体制の強化、政府開発援助(ODA)及びその他の国際協力の拡充等に格別の配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実は、外務省にとっての最重要事項の一つでありますが、昭和六十一年度においては定員九十名の純増を得、この中から内閣に振りかえる五名を差し引いた八十五名を加えて、合計三千九百七十一名に増強されることになります。
 また、機構面では、在外公館としてスペインのバルセロナに総領事館を開設することが予定されております。
 次に、縦済協力関係の予算について申し上げます。
 今や自由世界第二位の経済力を有するに至った我が国が、平和国家として、世界の平和と安定に貢献する上で、経済協力の持つ意義はますます大きなものとなっております。なかんずく、政府開発援助(ODA)の果たす役割は年を追って重要なものとなっております。政府は昨年九月にODA第三次中期目標を設定し、その着実な拡充に努めることを宣明いたしました。昭和六十一年度はこの中期目標の初年度に当たります。
 我が国としてはその国際的責務を果たすべく、ODA一般会計予算については、厳しい財政事情にもかかわらず、政府全体で対前年度比七・〇%増とする特段の配慮を払いました。
 このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を対前年度比九十億円増の一千二百四十億円としたほか、技術協力予算の拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費を対前年度比八・〇%増の九百五十七億円とする等格別の配慮を払った次第であります。
 さらに情報機能の強化のための予算の充実に努め、また、各国との相互理解の一層の増進を図るための文化・人的交流予算についても、一層の手当を講じて知ります。
 このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事の一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図る等の配慮をしております。
 以上が外務省関係予算の概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 なお、時間の関係もございますので、詳細につきましてはお手元に「国会に対する予算説明」なる印刷物を配付させていただきましたので、主査におかれまして、これが会議録に掲載されますようお取り計らいをお願い申し上げます。
#209
○伊藤主査 この際、お諮りいたします。
 ただいま安倍外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#210
○伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
  〔参照〕
   外務省所管昭和六十一年度予算案の説明
 外務省所管の昭和六十一年度予算案について大要を御説明いたします。
 予算総額は四千百九十三億一千百六十九万三千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費三千五十九億二千二百五十四万三千円、エネルギー対策費二十五億七千七百五十五万一千円、その他の事項経費一千百八億一千百五十九万九千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省三千四百九十三億三千七百四十四万八千円、在外公館六百九十九億七千四百二十四万五千円であります。
 只今その内容についてご説明いたします。
   (組織)外務本省
 第一 外務本省一般行政に必要な経費二百十四億九千二百一万五千円は、「外務省設置法」に基づく所掌事務のうち本省内部部局及び外務省研修所において所掌する一般事務を処理するために必要な職員一、六三六名の人件費及び事務費等、並びに審議会の運営経費であります。
 第二 外交運営の充実に必要な経費二十五億六千五百九十七万六千円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種の条約協定を締結する必要がありますが、これらの交渉をわが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。
 第三 情報啓発事業及び国際文化事業実施等に必要な経費五十八億三百六十三万五千町は、国際情勢に関する国内啓発、海外に対する本邦事情の紹介及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金補助金三十二億四百十八万円及び啓発宣伝事業等委託費五億九千七百六十一万円等であります。
 第四 海外渡航関係事務処理に必要な経費五十二億八千九百九十万八千円は、旅券法に基づき、旅券の発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二十五億七千七百四十三万五千円であります。
 第五 諸外国に関す番外交政策の樹立等に必要な経費三十億九千四百二十三万円は、アジア、北米、中南米、欧州、大洋州、中近東、アフリカ諸国に関する外交政策の企画立案及びその実施の総合調整を行うため必要な経費と財団法人交流協会補助金十一億一千二百三万九千円、財団法人日本国際問題研究所補助金二億二千五百八十三万九千円、社団法人北方領土復帰期成同盟補助金四千五百四十七万一千円及び画中友好施設建設費等補助金六億八百六十二万七千円並びにインドシナ難民救援業務委託費七億四百六十万六千円であります。
 第六 国際経済情勢の調査及び通商交渉の準備等に必要な経費九千四百三万四千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を適確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。
 第七 条約締結及び条約集の編集等に必要な経費五千三百二十二万八千円は、国際条約の締結及び加入に関する事務処理並びに条約集の編集及び先例法規等の調査研究に必要な事務費であります。
 第八 国際協力に必要な経費十三億九千八百六十八万九千円は、国際連合等各国際機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な経費及び各種の国際会議に我が国の代表を派遣し、また、本邦で国際会議を開催するため必要な経費と財団法人日本国際連合協会等補助金三千九百一万二千円であります。
 第九 経済技術協力に必要な経費二十億五千九百三十八万七千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施の総合調整並びに技術協力事業に要する経費の地方公共団体等に対する補助金十億一千三百十一万九千円等であります。
 第十 経済開発等の援助に必要な経費一千二百四十億三千八百八十七万五千円は、発展途上国の経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。
 第十一 経済協力に係る国際分担金等の支払に必要な経費八百四十一億五百九十七万六千円は、我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。
 第十二 国際原子力機関分担金等の支払に必要な経費二十五億七千七百五十五万二千円は、我が国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。
 第十三 国際分担金等の支払に必要な経費十億四千五百六十三万九千円は、我が国が加盟している各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。
 第十四 国際協力事業団交付金に必要な経費九百八億六千六百三十万五千円は、国際協力事業団の行う技術協力事業、青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に要する経費の同事業団に対する交付に必要な経費であります。
 第十五 国際協力事業団出資に必要な経費四十八億五千二百万円は、国際協力事業団の行う開発投融資事業及び移住投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対する出資に必要な経費であります。
   (組織)在外公館
 第一 在外公館事務運営等に必要な経費五百七十億六千三百九十六万五千円は、既設公館百六十四館五代表部と六十一年度中に新設予定の在バルセロナ総領事館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館の職員の増加、合計二、三三五名の人件費及び事務費等であります。
 第二 外交運営の充実に必要な経費六十一億七千九十万二千円は、諸外国との外交交渉の我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。
 第三 対外宣伝及び国際文化事業実施等に必要な経費三十一億五千二百九十二万七千円は、我が国と諸外国との親善等に寄与するため、我が国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流の推進及び海外子女教育を行うため必要な経費であります。
 第四 自由貿易体制の維持強化に必要な経費四億三千二百二十万八千円は、自由貿易体制の維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動を実施する等のため必要な経費であります。
 第五 在外公館施設整備に必要な経費三十一億五千四百二十四万三千円は、在米大使館事務所新営工事(第三期工事)、在インド大使館事務所新営工事(第一期工事)、在デンマーク大使公邸増改築(第一期工事)等の建設費、その他関連経費であります。
 以上が只今上程されております外務省所管昭和六十一年度予算の大要であります。
 慎重御審議のほどをお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#211
○伊藤主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#212
○伊藤主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
#213
○渡部(行)分科員 最初に、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約の誤訳についてお伺いいたします。
 これは、既に質問主意書で出ておるように六十七条の一部でございますが、その条約の答えがまだ全然出ていない、わからない。国会法上では期限を付してその理由を明瞭に答えなければならないことになっているのですが、いつまでにその答えが出てくるのかさっぱりわからない状態であるわけです。これは国会対策委員会や議運の中でも取り上げられているはずで、もっと誠意のある答弁をお願いしたいと思うのですが、今どのような運びになっておりますか。
    〔主査退席、平沼主査代理着席〕
#214
○中平政府委員 お答え申し上げます。
 この問題につきましては、従来から申し上げておりますとおりに、正確を期しますために条約の作成経緯、それからこの条約に加入した際の作業の詳細並びに各国の見解や実行等に関しまして、あらゆる観点から現在調査中でございます。
 昨年十二月に先生より提出されました質問主意書につきましては調査に日時を要すると考えられましたので、出会法に従いまして答弁書提出の延期を求める閣議請議を行った次第でございます。昨年十二月十七日の閣議で、本年二月一日まで答弁を延期いたしたいということが決定されまして、衆議院議長に通知した次第でございます。
 これを受けまして、この一月三十一日の閣議決定を経まして、内閣におきまして国会法の規定に従いまして所要の手続をとり、二月一日の期限に合わせて答弁書を提出させていただいたものでございます。
 しかしながら、御質問のありました内容につきましては、残念ながらこの条約の作成並びに我が国が加入いたしましたのが三十年以上も前のことでございます。したがいまして、その調査の内容が複雑かつ多岐にわたっておるということもございまして、いまだに残念ながら最終的な結論を得ておらない次第でございます。したがいまして、現在も鋭意調査を行っている次第でございますけれども、最終的に期限を確約できる状態にないということを御理解いただきたいと思うわけでございます。既にお答えいたしましたように、この所要の調査を完了した暁には御報告させていただきたい、しかも可及的速やかに結論を出したい、こういうふうに考えている次第でございます。
#215
○渡部(行)分科員 これはそんな難しい問題ではないのですよ。実際にこの条文の中に、ちょうど代数の代入みたいにほかの条文のところを当てはめてみればはっきりするのです。決して難しいものじゃないのですよ。どういう調査をやっているか私はわかりませんけれども、調査の内容を少し明らかにしていただきたい。この条約は、読んでみればだれでもわかることで、六十七条の日本文の中でのそのほかの条約にまたがるところは第六十条、それから六十三条の三項、六十八条、それからこの中に含まれておる他の条項が若干あるわけですが、それをみんな単純に一つの図解的に見ていくと、六十条というのは抑留国が本国にかわって行ういわゆる代行の支給であるということ、それから六十三条の三項、これは捕虜が本国の許可を得て請求する、あるいは六十八条も本国に対してなんで、こういうふうにして考えてこれを当てはめていけば、ばかでない限りこれはだれでも間違いだというのはわかりますよ。それがいまだに二カ月以上もたってなおかつわからないというのは、どういう調査をどこにやっているのですか。そして、今までの外交経験の中でこのくらいのことは大体一カ月とか二カ月とか、長くとも三カ月くらいで、できる、こういう見通しがついていいと思うのです。国会法の七十五条には期限を付してとあるのですよ。だから、期限というのは法律の中の絶対的要件なんです。この要件を満たさないのは本当は答弁にならないのですよ、そういう意味で、どうですか。あと一カ月くらいですか、どのくらいですか。
#216
○小和田政府委員 若干技術的な内容にわたりますので、条約の解釈、適用に関する責任を持っております立場からお答え申し上げたいと思います。
 渡部委員の御指摘は、確かに六十七条につきましては、ここで当該国ということに当たるような言葉があって、それに抑留国を当てはめるか、あるいは所属国を当てはめるかという極めて単純な自動的な操作の問題ではないかという御趣旨であると伺いました。確かに、この条文だけを見ますと、そこのところはそのどちらかが入るのであろうということはわかりますけれども、前にこの予算委員会において答弁申し上げましたように、この内容は六十条、六十三条第三項それから六十八条と、三つの異なった規定を受けておりまして、このそれぞれについて捕虜をめぐっての金銭の授受の問題に関しまして抑留国と所属国の間でいろいろな関係が生ずる、それについて関係国の間の取り決めの対象にする、こういう規定でございまして、条約の趣旨、目的というものを慎重に検討いたしませんと、全く機械的、自動的に、あるいは文法的に解釈をして当てはめるというわけにはいかないという関係にあるわけでございます。
 具体的にいろいろ調査しなければならないことがございますけれども、その中の一つに、先ほど御答弁申し上げましたように、主要国がこれについてどういう解釈をとり、また、実際にどういう慣行を行っているかというようなことが非常に大きい決め手になるわけでございますけれども、その面におきましても、主要国に対する調査に対しても、この問題は非常に複雑であって、そう簡単に答えが出ないというふうなことを言ってきている国もいろいろございまして、そのこと一つをとってもおわかりのように、これは見れば一目瞭然であるというような問題ではないということについては御理解をいただきたいと思います。先ほど国連局長から御答弁申し上げましたように、事務当局としては誠心誠意早く結論を出したいということで鋭意調査を行っておりますので、今しばらく御猶予いただきたいと思います。
#217
○渡部(行)分科員 これは何にもそんな難しい話じゃないのですよ。しかも、相手国と自分の国と取り違えるということは、夫婦で妻と解釈するところを夫と解釈したと同じなんですよ。ほかの意味の解釈じゃなくて、相手か自分かの解釈なんですよ。あなた、妻と解釈すべきを夫と解釈したら、これは同性愛になってしまうんじゃないですか。まるっきり本質が違ってくるのですよ。しかも、これは利益に関係ないなどという答えが出てますけれども、実際はそうじゃないのです。この六十七条というのは支払いの優先権に及ぶのですよ。それから、本国の責任に関する問題ですよ。
 そういうことを考えれば、これは何もどっちに解釈したって同じじゃないかという答弁が出る筋合いじゃないのです。これはひとつ十分検討して、まず一カ月くらいか、その見通しだけでもいいから、はっきりしてください。
#218
○小和田政府委員 技術的な詳細にわたってここで御説明するのは必ずしも適当ではないと思いますので省略をいたしますけれども、先ほど申し上げましたように、抑留国と所属国との間ではいろいろな関係で支払いが行われるわけでございます。その支払いを、最終的に敵対行為が終わったときに関係国の間の取り決めの対象としなければならないというのが第六十七条の趣旨でございます。その間に、その捕虜の待遇をめぐって抑留国と所属国の間でどういう金銭の動きがあるのかということを十分実態に即して判断をいたしまして、それを最終的に関係国の間の取り決めの対象にするということを考えなければならないわけでございまして、六十七条自体は、最終的にどちらに支払いの責任があるか、どちらにそういうものを最終的に捕虜に対して引き渡す責任があるかということについて決めている実体規定ではないわけでございます。そういう意味で、六十七条が決めているのは関係国の間の取り決めの対象とすることであるということを申し上げたわけでございます。もちろん、抑留された個人と国との関係については、どういう原則に従って最終的にだれが責任を負うべきかという問題は別途の問題としてございます。この別途の問題として存在しているものは、一般国際法の基準に従って考えなければならないというふうに私ども考えております。
 いずれにいたしましても、鋭意調査をしておりますけれども、先ほど申し上げましたように、主要国においてもこの問題についてはそう簡単に結論が出ないということを言っていることからもおわかりのとおり、かなり技術的に難しい複雑な面を含んでいる問題であるという点は御了解いただきたいと思います。
#219
○渡部(行)分科員 大体どのくらいですか。おおよそ何カ月ぐらいと聞いているのです。
#220
○小和田政府委員 相手もあることでございますので、いつまでということをはっきりと申し上げることは非常に困難でございます。もちろん、私どもとしても一年も二年もかかって検討すればいいという種類の問題であるとは考えておりませんので、今、相手に対して督促をしたり、さらに重ねて調査のために人を派遣するというようなことも考えておりますので、そういう過程が一通り済んだところで最終的な結論を出す検討ができるであろうというふうに考えております。
#221
○渡部(行)分科員 全然つかみどころのない答弁ですな。ナマズのよだれをつかむような話ではどうにもならぬですよ。そういう手続は大体あと何カ月くらいで終わるのですか。
#222
○小和田政府委員 具体的に何カ月ということで申し上げるのは大変難しいのでございますが、相手国、と申しますのは私どもが調査の対象としております主要国ですが、相手国がこれについて明快な立場を示してくれることができれば、それは事態の解明にかなり役立つであろうというふうに考えます。そういうことから考えますと、数カ月ぐらいの間に何とか結論を出したいというふうに考えておりますが、先ほど来申し上げておりますように調査の対象国がどれだけ協力してくれるかという問題もございますので、いつまでということを明確に申し上げることはちょっと無理であろうというふうに考えるわけでございます。
#223
○渡部(行)分科員 調査の対象国は、具体的にはどこです。
#224
○小和田政府委員 相手国の立場もございますので、一々具外的に申し上げるのは差し控えたいと思いますが、この条約は戦争に関連して起きる捕虜の待遇の問題でございますので、そういう意味で、そういう条約を適用する可能性の非常に高い同、あるいは過去においてそういう条約を適用する状況にあった国ということで、西側の主要国でありますとか、あるいはこの条約の草案を起草するに当たって中心になりました赤十字の関係であるとかいうようなところに調査を行っているところでございます。
#225
○渡部(行)分科員 この条約は、日本とソ連の戦争には適用されないのですか。
#226
○西山政府委員 お答え申し上げます。
 日本軍将兵のシベリア抑留は一九四九年のジュネーヴのいわゆる第三条約成立以前に端を発しておりまして、しかも、日ソ両国間におきましては一九五四年に至って初めて効力を生じているという事実がございます。したがいまして、抑留にかかわる問題をこの条約に照らして法的に議論するということは、実際問題として困難であるというふうに考えております。
#227
○渡部(行)分科員 日ソの戦争が終結したと認められるのは、法的に日ソ共同宣言の時期じゃないでしょうか。
#228
○西山政府委員 そのとおりでございまして、日ソ間の法的な戦争状態が終了いたしましたのは一九五六年十二月十二日、つまり日ソ共同宣言の発効した日でございます。
#229
○渡部(行)分科員 それでは、その前にこの捕虜の条約が日本において発効されているわけですが、そうするとちょっと理屈が合わないのじゃないですか。
#230
○小和田政府委員 私、質問を正しく理解したかどうかわかりませんが、日ソ間で法的な意味での戦争状態が終了したのは共同宣言が成立した一九五六年でございます。他方、日ソ間において敵対行為が終了したのは一九四五年でございまして、一九四九年のジュネーヴ条約というのは、第二次大戦の戦争の経験をも踏まえまして、一九二九年に存在しておりましたかつてのジュネーヴ条約を新しい事態を考慮に入れてつくられたという性格のものでございます。したがいまして、第二次大戦後の事態において、今後適用される捕虜の待遇その他の、一九四九年のジュネーヴ条約は幾つかの条約がございますけれども、戦時の関係に関する事態に対して新しく適用していこうというのでできたのがこの条約でございます。
 日本がこの条約に入りましたのは一九五三年、ソ連が入りましたのは一九五四年という関係にたっておりまして、四九年の条約の中にはもちろん従来から国際慣習法として認められているような規定も種々ございますけれども、他方、第二次大戦の結果として、第二次大戦の最中における一九二九年条約の適用状態が必ずしも満足すべきものではなかったという反省をも含めまして新しい条約ができているということでございますので、この条約の内容がすべて国際法の一部になっておると考えることは、この条約成立時において必ずしも言えないことであったと考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、先ほど欧亜局長から御答弁申し上げましたように、政府といたしましては、シベリア抑留者の関係について、この一九四九年の捕虜の待遇に関する条約がそのまま当然に適用があると考えることには無理があるのではなかろうかという考え方をとっているわけでございます。
#231
○渡部(行)分科員 大臣、これは少し外務省の姿勢を直してもらわないと困ると私は思うのです。日本の外務省の考え方あるいは大蔵省の考え方もそうですが、非常に汚い、そしてずるい。例えば今度の貿易摩擦問題だって、現実に日本が五百億ドルも黒字になっているのに、その黒字をなくすことを考えないで、一生懸命働いていい品物をつくったのがなぜ悪いという理屈ばかり言って、同じですよ。何でも支払いはしたがらない。そして、国が当然やるべき責任は負いたがらない。現実に同じような条件にあった西ドイツやイタリアがやっているじゃないですか。そういうことをやらないで、国際的な公平は一体どうなんですか。その点について大臣の答弁をお願いします。
#232
○安倍国務大臣 国際責任は果たさなければなりませんし、条約はちゃんと守っていかなければならぬわけでございます。これは日本といたしましても当然な責務であろうと思います。また、それは果たしておると思っております。
 そういう中で、今渡部さんから御指摘された点については、外務省といたしましても誠心誠意を持って今努力いたしておるわけでございます。それもほっておいていいという考え方を持っているわけではございませんし、そしてまた一年、二年先に結論を出そうということでもございません。条約局長も答弁いたしましたように、時間はかかるかもしれません、四、五カ月はかかるかもしれません、しかし最大限努力しましょうということを言っておるわけであります。なかなか複雑で技術的な問題もあるようでございますが、これはほっておいてもよいと思っておりませんので、私としても、外務省の事務当局を督励いたしまして、可及的速やかにこの問題についての態度をはっきりさせたいと思っております。
#233
○渡部(行)分科員 時間がありませんから、次に移ります。
 今度、マルコス政権が倒れてアキノ政権になりました。それで、海外経済協力という名において六千二百三十数億円が計上されております。これをこれから使っていくわけです。
 そこで私は、六十年度の海外経済協力費というものはどういう形で使われたかという一つの反省をしっかりしないと、これからの海外援助のあり方が問われるのじゃないかと思うのです。マルコス政権になってから今まで一体どれだけ日本が援助したのか、その額。それから六十年度の既にフィリピンに支払った額はどれだけか、またそれは具体的にどんなものに使われたか。こういうもの、こういうものという細かなことはいいですから、大ざっぱに御説明願いたいと思います。
#234
○藤田(公)政府委員 今までのフィリピンに対します経済協力の約束額で申し上げますと、円借款が六十年度、本年度までの約束額の累計が四千六百六十七億三千九百万円でございます。無償資金協力が本六十年度までの約束額の累計が五百四十六億六千九百万円でございます。それから技術協力、これは研修生を受け入れましたり専門家を派遣したりする費用でございますけれども、六十年度はまだ実績として終わっておりませんので五十九年度までしか累計が出ておりませんが、五十九年度までの累計が三百八十一億二千二百万円でごいます。
 どの程度が現実に支払われたかという御質問でございますが、年度はもちろんまだ終わっておりませんけれども、六十年の暦年でとりましても結果が出ますのは本年の五月ぐらいになります。ちなみに一番最近の年間の実績をとりますと、その前の年、一九八四暦年でございますけれども、一九八四暦年の我が国の実績が一億六千万ドルということになっておりますので、昨年は先方の経済情勢も余りよくございませんで八四年よりも実績は下がったのではないかと思われますが、大体この程度の規模であるということで御理解いただければいいかと思います。
 どのような内容かということでございますが、円借款はほかの国と同様にインフラ部門、すなわち公共事業部門を主にいたしておりますけれども、フィリピンの場合にはほかの国と違いまして石油の輸入国でございますので、エネルギー関係、地熱発電とか水力発電というエネルギー関係に対する供与が大きいということが特色として申せるかと思います。そのほかは、道路それから農業がんがい、河川関係、通信関係というのが円借款の対象でございます。無償資金協力は、基礎生活援助ということで、医療、教育ということを主として供与をいたしております。もし詳細の内容等、御希望でございましたら、資料を用意しておりますので、いつでも提出させていただきます。
#235
○渡部(行)分科員 詳細な資料を後からお願いします。
 それで、援助資金の中からマルコスが脱出する際にポケットマネーに入れていったことはないと断言できますか。
#236
○藤田(公)政府委員 我が国の経済協力は、御承知のとおり案件、プロジェクトを主体にいたしておりまして、円借款にしましても、昨年、一九八四年度は御承知のとおり極めて厳しい経済状況でございましたので、商品借款というのがかなり供与されましたけれども、円借款も無償資金協力も事業、プロジェクトに対して供与されるということになっております。したがいまして、我が国の資金が与えられる先は、その建設を行います企業ですとか事業体に対して支払われるわけでございますし、商品借款につきましては、輸出を行う業者に日本の円の資金が使用される、こういう姿になっております。そのプロジェクトの内容、効果というようなものは、事前に周到な調査をいたし、限度額、必要とされる金額というものを政府ベース、それから専門家ベースで厳密に査定をいたしまして、その限度内で交換公文に基づき供与をされるという姿になっております。事後にも十分に評価、調査を行っているという状況でございます。
#237
○渡部(行)分科員 時間が来ましたから、この問題はこれ以上追及しません。
 あと最後に大臣、これから参議院議員の選挙までの日程に、いろいろ企てられていると思います。また、そのうち総理が訪米する予定があるようですが、それに随行されるのか。その辺をひとつ明らかにしていただいて、最後にスウェーデンのパルメ首相が亡くなって、これはやはり世界の大きな悲劇だと思いますし、今後平和軍縮の問題にも相当影響が出るんじゃないか、我々はそう危惧しているのですが、日本がこれから平和と軍縮にどういう役割を果たしていったらいいのか、その辺についての御決意をお願いします。
#238
○安倍国務大臣 スウェーデンのパルメ首相が暗殺をされましたことに対して我々は心から哀悼の意を表したいと思います。国葬が十五日に行われるということで、日本としても礼を失しない、パルメ首相の生前の平和と軍縮に対する貢献に対して心から弔意を表するということで、福田元総理を特派大使として派遣をすることにいたした次第であります。 今、米ソ首脳会談、第一回目が行われまして、これから第二回目が行われるということでございますが、我々はこの首脳会談が実現をした、そしてこれからも継続されるということについて非常に明るい希望を持っておるわけでございますが、しかし実際上のジュネーブの核軍縮に関する、あるいは軍備管理に関する交渉はなかなか大きく前進しないという状況にあるわけでございます。また、世界各地におきまして依然として地域紛争等が続いておるわけでございますが、日本としましても、平和があって日本の安定と繁栄があるわけでございます。これからやはり世界の平和が、あるいはまた核軍縮が実現をするために日本なりの努力はしていかなきゃならぬ、国連総会あるいはまた軍縮会議等で積極的に行動をしなければならぬと思いますし、あるいはまた米ソ両国に対しましてもこうした日本の強い平和と軍縮への意思を伝えて、米ソの首脳会談を初めとする交渉が成功するように側面的な努力を重ねてまいりたいと思っておるわけでございます。
 我が国のこれから政府としての外交日程、いろいろと控えておるわけでございます。四月には御案内のように中曽根総理がアメリカを訪問するという予定を立てております。私もその際は同行する予定にいたしておるわけで、この日米首脳会談は主として五月のサミットを成功させるために日米首脳間で話し合おうという目的で行われるわけでございまして、我々としましては、何とかこの五月に行われる日本が主催国のサミットを成功さして、世界経済に一つの明るい展望をもたらすようなそうしたサミットにしたい。しかし、状況はなかなか困難な情勢があります。御承知のような債務累積国、開発途上国の状況も非常に厳しくなってきておる。特に、最近原油価格が下がったということは日本にとって、日本の経済にとってはプラスになるかもしれませんが、しかし反面、そうした開発途上国の産油国等には大打撃を与える。この債務累積問題が世界経済を混乱させる可能性もあるのですね。そうした問題、あるいはまた貿易の問題、自由貿易体制の確立の問題、あるいはまた通貨問題等について真剣に話し合いをしなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでございます。
 また、各国からいろいろな賓客も迎えることになっております。さらにまた私も、日ソの外相会談が一月に行われたわけでございますが、引き続いて検討問題もいろいろと控えておりますので、何とかソ連を訪問いたしまして第二回の外相会談も行いたい、こういう考えも持っておるわけであります。あるいはまた、OECDの閣僚理事会等もあるわけでございまして、外交の面においてもなかなかこれから日程も詰んでおります。また一面、国会も重要法案を審議しておりまして、そういう中で全力を尽くして日本の世界における役割を果たしていくために努力を重ねてまいりたいと考えております。
#239
○渡部(行)分科員 それでは終わります。どうもありがとうございました。
#240
○平沼主査代理 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、福岡康夫君。
#241
○福岡分科員 私、本日、核軍縮、平和の拠点、広島一区選出の衆議院議員として、外務省当局に核軍縮と平和に関連する問題についていろいろお尋ねいたしたいと思います。
 御承知のように、広島、長崎両市長は、本年一月十九日、東京のソ連大使館において、訪日中のソ連の外務大臣と核軍縮と平和について懇談することができました。そして、核軍縮と平和を求める広島、長崎両市民の心を伝えることができたわけでございます。そこで私、安倍外務大臣にお願いいたしますが、広島、長崎両市長が東京サミットの前後に訪日される各国関係者と東京の地で核軍縮と平和の問題で懇談する機会を得られますように御配慮いただきたいと思っておりますが、安倍外務大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#242
○安倍国務大臣 広島、長崎は世界で初めて原爆の洗礼を受けた地でありまして、日本としまして核の廃絶というのは日本の理想とするところであります。そういう中で、日本政府としても努力いたしておりますし、また広島、長崎の市民を代表する市長さんが核の悲惨さを世界の首脳に訴える、そして核軍縮を進めるという活動を展開されておることは非常に敬意を表するわけでございます。
 そういう中で、東京サミットで何とか核廃絶を訴えたい、広島、長崎の悲惨な実情というものを知ってもらいたい、こういうふうにお考えになっておることは私は当然だと思うわけでございますが、ただ、サミットは御承知のようにわずか三日間、丸々三日間ということではなくて十分三日間もとれないような非常にタイトなスケジュールで、今我々としてもスケジュールをどういうふうにこなすかということで大変苦労をいたしております。そういう中ですから、我々がサミットへ出かけていってもそうですが、そうした会議とか会談以外に日程をとっていろんな方に会うとか、あるいはどこかに出かけていくというふうなことは、これまでもそうですがサミット期間中は大変難しいわけです。これは非常に難しいわけでございます。そういう点については、これは広島、長崎の市長の気持ちもよくわかるわけですが、しかしそうした日程上から見ますと、各国首脳が会ってお話をされるということは、それぞれ市長さん方も御要請があると思いますけれども、なかなか客観的に難しいのではないか、こういうふうに私は思っております。
#243
○福岡分科員 そこで、安倍外務大臣にお願いしたいわけでございますが、私は東京サミットの前後に、各国首脳と申しておるのではなくてナンバーツーとかナンバースリーというような方とでもお会いできるような機会をつくってほしい、かように考えております。各国首脳というのは本当に難しいんだということも私も認識しております。そこで、ぜひお願いしたいのは、国務長官、外務大臣クラスとの懇談の場をひとつお考えいただきたい、かように考えておるわけでございますが、一いかがでございましょうか。
#244
○中平政府委員 サミット中のタイトな日程につきましては、今大臣がお答えしたとおりでございます。サミットの前後ということでございますけれども、従来から外務省といたしましては、外国から公式に訪問される首相とか外相とか、そういう方またはその随員の方の日程の作成に当たりましては、基本的には先方がこういうことをしたい、こういうところへ行きたいというようなことを言われまして、それに基づいて作成しておるわけでございます。したがいまして、御指摘の広島市長との会談につきましても、先方からそういう御要望がございましたら外務省としても喜んでアレンジをしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
#245
○福岡分科員 外務大臣の御答弁も、客観的には難しいがという条件を付した上で含みが残っておりますので、ひとつナンバーツー、ナンバースリーの方でぜひ懇談の場を与えるように、まだ五月までに日程がございますので、御努力されんことをお願い申し上げます。
#246
○安倍国務大臣 今局長が答弁しましたように、相手がそういう気持ちがあるなら、これは外務省としても喜んでアレンジしよう、こういうふうに思います。
#247
○福岡分科員 どうもありがとうございます。できるだけそういう機会をつくっていただくようにお願いいたします。
 次に、今月の五日、核軍縮を求める二十二人委員会の方たちが首相官邸に後藤田官房長官をお訪ねし、五月の東京サミットに参加する各国首脳に核軍縮と平和への認識を新たにしてもらうために資料展の開催を企画して、これの協力を政府当局にお願いにまいった次第でございます。その節、後藤田内閣官房長官は、安倍外務大臣とよく相談して政府としての対応を決めたいとの発言があったかのように聞いておりますが、外務大臣のお考えはいかがでございましょうか。原爆資料展に、サミットに参加しておられる各国の首脳は難しいにしても、各国関係者が一人でも多く御観覧いただくように外務省の御配慮をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#248
○安倍国務大臣 そのいきさつは官房長官から聞きまして事務当局の方に検討を指示いたしておりますので、事務当局から答弁いたさせます。
#249
○中平政府委員 先生御存じのように、この資料展示会につきましては、サミットの期間が短いということで、サミットの会場は恐らく迎賓館になると思いますが、場所的な制約もございますので、その展示会を催すというのは難しいのじゃないかと考えている次第でございます。しかしながら、そういう原爆資料展というものを適切なところでやられまして、たくさん何千人というプレスが外国から来るのじゃないかという予想をしている次第でございまして、ですから、そういうプレスの人たちにこういうところで原爆資料展をやっておるよというようなことを積極的に知らしめるというようなことについては我々としては検討していきたい、こう思っている次第でございます。
#250
○福岡分科員 ぜひPRの方、よろしくお願いしますと同時に、適当な場所の御配慮、いろいろ申し出があるかのように聞いておりますので、積極的に御援助いただきたいと思いますが、政府委員の御答弁はいかがでございましょうか。
#251
○中平政府委員 先生の御要望を十分踏まえまして我々対処していきたいと思います。
#252
○福岡分科員 御承知のようにことしは国際平和年の年でございます。さらに、昨年は御承知のように被爆四十周年を迎えております。核軍縮と平和を議題とする東京サミットも五月に近づいております。核軍縮と平和の拠点の広島の地におきましては平和研究所を設けてほしいとの声が強くなっており、また広島市当局としても、研究会やワーキンググループ等を設けまして前向きにこれを検討しているところでございます。
 そこで、平和が前提にあってこそ国の存立、一国の経済的繁栄がありますことから、平和をいかにしたら維持できるか、これを研究する平和研究所を広島の地で設けていただけばいろいろな意味におきまして大きな意義があるんだと私は思いますが、外務省当局のこの点についての御見解をお願いいたしたいと思います。
#253
○中平政府委員 福岡先生御存じのように、日本といたしましては軍事大国にならず平和国家として進んでまいりたい、こういうことでございますので、平和の維持とか軍縮の促進というようなことの努力は、我々みずからに課した重大な使命じゃないかと思っておるわけでございまして、このような平和に関する研究というものは非常に重要であるということを十分認識している次第でございます。政府といたしましては、外務省に国際問題研究所というものがございますし、その他、平和安全保障研究所等、現存の研究所がございまして、こういう平和の研究の問題につきましては今後一層そういう研究所の強化ということが第一の課題ではないかと私どもは現在考えている次第でございますけれども、ことしは国際平和年だということでございまして、広島に平和研究所をつくってはいかがかというせっかくの先生の御示唆もございますので、貴重な御意見として承ってまいりたいと思っておるわけでございます。
#254
○福岡分科員 外務大臣にお願いでございますが、今外務省の政府委員の方から非常に前向きの、抽象的ではありますが御答弁がなされておりますが、外務大臣のこの問題に取り組む決意をひとつ御披露お願いしたいなと思っております。
#255
○安倍国務大臣 広島に国際平和研究所を設けるというアイデア、これは確かに、ことしは平和年ですから非常に示唆に富んだ意見、アイデアだと思います。ただ問題は、今既に我が国外務省におきましても国際問題研究所等もありますし、あるいはまた平和安全保障研究所、いろいろとあるわけでございますし、またいろいろと財政上の問題ももちろんあるわけでありまして、これは一つの貴重なアイデアとして今後の検討課題ということにして勉強してまいりたい、こういうふうに思っております。
#256
○福岡分科員 いろいろやり方はあると思うのです。財政緊迫の折から、国立、国の費用だけでということも難しいし、またいろいろの関係者から募金をしてやる、また第三セクター方式的なものをつくるとか、やり方についてはいろいろの方法がありますが、今外務大臣、政府委員の方から抽象的ではありますが前向きの示唆があっておりますので、事務当局としてはこの問題、方法について財政面、またいろいろなやり方、国だけがつくる方がいいのか、また世界のあらゆる方々の御協力をいただいて、民間の社団法人なり財団法人でつくるのがいいか、いろいろあると思いますので、十分にいろいろの計画をお考えになって御検討いただきたいと思いますが、政府委員の方に御答弁お願いしたいと思います。
#257
○中平政府委員 先生今御指摘のように、必ずしも政府が直接やる必要はないのではないかという御示唆もございまして、確かにいろいろな形でやり得るのではないかと思われますので、今後検討課題として前向きに、どういうことができるのかできないのかということを検討していきたいと思います。
#258
○福岡分科員 ぜひ積極的に前向きにひとつお願い申し上げたいと思います。
 次に、公明党は今年の二月十二日、ことしの国際平和年に当たりまして、「核兵器全廃と軍縮をめざす全国代表者会議」を東京九段会館において開催しました。そして三つの宣言を採択したわけでございますが、その一つに国連での世界不戦宣言がございます。世界でただ一つの被爆国である我が国のとるべき平和外交において、この国連での世界不戦宣言をぜひ実現するよう外務省の努力を期待しておりますが、外務大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
#259
○中平政府委員 先生御指摘の不戦宣言というものは直接公明党の方からお聞きしているわけでございませんので、お聞きした段階で検討したいと思いますけれども、一般的に申し上げまして、これはほかの国連の決議もそうでございますけれども、宣言だけをやってあとは実際的な方法は講じないということがよく国連でもございまして、そういうことからしまして、宣言よりも実際的にどういうことをしたらいいのかということ、そういう側面から従来政府として対応しておりますので、実際の御要望を具体的に拝見するまでは確言できませんが、そういうことも御勘案していただきたいと思うわけでございます。
#260
○安倍国務大臣 不戦ということは国連憲章の中を流れる基本的な考え方、精神だと思っておりますし、そういう意味で第二次大戦のあの悲惨な戦争を反省して戦争を行わないということで国際連合もできておるわけです。日本はそういう中で積極的に平和活動を展開しておるわけでございますが、問題は、現実に戦争を一切行わないという状態を世界の中でつくっていくということが大事だろうと思います。ですから、今の米ソの首脳会談が行われるということも現実面において世界の平和を進める上においては非常に意味があると私は思っております。
 核戦争には勝者も敗者もないということはレーガン大統領、ゴルバチョフ書記長があの共同声明の中で述べておるわけでございますし、我々としてもこうした米ソが和解をし、あるいはまた世界の中で軍縮が進み、そして核廃絶あるいはまた軍縮が進んで、そして平和が世界の中でこれから確実に進んでいくということのために全力を挙げていかなければならぬ。これは日本だけでなく各国ともこういう点では相協力してやらなければならない最大の課題だろう、こういうふうに思っております。
#261
○福岡分科員 外務大臣の御答弁をお聞きしまして非常に気を強くしております。ぜひそういう御構想で進めていただくことをお願いいたします。
 次には、今外務大臣からの答弁の中に出ておりました米ソ首脳会談の問題についてお尋ねしたいと思います。
 実は広島市長は米ソ首脳会談を広島の地で開催したいんだという決意表明を市議会で答弁しておるわけでございますが、私も荒木市長の答弁は理解できます。確かに会議場とか警備体制、輸送手段等困難な問題はいろいろあると思いますが、どうかこれらの問題を乗り越えて広島の地での米ソ首脳会談を実現したいという我々広島市民の願いを込めて政府として対応していただきたいと思います。また、安倍外務大臣は今年中訪ソされる予定とのことでございますが、ソ連政府や米国政府に対し米ソ首脳会談広島開催を広島市長の、否日本国民の声としてお伝えしていただけるかどうか、この点のお考えについて御答弁をお願いしたいな、かように考えております。
#262
○安倍国務大臣 広島市長の御意見は一つの御意見として承っておきますが、やはり米ソ首脳会談、場所をどこに選ぶかということについては米ソ両国の非常に高度な政治判断によって決まるわけで、第一回はジュネーブで行われたわけですが、この次はワシントンで行われるということが大体決まっておるように思います。そして今度は、その次はモスクワでレーガン大統領が出席して行う、こういうふうな順序になるというふうに聞いておりますし、そういう意味ではこれからのある程度の日程といいますか、まだ日程そのものについては決まっておりませんが、大体一つの方向は決まっておるのではないだろうか、こういうふうに思います。
#263
○福岡分科員 私、外務大臣にお願いしたいのは、広島市民及び日本国民にそういう声があるということを米国首脳及びソ連首脳にチャンスがあればボールを投げてほしいということをお願いしておるわけでございますが、いかがでございましょうか。
#264
○安倍国務大臣 いろいろと米ソの外相ともお目にかかる機会もあります。日本での開催といったことも一つのアイデアであろうと思います。しかし、決めるのは米ソであるわけです。米ソ首脳会談の成功を念願しておる日本の気持ちの一端として何かのときにお伝えするということについては私も異議はありませんので、そういう機会があれば私の考えとして述べてみたいと思います。
#265
○福岡分科員 どうもありがとうございます。ぜひひとつ広島市民の願い、日本国民の願いとしてボールを投げていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、本年一月十九日に広島市長はソ連の外務大臣と会っておるわけでございますが、その節に広島市長は、ソ連の書記長に日本を訪問してほしいという要請を行ったのでございます。御承知のように、それに対してソ連の書記長から返書が参っております。その中に、広島市民の不安をよく理解している、今や今世紀末までに核兵器の廃絶が実現するしう日本国民とともに努力すると述べていると新聞は報道しております。安倍外務大臣が訪ソのときに、政府としてもぜひソ連の外務大臣に対しましてこの要請を行っていただきたい、このように考えておりますが、御見解を御披露願います。
#266
○安倍国務大臣 一月の日ソの外相会談の際も、日本として正式にゴルバチョフ書記長の訪日を要請したわけであります。これは共同コミュニケにも盛られております。中曽根総理からもシェワルナゼ外相を通じてゴルバチョフ書記長の訪日を要請しておるわけでございます。私としても、日ソ関係から見まして、ゴルバチョフ書記長が日本を訪問されることを心から期待し、今後そのための努力をしてまいりたいと思っております。
 なお、核廃絶については、既にゴルバチョフ書記長から、二十一世紀までにすべての核兵器を廃絶しようという提案が出されております。これに対してレーガン大統領の新しい提案も出されておるわけでございますし、基本的には米ソ両国とも核を廃絶するという方向で今後いろいろと交渉していきたいということでございますから、我々もこれを強くバックアップしていきたい。これは広島市長、広島市民の声にこたえるゆえんでもあろう、こういうふうに思います。
#267
○福岡分科員 どうもありがとうございます。外務大臣がおっしゃっておられるようにまさに広島市民の願いであり、長崎市民の願いであり、また日本国民全体の願いであると思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 政府委員にお尋ねしたいわけでございますが、東西両陣営及び各国の首脳、随行の方でも結構です、訪日のときに核軍縮と平和の拠点である広島の地に一人でも多く訪問していただくような御配慮をしていただきたいと考えておりますが、御見解をお聞きしたいと思います。
#268
○中平政府委員 過去におきましていろいろな外国の方が広島に参りまして、非常に感銘を受けたという話を私も伺っております。そういう話を聞いたような人たちは、恐らく日本へ来る場合には広島に行きたいというようなことを言われるのではないかと思う次第でございますけれども、先ほど申し上げましたようにこちらから広島にいらっしゃいということを強制することもできませんので、向こうからそういう希望が出ましたら喜んでアレンジしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
#269
○福岡分科員 ぜひとも一人でも多く広島の地を踏むように外務省当局として御尽力をお願い申し上げまして、時間が参りましたので、質疑を打ち切らしていただきます。
#270
○平沼主査代理 これにて福岡康夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、伊藤忠治君。
#271
○伊藤(忠)分科員 どうも御苦労さまでございます。伊藤でございます。
 私は、一つはアパルトヘイトの問題、二つはILO条約批准促進の問題、三つは公務員の団結権あるいは団体交渉権問題について質問を申し述べたいと思います。
 それで、まず初めにアパルトヘイトの問題でございますが、第七十一回ILO総会におきましてアパルトヘイトに関する決定がなされまして、これについては日本政府も積極的にこの決定を支持するという態度でこの総会の場に臨まれているわけでございます。御承知のとおりアパルトヘイトに関するこの決定は、「加盟国政府がとるべき行動」と題しまして十六項目にわたって具体的な遵守の事項が列挙されているわけでありますが、外務省当局、とりわけ外務大臣のアパルトヘイトに関する決定を日本国政府としても積極的な立場で遵守をされるのが当然だと思いますが、そのことについて見解の表明をいただきたいと思います。
#272
○中平政府委員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、昨年のILO総会におきまして、我が方はアパルトヘイト政策に反対であると基本的立場を表明した次第でございます。その際に我が国といたしまして、南アフリカに対する具体的な政策を概要九つの点を説明した次第でございます。まず第一に、南アとの外交関係を有しない。第二に、いわゆる独立バンツースタンを承認しない。第三に、経済関係は通常貿易の枠内にとどめる。第四に、我が国の管轄下にある個人、企業による直接投資を禁止しております。第五に、我が国の外国為替銀行及びその海外支店に対し融資を行うことを控えることを呼びかけております。第六に、国連安保理決議四百十八号を遵守し、武器を輸出しない。第七に、軍事協力は行わない。第八に、核物質及び他の関連物資、技術を輸出しない。それから最後に、文化、教育、スポーツ交流を制限しておる。これらの点を説明したわけでございます。
 先生御存じのとおり、政府といたしましてはこれらの政策を現在厳格に実施している次第でございます。
#273
○安倍国務大臣 アパルトヘイト政策に対して断固反対というのは日本の一貫した姿勢でございます。そのための具体的な措置もこれまでとっておるわけでございますが、今後ともその姿勢を貫き通して、アパルトヘイト政策が一日も早く撤回をされるように努力を重ねてまいりたいと思います。
#274
○伊藤(忠)分科員 次にILO条約の批准促進の問題なんですが、ILO当局として極めて国際労働基準の問題でございますから批准を促進してほしい重要な条約としてたしか十八挙げていると思うのです。日本が批准をしているのはそのうちの八つだと私は記憶しておりまして、批准促進に向けて労働団体の方からも政府に対して再三再四その要請を行っているところであろうと思いますが、外務省当局として批准促進に対する姿勢の問題なんですね。積極的にアプローチしていく、当たっていく、対処していくというお考えなのか、それともそう簡単にはいかないぞということなのか、そのあたりの態度についてお聞かせをいただきたいと思います。
#275
○中平政府委員 政府といたしましては、批准が適当と思われるILO条約につきましては、当該条約を履行し得るよう国内法制等を整備した上でこれを批准するということにしておる次第でございます。現在におきましても、この方針に従いましてできるだけその批准に向かって前向きに検討している次第でございます。現にILO条約の中におきまして百二十二号条約、それから百四十二号条約、すなわち、前者は雇用政策に関する条約、後者は人的資源の開発における職業指導及び職業訓練に関する条約という条約でございますが、この二つの条約につきましては今国会に提出すべく現在鋭意作業をしている次第でございます。
#276
○伊藤(忠)分科員 積極的な態度表明をいただきまして、ぜひともそのように今後ともお願いをしたいと思うのです。実は一九八五年六月一日現在の条約批准数を私調べてみたのですが、批准条約数で見る限り我が国は数少ないのですね。世界の大国であります。アメリカが一番少ないのです。二番目にカナダが少なくて、三番目に日本が少ないということなので、特段の答弁は要らぬわけですけれども、どうも首をかしげたくなるわけです。ですから、主要先進国の中でどうも余り成績よくございませんから、その辺もひとつ今後しかと御留意をいただきたい、かように考えるところでございます。
 話を続けますが、実は消防職員の団結権の問題なんです。これは自治省の方にお伺いいたします。
 率直な疑問は、ILOの八十七号条約を批准していながらいまだに消防職員に団結権すら認められていないというのはいかがなものかと思うのです。私もたまたま条約勧告適用委員会、一九七三年ですか、総会に参加をしまして、このときに初めて消防職員の団結権の問題が扱われたという記憶がございます。そのことについては第六十九回の総会、条約勧告適用委員会の報告の中でこういうふうにILOは言っているわけです。八十七項ですが、「労働組合を設立する権利から時どき除外されることのある公務員のカテゴリーに、消防職員、刑務所職員がある。このうち後者は、多くの国において、団結権という観点からは、警察と同類であるとされている。本委員会の見解では、このようなカテゴリーの公務員が行使する職務を理由に、この人びとを八七号条約第九条にもとづく団結権から除外することは、通常、正当化しえない。たとえば、ガボン、日本、スーダン。」私は差別意識で申し上げるわけじゃございませんが、ガボン、スーダンの真ん中に日本が入っておるのぞすね。このように国際的な常識に照らしても、消防職員が組合すら持てないというのは、これはもうそういう時代じゃない、こういうことを一つの労働基準の考え方として権利保護の立場から言っているわけですが、当局としては、こんなことはあってもなくても一緒、日本は日本の自分たちの考えでやっていくんだとかたくなにお考えなのか、それともやはりこういう国際世論というものを片や考慮しながらこれからの対処に当たられるのか、そのあたりについて見解を伺いたいと思います。
#277
○中平政府委員 国内政策の問題に入ります前にこのILO八十七号条約との関連について御説明いたしますと、我が国の消防職員の団結禁止の取り扱いにつきましては我が国が本件条約を批准する以前に二度にわたりましてILO結社の自由委員会で審議されまして、条約適用上問題ないという結論が出されている次第でございます。したがいまして、我が国はこれらの見解を前提といたしましてこのILO八十七号条約を批准した次第でございまして、消防を警察と同視するということ、国内法令上結社の自由の保障適用範囲から除外することは条約上問題ないというふうに考えておる次第でございます。国内政策上の問題については自治省の方から……。
#278
○紀内説明員 ただいまのお答えと若干重複するかもしれませんけれども、申し上げてみたいと思います。
 今お話がございましたように、八十七号条約は昭和四十年に我が国は批准してございます。それに先立ちまして、これは消防職員だけの問題ではございませんけれども、日本の公務員労働者に関する労働基本権の問題が取り上げられまして、結社の自由委員会で、先ほど外務省さんからお話がございましたように、この八十七号条約の九条というところに「この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適用する範囲は、国内法令で定める。」という文言がございます。この条約上の文言は「軍隊及び警察」でございますけれども、日本の場合につきまして警察及び警察と同視すべき若干の公務、具体的には海上保安庁の職員、監獄の職員及び消防関係の職員、こういうカテゴリーにつきましては警察に類するものとして国内法令で定めてよろしいんだという趣旨の確認があったわけでございます。我が国といたしましては、この二度にわたる審議の結果がございましたので、国内法制上何らの問題はないということでこれを批准したという経過がございます。
 先生お話がございましたように、確かに一九七三年にILOの条約勧告適用専門家委員会なるものが消防職員にも団結権が認められることを希望するという意向を表明したことがございます。これを契機にこの問題がまた再燃をしたわけでございますけれども、日本の政府といたしましては、この条約を批准するに至る経過等をるる説明いたしまして、この日本国内の法制というものが八十七号条約に違反するものではないという旨の理解を求め続けたわけでございます。その後、一九八三年になりまして、同じ条約勧告適用専門家委員会が、消防職員の職務は、通常は団結権から除外することを正当化しない、こういう表明を行ったわけでございます。通常はということで例外を許容すみ表現をとったのは、こういう日本のような特殊な経緯を背景にするものについての理解を示すものであると私どもは受けとめています。したがって、お話にございましたようにILO八十七号条約がどうあろうとそれと関係ないという意味では決してございませんで、八十七号条約に違反しないという見解をとっておるわけでございます。
 なお、ガボンその他のお話がございました。確かに通常いわゆる発展途上国と称されるようなグループに多いことは否めませんけれども、消防職員の団結権を禁止することの背景というものは、それが一般的な意味で、経済的なり文化的な意味で発展途上国であるか先進国であるかという議論とはまた違ったところで判断されるものではないか、このように考えます。
#279
○伊藤(忠)分科員 いずれにしても団結権は認めないという態度表明なのですが、それは消防職員の身分を理由にされるのですか、仕事、任務を主な理由にしておるのですか。
#280
○紀内説明員 消防職員の従事する業務の公共性と消防職員の占める地位の特殊性と両方でございます。
#281
○伊藤(忠)分科員 理由はわかりました。消火活動に当たる、あるいは市民の生命、財産、安全を守るということなんですよね、一般に言われていますのは。そうすると、組合をつくると、そういう所期の目的を達成するに極めて多くの障害がもたらされるという判断ですか。
#282
○紀内説明員 日本の災害というのは、火災を初めといたしまして、一たび災害が発生しますと非常にその被災が大きくなるという傾向がございます。したがって、災害発生時に、初期に迅速に対応するということがどうしても肝心なことでございまして、そのためには高度の規律、統制というものがとれた部隊活動というものが必要になるわけでございます。それはいわゆる火災がある場合あるいは水害がある場合だけの話ではございませんで、日常そういう厳格な服務規律のもとに訓練を施している、上下一致した気風が養われているということが肝心でございまして、そこに団結権を認めるということになりますと、どうしても勤務条件をめぐりまして職員間あるいは当局と職員の間それぞれにいろいろ緊張関係あるいは対立の関係というものが出てきて、常時即応の態勢といいましょうか、そういうものに対して緩みを生ずるおそれがある。これがひいては消防活動の遅延を招きかねないし、場合によっては国民の生命、身体、財産というものを保護する任務に支障を来すおそれがある、こういうふうに考えておるわけでございます。
#283
○伊藤(忠)分科員 そういう非常に社会的にも重要な任務についておる仕事は消防署だけではなくて、パイロットもそうですし、スチュワーデスもそうですが、組合はあります。それから送電に従事している電力会社にも組合はあります。軍事回線もまとめて安全管理に携わっておる電気通信にも組合はございます。それから、大学病院を初めとして、命を預かっている看護婦さんにも組合はございますが、こういう組合をつくっているところは、組合があるために労働条件をめぐって規律の弛緩を生じて業務に支障を起こしておるのですか。
#284
○紀内説明員 パイロットの問題であるとか看護婦の話というのは私どもの所管ではございませんので詳しい事情はつまびらかではございませんけれども、今の消防について申し上げますと、直接に自然的なり物理的なりの要因によりまして生命なり身体なり財産なりが現在侵されようとしている状況に対しまして一定の集団で立ち向かわなければいけないという特性があるわけでございまして、そのためには一糸乱れない指揮系統というものが必要である、こういう趣旨で申し上げております。
#285
○伊藤(忠)分科員 当局はそのようにお考えですけれども、今いみじくも何か本心を漏らされたような気がしまして私も心外に思っております。
 消防職員といいますけれども、実際に中心的な消火活動なり消防の任務に携わる専従者というのは、消火活動なりというときに動員をされるのは全体の中でもほんの一部ですよね。分団とかそういうところで働く人は非常勤の皆さんでございまして、そういうふうな地域一体的な活動でなければ目的を達成するというのですか、そういう一たん緩急あるときにやっていこうというのは、消防職員が組合をつくらずにやっているからそれができるんだというような短絡した考え方は私はいただけないと思います。時間がございませんからその議論は横に置きますけれども、いずれにしてもそのような考え方で組合すらつくることを禁じているというのは、いかんせん、先進国の冠たる日本において、一方には平和憲法があり、労働三権が保障されている中で、これは極めて厳しい規制だ、私はこのように思います。
 そこで、私は外務大臣にお伺いしたいのですが、国際舞台を切り回しておみえになります外務大臣、実はこういう議論を日本国政府を代表してやられるということはどうでございましょうか。先進国日本だったら、経済の面が強い、外交の面が強いというだけではございませんで、労働者の権利もそれ相当に保障しているんだ、だから内需拡大にしたっていろんな問題にしたって、決してチープレーバーだと言われないと胸を張って外務大臣が言われる立場からしても、私はこれはいささか次元が低いだろうと思いますが、感想で結構でございますから、その辺はどうでございましょうか。
#286
○安倍国務大臣 おっしゃるように、我が国は国際的にも非常に大きな存在になっておりますし、またそれなりに責任も重いわけでございます。同時に、我が国が加盟した条約はきちっと守っていかなければなりませんし、国際的な先進国家としての一つの大きい方向というものは進めていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、いろいろと我が国としてもILO条約等につきましてもできるだけ国内体制を整えて批准できるものは批准を早くしたいということで、今調整を進めておるわけでございます。しかし、それぞれの国にそれぞれの事情というものもあるわけでございますから、ただ、どこの国がやったからといってそれに倣えというようなわけにいかない点もあるわけでございまして、方向としては今御指摘がありましたようにいろいろと日本が批判を受けないような方向でこれからも法体制というものは整えていかなければならない、労働者の権利が守られるための努力をしていかなければならぬことは当然であろう、こういうふうに思います。
#287
○伊藤(忠)分科員 次は、公務員の賃金決定機構の問題なんですけれども、これはどの省がやるのですか、これについてお伺いします。
 これも実は関係省庁にとってみれば余り好まれませんILO条約勧告適用専門家委員会の報告で、人勧制度について指摘しているわけです。それはどういう考え方に立ってこういう表現、指摘になったのかといいますと、御承知のとおり公企体の労働者に対しては公労委がございます。これは労働代表も加わって三者構成でスト権の代償措置として公労委が置かれているわけですね。ところが、公務員も同じようにスト権の代償措置として人事院勧告制度がございますが、人勧制度の中には労働者の代表は加わっていないと私は思っているわけです。だが、それはまずいので、労働者の代表が参加して決めれるような制度が望ましいんだということをILOは指摘をしているわけです。したがいまして、私が主張したいのは、公労委と同じように公務員のスト権の代償機構である人事院の制度もそのように改組をいただきたい、改革をしてほしい。理由は今言いましたことでありますが、その私の意見に対してどのようにお考えでしょう。
#288
○中平政府委員 先生御指摘の、昨年行われました条約勧告適用専門家委員会の見解でございますけれども、これは一昨年の人事院勧告につきまして見解を表明したわけでございます。
 ポイントは二つございまして、一つは、経済的な危機及び困難な時期に当たりましては、政府が賃金決定の通常の手続に制限を課することが必要であるということは十分認識しつつも、人事院勧告が完全に実施されることが重要であるという指摘をしているわけであります。これが第一点であります。他方、第二点といたしまして、労働基本権の制約を維持するのであれば、日本政府は条約が定める保障のため、公務における賃金、労働条件の決定手続及び仕組みを再検討するであろうとの希望を表明しているわけでございます。
 それで、私どもといたしましては、今申し上げました報告の趣旨は、人事院勧告の完全実施が重要であるということを表明したのではないかというふうに理解しておる次第でございます。
#289
○山中説明員 公務員の給与の抑制措置は、財政事情等、公務員給与をめぐる厳しい状況の中で、人事院勧告制度の実効が上がるよう政府として最大限の努力を払って今まで実施してきたわけですが、今後とも人事院勧告制度を維持、尊重するという方針で対処したいと思います。いずれにしても、国家公務員の給与については、第三次公務員制度審議会の答申、あるいは第二次臨時行政調査会の答申においても、人事院勧告制度によるべきものだとされておりますので、この方針に従って政府として人事院勧告制度を維持、尊重するという方針で対処したいと考えております。
#290
○伊藤(忠)分科員 そうすると、これは九十八号条約の項目で日本に対して断り書きをつけて言っておるわけですよね。それのコメントが出ておるわけです。「公務における賃金と労働条件の決定のための手続と制度を政府が再検討するよう、本委員会は希望を表助する。」と言っているのですが、これはあえて表明したって、ILOのことだ、それは勝手、日本は日本で考える、だから今の人勧の完全実施をどうやっていくかというのが当面の課題であって、三者構成に改革をしていくなんということは考えてない、このようにお考えなんですか。それとも、今の制度が万々いいんだというふうには思わないし、一方では公労委という制度があるじゃないか、そうすれば将来そのように改革していった方が望ましいとお考えなのか、全然それは関係がないとお考えなのか。その辺をひとつ明らかにしてください。
#291
○廣見説明員 ただいまの先生のお話でございますが、まずILOの専門家委員会の報告の読み方にもかかわってくる問題であろうかと思います。したがいまして、先ほど外務省の方からもお話ございましたように、全体としましては、この報告は、人事院勧告が完全に実施されなかったということをめぐりまして議論がされ、それについての報告であるというふうに理解しております。この中でも、人事院勧告が完全に実施されることがなおさら重要であるというような指摘も行っておるわけでございます。したがいまして、制度のことに言及していることも事実ではございますが、そこは人事院勧告が完全に実施されないというような状況が続くならばやはり制度の検討も必要であるというふうな趣旨であって、私ども政府といたしましては、重点は完全実施の強調にある。したがって、先ほどお話のございましたように、完全実施に向けて努力する、こういう方針であるというふうに私ども理解いたしております。
#292
○伊藤(忠)分科員 最後になりますが、結局こういうことですね。制度そのものを云々する前に、現行制度でも人勧が完全に実施をされてないということに問題があるではないか、その点が一番ポイントとして国際的にも指摘をされておるんだ、だから完全実施を目指してやっていくというのが当面の最大課題である、このように考えてよろしゅうございますか。
#293
○廣見説明員 ILOの報告はそのような趣旨で読むのが正しいのではなかろうかというふうに私ども考えております。
#294
○伊藤(忠)分科員 いいえ、当局ですよ。そういうのを踏まえて当局としてはどうなんですかと私は聞いてあなたが答弁をくれたのですから。ILOの言っていることはそれでわかりましたけれども、あなたのところは完全実施についてどう考えているのですか。
#295
○山中説明員 人事院勧告制度について、先ほど申し上げましたように、公務員制度審議会の答申あるいは第二次臨時行政調査会の基本答申で、公務員の給与は人事院勧告制度によるべきだということでありますので、政府といたしましてはこの人事院勧告制度を維持、尊重するという方針で対処してまいりたいと思います。
#296
○伊藤(忠)分科員 こういうことでしょう。もともとこれがILOの場でも問題になったのは、人事院勧告制度というのがありまして、人勧が出されても完全に実施をされてないからそのことを取り上げて議論をされて、それじゃやはり制度そのものにも問題はあるのじゃなかろうかというような議論が労使間でもあったと思いますよ、三者ですからね。しかし、こういうものが出てきました。その上に立って、制度そのものをいらうということよりも勧告が完全実施をされてないということが発端、事の起こりでございましたから、やはりそれに基づいて勧告が出たら完全実施に向けて最大努力をするということなんでしょうかということを私は聞いているのです。
#297
○山中説明員 勧告が出ましたら、政府といたしまして完全実施する方向で最大限努力するという方針でございます。
#298
○伊藤(忠)分科員 いずれにしましても、人勧制度が労働代表が参加をしてない、そういう機関でありますから、私たちはその制度そのものを基本的に不備欠陥を持っているものだ、このように考えますけれども、これは政府当局とはどうも意見が一致しないわけでございます。それにしても、現行の制度で人勧が出された場合それの完全実施に向けて努力をされる、最大限努力をするという態度表州をいただきまして、ぜひともその立場で人勧完全実施に向けて今後とも取り組んでいただく、このことを最後に要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#299
○平沼主査代理 これにて伊藤忠治君の質疑は終了いたしました。
 次に、関崎正君。
    〔平沼主査代理退席、中島(源)主査代理着席〕
#300
○関分科員 外務大臣にお尋ねをいたします。
 昨年の四月二十三日、内閣委員会において私は外務大臣に、むつ小川原開発の計画に新しく核燃料サイクル基地を加える、そういうような議がありまして、この議については閣議においても簡単に軽々に了解などということがあってはならない問題ではないだろうか、こういう質問をしました際に、大臣は、実はこの問題については初めて聞く、それだけによく吟味したいという趣旨のお答えがあったわけであります。
 むつ小川原開発計画というものは、閣議の口頭了解というのが事前に二度ございました。昨年はいわば三度目の了解でありました。それで、新しく計画の中に織り込まれた核燃料のサイクル基地というものは、これはまた大変な問題であるだけに、当然に閣議においても、むつ小川原開発計画というものはどういう現状になっているか、そういう吟味が先にあって、その上に立って新しくさらに計画を加えるならば加える、こう事を進めるのが適当ではないだろうかということや、さらにこの核燃の施設というものがそこに置かれるなんということになると、これはもうアメリカの射爆場の利用の訓練機が日常毎度のごとく飛び交っているその中にそうしたものが置かれるということがあってはならないんじゃないのかという点からも、大臣には、幸いにしてこの議に参画しておらない、そういうところから、責任がないだけにきちんとしたお話を閣議において述べていただいて、少しくこの了解は時間をかけるべきではないだろうか、こういうようなお話が当然私はしていただけるものであろう、こう思っておったわけであります。ところが、このことがするすると決まったのかどうか、私、大臣でもありませんからわからないのですが、翌日の新聞には閣議の口頭了解、こういうことで打ち出されておりました。非常に力のある安倍外務大臣であり、何らかのこれについての意思表明というものがあったんじゃないだろうかとも私は思うのですが、四月二十三日に私が大臣に申し上げ、四月二十六日に閣議の了解が行われるという短時間であっただけに、あるいはまた大臣としても何も言うことがなく済ますしかなかったものなのか、まず第一に、この閣議口頭了解において外務大臣はどのような御意見なり御発言をされたものであるのか、その点について承りたいと思います。
#301
○安倍国務大臣 原子燃料サイクルの施設の建設につきましては、安保条約に基づきまして、米国の使用に供されている重要な施設、区域たる三沢対地射爆場の機能の円滑な維持運用等の調整が十分図られる必要があると考えております。このことは昨年四月二十三日の衆議院内閣委員会を初めといたしまして累次御説明をしてきております。現在、引き続きまして関係省庁におきまして原子燃料サイクル施設の安全性等につきまして主として技術的な検討が行われている段階であると承知しておりまして、まだ米側とは正式な話を行ってはおらないわけであります。いずれにしましても、外務省としても今後ともさきに述べた観点を踏まえた調整が行われることが必要と考えておりますので、必要に応じまして関係省庁及び米側と緊密に連絡調整を図っていきたいと考えておるところです。
 なお、御指摘の三沢対地射爆場を初めとする米軍基地、米軍施設、区域の機能の円滑な維持運用が日米安保体制の効果的運用を確保する上で必要不可欠であるということは政府部内でも十分認識をされるべきでありまして、また既に認識をされておもところでもあります、したがって、当然本件についてもこうした観点から今後所要の調整が行われるもの、こういうふうに承知をしております。したがって、御指摘がございました昨年の四月二十六日の閣議におきましては、特に本件につきまして発言を行わなかったというのが実情でございます。
#302
○関分科員 大臣、おしまいのところは、特に発言をしたのですか、しないのですか。
#303
○安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、これから調整をしなければならぬということになっておりますから、特に発言はしなかった、こういうことであります。
#304
○関分科員 実は大臣、これは頼る大臣はあなたしかなかったから、この問題についてはきちんと把握をしていただいて、何とかこの問題の理解というものを正しくいただけないだろうか、こういう切なる願いを込めてあのときは申し上げたわけであります。と申しますのは、むつ小川原開発計画というものは全く進んでいないわけです、また五年、十年、十五年かけても進むようなものにはなっていないわけです。そういうものを何の吟味もないままに進むようにしておいて、そうしてチェックすることもなくして同じ場所に、同じ地名のところに、同じ位置のところに三点セットをしくということなんかは、常識のある者の計画として認められるべきものではないのです。言うなれば、石油精製工場、原料タンク、そういうものの場所に計画として位置づけられている。その位置づけというものを何の変更もなくそのままにしておいて核燃のサイクル施設をそこに持ってくる、こういうことだから、どんなに常識のない人に聞かせても、何だこれは、こう問われるべきものであったと思うのです。ところが十四省庁会議の諸君たちは、経緯もあり経過もありだから、今さらその話をしてもどうにもなるまいというのでそのまま進めてしまった。唯一の頼りになるのはこの問題に関係してくるところの外務大臣、しかもアメリカの訓練機が常時その上空を飛ぶ、そういうようなことであるだけに軽々にそういうことをよしとするわけにはいかない、このくらいのお話はあなたに私はしてもらいたかった。また、あなたならばそれができるであろう、してくれるであろう、こう考えたわけであります。しかし、残念ながらただいまのお言葉では全く言わなかった、こういうことでありまして、本当に残念であります。
 そこで私は申し上げるのですが、大臣は、こうした核燃の施設の上にアメリカの飛行機が飛び交うことをよしとするようなお考えがございますか。
#305
○藤井(宏)政府委員 昨年四月二十三日に内閣委員会におきまして先生からこの問題が提示されて以来、外務省はこの問題を極めて注意深く見守っておるわけでございます。もちろん、むつ小川原総合開発計画そのものにつきまして外務省はとやかく言う立場でございませんけれども、三沢の対地射爆撃場につきましては、その円滑な運用が図られるということは日米安保条約の円滑な運営という見地からいたしまして大変に大切なことでございます。したがいまして、先生からその後もいろいろ御指摘がございましたけれども、そういうことを踏まえまして注意深く検討しておるわけでございます。
 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、現在のところ引き続き関係省庁において核燃料サイクル施設の安全性等について主として技術的な面で検討がされているという段階であるというふうに承知しておりまして、この問題がさらに煮詰まってきますれば、いずれにしましても外務省としてはこの調整が行われるべきであるという立場でございますので、その具体的な調整が国内、場合によりましては米軍との間でも行われるというふうに考えている次第でございます。
#306
○関分科員 調整が行われなければならないし、調整はしなければならない、そういう言葉で態度を強調されておりますけれども、今行われようとしておる施設が技術的にあるいはまた我々の考えているような安全基準に達するかどうか、こういう幾多の問題がここにあります。仮にパスした、パスさせる、そういうところで進めようと思っていることだけは間違いないのです。そのときになってアメリカの方から、そういうようなものがあったんじゃ我々の演習は自由にできない、それはお断りしますよ、こういうお話が来るようになったときには、非常に仕事の仕方としておくれを示すということになると思う。ですから私はまず第一に空の方はどうなんだ、こう言っているわけです、青森県の知事にも、また防衛庁長官にも。安全上いろいろな問題があります。あの場所は日本で一番悪い、不適地の条件を満ちあふれるほど持っているところです。にもかかわらず強行しようとしているのです。そこで、私どもは空の方から問題を見ようじゃないかと言っているわけです。 空の方を担当しているところの米軍の物の考え方、またこれと折衝している第一線にある外務省が何と見るのか。でき上がってから調整するなんというようなことで調整の効果があると思っておられるのかということです。安全上、飛行機が飛んだって心配ない、こう思っているなら別です。しかし、核燃のサイクルの基地に核搭載の飛行機がじゃんじゃん飛ぶのですよ。F16が配置されてから、二十七機、やがて五十三機。二十七機来ただけでも四川目の人たちはもう組織的に移転を余儀なくされているでしょう。四川目という部落がもうなくなってしまうのです。三百名の世帯が移転しなければならないということで、どしどし移転の仕事を進められているわけです。
 ですから、F16が来る、F16が来ない、これをとにかく調整の結果、今度F16が来なくなりました、やめさせることになりましたというなら、これは一つの前進でしょう。また、もう世界的に平和が来るんだから、アメリカに頼って三沢の射爆場なんか要らなくなったという調整をかけられるというならば聞いてもいいですよ。しかし、我が国の現状からいってますます日米安保条約の強化の方向にあるでしょう。緩められるとかこれを無にするとかという方向にはない。こう見ますと、今のような施設が訓練空域の下に置かれるなんということはとめなければならない。そう外務省も考えなければならないんじゃないだろうか。また、アメリカにおいても、でき上がってからそれは困るよと言われては困るから、もし了解をもらうとするならばこういうわけで御了解いただきたいというお話をしておかなければならないんじゃないだろうか。
 この問題が出てから、もう一年以上、二年近くになっております。でも、ただいまの答弁では、どこまでその話が進められているのか。調整に当たらなければならないということはわかりました。後で当たるのですか。でき上がる前に、そういう計画が確定する前に当たっておかなければならないことじゃないんですか。その点はどうですか。
#307
○藤井(宏)政府委員 先ほども申し述べましたように、先生の御指摘すなわち三沢の射爆撃場と三点セットとの関係、これは我々としても非常に大事に受けとめておる御指摘でございます。
 ただ、あくまで三沢の射爆撃場は現在存在するわけでございますが、その近郊に三点セットをこれからつくろうという計画が出てきたということでございまして、その三点セットというものがどのような安全基準、技術的ないろいろな側面、この上空についてはどうなんだというようなことが詰まってまいりませんと、現在行っております射爆撃場の機能がそれとの関連でどのように影響を受けるかということがわからないわけでございます。したがいまして、調整と一口に言っておりますけれども、片やその計画、安全基準の方が具体的になってこないと、我々としても具体的な調整に入れないという段階でございます。したがいまして、先生の御指摘は我々としても大変に大事な御指摘であるというふうに存じております。我々は調整が必要であれば図られるべきであると存じておりますけれども、現段階におきましては関係の各省におきまして三点セットの安全基準等々を検討しておると承知しておるわけでございます。
#308
○関分科員 あなた方の方だって、この三点セットが置かれた場合に、飛行機は自由にその上を飛んでもいいなんということは考えるわけにいかないでしょう。他の機関が安全であるかどうかを見てからおれの方が考えるなんということは主体性がないじゃないですか。今あなた方の訓練空域の下にこれができるというときに、これができても訓練は支障なく行われていいんだと考えているなら別ですよ。もしそう考えているならば、その考えを持ってアメリカにも、こうなるんですが、その下にこういうものができていかがでございましょうかというお話をしておかなければならないでしょう。でき上がってから何で今ごろお話しになってと言われるのはもう当然のことでしょう。そういう意味で、アメリカとの関係においてこのお話をどうなされましたか、また当然進めておかなければならないことでしょうから、しておいてください、こう私は申し上げてきたわけです。どうなんです、大臣。アメリカとこの話をしたんですか。お答えしてください。
#309
○藤井(宏)政府委員 アメリカとは正式には話しておりませんけれども、非公式には話をしております。先生ただいま御指摘の、でき上がってからということでございますけれども、先ほどの繰り返しで恐縮でございますけれども、現在射爆撃場があるわけでございまして、そこでいろいろ活動しておる、正確にはその下ではございませんでそのそばでございます。したがいまして、完全にダブるのかどうかということははっきりいたしません。そのそばに核燃料サイクルに関連しての三点セットの計画があるということでございます。したがいまして、現在ある三沢の射爆撃場の活動に対してこの計画が一体どのような影響を与えるのであろうかということは、この計画が詰まってこないと具体的な調整はできないということでございます。
#310
○関分科員 あなたはどんな考えでこれを見ているのかわかりませんけれども、こういう危険なものがそばにやってくる、その危険なもののそばを飛行機が飛ぶ、万が一飛行機の事故でそこにぶつかったらどうなるんだ。爆弾を積んだ飛行機がそれにぶつかったらどうなるんだ。危険でしょうがないでしょう。吟味しなくてもだれにでもわかることじゃないですか。ですから、できることであるならば外務省としてもこういうものは別なところへ考えろ、またアメリカ側と相談すればアメリカ側はこれをよしとするわけにはいかない、こういう返事が出てからでは遅いじゃありませんか。行政の進め方からいっても、了解をとるならば、アメリカの方としても、そばにそんなものがあっても構わないよと言っているならば、これは別です。アメリカが構わないよと言えば我々がいいと思うのかといえば、そうじゃありませんよ。アメリカは人の国だと思ってそう言っているのかもしれぬけれども、我々にとってはそうはいかぬよと、こうまた構えなければならないでしょう。何もアメリカに聞いてから御意見を定めるとかというものじゃなくて、こちらの方だって初めから一つの主体的な意見を持たなければならないじゃないですか。だから、そこで決まればいいんだなんということでは、あなた方が与える危険性なんですよ。空を飛んでいるものは何も危険でないでしょう。しかし空を飛んでいるものがぶつかったときには大変なことになるでしょう。あなた方が加害者になるのです。その認識、その意識というものはちっともなくて、放射能の安全性が確保されればそれでいいんだろう、この程度の認識でこれを見ておったんじゃ、とんでもないことだ。軍事基地の近くにこうした核燃の施設なんかつくっている国はありません。できる限り安全確保のためにそういう危険なものは遠ざかるように遠ざかるようにとしているでしょう。あなた方がF16を持ってきたおかげでえらい迷惑を受けている住民たちは、やむを得ないから逃げるしかなくて立ち去っていくでしょう。今ここに置かれようとしているものは、あなた方のそうした訓練の仕事に支障になることは間違いない。でも置くやつがいいと言うのならば構わないんだ、こんなことでは行政にならないじゃないですか。国民の安全を確保するためにはそういう危険物は訓練空域のそばには来てはならない、こう言っておいたらいいじゃないですか。それがあってもいいと思っているところに私は問題があると思うのです。だから、閣議で了解して黙っている大臣なんというのは本当に情けないと私は思う。安倍大臣はもう少し偉い大臣だと思っていた。昨年は真心を込めて私は申し上げた。大臣も私にこたえるような返事をしたのだ。そして私は、間違いなくこの閣議の了解というものは少なくとも延びるであろう、どんなことがあっても安倍さんが延ばしてくれるであろう、こう思った。何も延ばしてくれない。今聞いたら何も言わない。残念でしょうがありませんよ。言わせないようにしたのはきっとあなた方なんでしょう。大臣は言おうと思ったに違いない。青森県の知事がやってきて、そんなことでこれをとめたんじゃ困るからと言って、何とか通してくれ、願うだけ願っちゃった。社会党の関清正の話よりも自民党の北村知事の話をまた聞かなければならない、そんなこともあって黙ってしまったんじゃないかとも言われているのですよ。良識のある外務大臣がそんなことで何も言わないで、そういうような原因をあなた方がつくっているんじゃないか。この一年間あなたは何もしないで、非公式に話をしたというなら非公式にどなたと話をしたのですか。
#311
○藤井(宏)政府委員 非公式に日常の接触の中で話をしているわけでございますが、先生のただいまの御質問の中で主体的云々という言葉がございましたが、この点は非常に我々外務省の態度というものははっきりしておりまして、先ほど大臣が御答弁になりましたように、この射爆撃場は安保条約の円滑な維持運営のためには必要不可欠であると我々は考えておるわけでございます。それが既に存在しておりまして、現在機能しておるわけでございます。そこに、先ほどから御指摘ございますように、その近郊に、直下ではございませんで近郊に三点セットをつくるという案が出てきたということでございまして、我々としては、必要不可欠であるところのこの射爆撃場の機能を維持しつつ、どのようなことができるのか、その点の調整が必要であるというふうに述べてきておるわけでございます。
 ただ、先ほどから申し述べておりますように、先生はこれは危険であるというふうにおっしゃっております。危険であるのかどうか、この点についてはやはり精細なる――問題の所在は先ほどから申して示しておりますように、先生の御指摘を我々は去年からずっと大事に考えておるわけでございますけれども、果たしてどの程度の危険があるのかということは、これは具体的な話として技術的な検討等を経なければ一般的、抽象的には申し述べられないということを私は先ほどから申しているわけでございます。
#312
○関分科員 どのくらい危険であるかとかどんなものであるかなどということをあなた方お話ししているけれども、これは世界的に危険なものとして認識されているものでしょう。ですから、アメリカはもう再処理工場なんかつくるのはやめると言ってやめたじゃありませんか。ウランの濃縮工場だっていろいろ問題があって、とにかく、放射能の問題についての危険というものはどんなに恐ろしいか、一年や二年で薄くなるなどというものじゃない、何百万年も紡ぐような核種まであるわけですよ。そういうようなところに爆弾を積んだ飛行機が悠々と飛んでおる、訓練のためにやっておる。まかり間違えばどうなるかわからない、これはだれだって想像できることでしょう。そんなことがあったって構わないのだ、こう言うならば別ですよ。しかも射爆場の問題については、安保条約上もう動かしがたいものだ、こうなると、あと調整はどういう調整になるのか。ですから、この問題はぐずぐずしておるとまた既成事実をつくって、後でにっちもさっちも動きがとれないなんということになっては困りますから、まだつくると決まったわけでもないのです、まだ建設工事に入っているわけでもないのです、ようやく調査の段階に入っています。調査の段階においても当然我我は自主、民主、公開の原則を新しい長官に強く要請しておいて、そしてこの問題は、とてもあそこに置くなどということにはならないであろう、こう事が運ばれるようにしたいと思っています。だけれども、これは我々がそう思っても、今の権力の状況から見るとそう簡単なものではない。簡単なものではないけれども、しかし、あなた方がアメリカとの話について、そういうものが近くにできるなどということはごめんだよ、こういうことになれば、今から別なところにしなさい、こう言えるでしょう。日米合同委員会の正式の会議ではないが、非公式には申し上げている、こう言っているが、非公式に申し上げてアメリカ側は何と言っているかと今聞いているのです。簡単にアメリカ側はいいよと言っているのですか、どうなんですか。
#313
○藤井(宏)政府委員 アメリカ側と正式にこの問題について話をしておりませんので、アメリカの意見ということは申し上げられませんけれども、一般的に、先ほど来私が申し上げておりますように、この射爆撃場が安保条約の円滑な運営維持に当たりまして不可欠であるという認識は我々のみならずアメリカも持っておるというふうに存じております。
#314
○関分科員 とにかく射爆場は今の状態において片づけるわけにはいかないということは私どももそう思いますよ。幾ら片づけようといっても片づかない。しかし、これを利用して訓練機が飛び交う限り、その近くにこうしたものが置かれようとすることに黙っているということがありますか。でき上がってから調整をかけますなどという話がありますか。アメリカの物の考え方について日本側がどう考えるか、これは大変なことだから目をつぶってくれといってアメリカに頼むのですか。やはりこれは早いうちに片づけて、別なところに移すのが至当じゃないか、こういうふうに方針をとられた方がいいのではないかと私は思う。そういう意味において、大臣もぐずぐずしないで、やがて総理大臣になろうという人なんですから、なってからよりも、なる前に片づけてなった方がいいんじゃないですか。安倍大山、この点についてどうですか。
#315
○安倍国務大臣 この問題、何も外務省が放置しておるわけではないわけですね。今局長が述べましたように外務省としても関心を持っておりまして、非公式にも米軍と話をしておる、こういうことであります。ただしかし、三点セットとの関係がどういうことになるのか、三点セットの安全性というもの等も、これから進めるわけですから、その辺のところはやはり見きわめなければならぬし、あるいはまた射爆場の円滑な運用とか、あれは飛行機が飛び上がりますけれども、先ほどお話しのように核を積んだ飛行機なんかありっこないのですけれども、それが飛び上がりますが、果たして飛行のルートがどういうふうになっているか、その辺のところは私、よく承知しておりませんけれども、これはまたこれで安保条約上、大事な施設であります。その辺はやはりこれからいろいろと話し合っていくことによって調整ができるのではないか、こういうふうに私は思っております。決して何も無関心でおるわけではないし、これは国会でも議論になったわけですから、我々としても米軍にも話をし、非公式にも話をしている。しかし、これはもっとこれからの核燃料サイクルのいわゆる三点セットの安全性というもの等がどういう形で進められていくかというようなことを見なければ調整にはならないと思うのですね。ですから、その辺のところはやはり基地の態様等を踏まえて、そういうところを十分見ながら外務省としても調整をしていきたい、調整をしなければならない課題であろう、こういうふうに思っておるわけです。核燃料サイクルの三点セットについては、これは外務省がタッチする問題ではなくて、それは関係省庁がタッチされるわけです。しかし、外務省としては今の射爆場あるいは三沢基地、そういうものとの関係においてこれは重大な関心を持たざるを得ないわけですから、そういう意味で、先ほどからるる申し上げたとおりであります。局長の答弁で大体明快に御理解いただけるのではないかと私は思っております。
#316
○関分科員 どうも認識がずれているようです。局長の答弁で理解できるなんというものではないのです。問題は、積極的に外務省としても、これは困る、こういうようなものが置かれては困る、こういう意思表示が早くなされれば要らない心配をしなくてもいいし、要らない苦労をかけなくてもいいし、要らない工事をしなくても済むのです。工事をしてしまってでき上がってしまってから調整をかけよう、こういうやり方は逆だということを私は申し上げたい。ですから、アメリカ軍、アメリカ側においてもそういうところにそういうものができても構わないんだ、こういう了解をとったというならば別ですよ。そういう了解もとったわけでもない。そういう了解を求めたわけでもない。そして非公式に云々という程度でこの問題を位置づけておることは非常に残念です。ですから、外務大臣も日米合同委員会の際には、こういうようなことがあるんだがどうだ、こういうお話を早く出してもらいたい、そして、この次に問われたときには返事できるようにしていただきたい、このことを強く要求して、私の質問は終わります。
#317
○中島(源)主査代理 これにて関階正君の質疑は終了いたしました。
 次に、岡本富夫君。
#318
○岡本分科員 きょうはわずかな時間でございますので、率直に御質問申し上げますからはっきりとお答えをいただきたい。
 と申しますのは、私の質問は、実は昨年の十一月三日に芦屋市の市民病院の眼科部長をやっております黒住博士が市民賞をいただいた。なぜそういうようなものをいただいて、どうなったのかということをよく調べますと、アジア眼科医療協力会、民間の金なんですが、この方は四十七年に国際協力事業団の公衆衛生の面でネパールに派遣をされた。しかし、公衆衛生面ではネパールに対する援助をすることになったけれども眼科の援助は行わなかった、こういうことから、この方がアジア眼科医療協会というものを民間団体としてつくりまして、四十八年にネパールにおいて第一回のアイキャンプ――アイキャンプというのは後で申し上げますけれども、ここで七百四十五名の開眼の手術を行った。四十九年には第二回目行きまして九百七十八名の開眼手術、それは後で申しますけれども、こういった民間人としてネパールの、発展途上国の人たちに直接開眼手術をして非常な親日の意識を持たしておる。
 そこで大臣、御承知のように国際化時代を迎えて、自由諸国で世界第二位の我が国が発展途上国に対するところの協力は世界平和のためにはどうしても必要だ、こういうことで既に国際協力事業団は、外務省が主宰してつくっていろいろやっておるわけでございますけれども、こういった面で大臣の御所見はいかがでございましょうか。と申しますのは、昨年でしたか、メキシコ地震のときにも、お金は出したけれどもそういった直接的な救済がなかった。イギリスの方では相当うまくいった。そういうことですから、こういった医療援助に対するところの国際協力は私は大変必要だと思うのですが、まず大臣の御所見を伺いたい。
#319
○安倍国務大臣 我が国としましては、これほど経済的に大きな国になったわけですし、これからの国際責任というものを考え、我が国の役割というものを考えるときには開発途上国に対する援助は積極的に進めなければならない、こういう基本的な考え方を持っておりまして、六十一年度から第三次のODAの七カ年倍増計画を進めておるわけでございます。これは必ず実行をしてまいる決意であります。我が国のそういう援助は、基本的な精神は相互依存と人道主義ということで貫かれております。そうした基本的な姿勢のもとにこれまで援助を重ねてまいりました。それはそれなりに開発途上国の民生の安定、経済の向上等に非常に大きく裨益をしてきたと私は確信をいたしております。そういう中で医療援助につきましても、御承知のようにこれまでも各国は具体的なプロジェクト等について進めてきております。これも今後とも増大をしていくでしょうし、また拡大をしていかなければならぬと思っておるわけでございまして、非常に大事な援助の分野であろうと思っております。先ほどメキシコの事例もお挙げになりました。ネパールの事例もお挙げになりましたが、我々はそうした中での具体的な効果的な援助というのは確かに医療援助なんか大きいんじゃないかと思っておりますし、メキシコとかコロンビアのああいう大災害が起こったときは医師団とか医療器具であるとか薬品だとか当地に直ちに提供いたしまして、これはそれなりに大きな評価を得たのじゃないだろうか。帰ってこられた医師団からの話を聞きましても、大変現地で喜ばれたと思っておるわけでございますが、さらにそうしたものをもっと組織的にして、そうした大災害が起こったというようなときにはもっと効果的に、そして機動的に行われるように国際緊急援助体制を今度つくることにいたしまして、JICAで十億円予算を今度計上いたしましてこれを進めてまいりたい、ようやくそういう体制もできたわけでございます。これはこれからの日本の当然行わなければならない援助の一つの方向であろうと思っておりますが、そういう中でますます医療協力といったものは非常に大事になってきますから、それは岡本委員の年来の御主張でもありますし、我々もそういう点は十分認識もしておりますし、これはさらに具体的に積極的に進めてまいりたいと思います。
#320
○岡本分科員 国際協力事業団の総裁おいでになっておりますね。――この年次報告を読ませていただきましたが、この中でたくまんありますから、例としてネパールに対する医療協力事業について御報告をいただきたい。
#321
○有田参考人 お答えいたします。
 先ほど大臣も申されましたように、医療協力というのは大変重要な分野で、また今後も要望も多くなるであろうし、事業団の事業としても拡大してまいると思います。
 ネパールにつきましては、かなり前から医療協力をやっております。既に終了したものは結核対策でございますが、国立中央総合病院の結核対策に協力した。次いで、西部地域の公衆衛生対策というのがございます。これはヘルスポストというのをたくさんつくったわけです、山地の方に。そして、そこからいろいろ検査のために血液とかたんとか、そういうものを持ってきて検査をしてやるというような仕事をいたしましたし、その後現在進行中のプロジェクトは、どうもネパールもそういうヘルスポストをたくさんつくっても行く医者がいない、医者をもっとつくるのに協力してくれということで、ただいまはトリプバン大学の医学部で医学教育をやっております。それから最近は家族計画というのを協力しております。
 これが主な協力の態様でございますが、具体的には保健とか医療協力の分野でいわゆる研修員を日本に受け入れておりまして、これが累計で五十九年度末で九十四名になっている。六十年度も十名受け入れておる。また専門家としては七十八名送っており、六十年度には二十三名が派遣済みである。機材は累計で七億二千万円、六十年度には五千三百万円の機材の供与を予定している。また、御承知の青年海外協力隊ですが、ここから看護婦、保健婦という種類の者を送っておりまして、今まで協力隊で七十七名出ておりますが、その中で現在派遣中の隊員は看護婦が六名、それから理学療法士、栄養士各一名、計八名が出ております。
 また、御承知のように無償資金の供与ということを最近外務省の指示で私どもやっておりますが、これは先ほどお話し申し上げた西部地域の医療施設の建設とかトリプバン大学の教育病院の建設、それから看護学校の建設、カンティ小児病院の医療機材整備というようなものを行っておりまして、供与額は五十一億円に上っております。
 それが事業団の現在実施しております、あるいは過去に行いました協力の態様の概略でございます。
#322
○岡本分科員 今御説明いただきましたけれども、この国際協力事業団は目の方の援助は行っていないのじゃないだろうか。御承知のようにネパール、この国は、栄養失調もあるのでしょうが白内障による失明者が非常に多い。そこで、私が先ほどお話ししました以外にまだ五十五年には三百五十六名の開眼手術、それから五十八年には二百六十二名の開眼手術を行っておるわけです。
 アイキャンプというのは、御承知と思いますけれども数少ない眼科の医者を有効に活用して地方の町や村にもその恩恵を受けてもらうためにネパールで行われている野外開眼活動のことであって、初めはインドで行われた方式らしいのですが、このメンバーの構成は眼科医が一名、医療助手それから眼鏡士、看護婦、マネージャー等から成る十人ばかりで、すべて無報酬で行っておるそうであります。この人のこの本を見ますと、ネパールでは一人の盲人を救うのに薬品、材料費を含めて大体五百円あれば足りる。余り数が多いものですから、両方失明しておる人は一つだけ、片一方だけしか、それで生活できる。両眼やっておるとたくさんできないというような非常な苦労をしながら今日まで奉仕活動を続けておるわけです。これについて外務省は御認識はありませんか。こういう報告を受けたことありますか、どうですか。
#323
○藤田(公)政府委員 ただいま先生の御指摘になられましたネパールにおきますアジア眼科医療協力会の活動につきまして、極めて献身的な御活動をなさっているということで私どもも高く評価を申し上げております。
 アジア眼科医療協力会との連携ということで申し上げますと、委員も御承知かと思いますけれども政府ベースでの協力との連係プレーということで、国際協力事業団からカトマンズの眼科病院に対しまして医療機材の供与という形でございますとか、アジア眼科医療協力会の会員のお医者様を国際協力事業団の専門家という形で派遣をいたすというような形で協力をいたしております。
 そのほかにアジア眼科医療協力会のアイキャンプ自体ということをとってみますと、アイキャンプの御活動に大使館ないし国際協力事業団としての便宜を供与申し上げているという形で協力を申し上げているというのが今の状況でございます。
#324
○岡本分科員 どうも今の御報告は余りそのまますっと受けられないと私は思うのです。と申しますのは、よく調べてみますと、大体五十九年度のここの決算を見ますと収入で二千万余り、支出が千六百万ですか、どこからこういう資金が提供されておるかをいろいろ調べますと、PTAとかライオンズクラブとか、あるいはまたあちこちの病院の看護婦さんだとか、いろいろなところから少しずつ寄附金を集めてこれを運用しておる。また読売新聞、この事業団から何ぼか出しておる。最近は日本テレビも何か出してやろうというところまで来ておるらしいのですけれども、この内情を調べますと、国際協力事業団から何の手当も出ていないのではないだろうか。特にここの専門家の先生方やいろんな人の話を聞きますと、こうして協力をしておるんだから政府の派遣員として扱っていただけないだろうか、そうすると公用のパス等々も出る。今はただ民間でありますから、観光ビザで行く、こういうことで向こうでも制約される。こんな立派な仕事をして国際親善に尽くし、また人道問題を解決しておる、こういう団体にもう少し手厚い保護ができないのだろうか、こういうことを考えるわけですが、この点についてはいかがでしょう。
#325
○藤田(公)政府委員 先ほど私が申し上げました御説明は、このアジア眼科医療協力会に対しまして政府として直接補助金というような形で資金の協力を申し上げているということではございませんで、第一はアジア眼科医療協力会の協力しておられるネパール側の病院に対しまして、日本から行っておられる先生方が必要であると言われました、眼科用の機材でございますけれども、これは昭和五十六年度でございますが、一千六百万円相当をネパール側のカトマンズ眼科病院というところに供与をいたしまして、この先生方の御活動に便ならしめたというのが第一点でございます。
 第二点は、アジア眼科医療協力会所属の眼科医の方お二人及び技師の方お一人、五十六年から五十七年にかけまして国際協力事業団ベースの専門家ということでネパールに派遣をいたしましたのと、次の年五十八年にやはり技師の方を一名同じくJICAベースの専門家でお送りしたということでございまして、今委員の御指摘の収支決算書に載るという形での資金援助というものは行っておりません。
 それから、一般的に結論部分として先生の言われましたこの民間NGOと申しますか、その協力活動について積極的に政府としても力を入れるべきではないかという御指摘につきましては、政府も直接ないしは国際協力事業団を通じまして、補助金の形でございますとか、それから政府援助と民間の協力との有機的な連係プレーでございますとか、民間NGOの組織化のための補助でございますとか、そういういろいろな形で協力を活発化させつつあるというのが現在の状況でございます。諸外国に比してもう少し力を入れるべきではないかという御指摘でございましたら、それは確かに他の西側先進諸国に比べますと我が国のNGO自体の歴史が比較的浅いものでございますから、政府との連係プレーの歴史も他の諸外国と比べると見劣りがするというのは御指摘のとおりかと思います。
#326
○岡本分科員 今あなたが余りにも貧弱すぎるとおっしゃったとおりでして、このアジア眼科医療協力会が発足してネパールのが始まったのが四十七年ですから、もう十年以上たちますね、十二、三年たっています。ところが、今聞いておると五十六年にわずか千六百万の医療機械をネパールに渡したというくらい、あとは本当に一人か二人ずつ協力した。協力したことには違いないけれども、その方々が本当に仕事の休暇をとったりあるいはまたいろいろなことをしながら、今度は看護婦さんも行くそうですけれども、一生懸命に何の報酬も受けないで頑張っておるわけですから、もっと国際協力事業団なりあるいは外務省としてここに援助をすべきではないか、こういうように思うのですが、この点についていかがですか。
#327
○藤田(公)政府委員 一般論といたしまして、政府ベースでの国際協力事業団を通じます専門家の派遣、青年協力隊の派遣というものに加えまして、民間ベースでの、今御指摘のボランティアというふうに言われておりますけれども、NGOのボランティア活動を政府としても積極的に支援していくべきではないかという御指摘は委員のおっしゃるとおりだと思いますし、先般外務大臣の諮問に応じるために創立されましたODAの実施効率化研究会におきましても、NGOの活動と政府の援助との連係プレーを密接化するようにという指摘もされております。したがって、六十一年度の予算におきましてもいろいろな形で補助金それからNGOの組織化、NGOの活動の研究の深化といいますか、それからNGO活動との連係プレーといろいろな形の予算が組まれている次第でございます。
 西側の先進諸国に比べると確かに比率で申しましても十分の一くらいの比率でございますけれども、これは日本のNGOの歴史自体がほかのキリスト教の伝統のございますヨーロッパ、アメリカ等と比べますと比較的浅いものでございますから、NGOの活動基金自体が政府ベースのODAに比べると非常に小さいということに根差すものだと思います。御指摘のとおりの状況でございますので、今後ともその拡充に努めていく必要があると考えております。
#328
○岡本分科員 事業団の総裁にせっかくおいでいただいたのですから、今後こういうアジア眼科医療協力会のような民間団体をよく調査の上、お話ししましたようにそこへ派遣するところの医師あるいはまた看護婦、こういった人を公用扱いとして、ひとつ申請があればあなたの方でいろいろと骨を折る、こういうように考えてよろしいでしょうか。
#329
○有田参考人 NGOの活動に関連いたしましては、今、藤田局長から御説明があったとおりでございます。私どもの事業団は政府ベースの協力をしているということでございますので、その範囲においてはできるだけ協力いたしたいと思います。
 先生御指摘のとおり、わずか五百円で開眼できるとか大変な仕事をしておられる団体だと思います。目の話は簡単なようで非常に大切なことであると思います。事業団も例えばアルジェのオランの眼科大学に年来多数の眼科医を送ってアルジェ政府から非常に喜ばれているというような事例とか、あるいは御承知のブヨから失明を伴うというグアテマラのオンコセルカ症を対象とした研究、これはアフリカにも多いわけですが、このオンコセルカ症への協力を長年やってきておりますし、最近はWHOでもアフリカのオンコセルカ症対策に乗り出したということ、あるいはネパールの近所のバングラデシュでビタミンAの欠乏症のために失明が非常に多くなるということでユニセフが広範囲に援助をしております。これには事業団の方でも協力できるかどうかということを検討したこともございます。そのように眼科ということは非常に大切だと思います。
 それからもう一つは、本当に国民のためになる協力のプロジェクトファインディングということで、このNGOが実績を上げておられるような仕事をネパール政府とも相談してできるだけ政府レベルの協力に広げていくということも大切だと思います。
 先ほどの機材供与の件も、ネパール政府から要請があって機材の供与に発展したということで、先ほどのNGOの活動と政府ベースの活動との連係プレーということでございますから、そういう点に意を用いまして、できるだけこの皆様の活躍もさらにネパール政府から喜ばれるような協力に拡大していくべきだと思いますし、そのラインに沿って私どもできるだけの努力をいたしたい、このように考えます。
#330
○岡本分科員 政府が喜ぶだけじゃなしに、向こうの住民が喜ぶようにひとつお願いします。
 そこで最後ですが、最近厚生省は発展途上国の医療援助について国際委員会を設けて検討を開始するということを聞いておるのですが、これはどうなんですか。
#331
○佐藤説明員 我が国の保健医療水準の向上は相当なものでございまして、平均余命の伸長とかあるいは乳児死亡率の低下というような成果によってその水準の向上がなされておるわけでございますが、この成果、技術あるいは経験を生かしまして発展途上国に対する医療協力を積極的に推進したい、こう考えておるわけでございまして、こういう観点から省内におきましてプロジェクトチームを設けたわけでございます。このチームの中で今後医療保健対策の推進すべき対策等について十分検討してみたいと思いますが、その際特に開発途上国において死亡率が高い、しかも健康上重要な問題になっている感染症等について重点的に検討していきたい、こういう計画でございます。
#332
○岡本分科員 もう時間が参りましたから、これをもう少しお聞きしようと思ったのですが次の機会にしまして、大臣、最初にお答えいただきましたように、私もアフリカに参りましたときももうちょっとこうしていただけたらというような、非常な強い要望があったわけです。どうかひとつ手厚い、向こうの住民が一〇〇%はいきませんけれども、親日あるいは人道問題、この二つの面からもぜひ我が国の責任を果たせるように御配慮をいただきたい。最後にあなたの確信のある御答弁をいただいて終わりたいと思います。
#333
○安倍国務大臣 経済協力、経済援助の中で医療援助、医療協力は極めて重要な部門である、こういうふうに考えておりますし、この点についてはさらにいろいろと検討もしながらこれを拡大、充実していきたいと思っております。
#334
○岡本分科員 終わります。
#335
○中島(源)主査代理 これにて岡本富夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、左近正男君。
#336
○左近分科員 私はきょうは国際人権規約、人種差別撤廃条約について二、三、御質問をしたいと思います。
 まず冒頭、大臣の見解を聞きたいわけですが、大臣は積極的に国連外交を進めておられるわけですが、国連の求めておる人権、平和という問題について大臣としてどのようなお考えをお持ちなのか、所信を聞かせていただきたいと思います。
    〔中島(源)主査代理退席、平沼主査代理着席〕
#337
○安倍国務大臣 基本的な人権の擁護なくしては真の平和は達成できない、こういうふうに考えております。こうした観点から国連憲章の諸目的さらに諸原則に従いまして、さらにまた憲法にのっとりまして、平和の維持、人権の擁護、尊重のために積極的に努力をしていかなければならない、そういう決意を持って臨んでおるわけであります。
#338
○左近分科員 その立場を今後積極的に進めていただきたいと思いますが、そのためにも国際人権規約については一九七九年に締結されたが完全批准されておらないわけですね。経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、このA規約についてどの部分が批准されていないのですか、我が国として。
#339
○中平政府委員 お答え申し上げます。
 三つの留保をしておるわけでありまして、まず第一に、A規約の第七条(d)の「公の休日についての報酬」というところでございます。第二は、第八条一項(d)のストライキをする権利についての規定というところでございます。それから第三は、第十三条二項(b)及び(c)の「特に、無償教育の漸進的な導入」という点についてでございます。
#340
○左近分科員 これらの三項目について批准するに当たり、日本として、我が国としてどんな問題点があるのですか。
#341
○中平政府委員 まず第一に「公の休日についての報酬」の点でございますが、国民の祝日に賃金を支払うか否かにつきましては労使の話し合いにゆだねるのが適当であるということでございまして、法律をもって賃金の支払いを強制するのは適当ではないのではないかという考えでございまして、留保をつけた次第でございます。
 それからストライキをする権利についての規定でございますが、いわゆる労働基本権について規定したものでございまして、ストライキをする権利を定めておりますけれども、争議行為の禁止に関しまして同条と我が国の関係法令の定めるところが必ずしも一致しないということもございまして、我が国の現状にかんがみまして留保したものでございます。
 それから第三に「無償教育の漸進的な導入」の件でございますが、御存じのように後期中等教育及び高等教育につきまして、我が国におきましては私立学校の占める割合が大きいわけでございます。私学進学者との均衡等から国公立学校につきましても妥当な程度の負担を求めるということに現在日本政府の方針としてなっておるわけでございますが、私立学校を含めて無償化を図るということは私学制度の根本にかかわる問題ではないか、こういうふうに考える次第でございまして、留保をいたした次第でございます。
#342
○左近分科員 今の答弁では何かかなり否定的な部面のみを大変強調されておられますが、政府としてはこの三項目について批准する意思があるのかどうか、そのために具体的に作業をやっていこうとされておるのかどうか、その点いかがですか。
#343
○中平政府委員 政府といたしましては、このA規約を締結いたしましたときにはそういう判断で留保したわけでございますが、その後折に触れ検討はしておりますけれども、特に考え方というものにつきましてその後の諸般の情勢を注目しながら検討はしておるわけでございますが、まだ留保を撤回するという結論には達しておらない次第でございます。
#344
○左近分科員 いつ批准するかという明確な見解は出せませんか。
#345
○中平政府委員 現在のところは残念ながらまだ見通しが立っておりません。
#346
○左近分科員 外務大臣は国連外交を積極的にやって、日本も自由主義諸国では非常に大変な国力を持つ国になっておるわけですね。そういう中でこういう状況は恥ずかしいと思うのですよ。
 OECD加盟国で留保している国はどこですか。
#347
○中平政府委員 OECDに加盟している国の中で留保しておりますのは八カ国ございます。我が国のほかデンマーク、ニュージーランド……(左近分科員「国はよろしい」と呼ぶ)合計八カ国でございます。
#348
○左近分科員 二十四カ国中八カ国が留保しているということですか、OECDの。
#349
○中平政府委員 はい、さようでございます。
#350
○左近分科員 二十四カ国のうち八カ国だけですよ、留保しているのが。これは恥ずかしいと思いませんか。大臣、どうですか。ちょっとこれは積極的に答弁してくださいよ。
#351
○安倍国務大臣 これはやはり国際的には日本……(左近分科員「大臣も恥ずかしいでしょう、外国へ行くのが」と呼ぶ)いや、恥ずかしいというよりも、やはり国際的に日本の役割というものを考えていかなければならぬと思いますが、日本は日本の政府の立場というものがあるわけですから、国内の調整等もありまして、その点はこれまでの条約なんかの批准については各国とは多少歩調の違うところもありますけれども、しかし、確実に、全体的には国際的な日本の役割を果たすという面では進んでおるんじゃないか、進めておるのじゃないかと思っておりますが、鋭意努力はしなければならぬ課題だと思います。
#352
○左近分科員 時間がありませんので、この部分についてもひとつ積極的に努力をしていただきたいと思うのです。
 次に、市民的及び政治的権利に関する国際規約、B規約の中で批准されていない部分はどの事項ですか。
#353
○中平政府委員 B規約の選択議定書につきましては批准しておりません。
#354
○左近分科員 この市民的及び政治的権利に関する国際規約についての選択議定書、これは個人の人権を守るためにも非常に大事な部面だと思いますが、これについては一九七九年の国会でこの人権規約を批准する際にも完全批准を強く求められた附帯決議もされているわけですね。これは政府としてはいつ批准する考えですか。
#355
○中平政府委員 先生御指摘のようにB規約を御承認いただいたときに国会の附帯決議もございます。その趣旨を踏まえまして締結に向かって積極的に検討してまいりたいと思っておる次第でございますが、現在までにこのB規約選択議定書につきまして、個人の通報に基づく国際的な検討制度でございますが、これが国際的に普遍性を有する実効的な制度であるか否かということについて必ずしも疑問なしとしないという感じがいたしておりまして、現在までその制度の運用状況について注意深く見守っておった次第でございますが、現在までのところ、この制度の運用状況は問題ないのではないか、こう考える次第でございます。
#356
○左近分科員 この議定書を締結している国は幾つあるのですか。
#357
○中平政府委員 昨年末、十二月三十一日現在でございますが、三十六カ国でございます。
#358
○左近分科員 締結しているの。
#359
○中平政府委員 はい。
#360
○左近分科員 各国とも今大臣が言われたようにいろいろ事情があると思うのです。ある中で締結している国が三十六カ国もあるというのは日本ももう少し前向きにこの議定書問題についてはとらえていく必要があるのじゃないでしょうか。これは大臣、どうですか。
#361
○安倍国務大臣 日本としましてもただ何か理由をつけておくらせているということではなくて積極的に国際的に対応していかなければならぬという気持ちで取り組んでおるわけでございますし、今後ともそうした努力は鋭意積み重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。
#362
○左近分科員 大臣もイニシアチブをとってひとつ積極的にお願いしたいと思うのです。
 そこで今まで国連の差別防止・少数者保護小委員会で日本の人権問題が具体的に取り上げられたことがあるのか、その項目とそれに対して政府はどんな見解をとったのか、簡単にやってください。
#363
○中平政府委員 先生御指摘の差別防止・少数者保護小委員会の審議でございますが、現在までのところ、非政府機関によりまして在日韓国人、朝鮮人問題、それから同和問題、それから精神病患者の人権問題などが日本に関する案件として発言されておるわけでございますが、同委員会のメンバーがこれらの案件を正式に取り上げられたことはないというふうに承知している次第でございます。政府といたしましても、NGOの発言に対しましては日本政府のオブザーバーといたしまして、これらの問題につきまして国内的に講じております諸施策につきまして国際的な誤解を招くことのないように説明をしている次第でございます。
#364
○左近分科員 それではこのB規約に関する報告書というのは批准後政府としては一回出されたと思いますが、ことしはまた報告を出す年になっているのじゃないかと思うのです。これはいつごろ出されるのですか。
#365
○中平政府委員 この点につきましては、先生御指摘のようにことしは報告書を出す年に当たっております。我々といたしましてはこの秋ごろに提出したいと考えておる次第でございます。
#366
○左近分科員 この報告書は出す前に国内では公表しないのですか。
#367
○中平政府委員 今から五年前に第一回の報告を出したわけでございますが、この報告を出す前には私どもは公表しておりません。しかしながら提出いたしました報告書は人権委員会で審議されますし、その結果につきましては公表をされておる次第でございます。
#368
○左近分科員 国連の場で報告をする前に日本の政府としてどういうような報告をされるかということについて公表して差し支えないんじゃないですか、どうですか。
#369
○中平政府委員 この報告を提出するに当たりましては、国際人権規約に基づく締約国の義務としてこの提出を行うわけでございまして、この条約の実施にかかわる事務でございますので、公表しないという方針でやっておる次第でございます。
#370
○左近分科員 いや、だから私は公表しても差し支えないんじゃないですかということをお聞きしているのですよ。何かぐあいの悪いことがあるのですか。そんな秘密にしなければいかぬことがあるのですか。
#371
○中平政府委員 別に秘密にするというような問題ではなくて、その委員会に対する義務を遂行するということで、政府として最終段階まで練りに練りましてこの報告をしているわけでございます。
#372
○左近分科員 その練りに練ったものを国内で何で報告、発表できないのですか。それは合点がいかぬな。もう時間がないからあなたわけのわからぬことを答弁したら困るよ。僕はお願いしているんだ。
#373
○中平政府委員 御指摘の点は、この人権委員会に対する報告は義務の遂行ということでやっておるわけでございまして、それは直接人権委員会に対して最初に報告するというのが筋ではないか、こういうふうに判断しているわけでございます。
#374
○左近分科員 日本の政府としてこういう考え方を国連へ報告するんだということが何で言えないのですか。時間がもうないんでやりとりをこれ以上しませんが、強く要望しておきたいと思います。
 そこで、B規約の中のプライバシーの法的保護の問題、あるいは戦争宣伝、差別等の扇動の法的禁止、これは国内法の整備をしなければ完全なものにならないのじゃないかと私は思うのですが、その点いかがですか。
#375
○中平政府委員 御指摘のB規約の中でプライバシーの権利の保護の問題もございます。それから戦争宣伝、差別の禁止についての規定もございます。そのプライバシーの権利につきましては、私どもといたしましては憲法、刑法、その他のもろもろの法令によって保護されているというふうに判断しているわけでございます。それから戦争宣伝、差別の禁止につきましては、まず戦争宣伝でございますが、現在の憲法の規定とか国民感情を勘案いたしますと戦争宣伝行為による具体的な法益侵害の事態が生ずることはないのではないかと判断しているわけでございまして、将来、戦争宣伝行為による具体的な法益侵害の危険性が生じた際には必要に応じて立法を検討する所存でございます。
 それから差別等の扇動となる人種的憎悪の唱道等の禁止に関しましては、憲法で法のもとの平等を規定しているほかもろもろの法令によって実践されているところでございまして、現行法制で規制し得ない行為により具体的な法益侵害が行われるような事態が一般化しているということが判断されるようになった場合には、」言論、出版等表現の自由との関係を考慮しつつ、これに対処するための立法を検討していきたいと考えている次第でございます。
#376
○左近分科員 差別扇動の問題は今一般的にそんなことはないとおっしゃいますが、現実にこれは部落問題、今の日本の国内で大きな差別が存在しているわけですね。その点は認識がえらい違いますね。あなたは今この社会の中に存在する部落問題について全くそういうものは差別として存在していないという考えですか。
#377
○中平政府委員 差別について差別が存在していないということを申し上げておるわけでございませんで、プライバシーの権利……(左近分科員「プライバシー問題はよろしい、僕は差別扇動の問題を言っているんだ」と呼ぶ)それは存在していることは承知しておる次第でございます。しかしながら、法律でおおむねカバーされておるというふうに判断しているわけでございます。
#378
○左近分科員 いや、十分カバーされていないから、今日多くの差別事案が出ているんじゃないですか。もう時間がないので、その点をしっかりと認識してもらって、部落解放の基本的な法律というものを政府としては前向きに取り組んでいただくということが必要ではないかと私は思います。
 そこで、人種差別撤廃条約について少し御質問をいたしますが、僕はこれは早期に完全批准をすべきではないかと思う。国連に加盟しておる百五十九カ国のうち百二十四カ国も締結をしておるわけですね。五月にはサミットがあって日本が主催されるわけで、これは非常に恥ずかしいことではないですか。これは、大臣どうですか。
#379
○安倍国務大臣 政府としましては、これは本条約の趣旨にもかんがみましてできる限り早期に批准をしなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、今いろいろと調整も含めて所要の作業を行っておるわけでございます。
 ただ、この条約に規定されておるところの処罰義務に関して、表現の自由等基本的人権との関係をいかに処理するかということなどの点を含めまして検討作業を鋭意進めていかなければならぬ、こういうふうに思っておるわけであります。
#380
○左近分科員 大臣の方から具体的に検討の作業に入るという御答弁で、ひとつよろしくお願いしたいと思うのですが、一九八三年に第二回の人種差別撤廃世界会議で宣言及び行動計画というものが決定されたわけですね。ここでも日本の政府としてはどういう態度をとられたのですか。
#381
○中平政府委員 ただいま御指摘の一九八三年に行われました第二回人種差別撤廃世界会議におきましては、先生今御指摘のように宣言及び行動計画が採択されたわけでございますが、我が国としては、全体といたしましては賛成いたしましたが、一郡について留保した次第でございます。
#382
○左近分科員 この会議では、未批准国について積極的に早期批准を求めた宣言、行動計画、こういうものについては日本の政府としては賛成されたわけですね。
#383
○中平政府委員 先生今言われましたように、国連加盟国に対しまして条約に加入するように要請しておるわけでございます。しかしながら、日本といたしましては、人種差別撤廃条約を含めまして我が国が批准しておらないとか加入していない条約につきましては態度を留保した次第でございます。
 しかしながら、先ほど大臣がおっしゃいましたように、人種差別撤廃条約につきましては、その趣旨にかんがみまして、我々としては前向きに鋭意その締結に向かって努力してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
#384
○左近分科員 先ほど大臣も御答弁なさったように、政府はこの条約について基本的に賛成であるという立場をとっておられ、また、今の御答弁ではこれから積極的に批准のための検討に入るということですが、大臣、これはいつごろには批准すると考えておられるのですか。総理になってからですか、外務大臣中ですか。
#385
○安倍国務大臣 これはできるだけ早く締結に向かって作業を進めたい。いろいろとまだ関係各省庁の調整等も残っておるわけでございます。実際残っておるわけですが、作業はとにかく進めて、できるだけ早くひとつ締結をしたい、こういうふうに思います。
#386
○左近分科員 それではひとつ積極的に、よろしくお願いします。
 この条約による人種差別の定義の問題ですが、これは人種、皮膚の色、門地、民族的または種族的出身などに基づくあらゆる区別、除外を禁止しておるわけですね。したがって私は、第一条の定義の中には、我が国では部落問題あるいはアイヌ民族の問題あるいは在日韓国・朝鮮人問題、沖縄出身者に対する差別問題、こういうものが入るのではないかと思いますが、どうでしょうか。見解を聞かしてください。
#387
○中平政府委員 人種差別というものはいかなるものかということにつきましては、諸外国の見解を現在調査しておりますし、そういうことを含めて検討している段階でございまして、先生御指摘のアイヌ、在日韓国・朝鮮人、それから同和の方その他の方が入るかどうかにつきましても、現在まだ結論を得ていない次第でございます。
#388
○左近分科員 私は、これらの問題を政府としてはきっちりと整理をしてもらわなければならない、このように思いますので、今大臣の答弁もございましたが、積極的にひとつ御検討をしていただくように、強く要請をしておきたいと思います。
 そこで、もう時間もございませんが、最後に、現実に我が国では部落問題あるいはその他の問題、差別が存在をしておるわけです。特に、この人種差別撤廃条約を批准したら、当然国内法を整備する必要があるんじゃないか。私どもは、政府としては特に部落解放の基本法というものを取り上げていただいて、その法の制定を強くこれからも要請をしていきたいと思います。今、部落問題については地域改善対策特別措置法、これは環境改善が中心となった事業法でございまして、真の部落解放を求める基本法ではないと私は思います。したがって、そういう観点から今後政府として積極的に御検討をお願いしたいし、また、私は驚いたことには、アイヌ民族の問題で、北海道旧土人保護法というような法律があるのですね。これは法律の名称からして非常に差別的ではないでしょうか。これらの問題も、私は先住民族としての権利を認めた法律に整備をしていく必要があるのじゃないか、このように思うのですが、その点はいかがですか。
#389
○中平政府委員 今御指摘の旧土人保護法につきましては、こういうことを申し上げたらまたおしかりを受けるかもしれませんが、外務省の所管でございませんので、ちょっと見解の表明を控えさせていただきます。(左近分科員「どこの所管か」と呼ぶ)厚生省だそうです。
#390
○左近分科員 私は、そういう差別の名称のついた法律が現在のこんな近代的な日本にまだあるということは本当に悲しいことですよ。その辺、大臣、よろしくお願いします。
 そこで、条約第四条で「人種的優越主義に基づく差別及び扇動の禁止」を規定しているわけですが、この第四条は本条約の基本的な条項だと私は思うのです。この条項の趣旨を政府としてはどういう受けとめ方をしておられるのか、お聞きをしたいと思います。
#391
○中平政府委員 先生御指摘のように、人種差別撤廃条約の第四条というのは非常に大きな問題だと私どもも考えておる次第でございます。特定の人種の優越または特定人種に対する憎悪に基づく思想のあらゆる流布ということとか、人種差別の扇動とか、人種差別団体またはその活動への参加を犯罪として処罰するということ等を締約国に義務づけておるわけでございます。国会におきましても、過去におきましていろいろと御質問いただきましてお答えしている次第でございますけれども、この問題が憲法で規定されております表現の自由とかそういう問題との兼ね合いで、どういうふうに調整していくかということが非常に大きな問題として我々感じておる次第でございまして、この問題の調整をできるだけうまくやっていく方向で対処してまいりたいと考えておるわけです。
#392
○左近分科員 もう最後ですから。この人種差別撤廃条約を締結をした百二十四カ国の中で第四条関係を留保している国も当然あるんじゃないかと思うのですね。しかし、OECDの加盟国では国内法でそういう工夫をしながらいろいろ調整をしておるということを聞いておるのですが、その辺の実態についてどういうような掌握をしておられますか。
#393
○中平政府委員 先生御指摘のようにこの第四条というのは非常に重要な条項でございますので、現在のところ十五カ国が留保または解釈宣言ということをやっておる次第でございます。そのうちでOECD諸国は四カ国でございます。ちなみに各国の対応ぶりを若干御紹介いたしますと……
#394
○左近分科員 時間がありませんからもういいです。
 最後に、国際人権規約の完全批准の問題。人種差別撤廃条約についての批准、これを積極的にやっていただくことを特にお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
#395
○平沼主査代理 これにて左近正男君の質疑は終了いたしました。
 次に、佐藤徳雄君。
#396
○佐藤(徳)分科員 私は、中国残留日本人孤児問題について質問をいたしますが、質問の内容にかかわる基本が外交上の問題であるという認識に立ちましたので、以下外務大臣を中心といたしまして関係者の皆さんにお尋ねをいたします。先般、予算委員会で我が党の川崎委員が残留孤児問題を若干触れられまして外務大臣の答弁がなされたことを私は聞いております。川崎議員の質問に関連するかと思いますけれども、いま少し突っ込んだ内容の問題の提起をいたしますので、誠意ある、そしてまた前進的なお答えをいただきたいと思います。
 最初に、二月十三日の朝日新聞朝刊の投書欄に「孤児の親捜し判明率あげて」と題して愛知県の中沢光男さんという五十八歳の会社員の方が次のように述べられております。最近非常に中国孤児問題に対して多くの投書が毎日、新聞に載せられておるわけでありますが、以下質問に関連をいたしますから二、三紹介をしておきたいと思います。
 まず、今申し上げました愛知県の中沢さんの中身でありますが、実はこう書いてあるわけであります。
 今朝の中国残留孤児の記事を読みながら私はこの言葉をかみしめていた。
  ほんの五、六行の記事である。しかし、その裏にかくされたものは、百ページ、二百ページ費やしても諮りうるものではないと思う。例えば「襲撃されて父母、弟妹死亡、日本人女性にけられて避難したが、その女性も川に身を投げて死亡、本人だけ助けられて……」など、三歳や四歳の幼い身で遭遇したこの世の地獄、おそらく筆舌につくせるものではなかったであろう。
  この子供たち、すなわち中国の孤児たちが肉親捜しに来日する。回を追うごとに判明率は低下しているという。子供やその親たちを悲運に投げこんだのはいったい何だったのだろう。
  気の毒なこの人たちの肉親捜しに、国はあらゆる方法、あらゆる手段をもってあたるのがせめてもの償いの一つであるはずだ。何とかして全員に喜びの涙を旅させてあげたい。日本という祖国の温かさを味わわせてあげたい。それと同時に、物心両面に恵まれてすくすくと育っている子供たちに、まちがっても身のものよだつような地獄を二度と見せてはなるまいと思う。
こう書いてあるわけであります。
 私のきょう持ってまいりましたものに、あと二つあるわけでありますが、仙台市の方が「帰国孤児教育更に充実せよ」という投書を載せられております。これは終わりの部分だけちょっと紹介しておきますが、
  第一に「言葉との苦闘」に対し援助しなければならない。中国孤児定着促進センターがわずか四カ月しか面倒を見ないのは期間が短すぎる。私は兵隊当時に軍の中国語研修を六カ月受けた体験から、四十歳なかばの人々には、六カ月から八カ月、安心して日本語習得に専念できる環境を保障することが最も望まれる。言葉が通じないことは、無用の誤解を生む最大の原因であり、親族とのつながりをよじれさせることにもなる。
  永住帰国した孤児たちの自立を助け、近い将来、中国の親たちとも自由に訪問し合うようになれば、日中友好の大きな力になるだろう。こう結んでおります。
 さらに三月六日でありましたが、八日市場の人でありますけれども、「孤児ある限り戦争終わらぬ」、こういう見出しであります。そして、
  貧しい人たちが国策の名の下に開拓団に加わり、信じていた祖国に裏切られたという過去は動かし難い。いろいろ問題もあるだろうが、両親に死別した孤児ではあっても、国に捨てられた孤児にしてはならない。そう考えると、私たちはまだトンネルの中にいるように思う。
代表的なものを紹介しただけにすぎませんけれども、極めて当然の事柄を述べているわけであります。
 私は、中国残留日本人孤児問題及び帰国子弟の教育問題等につきまして、何回か質問をして政府の見解をいただいた経験があります。一九四五年八月十五日に私は中国黒竜江省のチチハル市で終戦を迎えました。その後における悲惨な状態をみずから経験してきた一人であります。したがいまして、それだけに残留孤児やあるいは多くの残留婦人の問題は人ごとではないなという気持ちでいっぱいなのであります。既に戦後四十年たっておりますからそれだけに何とか解決をしてやりたい、そういう気持ちでいっぱいであります。そしてまた今紹介をいたしましたその投書の中身のとおりに国民の関心というのは非常に高まっております。三人の方の紹介をいたしましたが、その気持ちは恐らく日本国民共通の気持ちだろうと私は理解をしているわけでありますが、外務大臣の御感想なり御意見を承りたいと存じます。
#397
○安倍国務大臣 いろいろと投書等も挙げられましてお話がございました。当時を思い私自身まさに深刻な思いでございますが、孤児の訪日肉親調査につきましては、これまで中国政府及び日本国内の関係方面並びに国民の方々の多大な支持を得まして実施をしてきております。孤児の皆さんが日本を訪問されたときのテレビ等も、これは私のみでなくて多くの日本人が見ていると思います。そういう点に関するマスコミの協力等も非常に高く評価されるべきである、こういうふうに思っておりますが、今投書にもありましたように肉親の判明率というのがだんだんと下がっておるということは非常に残念に思っておるわけでございます。しかし、この調査につきましてはこれからも積極的にひとつ努力していかなければならない、これは外務省だけでなくて、もちろん関係各省、さらに国民各方面の努力によらなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。
 これはまさに人道的な問題でもありますし、日本が過去に負ったいわゆるとがめというものを今こそそういう意味で責任を持って解決していく日本全体の一つの大きな役割ではないか、責任ではないか、こういうふうに痛感をいたします。
#398
○佐藤(徳)分科員 私は昨年の七月の下旬から十日間訪中をいたしまして、孤児問題の調査に入ってまいりました。黒竜江省のハルビンとチチハルの二つの市でありますが、この二つの市で多数の孤児の皆さんや残留者の皆さんとお会いをいたしまして、数々の心境や意見を承ってきたところであります。また、黒竜江省の人民政府やあるいは二つの市の人民政府の幹部の方と率直な意見の交換も行ってまいりました。さらに帰りがけ北京におきましては、孤児問題を直接担当しております中国政府の公安部の幹部の方とも意見の交換を行ってまいりました。中国残留日本人孤児の現地調査をいたしました私が受けとめてきたものは幾つかありますけれども、孤児の皆さんの抱える問題というのは極めて深刻である。そして、かつ複雑多岐にわたっている。戦後四十年過ぎた今でも戦争のつめ跡の深さというものを改めて思い知らされてまいりました。
 中曽根総理は戦後政治の総計算を唱えておりますけれども、孤児問題が日中戦争の歴史的事実の中で発生した問題でありますだけに、まさにいまだ戦後は終わっていないと私は思うのであります。日本の中国に対する侵略あるいは旧満州に対する移民政策、日中戦争等がなかったら、今日の孤児問題やあるいは残留婦人の問題は起こらなかったはずだということは言うまでもありません。それだけに、歴史的事実の上に立って日本の国家自体が反省をしなければいけないし、かつまた、その責任の所在を明確にして対応しなければいけないのではないか、こう私は考えるわけであります。
 そこで、大臣にお尋ねをいたしますが、まさに戦争責任の問題をいまだ引きずっているわけでありますけれども、その戦争責任の問題と基本的な対応につきまして御見解を承りたいと思います。
#399
○安倍国務大臣 我々は、過去の日本が犯した過ちというものに対しましては深刻に反省をしなければならぬ、こういうふうに思っております。
 この孤児が発生した原因は、もちろん日中戦争に端を発するわけでありますが、主としてソ連軍の侵入によって起こったわけでございます。惨たんたる状況になったわけでありますが、しかし四十年たって今日、中国政府がまさに人道的な見地からこの孤児を日本に帰していただいて、そして肉親との対面の道を開いていただいているということに対して、我々は心から感謝をするわけでございます。同時にまた、日本もこれまでの日本が過去の歴史において犯した責任というものをやはり痛感しながら、この残留孤児問題には対応をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
#400
○佐藤(徳)分科員 後段お答えになりました、日本が犯した責任であるだけに真剣になって取り組まなければいけない、私も全く同感であります。
 それで、具体的に幾つか、そういうことを前提にいたしましてお尋ねをしたいわけであります。
 今私のところにたくさんの手紙が中国から参ります。きのうも三通参りました。これはまさに判明した方とあるいは未判明の方とそれぞれいらっしゃるわけでありますが、自分が日本人孤児だとわかってからの心境というのはもう大変な苦痛であったし、そして実は苦い経験を持ってきていることは言うまでもありません。時間もありませんから引用することは省きますけれども、きょうのお昼のテレビニュースを見ましたら、現在第三班が来ているわけでありますが、まだ一人も面接がないという非常に痛ましい状況に接しているわけであります。同時にまた、新聞が掲載をしておりますように、毎回判明率が下がっているということについても御承知のとおりであります。したがって、孤児問題に対するボランティア活動というものがかなり全国的に行われておりまして、私などもそのボランティアの幾つかの団体の方と現在なお接触を続けているわけであります。本来私は、先ほどの外務大臣の答弁の中にありましたように日本が犯した責任であるならば、ボランティアの人たちと同時に、それよりもまさに先行して政府がその対応に全力を尽くさなければいけない、こういうふうに常々実は考えているわけであります。しかし、ボランティアの人たちが行いました今日までの仕事というものは私は高く評価したいと思いますし、政府もそのことを受けて今後その対応を図っていただきたい、こう思っているわけであります。私も幾つか個々の問題について手がけをいたしましたが、やはりボランティアの人たちには限界があるのですね。やはりその限界以上のことはできない、それは政府が乗り出さなければだめだ、こういう問題がたくさん実は今山積ををしているわけであります。それだけに、前段申し上げたのでありますが、中国政府との交渉も急ぐべきであるし、それから、日本の政府自体が積極的に、しかも敵意を持って当たるべきだということを、ひとつこの場で提言をしておきたい、こう思うのであります。
 今私が判断をいたしますところの解決をしなければならない緊急課題は幾つかあるということで整理をしてみました。
 すなわち、その第一は、残留孤児の訪日調査期間が現在では極めて短い。多分十二日だと思いますけれども、非常に短い。ですから、訪日調査期間をもっと延長すべきであるというのが、私が整理をした緊急課題の第一であります。
 それから第二の問題は、未判明孤児であっても永住帰国を希望する者を日本政府が受け入れることにはなりました。なりましたが、これは極めて大きな手がかりがある者に限定をされているという事態であります。そしてこれは御承知のとおり、身元引受人がなければ帰国できない仕組みになっているわけであります。したがって、身元引受人と帰国希望者との関係を一体どうするのか。さらに、私の主張は、本来的には日本の政府が身元引受人になるべきだというのが前々からの主張であります。
 帰国者の、いわゆる判明、未判明にかかわらず帰国後における対応、具体的に申し上げるならば、住宅問題あるいは生活問題、日本語習得の問題、就職の問題並びに子供たちの学校問題等が解決を急がれている。政府の対応をひとつ明らかにしていただきたいと思いますが、お答えをいただきます。
#401
○後藤(利)政府委員 佐藤先生がこの問題につきまして非常に御熱心に、いつも委員会で御質問いただいたり、あるいは昨年中国からお帰りになりましてからわざわざ私の部屋にお越しいただきまして細かくお話を承りまして、大変ありがたく思っております。それから、たしか先日の予算委員会での川崎先生の昭和七年の予算委員会の記録も、私拳々服膺さしていただいております。
 今、先生御質問の具体的な点でございますが、これは御案内のようにいろいろな関係省庁にまたがっておりますけれども、私ども、先ほど先生の御質問に対して大臣からお答えいただきましたように、外務省も一つの大きな中国との関係、それから戦争に対する反省を踏まえて、当然当事者の重要な一員としていろいろな協議にも参画しておるわけでございます。今、第十回の訪日調査ということで第三班が参っております。先ほど先生まだ身元の判明者が一人もおられないというお話を、私がもし聞き違いでなければ伺いましたけれども、私どもの承知する限りは第三班は二月二十八日から来られて三月十一日までの間、四十人でいらっしゃいます、そのうち六人の方が身元が判明されていると伺っております。ただ、御指摘のようにだんだんと判明率が下がってきて、最近一年くらいは平均二五%くらいであるというようなことで、ひところの四〇%とか五〇%に比べると落ちていることは事実だと思います。
 そこで、具体的な御質問でございますが、十二日間の滞在期間という点については、先生御案内のように中国側とも一応その時点において合意された期間でございます。ただ、それを踏まえまして面接調査あるいは対面調査を行ってきたわけですが、帰ってこられる孤児の方等からこの点についてはもう少し延長できないかという声がだんだん強くなっているという御指摘は私どももよく承知しております。この点につきましては、厚生省が六十一年度残り七百人の方の訪日を予定されているようでございますが、この訪日調査の実施に当たりましては滞在期間を延長する方向で中国側と協議を進めていきたいという予定と承知しております。具体的にこの問題が十二日以上になるということを私どもも希望しておりますし、外務省としても厚生省ともまたさらによくお話をしていきたいと思っております。
#402
○佐藤(徳)分科員 今の答弁に期待をいたしますから、ぜひひとつ両省で話し合って、やはり短過ぎますね、京都へ連れていくのも結構ですけれども、もっと孤児の皆さんの心情というものを判断されてひとつ十分対応していただきたいと思います。
 さてその次でありますが、御承知のとおりに埼玉県の所沢に定着センターがあります。私は三度行きました。先般去年の夏に会った方が帰ってこられました。里親になった身元引受人の方がありまして、これは未判明孤児なんでありますけれども、一家全部で引き揚げてきたわけであります。中国名李桂芹、日本名岡本恵子、一家族であります。何回か手紙のやりとりがありましてぜひ会いたいというので私がこの前出向いてみました。ところが、行きましたら一部屋、あれは八畳なんですかね、狭いでしょう、一家六人全部あの一部屋なんですね。これじゃちょっとひどいじゃないかという感じを私は実は受けてきたわけであります。先ほどの当初の指摘にもありましたとおり、とにかく四カ月間に限定されているわけでしょう。そうすると四カ月間で、御承知のとおり子供は覚えが早いですよ、しかし四十歳過ぎてから四カ月で言葉を覚えて日本の人と接触できるなんていう条件は絶対ないというふうに私は思います。だから大幅に入所期間の延長をすべきだ。同時に、いま一つつくられるそうでありますけれども、現状をよく認識をされて内部の改善やあるいは改造、そういう必要性に今迫られていますから、その検討と実現をぜひお願いしたいと思うわけであります。
 さらに、未判明孤児の一時帰国制度、これは先ほど申し上げましたようにちょっとはあるわけでありますけれども限定されます。ただ、私が接してきた大勢の方は、養父母が現在生存をしているという方は養父母を置いて自分たちだけ帰ってきたいとは思わないと言っているのですよ。それは当然だと思いますね。ところが、一時帰国制度がないために帰ってこれない、永住帰国したいと思わないんだ、だから日本の政府は何とか手をかしてくれないかと何人からも訴えられましたし、そういう手紙も今もいただいているわけであります。ひとつ後でお答えいただきます、
 それから、全国各地に日本語学級の特設と教職員の増配の問題でありますが、これは私は文教委員会所属でありますから文教委員会でやりますから、お答えは結構であります。
 それから、これは外務大臣からお答えいただきたいのでありますが、養父母に対する補償の早期実現ですね。まだ決まってないのでしょう。これは早くしないと、言っては悪いですけれども生存している可能性というのはだんだん減少しているわけですからね。この現状は一体どうなっているのかぜひひとつお願いしたい、こう思います。いかがですか。時間がありませんから簡単に答えてください。
#403
○後藤(利)政府委員 簡単に言います。
 大臣にお答えいただく前に、一番最初の、特に御年齢をとられた方の新しい言葉というのは、確かに私も経験しておりましてなかなか時間がかかるということでございます。これは主管は厚生省でございますけれども、同センターの拡充とかについては厚生省も心を砕いているというように承知しておりますし、受け入れ能力そのものは六十一年度は何か倍増すると伺っておりますけれども、施設の拡充あるいは改善については当然さらに検討する余地があろうかと思います。私どももできるだけ御協力いたしたいと思っております。
 それから孤児の一時帰国の旅費の問題につきましては、ただいま先生の御指摘のような問題点があると伺っておりますが、何せ財政事情の問題がございますので、とにかく厚生省としては六十一年度に残りの七百人の方の訪日をまず最優先して、それを踏まえた上で財政事情を踏まえながらさらに孤児の二度目の来日等についての検討をしたいというように承知しております。この点も私どもとしても今後とも十分考慮に入れていきたいと思います。
 それから第三点の御指摘の点でございますが、御案内のように一昨年の三月十七日に口上書が交換されたわけでございますが、現在、この扶養費支払い援助の実施細目につきましては、率直に申し上げましてなお日中間で技術上の細目について最終的な調整が行われております。私どもも非常に時間がかかるのは遺憾でございますけれども、やや技術的な問題について両国間でさらに調整する要があると思いますが、そう遠からずこの問題が解決するということを私どもも期待しておりますし、また努力をしていきたいと考えております。
#404
○安倍国務大臣 今局長から答弁いたしましたように、向こうに残っておられる養父母に対する扶養費の問題につきましては原則は今局長の答弁のとおり決まっておりますが、細部について目下鋭意交渉中ということで、早くこれが実現することを私期待をして努力したいと考えております。
#405
○佐藤(徳)分科員 皆さん、特にボランティアの皆さん、非常に期待をしておりますから、ぜひひとつよろしくお願いいたします。
 それで大臣、これは第一次の訪日調査に来た方で渡辺珠江さん、これは肉親判明したのですけれども、最近「遙かかなる祖国への道」という本を出されました。これは大変いい本であります。一度お読みください、お薦めしておきます。
 時間があればいろいろなことを申し上げたいのですが、もう時間も余りありませんから言いますが、つまり言っていることは何だと言ったら、たくさんの方が引き揚げてこられている、しかしやはり言葉の壁ですよ。もうこの障害に参っておるわけであります。現実の厳しさはまさに言葉の障害であります。そこで問題は、中国の現地に日本語学校をつくるべきだ。しかしこれは外交上の問題で非常に難しい点も私も知っております。どういう点がどうなるのかも私も大体知っているつもりなんでありますが、私の県の福島県引揚者団体連合会の会長さんの滝田さんという方がハルビンの黒竜江大学に滝田日語学校というのを設立いたしました。しかし一年間で終わったわけでありますけれども、結果的には経費の問題で参っちゃっているわけですね。それで、中国の幹部の方とお会いをいたしましてこの問題についていろいろ話をいたしました。異口同音に言っておりますのは、これは日本政府の態度一つだと言っているんですね。これは中国の公安部の方もそう言っておりますし省政府の幹部の方もそう言っているのです。だから日本の政府自体がもっと乗り出せば可能でしょう。土地は提供いたします。ただ、孤児の皆さんだけを対象にしていいものかどうかというのは問題がある。これは内政干渉の問題もありますから、その点はいろいろ吟味をしなくてはいけないと思いますけれども、大臣どうですか。帰国前に一定の日本語を覚えさせて帰ってくれば生活に溶け込むことができる、こういう条件をつくるのには現地に日本語学校をつくるというのが一番いい、私はこう思っておるわけであります。
 同時にまたボランティアでやっている皆さん方に対しても、現地でやっているわけでありますから、例えば今までハルビンでやっておったでしょう。現在チャムスでやっているわけでしょう。そして方正県でやっておるわけでしょう。みんな自前でやっておるのですよ。それだけ戦争責任があるとするなら、大したお金でないからやはり政府が積極的に乗り出すべきだ、私はこう思っているのですけれども、その点に対してもあわせてお答えをいただきたい。
 同時に、中国現地に日本語学校をつくるということについてひとつ検討してみる気がないかどうか、お答えをいただきます。
#406
○安倍国務大臣 帰国後の孤児の日本語教育の問題は本当に大事な問題だと思っております。これは文部省、厚生省を中心にして、これまでもいろいろと努力が行われておるわけでございますが、今御指摘の点、御提案の点は、その前に中国で印本語学校をつくって、帰国後に備えて研修といいますか、勉強させたらどうかという話でありますが、これは私は財政とかそういう問題を離れて、やはり中国の国民感情というものを考えなければならぬと思うわけであります。それから、孤児が相当広範囲に広がっておるということ、この点もやはり問題はあるのではないだろうか、そういうふうに思います。したがって慎重に取り組む必要がある、こういうふうに考えますので、今お話しの点は、確かに帰ってから勉強するよりは帰る前に勉強した方がいいと私は思いますけれども、そうしたいろいろな背景というものを踏まえて少し検討する必要があるのではないか、こう。考えます。
#407
○佐藤(徳)分科員 これで終わりますが、実は先ほど紹介いたしました福島県引揚者団体連合会の滝田さんの会長名で、何回も内閣総理大臣や外務大臣、厚生大臣、法務大臣に、今私が申し上げた中身の陳情書が出ているのですけれども、ナシのつぶてだというのですね。一回の返事もない。これはまさに不親切ではありませんか。私はもっと、大臣のああいう立派な答弁があるわけでありますから、こういうふうに一生懸命やっておられる皆さんの陳情書なり要請書というものは、現状の段階はこうだから我慢してくれとか、あるいは時期を見てこうするとかという回答をしてもいいのではないか。ナシのつぶてではちょっと政府は無責任過ぎると思います。今後、ひとつそういうことのないように迅速に処理をしていただきたいと思いますが、大臣よろしゅうございますか。
#408
○後藤(利)政府委員 今の御指摘の点、外務省その他関係省庁ともよくあれしまして、先生の御指摘の点を拳々服膺いたしまして今後さらに善処したいと思っております。
#409
○佐藤(徳)分科員 終わります。
#410
○平沼主査代理 これにて佐藤徳雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、岡崎万寿秀君。
#411
○岡崎分科員 逗子市における米軍住宅建設問題に関連して質問したいと思います。
 去る三月二日、逗子の市民は米軍住宅建設に反対してリコールで市議会を解散に追い込んだわけです。これに対して防衛施設庁は、地方自治の精神を私たちから言うならば踏みにじって、あくまで米軍の要請にこたえようとされているようです。しかし、いろいろ話を伺ってみましても、なぜ池子に大量の米軍住宅をつくる必要があるのか、この点については市民にも国民にも十分納得のいく説明がなされていないように私は思います。
 そこで、お聞きしますけれども、池子の弾薬庫は米海軍の横須賀兵器部の所管であったわけですけれども、現在はどうなっていますか。
#412
○芥川説明員 お答えいたします。
 先生御案内のとおり、防衛施設庁というところの業務は、在日米軍に対しまして施設及び区域の提供を行うというものでございます。したがいまして、在日米軍の組織でありますとかあるいはその運営等については当庁の所管ではないわけでございますけれども、ただいまの御指摘の池子の住宅地区及び海軍補助施設というところにつきましては、現在横須賀にございますところの在日米海軍司令部というところが管理責任を負っておるというふうに仄聞いたしております。
#413
○岡崎分科員 そうしますと、兵器部ではなくなったわけですね。
#414
○藤井(宏)政府委員 ただいま防衛施設庁の方から御答弁申し上げましたとおり、現在横須賀にある在日米海軍司令部が管理の責任を有しておるということでございますが、その中でいかなる部署がこれを担当しておるかということにつきましては、米軍内部の問題でございまして政府として一一承知する立場にないわけでございます。
#415
○岡崎分科員 大量の米軍の住宅をつくろうというわけでしょう。その所管も知らないでどうして仕事ができますか。また知ろうともしない。これは質問の項目としてきのうお伝えしていたはずです。名称は昨年十一月に池子住宅地及び海軍補助施設というように変わっておりますけれども、その所管がどこに変わっているのか、それさえも報告なさらないのですか。言ってください。
#416
○藤井(宏)政府委員 先ほど申し上げましたように、米軍内部の所管がどういうふうに変わるかということについて政府が責任を持って公式の場で一々コメントをする立場にないということを申し上げているわけでございます。
#417
○岡崎分科員 一々とは何ですか。国会で正式に、聞いているのですよ。所轄が変わったくらいのことは言ってくれてもいいのじゃないですか。変わっていないなら変わっていないと。変わったことを承知していないということでよろしゅうございますね。
#418
○藤井(宏)政府委員 先ほどから繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、米軍の所轄について、どこでどういうふうになっているかということについて御答弁申し上げる立場にないということを申し上げているわけでございます。
#419
○岡崎分科員 池子の人たちがあれだけ緑を守りたい、自然の大公園をつくりたいという願いで反対をされているわけです。そういう人たちを説得するためには、米軍の所轄ぐらいのことは調べておっしゃってもよろしいと思うのです。極めてそれは無責任だというふうに考えるわけであります。
 昭和五十八年十月六日、衆議院内閣委員会で塩田防衛施設庁長官が、「現在横須賀地区で提供している住宅が約二千戸、それに対しまして不足が約千三百」というふうに答弁しています。これは恐らく基地外のことだと思いますが、この状況は今日も変わっていませんか。
#420
○志滿説明員 住宅が不足しているという状況については変」わりません。
#421
○岡崎分科員 不足している状況については変わらないということですが、千三百ということについても変わりはありませんか。
#422
○志滿説明員 千三百の不足についても変わりません。
#423
○岡崎分科員 米軍の方から要請があってからもう既に数年たつわけです。独身者は結婚もしますし、結婚した人は子供も生まれるわけです。また子供も成長しますと一部屋では足りなくなってくることがありますね。住宅条件というのはいろいろ変化があるのですよ。何年たっても千三百に変わりないということはあり得ないでしょう。そういう変化について正確につかまれているかどうかということでお尋ねしたのです。
 そうしますと、基地外に今二千戸あってそしてうち千三百戸不足しているというふうに理解してよろしゅうございますね。
#424
○志滿説明員 お答えいたします。
 米海軍の横須賀地区の施設、区域におきます家族住宅の数は、横須賀基地、上瀬谷通信施設等含めまして約二千三百戸でございます。それから、御質問の基地外の民間住宅の件でございますが、私ども防衛施設庁の業務は、在日米軍への施設、区域の提供等でございまして、それ以外の基地外の風間住宅の借り上げ戸数等についての問題についてはお答えする立場にございません。
#425
○岡崎分科員 塩田防衛施設庁長官の当時のあれによりますと民間から借りているという話になっていますよ。だから二千戸というのは、あれは民間から借りているのではありませんか。基地外じゃありませんか。そうおっしゃっているわけですよ。
#426
○志滿説明員 横須賀地区におきます米軍の家族住宅は提供住宅及び多くの民間住宅に依存しておりまして、その嶋間住宅の大部分が狭隘かつ老朽化しているなどのために、また単身赴任者で家族との同居を希望しておる者がいるために現状においては約千三百戸が不足していると承知している次第でございます。
#427
○岡崎分科員 読み上げられていますが、どうもはっきりしませんね。
 施設庁によりますと、現在米軍基地内には千三百というふうに聞いたのですが、何か今の話では二千三百なんですね。いいです、その数は。
 基地内に住宅建設する余地はございませんか。
#428
○志滿説明員 先ほど千三百戸と申し上げましたのは横須賀基地の生宅戸数でございます。
 私ども、池子地区に住宅を建設する計画を立てる過程におきましていろいろ既存の米軍施設等について調べましたけれども、例えば、横須賀基地は非常に密度が高いためにその余地がないし、ほかの施設等についても、上瀬谷等につきましては電波障害の関係があるとか、いろいろな事情で余地がございません。
#429
○岡崎分科員 そちらの理由は現在の不足だと盛んに言われていますね。しかし、実際にもし池子に米軍住宅ができるとするならば何年先のことになりますか。現在の用に足りるということになりますか。
#430
○志滿説明員 池子におきます米軍家族住宅建設事業の建設工事の期間は、着工後七年間を計画しておるわけでございます。
#431
○岡崎分科員 大臣がお見えになりましたので、今の問題はまた後に再度触れたいと思います。
 横須賀を母港としている空母ミッドウェーについてですが、昨年の米国防報告ではミッドウェーを取りかえる計画を検討すべきであろうというふうに記入しておりました。ことしの国防報告によりますと、特にミッドウェーを交代させる必要があるとより明確になっているわけです。お帰りになった早々でございますけれども、外相、これについて情報を得ていらっしゃいますか。
#432
○藤井(宏)政府委員 ことしの国防報告におきましては、将来のことを考慮すれば二十一世紀にかけて空母十五隻体制を維持するために、米海軍としては一九九〇年初頭にも後継空母の発注が必要となろうという趣旨のことを述べております。
#433
○岡崎分科員 一九九〇年の初頭にもですね。わかりました。
 レーマン米海軍長官も二月五日、米下院軍事委員会の公聴会での報告の中で、我々はミッドウェーを二ミッツ級に交代させるために、一九九二会計年度において長期の資金を要求する方針だ、こういうふうに述べられています。これは一九九〇年代に現在横須賀を母港としているミッドウェーを二ミッツ級に交代させるという方針ということになりますけれども、これは日本とのかかわり極めて重大でございます。この方針は承知されていますか。
#434
○藤井(宏)政府委員 御指摘のとおりレーマン海軍長官はそのような趣旨の証言を行っております。と申しますのは、その背景といたしましては、五〇年代、六〇年代に建艦されました空母が古くなってくるということで、一九九二会計年度においてミッドウェーの退役に備えて新しい予算を要求するつもりであるという趣旨を述べているものと了解しております。
#435
○岡崎分科員 これは日本に対しても少なからぬ影響を与えるわけでございます。ミッドウェーの場合は通常型でありまして五万トン級なんですね。しかし、二ミッツ級になりますと八万トン級で原子力空母なんです。カール・ビンソンもその一つなんですけれども、これがミッドウェーにかわって横須賀を母港とすることになりますと、そのもたらす影響はいろいろな面でも大きいと思うのです。ミッドウェーの比ではないというふうに考えます。この場合、大臣、母港化をお認めになるわけですか。いかがでしょうか。
#436
○安倍国務大臣 またこれは大分先の話でございますから、それからやはり艦船等も時代とともに進むわけですから、改造とかあるいは新船等あり得ると思います。
 我々はやはり日米安保条約という立場からアメリカの艦船の寄港に対してはこれを認めるという基本姿勢には今後とも変わりはありません。
#437
○岡崎分科員 そうしますと、ミッドウェーが二ミッツに変わることも承知している、ミッドウェーは横須賀を母港化していますから、当然今度は二ミッツ級の空母が横須賀を母港化することも承知しているし、安保条約上の手前、これを拒否する立場ではない、そのようなのが政府の姿勢だというふうに了解してよろしゅうございますか。
#438
○藤井(宏)政府委員 先ほどから申し述べておりますとおり、一九九二会計年度において長期先行予算割り当てを要求するつもりであるということをことし議会で証言しておるわけでございます。一九九二年と申しますのは今から大分先のことでございますし、そこから先の長期先行予算割り当てを要求するつもりであるということでございますので、大変に先の計画でございます。したがいまして、その先の計画がどのようになるのかわからないわけでございますし、その将来のことにつきまして現在日本政府としてどういう対応をするのかということを確たる御返答を申し上げかねるということでございます。
#439
○岡崎分科員 いずれにせよミッドウェーが二ミッツにかわることについては承知されているし、ミッドウェーが九〇年代初めに交代することについては知っていらっしゃるわけですね。これは今後重大な問題を含んでいるということを指摘しておきたいと思います。
 報道によりますと、防空ミサイルを装備した最新鋭のAEGIS艦が日本に配備されて、横須賀がその母港になることが有力だというふうに言われていますけれども、非公式でもそのことが伝えられていますか。
#440
○藤井(宏)政府委員 アメリカが一般的に艦船の近代化を考えておるということはいろいろな資料等から存じておりますけれども、ただいま御指摘になりましたことについて具体的には存じておりません。
#441
○岡崎分科員 一九八五会計年度のアメリカの軍事建設計画の中で、横須賀基地の係船用ドルフィン建設に関して説明がこういうふうになされています。
  新しいクラスの駆逐艦や巡洋艦が一九八六会計年度には入港するが、これらの艦艇は、現在第六バース、第七バースを使用している大部分の艦艇にくらべ、長さも長いし、トン数も大きい。こうした大型艦艇は、現在ある桟橋からはみ出し、悪天候のもとで制御するのが容易でない。それで、この工事計画では、係留用の杭を多数まとめて打ち込み、これに小道を渡して、桟橋の使える長さを延伸するのである。
こういうふうに書いてあるわけですが、この新しいクラスの駆逐艦、巡洋艦というのは、アメリカの国防報告によってもAEGISシステムの艦船であるということは指摘されているとおりです。そういう点からいいますと、現在横須賀で工事が進められておりますけれども、まさにこれはAEGIS艦の寄港を考えての工事じゃありませんか。どうでしょうか。
#442
○藤井(宏)政府委員 そのような記述があることは存じておりますけれども、現在AEGIS艦が寄港するということについての具体的な計画は聞いておりません。
#443
○岡崎分科員 具体的な計画は聞いていないというふうなお答えでございますけれども、現に横須賀では工事が進んでいる。そして、米軍の文書によりましても、これが新しいクラスの駆逐艦、巡洋艦だと言っているから、これははっきりAEGIS艦用にこういう工事が進んでいるということを考えることも決してオーバーではないというふうに思うわけです。
 こう見てきますと、乗組員はミッドウェーの場合は四千四百人です。二ミッツ級のカール・ビンソンになりますと、六千三百人で、千九百人多いのです。AEGIS艦の場合、配備が予想されるタイコンデロガ級で三百七十五人。巡洋艦、駆逐艦の二艦だということになりますと、この約二倍近くなるわけなんです。私は、ここから、今逗子市に米軍の住宅建設が進められているのは、先ほど言われましたように一九九二年ぐらいですか、かなり先の話ですが、ちょうどこれと時期的にも一致するわけですね。まさに、こうした横須賀の米海軍基地の強化と合わせた住宅建設じゃないかということが考えられるわけです。現在の不足でやるならば、現在解決しなくちゃいけないと思うのです。これは民間のマンションを借りるとかいろいろな方法もあるでしょうしね。しかし、建設もかなり先のことでありますけれども、こういう状況で今市民の反対を押し切ってつくられようとしている米軍住宅というものが、こういう基地建設の強化と結びついていることを私は強く指摘したいというふうに思うのです。こういうことがないと言えますか。つまり二ミッツ級の空母の乗組員などが、新しくつくられようとしている池子の住宅に住まないという保証がございますか。やはり関連あるでしょう。
#444
○藤井(宏)政府委員 最初に一つ事実関係でございますが、時期が符合するということの御指摘でございますけれども、先ほど申し上げましたようにレーマン海軍長官の証言におきましては、一九九二会計年度においてミッドウェーの退役に備え、二ミッツ級の長期先行予算割り当てを要求するつもりであるということでございまして、そこから始まるわけでございまして、それからさらに先の時点でございまして、先ほど防衛施設庁の方から説明がありました七年ということと時期が一致するわけではございません。
 それから、先ほどの御質問でございますけれども、米海軍といたしましても当然近代化ということが必要でございますし、さらに、長年月使いました老朽艦の改築等は当然に一般的に必要かと思います。そういうことで、将来一体どういうことになるかということは、先ほどから申し述べておりますとおり、現段階におきまして我が政府といたしまして確たることは申し上げられないわけでございますけれども、一つはっきりしておりますことは、現在の池子の住宅の要請は、先ほど施設庁からも御答弁ありましたように現在の需要に関連するものでございまして、現在既に千三百戸足りないということに由来するものでございます。
#445
○岡崎分科員 いずれにせよ、横須賀基地が二ミッツ級の母港化になろうとしたり、AEGIS艦の母港となろうとしてみたり、そういう強化の方向にあることははっきりしていますし、また新しく池子につくられようとしている住宅がこういう母港化された乗組員の住宅に提供されることは、はっきりしているというふうに思うのです。そういう点で、市民の人たちの反対の声はますます広がっていくと私は確信を込めて申し上げたいと思うのです。
 さて、池子基地内に鎌倉時代のやぐら、お墓なんですが、そういう遺跡がございます。これは古文書でも確認されていることなんです。防衛施設庁は今回、アセスのために三回にわたって基地内の遺跡調査をやられています。これも委託したコンサルタントが立入調査をしているわけなんです。ところが、これまで、昭和五十三年でございますが逗子教育委員会や、それからこれは昭和五十八年ですが神奈川県、これらが文化財保護法に基づいて基地内の遺跡調査の要請をしたわけですけれども、米軍はこれを拒否しているわけです。外相、こういう問題があることは御存じでしょうか。
#446
○藤井(宏)政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、政府としては、神奈川県あるいは逗子市の教育委員会などが御指摘のような文化財のために池子住宅地区及び海軍補助施設への立ち入りにつきまして米軍に対しまして要請を行ったという事実は、承知しておりません。
#447
○岡崎分科員 私たちもまたちゃんと実地に調査をしてから、こういうことがあったけれども拒否されたということを聞いてきますが、施設庁はこれを承知してませんか、所轄が違うからわかるのじゃありませんか。
#448
○志滿説明員 防衛施設庁といたしましては、立ち入りにつきまして折衝、調整する立場にございません。したがいまして、その事実について承知しておりません。
#449
○岡崎分科員 どこも知らぬわけですか。いずれにせよ、断られたのは逗子市の教育委員会であり神奈川県なんであります。
 それではお聞きしますけれども、地位協定の第十六条でも、米軍が日本国の法令を尊重するということははっきり書いてあるわけですね。池子基地内に、特に今秘密にしなくちゃいけないところはないはずでございます。そういう点から、今後逗子の教育委員会などから、文化財保護法に基づいて貴重な遺跡を調べたりあるいは保存するために立入調査をしたい、こういう申し入れがあった場合は、外相、これは米側と交渉してその実現のために努力していただけますか。そのことを外相にお答え願いたいと思います。
#450
○藤井(宏)政府委員 御指摘のように、地位協定十六条は我が国の法令尊重義務をうたっておるわけでございます。したがいまして、文化財保護法等に基づきまして逗子市なり神奈川県等の正式な手続に従っての御要請があれば、米軍の管理権との間でどういうふうにそれを調整するかということが検討されるもの、そういうふうに了解しております。先ほどお答え申しましたように、外務省の知る限り、そのような正式な御要請は関係方面に出ていないというふうに了解しております。
#451
○岡崎分科員 それでは、正式の要請があればその実現のために努力していただけますね。大臣、頑張っていただけますか。
#452
○安倍国務大臣 こちらは何も事実を知らないわけですし、そういうことはないといいますか、それは承知しておらないものですから、お答えしようがありません。
#453
○岡崎分科員 ないと言っても現に断られているわけなんです。しかし、それではこれから要請があればちゃんと米側に伝えて実現を図ってくれるかということを聞いているわけです。検討するじゃなくて、そのようにやるということをはっきり明言してもらいたいと思うのです。
#454
○藤井(宏)政府委員 文化財保護法に基づいての正式な手続を踏んでの御要請があれば、当然のことでございますけれども、それに対してできる限りの便宜を計らうようにという姿勢で米軍の管理権との間の調整を行うということでございます。
#455
○岡崎分科員 大臣、それでよろしゅうございますね。
#456
○安倍国務大臣 局長の答弁したとおりです。
#457
○岡崎分科員 では、そのように頑張ってもらいたいと思います。終わります。
#458
○平沼主査代理 これにて岡崎万寿秀君の質疑は終了いたしました。
 次に、松浦利尚君。
#459
○松浦分科員 この分科会が十分ぐらいおくれているようですから、後の沢田委員も短くするそうですので、私もできるだけ短くして延びておる時間を取り戻したいと思います。
 昨年の十一月十九日、私の「原子力平和利用三原則中の「公開の原則」に関する質問主意書」について、政府から答弁書をいただきました。これに関連をして外務省、科学技術庁の見解をまず承っておきたいと思うのです。
 その第一点は、核物質防護条約に関する批准の関連でございますが、この核物質防護条約の状況について外務省の方から御説明いただきたいと思います。
#460
○松田政府委員 お答え申し上げます。
 核物質防護条約については、これを国内的に実施する場合の特に法制面での具体的問題点について関係各省庁で従来より検討しておりますが、まだ十分に問題点を詰めるに至っておりません。現在までの検討の状況においては、法律上の手当てがさらに必要である部分があるということに承知しておりまして、今後とも各省間の検討をさらに必要とする現状にございます。
#461
○松浦分科員 この条約の各国の批准状況について御説明いただきたいと思います。
#462
○松田政府委員 御説明申し上げます。
 現在までの状況で、四十二カ国が署名を下し、そのうち米ソを含む十五カ国がこれを締結してございます。なお、発効のためには二十一カ国の締結が必要とされております。
#463
○松浦分科員 発効条件として二十一カ国の批准が必要だということですが、あと六カ国の批准についての見通し等がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
#464
○松田政府委員 私どもの調査では、近い将来にこの六カ国が充足される形はとれないと理解しております。逆に申しますと、六カ国、特定の国が近く批准するであろう、締結するであろうという明確な情報は得ておりません。
#465
○松浦分科員 ユーラトム加盟国として同時署名しておる、こうした加盟国の関係情報等については把握しておられますか。
#466
○松田政府委員 本日の時点では特段の情報はございません。
#467
○松浦分科員 我が国の法整備の関連について若干質問させていただきます。
 核物質防護措置については現状どうですか、現在の法体系でどのような問題点がありますか。
#468
○堀内説明員 核物質防護の法律関係につきましては、現在は輸送等については運輸省関係の輸送に関する法律の中で、また施設関係については原子炉等規制法の中において対応しているところでございます。
#469
○松浦分科員 現行法令で担保されるということですね。(堀内説明員「はい」と呼ぶ)
 それから、輸出入の手続についてはどうですか。
#470
○松田政府委員 お尋ねが輸出入の具体的な段取りという側面でございますれば、この点はまだ具体的な検討が進んでおりません。すなわち、このような検討についての法律的手当て全体についての特定がなされておりませんが、もし私のとり方が、先生が輸入手続や貿管令の分野での御質問でありますれば、現在の検討の結果では貿管令の運用の範囲内で対応が可能だと承知しております。
#471
○松浦分科員 貿管令の運用で対応が可能だということであります。
 それから、犯人の処罰等については現行法令ではどうですか。
#472
○松田政府委員 現行法令でほぼ対応が可能であると理解しております。
#473
○松浦分科員 それで現在一番問題になっておるのは国外犯の処罰、裁判権の設定という問題が最大の障害になっておる。この問題については何らかの法的手当てが必要だというふうに理解しておるところですが、この一点がこの条約批准に当たって我が国の法体系の障害になるというふうに理解しておるのですが、よろしいですか。
#474
○松田政府委員 御指摘のとおりでございます。この部分、すなわち国外犯の措置については何らかの法的手当てが現行法に加えて必要ではないかという見解が政府部内で強うございまして、目下その辺に焦点を当てて検討を進めているところでございます。
#475
○松浦分科員 外務大臣にお尋ねしておきますが、現在十五カ国が批准をしておる段階で、国外犯の処罰規定について何らかの法的手当てが必要だという段階に来ておるということですけれども、これの我が国の批准の見通しはどういう状況になるのか、そして、あと六カ国が批准すれば発効するわけですけれども、その六カ国の批准の様子を見てその後に対応しようとされるのか、そういった見通しについてもお聞かせいただきたいと思います。
#476
○松田政府委員 まず私から事務的な部分にお答え申し上げたいと思います。
 御案内のように、我が国の原子力平和利用については海外への種々の形での依存がございますので核物質の国際輸送は非常に大きな問題でございまして、これが安全円滑に行われることは我が国にとって非常に意義の深いことでございまして、その意味からはできるだけ早い機会に国内法制の手当てが済みましてこの発効、我が国の参加が実現することが望ましいことは当然でございまして、私どももできるだけ急ぐという方向で政府部内の検討を進めております。ただ、現状におきましては、私どもがいつ具体的に国内法制度の整備を了し得るかは確固たる見通しを持っていないところでございますが、気持ちとして急いでいるということは申し上げたいと思います。
#477
○安倍国務大臣 今政府委員から答弁いたしましたように、国内法整備を今急いでおるということであります。努力は重ねていかなければならぬと思いますが、同時にまた、この条約の締約国も現在十五カ国でございまして、発効の見通しもまだ定かでないということもあります。努力はこれからも続けていきたいと思いますが、はっきりした見通しを申し上げられる段階にはまだ至っていない次第であります。
#478
○松浦分科員 科学技術庁の方にお尋ねをいたしますが、仮定の問題としてお尋ねをするわけですから、あるいは答えにくいという面もあると思います。問題は、仮にこの条約に従った国内法の手続、すなわち刑法の手当てですね。そういうことが行われた後、仮にこの条約が批准された場合に、この条約関係で国内法の整備は終わるわけですが、その関係で仮に終わったとした場合に問題になりますのは、この核ジャックに対しては当然核の存在を秘匿するということが犯罪を防止する唯一の手段になってくると思うのですね。この条約とは完全に無関係であります。これは罪を犯した者を罰する手続ですからね。国外犯等についてこうせよということが中心に書いてある。
 問題は、これに関連をして、これが発展していきますと、核の存在を秘匿する、平和利用のための核を秘匿するということになっていきますと、我が国の公開の原則というものと矛盾した問題が出てくるのですよ。一応この条約批准に当たっては、冒頭お話がありましたように現行法令で担保されていく、こういうお話です。しかし、現在の公開というものから見て、秘匿するということは原子力政策としては全く矛盾した政策になってくるわけですが、そういう点について科学技術庁の御見解を承っておきたいと思います。
#479
○今村説明員 御説明申し上げます。
 今、先生御指摘のとおり、いわゆる核ジャック等を防止するための核物質防護対策、これにつきましてはやはりその内容、核物質の防護の措置の内容を秘密にするということで初めて有効になり得るという面があろうかと思います。したがいまして、核物質防護に関連する極めて機微な情報等につきましては、これを非公開とせざるを得ないというふうに考えております。
 しかしながら、核物質防護ということに名をかりまして、いたずらに情報を非公開にするというふうなことは、これは原子力基本法の精神に照らしましても厳に避けるべきである、したがいまして、政府といたしましても、このようなことのないよう十分関係の機関、業界等を指導していく、こういうふうな考え方に立っておるところでございます。
#480
○松浦分科員 核物質防護に係る機微な情報というのはどれまでが限度ですか。それを教えてください。
#481
○今村説明員 これはいろいろなケースがあろうかと思いますが、例えば核物質を実際に警備している警備の状況、あるいは警備員の数といったような警備の状況、あるいはその核物質を輸送する場合でございましたう輸送の日時、ルート等につきましてはみだりにこれを公開することはむしろ避けるべきではないかというふうに考えております。
 以上でございます。
#482
○松浦分科員 もう少しお尋ねをさせていただきますが、核物質を運搬、輸送するルート、日時、そういったものは完全に秘匿されるわけですね、具体的な例として。
#483
○今村説明員 もちろんその情報の公開を制限するという内容は極めて限定すべきものでありまして、必要に応じ、そのケース・バイ・ケースで判断するということになろうかと思います。
#484
○松浦分科員 公開の原則というのがあるわけですから、ですからこの防護に係る機微な情報というものの範囲を狭義に、狭く解釈をして行っていただきたい。その点については担保していただけますか。
#485
○今村説明員 今、先生御指摘のとおりでございまして、我が国の原子力基本法は、原子力の研究開発及びその利用は平和の目的に限る、また安全を旨とする大前提がございます。そのために、研究開発の利用の成果を公開するというふうなことも決められておるわけでございますが、これはあくまで国民の安全とかあるいは平和利用を守るという趣旨に出たものと思っておりますので、核物質の防護のための情報の非公開という面を極めて限定的に考えて、基本法の精神にもとることのないように十分考えていく必要があろうかと思っております。
#486
○松浦分科員 これは大臣にお願いですが、この条約、批准を急ぐという御答弁はありましたが、まだ確たる期日等の答弁はございませんでしたから、恐らくさらに政府間で研究、検討をなさると思うのですが、ただあっさりと現行法令に担保されている――確かにこの法律では担保されておりますけれども、ジャックというものに対しては秘匿するということが別な意味で出てまいりますので、今科学技術庁からお話がありましたように、この条約の批准等の研究過程でぜひそういったことが新たな意味で出てこないように、ここに先ほど御答弁がありましたように、現在の法体系の中でやれるのだということを大前提にして、批准に向かっての各省庁間の連絡等を進めていただきたい、そういう点について大臣の御見解を承って、この問題は終わりたいと思います。ぜひお願いしたいと思います。
#487
○安倍国務大臣 おっしゃるような立場で調整を進めまして、批准に向かって努力していきたいと思います。
#488
○松浦分科員 それでは、この問題はこれで一応終わらしていただきまして、改めてまた批准等の段階が来ましたら御質問させていただきたいと思います。
 それから、実は私たちがいつも海外に出張して思うことですが、本当に在外公館の皆さん大変なところで苦しい中にも我が国の外交第一線として頑張っておられます。安倍大臣非常に御理解がございまして、安倍大臣になられてから在外公館の建物はもちろん、職員の待遇等もより改善する努力をしておられるそうでありますが、在外公館に勤務する職員の生活環境、あるいはその待遇改善、今年度の予算でどういうふうになっておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#489
○北村(汎)政府委員 外務省にとりまして在外公館というのはまさに外交の第一線の拠点でございますので、そこに勤務する者ができるだけ働きやすい環境をつくってやるということが一番大切なことでございまして、安倍大臣になられましてからも非常にこの点を予算の面で重視していただきまして、この六十一年度予算案では財政当局の御理解も十分得まして、今先生がおっしゃいました生活及び勤務環境の特に厳しい地域におきまして、三つのことに特に重点を置いてやっております。
 一つは、住居環境の整備でございます。これは、できるだけその館員の宿舎を働きやすいものにしてやる、そのために官費で借り上げていくとかあるいは国有化をするとかいうことでございますが、第二に、職員の健康管理を図るということで、このためには、健康管理休暇の対象公館をふやしましたし、あるいは医務官を配置することを増員をいたしましたり、そういう点が含まれております。それから三番目には、やはり最近は非常に治安の悪化しておるところが多うございますので、治安悪化に対する対策、あるいは警備体制、こういうものを整備するために警備員などの雇用の経費を補助するというような点でも増額を図っておるわけでございます。
#490
○松浦分科員 これは大臣も御承知だと思うのですが、海外を回りまして、私は行ったたびに必ず職員の家を見てくるのですが、諸外国に比べて見劣りがするんですね。経済大国日本の在外公館職員が入っておるところと、経済大国のアメリカが入っておるところと見劣りがするんですね。そういった面については、やはり経済大国日本の第一線での担い手ですから、もっと改善をすべきじゃないか。ある意味では聖域であっていいと思うのです。何も自衛隊ばかりが聖域じゃなくて、やはり日本の外交の第一線で一生懸命頑張っている、そこの外交官の働きいかんによって日本が海外で評価されるのですから、そういった意味ではここも聖域であっていいと思うのです、思い切って予算をとって。そういう点について、ひとつお聞かせください。
#491
○安倍国務大臣 これはもう全くおっしゃるとおりでありまして、私なんかも痛感しております。大使の公邸なんかは全般的には何とか諸外国に比べて見劣りがしないようになってはいますけれども、しかし、例えば公使だとか参事官とか、それ以外の外交官の住居というものは、ほかの国のカウンターパートと比較しますと非常に落ちております。ですから、なかなか家庭間の訪問もできにくい。こちらは呼ばれるわけですが、向こうをなかなか呼びにくい、それがまた外交活動に非常に影響するということもあって、これは私も痛感しておるわけであって、何とか先進国並みにしなきゃならぬと思うわけですが、何分にも今のところは外務省予算が御承知のように大変厳しい状況でありますし、その中で足腰予算は大いに力を入れておりますけれども、こういう財政再建の時代ですから、なかなか思うようにできない。私は去年から大臣折衝で足腰予算を入れまして増加を図っておるわけでございまして、それでもやはり瘴癘比等に対する対策がどうしても中心になりまして、なかなかそうした住居等まで行き届かないということがありますが、今後はひとつ大いに御支援もいただきまして我々も頑張ってまいりまして、全体の予算をひとつ伸ばしていく。これはやはりこれからの日本の国際的な役割というものが重くなってくるだけに、そしてまた外交活動が大事になってくるだけに当然のことではないだろうか、私はこういうふうに思います。努力してまいりたいと思っておりますが、御支援のほどをよろしくお願いいたします。
#492
○松浦分科員 大臣が本当に大臣折衝に持ち込んで御努力なさったという御報告も受けました。
 そこで、今度はフィリピンの問題ですね。いろんな質問が出ました。私は別の角度からああよかったなと思ったのは、あれが平和的な政権移譲でありまして、要するにあそこで何らかの不祥事態が仮に起こったとしたら、あそこにおられた外交官の人たちというのは大変だった。もちろん我が邦人も大変だったと思うのですけれども、より以上に外交官というのが大変だったと思うのですね。そういった意味では、外交官というのはいつどういう状態になるかわからない。ですから、それはそれなりに不健康地の手当等が出されておりますけれども、しかしもっともっと充実した身分保障、そういったものをして差し上げるべきだ、私はそう思うのですよ。全体の国会なり政府がそういう気持ちにならなければ実現しないので、ぜひそれをお願いしたいということが一つ。
 それからもう一つは、不健康地というところにはなかなか家族を連れていかれないのですよ。単身赴任ですね、まあ大公使は別でしょうけれども。そうなってきますと、おのずから二重生活になるわけですね。それでは外交官が二重生活に耐え得るかということを聞いてみますと、子供さんのあれがあるということで、国内では我々と同じようにお金が要る、同時に外交官としての体面を保つ外国の活動がある、もう大変に苦しいんですね。単身赴任の中で、それぞれみんな苦しいと思いますけれども、より一番苦しいのはやはり海外に出ておられる外交官の皆さんだと思うのです。だからそういう意味では、普通の単身赴任と外交官の単身赴任というのは意味が違うと思うのですね。それでまた家庭のことに気持ちを引っ張られまして、国におる家族のことばかり思っておったんじゃ全然活動が鈍るわけですから、そういった意味ではこの際発想の転換をしていただいて、ぜひそういう面の待遇についても力を入れていただきたいという点についてどうでしょう。
#493
○安倍国務大臣 全くこれもおっしゃるとおりでありまして、私なんかも見ておりまして、お国のためとはいえ大変気の毒に思うこともあります。やはり外交という重要な仕事をやるわけですから、何とか安心して赴任できるような待遇というものを与えなければいけない、こういうふうに思っておりますし、まさに実態はおっしゃるとおりで、まだ多くの問題を抱えておるわけで、これは今も少しずつ努力を重ねておりますが、できるだけそういう体制を早く充実していくために今後ひとつ力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っておるわけです。
#494
○松浦分科員 大臣の御答弁で結構です。ぜひ頑張っていただきたいと思います。我々も海外に行きましたときにお世話になってつくづくそういうことを感じますので、私たちも実現のために努力するつもりです。この分科会主査にお願いをしておきますが、本分科会における一つの方向として、方針として、今私が申し上げた点について六十二年度予算ではさらに実現が図られるように、そういう点をひとつ主査報告の中にぜひ入れていただきますようお願いいたしまして、五分余っておりますが、お約束ですから、私の質問を終わります。
#495
○平沼主査代理 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。
 次に、沢田広君。
#496
○沢田分科員 きょう一日、大変長かった一日だったと思います。それぞれ関係者、御苦労さまでございます。
 大臣は、今度外務大臣になって以来、歴代の大臣になかった行動力をもって歩き回ったということで、これは自他ともに認められている実線だと思います。そこで、今の松浦さんのお話を続けて言いますが、大臣は、戦車三台でどのくらいの金になる、まあ十台でも結構ですが、大体アバウトな話で結構です、どのくらいの金になるだろうと思いますか。大体の勘でいいです。――三十億だから三百億ぐらいになると思います、七四戦車ぐらいでですね。もう答えは要らない。だから、それよりも今言ったように大使館員をふやした方が、言うならば平和戦略としてはより正しい。また有能な人に行ってもらえば無用な紛争も未然に防止できるということなので、これもまた大臣に、大変申しわけないのですが、専守防衛の日本が戦車をどこで使うのか考えたことございますか。大変失礼な質問ですが。
    〔平沼主査代理退席、主査着席〕
#497
○安倍国務大臣 これは、日本の防衛ということも日本の平和と安全を確保していくために欠くことのできない、日本自身のしなければならぬ責任だと私は思っております。そういう意味で、日本には防衛の基本原則というものがありますから、専守防衛あるいは非核三原則とか、そういうものを踏まえて防衛はやはり着実に最小限充実していかなければならぬ、こういうふうに思います。また、外交は外交で同時にまた世界の平和を確保していくために積極的に展開をしていくということが外交の大きな役割だと思います。そうして外交、防衛、そういうものが相まって日本の平和と安全が保たれるわけでありますし、世界にも大きな貢献ができる、こういうふうに思います。
#498
○沢田分科員 今、商社で海外に出ておられる職員、職員というよりも商社マンといいますね、これがそれぞれどの程度の数、これも大臣、アバウトな話で結構なんでありますが、どの程度出ていると思っておられますか。――それでは来るまでの間、別なことをやっていますが、いわゆる民間活力ということでいろいろな紛争が起きる、事前の対応は商社マンではなくてやはり大使館の人である。ですから、いろいろな分野においての平和的な交渉能力、そういうものを整備していくことが大使館の役割である。今待遇の話が出ましたが、若干水を差すようではありますけれども、もちろん待遇は結構ですが、今のような円高のときには調整していくという機能を持つ必要があるんじゃないのか。逆に円安になったときにはどうにもこうにもならない生活に追い込まれる。だから、円高のときのものと円安のときにどういう調整機能を働かせるかということは極めて難しい問題ですけれども、やはりこれは考えていかなくてはならぬ課題だと思います。円安になったら給料をドルでくれ、今度は円高になったら円でもらっても非常に価値が高いから生活はいい、しかし今度円安になったら大変なことだ、こういう問題が出てくるわけですから、それに調整機能を与えるような仕組みというのがやはり必要だ、こういうふうに思いますね。その点はいかがですか。
#499
○安倍国務大臣 これは我が国の大蔵省、なかなかしっかりしておりまして、円高になれば円高、円安になれば円安で、いわゆる給料等につきましては調整をしております。
#500
○沢田分科員 ぜひそういうことで、さっきの質問の、いろいろ私たちも行きますと、商社マンの動きの方が活発で大使館の方がどうも商社マンに遭い回されるという可能性なしとしないということもありますので、その点はぜひひとつ配慮の中に入れていただきたいというふうに思います。
 それで、時間の関係もありますから重複はなるべく避けて質問をしていきますが、結論的に言うと人種差別撤廃条約の批准を早くしてほしい、それが阻害されている原因は何なのだろうかということで、この条約の批准について大臣が一歩進めた回答をしてもらえばもうこれであとの質問は省略してしまってもいいと思うのですが、ひとついかがでしょうか。
#501
○安倍国務大臣 人種差別撤廃条約は早く締結をしなければならぬというのが私の基本的な考え方でございます。そのために今、これは外務省だけの判断というわけにいきません、やはり国内法の整備をしなければなりませんから、いろいろと関係各省と調整を行っておるわけでございまして、そうした作業が終わり次第締結をしてそして批准に持っていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
#502
○沢田分科員 前の八五年のときの答弁では解決すべき問題があり引き続き努力をしたいというのが総理の答弁なのであります。大臣の答弁はそれよりも一歩前向きに答弁されましたが、ぜひひとつ総理を説得していただいて、今大臣が言われたことによって批准が少なくとも促進される、こういうことができますようにお願いをしたい、こういうふうに思いますが、決意のほどをまた伺いたいと思います。
#503
○安倍国務大臣 人種差別撤廃条約はできるだけ早く締結をしなければならない、そういう立場に立って国内の調整を今後とも積極的に進めてまいりたいと考えております。
#504
○沢田分科員 あとはまとめて言って、まとめて回答してもらいます。
 マルコスのいわゆる隠匿物資ではありませんが、隠匿財産も大きく出ております。これも我が国では気がつかなかったのかという監視機能にも問題があるだろうと思いますし、これはこの国だけの問題ではありません。そういう意味で海外援助のあり方というものについて監視制度といいますかチェック機能というようなものを、言いにくいことでありましょうけれども、それも外交の筋道だというふうに思いますので、これは多くの人から言われていることだろうと思いますから要望にとどめておきたいと思います。
 それからもう一つは、アフリカ対策は長年私の主張なんでありますが、これについて三つ申し上げます。
 アジア大使会議、EC大使会議、それからアフリカ大値会議、これが年に二回なり三回なりできるような仕組みをきちんととってもらいたい。そしてそのとった会議の中からの情報が日本に正確に伝わる仕組みをつくってもらいたい、こういうふうに思うわけであります。アジア、EC、それからアフリカということについてその大使会議を必ず年二回ぐらい開いて、そして情報を伝えてもらう、そして外務大臣が対応する措置、そして日本の国の外交政策をその中からつくり出していく、そういう機能をぜひつくっていただきたい、こういうふうに思います。
 以上、要望を込めて質問をいたしまして、今後の大臣がさらに平和のために余り武器の要らない日本になるように御努力いただくことを願って答弁をお願いして、質問を終わりたいと思います。
#505
○安倍国務大臣 まず第一に援助の点については、日本は経済大国として積極的な開発援助あるいは経済援助というものを開発途上国に進めてまいりたい。
 フィリピンについても、せっかく新政権ができたわけでございまして、しかし、同時にフィリピンの経済は非常に悪いわけでございますから、今後国民に直結する援助という形でいろいろと両国間で相談をしてむしろ拡大をしていくように努めてまいりたい。
 その他の開発途上国に対しましても、ODA倍増計画を実はつくっておりまして、この線に従って援助を進めてまいりたい、そういうふうに思います。
 それからアフリカ大使会議とかEC大使会議とかアジア大使会議、これは毎年やっておりまして、大使の論議を通じまして日本の新しい外交政策を進める上において大変有益な参考になっておるわけでございます。三年に一回は東京でもやっておるわけでございますが、おっしゃる点は十分踏まえて、こういう大使会議というのはこれからも大いに生かしてまいりたいと思います。
#506
○沢田分科員 以上で終わります。
#507
○伊藤主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに一厚く御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後七時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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