くにさくロゴ
1985/02/25 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 社会労働委員会 第3号
姉妹サイト
 
1985/02/25 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 社会労働委員会 第3号

#1
第104回国会 社会労働委員会 第3号
昭和六十一年二月二十五日(火曜日)
    午前十時二分開議
出席委員
  委員長 山崎  拓君
   理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君
   理事 高橋 辰夫君 理事 浜田卓二郎君
   理事 池端 清一君 理事 村山 富市君
   理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君
      伊吹 文明君    古賀  誠君
      自見庄三郎君    谷垣 禎一君
      戸井田三郎君    長野 祐也君
      西山敬次郎君    野呂 昭彦君
      浜野  剛君    箕輪  登君
      網岡  雄君    金子 みつ君
      竹村 泰子君    永井 孝信君
      森井 忠良君    橋本 文彦君
      森田 景一君    森本 晃司君
      伊藤 昌弘君    浦井  洋君
      小沢 和秋君    菅  直人君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 林  ゆう君
 出席政府委員
        労働政務次官  松尾 官平君
        労働大臣官房長 岡部 晃三君
        労働大臣官房審
        議官      中村  正君
        労働大臣官房審
        議官      稲葉  哲君
        労働省労政局長 加藤  孝君
        労働省労働基準
        局長      小粥 義朗君
        労働省婦人局長 佐藤ギン子君
        労働省職業安定
        局長      白井晋太郎君
        労働省職業安定
        局高齢者対策部
        長       清水 傳雄君
        労働省職業能力
        開発局長    野見山眞之君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局暴
        力団対策官   山本 博一君
        経済企画庁調整
        局財政金融課長 大塚  功君
        経済企画庁国民
        生活局国民生活
        政策課長    村田 憲寿君
        経済企画庁調査
        局内国調査第一
        課長      加藤  雅君
        社会保険庁医療
        保険部健康保険
        課長      佐々木典夫君
        通商産業省産業
        政策局産業構造
        課長      大塚 和彦君
        中小企業庁長官
        官房調査課長  上田 全宏君
        中小企業庁計画
        部金融課長   土居 征夫君
        労働大臣官房政
        策調査部長   小野 進一君
        労働省労政局労
        働法規課長   廣見 和夫君
        労働省労働基準
        局監督課長   菊地 好司君
        労働省労働基準
        局安全衛生部労
        働衛生課長   福渡  靖君
        社会労働委員会
        調査室長    石川 正暉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十二日
 辞任         補欠選任
  愛知 和男君     倉成  正君
  古賀  誠君     武藤 嘉文君
  沼川 洋一君     矢野 絢也君
同日
 辞任         補欠選任
  倉成  正君     愛知 和男君
  武藤 嘉文君     古賀  誠君
  矢野 絢也君     沼川 洋一君
    ―――――――――――――
二月二十四日
 環境衛生金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫
 法の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号
 )
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法
 の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○山崎委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹村泰子君。
#3
○竹村委員 山谷の労働の問題について少しお尋ねしたいと思います。
 去る一月十三日、山谷争議団の山岡さんという方が暴力団にピストル四発で殺害されるという事件がありました。これは、五十八年十一月以来暴力団による手配師が入ってきたために労働者側とトラブルが絶えないということが背景にあるわけでございます。御存じと思いますけれども、四大寄せ場と言われる、東京は山谷、横浜は寿町、名古屋は笹島、そして大阪は釜ケ崎、こういうふうにあるわけです。こういう寄せ場には職安法に違反するいわゆる労働者募集が公然と行われている。これらの手配師と言われる人たちですが、職安法などに定める労働者募集事業ではなくて違法な募集をしている。そして、その手配師によるピンはねが暴力団の資金源になっている。こういうことは許せないことです。手配師による就労条件にはタコ部屋への囲い込みなどということもあり、過酷なケースがあるわけです。
 例えば、労働省にお伺いいたしますけれども、五十八年十一月から今日まで山谷地区を対象に何かアクションを起こされたことがありますでしょうか。
#4
○白井政府委員 お答えいたします。
 山谷地区における労働者の募集については五十八年以降直接の立入調査を行った事例はございませんが、職業安定法及び建設労働者雇用改善法に基づく種々の規制によりまして、いろいろな機会をとらえまして関係事業主に対しこれらの規定の遵守を含め適切な募集が行われるよう指導してきたところでございます。今後ともそういう関係行政機関と連絡をとりながら指導を進めてまいりたいと思っております。
#5
○竹村委員 警察庁の暴力団対策も手ぬるいですね。私たち一般庶民から見ますと、まことに手ぬるいとしか思えないのですけれども、これを職安法違反で検挙することはなぜできないのでしょうか。警察にお伺いします。
#6
○山本説明員 お答えいたします。
 警察といたしましては、暴力団に対しましては、社会の敵、国民の敵という認識に立ちまして徹底した取り締まりを進めておるところでございまして、御指摘のような地域における暴力団につきましても重点取り締まり対象といたしまして、資金源を初めその実態把握に努め、違法行為を認知した場合には、あらゆる法令を活用いたしまして積極的に検挙を図ってきているところでございます。
 いわゆる山谷地域におきましても、昨年中には殺人未遂、恐喝、暴力行為、のみ行為等々で約八十人ほどを検挙しておるところでございまして、今後とも暴力団の壊滅を目指しまして一層強力な取り締まりを推進してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
#7
○竹村委員 殺害という異常事態を招いてしまったこの行政責任をどう考えておられますか。労働省、警察、両方にお伺いいたします。
#8
○白井政府委員 お答えいたします。
 山谷地区の問題につきましては、先生御指摘のようないろいろな問題があるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、労働省としましては、種々の機会をとらえまして、関係事業主に対し、これらの先ほど御指摘の規定の遵守を含め適切な募集を行うよう指導してきたところでございます。しかし、今回のような事件が見られるということは必ずしも問題が一掃されていないのではないかというふうに思われるので、労働省としましても、今後ますます一層厳格に関係行政機関とともに連絡をとりながら募集の適正化に努めていかなければならないと考えております。
#9
○山本説明員 御指摘の殺人事件につきましては、全力を挙げまして捜査を行い被疑者の検挙を図ったところでございますが、今後ともこのような事案が発生することがないよう積極的な暴力団取り締まりに努めてまいりたいと思っておるところでございます。
#10
○竹村委員 このような状態では出稼ぎの労働者の方たちは安心して働けないのです。取り締まりが難しいとおっしゃいますけれども、現地には、朝四時半過ぎに行けば違反業者はすぐつかまえられるのです。そして青空賭博も、マンモス交番の真とか玉姫職安の前とか玉姫公園とか、そういうところで、決まった場所で開かれているのです。どうしてそこへ行って現場を押さえないのですか。労働省だけではとても難しいかもしれないけれども、警察と労働省がチームを組んでやる気になれば、朝行ってくだされば現場を押さえられるわけですよ。
 そうして、一方でぜひやっていただきたいことは、建設会社の人探しは職安を通じるように徹底して指導していただきたい。今、野放しの状態ですよ。そういうことで、ほっておかれては出稼ぎの方たち、庶民が恐ろしくて安心して働けない。人が殺されているのですからね。これは大変なことでありますので、ぜひそういった積極的な御答弁をいただきたいと思いますが、どうですか。特に警察。
#11
○山本説明員 先ほど申しましたように、警察といたしましては、暴力団はこの社会から根絶するという強い決意を持って取り締まりに当たっておるところでございまして、御指摘の地域におきましても全力を挙げて対策を進めておるところでございます。今後ともより一層強力な取り締まりを推進してまいりたい、御希望に沿えるような事態を現出させてまいりたい、かように思っておるところでございます。
#12
○竹村委員 そういう努力いたしますというふうなお答えではなく、本当は、現場を押さえるようにいたしますとか、そういうお返事をいただきたいのです。なかなか難しいとは思いますが、ぜひそのように前向きに考えていっていただきたいと思います。
 それから、厚生省にひとつお聞きしますけれども、日雇い健保その他社会保険の適用状況はこの日雇いの方たちに対してどういうふうになっておりますでしょうか。状況がわかりますか。
#13
○佐々木説明員 お答えいたします。
 いわゆる寄せ場の日雇い労働者に対する健康保険等の社会保険の適用状況はいかがか、こういうことでございますが、一般的にいわゆる寄せ場の日雇い労働者でございますと、健康保険の例で申しますと、日雇い特例被保険者ということで健康保険の適用が考えられるわけでございます。現実問題といたしまして、日雇い特例被保険者の場合は、土木建設関係が多うございますけれども、そのほかに種々の職種がございまして、またこの適用状況等は社会保険事務所単位として把握をしているような状況でございまして、いわゆる寄せ場の労働者に着目した形での適用状況の把握はできてございません。
 しかしながら、本来当然適用されるべき日雇い健康保険がいわゆる寄せ場の労働者についても適用されない事例があるとすれば、つまり適用漏れ等があれば、これは大変問題でございますので、従来から適用漏れのないように事業主への指導ということにつきましては関係県と連絡をとりながら適正化に努めておる、こんな状況でございます。
#14
○竹村委員 適用漏れどころか、非常にたくさんそういう適用から漏れてしまっている方たちがいらっしゃるわけなんですけれども、ぜひ厚生省も努力をしていただきたい、当然の権利として受け取れるようにしていただきたいと思います。
 それでは次に、京セラの労働問題について御質問をしたいと思います。
 労働大臣、あなたは、去年十一月十日に第一回授賞式が行われました稲盛賞、京都賞というのを御存じでしょうか。この京都賞というのは、第一回授賞式には中曽根総理も祝辞を寄せているのですけれども、御存じですか。
#15
○林国務大臣 存じ上げておりません。
#16
○竹村委員 この京都賞を出しているのは京セラの稲盛和夫社長なんですね。そして、二年ほど前に設立いたしましたいわゆる稲盛財団、昨年十一月二十日付の朝日新聞によりますと、稲盛社長は稲盛財団を設立するために現金四十五億円、同社の株式百六十万株を出しているわけです。大変なお金です。
 賞の名前は初めは稲盛賞と言ったのですね。ところが、授賞式間際になってから京都賞というふうに変更された。賞金も当初は五千万円だったのですけれども、四千五百万円に引き下げられた。この新聞の報道によりますと、これはお金がないからというのではなくて、ノーベル賞の賞金よりも高くなってしまうからちょっと遠慮をしたということらしいのですけれども。
 また、授賞式間際になって稲盛財団には会長職が新設されている。そして、初代の会長には中曽根首相のブレーンの一人と言われる瀬島竜三伊藤忠商事相談役が就任されている。
 こういうこと、そして賞金の四千五百万円といい、京セラの稲盛社長さんが寄附された現金四十五億円、同社の株式百六十万株、庶民にとっては大変な額でありますけれども、この京セラという会社、あるいは稲盛さんという方がどっちを向いていらっしゃるかということはこれで非常によくわかると思うのです。
 この京セラ稲盛社長さんの壮挙といいますか、大変な名誉ある賞をつくられたわけですけれども、あなたは大臣としてどうお考えになられますか。
#17
○林国務大臣 稲盛さんが多額の基金を出し、そしてまた自己の株を相当数出して財団をおつくりになったということ、私、不勉強で申しわけございませんけれども、中のことはよくわかりませんが、大きく社会に貢献するためにそういった財団をおつくりになったのじゃなかろうか、このように思うわけでございます。社会的にいろいろと御奉仕をされるというお気持ちは十分に酌み取ることができると思います。
#18
○竹村委員 京セラというのは、もう大臣もよく御存じのとおりいろいろな反社会的行為が問題にされております。今、マイクロエレクトロニクス、バイオテクノロジーやニューセラミックスなど新素材の分野でも目覚ましい勢いを持って伸びてきている会社であります。京セラはその中で急速に発展をしてきているいわゆるベンチャービジネスの代表格と言ってもいいのじゃないかと思いますけれども、その華々しさの陰で実はさまざまな社会問題を引き起こしているのはもう御存じのとおりです。労働大臣、あなたはそのことはもちろんよく御存じでしょうね。いかがでしょう。
#19
○林国務大臣 さまざまな社会的な、何と申しますか事件を起こしているということ、ちょっと私、具体的によくわかりませんので、どういう事柄か、ちょっと今のところは理解できないと思います。
#20
○竹村委員 困りましたね。それでは少し申し上げます。
 昨年の二月十六日、衆議院の予算委員会で社会党の井上一成議員が、京セラがトマホークの部品をつくっているのではないか、これは非核三原則の違反ではないかということ、これはアメリカの京セラの子会社ですけれども、ここでトマホーク部品納入の疑いということで追及をされております。かなりの問題になりました。
 それから、電気通信事業、電波法違反で京セラがコードレスホンをひそかにつくっていた。これも同じく井上議員が追及しております。これは、無線通信による混信の問題などもあるとしまして郵政省も問題にしております。
 それから薬事法違反。これは随分騒がれましたから御存じだと思いますけれども、人工股関節、義歯とか、そういうのを無許可でやっていた。一九八〇年一月から八五年二月まで約五年間、人工骨や人工関節などを無許可で製造、広告、販売をしていた。同年六月二十四日に厚生省から医療用具の製造業務について三十五日間の停止処分を受けております。これも無許可でやっていた。
 それから、不当表示で公取の注意処分を受けています。京セラが製造、販売している高級一眼レフカメラ、コンタックスの宣伝パンフレットが、そのレンズには日本製のものもあるのにあたかも西ドイツのカールツァイス社からの直輸入品を装備しているかのように見せかけていた、印象を与えたということで、公正取引委員会から景品表示法に触れるおそれがあるとして注意処分を受けております。これも新聞報道されております。
 まだあるんです。公害をまき散らしているのです。京セラの鹿児島県川内工場の周辺の住民は、セラミックスの原料を練るのに使われるトルエンなどの有機溶剤による悪臭で被害を受けて、市議会で取り上げられて問題となっております。そして市も公害防止対策について文書要請を出すなど、鹿児島の方で大変に問題になっている。
 こういう数々の、今、私が挙げましただけで五つの反社会的な悪徳商法といいますか、反社会的な商売をしていて、その陰でしこたまもうけている、こういうことが数々あるわけですけれども、今回は労働大臣に対する質問でありますので、京セラが労働者や労働組合をどのように扱っているか、そのことについて御質問をしたいと思います。
 京セラの玉川作業所というのがありますね。川崎市中原区なんですけれども、ここの閉鎖、組合つぶしということが行われております。京セラの玉川作業所を閉鎖して、それに伴って従業員に対して長野県岡谷工場への配転命令を出している。総評全国一般労組神奈川地連京セラ支部の組合員二十一人が、会社の処置は事実上の退職勧告で組合つぶしがねらいだとして神奈川県地方労働委員会に訴え、同地労委は組合側の主張をほぼ全面的に認めている。そして、救済命令を出しております。
 労働省はこの事情をつかんでいらっしゃいますか、どうですか。
#21
○加藤(孝)政府委員 京セラにおきまして、五十九年七月二十七日付で京セラ玉川作業所の従業員に対しまして長野県岡谷市への配転命令を発しておるわけでございますが、従業員がこれを不服といたしまして、勤務場所を玉川作業所とする労働契約上の地位を有するということの確認などを求める訴えを横浜地裁川崎支部に提起をいたしまして、現在裁判所に係属をしておると伺っております。
 また、この配転命令につきましては、別途これはまた不当労働行為ではないかということで救済申し立てが行われ、神奈川の地労委におきましてこの救済申し立てを認めたわけでございますけれども、会社側はそれを不服として、現在中労委に係属中である、こういうような状況にあることを承知いたしております。
#22
○竹村委員 大変なことですね。これは地労委から中労委にかかっているのですけれども、玉川作業所というのは、京セラに吸収合併される前サイパネット社というところ、これは一九七八年に川崎工場を閉鎖するときに遠隔地への転勤が不可能な従業員のために開設された。当時の社長は玉川作業所について将来も閉鎖しないということを約束していた。その後一九八二年にサイパネット社は京セラに吸収合併されたわけですけれども、京セラはこうした経過、二十一人のうち夫や子供のある婦人労働者が十三人もいらっしゃる、遠隔地への配転には応じられないことを十分知りながら作業所の閉鎖と従業員への岡谷工場への配転命令を強行しているわけです。
 その京セラのやり方にもいろいろと驚き、あきれるようなことがあるんですけれども、例えば組合三役の職制登用による丸抱え策動、個人面談、社員教育と称して組合に対する支配介入、個別分断工作、そして次なる策としては遠隔地より屈強な男子を十九名もここへ送り込んで、特に旧ヤシカ岡谷工場からは課長クラスで組合の三役経験者などを送り込んで日常的に組合弱体化を策動している、こういうふうなことをやっているわけですね。実にひどい会社と言わなければならないと思います。地労委。はこうした京セラの処置について、作業所閉鎖は組合弾圧を意図したものであり、配転命令は事実上の退職勧告だとして救済命令を出しております。
 ところが、実はこれが今回始まったことではないんですね。労働省は御存じだと思いますけれども、五十九年にもこういう命令書をもらっている。このことを労働省はもちろん御存じですね。――そしてこの中に「被申立人は、その職制らを通じて申立人組合及びその組合員に対する、誹謗、中傷、どう喝的発言を行わせ、申立人組合の運営に支配介入してはならない。」ときちんと主文の中に書いてある。けれども、これをやめてないわけですね。
 そして一九八四年七月に地労委の救済命令が出されているわけですけれども、京セラはこの命令を守らず、その直後に工場閉鎖を強行しているわけです。躍進する先端産業、ベンチャービジネス、稲盛賞と華やかな京セラなんですけれども、その陰で行われているこうした労働組合つぶし、労働者に対するこういう態度を労働大臣どうお考えになりますか。こういうことが許されていいんでしょうか。
#23
○林国務大臣 ただいま先生御指摘のような事実、地労委から中労委へというようなことで今係属中でございますので、このことにつきましては私ども今とかく申し上げる段階ではないと思います。その間におきます労働行為というものにつきましては、組合が地労委にいわゆる問題を提起して、会社側がそれをまた中労委に持ち込んだという経緯でございますから、ただいまのところ、その結果が出るまでは労働省としてはじっと見守っているというところでございます。
#24
○竹村委員 大臣、その結果が出るまではじっととおっしゃいますけれども、待たされている方は数年もあるいは十年も待たなければならないかもしれないんですね。その間、どうやって食べていきます。この問題は後で申し上げますけれども。
 そして京セラは、玉川作業所の事件について中労委に再審査を申し立てているんですね。労働組合法第二十七条第五項には、使用者側が中労委に再審査を申し立てた場合でも地労委の命令は効力を失わない、こういうことがありますね。それにもかかわらず、京セラはこれを履行していないんです。「初審命令の履行状況について」というコピーをここに私持っておりますけれども、「(神奈川地労委昭和五十九年(不)第九、二三号)は、労働組合法第二十七条第五項により、再審査の申立てがあった場合にも、その効力を停止されないので、これを履行しなければなりません。」こういうふうに命令されております。そしてこの労働委員会の「履行勧告を行うことになります」、その点について「昭和六十一年二月二十五日までに当委員会あてに報告して下さい。」とあるんですね。何と不思議なことなんですけれども、きょうなんです。労働省にきょうまでに報告が届いておりますか、どうですか。
#25
○廣見説明員 先生お尋ねの報告は中央労働委員会に参る報告であろうと思いますので、私ども現在の段階ではまだ中労委の方にその届け出、報告がなされておるかどうか確認はいたしておりません。
#26
○竹村委員 これは二月四日に出されている命令書なんですけれども、二十日たっているわけですね。きょうが期限ですが、きょうじゅうに届かない場合、どうされますか。
#27
○廣見説明員 一般的に申し上げまして、労働委員会と労働省の関係でございますが、労働委員会は非常に独立した権限を行使するという考え方が基礎にございます。その旨は政令等でも書かれておりまして、労働省から具体的事件等については個別的な指揮監督あるいは個別的な指導を行うことはしないという建前になっております。したがいまして、これまた行政委員会の一つの特色であろうかと思いますが、労働委員会自身、すなわち中央労働委員会が規則を決め、その規則に従っていろいろの行動をしていくということになっておるわけでございまして、ただいま御質問のような件につきましても、中央労働委員会がみずから判断し、処理していかれることであると私ども考えておるわけでございます。
#28
○竹村委員 労働大臣、お伺いしますけれども、今のは、この報告がきちんときょうじゅうに出されない、また命令不履行がある、そういうときに労働省としては何もできないというお返事ですか。
#29
○廣見説明員 今申し上げましたのは、労働委員会と労働省との一般的関係ということでございまして、労働委員会は労働委員会としての権限を適切に行使されていくということが期待されておるわけでございます。したがいまして、もしも期限に提出されないというようなことがございました場合に、労働委員会としましては具体的にどのような指導、どのような権限を行使されて。いくかは、労働委員会が決めていろいろ執行されていくことであろう。ただ、命令その他本質的な事柄に関しましては、当然、例えば確定した判決によって指示された命令についての罰金の制度、あるいはまた判決によって指示されないけれども確定した命令につきましては過料による裏打ちということ等がございまして、一般的な労働委員会制度、その中での不当労働行為制度の実効が上がるように措置されている、このように考えております。
#30
○竹村委員 おかしいじゃないですか。労働省というのは労働者のためにあるのでしょう。中労委が労働省の権限の中にないといっても、やはり総括的に労働の問題を全部扱っている政府の最高の機関が労働省であるわけでしょう。それに命令の不履行があり、非常にひどい悪徳商法の陰で労働者が弾圧されている、こういう事実があって、労働者はこの地労委の裁定が出るまで、中労委の裁定が出るまで何年でも、失業保険はもらえない、働けない、そういう状態でじっと待っていなければならないのですよ。命令が履行されているかどうかぐらい、労働省が少し強力に指導したっていいのじゃないですか。どうですか。
#31
○廣見説明員 今先生の御指摘の点でございますが、これは不当労働行為制度一般の非常に本質的なことにかかわる点であろうかと思います。確かに、私ども見ておりましても、個別の件につきまして心情論的にはいろいろございます。しかし、労働委員会としては、一番基本には三者構成の委員による行政委員会である、非常に民主的な行政を行うということを基本に発足したわけでございまして、公益委員、それから労使、それぞれの各側委員が参与し、独立した権限を行使していくということがその基本になっておるわけでございます。したがいまして、わざわざ法制上でも、労働大臣は個別の事案、個別の問題につきましては、これについての具体的な指揮あるいは具体的な指導はできないという形にしておるわけでございまして、そのあたりが独立の行政委員会たる一つのゆえんであろう。したがって、法律の大きな枠組みの中で労働委員会が最大限その本来の目的に沿った努力をされることを私どもは全般的な立場からもちろん期待もし、そういう環境整備はやっていくわけでございます。
#32
○竹村委員 京セラは地労委命令を履行しようとせず、これを無視しているわけですね。先ほどから私が言っておりますように、まさに無法者ですよ。こういうことに対しては労働省は人間としての怒りを感じていただかないと困りますね。玉川作業所事件は今中労委にかかっているわけですけれども、中労委での再審査で結論が出るまでには少なくとも数年間はかかるのじゃないですか。その間、労働者は争議中のまま生活を維持していかなければならないわけです。身分は京セラ社員のまま、失業保険も出ず、ほかの会社に就職することもできず、今どうやって暮らしておられると思いますか。カンパや物品販売などで辛うじて生活を支えているというのが実情なんです。
 一方、悪徳商法をしている会社の方は大もうけをしているわけですね。自分のことが中労委にかかって争議されていても一向に困らない。憲法や法律に違反している企業の方は、社長が何を考えてか、いい気になって四十五億円も寄附して自分の財団をつくり、四千五百万円もの賞金を払う京都賞などをかっこよく設けているわけです。しかし、この新聞記事の中にありますけれども、海外のゲストにはかなり正体を見抜かれて皮肉られておりまして、このときの祝辞は中曽根さんとレーガンさんから来ているわけなんですね。まさにかっこいいですね。こんなことが許されていいんでしょうかね。
 私は、この京セラの問題をずっと資料を拝見しながら、もう腹が立ってむかむかしてきちゃったのですけれども、今後中労委の結論が出されてもそれに不服の使用者はさらに裁判所に訴えることができますね。そうなると、また数年間あるいは十年間もかかるかもしれない。裁判所で最終的な結論が出されるまで長期間にわたるわけですけれども、これは京セラがむしろ争議の長期化を図って、その間に労働者側が生活の苦労もあり争議にたえられなくなる、労働組合がつぶされることをねらっているとしか思えないわけです。もしそういう意図が貫徹されるとすれば、このあこぎな法律違反というのはまさにやり得になってしまいます。こういう企業の考え方や態度が認められ、大手を振ってまかり通るならば、我が国の労働問題は無法状態になってしまいます。労働者の権利や生活は守られない、こういう状態になってしまいます。
 そこでお尋ねいたしますけれども、このような無法者、悪徳企業に対して社会的制裁が加えられなければならないと思いますけれども、どんな制裁があるとお考えでしょうか、労働省のお考えを聞かせていただきたいのです。例えば罰則をもっと強化すべきではないかと思いますが、どうですか。
#33
○加藤(孝)政府委員 地労委命令というものが出ながら、そしてある程度そこで事実関係が相当明らかになっておるような状態の中で、さらにまた中労委へ問題の再審査を求めるという形で訴えを起こしておる、労働者が非常に困っておられるというような問題も絡めまして先生がいろいろおっしゃっておられることは、よく理解できるわけでございます。ただ、日本の全体の現在の制度といたしまして、裁判所あるいは労働委員会等へ訴えを起こしておる、そういう期間における生活の援助制度というもの、これは地労委レベルのこういう問題について特別にそういうような制度もないわけでございます。
 そういう意味で、いろいろ先生がおっしゃっておられる事情はよくわかりますが、この命令そのものが確定をすれば、あるいはまた判決が確定すれば、そこでぴしっとそれなりの制裁というものが出る。それからまたある意味ではそういう訴えが起こされる、あるいはまた地労委の命令が出される、それがまた労働委員会の命令の形で例えばマスコミ等で報じられるというような形での一つの社会的な制裁というものはあるわけでございますが、具体的にそれを国の制度としてどうこうするというのは、やはりその確定の判決なり確定の命令なりという形が出るのを待つしかないというのが現在の制度であるわけでございます。
#34
○竹村委員 ですから、その期間、数年からあるいは十年かかるかもしれないでしょう。その期間、労働者保護官庁として国の責任で賃金相当分を仮給付するようなそういう救済の方法は考えられませんか。これは食べていくために必要なことだと思います。今、労働者の何人の人たちが苦しんでじっと耐えておられるかを考えてみてください。労働省、そういう前向きな救済方法はありませんか。
#35
○加藤(孝)政府委員 御指摘になっておる問題はよく理解できますが、これを制度的にその訴訟というものをその間支える形で特別な制度というものはなかなかまた難しい問題ではないか、こんなふうに思っております。
#36
○竹村委員 お役所で考えられるのは大変かもしれませんけれども、やはりそういう方法をとらないとこの方たちどうやって生活していけばいいと思われるか、労働者を保護する立場であられる労働省にぜひ期待をしたいと思います。お考えいただきたいと思います。
 次に、京セラの長時間労働について質問を申し上げます。
 京セラからいわゆる三六協定の届け出が行われているはずですけれども、どうですか、出ておりますか。
#37
○小粥(義)政府委員 京セラは全国四十五くらいの事業所を持っておりまして、全部について私ども三六協定を確認しておるわけではございませんが、一応会社の方針としては統一的な三六協定を結んでいる、こういうことでございまして、したがって、私どもがつかんでおります三六協定、これは九州の県の事業所の分でございますが、大体全国共通のものというふうに理解しております。
#38
○竹村委員 私が入手しました京セラの社内資料によれば、こういう大変なことになっているのです。
 まず、時間外労働なんですけれども、一日の残業時間について、技術、研究、開発、設計、営業の人は残業が十五時間、その他の人は六時間、これが一日の最大残業時間である。つまり一日の最大労働時間は、最大に働きますとそれぞれ二十二時間、十四時間となるのですね。また、一カ月の残業時間については技術、研究、開発、設計、営業の人は八十時間、その他の人は五十時間が最大残業時間です。組合との協議の上でそれぞれ百二十時間、八十時間が最大の残業時間となっております。すごいですね。
 休日出勤については、昨年一年間は月間四日間の休日を確保しようと組合と協議をして実施をしてきたわけだけれども、ことしは一日ふやして月間五日間の休日を確保することになった。これはいいんですけれども、休日も出勤させられることがある。休日出勤についてはやはり時間外、つまり一カ月八十時間あるいは五十時間には含まれないものとする。全然別なんですね。しかもまだ休日出勤のときにも残業があって、そのときの一日の最大時間外労働も通常の出勤日と同様に技術・営業系は十五時間、その他六時間、つまり休日出勤の場合の一日の最大労働時間も同じく技術・営業系は二十三時間、その他は十四時間、こうなっているのです。
 これらの労働時間は、すべて休憩時間、つまり労基法三十四条で労働時間が八時間を超える場合は一時間の休憩時間というふうになっておりますけれども、この休憩時間を含まない実働時間である。「全て、休憩を含まない、実労働時間である。」と書いてあるのですね。大臣、こういう三六協定、どうお思いになりますか。
#39
○小粥(義)政府委員 今先生お話しございました三六協定の内容、私ども把握しておるのと大体同じものかと思います。
 確かに一日十五時間の残業というものは極めて長い、しかも基準法でいきますと六時間労働に対しては四十五分の休憩が必要でございますから、通常八時間労働であれば一時間の休憩が必要であり、したがって、十五時間の残業時間というのはつまり二十四時間労働ということになるわけでございます。実はこういう形が京セラに限らず前はいろいろとあったわけでございます。それは、ある特定の緊急を要する事態、研究開発あるいは納期に間に合わせなければいけないといった事態に備えて一応安全弁として最大限一日十五時間というようなものを決めたものがあったわけでございますが、従来はそれを一般的な形で十五時間というふうに決めるケースが多かったわけでございます。
 労働省としては、むしろそうしたものは極めてレアケースの異常な事態なんであって、一般的にはもっと短い時間で三六協定というものは結ばれるべきではないか、そういうことで実は五十七年から三六協定によります残業時間の限度についての目安を出すようにしたわけでございます。それでいきますと、一月五十時間、週に十五時間という形をとっておりますが、その場合になおかつそうした目安になじみにくいいわゆる非常に波のある作業で、研究開発の仕事だとか、あるいは道路その他の公共物の上で行う工事ですと、これは公衆の利便を考えて急いでやらなければいけないといったような、そういう一定の業務についてはこの目安の適用除外という扱いをいたしております。
 今御指摘の京セラの問題ですと、技術開発が確かに一日十五時間という形になっております。この点は、これが常時十五時間やられるとしたらまさに労働者の健康問題としても問題になってしまうわけでございます。したがって、そのこと自体、そうした事態が恒常的に続いているのであれば、これはやはり好ましいものではないと私どもも見ざるを得ないと思います。
 ただ、そういう異常な場合に備えて一応協定を結んでおくというケースは、今回の目安でも労使が一定の手続を経て決める場合は目安時間を上回る線で決めてもいいというふうにいたしておりますので、そのこと自体ですべてを好ましくないとはなかなか言い切れない面がございますが、そうした長い時間でもってそれが現実恒常的に残業が行われているとすればやはり好ましくない事態であるというふうに私ども考えます。
#40
○竹村委員 二十四時間というふうなことになりますと、睡眠時間も食事する時間もないわけですけれども、こういう三六協定が結ばれているというのは、毎日ではないとおっしゃるけれども、枠ができてしまうと忙しいときはそこまでやれということはできるわけですから、労働省、やはりもう少し指導を厳しくしていただきたいと思いますね。こういう協定を結ばせないようにしていただきたいと思います。時間外労働の適正化の基準をつくったらどうですか。
 そして、行政指導に取り組んでいらっしゃると思いますけれども、京セラについても指導していらっしゃるんですか。私、この三六協定を見ていて、労働省が指導していらっしゃるとは思えないんですけれども、週休二日制の普及促進なども労働省非常に意欲的にやっておられるわけですけれども、京セラに対しては指導されてきましたか、どうですか。
#41
○小粥(義)政府委員 指導はいたしております。先ほどちょっとお答えいたしましたが、京セラが三六協定を全社的に改めたのも実は五十七年に出しました労働省の三六協定に関する目安、これに一応準拠しまして一月五十時間というふうに決めているわけでございます。
 ただ、先ほど一日十五時間というような極端な例があると申しましたのは、技術開発といった問題についてあるわけでございますが、これは実は目安自体でも、技術開発業務は目安の適用に必ずしもなじまないということで外しております。適用除外にしておりますので、そうした点をうまく使っていると言えば言える面があるかもしれませんが、むしろ問題は、営業とかなんとかまで果たしてそういうような長い協定時間が必要なのかどうかとか、またそういう目安を超える長い時間を決める場合には、これは労使の一定の手続を経て決めるように私ども指導基準でもうたっておりますので、そうした形で実際に目安を超える時間協定ができているかどうか、そうした点についてさらに私ども指導を強めていきたいというふうに考えます。
#42
○竹村委員 ぜひよろしく御指導をお願いいたします。
 私、持ち時間がなくなりましたのでもう終わらなければなりませんけれども、京セラでは、稲盛社長は神様だ、すべて従業員は同軸だ、そういう社員教育が行われているようです。今を時めく先端産業というイメージの陰で、まさにかつての戦時中を思わせるような社員教育が行われる、これじゃ労働者はまるで奴隷ですよね。こういうことは許されてはならないと思います。労働者は、欧米諸国の場合よりも年間労働時間二百五十時間から五百時間も長く働かされている我が国の実態を象徴していると私は思います。
 国際経済摩擦、貿易摩擦、欧米諸国から厳しい日本批判を受けているわけですけれども、自民党政府自身も完全週休二日制や労働時間の短縮の必要性を強調しておられます。自民党政府が本当に労働時間の短縮を推進しようとしているのかどうか。私は、こういう労働の現場、これほどひどいところはそんなにないでしょうけれども、こういう労働の三六協定の内容とかいろいろ見まして、まことに不思議に思います。京セラの実態についてぜひとも早急に改善されるように強力な指導をお願いをいたします。一言お返事をいただきたいと思います。
#43
○小粥(義)政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、労働省としても三六協定につきましての目安というものを決めまして指導に当たっているところでございます。したがいまして、その目安の趣旨に反するような実態がないように、私どもこれからも指導を強めていきたいというふうに考えております。
#44
○竹村委員 ありがとうございました。
#45
○山崎委員長 池端清一君。
#46
○池端委員 林労働大臣にまずお尋ねをいたします。私は、あなたが今後の労働行政を推進するに当たっての基本的な理念といいますか、政治哲学といいますか、そういうものについてお尋ねをしたいと思うのであります。
 歴代の労働大臣は、例えば、完全雇用こそは政治の最大限目であるとか、失業は人生の最大の不幸であり、労働行政はこの最大の不幸を除去するそのことに最大の使命があるんだとか、あるいは坂本元労働大臣のごときは、剣道の達人でもございましたから、「「眼は遠山を望むがごとく」常に大局を忘れずに、「手の内は、生卵を握るが如く」社会経済の変化に機敏に対処してまいりたい」、こういうような抱負経綸を述べられておるわけであります。多少美辞麗句のたぐいなしとしないのでありますけれども、そういうふうに言われておるのです。
 今日、雇用失業情勢が大変厳しい、また円高によって中小企業の経営が非常に困難になっておる、また勤労者の可処分所得が年々目減りする一方だ、こういうような社会経済状況が極めて困難な時代の労働大臣として、労働行政を進めるに当たっての基本的な理念をまず最初に承りたいと思うのであります。
#47
○林国務大臣 先生御指摘のように、今大変に産業界は大きな転換の時期に参ってきております。高齢化あるいはまた技術革新、円高による中小企業の大変な不況とか、いろいろな面で転換の時期に来ていると思います。
 そういった中で労働省、私といたしましては、労働される方々が本当に生活にゆとりを持ちながら生きる喜びを感じるような環境づくりをしていかなければならない、こんなふうに考えているわけでございますが、中でも産業界におきます労働者と使用者側との関係につきましては、お互いに十分話し合いを双方がなされ、そしてそれぞれの意見がその産業に反映され、その産業が大きく発展をすることによって労使ともに栄えていく、こういったようなことを私は念願をするわけでございますので、いろいろと困難な場合に直面いたしましたときは、本当に労使が心から話し合いをしてそういったような解決に向かって努力をしていただきたい、このようなことで、その環境づくりを我々労働省としてはやってまいりたい、こんなふうに考えているわけでございます。
#48
○池端委員 先般一月二十一日に日経連が労働問題研究委員会報告というものをまとめられました。この最後のところに、今日「労働攻勢から「労働省攻勢」へ」、こういうふうに非常に労働省の攻勢が今強まっているというようなことを言われておるわけですね。私はそうではないと思うのであります。むしろ労働省の方が経営者の攻勢に圧倒されてたじろいでいるのではないか、そんな姿勢が見えてならないわけでございますが、今、労働大臣が言われましたこと、非常に結構なことでございます。しかし、言うはやはく行うはかたしでありますから、ひとつ今その大臣の発言を拳々服膺されまして今後の労働行政の推進に努めていただきたいということを強く要望しておきます。
 そこで、きょうは労働時間短縮の問題についてお尋ねを申し上げるわけであります。
 昨年は、御承知のように時間短縮元年、時短元年と位置づけられました。労働時間短縮の問題が今日極めて緊急の課題になっておるのであります。特に最近ますます激化しております国際経済摩擦、貿易摩擦の中で、我が国の長時間労働というものが欧米諸国から厳しい批判を受けておることは御案内のとおりでございます。
 そこで、まず最初にお伺いしたいのは、この際、労働時間の国際比較をひとつ明らかにしていただきたい、このように思うわけであります。
#49
○小粥(義)政府委員 労働時間の国際比較につきましては、各国の労働時間に関する統計、必ずしも斉一ではございませんので、一定の枠をはめて限定して比較するよりしようがないのでございますが、その意味で製造業の生産労働者についての国際比較をいたしております。調査時点は一九八三年ということになりますが、その時点で日本の労働時間は、年間の総実労働時間でございますが、二千百五十二時間に対して、アメリカが千八百九十八時間、イギリスは千九百三十八時間、イタリアは千六百二十二時間、西ドイツは千六百十三時間、フランスは千六百五十七時間といった状況になっております。
#50
○池端委員 今答弁がありましたように、一九八三年の時点ではございますけれども、我が国の労働者の労働時間は欧米諸国に比べて極めて長い。一番短いところでも、イギリスに比較して二百十四時間、西ドイツとの比較では五百三十九時間ですね。つまり一日八時間、週休二日制で計算をすれば、日本の労働者は六週間から十二週間も多く働いている、こういう計算になるわけであります。御案内のように、西ドイツの金属産業労働組合は、一昨年の夏、週三十五時間制を要求して六週間余りのストライキを打ちました。そして結果的には去年の春から週三十八・五時間制の導入を実現いたしたわけでございます。このようにヨーロッパでは既に週の労働時間が四十時間を切って三十五時間台に迫ろうとしている、こういう状況でございます。
 これは釈迦に説法でございますが、決して景気がいいからこういうふうにやっておるのではなくて、逆に一向に景気がよくならない、したがって減らない失業者に職を与えようというねらいから行われている。要するに、自分のパイの一切れを少々削ってその分を失業者の回そうという、いわゆるワークシェアリングの考え方、これに基づくものであるというふうに思うわけでございます。
 そういうように、今やヨーロッパは三十五時間制の時代に突入している。それに比べて我が国の労働時間は余りにも長時間労働に過ぎる。この乖離、この現実をどういうふうに考えたらいいのか、その点についてお尋ねをしたいと思うのであります。
#51
○小粥(義)政府委員 我が国と外国の労働時間の実態を比べた場合、先ほどお答えいたしましたように、確かに我が国の労働時間の実情は長いわけでございます。それには、中身を分析してみますと四つの点があると思っております。
 一つは、いわゆる所定労働時間が長い。これは週休なんかの数が少ないということも当然その中に含まれるわけでございます。休日の数で申しますと、少なくとも先ほどお答えしましたサミットト構成諸国と比べますと十日程度年間で休日が少ないわけでございます。
 それから二番目が、年次有給休暇の取得日数が少ない。これは付与日数も法制的に少ないこともございますが、かつ未消化の年休もあるといったことで年休の取得日数が少ない。
 三番目が、残業時間が外国に比べて長い。ただ、この点につきましては、我が国の場合終身雇用慣行というものを一つの背景にしまして、いわゆる景気が悪い場合に、人員整理を行うことなく、その雇用調整というものをむしろ労働時間で対応していきたいという傾向がございます。したがって、一方で雇用の安定をとるか労働時間をとるかといった議論ございますので、一概には非難できない点もございますけれども、現実には残業時間が長い。
 四番目が、いわゆるアブセンティズムといいますか、欠勤日数は日本がはるかに少なくて外国は結構多いといったようなことが複合されまして、先ほど申し上げたような差になっておるわけでございます。
 したがって、その面では少なくとも我が国の社会慣行あるいは労働慣行といった面からそれなりの理由のあるもの、そうしたものは除きまして、それ以外の、特に所定労働時間あるいは年休の問題といったような点は、今後もより短縮の方向に向けて努力をしていかなければならない問題であろうかと思っております。
 もう一つは、外国の場合は法制としては必ずしも短い時間が法律で決められておるわけじゃございません。法律の枠組みの中でむしろ労使が協定をする中で時間短縮を法律のレベル以上に短縮しているということがございます。我が国の場合はそうした労使関係というものは必ずしもまだ成熟しているとは言えない面が率直に言ってあろうかと思います。したがって、そうした面は今後労使のむしろこの労働時間問題に対する関心の高まりの中で労使が自主的に努力をされることを期待したい面もあるわけでございますが、我が国の実態では、中小企業にはそうした労使話し合いで進める基盤は率直に言って欠けている部分もございます。したがって、行政としてはそうした面についてさらに今後努力をしていく必要があろうかというふうに考えております。
#52
○池端委員 これまで労働省は年間二千時間を目標として時短に取り組んできたわけでありますが、一向にそれが前進をしていないということは甚だ残念でもあり遺憾でもあると思うのであります。
 そこで、去年の十月十五日に経済対策閣僚会議で「内需拡大に関する対策」というものをまとめられた。その中で「週休二日制の拡大」といったような時短の問題も大きく取り上げておるわけであります。この中で、年間休日日数が、今後五年間で十日程度増加するように努めるとうたっております。この十日程度増加する具体的な実施方針といいますか青写真といいますか、そういうものをひとつここで明示をしてもらいたい、こう思います。
#53
○小粥(義)政府委員 御指摘のように、昨年秋、今後五年間で十日程度休日をふやすという目標を立てて、政府全体としてこれに取り組んでいく、こういうことにいたしたわけでございます。その「内需拡大に関する対策」の中でも幾つかの項目を挙げてございます。特に民間における労働時間短縮については政府の働きかけを、行政の働きかけを進めていくということをうたっているわけでございますが、特に金融機関の週休二日制の拡大というものをむしろ戦略的なポイントにしまして、これを項目としても取り上げ、今後さらに進めていくといった線を出しております。
 同時に、それ以外の問題につきましては、労働省として昨年の六月に「労働時間短縮の展望と指針」というものを策定いたしました。これは三者構成の中央労働基準審議会の了承を得て策定をしたものでございまして、その中で週休二日制の普及というものを重点にしまして、それ以外に年次有給休暇の取得の促進であるとかあるいは連続休暇取得の定着といったようなこと、さらに残業時間の短縮といった幾つかの項目を挙げて、今後行政としてもそうした点についてさらに関係企業あるいは労働組合に対するいろんな理解を求めあるいは指導していく、こういうような手順を「展望と指針」の中でも明らかにしているところでございます。その線に沿って今後も積極的に進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#54
○池端委員 私は、内需拡大の方針もいいんですが、単なる作文に終わっているのではないか、こう思うのですね。何ら具体性がない。去年の暮れの臨時国会で五月四日の休日法制化を実現をいたしました。しかし、これもこの内需拡大策から見れば日暮れてなお道遠し、そういう感を免れないわけであります。しかも、ここにある内需拡大策を見ましても、連続休暇の定着にいたしましても、「労使の努力を促進する。」労使の問題だというふうに、そのための行政指導という観点にだけ何か重点が置かれているような気がするわけであります。
 いみじくも局長が言いましたように、労使交渉でこの問題を解決するといっても、零細中小企業の多い我が国は労働組合の組織もないわけであります。組織があっても、今日本の労働組合の組織率は二八・五%ですか、非常に低い率になっておる。こういうところで労使交渉でやりなさいといったって、それが定着するようなそういう状況に私はないと思うのですね。ですから、後ほど申し上げますけれども、やはり法的な規制というものがどうしても必要だ、こう思うのです。その点についてはどういうふうなお考えでしょうか。
#55
○小粥(義)政府委員 御指摘のように、我が国の労使関係のいわゆる基本的な指標でございます労働組合の組織率、今二八・九%でございます。これを民間と官公部門に分けますと、民間部門の方がむしろ低いわけでございます。これは五十九年の数字ですが二三・六%、さらにこれを企業の大小に分けてみますと、特に百人以下の企業になりますとその組織率は極めて低いものになり、三十人未満ですと一けたになってしまう、数%といったような数字もございます。
 実はここが外国の労使関係と違う点でございまして、外国の労働時間の実態は労使協定で進められる。しかし、我が国のそういう中小零細企業の場合はそういう実態がございますから、必ずしもそうはいかない。そこで、実は私ども、まずは行政指導として来年度、中小企業の集団を対象としての労働時間短縮の推進事業といったものも新しく実施することにして、予算も組んでおります。したがって、労働時間短縮に関する予算も前年に比べれば三倍以上の増額を実は図って積極的に進めることにいたしておりますが、同時に、今先生言われましたように、果たして行政指導だけで済むのか済まないのかといった問題もございます。
 実は三年来、労働基準法研究会で、我が国の今後の労働時間法制というのはどうあるべきかという研究をしていただいてまいりました。昨年暮れにその報告が出されました。その中でも指摘されておりますように、我が国の労使関係の実態等から見て、やはり法制による下支えというものが要るのではないかという御指摘もいただいております。具体的な提言もございますが、私どもとしては、基本的にはそうした点もなるほどとうなずける面もございますので、その報告を受けまして、今後、関係審議会としまして中央労働基準審議会がございますから、その中でも労使の議論等も交わしていただく予定にいたしております。そうしたものを踏まえまして、労働時間法制の改正について労働省としても本格的に取り組んでまいりたいと考えております。
#56
○池端委員 時間がありませんから、先に進みます。
 通産省にお尋ねをしたいのであります。
 先般、二月六日でございますか、産業構造審議会の総合部会企画小委員会で、「二十一世紀産業社会の基本構想」についての報告、中間的な取りまとめが行われた、こういうふうに承知をしておるわけでありますが、その中でこの労働時間の問題がどのように扱われ、取りまとめられておりますか、ひとつ御紹介をお願いしたいと思うのであります。
#57
○大塚(和)説明員 御説明申し上げます。
 先生御指摘のとおり、産業構造審議会から二月六日に中間報告をいただいておりまして、その中では、今後の政策展開についていろいろ御提言がなされておるわけでございます。
 そして、特に「自由時間の増大」につきまして、消費の拡大あるいはその質的充実という観点から取り上げられております。要約して申しますと、特にその労働時間関係でございますけれども、二十一世紀に向けまして、完全週休二日制の普及、それから休暇のまとめ取り、そういったことを通じまして、年間の総実労働時間でございますが、「少なくとも現在のアメリカ、イギリスの水準以下の千九百時間内にまで引き下げるよう努める必要がある。」かように書かれてございます。
 もう一点つけ加えさせていただきますと、私どもでこの事務局としての作業を行いましたときに、週休二日制がどれぐらい内需につながるであろうか、消費支出の拡大効果があるであろうかという試算をいたしまして、その結果につきましても、この報告書が触れでございます。「一定の仮定」これは省かせていただきますが、一定の仮定のもとで試算をいたしますと、約三兆円ぐらいの消費支出の拡大効果があるのではないか、かようなことも触れておるわけでございます。
#58
○池端委員 ただいまのお答えによりますと、年間の総実労働時間はイギリス、アメリカ並みに千九百時間内までに引き下げる、あるいはその週休二日制の拡大によって約三兆円程度の消費支出拡大効果があるのではないか、こういうようなことだというふうに承知をしたわけであります。
 それで、課長はきょう、何か御不幸があったそうでございますから、もう結構でございます。本当にありがとうございました。
 これに関連をいたしまして、去る二月十三日の予算委員会で、我が党の土井たか子委員の質問に対して、渡辺通産大臣も「労働時間をもっと短縮すべきで、千九百時間ぐらいまでした方がいいんじゃないかというのが大体大勢になりつつあるし、そうしたいと私は思っているのです。」こう答弁しているのです。総理も折に触れて、労働時間短縮の必要性を強調しておるわけでありますが、林労働大臣、あなたはどうでしょうか。中曽根内閣の閣僚の一人として、当然この際、年間千九百時間を実現することに目標を置くべきだ、こう思うのでありますが、これについての御見解を承りたいと思うのであります。
#59
○林国務大臣 昭和六十五年までに、一週四十五時間、二千時間という努力目標を今掲げておるところでございます。長い目で見ましたら、そのような動きが国民的な関心を高める観点から歓迎をできることではなかろうか、このように思うわけでございます。
#60
○池端委員 昭和六十五年度までに二千時間に持っていきたい。一九九〇年ですね。私は、どうも通産省なんかの考え方と大分乖離をしていると思うのであります。消極的な姿勢ではないか。労働時間の問題は労働大臣が担当大臣ですから、もっと積極的な姿勢があってしかるべきではないか、余りにも現状追認の姿勢が目立ち過ぎる。社会全体を長時間労働からの脱却に導いていく積極さに欠ける。これは実は労基研報告の際の、いわゆる各マスコミの論調なんですよ。私が言っているのじゃないのです。私は用く同感だと思うのです。
 それで、経企庁来ておりますか。――経企庁の方でも、総理の諮問機関である国民生活審議会、ここでは年間千八百時間労働への移行というような方針を出されているやに承っておるのでありますが、この労働時間の問題についてどのようなまとめを行っておるか、お聞かせ願いたいと思うのです。
#61
○村田説明員 御説明させていただきます。
 ただいま先生御指摘のように、国民生活審議会で労働時間の関係の議論もなされておるわけでございます。全体は人生八十年時代の経済社会システムのあり方ということでございまして、昭和五十九年の七月以来、検討を進めておるわけでございますが、昨年の六月に、基本的な考え方を中心にいたしまして中間報告を出していただいておるわけでございます。
 その中で、労働時間に関しましては、生涯を通じまして職業生活と個人生活の両面において自己実現が可能となり、しかも経済社会の活力が十分に発揮できるようなものであることが望ましいという観点から、適正な経済成長を前提にいたしまして、生産性の上昇分を賃金上昇分と労働時間短縮分とに適正な割合で配分する、そういうことを通じまして段階的に労働時間の短縮化を進めるということを基本として考えておるわけでございます。
 具体的には、二十一世紀の初頭を念頭に置いておるわけでございますけれども、年間の労働時間が千八百時間程度になることが望ましいのではないかというような御指摘もなされておるわけでございます。
 その後の検討状況でございますが、中間報告で基本的なことをまとめていただいたわけでございますが、今後もう少し具体的な肉づけなどをいたしまして、最終報告をまとめていただくことになっておりますけれども、その最終報告の検討の御審議の中で、今後、二十一世紀初頭を考えてみますと、サービス産業とか知識産業といったようないろいろなものがふえてくるわけでございまして、どうも従来の労働時間という概念では考え切れない面もかなり出てくるのではないか、そういうものをどう考えたらいいかというようなことなどを議論いただいておるわけでございます。そんなことで最終報告に向けて御審議をいただいておるというのが現在の段階でございます。
#62
○池端委員 今経企庁の方では、二十一世紀に向けてというまくら言葉はありますけれども、年間千八百時間、通産省の方は年間千九百時間、しかるに労働省の方は依然として二千時間、二千時間。一九九〇年というような年代を区切っておりますけれども、二千時間というものにこだわり続けておる。どうも目標にしても理想にしても非常に低過ぎるのではないか。さっき申し上げましたように、現状追認、この姿勢に満ちあふれているのではないかというふうに私は考えるわけでありますけれども、どうですか、この問題の担当大臣である労働大臣のさらなる決意をお聞かせ願いたいと思うのです。
#63
○小粥(義)政府委員 御指摘のように、表へ出された数字を見ますと、今、労働省といいますより政府としては六十五年を目標に二千時間、他の審議会では二十一世紀を展望して千九百あるいは千八百時間というふうな数字が出されております。これはやはりタイムスパンのいかんが数字には非常に大きく響くわけでございまして、少なくとも経済審議会のリボルビング報告でも二千時間というものを当面の目標としてうたっておるわけでございます。
 二千時間がいかにもみみっちいんではないかというような感じもあろうかと思いますけれども、実は最近五年間の休日の増加日数というのを見ますと、年当たりで〇・三八日という極めて少ない日数になっております。かつて四十五年から五十年にかけての高度成長期ではこれが一年当たりで三・何日というように労働時間短縮も進んだわけでございます。で、今掲げております今後六十五年までに十日程度休日をふやすという目標は最近の五年間の休日増加のテンポの数倍に相当する増加の数字になるわけでございます。
 したがって、一応まず当面の目標を達成し、さらにその上で二十一世紀をにらんでのその次に来る目標を掲げていくということは今後必要になろうかと思っておりますが、その点につきましては、現在労働省としても長期労働政策のビジョンについていろいろ懇談会を設けまして御検討願っておりますので、そうした二十一世紀を展望してのものは労働省としてもまたその結論をいただいて出し得るかと思っておりますが、今行政のベースに乗せておりますのは、当面の目標として六十五年度の二千時間ということでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。時間短縮について決して熱がないということではなく、私ども人後に落ちないつもりで取り組んでいるつもりでございます。
#64
○池端委員 お尋ねしますと、懇談会を設けて検討していただいておりますとか審議会でその問題は御相談を願っていますとか、そういうことですぐ逃げられるのですね。そこに、そういう姿勢のあり方に私は問題があるというふうに言っているのです。時間短縮に努めてきたと言っておりますけれども、現実にはどうですか。むしろ時間延長という方になっているじゃないですか。具体的な数字がそういうふうに示している。例えばおたくの毎勤統計、毎月勤労統計調査によりますと、一人平均月間の実労働時間数の推移は、製造業の場合、昭和五十年の百六十七・八時間をボトムにして、以降むしろ短縮どころか微増、微増というふうにあえて私は言いますけれども、ふえているのですね。そういう傾向になっている。
 要するに時間短縮はかけ声だけに終わって現実にはほとんど前進をしていない、こういう実態から、非常に努力していると今局長胸を張ったけれども、実態はそうではないんではないか、そういうふうに私は申し上げたいわけであります。なぜこんなふうに進んでおらないのですか、その要因を重ねてお尋ねをしたいと思うのです。
#65
○小粥(義)政府委員 労働時間短縮が我が国の場合なかなか進まない理由として、幾つかのものが挙げられると思います。
 一番大きな理由としては、昭和四十九年から五十年、いわゆる第一次オイルショックのときに相当大きな雇用調整というものが行われました。その苦い経験から、企業としては景気変動に際していわゆる人員整理をしないで済むようにふだんの雇用人員というものを少な目にして、そのかわりに労働時間でもって調整をするという傾向はございます。これははっきり言って、そうした傾向が第一次オイルショック以降できているわけであります。そのために景気がよくなるとかえって残業時間がふえるといったことがございます。先ほど先生御指摘のように、製造業でふえておる傾向がありますのは、景気の動向と極めて密接な関連があるわけでございます。
 それからもう一つは、私先ほどもお答えしましたが、中小企業の場合、いわゆる労使でもって話を進めていくといった土壌が必ずしも成熟しているとは言えません。したがって、外国のように労働協約でもって時間短縮を進める、そうした形が必ずしも幅広くとれない。それから中小企業の場合は、特に一社限りで対応するといってもなかなか難しくて、同業他社の動きあるいは取引先との関連といったものも考慮しなければならない。こういった事情がありますために期待ほど進んでいないというのが率直に言って事実でございます。
 そこで、私どもこれから中小企業に向けての対応としては、個別企業をどうこうというより、むしろ企業の集団を対象に全体として進めてもらうといったような手法も新しく新年度から取り入れて、そうした面で進めていきたいと考えているわけでございます。
#66
○池端委員 今局長も言われましたけれども、中小企業なんかの実態を見ますと、私も単なる労使問題でこの問題を解決することは非常に困難だと思うのです。
 労働基準法研究会のメンバーでもございます上智大学の山口教授が最近の「日本労働協会雑誌」の一月号で、時間規制の方法として自主交渉型、コスト圧力型、直接規制型の三つのタイプがあるけれども、我が国の場合、労働協約という労使の規制にゆだねることは現実的な選択とは言えない。なぜなら我が国の協約は企業別協約であって産業の規制力は著しく弱く、これのみに頼ることは極めて困難だからである。したがって、直接規制型が我が国に適した選択であると考える、こういうふうに述べておられるわけでありますけれども、私ども全く同感だ、こういうふうに思うわけでございます。
 特に、先ほども言いましたように、我が国の場合労働組合の組織率が非常に低い。中小企業では労働組合が存在しないところも極めて多い。それから我が国の労働市場はいわば底割れを起こしやすい下方弾力的な性質を持っている。こういうことから労働時間の問題は労使間の問題だとするのではなくて、法的規制がどうしても必要だ、私はこのように思うわけであります。これは労働基準法研究会でもいろいろ検討しておるようでありますけれども、ひとつそのことを十分踏まえてこれからの判断の材料にしていただきたいということをお願いしておきます。
 大臣が予算委員会にもうそろそろ行かなければならないそうでありますので、次にILO条約の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。
 労働時間に関するILO条約、ILOにおいて採択された労働時間に関する条約の件数はどんな数になっておりますか、またそれが我が国で批准されているものは幾つになっておりますか、お尋ねをしたいと思います。
#67
○小粥(義)政府委員 ILO条約のうちで労働時間、休日、休暇に関する条約は、批准すべきものとして採択されているものが十五本ございます。これは第一号条約から、第三十号、第四十七号あるいは第百三十二号といった主要なもの、それ以外のものを含めてでございます。
 なお、この中で我が国の批准件数でございますが、こうした労働時間関係につきましての批准件数はございません。
#68
○池端委員 十五本あるけれども、一本も批准をされていない。大臣、この現状をどう思われますか。
#69
○林国務大臣 これは幾つ批准をしたかどうかということでなく、私は、日本の今の労働環境と申しますか、そういったものが諸外国とは多少異なった面があって、それが一つ一つの条約の条文に日本の労働環境としてそぐわないといいますか、入り込めないというようなことがあってそれが批准がなされないというようなことと理解をいたしております。
#70
○池端委員 どうも労働大臣の答弁としてはまことにいただけない答弁だと私は思うのであります。十五本も労働時間に関するILO条約が既に採択をされておって、その一本も批准をされていない、こういう現状はまことに遺憾な状況ではないかと思うのですよ。
 ILOというのは、御案内のとおり一九一九年に創設をされまして、労働者の保護、労働条件の向上に大きな役割を果たしてきた。日本はその常任理事国の一つであります。アメリカ、ソ連に次いだ多額の費用も分担をしている。こういうような状況にあって、その消極的な姿勢というものはまことに遺憾であり、先進工業国の名に恥じるものである、こういうふうに私は思うのであります。特に、一号条約について第一順位で特殊国扱いを受けることとなってその不名誉を永久に記録しているということ、これは六十年も前の話ではございますけれども、我が国の労働時間に対する象徴的な姿勢を示しているのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 大臣、時間がございませんから最後に申し上げますが、労働時間短縮の問題は、本当に労働者の福祉の向上、雇用の確保という観点と貿易摩擦解消といった国際連帯の問題、国際協調の問題と、非常に大きな意義を持っておるわけでございまして、この問題に積極的に取り組んでもらわなければならない、これは今日最大の政治的な課題である、こういうふうに思うのでありますが、最後に大臣のこれについての積極的な前向きの御見解を承って、質問を終わりたいと思います。
#71
○林国務大臣 労働時間の短縮というものは極めて重要な課題として今日まで労働省も取り組んでまいりました。多少その間に先生には物足りないようなことでお映りになっているようなことを先ほどの御質問の中に伺っておるわけでございますけれども、労働省といたしましては、現在の中において最大の課題という認識のもとに取り組んでまいってきたこともひとつ御了解をいただきたいと思います。
 この問題につきましては、私どもは今後とも十分に先生の御意向なども念頭に置きながら対処してまいりたいと思います。
#72
○池端委員 終わります。
#73
○山崎委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時三十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二分開議
#74
○山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。林労働大臣。
    ―――――――――――――
 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法
  の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#75
○林国務大臣 ただいま議題となりました中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 現在、我が国の人口の高齢化は世界に類を見ない速度で進展しつつあり、これに伴い、労働力人口も急速に高齢化し、二十一世紀初頭には労働力人口の四人に一人を五十五歳以上の高年齢者が占めると見込まれております。また、労働力人口の高齢化の波は、五十歳代層から六十歳代前半層へと移りつつあります。他方、高年齢者をめぐる労働市場の状況には極めて厳しいものがあり、今後の労働力人口の高齢化の進展等に伴い、ますます、深刻化することが懸念されております。
 このような状況の中で、我が国の経済社会の活力を維持し、発展させていくために高年齢者の雇用・就業の機会の確保等を図ることが、早急に解決すべき極めて重要な国民的課題となっているところであります。
 このため、政府としては、従来から六十歳定年の一般化を労働行政の最重要課題として取り組んできたところでありますが、今後、六十歳定年を基盤に六十五歳程度までの継続雇用を促進すること、高年齢者の早期再就職の促進のための体制を整備すること、定年退職者等に対する臨時的かつ短期的な就業機会を確保すること等高年齢者の雇用・就業に関する施策を総合的に推進していくことが求められているところであります。
 これらの問題につきましては、昨年十月、雇用審議会から昭和五十四年以来検討いただいていた定年延長の立法化問題等についての答申をいただいたところであり、また、同じく昨年十月に中央職業安定審議会から今後の高年齢者の雇用・就業対策の充実強化について建議をいただいたところであります。
 政府としては、これらの答申及び建議に沿って、今後の高年齢者の雇用・就業対策を総合的に推進するための法律案を作成し、中央職業安定審議会にお諮りした上、ここに提出した対策であります。
 次にその内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、法律の題名を「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」から「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に改めることといたしております。
 また、目的規定につきまして所要の改正を行うほか、高年齢者は、その意欲及び能力に応じた雇用その他の就業の機会が確保されるよう配慮される旨の基本的理念を明らかにするとともに、基本的理念の具現に向けた事業主、国等の責務に関する規定を設けることといたしております。
 第二に、六十歳定年につきましては、事業主は、定年を定める場合には、それが六十歳を下回らないように努めるものとするとともに、六十歳未満定年の事業主のうち政令で定める基準に該当するものに対しては、引き上げの要請、引き上げ計画の作成命令、引き上げ計画の適正実施勧告、正当な理由なくこれらの命令及び勧告に従わない事業主名の公表等の行政措置を講ずることができるものといたしております。
 第三に、六十歳代前半層までを含めた高年齢者の継続雇用を促進するための施策を明らかにいたしております。
 まず、企業内における取り組みを推進するため、事業主は、高年齢者の雇用のための条件整備を担当する高年齢者雇用推進者を選任するように努めるものといたしております。
 また、国は、六十歳代前半層の高年齢者の雇用割合が一定の割合を超える事業主等に対する助成等を行うほか、調査、研究等に努めることにより、高年齢者の職業の安定その他福祉の増進を図ることといたしております。
 さらに、高年齢者の雇用の安定等を図ることを目的として設立された公益法人を中央高年齢者雇用安定センター及び都道府県高年齢者雇用安定センターとして指定することとし、これらに、事業主に対する高年齢者雇用に関する相談援助、高年齢者の継続雇用に関する給付金の支給等を行わせることにより、事業主の取り組みに対する援助体制を整備することといたしております。
 第四に、高年齢者の再就職を促進するための施策を明らかにいたしております。
 まず、国は、職業紹介、職業指導等の効果的な実施、求人者に対する指導、求人の開拓、求人求職情報の収集及び提供等を行うことにより、高年齢者の早期再就職の促進を図ることといたしております。
 また、事業主は、定年退職者等に対する再就職の援助に努めるものとすること、高年齢者が多数離職する場合には公共職業安定所長に届け出ること及び必要に応じ離職する高年齢者の再就職援助計画を作成すること等の措置を講ずるものといたしております。
 第五に、国及び地方公共団体は、臨時的かつ短期的な就業を希望する定年退職者等に対し、その希望に応じた就業機会を提供する団体の育成等に努めることとし、具体的には定年退職者等に対する臨時的かつ短期的な就業機会の提供等を目的として設立された公益法人をシルバー人材センターとして、また、シルバー人材センターの健全な発展を図ること等を目的として設立された公益法人を全国シルバー人材センター協会として指定することとし、定年退職者等の就業ニーズに応じた臨時的かつ短期的な就業機会の提供体制を整備することといたしております。
 さらに、事業主は、高年齢者が在職中から退職後の生活の準備ができるようにするため、その準備についての援助をするように努めるものといたしております。
 なお、以上に合わせ、現行の高年齢者雇用率制度は廃止することといたしております。
 この法律の施行は、高年齢者雇用安定センターに関する規定その他一部の規定を本年四月一日からとするほか、本年十月一日からといたしております。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
#76
○山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
#77
○山崎委員長 引き続き、労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がおりますので、順次これを許します。村山富市君。
#78
○村山(富)委員 私は、きょうは今国会の最初の質疑の日でありますし、労働大臣の所信表明を受けての一般質問でありますから、当面する具体的な問題について労働省の基本的な考え方を若干承っておきたいというふうに思うのです。
 当面の最大の課題といえば、これは何といってもやはり円高がどういう影響をもたらすか、一体これからどうなっていくのか、こういう問題が一番大きな問題ではないかと思います。
 そこで、お尋ねしたいのですけれども、先般来経済企画庁あるいは中小企業庁等で調査をされた報告も出されております。この調査は六十年の十二月から六十一年の一月中旬ぐらいまでの期間について調査されたものです。特に、中小企業庁の調査の報告によりますと、円が二百円の場合あるいは百九十円の場合に企業の操業短縮あるいは休廃業、倒産といったようなものについてどういう動向があらわれるか、あるいは見通しかといったような問題についての報告がなされておりますが、その報告を見ますと、二百円の場合に、例えば「休業の発生が見込まれる産地」は三十二産地、それから「廃業の発生が見込まれる産地」は二十五産地、「倒産の発生が見込まれる産地」は十九産地。百九十円のケースの場合には、それが休業が三十六産地、廃業が三十二産地、倒産が三十一産地というふうに、指定をした産地について調査をした結果が報告されておるわけです。
 今は百九十円ところではなくて、百八十円を前後している、ややもすると百八十円を割る傾向さえある、こういう状況になりつつあるわけでありますし、さらにまた経済企画庁の調査によりましても、円高による影響にどういうふうに対応していくかという問題につきまして、こういうふうに報告されているわけです。「今後の対応策と政策要望」といったような課題の中で「雇用についてはパート化、人員削減で対応するとする産地が多い」、こういうふうに報告されております。したがって、円高が中小企業を含めて大変な影響をもたらしますし、とりわけ雇用問題には深刻な影響があらわれてくるということが想定されるわけでありますが、仮に百八十円を割ったような場合に、中小企業、下請企業等にどのような影響があらわれてくると考えておるか、その見通しも含めて中小企業庁にお尋ねしたいと思うのです。
#79
○上田説明員 お答え申し上げます。
 先ほど先生が御指摘になりました調査につきましては、私どもが先般行った調査であると承知しております。
 御指摘のように、当時は二百円前後のレート時点の調査でございまして、そのときに想定いたしたレートは二百円ないし百九十円でございました。その後、レートがなお円高の方向に動いておりますので、百七十円ないし百八十円ないしは百九十円ぐらいを想定いたしまして再度調査を実施し始めたところでございます。
#80
○村山(富)委員 再度調査を実施し始めたところ、こういうふうに言われたのですが、きょうの日経新聞なんか見ましても、「円高で再値上げ輸出企業、新たな対応急ぐ」というような記事も報道されておりまするし、あるいはまた「円、百七十円台が当面の天井」といったように若干の見通しも出ておりまするし、「円高下請けいじめ防止で対策本部」といったように、もう経済新聞のほとんどの記事が円高問題を取り上げて報道されておる、こういう状況にもなっております。
 特に、経済企画庁や中小企業庁が産地を指定して調査したところだけではなくて、例えばこれはきのう地元から来た新聞ですけれども、大分県なんかでも円高で下請の窮状がどう展開されていくかといったような問題について、大分県の中小企業振興公社というところが関係企業を集めて、そして相談をしながら対応策を急ぐといったような記事も報道されておるわけです。
 それで、これまでの調査を踏まえて、仮に百八十円を割ったような場合にどういう影響が出るというふうに推定されるか、若干の見通しがあれば御報告をいただきたいと思うのです。
#81
○上田説明員 お答え申し上げます。
 調査を開始したところでございまして、この場におきまして明確なお答えを申し上げることはできないわけでございますが、先般の調査におきましても、百九十円台のケースの場合に、例えば新規成約額が前年比マイナスになる産地が五十五産地中四十七産地、そのうち五〇%以上マイナスになる産地が二十六産地ということでございまして、その他経常利益、休廃業の見通しにつきましてもかなり厳しい見通しが出ておりまして、それがさらにより厳しくなるものと憂慮しておる次第でございます。
#82
○村山(富)委員 時間がありませんから次に移りますけれども、そうした円高の及ぼす影響について、とりわけ雇用問題等についてどういう影響が出てくるというふうに想定をされておるか、労働省の見通しについて御報告願いたいと思うのです。
#83
○白井政府委員 お答えいたします。
 今通産省の方からも御説明ございましたが、労働省としましては、関係省庁や業界、関係団体等と緊密な連絡をとりながら実態の把握に努めております。なお、先ほど先生御指摘になりました円高の影響を強く受けると思われる輸出比率の高い産地については、関係都道府県を通じましてヒアリングを行う等、雇用への影響を早期に把握するよう毎月何回も実態の収集に努めております。
 それで、労働省としましては、新規成約が進んだところもありますが、しかし成約関係で雇用に影響が出ておるものもございますし、生産面への影響も見られますので、先行きが不透明な状況でございますが、産地の状況を四つの段階に分けまして、雇用調整はまだ見られないけれども先行き不透明感を有しているもの、それから、現在円高に伴う雇用調整は見られないけれども新規成約、受注の減少で雇用に影響が起こり得ると見られるもの、主に円高により雇用調整を実施しているケース、それから、従来からの構造的不況要因等地の要因も加わって円高による雇用調整がかなり進んでいるケース、この四段階に分けまして、それぞれ実態を把握しながら早期にこれらの業種に対します対策を打てるように状況把握を行っているところでございます。
#84
○村山(富)委員 いろいろ調査をされて対策も講じられていると思うのですけれども、ややもすると今まで労働省の取り組んできた雇用対策というのは、離職者が出た場合にその離職者をどう救済していくかという、言うなれば後追いの政策が主体ではなかったかと思うのです。むしろ大事なことは、離職者を出さないことが大事じゃないかと私は思うのです。そこで、そういう立場からお尋ねをしたいと思うのです。
 先般国会で、当面の緊急対策として特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法という法律が衆参両院で可決されました。この法律を見ますと、事業を転換する場合の計画を立案する段階あるいは今後どうしていくかというような問題について労使が話し合ってやるというような規定が残念ながらないわけですね。産構法の場合にはそのことはちゃんと条文に明記されておったわけですけれども、今回はそれが抜けておる。失業を予防していく、離職者を出さないという立場からするならば、労使が一体となって十分協議を尽くして再建策なり雇用の確保なりに努力していくことが必要ではないかと私は思うのですが、今申し上げましたように、残念ながらその条項が入っておらない。そういう問題について労働省はどういう対応をしてきたのか、もしあれば御報告いただきたいと思うのです。
#85
○白井政府委員 今回の法律の場合は、従来の法律を円の対策のために改正されまして通過されたわけでございますが、従来、特定不況業種その他につきましては、指定された場合に、計画を立てて労使の話し合いの上で進めていくことになっておりますし、これに適合しない業種につきましても、雇対法の中に多数発生の場合の届け出その他もございますし、これらを利用いたしまして労使の指導を図っていきたいと思っております。
#86
○村山(富)委員 商工委員会におきましても、「事業転換の円滑な遂行とその成果を期するため、転換計画の承認について弾が的な運用を行うとともに、転換に当たっては、当該中小企業者に雇用される労働者の意見が反映されるよう指導すること。」こういう附帯決議も入っております。具体的に転換計画をつくる段階とか雇用問題等について労使双方を積極的に指導して万遺憾のないようにやっていくことが大事だと思いますから、その点は強く要望しておきたいと思うのです。
 そこで、最近の傾向を見ますと、大企業と中小企業のいろいろな格差は、一時は縮まっておったのですけれども、またやや拡大傾向にある。その拡大傾向にあるときに、円高がまた大きな圧力になって一方的に中小企業、とりわけそこで働いている労働者に負担がかかっていく。これはまかり間違えば失業するわけです。そうしますと、失業すれば厚生年金ももちろん掛けられませんし、また、これから提案されて審議が始まることになっております中退金等についても離職中は掛けられないわけです。したがって、生涯を通じて計算してみますと、大企業と中小企業には大変な格差があります。
 こういう格差について何らかの救済する方策を、具体的に私もありませんけれども、手だてを考えていく必要があるのではないかと私は思うのです。中小企業と大手企業との格差を縮小させるという意味での手だて、あるいはいろいろな社会的事象によってこうむる損害、被害を何らかの形で救済できるような方策は検討されないものだろうかと私は思うのですが、そうした問題について、これは国会でもたびたび議論されてきた問題ですけれども、特に中小企業対策について労働省がどういう取り組みをしているか、どういう考えなのかということをはっきりしていただきたいと私は思うのです。
#87
○小野説明員 お答え申し上げます。
 中小企業と大企業の労働条件あるいは労働福祉全般にわたる格差の縮小の問題につきましては、労働省の重要かつ基本的な問題の一つとして、これまでも各般の施策を講じてきたわけでございますけれども、具体的な労働条件の改善につきましては、法定水準を上回るものについては基本的に労使の話し合いによって進められるべきでありますが、一方、産業政策、経営基盤を強化するための施策と相まって、労働行政といたしましても賃金や労働時間その他の労働条件の向上のために、先ほど来御指摘のありました円高等の関連も十分に配慮しながらきめの細かい施策を進めてまいりたい。特に来年度からは省内に中小企業労働対策室を設けて中小企業労働者福祉のさらなる増進に一層積極的に取り組んでいくという考えでございます。
#88
○村山(富)委員 これは労働時間の問題も含めてここでたびたび議論されてきた問題ですが、もう少し本気になってやるという姿勢を示してもらわないと、議論するだけであって解決しません。ですから、これは労働省だけの問題ではなくて、通産省も大蔵省もいろいろな省が関連すると思いますけれども、そうしたところとも連携を十分とり合いながら、何とかして中小企業の置かれている条件を底上げしていくという努力は必要だと思いますから、特にお願いしておきたいと思うのです。
 とりわけ今回の問題は、政府が介入して起こっている円高の現象なんです。だから、ある意味からすると、政府に責任があるわけです。これは経営者が放漫経営で労働者が失業したという問題とは違うわけです。こういう問題についてはもう少し責任ある対応を示してもらいたいと思います。その点は大臣に聞こうと思ったのですが、今大臣が出ましたから、せっかく政務次官が見えておりますから、政務次官の見解も聞いておきたいと思います。
#89
○松尾(官)政府委員 お答えを申し上げます。
 今だんだんのお話を承りまして、まことに大切な問題についての御要望と承りました。今部長から御答弁申し上げましたように、話だけでなく具体的にということにこたえて、この四月から中小企業労働対策室というものを設けまして、特別に中小企業労働者の福祉の増進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。特に、私は零細企業出身の立場でございますので、その辺については苦労も十分知っておるつもりでございますから、御趣旨に沿うように頑張ってまいりたいと思います。
#90
○村山(富)委員 せっかく労働省の中に中小企業労働対策室も設けたことですから、ひとつ今度は本気になって取り組む。早急にすぐあらわれると思いませんけれども、目に見えてだんだん改善されておるということがあらわれてくるように一層のお取り組みの強化を私は要請しておきたいと思うのです。
 時間がありませんから次に移りますが、個別的な事案について聞く意思はありません。一つの事例を紹介して、それに関連して幾つかの問題について質問を申し上げたいと私は思うのです。
 その事例と申し上げますのは、ヤーマンという株式会社がありますけれども、ここで長い間労働争議が続いているわけです。若干この経過のあらましを見てみますと、これは組合の報告による資料ですから間違いがあれば訂正していただきたいと思うのですが、このヤーマンという会社は、職場では従業員の使い捨てが激しく、女性のほとんどが一年未満で退社、男性でも平均勤続は二年に満たない、従業員は就業規則も知らされず、労基法違反の残業が連日強要され、しかも残業手当すらまともに支払われなかった、有休や生休は全く取得することができない、病気で一日でも休めば即日解雇、一時金はほとんどなきに等しい、こういう条件にあったために労働組合が結成されていろいろな具体的要求が出てくるというのは当然だと思いますね。
 労働組合が結成されましたところが、七六年の十二月八日にこうした問題を含めて第一次の争議が発生しているわけです。ところが、会社の方は、争議が発生したら途端に全員解雇を通告した。そして、今度は職場復帰でもって争議が起こった。七七年の九月二十日に全員解雇を撤回して職場復帰ができたわけです。
 その後、十七次にわたって連続的に出勤停止処分が出るといったような処分が繰り返されておりますが、八〇年の十二月二十三日には組合員全員解雇、懲戒解雇の通告がなされた。それで、救済申し立てを都労委に出しておりますが、都労委では八一年の九月八日に救済命令が出されたわけです。もとより解雇撤回、原職復帰、未払い賃金を支払えという救済命令が出されておるわけです。中労委でもこの都労委の結審を受けて同じような命令が出ているわけです。ところが、会社の方は、この中労委命令に対して行政訴訟を起こしております。しかし、裁判所でも同じように仮処分の事件の結審をして、賃金は支払えという命令が出ておりますし、中労委は緊急命令を申し立てて対処しておる。それで今は強制執行まで行われている、こういう状況にあるわけです。
 あらまし経過を申しましたけれども、労働省がつかんでいる経過は以上のような経過に間違いないかどうか、確認をしておきたいと思うのです。
#91
○加藤(孝)政府委員 先生の今御説明いただきましたのは、私どもつかんでおりますのと日付とか何かの面で二、三食い違いがございますが、事実の経過は大体そういうことで私どもも理解いたしております。
#92
○村山(富)委員 そこで、きょう午前中、竹村委員も京セラの問題について取り上げていろいろ訴えておりましたけれども、最近労働組合の組織率が三〇%を割っているというふうに報道されていますね。今のこの社会の現状から考えてみますと、なるほど労働者の権利は憲法で保障されております。憲法に基づいていろいろな労働の関係法規ができているわけです。そして、法律の建前では権利が守られ、保護されるようになっているわけですね。しかし現実には、やはり労働組合が結成されて、その団結の力が背景になって具体的に保障されていく。したがって、労働組合の組織のない実態の中ではもう全く権利は存在しないというような状況になっておる。
 ですから、現実にパートの実態を調べてみましても、あるいは日雇い労働者、臨時で働いておる人たち等々の状況を調べてみましても、ほとんど無権利状態で、会社の方でもう来なくてよろしいと言われればそれで終わりといったような事例がたくさんありますね。幾ら憲法で保障されておりましても、現実に労働組合がそれをバックアップする体制がなければ権利は保障されない、もうないに等しい、こういう状況がある。そういう中で先ほど午前中にありましたような京セラの事件とか、あるいは今私が御紹介申し上げましたような事件とかが起こっている。これは氷山の一角であって、労働者が現実に泣き寝入りしている事例というのはたくさんあると思うのですよ。
 そういう状況にあるときに、そうした現実に対して、労働省は、労働者の権利を擁護する立場からどういうところに問題があって、どういう点にもっと考えを及ぼす必要があるというふうに思っておられますか、その現状に対してのお考えを聞きたいと思います。
#93
○加藤(孝)政府委員 けさほどのお話、あるいはまたただいま村山先生のお話にございますように、法律上の制度としては、一連のこういう訴訟あるいは救済申し立て等を通じまして最終的には救済をされる、あるいはまたその不履行に対しては強制的な執行というものがついておる、こういうことではございますが、現実問題として、なかなかその最終決着をつけるまでがやはり相当の時間とエネルギーがかかるという現状にあることは私も率直に認めざるを得ないと思うわけでございます。
 しかし、一連のこういう訴訟手続とかいうような形で進んでおりますときに、これは一つの国の制度としてそういう形ができておるわけでございまして、問題は、私どもそういう訴訟の形というよりは、その前にまずはそういう事態が起こらないような、使用者教育、使用者に対する労働教育の面、指導の面というものを基本的に充実していかなければならぬだろうということも一つあると思うわけでございます。それからまた、一たびそういう紛争状態になりました場合に、あえてこういう訴訟という形よりは両者の話し合いという形の中で問題が解決するというような、労政事務所であるとか県の労政機関の仲介でのあっせん的なもの、あるいはまたさらに言えば地労委での話し合い、あっせん的な形での問題解決の道を探っていくというような形での問題解決、そのあたりのところで何とか未然防止と起こった場合の話し合いによる早期決着、そんなところに大きな重点を置いて労政行政というものを進めていく必要があるのではないだろうか、こんなふうに感ずるところでございます。
#94
○村山(富)委員 時間がありませんから、そうした問題についてはいずれまた突っ込んだ議論もしたいと思うのですけれども、ただ、今御紹介申し上げましたような事例というのは、東京都の労働委員会が救済命令を出してもそれに従わない、中労委が出してもそれには従わない、そして行政訴訟を起こした、裁判所も仮処分を決めた、過料を払えばいいじゃないか、争えば最高裁まである。こういった争いをやっていきますと何年かかるかわからないわけですよ。その間労働者は家族を抱えて生活しなければいけないわけですからね。そういう事例を考えた場合に、やはりこの企業に対して少しは命令くらいには従う、法律は守らせるというようなことはあってもいいのではないかと私は思うのですね。
 そういう観点から、きょうは中小企業庁の金融課の方も見えておりますけれども、この会社は中小企業金融公庫から融資を受けているわけですね。それで、これも組合からの報告ですから事実のほどは確認は、まあ間違いないと思うのですけれども、この金融課と労働組合との話し合いの中で、これは金融課の方の回答ですが、「極端な話、経営者が刑事事件を起こしたとしても中小企業庁として会社を指導することはできない。」「返済が滞ったり、使途目的以外に使われているとかすれば指導の対象となる。」こういうふうに言われているのです。これは組合からの報告ですから、もし間違いがあれば訂正してもいいと思うのですけれども。
 私は今まで議論をしてまいりましたように、中労委の命令も聞かない、裁判所の仮処分も聞き入れない、そして労働者は非常に塗炭の苦しみで困っている、こういう状況があるときに、恐らく労働省は、少なくとも都労委、中労委の命令くらいには従って正常にしてくれというくらいの指導はすると思うのです。労働省はそういう指導をしている、中小企業庁の方は関係なしに融資をする、そんなことは関係ありませんというのでは、同じ政府の機関の中としてはやはりおかしいのではないかという気がしてならぬわけですよ。
 こういう事例が起こった場合に、融資をしている金を回収するとか取り消すなんということはもちろんできぬでしょうね。しかし、労働省と連携をとり合いながらそうしたことのないように行政指導をしていく、誘導していくというようなことはあってもいいのではないかと思うのですが、そこらについてはどういうふうな見解ですか、これは中小企業庁の方に伺います。
#95
○土居説明員 政府系金融機関につきましては、法律に基づきまして中小企業施策の観点から貸付業務を実施しているわけなんでございますけれども、貸し付けに当たりましては、いろいろと公序良俗等の観点から問題がある場合については慎重に対処するという指導はしているわけでございます。
 ただ、一たん貸し付け決定をいたしますと、これは貸付契約という一種の契約関係になりますものですから、その貸付契約に従って相手方が債務を履行している限りにおきましては、その後の契約を越えた指導というのは非常に難しいかと思います。これは、やはり貸し付けについてはいろんな目的があるわけなんでございますが、これまた原資が国の資金であるということもございまして、金融のルールの中で債権保全を図らなきゃいかぬというような問題もありまして、かつ、貸し付けにつきましては金銭契約の特約条項というのがあるわけですけれども、それに記載する事項もおのずから金融慣行上限度があるということで、一たん貸し付けた後について他の観点からいろいろと指導することは難しいということでございます。
 したがいまして、労働関係法に違反する等の事態につきましては、やはり労働関係法の体系の中で制裁が科せられるなり、あるいは必要な指導が行われるというのが基本ではないかというふうに考えておりまして、なかなかこれは中小企業対策としての政府系金融機関を通じた指導というところは、基本的には妥当ではないのではないかというふうに考えております。
#96
○村山(富)委員 基本的にはそれは労働省の所管だから、中小企業庁が主体になってどうこうなんてことはできもしませんよ。しかし、せっかく労働省がそういう努力をしていれば、側面的にやはり協力できるところは協力しますというぐらいの姿勢があってもいいのではないか。それがもう、これはうちの所管外だから全然知りません、関係ありませんというような態度はとるべきではないと思います。これは後でまたちょっと触れますからその程度にしておきますけれども、私はそういうふうに期待したいと思うのです。いいですか。
 それから、こういう企業は、午前中の答弁を聞いていますと、マスコミに報道されたりなんかして社会的制裁を受けるというふうに言われたのだけれども、社会的制裁を受けるのは当然でしょう。しかし、社会的制裁も覚悟の上で平気でやっているというようなところもあり得るわけですから、そういう企業に対しては少なくとも官公需を発注する場合にはやはり若干の配慮があっていいのじゃないか。
 これは以前の資料等を見ますと、同じような労働争議の事例がありまして、その事例を踏まえて、例えば賃金の未払いとか基準法違反とかいうような事業主に対しては、政府機関の仕事を発注する場合に幾らかの手心があってもいいのではないか、こういう意味の質問に対して、当時の加藤労働大臣がこう答えておるわけです。そのまま読みますけれども、
  なかなかごもっともな御意見で、労働省といたしましては労働者の福祉なり利益擁護のために善処いだすことは当然であります。いま後段の、そういうような無理をしたいろいろな基準法違反だとか、厳然とはっきりした不当労働行為をした、裁判なり、中労委からのいろいろな命令が出たものに対して、公共事業の発注を禁止するとか、指名入札を取りやめるとかいうような案件につきましては、建設省とは従来から御趣旨のような点で相互通報いたしております。運輸省もいたしております。その他の省もそれに準ずべきが当然でありますので、十分各省と連絡いたしまして、その趣旨に沿うように善処いたしますが、ほかのほうとはまだ具体的にかっちりときめておりませんので、御趣旨を尊重して、慎重にすみやかに対処するようにいたします。
こういう答弁をしておるわけですね。こういう答弁をしておるのですけれども、その後の扱いはどういうふうになっていますか。
#97
○加藤(孝)政府委員 その労働大臣の答弁を受けまして、労働省としては建設省初め関係省と速やかに検討に取りかかったわけでございますが、先ほど中小企業庁の方からお話もございましたように、そういった問題について全省庁的な形でどうこうということは非常に難しい、やはり労働法の中での問題処理という形で対応せざるを得ないというような状態に今なっておるわけでございます。その点について、我々も努力いたしましたけれども、残念ながら現在そうなっておるということでございます。
#98
○村山(富)委員 残念ながら現在そうなっておるというのは、実行されておらぬということですね。
 もう時間がありませんから、いろんなことを申し上げたいのですけれども省略しますが、例えばILOで公契約における労働条項に関する条約というのがありますね。これは第九十四号ですけれども、中山教授の解説を読みますと、
 第九四号条約は公の機関がおこなう事業で下請けに付されるばあい、下請け契約自体の中に、下請け労働者の公正な労働条件が定められていなければならないとする条約であって、日本のように、下請けはおろか孫請けまでが普通であって、労働条件についての規制なしにおこなわれ、その結果、労働条件全体を低水準におし止めている国にとっては、決定的に重要な意味をもつものである。
こういうふうに書いてあります。
 これはもう相当の国がそれぞれ批准をしているのです。ベルギー、フランス、イタリア、スイス等五十一カ国が批准をしているわけです。日本政府は批准をしてないわけですね。私は、こういうことがもう国際的な常識になっておる、こういうものがなければ労働者の権利は守られないんだというようなこともやはりあるのだと思いますね。したがって、条約の批准はいろいろな困難があるにしても、せめてそういう企業体に対する官公需の発注について、加藤労働大臣が答弁されておりましたように関係省と連携をとり合いながらやはり若干の手心を加えていく、そして正常化するように誘導していく、これは当然じゃないかと思うのですが、どうですか。
 同時に、ついでに紹介しておきますけれども、アメリカの場合やはり同じような公契約法がありまして、例えばそのアメリカの法律を見ますと、現在運営している特定の産業、類似の産業若しくは産業群に従事する労働者について、一般職種別最低賃金と決定した最低賃金を下らざる賃金を支払うこと。それ以下の賃金を支払っているところについては契約をしないとか発注をしないとかいうような規定があるわけです。これは労働時間ももちろん入っています。
 そこで、このILOの条約を見ますと、労働組合と協定を結んだ、その協定が無視されているとかというようなことがあるのですけれども、同時に、労働組合がなくて協定のできておらないようなところにおいても、その地域の一般的な常識の水準というものを下ったようなものについてはやはり発注すべきじゃない、契約すべきじゃない、こういうものを含めて条約ができているわけですね。そういう全体の流れを考えた場合、これは当然批准をしてもらいたいと思うのだけれども、直ちに批准ができなければ次善の措置としてそのくらいの措置は考えてもいいのではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
#99
○加藤(孝)政府委員 御提言の趣旨は私どももよく意味はわかるわけでございます。私どももそんなような観点から労使関係法研究会におきましてこの問題について検討をしていただいたことがあるわけでございます。相当論議の末の結論といたしましても、一つには、他に非難されるべきいろいろな、例えば刑事犯罪もあれば労働犯罪もあれば、また破廉恥罪とかいろいろな社会的非難のそういう犯罪というものがある、あるいはまた社会的に非難されることがある。そういったものとの関係において、なぜ不当労働行為の問題だけ、なぜその問題だけで官公需がアウトになるのか。すると、そういうものを全部官公需からアウトにするのかどうか。こういうような非難される対象についての一つのバランスの問題をどう考えていくかという問題が一つある。
 それからもう一つの問題といたしまして、こういう例えば融資とか助成とかいうような関係があるという場合に、それがその融資なり何かとめられた、あるいは官公需がとれなかった場合に、それが致命的な場面になる企業なり相手方と、ほんのかすり傷程度の場合というような問題があって、それが効果的に発揮される場合とそうでない場合とがあるという問題。
 それからまた、もう一つの問題といたしまして、申立人がそれを手段としてそういうことを申し立てて例えば官公需がそこでとまる、ところが実は問題解決すればぜひ官公需はとりたいという形での一つの闘争手段といいますか、というような形にとられるおそれもある。
 そういったようないろいろな問題をどう考えるか解決をしないと、なかなかすぱっとそこで官公需問題について割り切った対応をするというのが難しい、こういうようなのが率直に言いまして今の研究段階での一応の中間的な判断ということになっておるわけでございます。
#100
○村山(富)委員 個々のケースにどう対応するかというのは、それはやはりケース、ケースによって違うと思いますよ。しかし、政府がつくっている機関から出された命令にも従わない、裁判所の判決も無視するというような事業体、企業に対して若干の手心を加えるというのは、憲法で保障された労働者の基本的権利を守るという建前からすれば、さっきの条約やアメリカの公契約法なんかを見ても大体もう世界の常識になっておるというふうに判断をしてもいいのではないかと思うのですね。そのくらいのことが各省の連携の中であってもいいのではないかと思うのですよ。
 現に、これは大阪府ですけれども、こういう事例がありますよ。
 労働法令違反をやる会社に対しては、大阪府は指名入札のワクに入れない、競争入札のワクに入れない。大阪府として、その会社が工場を拡張したりする土地を提供することもやらない。表彰なんかする場合もそれは除外するという形で、一定の期間入札をストップさしたり、あるいはいま言ったような会社に対する便益を講じないという措置をして、正しい労働法令の精神を守るように、会社に対しても政治的な措置を講じた
こういうことによって解消されている事例というのはたくさんあるのですよ。
 ですから、いろいろできない条件を考えるのでなくて、本当に労働省が、労働基本権を守らなければいかぬ、労働者を擁護しなければいかぬという前提があるならば、これくらいのことは労働省としては各省に要請して検討してもらうということくらいはあっていいのではないかというふうに思うのですが、これは次官、もう時間がありませんから、どうですか、せっかくあなたがお見えになっているのですから、ひとつ決意のほどを。それは役人の言うとおりになっていたのではだめですよ、あなた。
#101
○松尾(官)政府委員 お答えいたします。
 先ほど来局長からいろいろ御答弁申し上げているわけでありますが、法制的に大変難しい問題も含んでいるようでありますので、よく勉強させていただきたいと思います。
#102
○村山(富)委員 時間が来ましたから、もうこれで終わりますけれども、私がさっきも言いましたように、未組織の労働者がうんとふえていくのですね。未組織の労働者がふえていくということは、あるいは権利が存在しない状態がふえていくということが考えられると思うのです。
 こういう事件は氷山の一角であって、これからどんどんふえていく可能性がある。しかも労働者のほとんどは泣き寝入りしている。こういう状況を考えた場合に、労働省が本当の意味で憲法で保障された権利を守るとかあるいは法規に照らして労働者の生活を擁護していくとかいう立場に立つならば、今申し上げたぐらいのことはやはり考えてもいいんではないか。また、そうでなければ労働者は本当の意味で守れませんよ、権利は守れませんよ。私はそう思うのです。
 特にその点は強く要望しておきますが、せっかく中小企業庁もお見えですから、ひとつ十分連携をとっていただいて、悪いことをしようというのなら別だけれども、いい方向に誘導していきなさい、すべきではないか、こう言っているわけですから、ひとつ誠意を持って十分検討していただいて何らかの解決策を目指せるように努力していただきたいということを最後にお願いを申し上げまして、質問を終わります。
#103
○山崎委員長 大橋敏雄君。
#104
○大橋委員 先般、労働大臣が所信表明をなさったわけでございますが、その中で我が国の雇用失業情勢についてもお述べになっているわけでございます。特に業種あるいは地域にばらつきがある、いまだに非常に不安定な状況下にある、しかしながら地域の雇用動向に即応して機動的に推進すると力強く所信を表明なさったわけでございますが、実は私の地元には、北九州でございますけれども、この所信表明でお述べになったそのお気持ちをそのままいただきたい問題が起こっております。早急に機動的に対応していただきたい状況が発生したということでございます。
 それは、世界一の鉄鋼メーカーと言われております新日鉄が、いわゆる企業の戦略からでございましょう、企業内の事業を一カ所に集中しようという話があるわけです。それは設備技術本部と八幡製鉄所の第三技研というんですけれども、そういうふうに新日鉄のそういう関係が三カ所に分散されているのを実は千葉県の富津市に移転統合しようということなんです。その計画が昨年の暮れに発表されたわけです。
 大変な人数になるわけでございますが、関係の労働組合もこの計画を既に了承したという報道もなされております。たくさんな頭脳集団の流出という内容の計画でございまして、ただいま私の地元の北九州市の地域は複雑かつ深刻な空気に包まれているわけでありますが、こういう状況を労働省としてはキャッチなさっているかどうか、また、なさっていれば要領よく報告をしていただきたいと思います。
#105
○白井政府委員 お答えいたします。
 今先生御指摘の北九州市におきます新日鉄八幡製鉄所の問題でございますが、我々としても情報を一応把握いたしておりまして、新日鉄としましては研究効率を上げるために八幡製鉄所に主力のある設備技術本部、約七百二十名だそうでございますが、及び第三技術研究所、五百四十名をそれぞれ六十一年度以降六十五年度までの間に首都圏に近い千葉県富津市に移転する構想を持っているというふうに聞いております。
 これに伴い技術者を中心に大量の配転が見込まれるわけでございますが、この構想自体の具体的計画については現在のところまだ決まっていないということでございまして、今後計画が具体的に検討されるというふうに情報を把握いたしております。
#106
○大橋委員 関係の労働組合も了承したという報道を見たのですが、それは労働省としてはその点は掌握なさっておりますか。
#107
○白井政府委員 その点につきましては、先ほど先生おっしゃいましたが、昨年暮れの十二月三日に新日鉄の臨時経営審議会というのが開催されまして、ここで会社側から担当部長、それから組合側から副会長、書記次長等が出られまして、そういう会社側の提案を行われたというふうに聞いておりまして、完全に了承されたかどうか、まだ具体的計画はその中には盛り込まれておりませんので、その点は詳細には把握いたしておりません。
#108
○大橋委員 地元としてはただでさえ鉄冷えということで経済が冷え込んでしまっているわけでございますが、その上このように会社の都合とはいえ頭脳集団が千二百人前後が大量流出することについては、やはり地元の住民の立場からは何としてもとどまってほしいという声が充満しているわけでございます。会社の企業戦略でもございましょうし、やむを得ないことであろうと思うのですけれども、八幡製鉄所員が一人移動していきますと、家族や関連企業等を含めますと十人一緒に移動していくというのが一般的な見方でございます。したがいまして、地域に及ぼす影響は極めて甚大といいますか、関連中小企業が千社くらいあるようでございますが、その中で特に深刻な影響を受けるのが五十社あるそうでございます。また、関連中小企業の労働者が移動したり、あるいは失業する羽目に陥るわけでございます。
 地域経済に大きな打撃を与えることも十分予測されるわけでございますが、当然政府といたしましても適切な措置を講じて、保護あるいは活性化への行政が必要であり、また、そうなされると思うわけでございます。これは労働省だけというわけではないでしょうけれども、まず労働省としてどのような考えてこれに取り組んでいただけるのか、お尋ねしたいと思います。
#109
○白井政府委員 お答えいたします。
 新日鉄自体の研究機関を統一される問題につきましては、産学官の研究の効率等、先ほど先生もちょっとおっしゃいましたが、合理的に効率的にやっていくという面での会社自体の問題もあるかと思います。
 北九州市全体につきましては、今先生御指摘のとおり、同地区の有効求人倍率は六十年の十月から十二月で大体〇・二三倍。全国平均が〇・六七倍でございますから、雇用失業情勢が非常に厳しい状況でございまして、そういう事態で北九州市全体の活性化につきましては、先生おっしゃるとおり労働省だけでできる問題ではございませんが、いろいろな面で各関係機関と連絡をとりながら対応してまいりたいと思っております。
 しかし、今申し上げました雇用失業情勢が非常に厳しい点につきましては、北九州地域の公共職業安定所、また北九州市等行政機関が集まりまして北九州雇用対策連絡協議会というのを開催いたしまして、地域の雇用失業情勢の的確な把握、それから失業の予防、再就職の促進等について雇用対策全般の連絡協議を行いますとともに、八幡製鉄所を管轄する八幡公共職業安定所においては、北九州商工会議所、鉄鋼業等の業種別団体との間で業種別雇用問題懇談会を開催いたしまして、求人情報の交換その他求人の確保に努めているところでございます。
 なおまた、鉄鋼業につきましては本年二月一日から雇用調整助成金の指定業種といたしまして指定したところでございまして、関連下請を含めまして雇用調整助成金の支給による失業の予防、なお当該業種からの離職者に対する対策等を進めて、失業の予防と離職者の求職中の生活の安定等に努めてまいりたい、直接の問題についてはそういうふうに対応していきたいと考えている次第でございます。
#110
○大橋委員 ひとつぜひそれを強力に推進していただきたいと思います。特に円高デフレで非常にまた混乱した状況が起こってきているわけでございますが、通産省といたしましても直ちにそれに対応する特別措置法を今回提案し、もう成立したというふうに聞くわけでございます。そのほかにも不況地域あるいは不況業種等々に対する特別措置法等があるわけでございますが、あらゆる法律がこういう中に準用されていきますように特段の御配慮をお願いしたいと思うわけであります。
 地元北九州市におきましても昨年の四月、活性化を目指す先端産業振興資金融資制度というものをスタートをさせまして、最高一億円を限度としまして資金援助を実施しているということでございまして、既にもう二十二件、総額として十一億円が融資されているというようなこともございまして、北九州市は市なりに必死で活性化に向かって今対応しているところでございますので、政府としても大きくバックアップしていただきたいことを強く要望しておきます。
 次にまた、所信表明の中に国鉄改革と余剰人員問題についても触れられているわけでございますが、実は一月の十三日に国鉄当局と勤労、鉄労、全施労の間でトップ会談が持たれた、つまり国鉄改革に関し、あるいは余剰人員の問題に関してのトップ会談ですね。それで、最後に共同宣言が行われたと聞いておりますが、その内容を簡単で結構ですから、説明していただきたいと思います。
#111
○加藤(孝)政府委員 先生御指摘ございましたように、本年の一月十三日に国鉄当局と勤労、鉄労、全施労の三組合のトップが逐次会見をいたしまして、諸法規を遵守することによる安定輸送の確立あるいは合理化の推進あるいは余剰人員対策への積極的協力、こういうようなことを内容といたしました労使共同宣言というものを締結することで合意いたしまして、一月二十二日に国鉄当局と三組合の連名で労使共同宣言というものを調印をいたしたわけでございます。
#112
○大橋委員 要するに国鉄改革、つまり分割・民営化の基本的な問題についてはこのような労働組合も一応基本的には賛成をしているというふうに理解していいと思うわけでございますが、公的部門といいますかあるいは一般私的部門といいますか、そういう関係で労働省としてはどのような再就職へのお手伝いをしようとなさっているのか、具体的な内容で答えていただきたいと思います。
#113
○白井政府委員 お答えいたします。
 労働省としましては、昨年七月に大臣を本部長とする国鉄余剰人員対策推進本部を設置いたしまして、対策のあり方の検討、それから労使に対します協力要請等を実施してまいったわけでございますが、今後におきましても運輸省等と協力しながら再就職の促進に関する法案の提出、それから六十一年度からは都道府県ごとの再就職促進連絡会議の設置、求人開拓、職業紹介等の施策を推進していくことにいたしております。
 なお、労働省自体におきましても七十九名の六十一年四月採用、それから雇用促進事業団等におきます二百五十名の採用等も計画いたしているところでございます。
#114
○大橋委員 公的部門に移譲させていく基本的な人数は、全体的に政府の考え方として何人になっておりますか。
#115
○白井政府委員 先生御存じのとおり、亀井委員会から出されました国鉄余剰人員対策の概要におきまして六万一千人の余剰人員が出ると計算されております。そのうち約二万人につきましては六十二年四月民間移行前に希望退職者として就職を進めていき、あとの四万一千人につきましては旧国鉄という形で残ったところで雇用の場の確保を図っていくということになっているわけでございますが、その場合の計算といたしましては、公的部門、国、地方公共団体等を含めまして三万人の確保を図る、それから一般産業界において一万人以上をお願いしていくという計算に一応なっております。
#116
○大橋委員 今まだ国鉄法案が審議もされていない段階で少し早過ぎる質問になるかもしれませんが、現実問題としては、もう国鉄の皆さんは改革されていくことを基本的に理解しておられまして、むしろそういう公的部門に再就職していきたいと思っている方々もかなりおられるようでございまして、もしそうであるならば、少なくともことしじゅうにめどをしっかりと立てていただきたいという皆さんの要望があるわけでございますが、そういう面についての目標はきちっとしてあるのでしょうか。
#117
○白井政府委員 雇用の場の確保につきましては、「国鉄余剰人員雇用対策の基本方針について」という閣議決定を昨年の十二月十三日にいたしておりまして、六十一年度、国につきましては、いろいろな採用可能の母数があるわけでございますが、その採用可能の母数の一〇%、それから六十二年度から六十五年度当初に向けましては採用数の一〇%以上で別途定める率、これは今後の公務員の採用問題等もいろいろとございますので、法案作成等と絡めながら六十一年じゅうに検討されるものと思いますが、採用数の一〇%以上で別途定める率ということで進めることにいたしております。その他、特殊法人につきましては、国と同様に採用するよう指導、要請を行う。それから地方公共団体につきましても、国に準じた採用を要請していく。そのほか関連企業、一般産業その他に要望するわけでございますが、公的部門についてはそういうふうに進めていくことにいたしております。
 そして、この閣議決定の際に、「このため、国鉄改革の具体的内容が明らかになった時点で更に精査を行う必要がありますが、政府として国等の公的部門における採用目標数は三万人とし、その達成に政府全体が一丸となって全力を挙げて取り組む所存であります。」という官房長官談話を出しておるところであります。
#118
○大橋委員 内容はよくわかったわけでございますが、例えば私の知り合いに三十歳前後の国鉄職員の方がいるのですけれども、希望退職の思いがあるのかどうかわかりませんが、今ある公的機関に受験をしております。一次試験、二次試験と受かって今度はいよいよ面接試験があって、それで終わるのだそうですけれども、一般的に、希望退職していくような人あるいは公的部門に行きたいと思っている人等が例えば労働省関係の職場に行きたいという場合、やはり試験等をやっての採用になるのですか、その点はどういうことになるのですか。
#119
○白井政府委員 六十一年度についての労働省採用は、先ほど申し上げましたように、既に数字は決定いたしましたが、いわゆる公務員試験を受けて入ってくるというのではなくて、国鉄の職員の中で希望される方について面接試験を行いまして採用を決定いたしております。
#120
○大橋委員 よくわかりました。とにかく六十一年度暮れまでにはぜひとも明確にどこの職場に行けるというふうに決定をしていただきたい、強く要望いたしておきます。
 それから、民間部門なんですけれども、現在国鉄は派遣制度で、ある企業に国鉄職員の身分で三年をめどに就業させて、しかも賃金の約四割は国鉄の方が面倒見ているというふうに伺っているわけでございます。全体で一万人程度おいでのようでございますが、こういう再就職を促進している立場から見るならば、むしろこの派遣制度を活用いたしましてそこに定着させるような工夫、努力の必要はないのかな、こう思うわけでございます。これは国鉄の方と深い協議が必要であろうと思いますけれども、ぜひお願いしたいと思うのです。
 というのは、今も申しましたように、賃金の四割を国鉄が既に面倒見ているわけですから、三年間通っているうちに人間的なつながりも、あるいはそこの職場の仕事に対するなじみも定着する形であろうと思いますので、むしろこれがどんどん生かされていくような工夫をすべきではないか、それを採用する企業に対しては奨励金でも出すくらいのことをやるべきではないかな、私はそう思うのですけれども、いかがなものでしょうか。
#121
○白井政府委員 お答えいたします。
 国鉄が余剰人員対策の一環としまして、今先生がおっしゃいました民間企業への派遣制度を実施いたしておりますが、これは労使協定に基づきまして、三年を限度として国鉄が賃金を支給するという形で行っております。この労使協定の中身では、派遣終了後は国鉄に復帰することを前提として行われていると承知しているところでございますが、御指摘のような個別のケースにつきましては、国鉄職員がそこへ定着を希望するというような場合について、民間企業への再就職問題として国鉄、本人及び派遣先企業の当事者間で話し合いの上解決されることが望ましいと思うわけでございますが、協定自体はそういう形で進めていかれているようでございます。
#122
○大橋委員 当然両者間の合意がまず前提ですけれども、基本的に、帰ってこいというのではなくて、そういうところで働くことを希望すれば、どうぞと気持ちよく行けるような雰囲気をつくってもらうことを要望しておきます。
 次に、春闘と内需拡大に関しまして若干お尋ねしたいと思うのでございますが、内需拡大経済への転換はまさに国民的要求であろうと私は思うのです。その内需拡大の柱は、積極的な賃金の引き上げあるいは労働時間の短縮、減税、生活基盤型社会資本形成等々の実現を通しまして、円高の基本的な原因となっております貿易摩擦あるいは輸出依存型経済からの脱皮を図っていき、将来の展望を切り開いていくことではなかろうかと思うわけでございますけれども、この点、本当は大臣に聞きたいところだったのですが、今予算委員会の関係でお留守でございますので、政務次官、大臣に成りかわってこの辺をひとつ答えてください。
#123
○松尾(官)政府委員 お答え申し上げます。
 今の問題は、技術革新など経済発展の成果を賃金と労働時間短縮へ適切に配分すること等を通ずる可処分所得や自由時間の適度な増加を図ることは、勤労者の福祉、生活の向上のみならず、今日の課題である、今先生のお話にありましたように、内需中心の均衡のとれた経済成長の達成という面からも望ましいこととして私どもも認識しているところであります。
 具体的な配分につきましては、それぞれの労使が自主的な話し合いを通じて適切に対応することが基本であることは申すまでもないところでありますが、政府としましても、適度な経済成長、物価の安定、週休二日制等の促進等、環境の整備に努めていくことといたしております。
#124
○大橋委員 ちょうど林大臣お帰りになりましたのでよかったと思います。それで、大臣、内需拡大経済への転換は国民的課題になっておりますよ、その柱になるのは積極的な賃上げです、あるいは減税です、労働時間の短縮ですと、等々のことを今申し上げまして、大臣に成りかわって今政務次官にお答え願ったところでございますが、内需拡大政策は、一般的にはまず個人消費の拡大あるいは住宅投資、民間設備投資、公共投資、この四つに置かれていると思うのでございますけれども、中でも個人消費というものはGNPの六〇%を占めておりますので、いわゆる内需拡大の核というものは、すなわち賃上げあるいは所得減税が肝心である、このように私は考えるのでございますが、大臣はいかがですか。
#125
○林国務大臣 内需拡大の柱は、先生おっしゃるとおりだと思います。その中で賃金の値上げというものは働く者はすべて願っているものでございます。そしてまた、時間短縮問題も勤労者の生活の向上ということから考えますと、これも内需の拡大につながる大きな要素だと思います。
 賃上げにつきましては、これはそれぞれ労使の中で、その生産性の成果をどういうぐあいに配分するかという労使の話し合いの中で決められることでございまして、労働省といたしましては、円満な双方の話し合いの上でこれが決まっていくということを願っているような次第でございます。
#126
○大橋委員 要するに、賃金は労使交渉で決まっていくものだという原則は十分承知しているわけでございますが、今まで、特にオイルショック後、労働運動といいますか、労使関係が非常に様子が変わってきているような気がしてならないのですね。どちらかといえば、労働組合の皆さんのお気持ちも、生産性、職場意識が高まりまして、何となく遠慮がちではないかなと思われるぐらいにおとなしい交渉がなされているように私は感ずるわけでございますが、実は政府の経済審議会の十二月十八日の答申、これは最終報告でございますけれども、その中に、中長期的な内需拡大のため、成長の成果を賃金上昇や労働条件の改善によって再配分をし、個人消費を伸ばすべきだ、こう提言をいたしておりますね。これは、政府機関が賃上げを勧めるということは非常に珍しいことですよ。むしろ前代未聞ではないでしょうか。
 ですから、単なる労使交渉で決まればいいのだというのではなくて、むしろ内需拡大のためには労働組合等が要求するその方向にいくように、とにかく労働省としても側面的に援護すべきではないか、私はこういうふうに考えるわけでございます。今のような経済審議会の答申等も出ましたので、労働側のことしの春闘にかける情熱といいますか期待というものは、大変大きなものを私は感ずるわけでございます。私はこの場をかりまして、労働側にも本気で闘ってくださいよと激励をしたい思いでございます。
 労働組合も今や内需拡大を基本戦略としているようでございますが、もしそうであるならば、賃上げの要求も日経連が主張しております生産性基準原理の論理に抑え込まれるようなことなく、賃金要求というものはもっと積極的なものでなければならない。今春闘は円高デフレという悪条件が同居する困難な中での闘いではございますけれども、七%ないしはそれ以上の要求をしておられるようでございますが、労働側が主張しているこういう要求に近い賃上げを実現しない限り、景気は失速していくのではないか、私はこのように思うわけでございまして、政府の側面からの援助といいますか援護を強く要望するわけでございますが、この点いかがですか。
#127
○林国務大臣 賃上げの問題につきましては、先ほども申し上げましたように、労働省がそこに出ていって話をつけるというようなことでもございません。
 そこで、労働省といたしましては、労使がそれぞれ円満な話し合いの環境づくりというものを心がけていかなければならない、このように思っているわけでございます。先生御指摘のように、側面からどうの、あるいはまた、それにどのくらいが適切であるというようなことは、労働省としては申し上げるべき範疇ではない、このように思うわけでございます。
#128
○大橋委員 建前論だけではなくて、私が今申し上げました労使間あるいは労働界の雰囲気を十分酌み取り、また日本経済の現在のあるべき姿の立場から、全体的な姿として行政指導をしていくべきだということを申し上げているわけでございますから、それも十分理解された上で手を打っていただきたいものだ、こういうわけです。
 時間も迫ってきましたので、はしょって質問をいたしますけれども、今増加する女子パート労働に関してお尋ねしたいわけでございますが、パートと申し上げましても、今や流動的な労働力ではなくて、企業の中に定着した第一線の労働力だ、こう認識すべきだと私は思うのでございます。
 したがいまして、今回、野党四党が予算の共同修正要求の中でもパートタイマー、そして内職減税で四百億円の修正要求をしているわけでございますが、この点をどう受けとめられているかというのが一つです。
 それからさらに、内職者に対しての問題も触れておるわけでございますが、労働省としてはこの点をどのように受けとめているか、まずお答え願いたいと思います。
#129
○佐藤(ギ)政府委員 先生御指摘のように、パートタイマーは年々ふえておりまして、女子雇用者の五人に一人はパートタイマーということでございまして、おっしゃいますように、労働力の中では貴重な存在になっているわけでございます。パートタイマーにつきまして、税制の控除される最高限をもうちょっと上げるという御要求はいろいろあるわけでございまして、確かに、一定の額まで収入がございますと税金を取られるということで、そこで仕事をやめていかれるという方も一部あるやに伺っておるわけでございますが、私どもといたしましては、パートタイマーだけでなくて、税制全体の中で低所得者の方たちをどのように考えて税制を改善していくかということをとらえてやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
#130
○大橋委員 配偶者控除あるいは給与所得者控除関係では、現行の五十七万円を六十五万円にしなさい、八万円プラスしなさいということと、非課税限度を現行の九十万円から百二万円に引き上げなさい、そして内職者に対しましても必要経費の拡大などによりまして課税最低限をパート並みに引き上げるべきだということを主張し、野党の共同修正要求の中に盛り込んでいるわけでございますので、十分検討していただきたい。
 また、パート労働者は健保あるいは年金、雇用保険等の社会保険が適用になっていないのが全体の八割以上だということでございますが、この辺も早急に改善をしてもらいたいところでございますが、労働省としてはどう対応しておられるか。
#131
○佐藤(ギ)政府委員 確かに、先生おっしゃいますように、社会保険、雇用関係の各種保険の適用状況はフルタイマーに比べればかなり低くなっております。ただ、私どもの調査では、先生御指摘のよりもう少し上になっておるわけでございますが、私どもの所管しております保険で申し上げますと、労災保険の場合には事業所に雇用される労働者は全部適用になるということでございます。
 もう一つの雇用保険につきましても、その労働者が通常の労働者とかなり労働の状況が似ているといいますか、類似しているものにつきましては、一定の基準を設けまして雇用保険を適用するようにいたしておりまして、こういうことにつきましては事業所にも十分周知を図っているところでございますけれども、これからもさらに周知を図っていくように努力いたしたいと存じております。
#132
○大橋委員 もう時間が残りわずかになりましたので、最後にまとめてお尋ねしたいと思いますが、ME機器導入による危険作業や重労働の機械化によりまして、労働災害に対するME機器の貢献、寄与といいますか、これは大きいと私は思うのでございますが、その半面、操作ミスや信号の微妙な乱れによる異常作動が発生したりして、いわゆるロボット災害が新しい課題として今話題になっているところでございます。
 そこで、私は、労働者福祉の立場からディスプレー末端装置作業といいますか、VDTの問題に対してちょっと具体的にお尋ねしますが、VDT作業は目が疲れたり、あるいは視力の低下、目まい・吐き気、耳鳴り等々感覚器官の疲労あるいは心理的負担を訴えている人が多発しているわけでございます。欧米では、妊婦にはその影響を配慮してVDT作業にはつかせない、こういう労使協定があるやに聞いておりますが、その点はどうかという問題。それから、VDTについての安全基準の設定について労働省は既にガイドラインは示しているわけでございますが、六十一年度までに抜本的な安全基準をつくる、こういうふうに言っていたわけでございます。この点どうなっているのか、お答え願いたいと思います。
#133
○福渡説明員 お答えをいたします。
 まず、VDTが労働者の健康に与える影響につきましては、私どもも非常な関心を持っておりまして、昭和五十八年度から産業医科大学あるいは産業医学総合研究所に調査研究を依頼をしておりました。そういう調査研究の結果を踏まえまして、六十年の十二月に「VDT作業のための労働衛生上の指針」というものを取りまとめております。
 その概要を申し上げますと、先生御指摘になりました昭和五十九年二月に出しましたガイドラインの内容をさらに充実をいたしまして、その要点を五つほど申し上げますけれども、適正な照明や採光、映り込みの防止等の措置を講じること。連続VDT作業の場合には、連続作業が一時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に十ないし十五分の作業休止時間を設けること。それから適正な高さの机、調整可能ないすを用い、適切な作業姿勢により作業を行うこと。常時VDT作業を行う者については、健康診断等の健康管理を行うこと。それから、VDT作業の健康への影響などについて十分な労働衛生教育を行うこと。こういうようなことを内容にしております。
 それで、御指摘になりました妊婦に対する影響でございますけれども、これはかつて米国で影響があるという報道がなされましたけれども、その後、国内、国外の種々の調査におきまして、VDT作業に従事する婦人の流産、死産の割合が他の作業の従事者に比べ高いという明らかな科学的知見は、今のところ得られておりません。そういうようなことで、一般的な妊娠に対する注意を十分に行うことでVDT作業における健康管理を進めてまいりたい、このように考えております。
#134
○大橋委員 時間が過ぎたのですけれども、最後に一言。
 六十年十二月二十日に指針が出されたというのですけれども、それが今の我が国の基本的な安全指針である、VDTに対する最終的な安全指針である、こう認識しておっていいですか。
#135
○福渡説明員 今までに得られた知見による行政指導上の基準というふうに我々は考えておりまして、なお未解明の問題も幾つか残されておりますので、そういう点については引き続いて調査研究を行うという考えております。
#136
○大橋委員 終わります。
#137
○山崎委員長 森田景一君。
#138
○森田(景)委員 労働大臣はさきの所信表明におきまして、「本格的な高齢化社会の到来など今まで経験したことのない変化や厳しい国際経済環境の中にあって、勤労者の雇用を確保し、その福祉の向上を図ることは、社会経済と国民生活の安定のための基本的課題であります。」このように述べられまして、九本の基本的政策を掲げておられました。この中には私と意見を異にするものもあります。しかし、大臣に就任されまして初めての機会でございますので、ここで私は改めて労働省の使命といいますか、そういうことにつきまして林新大臣の抱負をお聞かせいただきたいと思います。
#139
○林国務大臣 私どもといたしましては、勤労者の健康、生活の向上、福祉、そしてまた今先生御指摘のような産業界の大変大きな曲がり角にあって、円高その他で中小企業の方々が大変厳しい環境下に置かれておりまして、その中で職を離れていかなければならないというような環境の方々も多く見られるような状況になっておりますので、そういった方々が今後新たな雇用の場に出られる、あるいはまた企業へのいろいろな法の許す限りの助成その他でそれをカバーできるようなことに努めてまいらなければならないと思います。
 そしてまた、労働省として一番大きな使命と申しますか、これは、労使双方がお互いに話し合いをいたしまして、その事業の経営また労働者のいろいろな条件といったものを満たすべく話し合いの場が持たれるような環境を労働省といたしましては整備をしていきたい、こういったようなことが大きな使命の一つであろうか、このように私は考えているわけでございます。
#140
○森田(景)委員 私がなぜこのようなことをお尋ねしたかといいますと、昨年の一月に労働省で発行しております「労働問題のしおり」という冊子がございまして、その初めにこういうことが書いてありました。前段は略しますが、「勤労者が安んじて豊かな生活を営めるようにすることが労働行政の使命である。」このように、労働省は勤労者のためにあるのだということを明確に示しているわけです。
 今の労働大臣のお話は労使双方協調してということで、労働省発行の冊子から見ると、大分後退しているお考えだと思うのですが、いかがでしょうか。
#141
○林国務大臣 私の申し上げましたことは、先生御指摘の労働者の福祉向上を大きな目的といたしておりますことは事実でございますけれども、片一方、産業におきましては使用者側という方もございますので、労働省といたしましては、その双方がともに円満にいろいろと話し合いの上でその企業の発展あるいはまた社会に大きな貢献をしていただくことを眼目といたしておるわけでございますから、どちらの方へどうだとかいうことは、確かに先生おっしゃいます働く方々の生活の向上あるいはまたそれぞれの企業の発展も考えていかなければいけない、このように私は考えておるわけでございます。
#142
○森田(景)委員 後でまた述べますが、企業の発展もこれは当然のことでございます。ただ、昨年、経済団体のある責任者が、今や敵は労働組合ではなくて労働省だ、こういう発言をしたということが新聞で報道されました。大臣は御存じでしょうか。
#143
○林国務大臣 そういうことを言っておるやに話に聞いたことはございますけれども、労働省攻勢という、私どもはどちらの側にも攻勢をかけた覚えはございませんし、本当に労使がともに繁栄をしていただくという願いのみを持っているわけでございます。
#144
○森田(景)委員 労働省として、姿勢をはっきりしておくことが大事だと思います。労働省はあくまでも勤労者のための行政を行う、これが基本で、したがって勤労者を守る立場から企業といろいろやりとりをしていく。企業の方を守る立場は通産省があります。今申し上げましたように、経済団体の責任者から発言があると、それで労働行政がたじたじとするようなことがあってはならないと危惧して私は申し上げたわけでございます。決意のほどをもう一度お聞かせいただきたい。
#145
○林国務大臣 企業側が労働省攻勢というようなことを言ったということで、私どももこんなことを言っているよという話は聞いたことはございますけれども、私どもといたしましては、労働省の攻勢とかいうことは決して考えておりませんし、先ほどから何遍も御答弁申し上げておりますように、労働省としての使命は私は十二分に心得ておるつもりでございますので、それに沿ってこれからの労働行政に携わっていきたい、このように思うわけでございます。
#146
○森田(景)委員 どうか、そういう勤労者の立場に立ってしっかりと今後とも御活躍をされますよう要望しておきたいと思います。
 勤労者にとりまして一番必要なことは、今話がありましたけれども、働く場所の確保、企業がなければ働けないわけでございます。政府の対策では、継続雇用の促進とかあるいは再就職の促進あるいは六十歳定年の立法化、いわゆる終身雇用あるいは常用雇用を基調としているように思われるわけでございます。
 しかし、労働省の労働経済動向調査によりますと、パートタイマーや派遣労働者が着実に増加しておりまして、雇用の場の確保という点ではこれからかなり厳しくなるであろうと危惧されているわけでございます。
 また企業の倒産状況を見ますと、昭和六十年度は倒産件数が一万八千八百十二件、負債総額が四兆二千三百五十六億円、これは東京商工リサーチの調査でございますが、このようになっておりまして、このうち半数以上が不況型倒産であるわけです。また、円高倒産も十一月には七件、十二月は九件となっております。
 一方、政府の労働力調査の結果によりますと、昨年十二月の就業者総数は五千七百十七万人でございまして、前年同月に比べ五万人減っているということでございます。この前年比減少というのは一年十一カ月ぶりであるということでございます。また、完全失業者数は前年同月より十二万人ふえ百五十四万人になっております。これは対前年同月比で十二万人の増加になっておりまして、対前年同月比で十万人台の増加は五十九年十月以来のことである。このように失業者もふえているわけでございます。完全失業率は二十八年にこの調査が始まって以来最悪の記録で、前月と比べては同じ二・九%でございますが、いずれも雇用情勢の悪化を裏づける調査結果となっているわけでございます。
 こうした厳しい状況が今続いているわけでございますが、雇用の確保ということにつきまして労働省としてはどのように対応していかれるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#147
○白井政府委員 お答えいたします。
 今先生御指摘のとおり、雇用失業情勢は厳しい状況にあるわけでございまして、一般的には経済の安定成長を図りながら雇用の確保を図っていくことが重要でございまして、政府といたしましても、六十一年度に向けまして四%の実質成長を図りながら雇用の確保を図っていくということを目標に努力いたしているところでございます。
 それからなお、いろいろ御指摘ございましたように、現在高齢化の進展、女子労働力の進出、また需要側におきましても、産業構造の変化や技術の変化等がございます。雇用を取り巻く環境が急速に変化しているということも事実でございます。
 これらの状況の中で労働者のニーズに対応した雇用の場を確保していくということは、それぞれを対象としました雇用の安定のためのきめの細かい雇用対策が必要だというふうに考えております。
 例えば高齢化に対しましては、六十歳定年の普及促進、六十歳代前半層の雇用就業対策等、高年齢者対策の推進を図っていくということ。
 それから、派遣事業等につきましては、先般の国会で通過させていただきました法律に基づきまして、労働者派遣事業の制度化、雇用職業情報の整備充実等、労働力需給調整の対策の推進を図ってまいりたいというふうに思っております。
 それから、いろいろ円高その他で地域別、産業別にばらつきの見られます雇用失業情勢に対しましては、雇用調整助成金の積極的活用、特定不況業種や特定不況地域の雇用対策、雇用保険制度の適正な運営等を機動的に進めていかなければならないというふうに思っております。
 それから、技術革新が進んでまいりましてME化の問題等ございますが、この産業構造の変化に的確に対応した職業生涯の全期間にわたります職業能力開発対策の推進等も図っていかなければなりませんし、パートバンクを通じましてパートタイマーに対する雇用対策の推進等も図っていかなければならないというふうに思っております。
 これらそれぞれに対応いたしましたきめの細かな対策を総合的に調整し発揮することによりまして雇用対策を進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
#148
○森田(景)委員 雇用の確保というのは本当に大変な仕事だと思います。しかし、労働省の仕事の中の大きな位置を占めているのが雇用の問題だと思います。格段の努力をお願いする次第でございます。
 今もお話がありましたけれども、六十歳定年につきまして、先ほど法案の趣旨説明もございましたけれども、この六十歳定年というのは法制化にやっとこぎつけたわけでありますが、非常に対応が遅いのではないか、このように考えるものでございます。先般来もいろいろと論議がありました。高齢化社会の中で、六十歳定年ではなくして六十五歳定年にすべきではないか、こういう論議が強く行われておるわけでございます。そういう時期にあって今六十歳定年を法制化しようという姿勢については、どうも私は納得できません。六十五歳定年制に向かって労働省も努力をすべきだろうと思いますが、そういう対応については検討されているのですか。
#149
○白井政府委員 お答えいたします。
 六十歳定年につきましては、従来から労働省としましても、行政指導で六十年度六十歳定年の一般化ということで進めてまいったところでございます。しかし、この問題につきましては、先生御存じのとおり昭和五十四年の国会におきましていろいろと与野党間のお話もございまして、政府のしかるべき審議会において法制化問題については検討を進めるということになった次第でございます。その間、随分時間がかかったわけでございますが、この問題につきましては、基本的に労使の問題であって、法制化で定年制を進めるということについては反対の立場に立ちます使用者側と厳しい定年制の実施を求めます労働側の立場、労使が鋭く対立をしていたところでございます。
 しかし、現実には、先ほども申しました行政指導でかなりのところが六十歳定年に進んできたわけでございますが、今こういう段階におきまして、将来の高齢化の進展等をバックにいたしまして、この際、国民的課題の立場から、その六十歳定年の法制化につきまして雇用審議会におきまして労使一致の答申をいただいたところでございます。したがいまして、この答申に基づきまして法制化を進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
 雇用の場そのものとしましては、人生八十年時代に、やはり全体としましては六十五歳程度までの雇用の場を確保することが重要だと我々も考えておりまして、それらの問題もこの法案の中に盛り込んでいるわけでございますけれども、定年でこれを進めるべきかどうかということにつきましては、やはり六十歳を過ぎてまいりますと体力的にも能力的にもそれぞれ個人差が顕著に出てまいるわけでございまして、当面は六十歳定年を基盤としながら、企業の実情に応じつつ、定年延長、再雇用、勤務延長、高齢者会社の設立とか短時間勤務の導入等、事業主による定年退職者等の再就職援助など、多彩な形態でのこれらの六十歳代前半層への雇用機会の確保を図っていくことがこの際必要であり、重要なのではないか、そのための条件整備を促進するための法律をつくっていきたいというふうに我々としては考えている次第でございます。
#150
○森田(景)委員 今回の法案では、六十歳定年というのは努力義務といいますか、こういうことで、しかもこの六十歳定年をしかない企業にあってもいろいろな条件を満たしていれば構わないという内容になっているわけですね。そういうことならば、六十五歳定年を法制化、いわゆる努力義務としても何ら差し支えないことじゃないか。むしろ年金等についてはもう六十五歳というのが現実の状況になっているわけでございますから、そういう点では、まあせっかく六十歳定年制の法制化の問題が出てきましてすぐここで六十五歳にしろといっても無理かもしれませんけれども、ひとつ早急にこの六十五歳定年という問題について労働省としては大きく取り組んでいただきたいことを要望しておきたいと思います。
 雇用の問題につきまして非常に大きな役割をしている機関が公共職業安定所でございます。この公共職業安定所は、いわゆる都道府県知事に対する政府の機関委任事務に相当しているところでございます。需給のミスマッチの解消であるとかあるいは高齢者、障害者の雇用などに真剣に取り組んでいるわけでございます。現在でもぎりぎりの定員の中で一生懸命頑張っていらっしゃるわけでございます。これからさらに男女雇用機会均等法あるいは七月に労働者派遣事業法が施行になります。さらには情報システムの完成、こういうことになってきますと、今の人員では対応が非常に難しいのではないか、こういう状況になって増員の必要性が叫ばれているわけでございます。
 こういう公共職業安定所の状況に対しまして労働大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
#151
○白井政府委員 今、先生御指摘のとおり、先ほどからのお話にもございますように、雇用失業情勢の非常に厳しい中、また産業構造の転換の中で公共職業安定所の果たすべき役割は非常に重要なわけでございますが、公務員全体の合理化が図られる中で、我々としましては公共職業安定所の重要性を強調しながら定員の増その他については努力を進めているつもりでございます。
 しかし、全体的に公共職業安定機関の情報網の整備その他を進めていくためには電算機等の使用によります、先生昨日ごらんになっていただいたようでございますが、コンピューターシステム等によりまして保険の支給その他についての効率化、それからそれぞれ安定機関を結びます情報のシステム化等を図りながらサービスの向上にも努めてまいりたい、そういうふうに考えているところでございます。
#152
○森田(景)委員 労働大臣はきのう労働市場センターを視察されたかと承っております。視察された御感想をひとつお聞かせいただきたい。
#153
○林国務大臣 昨日労働市場センターを訪ねまして、そちらで大型コンピューターを入れての業務をつぶさに視察をしてまいりました。
 最近の情報化時代を迎えまして、それぞれの各地の情報が一カ所に集中してまいり、それを迅速かつ正確にそれぞれの地域にまたこれを分散していく、こういった機能を見てまいりまして、労働行政の中でこういう新技術による機能に大きな力を発揮してもらっている、このように思い、私は大変力強く感じてきたわけでございます。
 まだまだ機械のソフト面で開発すべき点が多々あるように説明も受けました。こういったことはいっときも早くよりよき技術的な方向に進んでもらって、そして雇用、就職あるいは保険の支払い、徴収その他もろもろの事業にさらに大きな戦力となってそういうことが機能する、そういうことを力強くやってくれと言って激励もしてきたようなわけでございます。私としては、その最新の技術に大変大きな感銘を受けて帰ってきたところでございます。
#154
○森田(景)委員 この労働市場センターで今総合的な雇用情報システムの開発を五ケ年計画で進めておるわけでございます。雇用情報システムの進捗状況について御報告をお願いしたいと思います。
#155
○白井政府委員 お答えいたします。
 総合的雇用情報システムの構想を、今先生おっしゃいましたように、昭和五十七年から五カ年計画で進めているところでございます。
 労働省としましては、これによりまして情報化社会に対応して全国の公共職業安定所をオンラインで結び、求人求職に関するデータをコンピューターで一元的に処理してまいりたいと思っているわけでございますが、これによりまして求人求職の検索、照合等の職業紹介業務の広域化、迅速化を図るということ、それから二番目には利用者や地域社会に雇用や職業に関する情報をきめ細かく提供するためにこれを使用していくということで進めているところでございます。
 このシステムにつきましては、ことし十月からまず首都圏、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城の一都四県におきまして先行実施を図ることにいたしておりまして、現在諸般の準備を進めております。さらにこの成果を得まして、明年以降これらの実施結果により全国的にこれを導入しまして、地域社会において公共職業安定所が需給調整機関として中核的な役割を果たしていくようにその機能の充実に努めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
#156
○森田(景)委員 この情報システムは、労働市場センターにセンターコンピューターというのが設置されまして、サブセンターコンピューターというのが各都道府県庁に設置される、そしてその下に各地域の職業安定所に端末機が設置される、簡単に言いますとこういう仕組みになるわけですね。この市場センター、都道府県、それから職業安定所、これが有機的につながって全国的な雇用の情報の交換とかあるいは保険の情報の交換、いろいろできるわけです。
 こういう状況を見ますと、今、職業安定所が国の機関委任事務になっているから地方事務官制度を廃止して都道府県と分けろ、こういうのが労働大臣の所信表明の中にあるわけですね。この公共職業安定所が今のようなやり方、要するに国の仕事を都道府県が委任を受けてやるという、これで何かまずい点があったんでしょうか。どうなんでしょう。
#157
○岡部政府委員 地方事務官制度の廃止の問題でございまするが、これは御承知のとおり、戦後、国と地方公共団体との間の事務配分の結果とられた暫定的な措置であったわけでございます。また、これは予算権及び人事権が国にございまして、しかしながら事務の指揮監督権が都道府県知事にあるという変則的な姿であるというふうなことから、これを国に一括すべきか地方に一括すべきかということでいわゆる三十年戦争が行われたことも御承知のとおりでございます。しかしながら先般の第二次臨調におきまして、これは職業安定行政の一部の事務を除きまして国に一括すべしというふうな結論になったわけでございまして、そのような臨調答申の趣旨に基づきまして、廃止する法案を提出申し上げているところでございます。
 先生御懸念の、それで一体うまくいくのか、あるいはまた都道府県も同じようなことを結局やらなければならなくなるじゃないかというふうな重複行政の問題、これも大いに論点となったわけでございますが、私どもといたしましては、このような法案を提出しておりまする立場からいたしますと、国と地方の間の密接な連絡協議体制をつくりまして御懸念のないようにいたしたい、このような存念でいるわけでございます。
#158
○森田(景)委員 法案が継続審査になっているわけですから、今さら担当者としては引っ込めるとは答弁しにくいと思います。だけれども、これは引っ込めるべきだと私は思うのですね。
 なぜかと言いますと、きょうも本会議で東京湾横断道路の建設に関する法案の趣旨説明がありました。今まで房総半島と三浦半島とはそれぞれはっきりと分かれていたわけです。分かれていていい面もあるんです。けれども、分かれていたのでは困るという問題があって橋で連絡をしよう、道路で連絡をしよう、こういうことなんですよ。だから、国と地方だってそういうところがあっていいはずなんですね。臨調がそう言ったからそうしなければならない、これじゃ労働省も大臣も何も要らなくなってしまうんですよ。これは今まで非常に臨時的な措置であったにせよ、それがいい形で非常にうまく機能している、私はそう思うのですね。大臣、そう思いませんか。
#159
○林国務大臣 それぞれ長い経過がございまして、そういった相助け合う機能もあったかと思いますけれども、今日このような社会情勢の中で行政改革その他が大きな国民的課題となってきている中でございますので、今回はそのようなことになったかと私は認識をいたしております。
#160
○森田(景)委員 何か歯切れが悪いのですけれども、今国会でもしこれが審議されなかったら、労働省としては再び提出することのないように私は望んでおきたいと思います。これは要望です。
 それで、もう時間がなくなってきましたので、もう一つだけお尋ねしておきたいと思います。
 それは、やはり雇用という問題で職業訓練校が果たしている役割というのは非常に大きな役割だったと思います。そういう中で、ME比とかいろんな新しい状態に対応して全国に職業訓練短期大学をつくっていこう、こういう計画がありまして、たしか六十年度は十校新設ということだったと思います。この設置の状況について御報告いただきたいのが一つと、前大臣でございます山口労働大臣に、この十校の中に千葉県が含まれておりませんでしたので、千葉県も非常に人口急増、また工業県となっておりますので、しかも職業訓練校もたくさんありますから、ここにも短期大学校が必要であろうということを御提言申し上げましたら、山口大臣は非常に積極的に、次の計画の中に入れたい、こういうふうな答弁がありました。そういうことで、林新労働大臣もそういう御意向をお持ちかどうかお尋ねして、質問を終わりたいと思います。
#161
○野見山政府委員 先生お話しのとおり、技術革新の進展あるいは高学歴化に対応いたしまして質の高い技能労働者を養成するという観点から職業訓練短期大学校の設置を図ってきたところでございまして、六十年度まで十二校開校いたしております。近く二校開校する予定でございますが、今後の産業雇用の状況ですとかあるいは職業訓練の状況等を見ますと、今後さらに二十校程度の開校が必要ではないだろうかということで、今後とも整備に努めていきたいという状況でございます。
#162
○林国務大臣 千葉県に職業訓練短期大学校の設置の御要望ということを承っております。ただいま局長の方から御答弁申し上げましたように、将来にわたっては二十校ほどまた増設もしなければならぬ、こういったような状況でございますので、現在前向きに検討しているところでございますので、御了承をいただきたいと思います。
#163
○森田(景)委員 大臣のその決断を御期待申し上げまして、質問を終わります。
#164
○山崎委員長 塩田晋君。
#165
○塩田委員 私は、全国の各産業分野におきまして額に汗をして働いている勤労者の気持ちを外しまして、直接労働大臣にお伺いをしたいと思います。
 今後の労働行政の進め方、基本的な立場につきましては、せんだって所信表明をいただきましたので承りました。その最も基本的な、労働行政に携わるに当たりましての基本姿勢について最も大事なところ、労働大臣はどのように考えておられるかをひとつお聞かせいただきたいと思います。
#166
○林国務大臣 ただいまは産業界もいろいろと大きな転換の時期に参っておりますことは先生御承知のとおりでございまして、労働省といたしましては、こういった今まで経験もしたことのないような大きな転換の時期、これを将来にわたりまして誤りない道を歩んでいくためにはどうすればいいか、こういったようなことが私にとりましては一番大きな課題であろうかと思います。
 具体的に申し上げますと、高齢化社会をすぐ目の前に迎えまして高齢者の方々にどういうぐあいな雇用の場を、働いていただけるような場をつくるかということ、あるいはまたいろいろと新しい技術革新によりますところの産業形態の変化、あるいはまた女子の非常に大きな職場進出に関しますこういったような労働市場の変化、いろいろとそういったことがございます。こういったことを十二分に考えながら、そして二十一世紀に向かって日本の労働行政というものがどのような方向に歩んでいけば一番いいかといったようなことを念頭に置いてこれからの労働行政を進めてまいりたい。これが私の基本の姿勢でございます。
#167
○塩田委員 大臣の基本姿勢につきましてお伺いいたしました。まことに真摯な態度で労働行政に取り組もうとしておられる気持ちを十分に拝察できる御答弁をいただいたわけでございますが、私は、福祉、文化、教育、すべてのもとは産業経済の発展であると思うのです。資源も少ない、また国土も非常に狭い、そうしてその中に一億二千万の日本国民が生活をしておる、この中におきましてそのような日本の経済が目覚ましい発展をしておる。これは世界の注目の的でございます。
 なぜこのような置かれた条件の中で日本経済が発展をしているのか。これは言うまでもなく、世界は戦後全体的には平和な世界、そして特に我が国におきましては戦後、平和を謳歌しておる、そして我が国の安全、防衛の問題がしっかりしておる、こういった問題、その中での政治的な安定もまたあったと思われます。こういったものを基礎にいたしまして経済の発展の担い手といいますか指導力になってきたものはやはり何といいましても働く勤労者だと思うのです。
 御承知のとおり、来年度の規模で言いますと就業者数は五千八百六十五万人、そのうちの他に雇用されている雇用労働者、これは四千三百八十万人、これくらいの規模ですね。ですから就業者のうちの五分の四の方が勤労者であるということです。この人たちが主たる担い手であったことはもう紛れもない事実でございます。そしてその働く人々が我が国の場合は非常に勤勉である、勤労意欲に燃えておるということ、全般的に、概してそう言えると思うのです。
 真面目に働く勤労意欲、これが支えになり、また経営者も非常に経営努力をしておられる。そして我が国の場合には、教育の普及からくる技術、技能がすぐれておる。そしてすぐれた労使関係、これが安定的に支えておるという中で、いろいろ戦後いきさつはございました、いろいろな山もあり谷もあったわけでございますが、概してすぐれた労使関係、この労使関係あってこそ日本の経済の発展が今日もたらされておる。この点につきましては、諸外国でも、日本の労使関係というものを、なぜこのような状況が生まれたのか非常に注目をいたしまして研究をしておるところでございますし、これは日本の経済発展の大きな要因であると私は思うわけでございます。こういった点につきまして労働大臣はいかがお考えでございましょうか。
#168
○林国務大臣 昭和二十年の八月十五日に日本が無条件降伏をいたしまして、廃墟の中で日本の多くの国民が大変伸吟をした時代がございました。その中で日本人の勤勉と英知が今日の大きな日本の繁栄をもたらしたということはもう世界じゅうが認めるものでございます。その中でいわゆる勤労者の方々の大変な御努力もあったというふうなことは十分に認識をされているわけでございます。
 そしてまた、一方には経営者においてもこれからの自分たちの産業をどうするかということで大変に骨も折ったという事実もございます。そして中には、先ほど先生御指摘のように大変激しい労使の対立というようなときもございましたけれども、そういったものを乗り越えて今日の労使の関係が築き上げられて日本の大きな今日の繁栄になっているというふうに私は思っているわけでございます。
 こういった中で、これからも働く者のよりよき環境をつくっていくということになっていかなければならない、こんなふうに思うわけでございます。
#169
○塩田委員 私もそのように思うわけでございます。
 そこで、働く人々が、本当に額に汗をし手にまめをして働いておられるその人たちが本当に正しく報いられる、働いただけのものをもらったという関係ですね、そういうことが実現するような社会をつくるということに労働行政は最も大きな責任があるんじゃないかと私は思うのです。
 その働く者が正しく報いられる、働きがいのある社会、報われる社会、これをつくるということ、それはやはり社会の仕組みとしてそうならなければならない。その大きな要因といいますのはやはり完全雇用、働こうという意思と能力を持った者が働く場が得られるということ、これが完全雇用だと思うのです。これが実現されなければ働く者が正しく報いられる世の中とは言えないと思います。完全雇用が非常に重要であるということを痛感するわけでございまして、そのために経済の発展、また各種の労働行政、施策が行われておると私は思うわけでございます。
 その中でも世界に冠たるといいますか、余り例のない失業対策事業が行われてきたのもこのためであったかと思うのです。戦後の非常に苦しい中で失対事業が行われてきておるわけでございます。その後の社会情勢の変化によりましてこれも衣がえをしつつございますけれども、私は、完全雇用というのは労働行政の最も中心に据えなければならない問題だと思います。
 それから次は、正しく報いられる、汚しただけ報酬が払われるということ、それは公正な分配が行われるシステムをつくることだと思うのです。公正な分配というのは不公平があってはならない。不平等感があっては本当に喜んで働けない、そういう状態になろうと思いますので、公正な分配が実現されなければならない。そのような仕組みをつくる、そういう社会を、それが実現する社会をつくっていく、これが重要なことだと私は思うのです。
 そして各人の健康、今、これが守られる、そのような安全対策、産業安全対策が言われるのはそういうことだと思うのですが、そういう安全の問題、そして老後も、働く能力がなくなった方あるいはまた障害のある方、そしてまた老後の生活が安んじてできるような福祉の社会、これが実現されなければならないと思うのです。これについて大臣はいかがお考えでございましょうか。
#170
○林国務大臣 先生御指摘のように、労働生産性の公平な分配というものが大事なことはもう論をまたないことでございます。働いた方々が適正な賃金をもって生活をし、そして働く時間を、あるいはまた健康を保持する時間を十分にとれるような世の中が一番好もしい状態であろうかと私は思います。
 ただ、賃金の問題ということになりますと、あるいはまた働く時間の問題になりますと、これは労使のお互いの話し合いの上でそういうものが決まっていくというようなことであろうかと思いますが、それを手助けするといいますか、そういったような考え方で労働行政をやっていかなければいけない、私はこのように思うわけでございます。
 それからまた、先生御指摘のようなそういった社会情勢をつくるということ、これは何といいましても今日非常に良好な労使関係が保たれておるということが今日の日本の大きな発展につながったものだということを考えてみますと、これからもそういったような良好な環境をいつまでも維持して、そして産業を発展させて日本の国の大きな発展のもとを築いていく、そういったようなことを労働行政の中で取り組んでまいりたい、このように思っておるわけでございます。
#171
○塩田委員 私は、なお完全雇用と絡みまして各人が持てる能力、これを技術の面でも技能の面でも十分に発揮できるようなそういう施策が必要だと思うのです。能力の開発といいますか、そういったことを十分にすることが経済の発展にもなるし、本人の生きがい、生きる道だと思うのです。そういった意味におきまして能力開発政策というものが非常に重要だと思います。私は、これはもうわかり切ったことを、なお重要なので確認の意味で労働大臣にお尋ねをしておるわけでございます。
 しかし、なぜこれを申し上げますかといいますと、私は、最近の経済情勢並びに労働情勢、労働界の中に起こっている問題、労働者自身の中に起こっている問題、労働態様が変わっていっている問題、そして若者がどんどんと育ってその層を拡大していっているその段階の中で、世界に冠たる良好な労使関係と言われながらも、これはいつまでも同じではない、変化があらわれておるのではないか。そしてその中におきまして、働く者が正しく報いられる社会をつくる、そのことについての危惧が起こってきておるわけです。私自身がそれを痛感するわけです。
 そこで、お話を申し上げ、労働大臣のお考えをお伺いし、また労働行政の面でぜひともいい方向で勇気と決断を持って当たっていただきたいということをお願いするわけでございます。
 その懸念することのまず一つは、経済の面におきまして人為的な円高が今進行しているわけです。しかも急速でございまして、これが我が国の経済各方面に、そして労働者にも直接にあるいは間接に非常な影響が出ている。日本経済の中において特に急速に起こっているこの円高をどのように評価しておられるか、経済企画庁お見えになっていると思いますが、総括的にこれをどう見ておられるかお伺いしたいと思います。
 特に為替レートの変動、それから経済見通しにおきましても我が国は当分毎年五百十億ドル程度の黒字になる。これは円高によって来年度は若干見通しも狂ってくるのではないかと思いますけれども、かなりの大幅黒字が見込まれる。これは労働者が働いて輸出をし、労働の価値として日本の国内にためられたドルだと思うのです。五百十億ドルという大きな金額、日本円にすれば、円高になる前だと恐らく十何兆円かになると思うのです。今の百八十円の円レートですと十兆円を切っていると思います。そのような貿易黒字、労働の価値というのはそこに結集していると思うのですが、この価値の減少が現に三割も起こっているというふうに見られないか、労働者の立場から見たらこれはどう考えるべきか、経済企画庁、労働省にお伺いいたします。
#172
○加藤説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、最近ドル円相場大変に上昇しております。二月十九日には一時百八十円を上回っておりまして、一月下旬からわずかの間に二十円程度円高になるという非常に急速な円高傾向でございます。経済企画庁といたしましては、円高というのはもちろんいろいろな影響もございますが、一方ではプラスの面もある、御存じのとおり交易条件効果というものがございまして、国民の皆様方の生活を豊かにする面があるというふうに認識しております。しかしながら、このように急激な為替変動がございますと、特に円高のときはマイナスの面が当面強くなるおそれがございます。
 また、私ども一月の中下旬に実施いたしました調査によりますと、輸出関連の中小企業とか産地で今回の円高により新規契約の成約難とか操業短縮というような影響がかなり出ているということが判明いたしております。
    〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
 ただ、先生御指摘の目減りという点につきましては、私どもといたしましても必ずしも円高で目減りをするというふうにばかり考えるべきではないのではないかと思っておりまして、まず第一に、円高と申しますのは、当然円の価値が国際的に見て高くなるということでございますので、例えば海外旅行などいたしますと端的にわかるわけでございますが、同じ円を持っていってもたくさんの物が買えるというふうなことがまずあるわけでございます。
 それから、円建ての輸出企業におきましては円建ての輸出価格が下がることがございます。これにつきましては、どの程度ドルの減価あるいは円高の目減り分を取り返せるかということは、その産業なり企業の競争力のいかんでございますし、また原材料等の価格が低下するわけでございますから、一概に円高で賃金とか労働者の所得が目減りすをというふうには申せない面があろうかと考えております。いずれにいたしましても、今後関係各省庁と密接な連絡をとりながら円相場の動向、急速な円高の影響というものについて十分注意を払ってまいりたいと思います。
 国際収支については担当の調整局の方からお答えいたします。
#173
○大塚(功)説明員 国際収支への影響でございますけれども、円高が続きますと、輸出数量が減少し、一方輸入数量がふえるということで、貿易収支を減らす効果が出てくるわけでございます。政府の経済見通しにおきましても、十二月時点でその前の一カ月間程度の平均を出しまして、相当円高が進んでおりましたけれども、それを織り込んで、六十一年度につきましては貿易収支が五百六十億ドル、六十年度の見込みが五百八十億ドルでございますから、少し減るであろうという見通しを立てているところでございます。
 最近の円高がもたらす貿易収支への影響ということでございますが、これについてはそもそも現在変動相場制をとっておりまして、その関係で不規則な変動をするということがございます。したがいまして、今後一年ないし一年以上にわたる効果といった場合には、ある程度の期間をならしてみまして、それでもってどの程度の円高になるのかを見通してやるということになるわけでございますが、現段階ではいわば進行中でございまして、まだ円レートの行方を見定めるには難しい時期になっておるわけでございます。いずれは先ほど申しましたように輸出輸入の両面を通じまして調整作用が働くわけでございますし、影響が出てくるわけでございますが、また当面は逆にいわゆるJカーブと申しまして、ドルベースでの黒字は拡大する可能性もあるわけでございます。いずれにしましても、今後の国際収支につきましては、そういったいろいろな影響を考えながら為替レートの動向につきましても注目をして見通しを考えていきたいと思っておる次第でございます。
#174
○小野説明員 先生から円高について労働省はどう思うかという御指摘でございますが、基本的に、我が国の経済が国際的にふさわしい地位を占めるその役割と責任を果たすためには自由貿易を率先して維持していかなければならない、そのためには調和のある経済外交を進めていかなければならないわけでございます。
 そこで、円高の問題でございますが、輸出入価格の変化を通じて、先ほど来お話がございますように貿易黒字の減少をもたらす効果があるわけでございますが、同時に交易条件の改善を通じて実質所得の向上が図られるという側面もございまして、私どもといたしましては、内需中心の適度な成長の達成と相まって、円高に伴う交易条件の改善が物価の安定を通じて勤労者の生活の向上につながることを期待しているわけでございますが、何分にも最近の動きが急激でございますので、その影響について今後十分留意していきたいというふうに考えているわけでございます。
#175
○塩田委員 円高につきましてはメリットとデメリットがあるということは、今いろいろ御説明があったことは私も理解できます。そして、消費者物価の低迷を通じまして生活の向上にもプラスになるということも理解できるわけでございます。ただ、今まで輸出をして稼いだ、そのことによってためた黒字のドルが減価をしていっていることは、逆に言うと、労働者の汗とあぶらの結晶が小さくなってしまった、減少してしまっているということも言える反面、また今後輸出が伸びていくとすれば、これは我が国の労働者の働く価値、労働の評価というものが高く売れるということにもなる。いろいろな面があるわけですね。
 ですから、それはそれとして考えていかないといけないと思いますが、何しろ今年度の後半から急速に進んでまいりましたこの円高、大体産業界におきましても二百十円前後、悪くても二百円ぐらいで計画を立てて各企業ともにやってこられたと思うのです。ところが、場合によっては百八十円を割るというような状況が進んでおるわけでございまして、この急激な円高によりましてやはり企業の採算、あるいは輸出産業は直撃を受けているという中で、具体的に、繊維産業等ずっと私も回ってまいりました。あるいは金物等の中小零細企業をずっと回ってまいりましたが、本当に深刻な状況で、私の選挙区内でも、去年の十一月から既に二人の自殺者が出ているというような状況も起こって、なお今後も出るだろうということを言われてきたわけでございますが、そのように、企業倒産あるいは労働者解雇あるいは賃金不払い、もう電気代を払うだけでも容易ではないんだというような非痛な訴えを聞いてまいりました。このような状況をやはり的確にとらえて、労働行政として、あるいは国の経済政策として、通産政策としてやっていかないといけないのじゃないか、このように思います。
 賃金につきまして、そのような状況の中でいよいよ春の賃上げ闘争交渉が行われる時期でございますが、このような状況の中で賃金を上げるというようなことは到底余地がない。中小零細企業はもとよりのこと、大企業といえども構造的な不況に見舞われているところは、なおさらのことそのような賃金を上げる余地はないというふうに言われておるわけでございます。
 また、労使間におきましていろいろと交渉が行われておりますが、そのような産業全体あるいは企業独自にそのような賃上げの状況はない、雇用をうんと減らさなければならない、賃上げどころの話でないという状況の中で、せっかく毎年定年を延長してきて、計画的に六十歳定年まで持っていこうとしたところが、それすら停止をするなり、あるいはまた逆に繰り上げて退職しなければならないというような状況、あるいはまた、これは大企業で、新聞にも報道されておりますが、今回は賃上げを自粛しよう、賃上げを遠慮しようというような動きまで出ている、労使間の話しが進んでいるような情報もあるわけでございますが、このような状況につきまして労働大臣はいかがお考えでございましょうか。
#176
○中村(正)政府委員 確かに先生御指摘のように、現在の状況は必ずしも春闘を前にして労働側に有利であるというような情勢ではないと思います。しかし、その中で賃金を選ぶか雇用を選ぶかという問題につきましては、先生も十分御承知のとおり、我が国の労使関係というのは、労働者の希望もあり、雇用の安定というものを基盤として安定が成り立っておるという状況の中では、やはりどちらかというと不況期になると賃上げを自粛しても雇用を守りたい、こういうような実績というか経過を経てきたのではないかと思います。しかし我々が、それじゃどういう状況でどの程度に自粛し、どの程度に雇用を守るかというのを一方的に言うわけにはまいりませんで、これはやはり自由な団体交渉を通じて各企業において決定されるというバランスの問題ではないかと思います。
 いずれにいたしましても、このような問題が労使の交渉を通じて円満に解決されるということを望んでいるというのが労働省の態度でございます。
#177
○塩田委員 私は労働大臣に、このような状況をどのように認識しておられるかということをお聞きしたいわけでございますけれども、これはもう少し先に議論をしたいと思うのです。
 私は、実は先ほど非常に心配な事態が起こりつつあるということを直観的に思っておるものですから申し上げたわけでございますが、昨日ですか、フィリピン・マニラにおけるあのような状況、私自身、今から三十年前、初めて外国出張を命ぜられましたときに行ったところがフィリピン・マニラでございまして、非常に印象深い。特に雇用の問題、完全雇用、失業の問題、不完全就業の問題等のテーマでマニラでしばらく会議をした経験もございまして、今回のあの事件につきましても非常に関心を持っておるところでございます。その対比におきまして申し上げておる時間がございませんが、人口増加率が非常に急速に進んでおった状況の中で、現在もそうでございましょうが、そこから来る失業問題、それが底辺に常にあったと思うのです。
 そして労働行政の面ではかなり当時の日本よりは進んでいるんじゃないかと思うような、最低賃金法もありますし、その額も法定されておる。それは実現されていないのだろうと思って行ったのですけれども、案外それが実現しているのです。ということは、雇われている者は最低賃金、日本の平均賃金以上のものを当時もらっておる。ところが国民の大部分が失業している。はだしで走り回っている人、大人の人でもいっぱい失業者がいる。田舎へ行きましても農業は不完全就業のような形で、そこに問題があって、現在もそう基本的には変わっていないと思うのです。
 日本の場合は、中小企業あるいは多層多段的な中小零細企業まで含めての多就業の状況でございますけれども、向こうの場合はいわゆる二重構造――日本の経済をよく二重構造と言われますけれども、向こうの場合はむしろ画然と二重構造になっている。雇われているか雇われていない失業者か、失業者がしかし大部分だというような、農業も六、七〇%の比率を占めていると思うのですが、そのような状況の中で、いろいろな要因があったと思いますが、政治的なあのような噴き上がるような緊張、社会的緊張が起こっている。これが政治的にどう発展するかは予断を許さないところでありますけれども、なかなか大変だと思うのです。
 そういったことを頭に置きながら、日本の現在の円高による一部の、といっても一部の産業あるいは一部の地域かもわかりませんけれども、しかし大企業を含めて円高の不況の影響というのは非常に出てきている。この中におきまして、賃金は低ければ低い方がいいというような考え方、しかも先ほど申し上げました良好な労使関係の上にあぐらをかいてというか、安住してというか、安易に寄りかかっているのじゃないか。
 その中で、不況を乗り切るためには賃金を辛抱しろ、雇用の面を辛抱しろ、どちらも大事だけれども雇用の面を守るためには賃金は辛抱しろ、あるいは定年延長も辛抱しろ、こういうことで、「おしん」がはやりましたけれども、本当に耐え忍ぶことばかりでずっと労働者が働く。そして、五千万の人たちが本当に日夜働いておる、その人たちが報いられない。しかも、管理社会と言われるその中でだんだんと追い詰められているのじゃないか。そうであることは非常に危険であると思うし、そうならないことを私は望むわけでありますが、そのような傾向にどんどんいっているのじゃなかろうか、これを私は非常に心配をするわけでございます。
 賃金は低ければ低い方がいいというような考え方がどうもあるのじゃないかと思いますのは、いわゆる賃金抑制の理論的基礎になっている生産性基準原理、これがあるのじゃなかろうかと思うわけです。このようなことでどんどん進めていっては日本の社会もおかしくならないかと非常に心配でございます。そうならないことを願うわけでございますが、最近の新聞報道によりますと、五島日商会頭もこれまで余り賃金を抑え過ぎているとはっきりと批判をされた、こういう発言が出ております。私は、それだけではいけないということは良識ある人はやはり感じておられるのじゃなかろうかと思うのです。こういった動きにつきまして労働大臣はいかがお考えでございますか。
#178
○林国務大臣 最近の急激な円高によりまして一部の業種、地域において大変大きな影響が出ているということは先生御指摘のとおりでございます。そういった中で今後の労働市場がどのような方向に移っていくかという先生の危惧の念は私どもも十分理解のできるところでございますが、先ほど、生産性基準原理によりますところの、賃金を極めて低く抑えているのじゃないかというようなお話がございましたけれども、賃金の問題は労使が円満な話し合いをしたその上で決めるという基本的な原則もございまして、そういった面につきましては、労働省といたしましては今ここでお答え申し上げるものを持ち合わせないわけでございます。
 日商会頭の五島昇さんのお話が出ましたけれども、その後五島さんも何か軌道修正をしたような話も新聞に出たりなんかしておりまして、労働省といたしましては、今後とも労使のいろいろな話し合いを見守っていきたいというところでございます。
#179
○塩田委員 賃金が労使間の自主的な交渉を通じて形成されるものだということはもう前提として私は申し上げておるわけでございます。春闘時期におきまして一発回答で決まっていくあの日本の形は一つの知恵だったと思うのです。またそれがいい方向に作用したと思うのですけれども、いつまでもこの調子で抑えられるだけ抑えればそれでいいんだという形で進んでいくことが我が国の近い将来にとって本当にいいかどうかということですね。これは政治家としては本当に十分に深く考えて、この問題については将来を洞察して、今の惰性のままで、今までのとおりでいけばいいんだということではないところをお考えいただきたいと思うのです。フィリピンのあの情勢を見てなおさら私は感ずるわけでございます。
 大幅減税をやってもらいたい、所得減税は働く者については特に要望が強いわけですが、これは財源がない、国は赤字で困っております、こういう答弁ですね。それから賃金も、いや、もう原資がない、生産性が上がっただけの範囲内にとどめるべきだということで抑えぎみになってくる。しかし海外を見ますと、海外で不動産、土地、ビル、随分日本から出かけていった企業が買っておりますね。ハワイヘ行きましてもあるいはこのごろアメリカ本土でも、これというところには目立つし、タイヘ行きましてもバンコクの大通りの大きな建物あるいは土地は日本の商社が持っている、こんな話を聞きます。余った金とは言いませんが、海外投資に相当な金が動いておるということも事実でありますし、そしてまた原資がないないといいましても、経済規模の中に占める借金と積立金を相殺しますと、日本はまだまだそんなにあれじゃないというOECD等の見方もありますし、なお今後これらの議論が深められるべき問題だと思います。
 そこで、経済審議会がリボルビング報告をしておりますが、その中で「GNPの約六割を占める個人消費の拡大を図るため、技術革新など経済発展の成果を賃金と労働時間短縮に適切に配分すること」と指摘をしております。通産省の産業構造審議会小委員会の中間報告もそのような趣旨のことを言っております。これを関係各省はどう受けとめて今後どのように対処をしようとしておられるかをお聞きしたいわけでございますが、これとの関連におきまして先ほど出ました生産性基準原理につきまして経済企画庁は理論的、実際的にどのように評価しておられるか。私はこの原理は理論的に間違いだと思うのです。全国の平均的な賃金上昇率、これは名目の上昇率ですね、それを国民経済の生産性上昇率すなわち実質経済成長率から就業者増加率を引いたもの、これの範囲内にとどめるべきだ、これが一口で言いますと生産性基準原理です。これは明らかに理論的に間違いだと私は確信をしておるわけです。
 昨年はこの問題につきまして労働省とも論争をいたしました。今度は経済企画庁。経済企画庁の経済見通しの中でもいろいろと指摘されております。生産性基準原理というのは物価抑制を目標にしてやる場合にはこういう考え方もあり得る。しかし、結果的には物価上昇がゼロになるあるいは下がることなくして過去毎年上がってきているわけです。生産性基準原理のままでいきますと、これは物価が上がった分だけ実質賃金は前年よりも低下するわけですね。この構造式からいいますとそのような仕組みになります。それで、なるほどそういった面で賃金の抑制の中で国際競争力はついたと思うのです。高まっておりますけれども、国内の消費の停滞、国内需要のおくれ、これが日本の現在の経済の最も大きな課題ですね。あるいはまた海外からの非難の的になっておる。国内需要のおくれ、これを取り戻し、日本経済の安定的な均衡ある発展をするためには、やはり個人消費を伸ばさないといけない。それにこの賃上げということが非常に大きな要因になっておるわけでございます。
 経済企画庁にお伺いいたします。「経済見通しと経済運営の基本的態度」の中で、雇用者一人当たりの所得上昇率を、名目でございますが、六十年度四・〇%、六十一年度三・九%、ということは六十年度よりも抑えぎみに見込んでおると見られます。これに、所得税の額は上がります。また社会保険料等は毎年上がってまいります。こういったものを差し引いた可処分所得、したがって個人消費支出は伸びが鈍化すると思うのでございますが、少々の消費性向の増加がありましても、望まれる内需の拡大というものは期待できないと考えますが、いかがでございますか。
#180
○大塚(功)説明員 一人当たり雇用者所得でございますが、先生御指摘のとおり、私どもといたしましては、昭和六十年度四・〇%程度、六十一年度は三・九%程度というふうに見込んでおります。一方、雇用者数につきましては、緩やかな内需拡大に伴いましてその伸びを高めるということで、その掛け合わせました雇用者所得全体の伸びで見ますと、六十年度五・一%程度で、横ばいで六十一年度もいくのではないか、六十一年度も五・一%程度でいくのではないかというふうに考えております。
 それから、消費に影響いたします所得には、雇用者所得のほかに個人企業所得とか財産所得もございます。個人企業所得につきましては、内需拡大もございまして、特に住宅関連などの個人企業におきましては所得が伸びる。それから財産所得につきましても、国民の金融資産が着実に増大いたしておりますので、これも相当伸びるというふうに見ておりまして、したがいまして所得全体として見れば、可処分所得で見ましてやはり横ばい、具体的には六十年度五・三%に対して六十一年度も五・三%程度は伸びるのではないかというふうに見ておるところでございます。
 一方、消費性向でございますが、これにつきましては円高のプラスの効果であります物価安定効果も働きまして、消費者の心理が明るくなるというようなことから、消費性向が六十一年度は六十年度よりも高まるのではないかというふうに考えておるわけでございます。そういうふうなことで、私どもといたしましては個人消費が六十一年度は伸びを高めるのではないかというふうに考えております。
 その背景といたしましては、一つは、昨年の十月、それから昨年の十二月に予算編成、税制改正とあわせまして二度にわたりまして内需拡大策をとっております。これの効果は主として六十一年度にあらわれるものと考えております。
 それから円高につきまして、その外需面への影響はマイナス効果があるわけでございますが、内需面につきましていわゆる円高の交易条件改善効果というのが働きまして、消費でありますとか設備投資にもいい影響を与えるというようなことで、そういったことから経済の総体がいい影響を受けて内需中心に拡大をする、こういった経済全般の水準の上昇に伴いまして消費にもいい影響を与えるということが基本的な背景としてあろうかと思います。そういったことで、私どもといたしましては、家計の可処分所得もそこそこ伸びますし、基本的な背景もそういうことでいい背景にあるということで、消費は着実に拡大するのではないかというふうに見ておるところでございます。
#181
○塩田委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思いますが、今の御答弁につきましては、かなり楽観的過ぎる。そうして賃金の問題につきましては、先ほど来申し上げました、低ければ低い方がいいというような考え方、これは本当に重大な事態をもたらす要因でございますので、この問題につきましてはよほど労働行政に携わられる皆さん方、労働大臣を初め真剣にひとつお考えをいただきたい、このことを要望いたしまして、終わります。
#182
○浜田(卓)委員長代理 次に、小沢和秋君。
#183
○小沢(和)委員 まず最初に大臣にお尋ねをしたいと思います。
 日本が経済大国と言われるようになってから久しいのでありますけれども、それを支えてきた労働者の労働条件が先進国としては余りにも劣悪であるということが、今では貿易摩擦と関連して国際的な非難を浴びる状況になっております。これを改善することが労働行政の緊急課題だと思いますが、わけても私は労働時間の短縮が焦点ではないかと思います。私も初当選してから今は六年目を迎えるわけでありますけれども、この問題をずっと私は何回も追及してきましたけれども、残念ながらほとんど前進がないという状況ではないかと思います。
 昨日も六十年の労働省の毎勤統計によって労働者一人平均の労働実時間を見せていただきましたけれども、全体ではやや減ったような感じになるけれども残業時間などは前の年より七時間やはり延びているわけであります。こういうように全体としてほとんど改善されていないという状態が続いておる。むしろ残業時間などはずっと延びていっているというようなことについて大臣としてはどうお考えになり、抜本的な改善策を講じようとされておるのか、まずお尋ねをします。
#184
○林国務大臣 最近の傾向によりますと、労働時間の短縮という問題は私ども大きな課題として取り組んでいるわけでございますが、昭和六十五年までに今の休日を十日ほどふやそうとかあるいはまた二千時間に持っていきたいといったような努力目標を掲げながら、こういった時間短縮問題に取り組んでいるわけでございます。
 先生御指摘のように、いわゆる残業時間というものが少しも減ってはいないじゃないかというような御指摘でございますが、確かに残業の時間というものが目に見えて減っていないというようなことは私どもも十分承知をいたしております。そこで、そういったような時間短縮のことにつきましてはそれぞれ指導をいたしておるわけでございますけれども、なかなか思うような成果が今上がっていないというのが実情でございます。
#185
○小沢(和)委員 いや、だからなぜ成果が上がっていないのかということについて原因をしっかり見きわめないと、対策も方針も立たないのではないですか。今、十日ぐらい労働日数を短縮したいという願望を表明されたことは結構だと思うのですけれども、では、具体的にそれをどういう手法でやられようとしているのでしょうか。そのこともあわせてお尋ねします。
#186
○小粥(義)政府委員 我が国の労働時間がなかなか短縮が進んでいかないという点につきましては、大きく言って四つぐらいの理由があろうかと思っております。
 一つは、我が国の場合、第一次オイルショックのときに人員整理で各企業非常に苦労した体験がございます。その際に、そうした雇用調整を円滑に行うためには、むしろ人員ではなくて労働時間で雇用調整を図るというような対応が第一次オイルショック以降出てまいっております。それが労働時間、特に残業時間が長くなる一つの理由にもなっているかと思います。
 それからもう一つは、欧米諸国の場合は、法制は法制としてその枠内で労使の協定によります労働時間短縮が非常に進んでいるわけでございますが、我が国の場合は、労働組合の組織形態あるいは組織状況といったようなところから、必ずしもそうした土壌が成熟していないという点がもう一つあろうかと思います。
 それから、特に我が国の場合は、大企業、中小企業で労働時間の格差がございます。特に中小企業の場合、一社限りで労働時間短縮に対応するというのはなかなか難しい状況にございます。同業他社の動きあるいは取引先との関係といったようなことを考えて行動する傾向がどうしても強いわけでございますから、そうした面で、むしろ一社限りではなかなか動きにくいといったようなことがございます。
 それ以外にも幾つかあるわけでございますが、大きく言ってそんなような事情がございますので、今後の対応としましては、今申し上げたような問題点に対応して、少なくとも残業時間は、大企業、中小企業を比べますと、むしろ大企業の方が多いわけでございます。したがって、ここは大企業での労使の話し合いといったものに期待をしたいと思っておりますが、中小企業の場合は、そうした労使協定といったような土壌はなかなか熟していないわけでございますので、ここはむしろ政府としては行政指導で対応していきたい。さらに、中小企業一社限りでは労働時間短縮はなかなか進みにくいといった事情もございますので、むしろ中小企業の集団を対象とした行政指導といったものについて、今後、新年度からも予算を増枠しまして行政指導の推進に当たりたいと思っております。
    〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
 以上のほかに、いわゆる法制をどうするかといった問題がございます。その点については、昨年十二月に労働基準法研究会の報告もいただきましたので、この報告を受けまして、我が国の労働時間法制のあり方については、今後、関係審議会で労使の議論もいろいろしていただき、それを踏まえて納得の得られる形の基準法の改正案といったものをまとめる検討に入っていきたい、こういうふうに考えております。
#187
○小沢(和)委員 今局長が最後に法制化の問題を言われたのですが、今までも行政指導に頼るようなやり方というのはみんなうまくいかなかったということが、いわばこの十年間の経過で立証されてきた。やはり日本の場合には、法制化というのをもっともっと真剣に考えなければならないのではないかということを私は申し上げたいわけであります。
 このことについては労働基準法研究会の報告も、日本のように民間の労働組合は組織率が非常に低い、それも企業別に組織されているという状況のもとでは、やはり法制化が重要だということを指摘しているのですが、私はその範囲では賛成なのです。
 しかし、先に進めたいと思いますけれども、せっかく法制化を考えるべきだというふうに研究会が打ち出しているのですが、その中身がさっぱりなのですね。今まで週四十八時間だったものを四十五時間にする、これは全世界的な趨勢からいっても、これでは余りにも小さいものにすぎないのではないか。
 実際、あなた方の方からいただいた資料でも、千人以上の大企業の場合には所定内はもう四十時間を切っているわけでしょう。そして、中小も含む平均で見ても四十一時間余り。だから、四十五時間というようなことでは、もうよほどの零細企業か何かがひっかかるというくらいのことにしかならないのじゃないでしょうか。これではせっかく法制化をするといっても、余り意味のないものにしかならぬのじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
#188
○小粥(義)政府委員 労働基準法研究会が最終報告で、一週当たりの労働時間を四十五時間、一口当たり八時間という考え方を提起されたわけでございます。実はその一年ちょっと前に中間報告として出した場合には、一週四十五時間、一日九時間という案を提起されたわけでございます。それは、最終的にはそういう形に変更になったわけでございます。
 私ども、基準法研究会のそうした議論をいろいろ伺っているわけでございますが、やはり基準法は、罰則でもってその履行を担保する最低基準としての法律でございます。特に企業によって労働時間に非常に格差がある、そういう実態の中で、例えば四十五時間というところに線を引いてみますと、四十五時間よりも少ない労働者数、これは約六割でございます。逆に言えば、四十五時間を超える所定労働時間の労働者はまだ四割もいる、こういう実態にあるわけでございます。
 そこで、罰則で履行を担保する最低基準としての労働基準法の性格上、基準法研究会としては、この所定労働時間を法律でもって短縮するにしてもそれはおのずから限界がある、むしろ法制の枠としては現実を踏まえた形で対応し、その法律の枠組みの中で労使が自主的にさらに短縮を進められるような仕組みを考えるべきだ、そういう考え方に立って、一週の労働時間を四十五時間というふうに報告で提言した、こう私ども受けとめているわけでございます。
#189
○小沢(和)委員 現実の状態を考えていわば受け入れられやすいような水準のものにしたというお話のようですが、実際にもう大部分のところがひっかからないような現実がある、そのところで線を引いたからといって、それは確かに受け入れられるでしょうが、それではほとんど労働時間短縮の意味が出てこないのじゃないですか。
 話を次に進めますが、今度の研究会では、今まで一日について八時間、一週について四十八時間と決めていたのを、一週の四十五時間というのを基本にして、一口の八時間というのは、労働時間を割り振りをする場合の上限ですか、というような考え方になっておる。つまり、これは一日の労働時間を弾力化するということを意味しているのだと思います。
 しかし、私は、一週間の生活リズムというものも確かにありますけれども、人間にとって決定的なのは一日の生活リズムじゃないかと思うのです。これを労働時間を弾力化することによってめちゃめちゃにしてしまうというようなことが許されるのかどうか。今、実際にそういう傾向というのが強まってきている。あなたが、現実を考えてとさっきも言われたけれども、これも現実なんです。だから、その現実に合わせずに三カ月というのを単位にして、労働時間を忙しいときはふやせるように、暇なときは短くするようにと調整するというようなことを企業の都合に合わせてやられたのでは、働く者の立場に立ったらたまらぬのじゃないですか。
 しかも、測定不能だということで、もう八時間働いたこととみなすということで、実際上何時間働こうとそうみなすということで片づけてしまおうという人たちまで出てきているわけでしょう。これでは、私は先ほど、ほとんど役に立たぬのじゃないかと言ったけれども、こういうことを認めるということになれば、これは大改悪になってしまうのじゃないかということをこの報告を読んで大変心配するわけですが、局長はその点はどうお考えですか。
#190
○小粥(義)政府委員 研究会報告で指摘をいたしました幾つかの弾力的取り扱いについてのお尋ねだと思います。
 その一つが、現行では四週間単位の変形労働時間制が認められているものを三カ月を単位とする変形労働時間制を認めるという点でございます。報告では労使協議もの他一定の要件のもとにこれを認めるということにしております。確かに、一日当たりの労働時間というものを八時間で均一に考えるという考えかは必ずしもとらない。現行の四週間単位とする変形労働時間制にも現にその考え方はあるわけでございますので、そういう面を三カ月に幅を広げたというところに一つの意味があるわけですが、先生の御指摘は、それはむしろしり抜けになってしまうのではないかというような御意見かと存じますが、企業の業務の繁閑というのをいろいろ調べてみますと、三カ月単位で繁閑が一巡するといったサイクルをとっているケースがいろいろあるわけでございます。
 そうなりますと、繁忙期には確かに休日はとりにくいけれども、暇な時期に休日を設定するということはよりやりやすくなるといった面がございます。したがって、現行休日の増加はなかなか進みませんけれども、そうした変形労働時間制をとるしとによってむしろ今後休日の増加が労使の協議という中で設定しやすくなるといったことを私どもは大いに期待できるんじゃないかというふうに考えております。
 なお、換算制度についてのお話もございましたが、今の三カ月ぐらいの変形労働時間制あるいは換算的取り扱いといったもの、いずれも欧米諸国に例がございまして、そうしたものの実態を見た上で研究会としてはこれを報告に取り上げたわけでございまして、今の換算的取り扱い、実はフランスに例があるわけでございますが、これも幾ら働いてもこれを三十九時間というふうにみなすということではございませんで、それぞれの業種の労働の密度といったものを見ながら、ある業種については一定範囲の時間までを三十九時間にみなすといったような形でやっているわけでございまして、青天井で何時間でもみんな三十九時間にみなす、日本の場合に置きかえれば四十五時間にみなすというわけではございませんで、そこにもそれぞれのちゃんとした要件を今後決めていかなければいけない。その要件をどういうふうに決めたらいいかというのはまさに関係産業の労使の問題でも深いかかわりを持ちますから、そうしたものを今後審議会の議論の中で、どういう条件を設定していったらいいかということも議論をしていただく中で共通点というものを見出し、それを法律案としてまとめる形に持っていきたいと私ども思っているわけでございます。
#191
○小沢(和)委員 もう一つ今のことに関連をして申し上げたいと思うのは、弾力化をする。そうすると、それは所定内の労働時間が延びるわけですから、今までだったらそれは当然残業として支払われておったわけですね。暇なとき早く帰れるじゃないかと言われるかもしれぬが、今までだったらそれは手持ち時間ということで労働時間としてやはり支払われておったわけですよ。それから見ると、これによって大変な残業手当の削減という問題にもなるということを私は指摘しておきたいと思います。
 それで、もう一つ申し上げたいのは、所定内の労働時間を短縮すること以上にある意味で重大なのは、時間外・休日の労働時間をどうやって削るかということです。実際この十年ばかりを見てみると、これだけ時間短縮、時間短縮と言っているけれども、ほんの一、二年ちょっと減ったことはあるけれども、大体平均してみたらずっと残業時間は延びてきているでしょう。しかも大企業が残業が非常に多いということも先ほど指摘をされたそのとおりであります。この残業の問題についても、報告を見ますと労使協定方式というのが日本の社会に定着をしているからこれを維持していきたいという考え方ですね。しかし、これを維持していくということだったら、あの一カ月五十時間、三カ月百五十時間というようなガイドラインとかいろいろつくってみたけれども、実際にはそれから後もどんどん延びていっているでしょう。これでは全然抑制ができないんじゃないですか。これについても、報告ではそういうようなことを言っているけれども、あなた方としてはやはり独自の立場から抜本策を考えなければいけないんじゃないでしょうか。
#192
○小粥(義)政府委員 法制でもって労働時間短縮を進める場合のポイントとして、どういう内容のものについて重点を置いて法制化を進めるかというのは三つあると思います。一つは所定労働時間、いわゆる法定労働時間であり、もう一つは残業時間をどう抑制するかという問題であり、もう一つは年次有給休暇の取得日数というものをふやすといった点にそれぞれ法制の関与する場があると思うわけでございます。
 研究会内部でも実はこの点は大いに議論のあったところでございます。その議論の結果、やはりそこにはプライオリティーをつけて考えなければならない。今の実情からして三つが三つ全部とも一遍にというのはとてもできるものではないので、そこにプライオリティーをつけるとすれば、それは法定労働時間、つまり所定労働時間の短縮がまず第一に考えられるべきだろう、こういうことになったわけであります。
 その議論の中で、いわゆる残業時間、これを抑制するためにどういうことが考えられるかといったことも議論はあったわけでございますが、残業時間につきましては、これは私先ほどもお答えいたしましたけれども、いわゆる雇用調整的な機能を、我が国の残業時間は終身雇用をバックに持っているという面で、全部が全部これを否定的に理解するわけにはいかない。それはやはり雇用と労働時間のいずれを選択するかという問題にも迫られるわけです。そういう意味でこれはやはり労使の選択という問題につながることになるわけでございます。
 それからもう一つは、これは率直に申し上げまして、残業手当が確かに個々の労働者にとって一つの収入として定着している面がございます。その面から、特に私ども、企業と接する場合に、むしろ残業は労働者側が希望しているのだと言われる向きもあるわけでございます。全部が全部とは思いませんけれども、確かにそうした面もあることは否定できないわけでございまして、そうなりますと、割り増し率の引き上げというのは一般的には残業時間を抑制する働きを持っていると思いますけれども、今言ったような面からすると、逆にその効果が減殺される面もこれは否定できない面があるといったようなことから、やはり短縮の効果としては法定労働時間の短縮を第一優先順位に考えるべきであるというところに研究会報告は落ちついた。それもまた現状を踏まえた妥当な結論であると私ども受けとめておるわけでございます。
#193
○小沢(和)委員 労働省は報告をもらっても、労働省として独自の立場で検討して法律をつくっていささかも差し支えがないわけですから、私が今申し上げたような点について、ぜひ独自に検討して法制化の中に盛り込んでいただくということをこの機会に重ねて要求しておきます。
 次に、やはりこの労働基準法研究会の報告の一つで深夜交代制労働の問題についての報告があります。これについては、私は初めて当選してその直後のときにも実はこの問題を取り上げまして、実態調査をしてほしいという要請をしました。五十六年のあの調査というのはそれにこたえる形で行われたと思いますし、今回それについて検討してこういう報告がまとめられたということについては、私も率直に評価をしておきたいと思います。
 しかし、先進国に余り深夜労働について規制する立法例がないので、だから今回は「労使が考慮すべき事項を指針として示すこととする」というふうに書いてあります。フランスなどでは実際にそういう規制する立法があるのだから、私は、ほとんどないのでなどと言わないで、もっとそういうものを検討してほしいとは思いますけれども、「指針として示す」という意味は、文書としてちゃんとまとめて指針として出して、これに基づいて行政指導を進めていく、こういう考え方だと理解したのですが、それでいいでしょうか。
#194
○小粥(義)政府委員 研究会報告で示されている指針というのはそういう性格のものというふうに私どもも受けとめております。
#195
○小沢(和)委員 それから、その指針として示していく場合に、この報告の中には書いてないのですけれども、もともとは三交代は生理のリズムを乱すとか、休むことがなかなかできなくて非常に疲れやすいとか、社会生活に参加しにくくなるとか、いろいろな問題点があるということはこの報告の中でも指摘をしているぐらいでありますから、よほどの事情がなければこういうような不規則勤務、深夜勤などというようなことを企業が、自分の方がそうやった方が都合がいいからというようなことで簡単にやってはならないということもぜひこの指針の中では織り込んでいく必要があるのではないかと考えますが、その点いかがですか。
#196
○小粥(義)政府委員 研究会報告の中でも、それは要するにリズムが通常の場合と違うという点の指摘、いろいろあるわけでございます。ただ、最近の産業の実態を見ておりますと、国際化も非常に進んでおります。単に製造業だけでなくて、いわゆる三次産業の場においても、外国との通信その他の関係でいきますと、時差の関係もございまして、やはり深夜勤務というものはある程度絶対的に必要な部分がいろいろ出てまいっております。ですから、これがすべからく深夜勤務というものはなしにしていくというふうにはなかなか一概に言えない問題があろうかと思います。
 むしろ私ども考えておりますのは、研究会報告を受けてそうした指針を今後つくっていきたいと思っておりますが、その際にはやはりもう少し深夜勤務の労働時間ないしは健康管理の実態というものを調べて、それに基づいて今あるそういう深夜勤務の好ましくない点について、ここはこう直すべきだといったような指導指針というものをつくれるようにしていきたいと思っております。
#197
○小沢(和)委員 それから、多くのところでは、深夜勤のときにも昼間と全く同じ能率を前提にして作業計画が立てられているのですね。私は自分自身が鉄鋼産業で働いておりましたからよく知っているのですけれども、鉄鋼なんかでもそうですね。しかし、だれが考えたって決して体にいいとは思えないようなこういう深夜勤などについては、もっとゆとりを持たせるように、例えば昼間に比べて休憩時間を長くとらせるようにするとか、そういうような指導ぐらいは私はぜひやる必要があるのじゃないかと思うのです。指針の中にそういうような点についてもひとつ考慮してほしいと思いますが、いかがですか。
#198
○小粥(義)政府委員 そういう昼間の作業能率と夜の作業能率、それがどの程度変わってくるものかといったことも実は実態調査をいたしまして、その結果を踏まえて、もしそこに有意の差があるとすれば、そうしたものに対応する労務管理といったものを織り込む必要があると思いますけれども、それは実態調査の上で対応したいと思っております。
#199
○小沢(和)委員 そうすると、そういうような実態調査をこれからやってみたいとお考えになっているというふうに僕は聞きましたが、いいですか。
#200
○小粥(義)政府委員 新年度に実施したいというふうに考えております。
#201
○小沢(和)委員 それから、この報告の中では、仮眠時間をとるということが大変有効だというふうに述べられております。これは私もかねがね主張しておったことですし、ぜひ実現をさせていくように積極的に取り組んでいただきたいと思うのです。
 その点でちょっとお尋ねをしておきたいと思うのですが、ところによってはというか、もっとはっきり言えば、私が勤めておった新日鉄八幡などでは、休憩時間であっても横臥睡眠、横になって休むということはかつて就業規則で禁止しておったのですよ。これはいろいろトラブルがありまして、今では一応就業規則上はなくなってはいるのですけれども、しかし、昔そういう中で育ったような職制の人たちは、ちょっと起きとかんかというようなことで注意して、まあ横にさせないというふうな気風がやはりあるのですね。
 三十分でも横になった方が有効だということはこの中に指摘をされております。そうだとすると、休憩時間の利用などというのはもともと自由なんですから、深夜勤のある職場などでは横になれるような設備などもさせるようにして、まずせめて休憩時間などちょっと横になれるようにしてやるというようなことを指導していくべきじゃないでしょうか。
#202
○小粥(義)政府委員 深夜勤務の場合の休憩のとり方が具体的にどういうのが一番本人の健康にもいいかといった点は、いろいろな形があろうかと思います。今お話しの鉄鋼会社の事例、私は承知はしておりませんでしたけれども、休憩時間であれば、これは自由利用が本来許されているわけでございます。あるいは単なる休息という格好のものでそれが実施されていたのかもしれませんけれども。そういう面、さらに私どもも実態をもっとよくつかんだ上で対応を考えたいと思います。
#203
○小沢(和)委員 ちょっと念を押して聞いておきますけれども、休憩時間の利用は自由だという点では、ちょっとそこで横になるというようなことは問題ないはずでしょう。
#204
○小粥(義)政府委員 基準法上、問題ございません。
#205
○小沢(和)委員 それではそれはいいです。ぜひ立派な指導の指針をつくっていただくように期待をしておきたいと思います。
 次に、前回私が質問をいたしました機会に、西武鉄道の休日労働の不払い問題について質問をいたしました。この私の質問を契機にして労働省当局からも西武鉄道の会社を指導していただきまして、駅が企画をした団体旅行に労働者が休日に付き添って行った場合には勤務扱いとする、そして賃金を払うという通達が出されました。これは大きな前進であり、大変結構なことだったと思います。
 ところが、その後、過去二年間さかのぼって支払うというふうに聞いておりましたところが、その過去二年間に付き添いで行ったのはこの日にこういうふうに行ったというようにその実績を相手に示した上で、それが自主参加だったのかあるいは業務として命令されて行ったのかという調査を行ったのですね。ところが、もともと自主参加という建前で行かせるという仕組みをつくってあったわけですから、そういうふうに面と向かって職制から調査をされたら、大抵の人が自主参加で行きましたというふうに答えて、それじゃ払う必要ないですなということに今なろうとしておるわけです。これじゃせっかく指導していただいても、少なくとも過去のことについては意味がなくなりかねないわけです。ですから、私は改めて、もともと自主参加という建前で休日に行った、このこと自身が業務だったんだということでもう一遍ここのところをきちんと指導していだだいて、賃金が支払われるようにしていただきたいというふうに考えるのですが、この点の指導をどういうふうにしていただけるか、お尋ねをいたします。
#206
○菊地説明員 先生の御指摘もありまして、基準法上問題がございましたので、改善方指導を行ったところです。その結果、十二月一日以降の分につきましては適正に処理をしてもらっておりますし、それ以前の過去の分につきましても、全員に対しまして、本日支払う予定に至っております。(小沢(和)委員「全額ですか」と呼ぶ)全員に対しまして、全額、本日支払う予定に到達しております。
#207
○小沢(和)委員 それでは、これで終わりますけれども、私のところに今の問題を持ち込んでくるのと同時に、西武の活動家の人たちが組合の方にも問題を持ち込んで、組合も今度は動いたというふうに聞いております。ですから、今言われるように支払われるようになったとすれば、その線でもいろいろ折衝された結果だろうと思いますし、それは結構なんですが、しかしこういうような調査を行ったということは、実質的には西武はできるだけこの指導を骨抜きにしたいという腹があったからだと見ざるを得ないと思うのです。
 こういう大企業であっても、こんな労働基準法を事実上ないがしろにするようなことがいろいろありますから、今後も厳重な監督の目を光らせていただくことをお願いをして、私のきょうの質問を終わらせていただきます。
#208
○山崎委員長 菅直人君。
#209
○菅委員 林労働大臣の所信表明演説がせんだってありまして、大臣の労働行政に対する基本的な考え方を幾つか伺ったわけですけれども、きょうは大臣に就任されてから最初の質疑ということで、短い時間ですが、労働行政の最も第一の課題というふうに前回の所信表明でも言われております雇用対策の問題を含めて幾つかの御質問をさせていただきたいと思います。
 最近、日本は高成長から中成長になって、また特に近年は成長率がやや低下ぎみである、また一方では、円高の急激な進展等もあって、現在の雇用情勢、失業率がどういうふうにこれで推移をしていくのかということがかなり心配をされているわけですけれども、まずお尋ねをしたいのは、こういう情勢の中での失業率の見通しについてお伺いしたいと思います。
#210
○白井政府委員 お答えいたします。
 最近の経済情勢を見ますと、今先生御指摘のとおり、円高の影響等から業種、地域によるばらつきが見られまして、景気の拡大テンポが緩やかになっておりまして、こうした中で雇用失業情勢は全体として足踏み状態で推移している状況でございます。
 最近、求人が製造業を中心に減少しているわけでございますが、有効求人倍率は横ばいで、昨年十二月で大体〇・六七倍、数カ月そういう状態が続いております。それから完全失業者は前年水準を上回って、失業率も昨年十二月で二・九%ということになっております。
 お尋ねの今後の雇用失業情勢についてでございますが、六十一年度の政府経済見通しにおきまして四%の経済成長のもとで完全失業者百六十万、完全失業率二・七%と前年度と同水準で推移するものと見込まれておりますが、我々としましても政府全体でこの雇用失業情勢を経済の安定成長とともに確保していくことが重要である、こういうふうに思っておるわけでございます。
#211
○菅委員 今のお答えだと、完全失業率のことしの見通しは二・七%ということで昨年と変わらないという見通しを述べられたわけですが、これは最終的にどういう推移を示すかわかりませんが、経済成長率がこの一、二年、特にことしは四%という政府見通し、果たしてこれ自体も達成できるかどうかわからないという中にあって、この見通しそのものがかなり甘いのではないかということの心配を指摘しておきたいと思います。
 同時に、それに加えて質問申し上げたいのは、この円高と経済成長率の低下が、所信表明演説の中にもありますけれども、かなりいろいろな分野にとって、特定の分野にとって、特に厳しい形で影響している分野が業種、地域によってあると指摘をされておりますけれども、そういうところの現状とそれに対する労働省としての対策がどのようになっておるのか、お尋ねをしたいと思います。
#212
○白井政府委員 お答えいたします。
 先ほども申し上げましたが、円高の影響によりまして――先ほどからもいろいろ御議論ございましたように、円高がすべて悪いということではなくて、いい面と悪い面があるわけでございます。しかし、円高の急速な進展が雇用に確かに重大な影響を与えているということが懸念されております。労働省としましては、関係省庁や関係業種団体等と緊密な連絡をとりながら実態の把握に努めておるところでございます。
 特に、今御指摘の円高の影響が強いと思われる輸出比率の高い産地については、関係都道府県を通じましてヒアリングを行い、雇用への影響を早期に把握するように努めております。その結果、産地によってばらつきがございますが、例えば昨年秋以降のいわゆる成約が不調であった陶磁器業等では既に雇用調整が行われているなど、雇用にも影響があらわれている産地が見られます。このため、労働省としましては、昨年から本年二月にかけて刃物、陶磁器等を初め円高の影響を受けております十二業種を雇用調整助成金の指定業種として指定し、関係労働者の雇用の安定を図っておるところでございます。今後、この雇用調整助成金等を活用いたしまして機動的に対応してまいりたいと思っておりますが、円高の状況にも即時対応ができるように指定基準等につきましても現在欧、正を検討しているところでございます。
 いずれにいたしましても、今後とも必要に応じて実態把握に努めながら機動的に対応してまいりたいというふうに考えておる次第であります。
#213
○菅委員 個別的なそういう薬種あるいは地域に対する対策をおくれないように十分にとっていただきたいということでありますけれども、同時に、全体の問題として内需の拡大ということが今年度の予算についても与野党間でかなり議論が闘わされております。特に政府の提案している六十一年度予算は、内需拡大に対しては、少なくとも野党の立場からしてみますと、かなり、何といいましょうか不十分な予算ではないかということを指摘しているわけですけれども、内需の拡大が最終的には雇用に対してもいい影響を及ぼすことは明らかだと思うわけですが、内需拡大に対して労働省としてはどういうふうな見解を持ち、あるいは労働省の担当の中でどういう努力をしようとしているのか、その点について伺いたいと思います。
#214
○林国務大臣 内需拡大を図るために経済の発展の成果を賃金と労働時間の短縮に配分をするということ、こういうことは、勤労者の福祉生活の向上あるいはまた今日の課題である内需中心の均衡のとれた経済成長の達成という面からしても好ましい状況であると私どもは認識をいたしておりますが、具体的な配分になりますと、それはそれぞれ労使の自主的な話し合いを通じまして適切に解決をしてもらわなければならぬということでございますが、政府といたしましては、適度な経済成長、物価の安定あるいはまた週休二日制とか時間短縮、そういったような普及の促進、環境の整備に努めてまいりたい、こういうことであります。
#215
○菅委員 特に林大臣は今回――林大臣の前任者であった山口労働大臣は時間短縮にかなり意欲を燃やされて、超党派で五月四日の休日ということを実現をしたわけですけれども、今大臣の方から、内需拡大にとって、あるいは労働の成果を配分する上では時間短縮と賃金だということを言われたわけですね。私は、そういう意味では前大臣が時間短縮に注がれた一つの意欲に負けない意欲で大臣は今度は賃上げの方に、賃金の配分を拡大する方にぜひ向けていただきたい。
 特に、最近民活論なんというのを中曽根総理が言われておるわけですが、ある意味では、民間にはかなりの力がある。力があるということは、賃上げの力もかなりある。所得税の減税等について今野党の要求を自民党あるいは政府にぶつけているわけですが、それはそれとして、まさに民間の活力ということをもし大臣も言われるとすれば、一番ストレートな形は、今回の春闘を含めて、四%台なんというちゃちなことを言わないで、七%から場合によったら一〇%ぐらいの賃上げは大いにやるべきじゃないか。そのくらい労働の担当の衝に当たられる立場として大いに発言をしていただきたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
#216
○林国務大臣 賃金の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、これはあくまでも労使の円満な話し合いの上で決まることでございますけれども、労働省といたしましても、先ほど申し上げました時間短縮の問題あるいはまた適正な賃金の配分とかいうものにつきましては最大の課題として取り組んでいるような次第でございます。
 今、七%がいいとか一割がいいとかいうようなお話がございましたけれども、春闘を目の前に控えまして私どもの方からそういったような数字のことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
#217
○菅委員 時間になりましたので、これで終わりにしますけれども、適正なという表現の中に、今私が申し上げましたように、消極的な意味ではなくて、今の日本が財政的に厳しいと口を開けば中曽根総理は言われるわけですが、まさにそれであればあるほど、この内需拡大の面での賃金の引き上げの率がどの程度になるかというのは非常に大きな影響を及ぼすわけですから、そういう点で、労働大臣という立場はいわば労働者の味方というふうに考えていただいて、またいただいていると思いますが、ぜひ閣議の中でもそういう立場で努力をお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
#218
○山崎委員長 次回は、明後二十七日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十四分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト