くにさくロゴ
1985/02/06 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 予算委員会 第4号
姉妹サイト
 
1985/02/06 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 予算委員会 第4号

#1
第104回国会 予算委員会 第4号
昭和六十一年二月六日(木曜日)
    午前十時一分開議
出席委員
  委員長 小渕 恵三君
   理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君
   理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君
   理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君
   理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君
   理事 吉田 之久君
      相沢 英之君    伊藤宗一郎君
      石原健太郎君    石原慎太郎君
      上村千一郎君    臼井日出男君
     小此木彦三郎君    大西 正男君
      大村 襄治君    太田 誠一君
      奥野 誠亮君    倉成  正君
      鈴木 宗男君    砂田 重民君
      住  栄作君    田中 秀征君
      田中 龍夫君    葉梨 信行君
      橋本龍太郎君    原田  憲君
      村山 達雄君    山岡 謙蔵君
      山口 敏夫君    山下 元利君
      井上 一成君    井上 普方君
      上田  哲君    大出  俊君
      川崎 寛治君    川俣健二郎君
      佐藤 観樹君    多賀谷眞稔君
      松浦 利尚君    池田 克也君
      近江巳記夫君    神崎 武法君
      正木 良明君    矢野 絢也君
      大内 啓伍君    木下敬之助君
      小平  忠君    岡崎万寿秀君
      瀬崎 博義君    辻  第一君
      藤田 スミ君    松本 善明君
出席国務大臣
       内閣総理大臣  中曽根康弘君
       法 務 大 臣 鈴木 省吾君
       外 務 大 臣 安倍晋太郎君
       大 蔵 大 臣 竹下  登君
       文 部 大 臣 海部 俊樹君
       厚 生 大 臣 今井  勇君
       農林水産大臣  羽田  孜君
       通商産業大臣  渡辺美智雄君
       運 輸 大 臣 三塚  博君
       郵 政 大 臣 佐藤 文生君
       労 働 大 臣 林   ゆう君
       建 設 大 臣 江藤 隆美君
       自 治 大 臣
       国家公安委員会
       委員長     小沢 一郎君
       国 務 大 臣
      (内閣官房長官) 後藤田正晴君
       国 務 大 臣
       (総務庁長官) 江崎 真澄君
       国 務 大 臣
       (北海道開発庁
       長官)
       (沖縄開発庁長
       官)      古賀雷四郎君
       国 務 大 臣
       (防衛庁長官) 加藤 紘一君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)      平泉  渉君
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)      河野 洋平君
       国 務 大 臣
       (環境庁長官) 森  美秀君
       国 務 大 臣
       (国土庁長官) 山崎平八郎君
出席政府委員
       内閣法制局長官 茂串  俊君
       内閣法制局第一
       部長      工藤 敦夫君
       国防会議事務局
       長       塩田  章君
       内閣総理大臣官
       房審議官    田中 宏樹君
       警察庁刑事局保
       安部長     新田  勇君
       総務庁長官官房
       審議官     百崎  英君
       総務庁長官官房
       交通安全対策室
       長       矢部 昭治君
       総務庁人事局長 手塚 康夫君
       総務庁行政管理
       局長      古橋源六郎君
       総務庁行政監察
       局長      竹村  晟君
       北方対策本部審
       議官      稲橋 一正君
       防衛庁参事官  瀬木 博基君
       防衛庁参事官  筒井 良三君
       防衛庁長官官房
       長       宍倉 宗夫君
       防衛庁防衛局長 西廣 整輝君
       防衛庁教育訓練
       局長      大高 時男君
       防衛庁経理局長 池田 久克君
       防衛庁装備局長 山田 勝久君
       防衛施設庁長官 佐々 淳行君
       防衛施設庁施設
       部長      宇都 信義君
       防衛施設庁建設
       部長      大原 舜世君
       経済企画庁調整
       局長      赤羽 隆夫君
       経済企画庁総合
       計画局長    及川 昭伍君
       経済企画庁調査
       局長      丸茂 明則君
       科学技術庁長官
       官房長     矢橋 有彦君
       科学技術庁研究
       調整局長    内田 勇夫君
       沖縄開発庁総務
       局長      小谷 宏三君
       国土庁長官官房
       長       吉居 時哉君
       国土庁長官官房
       会計課長    斎藤  衛君
       国土庁土地局長 末吉 興一君
       法務省刑事局長 岡村 泰孝君
       法務省保護局長 俵谷 利幸君
       法務省入国管理
       局長      小林 俊二君
       外務大臣官房外
       務報道官    波多野敬雄君
       外務大臣官房領
       事移住部長   妹尾 正毅君
       外務省アジア局
       長       後藤 利雄君
       外務省北米局長 藤井 宏昭君
       外務省欧亜局長 西山 健彦君
       外務省経済局長 国広 道彦君
       外務省経済協力
       局長      藤田 公郎君
       外務省条約局長 小和田 恒君
       外務省国際連合
       局長      中平  立君
       外務省情報調査
       局長      渡辺 幸治君
       大蔵大臣官房総
       務審議官    北村 恭二君
       大蔵省主計局長 吉野 良彦君
       大蔵省主税局長 水野  勝君
       大蔵省証券局長 岸田 俊輔君
       大蔵省銀行局長 吉田 正輝君
       大蔵省国際金融
       局長      行天 豊雄君
       国税庁調査査察
       部長      日向  隆君
       文部省初等中等
       教育局長    高石 邦男君
       文部省高等教育
       局長      大崎  仁君
       文部省学術国際
       局長      植木  浩君
       文化庁次長   加戸 守行君
       厚生大臣官房総
       務審議官    北郷 勲夫君
       厚生省健康政策
       局長      竹中 浩治君
       厚生省保健医療
       局長      仲村 英一君
       厚生省保健医療
       局老人保健部長 黒木 武弘君
       厚生省薬務局長 小林 功典君
       厚生省社会局長 小島 弘仲君
       厚生省保険局長 幸田 正孝君
       社会保健庁医療
       保健部長    花輪 隆昭君
       農林水産大臣官
       房長      田中 宏尚君
       農林水産大臣官
       房予算課長   鶴岡 俊彦君
       農林水産省経済
       局長      後藤 康夫君
       通商産業大臣官
       房審議官    松尾 邦彦君
       通商産業省通商
       政策局長    黒田  真君
       通商産業省産業
       政策局長    福川 伸次君
       通商産業省機械
       情報産業    杉山  弘君
       資源エネルギー
       庁長官     野々内 隆君
       中小企業庁長官 木下 博生君
       中小企業庁計画
       部長      広海 正光君
       運輸大臣官房国
       有鉄道再建総括
       審議官     棚橋  泰君
       運輸省国際運
       輸・観光局長  仲田豊一郎君
       運輸省航空局長 山田 隆英君
       郵政省貯金局長 塩谷  稔君
       労働大臣官房審
       議官      稲葉  哲君
       建設大臣官房長 高橋  進君
       建設大臣官房総
       務審議官    佐藤 和男君
       建設大臣官房会
       計課長     望月 薫雄君
       建設省都市局長 牧野  徹君
       建設省道路局長 萩原  浩君
       建設省住宅局長 渡辺  尚君
       自治省行政局選
       挙部長     小笠原臣也君
委員外の出席者
       日本国有鉄道総
       裁       杉浦 喬也君
       参  考  人
      (日本銀行総裁) 澄田  智君
       予算委員会調査
       室長      大内  宏君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月六日
 辞任         補欠選任
 小此木彦三郎君     鈴木 宗男君
  大西 正男君     臼井日出男君
  住  栄作君     田中 秀征君
  三原 朝雄君     太田 誠一君
  武藤 嘉文君     山岡 謙蔵君
  山口 敏夫君     石原健太郎君
  辻  第一君     藤田 スミ君
同日
 辞任         補欠選任
  石原健太郎君     山口 敏夫君
  臼井日出男君     大西 正男君
  太田 誠一君     三原 朝雄君
  鈴木 宗男君    小此木彦三郎君
  田中 秀征君     住  栄作君
  山岡 謙蔵君     武藤 嘉文君
  藤田 スミ君     岡崎万寿秀君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和六十一年度一般会計予算
 昭和六十一年度特別会計予算
 昭和六十一年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
#2
○小渕委員長 これより会議を開きます。
 昭和六十一年度一般会計予算、昭和六十一年度特別会計予算、昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢野絢也君。
#3
○矢野委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に御質問いたします。
 総理、我が国も今や大した国柄と申しましょうか、世界じゅうの各国に対して債権大国ということになりました。我が国が海外に持っておる財産、それから海外に対する借金、これを差し引きしました純資産、どうやら一千億ドルを超えたと言われております。つまり、世界一の債権大国。それから、例えば日米貿易一つ取り上げましても、アメリカは海外で千五百億ドルの貿易の赤字がある。その三分の一が対日貿易の赤字である。言ってみれば、日本は世界一の貿易大国になった。それから、ハイテクの分野でもほぼアメリカと肩を並べ、あるいはアメリカを追い越しておる分野、例えば半導体の記憶素子一つ取り上げましても言えるのじゃないか。
 いろいろな面で追いつけ追い越せが、追い抜いてしまったという状況になってしまった。世界一の債権大国、貿易黒字国、世界一とまでは言わぬがハイテク大国。光の部分はまことにまばゆいばかりに輝かしい面がたくさん出てきた。
 しかし、光には影があるというわけで、国内に目を転じますと、我が国政府は大変な借金で、借金大国とは言いませんけれども、百四十兆になんなんとする国債残高になろうとしておる。内需拡大が必要だと言われておっても、ないそでは振れませんみたいな状況である。世界一の債権大国の我が国が、政府は貧乏政府である。あるいは国民も、中流意識だなどというおだて文句に乗っておるようでありますが、実態はそうではない。通勤に一時間以上もかかる。満員電車で苦しむ。住宅事情もよくない。社会保障も社会資本も十分でない。余りにもこの光と影の落差というものがひど過ぎる感じを受けます。
 しかも総理、かつての大英帝国、一八〇〇年代、パックス・ブリタニカなどと言われた時代には世界一の債権大国でありましたけれども、例えば世界じゅうの鉄道とか鉱山とか、いろいろな分野に大英帝国は投資をいたしました。また、みずからの国内に十八メートル幅の道路をたくさん、もうそれこそ一生懸命つくった。社会資本の充実もした。債権大国の責任を果たしたと思います。もちろんこれは植民地支配だ、搾取だという批判もあっていいでしょう。しかし、債権大国にふさわしい責任を果たした。また、アメリカも第二次世界大戦後、世界経済のためにマーシャル・プラン等々、これも批判があるでしょうけれども、それなりの貢献、役割というものをやった。
 ところが、日本は債権大国であるというものの、その大部分は証券投資である。直接投資はまことに少ない。オランダよりも少ない。世界の五番目である。だから、ある外人さんは、日本は債権大国だけれども高利貸しになるのですかみたいな冷やかしが出ておる。そういった債権大国としての、あるいは貿易大国としての日本のこれからのあり方、しかも目を翻せば国内事情はまことに困難をきわめておる。このアンバランス。これについての総理の、これからの日本の進路あるいはこうやりたい、御所感を承りたいと存じます。
#4
○中曽根内閣総理大臣 矢野委員おっしゃいますように、日本はなるほど債権大国で、また貿易大国でございますけれども、逆に考えれば住宅小国であり、下水道最小国であり、あるいは都市開発小国である、そういうような暗い面もございます。
 しかし、どの国もみんなそういう明るい面と暗い面を抱えつつ応分の国際協力をやり、最貧国あるいは発展途上国について、ともかく自分たちよりはまだ貧しい、苦しい生活をしている国に対しては、自分たちは苦しい中でもやはり人道主義にのっとって応分の協力をし合っているというのが国際社会の現状でございます。これだけ、ある意味においては債権大国とも言われておる日本でございますから、応分の協力をするということは当然であり、また、日本民族が生きていくためにも、貿易立国という面から見ますと、どの国とも仲よくしていく、そして平和が持続する、通商の自由が確保されるということが大事でございますから、そういうことを促進するという意味においても、国際平和あるいは国際的な交流、こういうものを促進して相互扶助が進むようにしていくということは我が国の国策である。その点については、随分政府も借金をしょっておりますけれども、その中からでもODAその他でできるだけのお金を集めてそういう方面に向けていきたい。これについては国民の皆様方によく御理解もお願いをいたしたい、そう思っておるところです。
 その一つとしてまた外国から日本に今言われていることは、日本は市場を閉鎖しているではないか、また、日本の社会経済構造というものが輸出一本やりで、しゃにむに輸出で立国しようという過去二十年間の影響を受けて、日本の社会経済構造というものが輸出のみに向けられて、輸入ということも考えてない、あるいは国民生活の向上ということも考えてない、すべて輸出のために犠牲にしているという構造ではないかという疑いあるいは非難もあるわけです。
 そういう意味において私は研究会を発足いたしまして、そういう社会経済構造ありや否や、あるとすればどのように中長期的に改革していったらいいかということを、前日銀総裁の前川さんを座長にして今その検討をしていただいておりまして、その検討の結果を待って公表もし、国民の皆さんの御論議もいただいて、改革すべきものは改革していきたい、そのように考えておるところでございます。
#5
○矢野委員 アメリカは世界のGNPの二〇%ぐらいのGNPである。しかし、アメリカのドルは、外貨準備あるいは貿易決済等々、世界の七〇%という重い役割を果たしておる。このこと自体、アメリカの持つ大変なアンバランスだと思います。
 そして、もう双子の赤字と言われるような、財政赤字二千億ドルですか、八六年度は貿易赤字は千四百億ドル程度じゃなかろうかと言われておりますけれども、財政の赤字、貿易の赤字、そういう大変苦しい状況になってきたということから、アメリカは世界経済についてアメリカ単独で責任を負うことはできない。こんな状況から、大蔵大臣、せんだって二回にわたって行われた先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議、一口でG5、五カ国でこの自由貿易体制を維持し、世界経済の秩序を安定し、アメリカの双子の赤字も十分念頭に置いた上で世界不況を避けよう、こういうお気持ちでこの会議が開かれたと私は理解しております。
 アメリカもちょっと虫がいいんじゃないかという面も、実はこの後御質問申し上げたいと思っておりますけれども、G5のお話に入る前に、まずその前提になっておるアメリカ経済、総理並びに大蔵大臣、あるいは総理はもうちょっとあれですから、大蔵大臣と日銀総裁にも簡単にコメント願いたいんです。私ばかりしゃべるようでいかぬかもわからぬけれども。
 アメリカ経済には楽観論と悲観論がありまして、オーソドックスに言えば悲観論の方が多数派、楽観論は少数派。私、どっちかというと楽観論の方でございますけれども、その楽観論、一口で言えば、去年一年で雇用が三百七十万もふえておりますから、失業率がかなり好転してきた。あるいはことしの貿易収支、アメリカは原油の値下がりで、例えば原油が一バレル八ドル下がったと仮定しても、一日八百万バレル使っておる。ですから、それだけで百五十億ドルくらいの輸入減になるんじゃないか。あるいは非鉄金属、一次産品等も値下がりで、これだけで百億ドルくらいは貿易収支が改善されるんではないか。さらにまた輸出の面でも、農作物がドル安ということから、一〇%強、二〇%くらいふえるんじゃないかという見方もあります。輸出促進策もアメリカはとっておる。農作物が五十億ドルから七十億ドルくらいふえるんじゃないか等々、貿易収支は、アメリカはことしはどうやら改善されるという見方が楽観論の方ですね。
 そして景気も、油代に費やされたお金が国内の設備投資、在庫投資その他いろんな面に向けられる。とにかく原油が下がる。相当な値下がりが予想されます。いずれにしてもGNPをかなり押し上げる。ある見方によれば、ことしは段階的に原油の値下がりが効いてくるから、一%はGNPを押し上げる。来年はもう四%くらい押し上げるんじゃないかという見方もある。さらにいろんな施策が功を奏して、アメリカ経済、ことしは四%台から五%台の成長をするという、これは強気論。
 一方、ドル安とか原油安は景気の下支えには効き目はあるだろうけれども、これは悲観論の方ですね、しかし消費も住宅も低迷しておる。政府支出も抑制されそうである。そういった面から、アメリカ経済は、悲観論で言えば、一昨年は六・八%のいい成長だった。去年は二・四%くらいになるだろう。ことしは二・二%くらいだろう。ですから、二・二%前後と、強気論の四%、いや五%とえらく乖離がある。これは原油安、ドル安、あるいは米ソのあのような会談が共産圏に対する貿易の拡大ということにつながるかもわからぬ。いろんな要素が錯綜しておりますから、一概にこれは言えない。しかし、大方は悲観論である。アメリカ経済、去年よりもことしの方がもっと悪い。二・四から二・二に下がる。一方ではかなりの強気論もある。まず、このG5の背景を考えるに当たって、大蔵大臣並びに日銀総裁に、アメリカ経済のデザインといいましょうか、展望を簡単にひとつお聞きいたします。
#6
○竹下国務大臣 G5というものを前提にしてということでございますので、本来あるいは経済企画庁からお答えすべきであるかもしれませんが、私も最近の会合に出ておりますので、そのときの感触を含め、簡単に申し上げます。
 G5というのは非公式な会合でありますが、そもそもは先進五カ国がお互いに相互監視をしたりする議論の場でございますから、非常に平易な議論もいたします。その議論をいたします際に出てくる基礎的な話は、今矢野さんおっしゃったような話が大体出てくるわけであります。民間の場合下回っておりますが、政府見通しとしては四%、こういうことを見込んでおるわけであります。
 今もお話がありましたように、アメリカ経済は一九八四年には六・六%という高い伸びを示した後に、八五年、これは速報としては二・三%、これに鈍化した。これは経常海外余剰の悪化と在庫整理の進展によるところが大きかったと見られますが、しかし個人消費の方を見ますと、今も御意見にありましたように、まだ堅調な動きが続いておる。したがって、八六年の成長率ということになりますと、これも今の御意見にあったように、原油価格の軟化等から物価が引き続き安定して、それからFRBの金融緩和スタンスが維持されると見られるというようなことから、やはり国の需要というものは堅調に推移して、緩やかながら安定した成長が遂げられるというのが、私どもがそこで話し合った実感として、あるいは経済企画庁のプロの分析は別といたしまして、私が実感として感じておるのがそういうことでございますので、日本も政府見通しが違うじゃないかと言われますが、結果で見ますといつも政府見通しの方が案外合っておりますので、アメリカの政府見通しというのも、私は四%程度というものは期待されるところではなかろうかという感じでございます。
#7
○澄田参考人 御指名でございますので私からも申し上げますが、御指摘のように悲観論、楽観論、交錯している状況でございますけれども、最近、悲観的な見方は若干後退し、むしろやはり、今も大蔵大臣も言われましたが、景気は本年も緩やかな拡大を持続するのではないか、こういう見方が多くなってきている。アメリカの国内においてもそうであり、その影響もあって、最近アメリカ以外の国でも、アメリカ経済をそういうふうに見てきているというような感じではないかと思いますし、G5の会議の席上の感じもそういうふうに受け取った次第でございます。
 その理由は、今までいろいろ御指摘ございましたが、実態的にやはりドル高の是正による−アメリカではインポートペネトレーションと言っておりますが、輸入が非常にふえて、それによって国内の生産が食われ、経済が停滞する、そういった現象が是正されるという期待、それからこれまでの金利低下、それから在庫調整の進展といったようなものが背景にあると思います。
 ただ問題は、やはりアメリカの財政赤字の削減が本当に実現するのかどうか、それから、やはり大きな要素であります消費につきまして、消費者信用が非常にふえている、これが今後の消費の足を引っ張るのではないか、こういう懸念が持たれまして、消費が今後とも果たして堅調を維持できるかどうか等の要因もあるようでございます。引き続きアメリカ経済にはもちろん注目を要するものが多い、かように思います。
#8
○矢野委員 ありがとうございました。
 G5、ニューヨーク、ロンドン、まあそういうわけで、特に二回目のG5では各国協調利下げというのが事前に期待されておったわけでございますね、大蔵大臣。結果は、そうはならなかった。これにはいろいろ複雑な背景があると私も考えております。単純に申し上げれば、先ほど言いました、アメリカは大変な財政の赤字、貿易の赤字、双子の赤字を抱えておる。この双子の赤字というものは、海外からのアメリカに対する資金の流入、いろいろプロセスは省略いたしますけれども、例えば日本からいえばアメリカに対する投資、こういったものがこの双子の赤字から必要が生まれてくる。お金がもっとアメリカに来てほしい。そのためには、かなりの金利差というものがなければ投資家はそういったことには乗りません。つまりアメリカの高金利、日本の低金利、いずれにしても金利差がなければ金はアメリカに動かない。つまりアメリカはこの双子の赤字に足をとられておる限りは、高金利志向、結果もたらされる高ドル志向というものが一つの論理的必然ということになってくる。
 しかし、これはかつて一九二〇年代のイギリスが、産業の国際競争力が低下しておるにもかかわらず高金利政策をとって、イギリスの国際競争力が低下した。これは歴史の教訓としてあるわけでございます。つまり高金利政策、高ドル政策をとる限り、アメリカ経済、産業の国際競争力がこれはいや応なしに衰弱いたします。
 国際競争力をつけるためには、アメリカは低金利にしなくてはならぬ。そしてドルも安くしなくてはならぬ。資金需要という面からは高金利志向が働き、高ドル志向が働き、アメリカ産業の活性化を図ろうとすれば、国際競争力をつけようとすれば低金利、低ドルと、非常にジレンマ、アンバランスというものがある。かつて、去年の年末でしたか、カウフマンさんがアメリカの金利の値下げはそんな簡単にはないぞと予言したら、株が暴落した。偉そうに言うたが、あれぐらいの予言ならその前から僕だってできておりました、まあこれは冗談ですけれども。簡単じゃないわけです、アメリカの内情は。
 そこで、日銀総裁に伺いたいのですけれども、この今申し上げた二つの相矛盾するメカニズム、双子の赤字からいえば高金利政策、金利差を大きくするという政策、そしてドルも高かった方が望ましい、国際競争力をつける、産業界の実力をつけるためには低金利、安いドルが望ましいというこの矛盾するメカニズム、ことしはどちらの方にアメリカは引っ張られる感じであるか。これは当然為替に関係してくるわけでございますので、総裁の、はっきり言えばお差し支えない範囲でお答えをいただきたい。ここで言われて、また為替が上がったり下がったりしたら、私えらいこと怒られますので。というわけでございます。お答えをお願いいたします。
#9
○澄田参考人 昨年九月のニューヨークにおけるG5以降、アメリカはやはりそれまでの考え方を改めまして、各国協調のもとにドル高の是正に努める、こういうふうな方向に変えたわけでありまして、その方向で現在もアメリカの政策が維持されておるわけでございますが、同時に、しかしドルの急落は、これはやはりインフレの再燃や、あるいはドルの信認低下によりまして資本の流出が起こる。そういうことがあっては大変でありますというようなことで、通貨当局、殊にアメリカの通貨当局におきましてはドルの急落といった事態はどうしても避けたい、こういう配慮もあるように思われます。したがって、御指摘のようなジレンマにどう対処するかということはアメリカにとって大きな政策課題であると思いますが、やはり基本は財政赤字の圧縮ということ、これを着実に推し進めるということによりましてインフレの再燃を防ぎつつドル高是正を図る、それが極めて重要である、こういう考え方だろうと思います。それがまた金利の低下にもつながる、こういう考え方だと思います。
 アメリカの金利は、昨年以来市場金利は低下傾向にあるわけであります。今後の見通しにつきましては、これはアメリカの政策運営とも絡むわけでありまして、的確に申し上げることはできないわけでございますが、しかしやはり方向としては、今申しましたように財政赤字を着実に縮減しつつ、そして金利も低くする、ドルについてはドル高是正の方向で政策を志向する、こういうことではないかと思います。
 私どもの立場といたしましては、内外金利差がなおかなり開いていることでありますし、やはり日本としてはアメリカに協力しつつ為替重視の政策という観点をとってまいりたい、かように考えておるところでございまして、米国金利の動向につきましてもなお今後とも十分注意をしてまいらねばならない、かように考えております。
#10
○矢野委員 結果は、いろいろな問題を抱えながら、今総裁おっしゃったようにドルの信用不安を起こすことなく二〇%以上もドルが安くなった、これは一つの成功だろうと思います。それから、ドル安が輸入インフレあるいは金利高という悪循環も招かないで、逆にドルの長期金利は一%ぐらい下がってきておる、これも大変いい傾向だと思います。さらにまた、そういう金融緩和がインフレにつながる、これは理論としてはそうなるわけですけれども、そういう心配なしにマネーサプライの供給が比較的自由にアメリカはやっておる。これもG5二回、いろいろ苦労はあったのでしょうけれども、今のところこの二つのジレンマ、そうぼろを出さないでいっておる。
 しかし、どうもやはりアメリカの金利はまだ不透明な感じがするわけでございまして、ベーカー提案なるものがあって、発展途上国の債務問題、これはもうダブルパンチということになっておるわけで、原油の値下がり、非鉄、一次産品等々の値下がり、そこへまだそう金利が一斉に下がらないという利息の負担増大という問題、この発展途上国との問題、これは日本としても非箱に重大な問題でありまして、望ましいことは、発展途上国に対して先進国はやはり金利を下げていく、そのバックグラウンドとしてアメリカも下がる、日本も下がる、こういうことが必要ではないのかと私は思いますが、大蔵大臣、その点いかがでございますか。
#11
○竹下国務大臣 まず、アメリカの金利の問題、日銀総裁からお答えがありましたが、財政収支均衡法、あの法律で赤字削減が期待されるということになりますと、赤字を借金で賄わなきゃならぬ、そうすると高い金利で諸外国の資金を吸収しなければならぬという必要が、赤字が削減されればそのことが減ってくる。したがって、金利はそういう意味では弱含みで推移するんじゃないかという感じは私は一つは持っております。
 御指摘のとおり、いわゆる協調利下げというものは、同じ日に各国が一緒になって利を下げたということはなかったわけでございますが、強いて言いますならば、G5で確認しましたのは、今のそれぞれの先進国が持ついわゆるインフレの心配がなくなったということからして利下げの環境が整ったというところまで合意したわけでございますが、後はやはりプロの中央銀行の総裁さん方の協力に請う御期待、こういうところまでいったわけであります。
 したがって、ベーカー提案というのは、開発途上国に対する一つの姿勢を打ち出されたものでございますが、それが仮に新しい金が、ニューマネーが民間銀行から調達されたりいろいろしましょうとも、問題は金利でございますから、金利が下がるというのは開発途上国にとっては恐らく今一番、ありがたいという表現が適切かどうか、開発途上国にとったはいいことだと思います。したがって、そういう意味においての認識はおおむね私は先進五カ国は共通をしたではないかというふうに思っております。
 ただ、ベーカー提案というもの、そのものについて私の見解を申し述べるといたしますならば、大債務国が包括的なマクロ経済及び構造調整政策を採用する。すなわち開発途上国も、IMF等がいろいろな条件をつけます、インフレをなくす努力をするとか、輸出振興の対策をやるとか、そういう自助努力が前提ですよ。その上に立って先進国は先進国としての支援を行っていきましょう。そして、特にIMFでございますとか、世界銀行でございますとか、そういういわば国際機関の資金も、日本が一番積極的でございますが、これは実際国会でも国際機関への出資とか増資とかという問題、共産党を除く全部賛成していただいているわけですから、確かにそういう熱心な背景でもって日本が主張し、他の先進国もそれについてそういう出資、増資等が行われ、そうしてその上になお民間銀行がそれぞれ協調融資団などを組んで融資すれば一番効果がある。
 ただ、ベーカー提案の民間銀行がさてどうするかということについては、各国の主要民間銀行もおおむね方向としてはそれに賛意を表したわけでありますが、具体的なスキームをどうするか、あるいは国の力に応じた分け前といいますかシェアをどうするかというような具体的な話はこれからでございますが、私どもといたしましては、そのベーカー提案の発想を支持すると同時に、なお私があえて七項目というのをつけ加えて申しておりますのは、金利を下げるとか、出資、増資を積極的にやるとか、あるいは安倍外務大臣からもきのうお話があっておりましたODA等をとにかく四百億ドル以上に七カ年で伸ばすとか、そういう先進国の役割も一緒につけ加えて、初めてベーカー提案というのも本当に生きてくるということを最近主張しておるということでございます。
#12
○矢野委員 日銀総裁にちょっと伺いますが、九月のG5以前、短期金利はたしか二%ぐらいの日米の金利差がありました。今その金利差はほぼ解消されておる。また今度の公定歩合の引き下げでそれが差ができたかもわかりませんけれども。それから、日米の長期の金利差、国債利回りを見ましても、最初は五%ぐらいありましたけれども、三%ぐらいまで縮まっておるというふうに聞いております。いずれにしても、こういう金利差の縮小は、いわゆる日本からアメリカへのドル債投資へのブレーキになってくることは明らかなことです。
 今大蔵大臣は、財政均衡法でかなりアメリカの財政が健全化するだろうというふうにおっしゃいまして、事はそれほど簡単じゃないと思うのです。日本政府なんかも、歴代内閣が財政再建の立派な数字の並んだ表を恒例行事のごとく出したのに、いまだかつて一遍も成功したことがない。もっともアメリカの場合は、我々もこれは反省しなくちゃいかぬと思いますが、議員が財政収支均衡法を出したというのは、これは大したものだと思いますね。私たちは、どっちかいうと、政府には財政再建やれ、総論賛成、各論はまた別なことを言うという悪い癖があります。これは与野党ともある。本当は議会が政府に対して法律によって財政の縮小を迫るぐらいの根性がなきゃならぬけれども、これはまあこれぐらいにしておきますけれども、本当はそういうことですわ。総論賛成、各論反対というのはこれは共通した現象で、こんなことをやっておる限りは日本の財政再建はできない。
 そういう意味で、アメリカは議会が財政収支均衡法をつくった、これは評価すべきことでありますが、それでもやっぱりだめだろうと私は思います、アメリカ財政の再建は。それほど甘くない。したがって、やはり資金需要のインセンティブは強い。高金利志向はどうしても出てくる。金利差をつけたいという志向が出てくる。今はやや縮小したけれども、どうでしょうか日銀総裁、もうちょっと日本は金利を下げてください、そしてそれによって日米の金利差を拡大しましょうというような日本の公定歩合再引き下げというような要望、あるいは日銀当局としてそういうお考えを今お持ちであるかどうか。これは第一問。
 第二問は、この為替投機の圧力というのは相当なものでありまして、五年前に比べるとこの為替投機の資金が倍以上にふえております。この五年間で実物の貿易は一六%しかふえていない。わずか一六%しか貿易量はふえていないです。しかし、為替市場の金の動きはこの五年間で倍以上もふえておる。簡単に言いますと、大ざっぱな数字で言えば世界貿易の一年分が為替投機では一カ月で動いておるというぐらい巨大な金が動いている。そしてこれは常に為替の動きを見ながら敏感に反応しておる。事あらば投機に出ようとしておる。それに対して政府側は一日十億ドル程度の調整資金がない。たしかそうだったと私は記憶しておりますけれども、そんなので防戦ができるものなのかどうなのか。今言いましたアメリカ経済にも必ずしもドル安を一貫して志向する力学が働いているわけじゃない。昔のドル高志向もどうしても出てくる。これは高金利、資金需要という逆の論理で、ある。一方では為替の巨大な資金がぐるぐる回っておる。
 端的に申し上げて第二問は、日銀当局はドルのターゲットゾーンをどの程度とお考えになっておるかということについてお答えを願いたいと存じます。
#13
○澄田参考人 先ほど第一問とおっしゃいましたその公定歩合の再引き下げの問題でございますが、現在日本の国内におきましても急速な円高化に対する影響というものもいろいろございます。円高には、他方、円高のメリットもございますが、しかし日本の産業界に及ぼす影響として、やはり内需拡大という見地からは、為替相場重視の姿勢を貫きつつ、そういう機会があれば、内需拡大の見地から為替相場に影響を及ぼさないような公定歩合の引き下げの機会があれば引き下げたいというようなことで、過日、為替相場あるいは景気、内外の金融情勢、こういうものを総合的に判断をいたしまして〇・五%公定歩合引き下げを行ったわけでございます。私どもとしては、現時点におきましてはその効果を見守っていくというのが最も適切な段階である、こういうふうに考えておりまして、現在、さらに追加をして引き下げるということは全く考えておりません。
 それから、次に御指摘になりました、資本取引が非常に膨大な量になっている、それが為替相場に非常な影響を与えている、それは事実でございます。そうして、資本取引におきましては金利差もございますが、金利差もやはりそういう取引の重要な要素でございますが、もう一つはやはり為替市場に対する先行きの見方あるいは思惑、期待といったようなものが働きまして、そうしてこれが大きく市場を、いわゆる経済のファンダメンタルズ、基礎的な諸条件と違った相場というものが往々にして続いたり、あるいはそれが激しくなったりするものでございます。今までの多年にわたるドル高というのはそういう現象によって起こされたということが大きいだろうと思います。
 そこで、御指摘のようにターゲットゾーンというようなものを設けて、そして為替相場というものをアジャストすることができないかというような説があるわけでございますが、しかし、そういうスキームを見出すということは非常に難しいということでありまして、昨年の先進十カ国の会議、いわゆるG10におきまして国際通貨問題に対する報告をまとめましたが、その中におきましても、ターゲットゾーン的な考え方は現実的な前進ではない、こういうようなことで、現実的には、やはりニューヨークG5以降の経験によりますように、各国協力いたしまして為替相場に対しまして、一方におきましては必要な場合には介入を行う、他方におきましては政策面における協調をできる限り行うということによって適切なる為替相場の維持を図っていく、こういうことが最も現実的な方法である、こういうことになっているわけでありまして、私どもも全くそういうふうなことであるというふうに考え、またその方向で努力しているところでございます。
#14
○矢野委員 御多忙のところ、日銀総裁、御出席いただきましてありがとうございました。
 総理、今お聞きのようなことでございまして、この議論をやり出しますと大変ややこしいことになるわけでございますが、総括的にこのG5の動きあるいは為替、例えば日本は円高基調というものを貫く、こういったことについてお答えをいただきたいとともに、先ほどもちょっと触れましたけれども、一九二〇年代のイギリスは、非常に貿易赤字が続いておった中でアメリカよりも高金利政策をとった。フランスなどからも短期資金をどんどんどんどん入れた。イギリスは高金利政策をとって短期資金を入れた。結果、イギリスの産業界は常に実力以上の高為替レートと高金利に苦しんだ。結果、イギリス産業の停滞と国際競争力の衰弱ということを招いておる。これは歴史の教訓です。
 これと同じことがここ三、四年のアメリカに起こっておるわけなんです。レーガンさんのいわゆるレーガノミックスの政策は高金利であり、高為替政策であった。そして、そういったことをてこにしてアメリカ経済の活性化を図る、その面では成功しておったかもわかりませんが、この高為替と高金利は、アメリカ産業界の著しい競争力低下を招いたわけであります。それが今日のアメリカの対外貿易の大赤字の原因なのであります。したがって、世界経済の中でアメリカは最大の、何というのでしょうか、お客様ということになりまして、資金もアメリカに流入をする、そして競争力では、アメリカの経済に対して、アメリカが必要とする、しかもアメリカに対して強い産業を持つ国、あるいは強い産業は、いや応なしにアメリカに対して貿易が入ってしまう構造になっておったわけです。
 だから日本が悪くないなどと私は言いません。日本のようなとにかく輸出依存型の産業でやっていくということには、これはもう限界がある。日本の設備投資も、その生産量の四割以上がもうアメリカ向けの製品でございますなんということを初めから予定して日本の企業は設備投資をしておる。こういうことがいいはずはありません。ましてや五百億ドルというような対米黒字、こんなことが許されるはずもないと私は思います。したがって、我が国も内需拡大その他やるべきことはたくさんありますけれども、ただ頭から日本が悪い日本が悪いと言われるのも、いささか私は残念でならない。
 今私が時間をかけて大変しち面倒くさい議論をしてまいりましたのは、アメリカにも責任があるんじゃありませんかと。このレーガノミックスの、この経済政策の持つ内部矛盾が結果的に高為替と高金利、アメリカ産業の国際競争力の低下を招いたんです。そのことを私たちはこの日本の議会において問題にする必要があるという意味において、あえて申し上げておるわけでございます。我々は、何も今の貿易状況がいいという意味で言っているわけではない、アメリカさんにももうちょっと考えてもらわなくちゃということを申し上げておるわけでございまして、そういったことを含めて、総理の御所見を承りたいと思います。
#15
○中曽根内閣総理大臣 物の考え方、見方においては、私は大体矢野委員と同感でございます。
 昨年の秋から世界的に大きな潮の変わり目が出てきておるしるしがあると、私本会議でも申し上げましたが、それは去年の九月のG5以降、それからもう一つはレーガン・ゴルバチョフ会談、この二つの大きなことが去年の秋ありまして、一つは世界の平和と軍縮の問題が一歩前進する一つのよすがが出てきた、もう一つは国際通貨体制、言いかえれば世界経済の動向について非常に注目すべき一つの転換点が出てきた、そう私、申し上げたわけです。それがゆうべ発表されましたレーガン大統領の一般教書、演説を新聞でもごらんになったとおりでございますが、それがその方向に推し進められてきておるということです。
 その背景にあるものは、私は、レーガン大統領やアメリカの専門家が大体物価安定に自信を持ってきた、そういうことだろうと思うのです。今まで物価安定に対する心配があって、またインフレが再発してはいかぬというので、ボルカーさんを中心に資金量をできるだけ少なくして、そしてわりあい高金利できておるわけでありますが、物価安定に自信を持ってきている。そういう面からして去年の傾向をさらに進めよう。
 そして、それが出てきた一つの背景には、アメリカの輸出力がストップしてきた、特に農産物の輸出というものが停滞してきた、中小企業そのほかの輸出業者あるいは農民の方から相当なクレームがホワイトハウスに去年の秋ぐらいから集まってきておるので、やはりことしは選挙の年ですから、どこの国でも同じことであって、そういう国民の動向というものを無視できない。そういう意味もあって、アメリカ大統領の教書の中でも、輸出業者あるいは農民に対する非常に大きな配慮が正式に文章で載っておりますですね。そういうようなやはり国民の意見、動向というものを最大限注目しつつ政治は進められつつある。
 そういう面からいたしますと、アメリカといたしましては、できるだけ通貨関係を安定させたい、しかも、今までドルが異常に高かったのを低目に抑えつつ輸出力を維持していきたい、そういう面が一つあります。これが非常に大きな要素です。もう一つは、南米そのほかの発展途上国の債務国の問題ももはや考えなければならない。これが去年のベーカー提案の二百億ドル云々というところへ出てきておる。これも頭にある。それがあるからこそアメリカ大統領は、ゆうべの教書で、ベーカー長官に対して国際通貨会議を検討するようにと今晩言ったとか言うつもりであるとかというのが出ておりましたが、この国際通貨会議、ベーカーさんに言ったというところに意味があるのです。ベーカーさんは二百億ドルの途上国や債務国の援助を国際的にやろうじゃないかと言っておる張本人でございますから、ですから、それは世界に向かってもあれを見せておるんではないかと私は思うのです。
 で、その大統領の政策は正しいと私は思うのであります。それはまた、私が去年の夏ごろから、アメリカとの間で包括的協議をやろう、それは通貨も含めてやろうと申し上げてきた、それを大蔵省が受けとめて、大蔵大臣が努力してG5まで持っていってくれたわけでございますが、その延長線上においてアメリカ大統領がああいうことを言ってきたということは、ヨーロッパも見てやっておるんで、私は、東京サミットに非常にいい影響を持ってきたと実は考えておるわけです。
 東京サミットの一つの大きな問題は、やはり国際的な通貨の問題である。そういう意味から、フランスの大統領が言うように固定相場に持っていくとか、今言ったターゲットゾーンをつくって、ヨーロッパ流のいわゆるトンネルの蛇みたいに安定帯の範囲内で動かそうという、そこまではとてもなかなかいく条件はない。矢野さんと同じ考えてあります。
 しかし、何らかの政治意思の決定によって、去年のG5の効果が顕著に出て、円は強くなり、ドルは安くなり、ヨーロッパ通貨も強くなっておる。それは、そういう政治意思を決定したということは、政策をこういう方向に持っていくということを見せたわけですね。それには投機筋の方も考えざるを得ない。一国だけがそれをやったのじゃなくて、有力な国が全部そっちに持っていくということになれば、これは投機筋も考えざるを得ない。それが為替が、これは危ないぞ、逆戻りするぞと言われつつも厳然として今のような状態になってきた背景である、そう思うのです。
 そういう意味におきまして、私はアメリカ大統領の施政方針演説を歓迎して、そういう方向に世界的協調をもって、現実的に一歩一歩安定するように、それと同時に債務国に対する我々の仕事も協力的にこれをやっていきたい。言いかえれば政策協調ですね。政策協調という面を推進していきたい、そのように考えておるところです。
 私は、景気の状況については、アメリカの景気はそう落ちないと見ています。なぜかと言えば、軍事費はそう落ちておりませんね。アメリカの景気を支えている一つの腰の強さは、あの軍事費にもあると私は思うのです。これは経済の原則であります。そういう面もあり、アメリカの景気自体はそれほど腰が弱いところにはいかない、大体これで推移していく、私はそういうふうに見ておるのであります。だからといって、我々は防衛費をふやそうという、そういうことで言っているのじゃないのですよ。経済学的な、冷徹な分析として私は申し上げておるのであります。
 それから、今申し上げましたような状況でできるだけ、もうインフレの危険性がないという方向に観測が出てきていますから、ある程度需要を起こす方向に金融政策も動いていくだろう、そう私は見ているわけであります。
#16
○矢野委員 嫌みなことを一言言いますけれども、私は、アメリカ経済は原油安とかドル安とかという面からプラスに働く、それから米ソのデタントの兆し――デタントとまで言いませんけれども、これが共産圏貿易にプラスに働く、あるいは農作物もドル安がプラスに働くだろう、あるいは輸入コストが安くなることによってアメリカ産業界に設備投資その他で金が動くだろう、だから経済がよくなるだろう。軍事予算がふえたから経済がよくなるというのは、これは総理、大変失礼でございますけれども、余りにも古くさい、古典的経済学の信奉者と言うべきでありまして、軍事産業はむしろマイナス要因と言うべきでありまして、今私がるる申し上げたような要因がアメリカ経済のプラスである。これはもう済んだ議論ですからやめておきますけれども、総理、ちょっとお考えを改めていただいた方が、G5、ビッグツーと言われておる日本の総理にふさわしい御見識なのではないか、余計なことでございますけれども。
 それから、アメリカの話になりましたので、科学技術庁長官、話題ががらっと変わって恐縮なんですけれども、アメリカという意味でお伺いしたいのですけれども、新自由クラブ代表に質問をしないというのは大変失礼なことになりますので、質問したいと思います。
 アメリカのスペースシャトルの事故、犠牲者が出まして、本当に私たちお悔やみを申し上げなければならぬ悲しみの気持ちでいっぱいでございます。大臣、出席されたわけでございますが、今回の事故がアメリカの宇宙開発計画に与えた影響はどういうことなのか、どう理解されたか。我が国も宇宙飛行士が三名いらっしゃるわけでございますけれども、我が国の実験計画、我々の目の前でぽかんとやられたのでは、これはもうあなた、首になりますよ。そんなことはないと思いますけれども、その辺についての御所感を伺いたいと思います。
#17
○河野国務大臣 アメリカのスペースシャトル・チャレンジャー号の事故は、我々にとりましても大変痛ましい事故でございまして、お悔やみを申し上げているところでございます。
 矢野委員御承知のとおり、この事故の原因究明につきまして、二月三日にアメリカでは大統領諮問委員会ができまして、ロジャーズ元国務長官がその委員長に任命をされました。百二十日以内に事故の原因について調査をして報告をしろ、こういうことになっておるわけでございます。
 当初、この原因究明が相当時間がかかるのではないか、原因究明に相当長期の時間がかかって、このシャトル計画に相当大幅な遅延があるのではないかというふうな観測記事などもございましたけれども、百二十日以内に原因究明をして報告をしろ、こういうアメリカの方針が打ち出されまして、今非常に積極的に原因究明が続けられておるところでございます。したがいまして、百二十日以内、こういうことでございますから、早くわかればそれだけ早く取り返せると思いますし、遅くも百二十日以内には何らかの報告がなされると考えます。
 したがいまして、三月にも打ち上げ計画がございましたけれども、これには多少の変更があるんじゃないかと私ども思わざるを得ませんが、言われておりますようにそんなに大幅な大変更があるとは思えないのでございます。新聞等で報道されましたが、私も追悼式に出席をいたしておりましたが、レーガン大統領はその追悼式でも、我々はこの悲しみを乗り越えて宇宙開発を継続する、昨日の一般教書でも同じような趣旨のことを正式に述べておられますから、多少の変更はあったとしても、そう大きな変更ではないのではないかと現在予測をいたしております。
 また、日本のペイロードスペシャリストといいますか、このシャトル計画に参加をする予定になっております三名の候補者は現在研修中でございまして、この研修は予定どおり続けていくつもりでございます。搭乗の予定が六十三年の二月ということになっておりますから、まだまだ期間もございます。その間に多少の変更はあったとしても現在の計画はそのまま続けていこう、こういうことで考えております。
 なお、今週土曜日、二月八日には種子島から放送衛星の打ち上げ等がございまして、もう既にカウントダウンに入っておりますが、これはスペースシャトルと全く系統の違う技術でございまして、それへの影響は全く考えておりません。ただ、気象状況とか準備状況、念には念を入れておりますが、私どもとしては予定どおり打ち上げるつもりでございます。
#18
○矢野委員 御成功を祈っております。
 国内経済の問題に入りますが、この円高、余りにも急激で大幅であるということから、我が国の産業、特に中小企業、輸出関連、深刻な打撃を受けておるわけでございます。たしか五十二年、三年も円高ショックがございました。日本経済、いろいろな苦難の中をそれを乗り切ってきたわけでございます。
 しかし、あのときの円高ショックと今回の円高ショックは、客観条件において大変な違いがあるということを、総理、まず御認識をいただきたいのです。例えば金利の問題にしましても、たしかあのときは一年間で六%から三・五%まで金利を下げました。それから世界経済、特に日本とヨーロッパの経済は、あのときはまだ上昇気流にありました。我が国経済も上昇気流にありました。そこへ円高が来たのです。それともう一つ大事なことは、五十二年、五十三年は日米の貿易摩擦は起こっておりません。少なくとも貿易収支の面ではバランスがとれておりました。今のように大変な日本の貿易黒字、アメリカから苦情が来る、そんな状況じゃなかったのです。ですから、あのときは金利を下げ、そして日本経済も上昇気流にあった。財政もかなりの機動力を持っておりましたね、大蔵大臣、あのときは。財政赤字はそれほど深刻じゃなかった。
 今はもう身動きつかない、政府に言わしてみれば。内需拡大といったってお金がありませんということです。出すのは舌を出すのも嫌だみたいな感じですね。あのときは財政に機動力があった。金融政策にも機動力があったのです。現在は自由金利預金がふえてきておる。公定歩合を下げたからといってイコール貸出金利が下がるわけじゃない。公定歩合引き下げのインパクトは極めて弱くなっておる。あのときは金融政策にはかなりのインパクト、機動力、影響力があった。しかも金利の下げは一年間で六%から三・五%まで下げた。まだほかにもありますけれども、あの五十二年、五十三年の円高ショックに比べまして、今回は極めて不利な状況にあるということをまずお認めになりますか、どうでしょうか、大蔵大臣。
#19
○竹下国務大臣 今の御意見を交えての御質疑の中で、たしか五十二、五十三というのは公共事業等を増査定のできた時代でございます。すなわち、正確に覚えておりませんが、恐らくちょうど四十兆ちょっと上回った程度の公債残高のときでございます。したがって、財政の対応力があったという評価もあるいはそのとおりでございましょう。それから公定歩合の問題につきましては、自由金利商品等がふえていけば徐々に公定歩合の持つ意義というものが多少力が弱くなってくるというあのときとの差はございます。私どもも注意しなければならぬのは、非常に粗っぽい言い方でございますが、あのとき一時の大変な急速な円高にも日本の企業は一件も倒産することなく対応できた、そういうことに対する自信、すなわち日本の労使のいわば対応力、柔軟性、それはやはりとうとい経験にはなっておるというふうに私は思います。
 しかし、あのときもう一つの要因として、対米貿易摩擦はございませんでした、繊維問題等が終わった後でございますから。したがって、そういう政策選択の範囲が厳しくなっておることは私も認めます。だからこそ先般、十二月初旬そして予算編成のとき二回にわたって、円高によって受ける中小企業の対策について、転廃業をも含め具体的な政策が打ち出され、また通商産業省におかれて今国会にも法案提出の準備がなされておる。だから大変な目配りをしていなければならぬ状態にあるという問題意識は、私もひとしくいたしております。
#20
○矢野委員 同じことを繰り返してもあれですから……。
 とにかくあのときは日米の貿易バランスはそれほど不均衡じゃなかった。そして円高による国内のデフレ、国内需要の停滞、それを、アメリカには大変悪いことですけれども、対米輸出でカバーすることによって五十二年、五十三年の円高デフレは乗り切ったといっても差し支えないのです。私たちはあのときのこの予算委員会で、それじゃまずいから国内需要を喚起しましょうということを何遍も言いました。しかし結果は、日本経済は対米輸出を拡大する形で円高を克服したというべきだと思います。しかし、その条件は今はないわけなんです。だとするならば、これは国内経済の不況、縮小という形で今回は円高デフレを迎えるしかない。選択の幅がもうなくなってしまっておる、大蔵大臣もお認めになったとおりです。
 私は、竹入委員長ともども、全国の不況産業の実態調査に行ってきました。これはまことに言葉ではあらわせないぐらい深刻な状況でございます。しかも五十二年、五十三年と比べてもっと根本的に違うことは、対米輸出の問題が一つと、もう一つは、我が国経済は、総理、あなたが就任されて、五十八年の二月ごろから日本経済は上昇期に入ったのですね、五十八年二月を底入れにいたしまして。そしていろいろな統計の示すところは、昨年の七月で経済の一つのサイクル、上昇過程が今度は下降に入ってきておる、これは厳然たる事実であります。これは今回の円高ショックの始まる前から我が国の経済は、経済の持つメカニズムによって自律的に下降期に入ってきておる。そこへ円高デフレが重なってきておる。あのときは上昇期であったのです。なぜそんなに、二十五カ月好況が続いたというのは総理の運のよさか、支持率の高いのもそれが原因だと私は思っておりますけれども、経済がよかったからです。これからそうはいきませんで。ほんまに運のええ人やこの人は。まあ冗談です。
 しかし、いずれにしても客観的には経済は昨年の七月から下降期に入ってきておる。そこへ円高ショックでございまして、私は岐阜県へ行きまして陶磁器の業界で話を聞いてきました。円高の初めには早速一割引いてくれという話です。それから、値引きだったのが今度は数量が減ってきた、その前の注文がキャンセルになってきた、こういう状況がありまして、まだ一月いっぱいの仕事は何とか残っております、二月からはないのですと。数字で申し上げますと、契約のまとまった状況は、一昨年の十月に比べて去年の十月は五二・三%、半分に契約は減っておる。十一月も五一・三%、契約は減っております。在庫は、十月は一年前だと一七八%、倍近くふえておる。売れないから在庫がふえる。十一月は二一一%、倍以上もふえておる。受注残は十月には一年前に比べて二六%に減っておる。十一月は二四%、四分の一に受注残が減っておる。だから多治見の陶磁器の方々は、これじゃ首つるしかありませんと言っておられました。これは一つの例を申し上げておるのでありまして、我が党の調査団があちらこちら調べました結果、ほぼこれに類する状況であります。
 総理、私は冒頭にかなり時間をかけてグローバルな立場の日本経済のあり方ということを議論いたしました。その結果、日本の責任というのは極めて重大だということは総理も強調していらっしゃいました。その責任を果たすのは内需の拡大によって、少なくとも日本が貿易の上で外国に御迷惑はかけないように努力するということが一つだと思います。
 もう一つは、今申し上げた国内経済の面からも五十二年、五十三年の円高不況とはちょっと性質が違います。今度は極めて深刻ですということは大蔵大臣も方向としてはお認めになっておる。あのときはまだ輸出ドライブという輸出へ逃げるという手があったのです。金融もかなりの効果を発揮したのです。そしてまた、財政もおっしゃるようにかなりの役割を公共事業その他で果たしたのです。今度のこの予算は何でしょうか、総理。これだけの悪条件、五十二年と比べても悪条件、対外的にも悪条件、そして日本経済、特に中小企業はまさに倒産の危機に瀕しておる。今大蔵大臣、あのときは、五十二年、倒産は一件もない、あれは取り消した方がいい。私は倒産したのをたくさん知っていますよ、あの五十二年、五十三年のときだって。あなたの耳には入らなかったかもしれないけれども、私たちの耳には入っておる。今日だって、もう倒産が起こっておるのです。
 私は、抽象的に中小企業を助けろ、そんなきれいごとを言うつもりじゃないのです。論理的にこの背景をもっと政府はシビアに分析をし、対処すべきではないかということを国際的な観点からも国内的な観点からも申し上げておるわけでございますが、総理、いかがでございますか。
#21
○中曽根内閣総理大臣 中小企業の動向につきましては、昨年の秋から特に注意をしておりまして、そういう心配は矢野さんと同じようにしておるわけでございます。特に為替が不安定で先行きが見通しがつかぬという場合には新しい契約ができない。そういうので、今までの既成の契約の分は輸出は続くけれども新規契約が停滞する、そういうような危険性が去年の秋から出てきつつあります。おっしゃるとおりの現象がございます。
 そういう意味において、何とかしてこれを持ちこたえ、また場合によっては転換もする、あるいはさらに生産性を向上するような、いろいろ機械の導入とかそういう面でも協力しよう、そういうわけで去年の秋に特別の措置で金利の引き下げをやりまして、所要の資金を供給する。たしか六・八%を五・五%程度に下げたと思います。そのほか、今国会におきましても、特別立法を行ってさまざまな支援措置を行いたい等々の措置を講じまして、それらの方々に御心配をかけないようにいたしておるところでございます。
#22
○矢野委員 中小企業対策賢一つを取り上げましても、金額は総理、大変憎たらしい言い方ですけれども、あなたが総理になられてから毎年減っているのです。そして、円高不況に悩む中小企業に対する緊急融資をいたします。しかし、その枠も限られておるし、その金利も高いのです、現実は。ですから、この議論はこれぐらいで切り上げますけれども、深刻な御認識を持って、ひとつ精力的に取り組んでいただきたいということを強く御要望を申し上げます。
 それから、通産大臣にお伺いしたいのでございますけれども、新聞の報道するところによりますと、この円高によりまして、特定の業種を挙げて大変恐縮でございますが、例えば電力は、一ドルが二百円、一バレルが二十ドルという仮定、想定を置きましたら、それだけで一兆一千八百億円の電力業界の差益が出ると報道されております。これはどうやら間違いじゃないと私も思っております。この電力会社でも、かねてから政府は原子力発電を推進せよということでいろいろ電力業界に協力を求めてきた。それで、今やそういう政府方針をサボって原子力発電のウエートの低い、つまり石油のウエートの高いところの方が得、原発を重視したところはむしろ苦しくなってきておる。
 これは一様に電力九社は大もうけでございますけれども、そういう差も出てきておりますね。
 それはともかくといたしまして、この電力のみならず、原油の値下がりによって我が国は従来払っておりました輸入に伴う支払い代金というのが当然減ってくるわけです。少なくなってくるわけです。これはイコール貿易黒字を拡大する要因なんです。
 そこで、通産大臣に伺いますけれども、想定はきのう申し上げたつもりでございますが、それはドルが五十円安くなるという想定になっておりますか。まあバレルの方でいきましょう。一バレル十ドル。ヤマニ石油相もバレル十五ドルぐらいになるのじゃないかというようなお話もあったようでございますから、十ドル下がるという仮定をいたしましょうか。そうすると、日本の原油の輸入代金は、昨年の実績、輸入総量から申し上げてどれだけ浮くことになりますか。
#23
○野々内政府委員 単純に計算をいたしますと、原油の価格がバレル十ドル安くなったということで、昨年の輸入量が十二億四千七百万バレルでございますので、そのときのレートを二百四十円と計算いたしますと、支払いの減少額が二兆九千九百億円ということになろうかと思います。
#24
○矢野委員 どうもありがとうございました。
 総理、これは、電力会社はもうけ過ぎているからけしからぬということも言いたいのですけれども、それだけを言っているのではないのです。そのような業界の方々は為替差益で利益があり、原油の低下によって利益があり、しかもその結果貿易黒字が拡大する。これは電力会社が悪いわけではないけれども、結果としてそういうことになる。そして貿易摩擦が激しくなって、またいろいろなことがあって、そのしわ寄せを中小企業がかぶっておるということを私は申し上げたいのです。日本の輸出がどんどん伸びて、貿易黒字がふえて、そしてしかられる。これは、日本の業界の中であの業種がやり過ぎてこの業種が損するんだということでございます。これも是正されなくてはなりません。とともに、輸入面においても、その業界はその差益によって大変な利益をおさめ、かつその結果が貿易黒字の拡大につながっておる。結果また外国からおしかりを受けることになる。結果また円高が加速される。結果また中小零細企業が苦しむ。この悪循環を私は申し上げておるのであります。感情的にもうけ過ぎるからけしからぬだけを言っておるわけではない。
 そこで、通産大臣、これについて自民党内にもそういった輸入に伴うあるいは円高に伴う利益は賦課金か何かの形でちょうだいして、それを円高で苦しむ中小企業対策費に充ててはどうかという御意見があると承っておる。これはなかなかいい御意見です。あるいはまた、そうじゃない、これは消費者に還元すべきものである、電力料金その他を安くすべきであるという意見も別にある。あるいはせんだって同友会の方でしたか、その輸入業者の差益というものを賦課金の形でいただいて発展途上国に対する援助に向けるべきであるという御意見もある。
 いずれにしても、そのような日本の国際的責任というものを感じ、あるいは国内のアンバランスを考えてそれぞれの御提案があるんだろうと私は敬服をしておるわけでございますが、この三つの考え、それ以外にも考えがあるかもわかりませんが、通産大臣のお考えを承りたい。ただ、業者には設備投資やらしておりますからそれで済みますなんというようなことは言わないようにしていただきたい、多分そう言うだろうと思いますから。
#25
○渡辺国務大臣 お答えいたします。
 為替レートが去年の秋から強くなったということは事実であります。六十年の前半は二百四十六円ぐらいでおったものが去年の十月以降急激に強くなった。これは時間がまだ足らないというような面もありますが、輸入価格にそろそろ影響が出てきた、これも事実でございます。
 それから、原油の点でありますが、これは実は十ドル安くなったらばという前提があるわけでございますが、去年の上期は平均をいたしまして輸入の原油価格が二十七・九五ドル、大体二十八ドル、これが十月、十一月、十二月大体二十七ドル台ということで来ておって、昨今二十ドルを割る、スポット価格が十五ドルとかいうのがぽつりぽつり出ておりますが、全体としてそういうふうに安くどんどん今入ってきておるというわけでもありません。これから安くなるであろうという見通しが言われておる、これも事実でございます。しかし、これもなってみないとわからない。したがいまして、私といたしましては、この前も石油の値段が下がって電気料を下げて一年かその程度でまた値上げしてというようなことは繰り返したくない。したがって、三月には一応決算の締め切り、それが五月ごろまでにはまとまるでしょうし、そのころまでのいろいろ為替レートの定着の仕方、原油の下がり方の定着の仕方、将来の見通し等もほぼわかるようになってきますから、そういうようなことを頭に入れながら、ひとつ対応をしていきたい、そう思っております。
#26
○矢野委員 円高あるいは原油安というのは一遍に効くものではない。徐々に効いてくる。しかし、石油問題を取り上げましても、今やOPLCの諸国は価格維持政策よりもシェア拡大政策というふうに政策が明らかに変わってきておりますから、これが昔のようにまた原油がぐうっと上がるというようなことはまずないだろうというふうに思います、何ぼになるかは今後の問題といたしましても。
 また、円高ということも、先ほどるる議論いたしましたように、これは方向として、国内産業にとってはつらい面もたくさんありますけれども、この方向としてはそういうことであろう。というならば、そう逃げ口上みたいにおっしゃらないで、これはその方向も政策の判断の前提にされて対処されるのが正しいのではないかというふうに思いますので、今後ひとつ真剣にお取り組みをいただきたい。
 それから、住宅問題も内需の大きな柱でございます。例えば、昭和四十八年はGNPの中で住宅投資は八・五%だったんです。ところが、最近ではGNPに対して住宅投資は四・九、半分近くまで住宅投資のウエートが減ってきております。
 先ほど日本経済、債権大国だ、貿易黒字だ、そして例えばイギリスは国内の道路の整備を完璧にやっちゃったということを申し上げましたけれども、私はこの際住宅という問題に着目をしていただいて、しかもこの住宅投資というものは決して輸出ドライブはかかりません。これはあくまでも国内需要でございます。しかも、重厚長大と言うと語弊がありますけれども、住宅産業はどちらかというと重厚長大型産業にプラスになる仕事でございます。今、そういう業種が非常に苦しくなっておる。
 ですから、総理もう先刻御承知だと思いますけれども、歳出の総額に占める住宅対策費の割合、フランスが四・七%、これは八一年。アメリカは八三年の実績で一・九%、イギリスは二・三%、日本は一・五%というふうに一番少ない。歳出総額に対する住宅関連減免税額の割合、歳出総額に対する住宅の減税、免税、もう日本はけた違いに外国に比べて悪いですね。
 アメリカは、歳出総額に対する住宅の免税、減税は何と四・二%、イギリスは二・三%、西ドイツは二・九%、フランスは二・五%。日本は何ぼだと思います。〇・二%。今度多少の措置が行われまして、それを見込みましても〇・三というところですね。二・三%、二・九%、二・五%、アメリカは四・二%、日本は〇・二%。
 中身、これは国民の皆さんにも聞いていただきたいと思って申し上げます。アメリカの場合は、私はちょっと行き過ぎかなという気もしますけれども、住宅ローンに限らずすべての借入金利子について所得控除がアメリカで認められておる。税金をまけてもらっておる。金額的には制限はない。借入期間全期間である。イギリスは、その所得控除を受けられる住宅は、自分が住んでおる主たる居住のところは減免税をします。西ドイツも同様でございます。フランスも同様です。これは大体妥当な線だと思うのですね。自分が住んでいる必要な住宅を建てる場合には大幅な減税、免税をしてあげる等々、中身は相当、日本と比べますと情けないといいましょうか、ヨーロッパの人が日本をウサギ小屋だなんて悪口を言いますけれども、言われてもしようがない、これは政府の責任だと言わざるを得ません。
 特に私が納得できないのは、最近日本の法人、企業で、本業でもうかった、利益が上がった、これは法人税を払わなくてはいかぬ、ちょっとばかばかしいと言って、将来値上がりしそうな土地を借金をして買う。法人の場合は、その利息は損金で認められておるのです。そうですね、大蔵大臣。土地投機で、しかも借入金を起こして利息を払う。ばかげたような値段、想像もつかぬような値段で買う。そんなのでペイするのですかと言ったら、いや、その分本業の利益が減りまして法人税助かるんですなんて言っていますよ。つまり、法人にはそのような減税、免税を認め、個人が自分のマイホームをつくろうとすると減税、免税を認めない。この不公平が私は一番納得できない。しかもそれは法人の利益隠し、利益の圧縮に利用されておる。こんな会社を私は山ほど知っておりますよ。これはまことによくない傾向なんです。それで主税局を初め大蔵省は、法人税の税収が落ちた落ちたと嘆いていらっしゃる。
 それ以外にいろいろな不公平税制がある。特に最近は大法人の、例えば海外に対する税金の問題でごまかしをやっておる、そういう事例もたくさんここにございます。お望みなら会社の名前全部挙げてあげてもよろしいです。しかも今申し上げた、本業でもうかった利益をそういうまことに常識で考えられない、土地投機とも言われるような買い方によって、その利息で利益を減らして法人税を免れておるという例もあるということを一方で考えますと、私は、国民が今一番必要としておるのが住宅、この住宅に対して、アメリカでは四%以上も歳出規模に対して減免税があるわけです。自動車をかえたのも何かと全部見てあげるというのがアメリカですけれども、それはちょっと行き過ぎとしましても、イギリス、フランス、西ドイツは、主たる居住用の住宅についてはその利息は税金から控除しておる、所得控除してくれておるということを考えますと、今回多少の措置はなさったわけでございますが、こんなものは説明にも何にもなりません、こういうことと比べますと。
 どうでしょうか総理、住宅減税は第一義的には内需拡大の大変な決め手になる、国民が求めておる、諸外国の例から見ても日本は余りにもこの減税、免税はお粗末である。一方、法人はそういう利息は全部経費、損金で認められておる、こういう不公平と考え合わせて、何とか国民大衆の住宅の、それにかかるローンの利息は減免税をするという大胆な決断をひとつお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#27
○中曽根内閣総理大臣 矢野さんが御指摘になったような現象は部分的にあることを私も知っておりまして、この対策は考えなければいかぬと思っておるところでございます。
 東京都内でかなりの地価が上がっておる要素等を見ますと、やはり法人で、片っ方で非常にもうけているものが、片っ方では節税のためにおっしゃるようにかなり高い値段でビルやあるいは土地を買って赤字にして、それでそっちの方を埋めて節税をする、そういう現象なきにしもあらずという声が頻々として私の耳にも入っておりまして、これを何とか取っ捕まえる方法はないか、そういうことを今大蔵省にも検討さしておるのです。ただそれは、個別的によく会社の内容を調べてみないとそういうことはよくわかりません。それから一つは自由経済、そういう基本原則もあることでございますから、統制らしきことはなるたけやらぬ方がいいという原則がありますけれども、しかし、常識を逸したようなそういう現象があることは、これは我々としてもよく調べてみなければいかぬ、そう思って、今その点は全く同じ関心を持ってやっておるところでございます。
 それから第二に、日本の内需振興について住宅政策が非常に重要であるという点は、全く同感でございます。今回やっておる政策もその一部でございますが、私はまだみみっちいと自分でも思っておるのであります。やはり今度税制の改革を今やっておるところでございますから、矢野さんの御議論等も税調にそのまま報告いたしまして、こういう我々としてまことに傾聴すべき御議論もあるので、これは答申のときに考えてもらいたい、来年度かなりの改革をやるつもりでおりますから、そのときにもぜひ税調の方に参考にして意見を考えてもらいたい、そういう考えでおる次第でございます。
#28
○江崎国務大臣 今の総理の答弁に関連して、住宅減税は〇・二、こういう御指摘でございましたが、これはまあ建設大臣から答弁した方がいいかもしれませんが、私特命相として申し上げますと、一%、これは本当にお恥ずかしいことですが、今回一%にしたわけです。そして、これを予算に計上しておるわけですが、いずれにしましても〇・二からとにかく一%にした。それから、個人としては二十万円を限度に減税をする、こういう改正をいたしておりますので御了承を願っておきます。
#29
○矢野委員 〇・二から一%とおっしゃいましたが、私どもの計算では〇・三にしかなっておりません。この議論はいいでしょう。どっちにしても、諸外国に比べればお粗末であるということについては変わりがないわけでございます。
 総理は、ことしは無理だけれど、米作住宅減税については税調にも話をしてという大変前向きの御答弁をいただいて、また法人のそういう利益隠しとも思われることについても断固たる決意を披瀝された。ぜひその言葉だけに終わらないようにしていただきたい。確かにこれは技術的に難しい問題があります。自分の仕事のための土地なのか投機のための土地なのか、区別はなかなか難しいという問題がございます。ですから、私がこんな大きな声を出して言うほど簡単じゃないということは承知しておるのでございますが、それにしても法人がそういう土地、建物の借入金の利息は税金が免除され、まあ要するに損金、経費に計上され、個人はしていただけない、原則としては。それが悔しいということを申し上げておるわけでございます。このアンバランスは何としても解決してもらいたい。−それから総理、内需拡大でまあ民活ということをおっしゃっておるが、私も原則としては民活には賛成でございます。東京湾の横断道路、明石大橋、相当やり方等には問題がございますけれども、方向としてはそれもよろしいと私は思います。しかし、これが先ほどから言っておりますようなことしの経済の内需になるかといいますと、いささかならないわけでございます。景気としてはいい、景気のいい話なんですけど、実際六十一年経済にはプラスはございません。短期的にはこれはだめですね。
 そこで一方、ある高名なエコノミストの話では、東京という町は、これから二十一世紀にかけてニューヨークに匹敵する情報センターあるいは金融資本のセンターになるであろう。一つは、ニユーヨークと東京、時差が十三時間あるから、ニューヨーク、東京が金融センター、情報センターになることによってグローバルに二十四時間がカバーできる、あるいは安全保障の面からもそれが言える。さらに、資金の集積という面から見ても、ニューヨークには約二千兆円ですか、それから東京には五百兆円の金が集積しておる。これはヨーロッパ全体でもその程度であって、これはまあロンドンだ、やれチューリヒだ、あちこち分散しておる。ところが、日本の場合、東京にそれだけの、ヨーロッパに匹敵する資金量、資本量が今や集積しておる、資本市場としての成熟をしてきておるという意味のお話がありました。まあこれから東京はよくなるぞよという御託宣でございますな。確かに私は東京がよくなるということにつきましては、そうですか、結構ですなと思いつつも、反面、地方はどうなるのだろうという心配があるわけで素直に喜べない気持ちもいたしますが、それは別といたしまして、二十一世紀、あと十四、五年の間にこの東京の都心部には六十階から七十階というような高層ビルが四十も五十も六十も建つであろうなどというお話も伺いました。ことし着工を予定されておるそういうビルだけでも四つはある。あっちの方向、こっちの方向と、そっちの方にもあるらしいですよ。もう御存じだと思います。
 それは第一期は、昔は冷暖房完備のビルなんてハイカラと言われました。これが第一期。第二期は超高層ビルがハイカラと言われました。最近では第三期、ハイカラな言葉ですけれどもインテリジェントビル、つまりビル全体がコンピューターの固まりみたいな機能を持ち、かつ屋上には通信衛星と交信できる施設を持ち、かつヘリポートで、ヘリコプターで離発着できるような装置も持つ。そういう大変なビルがことしだけでも、これはホテルらしいですけれども三つも四つも計画、もう着工寸前である。これから十四年、十五年の間にはそういうビルが五十も六十もできるというお話、これはお話です。これは、光には常に影があるというわけで、光はよりきらびやかであってほしいと思いますが、反面、私たち特に野党といたしましては、影の部分に目を注がざるを得ないという気持ちも、あるいは素直に喜べない気持ちもあるのです。
 それは別といたしまして、内需拡大という視点から申し上げておるわけでございますけれども、そういうような東京都心の再開発計画というものは総理もお聞き及びであろうかどうかということです。そういった場合、諸外国からもオフィスの需要がどんどん高まっておる、環境その他問題がない、いろいろな前提を置いて、私は、建築基準法あるいはその他関連法規、特に建ぺい率あるいは容積率については、それこそ東京湾の道路も結構でございますけれども、横断道路も結構ですけれども、今日の前にそういう計画があるわけでございますから、それについて容積率を緩和するのかしないのかということは、そういう方々は、中曽根さんしてくれるんじゃないかしら、それをしてくれるまでちょっと待とうということで、かえって内需がおくれております。するならする、しないならしないとはっきりした方がよろしい、あきらめもつくというものでございます。ですから、容積率を緩和なさるなら緩和するとお答えいただきたい。
 それから、これはまた恐縮ですけれども、そういうインテリジェントビルについて、それぞれのビルに通信衛星と交信するような施設を郵政省として許可されるのかどうか、ヘリポートもどんどん許可されるのかどうか、これは今後の東京の将来を考える上においても一つの参考になりますので、簡潔にお答えをいただきたい。総理、まずその辺から。
#30
○中曽根内閣総理大臣 東京の容積率の問題は、私、就任した直後も取り上げまして、例えば山手線の範囲内においても容積率を緩和せよ、そういうことで決定もいたしまして進めておったのです。ところが、大阪はもう制限ないですね。東京は制限があって、木造の場合は二階以上いかぬとか、鉄筋でも四階以上いかぬとか、そういうものがあるわけです。そこで、思い切って大阪並みにしなさい、そういうことで決定しまして、建設省もそういう方面で指導しているのですが、実際はそれをやるのは区なんです。新宿区とか、そういう区がやる。区の場合になりますと、東京の場合はちょうどワシントンDCとニューヨークと一緒になっておるような都市でございますから、ワシントンDC的要素も残しておきたいという区民の強い要望もございまして、そうして環境の問題あるいは日照権の問題等々から住民の抵抗もかなりありまして、遅々として進まない部分があるわけなんです。政府がこれを直接やるわけにはいかないで、区のお仕事に法律上なっております。そういう意味で、それでも東京都はいろいろ協力してくれまして、かなりその地帯を広げつつありますけれども、私が期待したほどまだ広がってはおらない。しかし、今後とも区の皆様方にも御協力願って努力してまいりたいと思っております。
#31
○三塚国務大臣 ヘリポートの件でお答えを申し上げます。
 インテリジェントビル、二十一世紀に向けての重要な建築であろうというふうに思いますし、その屋上にヘリポートが併設をされるということが情報化社会、高密度経済社会に対応する経済人としての重要なポイント、御指摘のとおりであります。既に昨年十二月、航空法に基づく設置許可の申請がなされた場合はその安全性、御指摘のように環境の問題等を調整をさせていただきまして、申請が出ましたならば適切敏速に対処してまいりたいと思っております。
#32
○江崎国務大臣 関連して御説明申し上げますが、民活に触発されて東京湾の横断道路、各省庁、通産省は新産業基盤整備促進臨時措置法、それから今の運輸省は港湾利用高度化促進法、それから郵政省は民間活力の活用による電気通信の高度化基盤の整備に関する法律、それから建設省は特定都市開発基盤整備の促進に関する法律、これなどを、土地は持っておる、また地の利は得ておる、したがって民間活力でこれらを充実したい、建設したい、こういうわけで今それぞれの構想が出ております。そこで四省庁間で話し合いをいたしまして、我々総務庁で調整をするようにという申し入れが参りました。そこでこれを調整して一本化して、やはり複雑にならないように簡素化していずれ御審議に供したい、こう思っております。
 それからついでながら、今のヘリポートとか、それから小型飛行機の問題等につきましては、既にアクションプログラムにおいてこれは決定したところでございますので、速やかな結論を得たい、こう思っております。
#33
○佐藤国務大臣 インテリジェントビルという新しい形態のビルがだんだんとできるようになると思います。現在、通信衛星で活用しておるのは、NTTが御承知のとおり固定局間の地域の連絡通信網、地上ではケーブルを使ってやっておる、こういう形態で通信衛星は利用しておるわけでございますが、今委員の御質問のインテリジェントビルに、屋上にその施設をつくるという場合には新しい時代を迎えるわけでございますし、そのインテリジェントビル全体がコンピューター化され、あるいはまた高速のファクシミリが設置され、あるいは多機能の電話が設置され、あるいはまた電子黒板等の設置もされるとか、非常な高度の情報綱の集中したビルになるわけでございます。したがって、通信衛星の送受信に対して、一応電波法の基準がございますので、それに基づいてチェックをしながら積極的に許可していきたい、こういうぐあいに考えております。
#34
○矢野委員 東京は単なる東京というよりも、世界の中心の一つという意味での国際化あるいは情報化等々が進行するわけでございまして、容積率その他の問題について、これは確かにおっしゃるとおりで東京都あるいは区の問題でございますが、私はやはり必要な、つまりいろいろな諸前提を置いた上でのことでございますが、必要なことについては政府としても積極的にその方策をおとりになるべきであるということを申し上げておきたいと思います。
 さらに、今度は東京じゃない地方につきましては、いわゆる利潤ベースで公共事業というものはなかなか行われません。むしろ東京のそのようないんしんをきわめる見通しと相前後して、私は、地方にも公共事業あるいは必要な情報センターをそれぞれ設置するとかあるいは国内空港をより増設するとか、その他いろいろな手段で地方が置いてきぼりを食わないように御配慮を願いたいと思います。この問題についてはこれ以上は申し上げません。
 あと所得税の減税問題と安保、防衛の問題、かなりおなかに悪い話があるわけでございます。ちょっと私も人相がこれから変わってくるわけでございますが、その前に上品な話題を一つしたいと思うのです。
 昨年私は、フィルムセンターの火事がありまして、大変不幸なことでしたが、総理もおっしゃっておりましたが、映画というものはやはりそれぞれの人生の青春の一こま一こまに思い出が残っておる、古いよき映画をライブラリーする、保存していく、二十一世紀は映像の時代だと言われておりますけれども、若い人たちがそういう映像を学ぶ、立派なディレクター、プロデューサーに育っていく、カメラマンに育っていくためにもそういうことは必要だということを申し上げたところ、早速ことしの予算において御配慮をいただきました。このことについては総理に私、御礼を申し上げておきたい。本当にありがとうございました。
 そこで、文部省に伺いたいのですけれども、このフィルムセンターはどういうことになったかが一つ、それから京橋分室の問題もあわせてお答えをいただきたい。あわせて、よその国のあれを見ますと、フィルムセンターはやはり独立した機関ということで、いろいろな方々が自由に勉強できるような立派な施設を持っておるし、独立した機能――行政改革に逆行すると言われるかわかりませんけれども、総理の施政方針演説を伺っておりましても文化ということに大変力点を置いていらっしゃる、私は同感でございます。そういう意味で、このフィルムセンターをより独立した機能の発揮できるようなものにしていただきたい。このことについて文部大臣の御所見を承りたいと思います。
#35
○海部国務大臣 御指摘のように、映像文化は一国の文化の基礎を広め、発展させていく上に極めて大切なものでありますが、先生昨年御指摘のように、フィルムセンターの一部、特に貴重な外国映画部門を焼失いたしまして、その後民間の心ある人々のいろいろな好意や映画関係者や財界の寄附等もいただきながら、また映画に対して大変関心をお持ちいただく矢野委員からも御寄附等も賜りながら、焼失いたしました分については、何しろ昨年は予算概算決定後の損失でございましたので、当面の既定経費を文部省としてもできるだけ回しまして、一部は既に回復をいたしましたし、また御指摘のように、イギリス、フランス、ドイツなど関係各国のフィルムセンターやそれぞれのところにお願いをして、プリントを復旧するとか著作権者に対して了解工作をとるとか努力をしておりまして、今後三年計画で、焼失した分の中で貴重な必要なものは全部復旧をして、映画研究者の皆さんや一般の愛好家の皆さんに御迷惑のかからないような計画を立て、その努力を進めておりますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
 さらにもう一点、東京国立近代美術館の分館でなくて、独立なものをきちっとしたらどうかという昨年来の御指摘でございますけれども、御承知のように行財政の非常に厳しい環境の中でありますから、今直ちに新規にそれをというのはなかなかここで申し上げかねることでございますが、しかし、私どももその必要性は考えまして、京橋分館から新たに相模原市に今年四月フィルム保存庫を開設いたします。同時に、残りましたフィルムセンターについては、検討委員会を設けて今後どのようにしていったら映像文化の向上発展のために役立つことができるかどうか、今検討を有識者に集まってもらって続けておるさなかでございます。どうぞ御理解をいただきたいと思います。
#36
○矢野委員 総理、昨年私この席で、映像界の大きな貢献をなさった方々、映画監督、文化勲章をまだいただいていないのはいかがなことかということを申し上げたら、これは私の権限の外のことであるけれども同感であるというお話がございましたが、その後、黒沢明監督が文化勲章を受けられて、これはまあここで言うたからというわけではない、当然御本人の実績と力量、お人柄の結果でございます。やはり芸術家を大事にしていくということは、これからの文化国家として必要なことですね。
 最近話題になっているものに、英国のプリマバレリーナの清水洋子さんという方が、外国人雇用法、これは英国政府の政策がございまして、国外退去ということになるんですね。珍しいことに、そういうことは余りないのですが、英国のそういう芸術家の組合、エクイティーという芸術家労組の方々も、彼女が非常に優秀な、英国でも五本の指に入るバレリーナである、英国民から大変貌しまれ、愛されているというようなことから、そのピザ延長の応援が労組からもあった。あるいは国会でも議員さんからもあった。しかし残念ながら退去というわけです。貿易摩擦と言いますけれども、底流には文化摩擦ということもある。これは非常に深刻な複雑な問題で、この後具体的なお尋ねをするつもりでおりますけれども、我が国のアーチストたちが海外へ行って活躍をしておる。外国には雇用法があってちょっと遠慮してくれということになる。全部が全部というわけにいかないでしょうけれども、このようにイギリス国内にも清水洋子さんにとどまっていただきたいという強い声があるにもかかわらず、これはちょっと私、残念な気がするわけでございます。ほかにもそういうケースがあるわけです。何か貿易摩擦のあおりで、日本憎たらしいみたいな感じでそっちの方にとばっちりが来たのではたまったものではないし、ますます文化面での交流が阻害されるということにもなります。
 ですから私は、このイギリスのバレリーナの件を一つの例として申し上げるわけでございますけれども、総体的にこういう問題は、政府としては一遍考えていただかなくちゃいかぬことだろう。もっともこれは余り言いますと内政干渉ということになりますから、これは非常に微妙かつ難しいことです。しかし、これはやはりもう世界で、非常に外交面で総理は各国首脳とも親しくしていらっしゃるわけでございますから、そこはそれ、ハードな法律話じゃなしに、ソフトな感じで何とかならぬものだろうかと私は思うのだけれども、総理、これはどうですか。
#37
○中曽根内閣総理大臣 バレリーナの満水洋子さんのお話で、矢野さんからも前にお話がありましたのでいろいろ外務省にも努力をさせました。調べてみますと、清水洋子さんは一九八四年四月二十一日英国へ入国いたしまして、八四年六月一日から八五年一月五日までの就労許可証が付与されたのであります。それから八五年七月十日まで延長が許可された。そこでまた期限が切れたというので、そのバレエ団から、何しろ英国の有名なバレエ団のプリマドンナですから、バレエ団としてもいなくなると困るお方でもあります。それでバレエ団からサッチャー首相に書簡をもって訴えた結果、雇用省政務次官より書簡をもって、特例かつ最終的措置として八六年一月三十一日まで就労許可を付与された。ことしの一月までは再々延長された。三回延長したわけです。そういうわけで、英国側はもうこの辺でひとつ勘弁してください、そういう話なので、外務省にももう一回ひとつ努力してみるようにと、そうやって今やらしておりますが、事態はなかなかそう楽観を許さないという状態であります。
 それで。こういうような問題は一国、一国だけの問題じゃないので、国際的に、先進国とかそういう適当な国で協定を結んで、芸術、文化を尊重するという意味で、全く特例中の特例でございますから、相互主義で、その関係国の間では国民の要望にこたえるよに措置したらいい、そう私は思うのです。ですから、一つの問題としてこれを受けとめまして、そういう面でも協力してみたいと思っておるわけです。
 詳細は外務省から……(矢野委員「サッチャーさんがサミットに見えるけれども、話しませんか」と呼ぶ)今もそういうことは頭の中にあるから申し上げたので、一つのいい話題ではないか、そう思っております。
#38
○矢野委員 外務大臣、何か御意見ありませんか。
#39
○安倍国務大臣 今総理から答弁があったとおりですが、一月末というのが、また英国の特別な配慮で今月いっぱいということに延ばしていただいておる。英国政府としては最大限の配慮をしていただいておると私は思っております。こういうケース、いろいろありますけれども、やはりこうした文化人等のビザだとか滞在だとか入国、各国の主権には属しておりますけれども、その辺は、これからの文化交流を盛んにするという意味からも、いろいろとこれから政府間でも話はする一つの課題だろう、こういうふうに思います。
#40
○矢野委員 総理の施政方針演説を伺っておりまして、文化の受信だけじゃなくして発信ということを強調しておられた。まことにこれは大事なことだと私は思うのです。ただ、その割には、予算を拝見しますと発信予算がないわけでございまして、精神論に終わってしまう可能性があると思うのです。
 ちょっと具体的なことばかりで恐縮なんですけれども、例えば私費で日本に勉強に来ている、留学に来ている私費留学生、この方々にとって、日本で言えば共通一次試験みたいな試験があるわけです。日本語能力試験あるいは統一試験、これは日本国際教育協会の主催で行われておる。これはそういう方々にとって非常に重要な試験なんですね。ところが、その運営が極めてずさん。受験生が受験会場へ行きましても張り紙もしてない、どこの部屋かわからない、あるいはまた試験場での監督が何となくルーズであるとか、あるいは受験票の印刷ミスや試験問題のミスもあったというようなことで、一体日本は我々のことをどう考えているんだみたいな議論が出ておるわけでございます。こういった方々は、いずれそれぞれの祖国に帰られますとそれなりに活躍をされ、それなりの発言力をお持ちになる方はかりだと私は思います。そういった方々がほんのちょっとしたことで不愉快な思いをしておるという、これに類することは山ほどあるわけですね、総理。これは予算も大事ですけれども、やはり心配り、気配りということが大事だと私は思います。ですから、この留学生の試験問題を文部大臣にお答えいただいて、それらいろいろな問題についての心配りですね。
 例えば、今度は青い目の場立ちさんが出まして、証券のこんなことをやっておるわけですね。売った、買ったしているのです、目の青い外国の人が。証券取引所が国際化しているから、そういう傾向。ところが、日本の習慣がわからなくて困っていらっしゃる。まあ商売のノーハウまで教えることはないけれども、これからどんどんどんどん海外からいらっしゃる方々に、せめて日本というのはどういうものなんだということを教える、そういう施設なりを、日本政府がつくるのが無理ならば経済界に協力を求めるとかというふうな、その他いろいろな考えはあろうかと思います。
 そういう一般論については総理にお答えを伺いたいし、この留学生の問題は文部大臣にお答えをいただきたい。
#41
○海部国務大臣 御指摘の問題は、留学生の留学生活をスムーズにスタートしてもらうために、統一試験とかあるいは能力試験を日本国際教育協会の主催で行っておりますが、矢野委員御指摘の件は、昨年十二月九日のこの試験についての具体的な問題、例えば出題にミスがあったこと、これは率直に、よくなかったことだと思いまして、協会に厳しく、今後こういうことのないように指導をしております。同時に協会側も、ふなれな外国の方ですから、最寄りの駅から試験場までの間に案内人をきちっと配置しましたとか、あるいは当日、雨も降っておりましたので、傘を差して、いろいろ掲示板等が見つらかったというようなこと等も我々の調査で事実としてわかってまいりましたので、やはり外国から留学に来る人がその第一の印象を受ける関門でありますから、御指摘のようにいろいろな面をできるだけ改善して、喜んで勉学のスタートを切ってもらうようにしなければならぬわけでありますから、御注意を十分肝に銘じて協会も指導して改善をしていきたい、こう考えております。
#42
○中曽根内閣総理大臣 日本をよく知ってもらうということは非常に大事なことであります。そこで、最近は日本がこれだけ強い経済力をどうして持ったのだろうか、単に商品がいいというだけじゃない、何かああいうものをつくるについては社会的な組織とかいろいろな面があるのだろうというので、日本をもっとよく勉強しようという空気がアメリカでもヨーロッパでも高まってきまして、例えば私がある教授から聞いたところによりますと、ドイツではことし十以上の大学で日本学の講座を設けたい、そういう申請があったそうです。これは一例でありまして、世界的にそういう現象が今起きつつある。それにこたえるように、我々が教師を派遣するとか日本語をもっと勉強できるようにするとか資料を送るとか、そういう面の努力はもう非常に不足しておるのであります。そういう点では、まず日本語を十分勉強できるように、外国でやれるように、英語なりドイツ語を知っている先生を向こうへ派遣する、そういうようなことから始めなければいかぬと思います。
 それから、留学生の問題で一番頭の痛い問題は宿泊所なのであります。日本の場合は、外国のようなああいういい下宿というものは余りございません。そういう意味で、留学生が共同でもいいから安易に宿泊できて、そして十分勉強ができるような施設をつくってあげよう、これが実は大きな問題でございまして、積極的に取り組んでまいりたいと思う次第でございます。
#43
○小渕委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
#44
○小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。矢野絢也君。
#45
○矢野委員 昭和四十年代と昭和五十年代と比較いたしますと、昭和四十年代は生産性が向上する、その伸びに大体アンバランスでない感じで労働分配率というものも上昇しておりました。ところが五十年代になりますと生産性の向上の伸びに比べまして労働分配率というのは伸びが悪くなってきておる。政府のレポートでもその事実は認めていらっしゃるわけでございます。上場企業の製造業千五十九社ということで調べてみますと、昭和五十年は生産性の伸びに対する分配率の伸び六〇・一%、五十九年になりますと五二・一%というふうに八ポイントもダウンしておるわけでございます。したがいまして、日本人はいかに勤勉に働き、かつ付加価値を高めながらも労働分配率、つまり労働者、勤労者の分け前が伸びという意味では低下しておるということは、客観的な事実としてこれは五十年代認めざるを得ません。消費を伸ばすという立場から考えますと、この労働分配率、ありていに言えば賃金の上昇ということは非常に重要なことになるわけであります。
 最近一部財界人が、この政府のレポート、労働分配率を上げるべきであるという見解あるいは閣僚諸兄のそういった見解に対して、政府は要らざる口出しをするなどと何かえらい牽制をしておるようでございますが、私は、労働分配率の低下という面から考えても、財界が偉そうなことを言う筋合いはない、文句があるのならここに来てもらって一遍討論してもいいというくらいに思っておりますが、それはさておきまして、労働分配率が低下しておる。何としてもことしは賃金が上がった方がいい。あわせまして所得税の減税もぜひ考えていただかなければなりません。政府のお考えは、高額所得者の税率が高過ぎるから累進課税のカーブをもっとなだらかなものにする必要があるというお考えをお持ちのようで、私も、高額所得者から何でもかんでも税金を取ればいいというふうに思っているわけではございません。ある程度妥当な線というものは必要だろう。それは必然的に、上の方のカーブをなだらかにしますと下のカーブが上がってくるわけでございまして、低所得層に対する累進課税の率が上がってくるということにもなりかねないわけです、累進課税のカーブをなだらかにするということになりますと。上を抑えます、すると下が上がってくる、これではたまったものではございません。ましてや内需拡大という視点から見ましても、消費の伸びは重要な要素でございますが、その消費の中で、労働分配率、賃金の上昇、そして所得税の減税、特に子供さんが学校へ行っていらっしゃる、あるいは住宅ローンの真っ最中であるという世代の方々にとってこの所得税の減税は緊急重大な課題だと私は思います。一方で、単身赴任で苦しみながら税金を持っていかれるのじゃ、これはたまったものじゃございません。
 こういう点について、賃金並びに所得税の減税、総理のお考えを簡潔で結構でございますからお願い申し上げます。
#46
○中曽根内閣総理大臣 昨年の十二月に出しました経済の「展望と指針」に対するリボルビング、再検討の報告、経済審議会の報告を読んでみますと、こういう文章がひとつあります。技術革新など経済発展の成果の賃金と労働時間短縮への適切な配分、物価の安定等による消費の拡大、こうありまして、賃金と労働時間短縮への適切な配分、消費の拡大、これはやはりある意味において矢野さんの御指摘になったところと共通するものがあると思うのです。
 ほかの点ではいろいろまた注意する点がございますが、私はこのところにやはり目をとめておりまして、ただ、こういう問題は労使間がお互いで団体交渉等によって決めべきことで、政府は介入すべき問題ではない、そういうふうに思います。しかし、国民経済全般というものをリボルビングしてみますと、そういう点が経済学的に分析されるということは我々としては頭に置いて政策を行う必要がある、そう考えるわけであります。
 所得税の減税については、もう既に何回も申し上げているとおり思い切った減税をやりたい。きのうもいろいろ御質問がありました。それで、前から申し上げているように、レーガンさんがやったあの改革というものは非常に参考に値する。非常に簡素化されているという点、それから税率を思い切って下げているという点、重点的にいろいろおやりになっているという点、そういう点は非常に参考になる。そういう我々の議論もここでやりましたが、それは全部政府税調の方へ、こういう議論がございますということでお知らせはしてあるわけでございます。
#47
○矢野委員 減税の問題につきましては、総理はことしの春には減税の答申をいただく、秋には財源の手当てについて答申を願う、そんなお考えのようでございますが、午前中、私、五十二年、五十三年円高不況のときと今回とは大分違いますということを具体的に指摘申し上げました。極めて深刻な状況にあるし、問題は国際的な日本の責任という問題と国内的な中小零細企業を救うという問題と両面にわたっておる。そこで大事なのは内需の喚起ということにかかわるわけでございます。
 そういう観点から住宅減税のお尋ねをしましたところ、前向きにやるというお答えをいただき、私はこれは非常に感謝しております。ぜひやっていただきたい。
 とともに、今の総理のお考えでは、政府税調から答申があって減税をするということのようでございますが、嫌みを言うわけではございませんが、大蔵大臣、たばこ消費税のときは政府税調なんか無視しておやりになったわけでございまして、それはよろしいけれども、都合のいいときだけ政府税調が出てきて、やむを得ぬときにはそんなものは知らぬというようなことを実際政府はやっているじゃありませんか。そうでしょう。ですから私は、政府税調の役目も非常に重大だと思います。いろいろ技術的な問題がございますから、そういう方々にいい仕事をしていただくという意味で、決してそのことを軽んずる意味じゃございませんけれども、やはり減税というような大政策、これは立法府の仕事でございまして、しかも政府税調が中堅所得層のサラリーマン、低所得層のサラリーマンに増税しなさいなんという答申を出すはずがない。流れとして、いろいろ技術的な問題はあるとしましても、政府税調は私たちが申し上げていることを十分踏まえた、大筋として違わないものが出る。あと、いろんなことはあるでしょう。したがって、今緊急な課題については、政府税調の御議論は御議論としましても、例えば我が党委員長が代表質問で要望いたしましたような、この国会において二兆円規模の減税を、政府税調は政府税調として尊重しつつも、国会の立場においてこれを決める、実施するということは決して間違ったことではない、政府税調だけを隠れみのにするような印象を与えることは私は余り好ましくないと思います。だれが考えても今減税の緊急性はわかっているわけです。ここで私はその必要性、データ、いろいろございますけれども一々申し上げるつもりはございません。そんなことはもう常識というわけです。ですから、常識の範囲内において所得税の減税を与野党が協議し、政府も協力をするという形でこの国会で減税を実現したい、強く要望したいと思いますが、総理いかがでございますか。
#48
○中曽根内閣総理大臣 矢野さんの御趣旨もよく理解できるところでございますが、ことしは財政関係いろいろ勘案いたしまして、今までやったことが精いっぱいなのでございます。住宅減税につきましても精いっぱいの努力をして、あの程度と言われればあの程度でございますが、しかし努力をしたところでございます。来年思い切った大改革をやろう、そういうスケジュールで進んでおるものでございますから、その中途でこのスケジュールを崩すということは税調全体の今までの審議経過や何かまで全部御破算になってしまうというところもありまして、大体スケジュールどおりお願いいたしたいと考えておる次第でございます。
#49
○矢野委員 人事院勧告、公務員の給与の問題、さらに今申し上げた所得税減税の問題、これは私一人の問題というよりもこの国会全体の持つ重要な課題であろうかと存じておりますので、私は御要望申し上げ、この問題については同僚議員から引き続き御質問申し上げる、そして、ある段階において与党、野党真剣な話し合いをしたい。また、政府もそれを御尊重願いたいことをあらかじめ御要望申し上げて、この問題は終わります。
 外務大臣と大蔵大臣に伺いたいのですが、話があちこちにいって恐縮なんですけれども、ソウル・オリンピックが予定されておるわけでございます。昨年私は韓国の問題につきまして、韓国だけではございませんが、指紋押捺問題についてお尋ねをいたしまして、それなりの改善をしていただきました。しかし、根本的な解決はまだできておりません。これはぜひ御要望申し上げるように改善を図っていただきたいということを重ねてここで申し上げておきたいのですが、このソウル・オリンピックにつきまして、日本にいらっしゃる韓国人の皆さん方が、我々の祖国でやるオリンピック、これは大変うれしいことだ、我々でできる範囲で援助をしたい、寄附もしたいというわけでございます。我が国政府としても、お隣のオリンピックでございますからそれなりの御援助は必要だろう、今後御研究を願いたいと思いますけれども、そうやって日本にいらっしゃる韓国人の皆さん方が、一生懸命働いて稼いだお金で祖国のオリンピックを応援したい、寄附したい。ところが税金がかかるということですね。これは日本政府として、友好親善の一つのあかしとして免税措置をとるということは外務大臣、いかがでございますか。
#50
○安倍国務大臣 ソウルのオリンピックには日本としてできるだけ協力したいと思っておりまして、何とか成功させたいということで、関係の国々、特に韓国と国交のない国々に対しましても強く働きかけておるわけでございますが、そういう中で、日本がそうした外交努力とともに、今お話しのような在留の韓国人からの、ソウル・オリンピックを成功させるために自分たちも協力したいのだ、そういう中で今お話しのような寄附なんかするために免税措置をとってほしいという強い要望が出ておることも事実であります。そうした御要望等も踏まえまして、これは大蔵大臣の決断によるわけでございますが、今相談をいたしておりまして、何とか私としましては、せっかくの国内における韓国の人たち、あるいはまた既にもう帰化した人たちもおりますし、一般の日本人でも協力したい、そういう道ができれば協力できるという向きもあるわけですから、何とかこれは道を開きたいものだということで大蔵大臣とも話をしておるわけでございますが、方向としては可能性があるような感触を私も得ておりまして、ぜひともこれは実現をするためにさらに努力をしたい、こういうふうに思っております。
#51
○矢野委員 大蔵大臣、いかがでございますか。
#52
○竹下国務大臣 大要は今の外務大臣のお答えで尽きるわけでございますが、当初私どもは、在日韓国人の方々の寄附をいわゆる指定寄附として免税措置をして、それを本国へお送りになるというようなことを考えておりましたが、昨日も二人で話しまして、それはもとより結構だが、恐らく日本の企業、個人等でもそこへ寄附なさる人もおるんじゃなかろうか、そうなると、それも含めてできる方向で、前向きでと申しましょうか話を詰めようや、こう申しておるさなかでございます。
#53
○矢野委員 ぜひその方向で御検討をお願いします。
 総理、毎回総理にお願いをして、例の交通遺児の問題については前向きに御配慮いただいておって、私感謝しております。交通事故で亡くなったお父さん、お母さんの子供さん、大変苦しい中で頑張っておる。やはりこの国会の場でできるだけのことはしなければならぬと思って毎年質問をし、毎回前向きのお答えをいただいておるわけでございますが、交通遺児の諸君たちが、我々は奨学資金制度のおかげで学校へ行けた、しかし、交通事故と海難事故以外の災害の諸君はそういう制度がないので学校へ行けない、御恩返しをしなければならぬということで、大変けなげな話だと思いますが、この三年間で彼らは八千万円のお金を街頭募金で集めたのですね。これは私、我々大人は襟を正さなければならぬことだと思うのです。恩返しをしなければいかぬというこの気持ち、非常にいいと思うのですね。
 そこで、ぜひこの災害遺児の実態をお調べ願いたいということを昨年お願いしましたところ、政府も大変御協力をいただいた。そのあらましはわかってきたわけでございますが、まだ正確じゃございません。この調査をさらにお進めいただきたい。公明党も調査いたしましたが、ただいまわかっている災害遺児は六万五千人いらっしゃる。十九歳までの方ですね。父親を失った方が九四%である。生活保護で暮らしておられる方が二〇%である。平均勤労月収は九万七千円である。一般世帯の三九%にすぎません。親子心中を考えましたという方々が一七%もいらっしゃるというようなことで、大部分の方が育英制度の発足を願っていらっしゃるわけでございます。行政改革の段階でございますので、ここでまた新しい育英制度をつくるということはいろいろ問題もあろうかと思います。ですから、私今すぐそのことを実現せい、そんなことを御要望するつもりはでざいませんが、長期的にこういった災害遺児に対する育英資金制度、奨学金制度をお考えいただきたい。それと、そういった家族に対する生活苦という問題があるわけでございますから、十分御配慮をいただきたい。
 当面お願いしたいのは、そういう災害遺児の中で、ことし三百名の中学生が高校に入らねばならぬ。ですから現行制度の中で、育英制度がございます、そういった中で、新しい制度をつくれというわけじゃない、ことしの問題は。この三百名の諸君が何とか高校に行けるような措置をお考えいただきたい。
 いろいろと申し上げましたけれども、総理、いかがでございましょうか。
#54
○中曽根内閣総理大臣 昨年の国会で矢野議員から災害遺児の実態調査をせよというお話をいただきまして、お手元に差し上げたとおりでございますが、実態を見ますとやはり母子家庭、お父さんが亡くなったという方が非常に多いようでございまして、必ずしも恵まれている状況ではございません。この災害遺児の実態を調査するので交通遺児の皆さんがボランティアでいろいろ御努力いただいたということは非常に涙ぐましい、ありがたい話であると思っております。災害遺児の問題については、小学校、中学校では大体手当てはできておると思うのですが、問題はおっしゃるような高校以上の場合でございまして、今の御指摘の問題については文部省でよく検討させ、関係各省ともよく相談させるようにいたしたいと思います。
#55
○矢野委員 ぜひ前向きにお願いを申し上げます。
 安全保障、外交、防衛の問題に移りますが、総理、昨年夏、総理は、防衛費対GNP比一%枠の閣議決定を撤廃できたら撤廃したいなというお考えがあったようでございます。それから中期防衛力整備計画、中期防の策定をなさいました。五年間で十八兆を超える膨大な予算でございます。ことしはこの中期防の初年度ということになるわけでございますので、本年度の防衛予算の論議、あわせて、この中期防が完成いたしましたときにはどういう姿になっておるかということも議論をするのがこの初年度たる本年度予算委員会の役割であろうかと私は思います。
 そこで、私のまず認識でございますが、中曽根総理は、去年の夏、秋にかけて、ある意味では使命感をお持ちになったのかどうか知りませんが、一%枠の撤廃とか中期防の策定とか、その後しかし米ソの会談、これはイコール軍縮だとは言いませんけれども、少なくともそちらの方向に風が少しばかり吹き始めてきたということだろうと思うのです。日本としてはこの風をできるだけ大切に、そしてその風を大きくしていく、簡単に言えば、米ソの核軍縮、通常兵器も含む軍縮の方向にできる限り努力をするというのが我が国外交のあるべき姿であると思います。ところが、いささか総理が御熱心であった夏から秋にかけては中期防、一%枠撤廃、それでここへ来ているわけですね、日本は。その後、米ソ会談その他いろいろなことがあって、ことしでしょうか、アメリカの防衛、外交の政府高官は、日本の防衛大綱の見直しは必要ないという意味の御発言もあった。これは私いろいろと取材してみましたが、確かに風の流れが変わってきたので、日本さん、いろいろハッスルしていただくのは結構でございますけれども、少しは時代の流れもわかってほどほどにと、そこまでは言わぬにしても、そのニュアンスを私は感じます。だとするならば、総理はいささかちょっとフライングということになるわけでございます。やはり時代の流れにより柔軟に総理としては対応されて、米ソの軍縮、世界の軍縮、それとあわせて我が国の中期防も見直すというくらいの御判断があってしかるべき国際情勢になってきたし、そう楽観はしないにしても、その国際情勢をにらんで物を考えていくということが必要ではないかと私は思います。
 ところが、この中期防、ことしが初年度ということでございますが、簡単に言いますれば二つの特徴がある。一つは日本の領域外で行動する能力をこの中期防は持とうとしておる。そして、一方では領域外における行動の訓練が行われておる。リムパックしかり、フリーテックスしかりでございます。一々具体的に申し上げる時間がございませんからかいつまんで申し上げますけれども、OTHレーダー、これは中期防に入っておる。これはまさにミニSDIと言っても差し支えないものでございます。しかも米国のOTHレーダーと相補完する関係にこれは間違いなくそうなる。あるいは護衛艦一つ取り上げましても、最初の本当に自衛隊よりもっと前の段階では、初期では千七百トンクラスであったけれども、現在では五千二百トンクラス。中期防後半で予定されておるAEGISシステムを搭載したAEGIS艦、これはもう飛んでくるミサイルをたたき落とすミサイルを発射する能力を持ち、しかも同時に十万に発射することができるなどというまことに驚くべき性能を持った対空ミサイル搭載の、いわば自前で防空の傘を持った艦船である、六千五百トン。潜水艦とらえましても、初期は七百五十トンであったのが、中期防では二千四百トン。重厚長大の装備になり、昔八八艦隊などとよく言われましたが、最近の八八艦隊は八隻の護衛艦に八機のヘリコプター、常に二機が上空を飛んでおる。そして、まだこれからの問題でしょうが、空中給油機の検討までされようとしておる。まさに領域外、幅広い地域における、地上からの航空機の支援なしに、遠洋において、しかも防空のミサイルを持ち、しかも相手を撃墜するミサイルを持ち、飛んでくるミサイルもたたき落とせるミサイルも持ちと、独立した戦力としての能力が中期防で完成する。
 あわせて、もう詳しく申し上げませんが、リムパック計画、演習につきましても、だんだんだんだんと日本の参加の規模が大きくなってきております。大平さんの時代から始まったのが、二年に一遍ですけれども、最初は二隻だったのですね。ことしは八八艦隊丸ごと八隻、潜水艦、P3Cまで参加しておる。演習期間も一カ月以上である。何と口実を設けられようと、これは能力の面からも訓練という面からも日米共同の対ソ抑止力の強化というふうに見られてもやむを得ない。これは、歴代自民党政府の専守防衛の概念から幅広く拡大してきておると私は思います。そういう能力の面、訓練の面ということから考えて、この中期防というものは、ああそうですかというわけにいかない内容を含んでおります。
 私はこのことについて一々議論する気持ちはございません。いずれにしても、中期防はそういう能力を志向し、かつ本年から始まっている。少なくとも私たちの常識というか、我が国自衛隊に対する認識である領域保全あるいは専守防衛という概念とはかなり違ったものに変貌しつつあるということは客観的事実であると私は申し上げたいのでございます。
 さてそこで、そういう能力あるいは行動範囲というものは、今までは架空の理論として、そんな議論をしてもそういう能力ございませんということで話はかみ合わなかったわけでございますが、そういう能力を持ったわけでございますので、私はいろいろな状況について、私防衛については素人でございますから、それほど専門的にお尋ねができないかもわかりません、ただ私なりに考えた状況、これをひとつここでお尋ねをしたいと思いますので、お答えをいただきたい。
 私は、安全保障問題というのはタブーにはしたくない。少なくとも、意見が違うことはあるかもわかりませんが、政府が何を考え、防衛庁はどういう能力を今や持ちつつあり、どういう方向に展開しようとしているかということは国民の前に率直におっしゃるべき責任がある、違いは違いとして大いに議論はしたいと思っておりますけれども、そういう気持ちでございますので、質問に対して率直にお答えをいただきたい。
 前提を四つほど立てました。
 前提その一は、「万一、日本の施政権下が急迫不正に特定国によって組織的、軍事的に攻撃され他に手段のないとき」、所定の手続を経て「防衛出動が下令されるか。」、また安保条約により「米軍が来援するのか。」これは前提のその一でございます。
 前提だけ先に申しておきます。
 前提の二は、「いわゆるシーレーン水域で特定国により意図的組織的計画的多発的に日本船舶が攻撃され、且つ又、引き続き攻撃されうる状況があると考えられるとき」、これは前提のその二でございます。
 前提の三は、「いわゆる極東有事の状況」、まあ極東のどこかで有事が発生した、米軍が行動をする、そういう「いわゆる極東有事の状況であり、且つ又」シーレーンに前提二の状況が発生していないとき、つまりシーレーンに意図的、多発的、計画的に日本船舶に対する攻撃がないとき、つまりシーレーンが平穏なときという状況でございます。
 前提のその四は、極東有事であり、かつまた前提二のシーレーン有事である、シーレーンにおける我が国船舶に対する特定国の計画的、意図的、多発的攻撃が行われておる、こういう「極東有事かつシーレーン有事」、こういう前提四つのケースを考えました。
 まず前提一。これは外務省にも後でお尋ねするかもわかりませんし、かいつまんで総理にもお尋ねするかもわからぬが、とりあえずは防衛庁の方でお答えを願いたい。つまり万が一日本の施政権下が急迫不正に特定国によって軍事的に攻撃をされ、他に手段がないとき、所定の手続を経て防衛出動が下令されますか。そういうときには下令されませんか。安保条約第五条によって米軍が来援しますかしませんか。
 そしてケースその1として、そういう状況において、つまり防衛出動が下命され、安保第五条による共同対処行動も起こっておる、そのときにおいて日本が発見し日本が攻撃する。ケースその2、日本が発見しアメリカに連絡をし、つまり情報を提供する、アメリカが攻撃をする。ケース3、アメリカが独自で発見をしアメリカが攻撃をする。ケース4、アメリカが発見をし日本に連絡があり、情報提供ですね、日本が攻撃をする。そしてケース5として、そういう日本有事の状況で、領域外で日本防衛のため来援行動をしておる米軍に特定国から攻撃があり、そのアメリカ艦隊を守るために日本が領域外でその特定国の米艦隊に対する攻撃を防衛しかつ攻撃をする。このいろいろなケースについてまとめて、この前提一、防衛庁からお答えをいただきたいと思います。
#56
○加藤国務大臣 委員御指摘のように、中期防によって私たち防衛力の整備をしてまいります。そしてそれにつきましては、諸外国の技術的な水準の向上等に見合って近代化もいたしておりますけれども、あくまでも専守防衛の原則に従ってやってまいりたいと思っております。そしてその運用に際しましては、今委員御指摘のように幾つかのケースがありまして、また、そのようなケースに分けての種々の御議論というのはある意味じゃ今回が初めてなのかなというような形で今ケースの設定をお聞きいたしておったわけでございますが、その運用に際しましてはしっかりとしたけじめを持ちながらやっていかなければならないことではないかと思っております。
 そういう前提でお答えいたしますと、先ほど我が国の施政権下にある地域が諸外国の組織的な計画的な意図的な武力攻撃にさらされた場合に防衛出動ができるかという第一の御質問でございますが、自衛隊法七十六条によりまして、計画的、組織的な武力行動があった場合には総理大臣は国会の承認を得て防衛出動できるということになっておりますので、できるというのが私たちの態度でございます。
 その際に米軍はどうするかということでございますけれども、安保条約第五条の我が国に対する防衛義務の発生ということでございまして、まさに安保の一番の中核の部分が発動できるケースになろうと思いますので、米軍の来援になるということは言えると思います。
 次に、そうした場合に、まずその施政権下領域内において、いかなる国でも敵と目されるものを日本が見つけて日本がそれに対して攻撃を加えることができるかという問題でございますけれども、いわゆる自衛権の発動の条件の不正急迫、なおかつ他に手段がないという先生の前提の御設定でございますから、日本が発見しようが、またその情報がアメリカから得ようが、当然日本は防衛の実際の行動に出る、もちろん必要最小限に限りますが、それができるということになります。また、我が国が発見した状況を米側に連絡して。そして米側が行動してくれることも当然でありますし、米側が発見して米側がそれを行動に移すということも当然であろうと思います。したがって、四つのケースは全部ある意味じゃイエスという答えだと思います。
 ただ、その際に、日本を防衛するために米軍が、特に船が参りまして、それが特定国から攻撃を受けたという場合に、我が自衛隊がそれに対して支援をするかという問題でございますが、これは従来から米艦護衛という問題でこの予算委員会でも種々問題になり、総理からの御答弁もございました。我が国が有事であり、我が国を守るために米軍が来援するものに対して、自衛隊がその自衛のためにその行動を行うことは当然可能であり、答えはイエスでございます。
#57
○矢野委員 議論は後ほどいたします。
 前提その二でございますが、いわゆるシーレーン水域で特定国によって意図的、組織的、計画的、多発的に日本船舶が攻撃されておる、かつまた引き続き攻撃される状況があると考えられる、こういう前提でございますが、防衛出動は下命されるかどうか。あるいは安保条約に基づく米軍の来援ということはあるのかどうか。
 そしてケース1、日本が発見、日本が攻撃。ケース2、日本が発見、日本より米軍に連絡、米軍が攻撃。ケース3、アメリカが発見、アメリカが攻撃。ケース4、アメリカが発見、アメリカより日本に連絡、日本が攻撃。ケース5、アメリカがシーレーン防衛に来援途上で、シーレーンの水域もしくはその周辺水域にあるときに、そのアメリカ軍に特定国から攻撃がある。例えばバシー海峡周辺で米空母機動艦隊がシーレーンに向かっておる、特定国の航空機が北から南下してくる、そういう場合、その間に、つまり特定国と米空母機動艦隊との間に中期防で完成されるAEGIS艦が存在する、このAEGIS艦はミサイルを発見、ミサイルを撃墜する能力を持っておる、能力はある、そういう状況において、日本のAEGIS艦あるいはその他の能力がその特定国を攻撃するというケース5の場合ですね。
 以上の問題についてお答えください。時間がかなり迫ってきましたから簡潔に。
#58
○加藤国務大臣 簡潔にお答えいたします。
 いわゆるシーレーンで、我が国有事でございますから防衛出動は可能であります。
 それから米軍が来援するかということは、これはいわゆる公海と前提いたします、シーレーンでございますので。公海と簡潔にさせていただきますが、そうした場合には、いわゆる日本の施政権下ではございませんので、そうしますと、当然ながら安保条約第五条によりますアメリカの義務的な防衛出動にはなりません。第四条によりまして随時協議という項目がありますが、我が国はアメリカと我が国の安全の問題について協議をするこになっておりますので、それに基づいて協議し、私たちの方から来援をお願いするケースという形があろうと思います。これはアメリカの判断でございますけれども、私たちは来援していただけるものと期待しております。ただ義務的なものではございません。
 それから、それぞれのケースの場合ですが、そうしますと、日本が有事でございますから、日本が発見し日本が攻撃することはこれはイエスであります。日本が発見して米に連絡して米に攻撃してもらうケースは、これは義務的ではございませんけれども、アメリカの方に当然私たちはそういう判断でやってもらえるだろう、そういう意味で、アメリカの判断ではございますけれども、イエスと考えたいと思います。それから米国発見、米国攻撃という設定でございますが、これも先ほどと同じようにアメリカの判断によりますが、多分イエスということにしてくれるだろうと思います。それから米国が発見し日本に連絡して日本が攻撃できるかということですが、日本有事ですから当然イエスでございます。それからアメリカがそれを出動してきて、その過程の中で攻撃された場合は、先ほどの日本の施政権下の地域の有事の場合と同様に考えてイエス。我々は米艦護衛を個別自衛権の範囲内で行い得るものだと思います。
#59
○矢野委員 随分この辺に言いたいことが山ほどたまってきましたけれども、もう時間もありません。どんどん先へ行きましょう。
 前提三、いわゆる極東有事の状況でありまして、かつてのベトナム戦争、これは極東というようなことで直接日本から米軍が行動しましたね。極東有事、しかしシーレーンはまだ平時である。極東有事、シーレーン平時、こういうときに防衛出動は下命されますか。日本の米軍基地からの米軍発進は当然なのかどうなのか。それから、ケース1は先ほど申し上げたとおりでございますから省略いたします。
 以上の問題にお答えください。
#60
○加藤国務大臣 極東有事だがシーレーンは平時であるという場合でございます。平時と申しましても、極東においていろいろな状況が発生しておるわけでございますから、我が国がいわゆる脅威を感じ、そして侵略されるおそれがある場合という認定となれば、我々は防衛出動の下命はあり得ると思いますが、通常の場合は、それは平時である、そしておそれもないということで、該当しない場合には下命はできません。
 それから、そうした場合に、ケース1、2、先ほどの前提のように考えますと、もちろん日本が発見しましても日本有事でありませんから、行動はしてはなりません。それから、日本が発見して米国に連絡、米国攻撃というような場合ですか、そういう場合は、いわゆる日本が得た情報をアメリカ側にどのように伝えていいのかというような問題を含むのだろうと思いますけれども、私たちは、専守防衛の日本としては情報収集はしっかりやらなければなりませんし、そして、それをお互いに交換することは当然有益なことであります。特に、私たち、アメリカと日本はいわゆる安保関係にあるわけですから、御指摘のような事態でも私たちはできるだけ情報の交換ということはあり得るものだし、それはいわゆる個別自衛権の原則に抵触するものではない、こう思っておりまして、日本が発見しそして米国に通報する、そして米国がそれにいかなる行動をとるかというのは米国の問題であろう、こう思っております。
#61
○矢野委員 引き続きお尋ねを続けます。
 前提四で、極東有事であり、かつまた前提二のシーレーン有事、シーレーンも特定国によって日本船舳が攻撃され、しかもそれが意図的、計画的、多発的であるという状況ですね。そのときには防衛出動の下命はあるのかどうか。安保条約による米軍との関係はどうなるのか。そしてケース1は、日本が発見し日本が攻撃する場合はどうなのか。ケース2、日本が発見、米に連絡、米が攻撃ということはどうなのか。ケース3、アメリカが発見をしアメリカが攻撃するというのはどうなのか。ケース4、アメリカが発見、そして日本に連絡、日本が攻撃。こういう問題でございますが、さらに、先ほど前提二で、シーレーン周辺の水域における米軍の来援行動に対する特定国の攻撃に対して、日本は、例えばAEGIS艦がその特定国の空軍を撃墜することができるかどうかということをお尋ねしましたら、できるとおっしゃったのだけれども、今度はシーレーン水域とかシーレーン周辺ということは抜きにして、極東有事、そういう状況において米軍に対する特定国の攻撃に対しては、冒頭に申し上げた能力と行動範囲が広くなった我が国自衛隊が、その特定国に対して攻撃を加えることができるかどうか。
 これらのケースについてお答えください。
#62
○加藤国務大臣 極東有事でありシーレーンも有事であるというケースでありますが、シーレーン有事で我が園の船舶が特定国に組織的、計画的に攻撃されているわけで、それが多発的であるという設定でございますので、それは防衛出動は当然のことながらしなければなりません。そして、その際米軍が来援するかどうかというものは、先ほどの安保条約四条事態で私たちが協議し、米国の来援を依頼することが可能であると思っております。
 そこでケース1で、日本が発見して日本が攻撃、これは当然でありまして、イエスであります。それからケース2の、日本が発見してアメリカがどう対処するかは米国の判断でございます。私たちは、支援してくれるものだと期待します。ケース3で、米国が発見してこのシーレーンに対して米国が攻撃するかということは、二番と同じように米国の判断ですが、支援してくれるものと思っております。それから、米国が発見し日本にそういう状況だよ、どこどこにどういう事態があるということを連絡して、日本が攻撃できるかということですが、日本有事の場合ですから、当然自衛隊は国民のために頑張ります。ケース5でありますけれども、極東も有事だしシーレーンも有事で、日本が攻撃されているというときに、アメリカの船舶、特にいろんな空母なんかが来て、シーレーンの近辺等やなんかで攻撃を受けた場合どうするかという問題でございますが、ここはシビアに二つに考えておかなければいけないと思います。極東のほかの地域の防衛のために行動しているケースであれば、私たち自衛隊が個別自衛権の発動として支援することはあってはならないことだと思います。その船が日本を助けるために、日本に支援するために来、そして行動しているという場合には、当然のことながら先ほどの米艦護衛の論理が適用されるものであろうと思います。
#63
○矢野委員 随分思い切った答弁をなさったものだと思いますけれども、私は、冒頭に申し上げたようにこの中期防、ことしは初年度。これが完成すると、独立して領域外で防空の傘を持ち、かつ飛行機がミサイルを撃墜する能力を持つ。潜水艦を見つける能力を持ち、E2Cなどでそれをちゃんと監視することもできる。こういう中期防であるということで、それではそれは何をやらかすのかということで私はお尋ねをしたわけでございますが、これは重大な問題を含んでおりますよ。
 例えば、シーレーン有事の場合は防衛出動が下令される。いつの間に、憲法上の解釈である日本の領域の防衛という概念が、シーレーン防衛なら自衛隊は出動して当たり前だというふうに概念が変わってしまったのですか。あるいは、日本防衛ということは今まで議論がありましたけれども、シーレーン防衛のために行動する米軍を日本の領域外、いわば太平洋の真ん中で、米空母機動艦隊に対する特定国の攻撃を防衛し、かつ特定国を攻撃することは個別的自衛権だという解釈は、いつの間に生まれてきたのですか。
 あるいはまた、情報提供は何ら集団的自衛権に違反しないという御解釈でありますけれども、まさにエレクトロニクス――総理、「レッド・オクトーバーを追え」という小説をお読みになりましたか。レーガン大統領がその作者を呼んで懇談したくらいの、近代戦というものを小説の形で書いたものです。もしお読みでなかったら、お読みになった方がいいと思いますよ。発見したことを通知すること自体攻撃なんです、この段階の戦争というものは。情報を提供する、攻撃するのは米軍だ。それを迎え撃つ、それを利用するのは米軍だから日本の知ったことじゃない。それでは、情報を提供されて不利益を受ける方はどう思うのですか、日米共同の情報交換によって迎撃したということになるじゃありませんか。さらにまた、極東有事、シーレーン有事というケースにおいても、シーレーン防衛というような概念を離れて、まさに太平洋のいかなるところでも米艦護衛ができるという解釈じゃございませんか。
 公明党は、安保条約というものが一面において危険性を持つという認識を持ちながらも、日米友好親善ということもさらにまた国際的情勢という立場からも、安保を是認する立場に立っております。そしてまた、自衛隊をゼロにせよなどとは言っておりません。領域を守るため、日本の独立、民族の生存を図るためには、領域保全に限って能力を持つことはよろしいと公明党は言っておるわけでございます。しかし、そういう立場ではあっても、今の防衛庁長官の認識は、到底これは容認できる見解じゃございません。
 総理、今私が問題点を申しました。全部答えろと言いません、このケースについて。集団的自衛権の問題、防衛出動不令の問題、領域外、太平洋の真ん中において米艦護衛を日本自衛隊がやるということの問題について、そういう御見解を承りたい。
#64
○中曽根内閣総理大臣 今、加藤長官がこの設問に対してお答えしたのを私は聞いて、自分でも丸をつけてみましたが、私と完全に一致しておった。それは、今まで政府が答弁してきた防衛の枠内において、その判断で今の判断が下されたので、今まで政府が国会で言明し、また合憲であり、また防衛庁設置法や自衛隊法に適合すると判断をして、外務省と打ち合わせして答弁申し上げた枠内に完全におさまっている、そういうことで答弁が成立しているから私はそう申し上げた。
 ただ、長官の言葉の中で、念のために申し上げればどういうことかということが一つありますが、念のために申し上げれば日本防衛の目的のためにと、シーレーンというものがある場合でも、それは日本防衛の目的のために役立っているシーレーンであり、シーレーンというものが仮に航路帯である、そういうふうに考えた場合におきましても、それはたまたまそこに船がいるというのじゃなくて、日本が有事であって侵略されている、そういう状態のもとに、継戦能力をふやすとか、防衛力を全うするとか、そういうために救援に駆けつけるとか、そのために必要ないろいろな物資を日本へ持ってくる船舶を守るとか、そういう日本防衛のためにというものはもちろん前提でついておる。これは個別的自衛権の範囲内だ、そういうふうに解釈しておるわけです。
#65
○矢野委員 シーレーンというのは、日本が、我が国船舶が航海しておるから、ここは日本の大事な海なんだ。日本の領域の海じゃない、公海を日本にとって大事な海なんですと言って設定する。例えば、今度アメリカがアラスカ原油を日本に売ってあげましょうということになりました。北太平洋水域は、まさに米ソの核が海の底でにらみ合っている水域です。そうすみと、アラスカ石油を日本に運んでくるんだから、ここもシーレーンだということにもなりかねない。まさに一番の北太平洋水域の核がにらみ合っているところへシーレーンを設定しようと思えば、日本の判断でできる。しかも、くどいようですけれども、シーレーンはおろか、洋上で行動する能力をこの中期防は持とうとしておる。
 今までのような総理並びに長官の御見解であれば、現場の指揮官は、例えばアメリカ空母機動艦隊がこちらに行動しておる、こちらにバックファイアがやってきた、発見した、迎撃する能力がある、バックファイアが仮にミサイルを撃った、米空母を擁護するために、シーレーンでもなければ日本の領海でもないところで、司令官は発射ボタンが押せるということになる。そうなりますと、一体この作戦命令計画、具体的な現場の判断はどういうことになるんだということを、今の見解なら詰めていかなくちゃならぬことになるわけであります。こんな恐ろしいことは私は許せません。
 委員長、私、この委員会とめる気はないのです、あらかじめ申し上げておきます。ただ、中期防の初年度の一年である。総理は、今までの見解を述べただけだとおっしゃいますけれども、一々は申し上げませんが、新しい見解ばかりです。到底これは容認できません。したがいまして、この問題についての集中審議をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。
#66
○加藤国務大臣 ただいま総理からも御発言いただきましたように、さっき御答弁申しましたことは、これまで私たち国会で申したことがすべて原則になっております。で、若干時間がなくて、多くのケースでございましたので、取り急きお話し申し上げ、前提について詰めない部分もあったかと思いますけれども、私たちは我が国の原則に従い、また、従来からの答弁に従ってやってきたと思いますし、その原則に従って私も答弁いたしました。
 で、詳細につきましていろいろ御議論があると思いますけれども、時間があれば私たち十分に御討議いたしますし、時間がなければこの問題の専門的な委員会であります安保特等で、公明党の委員の方と十分に率直にお話し合いをしてみたい、こう思っております。
#67
○矢野委員 総理、私は野党の立場でありまして、本来ならば、かなり立ち入ったケースについて質問申し上げるということは、政府に言いたいことを言わせるという意味で、正直申して危険な質問だと思いながら自分でもしておるのです、はっきり申し上げて。
 ただしかし、与党と野党がこの問題で角突き合って、そして平行線の実りのない論議をしても仕方がない。我が国自衛隊はどういう方向に行こうとしておるか、そして、この中期防においてどういう能力を今や持とうとしておるかということを、違いは違いとしながらも、国民にわかっていただくということが大切だと思ってあえて御質問をいたしました。違いはどうしても違いとして、私は残ると思います。また、今長官もおっしゃったように、時間もございませんでしたから、前提について十分な詰めができなかった、これはごもっともだと思います。ですから委員長、ぜひこの問題についての御配慮をお願いしたいと存じます。
#68
○小渕委員長 集中審議においてさらに論議を深めたいという矢野委員のお考えにつきましては、理事会において協議いたしたいと存じます。
#69
○矢野委員 もう時間も余りございませんので、一、二点だけ伺いたいと存じます。
 最近、家庭の御婦人がパートに働きにいらっしゃるケースが多くなっております。また男性の方も、昼間仕事が忙しいということで、要するに健康診断のことなのです。私は、ぜひ夜も健康診断が受けられるような制度をつくっていただきたい。
 もちろんこれには、地域の医師会の御協力も必要でしょう。そしてまた、私は厚生省にぜひお願いしたいのは、今全国にたくさんの保健所がございます。この保健所は、風俗営業の許認可の、どっちかというと事務的な仕事の方がウエートが高まっているなんて言うと保健所にしかられるかもわかりませんけれども、やはり地域保健、地域の住民の保健、こういう立場から、保健所の協力も得て夜間健康診断、特に女性を対象にした健康診断制度というものを−これからは、物質的な幸せも大事ですけれども、この健康ということが大事になってきました。これはぜひ総理、前向きに御検討をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#70
○中曽根内閣総理大臣 御趣旨はよく理解できますが、保健所の能力とかそのほかの問題がありますので、厚生大臣から答弁させます。
#71
○今井国務大臣 ただいまの問題は、お説のとおり、パートの婦人などがなかなか昼間できないものですからやっていただきたいということでございます。ただ、私どもは老人保健事業で、先生御案内のように婦人の方に対しても年一回、がん検診などを実施しているわけでございますし、また、婦人の健康づくり推進事業というのをやっておりまして、これは、十八歳から三十九歳未満の家庭の婦人などに対しまして年一回、やはり受診できるように指導を行っているところでございます。
 ところで、この場合、先生お話しのように、休みの日や夜間におきます健康診断、そういったものを地域住民ができるようにしたらどうかということでございますが、これは、実は既に実施しております都市もあるわけでございますので、今後ともきめ細かな配慮をするように、これは指導をしてまいりたいと思っております。
#72
○矢野委員 もう時間がございませんから、まとめて私の意見を申し上げて終わりたいと思いますけれども、厚生省にお願いしたいことは、最近、お年寄りの体の不自由な寝たきりの方々に対するいろいろな施策が打ち出されておる。大変結構なことだと思います。ただ問題は、この在宅の寝たきりのお年寄りに対する家族の負担というのは物すごく大きくなってきております。これはもう本当に筆舌に尽くしがたい負担でございます。そういう面から、ヘルパーさんの制度の充実、在宅看護についての施策の充実をお願いしたい。
 それから、総理にはぜひ、例のアムステルダムのコンセルトヘボー建てかえの問題がございます。金がないということで日本にも協力が要請が来ておるわけでございます。これは民間の問題でございます。情けないことに、今のところわずかしか日本の経済界からお金が集まっていないという実情でございまして、日本はお金もうけのときは大挙してやってくるけれども、こういうときには知らぬ顔だという非難があるわけでございます。このアムステルダム・コンサートホール、コンセルトヘボーの協力についてもぜひ御高配を願いたい。
 最後でございますが、沖縄の読谷村の国有地問題についても実は質問させていただこうと思って資料を用意しました。戦後がいつまでたってもその地域では終わらないわけでございます。何遍も国会決議がなされ、我が党も要請しておるわけでございますが、この国有地問題についての処理も取り急ぎ善処していただきたいことをお願い申し上げ、とりわけ減税問題と安全保障問題については引き続き同僚議員から質問を申し上げますので、減税はぜひ前向きで実現の方向で、防衛問題については憲法精神にもとることのない立場で施策をやっていただきたいことを強く御要望申し上げ、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
#73
○小渕委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。
 次に、大内啓伍君。
#74
○大内委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、質問をいたします。
 生臭い問題もあると思うのでございますが、アカデミックな問題は後に譲りまして、最初に、ちょっと生臭い問題でお伺いいたします。
 総理は、ことしの一月一日にこうおっしゃいました。虎穴に入らずんば虎子を得ず、勇気を持って王道を進むことが大切である、君子は豹変する、大人は虎変する、君子より上等の大人はトラのように毅然として変わっていく。
 まさか政策が大転換をするとは思えませんので、私がこの言葉から想像いたしますのは二つございまして、一つは選挙です。二つは中曽根総理の再選です。しかし、後の方は自民党の党内問題でございますから、これは私は触れません。(「予想だけでも」と呼ぶ者あり)予想だけでもという話がありますが、これは自民党内部の問題でございますから。
 そこで、恐らく選挙という問題になりますと、これは同時選挙という問題があります。私は過去十年間の選挙を見ておりますと、自民党が勝った選挙というのは過去四回のうち昭和五十五年の同時選挙だけでございます。あとの三回の選挙は全部敗れて過半数を失っておるわけです。最近自民党の首脳の方々が盛んに同時選挙というアドバルーンを上げられる。しかし、この選挙というものは相当重要に考えていただかなければならぬ。これは今我々の党利党略で議論しようとしているのではないのであります。
 確かに憲法第五十四条によりますと、「衆議院が解散されたときは、」「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」こういうふうに書いております。今自民党が選挙のたびごとに全国でとっている得票は三分の一です。東京を初めとして大都市では五分の一であります。三分の一、五分の一の得票で過半数をとるということ自身が本当は不自然なんであります。しかし、現実にはそれをとるために一生懸命努力をされておられる。しかし、この「緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」ということになっておりますが、もし同時選挙が行われた段階で緊急集会を開く参議院というものが、同時選挙の段階で半数は選挙に出ているわけであります。こんなような状態の中で国家の重要問題が議論される、これは非常におかしいと思います。もちろん、やってできないことはない。しかし、このような選挙というのは本来邪道の選挙であります。やってはならない選挙だと思うのでございますが、憲法の求めているものに照らしてお答えをいただきたいのでございます。
#75
○中曽根内閣総理大臣 私は、解散は考えていないと申し上げているので、したがって、今の解散を前提にしてお答えをすることは適当でないと思います。
 法の解釈の問題は法制局長官から答弁させます。
#76
○大内委員 私は法解釈を問おうとしているのではないのであります。盛んに自民党の諸君から打ち出される同時選挙というものはやってはならぬ選挙ではないか、邪道の選挙ではないかということについて、たった一人解散権を持っておられる総理の見解を尋ねているのであります。
#77
○中曽根内閣総理大臣 やはり解散とか非常に重要な問題については憲法がそれぞれみんな配慮して条文ができておるわけでございますから、憲法に従って行うことが正しい。憲法に従わないではいけない。憲法に従って行うということは、民主主義上当然のことであろうと思います。
#78
○大内委員 そうすると、同時選挙は是認される。憲法上是認される。これは別にやっても構わないのだ、そういうふうに総理は認識しておられるという意味ですか。
#79
○中曽根内閣総理大臣 既に同時選挙は行って、経験もありますし、行ってはならないことではないと思っております。
#80
○大内委員 過去やられたのは一回だけです。しかし、その緊急集会を開く参議院が半分の状態でどうして国民の意思がそこに反映されますか。異常な状態じゃありませんか。だって、場合によっては参議院の構成要件というのは三分の一なんです。二分の一残っていればいいじゃないかと言いますけれども、片っ方で選挙をやっていて、片っ方でさあ国会に来い、緊急集会があるのだといって、三分の一を欠ける状態すら想定されるのですよ。そんな選挙がいいはずがないじゃありませんか。
 私は政治論を総理と今議論しようとしているのです。法律論ではありません。いかがでしょう。
#81
○中曽根内閣総理大臣 憲法で認められていることについては総理大臣に任せられている判断である、総理大臣はよく時局を考え国の前途を考えて、最終的に自己の責任において判断すべきことであると思います。
#82
○大内委員 すると、虎穴に入らずんば虎子を得ずというのはどういう意味でおっしゃったのでしょう。というのは、総理はそれから数日後のNHKの番組でこう言っているのですね。カーブも投げるし直球も投げる、正月からはシンカーも投げた。この言葉、シンカー、私はシンカーというのはどういう球かよくわからないのですが、教えていただけませんか。
#83
○中曽根内閣総理大臣 シンカーというのは沈みぎみの球です。
#84
○大内委員 それは政治的にはどういうふうに沈むのですか。
#85
○中曽根内閣総理大臣 私も野球の専門家ではありませんので、解説や何かを聞いていて常識的にそう考えた、それを申し上げただけです。
#86
○大内委員 選挙は念頭にはない、この言葉が一貫して――変化することがあり得るという意味でしょう。そうでしょう。
#87
○中曽根内閣総理大臣 解散は考えておりません。(発言する者あり)
#88
○大内委員 応援団がおりますが、まあまさか解散するとは言えないでしょう。それはそのくらいにいたしましょう。
 そこで私は、経済、財政、税制といったような重要な問題についてお聞きしたいと思うのです。
 総理は今度の施政方針演説で、経済問題についてこう演説をされている。「経済の拡大均衡を通じて対外経済摩擦の解消を目指」し云々、「内需を中心とした景気の持続的な拡大を図ることが必要」である。実は、総理が経済の拡大均衡という言葉を使われたのはこの演説とこの前の臨時国会の演説が初めてなんです。
 毎年党首会談が行われておりますが、私忘れもしませんが、一昨年の一月十七日に実はこの問題で党首会談が行われまして、当時は佐々木委員長でございましたが、私もお供をしまして、実はその党首会談に参加をさせていただいたのであります。
    〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
 そのとき私どもは、これから経済の運営にとっては拡大均衡が必要だ、こういう議論をしたときに、総理は、いやそうじゃないんだ、今政府は臨調路線を踏襲しているので拡大均衡はとれない、こうおっしゃった。私自身も立ちまして、いやそうではなくて、行革と拡大均衡というのは両立し得るのです、ですからぜひお考えをいただきたい、こういうことを申し上げた記憶が鮮明に残っているのでありますが、このところへ来て、総理が拡大均衡という言葉を急にお使いになり始めたのは、私どもの主張に対して何らかの御理解を示され始めたのか。つまり、基本的な考え方が変わってきたのか。また、その拡大均衡とは何を指しているのか。つまり主な政策の柱は何か、それをお伺いしたいと思います。
#89
○中曽根内閣総理大臣 前に大内さんが申された時代は、日本の景気その他についてもある程度安定感がありました。最近に至りまして、去年のG5以来円ドルの関係が大きく変化して、景気の前途についても我々は細心の注意をしなければならぬ、あるいはさらに日本の非常に大きなドルの蓄積、あるいは貿易摩擦というものが出てきでおるわけでございます。最近はまた石油が既にだんだん値が安くなってまいりまして、それが世界経済について沈滞の原因になりはしないかという心配もしてきておる。一面において、日本のような場合は原価が安くなりますからそれだけ利潤率が高まる、物価が安くなる、実質的所得はふえる、そういう面もございますが、世界経済全般を見ると、産油国というものが沈滞してくる。メキシコにしてもどこにしてもそうでしょう。そういうような現象も考えなきゃならぬ。そういう客観情勢の変化に応じまして拡大均衡ということを申し上げておるわけであります。
#90
○大内委員 その主な政策の柱は何になりますか。私の考えでは、それは一つは公共投資であり、一つは減税ではないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
#91
○中曽根内閣総理大臣 経済理論から見ますと、両方とも非常に有効なものであると思っております。
#92
○大内委員 私は、総理が拡大均衡というものを目指し始めたことを歓迎いたします。そして、そのための具体的な政策が打ち出されるように本当に強く望みます。
 それは既にこれまで各省庁が口を酸っぱく言ってきた。例えば建設省は、財政再建を図っていくためには財政の拡大均衡を目指すべきである。また経企庁は、最近の五十五年初めからの景気後退局面では財政支出による明確な景気下支えは行われず、このためもあって後退局面が長期化したものと考えられる、景気調整のための財政政策を必要に応じて発動していくことが望ましい。実は建設省や通産省あるいは経企庁といった政府の主要官庁は、この数年来、口をそろえて拡大均衡の重要性を述べてきていたのであります。にもかかわらず、政府は、特に大蔵省は、それに対して拒否反応を示されていたんです。これは経企庁長官と建設大臣、いかがですか。
#93
○平泉国務大臣 お答えいたします。
 去年の経済白書、その後のはまだ出ておりませんから最近の経済白書で、既に新しい成長ということを提唱いたしておるわけでございます。その新しい成長というものの大きな柱は、五十八年からもう既に景気はかなりいい成長段階を示しておるわけでございますが、そういう中でも、ずっと我々見ておりますと、技術革新の成果が非常にあらわれてきておるし、新しい産業がどんどん興ってきておる、そういう中で新しい設備投資がどんどん進んでくる、そういうことで、従来の輸出主導型の成長というものと別の、内需の中にあるたちのいい成長、そういうものの芽がどんどん出てきておるんだ、これをひとつどんどん伸ばしていくことが必要じゃあるまいか、またそれが可能になってきておる、こういうことを申しておるわけでございます。
#94
○江藤国務大臣 都会でも地方でもそうでありますが、よく陳情に参りますと、道路の陳情、河川の陳情あるいは都市再開発の陳情等が実はたくさんあるわけであります。
 私どもは、道路整備五カ年計画をただいま進めておるわけでありますが、約三十六兆九千億で進めておりますけれども、なかなか計画どおり進んでいきません。同時にまた、ことしから五カ年計画をそれぞれまた五つスタートさせるわけでありますけれども、容易にこれが達成できるとは考えられない、財政的になかなか苦しいときであります。しかし、国民の求めておるニーズからいたしますと、私どもは、内需の拡大という立場から考えれば何としてもこれらの国土づくりだけは進めていきたいという強い願望が実はあるわけでありまして、これらのことにつきまして、政府の中においていろいろ討論をし、私どももそうした国民の皆様方の御要望が達成できるようにいろいろ御相談を申し上げておる、こういう実態にあるわけでございます。
#95
○大内委員 今経企庁及び建設省の意見もお聞きのとおりでございますが、私どもはこれまで、今のような縮小均衡型の財政を続けていくと財政も悪くなり、そして経済の環境も悪くなるということを実は一貫して主張してまいりました。私は、これまでの政府の政策を見ますと、行政改革つまり財政再建というものと経済の拡大均衡は両立し得るのだ、こういう視点が余りにも欠けていたのではないか。そして、特に昭和五十六年からとられてまいりましたいわゆる縮小均衡型財政の採用以来、中曽根内閣は内需拡大というものをある意味で犠牲にしてしまった。これはあるいは厳しい言葉かもしれませんが、客観的にはそうであったと思うのです。そして、そのことはその以後の各年度の低い成長率、しかも外需依存の成長の内訳というものが数字で立証していると思うのです。そして、それは企業をして生きるためにどういう方向を歩ましたかといいますと、それは輸出へ輸出へと走らせまして、その結果がアメリカに対する五百億になんなんとする貿易収支の黒字、そしてECに対しては百億ドルを超える黒字、そして世界各国から日本がこの問題で袋たたきに遭う、こういう状態を招来したと思うのであります。
 そういう意味では、私は昨年も申し上げたのです。中曽根総理、そして中曽根内閣というのは、日本の国際的な地位を高める上では私は相当の業績を上げてきた、しかし、惜しむらくは内政においては打つべき手を打ってこられなかった、これを昨年も申し上げたのであります。しかし、今中曽根総理が、自分の考え方を変えだというような言い方はやりにくいにしても、行革と拡大均衡の両立ができるという考えに立ったということは、私は一つの前進であった。しかし同時に、そのことは過去数年の内需犠牲の中曽根政治という問題について深く反省する必要があるのではないか、でなければ本当のいい案は出てこない、こう思うのでございますが、いかがでしょうか。
#96
○中曽根内閣総理大臣 経済政策は、やはりそのときの客観条件に適合しつつやらないといかぬと思うのです。アメリカのドルがあんなに強くて、そして円、ドルの関係が輸出に向くように客観情勢があったという場合には、やはりどうしても輸出の方へ伸びていく、ほっておいても景気はそう悪くならない。ところが、円、ドルが逆転いたしまして円が非常に強くなってくるということになると、輸出が今度は停滞してくる。しかし、といって輸出にドライブをかけるという意味ではありませんけれども、一般的に冷えぎみになる、そういう点から内需に対してさらにドライブをかける、そういう方向に潮の変わり目が来た、そういう意識で行っておるものであります。
#97
○大内委員 しかし、そういう意識で行った結果、財政は悪化しましたよ。財政の構造は間違いなく悪化しました。それは私は、昨年もある意味で立証してみせたはずなんです。しかし、また再び申し上げなければならぬのです。私は、大蔵省の特に財政再建に関する政策を見ておりまして一番痛感いたしますのは、一つは中長期的な視野が全くないということです。もう一つは、今後の財政再建のための具体的な計画と対処方針が全くないということです。そういうものを示されたことはありません。そして、あるものは毎年の見せかけの歳出削減による予算の帳じり合わせでした。具体的な数字の裏づけのない計画、目標達成のための計画なき政策であったように思うのであります。そうでないと言うなら具体的に後で示してもらいたいのです。その結果、財政構造が悪化したというこの事実はやはり認めてもらわなければ。
 だって一つは、財政再建というのは赤字国債の発行を減らすことでしょう。それは名目的な赤字国債だけではなくて実質的な赤字国債を減らすことでしょう。しかし実質的な赤字国債はふえています。財政再建が始まった昭和五十六年から五十九年までの実質的な赤字国債はずっと八兆円台です。じゃ、昭和六十年、去年はどうでしょう。定率繰り入れの停止と借換債の発行をまぜますと、何と九兆八千億に膨れた。昭和六十一年度も同じなんです。もっとふえた。九兆八千九百六十三億円。実質的赤字国債、ちっとも減らないじゃありませんか。経済の実勢に合わせて、国際環境に合わせて財政を締めるんだ、そしてそれによって財政再建をやるんだと言ったって、肝心かなめの赤字国債は減るどころかふえたじゃありませんか。それでも総理は我慢しろとおっしゃるのですか。
 そして、赤字国債の減額方針が次々と出されました。もっとも政府は、昭和五十五年赤字国債をゼロにいたします、昭和五十七年もゼロにいたします、昭和五十九年もゼロにいたします、全部失敗いたしました。そして今、六十五年赤字国債からの脱却を図ります、失敗するでしょう。だって、昭和五十九年の赤字国債減額の目標は一兆円でしたよ。しかし実際に赤字国債の発行の減額はその半分の五千二百五十億でした。昭和六十年度は一兆八千億の赤字国債の減額をやらなければならなかったところが、七千二百五十億でした。
 じゃ六十一年度はどうでしょう。ことしです。六十五年度にかけて赤字国債をゼロにする、その六十一年度はどうなるでしょう。本当は一兆一千五百億の赤字国債の減額をやらなければいけないんじゃないですか。やったのは幾つあるんです。四千八百四十億円です。六十五年度脱却は不可能ではありませんか。総理、いかがです。
#98
○中曽根内閣総理大臣 なかなか厳しい環境に来ているということは私もよく知っております。しかし、あらゆる知恵を絞り、努力をして、所期の目的を達するように努力し続けていきたい、そう念願しておるものです。ことしはたしか赤字公債の発行額が五兆円前後であった、四千億円ではなくて五兆円前後であった、そういうふうに思います。
#99
○大内委員 いや、減額分です。今ちょっと総理は間違えられたと思いますが、要するに赤字国債の減額分が、一兆一千五百億削らなければならぬところを四千八百四十億に終わった、こう申し上げているんです。
 しかも定率繰り入れの停止は昭和五十七年から今日まで続いておりまして、ために国債整理基金の金庫は空っぽになりました。定率繰り入れの総額はこの五年間で何と七兆七千三百五十一億円に及んでおります。そして予算のいわゆるツケ回し、見せかけの歳出削減は相当額に毎年達しておりまして、ことしは毎年やっておりました公務員の給与の一%分も計上できなくなりました。
 そして、財政節度を失うとされた赤字国債の借換債も昭和六十年度から御存じのように始まりまして、六十年度が一兆八千七百九十億円、昭和六十一年度が二兆九千八百六十五億円。借金を返すに借金をもってする、これは財政当局がやってはいかぬと言っていたことです。
 そして、「増税なき財政再建」と言いながら増税をしなかったのは、あの一年間の間に統一地方選挙、参議院選挙、衆議院選挙が行われた昭和五十八年だけ、あとは全部増税をやっておる。ことしは大した増税をやらないような格好をしておりますが、何と八千億強やっておる。六十一年度皆さんが提案をしているこの予算の中では八千億強の増税を要求しているんです。これは「増税なき財政再建」とは言えないと思うんです。そしてその結果、五十六年度の緊縮財政の実行を契機といたしまして、税収の伸び悩み、自然増収の著しい落ち込み、そして三%そこそこの成長、六十年度はやっと四%。今私が並べたことは財政が悪くなっているという具体的な数字なんです。緊縮財政で財政は悪くなったでしょう。これは認めてもらわなければならぬです。いかがでしょう。
#100
○竹下国務大臣 私と大内さんとたびたび問答をいたしますと、一つ大きな問題は、いわゆる大内さんの拡大均衡というのは財政政策、したがってその議論は昨年もうございました。
 そこで、六十年の十二月の経済審議会で、今経済企画庁長官からもちょっと、第一項目について、技術革新とか情報化に牽引された成長であって、内需中心の持続的成長である、いわゆる拡大均衡のもとでの新しい成長という定義の一つが御説明になりました。二番目に、昨年来の御議論でありますが、国際経済との調和、行財政改革の推進等を図りつつ内外の拡大均衡が達成される成長であることということをうたいとげておるわけであります。したがって、その後産業構造の変化あるいはまた、いわゆる市場開放とか、そういう点からする経済交易条件の拡大というものは図られておる。だから、財政を拡大均衡さすという考え方の上には立たないで、大きくはその考え方に立たないで、小さくはございます、公共事業を苦心するとかいろいろございますけれども、そういう点で今日まで財政運営をやってきた、こういうことになろうかと思います。
 そこで、よくなったか悪くなったか、こういうことでありますが、私は、GNPに対するところの公債残高等から見れば、これは悪くなっておると言わざるを得ません。しかし苦心して、言ってみれば、今年度予算におけるいわば公債依存度、こういうことになると若干の改善も加えたという評価もすべきではなかろうか。まあしかし、それとて大内さんのおっしゃったのは、実質上の厚生年金等の繰り入れを停止したり、今おっしゃいました国債整理基金へ入れることを停止したりというようなものは、性格的には赤字公債と同じもので、いずれの日か穴埋めをしなければならぬものではなかろうかというような考え方で御指摘なすった数字であろうというふうに考えます。
 しかし、私どもといたしましては、いわば市場に直接影響のある新しい原資を調達するという形の赤字公債の調達ということについては可能な限り努力はしました。しかし少なくとも、単純平均とは言え、昨年試算等で申しました目標額を大きく下回っておることは事実であります。結局、これらの問題については毎年毎年の努力の中の積み上げによって結果を出していかなければならない課題であるというふうに考えます。したがって、財政状態が悪くなったかよくなったか、こういう問題につきまして、私は、大きく改善されたとは申しませんが、それは、評価はそれぞれの視点に立って変わるものではなかろうかというふうに考えます。
#101
○大内委員 私は、自分の意見や主観で申し上げたのではなくて、財政というものを診断する幾つかの項目について見ると、財政の構造は悪化するということを今数字的に申し上げたのでありまして、これは消すことのできない事実であろうと思うのであります。竹下さんもこれから総理・総裁を目指す重要な人物でございますから、緊縮財政の竹下では、これは余り人気が出ないと思いますよ。やはり積極財政の竹下、まあそんなことは余計なことかもしれませんけれども、そう思いますね。
 毎年のように大蔵省が「財政の中期展望」、仮定計算というものを出してきております。私は、これはいろいろな見方ができると思うのです。大蔵省は大蔵省として一つの前提に立って計算を出してきたと思うのですが、私はこの中期展望と仮定計算を見まして痛切に感ずることは、一つは要調整額というものを出しながら、その要調整額の解消という問題についての政策選択が全くない。租税負担率の目標値あるいは国民負担率の目標値というものも全くない。そして歳出削減の具体策も全くない。私はここに一つの大きな欠陥があるように思いますね。こんなものを出したってしようがないですよ。これからどうするんだという一つの案が出なければしようがないと思うのです。要調整額を増税あるいは歳出削減で解消する場合に、それじゃ六・五%の名目成長率あるいは一・一の弾性値が可能かどうか検証は全く行われていないし、したがって税収見積もりも固定してただはじいているだけだ。財政再建は本来特例公債の解消が主たる目標でありますけれども、経常部門が問題の対象であったにもかかわらず、投資部門についても単純一律な緊縮財政を前提としている。そして、特例公債の減額が機械的に、経済情勢に即応した財政運営の視点、そんなものは全くなしで言われている。これでいきますと、答えは、要調整額をぐっとクローズアップいたしまして、あとは増税しかありませんよ、その啓蒙の材料として出したとしか思えない、そういう感じが率直に言っていたします。
 それで、竹下大蔵大臣、六十五年度の赤字国債脱却、この方針はなお努力目標として堅持しているとおっしゃいますが、そのためには毎年幾ら赤字国債の減額が必要なんですか。
#102
○竹下国務大臣 一兆三千五百億円、平均値はそうなります。
#103
○大内委員 一兆三千百でしょう。
#104
○中島(源)委員長代理 吉野局長。
#105
○大内委員 まあいいです。それは大した……。一兆三千百億ずつ減らす、そんなことできますか。これから六十五年にかけてできますか。
#106
○竹下国務大臣 そこが問題でございまして、したがって大変困難なことであると申しておるわけでありますが、ただ、毎年大内さんとこの問答をしながら思いますのは、確かに民社党において出される試算というものもございます。それの前提としては、一つはいわゆる潜在成長力を何ぼに見るかという点の違いが多少ございます。
 それから、六・五でいつまでも計算しておるがいいか、こういうことでございましたが、これも経済審議会のお答えの中で、その議論もしてみたが、まあ八〇年代後半として位置づければ今それを変える必要はなかろうということでございましたので、その数値を使っておるわけであります、全体の平均値でございますから。
 そうして、大体そうはいっても、君はその具体的な、じゃ歳入をふやすとか、あるいは歳出をカットするとか、そういう具体性ないままに、ただ、要調整額がこれだけありますと言ってきたではないかと。そのとおりであります。強いて申しますならば、私は予算審議の参考に使っていただくために毎年出しておりますこの試算というものの中で、強いて色合いが違ったとすれば、ことし初めて、まだ実行には移しておりませんが、いわゆる電電株の売却収入というものを一応カウントをいたしたわけでございます。
 だから、確かに要調整額がこれだけあります、皆さん、これは公債の増発によりましょうか、あるいは増税によりますか、あるいはなお一層の歳出削減によりますか、問答をして国民のコンセンサスが那辺にあるかを決めましょうと、こう言ってきて、その中で透かしが出てきたとすれば、NTT株を一応カウントする状態にはなった。さあ今度は、ではこれからはどういうことが考えられるかといえば、これは毎年毎年の予算で厳しくやっていかなきゃいかぬことでございます。必ず帳じり合わせじゃないかという御批判も受けます。しかしまた、帳じりの合わない予算というのもこれはございませんので、その辺を苦心しながら詰めていくわけでございますが、一方、昭和五十四年以来いろんな議論をしていただきましたが、税制調査会の方へやっと持ち込むことが、税の問題でもできた。これはまだ、当然のこととして、いわば透かしにもなっておりませんけれども、これからでございますが、そのようにして毎年新しいいろんな措置が少しずつ浮き彫りにされてきて、そして五十二年、五十三年と国民の選択の幅が、言ってみれば、要調整額という非常に漠然としたものが、いろんな工夫によって選択の範囲が少しずつ狭まっていくということの中で、国民の理解と協力を得ながら進めていきたいと。まあ容易じゃないことだと思っております。そうすれば、私は、六十五年脱却というものを今容易でないと思いつつも、これをギブアップする段階ではないというふうに考えております。
#107
○大内委員 私は、これからの財政対策というのは、一つは、はっきりした構造的な赤字に対しては厳しい行革姿勢で臨み、そして循環的な赤字に対してはそれだけの予算を財政的に確保していくという、この両面の政策がなければ財政再建なんかできるものではない、この一点に尽きて実は主張をしてきたのです。そしてそのことは、いろんな財政の実態的な数字というものが立証してきていると思うのです。
 ですから、今私が六十五年度赤字国債脱却ができますかと問うているのは、その政策が一番最初にあって、その政策だけに固執して政策を遂行する場合には財政政策を誤ってくる、そういうことを実は申し上げようとしているのであります。したがって、これから六十五年度赤字国債脱却というところにだけもし政策を集中していくならば、五十六年度から行われてきたこの緊縮財政の悪い結果がもっと出てくる。そして、この問題についてはもっと弾力的に対処していいのではないか。そのことは、実は政府の中からも随分出ているのですよ。
 例えば、これは平泉さんのところの経企庁はこう言っていますよ。「現行のように特定年次の赤字の絶対額を一定以下に抑えるという形式の目標の下では、経済環境が当初の想定に比べて悪化すると、これによって生ずる財政赤字の拡大により支出削減あるいは増税が必要となる。このようなことが実行されれば景気は一層落ちこみ、より大幅な支出削減・増税が必要となる」という悪循環に陥るんだ。これが政府の経企庁の見解なんですよ。
 そして、政府にとって一番重要な財政審議会の館財政審会長代理はこう言っていますよ。経済は我慢、我慢でやっていけるものじゃないんだ、こういうときは、財政再建も弾力的に考えるべきなんで、具体的には六十五年度という目標を延長するという形で。そうでなければ増税になっちゃう。
 だって、竹下大蔵大臣自身だっておっしゃっているのですよ。これは昨年の十二月の末、二十八日です。記者会見で、「国債発行額の一兆円減額は達成できず、六十五年度の赤字国債脱却は困難な情勢」になった、竹下大蔵大臣自身もそうおっしゃっているわけでございます。建設大臣も同じようなことを言っているのです。
 六十五年度赤字国債脱却という問題を弾力的に考える、そういう姿勢はとれませんか。
#108
○竹下国務大臣 確かに、一兆円というものを目指しておって、今おっしゃいました四千八百億というものにとどまった、そうすると、これは容易じゃないなという感じを受けたことも事実であります。
 そこでしかと考えました。しかし、今仮に、もしここで六十五年度赤字公債脱却はあきらめましたとこの旗をおろしたら一体どうなるか。もちろん、経済の運営は適時適切、弾力的であらなければなりません。経済運営の方針とは何ぞやと言われれば、適時適切、弾力的に行うという言葉を使えば満点だと言われたことがよくございますが、そういう漠然としたことでなく、現実問題として、経済の変動に対して財政もまた弾力性を持たなきゃならぬということは事実であります。その弾力性を持ち得る対応力があったから、私は、ドルショックも、一次石油ショックも、二次石油ショックも、日本経済はくぐり抜けることができたと思います。
 しかし、それが今や限界に達したという認識に立っておりますだけに、かたくなと言われようとも、これを緩めることによって出てくる歳出膨張圧力というものを考えてみると、だれかやはりかたくななまでにも財政改革路線というものの旗を掲げていなければならぬ。そのようにして、心の中では弾力的に、そして外目には物すごくかたくなに構えておるというのが自己評価でございます。
#109
○大内委員 そうやって、結果的にはいつも、目標が達成できませんということを後になって弁解する、私は、これはわかりやすい政治でも何でもないと思いますよ。不正直な政治だと思います。不正直な財政だと思うのです。毎年一兆三千百億ずつこれから赤字国債を減額していかなければ、六十五年度の赤字国債の脱却は到底不可能だ、そして、そんなことはできるはずもないということを腹の中で承知しながらこの旗はおろさないんだ、そんなことを国民はわかりません。それなら、経済運営、それから財政政策を根本的に変えるという代案があるなら別ですよ。
 そこで、私は、きょう資料をちょっと配っていただきたいのでございますが、「昭和六十一年度の経済見通しと経済運営に対する提言」というものを用意をいたしました。
 これは、今竹下さんが御説明になったように、これまでの縮小均衡型経済運営をなおも踏襲し、また、単純・一律的な緊縮政策を継続したケースと、それから、今私どもが提案しているような拡大均衡型経済運営への転換を図り、積極財政政策を推進したケースというものを二つ並べてみまして、御参考に供したいと思うのであります。
 もっとも、それは前提条件があるわけでございまして、このめくった一ページの終わりのところに書いてございますように、円レートは百九十五円程度、最近はもう少し下がってきておりますが、それからアメリカの実質経済成長率は三%弱、原油価格は大体四月から六月まで二十六・二五ドル近辺、さらに先へ行けば少し下がるであろう、公定歩合の〇・五%というものは既に織り込み済みという形で計算をしてみますと、ここにありますような図表になるわけであります。
 細かい字はそうごらんいただく必要はございませんが、上の表を見ていただきますと、実質国民総生産の増加率、政府案では四%となっておりますが、この私どもの計算でいきますと四%にならないのです。三・四%ぐらいに終わってしまう。この表ですね。ここに実質の増加率というところがございますが、これでは政府が言っている四%という数字にはならないで三・四%に終わってしまう。したがって、税収の伸び率も五・五%から五・六%ではなくて五・三%ぐらいに終わってしまう。経常収支も五百十億ドルではなくて五百二十五億ドルぐらいに膨らんでしまう。これはコンピューターに入れた数字でございますから、ある程度の客観性を持っている。
 しかし、私どものような積極的な財政政策、そこに「主な前提条件」として書いてございますが、二兆円の所得減税、うち住宅減税を二千億、投資減税を三千億、そして、増税は行わないが不公平税制にはメスを入れる、公共投資についてはこれを増額する、その必要な財源は建設国債の発行によって賄う等々の前提条件を組み入れて計算をしてみますと、国民総生産の実質は四・六%ぐらいに伸びる、つまり不景気ではなくて景気は完全に維持できる、経常収支も四百億ドルちょっとに縮んでいく、こういう一つの試算をしてみたのでございます。
 もちろんこれは一つの試算であって、これが絶対だなどというそんな思い上がったことを申し上げるわけではないのでありますが、しかし、これは一つの計算として立派に成り立つのであります。私どもは、今、政府の縮小均衡財政というものを批判しているだけじゃなくて、こういう措置をとればこういう数字も出得るのですということを責任ある政党として申し上げているわけなんでございますが、竹下大蔵大臣の御感想をいただきたい。
#110
○竹下国務大臣 今見せていただいたばかりでございますが、昨年までにも、民社党のきちんとした前提を置いたこの種の試算はお見せいただいております。私が昨年までに感じておりましたのは、いわば潜在成長力の見方が民社党と政府との相違があるということを印象として受けとめておったわけであります。
 確かにいろいろな計算をいたしますと、私も、これらの前提条件に基づいて行われた場合の一つの試算として、大いに参考にさせていただくべきものであるという認識は持っております。ただ、いずれにせよこれらの問題が、財源が例えば建設公債の発行であるとかいうようなことから考えてみましたときに、いわば将来への影響ということをいま一つこれははじいてみなければならない課題ではなかろうか。なお、この財源問題、減税に伴う財源問題の際に、確かに所得捕捉の徹底とかキャピタルゲイン課税の適正化あるいは税の執行上の問題等を念頭に置いてのことであろうかと思いますが、それは現実問題としてそれに対応する財源となり得るかどうかということになりますと、執行当局自身を担当しております者としては、いささかこれに対しては自信がありますと言える数値ではないではなかろうか、こんな一見しただけの感想でございますが、毎年出していただいて叱咤鞭撻していただきますことに対しては、私どもは絶えば敬意を払っておるところであります。
#111
○大内委員 拡大均衡というのは言葉ではないわけで、やはりそれを裏づける政策が必要だと思うのであります。したがって、これは我々の一つの提言でございますので、少なくとも総理が拡大均衡という言葉を口にされる以上はこういう面で具体的に今後御検討いただきたい、こう思っているのであります。
 そこで、今竹下大蔵大臣がおっしゃいましたように、例えば公共投資の中の建設国債という問題をどう見るかというような問題とか、あるいは経済の潜在的な成長力をどう見るかというのは確かに論争点なんであります。しかし、これは政府側と我々との論争というよりか、実は政府側の省庁で出している数字の中に、潜在成長力についても大体五%程度は見れるというたくさんの今までのデータも出されているわけで、我々はそういうものもひとつ参考にしながらこういう問題を提起している。つまり我々の主観的な立場でただ提起しているのではないということをぜひ御理解をいただきたいのであります。
 そこで問題は、その拡大均衡を裏づける公共投資なんでございますが、公共投資が今度、例えば財投やなんかを含めてふえた、ふえたという話がございます。しかし、一般会計あるいは投資部門の数字はずっと減り続けであることはもう御存じのとおりなんであります。それは昭和五十四年から六十一年までをずっと見ておりまして、一貫して公共投資というものが減ってきている。それは一般会計予算公共事業関係費及び投資部門の歳出の推移を見れば明らかでございまして、今度は財投でちょっとふえた、それから地方の単独事業を少しやらせるということでふえたといいますが、公共投資というのは本来この一般会計予算でふやしてこそ本当の公共投資がふえたということになるのであります。そういう意味では、私は、公共投資というものが総理の言う拡大均衡を裏づけるような状態には全くなっていないと思うのであります。
 実は、その公共投資をふやせというこの主張は、建設省はもとよりのこと、経企庁その他においてももういろいろな形で言われておりまして、私はここにたくさんのその資料を持っておりますが、これを一つ一つ御紹介を申し上げる時間はありません。もっと国内投資、なかんずくその中の公共投資をふやしていくということについて政府は努力する必要がある。経企庁長官、建設大臣、それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
#112
○平泉国務大臣 経済成長の中で公共投資の持つ重要性ということは我々十分認識をいたしております。殊に我が国は社会資本が欧米諸国に比べて十分ではございませんから、何としても公共事業は拡大をしていってもらいたいというのは我々の強い気持ちでございますけれども、一方、現在の財政状態の現状を見ますと、やはりなかなかそれに対応ができない。何としても財政の対応力を早く回復してもらいたい。まあ今の場合は新しい成長の要因というのは十分出てきておりますけれども、またそうでない場合もあり得る。将来のことを考えますと、財政の対応力を大いに発揮して、必要なときに必要な公共事業ができるという財政状態の再建が必要であると考えております。
#113
○江藤国務大臣 公共投資が持つ性格はいろいろあると思います。こういう時代においては、まず内需拡大のためには公共投資が一番手っ取り早いということがございます。また、都会と地方では違いますが、地方において、例えば農山漁村というものがだんだんだんだん現金収入の道がなくなってくるということになりますというと、一番の工場誘致というのは間に合わないわけでありますから、工場誘致に匹敵して現金収入の道を得るといったならば、私は後進地域においては公共事業の安定的な導入というものが一番適切である、こういうふうにも考えておるわけであります。
 先ほども申し上げましたが、まだ我が国の高速自動車道路でも、これは自動車の一台当たりから見ますと外国の四分の一、進んだ国の四分の一しか高速道路がありません。国道でもまだ改良率はわずかに六〇%程度かと思います。舗装率でも八五%ぐらいであろうと思います。都会でも地方で脇道路をよくしてくれ、災害のない国にしてくれというのは国民ひとしい願望でありまして、それに私どもは何とかしてこたえていきたい、こういう気持ちがあるわけでありますけれども、何といたしましても、国全体の財政再建ということを全く無視するわけにはまいりませんので、内心苦悩しながら一生懸命努力をしておるというのが実際の今日の状況であることも御理解をいただきたいと思います。
#114
○大内委員 問題は、その建設大臣の意向が政府の政策に反映されないんですね。問題はそこなんですよ。経企庁長官の意向が政府の政策に反映されてからということなんですよ。経済企画庁というのは経済政策の最高の機関でしょう。大蔵省じゃないんでしょう。そこが公共投資はもっとふやさなければならぬ、そしてそのために建設国債を発行することは決して悪いことではない。建設省もそうおっしゃっている。しかし、大蔵省がそれを締め上げる、そしてこの建設国債の財政効果について意見が分かれている。そして勝つのはいつでも大蔵省、負けるのはいつも経企庁と建設省。私はこれはおかしいと思いますね。建設国債を発行して公共投資を行うことがどこにマイナスがあるんでしょう。プラスが起こったってマイナスなど私ないと思いますよ。大蔵大臣どうです。
#115
○竹下国務大臣 国債政策全体からいって、いわば民間にある資金を国が吸い上げて、それによって金融政策に影響をもたらすということがいけないという論理がまず第一にございますが、我が国は、幸い、金融情勢はそうではない。したがって、その問題はまず横に置いて議論をして進めて結構だと私も思います。
 しかし、それにいたしましても、やっぱり一兆円、この辺がいつも議論が違うところだとおっしゃる点の一つでありましょうが、仮に一兆円の公共事業を実施いたしたといたしますと、その波及効果として税収ではね返ってくるものが大体四千億円程度、こういうことでございましょう、三年間にわたりまして。したがって、他の施策よりも税収へのはね返りが大きいということは確かに言えます。しかしながら、一遍それを拡大した場合、それが既得権化して、今度は縮めていくという作業は現実問題としてなかなか困難な問題もあります。そして、最終的にはその一兆円というものはやはり六十年間にわたって、すなわち子、孫、ひ孫の時代にわたって、その三・七倍たる三兆七千億のいわば負担を後世代の納税者に回す、こういう論理だけはやはり私はきちんと守っていかなければならないではなかろうか。
 したがって、今度も公共事業は、それはおくれているからと言えばそれまででございますが、一生懸命で工夫をいたしました。昨年よりも一層これを伸ばすことに苦労いたしました。それだけにまた地方団体への負担を余計求めることもお願いをいたしております。それによって事業費を伸ばし、さらには住宅金融等においてこの住宅政策等の事業そのものが伸びていき、と同時にいわゆる民間活力を活用いたしましたところのもろもろの施策の芽を出すということに心がけてきたということであります。
 ただ、御参考までに一つ言えますことは、我が国のいわゆる政府投資の対GNP比というのは、日本は五・四、アメリカが一・六、英国が一・六、ドイツが二・九、フランスが二・九、そういうふうに対GNPを通して見た場合は、日本のいわゆる政府投資の率は高いということは、私どもがG5等で主張しておる一つの数字でございます。
#116
○大内委員 建設大臣は就任の直後にこう言っているのですね。建設国債は後世にツケを残すと言われるが、ツケだけではなくて社会資本という資産も残すのだ、ツケしか残さない赤字国債と同列に論ずるのはおかしい。これは正しい議論ですよ。よく竹下大蔵大臣は、建設国債を発行してもそれは孫、子にツケを残す、だからそういうものはいかぬという議論は非常におかしいですよ。なぜならば、孫、子にツケを残すといっても、その孫、子はその道路なりその河川なりその他の公共社会資本の恩恵を受けるのです。そのツケを今の人だけが背負うということの方がよほどおかしい議論じゃありませんか。だから、私は建設大臣の意見の方が正しいと思う。もう一回信念を述べてください。
#117
○江藤国務大臣 建設国債についての意見は、私は基本的にはただいま大内委員の言われたように考えております。しかしながら、ただいま予算案が提出されたばかりでありまして、その中におきましても、今防衛庁長官に確かめましたら、防衛予算は三兆三千四百億、ことしの一般公共事業費は十二兆五千億の公共事業費をちょうだいしておるわけですから、苦しい中においても相当の工夫と努力はしていただいたことは間違いないと私は思うのです。
    〔中島(源)委員長代理退席、林(義)委員
    長代理着席〕
 もう一つは、ことし六十一年度予算の中におきましてもおおよそ五兆七千億の建設国債を実は財源として充当しておるわけでありまして、六十一年度末の建設国債の残高はおよそ七十九兆円になる、国債の残高の大部分は建設国債が占める、こういうことになっておりますわけで、多々弁ずるではありますが、かなりの努力はしておる、こういうふうに考えておるところでございます。
#118
○大内委員 江藤建設大臣のいいところはストレートに物をどんどん言うということで、余り周りを気兼ねせぬ方がいいですよ。大いにおっしゃった方がいいです。しかし、今は日本にとって一番先進国でない部門というのはやはり社会資本のおくれですよ。住宅と住宅環境の整備は恥ずかしい限りですよ。これに対して政府が本腰を入れてもし政策を実行に移すならば、私は日本というのは相当世界に誇れる国家になると思うのです。
 私はあのシンガポールに行ってリー・クアンユー首相と二度ほど会談したことがございましたが、あの人は住宅にむしろ命をかける思いでその近代化を図った。今その公共事業の五カ年計画の進捗状況を見てごらんなさい、ここに表がありますけれども。政府が計画したものでできたものは何一つないのです。そしてお金がないから、お金がないから、そしてどんどんどんどんその部門がおくれ、それが内需拡大の足を引っ張っている、財政面から。それを直さなければ、総理が言っているような拡大均衡などというその言葉はまさに絵にかいたもちであるということを私は強調したいから、こんなことまで申し上げているのです。
 もっと、私はいろいろなところを歩いていますよ。これは通産大臣がよく知っていると思いますが、今、中小企業の皆さんは円高不況で本当に苦しんでいる。四苦八苦ですよ。じゃ、東北へ行ってごらんなさい。私も東北の各県を回ってみた。そして中曽根総理が、民活で内需拡大をやるんだ、その一生懸命言っている声というものがいかに自分たちにとってそらぞらしいかということを彼らは訴えていた。なぜならば、民活では東北のあの各県は経済が振興しないのですよ。みんな公共投資に頼っているのですよ。公共投資を締め上げれば東北の各県は困り、そして四国、九州のあの貧しい県はみんな困っているのですよ。どこかのところで民活は一部できるかもしれないが、それだけで地方の財政などというものは振興できるものではない。この公共投資に対して政府が本当に前向きに金をつぎ込むところはつぎ込んでこそ初めて今の内需拡大という要請にこたえられるし、東北の各県を救うこともできる。四国や九州のあの貧しい県を救うことができる。余り貧しいと言うと怒られるかもしれないが、しかし特定はしてないのですから。しかし、私は行ってみて、本当にここから公共投資を頭打ちで抑え込んだらどうなるだろう、本当に政府の首脳というのはそういうことを考えているのだろうか、こう思いながら見てきたのです。
 せめて政府が立てた公共投資の計画ぐらいちゃんと実行してくださいよ。そうでなければ、こんなものは計画じゃありませんよ。しちはち置いてもそこに金を出して、それらの人々に対して仕事の場を与え、そこから経済と地方財政の復興を図っていく、それが内需振興じゃありませんか。それが総理の言う拡大均衡じゃありませんか。民活だけでは日本の全県がこの内需拡大の恩恵に浴することは不可能です。いかがでしょう。
#119
○中曽根内閣総理大臣 予算の配分につきましても、大体都会は民活、それから地方の府県は公共事業、政府の費用を使おう、大体そういう方向で傾斜的に考えていただこうと思っておるわけであります。
 一般的に言いまして、確かに、大内さんおっしゃっているように、東北とかあるいは北海道とかあるいは四国あるいは南の九州、そういう重点的に考えなければならぬところが多々あると思います。そういう点につきましては配分についても大いに心してまいりたい、そう思っておるわけであります。
#120
○大内委員 私は本当にもっと民活その他を深く論じたいのですが、時間がそうありませんので次の問題に移りますが、少なくとも総理が経済の拡大均衡という方向でこれから内需拡大を振興していこうというなら、公共投資という問題についても現状に即してもっと真剣に考えていただきたい、本当に切望する次第でございます。それはある意味では、そのことを待ち望んでいる国民にとっては本当に悲痛な願いであるということも総理の胸にとめていただきたいと思うのであります。
 減税の問題、税制の問題に移りたいと思うのです。
 総理はこの問題についていろいろなことをおっしゃっていますが、要約いたしますと、春には減税の答申をもらい、そしてことしの秋には財源措置を含めた包括的な答申を求めていく。そしてそれらを通じて税制の根本的な改革をやろうとしている。「戦後政治の総決算」という形で、税制の見直しがあるいはその仕上げかもしれない。その意味では、この問題が中曽根内閣によって遂行されるのか、そうでないのかということは、私個人にとっても相当興味のあるところでございます。
 しかし、それは別にいたしまして、それはこういうことになるんじゃありませんか。もし、その方式で税制改革に取り組まれますと、六月には参議院選挙があります。あるいは私が冒頭に論じましたように同時選挙というものも起こるかもしれません。春には減税を答申をいただく。選挙を前にしてまず減税を打ち上げる。そしてそれによって国民の歓心を買う。これは、あるいはげすの勘ぐりと御批評いただくかもしれませんが、私は客観的な形だと思うのです。そして選挙が終わったら増税、こういう嫌いがあるのではないかなと実は思っているのでありますが、思うにはそれだけの根拠があるのです。
 これは中曽根総理も思い起こしていただきたいのです。昭和五十八年は選挙の年でありました。そして十二月には衆議院の選挙が行われました。それを前にして総理は何とおっしゃったかといいますと、五十九年度予算編成構想を発表されまして、臨調答申を守り、増税は行わない、こうおっしゃいました。そして一兆円の所得税減税、住民税減税を行いますと打ち上げました。この二つでした。選挙をやられました。選挙が終わったら、国税だけで初年度九千三百二十億円の減税をやりましたが、その見返りとして九千九百七十億円の増税、これは法人税、酒税、物品税。今総理の減税構想というのは、この五十九年度パターンをお考えなんでしょうか。私は、この五十九年度の増税案を国民が見たときに、これはだまし討ちに遭ったなと思う。選挙のときは減税だけやるとだれしもが思っていた。そして選挙が終わったら、今度はそれを上回る地方税を合わせて一兆三千億の増税に踏み切ってきた。これによって減税は帳消しになって、増税の方が多くなる。今度の手法はそういう手法でしょうか。
#121
○中曽根内閣総理大臣 ともかく税調に対しまして諮問をいたしまして、そして春には重税感からの解放、あるいは公平、公正、簡素あるいは選択、あるいは民活、そういう原則に基づいて、シャウプ税制以来の税制の見直しをお願いをしておる。そして、ねじりとか、よじりとか、不合理なものを是正する。それは減税という形になります。そういう案をまずつくっていただく。そして秋にはこの財源措置も一体とした最終的な答申をいただいて、そしてそれを法律化して実施に移そう、そういう段取り、手順を申し上げてお願いしておるところです。何しろシャウプ税制以来の画期的な大がかりな税制改革でございますから、相当手数と時間と慎重さを要する、そう思っておるわけでございます。
#122
○大内委員 そうすると、減税と増税は六十二年度に大体一緒にやる。そして、その減税の規模によってはそれに見合うだけの大増税をやる、そういうふうに理解していいわけでしょうか、ほかに考えられないのですが。それならそれで、そうだということをやってやるなら私はフェアプレーだと思うのです。先に減税だけやるようなふりして、後で選挙が終わったら増税もひっくるめてやるというようなやり方はフェアプレーではない。
 私は、きのうのレーガン大統領のあの一般教書を読みまして、非常に同感のところがありました。レーガン大統領はこの一般教書でこう言っています。「われわれは、偽装された増税であるような税制改革を受け入れることはできないし、受け入れないであろう。真の税制改革とは生産性と成長の原動力であるべきである」、私は、このレーガン大統領の言葉を我々の言葉として中曽根総理に進呈したいと思うのです。いかがでしょう。
#123
○中曽根内閣総理大臣 私も民活ということを言っておるので、これによって民間活動がますます活発化する、そして税源を生んでくれるように景気の回復に役立つ、そういうことも念願しておるわけであります。
#124
○大内委員 私は、春に減税の答申をなぜ受けるのか、なぜ増税と減税を一緒に答申を受けないのか、不思議でたまらないです。それはまた、国民に対してだまし討ちをやったあの五十九年度のパターンをとろうとしているとしか思いようがない。それじゃ、春に答申を受けるなら、六十一年度の予算修正をその答申に基づいてやったらいいじゃないですか。そういう余地も残しているのですか、春の答申というのは。
#125
○竹下国務大臣 シャウプ以来の抜本改正、これを諮問する。そして総理から、諮問文の中におきましていわば手順が示されておる。春には痛み、ゆがみ、ひずみ、重税感、そういうものがどこにあるかということをまず御検討をいただきたいということを申し上げ、そして秋ごろまでには総体としての我が国の税のあり方についての御答申をいただきたい、こう言っているわけでありますので、春に答申をいただくということにはならないというふうに思います。それは税制調査会で、場合によって中間報告というのがあるかないかもこれから税制調査会の主体性において御議論いただくわけでありますが、総理から諮問申し上げましたのは、その手順について、まずはシャウプ以来の税制のゆがみ、ひずみ、重税感が那辺にあるか、そういうところから議論を始めてくださいということで、今、第一特別部会というのが総括でございますが、第二特別部会、第三特別部会というようなものが設けられ、そこで議論が進められておるという段階でございます。
#126
○大内委員 そうすると、春には別に減税の答申をもらう意思はないのですね、春にそのお答えをまずいただくと総理が言っているものですから。どういうことなんでしょう。
#127
○中曽根内閣総理大臣 答申というのは、秋に最終的にまとまったものが答申であって、春には私が申し上げたような原則に基づいた中間的な考え方と申しますか、そういうものをお示し願いたい、そのような意味であります。
#128
○大内委員 中間的な考え方というのは、普通は中間答申ですよ、常識的に言えば。それなら一遍にもらえばいいはずなんです。ですから、六月の選挙前は減税という一つのムードを出しながら、そして後は五十九年度にやったような増税を一遍にやろう。
 それで、大型間接税は六十二年度の取り扱いとしてはどうなるのですか。私は去年の春に大型間接税の問題で統一見解までいただくような議論をしたのですが、大型間接税の導入は六十二年度はあり得るのですか、ないのですか。
#129
○竹下国務大臣 この問題、昨年来からの議論でございますが、大体、今のところの税調の進みぐあいを見ますと、いわば所得税それから法人税のあり方というようなところの議論を詰めていただいておるわけであります。したがって、俗に言いますところの課税ベースの広い間接税の問題、これは今までの税調の中間報告でございますとか毎年毎年もらっておる税制のあり方についてというような課題にも示されておりますので、検討の領域の中に入っておるというふうに私は思います。が、取りまとめの順序からいたしますと、後半における審議課題となろうといふうに考えております。したがって、それを六十二年度の税制に採用するかしないかという問題は答申をいただいた後の政策選択の課題になるであろう、その答申もまだどんなものかはわからぬと言えばそれまででございますが、そういう手順になろうと考えております。
#130
○大内委員 非課税貯蓄制度の見直しの問題は、六十二年度の問題ですか。
#131
○竹下国務大臣 この問題は国会や税制調査会でさまざまな議論が行われてきております。で、税制全般の見直し作業でございますので、その中でこの問題についても御検討をいただいておるところでございます。
 で、今後における利子配当課税のあり方につきましては、利子配当所得の持つ特異性とか、それから金融の新たに出ます国際化、自由化の進展、そういうことを新しい要素として御議論をしていただこうということで税制調査会で検討していただいておりますので、どのような結論が出るかは別といたしまして、政策選択の問題は御答申をいただいた後のことになろうと思います。
#132
○大内委員 今私は大型間接税と非課税貯蓄の問題をちょっと触れましたのですが、この大蔵大臣の答えは、ともに答申をいただいた後の政策選択の問題である、という意味は、その可能性があるということになりますね。政策選択の問題であると言うのですから、その可能性があるという意味ですね、両方とも。
#133
○竹下国務大臣 両方とも、今までかつて過去においていただいた答申の中には、これを取り上げるべきだという答申をちょうだいしたことはございます。しかし、それぞれ取り上げないでまいったわけでありますが、これが新しい議題、税調の皆さん方からいえば継続した議題として取り上げられる可能性のある問題だ。しかし、その答申がどう出てくるかということを今予見を持って申し上げるわけにはまいりません。したがって、やはり答申の出た段階での政策選択の課題である。それのためには、国会の議論等に耳を傾けて、国民のコンセンサスが那辺にあるかを慎重に突き詰めてから政策選択をするということになろうかと思っております。
#134
○大内委員 私は、税制改革ということについて、よく政府が税調を隠れみのにしてしまう、これが一番いかぬことだと思うのです。
 例えば、中曽根総理は戦後税制の見直しという問題を手がけられ、レーガン減税についてもあるいはレーガン税制についてもいろいろ検討されているというお話を承ったことがあります。しかし、レーガン大統領のあの税制改革に対する姿勢を見ておりましても、今まである十四段階のこの累進税率についてはこれを三段階に圧縮して、下は一五%から上は三五%に圧縮したいという一つの方針を持っていろんな審議会にも議会にも諮っていく。私は、政府というのは一つの財政の見通し、経済の見通しをはっきり持ちながら、政府としては大筋において、例えば減税についてはこういう方向を模索したい、それに見合う財源措置としてはこういうことを考えていきたいという方針を総理もあるいは大蔵大臣も持ちながら税調に臨むというのが、私は本当の政治家として、政府としての責任じゃないんでしょうかね。その面は、いつでも税調の隠れみのの中に隠れてしまって、そして都合がいいことについてはどんどん税調を利用して推進し、都合が悪いと引っ込んでしまうというようなやり口というのはどうもいけないと思うんです。私は、総理がレーガン減税、レーガン税制というものを研究している以上は、そういうことについてもはっきりした方針を出すべきだと思うんです。例えば累進税率はどうするか、国民が一番心配している大型間接税はどうするか、国民の貯蓄と最も関係を持っている非課税貯蓄については大体どういうふうに政府は考えているか、そしてその是非を税調にひとつ御審議をいただくということが大事なんじゃないでしょうか。
 それらを含めて特に総理にお伺いしたいのは、累進税率の緩和という問題について、一つの御方針をお持ちなんでしょうか。いかがでしょう。
#135
○中曽根内閣総理大臣 まずその前に、いわゆる大型間接税の問題については昨年の二月二十日にあなたに御答弁申し上げた私の答弁があります。このとおり今でも考えておるということであります。
 それから税のやり方については、前からくどく申し上げておりますように、ともかく国民の欲することをまず考えるのが大事だ。それから、我々が今まで勉強して、経験的にもいろいろ見て、国民の御要望もまた聞いてみて、どの辺をどう直したらいいのかというある程度の勘も出てきておる。そういうような点から、我々には皆さんと同じように、こういうふうにしたらいいんだろうなというようなものはあります。あるけれども、しかしそれを我々が先に出して、これを国民の皆さんに押しつけるような形になってこれはよくない。今までの税の改正から見ますと、ややもすると税調というものが大蔵省の意を受けて、そしてそういう御用機関みたいになってその案を押しつけてくる、そういう非難が国会筋でも非常に強かったわけであります。今度は、ともかくいろいろな人に入ってもらって、好きなことを言ってもらって、そして国民の要望を全部吸い上げてもらって、そして案を出してもらう。その中で大事なことは、ゆがみとかひずみとか重税感とか不公平感とか、そういうものをまず直した、大事な、一番欲しているものをまずおやりください。それを中間報告か何かで出てきたら国民の目の前にお見せして、これは国民の感じに合っているか合ってないか、国民が喜んでくださるか喜んでくださらないか、まずそれを見ないといかぬ。それで、国民にこういう反応を得てきたからこれはこういうふうに直した方がいい、これはこうした方がいいという勘を我々は得てくるわけです。それで大体この辺なら落ちつくなという勘を得て、じゃそれに相応する財源措置というのは何がいいのかというのが出てくる。そういう意味で今申し上げたような段取りをして、国民の皆さんに批判していただく時期というものをある程度考えてやっているわけです。もう出てきたらすぐそれを取り上げてぱっとやるというやり方はよくない。ともかく国民が一番うつぼつとして不満に思っているところを直してもらって、それをお見せして、それを批判していただいて、そして世論を吸い上げて、我々は我々の考えのセンターを決めていきたい。それには時間的余裕が要る。そういう意味で、手続を今のように申し上げている次第なんです。
 そこで、私は自分の個人の考えをよく聞かれますから、自分はレーガン税制については非常に関心を持っておる。アメリカはアメリカとしてなかなかおもしろいいい案を考えているんじゃないかと私は思います。第一、あなたがおっしゃったように、今十四段階を三段階にしたとか、あるいはさらに法人税についても四六%程度のものを三五%にさっと一本やりにしてしまうとか、そういういろんな面を考えて、そのかわりまた特別措置をみんなある程度やめてきている。しかし、やめようとしたけれどもこれはどうしても残しておけという相当な世論が出てきたものは残してありますね。やはりみんな反応を見つつ、国民が何を喜ぶか、何が公正であるかという見当を政治家がそれで得つつ進んでおるのであります。私は同じょうなやり方でやりたい。そういう意味で、レーガン税制というものは私はよく勉強したいい案であるということは申し上げておる。そういう国会の議論が全部税制調査会に今行って、報告に行っているわけだから、皆さんもそれ相応なりにお考えになっておると私は思っておるのであります。
#136
○大内委員 累進税率の緩和はやりたい、こういうことですか。
#137
○中曽根内閣総理大臣 その点は、重税感という面から見ますと、サラリーマンの子持ちの皆さん方が一番今そういう不平不満、重税感を持っておる。それは人によっては二百万から八百万だと言い、人によっては三百万から五、六百万だ、そう言います。大体その辺の見当だということは皆さんおっしゃって、これは大体最大公約数になりつつあるのではないでしょうか。だから、その辺を中心にしてならして、そして税率を思い切って下げる。そういうならし方で曲線を描いていけば、では最高限度というのは地方税も入れて六割ぐらいになるのか、六割を超すのか、あるいはもっと下げられるのか、そういうような幾つかの試案というものはそのうち出てくるだろうと思うのです。そういうようないろいろな案が出てきて、そのさまざまな案が出てきたものをいろいろ国民の皆さんがどういうふうに考えるかというのを見るのが私たちの大事な仕事である、そう思っておるのであります。
#138
○大内委員 中曽根総理は今おっしゃられたような手順でやっていないですよ。それはさっき私が、五十八年、五十九年度の中曽根総理のやったこと、言ったことを申し上げたわけで、それなら増税はどういうものがいけないか、やるのかというものを先に答えをもらうという方法も一つのやり方なんです。しかし、それは余り議論してもしようがない。
 私が累進税率の緩和を考えるのかと申し上げましたのは、竹下さんがアメリカへ行っていろいろ話されると、十五段階を八段階ぐらいにというようなことをアメリカ人にはおしゃべりになるが、国会へ来ると不思議に黙ってしまう。法人税でも五〇%以下にすることが適当である、個人の税負担も八十数%のあれはひど過ぎる、ですから何とかこれを圧縮したいとアメリカへ行っては言うのだけれども、日本の国会へ来ると言わなくなってしまう。ですから、竹下大蔵大臣は明らかに累進税率の緩和という問題、圧縮という問題を提起しているのですよ。
 私も大学で竹下さんの後輩として法律を学びました。死刑囚が執行される死刑台というのは十三段階なんです。日本の累進税率はそれよりか二段高い。幾ら何でも高過ぎる。この圧縮については、竹下大蔵大臣、いかがですか。
    〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
#139
○竹下国務大臣 ちょっと弁明さしていただきますと、私がニューヨークにおきまして、実は当委員会等でもいろいろお世話になっておりますシャウプ先生とお会いする計画を持っておりました。幸い、私が名誉学位をもらいましたコロンビア大学の先生でもございましたので。
 お会いしてみますと、確かにおじいさんでございます。いいおじいさんだなあという印象を受けまして、それをある新聞社が一つの記事にしたいということで、立ち会っていただきました。その際、シャウプさんがおっしゃるような話を、私も、いわば気配りをいたしまして相づちを打つようにして、しかし、日本の国会のことが念頭を離れるわけはございません、ここでオーバーランしたら困るという気持ちを持ちながらも、シャウプ先生に、思いやりと言うと少し表現がおかしゅうございますが、気を使いながら対談をいたしましたのがあのような記事になっておりました。
 しかし、私がしゃべらないであろうというような誤解もございました。累進税率が八〇%以上になっているというようなのはないわけでございますから。そういうことは私の話学力の拙劣さもありましょうが、必ずしも正確につながっておるとは思いません。しかし、シャウプさん自身が、あのときは富裕税というものもあったけれども、大体日本の税制における累進構造は幾ら何でも、その後変化したとはいえ、自分が考えておったこととは非常に違った方向にゆがみ、ひずんでおるというような御発言に対して、私がもっともな受け答えをしておったということは事実でございます。
#140
○大内委員 そこで、私、税制改革について、この際、具体的な問題について二つほど提案をしたいと思っていたのです。
 その一つは、税制における二分二乗方式のことです。これはあるいは一般の国民の皆さんはおわかりにならない面があると思いますので、ちょっと申し上げますと、主婦の所得に対する貢献度、これを評価しようではないか。言うなれば内助の功に対する減税と言ってもいいのですが、これは夫婦の合算所得額をまず半分にいたしまして、そしてそれに所得税の税率を掛けて、出てきた税額を二倍にしたものをもって夫婦の納付すべき税額とする。これは既に御存じのように西ドイツ、イギリス、フランスあるいはアメリカといった先進国で広くとられているわけでございまして、特に西ドイツにおいては、憲法の考え方としては結婚によって税制上の不利益をもたらしてはならない、こういう一つの思想がありましてこういうものが採用されている。
 給与所得者はもちろん自分が働いて所得を得ているわけではございますが、それは決して本人の努力だけではない、そこには主婦の貢献、すなわち内助の功に支えられて生み出されたものである、そしてこの貢献度を評価する税制こそが実は今私が申し上げている二分二乗方式であって、もしこれを採用するならば、サラリーマンの税に対する不公平感、というのは、最近は月給が上がりましても、累進税率がございますために一向に手取りがふえないのですね。それからもう一つは、節税可能な事業とは異なりまして、その不均衡感がある。そういう不公平感というものを除去するための重要な政策であると、私どもは今この問題を重視しておるわけであります。
 私ども民社党は、これまで婦人に対する政策を強化するという立場から、例えば昭和五十五年には、これは法制局長官もよく御存じだと思いますが、民法の改正を出しまして、妻に対する遺産相続権というものを飛躍的に前進をさせました。昨年は男女雇用均等法であるとか、あるいは年金の改正を通じまして妻の年金権を確立するといったようなことが前進してきたことは非常にいいことだと思うのでありますが、今やこれを税制という面で主婦の立場を考える必要があるのではないか。それがいわゆる二分二乗方式でございまして、これは今は、いろいろな統計を見ましても消費の単位というのはみんな家庭なんですね。家族なんですね。月給をもらってきている本人ではないんです。ですから、そういう面を考えましても、この課税単位をそうした実情に即して考えるということは非常に大事な時代の要請になっているのではないだろうか。
 もちろん二分二乗をそのままやった場合にはいろいろな不合理も出ないことはないのですよ。例えば子連れの母親はどうするんだとか、あるいは共稼ぎの面では逆にまずくなる面もあるのじゃないかとか、いろいろな問題があるのですが、しかしこれは、税率をいじるとかあるいは基礎控除とか扶養控除とか配偶者をいじるとか、あるいは所得の頭打ちをつけるとかといったようなことで相当カバーされるんです。−ちょっと資料を出してください。
 今ちなみに、もしこれが実現できるとどの程度の税負担の軽減が行われ、主婦の御主人の所得に対する貢献度に対する減税措置ができるかといったような表を皆さんにお配りを申し上げましたが、これをごらんいただいてもおわかりのように、大体中曽根総理が非常に重視しておられる中堅層、ここに非常に恩典がいくんです。しかし所得の低い方は余り恩典がいかないので、ここは何らかの調整措置が必要だと思うのであります。それから高額所得者は恩恵が行き過ぎるという面がありますので、これもさっき申し上げたような所得の頭打ち等の措置を講ずる必要があるのでございますが、この際、そうした二分二乗方式の採用、つまり主婦の貢献度に対する減税、税に対する、婦人に対する施策という面でひとつ御検討をいただきたいと思いますが、大蔵大臣並びに総理大臣の御見解をいただきたいのであります。
#141
○竹下国務大臣 いわゆる今御提案の二分二乗の問題でございますが、歴史的に見ますと、今大内さんもおっしゃいましたように、妻の座の確立というようなことからして、相続税の改正でその妻の座の確立という意味においての考え方は導入されて今日に至っておる。そこで、これをいわゆる所得税において、こういうことになりますが、当然のことといたしまして、今総理からも言われておりますように、中堅所得者階層を中心とした負担の軽減、合理化を求める声が非常に高い。その背景のもとには、所得税における今御指摘の課税単位の問題も含め、税制全般について検討が進められるではなかろうかと思っておりますが、特に今それをメリット・デメリットをそれぞれ指摘されながらの御議論でございました。これは税調でもこれに対しての検討は当然行われるものであろう、報告をします限りにはそういう性格のものであろうと思っております。
 ただ、今メリット・デメリットそれぞれおっしゃいましたから、私から今までの審議の過程で過去における問題を申し上げる必要はないといたしますが、やはり共稼ぎとそれから片稼ぎとの間のバランスとかいうような問題については複雑な問題がある。そこで、すっきり割り切った答えを出すというのはなかなか難しいものだ、こういうような御議論がなされておったということもつけ加えさしていただいておきます。
#142
○中曽根内閣総理大臣 二分二乗方式については、私は前から実は関心を持って注目しておる一人でございます。婦人の経済的地位の向上という点はかねがね私たちも関心を持っておるところで、相続税の改正の際にも自民党が一番力を入れたところでもあります。
 そこで、今度の税制改正についても、二分二乗というのは前からいろいろ論ぜられているところでもありまして、恐らく税制調査会においてもいろいろ検討はなされる一つの大事なポイントであるだろうと思います。しかし、これの功罪については、今大内さんがおっしゃったように、割合に働き手の妻は余りよくない、黙って家におる妻が割合に得し過ぎる、端的に言えばそういうようなところもありまして、婦人の社会的進出という面から見ると余りプラスにならぬ、そういう説もあります。そのほかさまざまな長短がございまして、こういう点もよく検討せらるべき課題であるだろうと思っています。
#143
○大内委員 この二分二乗方式を導入した場合に、一つは、中堅サラリーマンの税負担がある程度軽減される、そしてそれによりましてサラリーマンの中にある税に対する不公平感、これが相当除去されるという利点があります。それからもう一つは、主婦の貢献度というものに対して税制上のしんしゃくが初めて確立される、それによってやはり婦人の地位も上がる。今、民法の改正の相続権の問題は、あれは民社党が提案したのです。そして皆さんの全体の同意となってあれが実現していったのです。そして三つ目には、今パート収入を、まあこれは配偶者控除の関係がございまして、一生懸命一定の限度に抑えようというようなことがなくなってくる。そしてもう一つは、やはり今の時代的な要請である個人消費が拡大してくるといったような利点が相当あります。そして、今総理が御心配いただいたような、例えば共稼ぎの夫婦には御婦人の方に余り恩典がないというような問題も、私が申し上げたような税率とかあるいは配偶者控除とかいったようなものをいじりますと、この面でも実は恩典が出てくるのであります。
 ですから、そういう面で既に政府の税調でもこの問題を真剣に考えようと言っているときでございますので、この私どもの提案についてひとつ真剣に取り組むようにお願いをしたいと思うのでありますが、その決意についてだけ総理から伺っておきましょう。
#144
○中曽根内閣総理大臣 大内さんと我々のこの議論は、税調の方に正確にお伝えいたしたいと思います。
#145
○大内委員 もっとこれは深く論ずべき内容がたくさんございますが、次に移ります。
 住宅減税であります。ことしの一月に西ドイツのヘルムート・シュミット元首相、中曽根総理もかつてはサミットで御一緒された首相でいらっしゃる。これはドイツ社民党の私どもの仲間でもございます。この方はある日本の新聞にこういうことを言っておられます。「日本はその構造的な貿易黒字のために、今日では西側世界の唯一のスケープゴート(いけにえ)になっている。」しかし「これは日本にも責任がある。日本は国内で十分金を使っていない。」「日本の住宅事情はお粗末で、この面では六十年前のドイツ人の生活水準に匹敵している。」このシュミット元首相の発言をどういうふうに総理は聞かれますか。
#146
○中曽根内閣総理大臣 なかなか辛らつな批評をなすったものだと思います。
#147
○大内委員 これはしかし、残念ながら日本の事実であろうと思うのです。それだけにこれからの住宅建設また住宅建設が促進されるような住宅に対する税制という問題について、どうか総理も大蔵大臣も真剣に考えていただきたいと思うのであります。
 例えば、第四期の住宅建設五カ年計画、これは昭和六十年度で終わる計画でございますが、この住宅計画の実績見通しは大体七九・五%、八〇%を切る状態であります。そして、今住宅水準の国際比較というものを建設省は随分データを出されましたね。ああいうのはどんどんやるといいのです。私はこの国際比較を隅から隅まで相当見てみました。その結果よくわかりましたのは、日本の住宅水準というものは先進国に比べると著しく悪い。そしてその住宅に対する満足度というのは先進国では大体七〇%台ですね。高いところは八〇%台ですが、日本の場合は四六%です。半分近くが今の住宅に対して不満を持っている。したがって、その不満率というものもやはり同じ四六・三%に達しているんですね。西ドイツの場合は八一%です、カナダの場合は八三%でございますから、半分近い不満感というものを持っている。
 しかも一番大事なのは、住宅の価格と所得の乖離ですね。私はこれも調べてみましたら、ことしはたしか、一月十五日の成人式には二十のいわゆる若者が百八十万人巣立っていきました。そしてこの二十の若者が結婚し、職場を得、そして三十五歳ごろになると自分の住宅を取得するんですね。ところが、その時点の自分の所得と住宅の価格を見てみますと、日本の場合は六・五倍なんです。これは建設省が出している数字なんです。アメリカはどうかと思って調べてみましたら三倍なんですね。フランスはどうかと思って調べてみたら二・七倍なんです。イギリスは幾らか高くても三・六倍なんです。これなら住宅は買えるのです。ところが日本のそうした三十五歳近辺のサラリーマン、事業主においても住宅が買えない。これは国の住宅政策と自治体の住宅政策がおくれているという意味なんですよ。これはさっき私は住宅問題で幾らか議論しましたけれども、本当に日本が世界に出かけていって誇れる国家、民族になるためには住宅の整備というものは非常に重大だ。あのキリストにおいてすらも、人の心を正すのはまず立派な住宅を与えることにあると言っていたくらいなんです。
 そして、その住宅に対する減免税の比較というものを見てみますと、これもまたひどいですよ。さっきちょっと、別に私は揚げ足をとるわけではございませんが、総務庁長官はちょっと数字を間違えられていたように思うのですが、歳出総額に占める減免税額というのはアメリカは四・一%、それを今一%にするように努力されているというお話がございましたが、そうではないのです。〇・二%です。イギリス、ドイツの場合は三・七%です。ですから住宅に対する施策というものが実はあらゆる面でおくれているのです。
 そこで、私は中曽根総理が研究されているというレーガン減税を見てみたのです。住宅減税。そうしたら、一九八五年の利子控除額だけを見てみますと、二百五十億ドルです。あの当時は換算が幾らか違いますから、邦貨に直しますと五兆八千七百五十億です。利子控除額だけです。しかしそれは八五年だけで、八三、八四、八五と連続して見てみますと十九兆くらいの利子控除をやっています。
 利子控除以外のすべての住宅税制の優遇措置を見てみたのです。これは一九八五年だけで四百二億六千万ドルです。これは二百二十四円、当時の換算で見ますと九兆円ちょっとです。日本の減税額御存じでしょうか。大体四百億から五百億です。アメリカは九兆円、日本は四百から五百億、まさに雲泥の差なんです。
 もう一つ比較してみたのです。日本とアメリカで、例えば住宅ローンを一千万円持っている、給与収入は中堅サラリーマンで六百万円、年利八・二%、二十年間の元利均等の償還でどのくらいの税額の控除が行われるであろうかということを計算してみたのです。日本の現行の税額控除方式によりますと、今の条件でいきますと三十九万円控除されます。ところが、アメリカの利千所得控除でいきますと百七十三万円なんです。四・四倍なんです。
 これを見てみますと、日本の住宅減税というものがいかに貧弱であるか、これは一回本当に考えてもらいたいですよ。そしてきのう、おととい、さきおとといと議論が続いておりましたこの住宅減税を見ておりますと、いや、六十一年度は相当の住宅減税をやりました、確かに幾らか努力しているのですよ。しかし、この住宅取得の促進税制の創設ででき上がったのは三百七十億でしょう。これでは本当のいい住宅は建ちませんよ。日本の住宅は依然として偉大な村に発展していくだけなんですよ。これを本当に考えていただく政治があれば国民は非常に喜ぶと私は思うのですよ。中曽根総理が本当にこの問題に手をつけるなら、今の高い支持率はもっと上がると思いますよ。
 そこで、私はこの際提案したいのです。来年やるとおっしゃいましたね。ことしもやってもらいたいのです。しかし、ことしは一定の予算の枠組みがあるからそんな無謀なことはできないでしょう。したがって、最小限の要求をここで申し上げますので、ちょっと聞いていただきたいのです。
 これは今度の政府の住宅減税でも取り上げられているところに即した修正なんですけれども、一つは、今回の住宅減税において税額控除される額が、年末における住宅ローン等の残高の一%相当額となっていますね。江藤建設大臣は就任早々の新聞記者とのインタビューで、一%なんてけちなことを言わないでもっと上げろと言った。言いっ放しでは無責任です。したがって、これは二%相当額にまず引き上げたらどうかと思うのです。
 二つ目、住宅減税の適用期間を三年間と今度しましたね。アメリカの場合、これは無期限なんです。期間の制限なしなんです。せめて五年ぐらいにしてもらいたいのです。
 三つ目、減税の適用対象は借入金の残高となっておりますけれども、住宅の取得費の全体にしたらいいと思うのです。そうすると非常に恩恵が出ます。つまり、借金で建てる場合の頭金や、借金をせずに建てる場合についても減税の対象にしたらどうか。
 私は、住宅減税というのはもっと大規模に大がかりでやらなければならぬと思いますが、少なくとも六十一年度予算という枠内で見てもこのぐらいは努力すればできる、民社党としてはそういう意味で六十一年度予算についても住宅減税を拡大する修正を要求したいと思うのです。
 この私どもの要請に対して検討されますか。恐らくこれからいろいろな予算修正交渉も持ち上がってくると思うのです。しかし、そんなことは受け付けないと言ってはねつけるだけでは、政府がおっしゃっている住宅減税について我々は真剣に考えているとは到底言いがたい。これは私どもの最小限の要求でございますが、検討していただきたいと思いますが、いかがでしょう。
#148
○竹下国務大臣 国会というのは話し合いの場所ですから、いろいろな意見があることは私どもも承知しておりますが、現在御審議をお願いしておる予算案というのは、現状においてぎりぎりのものであるということで御審議をいただいておるわけでありますから、そしてそれに伴う住宅取得控除等の問題は別途また法律で御審議いただいておるわけでありますから、今直ちに私は政府の考え方を改める考えがあるかと言われれば、それはありませんと答えざるを得ない。
 私は、今度の住宅控除の問題がぎりぎりの問題だと感じておりますのは、改革案における住宅取得促進税制の年二十万円の税額控除額というのは、年収四百七十五万円の夫婦子二人のサラリーマンの所得税の年の税額と一緒であるということになると、かなりのことをぎりぎりの段階で選択さしていただいたものではなかろうかというふうな御説明を今日までしてきておるところであります。
#149
○大内委員 これは非常にまじめな、率直な提案なんです。ですから、総理、大蔵大臣等々を中心にひとつぜひ御検討賜りたいと思っているのです。
 そこでもう一つの問題は、特に東京を中心とする大都市では土地がない。そしてこの土地対策が成り立たないと住宅が建たない。建っても高いものしか建たないというので、この住宅問題というのは壁にぶつかっている。しかし、この問題を解決するというのは相当な発想の転換をやらないと実はできないと思うのです。こういう狭い、都市集中してくるその都市において、場当たりの都市計画あるいは建築基準法ではだめだと思うのです。
 さっき私が申し上げましたように、住宅を取得する層というのは大体三十四歳から三十五歳なんです。その人たちの年収所得というのは大体四百五十万円ぐらいなんです。そして今東京の二十三区をずっと調べてみますと、その年収の四倍から五倍に当たる二千万円前後で家が建たないのです。私はこれは専門家にも計算させてみた。建たないのです、どうしても。そして大体三千万円ぐらい、どうしてもかかってしまう。だものですから、欲しい人に住宅が渡らない。しかし、これは渡せる方法はあると思うのです。それは、ニューヨークのマンハッタンへ行っても、あるいはシドニーへ行っても、やはり物を建てていくという考え方が根本的に違うのです。狭いところには、狭いところに建てるような一つの都市利用計画があり、都市計画があり、建築基準法があるのですよ。それが欠如しているのです。
 さっき私は問答を聞いておりましたら、総理も幾らか誤解がございましたのは、都市計画法というものによって用途地域というものが決まっていまして、これを変えるのは住民のいろいろな意向がありまして非常に難しいのです。しかし、建築基準法、この容積率の拡大は国が決めればできるのですよ。そして、もしこの今の建築基準法の斜線の制限、これは例えば道路の幅の一・五倍しか建てられないといったような制限があります。これを緩和する。あるいは道路の幅員の制限について若干の緩和を行う。あるいは商業用地の容積率の上限、現在は百分の千ですが、これを例えばマンハッタンやシドニーのように百分の千五百ぐらいにするというようなことをやりますと、さっきの三千万円の現在の価格は二千万円ぐらいに引き下げられるのです。これは専門家に計算させてみた。できるのです、これは。
 ですから、都市計画法をいじることはもちろん大切なことなんでありますが、国自身の決意によってできる建築基準法の改正によって容積率等の緩和をすれば、今のこの少ない土地を有効利用する道は都会においてなおある。しかもそれによって住宅が欲しいサラリーマンに対して適正価格の住宅供給ができる。今の六・五倍の住宅では、住宅は持てない、借りられない。そういう意味で規制緩和という問題は、今土地対策としても最も重要な政策として登場してきたと思うのです。
 これは建設大臣に聞けばそうだと言うに決まっているのです。そうでしょう。ですから、問題は、やはり総理がそのイニシアチブをとるかどうか。先ほどお話がございましたが、幾らか総理にも誤解があったようでございますので、国でできるようなものは思い切ってやるような、そういう作業に入ったらいかがでしょうか。
#150
○中曽根内閣総理大臣 私は、住宅を促進するために規制緩和については大賛成で、そういう意味で規制緩和、規制緩和と言って今まで促進してきたのであります。
 どういう法規をどういうふうに改正したらいいのか、私、専門家でないからわかりませんが、しかし、少なくとも東京都の場合に、大阪と同じように、あれは二種を一種にするのでしたか、あるいは一種を二種にするのでしたか、大阪並みにしてくれ、そういうことで、要するに制限を取っ払いなさい、そういうことでやってもらって、その線でいったところが、これはやはり区議会の了承を得なければできないのだ、そういうようなことで行き詰まって、それでも東京都は随分苦労してくだすって、かなり広がってきているということは報告で聞いたのです。
 ですから、今の建築基準法の問題は知っています、前から百メーター制限でも突破するという問題がありましたから。しかし、何か難しい、ややこしいものがまだあるような気がしますので、ひとつ専門家にここで答弁させます。
#151
○江藤国務大臣 都市計画法の見直しあるいは建築基準法の有効な利用ということ、私は就任早々からこのことを実は言っておりまして、総理から規制緩和というものをひとつ積極的にやれ、こういうお話がございまして、それから就任しましてすぐに、住宅が建たない、地価が上がっている、いろいろ再開発ができない、何か都市計画法上あるいは建築基準法上に問題があるのではないかということで、毎日このことは省内で実は私は今熱烈な討論、研究をやっておる段階でございます。
 まだ最終的な結論に至っておるわけではありませんが、都市計画法から申し上げますと、まず線引きの見直しを早急にやっていくということが必要であると思って、今それを積極的に進めるように各都道府県に対してもお願いをしておるところでございます。
 それから、建築基準法につきましては、いろいろと開発許可の問題もありますし、あるいは用途地域の問題もありますが、建築基準法の問題については、例えば東京都内を私は調べてみましたら、純然たる商業地域で容積率が千というところがあるのです。全部千になっておるかと思って調べてみましたら、実はわずかに二%しかなっていないのです。あとはもっと低いのです、実際利用しておるのは。それにはそれなりに、例えば後刻、日照権でありますとか日影権でありますとか、あるいは公園だ、下水道だ、地下鉄だ、道路だ、それらのもろもろの問題が、東京都もしくは各区において、それぞれの規制がかかってなかなかうまくいかないというようなこともございます。
 こういう全体の問題はありますが、オープンスペースをとった場合、いわゆる公開空地をとった場合においては、建築基準法によっていわゆる総合設計制度などのいろいろな制度がございますから、そういうものを弾力的に利用しながら土地の高度利用ができるようにできるだけのことを今やっていこう。しかし問題がどこかにある、こう私も考えておりますから、いましばらく時間をおかしいただきたいと思っております。今一生懸命その問題を、就任後わずかでありますけれども、毎日のように実は議論をしておる。そしてまた、各部、各局においてチームをつくらせまして、今検討を急がせておるという段階でございます。
#152
○大内委員 ぜひ研究を実行に移していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 まだ問題が残っておりますが、時間の関係で外交問題に入ります。
 第一は、日ソ関係についてであります。特に、北方領土の問題を中心にいたしまして安倍外務大臣にお伺いをいたします。
 安倍外務大臣が今度シェワルナゼ外務大臣を日本にお呼びになったこと自身成功であったと思います。また、特に領土問題を中心に安倍外務大臣が本当に体を張る思いで交渉に当たられたということに対して、私は深く敬意を表するのであります。特に、私は今度のシェワルナゼ会談を見ておりまして、一九七八年以来グロムイコ外相がとってきた、領土問題を話すなら、あるいは持ち出すならテーブルには着かないといった態度が変化した、その意味では、今後の領土交渉に手がかりがつけられたという意味では一つ前進があったと思うのであります。
 しかし、それは内容的に見ますとなかなか厳しいものでございまして、今回の会談で、領土問題の中身という面から見ますと、それは何ら前進も見られなかった。したがって、事態は一九七三年の田中・ブレジネフ会談の当時にようやく戻ったということであったと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#153
○安倍国務大臣 おっしゃるように、これまで一九七三年以降しばらくたってソ連は、領土問題についてはこれは存在をしない、もはや解決済みであるというかたくなな態度をとって、日本のしばしばの呼びかけに対しましてテーブルに着こうともしなかったわけでございます。これは実に頑固でありました。私も実はグロムイコ前外相とも数度にわたる会談においてもソ連の態度は極めて強硬であったわけでございまして、領土問題について話し合う余地すらなかったわけでございますが、今度のシェワルナゼ外相の訪日によりまして会談を行いました。
 領土問題につきましても、両国の考え方を三時間にわたって述べ合った。基本的には今おっしゃるように領土問題については日ソ間の意見は根本的に対立しておるわけでございますが、最終的に、共同声明においても明らかなように、とにかくソ連が領土問題も含めた平和条約交渉において席に着く、テーブルに着くということについて合意したことは、今お話しのように、一九七三年のいわゆる共同声明、田中・ブレジネフ共同声明、そしてその口頭合意の線に戻った、さらにそれ以上私は確認をすることができたんじゃないかというふうに思っております。
 なお、これについては、さらにこの次私がモスクワを訪問する際にそうした基盤に立って交渉を続けるということについても合意を見た次第であります。
#154
○大内委員 私、今度の会談のいろいろなものを読ましていただきましたのですが、そこでソ連は、私どもにとって最も関心のある領土問題については、一貫して、存在しない、また解決済みである、こういう姿勢をまず一つ変えなかった。これはやはり日本の国民の皆さんに冷厳な事実としてきちっと言っておく必要がある。そして同時に、私どもが最も心配している例えば極東におけるSS20にいたしましても、昨年は百三十五基でございましたが、現在においては百七十基とも言われている。そして太平洋艦隊も八百三十五隻、質量ともに増強が続けられている。我々が返してほしいと言っているこの北方領土も、一個師団が常駐し、ミグ23が四十機も常駐するという厳しい状態を続けておりまして、ソ連側のそうした一連の態度というものは、日本国民が喜ぶようなそういう具体的な変化や兆候というものはこの会談を通じても私は見られなかったように思うのです。
 特にその交渉の中でシェワルナゼ外相は、領土問題について、法的、歴史的などあらゆる面から要約して、領土を変更する必要はない、こう表明したと伝えられておりますが、何か条約などの法的根拠は示したのですか。歴史的とはどういうことを指したんでしょうか。
#155
○安倍国務大臣 これは、私が北方四島についての歴史的、条約的な面からの我が国の固有の領土であるという日本の立場を明確に述べたことに対しまして、シェワルナゼ外相が、北方四島については一番初めここに住んだのはロシア人であるというふうなことも例示で挙げながら、条約的にも歴史的にも日本の領土と認める根拠はない、こういうことを言ったわけでございまして、それ以上さらに具体的な説明については触れませんでした。
#156
○大内委員 私は今度の会談で見られるソ連の領土問題に対する態度というのは極めて厳しいと思うのです。ソ連のシェワルナゼ外相は、ソ連の従来の立場は変わらないんだ、そして日本側がこの問題を提起することを禁止する権利はソ連側にはないけれども、あらゆる問題が日本の望むとおりに解決するという保証をしているものではないんだ。そういう意味では領土問題は一歩も前進していない、中身の面では一歩も前進していないと受けとめることが正しい受けとめ方だと思うのです。私はその後のモスクワ放送を注意しておりましたら、こういうふうに放送しておりましたね。北方領土の問題は日本側が持ち出したもので、しかるべき答えをしておいたが、ソ連の態度は周知のとおりだ、北方領土の問題はソビエト国民にとって受け入れがたい無理難題である。この放送を聞いておりましても、相当厳しい問題である。
 そこで、私どもが心配しておりますのは、例えば七三年の田中・ブレジネフ会談のところにまで戻ったといいますが、あのときは未解決の諸問題の中に領土問題が入るかどうかについて口頭了解があったのですよね。今度の会談で何らかのそういうものはあったのでしょうか。
#157
○安倍国務大臣 今度の会談におきましては、共同声明の中で明らかにいたしておりますように、一九七三年の確定した合意に基づき、日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題について平和条約交渉を行った、さらにこの交渉は今後継続をされるということを両国の共同声明として打ち出したわけであります。
 したがって、今度のいわゆる我々の交渉は平和条約交渉であった。そして、その中で三時間有余にわたって領土問題に対する交渉を行ったということは、ソ連側もはっきりこれを認めておるわけでございますので、我々としては今後とも平和条約交渉を続ける、そういう中でソ連もテーブルに着いて、領土問題について、今は基本的にはまだ日ソ間は対立しておりますが、十分話し合うことができるし、また我々は粘り強く日本の主張をソ連側に納得をさせる、そういう状況をつくり出していかなければならない、こういう一つの下地といいますか手がかりといいますか、そういう出発点に立つことはできた、こういうふうに思っております。
#158
○大内委員 私はそういう意味からいいますと、さっき一九七三年の田中・ブレジネフ会談まで戻ったと申し上げたのですが、本当はもっと正確に言いますと、あのときには未解決の諸問題について領土問題があるという口頭了解があったが、今回の場合はそこまでいっていないという意味で、田中・ブレジネフ会談当時の状態にまで必ずしも戻ったと言い切れないとさえ思っているのです。
 そして、最も私どもが心配するのは、今後これから外相の定期協議が行われ、安倍外相もことしじゅうに訪ソをされる、シェワルナゼ外相もまた日本に来る、そのたびごとに平和条約交渉というのは確かに行われる、そしてその段階で領土問題が話される、しかし、話されるが、その領土問題がいつでも形式的に事務的に片づけられるパターンをつくることになってしまう危険がある。恐らくソ連は善隣協力条約というものを結びたい。これは今度の会談でも、まだこの提案は生きているという提案に見られるように、日本側がよほど確固たる姿勢を持って今後の交渉に臨まないと、領土問題はいつも交渉のテーブルにのるけれども、前進は何も起こらない。そして、前進するのはソ連側の欲している経済協力や技術協力になってしまうという、こういう危険があって、そのうちに領土問題は無理だからというような形で善隣協力条約にいこうじゃないかという、こういう作戦をソ連は当然考えているものと我々は見ておかなきゃならぬ。それはまさにヨーロッパでの領土固定化を図ったヘルシンキ条約の延長を日本が受け入れるという可能性すらあると思うのであります。この辺は非常にこれからの交渉のテクニックとしても大事なところだと思いますが、いかがでしょうか。
#159
○安倍国務大臣 今回の共同声明では、少なくとも一九七三年のときの口頭了解、これは口頭了解であったわけでございますが、これが共同声明の中にはっきりと平和条約交渉の内容として領土問題があるということについて日ソ間で合意を見たということだけははっきりしておるわけです。これは私とシェワルナゼ外相との長い間の会談、さらにまた第四回目の非公式会談においても、その点は明確にいたしておるわけでございまして、ですから、平和条約交渉をこれからも進めていくわけですが、その際には領土問題を議題としなきゃなりません。この点については合意しておりますから、日本はあくまでも腰を据えて頑張らなきゃならない。しかし、ソ連側の領土に対する基本的な態度というのは、今お話しのように非常に厳しいものがあるわけでございます。これが短時日のうちに解決するものでは私はないと思っておりまして、あくまでもやはり国民全体の、北方四島に対する非常に世論的な盛り上がりというものを基礎に置いて、ソ連側に対して、これからも粘り強い、腰を据えた、毅然とした交渉を続けていくことが最も大事じゃないかと私は思っております。
 同時にまた、日ソ関係というものを考えていくときに、やはりこの領土問題を解決する、そして平和条約を結ぶというのが日ソ関係の基本であると私は思っております。やはり基本というものを離れて、日ソ関係その他、経済だあるいは文化だ、人的交流だ、そういうものが発展をしていくということは、やはり日ソ関係の将来を考えるとき、真の友好関係を確立することにはならない、こういうふうに私は思っております。やはり日ソ関係においては、領土を基本として進めていく、これを解決して平和条約が結ばれるという段階になって初めて真の日ソの関係というものがここに生まれてくる、私はこういうふうに思っております。道は非常に長いと思いますが、腰を据えてやらなければならぬ、こういうように思います。
#160
○大内委員 私は、日ソ関係、特にこの領土問題は、今外相が示されたような非常に厳しい問題であろうかと思うのです。ソ連の歴史を見ておりますと、第二次大戦でいろんな領土をとられました。第二次大戦後、とった領土は返しておりません。しかし、帝政ロシア時代は返したことが一、二あるのです。ソ連が領土を返すというときは、非常に現実的に利害、損得を考えながら返してくる、こういう形がソ連の歴史の中には散見されるのであります。
 そこで、日本の悲願であるこの領土問題をしてソ連が関心を持ち、動いてくる、こういう状態をつくるためには、日本が求めている領土返還に対してソ連が積極的に応じてくる場合には、日本として日ソ関係がこういう形に新しい発展を遂げるのだという展望を総理なり外務大臣の口から内外に明らかにしておくということが非常に重要なのではないか。理不尽であり返せというこの主張だけではなくて、もしソ連が本当に我々の要求に対して耳を傾けるのであれば、日ソ関係はこうなるであろうということをソ連に示す、これもこれからの重要な日本の姿勢になってきたのではないか。
 私は特に総理にお願いしたいのでありますが、かつて佐藤総理は、沖縄の返還なくして日本の戦後は終わらない、そのことをみずから掲げて沖縄の返還交渉に当たられました。私どもはあの当時、本土並み返還論を打ち上げながら、その佐藤総理の沖縄返還をバックアップした記憶がございます。私は総理の口からぜひ言明していただきたいのは、北方領土の返還なくして日本の戦後は終わらない、そのことを内外にわたって言明していただき、そして今申し上げた私の諸点について総理の答弁をお願いしたいと思います。
#161
○中曽根内閣総理大臣 北方領土の返還なくして日本の戦後はソ連との関係においては終わらない、これはもう明らかなことで、はっきりここで申し上げる次第です。
 しかし、今お話がありましたように、ソ連が領土問題において日本の要求を受け入れて、この解決のために積極的に取り組んでくるということが明らかに出てくるならば、今後の日ソ関係は相当に改善するものになると私は考えます。
#162
○大内委員 これは私は総理の発言としてはなかなか意味の深い発言だと思っています。もしソ連が本当に領土問題に積極的に入ってくるならば、日本としても日ソ関係を相当改善させていくであろう、これは非常に重要な言葉として留意をさせていただきたいと思うのであります。
 安倍外務大臣も、これから直接の衝に当たられますので、今の厳しさをもってぜひ当たられますように。
 安倍外務大臣も、北方領土の返還なくして日本の戦後は終わらない、そう言明されますか。
#163
○安倍国務大臣 今総理が答弁されたとおりの決意でもって臨みたいと思います。
#164
○大内委員 私は、日ソ関係というのは、アメリカをにらみ、また中国を考え、さらにはアジア諸国を考えながら、ヨーロッパも考えて慎重に進めなければならぬ、非常に難しい、バランスのとれた判断力の要る問題だと思うのであります。
 日中の外相の定期協議は、次回はどういうふうになりますか。
#165
○安倍国務大臣 日中関係は、国交が回復して以来十三年間、非常に最近では温かい、そして親密なものになってきたわけでありますし、この関係を我々としてもさらに発展をさせ、充実させていきたいということを考えております。政治、経済、文化、人的交流、あらゆる面における日中間の関係というものは、今良好でございますが、同時にまた、その良好であり、緊密化すればするだけにまた問題も起こってくる可能性もあるわけでございます。そういう中でやはり一番大事なことは、外相間で総括的に日中関係のそうした緊密化のかじ取りを間違いのないようにしていかなければならない、そういうふうに思っております。これは中国の呉学謙外相とも話し合って、そういう二人の合意から昨年第一回の日中外相定期協議を開いたわけでございます。これはさらに、日中関係いろいろと問題もありますから、二国間の問題だけじゃなくて、アジアの問題あるいは世界の平和と軍縮の問題、いろいろとあるわけでございますから、やはりことし早いうちに中国の外相に来ていただいて、二人でじっくり話し合うということが大事じゃないかというふうに思いまして、実は打診をいたしたわけでございます。呉学謙外相もぜひ日本に来ていろいろと話し合いたいことがあるということでございまして、中国側の感触によりますと、大体四月の中旬ごろにはこちらを訪問したいということで、今その段取りを進めておるところであります。
#166
○大内委員 そうすると、日中の外相の定期協議は大体四月中旬、こういうふうに理解していいわけですね。
 それから、サミットに関連しまして、私どもはよくアジア・サミットを開催されたらどうかということを総理にも進言してきたわけでございますが、サミット前に、やはりアジア、特にASEAN諸国の意向を踏まえる措置が必要なのではないかと思うのでございますが、その辺は何かお考えでしょうか。
#167
○安倍国務大臣 この点につきましては、日本が今度はサミットの主催国でありますし、ぜひともこれは成功させなければならないということで、今いろいろと全力を挙げて準備を進めておるわけであります。特に、日本の場合はアジアから出ておる唯一のサミット参加国でありますし、これまでのサミットにおきましても、アジアの国々の考え方あるいは御意向等も聞きながら、これをサミットの中で生かしてまいったわけでございますが、特に今回は東京であるということもあります。総理自身もアジア各国の首脳の意見を求められる、こういうふうに思いますけれども、外務省としましても、サミットが近づきますから、アジア諸国の考え方、意向というものはできるだけ早くキャッチしたい、知りたい、こういうふうに思っておりまして、そういう立場からしかるべき人をアジア諸国に派遣をいたしまして、アジアの意向を早く知りたい、こういうふうに思っております。
#168
○大内委員 総理、いかがでしょう。
#169
○中曽根内閣総理大臣 外務大臣が御答弁申し上げましたとおり、アジア、特にASEANあるいは韓国やあるいは中国そのほか関係各国の御意見をよく承って、それらの御意見もよく踏まえた上で会議に臨みたいと思っております。
#170
○大内委員 時間もありませんから、防衛問題の一つの各論について質問をいたします。
 防衛問題も実はたくさん時事的な問題がございまして、中期防の中身の問題やあるいは日米安保協議の問題やあるいは洋上防空のシステムの問題、いろいろな問題がございます。それぞれ伺いたいのでありますが、時間的な制約がありますので、FSX、次期支援戦闘機の問題についてお伺いいたします。
 昭和五十七年七月二十三日、これは政府が五六中業を国防会議の了承を受けて決定した日でございます。そして今私が議論しようとしているFSX、つまり次期支援戦闘機につきましては、この五六中業中に、つまり期間中というのは五十八年から六十二年までですが、次期支援戦闘機一個飛行隊二十四機を整備することを決定いたしました。今の五六中業ですね。その理由というのは、今自衛隊が使っておりますF1が昭和六十年の後半ごろに耐用命数が来るということが一つ。それから二つ目には、対艦、対地面で相対的な能力不足が見込まれる。これは五六中業の中にそう書いてある。そうしてこの際、支援戦闘能力の向上を図ることが必要であるという理由からそういう決定が行われたわけです。これに間違いありませんね。
#171
○西廣政府委員 今申されたとおりであります。
#172
○大内委員 これは重要なところなんですが、相対的な能力の不足も見込まれる、つまりF1がですね。どこが能力不足なんですか。
#173
○西廣政府委員 いろいろございますが、例えば一つは、対地能力としましてはレーダーの能力その他についてだんだん能力が相対的に落ちてくる、あるいは相手方の戦術戦闘機というものが逐次航続距離が非常に上がってくるというようなことで、FSの一番の出番というのは、着上陸侵攻があったときに、上陸しようとする艦艇等を攻撃することになるわけでございますが、その前に、当然のことながら空からの攻撃がある。ということになりますと、そういった攻撃に対して生き残って戦わなくちゃいけないということになりますと、現在のF1では足が短い、要するに相手の戦術戦闘機の攻撃範囲内に入りますので、そこで生き残って、なおかつ外から着上陸時に反撃を加えるというには足が短過ぎるとか、そういったいろいろな問題があるわけでございます。
#174
○大内委員 今世界の支援戦闘機の機種を見ておりますと、F16、F15、F14、F18、トーネードといったようなものがあります。私は、昨年の三月の予算の分科会でその性能の比較を問いました。そして、その結果防衛庁当局から出てきた答えは、F1というのはT2を戦闘機に変えたので、T2の時代のF5、ジャガー時代の航空機なので、今実戦に配備されているF14、F15、F16、F18といったようなものと比べると、すべての点において劣るのは事実でございます、しかしそれは時代の差でございます、こういう答弁をなされておる。だからこそ五六中業で相対的な能力の不足、自分で使っておる飛行機を能力不足と認定したわけです。
 これは総理が最後は裁断しなければならぬと思いますので、これをちょっと差し上げます。見ておいていただきたいのですが、今世界で飛んでいる支援戦闘機とF1を比べてみますと、その速力、行動半径、航法・火器管制、低空飛行性能あるいは短距離離着陸性能あるいは対艦・対地攻撃の兵器システム、あらゆる面で全部劣っています。
 ところが、幾らか事態が変化してきた。さっき申し上げたのはちょっと御記憶をいただきたいのですが、昭和五十七年の七月の二十三日。その一カ月後、つまり直後ですね、何らかの働きかけによって急速に国産機運が高まりまして、この要求を満たすためにはF1の寿命を延命する、これを実現して開発の所要期間約十年間の時間を稼がなければならない。そして二十四機の導入を国防会議が決定したわずか一カ月後の五十七年の八月には、抜本、技術研究本部はF1の耐用命数の見直しを開始されました。そしてこのときから、事実上その一カ月前の国防会議の決定を覆す作業が開始されました。
 私はこれは非常に不可解だと思います。いや、命数の問題は前からあったんだ、必ずそういう議論をします。それなら、なぜ五六中業で二十四機のFSXの導入を決めたのですか。これは防衛庁長官が指令したのですか。防衛庁長官に聞きます。この命令を防衛庁長官がしたのですか。もちろん加藤防衛庁長官でないでしょう。
#175
○加藤国務大臣 当時の経緯につきまして装備局長から答弁させます。(大内委員「命令したかしなかったかということだけでいいです」と呼ぶ)
#176
○山田(勝)政府委員 これは航空幕僚監部が飛行機の運用をやっておるわけでございます。F1の最初の耐用命数は三千五百時間でございましたが、F1の運用をしている間に、果たしてその三千五百時間が適正かどうかということを検討するわけでございます。いわゆる荷重頻度計測器を用いましてやるわけでございますが、F1の運用が軌道に乗った段階でそれを開始するわけでございます。こういうことが通常のやり方でございます。
 たまたま軌道に乗ったのが五十七年度でございまして、五十七年の八月から五十九年の六月にかけまして合計二千四百時間の計測を行った結果、先生御承知のように、四千五十時間まで延ばせるということが決まってまいったわけでございます。その間、技術研究本部の専門的検討も経ておるわけでございます。
#177
○大内委員 私はそういう内容をみんな知っているのです。私が聞いているのは、それは長官の指令に基づくものかと聞いているのです。どっちですか。うそを言ったらいけませんよ。
#178
○山田(勝)政府委員 航空機の……(大内委員「一点だけでいい。難しいことはいい」と呼ぶ)いろいろ長官から仕事を委託されておるわけでございまして、もちろん報告をする場合、あるいは通常の業務として行っていく場合、あるいは決裁を経なければならぬ、いろいろございますけれども、ただいまのようないわゆる飛行安全という専門的、技術的な検討でございますので、航空幕僚監部の通常のパターンといたしまして開始をいたしたわけでございます。
#179
○大内委員 今の答弁のとおりです。防衛庁長官は関知しておりません。そして五十九年の十二月の六日、これは私どもの方で調べたのです。これは私どもの方の政策審議会から防衛庁に一生懸命問い合わせたって、絶対言ってくれない。私が調べた。十二月六日に参事官会議で、F1の耐用命数を五百五十時間延長して、約四年間の命数延期が可能との抜本の報告を了承いたしました。そしてこのときには同時に、国内開発が可能になったとして、これまでの外国機の導入、既存の航空機の改造案に国内開発を加えることを了承しているのです。
 私が問題にしているのは、国防会議で決まった、つまり内閣総理大臣が出て決めたことが覆されるような作業がどんどん進んでいく。だれの命令でもない。しかも、その間にはいろいろなうわさが飛び交うような状態の中ででございます。これは、本当はもっときちっと立証する必要があるのですが、なかなか時間がありませんので、これから私がある程度説明に入ります。
 この参事官会議の決定というのは、一つは、五六中業期間中のFSX部隊、つまり二十四機の導入強化を御破算にする、こういう決定であります。こんな権限がどこにあるのでしょう。私は、だから国防会議の事務局長に問い合わせてみた。国防会議で決まったことが、その下の参事官会議で覆せるか、そんなことは絶対できませんと言った。でも、やっている。しかも、このFSXの主力を、今後十年間もの長期にわたって、防衛庁画身がその能力が相対的に劣るとしたF1でつなぐということになる。これは明らかに防衛の中に穴をあげることを容認する決定になる。FSXの選定というのはまさに国防会議が決定すべきことであって、参事官会議の決定は国防会議を無視した。それはシビリアンコントロールを覆すという問題なんですよ。だから問題にしているのです。五六中業で二十四機導入と決まったこの国防会議の決定を覆せという、この指令はだれがやったのですか。防衛庁長官、だれがやったのです。あなたがやったのですか。だれがこんな重大な変更をやったのです。私は、その内容の是非を言っているのじゃない。そのやり方が問題だと言っているのです。こんなやり方が、これからの防衛政策の中で大事な問題についてとられてきたら、えらいことになる。
 そして、六十年の九月十七日、抜本から空幕に対して、国産は可能との答申を出した。そして、その後に行われた六十年九月十八日の中期防の決定で、後から判を押すという羽目になった。これでは国防会議がかなえの軽重を問われるはずなんです。この抜本から空幕に、国産は可能という答申が出されましたが、これを出してください。この答申を出してください。でなければ、この問題の判定できませんよ。何を水準にして、何を基準にして、そして一九九〇年代の、これから各国が競って開発を始めているこの飛行機と拮抗できる国産機ができるというこの答申を出したというなら、出してください。こんなことを許せるわけはありません。国防会議がこれだけ無視される決定を見逃すわけにいきません。出してください。
#180
○山田(勝)政府委員 ただいま先生の御議論の、まず前段についてお答え申し上げます。
 昭和五十九年の十二月六日、参事官会議を開きまして、航空自衛隊及び技術研究本部におきまして検討したF1の延伸、つまり三千五百時間から四千五十時間に延ばしても飛行は安全であるという結論につきまして報告を受けまして、了承されたものでございます。しかる後、大臣に報告をいたしました。
 それから、その後の、後段でございますけれども、技術研究本部が航空幕僚監部から依頼を受けまして、果たして国産機がF1の後継機として開発可能であるかどうかについての専門的分野での検討がございます。しかし、これはいわゆる支援戦闘機としての運用要求というものにかかわるものでございまして、私ども、公表は差し控えさせていただきたいと思います。
#181
○大内委員 これは、その決定が正しいかどうかを判定する上では非常に大事な、不可欠の文書です。この答申をこの委員会に出すように、ひとつ委員長からお取り計らいを願います。
#182
○小渕委員長 理事会で協議いたします。
#183
○大内委員 これはもちろん私も、国家の秘密にかかわることの一部がその中に含まれておりますので、何も全部を出せと言っている意味ではありません。しかし、できるだけ出せるものは出して、我々の公平な判断の材料にするということの努力をしてほしいと思うのです。
 私は、総理、この延命を決めたというやり方は非常におかしいと思う。なぜかといいますと、軍用機というのは戦時の、戦闘時の最大の荷重を基準として、十分な余裕を持って決めているのです。ですから、普通の民間航空機でございますと、大体二万から四万時間飛べるのです。しかし、軍用機が例えば何千時間だというふうに、極めて短い設計寿命となっているのは、これはやはりその機能が相対的に果たし得るかどうかなんですよ。ですから、寿命を延ばすなんというのは、やろうと思えば幾らでもできる、幾らでも飛べるのですから。また、そういう例もある。
 例えば航空自衛隊はF104J、F4EJの整備に伴って、昭和五十四年度までにF86を退役させています。これは寿命がまだあったのです。F4EJ、F15Jの整備に伴って昭和六十年、去年ですね、これは年度ですから三月いっぱいまで入りますが、F104を全機退役させるのです。まだ寿命があるのになぜ退役させるのでしょう。それは言うまでもなく旧式になってきている。日本の安全保障を考える場合に相対的に旧式になっているから、そういう措置をとっているのです。だって、現にF86は韓国の空軍で使っていますよ。F104はトルコ、ギリシャ、台湾などで第一線機として使っていますよ。しかし、日本でF86やF104を退役させたのは、そうした物理的な寿命からではなくて、これが旧式化による能力不足によるものであった、このためなんです。F1は能力不足だと言いながら、まさにその延命は物理的な条件だけで延命しているのです。ここが問題なんです。だから、何か背後にあるのです。OBの方にもみんな働きかけなんですよ。そして国産化へ、国産化へ。私は本来国産化主義者なんです。できるだけ国産化した方がいいと思っているのです。しかし、余りにも日本の防衛という問題について考えていなさ過ぎるのです。
 本当は、もっと具体的に、時間があれば証明できるのです。F1の戦闘行動半径というのは全くだめです。例えばタンクをつけない、これは増槽といいますが、使用しないでクリーン状態でいきますと百五十海里、二百七十八キロしか行動半径がないのです。F1がおるというのは三沢なんですよ。有事というのは北方有事でしょう。クリーンの状態でまさか出かけていったってしようがないでしょう。燃すものを持って出かけていかなければならぬ。そうすると、タンクを一個つけた場合に飛べる距離は三百海里、五百五十六キロですよ。これは石狩湾まで行けますが、宗谷海峡まで行けない。しかも、北方有事に際して三沢から発進運用は不適格ですよ。それは航法、電子機器の装備、これが不十分なために、対地・対艦の攻撃の資質とされる全天候攻撃、超低空攻撃、オフセット攻撃能力にみんな欠けるからです。だからアメリカが三沢にF16を二個飛行隊持ってきたのです。でなければ対応できないと思っているのですよ。このような状態で防衛庁が国産、国産といって、それ以外の口をどんどん封じ込めているというこの不明朗なやり方が、今の見識の高い、バランス感覚のとれた加藤防衛庁長官のもとでなぜ起こるのだろう。
 どこを国産化するんだと言ったら、周りのどんがらを国産化するのだと言う。エンジンは向こうから買うのだ、主要電子機器も向こうから買うのだ、主要兵器システムも向こうで買うのだ、だけど国産なんだ。私は、これまでの国産化の歴史をたずねてみたのです。−あと五分しかない。過去ではターボプロップの輸送機YS11を国産化した。これは防衛庁じゃありませんが、民間でやりました。ジェット輸送機C1を開発いたしました。そしてロッキードのC130を輸入しました。これは国産をやったらできるはずです。ターボプロップの対潜哨戒機P2Jを開発しました。その後に、同じターボプロップのP3Cをライセンス生産しました。超音速練習機のT2を国産化しました。支援戦闘機のF1を国産化しました。そしてその後に、同じタイプのF15をライセンス生産しました。なぜでしょう。一番大事な内臓は国産化しなかったからです。フランスや英国が、ミラージュ二〇〇〇やラフェールEFAというような最新型の戦闘機を自主開発したのは、日本の防衛庁と同じようにT2やF1と似たものをつくりながら、内臓を自主開発したからなんです。やはり、今世界各国で一九九〇年代の戦闘攻撃機を目標に新型機の開発が行われている、その動向を慎重に見きわめながらFSXの選定をしなきゃならぬ、それが本当のフェアプレーではないでしょうかね。私は少なくともそう思えてならないんです。
 時間がありませんので本当の説明はできませんでしたけれども、FSXの国産化をしゃにむに推進しようというやり方は、それが本当に価格、性能の面でいいなら、私、賛成するんです。私は昨年の三月、防衛庁長官と一問一答をやったときに、防衛庁長官が我々に約束した、公正で合理的な機種選定というものをやります、そのために指導します、私はそれに反していると思うのです。そしてこれまで、例えばP3CやF15を機種選定するときにどれだけの作業をやってきたか。P3Cの場合はいろいろな問題もあって十年もかけて、しかも六回にわたって欧米を視察し、大変な調査をやった。F15の場合だって二年かけて、二回にわたって欧米に対して調査団を派遣し、そして自衛隊のパイロットが出かけていって、対象となる機に全部乗っかって試験をして決めているんですよ。今度のはペーパープランだけじゃありませんか。
 私は、欠陥があるというF1を十年延ばして、そしてその先にできるかどうかわからない国産化に夢を託していく、それは何か背後にあるに違いない、いろいろ聞いてみた。私は、国の防衛よりか自分の防衛を先に考えているといううわさもたくさん聞かざるを得なかったことは本当に残念です。本当に残念だ。私はもっとフェアプレーでこういう問題はやってもらいたい。そして、国防会議が決めた大事な機種選定などという問題、これは昭和五十一年に国防会議に付議する重要事項の中に実は作戦航空機というものを指定した、そして国防会議がこれを取り扱っていかなければならぬということを決定し、国防会議が一つの結論を持ちながら、それを事務的レベルでどんどん覆し、その足固めが固まっていく、そして防衛費の効率化とか日本の防衛とかで本当に歓迎しないような機運が日本の防衛庁の中に広がってくるとすれば、日本の防衛問題はゆゆしき問題だという意味で、私はこれを重視しているのであります。
 もちろん私は、今はんの一部しか言うことができませんでした。しかし、もっと体系立ててきちっと説明すれば、私の申し上げた今の結論は、決していいかげんで言っているのではない。私があの短SAMを問題にしたときにでも、今の結果をごらんいただけばおわかりのとおり、私が指摘したとおりになってしまったじゃないですか。私は一つの利害、損得で物を申し上げたのではない。この問題については、日本の防衛という一点にかけて私はこの問題に取り組んでいる。
 総理、もう時間がありませんので、私は本当は防衛当局と分科会でもできれば議論をさせてもらいたいと思っています。防衛庁長官もこれは一言なかるべからずでありましょう。部下のことにかかわることであります。そして同時に、最後に総理のこの問題の処理の仕方についての御所見をお伺いしたいと思うのであります。
#184
○加藤国務大臣 次期支援戦闘機FSXの問題につきましては、現在大変いろいろな方面から御議論いただいております。国産にすべきか、それから既存機の転用を図るべきか、また外国機の導入か、というテーマでありますことは御承知のとおりでありまして、したがいまして、私も、この問題につきましては非常に発言を慎重にせざるを得ない状況にあります。
 そして、一つ申し上げておきたいことは、先生の御指摘のような状況ではなくて、現在国産にもうほぼ決定したというような状況と見られておると思いますけれども、私たちとしてはあくまでも公正な観点から、まだ白紙でこれからの決定に当たっていきたい、こう思っております。
 それから、F1の延命につきましては、私が防衛庁長官就任直後、五十九年の十一月か十二月だったと思いますけれども、そういう結果が出ましたということを私に報告がございました。その後、参事官会議の決定が行われております。そしてその後、国産が可能であるかという抜本の報告等も私に報告を受けてから会議の決定をいたしておりまして、手続上瑕疵のないようにしなければならない。特に大変御議論のある問題ですから、その点は防衛庁内でもきちんとフェアにできるように精いっぱいの努力を現在までもしておりますし、今後もしてまいりたい、こう思っております。
 いずれにいたしましても、我が国の防衛の観点から考えてまいりたいと思いますが、一つだけ訂正させていただきたいのは、先ほどのF86、それからF104が物理的にまだ可能であったけれども日本の場合には退役させたということではなくて、物理的にぎりぎりまで、使えるところまで使っておったということは御理解いただきたいと思います。
#185
○中曽根内閣総理大臣 FSXの選定については、今も防衛庁長官が申し上げましたように、まだ白紙であります。もちろん、国の重要な防衛の兵器でございますから、日本の防衛にいかに寄与するか、あるいは性能の問題、あるいは費用の問題、その他さまざまな諸元を比較検討した上でこれがベストである、そういうものを公正に選ぶ、フェアに選ぶ、そういうことを貫徹してこれを実行してまいるつもりでおります。
#186
○大内委員 終わります。ありがとうございました。
#187
○小渕委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。
 次に、松本善明君。
#188
○松本委員 私は日本共産党・革新共同を代表いたしまして、総理並びに関係大臣に若干の質問をしたいと思います。
 最初にお聞きしたいのは、スパイ防止を名目とする国家機密法の問題であります。
 これは昨年、広範な世論が沸き起こりまして廃案になりました。しかし、総理大臣初め、この法案をどうしても再提出をするということを言っておられます。私は、この問題は、戦前の軍機保護法や国防保安法と同じようなもの、軍機保護法というのは、いわゆる昭和十二年の中国全面侵略のときに大改悪をされた。国防保安法は、太平洋戦争開戦九カ月前にできた法律です。これと同じような法律をどうしても提出して成立させようということを聞きまして、これは本当に重大なところへ来ているのではないか、政府・自民党は戦時体制をつくるという方向へ進もうとしていると、重大な危惧を感ずるわけであります。国民世論もそこを心配しておるのだと思います。
 まず総理にお聞きしたいのですが、前国会で廃案になった法律が、どこが悪くてどうしようとしておられるのか、伺いたいと思います。
#189
○中曽根内閣総理大臣 前から申し上げますように、日本はスパイ天国である、日本ぐらいスパイが暗躍自由な国はない、そういうようなケースもしばしば見たところでございます。そういうところから、どうしても国の重要な機密は守るべきものは守らなければならない。ヨーロッパの国においてもアメリカにおいてもどこの国においても、国の重要な機密を裸のままにして、自由にスパイに取らせているというような国は一つもないと私は思うのです。そういうような観点から、日本の場合におきましても、防衛の重要な機密であるとかあるいは外交の重要な機密であるとか、ともかくそういう類の重要な機密についてはこれを守る、スパイから守る、そういうことは独立国家として当然の行為であって、今までそういうものがなかったのが不思議なくらいであります。
 そこで、必要最小限のそういう法律を整備しようという考えに立って案をつくったわけでございますが、しかし世論の状況も考え、野党のお考えも十分承って、そうして必要にして最小限の法律をつくっていこうと、私は前から申し上げたとおりで、この前の国会におきましても、いろいろ各党の御議論も拝聴し、世論も拝聴いたしまして、その結果に基づいて今度は最善のよりよきものを国会へ提出して御審議いただこうというものであって、今おっしゃるような国防保安法とかあるいは軍機保護法とか、そういうような類とは全く異にする、こういう平和国家、こういう憲法を持っている日本にふさわしい必要最小限の機密の保護を行う、そういう法律をつくって、それを議員提出で出すかあるいは政府提案で出すか、これは党とも協議してやることでありますが、いずれそのような法案を御提出申し上げたいと思っておるので、法案の内容をよく読んでから御議論願った方がいいと思います。
#190
○松本委員 どこを直そうかということはお答えにならないで、スパイ天国論やその他を展開されました。スパイ天国論と盛んに言われるけれども、この特徴は、スパイ天国と言われているということを言われるだけであって、どういうケースがどういう法律で処罰ができなかったからそれで困るんだということはだれもおっしゃらないというのが特徴なんです。
 そして、この問題につきましては、御存じのように国家公務員法、外務公務員法、自衛隊法、電波法、職業的なスパイなんかの場合には住居侵入とか窃盗とかそれから誘拐とか刑法上の犯罪も全部構成します。だから、やろうと思えば幾らでもできるのです。
 ですから、例えば丸山元防衛事務次官、彼なんかは、防衛庁の秘密は漏れたと思われましたかと聞かれて、雑誌での座談会ですけれども、私は自信があります、絶対大丈夫だ、こう言っていますよ。
 それから山本鎮彦元警察庁長官ですね、彼なんかは、我々は治安的に価値のなくなったスパイ事件だけを摘発するので、活動中の生きているスパイは自由に活動させながら長期にわたり観察するので、死んだスパイだけ摘発して新聞発表するので、生きているスパイはどこの新聞にも報道されることはないので御安心ください、そのかわり、発表した事件は大きく報道してください、こう言っているんですよ。皆さん、これが実態ですよ。
 総理、お聞きしますが、今までどういう事件があって、そしてどういう法律がなくて困った、その例をあなた、挙げてください。根拠を挙げてください。
#191
○中曽根内閣総理大臣 専門家にあと敷衍して申し述べさせますが、ともかくスパイの場合、今までのケースを見ますと、国家公務員で漏らした、そういう場合に、漏らした者は国家公務員法によってやられますよ。しかし、取ろうとした者は罰せられないんですよ。取ろうとした者を罰する法律がない。これがやはり非常に大きな欠陥ではないかと思うので、それを窃盗という程度でやっていていいのか。ほかの国はもっと重いことでやって予防しているわけです。だから予防的意味が非常に多いわけです。そういう意味において、やはり国家の機密を守らなければならぬ、そう思っているわけです。
#192
○松本委員 総理、毎日新聞の記者がやられたのは、あれは共犯でやられたんですよ。全くでたらめを言っているじゃないですか。
 それから、外国に幾らもあると言っているけれども、今外国でも、こういう問題については、むしろそれは廃止すべきだという方向へ動いているのですよ。
 どういうことがあったかということを申し上げますと、一番典型的なのはイギリスの政府秘密法です。これがいわば各国のこの種の法律の原点になっている。この法律につきましては、この間ありましたフォークランド紛争、これについて下院議員に資料を渡したという人が起訴されました。無罪になりました。そしてこの法律は大体時代おくれだということでイギリスで廃止運動が起こっています。
 それから、アメリカではどうか。例の有名なペンタゴンペーパー事件。これは、ベトナム戦争のときにトンキン湾事件があった、そして北爆が開始をされました。これはでっち上げたということで問題になりまして、ニューヨーク・タイムズがそのすっぱ抜きの記事をやった。政府はそれを差しとめるという裁判をやりました。これは却下です。政府が負けました。それから、その記事を出そうとした人は起訴されようとしました。起訴自体が却下されました。そして、この差しとめ訴訟の裁判のときにブラク裁判官というのが意見を書かれまして、こういうふうに言っている。よく情報が提供された代議政治を犠牲にして国家の秘密を擁護しようとするのは共和国に真の安全を供するものではない、これは総理大臣、よく玩味すべき言葉です。私は、総理が結局スパイ天国論の根拠を一つも言えなかったということだと思います。
 加藤防衛庁長官、今まで防衛機密が漏れてそして刑事事件にならなかった、こういう事件がありますか。
#193
○加藤国務大臣 具体的にどういう事件があったかも含めてお答えを差し控えさせていただきます。
#194
○松本委員 それはめちゃくちゃな答弁というものですよ。あなた方はスパイ防止法、国家機密法が要るということで、ここで国会で論議をしているのに、それは答えられない。結局、控えさせていただくというのは答えられないということじゃないですか。そういうものがいわゆるスパイ天国論の中身なんです。そうすると、これだけ執拗に、今までは漏れたことが、全部処罰をされるものは処罰をされている、今まで困ったことはないというのがいっぱい言われている、そういう状況で、なおかつ中曽根総理を初めとしてこの法律に固執しているというのは一体何だろうか。新しい問題があるんじゃないか、こういうふうに考えざるを得ません。
 自民党の有馬代議士、これは国防部会長もやられました。彼は新聞紙上で証言しておられますが、七八年、日米が防衛協力の指針を決めた、それ以後濃密な日米共同防衛体制を細むことになった、だからスパイ立法が必要になった、米側は自衛隊に対し機密保護法制の強化を要請してきている、こういうふうに言ってきています。これは具体的な証言だと思います。私はSDIとの関係があると思います。SDIについては、パール国防次官補が、これに参加をする場合は機密保護法制の強化が必要だ。民間ハイテクの技術などがSDIで提供されるという場合には、私は今の法制ではこれはかからないだろうと思います。そこが、SDIとの協力とのにらみでやろうとしている。日米の共同作戦体制を強化しようというのがこの法律のねらいだと私は思います。
 安倍外務大臣、SDIとの参加の関係でアメリカから機密保護法制の強化が要求されていませんか。
#195
○安倍国務大臣 SDIについての政府の基本方針は、御承知のとおりSDIの研究はこれを理解するということで今日に至っておりまして、アメリカに対しても調査団等も送っておるわけでありますが、アメリカからそのような要請等はまだ受けておりません。
#196
○松本委員 そういうふうに報道はいろいろあるのですけれども、否定をされているというと、やはり本当のところが隠されている。それでなければ、今までは間に合っていたのに、今根拠なしに、先ほど来論じておるように根拠が二言も説明できない、これをどうしてもやろうとしていることは理解が到底できないということであります。
 後藤田官房長官、あなたはかって、昭和五十八年でありますが、探知・収集罪、これをつくると世の中が暗くなる、民主主義の基本原則が侵されてくる、私は一貫して消極的だというふうに言われております。変わりませんか。
#197
○後藤田国務大臣 私は、外交あるいは防衛その他国としてやはり秘匿すべき秘密はあると思いますね。保護法制がないというのは、やはり私は国としては欠けている面があると思う。私は、基本的につくるべきだと思っているのですよ。
 ただし、私が申し上げておる今お読みになったのは、機密保護法、スパイ防止ということになると、収集、探知の罪が入る。そうなりますと、法律の規定いかんにより、あるいは規定ができましても運用いかんによっては、よほど注意をしてないというと、基本的な人権あるいは知る権利、こういうところでいろいろなマイナスの面が出てくるおそれがある。立法する場合には、こういう点を十分注意をしながら対象を絞り、構成要件を絞ってやるべきであるというのが私の本意でございます。
 そして、しかもそれだけ絞りましても、こういう法律を出すと、ちょうどあなたがやかましく言うのと同じ、いろいろなところでいろいろな議論が出る。そこで、今は野方図になっていますね。あなたがおっしゃるように、恐らく適用罰則からいえば十何本あると思いますよ、今でも。しかしながら、それでは抜けるところがあるわけです。だから、私はそれはつくった方がいいと思うけれども、いきなりそこへ持っていくと、あなたのような議論が必ず日本の戦後四十年の間の国民感情として出てくるおそれがある。といって、今のまま放置するわけにいかぬ。
 ならば、国の機密というものは公務員が握っているんだ、公務員が漏らさなければ漏れるわけはないではないか、これを民間人が一緒になってやれば共犯理論でやればいいではないか、まず第一歩進めるべきだと。ところが、現在の公務員の守秘義務の規定というのは、罰則がいかにもアシバランスになっていますよ。調べてごらんなさい。必ずそうなっている。だから、そこらをまずきちんとして一歩前進してやるのも一つの方法であろうということを私は言っておるのです。しかしながら、基本的には、あなたの言うように何かほかのことにひっかけてない方がいいという議論は、国としてはそれは欠けた国家ですよと言わざるを得ない、これは私の考え方でございます。
 幸い、昨年、自由民主党の中で、これはおかしいということで、議員立法でお出しになった、しかしこの中身についてはいろいろな問題が各方面から出てきたから、やはりこれはもう少し中身を慎重に見直した方がいいのではないのかということで、今党の方で懸命な作業をなさっている。私は、これは当たり前のことで、いいことじゃないかと思いますよ。
 それから、あなたはさっきからスパイ防止法がなくて困ったことはないというような言い方。困っていますよ。私はみんな知っておる。例えばラストポロフのとき、どうですか。山本鎮彦君がアメリカへ行ったでしょう。それが全部検挙できましたか。できない。こんなことありますか。宮永事件で、公務員法の違反であれが一年以下ということがありますか。これは国民感情に合致しない。だから、あなたのようにいろんなことを言って、いかにももっともらしく言うけれども、それはおかしい、私はそう申し上げる。
#198
○松本委員 専門家に近い後藤田官房長官でも、この程度の答弁であります。ラストポロフ事件も刑事事件になっている、宮永事件も刑事事件になっている。宮永事件、刑が軽いと言っているけれども、あれを贈収賄でやったらもっと重くなりますよ。それは、あの時点で陸将が一年の実刑というのは相当重いと私は思います。もし政府があれを本当に贈収賄で起訴したら、もっと重くできるのです。やろうと思えば幾らでもできる。あなたが言われたことは、結局、刑が少し軽いというだけじゃないですか。それでは国家公務員法を変えるのか、そういう問題、せいぜいそこまでしか言えないのです。独自の法律が必要だということは一言も言えないじゃないですか、そういう状態であります。
 河野科学技術庁長官、あなたは、新自由クラブは反対だということでありました。この再提出問題についても発言しておられますが、あなたの見解を伺いたいと思います。
#199
○河野国務大臣 前国会議論が続いておりました国家機密法につきましては、先ほど来も御意見がありましたように、自民党内を初め各方面で、その国家機密の範囲でありますとか、あるいは収集・探知の方法の規制でありますとか、あるいは量刑でありますとか、いろいろな点でまだまだ議論がある、こういうことでございました。私どもの党内におきましてもいろいろと議論をいたしまして、前国会まで議論が続いておりました法案については賛成いたしかねるということを申し上げてきたわけでございます。
 今回、御議論がまた持ち上がっておりますものにつきましては、その内容等がまだわからないわけでございまして、何かというとレッテルを張って直ちにだめと言うのもいかがかと思いますし、十分にその中身、内容を拝見をいたしまして、慎重に研究をしたいというのが私どもの立場でございます。
#200
○松本委員 前回の自民党の出した法律によりますと、スパイ行為というのは、さっき後藤田官房長官が暗くなるという探知・収集と、それから外国通報行為ですね。外国通報行為というのは、非常に有名になりました自民党のこのパンフレットによって、これは国内で公表する場合、外国通信社に配信する場合、全部当たるということが書いてある。だから、言論の自由に抵触する、これは憲法に違反すること、明白ですよ。日本弁護士連合会は、部分的修正によっては治癒不可能という意見を出していました。私は、絶対再提出をするな、このことを強く要求して、この関係は質問を終わりにしたいと思います。
 もう一つ、これとの関係で伺いたいのは、政府が提出をいたしました安全保障会議設置法の問題であります。
 この法律にはありませんけれども、行革審の答申では、この安全保障会議について、「緊急事態発生の際の対処は、その態様に応じ可能な限り、既存の法制あるいはマニュアルに従って行うが、内閣総理大臣は、重大緊急事態が発生し、かつ、必要があると認めた場合には、安全保障会議を召集して、対処措置等を同会議に諮るものとする。」私は、非常に重大だと思いますのは、「可能な限り、既存の法制あるいはマニュアルに従って行う」ということになっている点であります。
    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
 これは、行革審の答申どおりであれば、超法規的な措置をとることができるということになろうかと思います。政府はそういうことを考えているのかどうか、お聞きしたいと思います。
#201
○後藤田国務大臣 お答えをいたします。
 超法規などという処置があるはずのものはございません。問題は、緊急な事態が、重大な事態が起きたときに、今の日本の行政の仕組みでは、適時的確なる政府の方針が決まらないという場面がしばしば私はあったと思います。このおそれもあります。
 そこで、そういった際に、やはりスタッフ組織というものを強化をしておいて、そして常日ごろからいろいろなマニュアルをつくるなり、いろいろな想定で勉強もするし、各省との事務の連絡も十分し、情報も集めておいて、そしてトップダウンの方式でやらなければならないことがある、その際に総理の補佐に遺憾なきを期そう、そうすることによって各官庁のそれぞれの調整を的確にやらなければならぬ、こういうことで行革審の方からの御答申があったわけでございます。したがって、その答申を受けて、その答申どおりに我々としてはやりたいということで法律案の御審議をお願いをしておる。
 そこで、今あなたのおっしゃった超法規云々ということは、これはあるわけはないのでして、基本の方針を安全保障会議で決める、しかしながら、それを方針に従って実施するのは従来のそれぞれの担当部局に命じてやってもらう、こういう仕組みにするわけでございます。それと同時に、ここにかける対象も、今でもいろいろな対策本部式のものがあるのですよ、それで処理できるものはそれで処理をさせる、しかしながら、それを一段超えて、やはり国の安全、国民の平和、これが乱れるといったようなおそれのあるような重大事件についてだけこういう仕組みをつくっておこう、こういうことでございますから、その点は御安心をしていただきたい、かように思います。
#202
○松本委員 結局、行革審の答申のとおりやるということになれば、私は、超法規的な措置をやるのだということ以外にはないと思います。言葉の上では否定したけれども、この行革審の答申のとおりでいけば、そういうふうに解せざるを得ないと思います。私は、この法律は、国家機密法などとあわせて、国家機構の軍事体制化を図る本当に危険なものだというふうに思いますが、この点については、またこの予算委員会でもあるいはこの国会でも他の機会にさらに質疑をするということも起こるでありましょうし、きょうはこの程度にしておきたいと思います。
 核兵器の廃絶問題をお聞きしたいのでありますが、アメリカの国防報告を見ますと、SDIを抑止力の柱にする。それから、これはこういうことになると宇宙軍拡はますます激しくなっていくと私は思いますし、国防予算を見ますと、やはり軍事費の突出、大軍拡をさらに続けていく。ですから、米ソ会談は始まったけれども、核戦争を阻止をする、核兵器を廃絶をするということは、人類の生存をかち取るという点でも、民族の生存をかち取るという点でも、本当に緊急な重要な課題だと私は思うわけであります。
 そういう点で、総理と去年も話をしましたが、去年質疑をいたしましたときに、中曽根総理は、結論として核兵器廃絶協定の促進決議案を国連に提起することについて外務当局に検討させるということを答弁をされました。一年たちましたが、結論はどうなりましたでしょうか。
#203
○中曽根内閣総理大臣 政府委員から答弁させます。
#204
○中平政府委員 お答え申し上げます。
 昨年の国連総会におきまして、中曽根総理大臣及び安倍外務大臣が核廃絶を訴えました。政府の立場といたしましては、米ソの軍備管理交渉の進展を深く期待するとともに、日本といたしましては、ジュネーブの軍縮会議におきまして、核軍縮関連の諸問題につきましてその審議に積極的に参加しているわけでございます。先生がおっしゃいます核兵器の究極的廃絶問題につきましては、政府といたしましては、実効的かつ具体的な措置を積み重ねるということが最も重要であり、かつ近道であるというふうに判断しておるわけでございまして、単なる宣言的な核兵器の廃絶というものは必ずしも現実的なアプローチではないというふうに判断しておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、その後検討いたしましたけれども、このアプローチは現実的でないということで提案するに至らなかった次第でございます。
#205
○松本委員 結局、やってないということですね。
 デクエヤル国連事務総長も核戦争防止についての報告という中で、核戦争の危険と核兵器の使用を防ぐ最も効果的な保障は、核兵器廃絶のための協定に至る核軍縮であるとはっきりと言っています。去年の論議でも、結論は核兵器の廃絶協定が必要なんだということに私は中曽根総理と結論に至ったと思っておりますけれども、一年やった結果は今のような状況です。
 去年の十二月十二日に、デクエヤル国連事務総長は「安全保障の諸概念について」という報告を出して、それが国連で採択をされております。そこでは、「あらゆる核兵器の明確かつ完全な禁止と全面廃棄、ならびに核兵器の開発、実験、生産、貯蔵、使用の明確かつ完全な禁止を国際法に含めるためにさらに努力すべきである。」ということが入っておりまして、この報告については四月三十日までに見解を事務総長に知らせるということになっておりますが、これは日本政府はどういうことをされるつもりでありますか。
#206
○中平政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま先生御指摘の報告書は、安全保障概念の研究というものを指すものと思われますが、この研究におきましては、安全保障概念のみならず、その他我が国といたしまして慎重な検討を要する多岐にわたる問題がございます。したがいまして、現在政府といたしましては、その見解を提出するか否かの問題を含めまして、検討中でございます。
#207
○松本委員 国連の事務総長が、国連総会で採択されて、この核兵器の廃絶を国際法に含めるべきだというところまで来ておるのですよ。ところが、中曽根内閣は全く積極的な態度をとらない。私は、まことに唯一の被爆国の政府として遺憾きわまりないというふうに思います。そうすると、こういうやり方でいきますと、総理大臣は演説はするけれども、具体的な政府の行動はないということで、演説だけではだめだということをかつて総理大臣、言われましたけれども、そのとおりなんじゃないかというふうに思うのです。
 なぜそうなるかということについての根本原因は、総理と去年もやりましたけれども、結局、抑止と均衡論。これは今度のアメリカの国防報告でもわかりますように、SDIも抑止力だ、攻撃核も抑止力だ、抑止と均衡の理論というのは、結局、核兵器を持つんだ、それから核兵器の使用もしなければならぬ、いざというときには。それが抑止と均衡の理論なんだ。私は、この抑止と均衡の理論を打ち破るということが人類を核破局から救う上で非常に重要だというふうに思いますので、昨年も議論をいたしました。ことしも総理に、随分状況は変わりました、総理、もう政治情勢も国際的にも国内的にも、この問題は去年は私たちだけがやっていたような感じですけれども、必ずしもそうでもなくなってきた、そういう状態になっております。
 改めて総理に伺いたいと思うのでありますが、総理は、現実は抑止と均衡の理論で動いている、それで段階的に縮小していってついにゼロにするのだということを言われるわけですね。しかし一方、同時にこれは業の兵器なんだ、そして相手を、懐疑心から相手に負けられないということで、これは増殖作用もあるのだ。そうすると、これは、総理の言っていることは両方矛盾しているのですよ。この段階的に縮小していって、ゼロにしよう。ところが、これは業の兵器で、増殖作用があるのだ。これは、そうすると絶対にゼロにいかないのですね。それは実際にやった結果がそうです。段階的に縮小するといって何回も何回も、何回か数え切れないぐらいの軍縮交渉がやられたけれども、広島型原爆の百万発分の原爆ができたわけでしょう。これは現実の実践の結果がこういうふうに明らかになった。
 私は総理にお聞きしたいのは、このあなたの言う段階的縮小でゼロに持っていくということに展望がありますか。今までの事態ではふえ続けてきているのです。これについて私は、あなたは言ってはいるけれども、これはこれで実現する見込みは全くないと承知の上で言っているのではないかと思うのですが、これについての総理の見解を伺いたいと思います。
#208
○中曽根内閣総理大臣 増殖作用があると申し上げましたが、その後言っていることをあなたは言わないのです。それは、ある限度に達するともう意味がなくなって、したがって、財政負担その他でもうたまらぬから減らしていこう、今度は縮減の方向へ向かうという現象も起こっている。それは最近の米ソがそうです。もう一方発も二万発も持ってしまったら意味なくなってきている。ああいう超弩級兵器というようなものは何発あったらもう飽和状態に達する、そういう性格を持っている。しかし、相手が持っているからというので猜疑心でふやしてくるけれども、ある限度以上になったら、もう飽和状態になったら無意味になってくる。そこでアメリカもソ連もくたびれてきて、もうこういうむだなことはやめよう、ほかの民生や教育にお金を使おう、ソ連の場合は生活水準が低いし、国内の不満もかなりあるから、軍事費から福祉の方へ少しスイッチしないといかぬ、そういう要求が非常に強くなってきておるのだろうと、情報は伝えていますね。
 そういうような情勢で、ある限度まで達すると、飽和状態になれば無意味になる、そういう性格もあるということももう一回思い返していただきたいと思うのです。
#209
○松本委員 ところが実際は違うのですね。アメリカの今度の予算を見ましても、これは大軍拡じゃないですか。SDIにはまた物すごく予算をつけておる、そういう状況が生まれておるわけですよ。これは、飽和状態になってアメリカは債務国に転落したわけでしょう。財政状況ますます悪くて、にもかかわらず軍拡だけはやる、そして国民生活はぐっと圧迫する、こういうことになっているじゃないですか。あなたの言うとおりにはなってないですよ。これは、あなたの言っていることが目の前で崩れているということなんです。この抑止と均衡の理論がもう既に破綻し始めているのですよ。
 国連の事務総長がそういうふうに言う、ワルトハイム事務総長、前の事務総長は典型的に言いましたね、これは集団的誤謬だ、最も危険な集団的誤謬だ、去年も申しましたけれども。それは国連加盟国の圧倒的な多数がそういう認識に立っているのですよ。日本、アメリカを含む二十カ国ぐらいがこれに抵抗しているというのが現状なんです。もう日本政府の中でもこの破綻が明らかになってきています。
 西堀前国連大使ですね、これは昨年の十一月二十七日に、参議院の外交・総合安全保障に関する調査特別委員会外交問題小委員会で参考人として述べられて、国連大使として訓令が今まであったから心ならずも均衡論をぶっていたけれどもという断りをつけながら、「抑止力の均衡、力の均衡ということを言っている限り、とても軍縮ということは望みがたい事実だと思うのでございます。」と。日本政府の代表として四年もやっていた人ですよ。それがあなたの言うとおり抑止と均衡でやったけれども、現実を見てみると、これをやっていたら絶対軍縮にならぬ、これはあなたの抑止と均衡理論が破綻をしているということの最大の証拠じゃないですか。これぐらい明らかなことはないですよ。外務省で先ほど答弁した人も心ならずも言っているのかもしれないですよ、これは。本心はそうでないと思っているかもしれませんよ。
 そういう事態が起こっておるのですよ。均衡ということでいけばこれは幾らでも言えて、今あなたが言うように猜疑心で、相手に負けてはならぬということでどんどんふえていく。大体、均衡といっても、核ミサイルの個数だとか、一個のミサイルの運ぶ核弾頭の数だとか、弾頭の核爆薬の量だとか、命中精度だとか、ミサイルの飛ぶ距離だとか、いろいろな要素があって均衡なんてことは決められないのですよ。だから、相手と比べるとこっちは少ないんだということで、均衡を図るんだということで軍拡を進めてきたというのが今までの歴史じゃないですか。あなたはあなたの理論が破綻をしているということを認めませんか。
#210
○中曽根内閣総理大臣 認めません。(「総理、もっと詳しく答弁しなさい」と呼ぶ者あり)
#211
○松本委員 認めませんという言葉だけで、結局反論できないということだというふうに私は思うのですよ。それは不規則発言でもう少し詳しく言ってくれという発言があったようですけれども、やはりこれは実際に現実が破綻をしているのですよ。そのことにあくまでもしがみついておられるというところが私はこの問題の本質であって、これはもう極めて重大なことだと思います。私……(中曽根内閣総理大臣「じゃ答弁しましょうか」と呼ぶ)どうぞ。
#212
○中曽根内閣総理大臣 現実の世界を見ておりますと、抑止と均衡で平和が維持されているということは松本さんも認められましたね、今。ソ連もこうであり、アメリカもこうであり、増殖するんだと。そういう現実をあなたはお認めになったんだから。だから、抑止と均衡で成立しているということはお認めになったじゃないですか、そうでしょう。だから、そういう認めて−しかし、私はそれで終わっているんじゃないのです。しかし飽和状態になるというとくたびれてきて、そして今度は減らす方向に、反作用に移ってくる。それを今ソ連とアメリカが同じようにそういう状態になりつつある。
 ところがアメリカはもう一歩前進しておるのです。それはどういうことかというと、ICBMのような攻撃的大量核兵器を今度は迎え撃つSDIという新型兵器の体系に移ろうとしているわけですよ。もうあれは旧式兵器になってしまう、いずれ博物館に納められるであろう、そういう時代を目指してSDIに非常に力を入れておる。ところが、アメリカは非常に科学技術が発達しているから、最近の情報で見るとSDIはどうもできそうだ。ソ連も実はABM条約をやっておって、自分でもああいう研究をやっておったわけです。あるいはキラー衛星、衛星を迎え撃って殺す衛星という、そういう研究もソ連はかなり進んでいると言われておった。だからソ連もやっておるには間違いない。しかし科学技術の性能から見たらアメリカとソ連は雲泥の差がある、特にハイテクについては。大型コンピューターあるいはセンサー、そういうような、特にコンピューターについてはもう格段の差がありますね。そういうような状況から、これはとてもたまらない、SDIをぶっ壊すに限る、それで方々じゅうにSDI反対、SDI反対ということで運動し続けているんじゃないのでしょうか。共産党もそういうような影響を多少お受けになって今のような御質問をおやりになっているんじゃないかと私は推察いたしますがね。
 しかしともかく、新しい新兵器体系に移って今までの核を中心にする兵器体系から抜け出そう、それをアメリカがやってきておる。そういう中で、つまり抑止と均衡というものが現に生きつつ新しい体系に動かそう、フランスやイギリスやヨーロッパの核を持っている国が心配しているのは、そういう新しい兵器体系に移る場合にこの均衡が崩れるというと不安定になって危ない、だからその過渡期をどうするか、それをアメリカに対してその過渡期をどうしてくれるんじゃというようなことを今いろいろ質問もし研究もしているわけでしょう。過渡期における抑止と均衡状態を崩さないようにして戦争を起こさないようにしようというのがフランスや、あるいは中国もそうかもしれませんね、ほかの核を持っている国々の心配である、現に抑止と均衡で世界が動いているという証拠であります。
#213
○松本委員 総理がこの抑止と均衡の理論で平和が維持されているのを私が認めだというのは、これはもう全く牽強付会というか、そういうやり方で本会議でも答弁をしたのだ。デクエヤル事務総長が認めたとか、それから、ゴルバチョフ書記長が認めて、それでやっているとかというふうに言われた。これは全く違います。私もデクエヤル事務総長の報告を詳細に読んでみましたけれども、わざわざ、先ほど申しました安全保障の概念についての報告では、「「力の均衡」の概念について」と「「抑止」の概念について」と、いずれもこれは否定的に書いています。「戦後の同盟体制は、」「核時代における安全保障のジレンマを取り除くことはできなかった。」というのが「力の均衡」の概念について言っていることです。「抑止」の概念については、核保有国は「使用の可能性を完全には放棄していない。」これは、抑止と均衡の理論がこういうことになっているということを言っているのですよ。
 私はそれについても、いろいろゴルバチョフ書記長の問題についてもまだ言いたいところがあるのですけれども、今の発言は非常に重大だと思うのですよ。核兵器の廃絶というのはSDIによってできるんだ、これは、あなたの今発言しているのは事実上SDIの支持発言ですよ。SDIを支持するつもりですか。
#214
○中曽根内閣総理大臣 アメリカはそういう考えでやっている、そういうふうに申し上げたわけです。レーガン大統領は現に、核兵器を廃絶しよう、そのために自分はSDIというものを考えている、そういうことを聞いてきているからです。
#215
○松本委員 SDIの話が出たから言っておきますけれども、これは非核で防衛的だと言うけれども、エックス線レーザーの開発をやっているでしょう。これはミサイルを落とすと言うけれども、ミサイルを落とせるなら、地上のものが攻撃できるのは当たり前なんですよ。都市全体を破壊することができるということも言われています。それから、これが小型の水爆を燃料に使うということも明らかであります。それから、ICBMだけじゃなくて戦術核もあるのですよ。それからSLBMもあるのです。これはそういうものを含めれば、これが核廃絶になるというものでは絶対にありません。そういうことを承知の上で−私は知らないとは思わないですよ。承知の上で総理は今のような答弁をしておるというふうに考えざるを得ません。
 大事な問題なので、私は、本会議で総理がゴルバチョフ書記長も均衡と抑止でやっているんだということについて言いました。ソ連との関係では、私たち御存じのようにいろいろな点で、千島問題あるいはアフガニスタンの問題などいろいろ見解は違いますが、この点は人類の死活にかかわる問題だということで共同声明を発表し、それからゴルバチョフ書記長の声明も、十五年というのは少し長過ぎるけれども、歓迎をするという声明を出したわけです。しかし、あなたと同じだということは絶対ないですよ。
 あの声明の一部を引用してみますが、こういうことを言っています。
  二十世紀は、原子エネルギーを人類に贈った。しかし、理性のこの偉大な獲得物は、人々にとってみずからを絶滅する道具となりかねない。
 この矛盾を解決できるだろうか。我々は解決できると確信をしている。核兵器廃絶の効果的な道を見出すことは、今すぐその解決に取り組むならば、解決可能な課題である。
 これを私たちが評価をしたのは、この核兵器廃絶という問題を政府間交渉の日程に上せた、今すぐ取りかかるということを言った、そこが大きな問題なんです。
 私たち両党の日ソ共同声明、これはゴルバチョフ氏が書記長になる前のものですけれども、これはもう確認しているわけですけれども、ここでも核抑止力論について共同声明ではこういうふうに言っています。
  「核抑止力」論、核兵器の使用を容認する議論は、核兵器と人類の危険きわまりない共存を恒久化し、人類を永遠に核破局の脅威のもとにさらすものである。核兵器のすみやかな禁止・廃絶が必要であり可能であることを疑問視し、あるいはこの課題を無限のかなたに追いやるようなさまざまな主張は、核戦争の危険からの脱出を求めている人類の知性と意思に逆行するものである。
 これが日ソ両党共同声明であります。
 これらを読んだだけで、あなたの見解とゴルバチョフ書記長の見解が違うということはもう明白であります。だから国連でも核兵器の先制使用はしないという立場ですし、使用禁止決議も賛成しています。日本はどうですか。先制使用容認の決議を出して、去年に引き続いて反対が多くて撤回せざるを得ない、そういう立場でしょう。それから、使用禁止決議についてはずっと反対とか棄権とか、背を向けているという態度です。はっきり違います。同じだと言うのなら私は聞きたいのですが、この核兵器の廃絶という問題について今すぐ取りかかるという決意があるかどうかお聞きしたいと思います。
#216
○中曽根内閣総理大臣 もうやっているのです、一生懸命。ですから、私は、NPT条約に対して皆さんお入りになるようにインドの首相にも言っているしパキスタンの大統領にも言っておるし、あるいはサミットの場においてもレーガン・ゴルバチョフ会談をやって核兵器廃絶に向かって進むように、あるいはアメリカのゼロオプションを支持しておる。ゼロオプションというのは核兵器をゼロにする、つまりSS20に対抗するものの処置の話し合いの話ですね。そういうようなことを支持しているんで、もうやっているわけです。
#217
○松本委員 それが本当かどうか、この質問に答えてほしいのですが、デクエヤル国連事務総長は先ほど紹介いたしました核戦争防止についての報告の中で、各国のこの核兵器廃絶についての見解をずっと聞いてそれを報告の中に書いています。その中にあります日本政府の考えといいますのは、全般的完全軍縮という最終目標、その中での核兵器完全廃絶に向かって進むことが基本であると考える、これが日本政府の態度ですよ。これはどういうことか、軍備のない社会ができるときに核兵器もなくします、これですよ。だからあなた方はいつもいつも究極的廃絶ということです。これはこのとおりだったら完全に核兵器の廃絶というのは幻想です。あなたの言ったとおりの幻想的廃絶論ですよ。そんな時代がいつ来るか。私は、それが違うと言うのであるならばこの国連における日本政府の態度を改める、全面的完全軍縮の過程の中で考える、これは究極的廃絶ということです。この考えを変えるということを明言をしてもらいたいと思います。
#218
○中曽根内閣総理大臣 私の考えは変わっておりません。ゴルバチョフ氏が述べた三段階の核兵器廃絶というのも、一般的な廃絶の話し合いをした。やったってそれは実際はできない。なぜならば、不安で眠れないからです。安心してやめさせられる方法を考えたら十五年ぐらいはかかる。第一段階はこれ、第二段階はこれ、こういうふうにしてお互いが抑止と均衡に基づいて削減をしていく。いわゆるレベルダウン。そして、ついに廃絶へ持っていく。レベルダウンをやっている間に両方が信頼感がもっと生まれるでしょう。あるいは現地の査察をして、お互いの将校やら専門家を派遣して現にやっていないということが論証されれば安心感が生まれるでしょう。そういう現実を通って初めて完全にゼロになり得る。そういうことをゴルバチョフ氏は頭に置いているから十五年かかってもやりたい。あなたみたいなあしたかあさってに全部できるなんて考えてはいないのです。
#219
○松本委員 あしたかあさってにできるなんて考えていませんけれども、ただ政治的合意が必要だということを言っているのですよ。それが先だ。そして、核兵器廃絶についての政治的合意ができたら、それについては段取りがあるでしょう、それは一定の時間があるでしょう。それと均衡と抑止でかなたの問題にするのとは全然違うのですよ。
 今あなたが信頼できる措置ということを言いましたからちょっと言っておきますが、検証の技術は、レーガン大統領も去年の一月九日の記者会見で交渉に必要なほど発展していると言っています。そして、人工衛星から見ますと、これは大変なことのようですね。二十五センチ物が動いたところがわかるようです。温度差もわかる、高さもわかる、そういう状態になっているのです。だから、軍事費の、ハードウエアのほとんどは、重要なものは全部お互いにわかるという状態になっているのが今の科学技術の状態です。レーガン大統領もそれを言っているのです。ゴルバチョフ書記長もこの査察も含めて合意する用意がある。この検証問題は基本的に解決しているんですよ。ただ、猜疑心がある、そして検証しなければならぬというのがこの口実に使われている、軍縮を阻む口実に使われているというのが現実です。
 このことを証明するのは、再々西堀前国連大使を引っ張り出して申しわけないけれども、やはり先ほど申しました参議院での証言で、参考人としての発言ではっきり、「言うなれば検証問題ということを一つの口実にしている」のです。もしあれだったらこのときの会議録を詳しくお読みください。四年間日本の国連大使をしていた人がこういう発言を率直にするという状態になっているんですよ。あなたの議論は、検証問題にしても、信頼醸成措置の問題は完全に破綻をしているということを私は申し上げて、次の質問に移りたいというふうに思います。
 総理、ちょっと別の質問ですが、非核自治体の問題で、本委員会でも問題になりました。自治体が非核都市宣言をする、非核自治体ということを決めるということについて、この委員会では、自治体がやるのは自由だ、制肘はしないという趣旨の答弁をされましたけれども、参議院の本会議で我が党の上田副委員長に対して、総理は、まやかしの非核都市宣言運動というのが自民党の国民運動本部活動方針にあることについて聞いたところが、総理は、一部には自由世界を分断しようとかその他の意図があるんだということを言っているんだ、こういうふうに言われました。
 私はお聞きしたいのですが、総理の地元の群馬県でも全会一致で、自民党の議員も賛成をして、非核都市宣言をしているところがあります。例えば渋川市でありますとか新町というところがそうです。みんなは読みませんけれども、渋川の市議会の決議を読んでみます。決議部分だけを読みますと、「日本はもちろん世界の「非核平和宣言」自治体と協力して「核兵器のない平和な世界」を早期に実現するために、必要な努力を行なうこと。」が一つです。次は、「渋川市において、核兵器が製造、貯蔵、配備されることを許さない。」三は、「広島、長崎の原爆被爆体験をはじめ、戦争の悲惨な体験を次代に正しく伝え、非核、平和の世論形成に力をつくすこと。」総理、これはどうですか、自由世界を分断をするという意図に自民党の議員も乗せられたということになりますか、こういう決議に賛成するということは。
#220
○中曽根内閣総理大臣 私が申し上げたのは、一般的に我々は既に非核三原則を持っておる。それで、外交とか国防という問題は中央政府の所掌事項になっておる。既に非核三原則を政府でもやり、国会でも決議しているんですから、地方でおやりになることは自由であるけれども、しかし我々からすれば、中央政府を信頼して、そういうことはおやりなさらなくても大丈夫です、そういうことを私は申し上げておる。
 また、自民党がああいう運動方針を書いたという背景には、中には純粋で、純真にああいう決議をなすっているところもあるし、またああいう決議を起こさせようという働きかけの中には、一部あるいはプロパガンダにしようとかあるいはそういう分断をしようという、そういうものがなきにしもあらずであると思われるから注意しなさいよと、そういう意味で自民党はそういう示達を出した、そういうことを申し上げたのです。
#221
○松本委員 私もいろいろ調べてみましたけれども、アメリカの核はいけないけれどもソ連の核はよろしいというような決議は一つもないです。
 自民党の国民運動局の活動方針によりますと、こういうように書いている。この「運動の目的は、日本を「米国の核」の影響下から排除し、「ソ連の核」の影響下におくことにあり、日米安保体制の弱体化・解体を意図する大変危険なものである。」「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」という資料も作成して配ったという。今非核都市宣言をやっているのは、去年の暮れで九百以上です。それから、そこで生活している人たちは日本の人口の五割を超えました。日本の国民は本当に核兵器がなくなること、日本に核兵器がないことを願っているのです。もし総理が言っているように、これは御心配なくというのであるならば、こういう活動方針はやめさせたらどうですか。総裁としてそういうふうにおやりになる考えはありませんか。
#222
○中曽根内閣総理大臣 政党ですから、政治的キャンペーンというのはみんなやるものであって、共産党なんか最もうまくおやりになっている。似たようなものだろうと私は思うのです。政治的キャンペーン、つまり我々は我々の理念、我々の政策というものを県民やあるいは国民の皆さんによく知悉していただいて、そして御協力を願う、そういう運動であります。
#223
○松本委員 やはり核兵器の、この非核都市宣言ができることを嫌っておられるというふうにしか私は考えられません。
 日本の中央政府のやっている非核三原則は、これはしり抜けなんですよ。これはもうみんなに見透かされています。だからこそ非核都市宣言がなされてきているということでもあると私は思います。世論調査によれば、七三%の人が政府の言っているのは信用していない。ここまで破綻をしているのに、いまだに政府が、いわゆる事前協議が来ないから大丈夫なんだという立場を固執しているということは、アメリカの核が結局入れるような仕組みをとっているということ以外の何物でもないというふうに私は思います。
 質問は、次に移りたいと思います。きょうの夕刊にも出ていますが、きのう、きょう報道されておりますが、アメリカの国防報告によりますと、日本はアメリカの戦略の中で非常に重要な位置を占めるようになってきている。国防報告では、日本は極めて重要な位置、向上した対潜水艦作戦並びに機雷作戦能力、新鋭化した自衛隊、及び自衛隊が新任務、これは複数でありますけれども、を引き受けたことによって、西側の防衛を支える重要な役割を演じている。
 この新任務の中には、例えば一千海里の範囲まで海上兵たん線を守ること、これは原文で言えば、シーラインズ・オブ・コミュニケーション、これは軍事辞典でいきますと、海上兵たん線ということなんです。一般の新聞にはただシーレーン防衛と言っていますけれども、アメリカの方では、海上兵たん線を守るという任務を自衛隊が引き受けた、こういうふうに見ているのです。
 そういう国防報告が出まして、かつて沖縄がそういうふうに言われていたと同じように、日本と我々の防衛パートナーシップは、引き続き東アジアにおける我々の防衛政策のコーナーストーンである、礎石である、そういうふうにアメリカは国防報告で見ておる。
 そして、さらに重大なのは、アメリカの海軍作戦部長のワトキンズ氏がことし一月に戦略を、三年前から研究していた海軍の新しい戦略、公式戦略を発表いたしました。そして、これは報道によりますと、昨日アメリカの下院軍事委員会でやはり証言をしております。いよいよ公式性が高まってきたわけでありますが、ソ連潜水艦への先制攻撃をする、あるいはこの論文でいきますと、対ソ通常戦争であってもオホーツク海などに潜むソ連の弾道ミサイル原潜を撃破するという。これは、元アメリカの国防総省に勤務をしておりました、プリンストン大学の助教授でもありますポーゼン氏は、この戦略は相手側が核兵器に手を伸ばす危険を最も大きくする戦略だ、挑発的な戦略だということで、アメリカ国内でも非常に危険視をされている。
 日本の場合は、盛んにこの論文の中でも触れております。これがこのままやられますと、日本はオホーツク海あるいは日本海を含む日本周辺全域を核戦場化する非常に危険な戦略でありますけれども、総理は、こういう戦略、この日本周辺でソ連の核戦略を先にたたく、通常戦略でもたたく、こういう戦略のもとで日本の自衛隊が協力をしていくということになったら、まさに日本は核戦場化していくということになると思いますけれども、これに協力をしていくのかどうか、はっきりお答えをいただきたいと思います。
#224
○中曽根内閣総理大臣 日本防衛を主たる目的として安保条約を有効に機能していく、日本防衛が中心であり目的であります。
#225
○松本委員 今のアメリカの核戦略に協力をするのかということを伺っております。
#226
○中曽根内閣総理大臣 日本防衛というものが中心で、憲法で認められている自衛隊あるいは安保条約があるのでありますから、それ以外のことは協力はしない、そういうことになります。
#227
○松本委員 中曽根内閣が決定いたしました中期防衛力整備計画ではP3Cを新たに五十機購入をして百機体制にする、アメリカのP3Cは広大な北西太平洋で三十六機、非常に異常なものであります。P3Cは一機で四国同様の面積でソ連の潜水艦を見つける能力を持っているわけです。
 最近の政府の答弁書によりますと、シーレーン防衛に関する周辺海域の範囲について「太平洋、東シナ海、日本海、オホーツク海」と述べております。オホーツク海といいますのは、アメリカの国防総省報告の「ソ連の軍事力」では原潜のたまり場と言われているところであります。P3Cはこのオホーツク海でソ連の原潜の哨戒、監視に当たるということになるのではないか、この点についての政府の見解を聞きたいと思います。
#228
○加藤国務大臣 御承知のように、我が国の防衛力整備はあくまでも私たちの国の自衛のためであり、そして専守防衛の原則に従っているものであります。特に私たちの国のように海洋国家であるがゆえに安心感を持てる国としては、プロペラ機にコンピューターを乗っけた、言うなれば攻撃力を余り持たない、ただどのような状況に我が周辺海域がなっているかということを調べる目的のP3Cをほかの国々よりも多く持っても、またそれは当然のことのように思います。それは我々の国の攻撃力を持たない、常に情報を収集し専守防衛に徹する国の特性を示すものではないかな、こう思っております。
#229
○松本委員 私のお聞きしていることは、P3Cはオホーツク海のソ連原潜を哨戒するのかということをお聞きしております。
#230
○西廣政府委員 自衛隊のP3Cは、御承知のように北海道はオホーツク海にも面しておりますから、日本周辺の海域の哨戒を行いますので、ソ連原潜を哨戒するという特定の目的じゃございませんが、我が国周辺の海域の哨戒を行うことは当然ございます。
#231
○松本委員 ソ連の原潜も哨戒をするのでしょう。いれば当然わかるでしょう。
#232
○西廣政府委員 ただいまお答えしたと思いますが、我が国の防衛力というのは特定の国を対象にして、そこの国の何か特定のものを哨戒するということではなく、我が国防衛のために我が国の周辺海域なりあるいはシーレーンの哨戒等を行うということでございます。
#233
○松本委員 立木議員が参議院で五十七年四月二十日に聞きました。このP3Cによる戦術情報を米軍に提供するという行為は憲法上どうなるかということについて、九条の解釈に照らして合憲だという答弁が法制局長官からなされた。私はこれは非常に重大なところへ来ているというふうに思うのですが、改めて本会議で我が党の不破委員長が聞いたことについて総理に確かめておきたい。
 不破委員長は、P3C情報を米軍に提供するという問題について、軍事機密だということで四年前は答弁を拒否されたということを断りながら、アメリカ有事の際に米軍にP3CやOTHレーダーの情報提供をしないということが明言できるかという質問を本会議でしました。ところが、総理大臣はいとも簡単に、日本の防衛目的として軍事情報の交換が含まれていることは当然だというふうに答弁された。これは私は本当に重大な答弁だと思います。アメリカが有事です。日本は平時です。そのときに、それをわざわざ我が党の委員長が断って質問したのに対して、軍事情報を交換されるのは当然だ。これは私はアメリカの戦争に日本が参戦をする、あなたは今自衛の範囲でだけだと言ったけれども、実際は違うということですよ。国際的にも、なるほど日本はそういうふうにしているのか。P3C情報は、今否定をしていましたけれども、否定じゃないな、正確に答えないでごまかしていましたけれども、ソ連の原潜を探査するということはもう明白ですよ。その情報を伝えるということになれば、これは日本はまさに核戦争に巻き込まれるということになる。あなたの答弁はそういうことを意味していると思います。総理にもう一度確認をいたしますか。
#234
○中曽根内閣総理大臣 この前申し上げたとおりであります。日本防衛のために行うということは安保条約上認められておると思います。
#235
○松本委員 これは私は本当に重大な答弁だ。私はわざわざ断ってお聞きしたけれども、改めて確認をされました。
 これは憲法の考えているようなものでは絶対にないですよ。それは戦争放棄でしょう、それから戦力は持たない、それから交戦権は認めない、それから諸国民の公正と信義に信頼をして、我々の安全と生存を保持しようと決意している、前文の精神とは全く違います。それは個別的自衛権だということで言うわけですよ。参議院本会議でもそう答弁をしました。
 これは国際的には絶対に通用しないことであります。私はそういう答弁を聞きますと、これはもう完全に憲法を無視している。自衛隊を持つというだけではない、共同作戦で核を使用しようとする米軍とも共同作戦をするということを認めている。今の答弁も軍事情報を提供するのは当然だということを言うということになりますと、警察予備隊ができたときに在日米軍軍事顧問の初代幕僚長のフランク・コワルスキーという人が、これは時代の大うそが始まろうとしているということを言いました。全くそうだと思いますよ。憲法の範囲内だと言いながら実際には共同作戦をやる、自衛隊をどんどん大きくする、このような時代の大うそは断じて暴露されなければならぬと私は確信をいたします。
 質問としては次に移りたいのですが、千島のことを一言お聞きしておきたいと思います。
 これは不破委員長が本会議で我が党の立場を明確にしながら質問をいたしました。私も詳細にやりたいのですけれども、十分な時間がありません。我が党はサンフランシスコ条約の千島条項を廃棄をして全千島の返還を要求するという立場であります。
 私が一つ聞いておきたいのは、安倍外務大臣、この本委員会で一九五六年の日ソ共同宣言を出発点として交渉していきたいという答弁をされました。
 この一九五六年の日ソ共同宣言というのは、歯舞、色丹を日本に引き渡すことに同意をするということがありますが、ただし、これらの諸島は、日本国とソ連との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとするということになっているわけであります。
 我々は、我が党は、それでは今意見があるのです。といいますのは、歯舞、色丹というのはもう北海道の一部なんです。いかなる意味があっても、どんな場合であっても、ソ連が領有するということを正当化することのできないそういう島なんです。直ちに引き渡すべきことなんです。これは平和条約による領土の最終画定まで待つ必要の全くないものなんです。すぐ返すべきだ、こういう立場で交渉しなければならぬものだと思うのです。我が党は一九七九年に今の宮本議長がソ連へ行って共同声明を出しましたが、このときには、今までソ連は領土問題は解決済みと言っていたのですが、そのときに平和条約締結について引き続き意見を交換するということになりまして、いわば継続協議ということになった。今度は日ソ外相会談でそういうことになったということで、これは国レベルでもそうなったということで我々は歓迎するわけですが、この歯舞、色丹について、最終平和条約に至らない中間条約で歯舞、色丹はすぐ返せという問題を提起しているのです。私は、日本政府も、歯舞、色丹はもう北海道の一部で、難しいことを言わなくてもすぐ返すべきなんだという立場で交渉すべきだと思うのですが、いかがですか。
#236
○安倍国務大臣 これはもうおっしゃるまでもなく、歯舞群島、色丹島、それから国後、択捉は歴史的にも条約的にも日本の領土以外であったことは一回もないわけですから、我々は北方四島は直ちに返してもらいたい、日本の領土であるという確信を持ってソ連との間で交渉をいたしておるわけで、これからもいたすわけです。
#237
○松本委員 歯舞、色丹と国後、択捉は少し性質が違うのですね。そのことは本会議で不破委員長が言いました。総理自身も南千島という言葉を本会議で使われるのですよ。だから、あれは千島でないと言いながら、ちゃんと答弁では南千島と言われるのですよ。だから、それが最大の日本政府の交渉の弱点なんです。ただ、私時間がありませんからこの問題はこの程度にいたしますが、本委員会でも、またほかの委員会でも我が党はこの問題を追及するでしょう。
 次は、経済と国民生活の問題に入りたいと思います。
 減税問題は非常に各党も、今までも本委員会で議論がされました。これは非常に切実な要求になっております。正月に発表されました新聞の世論調査でも、今政府に何が一番やってほしいかということの一番大きいのは減税なんですね。しかも八〇年のときと比べますと、五年前に比べると二倍以上の人が減税をやってほしい、こういうふうに言っております。これは国民の要求が非常に切実だという点でも、それから今、日本経済は内需を拡大するということが非常に重要であります。国民総支出の六〇%を占める個人消費を中心に内需の拡大をするということが最も重要なわけでありますが、我々は減税と、それから賃金の大幅引き上げ、労働時間の短縮、それから社会保障の圧縮から拡大、これが個人消費を拡大する上で非常に重要だというふうに思っております。二兆五千億今年度に減税をするようにということを要求しております。この要求の切実さから見ましても、日本経済の要求から見ましても、私は総理が言っているように、来年というのでは間に合わない。やはりことしやるべきだ。各党とも、野党はそういうふうに言っております。これを、今までの議論を聞いても考えを変えないのかどうか。ぜひことし減税をやるべきだということについて、改めて答弁をいただきたいと思います。
#238
○竹下国務大臣 重ねてこの場所で総理からもたびたびお答えしておりますように、昭和五十四年以来国会の論議が、減税問題の方が、かつてと違って物価問題等よりもはるかにそのウエートを占めてきております。したがいまして、今政府税制調査会の方へ、まず重圧感はどこにあるか、シャウプ以来のひずみ、ゆがみはどこにあるかということで諮問を申し上げ、鋭意それが御議論をいただいておる。したがって、整合性のとれた税制というものを念頭に置きながら、いずれ秋ごろには抜本改正の答申がいただけるでございましょうから、それを受けた段階で考えるべきものであって、いわばこの財源をいかにするかとか、共産党の案は軍事費の削減等々でそれなりの、数字の上では私も拝見さしていただいたことがありますが、やはり全体にあるべき税制の姿と、そして財源をどうするかということを含めて、税制調査会の結論を待った上で対応をすべきである、このように考えております。
#239
○松本委員 総理は本会議で大減税をやるというふうに言われたのですね。竹下大蔵大臣の今の御答弁では答申を得てから考えると言われるのだが、大減税をやるということを総理大臣が言った以上は、自分の頭の中では財源をどうするかということがあってしかるべきだと私は思うのですよ。
 私の考えでは、大きな政策転換、私どもが言うような軍事費の大幅削減とかあるいは不公平税制の是正とか、そういうようなことをしない限りは、これは財源は大型間接税などに求めざるを得ないんじゃないかという感じがいたします。現に自民党の村山調査会もそういう方向で出ているし、NIRA、総合研究開発機構もそういうような趣旨の報告、意見を出しております。その中身はやはり大企業減税、金持ち減税、しかも大型間接税導入、マル優の廃止というようなものが含まれている。
 私は、総理が大減税をやると言っている以上は、財源について言わなきゃならぬと思うのです。自分で言わなければ別ですよ、答申が出てから考えるというのなら別だが、自分で言ったんですから、総理大臣としては何を考えておられるのか。私は財源として大型間接税は絶対にやってはならぬというふうに思います。それをやらぬということも明言をされたいと思いますが、その大減税をやるという財源についてどう考えているか、お答えをいただきたいと思います。
#240
○中曽根内閣総理大臣 国会でしばしば申し上げておりますように、シャウプ税制以来のひずみやゆがみや重税感というものを抜本的に改革する案をお願いします、そう言っておるので、そういう点からもこれは大減税になるだろう、そう思っております。しかし、その内容については我々は一々干渉しないで、そして国会の論議等を踏まえて税制調査会でいろいろお考え願いたい、こういうふうに申し上げておるわけであります。
#241
○松本委員 中身を言わないで大減税をやるということだけ言うというのは、私は本当に選挙対策だというふうに思います。総理大臣の発言としては、そういう責任のないことでは本当に困るのではないかというふうに思うのですね。
 総理はかつて、税の極意というのは、羊が鳴かないようにもをむしることだということを言われました。驚きましたけれども、そういう手法かということを私は感ぜざるを得ないのですね。
 この問題については、本当はもっともっと論議をしなければならぬと思います。今までも議論がありましたし、私たちこれからもこのままでは済まないのですが、そこで私は委員長にお願いしたいのでありますが、やはりこの問題は各党も要求していますし、私どもも今の答弁で絶対に承服できない。やはり集中審議をやっていただきたいと思います。また、我が党はもう組み替え要求も理事会に出すと思いますので、政府は今年度やらないと言いますけれども、各野党はことしやるべきだ。それで、予算委員会理事会で、今年度の減税についても協議ができるようにしていただきたいというふうに思います。
#242
○林(義)委員長代理 御提案は承っておきます。(発言する者あり)理事会におきまして協議いたすことにいたします。
#243
○松本委員 それでは、次へ行きたいと思いますが、社会保障の問題であります。
 今度はまた老人医療が老人保健法の再改悪で、これは本当に深刻な影響を与えているのですよ。社会保障の改悪の場合、いつも老人が突破口になっている。老人医療が有料化をされて、それから健康保険の改悪、年金の改悪、ずっと来ました。今度は第二ラウンドで老人医療が改悪をされるということです。これはどういう状態に老人を陥れるかということで、私は調査してみたのです。
 東京の中野区では、去年の九月に高齢者の入院に関するアンケートをとりました。そうすると、大体一カ月の収入、夫婦五万円未満の人が三分の一ぐらい、十万円以下の人が五割ぐらい。入院費用はどうかというと、これはいわゆる患者負担というだけにとどまらないのですね。差額ベッド料、寝具料、お世話料、おむつ料とかいろいろあって、月十万ぐらいかかる。それで、有料化が実施をされてから後、老人の外来受診が減ってきているという状態になっております。
 私は、東京の板橋区で老人にいろいろ意見を聞きました。そうすると、年金を遺族年金で八万円もらっている。これはひとり暮らしのお年寄りとしては、老齢福祉年金が大部分で三万円以下ですから、比較的恵まれているという状況でしょうけれども、それでも大変なんですね。部屋代を払う、電気料を払う、光熱費を払うということになったら、本当に同じようなものを毎回食っているという。この方々に私は老人保健法がこういうふうに変わりますということを説明して、どうしますかと言ったら、やはり入院はできない、一年入院したら十八万かかるというのでは入院はできない、お医者さんにそう言われたら、これは入院を断りますというふうに言っていました。これは大部分じゃないでしょうか。
 総理は、施政方針演説では、寝たきり老人や障害者などにはきめ細かい配慮をするという。老人医療を改悪することがきめ細かい配慮になるのですか。私は、総理の言われるきめ細かい配慮というのはどういうことになるのか、答弁していただきたいと思います。
#244
○中曽根内閣総理大臣 老人医療につきましては、我々もいろいろ腐心しておるところでございます。なるたけ老人の皆様方に御安心して老後を養えるように、私たちも全力を尽くしてまいりたいと思っておるわけであります。
 しかし、一面において、国家財政全般を見まして、その中でも多少とも今回は老人に対して御負担を願いまして、そしてこの老人医療制度を永続的に末永く安定して維持できるように、そういう考えに立ちまして行っているのでございます。しかし、寝たきり老人とか難病の方とか、そういう特殊な方については、予算もふやし、また積極的な努力も今しておるわけでございます。
#245
○松本委員 永続的にこの制度を維持しようということなら、お医者さんにかかれない制度がずっと永続するということなんです。これは大変なごとなんですよ。この今の改悪された場合にはかかれないという。
 それから、入院をした人はもちろんのことです。外来の人も、例えばお聞きしましたけれども、目が悪いというような方はしょっちゅう転ぶから、けがをするから外科へ行かなければいかぬ。それから、年寄りですから内科も悪い。そうすると、月千円と言うかもしれないけれども、三千円なんですよ。それはもう本当に苦しいですよ。これはそういうような医者にかかれないという状態を永続させるということになって、これこそ大問題だと思うのです。
 私は、この金額というのは、老人保健法の改悪によって負担がふえる金額というのは九百六十億ですね。これに大体見合うものは、軍事費でいうと、パトリオットが九百六十八億、P3C十機で千七十五億、それからF15十二機で千百九十二億、どれか一つやめただけで老人保健法の改悪はやらないでいくんですよ。私は、軍事費を削って暮らしと福祉、教育の充実をという、これは単なるスローガンじゃないんですよ。本当に現実政治の中で軍事費を選ぶか、福祉を選ぶか、軍事国家を選ぶか、福祉国家を選ぶかという問題なんです。総理はその選択で軍事を選ぶということになっているんですよ。
 もし本当に弱い者に配慮をされるというのならば、老人保健法の改悪をやめるということを言われるべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。
#246
○中曽根内閣総理大臣 老人も大事ですし、国の防衛も大事だと思います。国の防衛を積み上げるということをおろそかにしたら国自体がひっくり返ってしまって生活自体が吹っ飛んでしまう、そういう危険性も潜在的にはあるわけであります。
#247
○松本委員 今、核の冬とか核の夏とかいうようなことがあります。それからもっと小さい規模でも、小規模の核戦争でも、例えば巡航ミサイルの二十発ぐらいで大飢餓が起こるということも発表されています。だから、私たちの命を守るという問題は、軍拡じゃなくて、あなたも言っているでしょう、平和と軍縮と言って。それをやることなんですよ。軍縮をやって、そして世界の平和を確保する、それが民族の生存をかち取る道であり、人類の生存をかち取る道なんです。それで、そういう立場で大幅な軍事費を削減をする、そして国民生活を向上さすということが本当の政治家の選ぶ道だというふうに私は思います。
 健康保険の問題に移りたいと思います。
 健康保険が改悪をされましてからどうなっているか。検査や薬は要りません、金が心配だからもう要りませんという人も出ている。それから、治ってないのに退院する人も出ます。それから手おくれになって死亡する人も出ています。そういう状況であります。
 ところが、受診抑制が起こって一挙に黒字になりましたね、健保財政は。六十一年度末で積立金の見込みは三千九百億だということです。ところが政府はこの黒字に目をつけて、六十年度予算で九百五十億国庫補助削減を行いました。そのときに政府は、この特例措置は一年限りとすると言っていたところが、今度またそれを六十一年度も千三百億国庫補助の削減をやる。これは将来医療保険に対する国庫負担をゼロにしたいと考えているけれども、そういうのの先ぶれじゃないかというふうに私たち思わざるを得ないのです。もしそうでないというのならば、この削減をした元利をいつ返すのかということを明確にしてもらいたいと思います。
#248
○花輪政府委員 お答え申し上げます。
 政府管掌健康保険の財政状況でございますが、五十九年度末二千四十億ということで、六十年度の特例措置といたしましては九百二十九億でございます。引き続きまして六十年度におきましても千八百七十二億の剰余が現在見込まれるという段階に立ち至りまして、六十年度に引き続きまして六十一年度においても千三百億の特例措置を講ずる、こういうことにいたしておるわけでございますが、この特例額は、いずれにいたしましても健保の財政状況、収支状況に応じまして一般会計の方から健保勘定に繰り戻す、こういうことに法律上明記をいたすことと予定いたしておりますので、健保財政の適正な運営という意味では支障を将来とも生ずるものではないというふうに考えているところでございます。
#249
○松本委員 いつ返すのかと言っているのです。
#250
○花輪政府委員 これは短期保険でございますので、財政状況といたしましては、毎年医療費等の変動が非常に大きい要因がございます。したがいまして、いつということは法律上も書いてございませんで、やはり短期負担で一番大事なことは、財政上必要になった場合には必要額が必ず繰り戻されるということがポイントであると考えておりまして、そのような規定を法律上設けた、こういうことでございます。
#251
○松本委員 結局、いつ返すかということを言わない。これは結局健保財政の補助の削減をしていく、これを永続化していくということですよ。この健康保険の保険料は引き上げる、そして一割は自己負担にする、そして黒字になったら国庫補助をカットをするというやり方なんですね。これは本当にひどいというふうに思います。しかもこれを二割にもしようという。私どもは、当然これはもとへ、しれだけ黒字が出ているんだから十割給付に復活すべきだと思います。それだけではなくて、今国立病院の統廃合問題が起こっています。二百五十三の三分の一の国立病院、療養所を切り捨てていくという問題ですね。これらを見ますと、老人医療の問題にしても健保の問題を見ましても、国立病院の統廃合問題にしても、日本の医療はもう重大なところへ来ている。私は、政府がこういう施策をやっていったら、本当に国民の医療は、健康は完全に破壊されるということを警告をして、次の問題に移りたいというふうに思います。
 次は円高、中小企業の問題であります。円高問題につきましては、これはアメリカの要請に基づく政府主導の円高誘導というもとで、電気でありますとかガスでありますとか大手の石油会社などは非常に大きな円高差益を得ている。我が党は、これらの大企業が三兆五千億の利益還元をすべきであるということを主張をしております。これは本委員会でもまたさらに詳しく論じられると思いますので、このことはおいて、私は中小企業への打撃の問題を今お聞きをしたいというふうに思います。
 我が党は新潟とか東京、愛知、岐阜、大阪、兵庫等の調査に入りました。私も兵庫県の播州織の産地に調査に行きました。私が播州織の産地に調査に行きましたのは、自殺者が三人も出ている、去年の春に一名、秋に二名出ております。倒産で自殺が出ているというのはこれは重大なことだということで、どういう状況で自殺に追い込まれるのかということを中心に調査に参りました。総理、中小企業者が自殺をするということになっている状態というのはどういうことから生まれているとお考えですか。
#252
○中曽根内閣総理大臣 非常にお気の毒な事態であるとお悔やみ申し上げたいと思いますが、恐らくいろいろ借金や何かが累積してきて動きがとれなくなるという、そういうところへ追い込まれたんではないかと想像いたします。
#253
○松本委員 これはこういうことなんですよ。新しい織機を入れて頑張っていたわけですが、ある人が夜逃げしちゃった。そうすると、その人の保証人になっていた三人のうち、二名の人がこれは大変だということで、その保証人の三人のうち二人も夜逃げをしていっちゃった。残った一人の人がかぶらなくちゃいかぬということで、しかし、もし自分もそうして倒産をして夜逃げをしたら周りの方々に大変な迷惑を及ぼしちゃうということで自殺をした。これは倒産ができればいいというんですよ。倒産できないというんですよ。何でかというと、村じゅうの人たちがお互いに保証し合っている。一軒倒産したら村じゅう倒産するという状態なんです。だから機械を朝から晩まで動かし続けています。そして、奥さんと御主人が交代でやっているのですよ。だから夫婦で一緒に食事できないのですよ。それで、御主人が深夜やる、それから奥さんが昼やる、そういう状態に追い込まれているのです。政府の円高政策でこういうことになっている。これは私は、政府が責任を持って解決をしなければならぬというふうに思うのです。政府はどういうふうにいたしますか。
#254
○渡辺国務大臣 確かに、円高が非常に急激に来たために、心の準備もできないし、それから生産性の向上、その他転換等に間に合わないというようなこともございまして、局部的にそのような社会問題化しておることはよく認識をいたしております。したがいまして、政府といたしましては、中小企業の事業の転換が円滑にできるように、また当面の経営危機が回避できるように緊急の措置を実施する必要がある、そういうような観点から特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法等をつくりまして、信用の補完、税制の特例その他できるだけのことはやってまいりたいと考えております。
#255
○松本委員 事業転換というふうに言われるのですけれども、例えば播州織を例にしますと、播州織やめて何をやれと言うのですか。どこへ行けと言うのですか。例えば播州織の場合に、通産大臣、どういうふうにお考えですか。
#256
○渡辺国務大臣 できるだけ現在の事業が残れるように、政府としては助成といいますか、そういうようなお手伝いをもちろんいたしますが、中には他に転換可能なものについては、転換をしたいという方にはそのお手伝いといいますか助成をしていかなければならぬ、そう思っております。
#257
○松本委員 播州織の産地では、播州織は天然記念物にされるんじゃないかと言っていますよ。本当に急激な円高でどうしようもないと。今一番の要求になっているのは何かというと、今通産大臣は、今までの事業を続けられるようにと言われたでしょう。あしたの借金に困るのですよ。私に話をしていた人が、あと一カ月後にどうなっているかわかりませんと言うのですよ。そうすると、何をしてほしいかと言ったら、据え置きの融資だ、しばらく返さなくていい金を貸してほしいということなんですよ。それ以外にないですね。これは災害と同じなんですよ。何も自分の商売が下手でそうなったんじゃないのですね。だから、私は政府が救済すべきだと思うのです。地方自治体も、西脇市も、これは災害と同じように考えますというふうに当局者が言ってました。私は当然だと思いますね。だから、私は政府に提案したいのは、激甚災害の被害者、特別被害者融資、あれ並みに、これは災害と同じですよ、あれ並みに年金利三%、返済期間も三年据え置き、十年返済ぐらいの制度をやるべきじゃないか。それに踏み切らないと自殺者がどんどんふえます。倒産も夜逃げもどんどんふえます。それに踏み切るべきじゃないですか。
#258
○木下(博)政府委員 昨年秋の円高が進みまして以来、各地の産地における状況を私どもは十分調べておりまして、前回三回目の調査も実施したわけでございます。御指摘の播州、西脇の産地においてもいろいろ影響を受けているという企業はあるようでございます。そういう状況でございますので、昨年の十二月の初めから中小企業金融公庫、国民金融公庫等による緊急融資を実施いたしまして、当初は六・八%の金利で実施いたしましたが、一月二十日に五・五%に引き下げることを決めまして、それを十二月の初めまでさかのぼっております。そういう緊急融資制度、あるいは今度法案を通していただければ、それに基づいて信用保証協会に基づく別枠保証、そういう形で、金融面でそういう困った中小企業の方々に対する支援措置を行っていきたいと考えております。
#259
○松本委員 五・五%に金利を下げたのでと得々と言われたけれども、金利の問題じゃないのですよ。こんなのは借りられる状態じゃないのです。借りられない人が借りられるようにしなくちゃならぬのですよ。それが今の対策なんですよ。それはしばらく返さなくてもいい融資なんです。だから今の答弁では、西脇の人であろうと播州織の人であろうと、そのほかのところの人であろうと、そんなものは、政府は何を言っておるんだ、実情を知らぬも甚だしいということになると思うのです。私ははっきりと、据え置きの融資、しばらく返さなくてもいい融資を政府が考えるべきだということを要求します。
#260
○木下(博)政府委員 昨年の十二月から実施いたしました融資では、据え置き一年で五年返済という形で実施いたしておりますが、今度の法案を通していただければ、特別の場合には据置期間を長くする、それから返済期間も長くするということを考えていきたいと考えております。
#261
○松本委員 予算はこれは十一億なんですね。こんなものではとても私はだめだと思います。この予算、もうふやすべきだと思いますが、大蔵大臣どうでしょう。
#262
○木下(博)政府委員 五・五%の低利融資を実施するために必要な利子補給の予算は十分に確保できると考えております。
#263
○松本委員 ただ私は、これだけでは不十分だろう、今の答弁だけでは不十分だろうと思います。といいますのは、大企業にはもっとやっているのですよ。通産省予算の場合、航空機開発についてはYXXあるいはV二五〇〇エンジンの開発資金用に、これまでの補助金に加えて無利子融資制度をつくろうとしているじゃないですか。それから石油産業に対しては年金利三・五%の融資制度を新たにつくっているという、そういう大企業と、今本当に自殺をする、夜逃げをするという中小企業と比べた場合に、この格差の大きさといいますか、政府の姿勢の違いというのはもう明白だと思いますね。抜本的な再検討を私は総理大臣に要求したいと思います。
#264
○木下(博)政府委員 融資の金利は、ほかの中小企業に対する融資よりはるかに低い金利でやっておるわけでございますし、政府関係金融機関の出します融資金利、例えば住宅金融公庫の金利、そういうもの等と均衡を持たせるように決めたわけでございます。ただし、中小企業に対しましても、中小企業事業団による高度化融資というようなものでは非常に低い金利あるいは無利子融資が適用される場合もあるわけでございます。
#265
○松本委員 やはり中小企業庁長官ではこれは解決できないと思うのですよ。この一年据え置きという、これもなかなか借りられない制度になっています。だけれども、一年ぐらいで円高が解決するかというと、しないでしょう。解決するまで面倒見るという状況にしなかったら、今本当に命の問題になっているのですよ。私は、この問題についてやはり総理大臣とか大蔵大臣とか通産大臣が確固として、それはわかった、それなら考えるということにならなければ、予算委員会の審議をやっている意味はないじゃないですか。大臣が責任のある答弁をされたいと思います。長官はもう結構です、さっきから何遍もお聞きしているから。今までの枠を超えてやるべきだということを言っているのですよ。
#266
○渡辺国務大臣 だから政治的判断をいたしまして、特定中小企業者等の事業の転換の臨時措置法を提案したわけですから、まずそれを成立させて、できるだけ救済できる措置を講ずることから始めたい、そういうことで、できるだけのことはいたします。
#267
○松本委員 事業転換ではないということは再々言ったとおりです。私は、本当に自殺したり夜逃げしたりという人がなくなるようなことをやってこそ政治だと思います。そのことを強く要求をいたしまして、次は国鉄の分割・民営化問題をやりたいと思うのです。
 これは、国鉄の財政破綻の原因を完全にすりかえて、そして長期債務に加えて国鉄に関係のない借金までずっと集めて、三十七兆円に水膨れをさせている。十七兆円を国民負担にさせる。これは四人家族、二十五年間で毎年四万七千円に当たります。そして十万近い余剰人員をつくって大量の首切りをやろうとしているということでありますから、労働組合が反対をする、それから識者も反対するというのは当然のことであります。
 私は何点かをお聞きしたいと思いますが、この国鉄財政の破綻を決定的にしたのは利権絡みの過大投資なんです。これらは、一九六四年に単年度赤字が生じたときに、国鉄は主として設備投資の抑制をやった。国鉄の財政再建推進会議の意見書では、「ここ十年間の設備投資規模をおおむね三兆七千億にする。」政府もそれに沿った再建方針を決めたのですが、田中内閣のときの日本列島改造論に基づく膨大な設備投資がやられました。田中角榮氏が総理になってから半年後の一九七三年二月には、国鉄の投資限度についてのそれまでの決定は御破算になって、三兆七千億の決定が御破算になって、設備投資規模を一挙に三倍にした。再建期間中の日本国有鉄道の工事費は十兆五千億とするという大転換をやった。このときに、過大投資をする際に、これは国鉄の財政再建とは無関係だということを政府関係者も明言したわけです。例えば、当時の磯崎国鉄総裁は、七〇年の五月十二日に参議院の運輸委員会で、「推進会議におきましては、全国新幹線は、山陽新幹線以外は全然国鉄の再建計画と別だということがはっきりされております。」それから橋本運輸大臣も、七〇年五月十三日に参議院の運輸委員会で、「国鉄の財源計画に対して、別個の道でいけという、従来の新幹線のように国鉄の財政の中でまかなうんじゃないんだと、別個の金でまかなえと、」「政府に対して一つのくさびを打った」ということを答弁をしております。ところが、この公約は完全にほごにされている。国鉄の赤字は雪だるま的にふえていったわけであります。
 私は、こういうふうに国会で大臣などが答弁をした、政府がこういうふうに言ったということが、こういうふうに投げ捨てられて変えられていくということになったら、これは重大なことだと思うのです。この責任は一体どうとるのか。同じ自民党内閣、内閣の継続性という問題でありますから、やはり総理に伺うのが一番いいんじゃないかというふうに思うのですけれども、かつて、橋本運輸大臣を初め国鉄総裁などがそういうふうに答弁してきた。それが全くほごにされたということについての責任はどうなるのか、御答弁をいただきたいと思います。
#268
○三塚国務大臣 私からまずお答えをして、総合判断を総理からお聞きをいただければと、こう思うのであります。
 ただいまあなたが、全部赤字が、列島改造の分がどうだこうだと申されましたけれども、政府はそのときの基本計画、整備計画に基づいて新幹線は新幹線として行う、こういうことなんですね。東北新幹線、上越新幹線。さらに、線増でありますとか、大都市交通線の改良でありますとか、そういうものにも投資をしてきたことは御案内のとおりだと思うのです。昭和六十年度の推計で長期債務はどれだけあるかというのも監理委員会の計算にも出ておりますし、政府が試算をいたしておりますものもございます。六十年度末現在でアバウト二十三兆六千億円。そのうち累積赤字によりますものがどれくらいあるのかというふうに申し上げさせていただきますと、それは八兆九千、約九兆円、こういうことになりますね。減価償却分のやつも入れて五兆一千、十四兆、こういうことになっておりますね。それで、言うなれば、建設国債分というわかりいい話を申し上げますとそういうことになるわけでありますが、試算として、線増があり、新幹線が建設をされましたという分を見てみますと九兆六千億円であります。ですから、大ざっぱに言うと、アバウト十兆円建設国債分、アバウト十三兆円赤字国債分ということで、運賃収入によって賄い切れない運営費分が調達をされ、そこで国鉄というものが今日まで出てまいりました、こういうことであります。列島改造は列島改造としての論文であったわけでありますし、さらに政府は政府としてその都度新幹線計画を鉄道建設審議会の議を経て、これは各党の代表もお入りになっておるわけでございます。そういう中でこのことが取り進められ、今日まで来ておるということであります。
 また、新幹線が決してそのことが赤字のすべてに相なったということではないことも、御利用いただいておる皆さんがよくおわかりのいただけるところであるわけですね。東北新幹線、上越新幹線、それらすべて地域開発のために大きなプラスを果たしておりますことも御案内のとおりでありますし、地方税収入にもはね返っておるということであります。
 ただ問題は、国鉄が危機的状況に相なったものでございますから、この危機的状況の中で、これを打開するために、答申を尊重しつつ政府としてただいま法案作成の最中でございますが、一つは提出できることに相なりましたが、これを御提出をさせていただきまして、その中で十分な御審議をいただき、国民の御理解をいただかなければならぬ、このように考えておるということであります。
#269
○松本委員 私は、今聞いているのは運輸大臣、かつて運輸大臣が答弁をしたことが全くほごになっている。この責任は一体とらないでいいのか。私の質問を聞いてなかったのですか。そのことに限って、その責任は一ちょっと待ってください、まだ私が聞いておる最中なんです。これは、なぜこれが大事かというと、今ここで私たち審議をしていますね。答弁をされます。大臣が答弁をされます。それが次に内閣がかわったら、どんどんどんどん勝手に変えていくということになったら、予算委員会やその他で審議をしている意味はなくなるのです。そのとき出任せを言って、とにかく矛先をかわしさえすればいい、別のことでも長々しゃべっていればいい、そういうようなことになったら国会の審議はめちゃくちゃですよ。だから、かつて運輸大臣が答えたことがほごになっているということについてはどう責任をとるのかということです。
    〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
 これは内閣の責任の問題なんですよ。だから、これは私は、やはり三塚さんの答弁ではさまになっていないのですよ。総理大臣、お答えいただきたいと思うのですよ。
#270
○棚橋(泰)政府委員 先生の御質問は、当時の橋本運輸大臣が全国整備新幹線法、これは議員立法でございましたけれども、この制定の際の質疑応答の中で申されたということだと思います。
 その際の橋本大臣の御答弁は、当時、御承知と思いますが、全国に九千キロの整備新幹線を張りめぐらす、そのために十一兆円の資金が要るというような前提でこの全国整備新幹線法を提案されておりましたので、そのような新幹線の中にはいろいろな新幹線もある、そういうようなものをすべて国鉄の負担でこれを負っていくということはとてもできない、そういう意味で、それについては何らかの措置が必要であるという趣旨で申し述べられたものというふうに私ども解釈いたしております。
 その後、建設いたしました東北・上越新幹線につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、鉄道建設審議会等の議を経まして、それなりの助成というものを国においても講ずるということを前提といたしまして、長期的には収支が相償うものであるという考えのもとに建設が進められて、今日に至っておるわけでございます。
#271
○松本委員 そういう答弁では私は全然納得しませんが、次の問題を聞きます。
 本委員会で問題になりました売却用地は二千六百ヘクタール、これは、国鉄の全土地は六万六千八百五十ヘクタール、そのわずか四%なんです。これは一体幾らなのかということを、全土地は一体どのくらいになるのかということをお聞きをしたいと思うのです。
 これは、自民党の国鉄基本問題調査会国鉄再建に関する小委員会の会議録を見ますと、岩瀬常務理事は、「原簿価格で申しますと六千八百九十九億円」。それで三塚運輸大臣が当時小委員長でしたね。小委員長が、アバウト何倍ぐらいになるのか、時価でどうだということを聞かれて、百倍ぐらいにはなると思いますという答弁で、結局そうすると七十兆なんですよ。膨大なものですが、一体時価で国鉄の全土地、幾らぐらいになるのですか、国鉄総裁。
#272
○杉浦説明員 簿価につきましては先生御承知のように八千九百六十八億円ということでございます。時価につきましては現在のところ算定をしておりません。
#273
○松本委員 私はこれは重大なんだと思うのです。単に売却用地だけの問題ではないと思います。
 この答申によりますと、全部で六兆円の事業用資産、それが四兆三千億の長期債務を抱えるだけで民営会社に引き継がれることになります。北海道、四国、九州はそれぞれ三千億、一千億、三千億の資産をただで引き継ぐということになっております。そのほかの東日本、東海、西日本会社は簿価で引き継ぐということになるんでしょうが、これは実に低いのです。
 例えば、山手線は簿価五百五十七億です。山手線で一年度、五十九年度の利益は五百億だというんですね。そうすると、一年間でその簿価に当たるものはもうもうけちゃうということになる、その簿価で渡すというわけですからね。これはもう本当に二年目以後は丸々もうけということになる。こういうようなことになるということを、やはり国民が十七兆円の負担をさせられるかもしれぬということでありますから、これは資産内容を知るのは当たり前の話だと思います。再建ということになれば、資産が全部わかる、債務が全部わかる、そしてこういうことだからこういうふうに再建をするんだということが国民にわかるようにしなければならぬというのに、資産が全然わからないということではこれはお話にならぬと思います。
 運輸大臣にお聞きしたいのですが、全資産の明細が、どこにどれだけあってどれだけの価値があるんだ、時価でどうかということを明らかにしてほしいと思います。
#274
○棚橋(泰)政府委員 国鉄の全資産は、先ほど総裁から申し上げましたように、簿価では算出いたしておりますけれども、時価というものでは算出いたしておりません。
 先生、どのくらいの時価であるかという御質問でございますけれども、国鉄の全資産は大変膨大なものでございまして、これを時価に換算するというのは大変な作業でございます。それともう一つは、国鉄の資産の大部分は鉄道でございます。鉄道は鉄道として使っているがゆえに価値があるわけでございまして、それを売却した場合には鉄道でなくなるわけでございますから、そういうものを時価で換算するということ自体はある意味では余り意味がない、そういうふうに考えておるわけでございます。
 今回の監理委員会の答申では、新しい発足する会社というものは健全な会社としてスタートさせる。そういう意味で、資産に見合うものとしては原則として簿価に見合う債務を引き継ぐという形で、鉄道というものを立派な経営にしたい。ただし、当面その株は全額国鉄が出資いたしますから、その会社というのは特殊会社でございますから、そういうものが健全な形でスタートするということは国民のための利益でもございますし、また、株を持ちます国側にとっても国民側にとっても、そういう株を持つということにおいて、その会社が健全になるということは国民のためになる、そういう考え方で健全な会社をスタートさせる、かように考えております。
#275
○松本委員 国民は私は絶対納得しないと思いますね。この国鉄の土地について、利権絡みでこういうふうに方々で指摘をされています。こういう利権が生まれる、土地が安く売られるんじゃないか。投書にも出ていました。そんなに安く売るんなら私に売ってほしいという投書まで出ていました。そういう国民がこの問題については重大な疑惑を持っている。ただ、私、時間の関係もありますので、これはこの程度にいたしますが、この問題では、国鉄問題では本当に重大な疑惑がいっぱいあります。工藤経済政策委員長が改めて本委員会でも徹底的に追及するということを申し上げて、次の問題に行きたいと思います。
 民活ということを総理、盛んに言われて、目玉に東京湾横断道とか明石架橋の問題があります。この東京湾横断道で話をしたいと思うのですけれども、これは御存じのとおりと思いますが、神奈川県の川崎と千葉県の木更津の間を十五キロメートルのトンネルと橋梁で結ぶ、そして二つの人工島をつくる、当面四車線、将来六車線とする、そういうものをつくる、横断道路をつくるというわけですね。
 総理、これをごらんいただきたい。これは千葉県側の取りつけ口の木更津で、新日鉄の関係会社のジャパンデベロプメントが買い占めている土地の地図であります。木更津だけでこのくらい買い占めています。それで、このほか木更津だけでなくて君津、富津、それから袖ケ浦、そういうところでも買っています。その総合計は千五百五・四九ヘクタール。そのほか新日鉄も直接買ったり日鉄不動産なんかも買っていますが、その総合計は千五百九十二・三九ヘクタール。これは数字で言うとわかりにくいですから言いますが、東京でいいますと渋谷区とか中野区くらいの大体大きさになります。東京以外の方にはわかりにくいですから申しますと、甲子園球場の四百二倍の広さであります。物すごいものですよ。これは、東京湾道ができましたら、新日鉄とその関係会社は大もうけになることはもう間違いないです。木更津の土地は、取得当時三・三平米で大体八千円程度であります。現在もう十万円ぐらいだというふうに言われております。それで、横断道ができると川崎の地価に近づいていって、最低でも平均二十万ぐらい、二十万だとすると差益が一兆円になるというふうに言う人もあります。この買った土地はもちろん土地としても使えますが、土砂を取って、今土砂取っています、それは工事にも使う、鉄で鉄橋をつくる、道路をつくる、それから土砂もそれに使う、それから土地も値上がりでと、それはもう大変なもうけになるわけですね。で、やっぱり新日鉄が一番利益を得るということになると思います。
 私は建設省にお聞きしたいのですが、この総事業費は一兆千五百億円だというふうに建設省にお聞きしました。そして中身は、出資金が六百億、政府保証借入金が千百億から二千三百億、政府保証債が三千八百億から五千億、開銀融資、民間借入金が千五百億から二千五百億、道路開発資金が二千八百億というふうにお聞きしましたが、そのとおり間違いありませんか。
#276
○江藤国務大臣 資金計画については、今御意見のように、道路公団、地方公共団体、それから民間、資本金約六百億を予定をいたしております。そのほかの民間資金の借り入れあるいは開銀融資あるいはまた割引債、いろいろありますわけで、大体六%の資金コストでもってこれを調達しようということで、今おっしゃったのは一応の試算でございまして、確定したものではありません。
#277
○松本委員 道路開発資金は、普通の場合は通常五年据え置き、二十年償還で、利子は半額無利子、半額七%くらいということのようでありますが、報道されているところによれば、この法律では資金の一部を無利子で貸し付けることができるということになっているようであります。無利子で貸し付ける金というのは幾らぐらいを予定していて、どういう性質の金でありましょうか、今私が申しましたものでありましょうか、お答えをいただきたいと思います。
#278
○萩原政府委員 お答えいたします。
 今先生御指摘の道路開発資金でございますけれども、これは低利の金と民間の金を合わせまして一つの資金として貸し付けるものでございます。ただいま考えております東京湾横断道路につきましては、無利子の貸し付けを含みまして大体三・七五%ぐらいの金で、先ほど大臣申し上げました六%の資金コストを確保しよう、こういうふうに考えておるものでございますが、まだ詳細についてはこれからの検討を待つところでございます。
#279
○松本委員 こういう事業に無利子というのは、先ほどの私が申しました円高で苦しんでいる中小企業と比べますと本当に違う。これは政治の方向を変えさえすれば、今死ぬ人が救えるのだということを改めて痛感せざるを得ませんね。
 それから、これは結局最後は道路公団の所有になるということでありますが、それはどうしてでしょうか。
#280
○萩原政府委員 東京湾横断道路につきましては、先生御承知のようにかなり大きなプロジェクトでございます。したがいまして、建設の間におきましては災害その他いろいろなリスクがございますので、そのリスクを民間が負担することになりますと、非常に資金コストの高いものが必要になります。そういたしますと、将来の通行料金もかなり上がらざるを得ないということでございますし、またこれは道路でございますから、本来の道路管理者である日本道路公団の所有にするというのが最も妥当であろうというふうに考えておる次第でございます。
#281
○松本委員 リスクがあるということは結局損するかもしれないということですね。これはもういろいろな識者が指摘をしています。ひどい人は、釣りをする人とゴルファーだけの道路だ、その需要はないということまで言う人もあるくらいであります。これは計算上は盛んに言われているのは片道三千円で三万通るであろう。その計算でも、関門トンネルが二万五千台なんですね。関門トンネルのようなのがそうですから、とても東京湾横断道はそんなことにならぬだろう。それだけ見てもちょっと無理じゃないかということが言われております。第二の青函トンネルになるだろうということを指摘している人までいます。これは先ほど言った国鉄と同じことですね。私はそういうことになったら本当に大変だと思いますし、東京湾が死の海になるということを指摘する学者もおります。
 私は、こういう大型プロジェクトではなくて、公共投資というのは着実に、やはり国民生活に密着をする住宅だとか、それから公園だとか生活道路だとか福祉施設だとか学校などとか、そういうところにやるべきだ、これは根本的に転換をする必要があるということを申し上げて、次の質問に行きたいと思います。これらの問題も本委員会その他でさらに追及するでしょう。
 それから伺いたいのは……(「答弁、答弁」と呼ぶ者あり)それじゃどうぞ。
#282
○江藤国務大臣 この計画はきのうやきょうに始まったことではないのです。建設省がここに橋をかけようと計画したのは、昭和四十一年の四月から実は調査を始めたわけであります。昭和四十七年には東京湾横断道路の建設の研究会がスタートをしておるのです。昭和五十年にはこれは技術的に十分いけるという結論を建設省が出しまして、そうして五十一年に道路公団に調査その他を引き継いだわけです。白米、十年間にわたって環境調査あるいはまた影響調査、採算にかかわる調査、あるいは住民、地域開発に及ぼす影響等を十分検討した上で建設をしようということになったわけでありまして、松本さんもこの道路ができましたら必ず乗られると思うのです。
 ちなみにこの道路は、東京、いわゆる首都圏南部のバイパスの役割を果たす大きな環状道路となるのです。成田から木更津、そして川崎に渡って厚木に至る、東京湾を横断する壮大な構想のもとにこれは建設される道路でありまして、これによってもたらされる経済効果というものははかり知れないものがある、こう考えておりますので、もう少し大きな気持ちでこれらの計画を見ていただきたいと思います。(「調査費も言え」と呼ぶ者あり)調査費も百億以上のものをかけておるのです。
#283
○松本委員 時間がないのが大変残念ですけれども、本当にたくさんの人がこの問題の危険性を指摘をしているということだけ言っておきましょう。
 それから、私は最後に伺いたいのは、国民主権の問題との関係で、法のもとの平等の問題です。定数是正の問題が政局の大きな問題になっていますが、詳しく論じようとは思いません。
 この問題については、法のもとの平等、一票の価値の平等ということなんです。この一票の価値の平等については、日本では普選の運動もありました。財産によって差別をしてはならぬ。あるいは婦人参政権の運動もありました。性別によって差別をしてはならぬ。これらは憲法十四条でも、それから憲法四十四条の選挙権の、選挙資格の平等の問題でもはっきりしております。
 我が党は、格差一対二未満の法案を提出をいたしました。これは法のもとの平等ということならば、どんなことがあってもできるだけ一に近いようにしなければならないのだけれども、二以上を超すということはあり得ない。住んでいる場所によって、ある場所からこの場所に移転をしたら、今まで一票だったものが三票になる、そういうようなことはあり得ない。法のもとの平等ということから考えるならば、私は、どんなことがあっても格差一対二未満ということが正しいと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。
#284
○中曽根内閣総理大臣 裁判所の判決におきましては、大体一対三というような判例が判示されておるのであります。大体そういうものであると我々は心得ております。
#285
○松本委員 立法府として、これはやはり本来どうあるべきかということが議論をされなければならぬ性質のものだということを申し上げておきたいと思います。
 最後にお聞きしたいのは、本会議で我が党不破委員長が指摘いたしました天皇在位六十年祝賀問題、この問題点を明確に指摘して質問したのですが、総理が答弁を避けられました。それでお聞きしたいのですが、第一は、現憲法が排除した戦前の天皇制支配、主権在君の時代と、その原理的な否定の上に開かれた戦後の国民主権の時代を一まとめにして、天皇在位六十年を国を挙げて祝うということは、結局、戦前の侵略戦争と暗黒政治の時代を祝賀の対象として肯定することになるではないかというのが我々の指摘であります。
 それで法制局長富、伺いますが、憲法の前文が国民主権を人類普遍の原理として、これに反する憲法、法令、詔勅を排除したわけでありますが、明治憲法は天皇を「神聖ニシテ侵スヘカラス」として、その統治権を明確にしております。それから陸海軍の統帥、宣戦、講和、立法も天皇の権限、いわば天皇主権で、これがこういうものだ、これが現憲法の国民主権の原理に反するから、明治憲法は排除をされたんだというふうに思いますが、これに間違いないかどうか。
#286
○茂串政府委員 ただいま御指摘の憲法前文の解釈の問題でございますが、確かに今委員おっしゃいましたように、この新憲法の主旨に反するような法律とか詔勅とかいったものは、これを無効とするというような規定がございます。
 それよりも何よりも、新憲法がよって立つところのいわゆる国民主権と申しますか、民主主義と申しますか、そういった基本的な原理のもとにこの新憲法はできておるわけでございまして、したがいまして、第一条以下にるるその理念に即した規定があるわけでございます。そして、天皇の場合には、確かに旧憲法におきましては統治権の総攬者であられたり、いろいろな規定がございましたが、これが新憲法におきましてはその御地位が変わりまして、第一条に「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、」主権の存する国民の総意に基づくものであるというような規定が置かれておるわけでございまして、新しい立場で天皇は、いわゆる象徴天皇としての地位が確立されたわけでございます。そのように、新憲法のもとにおいては天皇の御地位が明定されておるということがこの憲法の趣旨でございます。
#287
○松本委員 私の聞きましたのは、現憲法は国民主権の原理である、それが人類普遍の原理だ、こう言っている。だから、天皇主権というのはそれに反するから、明治憲法は排除をされたのでしょうとこう言っている。ごく簡単なことでございます。法律家としては当たり前のことだと思いますが、ちょっとお伺いいたします。そのとおりならそのとおりで結構です。
#288
○茂串政府委員 今申し上げましたとおりでございまして、新憲法の天皇の地位というのは一条に明定されておる、それによって、旧憲法に定められておりました、いわゆる統治権の総攬者としての天皇の地位がそのように変わったということでございます。
#289
○松本委員 結局、国民主権に反するからこの明治憲法の天皇の地位が変わったのだというふうに受け取らざるを得ないと思います。
 総理、お聞きしたいのですが、満州事変と言われた中国侵略も日支事変と言われました中国全面侵略も、天皇の承認なしには行われることはできなかったわけです。太平洋戦争の開戦も天皇の名で行われました。治安維持法や軍機保護法、国防保安法、その他の弾圧立法も、天皇の名で裁可をされ、公布をされ、実行されたのであります。徴兵も天皇の名で行われました。国民はそういうもとで、もう有無を言わさず十五年戦争に駆り立てられたわけであります。
 そういう点で言えば、天皇は、まさに戦前の天皇制支配が軍部を先頭にして行った侵略戦争と暗黒政治の最高の責任者の立場にあったということは、これはもう動かせない事実だと思うのですね。こういうのを戦後の天皇の時代とあわせて国を挙げて祝賀をするということは、やはり戦前の歴史から教訓を学んでないということになるんじゃないかということを私は言いたいのです。これは天皇の六十年の祝賀というのは、そういう戦前の時代もあわせて祝賀をする、それは戦前の時代についての反省をしてないということになるのではないかというふうに思うのですが、総理の見解を聞きたいと思います。
#290
○中曽根内閣総理大臣 陛下は、現憲法においては民族の国民統合の象徴として御在位になっておるわけでありまして、そしてしかも陛下は、御在位にいたしましても六十年、あるいは今までの日本歴史における御在位の天皇の中におかれましても最も長い御在位であると言われておる、お年も最も御長寿でいらっしゃる、こういうふうに非常におめでたいことが三つもあります』そういう意味において、国民の自然の感情として、象徴たる天皇の御長寿をお祝いし、みんなでことほごうというのは自然の感情でありまして、そういう自然の感情を持たない人は不自然だと私は申し上げます。
#291
○松本委員 私どもは、個人的に長寿を祝うとかそういうことは、それは個人的な問題だと思うのですよ。それはそれでいいと思うのです。それを、しかし国を挙げて祝うということが、これは戦前の時代を美化をする、そしてそれはその時代の美化であり、侵略戦争や暗黒政治を結局美化をするということになるということを問題にしているのです。自然の感情がどうかというような問題、個人的な問題では決してない。国を挙げて、国の行事としてやるというところが問題なんだというふうに思うわけであります。
 総理に伺いたいのでありますが、天皇の即位の儀式というのは十一月十日だったのですね。五十年の式典は十一月十日にやった。それを四月二十九日に繰り上げた。これはどうして繰り上げたのですか。
#292
○中曽根内閣総理大臣 政府部内で官房副長官を中心にいろいろ検討いたしまして、陽春四月のお誕生の日が一番それにふさわしいであろう、そういうことでそのようにしたわけであります。
#293
○松本委員 結局、理由は説明がないわけですよ。今経過を御説明になりましたけれども、ふさわしいというふうに言われたけれども、理由は成り立たないと思うのですよ。もし六十年ということであれば、即位の儀式の日にやるのは当たり前ですよ、五十年のときにはそれをやったのですから。それを繰り上げたというのは、これは六月の参議院選挙前にキャンペーンをやって、選挙を有利に運ぶということじゃないかと方々で指摘をされているし、私もそうじゃないかと思う。これが天皇の政治的利用だというふうに思う。そういうことはやってはならぬ。今の象徴天皇制、我々はまだ不徹底だと思いますけれども、しかしこの象徴天皇制は、天皇を政治的に絶対に利用してはならぬというのが憲法の趣旨なんです。それをそういうふうにやるということは絶対反対です。それについて総理の見解を聞きたいと思います。
#294
○中曽根内閣総理大臣 そういうお考えは、はしたない勘ぐりだろうと思います。
#295
○松本委員 それでは、さらにもう一歩進んで申しましょう。
 これは私どもだけではありません。天皇の御在位六十年奉祝委員会というのがございます。これは加瀬俊一氏が代表委員で、はっきりと改憲運動に位置づけている。それを申しますと、奉祝委員会の発足式の式場で加瀬代表委員は、奉祝行事を好機として大啓蒙運動を起こし、憲法、特に天皇条項あるいは教育の刷新の問題も提起されることになる、中曽根総理を初め政府当局においても熱心だと語り、在位奉祝を天皇元首化を柱とする改憲運動の中に位置づける。代表委員の一人の法眼晋作元外務事務次官は、もっとはっきり言っているのです。御在位六十年を祝った後は、我々は専ら憲法の速やかなる修正に余力を尽くす必要がある。(「立派な意見だ」と呼ぶ者あり)不規則発言ですけれども、立派な意見だという意見もありますね。これは、この六十年記念式典を契機として、そしてこれを改憲運動に利用している。これは明白な政治利用じゃないですか。総理も、改憲論者であるということを公言してはばからない方でございます。これを改憲運動に利用する、そういうことも政治利用ではないですか。私は、勘ぐりだなんという問題では決してないと思います。実際にこれが政治利用されるということが問題なんだと思います。いかがですか。
#296
○中曽根内閣総理大臣 民間の方が自由なる発言をすることは、憲法上認められている言論の自由であると思います。政府は、ただいま申し上げましたように御長寿をことほぐ、そういう気持ちで我々は御在位を皆さんでお祝い申し上げたい、そう思っておるわけです。
#297
○松本委員 中曽根総理の戦後政治の総決算路線というのは、これはいわゆる不沈空母発言、日米運命共同体発言から始まって、そして本当に大軍拡を進めてまいりました。そして、さらに戦時体制をつくるという法律まで出そうとしているという状態でありますし、福祉は先ほど申しましたように本当に圧迫をされております。そういう事態が生まれてきて、さらにその総決算路線を、天皇の六十年記念祝典でさらにこれを利用して総決算路線を進めていく、憲法の改悪という方向にまで持っていこうという意図が、本当にありありと私は見えているというふうに思います。そういうようなやり方に対してはもう断じて反対でありますし、国民はそういう中曽根内閣の政治の方向に決して支持を与えないだろうということを申し上げて、私の質問をこれで終わりにしたいと思います。
#298
○小渕委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後七時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト