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1985/02/13 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 予算委員会 第9号
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1985/02/13 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 予算委員会 第9号

#1
第104回国会 予算委員会 第9号
昭和六十一年二月十三日(木曜日)
    午前十時開議
 出席委員
  委員長 小渕 恵三君
   理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君
   理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君
   理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君
   理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君
   理事 吉田 之久君
      相沢 英之君    伊藤宗一郎君
      石原健太郎君    石原慎太郎君
      上村千一郎君   小此木彦三郎君
      大西 正男君    大村 襄治君
      奥野 誠亮君    倉成  正君
      砂田 重民君    住  栄作君
      田中 龍夫君    葉梨 信行君
      橋本龍太郎君    原田  憲君
      三原 朝雄君    武藤 嘉文君
      村山 達雄君    山下 元利君
      井上 一成君    井上 普方君
      上田  哲君    大出  俊君
      川崎 寛治君    川俣健二郎君
      佐藤 観樹君    多賀谷眞稔君
      土井たか子君    松浦 利尚君
      池田 克也君    近江巳記夫君
      神崎 武法君    坂口  力君
      矢追 秀彦君    大内 啓伍君
      木下敬之助君    小平  忠君
      瀬崎 博義君    中島 武敏君
      松本 善明君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  中曽根康弘君
        法 務 大 臣 鈴木 省吾君
        外 務 大 臣 安倍晋太郎君
        大 蔵 大 臣 竹下  登君
        文 部 大 臣 海部 俊樹君
        厚 生 大 臣 今井  勇君
        農林水産大臣  羽田  孜君
        通商産業大臣  渡辺美智雄君
        運 輸 大 臣 三塚  博君
        郵 政 大 臣 佐藤 文生君
        労 働 大 臣 林  ゆう君
        建 設 大 臣 江藤 隆美君
        自 治 大 臣 
        国家公安委員会
        委員長     小沢 一郎君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長官)後藤田正晴君
        国 務 大 臣
        (総務庁長官) 江崎 真澄君
        国 務 大 臣
        (北海道開発庁
        長官)
        (沖縄開発庁長
        官)      古賀雷四郎君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 加藤 紘一君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
         官)     平泉  渉君
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)      河野 洋平君
        国 務 大 臣 
        (環境庁長官) 森  美秀君
        国 務 大 臣
        (国土庁長官) 山崎平八郎君
 出席政府委員
        内閣官房副長官 唐沢俊二郎君
        内閣官房内閣審
        議室長
        兼内閣総理大臣
        官房審議室長  的場 順三君
        内閣審議官   高瀬 秀一君
        内閣法制局長官 茂串  俊君
        内閣法制局第一
        部長      工藤 敦夫君
        人事院総裁   内海  倫君
        人事院事務総局
        給与局長    鹿兒島重治君
        内閣総理大臣官
        房審議官    田中 宏樹君
        臨時行政改革推
        進審議会事務局
        次長      山本 貞雄君
        日本国有鉄道再
        建監理委員会事
        務局次長    吉田 耕三君
        総務庁人事局長 手塚 康夫君
        総務庁人事局次
        長
        兼内閣審議官  吉田 忠明君
        総務庁行政管理
        局表      古橋源六郎君
        北方対策本部審
        議官      稲橋 一正君
        防衛庁参事官  古川 武温君
        防衛庁人事局長 友藤 一隆君
        防衛施設庁施設
        部長      宇都 信義君
        防衛施設庁建設
        部長      大原 舜世君
        防衛施設庁労務
        部長      岩見 秀男君
        経済企画庁調整
        局長      赤羽 隆夫君
        国土庁長官官房
        長       吉居 時哉君
        国土庁長官官房
        会計課長    斎藤  衛君
        外務大臣官房長 北村  汎君
        外務大臣官房領
        事移住部長   妹尾 正毅君
        外務省アジア局
        長       後藤 利雄君
        外務省北米局長 藤井 宏昭君
        外務省欧亜局長 西山 健彦君
        外務省経済協力
        局長      藤田 公郎君
        外務省条約局長 小和田 恒君
        外務省国際連合
        局長      中平  立君
        大蔵省主計局長 吉野 良彦君
        大蔵省主税局長 水野  勝君
        文部大臣官房長 西崎 清久君
        文部省初等中等
        教育局長    高石 邦男君
        文部省社会教育
        局長      齊藤 尚夫君
        厚生省児童家庭
        局長      坂本 龍彦君
        農林水産大臣官
        房長      田中 宏尚君
        農林水産大臣官
        房予算課長   鶴岡 俊彦君
        農林水産省経済
        局長      後藤 康夫君
        農林水産省農蚕
        園芸局長    関谷 俊作君
        食糧庁長官   石川  弘君
        水産庁長官   佐野 宏哉君
        通商産業省産業
        政策局長    福川 伸次君
        運輸大臣官房国
        有鉄道再建総括
        審議官     棚橋  泰君
        運輸省国際運輸
        ・観光局長   仲田豊一郎君
        労働省労政局長 加藤  孝君
        労働省労働基準
        局長      小粥 義朗君
        労働省婦人局長 佐藤ギン子君
        建設大臣官房会
        計課長     望月 薫雄君
        建設省道路局長 萩原  浩君
        自治省行政局選
        挙部長     小笠原臣也君
        消防庁長官   関根 則之君
 委員外の出席者
        予算委員会調査 大内  宏君
        室長
委員の異動
二月十三日
 辞任        補欠選任
  井上 普方君    土井たか子君
  坂口  力君    矢野 絢也君
  矢追 秀彦君    正木 良明君
  田中美智子君    中島 武敏君
同日
 辞任        補欠選任
  土井たか子君    井上 普方君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和六十年度一般会計補正予算(第1号)
 昭和六十年度特別会計補正予算(特第1号)
     ――――◇―――――
#2
○小渕委員長 これより会議を開きます。
 昭和六十年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和六十年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小平忠君。
#3
○小平委員 民主政治のあり方につきまして、総理大臣にお伺いいたします。
 民主政治が真に活力と創造性を持つためには、党対党の間で不断の政権交代の新陳代謝が行われることが望ましいと思うのであります。残念ながら、戦後から今日に至るまで、日本の政治の実態はそうした状態をつくり出すことができませんでした。そして、それを補うものが自民党内の派閥たらい回し政権であったのであります。私は、党利党略を離れ、一人の政治家としてこの現状を深く憂えるものであります。この点につきまして、まず、総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
#4
○中曽根内閣総理大臣 各国によりまして、その歴史あるいは風土あるいは社会慣習その他によりまして、みんな自分の国に合った政治体制をとるものであり、民主政治をとる国におきましても、おのおの国情に合った民主政治をとっておるわけでございます。しかし、正常な民主政治におきましては、国民の選択が一番の基礎でございます。国民の皆さんの選択に合うように、各政党がおのおの政策を国民の前に展示し、そしてこれを競って御支持をいただいておる、これが民主政治の基礎にあるわけでございまして、それが選挙にもなるわけでございます。
 そういう意味において、日本の戦後の歴史は、このような国民の選択の上に政治が展開されて今日まで至っており、それは国民の要望に沿いつつ政治が動いてきていると思いまして、健全な現象であると思うのでございます。その間において、自由民主党が長い間政権を担当させていただいておりますが、これは国民の選択に合うように政策を錬磨し、あるいは時代を先取りし、あるいは改革すべきところは柔軟に先見性を持って改革してきた、そういうところにあると思うのであります。したがいまして、政権が交代しなかったからといって民主政治にそこを来しているわけではない、すべては国民の選択にある。そういう意味におきまして、今後とも与野党が切磋琢磨して、国民の御選択の前に自分たちの実力を競うというところに発展があるのであると考えております。
#5
○小平委員 私どもの友党関係にありまするスウェーデン社民党は、四十年にわたりまして長期政権を担当いたしました。その間、福祉国家政策を大きく前進させ、功績を残しましたけれども、同時に、長期政権の弊害として、政策のマンネリ化、国民の負担増大に基づく国民の活力の喪失などに基づきまして、政権の崩壊を見たのであります。
 民主政治の活性化は、党対党の政権交代から生まれる緊張感、新たな努力と工夫への決意からつくり出されるものでありまして、私はそのように確信いたすものであります。政権党が政策で失敗すれば潔く反対党に政権を渡す。アメリカを初め英国でも西独やフランスでも、先進民主主義国家ではどこでも行われておりますことが日本ではできない。いわゆる憲政の常道が実現されない。その結果、政治の腐敗、官僚の腐敗が慢性化していることは周知のとおりであります。それは我々野党それ自体にも責任がありますが、この現状の打開、すなわち民主政治の真価を生み出すための政治改革について、総理大臣はどのような御所見をお持ちか、お伺いしたいと思うのであります。
#6
○中曽根内閣総理大臣 ただいま民主政治の基本的な考え方を申し上げましたが、現実の政策あるいは政治の運用等につきましては、そのときどきの国民の御要望あるいは政策の重点性等々も考えてみまして、国民の御要望に沿ってある特定の政策を推進するために必要がある、こういう場合には、情勢によっては、数の多少にかかわらず政党間において政策を協定しあるいは話し合いを行って、そうしてその政策を遂行するためにお互いに強く協力し合うということも民主政治の常道の一つに十分あり得る、そう考えておる次第であります。
#7
○小平委員 私はこの席で、かつては吉田総理、佐藤総理を初め歴代の首相に対しましてこのことを進言してきたのでありますが、結論は、ほどよく政権の交代体制を実施するためには、まず、今日の選挙制度の抜本改正を初め、これに関連する諸制度の改革が必要であろうと思うのであります。いやしくも、一国の宰相として、政権党は常に健全な反対党の存在を配慮することが必要だろうと思うのでありますが、この点、総理はいかようにお考えでしょうか。
#8
○中曽根内閣総理大臣 民主政治におきましては、多数決ということで政治は運行していくわけでございますが、多数決を行うに際しましても、少数派に対する配慮というものが必要であると思います。言いかえれば、少数派を支持した国民の考え方がゼロになるということは、多数派といたしましても、国全体の安定あるいは調和という面から配慮しなければならぬところでありまして、少数派の意見の中でも掬すべきものがあれば十分これを受け取りまして、そしてそれを政策の中に織り込んでいくということは大事なことではないかと思っております。
#9
○小平委員 我が国の民主政治そのものを育てるという意味から、やはり与野党が政策で競争し、ほどよく政権の交代を行うところに政治の改良、改革、前進があると私は確信をするのであります。長期にわたる政権を担当されました政権党でありまする自由民主党におきまして、特に政権党の総理・総裁であります中曽根総理におかれましても、今までの総理同様に、民主政治を育てる、確立するという見地から今後も十二分の配慮をいただきたいと思うのであります。
 つきましては、これに重大な関係を持ちまする衆議院の定数是正の問題であります。この問題は、今国会の重要課題の一つと、言うまでもなく、私は、昨年末の議長見解を踏まえて、今国会中には必ずこれは立法府の責任において実現しなければならないものだと確信いたしておるのであります。
 この問題の解決ができるか否かという問題は、どうも二人区制の取り扱いにかかっているように考えられるのであります。
 第一点は、これまで六十年にわたりまして続いてまいりました、すなわち三ないし五人の中選挙区制を今後とも尊重されるお考えでしょうか。それとも、二人区は小選挙区でないが、しかし日本が長く続けてきた中選挙区制でもないとお考えでしょうか。この点はいかがでしょうか。
#10
○中曽根内閣総理大臣 二人区に関する定義等を、学者の意見等もいろいろ勉強してみますと、日本の多数説、大多数の学者は、小選挙区というのは一つの選挙区から一人を選ぶ制度であって、それ以外はいわゆる大選挙区、大選挙区の中にはいわゆる中選挙区も含むと思いますが、いわゆる大選挙区、小選挙区と大選挙区、そういう対立で物を見ておるようでありまして、二人区も大選挙区に入るというのが憲法学者の意見であります。私もこの定義に従っております。
 先般の議長見解のところに小選挙区制はとらないという趣旨のことがありましたが、私は、これらの憲法学者等の意見を踏まえての考え方であると私自体は認識いたしております。
#11
○小平委員 ただいまの総理の御意見は衆議院の本会議及びこの委員会におきまして再度伺っておるのでありますが、私は、この衆議院の定数是正を本気でこの国会で通過する、成立するということは、昨年暮れの議長見解で示されました趣旨を生かしまして、特に政権党である自由民主党は大乗的見地に立って現在の中選挙区制を守り、与野党の合意を得まして今国会中に速やかに合憲是正を行うということが刻下の急務であると考えるのでありますが、重ねて伺いたいと思います。
#12
○中曽根内閣総理大臣 選挙区制度を早く改良して新しい改革を行うということはまことに刻下の急務であると同感でございます。
 どういうふうな内容が現実的に各選挙区についてとらるべきであるかという点については、各党各派でよく御相談を願いまして、そして合意を見るように我々も努力すべきであると考えております。
#13
○小平委員 これは現に与野党の国対委員長会談におきましても目下話を進行中でありますけれども、やはり当面の問題、特に二人区制などにこだわっておりますとなかなか、先国会、先々国会も継続審議あるいは廃案というような憂き目を見たのでは、国民が国会に対しまする信頼を失う結果となるのでありまして、総理は非常な決意を持ってこの国会で速やかに成立するように、これを強く要請いたしまして、次に移りたいと思います。
 食糧問題、すなわち食糧自給率の向上という見地から、去る一月三十日の再開劈頭の施政方針演説に対しまする我が党の塚本委員長の質問に答えまして、次のごとく答弁されました。
 農業の現状にごつきましては、最近の情勢は、農産物需給の緩和、規模拡大の伸び悩み、市場開放要求等の厳しい問題に直面いたしております。このような情勢に対処するために、生産性の向上による農林水産業の体質強化と農山漁村の活性化を進め、農林水産業に携わる人々が意欲と生きがいが持てるように、各般の施策をやらなければならぬと思います。前から、農は国のもと、農業は生命産業であると私は申しておるのでありますが、食糧の安定供給あるいは地域社会の形成、自然環境の保全、そういうように農業は、非常に幅広い社会的意味を持っておるものであります。したがいまして、「農産物の需要と生産の長期見通し」と同時に、一方において、生産性の向上や、あるいは、国内で生産可能なものはできるだけ国内生産にして総合的自給力をふやす、そういうことも考える必要がありますが、先ほど申し上げましたような地域的意味あるいは環境的意味というものも考える必要があると思います。輸入については、一面、関係国との友好関係に留意し、国内農産物の需給動向等も踏まえて、我が国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが大切であると思っております。総理はこのように答弁なさったのでありますが、この考え方は現在も変わりありませんか。
#14
○中曽根内閣総理大臣 農は国のもとであり、農業は生命産業であると前から申し上げておりますが、今小平委員がお読みになったことは私の考えであり、今でも変わっておりません。
#15
○小平委員 しかるに、現状は、需給の不均衡、対外貿易摩擦の激化、流通機構の乱脈などによって、穀物の自給率は低下の一途をたどり、農家経済は負債の重圧に悩まされ、日本農業は一大危機に直面いたしております。総理は、このような現状に対しまして率直にお認めになりましょうか。
#16
○中曽根内閣総理大臣 農業は非常に厳しい環境に立たされていると思います。国際的に自由化の波がどんどん押し寄せてまいりまして、ガットに関するいろいろ提訴とかあるいは話し合いとかという問題もございます。そういう中にありまして日本農業を守っていくということはなかなか厳しい状況にあると考えておりますが、しかし、やはり我々は、日本農業が国内的に果たしている役割というものを十分認識いたしまして、そして生産性の向上あるいは新しいバイオ技術の開発等々を重要視いたしまして、農業が健全に発展していくような基盤をさらにつくっていかなければならないと考えております。
#17
○小平委員 我が国は古来から瑞穂の国と言われ、食糧政策よろしきを得るならば完全自給自足のできる国であります。しかるに、今日、穀物の自給率は何と三三%を割ろうとしております。食糧の生産こそ、総理がただいま農業は生命産業だとおっしゃいましたように、人間の命を守る最も重要な第一次産業であります。科学がいかに進歩しても、農業生産は依然として大自然の天候に支配される宿命を持つだけに、世界いずれの国も保護政策をとっておることは周知のとおりであります。したがいまして、ただいま総理が述べられた方針に沿って、今後基本的に一番大事なことはどのように推進されることが必要とお考えでしょうか。
#18
○中曽根内閣総理大臣 今のような基本方針に沿いまして農政を展開していきたいと思いますが、具体的には農林大臣から御答弁申し上げます。
#19
○羽田国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、確かに、日本の穀物の自給率は三三%を割るという状態であります。これはもう小平委員もよく御案内のとお力、日本の食生活というのは戦後急速に変わってきた。肉ですとか、あるいはバターですとか、チーズ、こういったものの摂取が多くなってきた。そしてそれに対応するための畜産の飼料というものは日本の狭い国土ではなかなかできない。やむを得ず飼料穀物等多く輸入しておる、これが食糧自給率を大きく下げてきてしまっている大きな原因だと思っております。
 それから、確かに、今御指摘がございましたように、いわゆる食糧の需給というもの、これが非常に均衡を外しておるというのも現状であるというふうに思っております。米のように、あるいは今牛乳なんかもそうでありますけれども、過剰のものが出てきておる。しかし、逆に飼料作物あるいは麦、大豆こういったものはまだ不足の基調にある、こういう中でやはり需給のバランスというものを考えていかなければいけないのじゃないか、やはり一つの大きな問題点であろうと思っております。
 そういうことで、一つの環境にありますけれども、農業が食糧の安定供給を果たすと同時に、今お話がありましたように、総理からもお答えしておりますけれども、健全な地域の発展のために大きな役割を果たしていること、あるいは自然環境というものを保全するため、こういったものについての役割というものを果たしております。
 そんなことから、私どもの限られた国土資源あるいは固有の自然条件のもとでこのような農業の役割を一層発揮させていくために、やはり一定の振興策というものが必要であろうというふうに存じます。需要の動向に応じた農業生産の再編成をすること、あるいは技術、経営能力にすぐれた中核農家や生産組織というものを育成すること、また農業生産基盤、これはもう基本的な問題として整備していかなければいけない。また、今総理からもお話がありましたように、新しい時代の新しい技術、例えばバイオテクノロジーのような技術開発というものをすると同時に、担い手もやはりそれに対応できる人たちを育てていかなければいけないのじゃないかと思っております。そしてもう一つ、やはりそこに農民が生活します。その生活の基盤づくりというもの、こういったものを総合的に対策を立てていく、これが今重要な私どもの課題であるというふうに考えております。
#20
○小平委員 ただいま主管大臣である羽田農水大臣の御意向を伺いましたけれども、しかし、政府は今日まで長期にわたってあらゆる施策を講じておるにもかかわらず、例えば、私の選挙区でありまする北海道の農業生産の総生産額は年間一兆円、これに対しまして農家の負債総額は一・五倍の一兆五千億、これが卑近な例であります。このような現状に対しまして、いろいろな点はありますけれども、やはり貿易自由化の拡大による外圧あるいは水田利用再編対策によりまする打撃、これがこのような結果をもたらしておるのであります。
 農業の全国的な対応は各地域によって異なっておりますから、なかなか一律に論ずるわけにはまいりませんが、そういうことから、私はここで、当面この水田利用再編、ポスト三期に対処してどのようなお考えをお持ちになるか、伺いたいのであります。
#21
○羽田国務大臣 ただいま負債のお話がありました。この問題につきましても、私ども、先生方皆様とも御相談しながら、特に酪農等では施設なんかへの資金投入というものが非常に大きいということで、負債整理資金、こんなものを準備しながら進めておるところであります。
 なお、今御質問のございましたポスト水田利用再編対策につきましては、確かに、米というものについて、まだ現在、生産力というものが需要を非常に大きくオーバーしておるというのが実は実態でございます。またしかも、これは残念ですけれども、いろいろな手当てをしておりますけれども、まだ拡大しておるというのが現状でございまして、これから私どもまだこの米の需要拡大というものをまずひとつしていかなければならないのじゃないかというふうに思っております。
 なお、米の生産は、ポスト三期におきましても計画的に調整しまして、麦、大豆、飼料作物等の生産拡大とその農業経営における定着化を図る必要がある、このような考えに立ちまして、五十三年度から水田利用再編対策をずっと進めてきたところであります。そして、このポスト三期の検討に当たりましては、米の需給均衡というものを着実に実現するよう、現下の諾情勢に対応し、有効な調整方策とすることが大切であると思っております。また、将来の水田農業のあり方、これを展望しまして、今後の需給状況も踏まえた農業生産構造の再編成を図らなければいけない。しかも、もう一つは、ここにやはり定着を図っていくということが大事だと思っております。
 なお、これはもう当然のことでありますけれども、生産性が高い、足腰の強い農業をつくり上げていくこと、それから日本型食生活の定着という観点に立って今後とも米の消費拡大にさらに努めていかなければならないと思っております。
 次期対策につきましては、関係各方面の皆さん方の御意見を伺うと同時に、これは生産者あるいは農業団体並びにいわゆる流通関係の皆さん方、そして消費関係の皆さん、こういった方々とも話し合いをしながら、どこに問題があるか十分検討して対処していきたいというふうに考えております。
#22
○小平委員 食糧の自給率向上につきましては、国会におきましても再三にわたり超党派の決議がなされておるのでありますけれども、主食であります米につきましては、ただいま羽田大臣御指摘のように、昭和五十三年以来三期にわたって水田利用再編対策を強行いたしまして、その結果稲作農家はもちろんのこと、その余波を受けて畑作地帯も重大な悪影響を受け、現在塗炭の苦しみをいたしておる現状であります。現状において、引き続き、ただいま御指摘のように、水田利用再編対策をさらに第四期へ向けて続行しなければならないというのであれば、私は少なくとも次の諸点について最大の配慮をなすべきであると確信するのであります。すなわち、過去の実績にこだわらず現状を見きわめ、公正、平等に判断してこれが具体策を決めるべきであると思うのであります。
 その一つには、足腰の強い農業の育成に最重点を置くこと。第二は、専業農家の育成、すなわち主産地形成に最大の配慮をすること。第三は、国際価格差解消の見地から、コスト低下の行い得る経営規模の大きい地帯にも考慮すること。四番目には、米の消費者ニーズが多様化してきておりまする現状から、質、食味が要求されることは原則でありますけれども、外食産業が増加している実情。実態を十二分に踏まえてその要素に入れること。第五番目は、市街化区域の農業と専業農家と同一に扱うことはやめること。第六番目は、現在行われている他用途利用米のごとき悪制度はこれを全廃すること。最後に、国の方針で転作をどうしてもしなければならぬという場合は、その補償として転作奨励金のごときは従来どおり実施するという、以上の観点に立って、私は十二分な配慮をなすべきであると考えますが、主管大臣である羽田大臣並びに総理の御見解を承りたいと思います。
#23
○羽田国務大臣 先ほども申し上げたことでありますけれども、私ども今日まで水田利用再編対策を進めてくるこの過程にありまして、やはり全国の農業者の理解あるいは御協力、これを得ながら進めてこなければならないということで、今日までいろんな角度から検討しながら進めてきておるところでございます。特に配分に当たりましては、農業生産の地域の特性というものをやはり考えていかなければならないこと、それから、今お話がありましたように、産米の品質、こういったものについても、これはいろんな用途があると思いますけれども、これを考えなければいけない。それから、麦、大豆、飼料作物等の特定作物への転作可能性等を総合的に勘案して行ってきたところであります。
 次期対策につきましては、現在省内におきましてことしの秋に向けて検討を進めておるということでありまして、先生の御意見等も十分踏まえながら私ども検討していきたいと思います。
 ただ、一点だけ。例の他用途利用米、これについて、これはもうよくないという御指摘であるわけでありますけれども、やはりどうしても転作をしていく、ほかの作物を一部つくるよりは、むしろ他用途利用米のようなお米を少し安くてもつくらしてもらった方が効率がよいというお話も実はございます。そしてまた、そういったある程度安い米というものをやはり加工業にも提供しなければならない。今まではちょうど過剰米がありましたから、過剰米処理の一環としてこれを進めてまいったわけでありますけれども、過剰米がなくなってしまった今日、やはり加工業に対する配慮というものもしなければいけないということで他用途利用米が生まれてきております。
 そんなことで、また、米の生産の効率をよくするという意味でも、ほかの作物をつくよりはやはり少し安くても米をつくらせてもらいたい。中には、飼料用の米もつくらしてもらいたいなんという話がありますけれども、将来超多収穫品種でも生まれてくればそういったことも可能だと思いますが、私たちはそこまではまだ考えておりませんけれども、加工用のための他用途利用米については御理解いただきたいなというふうに存じます。
#24
○小平委員 大臣、生産者は一枚の水田で、この田んぼはマル政米、政府買い入れ米です、この田んぼは他用途利用米ですよという区別をして生産していないんです。ところが、実際に価格は、マル政米は一俵二万円近く、他用途利用米は一俵一万八十円、約半値ですね。そういうようなことで生産者が納得できますか。加工原料米のこともわかります。しかし、そんなことは食管法のどこにあるのです。それは、政府が食管法の拡大解釈によってなされております現在の制度なんですよ。こういう悪制度は私は改めるべきであるということを申し上げているのです。
 それと、やはり劈頭に申し上げましたように、引き続きどうしても米の生産調整、減反政策をやらなければならぬというのであるならば、全国の生産者が、あるいは消費者も関係者も納得できる、やはり全国平等、一律にこれを配分して、そして生産性の高い農業を行うということが――総理も施政方針演説の答弁でなされているわけであります。
 したがいまして、私はこの際総理大臣に特にお伺いいたしたいのでありますが、食糧の安定生産、安定供給という見地から我が党がかねてから主張いたしておりまする食料基本法を制定して、国民の生活を守ることと、災害など一朝有事に備えまして食料備蓄法の制定を行い、これを実現することが刻下の急務であると思います。
 とりあえず、現在の第三期の水田利用再編対策の中で、積み増し分三カ年で百四十五万トンだけでもこれを制度化することが一歩前進であろうと、思うのでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
#25
○中曽根内閣総理大臣 前から民社党におかれましては食料基本法あるいは食料の備蓄法の御提言をいただいておりまして、我々も検討してきたところでございます。
 しかし、食管制度を運用しておりまして、そのときの国際市況の関係とかあるいは天候のぐあいであるとか、そのほか弾力的、機動的に考える要素はかなりあるように思うのでございます。毎年毎年そのような国際関係あるいは国内の生産力の関係等々もよく勘案しながら、弾力的に、機動的に対応していくという方が効率的である、そういう考えを持っております。もとよりある一定量の、国民に不安を与えない量というものは確保して持ち越していく必要はあると思いますが、そういうことを十分注意しつつ、現在のようなやり方で弾力的に行う方が効率的ではないかと考えておりますが、この点については農水大臣からも御答弁申し上げます。
#26
○羽田国務大臣 お答え申し上げます。
 ただいま総理の方からお話がございましたように、食糧の安定供給というのは独立国家としても、私どもとしてもこれは本気で考えていかなければならぬというふうに思っております。そういう中で長期的な目標を立てながら今進めておるわけで、私どもは、この運用というものをきちんとしていくことによって先生が言われるものにおこたえすることができるのじゃないかというふうに確信をいたしております。
 なお、今備蓄についてのお話があったわけでありますけれども、この備蓄についてのあれは、私どもの方は回転備蓄という考え方を持ちまして。ともかく備蓄をしたもの、これは翌年、古米でありますけれども、これを食べていただく。しかし、古米であるけれども、これは低温倉庫等を活用しながら、品質のいいお米というものを提供していくということが重要じゃなかろうかと思っております。いずれにしましても、備蓄というものをうまく運んでいきませんと、かつてのような七百万トンあるいは六百万トンというような大変な過剰というものを招いてしまうものですから、私たち、その辺を十分配慮していかなければいけないと思っております。
 今、備蓄法のお話があったのですけれども、これは食管法に基づきまして毎年定めることになっております「米穀ノ管理ニ関スル基本計画」という制度、これを根拠にして、私ども、百四十五万トンというものを積み増そうということでやっておりまして、多分ことしの出来秋には百万トンくらいまではいくのじゃなかろうかと思っております。そういうことで、備蓄法という法律がなくても何とかひとつここでやっていけるのではないかなというふうに考えておりまして、国民の食糧の安定供給、特に主食である米の安定供給に事欠かないように我々もこれから十分配慮しながら進めていきたいと思います。
#27
○小平委員 先ほど申し上げましたように、何と言っても農業は天候に左右されるという宿命を持っておるだけに、一昨年の韓国米の緊急輸入のような醜態を二度と繰り返してはならないのであります。かかる見地から、やはり備えあれば憂いなし、災害等の一朝有事に備えて最小限の備蓄制度を確立するということを重ねて強く要求いたします。
 食糧問題の最後に申し上げたいことでありますが、私は、以上申し上げたようなことができなければ、戦後食糧増産に挺身してきた生産者の努力、戦後四十年にわたって食糧増産に投ぜられた農業基盤整備費は、六十年度までに実に十兆九千億、現在の価格に換算すれば約十八兆に達し、膨大な国費が水泡に帰するのであります。現在の転作、休耕は、終戦直後の食糧難を解決するために血の出るような努力で土地改良や開拓に従事し、今日すばらしい美田となったものでありますものを転作や休耕をせよということで、これを生産者に押しつけることは自殺行為であると私は思うのであります。人間の命を守る食糧の生産だけはいたずらに他国に依存してはならないと思うのであります。他産業の生産調整とは異なった性格を持つものでありまして、国の方針としてどうしても生産調整を余儀なくされるのであるならば、全国一律、公平な、平等な施策を、国の責任において温かい手を差し伸べるのが私は真の農政であると思うのでありますが、最後に総理大臣、主管大臣の羽田農林水産大臣の所見を伺います。
#28
○羽田国務大臣 ただいまの御質問に対してお答えいたしますけれども、確かに今日まで、我が国の食糧の生産力を上げるために膨大な投資をしてきたことも事実であります。そういう中で、今私ども米の水田利用再編対策という形で転作というものをやむを得ず実は行っておるというのが現状であります。
 これは、基本的にはやはり国民の皆さん方が米に対する理解というものを深めていただき、もう少し米の需要というものを図っていただくことが基本であろうかと思っておりますけれども、私どもも実は政務次官をやってから十年来、今日までもいろいろな角度から需要拡大というものを図ってきておりますけれども、残念ながらいわゆる他の食物の方に御婦人方も、調理その他なんかもいろいろとテレビ等であれいたしますものですから、大分そちらの方向に行ってしまう。そういう中で、米というものがいまだに需要減退の傾向にあるということで、やむを得ない措置としてやはり転作をせざるを得ないということであります。ただ、転作をする場合にも、私どもただ転作をお願いするというだけではなくて、どうしてもお米とその他の作物との間に大きな価格の乖離がある、これを何とか埋めなければいけないということで、厳しい財政事情の中でありますけれども今日までいろいろな補助金等をつけてまいったところでございます。
 そういうことで、今、先生が御指摘のように、何とか米なら米の生産の方向に進めればいいのですけれども、需給が均衡するまではこの政策というものをとっていかなければいけないな、そのときに、やはり本当に生産する農民の皆さん方も理解していただけるようないろいろな原則に立って私たちはやっていかなければいけないということで、今、先生から御指摘ありましたことも十分頭に置きながら、私どもはこのポスト三期、これに対応し、そして、そういう中で本当の意味での食糧の必要なものを、お互いにバランスのとれた生産ができるような体制というものをつくり上げていきたいというふうに考えております。
#29
○中曽根内閣総理大臣 食糧の問題は国家を維持していく上につきまして基本的な課題でございまして、国民の皆様方にいささかの不安もなからしむるというのが政治の基調であると思います。そういう観点に立ちまして、食管法を運用しつつ長期安定の方策を講ずるように今後も努力してまいります。
 なお、制度が硬直化しないように常にこれを見直しながら、それと同時に、生産性の向上、あるいは新しい科学技術の開拓、こういう面によりまして日本の農業を質的にさらに充実させ、前進させていくように努力してまいりたいと思います。
 農家にとりましては、所得が都会と比べて格落ちしているということをいつも心配なさっておるのでございますが、我々の方もそういうような都会との均衡の点につきましても心してまいりたいと思っておるところでございます。
#30
○小平委員 ただいま総理並びに農水大臣の御所見を伺いましたが、米の消費の減退は、戦前は国民一人当たり一石、百五十キロ消費したものですが、現在は半減してしまって、七十五キロを割っているわけです。これは、いろいろな施策を講じながらも欠陥があるからなんです。国会でも米消費拡大の超党派議員連盟をつくっております。さらに、そのように減退いたしておりましても、現在米が国民の主食の地位にあることは変わっていない、米のカロリーの多いことは国民ひとしく承知していることなんです。これにはやはり国民あるいは政府一体となった食糧政策の改善、改革が必要であると私は思うのであります。
 そういう見地から、先ほど申し上げましたように、現在の価格で換算するならば二十兆にもなんなんとする膨大な国費を投じて農業基盤整備をやった、孜々営々として食糧増産に挺身する生産者が、あるいは若い者が今後安心して農業経営に従事できる農政を本当に確立することが刻下の急務であると私は思うのであります。このことを強く政府当局に要求いたしまして、次に移りたいと思います。
 国鉄再建問題についてお伺いいたします。
 国鉄再建問題は行政改革の目玉ともいうべき重要課題であることは、今さら申し上げるまでもありません。国鉄の民営・分割の成否は今後の政局の動向を左右する重要問題であります。この問題につきましては、さきに同僚議員からも我が党の基本線に立っていろいろ指摘してまいったところでございますが、再確認の意味で、私は次の四点に絞って総理にお伺いいたしたいと思うのであります。
 この国鉄改革、いわゆる民営・分割化を実現するためには、第一に余剰人員対策に万全を期すること、第二は給与、待遇などに対しまする保障ておりますが、新会社の労使話し合いによる就業規則によること、第三は、新会社の役員任命につきましては代表役員のみにすること、第四番目は、資金計画、事業計画並びに営業計画につきましては一々政府の干渉をしないこと、以上の四点につきまして総理の所見を承りたいと思います。
#31
○中曽根内閣総理大臣 以上の四点につきましては、私も原則的に同感でございます。特に人事統制あるいは予算統制あるいは経営統制、そういう面に関する政府関係の規制をできるだけ少なくして、民間手法の余すことなき発揮ができるように配慮することがこの民営・分割化の一つの急所であると思います。それからもう一つ大事な点は、労及び使それぞれが責任体制を持ちまして、おのおのが交渉によりまして賃金やそのほかの問題を決めていく、自主性を持って決めていく、これがまた活力を与える大事なポイントでございます。
 そういうような点を今後とも十分配慮しつつ法案も提出し、運営についても気をつけてまいりたいと思っておる次第で、小平さんの御提起につきましては原則的に同感で、配慮してまいりたいと思います。
#32
○小平委員 ただいまの総理の御答弁に対しまして全面的に賛意を表します。したがいまして、この国鉄再建問題につきましては幾多困難な諸問題がありますけれども、これを解決いたしまして国鉄民営・分割化実現のために最善の努力をしていただきたい。我が党も従来から基本的に賛意を表してまいりましたが、今後とも全面的に協力することを約束いたしまして、次の問題に移りたいと思います。
 北方領土の問題につきまして伺いたいと思います。
 去る一月十九日、シェワルナゼ・ソ連外相と安倍外相の間で共同声明が出されました。私は、率直に言って安倍外相の努力を評価するものであります。しかし、問題はこれからであります。
 そこで、お伺いいたしますが、今回の日ソ間の合意は、一九七三年の田中、ブレジネフ間で取り交わされました日ソ共同声明並びに領土問題を含むという口頭了解の線に戻ったということでありましょうか。それ以上のものだというのであればどこが違うのか、外務大臣にお答えいただきたいと思います。
#33
○安倍国務大臣 一九七三年の共同声明は、「双方は、第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが、両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識し、平和条約の内容に関する諸問題について交渉した。」旨規定をいたしておるわけでありますが、何がこの「第二次大戦の時からの未解決の諸問題」であるかがそれ自体として明確でないので、その点を補足するため、「未解決の諸問題」の中には北方四島の領土問題が入っていることを両首脳間で口頭で確認をしたものであります。領土問題が入っておるということは、当時の両首脳間の口頭了解ということになっております。
 他方、今回の日ソ共同コミュニケは、まず「一九七三年十月十日付けの日ソ共同声明において確定した合意に基づいて、」云々「同条約締結に関する交渉を打った。」ことが明記されているのでありまして、この点で一九七三年共同声明の延長線上で行われたことが規定上明確にされております。さらに、交渉を行った内容として、「日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題」がこれに含まれていることが確認をされております。事実私とシェワルナゼ外相との間の会談におきまして、長時間にわたりまして北方四島の領土問題をめぐる交渉が行われた事実を踏まえて、これをそのまま実質に即して記述したものであります。したがって、「平和条約の内容となり得べき諸問題」の中に領土問題が含まれていることは、共同コミュニケの文言上も、また交渉の実態上も全く疑問の余地がありません。
 以上のとおり、一九七三年と今回との領土問題をめぐる処理の仕方につきましては若干異なっておりますが、北方四島の領土問題が日ソ平和条約交渉の対象であることが確保されておるという意味においては同様でありまして、一九七三年の共同声明のラインに戻ったと言うことが可能であります。
#34
○小平委員 わかりました。
 次に、私は、日本政府としては北方四島返還による平和条約の締結を最終目標としつつも、まず一九五六年のグロムイコ・松本交換書簡、つまり、「領土問題をも含む」と明記した交渉を続けるという線まで戻させることが中間目標と考えるのですが、外務大臣いかがですか。
#35
○安倍国務大臣 今回の外相定期協議に当たりまして、私は、現状では何よりもソ連をして北方四島問題を含む平和条約交渉のテーブルに着かせるととが先決であるという判断から、その点に最重点を置きまして交渉した次第でございます。
 長時間にわたる交渉の結果、ソ連側は領土問題を含む平和条約締結交渉のテーブルに着くことについて合意をしたわけでございまして、これが今回の交渉の意味であろうと思います。すなわち、今回の交渉は、北方四島問題を含む平和条約交渉の出発点ということでありまして、領土問題については、今後継続することが合意されている平和条約交渉においてさらに交渉していかなければなりません。
 今後の交渉におきましては、共同宣言によりましてソ連側が返還を義務づけられている歯舞、色丹はもとより、共同宣言発出の基礎をなしておるところの松本・グロムイコ合意の内容である国後、択捉についても返還をソ連に要求をし、もって北方四島の一括返還の実現に向かって努力をしなければならない、こういうふうに考えております。
#36
○小平委員 そういたしますと、もし総理大臣が訪ソするとすれば、こうした一つのはっきりしためどがつくのが条件でないかと思いますが、総理大臣、いかがでしょうか。
#37
○中曽根内閣総理大臣 今回の外相会談におきまして外相間の定期協議が確認されまして、今度は安倍外務大臣がモスコーで外相会談をやる順番になっております。
 私は、ソ連外相との会談におきまして首脳間の相互招聘を約束いたしまして、先方も快諾をしていただき、私も快諾をした次第で、私とゴルバチョフ書記長との相互訪問がいよいよ行われるように約束されたわけでございますが、前から申し上げておりますように、日本の総理大臣は四回もモスコーへ行っておりまして、先方はまだ一回もいらっしゃらない、こういうことですから、安倍外務大臣がモスコーへ行って、今度はソ連側からゴルバチョフ書記長がおいでになる、あるいは安倍外務大臣がおいでになる前に、都合がよければ日本にゴルバチョフ書記長がおいでになる、そういう順序になっていると考えております。
 私が、先方が来るよりも先に行くというようなケースがあるとすれば、国民が喜んで、そして私が行くことが意味がある、そういう場合に私は行くことも辞さない、そういうことを申し上げておるのでありますが、その点につきましては、私のその解釈、私が意図している内容については先般ここで申し上げたとおりでありまして、やはり北方領土四島返還について先方が相当前進してきて、それが明らかになる、そういうようなことが我々の方のあかしとして十分酌み取られるというような場合にはそれは考慮の対象の中に入る、そういうことを申し上げたとおりでございます。
#38
○小平委員 ソ連は日本ばかりでなく中国や東欧諸国などと多くの領土問題を抱えているのは周知のとおりであります。しかし、これらの領土紛争はさまざまな長い歴史的経過があり、どの国もみずからの固有の領土と主張し切れない、極めて難しい状況がその背景にあると思うのであります。
 この点について、日本以外の領土となったことの一度もない北方四島は、ソ連が抱える他の領土問題とは本質的に違うものと私は考えるのでありますが、外務大臣、この点いかがでしょう。
#39
○安倍国務大臣 これは小平委員のおっしゃるとおり、全くそのとおりであろうと思います。その他の国とソ連との領土問題等いろいろ調べてみますと、歴史的にいろいろな変遷があるわけでございます。しかし、そういう中で日本の場合においては、北方四島は少なくとも歴史上一度もソ連領土であった時期というものは全くあり得なかったわけであります。条約的にもこの北方四島が日本の領土であるということは当時のロシアとの間でもはっきり確定をされておる事実でございますから、歴史的にもあるいは条約的に見ても、北方四島というものはあくまでも日本の固有の領土であるということは明確であるわけでございます。
#40
○小平委員 私は、北方領土返還問題は決して日本の領土欲やエゴの問題ではなくて、国際的に正義が貫かれるかどうかという重要な問題だと思うのであります。日本が受諾したポツダム宣言並びにその基礎となるカイロ宣言は、連合国は領土不拡大の原則を貫くとうたっております。国連憲章あるいは日本国憲法も、国際的正義と侵略反対を強調していると考えるのであります。その意味で、我が国が例えば二島返還で妥協してしまうような安易なことをすれば、日本みずから目先の利益のために正義や道義を捨てることになり、日本の歴史に汚点を残すばかりでなく、国際的秩序を混乱に陥れる危険すらあると考えるのであります。
 私は、北方領土の返還には、日本の国を挙げての粘り強い努力と相まって、国際世論の喚起が不可欠と考えるのでありますが、この点総理大臣の御決意はいかがでございましょうか。
#41
○中曽根内閣総理大臣 北方四島に関しましては、サンフランシスコ条約締結の相手方であり起草者であったアメリカも、たしか昭和三十一年には明確にこれは日本の領土であるというふうに言っており、あるいは中国も英国も同じようにこれを確認しておるということでありまして、サンフランシスコ条約締結の当事者自体が命そのように明瞭に打ち出しているところであります。しかし、国際的にもそういうような地位にあることを、また歴史的にも我が国固有の領土であったということも、今後も国際的に十分啓蒙いたしまして、我が国の正当な主張をよく認識してもらうように努力もいたしたいと思います。
 残余の答弁は外務大臣から申し上げます。
#42
○安倍国務大臣 今の総理の答弁にありましたように、サンフランシスコ条約に調印をしましたほとんどの国が北方四島は日本の領土であるということを確認をいたしておりますし、最近におきましてもアメリカのシュルツ国務長官、さらに中国の呉学謙外相も、グロムイコ外相との会談の際に、北方四島は日本の領土である、これを日本に返すことが真の日ソ友好につながっていくんだということを強調されたわけでございます。
 したがって、国際的にも北方四島というのが日本の領土であるということはほとんど認めておるということでありますし、そうした国際的な判断だけでなくて、先ほどから申し上げましたように、日本の固有の領土であるということは我が国の歴史あるいはまた条約等から極めて明瞭でございますので、我々は何としても北方四島一括返還という基本的な立場でこれからもソ連と粘り強く腰を据えて交渉をしなければならないと決意をいたしております。
#43
○小平委員 どうか北方領土返還につきましては、まさに全国民の長い戦後四十年にわたる願望であります。私は、支持団体の同盟のいわゆる国民集会、国民運動に党を代表する団長として八回も現地の納沙布岬に赴いておりますが、まさに北方四島は指呼の間にあって、日本の固有の領土であるということは今や明々白々であります。かかる見地から私は、これは粘り強くこの返還交渉を、全国民が一体となって、これを速やかに実現するように今後強くその外交交渉、いわゆる外交手段によって解決するように特に強く要求するものであります。
 次に、漁業問題に移りたいと思います。
 昨年の日ソ漁業委員会におきまして、国連海洋法条約に基づく二百海里体制の中で漁業の分野における日ソの新しい関係が樹立されたばかりであるのに、今回の日ソ漁業委員会第二回会議は、ソ連が従来とは全く異なった新しい枠組みに基づく提案を行ってきたことから、日ソ間で遂に合意を見るに至らず、一月四日以降操業を中断して今日に及んでおるのであります。去る一月二十三日より二月十一日を期限に交渉が再開されましたが、最終日の十一日夕刻、さらに二月十五日を期限に再延長を通告してまいりました。このように再三にわたって中断、延長が繰り返され難航している模様でありますが、その経緯と真相を簡単に羽田農水大臣から伺いたいと思います。
#44
○羽田国務大臣 ただいま御指摘のとおり、昨年十二月から新年にかけましての漁業交渉決裂といいますか、話し合いが不調のまま私どもの代表団も引き揚げ、また漁業者の皆さん方も六日から実は操業が中止になっております。そして、そういうものを踏まえながら私ども一月二十三日からまた再開の交渉をいたしておりますけれども、今も先生から御指摘がございましたとおり、今までになかった枠組み、これによって話が提案されておるということで、実際に私どもとしましても、このままいきますと我が国が必要としております底魚、これが壊滅的な状態になるということで、北洋漁業全体が壊滅的な状況になるということになっておるわけであります。
 しかし、いずれにいたしましても私どもといたしましては、漁民の皆さんあるいはすり身加工する加工業の皆さん方、この立場の皆様方の状況というものは今大変な状況にあるということを私どもよく承知しておりまして、本当に憂慮しておるというのが率直なところでございます。
 そういうことで、アブラシモフ大使、新年早々に表敬訪問で私のところにお見えになっておるのですけれども、そのときにもいろいろと日本の実情をお話しいたしましたり、また先々週でございましたか、農林水産省の方に大使をお招きいたしまして、北海道あるいは青森その他の漁業者の皆さんあるいは加工業の皆さん方が一体どんな状況にあるのかということ、それと同時に魚食民族である日本人が今この問題についてどんな気持ちを持っているのかということ、これをぜひともひとつ本国に伝えていただきたいという要請を実は行ったところであります。なお、それ以外にも鹿取大使がシェワルナゼ外相あるいは漁業相ともお会いいたしまして日本の状況をお伝えをしておるところであります。
 いずれにいたしましても、今先生の御指摘がありましたように二月十五日ぐらいまで何とかその交渉を妥結することができないか、鋭意代表団が努力中であるということであります。
#45
○小平委員 私はこの際政府当局が、実際に今日まで日ソの漁業交渉がどういう経緯をたどってきたかということを再認識してもらいたい。それは今までの日ソ漁業交渉を通じて、北洋漁業の実績は、二百海里水域内における漁獲量は一九七八年の八十五万トンが翌七九年には十万トン削減され、自来一九八三年まで五年間七十五万トンに据え置かれ、また一昨年の一九八四年に至っては五万トン削減の七十万トンとなり、昨年は六十万トンに削減されて、本年はさらに厳しい割り当ての態度であります。さらに今回は新たに五百メートル以浅の操業を認めないという操業条件で、前例のないいわゆる漁業協力費を百億円以上も要求するとは、まさに言語道断と言わなければならないと思うのであります。
 このたびの二月十五日までにまとめるということは、現地の漁民の現状にかんがみまして私は極めて刻下焦眉の急務であると思うのであります。しかし、操業条件や協力費などについて下手な妥協は極めて禁物であります。二月十五日になっても協議妥結に至らないというような場合には、主務大臣でありまする羽田農林水産大臣みずから現地モスクワに乗り込んで交渉するという用意がありましょうか、この際伺っておきたいと思います。
#46
○羽田国務大臣 日ソの漁業交渉につきましては、もう先生が既によく御案内のとおり日ソ地先沖合漁業協定、これによりましてロン漁業委員会、この場所で協議が行われることになっておりまして、我が国の代表団が非常に難しい環境の中でありますけれども最善の努力を尽くしてくれておる、このように私ども信頼をいたしております。
 そういうことで、私どもといたしましても、やはり後方からの応援ということで、大使をお招きいたしましたり、あるいは私どもの大使が、先ほど申し上げたように先方にも伺ってお話をしておるというのが現状でありまして、もちろん気持ちの面では幾らでもそのあれはございますけれども、この交渉というものがそういう協定に基づいて進められておるということで、私どもとしても極力、今お話しのとおり変な譲り方をするのではなくて、代表団が言うべきことは言いながら相手に理解をしてもらうように、これからも努めてもらいたいと思っております。
 気持ちの上では私どもいつでも飛んでいく気持ちはございますけれども、こういう協定に基づいて協議をしておるということで、今しばらく交渉の成り行きを見守っていきたい、かように考えております。
#47
○小平委員 成り行きといいましても、十五日、明後日が期限なんです。二十五日にはソ連の共産党大会が持たれるわけです。なかなか全国から集まりますと、モスクワに宿もなくなります。ですから十五日という期限はぎりぎりなんです。したがって非常に緊迫しているという現状を十二分に踏まえて対処していただきたいと思うのです。
 私は、現在の状況は、先般ソ連シェワルナゼ外相の訪日によりまして日ソの定期外相会談が持たれて、親善友好のうちに共同声明を交換したという直後だけに、極めて遺憾であると思うのであります。今やスケソウダラのごときは漁獲最盛期に直面して、関係漁民はもちろん、関係業界、地方自治体はまさに窮地のどん底にあります。政府はこのような現状を速やかに打開するために、私は、再度大臣並びに総理大臣のお考えを承ります。
#48
○羽田国務大臣 もう御指摘のとおり、関係漁民の皆さん、そして加工の皆さん方、大変な今窮状にあることを私どもよく承知しております。先生の今の御指摘も私ども踏まえながら、気持ちの面では、先ほどもいつでも飛び立つあれがあるということを申し上げましたけれども、ともかくこれは交渉事でございますから、ただ私ども政治というものが介入することが、今先生のお話がありましたように、何というのですか、守るべきものは守らなければならぬといったときに、ただ政治的なことよりむしろ実務的にきちんと話し合っていくことが大事であるというふうに思っております。しかし、私どもは常にその支援態勢、あるいはいつでも必要があれば行くというその構えだけは持っておることだけを申し上げたいと思います。
#49
○中曽根内閣総理大臣 ともかく専門家及び関係行政機関あるいは農水大臣に全力を尽くさせまして、漁民の不安をできるだけ早期に解消するように努力してまいります。
#50
○小平委員 次に、日米サケ・マス交渉についてお伺いいたします。
 アメリカ国務省が去る二月六日、同国二百海里水域内対目漁獲量として新たに三万七千八百八十トンの追加割り当てをすることを日本大使館を通じまして水産庁に通告した旨の趣でありますが、事実でありましょうか。
 二番目は、その結果一月初めに通告してまいりました一万トンと合わせて約五万トンとなり、昨年一月から三月期の漁獲実績五万五千トンにほぼ匹敵するので、水産庁は三月いっぱいまでの操業は何とかしのげる見通したということでありますが、そのとおりでありましょうか。
#51
○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。
 一月初めの放出及び二月の五日の放出、それぞれただいま先生御指摘のとおりの漁獲割り当ての放出がございました。さらにそれに加えまして、ワシントン時間の二月十二日、さらに一万トン強のマダラの放出がございまして、今年に入りまして合計で既に放出された漁獲割り当て量は約六万トンに近い数字でございます。
 先生御指摘のように、この割り当てとそれからベーリング公海での操業あるいはシェリコフ海峡のジョイントベンチャー、こういうものを合わせますと、全体として我が国の漁船の三月末までの操業は何とかやりくりがつく状態であるというふうに認識をいたしております。
#52
○小平委員 去る二月十日の報道によりますれば、日米サケ・マス協議が中断されたとのことでありますが、これは事実でしょうか。アメリカは海洋法に調印していないにもかかわらず母川国主義や二百海里経済水域を主張するのはおかしいと思うのであります。二百海里内からの日本漁船の締め出しを法的にも決定しており、ここで安易な妥協をすれば日本は底魚もサケ・マスも失うことになるのでありまして。このことは鯨の先例を見ても明らかであります。今後政府はいかなる方法で交渉に臨むのか、その決意のほどを伺いたいと思います。
#53
○羽田国務大臣 ただいま御指摘がございましたとおり、一応今話は不調に終わっておるというのが現状であります。なお、アメリカは自国漁業の振興と外国漁業の締め出し策を今御指摘のとおり政策として掲げております。既に実行段階に移しつつありますが、また最近では、サケ・マス問題の解決と底魚の割り当てを絡める方針をとっております。しかし、現状は今長官の方からお話ありましたとおり、現実的な放出というものがなされておるのが現状であります。
 これに対して我が国としましては、サケ・マス漁業は日米加漁業条約に基づいて操業を行っているものであること、それから我が国はスケトウダラの洋上買い付けなど、対米漁業協力事業というものもちゃんと実施しておるということなどをアメリカの方に十分説明しまして、北洋漁業の安定的操業、これを確保するように引き続き努力をしてまいりたい、こんなふうに考えております。
#54
○小平委員 私は、日米サケ・マス交渉での安易な妥協というものは今後の日ソ漁業交渉にも重大な影響を与えるものであると思うのであります。したがいまして、政府は毅然たる態度をもってこの日米サケ・マス交渉に臨むということを私は強く要求いたしまして、次に移りたいと思います。
 次は、日米航空協議について伺います。
 第一は、今回の対米航空交渉は我が国が一方的に譲歩して政治決着されたような感じがいたします。この決着によりましてこれまでの不平等が一層拡大したことにはなりませんか。第二は、特にこの決着はレーガン大統領が竹下大蔵大臣と会見した際に政治決着を要請したと伝えられておりますが、このような決着の仕方は全く不可解であります。一方的な譲歩をしてまで政治決着をした理由は那辺にあるのでしょうか。第三は、日米間には以遠権や乗り入れ地点などで著しい不平等が存在しているのであります。これを正すことが日本の重要な責務であると思うのであります。
 以上三点につきまして、大蔵大臣と運輸大臣の所見を伺いたいと思います。
#55
○竹下国務大臣 去る一月の十八、十九日に行われました五カ国大蔵大臣会議、ロンドンでありましたが、その後ワシントンヘ寄りましてベーカー財務長官と日米円ドル委員会についての評価をお互いするために会談をいたしたわけであります。それは二十一日でございますが、その翌二十二日に安倍外務大臣のごあっせんで、私も一年数カ月ぶりにレーガン大統領に表敬の機会を与えていただきました。
 その際、まず円ドル問題についての評価を私から申しましたところ、それはまことに結構であるが、いわゆる日米航空協定の問題、特にユナイテッド航空問題の早期決着を米側としては望む旨のお話があったことは事実であります。このことはベーカー財務長官との会談でも同様のお話がありました。この問題はもとより私の所管事項ではございません。しかし、このように米国の最高首脳が重大な関心を持っておるということは、やはり所管大臣に正確に伝えるべきであると思いまして、私が三塚運輸入厚にワシントンからお電話を申し上げたわけであります。安倍外務大臣はちょうどヨーロッパ旅行中でございましたので、アメリカの松永大使からこの御連絡をいただくことにいたしました。したがって、二十四日に私も安倍外務大臣も夕刻帰国いたしまして、閣議がございましたその後、内閣官房長官のごあっせんで、自民党の航空対策特別委員長の塩川さんを含め五名がお会いをいたしまして、私からはその際の米側の意向というものをお伝えをいたしたわけであります。
 その後外交交渉等を通じてこれが決着を鼻だということでございますが、所管事項以外のことでございますので、私からはそり経過をお話しし、正確には運輸大臣から内容についてお答えすべきであろうと思います。
#56
○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。
 竹下大蔵大臣から概要の説明がございました。レーガン大統領と会見をいたした際に、日米間における重要な政治課題であるという意味の提言がなされたということをワシントンから国際電話で御報告をいただきました。所管外でありますので本件について御報告を申し上げる、こういうことでありました。安倍外相、これまた公式旅行中でありましたので、帰る日程を待ちまして、ただいまのように二十四日の夜、会合を開き、その対応策を考えました。
 私といたしまして考えました第一点の重要なポイントは、所管大臣でもない大蔵大臣、もちろん日本のニューリーダーのお一人であり、政権担当の有力な方でありますという点を踏まえてレーガン大統領が本件の開陳をされたものと思うのであります。そういう観点から、まさに所管大臣でない大蔵大臣に本件の解決のためのごあっせんというものを申し出したというところに重要な意義がある、こういうことであります。
 事務当局、再三再四の交渉を行ってまいったのでありますが、アメリカ側は不平等は存在をしない、我が国は不平等が存在をする、こういうことで丁々発止の交渉を続けてまいったさなかのことでございましたので、本件をどう扱うか、安倍外相と後藤田官房長官、塩川委員長にも御同席をいただき、最終の判断をいたしたわけでございますが、これはやはり承継でございますものですから、パンナムからユナイテッドに対する承継でありますので、その件について拒否をいたしますことは日米経済を激化させることに相なるという客観的な判断をいたしました。
 しかしながら、NCAシカゴ乗り入れを含む六便を九便にしてほしいというかねがねの要望、この点も国益でございますから、しっかりとさらにこれを推し進める、まさに政治解決でありますから、政治決着を我が国としても図らなければならぬということで、安倍外相の特段の御努力を、やっていただいておるのでありますが、さらにお願いをするということで、安倍、シュルツの間における安倍外相の書簡を特に発しまして、本件に関する三月三日スタートを切ります日米航空包括交渉においてNCAのかねがねの要望を果たしてまいる、こういうことにアプローチをいたしまして、それなりの感触を得た。また、中曽根総理大臣からも大統領に対しまして、かねがねの日米関係の重要性を考えつつ、航空交渉は国益のぶつかり合いであります観点から、有効に解決されたいという旨の書簡もお出しをいただきました。また、私からは向こうの運輸長官にも詳しく本件の問題について、しかと三月三日から始まる包括交渉において進めてほしいということを申し上げさせていただきました。
 第二点の、不平等があるのではないかということであります。これはかねがね我が国会、我が政府もその観点に立ちまして交渉を続けてまいりましたところであり、本件は以遠権の問題を含め解決を進めるべく今後も最大の努力をしてまいらなければならないと考えておるところであります。
 先生の御指摘のポイント、まさにそのとおりでありまして、十二分に、全力を尽くして、外務省のお力もかり、外務大臣のサポートもいただきながら全力投球をして御要望にこたえたい、かように考えております。
#57
○小平委員 日米関係の重要性はよく理解できるのでありますが、この航空交渉の過去の経緯を見まして、非常に不平等性を第一点としての難問が横たわっておったことは周知の事実であります。御承知のように昨日はアメリカから第一便が成田に着陸しております。したがいまして、これは今後航空協定をさらに前進せしめる意味からも極めて重要な意義を持つものであると思いまして、旅客問題が一段階を進めたけれども、御承知のように航空貨物の交渉はこれからです。そういう意味合いにおいて、毅然たる態度をもって今後も交渉に当たっていただきたいと私は思うのであります。次に、和五十一年に協定改定交渉が開始されましてからもう十年にも及んでおるのでありますが、この問題は一体いつまで続けるつもりですか、またその決着のめどはどうなっておるのでしょうか。さらに、本年三月に改定交渉が再開されるとのことでありますけれども、不平等是正ができるという見通しは持っておられるのでしょうか。不平等是正のためには何をなそうとするのでありますか。不平等とはどういう状態にあると考えておられるのでありますか。私は、不平等が解消できない場合、協定を破棄するという決意を持って今後交渉に臨んだらどうかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
#58
○三塚国務大臣 小平先生御指摘のとおりでございます。航空協定はイコールフッティングでなければなりません。国の独立権をかけた、主権をかけた交渉でございますものでありますから、さような観点から、今後イコールフッティングという意味では、以遠権の問題、それから、さしあたりNCAの便数の増加の問題、こういう問題がございます。これは、かねがね主張をし、交渉を続けてまいってきたところでございますが、ただいま御指摘のように、不退転の決意をもちまして本交渉に当たり、御期待にこたえていかなければならぬ、このように考えておるところであります。
#59
○小平委員 大臣、不平等の中身、私の質問に答えておりませんね。わかりませんか。
#60
○仲田政府委員 不平等の中身でございますが、具体的に申し上げますと三点あるかと思います。
 一つは以遠権。以遠権の中身といたしましては、米側は東京以遠について無制限の権利を持っている。それに反し、日本の現在行使している米国以遠の権利は、ロサンゼルス以遠ブラジルへ二便、これだけでございます。ほかにまだ行使してない以遠権は若干ございますが、いずれにしろ無制限ではないということでございます。
 二番目の点は乗り入れ地点の問題でございます。これは、例えばシカゴと東京の間におきまして、日本の航空企業は貨物便を行うことができないということになっております。ただし、向こうからは貨物便は現在行っております。こういう乗り入れ地点間の不平等の問題、これが第二番目。
 第三番目は、企業数の問題と申したらよろしいかと思いますが、向こうのアメリカの方からは現在五社が入ってきております。ところが日本からは一社、これから最大限三社は入れるが、そのあとの二社につきましては、先ほどから御説明申し上げておりますようにNCAの場合には三便という一つの制限がついております。そういう制限つきでなければ入れない、つまりフルライトを持っていないという、そういう状態になっております。そういう企業のバランスの意味でまた不平等が存在する、大体そういう三点に絞ったらよろしいかと思います。
#61
○小平委員 最後に、総理に、三月の交渉再開までに総理みずからが交渉の衝に当たるという御決意はないでしょうか。
#62
○中曽根内閣総理大臣 この問題は、航空当局はもとより、外務当局においても懸命の努力をしておるところであり、私からも大統領に直接親書も提出しておるところでございますから、なおさらに一層、直接当事者に努力をさせまして、その状況を見まして、さらに今後どういうふうな手段を講ずることが適当であるか、検討してみたいと思います。
#63
○小平委員 わかりました。
 私がなぜ総理に伺ったかというと、日米航空交渉は今後の日米間の極めて重要な課題であると思いますし、日米間の親善、友好のきずなを乱してはならないという見地から、円満な解決、平等な解決を望むから申し上げたのでありまして、今後とも一段の努力を要請する次第であります。
 最後に、青函隧道の有効利用について運輸大臣に伺いたいと思います。
 青函隧道は、これまで七千億の資金を投入し、いよいよ明昭和六十二年の完成を間近に控えておるのであります。本資金の利子は五千億と言われ、合算すれば実に一兆二千億の巨費であります。青函隧道完成の意義は、言うまでもなく国土の一体化と均衡のある地域振興、気象条件に左右されない安全確実な輸送路の確保、特に北海道と本土との直結により、北海道価格の解消、後進地域の開発という見地から極めて重要な意義を持つものであると私は思うのであります。
 目下のところ、在来線の活用以外にはその方法がないと思うのでありますが、トンネルそのものは新幹線を通すように工事がなされておるのであります。新幹線を速やかに、少なくとも函館さらに札幌まで延長することは、私は、青函隧道を着工した意義からいって政府の当然の責務であると思うのでありますが、以上の見地に立って、何年後にどこまで、何年後にどこまでという見通しについて、運輸大臣の所見を承りたいと思います。
#64
○三塚国務大臣 お答えを申し上げます。
 青函の開通に伴う北海道新幹線の建設について、北海道民の切なる願いはよく承知をいたしておりますし、同時に、北海道民という以上に、国家的な観点からも、経済、総合安全保障、すべての観点から、先生御指摘のように重要な課題でありますことも承知をいたしておるわけでございます。
 いつ、どういうスケジュールでということでございますが、御案内のように整備五新幹線ということに相なっておりまして、本日現在の時点において申し上げますならば、盛岡以北青森新幹線、北陸新幹線工事認可申請書を受理をいたし、整備新幹線の検討委員会において、財源及び分割・民営後の事業主体、運行主体等、また、並行在来線のあり方を含めて検討を続けておるところでございます。この結果、すべてがクリアをいたす時点で認可をいたし、工事に着手をするということであります。
 よって、そういう状態の上で物事を考えてみまするならば、まず将来、盛岡以北青森まで、これの建設にかかるというスケジュールになろうかと思います。そしてその後、青森から函館まで、青函を活用しつつどのように工事を進めるかは、自後、事業主体及び運行主体等における検討が行われる、さらに同時に、政府において全体的な交通政策また経済政策、社会政策、これに加え財政の観点からこれを検討いたしまして最終の判断をいたす、こういうことになりますものでありますから、今直ちに、青森から函館まで、函館から札幌まで、このような年次計画で進めますということを申し上げられる段階にないということを御理解を賜りたいと存じます。
#65
○小平委員 今般、英仏両国でドーバー海峡のトンネル着工に調印がなされると報道されております。青函トンネル開通を契機といたしまして、私は、日本列島は、最小限北海道から九州の南端まで新幹線を開通させるということは、スピード時代に、あるいは地域の活性化、内需拡大という見地からも速やかに実現をしなければならぬと思うのであります。ただいま運輸大臣の話では、とりあえず新幹線は青森まで、そのようなことではなかなか進捗しないのです。
 御承知のように、一時は大型プロジェクトも凍結されましたけれども、本四架橋、関西空港あるいは東京湾のいわゆる横断橋のごとき、どんどん進められておる現状において、特に本年の大きな柱の内需拡大という見地からも、後進地域のいわゆる活性化のためには極めて重要な問題でありますから、国家財政は極めて厳しい、よく承知しておりますが、方法はあるのです。英仏両国があの多年の懸案であるドーバー海峡にトンネルを掘るということを調印したのもどこにあるか。既に我が国は利子を入れて一兆円を超える資金を投入して、いよいよ昭和六十二年には完成するのですよ。在来線を通すだけでは意味がないのです。
 したがって、これは急速に、段階的にはもちろんまず青森まで、次は函館まで、さらに北海道の中心である札幌までぐらいは通すべきである。同時に、北海道といわゆる九州の南端まで速やかにこの問題は――憲法で示されているように、国民は平等の権利、平等の利益を受けると条項によって保障されているのですよ。中心地だけが交通の便のいわゆる利益に浴して、遠隔の地だから。あるいは過疎地だからといって放置するのは、政治の本道ではないと思うのです。そういう見地から私は強くこのことを要請するものでありますが、再度、本件に関しまして運輸大臣の決意を伺います。
#66
○三塚国務大臣 憲法に保障されておりますとおり、どこに住んでおりましょうとも我が国民は幸せは均てんでなければなりませんし、政治というものはさようなものでなければならぬことは御指摘のとおりであります。
 特に、先生御指摘のように、新幹線はまさに二十一世紀はおろか二十二世紀に生き延びる有効な交通手段であります。地域開発はもとより、全体的に我が国経済を底上げしてまいりますことも、専門家また各界の指摘のとおりでございます。残念ながら今財政再建という極めて重要な時局に遭遇をいたしておりますさなかでありますだけに、その財源のあり方をどうするかということで、ただいま鋭意検討委員会におきまして本件についてのあり方を検討をいたしておるところであります。
 同時に、御指摘のように六十二年度開通をいたすわけでございますから、これだけの優秀なトンネルを在来線だけで活用するということは、国益にもかなわない、国家投資の観点からも考えなければならぬわけでございまして、この点につきまして、カートレーンを中心とした有効活用をしていかなければなりませんし、あるいは狭、広軌による青森―函館間のカートレーン方式なども答申をいただいておる有力な一案でありますので、さらに運輸省といたしましてもこの提言を受けて真剣に検討しながら、現時点ででき得る施策が何があるか、こういうことで今後取り組んでまいる、かように考えておるところであります。
#67
○小平委員 約束の時間が参りました。建設大臣に高速道路の問題について伺いたかったのでありますけれども、時間が参りましたので、まことに失礼でありますが質問をこれで打ち切りたいと思います。
 以上で終わります。
#68
○小渕委員長 これにて小平君の質疑は終了いたしました。
 午後零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時四十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十一分開議
#69
○小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。中島武敏君。
#70
○中島(武)委員 私は、最初にちょっと緊急にお尋ねしたいと思って、消防庁、来ておられますでしょうか。――去る十一日、死者二十四名を出しました東伊豆町熱川温泉のホテル大東館旧館の火災についてお尋ねしたいと思いますが、大変痛ましい事故でありまして、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表する次第であります。
 私が聞きたいと思っておりますのは、旧館は収容人員三十人未満だということで、マル適マークの対象外だったというふうに言われているのですけれども、しかし、報道によりますと、消防法施行規則で定められた計算方法で計算しますと、収容人員は三十名以上になる。これに宴会場などの面積も加えますとさらにもっと大きくなる、そういう指摘がされております。こうなりますと、マル適マーク以前に、法定による防火対象物として、消防法に違反する重大な欠陥があったのではないかと思わざるを得ないのでありますが、この点、消防庁、いかがですか。
#71
○関根政府委員 マル通マークの実際の運用に当たりまして、収容人員によりまして基準を設けているわけでございますが、その基準の算定の仕方、収容人員の算定の仕方につきましては、別に消防法の施行規則で、別な条文で算定基準がありますので、それを便宜かりてまいりまして、それによって計算をしておるというのが実情でございます。
 私ども、具体的な現場での判断につきましては現場の消防本部に判定をお願いせざるを得ないということでございますけれども、現場の東伊豆消防本部におきましては、一応二十四人という算定をいたしまして、三十人以下である、こういう判断をいたしたようでございます。これは部屋の大きさにももちろんよりますけれども、洋室につきましてはベッドの数で判断をする、こういうこともございまして、二十四という答えが出ているようでございますが、焼け落ちてしまっておりますので、具体的な実測等が現時点ではできませんけれども、図面等によりまして判断をいたしますと、三十人以下という扱いはほぼ妥当な線ではなかろうかというふうに考えております。
#72
○中島(武)委員 まだ図面も正確なものではないみたいなのですね。ほぼ妥当ではないかというのですが、こういう報道もされていることでありますから、やはり厳重に、きちんと調べるというようにしていただきたいと思うのです。
#73
○関根政府委員 まだ現場が大変混乱をいたしておりますので、現時点におきましてその面の詳しい調査はちょっとできませんけれども、一たん落ちつきました段階で、できるだけ早くその辺の算定のやり方等につきまして正確な聞き取りをし、調査をしたいと思います。
#74
○中島(武)委員 重ねて厳重によく調査していただきたい。特に亡くなられた方のことを考えますと、これはゆるがせにできない大変重大な問題だと思うのですね。その点で、消防庁としてもよく調べていただいて、きちっとさせていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 引き続き、内需拡大と大企業労働者の実態、この問題について質問をしたいと思います。
 総理にお尋ねしたいと思っておりますが、現在の日本経済と高度成長期との大きな違いはどこにあるか。これは結局経済成長の要因が輸出肥大きく依存しているというところにあると思うのです。
 私が経済成長の要因分析について調べたところによりますと、経済成長増加の寄与度が高度成長期、これは一九五五年から一九七〇年までをとった場合ですが、個人消費支出の寄与度が四四・八%であります。民間設備投資が二七・一%、輸出等は一五・五%だったんです。ところが、調整期と言われる一九七九年―一九八三年、この間は個人消費の支出が三四・四%に落ち込んだ、そして輸出等は四六・八%に上がり、民間設備投資は二一・〇%と、こんな調子で大変大きなさま変わりをしておるわけであります。輸出等が五割近いシェアを占めている、そして個人消費支出が約一〇%落ちている、これが現在の非常に大きな問題じゃないか。この輸出等の伸びが貿易摩擦をつくり出していることは周知の事実であります。
 それで、問題は、この消費支出とそれから輸出の分配調整、これをどうやるかというのが、目下の日本経済における最大の問題だと思うのです。
 なお、この五年間を調べてみますと、個人消費はほとんど伸びておりません。実質で〇・二%、可処分所得もほとんど伸びておりません。言うまでもなく、内需を拡大していくためには個人消費支出を伸ばさなければなりませんし、そのために可処分所得を大いにふやさなければならぬわけであります。
 そこで、私、総理に聞きたいと思うのですが、施政方針演説で、消費の拡大、国民生活の向上のためには労働時間の短縮が大事だ、こういうふうに言われましたけれども、なぜ労働者の賃上げのことをこれは除いていらっしゃるのでしょうか、この点を伺いたいと思います。
#75
○中曽根内閣総理大臣 高度経済成長時代との違いは、一つの基本的な問題は、あのころは新しい技術革新が起こりまして、それで耐久消費財、テレビであるとかあるいはそのほか電気洗濯機に至るまで、それからさらに今度は自動車に対する需要が非常に起きた。そういう技術革新というものが一波万波を呼んで賃金の上昇をもたらし、それがかつまた需要を起こしていった、そういうらせん状の非常にうまい経済構造に移っていった。それはやはり基本は技術革新であったと思うのです。今日はそれに合うような、内需を起こすような新しい顕著な技術革新が今のところ出てきていない、これがやはり一つの大きなポイントではないかと思っております。やはり新しい技術革新を呼び起こす必要がある、魅力的なものをつくり上げる必要がある、そういうことがあると思っております。
 それから、消費を起こすためにはいろいろな問題点がありますが、賃金の問題もそうでございましょうが、大体賃金の問題は労使関係で決まる問題であり、時短の問題は、どっちかというとかなり政治性を持っている問題である。というのは、労働基準法の改正について研究会もつくられておる。労働基準法改正という問題は政治の一つの大きな問題でございますから、そういう意味であれば触れてもいい問題である、そう思ったわけです。
#76
○中島(武)委員 政府の諮問機関であります経済審議会の答申を見てみましてもそうなのですけれども、やはり個人消費を伸ばすためには、時間短縮だけではなくて、賃金を引き上げることが大事だということを非常に強調しているわけであります。またその時短問題と賃金問題の性格においても、単に労使関係の問題というだけじゃなくて、中曽根内閣の政治的な姿勢としてどう考えるのかという点、この点を私はむしろ聞きたいわけなのです。重ねてひとつ答弁をお願いしたいと思います。
#77
○中曽根内閣総理大臣 週休二日制の普及等々、政府としても関心を持ち、努力もしておるところでございまして、今後も努力していきたいと思っております。
#78
○中島(武)委員 賃金の引き上げ問題についてはなかなかおっしゃらない。私は、時短と同時に賃金も引き上げていくということが、やはり今内需を拡大していく上で非常に大事なんだという点を指摘をしたいと思うのです。
 労働大臣にお尋ねしたいと思います。
 私は、実は民間の主要な企業を調査いたしました。特に、中でも集中豪雨的に輸出を伸ばして経済摩擦を引き起こす最大の要因になっております自動車産業を調査してみたのです。二つの特徴があります。一つは長時間労働です。それからもう一つはただ働きです。 具体的にこの点について述べたいと思いますが、例えばトヨタ・グループの例ですけれども、生産目標に対する生産管理が急速に強められ、労働密度が強化されるので、労働災害や自殺者が急速にふえているという状態であります。ことしに入ってからもう既に数名の自殺者が出ているというのが実態であります。世界のトヨタと言われるところにの上がっていった陰には、やはり労働者のこうした犠牲があることは明らかであります。しかも非常に重大なのは、豊田自動織機、それから日本電装、アイシン精機といったようなトヨタ・グループが、ここでもすさまじい合理化で、労働者のただ働き、労働条件の切り下げ、労災隠しなどが大変進行しているということであります。特に、中でもただ働きは大変驚くべき状態でありまして、大企業に憲法や労働基準法はないと言っても決して言い過ぎではないと思うのです。
 実は私、ここに豊田自動織機のある労働者から送られてきた手紙のコピーを持っております。これは手紙の一部なのですけれども、その一部を読んでみますと、「個人の残業枠があり、これが超えそうな時、タイムカードを打刻して仕事をさせられる。特別、間接部門に多く、二十一時、二十二時はざらにある。タイムカード打刻十九時、これが当然と暴言する非組合員がいる。」これは括弧して職制と書いてありますが、「真に、弱い労働者の味方として、たたかってくれるのは日本共産党しかいないのではないか。」全組織を挙げて頑張ってほしい、こういう手紙なんです。これはやはり、やむにやまれない気持ちでこの労働者が書いたものだと思うのです。
 しかも、この手紙の中身は大変重大なことを言っていると思うのですが、タイムカードを打刻してさらに残業をやる。こうなりますと、この残業は言うまでもなくサービス残業とも言われているのですけれども、これは賃金が払われないということになるわけであります。労働者にとってみるとこれはただ働き、こういう次第なんです。しかも、間接部門で常態化しているというのですから、一層事は重大でありまして、夜九時、十時まで働かされるという状況であります。
 労働大臣に伺いたいのは、これはやはり労働基準法に対する違反ではないのか、これを直ちに是正をするべきではないかというふうに思うのですが、お答えをいただきたい。
#79
○林国務大臣 先生御指摘のような事実があるかどうか、まだ私ども聞いておりませんが、このような事実があるといたしましたなら、労働基準法のゆゆしい違反でございますので、所轄の監督署で調査をさせてみたい、このように思っている次第でございます。
#80
○中島(武)委員 ぜひ調査をして、事実であれば、やはり直ちに是正の措置をとっていただきたいと思います。
 それから、トヨタに次ぐ自動車メーカーでは日産自動車でありますが、ここでも限られた人員で最大の生産を上げようとして、労働強化が大変進んでいる。ここも時間外労働を強いられて、しかも問題なのは、やはり一部が不払い労働になっているということであります。
 それで、これは日産の村山工場における例でありますが、この日産では、資格手当なるものが就業規則で決められているのです。それで、例えば主事とか技師とかあるいは工師初級、こういう名前がついておりまして、月額五万五千円の資格手当が払われております。ところが、これらの人は管理職ではないのだけれども管理職扱いをされるために、残業を幾らやっても残業手当がつかないのです。だから、資格手当は要らない、こんな資格は要らないのだ、残業手当を支給してほしい、こういう労働者の声も高まるのは私は無理からぬことだと思うのです。実際に調べてみると、資格手当以上に残業を行っているわけでありまして、非常にこの点は重大だと思うのです。
 それで、管理職とは一体何なのかということについては、労働省の通達であいまいな点を残さず、非常に明快にされているわけです。そういう点からいいますと、本当はちゃんと、きちんと払わなければいけないのだけれども、資格手当というような名前でこそこそ残業手当をけちる。こういっただ働き、これはやはり直ちにやめさせなければいけないと思うのです。その点で労働大臣の見解を聞かしてください。
#81
○小粥(義)政府委員 先生お尋ねの日産村山工場の件につきまして、今御質問の中で見ますと、一つの問題は、基準法四十一条の管理監督者に該当するかしないかという問題がございます。これについて、もし該当するとすれば、それは一定の手当でいいわけでございますけれども、該当しない場合は、御指摘のように、実際の残業時間に支払うべき割り増し賃金の額がその一定の資格手当の額を上回ることになれば、これは残業に対する割り増し手当を支払わなければならない、こういうことになるわけでございます。
 ただ私ども、まだ実際の実情をつまびらかに承知いたしておりませんので、その点については、これが果たして管理監督者に該当するのかしないのか、さらに資格手当を上回る残業の実績があり、またその割り増し賃金の額が資格手当と比較してそれより上回ることになるのか、そうした点については調査をしてみたいと思います。
#82
○中島(武)委員 もう一つ申し上げたいと思うのですが、これも同じ日産ですけれども、労働協定によって残業は一日二時間というふうになっているのですが、実際には二時間以上残業しても残業代が払われていないのです。例えばフォークリフト検査課組長代行のAさん、一月の三十日に午後十時過ぎまで残業をやった。しかし、二時間しか残業がついていない。五時十五分が所定内労働時間でありますから、四時間四十五分残業をして二時間しか残業にならない。つまり二時間四十五分がただ働きになっている、こういう計算になるわけでありまして、しかも大変残念なことに、こういうことが特に間接部門ではやはり常態化をしているという状況であります。
 それから、なおついでにもう一つ申しますと、日産村山で成約活動というのが強制されております。昨年の四月からことしの三月まで、一年間に一人一台当て日産の自動車を売れ、こういうことが強制されるわけです。それで、土曜、日曜返上でチラシをまいたり、電話をかけたり、いろいろ注文をとって歩いたりして、そして月曜日になりますと、どんなふうに売ったかということについての点検が行われるという職場もあるわけです。それで、一台売りますと五千円、これは日産自動車の下取りがあった場合ですが五千円の報奨金が出る、あるいは他社のものあるいは下取りがなかった場合には一万円の報奨金を出すということをやっておるのです。このことで非常に苦しんでいる労働者も、当然のことですが多いわけでありまして、これは時間外労働に対する強制じゃないかと思うのですね。私は、やはりこういうのをやめさせなければ、問題は正しく進まないと思うのですね。この点でちょっとお答えをいただきたいと思います。
#83
○小粥(義)政府委員 お尋ねの第一点の、実際に残業時間を一定の時間やっているのに、割り増し賃金がその残業時間すべてについて支払われないで、言うならば値切られているという問題につきましては、これは当然残業時間を行なった時間数については基準法に定める二割五分の割り増し賃金の支払いが義務づけられておりますから、したがって、法定の労働時間を上回る分については、これは基準法上割り増し賃金の支払いをしなければならないということになるわけでございます。
 第二点の方の、いわゆる販売促進活動と申しますか、そうした活動が強制をされているのかいないのかといった問題。これは実は自動車産業に限りませんで、販売促進活動はいろいろな産業であるわけでございます。その辺がいわゆる強制と受け取られる向きもあるわけですけれども、必ずしも企業サイドとしては強制というわけじゃないといったような形で行われる場合もございますので、これはケース・バイ・ケースで、実態を調べてみませんと一概に申し上げられない問題であろうかと思います。(中島(武)委員「調査しますか」と呼ぶ)
 それが強制にわたるものであれば、それは明らかに時間外労働に該当してくることになるわけでございます。その実態については、先生からの今の御質問で伺ったわけでございまして、私ども監督署においてもまだ承知をいたしておりませんので、そうした点については、もしお尋ねがあれば調査をしてみたいと思います。
#84
○中島(武)委員 このほかQCサークルという名目の残業もありますし、そしてわずかばかりの教育手当とか研修手当とかいうようなものを払って、実は大変な残業がやられるというようなこともあります。あるいはタイムカードが廃止になって、今まで労働時間に入っていた作業服の着がえだとか作業につく前の準備だとか、こういうのがみんなただ働きになっている例もあります。
 総理、実態は今申し上げたとおりなんです。問題は長時間、それからただ働き、この点だと思うのです。
 有給休暇についても、その消化率を調べてみたところ、約半分程度なんですね。ところが、ILOの東京支局に問い合わせをやってみたら、どういう返事が返ってきたと思いますか。ヨーロッパでは有給休暇を完全にとるのが当たり前になっているので、有給休暇の消化率なんというのは、国際的なそういう統計はとっておりません、こういう返事が返ってきたわけであります。日本の実情としてはまことに恥ずかしい次第だと思うのです。どこに問題があるのか。私は率直に言いますけれども、これはやはり大企業、財界が一番問題であると思うのです。
 日経連の労働問題研究委員会の報告を私は読みました。ところが、これはなかなか大変なことが書いてある。「我が国の労働時間短縮論議が、いわゆる欧米先進国との比較においてのみなされており、韓国、台湾、中国、香港等近隣のアジア各国との比較が無視されていることに奇異の感を持つ。」とんでもないことを言っておるわけですね。日経連のこういう労働時間についての考え方、見方について総理はどう思われますか。
#85
○林国務大臣 お答えいたします。
 日経連の労働問題研究委員会の報告では、アジア諸国と競争をいたしております中小企業の置かれている立場から、そのような比較がなされたものと私どもは思っておるわけでございますけれども、昭和五十八年に閣議決定されました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」あるいはまた昨年十月の「内需拡大に関する対策」などに指摘をされているように、経済先進国となった我が国には、国際的な視野からも対応、行動が求められておりまして、労働時間など労働条件の面でも、先進国としてよりふさわしい水準を確保して、ゆとりのある国民生活を実現していく必要がある、このように考えておるのでございます。
#86
○中島(武)委員 総理からはお答えはなかったのですが、労働大臣からお答えがありました。
 私は労働大臣にもう一つ伺いたいのです。それは、今私がるる申し上げたような大企業労働者の実態、そしてこれは日経連や何かが、先ほど言ったようなああいう考え方であおっては本当に大変なことになってしまうと思うのですが、同時に私は、これも率直に言いますけれども、政府の姿勢にも大変問題があるのじゃないかというふうに思うのです。
 実は、これは私も非常に驚いたのですけれども、労働省労働基準局長の名前で、都道府県労働基準局長殿、そこあてに「監督指導業務の運営に当たって留意すべき事項について」という五十七年二月二十日付の文書が出ているのです。それで、その中にこういうことが書いてあるのです。「関係法令に抵触する事案について、労働基準監督機関がその処理をつかさどることはいうまでもないが、これらの事業場はこれらの事業場というのは大企業であります。これは前の方を読めば一見明瞭であります。大企業では「労使共に労働条件の確保上の問題につき自主的に協議改善する能力を有している点に留意し、可能な限りこれを労使間の解決にゆだねることとし、労働基準監督機関としては、中小零細企業、宋組織労働者等労働条件の確保上問題の多くみられる対象に対して、最大限の監督能力の投入を行うよう配意すること。」こういう通達なんですね。
 私は、実はこれを見て驚きました。といいますのは、さっきから言っておりますように、大企業は問題がないのじゃないのです。労使間でちゃんとやるから大した問題はないのだ、問題はそっちじゃないのだ、こういうふうに言っているのですけれども、さっきからごらんになったとおりであり、これは氷山の一角なんでありまして、調べれば何が出てくるかわからないというぐらいいろいろ問題をはらんでいるわけであります。中小企業に問題があるという場合には、なぜ中小企業に問題があるか、これは御存じのとおりなんです。上から締められるからなんです。そういう意味では一番上の大企業、ここが問題にされなければならないのです。ところが、残念なことにそこは労使間の解決にゆだねるのだといって、中小零細企業、零細まで入れている、それから未組織労働者、ここを監督しなさい、そこへ精力を投入しなさい、これは甚だ遺憾だと私は思うのです。こういう政府の姿勢を改めない限り問題は解決しない。やはりこういう通達は直ちに是正するべきだというふうに思うのです。
#87
○小粥(義)政府委員 先生、今御指摘の通達は恐らく毎年出しております監督指導業務の留意通達であろうと思います。私どもの労働基準行政の中で、特に監督指導業務を遂行していく場合、当然監督指導能力に限られた面がございますから、できるだけそれをプライオリティーの高いところに重点的に進めていかなければならない。その場合に、当然のことでございますけれども、労働条件の決定は労使が対等の立場で自主的に決定するのが本来の姓前であります。したがって、特に大企業の場合、労働組合の組織率も中小零細に比べれば高く、しかもれっきとした労働組合があって職場におけるいろいろな労働条件が労使の間で決定されている向きがございますから、そうしたところは労使の自主的決定にまつということがまずは基本であり、労使の自主的決定がなかなか実際には行い得ない、そうした中小零細企業の場合、そこで基準法違反等の問題がとかく出やすいわけでございますから、そうした点に限られた能力を重点的に振り向けるということで従来から進めてまいっておるわけでございます。もちろん法律違反が大企業において行われるとすれば、これは明らかに私どもの監督指導上の問題として取り上げなければなりませんけれども、まずは労使の話し合いによる解決ということを前提にして、私どもそうした監督能力の配分を効率的に行いたいと思って進めているわけでございます。
#88
○中島(武)委員 甚だ残念なお答えだと思うのですね。さっきから申し上げておりますように、私は労働条件を決定するのは労使間の問題だなんということを知らないで物を言っているのじゃないのです。それは当たり前なんです。その上に立って先ほどから申し上げているような実態がいろいろあるということも事実なんです。これから調べていただくという問題もありますよ。さあ調べてごらんになってください、そしたらはっきりしますから。私は、こういう通達を出して、それは基準監督官が少ないというような問題もわからぬわけではありません。だから効率的にやるにはどこへ投入したらいいかというようなことはあるでしょう。だけれども、こういうことによって大企業における問題が免罪されていくということは大変な問題じゃないかというふうに私は思うのです。大臣の見解をお聞きしたいと思います。
    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
#89
○林国務大臣 お答え申し上げます。
 個々の事例については私ども承知をしていない面がたくさんございます。先ほど基準局長から御答弁申し上げましたように、大企業の中では労使の協約というものが比較的と申しますか、中小零細企業に比べましたら格段に整備をされております。そういった中で先生御指摘のような問題が起こったといたしますれば、これはまた労働基準法違反ということになるわけでございますので、そういった面でも、これからはよく目を配りながら、個々の実例がございましたら調査をして、しかるべくやっていきたいと思います。こういうことでございます。
#90
○中島(武)委員 極めて残念です。そういう政府の姿勢では、この種の問題は解決がついていかないのです。だから私はわざわざここで言っているのです。それは局長がそういうふうに言うのはわからぬではないが、しかし、大臣ともあろう者はすぱっとこの辺は、なるほどまずい、改めるぐらいのことを言ってほしかったね。
 だけれども、残念ながらそうでないわけでありますが、後追い行政みたいになっておってはいかぬ。何か申告されたから、告訴、告発されたからそのことをただしにいくのだ、こうじゃなくて、政府の側から正しいあり方はどうなんだというようにどんどんただしに入っていくということが監督行政じゃないか、私はそういう点をはっきり申し上げたいと思います。
 しかも労働基準法研究会、御存じのとおり、これは労働大臣の私的諮問機関でありますが、ここで労働基準法の全面改定の審議を行っておりますね。昨年の十二月に報告が発表されて、私も見てみますと、これは非常に重大な問題をはらんでいる。労働時間の弾力化というような点、こういう点で大変重大な問題をはらんでいる報告だというふうに思いました。
 私は重ねて、真に実効ある労働時間の短縮、そしてまた今言ったような問題は、正しく解決するイニシアチブを政府自身がとるということを大いにひとつ要求をしたい。そして労働時間についても、それから賃金についても、問題が解決されていくということによって初めて本当の内需拡大になっていくのだということを申し上げたいと思うのです。
 関連しますので、引き続きお尋ねいたします。
 人事院総裁来ておられるかと思いますが、公務員の給与問題であります。
 総理は今度の本会議におきまして、答弁で人勧を尊重するというふうに言われました。しかし、公務員の給与はもう御存じのとおりでありまして、五十七年は凍結、五十八、五十九、六十と三年間値切られるということになりました。せっかく勧告しても凍結されたり値切られたりというのじゃ甚だ心外だと思うのです。これは人事院総裁としてはどう思っていらっしゃるか、お尋ねしたい。
#91
○内海政府委員 私どもの勧告がここ数年にわたりまして見送りあるいは抑制が行われた。これは私どもも勧告をした者としまして、あるいはまた公務員の給与のより適正を願っておる者としまして甚だ遺憾に存じておったわけでございますが、しかし、その間も政府におかれては最大限の努力をしたいあるいは努力をするということでございまして、幸いに六十年度の勧告につきましては、その始期は七月ということにはなりましたけれども、内容的には完全実施が行われたわけでございます。これは大きな前進であり、私どもとしましては、政府が今後における完全実施ということを具体的な事実としてお示しくださっておるものと期待いたしておるわけでございます。
 政府におかれまして、今回も総理あるいは大蔵大臣も総務庁長官も完全実施への努力ということを言われておるわけでございます。私どもはそれを大いに期待をいたしておる次第であります。
#92
○江崎国務大臣 担当大臣としても重ねてお答えを申し上げておきます。
 財政事情が引き続き厳しい情勢にあることは御存じのとおりです。しかし、昨年の十一月八日、官房長官が談話ではっきりお示しをいたしました。それは、給与は勤務条件の基本にかかわる重要な事項だ、これは勧告を完全実施する方針で臨んでいきます、こういう談話を発表しております。これはお含みおきを願いたいと思います。私もさよう心得ております。
#93
○中島(武)委員 率はそのとおり実施されているわけですが、月がずらされているというのは、この問題に関して言えば私は大変遺憾だと思うのです。しかも、来年度の予算を見ますと、公務員の給与のアップ分が計上されていない。そこで公務員労働者の中に不安が広がっているのです。七月実施ということがやられたこともあるので、五%条項を盾にとって、ことし、つまり六十一年ですね、ことしは人事院勧告がなされないのではないか、つまり官民較差が五%未満におさまってしまって勧告がなされないのではないか、こういう不安が広がっているわけであります。
 それで、私は人事院総裁にもう一度お尋ねしたいのですけれども、官民較差五%未満でも必ず勧告を出します、こういうふうにお約束できるかどうか、この点を伺いたいと思う。
#94
○内海政府委員 先刻御承知いただいておりますように、私どもの行う勧告は、いわば基本的な労働基本権というものの代償措置として、そしてまた公務員の適正な給与を確保するという観点から勧告を行う制度が設けられ、また、したがって私どももそういうふうに行ってきておるわけです。
 さて、今年につきましても、既に私どもは勧告というものを前提にしながら作業に入っておりまして、この四月をもって官民の給与の比較をいたしたい。その較差がどのように出てくるかということは、今なお想像はいたしかねますが、その結果によりまして、私どもは他のいろいろな諸条件、例えば他の公務員の給与の問題あるいは公務員の実際の生活実態、あるいは先ほど申しましたような勧告制度の趣旨というふうなものを総合勘案しながら最終的な私どもの見解を決定いたしたいと思っております。そのことにつきましては、勧告するかしないかということを今ここで明言することは困難かもしれませんが、私どもとしましては、較差が生ずる限りにおいては、積極的な考え方で臨みたい、こういうふうに思っております。
#95
○中島(武)委員 明言されないのは非常に残念に思いますね。しかし、較差が生じれば勧告はしたいというのが総裁が言われたことでありますから――過去五%未満だからということの理由をもって勧告をしなかったことは一回もないわけであります。したがって、必ず勧告をするというふうにぜひしていただきたいということを要求いたします。
 この問題はこの程度にします。総裁、どうぞ結構です。
 引き続き東京湾横断道路の問題について伺います。これは総理に伺いたい。
 総理は、一月三十日の本会議で我が党の不破委員長が東京湾横断道路について質問いたしましたが、それに対する答弁で、十分採算可能という見通しがあってこれを行わんとしていると答弁をされました。その後、私は建設省から「東京湾横断道路の採算性についての試算結果」なる文書をもらいました。それによりますと、三十年で償還できるというふうになっております。三十年で償還できる根拠について述べていただきたいと思うのです。
#96
○中曽根内閣総理大臣 関係大臣から答弁いたします。
#97
○江藤国務大臣 先般来申し上げておりますように、東京湾横断道路につきましては、所要事業費一兆一千五百億を見込んでおるわけでありまして、民間資金を導入することによってこの建設をやっていこう、こういうことであります。原資は大体六%のいわゆる資金をもって充てていく。五十七年ベースで通行料金は三千円、おおむね三万台を予想して、三十年たったならば十分償還もできる、こういう計算に基づいておるわけでございます。
#98
○中島(武)委員 実は、私この三十年で償還ができるということについて非常に重大な疑問を感じていのです。第一、総事業費一兆一千五百億円、この問題ですが、大型プロジェクトで事業費が計画どおりいったという例はあるんだろうかと思うのですね。例えば青函トンネルは予定の三倍かかっておるわけであります。それから本四架橋の鳴門ルートも現在既に二倍半かかっている。しかも、今度は橋梁部分が五キロですけれども、後の十キロは海底のトンネルなんですね。それでかつ十キロの長いトンネルですから、ちょうど五キロの地点に人工島を設けて換気を行うというふうになっているわけです。自動車の排気ガスを排出するわけですね。それでこういう長いトンネルで、海底で、かつ人工島を設けてやるというのは初めての経験だと思うのですね。そこへもってきて、さらにこれは大変な軟弱地盤なんです。だからどんな困難が待っているかわからない。そこで一兆一千五百億円の総事業費でおさまらないという可能性は大いにあり得るとは思いませんか、建設大臣としては。
 それからもう一つ、ついでに伺っておきますが、この一兆一千五百億円をさらにオーバーしたという場合、この場合には一体そのオーバー分はどこが負担をするのか。これは第三セクターが負担をするのか、それとも道路公団が負担をするのか。もっとわかりやすく言えば、道路公団の所有ですから、道路公団が買い取るわけですね。そうすると、そのときに一兆一千五百億円よりも膨らんだ分を含めて道路公団は買い取る、こういうふうになっているのか、ここを大臣にお尋ねしたいのです。
#99
○江藤国務大臣 一兆一千五百億の事業費につきましては、最終的にそうなるという計算をしているわけですが、三%の物価増を見込んだものが実は一兆一千五百億になっておるわけでございます。したがいまして問題は、本四架橋にしてもあるいはその他の関門にしても、工事費が非常にオーバーしたというのは、途中で中断があったり長年月を要したというところに問題があったと私は思います。したがいまして、今回の東京湾横断道路は十カ年計画でやろう。これはいわゆる用地補償、漁業補償を含めまして十カ年で実は完成させよう、それ以上はかけないという強い決意を持って臨んでおるわけでありまして、私どもはこの十年のうちには完成できるものと思っております。その間に若干の工事費の変動はあり得べし、そのとおり一兆一千五百億どんぴしゃりというふうにはまいらぬと思いますが、何としましても、十年以上にまたがらないようにすることによって工事費の膨らみをなくしよう、こう考えておるところであります。
#100
○中島(武)委員 もう一つお尋ねしたいのですが、そうは言っても、今さっき申したように、大変な、これはどんな困難が待っているかわからないというところでありますから、設計変更しなければならないということになれば、これは工事費が膨らみますね。それから、工期が延びれば、延ばさないように断固やるんだ、こういうお話ですが、延びれば工事費は膨らんでいくというふうになります。
 それから、先ほど言われた自動車の台数の問題なんです。この問題についても、供用開始時に三万台、二十年後に六万台というんですけれども、これも大変率直に言うのですが、無理があるのじゃないかという気が私はするのです。三万台といいますと、我が国の大動脈の一つである本州と九州を結ぶあの関門自動車道路、これはトンネルであります。それから関門橋、これは橋ですけれども、両方合わせて三万三千五百台が通っております。大体三万台に匹敵をするわけですけれども、しかし、木更津―川崎間にそういう三万台も車が通るという要因が一体あるのかというのが非常に多くの識者の疑問とするところであります。
 さらに、料金が、今大臣は三千円、五十七年価格でと言われましたけれども、これは供用が開始されるときには幾らか。私が建設省から伺っているところによりますと、実はこれは四千九百円であります。三千円、三千円と何か三千円で通れるような感じになっていると、そうじゃないのです。これは五十七年価格であります、それは大臣が言われたとおりですから。五十七年価格よりも十何年先の話ですから、供用開始になるのはそのときは四千九百円、そういうふうに私は伺っております。そうなると、往復すると九千八百円、ざっと一万円なんですね、十五キロを往復して。これはなかなか乗りにくいですよ。これは非常に高い。
 念のために伺いますけれども、東名、名神はキロ当たり幾らでございますか。
#101
○萩原政府委員 現在、全国の高速道路の料金でございますが、一キロ当たりたしか二十二円ぐらいであったろうと存じます。そのほかにターミナルチャージもございますので、少しく数字は違いますが、オーダーといたしましては、そのくらいのオーダーでございます。
#102
○中島(武)委員 これは東京湾横断道路の場合幾らになるかと言ったら、五十七年価格で計算すれば二百円ですね。供用時で計算しますと三百二十七円。これはざっと十倍であります。高いんです、これは。これほど高いと通勤なんかには使えないということになってくるんですよね。ですから、やはり非常に限られてくる。
 それから、私はこの問題についていろいろ調査をいたしました。そうしましたら、千葉県木更津や君津、富津なんかも予想のほか期待感が薄いのですね。それから神奈川は何のメリットもないというので、出資金を出し渋っているというのが実態なんです。
 それで、もし三万台通らなければ、これは赤字になる、三十年で償還できない、こういうふうになるんですけれども、三十年で償還、こういうふうに言う場合には、三万台通らないという場合のことも考慮に入れているものなのかどうなのか、この点を大臣に聞きたいと思います。
#103
○江藤国務大臣 中島さん、少しく数字の訂正をさせていただきたいと思いますが、今関門は、関門橋が大体年間一万六千台、関門トンネルが二万四千台、締めて大体四万台の通行でございます。ただ、関門トンネルは二車線だものですから、これは通ろうにも通れないのです。それと御存じかと思いますが、九州と山口は余り経済交流というのはないのですね。ですから、この東京湾横断道路というものとの比較にはならないと私は思っておるのです。
 この前も申し上げましたように、この道路は、南関東の大きなバイパスをなすいわゆる国道四百九号線としての役割をこれから果たしていく、いわゆる東北自動車道路もでき上がってくる、あるいは東関東木更津線もでき上がっていく、あるいはまたその他の中央高速道路もでき上がってくる、いろいろな高速道路が東北、北陸からこう延びてくる、それで湾岸道路も完成をしていく、こっちはこっちの川崎の方で、川崎縦貫道路はできてくるし、東名につながるし、中央自動車道路につながっていく、そして川崎から湾岸五期を経て、そして厚木に通ずる大動脈となるでしょう、こういうふうに申し上げておるわけであります。私は、関東一帯の将来の道路交通綱の整備、特に今世紀末には七千六百キロの高速自動車道路がほとんど完成をする、北から南まで完成をするという中で大きな役割を果たしていくものと考えておるわけであります。
 特に、料金が高いというお話ですが、関門トンネルは、もう既に償却をいたしまして、今は維持費だけを取っておるのです。赤字だ赤字だと言われたけれども、あそこももうとうの昔に払ってしまって、今はもういわゆる維持費だけを関門トンネルは取っておる、こういう状態であります。
 今、御承知のように、恐らく中島さんのことですからごらんになったと思うのですが、川崎から木更津間のカーフェリーは七十分かかるんですね。これが料金六千七百円です、現在がこの横断道路ができ上がりますと、十五キロが十五分間で通行できるということですから、その至便さに至っては、それは比較にならないものになってくる、利用者は急激にふえていく。このことについては経営の基礎にかかわることですから、道路センサスその他を慎重に長い間道路公団が研究に研究を重ねてきたことでありまして、私は万間違いはないものと確信をいたしておるものでございます。
#104
○中島(武)委員 カーフェリーの話が出ましたけれども、これは台数は数百台にすぎないですね。片や三万台の話なんです。ですから、それは大臣が言うのはそのとおりなんですけれども、極めて少ない台数しか輸送していない。これはちょっと一言申し上げておかないと、随分たくさんあって、それで随分安く橋といいますかトンネルができれば通れるんじゃないかというふうに思われるといかぬので、一言申し上げておきたいわけです。
 それから、今三万台確実にいけるというお話ですが、資金コストなんですけれども、資金コストは約六%となっているんですね。そうですね。ところが、七%になったらこれは大変な狂いを生じてしまうわけですね、償還計画に。約六%というのは、どの程度の範囲が六%なんだろうな、こう思うのです。それはお答えがありますか。
#105
○江藤国務大臣 その前にちょっと。先ほど私、関門橋、関門トンネル、年間と申しましたが、一日当たりでありまして、大変失礼をいたしました。年間一万六千台、四万台ですと、これは大変でありまして、これは間違いであります。訂正させていただきます。
 それから、資金コストは、これは工事費についておおむね六%をめどにしておる、こういうことでありまして、もう御存じでしょうが、道路開発資金、これは民間資金を七%で入れまして、こっちを〇%で、三・七五でこれを貸す、その他割引債等入れて大体六%、こう考えておるということでございます。
#106
○中島(武)委員 私は、細かいことを一々、償還計画に関するいわば基礎となるところをちょっと大臣にお尋ねしてきましたが、実はちょっと委員長、文書の配付をお許しいただきたいのです。
#107
○林(義)委員長代理 はい。
#108
○中島(武)委員 大臣の方に渡ったようですから、ちょっと申し上げます。
 第一枚目にありますのがモデルAでございます。実は、今大臣が言われました建設費一兆一千五百億円、料金は、これは供用開始時が、事前に伺ったところ、普通車四千九百円だというのでこういうふうに計算されております。それから大型車がどのくらい入るかということもお尋ねしましたところ、料金としては五割増しで、混入率二〇%だ。これは随分高いと思っているのですが、建設省の言ったとおりですからそういうふうにしてあります。それで台数は、当初三万台、二十年後六万台でございます。等率で六万台にふえていくというふうにしてあります。管理費をあらかじめ伺いましたところ、年間百億円ぐらいじゃないかというので、百億円としてあります。金利は六%でございます。
 それで、ちょっと簡単に御説明いたしますと、最初は料金ですね、五千三百九十円、それから台数が三万台、年間の収入が、三百六十五日掛けますから五百九十億でございます。その次にありますのは一次金利です。これは、一兆一千五百億円借りておりますので、これに対する利息〇・〇六を掛けたものでございます。それから管理費がかかります。これを合わせますと七百九十億になります。したがって二百億足りないということになりますが、最初から一年間二百億借りる必要はありませんので、同じだけの仕事をしているとすれば、ちょうど半分、百億を見ればよろしいわけです。それで、二次金利が六%かかりまして、これがその次の二次金利の六億円なんです。一次金利、管理費、二次金利、費用合計は七百九十六億になります。したがって、収支の差は二百六億になるのです。この二百六億は一兆一千五百億円に積み増しされます。
 それから、第二年度はどうなるかというものなんですが、第二年度についてもちょっと簡単に言いますと、二年度目から問題になりますのは二次金利のところであります。これは二つありまして、一つをAとすれば、一次金利と管理費を足したものから収入を削って、それを括弧で大きくくくって〇・〇六を掛けて、割る二であります。それからもう一つは、Bとして、一年目の借入残高一兆一千七百六億から一兆一千五百億を引いたものに〇・〇六を掛けて、この二つ、A、Bを足したものであります。
 考え方としてはこれ以外にないと思うのですけれども、これで計算をいたしますと、何と三十年後には五千八百十九億の借金を抱えたままということになるのです。これは、建設省、大臣がおっしゃっているとおりに計算をしてこうなるわけなんです。だから、総理が採算性は十分に合いますと言われましたけれども、採算性は合わないのです。大臣何か……。
#109
○江藤国務大臣 大変難しい計算を丹念にされたその御努力に対しては、さすがだなと思って敬意を表します。
 ただ、今見たばかりですから何とも申し上げられませんが、三十年間にわたって料金は五千三百九十円で据え置きと、大変結構なことでありますが、ちっとこれは上がらぬもんかなという感じもいたします、こうせぬと計算はできなかったのでしょうが。私は、すべての料金で三十年間据え置きというのは大変結構だと思います、こうあるべきだと思います、これは公共料金ですから。だけれども、三十年一銭も上がらぬというのはまあどうかなという感じです。せっかくおつくりになったのですから、とやかく申し上げません。
 それから、せっかく御利用いただきまして、二年目あたりから共産党さんもこれは乗っていただくのかな、大分ふえてきたな、こう見ておりましたら、二十年したらぱたりととまりまして、一台もふえぬことにあと十年はなっておりまして、それから借金がふえるような格好になる。もうちょっと台数がふえぬかな、私は、正直言ってそういう感じでございます。
#110
○中島(武)委員 実は、そういうふうにふやすと、物価スライドをさせるということになれば、管理費の方も物価スライドをさせなければならぬわけであります。それで私はそこの考え方を、試算表をもらったときに、試算表といいますか、「東京湾横断道路の採算性についての試算結果」、これを建設省からいただいたときに、くどいほどいろいろ聞いたのです。そうしましたら、料金は固定するという考えなんだというのですよ。それじゃ管理費の方も固定するんだなと聞くと、管理費の方も固定する、当然そういうふうにして計算しますというわけなんですね。それで私はこういうふうに計算したわけでありますが、どの程度上げるのか知りませんけれども、上げるということになりますと、管理費の方もまた同時に上げなければならないということになりますし、それから、与えられているものは二十年後の六万台という数字でありますから、そういうふうに計算をしたということであります。
 ですからこの点は、建設省がおっしゃったとおりに計算をしますとこうなるわけでありまして、この点は御確認をいただきたいということであります。
#111
○江藤国務大臣 一つの計算の仕方として承っておきたいと思います。
#112
○中島(武)委員 恐縮ですが、二枚目をちょっとごらんいただきたいと思うのですが、これは、一兆一千五百億円が二割ふえたという場合に一体どうなるだろうかということを試算したものです。一兆一千五百億円が一兆九千三百五十七億に膨れ上がってしまいます。工事費は、大臣はこんなふうにならないようにということで頑張るというお話だったのですけれども、現実の世の中ですから何が起きるかわかりません。こういうことは大いにあり得ることじゃないか。
 それから、さらにその次を見ていただきますと、モデルRでございますが、これは大型車の混入率が一〇%であった場合であります。九千二億残るわけであります。
 それから、一割台数が不足をしたという場合、これは減らないどころか逆にふえてしまって、一兆二千八百二十億というふうに三十年後もふえるわけであります。
 それから、金利は六%ではなくて六・二%になったと仮定しますと七千八百十四億残る、こういう結果になるわけであります。
 私が今申し上げたようなことが全部悪いことに、悪いことにといいますか、そういうことはあり得ることだと思うのですけれども、重なりますと、その次のFというところに書いてありますが、三兆二千三百四十七億になってしまうという計算になるわけであります。
 それで、もしこういう赤字が発生したという場合にだれが負担をするのかという問題なんですけれども、これはこの前も建設大臣からも答弁があったとおり、結局、道路公団の所有ですから、道路公団が負担をするということになるわけですね。
 それで、この計画というのは、第三セクターを構成する大企業というのは一体幾ら負担をするのか。出資金は全部で六百億ですから、そのうちの三分の一、二百億を負担するにすぎないと思うのですね。それで、横断道路建設のための調査費は百億を超えておりますが、これも自分でその調査をしたんじゃないわけで、これは活用すると。それから設計も、道路公団が基本的な設計はおやりになる、こうなるのですね。そうなりますと、結局二百億を出しただけで、ほかは、端的な話をすれば何もしないということになってしまうわけでありまして、いろいろな、赤字、採算性がうまくいかないというような問題が起きてきたときには道路公団の負担になる、そしてそれはひいては国民に対するツケになってしまうということになるわけですね。
 だから私は、これは果たして民活というふうに言えるのたろうかというふうに、総理、これは思うのです。それで国民が反対して、臨調でさえも大型プロジェクトを凍結したわけです。行革審は民活ならというので凍結解除の方向を出したわけでありまして、そういう点では、私は結局、東京湾横断道路というのは民活でやるというふれ込みで大型プロジェクトの凍結解除の口実に使われているんじゃないかというふうに思うのです。
 今まで私もいろいろと建設大臣あるいは総理からも何度も話を聞いてきましたが、民活論というのは結局、民間のノーハウを活用して効率的な仕事をするということと、それから民間の資金を活用するということにあるわけですね。国の財政がピンチだ、だから民間資金を活用するんだ、こうなっておるわけなんですけれども、しかし今度の東京湾横断道路の場合に、実際にそれじゃこれが民活と言えるのか、果たしてそういう中身なのかというふうに考えますと、資金構成を見ましても実際には財投の金が随分多いわけですね。民間企業がまるきりゼロとは申しませんけれども、しかし非常に多い。そしてとどのつまり、巨大プロジェクトはうまくいかないという場合、つまり採算割れしたというような場合には結局、道路公団、国が、国民がかぶるというふうにこれはなっているのです。
 先ほどから言ったようなことも、大臣がある面では認められたかと思いますけれども、一つの計算方法だというふうに言われましたけれども、しかし私は、これは建設省の言ったとおりであり、それからまた私がB以下にいろいろ試算したことは現実問題としてはあり得ることなんですね。公共事業だからこそ今まではこういうのは国がやってきたのです。ところが今度は、民活だというのだけれども、果たしてこれは本当に民活と言えるのだろうか。私は、結局は全部国民がツケをかぶるようなやり方というのはやはり抜本的に再検討をされなければならないのではないかというふうに思うわけであります。
#113
○江藤国務大臣 これだけ大きな世紀のプロジェクトでありますから、慎重の上にも慎重を期して、絶対に失敗することがないように細心の注意を払うことは、私は当然であると思います。
 それから、しばしば建設省のお話が出ましたが、建設省の最後の意思決定は建設大臣がするものでございます。したがいまして、私が言うのが建設省の答弁でございます。
 しかも、私はこの際申し上げておきたいと思いますが、よく日ソ交渉の中で経済協力が言われて、シベリア鉄道開発などというのが言われる。あの荒野の地に鉄道を敷いて一体ペイするのだろうか、こう思ったりする。あるいは揚子江の上流の重慶のところに三峡ダムというのをつくって二千万キロワットから三千万キロワット、関西電力の総電力量に匹敵するダムをつくろうとする。一体採算がとれるのかな、こう思うのですね。しかし私は、一つの国家が生存をし民族がこれから営営と発展をしていくためには、そうした国家的な大きな目的を持ったプロジェクトは当然あっていいと思うのです。それが政治である。それが将来にわたる、我々が子や孫の代に残す大きな遺産として、我々は勇敢にそうしたものに挑戦していく必要があると私は日ごろから思っています。
 同時に、アメリカの高速自動車道路の四分の一が非常に交通規制をしなければならぬようになり、五分の一の橋梁が重量制限をしなければ通れなくなったというところに、アメリカ経済の行き詰まりがあると私は見ておるのです。公共事業というのは私はそのようなものだと思い、多種多様の目的と、また使命を持ったものだと思っております。
 したがいまして、東京湾横断道路もそういう考え方に基づいて、国の予算やらあるいはまた方針に左右されることなく、短期間に効率的に、事業を中止することなくやっていくために民活を取り入れてやろうという制度でございますから、ぜひ温かい御理解を賜りたいと思うわけでございます。
#114
○中島(武)委員 私は大型プロジェクトをすべて悪だという考え方を持っているわけではありません。また、大型プロジェクトはリスクを伴いやすいものでありますから、やるときにはこれは国が責任を持ってやるという態度をとってきたのです。ところが今は方針を転換して民活にされたのです。ところが民活というのは名前だけなんです。さっきから言っているとおりであります。だから私は、そこで結局、失敗をしたり、ミスを犯したならばツケが全部がかってくるようなものであってはならない、慎重にやらなければいけない。総理は本会議で、これは採算性が十分とれるんだと大見えを切られました。だけれどもしかし、さっき建設大臣が認めたように、私の書いたものは一つの方法であることは認めると言われた。一つの方法であれ二つの方法であれ、これにはうそも隠しもないのです。つまり三十年間で償還はできないのです、これは。そういう計算なんです。私が好むとかあなたが好むの話じゃないのです。
 そういう問題のときに私が要望するのは、やはり根本的な再検討ということを加えるべきではないかということであります。私は総理の見解を最後にお聞きしたいと思う。
#115
○中曽根内閣総理大臣 再検討する考えはありません。
#116
○江藤国務大臣 この前も松本さんに申し上げましたように、この計画はもう三十年も前から関係者の間で実は非常に熱心に進められまして、昭和四十一年の四月に建設省が初めて実はこの計画をやろうということで調査に取りかかったものであります。そして昭和四十七年にはこの東京湾横断道路建設のための研究会がスタートした。五十年には建設省が、この横断道路は十分やっていけるという結論に達した。そして五十一年に道路公団にこれを渡しまして、自来十年間にわたっていろいろな環境調査あるいは経済調査、今中島さんおっしゃったように採算が一番ですから、こういう開発効果によって車の通行量その他波及効果はいかにあるかということを十年間検討の末、これは絶対にやれる、いけるという確信を持ってその結論に達したものであります。
 しかもこの工法については、御承知のように最も進んだシールド工法というのを十キロのトンネル部分には導入するわけでありまして、この特例法が国会を通過して、いよいよ取りかかるということになってスタートをしましたならば、とまることなく、十年以内には絶対に完成する、こういうことでやっていくわけでありますから、その点は御理解を願いたいと思います。
#117
○中島(武)委員 先ほどから言っておりますように、再検討を重ねて要求したいと思うのです。理由はさっきから申しました。時間がありませんから、るるは申しません。実際の仕事は大企業がやるのですね。だから、そこのところは大変大きなもうけになるでしょう。それからまた、赤字になるとか償還できないとかいうことになった場合にはそのツケは国民に返ってくるのです。だから慎重に再検討をしなければならないということを私重ねて要求して、質問を終わります。
#118
○林(義)委員長代理 これにて中島君の質疑は終了いたしました。
 次に、土井たか子君。
#119
○土井委員 私は、ただいまから一時間にわたりまして女性に関する問題で質問をさせていただきたいと思うのですが、その問題に入ります前に一問ちょっとお尋ねをしたい件がございます。
 それはほかでもございません、二月の七日に投票のございましたかのフィリピンの大統領選挙でございます。連日、私どもの茶の間の方にはテレビを通じてニュースの時間にかの地における混乱ぶりが報道されるわけであります。新聞を毎日開きますと、この問題に関する記事のない日はございません。それで、ちまたの声は、茶の間の人たちの率直な声は、一体どうなっているんだろうか、フィリピンの選挙というのはこんなに疑惑に満ちたものなのか、まことに混乱と不正が渦巻いているという実感をみんな国民は持っておると私は思うわけであります。こういうちまたの声あるいは新聞の連日の記事、テレビの報道、こういうことについて内閣総理大臣はもちろん御存じでしょうね。
#120
○中曽根内閣総理大臣 新聞は読み、テレビは見ております。
   〔林(義)委員長代理退席、中島(源)委員
    長代理着席〕
#121
○土井委員 それが茶の間で見ております人たちの率直な声戸特に女性というのは率直に物を言うという特性を持っておりまして、これは大変よいことだと私は思いますが、今のフィリピンの情勢に対して非常に憂慮しながらこれはまことにただごとでないという気持ちを皆持っているわけであります。これは普通の状況とは言えませんよね、総理大臣。これは非常に混乱をして、そして不正の渦巻いた選挙である、こういう実感を国民が持っているということも大臣は御存じでいらっしゃいますか。
#122
○中曽根内閣総理大臣 さまざまな評価をしながら国民の皆様はごらんになっておると思います。人によっていろいろ違うと思います。
#123
○土井委員 いろいろ違いはあったとしても、おかしいと思って見ている人ばかりだろうと思うのですよ。これは当たり前の状況であって、至極当然のことであると思って見る人というのは恐らくないだろうと思うのです。
 まあ総理大臣にこのことを幾らお尋ねしても恐らく同じようなお答えを続けてなさるから時間のむだだと思いますが、安倍外務大臣、お隣の国でこういうふうな状況というのが今展開されているわけですが、あの選挙の状況をごらんになりまして、もうきょうで六日だったのですね。しかし、依然としてどうなるかわからないのです。票読みも全然違った票の読み方というものが出てきておりますし、しかも大量に投票用紙が投棄されていることが発覚したり、それから大変指導的な役割を果たす人であるとか運動員が射殺されたり、いろいろなことが起こっておりますが、これは正常とお考えになりますか、ただごとでないというふうにお考えになりませんか、困ったことだとお思いになりませんか。外務大臣として、隣国のことでございますから。(発言する者あり)それは内政干渉じゃないですよ、こういうのは。感想としてひとつ外務大臣のお気持ちというのはどういうことでしょうか。
#124
○安倍国務大臣 隣国のことでありますし、ASEANの一国で、日本とも歴史的に非常に深い関係でありますし友好関係にありますだけに、今の選挙での状況はやはり心配をいたしております。刻々と情報を集めておりますから、今議会で整理がされておるということで、我々としては選挙の前から、選挙は公正、自由に行われることを期待するという日本政府の立場を表明しておりますが、この選挙の結果が民意を反映するという形で確定をして、そして政局が安定することを心から期待をしておるわけです。
#125
○土井委員 希望的観測みたいなものをおっしゃっていますが、現実の問題はそうではなくまことに不正常な状況がここのところ続いているわけですよ。
 十三次のフィリピン円借款の調印が無期延期になった。これは四百九十五億。非常に賢明な策だと私は思います。これは、外務大臣もそのようにもちろんただいまお考えでしょうね。
#126
○安倍国務大臣 いや、無期延期になったということではなくて、十二日の署名が基金総裁の都合で延びたということであります。
 既にこの借款については交換公文を交換しておりますから、確定した一つの方針でございます。我々はこの方針は貫いてまいりたいと思います。
#127
○土井委員 しかし、現実の問題としては決められた日に署名はできていないということがただいままで続いてきているというふうな現実は現実としてある、これはそのとおりですね。
#128
○安倍国務大臣 予定された十二日からは延びた、こういうことです。
#129
○土井委員 本題の方に少し歩調を進めたいと思います。
 昨年は国連婦人の十年の最終年でございまして、女子に対するあらゆる形態における差別を撤廃する条約を日本は批准をいたしました。この条約の中では、その前文の箇所に、「社会及び家庭における男子の伝統的役割及び女子の役割の変更が、男女間の完全な平等の達成に必要である」、こう書いてあるのです。よろしゅうございますか、家庭においては男性も女性もともに協力をして努力をしていきましょう、家庭の役割を男女ともに果たしましょう、したがって、男の人は働けばよい、女の人は家庭におればよい、こういうことではありません、この点を変えていかなきゃならぬということをはっきり明記しているわけです。もう女性というものはどんどんどんどん働く現場に出かけておりまして、働くことが当たり前であります。恐らくは二十一世紀に向けましてどんどんその数はふえて当たり前ですし、家庭と、それから職業ということを両立させなければならないということは、男女ともにこれは問われているわけであります。
 そのためにきょうはこれから聞く問題があるわけですが、内閣総理大臣に女性像をお尋ねすれば、恐らくよき母でありよき妻であってほしいとまたおっしゃるだろうと思うので――笑っていらっしゃいますけれども、そうなんです、何遍聞いてもそうなんです。失礼ですけれども、内閣総理大臣の周辺にいらっしゃる大臣方にお尋ねしても恐らく同じような答弁が返ってくるのじゃないかと思うのですね。そこで、こう拝見したところ、どうも一番お若いのは防衛庁長官じゃないかと思うのです。(発言する者あり)ああ、そうですか。
 それじゃ、またそれは後でお尋ねするとして、防衛庁長官、かわいいお嬢さんがいらっしゃいますし、二十一世紀をあともう十四年後に控えておりますが、それを担う政治家として、女性観についてひとつまずお尋ねさせていただきたい。どうですか。
#130
○加藤国務大臣 今私の娘は高校一年と中学三年と、それからまだ幼稚園のもおりますけれども、やはり私、諸外国をいろいろ見てきたり、そういう中で女性と男性の関係というものをいろいろ考えるのですけれども、結論から言えば、自分の意思を持った娘には育てたい、それから自分のやりたいものを持った娘には育てたい、こんなふうに思っております。
#131
○土井委員 大分に総理大臣と違うのですね、やっぱり。
 河野大臣、いかがですか。河野大臣にもお嬢さんがいらっしゃることは私存じおります。
#132
○河野国務大臣 最近女性について感じますことは、例えば昨年一年間でも各界できちっと光る人が大変多かった。例えば芥川賞とか直木賞とかあるいは大宅賞とか、非常に女性の方の活躍が目立った。これは女性の方々が、以前に増して自分の時間を持って自分を確立をされた。あるいはもっと言えば、男性の方がとかく義務的な仕事が多くて、そういう新しい分野に気を配る時間がむしろ非常に少なくなっていて、その反面女性にそういう時間が比較的多かったんじゃないか、そんなことを感じております。
#133
○土井委員 個性的な女性というのをやっぱり河野大臣も好ましいと思っておられるというのが、今の御答弁の端々に出ているわけであります。いや、違っていればそれは恐縮ですが、それはそのとおりに思われるであろうと私は考えますが、やっぱりこれはあと十四年で二十一世紀ということになりますから、為政者の認識というのは非常にこれは大事だと思うのですね。
 今承っておりますと、内閣総理大臣とちょっと隔たりがあるようでありまして、やっぱりよき母でありよき妻である、まあこんなこと言われなくたってそれは当然のことであるかもしれませんけれども、やっぱり家庭を一番大事にして、働くなんていうのはまず家庭を大事にしてからの話だとか、働くことによって家庭を破壊してもらったら困るとか、おのずとこういう認識というのは案外年配の男性に多いんですよ。この認識というのがやっぱり少し整備されていかないと私はいけないなという気がいたします。
 さあそこで、外務省は、この女子差別撤廃条約を批准するときに、この条約と表裏一体でございます男女労働者の機会及び待遇の実効的な均等を確保するという観点から、男女という性にかかわらず家族的な責任を持つ労働者が差別を受けることなく働くことを可能にするということと同時に、職業生活と家族的な責任の両立を図り得るような措置を講ずるために、いろいろと質問をいたしまして、結局外務大臣は、あの条約と表裏一体というふうに考えていいILOの百五十六号条約というのをぜひとも国会に出したい、そのために努力する、こうおっしゃったんです。
 今国会は、外務省は二つのILO条約を出してこられておりますけれども、私、ああ百五十六号条約が出てきたと思いきや、中身違うんです。百五十六号条約じゃないんですね。今その百五十六号条約が出てないというのは、一体どの辺にまだ出すことができないという理由がございますか。どこの省ですか、問題は。
#134
○安倍国務大臣 女子差別撤廃条約の審議に当たりまして、土井委員から随分啓蒙されました。そのときの審議の中で、これに関連する百五十六号条約を批准すべきであるという御質問がございまして、これについては、外務大臣としてもこの批准ができるように努力はひとつ重ねてまいりたい、こういうことを申した覚えがございます。
 しかし、まあこれにはやはり国内の各省の関係の法規もありますし、国内の環境整備等もありますから、それをやらなければ条約の批准というところまでいかないわけで、今外務省としてその辺のところを整理、検討、調整をしておるという段階で、残念ながら今回の国会には間に合わなかった、こういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
#135
○土井委員 残念ながら間に合わなかったとおっしゃる、そのところの間に合わなかった調整の中身というのは一体どこの省との間ですか、いろいろあると思いますがそれをはっきりしておいていただく必要があると思います。
#136
○中平政府委員 お答えいたします。
 現在検討中の点は多々ございますが、例えて申し上げますと、第八条の規定に関連いたしますが、家族的責任のみをもって解雇することを禁止することまで要求しているのかどうかというところが、まだ十分整理されてないというところでございます。
 それからもう一つの例といたしまして、第十条に関係する点でございますが、この条約は、国内事情を考慮した上で段階的に適用することが認められているということでございますが、仮に段階的に適用されるという場合に、最低限どの程度の施策を講ずる必要があるのかというような点について、最終的な結論を得ておらないわけでございます。
 先ほど大臣が申し上げましたように、この問題につきましては、現在の締約国における解釈とか実施のための措置等につきまして現在鋭意調査中でございまして、その調査が完了した暁には今国会中に何らかの形で報告を申し上げたい、こう思っておる次第でございます。
#137
○土井委員 それは約束ですから、今国会に報告をする、それからできたら提案したいとおっしゃったのは。したがって今の、労働省ですか、今御答弁になったのは。労働省ですね。(「外務省」と呼ぶ者あり)外務省は一体どこの省との間でそれを詰めていらっしゃいますか。
#138
○中平政府委員 お答えします。
 関係省は多々あるわけでございますが、私ども外務省といたしましては、先ほど申し上げましたように、既に批准しておる諸国の大使館に訓令をいたしまして、先ほど申し上げましたような諸点につきまして調査している次第でございます。
#139
○土井委員 これは随分作業としてはスローですね。外務大臣、この国会にできたら提案したいとおりしゃったんですよ。まだ外国に問い合わせ中って、これはちょっと違ってやしませんか、お約束が。相当これは進んで、もう国内の整備について各省詰めに入られているに違いないと私は思っていたんです。外務大臣、いかがですか。これ約束は約束ですから、果たしていただかなければなりません。
#140
○安倍国務大臣 女子差別撤廃条約を批准するに当たりましては随分時間がかかったわけでありますし、やはりこの種の条約を批准しようということになりますと、各省間の調整とか、これはもう大変時間がかかるということは御承知のとおりでありますし、やっぱり条約を批准した以上は、これを国内的にきちっと守っていかなければならぬわけですから、そういう国内体制ができない以上はなかなか条約の批准を求めるというわけにもいかないわけで、私が申し上げたのは、この条約を批准するために努力はやっぱりやらなければならぬ。同時にまた、今度の国会では少なくともその努力について御報告は申し上げますということを申し上げておるわけで、今そういう立場から外務省を中心にしましていろいろ努力は重ねておるということであります。
#141
○土井委員 何だかまことに歯切れの悪い中身になっておりますが、これは必ず今国会中にひとつ報告をいただいて、次期国会には、次回国会にはぜひとも提出ができるような方向で取り組んでいただかないと。
 実は、差別撤廃条約を批准するということと同時に、これを批准できてよい国内措置がもう既に講じられていると考えていいんじゃないでしょうか、あの差別撤廃条約が批准できたんですから。そういうことからすると、今それは作業が非常におくれているということをきょうははっきり申し上げて、大急ぎでひとつやっていただくことをもう一度ここの場所で改めて申し上げます。よろしゅうございますね、大臣。
#142
○安倍国務大臣 努力をいたします。
#143
○土井委員 さあそれで、昨年この差別撤廃条約批准ということで、国内措置の中で大事なのは、やっぱり雇用機会均等法という法律を制定したということでありました。この雇用機会均等法についてるるお尋ねしたいことは山ほどあるのですけれども、きょうは時間のかげんがございますから、具体的なことについて簡明にひとつお答えをちょうだいしたいと思います。
 この男女雇用機会均等法はもうことしの四月一日から施行される、そのためにこの均等法のかなめとなる指針、省令の内容を一月二十七日に公布されているわけです。
 さあそこで、その中身についてなんですが、これ吟味すれば吟味するほど、四月の一日に施行されて後問題が出てくるであろうということが予想される点がございます。一々取り上げておりましたら、これは半日あったって一日あったって時間が足りないと思うのですが、ポイントだけを一点一点洗い出してお尋ねします。一まず、募集、採用というところなんですが、これは入り口のところなんです。一般職男子のみの募集、採用、これはいけない。男女ともに募集、採用する、そうでないといけない。ところが一方で、補助職は女性のみでよろしいということが指針の中身を見るとございます。また、男性は七十人、女性は三十人、こういう募集の仕方をいたしましても、女性を排除していないからいい、こういう募集の仕方になります。これは、こういうガイドラインというのは、こういうことにかなっていさえすればよいという中身じゃなかろうと私は思うのです。本来はやはり男性が五十なら女性も五十、機械的に申しますけれども。それからまた、補助職のみ女性というのはこれもまたおかしな話でありまして、これはやはりこういう募集の仕方は許せないというところに持っていくことが大事だと私は思うのですね。
 そこでお尋ねは、こういうガイドラインにとどまらないで、改善のために、努力を幾らでも事業者側、企業者側はやるということが問われている、こういう趣旨にこの中身は受けとめてよろしゅうございますね。どうでございますか。
#144
○佐藤(ギ)政府委員 今先生お話ございました募集、採用でございますが、指針というのは、使用者にぜひ努力していただきたいということで具体的な目標を定めたものでございます。法律は、男女均等な扱いをしていただくことを努力義務として定めておりますので、それを上回る努力を企業の方にはしていただくことは非常に望ましいことだというふうに思っております。
#145
○土井委員 さて、上回る努力ということだけではなくて、中身を見ていきますと、商社の中にこういう例があるのですね。実際の採用に当たって一般職は男性だけを採用する。女性の場合は補助職ということで採用して、そうして事実上は同じ事務職を担う。しかし、同じ仕事をしながら、一般職である、補助職であるという区分けによって賃金や待遇の差がそこでどんと出るというふうな実態がございます。
 こういうことなどを考えますと、やはりこういうことに対しての努力というのは、それは不断の努力として問われる。具体的にこういうことをなくしていくという方向での努力は一日一日早ければ早い方がいい、そういうふうに考えますから、これはそのように思ってよろしいですね。
#146
○佐藤(ギ)政府委員 先ほど申しましたようなことで、とりあえずまずやっていただくことは、指針に定められたことは必ず守っていただくということでございますが、それ以外のことにつきましても、一日も早く本当の意味での均等待遇が実現することは望ましいことだと存じます。
#147
○土井委員 それから二つ目は、これは見てみますと、訓練というのは非常に大事なんですけれども、その訓練の中から、今回のこの省令の中身を見てまいりますと、OJTというのが外されているのです。オン・ザ・ジョブ・トレーニングですね、これが外されているのですね。OJTというのはどのように日本語で訳せばいいのか、ちょっと適切な言葉を教えていただきたいと思うのですが、企業がやる職業訓練でありまして、仕事を遂行していく過程においていろいろ仕込んでいくという性格のものであって、仕事の与え方自体と一体不可分のものだというふうに考えていいだろう、と私は思うのですが、これが今回の訓練の中から外されているというのは一体どういうことに相なるかと思うのです。
 昨年政府は、職業訓練法の一部を改正する法律というのを具体的に守っていかなければならないということにおなりになったはずでありますが、これを改正するときに国会の中でも種々論議がございましたが、この改正案の中身を見てまいりますと、「新時代の企業内職業能力開発の課題と方向―新しい「学習企業」をめざして―」という企業内教育研究会報告が出ております。これが一つは改正に向けて考えられる場合の土台になっているのですが、それを見ていきますと、「戦後日本経済の発展を支えた人材育成の基本はOJTにある。」とちゃんと書いてあるのです。
 このOJTから女性を除外するというのは、これはどうもおかしな話でありまして、やはり訓練の中にはOJTを含むということでなければならないと私は思うのです。そっちの方向に持っていくということを排除してはいない、こういうことを考えなければならないと思っていらっしゃると私は思うわけでありますが、これはいかがでございますか、どのように考えられますか。
#148
○佐藤(ギ)政府委員 オン・ザ・ジョブ・トレーニングの訳は何かというお話でございましたが、私どもは業間訓練というふうに言っております。
 オン・ザ・ジョブ・トレーニングにつきましては、その仕事をさせながら同時に訓練もするというものでございまして、先生も御指摘のように、仕事の職場でその人が能力をつけていくためには非常に重要なものでございますが、その性格からいいまして、教育訓練的な面とそれから業務の遂行という面とが非常に複雑に絡まり合っておりまして、その分類がなかなか難しいというようなこともございまして、これまでも国会でもいろいろ御議論をいただきましたが、結果的にはオン・ザ・ジョブ・トレーニングは入っておらないわけでございます。ただ、あらゆる意味で均等な取り扱いをなされるということは望ましいことでございまして、使用者も、オン・ザ・ジョブ・トレーニングにつきましてもできる限り均等な取り扱いをしていただくよう、私どももお願いをしていきたいというふうに考えております。
#149
○土井委員 そのお願いをしていきたいとおっしゃっているのは、それではどういうふうな措置を講じてそれは実行されますか。――委員長、委員長。
#150
○佐藤(ギ)政府委員 どうもたびたび小物が出てまいりまして恐縮でございますが、ちょっと……(発言する者あり)
 四月一日から先生御指摘のございましたように法律が施行されるわけでございますが、私どもといたしましては、この法律が円滑に施行されるためには、この法律の趣旨が十分正しく使用者に理解されるということが非常に重要であると思っておりますので、この周知徹底には努めてまいりたいと思います。
 その場合に、指針の内容を使用者の方々にお知らせするというだけではなくて、さらにそれ以上の努力をしていただくことがこの法律の本当の趣旨であるということも、あわせて周知徹底に努めてまいりたいと思っております。
#151
○土井委員 周知徹底はまずなければわかりませんから、これはABCのAだろうと思いますけれども、やはり積極的にもう少し、このことが当然OJTも含んで考えられるという方向に持っていくという措置を労働省としては考えていただく必要があるだろうと思いますよ。
 ここらあたりで、女性の局長の御答弁も大変結構でございますが、大臣に御登場願ってみましょう。労働大臣、どうですか、それをはっきりおっしゃっておいてくださいませ。
#152
○林国務大臣 先ほど婦人局長から御答弁申し上げましたように、労働省といたしましてはあらゆる機会をとらえ、あらゆる時を心得ながら、この問題の周知徹底ということに全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
#153
○土井委員 周知徹底も結構ですけれども、今回の指針、省令の中では外されているという現実があるわけですからね。したがって、その省令、指針についてもつくりかえていくという努力を、労働省自身は、大臣が責任を持っておやりになるということが問われていると私自身は思うわけであります。この点は労働大臣、将来にわたって御努力なさいますよね、当然。
#154
○林国務大臣 社会の移り変わりに従っていろいろな場合が展開されると思いますので、今土井先生御指示のようなことも私どもとしては十分踏まえながら、これから適切な対応をさせていただきたい、このように思います。
#155
○土井委員 中身を見てまいりますと、やはり深刻なのはこれは労働時間のところなんです、本当のところ。いろいろございますけれども、現実に働いている人にとって、この労働時間が今回は母性保護を横に追いやって、労働時間が時間外労働などについても制限が緩和される、深夜業の規制というのが外される、これは大変な大問題なんですね。
 そこで、いろいろなところでいろいろな事情がこれから起きてくると思うのですけれども、その前日になって突然あしたは十時間労働ですということが言い渡される。子供を保育所に預けて働いている母親という立場にとっては、その前日にこれを言われて時間外労働というのは難しい条件を持っている。そこで、時間外労働は私の場合は残念ながらできませんと言って、時間外労働ができないことで断る。ところが、これが不利益な取り扱いの理由になる。極端なことになると、これで解雇されるという場合もなきにしもあらずでございます。
 現にそういう例があるのです。母子家庭で子供が八歳、五歳とあって、そして労働時間について時間外を言われて、それが難しいということになったら途端に首になってしまった。労働基準監督署にそれを申し出て、そしてその事業主の方は三カ月分の賃金をこれに補償して、しかし首になったことはもとに返らぬという実情があったりいたします。
 これは断じて、こういうふうな場合に、これは解雇はもちろんのこと、人員整理の対象にしない、不利益な取り扱いをしない、こういうことははっきりさせておかなければならない、このように思いますが、いかがでございますか。大臣、どうぞ、せっかく出てきていただいたのですから。
#156
○林国務大臣 残業を命令されて、それを家庭の事情によって拒否をしたということで解雇にされたというようなこと、これはその企業がどのような労働協約のもとにそういったことがなされているか、私はつまびらかでございませんけれども、そういったようなことが起こり得るというような客観的な情勢は好もしくない情勢ではなかろうか、このように私個人としては思うわけでございますが、それは企業は企業としてのそれぞれの労使の間の協約も結ばれておることでございますから、そういったことで労働基準監督署の方に提訴がございましたならば、それに私どもとしては十分に調査の上適切な処置をとっていかなければいかぬ、このように思うわけでございます。
#157
○土井委員 これは労働大臣には申し上げるまでもないことでありますけれども、この雇用機会均等法の二条というところを見ますと、「女子労働者は経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者であることにかんがみ、この法律の規定による女子労働者の福祉の増進は、女子労働者が母性を尊重されつつしかも性別により差別されることなくその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営みこということがちゃんと保障されているわけですね。
    〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
 それで、山口労働大臣のときには、「時間外労働その他を強要されるような過程の中で職場を断念しなければならぬことのないように、また、不利益な取り扱いを受けることのないように十分きめ細かい行政的な配慮をいたします。」と答えられているのです。ところが、ただいまの労働大臣の御答弁を聞いていると、ちょっと山口労働大臣当時に比べて、もう一つドーンとやりましょうというところが、後ろに引っ込み思案みたいな感じがして受けとめられるわけですけれども、この点、労働大臣、大丈夫でございましょうね。もう一たびおっしゃってください。こういうことがあるんです、今までに。きちっと国会の中で押さえられているわけですから。
#158
○林国務大臣 前山口労働大臣がここで先生に御答弁を申し上げたことをつまびらかに私は承知いたしておりませんけれども、労働行政の重要な課題の一つとして、私どもは将来に向かってこの問題に取り組んでまいりたい、このように思う次第でございます。
#159
○土井委員 今の御答弁のままでもう一回質問したいような気もありますけれども、もう一点、別の観点の問題を申し上げます。
 今回の省令、指針の中に、御存じのとおりに適用除外の部分があるのです。こういう場合には女性に対して配慮しなくてよろしいという適用除外。適用除外を見てまいりまして気になるのは、会社の立場あるいは事業所の立場あるいはそこの働いている職場の立場でもって外部と折衝するという仕事を女性がやる場合、相手方は女性だったら男性に比べて軽く見るんじゃないかというふうなことを会社が思って、女性をそういうところから外すというふうなことが間々ございます。外部との折衝には女性は不向きであるとか、対人関係でいろいろ相談をして契約を結んだりするのに女性は不向きであるとか、外部と折衝するというふうなことに対して女性は押しがきかないとか、そういうふうなことを問題にするという向きがございます。
 こういうことはただいまのこの適用除外の中に入らない。こういう取り扱いをするということは、外に対して折衝する場合に女性だったら軽く見られるなんというようなことで女性を外すという取り扱いは許せない、そういうことは許されない、このように思いますが、大臣、いかがですか。
#160
○佐藤(ギ)政府委員 大変事務的なことでございますので、私お答えさせていただきたいと存じますが、今先生御指摘になったようなことは、先生もおっしゃいましたように当然にそういうものは対象に入っておりません。したがいまして、女性であるということで適用除外になるということはないわけでございます。
#161
○土井委員 外務省あたり大変問題になってくるのは、治安が悪い国とか、それから習慣とか風習というのが日本と違うとか、これはどこの国に行ったって皆違うのでありまして、特定の国だけを名指しで言うこと自身が私はおかしいと思うのですけれども、こういうのが今回の例の中に提示されています。これは労働大臣ではなしに外務大臣に開きたいと思いますが、こういうのを適用除外にして、女性をそういうところには、やらせないというふうなことを考えてよろしゅうございますか。
#162
○北村(汎)政府委員 外務省の在外の勤務地には、非常に気候の悪いところであるとか、あるいは女性が勤務をされるには、治安の面とかその他社会的風刊、習慣、そういうところで非常に女性の勤務しにくい場所が多々ございます。そういうことで、女性を在外の勤務に充てる場合にはそういうところでないところに充てるということは、当然人事的に考慮いたしております。
#163
○土井委員 それは人為的に考慮とおっしゃるけれども、本来はこれはだれが判断するかという問題もございまして、これは大変微妙な問題であると思いますが、適用除外についてこれを悪用するというのはおかしいと思うのですよ。いろいろとこれを判断なさるのは男性が判断なさる場合が多いわけですからね。だから、これに対しては、やはり範囲を広めて考えるということは許せないというふうに、これははっきり申し上げることができると思います。それはよろしいですね。適用除外の範囲を広げることは断じてあってはならない、また現にあるのを悪用してはならない。
#164
○佐藤(ギ)政府委員 先生おっしゃいましたように、適用除外の範囲というのはもうはっきりと決まっておるものでございまして、これを恣意的に広く解釈して女性に均等な機会を与えないということは許されないことだというふうに考えております。
#165
○土井委員 それで、さっきのいろいろある問題の中でも現実に今働いている人にとって気にかかるのは、これは労働時間のところではないかと思うのですけれども、不利益な取り扱いをするということの中の極端なのはやはり解雇でありますけれども、昇進とか、それから役職につくとか、そういうふうなことについても、女性を先ほど申し上げたような時間外労働ということが難しい条件にあるということで差別的取り扱いをするということは許せないと思いますが、この点も労働大臣、よろしゅうございますね。
#166
○林国務大臣 女性としての特別の除外をなさないというのが今回の均等法の基本のことでございますから、そういったことのないようにしたいと思います。
#167
○土井委員 ところで、日本の労働時間の問題は、これは非常に深刻なんですね。これを取り上げて私はお尋ねをしたいと思いますが、それに先立って、最近やはりこれは女性にとって家庭と仕事を両立させていくということを考えますと、非常に家庭における責任分野というのが女性の肩にずっしりかかるために働きにくいという条件もございます。
 パートタイマーというのが非常にふえてきているんですね。まことにふえてまいっております。「婦人労働の実情」という労働省がお出しになっていらっしゃるいわゆる婦人労働白書などを見ましても、パートタイマーというのは一九六〇年以降年々増加をして昨年の場合なんかは三百二十八万人、それは今から十四年くらい前の五十七万人と比べると五・八倍に膨れ上がっている。
 そうして中身を見てまいりますと、正規の従業員と比べて時間、日数とも同じなんて言われるのが大体全体の二三・七%にまで達しているわけですから、これは大変に私はパートタイマーに対する対策というのは一日としてゆるがせにできない中身だなという気がいたします。
 そこでお尋ねしますが、労働省が五十九年の十二月にパートタイム労働対策要綱をおまとめになりました。これを事務次官名で全国に通達としてお出しになりました。これによりますと、例えば雇い入れ通知書の交付または書面によりまして労働契約が必要なことなどや、週五日以上働くパートタイマーで一年間継続勤務した人たちには労働基準法に基づいて年次有給休暇を与えられるなど具体的な指摘がございます。
 こういう対策要綱の内容についてさっき十分に徹底させることに鋭意努力をしたいということをおっしゃった大臣でございますが、この実施状況を把握していらっしゃいますか、どうですか。この対策要綱の具体的中身について。
#168
○佐藤(ギ)政府委員 ただいま御指摘ございましたパートタイム対策要綱は五十九年の十二月にできたものでございまして、施行されましてから一年ちょっとという大変若いものでございます。私どもとしましてもいろいろな機会に実態の把握には努めておりますが、これからさらにいろいろな調査も含めまして実態の把握に努めていきたいというふうに考えております。
#169
○土井委員 それは、実態の調査、把握に努めていきたいとおっしゃっていますから、そのとおりにやっていただきたいと思いますが、あの対策要綱は五十四年、五十八年度の雇用管理調査をして、パートタイマーについての調査がもとになって、そして要綱がつくられていると我々理解しておりますから、今度は要綱を周知徹底させていただいて、実情把握に向けてまずきちっとした調査をやっぱりやっていただく必要があると思います。これはよろしゅうございますね、今おっしゃったとおりですから。
 そこで、一つ実例を申し上げたいのですが、川崎に高津中央病院というのがあるのです。これは名指しで申し上げていいと思うのですが、そこでパートタイムで看護助手に勤めておられた二人の主婦の方が、昨年契約更新時に病院側から一方的に示された従来よりも不利な労働条件を、これは困りますと言って拒まれたところ、解雇されたという実例がございます。この事件は、地労委でも裁判所でもお二方の主張を全面的に認められまして、パートの主婦が地労委や裁判所に訴えるなどという例はまれだったんですけれども、しかしこのお二方の主張というのがそこで全面的に認められるということになったわけであります。たまたま地労委、裁判所に出た事件でありますからだれしもがもうすぐにわかる事例でございますけれども、わからないで泣き寝入りをされているという事例は全国では山ほどあると思うのですね、これは恐らく。表面に出ないで黙ったままで泣き寝入りされてしまっているという例は山ほどあると思います。労働基準監督署など労働行政の最前線が有効に機能しておりますと泣き寝入りも訴訟も必要ないというふうに思うのですけれども、この病院に対しての是正指導についての内容はどうでございますか、これをちょっとお尋ねしたいと思います。
#170
○小粥(義)政府委員 先生お尋ねの川崎の病院の件につきましては、所轄の監督署にその労働者の方から申告がございまして、現在調査を進めているところでございます。
 今まで把握しているところでは、繰り返し反復、継続雇用されていたにもかかわらず、あるとき年休については今後与えないというような形での条件提示があった、それを断ったことによって解雇対象となった、こういうふうに承知をいたしております。
 基準法の規定によりますと、当然パートタイマーとして雇用される場合、一定の期間がありましても、それが反復、継続して引き続き雇用される場合には、いわゆる期間の定めなき雇用の常用労働者と同じような取り扱いを受けることになります。したがって、その場合に、当然前年に八割の稼働日数があれば翌年は基準法に基づく年次有給休暇の権利が与えられるわけでございますから、そうした点については今鋭意調査中でございます。
#171
○土井委員 鋭意調査中とおっしゃるのですが、年次有給休暇を認めない労働契約が提示されるというふうなことが起こらないようにするのに、それじゃどうしたらいいというふうにお考えになりますか。
#172
○小粥(義)政府委員 事業場いろいろございますので私ども定期的に監督に回るほかに、労働者からの申告を受けまして、当然申告をした労働者の名前が表面に出た場合にいろいろな不利益な扱いを受けることになりますから、そうしたことは申告についてはないように心がけて、その申告を受けて直ちに対応するといったことをやっておりますが、同時に、企業に対する周知徹底は、先ほど婦人局長もお答えしましたが、私ども労働基準監督署を通じましても、パートタイム労働対策要綱の周知徹底は、事業主に対しての指導に努めているところでございます。そうしたことを通じまして、そうした事態が出ないように今後とも進めてまいりたいと思っております。
#173
○土井委員 出ないように努力していくというふうなことを今お答えになりましたが、どうも対策要綱の周知徹底に工夫が必要じゃないかと思われるのですね。重点的業種別対応や地域別対応というのを考えたり、特に今までの傾向からすると製造業重点に傾き過ぎている嫌いがございますから、サービス業対策にも力を入れる必要もあるでしょう。その辺工夫しながら周知徹底をさせ、そして行政で、年次有給休暇を認めないような労働契約が提示されるようなことがないように努力をしていくということが問われていると思いますよ。
 労働大臣、首を振っていらっしゃいますから、どうか前にお出ましいただいて、その辺一言お答えください。
#174
○林国務大臣 ただいま先生の御指摘のように、製造業のみに偏っておるのではないかというようなお話もございましたけれども、ただいまの経済社会情勢を見てみますと、第三次産業というものが非常に大きなウエートを占めてまいっておるわけでございますから、そういった面にもきめ細かい監督行政をしてまいりたいということを申し上げたいと思います。
#175
○土井委員 それじゃまた大臣に続けさまにお尋ねしますが、毎年十一月一日から十日の間に、パートタイム労働旬間というのがあるのですね。この重点をパート駆け込み寺活動みたいなのに持っていって、持ち込まれた苦情に対して即応できるようにその期間だけでもパート保護、パトロールというのをしっかりやる必要があるだろうと思うのです。労働行政の第一線を退職した高齢者の方方を活用するという方法もあるでしょう。いかがです、これ、大臣。ひとつそういうお取り組みを考えていただけませんか。
#176
○林国務大臣 先生のただいまの御提言も大変貴重な御意見だというふうに私ども受け取りまして、今後そういったようなことについても十分に労働行政の中で検討させていただきたい、このように思います。
#177
○土井委員 それで、この婦人労働白書というのを拝見しますと、「労働時間対策」というので、「婦人の職業と家庭責任の両立を図るうえで、労働時間短縮により労働環境の整備が進むことが望ましい。」とちゃんと書いてあるのです。「今後はこれに基づきこというのは「労働時間短縮の展望と指針」を指していらっしゃるのですが、「週休二日制の普及を最も基本とし、年次有給休暇の消化促進及び連続休暇の定着、所定外労働時間の短縮を重点として、労働時間短縮を推進することとしている。」というのが労働省の婦人労働白書の中身にちゃんと掲載されているのですね。
 そこでちょっとお尋ねします。通産大臣にお尋ねします。日本の働いている人たちは、男女ともに働き過ぎだとお考えになりませんか。どうですか。
#178
○渡辺国務大臣 今まではよくそういうことを言われました。
#179
○土井委員 大臣もそのように考えていらっしゃいますね、もちろん。
#180
○渡辺国務大臣 今まではやはり資源がありませんからどうしてもそういうようなことになったと思いますが、これからはいろいろ海外投資の問題もありますし、国内消費を伸ばすこともありますし、過剰労働をどこかで吸収しなければならない問題もおのずから出てまいりますから、労働時間をもっと短縮すべきで、千九百時間ぐらいまでした方がいいんじゃないかというのが大体大勢になりつつあるし、そうしたいと私は思っているのです。
#181
○土井委員 そうすると、今のお答えは通産大臣のお答えなんですが、もちろんアクションプログラムに一生懸命にお取り組みになって御努力をなすっていらっしゃる内閣総理大臣も、労働時間短縮は熱心に取り組まなければいけないというお考えであろうと思われます。今言われたとおりですね。総理大臣、いかがでございますか。
#182
○中曽根内閣総理大臣 時短の問題は私もかねてから積極的に努力したいと思っておるところでございます。今日本は二千百五十時間ですか、一番少ないドイツが千六百時間台、英国や米国が千八百時間台、そういうことを考えてみますと、やはり日本も考えていかなければいかぬ。ただ、これは労使関係で決める問題でございますので政府が干渉するわけにはまいりませんが、しかし、一面において労働基準法の改正問題というものもございます。そういう意味において最低労働時間といいますか、そういうような意味において政府も関係している面もありますので、そういう点ではできるだけ積極的に努力してまいりたいと思います。
#183
○土井委員 そこで労働大臣にお尋ねをしたいと思うのです。週休二日制の推進等労働時間短縮五カ年計画というのは、二千時間に昭和六十年までを一つの区切りとして実現すべく努力をするという中身でありました。昨年、展望と指針というのが、結局二千時間ということを具外的に実現し得ず、また出されたわけであります。この「労働時間短縮の展望と指針」の中でも、これは引き続き二千時間ということを目標とされているように受けとめられるのです。なぜかといったら、目標数値が一切ございませんからわからないのですが、国会答弁なんかをお伺いしたり中身を見ると、前に「引き続き」という表現がこの展望の中にございますから、したがって二千時間ということを考えていらっしゃるように思われるのですが、労働省とされては、展望と指針をここらあたりで改めて、年間千九百時間くらいを目標とするような新たな五カ年計画というのを策定するということをお取り組みになるのが非常に大事じゃないかなと思われるのですが、いかがですか。
#184
○林国務大臣 労働時間の短縮につきましては、従来から労働省といたしましては真剣にこれに取り組んでまいったわけでございます。それで、二千時間という時間のあれでございますけれども、これは努力目標ということで、昭和六十五年まで二千時間に持っていきたいという大きな努力目標を掲げてきたわけでございますから、労働時間の短縮というものは、労働者の健康あるいは社会生活の充実あるいはまた国際社会におきますところの日本の産業、経済の形の中においても、国際的にも大変重要な問題に相なっておるわけでございますので、十分私どもとしてはこういった問題に積極的に取り組んでまいりたい、このように思っておる次第でございます。
#185
○土井委員 今のは、そうすると千九百時間ということを目標値に据えてひとつやってみたいという御答弁になるのですね。何かはっきりそこら辺がわからないのですね。もしそうでないとおっしゃるのだったら、内閣総理大臣や通産大臣の方がむしろ労働時間短縮に熱心だということになりますよ。
#186
○林国務大臣 お答えいたします。
 二千時間というのは六十五年までの目標でございまして、それ以後のことにつきましては、これからいろいろな社会情勢あるいは国際的な環境を勘案しながらやってまいりたい、このように申し上げたわけでございます。
#187
○土井委員 これは六十五年までの間にまた、それは環境に従って整備をなさる必要がおありになると思うのです。外務大臣も貿易摩擦等々の問題についてアクションプログラムに取り組むという立場からすると、やはり労働時間短縮というのは急を要する問題であるというふうな御認識で国会ではるる答弁をされてきたのです。ただいま承ったら、担当大臣である労働大臣がその問題に対する取り組みが一番おくれておられる。よろしゅうございますか。これをひとつはっきりと御認識の上、もう一度答弁をいただいた上で、もうあと二問して、私は終わりたいと思います。
#188
○林国務大臣 再三申し上げましたように、これからの労働時間の短縮というものにつきましては労働行政の中でも大変重要な課題を占めているものでございまして、ただいま二十一世紀に向かってのビジョン懇談会というものも設けまして労働時間の問題は鋭意研究をいたしているところでございまして、先ほど申し上げたように六十五年二千時間努力目標ということで、二十一世紀に向かっては新しい方向でもって見出していきたい、このように思っておるわけでございます。
#189
○土井委員 これはまた相当ぎりぎりと質問、答弁を展開するという場面が必要なように思います。
 さて、あと文部大臣にお尋ねをしておきたいのが一問あるのです。それは何かといいますと、要するに男女平等、役割に対しての男女ともに家庭生活と職業を両立させていくという努力、そういうことを考えますと、意識の変革がこれはどうしても問われるのですね。人間形成の場である教育についてどのようにこういう問題が問われるかというのは非常に大切な、避けて通れない大事な大事な問題です。
 そういうことを考えていきますと、この条約の中には、「教育のすべての段階及びあらゆる形態の教育における男女の役割についての定型化された概念の撤廃。この場合において、その目的の達成を助長することとなる男女共学その他の種類の教育を奨励し、特に、教育書及び授業計画の改定並びに教授法の調整を行う。」となっているのです。条約の十条の(C)というところでそういうふうに決められている。ここにあるところの教育書というのはもちろんのことながら教科書を指すわけですから、教科書もこの中に入るわけですから、教科書について、初等、中等の教科書の調査官を私は調べてみました。そうしたら、主任教科書調査官は全員十二人男性なんですね。そうして調査官の中には、一生懸命に探してみるとわずか女性が二人しかいないのです。全体は四十五人なんですよ。これはもう数年来変わっていません。八年くらい前に私、調べてみたら同じだったですよ。こういうのはやはり文部大臣、若き文部大臣であり、大変意欲的に文部行政に取り組まれる大臣だということを世の中の多くの人が期待しているわけですから、ひとつ大臣から、これ何とかなりませんかということを私は申し上げたいと思っているのです。このままではいかぬでしょう。いかがでございますか。
#190
○海部国務大臣 御指摘のように、条約の第十条で男女の平等が教育の場でも図られなければならない、御指摘のように教科書の問題も教育課程の問題もいろいろ触れられておること、十分承知しております。ただ、文部省としましては女性を軽視したり決してしないで、男女の本質的平等というのは学校教育全体を通じて指導するようにもしておりますし、また今固定概念を破壊しろとおっしゃいますが、社会科等では児童生徒のそれぞれの発達段階に応じて指導するように努めてきております。
 ただ、一つ問題は、中学校とか高等学校の教科書あるいは教育課程における履修選択のあり方が確かに違う、それが条約批准の妨げになってはいけないという指摘等もございましたので、一昨年検討会議をつくり、その結論をいただいて、家庭科に関しましても特定の科目の中から男女が平等の条件で平等に選択するという選択必修の制度の答申を受けておりますから、ただいま行われておる教育課程審議会にその方針での御検討をお願いしておるところでございます。
 なお、教科書検査官の問題につきましては、運用上いろいろな制度、仕組みの問題等にもなってまいりますが、女性で志を持っていただける検査官の希望者がある場合にはそれなりに十分配慮してお願いをするように役所に指導をしていきたいと考えます。
#191
○土井委員 調査官です。検査官ではなくて調査官。これは文部省の方が委嘱されるのですね。したがって、大臣のこれに対する御認識によって大分違ってくると思いますよ。
 さあ、それであと一問だけ。これは厚生大臣にお尋ねしますが、今国会で提出が予定されているということが問題になってまいりました母子保健法の改正です。お考えになっていらっしゃる中身を見れば見るほどこれはゆゆしい中身でございます。部分では憲法違反の疑いすらあるような人権の無視が甚だしい中身を持っている。このままお出しになっていっても通るはずはないですよ、こんな法案。これは今国会まさかお出しになるとは私は思わないけれども、厚生大臣、それは非常に良識ある大臣の御判断というものをひとつ聞かしていただきましょうか。
#192
○今井国務大臣 お言葉ではございますが、私どもはこの法案は一生懸命考えましてやったものでございますが、しかしまあそういう御意見もあることはよく承知いたしておりますので、厚生省としましてはなお慎重に検討を進めてまいりたいと、こう考えております。
#193
○土井委員 慎重に検討って、どっちの方向に検討なさるのですか。今国会出す方向で検討なさるのですか。今国会はもう出さないな、これは無理だなという方向で検討なさるのですか。いかがですか。
#194
○今井国務大臣 おっしゃいました両方の御意見を含めまして検討をさしていただきたいと思います。
#195
○土井委員 それはおかしいので、それははっきりしておいてくださいませよ。大臣、それくらいははっきり言えるでしょう。今国会は難しそうだとか、それはどんなことがあったって出すとかあると思うのです。難しいですよ、これ。参議院選挙に響きますよ、これは。厚生大臣、ちょっとそこははっきりおっしゃる必要がある。
#196
○今井国務大臣 まあ、今のような御意見も踏まえまして十分検討さしていただきたいと思います。
#197
○土井委員 それは、答えとしてはあんなのは答えの範疇に入らないと思うのです。大臣、どうですか。それはもう今国会は無理をしてやるということは、時間的経過からしても内容からしてもどうも望み薄であるというふうに大臣お考えになっていらっしゃるというふうにこちらとしては考えてよろしいですね。
#198
○今井国務大臣 今までの御質疑をずっと私も議事録等で読ましていただきまして、やはりこれを推進すべきだという強い御意見もございますので、私は慎重に検討をすべきだと考えております。
#199
○小渕委員長 これにて土井君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして、両案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#200
○小渕委員長 これより討論に入ります。両案を一括して討論に付します。
 討論の通告がありますので、順次これを許します。渡辺秀央君。
#201
○渡辺(秀)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十年度補正予算両案に対し、賛成の討論を行うものであります。
 我が国経済は、二度にわたる石油危機を初めとする幾多の試練により経済活動が低迷いたしてまいりましたが、国民生活の安定と経済の持続的成長を確保するため、政府は毎年多額の公債を発行するなど機動的な財政施策を展開してこの試練を乗り越え、今や世界経済のほぼ一割を占めるまでの発展を遂げたのであります。
 しかし、その反面、我が国の財政は公債残高の累積などにより、社会経済構造の変化に対応する新たな施策を講ずる余力を徐々に失ってまいりましたので、早期に財政の対応力を回復することが緊急の課題となり、昭和六十年度当初予算も、経費の徹底した節減合理化を図りながら特例公債依存体質の改善に努めるよう編成されたのであります。
 しかるに、当初予算成立後に我が国を取り巻く世界の情勢は大きく変化いたしました。すなわち、アメリカ経済の拡大速度の鈍化、我が国の五百億ドルにも及ぶ輸出黒字の発生、貿易摩擦の激化、内需拡大圧力の増大など種々困難な問題が発生し、これら諸問題解決の一環として、為替レートについては、昨年九月に五カ国蔵相・中央銀行総裁会議が開かれ、その合意を契機として円高が急速に進んだのであります。
 一方、国内においては、円高基調の影響をまともに受けた経済の障りに対し内需の振興などを促進するための経済運営が強く望まれ、また災害による被災地の復旧事業も急がれているところであります。
 今回の補正予算は、このような内外経済の動向を勘案し、当初予算成立後に生じたやむを得ざる事由に基づいて特に緊要となった事項等について所要の措置を講じようとするもので、その規模は七千二百三十二億円となっております。
 以下、本補正予算に賛同する理由を申し上げたいと存じます。
 その第一は、災害復旧費の追加であります。
 昨年は、自然災害が多く発生し、このため幾多のとうとい人命が失われたことはまことに痛ましい限りでありますと同時に、被災地の方々は日常生活にはかり知れない不便を感じておられることと存じ、心からお見舞いを申し上げる次第でありますが、今回の補正予算では災害復旧に特段の意を注ぎ、初年度復旧進度を従来よりさらに速めるなど万全を期することとし、三千五百三十四億円を計上いたしておるのであります。これにより被災地の方々が明るい希望を持って生活の再建に取り組むことができるものと高く評価いたすものであります。
 賛同の第二は、公務員給与の改善であります。
 公務員給与については、これまでも厳しい財政事情の中で適宜相当程度の改善を行ってきたところでありますが、昭和六十年度は、人事院勧告制度の本旨にのっとり、かつ公務員が生活の安定を通じて職務に専念することを期待して、七月からではありますが、勧告どおり五・七四%引き上げ、率においては完全実施を行ったということであります。
 今回の措置により、公務員給与についてのいわゆる積み残しは解消されたことになるわけでありますので、公務員各位も、政府の意図するところに沿って綱紀の粛正に努めるとともに国民への奉仕に一層努力されんことを切に期待いたすものであります。
 賛成の第三は、内需振興のための諸施策についてであります。
 近年、輸出入のアンバランスが拡大し、アメリカを初め欧州諸国等が、我が国に対し収支の不均衡是正を強く求めていることは御承知のとおりであります。
 貿易立国である我が国としては、自由貿易体制の維持強化を図るため、経済摩擦の解消に真剣に取り組んでいかなければならないのは当然のことであります。これにこたえて政府・自由民主党は、率先して各種の対策を決定し、その推進に努めてまいりました。すなわち、昨年四月の対外経済対策の決定、七月の「市場開放のためのアクション・プログラムの骨格」の策定、十月及び十二月末の内需拡大に関する対策の決定と、切れ目なくあらゆる努力を傾注してまいったのであります。
 今回の補正予算におかれても、一般会計及び特別会計に内需拡大に関する対策の一環として、一般公共事業に係る国庫債務負担行為約四千億円を追加計上し、これにより事業費として六千億円を確保いたしております。この措置は、経済の拡大均衡を通じて経済摩擦の解消を図るため内需の拡大等に努めるという従来の基本方針に沿うものでありますから、貿易収支不均衡是正への積極的取り組みとして、補正予算の一日も早い成立を切望するものであります。
 以上、私は、本補正予算に賛同する主な理由を申し上げてまいりましたが、我が国はこれから急速に高齢化社会を迎えることになり、また、対外経済摩擦も我が国の経済構造からいまだ続くものと見なければなりません。このようなときに当たり、政府におかれては、引き続き行財政改革を推進するとともに、財政の根本的健全化を図るよう十分留意し、また一方、拡大均衡の下での新しい成長を促進するためには、基礎的、先端的分野における創造的技術開発を推進して付加価値の高い産業への転換を図るなど、将来の我が国産業のあり方に万全を期せられんことを特に要望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)
#202
○小渕委員長 井上一成君。
#203
○井上(一)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっております昭和六十年度補正予算二案について、反対の討論を行います。
 反対する理由の第一は、本予算案が財政法第六条の規定を踏みにじる形で編成されていることであります。
 財政法第六条は、御存じのとおり、剰余金を生じた場合、その二分の一以上の金額を公債等の償還財源に充当することを規定しております。そればかりではなく、政府は、これまでのいわゆる赤字特例公債の発行に際し、昭和五十年十月の衆議院予算委員会において当時の大平大蔵大臣が、財政法第六条の「剰余金の繰り入れに関しては、従来は、原則として剰余金の二分の一に相当する金額を充ててきましたが、特例公債償還までの間は、その全額を充てる予定であります。」との説明を行っております。しかしながら、政府は、その後この説明をみずから放棄したばかりでなく、その都度「臨時、異例の措置」と称し、財政法の規定そのものまで再三にわたり踏みにじってきたのであります。
 今回の補正予算の編成に際しても、財源不足を理由に、昭和五十九年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案を補正予算案にあわせて提出し、五十九年度の決算上の剰余金千七百五十億円を全額一般財源に充当しております。
 財政法は、国の予算その他、財政の基本を定めた財政基本法ともいうべき極めて重要な法律であります。大幅減税のための財源確保というならばともかく、ただ単に財源不足を生じたからといって、その都度「臨時、異例の措置」として安易にこの財政法の規定を変更し、そのときの都合で自由に予算の編成を行うことができるということになれば、国の財政の基本を定めた財政法は空文に等しいものとなってしまうのではないでしょうか。財政運営の明らかな破綻によって生じた財源不足を、法律の規定を勝手に変更してつじつまを合わせるような補正予算の編成を続けることは、我が国財政の将来に大きな悪例を残すものであります。
 反対する理由の第二は、税収見込みのずさんさと、それを補てんするためのいわゆる赤字特例公債の追加発行であります。
 我が国経済は、既に低成長時代に直面しております。しかし、政府は、みずからの財政再建の破綻を糊塗するため、常に高目の成長率を想定した経済見通しをつくり、それに基づく予算編成を行っているのが実態であります。このことは、この十年間を振り返ってみても、政府の経済見通しを上回る成長が達成されたのは昭和五十九年度のみであり、その他はすべて実際の成長率が政府見通しを下回っている事実からも明らかであります。昭和六十年度についても、当初六・一%の成長を見込みながら、補正の段階ではこれを五・七%に変更し、これに基づいて税収の見積もりを修正するという、極めて場当たり的な財政運営を行っていることは問題であると考えます。
 予算編成で最も大切なことは、ありのままの財政の姿、景気予測を国民に知らせることであるはずであります。その実態が窮状を告げるものであるにもかかわらず、それを直視せず、意図的に税収を高目に見積もることは許されないと思うのであります。
 さらにその上、税収見直しによる減収分を赤字特例公債の追加発行によって補てんすることは、単に昭和六十五年に特例公債の発行をゼロにするという財政再建の破綻を内外に明らかにするだけではなく、その負担を我々の子孫に転嫁し、将来にわたって禍根を残すことになると言わざるを得ないのであります。
 反対する理由の第三は、この補正予算には、国民の要求する減税等の措置が全く盛り込まれていないことであります。
 円高不況の中で、減税を求める国民の声には切実なものがあります。私どもは、不公平税制を是正することによって大幅な減税が可能であることを明らかにしてきましたが、政府は、これらの問題を先送りするとともに、増税との抱き合わせで減税を実施するという、国民の期待を裏切る姿勢を示しているのは極めて遺憾であります。
 反対する理由の第四は、国民の生活を改善する内容が極めて不十分なことであります。
 例えば、人事院勧告は、単に国家公務員の給与の改善を図るにとどまらず、多くの民間企業の賃金決定にも大きな影響を及ぼし、勤労者世帯の可処分所得の増加を通じて内需拡大にも結びつくものであります。
 しかも、この人事院勧告は、国家公務員の労働基本権を制約する代償措置であり、財政上の都合だけでその完全な実施を行わないというのは、人事院勧告制度の形骸化を招くものであります。
 今回の補正予算では、四月実施の人事院勧告を七月実施としておりますが、このような人事院勧告の不完全な形での実施が、国家公務員の給与の抑制にとどまらず、地方公務員、年金・恩給生活者などにも悪影響を及ぼしている事実も見過ごすわけにはいかないのであります。
 以上、補正予算二案に反対する主な理由を申し上げ、反対討論といたします。(拍手)
#204
○小渕委員長 二見伸明君。
#205
○二見委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和六十年度補正予算二案に対し、反対の討論を行うものであります。
 その第一は、積極的な内需拡大策の実施を怠り、税収の減額修正を余儀なくされたことであります。
 今回の補正予算案では、法人税を中心に四千五十億円に上る税収の減額修正を行っておりますが、この原因は、景気の後退による企業収益の落ち込みと給与所得の伸び率の低下によるものであります。このことは、とりもなおさず政府が積極的な内需拡大を怠ってきたことによってもたらされたものであり、中曽根内閣の経済、財政運営は厳しく追及されなければならないのであります。
 私どもが内需拡大のために特に強く要求した所得税減税が、四野党と自民党で前向きの合意がなされ、政府もこの合意の尊重を約束しながら、寝たきり老人減税等にとどめられたことは、国民生活防衛の点からもまことに遺憾であります。また、私どもは、当初から公共事業費の追加を要求してきたのでありますが、これも見送られた上、本補正予算案における公共事業費の追加も国庫債務負担行為によるもので、六十一年度予算の先食いであります。
 反対する理由の第二は、財政再建計画を破綻させる四千五十億円もの赤字国債を追加発行したことであります。
 政府は、六十五年度赤字国債脱却を目指し、不十分ながらも六十年度当初予算では赤字国債発行額を七千二百五十億円減額いたしました。しかし、本補正予算案で、税収の減額と同額の四千五十億円の赤字国債を追加発行せざるを得なくなった結果、六十年度の赤字国債発行額の減額は、五十九年度に比べわずか三千二百億円、五十七年度実績七兆円に比べてもわずかに八千六百五十億円の減額にとどまってしまったのであります。六兆円の税収不足を生じた五十七年度補正予算以来の赤字国債の追加発行は、財政再建をさらにおくらせることになったのであります。
 また、赤字国債の発行によって、財政法上、半分は国債償還のための国債整理基金に繰り入れることが義務づけられている五十九年度の決算剰余金一千七百五十五億円を全額歳入に繰り入れる特例措置を講ぜざるを得なくなったことは、公債の償還財源の窮状にさらに追い打ちをかけるものであります。
 反対する第三の理由は、退職者医療制度への移行人数の見込み違いによって生じた国民健康保険の赤字に対する補てんが極めて不十分であるということであります。
 一昨年十月に発足した退職者医療制度の加入者、つまり国民健康保険からの移行者は、政府が当初見込んだ四百六万人を大きく下回り、五十九年度実績で二百五十九万人にすぎなかったのであります。四百六万人の移行を前提に国民健康保険への補助率を引き下げた結果、見込み違いによる地方財政への影響額は、五十九、六十年度で二千八十億円にも上り、多くの地方自治体で保険料の引き上げを余儀なくされたのであります。本補正予算案において千三百六十七億円の特別交付金が追加されるとはいえ、それは不足分の六六%にすぎないのであります。当分の間、移行人数の見込み違いが解消されない以上、政府は、引き下げた補助率を適正水準に引き上げるべきであります。
 反対する第四の理由は、人事院勧告に基づいて五・七四%の国家公務員の給与改善が図られたとはいえ、その実施は七月一日からという不完全なものであることであります。
 本年度は、五十七年度以来続けてきた勧告の凍結あるいは勧告率自体の引き下げを避けたことについては評価するものの、実施時期を七月としたことは人事院勧告の完全実施とは到底言えるものではありません。政府は、今日まで財政難を理由に人事院勧告の完全実施を怠っておりますが、このような態度は、公務員の労働基本権を制約する見返りに設けられている人事院勧告制度を形骸化するものであります。
 人事院勧告の抑制による波及効果は、地方公務員、年金・恩給生活者から民間労働者の生活まで幅広い範囲に及び、ひいては個人消費の伸び悩み、景気低迷の要因ともなっているのであります。
 我が党は、かねてから国家公務員の純減数の拡大を図る一方で、人事院勧告の完全実施を要求してきましたが、人事院勧告を踏みにじる本補正予算案を認めることはできないのであります。
 以上、補正予算二案に反対する主な理由を申し上げ、討論を終わります。(拍手)
#206
○小渕委員長 木下敬之助君。
#207
○木下委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております昭和六十年度補正予算二案に対し、反対の討論を行うものであります。
 現在、我が国は三つの重要な課題を抱えております。それは対外経済摩擦の解消と、円高による景気減速への対応、そして「増税なき財政再建」の達成、この三つであります。そのいずれも相互に関連し合い、政策運営のいかんによっては、一つの政策目標の改善が他の政策目標の改善を妨げるおそれがあります。
 こうした困難な課題を克服するためには、我が党が主張するとおり、行政改革の断行により経費を節減すること、内需依存型の経済の実現のために、公共投資を拡充し、一方で大幅な所得減税を実施することにより個人消費の拡大を図り、景気を刺激させて税の自然増収を図ること、といった総合的な施策を講ずることが最も重要であります。
 私たち民社党は、中曽根内閣に対し、対外経済摩擦の解消、行財政改革の達成といった重要な課題を克服するため、拡大均衡型経済財政政策への転換を改めて強く求めるものであります。
 私は、以上の見地に立ち、本補正予算に反対する理由を申し上げます。
 第一に、行財政改革への取り組みが極めて不十分であるということであります。
 我が党は、補助金の整理合理化に当たっては、存続の意義の失われたものの廃止、地方に同化定着した補助金の地方一般財源化、人件費補助の廃止、箱物補助金の総合化など、行革の趣旨に沿った措置を講ずるべきであると強く訴えるものであります。
 さらに、赤字国債発行の減額について、政府は六十年度予算において一兆一千五百億円の減額を図ることとしたにもかかわらず、本補正予算で新たに四千五十億円の赤字国債を発行するに至った責任は、行財政改革の推進の観点から極めて重大だと言わざるを得ません。
 第二に、我が党は、建設国債を財源に、社会資本の整備と景気拡大を図るため、本補正予算において事業費ベース約一兆円の公共投資追加を組むよう強く求めました。しかるに、本案において、建設国債の追加発行が災害復旧分のみにとどまったのは極めて遺憾であります。
 第三に、税制改革についてであります。
 我が党は、六十年度予算に当たり、約一兆円程度の所得減税と産業基盤強化のための約三千億円程度の投資減税の実施を求めました。しかるに、中曽根内閣は、こうした景気回復に不可欠な施策を見送ったばかりではなく、法人税の貸倒引当金の法定繰り入れ率の引き下げ等の、三千億円もの増税を強行したのでありました。このように、依然として勤労者の税負担が高いままに放置され、赤字財政のツケが中小企業に及ぶような政策を続けていくことは断じて容認することはできないのであります。
 第四に、我が党は、退職者医療制度の創設に伴う国庫補助率の引き下げ措置が国保財政に多大な負担増を強いている点について、補正予算において五十九、六十年度分の不足額二千八十億円の全額を国が措置するよう求めました。これに対し千三百六十七億円の特別交付金を支出するにとどまったことは、国民生活を圧迫するものであり、到底認められるものではありません。
 最後に、内外ともに非常に厳しい環境の中で、我が国が世界の一割国家としての責任を自覚し、諸外国に見られる保護貿易主義の台頭を回避し、世界経済の安定と発展に資するために、政策を大胆に転換していくことを強く求めまして、補正予算二案に対する私の反対討論を終わります。(拍手)
#208
○小渕委員長 瀬崎博義君。
#209
○瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和六十年度補正予算案に対する反対討論を行います。
 反対理由の第一は、六十年度当初予算の反国民的性格を温存し、拡大さえしていることであります。
 すなわち、当初予算で異常突出させられた軍事費は、新たに三百二十五億円が防衛庁予算に追加されております。一方、福祉、教育、農業、中小企業予算は、福祉予算六百五十九億円、私学助成など教育予算百十九億円、畜産振興費十八億円、中小企業対策費四十三億円など、またもやばっさりと削られました。
 圧倒的多数の国民が望む軍事費の削減要求にこたえず、レーガン政権の軍拡要求に追随して軍事費をさらに拡大し、その犠牲を国民に押しつける本補正予算案は、断じて容認できるものではありません。
 反対理由の第二は、財政破局を一層抜き差しならぬところに追い込んだ点であります。
 当初予算における税収の過大見積もりと災害復旧費の大幅な抑制などが、本補正予算案における七千五百八十億円の国債大増発に結びついたことは明らかであります。とりわけ、赤字国債増発の結果、五十九年度に比べての赤字国債縮減額はわずか三千億円にとどまりました。六十五年度赤字公債ゼロという中曽根総理の公約の破綻はだれの目にも明らかであります。かかる補正予算案の提出は、当初予算が粉飾予算であったことを中曽根内閣みずからが証明するところとなっています。
 第三の反対理由は、人事院勧告の値切りを予算面でも確定したことであります。
 五十七年度凍結、五十八、五十九、六十年度連続三カ年の値切りという事態は、公務員労働者の生活を破壊するだけでなく、政府が労働基本権剥奪の代償措置と称している人事院勧告制度そのものさえ否定する、二重の違憲措置と言わなければなりません。
 反対理由の第四は、国民の命と健康を破壊する新たな攻撃をかけてきていることであります。
 一昨年の健保改悪で国民健康保険への国庫負担を四五%から三八・五%に引き下げた際、政府は、退職者医療制度をつくるから国保財政には問題ないと強弁しました。ところが、この退職者医療制度なるものは、政府の大変な見込み違いで、わずか一年半の間に国保財政に二千八十億円に上る大穴をあけたのであります。国が全額補てんすべきは当然でありますが、しかるに、今回の補正による補てんはその六割強にしかすぎません。しかも、国保財政の赤字は、平均一七%という保険料の大幅値上げを招き、払えぬ人が続出するという異常事態を既に生み出しているのであります。
 これを口実に、政府は、本人負担を一挙に二・五倍にする老人医療制度の大改悪をたくらみ、さらにまた、保険料未納者に対し、保険証の支給停止、全額自己負担させるという法案まで準備しているのであります。こんなことは断じて許されません。
 以上、私は、反対の理由を具体的に明らかにしましたが、改めて核廃絶、平和への姿勢を明確にして、軍事費を大幅に削減し、円高不況に苦しむ中小企業への思い切った緊急対策実施、大幅賃上げと労働時間短縮の実現、社会保障の充実、生活密着型の公共投資の拡大、農林漁業対策費の充実、何よりも増税なしの大幅減税を実施することを強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)
#210
○小渕委員長 これにて討論は終局いたしました。
#211
○小渕委員長 これより採決に入ります。
 昭和六十年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和六十年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して採決いたします。
 右両案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#212
○小渕委員長 起立多数。よって、両案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#213
○小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。〔報告書は附録に掲載〕
#214
○小渕委員長 次回は、明十四日午前十時より昭和六十一年度総予算について公聴会を開会いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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