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1985/04/15 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 社会労働委員会 第12号
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1985/04/15 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 社会労働委員会 第12号

#1
第104回国会 社会労働委員会 第12号
昭和六十一年四月十五日(火曜日)
    午前十時二分開議
出席委員
  委員長 山崎  拓君
   理事 稲垣 実男君 理事 小沢 辰男君
   理事 高橋 辰夫君 理事 浜田卓二郎君
   理事 池端 清一君 理事 村山 富市君
   理事 大橋 敏雄君 理事 塩田  晋君
      伊吹 文明君    古賀  誠君
      斉藤滋与史君    自見庄三郎君
      谷垣 禎一君    戸井田三郎君
      長野 祐也君    野呂 昭彦君
      浜野  剛君    林  義郎君
      金子 みつ君    河野  正君
      多賀谷眞稔君    竹村 泰子君
      森井 忠良君    沼川 洋一君
      橋本 文彦君    森田 景一君
      浦井  洋君    小沢 和秋君
      菅  直人君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 林  ゆう君
 出席政府委員
        労働大臣官房長 岡部 晃三君
        労働大臣官房審
        議官      稲葉  哲君
        労働省労働基準
        局長      小粥 義朗君
        労働省職業安定
        局長      白井晋太郎君
 委員外の出席者
        厚生省薬務局審
        査第一課長   齋藤  勲君
        厚生省保険局医
        療課長     谷  修一君
        労働大臣官房労 
        働保険徴収課長 小島 迪彦君
        労働省労働基準
        局労災管理課長 松本 邦宏君
        労働省労働基準
        局安全衛生部労
        働衛生課長   福渡  靖君
        社会労働委員会
        調査室長    石川 正暉君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十一日
 辞任         補欠選任
  菅  直人君     阿部 昭吾君
同日
 辞任         補欠選任
  阿部 昭吾君     菅  直人君
同月十五日
 辞任         補欠選任
  網岡  雄君     多賀谷眞稔君
同日
 辞任         補欠選任
  多賀谷眞稔君     網岡  雄君
    ―――――――――――――
四月十一日
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提
 出第二五号)
 廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第六三号)(参議院送付)
同日
 国立横須賀病院の移譲反対に関する請願(岩垂
 寿喜男君紹介)(第三〇八九号)
 老人医療費の患者負担増大反対等に関する請願
 (小川国彦君紹介)(第三〇九〇号)
 同(新村勝雄君紹介)(第三〇九一号)
 国立療養所静澄病院と国立津病院の統廃合反対
 等に関する請願(伊藤忠治君紹介)(第三〇九
 二号)
 社会保障・社会福祉の拡充に関する請願(瀬長
 亀次郎君紹介)(第三〇九三号)
 同(松本善明君紹介)(第三〇九四号)
 同(山原健二郎君紹介)(第三〇九五号)
 老人医療の無料化制度復活等に関する請願(梅
 田勝君紹介)(第三〇九六号)
 同(浦井洋君紹介)(第三〇九七号)
 同(小沢和秋君紹介)(第三〇九八号)
 同(岡崎万寿秀君紹介)(第三〇九九号)
 同(経塚幸夫君紹介)(第三一〇〇号)
 同(工藤晃君紹介)(第三一〇一号)
 同(佐藤祐弘君紹介)(第三一〇二号)
 同(柴田睦夫君紹介)(第三一〇三号)
 同(瀬崎博義君紹介)(第三一〇四号)
 同(瀬長亀次郎君紹介)(第三一〇五号)
 同(田中美智子君紹介)(第三一〇六号)
 同(津川武一君紹介)(第三一〇七号)
 同(辻第一君紹介)(第三一〇八号)
 同(中川利三郎君紹介)(第三一〇九号)
 同(中島武敏君紹介)(第三一一〇号)
 同(中林佳子君紹介)(第三一一一号)
 同(野間友一君紹介)(第三一一二号)
 同(林百郎君紹介)(第三一一三号)
 同(東中光雄君紹介)(第三一一四号)
 同(不破哲三君紹介)(第三一一五号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三一一六号)
 同(藤田スミ君紹介)(第三一一七号)
 同(正森成二君紹介)(第三一一八号)
 同(松本善明君紹介)(第三一一九号)
 同(三浦久君紹介)(第三一二〇号)
 同(簑輪幸代君紹介)(第三一二一号)
 同(山原健二郎君紹介)(第三一二二号)
 老人保健法改悪反対等に関する請願(網岡雄君
 紹介)(第三一二三号)
 同(渋沢利久君紹介)(第三一二四号)
 同(新村勝雄君紹介)(第三一二五号)
 同(田並胤明君紹介)(第三一二六号)
 老人保健法改善等に関する請願(網岡雄君紹
 介)(第三一二七号)
 同(新村勝雄君紹介)(第三一二八号)
 国立十勝療養所及び国立療養所帯広病院の統廃
 合反対等に関する請願(新村源雄君紹介)(第
 三一二九号)
 鳥取県の国立病院・療養所の統廃合反対等に関
 する請願(武部文君紹介)(第三一三〇号)
 広島県の国立病院・療養所の統廃合反対等に関
 する請願(大原亨君紹介)(第三一三一号)
 高齢者の生活保障等に関する請願(佐藤祐弘君
 紹介)(第三一三二号)
 保育所等の入所措置制度改悪反対等に関する請
 願(経塚幸夫君紹介)(第三一三三号)
 同(東中光雄君紹介)(第三一三四号)
 同(藤田スミ君紹介)(第三一三五号)
 同(正森成二君紹介)(第三一三六号)
 国立腎センター設立に関する請願(砂田重民君
 紹介)(第三一三七号)
 国立病院及び療養所の統廃合反対等に関する請
 願(石橋政嗣君紹介)(第三一三八号)
 同(浦井洋君紹介)(第三一三九号)
 同(小川仁一君紹介)(第三一四〇号)
 同(大原亨君紹介)(第三一四一号)
 同(川崎寛治君紹介)(第三一四二号)
 同(木島喜兵衛君紹介)(第三一四三号)
 同(小林恒人君紹介)(第三一四四号)
 同(関晴正君紹介)(第一三四五号)
 同(田中恒利君紹介)(第三一四六号)
 同(藤田高敏君紹介)(第三一四七号)
 同(松浦利尚君紹介)(第三一四八号)
 同(元信堯君紹介)(第三一四九号)
 同(森井忠良君紹介)(第三一五〇号)
 国民の医療と福祉の充実に関する請願(岡崎万
 寿秀君紹介)(第三一五一号)
 医療・福祉の改善等に関する請願(津川武一君
 紹介)(第三一五二号)
同月十四日
 老人医療の患者負担増額反対に関する請願(浦
 井洋君紹介)(第三一九〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第三一九一号)
 静岡県の国立病院・療養所の統廃合反対等に関
 する請願(渡辺朗君紹介)(第三一九二号)
 社会保障・社会福祉の拡充に関する請願(柴田
 睦夫君紹介)(第三一九三号)
 老人医療の患者負担増額反対等に関する請願
 (佐藤祐弘君紹介)(第三一九四号)
 同(瀬崎博義君紹介)(第三一九五号)
 同(津川武一君紹介)(第三一九六号)
 同(中林佳子君紹介)(第三一九七号)
 老人保健制度の改悪反対等に関する請願(佐藤
 祐弘君紹介)(第三一九八号)
 同(津川武一君紹介)(第三一九九号)
 同(中川利三郎君紹介)(第三二〇〇号)
 同(東中光雄君紹介)(第三二〇一号)
 老人医療の無料化制度復活等に関する請願(津
 川武一君紹介)(第三二〇二号)
 同(林百郎君紹介)(第三二〇三号)
 老人医療無料制度復活等に関する請願(浦井洋
 君紹介)(第三二〇四号)
 母子保健水準の維持発展に関する請願(伊吹文
 明君紹介)(第三二〇五号)
 老人医療費の患者自己負担増大反対等に関する
 請願(田中美智子君紹介)(第三二〇六号)
 老人保健法等の一部を改正する法律案に関する
 請願(松田九郎君紹介)(第三二〇七号)
 老人保健法改善等に関する請願(青山丘君紹
 介)(第三二〇八号)
 同(伊藤英成君紹介)(第三二〇九号)
 同(田中美智子君紹介)(第三二一〇号)
 同(東中光雄君紹介)(第三二一一号)
 カイロプラクティック等の立法化阻止に関する
 請願(西山敬次郎君紹介)(第三二一二号)
 国民健康保険制度の改善等に関する請願(梅田
 勝君紹介)(第三二一三号)
 同(中島武敏君紹介)(第三二一四号)
 老人保健法の医療費拠出金の加入者按(あん)
 分率に関する請願(伊藤英成君紹介)(第三二
 一五号)
 同(小沢貞孝君紹介)(第三二一六号)
 国立病院並びに療養所の統廃合反対等に関する
 請願(渡辺朗君紹介)(第三二一七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の
 徴収等に関する法律の一部を改正する法律案
 (内閣提出第六六号)
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
 き、公共職業安定所及びその出張所の設置等に
 関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第二
 号)
     ――――◇―――――
#2
○山崎委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、労働者災害補償保険法及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野正君。
#3
○河野(正)委員 法案の審議に入るわけですが、まず最初に、これら労災法に取り組む大臣の姿勢、そこから逐次入っていきたいと思います。基本はやはり改正に対します姿勢でございますから。
 人間というものはいつ災害に遭遇するかわからぬ、こういう条件を持っておるわけでございます。そこで古くからさまざまな保険制度というものができ上がったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、人間はいつ災害に遭うかわからぬ、こういう心配というか杞憂といいますか、そういうものが常にあるわけです。そこで、勤労者といいますか、労働者といいますか、やはりいつ災害に遭うかわからぬという条件に置かれておるわけですから、常に安心して就労ができる、もし災害に遭っても後の補償等について万全を期してもらえる、そういう配慮というものがなされて初めて労災の意義というものが生じてくるというふうに思うわけです。そこで、まず勤労者、労働者というものが常に安心して就労できる、それがいつ災害に遭うかわからぬ、もし災害があっても大丈夫ですよ、そういうことを配慮して労災法というものは考えられていかなければならぬ、こういうふうに思うわけです。そこで、ひとつそういう基本理念についてまず大臣から御見解を承って、逐次内容に入ってまいりたい、こう思います。
#4
○林国務大臣 労働災害というものは、本来こういったことが起こってはならないものでございますけれども、不幸にしてこういった災害に遭われた方あるいはまたその家族に対しましては、そういったことによりますところの失われた収入と申しますか、そういったものの補てんのために必要な保険給付を行いますとともに、あわせて、災害を受けられた労働者に対しまして療養生活の援護から、また社会復帰ができますまでの一貫した援護を行うということ、被災をされました労働者の福祉の増進を図るということを主たる目的にする制度がこの労災保険制度であると私は考えております。
 このような観点から、労災保険の給付水準は何回かにわたります改善によりまして国際的にもILO百二十一号勧告の水準を満たすに至っておると思います。
 しかしながら、労災保険のあり方につきましては、昨年十二月の労災保険審議会の建議におきましても指摘されたとおりいろいろの課題がありますので、今後とも被災労働者の実情及び社会経済情勢の変化に対応した制度のあり方につきまして検討してまいりたいというふうに考えております。
#5
○河野(正)委員 労働災害というものは、大臣も御指摘のとおり本来起こらぬことが一番いいわけで、まず基本というものは、労働災害が起こらないようないろいろな処置ができるということだと思います。しかし、現実には起こり得るわけです。ですから、起こった場合には万全の補償ということが当然考えられなければならぬことはそのとおりだと思います。
 そこで、与えられた時間が非常に短いわけでございますから、法案そのものに対する質疑に入りたいと思います。
 提案理由の説明にございますように、今回の最大の改正点というものは、労災年金に年齢階層別の上限と下限を設ける、これが改正案の一つの大きな柱になっているわけです。もちろん、不均衡の是正という一般論からいうならば、今回その上限、下限を設けられたことに対して多少うなずかれる点もないではないわけではありますが、しかし、この上限、下限を設けること自体が果たして適切であるかどうか。
 要するに、高いところ、低い上ころがあるから、それを均衡を図っていこうということですから、一般論としてはそのとおりであるけれども、そうかといって、この上限、下限をつくることによって、果たして公平な給付制度になり得るのかどうか。これは五%、五%の問題がありますから、それで果たして均衡の是正になると言えるのかどうか。要するに、それぞれ五%カットすることが真に本来の均衡の是正に値するのかどうか、そういう点についてひとつ御見解を承りたいと思います。
    〔委員長退席、高橋委員長代理着席〕
#6
○小粥(義)政府委員 労働者の災害に対する補償制度として、先生もう御承知のように労働基準法での災害補償の規定でいろいろなことを決めているわけでございます。一方、その補償責任を保険するような形で労災保険制度ができたわけでございますが、被災者の実態等から、従来の基準法と変わっていわゆる長期給付、年金が導入をされるようになり、今や年金受給者は相当の数になってまいりまして、十七万三千くらいの数になっております。
 そうなりますと、災害補償の本来の趣旨というものがその労働者の失った稼得の補てんというところに実はあるわけでございますが、そうしますと、年金になった場合に、通常でしたら六十歳あたりで労働市場から引退する方でもその後引き続き七十、八十でも年金給付は支給されることになるわけでございます。そうした場合に、いわゆる稼得能力との関係から見た場合相当大きな開きが出てきて、それが不均衡という形に一般の目に映るケ一スも出てまいったわけであります。
 一方で、実は五十五年の改正の際に年金給付自体にいわゆる年功賃金の体系というものがある程度反映されるようにすべきであるという決議も実はいただいております。したがって、そういう観点から最高限度額を設定をしたい。その場合、年功賃金を反映をするという意味で年齢区分を定めまして、それぞれに最高、最低を決めることにしたい、こういうふうに考えたわけでございます。
 なお、最高限度額を決めることについてはILOの条約でもこれを実は認めているところでございまして、もちろん一定の要件はございますけれども、そうしたILO条約の趣旨も踏まえて最高限度額というものを設定することにいたしておるわけでございます。
#7
○河野(正)委員 今も私が指摘いたしましたように、確かに現在の制度上の問題点というものは給付基礎日額の格差があり過ぎる。具体的に申し上げますならば、下限の三千二百十円から上限の約四万円、こういうふうに上限、下限の格差があります。そこで、これをできるだけ公平に、あるいは不均衡を是正する、こういうことを発想として今回の改正が行われるということについては、お説のとおりでございます。
 そこで、政府が賃金構造基本調査をもとに五歳刻みで今回年齢階層別の賃金水準を出して、最高と最低それぞれから五%をカットをしてそれを給付基礎日額にする。なるほど格差が大き過ぎる、そこでできるだけ公正に不均衡というものを改めていこう。趣旨がわからぬわけではないわけですが、少なくとも最高の方は将来五%切られるということになるわけですから、少なくともそれは今までよりも正直言って冷遇を受けるという形になるわけでございます。ですから、不均衡是正という方針はあるけれども、今よりも有利になった者、不利になった者、こうなりますね。そういうことで果たしていいものかどうか。それらの点について、いま一度御見解をお聞かせいただきたい、こういうように思います。
#8
○小粥(義)政府委員 私、先ほどは最高限の設定について専らお答えをしたわけでございますが、いわゆる不均衡是正の一つとして考えておりますのは、最低限度額の年齢区分別の引き上げももちろんこれに含まれるわけでございまして、それを考えました趣旨といいますのは、先ほどもお答えいたしました五十五年の当委員会での附帯決議にあります年功賃金を反映させるという趣旨にまさにかなうものでございますが、いわゆる若年時に被災をいたしますと、日本の年功賃金体系のもとでは若年時は比較的賃金は安いわけでございます。それに年金のスライドはかかりますけれども、災害に遣わなければ得られたであろういわゆる昇進昇格的な要素というものは全く加味されない。ところが一方、壮年時に被災をいたしますと、比較的賃金が高く、この若年時、壮年時の被災者ともに、例えば通常ならば労働市場を引退する年齢になった後もなおかつ年金給付が受けられるわけでございますけれども、そうなった場合に非常に大きな開きが見られるわけでございます。
 そういう面を少しでも改善するために、いわゆる最低保障額について年齢階層別の五%の引き上げを図ることでもって若年時被災者のそうした相対的な不利な部分を解消したい、こういうふうにも考えているわけでございます。同時に、あわせて最高限については先ほど申し上げたような趣旨で合わせを行う、こういうふうに考えているわけでございます。
#9
○河野(正)委員 具体的に検討してみますと、例えば昨年五月の年金受給者で試算いたしますと、二十歳から五十歳までの層、これがさっきおっしゃったように賃金が低い、そこでそれらについては今度配慮されましたから二万一千の皆さん方が給付水準の改善を受けられる、こういうことになることはそのとおりでございます。それと同時に、一方では最高額を超えるということで、今日は既得権でございますからそれはそのまま認められるとしても、今後スライド等見送られるというのが一万二千余人あるわけです。
 ですから、確かに二万一千人余が給付改善によって五%上がっていくということについては私も評価するけれども、そう言っても、その一万二千人というものは既得権としては現在では認められるけれども、今後スライドというものが抑えられていくことで、スライドで検討される際には不利になる。そういうような不利な点について将来どういうふうに考慮されていくのか、さしあたりこのスライドの段階で超えている者についてはスライドしないわけですから、それが将来一体どういうふうになっていくのか、どこかでまた検討してもらえるのか、あるいはそのまま抑えられたままになるのか、この辺について、不利になる方もいらっしゃるわけですから、そういう立場でひとつ御見解を承っておきたい、こういうふうに思います。
#10
○小粥(義)政府委員 今回の改正で考えております最高限度額の適用の仕方としては、今後新しく裁定を受けられます方は最高限度額がその当初から適用されるのでございますが、既にもう裁定を受けて年金を受給しておられる方、この方々につきましてはいわゆる既得権があるわけでございます。これらの方については最高限度額で頭打ちということではなくて、現在の給付額というものを保障いたします。ただし、その場合に現在の給付基礎日額が今後新しく設定する最高限度額を超えることになる、そういう年齢に該当している場合は、いわゆるスライドの適用は停止をいたしますということで、その部分のマイナスは生じますけれども、既に受給をされている方については現在の給付額を保障する、こういう形で考えているわけでございます。
 今後新しく年金の受給者になられる方については、この最高限度額と最低保障額の間で動いていくことになるわけでございます。ある年齢階層のときに最高限度額にぶつかっても、それが特に前半の方ですとぶつかっても年齢が加齢、年を加えることによって限度額がふえる、高まる年齢階層に進むわけでございます。そうした場合は、当然、従来限度額で頭打ちであったものが新しい年齢区分に対応する限度額までは支給される、こういうような仕組みで動くわけでございまして、いわゆる全体としての枠組みの中で最高限度額と最低保障額があって、その枠の中で年金額が推移をしていく、こういう仕組みを考えているわけでございます。
#11
○河野(正)委員 率直に申し上げまして、今の経済情勢というものが非常に厳しいわけですから、そこで今の年金保障で十分生活が保てるのかどうかということについては、これは大きな疑問のあるところである。そこで改善されるものについてはよろしいが、今申し上げましたように一万二千人余りはもうそこで上限を超えるわけですから、そこで抑えられてしまう。そして、今後スライドがあってもそれはそのままいかぬわけです。この限度額を超えておる、既得権ですから今もらっておるのは限度額を超えておるのは認めるけれども、今後スライドは行われないという者について、経済情勢が厳しい、生活が非常に厳しい、そういう状況であれば、やはりいつの日かそういう不利になった方々に対して何らかの措置が考えられ得るのかどうか、その辺をお伺いいたしておるわけです。
#12
○小粥(義)政府委員 確かに、新しく最高限度額が設定されたことによりまして、今後新しく年金を受給される方が最高限度額で頭打ちになる。現行の制度に比べますと、その部分に関しまして不利な部分が出ることは事実でございますけれども、この年齢区分別の最高、最低保障額、いずれも、賃金に関します実態調査を毎年行いまして、それに基づいて線を引いていくわけでございます。したがって、一度この改正法の施行時点に引いた限度額が未来永劫それでずっといくものではなく、年々の賃金水準の上昇といったものを反映させてまた線が引かれていくわけでございまして、そうした場合、今までの傾向から見ますと、当然従来よりは高い線に限度額が設定される。その範囲では、少なくとも改正法施行時点で固定されるものではないので、それなりの上昇の余地があるわけでございます。
 ただ、限度額を超えてさらにスライドをかけるというようなことになると、この限度額設定の趣旨から見ていかがかということにもなりますので、そこは一つの割り切りをさせていただいたということでございます。
#13
○河野(正)委員 現状はそれで納得するにしても、将来一体どうなるのか。何かその辺の配慮があり得るのかどうか、そこをひとつお尋ねしておきます。
#14
○小粥(義)政府委員 その点は大臣が冒頭にもお答え申し上げましたように、今回の制度改正は、昨年暮れに労災保険審議会から建議をいただきました中で当面措置すべきものを取り上げて、法律事項分を改正案として御提出申し上げているわけでございます。この審議会は、申すまでもなく公労使三者構成の審議会でございます。そこでいろいろな労災保険制度についての問題点の指摘がございました。
 そこで長期間にわたって検討している中で、今回具体的成案を得るに至らないでなお今後引き続き検討すべき問題も幾つか残されております。その中には給付の改善の問題であるとか他の社会保険との調整の問題であるとか、いろいろ大きい問題があるわけでございます。これについては、早速にも労災保険審議会の中に引き続き検討する場を設けて今後さらに検討していこう、こういうことにいたしておりますので、先生御指摘のような問題は、今回の改正法施行後、さらに情勢の変化等もいろいろあろうかと思いますが、そうした点は今後の審議会の中での検討の場に十分また反映をさせ、そうした検討の結果で直すべき点はまた直していかなければならないものというふうに考えております。
 ですから、今回のこれで未来永劫決まってしまうというものではなく、もちろん制度でございますから、時々の社会情勢あるいは受給者の実態等に応じまして適宜必要な改正というものは今後とも行っていかなければならないものというふうに私ども考えております。
#15
○河野(正)委員 御承知のように、労災事故というものは、幸いにして少しずつ減少の傾向にあるというふうに承っております。それでも、労災保険給付を新たに受けた人は、一昨年で九十二万を超えた、こういうふうに承っております。一方また、高齢化がだんだん進んでまいりますから、その高齢化の影響で労災年金を受ける人はふえておる。現在、十七万五千というふうに承っております。こういうように労災事故は幸いにして減少しておるけれども、年金の給付を受ける人はだんだんふえておるということですね。しかも、高齢者がふえてまいりますから、したがって、まだふえていく状況にあろうと思うのです。
 今、これがどういう状況で進んでおるのか。今私が指摘いたしましたように、年金を受ける人はふえておる、そして高齢化という影響がまたある、そういうことで、現在の十七万五千、この数字というものが今後どういう方向に推移していきつつあるのか、これがおわかりでしたらひとつ明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
#16
○小粥(義)政府委員 労災保険の給付に年金が全面的に取り入れられましたのが昭和四十年からでございますが、現在、十七万数千人の年金受給者がいるわけでございます。
 今後、傾向としては幸い労働災害の件数はさらに減少をしていくものと見ておりますけれども、いわゆる年金受給者は、寿命の伸長に伴いまして数がだんだん累積をしていくわけでございます。私どもの今の見通しては、今後もさらに十七万数千が増加を続けて、ほぼ二十年後には三十万くらいの数字になるのではないか、その後は大体三十万くらいの数字で推移するのではないかというふうに見ているわけでございます。
#17
○河野(正)委員 いずれにしても、この年金受給者はふえている、それから高齢化ということで累積をしていくということですから、財源も逐次増加するというふうに思うわけであります。要は、今の年金では最低生活を維持するには必ずしも十分でないという感じもいたしますものですから、我々は、今後の数の推移によって、一体、今後年金というものがどういう状況になるのか、そういうことを憂うるものですから、あえてそういうことをお尋ねをいたしたわけです。
 そこで、そういう生活権との関連もございますからお伺いをしたいと思うわけでございますけれども、これは労働省の実態調査であるそうですが、今の年金保障の額で十分であるかどうかという観点から調査の結果を見てみますと、被災労働者の約八割が今の年金では家計に非常に大きな影響をもたらしておる、非常に苦しいということですね、わかりやすく言えば。それから四割程度が今の年金では生活が困る、こういうふうな感触の回答があっておるわけです。そのことは、それぞれ八割、四割の方々、表現の違いはございますけれども、総じて申し上げるならばやはり給付水準が全体的に見て低い、十分ではないということに尽きると思うわけです。
 そこで起こってまいりますのが損害賠償ですね。そういう補償が少ないから別に損害賠償、あるいはまた企業に対して今度は企業が面倒を見ろ、上積み補償、そういう要求が最近非常に多くなっておるという話も承っておるわけです。この言葉を裏返しますと、やはり年金給付額が十分でない。十分であれば、何も訴訟する必要はない。それから企業に対して上積みを要求する必要はない。やはり十分でない。これは、労働省の調査でも八割の人が非常に大きな影響をこうむった、四割が困っておるというような数字が示しますように、給付水準というものが全体的に見て必ずしも十分でないことを示す一つの現象が、先ほど申し上げましたような損害賠償とかあるいは企業への上積み補償要求とかいうことになっておるのだと思うのです。
 そこで、それは財政を伴うことですから、いろいろ議論はありますけれども、そういう生活保障という立場からはもっと前向きで御検討をいただかなければならぬのではなかろうか。これは、私が冒頭に申し上げました大臣の労災に対します基本的姿勢ということにも通じていく、こう思うわけですが、この点はひとつ大臣の方からお答えいただけませんか。
#18
○林国務大臣 この件につきましては、福祉関係の中でこういったものの給付をするというようなことに私どもとしてはいたしておるわけでございます。
#19
○小粥(義)政府委員 先生御承知のように、いわゆる保険給付としては、例えば休業補償でしたら給付基礎日額の六割というようなことになっておりますけれども、一方で、労災保険の福祉事業で、いわゆる特別支給金でさらに二割それに積み足す、あるいは年金につきましても特別年金といったものを支給することでもって、いわゆる法定の保険給付にさらに上乗せをする形で制度を運営いたしておりますので、御指摘のようないわゆる生活保障的な要素、これは当然給付水準を考える場合に抜かしてはならない要素だとは思いますけれども、そういう面の配慮をいたしておるわけでございます。
 ただ、あくまで労災保険は、御承知のように稼得能力の損失を補てんするというところに基本的性格があるものでございますから、余りそれとかけ離れた形で給付水準を決めるわけにもまいらないというところに一つのおのずからの制約があるということも御理解を賜りたいと存ずる次第でございます。
#20
○河野(正)委員 そこで、それらの問題に関連をして、ここから先は厚生省に承りたいと思うのですが、一つはアルバイトに関する問題がございます。これは最近出てきておるわけでございますが、新薬が出る場合には臨床試験、臨床実験というものが薬事法で定められておるわけです。そこで、人体実験的な要素を持つ案件が出てきておるわけですが、こうした人体実験的な臨床試験という問題は、パートですから、一般の労働によって災害を受けるわけではない、ですから、実際には損害補償といいますか損害賠償というような形になると思うのですが、こういった問題について最近非常に極端な例も出ておるようでございます。これらの現況について、ひとつ厚生省からお答えをいただきたいと思います。
#21
○齋藤説明員 新しい有効成分を含有しますいわゆる新薬につきましては、臨床試験としまして健康人を対象とする第一相試験、それから患者さんを対象とする第二相試験及び第三相試験がございます。これらの治験の実施を依頼しようとする者は、薬事法の規定によりまして治験の依頼の基準を遵守するとともに、あらかじめ治験の計画を厚生大臣に届ける仕組みになっております。これによりまして、治験の実施期間、実施時期を把握するとともに、依頼者である製薬企業に対しまして適切な指導を行っているところでございます。
#22
○河野(正)委員 適切な指導を行っていただくことが望ましいわけです。というのは、新薬を出す場合には、この人体実験といいますか臨床試験といいますか、これは薬事法で義務づけられているわけですから当然のことでございますけれども、問題は、そこで事故が起こった場合に一体どうなるのか、マスコミもこの問題を取り上げておるわけです。
 そこで、そういう実態というものが、まあ、こういうことで慎重にやりなさいとかいうような指導が行われることは当然だと思うのですよ。ところが、現実には一体どういう状況にあるのか。最近の新聞の報道などによりますと、極めて私どもが関心を持たなければならないような事件が起こっておるわけですね。そういうことで問題になったところは何らかの形で改善されるでしょう。ところが、全般的に、新薬が出る場合には、人体実験といいますかあるいは臨床試験といいますか、そういうことをやっているわけです。これは薬事法で、やらなければならないわけですね。ですから、いろいろなところで新薬開発をする場合にそういう状況があると思うのですよ。そういう全般的な状況について把握しつつあるのかどうか。ただ指導だけではいかぬのですよ。現実に一体どうなのか。その辺について大体お伺いしたかったわけですから、それに対してお答えをいただきたい。
#23
○齋藤説明員 ただいま先生のお尋ねの件は、いわゆる健康人を対象とした治験ということに特別な御関心がおありだと思いますが、そういった健康人を対象としますボランティアの募集ということになりますと、製薬企業の社員ですとか家族、友人、知己、こういったいろいろな関連を通じましてボランティアを募りまして、そういう方々に同意を得た上で、治験を実施しているということでございます。そういった場合に事故が起こったということを想定いたしますと、製薬企業は治験を依頼します際にあらかじめ補償のための方策を講じておくということが先ほど御説明申し上げました治験の依頼の基準に定めてございまして、これによって事実上その補償がなされるという仕組みになっております。
#24
○河野(正)委員 今のはいわゆる人体実験、臨床試験のほんの側面だけをお答えになったわけですね。今、いろいろな研究開発が行われる。そういう場合には、社員とか社員の家族とかそれだけでは事が足りない部分が非常に出ておるわけです。そこで、大阪でもそのことが取り上げられておるわけですよ。ですから、社員は、一体どういう研究がなされておるのか、薬効についても研究の目的についてもある程度わかるでしょう。ところが、そうでない部分というものはかなりあるのじゃないか。そこでもし事故が起こったという場合は一体どうなるのか。社員とか社員の家族とかボランティアとか、そういう一つの側面は大体の目的というのはわかっていますから。ところが、全然目的がわからぬで臨床試験が行われておる部分がかなりあるというように私は思っているのです。それは薬の性格によって、とにかく社員だけであるいは家族だけでおさまるような今の状況ではないと思うのですよ。
 問題は、その他の部分の臨床試験というものが一体どういう形で行われておるのか、そこが問題だと思うのです。何も目的がわからぬで、ただ薬を飲まされたり検査されたり、大阪の場合はそういう人間を集めるために二千円の紹介料まで払った、こういう問題もあるわけでしょう。ですから、例えば大学のクラブあたりで、クラブで金が要るものだから、おまえ行ってこい、そうすると二千円もらえるわけですから、そういうことで、安易な形でこういう臨床試験というものが行われておる。その際、もし事故が起こった場合一体どうなるのか。そうでしょう。ですから、先ほどお答えになったような側面、すなわち社員とか社員の家族というものはどういう目的で行われておるかというのはある程度わかるわけですから、拒否することもできるわけですよね。できますよね。ところが、その他の側面というのは、全く理由もわからぬ、目的もわからぬ、そして金だけで処理されておるという状況がここにあるわけです。
 今のような薬の開発、開発という状況の中では、むしろそういった後段のケースが大きいんじゃないかというふうに私は思うのです。その辺が一体どういう状況として把握をされておるのか、そこをひとつお尋ねをしておるわけですから、その辺に対するお答えをいただかぬといかぬと思うのです。
#25
○齋藤説明員 ただいまのボランティアを募った場合でございますが、治験をする際につきましては、担当の医師から治験の内容を被験者に説明し、そして文書により同意を得る、こういったような形で十分に納得して治験をしていただくということを製薬企業から医療機関に要請する、このような指導をいたしておるところでございます。
#26
○河野(正)委員 そういう側面があることは私は知っておるわけです。ところが、そこでは余り問題ないわけですね。ちゃんとこの薬で試験する場合にはこういう目的がある、薬の内容はこうだということが社員とか社員の家族とかボランティアにはわかるわけでしょう。ところが、そういう側面じゃなくて、別な側面ですね。
 それは大阪の場合は、先ほどから申し上げますように、要するに紹介料を取って、とにかく紹介すれば、おまえ、臨床試験で二日やれば五万二千円になるんだ、口コミでそう言っているわけでしょう。それで、何のためにそういう実験をされるのか、検査をされるのか全然わからぬで行っているわけでしょう。そして、そういうところでもし事故が起こった場合に一体どうなるのか、私どもそこを心配しておるわけですね。前段のことじゃないですよ。私がお尋ねしているのは後段の問題ですよ。しかも、その後段の問題の方が、やはり今から非常に問題を起こし得る、あるいは問題が起こったけれども泣き寝入りで終わるというような状況がこれあるんじゃなかろうか。
 そうすると、これは労災と違って、事故が起こっても、要するに労働の協約じゃないわけですから、どうしても損害賠償とかそういう形で解決せざるを得ぬということがあるわけでしょう。ですから、一般の労働ということになりますと労災で補償されていくわけですけれども、これはやみで処理されていく、そういう危険性があるものですから、私は特にこの問題を取り上げておるのです。だから、前段のことじゃなくて、後段のことについてお伺いしたいわけですよ。後段について一向にお答えにならぬでしょう、先ほどから。もうわからぬならわからぬでいいですよ。わからぬとおっしゃればいいです。
#27
○齋藤説明員 ただいまの大阪の製薬企業の件につきましては、紹介料を実際に仲介に立った人に支払っていたということがございまして、その会社につきましては、その後、誤解を招くということで紹介料を払うようなこういうことは中止したというふうに聞いております。
 それから、先生お尋ねの補償の件でございますが、通常こういった臨床治験を始めるに際しましては、製薬企業は保険に入るとか、こういった形で万が一の事故に対します体制をとるということになっているというふうに聞いております。
#28
○河野(正)委員 もう時間がございませんから、これ以上議論するわけにはいかぬと思うのですけれども、ただ非常に残念なのは、問題は、今私が取り上げた後段の部分です。紹介料、金を取るということにも問題がありますけれども、紹介料を取って、何にもわからぬ間に実験をされているところに私は非常に問題があると思うのですよ。二千円の紹介料ですから、とにかく行ってこいよ、紹介した人が金をもらうわけでしょう。行く者はただ行ってこいよと言われて行くだけです。ところが、薬をどういう目的を持って使用されるのか、また検査がどういう目的を持って検査されるのか、そういう状況が全くわからぬまま検査をされておる。
 したがって、今保険がどうだとかおっしゃるけれども、そういうことがあり得るはすがないのですよ。それがあれば、何も紹介料を取って行く必要はない。ですから、厚生省もそういった現況は十分把握していないという話を聞いておりますから、恐らく把握していないというふうに私ども判断しておりますし、そういうことでございますから、幾ら言っても同じようなことを言われて、私の問いに対する答えになっていない。ですから、これは今からでも遅くないから、十分把握して、そういう事故が起こらぬように、人の命ですから、ぜひひとつそういうことで努力していただきたいということで、これはもう終わっておきます。
 そこで、それに関連してですが、ついでに厚生省にもう一件お尋ねいたしたいと思います。
 この労災法の今度の改正の中でも、やはり高齢化が非常に進む、そこで養護施設とかそういう点について非常に力を注がなければならぬ、こういうような審議会の答申等が出ております。それに関連して、一言、厚生省おいでですからお尋ねをしたいと思いますのは、運動療法、とりわけ精神科の作業療法について一言ここでお伺いをいたしておきたいというふうに思います。
 と申し上げますのは、運動療法、その中の具体的には精神科の作業療法、これに対する厚生省の指導というものが全くずさんである、一つも現状に即した指導が行われておらない、そういう立場から、時間が余りございませんから単刀直入にお尋ねをしますが、一体この作業療法は厚生大臣が定める施設基準、それに適合しておるかどうか、それによって県知事が作業療法の施設として医療機関の指定を行うということになっておるわけです。ところが、その厚生大臣が定める施設基準というものは一体どういう方針を示しておられるのか、まずそこからお答えをいただきたいと思います。
#29
○谷説明員 精神科の作業療法に関連いたします施設基準でございますが、目的といたしましては、御承知のように精神障害者の社会生活機能の回復を目的とするということでございまして、具体的な施設基準といたしましては、作業療法士がいるとか、あるいは十分な施設を擁しているといったようなことを定めているわけでございます。
#30
○河野(正)委員 ちょっと、まことに申しわけないですが、一つも答えになってないわけですよ。それだけで都道府県知事が認定をするのですか。そうじゃないでしょう。
#31
○谷説明員 作業療法の施設基準といたしましては、一つは作業療法士が適切に配置されているということ、それから施設につきましては作業療法を行うにふさわしい専用の施設を有しているということと、その施設の広さにつきまして、作業療法士一人当たり大体七十五平米が基準。それから作業療法を行うための必要な専用の機械とか器具というようなもので、例えば手工芸の場合、これは例示をいたしているわけでございますが、織機とか編み機あるいはミシン、あるいは木工の場合には作業台とか工具等の例示をいたしております。
#32
○河野(正)委員 どうも何か遠慮し遠慮しお答えになっているのかわかりませんけれども、私も何も事を荒立てる気持ちはないのですよ。厚生省の指導というものがきちっと都道府県に行き届いておるかどうか、その辺を明確にしていただきたいと思っておるのです。ですから、今課長がおっしゃったようなことでは何にもトラブルは起こりませんよね。しかし実際に――別に厚生大臣が定める施設基準に適合していると都道府県知事が認めた保険医療機関に限っては認めていく、こういうことですね。だから、厚生大臣が定める基準というものはあろうと思うのですよ。それはどういう基準ですか。
#33
○谷説明員 今申し上げましたのは精神科作業療法についての基準でございますが、先ほど申しましたように、作業療法士がいる、適切に配置をされているということと、十分な専用施設を有しているということでございますが、さらにその上に、この療法を行うに必要な専用の機械とか器具が備わっているということでございます。
 お話しございました承認に当たりましては、この施設基準をもとにして都道府県知事がその適否を判断をいたしているわけでございまして、私ども、この施設基準に基づきまして都道府県知事が適切に判断をして該当する施設については承認を与えるように指導をしているわけでございます。
#34
○河野(正)委員 その指導が一つも行き届いておらぬから各県ばらばらで認定しておるでしょう。だから、これが問題になっているわけですよ。あなたがおっしゃる今の条件だったら何にも問題ないでしょう。とにかくそういう施設の面積でしょう、OTがおらなければならぬということでしょう。それから非常に陳腐な、今から考えましたら本当に非近代的な例示がありますね。例えば今の機械とかミシンとかろくろとか、そういうものを設置しておかなければならぬとか。今の作業療法というものはそんなおくれた作業療法なんかないですよ。それは一部ではあるでしょう。今の作業療法というのは非常に進歩しています。昭和何年にこの例示が行われたかわかりませんけれども、こういうことは今の状況から見ると全くナンセンス的な例示です。
 それはそれで結構ですが、それだけでしたら何にもトラブルの原因にならぬですよ。都道府県はそんな指導をしていませんよ。それだけだったら本当に簡単なことですよ。やってないでしょう。何遍聞いても課長がそういう答えでは、きょうはもう時間が来ているけれども済まないですよ。
    〔高橋委員長代理退席、委員長着席〕
#35
○谷説明員 現在の基準の中に入っております作業療法の例示につきましては、木工ですとか手芸、絵画、あるいは農耕、園芸、印刷等、基本的なものを一応例示として挙げておりまして、私どもはそれぞれの承認されました施設においてはこれらのものがかなり広く行われているものだというように理解をしております。ただ、精神医療といいますか精神科医療の進歩というようなことに伴って、これ以外のものについて別に否定をするわけではございませんし、またそういった新たに加えるものがあれば、それについても検討をしていきたいというふうに考えております。
 それから、先ほど来お話のございます都道府県知事の厚生大臣が定める基準に基づきます承認につきまして、私ども、できるだけ都道府県の間での違いがないように指導をしているつもりでございますが、今後ともそういったような施設基準というものに基づいて統一的な運用が図られるよう指導をしてまいりたいというふうに考えております。
#36
○河野(正)委員 ある程度こういうことですよということを厚生省に通告して、大体談合が済んでおったはずですけれども、どういうことか、この委員会の席上ではお答えいただくことがさっぱりわからぬ。この作業療法を行うにふさわしい専用の施設を有する。施設としてはこれですね。あと附帯的にはOTがおらなければならぬとか、その施設の面積はこれだけですよとか、こういうことでしょう。だから専用の施設を持たなければならぬということが大原則ですね。その専用の施設に対する厚生省の指導というものが完全に行き届いておらぬでしょう。
 大体私どもからこういう具体的な問題がありますよということも指摘して、きのうの院もそういう話をしておったのですが、どうも課長は遠慮しているかなにかわからないけれども、これでは議事が進みませんので、行き届いておりません、今までの厚生省の指導は抜かっておりました、誤っておりました、こういうふうにぴしゃっと言ってもらわぬと、これは片づきませんよ。
#37
○谷説明員 十分な専用の施設を有しておるということでございますが、これはもちろんその病院の内部でそういうことを有しているということでございますので、病院の中で先ほど来申しておるような基準が満たされていれば、それを都道府県知事が適切と考えれば承認をするということでございますので、先ほど来おっしゃっておられるような県によって承認にばらつきがあるというようなことがあってはならないというふうに考えておりますので、十分な指導はしていきたいと思いますし、この十分な専用施設を有するということは、もちろん病院の施設内にそういうものがあればいいという考え方でございます。
#38
○河野(正)委員 くだらぬことで時間が延び延びになりまして大変困っておるわけですが、そこで一言だけ示唆を与えます。
 医療法の十六条、これは病院というものはどういうものだという一つの基本的な理念が示されておるわけですが、これに対して御見解を承りたい。医療法の十六条。
#39
○谷説明員 医療法の十六条は病院に必要な施設設備を規定しているというふうに理解をしております。
#40
○河野(正)委員 あなた、これを全然見ないで言っておるでしょう。十六条というのは医師の当直ですよ。医師の当直について書いてあるのですよ。施設じゃないですよ。当直ですよ。
 なぜこれを私が取り上げたかというと、病院というものは、例えば当直医師が病院の隣接地帯にあっても当直医は要らぬ、こういうように記してあるわけです。だから病院というものは、病院の用地、構内ということが一般的に言う病院なんですよ。だから、当然この作業療法の施設にいたしましても、その病院の構内にあれば、とにかく隣に医者がおっても当直は要らぬというのでしょう。これが十六条でしょう。あなたはやみくもにお答えになるものですから、とんでもない答えになる。病院の隣におっても、そこは隣だから病院の敷地内と認めるという条文が医療法十六条にあるのですよ。だから、病院の敷地内、用地内にそういう作業をする施設があればこれは当然病院内の施設でしょう。それを病院内の施設と認めぬという県があるのですよ。それは一体どういうことですか。
#41
○谷説明員 作業療法で言います十分な施設を有しているということは、先生おっしゃるように病院の敷地内、病院内にあればいいという解釈でございますし、またこの内容からいいましても、例えば農耕というようなものも作業療法の中に入っておりますので、そういう意味におきまして、どう言いますか病棟の中というような規定ではなしに、病院の敷地内にそういったような十分な施設を有していればいいという考え方でございます。
 したがいまして、そういったようなことにつきましての各県におきます運用が、解釈が違っているというようなことがありますれば、これは大変問題だと思いますので、十分な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
#42
○河野(正)委員 時間がございませんから、単刀直入にお尋ねしますけれども、施設基準の中に先ほど申し上げましたように農耕、園芸、花をつくったりお百姓をしたり、そういうこともあるわけですね。それでございますから、当然そういうふうな専門施設というものは病院の構内になければならぬわけですね。構内――病棟の中でしなければならぬと言ったら、病棟の中で花をつくりますか、病棟の中で野菜をつくりますか。そういう解釈をして今日までそういう認可をしなかったという事例があるわけでしょう。ですから、いろいろおっしゃるけれども、そのことが一つもいっていないのですよね。これは、厚生省がそういう点について手抜かりがあった、指導が十分でございませんでしたというふうに言ってもらわぬと、これで済むわけにはいきませんよ。
#43
○谷説明員 作業療法の性格からいいまして、そういったような施設すべてが病棟の中になければならないというような解釈を私どもはもちろんいたしておりません。先生が先ほどおっしゃっておられるように、病院の敷地内あるいは病院の中に全体としてそういうものがあれば十分であるという解釈をいたしております。したがいまして、そういったような解釈について私ども指導が不十分であったということにつきましては、今後十分指導してまいりたいというふうに考えております。
#44
○河野(正)委員 そこで、それは全国的にそういう指導をしてもらわぬと、各府県が検討するわけですけれども、非常にまちまちであるということですから、これは全国的にそういう見解を明らかにしてもらわなければいかぬ。
 というのは、都道府県ではこういう見解を持っているのですよ。病院内にそういう施設を持たなければならぬというのですね。それから、先ほど申し上げましたように、なべかまから、すきくわから、それも置かなければならぬ、そういう解釈をしているところがあるのです。ところが、そうでもないですよ、あなたがおっしゃったような見解でやっておるところもある。ですから、先ほど申し上げましたように、少なくともこの運動療法の施設基準の承認に関する取り扱いでは厚生省の指導が行われていないということで、ぜひひとつ今後指導を全国的にやってほしい、こう思います。
 それからもう一つ、このことについては余り時間がございませんから、最後に申し上げますが、作業療法について療法を制限するという方針、これは厚生省でやっているのですか。例えば一週間に日曜、祭日休むことは、これは大体常識でしょうが、そのほかにもできるだけ休みなさい、患者に無理ですよ、こういう指導はやっていますか。
#45
○谷説明員 先ほどの施設基準につきましての解釈の運用の問題につきましては、全国にわかるような形で指導をいたしたいと思います。
 それからもう一点、作業療法について制限をしているのではないかというお話でございますが、現在の作業療法についての基準なり考え方といたしましては、そのようなことは具体的に何も申しておりません。ただ、これは現実問題としてそれぞれの現場の医療機関でどういうスケジュールを組んでやるかというようなことだろうかと思いますので、私ども、そういったように今おっしゃったような意味での制限というものはしておりません。
#46
○河野(正)委員 制限になっておるから言っておるのですよ。どう作業療法のプログラムをつくるかは、それは病院の責任ですよ。ところが、相手が患者だから、これはもう御承知のように作業療法あるいは生活療法、そういうことにたえ得る患者ですね。ですから、それらも見込んでOTないし主治医が計画をつくるわけでしょう、それが多過ぎるとか、少ないとか――少ないというのは厚生省は喜んでおる、多過ぎるというような指導というものをやっておられるんじゃないかというような――支払基金がそういうことを言っておるのです。これは事情を調査してください。
#47
○谷説明員 先ほど申しましたように、私どもそういったような具体的な中身に立ち入ったことについては何も指導といいますか通知も出しておりませんが、具体的にどういう形で審査が行われているかということについては調べさせていただきたいと思います。
#48
○河野(正)委員 もう時間がなくなりましたので、途中はしょりまして、これはやりたいと思っておったところだけやらせていただきます。
 それは、この労災法です。もとに戻って、中間ちょっと触れるつもりだったが、時間を食いまして大変恐縮でした。私も、特に医者の出身ですが、はり、きゅうの労災、このはり、きゅうが打ち切られた、こういう状況が出てきておるわけです。ところが、はり、きゅうは慢性の状態に対してやることであって、ですから一般的に急性のときにはこれは主として医師がやるが、残りの部分をはり、きゅうで治療するというケースが多いわけです。ですから、長くなったからもうこれで打ち切りだ、五千ないし六千人が打ち切られるという話もありますが、これは一体どういうものか。はり、きゅうというのは大体慢性的な状況の中でやるわけですから、古い患者が治療を受けるということになるわけですが、それが古くなったら打ち切られる。これは一体どういうことかというように思うわけですが、その点についてひとつ御見解を承りたいと思います。
#49
○小粥(義)政府委員 労災保険の療養費は、原則として、先生御承知のように健康保険に準じて取り扱っているわけでございます。お尋ねのはり、きゅうについては、健康保険の場合、はり、きゅう単独に行われる場合に限って六カ月となっておりますが、労災保険の場合は労災医療の特殊性といったものを考えまして、これを期間をそれよりも長く九ないし十二カ月間の施術を認める、こういう形で今やっているわけでございます。ただし、さらに一般医療とあわせ行う者は十二カ月まで、こういうことになっておるわけでございます。実は私ども、この取り扱いをするに当たりまして、はり、きゅうの専門家の意見もいろいろ伺ったわけでございます。御指摘のように慢性的なものに使われるケースが多いわけでございますが、通常の場合であれば、負傷または疾病の治療を目的とする場合は大体六カ月でその目的を達するものというふうに専門家の考え方としても示されたところでございます。
 ただ、個々の人によって差があるわけでございまして、したがって、そうした個人差というものに対応できるように、労災の場合には健康保険と違いまして九ないし十二カ月というところを考えておるわけでございます。それ以外に特別援護措置として、さらに必要とする場合にはそれ以外にさらに延長してやる事例もございますけれども、原則的な考え方は、今申し上げたように一応のものは通常であれば六カ月程度で目的が達するけれども、そうじゃない場合、個人差というものもあるので、九ないし十二カ月施術はできるように労災では扱っているという状況でございます。
#50
○河野(正)委員 今、月で区切ってお話があったわけです。健康保険の場合は医療とばり、きゅう、二者択一でどっちか一方しか認めないということですが、その辺が労災の健康保険と違うところであったわけですが、ある意味においてはいい面があったと思うのです。そして、しかも慢性期ですから、急性期でやったってそう大して効果はないわけですから、その辺がやや一般の医療とはちょっと違うと思うのです。でございますが、それは局長にそこを厳しくお尋ねしましても、失礼ですが、行政に明るくてもその方面についてはそう明るくもないわけでしょうから。ですから、はり、きゅうを打ち切る、専門家の意見も聞いたということですが、この専門家の意見というのは明らかにされぬわけですか。
#51
○小粥(義)政府委員 はり、きゅうについてのこの取り扱いをする時点で五人の専門家の方の意見を聞いたというふうに承知いたしております。確かに、いろいろな問題が当時あったようにも聞いているわけでございますが、こうした方々の御意見等では、やはり先ほどお答えしましたように、九ないし十二カ月、したがって一年あれば大体のものは目的達成できるではないか、それ以上はむしろ必ずしも治療の効果が期待できないのではないか、こういうふうな意見が大勢であったというふうに承知いたしております。
#52
○河野(正)委員 専門家に意見を聞くという場合に、その専門家はだれだれという、そういう専門家委員の集め方にもやっぱり問題がありましょうね。でしょうから、できればその専門家がいろいろ意見を述べられたことを何も隠しておく必要ないですね。医学的なことですから隠しておく必要はない。正々堂々と意見を述べられていいわけですから。そういう意味では、やっぱりこの打ち切られたことに対する疑問があるという問題も出ておるわけですから、その専門家会議で検討された中身について資料か何かございましたらいただけますか。
#53
○小粥(義)政府委員 専門家の意見をお聞きする際に、公表を前提としない形で専門家の意見をお聞きしていますので、具体的にどなたがどうという形でお答えをするわけにはまいりませんが、必要な資料については後ほど先生の方に専門家の意見の要約といいますか、そうしたものについてはお示しをしたいと思います。
#54
○河野(正)委員 もう最後です。私がいただくのも結構ですけれども、専門家、学者の意見――学者というのは常に公表するところに学者の意見の意義があるわけです。論文でもそうでしょう。広く論文を発表して世間に訴える。学者の間でいろいろ討議していただいたということですから。だから、そこで専門家が話したことが公開できないということ自身が何か密室の会議みたいでおかしいじゃないですか。ですから、正々堂々ととにかくはり、きゅうはもう十二カ月以上はだめですよというならだめですという根拠を明らかにして発表された方がいい。
 これはいろいろなぜ打ち切られたかということで疑問もある点でございますから、そういった意味で、私は、私がいただくことも結構ですが、むしろやっぱりそういうものは正々堂々と御発表いただくことが望ましいんじゃなかろうか。そうすれば、やっぱりそういうことで不満を持っている人もあるいは納得するやもしれませんね。ですから、私がいただくのも結構ですが、できればやっぱり公表してもらいたいと思います。しかし、もう時間ございませんから、その点だけ一言答えていただいて、あとはもう……。
#55
○小粥(義)政府委員 一般論としては、先生御指摘のようにそうしたものを公開していくのが好ましいと思っております。ただ、先生も御承知かと思いますが、労災の問題につきましては、はり、きゅうに限らずいろんな場合にいろんな声があるわけでございまして、したがって、かえってその公開したことでそれぞれの専門家の方にいろんな形の御迷惑をおかけするケースもあるものですから、そういう扱いをさせていただいている点は御理解を賜りたいと思います。
#56
○山崎委員長 多賀谷眞稔君。
#57
○多賀谷委員 労働基準法は昭和二十二年、同じく労働災害保険法も同じ時期に公布されたわけですけれども、今日まで調整がなされていないというのはどういうわけです。と申しますのは、基準法の場合は最初は給付が同じだったわけですけれども、その後、労災保険法によってあるいは年金化になった、こういう状態の中に依然として放置をされておる。そうして同じ負傷が起こった場合には、これは基準法でいくのか労災保険法でいくのか。しかし労災保険法も強制適用である。そうなると、一体この二つ、少なくとも災害補償について二つの条文があるというのも極めて奇妙な話でありますが、一体いつ調整をされるのか、なぜ今まで放置をされておったのか、これをお聞かせ願いたい。
#58
○小粥(義)政府委員 先生御承知のように、労働基準法の災害補償の規定と労災保険法の関係は同時に施行されましたわけですが、三十五年の労災保険法の改正で基準法は従来打ち切り補償というのがあったものを長期給付を労災保険に導入したところから基準法の災害補償の規定の中身と変わってまいったわけでございます。したがって、その両者の調整は一応の規定は置いてあるわけでございますが、その規定自体もまた、その後の労災保険法の改正等に伴いまして調整規定もまた変わってまいったわけでございます。現在では、労災保険法で相当する給付がなされる場合には、従来は価額の限度という言葉もあったわけでございますが、現在は、労災保険法で相当する給付がなされた場合には基準法による災害補償の責めはなくなる、こういうように一応の調整はできているわけでございます。
#59
○多賀谷委員 なぜこの災害補償について、強制適用ですからね、強制適用における労災補償保険法があるのに基準法の災害補償と調整ができなかったのか。具体的に言うと、一体範囲が違うのかどうか、範囲はどういう点が違うのか、これをお聞かせ願いたい。
#60
○小粥(義)政府委員 二つの面があると思い、ます。
 一つは、適用範囲の問題でございまして、労災保険法は一応全面適用の原則をとっておりますけれども、中に一部まだ適用がされていない部分があるわけでございます。具体的に申し上げますと、農林水産業の個人経営の五人未満の労働者を使用する事業というのはまだ任意適用事業になっているわけでございます。必ずしも基準法が適用されるすべての事業について強制適用になっていない部分があるというのが一つでございます。
 それからもう一つは、例えば休業三日以下の休業補償については基準法に規定がございますが、労災保険法では四日以上についてこれを休業補償給付として行うということにしている部分がなおかつ現時点においても違っているということ。さらに、例えば国鉄とかというようないわゆる公共的な事業体については労災保険も適用になっておりませんし、別途の扱いを受けているというような面がありまして、いわゆる適用範囲の問題と給付内容の二つの面で必ずしも同じにはなっていないというところから完全な調整というものができていない。
 したがって、一方で労災保険法がありながら、なおかつ漏れる部分については労働基準法の災害補償の規定が働いていく、こういうような二本立てになっているわけでございます。
#61
○多賀谷委員 二本立てというのが今の時期においてはそれだけ存在価値があるのか、いや、それはまだ準備ができていないという段階であるのか、これを労働省は一体どういうふうにお考えですか。
#62
○小粥(義)政府委員 労災保険が実質的にはほとんどにわたって強制適用の実態を持つようになった今日の時点では、私どもの考え方としては、将来の方向としてはこれは当然一元化されてしかるべきだというふうに考えております。
 しかしながら、先ほどお答えしたような幾つかの点がなお残されておりますので、これを直ちに今の時点でというわけにはまいらないのですが、実は昨年十二月に労災保険審議会の建議が出されますまでの審議会の中での論議でも、この基準法と労災保険法の関係についてなお詰めて議論する必要があるのではないか、検討する必要があるのではないかという御議論もいろいろあったわけでございます。
 ただ、それにはなお相当時間もかかるということで、建議における当面とるべき措置の中には含まれないで、なお引き続き検討する事項として指摘をされたわけでございます。
 私どもは引き続き検討すべき事項として指摘されましたこの基準法との関連の問題、さらにそれ以外の問題を含めまして、今後さらに引き続いて審議会の中に検討の場を設けて検討を続けていく、こういうことに考えております。
#63
○多賀谷委員 具体的にこの基準法と労災保険法にギャップがあるということについて今後問題が起こるのですね。すなわち、今度はいわゆる基礎日額の算定が違うのですからね。一体こういうものをどういうように考えるのか。今までは同じであったけれども、今からは違うわけですね。ですから、ここに一つの大きな問題がある、私はこういうふうに考えるわけです。
 そこで、若干計数的なことを一つ聞きたいと思うのですけれども、高額の給付を受けておる人は大体どのぐらいいて、そしてその高額の給付を受けている人はどういう職種で、どういう場合にその障害を受けたのか、若干お示し願いたい。
#64
○小粥(義)政府委員 年金受給者の中で高額の年金給付を受けておられる方の数ですが、ことしの二月現在で年金給付額が年間一千万を超える方の数を拾いますと三十人でございます。年齢はそれぞれいろいろな階層の方がおいでになりますが、一番高齢の方は八十七歳の方というのがいるわけでございます。
 その職種でございますが、業種はいろいろにわたっておりまして、建設業、あるいは交通運輸業、あるいは採石業、あるいは水力発電施設の隧道新設事業であるといったようなものもございますが、どちらかといえば建設業あるいは運輸業ないしはマイニング、そういったところの業種の方が比較的多いように感じております。
#65
○多賀谷委員 建設業は主として突貫工事、例えばオリンピックを前にして突貫工事を行っておるというのが最高の額だと思うのです。この方は最近亡くなられたわけですね。そういうことで、いろいろあるのですが、これだってむしろスライドがかなり高いですね、七倍以上になっておる。そこで一千万円を超えたということで、こういうことを考えるとどういうように措置をしたらいいのか私どもも迷うのですけれども、しかし、基本賃金を変えるというのはまた一つ大きな問題があるんじゃないか、こういうように思います。
 しかし、人たるに値する生活ということになると、最低はやはり引き上げていかなければならぬ。殊に弱年で、いわば見習いの時期に電柱から落ちたなんというのは幾らもある。それを永久に安い平均賃金のままで年金も低いというような方は考えていかなければならぬと思うのです。しかし、わずかしかいない最高限度を抑えるということをしなくてもいいんじゃないか。わずかしかいないのですから、上を抑えるということをする必要があるのかと思うのです。それを声を大にして、非常にアンバランスだ、高い人がおるということを盛んに宣伝することは要らないんじゃないか。
 というのは、この審議をする姿勢で私が非常に遺憾に思いますのは、経営者の方からこの基本問題懇談会に最初建議が出ている。それはこの「「基本問題懇談会」において検討すべき事項 労災保険審議会使用者委員一同」に次のように書いてあるでしょう。
  我が国経済は本年に入って容易ならぬ状況になり、輸出が二月以降対前月比でマイナスを続けているのをはじめ、鉱工業生産、出荷の伸びも著しく鈍化し、製造業の稼働率は四月に八二%、六月には七七%に低下するなど、今後の成行きには深刻な不安を禁じ得ない。こうした情勢の下で事業主の保険料負担は現行料率のままでも極めて重いものとなっている。
  かかる現状に鑑み、労災保険制度の基本問題を審議するに当たっては、まず現在及び将来の保険財政について十分な検討を加え、その健全化を図ることが先決問題である。とにかく日本経済はどうにも行き詰まってしまった、こういう前提でこの審議をしなければならぬという態度が出ておるのですね。それに政府は乗っているわけですよ。今貿易摩擦で大変だ、賃金の上げ方が低かったと政府も言っておる、審議会も言っておる中で、こういう建議を土台にして審議が行われているというのは情勢認識が狂っておるんじゃないか。
 もう今内需拡大とか賃金を上げるという大合唱が周辺から応援で行われておるでしょう。ところが、古い情勢を踏まえて調整をするんだ、これ以上保険料を上げたら大変だ、こういうことが全体を通じて今度の答申にあらわれ、そうして法律化されておる、これは非常に遺憾だと思うのですね。以下今からお話をしますけれども、その基本姿勢がそもそも間違っておるんじゃないか、こういうように思うのですが、どうですか。
#66
○小粥(義)政府委員 御指摘の建議が使用者側委員の方から出されたことは事実でございますけれども、これは必ずしも使用者側委員のその建議だけでもってこの労災保険審議会の中での基本問題懇談会の検討が左右されてきたというものじゃございません。
 検討の経過を申し上げますと、労、使、公益、さらに行政各側からいろんな労災保険制度の運営に関する問題をすべて提起して、その中で問題点を整理しつつ最終的には昨年十二月に公労使三者一致で建議をいただいたわけでございます。もちろん使用者側委員としてそうした考え方が基本にあることは私は否定をしませんけれども、そのことだけでもってこの審議会全体の検討がゆがんだということではないというふうに私は考えております。
#67
○多賀谷委員 そういう意見の中で出発したということは非常に不幸である、こういうふうに考えるわけです。
 さて、先ほどから私が問題提起をしております労災保険法とこの基準法との格差の問題ですね。御存じのように、基準法の場合は休業補償は三年でしょう。労災保険法は一年半から年金支給になるわけでしょう。そうすると、年金支給の開始になりますと、今度の新しい基準が施行されるということになると、基準法の方は前の基礎日額でいく、こういうようになっておるわけです。そうすると、一年半を過ぎた後の一年半は基準法の方が上回るわけですね、そういうことになるわけでしょう。これはどういうことになるのですか。受給者本人は年金に切りかわったその一年半分の休業補償の請求権がありますかどうか、これはどうですか。
#68
○小粥(義)政府委員 今回の改正案によりまして傷病補償年金の給付基礎日額に最高限度額が設定されることになりますと、確かに御指摘のように、一年半を超えて三年に至るまでの間、基準法は平均賃金は従来のままであるのに、傷病補償年金の方の給付基礎日額は少なくなる、それよりも下回るということは形として、事実として出てまいるわけでございます。その場合に、じゃ労災給付を受けながらなおかつ基準法での災害補償の請求ができるかということでございますが、一応現在基準法と労災保険の調整規定があるわけでございまして、それでは、相当する給付がなされた場合には云々、先ほどお答えしたように、その場合は基準法に基づく災害補償は行わなくてよいという形になるわけでございます。今回の改正、確かにある部分、基準法よりも薄くなる部分が出ることは、これは否定できないわけでございますけれども、全体として見た場合に、見合う、相当する給付として、休業補償ないしそれに続く傷病補償給付というものは基準法で言うところの休業補償給付、それに見合うものというふうに考えております。
#69
○多賀谷委員 そうすると、調整規定によって基準法に基づく基礎日額の一年半分の差額はもらえないということですか。
#70
○小粥(義)政府委員 結論としては、そういうことになると思います。
#71
○多賀谷委員 しかし、おかしいでしょう、常識に反しますよ。そういう解釈をどうも私は理解できない。これは論議したのですか、気がつかなかったの。
#72
○小粥(義)政府委員 これはいろいろ論議をしたわけでございますが、いわゆる打ち切り補償から長期給付、さらには年金に移行した過程を経まして現在に至っているわけであります。
 その中で、いわゆる年金化することによって期間の利益といいますか長期にわたって給付が行われる利益と、それから、それぞれの時点における給付の額といいますか、それと総体として見合う給付と見るのか見ないのか、こういうことが考えられるわけでございまして、したがって労災保険法の給付が常に基準法の災害補償の内容よりもあらゆる場合において厚くなければならないかというと、必ずしも従来の労災保険の制度としてもそうはなってない部分があるわけでございます。
 それは最高裁でもいろいろな判例が出ておりますけれども、結局それぞれの労災保険あるいは基準法の災害補償、二つの制度があるわけでございます。法理としては事業主の補償責任という共通の法理に基づいてつくられた制度でございますけれども、それぞれの制度における独自性というのもまたその後生まれてきているわけでございまして、そういう観点で個別の給付について価額の限度ということを必ずしも要件としないで調整が行われるように現行の規定がなっているわけでございますから、その辺のところから見ますと、先生はむしろ個別給付ごとに常に対応関係を見るべきだという御意見かと存じますが、私どもとしては、期間と給付の厚さというものを総体として考えて、それぞれの給付についてはむしろ法律レベルにおいて全体として見合うものというふうな判断をしているわけでございますから、その考え方に倣ったわけでございます。
#73
○多賀谷委員 私は権利関係というのは平均行政ではいけないということをかねがね言っているのです。雇用保険の方は殊に私ども主張した。年齢一本であなた方は三十日とか六十日とか切るけれども、栄養士なんかを希望する人は、若くてもなかなか就職ありませんよという話をしたわけです。それは大分前の話で、その後十年ほどたって改正になってまたもとへ返ったんですけれども、そういう平均行政というのは、そういう点で個人の権利というものをそう簡単に剥奪することはできないと思うのです。
 そこで、今度の場合だって三年以内で亡くなったらこの人は損ですよ。ですから、そういう場合には必ず選択というのが制度としては出てくるのです。それを調整するには、高い方を三年なら三年とるという選択制度というのができておるわけですよ。今度あなた方の共済だってそうでしょう。国家公務員の共済だって国鉄を除いたら高い方を選択せよという制度が残るのです、制度としては。ですから、今度の場合でもそういう基準法が上回っておるならばその間はやはり選択をする、こういう余地を残して法律は改正しなければ、わずか一年半の話ですから。一年半後はもう下がった、法律が通過をいたしますと最高限度額によってある程度ダウンしたのがもらえるのです。三年というのはやはり今までの既得権を認めてやる、そうしてそれは選択制にするということが必要じゃないのですかね。率直に言うと、そういう配慮が政策にない、こういうふうに思うのですが、どうですか。
#74
○小粥(義)政府委員 確かに、最高限度額の設定によって給付基礎日額が減額されることになる方について御指摘のような問題はあろうかと思いますが、一方で最低限度額を引き上げる部分もあるわけでございますから、保険制度全体として見た場合、個人個人について確かに御指摘のような問題がございますけれども、全体の制度として見た場合、むしろ他方で最低限度額を引き上げるということとあわせ考えますと、こうした改正案で対応してもしかるべきではないかというふうな考え方に立ったわけでございます。その点は御理解を賜りたいと思います。
#75
○多賀谷委員 制度をつくる場合、殊に経過措置の場合はもう少し配慮が必要ではないのですか。最初の一年半は基準法によるのでしょう、それから後の三年までの間は基準法の方が高い、それで労災保険法にいくと安い、低くなるというのですから、そのくらい人数からいってもわずかですし、一年半ぐらいの考慮というのはやはりすべきですよ。そういう配慮がない。そこが官僚的とか画一的とか言われる。殊に労災の被害者ですからね。これはひとつ大臣、政治的な立場であなたはどう思われますか。
#76
○林国務大臣 この問題につきましては、法改正というものにつながるものでございますから、現状においては今局長が御答弁申し上げたようなことになろうかと思います。
#77
○多賀谷委員 僕は政治家としての国務大臣の意見を聞いたわけですが、これはまあ各党においてひとつ御配慮を願いたい。こういう問題は人数から一いっても財源からいってもごくわずかですから、そのくらいの配慮をしてもいいのではないか、こういうように思います。
 では次に、同じくやはり基準法との関係もあるのですが、監獄等に収容をされた場合に休業補償給付を不支給とするという改正が今度なされた。破廉恥で刑事責任を問われるという場合は私はやむを得ないと思いますが、業務上過失傷害とかいろいろあるのですよ、交通事故とかね。あるいは炭鉱でいえば、職員が保安事故であるとか、随分これはあるのです。そういう場合にも、もう休業補償一切やらぬ、こういうのも、これも配慮が非常に足らない、私はこういうように思うのですよ。
 ですから、逆に、この人だって災害を受けておるのですよ。災害を受けなければ労災の対象にならぬわけです。本人も受けておるのです。ほかの人もけがをさせたりあるいは亡くなった方もあるという、こういう事例は随分多いのです。交通事故なんかは、トラックの運転手も自分でもけがをしておる。しかし事情を聴取するために長く引っ張られておるというのはあるのです。そういう場合もそれは不支給だという、私はこれは問題ではないかと思うのですね。
 今までの解釈例規によりますと、昭和二十三年七月十三日の基収第二三六九号、「業務上の事由によって災害を被った労働者が、監獄、留置所又は労役場に拘禁又は留置された場合でも、災害補償は原則として行うべきである。」こういうふうに書いてあるでしょう。「但し、療養中拘禁、留置または入院せしめられた場合に於いては、その療養は国家がこれをなすべきものであるから使用者においてこれをなす必要はないが、休業補償は荀も負傷疾病が労働することができない程度のものであるときは、使用者において休業補償を行うべきものであって、補償を受くべき労働者が右の施設にあると否とは何ら影響を及ぼすものではない」、あなたの方も言っておる。まあ、これとはちょっと違いますけれども、最高裁の判例も出ておる。でありますから、私はこれも同じだと思うのですよ。これは破廉恥の刑事事件というようなのではないのですよ。ですから、本人が労災補償の給付を受給する資格があるのですからね。相手も業務上過失致死か何かで傷つけておる、しかし自分も、言うならば留置はされておるけれども災害補償の対象になっておるという事件ですよ、この事件は。これについて一切やらないのだ。
 この通達は、一体基準法の通達ですか、労災保険法の通達ですか。
#78
○小粥(義)政府委員 先生今お尋ねの昭和二十三年の通達は、基準法についての通達でございます。
#79
○多賀谷委員 これは今現在生きておるわけでしょう。現時点においてはこの通達は生きておるわけでしょう。
#80
○小粥(義)政府委員 そうでございます。
#81
○多賀谷委員 ですから私は、労災保険法と基準法が乖離されておるとこういう問題が起こるのですね。労災保険がもらえるなら、本人は使用者に基準法の申請をする、あなたの方は調整規定があるからだめですよ、こうおっしゃるけれども、それも大変矛盾した話でしょう。基準法の方をそのままにしておいて労災保険法で行う、そしてそれは調整規定がある。本人からいえばこれは大変ですよ。全然その間生活できないじゃないですか。こういう問題があるのですよ。どうして生活保障しますか。
#82
○小粥(義)政府委員 今回、収監中の人に対する休業補償を支給しないという形に法律を改めたいと考えました趣旨は、先ほど御指摘のあったような解釈例規が出ているわけでございますけれども、一方でほかの諸制度、社会保険あるいは船員保険の労災保険部分といったようなものにおきましては、いずれもそうした収監されている場合に保険給付をとめる形に制度がつくられております。実は基準法と労災保険だけがその辺の規定が必ずしも明確にされてない、こういう状況にあったわけでございます。
 したがって、二十三年当時、あの照会のあった事案についてはそういう解釈通達を出したわけでございますけれども、最近のそうした他の諸制度との関連等も考えまして、今回新しくそうしたものを労災保険制度に導入をしたいというふうに考えたわけでございますが、お尋ねの基準法との関係は、当然、基準法も法律レベルで同じような扱いを書くことが一つの考え方かもしれません。しかし、船員保険の労災保険の場合、既にそうした収監中の場合の休業補償は行わないことになっているわけでございますので、一方で船員法におきますいわゆる基準法に相当する部分の規定ではその部分は触れないで行われております。したがって、今回私ども労災保険法でこの収監中の休業補償給付の取り扱いをこういう形にしたということで、改正が施行されます時点では、労働基準法の同じ部分についても、これは災害補償の細目は命令に委任されておる部分がございます。その中で同じような取り扱いを考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
#83
○多賀谷委員 大体船員法を知らないんだよ。船員法は総合的社会保険制度ですよ。ですから、ベースが、労災というベースよりも、あれはやはり社会保険のベースなんですよ、船員法というのは。ですから所管は厚生省でしょう。大体ベースが統一法ですから、統一法のベースは社会保険的なベースでやる。それは船員法が、御存じのように日本では最も早く社会保険として出発したわけですね。あれは統一法です。ですから、私はそういう意味においては、船員法があるからというのでこれを見習おうなんて、物の考え方が間違っておる、こういうように思うのです。
 それから、いわゆる厚生年金のような場合と違うのですよ。これは例えば業務上の過失致死で、それで自分もその災害をこうむったというような事案を私は話をしているのですよ。どうも配慮が足らぬということはこういうことですよ。収監をされて、何か破廉恥か何かで監獄に入っているという物の考え方をするから、監獄にそういう人が入っていて、どうしてその人が災害補償の適用を受けるような人がおりますか。それは少ないです。それは本人が罹災者であるという、それから相手も過失傷害か何かで、事故でけがをしたという場合がほとんど多いのですよ、労災の場合は。ですから、何か厚生年金の場合にありますというような事案と違うのですよ。
 ですから、私はここに、ただしこういうものと――しかし、労災で罹災者の場合は主としてそうでしょう。私が言う事例が多いでしょう。ですから、私はそれもまた配慮が足らぬと思うね。
#84
○小粥(義)政府委員 確かに、こうした問題を今回改正案に盛り込むことにした一番大きな理由といいますか、考えられるケースというのは、いわゆる破廉恥罪で入っている人になぜ補償しなければいけないのか、こういうような問題が実はあったわけでございます。
 ただ御指摘のように、みずから業務上の災害にかかりながらなおかつ収監をされるケースがないとはいえないわけでございます。果たしてその場合まで休業補償しないことにするのかどうか、実はこれはいろいろ議論があったところでございますけれども、その場合に労災保険では、収監されるとなれば本人に故意または重大な過失があるということに恐らくなるだろうと思うのですが、そうした形で業務上の災害に遭った場合、実はこれは支給制限になってしまうわけでございまして、したがって、そういう場合は実はもともと給付がなされないケースがほとんどじゃないか。ただ、そうじゃないケースもあり得るかもしれないというふうに考えまして、そこで健康保険等とは少々法律の規定が違っておりまして、特に労働省令で定めるものに限定してやることにいたしております。今後、その省令の決め方の中でそうした点をどういうふうに処理していったらいいか、なお検試したいと思っております。
#85
○多賀谷委員 一般の社会保険における休業補償的なものと、本人が罹災者であるという場合、そういう場合はやはり何らか考慮すべきである。ですから、最初この法律を一貫して読むと、残念ながら、今までの問題点、例えば若年の場合、けがをした人を引き上げるとか、そういうものを除くとどうも財政的な面からアンバランスになっているということを盛んに強調されてそれを行われておるんじゃないかという点に視点が置かれて、どうも配慮が足らないんじゃないかという点、これも私は配慮が足らぬという一つの例として申し上げたい。
 続いて、私は同じことを質問したいと思う。
 それは一部労働の場合の休業補償給付は給付基礎日額と当該労働に対して支払われる賃金との差額の百分の六十に該当するが、要するに一部労働しておる、だからそれだけ収入がある、その分は引くんだ、こうなっているのでしょう。今までこれは引いたことはないのですね。ここはちょっとアンバランスになっておるのではないかというけれども、この一部労働をしてそして休業補償をもらっている人というのは大部分後遺症ですよ。そして会社に忠誠心があるから無理に来ているという場合もある。そして後遺症でリハビリに行ったり、いろいろしているという例が多いのですよ。この規定は非常に真の職場復帰を促す規定なんですよ、精神的に言うと。
 それをまたしゃくし定規に、一部労働をしているから収入があったんだから、残りの分の百分の六十にするという、これも重箱の隅を掘るようなことが行われておるが、これが一番活用されておるのは、職場復帰を早くして正常な体に治すために一部労働をしながら、そして体をならしながら職場に行く、しかしまだリハビリやその他行かなければならぬから休む、こういう場合が多いのですよ。この効果を認めないのですか、あなたの方は。
#86
○小粥(義)政府委員 リハビリなり後遺症を持っている過程において一部働きながら社会復帰の努力をする、こういうケースはもちろん多々あるわけでございます。
 ただ今回そうした一部給与の場合の休業補償の取り扱いを変えたいというふうにいたしましたのは、例えばの例で申し上げますと、半日休業して半日働く場合、半日の就労に対しては当然賃金が出るわけでございますが、一方、現在の休業補償は一日単位でやっておりますから、そうしますと、一日の六割と半日分の就労を合わせますと、実は一日丸々働いている人よりも高い額になってしまう、こういうような点が不合理な面として指摘をされたわけでございます。
 その点を是正しようということで、他にそのために給付の節減だとか、あるいはそれで財政をどうこうするとか、そういうような意図を持ってやっているものではございません。あくまでその点をとらえて、通常の人が一日働いている場合よりも割合としては多くなるケースが出る、そうした点を改善したいというだけでございます。
#87
○多賀谷委員 これは罹災者ですよ。そして恐らくその職場における罹災者ですね。そういう観点から物をとらえないで、どうもアンバランスではないか、こういう観点から物をとらえるというのは間違い。それは日本的慣行と言いながら、あなたは日本的労働慣行を知らぬですよ。半日出て帰るというのは本人からしても容易でないのですよ、気持ちが。やはり一日中勤めたいんですよ。私は先に失礼しますなんというのは本人から言うと容易ならぬですよ。あるいはまた半日しか出られないという人、本来ならば休まなければならない人が半日でも出て会社に貢献をしたいという気持ちでしょう。
 そういう何か犯人のような物の考え方をしているんだな、全体に。基本的には労働災害の罹災者であるという観点が今度の改正は全部抜けているのですよ。これは非常におかしいことじゃないですか。
#88
○小粥(義)政府委員 もちろんその災害に遭われた御本人の問題でございますから、社会復帰のために必要なものは当然対応を考えていかなければならないわけでございます。その点は、別途労働福祉事業でいろいろな形の仕組みを持っているわけでございます。
 今回のこの一部休業の場合の取り扱いは、先ほど申し上げたような趣旨で改正案に織り込んだものでございます。この場合も、先ほど一日分の六割と半日分の賃金で云々と申し上げましたが、休業補償については、御承知のように労働福祉事業でさらに二割特別支給金が出るわけでございます。したがって、それらを考え合わせますと、余りにも通常働く場合よりも差が出るのもいかがかということも一方から見た議論としてあるわけでございます。そこで今回、休業した時間に対応する六割、こういうことになるわけでございますが、その場合、もちろん福祉事業での二割の特別支給金は出るわけでございます。そうしますと、一日分の収入として見た場合、それではなかなか生活できないといったことではなくて、今申し上げた通常働いている人との均衡の問題であるというふうに御理解を願えるかと存ずる次第でございます。
#89
○多賀谷委員 そのことは、そういう声は職場から出たのですか。あなたの方で頭の中で考えたのでしょう。職場からあの人は一日分もらっておるからけしからぬなんという意見じゃないですよ。役人が頭の中で、いや、これは算術計算すれば矛盾だななんて、そんな非難なんて職場には起こってないですよ。私は、どうもどこか直さなければならぬからどこを直すかという、全部算術計算でやっておる、そういう考え方が先行しているんじゃないか、こういうように思います。これも問題点だ、かように思っています。
 そこでその次、例の通勤災害ですね。これは私も大変思い出のある法律ですけれども、昭和四十八年に、当時の石井労災管理課長といろいろ論議をしまして、一問一答をやって、その前には文書で書いて、とにかく初めてのケースですから、フランスなんかは早くからやっておりますからいろいろ事例があるわけですが、日本には全然事例がないので逸脱とか中断とか通常の経路とかいろいろやりまして、そして文書で書いたのを基準局長から答弁願って、それが通達になったという大変思い出があるのです。
 ところが、大分時代が変わっておりまして、そして各国の立法も事例もかなりできた。ただ、外国の場合と日本の労働慣習が違うのですね。これは見なければいかぬですよ。外国の場合は家庭というものを非常に重要視する、そしてある仕事をしておっても時間が来るとぱっとやめて自分の家にさっと帰る。ところが日本はそうでないでしょう。残ったものを残業手当がつかなくてもやる。そして帰りがけに友だちと一杯飲むという、こういう慣習なんですよ。そういう慣習と外国のように時間が終わったらぱっと仕事をやめてすぐ家庭へ帰るという場合と非常に違うのですね。ですから、あなた方は日本的労働慣行と言いながら、今我々が振り返って反省をしなければならぬのは、とにかく最初は外国の事例しか我々の頭にないわけですから、外国の事例を一生懸命見ながら通達を出した、しかし、かなり時代が変わっておるということですよ。それで一、二、私は質問をしてみたいと思います。
 そこで、まず今までずっとおやりになったのですけれども、逸脱及び中断の認定事例を少し申し上げたい。
 帰宅途中で食事をとり、再び通常の通勤経路に復した場合の災害、これは認めていませんね。すなわち、この人は妻帯者で、妻帯者が理由になるかどうかわかりませんが、妻帯者が通勤の途中で食事をとる行為は「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行なうための最少限度のもの」、それからもう一つは、「ささいな行為」ですね、これが二つ、通達で要件になっていますね。ところが、これには該当しない、こういうことで、要するに通勤途上の災害としては認定されなかったわけですね。
 それから、コーヒーを飲むというのもありますね。喫茶店に立ち寄って過ごした行為は通常、通勤の途中で行うような「ささいな行為」にも該当しないし、「日用品の購入その他」云々の最少限度のものとも認められないので、中断後の災害に該当するということでこれも認められない、こういうことになっておりますね。
 これは日本的と言えるかどうか。これは日本的でしょうね、会議を終わって慰労会というので料理店に行って、それで帰宅中の災害。これも認められない。しかし、これなんかはあるのですよね、実際は。そして慰労会というのは自分だけ出ないと悪いような、これは義務ではないけれども、上司も出るし、断るわけにもいかないというのが日本的慣行ですね。しかし、認めていない、こういうことです。ところが、理髪店に寄るというのは認めてくれておるのですね。
 それからいろいろあるのですが、通達では「ささいな行為」の中に通勤途上でのどが渇いたといって駅構内でジュースの立ち飲みをするとか、たばこ、雑誌を買うとか、また大道で手相を見てもらうとか、これはささいな行為であるからよろしい。ところが、ジュースだけではなくて駅構内のビールはいいのですね。そういうふうになっていますね。ビヤホールはいかぬわけですね。しかし、駅構内のビールはいいということになっていまして、これは今度の条文で少し法律が変えられてましょう、あれは意義があるのですか。この「当該逸脱又は中断が、日用品の購入その他これに準ずる」という言葉を「日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるもの」云々とありますが、これは今度の改正でかなり幅を広げられるのかどうか。どうですか。
#90
○小粥(義)政府委員 今回の通勤災害の改正部分は、御指摘のように従来の通勤災害の特に逸脱、中断の取り扱いが余りにも厳格過ぎるんではないかという御意見等もございまして、そこで逸脱、中断を認める範囲を広げようということで今回の改正をお願いをしているわけでございます。
 具体的に省令で何を決めるかは今後の問題でございますが、現在までのところで考えておりますのは、いわゆる定時制高校へ通うとかあるいは訓練校へ通うとか、あるいは病院の場合も特に時間のかかる腎臓透析といったことを定期的にやらなければならない方もおられるわけでございますけれども、そうしたような方もやはり日用品の購入とかそうしたものに限定しないで認めるべきではないかといった御議論が審議会の中でもございまして、そうした行為を具体的に省令で定めることによってその範囲を広げたい、こういうふうに考えております。
#91
○多賀谷委員 新宿のバス放火事件に伴う労災認定をしていただいて大変我々喜んでおるわけですが、これはちょっと後から言います。
 ついでに、通勤途上の問題で単身赴任者の往復というのはどうなんでしょう。
#92
○小粥(義)政府委員 実はその問題も審議会の中で労、使、公益、各側それぞれいろんな議論が交わされたわけでございます。結論としては、現状でこれを通勤途上災害と見ることは難しいということで今後の検討に譲ってございます。
 その趣旨は、現在、例えば東京に通う方が住所が小田原あたりで遠くて、毎日通う場合に前の日が遅くなった場合なかなか困るといったことで、都内に別にもう一つの居を構えて、言うなら二つ持って通勤するといった場合に、例えば小田原の方の住宅に毎週帰ってそこから出勤したような場合、これは通勤途上として認めたケースがございます。
 しかし、東京と大阪のようなそう頻繁に往復できないような場合に、これを通勤と見るのかどうかというのが実は審議会内部でもいろいろ議論がございました。結論としては、例えば単身赴任者をどういうふうな定義でとらまえたらいいのか、さらに通勤と理解するためにはどのくらいの頻度で家族のところと往復するものをとらえるべきなのか、その頻度の問題とか、つまり、そういった通勤と見るべき家族の住んでいるところとの往復の範囲のとらえ方、これは非常に技術的に特定しにくいのじゃないかといった問題がございまして、したがって今の時点でそこまで直ちに通勤災害として扱うことは難しい、今後引き続きさらに検討を進めていこう、こういうことになっているわけでございます。
#93
○多賀谷委員 労働省の方で労災保険審議会の労使の方々と諸外国の例を調査をされてその報告書を我々いただいておるわけです。「労働者災害補償保険審議会委員海外視察報告書」、これを見ますと、フランスは単身赴任者を認めていますね。ですから、日本の場合はこれだけ社会問題になっておるのですから、認める方向で検討してもらいたいと思います。
 そこで、金子先生もかつてやられたのですか、新宿バス放火事件に基づいて秋葉静枝さん、横尾智恵子さんの事件について労働省は通勤途上災害として認められたということについて我々も敬意を表する次第です。
 これを見ますると、我々大変参考になるのですけれども、一つは秋葉さんの事件ですね。赤坂の会社から退社したのが六時三分。新宿で長男と待ち合わせて近くで靴を買った。夕食の準備のために買い物をした。それから次男と夕食をしているのです。自分はバスで帰宅しようというので九時八分に乗って、九時八分に悲劇が起こった。その間三時間五分かかっています。ですから、私はこれを認めたのは非常にいいというのは、今までと違って夕食をしているのですね。それから日用品ではない靴を買っているのですね。これはなかなかの英断だと思うのです。ぜひひとつ今後もこういうように取り扱ってもらいたい。
 それから横尾さんの場合は、派遣先のデパートに勤めておったのですけれども、喫茶店で五十分くらいデパートの人々と在庫やその他の話をした後に新宿へ向かい事件に遭った、こういうことです。これは喫茶店に行った、しかし理屈をつけて、喫茶店では業務の打ち合わせをしたとかいろいろ書いてあるのです。
 こういうふうに見ますると、労災の通勤途上も、おっしゃるようにもうかなり拡大をする時期に来ておるのじゃないかと考えるのですが、どういうようにお考えであるか。
 それから、聞くところによりますと、この事案は認定事例の中に載っていないというのですが、これは載せるのでしょう。あなたもこれは特殊だから認定事例に載せない、こう言うのですか。これは今後の参考のために載せるのでしょう。どうですか。
    〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
#94
○小粥(義)政府委員 通勤災害の特に逸脱、中断の具体的なケースの取り扱いは、先ほど来先生いろいろ御指摘になりましたように、実はいろいろなケースがございます。したがって、これはたしか四十八年からですか、制度ができましてから既にある程度の年月を経過しているわけでございますが、そうした事例集を私どもケース別に整理をしまして、これを全国の各基準局あるいは監督署に徹底も図ってまいっているわけでございます。
 ただ、先生のお持ちの事例集の中には先ほどの新宿のバスの件は載っておりませんけれども、そうしたケースについては、当然、判断に困る場合は各監督署あるいは局から本省あて相談もあり、稟伺があってその上で判定を下す、こういうようなこともやって、なるたけ全国統一的に行われるような体制をとっておりますけれども、中には必ずしもそうじゃないケースがあって、若干ちぐはぐと指摘をされる部分もあることは率直に言って認めざるを得ないわけでございますが、私どもそうした事例も今相当積み重ねられてきておりますので、そういう中でさらにこうした認定事例のあり方についても考えていきたいと思っております。
#95
○多賀谷委員 それでは、今の新宿の事案というのはこの事例集に載せられるわけですね。
#96
○小粥(義)政府委員 事例集に載せますのは、地方から本省へ稟伺があった事案について載せているわけでございますが、新宿の件は実は稟伺がなくて処理をしたケースでございますので、その意味で事例集に載せるに至らなかったということだそうでございます。
#97
○多賀谷委員 そんなことないでしょう。これだけ大きな問題になったんだから、本省と十分協議をしてやったわけでしょう。やはり載せるべきですよ。そして、拡大をしていいんじゃないですか。私はまだ若干ほかのことも言いたいのですが、もう時間がありませんから……。
 今後増大を懸念される労働災害を見ますと、まず産業用ロボットによる労働災害、それから後から申し上げますがVDT労働による職業病及び労働災害、半導体産業による労災、職業病の問題、それから今から高齢者の就労に伴う高齢労働者の災害の増大の懸念があるのです。これも考えなければならぬ。それから急性死、過労死、脳卒中とか心筋梗塞の問題、それからテクノストレスの問題、主として精神衛生、心の問題、これは心因性の問題について判定をしていただいたものですから、これは敬意を表しながら後から質問したいと思います。それから雇用機会均等法施行による女子の労働災害の問題、それから労働者派遣事業法の施行に伴ってその教育訓練その他の問題と関連をしての労働災害、それから原子力発電と労災問題、こういう幾多の問題があるのですけれども、その中で私は心因性精神障害と労災認定の問題に触れさせていただきたいと思います。
 これはかなり有名な事件ですが、うつ病を労災認定をした。この事件はよく御存じですから役所に説明をする必要はないのでございますが、これは珍しい事件ですから紹介をしておきたいと思いますが、残念ながら時間がありませんから紹介は省きます。
 これは私は率直に言いますと、従来の行政解釈よりも範囲を広げたなという感じを持つのです。ところが、労働省の方はなかなかそうはおっしゃらないで、これは補償課長がわざわざ記者会見をしているのですね。まず精神障害の疾病について業務に起因することが明らかであると判断した、それから労災認定の考え方は今までとは変わったととられては困るんだ――ちょっとこれが問題だと思うのです。今までとは違っていないんだ。しかし、やはり違っているんじゃないかな、業務執行とか業務認定というのは少し変わってきておるのじゃないか、喜ばしい方に変わってきておるのじゃないか。そうして、この方は精神障害になりやすい特性として責任感が強い、気が小さい、潔癖などがあるが、本人はそれが通常の範囲内であった、異常ではないということですね。その他いろいろあるわけです。これは将来の大きな問題でありますからぜひ触れていきたいと思いますが、言うならば新しい、極めて実情に即した認定ではなかったかというように私どもは思います。
 というのは、今から過労状態あるいは仕事の悩みというものがやはり精神的に障害を生ずるストレスというものをどういうふうに考えるのか、これは大きな問題だと思うのですが、これについて御意見を承りたい。
#98
○小粥(義)政府委員 最近新しい技術革新の進展などに伴いまして労働密度が非常に高くなっている、また緊張感が極めて高まる、こういったようなことからそれが精神的にストレスとしてたまり、このストレスが高じますと一つの障害にまた転化していくというおそれも多分にあると思います。そういう観点で、例えば従来自損行為は労災の認定では対象外、こういうふうにしていたわけでございますけれども、そうした職場でのいわゆる精神的緊張の高まりがうつ病的なものを生み出し、また、うつ病についてのいろんな医学的な知見が集積される中で、うつ病にかかった場合に自損行為に走るというのも一つの因果関係が認められるというようなことから先ほど御指摘になったようなケースについての業務上の認定をしたわけでございます。
 これが、いわゆる自損行為はすべて今後セーフだよということではないので、その意味で補償課長が御指摘になったようなことも申し上げたかと思うのです。ただ、これは個別のケースについて判断して業務起因性なりが認められれば、当然業務上の認定をすべきものと私ども考えております。個別のケースについてそうした業務遂行性ないしは業務起因性というものを的確に判断するように今後とも努めていきたいと思っております。
#99
○多賀谷委員 これは新しい職業病として考えられるものでVDT障害、国際的にも、各労働組合も大変真剣に取り組んでおるわけです。
    〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
いろいろ障害が起こるという問題あるいはまたそれに対すも学会からの意見あるいはそれに対するいろいろな反論が起こっております。
 自治労と岡山大学医学部の共同研究がこの前、日本産業衛生学会で発表されておる。それによると、「妊娠の経過および出産」「分娩時の経過」「出生児の健康状態」いろいろあるわけです。これも残念ながら時間がございませんが、要するに、分娩時の経過等は明らかにVDT作業者は前期破水や吸引分娩など異常な状態が起こっておる。これが一般の人の約二倍であるというデータの紹介があります。
 それから、出血多量とか、逆子の異常胎位も一般の人よりも多い傾向にある。それから、出生児の健康状態を見ると、体重二・五キロ未満の低体重児が生まれた割合が約倍であるということ、それから生後二十八日、四週間以内に死亡したケースがこの事例では三・四%ある。一般はゼロである。それから仮死状態で出産をした者が一般は八・三に対して一四・三ある、こういうふうにかなり異常が認められるデータが出ておるわけです。
 これらについてどういう研究をされておるのか、あるいは現実に例えば一時間働かせたら従来十分ないし十五分休憩するとかいろいろありますが、殊に妊娠中の者についてはどういう配慮がされておるのか、これらをお聞かせ願いたいと思います。
#100
○小粥(義)政府委員 VDT作業と異常妊娠との関係でございますが、先ほど先生から御紹介もございましたが、それ以前に実はアメリカで関連があるのじゃないかという事例の発表が行われたこともございます。ただそのアメリカのケースについては、その後アメリカの労働安全衛生研究所なり産婦人科学会あるいは昨年MEに関する国際シンポジウムを開いたのですが、そこで各国から来た学者の中で必ずしも異常妊娠とVDT作業との因果関係というのは認められないという意見がございまして、現在までのところ、各国のそうした医学的知見を私どももいろいろと集めているわけでございますが、現状においてはVDT作業と妊娠、出産異常の間に因果関係ありと認められる医学的知見というのはまだ確立されてない、こういうふうに私ども現段階では考えているわけでございます。
#101
○多賀谷委員 医学的にはまだ十分確立されてないということですが、これはひとつ研究をお願いいたしたい、こういうように思います。
 そこで、時間もございませんが、最後にけい肺あるいは脊損でも同じですが、具体的に言いますと、けい肺で長い間病院にいた――飯塚の病院でありますが、昔は炭鉱病院でありまして、その炭鉱に勤めておった人がけい肺になった。そうして二十四年間もけい肺の状態が続き、かつて炭鉱経営の病院であった病院に入院していた。そうして最後に消化管出血ということで、これはけい肺との相当因果関係はないということになった。ところが、もう死期が近づいているその人がなぜ今日まで衰弱をしてそういういろいろな症状が出ておるのか。私はこういう点を見ますと、結局やはりけい肺が起因して衰弱をしておる。そこで、この罹災者の食道及び胃腸等の消化器の内壁及び血管等が潰瘍の炎症をなしておる。それが障害を発生し消化管出血をもたらした。やはりけい肺で薬物を非常に使ってあるいは副作用が起こったのじゃないか。この人は結核も併発しておりますが、そういう配慮をしてやらないと、奥さんの方は労災保険、要するに遺族年金をもらえないという状態です。
 ですから、いろいろ例がありますけれども、本来これなんかは、炭鉱で災害を受けて炭鉱病院にいてそういう状態です。お医者さんは全くそれと無関係な大学から来たばかりのお医者さんが診断をした。こういう場合もあるので十分検討してもらいたい。これは再審査請求になっておりますから、ひとつお願いをしたい。
 それから、例の労災以外のけい肺及び外傷性脊髄の場合に、昭和三十五年三月三十一日において打ち切り補償が年金にかわった時点以前に打ち切り補償をもらったために年金の請求ができなかったという、この点も、お医者さんが皆介在をして、いや注意いたしましたというようなことで異議申請をしなかったという事例が多いのですけれども、三万六千五百円、御存じのように療養のほかに手当が来ております。それから介護料も来ておりますが、問題は、個人病院に入院した場合に、完全看護のところはよろしいですけれども、一つは、婦人の場合はやはり個室ですね。男女一緒の中で婦人が排便とかするのはなかなか困難である。これは脊損の場合です。そういう場合は、僕は差額ベッド代は出してやる必要があるのじゃないか。それから介護も、個人病院の付き添いは三万六千五百円では来ませんね。これも配慮してやる必要があるのじゃないか、人数からいうとそう多くないのですから。これらもせっかく制度ができて、そして現実に療養をしておるわけですがら、これはひとつ配慮してもらいたい、こういうように思うのですが、いかがですか。
#102
○稲葉(哲)政府委員 先生今御質問のケースでございますけれども、御質問の中にもございましたけれども、現在、御質問のようなケースにつきましては、介護料といたしまして通常の場合と同様の金額を支給することにしているわけでございます。また、療養の範囲につきましては、これは一般の労災患者と同じ扱いにいたしておりまして、個室ベッドにつきましても、一般の労災患者と同じ扱いということでもって取り扱っておるところでございます。
#103
○多賀谷委員 今、一般というか、年金制度になってからの患者と同じ扱いにされているのですか、介護料も一般の脊損患者と同じようにしておるのですか、間違いありませんね。
#104
○稲葉(哲)政府委員 介護料は、先ほど申し上げましたとおり三万六千五百円にいたしております。それから、差額ベッドにつきましては、一般の労災患者と同じように療養の範囲に入れておるわけでございます。
#105
○多賀谷委員 いやいや、それは、その金額では事実上差額ベッドに入れないだろう。大橋さんも質問しておりましたが、差額ベッドの問題と、それから一般、一般とおっしゃるけれども、在宅の一般と病院の一般、両方ともそうですが、医病院の場合は、付き添いの場合はこれは現実に年金化が成った患者とは違うでしょう、三万六千五百円で現実に付き添いさんが来ておるのですか、来ていないでしょう、そんな付き添いは。
#106
○松本説明員 現在の取り扱いについて申し上げますと、今御指摘の労災保険の打ち切り補償を受けました長期療養者につきましては、療養援護金という名前で今の三万六千五百円が出ておるわけでございますが、そのほかに、例えば室料、特別室が必要な場合につきましては、個室に入られました場合には二千八百円、二人部屋の場合には千三百円という金額の扱いにしておりますが、これは一般の労災患者と扱いは全く同じでございます。それから、特別看護加算につきましても、労災診療費の算定基準に準拠した額を支給することにいたしておりますので、その点についても一般の労災患者と同じ扱いにしておるところでございます。
#107
○多賀谷委員 そうすると、医療、付き添いあるいは病室、これについては同じだと見ていいですか、間違いないですね。
#108
○松本説明員 同じでございます。
#109
○多賀谷委員 時間が来ましたからこれで――まだあるのですか。それではもう少し……。
 そこで僕は、さっきちょっと申しましたが、認定の問題で、殊に脊損あるいはけい肺という長期療養の人、そうして衰弱している、これはいろいろな病気が出ておるわけですよ。けい肺になったということあるいは脊損であるということ、そうして、先ほど一例を申しましたけれども、亡くなったときの診断は消化管出血というので出ておる。ところが、なぜ消化管出血になるかというと、やはりもとはけい肺ということになるわけですね。ですから、そういう場合に、少し考慮をしていただければ遺族年金がもらえたのに、言うならばお医者さんの方は労災というような観点が全然欠如して、消化管出血というだけで、因果関係がないということであります。
 私が今申しました事案というのは、重症けい肺症状が高進をしておりまして、そしてだんだん死期を迎えつつあった。しかも、炭鉱病院にずっといたわけですよ。もう何年も入っていたのですね。そうして、亡くなるときに病名が違ったというので全然認められないというのは、何としても不合理ではないかと思うのです。そういうのは、けい肺との相当因果関係があると認定していいのじゃないですか、どうですか。
#110
○小粥(義)政府委員 先生が今御指摘の事案について具体的にどうこうとは私、申し上げられませんが、一般論として申し上げますと、実は今回の改正案をまとめるまでの過程でも、審議会の中でもいろいろ御議論ございました。特に、例は脊損患者であったわけでございますが、脊損患者の方が長期にわたって療養生活を過ごした後で亡くなった、ただし、その亡くなられた死因が脊損とは直接関係がないという場合には、いわゆる業務上の死亡にならなくなるわけですから、長年介護をされてきた方も遺族補償が受けられないということで、極めて悲惨な状態にある方がいるというような問題も提起されたわけでございます。
 そこで、そうした明らかに業務上しゃない死亡の場合、長かったからということでこれをあえて労災で対応するわけにはまいりませんけれども、実はその脊損の例で申し上げますと、脊損患者の場合はいわゆる知覚神経が麻痺しておりますので、通常でしたら当然脊損に併発してくる余病というものについて、症状を早目に訴えればそれに対する対応も医学的にやれたのに、その訴えがなかなか出せないためにおくれて余病が発生し、またそれが手おくれになるということもケースとしてあり得るというような議論もございました。
 したがって、いわゆる長期療養をされた方が亡くなられた場合の直接の死因と長く療養されていた疾病との因果関係については、今申し上げたような知覚神経が麻痺しているというようなことから来るいろいろな要素もありましょうし、あるいは先生御指摘になったような薬の服用がいろいろな形で影響を与えたということも考えられようかと思います。そうした点の因果関係については、さらにもっと、今までは単純に処理をしていた部分があったかもしれませんけれども、もっと因果関係について精緻に調べて対応していくべきじゃないか、こういう御議論がございましたので、私ども今後その面の研究を進めたいと思っております。
#111
○多賀谷委員 どうもありがとうございました。我々もかねてから、長期療養者の場合に、病名が今までの災害の原因になった病気に起因しないということのために遺族年金がもらえないというのは、この委員会でも私ども随分指摘したわけです。なるべくひとつこれらを十分検討して、安易にお医者さんが書いた最後の死因だけで判断をしないように、なるべく拡大をして遺族年金がもらえるようにお願いをしたい。私ども、制度としては遺族年金を支給すべきだと考えるのですが、とりあえずそういうようにしてもらいたい、こういうように思います。
 以上で終わります。
#112
○山崎委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時四十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
#113
○山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
#114
○大橋委員 私は、初めに最近における労働災害の発生状況についてお尋ねしたいと思うのですが、発生件数、総体的にはどのような水準で推移していっているか、これをお願いしたいと思います。
#115
○小粥(義)政府委員 我が国の労働災害の発生状況でございますが、発生件数としては、実は昭和三十六年がピークでございまして、その後漸次減少いたしてまいっております。最近の数字を申し上げますと、労働安全衛生法ができました四十七年以降十数年間で死亡者数はほぼ半減いたしました。また休業四日以上の死傷災害も四十七年の四分の三程度にまで減少しておりまして、長期的に見ますと減少傾向にあるわけでございます。
 ちなみに昭和六十年の数字を申し上げますと、休業四日以上の死傷者数は二十五万七千七百人、そのうち死亡者の数は、六十年の最終的な数字はまだ確定しておりませんで、一応の推計値ではございますが、二千五百七十人というふうになっております。そういう意味では、長期的には低落傾向にあるのですが、実はその減少の仕方が最近鈍化する傾向にあるわけでございます。そういうのが最近の発生状況でございます。
#116
○大橋委員 今の御説明によりますと、労災は全体的には減少傾向にある、しかしながら最近また減少傾向が鈍化してきた、こういうお話でございますが、その原因はどこにあると分析しておられるか、その点についてお尋ねします。
#117
○小粥(義)政府委員 最近の労働災害の発生状況の中身を見てみますと、林業であるとかダムの建設工事といったような特定の業種では依然として災害率が極めて高い。そういう特定業種での災害率が思うように減らないというのが一つございます。それから、大企業と中小企業を比べた場合に、中小企業での労働災害の発生件数が高いわけでございますけれども、この中小企業での発生件数の減少が思うように進んでいない。それから、高齢者の災害にかかるウエートが全体から見ると年々ふえてきているわけでございます。高齢者の災害問題も一つの理由であろう。
 以上、重立ったものを挙げますと三つぐらいあろうかと思っております。
#118
○大橋委員 今の説明によると、最近また減少傾向が鈍化してきている理由としては、林業関係等の特定の業種である、あるいは大企業と中小企業とを比べるとやはり中小企業がかなり含まれておる、それから高齢者の作業現場等々が挙げられるという話でございました。
 労災事故を大幅に減少させるためには、何といっても労働安全衛生対策の抜本的な充実を図る以外にはないと私は思うのでございますが、何か具体的な施策はあるのかどうか、この点は大臣にお尋ねしたいと思います。
#119
○林国務大臣 先生御指摘のように、労働災害防止対策につきましては、従来から第六次労働災害防止計画に基づきまして計画的にいろいろな対策を推進しているところでございます。先ほど局長の方から御答弁申し上げましたように、災害の減少の鈍化というのは、高齢化あるいはまた技術革新による対応とかといったようなことにも原因があろうかと思います。特に中小企業においてはそういった傾向がよく見られるわけでございますので、労働省といたしましては中小企業共同安全衛生改善事業助成制度を創設いたしまして、こういった災害を防止するために努力していかなければいかね。それから新技術関連の対策といたしましては、バイオテクノロジーとかIC製造工程にかかわる安全性に関する研究、こういったものをいたしまして、今後とも労働災害防止対策を最重点施策として積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
#120
○大橋委員 実は報道で知ったのですけれども、昭和六十一年度から労災指定団体制度が発足されるということでございますが、その趣旨、内容について御説明願いたいと思います。
#121
○小粥(義)政府委員 労災の料率改定を三年ごとに行っております。実は、六十一年四月が改定の時期に当たっているわけでございます。毎回の料率改定に際しましては、特に災害の多い業種、言葉をかえますと労災の収支率が悪い業種でございますが、そういう業種について何とか収支改善の方策をそれぞれの業界でとっていただくということを従来やっていたわけでございますが、必ずしも思うような効果が上がらない。上がらないといいますのは、単に収支面の改善という観点だけですと、根っこにあります災害防止の問題がどちらかといえば横に置かれてしまうという問題もございますので、六十一年度から新しく労災指定団体制度を設けましたのは、一つには、その業種での労災の収支率の改善を図る、そのためには基本としてその業種での災害防止対策を進めていく、その結果、収支率もおのずから改善されていく、こういう関係になるわけでございますので、そういう災害の多い業種について、その業界で自主的に団体としての災害防止、ひいては労災保険料率の収支改善に取り組んでいただくことをお願いしよう、その場合には当然行政としてもいろいろな面でのお手伝いをする。特に、災害防止につきましては、技術的な問題もございましょうし、あるいはアウトサイダーでの災害が多いといった問題もございますから、アウトサイダーについてもできるだけ団体の中に入って自主的な活動に参加してもらうという面では行政としていろいろお手伝いすることもあろうかと思っております。
 そういう団体を四十一団体指定をいたしまして、その団体で自主的に労働災害防止活動を進めていただく。その際に、例えば技術的な面で第三者の意見を聞いて進めた方がいいと思われるところについては、そうしたコンサルタントであるとかあるいは社労士であるとか、そういったような人の知恵も出していただく、そういうような仕組みを団体を単位として今後進めていこうということで労災指定団体制度というものをつくったわけでございます。
#122
○大橋委員 大体理解できましたが、要するに労災保険収支率の悪い企業を選び出すわけですね。それが今の説明では四十一団体ということになるわけですね。代表的なものでいいですから、後で何社が、こういうものだということをちょっと教えていただきたいのです。
 それから、この労災指定団体制度を発足させることによって労働省はどういうところに期待しているか、その効果についてどういうふうに大体予想しているのか、その点もあわせて説明願いたいと思います。
#123
○小粥(義)政府委員 先ほどの指定団体四十一団体、業種としてはいろいろにまたがっておりますが、例えば林業であるとか、林業は保険料率も極めて高い部類に属するわけですし、かつ災害も多いといったような事例がございます。そういう意味での四十一団体でございますが、重立った業種は後ほど先生に御報告させていただきたいと存じます。
 そうした指定団体制度を設けますことによって、――先ほどもちょっと触れましたが、そうした業界団体、必ずしも十分に成熟しているわけではございません、業種によってはアウトサイダーが極めて多くてアウトサイダーでの災害の発生率が悪いといったようなところもございますので、できるだけ団体の自主的活動を広めることでもってそうしたアウトサイダーもその中に入ってもらい、団体としての自主的活動の中で全体の安全衛生水準を高めていただくということを期待しているわけでございます。
#124
○大橋委員 今私の手元に労働基準広報というのがあるのですが、それを見ますと、八団体がまず指定されて、それからその関連の事業所が指定されるのだという趣旨のことが書いてありますが、時間の関係で一々読み上げることは省略いたしますけれども、この八団体、ここに記されている分については間違いありませんか。
#125
○小粥(義)政府委員 労災指定団体制度に内訳として二種類あるわけでございますが、収支が特に悪い業種で労災特別指定団体としているものがございます。これは林業であるとか、石材であるとか、あるいは造船関係であるとかというもの八団体を労災特別指定団体として指定いたしております。
 もう一つは、労災特別指導団体ということで、これは収支が極端に悪いわけじゃないのですけれども、悪化傾向にあるとかいうことで今後努力をしていただきたい、そういう業種を三十三でございますか、別に指定しているわけでございます。
#126
○大橋委員 ひとつ、労災の撲滅に向かってしっかりと対策を進めていただきたいと思います。
 それから、労災保険の財政は労災法の目的を果たすために健全な保険運営が重要なことでありますし、また、期待されるところでありますけれども、保険財政の現状がどうなっているか、それから年金受給者の数あるいは年金給付額はどの程度か、その給付額は保険給付全体の何割を占めているか、まずこれを説明願いたい。
#127
○稲葉(哲)政府委員 まず御質問の第一点でございますが、労災年金の財政状況でございますけれども、労災保険の収支は、単年度でいいますと若干ではございますが黒字を維持しておるところでございます。ただ、ここ数年間を見ますと、その黒字の幅はやや減少を続けているという状況にございます。
 若干詳しく申し上げますと、昭和五十九年度におきます保険料の収納額は対前年度比で三・四%増の九千六百六十七億円でございました。一方、支出の方でございますが、給付費、これは保険給付と特別支給金を含めた給付費でございますけれども、これが対前年度比で四・〇%増ということで八千九十三億円ということになっております。
 なお、そのほかに特別支給金以外の労働福祉事業の費用とかあるいは事務費というものがございますので、これを加えました支出総額は九千四百八十六億円というのが昭和五十九年度の状況でございます。
 第二点の御質問の年金給付の状況でございますけれども、受給者の数は約十七万三千人でございます。そして年金の全体の給付額は二千五百八十五億円でございまして、これは保険給付の総額のおよそ三二%を占めているというような状況でございます。
#128
○大橋委員 現在は黒字だけれども、だんだん減少傾向にもあるという話でございますが、六十一年度において保険料率の改定が行われたと聞いているわけでございますが、それは事実かどうかということが一つですね。そして、これからの見通し等についてどのように判断なさっているか、これもあわせてお聞かせ願いたいと思います。
#129
○稲葉(哲)政府委員 労災保険は三年ごとに保険料率の見直しをするということにいたしております。その見直しの際の考え方と申しますのは、向こう六年間を見通しまして均衡がとれますように保険料率を考える、そして三年間はそれを固定する、三年先にまた検討する、こういう方法をとっているわけでございます。昭和六十一年度はその三年ごとの検討の時期になっておりまして、過去三年間の災害率をもとにいたしまして所要の改正を行っております。今回の見直し作業におきましては、企業種を対象にいたしましてその検討を行ったところでございますけれども、結果といたしましては、企業種平均の業務災害の分の料率、ほかに通勤災害の分として一厘ございますけれども、それを別にいたしまして、業務災害分の料率を九・五厘、これを〇・〇三五厘、率にいたしまして〇・三七%に当たりますけれども、これを上き上げまして、その結果企業種平均の保険料率は九・五四厘、千分の九・五四になったところでございます。
#130
○大橋委員 よくわかりました。
 そこで率直に申し上げまして、今回の改正内容を見てまいりますと、労災保険審議会の建議に基づいて改正を行ったんだということになっていますけれども、これはあくまでも給付の適正化が中心でありまして、財政負担の軽減を図ったにすぎないのじゃないかと思えてならぬのですけれども、この点についてはどう御判断なさいますか。
#131
○小粥(義)政府委員 労災保険制度の収支の面は、先ほど審議官がお答え申し上げましたように単年度では黒字を維持しているわけでございます。ただ労災保険制度に本当に収支面の問題がないかといえば、これはあるわけでございまして、ただしこれは長期的な問題でございます。
 特に年金受給者が今後ふえていくことが見込まれるわけでございます。現在十七万三千人が二十年後には三十万人にふえるであろう、こういうふうに見られるわけですが、そうした将来の年金給付に充てる原資は必ずしも今十分な積み立てが行われているわけじゃございません。これを厚生年金におけるように長期給付の原資を的確に積み立てるとなれば、この面での料率問題というのはいずれ改めて問題とされなければならない時期が来るかと思いますけれども、そうした問題とは別に、今回改正を行いますのは、先ほど申し上げましたように単年度で黒字を維持している現況でございますから、その中で行います改正は、あくまで、審議会の建議にもありましたように、制度の中における不均衡、不公平な面を是正をするという観点で考えたものでございまして、特に収支面の改善を意図してどうこうということで今回の改正を考えたものではございません。
#132
○大橋委員 労災保険財政の健全な収支を確保することは非常に重要なことではございますが、労災保険法の第一条に目的が示されておりますけれども、簡単に申し上げますと、被災労働者及び遺族等に対しては国の責任で手厚い保護を行いなさい、こう明確にうたってあるわけですね。そういうことを踏まえまして、あくまでも被災労働者の立場に立った手厚い対策が基本であることを忘れないでいっていただきたい。
 そこで具体的にお尋ねいたしますけれども、労災年金の給付基礎日額に年齢階層ごとの最低限度額、最高限度額を設定しまして年金額の公平を図るというふうに言っておられますけれども、この考えの基礎になったいわゆる理念といいますかあるいはその背景になっている内容は一体どういうものなのかを説明していただきたいと思います。
#133
○小粥(義)政府委員 労災保険は、制度の本来の趣旨としまして労働災害に遭った労働者がその失った稼得の補てんが本旨でございます。そうした趣旨からいろいろ制度が組み立てられているわけでございますが、特に年金給付になりますといわゆる給付基礎日額、これは基準法の平均賃金の考え方を取り入れているわけでございますが、被災前三カ月間の賃金でもって額を決めていく、こういう仕組みになっておるわけでございます。そうなりますと、何十年にわたる長期の給付として給付の基礎になる給付基礎日額の決め方が三カ月では余りに短いではないか、こういう議論も実はあるのでございますけれども、一応その三カ月で算定した場合に、その短い期間ですからいろいろ通常の状態とは違うケースがその中に反映されてくる。時には異常に高い場合もありますし、逆に低い場合もあるわけでございます。そうした面の不合理を解消するのが一つの考え方でございます。
 もう一つは、同じ被災労働者でも若年時の被災労働者は、日本の場合、年功賃金体系でございますから賃金が比較的低い。その低いままの賃金で年金額は一生決められていく。その場合、スライドがかかりますので、毎年のペースアップ見合いの分はスライドによってある程度カバーされますけれども、災害を受けなければその人がなったであろういわゆる昇進、昇格的な要素というものは必ずしも反映されない仕組みになっております。逆に、壮年時に災害に遭った方は比較的賃金が高いときですから、その後、労働市場から引退する年齢になっても比較的高い給付額で推移することができる。そうなりますと、同じ被災労働者でありながら、かつ通常でしたら労働市場から引退する年齢になりながらその年金給付に大きな格差が生ずることになる。これがやはり制度としての不均衡の問題がございますので、そういう点を是正をしていきたい。
 もう一つは、極めて高額な年金給付があるわけでございます。通常、先ほども申し上げました労災保険制度が稼得能力の損失を補てんするという趣旨は当然踏まえなければならないわけでございますが、それにしても七十、八十でも壮年時の、あるいは一番よく働いていたときの賃金でずっと推移することが果たして稼得能力の観点から見て合理的と言えるかどうか、こういう問題もございます。
 そうした面を含めまして、いわゆる不公正、不公平、不均衡と考えられる点の是正を図るために最高、最低額を設定することにしたわけでございますが、その際に年齢区分別に最高限度額あるいは最低保障額を設定することにしましたのは、これは当委員会で五十五年に労災法の改正の際付せられました附帯決議の中で、年功賃金体系というものが年金給付に反映されるようにすべきではないかといった決議の趣旨も踏まえまして、年齢区分別にこの最高、最低の額を決めることにしたわけでございます。
#134
○大橋委員 最高、最低限度額を設ける総体的な考え方は今の説明で私もまあまあ理解できたわけですけれども、今から私、具体的に一つずつ聞いていきますから、簡単でいいですから、それはこうだ、こうだと答えてくださいね。
 どのような方法によって設定していくかということが一つ。一つずつ聞いていきましょう、簡単でいいですから。
#135
○小粥(義)政府委員 賃金構造基本調査を毎年実施しておりますので、その調査結果に基づきまして、上位五%、下位五%を除外したところにそれぞれ最高、最低の額を設定する、こういう方式をとることを考えております。
#136
○大橋委員 今言われました賃金構造基本統計調査、これは毎年六月に調査されていますね。この結果に基づいて設定するということでございますが、これは全産業にわたるのか、それとも男女計ということになるのか、その点はどうでしょう。
#137
○稲葉(哲)政府委員 賃金構造統計調査自体は、全産業につきまして五人以上の事業所を対象といたしております。そして男女及び男女計の数値が出ております。
#138
○大橋委員 じゃ適用時期についてお尋ねしたいんですが、四月から適用されるのか、また毎年改定していくものかどうか、この点について……。
#139
○小粥(義)政府委員 毎年調査を行いますので、その調査が出た段階で毎年最高、最低額というものを設定していく、こういうことになるわけでございます。
#140
○大橋委員 法案の中に「就業状態その他の事情を考慮して定める」としているわけでございますが、どのような事情を考えているのですか。
#141
○小粥(義)政府委員 我が国の賃金の実態としましては、まだ男女の格差というものがございます。そこで賃金構造基本統計調査では男女別の数字がそれぞれ出てまいりますが、それらをまとめた形で共通の最高、最低額を引かなければいけませんので、そういった男女の賃金の実態等が「その他の事情」ということになってくるわけでございます。
#142
○大橋委員 それで、最高限度額の設定についてILO百二十一号条約の規定との関係ですね、これはどうなっているのか。
#143
○小粥(義)政府委員 ILOの百二十一号条約では、最高額を決めること自体は認めているわけでございますが、その最高額を決める場合には全労働者の、まあわかりやすく申し上げますと、四分の三が受けている賃金を下回ってはならない、こういうふうに条約ではうたっておりますので、当然我が国としてもその線に沿って最高限度額を決める場合には、全体の労働者の四分の三が受けている金額と申しますと五十九年の調査では約九千四百円台の数字になるわけでございまして、それを最高限度額としては最低の線に持っていきたいというふうに考えております。
#144
○大橋委員 それで限度額を五%落とした理由は一体何ですか。
#145
○小粥(義)政府委員 パーセントのとり方はいろんな考え方があろうかと思いますが、私ども、よりどころにさせていただいたのは、いわゆる社会保険におきます標準報酬月額、これの最高が今四十七万円ぐらいだと存じますが、日額に直しますと一万五千円強、こういう数字になっております。これは、私どもの賃金調査におきます二十分位数で見た場合にちょうど上五%を除いたところとほぼ見合う額になっております。男子の数字で見た場合。したがって、その五%というのを取り、したがって上で五%であり、下限についても五%という数字を適用することにしたものでございます。
#146
○大橋委員 それでは今回設けられました最低限度額までに引き上げられる人は、その対象者といいますかは何人ぐらいいるんですか。
#147
○稲葉(哲)政府委員 最低限度額まで引き上げられる方でございますが、これは六十年五月支払い期の年金受給者につきまして五十九年度の賃金構造基本統計調査に基づきまして線を引きましたものによって計算いたしたものでございますけれども、引き上げられます者が二万一千二百九十三人でございます。
#148
○大橋委員 それでは、最高限度額で抑え込まれる方はどのくらいありますか。
#149
○稲葉(哲)政府委員 同じく、一万二千百八十九人でございます。
#150
○大橋委員 最高限度額の適用を受ける者の年齢階層別の状況と申しますか。給付の種類別というものはわかりますか。
#151
○稲葉(哲)政府委員 給付の種類別はちょっと統計をとっておりませんので御勘弁いただきたいと思いますが、年齢階層別に、これ、一つ一つ申し上げましょうか。よろしゅうございますか。――例えば、五十歳から五十五歳の層でございますと、三百三十四人というような数字になっております。
#152
○大橋委員 後で資料を届けていただきたいと思います。
 それから、この限度額の設定によりまして、保険経済面での得失、収支といいますか、どうなると見込んでおられるのでしょうか。
#153
○小粥(義)政府委員 とりあえず六十五年までの数字を私ども推計としてはじいておりますが、最初の前半期はむしろ支出がふえまして、後半になると支出が減少するという傾向にございます。六十五年までをトータルで見ますと、支出の増で約二十億円ぐらいのものになるのではないかというふうに見ております。
#154
○大橋委員 先ほど最低限度額の決め方は説明でわかったのですけれども、生活保護基準と比較した場合、下回るケースが出てくるんじゃないか。その適用を受ける者が十体何人ぐらいおるかということをお尋ねしたいと思います。
#155
○小粥(義)政府委員 御承知のように、生活保護は世帯単位で給付を行うわけでございます。労災の保険給付は原則的には個人単位で給付を行いますので、直接これを比較することは必ずしも合わない面があるのでございますけれども、したがって、現在、生活保護基準を下回る年金受給者の数がどれだけであるかというのは、私ども、実はまだ把握いたしておりません。
 ただ、現在の最低保障額が三千二百十円ということになっておりますが、これは雇用保険の保険給付、失業給付の額、これの最低線と同じ額で設定をすることに従来いたしてまいっております。これが、今回五%の範囲で引き上げられるということになりますと、年齢階層で見た場合は、四十から四十五歳層、この辺は五千六百円ぐらいのところに上がってこようかと思っております。
#156
○大橋委員 時間の都合もございますので、次に進みます。
 労災年金以外に収入の道がない、いわゆる高齢被災労働者といいますか、そういう層の中には、最高限度額が設定されたことによって、場合によっては生活が困難になる、苦しくなるというケースが出てくるんじゃないか。私は、果たして最高限度額の水準が適切であるかどうか、疑問なんですが、その点はいかがですか。
#157
○小粥(義)政府委員 まず、今まで既に労災年金を受給されている方、これはその給付基礎日額は保障するということで考えているわけでございますが、今後新しく年金を受給されることになる方の場合、確かに、最高限度額を設定することによって頭打ちになる部分が出るわけでございます。
 ただ、その設定は、先ほど来御説明しておりますように、その年齢階層の方が得られる賃金収入の上五%を除外するわけでございまして、全体として見れば約九〇%の人がもらっておられる賃金に見合うものとして設定をするわけでございます。
 と同時に、ただ、その年齢区分別の賃金の実態は、高齢者になるほど実は下がってまいります。賃金の統計でいくと、実は、六十五歳以上になりますと相当大幅に下がるわけでございます。その場合には、先ほどお答えしましたILO百二十一号条約の最高額を決める場合の原則を適用いたしまして、その線を最低線にするということで考えておりますので、先ほど申し上げましたように九千四百幾らという日額になりますから、生活の面からすれば一応維持できるものは給付できるというふうに考えているわけでございます。
#158
○大橋委員 一つ疑問が出てくるのですけれども、今回の最高限度額は年齢によって、例えば六十歳以上になるとぐんと下がってきますね。この賃金構造基本調査の対象労働者、一般的にはほとんどと言ってもいいのですけれども、六十歳定年制ということで退職していくわけですね。そうしますと、これも法律に基づいて退職金が支給されるわけでございまして、退職金をもらって退職した方が、再就職をするときには非常に低い賃金で再就職するわけですね。ですから、今度の賃金構造基本調査の対象労働者を見ている内容は、退職金は除外されているのじゃないかというふうに私は思われてならないのです。
 そのために、賃金構造の統計表にあらわれる賃金というものは非常に低い水準に出てきている。そこで、この統計表によって六十歳以上の上限が決定されるということになれば、退職金相当額の配慮がここになされなければならぬのじゃないかなと私は思うのですが、いかがですか。
#159
○小粥(義)政府委員 退職金が各人についてそれぞれどれぐらい払われているかという統計は実はないわけでございます。労災保険はいわゆる稼得能力の損失を補てんするという趣旨でつくられるわけでございますから、通常の稼得能力をあらわすものとして賃金をとっているわけでございまして、御指摘のように六十歳を超えますと賃金額は下がってまいります。それは再就職の際に賃金が下がったという実態もありましょうし、あるいはもう引退をされている方が割合としては多くなるということも影響している面があろうかと思います。そうした面では低くなることは事実でございますが、その数字自体は、その年齢階層の方の大方が受けておられる数字であるというところに着目をして、私どもそこに一つの線を引くということを考えたわけでございます。
 全体の年金給付総体として見た場合に、確かに年齢が高くなった段階で低くなる部分はございますけれども、それも、言うなら五%の方を除けばおさまる範囲の数字であるということで、必要な補てんというものはそれで大体賄えるのではないかというふうに考えている次第でございます。
#160
○大橋委員 今も申しましたように、六十歳定年退職時に一般的には退職金を受給される、そして、今局長がおっしゃるように、労災年金の本質というのは稼得能力の補てんであるという精神からまいりますと、今回の六十歳以上における最高限度額の線引きというのは不合理じゃないかなという気がしてならぬのですね。だから、むしろ六十歳以上は最高限度額を取っ払った方がいいのじゃないかという気がするのですけれども、いかがですか。
#161
○小粥(義)政府委員 そうしたいろいろな御議論もあろうかと思いますが、一例を申し上げますと、先ほど来の御質問にもお答えしている中で申し上げたのですが、一千万を超える高額受給者の方が何人がおられるわけでございます。それらの方が通常働いている年齢に属する期間というのは、ある程度それもうなずけるという面があるかもしれませんが、それらの方が通常でしたら労働市場から引退する年齢に達し、その後もさらに、七十になり八十になり、なおかつそうした年金給付を受けられるということになりますと、いわゆる通常の意味での稼得能力の補てんという面からしますと、相当隔たった姿が出てくるのも事実でございますので、そうした面の是正を図るというのも今回の改正で織り込んだ趣旨でございます。御理解を賜りたいと存じます。
#162
○大橋委員 保険給付というのは、被災労働者の立場に立って、年功賃金体系が十分反映されるようにすべきであるという声はもともとからありました。今回の改正内容では、若年労働者を中心に年功制を加味した部分的な形での改正内容となっているわけでございます。この点、一歩前進だと私は評価をするわけでございますけれども、年金受給者全体については、年功的な年金額アップが図られたわけではないと私は思うのです。この点、ちょっと確認したいのですが、どうですか。
#163
○小粥(義)政府委員 個々人ごとに見た場合は、最高限度額によって頭打ちになる方、他方で最低限度額の引き上げでむしろ給付額がふえる方、それぞれいるわけでございます。それを総体として見た場合どうなるかということでございますが、これは先ほど審議官からもお答えしましたように、該当者の数は、最低額の引き上げに該当する方の方が多いわけでございます。将来高齢化が進んでまいりますと、最高額の頭打ちにぶつかる方がふえる部分ももちろん出てこようかと思いますが、先ほどお答えしたように、六十五年までを通じて見た場合、四年分でございますが、それでは総額としてはむしろ給付は増額するわけでございます。
 ただ、その後さらに高齢化がどんどん進んでいった場合にどうなるか、まだそこまでの数字ははじいてはおりませんが、高齢者の限度額が低目になるという点は率直に言ってあるわけでございますので、その面の数字はあるいは変わってくるかもしれませんけれども、総体として見た場合、特に下の引き上げに該当する方の数が二倍近いものがあるというところは、私ども十分考えていかなければならないのじゃないかというふうに思っているわけでございます。
#164
○大橋委員 先ほど申しましたように、年金受給者全体について年功的な年金額アップが図られたわけではないという事実を踏まえますと、このままでは不徹底である、あるいは公平を欠いている。したがいまして、近い将来年金受給者全体について年功賃金体系が反映されるような仕組みに改善していくべきであるということを私は強く要望しておきます。
 次に移ります。
 一部休業の場合の休業補償について、給付額が減少されますね。所定の労働時間の一部をリハビリ、いわゆる社会復帰に努力している被災労働者の意欲を減退させるのではないか。これは先ほどの質問にもあったと思うのですけれども、私も、この点、非常に心配するわけです。
 リハビリが労災患者の重要な部分を占めておるという事実、あるいは職場復帰のための一部就労の必要性が増大しているという現状から、こういう形をとるのはよくないのじゃないか。わずかな賃金と保険給付を頼りに職場復帰に励んでいる労災患者の意欲を失わせるようなことがあれば問題だと私は思うのでありますが、この点はいかがですか。
#165
○小粥(義)政府委員 一部休業の場合の休業補償の取り扱いを変えました趣旨は、先ほどもお答えしたわけでございますが、いわゆる就労をして賃金を得たものと休業補償を合わせた場合に、一日働いた者よりも額が上回ることになるということ、これは全部の人じゃないかもしれませんが、もちろん不均衡の問題もございますし、同時に、ある意味で逆に一日働いた場合より多額の給付になるということで、むしろ復帰の意欲を阻害する面もなきにしもあらずという面もございまして、そういう趣旨で変えたものでございます。
#166
○大橋委員 この改正について無用の誤解が生じないように、関係者に対して事前に周知徹底を図る必要があるような気がしてならぬのですが、その対策は考えていますか。
#167
○小粥(義)政府委員 制度の仕組みが変わること自体を周知徹底することはもちろんでございますが、先生の御指摘になりましたように、社会復帰のためのいろいろな意欲なり活動を損なうようなことがあってはならない、したがって、これは単に労働基準監督機関だけではなくて、能力開発あるいは職業安定等の行政とのタイアップの中でまたこの社会復帰対策というものを進めていきたいと考えておりますので、今後それらとの連携も十分にとって進めていきたいと考えております。
#168
○大橋委員 今回の通勤災害の見直しにより拡大される範囲は、具体的にはどのようなものが予定されているかというのが一つ。
 それから、学校の範囲は具体的にどこまでを考えられているのか。また、通勤途中で病院に立ち寄る場合等はどう扱われるのか、これも具体的にお答え願いたいと思います。
#169
○小粥(義)政府委員 今回、日用品の購入等日常生活に必要な最小限のもののほかに省令で決めるものとして考えておりますのは、いわゆる定時制高校への通学とか訓練校への適所、あるいは定期的に人工透析に通うような行為、そうしたものでございます。昼間の学校の場合どうなるかという点でございますが、当然これは勤めながら昼間の学校に通いまた自宅へ行くというような形で通勤と見られる場合があるわけでございますので、別に夜間、昼間の別を問わないわけでございます。
 もう一つお尋ねの通院でございますが、これはいいわけでございます。特に人工透析を挙げることにしておりますのは、これは相当時間がかかるということで、通常の日常生活に必要なものと言えるかどうかという点でむしろ外れていたものでございまして、通院は、むしろその日常生活の方で従来も読んでいるわけでございます。
#170
○大橋委員 時間がだんだん迫ってまいりましたので、はしょってまいります。
 メリット制の適用範囲が拡大されるわけでございますが、結果的には中小企業の負担増につながるのではないかという心配が一つと、この結果、労災隠しがふえるのではないかという気がしてなりませんが、その点はどうですか。
#171
○稲葉(哲)政府委員 今回のメリット制の改正によりまして、継続事業について三十人以上の規模に適用しておりましたものを二十人以上に下げるわけでございますが、この結果、現在約五万七千の事業場に適用されておりますものが、一万七千事業場ふえるという状況になります。
 それで、御質問の中小企業事業主にとってこれが負担になるのではないかということでございますが、従来メリット制を適用されております三十人以上の事業場について見ますと、むしろ事業場の方に有利に働いているわけでございます。したがいまして、この傾向は、二十人ないし三十人の規模につきましても同じ傾向になると考えられますので、むしろ中小企業事業主の負担は全体としては軽減されるように働くと考えておるところでございます。
 なお、労災隠しの問題でございますが、御承知のとおり労働安全衛生法によりまして事業主には死傷病報告の提出が罰則つきで義務づけられております。そういうこともございますし、また、労災の申請は被災労働者自身から監督署に出せることになっておりますので、そういう点から労災隠しということは、私どもとしてもないように措置していきたいと思いますし、そのようなことはないのではないかと考えているところでございます。
#172
○大橋委員 では、法改正の内容の最後に、大臣の気持ちを伺いたいのですが、今回の労災害議会の建議によりますと、労基法との関係のあり方あるいは社会保険年金とのあり方等の基本問題については、結論に至っていない、引き続き検討すべきだとされているわけでございます。この問題等も含めて、今後の労災保険制度のあり方について基本的にどうお考えになっているのか、大臣のお答えを聞きたいと思います。
#173
○林国務大臣 御指摘のとおり、今回の労災保険審議会の建議においては、幾つかの事項が今後引き続き検討すべきものとして指摘されております。これらの事項につきましては、これまでに労災保険審議会に設けられました労災保険基本問題懇談会において種々検討が行われてまいりましたが、制度の根幹にかかわる事項やほかの制度との調整にかかわる基本的事項などでございまして、さらに掘り下げた検討が必要であるとされて結論が出なかったものと承知をいたしております。
 これらの課題については、労災保険審議会におきまして今後引き続き検討をお願いすることにいなしておりますが、ほかの制度との均衡など社会的公正の確保あるいは被災労働者の実情に即しました適正な補償の実施などの観点を考慮いたしまして、制度のあり方について今後とも検討してまいりたいと考えております。
#174
○大橋委員 本会議が二時からということで予鈴が今鳴りましたが、最後にもう一問、これは法案とは関係ありませんけれども、昨年十二月十日、私がこの社会労働委員会でお願いしたことでありますけれども、繰り返しお願いしたいのです。
 脊損患者の重症者については一人つき看護が認められておりまして、患者と看護者は一同体の関係で療養生活には最善の効果をもたらしているわけでございますけれども、余病を併発して基準看護病院に入院する場合は、その病院の規則のためになれた看護者が切り離されてしまう、これはそういうことにならないように何とか特別な配慮をお願いしたいということをお願いしておきました。山口労働大臣も、前向きに検討しましょうということでございました。もう一度繰り返してお願いいたしておきます。
 それから、脊損患者の死亡原因と労災の脊損との因果関係についても具体的な例を引いて質問したわけでございます。要するに、脊損患者という症状からは体力が衰弱するし、抵抗力もなくなり、余病を併発して死亡していくということで、そのときも山口労働大臣は、「今後、医学情報の収集、研究等に努めて、どう取り組むかということにつきましてもひとつ研究」してまいりますと言っております。そのことをあわせてお願いしておきますので、大臣からもう一言この点についての御答弁をいただいて終わりといたします。
#175
○林国務大臣 先生の今御指摘の件につきましては、その御趣旨を体しまして、私どもといたしましては検討してまいりたいと思っております。
#176
○大橋委員 終わります。
#177
○山崎委員長 午後二時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後一時五十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十一分開議
#178
○山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。塩田晋君。
#179
○塩田委員 労働者災害補償保険法の改正法律案につきまして労働大臣並びに関係局長にお伺いいたします。
 労働災害は本来あってはならないことでございます。労使を挙げて産業安全に取り組んでおるところでございまして、言葉としては一見、不適切かもわかりませんが、安全戦争という言葉があるわけでございます。安全を守るための戦い、安全戦争という言葉があるのでございます。戦争の被害というのは大変大きなものでございますけれども、それにまさるとも劣らないような大きな惨害をもたらすものが産業の災害でございます。企業も労働者もともに大きな関心を持ち、これに取り組んでおるというのが現実の姿でございます。私の選挙区にございます神鋼の労働組合では毎日の朝のあいさつ、帰りのあいさつ、途中で会ったときのあいさつ、おはようございますというのを御安全に、ありがとうと言うときも御安全にと言って別れる。海軍ではオスと言うところかもわかりませんが、御安全にという言葉をもってお互い安全に対する問題を喚起し、お互い戒め合っておる、そしてお互い安全を祈り合って毎日の仕事に精を出している、このような状況があるわけでございまして、非常に関心が持たれているところでございます。
 ひとたび災害が起こりますと、その企業にとりましても大変な損害でございます。コストになるわけでございまして、またその災害を受けた労働者個人にとりましては大変な不幸にもなるわけでございますので、そのようなことのないように、安全、災害防止ということに労使挙げて取り組む、もちろん国の行政関係者挙げて災害の起こらないように災害の発生を少なくするように、そしてまた不幸にして災害に遭われた方に対しましては、労働者及びその家族に対しまして労働者災害補償保険制度、これをもちまして対処しておるところでございまして、これは非常に重要な制度である、このように考えておるわけでございます。使用者にとりましては無過失賠償責任論の上に立ちまして企業が災害に対しましては責任を持って償いをする、補償する――セキュリティーというよりはコンペンセーション、補い償う方でございますが、それを行うべきものとされてきているわけでございます。
 そこで、この非常に重要な労災保険制度の改正が今回、昭和五十五年以来六年ぶりに行われようとしておるわけでございます。これは労働者のみならず全国民も非常に関心を持って見ておる関心の高い問題でございます。そこで労働行政の最高責任者でございます林労働大臣に対しまして労災補償行政の基本的姿勢は何か、また今回の改正の基本的な考え方は何かということをお伺いいたします。
#180
○林国務大臣 労働災害というものは、先生御指摘のとおり本来はあってはならないことではございますけれども、その労働災害というものの絶滅ということは大変難しい問題でございます。そして、労災補償行政の基本姿勢と申しますと、不幸にしてこうした業務災害や通勤災害をこうむった労働者あるいはまたその家族に対しまして、速やかに公正な保護を及ぼすということであります。また、このために労働者災害補償保険制度を適切に運営することによりまして、それとともに社会経済情勢の変化に対応すべく制度の絶えざる見直しと改善を行いながら、労働者の福祉の増進を図ることと考えております。
 今回の労災保険制度の改正につきましては、高齢化の進展、年金受給者の増加などの実情にかんがみまして、昨年十二月に行われました労働者災害補償保険審議会の公労使三者が一致した建議がございましたので、その建議を踏まえまして、年金制度に年功賃金の要素を反映するために給付基礎日額につきまして年齢階層別に最低限度額、最高限度額を設けることを中心に給付面におきます不均衡、不公平の是正を図ってまいりたいということなどを主といたしまして、公平性の確保の観点から今回の所要の改正を行うことにいたしたのでございます。
#181
○塩田委員 基準局長にお伺いいたします。
 現在、日本の労働災害発生の状況でございますが、死亡とか傷害ですね、災害はどのような状況で起こっているか。交通災害とか戦争の犠牲なんかと比べるとどの程度のものか、かなりの大きいものでなかろうか。しかし、労働行政の安全に対する対策の進展によりまして傾向的にはかなり下がってきているんじゃないかと思いますが、どのような状況になっておりますか。お伺いいたします。
#182
○小粥(義)政府委員 まず、労働災害の発生状況でございますが、休業四日以上に限らず一日以上の場合を含めましていわゆる労災保険の新規受給者数で申し上げますと、九十万人を超える数字になっております。五十九年時点では九十二万人でございましたが、六十年時点はまだ全部の集計が固まっておりませんので正確にはわかりませんが、九十万強という数字でございます。
 ほかのいろんな災害がございますが、それと比較して申し上げますと、世上よく災害として取り上げられますのがいわゆる交通災害、交通事故でございます。死亡者数は実は一万人近くということで非常に多いのですが、けがをされた方を含めた件数で申し上げますと六十万から六十五万くらいの数字で推移しております。ですから、労災の場合、九十万を超えるということは交通災害の五割増しという大きな発生件数になっている、こういうことでございます。死亡者数は労災の場合六十年では二千五百数十人、こういう数字になっておりまして、ピークは昭和三十六年時点、六千人くらいいたわけでございますが、交通災害の方の死亡者数に比べますと少ないのではございますが、なおかつ、年間二千五百人を超える方々が労働災害で亡くなられているという痛ましい現状にあるわけでございます。
#183
○塩田委員 三十六年に比べまして最近の状況は死亡者数におきまして半分以下になっておるということは、労使並びに関係行政当局の日夜を分かたぬ大変な御努力によって達成されたものと思いますけれども、なお二千五百人を超える方々が一年間に亡くなられるということは大変なことでございます。交通災害、事故による死亡の減少とあわせまして、今後、本当に一人一人大切な人命でございますので、これが失われることのないように最大の努力をいたしまして、やはりゼロを目指して御努力を賜りたい。このことを特に要望をいたしておきたいと思います。
 そこで、今回の法律の改正によりまして、現在の制度では年金の給付基礎日額については年齢に関係なく一律の最低保障額が定められておりますが、今後新たに最高限度額、しかも年齢階層別に設定しようとしておられます。これはどのような考え方に基づくものであるのか。労災年金受給者の中には年金額が一千万円を超える――これは無税で一千万円の年収ということになりますと相当な高額の方でございますが、こういう方が何人おられるか。それから、このような高額の年金の是正を図るという趣旨であるなら、年齢階層ごとでなくして、一律に最高限度額を設けるべきではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
#184
○小粥(義)政府委員 今回年齢階層別に最高限度額の設定、最低保障額の引き上げを行うことにいたしました趣旨は、年金受給者が非常に増加してまいった中で幾つかの不均衡な面が見受けられるようになってきたことでございます。
 その一つは、極めて高額の年金給付を受けられる方がふえてきたということでございます。二月時点の数字で申し上げますと、年間の年金給付額が一千万円を超える方が三十人に達しております。いま一つの不均衡といいますのは、若年時に被災をされた方は賃金が低いときに被災をされた、そのために年金のスライドはかかるものの低い水準の年金給付で七十、八十まで推移しなければならない。一方、壮年時に被災をされた方は若年時被災者に比べれば高い賃金を基礎にした給付基礎日額で年金給付が受けられる。それらの方々が、働ける年齢の間は別としまして、通常なら引退をされる後においても年金給付を相当長い期間にわたって受けられるわけです。そうすると、被災の時点の姿でもってその間に非常に大きな格差が生まれてしまうといった不均衡が見受けられるようになってまいったわけでございます。
 そうした面を是正するために最高限度額あるいは最低保障額、現にあるものを引き上げるということを考えた次第でございますが、これを一律の最高限度額ではなくて年齢階層別に設けることにいたしましたのは、一つには、この労災保険制度が労働者の稼得能力の喪失を補てんするということに本来の趣旨があるわけでございまして、稼得能力を何で判断するかとなると、やはりそれぞれの賃金ということになろうかと思います。日本の場合、その賃金制度がいわゆる年功序列型の賃金体系が大宗を占めるといった状況にもございますので、そうしたことを考慮したことと、いま一つは、五十五年当時当委員会におきましての労災保険法の改正に対する附帯決議でも、年功賃金の体系を年金給付に反映させるように検討すべきであるという決議もいただいたわけでございまして、それらの面を考慮いたしまして年齢階層別に最高限度額を設定し、または最低保障額を引き上げるということにいたしたわけでございます。
#185
○塩田委員 労災保険制度に年金制度が導入されましたのは昭和四十年以来のことでございますが、現在まで上限についての制限がなかったわけでございます。このような中で、年金の給付基礎日額に最高限度額を設けるということは制度の根本的な改革になると思います。その上、年金に最高限度額を設けるという例は諸外国においてあるのかないのか、また業務災害の場合における給付に関するILOの条約に違反することにならないか、この点についてお伺いいたします。
#186
○小粥(義)政府委員 災害補償に関しますILO条約は百二十一号条約がございます。その中で、年金給付について最高限度額を設定すること自体はILO条約としても認めているわけでございます。ただ、その場合に一定の要件がございまして、その最高限度額を設定する場合は、その限度額の水準が、わかりやすく申し上げますと、全労働者の四分の三が受けている賃金を下回ってはならないというところでその最高限度額を設定すべきである、こういうことになっておりまして、ヨーロッパ諸国の制度を見ましても幾つか最高限度額が設定されている国がございます。個別の具体的ケースについては担当者の方から御説明申し上げます。
#187
○稲葉(哲)政府委員 諸外国で最高限度額を年金について定めている例でございますけれども、かなり多くの国が定めております。例えば、主な国を申し上げますと、フランス、西ドイツ、イタリア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカ等挙げられるかと思います。それぞれの定め方でございますけれども、それぞれの国の制度の歴史等を反映いたしましてさまざまでございまして、最高限度額、最低限度額を一律に定めている国もございますし、また法律でそういったものを定めた上で、それぞれの同業組合におきまして、それぞれの規約におきましてそれのかさ上げをやっている例もございます。また、国によっては定額で定めている例もございまして、さまざまでございます。
#188
○塩田委員 今言われました各国その例があるということでございますが、年齢別に最高限度額を定めているところはどれくらいでございますか。
#189
○稲葉(哲)政府委員 今回、私どもが年齢別の最高限度額、最低限度額を定めました一つの基本的な考え方は、我が国は年功序列型賃金体系にあるということでございます。したがいまして、年功賃金体系をとっておる国というのは諸外国には余りございませんので、私どもが調べた範囲内では最高限度額、最低限度額に年齢別の階層を設けているという国はございません。
#190
○塩田委員 我が国独自の考え方に立って、我が国の特色である年功序列賃金体系、この現実に合わせて諸外国には例のない制度として年齢別の最高限度額を設けたということでございますね。その問題はそれとして、最高、最低の限度額を設けることによりまして影響を受ける人数はどのような状況と把握をしておられますか、お伺いをいたします。
#191
○稲葉(哲)政府委員 昭和五十九年に実施されました賃金構造基本統計調査をもとにいたしまして、私どもの考えでおります算式によりまして最低限度額、最高限度額を設けまして、これを昭和六十年五月期の、これは年金の支払い期でございますが、その年金受給者に適用するという条件で数えました場合に、最低限度額によりまして引き上げられる者の数が約二万一千人でございます。これは、年金受給者総数が全部で十七万人でございますので、その約一二%ということになります。他方、最高限度額を超えておる者の数は一万二千人程度でございまして、これは同じく占める割合は約七%ということになっております。
#192
○塩田委員 日本の労災補償はいわゆるメリット制の保険料制度をとっておるわけでございますが、諸外国の状況はいかがでございますか。日本の現在の制度は、諸外国の中でもとの国と最も近い状況にあるのか、お尋ねいたします。
#193
○稲葉(哲)政府委員 諸外国におきましてもメリット制度をとっている国が幾つかございまして、その代表的な例について御説明をさしていただきたいと思います。
 フランスの場合は、二十人以上の事業場につきましてメリット制が適用されておりまして、そのうち事業場規模三百人以上につきましては、いわば完全メリット制といいますか、その事業場自体でもってプラス、マイナス全部賄うというような完全メリット制をとっております。そして、二十人未満の規模の事業場につきましてはメリット制度をとっていない。そして、残りの二十人から二百九十九大規模がその両者の折衷方式を、いろいろな段階のメリット制をとっているということでございます。
 それから、アメリカの方式でございますけれども、これは年平均の標準保険料額というのをつくっておりまして、これは賃金総額に保険料率を掛けたものでございますけれども、これに基づきまして、アメリカは合衆国でございますので具体的なところは州によって異なっておりますけれども、主として過去三年間の年平均の標準保険料額、これが七百五十ドル以上であるということを条件にしているということがかなり多くの州でもって適用されておるようでございます。
 また、カナダの場合は、賃金総額四万ドル以上で、かつ保険料五百ドル以上の事業場のうち、希望する事業場についてメリット制をとるというような制度をとっているというふうに承知をいたしております。
#194
○塩田委員 日本の現在のような制度をとっている、最も近い国というのはどこでございますか。
#195
○稲葉(哲)政府委員 今御説明した中でアメリカが比較的近い方式をとっておると存じます。
#196
○塩田委員 アメリカは五十州のうち各州かなり違うのでしょうか。それとも相当各州共通でございますか。雇用保険なんかを見ていますと、かなり給付もあるいは負担も州によって違うようでございますが、これはやはり事業主の全額負担で災害時に支払うという面については同じでございますか。
#197
○稲葉(哲)政府委員 州によってかなり違うようでございますが、事業主の全額負担によって保険料を負担しているという点においては同じでございます。
#198
○塩田委員 労災保険は全面強制適用となっておるわけでございますが、現在の加入状況はどうなっておりますか。
#199
○小島説明員 今御指摘のように全面適用になっておるわけでございますが、そのうちで実際に労災保険の保険料を納めている事業場数は、これは五十九年度末ですが、二百四万事業場でございます。それから労働者数は一同じく五十九年度末で三千五百二十万程度でございます。
#200
○塩田委員 今回の改正によりまして、労災保険未加入中に事故が生じた場合に、給付に要する費用の全部または一部を徴収することとなっておりますが、その意図するところは何でございますか。
 また、費用徴収ができるケースを、事業主が加入手続をとらないことについて、故意または重大な過失がある場合に限定しておりますが、その理由は何でございますか。
#201
○小粥(義)政府委員 今回、未加入中に発生した事故に対する補償について費用徴収をすることにしました趣旨は、適用、加入の促進を図るという観点が一つございます。これは、現在原則として全面適用になっているわけでございますが、特に零細企業の場合、企業の存立なり廃止といったことがたびたび繰り返されるといった事情もございまして、必ずしも全部を把握いたしておりません。そのために、年々適用、加入の促進方の努力をいたしているわけでございますが、そうした努力にもかかわらずなお相当数未加入のままに残っている面がございます。
 ただ、保険の制度の運用としましては、未加入の場合にも、御承知のように、事故が起きた場合、労働者についての責任があるわけじゃございませんので、労働者に対しては保険制度から保険給付を行うわけでございますが、その場合、事業主に対しては過去二年の保険料の徴収でもって対応するということになっておるわけでございます。ところが一方で、既に加入している事業主が保険料を滞納いたしますと、これは費用の徴収をされるという仕組みになっております。したがって、未加入のところが仮に知っていても入らないで、まあ事故が起きたとき二年分払えばいいのだという形のところもなきにしもあらず、こういうような面がございますので、そうした公平を確保する観点からも、単に二年分の保険料の徴収にとどまらず給付の費用の一部を徴収する、こういうことにしたわけでございます。
 その場合に、故意または重大な過失があるときに限定をすることを考えておりますが、それは、いわゆる適用、加入の促進はそうした企業側の対応ももちろん求められるわけでございますが、行政側としての努力の問題もあるわけでございまして、したがって、単に未加入だからすべてが事業主の方でどうこうということですべてをかぶせるわけにはまいらない、行政サイドの努力にまたなければならない面もありますので、したがって、行政サイドから通知なり何なりしたにもかかわらずなおかつ加入をされないというところに限定してこの費用徴収を行おう、こういう趣旨でございます。
#202
○塩田委員 そういうことであるならば、むしろ故意、過失に関係なく一律に費用徴収の対象とすべきではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
 なお、その運用に当たりまして、今言われました行政サイドの自主的な判断といいますか裁量の余地がありますと、日本の北から南まで一律にやっておられる労働基準行政でございますが、各局あるいは各監督署におきまして判断がまちまちになってくるのじゃないか。客観的な基準を設定してかなり厳密にやらないとむしろ不公正、不公平が起こるのではなかろうかと思いますが、いかがでございますか。
#203
○小粥(義)政府委員 加入促進で費用徴収をするならもっと別のやり方があるのではないかという御指摘もございました。確かに実はいろいろな方法も考えられるわけでございます。
 例えば他の保険制度でとっておりますように、届け出に対して一定の罰則を科するというようなことも一つの方法であるわけでございますが、労災保険の場合は既に加入している企業が滞納した場合、先ほど御説明いたしましたように費用徴収の仕組みがあるわけでございます。それとの均衡も考えまして、今回労災保険では未加入の場合の災害に対する補償についていわゆる費用徴収の形でこれに対応しようと考えたわけでございまして、御指摘のようにいろいろな方法があるかと思いますが、既存の制度とのバランスを考えてこの方法によるということにしたわけでございます。
 同時に、御指摘にありましたように、そういう故意または重大な過失といったような要件がそこに加わりますと実際の運用面でちぐはぐなところが出てこやしないかという点は、御指摘のとおりそのおそれもございます。したがって、この場合の要件については、形式的に判断できるような、つまり通知行為、催告行為をやったようなものについてこれを適用するという形で、いわゆる心情にわたってあれこれ判断しなければならないとかということではなくて、むしろ外形的に判断できるような物差しでもって運用の統一性を図ってまいりたいと考えております。
#204
○塩田委員 これはかなり厳密な基準をつくりまして全国にわたって指導されませんと、地域別にちぐはぐなことが起こらないように公正を確保するように行政を進めていただきたいと思います。
 続きまして、今回通勤途上の災害に対する補償、これは日用品の購入のための寄り道をしたことによっての災害は従来からも認められておったわけでございますが、これ以外にも若干のものをつけ加える、例えば通学とかあるいは人工透析に行く場合等が加えられるということで、これは非常に結構なことだと思っております。
 なお、この点について同じような考え方に立てないかということを御質問したいのでございますが、いわゆる単身赴任者が社会的に増加をしてこれが問題になっておる。しかも、これにつきましては、税制面におきまして全面的に単身赴任減税を行うべしという野党の要求に対しまして、全部は認められなかったわけでございますが、かなりの程度単身赴任減税が実現を見たところでございます。
 同じような意味におきまして、単身赴任者が職務上の旅行等を行った場合に支給される旅費のうち職務遂行上必要な出張に付随して家族のいる住居に帰宅する場合に支給されるものは非課税ということでございますから、それと同じような意味におきまして、いわゆる土曜日に帰って月曜日に会社に出てくる土帰月来といいますか、あるいは中には金帰火来、国会議員の常識みたいな状況も、民間でも土曜、日曜連休のところはそういうこともあろうかと思いますが、そういう途上での災害を補償の対象とすべきであると思うのでございますが、これについてはどのように検討をしておられますか、お伺いをいたします。
#205
○小粥(義)政府委員 御指摘の問題は、実は建議をいただきますまでの間、労災保険審議会の中で非常に熱心な御討議があったわけでございます。私ども労働省としても、単身赴任者の税制についての要求も昨年度出しておりました経緯もありまして、こうした単身赴任者の取り扱いは何らか図れないものかという考え方を持っていたわけでございます。そこで、その審議会の中で公労使それぞれ熱心な御議論があったわけでございますけれども、結論としては、今直ちにどうするということの結論を見出しがたいので、引き続き検討をするということになって、今回の建議ではそのような形に、引き続き検討の方に整理をされているわけでございます。
 その中で出ましたいろいろな議論のうち、特に直ちにこれを実施することはなかなか難しいという点について申し上げますと、一つには、土帰月来あるいは金帰火来でも結構なんですが、そうした形で家族のもとへ帰るのが例えば毎週の場合、あるいは月に一回の場合、あるいは七夕さんのように年に一回とか二回とかいろいろな形が考えられるけれども、果たしてそれらの場合すべてに通勤という概念が適用できるのかどうか。毎週くらいになれば、これは相当通勤に近い姿になるのではないかという御議論もございましたけれども、それが月に一回であり、あるいは年に一、二回だということになると、通勤としてこれを取り上げることが果たして妥当かどうかというような問題がございまして、したがって、これを労災保険の保険制度の対象としていく場合に、じゃどこまでの範囲の往復行為をとらえるのかといったことで、実務技術的にもなかなか難しい問題があるということも事実論議をされたわけでございます。
 もう一つは、いわゆる単身赴任者がそういう家族のもとへ帰る行為、これはいわゆる使用者の管理下にない行為だから、これを適用対象とするとすれば、通勤がないしはそれに準ずる別の制度としてつくらなければいけないけれども、通勤として取り扱うことについては、今申し上げたようないろいろななお解決しなければならない問題点があるということで、といってそれでは全く別の第三の制度をつくることについてはいささか問題が大きくなり過ぎますし、いわゆる単身赴任者の該当者数というのは数としてはそれほど多いものではないと考えられますので、そういう面で、対応するとすれば通勤災害としての対応が望ましいと思うけれども、じゃ具体的にどういう取り扱いをしたらいいか、なお引き続き検討すべきじゃないか、こういうことで引き続き検討することになっている次第でございます。
#206
○塩田委員 局長が言われますように、毎週金帰火来あるいは土帰月来といった状況であるならば通勤的な感じも出てまいりますが、月に一回とか年に一回ではいわゆる通勤という概念にはなかなか入りにくいという常識的な線はわからぬことはないわけでございます。ですから、通勤という概念の中に入れることがなかなか難しければ、第三の概念のものをつくってそれを対象にするということも考えられますが、いわゆる会社命令によって出張する場合はもともと災害補償の対象になるわけでございますね。とすれば、減税の場合でもストレートに金帰火来あるいは土帰月来をやっている人全部を対象にしているのではなしに、かなり限定をしまして、出張に付随して家族のいる住居に帰宅をして、そしてまた会社に出る、この場合にできるだけ限定をするという通達で実施されているわけでございますね。ですから、それとの均衡といいますか、並びで考えることが将来できないかどうか、局長のお考えをお聞きいたします。
#207
○小粥(義)政府委員 税制上の取り扱いとしては、出張のついでに家族のところへ寄ってまた勤務先に戻るという場合、経費としては、会社が支給する旅費は少なくとも勤務先と出張先との往復でございますから、そういう取り扱いは可能かと思います。
 ただ、仮にこれを通勤として見るとした場合は、いわゆる逸脱、中断の問題があろうかと思います。その場合に、どこまでこれを逸脱、中断と見ないとすることにするとか、いろいろ議論があろうかと思います。御指摘のように、出張に伴って家族のもとに帰る場合は、単に家族のもとへ帰ること専一で往復するのとは少々事情も変わる面が出てこようかと思います。
 ただ、その場合、通勤上の逸脱、中断みたいな理解で済むのか、あるいはもっと別布考え方で対応しなければいけないのか、今この場ではにわかに申し上げられませんが、少なくとも税制面でそういうような対応がなされたとすれば、それに準じた形が労災の適用の面でとれるかどうか、これは今後引き続き検討する中で十分詰めてまいりたいと思っております。
#208
○塩田委員 ありがとうございます。前向きにこれを検討するという御回答でございますので、ぜひとも実現するようにお願い申し上げます。
 続きまして、口座振替による今回の労働保険料の納付の改正でございますが、その具体的な内容、その理由についてお伺いいたします。
 この口座振替制度を導入することによりまして事業主側あるいは行政側にどのようなメリットがあるのか、またデメリットはないのかどうか、あるとすればどういうものがあるのか、お伺いいたします。
#209
○小島説明員 ただいまの口座振替制度を導入する理由でございますが、現在では各種料金、NHKとか電気料金、ガス料金、その他いろいろ料金の納付に広く利用されております。それから国税と社会保険――これは労働保険料と同じようなものでございますが、これらも口座振替制度が導入されております。それから五十八年に出されました臨時行政調査会の答申の中においても口座振替制度を一層活用するようにという提言がなされています。そういうことから、この際、口座振替制度を労働保険料についても導入しようということで法案に盛り込んだ次第でございます。
 それから、口座振替制度を導入した場合のメリット、デメリットということでございますが、口座振替制度は、希望する事業主についてだけ導入することにしておりますので、デメリットは考えられないと思います。
 メリットにつきましては、現在ですと事業主が納期ごとに金融機関なり私どもの出先に出向いて保険料を払わなければいけないということでございますが、口座振替制度にいたしますと、自動的に口座から落ちますので、金融機関に出向く手間が省けるということが事業主のメリットとしてあると思います。
 それから、私ども行政側のメリットといたしましては、その期日が参りましたら確実に口座から振り落とすことになりますので、保険料を納めるのを忘れたとかいうことが解消されるのではないか、あるいはそれによります督促等の手続がかなり減るのではないかというようなこと、ひいては収納率が高まるのではないかというメリットがございます。また、今後の工夫次第でございますが、やり方によって徴収事務自体の簡素化がかなり図られるのではないかというふうに考えております。
#210
○塩田委員 次に、新技術に対応した安全衛生対策につきましてお伺いいたします。
 労災保険制度におきまして補償や援助の充実を図ることはもとよりでございますが、何よりも災害が発生することのないように労働安全衛生行政の一層の推進を図ることが必要だと思います。特に、最近は技術革新、そして職場のオフィスオートメーション化に適応することができない労働者、あるいは単身赴任等を余儀なくされる労働者が多くなってきているのじゃないかと思います。こういう労働態様の変化に伴い、労働者の健康の確保が必要だと思います。特に、体の面だけでなく、メンタルな心の健康が保たれなければならない、そのような方向にますます進んでいっておると思います。
 心の面における健康管理、健康確保を図るといったことは厚生行政と連携をとりながら進めなければならないことでございますけれども、産業内部、職場におきましてこのような健康確保の施策をどのように進めていっておられるか。大企業におきましてはかなりいろいろやっておられることも認めておるところでございますが、企業の大部分を占めております中小零細企業において依然として労働災害が発生している現状を見ますときに、中小企業における災害防止の努力を一層強化すべきだと思うのでございますが、労働省としてどのような施策を推進しておられますか、お伺いいたします。
#211
○小粥(義)政府委員 まず、御指摘のメンタルな問題での健康管理が今後必要になってくるということは私どもも同じように考えている次第でございます。労働省で五十七年に調査しました労働者の健康状態の調査でも、体の疲労よりも精神の疲れを訴える方が割合としてはむしろ多いというようなデータも出ております。さらに、ME機器の操作をめぐってもいろいろな精神的なストレスの問題を訴える向きも出てきているということで、私ども単に体の健康管理だけではなくして、メンタル面を含めた健康管理を今後進めていかなければならないと思っております。そのために、財団法人産業医学振興財団でそうしたメンタルヘルスの相談に応じ得るような人を養成するといったことも手がけております。まだまだ数は少ないのですが、今後これをさらに広げていきたいと考えております。
 それから、先生御指摘のように、実は中小企業にこうしたメンタルの問題に限らず安全衛生の問題が多いわけでございます。最近の災害の発生事例を見ましても、千人以上が一・〇六という度数率でございますが、百人以下になればそれが四倍、さらに五十人以下になれば八倍を超えるような高い発生率になっておりますから、そういう面で今後中小企業に対する安全衛生水準の向上を図っていかなければならないと思っております。
 そのために、具体的には中小企業が共同でやる場合の健康管理対策、労働衛生対策、これについての助成制度、これは従来個別のものとしては例えば健康診断あるいは作業環境の測定について助成制度があったわけでございますが、そうしたものを総合いたしまして、中小企業の安全衛生対策についての助成制度を六十一年度から総合的なものとして創設をすることにいたしております。こうしたものを通じまして、中小企業でも労働者の健康管理や何かに力を入れていただく、その場合にコストもかかるといった面を配慮して、そういう助成制度を今後大いに活用しながら中小企業での労働安全衛生水準の向上といったことに努力をしてまいりたいと考えております。
#212
○塩田委員 そういったきめ細かな対策、特にまた助成制度も新たに導入されたわけでございますので、今後ともこれに力を入れて推進をしていただきたいと思います。
 これに関連いたしまして、労働省関係の研究所あるいは産業医科大学等におきましてこの面の研究、何がどのように進められておるか、またどのような成果を上げておられるか、担当の方おられましたら御説明をいただきたいと思います。
#213
○福渡説明員 まずメンタルヘルス関係で申し上げますと、非常に基礎的なものではございますけれども、産業医学総合研究所でストレスに対する生理的な反応というテーマを大きく挙げまして研究を進めてきております。この点についての成果はまだ具体的に我々が取り上げてはおりませんけれども、次第にまとまりつつあるというように聞いております。
 それからVDT関係、これはOA化に伴う研究でございますが、これも産業医科大学と産業医学総合研究所の両方で生理的な面とフィールド調査をそれにかませまして、身体にどのような負荷がかかるのか、体の反応がどのような状態になってきているのか、このようなことについても次第に明らかにされつつあります。特にVDTによる目の疲労については生理的な反応についてのいろいろな成果が得られてきておりまして、適切な休止、作業中断というようなことで疲労の回復が早く行われるというような成果が得られてきておるところでございます。
#214
○塩田委員 続きまして、保険給付に関する労働基準監督署長の決定に不服のある者につきましては、労災保険審査官に対しまして審査請求をすることができることになっておりますが、この制度を設けている趣旨は、行政庁の行った処分に不服のある労働者の迅速な救済にあると思うのでございますが、最近あちこちで聞きますのは、審査官の決定が非常に手間取っておくれておる、そういう傾向が全般的にあるのではないかという指摘がございますが、この処理状況はどうなっておりますか。労働省は審査請求の処理の迅速化を図るために具体的にどのような施策を講じようとしておられますか、お伺いいたします。
#215
○稲葉(哲)政府委員 現在どのような審査の状況にあるかという点についてお答えいたしますと、五十九年度に新たに審査請求を受けた件数が約千五百件ございます。そして、当該五十九年度に約千三百件の審査決定を行ったところでございますけれども、前年度からの繰越件数もございまして、五十九年度末におきまして未決定件数が約千四百件ということになっております。
#216
○小粥(義)政府委員 件数については今お答えしたとおりの状況でございますが、最近おくれていると申しますか、たまる傾向にあることは否定できない事実かと思います。その対応策として、基本的には審査請求に当たる都道府県労働基準局に置かれます審査官あるいは労働保険審査会の事務局の体制といったものの強化を図らなければならないという面があるわけでございますが、この点は行政改革で定員増が必ずしもままならない厳しい情勢にございますので、十分な対応はまだできておりませんけれども、昨年末の審議会の建議でもこうした審査体制についての指摘もございますので、私ども今後この点は力を入れて進めてまいりたいと思っております。
 と同時に、個々の案件が非常に複雑になってきているということもおくれている大きな理由になっております。これはその事案の審査に当たって医師の意見をいろいろな各方面にわたって聴取をしなければならないといったこともあるわけでございます。同時に、もう一つは、いわゆる認定基準が相当前につくられたものもあるわけでございまして、そうした面で必ずしも今の場合に当てはめて的確な判断を下しにくい面も一部あるというような声も私ども耳にいたしておるわけでございます。したがって、認定基準も実態に合わせた形で見直しをしていかなければならない。そうしたことでこの審査案件の処理の迅速化を図ってまいりたいと考えております。
#217
○塩田委員 ぜひとも審査請求の処理の迅速化を図っていただきたいと思います。
 これに関連いたしまして、認定基準も問題であるということを言われましたが、確かにその面は、年月を経ますと実態も変わってまいりますし、いろいろ事情も変わってまいりますので、そういった必要があろうかと思います。また、実際に審査に出てくる前に、認定の段階におきますいろいろなトラブルがあるのじゃなかろうかと心配するわけです。ときどき私も各地の基準局に参るのでございますが、たくさんの人が押しかけて非常に喧騒にわたっている。これは何ですかと尋ねましたら、いや労災の認定の問題だ、多数で押しかけてやれば認定がすぐ行われるものではなかろうと思うのですけれども、どうしてこういう事態が起こるのか、前にはそんなことは余りなかったのにということを感じたことがございますが、これは一部の周あるいは署ではないかと思うのでございますけれども、そういう実態があるのを御存じでございますか。あるとすればどのようにこれに対処しておられるのか、お伺いいたします。
#218
○小粥(義)政府委員 監督署の窓口あるいは都道府県の労働基準局で労災保険の事案を処理することをめぐりましていろいろな紛争があったことは事実でございます。これは相当前はかなり広範な範囲でそういうこともあったわけでございます。最近、その当時に比べれば相当少なくなってきていると理解しておりますけれども、なお認定の場合あるいは療養給付を受けておられる方が傷病補償給付に切りかわる場合、いろいろな場合を通じまして、今でも一部にそうしたトラブルが起こるケースがあるというふうに聞いております。
 私ども、いわゆる給付の適正管理対策ということを最近推進しております。それぞれの局署で相当苦労してもらっているわけでございますが、漸次これが軌道に乗りつつある。したがって、そうした集団でどうこうということで行政の判断を筋をたがえるということのないよう今後とも適正に執行してまいりたいというふうに考えております。
#219
○塩田委員 ぜひとも法令に従い、行政は厳正にこれらの問題について処理をしていただきたい。圧力に屈することなく、公正な行政を推進していただきますように強く要請をいたしておきます。
 最後に、社会復帰の問題でございますが、被災された労働者に対しましては、年金を初めといたしまして保険給付を充実していただくということ、これがもちろん重要なことでございます。そういった方向で努力をしていただきたいわけでございますが、被災した労働者の一番の願いは、一日も早く元気になってもとの職場に復帰したいという気持ち、そして仲間とともに労働の汗を流して、家族にも、あるいはまた社会のためにも奉仕していきたい、こういう気持ちが心情としてあると思われるのでございます。このために、労働者の社会復帰を促進するための施策を充実することが必要だと思います。
 これにつきましては、昨年の十二月の労災保険審議会の建議にも指摘されておるところでございますが、労働省はどのような社会復帰の促進の措置を講じておられますか。また、今申し上げましたこの建議を受けでどのような施策を展開しようとしておられるか、お伺いいたします。
#220
○小粥(義)政府委員 審議会の建議でも指摘をされましたことでもございますし、私ども今後このリハビリ対策、社会復帰のための対策を積極的に進めていかなければならないと思っております。
 具体的には、例えばリハビリテーション作業所、これが労働福祉事業団の手によりまして幾つかあるわけでございますが、それが必ずしも十分その機能を果たしていない、むしろ入所者が固定してしまって、必ずしもその本来の機能を発揮していないといったような問題の指摘も受けております。したがって、そういうリハビリテーション作業所のような施設のあり方をまず見直していかなければならないと思っております。
 また、労災事業の枠内のいろいろな社会復帰のための施設だけではなくて、むしろこれからは職業能力開発の行政でいろいろ建てております施設等も大いに活用して、社会復帰がさらに促進されるように進めていかなければならないと思っておりますので、これはこれからの問題でございますけれども、労働省の職業能力開発行政の中でいろいろ用意されております施設をどういうふうに労災の被災者についても活用していったらいいか、そうしたこともあわせて検討していきたいというふうに考えております。
#221
○塩田委員 これらの社会復帰につきましては、今言われました職業能力開発行政の関係と密接に連携をとりまして、また現在労働基準行政で行っておりますリハビリテーション作業所等も見直す必要があるのじゃなかろうか、その連携をいかに進めていくか、また広くは厚生行政ともどのように連携を保っていくか、こ辺を総合的に見直して検討して、総合施策として緊密な連携のもとに進める必要があると思います。このことを特に強く要望をいたしまして、質問を終わります。大臣、もし何かございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
#222
○林国務大臣 ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、いっときも早く職業生活に復帰できるように、労働省といたしましても、施設の面あるいは運用の面その他に万全を期してまいりたいと思っております。
#223
○塩田委員 ありがとうございました。終わります。
#224
○山崎委員長 浦井洋君。
#225
○浦井委員 午前中からの今回の改正案の審議を聞いておりますと、局長は、今回の改正、制度面において公平を欠くと考えられる点であるとか均衡を失していると考えられる点の改善を行うということをしきりに強調されるわけでありますけれども、どうも年金の給付費全体の削減をある程度のスタンスでねらっておるのではないかというふうに思わざるを得ないわけでありますが、これが目的ではないんですか。
#226
○小粥(義)政府委員 午前中からのお尋ねに対しても繰り返し御答弁申し上げているわけでございますが、今回の改正は昨年暮れの労災害議会からの建議にのっとりましてまとめたものでございまして、その本旨とするところは、労災保険制度は今いろいろな問題点を抱えておりますけれども、その中で、制度の持ちます不均衡、不公平の是正を主眼として今回の改正案をつくったわけでございます。
 確かに結果的に高齢者の年金給付が減額になる部分が出てくるといったようなことでの御指摘もございますが、他方で最低保障額の引き上げあるいは通勤災害の適用の拡大といったようなことも考えているわけでございまして、財政面だけを考えてどうこうというような趣旨のものではない、あくまで不均衡、不公平の是正を主眼とするものであるということでございます。
#227
○浦井委員 そういう答えでありますけれども、いただいた資料、今度の改正による影響額ですね、午前中から何度も言われておりますけれども、これを見れば、六十二年度が二十六億六千万円の持ち出しですね。それから六十三年度が十億三千万円ですね。それから六十四年が今度はマイナス二億八千万円、六十五年度はマイナス十三億六千万円でしょう。だから、もう六十五年度から約十億くらいの支出減になるわけで、これはやはり削減と言わざるを得ないですね。
#228
○小粥(義)政府委員 それは、六十年時点の受給者を前提に六十一年度から該当者がどういうふうに出てくるかを推計したものでございますので、そういう数字になっておるわけでございます。御指摘のように、前半では持ち出しになるけれども後半ではむしろマイナスになるという傾向は確かにございます。しかし、労災保険事業の収支全体の問題として考えた場合は総枠八千億から九千億の年間保険給付があるわけでございまして、収支改善という観点からすれば極めて微々たるものだ、それは単なる結果にすぎないというふうに私ども考えております。
 これも午前中お答えを申したわけですが、労災の保険収支の問題としては、今後年金受給者がさらに増加をしていく傾向にあるわけでございます。二十年先には三十万人に届くというような傾向にあるわけでございまして、それに必要な原資の積み立てが果たして十分かどうかといった観点ではいろいろ問題があるわけでございます。したがって、その点は現在私ども研究会の場をつくりましてこうした労災保険の将来の収支というものをどう見ていったらいいかといったような研究もいたしているわけでございまして、それはもっと先の話でございます。
 今回の改正はもちろんそういう問題を持っていることは否定いたしませんが、今回の改正は専ら財政収支をどうこうということではなくて、あくまで最初お答えしたような観点で案をつくったものでございます。
#229
○浦井委員 日本は世界第二の経済力を持っているわけですから、同じようなパイをそれをどう分けるかというようなことで狭い観点で検討するのでなしに、もっと広い観点でパイを大きくするようなことを考えていただきたい。
 だから、局長いろいろ言われますけれども、やはり将来給付額を削減するための改悪だというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。公平を言うならば、やはり最低保障額をもっと上げるべきではないか。下の方をもっと上げるべきではないか。
 例えば、局長ももう既に御存じだろうと思うのですけれども、若年で被災した場合にはずっと低くなる。イギリスなんかの場合には四十歳を一つの区切りにして、四十歳以下の若いときに被災した人たちには特別に付加給付を行うというような制度があるというふうに私は聞いておるわけでありますけれども、そういうような少し広いスタンスというか、広い視野で物事を考えなければいかぬのと違うのですか。
#230
○小粥(義)政府委員 イギリスの制度、詳しくは存じませんが、四十歳を境に付加給付の額が違う形をとっておりますけれども、イギリスの場合はいわゆる社会保障制度が一本化をされておりまして、その中に位置づけられた制度というふうに理解をしております。我が国の場合の労災保険制度、これはもちろんいろいろ他に社会保険制度がございますが、やはりその制度の基本は労働者の失われた稼得能力の補てんというところにあるわけでございます。したがって、最低保障額の引き上げをどうするか、どの程度にやるかということは、もちろんいろいろな考え方がございますが、基本的にはその人が得ていた賃金を前提としたいわゆる稼得能力の損失を補てんするという基本線はやはり守らなければならないわけでございまして、高ければ高いほどいいということは言えるかと思いますけれども、その線との基本的な性格との兼ね合いで、やはりおのずから線を引く範囲は限定されてくるものではないかというふうに考えております。
 現在御審議いただいております五%引き上げの案ではまだ上げ方が少ないという御意見かとも思いますが、例えば四十歳から四十五歳層ですと、これは最高がたしか五千六百円くらいになるはずでございます。そうしますと、現在三千二百十円の最低保障額でいる方の年間の給付総額に比べますと、相当の増額にもなるわけでございまして、それに労災の福祉事業として、労働福祉事業として給付しております特別年金等を加算いたしますとかなりな増額が期待できるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
#231
○浦井委員 稼得能力の欠けた部分を補てんするのだということで、余り限定をしない方がよいのではないかと思うのだ。いずれにしても傷病を受けた方あるいはその方の家族、そうでない御家庭あるいはそうでない勤労者に比べたら非常に苦しい生活を強いられておるわけなのですから、ハンディキャップがあるわけなのですから、やはりこの際真っ先にやるべきことは、低い最低基準というものをもっと上げるべきだということを要望しておきたいと思うのです。
 それから、今度は最高の方でありますが、最高の方でいろいろ問題がある。今回の改正で年金部分の保険給付が労基法上の法定補償を下回る場合が出てくるという問題もある。それから、これは午前中同僚の委員が質問をされた問題でありますけれども、一年半の間は労災保険で休業補償をもらっておった。一年半から三年の間は労働基準法の給付さえも下回るというようなケースが出てくる、比較的高い賃金の場合ですね、そういうケースが出てくる。これは確認されますね。
#232
○小粥(義)政府委員 療養を始めてから一年半を過ぎ三年までの間に、今度新しく設定しようとしている最高限度額に給付基礎日額がぶつかる方については最高限度額で抑えられる、他方、基準法の休業補償の方はその頭打ちがないという意味では、基準法による災害補償よりも日額において下回るというケースは出るかとも存じます。
#233
○浦井委員 その場合に、基準法に基づく災害補償ということでその差額が出てくるわけですから、事業主にその差額を請求できると思うのですがね。これはどうですか。
#234
○小粥(義)政府委員 それは午前中の御質問にもお答えをしたわけでございますが、いわゆる基準法による災害補償とそれから労災保険法によります保険給付との関係の問題でございまして、すべての面について基準法の災害補償を上回るという仕組みには必ずしもなってない面があるわけでございます。
 その場合に、その基準法の災害補償の水準を下回る部分については基準法に基づく災害補償の請求ができるかどうかという点は、これはいわゆる打ち切り補償を長期給付、さらには年金に切りかえた時点以降、そうした点のあり得ることを法律としてもある程度予想しながら、その上で労災保険給付で基準法の災害補償に相当する給付がなされた場合には基準法の災害補償を行わなくてもいい、こういうように調整をいたしたわけでございます。
 従来は、実は労災保険で給付した場合はその価額の限度で基準法の災害補償の責めを免れる、こうなっていたわけでございますけれども、その価額の限度は必ずしも必要条件じゃないということで、単に相当する保険給付がなされた場合は基準法の災害補償を行わなくてもよい、こういうことに法律が改められた経緯が実はあるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、今回その一年半の部分に関して若干のずれが出ることは否定をいたしませんけれども、他方、その間最低保障額の引き上げはその期間について同じようになされるわけでございまして、それらを総体的に判断して、私どもとしては、その一年半の期間に係る傷病補償年金も基準法で言うところの補償に見合う、つまり相当する保険給付というふうに見ているわけでございます。したがって、差額が出るからそれを基準法の災害補償の請求で償うということは、法律の字面からは出てまいりませんということをお答え申し上げているわけであります。
#235
○浦井委員 そうすると、長々とお答えになりましたけれども、要するに、個々人で見れば労基法の給付を下回る場合も、これはもう仕方がない、請求はできない、もう一遍確認しますけれども、そういうふうに理解していいですね、簡単に言えば。
#236
○小粥(義)政府委員 少なくとも相当する保険給付がなされたものと見られる場合は、その実際の個別の額について下回る場合があっても、その分だけを別途基準法で請求することはできない、こういう解釈であります。
#237
○浦井委員 そうなると、問題になってくるわけでありまして、労働基準局長でありますから十分御承知だと思いますけれども、まさに労基法というのは労働法の基本憲章であります。それが部分的にしろ実質的に改悪されるということになるわけですよね。労基法というのは労働組合と使用者との間のことを決めるのではなしに、労働者個々人と使用者の間の関係を決めて、その中で労働者を保護するために、労働者の最低の権利を確保するためにつくられたものでしょう。ささいなことのように見えますけれども、これは重大な問題でして、実質上労基法を改悪することにならへんですか、そういうようなケースの場合には。
#238
○小粥(義)政府委員 御指摘のような点が実はあるわけでございます。四十年時点の改正でも同じようなケースの問題がございました。その改正を踏まえてなおかつ法律では、その保険給付がなされた場合に基準法の災害補償との調整を行うように調整規定を置いてあるわけでございます。
 今、私が申し上げておりますのは、確かに個々人の給付内容を見ますと基準法のレベルより下がる部分が出るわけでございますが、今回、そういうような傷病補償年金について取り扱いをすることにしましたのは、いわゆる年金について年功序列的な賃金制度の反映を図る、その観点では下を引き上げる、となれば上はやはり最高限度額を設定してということで、年金としての年功賃金体系の反映を図るのか図らないのかという二者択一の問題になるわけでございますが、最低保障の方の引き上げも別途あるわけでございますから、その場合には、むしろ年金についての最高、最低保障額の適用の方を優先して考えたということでございます。
#239
○浦井委員 だから、二者択一のそこが問題でありまして、小粥さんのお話では、年金の収支の均衡を図るということが目的になって、故意か偶然か知りませんけれども、肝心の個々の労働者が守られるべき労基法の一角を突き崩していることにならへんですか、こういう議論が成り立つでしょう。この論理が通るなら、極端に言えば、他方で労基法を、例えば休日の部分であるとか超勤の部分であるとか他の部分なんか、この問題出てませんけれども、こういう手法でやれば実質的に労基法が空洞化してしまうことにならへんですか。
 これは重大な問題ですよ。年金、年金とそればかり主張して、それだけを前に浮き彫りにさせて、それの収支の均衡が問題だと言いながら、実際上は労基法で最低保障されておる給付さえも引き下げる場合があり得るということになってきたら、これは大変なことになるのですよ。
#240
○小粥(義)政府委員 労災保険法と基準法の性格につきましてはいろいろ議論のあるところでございますけれども、発生の経緯からしますと、基準法で規定しております災害補償責任、これの責任保険みたいな形で労災保険法は生まれてきているわけでございます。しかし、労災保険法が生まれて以降、労災保険法自体のいろいろな改正もやりまして、基準法にはないいろいろなこともその中に織り込まれるようになっております。ですから、基礎となる法理は、つまり使用者の補償責任という点は共通の法理でございますけれども、制度としては並立する制度になっているわけでございます。そういう中で、基準法に比べて不利な部分はあるかもしれませんけれども、総体として見た場合に、それが相当する仕組み、給付であるというふうに見られるものもあるわけでございます。
 特に一番端的な例が、いわゆる打ち切り補償をなくしてこれを年金化した、長期給付化したのは、ある意味では長い期間給付が受けられるという期間の利益をとる。一方、給付基礎日額については、ある部分下がる場合があっても総体としての給付で見れば基準法の水準を上回るというような考え方もあり得るわけでございます。そうした改正が四十年時点行われたことも事実あるわけでございます。ですから、私ども必ずしも下回ることは奨励すべきだということを申し上げているのではなくて、制度全体として見た場合に、障害補償年金の場合、今後長期にわたって給付するとなった場合に、その年金額にいわゆる年功型の賃金制度の反映を図るというような本委員会の決議の趣旨もあるわけでございますから、そうしたものを踏まえてむしろそれの適用を考えた、こういうことでございます。
#241
○浦井委員 何度も繰り返しますけれども、労基法というのは労働法の基本憲章です。それをもとにして労災法もできたのだろうし、それが労働運動の結果として国会で皆さん方が上積みをしていった。それが今回は部分的にしろ下がるというところを私は問題にしておるわけです。だから、ここのところをはっきりささぬとぐあいが悪いわけだ。そんなことをしたら、そういう小粥さんのような言い方をすれば、労基法の個々の部分についてどれでもそういう手法を使ってやれる。こんなことは絶対許されぬですよ、労基法を部分的に実質的に空洞化するとか、改悪するとか。
#242
○小粥(義)政府委員 ですから、先ほどからお答えしておりますように、ある部分をとらえてみますとそういう部分はあっても、一方で期間の利益が得られるということで考えた場合、総体としての保険給付は少なくとも基準法で言う災害補償の給付に相当するものというふうに見られるわけでございまして、そういう観点で私ども考えておるわけでございます。
#243
○浦井委員 この辺でこの議論はやめますけれども、もう一遍繰り返しますが、ある部分では切り下げられるケースが出てくるかもしらぬけれども、全体としてはよくなるのだというような考え方では労基法の基本的な精神に反するわけです。重大な発言だと思うのです。このことを私は銘記をしておきたいと思うのです。
 それから、年金のスライドが六%、休業補償のスライドが二〇%は低過ぎる。厚生年金でも五%でありますから、傷病年金にしろ休業補償にしろ五%ということにして毎年きちんと適用していくというふうにすべきではないかと思うのですが……。
#244
○小粥(義)政府委員 休業補償のスライドは現行二〇%という制度になっておりますけれども、これにつきましては、休業補償は元来がそう長期に及ばないものということで考えられていたものでございまして、そういう意味で年金給付のスライドとは違う取り扱いで考えられているわけでございます。こうした観点から、例えば雇用保険の給付と最低額を合わせるといった関連もございまして、したがって年金給付については賃金スライドで六%をやっておりますけれども、休業補償については現行二〇%で妥当なものと考えている次第でございます。
#245
○浦井委員 これは各委員とも取り上げた通勤災害の問題ですが、多少は改善されておるように見えますけれども、ごくささいなことで、プラス学校、公共職業訓練施設への通学、人工透析というような格好であります。私は、これは根本的に見直すべきだ、通勤災害全体を業務上と見るということで、その中からこれはあんまりだからということで外にするというような考え方でいかないといかぬのと違うか、こういうふうに思うのですが、その概念のところが非常に特殊な例ばかりつけ加えていっているという感じがして仕方がないわけです。
#246
○小粥(義)政府委員 業務上災害について、使用者の無過失損害賠償責任を前提に、また保険給付に要する費用もすべて使用者の負担にしておりますのは、使用者の管理下において生じた災害であるということがその眼目になっておるわけでございます。
 しかしながら、通勤災害になりますと、確かに就業のために行う行為であることは事実でございますけれども、使用者の管理下にある行為とは言えないわけでございまして、そういう意味で、四十八年、この制度ができましたときもそうした労働災害として扱うべきじゃないかという御議論ございましたが、一応労働災害とは別のものとして制度を立てたわけでございまして、その考え方は今も同様でございます。
#247
○浦井委員 労働の態様が変わってきていますし、今何かエグゼクティブとかなんとかかんとかいっておだてられながら四六時中使用者の管理下にあるわけですよね。それをいろいろ事細かくあれがどうだ、これがどうだというようなことで認定事例集に入れるとか入れぬというようなことでなしに――午前中にも出ましたように、新宿バス放火事件、この場合の秋葉さんなんかの場合は、これは明らかに新聞にも出ておったように大岡裁きというふうに出ておったですね。これは明らかによかったと思うのですよ。これは評価したいと思うのですけれども、例えば認定事例集を見ますと、いまだにこんなケースがある。バスの運転手が洗車をしておっておなかがすいたので車庫の隣の食堂でうどんを食べて、そして車庫に帰ろうとした途上で災害に遭って、それでそれが認定外という裁定を受けておる。こういう非常にシビアなのが認定事例集に載っておって、秋葉さんのケースなんというのは、午前中の論議でも出ておったように、これは認定事例集に入れないわけでしょう。
 こういうようなやり方をやっておったら、もう一遍繰り返しますけれども、文字どおり二十四時間じゅう使用者の管理下にある労働者はかなわぬですよ。もっと通勤災害全体を業務上と見るということから出発した論議をせないかぬというように私は思うのですが、重ねて要望したいと思います。
#248
○小粥(義)政府委員 今先生御指摘の最後の部分で、労働災害として見た上で対応を考えるべきだという点は、先ほど私お答えしましたとおり、労働災害とはやはり違うものとして対応せざるを得ないと思っております。しかしながら、個別のケースについて午前中にもいろいろ御質問ございました。極めて特異なケースと見るのか見ないのか、あるいはリーディングケースとして見るのかとか、いろいろなものもあろうかと思います。この点は今回の改正案にも織り込んでございますように、今後また省令でいろいろその行為を書き加えなければならないわけでございまして、そうした際にそういう事例についてもわかりやすいように整理をして、各局署での扱いが不一致にならないように今後とも私どもは努力をしてまいりたいと考えております。
#249
○浦井委員 とにかく後で後で、皆先送りになって、しかも省令でというような格好で、これは国会審議というのは一体とないなるんだろうかというふうに今のお答えを聞いて私、痛切に感じておるわけなんです。
 次の問題として、今度省令で経営側の不服申し立てが意見書として提出できるように定めるわけですか。
#250
○小粥(義)政府委員 不服申し立ての適格性云々とは全然別の観点で、企業も産業医をいろいろ持っておりまして、労働者の健康管理についてのいろいろな蓄積もあるわけでございます。そうした観点から、業務上の認定に関しての意見を言う場が欲しいという要望は、これは使用者側からございました。むしろ率直に申しますと、不服申し立て制度を認めるべきではないか、こういう意見もあるわけでございますが、ただこれはやはり不服申し立ての適格性はないもの、法律的な利害関係者としては見るわけにはいかないので、しかしながら、一方、健康管理については企業にもいろいろなことを義務づけておりますから、そうした観点での意見が言える場を設けるということは審議会の建議にも指摘をされておりますので、それを省令でもって様式の改正という形で織り込みたいというように考えております。
#251
○浦井委員 だから、労働者の方は、今小粥さん言われたように使用者の不服申し立てが制度として創設される第一歩になるのではないかということを非常に心配されておるわけですよ。小粥さんは、原告として適格性がない、それは確かにそのとおりです。この原則は動かさぬわけですね。省令で定める、そんな余計なことせぬでもいいのと違いますか。そんなことはやめた方がいいのと違いますか、労働者保護という観点に立ては。
#252
○小粥(義)政府委員 御承知のように審議会は三者構成でございまして、そこで各側からそれぞれ御意見が出るわけでございます。その意見の中で整理をした上の集約が建議として出されたわけでございます。私どもとしてはその建議を尊重していきたいと思っておりますし、実質的な問題としても、先ほど申し上げましたように使用者には健康管理の責任をいろいろ義務づけているわけでございます。そうした面で産業医その他の活動の実績というものはあるわけでございますので、そうした面の意見を行政が判断する場合の参考資料としてとることについては、これはいささかも差し支えないものというふうに考えております。もちろん、そのために事案の処理が殊さらに長引かせられるとかいうような弊害を生まないように私ども十分気をつけてまいりたいと思っております。
#253
○浦井委員 労使の間の中をとるというようなことでなしに、やっぱり労働省というのは労働者の側に立ったきっぱりとした態度を見せなければいかぬわけですね。この労災保険制度にしても、やっぱり使用者が拠出をして保険者は政府であるということになっておるわけなんですから、使用者側にいろいろお願いしているから使用者側の言い分も多少は聞かなければいかぬというようなそんな態度は労働省としてはとるべきではないということを私は強調をしておきたいと思うわけであります。
 そこで、次に急性死の問題。これは最近非常にふえておって、これが業務上なのか業務外なのか非常に判定が難しい。けさからも議論になっておりました。しかも中高年の一家の中心柱がなることが多いということで、一一六通達ではもう古くなって実情に合わない。現場の監督官が非常に苦労しておるという話も聞いておるわけでありますけれども、労働省では脳血管疾患及び虚血性心疾患等に関する専門家会議で認定基準の見直しの検討をしておるというが、どういう検討をしていつごろ結論が出るのか、ちょっと答えていただきたい。
#254
○小粥(義)政府委員 今御指摘の専門家会議で実は三年ほど前から検討をいただいて、さらに今継続をしている段階でございますが、御指摘のように、いわゆる脳卒中ないしは心筋梗塞みたいな疾病が最近多くなっております。それが業務遂行中に発生をした、その場合に果たして業務起因性があるのかどうかをめぐって争われる事案が非常に多くなっています。
 現在のその二つの疾病に対する認定基準は三十六年当時につくられたものでございます。その後の成人病の実態の変化等もあろうかと思いますから、そういう意味での見直しをお願いをしているわけでございますが、ただ、今までのところはいわゆるこれを基準法施行規則の三十五条でもう疾病そのものとして特掲をすることは必ずしも適当じゃない。むしろ個人差というものはやはり大きいのであって、個別ケースごとに考えて対応していかなければいけない、こういうことになっているわけでございますけれども、それではその個別に判断する場合の認定基準をどういうふうにしたらいいか、これを今検討いただいているところでございまして、結論を得るまでにはなお一年まではいかないにしても、一年近くかかるのではないかというふうに見ております。
#255
○浦井委員 私も医者ですから、一応ライセンスは持っておりますからわかるのですけれども、例えば脳出血、脳梗塞あるいはクモ膜下出血、こんなもの一々医学的にどうだというようなことを言いよったら、いつまでたっても認定基準の見直しというようなことはできないと思うのですよ。だから法律上の保護を与えるのが相当かどうかというような観点に立った思い切りが必要だと思うのですよ、そういう点で。だから、いつまでも医学論議をやっておれば認定基準の見直しはできないですよ。いつごろやるのですか。
#256
○小粥(義)政府委員 今までの症例を全部検索をいたしまして共通点を整理するとかいったようなことで時間を要するわけでございまして、と言って私どもこれをいつまでもだらだら引き延ばすつもりはないわけでございます。むしろ、正直言いましてこの事案の処理で一番汗をかいておるのは行政の窓口の担当者でございますから、できるだけ早くすっきりした判断ができるような認定基準を私どもも切に望んでおるわけでございます。ですから、この検討についてはできるだけ必要なデータ等も提供しながら、可能な限り早く結論をいただきたいと考えておりますが、今言ったようないろいろな作業をしていくとなるとやはりそれなりの時間を要しますので、めどとしては、先ほど申し上げたように小一年はかかるものと考えております。
#257
○浦井委員 いつももう一年ぐらいという格好になるのですよ。去年の十二月の参議院で内藤参議院議員が人事院規則の問題でやったときも一年ぐらい、今度もまた一年ぐらいですか。だから、観点を変えないかぬのと違いますか。急性循環器疾患がふえておる。例えば、いただいた資料によると五十九年度五十四件ですね。それで申請件数はわからぬわけですね。認定件数がわかっておるわけでしょう。申請件数がどれくらいあって、認定外、業務外の件数がどれくらいあるかという数字はあるのですか。そういう数字を調べたりしながら急がなければ、いつまでたっても第一線の窓口はそれこそ困りますよ。
    〔委員長退席、浜田(卓)委員長代理着席〕
#258
○小粥(義)政府委員 毎年定例的にとる報告ではそうしたものをとっておりませんけれども、先ほど来お答えしております専門家会議で検討していただくためにも当然全体の数はどれくらいあるのかということも把握をしなければいけませんので、五十九年について私ども把握をいたしております。請求のありました件数は、五十九年度では繰り越しを含めまして五百七十二件でございまして、うち業務上の認定をしたものが五十四件、まだ未処理のものが百七十三件という状況でございます。
#259
○浦井委員 そうすると、それ以外のものは全部外ということになっておるわけですよ。だから、だんだん申請の数が五百七十二件というようにふえてきておるわけでしょう。だから早うにやらにゃいかぬ。
 それと、これは細かいことですけれども、不支給処分の決定通知書ですね、これが極端に言えば上、外と書いて、ただ外の方に丸をしただけで返ってくる。その理由は何も書いてない。極端な場合ですよ。そういうケースもまだある。だから、右なら左が半身麻痺になって非常に困っておるのに何でそんな外だけで返ってくるのやという不満が多いわけで、できるだけ詳細にこういう理由で外と判断したのだというような、せめてそれぐらいのことをやるべきじゃないですかね。
#260
○小粥(義)政府委員 業務上外の認定をした場合の通知書に業務上外とされた理由が書かれていないというケースが多いということでございましたが、私どもが業務上外と判断する場合は、不服申し立てのためにもその理由が明らかになっていないと相手方としていろいろ困る面も出るので、そこは明確に業務上外とした理由を書くように局署を指導をいたしております。それが必ずしも徹底していなかったとすれば、私どもさらにその点は徹底をしてまいりたいと思っております。
    〔浜田(卓)委員長代理退席、委員長着席〕
#261
○浦井委員 そこで局長、上外の認定をするときに災害主義という引き金がどうしても重視されるということなんです。ところが、ことしの二月の大阪の地裁判決で、業務起因性というのは引き会もその一つであって、言うたらそのほかのファクターも十分に並列的に考慮して決めるんだということで認定外になったのを今度は原告勝利、こういう格好になっておるわけです。だから、そういう考え方自身を変えなければ、アクシデントが存在しなければならぬという固定観念にいつまでも引っ張られておればだめなんだろう。労働の態様が違ってきておりますし、先ほどからストレスの話も出ておる。だから、業務起因性は引き会もその一つなんだという観点でやるべきではないかと思うのですが、どうですか。
#262
○小粥(義)政府委員 もともとそうした疾病を言うならば持病として持っておられる方が業務遂行中に発症したという場合に、やはり業務起因性がなければならないわけでございまして、その起因性を判断するのに、認定基準ではいわゆる災害性といいますか突発性といったようなものを要件として掲げているわけでございます。その点は、確かに二月の大阪の方の判決では必ずしも必要条件ではないというような判示の部分がございますけれども、他方、私どもとしては、ほかの裁判例では、単に地裁に限らず高裁を含めましてそうした今の認定基準を支持される判決も出ていることもあるわけでございまして、一概に言えない面があるわけでございます。
 二月の事例について申し上げますと、いわゆる突発性というよりも、むしろ寒暖の差の相当大きい業務にその直前従事していた。その従事していた期間がある瞬間であったのか、あるいはある程度の期間継続的にやっておったのか、これはいろいろケースによってあろうかと思うのですが、少なくとも何らがその業務が持っている疾病を表へ出す引き金になる、そういう業務とのつながりがなければおかしいわけでございまして、そういう面で、私ども把握していないそうした事実が二月の判決についてはあったと判断をいたしているわけでございます。したがって、認定基準でいう突発性あるいは災害性を全く否定されるということについては私ども必ずしも納得できないわけでございます。
#263
○浦井委員 私は、やはり災害前置主義という立場に固執する限りはなかなか作業が先へ進まないと思うわけなんですよ。現にクモ膜下出血の場合なんかは、別に何の引き金もなしにうちで夜中に起こるというようなケースもたくさんあるわけです。それは生まれつきの奇形であったというようなことも医学的には言えぬことはないですよ。労働者保護という観点に立って、労災法の精神に立ってやるならば、私はこういうのは業務上だとすべきだと思うのですよ。そこのところを小粥さんに決断いただきたい、こういうふうに私はお願いしておるわけです。
#264
○小粥(義)政府委員 先ほどもお答えしましたように、非常に個人差があるということは事実でございますから、そうした個別のケースに当たった場合に判断がぶれないようにやはり何らかの客観的な要素というものが判断基準に入らなければならない。その一つとして、いわゆる災害性というものを今の認定基準に掲げているわけでございます。仮にそれ以外の客観的な要件というものが、もっと的確なものがあるとすれば、それによることもやぶさかではないわけでございまして、そうした点を含めて今検討をいただいておるわけでございます。しばらく時間をおかりしたいと思います。
#265
○浦井委員 個々の労働の態様が違ってきておるし、中高年の方が、五百七十二件もいろんな格好で申請されておるわけですから、これは今までの災害主義というものを捨てよとまでは言わぬですけれども、相対的には軽く見るというような感じでやらぬと、私は基本的な認定基準の見直しなんというのはできないと思うのです。効率的にやらなければいかぬわけですから。
 それはそれとして、もう時間がないですから、VDTもちょっと一言尋ねておきたいと思うのです。
 VDTの場合、その指針、まだ未知の部分がたくさんありますから、だから今すぐに認定基準をつくった方がよいのかどうか、私自身まだ迷っております。だから、指針は指針でつくられたことは評価はするのですけれども、しかし、いずれやはり基準をつくらなければならぬ。頸肩腕症候群、キーパンチャーの場合には割に早く基準をつくって、それを改定をされていっておるわけでありますから、だから、そういう点でやはり指針から早く基準にするような作業を進めるべきだというふうに私はまず要望しておきたいと思います。
 そこで、やはりその場合に、VDTの作業時間の上限をせめて指針の中でも決めるべきではないかというような問題があるし、A、B、Cとわざわざ分けなければならぬのかというような問題があるわけですし、それからいただいた労働基準局の指針のパンフレットを見ますと、もう初めから難しいのですよね。一般向きでない、極めて抽象的でわかりにくい、こういう問題があるのですが、ちょっとこれ答えていただきたいと思うのです。
#266
○小粥(義)政府委員 まず指針に一日の作業時間の上限の規制をしなかったという点は、現在までの医学的知見をいろいろ私ども収集をしているわけでございますが、その中では確かにVDT作業で目の疲労あるいは肩が凝るといったような現象が出るわけでございますが、それは疲労の蓄積という格好でございまして、一定の休息期間をとることによって回復するという見方がむしろ大勢であるというふうに承知をいたしておりまして、したがって総量の規制よりはむしろ一定の休息をとることの方が大事であるというふうに理解しております。特に、外国の法規制を見ましてもそれはないものですから、そういう観点でやっております。
 なお、指針がわかりにくいという点は、実はそうした作業管理の仕方、考え方を出先機関に対して示すということでやったわけでございまして、これが一般事業場にさらに広まっていくためにもうちょっとわかりやすいものをという声もございますので、そうしたものは別途考えたいと思っております。
#267
○浦井委員 そのときの参考に、これは最後ですけれども、きのうページ数を打ち合わせをしたと思うのですが、労働省労働基準局という名前のこのきれいな紙のパンフレットですよね。それを私、日本眼科医会の会長個人の、会長個人のと言ったら変ですけれども、意見を聞いてきましたので、ちょっと局長さん、小粥さん、見ておってください。
 まず二ページですけれども、この「グレアの防止」、突端からグレアと出てくる。このグレアとは何かと、後で十二ページに出てきますよ。しかし、まずグレアとは何かというようなことがだれにでもわかるように、重複してもよいからやはりここに書いておかなければいかぬのと違うかという意見。
 それから、今も言われた三ページの休止時間ですね。小休止の場合でも、編み物をしたり、本を読んだり、テレビを見るというようなことはやめておけ、そして目を休めるということが大事だという説明が必要ではないかという意見があります。
 それから今度は五ページ、これはちょっと論理的におかしいのですが、一番上の行ですね、「おおむね四十センチメートル以上の視距離が確保できるようにすること。」ということですけれども、近視が強いと四十センチという視距離では見えない人がおる、一体どうするのかというような問題がある。
 それから、もうこれでしまいですけれども、七ページですね。真ん中よりちょっと下に、やはり「必要な保健指導を行うこと。」というところに、これは眼科医ですからそう言うのですけれども、眼科へ行って眼鏡処方せんによって新しい眼鏡をつくれというようなことも書く必要があるのではないか。
 それから、その七ページの最後の行ですけれども、就業の前後または就業中または休止時間に体操を行わせるというような丁寧な書き方が必要ではないかというような意見も聞いてきております。
 これはなかなか苦労してつくられたということはよくわかるのですけれども、やはり丁寧さに欠けておるということが言えるわけで、またこれの解説書がつくられるということでありますけれども、そのときには、こういうような意見もあるのだということを参考にして、だれが読んでもわかるようにしていただきたい。
 特にこれは労働省としては無理な注文かもわかりませんが、十八ページの上から三行目に「産業医又は眼科医」というふうに書いてあります。が、日本眼科医会の会長は、産業医で果たしてこんなことができるのか、これは産業医科大学を否定するみたいな話ですけれども、そういう意見があるわけなんです。
 だから、そういう点を十分に考慮しながら、VDTに従事する人たちが見て参考になるような、あるいは使用者が見て具体的に参考になるようなものに仕上げていただきたいということを私要望して、質問を終わりたいと思います。ちょっと答えていただきたい。
#268
○小粥(義)政府委員 私ども、このVDT作業に従事する方に職業性疾病的なものが発生しないように強く願っておるわけでございますから、そのための必要な指針その他について、いろいろな御意見、これからもあらゆる方面から伺っていくつもりでおりますし、そうした面は今後のパンフレットの中にもできるだけ生かしていきたいと思っております。
#269
○浦井委員 終わります。
#270
○山崎委員長 菅直人君。
#271
○菅委員 労災法の改正の質疑がきょう午前以来ずっと続いているわけですが、私は時間も短いので、幾つかの問題に絞って労働省としての見解を伺いたいと思います。
 今回の改正の大きな柱がいわゆる給付基礎日額の改正にあるわけですけれども、いろいろと労働省の説明を受けますと、確かに現在の状況が必ずしも合理的でないというか適正でないという面もわかるのですが、この新しい方式を実施をしたときにどういうふうな影響が出てくるのかという点で幾つか心配な点もあるわけです。
 この労働省が出された資料を見ますと、賃金構造基本統計調査をもとに最低、最高額をある範囲の中におさめるというふうになっておるわけですが、最高限度額が特に六十歳から六十五歳に移る時点でかなり大きく急激に変化をしているわけです。この点で、この日額が六十歳−六十五歳で具体的な数字でどのくらい変化をし、そのときに特に残されている遺族の人たちにとってどういう影響が出るのかという点が若干心配なんですが、そのあたりの見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
#272
○小粥(義)政府委員 今私どもが五十九年の賃金構造基本調査の結果に基づいて一応はしいた数字では、六十歳から六十五歳層は最高限度額が一万四千六十八円になっておりますが、六十五歳になりますと、賃金構造基本調査の数字では実はもっと低いのですが、別途ILO百二十一号条約で最高限度額を決める場合の要件がございます。それを当てはめました九千四百九十三円、これが六十五歳以上の年齢階層についての最高限度額、こういうふうに考えているわけでございます。
 では、これを適用した場合にどのくらいの影響が出るかということでございますが、いわゆる法定給付としての年金給付額のほかに別途労災保険事業におきましては労働福祉事業として特別支給金を支給いたしております。年金受給者についても、いわゆる定常的な賃金以外にボーナス等をそれぞれ労働者がもらっていた場合に、そのボーナス見合いの分に相当する給付の上積みをいたしておりまして、限度額は大体給付基礎日額の二割ということになっておりますけれども、そうしたものがその上に上積みされますので、ここで表面に出ております九千四百九十三円よりは高い年金給付がその家族にも渡る、こういうふうに見ているわけでございます。ただ、いずれにしても最高限度額がなかったときに比べればそれなりに減額になることはやむを得ないところでございます。
 ただ、一般的なその年代層の稼得能力といったものを考えますと実はもっと低くなるのでございますが、そうはしないで、一定の下支えをしているというところは御理解いただきたいと思っております。
#273
○菅委員 今の数字を見ても、この世代で三分の一ぐらい一挙に上限額が下がるわけで、そういう点では、同じ下がるにしてももう少し工夫があってもいいのではないかという感じもするわけです。特別支給金のことを言われましたけれども、そういうことでそういうものが若干フォローされるとすればそれはそれで何とかなるのかとも思いますが、その点をまず一つ指摘しておきたいと思います。
 それから、きょうの朝以来通勤災害の議論がかなりいろいろな方から出ておりましたけれども、あるいは通勤災害に直接には関係しないかもしれませんが、最近勤務の形態がいろいろ変化をして、特にニューメディア等が発達をしてくると在宅での勤務ということがかなり広がってきている、あるいは今後ますます広がってくるのではないかと思われるわけです。その場合に、在宅勤務中の労働災害ということも今後考えられてくるだろうし、あるいは、これは通うということにはならないわけですけれども、いわば自分の家で仕事をしていて多少近所に出て戻ってくるというようなとき、日用品の購入あるいは学校施設等の通学ということもあり得るかとも思うのですが、そういう在宅勤務を想定した場合に、この通勤災害の条項の適用はどういうふうに考えればいいのか、その点の考え方を聞かしていただきたいと思います。
#274
○稲葉(哲)政府委員 まず第一点の在宅勤務の事故につきまして労災保険が適用されるかどうかということでございますが、労災保険の適用事業に雇用されております労働者につきまして、その者が自宅におきまして作業中に災害をこうむったという場合、これはその発生状況等の確認については若干困難な面はございますけれども、その災害が業務に起因するものというふうに認められる場合には労災保険給付が行われるということになるわけでございます。
 なお、近所に買い物に行っての災害というのはちょっと通勤災害として判断するのは困難かと存じます。ただ、本来勤務しております会社との往復につきましてはまたその事情によっては通勤災害と同様の判断ができるかと思います。
#275
○菅委員 この通勤災害の問題は常に微妙な差で大変大きな扱いの差が生じるということで、実際に仕事をしている方からいえば、先ほども使用者の管理下にある場合、ない場合ということが一つの区切り方だと言われましたけれども、それを厳密に解釈することが仕事をしている立場、労働者の立場に立ったときに必ずしも適切なのかどうかということは非常に問題があると思うわけであります。そういう点では、今後就業形態が変化をする中でもう少し柔軟な扱いがあっていいんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。
 もう一点、今回の改正案の中にいわゆる保険関係の成立の届け出を怠っていた期間の事故について、使用者に対して以前よりも少し厳しい徴収をしようというようなことが出ているわけです。この改正そのものというよりは、こういった労災の届け出を怠っていることに対して、労働省としてもっといろいろと周知徹底をして、ぜひ届けるようにという作業をやっておられるのかもしれませんが、そういう周知徹底の作業がどんな形で行われているのか。あるいはせんだって中小企業の退職者の法案も通りましたけれども、こういうものも含めて中小企業に対しての労働省の施策がどういう形で知らされているのか。今後の展望としてそういう方面でもう少し努力をする必要があるのじゃないかという感じもするのですが、その点はいかがですか。
#276
○小粥(義)政府委員 まず、保険の適用、加入の促進の観点では労働保険の事務組合がございます。特に零細企業の場合は個々に保険料納付事務を処理するのがなかなか難しいという面もございまして、事務組合を通じてその適用拡大なり加入促進を図っておりますので、今後ともその面ではこの事務組合の活動がさらに活発に進むように努力をしていきたいと思っております。
 一方、中小企業一般に対する労働施策のPRといった面では、正直言って、今まで必ずしも効率的なやり方が十分できておりません。特に中小企業団体が幾つかあるわけでございますけれども、それぞれの出先機関との接触もそれほど密じゃないところもありますので、最近特に労働時間の問題も含めましてそうした中小企業の集団と行政との接触を通じたPR、これを進めたいと思っております。ですから、商工会議所であるとかあるいは中央会であるとか、業種別の団体、さらには安全衛生の面でも中小企業の集団を対象とする新しい施策を展開しようとしておりますけれども、そうした場合も集団をとらえて対応していくことが効率的でもあるわけですから、ぜひそうした方向の努力を今後積極的に進めたいと思っております。
#277
○菅委員 時間ですので質問を終わりにしたいと思いますが、今の最後の問題で、労働省という役所の独自のラインを使われて、あるいはそういう業界団体を使われての周知徹底というのはいいと思うのですが、場合によっては、例えば健康保険関係の流れとか税の流れとかいろいろな形の団体があるわけで、そういう点では事業主に対する宣伝と同時に、そこに働いている人たちに直接かかわる問題ですから、そういう人たちに対しても、皆さんのところの事業所ではこういうことはぜひやるように当然の権利としてあるのですよということを周知徹底するという意味ではもっといろいろなラインを使い得るのじゃないか。そういう点では必ずしも労働省という枠組みだけのラインじゃなくて、ある部分では厚生省であったり大蔵省であったり、そういう枠組みの中でもいろいろなルートを見つけられることがより伝えることになるのじゃないかということを私からの提案として申し上げて、質問を終わります。
     ――――◇―――――
#278
○山崎委員長 次に、内閣提出、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。林労働大臣。
    ―――――――――――――
 地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ
  き、公共職業安定所及びその出張所の設置等
  に関し承認を求めるの件
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#279
○林国務大臣 ただいま議題となりました地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 現在、労働省の地方支分部局として、公共職業安定所が全国に配置されておりますが、これらに関して、現下の重要課題である行政改革の一環として、その一部を整理統合するとともに、近年の地域の実情の変化に伴い、その配置の適正化を図る必要が生じてきております。
 この案件は、昭和六十一年度において行う予定の右の理由による再編整理に伴い、札幌東公共職業安定所及び同所江剔出張所ほか公共職業安定所及びその出張所十一カ所の設置等を行うことについて、地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、国会の御承認を求めようとするものであります。
 何とぞ御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願いを申し上げます。
#280
○山崎委員長 以上で趣旨日の説明は終わりました。
 本件に対する質疑は後日に譲ります。
 次回は、明後十七日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十二分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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