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1985/03/20 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 内閣委員会 第4号
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1985/03/20 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 内閣委員会 第4号

#1
第104回国会 内閣委員会 第4号
昭和六十一年三月二十日(木曜日)
   午前十時二十四分開議
出席委員
  委員長 志賀  節君
   理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君
   理事 深谷 隆司君 理事 宮下 創平君
   理事 小川 仁一君 理事 和田 一仁君
      池田 行彦君    石原健太郎君
      月原 茂皓君    中村喜四郎君
      二階 俊博君    堀内 光雄君
      井上 一成君    上原 康助君
      矢山 有作君    鈴切 康雄君
      日笠 勝之君    滝沢 幸助君
      柴田 睦夫君    三浦  久君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
         (総務庁長官)江崎 真澄君
 出席政府委員
        内閣参事官   荘司 晄夫君
        国防会議事務局
        長       塩田  章君
        内閣総理大臣官
        房審議官    田中 宏樹君
        内閣総理大臣官
        房管理室長   橋本 哲曙君
        臨時行政改革推
        進審議会事務局
        次長      山本 貞雄君
        総務庁長官官房
        審議官     本多 秀司君
        総務庁人事局長 手塚 康夫君
        総務庁行政管理
        局長      古橋源六郎君
        総務庁行政監察
        局長      竹村  晟君
        総務庁恩給局長 佐々木晴夫君
        青少年対策本部
        次長      倉地 克次君
 委員外の出席者
        内閣総理大臣官
        房特別基金検討
        調査室長    杉浦  力君
        大蔵省主税局調
        査課長     薄井 信明君
        大蔵省主税局税
        制第二課長   日高 壮平君
        自治省行政局行
        政課長     濱田 一成君
        内閣委員会調査
        室長      石川 健一君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月七日
 辞任         補欠選任
  新村 勝雄君     佐藤 観樹君
  日笠 勝之君     神崎 武法君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤 観樹君     新村 勝雄君
  神崎 武法君     日笠 勝之君
同月八日
 辞任        補欠選任
  山口 敏夫君     石原健太郎君
    ―――――――――――――
三月十三日
 プライバシー保護基本法案(井上普方君外九名
 提出、衆法第三号)
 電子計算機を利用する個人情報の処理業務の規
 制に関する法律案(井上普方君外九名提出、衆
 法第四号)
同月十四日
 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第二六号)
同月七日
 シベリア抑留者の恩給加算改定に関する請願
 (奥野誠亮君紹介)(第九六一号)
 同外一件(川俣健二郎君紹介)(第九六二号)
 同外一件(川俣健二郎君紹介)(第九八〇号)
 同(天野光晴君紹介)(第一〇〇五号)
 同外一件(川俣健二郎君紹介)(第一〇〇六
 号)
 同外一件(川俣健二郎君紹介)(第一〇六二
 号)
 同(山崎拓君紹介)(第一一二〇号)
 スパイ防止法制定に関する請願(奥野誠亮君紹
 介)(第九六三号)
 同(森喜朗君紹介)(第九八二号)
 同(山本幸雄君紹介)(第九八三号)
 同(与謝野馨君紹介)(第一〇〇七号)
 同(奥田敬和君紹介)(第一〇六四号)
 同(柿澤弘治君紹介)(第一〇六五号)
 同(梶山静六君紹介)(第一〇六六号)
 同(原田昇左右君紹介)(第一〇六七号)
 同(森下元晴君紹介)(第一〇六八号)
 同(衛藤征士郎君紹介)(第一一二一号)
 同(原田昇左右君紹介)(第一一二二号)
 同(森下元晴君紹介)(第一一二三号)
 旧台湾出身元日本軍人軍属補償に関する請願外
 二件(有馬元治君紹介)(第九八一号)
 同(山下元利君紹介)(第一〇六三号)
 旧軍人の恩給欠格者に対する特別法制定に関す
 る請願(近江巳記夫君紹介)(第一〇六一号)
 同(近江巳記夫君紹介)(第一一二四号)
同月十三日
 シベリア抑留者の恩給加算改定に関する請願外
 一件(川俣健二郎君紹介)(第一一七九号)
 同外一件(川俣健二郎君紹介)(第一二七四
 号)
 同外一件(中島源太郎君紹介)(第一二七五
 号)
 スパイ防止法制定に関する請願(衛藤征士郎君
 紹介)(第一一八〇号)
 同(奥田敬和君紹介)(第一一八一号)
 同(田原隆君紹介)(第一一八二号)
 同(畑英次郎君紹介)(第一一八三号)
 同(原田昇左右君紹介)(第一一八四号)
 同(東力君紹介)(第一一八五号)
 同(森下元晴君紹介)(第一一八六号)
 同(衛藤征士郎君紹介)(第一二二七号)
 同(倉成正君紹介)(第一二二八号)
 同(田原隆君紹介)(第一二二九号)
 同(畑英次郎君紹介)(第一二三〇号)
 同(福島譲二君紹介)(第一二三一号)
 同(森下元晴君紹介)(第一二三二号)
 同(衛藤征士郎君紹介)(第一二八〇号)
 同(倉成正君紹介)(第一二八一号)
 同(田原隆君紹介)(第一二八二号)
 同(畑英次郎君紹介)(第一二八三号)
 同(福島譲二君紹介)(第一二八四号)
 同(森下元晴君紹介)(第一二八五号)
 旧軍人の恩給欠格者に対する特別法制定に関す
 る請願(浅井美幸君紹介)(第一二三三号)
 同(近江巳記夫君紹介)(第一二三四号)
 同(駒谷明君紹介)(第一二三五号)
 同(矢追秀彦君紹介)(第一二三六号)
 同(近江巳記夫君紹介)(第一二八六号)
 同(鈴切康雄君紹介)(第一二八七号)
 同(春田重昭君紹介)(第一二八八号)
 同(二見伸明君紹介)(第一二八九号)
 同(森田景一君紹介)(第一二九〇号)
 同(吉浦忠治君紹介)(第一二九一号)
 国家機密法制定反対に関する請願(田中美智子
 君紹介)(第一二七六号)
 同(津川武一君紹介)(第一二七七号)
 同(辻第一君紹介)(第一二七八号)
 同(中島武敏君紹介)(第一二七九号)
同月十八日
 シベリア抑留者の恩給加算改定に関する請願外
 一件(川俣健二郎君紹介)(第一四〇九号)
 同(阿部昭吾君紹介)(第一四九九号)
 同(伊藤宗一郎君紹介)(第一五〇〇号)
 同(越智伊平君紹介)(第一五〇一号)
 同外一件(川俣健二郎君紹介)(第一五〇二
 号)
 旧台湾出身元日本軍人軍属補償に関する請願外
 五件(中村靖君紹介)(第一四一〇号)
 同(谷垣禎一君紹介)(第一五〇三号)
 スパイ防止法制定に関する請願(衛藤征士郎君
 紹介)(第一四一一号)
 同(倉成正君紹介)(第一四一二号)
 同(谷垣禎一君紹介)(第一四一三号)
 同(中村靖君紹介)(第一四一四号)
 同(畑英次郎君紹介)(第一四一五号)
 同(福島譲二君紹介)(第一四一六号)
 同(宮下創平君紹介)(第一四一七号)
 同(倉成正君紹介)(第一五〇四号)
 同(國場幸昌君紹介)(第一五〇五号)
 同(玉置和郎君紹介)(第一五〇六号)
 同(福島譲二君紹介)(第一五〇七号)
 旧軍人の恩給欠格者に対する特別法制定に関す
 る請願(小谷輝二君紹介)(第一五〇八号)
 同(武田一夫君紹介)(第一五〇九号)
は本委員会に付託された。
三月二十日
 国家機密法制定反対に関する請願(伊藤昌弘君
 紹介)(第八〇八号)
は委員会の許可を得て取り下げられた。
    ―――――――――――――
三月十四日
 靖国神社公式参拝反対に関する陳情書外一件
 (北海道函館市議会議長出町国義外七名)(第
 一号)
 国旗掲揚と国歌斉唱に関する陳情書(那覇市久
 茂地三の二三の一〇平良良松外一名)(第二
 号)
 シベリア抑留者の恩給加算に関する陳情書外一
 件(北海道赤平市議会議長山口八郎外一名)
 (第三号)
 スパイ防止法の制定に関する陳情書外三件(大
 阪市南区瓦屋町一の七の二二岡田實外三名)
 (第四号)
 スパイ防止法制定反対に関する陳情書外九十一
 件(大阪府寝屋川市議会議長馬場好弘外千三百
 三名)(第五号)
 同和対策の充実強化に関する陳情書外四十三件
 (大阪府箕面市議会議長西河哲三外四十四名)
 (第六号)
 部落解放基本法の制定に関する陳情書外十一件
 (大阪府池田市議会議長宮川義久外十一名)
 (第七号)
 青少年健全育成対策に関する陳情書(四国市議
 会議長会会長松山市議会議長大西俊雄)(第八
 号)
 防衛費一パーセント枠堅持に関する陳情書外三
 件(福島県河沼郡河東町議会議長鵜川敏夫外三
 名)(第九号)
 森林省創設に関する陳情書(和歌山県新宮市長
 田阪匡玄)(第一〇号)
 太陽と緑の週の休暇制定に関する陳情書外一件
 (滋賀県草津市議会議長北川重雄外一名)(第
 一一号)
 行政改革の推進に関する陳情書(宮崎県町村議
 会議長会会長児湯郡新富町議会議長太田直満)
 (第一二号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一八号)
 国家機密法制定反対に関する請願(伊藤昌弘君
 紹介)(第八〇八号)の取下げの件
     ――――◇―――――
#2
○志賀委員長 これより会議を開きます。
 この際、請願取り下げの件についてお諮りいたします。
 本委員会に付託になっております国家機密法制定反対に関する請願第八〇八号につきまして、紹介議員であります伊藤昌弘君より取り下げの願いが提出されております。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○志賀委員長 内閣提出、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
#5
○矢山委員 きょうは、行革審の問題でお伺いしておきたいと思います。
 行革審、今最終答申に向けた作業を進めておるように聞いておるのでありますが、その最終答申では大体何について答申をされるというふうに考えられますか。
#6
○山本(貞)政府委員 行革審の最終答申の事項でございますが、昨年の十月以来三つの小委員会等を設けまして、一つは臨調答申の推進状況調査小委員会でございまして、これは臨調答申の実施状況、財政再建の道筋の問題。そして地方行革分科会というのがございますが、これは地方行革、地方自体の行革の問題、それから国サイドからのいわば地方行革をやりやすくするという関与等の問題、並びに臨調答申から出ております市町村合併問題を含みます行政の広域化問題。さらに特殊法人の小委員会というものを設けておりまして、これは個別の法人の見直し並びに一般的な活性化方策。そういった事項につきまして最終答申に盛り込むべく検討中でございます。
#7
○矢山委員 行革審は臨調の第四次答申に基づいて設置されたものですね。行革審設置法の「所掌事務」の規定にもありますように、あくまでも臨調答申の実施について意見を述べるための機関だというふうに承知をしております。でありますから、答申の内容は臨調答申の範囲内に限られるべきであると思っておりますが、いかがでしょう。
#8
○山本(貞)政府委員 基本的には先生御指摘のとおりでございますが、もう少し御説明させていただきますと、行革審設置法が当内閣委員会で審議されましたときも、御案内のとおり、いわゆる臨調答申について「講ぜられる施策」というふうな書き方でございます。「講ぜられる施策」というのは、講ぜられた施策、講ぜられつつある施策並びに講ぜられるべき施策、このような御説明があったわけでございます。
 と申しますことは、一つは、臨調答申が個別、具体的に指摘いたしております事項、これの実施を推進する。それから、臨調答申が単に基本的考え方だけを述べております事項、これにつきまして具体的な推進改革方策を提言する。これは行革審設置法にもございますように、諮問に応じて答申をすること並びに行革審みずから検討いたしまして御意見を申し上げる、こういった二つの面があるわけでございます。
#9
○矢山委員 第三次の答申によりますと、「機関委任事務等の見直しの検討」ということで、「機関委任事務、国の関与等の見直しについては、新たな審議機関を設置して検討を行う。」とあります。それから、五十七年九月二十四日の「今後における行政改革の具体化方策について」という閣議決定がありますね。この閣議決定でもこのことは言われておるわけであります。
 そこで、ここに指摘されておる「新たな審議機関」というのはどういうふうに理解したらいいのでしょうか。
#10
○山本(貞)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、臨調の五十八年の最終答申におきましては、「新たな審議機関」、こういうことを言っておるわけでございます。と申しますのは、臨調が、時間的な制約もございまして、機関委任事務の問題につきましては、個々の事務の整理合理化の基本的考え方と、それから当面二年一割、こういう方針を打ち出しておりまして、これは政府自体実行済みでございます。
 それに対しまして、やはり機関委任事務の制度自体の検討が必要である、そしてさらに、単に一割にとどまらず、その他の事項についても個別の見直しが必要である、こういった考え方から、「新たな審議機関」において検討、これを受けまして、政府は、五十八年の五月のただいま御指摘のございました閣議決定によりまして、こういった問題を、つまり制度の見直しと個別の見直しを行革審において行う、こういった閣議決定によりまして行革審に諮問が行われたわけでございます。
#11
○矢山委員 そこで、私の理解と少し食い違ってくるのです。というのは、私は臨調の議事録をちょっと調べてみまして、「新たな審議機関」というのは国と地方とが一緒になって設ける機関、こういうことを意味しておるというふうに承知しておるのです。私が考えても、機関委任事務の見直しというような国と地方との基本的な関係にかかわる問題については、当然のこととして国と地方の共同作業ということで実行されるべきではないかと思うのです。ところが、それを一方的に国の審議機関、つまり今おっしゃった臨時行政改革推進審議会にゆだねてしまうというのは、この答申の趣旨から見て少しおかしいのじゃないかな、私はこういうふうに思うのですがね。
#12
○山本(貞)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、臨調答申の「新たな審議機関」というのは、必ずしも因と地方が共同で構成する審議機関、このようには言っておりません。また説明におきましても、そのようにはなされておりません。
 ただし、御案内のとおり、こういった問題はやはり地方にも非常に関係がございますので、まず行革審におきまして、地方行革の問題を取り扱う委員会におきましては、知事さんあるいはただいまは市長さんも入っております。さらに自治省の元次官等もお入りでございますが、そういった地方関係者並びに有識者等々で構成されておりまして、かつまた、個別の検討におきましては、地方六団体あるいは自治省その他、地方団体からの意見、要望というものを悉皆的に調査いたしまして、そしてそれに基づきまして、地方六団体やあるいは自治省等からも御意見を聴取する、その上でこういった審議機関において客観的、中立的に検討された結果が、今回御指摘の答申であるというふうに御理解いただきたいと存じます。
#13
○矢山委員 そういうふうになかなか理解できないのです。やはり国と地方との機関委任事務をどうするかというものは、これは基本的な関係の問題でしょう。それをやる場合にはやはり国と地方との先ほど言ったような共同作業的な形でやっていくのが一番いいので、行革審の委員あるいは参与の状況を見てもこれは圧倒的に財界と官僚0Bでしょう。そこへ一人や二人や三人の地方自治の経験者なり地方自治体の代表が入っておったといったところで、そういう状況の中では地方の主張というのは通るものじゃないのですよ。そのことはあなたが一番よく知っているのです、国の官吏として、中央官吏として。なかなか通らないのですよ。
 したがって、私は、この第三次の答申に言っておる「新たな審議機関」というのは、やはり国と地方とが対等、平等な立場に立って機関委任事務のあり方というものを検討していこう、こういう趣旨でつくられたと私は思うのですよ。
 例えば、五十八年四月二十八日の会議録をちょっと読んでみたのですが、これは念のために読んでみます。
 ○和田(一)委員 いままでの御答弁で今度の行革審というものの性格は大体わかってきたのですけれども、ある新聞報道によりますと、そういった臨調答申を踏まえて政府が出してくる施策に対してそれを監視する監視機関だけではなくて、新機構の中で、たとえば地方自治体への機関委任事務の整理合理化案の作成だとか、
云々ということを言っておって、そういうことを今度の行革審がやるのか。こういう質問をしておるわけですよ、行革審設置法の審議で。ところがそれに対して、
 ただいま御審議をちょうだいしております法案の第二条に審議会の所掌事務が規定されているわけでございます。先ほど来お答え申し上げておりますように典型的な調査審議機関であるわけでございまして、一部新聞の報道にございました、先生ただいま御指摘のような記事の真意は私ども定かでないわけでございますけれども、施策決定機関というふうなことでは全くないと御理解をお願いしたいと存じます。
こう言っておるわけですよ。
 わざわざ、新聞報道の中で言う地方自治体への機関委任事務の整理合理化案、こういうものをこの審議会、行革審で検討するのか、俎上にのせるのかという質問に対して、そんなことはない、こう言っているじゃありませんか。これはどう理解したらいいのですか。そのときどきで答弁が変わるのですかね。
#14
○山本(貞)政府委員 恐縮でございますが、ただいま読み上げられましたその議題の内容につきましては、私はつまびらかにはいたしておりませんが、いずれにいたしましても、行革審の設置法といいますものは、先ほど先生御指摘のとおり臨調答申の推進ということでございますので、臨調答申が取り上げております機関委任とかあるいは権限委譲の問題というのは当然行革審でやるわけでございまして、行革審ではやらないということはちょっと考えられない事柄でございます。
#15
○矢山委員 これは議事録の写しですよ。私はでたらめなことを言っているのじゃないですよ。これは、今言ったでしょう、内閣委員会、昭和五十八年四月二十八日、行革審設置法の審議のときですわ。その答弁をしているのは、門田というのですか門田というのですか、その人の答弁ですよ、これは。
#16
○山本(貞)政府委員 どうも失礼いたしました。議事録がなかったためにどうも不完全な答弁をいたしました。
 ただいま議事録を見てみますと、御指摘のように、あくまで調査審議するいわゆる審議会でございまして、新聞報道が言っているような施策の決定機関ではない。これはあくまで調査審議をいたしまして、いわば答申、意見というものを申し上げまして、それを具体的に取り上げて決定するあるいは国会に法案を上程する、それは政府でございまして、さらにそれを、法律を決定されるのはまた国会でございますので、行革審は決して施策の決定機関ではない、このような趣旨だろうと思います。
#17
○矢山委員 私は、施策の決定機関ではないとかあるとか言っておるのじゃないのです。私が聞いておる中心は、和田さんの質問が、地方自治体への機関委任事務の整理合理化案の作成などについて行革審がかかわるという新聞報道があった、果たして行革審はそういった問題を扱うのかということに対して、これは門田さんか門田さんの否定的な答弁でしょう、どう考えても。だから、行革審に機関委任事務の見直しを全部任せてしまったということに問題があるのじゃないか、つまり中央官僚の独善があるのではないか、こういうふうに私は感じたわけです。
 第三次答申のあの文脈から見ても、あるいは閣議決定の文脈から見ても、設けられた行革審に便宜的にそれを審議させる、そして意見を言わせるというものじゃない。やはり別個、地方自治の基本にかかわる問題だから、自治体との間で十分な協議ができるような審議機関というものを予想しておった。こういうふうに私は思っておるし、臨調議事録を読んでみてもそういうふうに私は感ぜられるから、今申し上げておるわけです。
 江崎さん、どういうふうに思いますか。
#18
○江崎国務大臣 これはやはり地方の六団体、あるいは六団体のほかに政令都市の集まりもありますが、さっきも答弁しておりましたが、そういったところの意見を十分踏まえて決めていくことが妥当である。
 大体、今の答弁で私は先生の質問とそんなに食い違いがあるようには思えないのです。当然六団体の意見は参照しながらやりませんと押しつけになりますね。独善的に押しつけて事が成就するものではありませんですから、それらについては配慮されておる、そういうふうに理解しております。
#19
○矢山委員 水かけ論になりますが、そこらに私どもの理解と違いがあるわけです。やはり中央省庁の力というものは、地方の自治体から見るとなかなか強いものでございます。したがって、意見を述べた、聞いてもらった、その意見が公正に反映されるというようなものではない。後でいろいろ申し上げますが、実質が、意見は聞くだけ、聞くのは聞いたが、しかしやることは別だ、これが往々にして行われておりますだけに、私は、その点を第三次答申では頭に置きながら、そういうことのないように、まさに先ほど言いましたような、地方自治体も十分にその意見を反映することができる対等、平等な審議機関として新しく設けろ、こう言ったと思います。しかしながら、まあそれは見解の相違として、そこでやめておきます。
 次にお伺いしたいのは、「機関委任事務の整理合理化」で「市町村委譲すべきもの」ということで、十二件挙げていますね。「この市町村委譲」というのは、市町村長の機関委任事務にする、こういうことなんですか。
#20
○山本(貞)政府委員 行革審答申では、「市町村委譲」という項目は二十五項目でございますが、法律改正が恐らく十一項目。それで、これは先生御指摘のように市町村長へ委譲するということでございます。
#21
○矢山委員 ということは、機関委任事務にするということですか。
#22
○山本(貞)政府委員 はい、さようでございます。
#23
○矢山委員 なぜそれを聞いたかというと、審議会の中で「委任」と「委譲」の問題についていろいろ議論がされておったようですから、委譲というのは一体どういうものなのか明確にしておきたい。
 あの臨調の議論を見ると、委譲というのは全部渡してしまうことだと。あのときの表現は、所有権を渡してしまうことだ、委任というのはそうじゃないのだというふうなことを言っておったけれども。いや、それはもう委任も委譲も一緒なんだ、だから機関委任事務になるのだ、こういうことも言っておられたと思います。これはあなただったかほかの人だったかよく記憶しておりませんが。
 それから、許認可権限等の知事への委譲、これはどういうことなんですか。要するに知事に対する機関委任事務の新設、こう考えたらいいのですか。
#24
○山本(貞)政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
#25
○矢山委員 そこでお伺いしたいのは、「機関委任事務の整理合理化」、それから「国・地方を通ずる許認可権限等の在り方」の「個別事項の整理合理化」を見ますと、まず廃止、緩和、運用の改善等を指摘されておるものが二十三件ありますね。六十年七月二十二日の行革審の答申ですよ。それから機関委任事務の団体事務化、これが十八件挙げてあります。それから機関委任事務の市町村長への委譲が十二件挙げてあります。それから知事に対する機関委任事務の新設が二十七件、こういうことになっています。
 これで見ますと、一見しておわかりのように、答申の個別事項の整理合理化と言いながら、知事に対する機関委任事務の新設が最も多い。機関委任事務の新設または委譲ということが主流をなしておるように思います。整理合理化だと言いながら、結果は機関委任事務の増大になっておるというふうに私は受け取るわけであります。
 機関委任事務の改革については、御存じのようにたびたびその必要性が叫ばれ続けてまいりました。そしてまた、自治体からもたびたび個別事項の改善というものが提案をされてきました。ところが、そういう状況の中で行革審でいろいろとやられたのにもかかわらず、行革審の力をもってしてもこの程度のことしかできないわけであります。これを見て、私は、中央省庁の既得権擁護の抵抗の強さというものを感じます。それだけに、機関委任事務の改革というものは、調査会の第三次答申に指摘しておりますように「新たな機関」、つまり先ほど来申し上げておる国と地方との共同作業として、国と地方とが一緒になって設ける審議機関、そういったものを置いて、そして推進さるべきものであったというふうに私は主張せざるを得ないわけであります。
 先ほど言いましたように、行革審の構成を見てみますと、行革審の委員七名、財界が三、官僚OBが二、労働界が二、参与という方が四十三名おるのですが、これは一々細かく申し上げませんけれども、財界人と官僚のOBが圧倒的なんです。そういう中で、なかなかこの機関委任事務についての結論がいいものが出てくるはずはないというふうに私は思うわけであります。結局、答申を尊重すると言いながら、独善的な結果に終わってしまったというふうに私は考えざるを得ません。
 どういうふうにお考えですか。もう一度重ねてお尋ねしておきます。
#26
○山本(貞)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、行革審でいろいろ個別の問題を具体的に検討いたしたわけでございますが、その過程で、機関委任事務制度そのものが相当長期にわたって基本的に検討されまして、そして、自治省の御意見あるいは地方六団体の御意見あるいはさまざまな学者の御意見等も聴取いたしました。それでその検討の結果、機関委任事務制度というものは、これが正しく活用されるならば有効な制度である、決して否定されるべき制度ではない、むしろ国の権限というものをできるだけ地方の身近なところで行うべく、権限を委譲するためにも、もちろん地方の団体事務とすべきものは大いに団体事務とすべきでございますが、しかし地方の実情と全国的な整合性という問題との調和をとりながら、できるだけ地方に権限を委譲していくという観点からも、この機関委任事務制度というものは正しく活用されるならば極めて有効な制度である、こういうふうな結論に達しまして、そこで、今度は具体的に、その上に立ちまして、現実に個々にございます機関委任事務というものをよく洗いまして、そしてその後の状況変化、あるいはそもそもの観点から検討いたしました場合に、住民の利便あるいは地方行政の運営の総合性、弾力性、そういった観点から、できるだけ住民に身近な事務は身近な地方団体でやる必要がある、そういうことで個々に洗いまして、それで意見、要望等を全部調査いたしまして、その結果、団体事務化すべきものは団体事務化する、先ほど申し上げましたように、十八項目の団体事務化をやっておりまして、しかし国から直接――つまり機関委任事務に既になっているものを検討いたしましてそれは団体事務化する、しかし今度は、国から直接地方へ移す場合に個々に検討してみますと、やはり機関委任事務とするのが適当である、こういったことで御答申申し上げた次第でございます。
#27
○矢山委員 いろいろと御説明はなさっておりますね。機関委任事務の整理合理化と言う以上は、できるだけ団体事務化ということを中心にしていく、そのことが第三次答申の中にも言われておったと思うのですよ。ところが、一つ一つ当たってみたらこうだったとおっしゃる。きょうは一つ一つ当たって議論することはできませんが、いずれにいたしましても、整理合理化だとだんぴらを振りかざしながらやっていることは、本当の整理合理化になっちゃいないということを言いたいわけです。
 次に、行革審は昨年七月二十二日の答申で、「職務執行命令訴訟制度の見直し」について、「当該事務を執行しなければ公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められる場合に限り、勧告、職務執行命令、事実確認についての内閣の告示等一連の慎重な手続を経た上で、主務大臣は当該事務を代行できる途をひらくこととし(知事についても、同様の手続により代行できる途をひらく。)、これに不服がある場合には、地方公共団体の長は、裁判による措置を求め得ることとする。」と言っております。
 そこで、これについて二、三聞きたいのでありますが、「公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められる場合」というのは、一体具体的にはどういう場合を考えておるのか。後藤田官房長官が、この代執行の対象として国政選挙事務を挙げておったようであります。国政選挙事務は自治体の選挙管理委員会に委任されておる事務であります。それも国が代執行できると考えておるのか。国政選挙事務に関して国が代執行できる事務が何かあるのか。この点はやはり明確にしておいた方がいいと思いますので、新聞報道だけ見て我々は納得するわけにいきませんから、お尋ねしておきます。
#28
○山本(貞)政府委員 御案内のとおり、御指摘の点につきましては、機関委任事務といいますのは、やはり行革審の審議の過程におきましても、あくまで国と地方が協同で共通の目的のために行う事務でございますから、よほどのことがない限り地方が国の意思に反するようなことはない、こういう基本的な認識がございます。しかしながら万が一、これは極めて万が一でございますが、たまたま不作為あるいは違法な事態が生じましたときに、それではどうするかというふうなことで、今の職務執行命令訴訟制度を検討したわけでございます。これはあくまで一般的な制度の問題として検討いたしましたわけでございまして、個々の事案なり事項ということにつきまして検討したわけではございません。
 それから最後に、後藤田官房長官のこの選挙事務に関する点でございますが、御案内のとおり百四十六条の職務執行命令訴訟制度というのは、自治法上はあくまで知事または市町村長の機関委任事務でございまして、いわゆる行政委員会の事務につきましては対象外でございます。
#29
○矢山委員 そうすると、国政選挙事務で代行できるものは何もありませんね。ないでしょう。
#30
○山本(貞)政府委員 ただいま私が申し上げましたように、あくまで一般的な制度の問題として検討したわけでございまして、確実に御答弁できるのは、いわゆる行政委員会の事務とされておる選挙事務については対象外であるということでございます。詳しくは、その他の選挙事務につきましてどのような権限配分になっているか私は必ずしも正確に存じませんので、そこは関係省庁から御答弁いただいた方が適切かと存じます。
#31
○矢山委員 自治省、来ておられますか。
#32
○濱田説明員 お答えいたします。
 選挙事務につきましてはいろんな事務があるわけでございまして、多くは選挙管理委員会に委任されておるわけでございます。したがいまして、この選挙管理委員会の所掌する事務につきましては、地方自治法上、機関委任事務ではありますけれども、いわゆる知事、市町村長の事務と違いますので、職務執行命令の対象にはならないということでございます。
 なお、それ以外の選挙事務に関してどのようなものがあるかという具体的な御質問でございますが、これは私どもの選挙課の方で詳しく専管している問題でございますので、私ども行政課といたしましてはそこのところを詳細は存じないわけでございますが、基本的には、選挙事務につきましては選挙管理委員会が所管しているというふうに理解をいたしております。
#33
○矢山委員 何だかどうも、選挙管理委員会が国政選挙の事務自体はほとんどやっているんだから、国政選挙全般として何か代執行できるものがあるんじゃないかと重ねて聞いたんだが、どうも明確でないのですね。
 要するに、こういうふうに理解したらいいですか。国政選挙については代執行できない、これでいいですね。
#34
○山本(貞)政府委員 ただいま自治省から御答弁ございましたように、選挙管理委員会の事務につきましては代執行できない、これが正確な御答弁かと存じます。
#35
○矢山委員 そうすると、こっちからもう一遍聞かなければいかぬ。そうすると、選挙の問題については、首長がやれるものが、予算だとかあるいは人員の配置だとか、いろんな問題があるんですな。これは首長の固有の権限だから、これは別に代執行の対象になることなんかじゃありませんね。
#36
○山本(貞)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、選挙事務の配分関係につきましてつまびらかにいたしておりませんので、仮に知事に国政選挙の事務の一部が委任されておるといたしますならば、万が一、違法または不作為の事態が発生いたしましたときはそれは対象になる、このようなことかと存じます。
#37
○矢山委員 それじゃ自治省、後で教えてもらいたい。選挙事務の中で知事に委任事務として委任しておるものがあるのかどうか、それは調べておいて後で教えてください。
 そしてお伺いしたいのは、今言った「公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められる場合」というのはどういう場合だと言ったら、一般論としてやっておるんだとおっしゃるんだけれども、職務執行命令訴訟制度の見直しというような重大なものを議論するときに、具体的にどういう場合が予想されるかということを議論しないで、ただ一般論、一般論と言ってやっているんですか。先ほどあなたが説明されたのには、機関委任事務について一つ一つ挙げていろいろと検討して、団体事務にするもの、いや、機関委任事務にするもの、こう決めたんだとおっしゃる。それだけ慎重な検討をやっておるのに、「公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められる場合」が一般論だけで、どういう場合を想定しているのかさっぱり想定がないということになるのですか。
#38
○山本(貞)政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、行革審におきましては、あくまで個別の事案ではなしに一般的な制度の問題として審議、検討いたしたわけでございます。
#39
○矢山委員 あくまでそう言い張られるんだが、あなたは、行革審の中のたしか小委員会の審議のときに、例えばどういうものだと言われたら、あなたが言ったんじゃないの、考えられるのは国政選挙事務だと言ったのは。だから恐らく、あの論議の中でも、どういった場合が考えられるんだということが議論になっているはずなんですよ。あなたがそのときに国政選挙だけを挙げているのだ、ほかのものは挙げていないのだ。そして一般論、一般論で逃げている。こんな重大な問題をやるときに、そんな話はないですよ。
 ではこちらから具体的に聞きますが、外国人登録に関する事務について何か代執行できるものを考えていますか。
#40
○山本(貞)政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、あくまで一般的な制度として検討いたしておりまして、外国人登録事務の問題につきまして、どういった事項が代行の対象になりあるいはどういったことが対象にならないかということは検討いたしておりません。
#41
○矢山委員 これは答弁にならぬね。こんな無責任な話じゃ、こんなもの、あなた、答弁にならぬよ。
#42
○山本(貞)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、行革審で検討いたしましたいきさつは、先生が先ほどおっしゃられましたように、あくまで臨調答申が機関委任事務制度そのものを検討する必要がある、そして行革審で検討するようにということになりまして、行革審では五十八年の末から機関委任事務制度そのものを検討してまいりまして、その結果、先ほど御答弁申し上げましたように、制度として「正しく活用されるならば有効な制度である」。それで関連の制度といたしまして、職務代行制度あるいは機関委任事務に対します地方議会あるいは監査委員の権限拡大、関与の拡大の検討をいたしたわけでございまして、地方議会の権限拡大や監査委員の権限拡大につきましても、個々の事務につきまして検討してはおらぬわけでございます。あくまでこういった関連制度につきましては制度一般の問題として検討いたした、そういうことでございます。
#43
○矢山委員 これだけの重大な問題を、さっきあなたは、機関委任事務の整理合理化については一々個別に審議をしてやった、こうおっしゃったのでしょう。それだけ慎重な審議をやっておるのに、職務執行命令訴訟制度の見直しというような国と地方自治体の基本的な関係にかかわってくる問題を審議するときに、その個別について何もやらずにやったのですか。
 そうすると、こういうふうに考えたらいいのですね。あなたは一般論、一般論と言っているんだから、知事に委任した仕事、市町村長に委任した仕事、それを知事や市町村長が執行しないときには職務執行命令訴訟制度、これで――つまりこれが変わってくる、それを変える前提でしょう。変わってきた、それで全部やっていく、こういうことなんですか。それとも、全部やるんじゃない、重要なものだけやるんだ、公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められるものだけやるんだというなら、どういうものに対してこれをかぶせるのだということを明らかにしなければいかぬじゃありませんか。
 それでは、もう一つ聞きます。恐らくこれも答えぬのでしょう。自衛隊法九十七条によると、自衛官の募集事務の一部が自治体の首長に機関委任されております。これはどうなる。同じく自衛隊法の百三条によれば、防衛出動時の徴発事務、医療関係者、運輸、建設労働者に対する徴用事務が都道府県知事に機関委任されております。これらについてどうするのですか。執行されない場合に、公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認めて、職務執行命令を出すのですか。対象になるのですか。これは私は具体的に挙げたから答えてください。
#44
○濱田説明員 お答えいたします。
 今般の地方自治法の一部改正法の提案につきましては、地方制度調査会の御答申をいただいておるわけでございますが、そこで、地方制度調査会での審議におきましても、個々具体的な事例を挙げてそれについて判断をするということではなく、制度論として、全体として慎重な手続を検討するという趣旨で答申が行われたわけでございます。したがいまして、それを受けて私ども法案化いたすわけでございまして、個々具体的な事例を想定いたしているわけではございません。
#45
○矢山委員 そんなばかな、人をなめたような、国会を無視した答弁がどこにありますか。
 それでは、機関委任事務というのは何ぼあるのですか。――それじゃ要求しておきますが、今の機関委任事務全体について、これに当てはまるもの、当てはまらぬもの、それを全部選別して、当てはまるものを資料として出してくれますか。「公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められる場合」、この場合に「勧告、職務執行命令、事実確認についての内閣の告示等一連の慎重な手続を経た上で、主務大臣は当該事務を代行できる途をひらくことと」する。これに言うておる「公益上重大な支障が生ずるおそれがあると認められる場合」は、現在の機関委任事務の中でどれとどれとどれであるということを明確にしてもらいたい。
 なぜかと言うと、この機関委任事務の訴訟抜きで代執行を認めるか認めぬかということは、国民の権利義務にとっては大変な問題なんだ。役人の一方的な考え方でどうこうし得る問題ではないのです。だから私どもは、ここに一般論として言ってある以上は、それを具体化した場合にはどうなるか、これはやはり明確にしてもらいたいのだ。
#46
○山本(貞)政府委員 自治省から御答弁されます前に私からまず御答弁させていただきたいわけでございますが、二点ございまして、
 一つは、ただいま先生御指摘の公益上重大な支障がある場合、こういうことでございます。これはあくまで条件でございまして、個々の、どの機関委任事務について公益上支障があるかということではございませんで、それぞれの機関委任事務につきまして、いろいろな状況のもとで、もしそれが代行されなければ公益上重大な支障がある、こういうことでございますので、機関委任事務ごとにそれを区分けするというのは少し次元が異なるかと存じます。
 それからもう一つは、先ほど来個々の事案を検討しないのはおかしいではないかという御指摘で、ごもっともだとも思われますが、しかし率直に申し上げさせていただきますと、現在の百四十六条の職務執行命令訴訟制度で現実に決着がついたものはゼロ件でございます。したがいまして、極めて個々の具体的事案というものを検討しにくいというのが実態でございます。もちろん先生御案内のとおり、かつての砂川事件というのが決着を見ない状態であったわけでございますが、これとてもそういう決着は見てない。したがって対象件数はゼロでございます。もちろん行革審におきまして検討いたしましたときに、個別法でどんなものがあるか、例えば土地収用法とか、御案内のとおり七つか八つぐらいの個別の法律がございますが、そういう法律があることは念頭に置きながら、現実に適用の事例がございませんので、そういったものを念頭に置きながら、あくまで万が一の場合の問題として、機関委任事務制度を整合的に制度論を検討いたします場合は、やはり関連制度も整合的に検討する必要があるということで、一般的に検討したという点を御理解いただきたいと存じます。
#47
○矢山委員 理解しろと言ったって、制度論としていろいろ議論をして、これを制度としてつくったわけでしょう。制度としてつくった以上は、これが生きて動いてくるわけですね。動いてきたときに、国民の権利義務に重大な関連を持ってくる。したがって、どういうものが当たるのかというものはやはり明らかにしておくべきじゃないのですか。
 例えば、あなたはいろいろな環境や条件によって違うと言うのだが、それでは今指摘いたしました自衛隊法九十七条、これはどうなんです。あるいは自衛隊法の百三条による場合、これはどうなんです。特に自衛隊法の百三条による場合、これは職務執行命令訴訟制度の見直しの適用になるかならぬか。どうですか、これは。これは答えられるでしょう、百三条が発動される場合はちゃんとわかっているのだから。どうなんです。
#48
○濱田説明員 お答えいたします。
 ただいまお尋ねの法律の具体的な適用関係でございますが、これは所管省庁、主務大臣がその適用があるかどうかということについて具体的に判断することになると思います。
 先ほども申し上げましたように、職務執行命令訴訟制度の見直しは、現に起こりつつある、あるいは今後起こりそうであるということを想定して問題を審議されたわけではないわけでございまして、あくまでも制度論ということでやられておりますので、個別の機関委任事務にはいろいろな態様もございますし、また、それを現実に発動できるかどうかということにつきましては、個々の具体的なケースに当たらないと判断ができにくいということでございます。
#49
○矢山委員 いや、個別に検討された上でこういうものがつくられてくるのならまだ対象がはっきりするから、これは安心しておられるのです。ところが、個別な検討も何もしないで一般論としていわゆる制度化しだということでは、この適用を誤ってくるなら大変な問題になる、私はそういうことで言っておるのですよ。
 長官、おわかりいただけますか、私の言っておることが。どう思われますか。これは国民の権利義務にとっては、そしてまた地方の自治体と国との関係にとっては、大変な問題をはらんでいるわけですよ。
#50
○江崎国務大臣 今回の委任事務及び国、地方を通ずる許認可権限の整理合理化、これは我々の方としては地方自治法の問題でありますからちょっと問題が別になるわけですが、機関委任事務整理合理化法案による措置の内容は、経済企画庁が一法律、国土庁が一、法務省が一、文部省が二、厚生省が十五、農林水産省が十二、それから通商産業省西、運輸省一、労働省一、建設省二、自治省三、四十三法律、十一省庁に関係しているわけで、今のは地方自治法の問題でございますから私からちょっと答弁は差し控えたいと思います。
#51
○矢山委員 地方自治法の問題ではありますけれども、行革審の答申を経てそれが法制化されるわけです。しかも、先ほど来言っておりますように極めて重要な問題を含んでおりますので、ただ一般的な制度にしたのだということだけで議論を済ますということは、問題が残ってくるということを御指摘を申し上げておるわけであります。
 この点は恐らく地方行政委員会等ではいろいろ議論になると思いますが、この問題に対する私の質疑はこれでとめておきます。
 そこで次に、現在言われておるいわゆる職務執行命令訴訟制度の持っておる意味、これをどういうふうにお考えになっておりますか。
#52
○濱田説明員 お答えいたします。
 現行の職務執行命令訴訟制度につきましては、国の機関委任事務の適正な執行の確保ということと、地方公共団体の長の本来の地位の自主独立性の尊重という両面を配慮して、調和をとった制度としてつくられたものと理解しております。
#53
○矢山委員 最高裁の判決ですか、一九六〇年六月十七日、この中にも言っております。私もそう思います。そういうふうな正しい理解で今後対処してもらえればいいのですが、なかなかそうなるような状況にないことに問題があるわけです。
 そこで、職務執行命令訴訟制度の見直しの答申は、地方公共団体の長本来の地位の自主独立性を否定するものであると私は思います。そして、知事に対する主務大臣、市町村長に対する国の機関としての地位の優越性はまさに圧倒的なものとなってまいります。したがって、府県と市町村、因と府県との団体間の関係にも、前者の後者に対する服属関係を強めることになる。また、答申の地方公共団体の自主性・自律性の強化と全く相反する国の中央官庁の強権的な支配、統制を招くと言わざるを得ないと思います。したがって、戦後の地方自治制度を明治憲法下の官治主義に引き戻すものと私は思うわけでありますが、この重大な問題について地方行革推進小委員会の会合は一体どの程度の審議をやられたのですか。
#54
○山本(貞)政府委員 地方行革小委員会の審議の状況でございますが、(矢山委員「この問題に対してどのくらいやったんですか、それだけ。」と呼ぶ)はい。実は、機関委任事務制度の問題を検討するようにという政府側の閣議決定が五十八年五月にございました。そうして、行革審の小委員会自体はこの五十八年秋から審議を開始したわけでございます、これは制度論全般を。それで……(矢山委員「時間がかかるから、聞いたことだけ言ってください」と呼ぶ)はい。その点を申し上げますが、五十九年五月に、政府側から緊急の六事項についての検討要請がございまして、一たん中断いたしました。そうして六十年一月にこの制度の検討を再開いたしまして、いろいろな有識者の意見を聞き、そうして大体六十年四月ごろに、先ほど申し上げましたように、制度としては「正しく活用されるならば有効な制度である」。そこで、この機関委任事務制度を存置しつつ、その関連制度を検討することが四月ごろから行われ始めまして、これは関与の拡大と職務執行命令訴訟制度の検討でございますが、そうして、この職務執行命令訴訟制度の改革案を含めまして六月二十日に改革案の素案が出されまして、四回の審議を経まして、六月二十八日に報告を決定し、審議会では、四回にわたる慎重審議の上、修正を加えまして、七月に答申を行った、こういう次第でございます。
#55
○矢山委員 機関委任事務制度の問題についてはいろいろやられた、これは私もそのとおりだと思います、議事録というのですかいろいろな資料を拝見して。ところが、この職務執行命令訴訟制度の見直しの問題が出たのは、あなたがおっしゃったように急に六月二十日に出てきた。そうでしょう、六月二十日に出た。それまで職務執行命令訴訟制度見直しというものについて、これが積極的に提案をされて、議論は本格的になされておらぬと私は承知しておるのです。六月二十日に出てきた。出てきたのは、あなたが出したのでしょう、あなたが。そうしてしかも、この出したのも、それからその後のいろいろな作業をやったのも、何かあなた単独でやって、だれも事務局員は知らなかったというじゃないですか。これは私は関係しておる方から聞いておるのですが、突然六月二十日にあなたが出した、そうして、その後の取り仕切りもみんなあなたがやってしまった、ほかの事務局員は何にも知らなかった、こういうふうに聞いていますよ。しかも、だれかある委員がこの修正を求めたところが、あなたが、そういう修正をやったんでは後藤田長官が納得しないだろう、こう言ったということまで言われておりますよ。一体こういうやり方の背景は何なのか。何でこういうやり方をしなければならぬのか。
 職務執行命令訴訟制度がいかに重大がということは、あなたでも知っているでしょう、自治省の役人でなくても。知らないのですか、重要さを。知っておるか知っておらぬかそれだけ言うてもらえばいい、時間がなくなるから。
#56
○山本(貞)政府委員 職務執行命令訴訟制度の重要性は重々に承知いたしておるつもりでございます。
 なお、この問題の検討が始まりましたのは四月ごろで、制度自体は存続させる、そしてそこで関連制度も検討する、こうなったのが四月でございます。
#57
○矢山委員 それはそれとして、急に素案だということで、原案だというのか山本案というのか何と言ったらいいのか知らぬが、出されたのはあなたの手で六月二十日に出された。もう審議は幾らもない、そういうときに唐突に出されたわけですよ。それで、私が今言ったような状況の中でこれが進められていって、六月二十八日に最終結論を出したのでしょう、小委員会としての。そして、報告は七月一日になっちゃったわけだ。何でこういうやり方をやるのですか。
 私はこう思うのですよ。そういう無理押しをされるその背景というのは何であろうかいろいろ考えてみましたが、ある機関委任事務の執行を多数の長が拒否した場合、あるいは少数の長による拒否であってもそれが多数の長の拒否に発展するような可能性がある場合、現行法によって主務大臣が当該事務を代行するというためには、訴訟を含む一連の手続が必要なわけであります。したがって、仮にそういう手続を経たにしても、同時多発的な事態に対応するということは私はほぼ不可能だろうと思う。ところがこれに対して、司法権の介入を極力排除する、そして国の行政権によって機関委任事務の執行を強制し得る簡便かつ強力な制度に改める、こういう考え方が私は背後にあったと思う。行政権優位の思想を持ち、そして危機管理に情熱を燃やしておる今の政府でありますから、私はそういうふうなことを考えながらこんなことをやろうというふうに企んだのじゃないかと思うのですが、そうでしょう。
#58
○山本(貞)政府委員 ただいまの点でございますが、あくまで行革審では、この機関委任事務制度と申しますものを、地方自治をむしろ尊重、強化するという観点から取り上げたわけでございまして、いろいろな地方議会とか監査委員の権限拡大、あるいは知事の罷免制度というものを廃止する、そして、この機関委任事務というものは国、地方の協同の目的のための事務でございますから、めったに違法とかあるいは不作為はない、これは全く万が一のための制度として代行制度というものが検討されるべきだ、その場合に、現在の制度では高等裁判所の二回の命令裁判と事実確認裁判を要する、こういった点について、やはりそこは現実的に機関委任事務が適確に執行がされるような制度として改めていく必要がある、こういったことでございまして、決して地方自治を軽視するとかいうことではございませんで、むしろそういうことによって権限もできるだけ委譲していこう、こういう観点から、あくまで地方自治尊重の観点から取り扱ったものでございます。
#59
○矢山委員 冗談じゃありませんよ。地方自治を尊重するための一番の基本の制度の一つになっておるのが職務執行命令訴訟制度でしょう。これが一番地方自治の自主性・自律性を守るための柱になっておるのですよ。それを司法の介入を極力排除する、事後の取り消し訴訟に訴えるだけで代執行できるようにする。これはまさに、地方の自治体の長の自主独立性を全く無視したものじゃありませんか。よくあなた、そんなぬけぬけとしたことが言えますな。
 それでは、先ほどからおっしゃってきたように、行革審の任務というのは臨調答申の実施状況について調査することにあるわけでしょう。職務執行命令訴訟制度の見直しというのは一体臨調答申のどこに書いてあるのですか。
#60
○山本(貞)政府委員 御案内のとおり、臨調というのは行政の問題全般をとらえるわけでございまして、国、地方を通ずる行政は当然対象にいたしております。そして最終答申におきまして、機関委任事務のあり方の問題を検討する、新たな審議機関で、こう指摘しております。行革審ではそれを受けまして検討いたしたわけでございますが、これは当然制度論が含まれておるわけでございます。したがいまして、機関委任事務制度そのものをどうするか、さらに機関委任事務制度に関連した制度、つまり議会の関与の拡大とか監査委員の問題、あるいは職務試行命令訴訟制度、こういったものも当然そのあり方の問題に含まれる、こういうふうに理解しておるわけでございます。
#61
○矢山委員 ところが、私は臨調答申の精神はどこにあるかということを考えてみたときに、一次答申で、地方公共団体の自主性は十分に強化されなければならぬ、こう言っているわけでしょう。それからまた第三次答申で、その「改革の視点」というところにあるのですが、「国の地方公共団体に対する規制や関与の積極的な緩和」を掲げていることからわかるように、自治体に対する国の権限の強化ではない、反対に自治権の強化だ、地方への分権化、これを臨調の答申は求めておると私は思うのですよ。それにもかかわらず、臨調答申に書いてないこと、職務執行命令訴訟制度、それを見直すということは書いてない、機関委任事務についての見直しということは書いてあるかもしれない、しかしながら重要な職務執行命令訴訟制度について見直しということは具体的に言ってないわけです。あなた方の方でそれを含まれておるんだというふうな解釈をして、そして行革審でこの問題をけりをつけようとしたわけですが、その不当性については、先ほど来「別の新たな審議機関を」設けるべきだといったことで、私が主張しておるとおりです。私は、こんなことを行革審でやるのは越権行為だと思いますよ。
#62
○山本(貞)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、この機関委任事務のあり方、つまり制度のあり方と申しますのは、機関委任事務の制度そのものを存続させるか廃止させるか、それだけではなしに、仮に存続させるといたしました場合に、この機関委任事務に関連する制度といたしまして、これは職務執行命令訴訟制度だけじゃございませんで、地方議会の関与の問題やあるいは監査委員の関与の問題をどうするか、これも同じように機関委任事務の制度に関連した制度でございまして、これは当然含まれるというふうに考えているわけでございます。
#63
○矢山委員 それはあなた方の考え方。私どもは、臨調の答申でも言っているように、この見直しは「新たな審議機関」でやる、こう言っておるから、したがってあなたの言っているように、機関委任事務の制度のあり方の論議の中にはなるほど職務執行命令訴訟制度も含めて考えるということになったのかもしれない。しかしながら、それに含めてはいけない、これは地方自治制度の根幹にかかわる問題だから含めちゃいけないから、臨調の答申が言っておるように「新たな審議機関」で、こう言っておるということを私はあくまでも主張しながら、取り扱いが間違っておるということを言っているわけです。
 そこで、行革審としては、現行の職務執行命令訴訟制度の見直しの方向の一つの案として、裁判抜きの代行制度を提示しておりますね。そして、以下のような方向でその具体策を含め十分検討すべきであるとして、むしろその結論は、どう具体化させるかということについては政府にげたを預けている形です。国と地方との基本的な関係にかかわる重大な問題であるだけに、十分な論議が特に地方公共団体の間で行われなければならないと思いますし、また、去る三月七日に、憲法や行政法などの学者五百二人が、裁判抜き代行制度は憲法の原理及びそれに基づく地方自治制度の根幹を否定するものだということで声明を発表しております。政府はこれについてどう考えられるか、御見解を伺いたい。
#64
○濱田説明員 お答えいたします。
 「裁判抜き代行制度の導入に反対する研究者の声明」がございまして、私どもの方にもお届けいただいております。
 政府といたしましては、今回の地方自治法の改正につきましては、既に地方制度調査会で慎重な御議論をいただいた結果に基づいて、法案を提出いたしておるところでございます。
 今回の職務執行命令訴訟制度の改革の内容についてでございますが、まずその発動要件を、適正な事務の管理、執行がなされぬまま放置することにより著しく公益を害することが明かであるというときに限っておりますし、主務大臣の命令に対しましては内閣総理大臣に不服の申し出ができるものとして、地方の側から国に対して意見を表明し国の再考を求めることができるようにする等、代行権限の発動が慎重かつ公正になされるように一連の手続を整備いたしております。さらに、代行が現実に行われる前に、不服の申し出が国の受け入れるところとならなかった段階で、直ちに主務大臣の命令の取り消しを求める裁判を提起し、あわせて執行停止の申し立てをすることができることといたしておりまして、最終的には裁判所の公正な判断を仰ぐものといたしているわけでございます。
 そこで、現行の制度は、機関委任事務の適正な執行の確保の要請と地方公共団体の長の本来の地位の自主独立性との調和を図る観点から設けられたものでございますが、現実に制度として動かないという批判があることは事実でございます。機関委任事務の執行の実効性の確保につきましては、我が国における国と地方公共団体の関係全般に係る問題であることから、制度の見直しに当たっては極めて慎重な配慮を要するという立場から、地方制度調査会においては、議論に議論を重ね、地方公共団体の意見を十分尊重しつつ、慎重かつ適切に機能し得る制度として、かような提言をするに至ったと承知いたしておるわけでございます。
 したがいまして、この答申を受けて今回法律を提出させていただいたわけでありますが、今回の改正案では、同時に、地方公共団体の長の罷免の制度の廃止、機関委任事務に係る議会及び監査委員の権限の拡充も盛り込んでおりまして、全体として国と地方の関係の改善に資する内容となっていると考えております。
#65
○矢山委員 改正法案の内容についてはここで議論はいたしません。私も新聞報道でちょっと見て、これは問題がかなりあるなという受け取り方をしておりますが、その論議はまた別個のそれぞれの関係の委員会でやることになると思います。
 次に、ことしの二月三日に地方制度調査会が中曽根首相に提出した機関委任事務に関する答申では、「都道府県及び市町村の全国的な連合組織が地方公共団体の利害に関係する法令の制定改廃について国会又は関係行政庁に意見を提出することができるものとする」とされておりますね。ところが、これは私は新聞で見たのでありますが、この地方六団体の意見提出権は関係省庁の抵抗によってつぶされたと言われておりますが、どういうことになりましたか。
#66
○濱田説明員 お答えいたします。
 今回の地方制度調査会の答申では、国と地方公共団体との関係改善の観点から、地方公共団体の意向が国政に適切に反映されるような方途を講ずべきである旨述べられているところでございます。
 自治省といたしましては、この答申に沿いまして、地方公共団体の全国的な連合組織の意見提出権を制度化すべく粘り強く折衝をいたしたところでございますが、法案提出の期限までに各省の納得を得られませんで、まことに残念に思っております。しかし、今後とも引き続き地方公共団体の意向が国政に適切に反映されるよう努力してまいりたいと考えております。
#67
○矢山委員 地方六団体の意見の提出権、これは各省庁が反対をしてつぶれた。ところが職務執行命令訴訟制度の見直し、これはできた。このことは一体何を示しておるのでしょうね。中央省庁が一たん握った権限は断じて放さない、そういう思想が背景にあって、そして委任事務等についても、ごちゃごちゃ言ってやらないということになるのなら、現行制度を変えて司法権の介入を弱めてそして代執行できるようにしよう、こういうことなんですね。そして意見の提出権を認めない。地方自治団体はごちゃごちゃ言うな、これはまさに中央省庁の独善的な態度を示したものだと思うのです。
 今の行革が本当の意味で進まないのも、中央の各省庁、中央官僚の抵抗が激しいから進まぬのじゃありませんか、長官。
#68
○江崎国務大臣 総理もいつもよく言っておりますが、国と地方というのは車の両輪みたいなものですから、地方と対立することを考えてこの権限委譲などということを考えたわけでもありませんし、今御質問の点についても、自治省から答弁しておりますように、意見の一致を見ない点をなお調整しよう、こういうことですね。
 それで、私、今資料が手元になかったものですから、自治省側からも答弁しておりましたが、これは地方自治法の一部改正のときに当然議論になる話ですから私からも重ねてお答えをしておきたいと思いますが、地方制度調査会で機関委任事務についても十分練っておりまして、そして地方自治体に密着したもの、住民に幸せをもたらすものというものに重点があるわけですね。ところが御質問の点は、一つの批判意見としては重要なところを突いておられる。だから今ちょっと資料を取り寄せて見たわけでございますが、しかし、確かにこの制度について、議会の検閲・検査権、それから監査請求権、監査委員の監査権を強く認めることにしておりますね。それから訴訟制度の見直しについても、地方公共団体の長の罷免の制度を廃止する。罷免の制度を廃止というのは重要ですね。そして知事の機関委任事務の処理について、法令等の違反――法令の違反はいけませんね。あるいは著しい怠慢があり、公益を害することが明らかであるときはまず主務大臣が勧告をする。これは勧告をするわけです。それからその次に命令をするわけです。それでも知事が履行をしないときは不履行の事実を確認する内閣の告示を経てというわけですから、これはもう当然国会議員の皆様方、国民にも、地方自治体にもわかるようにしてそして代行することができるというのだから、相当慎重な取り扱いになっておる。また、そうでないとこれは地方自治法の一部改正だって通過いたしませんね。
 ですから、矢山さんのおっしゃる疑問点、これは疑問点として私も今よく傾聴をいたしました。しかし、資料を取り寄せて見てみますと、前よりは随分改善され、そして、代行ができることとするが、知事の方からは不満があるときは内閣総理大臣に不服の申し出をすることもできる、主務大臣の命令の取り消しを求める訴えの起訴も認めておる。こういうわけですから、相当これはガラス張りで、地方住民ぐるみ、国民ぐるみ明らかにして、委任事務についての怠慢性、そして代行、こういうことがそんなに勝手にできないようにできていますね。そして、地方自治体はこれについて不服を申し出たり、主務大臣の命令も取り消してくれと言うことができる。これを権力で抑え込むなどと言ったらそれこそ大変なことでありますから、御心配の点については、私は、公正を期し、妥当な改正がなされておるなと思っております。
 先ほどは資料を持っていませんでしたので、今資料を取り寄せて、私自身もよく検討をして、お答えをしておる次第でございます。
#69
○矢山委員 今いろいろ御説明がありましたが、恐らく、今度の地方自治法の改正案をもとにしながらいろいろお話しになったのだろうと思うのです。しかし、現行制度から比べるとこれは極めて簡略化されておるのです。現行制度というのは、地方自治体の長の自主独立性を尊重する上に立って、国の指揮監督権との調和を図るということで、その判断権を司法に任せて、そしてその判断に基づいてやろうという、極めて慎重な体制をとっておったわけですよ。
 ところが見直しの中で、行革審の答申それ自体だけを見ると、かなり大幅に改正されたわけです。そして、裁判に訴える場合というのが今度の改正案でも一部出ております。しかしながら、その裁判に訴えたのが果たして実効性があるかどうかということについては、あの条文を解釈していくとほとんど実効性はありません。これは骨抜きです。その点を私は意識しておったから言っているわけですけれども、この議論は地方自治法の改正の場でやるべき議論でありますから、そのことはこれ以上言いませんが、そういう認識です。
 そして、職務執行命令訴訟制度というものが現行法により非常に弱められてきて、ほとんど私は意味をなさぬと思いますが、そういう制度に改善をされて、一方では地方六団体の意見書の提出も認めない。これはやはり中央省庁の独善じゃないかというふうに私は思うのです。
 罷免制度については、これは自治体の長というのは公選で出てきたのですから、これを罷免するというのはそもそも問題なので、これが改められたことは当然のことであります。
 それから、地方議会や監査委員の権限がある程度拡大されてまいりましたが、これも、機関委任事務について、事務は委任しておいて金は全部は出さない。一部出して地方自治体に負担をかけておいて、そして地方自治体が実際に仕事をやる。こうなっているわけですから、その問題について、地方の住民に関係のある委任事務であるだけに、その執行がどうかこうかということを監査する。議会が関与する、これは私は当たり前のことだろうと思います。
 これ以上踏み込みませんけれども、今度の改正というのは、地方自治の立場からいうと重大な自治権の侵害という要素を含んでおるというふうに私は考えておるということを最後に申し上げておきまして、次に移りたいと思います。
 地方制度調査会というのは、御案内のように最近はやりの私的懇談会などじゃございません。地方制度調査会法という法律によって設置をされました八条機関であります。そこに正式に諮問して答申を受けておきながら、結局政府は地方六団体の意見提案権を無視してしまった。まさに、都合の悪いところは取り上げない、そして都合のいいところは取り上げよう、こういう考え方がどうも露骨に出ておると思います。こういう姿勢というものは改めていただかなければならぬというふうに私は思います。
 そして、もう一つ申し上げたいのですが、地方自治体に対する職務執行命令を裁判所の判断にゆだねておるのは、たびたび言っておりますように、地方自治体の長本来の自主独立性を尊重し、国民の民主的な運営を保障するための制度であります。ところが、六十年七月二十二日の行革審の答申は、国と地方自治体が対立した場合に、司法権による判断を排除し、国に一方的な執行の権限を与えようとするものであって、地方公共団体の自主性を否定し、憲法の精神にも反するものであります。行革審答申が言うように地方自治体が機関委任事務を執行しないことが起こるとしても、先ほどお話しになっておりますように、それは過去の例を見ればわかりますように、軍事基地拡張のための土地収用の手続とか、あるいは自衛官の募集の事務とか、外国人登録のための指紋押捺といった、憲法上疑義のある行政事務を国が自治体にやらせようとすることから起こるのであります。つまり根本の問題というのは、そのような憲法の精神に反する行政をやっておる国の姿勢にあるのでありまして、それを自治体に強制するために国の権限を強めようなどというのは、まさに本末転倒の考え方です。
 そもそも、地方自治というものは憲法で保障されたものでありますから、それについて何の権限もない行革審などが口をはさむというのは、重大な越権行為だと私は思う。また政府も、行革審を隠れみのにして、戦後日本の民主政治の基本を否定、清算するような法律改正はやるべきではない。このことを私は強く要求をいたしておきまして、この問題に対する質疑は終わらしていただきたいと思います。
#70
○江崎国務大臣 ちょっと重要な点ですから私からもお答えしておきますが、行革審からの答申は、「機関委任事務の適正な執行を確保する現実的な制度に改めるとともに、地方公共団体の長の罷免の制度についても見識す必要がある。」これは矢山さんがおっしゃっている点が、そういう言葉になって、まだずっと長くありますが、時間がありませんから、そちらの時間に影響してもいけませんから結論的なところを申し上げますが、そういう答申になっておるわけです。それを受けておるわけですから、御指摘の点は十分承りましたが、むしろ地方のためになる、また地方が簡素化されていろいろな委任事務が円滑に遂行できる、こういうところに問題がありますので、どうぞ、御心配の点を余りに強調されますが、そういう極端な、勝手なことはできませんよ。これはさっきも申し上げましたから繰り返しになって恐縮ですが、とにかく、まず勧告から始まるわけですから、それから命令にいき、そして内閣告示で代行、こうくるのですから、そんなにこの命令段階で――監査委員は非常に権限が拡張されておりますので、御心配の点についてはよく配慮いたしますが、そういう極端なことにはならないように政府としても配慮し、地方自治体とは一体的に政府は運営されるべきものだというふうに認識しております。
#71
○矢山委員 もう余り時間がなくなりましたので、あとの議論についてはまだ機会を改めてやりたいと思います。これは私は、何と考えても、地方自治の根幹にかかわる問題でありますだけにゆるがせにできない問題だというふうに思っておりますので、また改めて議論をしたいと思います。
 そこで、もう時間がありませんから、一つ二つお願いをしておきたいと思います。
 今度、内閣官房の内部組織の改編を行うということでありますが、もう質疑はやめますから、その改正の案ができておればぜひ御提出を願いたい。
 それから、その場合に、今度の安全保障会議法案との関連で、内閣官房の安全保障室の方に国防会議が移されるということでありますが、安全保障室の内部組織は政令でやるのか、あるいは内閣調査室組織規則というのがありますが、これのように内閣総理大臣決定でやるのかということでありますが、これも案ができておったらぜひお示しをいただきたいと思います。
 なぜ私が今のようなものを要求するかといいますと、これは、今まで法律で決められておったものが政令に移っていったり、さらにまた、政令で決められておったものが総理大臣決定だとかあるいは規則だとか、そういう問題に移っていくわけですね。しかも、その組織、構成がどうなるかということは、これからの運営の問題等で非常に重要な意味を持ってくると思いますので、これはぜひ資料として御提出願いたいのです。安全保障会議法案も提出されておることでありますから、この審議にも必要であろうと思いますので、お願いしておきます。
 あわせてもう一つは、今の国防会議議事運営規則、これもぜひ御提出願いたい。たしか先般、これは秘密だから出せないというふうにおっしゃったかとも記憶しておりますが、こんなものは秘密にされるべきものではありませんので、まあ防衛庁というところは秘密の件数の極めて多いところでありますけれども、国防会議議事運営規則、これはぜひ御提出いただきたい。
 それからもう一つ、国防会議が、五十九年の十二月に防衛大学校の安田寛氏に委託して作成されました「危機管理と国防会議」という研究レポートがございます。これをぜひ御提出いただきたい。
 以上のものが御提出いただけなければ、安全保障会議法の審議にも支障を来すと私は思いますので、このことをぜひお願い申し上げておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#72
○塩田政府委員 前段の御要望は必ずしも私の方の所管ではございませんので、内閣官房全体の組織につきましては、その担当者の方に連絡いたします。
 後段の国防会議議事運営規則、それから五十九年のレポートの二点につきましては、従来こういうものを公表しない取り扱いになっておりますので、その点につきましては今ここで直ちに御提出のお約束をいたしかねますので、検討させていただきたいと思います。
#73
○矢山委員 内閣官房、来ているでしょう。
#74
○荘司政府委員 前段の内閣官房全体の組織の問題でございますけれども、現在また検討中でございまして、成案を得るに至っておらないところでございます。
#75
○矢山委員 最近の非常に悪い傾向ですけれども、法律を出される、その法律は極めて抽象的な書き方をされ、肝心なところは政令、省令、規則に移されてしまうということが流行になっている。法案審議をやるときに、そういう抽象的な法律だけでは審議はできないのです。中身を一体どう具体化していくのか。政令が要る、省令、規則といったものもそろえて出して審議をしてくれというのが常識ですよ。抽象的な法律だけ出しておいて、あと政令はどうなっているのかわからない、省令、規則はどうなるかわからない、これでは国会の審議は身が入りませんよ。だから、安全保障会議法を審議してくれとおっしゃるなら、内閣官房組織令、あるいは安全保障室の内部構成はどうなるのか、こういったものも当然提出をされなければならぬと私は思います。そうせぬと審議に支障が起こるということを申し上げておきます。
 それから、塩田さんのおっしゃった国防会議議事運営規則、あんなものは秘密というほどのものじゃないでしょうから、これも御検討の上、御提出をいただきたいと思います。それから、「危機管理と国防会議」という委託研究、これはぜひお願いします。いいですね。今、ちょっと出しにくいとおっしゃったのは議事規則だけですね。
#76
○塩田政府委員 従前の取り扱いで出しにくいと申し上げたのは二点でございます。議事運営規則とレポートについてでございます。
#77
○矢山委員 あなた、レポートのことはおっしゃらなかったですよ。言わないでしょう。(塩田政府委員「言ったつもりです」と呼ぶ)それはあなた、二つ要求して、二つとも出さないというのは酷じゃありませんか。これはお出しいただくように、内部でひとつ長官とも御相談ください。お願いいたします。
 それでは、きょうの質疑はこれで終わります。
#78
○志賀委員長 午後三時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時三十二分開議
#79
○志賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。日笠勝之君。
#80
○日笠委員 恩給法等の一部改正問題、また、そのほかの行政改革、貿易摩擦の問題、青少年対策の問題で、時間のある限り政府の御答弁をいただきたいと思うわけでございます。
 まず、恩給の件でございます。御承知のとおり、昭和五十六年七月の臨時行政調査会の行政改革に関する第一次答申、この中に「年金、恩給等」という項目がございますが、「昭和五十七年度においては、恩給費の増加を極力抑制し、新規の個別改善は行わない。」このようにございます。さらに、五十七年の七月、いわゆる基本答申、この基本答申にも御承知のとおり、「当面第一次答申の趣旨を尊重するとともに、年金制度とのバランスをとるために必要な見直しを行う。」このように出ております。そして、昨年の七月二十二日の行革審の「昭和六十一年度予算に向けた行財政改革に関する意見」の中にも、「年金とのバランスを考慮した恩給制度の見直し」、このようにあるわけでございます。いわゆる年金制度とのバランスをとるために必要な見直しを行いなさい、こういう答申であろうかと思います。
 そこで、御存じのとおり、年金と恩給のバランスは一面からいえば非常にアンバランスでございます。いわゆる受給資格の年限も違いますし、支給年齢も違います。また、年金は物価上昇率をもってアップを図るわけでございますが、恩給の方は国家公務員の給与引き上げをベースとして上げておるわけでございます。その後、この年金とのバランスをとるための必要な見直しをどのように行ったかということからまずお答えをいただきたいと思います。
#81
○佐々木政府委員 今、先生がおっしゃいましたように、臨時行政調査会、それから臨時行政改革推進審議会、それからつい最近では、昨年末の共済にかかわる臨時国会、そこにおきまして公的年金制度と恩給のバランスということが種々論議をされ、諸般の御指摘をいただいたというのはおっしゃるとおりでございます。
 私どもとしましては、やはり恩給というのは多分に特殊事情がある、これは例えば恩給につきましては国家補償であるということ、それに対して公的年金にあってはいわば公的社会保険である、そこの違いがあるということ。それから、その対象者がすべて既裁定で、新規参入はないといったようなこと。それから、戦後四十年、皆さん大変御高齢になっておるということ。そのあたりから、いわば制度の基本の枠組みを変更することは極めて困難であるとは思いますけれども、おっしゃるとおり恩給も年金としての機能を有しているわけでありますから、そのあたりのバランスは十分考えなければならぬということで、御指摘をいただいて以降、種々内部的な検討をいたしておるわけであります。ただ、今申しました三つの大変恩給に特有の事情がございますものですから、これらにつきまして関係方面とも諸般の協議をいたしておりますけれども、いまだその結論を得るに至っていないわけであります。
 ただ、先生御指摘のありますように、例えば今のスライドの問題、あるいは多額所得者のいわば恩給支給制限の問題、こうしたような問題を中心にいたしまして、これからも内部的にも種々勉強会を、今やっておりますけれども、さらに続け、あるいは関係団体、関係者の方々とも十分協議を遂げて、できるだけ早急にその見直しを行いたい、このように存じておる次第であります。
#82
○日笠委員 この「年金制度とのバランス」という中の一つの概念としまして、いわゆる旧軍人軍属の恩給欠格者の方々の場合、国民年金であるとか厚生年金には引き継げないわけですが、そういうことも考えておられるというふうに理解してよろしいでしょうか。
#83
○佐々木政府委員 先ほど、恩給は国家補償の制度であるということを申し上げました。その年限につきましては、例えば兵の場合の恩給年限、この十二年ということにつきましては、実は昭和八年から定まっておる制度であります。それから、恩給の場合には御承知のように加算年がつくわけであります。例えば戦地で戦務に従事された場合にあっては、南方であれば一月について三カ月といったような加算年がつきまして、そのあたりが合わさりまして在職年限十二年を満たせば恩給の受給資格を得ることになっておりますけれども、今の昭和八年以来という一つの年限の定まり、それから加算年につきましても、これは戦時中にいわば戦意高揚のために諸般のお約束をしたというふうな経過もあります。そこで、この十二年、それから従来の加算年につきましては、これを今改めることは私どもとしてはできることでもない、またそれは適当でもない、このように思っているというのが率直なところであります。
 ただ、先生も当然頭の中に置いていらっしゃると思いますけれども、この戦後処理問題の一環としまして、恩給欠格者の問題というのは諸般の論議を呼んでいることも事実でありまして、これらにつきまして実態調査を行うということで、六十年度からそのための予算が計上され、ただいま総理府において種々の検討が行われておる、このように承知をいたしておるわけであります。
#84
○日笠委員 戦後処理懇の基金の問題についてはまだ後ほどお尋ねをしたいと思いますが、これは局長どうなんでしょうか、いつごろまでに目安をつけるとかは。年金制度とのバランスを見直すということですが、そういうタイムスケジュール的なものはあるのでしょうか。
#85
○佐々木政府委員 恩給制度の公的年金制度とのバランスの観点からの見直しにつきましては、これはまだ先生方にお話しができる段階かどうかは一応別といたしまして、六十二年度予算までにはある程度の議論を詰めなければならない、このように思っております。
 ただ、恩給欠格者の問題というふうなお話であれば、これは総理府の方でお答えをすべき問題であろう、このように思います。
#86
○日笠委員 また後ほど聞きますけれども、御承知のとおり、行革審も六月で一応卒業論文を書かれて、法律的には廃止になるわけでございますが、未措置といいましょうか改善措置ができてない分につきましては、これは当然何らかの形でやらないと、中曽根内閣の大きな柱であります行政改革、財政改革、教育改革といろいろあるでしょうけれども、中でも行政改革ということが目玉でございましたので、その点も鋭意答申に沿いましての前向きな御検討をひとつお願いをしておきたい。いわゆる官民格差といいましょうか、国民の中での不公平のないような見直しをしなさいという一つの御意見ではなかったかと私は思っておりますので、そういう意味でひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。
 続きまして、非常に細かいことでございますけれども、いわゆる一時恩給と断続一時金の未請求者はこれぐらいはおるのではないかと一応考えておられたと思うわけでございますが、現実的には現在とのくらいの方が一時恩給ないし断続一時金、一時恩給というのは三年以上連続してということですね、断続というのは切れ切れでも三年以上になればいいという方でございますけれども、現時点におきましての予想人員と、現実に支給を受けておられる方、これをまずお願いしたいと思います。
#87
○佐々木政府委員 御承知のとおり、一時恩給につきましては、昭和二十八年に軍人恩給が復活しましたときに、これは七年以上連続して勤務をなさった方につきまして一時恩給の制度が設けられたわけでありますが、四十六年から順次その条件が緩和されてまいりました。実は、私どもの調査の資料はそのたびごとに対象者を大体把握をいたしておるということで、現在の数字とはいささか違うかと思いますけれども、まず最初にその対象の人員でありますけれども、一時恩給につきましては約百八万六千人、それから断続一時金の対象の人員は約三十三万二千人と見込んでおるわけであります。
 そこで、昭和六十一年二月末現在における一時恩給の裁定件数は約六十三万七千件、それから断続一時金の裁定件数は約十二万八千件ということになっておるわけであります。したがいまして、一時恩給の未請求者数が約四十四万九千人、それから断続一時金の未請求者数が約二十万四千人、特に断続一時金につきましては、必ずしも多くの方が請求をしてないというのが現状であります。
#88
○日笠委員 そうしますと、約六十五万人ぐらいが未請求であるということでございますね。六十五万というと大都市の人口ぐらいに匹敵する方でございます。これの時効という問題がありますけれども、その辺は弾力的に運用してくださっておるようでございますが、もちろん亡くなられた方であるとか、いろいろ事情があって失権をされた方もあるでしょうけれども、今までも何回か、いろいろな意味で政府広報等を含めて申請をするようなPRはされたと思うのですが、今後この六十五万のうち果たして何人が申請されるかわかりませんけれども、救済措置でございますから、公平という意味では全員が知らなければいけません。それを請求するかどうかは御本人の勝手でございますけれども、そういう意味におきまして、一時恩給、断続一時金等々は、まだこういうことで請求すればいただけるのですよというPR、周知徹底はどのようにお考えでしょうか。
#89
○佐々木政府委員 一時恩給、それから一時金を含めまして恩給改善のPRというのは、私どももいろいろと努力をしておるつもりでございます。新聞あるいはテレビ、ラジオ、それから政府広報といったようなことで広報をいたし、また都道府県や市町村の広報紙なんかによっても、そのあたりについて周知を図っているところであります。また、関係団体にもいろいろと御協力をお願いいたしまして、恩給改善の状況につきましていろいろとお知らせをするというふうな努力を払っておるわけでありますけれども、なお不十分な面は認めざるを得ないと思います。
 各種恩給の未請求者に対する請求の指導につきましては、私どものほか、県あるいは今申しました恩給の各種団体の、例えば全国の各ブロックでの会議その他を通じまして、今おっしゃった時効の問題はあるわけでありますけれども、弾力的に運用するということを含めまして今後とも十分指導してまいりたい、このように考えております。
#90
○日笠委員 続きまして、死亡とか婚姻によります恩給の失権者、これは資料をいただきまして、五十九年度は十四万八千件、こういうことでございますが、会計検査院の方の五十九年度のいわゆる不当事項であるとかいうことで取り上げられておるものの中に、厚生年金及び国民年金の支給が不適切ということで、いわゆる受給権者が死亡しておるのに年金を支給していた者が多数あった、年金支給の適正化対策が必要であるということで、これを会計検企院が「厚生年金及び国民年金の支給の適正化について」ということで指摘をしておるわけてございます。
 ちなみに五十九年度の場合は、厚生年金の場合は債権現在細が四十九億三千七百万円、不納欠損額、返してくれと言ったけれども返してくれないのが約五億円、こういうふうなことも厚生年金、国民年金には、まあ一千五百万人からの方が支給を受けておるわけでございますから、その点恩給の方は二百万ほどでございますので七分の一ということでございますけれども、こういう恩給の過払いというのでしょうか、失権していたにもかかわらず恩給が支払われておったというふうなことはないのでしょうか。
#91
○佐々木政府委員 先ほど申しましたように、恩給の受給者も大変御高齢になっていらっしゃるわけであります。私どもとしてもそのあたりについては大変神経を使っているところでございます。
 この受給権の存否につきまして、私どもの方では、毎年というよりも、全体で二百万いますものですから、大体百万ずつに分けまして受給権調査というのを行っております。この受給権調査の段階でもって戸籍謄本を一緒につけていただきまして御返戻を願う、その中で例えば死亡しておられる方についてはその死亡の記載がはっきりとあらわれてまいるわけであります。そういう受給権調査に応じられない方につきましては支給差しとめをして、私どもの方で実態調査をする、このようなことでありますから、基本的には、私どもの方で正確にその死亡の事実を一応把握をいたしまして、それで、これは郵政官署において債権管理を行うわけでありますけれども、過払いの場合にはその返済について郵政官署の方へお願いをする。したがいまして、今先生の御心配のことにつきましては、私どもの方では割りかし的確に一応やっておるように思っております。
 ただし、おっしゃるように、この死亡失権、そうしたことにつきましては迅速に把握する必要があるものですから、六十一年度から、特に御高齢の方につきましてはそうしたような失権の可能性が高いものでありますから、さらにその中間年にあっても実態調査を行う、このようなことをただいま考えておるわけであります。
#92
○日笠委員 そうしますと、今は現況届は二年に一度でございますね。戸籍謄本でなくても抄本でいい、弾力的にやっていただいておるそうでございますけれども、国民年金、厚生年金は一年に一度でございます。その一年に一度でも、先ほど言ったような相当の過払いが起きておるわけですね。そうなりますと、先ほどおっしゃいました恩給受給者の今の平均年齢は幾つぐらいですか、七十歳ちょっとぐらいですか。
#93
○佐々木政府委員 六十年三月末でもって七十・二歳というのが平均年齢であります。ただし、それからもう一年もたっておるわけでありますから大体七十一歳程度、こういうところであります。
#94
○日笠委員 そうしますと、先ほど局長がおっしゃった、高齢者の方は中間でもということでございますね。その中間というのは毎年という意味にとらえていいのでしょうか。
#95
○佐々木政府委員 それを通算いたしますと、毎年ということに広がってまいるわけであります。
#96
○日笠委員 そうしますと、ちょっとこれはひとつどうなのかなと思うことがございます。それは、厚生年金と国民年金の現況届は、市町村の役場へあらかじめ社会保険庁から送ってきました現況届書を提出しますと、それに居住地証明の判こを押してくれて、それをそのまま社会保険庁へ送り返せばいいということで、戸籍抄本代は三百円だと思いますが、これは無料になっておるわけです。それで、今度から恩給の方も高齢の方ですと年一回となりますと二年で六百円、微々たるものかもしれませんが要るということになりますね。そういうことで、例えばいわゆる公平ということで、それは制度が違う、発足のいきさつが違うということはあるでしょうけれども、厚生年金、国民年金並びで、この恩給局で行います恩給の支給のためのいわゆる現況届というものも、戸籍抄本、謄本じゃなくて、居住地の市町村の判こがあればいい、こういうふうなことに、改正、改革ができる可能性がありますでしょうか。
#97
○佐々木政府委員 おっしゃるとおり、ほかの年金で例えば年一遍というふうなことで調査をなさっているところがございます。そのあたりのことも含めまして、この受給権調査のあり方については私どもさらに一応考えなければならぬ問題であろうと思っております。そのあたりの検討の中で先生の御提案もあわせて考えさせていただきたいと思いますが、当面、ことしからやろうと思っておりますものは、今おっしゃった二年に一遍、その中間年において受給権のいわば実態調査を行うということで、実は、往復はがきとまでは言いませんけれども、いわばはがき方式でもってそれぞれの方の今の実態につきまして御報告を願う、負担をかけないような方法でできるだけやりたいというのがただいまの私どもの考え方であります。なお、さらにそうしたようなやり方につましては検討させていただきたいと思います。
#98
○日笠委員 もらう方は老後になっていただくわけですから、年金でも恩給でも老後の生活保障の資金でございますから、片一方は二年に一遍で戸籍謄本をつける、片一方は居住地の市町村の判こだけでいい、こういういわゆるアンバランスがあるわけですから、横並び、公平ということを考えても、できる限り弾力的に、今おっしゃったような方向で考えていただければ非常にお年寄りの方、高齢の方は喜ぶのではないかと思います。
 先ほど局長おっしゃいました、高齢者の方はそういう中間年でもやりたいということで、大体何歳くらいの方を見込んでいらっしゃいますか。
#99
○佐々木政府委員 これも今確定的なことを申し上げられるわけでもないのですけれども、ただいまのところは、実は予算の段階でもって一応議論をして、大体この程度のめどということで考えておりますのは、八十五歳以上の方についてそういう往復はがきでもってその実態把握をいたしたい、こういうふうに思っているわけであります。
#100
○日笠委員 それから次に、行政監察局の方になるかと思いますが、いわゆる恩給にかかわる行政相談の件数でございます。
 これは一応五十八年度までの資料をいただいておりますが、年度によって違うわけですが大体千件、多いときは千六百件、相当ございますが、恩給にかかわる行政相談の中身はどういう内容のものが多いのでしょうか。どういう傾向性があるのでしょうか。
#101
○竹村政府委員 恩給関係の行政相談の内容でございますが、総務庁の行政相談で上がってまいります恩給関係でありますが、統計上、恩給に関する相談内容別の分類は実は行っておりません。したがって詳細は把握できませんけれども、一般的な傾向として申し上げますと、例えば恩給の請求手続、どこの窓口機関に行ったらいいか、あるいは必要な書類等、それから扶助料の遺族の範囲はどこまでかとか、あるいは恩給の種類はどのようなものがあるか、こういった事務手続あるいは制度に関する問い合わせに類する相談が比較的多くなっております。
#102
○日笠委員 はい、了解いたしました。
 続いて、全国市町村職員年金者連盟の方から既に陳情が行っていると思います、いわゆる現職公務員の給与改定の実施より一年おくれであるのでこれを解消されたいという陳情でありますが、これは毎回の附帯決議でも、参議院、衆議院ともに、附帯決議でそのことは述べられておるわけでございますが、この点はどうなんでしょうか。
#103
○佐々木政府委員 恩給の改定につきましては、年金価値の維持という観点から毎年改定をさせていただいておるわけであります。年金価値の維持ということは何であるかということになりますと、今まで各種の公的年金制度でもいろいろな工夫をいたしているわけであります。例えば厚生年金その他につきましては物価である、それから恩給についてはいわば公務員給与のベースアップ率である、こういうことでありますけれども、いわば物価が例えば六十年十二月までの物価によりまして六十一年四月からこれを改めるというふうな仕組みをとるのに対しまして、その物価にかかわるものとして恩給の場合には一応公務員給与のアップ率をとっておる、いわば実質価値維持の手段である、こういうことでありますから、現職公務員の場合には御承知のように官民の給与較差を是正するというふうなことであり、恩給の場合にはその手法を変えて実質価値の維持をするということで、私どもとしてはこれは一年おくれというふうには実は考えてないわけであります。
#104
○日笠委員 それから二つ目に、恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃されたいとありますが、この辺はどうでしょうか。
#105
○佐々木政府委員 老齢福祉年金の場合には、他のいわば公的年金制度を受けない方々、これに対して無拠出でもって老齢福祉年金が出されておるわけであります。したがいまして、恩給受給者の方々に一概にすべて老齢福祉年金を受けさせるというのは、これはまたいささか公平の観点から問題が出てくると思います。
 ただ、例えば特に公務傷病の方は、大尉の階級以下の方々を条例といたしまして、公務傷病の方あるいは遺族の方々につきましては、いずれも老齢福祉年金を全額一応受けておられる。それからまた、今ちょっと手元に金額のそれがありませんけれども、一定条件のもとで老齢福祉年金と恩給とのいわば調整措置がなされておる。こういうことで大体、老齢福祉年金の所管庁は厚生省でありますからこれは厚生省所管の問題ではありますけれども、私ども恩給の立場でも大体御希望に沿えるような形になっておるのではなかろうか、このように思っておるわけであります。
#106
○日笠委員 この陳情書は恐らく行っておると思いますので、もう一度よく御検討いただければと思います。
 それから、これは非常に細かいことでございますが、「恩給法令要覧」なんという法律書を見ますと、これ一冊、とてもとてもこんなものを一夜漬けで質問しろというのは無理なようなことでございまして、ある程度読みました。読みまして、私、実は昭和二十年七月生まれですからいわゆる戦後っ子でございます。非常に難解でございますね。おまけにこういう言葉遣いをしたら、御存じのように長官は貿易摩擦の専門家でございますけれども、いわゆる文化摩擦でよその国からおしかりを受けるのではないかというふうな言葉もありますね。例えば「理蕃」というのがあります。理蕃加算ですね。この「理蕃」というのはどういう意味ですか。正確に国語学的に言ってくださいよ。
#107
○佐々木政府委員 「理蕃」というのは蛮地を治めるということであります。主として台湾の方々に対してそれは考えておるわけであります。
#108
○日笠委員 これは台湾の人が見たらどうなんでしょうね。自分のところが蛮族で、それを治められるのかということですね。恩給法というのはほとんど毎年一部改正されていますね。そういうところで、台湾の人から見れば「理蕃」、私たちは野蛮未開のところであって、それを治めるのが日本だ、こういうことになりますね。
 それからもう一つ、以前でございましたか、この委員会で在勤法のときに「不健康地」というのをやりましたけれども、これはよくわかるのです。法律用語で「不健康地」というのはわかりますけれども、これは中国のことを言っておるのだと思うのです。中国は不健康地だ。これは戦前の法律用語でございますね。
 それから例えば「傷病賜金」、傷病のためのお金を、賜金の「賜」というのは与えるということです、上から下へお金を上げようという意味ですね。
 それから「警察監獄職員」とありますね。御存じのように法務省も、監獄法を変えて留置施設法であるとか刑事施設法にしようか、この用語は現代人にはなじまないということで、そういうふうなことも考えておるようでございます。今回は法案は提出されなかったそうでございますけれども。
 そういうことで、毎年こういうふうに法律を変えるのでしたら、一つ一つの言葉を変えるというのも大変面倒なんだとは思うのですけれども、もう戦後生まれが人口の半分を突破しておるわけですから、これは長官どうでしょうか、そういう法律の一言一句、昔は「つんぼ」とか「おし」とかいう言葉を使っておりましたけれども今は使いませんね、そういう意味におきましても、毎年少しずつでもこの恩給用語、非常に難解でもありますし、対外的にも聞かれた相手の方が、おれのところは理蕃が、おれのところは不健康地かということにもなりますし、こういう用語を改正するということにつきましては、長官どうでしょうか。これはもう長官じゃなきゃだめでしょう、恩給局の者では。
#109
○江崎国務大臣 私は、今御指摘の点は非常に重要だと思います。ただ、今恩給局長などが申しますには、戦前の常套語を使った方が、何せ平均七十歳ですから、そこでわかりやすいというようなことでそういうことになっておると言うんですが、これはやはり御指摘の点を加味しながら改めていくことも考えなくちゃなりませんね。御指摘の点は有力な御意見として承っておきます。
#110
○日笠委員 恩給局長はこれ一筋で何十年ですから、使いなれた言葉ですから非常にわかりやすいと思いますけれども、先ほどから言っていますように対外的なことも考えなければいけませんし、ぜひひとつ前向きに検討してみてください。
 恩給の件は以上で終わりまして、続いて戦後処理問題につきまして、総理府の方にちょっと御質問をしたいと思います。
 この戦後処理問題懇談会、これはいわゆる八条機関ではございませんですね。いわゆる私的諮問機関、官房長官の私的諮問機関でございますが、ここで検討されましたこと、いわゆる「基金の創設を提唱する」とございますけれども、この基金の創設を提唱するという報告を受けまして、その方向で行こう、このようにどこのセクションで、どこのところで決められたでしょうか。いわゆる閣議決定みたいなものがあったのか、そういう意味のことでございます。
#111
○田中(宏樹)政府委員 閣議決定というような方式はとりませんでしたが、今年度予算を決める際に各省検討をいたしまして、特別基金検討調査室というものを新設をいたしました。予算もつけられまして、ここで基金の具体化についてよく検討してみる、こういうことに相なっております。
#112
○日笠委員 いわゆる八条機関でない私的諮問機関、靖国懇のことを実はきょうも質問したかったのですが、官房長官がだめだということでしたので。――この方向性はまあいいと思うのですけれども、私的諮問機関が報告をする、それを受けて即予算化をしていくというのは、もちろん予算化をするには最終的には閣議決定が要るわけですけれども、ちょっと早いのではないかな、こういうふうな気もいたします。
 そこで、ひとつお聞きしたいのは、この特別基金検討調査室、今アンケート調査の回収を急いでおりますね、三種類の。恩欠者と強制抑留者と在外財産の方々でございますけれども。これはあくまでも基金創設に関する皆様の御意見を伺うということと考えていいんでしょうか。それとも個人補償の道を残しておる、このようにも考えていいんでしょうか。
#113
○田中(宏樹)政府委員 総理府の方で現在調査をしておりますアンケートでございますが、対象が、問題が三つに分かれております。あるいは対象者が非常に多いということもございます。あるいは戦後の話でございますので、それ以来四十年たっておるということで、関係者といいましょうか、現在どういう実情にあるかということにつきまして調査をしているわけでございますが、特別基金の検討に資するための調査、こういうふうに理解をしていただきたいと思います。
#114
○日笠委員 そうしますと、あくまでもこれは特別基金の皆さんの御意見を伺うアンケートであって、個人補償を考えたアンケートではない、こういうふうに理解をするわけでございます。
 ところが、恩欠の方々のいろいろな団体がございますけれども、そういう方々の機関紙といいましょうか会報を見ますと、どうもそういうふうな認識でないような気がするのですが、その辺のギャップはどうなんでしょうか。あくまで、恩欠者のいろいろな団体にはそういう今おっしゃったような旨を徹底がいっているのでしょうか。
#115
○田中(宏樹)政府委員 先ほど言いましたように、各問題一万人ずつ抽出をいたしまして、その方に郵送法で調査をしておりますので、政府の考え方は現在こういうふうになっていますよということも含めまして御説明した上で、お願いをしているわけでございます。目下集計をやっているところでございますが、この辺につきましての御理解といいましょうか、この辺については、報告書で提唱しております特別基金というのは、これは方向が決まっているだけでございます。
 ちょっと申し上げさせていただきますと、「これらの尊い損害、労苦が時日の経過とともに国民の記憶の中から忘れ去られ、風化していくことを防ぎ、更に後世の国民に語り継ぐことであり、国民が戦争により損害を受けた関係者に対し衷心から慰藉の念を示す」という意味におきまして政府は特別基金を創設するように、こういうふうに方向だけが示されておりまして、その具体化につきましてはこれからでございますので、関係の方々の特別基金に対する御意向、期待、注文というものをよく承り、よく調査をした上で、特別基金の事業で活用をどういうふうに展開していくかということに尽きるかと思いますが、そういう方向で検討させていただきたいと思っております。
#116
○江崎国務大臣 これは政治問題でもありますから私からも補足して申し上げておきますが、言うところの懇談会報告の基金というものはまだ予算化されていないわけです。昭和六十年度から総理府に特別基金の検討及び調査費が計上されておる。そういうものを設けてどうするかという調査費ですね。この検討調査費は、基金そのものではなく、いわゆる基金構想に関し、その具体的な事業内容、関係省庁等が現在行っておる関連諸事業との調整、財源措置、それから設立形態などを検討するための経費、こういうわけですね。そしてまた、これは八条機関のものではありませんから、当然政府の責任においてこの基金を、いわゆるこの調査費を設けた。これは政府の責任で決めたわけであります。
#117
○日笠委員 もう一度総理府の方に確認いたしますと、このアンケートはあくまでも、基金をつくる、その基金をどのような形で運用していくかといいましょうか、こういうことをお聞きするものであって、別に誘導的な内容を含んでいるものとは考えなくていいわけですか。こういうものだと、具体的なものじゃなくて。言っている意味、わかりますか。
#118
○田中(宏樹)政府委員 先ほども申し上げましたのですが、三つ要素があると思います。その方が戦争とどういうかかわり合いを持ったか、例えば率直に言いまして、どこに抑留されたりあるいはどういう軍歴を持っていたりという戦争とのかかわりの関係、それから現在の生活の状況の関係、それと基金に対する意向、期待、希望というものを主眼にいたしました調査でございます。別に意図的に誘導したつもりもございませんし、そのまま率直な御意見を承りたい、こう思っております。
#119
○日笠委員 だけれども、このアンケートを見ますと、展示館を設けての常設展示はどうかとか、刊行物の発行であるとか、また記録映画であるとか、それからまたこっちの方には会館の件、平和会館というのですか、大体そういうことでこのアンケートをとられています。このアンケートから考えますと、もう個人の補償の道はないんだ、基金による何か新しい事業をし、永久に皆様方の御苦労を顕彰していこうということで、例えば会館をつくる、平和会館、平和祈念館、いろいろあるでしょう。それから記念碑をつくるとか。このアンケートを見るだけですと、そういう方向へぐっと誘導しているわけですね。ですから、結論とすればこれはもう決まっておるわけですね。基金でやるのは、平和会館であるとか記念碑であるとか、いろんな刊行物を出す、歴史的な資料として皆さんの体験談なんかを集めましょうとか。だから、そういう意味での誘導ですね、そう考えていいのでしょうか。
#120
○田中(宏樹)政府委員 率直に言いまして、調査票が来まして、全部ブランクでいい知恵を出しなさいと言われましても、実際問題としてできかねるということもございまして、多少御批判の点は十分承知をいたしますけれども、しかし、調査をする取っかかりといいましょうか、こんなことも例示的に考えられますけれども、その他どういうことをと、こういうつもりで設計したつもりでおります。
#121
○日笠委員 御努力の跡はうかがえますけれども、最後にフリーで書くところもございますし、いい知恵が出てくる、このようにも思いますが。
 これは別の分野からお聞きしますけれども、この特別基金検討調査室は、一億円くらいで、今アンケートの回収を始めておりますね。そのほかにも、全国にある恩欠連等々があるかどうか、その組織名であるとか会長名であるとか会員数であるとか、どういう資料をお持ちであるかとか、こういうものを各県の民生部に問い合わせをしているということはございますか。
#122
○杉浦説明員 お答え申し上げます。
 私どもがこの調査を設計いたしますに当たりまして、どういう方がおられるか、どういう活動をしておる団体があるか、こういった点につきまして、昨年の夏、各県にいろいろ資料をいただきました。そのほか、この調査にあわせまして、そこからいただきました団体につきましては、この基金の事業の中身につきましてどういう御意見をお持ちかという点も、あわせて聞いております。
 それからもう一つ、先ほどの審議官からの御答弁に関連するわけでございますが、私どもこの調査をいたしますに当たりましては、誘導するというつもりはございません。もともと、一つの参考には出しでございますが、頭の上に、これはあくまでもこういった便宜的なものでつくらせていただいたものでございますという点も明記いたしたり、あるいは趣旨を盛り込みました紙を一枚同封いたしまして、なるべく皆様方に公平に書いていただきたいと思って準備させていただいておりますので、御理解いただきたいと思います。
#123
○日笠委員 「お願い」というのが皆入っていくわけですね。これを見ても、戦後処理問題懇談会でいわゆる基金の創設を提唱するとぴしっと入るわけですね。ですからもらった方は、個人補償のことではなくてあくまでも基金に対するアンケートだな、こういうふうに理解をすると思うのです。
 この恩欠者の件につきましては、大変な政治といいましょうか、これは法律ですからぴしっとどこかで線を切らないと、私は一カ月足らない、その人は恩給をもらえるようになった、私はまだその一カ月下だ、こういうようなことで、最後は全員ということになってしまいます。そういう意味も含めていろいろ大変なことだと思うのですけれども、この戦後処理懇の報告を踏まえて、総理府としては現在ではあくまでも個人補償の道は考えないで基金の方でいく、こういうふうに考えていいのでしょうか。
#124
○田中(宏樹)政府委員 私どもといたしましては、恩給欠格者問題を含めて、いわゆる戦後処理問題につきましては、懇談会報告の中身を踏まえまして、この報告の趣旨に沿ったところで具体化していきたい、こういうふうに考えております。
#125
○日笠委員 ここで、政府と自民党さんとの昭和四十二年六月の了解事項がございますね。これは三項目ございますが、ちょっと読んでみましょうか。
      了 解 事 項
 1 引揚者に対する特別交付金の総額は、一九二五億円とする。
 2 本施策により在外財産問題あるいは引揚者に関する措置は完全に終了したものとする。
 3 本件措置をもってあらゆる戦後処理に関する諸措置は一切終結したものとする。
 昭和四二年六月二七日
 自由民主党 幹 事 長   福 田 赳 夫
       総務会長    椎 名 悦三郎
       政務調査会長  西 村 直 己
      総理府総務長官  塚 原 俊 郎
         大蔵大臣  水 田 三喜男
こういう政府・与党の了解事項、いわゆる覚書と称するものがございます。
 私、これは決して悪いという意味ではないので、誤解してもらっちゃ困るのですが、これ以降も、例えば昭和五十四年には日赤の看護婦さんの場合も慰労金が出るようになりました。五十六年には陸海軍の従軍看護婦さんにも慰労金が出るようになりました。また、その前の昭和五十三年には恩欠者のいわゆる断続一時金も出るようになりました。こういう政府と自民党さん、いわゆる与党との了解事項、覚書というものの拘束性といいましょうか、「戦後処理に関する諸措置は一切終結したものとする。」こうあるわけですけれども、この拘束性というものはあるのでしょうか。これは長官にお聞きしたいのです。
#126
○江崎国務大臣 そういう記憶は私もありますが、その後、御存じのようにやはりいろいろ問題が出てまいりまして、昭和五十七年から五十九年までの間に広く有識者の参集を求めまして、いろいろな補償措置について取り上げるものは取り上げたわけですね。そして、その五十九年の末をもってその開催が打ち切られた。むしろ、四十二年のそのもう一遍後にもう一度総ざらいをしているわけですね。そういうことで、今の党の拘束というものも、党としてはありましょうが、やはり国会第一主義ですから、国会でいろいろな意見が出れば、もっともなものは党として取り入れ、また党自体でもそこで自問自答しながら改めていく、こういうことで、今申し上げたような経過もあるわけであります。そしてまた、新しく今後のことで戦後処理問題懇談会が改めて官房に発足をした、こういうことです。
#127
○日笠委員 国会第一でございますから、立法措置さえできれば恩欠者の方々にも救済措置の可能性は残るわけですね。立法措置ができればできるということを確認をして、次へ移りたいと思います。
 今度は行政改革の件でございます。五十九年十月の御存じのように行革審の「臨時行政調査会答申の推進状況について」という中で、有名な「ほぼ五合目に達している」、こういう表現がございますね。現在の全体評価は五合目だ、非常にお褒めの言葉だというふうに前の後藤田長官はおっしゃっておられましたけれども、江崎長官は、現時点でこの行政改革の全体評価は何合目ぐらいだと御認識でございましょうか。
#128
○江崎国務大臣 これは私がとやこう言う話ではないと思いますが、五合目というのは、それは後藤田長官も申したように、まさに激励の意味を含めてそういう評価がなされたというふうに受け取るのが本当だと思います。
 五合目評価の後でも、規制緩和の例えば一括法、それから民間活力の発揮・推進、地方行革の指針となる地方行革大綱、その策定というわけで、いろいろ行っておるところであります。
 しかし、何といっても、まだ国鉄の改革の法案を今ようやくまとめて国会に提案したところであります、この問題。それから地方行革の一層の推進、内閣の総合調整機能の強化、こういった今後実行に移していかなければならぬ、推進を迫られておる問題はたくさんあります。ですから、まさに本当の行革はこれからだというふうに認識をいたしております。
#129
○日笠委員 自己評価は非常に難しいということですね。未措置の部分もたくさんありますね。
 当委員会でもいろいろな観点から論議されておるわけでありますが、いわゆる国土庁、北海道開発庁及び沖縄開発庁の三庁統合というのが昭和五十七年の基本答申に、「特殊事情を考慮する」という言葉がありますけれども、私どもが読む限りでは、一応三庁統合を図るのだ、こういうふうに認識をしておったわけでございます。
 五十八年五月の閣議決定では、いわゆる新行革大綱でございますが、三庁統合を図っていく上で、協議の場として国土開発行政関係三庁連絡会議を設置する、以来鋭意御努力はされてきたのだと思うのですが、大変不審に思いますのは、昨年の七月、行革審から、「行政改革の推進方策に関する答申」の中で、いわゆる「国土三庁の統合は、沖縄の特殊事情に配慮しつつ、臨時行政調査会答申の趣旨に沿って進めることとし、当面、国土庁、北海道開発庁及び沖縄開発庁の各長官は、一国務大臣の兼任とすることが望ましい。」昨年七月、三庁の大臣は一国務大臣が望ましいと言われながら、昨年の改造では二大臣になっておるわけでございますね。
 こういうふうな、いわゆるやろうと思えば即できる立場でございます中曽根行革ということであれば、この行革審の答申を尊重して二大臣を一大臣にしていくことはできるわけでございます。副総理格として、長官もいろいろとそういう分野で、総務庁長官でもございますし、こういう行革審の答申を無視したといいましょうか、考慮に入れなかったというやり方、いかがですか。
#130
○江崎国務大臣 やはり簡素で能率的に一大臣で兼務すべきだ、その提案は権威のある意見だというふうに評価をしております。ただ、御存じのようにいろいろまだ残事業もありましょうし、それからそれぞれの地理的特殊事情もあります。特に国土庁の総合計画、四全総の推進というようなことなどがありまして、横の連絡会議をもう過去八回ほど開いておるわけですが、将来に向けて一大臣でできるようになれば大変結構ですが、現在の段階ではまだそれぞれの特徴もあり、特殊性もあり、いましばらく時間をかしていただいて、将来は実行に移していく、その間は三省庁の連絡会議を有効に実行に移して、この臨調の期待にこたえたい、これが現況であります。
#131
○日笠委員 事ほどさようで、行政改革もだんだんトーンダウンをしているような気もするわけですね。八ブロック制でも六十年度末で、地方の機関でございますね、八ブロック制にするということも、三つは残そうとか、今までの答申後の状況変化にかんがみて当面の間は八ブロックもやらないという、電波監理局だとか三つございますけれども、だんだんトーンダウンしているような気がいたしますね。ですから、中曽根総理の「行革の中曽根」というのがだんだん色あせていくような気がいたします。特に一大臣にしなさいと言われた七月から組閣まで、ほんのわずかな期間で即できるわけでございますね。こういうふうなことも含めて、さらに行革も進めるべきところは一生懸命進めなければいかぬわけでございますから、鋭意御努力をいただきたい、かように思います。
 時間がなくなってまいりましたので、ちょっと最後に。
 これは御承知のとおりでございますが、いわゆる貿易摩擦、非関税障壁と言われておりますものの中の、特にEC、またアメリカからも言われておりますけれども、お酒の税金、酒税の件でございますが、日本の場合、酒税というのは非常に複雑でございます。そこでECの方から言われておりますのは、アルコール含有率に基づく単一税率方式をとってもらいたい。日本の場合は例えば低アルコールのビールの場合なんかでも四八・九%という高税率がかかっておりますが、向こうの国はスコッチとか何かの場合、非常に度数の高いウィスキー、ブランデーでございますね、それが日本に来ると酒税が非常に高いということで商売にならない、競争できない、こういうことでございまして、アルコール含有率に基づく単一税率方式をとってもらいたいという要請が矢のように来ていると思うのですね。この点、酒税そのものは、税調でも、酒と酒の間の格差、また一級とか特級という紋別の格差、こういうものを指摘されておるわけでもございますから、貿易摩擦、いわゆる非関税障壁の一つになっていると考えられます酒税そのものの改正といいましょうか、こういうことは国税庁はどう考えておられますか。
#132
○日高説明員 EC諸国から、特にウイスキー類に対する酒税の問題を中心にいたしまして、種々の批判があるということは十分承知いたしております。
 ただ、例えば今申し上げたウイスキーに対する酒税を、アルコール含有量に応じて一律の税負担を求めたらどうかという御指摘は、確かにECからも来てはおりますけれども、その問題につきましては、先生御承知のように、現在、例えばウイスキーに対する酒税が特級、一級、二級という形で区分して、いわば品質に応じて、いいもの、高いものについては高い負担、安いものについてはそれほど高くない負担という形で、いわば格差をつけて課税している。したがいまして、一律にアルコール量に応じて課税するという仕組みはなかなか私どもとしてはとりがたいというふうに考えております。
 なお、ECから、現在の酒税はいわば内外差別であるという批判も来てはおりますけれども、現在のこの酒税の仕組みというものは、国産、輸入酒共通して同じ土俵で課税されるということでございまして、内外無差別に適用されているということもあわせて申し上げておきたいと思います。
#133
○江崎国務大臣 私は国際経済摩擦の特命相でもありますからね。――今の答弁で尽きておりますが、要するにあれは従価税なのですよね。価格によってまた税金をかける。ブランデーにしてもスコッチウイスキーにしても非常に高くなってしまう、これは非常にわかりにくい、何とかしたいと思って私も一生懸命取り組んでまいりましたが、酒税の根本に触れることにもなりますし、それからまた、これも情けない話だと思うのですが、ブランデーにしろスコッチウイスキーにしろ、余り安くなるとかえって売れないというわけで、それでECなども、一方では強硬な抗議を申し込みながら、フランスとイギリスが結託してソールエージェントを持っておるのですよ、そして値段を崩さないというようなことなどもありまして、これは我々論議の場では遠慮なくそのことを指摘したり、もっと安くなるべきだということを言っておるわけですが。また、日本のエージェント自身の中間マージンも新聞などでごらんのとおりちょっと高過ぎる。ですから、それらについては不当なものは不当なものとして大蔵省が厳重に取り締まっていく。これはもう絶対必要な条件だと思っております。
#134
○日笠委員 最後に、青少年対策本部長は長官でございますので、ひとつお願いを申し上げたいと思うのです。
 六十年版の青少年白書、いじめのことがちょっと出ていますね。今学校で大変話題になっておりますいじめの問題、ちょっと出ております。そこで、今、法務省は人権侵害だというようなことで勧告をするとかいろいろな窓口をつくる。警察庁は警察庁で少年課の方がまたそういう窓口をつくる。文部省は当然担当省庁として精力的にやる。各省庁がばらばらでこのいじめ問題について取り組んでおります。
 そこで、非行防止対策推進連絡会議ができまして、昨年の十一月でございましたか通達を出されておりますが、この通達の趣旨がまだ各県市町村に行き届いてないのではないかということ。それから青少年問題審議会がございますが、ここの審議会で、これは長官の諮問機関、八条機関でございますから、できれば一度いじめ問題について幅広く御意見をいただいて、ちょっと遅きに失した感もありますけれども、諮問をしていただける御決意があるかどうか。これを最後にお聞きしたいと思います。
#135
○江崎国務大臣 この非行問題は、これはなおざりにできぬ問題だと責任者としてとらえております。そこで、昭和五十七年に青少年問題審議会の答申が出されたことは御指摘のとおりです。
 そこで特に私どもも大きな関心を持っておるところでありますが、学校教育の現場で起こっておるということから、臨教審及び文部省でこの問題に積極的に取り組んでもらう、総務庁もその動向を十分踏まえながら対応をして、特に各省庁にまたがる問題でもありますので、十分今後の青少年行政の総合調整を図ってまいりたい、こういう決意で、今後に期して大いに責任を果たしていくつもりであります。
#136
○日笠委員 ちょっと答弁漏れですね。長官、青少年問題審議会に諮問をしていただけるかどうかということ、これは最後が答弁漏れでございますから。それで終わります。
#137
○江崎国務大臣 これは今もちょっと申し上げましたが、臨教審、文部省で積極的に取り組んでおりますね。そこで、この問題を十分注視すると同時に、各省庁間における調整は総務庁として積極的に取り組んでいく、こういうことでございます。一応まず臨教審、そしてそれを受けて文部省の動向を責任を持って見守っていく、こういうわけです。
#138
○日笠委員 時間が来たから終わります。
#139
○志賀委員長 井上一成君。
#140
○井上(一)委員 最初に、恩給種別の最低保障額、さらにその対象人員の割合について、とりわけ最低保障額は幾らでどれくらいの対象者がいらっしゃるか、まずそれを聞いておきたいと思います。
#141
○佐々木政府委員 最低保障の制度が設けられております恩給は、普通恩給とそれから扶助料関係の二つでございます。
 それぞれについて申し上げますと、今回、御承知のように最低保障額のそれぞれ五・三%アップをいたしますことを提案を申し上げているわけでありまして、その改善後の額によって申し上げますと、普通恩給の場合の対象人員、トータルで九十三万一千人でございます。
 その金額について申し上げますと、長期在職者で六十五歳以上の方は八十七万九千三百円、その対象人員が二万三千人。それから六十五歳未満の方が六十五万九千五百円、この対象人員が一千人。合わせまして長期在職者関係は二万四千人であります。
 それから短期在職者について見ました場合、九年以上の方につきましては六十五万九千五百円、これが八万一千人。それから六年から九年未満の方につきましては五十二万七千六百円、三十三万四千人。それから六年未満の方につきましては四十三万九千七百円、これが四十九万二千人。合わせまして九十万七千人の方がそのトータルになります。
 これは、普通恩給全体の受給者の中で、八五・九%を占めるものに一応なっております。
 それから扶助料の関係でありますけれども、トータルで八十八万七千人の方が対象人員になっておるわけであります。
 普通扶助料については、長期在職の方の大体奥さんでありますけれども、長期在職者の関係の普通扶助料は六十万九千六百円、これが五万人。
 それから短期在職の方の九年以上の方につきましては四十五万七千二百円、四万八千人。それから六年から九年未満の方、これが三十六万五千八百円、十三万四千人。それから六年未満の方につきましては三十万四千八百円、これが十九万二千人。トータルいたしまして三十七万五千人。
 それから、公務扶助料の関係の方、これは戦傷病死の方々の遺族の方でありますけれども、百五十一万一千円、対象人員四十五万人。
 それからなお、特例扶助料の方は百十九万六千円、これが一万三千人。
 トータルでは、この扶助料関係の方では最低保障の対象になっておる方が九二・七%といった数字になっております。
#142
○井上(一)委員 毎年の恩給法の改正について、何を一つの指標に置かれているのか、その点についても聞いておきたいと思います。
#143
○佐々木政府委員 一つには、先生の御質問の御趣旨が何を指標としてベースアップをしているのかということになりますと、これは御承知のように他の年金は一応物価をめどにしておるわけであります。恩給の場合には公務員給与の改善率をもって毎年の改善をいたしておるわけであります。なお、そのほかに、他の公的年金とのバランスといったことも私どもの考慮の対象になっておるわけであります。
#144
○井上(一)委員 公務員給与のベースアップということになると、人勧が完全実施されていないということについてはこれをどうとらえていくのか。さらに、恩給というものが最低の生活保障であるという認識に立つならば、完全実施でない、それでいいのか。いいとは言い切れませんけれども、現状の改定で満足なのか。
 私は、財政的な問題だとか、あるいはいろいろな他の要因を恩給の中に持ち込むことはよろしくない、少なくとも恩給で最低の生活が保障できるように、そしてそのことは一つの新たな――物価指数だとか給与べースアップだとか、いろいろな物差しがあるでしょう。しかし、私は、恩給については新たな物差しを考慮していくべき時期に来たのではないだろうか、こういうふうにも私見として持っているわけで、そういう点であえて指標を聞いたわけですが、給与ベースアップということならば、なぜ人勧を完全実施しないのですか。そして、なぜ四月からやらないのですか。
#145
○江崎国務大臣 これは御存じのとおり、財政事情から、過去完全実施ができなかったことは非常に遺憾に思っております。しかし、これは予算委員会等でも答弁してまいりましたように、人事院勧告があれば、私ども、特に給与に関係のある責任庁としては、ぜひ完全実施ができるように努力をしたい。これはもう昨年の官房長官談話にもありますように、給与というものは勤労の基本的条件をなすものですからおろそかにしてはならない、ぜひ完全実施の方向で進めてまいりたいというつもりをいたしております。
#146
○井上(一)委員 私は、政治というのは時には妥協も必要であるということはわかりますよ。しかし、恩給受給者の生活の実態ということをどれだけ真剣にとらえているのか、そしてどれだけ重くその位置づけをしているのか、あるいは恩給というものの性格、そういうことを考えたら、今の財政がどうのこうの、あるいは他の要因で恩給受給者に迷惑をかけるようなことがあってはいけない。もちろん公務員も人勧制度を尊重する上において完全実施を少しでも曲げるようなことはいけないわけでありますが、とりわけ恩給受給者についての配慮というものがそこに何らなされていない、そういうことについては弁解の余地がない、僕はそう思っているのです。そういうことについては強く警鐘を鳴らしておきたい、こう思います。
 公的老齢年金に対する課税特別措置は六十二年十二月三十一日まで延長されたわけです。この措置を恒久的なものとして制度化すべきであるというこれまた私の考えでありますけれども、この点についてはどうなのか。
 また、昭和四十九年以来控除額は七十八万円に据え置かれているわけです。昭和四十九年にその控除額が決められてそれがずっと据え置かれているということ、物価上昇率に合わせてこれは当然何らかの方法で価値を変化させるべきであるし、引き上げるべきである、改定すべきであると私は思うのです。
 このことについて、これは大蔵省に少し意見を聞いておきたいと思います。
#147
○薄井説明員 お答え申し上げます。
 恩給を含めいわゆる公的年金につきましては、老齢者年金特別控除という今御指摘の特別控除制度がございまして、七十八万円を控除させていただき、控除後の所得につきましてさらに給与とみなして給与所得控除が適用になる、このように配慮がされているわけでございまして、現在一番高い場合では二百五十一万円まで税金がかからない、このような制度になっているわけでございます。
 ただ、御指摘のように、この制度は期限があるではないか、あるいはこれまで大分長い間手をつけてないではないかということでございます。この点につきましては、高齢者社会が到来すると言われておりますが、各種年金についてどう課税していくか、どう対処していくかということは私ども非常に大きな問題だと受けとめておりまして、税制調査会におきまして、現在、学者、委員を中心にいたしまして年金制度全体について議論を始めております。いずれこの中で答えが出てくる、辛い話も中には含まれておりますが、今後を見据えながらあるべき年金課税制度を考えていきたい、このように考えております。
#148
○井上(一)委員 一日も早く、私の提起している問題を理解していただいて、そういう対処をしていただきたい、特にこれは強く要望しておきたいと思います。
 元日赤の従軍看護婦に対する慰労給付金は、昭和五十四年度に国庫補助金を財源として日本赤十字社を通して支給されているわけなんです。昭和六十年度において初めて増額があったわけであります。元日赤従軍看護婦に対する慰労給付金制度は決して十分なものではない。この問題については何回か私も指摘をしてきたわけでありますが、六十年度、たしか平均一二・三%の増額がなされた。しかし、今申し上げたように決してすべてがそれで十分だとは考えておりませんし、まだまだ問題があるわけであります。
 例えば、もちろん慰労給付金の増額を検討しなければならないし、除外されているわずかの不足年月に対する何らかの補償を検討すべきである。さらに朝鮮、台湾に派遣された者も該当者として補償すべきである。これらの点について今後十分な検討を加えるべきだと思うわけでありますが、この点についてはいかがなものでございましょうか。
#149
○橋本(哲)政府委員 お答え申し上げます。
 まず、先生御指摘の最初の増額の件でございますけれども、旧日赤が五十四年に実施されまして、さらに、旧陸海軍の看護婦につきましては五十六年度から実施されたわけでございますけれども、その間に非常に物価の上昇ということもありまして、実質価値を維持するという点から、昭和六十年度の予算のときにおきまして、過去五年間の消費者物価指数を基準にいたしまして、先生御質問にあったとおり一二・三%の増額を図ったところでございます。
 なお、今後の措置についてどうするかという御質問でございますが、六十年度の予算の増額の経緯を踏まえて慎重に対処してまいりたいと考えているところでございます。
 さらに朝鮮、台湾についての御質問でございますが、これにつきましては、慰労給付金は戦地、事変地において旧陸海軍の戦時衛生勤務に服したその労苦に報いるということで支給しているところでございますが、恩給法等に基づきましても、御指摘の朝鮮あるいはまた台湾等につきましては戦地、事変地として扱われてないところから、慰労金につきましても受給の資格年数に含めるということは考えていないところでございます。
 以上でございます。
#150
○井上(一)委員 増額については今後の検討課題。台湾、朝鮮への従軍については検討をさらに加えるべきだ、私はこれは強くお願いをしておきます。
 江崎長官、あすから連休なんですよね。子供たちが春休みを利用してお母さんの国元へ帰りたい。あるいは、夏休みを含めて学校の休みと言えば、お母さんと一緒に、お父さんと一緒に、そしておばあちゃんに会いたい、おじいちゃんに会いたい。これは非常に教育上好ましいことであると同時に、家族的なほほえましい、今日的にぜひ必要である、そういう経験を持つべきだ、私はこう思うのですよ。長官、いかがでしょう。
#151
○江崎国務大臣 私、それは大変賛成ですね。いい御提案だと思います。そしてまた、それぞれの宗教に応じて祖先の冥福を祈るとか追悼をするとか、そういうようなこともあっていいと思いますね。
#152
○井上(一)委員 学校で教育上も、非行だとかいじめだとか、現象面では非常に憂うべき事柄が多い今日ですが、車で一緒に、あるいは新幹線であっても、いろんな交通手段で、それこそ朝から十時間電車に乗っても汽車に乗っても、そういうのは何となくうれしい、楽しい、ほほえましい、人間らしい暮らしではないだろうか、僕はこう思うのです。学校の中で、あしたからお休みだ、私はお母さんとおばあちゃんに会いに行くねん、そんな話題を教室の中で先生を交えて和やかに語り合っている雰囲気、想像しただけでも楽しいじゃないですか。そういう雰囲気をつくることがやはり政治あるいは教育、そういうふうにお考えになりませんか。
#153
○江崎国務大臣 私、さっきからの御提案なり御意見というものは全く賛成でございます。そういう雰囲気をぜひつくっていきたいですね。
#154
○井上(一)委員 ところが、里帰りもできない、おばあちゃんにも会えない、お母さんの生まれた場所へも行けない、何らかのいろいろな事情があるにしても、そういう子供がおったら――そういう家庭が現実にあるわけなんですね、いろいろな問題で。どうでしょうか、そういう帰れない子供たちにどんな思いを長官は持たれますか。
#155
○江崎国務大臣 いろいろなケースがありましょうが、おっしゃる意味は何となくわかるような気がいたします。本当にそういう人たちがありとすれば、これほど不幸せなことはない。心痛む問題です。
#156
○井上(一)委員 今、長官は、これほど不幸せなことはないと言われたが、だれが不幸せだと受けとめられますか。
#157
○江崎国務大臣 先ほどからおっしゃっておるように、親も不幸せなら子供だって不幸せでしょうね。自分の郷里に戻りたい、みんなが戻っていくときに戻れないような環境にあるということは、どんなケースにしろ非常に痛ましいことだと思います。
#158
○井上(一)委員 帰れない子供、帰りたいお母さんが不幸せ、あるいは帰ってほしいと国で待っているお母さん、帰ってくることを拒まなければいけないそのお母さんも不幸せなんですよ。そう思いませんか。
#159
○江崎国務大臣 全く同感です。
#160
○井上(一)委員 そのお母さんを不幸せにしている、帰ることを拒否しなければいけない社会の仕組みに、あなたはどう受けとめ、どう対応しようとなさっているのでしょうか。
#161
○江崎国務大臣 そういう事態は、一刻も早くやはり政治が解決しなければならない問題であると認識します。
#162
○井上(一)委員 念を押して大変恐縮ですが、同和対策審議会が答申を出された、その答申についてもうくどいほど多くの人が質問をしていますが、いわゆる同対審の答申を最大隈尊重するという決意はお変わりではないだろうと思うし、まず私は、そういう認識を持っていらっしゃるという受けとめ方でこれから質問に入るわけであります。
 同対審答申を最大限尊重する、している、してきた、こういうことを大臣、ここでしっかりと約束をしてもらえますか。そういう御決意を持ってきたんだということもあわせて聞かしてください。
#163
○江崎国務大臣 従来、同和問題には私は深い関心を持ちておるつもりですし、仰せのように私自身も、今後もその答申の線に沿って、一刻も早く実現するように改善に努力を重ねてまいりたいと思います。
#164
○井上(一)委員 社会の流れをマスコミはそのまま多くの人に情報として報道するわけなんですね。このことは私はよいことだと思いますし、そういう意味でとりわけ同対審の答申を尊重した情報は私は大切にしていきたいと思っているのです。いかがですか。
#165
○江崎国務大臣 全く同感です。
#166
○井上(一)委員 今、神さんが長官に一つだけあなたの願い事を聞いてあげる、こういうふうに言われたら、あなたは神さんに何を願いますか。
#167
○江崎国務大臣 ちょっとこれは答えにくいですが、今御質問の同和問題で言うならば、全く同じ日本人でありながら、今前提でおっしゃったように、迎える親も、また連れていく親も子供も何だか郷里に行きにくいというようなそんな環境がいまだにあるということは、この民主政治四十年、封建時代ならいざ知らず、もうその封建時代もはるか何百年前の話ですね。これは本当に悲しいことですね。日本の民主政治いまだし、本当に残念に思います。
#168
○井上(一)委員 私はあなたに残念なことを聞いているのではありません。今のお答えの中で、非常に私と認識を異にしている部分はたくさんある。すべてであるかもわからない。しかし、今、私は長官に私と認識を同じくしてくれと言うのではなく、お互いにこういう議論を通して認識を一にできれば幸いだと思っているのです。――あなたは何を願いますか。子供たちが七夕さんに願い事を書くようなものですよ。国会のこの委員会で、江崎長官、あなたがもし今願うとしたら何を願うのでしょうか。残念なことを聞いているのじゃないのです。何を願いますか。
#169
○江崎国務大臣 非常に難しい御質問でございますが、まず国家の平和と繁栄をこいねがうことが私の当面の願いでございます。
#170
○井上(一)委員 私は、いろいろ人それぞれの思いがあり、考えがあって当然だと思うのですよ。国家の平和、国民の安定、平和も暮らしの安定も根底から覆しているそのものを取り除きたい、あらゆる差別をこの世からなくしたいと私は神にお願いをしたい。
 さっき封建時代から云々、同じ日本人だからどうのこうの、ファミリー意識の、あるいはいろいろなお考えがあっていい、日本人だから差別しないのだとか言われたが、すべての人種、国籍、思想、信条を越えて万民平等であるというのを中曽根総理が施政方針で言ったじゃないですか。予算委員会で私の総括の質問に、総理はきっちりと、万民平等の精神を強く決意して施政方針に申し上げたのだ、こういうことを言ってお答えになられたのですよ。私は少なくとも江崎長官からそれに近いお答えがいただけると思っていた。
 私は、平和であり、そして国民の暮らしが十分に豊かに保障されていく、そういうことが大事だと思います。しかし、それを何らかの形で邪魔をしているというのが差別でしょう。そういうことについて、まあ何を願うかはそれは個人の自由。しかし、私は、少なくともあなたが総務庁長官として国務に、内閣の一員として政治家として懸命な努力をなさっていらっしゃるから、あえてこれを申し上げるわけなんです。
 大阪の読売新聞に、一月から三月まで何回かに分けて、差別をとらえたキャンペーンが載せられています。小さな「窓」という欄ですが、東京にはないわけなんです。
 私は少し中身を要約して申し上げましょう。一月八日に「涙のあとをきれいに拭いて」という小見出しで、愛媛に住む二十六歳の女性です。彼が同和地区出身だったため、私の両親、そして身内からかなりのことを言われたのです。いわゆる二年間の交際が実って結婚したいと言ったのだが、身内からの反対だ。そのとき同和地区出身の彼は、「お前をくれということでは何度でも頭を下げる。けど、ぼくが同和だということでは頭をよう下げん。すまん、苦労かけるなあ」、こういう彼の言葉。「世の中の一人一人がちょっとだけ心の方向を変えれば差別もなくなって行くと思うのです。差別をしているみなさん、自分の心が変わらないからといって、汚れのない子供たちにまで、そんな醜い心を伝えないで下さい。」こういう一つの声なんですね。この一月八日から、さらに二月十八日に、「ぶつかるたびにやさしくなりたい」今度はこういう見出しで、さっき言ったように、A子さんを結婚の相手に欲しいということでは何度でも両親に頭を下げる。しかし同和地区出身だからといって頭はよう下げぬ。こういうことに対して、人間の醜さ、嫌らしさ、悲しさを目の当たりに見せられ、人が信じられない、怖くさえなっていった。しかし、全国のたくさんの人からこの人に激励の手紙が届いているわけなんです。そして、四月に新しい人生を二人でスタートしてほしい。さらに「涙のあとはきれいに輝いて」ということで、続いてこれが、「本当にこの世の中からあらゆる差別がなくなり、すべての人が明るく陽気に暮らせる日が来てほしいですね。私もその日を夢見て、彼と笑顔でコツコツ歩いてゆきます。」そして、わずかな金額だけれどもと言って三千円の金を、いろいろと今の社会の中で苦しんでいらっしゃる方に使ってください、役立ててくださいと言う、こういう人がいらっしゃるわけなんです。
 このことだけで感想を述べてくださいなんというのはきついかもわからぬけれども、今読ましていただいたこの報道に対して、江崎長官はどう受けとめられますか、御感想を聞かせてください。
#171
○江崎国務大臣 同じ日本の中に、同じ日本人でありながらまだそんな意識があって、本当に悲しんでおる人があるということは、私は政治家として責任を感ずるばかりか、そのエピソードそのものにも大変な怒りを覚えます。
 私も同和関係の人とは随分親しくしておりますし、それからまた葬儀委員長をやった経験もあります。私の心の中には全くそういうものがないのだが、なぜ一体そういう感情が一部の社会ではまだびまんしておるのか、これは本当に残念な、悲しいことだと思います。
#172
○井上(一)委員 今のお答えに対しては後でまた、一部の社会では云々とかあるいは残念な、悲しいことだというのは。――私は別に長官に、長官の認識が非常に浅いから、と言うとえらい失礼かもわかりませんが、不十分だから、ひとつぜひ「窓」のこのような情報は一読に値するのではないか。私も毎日毎日読んでいるわけじゃありませんが、しかし、私は非常に大衆の暮らしというものがじかに伝わるような気がします。
 さらにもう一つ。今度は三月十一日、「私、悪いことしたのですか」ということです。「涙のあとはきれいに輝いているみたいです」という、さっきの同和地区の彼との結婚を親から反対をされた、四月に家を出て彼との生活をスタートさせたい愛媛のA子さん。しかし、今度は同じ愛媛の陽子さんという方から、「私、悪いことしたのですか」という、同じような状況の、いわば部落出身者との結婚に反対をされて大きな壁にぶち当たっている、しかし強く生きていこうという、そういう人のニュースです。
 「私の彼もA子さんと同じように同和地区の出身でした。私の両親、兄は大反対、彼の両親が何度も二人を結婚させてくれと、私の親に頭を下げたのですが、両親はまったくわかってくれようとはしませんでした。」「この男と結婚するなら、お前は一生他人だ。何があろうと親でもなければ子でもない」、子供ができたって帰ってこられないんですよね、わかります。さっきの話ですよ。「私の親族は誰一人出ない結婚式をあげたのです。」この人は、親も親類も兄弟もだれも出てくれない結婚式をみずから挙げて、そして彼との結婚に踏み切ったわけなんです。この子が不幸せであるのか。私は出なかった人、差別をしている人がかわいそうだと思う。子供を思う親の気持ちというのは変わりはないのですよ。同和地区の人と結婚するから出席ができない。世間の目が怖いからできない。その親御さんや親族は、私から見れば大変不幸せな気の毒な方だと思います。帰れない娘さん、あるいはそのお孫さんが不幸せだと言うが、私は逆ではないかと。その子供もまたそうでしょうけれども、それよりもまだ、帰ってほしいけれども帰ってこさせることのできない親族、親御さんというのはより不幸せである。逆に言えば、差別される者、差別をした者と二つがあれば、差別される者がかわいそうだという認識が大半なんですが、この結婚の例をとればそうではない。差別をされた者は勇気を持って結婚をした。差別する側が不幸せじゃないか、かわいそうじゃないかという物の見方もあるわけです。そのことは前段の話として、私は素直にこの一つの事実をもって、あなたに、長官に御感想を聞きたいわけです。
 今申し上げたように、だれひとり出席をしなかった結婚式に、この若い青年は二人でその意思をかたく結び交わしたわけですね。「両親にもしものことがあっても私、会いにも行けないのです。」さっきの話ですよ。両親に不幸なことがあるか喜びのことがあるかは別として、年いった両親が死んでも私はその葬式にだって行くことができない。あの子は部落の子と結婚したのだからという世間のその指す指が恐ろしい、その目が恐ろしいというのでしょう、帰れないというのは。そしてこの人は、この「窓」という編集をしているその人たちに問いかけているわけです。
 さっきの表題じゃありませんが、「窓さん、私、何か悪いことしたのですか」、私はきょうは長官に質問するのです、その子に成りかわって。愛媛の陽子さんに成りかわって。その子は「窓」に問いかけているので、私は国会の中で、差別に打ちかっていく、差別を許さない二人の青年の心をとらえて、長官に質問をします。この二人は何か悪いことをしたのですか。
#173
○江崎国務大臣 御質問の趣旨は私、わかるつもりです。私が親なら許してやりますね。それは本当に寂しい残念な事例だ。そんなことが行われていいはずのものではありません。全く残念に思います。
#174
○井上(一)委員 「好きな人と結婚したことは悪いことなのですか!それとも彼が同和だから悪いのですか!どうして私も彼も私の両親も兄もこんなつらい思いをしなければならないのですか!」と問いかけているわけなんです。今、あなたなら許す、残念なことです。――悪いことではないんでしょう。「好きな人と結婚したことは悪いことなのですか」。悪くないでしょう、答えてくださいよ。「彼が同和だから悪いのですか」と言っているんです。答えてください。
#175
○江崎国務大臣 悪いなどとは私、毛頭思いませんし、私が親だったら許します。これは率直な私の見解です。
#176
○井上(一)委員 同和地区だから悪くはないですね。いやいや、うなずかずに。これは一問一答で大変恐縮です。長官に何回も立たせて悪いのですが、お答えをいただければありがたいです。
#177
○江崎国務大臣 毛頭悪いとは思いません。
#178
○井上(一)委員 そして、先ほどから何回も申し上げるように、私も私の両親も私の兄弟もこんなつらい思いをしなければならないのでしょうか。お父さんやお母さんや兄弟や親族の方、差別をしたくないし許したい。あなたも今許しますと言った。帰ってきてほしい、しかしそこに障害があるということでしょう。帰れない、世間の目がこわくて。「私、八年間、両親に会っていません。そしてこれからもずうっと会えないのです。」と、この人は言っているんですよ。自分は主人と子供と幸せに暮らしている。いつか必ずわかってくれるであろう。しかし私の子供を一目見てやってほしい。その陽子さんにそっくりだ。しかし、先ほど言う社会の差別がいかに厳しいか。短い何行かの文章の中に、差別の厳しさ、差別の恐ろしさ――平和も豊かな暮らしも、こういうことがある限り何が保障できますか。何が論じられますか。このことを抜きにして社会を見詰めることができるんですか。
 これはできれば、ぜひこの陽子さんという差別に打ちかって生きているお母さんに、大臣、あなたの声を私は伝えてあげてほしい。今ここで私に答えたその本当の気持ちを、素直にこの陽子さんに伝えて、差別に打ちかってほしい、その差別をなくするために、担当大臣というか内閣の一員として全力を出し切るという約束をしてほしい、そう思うのです。いかがですか。
#179
○江崎国務大臣 今の御提案に賛成です。もし住所などがわかれば、私が直筆で手紙で激励しましょう。
#180
○井上(一)委員 これは大阪読売のその「窓」を編集していらっしゃる方が住所も知っていると思います。愛媛ということでこれは報道されておって、最初がA子さんで、次は陽子という実名を挙げておられる。
 だから、日本全国たくさんなところで、このように差別に苦しみ悩む、あるいはその差別と強い闘いを進めている人たちに、やはり私は最大の敬意を、そして、私たちも同じようにその人たちとともに闘うという連帯の意思を私は表明しておきたい。江崎長官が住所がわかれば直筆でとおっしゃったので、私もまずこの委員会を通して努力をいたします。そして、私も長官に負けない私の決意をぜひ伝えたい、こういうことを冒頭に申し上げたわけです。
 あなたがさっき封建時代の、いや同じ日本人でどうの、いろいろな議論があったわけでありますが、予算委員会でもいろいろとお答えになっていらっしゃるわけなんです。ごぢゃごぢゃとまぜてしまって、それこそ言うならば全部一つにぽんと持ってくれば、あるいは何が何だかもうわからぬようにすれば、表面的には、現象的にはわからぬじゃないか、そういうことがいいのではないかという誤った認識を持たれる方がいらっしゃるわけなんです。だから長官に、長官はまさかそんなお考えは、今まではあったとしても、きょう私のこの質問を通してそういう考えを持ってもらいたくない。その人たちにだって国があるわけなんです。生まれ故郷があるわけなんです。胸を張ってその生まれ故郷がみんなに言えるように、そして胸を張って生まれ故郷に、ふるさとに帰れるように、子供を連れておばあちゃんやおじいちゃんに会えるように、やはりそういうことが大事であって、そこに差別の意識が、いわゆる心の問題だとかあるいは意識の問題だと言われるけれども、そこに差別という意識を持たなければ何も要らないのですよ。委員会でこんな話をしなくてもいいのですよ。そういうことを一つ申し上げて、このことについては、差別の挑象の一つの事例を私は申し上げたわけです。
 さらにもう一つ、長官、これは私から申し上げておきましょう。この陽子さんやA子さんのように普通の、被差別部落の人とそうでない人とが結婚することにおいてだんだんわからぬようになるじゃないか、いわゆる通婚というのでしょうか、もうそんなのはわからぬようになって、しまいにどうなっていくのかわからぬ、部落もそういうことは全然なくなってしまうのと違うか、こういう認識もまだあるわけなんです。一見ああ、そうかいなという、そういう認識に立たれる方もたくさんいらっしゃるわけです。これはたくさんいらっしゃる。
 しかし、統計的にとかそういうことを一々私は承知しませんけれども、部落の人と部落でない人との結婚はふえつつあります。それだけ意識の変革がなされたという前進的な見方と、その反面、そこに起こる差別のトラブルですね。結婚はしたのだけれども、それは結婚したことはいいけれども、結婚するあるいはした後も、そこに差別の実態、事象が蔓延している。部落同士、部落の人と部落の人と結婚した、そういうことでないケースの場合は、今申し上げたこともそうなんですけれども、だから逆に言うと、そういう結婚がふえればふえるほど差別の事象、事例がふえているということなんですよ。私の申し上げていることがわかりますか。このこともその一つですね、同和地区と同和地区でない人が結婚した。だから、差別をなくするためには必ずしも喜べないことなんですね。新たな差別が通婚によって、部落と部落でない人との結婚によって新たな差別がそこに生まれている、こういう認識を持っていただかなければいけない、私はこう思うのです。
#181
○江崎国務大臣 予算委員会で私が答弁した、いわゆる東京などでは比較的それが言われないということをきっとお取り上げになったろうと思いますが、言葉が足りなかったかもしれません。しかし、私の言った意味は、例えば士族、平民、華族、前はこういった区別がありましたね。今それにこだわりますかな。士族だから嫁さんにもらうのにいいな、それとはもう全く違った形で、そういう過去の封建時代のいわゆる士族、平民といいますか、そういったものが全く解消されて、今華族から偉い嫁さんが来たからといって大喜びしたり、人に吹聴してもそれがそう自慢にならぬ。それぐらいになっておるときに、この同和問題というものがいまだに根強く残っておるということは、本当に残念だと思う。また悲しむべきことです。これは何としても解決しなければなりませんね。そういうことを私はあのときには申し上げたつもりであって、何も部落を出て東京に全部出てこい、そんなことを言っているわけじゃない。これはやはり、また「窓」にあるような悲しい運命の人もありますが、いい結婚に恵まれて幸せになった人が多いことを、私は本当に祈りたいですね。
 ですから、そういう悲しい面をなくするような努力、これは政治家として最大限、あなたと一緒になって今後とも熱情を傾けてまいりたいと思います。
#182
○井上(一)委員 根本的にあなたの認識が間違っているのですよ。本当はここで、それではあなたが今言ったような見解で政府が統一されているのかどうかということを、私は逆にきっちりと整理をしてもらいたい、あなたが今そういう答えをされたから。今までは江崎長官、認識不足でもいいですよ、それはしようがないよと。しかし、具体的にこういう事例を出して私は質問しているのだから、少なくともきょうからは、やはり差別をなくするためにどう取り組んでいくべきかという新しい決意は持ってほしいということで、私は別にあなたが十分な認識を持っているなんて思っておりませんよ、そういう認識を持って質問していませんよ。だから、今のような認識が政府の統一された見解だとするなら、私はそれをきっちりしてもらってからこの質問を続けたいと思います。今のようなあなたの答弁では、私は満足できない。
 少なくとも、同和問題のこういう議論をしている中だから、どれだけ数多く差別事件が発生しているか。いろいろと手だてをしたけれども、同対審の答申を尊重して、最大限の法制化もしいろいろなことをやったけれども、なおかつ差別はなくならぬじゃないか。何の法律も要らないのですよ。何らの法律のないことを私は望みたい。何の法律もなくていいのだと、私はそう言ってますよ。何でこんな法律が必要になるのだ。今の社会に差別事件が起こり続けるから、何とかこれをなくするために何らかの手だてが必要なんでしょう。どうなんですか。
 あなたの今の答弁では私は不満足。だから、もっと真剣にやはり取り組んでもらえる、あるいはもっともっと差別の事象を知っていらっしゃると私は思っていたが。これだけ差別がふえているのに、いや、もうこのまま時がたてば、日にちが来れば差別が自然に解消するのだというような認識に受けとめられるし、いや、別に部落を、地域を捨ててどうのこうの。東京に。当然ですよ、どこで住もうと、すべて民主主義の中でだれが東京で住めという権限があるのですか。しかし言葉が足りませんでしたと言うけれども、認識不足ですというのが私は正しいと思っているのですよ。どれだけ言葉を追加したって、あなたのあの答弁では認識不足だ。だから、例えば今後あなたの意識を変えてほしいために、具体的なこういう問題を私は提起したわけなんです。
 地対法が切れるから、いや基本法がどうだとか、まだそんなところにいく問題じゃありませんよ。これだけの差別があるということ。
 具体的には差別は減ったですか。もっと極端なことを言えば、同対審の答申を受けて特別措置法が制定され、そして、そのことにおいて差別をなくするための取り組みをやってきた。そして地対法に変わった。もっと極端なことを言えば、端的に言えば、差別がなくなると思ってそういうことをやったんでしょう。それで、差別がふえこそすれ、なくなっておらない。そして、今のお答えは私はどうも気に入りません。気に入りませんというよりも、あなたの認識は誤っています。だから認識不足で、これから新しい取り組みをするためにお互いに議論をしていこうというのがこの国会の場だと私は思っている。私はあなたに、何の法律もなくてもいいんだと、そんな法律が要ることを嘆いているわけなんですよ。なぜ要るのかというのです。差別があるからでしょう。差別がなけりゃそんな法律が要りますか。
 僕はここで、私なりの差別に対する大変強い怒りを込めて質問をしました。委員長、私は今の答弁には不満足ですし、誤った認識を少なくとも私の質問の中で答弁をなさったということであれば、その認識を変えるために、私もあとの質問については留保いたします。
 少なくとも、中曽根内閣の統一した見解を書面でもって出してください。そして、今私が話の中で指摘をしたように、差別がふえているというその事実をお認めになりますか。あるいは減ったんだというのなら減ったという数字を具体的にお示しください。
#183
○江崎国務大臣 私は随分井上議員の質問に同感をしながらお答えしておるつもりでして、認識に欠けるというならばそれは言葉が足りなかったかもしれませんが、私、誤解だと思いますよ。差別があるということは本当に悲しいことだ、何とか幸せになってくれる人が多くなることが望ましいということを私は言ったつもりですよ。ですから、今後といえどもこの問題解決のためには全力を挙げて取り組んでいく、こういう決意ですから、どうぞそのあたりについては御了解を願いたいと思います。
#184
○井上(一)委員 いや、言葉が足りなければ言葉を追加してください。私も、江崎長官には十分理解を求めたいという立場に立って質問しているわけなんです。今までもお持ちであったかもわからぬけれども、私からすればまだまだ不十分だというか、時には誤った認識を持っていらっしゃるのではないかと私は受けとめています。だから、あなたがこの質問を契機に少しでも意識を変えていただけるというなら、私の質問は意義があることだし、この質疑はよかったと思うのです。だから、申し上げておるように、言葉が足りなければ私に理解ができるように言葉を追加してください。そして、限られた時間だし多くを申し上げるということは皆さんにも、議事の運営に何か迷惑をかけるような気も半分はあります。しかし、やはり問題が問題だけにきっちりと一つずつ整理をしていこう。
 それで、差別がふえているという私の指摘に対しても、今お答えがないわけなんですよ。私は、あなたのせいだとかどうだとかこうだとか、まだその原因については申し上げておりませんよ。事実を申し上げて、その事実に対してどう対応していこうかというのが、お互いの議論を通してつくり上げていくものだと私自身は思うのです。だからやはり真摯な議論をして、その積み重ねが差別をなくすることにつながってほしい、こう思っているので、あえて私の質問を、さらには言葉が足りなければ言葉を追加してください。
#185
○江崎国務大臣 私も、この同和問題は相当突っ込んで認識をしておるつもりです。それからまた、私の選挙区にもそういう地域があることを悲しみに思っておるものです。そうしてまた、その啓蒙活動のためにも随分努力した覚えがあります。しかし、今、井上議員の例を挙げての一生懸命な御質問、これは一つの例だとは思わない、もっと数多くの、そういった文章に書けないようなもっと深い悲しみに泣いておる人もあるでしょう、そういったことは十分理解しておるつもりでございます。
#186
○井上(一)委員 先ほど私は、差別の事象、差別事件が年々ふえ続けているという、そのことを指摘しているわけです。当局は、いや、減っていると言うのか。私が指摘している、ふえているというそのことに、そのとおりだとおっしゃるのか。具体的なことを聞いているのですよ。あなたの決意というのはもう何回も言われているし、非常に残念だとか遺憾だとかいうのは。
#187
○江崎国務大臣 私は、過去十七年の対策によって、環境の整備とか職能教育とかいろいろな面の改善は相当成果を上げてきた、これは井上議員も認められると思うのです。しかしソフトの面、これは心の問題ですね。教育の問題にも影響しましょう、それから心なき雇い主が差別待遇をする、これなども大問題だと思います。そういったことについてはやはりもっともっと啓蒙をし、もっともっと教育面でよく徹底をしていく必要がある、この面についてはやはりいまだし、十分でないという考え方は、私は確かに認識しておるつもりであります。
#188
○井上(一)委員 長官、ちょっとそこも違うのですよ。あなたが今お答えになっていることも違うのですよ。だから私は、先ほどから、まあ余り長官の足を引っ張るようなことはしたくないので、内閣の統一した見解を出された方がいかがでございますか、こういうふうに申し上げた。同対審答申を最大限尊重し、かつ、それに基づいて今日まで立法して取り組んでこられたということについては、それは事実である、それには私も敬意を表します。しかし、そういう取り組みをしていただいたのだけれども差別がふえ続けている。差別がなくなればそんな法律はなくてもいいんだと私は言っておるでしょう。
 私はあえて申し上げますが、長官は、同対審答申を尊重すると言い、ハードな面とソフトな面と言われているわけなんです。私は実態的差別と心理的差別、こういう表現を使っているわけなんです。それは同対審答申の中にもある。そして実態的差別の中に、今仕事だとか教育だとか福祉だとか産業も含めてそういうことが入っているわけなんです。ハードというのは、コンクリートで同和改良住宅ができたということをただ単にハードというのですよ。あなたの答弁はそもそも間違っているのですよ。だからよくお聞きなさい。
 私の質問に対してあなたがお答えになられて、今度そのことをまた指摘をしていかなければいけない。日ごろ御懇意に、ごじっこんに願っている私としても、そういうことは本当はしんどい。私の私的な面からとらえると、こういうことを申し上げにくいわけなんです。にくいけれども、あえて言わなければいけないというのは、あなたに意識を変えてもらいたいということです。
 だから、今申し上げたように実態的差別と心理的差別があり、ハードの面、ソフトの面――じゃ聞きますが、ハードの面は何なんですか。ソフトの面は何なんですか。そして、それは同対審答申をどう理解なさっているのですかと私が聞いたら、あなたはどうお答えになりますか。後で困るんじゃないですか。――じゃ聞きましょう。答えてください。
#189
○江崎国務大臣 私、環境面のと言いましたね。それから職能教育の。それから、いろいろな同和対策以来の十七年間の成果というものは確かに上がっておる。しかしソフトの面というのは、これには教育の問題もひっくるめたり、職業差別の問題、採用の問題、先ほどの結婚の問題、そういう心の問題というと、いろいろな面が幅広くひっくるめられると思って、こういう答弁で、一々あれこれと全部並べるわけにいきませんから、心の悩み、本当につらいことであるということ、その心ということに表現をしたわけですが、それはいろいろな面にいろいろな形であらわれてくる。その面が解消されないということは本当に残念だ。あなたがおっしゃるようにふえておるというならば、確かにそういう面の影響というものは大きいと思っております。(本多政府委員「委員長」と呼ぶ)
#190
○井上(一)委員 あえて時間外にして答弁をしたいのですか。答弁したければ答弁しなさいよ。僕は長官に質問しているんだけれども。
#191
○本多政府委員 お答えいたします。
 先ほど先生から、差別事象がふえているかどうか統計的な御質問がございました。数字的なものでございますので、私の方から補足的に答えさせていただきます。
 これは法務省でとらえました人権侵犯事件の受理件数でございますが、この統計で見る限り、五十九年では百八件、四十年以降一番ピークが五十四年、あるいは五十一年の二百件を超える件数でございます。もちろん、この件数は人権侵犯事件として受理された件数でございますので、それ以外の、先ほど先生が御指摘になったような心の問題、あるいは結婚差別のすべてが網羅されているというふうには理解しておりませんが、少なくとも統計上とらえられる限りにおいてはこの法務省の統計がございますので、御紹介いたします。
#192
○井上(一)委員 あなたはすべて、統計上の人権侵害の受理件数を尺度に今答えたわけです。私は、それはいずれあなたと、差別事象が減ったというなら減ったであなたの方から指摘をもらえばいいし、私たちはふえたと思っている。今、長官は、いろいろなケースでふえ続けている、私もそういうとらえ方をしているので、ややそれに近い答弁を私はいただけたと思うのです。ただ、法務省に届け出た件数は今のそれかもわかりませんが、そういうことだけでこの問題をとらえていくなら、これはまことにもってけしからぬ。それはあなたは件数の問題、私は差別事象というのはふえ続けている。それで、むしろ差別の事実に対する評価の差、あるいは差別の実態を正しくとらえてもらうというか、いかに差別の実態を正しく理解するか、そのことがポイントになるのではないだろうか、そういうふうにも僕は思うわけなんです。
 それでいろいろ問題があろうと思いますし、いわば人権意識をいかに高めていくかということの問題があると思うのです。そういうこと等については時間も何ですから私はきょうは余り申し上げたくありませんが、人権意識を高めることが今日必要ではないかと指摘できるのではないか。この点については総務長官、私のそういう考えについていかがですか、人権意識を高める必要があると。
#193
○江崎国務大臣 その点は全く同感です。
#194
○井上(一)委員 そういう意味では、同和だとか部落だとかいろいろな表現があったって、何らそのこと自体は問題ではないと私は思うのです。それを差別に連動させていくということには問題がありますけれども。
 それで、何か禅問答のようですけれども、同和という言葉を聞いて何を連想されますか。
#195
○江崎国務大臣 私の場合は、このことについて前から深い関心を持ってきておるだけに、何とか同和しなければならぬ、何とか一緒にならなければならぬということを念ずるわけですが、しかし、現実には、さっきから深刻に御指摘のような問題がまだまだ数多く残っておる。これは本当に残念だし、改めていく責任者として全力を挙げてまいりたいと思っております。
#196
○井上(一)委員 私は、残念だとか甚だ遺憾だとかということはもう聞き飽きたわけですから、そういう答弁だけでは今後議論は進まないと私は思います。きょうは一応そこまでおっしゃっていらっしゃるのだから、わかりましたというんじゃないが、きょうはそれくらいで。
 普通、同和あるいは同和部落という表現をすれば、一つの連想として、利権、暴力、悪という連想をしますと言ったって、差別をなくするためにそういう議論をやるならあえてそういう議論もいいじゃないか。同和といったら怖い、汚いとかそういうことを連想しますと言ったって、連想ゲームの中では私は何ら――連想ゲームというとおかしいけれども、しかし、そこに人間の尊厳を傷つける差別があるということを連想してもらって、と言ったらおかしいですけれども、そこに目を当ててもらって、その差別に打ちかつ力が生まれてくることを、同和あるいは部落ということが出れば、そうあってほしいと私は願っているわけなんです。
 しかし、十分の一かもわからないし、あるいはひょっとしたら百分の一かもわからない、えせ同和がはんらんしている。何か同和といったら事が済むように思って同和、同和と言っている、えせ同和というのですか、そういうことが一般的に怖いあるいは暴力、いろいろな連想というのでしょうか、いろいろな受けとめ方があるでしょうけれども、少なくともそういう場合に、今申し上げたように、そこに起きている、起こる差別に目を向けて、その差別をいかになくしていくかという心の変革、意識の変革を求めていく。私は、そういうことが今日の問題ではないだろうか、こういうふうに思うわけなのです。
 例えば、物事は一つの事実に対して二つの反応があるわけなんですね。同和というから、同和の人と結婚したらあかんでという差別の一つの反応というのでしょうか、一つの対応がある。そしてもう一つは、同和といったら普通そういうことで差別が起こる。そういう差別を起こしてはいけない、差別をしてはいけないという、差別と闘うというか差別に打ちかつ、そういう対応が一つあるわけですね。二つの反応がある、僕はこういうふうに思うのですよ。だから、それは相反していると思います。しかし世の中、えてしてそういうことがよくあるでしょう。
 もう一つ、私から申し上げておきましょう。同和地区はようなった。家もようなったし、道もようなったし、橋もかかったし、さっきの話じゃないけれども、いろいろなことがある。これだって、この持つ意味というのは、だれそれさんが東大へ行きました、だれそれさんがこうなりましたといったら、あこがれに近いものがあるわけです。うちも頑張らにゃいかんで、私もという。同和の地域がようなったら、あこだけが何であないようならないかんねん、何であこだけが先にようなんねんという、一つのねたみというか、いろいろな表現があるけれども、何かこれも、片っ方はあこがれ的なもの、別に東大があこがれでも何でもないけれども、一生懸命努力してちゃんとしやはった。同じ共働きで、一生懸命頑張って新しいマンションへ住んだ。うちもお母ちゃん、一生懸命頑張りまひょうやという夫婦の会話もある。しかし反面、あこだけが、同和地区だけがあないようなってという。だから、あこがれとねたみというのでしょうか、何か相矛盾した二つのものを、私は一つの事実についてここで申し上げているわけなんですよ。
 グリコ事件でもそうでしょう。グリコの事件があって、悪い人間はあれをまねしますねん。あれをまねて、同じようなことをして捕まっておるやつがおる。一方、ああいうことは絶対許せない。すべての力をそこに集中して、ああいうことは再び起こらないようにというのがある。
 差別だってそうじゃありませんか。一人が差別をし、あるいは一つの差別の事象が結婚の事例、今私は結婚だけを申し上げたわけだけれども、随所にあるわけだ。さっきの人権侵犯の事例の話はまた次の機会にやりますが、ではグリコの事件が起こった、まねる、そういう人もおるわけ。要は、人間の意識をどうとらえさすか、物事に対しでどう意識を正しく持つようにするか、そういうことが今求められているものであり、まさにその意識の変革を論せずして差別の問題は解消しない。
 これは、きょうは私の意見だけに終えます。あなたから答弁を求めることは、いろいろな言葉足らずの答弁が出ればむしろお気の毒ですから。だから、きょう私の申し上げた少しの事実をもっての議論ですね、同和の問題、部落の問題、差別の問題。――最後にひとつ長官から、この問題については今までも取り組んではきたけれども、それこそ意識を新たにして差別をなくするために頑張る、すべての力をそこに集中するという強い決意をいただければ非常にありがたい。強制はいたしません。きょうの議論を通してのあなたの素直な意見を承って、私の質問を終えます。
#197
○江崎国務大臣 御質問の点については、深刻に受けとめております。そして、今後も同和問題については政治家としてまた担当大臣として全力を上げる決意であります。
#198
○志賀委員長 次回は、来る二十五日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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