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1985/05/08 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 内閣委員会 第15号
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1985/05/08 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 内閣委員会 第15号

#1
第104回国会 内閣委員会 第15号
昭和六十一年五月八日(木曜日)委員長の指名
で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。
 地域改善対策に関する小委員
      石川 要三君    石原健太郎君
      塩川正十郎君    月原 茂皓君
      二階 俊博君    深谷 隆司君
      井上 一成君    矢山 有作君
      鈴切 康雄君    和田 一仁君
      三浦  久君
 地域改善対策に関する小委員長 石川 要三君
―――――――――――――――――――――
昭和六十一年五月八日(木曜日)
    午前九時五十六分開議
 出席委員
  委員長 志賀  節君
   理事 石川 要三君 理事 戸塚 進也君
   理事 深谷 隆可君 理事 宮下 創平君
   理事 小川 仁一君 理事 元信  堯君
   理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君
      池田 行彦君    石原健太郎君
      内海 英男君    菊池福治郎君
      塩川正十郎君    田澤 吉郎君
      月原 茂皓君    中島源太郎君
      中村喜四郎君    二階 俊博君
      堀内 光雄君    与謝野 馨君
      井上 一成君    上原 康助君
      佐藤 徳雄君    新村 勝雄君
      矢山 有作君    鈴切 康雄君
      日笠 勝之君    滝沢 幸助君
      吉田 之久君    柴田 睦夫君
      東中 光雄君    三浦  久君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  中曽根康弘君
        外 務 大 臣 安倍晋太郎君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長官)後藤田正晴君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 加藤 紘一君
 出席政府委員
        内閣参事官   荘司 晄夫君
        内閣官房内閣審
        議室長     的場 順三君
        内閣審議官   高瀬 秀一君
        内閣官房内閣広
        報室長     金子 仁洋君
        内閣官房内閣調
        査室長     谷口 守正君
        内閣法制局第二
        部長      大森 政輔君
        国防会議事務局
        長       塩田  章君
        総務庁長官官房
        長       藤江 弘一君
        総務庁長官官房
        審議官     本多 秀司君
        総務庁長官官房
        審議官     百崎  英君
        防衛庁長官官房
        長       宍倉 宗夫君
        防衛庁防衛局長 西廣 整輝君
        防衛庁教育訓練
        局長      大高 時男君
        防衛庁人事局長 友藤 一隆君
        防衛庁経理局長 池田 久克君
        防衛庁装備局長 山田 勝久君
        防衛施設庁長官 佐々 淳行君
        防衛施設庁総務
        部長      平   晃君
        防衛施設庁施設
        部長      宇都 信義君
        防衛施設庁建設
        部長      大原 舜世君
        防衛施設庁労務
        部長      岩見 秀男君
        国土庁計画・調
        整局長     星野 進保君
        外務大臣官房長 北村  汎君
        外務大臣官房審
        議官      福田  博君
        外務大臣官房審
        議官      渡辺  允君
        外務大臣官房領
        事移住部長   妹尾 正毅君
        外務省北米局長 藤井 宏昭君
        外務省中近東ア
        フリカ局長   三宅 和助君
        外務省経済局長 国広 道彦君
        外務省条約局長 小和田 恒君
        外務省情報調査
        局長      渡辺 幸治君
        大蔵省国際金融
        局次長     橋本 貞夫君
 委員外の出席者
        大蔵省主計局主
        計官      西村 吉正君
        文部省初等中等
        教育局中学校課
        長       林田 英樹君
        運輸省航空事故
        調査委員会事務
        局長      藤冨 久司君
        内閣委員会調査
        室長      石川 健一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月七日
 辞任         補欠選任
  井上 一成君     細谷 昭雄君
  日笠 勝之君     木内 良明君
同日
 辞任         補欠選任
  細谷 昭雄君     井上 一成君
  木内 良明君     日笠 勝之君
同月八日
 辞任         補欠選任
  中村喜四郎君     与謝野 馨君
  嶋崎  譲君     佐藤 徳雄君
  滝沢 幸助君     吉田 之久君
  柴田 睦夫君     東中 光雄君
同日
 辞任         補欠選任
  与謝野 馨君     中村喜四郎君
  佐藤 徳雄君     嶋崎  譲君
  吉田 之久君     滝沢 幸助君
  東中 光雄君     柴田 睦夫君
    ―――――――――――――
五月六日
 シベリア抑留者の恩給加算改定に関する請願
 (熊川次男君紹介)(第三八二四号)
 同(箕輪登君紹介)(第三八四八号)
 スパイ防止法制定に関する請願(田原隆君紹
 介)(第三八二五号)
 同(西田司君紹介)(第三八二六号)
 同(野田毅君紹介)(第三八二七号)
 同(畑英次郎君紹介)(第三八二八号)
 傷病恩給等の改善に関する請願(大西正男君紹
 介)(第三八二九号)
 同(鹿野道彦君紹介)(第三八三〇号)
 同(田中龍夫君紹介)(第三八三一号)
 同外二件(三ッ林弥太郎君紹介)(第三八三二
 号)
 同(小澤潔君紹介)(第三八五二号)
 同(箕輪登君紹介)(第三八五三号)
 同(平沼赳夫君紹介)(第三九〇七号)
 旧台湾出身元日本軍人軍属補償に関する請願
 (亀岡高夫君紹介)(第三八四九号)
 同(箕輪登君紹介)(第三八五〇号)
 国家機密法制定反対に関する請願(田中克彦君
 紹介)(第三八五一号)
 旧治安維持法等による犠牲者の賠償に関する請
 願(井上一成君紹介)(第三八五四号)
 同(上田卓三君紹介)(第三八五五号)
 同(近江巳記夫紹介)(第三八五六号)
 同(高沢寅男君紹介)(第三八五七号)
 同(天野等君紹介)(第三九〇八号)
同月八日
 旧台湾出身元日本軍人軍属補償に関する請願
 (伊藤公介君紹介)(第三九二九号)
 同(塚原俊平君紹介)(第三九三〇号)
 国家機密法制定反対に関する請願(岡崎万寿秀
 君紹介)(第三九三一号)
 同(柴田睦夫君紹介)(第三九三二号)
 同(瀬長亀次郎君紹介)(第三九三三号)
 同(田中美智子君紹介)(第三九三四号)
 同(津川武一君紹介)(第三九三五号)
 同(中島武敏君紹介)(第三九三六号)
 同(中林佳子君紹介)(第三九三七号)
 同(林百郎君紹介)(第三九三八号)
 同(東中光雄君紹介)(第三九三九号)
 同(不破哲三君紹介)(第三九四〇号)
 同(藤田スミ君紹介)(第三九四一号)
 同(松本善明君紹介)(第三九四二号)
 同(簑輪幸代君紹介)(第三九四三号)
 安全保障会議設置法制定反対に関する請願(岡
 崎万寿秀君紹介)(第三九四四号)
 同(経塚幸夫君紹介)(第三九四五号)
 同(田中美智子君紹介)(第三九四六号)
 同(不破哲三君紹介)(第三九四七号)
 同(藤田スミ君紹介)(第三九四八号)
 同(正森成二君紹介)(第三九四九号)
 同(山原健二郎君紹介)(第三九五〇号)
 旧治安維持法等による犠牲者の賠償に関する請
 願(天野等君紹介)(第三九五一号)
 同(伊藤茂君紹介)(第三九五二号)
 同外二件(工藤晃君紹介)(第三九五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会設置に関する件
 安全保障会議設置法案(内閣提出第九号)
     ――――◇―――――
#2
○志賀委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、安全保障会議設置法案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
#3
○矢山委員 安全保障会議の設置に伴って、内閣官房組織令を改正して内閣官房の再編を行うというふうに聞いておりますけれども、この問題で二、三お聞きしておきたいと思います。
 今度この再編で内閣調査室を情報調査室とすることに伴いまして、新たに情報の分析に関することを所掌事務に加えるということになっておるようであります。しかし、内閣法では十二条で「内閣官房は、」「内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務を掌る。」と定めておりますし、また十四条の二の四項も「内閣調査官は、命を受けて内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務を掌る。」と定めているだけでありまして、情報の分析などということは内閣法のどこにも書いてございません。そういう法律に定めのないことを、つまり国会が政府に授権していない権限を政府が勝手に政令でつけ加えるというのは、国会の立法権のじゅうりんであります。まさに戦前の天皇の官制人権と同じゃり方ではないかと私は思うわけでありますが、もしこの分析機能をつけ加えるということであるなら内閣法の改正からやってもらいたい、内閣法の改正が考えられていない現在の段階ではこれは撤回してもらいたい、こういうふうに思います。
#4
○谷口政府委員 先生御指摘のとおり、現在の内閣調査室の所掌事務というものは「内閣の重要政策に関する情報の収集及び調査」ということになっておるわけでございます。収集、調査というのはどういうことを言うかということになると思いますけれども、収集は文字どおり集めるということだと思います。調査というのは、典型的な例としましては、集められた情報について既存のいろいろな基礎データ、こういったものによってチェックする、調査するということだろうと思いますけれども、それとともに当然のことながら、いわゆる分析というものも当然入っておると思うわけでございます。いろいろな断片的な情報について基礎資料に基づいて点検する、あるいはそれをいろいろな角度、要素に基づいてチェックする、これがやはり分析だと思うわけでございます。そういう面では、現在の内閣法で定めている「情報の収集及び調査」の中には、先生御指摘の分析という機能も入っておるものと考えられるわけでございます。
 確かに、今般いただきました答申では「収集・分析等」の体制を充実強化しということになっておりますけれども、「等」と書いてありまして、調査というのはまた抜けておるわけですね。この答申の読み方でございますけれども、やはり収集、調査、それから分析と、いろいろな機能があると思いますけれども、そういったものについて、内閣調査室が内閣の重要政策に関する情報について任務を果たしておるんだけれども、現実に運用をされている状況を見ると、そのうち特に収集あるいは分析、こういった面について必ずしも十分ではないんじゃないか、その充実強化をする必要があるのではないかという御指摘があったのではないか、そのように私どもは受けとめておるところでございます。
#5
○矢山委員 それは答弁になりませんね。情報を収集するだけでは余り意味がない、情報の収集、調査だけでは意味がない。重要なのは、情報を活用しようと思えば分析しなければいけない。この情報収集、調査、分析、この分析というのが一番重要な仕事だと私は思っておるのです。恐らく分析ということは今まででも内閣調査室では多少はやっておったんじゃないかと思うのです。ところが、今度はこの行革審答申を踏まえてこの分析機能を特に強化しようというのではないか、私はそういうふうに受け取っております。だから、分析というものが情報の収集、調査に附帯するような仕事ではない、まさに情報の収集、調査、そして分析という機能を極めて重視をしておる、そういうふうに思います。
 したがって、であるとするなら、分析という権限は内閣法によって与えられていないのですから、これは当然法改正を必要とすると私は思う。あなたの言うのはへ理屈だと思います。
#6
○谷口政府委員 私どもの現行法の解釈でございますけれども、先生もまた御指摘があられたわけでございますけれども、「情報の収集及び調査」という「調査」の中にはやはり分析というのは当然入ってきているんだろう、こう思うわけでございます。その分析について答申では、内閣調査室のやっている分析、こういった面では必ずしも十分ではない、そういった面でその分析機能体制を強化する必要があるという御指摘があったものだ、こういうふうに受けとめておるところでございます。
#7
○矢山委員 あなたの答弁自体が、分析機能を極めて重視し強化しようとしておるということを言っているじゃありませんか。今までの内閣法に「情報の収集調査」はあったけれども、分析のことについては全然触れられてなかった。そこで今後は、情報活動の中で分析機能を極めて重視しなければならぬ、こういうふうに行革審が考えた。したがってその答申をしたわけです。そうすると、今まで多少やっておったような付随したそういうものではだめなんで、分析機能というものを極めて重視しておるということです。であるとするなら、それだけ重視をされた分析機能というものを法の中にちゃんと書き込むのが当然のことであります。
 では、ほかの例を申し上げてみましょう。省庁の設置法をずっと調べてみました。例えば経済企画庁設置法の四条が、経企庁の所掌事務として、第十九号で「内外の経済動向の調査及び分析に関すること。」と定めておりますね。それから、外務省設置法四条でも、第八号に「国際情勢の総合的な分析及びこれに必要な情報の収集に関すること。」とあります。このほか科学技術庁設置法の四条五号、厚生省設置法の五条四号、農林水産省設置法の四条一号、労働省設置法の四条九号などにも「分析」ということが明文で規定されております。
 情報調査室がこれから行おうとする情報の分析は、これらの省庁が行う分析よりも軽いものではないはずであります。それを政令だけで決めようということは私は断じて認めることはできません。いかがですか。
#8
○谷口政府委員 先生の御指摘のとおり、これまでの立法例では収集、調査、分析についていろいろな用法があると思うわけでございます。
 先生がまず最初に御指摘がありました経済企画庁設置法によりますと、「内外の経済動向の調査及び分析」ということで、調査と分析とは違うというような形になっておるわけでございますけれども、今度は逆に申し上げまして、外務省の設置法でございますけれども、第四条八号では確かに「分析及びこれに必要な情報の収集」ということで分けてはおりますけれども、同条の第十九号を見ますと、「諸外国に関する政務の処理並びにこれに必要な情報の収集及び調査研究に関すること。」こう書いてあるわけです。こうなりますと、調査研究の中に分析が入ってない、こういうことになってしまうわけでございます。そこで、やはり調査、分析、あるいはさらに収集といった点につきまして、いろいろな立法例があるということだと思います。
 私どもは、現行法でございますけれども、内閣調査室の所掌事務としての調査でございますけれども、その中には分析というものも含まれておるという解釈に立って実際に仕事を進めておる、それにつきまして今般の行革審では、分析機能は必ずしも十分発揮されてない、もっと充実強化する必要があるという御指摘があったものと受けとめておるわけでございます。
#9
○矢山委員 そんな詭弁を弄してはいかぬよ。外務省設置法第四条の第八号は、必要な情報の収集だけではだめだ、だめだから分析をやるんだ、その分析をやるためには必要な情報の収集が要るんだ、こう書いてあるわけでしょう。情報の収集、調査というものに対して、情報の分析というものをそんなに軽く見ておるのですか。情報を生かして使うためには情報の収集、調査だけではだめなんだ、子細な分析という仕事が要るんだ。そこでわざわざ答申では、分析というものを重視してこれを指摘しているわけでしょう。それでそれを職務権限に加えようというのなら、これはやはり内閣法の改正から考えるべきですよ。今の答弁では承服できません。しかし、これらの問題は後いろいろの問題が重なっておりますから、それと一緒に最終的な私の判断を示して処理をしていきたいと思います。
 次にお聞きしたいのでありますが、内閣官房組織令を改正して内閣官房に内閣広報官というものを設置する予定だというのでありますが、そのように新しく官を設置する、このためには、内閣法十四条の二に「内閣官房に、内閣参事官、内閣審議官、内閣調査官、内閣事務官その他所要の職員を置く。」とありますが、これの改正が必要なんではないかと思いますが、いかがですか。
#10
○金子政府委員 そこに書いてあります内閣審議官、この審議官の職務の内容といたしまして、広報官という名称下に、内閣の重要政策に関する情報を国民に提供するという仕事をいたそうというわけでございます。
#11
○矢山委員 その説明は既に私も受けております。したがって、今の御答弁なり私の受けた説明をもとにしながら質疑を続けます。
 内閣広報官には、広報に関する総合調整、これに加えて新たに内閣自身の広報もやらせるというのでありますが、これまでは内閣の方針などについては官房長官が内閣のスポークスマンとして記者会見などをやってきておると思います。それと今度の内閣広報官との関係、これはどうなるのですか。
#12
○金子政府委員 従来と変わりがないわけでございまして、内閣広報官は内閣の重要施策に関する広報をつかさどります。この広報は従来官房長官を中心になされておりましたが、事態が非常に複雑化してまいりまして、これに対する補佐機能を強化しなければならないということで、内閣広報官が官房長官を補佐して内閣の重要施策に関する情報提供業務を国民に対していたそう、こういうわけでございます。
#13
○矢山委員 そうすると、この内閣の広報について内閣官房組織令はどういうふうに規定を置くつもりですか。
#14
○金子政府委員 組織令の方は目下検討中でございまして、まだ成案は得ておりません。
#15
○矢山委員 こういうような安全保障会議設置法施行とともに、内閣官房の組織を再編するというのでしょう。その安全保障会議設置法の審議をしておるときに、それに関連をする政令条項が検討中でまだ決まってないとは何事ですか。法律にはそれほど細かいことは規定しないわけでしょう。その法律に規定されたことが実際にどうなるのかというのは、細かい点は組織令にいくわけでしょう。その組織令がまだ決まってない、それに今言ったような中身もわからない、それで安全保障会議設置法だけは通せ、そんな矛盾した話がありますか。
#16
○金子政府委員 法律が通りまして、その法律を施行するに必要な細かい規定を政令で定めることになります。したがいまして、政令の内容案については鋭意検討を進めておりますが、最終的な決定は法律が成立した晩に決められるものと考えております。
#17
○矢山委員 最近は、法律案だけ出して、その法律が成立したときに、それを施行することに重要な政令事項なんというのは、いつも出さないわけだ。法律が決まってからやりますと言うんだ。ところが、残念ながら政令は国会審議にはかからない。本当は、法律案を審議するときには当然のこととして、国会としては、それを施行する場合に政令がどうなるのか、省令がどうなるのか、あわせて検討しなければならぬわけです。それを法律案だけでやってくれ、法律案ができたら政令、省令は自分たちの勝手でやるんだ、自分たちの思うようにやるんだ。なるほど法律の枠内かもしれない。しかし、自分たちで勝手にやるんだ、これは国会審議の場では通らぬのではありませんか。今までそういうことが軽んぜられておったというのは事実であります。そのことがその後法律の施行に伴っていろいろな問題を具体的に起こしておる。であるから、我々は、法律案を審議するときには同時にそれに関連する政令その他も審議をしなければならぬ、これが国会審議の本当のあり方ですよ。あなた方、今までの惰性になれて、今回のこの安全保障会議設置法のような重要な法案を通すのに、政令の問題はこれから考えればいいんだという考え方ですか。それは承服できません。
#18
○金子政府委員 国会審議の過程におきまして先生方から貴重ないろいろな御意見を賜るわけでございます。また、法案を審議する最中にあらゆる問題、あらゆるコンセプトはその中で提示され、論議されるわけでございます。それらの全体を勘案しつつ最終的に組織令という法案の形式にまとめていく、こういう作業になりますから、途中におきまして、先生方からの貴重な御意見やその他のいろいろなまつわるすべてのコンセプトに関して、検討を進めていないということではないわけでございます。
#19
○矢山委員 詭弁を弄しておだてるんじゃないよ。我々がここでしゃべったことを十分参考にして政令にする、それは表の言葉は立派ですよ。我我はそういうことで引き下がるわけにいかぬのです。法律案をつくる以上、その法律案を施行するときにどうするのかという政令事項を考えないで、法律案をつくるばかがありますか。当然のことでしょうが。法律案をつくればそれを施行していくための政令をつくる、それを両方出してきて審議にかけるというのが筋じゃありませんか。今のあなたの答弁を詭弁という。詭弁の典型的なものだ。全部ためておいて後からやるからね。
 四十一年の五十一国会に、政府は内閣官房に内閣報道官を置くための内閣法改正案を提出しておりますね。このときの法案では、内閣官房に内閣報道官を置くと一条を追加しております。その上で、内閣官房の所掌事務を定めた内閣法十二条も改正をして、「内閣官房は、」「内閣の重要政策に関する広報に関する事務を掌る。」という規定をつけ加えております。このときは、これは衆議院で削除されて、内閣の広報ということは内閣法に書かれておりません。そうである以上、今回内閣広報官を置いて内閣自身の広報をやろうとする以上は、まずそのための内閣法の改正を国会に諮るべきであります。政府自身が法改正が必要だと考えておることを政令だけでやってしまおうなどというのは、国会の立法権をないがしろにするのも甚だしいと言わなければなりません。したがって私どもは、これは到底認めることができないということであります。いかがですか。
#20
○金子政府委員 十四条の二というのがございますが、内閣官房に内閣審議官というものを置きまして、その審議官が内閣官房において、総合調整を行う必要があるような政府の重要施策についての広報に関する事務を行う、こういうことでございまして、先生御指摘のことでございますけれども、現在の我々のこの考え方で進めさせていただきたいと思うわけでございます。
#21
○矢山委員 何言っているんだ。いいかげんなことを言っちゃだめだよ。答弁になっていない。四十一年の五十一国会に、内閣官房に内閣報道官を置いたときに内閣法改正法案を出しておるでしょうがな。そのときに、内閣法の十二条に「情報の収集調査に関する事務を掌る」としかなってなかったが、ここにちゃんと広報を加えているわけだ、「広報に関する事務を掌る。」と。そして同時に、内閣法の十四条の二に「内閣官房に、内閣調整官及び内閣報道官各一人を置く。」ちゃんとこうやっているじゃない。つまり、内閣が広報をやるという場合には、今まで内閣法に規定がないから、内閣の職務権限として、所掌事務として広報を加え、それを担当する内閣報道官を置くことについても、ちゃんと条文の中に内閣法改正という形で入れてあるんだ。それと今回のこの措置は全然つろくせぬじゃないかというのです。おかしいじゃありませんかと言うのです。これは法律事項だとその当時考えて、内閣法の改正で広報を入れ、内閣報道官設置をちゃんと正式の条文を入れてつくっていったわけだ。そのことは広報なり内閣報道官の設置が法律事項として考えられておったということじゃないのですか。
#22
○金子政府委員 十四条の二に内閣審議官の所掌事務が書いてございますが、それの第三項「内閣審議官は、命を受けて閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整に関する事務を掌る。」こういうことでございますが、広報の仕事も、各省を分断いたしまして各省に広報室ないし広報課のようなものがございます。各省で国民に必要な情報を適宜提供しているわけでございますが、その仕事が内閣全体といたしましてそごを来すようなことがあってはいけませんので、そこで、この内閣審議官が、ここに書きましたような分掌事務で総合調整を行うということで従来進んできているわけでございます。
#23
○矢山委員 それもまたいいかげんな答弁ですね。
 それでは、一般の省庁がその所掌事務を行う上で必要な広報というものをその所掌事務の一部として行うことと、内閣が政府の重要政策について国の内外に訴えるのとでは、これは全く重さが違う。広報というのは法律から落としておるのだが、法律改正に盛り込もうとしてないのだが、外務省設置法では、今でもその所掌事務として、四条三十九号で「国際情勢及び外交問題に関する国内における広報」に関すること、これを所掌事務としてちゃんと決めてありますよ。外務省設置法には広報というのはちゃんと所掌事務に入っているのだ。内閣法には入ってない。しかも今度は内閣で内閣の広報をやろうという。そしてそのために内閣広報官を置くという。当然これは法改正をしなければいけないのだ。当然法改正が要るのじゃないですか。おかしいですよ、これは。
#24
○金子政府委員 内閣で広報を行う場合と各省で広報を行う場合と質的な差があるという御指摘は、先生のおっしゃるとおりで、私どもそのとおりに考えております。しかしながら、内閣で行う広報というのは、実施に当たりましては、その実施部面はあくまでも各省が分担して行っているところでございまして、内閣面、つまり全体に関係のある広報は、現在総理府で広報室がございましてここで実施をいたしておりますが、そういった全体の各分担して実施されているところの広報事務に関して、その統一保持上必要な総合調整を内閣がいたすということでございまして、おのずからそのやることに質的な差異があるわけでございます。
#25
○矢山委員 つまり広報をやるのに、各省庁にかかわるものについては各省庁で広報をやっている。しかしながら、極めて重大な、国として、内閣としてやらなきゃならぬ広報については内閣が直にやるわけでしょう。これは重みが違うじゃないですか、最初に言ったように重みが。内閣の広報と各省庁でやっている広報とは重みが違う。内閣でやる広報というのは、各省庁にまたがる場合もあるかもしれぬ、いろいろなことがあるだろう、それを統一し、総合して、その結果を広報として内閣みずからがやる。これは極めて重要な仕事ですよ。情報の分析と同じようにこの広報活動も極めて重要ですよ。それを法律に書き込まないでやろうという。それがおかしいと言うのですよ、私は。
#26
○金子政府委員 広報の中にはいわゆるアドバタイズメントというのと――広報は広告をする仕事と、それから報道をする仕事と二つあるわけでございまして、報道に関する仕事は従来、現在も引き続きまして官房長官が実施しているところでございます。これは重要な内閣の広報でございます。その官房長官が現在行っておりますところの広報の重要部分を、新しく広報官が補佐をするということで、その機構を答申に従って考えておるということでございます。
#27
○矢山委員 内閣官房長官が行う広報は、今まででも記者会見という形などでやっておったね。ところが、今度は、その広報というものを情報活動として極めて重視しておるのでしょう。情報活動という立場から考えたら、広告であろうと報道であろうと、それは軽重はつかないと私は思いますよ。単なる、あしたどこかで大売り出しをやりますという広報じゃないんだから。そんなものを内閣がやるはずないんだから。そうでしょう。だから広告であるから報道であるからと、その軽重はつけがたいと私は思う、これはケース・バイ・ケースで考えぬと。そういうような重要な広報をやるのですよ。その広報の中心になるのが広報官でしょう。そうしたら、その広報官の補佐を得て官房長官が表ではしゃべるのですか。そうしたらこの広報というのは極めて重要なんじゃないですか。だから重要であるから、今までのような官房長官の記者会見とは質が違います。情報活動の中の分析、広報、これは極めて重視をされておるのですよ。したがって、先ほども言ったようにわざわざ行革審の答申でそれを指摘したわけだ。それを内閣でやろうとする。であるとするならば、それだけの新しい所掌事務は、内閣法に盛り込まれてないとするなら、それを盛り込んでいくというのが当たり前じゃないのですか。それを国会の審議を抜きにして政令事項だけでこそっとやろうなんという、そんなばかげた話は通りませんよ。私はそう思うのです。これも後でまとめてやります、全体に大分問題があるから。
 次に、顧問、参与の設置について聞きたいのです。
 私が先般質問主意書を出しました。それに対する答弁書では「内閣の総合調整機能を補佐する手段の一つとして、顧問・参与等の助言者を内閣官房に適時、適切に置くことは有益である」としております。これは一体どういう人を顧問や参与に置くつもりですか。
#28
○的場政府委員 顧問、参与につきましては、先生御指摘のとおり内閣官房に顧問、参与を置くことは有益であると考えております。しかし、その設置につきましては、必要に応じ所要の措置を講ずる考えでございますが、当面、直ちに置くことは考えておりません。
#29
○矢山委員 当面直ちに置くことは考えておらぬけれども、いつの日か置くということを考えておるから、顧問、参与を置くということになっているのでしょう。したがって、その顧問、参与になる人はどういう人ですか、どういう人を頭に置いてそういうことをやろうとしておるのですかと聞いているのですよ。これもまたわからぬですか。
#30
○的場政府委員 学識が深く、顧問、参与にふさわしい方ということになろうかと思いますが、顧問、参与を置くというのは顧問、参与を置く必要を内閣側が感じたときでございますから、どういう事態で感ずるかということによっておのずから人選も異なってくるんだろうと思います。
 したがって、ただいまのところは置く必要はないと考えておりますので、具体的にどういう資格でどういう方かというふうに仰せられても、今必要があるとは直ちには考えていないわけでございますので、事態、事態に応じて人は変わってくると思いますので、それ以上のお答えをするわけにはまいらないのでございます。御理解いただきたいと思います。
#31
○矢山委員 なるほど、理解はできぬけれども、次の質問を進めて、それからまたやりましょう。
 安全保障会議設置法案の七条では、「議長は、」云々「関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる。」というふうにありますね。顧問や参与は、安全保障会議に出席させて意見を述べさせることはあるのですか。
#32
○塩田政府委員 七条の「関係者」というのは、特段の特定をいたしておりません。
#33
○矢山委員 だから顧問、参与を置いた場合に、安全保障会議に出席させて意見を述べさせるのですかと聞いているのです。意見を述べさせるのなら述べさせると言ってください。
#34
○塩田政府委員 あり得ると思います。
#35
○矢山委員 中曽根首相は、この間の三月二十五日の本会議の答弁で、「いかなるものがその緊急事態であるかという判断は、最終的には、総理大臣が決める」と言っておるのでありますが、例えば首相がそういう判断をする場合に、この参与等の意見を参考にすることもあるのですか。
#36
○塩田政府委員 それはそのときの総理の御判断でございますから、何ともこの時点で申し上げかねますが、私どもとしては従来からお答えいたしておりますように、官房長官を初め関係大臣の補佐を受けて総理が御判断されるでしょう、こう申し上げてきたわけですが、その場合に総理がそのほかにどんな方に相談されるがということは、ちょっと私どもにはお答えいたしかねると思います。
#37
○矢山委員 それでは後藤田長官、この間言われておることなんですが、安全保障会議は基本方針を決める場だということを言っておいでになりますね。例えば安全保障会議で緊急事態対処の基本方針を審議、決定をするというような場合に、参与等の意見を参考にするのですか。
#38
○後藤田国務大臣 今局長が答弁をしましたのは、私は法律上の解釈の問題を言っていると思いますが、現実に今参与とか顧問を置くというようなことを考えておりませんし、こういった緊急事態として総理が認定するという場合に、果たして顧問とか参与の意見を聞くかといえば、制度面は別として、現実の運用としてはほとんどないと私は思います。やはり官房長官あるいは所管の国務大臣の意見をよく聞き、あるいはまたそれをそれぞれ補佐しておる上級の職員の意見を聞いて、最終的に総理が判断をする、こういうことになるのが実態であろう、かように私は理解をいたします。
#39
○矢山委員 そんな置いても置かぬでもいいようなものなら、顧問、参与を置くなんという必要はないじゃありませんか。
 先ほど顧問、参与はどういう人かと言ったら、具体的には言わなかったけれども、極めて学識経験の高い人だ、こう言いましたね。そして今聞いてみると、安全保障会議に出席させて意見を述べさせることもあるという。そうなるとこれはちょっこらちょいとした軽い役職じゃありませんよ。その極めて学識経験の高い、中曽根総理が尊敬おくあたわざるような方が顧問、参与になってきた場合には、その発言を極めて重視をして聞くのじゃありませんか。最近いろいろなことがあるでしょう。私的諮問機関などといって、いろいろなことがありますね。あの私的諮問機関を一々調べてみて、顔ぶれを見ると、大体十人のうち七、八人は中曽根さんが尊敬をする、あるいは中曽根さんのブレーンの人ですよ。あと二人か三人ちょこっとほかのも色の変わったのを入れている。そこで結論を出す。結論の方向は見えているわけです。
 そういうことをやられておることから考えても、顧問、参与を置くか置かぬかわからぬとおっしゃっているけれども、私はこれを置くということができる規定がある以上は、これはやはり、そうですか、じゃあ大したことはないと逃げるわけにいきませんね。どうなんですか。置くのですか置かぬのですか。置かぬのならこういう規定を削りましょうや、置くなんという規定を。
#40
○後藤田国務大臣 顧問、参与というのは、これは矢山さんも恐らくおわかりだと思うのです。それはそのときどき、経済上のいろいろな問題あるいはエネルギーに関連したいろいろな問題等があって、それらについて学識経験を持っている人、こういう人の意見をやはり聞かなければならぬなといったようなときには、場合によれば顧問、参与というものを置くということも考えられます。そういうようなことを予想して、将来何が起きるかわかりませんが、顧問、参与というものを置き得る制度だけはつくっておこう、こういうことでございますが、これは今から何を置くなんという予定をしておるわけではございません。
 それから、御質問の重大緊急事態、これはこういった事態に、制度としては先ほど局長が言ったように制限がありませんけれども、こういうような場合に一々顧問、参与を任命して、そんな間に合わぬことでは到底どうにもならぬ。これはやはり、現実の運用としてはそれぞれの関係の国務大臣あるいは官房長官あるいはそれらを補佐するスタッフの諸君の意見を聞いて総理が最終的に判断をする、かように理解をしておいていただければ、大体の運用としては間違いがない、こう私は思います。
#41
○矢山委員 重大緊急事態が発生した場合に急なことでは間に合わぬから、ちゃんと平素調査審議をしてマニュアル等をつくっておいて備えようというのでしょう。だから、そういうことをやるときに顧問、参与というものを呼ぶということになるのじゃないですかと言っているのです。急に起こった、顧問、参与をすぐにといっても、それは後藤田さんのおっしゃるとおりです。間に合わぬです。ところが、重大緊急事態について対処方針を決めるという場合には、いろいろな調査をやってマニュアルをあらかじめつくっておくわけでしょう。そのマニュアルをつくる過程に顧問、参与の御意見を拝聴ということがあるのじゃないですか。そういう意味で顧問、参与を置こうとしておるのだと私は思いますよ。そうなると、顧問、参与というものを軽々しく扱うわけにはいかない。今、中曽根さんがやっておる政治手法から見ても、顧問、参与を軽々しく扱うわけにはいきませんよ。今のやり方を見ても、閣議の上に私的諮問機関があったり、あるいは国会の上に私的諮問機関があったりするような実態になっているのですから、私はこの顧問、参与も軽視できないと思うのですよ。
 そこで、同じく私に対する答弁書で、内閣官房に顧問、参与等を設置するについては、「必要に応じ所要の措置を講ずる」としておるのでありますが、内閣官房に顧問、参与を置くためには、これもまた法律事項として内閣法の改正が必要だと私は思います。これはいかがですか。
#42
○的場政府委員 これは顧問、参与の性格によると思いますが、現在のところ直ちに置くことを考えておりません。政令で措置して足りることであろうと思っております。
#43
○矢山委員 顧問、参与をいわゆる駄じゃれで言いますと、顧問はイコール来ん者だ、そういうような軽いものじゃないということを前提にして物を言っていますからね。したがって、顧問、参与を置くことができるということで顧問、参与を置くとする以上は、やはりそれがどういう人が選ばれるのかということが私は極めて重要だと思うのです。先ほど言ったように、顧問、参与を置く場合に、何か事件が起こった、重大緊急事態が起こった、そのときに顧問、参与、これではないと思いますよ、繰り返しますけれども。重大緊急事態に備えてどういうふうにするかマニュアルをつくる、そういうときに顧問、参与というものが必要になってくるのですよ。であるから、その果たす役割は極めて重要だと私は思っておるわけです。
 そこで、私は、この顧問、参与も内閣法の改正でやるべきだという考え方を持っておるのです。それはなぜかというと、昭和四十八年の七十一国会に、内閣官房に参与を設置するための内閣法改正案を提出しております。この法案では、内閣法に新たに一条を設けて「内閣官房に、内閣参与三人以内を置くことができる。」という規定を設けようとしておったわけであります。すなわち、政府みずからかつては参与を置くためには内閣法の改正が必要だと考えていたわけでしょう。今後内閣官房に顧問、参与を置く場合には内閣法の改正を国会に語る、このことを私ははっきりしてもらいたいと思います。
#44
○的場政府委員 一度、かつて参与の制度を法律案として考えたことがあるではないかというのは、事実でございます。先生そうおっしゃっておりますように、これは顧問、参与の位置づけ、重要性をどういうふうに考えるかということによって異なってくるんだと思います。法律で仮に設置いたしますとそれなりの重みがございます。当時考えました参与は、内閣総理大臣に直属して総理大臣に直接いろいろお話をしていただくというふうな形で考えたわけでございまして、それでその法律ということを考えたわけでございますが、今回、先ほど来申し上げておりますように、顧問、参与を置くことは直ちに必要ないと考えておりますし、仮に置くといたしましても、官房長官を経由して総理には物を言うというふうな形が一つあるのではないかというふうなことも考えております。したがいまして、法律によらず、政令あるいは内閣総理大臣決定等その他の手段で設置する場合には、おのずから重みが違ってくるというふうに考えておりまして、法律によるような顧問、参与ということを考えているわけではございません。
#45
○矢山委員 それで、そういうことをおっしゃって、この顧問、参与をえらい軽く見ておられるようでありますが、内閣官房長官を通じて物を言うんだろう。何年だったかな、七十一国会のときの参与というものは内閣総理大臣に直接物を言うんだ、だからこれは重たい。今度の顧問、参与は、安全保障会議に置くのは、官房長官を通じて物を言うことになるだろう、こういうふうなことを言っておられるのですね。そう言っておられるのですね。ところが、安全保障会議の議長は内閣総理大臣ですよ。内閣総理大臣の考え方で、判断で御相談をなさるかもしれぬが、顧問、参与を置くわけでしょう。それで、その顧問、参与は、あなた安全保障会議に出席すると言ったでしょう。意見を述べることがあると言ったでしょう。これはそんな軽いものではありませんよ。
#46
○的場政府委員 内閣機能の強化拡充ということで考えております顧問、参与は、内閣官房に置くということでございまして、安全保障会議に置くというふうに考えているわけではございません。
#47
○矢山委員 内閣官房に置くのかもしれぬけれども、その置かれた顧問、参与は安全保障会議に出るんじゃないの。意見を述べるんじゃないの。そういうこともあると言っているんじゃないの。それで、しかも、その安全保障会議というのは、国防に関する重要な事項あるいは重大緊急事態、それに備えてどう対応するかというマニュアルをつくるというんでしょうから、これは大変な仕事ですよ、あなた。まさに大仕事だ。そこで、一定の役割を果たそうという顧問、参与をそんなに軽く見ていいのですか。だったら私は、そんなに軽く見ていい顧問、参与なら置きなさんなと言うんですよ。それを、何であえて置こうとするのか。
#48
○塩田政府委員 先ほど私が、第七条による「関係者」の出席について法律上は制限がないということを申し上げましたが、御承知のように法律上は、「関係の国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる。」こうなっておりまして、ある事件が起こったときに、その事件に関係のある人の出席を求め、意見を述べさせることができる、こういうことでございまして、そういう意味でいいますと、制度上はだれという制限はないということを先ほど申し上げたわけであります。この規定は何も、今議論になっております顧問、参与を出席させるとか、あるいはその後に先生がおっしゃっておられましたマニュアルづくりなんかについて意見を聞くとか、そういうこととは全然関係ないことでございますので、念のために申し上げさせていただきます。
#49
○矢山委員 「議長は、必要があると認めるときは、関係の国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者」、これは「その他の関係者」とあって、限定がないのです。だから顧問、参与も「その他の関係者」で、会議に出席して意見を述べるんじゃないか。あなた正直に言ったんだ、最初の答弁は。今おかしな方向に変えちゃった。そうでしょう。それで、緊急事態が発生したときとおっしゃるけれども、発生時のことだけじゃないんですよ、この安全保障会議がやるのは。ちゃんとここに書いてあるのじやありませんか。「重大緊急事態対処の基本方針 情勢分析及び重大緊急事態の想定 重大緊急事態に対処する政府部内の情報連絡、意思決定の仕組み等に関するマニュアル」、緊急事態が起こったときに、さあマニュアルどうしよう、どういうふうに対応しよう。それで間に合わぬから、安全保障会議をつくって、そういう場合のマニュアルなんかをちゃんとつくろうというのでしょう。そういうことなんでしょう。どうもあなた方の方は考え方がおかしいんじゃないですか。論議がさっぱりかみ合わぬね。間に合わないんだ、緊急事態が発生してからでは。あらかじめ緊急事態を想定をして、そしてマニュアルをつくっておかなければいかぬのだ。その重要な役割を果たすのが安全保障会議なんだ。その安全保障会議に参与、顧問を置こうというのだ。それで参与、顧問は安全保障会議に「その他関係者」として出席できる。これはそんなに軽はずみなものじゃありませんよ。
#50
○塩田政府委員 まず、安全保障会議に参与、顧問を置こうというのではありません。それは先ほど審議室長がお答えしたとおりでございます。先ほど申し上げましたように、第七条は「関係者を」会議に出席させて意見を述べさせることができる、こういうことでございまして、「関係者」であればだれであるかということを制限してないというだけでございます。したがって、先ほど顧問、参与の方も関係がある方であれば出席されることはあり得るというふうに、制度的にはそうなっているというふうに申し上げましたが、そういう意味でございます。ましてや、平素にマニュアルづくりなんかをやるのに、顧問、参与を今度置いて、それで安全保障室のマニュアルづくりに意見を聞こうとしているのではないかというような趣旨のお尋ねのようでございますけれども、これは私どもそういうことを考えているのではございませんで、全然関係がないことでございます。
#51
○矢山委員 安全保障会議に顧問、参与を置くのじゃないということは言われました。ちゃんと耳に入っている。その安全保障会議に関する事務は、内閣官房で処理するわけだ。その内閣官房に顧問、参与を置く。その顧問、参与がこの安全保障会議に対する極めて重要な役割を果たすのじゃないかという観点で私は質問しておるわけです。ところがあなた方は、いとも軽く見ておられる。だから、そんな軽いものなら顧問、参与を置くなんということをなさらぬ方がいい、重い役割を果たすものであるならば、やはりこれは七十一国会のときと同じように法律事項としてちゃんと法律に規定する方がいいと私は思います。
 そこでもう一つ聞きたいのですが、国家行政組織法改正に伴う整理法で、外務省や自治省などの設置法から顧問や参与の規定が落とされました。これは私も承知しております。国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律を最初に国会に提出されたのはいつですか。
#52
○的場政府委員 総務庁の所管でございまして、突然のお尋ねでございますので、ちょっと調べてすぐに御報告いたします。
#53
○矢山委員 これは調べておいてくださいね。これは前の総務庁長官は後藤田さんだったと思うのだが、後藤田さん、御記憶じゃないですかな。――それではひとつ調べてもらって、この質疑は後に回します。
 要するに、内閣官房に情報の分析という事務が新たに加わってくる、それから内閣が広報をやるということが加わってくる、それから顧問、参与を置くという問題が出てくる、これらは、今度の安全保障会議の設置と内閣官房の再編と絡んで非常に重要な意味を持っておると私は思うのですよ。
 先ほど来言ってきましたけれども、情報を最高度に活用するためには、情報を収集するだけではだめ、収集をし調査をしそれを分析してやらなければならぬ。だから、今まで内閣官房長官が広報ということで記者会見でやっておられたのと、今度の安全保障会議設置に伴って内閣が広報を直接やるというのは、意味が極めて違ってくる。極めて重大な意味を持ってくる。
 情報の分析にしても、安全保障会議を設置して内閣官房組織を再編成して情報の分析をわざわざ所掌事務に入れる、これも情報活動の中で極めて重要な意味を持ってくる。しかも、それらの情報の分析だとか広報というようなものは、従来の内閣法の中で内閣官房の職務権限になっていない、所掌事務になっていない。だから、これを新たに加えようとするなら当然法律事項にすべきである。
 そしてまた顧問、参与にいたしましても、内閣官房に設置をする、しかしながら内閣官房は安全保障会議の事務をつかさどることになっておる、そして安全保障会議は重大緊急事態等に対するマニュアル等をつくっていく、そういうことをやる、その具体的な中身は後で質問いたしますが、そういう重大なことをやる内閣官房に顧問、参与を置くという、やはりこれも重要な役割を持つものとして法律で決めなければいけないと私は思うのです。
 したがって、私は、今までの御説明を納得することはできません。できませんが、次にまだ重要な問題が残っておりますので、それをお伺いしながら質疑をやってまいりたいと思います。
 官房長官がどうしても席を外さなければならぬようでありますから、官房長官がお留守の間でも、理事さんの言うことを拳々服膺いたしまして質疑をいたします。しかしながら、できるだけ早くお帰りを願いたいと思います。
 それでは、今法律関係のことについていろいろ申し上げてきたわけでありますが、次に質問を移してまいりたいと思います。
 これもこの前、私は質問書を出しましたが、その答弁書で、国防会議の秘密決定の件数について「該当がない。」と答弁しておられるのであります。秘密決定という名称であると否とを問わず、国防会議の案件で、これまで公表されているもの以外に、不公表になっておるようなもの、了解事項だとかそういったものはございませんか。
#54
○塩田政府委員 国防会議で決定したあるいは了解したことで、不公表になっているものはございません。
#55
○矢山委員 不公表になっているものはないとおっしゃるから、それではお尋ねいたしますが、元陸上幕僚長の杉田一次さんが「忘れられている安全保障」という本を書いております。その中で、昭和三十六年七月十八日の国防会議と閣議で正式決定をされた第二次防衛力整備計画には、公表された本文のほかに秘密の了解事項があったということを書いております。その秘密の了解事項というのは何か。読み上げてみますが、「国民の防衛意識の高揚、基地対策、関係諸法令の整備、冷戦対策の推進、防衛産業の育成等に関する施策に努め、必要物資の備蓄、道路の整備、その他運輸、通信、建設、教育、科学技術関係の諸計画に国防上の配慮を加えると共に全国的規模における民間協力組織について検討を行うものとする。」まさにこれはその当時国民に知られたくないことだったと思うのです。そういうことを秘密で決めておく、そして政府の都合のいいことだけ発表する、こういうやり方は私はけしからぬと思いますよ。どうなんでしょう。
#56
○塩田政府委員 先ほど、決定あるいは了解したことで公表しないものはないと申し上げましたが、当然のことながら、国防会議の中でいろいろ議論になること、議論になっている中身について秘密にわたる事項があることは当然でございます。ただ、先ほど申し上げましたのは、国防会議として決定をしたことあるいは了解事項として決定したこと、これについては公表いたしております、こういうことでございます。
#57
○矢山委員 しかし、この杉田さんの著書を見ると、ちゃんと了解事項として書かれていますよ。これは公表されてないのだと言っています。あるのでしょう。全然ないということは私は余り考えられぬですがね。秘密にしないまでも、この際発表せぬ方がよかろう、たんすの底へしまっておけというようなのがあるのじゃないですか。ここに一つ例がある。
#58
○塩田政府委員 先ほど申し上げましたように、議論の中身ではそういうことは、秘密にわたる事項はそれは当然ございます。ただ決定あるいは了解ということで公表しないものはない、こういうことでございますので、その点の御理解をいただきたいと思います。
#59
○矢山委員 これはそうすると、杉田一次さんに聞いてみぬことには、あなた方の意見と違うのだからわかりませんから、私も直接会って聞いてみることにします。しかし事前に、こんなことを聞いたときに言うなよというようなことを言わぬようにしてください。
 そこで、国防会議または国防会議事務局に、これまで設置したことのある専門家会議、下部機構、研究会等に関する質問に対して、答弁書では、次期対潜機及び早期警戒機専門家会議だけを挙げておるのでありますが、ほかに該当するものは何もありませんか。
#60
○塩田政府委員 ございません。
#61
○矢山委員 ございませんということで一応承っておきます。
 そこで、政府は今回新たに合同情報会議を設置するということでありますが、それはいつ設置をするのですか。
#62
○谷口政府委員 今般の答申を受けまして現在検討中でございますけれども、設置の時期につきましては、内閣官房の組織の再編成などに合わせて措置する予定でございます。
#63
○矢山委員 そうすると、内閣官房の再編成が七月ですね。それから安全保障会議設置法、これができるとき、そういうときに設置する、こういうことですね。
#64
○谷口政府委員 七月一日になるかどうかは別といたしまして、それに合わせて措置されるということになります。
#65
○矢山委員 合同情報会議は内閣官房の中に設けるのですか。
#66
○谷口政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、合同情報会議の設置あるいは運営要領等について現在検討中でございますけれども、答申によりますと、官房副長官が主宰し、関係行政機関の構成員をもって国内外の情報を総合的に把握するために設置する、こういうことになっておるわけでございます。
#67
○矢山委員 これも内容はまだどうも確定してないようですね。安全保障会議設置法に伴って設置をされる合同情報会議、こういったものが具体的にどういうふうなものになって、所掌事務はどうなのか、こんなことは今わからない、こういうことのようですね。これもこの審議のためにはいささか問題があると思います。何もかも肝心なことがわからないで法律だけ通せ、こういうことだからこれは困ったことなんですね。
 そこで、合同情報会議には小委員会だとかあるいは何々部会だとか、そんなものは設けるか設けないか、これも今検討中ですか。
#68
○谷口政府委員 検討中でございますけれども、答申で関係省庁の構成員をもって構成するという程度でございまして、小委員会とか部会とか、そういった下部機関を設けるつもりは今のところ考えておりません。
#69
○矢山委員 私、先般内閣調査室から説明をいろいろ受けたんですが、そのときの説明では、情報機関同士の定期的な連絡会議というのはこれまでも行われてきておるというふうに説明を受けました。その会議の名称あるいは構成メンバーはどうなっておるのか、またそれはいつごろからそういうことが行われておるのか、御説明いただきたいと思います。
#70
○谷口政府委員 関係行政機関はいろいろございますけれども、そういった関係行政機関とは定期的にあるいは随時連絡をやっておるわけでございます。別段その名称をつけることなく、いろいろなレベルがございますけれども、いろいろな問題につきまして情報交換をし、その任務を全うするために機能しておるということでございます。したがいまして、先生御指摘の、どういう連絡会の名称ていっ設置したかということについては、そういうきちんとしたものではないということでございます。(矢山委員「構成メンバーの具体的なことはわかりませんか」と呼ぶ)情報関係を担当している機関というのは、御案内のとおりたくさんあるわけでございます。行革審で指摘されておるところでも、外務省の情報調査局とか防衛庁の防衛局とか警察庁の警備局とか公安調査庁など、いろいろあるわけでございます。
#71
○矢山委員 そうすると、そういう連絡会議が定期的にあるいは随時行われて情報関係の機関が寄ってやっておるというのに、どうして今さら合同情報会議を設けるのですか。
#72
○谷口政府委員 現在行われているあれでございますけれども、内閣調査室と例えば外務省の情報調査局というように、一対一でいろいろな問題について情報交換するということもありますし、三以上の関係行政機関の担当者が集まって情報交換するということもあるわけでございますけれども、ただ、そういった関係行政機関の責任者が一堂に会して、そして総合的に情報を把握するといった面についてはやや欠くるところがあるわけです。そういう面で、今回の行革審ではその点を指摘されまして、官房副長官が主宰するそういった会議を定期的に開催して、そしていろいろな問題について情報交換し総合的に情報を把握するといいますか、こういう必要があるという指摘があったわけでございます。
#73
○矢山委員 いろいろ私も事前に説明を受けてみましたが、今までの情報連絡会議というのか何というのか正式な名称はわかりませんが、やっておるそういう会議と今度設けられようとしておる合同情報会議というのは、かなり性格が違うと私は思うし、そしてまた、その果たす役割も比較にならぬほど大きいと思うのですね。合同情報会議の設置が言われておるのは、緊急事態対処のための基盤整備だ、こう言っているわけです。だから、緊急事態に対処していく、そのためにいろいろのことを安全保障会議等がやっていく、そういうことをやるための合同情報会議というのは基盤整備ということでつくられるというのですから、これは極めて重要な位置づけを持ってくるなというふうに私は考えております。
 そこで、今回、この安全保障会議の設置と同時に行う予定になっております内閣官房の再編では、合同情報会議のほかに内閣広報官を新しく設置する、これは先ほど言いましたが、内閣調査室の情報分析機能を強化するなど、情報部門の強化が大きな柱になっております。政府が尊重すると言っておる昨年七月の行革審答申では、中を読んでみると、補佐体制の強化だとか情報の秘魔だとか、こういうことがしばしば出てくるわけでありますけれども、そういう中で情報統制の重要性というものが強調されておりますが、そういうことを考えますと、今回の安全保障会議の設置と内閣官房再編も一つには情報の統制にねらいがあるというふうに私は思うわけですが、いかがですか。
#74
○谷口政府委員 情報調査室の改組などと言われたのでお答え申し上げますけれども、内閣調査室の情報調査室への改組につきましては、やはり内閣の重要政策に関する情報の収集あるいは分析体制を強化するために改組する必要があるという御指摘があったわけでございまして、決して情報の統制をねらうということではないわけでございます。
#75
○矢山委員 あなたもこの行革審の答申を一遍よく読んでみて素直に考えられたらどうですか。「緊急事態対処のための基盤整備」として合同情報会議をつくる、内閣広報官を新しく設置して内閣の広報をやる、内閣調査室の情報分析機能を強化する。そして、そういうことを書いておるこの行革審の答申の各所には秘密を守ることの重要性あるいは情報の秘匿、そんなものがふんだんに出てきておるでしょう。これを総合して考えたら、これは情報の統制をねらっておるなとだれしも思うわけです。ただ、あなた方がそうだとおっしゃらぬのは、そうだと言ったらぐあいが悪いからおっしゃらぬだけでしょう。だれが読んだって、それを実行に移そうとしておるのだから情報の統制を考えておる、だれだってそう思いますよ。もう少し素直に答えたらどうですか。
#76
○谷口政府委員 何回もお答え申し上げて恐縮でございますけれども、私どもといたしましては、内閣の重要政策に関する情報収集、調査、分析する、これが極めて重要であることは間違いないわけでございますし、そういった面で努力してまいったところでございますけれども、今般の行革審では、まだまだ不十分な点がある、情報というのはやはり重要であるということを指摘されまして、その体制を充実強化すべきであるという答申をいただいたものと受けとめておるわけでありまして、決して情報の統制というものをねらうものではない、こう思います。
#77
○矢山委員 情報というものは重要であると指摘されて、その重要な情報にふさわしいような体制をつくっていこう、そして情報の秘匿だとか秘密を守るとかということが非常に重要視をされる、これは当然情報統制ですね。
 そこで、ハイジャック事件の処理に関して政府は、一九七七年のモガジシオ空港での西ドイツの対応、特にその徹底した報道管制を高く評価しておるようであります。例えば日本では、ハイジャックなどが起こるとマスコミが乗客名簿を発表するが、そうすると乗客の家族が騒ぎ出して政府の強硬措置の足を引っ張ることになるので、乗客名簿の発表は抑えるべきだという考え方が政府部内にあるように私は見受けます。そういうように、緊急事態対処のためには情報管理が必要だというふうに政府は考えておるのではございませんか。
 それを私があえて言うのは、戦略問題研究所が「都市ゲリラの研究」ということで発表しておる論文があります。その中に「情報作戦の重要性」というのがあるわけです。それを読んでみると、私が今申し上げましたように記述がなされております。こういうことであります。
 やはり私は、今回の安全保障会議の設置、それに伴う内閣官房の再編成、これは情報管理というのが非常に重要な問題として取り上げられ、そして情報管理にふさわしいような体制を整えるということになっておると考えざるを得ません。あなたはこの「情報作戦の重要性」、これをごらんになりましたか。――長官もごらんになっていないですか。わからないですかね。戦略問題研究所「都市ゲリラの研究」、そこの第二章に「情報作戦の重要性」、こういうことでいろいろ今言ったような記述がなされております。これははっきり情報管理を言っておるんじゃありませんか。どう思いますか。読んでないというなら、私が言ったことの所感を述べてください。
#78
○谷口政府委員 私は読んでおりません。
#79
○矢山委員 情報不足だね。読んでいるんだろうと思うね。読んでいるんだろうけれども、それを読んでいると言うわけにいかないからそう言っているのでしょう。
 次に、平和安全保障研究所、これが昭和五十四年に防衛庁の委託研究として行った「わが国における危機管理の軍事的側面」というレポートがあります。その中でもこの情報管理のことについて言っているわけであります。政府がハイジャックに対して強硬措置をとれば、人質の命を犠牲にする場合も出てくる。「強硬策はつねに賭である。そして国民世論が百パーセントの成功保証を要求する場合、政府はそのような賭には踏みきれない。」云々、「ゆえに、対テロ危機管理態勢の整備を図ることとならんで、世論の反応という問題が軽視されてはならない。つまり、政府による危機対処能力の行使を是認する世論形成が手掛けられなければならない。」まさにこれは世論の管理、情報管理を言っているわけですね。このことのために合同情報会議をつくったり内閣広報官を設置するんじゃありませんか。そうなんでしょう。これは全部を持ってくると重たいから必要なところだけ持ってきたわけです。「わが国における危機管理の軍事的側面」、財団法人平和安全保障研究所、書いてあります。どうですか。これでも、合同情報会議をつくったり、情報の分析をやったり、広報官を置いて内閣広報をやったり、そうすることが情報管理、情報統制、それにならぬというふうにおっしゃるのですか。
#80
○谷口政府委員 再三同じお答えを申し上げて恐縮でございますけれども、今回の行革審の答申で指摘された私どもに関する二点でございますが、情報調査室への改組、収集・分析体制の充実強化ということと、それから合同情報会議の設置につきましては、現在行っております内閣調査室の機能が十二分に発揮できていない、情報の重要性にかんがみさらに強化する必要があるという御指摘を受けたところでございまして、先生のいろいろ御指摘がありました情報の管理ということとは関係はない、こういうふうに思います。
#81
○矢山委員 さっきから御紹介してきましたものは、情報管理ということを非常に重視しておるということを申し上げておきます。そして、行革審答申を読んでみましても、これをまともに受け取るなら、情報管理というのが極めて重視され、そのための今回の法律制定でありあるいは内閣官房の再編であるということは明らかだと私は思います。
 そこで、合同情報会議では具体的に何をやりますか。
#82
○谷口政府委員 我が国の内外情報のうち、いろいろあるわけでございますけれども、特に内閣の重要政策に関するものについて、関係行政機関と緊密な連絡を保つためにこの会議を設置するものでございます。したがいまして、情報の総合的な把握を図るというところにその任務があろうかと思います。
#83
○矢山委員 情報の収集、総合的な把握、同時に情報の分析、評価、こういうものもやりますわね。情報を最高度に有効に一つの目的のために使おうと思えば、集めただけではだめ、調査をしただけではだめ、分析をし、それを評価し、そしてどんどん広報で流していくことが必要なんです。合同情報会議はその重要な部分を担うんじゃありませんか。一体どういうことをやらせようとするのか。今聞いてもそのくらいのことしかお話しになれぬわけです。これについても、恐らく何らかの、政令にするかあるいは省令にするか規則にするか、何にするかは別として、どういうことをやる、構成をどうする、そういうことが決められてくるのだろうと思うのです。
 そこで、もう一つここで改めて聞いておきたいのですが、情報の分析ということを今事改めて行革審の答申が指摘をし、それを積極的に入れようという、これはどういう見地からですか。情報の分析というものをどういう見地から積極的に取り入れようとしているわけですか。
#84
○谷口政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおりでございまして、私ども現在、情報の収集、調査、それからその分析というものをやっておるところでございますが、行革審では特に収集、それから分析、そういった面で、現在やっている内閣調査室の運営状況を見ているとまだまだ足りないという御指摘があったわけでございます。私どもとしましては、この答申を受けて、収集、調査あるいは分析体制そのものにつきまして、情報調査室への改組とともに自主的な内部の検討というものを今も続けているということでございます。
#85
○矢山委員 機能強化が特に言われているというのは、先ほどおっしゃったように、今までもやはり情報の分析というのはやっておったと思うのですよ。しかしそれではだめだ、情報を最高度に使うためにはもっと徹底した分析業務が要るということでやったのだろうと思うのです。
 そこで、次にお伺いしますが、内閣調査室、これはいろいろ読んでみると、日本での心理戦の実施機関ということでつくられたんだなという感じを私は受けておるのです。今度内閣官房の再編をやるというのも、この心理戦機能を強化しょうと思っているのじゃないか。つまり情報管理をやる、その中で心理戦を重視した、そういう方向を考えておるのじゃないか、そう思うのですが、どうですか。
#86
○谷口政府委員 私どもは、内閣の重要政策に関する情報の収集、調査、分析をするということでございまして、そのようなことは全く考えておりません。
#87
○矢山委員 あなた、そのようなことは全く考えてないと言ったって、中曽根さん自身が、五十九年三月三十日の参議院予算委員会の答弁で、諜報とか謀略とか破壊活動をどう思うかというふうに聞かれて、「近代防衛におきましてはインテリジェンスオペレーションというのは必要であり、日本の防衛に役立つと思っております。」というふうに答えておるじゃありませんか。これはまさに、今回の安全保障会議の設置、内閣官房の再編成、そしてそこに盛り込まれてきた新しい所掌事務、あるいは新しい機構、そういったものは心理戦機構を整備するということにねらいがある。これは中曽根さんがおっしゃっているじゃありませんか。この発言から私はそう思うのですよ。どうですか。
#88
○谷口政府委員 総理大臣の答弁について私がここで申し上げる立場ではないわけでございますけれども、私ども内閣調査室は、内閣の重要政策に関する情報の収集、調査、分析をやるということが任務でございまして、それに尽きるわけでございます。それ以外の何物でもないということでございます。
 なお、先ほど先生の御質問の中で、合同情報会議の椎成とか運営について政令あるいは省令マターになるのじゃないかというようなお話もございましたけれども、これは、先ほど来申し上げておりますように、現実に私どもが関係行政機関と一対一とかあるいは三以上の機関が集まって随時あるいは定期的に情報交換をしておる、それを今回官房副長官が主宰する合同情報会議ということでより総合的な把握をしようということでございます。そういったことにつきましては政令、省令マターでもないのじゃないか、こう思っておるところでございます。
#89
○矢山委員 この答申に書いてあるように「内閣官房副長官が主宰し、情報調査室、外務省情報調査局、防衛庁防衛局、警察庁警備局、公安調査庁等を構成員とする「合同情報会議」を設け」となっておるから、政令だとか何だとかそんなものでやる必要もない、こうおっしゃっているわけですね。
#90
○谷口政府委員 そのとおりでございます。
#91
○矢山委員 そうすると、この話が出たからついでに聞きますが、従来情報連絡のためにやっておった定期的あるいは随時的な会議というのは、合同情報会議ができたらもうやめるわけですか。
#92
○谷口政府委員 現在やっております情報交換の会議でございますけれども、これはそれぞれのレベルでやっておりますし、必要性がありますので、引き続き実施していくつもりでございます。
#93
○矢山委員 国防会議もいろいろ委託研究などをやっておりますね。例えば先ほど引用した「わが国における危機管理の軍事的側面」、これは委託研究をやられたものだというのですが、この全部を正式に提出していただきたいと言ったけれども、これは委託研究だから出せないということで、とうとう出してもらえなかった。そうしたらどこからか手に入ったから、これは見ているわけですね。
 そこでお聞きするのですが、心理戦などについてはこれまで何か研究をやったことがありますか。
#94
○塩田政府委員 先ほどの御指摘の資料は、国防会議が委託したものではございません。
 それからなお、心理戦の研究について委託研究をしたことがあるかというお尋ねでございますが、国防会議としてはございません。
#95
○矢山委員 そうすると、これは国防会議じゃなくて防衛庁か。
#96
○西廣政府委員 御承知のように、近代戦では心理戦なりあるいは謀略みたいなことが使われるということは当然考えられるわけでありますが、我我としては、それに対応するためには、やはりタイムリーに正確な情報を知らせるということが最も有効な対応策であるというふうに考えておりますが、その種のいわゆる心理戦に対応するために何をすべきかということについて、全く研究をしていないというわけじゃございません。結論的には今申し上げたようなことであります。
#97
○矢山委員 そうすると、心理戦研究をやっていますね。やっているんでしょうね、これは。一九六〇年版の防衛年鑑によりますと、国防会議事務局でやっておると書いてあるんだな。「諸般の国防問題について調査研究を行なっている。」として、「列国心理戦の現状分析」を行っておると書いてありますね。防衛庁は今の答弁ですが、国防会議がやっておると書いてあるんだがね。国防会議、全然やってないのですか。
#98
○塩田政府委員 今思い当たりませんので調べてみますけれども、私の記憶する限りでは、心理戦についてはやっていない、こういうことでございます。
#99
○矢山委員 国防会議の方は今聞きますとどうも記憶がはっきりしないようですが、私が先般質問書で「国防会議又は国防会議事務局に、これまで設置したことのある専門家会議、下部機構、研究会等はあるか」という質問に対して、答弁書では、先ほど言いましたが「次期対潜機及び早期警戒機専門家会議だけだ」、こういうことのようなんですね。ところが、そこへ差し上げたのをごらんいただけばいいのですが、これは部外秘になっているのですが、「昭和三十五年三月 国防会議事務局」とある「心理戦機構に関する研究」という題名の、これは全部持ってきていませんが、全文が三百二十八ページの文書があります。その「はしがき」を見ると、「昨年度に引続き心理戦研究会は心理戦の共同研究を続け、今年度のテーマとしては『心理戦の機構』を取りあげた。」と書いてあります。
 この心理戦研究会というのは設置をされたということは確かなんですか。そして、まだ今もこれはあるのですか。
#100
○塩田政府委員 突然のお尋ねでわかりませんので、調べさせていただきたいと思います。
#101
○矢山委員 では、調べていただくまで次の――それでは総務庁が見えたようですから、そっちの方に質問を移して……
#102
○志賀委員長 ちょっとお待ちいただきたいと思います。
 この際、先ほどの行政組織法の改正に関する質疑について百崎審議官から発言を求められておりますので、これを許します。百崎審議官。
#103
○百崎政府委員 先ほど国家行政組織法の改正法案をいつの国会に出して、いつ成立したかというような御趣旨の御質問があったようにお聞きいたしておりますが、先般の国家行政組織法の改正案は、五十八年の三月十一日第九十八回国会に提出いたしまして、九十八、九十九国会、いずれも継続審査に付されまして、五十八年十一月二十八日に成立をいたしております。そして五十九年の七月一日から施行されている、こういうことになっております。
#104
○矢山委員 もう一遍言ってください。最初出されたのは何年ですか。
#105
○百崎政府委員 五十八年三月十一日でございます。
#106
○矢山委員 それは違いますよ。国家行政組織法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案、これを最初に国会に出しているのは、昭和四十六年、第六十五国会です。このとき提出された整理法と百国会で成立した整理法とほとんど同じであります。四十六年の整理法案でも、同じように北海道開発法七条、経済企画庁設置法十一条の二、科学技術庁設置法十五条、外務省設置法六条八項、自治省設置法八条、これらは顧問や参与の設置を決めた規定でありますが、これを削除することに全部しておるじゃありませんか。すなわち、顧問、参与を法律から落とすというのは少なくとも昭和四十六年から政府の方針だったのであります。それにもかかわらず、四十八年の内閣法改正では、内閣参与に関してはやはり法律の根拠が必要だと政府も考えておったんではないかと思います。このような重要な問題を、政府の気まぐれで、あるときは法律事項としたりあるときはそうでなかったりというようなことは、ちょっと許されぬのじゃありませんか。
 もう一遍言いますよ。顧問、参与、これを削るという問題が最初出たのは、四十六年の第六十五国会です。そしてそれは廃案になりました。そしてまた、たしか四十八年にも出ております。そのときも廃案になった。そしてずっと出ておらなかったのが、今度第百国会で出されて成立したということなんですね。だから、先ほど言いましたように、四十八年のときに内閣参与を法律事項として入れるというこの法律が出た。それより前の四十六年、四十七年に参与、顧問を削るという法律案が出たけれども、これは通らなかった。そういう背景の中で、四十八年に法律事項として参与を置くという改正案がまた出てきた。こういうことなんですよ。そういう経過をたどっておるのです。そのときの会議録はここに全部あります。そのときに対象になったのが、今読み上げましたが、北海道開発法、科学技術庁設置法、外務省設置法、自治省設置法、こういうところです。どうなんですか。この問題は今に始まったことじゃないですよ。四十六年の六十五国会のことは知らぬと言うんですか。
#107
○百崎政府委員 先ほどちょっと御答弁申し上げましたのは、先般の改正法案につきまして申し上げたわけでございますが、今の御質問によりますと、確かに四十八年当時ですか……(矢山委員「四十六年ですよ」と呼ぶ)四十六年でございますね。各省庁に置かれている顧問、参与等の特別の職につきましては、その設置形式が法律によるもの、あるいは政令によるもの、省令によるもの等いろいろ区々になっておりましたので、これを統一することにいたしまして、国家行政組織法の改正案に盛り込んでおります。それで、内閣に置かれる顧問、参与は、四十年代当時、内閣補佐官とか内閣参与とか、そういう名称でたしか内閣法の改正案を出したことはございますが、一つは、国家行政組織法は先生御承知のように、内閣の統括のもとに置かれる各省庁の組織の基準を定めるという法律でございまして、内閣に置かれるいろいろな機関の設置は内閣法で規定する、こういう関係にございまして、組織法の改正と内閣に置かれる機関を法律で定めるか政令で定めるかということは、直接関係はございません。
#108
○矢山委員 だから、私が言っておるのは、四十六年に最初に顧問、参与はもう置かないということの法律を出した、ところがそれは通らなかった。四十七年にも出したけれども通らなかった。そういう状態の中で四十八年に内閣に参与を置くという法律改正を出してきた。だから、内閣に参与を置くということは法律事項にしなければいかぬなという考え方があくまでも政府にあったということを私は言っているんですよ。内閣に参与を置かなければいかぬという考え方があったから、各省庁の顧問、参与をなくする法律を出しながらも、内閣については参与を法律事項として出してきた。経過としてはこういうことになっているんじゃないか、そう言っているのですよ。だからやはり参与、顧問というのは法律事項にすべきだ、こう言っているわけです。わかりますか。
#109
○百崎政府委員 確かにそういう経緯は先生御指摘のとおりでございますが、内閣に置かれる顧問、参与をどういうふうに格付するかということは、今先生の御指摘のような話とは直接結びつくものではなくて、むしろ顧問、参与あるいは内閣の補佐官の職務内容を非常に重視して、かなりハイランクの組織をつくるという場合には法律で定めるようなことになりましょうし、恐らく四十何年当時はそういう考え方で、非常に重きを持った補佐官を置くということで法律改正案を出したのではないかと思います。
 それから、各省に置かれております顧問、参与は現在すべて省令あるいは訓令等で置かれておりますが、いわば内閣に置かれるそういう顧問、参与のウエートといいますか、これはある程度、今回の措置はそれほど、四十何年当時のものよりは、軽いという言葉はあれですけれども、比較的ウエートを低くした、そういうものを想定しておられるのじゃないか、私どもはそういうふうに理解いたしております。
#110
○矢山委員 あなたがおっしゃるとおりに、今度内閣官房に置く顧問、参与というのは軽いものだという考え方があるのです。答弁の中に出てきた。(「前川レポートはどうなんだ」と呼ぶ者あり)それほど軽いものなら置くなど私は言っているわけです。置かぬ方がいい。私的諮問機関というのは私の諮問機関で、総理なら総理が勝手につくっていく諮問機関だ。これは正規の法律によってつくられる審議会よりかなり比重が軽いのです。そのことは政府も認めておられるでしょう。そのかなり比重の軽い諮問機関が今や日本の政治を動かしているわけですよ。そういう実態が生まれているわけだ。そういうことから考えるときに、安全保障会議が設置をされ、それに伴って内閣官房組織が変えられてくる。そういう中で参与、顧問を置く。極めて軽いものだという。ところが、反対に、この内閣の参与、顧問というのは極めて学識経験の深い人だということだから、これが諮問機関のような大変な役割を果たすのじゃなかろうかと私どもは疑わざるを得ぬのです。だから、軽いものだ軽いものだとおっしゃるならこれはつくらぬようにしてもらいたい、そう私は思っているのです。
 官房長官、これはつくらぬようにしてもらいたいのです、軽いんだ軽いんだというなら。軽いのが今大変な働きをしているわけですから。どうなんですか。
#111
○後藤田国務大臣 今総務庁の事務当局からお答えをいたしましたように、四十年代、これは三十八年の第一次の佐藤調査会以来、内閣の機能を強化しなさいというような一連の経緯の中で、官房長官の数をふやしたらどうかとか顧問、参与を置いたらどうかとか、いろいろな議論があったわけでございます。それらを踏まえながらいろいろな立法の経過もあったと思いますが、今回の第二臨調の御答申、そしてそれを受けた行革審の内閣機能の強化については、要するに内閣の官房の中のスタッフ組織を強化をする、そして総合調整機能を発揮しなさい、こういうことで今その仕事に取りかかっておる。その中で、国防会議の関係のものだけはこれは立法事項でございますから今御審議を願う、それ以外の件はすべてこれは政令事項でございますから政令として改正をさせていただこう、その発足は法律をお認め願えれば七月一日というように平仄を合わせておこう、こういうことでございます。
 その中で顧問、参与は今後どうするんだということでございますが、先ほど来お答えいたしておりますように、昔であれば、随分古い話ですけれども、内閣参与といえば、例えば正力松太郎さんであるとか、えらい大変な当時の閣僚級以上の人さえ置いた時代もあります、いろいろな経緯がある。しかし今度の、顧問、参与を云々したらどうだという行革審の御答申はそこまでは考えてない、そういう意味合いからやや軽くなっているのではないか、こう御答弁を事務当局がいたしておる。そうすると、矢山さんはそんな軽いものならやめてしまったらどうだという御意見でございますが、これは政策の選択判断の問題でございますから、御意見としては拝聴させていただきます。
#112
○矢山委員 軽い軽いというのが大変な役割を果たすということは、後藤田官房長官みずから知っているんじゃないですか。今話に出た前川レポート、あれなんか私的諮問機関ですね。それがひとり歩きしてしまって、自民党の中でも大変なんでしょう、あれをめぐって。国政に大変な影響を及ぼすほど、軽い私的諮問機関が出したものが大きな影響を持つのですよ。だから、軽い軽いと言っている顧問、参与が重大緊急事態の対処マニュアルをつくるときに大変な役割を果たすだろう、私はそう思って実は心配しているのです。
 そこで、もうわかりましたか、心理戦研究会というのは。その当時できて、今もありますか。
#113
○塩田政府委員 先ほどもお話がございましたように、先生からの質問主意書が出ました段階で、この種の国防会議の下部機構を私ども全部調べてみたわけでございますが、既に御提出申し上げておりますように、一件しかなかったということでございます。
 今、この御指摘を受けて調べてみたわけでございますが、当時の資料がございませんのでよくわかりませんけれども、我が方、国防会議から委託したものではないということはわかりました。しかし、それ以上のことは現時点でわかっておりません。関係資料も当時のことでございましてございませんし、当時研究会があったかどうかを含めて関係資料がございませんのでわかりません。
 なお、最後にお尋ねのありました、現在もこの研究会があるのかという点につきましては、これはございません。
#114
○矢山委員 どうも、私どもが政府に資料要求をしますと、あれもだめ、これもだめで、全然出さないのですよ。だから、今の問題に関するものだって、当たりさわりのないものだけは出てきたわけだ。専門家会議で、次期対潜機及び早期警戒機専門家会議、これだけがあった。これは当たりさわりがないのだ。全くないことはないかもしれぬけれどもそれほど大きく当たりさわりはない。
 ところが、心理戦研究会というのが設置をされておったのですね、「昨年度に引続き心理戦研究会は心理戦の共同研究を続け、」というのだから。これは国防会議なんだ。「国防会議事務局 部外秘」になっている。こういうものが現実にあるのですよ、ないないとおっしゃっているけれども。
 この文書の中身をちょっと言ってみましょうか。この文書によりますと、心理戦の活動内容として、次の五つが挙げられております。「国内の目標に対する広報、宣伝又は煽動」、「国外の目標に対する広報、宣伝又は煽動」、「国内の世論の調査、分析」、「外国に関する情報の収集、評価及び活用」、「政策全般に対する心理戦的見地からする調整」。そしてこの文書は、各国の心理戦機構と情報機構を検討しております。そして、それをやった上で、第三編で「わが国における心理戦機構」として、A、B、Cという三つの案を出しております。
 A案というのは「現状にこだわらず新しい機構を政治組織の中枢に持つ」というものであります。B案というのは「米国の例を充分に参考としながら、立法措置までは考えないでよいから、政令程度で処理し得る組織」というものであります。C案は「政令等の考慮をわずらわさずに、既存の組織の運用によって目的を達せんとする」というものであります。
 例えばB案では、ここに図面まで入っていますが、国防会議事務局と内閣調査室を強化し、そしてまた、今回の合同情報会議と同じような構成の国家情勢判断会議というものを新設する、その上で国防会議、内閣調査室が情勢判断、内閣官房、内閣審議室が政策調整、総理府広報室が心理戦のための情勢分析と計画の作成をやる、こういう構想を打ち出しております。そして、この文書が出た四カ月後の一九六〇年七月には、総理府広報室が実際にこのころ設置された。今回の内閣官房と国防会議の再編も、こういう意識に立って行われるのじゃないかと私は思っているわけです。
 だから、この心理戦研究というのは、私は知らぬとおっしゃるけれども、こういう研究を何年かけたか知らぬが、「昨年度に引続き」とか「共同研究を続け、」というのだから、恐らく最低でも二年、二年以上かけてこういうことをやっておる。それが、わからぬでは済まぬと私は思うのです。
 安全保障会議が置かれて、先ほど来言っている情勢の分析あるいは広報は内閣がやる、顧問、参与を置く、合同情報会議を置く、そして情報の秘匿を考える、秘密保持をやる、いろいろなことが言われておる。これはまさに、重大緊急事態対処を初めとした危機管理の体制をつくり上げようということ以外の何物でもないじゃないですか。そしてしかも、当然法律事項となるべきものを法律事項にもしない、政令で処理してしまおうとする、その政令ができておるのかと言えば目下検討中だ、まだできていない。これじゃ安全保障会議の審議はできません。私はできぬです。
#115
○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、御指摘の資料につきまして私どもの方に資料がございませんので、その点についてはお答えをいたしかねます。
 ただ、今回の安全保障会議の設置に当たりましては、今御指摘のような資料を使ったのではなくて、私どもとしてはあくまでも昨年、六十年七月の答申の趣旨を生かすべく立法いたした、こういうことでございます。
#116
○矢山委員 内閣官房組織令の案を出してもらえますか。そうして今提起した問題、これは内閣法改正を当然伴うと私は思う。それに対する対応策をきちっとしてください。
#117
○荘司政府委員 ただいま御指摘の内閣官房全体の組織令でございますけれども、私どもが承知いたしておりますところでは、現在、内閣参事官室、内閣審議室、内閣調査室、内閣広報室、それに国防会議事務局があるわけでございますが、これを新たに、内閣参事官室、内政調整室、外政調整室、安全保障室、報情調査室、内閣広報官(内閣広報官室)という形に再編成するという概要については案を持っておるわけでございまして、この点につきましては、先生の質問主意書でも御質問をいただきまして、基本的にはそういった再編成の方向で考えておる、ただ政令としての形にする細部についてはさらに所要の検討をしているというお答えを申し上げたところでございまして、現段階では、そういう基本的な考え方の御説明ということで再編成の概要については御理解いただきたいと存ずるわけでございます。
 それから、先ほど来個々に御指摘の広報官あるいは顧問、参与の問題といった点につきましては、先ほど来お答えいたしておりますように、私どもとしては法律事項としない方向で検討しているということでございます。
#118
○矢山委員 「私どもとしては法律事項としない方向で検討」とおっしゃるのですが、先ほど来いろいろ議論してきましたように、今度の内閣官房の再編が持っておる意味、あわせて安全保障会議が設置される意味、それらを総合的に考えたら、内閣官房で今度やろうとしておる情報の分析とか広報といったものは、極めて重要な意味を持つと私は思うのです。だから、それを所掌事務に内閣法を改正して加えないということは納得できない。
 参与にしてもしかりです。先ほど来参与というものがどういう役割を果たすかということで私の考え方を申し上げてまいりましたが、かつては参与も法律事項だった、それを落とす、これも納得できない。
 かつて情報の分析、広報というものは法律事項として入れられかけたことがある、それがただ法律が成立しなかっただけの話です。
 だから、情報の分析とか広報とか、参与、顧問、これはやはり法律事項にすべきです。
#119
○的場政府委員 先ほど総務庁からも御答弁がございましたように、参与、顧問等については国家行政組織法の方でも従来法律であったものを政省令で設置できるように改正をした。内閣法と国家行政組織法とは確かに形が違います。それから、昭和四十年代に内閣補佐官制度という関係で内閣参与を法律事項として考えたこともございます。しかし、現段階におきましては、国家行政組織法の方でも法律によらずに政省令等で顧問、参与が設置できることになっているということもございますし、そういう点もろもろ考えまして、また先ほど来お答えいたしておりますように、現段階で直ちに顧問、参与を置くことを考えているわけではございません。したがいまして、法律にすることは考えてないわけでございます。御理解いただきたいと思います。
#120
○矢山委員 それは理解できないと言っているのですよ。あなた自身も言ったように、国家行政組織法による府、省、庁、委員会と内閣官房とは違うでしょう。だから、国家行政組織法によって顧問、参与を政令事項に移したとしても、内閣官房にそのまま当てはまる問題じゃない。そういうところから、国家行政組織法の改正案を出して顧問、参与を全部政令事項に移す、法律事項から抜くという法律案を四十六年に出したときでも、その後に内閣官房についてはちゃんと参与は法律事項になっておもわけで、そういう軽く扱うようなことは納得できない。
#121
○後藤田国務大臣 今回の内閣官房の組織の再編という問題は、かねがねお答えいたしておりますように、最近の状況から見て各省の総合調整機能を内閣官房としてはしっかりしなければならない。そういう意味合いから現在の内閣官房の各室について、内政、外政というのは設けますけれども、大体はスタッフ組織を強化する。したがって従来以上にハイランクの職員を設置しよう、置こうということでございまして、特別に新しい権限をそれに付与するとか、そういったような立法事項として法律によってやちなければならないような内容のものは含んでおりません。
 そこで、政令を示せということでございますが、政令は法律が通れば七月一日発足予定をしておりますが、おおよその現在の考え方は私はお示しできると思いますけれども、内部の詳細なものはその時期にならなければ何とも、今その資料を出せと言われてもそれは出し得ない、こう思います。
 いずれにいたしましても、矢山さんがお考えになっているような思い切った制度の大改革というものを予定しているものでは全くないということをひとつ御理解を願いたい。要は、最近の事態に即応できるような――各省がそれぞれ割拠して政府全体としての意思の統合さえできない、これではぐあいが悪い。やはりせっかく今法律に認められておる内閣総理大臣の総合調整機能を強化する意味において、官房長官なり総理大臣に対する補佐のスタッフを強化していこう、これにとどまるのである、かように御理解をしていただきたいと思います。
#122
○矢山委員 こうしてやっておったら時間がたつばかりだが、理解ができぬのですよ。内閣の権限が非常に強化されてくるわけでしょう。その中で今言う情報問題が特に重視をされておるわけですよ。だから情報の分析をやる、内閣の広報をやる、そういうものがちゃんと行われようとしておるのですよ。だから所掌事務とすれば、情報の分析、広報というのは、情報管理を考えておる今度の改正の中では極めて重要なものなんですよ。それを現在内閣法に所掌事務としてないままでやろうということは絶対に承服できないと言うのですよ。だから内閣法改正を出してきなさい。それまで物を言いません。
#123
○後藤田国務大臣 それは矢山さん、いかがなものでしょうか。要するに、内閣の権限を強化するというのであるならばそれは新しい法律が要るかもしれません。私は先ほど来お答えしているようにそうではない。あくまでも内閣の総合調整の機能というものは現在の組織の中である。しかしながら、それのスタッフ組織が弱体であるがゆえに十二分な補佐ができていない。したがって、その補佐が十分にできるようなハイランクの人間を職員として置けるように改正をしよう。これにとどまるのだから、新しい権限付与ではありませんので、立法と言われても立法の必要はないではないか、政令事項でいいではないかと私はお答えをしておる。
 そうすると、あなたの御質問の中には、情報について分析が入っておるのは新しい、こうおっしゃる。それはあなたは御案内のはずだ。情報の調査といえば、調査してどうするのですか、調査すればおのずから――まず収集があります、それから調査がある、調査があればそれは一定の評価を下すのですよ、評価をするのなら分析をするのは当たり前の話で、現在の内閣の調査室だってちゃんと分析はしているわけですよ。ただ、それにもう少ししっかりしなさいというのが私は行革審の御答申だと思うのですよ。あるいは公安調査庁だって、名前から見たって公安調査庁ですよ。しかしこの調査だけかというと、そうではない。収集して、そして調べて、そしてその結果を一定の分析をして判断をする、評価をするというのが常識ではありませんか。だから私は、分析という機能が新しく加わるじゃないかという御意見は、残念ながらちょっと法律的に見てもおかしいのではないかな、かように理解するのです。
#124
○矢山委員 あなた、法律的におかしいことをかってやろうとしたわけですか。情報の収集、調査しかないから分析機能を加えようとして、内閣法の改正を提案しているのですよ、先ほど指摘しましたように。広報というのが所掌事務にないから広報を加えようとして、法律改正を出しているのですよ。そんないいかげんなものですか、法律の改正というのは。それこそますますうなずけませんね。それは情報の収集、調査をやる中に分析というのは入っているのかもしれませんよ。あなたがよく記者会見をやってしゃべられるときに、恐らく多少あなたの頭で分析をしながらしゃべっているのだろうと思うのですよ、あるいは人の知恵をかりて。しかしながら、それは本格的な分析じゃないのですよ。国政を行う上に本当に情報というものをいろいろと役立たせようとするなら、情報を収集し、いろいろ調査をし、さらに情報を分析するという機能はどうしても要るのですよ。その情報分析機能というものが今まで欠けておった。内閣法にもない。だからわざわざ情報分析という問題が出てきたんだけれども、法改正をするのは嫌だから政令でやっつけよう、こういうことなんでしょう。広報だって同じ。だからだめだと言うのですよ。
#125
○後藤田国務大臣 それは各省の官制の中に、調査あるいは分析と書いてあるのもあるし、いろいろありますよ。あるが、およそ情報の調査といえば、それは分析、評価が入るというのが常識でははないのですか。したがって、別段新しい、矢山さんが御心配なさっていらっしゃるようなことを今回の改正で考えているわけではない、かように御理解をしていただきたい、こう思うわけです。
#126
○矢山委員 あなた、そんな大層なことを考えているのじゃないとおっしゃるのですが、あなたは行革審答申を読まれたのでしょうね、その該当部分は。読まれておるのなら、これは大したことが書いてありますよ。先ほど来御指摘申し上げているように、大層なことでないのなら全部やらなければいいじゃないですか。今までどおりでいいということになる。今までどおりではいけぬから、大層なことをやろうと思って、行革審答申が出、それをやっているのでしょう。そういうように、言葉でごまかすというのは私は大嫌いです。それはいかぬですよ、やはり正直に言わなければ。正直に言うところに議論がかみ合ってくるのですよ。今のようなことばかり言われておったのじゃ、これは議論がかみ合わないのですよ。
#127
○後藤田国務大臣 私は、今度の改正の中身を頭の中に置きながら率直簡明にお答えしているのです。正直にお答えしているのです、絶対にあなたが御心配のようなことはないじゃありませんかと。それならば改正するなとおっしゃる。そうじゃないのです。
 私は、先ほど来申し上げているのは、内閣官房が本来、最近の状況にかんがみて、各省が余りにも割拠の弊が出ている、これは行政の総合調整をしっかりやらなければならないではないかという、この総合調整機能の強化として、官房長官なり総理大臣を補佐するスタッフ組織を強化しろ、これが基本でやっているわけである。したがって、内閣に新しい機能を付与しようというものではないのだ、かように私は申し上げておるので、これは正直率直にお答えを申し上げているので、そのままにひとつ御理解をしていただきたい、こう思います。
#128
○矢山委員 私は今ので納得したわけではございません。より上級の次官クラスを入れて機構強化をしようというのは、だてやひょうたんにやっているのじゃなくて、それに伴う権限というものも拡大をされていくわけですから、次官クラスを持ってきて補佐体制を強化する、そのときに頭数の、偉い肩書の人間だけそろえて、今までどおりということにはならぬ。今までどおりにならぬから、行革審答申、行革審答申と言ってやっているのでしょう。その行革審答申を見れば、これは御大層なことになる、そういうふうに考えるのが普通です。
 これでやり合ったってだんだん時間がなくなるから――本当言ったらこういうところで質疑をとめるべきなんです。本当の話が、私はそう思いますよ。組織令も出てこない、何もかも政令に移してしまう、国会の審議は空洞化される、これだけ小ばかにされたら、やはりもう審議でもとめて横になりたいですよ、本当に。やめようか。(発言する者あり)
 それでは、今言ったようにもうとめてしまって、こんな危険な物騒な法案をぶっつぶしたいのだけれども、どうもなかなか私が一人そう頑張ってみたところで動きそうにもないから、これから続けてやりますが、しかし、これは大変なことだと思いますよ。
 昨年の行革審の答申によりますと、安全保障会議は「重大緊急事態に対処する政府部内の情報連絡、意思決定の仕組み等に関するマニュアル」や「重大繁急事態対処の基本方針」などについて「平常時から調査審議し、」また安全保障室も「各種マニュアルの整備等について、関係各省庁の施策の総合調整を行う。」ということになっております。安全保障会議として具体的にはどのような基本方針、どのようなマニュアルをつくるのですか。ちょっと説明してもらいたいです。
#129
○塩田政府委員 マニュアルにつきましては、しばしばお答えいたしておりますけれども、政府の中の、関係省庁の中の連絡体制の整備、意思決定の仕組みといったようなことについてあらかじめ定めておこう、こういうものでございます。
 「基本方針」というのがございますけれども、これは起こり得る事態がどんなことかわかりませんものですから、すべての事態についての基本方針ということはこれはなかなかあり得ないと思いますけれども、例えて申し上げてみますと、現在で言いますと、既にハイジャックというのが何回かございました。そういうことについては既に防止対策本部ができて、政府としての基本的な方針ができております。こういったようなことが安全保障会議ができれば逐次整備されていくのではなかろうか、こういうふうに考えております。
#130
○矢山委員 そこで、答申の中には「重大緊急事態」しか書いてないんですね。ところが、例えば防衛出動事態については、安全保障会議では、政府全体の対処方針についてのマニュアルとか基本方針というのはつくらないのですか。これはどうなんです。
#131
○塩田政府委員 お尋ねの趣旨は、防衛出動ですから、七十六条の防衛出動の可否について国防会議に、第四号ですか、第四号で諮問がかかってくるわけですが、その場合の諮問の手続なりぞれに関連するマニュアルという意味でのお尋ねでございますれば、それは当然考えております。
#132
○矢山委員 つくるわけですね。そうすると、つくるということになるとどういう内容になるのですか、それは。防衛出動事態に対してマニュアルをつくるという、どういう事態を想定してマニュアルをつくっていくのですか。
#133
○塩田政府委員 事態そのものは防衛庁の方で把握されるわけですが、私どもの方は、防衛庁の方からの連絡を受けまして、その後国防会議をどういう連絡体制をとりながら開いていくか、またその国防会議で決まったことをどういう形で流していくかといったようなことが、先ほど申し上げました国防会議の側のマニュアルということになろうかと思います。
#134
○矢山委員 防衛庁の側は。――防衛庁長官どうした、来ておらぬのか。
#135
○西廣政府委員 国防会議で言われるマニュアルというものは私どもまだ十分理解いたしておりませんが、いずれにいたしましても、防衛出動の下令に際しましては国防会議で御審議をいただくことになっております。それについて、私どもとしては、当然のことながら、防衛出動不令を防衛庁の方からお願いをするということになれば、そういう事態がなぜ下命が必要であるかという情勢分析その他について資料を添えてお願いをすることになると思いますが、その際どの程度のと申しますか、あるいはどういったたぐいの資料が必要であるかとか、そういったことについて逐次事務局の方とも御相談してまいりたいというふうに考えております。
#136
○矢山委員 安全保障会議法案の二条の二項に「国防に関する重要事項としてその対処措置につき諮るべき事態」という表現があるのですが、この「国防に関する重要事項としてその対処措置につき諮るべき事態」というのは、これは防衛出動のことが含まれているわけですか。
#137
○塩田政府委員 含まれております。
#138
○矢山委員 含まれておる。そうすると、「日米防衛協力のための指針」によりますと、「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」には、自衛隊は日米共通の準備段階に従って作戦準備を実施することになっておりますね。これまでの政府の答弁では、この「おそれのある場合」というのは、自衛隊法七十六条で防衛出動の要件とされておる「武力攻撃のおそれのある場合」よりも広い概念であると言われておりますね。答弁があります。この防衛協力指針の「おそれのある場合」というのは、安保会議に諮るべき事態に含まれるのでしょうか。このような「おそれのある場合」に関しては、安全保障会議では政府レベルのマニュアルをつくるのであろうと思うのですが、どうなんですか。
#139
○西廣政府委員 ガイドラインにあります武力攻撃の「おそれのある場合」は、今先生申されたように、いわゆる防衛出動下令の要件といいますかそういったとき、いわゆるもう非常に切迫しておるといいますか、日本に対する武力攻撃の蓋然性といいますか、それが非常に高い状況とは違う、もっと早い段階を含むものであるということはかねがね申し上げておるとおりであります。
 それで、そういった早い段階の情勢等について国防会議に諮られるかどうかということでございますが、内容的には、国防会議にお諮りをして何か御決定をいただくというよりも、そういう事態を国防会議のメンバーである主要な方々に知悉していただくといいますか、そういった御報告をする、あるいはそういった情勢を御説明するという場として使われることは当然考えられまするが、そういう状況で何か国防会議の御決定をいただくということになりますと、その一つの節目というのは、先ほど来申し上げておる防衛出動を下令するかしないかといったようなときになろうかと考えております。
    〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
#140
○矢山委員 自衛隊法七十六条で言っておる「武力攻撃のおそれのある場合」と、ガイドラインで言う場合は、これが範囲がガイドラインで言う場合の方が広い概念だと言われていますね。これについては安全保障会議の第二条の五号ということになるのですか。五号事態じゃないかと思うのですが、これはどうなんですかね。
#141
○塩田政府委員 規定からいえば御指摘のように五号事項ということになるわけですが、今防衛局長からお答えもありましたように、今のガイドラインのその段階で国防会議に何か諮問をして決定をするというようなことが果たしてあるのか。むしろそうじゃなくて、防衛局長のお答えの中にありましたように、そういう事態でありますから、情勢がかなり緊迫していることは事実であろうと思いますので、そういった情勢報告のための会議というようなことはあるいは考えられますけれども、ここで言うところの諮問、答申という段階ではまだないのではなかろうかという感じがいたします。
#142
○矢山委員 そうすると、自衛隊法で言う「武力攻撃のおそれのある場合」というのは、これは防衛出動になりますね。ところが、ガイドラインで言うのはそれよりも広い事態。そうすると、これの事態について国防事項としてそれに対処するのにどうするかというマニュアルはつくらぬでいいのですかね。防衛出動事態についてはマニュアルを考えているわけでしょう。これはつくらぬでいいのかな。
#143
○西廣政府委員 ガイドラインにあります「おそれのおる場合」に何をするかということについて二、三御説明申し上げます。
 これは非常に早い段階、国際情勢上いろいろな状況が起きてきた、そういうときに我々として一番必要なことは、まず情報をより的確につかむということになろうかと思います。そういうことで、情報収集のためのもろもろの活動というものをより強化するということが、一つの重要な要素になろうかと思います。
 もう一点は、仮にそういったことが日本の防衛についてかなりかかわりがありそうだということになりますと、日米安保条約というものがあって、米側の支援を受けるのでありますから、それぞれ、日本側は今どういうように物事を認識しているかあるいはどういうことをしつつあるか、それに対して米側はまた米側で、どういう事態と認識をしておるかあるいはどういうことをしつつあるか、こういうことについて相互に相手方のといいますか、日米安保条約を結んでおる同盟国としてそれぞれの状況を十分に知悉をしている必要がある、そういったことで連絡体制等についても十分とられる必要があるというように考えております。
 さらに状況が切迫していくということになれば、自衛隊自身、防衛出動下令時に直ちに十分な行動ができるように、逐次準備なり警戒の体制を高めていくということになると思います。
 そういった段階を逐次踏んでいくことになりますが、いずれにしましても、我々としては、防衛の基本的な態度というのは侵略を未然に防止するということでありますから、状況に応じて日本自身が相当な警戒をし、準備体制も高めておくということで、でき得れば事態を未然に防止するということでありますので、そういった状況に部内的には逐次持っていくことになると思います。その節目、節目で国防会議あるいは閣議等にその状況をどのように御報告するか、あるいはどういう形で御意見を伺うかということはあろうかと思います。そういった点で、この安全保障会議が種々の面で活用されることはしかるべきだと思います。
 さて、その法律にありますのは総理大臣が国防会議にお諮りになるということでございますので、どの段階で何をお諮りになるかということになると、そこで政府として何か特段のことをするということがありませんとお諮りになる意味がありませんので、その点については、現在決まっておる段階としては、防衛出動下令時には当然のことながら国防会議にお諮りをするということになっております。そのほか一つの節目としては、現在の法体系の中では防衛出動待機命令というものがございますが、そういったものは、今現在の手続では、防衛庁長官が総理大臣のお許しを得て出すことになっておりますけれども、その段階で安全保障会議に諮るべきかどうかということが今後論議されるのではないかと考えております。
#144
○矢山委員 どうもこの法律をどういうふうに運用するんだろうかと考えてみても、なかなかすとんと胸に落ちぬというか、よくわからないのですよ。
 例えばガイドラインには「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」ということで、「武力攻撃がなされるおそれのある場合」にはいろいろやって、「整合のとれた共同対処行動を確保するために必要な準備を行う。」あるいは「共通の基準をあらかじめ定めておく。」こういうようなことをずっとやるわけですね。そうすると、それは防衛庁がやること。そして、こういう事態を安全保障会議法の五号事態として、「国防に関する重要事項」について語るだけでなしに、これは内閣総理大臣に意見を述べることにもなっていますね。そこらはどういうふうに運用していくのか、ちょっとよくわからぬ。
#145
○西廣政府委員 前段の基準の問題だけについてお答え申し上げておきます。
 ガイドラインに「共通の基準」というようなことが書いてありますが、これは日米双方がそれぞれ、そのときの状況をどう認識しどういう体制をとっているかということについて、物差しが違っておりますと、例えばそれぞれ一、二、三というレベルを設けたとします、日本側が三なら三のレベルの認識をし、そういう措置をとったと言いましても、アメリカ側から見て今日本が何を考え、何をしているのかわかりませんので、そういう点で日米のとるべき措置について物差しを一致させようじゃないかというのが、まず基本的なガイドラインで言っている趣旨であります。そして、そのうちどの段階をとるかということはそれぞれの国の判断によるわけでありまして、またそれぞれの国の事情が違うわけですから、なるほどアメリカは今三をとったなということがわかれば、我々としてはアメリカがそのときの現状をどう認識し、どう対応しようとしているかわかるということで、その種の記述がなされておるわけであります。
#146
○矢山委員 ようわかったような、わからぬような、共通の基準をあらかじめ定めて整合のとれた共同対処行動を確保するようにやる、それ自体は防衛庁がやる、ところが「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」、これで安全保障会議は何をやるんだろうかな、こういう疑問が残るわけです。何をやるのだろう。防衛庁がやるのは大体わかる。これの中へ書いてあることをやるんだろうと思う。しかし、それに対して、この問題が「国防に関する重要事項」として安全保障会議の問題であるとするならばそこは何をやるんだろうか、これがどうも釈然としない。
 釈然としない話ばかりしておってもいかぬから次へ移りますが、五十三年の七月に当時の福田総理が、国防会議に対して有事法制と民間防衛について検討するように指示しておりますね。これはその後どうなっていますか。
#147
○塩田政府委員 今のお尋ねの点は、五十三年の当時に国防会議の席上で、有事法制の研究を取り上げたらどうかというお話が出たということのようでございます。それを受けまして防衛庁の方で研究はされておると思いますが、国防会議ではその御発言があった、こういうことでございます。
#148
○矢山委員 そうすると、御発言があっただけで、その御発言を引き取って防衛庁の方で有事法制の研究をやってきた、こういうことですね。それで第一、第二分類までが大体できたというのですか、大体まとまりかけておる、こういうことだね。そういうふうに理解したらいいのですね。そうすると今度は第三分類の問題になるのですが、これは防衛庁、今どうしておるのですか。
#149
○宍倉政府委員 防衛庁といたしましては、自衛隊の行動との関係において関連のありそうな事項について内々勉強はいたしておりますけれども、その内容を、どの程度までの勉強ができたかということをここで申し上げられるような段階にはなっておりません。
 なお、この第三分類の取り扱いをどうするかということは、広く政府全体としてこれに対処していこうということでございますので、その辺のところの取り扱いを含めましてまだ具体的には決まっておるとは承知しておりません。
#150
○矢山委員 この第三分類というのは、確かにおっしゃるように防衛庁限りでやれるものでもないし、大変な問題だと思うのですね。したがって、この有事法制の研究の第三分類、これこそが安保会議ができれば安保会議なり安全保障室で作業を行う、こういうことになるんじゃないですか。
 この前、国防会議の事務局の話では、この問題をちょっと聞いたのですが、内閣審議室との間で、どちらがやるべきか話がまとまらないで具体的に手がつかぬ、こういうふうな説明があったように思うのです。だから、第三分類というのは、まさに安保会議ができればここでやるのが最も適した問題だということで、ここで取り上げるようになるんじゃないでしょうか、どうなんでしょう。
#151
○塩田政府委員 第三分類というのはどの省庁が所管すべきか明確でないという項目でございまして、しょせん政府としては、どの省庁が所管すべきかを決めなくてはならない問題であります。したがいまして、その点について政府全体としてどう対応するかを、今後の課題だという先ほどの御答弁もありましたが、具体的にはどの省庁がどの問題を所管するかについて調整をする必要がある、このように考えております。それについては、今度安全保障室ができますれば、安全保障室においてその調整はすべきではないかというふうに私は考えております。ただ、安全保障室がその問題そのものを分担する、そういうことは考えられませんけれども、調整はする必要があるだろう、このように考えております。
#152
○矢山委員 そうすると、どの省庁が所管するのかわからぬような有事法制については、この安全保障室等で、所管する省庁はどれかということを決める、そこまでで、安全保障会議なり安全保障室は直接それを決めるということはやらない。官房長官、こういうふうに確認していいのですか。
#153
○後藤田国務大臣 安全保障室の方で仕分けをする、そしてそれぞれに、この事項はこの省でやっていただくといった総合調整をやることになろう、かように思います。(「この間の答弁と違っている、やると言っていたんだ」と呼ぶ者あり)
#154
○矢山委員 答弁が違うそうですよ。この前は、安全保障会議なり安全保障室で第三分類について直接やるという答弁があったそうですよ。
#155
○後藤田国務大臣 それは私の舌が足りなかったのかもしれません。やるという意味は、もともと内閣は総合調整の機能しか持っておりませんから、内閣自身で直接そういった具体的な立案をやるのではありません。したがって、これはどこの省もみんなやや消極的な立場に立たざるを得ない法律事項であろうと思います。そこで、それらを総合調整をしながら、ここはこの省で、ここはこの省でひとつ検討してもらいたい、こういうことの仕事を私どもの方でやる、こういう意味でございます。
#156
○矢山委員 おかしいね。そうするとこういうことですね。安全保障会議なり安全保障室で、所管のわからぬものについては、これはここ、これはここと仕分けをやる、そしてそこから出てきたものを総合調整をして安全保障室なり安全保障会議が決めていく、こうなるのですか。そうなんですか。
#157
○塩田政府委員 仕分けをいたします。仕分けをしますと各省庁が、つまり所管省庁が決まるわけです。それで、決まりますとその省庁で所管をされて企画立案をされる、こういうことでございまして、それをまた集めて調整するそういう意味ではなくて、仕分けをすることを調整と申し上げているわけです。
#158
○矢山委員 そうすると、確認しておきます。安全保障会議なり安全保障室でやるのは、どこの省庁の所管にさせるかということを調整をする、そして調整をされて、受けた所管省庁でその問題については消化をしていく、こういうことですね。
#159
○塩田政府委員 全くそのとおりでございますけれども、具体的に当たりますといろいろな共管事項みたいなものもございますから、そういうことも含めまして調整をする、こういうことでございます。
#160
○矢山委員 それでは質問を次に移しますが、イギリスでは、有事の際に、立法、司法の権限を政府が掌握して、国民の人権を停止するために、三段階に分かれた非常時権限のための立法計画がつくられておるということが明らかになっております。また、自衛隊が以前実施した三矢研究でも、日本を戦時体制に移行させるための法案を、防衛目的を達成するため直ちに制定を要するという第一グループと、情勢の推移に応じて制定を要するという第二グループに分けて、国会に上程することが研究されておりました。安保会議では、このような有事のための緊急立法計画のようなものをマニュアルとして用意しておくというようなことを考えておるのでしょうかどうでしょうか。
 イギリスの今言いました例につきましては、ダンカン・キャンベルという人が、「ひそかに承認されていた英非常時権限法案」ということで解説をやっております。それに基づいて御質問を申し上げたわけです。
#161
○塩田政府委員 イギリスのそれを私は承知しておりませんけれども、いずれにしましても、安全保障会議ができました後、いろいろなことの勉強は当然あると思いますけれども、今御指摘のような国家の非常緊急法というのでしょうか、そういうものをここでマニュアルとして考えるんじゃないかということについては、考えておりません。
#162
○矢山委員 考えておらぬと言われれば、考えているんだろうなんということは、腹の中は見えぬから言えませんが、しかし三矢作戦研究なんというものが行われた、あるいは先ほど示した心理戦研究なんというものが行われた。しかしながら、これはもう資料がなくなった、わからない、こういうことで済むわけですからね。だから私は、今度の行革審に基づく、今言ったような安全保障会議の設置だ、内閣官房の再編だというようなことをやっておるのは、やはりこういった緊急事態に対応する危機管理をどうやるかということが主眼になってやっておると思いますので、そこでイギリスなんかがこういうことをやっているのを見て、日本でもこんなことを考えているかなと思ったわけです。
 そこで、イギリスでは内閣の中に戦時立法小委員会というのが設置されておるわけです。安全保障会議あるいは安全保障室の中にこういうようなものを置いて、有事法制とか民間防衛に関する作業を進めていこうということは考えてないでしょうね。
#163
○塩田政府委員 考えておりません。
#164
○矢山委員 考えておらぬとおっしゃったことを、二、三年たったら考えておったようだ、実際にやりかけたなんということのないようにひとつお願いをしておきます。
 防衛研究所の第一研究室長の郷田さんですが、この方が、有事の際の国家総動員のための民間非常事態計画を日本もつくらなければならぬと主張しておるのでありますが、安保会議でこういうものをつくろうというのではないのですか。これは郷田さんの書いたものの中にその主張は載っております。いかがですか。
#165
○塩田政府委員 安保会議は、現在の国防会議もそうですけれども、諮問を受けてそれに対して答申をする、こういう機関でございまして、御指摘のようなことを安保会議で考えるということではございません。
#166
○矢山委員 ところが、先ほど来議論になっておりますように、諮問を受けて諮問を受けてとおっしゃるのですが、諮問を受けてだけでなしに、「内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」や「重大緊急事態」、これらに対する「対処に関する重要事項につき、必要に応じ、内閣総理大臣に対し、意見を述べることができる。」こうなっているのですよ。だから、ただ単に諮問諮問とおっしゃるが、受け身だけの問題ではないのですよ。民間における非常事態計画の問題であるとか、あるいは有事においてどう対応するかということの緊急立法の問題というのは、まさにこの三項で消化し得る問題なんですよ。だから私は、諮問だ諮問だと言って逃げておられるけれども、そういうふうに単純に受け取れませんよ。どうなんです。
#167
○塩田政府委員 三項に建議の規定があることは御指摘のとおりであります。したがいまして、その条文からいきまして「国防に関する重要事項」について建議ができる、こういうことになっておりますが、もともと、現在の国防会議あるいは今後の安全保障会議におきましても、事務局、今度は安全保障室になりますが、そういうところで、今の建議にしましてもあるいは諮問案の作成にしましても、具体的に企画、立案するというようなことは能力的にも持っておりません。したがいまして、その建議というのは、具体的にどういう場合にだれの発案に基づいて建議をすることになるのかというようなことになりますけれども、この規定は、現実にはまだ動いておりませんが、今後もそういう点について、どういうふうに運用されていくかということについてまだ的確なものを持っておりません。規定の上から言いますと、御指摘のとおり重要事項であると認めればすべて建議ができる、しかしそれに伴って、実態的にどういうものが考えられるかということについては、何も過去の実例もございませんし、今の時点でどういうことを考えておるということもございません。
#168
○矢山委員 どういうことの場合にどうなるかということを考えてない、考えてないとおっしゃられればそれまでの話なのだけれども、私はそう思えないのですよ、答申を尊重してこういうことをやろうというのですから。「情勢分析及び重大緊急事態の想定」をして「緊急事態対処の基本方針」だとかあるいは「情報連絡、意思決定の仕組み等に関するマニュアル」、こうなっているのですから、そんな弱体な機構ではできないと私は思いますよ。だからこそその答申の中にも、次官クラスをちゃんと配置をし、しかも優秀な人材をそろえて、こういうふうになっているわけでしょう。だから私は、そういうふうに御答弁のように単純に受け取るわけにいかぬのです。この答申とそれからこの安全保障会議設置法案と、そして考えられておる内閣官房の組織再編というものを照らし合わせてみると、これは、今例示いたしましたような民間の非常事態計画だとかあるいはいざという有事を想定しての緊急立法の準備だとか、こういうものが必ずなされてくる、そういうふうに私は考えられて仕方がないのです。しかし、ここに実物がないわけですから、それで議論がそれ以上発展せぬと思うのです。
 そこで、もう一つお伺いしたいのは、緊急事態対処の基本方針やマニュアルをつくった場合、その決定や決裁手続はどうなるのですか。例えば閣議で決定するとかあるいは閣議決定にはいかぬけれども安保会議で決定するとか、ここのところはどういうふうになるのですか。
#169
○塩田政府委員 マニュアル等は閣議決定の必要はないのじゃないかと考えております。基本方針という点につきましては、これは事柄によりましてあるいは閣議に報告するというようなこともあり得るかと思いますが、今の時点でちょっと、どういうものを閣議というふうに具体的なものは持っておりませんが、考え方としましては、マニュアルについては閣議に報告あるいは決定というようなことはないだろう、それから基本方針については事柄によってあり得るかもしれない、それも報告といいますか了解といいますか、そういう形になるかもしれません。その辺はちょっと今定かに申し上げかねるわけであります。
#170
○矢山委員 そうすると、基本方針は事柄の性質、中身によって閣議決定がある場合がある、マニュアルについては閣議に報告、決定はない、こういうことですね。
    〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
 そこで、次にお聞きしたいのですが、後藤田官房長官、緊急時の対処について二月十四日の参議院の予算委員会で、閣議で決めるためには、その前に次官会議を経なければならないが、そうするとなかなか決まらない。だから直接閣議にはかけないで、まず安全保障会議で基本方針を決める。そうすれば「基本方針が決まっておりますから、次官会議でがたがた決まらないなんということはない」、こういう言い方をしておられますね。そして、そういう緊急事態対処の基本方針を平時から安全保障会議で準備しておくというんだから、いざという場合には、閣議で決めるべき内容を実際には首相の諮問機関でしかない安全保障会議で事前に決めておくということになるんじゃありませんか。
 最近中曽根首相は、私がたびたび指摘しましたように、私的諮問機関をつくってはそこで出てきた意見で国政の方向づけをやっている、自分の都合のいいように。この安全保障会議で緊急事態対処方針を決めるということになると、そしてあなたの発言から考えると、まさに閣議なんというものはそっちのけでこの安全保障会議で決まったことがやられていく、こうなるんじゃないですか。こうなるとこれは憲法上、法律上の問題が出てきますよ。どうなんですか。
#171
○後藤田国務大臣 私が申し上げておるのは、重大な緊急事態が発生をした、こういう事態は多くの各省庁に関係を持つわけでございます。ところが、現在の仕組みでいきますと、関係しておる役所の数が多過ぎる、そこでなかなか政府としての基本の方針といいますか考え方すら決まらない、これでは国民の命と財産を守らなければならないという行政府の最大の責任が、行政府の権限の争いとでもいいますか各省割拠の弊のために、適時適切な措置ができないおそれがあるじゃありませんか。その際に、やはりトップダウンで少なくとも方針だけは決めなきゃならぬでしょう。その方針を決めるときに間違った方針を決められたら大変なことになるわけですから、やはりそれを補佐する常日ごろからのスタッフ、組織というものは強化をしておく必要があります。それをやらせていただきたい。
 そこで、基本方針が決まりますれば、物によってはその基本方針それ自体を閣議にかけることもあり得るかもしらぬし、閣議に報告するかもしれない。しかし、それほどの大方針といったようなものでない場合には閣議には報告はしない場合もあり得るかと思いますけれども、大体私は閣議報告には少なくともなると思います。そうすると、その基本方針に従って今度は各省が実施をするわけですから、その実施の過程においては既存の法律の体系できちんとしたあれが決まっておりますから、各省はその方針に従って仕事をしていく。その過程においては、次官会議に付議して閣議にゃらなければならぬものは次官会議、閣議になるし、その省独自でやって必ずしも他省庁に直接の関係がないといったような事項も物によってはあるかと思う、それはそれで各省でどんどん仕事をしていけばよろしい。こういうことでございますから、いずれにせよ、この安全保障会議というのは具体的な措置を実行する機関ではない。基本の政府の方針というものが決まらなくて今まで大きな穴になっておりますから、その考え方を決めてそれに従って各省の既存の組織、既存の法令で仕事をやってもらおう、こういうことでございますから、そこはひとつぜひ御理解をしておいていただきたいと思います。
#172
○矢山委員 それは言葉はなかなか多く説明されたのですが、基本方針、マニュアルが安全保障会議で決まった。それを安全保障会議でやろうとするのは、関係各省庁があるといろいろな異見が出てなかなかまとまりっこない。だから、あらかじめそういうところで基本方針、マニュアルを決めておいて、それで実行はそれぞれの省庁にやらせるのだ。省庁は決まったことをそのままやるわけですよ。しかも閣議へかけるかかけぬかはわからない。マニュアルのごときものは閣議に報告もしない。基本方針でも全部が全部報告されるのではない。しかし、方針は方針として決まり、マニュアルはマニュアルとして安全保障会議では決まっておる。そしてこれでやっていきなさい。これでは、安全保障会議に参加していない閣僚は何もわからない。これは今の内閣制度からいうと問題なんじゃないですか。私は問題が残ると思いますよ。この安全保障会議に参加していない閣僚はそれこそ何もわからずに、決まったことをこうやれ、ああやれ、そしてそれをやっていくだけだ。ましていわんや、国会が何もわからぬ。これは私は大変な問題だなと思いますよ。これは、今日の憲法体制下における内閣制度としてははっきり逸脱していますよ。こういうものをつくろうというのだからとんでもない話ですよ。今の議会制民主主義の否定ですよ。内閣制度の否定ですよ。私はそう思いますね。どうなんです。今のような御答弁では納得できませんね。
#173
○後藤田国務大臣 行政はあくまでも現在の憲法秩序の中でやるわけでございますから、これが憲法秩序に反するようなことをやれるはずもありませんし、そんなことをやろうとしているわけではございません。それは今でも、事柄が何かある、そうするとそれに対して関係の閣僚の協議で方針は決める、それは何ぼでもやっているわけです。それで、それは物によって閣議に報告していくこともありましょうし、その方針によって各省仕事をして、閣議に上げる事項であれば閣議に上げるということを幾らでも今やっておるわけでございまして、これで内閣制度に反するなんというようなことを私は毛頭考えておりません。これはほかにも幾らでもあります。
#174
○矢山委員 緊急事態に対処する重要な問題を限られた閣僚だけを集めてやって、基本方針を決め、マニュアルを決め、それが閣議に報告をされるかされぬかわからない。マニュアルのごときは閣議報告もない。まして閣議の決定もない。そうすると、決まったことをやらされるだけですよ。これは内閣法に「内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。」とある。これは「閣議によるものとする。」ことになっていませんよ。閣議は空洞化されますよ。そこにこの法案の持っておる問題があるということを指摘しておきます。
 しかも、後藤田長官は本会議での答弁で、安全保障会議で決めたことで、既存の法律等で国会の承認が必要とされておる場合には、当然その手続がとられることになるとおっしゃっているのですが、そうすると、法律で国会の承認が必要とされていること以外、これは国会にも報告しないということですね。そうですね。
#175
○後藤田国務大臣 しばしばお答えしておりますように、この会議は実施の機関じゃない。物の考え方、基本方針を決める。そして、その基本方針に従って、既存の法令に従って、各省それぞれの所管に応じて仕事をやるんだ。その仕事を進めるに際して、各省として閣議請議をすべき事項は閣議請議をしていきますから、そこらは何らの変わりはないのであって、特別に閣議を軽視しておるとか国会を軽視しておるとかといったものではございません。既存の体系の中で、国会への報告事項と決まっておるものは当然国会に報告をいたします、報告事項と決まっていないものについては国会に報告しない場合もある。しかしながら、重要でこれはやはり国会に、立法府に事前に話した方がよかろうとかあるいは報告した方がよかろうといったようなものがあれば、それはそのときどきの判断で国会に報告して一向に差し支えない、私はかように理解をいたしております。
#176
○志賀委員長 矢山委員にお願い申し上げますけれども、申し合わせの時間が超過いたしましたので、御協力をお願いいたします。
#177
○矢山委員 少しずつ向こうの答弁が暇が要ったから、その分だけもう二、三分で終わります。
 要するに、今の答弁ではっきりしたのは、必ずしも全部が全部国会には明らかにされぬということが明らかになったわけです。私が先日出した質問の答弁書で、昭和五十年以降だけでも、内閣の案件で不公表とされているものが十七件あります。ことしに入ってから今日までそういうものはあるのかないのか、これが一つ。
 それから、不公表とされているものの各年度の件数のうちで、閣議決定と閣議了解の件数はそれぞれ幾らか、これもわかれば言ってもらいたい。
 ところが、それぞれの案件の所管省庁と名称は何か、内容を全部公表しろと言っているわけではないのに、この案件の所管省庁と名称については答えられないといって、これは回答が参っておりません。こういう閣議の問題ですら答えられないというものがどんどんある。
 それから、五十九年の十二月に、日米の制服組のトップで署名した日米作戦計画がありますね。これについて昨年の予算委員会で私は質問いたしました。ところが、そのときに防衛庁は、秘密を盾にして、その共同作戦計画の正式名称も言わない、秘密だと言う。では、秘密の登録をした年月日はいつか、これも言わない、秘密だ。では、登録番号は何ぼか、これも秘密だから言わない。全く何にもわからない。これくらい国会をばかにした問題はないのですが、しかしながら、そのときは、日米間の共同作戦計画が合意をされたという事実だけは国民にはわかった。中身は何もわからなくてもわかったわけだ。ところが、閣議の案件というのは国の政策の重要な部分について決定されるわけでしょう。そういうものが全然、どういうものが決められたのか、何についてどういう決め方がされたのか、さっぱりこれは明らかにならぬ。私は、これくらい独裁的なやり方はないと思うのですよ。
 そういうやり方をしておるところに、安全保障会議をつくって、緊急事態や有事の対処方針あるいはマニュアルを決めていこう、それが閣議にも報告されないものもある、まして国会にも全部報告されない場合がある。そうすると、これは実際に、内閣はこういう組織機構をつくって何をやるのか、国民はそういう不安を抱かざるを得ないのですよ。私は、そのことを申し上げまして、時間がいささか足りません、まだ問題が残りましたが、これで質問を終わります。
 しかし、私は、あくまでも、先ほど来申し上げましたように、法律で規定すべきものを政令に移していく、あるいはまた内閣が今まで国会にとってきた姿勢、あるいは先ほど言いました心理戦の研究もなされておるがこれもさっぱり事態が明らかにされない、そしてそういう中で危機管理の体制だけが強化をされる、その重要な部分である安全保障会議設置法案には、絶対に賛成ができないことを申し上げて、質問を終わります。
#178
○志賀委員長 本会議が開始されますので、この際、暫時休憩いたします。
    午後一時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十三分開議
#179
○志賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。滝沢幸助君。
#180
○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。長官、大臣、御苦労さま。
 そこで、実は、安全保障会議設置法につきましては、私は本会議で総理に質問を申し上げておきましたので、そのことの繰り返しになりますけれども、どうぞひとつ御親切に御答弁を願いたいと思います。特に、この法案につきましては、本会議で申し上げましたとおり、原則的には政府の努力を多とするという立場をとっておりまする関係もございまして、きょうお伺いいたしますことにつきまして、我々の不安を解消していただき、かつ、我々の要求を入れていただくような措置が講ぜられるならば、賛成を申し上げることにやぶさかではないという立場でありますので、どうぞひとつ意のあるところを酌んでいただいて御答弁を賜りたいと思います。
 初めに、この法案、つまり国防会議にかわりまして安全保障会議を設置するという法案が提出されました基礎的ないわば思想、そして政府をして提出の決心をいたさしめましたその条件、ないしは今日に至りますまでの経過というようなものをお伺いしておきたいと思います。
#181
○塩田政府委員 最近の我が国におきましては、いわゆる高密度工業社会となっております。また同時に、国際的にも諸外国との関係において非常に緊密化してまいっておる。こういう状況がございますことは御承知のとおりでありますが、内外におきまして、国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事態が発生するいわゆる潜在的可能性というものが、こういう状況下において高まっておるというふうに我々は判断をいたしております。そして、こういう我が国に重大な影響を及ぼすおそれのある事態が発生いたしました場合には、迅速的確に政府の方針を決定しこれに対処するということが、極めて重要な課題となっているというふうに認識いたしております。そこで今回、第二臨調及び行革審等の提言を受けまして、重大緊急事態に対処する内閣の総合調整機能の整備を図ろうとするその一環といたしまして、安全保障会議の法律案を提案させていただいたわけであります。
 従来から、我が国の行政は、下からの積み上げ方式といいますか、いわゆるボトムアップ方式によって意思決定が行われているわけでございますけれども、事案の処理に緊急を要するような場合に、関係各省の意思がなかなか決定されないというのが実態でございます。したがいまして、そういう場合には、時によりトップダウン方式のやり方で、迅速的確に方針を決定する必要があるという面も否定できないと思います。そういう意味で、日ごろから総理に対するスタッフ機構を強化して、いろいろな事態を想定しながら、現実に事態が発生した場合に^関係省庁との連携を密にしながら総理大臣の補佐をしていこう、こういう必要があると考えたわけであります。
 そういう意味から、従来の国防会議の所掌事項でございますところの「国防に関する重要事項」についてはそのまま引き継ぐということにしながら、有事に至らない段階で、有事に至ることがないように、国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事態をあわせ処理させるという意味合いから、安全保障会議とその事務をつかさどる安全保障室を整備しようとするものであります。
#182
○滝沢委員 実はそこのところが、だれが聞いてもわからぬのであります。いろいろと国際状況等を判断した上で、国の安全を保障する措置を強めたいということで今度の提案になったというならば、わからぬのでもないけれども、有事のときは国防会議の状況のままでいいんだ、有事に至らない段階で問題が生じたときにというような言い方がわからぬのです。
 じゃお伺いしますが、戦後四十年どこからも侵略等がありませんでした。そして内乱のような状況もございませんでした。これは幸せと言わなくてはなりません。しかし、仮に今日までそのような事態があったと仮定したならばどうなっていたでしょう。何らの問題点もなくその困難を克服してこれたとお考えですか。そうならば、これからの審議にも安心して応じられるというものでありますが、長官、いかがでしょう。仮定の問題は答えられませんなんて吉田茂様がおっしゃったこともありましたが、ひとつ答えてちょうだい。
#183
○後藤田国務大臣 国防事案の方は従来のまま引き継いております。これはおっしゃるように、今日まで四十年間特別な事案はなかったと思います。いわゆる自衛隊の出動といったようなことは、私はなかったと思います。それはそのままですから、変わっておりません。それから国民生活上の問題については、それなりの体系ができております。それから警察であれば、警察の非常事態宣言という措置もありますし、あるいは国防事案でありますけれども、治安出動というようなものもございます。
 しかし、私は、今までの例の中でも、今度のような措置があったならばもう少し適切に、もたもたしないで処理ができた事案は幾らでもあったと思います。その例として御質問のときよく挙げておるのが、ダッカの問題であるとかミグの問題であるとかKALの事件であるとかということを申し上げているわけですね。私はあの事件を振り返ってみまして、こういうような今私どもが考えているような仕組みができておれば、もう少し適切な処理ができた、そして、はっとするようなことはなくて済むということを考えるわけでございます。
#184
○滝沢委員 防衛庁長官、先ほど申しましたとおり、戦後四十年、我々はいわば戦火を交えることがなかった、幸せなことであります。仮に今日まで他国の侵略等があったと仮定したならば、あなたの自衛隊は日本の安全を守り得ましたか。
#185
○加藤国務大臣 先ほど委員がおっしゃいましたように、仮定の問題でというのはなかなか難しいのですけれども、基本的には、我が国の自衛隊と日米安保体制、我が国の防衛のこの二つの柱というものは有効に機能しておりますし、仮に過去にそういうことがあっても有効に機能した、こう思っております。
 ただ、自衛隊が現実に対処するというような仮定を非常に理論的に考えてみますと、例えば装備が足りないという部分は常にいつでもあることでございますが、その中でも、継戦能力を中心とした後方というものはもうちょっとしっかりしていなければならないのではないかな、こんなふうに思っております。継戦能力といいますと、じっと耐えて戦い続けていく、いろいろな物資とか、特に弾薬なんかの数量の問題であろうと思います。それからもう一つは、午前中も御議論いただいております、そのときにおける法律の体系が十分なるものが今想定されていないわけでございます。その辺で若干幾つかの困難性が出ていたのでないだろうかな、こんなふうに思います。
#186
○滝沢委員 じゃ、その議論はしばらくおくといたしまして、これから三つ四つお尋ねしますることは、我々がこの法律案につきまして賛否の態度を決する一つの材料としてお伺いさせていただきますので、ひとつ明確にお答えをちょうだいしたいと思います。
 一つは、この会議の名称でありますが、我々はかねがね「国家安全保障会議」というものを設置すべしと主張してきたところであります。しかし、提案は「国家」という二文字がないのでありますが、これを私は本会議では、政府みずからが国家というものを軽んじている、ないしは総理大臣も国家というものをむしろ恥じていらっしゃるのか、こう申し上げたのであります。御答弁は、「国家」という文字をつけると何か物々しくてどうもかたい感じがしますからという。そんなあなた、どこかのホテルの名称じゃありませんし、やわらかい感じとか、お客さん受けがしますようになんというのは話になりません。
 そこで、端的にお伺いいたしますが、「国家」という文字を抜いた、あるいはまたつけなかった発想の原点は何ですか、長官。
#187
○塩田政府委員 安全保障会議は国防会議の任務を継承しておりますが、それ以外に、御承知のように今回は重大緊急事態を所掌する、こういう考え方であります。ということは、いわゆるナショナルセキュリティーという言い方をしますと、どうしても外部からの攻撃、外部からの脅威に対して我が国を守るというニュアンスが強いことになりますので、今回の場合は、重大緊急事態というのは何も外部からの脅威ばかりではございませんので、そういう意味で、いろいろ議論をいたしましたけれども、「国家」をつけない方がいいのではないかというのが第一点でございます。
 それから第二点に、同じくといいますか、今までに各党あるいは各民間の機関等の御提言の中に、国家安全保障会議というものをつくるべしというのがございました。また現実に、諸外国の例で言いますと、アメリカとか韓国とかは国家安全保障会議という名称を使っております。そういうものの内容を見てみますと、いずれもいわゆる国防事項のほかに、もちろん国防に関連をすることではありますけれども、国防に関連するところの経済とか外交政策とか、いわゆる総合安全保障政策というものを所掌する、それの調整なり策定を行うというような内容になっておりまして、そういう内容の場合に「国家」という名前をつけている例が、すべてというふうには申し上げませんが圧倒的に多いということでございます。そうしますと、今回私どもが御提案申し上げている安全保障会議は、そういうものとは異なっておるというふうに判断をされたわけであります。
 それからなお、これは第三点として申し上げておきたいのですが、今回私どもがよりどころにいたしましたところの行革審の答申におきましても、「国家」という名前をつけないで、安全保障会議を設置しなさいという提言になっておるわけであります。
#188
○滝沢委員 防衛庁長官、国家とは何ですか。
#189
○加藤国務大臣 改めてそう聞かれますとなかなか定義というのは難しいと思いますけれども、やはり地理的な条件とか民族的な条件等いろいろなものを加味しながら、一つの集合としてともに生活しているという意識のある一つの広がりだろう、常日ごろはそう思っていますが、では、連邦とどういう違いがあるのかとか、それぞれ多数民族がどうなるのかとなりますと、ちょっとその辺の定義は、今こういう立派な国会で答弁できるほどのしっかりした定義を私、持ち合わせておりません。
#190
○滝沢委員 長官がおっしゃるようだと、国家というのは、意識を持って一緒に生活する集団だ。そうならば、おのれの意思によって入会したり退会したりできるけれども、人間は生まれる以前に国を選ぶことはできない。生まれてみたら日本国民なんだ。それは日本国民が嫌になったら、国を離れてよその国の国籍を取得することもできるかもしれない。しかし、生まれる以前に既に日本人、生まれてみたら日本人、このことは動かしがたい運命ですから、そうなれば、日本の国に生まれたがゆえに、日本の安全保障がきちんとしないがゆえに、とうとい命が奪われるというような状況があってはならない。それがゆえに防衛庁長官が苦労していらっしゃるのじゃないでしょうか。私はそういうふうに思うのです。
 そうなれば、先ほど局長が答えていただきましたのは、外からの侵略等に対する措置は、国家の安全という、「国家」という名を冠するにふさわしい。しかし、今度の提案はそうではなくて、何か内部からのいろいろの状況の変化に対応しょうというものでありますから、国ないしは国家というのはいかぬというようなことでありました。内からの揺さぶりであろうと外からの侵略であろうと、同じじゃありませんか。国の安全が脅かされている、そこにとうとい命が危機に瀕しているという状況が生じたらば、国家の責任においてその安全を保障しなくてはならぬ、政府の責任においてと言ってもよろしい。これがどうして国家の安全を保障する国家安全保障でないのでしょう。内からのものは国家じゃない、こういう認識のところにそもそも政府さんのはっきりせぬ姿勢があるのじゃありませんか。人気取りの政策の一面として、今回のこの提案、特に「国家」の文字を冠しないという態度があるならば、我々はまことに頼りない、ないしは無責任な態度と断ぜざるを得ないのであります。
 そこで、一つ端的にお伺いをいたします。これは大事なことでありますから、長官からお答えを願いたい。
 「国家」という文字を冠するように修正をされる考えはありませんか。イエスかノーかで結構です。
#191
○後藤田国務大臣 政府としましては、原案が一番いいんだ、こういうことで御審議をお願いしている以上、原案どおりぜひひとつお認めをいただきたい、かように考えるわけでございます。
#192
○滝沢委員 政府の考えはわかりました。
 次に、事務局のあり方でありますが、拝見しますると、内閣官房に安全保障室というものを設ける、ここが一切の元締めだ、こうなっているのでありますが、国防会議においては事務局が独立して機能していたのに、どうしてそれが今度は内閣官房に入り込んできちゃったのかということを我我はむしろ不思議に思うわけであります。従前どおりあるいはそれ以上の権威のある事務局を設置する必要があるのではないか。しかもその長たる者は相当の立場の者でなくてはならぬ。名称のごときも例えば事務総長というようなことで、日本の国の生命、財産、安全を保障するという非常に重大な会議でありますから、これが組織要員は後でまた申し上げますが、いずれも重要閣僚であります。その中心となるべき事務局が原案のようなことでは権威にかかわる、十分に機能し効果を上げ得ないだろうというように私は思うのでありますが、いかがなものですか。
#193
○塩田政府委員 現在の形の国防会議事務局というものをそのまま安全保障会議事務局という形で持っていったらどうかという御趣旨だと思いますが、もちろん私どももそういうことを検討はしたわけでございます。いろいろ考えましたけれども、現在の国防会議事務局を今度もし仮に安全保障会議事務局という形でいきます場合には、当然のことながら内閣官房とは別個の組織になります。したがいまして、その持っております機能、仕事、任務といいますものは、当然のことながら安全保障会議の運営に関する事務ということになるわけでありますが、今回の案のように、内閣官房に設置されます安全保障室で行うということになりますと、内閣官房が持っております行政全般についての調整機能の一部を受け持つ、こういうことになりますので、実質的なことを考えた場合には、安全保障会議の事務を行うと同時に、内閣官房の一部として総合調整機能を持っておるという方が、いろいろな意味で仕事はやりやすいし、またよくできるのではないかというようなことも考えまして、今回のような案にいたしたわけであります。
 なお、その場合に、安全保障会議事務局と内閣官房の安全保障室とを別々に同時に併存するという考え方もあり得たわけでありますけれども、それも私どもは、今回の行革というものの趣旨から考えてとるべきではなかろうというふうに考えまして、今回の案にいたしたわけであります。
#194
○滝沢委員 これも端的にお伺いいたしますが、これからでも原案を修正して、従来の事務局をそのまま残す、ないしはこれを強化するというふうに修正されるお考えはありませんか。
#195
○後藤田国務大臣  先生のおっしゃる意味は私も理解できないわけではありません。もう少しはっきり強化した方がいいではないか、こういう御意見だろうと思います。しかし、私は実態はそうではないのではないのかと理解をするのです。それはやはり、こういった重大緊急事態の処理を一緒にやる場合は、これは極めて各省に利害関係の深い事項でございますから、総合調整をやらなければならないわけです。そのときに、行政の実態は、なるほど総理大臣の下に事務局長を置いてやった方が総理大臣の命令でやるのだからいいではないか、そのとおりなんですが、そうは動かないのが私は行政運営の実態であろうと思います。
 過去の経験も、この国防会議ができた当初は、私も時々一緒になって話をしたことがございますが、まさに総理と余り開かないぐらいの人がやっておりました。そういうときは相当なあれができるのです。しかしながら、そういった任命ではなくて、だんだんいわゆる役人が年次区分に従って任命をせられていくというようなことになりますと、総理が一々各省調整をやるわけじゃありませんから、局長自身がやらなければならない。とてもじゃないが、局長で総合調整なんてできるような事態ではありません。やはり全体を総理の命を受けながら各省に対して総合調整の機能を発揮しておる内閣官房におきまして、そして内閣官房長官の指揮のもとに、指図のもとにやる方がはるかに調整機能を発揮することができる、これが実態でございます。
 したがって、私どもは、今度の改正の方が本当の意味での強化になっておるのではないのか。形式的な論議からいえば、なるほどそれはおかしい、総理の下にあったものが内閣官房の方に入って強化になるなんということはないじゃないかという議論はよくわかるのです。わかるのですが、日本の今日の行政組織の中の運営の実態を見れば、そうではない、内閣官房に置いた方がはるかに有効である、私はかように理解をしておるわけでございますので、この原案を改正しろという御意見はわかりますけれども、今直ちにそれをやるという考え方は持っていない、かようにお答えを申し上げます。
#196
○滝沢委員 それならば、官房長官が事務局長を兼ねるというふうに書いた方がわかりやすい。そうならこれはちょっと違ってくるのじゃないですか。その方がわかりやすいのじゃないですか。
 さて、次に組織のことでありますが、これも本会議で申し上げたことでありますが、国防会議と少し顔ぶれが違ってきております。経済企画庁長官も入っておりますが、私たちは、今回の提案の隅々を見ておりまして、経企庁長官よりはむしろ運輸大臣ないしは郵政大臣というような方々に入っていただいた方がより効率的ではないのか、こういうふうに思うのであります。これは簡単にお伺いいたしますが、まだ時間がありますから、この構成要員について、申し上げたように経企庁長官にかわって運輸、郵政両大臣を入れるというふうに変えられる考えはありませんか。
#197
○塩田政府委員 経済企画庁長官を存置いたしましたのは、従来からの国防会議の任務を継承しておるということ、その国防会議における経済企画庁の任務といいますか、経済政策の方針、企画を任務とする同庁所管の重要性ということで、これは引き続きメンバーになっていただくことにいたしました。
 また、運輸大臣あるいは郵政大臣等を入れる方が現実的ではないかという御指摘につきましては、私どもも随分検討はいたしたのですけれども、こういう重大緊急事態の対処に当たっては、原則的には迅速的確に処理したいという要請が片一方でございますので、恒常的機関としてはなるべく人数が少ない方がいいという一方の要請がございます。そこで、実際にはどんな事態が起こるかわかりませんが、起こった事態によっては、運輸大臣であっても郵政大臣であってもぜひ御出席をいただいて十分意見を述べていただく、こういうふうにする方が現実的ではないかと判断をいたしたものであります。
#198
○滝沢委員 私が承っているのは、どうしてどれを入れたか入れないかということじゃなくて、修正される考えはないかということです。これは賛否の態度を決定する一つの要素でありますからお伺いしているわけです。簡単に答えてください。
#199
○後藤田国務大臣 政府としては、原案が一番よろしいということで御提案申し上げておるわけでございますから、原案どおりお認めいただければ大変ありがたい、かように恵うわけでございます。
#200
○滝沢委員 長官、日本政治の不幸はそこだと私は思うのですよ。実はほとんどの法案について、各党の賛否が提案前にもう分かれているのです。そして、一週間やろうが十日やろうが二十日やろうが一年やろうがこの賛否は変わらないのですよ。そうではなくて、提案する者はもっと謙虚な態度で、一応の考え方はまとめて提案するけれども、議会の審議の中で意見に従って修正にも応ずるという柔軟な姿勢がない限り、民主主義は有効に機能しないのじゃないかと私は思うのです。
 それから、我々議員ないしは政党の方も、最初から賛否の態度をはっきりするのではなくて、意見を聞いてみようじゃないか、内容をよく審議しようじゃないか、そうした結果、賛成し得るものであるかないしは我々の意見を多少なりとも政府がのんで修正に応ずるならば賛成もいたそうということが議会じゃありませんか。そうでないならば、何も長い時間をかけて議会を開かぬでも、提案即採決ということでよろしいわけです。最初賛成であったような態度の者が、いろいろと議論しているうちに、これはどうも賛成しかねるということになることもあろう。最初反対のニュアンスが大変濃かった政党ないしは議員等も、いろいろと議論しておりますうちに、自分の提案等も入れてちょうだいしたということで賛成に変わることもあろう。これが民主主義の妙理だと私は思うのでありますが、長官、いかがなものですか。多年の御経験の教訓を聞かしてちょうだいしたい。
#201
○後藤田国務大臣 私は、国会の審議というのは滝沢先生のおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、修正に応じるのかどうだという御質問でございますので、政府としてはこの原案を是なりとして提案させていただいておるわけでございますから、でき得べくんば原案どおりお願い申し上げたい、こう申し上げておるにすぎないので、国会の御審議で各党が意見一致して、これはこういうように修正すべしということになれば、それに政府が従うのは当然これは民主政治の基本であろう、かように考えておるわけでございます。
#202
○滝沢委員 さて、時間も半ば過ぎましたので、話題を変えさせていただきます。
 防衛庁長官、今日まで自衛隊が出動いたしました回数ないしはその動員された人数ないしは内容等を、簡単にかいつまんで今日までのことを御報告いただけますか。
#203
○西廣政府委員 自衛隊の行動につきましては、自衛隊法の第六章に防衛出動以下各種の態様が九種類ほどあるわけでございますが、自衛隊発足以来現在まで、そういった形で出動といいますか行動をとったものは、災害派遣と領空侵犯に対する措置、この二種類だけでございます。
 災害派遣につきましては、自衛隊の前身である警察予備隊発足以来本年三月末までの実績で、件数にして約一万八千件、派遣勢力としては、人員が約四百十三万人、車両が四十三万両、航空機が延べ約三万機、艦艇が延べ約九千隻というところであります。
 それから、領空侵犯に対する措置につきましては、この実績は要撃機の緊急発進の回数で申し上げますと、これは昭和三十三年四月以来でございますが、本年三月末までに約一万三千回緊急発進いたしております。
#204
○滝沢委員 ところで長官、自衛隊の装備は非常に古い。大体日本の自衛隊そのものが張り子のトラだと言われているわけですけれども、装備も何か楠木正成が得意とした戦法のように、遠くから見ればなるほどいかめしいというようなものじゃないかと言われているようであります。
 そこで、装備は近代戦力として十分なものでありますか、それともまさに古いものでありますか。いわゆる実戦の役に立たぬのじゃありませんか。立ちますか。
#205
○加藤国務大臣 装備の具体的な内容については政府委員よりお答えさせていただきたいと思いますが、よく自衛隊は張り子のトラで何の役にも抑止力にもならぬのじゃないかという御議論がございますけれども、私はそうは思いません。
 もちろん、我々の国の防衛力は海外に攻めていく能力を持ちません。これは憲法の精神から禁じられておりますし、専守防衛に徹しておりますが、この国を守るための抑止力という意味では、ある部分については確かに古いものもありますけれども、しっかりとした装備を国民の貴重な税金をもって私たちは装備させていただいております。そしてそれは我が国に対する侵略防止の立派な抑止力になっておると思いますので、単なる何の意味もない張り子のトラ、かかしにすぎないのではないかという御認識はぜひ御修正いただきたいと思います。
#206
○滝沢委員 せっかくさっきから修正を迫っておりましたら、今度はそちらから修正を言われました。(笑声)
 この間、中国に渡ってまいりました。御存じのように中国は四百五十万の正規軍、民兵一億と言われているわけであります。そこで、日本の自衛隊の定数について、何か今度の防衛二法の中で幾らかのそれこそ増員も用意していらっしゃるようなことでありますが、陸十八、海四、空四と記憶しておるのでありますけれども、これは一面からいうと、車両ないしは兵器それぞれのものに要する兵隊さんの人数、つまり車両とか兵器ごとの定数がありますね、それといわば戦車なら戦車、車両なら車両についての総体の数ということの掛け算においては、甚だ合わぬと聞いておりますが、いかがなものですか。つまり飛行機だけでは飛べませんね。これに乗る兵隊さんが必要になるでしょう。これが定数法に抑えられて、つまり無人飛行機でなくちゃだめだ、無人戦車でなくちゃだめだ、無人砲でなくちゃだめだというようなことになりませんか。
#207
○西廣政府委員 自衛隊の人員、定数につきましては二つ考え方がございまして、一つは陸上自衛隊の考え方でございますが、陸上自衛隊については、各国ともそうなんですけれども、まず人員の枠組みというものがあります。これは「大綱」で決められておりますように自衛官十八万人ということで、現実にも法律的にも十八万人の定数が認められているわけでございますが、この枠組みを基本にいたしまして、師団を幾つつくる、そしてその中の師団がどういう装備を持つかということで、まず人員を基本にして基本的な部隊の枠組みなり装備を考えていって、現実の必要とする防衛力を達成するためにどういう質の装備を持つかというようなことで組み上げておるわけでございます。したがって、陸上自衛隊につきましては過去十数年間、それ以上にわたって、十八万人という固定した枠組みの中で、逐次装備等を改善しながら部隊を改編していっているということでございます。
 一方、海・空につきましては、人員の枠組みということではなくて主要な装備、例えば航空機であるとかあるいは艦艇でありますとか、そういったものを中心に防衛力というものを考えておりますので、ある装備をつくるとしますと、それに必要な人員というものをその都度ふやしていっていただくというやり方をやっております。したがいまして、今回防衛二法でお願いをいたしておりますのは、海・空の部隊については、過去の予算でお認めをいただきました航空機なり艦艇、そういったものが今年度に当たって就役をしてまいります、それに必要な人員をお願いをしておる。 一方、その間退役をしていく航空機なり船がございますが、そういった人員で要らなくなった人員を差し引きまして、どうしても不足する分についてお願いをいたしておるというのが現状でございまして、先ほど先生の御質問にもありましたように、海・空につきましては、人員がお認めいただけませんと、せっかく航空機や船が就役してきてもそれに配備すべき人間がいないということで、極端に言えば幽霊船みたいなものができてしまうということになります。現実には、ほかのところから持ってまいってそれぞれの充足を下げることによって何とか運航はいたしておりますが、現実に防衛行動をとるについては足らない状況になってしまうということを御理解いただきたいと思います。
#208
○滝沢委員 陸上の十八万というのは今欠員があるのでしょう。幾らありますか。いつから欠員のままですか。
#209
○西廣政府委員 おっしゃるとおり、陸上自衛隊の充足につきましては、もう既に二十数年、三十年近く、ある程度、十数%の欠員を抱えております。これは陸上自衛隊は、先ほど申したように一つの枠組みを示すものでありますので、自衛隊の立場からすれば常に平時から一〇〇%充足されておるということが望ましいことは間違いないわけでございますが、一方、有事急速に補充でき、かつ、さほどの練度といいますか、日ごろから特殊な技能なり知識を持たなくてもいいものも全くないわけではございません。そういう点、各国とも、平時における陸上部隊の充足については、最も経費効率のいいものを何らかの工夫をしながら探っているのが実情でございます。
 現在、陸上自衛隊の充足率というのはかなり低いところでございますが、それで私ども決して十分とは思っておりませんけれども、財政の事情等も勘案しながら、最も効率のいいものの中で、できるだけの練度の向上を図っていきたいと考えておるわけでございます。
#210
○滝沢委員 いや、幾らの欠員がありますか。それはいつからそういう状態ですかと聞いているのです。この理由とか何は結構です。
#211
○西廣政府委員 年間の平均的な充足状況が八六・四%ということでございますので、実質的には恒常的に一万数千人の欠員があるということでございます。
#212
○滝沢委員 予備自衛官の再教育はどういうふうにしていらっしゃいますか。
#213
○西廣政府委員 ちょっと間違いましたので修正させていただきますが、二万五千人くらいの欠員があるということでございます。
#214
○大高政府委員 お答え申し上げます。
 予備自衛官の教育訓練の内容でございますけれども、訓練といたしましては、自衛官を退職しまして一年未満で予備自衛官に就職された者につきましては、招集期間一日間の訓練というのを行っております。それ以外の予備自衛官でございますが、これは招集期間五日間の訓練、通常五日訓練というふうに申しておりますが、これを行っております。一日訓練では、予備自衛官としての使命感を高めるための精神教育、それから服務指導、こういったもので八時間の教育を行っております。五日訓練では、小銃の射撃、それから体育、それから戦闘職種あるいは支援職種というふうにいろいろ職種が分かれてございますが、この職種別の訓練、それから予備自衛官としての使命感を高めるための精神教育等、これを陸上自衛隊、海上自衛隊ともに四十時間教育を行っておるという状況でございます。
#215
○滝沢委員 ちょっと話が変わりますが、万が一侵略ないしはそのおそれがあるような状態になりまして陣地の構築等が必要な場合において、一つの海岸なら海岸、そこでこの松の木も切らなければならぬあるいはこの丘を必要とするというときに、どういう手続でそれができますか。所有権との関係が何かありますか。その土地や物件の。
#216
○西廣政府委員 通常の場合は、やはり個別の契約によって借り上げるなりして陣地を構築するという形であろうと思いますし、防衛出動下令後になりますと、仮にその所有者から契約によってそこを借り上げることが困難な場合には、自衛隊法の百三条によりましてこれを強制的に使用する権限が持てることになっております。
#217
○滝沢委員 その折衝等が困難な場合に使用する権限というのは、これはいわば私権との関係はどうなりますか。契約が基本的には必要だ、しかしその交渉等をすることが困難な状況のときは使用権がある、こういうふうに今の答弁を聞いたのでありますが、それはいわば緊急事態とか有事とかいう言い方にかわりますか。いかがなものですか。交渉する等が困難な場合というのはどういうときですか。
#218
○宍倉政府委員 自衛隊法の百三条では、今お話ございましたように、防衛出動が下令されまして、自衛隊の行動に係る地域におきまして、今御議論がございますようなことで、例えば土地、家屋あるいは物資、そういったものを使用するとかいう必要ができましたときに、都道府県知事が長官等の要請に基づきましてそういったものを使用できる、あるいは収用できる、こういう規定になっておるわけです。でございますから、その限りにおきまして、その緊急有事の特別の事態におきまして、所定の手続を経た上のことではありますけれども、その意味で、私権が通常の形態と違った形での制約を受けるということはあり得るんだろうと思います。
#219
○滝沢委員 それは、例えば裁判でそれを排除する手続等がとられることがありませんか。
#220
○宍倉政府委員 その百三条の六項には、「処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。」こういうふうに書いてございますので、普通の行政事件としてはちょっとその辺のところが、そういうことでやったことでございますから、裁判上のとめ方ということも、これはちょっと普通の形ではいかないということになろうかと思います。
#221
○滝沢委員 重大緊急事態ということがいろいろと議論になります。抽象論ではまことにわかりませんで、関東大震災とかなんとか言われておりますけれども、緊急の事態というものは、いわゆるいろいろと言われておりました有事でありますか。同じですか。
#222
○塩田政府委員 今回の法律で御提案申し上げております場合の「重大緊急事態」といいますものは、今おっしゃった有事の場合は含んでおりません。有事というのは国防事態ということで、従前の国防会議、今度の第一項の方、こういうことになります。
#223
○滝沢委員 時間が少なくなってきましたから質問も端的にしますから、御答弁もそのようにお願いしたいと思います。
 それでは、有事の場合を考えない、こうおっしゃるのでありますが、これは緊急事態でも結構です、あるいはまたわかりやすく侵略等の行為があったときでも結構でありますが、そのときは、例えば交通ないしは食糧、あるいは言論までも、ないしは電力その他のエネルギーというようなもの、ないしは経済の全般にわたって統制等を行うことができますか。また行う必要がありますか。いかがなものですか。
#224
○宍倉政府委員 具体的なケースが定かでないところもあるわけでございますが、恐らく先生の今御質問のことは、私どもが有事法制研究の第三分類と言っております、まあどこでございますか、その担当する省庁が不明でございまして、目下のところ政府全体で取り組まなければならない、そういう分野に属することかと存じます。
#225
○滝沢委員 さっぱりはっきりしません。緊急な事態ないしはこれは有事と言われても結構です、いかなる表現をしましても、いざ事ある場合には国民の固有の権利というものを制限する必要、あるいはまたそれができるか、こう聞いているわけです。いかがですか。
#226
○宍倉政府委員 憲法によれば、公共の福祉の範囲でということで基本的な人権がそれぞれ規定されているものもあるわけでございますから、そういう公共的な、公共の福祉を保つという基盤といいますか、そういう前提のもとで適法な手続、つまり法律をもってすれば、そういった基本的な人権といいますか所有権といいますか、そういったものに制約を設けるということは全く不可能というわけではないと思います。
#227
○滝沢委員 はっきりしないですよ。今の法律であることはできるくらい、だれだってわかるじゃありませんか。
 長官、どうですか。そういう状態になったときに国民の固有の権利も制限する必要があるか、あるならばできるか、今の法制のもとでどの程度できるか、それをしないまま自衛隊は十分に活動できるか、成果を上げることができるか、こう聞いているわけであります。両長官、どうかひとつきちんとはっきりしたお答えをしてちょうだい。
#228
○加藤国務大臣 先ほど政府委員が申しましたように、自衛隊法百三条によりましてある程度のことができることにはなっております。しかし、それで仮に緊急有事の場合にすべて自衛隊の行動が円滑かつ効果的にできるような体制になっているかという御質問に対しては、やはり現在ではそれは不備であると言わざるを得ないところがあります。
 例えば百三条によれば、多分後で政府委員が正確に申すと思いますが、緊急に県知事さんなんかの御協力を得てある土地を使用することができるように。はなっているのだろうと思います。しかし、いざそのときに同意をとる手続だとかその土地の持ち主の方が全然わからなくて御同意もとられないときに、そこはどうしても通っていかなければいわゆる前線に行けないとかそういった問題はあるでしょうし、それから、火薬類を通常はいろいろな法律に従って自衛隊も運んでおるわけですけれども、その緊急のときにそういった日常と同じような法規制で活動できるのかどうか、そんな問題点は多くあろうと思います。
 したがいまして、今有事法制について研究しておりまして、もちろんこれは立法を前提としてやっているわけではございません。ただ、こういうところの問題点があるということを正確に洗い出しておかなければならない。こういうことは、いざというときにはわあっとなりますから、冷静さを失う可能性があって、だから逆にしっかり、ここまでは有事のときはやっていいけれども、ここから先は有事のときでもやっちゃいけないというような仕組みははっきりしておきませんと、逆に私権に対する不当な圧迫になったりするものですから、その辺につきましては、国民世論の動向、国会の皆さんの御意見等聞きながら慎重に考えていきたいと思いますが、現在、立法の前提ではないけれども、どこに不備があるかというところはいろいろ洗い直しております。
#229
○滝沢委員 せっかく政府委員がどうか知りませんけれどもおいでになっているならば、居眠りしないで、居眠りするならば御自分の部屋でベッドの上で寝てちょうだい。だれだ、その寝ているのは。ふまじめじゃありませんか。
 そこで、つまりお聞きしたいのは、そういうわかるようなわからないような話じゃわからぬですよ。つまり例えば、それは政府委員おっしゃったように県知事に通告してなんといったって、侵略やそういう事件が起きる。これは地震だってそうですよ。何も朝の八時半から五時までのうちに起きるのじゃない。日曜でも起きるのですよ。夜中でも起きるのですよ。それを県知事にどうして通報するのですか。県知事はどうしてオーケーを与えるのですか。ですから、どうにもならぬじゃありませんかと言っておるのです。
 ですから、防衛庁長官も、そうした緊急事態にならないうちにもうこの任務を離れた方がいい。大変な責任を背負うということになりますよ。今もしもこうして演説をしているうちに何かそういう事態になったら、どうにもならぬじゃありませんか。そのとき責任を負って辞職するよりは、今のうちにもうやめた方がいいようなものだと思うのです。それほどに今日の日本の安全は保障されていないのであります。安きにいて危うきを思う、治にいて乱を忘れずということを言っております。ならば、今のうちにきちんとしなくてはならぬことはきちんとしたらいいのではないか。長官は、立法のためにいろいろと準備をしているのではない、こうおっしゃいました。立法の意思がないならば、何も準備したり調査したりする必要はないじゃありませんか。もっと正直におっしゃい。そうしないから、国民が政治を信頼しないのじゃありませんか。どうですか。
 そして、時間がなくなりますから、最後に、文部省から見えておいでいただいておるのでありますから承らせていただきますが、教育の場面では、安全の保障ないしは国防あるいはまた国を守るというようなことはいかがになされておりますか。
 つけ加えて、時間がありませんから質問させていただきますが、自衛隊を小中学校等が見学をされたり、ないしは学校等に自衛隊から講師が派遣されたりして勉強しているというようなことはありますか。他国では、これはあまねくと言っていいほどに行われていることであります。日本はいかがですか。
#230
○加藤国務大臣 有事の法制、有事立法といいますと、新聞の見出しになりますと、何かこれで戦争準備のおどろおどろしいことをまた政府・自民党が考えているのではないかというようなことをよく言われるのですけれども、有事の法制というのは、いざそういうときになったら、いろいろな分野で、この点については私権を少し我慢していただく必要も出てまいりますというものでありますと同時に、そういうときでも、ここから先は私権の範囲を踏み越えてはいけないというところの線引きをする作業だと思うのですね。
 実は、去年JAL事故がありました。あのとき自衛隊は、戦後の災害出動としては二番目に大きな活動をいたしました。一番目が伊勢湾台風のときで、二番目がJAL事故であったわけですけれども、あのときに、山の上で緊急にヘリコプターの発着場もつくらなければならぬ、通っていくためには松の木も杉の木も突然切らなければならぬということになりまして、本来ならばあのときいろいろと手続をしなければならなかったのだろうと思いますが、皆さんの御好意で、どうぞどうぞ緊急のときだから急いでおやりなさい、いいですよと言って、国民の皆さん、林野庁、国有林もみんな支持してくれて、それで何とかうまくいったわけですね。しかし、体育館を遺体置き場として借り上げていいのかとか、そういうようないろいろな問題というのは、本来詰めていくとなかなか難しい話だったと思います。あれはいわゆる国防上の有事ではございませんでしたけれども、やはりある種のそういった、いざというときにはどこまで踏み込んでよくて、どこまでは踏み込んではいけない、そういったものは、先ほど言いましたように平生のときによく考えておくべきじゃないかと思います。
 ただ、先生の御指摘でございますが、この点につきましては国民の桁さんのしっかりとしたコンセンサスがなければ立法上もなかなか進んでいかない問題だと思いますので、そういう意味で、私たちは、国民の皆さんに問題提起やいろいろしながら、考えていただくために、今問題点の整理をしていると御理解いただきたいと思います。
#231
○林田説明員 お答え申し上げます。
 平和的な国家及び社会の形成者といたしまして、自国を愛し国を守るという心情や意識を持つことは、国民として当然のことであるわけでございます。このため学校教育におきましては、かねてから、児童生徒の心身の発達段階に応じまして、特に社会科や道徳などにおいて、我が国土に対する認識、我が国の歴史に対する正しい理解を深め、国民としての自覚と自国を愛する態度を育成することとしておるわけでございます。また、憲法の基本や国際政治などの学習の中で、平和の重要性について認識させ、我が国の安全と自衛の問題について考えさせることとしておるわけでございます。
 なお、御指摘ございました自衛隊の視察でございますとか講師としての招聘でございますけれども、文部省といたしましては、今申しましたようなことを学校において教育すべき教育課程の基準として示しておるわけでございまして、このような学習指導要領に定めました内容に沿います教育が行われることを指導しておるわけでございますけれども、具体的にどういう場所を視察するかとかどういう方からお話を聞くかということにつきましては、それぞれ学校の判断におきましてそれぞれの教育活動の中で行われるわけでございますので、文部省としてそれらの個別の詳細につきましては現在のところ把握していないわけでございます。御了承をいただきたいと思います。
#232
○滝沢委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、ただ最後に要望しておきます。
 今の文部省のお答えのようなことでは、本当の意味の愛贈の気持ちも国を守ろうとする意欲も、教育の現場から生徒さんに浸透してはこないということであります。それは現場任せ、こういうことで今日の教育が安心していけるほど教育は正常に機能しているとお考えならば、文部省の判断は甘いと言わなければなりません。何も国防のことだけではありませんけれども、そういう点についてはもっときちんとしていただきたいと思います。
 なお、防衛庁長官はわかったようなわからぬようなことをおっしゃいましたけれども、本当にあなたが責任を負って日本の安全が保障できる体制にないならば、勇気を持って足らざる点を満たすという姿勢を政府が示すべきじゃありませんか。国民のコンセンサスを得られる、得られぬなんて言っているうちに事があったらどうするんですか。勇気を持って方針を示し、国民の皆さんに納得していただくだけの説明と説得をするのが政府の責任じゃありませんか。
 なお、官房長官に申し上げますが、先ほどから私は、名称に「国家」の名を冠せざるは何ゆえぞ、これを修正する意思なきや、また事務局の体制についてもっと強化し、従来どおりないしはそれ以上の独立した事務局を持つべし、この修正に応ずる用意なきやと問いました。さらに組織につきましても、大臣の顔ぶれについて注文をして、我々の主張を受け入れてはいただけませんかと申し上げましたが、いずれもノーのお答えでございます。
 なれば我々は、この提案につきましては、その志は歩といたしまするが、この一方的な政府の態度につきましては、まことに遺憾と言わなければなりません。ゆえに、後刻総理大臣がお出ましいただきましたときに吉田議員よりまた質問を申し上げさしていただきまするけれども、それを通じてさらに最後の判断をいたしまして、これは涙を振るって反対せざるを得ない状態もあろうということを申し上げさしていただきまして、私からの質問を終わらしていただきます。
 委員長、ありがとうございました。両長官、御苦労さまでした。終わります。
#233
○志賀委員長 三浦久君。
#234
○三浦(久)委員 私は、まず官房長官に、重大な緊急事態とは一体何なのかということについてお尋ねをいたしたいと思うのですね。
 政府は、重大な緊急事態が発生をした場合に、閣議にかけてやっておったのでは意見がまとまらない場合もある、急いでやらなければならない問題なんだからトップダウン方式で方針を決めて実行していくんだ、こういうことを安全保障会議設置の必要性として言われているわけであります。それでは何が重大緊急事態なのかということについては、具体的にはまだ今までの答弁では私ははっきりしていないと思うのですね。この法案の二条二項で抽象的に概括的に規定されているわけですが、具体的には政府としては、ダッカ事件であるとかそれからミグ25の問題であるとかそれからまた大韓航空機の問題であるとか関東大震災のような震災が起きた場合であるとか、こういうことを例として挙げられているわけですね。しかし、私は、これらの事態が何で重大緊急事態なのか、いわゆる法案の二条二項に言う要件を充足しているのかわからないのですね。それで、一つずつ具体的にお尋ねをしていきたいというふうに思います。
 まず、ダッカ事件ですけれども、これはハイジャックの事件ですよね。一九七七年九月二十八日の午前中に起きたわけですけれども、これは日本の日本航空がパリから来ましてボンベイ空港を離陸して東京に向かう、その途中に赤軍派と名のる者どもによってハイジャックをされたということですね。そして急遽バングラデシュのダッカ空港に強制着陸をさせられた。そこで乗っ取り犯人が六百万ドルの身の代金の要求をしたとか、それからまた赤軍派の拘置をされている人間であるとか刑に服役をしているそういう犯人、こういう者の釈放も要求したということであります。これが大体事件の概要ですね。政府はそういう身のしろ金も払う、それからまた要求に応じて犯人も釈放する、こういう措置をとったということですが、これが何で法案の二条二項に言う「重大緊急事態」というものに該当するのか、説明をいただきたいというふうに思います。
#235
○塩田政府委員 事件の概要は今御指摘があったようなとおりでございますが、これを振り返ってみますと、人質を盾にしまして政府に対し作為を強要したわけでありますが、我が国の主権に対する侵害行為であるというふうに考えられます。したがいまして、我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある行為であるというふうに私どもはこの例は考えられるのではないかというふうに思っております。
 また、本事件のように外国を舞台にしまして発生した事案につきましては、通常の緊急事態対処体制では適切に対処することがやはり困難な事態であるというふうに考えられますので、ダッカの事件は重大緊急事態に当たる一つの例ではなかろうかというふうに申し上げているのであります。
#236
○三浦(久)委員 そうすると、現在この種のハイジャックが起きた場合、今の制度としてはどういう対策の制度があるのですか。
#237
○的場政府委員 お答えをいたします。
 ハイジャック等の人質を盾とした非人道的暴力事件が発生いたしましたときには、これに対処するため速やかに内閣に事件対策本部を設置することとしております。同本部は、内閣官房長官を本部長として関係大臣等で構成され、内閣総理大臣の命を受けて当該事件処理に係る基本方針を協議、決定することを任務としております。関係省庁はそれぞれの任務、権限に基づいて必要な施策を実施し、事件の対処に当たることになっております。
#238
○三浦(久)委員 そうすると、今あなたは事件が発生した場合のことを言われましたけれども、先ほどの御答弁ですと、現在も略称ハイジャック防止対策本部、こういうものが常設されているわけでしょう。どうですか。
#239
○的場政府委員 そのとおりでございます。
#240
○三浦(久)委員 その構成メンバーはどうなっていますか。
#241
○的場政府委員 本部の構成員は、本部長が内閣官房長官、本部員が法務大臣、外務大臣、運輸大臣、国家公安委員長、それから政務、事務の内閣官豚副長官、警察庁長官でございます。
#242
○三浦(久)委員 そうすると、もうほとんどこの安保会議のメンバーが網羅されているという状況じゃありませんか。そうすると、我が国のハイジャック防止対策としては、略称ハイジャック防止法というのがありますね。そして今そういう事件が起きた場合には、通常の対処体制としてはそのハイジャック防止対策本部がある。事件が発生した場合には事件対策本部がつくられる。そしていわゆる身のしろ金の要求であるとか犯人の引き渡しであるとか、そういうものに対してはきちっと対処する体制ができているのじゃありませんか。こういう通常の処理体制では適切に処理することが困難であるというふうに思われているのですか。官房長官自身が本部長なんですよ。どうなんですか。
#243
○塩田政府委員 今御指摘のとおり、事件対策本部をつくって対処する、こういうことになっておりますので、それで対処できる限りは、私どもの言いますところの通常の緊急事態対処体制ということになりますので、それで対処いたします。それで、先ほどのダッカのような事件の場合に、今の対策本部の体制で対処できるかどうか、こういう判断になるわけでございまして、非常に高度な政治的判断を要する事案であるという意味におきまして、これは通常の事件対策本部では処理し切れないケースではなかろうか、私どもはこういうふうに判断をして例として申し上げているわけであります。
#244
○三浦(久)委員 それはおかしいんじゃないでしょうかね。こういう事件の経験があってハイジャック防止法もつくり、そしてこういうハイジャック防止対策本部もつくり、そしてまた事件が発生すれば事件対策本部をつくる。それで官房長官が出て、運輸大臣も法務大臣も、もうほとんど関係大臣みんな対策本部の委員になっているのでしょう。そこで対策ができない、そこで適切に処理することが困難だというような事態というのはどういうことが考えられますか。それは、身のしろ金の問題は当然もう予想されていることですよ。身のしろ金の要求も犯人の釈放の問題も経験済みの問題ですよ。そうすると、そこでやればいいのであって、何も安全保障会議を設置してそこでやらなきゃならぬというような問題に発展するなんて考えられないでしょう。
 もちろん、これは放置しておくと、また処理のいかんによっては国家の安全にとって重大な影響を及ぼす場合が出てきますね。それはそうでしょう。例えば西ドイツのように特殊部隊を派遣してさっと武力でもって人質を奪還するというようなこともあるわけですから、こういう方針を決めたらそれは大変なことですね。我が国の安全にとって影響を及ぼすことは出てきます。しかし、少なくとも通常の処理体制というのは今できているわけでしょう。それで十分やれることじゃないですか。じゃ、そのほかにどんな予想しがたいようなことが独像できるのですか。ですから、今の体制で十分処理できる、安全保障会議をわざわざつくらなくたってできると私は思うのですが、その点いかがですか。
#245
○塩田政府委員 お話しのように、ハイジャックそのものにつきましては過去何回か経験がありまして、現在の体制になってきておるわけでございまして、その限りで過去の経験を生かした対策がとれるという体制をとっております。したがいまして、何回も申し上げますけれども、その体制でできる限りはそちらでやるということで結構なわけでございます。ただ、ダッカのような場合のときに今の体制でできるかどうか、こういう判断の問題でございまして、具体的な事件が起こった場合に当然その判断をされるわけでございますが、今申し上げました、官房長官を長とする現在の本部で対処できるか、あるいは今度の安全保障会議で対処をすべきかというようなことが具体のケースにおいて判断をされることになります。それで、私どもは、ダッカのような場合には安保会議にかかるケースではなかろうかというふうに申し上げているわけであります。
#246
○三浦(久)委員 それはなぜですか。身のしろ金の要求をされたり、犯人の釈放を要求されたりしている場合だからということですか。
#247
○塩田政府委員 そういうことでございますけれども、そういう非常に高度な政治判断を要する問題につきまして政府としての方針を決めまして、実際の処理は、今ありますところの、現在の制度で考えておりますところの、事件の際に設けられる事件対策本部を通じて処理はされるという方針を安全保障会議で諮られることになるのではなかろうか、こういうふうに思っておるわけであります。
#248
○三浦(久)委員 だから結局、身のしろ金の要求とか犯人の引き渡しの要求とかに応ずるのか応じないのかとか、そういう問題は非常に高度な政治的判断でしょう。そういうものをやるためだけにこういうものをつくるのかということになれば、まさにこれは超法規的な対処をするためにこの安全保障会議が必要なんだ、そのほかの問題は全部通常の体制で処理できるんだ、こういうことになりはしませんか。これは私は、この安全保障会議設置というのは非常に危険なものを持っておる、現行体制からはみ出しちゃうものを持っているというふうに言わざるを得ないわけですね。
 ですから、こんな高度な政治的な判断であれば――私は非常に高度な政治的判断だと思う。そうであれば、何も一部の閣僚でやる必要はないのですよ。むしろ閣議にかけて、そこで多くの人の意見を聞いて、内閣としての意思を一致させてやるべきなんですよ、こういうものというのは。今の政府の答弁を聞いていても、何で安全保障会議を設置してここでやらなければならぬのか、例えばダッカ事件についてですよ。全然納得がいきませんね。理由は非常に希薄であり、あいまいであります。
 次に論を進めますけれども、ミグ25の着陸事件でありますが、これは一九七六年の九月六日に起きたんですね。ソ連の軍用機ミグ25が函館空港に強制着陸をしたということでしょう。そしてベレンコ中尉がアメリカに亡命を希望し、亡命したのですね。そしてミグの機体は解体をし、調査をし、そしてソ連に送り返したという問題でしょう。これが何で重大緊急事態の要件に合致しているのですか、教えてください。
#249
○塩田政府委員 ミグの場合は、高度の軍事機密を持った機体でありました、ミグ25自体が。したがいまして、その取り扱いをめぐる問題が、当時におきまして対処すべき省庁が必ずしも明確ではないということが一つ。
 それからまた、これは対処を誤れば日ソ間に重大な軍事的紛争を生ずるかもしれない、そういういわゆる不測の事態に発展するおそれがあった、そういうような観点から緊急に対処する必要があったというふうに考えて、このようなケースがもし今後起これば、ここで言うところの重緊事態に当たるのではないかというふうに考えているわけであります。
#250
○三浦(久)委員 このとき政府はどう対処したのかということですね。このときには外務省とか防衛庁、そういう関係省庁会議というものを開いておりますね。それで処理しているのですよ。別に対策本部をつくっているわけでもない、また臨時閣議を招集してやったわけでもない。それで間に合って立派にやっているわけじゃないですか。それで立派にやっているわけですよ。それは確かに外務省と防衛庁の間で意見の対立はありましたね。外務省はやはりソ連との関係を考えて早期に返還しろ、防衛庁の方はいや、解体して秘密を全部探ってそれをみんなアメリカに教えてから返そう、こういう意見の対立はあったと思いますよ。しかし、その意見も何も、ほどなくちゃんともう瞬間的におさまって、総理大臣のツルの一声で決まって、それで、これは事のよしあしは別として、何の支障もなくあなたたちの方針どおり事が運んでいるじゃありませんか。そうすると、今ある既存の処理体制で十分にやっていける問題だと私は思うのだ。こんなものを一々、こういうものを処理するのだといって安全保障会議にかけなければならぬというような問題じゃない。
 後藤田さんはよく、いや、いろいろ意見がまとまらないのだ、こう言われますでしょう。では、このミグ25の問題、安全保障会議にやったら意見がまとまるのか、最初から何の異論もなくぱっと決まるのか。そうじゃないでしょう。やはり外務省と防衛庁が入るわけですよ。このミグ25の場合だって、外務省と防衛庁との意見の対立があったということでしょう。ですから、安全保障会議でやったからうまくいくとか、閣議にかけたらうまくいかぬ、緊急には間に合わないというようなそんな問題じゃないので、このときには臨時閣議すら開いていない。宮澤さんは当時の外務大臣でしょう。何と言っていたかというと、これはもう外交上の難しい問題になる心配はないというふうに次の日に言っているのです、七日の日に。という程度の問題なんですよ。こういうものを処理しなければならないのだということを口実に、あなたたちは安全保障会議をつくろうとしている。私はこれは全く口実にしかすぎないというふうに思うのです、
 もう一回聞きますが、どうしてこれが二条二項に言う「重大緊急事態」という要件に該当するのですか。
#251
○塩田政府委員 どうして該当するかという理由は、先ほど申し上げましたが、当時のことを振り返ってみて、御指摘のように、何もなくてちゃんとうまくいったではないかということでございますけれども、私がいろいろ承っておる限りでは、必ずしも政府として迅速に的確に対処し得たという状況ではなかったというふうに聞いております。ただ、あれ以上の大きな発展にはならなかったという点は幸いであったと思いますけれども、政府の対処のあり方がスムーズに的確にいったかということになると、必ずしもそうではなかったのではないかというふうに聞いております。
#252
○三浦(久)委員 そうすると、あのときは通常の体制では適切に処理することができなかった、困難だったというふうに言われるのですか。
#253
○塩田政府委員 あの場合は、むしろ通常の体制そのものがないのです。したがって、そもそも最初から所管省庁がどこかという問題から始まったわけでありまして、結局、官房長官の指揮のもとにああいう措置をとったということでございます。
#254
○三浦(久)委員 そういうときの通常の体制というのは、閣議にかけて決めるんじゃないのですか。このときは閣議をやっていないんだけれども、通常の場合には閣議にかけて決めるのじゃないですか。どこが所管の省庁かわからないなんというようなときには閣議にかけてやればいいのじゃないですか、どうですか。
#255
○塩田政府委員 事態によりまして、すべて閣議にかけるかどうかというのは別だと思いますけれども、通常の体制がないと言いましたのは、例えばきょう現在何か起こりますとどうするかと言われれば、官房長官の指揮のもとに政府としては何か対処しなければいけませんから対処することになる、そういう意味では通常の対処体制というものがあるわけでありますけれども、今申し上げているのは、政府として、組織として整った体制ができていないということを申し上げているわけであります。
#256
○三浦(久)委員 そんなものは必要ないじゃないですか、そういう組織的な体制がなくても、現在の内閣法であるとか、そういうもののもとでもってぴしっとあなたたちは適切に対処したと思っていらっしゃるのでしょう。それで十分じゃないですか。それ以上のことは、安全保障会議を開いたって同じですよ。その安全保障会議でどうしてもこれを語らなければスムーズにいかないのだという理由は全く何もないじゃないですか。どうしても、あなたたちの言っている具体的な例というのは、これはもう口実にしかすぎないというふうに私は思うのですけれどもね。
 同じことを言ってもしようがないのですけれども、今度はKALの事件ですね。これもあなたは言われますね、あの大韓航空機の撃墜事件。これは一九八三年の九月一日に起きた事件ですね。これは何で「重大緊急事態」に該当するのですか。
#257
○塩田政府委員 KALの事件は、我が国の周辺におきます外国の軍隊による武力の行使をめぐる事件につきましての、我が国の立場からいいますと、その関係の機密情報の取り扱い、それから撃墜をされた飛行機の捜索をめぐる問題、こういった問題が「我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがある」、また、その対処につきましては高度の政治的判断が必要とされ、「通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難」である事件の例として、私どもはこれを申し上げておるわけであります。
#258
○三浦(久)委員 これは外国の飛行機でしょう。外国の飛行機が外国に撃墜されたというだけの話じゃないですか。そしてそれが日本にたまたま近かった、それだけの話でしょう。これが何で「重大緊急事態」なんですか。こんなことまで安全保障会議でやるというのは一体どういうことなんですか。全然関係ないじゃないですか。
 例えば、ではこれが、大韓航空機がアメリカの上空でアメリカに撃墜された、または第三国に撃墜されたとしますね。これは日本にとって「重大緊急事態」ですか。そんなことにならないでしょう。そうすると、日本の近くにおって撃墜されたというだけで、それだけで何で「重大緊急事態」ですか。黙っておったって、放置しておったって、日本の安全に重大な影響を及ぼすというような事態に発展するなんて考えられないでしょう。そんなことがどうして考えられるのですかね、教えてください。
#259
○塩田政府委員 おっしゃいますように、外国の領土における外国の軍隊による外国機の撃墜事件でありますけれども、あの事件に関します機密情報の取り扱い、これは我が国にとっては重大な問題であったわけであります。
#260
○三浦(久)委員 その機密情報をどうするということが重大な安全問題だったのですか。
#261
○塩田政府委員 先ほど申し上げましたが、その問題と、もう一つは、あそこで墜落した飛行機の捜索がございました。各国の艦艇が狭い海域に入り乱れて捜索をしたという状況がございます。そういう事態も、よほど慎重に対処しないと、国際的な紛争になりかねないおそれはあったというふうに思われるわけであります。その二点で申し上げておるわけであります。
#262
○三浦(久)委員 しかし、これは大変なことですね。重大な緊急事態というのをああいうものにまで広げていくということになれば、あなたたちの主観でもって外国のどんな事件だって入ってしまうでしょう。捜索の問題なんて関係ないじゃないですか、そんな問題は。それから機密の問題だって、アメリカにそれを教えるかどうかとかという問題でしょう。そんなことがどうして日本の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるということが言えるのでしょうかね。
 あなた自身も行革審でいろいろ説明しているでしょう、安全保障会議設置法の問題について。これはことしの二月十七日、報告者は国防会議の塩田事務局長さんと能紫参事官さんが出られた。このときにあなたは、「国の安全、国民生活の安全に重大な問題があり、かつ緊急性を有するという場合で、ただ大韓航空機撃墜事件をみても、さめた目でみれば、別段、日本にとって重大、緊急事態かどうかには疑問がある。他国の領土の上空を他国の飛行機が侵犯したというに過ぎない。アフリカ上空で起きたとして別段、日本が重大緊急といってさわぐことではない筈だ。あえていえば日本に近いところというに過ぎない。結果として撃墜された以降、ソ連もアメリカも、又日本も一斉に大さわぎして海底捜査をしたりしたけれども……。」こう言っているのですね。
 だから、あなた自身もこれは「重大緊急事態」に該当しないのではないかと思っているんじゃないですか。行革審でこういう説明をしたことはありませんか。
#263
○塩田政府委員 行革審に行ったことは覚えていますが、その説明した言葉までは覚えておりませんけれども、しかし、先ほども言いましたように、事件そのものはなるほど外国で起こった外国の軍用機による外国機の撃墜事件である、それはそのとおりでございます。しかもそれは、単に近かったというだけでなくて、近かったために我が国の機密情報の取り扱いにかかわる問題が起こった、こういうことでございます。
#264
○三浦(久)委員 機密情報に関する取り扱いが起こったといったって、それは日本の意思でどうにでもなる問題じゃありませんか。日本の意思でどうにでもなる問題でしょう。ですから、そんなものが日本の安全に重大な影響を及ぼすとかなんとか、それは私ども不可解ですね。あなた、アメリカに通報したということだけでしょう。アメリカに通報して、それが何で日本の安全に重大な影響を及ぼすことになるのですか。それなら何もしなければいいじゃないですか、アメリカに報告しなければいい。アメリカに通告しなければ、何にも事は起こりませんね。
 では、アメリカにその秘密を、日本がいろいろ常時監視体制を組んでソ連の飛行機の動向を探知していますね、それをアメリカに通知したからといって、何で日本の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある事態に発展するのですか。どうしてなんですか教えてください。
#265
○塩田政府委員 これは私の担当ではございませんけれども、ああいう機密情報というのは取り扱いは平素非常に慎重を期しているわけでありまして、これは我が国の安全にとって重大な問題だと私どもは思うわけであります。
#266
○三浦(久)委員 いいですか、この二条二項の「重大緊急事態」というのは、国防に関する以外の緊急事態であって、「我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもののうち、通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な事態をいう。」というのですよ。抽象的にではあるけれども、これだけの縛りがかかっている。そうすると、機密といったって、あなたたちは安保条約でもって、いろいろ仕入れた情報はアメリカに通告する義務を負っているじゃないですか。そういう中で、あなたたちが知り得た情報をアメリカに知らせて、何でそれが日本の安全に重大な影響を及ぼすおそれがある事態に発展するのですかね。あなたたちはアメリカから褒められているじゃないですか。感謝決議までもらっているでしょう、この問題ではアメリカの国会から。ですから、何でそれが日本の安全に重大な影響を及ぼすのですかね。それは聞いている方は全然わかりませんよ。もう一回説明してください。
#267
○塩田政府委員 繰り返しになりますが、私どもは、あの種の機密情報の取り扱いということをそれだけ慎重に重要な事項と考えておるわけであります。
#268
○三浦(久)委員 そうすると、これは極めて恐ろしい法案になりますね。この二条二項の解釈というのはあなたたちがもう自由自在に解釈できるということになって、何ら客観的な担保がない。ですから、あなたたちが必要だと認めさえすればもうこの安全保障会議にどんどんかけて、そこでオーソライズした決定をぐっぐ、ぐっぐ実行していくというそういうことができるということですね。これはちょっと大変な法案だと私は思います。
 それじゃあなたたちが言っている関東大震災の問題ですけれども、これもこの前同僚議員が質問しておりましたけれども、こういう関東大震災が起きたような場合というのは現行法の災害対策基本法、ここで十分な対策が練られていることになっているのじゃありませんか。通常の緊急事態対処方針を教えてください。――答弁者がいないようですから……。
 災害対策基本法の第百五条によりますと、これは災害緊急事態の布告というのが行われますね。どういう場合かというと「非常災害が発生し、かつ、当該災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、閣議にかけて、関係地域の全部又は一部について災害緊急事態の布告を発することができる。」わけてあります。そして、布告を発した場合に緊急災害対策本部というものがつくられますね。これは第百七条であります。そしてその本部長は内閣総理大臣がなるのです。そうして、緊急勅令というのが昔ありましたが、災害の場合には一種の緊急政令まで第百九条でつくることができるようになっているのですね。災害応急対策の中には治安の維持というものもある。犯罪の予防というものもある。あらゆることができるようになっているのですね。ですから、こういう通常の緊急事態対処体制によって十分処理できると私は思うのです。これで処理できない、適切に処理することが困難だというような事態というのはまず発生しないのじゃないか、内閣総理大臣が本部長なんですから。私はそう思うのですが、どうしてこういう関東大震災のようなときが重大緊急事態になるのですか。
#269
○塩田政府委員 災害の関係は、私どもが言いますところの通常の緊急事態対処体制がある場合はそれによると言っておりますが、我が国の場合これが一番整っていると私は思います。そういう意味では、災害についてはかなりのところ現在の体制で対処できるというふうに考えております。
 ただ、私どもが関東大震災クラスのものが起こった場合には安保会議にかかることもあるのではないかと申し上げておりますのは、地震の後大変な社会的混乱といったような状態を考えた場合に、現在の緊急災害対策本部で行うところの対策の中で果たして処理し切れるだろうか、こういうことを考えまして、災害応急対策の範疇を超えるものが出れば、これはやはり安全保障会議で審議をして対処対策を考える、こういうことになるだろう、こういう意味で申し上げているわけですが、やや具体的に申し上げてみますと、お話しのように、犯罪の予防でありますとか交通の規制その他、災害地における社会秩序の維持といったようなところまで現在の災害応急対策の中に含められておりますから、かなりのところまでそれでできる、これはもう間違いないと思います。しかし、そこで言うところの社会秩序の維持といいますのは、やはりあくまでも災害応急対策の一環でありまして、人心の安定を図るために正確な情報を伝達するとか、あるいは避難地における窃盗などの犯罪を防止するとか、そういうようなことが当然必要になってきますので、そういう意味で警察が当たる、こういうことになっております。ですから問題は、その程度の警察力の行使をもって事態がおさまるのであれば、どんな地震であっても何も安全保障会議にかける必要はない。それ以上の場合にどうか、こういうことであります。
#270
○三浦(久)委員 警察の場合でも、これは警察の出動の問題でも警察法にありますね、緊急事態の布告というのがありますね。総理大臣が直接警察を指揮できるというのがありますね。これは災害のときできるのですよ。そうすれば、まずほとんどの問題というのはこの通常の処理体制でできると私は思うのです。これはあなたもそうおっしゃる。そうするとそれを超えたもの、こうなるのです、あなたたちは。超えたものというのはどういうことか。どういうことなんですか。それじゃ、超えた場合に何をしなければいかぬからこの安全保障会議設置法が必要だとあなたたちはおっしゃるのですか、それを教えてください。
#271
○塩田政府委員 今地震の場合の警察力による社会秩序の維持というものが災害対策として考えられておると申し上げましたが、その場合の災害対策としての警察力によるところの社会秩序の維持というのは、今申し上げたような窃盗などの各種犯罪の防止でありますとか、あるいは正確な情報の伝達でありますとか、交通の規制でありますとか、そういうことを指しております。ですから、先ほど申し上げましたように、その程度の秩序の維持の努力で秩序が維持されればそれはそれでよろしいわけです。ですから、もっと大きな社会的大混乱という事態に、関東大震災の場合は私どもも承知しておりませんけれども、戒厳令まで出たというふうに聞いておりますけれども、そういうような事態というものは、ここで言うところの災害応急対策としての警察力では恐らく秩序の維持はできなかった状態ではなかろうか、こういうふうに考えるものですから例として申し上げておるわけであります。
#272
○三浦(久)委員 警察法の第七十一条では、「内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる。」こうなっておりますね。すると、これを超える事態ということですか。大規模な災害または騒乱その他の緊急事態に際してはこういう緊急事態の布告を発して、そして内閣総理大臣が直接警察庁長官を指揮して動かすことができるのです。これはいろいろなことができると思いますよ。それを超える事態というふうにあなたたちが言うというのはどういうことを指しておるのでしょうか、もっと具体的に言ってください。
#273
○塩田政府委員 御指摘のように別途警察法上に七十一条の規定がございます。これはまた、大震災も含みますけれども大震災だけではない、いわゆる治安対策上の一つの制度としてあります。私ども申し上げておるのは、これを超えるとか超えないとかということではないわけです。いわゆる治安対策という観点からだけ考えれば、警察緊急事態を超えるというのは、もうあとは自衛隊の治安出動しかないわけであります。私どもはそういうことではなくて、先ほどの災害対策として行われる秩序維持のための警察力の行使でその災害地の秩序が維持できないという場合に、必ず警察は警察緊急事態を布告するかそれはわからないと私は思うのです。もちろん布告することはあるかもしれません。ないとは言いませんけれども、少なくとも一義的にはわからない。そのときの判断によると思いますが、私どもが言っておりますのは、そういう災害が起こって災害対策だけでは対処し切れない、そういうことで今の警察の方も、先ほど申し上げた災害対策としての警察力以上の警察を使わなければいかぬといったような事態になった場合に、総合的に判断をして、当該地震の対策として総合的な立場からどういうことをしたらいいかということを安全保障会議で審議しようということでありまして、それが必ず警察庁の警察法の警察緊急事態を布告するとかあるいはそれを超えるとか、そういうことと一義的に結びついて考えているわけではないわけです。
#274
○三浦(久)委員 しかし、通常の警察力をもって社会の秩序が維持できないというような事態になれば、一地域の治安維持ができないとなれば、あなたたちはやはりこの警察法に基づいて強力な体制をとるということでしょう。そのために警察法の七十一条に規定があるわけだから。この七十一条というのは災害対策としてやるということだけじゃありませんよ。これは大規模な災害ももちろん入りますよ。しかし、そのほかに「騒乱その他の緊急事態」というふうになっているわけですから、何も災害対策としての治安維持というようなことだけが入っているわけじゃないのです。ですから、例えばあなたたちが言ういわゆる災害対策の範囲を超えるというかな、そういうような事態にまで発展していったという場合でもこの警察法第七十一条で十分できるわけであって、そしてまた、緊急災害対策本部が総理大臣が本部長になってやっているわけだから、そこで一人がやっているわけだから、十分に調整もできれば時宜に適した指揮監督というのはできると私は思う。何も安全保障会議をつくらなくてもいい。安全保障会議で何でやらなければいけないのか。
 安全保障会議でなければやれないという問題、それは今あなたがちょろっと口に出したけれども、治安出動ですよ。自衛隊の治安出動の場合にはちょっと警察の非常事態の布告ではできないでしょう。ですから自衛隊の治安出動をさせる、そのためにあなたたちはこういう安全保障会議をつくろうとしているのですよ。しかし、この自衛隊の治安出動というのは安全保障会議でやると後藤田さんは何回もおっしゃっているのだけれども、これは二条の一項ではできないと私は思うのです。これは「国防に関する重要事項」でしょうから、それでは私はできないと思う。そうすると二条の二項ということになりますね、いわゆる重大緊急事態ということになる。そうすると、これはもう既に、自衛隊法の七十八条でちゃんと総理大臣がやることになって、やってからはまた二十日以内に国会での承認を得るとか、一連の手続はできておる。既存の対処体制ができておる。そうすると、重大緊急事態ではないと私は思うのですね。そうすると、何で自衛隊の治安出動をこの安全保障会議でもって審議し、決定し、そして出動を総理大臣が命ずるのかということなのですが、そのできる根拠をちょっと明らかにしてほしいと思うのです。
#275
○塩田政府委員 治安出動の前に、まずさっきの警察の話でございますが、先生がおっしゃいますのは、大地震のときに社会的秩序が乱れるということに対処するのに警察の力をかりるのであれば七十一条があるじゃないか、こうおっしゃるわけですけれども、私どもはそういうことを申し上げておるわけではないのです。災害対策本部ができて災害対策を実施していく、その実施の災害対策の中には今申し上げた秩序の維持という項目がありますから、当然警察はその災対本部の指示を受けて秩序の維持に当たっておる、こういうことを申し上げておるわけです。それで足りる程度の秩序の紊乱であればいいのですけれども、もっと大きな混乱のときにはもっとその災害対策を超えた警察力の行使が要るではないか、こういうことを申し上げている。それが直ちに七十一条にいくとは申し上げているわけじゃないのです。もっと違った、災害対策を超える警察力の使用が要るではないかということを申し上げている。そういうことになりますと、災害対策本部の範疇を超えますから、安全保障会議で総合的な判断を下す必要が出てくるのではなかろうか、こういうふうに申し上げたわけであります。
 それから、治安出動について二条の一項ではない、こういうふうにおっしゃいました。私どもは二条の一項だと思っているわけです。治安出動の場合は、二条一項の五号で考えておるわけでございます。
#276
○三浦(久)委員 二条の一項五号、これは国防会議の事務をそのまま承継したものだというふうに、あなたたちはおっしゃっていましたね。そうすると、治安出動というのは国防会議の付議事項だったのですか。
#277
○塩田政府委員 御承知のように、防衛出動の可否と違いまして明文の規定がございません。したがって、治安出動の場合に必ず国防会議にかけるかどうかについての防衛出動のときのような明文の規定は、はっきりしたものはございませんが、しかし、治安出動というような事態の重要性を考えました場合に、一項の五号で言うところの「その他国防に関する重要事項」として判断されるであろう、こういうふうに申し上げてきたわけであります。そういう意味で一項の五号というふうに、現在の国防会議の場合ですね、そういうふうに我々は解釈しておるわけであります。
#278
○三浦(久)委員 そういう方針ですね。そうすると、明文はないけれども国防会議にかけて、そして出動命令する場合もあるだろう。いつからそういう方針になったのですか。
#279
○塩田政府委員 これは政府が従来から御答弁申し上げておるはずでございます。
#280
○三浦(久)委員 これはちょっと古いのですが、佐藤達夫という政府委員、これは法制局長官、この方が参議院の内閣委員会でもって答弁されておるものがあるのです。これは昭和二十九年の五月三十一日ですね、防衛庁設置法と自衛隊法制定の際の論議なのですけれども、ここで佐藤さんは「治安出動については、現在も同じような保安庁法の下に」、当時は保安庁です、「保安庁法の下にあるわけであります。その場合についても、何も治安会議というようなものもございませんし、国会の同意ということだけで済ましておるわけでありますからして、それは今日この自衛隊法ができました後においても、事態は同じことであろう、そういう意味で国防会議そのものの問題には実はならないと思います。」こういうふうに答弁しておるのですね。この当時の議論としては、法制局長官が国防会議の問題ではない、国防会議にはかからない問題なんだとはっきり述べておるのですよ。そういう事実があったのは御承知ですか。
#281
○塩田政府委員 そういう答弁は承知しております。
#282
○三浦(久)委員 そうすると、いつそういう方針が変わったのですか。
#283
○塩田政府委員 先ほどのものは国防会議の法律の審議のときの質疑であったと思いますが、そのものには、かからないだろうという意味にも今言えるわけでございますけれども、その後、例えて言いますと昭和三十七年七月二十七日の池田総理のお答えの中に、「防衛出動のときにはもちろん国防会議にかけなければなりません。しかし、今のお話のような点につきましては、」つまり治安出動のことですが、「今のお話のような点につきましては、法律的に国防会議にかけなければならぬということにはなっていないのでございます。従いまして、事態の状況によりまして私が判断いたしたいと思います。」こういう答弁がございます。
#284
○三浦(久)委員 そうすると、それは事態の状況を見てかけるかかけないか決めるということでしょう。じゃ、そういうふうに変わったということだね。後藤田さんはこれをかける、やるんだ、こう言っていますでしょう。そうすると、そういう今までの内閣の方針を変えるという場合には、閣議で決めるとかということが必要なんじゃないでしょうか。どうなんですか。
#285
○後藤田国務大臣 私がお答えをしておるのは、自衛隊というのは御案内のとおり武装部隊でございますから、したがって、その武装部隊を治安出動といえどもやはり外に出すわけですから、そのときは事柄として極めて重大に扱わなければならぬ。ならば、やはりこれは国防会議にかけるのが普通ではなかろうか。しかし、これは総理が判断するわけです。根拠規定は二条一項の第五号の規定によるわけですから総理の判断によるわけです。それは池田総理が言ったとおりなんです。しかしながら、通常の場合はこれは事柄の重要性から見てかけるのが筋道であろう、こう私はお答えをしているわけでございます。だから、法律の解釈を変えるのはどうこうと言うが、私は別段法律の解釈を、池田さんの解釈とそう変わっているつもりは実はないわけでございます。
#286
○三浦(久)委員 そうすると、後藤田長官は、この治安出動をやる場合には必ず安全保障会議に付議する、付議しなければならない、そういうふうに考えていらっしゃるのですか。
#287
○後藤田国務大臣 付議しなければならないとは私はお答えをしていない。そうではなくて、総理が判断をせられることであろうけれども、事柄の重要性から見てかけるのが普通であろう、こういうことを申し上げておる。
#288
○三浦(久)委員 安全保障会議の危険性がますます浮き彫りになってきたと思うのですけれども、それじゃ、治安出動の場合には知事の要請による治安出動というのがありますね、後藤田さん。この知事が要請することができる場合というのは、自衛隊法の八十一条で、「治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、」「内閣総理大臣に対し、部隊等の出動を要請することができる。」とあります。そうすると、政府の側から見てこういう要件があったにもかかわらず、知事が要請をしなかったという場合があるとします。その場合に、この安全保障会議で審議して、そしてあの都道府県知事に対して要請を勧告しようとか要請を命令しようとか、そういうようなことはやるおつもりがあるのですかどうですか。
#289
○西廣政府委員 自衛隊法の問題でございますから私の方からお答えいたします。
 御承知のように治安出動には命令による治安出動と要請による治安出動があるわけですが、都道府県知事から特段の要請がない場合は、要するに政府としては、そのまま静観しているかあるいは政府自身の判断として命令による治安出動を下令するかという、どちらかの選択をすることになろうかと思います。
#290
○三浦(久)委員 そうすると、要請をするように職務命令を出すようなことはないということですね。それは確認しておきます。
 それと、そうすると当然、職務命令に従わない場合に代執行をやるというようなこともないというふうに承っておいていいですな。――答弁は……。
#291
○後藤田国務大臣 事務当局が返答しませんから、私からお答えを申し上げます。
 今の代執行という御質問が何のことかよくわからない。これは要するに委任事務の話じゃないですか。(三浦(久)委員「機関委任事務」と呼ぶ)そうでしょう。これは別段機関委任事務じゃないでしょう、その要請ということは。だからそれはちょっと話が別じゃないですか。私は一応そうお答えしておきます。
#292
○三浦(久)委員 これは機関委任事務なんですよ。これはもう前段で、あなたたちの方で、そういう強制はしないと言っているからいいのですけれども、後学のために言っておきますと、地方自治法百四十八条二項に国の事務の問題がございますね。そして別表第三でたくさんありますね。その別表第三の五の三というところに、治安出動の要請というのも機関委任事務に入っております。自衛官の募集の次に書いてあります。ですから、これは後学のために申し上げておきます。
 それでは次に、塩田さん、この法案を見ますと、安全保障会議に諮る場合は、「重大緊急事態が発生した場合」とありますね。ところが、その重大緊急事態の括弧の中を見ますと、「我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもののうち、」となっていますね。「おそれ」というのがあります。それで私ははっきりさせるためにちょっとお尋ねしたいのですが、これは重大な緊急事態が発生した場合にだけ諮問という行為が行われるのか、審議が行われるのか、それとも、重大緊急事態が発生するおそれのある場合にもこの会議にかけるのか、それをちょっとお尋ねしておきます。
#293
○塩田政府委員 これはあくまでも事態が発生した後であります。事態が発生した場合に、その事態が重大な影響を及ぼすおそれがあるかどうかという判断が加わるわけでありまして、事態が発生する以前には関係ございません。
#294
○三浦(久)委員 それで、私もそう思っておるのですが、先ほど申し上げましたが、あなたがことしの二月十七日行革審に行って安全保障会議設置法について説明をされておるのです。これは覚えておられるでしょう。
#295
○塩田政府委員 先ほども申し上げましたが、行った覚えはあります。
#296
○三浦(久)委員 そこで、いろいろ説明した後、質問が出まして、「「重大緊急事態が発生した場合」では間に合わないのではないか、「発生するおそれがある場合」としないと。」という質問が出ているのです。それに対してあなたが「解釈としては事実上「おそれのある場合」も含まれる。」こう答弁しているのです。覚えていますか。
#297
○塩田政府委員 そういう答弁をするはずがないと思います。
#298
○三浦(久)委員 これは非常に信憑性の高い槇枝ニュースなんです。槇枝ニュースというのは、これはもう行革審の事務局だってうそだとは言わない内容ですよ。この槇枝ニュースの中にそういうのがあるのです。
 Bという人が、「「重大緊急事態が発生した場合」では間に合わないのではないか、「発生するおそれがある場合」としないと。」こう言っている。で、「塩田 解釈としては事実上「おそれのある場合」も含まれる。」こう言っておるのですね。ですから、国会の答弁と行革審での答弁と違うというのじゃ困りますから、その点もまたはっきりさせていただきたい。
#299
○塩田政府委員 ここで先ほどお答え申したとおりであります。
#300
○三浦(久)委員 そうすると、そういうことを行革審で言ったとすれば、それは訂正するということですね。
#301
○塩田政府委員 どなたからもそういう御指摘がございませんので、別に何もいたしておりません。
#302
○三浦(久)委員 それでは、次に国防と重大緊急事態との関係についてちょっとお尋ねをしたいのですが、これは確認だけですけれども、重大緊急事態の定義として、括弧の中に「前項の規定により国防に関する重要事項としてその対処措置につき諮るべき事態以外の緊急事態であつて、」こうなっていますね。そうすると、重大緊急事態というのは国防に関する問題は一切含まれないという意味なのか。それとも、第一項でこぼれ落ちた国防問題であってこの重大緊急事態の要件に合致するものは、国防問題であってもやはり重大緊急事態としてこの会議に語るということになるのか。その点をちょっとお尋ねしておきます。
#303
○塩田政府委員 「国防に関する事項」について、一項の五号で総理が必要と認めてかけるという場合に、そこで必要と認められなかったという程度の問題だ、こういうことだと思いますが、それが二項に移るか、こういうお尋ねのようですが、そういうことは私どもは考えておりません。ただ、一つの事態の中に国防問題に発展するおそれがあるような局面も含んでおるということはあり得るかと思います、つまり、二項で言うところの重大緊急事態の中に。どんな事態が起こるかわかりませんけれども、その局面の中に国防問題に発展するおそれのあるかもしれないことは含んでおりますから、一概に整序をして、ある事態を国防か重緊かと分けることが必ずしも明確でない場合もあろうかと思います、それは事態によりますから。しかし、その場合でも、私ども先ほど申し上げたように、一項の五号の判断で外されたから、それじゃ二項にいこう、こういうような性質のものではないというふうに考えております。
#304
○三浦(久)委員 では、安全保障会議と内閣との関係についてお尋ねをいたしたいと思います。
 憲法第七十二条には、内閣総理大臣の職務というのは、内閣を代表して議案を国会に提出する。それから「一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」こういうふうに規定しているわけですね。ですから、総理大臣というのは内閣を代表して行政各部を指揮監督する、こういう任務を持っているわけです。内閣法の第六条によりますと、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」というふうに定められております。
 ここで強調したいのは、内閣総理大臣の行政各部に対する指揮監督権というのは、閣議にかけた方針に基づいて行わなければならないということなんですね。私は、重大緊急事態の場合であってもこの方針は貫かれなければならないというふうに思うわけですが、その点はいかがでしょう。
#305
○塩田政府委員 安全保障会議での答申の内容が閣議決定等を要するような事項であれば、これは当然閣議にかけて審議される、こういうことになるわけであります。その閣議に付議する場合の基準は、一般的に申し上げれば、閣議決定は内閣としての意思を決定する事項について行われる、これは閣議決定でございます。そのほか閣議了解、閣議報告、それぞれございまして、その取り扱いによって処理される、こういうことでございます。
#306
○三浦(久)委員 私が言うのは、安保会議にかけるもので閣議にかけなければならないものということを聞いているんじゃないのです。閣議にかけなければならぬものは閣議にかけるのは当たり前のことですね。そうじゃなくて、総理大臣というのは、内閣を代表して、閣議にかけた方針で行政各部を指揮監督する、この方針というのは重大緊急事態の対処の場合においても貫かれなければならない方針ではないですかということなんですが。
#307
○塩田政府委員 その点は、そのとおりだと思います。
#308
○三浦(久)委員 内閣法の十二条四項に「内閣官房の外、内閣に、別に法律の定めるところにより、必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる。」とありますね。安全保障会議というのは、この内閣法十二条の四項に基づく会議なんでしょうか機関なんでしょうか。
#309
○塩田政府委員 そのとおりでございます。
#310
○三浦(久)委員 そうすると、安全保障会議というのは内閣の補助機関だというふうに考えていいんですね。
#311
○塩田政府委員 内閣の補助機関でございます。
#312
○三浦(久)委員 今までの政府の答弁をずっと聞いていますと、後藤田さんがいなくなってしまったのでぐあいが悪いのですけれども、特に後藤田さんは、安全保障会議というのは、総理が難しい判断をしなければならない場合に、総理のそういう判断を助けるための会議なんだ、こういうふうに言われておったのですけれども、それとの関連はどうなるのでしょうか。総理を助ける機関だと言う、しかし法律では内閣の補助機関だと言う、これは私は意味が違うと思うのですね。同じことじゃないと思うのですが、それはどういうことでしょうか。
#313
○塩田政府委員 組織法上は内閣の補助機関でありますが、この任務は、内閣総理大臣の諮問を受けてこれに答申をしあるいは建言をするということで、内閣総理大臣を補佐するのが任務でございます。
#314
○三浦(久)委員 しかし、内閣の補助機関でしょう。内閣の補助機関なのに総理大臣を補佐するのが任務というのは、どういう関係になるのでしょう。
#315
○塩田政府委員 組織法上は内閣の補助機関という立場に立ちます。しかし、そこで与えられておる任務は、先ほど申し上げたように総理大臣の補佐をするのが任務でございます。
#316
○三浦(久)委員 それはどの法律に書いてあるのですか。
#317
○塩田政府委員 安全保障会議設置法の第二条でございます。
#318
○三浦(久)委員 内閣というのは合議体でしょう。内閣全体の補助機関ということになっていながら、勝手に安全保障会議設置法で総理大臣の補助機関だということを決めるというのはおかしいじゃないですか。第二条にそう書いてあるのですか。これは内閣総理大臣が会議にかけて、内閣総理大臣も一緒になって、そして内閣総理大臣にいろいろ意見を出す、こういう自問自答の組織ですね。それは確かに二条はそうなっています。だけれども、合議体である内閣の補助機関だというふうに明記されているわけですから、その安全保障会議が総理大臣の任務を補助する機関だというのは私は矛盾していると思います。この整合性をどうするのかということです。
#319
○塩田政府委員 私は矛盾していると思わないのです。先ほど来申し上げておりますように、任務として内閣総理大臣の諮問機関としての任務が与えられておりますから、それは任務としては内閣総理大臣の補佐をする機関だ、こういうことになります。組織法上は御指摘のように十二条の四項で内閣の補助機関ということになるわけでございますが、私はそれと別に矛盾しているとは思いません。
#320
○三浦(久)委員 そんなことはおかしいじゃないですか。組織法上は内閣を補佐する機関なんですよ。内閣の補助機関なんです。しかし、内閣の補助機関でありながら任務は総理大臣の補助機関ですと言ったら、それは矛盾するじゃありませんか。矛盾しますよ。それはどうですか。あなたは矛盾しないと言うけれども、矛盾するじゃないですか。
#321
○塩田政府委員 十二条四項で言う内閣の補助機関というのは、「内閣官房の外、内閣に、別に法律の定めるところにより、」云々で、「内閣の事務を助けしめることができる。」こうなっておりますが、現実には、現在でいいますと国防会議あるいは法制局等もございます。法制局は法制局の任務を行っております。現在の国防会議は国防会議の任務を行っております。安全保障会議の場合は、今の国防会議の場合もそうですが、総理の諮問に答えるという任務を持っておる、こういうことでございます。
#322
○三浦(久)委員 法制局というのは内閣総理大臣の補助機関じゃないでしょう。内閣全体の補助機関でしょう。それは矛盾する概念でしょう。内閣というのは総理大臣も含めた合議体なんだから、それは合議体の補助機関でありますという組織が、いや、そうじゃなくて総理大臣の補助機関でありますというのは、これは全く矛盾しているじゃありませんか。それは矛盾しないという説明がおかしいですよ。だれが聞いたっておかしいのじゃないですか。
#323
○塩田政府委員 内閣の補助機関だと申し上げているわけではないのです。安全保障会議は内閣総理大臣を補佐する機関だと申し上げているわけです。補助機関というのは組織法上の言葉でございますから、これは十二条四項で言う内閣の補助機関でございます。
#324
○三浦(久)委員 だから、内閣の補助機関が何で内閣の一構成員――これは首長ではあるけれども内閣の一構成員です。それを補佐する任務だけをするというのはおかしいじゃないですか。法制局というのは内閣全体の法律に関するいろいろな補助活動をしているでしょう。それを、内閣の補助機関でありながら内閣総理大臣だけを補佐するなんて、そんな任務を与えられるというのはそもそもおかしいと私は思うのです。
#325
○塩田政府委員 私は矛盾しないと思うのです。内閣の首長である総理大臣、その総理大臣を補佐するのですから、おっしゃいますように内閣の補助機関たる地位から離れておるとは思わないのです、内閣の首長である総理大臣から諮問を受けて、それを答申するわけですから。
#326
○三浦(久)委員 組織法上内閣全体の補助機関である安全保障会議が、総理大臣を入れてわずか八名で構成されているわけです。そしてほかの人には秘密になっている。内閣の補助機関である安全保障会議が、内閣の構成員に対して秘密にしなければならないというのはどういうことなんですか。これはもう内閣の補助機関としての役目を果たさないということになりはしませんか。これは矛盾じゃないでしょうか、どうですか。内閣の補助機関ですよ。合議体である内閣の補助機関がいろいろ討議した。そしていろいろ決定した。そのことを構成メンバー以外の閣僚十二人ですか、それには知らせてはいけないというのだ。どっちが上なのかわからないじゃないですか。内閣の補助機関なんだから、そうしたらそこで討議したことは当然内閣に報告するとかするのが当たり前でしょう。それを全然隠してしまって、内閣の構成員にすら秘密にするというのがこの法律なんです。補助機関としての役割から見て、そういうことはどう思いますか。
#327
○塩田政府委員 先ほどから何遍も申し上げているのですが、内閣としての意思を決定する必要がある事項は、安全保障会議でかけたものでも当然閣議にかかるわけです。ですから、その意味で何も秘密にしておるわけではございません。
 それから繰り返しになりますけれども、行政組織法上内閣の補助機関ではありますけれども、その与えられた任務は総理の諮問に答える、こういうことでございますから、私は別に矛盾しておるとは思いません。
#328
○三浦(久)委員 ですからまた同じことになりますけれども、あなたは別に秘密にするわけじゃないと言っているけれども、秘密にしておるじゃないですか。第六条で「議長及び議員は、非常勤とする。」「議長及び議員並びに議長又は議員であった者は、その職務に関して知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」「他に漏らしてはならない。」ということは、同僚の閣僚に対しても漏らしちゃならないということじゃありませんか。漏らしてはいけないということでしょう。そうすると、内閣全体の補助機関であるこの安全保障会議がいろいろ討議したそのことを、補助しなければならない内閣に言えないというのはどういうことなんですか。変な話じゃありませんか。これを矛盾と思わないのですか、どうですか。
#329
○塩田政府委員 先ほどから申し上げておりますが、当然内閣の皆さんに知っていただかなくてはいけない内閣の閣議にかけるべき事項はかけるということは、先ほどから申し上げております。それ以外の事項についてはそれでは秘密になっておるじゃないかというお尋ねかと思いますが、それはすべての国務大臣がいろいろな形で、協議会なり他の委員会とかそういうものに出ております。それはそれぞれの分担によりまして、いろいろな形の組織の中で仕事をしているわけですから、それを一々全部内閣に言っているわけではありません。ですから安全保障会議の場合も、今の国防会議でも同じですが、当然内閣として意思決定を必要とすることはすべてかけるということですから、その限りでは秘密にはならない。それ以外のこともありますが、それはそれぞれの各大臣、あるいはこの場合は議員でございますが、それぞれの議員が自分の職務を遂行するに当たって、安全保障会議で言えば安全保障会議の議員としての職務を遂行しておる、あるいはそのほかにいろいろな形があると思います。それはそれぞれで、言うなればそのグループごとに、いろいろな秘密事項があるかどうか知りませんが、いろいろな形の閣僚のグループがございます、そのうちの一つでございますから、当然内閣の意思を決定する必要があるものはすべて閣議にかける、こういうことによりまして、普通のそのほかの閣僚が組織する機関と別段変わりはないというふうに私は理解をしておるわけです。
#330
○三浦(久)委員 あなたも自分でしゃべっていてわからなくなっているんじゃないですか。安全保障会議というのはグループの補助機関じゃないのです。閣僚のある特定のグループの補助機関じゃないのですよ。そうでしょう。合議体である内閣全体の補助機関なんです。その補助機関が決めたことを閣僚に教えてはいけないという。補助をするんだから教えなければしようがないでしょう。これは全く矛盾している。
 何でこんなめちゃくちゃな法律が出てくるかというと、これは中曽根総理が大統領のような総理大臣になりたいという発想から、内閣の中にインナーキャビネットみたいなものをっくろうとするから、こういう法制上非常に無理な問題が起きてくるのですよ。これは非常にけしからぬ話だ。一人の政治家のそういうよこしまな意図を実現するためにこういう安全保障会議を設置しようなんというのは、私たち国民としてはとても納得するわけにいかないと思います。
 時間がないからちょっと先へ急ぎますが、そうしますと、安全保障会議というのは内閣の補助機関であり、同時にこれは諮問機関ですね。ですから、そこで決定したことを実行するに当たっては、補助機関なんだから決定した方針は閣議にかけるということが必要だと思うのです。今までの後藤田さんの答弁だと、かけなければならぬものほかけるけれども、かけたくないものほかけないという方針ですね。そんなことはできないと私は思うのです。かけるべきだと思いますが、どうですか。
#331
○塩田政府委員 かけるべきものほかける、こういうことを申し上げております。かけたくないものをかけないのでなくて、かける必要のないものをかけないわけでございます。
#332
○三浦(久)委員 それでは、ちょっと先に急ぎましょう。
 内閣官房で「文書法令事務の手引」というものをつくっているのです。これによりますと、「閣議付議事項」というのが詳細に書いてあります。「閣議に付議される事項は、内閣において一般案件、公布、法律案、政令、人事、議員提出法律案関係、配布等の項目に区分されている」と書いてあります。そして、一般案件について詳しく述べています。まず、「憲法等に基礎を置くもの」、例示としては「恩赦」、「外国使臣の接受」、「大使、公使の信任状」とかいうものが全部閣議付議事項になっております。「法律に基礎を置くもの」、例えば「国会採択の請願に対する内閣の処理経過報告」、「議員の質問に対する答弁書」、これはたくさん書いてあります。それからまた「重要政策事項」というのがあるのです。この中には、「政府声明」、「税制、金融制度に関する基本的事項」、「米、麦の価格、集荷等に関する基本的事項」、「貿易に関する基本的事項」とか、要するに重要政策ですよ。重要政策事項というのは閣議に付議しなければならないというようになっているのです。
 そうすると、安全保障会議でやるのは「国防に関する重要な事項」でしょう。もう一つは「国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもの」なんですよ、これは緊急事態に対する対処ですから。そうすると、これは国の重要政策の決定ですよ。そうすれば、今のあなたたちがつくっている「文書法令事務の手引」によったって、当然内閣に付議しなければならない事項だというふうに私は思うのです。当たり前のことですよ。国の安全に影響するかどうかというのは大問題なんですよ。これは閣議にかけないのですか。かける場合もあるし、かけない場合もあるのですか。そんなことでいいのですか。後藤田さんがいないのでちょっと残念ですが……。
#333
○塩田政府委員 何回も申し上げておりますけれども、この安全保障会議で重大緊急事態を審議する場合には、その対処措置について審議をし、基本方針を決めまして、決めた基本方針に基づいて各省庁が実施をする。その実施をするに当たりまして、各省庁はそれぞれの権限によってやるわけですけれども、その場合にそれぞれ閣議にかける必要があるものほかける、閣議に報告する必要があるものは報告するということになるのでありまして、この安全保障会議で審議したことを必ずしもそのまま閣議にかけなければならないというわけではないということを申し上げております。もちろんそのままかける場合もありますが、そうでない場合もあります。そうでない場合であっても、各省庁がそれぞれ所管の権限によって実施する場合に、閣議に何らかの形でかけるものもあり得るわけでございます。そういうふうに申し上げているわけであります。
#334
○三浦(久)委員 だから、全くおかしいのだよ。こんな国の安全に影響する重大な緊急事態についての処理方針でも閣議に報告しないなんて、一体どういうことなんですか。それじゃ、全く中曽根総理のやりたいほうだいやれるということじゃないですか。こんなものは独裁機関ですよ。これはだめです。
 それで、最後に一つちょっとお尋ねしますけれども、私は今まであなたたちの答弁を聞いてきましたが、安全保障会議をつくる積極的な理由というのは何一つ見出すことができませんでした。例えば政府が例に挙げているミグ25の問題、大韓航空機の問題、ダッカ事件、こういうものを見ましても――処理のよしあしはまた別ですよ、立場によって違います。しかし、あなたたちなりにそれはちゃんとやってきているわけだ。何でああいうものを処理する場合にこの安全保障会議が必要なのかという疑問が、私はまだ払拭できません。それでひとつお尋ねしたいのは、大韓航空機事件、ダッカ事件、それからミグの問題、こういうものを処理するに当たって、非常に困った、これじゃ本当に別の組織をつくってやらなければ大変なんだというふうに思ったのかどうか。それからまたそのほかに、あなたたちが緊急事態を処理するに当たって今の体制では絶対だめだ、もっといい体制をつくらなければだめだというふうに思われたものが過去にあったら、どんなものがあったか。これを教えていただけませんか。
#335
○的場政府委員 事件が起こりました当時直接仕事に携わったわけではないわけでございますので、なかなかお答えのしにくい話でございますが、その当時置かれていた状況では精いっぱい努九をし、稼働率一〇〇%というような状況でやっと処理をし終えた、したがって、より能率的に効率よくするためにはこういうふうな組織の変更が必要であるというふうに考えております。
#336
○三浦(久)委員 より能率的にやるために必要だというようなことは理由にならない。ここでは「通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な事態」を言うのですよ。もっとスムーズにやるために重大緊急事態を安全保障会議でやるというのではないのです。既存の体制では適切に対処することが困難な事態、こういう場合を言うのです。ですから、そういう事態が過去にあったのか。ないじゃないですか。結局は何にも必要性がないのですよ。それで、何でこんなものつくるのか。さっき言ったように、中曽根総理が、インナーキャビネットをつくって自分の思いどおり内閣を運営しようという独裁的な機関をつくろうとしている。そしてまた、常時国民を監視体制に置いて弾圧体制を強化するということ。アメリカ有事の際にこの自衛隊の参戦体制を強化する。そういう目的でこれが出てきているのだろうと私は思うのです。
 もう時間が来ましたのでやめますけれども、本当に私は、一時間半しか時間が与えられないので残念に思っております。これは五時間要求して一時間半しか認めないというのは極めて不当で、私は、今言ったような、何を目的にして政府がこういう安全保障会議をつくろうとしているのかということについて、これから十分に論証していきたいというふうに思っていたのですけれども、これはもう時間がありませんから参議院の同僚議員に譲らざるを得ないと思いますけれども、私は、こういう危険な独裁機関である安全保障会議、この設置に強く反対して、私の疑問を終わりたいというふうに思います。
#337
○志賀委員長 井上一成君。
#338
○井上(一)委員 まず最初に、私は加藤防衛庁長官に、本年の一月十五日からの日米安全保障事務レベル協議、一年半ぶりにこれはハワイで開かれた、この会議の中で、今日大変な問題である円高問題にかかわって、一番もろに受けている在日米軍施設に働く労働者、その賃金の支払いですね、そういうものに対しての協議が議題となって上がったのかどうか、あるいは議題となろて話し合いがなされたならばどういう話し合いが持たれたのか、この点についてまず聞いておきたいと思います。
#339
○加藤国務大臣 一月の会議におきましては、在日駐留軍の経費、それからいわゆるいろんな種類のホストネーションサポート等の問題につきまして話題になったと報告を受けておりますけれども、在日米軍の日本人労務者の労務費問題そのものが直接議論にはなってなかったと承知いたしておりますが、出席いたしました政府委員の方から正確にお答えさせていただきます。その会議には出席しておりませんけれども、担当でございます施設庁長官から答弁させます。
#340
○佐々政府委員 お答えいたします。
 私、直接出席はいたしませんでしたが、出席をいたしました次長からの報告によりますと、一般論としてホストネーションサポートのより一層の努力を望む、こういう問題がございましたけれども、御指摘のような具体的な問題は出なかったと承知しております。
#341
○井上(一)委員 アメリカは、在日米軍の経費として年間どれくらいの予算を計上しているのか。さらに、基地で働く日本人労働者の給与は年間どれぐらいなのか、一応その点について聞いておきたいと思います。
#342
○岩見政府委員 お答えいたします。
 米側の負担しております日本人従業員の額は約九百億円でございます。日本側で負担しております額が百九十一億円でございます。これには、経費という意味でございまして、給与額だけではございません。
#343
○井上(一)委員 私はここで、円高によるやはり実質的な差益損、ドル建てと円高による日本人の給与の目減り分がどうなのか、どういう実情であるのかということを防衛庁に聞きたいわけなんです。それは俗に思いやり予算の中で賄ってきた、それはもう限度いっぱいではないだろうか。実際どういう状況なんだということをまずここで聞きたい。円高がどういうところにまで波及しているか、いわゆる米軍の基地に働く労働者の懐にまで、あるいはそれはひいては我が国の財政に負担をかけているのではないか、こういうことなんです。
#344
○佐々政府委員 お答えいたします。
 確かに円高によりまして、アメリカが駐留経費の負担増ということで非常に問題になっていることは事実でございますが、少なくとも現時点において、例えばこの労務費の問題について、アメリカ側から公式にもう少し負担をしてもらいたい、こういうようなお話はございません。また、先般のベアあるいは給与法の改正に伴うところの全駐労の給与改定、これもプリベーリングプラクティスと申しますが、日本の場合には御承知のように公務員の給与を基準として駐留軍労務者の給与を決めておりますが、これもアメリカ側との話し合いの結果、円満に妥結をいたしております。
#345
○井上(一)委員 私の承知する範囲では、米国は在日米軍経費として年間約二十三億ドルを計上している、こういうふうに承知するのですが、これは間違いないでしょうか。
#346
○藤井(宏)政府委員 私、今手元に持っております資料が八四年でございますが、八四年では御指摘のとおりほぼ二十三億ドル、二十二億ドル強でございます。
#347
○井上(一)委員 今日の円高から、いわゆる私の承知する範囲も、これを例えば当時の円レート二百五十円で計算をすれば五千七百五十億円、そして今日の百七十円台で計算をしたらこれが三千九百十億円、まさに目減り分というのは一千八百四十億円、これがどうなっていくのか。これだけの目減り分をどう穴埋めをしていくのか。思いやり負担ということですべてそういうことが貯えていけるのであろうか。アメリカ側はこれに対して今までのところそういう要求はないということなんです。しかし、今後さらに円高が予想される中にあって、こういう問題は避けて通れない問題であるし、やはり両者が議論をしなければいけない問題である。
 そういうことを考えると、私は地位協定の二十四条から考えても、もうこれ以上思いやり負担だというような形では負担はできないのではないだろうか。むしろ基地従業員の給与是正のために、防衛庁は地位協定二十四条を改正するぐらいの考えを持たなければならない、そういう時点に迫られているのではないだろうか。円高による一つの大きな被害、そういうふうに思うのですけれども、これはいかがなものでございましょうか。
#348
○藤井(宏)政府委員 御指摘のように、円高によりまして大変な目減りをしておるわけでございます。その状況は御指摘のとおりでございますが、地位協定につきましては、従来から政府が答弁いたしておりますように、ほぼ労務費につきましては限度いっぱいということでございます。したがいまして、これ以上、労務費におきまして、地位協定の上から日本側として何かするということは極めて困難というふうに存じております。
#349
○井上(一)委員 いわゆる目減り分はどのような形で対処されるおつもりなんでしょうか。
#350
○藤井(宏)政府委員 先ほどから御答弁申し上げておりますように、アメリカ側に一般的に我が国におきまして何らかの負担をという希望は存在するかとも思いますけれども、具体的に労務費等につきましてアメリカ側から特に要請は来てないわけでございます。したがいまして、現在までのところアメリカは内部の予算によってこれを処理しているというのが実情でございます。
#351
○井上(一)委員 それは、我が国として円高の問題をとらえて、そういう話し合いをアメリカ側に持ち込まれたということがあるのですか。
#352
○藤井(宏)政府委員 アメリカ側から、労務費につきまして具体的な要請は何ら日本側に寄せられておりません。
#353
○井上(一)委員 私は、この問題はやはり円高に関連して、あるいは米軍基地で働く人たちの立場ということを考えれば、当然いち早く折衝に入っていくべきであり、問題を解決すべく努力をしなければいけないと思うのです。これは強く要望しておきましょう。
 防衛庁長官にちょっと一般論として聞いておきたいのですが、防御兵器と攻撃兵総をどういうふうに分類というか、区分けをなさるのですか。
#354
○加藤国務大臣 その分類は一般的にというのはなかなか難しいので、個々の兵器につきまして、個々の装備につきまして、どういうのが防御兵器であり、どういうのが攻撃兵器であるかということについてお答えしなければならぬと思いますので、政府委員よりお答えいたします。
 例えばICBMは当然のことながら攻撃兵器でございますし、ある種のレーダーなどは防御のための仕組みであるわけでございますが、なかなかその辺が区別しにくい部分もございます。専門的に政府委員よりお答えいたします。
#355
○井上(一)委員 加藤防衛庁長官、私も、今のお答えのように非常に分類はしにくい。時には攻撃用であり、それがまた時には防御用でもある。むしろそれは使う意図の問題になると思うのです。
 そこで、ちょっと私はSDIについて聞いておきたいのです。
 SDIの問題ですが、これは一定の調査団が派遣されて、報告があるわけなんです。官民合同調査も含めて、四月に報告書が提出されたわけですけれども、レーガン大統領は、システム全体の完成を待たずに地上配備の迎撃ミサイルなどは部分配傭も考慮しなければならない、あるいはパール国防次官補は、日本の先端技術を利用できればSDIの実戦配備が早まることになる、報道によればこういうふうに発言をしているわけなんです。技術的に難しいものは先に送っていこう、こういう中で、確かに報告書では、SDIの研究は実戦の開発配備とは別であるということを強調はされていますけれども、技術の一部なんというものは研究室を出ていってしまう、実戦段階にそれが入る可能性すらある、そういうことを考えると、日本は研究参加、不参加をまだ決めていませんけれども、研究だけなんだという枠の意識の中にはまるのかどうか。それぞれの意思で、はまるんだ、はまらないんだという議論よりも、SDIは防御兵器だとレーガン大統領が言っているわけなんですけれども、私はむしろ、SDIは防御兵器と攻撃兵器との両用、いわゆる汎用品に近いものではないかという判断も成り立つのではないかと思う。ひとつその点は防衛庁長官、SDIは防御兵器であるとレーガン大統領が言うから防御兵器だという認識でなく、私は、加藤防衛庁長官は次の次ぐらいは日本を背負われる方だと日ごろから本当に思っているので、SDIというものについては慎重であってほしいというのが私の考えです。防御兵器だということだけに惑わされてはいけないと思うのです。あえてそういう点で防衛庁長官に、SDIはむしろ使う意図によっては攻撃兵器にもなりかねないという懸念を持っているのですが、その点はいかがなものでしょうか。
#356
○加藤国務大臣 SDIの問題につきましては外務大臣の方がお取りまとめになっておられますので、私からコメントするのは避けさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、人類のいわゆる武器の開発の歴史というものを見ますと、やはり盾と矛の相互関係でずっと進んできたように思います。レーガン大統領がこれは防御兵器だということをおっしゃって、そしてそのことをもとにSDIというものを研究できるかどうかを今勉強しているという段階だろうと思いますので、その辺につきましては我々も十分に情報を集め、そしていろいろな角度から検討していかなければならない問題だろうと思います。
#357
○井上(一)委員 例えばピストルは、人を撃つ、殺すために使ったら攻撃用だと思うのです。撃ちに来た、あるいは殺しに来た、撃たれる前にこちらが撃った、これは防御だ。私は外務大臣にはまた聞きますし、SDIについては外務省には何回か聞いているわけなんです。きょうは違った角度で防衛庁長官に聞きたい。
 SDIは防御兵器である、国会の中ではそういう議論をしてきました。そして、皆それを信じつつ議論をしています。そう願いたい。しかし、同時に攻撃兵器にもなり得る。攻撃兵器であるという断定までは今できないと思います。攻撃兵器にもなり得る、そういうものである、兵器それ自体は。そのことをしっかりと確かめておかなければ、認識をしておかなければ、参加決定も含めて、これは大きな間違いを起こすことになる。私は、そういう意味で、防御兵器だという反面、攻撃兵器にもなり得るという認識を持っているのですが、防衛庁長官、いかがですか。
#358
○加藤国務大臣 私は、井上委員のおっしゃった観点よりも、盾と矛の相互の関係というところにより注目して考えてみたいなと思っております。いつかの委員会でも申しましたけれども、すべての盾をやっっけることのできる矛と、すべての矛を防ぎ切ることのできる盾というものが世の中にあるとしたら、それは矛盾だというところからきたわけでございますけれども、ある意味では、本当に完全なる盾ができるのならば、それは我々人類のために有用なことであろうと思います。しかし、それがある程度の途中の段階で成功せずに、そのことによってより強固な矛の開発戦争を誘発するならば、それはまた一つのバランスの問題を崩していくというような、そっちの方が私たちはちょっと論議すべき問題ではなかろうかと思っております。
 レーガン大統領が、絶対にしっかりとしたSDIをつくってみたいという構想を持っているものは、私は完全なる盾をつくってみたいという発想だろうと思いますので、それが技術的に可能であるのかどうか、アメリカ自身も今いろいろ考えておりますでしょうし、またそれが仮にできるとしても、その間の過程の話はどうなるのであろうかという部分をいろいろ研究しているのでありましようし、我々もその技術面と戦略面について十分なる検討をしなければならぬのだと思っております。
#359
○井上(一)委員 じゃあ、防衛庁長官は結構です。
 中曽根さんは、その内閣のかなめに後藤田さんを官房長官に据えた。適材適所という言葉があるとするなら、私はまさにこのことを指すのではないか。官房長官、番頭役というのでしょうか、あえて異体同心という言葉を使いますが、私の受けとめ方、中曽根さんと後藤田官房長官との関係、一心同体という言葉がありますけれども、異体同心という認識に立って質問をさせてもらいたい。
 去年のボン・サミットではSDIがいろいろな問題、議題になったのですが、ことしは全くなかったわけなんです。舞台裏というのでしょうか、水面下を含めて何もかもよく承知をなさっていらっしゃる官房長官として、今回の東京サミットでそういう問題が論じられなかったのは何か理由があったのでしょうか、どうなんでしょう。SDIの問題が今回の東京サミットで議論にならなかったのは何か理由があったのでしょうか。
#360
○後藤田国務大臣 議論が出なかったことは事実でございますけれども、出なかった理由は何ぞやということになると、これは出さなかった各国の人に聞かなければわからぬということですが、あえて推測をしますと、各国は既に大体方針を決めておりますから、そういうことで議論が出なかったのではないか、私はかように思います。
#361
○井上(一)委員 そこで外務大臣に。官房長官がおっしゃるように、それぞれの参加国は態度決定をされているわけなんですけれども、我が国は態度決定が保留されている。外務大臣も非常に慎重な対応をなさってきていらっしゃるわけですが、二国間、いわゆる日米間では、公式、非公式を問わず、この問題については話し合いを持たれたのかどうか。この点について聞いておきたいと思います。
#362
○安倍国務大臣 これは既にキャンプ・デービッドの首脳会談におきまして、たしか中曽根総理から、日本のSDIに対しての考え方をはっきり述べておりますから。考え方といいますのは、理解をしておる、そして今検討中だということを述べております。でありますから、その限りにおいてアメリカは日本の立場を了承しておる、こういうことで、日本にレーガン大統領が来られてからは、二国間の会談でも、あるいはサミットにおいても、今お話しのように実際出ておりません。
#363
○井上(一)委員 後藤田官房長官、さっきも申し上げましたように「SDI研究計画についての官民合同調査団報告」ですね、官房長官は関係閣僚の協議会の座長を務めていらっしゃるのですよ。この報告を受け取られたと思うのですが、この報告を受けてどういうような受けとめ方をされていらっしゃるでしょうか。
#364
○後藤田国務大臣 おっしゃるように、私は、制度的な協議会ではありませんけれども、関係閣僚が必要の都度、随時という懇談会の座長を命ぜられておるわけでございます。せんだって、第三回の調査団が帰ってまいりまして、その第一回目の報告を聞いたわけでございます。
 ただ、今の日本の態度は、今井上さん御案内のように、一応この計画については日本政府としては理解は示しておりますけれども、まだまだ内容がよくわかりませんので、実態調査の上、日本政府としてこれにどう対処していくかということをこれから決めるわけです。まだ第一回の報告を聞いたばかりでございますから、今何とも申し上げかねますが、率直に言って、私のような素人には、第一回聞きましたけれども、まだなかなかわからぬ。したがって、重要なことですから、私どもこれはよほど慎重に聞きまして、我々のようなものにも腹にしっかり入るまでは十分検討させていただいて、その上でみんなで議論をして何らかの方向を考えていきたい、かように考えておるわけでございます。
#365
○井上(一)委員 専門家も含めた調査団ですが、技術的側面からの研究参加の必要性というものは非常に強く訴えられているのですね。私は、こういう研究参加というのは政治的側面というのでしょうか、そういうものが実際は肝心になってくると思うのです。そういう分析が少し報告には落ちているような気がするわけで、具体的にはもっともっと詳しい報告が座長にはなされたのかどうか。ただ単にこれだけなのか。私は、詳しい報告を今見せてくださいとか、ここで発表してくださいとか、あるいはそれを報告すべきだということは申し上げません。座長の方にはこれ以外にも詳細な報告がやはりあったのかどうかということを、ちょっとここで聞いておきたいと思います。
#366
○後藤田国務大臣 簡単な書類だけでございまして、大部の報告書なるものは私にはまだ全然届いておりません。
#367
○井上(一)委員 私は私の判断として、この調査団の報告書だけでは何を言おうとしているのか、参加、不参加を含めてそういう志向が具現化されていない、こういうふうに思うのです。それで、この報告書だけで判断ができると認識をされるのかどうか、これは官房長官に聞きたいのです、外務大臣でなく。今回のこの官民合同調査団の報告書で参加、不参加が判断できると御認識なのかどうか、ちょっとその点。
#368
○後藤田国務大臣 その報告書は技術者の視察報告でございまして、その技術報告自身が数ページの報告だけにとどまっておりまして、まだ私は全体を見ておりませんし、技術上の問題もまだ私のみ込んでおりません。同時にこの問題は、やはりおっしゃるように技術的な面だけでなしに広い目配りをして日本として決めなければなりませんから、したがって、今直ちにこの問題はよくわかったといったような筋合いのものではない、かように私は理解をいたしております。
#369
○井上(一)委員 これまた座長役という立場で、この調査をもって最終と判断できるのか。まだまだ調査が、今のお答えで若干そういうニュアンスはあったと受けとめたのですけれども、これが最終の調査ではない、こういうふうに受けとめてよろしいでしょうか。
#370
○後藤田国務大臣 私は技術的な面はよくわからないのですが、技術的な面は大体この調査程度で終わったのではないかなと思っているのです、私は。これは間違っているかもしれません。わかりません、これは。しかし、それだけでこの問題の結論を出すというわけにはまいらない、もう少しいろんな幅広い検討を必要とする、私はかように理解をしております。
#371
○井上(一)委員 実は、SDIの研究参加の動きに対して、日本の学術会議が、最近深い憂慮の念を披瀝したという報告書を提出しているわけなのです。このことは御承知なんでしょうね。そういう見解に対しては官房長官としてはどうお受けとめになっていらっしゃるのか。このことも聞いておきたいと思います。
#372
○後藤田国務大臣 そういう新聞記事は私は読みましたけれども、学術会議から具体的にどういう意見書が出ているかは承知をいたしておりません。
#373
○井上(一)委員 私がこういうことを官房長官にあえてお聞きをするのは、対米武器技術供与を決定したときに、たしか五十八年の一月でございましたが、その際にも後藤田さんは官房長官であったわけです。談話をたしか出されたわけなんですね。
 今回、この調査を一つの契機として参加に対する態度決定が早々になされるのではないだろうか、サミットの成功を期待したわけでありますけれどもなかなか芳しくない、しかしそういう中で時には解散、同時選挙というような声も聞こえる、SDIの参加は参議院の選挙を終えた後に決定をするのではないだろうか、こういうまことしゃかな報道というか、そういううわさもあるわけなのです。この報告書でも、検討を要するという課題はたくさんあるわけなのです。軽々な判断は許されない、私はこういうふうに思っているわけなんです。そういう意味で長官に今いろいろお伺いしてきたわけで、この前のように――この前のようにと言うとえらいなにでございますが、五十八年の一月のように、参加決定を官房長官の談話だけで終えてしまうということになると、やはり問題になるのではないだろうか。それは、国会の中で今日までいろいろと議論をされてきました非核三原則決議あるいは宇宙平和利用決議、そういう国会の決議を重く受けとめるべきでありますし、官房長官も重く受けとめていらっしゃると思うのですが、そういうことであれば、前回のような手順で事を運んでもらっては大変なことになりますよということをあえて私は申し上げたかったのです。そういう点は官房長官、いかがなものでございましょうかと、こういうことでございます。
#374
○後藤田国務大臣 私は先ほど来事柄が重要だから幅広い目配りを必要とすると申しておるのは、今あなたがおっしゃったようないろいろな面を頭に置きながらお答えをしておるつもりでございます。
 ただ、御質問の中に、選挙の後になればすぐにやるんじゃないかなんというような一部の声をお述べになりましたけれども、私どもはさようなことは考えておりません。こういう問題はあくまでも、政治的な面も考えなければなりませんし、技術上の面も考えなければなりませんし、何よりも国益に沿うかどうかということを基本に考えまして、イデオロギーその他の面は一切入れないで冷静に判断をしていくべきものであろう、かように考えておるわけでございます。
#375
○井上(一)委員 さらに念を押すようでございますが、前回は国会が開会中でありましたけれども、もし閉会中にこういう重要な問題に対する決定というか、そういうことの取り決めについては、国会決議というものに対する重みを深く受けとめられて国会への対応を十分にすべきである、こういうふうに私は思うわけであります。そういう認識を持っていただきたい、こういうことであります。このことについてもいかがですか。
#376
○後藤田国務大臣 この研究の中身が、検討の結果、従来の国会決議その他との関係がどうなるかといったようなことの結果によって今の御質問は判断をすべき筋合いのものであろう。重大な関係があるということになりますと、これはやはり国会には御説明をしなければなるまい、こう思います。基本的にはこれは政府で決定すべきものである、かような理解でございます。
#377
○井上(一)委員 西ドイツは三月に、アメリカとSDI参加協定を結んだわけなんです。その内容が先ごろ暴露されたというか明らかにされて、コール首相の議会での説明と反対に、この協定が研究成果の利用でアメリカ側に大幅な裁量権のある不平等なものである、そういう議論が持ち上がって政治問題になっているわけなんです。いわば秘密協定というのでしょうか隠された協定ですね。私は、西ドイツの問題だということだけに受けとめずに、我が国も決してそういうことがあってはいけない、こういうことで、仮に参加を決定して協定を結ぶ場合には、何らかの約束があれはすべて国会に知らすべきである、こういうふうに思うわけなんです。あえてここで私は、西ドイツのそのような政治問題になった秘密協定というか隠された協定の部分、こういう問題を官房長官はどう御認識になっていらっしゃるのか、このことも聞いておきたいと思います。
#378
○藤井(宏)政府委員 西ドイツにつきましては、アメリカとの協定が御指摘のとおり公開されておりません。一部新聞等にこれが全文という趣旨で載っております。これについて公式の場でコメントする立場にないわけでございます。他方また、イギリスにつきましても、公開されていないということは事実でございます。日本につきましては、SDIに参加するかどうかを含めまして現在検討中でございますので、日本の場合ということを想定して云々するのは時期尚早かと思います。
#379
○井上(一)委員 私は、参加するしないは軽々に判断してはいけないということをよく、慎重な対応をしなさいということをさっきから言っているわけです。しかし、西ドイツであったことは他人事ではないのだ。我が国もそういうことのないようにちゃんとすべきですよ。これは官房長官に私はお聞きをしたいのです。こういうことがあってはいけないですよ。だから、参加をする場合には参加をするで、決まったことをきっちりと国会に報告をする、そういうことの姿勢でないといけない。
 私は参加をしなさいと言っているのじゃないのです。それはお決めになるのは、参加するか参加しないかは、いろいろな調査団も出て十分な慎重な対応をとってほしい。しかし、西ドイツの秘密協定というか、そういうものを結んでいるということについては、私は非難されるべきだと思うのです。そういうことは我が国ではあってはいけないというので、官房長官にお聞きをしているわけです。
#380
○後藤田国務大臣 まことに申しわけないのですが、私は西ドイツがどういう秘密協定を結んでおるのか内容も承知をしておりませんが、日本でこれから勉強して決めるわけですから、そういった際に、諸外国の対応がどうであったのかといったようなことは当然私どもとしては勉強しなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
#381
○井上(一)委員 諸外国がどうということよりも、我が国は我が国の独自性、主体性を持ってこういうことに対しては対応していかなければいけない。そうでないと、西ドイツがこうだからそれにする、あるいはイギリスがこうだからどうだ、そういうことでは私は日本の主体性というのはどこにあるのだと思うのです。万一にも日米間でそういう協定は締ばれるべきでないし、秘密協定があってはならない。こんなことは議論する余地がないくらいの問題だと私は受けとめています。
 ただちょっと気になるのは、アメリカのヒックス国防次官、技術研究開発担当ですが、これは朝日新聞との会見で、日米間で協定を結ぶ場合、それを秘密とするかどうかは日本次第だ、我々としては日本の高品質の技術、能力が得られればよいのだ、こういう発言をしているわけです。だから、この発言をどう受けとめ、どう評価し、そしてそれに対して、先ほど私が申し上げたような、日本としていわゆる秘密協定は結ぶべきでないし、そういうふうなことはいたしませんということなのか、その点を官房長官に私は聞いておきたいと思うのです。
#382
○後藤田国務大臣 私は、今井上さんのおっしゃった、自分の方さえ使わせてくれればそれでいいのだ、その人はそういうことかもしれませんが、日本はそうはまいりません。これは日本も、どうなるかわかりませんが、仮に参加をするとすれば、それが日本の技術の発展にどのように寄与することができるのか、また、したがってそれをどのように日本が使うことができるのか、日本の国益に沿って一体どうこれを考えていけばいいのか、といったような点を私は十分慎重に判断しまして、自主的な立場で決定をさせてもらいます。
#383
○井上(一)委員 ぜひそう願いたいと思います。十分慎重な対応を総理にも進言をしていただきたいと思います。
 次に、外務大臣に聞いておきたいと思うのです。
 常々中曽根総理は、三極協調外交、いわゆる日米欧、このことを強調されるわけです。これは当然私も異論はありません。しかし、私たち日本が忘れてはならないそれは、我が国がアジアの一員であり、日本としてのアジア外交がなければならないということなんですね。これを抜きにして三極協調外交なんというのはおかしい。特にASEAN諸国との関係強化に努めるということは当然でありますし、これらの国々の安定と発展のための我が国なりの努力をしていかなければならないと思うわけです。しかし、御承知のようにASEAN諸国のすべての国が経済不振に悩んでいる、そういう状況をどういうふうに外務省はとらえているのか、その点をまず聞いておきたいと思います。
#384
○安倍国務大臣 日本は自由主義陣営に属しております。そういう立場で、アメリカそしてヨーロッパ、いわゆる三極外交といいますか、同じ価値観を持っておる、こういう連帯感の中で協調姿勢を進めております。
 同時にまた、日本はアジアの一国である、アジア・太平洋の一国である、これも一つ日本の大きな原点でございますから、そういう点も踏まえて日本外交というものは進めていかなければならない、また進めてまいったというのがこれまでの立場でございます。
 そういう中で、今回もサミットも行われましたが、我が国として東京、アジアで行われたサミットということで、アジアの現況というものをヨーロッパあるいはまたアメリカの首脳に訴えまして、アジアを通じまして南北対話、あるいはまた南北協調ということのいかに重要であるかということを大いに理解を求め、ともに先進国が協力し合って、こうした南北問題解決のために努力し合おうということを合意したわけでございます。
 アジアの現況については、今第一次産品の価格が非常に低迷しているとか、あるいはまたアジアの中での石油の産出国等は石油の価格が非常に落ち込んでおるというふうなこともありまして、経済はこの種の問題を持っております。特にフィリピン等は相当な赤字を抱えておるというふうな状況で、非常に混迷をいたしておる。
 しかし、同時にまた、そうしたアジアの今非常に難しい経済的立場にはありますけれども、アジアにはアジアの持っている独特な一つの活力というのが私はあると思っている。非常にダイナミズムのところがありますから、私は、これからASEAN、さらにアジア諸国がお互いに相協力し合って、また日本もアジアに対する協力というものを積極的に進めていけば、アジア・太平洋の新しい時代というものが二十一世紀に向かって明るい展望として開けてくるのではないか、こういうふうに考えております。
#385
○井上(一)委員 サミットの開催を前にして、四月に須之部元次官にASEAN諸国を歴訪させて、ASEANのそれぞれの国が東京サミットで訴えてもらいたい、そういうことを聞いて帰られたと思うのです。どんなことを聞いて帰られたのか、それをここで聞いておきたいと思います。
#386
○国広政府委員 須之部大使がASEAN諸国を訪問してまいりましたときに、これら諸国から共通して受けました要望は、保護主義、高金利、一次産品及び石油価格の下落等によりまして諸困難に直面している開発途上国経済の現状を踏まえて、国際経済体制の諸問題にグローバルな見地からの検討が行われるようにという希望が表明されたわけでございます。同時に、開発途上国の立場から見ましても、先進工業国の経済成長が持続的に行われるということが累積債務の返済その他の面で大変必要であるということも強調されたと聞いております。
#387
○井上(一)委員 我が国もASEANに対する気配りをした、レーガン大統領もサミットの参加の前にパリ島に立ち寄ってASEAN外相会議に臨んでいろいろな要望を聞き、具体外的な要望書をもらってきた。いわば、日本もアメリカもASEANに対する気配りは十分なされた、こういうふうに私は認識するわけです。
 しかし、今度の議長総括というのでしょうか発表文というのでしょうか、具体的に経済問題は出ていないのではないだろうか。特に、一次産品の価格の値下がりで経済不況に大変苦しんでいる国国は失望している。これでは中曽根首相が言われた「我々は、このサミットがアジア・太平洋の地で開かれたという意義を十分に認識し、この地域の当面する諸問題について話し合いました。」というその認識が薄かったのではないだろうか、あるいはむしろ反してはいないだろうか。
 具体的に一次産品問題がサミットで議題になったのかどうか、議題になったとしたらどのような結論が出たのか、こういう点について少し詳しく聞いておきたいと思います。
#388
○安倍国務大臣 議長総括は、アジアに大分触れておりますが、いわゆる経済問題以外についてアジアを重点として触れております。経済につきましては経済宣言で、いわゆる開発途上国に対する問題として取り上げております。また、その議論の中で、首脳だけの会合には私は出ておりませんが全体会議等に出ておりましたけれども、やはり一次産品の問題は相当深刻に論ぜられたというふうに私は受けとめております。これは先進国の農業問題とも絡めて相当深刻に論ぜられた。共通基金等を確立すべきではないか、価格の安定基金等も考えるべきではないかという議論もあったわけであります。また、特にヨーロッパ諸国とか先進国がいわゆる農業の保護主義を積極的にやっているということは、結局開発途上国の農業を非常に圧迫するということになっていくので、そういう面から、先進国における農業のそうした保護主義といいますか補助金主義というようなものに対して大いに改革をする必要がある、先進国自体が近代化を行うことが結局第一次産品の低迷で悩んでおる開発途上国を裨益することになるんだというような論議等も行われまして、相当けんけんがくがく行われたと思っております。
 ただ農業問題は、先進国自体においても対立がありますし、難しい。こういうこともあって結諭的なものは出ませんでしたが、やはり開発途上国の第一次産品の問題については深刻にとらえなければならないという点については共通の認識を得た、こういうことははっきり言えるとは思っております。
#389
○国広政府委員 多少補足させていただきたいと思うのでございますけれども、過去数年のサミットと比べてみましても、今回のサミットは、たまたまアジアで開かれたということもありますし、この九月にはニューラウンドを開くための閣僚会議が予定されておるということもございまして、開発途上国の問題に対する関心が大変強く示されたと私は思います。
 経済宣言におきましては、ASEAN等が非常に強い関心を持っております一次産品の加工度の向上、対外直接投資の拡大を含む産業構造の調整、ODAの拡大、農業生産構造の調整等が現に含まれておりますが、今御質問がありました一次産品そのものにつきましては、実は今度のサミットを開く前に、個人代表の会議で一度その問題に集中して検討が行われました。その検討会に対する最初の報告を日本が引き受けまして、私どもの方で検討した結果を持っていきまして、そこで種種の議論が行われました。
 その中での要点を二、三御紹介しますと、過去の一次産品問題の取り組みのときは、商品協定をつくるとかそういうことによって、人為的に価格を維持するというようなところに一応重点があったのですが、最近どうもそれがうまくいかないということがありまして、むしろ先進工業国における一次産品の需要を高めること、生産する方で将来の予測を間違えないこと、生産そのものが技術的にもっと能率的に行われるべきこと、コストを下げること、また一次産品の加工度そのものを上げること、そういうようなことにもっと重点を置くべきである、したがいまして調査とか技術開発、技術協力、そういうものを含めて一次産品問題に取り組むべきだというのがおよその結論でございましたが、それはサミットに参加する首脳にも報告されまして、そういうふうな事実認識を含めて討議が行われたものと了解しております。
#390
○井上(一)委員 経済の落ち込みに対するASEAN諸国の危機感に対して、日本は十分な認識を持って対処していかなければいけない。どうもASEAN諸国の具体的要望に対して抽象諭的な表現で事を処しているというところに、私としては納得がいかない。そういうことでは三極協調外交というのは成り立たない。むしろASEANの一員である我が国は、ASEAN外交をもっともっと強く基盤を固めていくということが先決であり、そのことが大事である。サミット前にいろいろのいわゆるカンファレンスを通して対応されたようなことを言っていますけれども、私は、十分でない。
 今、ASEAN諸国のそれぞれの国の人たちは、東京サミットに対して日本のとった対応に失望していると私は思いますよ。外務省はやはりそういうことを正しく認識するというか、把握するというか、そしてASEAN外交をどう展開していくかという強い決意をここで持ってもらわないと――私は、具体性を持ったASEAN諸国への我が国の責任のある外交を強く要望したいというか、強く皆さんに訴えておきたい、こう思うのです。外務大臣、何かお答えできるようであれば答えてください。
#391
○安倍国務大臣 このサミットにおいては、やはりアジア、ASEANの問題も首脳会議、我々の外務大臣の会議においても重点的に相当論じ合ったわけでありますし、そういう中で、ASEANの要望も、今おっしゃるようにストレートに答えがすべて出たわけではないのですけれども、しかし一つの方向というものが出たことは間違いない。これは経済宣言の中にも出ておるわけであります。ASEANが要望しておる、例えば保護主義を排していかなきゃならない、あるいは金利をもっと安くしていかなきゃならない、そうした問題、あるいは先ほども述べられました第一次産品等に対する問題あるいは援助の拡大、そういった問題等も今度のあれで比較的前向きに合意された、こういうふうに思っております。
 このサミットの詳細な論議を踏まえて、最近、外務省から梁井外務審議官を早速ASEAN諸国に派遣をいたしまして、やはり討議の内容を具体的に御報告しないとわかってもらえない点もあるでしょうから、これは具体的に要望を聞いて帰ったわけですから、今度は早速、このサミットで何が論ぜられたか、特にASEANについてどういう問題がどういう形で論ぜられたかということを詳細に御説明を申し上げまして理解を求めたい、こういうふうなことを考えております。これは早速やらなければならぬ、こういうことで今準備を進めております。
#392
○井上(一)委員 ここで私は、中曽根さんがいわゆる審議会方式というのを非常によく用いられるわけなんですね。これは多くの人から指摘があったと思いますけれども、やはり議院内閣制、我が国のいわゆる大統領型政治でない議会に対する責任、こういう質疑を通して国会への責任を総理が持つべきであって、こういうことは、私からるる説明をするまでもなく官房長官の方が十分御認識なんですけれども、マスコミ等を通じて国民に訴えるというのは大統領氏政治なんですよね。国民に責任を持っていく、これは一つの型なんです。我が国の今の制度ではそういう制度ではないのだ。だから、その大統領型政治がいいとか悪いとか、あるいはそれはそれぞれのお好みがあるわけでありますがら、私は、そういう中で、審議会というのでしょうかそういうものを非常によくつくられてその答申を待ってということに政治が流れているということに対して、我が国の議会制民主主義、国会中心の政治を誤ってはいけませんよ、こういうことを申し上げながら、いわゆる経済構造調整研究会の報告の取り扱いですね、前川レポートとも一面呼ばれているわけでありますけれども、この報告書は行政組織上からいって一体どのような地位にある文書なのか、これをちょっとここで聞いておきたい、こう思うのです。
#393
○的場政府委員 これは内閣総理大臣が行政の参考の用に供するために勉強された私的な研究会ということでございますので、そういう性格のものでございます。
#394
○井上(一)委員 その私的な文書だ、そういうことを僕らも聞くわけなんですが、それじゃ、その内容はといわれたら、すべてを承知しているわけじゃありませんけれども、いわゆる日本の経済体質を輸出依存から内需中心というんでしょうか、製品輸入拡大の方向に変えていこう、社会の産業構造、産業体制を変えていこうという。僕は非常に難しいことだと思うのですよ、変えるということは。そして、変えるということはそんな私的な諮問委員会で論じられるのじゃなく、こういう国会の中でいろいろな議論を出し合って、そして行政としてそれにこたえていくべきである。社会のいわば仕組みを変えていこうというようなそんな大事なレポートを国会にも一切報告をしない。で、これはいろいろ議論になって、アメリカへ行って国際公約をしてきたんじゃないかとか、いや、そうじゃないとかいろいろ論ぜられますが、そういうことを私は今ここで取りざたするわけじゃないわけで、議会、国会というものをもっと尊重するというんでしょうか、国会の重みというんでしょうか、最高の機関だという中で国会で論じていかなきゃいけないし、こういうものを国会の中に報告がないということは大変議会軽視も甚だしい、そういう表現が当たるのではないだろうか。
 アメリカ側には外務省を通して、総理が訪米前に既に説明がされていたというようなことも聞いているわけなんです。これも事実かどうか。議会において文書を提示することはもちろんでありますけれども、一言の説明もしていない。そして、産業構造、社会の仕組みを変えていこう。そういうような大きな問題を明らかにしないというのは議院内閣制のとるべき態度ではない。私は特にこれは強く注意を促したい、こう思うのです。
 このことについて官房長官からお答えをいただきましょうか。
#395
○後藤田国務大臣 今井上さんの御指摘の件は、井上さんのみならず各方面で、今いろいろな御批判を受けておるところでございます。もちろん、民主政治の原点は国民でございますから、国民によく理解を求めるということは基本でありましょう。しかしながら、日本の場合には、これは大統領制でなくて代議政治、つまりは議会制民主主議、したがって国会の重み、同時に、その国会を構成しておるそれぞれの政党、こういった政治運営上の重要性、これらは私どもは十分念頭に置いて政治の運営をやらなければならない、これはもう基本的に私は同意見でございます。そのつもりでやりたいと思っております。
 問題のいわゆる経構研は、行政運営上しばしば従来から使われておるいわゆる八条機関にあらざる、いわゆる私的諮問機関でございます。したがって、これは御承知のように別段機関意思を決定して拘束力を持つものではございません。やはりそれぞれの委員の意見というものを十分参考にしながら、その上で政府としてこれにどう取り組んでいくかということを正規の手続を踏んで決定をすべきものである、かように考えるわけでございます。
 そこで、経構研につきましても、四月の七日に御意見を取りまとめたような文書をちょうだいいたしております。八日に政府・与党の首脳会議の中でそれを決めまして、そして四月の二十二日にさらにそれについて多少具体化したものを中身として決めまして、そして五月の一日にさらにまたその中から決めまして、それらについてはいずれも、与党のそれぞれの政調の方々とも、各省調整の過程で部会とも十分話をしております。
 最終は、これは従来から閣議には報告事項でございますし、与党に対しても報告事項でございまして、一応五月の一日にこれは報告をしようということであったわけでございますが、閣議は報告を受けたのですが、党の方は御案内の連休に入っておったというような関係で、資料をお配りをし、在京の方には御説明をし、そして与党の幹部には十分御報告を申し上げて、お認めをいただいた。
 そこで、その中の決め方は何かといいますと、これから先の我が国の国際的な経済調整に向けて大体どういう方向で日本としてはやっていきたい、こういうことを決めておるわけです。当然日本には、それぞれの各省に審議会とか委員会とか、例えば税制調査会なら税制調査会、こういうものもありますし、そういったそれぞれの手続を踏んで、その上で与党との連携もとりながらこれは具体化していくのです。したがって、その過程はこれから先の話ですというようなことを十分念押しをいたしまして、それでまずそれを文章の中に書いてあるのです。そういう趣旨で実は今日まで来た。
 ところが、それがあたかも公約だ何だといって、いろいろと誤解を生みました。その誤解を生んだことについては、私どもの取り扱いをこれから先十分注意をしなければならない事柄であったなというだけの自己反省はいたしておるつもりであります。
#396
○井上(一)委員 外務省はどうですか。
#397
○国広政府委員 先ほど来国に対する説明ということについて御質問がありました。米国に対しましては、報告書がほぼまとまった段階で、研究会自身が大河原前駐米大使に訪米していただいて、米国の関係者に、今こういうことが検討されております、いずれ近いうちに報告書としてまとまりますがということの説明をしたと聞いておりますが、その目的は、公表されたときに関係者が内容を正しく理解しておるということを期するためだと私は理解しております。
#398
○井上(一)委員 外務省もけしからぬと思うのですよ。アメリカへ先に持っていって、そしてそれはどんな手順でどうなったかは別にして、国会で外務委員会もあればあらゆる委員会があるんだから、今こういう私的諮問機関でこういうことが検討されています、そういうことをやっぱり何らかの折に国会の中で明らかにしていかなきゃいけない。しかし、この問題についてはいずれ外務省に時を改めてお聞きします。
 ただ官房長官、今ずっと四月七日からの経緯を述べられて、五月一日に与党との経済構造調整推進要綱ですか、そういうものが決定されたんですね。これは聞き及ぶところでございますから正確かどうかわかりませんがね。正確だと思うのですが、この問題についてはいろんな議論が政府・与党の中にもあった。しかし、サミット前だし、事を荒立ててはというようなことで、いわゆる番頭役である官房長官が御苦労なさったというふうに私は受けとめているわけです。そういうことではまさに御立派な官房長官だ、私はそう思っておるのですよ。
 それで、さっきは的場さんが私的文書だという位置づけをされておったのが、いつの間にやらこれが公的なものになったわけです。これが私はやっぱり問題であるというわけなんです。その要綱それ自体に百家争鳴、いろんな意見が出てくるでしょう。それはそれでいいと私は思うのです。一つの意見ですべてがまとまるというようなことはなかなか難しいのですから。しかし、私的文書がいつの間にか公的文書になっていってしまう、それを国会の中では一言も諭ずる機会もない、それに対する議論の場もないということを私はおそれているというか、そういう政治を直していかなければいけないということを私は指摘をしているのです。
 官房長官は、与党とまず話をされたと言うけれども、今後のスケジュールをどう実行していくのか、ここで本当に説明をしてほしいし、まずそれ以前に、与党との話し合いの中身を国会に出して議論をするということになると思うのです。それは約束ができるものかどうか。そういう点に、国会と内閣とが、国会と行政とがお互いに明確な責任を持ち合っていくというところに議会制民主主義があるのですから、私的文書がひとり歩きをして公的文書になり、そして諮問機関でやったものだから国会とは無関係である、そういうようなことにしてもらったら大変なことになりますよ。それこそ政治それ自体が国民から不信を買いますよ。
 内閣の支持率がいいというのは、僕は一見思うのですが、いわゆる大統領型政治を今まで表面に出してこられた中曽根さんの手法というものが若干そういうことになったんじゃないか。しかしこういうことなんですよということを一つ一つ明らかにしていくと、国民は失望しますよ。本当を言えば、きょう私は中曽根さんにこのことだけは申し上げておきたかったわけです。国会を通して、しっかりと国会の中で議論をして、一つ一つ積み上げたいわゆる誠実な実直な行政、そういうものをやってもらわないといけない。その点で、冒頭申し上げたように、官房長官が中曽根内閣のかなめとして大変しっかりと手腕を振るっていらっしゃる、そういうことを強く信頼をしている私として、前川レポートについての、あるいは経済構造調整推進要綱が正確な名称ですが、これについてはやはり国会に提出して議論をする、こういう約束をしてもらいたい、こういうことでございます。
#399
○後藤田国務大臣 井上さんの国会の軽視といいますか形骸化、これについての御心配、これは私もそれなりに十分理解をいたします。この問題につきましては、先ほどお答えをいたしましたように、これから先いよいよ具体化する段階に入るわけでございますが、その際には、政府の中にいろんな審議会もあるし、政府のそれぞれの立場もありましょう、そして同時に与党の立場もあります、その関係で十分調整をしてまいります。その中で、それぞれの各省が現在の行政上の処理だけでできるという場合にはそれでおやりになると思いますが、しかし、そのうちの多くは立法事項を必要とするかもしれません、あるいは予算を伴うものもあるかもしれません、こういうものについては当然各省が十分論議をしながら国会の御判断を仰いでいくということになりますから、そこらは十二分に国会で御審議をしていただければありがたい、かように思うわけでございます。
#400
○井上(一)委員 外務大臣、結構です。
 それでは次に、円高の問題について少し官房長官にお伺いします。四月に中曽根総理あるいは安倍外務大臣が訪米をされたわけです。帰国をされた途端に急激な円高になったんですね。これは何でなのでしょうか。どう受けとめていらっしゃいます。
#401
○橋本(貞)政府委員 為替相場のレートの推移につきましては、市場でいろいろな要因で動いておりますので、日々の相場の要因を一概に決めることは非常に難しいわけでございますけれども、最近かなり急速にドルが全面安になっておる、それを背景に円が急上昇しておる、そういうふうに私どもは受け取っておるわけでございます。
#402
○井上(一)委員 官房長官、時間が長いのでお疲れだろうと思いますが、きょうは私は、やはり官房長官のお答えあるいは認識をちょっと聞きたい。
 それで、これは竹下大蔵大臣がベーカー財務長官との会談を終えた直後、一ドル百八十円で合意した、こういうことをコメントして、それがニュースになった。ところが、イギリスのローソン大蔵大臣が「ベーカー長官自身の考え方が私とかなり違うなら驚くべきことだ」、いわゆる竹下発言を完全に否定したわけなんですね。そういうことが政治的な立場から――これはエコノミストにそう書かれているのです。「サミット前に露呈した「非協調」。昨年の九月のG5から円高の事態は十分想定されていたのではないか。それに対して何ら適切な手を打たなかった。日米首脳会談が一体何をしてきたのかということは、これは官房長官も御出席なさっていたと思うのですが、経済対策閣僚会議で自民党の宮澤総務会長が突然発言を求めて、首相が訪米から帰国した直後から円が上がり始めた、なぜそうなったのか、中曽根総理は日米首脳会談で一体何を話したのか、こういう疑問が投げかけられたと書かれているわけです。これは事実なのです。私は、話はしたけれどもレーガンに、その友情は友情として、このことについては体裁よく拒否された、こういうように受けとめたいわけです。明確な否定でないとしても、私はそういう認識を持つのです。官房長官、中曽根総理なり安倍外務大臣がわざわざアメリカまで行っていろいろ御苦労をいただいたのですが、この円高に対する対応というのは十二分でなかったと私は評価するのですが、一体いかがなものでございましょうか。今具体的に申し上げたのですが、こういう時点をとらえて、官房長官としてはどう受けとめられます。
#403
○後藤田国務大臣 井上さん、私、本当は難しいのです、この答弁。私は専門じゃありませんからね。これは竹下大蔵大臣にやってもらわなければいかぬのですが、去年の九月のG5、私はあれで、各国の大体の政策が歩調が合ってきたと思うのですね。そこで、アメリカが第一に基本的な政策変更をしたのだろうと思いますが、そこで従来のドル高というものが是正をされていって、そして円なりあるいはマルクなりというものがだんだん上がってきて、ところがそれがだんだん急激になってきておりますね。余りにも急激なものですから、そこでいろいろな摩擦現象が日本国内にはできてきておる、こういうのが現状だと思います。
 しかし、私は素人ですから、国務大臣としてお答えしているわけですから、為替相場というのは、本来はそれぞれの国の経済的なパフォーマンス、私はこれが根底だと思います。したがって、ひっきょうそれになっていくだろうと思いますが、それだけでなしに、いろいろな投機、思惑、こういったようなものが入りますから、そこでいろいろな乱高下等も出てきておると思うのですね。しかし、私は基本はパフォーマンスだと思います。ところが、日本のパフォーマンスは相当いいわけですからこそういったようなことで今西のような状況になっておる。しかし、いずれに、せよ、それにしても急激過ぎるということだけは私は間違いがないと思います。
 したがって、日本としては、これは私、同席しておりませんからわかりませんが、恐らく総理にしろあるいは大蔵大臣にしろ、この急激な円高に対しては日本の国内に大きな経済的な影響を与えておる、これはやはり何らかの是正をする必要があるということで、私は日本としての主張は十分なさったと思います。しかし、基本的には、中央政府の連中が何を言ったって、大体はこれは中央銀行の専管事項じゃありませんかね。一方にそういう問題もあるといったようなことで、基本はパフォーマンスであろうけれども、それには権限的に言っても中央銀行の専管事項になっておるといったようなこともあるし、さらには投機、思惑、いろいろなことが絡んで今日の状況になっておりますから。
 ともかくこれは、日本の円が強くなるというのはいいことなんですよ。間違いありませんよ、これは。弱い経済力の同で円が高くなるなんということはあり得ないのですから、私はこのこと自身はいいことだと思う。そして、日本の経済の基礎条件がよければ、基礎条件、最後はそれによって決定するのですから、必ずや落ちつくところに落ちつくであろうと思う。問題は、余りにも急激過ぎて、日本の中小企菜その他に大きな影響を与えておりますから、政治の場ではそれに対してどう対応すればいいのか、これは政治の場で考えなければならぬ大きな課題である、私はこういう認識ですね。
 井上さんのおっしゃる、何で百八十円が百七十円になったかなんというのは、これは私には全くわかりませんから、あそこに専門家がおりますから専門家に答えさせます。
#404
○井上(一)委員 官房長官、それじゃ、今日の相場というか百六十五円、これぐらいならどうですか。円の高いことはええこっちゃと今言われたわけですがね。急激だから中小零細企業は困っているんだ。今まさに円高不況で嘆いている企業が多いのですよ。きょう日銀総裁が、百六十五円なら対応可能というコメントを出しておるのですよ。それで官房長官に聞くが、百六十五円、日銀総裁そう言ってはりますけど、官房長官はどう思われますか、こういうことを聞いておきたいのです。
#405
○後藤田国務大臣 なかなか井上さん誘導尋問が上手だから、うっかりすると私はえらいことになるので。――そうじゃないんです。やはり急激過ぎる、日本の経済にとっては。私は本当にそう思います。しかしながら、一体それじゃ為替相場というのは何ぼがいいのかということになると、これは口にすべきことではない、あくまでも市場に任せるべき筋合いのものである、私はこう考えるわけでございます。
#406
○井上(一)委員 今回のサミットでは、先ほども申し上げたように成功を期待したわけなんです。参加された各国は中曽根総理に対して絶賛されているわけですね。日本にとってはどうなのかというと、今言う円高の問題、あるいはアジア、ASEANの問題もありますけれども、これからこの円高に対して一体どう対応しようとしていくのか、そういうこと。しかし、これを官房長官にお聞きしてもちょっと答弁がしにくいということですから、それは次回に関係の大臣にでも聞きましょう。
 ただ、中小零細輸出業者というのは今まさに、表現が適当であるかどうかは別として、瀕死の状況であるという今日、東京サミットまで何とか持ちこたえれば何らかの調整介入があって、何とか立ち直れるであろうという期待感も持っていたわけなんですが、実際はその期待も裏切られていった。むしろ、失望と怒りというのでしょうかそういうもので、それこそ今、円高不況に苦しむ関連の業者は大変な状況である。そこで、本当は一体どうするつもりなのかということを聞きたいわけなのですけれども、それはさっき宵房長官も答弁が十分できないというような意思があったものですから。
 ところが、総理は、参議院の本会議で、円高対策を目的とした補正予算を組んで、その財源にいわゆる建設国債の発行もあり得る、これは後で若干のイレギュラーを、是正をされるわけなんですが、そういうことに対して研究をさせる、記者団にはそういうことを言っているわけなんです。
 官房長官、このことについては何らかのそのような指示を受けたのかどうか、そこはお答えができると思うので、ひとつ聞いておきたいと思います。
    〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
#407
○後藤田国務大臣 これは通産大臣とか大蔵大臣あるいは経企庁長官、官房長官等に対応策を指示してある、こう御発言なさったようですが、その点はかねがね申し上げておったのですが、六十一年度の予算の成立を待って早急に円高に対応する中小企業対策、これらを政府として講ずべしということで御指示がございまして、それはもう既に決定をしまして、そしてそれぞれの街で逐次実施をやっていることでございます。しかしこれも、最近の円高の急激な上がり方でなお一層やらなければならぬということであれば、これまたそういう検討の場はあろうかと思いますが、これは今実施中でございます。
 それからもう一点の、総理が小柳議員の質問に対する答弁の中で、円高対策はどうだという御質問に対するお答えですね、その中で言っておられることは、公共事業の前倒し等もやっておる、これは御案内の七七・四%ぐらいをやろう、こういうことですね。そうすれば当然下期に枯れてくるわけですが、そこを頭に置いておられたと思いますが、公共事業の前倒しもやっておるのだ、それで必要とあらばこれは補正予算等も検討しなければならぬかもしらない、しかしながら、政府としては、油の差益還元の問題であるとかあるいは金利の引き下げの問題であるとか、各般の対策を講じておるので、その効果が下半期に出てくると思う、こういうことを言っているわけです。
 したがって、総理の答弁というのは、今直ちに補正予算を組むなんということではなくて、もう少し模様を見まして、秋口に状況等も判断をしながら検討すべき課題であろう、こういうことを申し上げておるわけであって、今直ちに補正予算ということをお答えしておるものではありません。総理も今の中小企業の難しい立場は十分おわかりで、既に対策も命じてある、しかし、必要とあらばまた考えなければならぬが、いずれにせよ金利も下がっておるし、物価も安定し、むしろ卸売物価が下がっている、こういったようなことでプラス面も出ているんだ、そして一連の我々の考えている対策をやれば、秋ごろにはだんだん景況もよくなってきはしないりか、こういうことを申し上げておるので、その段階での判断である、かように御理解をしておいていただきたいと思います。
#408
○井上(一)委員 円高で苦しむいわゆる関連不況業者、他方、円高でもうかっている企業もあるわけなんですね。しかし、国民にとっては、そんなに円高になったからといって輸入品がぐっと下がる、そういうことは目に見えて還元がないわけであります。こういうことについては、やはり行政指導が徹底していかなければいけない。やはり円高不況に苦しむ中小企業対策というのは、大型の補正予算を組んで抜本的に立てなければいけない。これは当初予算、本年度の予算の審議の中で、予算委員会の中でも、円高不況の問題については、特に不況産業に対する手だて、いわゆる財源を私は具体的に指摘をしたわけであります。
 きょうはひとつ、これは大蔵省に聞きます。官房長官も聞いておいてほしいと思うのですけれども、いわゆる支出官レートというのがたしか二百九円だったと思うのです。その一ドル二百九円の支出官レートを、補正予算を編成するときはやはりこれは変更すべきである、そしてその変更によって一定の財源が確保されてくる、私はこういうふうに思うのです。すべてがそれで賄えるとは思いませんけれども、そういう工夫は当然必要であると思うのです。これは大蔵当局に、そういうことに踏み切るべきであると私は思いますが、いかがでしょうか。
#409
○西村説明員 お答えいたします。
 予算が成立いたしましてからまだ一月ばかりでございまして、先生御指摘のように六十一年度予算は支出官レート二百九円で組んでおるわけでございますが、今後どのような推移をたどるかということについて、私どもまだ十分な自信があるわけではございません。それから、先ほど官房長官から御答弁がございましたように、御指摘の補正予算という点については、私ども今直ちにそういうことを考えるということではないと理解をしておるわけでございます。
 したがって、大変事務方としてはお答えがしにくいのでございますが、事実の問題だけ申し上げておきますと、例えば六十年度の補正予算の段階では、当初予算は二百三十七円で組んでおったわけでございますが、補正予算の段階では二百九円ということで編成しておる、事実関係としてはそういうことがございます。
#410
○井上(一)委員 例えば、防衛庁の予算の執行において、為替の不用額が過去にどういう状況であったか。五十四年度では十四億九百万ですか、五十五年度六億九千七百万、五十六年度では十七億三千万、五十七年度四億三千百万、五十八年度では十九億二百万、五十九年度では八億六千万。大蔵は一体何を考えているのか、今ここでお答えができませんとは。為替レートが二百九円、そういう想定をしたことそれ自体も批判されるべきなんだけれども、今百六十五円云々と言っている。あるいはさらにそれが百五十円になるかもわからない。ひょっとしたら百三十円になるかもわからない。円高で非常に苦しんでいる人たちに対する、いわゆる中小企業の円高不況を救う財源に、為替不用額というのがその差額を当然充てていってしかるべきだ、こう私は思うのです。だから、今日でもなおかつ二百九円云々、それを変えることができないなんという、そういう事務方では困ると思うのです。
 建設国債まで発行しなければいかぬという、総理もそれだけしっかりとした中小企業対策を考えようとなさっているときに、防衛庁が、これは必ずしも防衛庁だけに限らないわけですけれども、防衛庁の私が申し上げた数字を取り上げても、やはり何億かの剰余金というか不用額が出てくるわけなんです。E2Cの購入だとかF15の整備機材とかその他の国産装備品に係る輸入部品とか材料とか、いろいろな機材購入、部品購入、そういうものにかかわって相当の不用額が出てくる。やはり減額修正をして円高不況にこれを充てていく、そういう姿勢が大事だと私は思うのです。額の問題ではなく、補正時に為替レート二百九円で、そのままそういうことをほっておくということそれ自体が間違いである。それは百八十円になるか、百七十円になるか、百六十円になるか、今申し上げるように百五十円になるかわからないけれども、やはり一定の見通しを持って何ほかの減額補正をしながら補正予算を組み立てていく、中小企業対策の資金に充当するのが順当な正しい予算の組み方だ、こう思うのですよ。
 官房長官、事務方ではひょっとしたら、一担当がそういうことをやりますということは国会では言い切れないかもわからぬから、番頭役である官房長官としては、今の円高で不用になるそういう額は、補正で当然財源としてそちらの方に回します、そういう決意を私は持ってもらいたい。いかがですか。
#411
○池田政府委員 その前に、今防衛庁の為替の問題がございましたので、ちょっと御説明をさせていただきたいと思います。
 為替で円高になりまして不用が出ます。それは、そこで明確になった段階で補正でも是正しております。例えば六十年度の補正予算では、この分として二十八億計上をいたしました。ただ、そう申し上げましても、防衛庁の為替の問題につきましては、いろいろな契約のタイプがございますけれども、すべての契約に、外貨建てのものにつきましては特約条項がついてございまして、差益が出たら払わない、召し上げるという特約条項がついております。したがって、それを補正の段階でやるのか決算でやるのかあるいは予算で組むのか、いろいろなタイプがございますけれども、いずれにしても為替の不用を他に転用するとか、そういうことはいたしておりません。
#412
○井上(一)委員 官房長官、私はやはり政治の姿勢の問題だと思っておるわけです。金額の問題とかは――それなら今後の契約については、修正のできるような、取られてしまうというそんな契約では、それこそ防衛予算の削減が言われている今日、そんなことを今諭じようとしている時間もありませんし、今はそういうことに議論を私は向けないのですが、ともあれ、そういう支出官レート二百九円をやはり是正すべきである。そして、そういうことによって生ずる幾ばくかの財源を円高不況に苦しむ中小企業対策に充てていく。六十一年度予算では中小企業対策は二千億余りなんです。これは当初予算です。だから私は、金額の問題よりもそういう政治姿勢が今求められるのではないだろうか、こういうことを申し上げているので、ぜひこれは検討すべきであり、そういう私が指摘しているような方向で取り組んでほしい。官房長官、いかがですか。
#413
○後藤田国務大臣 井上さんの政治的な御意見、わからぬではありませんけれども、ともかく政府としては、急激な円高対策、殊に中小企業に対する影響ということは重く見まして既に対策を講じつつある。その対策としては、先ほど言いましたように公共事業の上半期で思い切った使い方をする、あるいはまた何度がにわたる利子の引き下げ、さらには輸入商品の円高差益の消費者への還元、こういった一連のいろいろな対策を今講じておるわけでございますから、それらの対策で不足するということであるならば、これはやはり、中小企業の重要さはよくわかっておりますから、政府としては何らかの対応を考えなければならぬ事態もあるいはあり得るかもしれません。
 しかし、今、さればといって、成立したばかりの予算を補正予算で組み直せというのは、政治的にもそれはいささか無理なお話ではないのかな、いま少しく時間の猶予をいただいて、そして下半期には、私どもとしてはそれなりの一応の目安を持って今経済運営をしておりますから、それらの状況を見て補正予算の問題は検討すべきであろう、かように考えているわけでございますので、そこはぜひ御理解をしていただきたい、こう思います。
#414
○井上(一)委員 私はこれは強く要望しておきたい。そういうことをきっちりしていかない限り、財源の乏しい中で有効な行革あるいは効果ある行政をやる場合に、そんなむだな予算を組むなんということは、それだけ組んでおけば少々円安になってもどうも影響はないという役人的発想からいけば無難なそういう道をとるかもわかりませんが、中曽根さんは、この間予算が通って一カ月もたたないうちに、補正予算を考えなければならないと本会議で答弁をしなければならないほど、円高不況による中小企業対策としての補正を発想されたんじゃないのですか。そういうときに官房長官、支出官レートの問題を見直す、検討するというぐらいのお考えがないなんというのは、この点はちょっと期待外れというか似合わないですよ、官房長官にしては。それこそ思い切ってそういうことはきっちりやってもらいたい、こう思うのです。
 時間がなんでございますから、本論に入っていきます。
 今回提案されている安全保障会議設置法というもの、これもいろいろたくさんの同僚議員から既に議論がされて言い尽くされている、あるいは議論がすれ違っている、いろいろなことがあるわけでありますが、私は私なりに疑問な点をただし、明らかにしていきたい。
 基本的には、こういう設置法それ自身を議会に提案してきたということも、何か中曽根さんの審議会方式というのですか、そういう発想ではないだろうか、こういうふうにも思うのです。
 例えば、臨時行政改革推進審議会が行政改革の推進方策に関する答申を行って、国会の議論の中から生まれてきたのではなく、その答申の中から今回の設置法がつくられてくるわけなのです。そういうところに問題があるのではないかと私は思うのです。この点についてはどうですか。
#415
○後藤田国務大臣 総合調整機能の強化の問題は、古くて新しい問題であったわけです。昭和三十八年の第一次佐藤行政調査会からもいろいろな意見が出ておりましたが、それは各省にいろいろ抵抗があって結局実行できなかった。第二次の土光臨調で御審議になりましたが、これは中途半端で時間切れということになったので、私の方から、これは極めて重要な問題であるから、行革審として第二臨調の積み残しの問題として御審議いただきたい、こういうことで鋭意御検討いただいて御答申をちょうだいし、それを尊重しながら、立法すべきものは立法し、政令で措置すべきものはこれから政令で措置していこう、こういうことになったわけでございます。
 そこで、井上さんにぜひ御理解していただきたいのは、午前中からいろいろな御意見が出ました。それぞれのお立場でございますから、私もそれなりに十分拝聴させていただいております。しかしながら、私どもの基本は、これだけ内外の非常に緊張した状況の中で、日本の社会もこれだけ高密度社会になっている中で、いつ何が起きるかわからない状況にある。そこで、従来から対応のとれているものはそのままそれを使わせていただきますけれども、そうでない事態が起こる、そのときに、我々の最大の責任は、国民の命と財産をどのようにして守り抜いていけばいいのか、この一点で私どもは今回の御審議をお願いしておるのだ、ここの基本はぜひ井上さんに御理解していただきたい、これはお願いを申し上げる次第でございます。
#416
○井上(一)委員 臨時行政改革推進審議会が答申してきたこの法案ですが、「シビリアン・コントロールを確保することができる」、こういうことが書かれているわけです。どの点で国防会議よりシビリアンコントロールを確保することができると思われるのですか。
#417
○塩田政府委員 シビリアンコントロールの関係でございますが、まず第一に、今回の改正は、御承知のように国防会議に関する部分についてはそのまま引き継ぐという考え方をとっておりますから、その点においては従前と変わりがない、これは強化とかなんとかということではなくて、変わりがないということであります。これが一点。
 第二点に申し上げたいのは、今度二項の方で重大緊急事態の対処体制が入ってきます。これはすべてそうだというわけではありませんけれども、事態によっては、不幸にして悪化する場合には、国防事態に発展するかもしれない事態もあるわけです。もちろんそういうことがないように適切な措置をとりたいということで今回の案を立てているわけでございますけれども、事態によってはそういうこともないとは言えない。そうしますと、その事態について見ますと、事前に安全保障会議で取り上げて審議をしていくということを既にやっておるということになりますので、より慎重な、より適切な対応ができるのではなかろうか、こういう点が一つ言えるかと思います。
 第三は、これは制度の問題ではなくて運用の問題だと思いますけれども、この改正を機会にして、現在の国防会議、今後の安全保障会議の運営について臨調の御指摘にもあるような活性化を図っていくというようなことによりまして、よりシビリアンコントロールの充実を期していきたい、こういうことでございます。
#418
○井上(一)委員 情報の収集・分析機能の充実等が図られる、これはわからぬことはないです、運用の問題もここに入ってくるわけですから。しかしその後段です。
 有事に対するシビリアンコントロールを確保することができる。これによって国防会議よりシビリアンコントロールがより確保されるのだという具体的な問題が、あなたの答えに全然出てこないじゃないですか。それを聞いているわけなのです。今の国防会議ではシビリアンコントロールがこの部分できかないのだ、だから今回のこの法律によってこの部分がシビリアンコントロールがかかるのだ。あなた、そういうことを答弁しないで−ここにはそう書いてあるのです。どうも僕はこれはわからぬ。私自身がわからない。わからないから聞いているわけです。あなたの答弁は全然答えになっておらぬ。国防会議ではシビリアンコントロールがかからない、かかっているのだが、この法律の方がよりシビリアンコントロールが確保できるのだ、こういうふうにうたっているから、どこですかと聞いているのです。答えてください。
#419
○塩田政府委員 繰り返しになるわけですけれども、今私が申し上げたかった点は、第一点は、国防会議はそのまま継承ということですから、これは変わりがございません。
 第二点の場合、重大緊急事態が発生して、第二項で取り上げて安全保障会議で審議をする。そうしますと、適切な措置をとることによって事態が収束すればそれは結構なわけですが、事態によっては悪化するというケースもあり得る。悪化するというのは国防事態の方に発展するということもあり得る。その場合に、もしそういうケースがあるとすれば、これは既に重大緊急事態の段階から対処を考えて審議をしていくわけですから、そういう意味では十分な、慎重な対処ができるではないか、こういうこと。
 それから、第三点に運用の問題を申し上げました。
 それからもう一点、先ほど言い落としましたが、これは形式的な問題ですけれども、現在国防会議が防衛庁設置法の中に規定されている、これは形としてもおかしいのであって、今回の独立法の方がいいのではないかという点もつけ加えさせていただきたいと思います。
#420
○井上(一)委員 どうもしっかりとした答弁にはなっていないのですが、じゃ、シビリアンコントロールの原則をどう考えているのか、この際聞いておきましょう。
#421
○塩田政府委員 これは一言で申し上げれば、政治の軍事に対する優越、こういうことだと思います。
#422
○井上(一)委員 国防の最高責任者は内閣総理大臣ということであるわけです。それで、今言う政治の優越、シビリアンコントロールの責任を内閣総理大臣が持つということになるわけですけれども、もし総理が好戦的というか、そういう言葉がいいかは別として、ああいはちょっとしたことで判断を誤る、それをコントロールする責任はだれが持つのですか。
#423
○塩田政府委員 シビリアンコントロールの最終責任というのは、やはり国会だと私は考えております。
#424
○井上(一)委員 まさにそのとおりであって、結局本来的なシビリアンコントロールを持っているのは、国権の最高機関である国会だと思うのです。ところが、そういう観点からいけば、これはあなた、国会を通ってこの設置法でいけば、別に国会に語るわけでもなく、国会無視、国会軽視、国会なんていうものを通らずにいくわけでしょう。それがなぜシビリアンコントロールの確保になるんですか。
#425
○塩田政府委員 先ほど、最終的な責任は国会だと申し上げましたが、行政面でいいますと、やはり行政の最高責任者である内閣総理大臣がシビリアンコントロールの責任を持っておるわけであります。それを補佐するのが今度の機関でございますから、総理大臣の行うシビリアンコントロールについてより適切な補佐をする、こういうところにあると思います。
#426
○井上(一)委員 内閣総理大臣は、我が国の場合は、国会議員の中から国会議員によって選任をされ、そして内閣の最高責任者である。それで、今議論をしている安全保障会議設置法では、この安全保障会議というものは内閣総理大臣が議長になる。そして、第五条に書かれた限られた人たちがそのメンバーであって、その人たちによって事が処せられていくということなんですよね。
 例えば、六条の二項で「議長及び議員並びに議長又は議員であった者は、その職務に関して知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」そうしたら、国会は、重大緊急事態が起きても何も知らされないことになる。秘密を他に漏らしてはいけない、こうなんです。もちろん今のところは、外務大臣も大蔵大臣も内閣官房長官も国会議員でいらっしゃる、そしてシビリアンコントロールというのは国会が持つ、そのことから考えれば、重大緊急事態が発生した場合に、国会に報告する義務が当然そこに生まれてくるわけなんです。ところが、そういうことを知っても、それは漏らしてはならない、そんなことでシビリアンコントロールが確保されるなんというのは、そんな認識は大きく誤っていると思うのです。大きく誤っているでしょう。他にしゃべれないんですよ。どうなんですか。
#427
○塩田政府委員 これもかねてからお答えいたしておりますが、国会に対して報告すべきものがあれば、通常のルールに従って報告するということであります。
 今度の場合、たびたび申し上げておりますが、安全保障会議で審議した方針に従って各省庁がそれを実行する、こういうことになりますが、その実行に当たって、各省庁の既存の権限において行う場合に、国会との関係、いろいろ規定がありますから、それは当然それに従った措置をとるということが一つ。それから、安全保障会議で決めて措置する事項のうち、重要事項について国会の御要望があれば御報告をします、こういうこともお答えをいたしておるところでございます。
#428
○井上(一)委員 シビリアンコントロールの確保というこの一点からして、当然すべて国会に相談をする、国会に報告をする、このように国会が絡んでこなければいけない、やはり国会のコントロールが必要である。
 では、一体この重大緊急事態であると決めるのはだれなんですか。
#429
○塩田政府委員 最終的には総理であります。
#430
○井上(一)委員 何を基準にして決めるのですか。
#431
○塩田政府委員 ある事態が起こった場合に、それがここで諮られるべき重大緊急事態であるかどうかについての判定に当たりましては、もちろん最終責任者は総理でありますが、総理が官房長官や所管の大臣等の補佐を受けながら決定をされると思います。その場合に、起こった事態の重大性でありますとか緊要性でありますとか異例性といったようなことを判定の要素として、今申し上げました補佐を受けながら総理がお決めになる、こういうことでございます。
#432
○井上(一)委員 私は、そういう答弁では納得もしないし、もちろんそういう答弁しかあなた方はしないわけです。そんな答弁ではだれも、私以外の人も含めて納得ができない。
 一つの基準というのは、やはりそのときそのとき変わってはいかぬわけなんですよ。既存の法律の枠をはみ出るような場合がまさに緊急事態だ、こういう一つの基準を持つわけなんですか。それでいいんでしょうか。私はそう受けとめるのですが、いかがでしょう。
#433
○塩田政府委員 今おっしゃいました既存の枠というのを、私どもの申し上げておりますのは、既存の緊急事態対処体制があって適切に対処できるものを除く、こういうことでございまして、いわゆる既存の体制として御理解いただいて、それをはみ出すもの、それを異例性として把握しているわけでございます。
#434
○井上(一)委員 既存の法律の枠をはみ出るもの、こういう認識でいいのですか。
#435
○塩田政府委員 私が申し上げているのは、既存の法律の枠ではなくて、既存の現在あるいろいろな緊急事態対処体制、その対処体制で対処できるかどうかという観点から、対処できないと思われるもの、既存の対処体制の枠を外れるもの、枠を超えるもの、そういう意味でお受け取りいただきたいと思います。
#436
○井上(一)委員 既存の対処措置、それぞれの法律があって対処措置が可能なわけなんですが、その枠に入らないもの、こういう認識だと言うんですけれども、それでいいんでしょうかと私は聞いているだけなんです。どうなんですか。それなら既存の法律の枠の中で対処すればいいんだ。ここは肝心なところだと思うので、ちょっと聞いておきたいのです。
#437
○塩田政府委員 私が先ほどから申し上げているのは、既存の対処体制がありますが、その対処体制によって適切に対処できない事態、それをつかまえるわけですが、しかし、それを実施するに当たってはあくまでも既存の法律によってやるわけですから、そういう意味で既存の法律を超えるという意味ではない。既存の体制で適切に対処ができない事柄を対象にしますが、その場合の対処に当たってはあくまでも既存の法律によって対処する、こういうことでございます。
#438
○井上(一)委員 既存の法律で対処できるんならこれは必要ないんじゃないですか。こういうものはそれこそ行革の精神に反するじゃないか。少しそこは整理して答弁をしてください。既存の法律の中で対処できるものならこういうものは必要ないわけです。既存の法律では対処できないから、こういうものをつくろうとしているんじゃないんですか。
#439
○塩田政府委員 そうではございませんで、私たちは、この安保会議によって決めた方針に従って各省が対処するのはあくまでも現行の法律の中で対処する、こういうふうに考えております。だから法律を超えて対処するんじゃありません。そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。
#440
○井上(一)委員 それじゃ、既存の法律の枠の中で対処する、こういうことですね。
 官房長官、これはやはり内閣からちょっと聞いておきたい。何を基準にするんですかと私が聞いたわけです、何やかんやわからぬから。今まではダッカ事件だとか大韓航空のときだとか地震がどうだとかこうだとか、具体的にはそういうことを言われていますが、私がやっぱりしっかりと聞いておきたいのは、だれが決めるのかと言ったら総理大臣だ。何が基準ですかと言ったら、やはり物には基準がなければいけないので、それは既存の法律の枠からはみ出たもの、既存の法律の枠ではくくれない、そういう事態が発生した場合に、やはりこういう会議をもってそこで判断をしていくんじゃないか、こう受けとめているわけなんです。そういう意味で、既存の法律の枠の中で対処できるものならこんなものつくる必要ないでしょう。それはつくらない方がいいんですよ。
#441
○後藤田国務大臣 既存の法律の枠の中に入らぬものをここで対処するんではございません。それだとそれは超法規の措置になりますから、そういうことではございません。既存の法律の枠の中でそれぞれの権限に従って各省が処理をするんですが、一つの事態に、そういった既存の法律がたくさんあって、それぞれの役所がみんな関係をしておる、そこでそれぞれの役所の意思が合致しない、コンセンサスが得られないということで、事態は起きておるにもかかわらず適時適切なる措置がとれないんだ、それをとらなきゃならない、そのときの少なくとも方針だけは決めなきゃならない。その方針を決めるときには、この会議にかけまして、そして総理の判断がそういう際にトップダウンで下がってきますから、これは間違いのないような判断をしていかなくちゃ困るんだ。それがために会議も置き、そして同時に、事務系統の補佐のスタッフの組織をきちんと整理しよう、こういう趣旨だ。かように御理解をしていただきたいと思います。
    〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
#442
○井上(一)委員 官房長官、それはおかしいですよ。安全保障会議設置法の条文の中に、第二条の二項に「通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難な事態」「が発生した場合」だとある。重大緊急事態。緊急事態の対処はそれぞれの行政というかそれぞれの省庁にある、緊急事態発生時には。もう何人かの方が言われているから言いませんが、ちゃんとあるわけなんですよ。しかし、それの体制では適切に対処することが困難だ、だからつくるんだということだから、その法律では不十分だ、今の既存の法律の枠の中では十分に対処することが困難だ、それで必要だ、そういうものが発生した場合、好まないことだけれども発生した場合は。僕はそう受けとめているんですよ。既存の法律の枠の中でできるのなら、こんなのをする必要はないじゃないですか。それは話が基本的に違ってくると私は思う。だから、それならこの条文これ自体から問題が出てきますね。ちょっとそれはおかしいですよ。
#443
○後藤田国務大臣 井上さん、それはそうではないのです。それは、既存の何というか重大事態に対処する仕組みがあり、そして法律がある。それで処理ができるものはそれで処理をすればいいんです。ところが、それで処理がし切れないというのは、重要度は同じだけれども、関連する範囲が多いわけです。例えば大災害を一つお考えいただければわかるのです。非常災害の措置というものはちゃんと決まっておる。ところが、その災害いかんによっては、これは昔なら、例えば関東大震災を例に挙げますと、昔は戒厳令をしいているわけですね、そしてやっておる。だとすると、これに匹敵するものは、これは今であれば治安出動になるのですね。ところが、治安出動の前に、現行法でいけば警察の非常事態の宣言もあるわけですね。ところが、そういう程度の大きな社会不安を起こし大混乱になるといったような事態であるならば、災害としての措置はそこでできておるけれども、横の広がりの処理ができない。この災害対策本部で、それじゃ自衛隊をひとつ治安出動で出してもらおうかとか、あるいはまた警察の緊急非常宣言を発せさせるかということになると、それができないわけなんですよ。したがって、そういった事態の場合には、今度設けようとしておる安全保障会議にかけまして、そしてそこで一応の基本の方針を決める。そうすると、その基本の方針についてそれぞれの権限がありますから、それによって処理をしてもらおう。こういうことですから、幅の広さがまるきり違って、よそのことまではやれないんだ、そういう事態を私どもは想定しておる。こう理解をしていただきたいと思います。
#444
○井上(一)委員 それじゃ、対処措置についてはあらゆることができる、そういう理解をしてよろしいんでしょうか。
#445
○塩田政府委員 あらゆることができるかというお尋ねの意味がよくわかりませんけれども、あくまでもそれぞれの官庁が持っております現行の法律に基づく権限の中で実施する、こういうことでございます。
#446
○井上(一)委員 それじゃ、日本国の憲法で明示的に緊急権を授権している条項があるんでしょうか。
#447
○塩田政府委員 ないと承知しております。
#448
○井上(一)委員 憲法で認められていない、明示されていない緊急権、ここではそれ以上な権限を、この重大緊急事態、さっき戒厳令云々と一つの例を言われましたが、これは例えば国民の人権をも制限することがあり得るというようなことになりはせぬだろうか。既存の法律の枠の中では対処できない、この文章かるいけばそうなんですから。そういう点はどうなんですか。
#449
○後藤田国務大臣 その点は御心配はありません。つまり、今度のこの機関は新しい格限を付与するのではないわけですよ。いろいろな今までの重大事態に対処する仕組みのないような事態が起きる、そうすると各省の意見が一致しないで方針すら決まらない、それでは困るんだ。そこで方針を決めますね、意思を決定する、その意思決定が間違わないようにしてもらわないと大変なんだ。その意思決定をしてもらえば、各省はそれぞれの権限に従い、そして非常の準備の体制がとれている制度もありますから、それはその体制に乗せてやっていけばいいんだ、こういうことでございまして、この会議に新しい権限を付与するなんというのは一つも書いてございませんから、そこは御安心願いたいと思います。
#450
○井上(一)委員 重大緊急事態、短い言葉だけれども、発生した場合において対処措置をとるについて会議に語る、こういうところに多くの意味が含まれるものですから。ダヅカ事件のときでも超法規的ななにを解決としてやっているのですよ。だから、私がなぜ既存の法律の枠の中だということの確認をしつこくしたかというのは、そういう意味もあったわけです。さっき答弁でちょっとわからないと言われたけれども、私の質問は、人権の制限も含めてあらゆる措置が対処措置として講じられるのか、こういうことを言ったわけで、もっと具体的に言えば、では外出制限を措置する、一時、戒厳令に近いような外出制限、あるいは昔の灯火管制、物価統制、配給制度、いろいろ過去私たちの小さいころに経験してきた戦時中の体制を思い出して、そういうことができるようなことであっては大変なことになるから、そういうことについてはどうなんでしょうかと聞いているのです。
#451
○塩田政府委員 繰り返して申し上げておりますように、この対処措置が決まった後対処するには、各省庁が現在の法律の中で持っておる権限に基づいて措置する、その方針をここで決めようということでございますから、御指摘のようなことはあり得ないと思っております。
#452
○井上(一)委員 それでは、今度はもうちょっと具体的な事例で聞いていきましょう。
 事態が発生した場合だ、おそれの状況ではない、こういうことを答えておられました。例えば、アリメカが中東と今いろいろな問題を起こしつつあるわけなんですが、紛争状況に入った、ソ連が何かそのことによって動き出した、極東艦隊が動き始めた、そんな場合は重大緊急事態の発生だ、こういうふうに判断をされるのでしょうか、基準を言わないから私は具体的に聞くのです。
#453
○塩田政府委員 ある事態が発生しまして、我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがある事態がまず大前提でございます。今のお話のような事態のときに、それが我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのある一つの事態が発生したと言えるのかどうか、こういうことになると思いますけれども、非常に抽象的で恐縮ですが、私は、今のお話のような段階で、ここで言うところの重大緊急事態だとは考えられないと思います。
#454
○井上(一)委員 それはそのときの判断になるわけですが、官房長官、私はやはり答弁は官房長官にお願いしたいですね、あなたにはえらい失礼ですが。それはそのときの判断、いわゆる推移を見守りながらというのが大体政府側の答弁なんです。推移を見守りながらとか、あるいはそれが我が国の安全を脅かすという判断、その判断をするのは内閣総理大臣なんですよ。そういうことを考えると、安全保障会議をそういう場合に開催するかと私が聞いたら今のお答えなんですが、有事には突入はしていない、入り込んではいないが、推移を見守る中で重大緊急事態発生と認定して会議を開くこともあり得ると考えられる、こういう認識を持ってよろしいでしょうか、官房長官。
#455
○後藤田国務大臣 いずれにしましても、今の御質問は、それは国防事態です。したがって、今回の改正とは関係がない、かように御理解をしておいていただきたいと思います。
#456
○井上(一)委員 関係がないなんて、官房長官、そういう認識では間違っているのじゃないでしょうか。「国防に関する重要事項及び重大緊急事態への対処」だから、両方に絡んで安全保障会議をやるわけなんです。だからそれは、今のお答えではどちらに入るか、重大緊急事態の発生に入るのか。――あなた、後ろからあなたの思いを官房長官に教えたって、官房長官はそのとおりしか言えないじゃないか。失礼だけれども、あなたの答弁は結構です、これは官房長官とやはり議論していかなければ。最高のシビリアンコントロールは国会だということをあなたはおっしゃったでしょう。こういう議論を通してやるそのことがシビリアンコントロールを確保していくことにもなるのじゃないか。塩田さんには大変お気の毒ですけれども、この際は官房長官と議論をしていきたい。
 そういう点では、私が今申し上げたように、推移を見守りながらそういうこともあり得るという理解でいいのか、いやいやそんなことは絶対にと。日米の安保も絡んできますから非常に難しい答弁ですが、そういう場合にこの安全保障会議は動くのでしょうか動かないのでしょうか、こういうことです。
#457
○後藤田国務大臣 私が関係ないと言ったのは、今回の改正と関係がない、こう申し上げておるわけです。
 そこで、今の御質問は、事態のいかんによりますけれども、それが日本の国防事案である、そして国防会議に付議しなければならぬような重大な事態であるというならば、それは従来どおりの国防会議の系列であり得ます。しかし、緊急事態の制度を設けたからあえてそれは緊急事態の制度の対象となるのかといえば、その対象にはならない、こう申し上げておるわけです。
#458
○井上(一)委員 時間に制約もありますし、この後総理がお見えだということだし、官房長官も大分お疲れでしょう。
 私は、この法案というのは非常に重要な法案の一つである、本当はもっともっと総理とも議論を重ねて、そしてもっともっと討議をする必要があると思うのです。しかし、限られた時間ですからそうもまいりまぜんが、重大な緊急事態ということが何なのか基準すらもない。何なのかということもわからない。そして対処措置も、各省庁がばらばらでは云々と言うだけであって、それなら今の法律を一つに一本化すればいいわけで、それは私から言わせれば、対処措置も全然わからぬ、何か起これば、そのときそのときにこの設置法が生かされてきて、この会議が出てくるわけなんですね。
 これはまさに国会が、私たち国会議員が安全保障会議に白紙ですべて一任をする、こういうことになると私は思う。白紙一任を承認せよということが今回のこの安全保障会議設置法を審議せよということであって、私はやはりよく考えなければいけないと思う。いわゆる国権の最高機関である国会がシビリアンコントロールを果たすという役割、そういうことから考えても、白紙一任を承認せよということは、それこそもう到底私としては承認ができない。もちろん反対の立場に立つわけであります。まさに国会には白紙一任というそういう法案ではないでしょうか、法律ではないでしょうか。この点を強く私は申し上げて、お答えがあればどうぞおっしゃってください。私は、白紙一任ということは許されないということを強く申し上げておきたい、こう思います。
#459
○後藤田国務大臣 御意見としてはよく拝聴しましたが、これは白紙一任を求めるような大それた法律では絶対にございません。私どもとしては、今日の事態に対応して国民の命と財産を守る仕組みが今、国全体の行政組織の中で欠けておる面があるのだ、それを何とか埋めさせていただきたい、これが私の念願でございますから、そこはぜひひとつ御理解をしていただきたい、こう思います。
#460
○井上(一)委員 最後に一点、この問題はこの機会にどうしても尋ねておきたいので、官房長官からお答えを聞いて、その後また、関係の人たちにお答えをいただきます。
 実は、日航事故の聴聞会というのでしょうか、四月二十五日に運輸省の航空事故調査委員会主催の公開の聴聞会があったわけなんですね。ここで学識経験者の一人として陳述した清水馨八郎千葉大学名誉教授の日航機事故についてのコメントというか公述は、官房長官、これは御承知なんでしょうね、私が今詳細に申し上げなくても。山が殺したんだというような意見を陳述しているわけなんですが、内容は時間の関係で省略しますが、この公述に対して官房長官はどのような感想を持ち、どういうお気持ちを持たれたのか、聞いておきたいと思います。
#461
○後藤田国務大臣 これは四月の二十五日に千葉大学の清水名誉教授が公述人として意見を述べられたものでございますけれども、山への衝突が事故の原因である、こういった発言。これは私はそうではなくて、山があるから事故があったのだなんてそれはべらぼうな話なんですから、そうではなくて、山岳国家の日本だから、やはり日本はそれに対応した安全ということについての配慮をすべきではなかったのか、それを言っておるのであろうと考えておるわけてございます。したがって、いかにも山があったから事故があるんだなんというようなことを文字どおり清水さんが考えておるはずがありません。しかし、もし考えておると仮定をすれば、それはもうどだい話にならない議論である、かように理解をいたします。
#462
○井上(一)委員 考えてないって、あれは、まあ平地の多いオランダでも低い山はあると言われるのだから、山のない国なんというのはないわけですよ、世界じゅうどこへ行ったって。航空機が山のないところだけ飛ぶ、そういうものでもないわけなんだ。あなたが今ちょっとおっしゃられたことは、清水先生は何を言おうとされたのか。私はそれは直接聞いてはおりませんけれども、被害者にとっては、この言葉をどう受けとめるのか。そんなことで行政がいいのか。中曽根内閣はこういう発言に対してそれこそ何らかのコメントがあってしかるべきである。官房長官、もう一度。何か今の話だと、とんでもないことだとおっしゃっている反面、そうではないのだ。では、あなたは清水先生に聞いたのでしょうか。
#463
○後藤田国務大臣 清水さんの御発言をストレートに聞けば、これは私は不適切なる公述人としての発言である、さように理解をします。
 ただ、そういう非常識なことをまさかおっしゃったのではないのではないかな、私はそう申し上げておる。殊に山岳地帯ですからね、これは気象条件も悪いですよ。殊に山岳地帯であれば、それなりのやはり安全措置というものは十分注意をしてやらなければならない大事な事柄である、かような認識でございます。
#464
○井上(一)委員 それでは、航空事故調査委員会の事務局に聞きますが、この清水名誉教授は、事前に自分の公述するいわゆる趣旨を事務局に提出をしたように報道されているわけです。事実なのかどうか。そしてそういう箇所がしっかりと表現されているというか、明らかにされていたならば、そのことについての趣旨を確認されたのかどうか。あるいはこういう発言に対していわゆる調査委員会としての対応はどうしようとしているのか、どうしてきたのか。
#465
○藤冨説明員 まず、簡単な経緯から御説明させていただきたいと思います。
 この聴聞会は、先ほど官房長官も申し上げましたように、六十一年四月二十五日に開催されました日航機事故についての聴聞会でございます。この聴聞会と申しますのは、航空事故調査委員会が、当該航空事故に関して関係者及び学識経験者から意見を聞くものでございますが、清水氏は官報の公示を見まして公述の申し込みをされ、公述人として意見を述べられたものでございます。
 そこで、先ほど先生のお話にもありました山の件でございますが、これは山への衝突が事故の原因であるというものであったと承知をいたしております。これにつきましては、今後の対応策等の記述を見ますと、公述全体としては、山岳国家日本はそれに対応したマニュアルを作成すべきだという趣旨を言おうとしたものではなかろうかと思われるところがございましたのですけれども、その表現におきましては、公開の聴聞会における発言としては適切でないものがあったというふうに我々も考えているところでございます。
 そこで、そういった公述の内容について事前に承知していたのではないかという御質問がと存じますが、公述を申し込みいたしますときには、公述の概要について同時に提出をすることになっておりますので、この山岳国家諭についての内容につきましても、全体の一部として我々の方では読んでいたということでございます。
#466
○井上(一)委員 事前にそういうことがわかっていて、それに対して調査委員会では何らか清水名誉教授に真意を尋ねるということはしなかったのですか。今あなたは、こうでしょうと言う。それも尋ねたのかどうか。あるいは明らかにそういうことが後で補足されたのかどうか。多分と、そういうような表現で今言っているわけなんです。事前にそういうことが報告されておって、それに対して何の対応もしないなんというのは、これまた調査委員会がどうかしている、けしからぬ、私はこう思いますよ。
#467
○藤冨説明員 公述書の性格でございますが、公述される方々は、自分の公述の内容につきましてあらましをあらかじめお届けいただきますが、その公述を実際にいたします場合には、それぞれそれの重点をどこに置くかということについて、またさらに詳細な補足をして御説明するというのが一般的でございます。
 航空事故調査委員会といたしましては、広くいろいろな御意見を聞くという観点から、公述人の良識を信頼いたしまして、個々の表現についてあらかじめ云々することは現在までやっておりませんでした。そういう意味で、結果的に、御遺族の方がお聞きになりますと心情的に非常に問題とされるような発言内容が含まれていたということにつきましては、私どもも残念に思っているところでございます。
#468
○井上(一)委員 それでは、時間も来ましたからこれで終えます。
#469
○志賀委員長 それでは、総理が到着次第再開することとし、暫時休憩いたします。
    午後七時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後七時二十一分開議
#470
○志賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。上原康助君。
#471
○上原委員 総理もお疲れのところもあろうかと思いますが、いよいよ提案されました安全保障会議設置法が、私どもにとっては極めて不十分な審議期間であって、まだまだ解明をしなければいけない問題点が多いと思うのですが、諸般の事情もありまして、総理に対するお尋ねとなっております。これまた非常に短い時間でお聞きをしなければならないことが多いので、この点も遺憾なんですが、まず、この法案ともかかわりがありますので、せんだって華々しく行われた東京サミットの成果というか、あるいは結果について中曽根総理はどのように評価をしておられるか、御所見を賜りたいと存じます。
#472
○中曽根内閣総理大臣 アジアにおいて行われる第二回目のサミットでございますので、まず第一に、全世界に平和と繁栄、経済の繁栄及び世界の平和、こういうもので希望を与えるようなサミットにしたいし、特に発展途上国の問題や債務国の問題にも細心の注意を払って我々がその配慮を示す、そういうサミットにしたいし、特にアジアの問題では、朝鮮半島あるいはカンボジアあるいはアフガニスタン等々の地域問題の平和的解決に向かっても協力し合う、そういう線を強く出したいと思いまして、そういう面は声明その他に十分出ていると思います。
#473
○上原委員 安倍外務大臣はどのように御評価しておられますか。
#474
○安倍国務大臣 今総理がお述べになりましたように評価しています。
#475
○上原委員 なかなか御慎重のようですが、これもお尋ねすればいろいろありますので、簡単にお聞きをしておくわけですが、まず、円相場安定のための日米協調介入を総理は強く求めた。しかも、四月十三日から十五日までワシントンもうでをしてまで、ロン・ヤス関係の緊密さというか、総理が東京サミットにかけた意気込みというのがにじみ出ておったと思うのですね。しかし、円為替相場問題などが日本側の総理の期待どおりに運んでいなかった。ベーカー米財務長官は、市場介入よりも内需拡大で経済成長を図る方が為替相場の安定につながるとまで言明したわけですね。これは我々がかねてから指摘したとおり。このことは、首相が求めていた円高・ドル安抑制のための協調介入は失敗に終わった、こう見て差し支えないと思うのですね。
 したがって、今後の日本経済、なかんずく中小企業なり国民生活に及ぼす影響というのは極めて大である。そのことについて、アジアでサミットが行われたということ、あるいは議長国であったというだけで済まされないと国民は見ておるわけですが、このことに対しての総理の責任ある御答弁を求めておきたいと思います。
#476
○中曽根内閣総理大臣 サミットは国立銀行総裁等の会合とは違って、一般的政策を論じ合う会議でありまして、マルクであるとか円であるとかという特定通貨をどうするかという会議ではないのであります。
 今回のサミットにおきましても、ウィリアムズバーグ・サミットで決めたことをさらに確認しまして、いろいろな諸条件についてお互いが監視を行う、その諸条件から大きく逸脱した場合にはお互いが協調活動を行う、その中にはもしそれが有用であれば介入も含む、そういうことを文書でまた確認しておるわけでございます。
 そういう政策について話し合うという場所であって、特定の通貨をどうするかという個別的な通貨の話をする場ではありません。しかし私は、現在円が急上昇しておる、これによって日本の産業が非常な打撃を受けておるということは詳細に各首脳にも説明もし、日本の現状というものを訴えだということは事実であるが、しかし、それでマルクをどうする、円をどうするという個別的通貨の問題には入らない、そういうことになっておるのであります。我々は、今のそれらの声明の内容というものを適宜これから活用していきたい、そう思っておるわけであります。
#477
○上原委員 そうはおっしゃっても、過去六カ月で円の為替レートが四〇%も上昇したということ、特に必要があれば協調介入もやるということを文書化したとおっしゃいますけれども、いわゆるサーベーランス、相互監視体制を織り込まれたということは、むしろ日本側にとっては極めて不利な声明だと見る経済専門家も多いわけですね。そうしますと、円の為替レートなどを決めるようなサミットでないとおっしゃるのだが、あなたの一番の期待というものは、円の為替レートを安定化させるということがこのサミットにかけた最大の眼目じゃなかったのですか。
#478
○中曽根内閣総理大臣 政策的協調と、それから各国が積極的に構造改革を行ってそうして適切な世界経済繁栄の方向に持っていく、そういうことは私の考えにあった。もちろん日本の円が急上昇して乱高下しておる、我々はそう考えておる。したがって、日本も適当な措置をとりつつあるし、また将来もそういうことは考えておるわけでありますが、しかし、日本の円とかマルクとかという特定の通貨をどうするかということは、名前を出して議論の対象とするということはみんなが慎んでやっておるわけであります。
#479
○上原委員 この評価は国民がなさると思うので、今の御答弁ではいかがかと思いますが、これだけにかかわるわけにもまいりませんので、もう一点お尋ねしておきます。
 いま一つは、国際テロ対策というか、その必要性については私たちも全面的に必要を認めるものです。しかし外務省は、リビアを名指しにするということは控えたい、こういう意向を強く持っておったということですが、結局中曽根首相のオーバーランというか、あるいはレーガン路線への協力を優先せざるを得なかった。その結果、リビアを名指しにした声明になったとも言われているわけですが、要するに、冒頭に申し上げましたドル対円の為替レートの問題にしましても、ロン・ヤス関係を軸にしたこれまでのスタイル重視の中曽根外交ではもう限界が来たということを、このサミットの結果というのは明白にしていると思うのですね。したがって、このリビアを名指しにしたということによって、かねて安倍外務大臣が言ってきたところのいわゆる創造的、全方位外交というものに支障を来さないのかどうか。また、このことによって中東外交に及ぼす影響というものは考えられないかどうか。総理並びに外務大臣の見解を求めておきたいと思います。
#480
○安倍国務大臣 国際テロ防止声明につきましては、よく御承知のとおりでございますが、これは地域を限ってテロ防止ということを主張して声明しているわけでありませんで、世界のどういう地域でもテロに。対しては断固として排撃をしていく、国際テロを防止しなければならないという参加国の強い決意が表明されたわけでございます。これは、最近の続発する国際テロに対しまして世界の憂慮が結集したと言っても過言ではないと私は思います。
 そういう中で、確かにリビアの名前がメンションされたことは事実でございますが、この点につきましては、これも国会でももう既に説明もいたしておりますが、サミットの前に、日本に対しましてアメリカあるいはまたヨーロッパ諸国から、ベルリンにおけるディスコのテロ活動、その他最近のテロ活動について、詳細具体的な説明がありました。その詳細具体的な説明を受けて、我が国としてはリビアが関与しているという認識を深めた次第でございます。既に我が国のこうした認識は発表いたしております。そうした認識を踏まえましてサミットで議論をされまして、そしてサミット参加国の完全な意見の一致ということで声明の中に盛り込まれた、中曽根議長は議長国の責任においてこれを踏まえて声明の中に盛り込まれた、こういうことでございます。
 しかし、これでもって、今おっしゃいますような、我が国の中東外交に変化があるとか中東外交が変わったということでは毛頭ありませんで、これはあくまで次元の違う話で、あくまでも全世界各国、あらゆる地域のテロに対して声明を発しておるわけでございまして、中東に対しての我が国の平和外交、基本的な外交の姿勢は、声明を発表する前と発表したとき、その役といえども、これは一歩も変わっておりません。我々はあくまでも、これまでのアラブに対する政策あるいは中東和平に対する基本政策を堅持しながら、アラブ諸国との友好関係あるいはまた経済的な協力等も進めてまいりたい、こういう決意であります。
#481
○中曽根内閣総理大臣 外務大臣が答弁されたとおりであります。やはりテロというものについては、我々は断固糾弾すべきものであると思うのです。無辜の市民をああいう卑劣な手段によって殺りくする、特に出際テロというようなことは許すべきではない、この点においては何人といえども一致しているだろうと思うのです。しかし、最近、国家に支援されたテロというようなものが拡大するという傾向があると言われておりまして、まあ今度のリビアの問題については、我々もアメリカから詳細な説明を受けまして、そしてアメリカのそういう考えに対する認識を非常に深めたということであります。
 それで、国際テロについては国際的に協力してこれは防圧しなければならぬ、その防圧する方法について数点の項目等を挙げて今回は決めました。決めましたけれども、しかし、我々が行ってきた中東外交の政策というものは変わるものでもない。外務大臣が答弁されたとおりであり、特にアラブの国と対決するというような考えは毛頭ないのであります。
#482
○上原委員 この点はこの程度でとめざるを得ませんが、これは総理や外務大臣が呼吸を合わさざるを得ないところはあると思うのですが、私らも、何も国際テロを容認するとか、そういうことに対して緩和していいとか、なまぬるいでいいということじゃないのです。しかし、言いたいことは、米国とか英国が強硬に出れば、アメリカよければ世界よしじゃないのだよな。もっと自主的外交というものがあってしかるべきだということを指摘しておきたいと思うのですね。
 そこで、質問の順序が違うが、次は重大緊急事態に対する総理の認識をお伺いしたいわけですが、何か外務大臣の御日程があるようですから、外政調整室の問題についてお伺いをしておきたいわけです。
 今度のこの安全保障会議設置法の中で一番問題なのは、重大緊急事態というは一体何ぞやというその基準というか、あるいはその対処方法なのですが、内閣官房、いわゆる総理官邸、総理大臣の権限、あるいはその総理大臣の権限と内閣との関係、いま一つは国会との関係、いろいろな問題があるわけですね。同時に、外政調整室を置くことによって一体−外交に関することは外務省がやる、外交に関する国内調整についても第一義的には外務省がやるのだ、だが、緊急な場合は早急な意思決定を迫られる場合があるので補佐組織として外政調整室を置いてやるのだというのですが、果たして二元外交の危険なしとしないかということについては非常な疑問があるわけです。
 しかも、中曽根総理の政治手法というか政治スタイルというものは、すべて私的諮問機関、何々審議会先行型でしょう。外務省も国会も内閣もわからない間に、アメリカにはいろいろなレポートが行ったりすることがしばしばある。皇太子問題しかり、中国に行ってもらうとかあるいは韓国に行ってもらうとか、頭越しのことがしばしば起きているのだが、今回ここで言う外政調整室を置いていろいろな外交案件をこの調整室でやることによって、二元外交の危険なしとしないのかどうか。この点は、総理並びに外務大臣、外務省の見解も私は明確に求めておきたいと思うのです。
#483
○安倍国務大臣 私は、最近の我が国の外交はまさに一元的に政府一体となって行われておる、中曽根総理と相談をしながらまさに外交は整然と行われておるという確信を持っております。
 そういう中で、今お話がございましたように外政調整室という問題が持ち上がりまして、これが答申されるというその議論の段階で、私はやはり同じように、外交が二元化してはならない、これは当然のことでございますし、そういう心配があるならそれはやめるべきである、こういうふうな考えを持ちまして、当時の後藤田長官ともいろいろとお話もさせていただいたわけでございますが、そういう中で、審議会の皆さんの考え方、そして答申の内容も、決して外交の二元化というものを意図するものでもないし、そういう危険はやはりないようにしなければならぬというのが一致した審議会のメンバーの考え方である。ただ、やはり最近の外交の背景が非常に複雑化しておる、外交は即内政というような立場に立っておるという状況にあるわけですから、やはり国内的にもいろいろと調整をしなければならない、そういう問題が多々出ておる。これは貿易問題なんか特にそういうことでございますが、そういう調整をする場合において、やはり総理官邸で調整をしていただくということが、外交問題を処理するためには非常に大事なことになってきているわけです。これは、これまでのいわゆる貿易摩擦等を処理してまいりました経験からもそういうことは言えるわけでございます。
 そこで、外政調整室というものが浮かび上がって答申をされた。しかし、内容は決して外交の二元化につながるものじゃない。外交はあくまで外務省が行うわけでありまして、決して外政調整室が行うわけではないわけです。その点は極めて明快になっておるわけでございますから、この調整室ができることによってむしろ仕事が能率的に行われるということになり得るのではないかと私は思っております。したがって、外交二元化の危険というものは決してあり得ないというのが私の結論でございまして、積極的に協力をいたしておるわけであります。
#484
○上原委員 何か安倍外務大臣もえらい中曽根総理を持ち上げて、任期の終わりも近いからかもしらぬが、あなたが次は官邸に入る可能性があるからそうおっしゃるかもしらぬけれども、そう簡単にはいかぬはずです、これは。まあ外務大臣がそうおっしゃれば、これは元も子もないことです。
 しかし、では一例を聞きますが、せんだって四月七日に発表された報告書、いわゆる国際協調のための経済構造調整研究会が出した、言うところの前川レポート、これは内閣に諮られたんですか、官房長官。四月十二日に総理がアメリカに行く前に、わざわざ首相の特使をアメリカにも欧州にも派遣しておる。それは外務省は知っておったの。明確にしてくださいよ。
#485
○国広政府委員 大河原前駐米大使が研究会の御意向を受けて訪米されたわけでございますが、その訪米されるに当たりましては、外務省にも御連絡があり、外務大臣にも大河原前大使はごあいさつをして御出発されまして、現地では大使館の方でお世話をいたしたものでございます。
#486
○上原委員 内閣はどうだったのですか、官房長官。
#487
○後藤田国務大臣 これは経構研の委員のお立場で大河原前大使がお行きになったわけですが、それは必要なところには事前に十分御説明もし、連絡の上、行っております。
#488
○上原委員 それは内閣は連帯責任ですから、外務省も官房長官も――しかもあなたは官房長官でしょう。総理の懐刀と言われているあなただから、いや私はそれは全然知りませんでしたとは言わぬでしょう。しかし一般的にはそうではないのです。私的諮問機関が出した、その諮問機関の委員である人が、しかもこれだけ膨大なものを英訳までして持って行っている。これはアメリカで中曽根総理が、これはおれならできるからと向こうと約束してきたわけでしょう。こういう独断専行、頭越しの外交を今までもやっているのです。笑っておられますが、国民の側から見ると、我々国会の立場から見ると、とんでもないこれは越権行為ですよ。そういうことが今度のこの法案の安全保障会議の設置によって、これは国防会議の事務局を取り込むための、全く内閣官房機能強化の法案じゃないですか。私に言わせれば、ある面では塩田さんなんかもかわいそうだ。首切られるのに、一生懸命まじめにここで答弁している。こんな引き合わない仕事ないと思うよ、本当に。
 総理、今私が指摘したことについてあなたは何かないですか。
#489
○中曽根内閣総理大臣 その英文というのは外務省が翻訳したのではないかと私は思います。それぐらい外務省も協力してやっておるわけであります。外交一元化というものはあくまで守っていくつもりで、御心配は要りません。
#490
○上原委員 そうは言っても、これもほかに例を挙げれば、皇太子が中国に行かれる問題とかあるいは南朝鮮へ行かれるとか行かれないとか、いろいろ皇室まで政治的に利用しようとするその中曽根政治スタイルは、もうおやめになったらどうですか。
 あなた、もっと自信があれば、何で靖国神社の春の例大祭も堂々と行かなかったのですか。国民世論とか政治的風向きが、風圧が少し強くなったからスタイルをよくしようとしたって、あなたがどんなにじたばたしたって、みんな見抜いております。まあその程度にとどめておきましょう。
 次に、重大緊急事態に対する総理の御認識ですが、これは官房長官のいろいろなお説をどう聞いてもわからないのですが、ここでまた繰り返すことにはしたくございませんで簡潔にいきますが、簡単に言うと、ほかにももっとありますが、要するに通常の緊急事態対処でカバーし切れない事態、しかもこれは、その前提は「我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがあるもののうち、」なんだ。そうしますと、重大緊急事態は内閣総理大臣が判断するわけでしょう。判断をして諮問をし、またそれを受けて対処していく、法案では一応そういうふうに理解いたしましょう。それで、あなたの重大緊急事態の御認識と、この法案が仮に通って安全保障会議が設置された場合は、総理、最高責任者であるあなたはどのように運用なさろうとするのですか。
#491
○中曽根内閣総理大臣 この場合に想定しておりますのは、ダッカの事件であるとかあるいは大韓航空機の事件であるとか、ああいう極めて重大でしかも緊急を要する、そういうようなことが想定されておるわけであります。各省設置法で処理できるような普通の問題は、それぞれ各省設置法でその範囲内であるいは協力してやればいい、そういうような考えに立ちまして判定をいたす予定であります。
#492
○上原委員 それは、普通の各省設置法で対処できるもの、あるいは通常の緊急事態対処でできるもの、既存の制度、法律上できるものは既存でやるというんだから、そこまではわかる。だが、この重大緊急事態であるといういわゆる基準、線引きは何かということがわからぬ。したがって、内閣総理大臣が通常の緊急事態対処体制によっては適切に対処することが困難と考えれば、どのような事態でも重大緊急事態と認定されかねないのです。この法案はそういう代物なんですよ。
 したがって、仮に重大緊急事態が発生した場合、具体的にだれがどのように対処措置をなさるのですか。これは総理から聞いておきましょう。
#493
○後藤田国務大臣 この安保会議で取り上げてやることは、何遍もお答えしているように、基本方針を決めるだけであって、新しくこの会議体に権限を付与するものじゃございません。方針を決めて、その方針に従って、各省がそれぞれの法令に従い、そして各省がそれぞれ持っている機関によって実行していく、こういうことでございますから、特別な権限は与えておりません。
#494
○上原委員 それじゃ別の角度からお尋ねしますが、新しい権限を付与するものではない。さっきも井上先生やら午前中から同僚委員の御質問を聞いてその点は承ったわけですが、その前に改めて確認をしておきたいわけです。では、例えば憲法条項に法治主義が明らかに規定されておりますね。基本的人権の保障も明確にされておりますね。そういう国民の基本的人権、表現の自由、思想、そういうものを侵害するとかということは、この安全保障会議では一切やりませんね。確約できますね。これは総理から……。
#495
○後藤田国務大臣 そういう御心配はいささかもございません。
#496
○中曽根内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、大韓航空機の事件であるとかあるいは、恐らく将来そういうことはないと思いますが、関東大震災のような建設省だけではとても処理できない、あるいは金融問題も起こるでしょうし、あるいは国際信用の問題も起こるでしょうし、人命に関する問題も起こるでしょう。そういうようなていの大きな緊急重要事態というものを頭に置きまして考えてまいりたいと思っておるのであります。
#497
○上原委員 今の総理の御答弁はごまかしがある。さっきは官房長官が、私が憲法条項に規定されている法治主義ということ、あるいは保障される基本的人権の侵害はないですねと言ったら、ないと言った。あなたは、自然災害においては、これは自然災害から人権が侵されていろいろ災害を受けますよ。私が言っているのは、政治的、行政的に、この安全保障会議が設置されることによって、憲法条項に規定されている国民の基本的権利の侵害とかそういうものの心配はないですね、それは総理の口から確約できますねと、このことを聞いている。
#498
○中曽根内閣総理大臣 憲法で認められ、あるいはそれが法律事項として決められている基本的人権というものを侵害するようなことはありません。
#499
○上原委員 それだけでも安心できないですがね、これは秘密保護法とかいろいろなことをやろうとしているので。
 もう一点、総理、ここは大事な点ですから、ひとつ誠意をもってお答えいただきたいと思うのです。これは国会は討論の場ですから、きついことも申し上げますが。
 安全保障会議と内閣との関係、いわゆる閣僚会議ですね、それから国会との関係。きょうも私は、冒頭からこの点を非常に重視をしているわけですが、極めて不明瞭ですよ。内閣総理大臣が重大緊急事態について一定の対処措置を講ずる場合に、国会との関係はどういうふうにお考えですか。その前に閣僚会議がありますね、内閣全体との関係。トップダウン方式というと、あなたが――いつまでもあなたが総理大臣じゃないから、もうあと短いと思うので、これはあなたと言うのも変なんですが、総理大臣が重大緊急事態と認定して諮問をする、それを発動しようと思えばすぐできるわけなんですよ。まさにあなたの長い間の夢であった大統領府だね、つくろうとしているのは、総理官邸を。その議論は本当は時間があればうんとやりたいわけですが、できませんので、この安全保障会議で決めようとする重大緊急事態事項と内閣との関係、国会との関係はどのように総理大臣として運用なされようとするのか、明確にしていただきたい。
#500
○志賀委員長 官房長官。
#501
○上原委員 官房長官はもういいよ。疲れていらっしゃるでしょう。総理に質問している。
#502
○志賀委員長 官房長官と申しました。
#503
○後藤田国務大臣 指名でございますから、お答えをいたします。
 それは、これもしばしばお答えしているように、基本の処理の考え方だけはここで決める。そうしなければ、なかなか各種の対立があって決まりませんから決めて、そしてそれをそれぞれの各省が実行していく。その実行の過程において、既存の法令で閣議に報告すべき事項ということであれば報告するし、閣議決定を求めるべしと書いてある事項があれば閣議で決定を求める、あるいはまた法律を必要とする、あるいは国会に報告をすべしということが決まっておればそれにょって報告をする、こういうことでございますから、いささかもそういう御心配のことはない、私はかように申し上げておきたいと思います。
#504
○上原委員 後藤田さん、あなた非常に官僚としても有能だし、政治家としても最高級でしょう、トップでしょう。仮にもしあなたがおっしゃるような基本認識なら、これは問題ですよ。何のための重大緊急事態対処ですか。さっきも議論がありましたが、既存の制度なり既存の枠組みでできないものを、しかも我が国の安全に重大な影響を及ぼすおそれのあるもの、及ぼすものを重大緊急事態としてこの安全保障会議でやろうというわけでしょう。何もそれは自然災害じゃないんだ。そういう基本認識においてずれがあるから、けさから幾ら議論をしてもかみ合わない。あなた、これはそんな愛きょうを出せば納得するということでないんだ。失礼ですが、笑って答えれば納得するような僕らじゃないですよ。冗談じゃない。総理、あなた答えないのだが、そういう重要な事態に対して、国会との関係というものは極めて重要ですよ。ある面では国防も入るのよ。さっき官房長官は、お疲れかもしれぬが、国防は別ですと言って、防衛出動なんかちゃんとここで決めるんだ、この安全保障会議で。塩田さんがいなければ間違いの答弁をして恥をかくよ、本当に。
 総理にお尋ねしますが、もう一度確認しますよ。内閣総理大臣が重大緊急事態として一定の対処措置を講ずる場合には、事前あるいは事後に国会での承認または報告がなされなければならないと私は思う。総理官邸だけ、総理大臣だけ権限が肥大化して、官邸はうんと強化された、国権の最高機関である国会に対して報告もない。新聞でしかわからぬ、こんなアンバランスなことがありますか。これこそまさにインフェア、アンフェアだよ。したがって、ここで一定の対処措置を講ずる場合には、事前もしくは事後において国会での承認を求める、報告をするということを総理の口から、最高責任者はあなたですから、これを明確にしていただかないと、絶対に我々は、こういう極めて危険性のある法案に、そう言ったからといってもちろんそれに賛成するという立場でないが、明らかにしてもらいたい。
#505
○中曽根内閣総理大臣 国防会議で諮問を受けるのも今度は包含されるわけですから、従前の国防会議設置法等でいろいろ手続が決められていることはその手続に従ってやる。防衛出動そのほかの問題についても同様でしょう。したがって、そういう手続に決められているような国会の関与の仕方というものはそのまま残っていくということであります。
 それから、大韓航空機の問題とかあるいは今申し上げたようなダッカの事件とか、あるいは関東大震災みたいな大きなものが起こったという場合には、臨時、緊急を要する場合ですから、国会がある場合にも、夜中に急にやらなければならぬ問題が起きてくるかもしれません。ですから、少数の閣僚が集まって緊急の手配をする、ダッカの事件なんかはまさに、そういう事件でもありましょう。したがいまして、事案によって、そして法律上の権限に。従ってそれは行わるべきものであり、そして一般論としては、そういうことが適当である場合にはできるだけ適切なときに国会に連絡するあるいは報告する、そういうようなことは望ましいことで、これは国会が国権の最高機関であり、行政を監督するという立場にもありますから、一般論としては当然そういうことが行われることがよろしい、そう思っておるわけであります。
#506
○上原委員 今、少しだけよかったね。
 これは総理大臣、中曽根さん、さんと申し上げたら失礼かな。総理、確かに自衛隊法の七十六条あるいは七十八条、警察法七十四条、これは決められている法律であるからやらなければいかない、義務ですよ。私が言っているのはそれではない。何も夜緊急に国会をやれ――こんな夜遅くまであなたを働かせるのは我々嫌なんだ、幾ら仕事師内閣だろうが。そういうことを言っているのじゃないですよ。したがって、もう一度確認をしますが、やはり必要に応じては国会に報告をし、あるいは承認を求めるものについては求める、これはお約束できますね。
 なぜ私がそれを言うかというと、災害対策基本法百六条に何と書いてある。「国会の承認及び布告の廃止」というのがありますよ。災害対策基本法は引用しませんが、災害対策基本法で言う災害緊急事態よりはるかに大きい重大緊急事態なんですよ。ですから、災害対策基本法にさえこういう条項があるのに、それよりもはるかに大きい関東大震災クラスのものというわけでしょう、自然災害ならば。こういうこととか、あるいは我が国の安全に重大な影響を及ぼすであろう、及ぼすおそれのあるものの重大緊急事態を処理するというのに、何名かの閣僚がインナーキャビネットでやって、閣議も知らない、国会もわからぬ、こんな民主主義ってありますか。そのことは、今の災害対策基本法百六条には明文条項がある。したがって、改めて一〇〇%ということを我々は期待をするわけですが、やはり物の重要性のいかんによっては、国会に事前もしくは事後において報告をし、承認を求める。この点はお約束できますね、改めて御見解を聞いておきたいと思います。
#507
○中曽根内閣総理大臣 それは、法令に従いまして時宜により適切な処置をとり、またそれらの必要に応じて国会に御報告すべきものは御報告する、そういうことになるであろうと思います。
#508
○上原委員 これ、法律に基づかないのもあるのよ、必ず。ダッカなんかありましたか。そのときはどうするの。
#509
○中曽根内閣総理大臣 ですから、時宜によりと申し上げたわけでございます。
#510
○上原委員 時宜によりやりますね。
#511
○中曽根内閣総理大臣 我々は時宜により、これが国会に報告すべきものであると考えたときにはこれを報告する、そういうことになります。
 案件によっては、臨時議会をお願いしなければならぬという問題も起こり得る場合もあり得ると思っております。
#512
○上原委員 解散のための臨時議会なら嫌だが、そういう国民の生命、財産に重大な影響を及ぼす臨時議会なら、これは当然の職務ですよ。まあ少しは前進をしたかとは思うのですが、十分我々も監視をしてまいりたいと思います。しかしこのことは、官房長官も、大変重要な事項なんですよ、もちろん総理もですが。
 時間がだんだんたちますので、次に進みましょう。
 次はシビコンについてお尋ねするのですが、さっきの井上先生とのやりとりを聞いておってちょっと考えさせられたのですが、この安全保障会議を設澄することによってシビコンが強化されるという、これはいわゆる国民向けの皆さんの宣伝なんでしょうね。PR、情報活動というか、そういうものかと思うのですが、決してそうでないですよ。
 詳しくは時間がありませんから申し上げられませんが、防衛庁長官はいつも、私は戦後生まれだからわからないなんと言うけれども、なぜ国防会議が設置されたかというと、あのときの、昭和三十年、三十一年前後のいろいろな会議録を見てみますと、一つは旧軍閥の復活を防止するということですよ。日本が絶対にああいう軍国主義国家になってはならぬということが大前提なんだよ。その認識が防衛庁にも、残念ながら内閣にも全体としてない。
 シビコンは、軍人に対する文民の優位性ということと、もう一つは、軍事に対する政治の支配の確立なんだ。いわゆる軍事に対しての民主的コントロールというものを確立するために国防会議を設置したい、設置すべきだということを言ったんだ。だから、閣僚以外の議員、民間人を起用しょうということが大分論議されたのです、あの時分に。元軍人は民間人たり得ないということと、そして国防会議にぶら下がっている事務局の機能はどうするかということも大分譲諭されている。お茶くみじゃないんだ、それは。これが一つの柱。
 二点目は、内閣総理大臣の独裁化を防ぐということですよ。もう中曽根総理にあと何年間でも総理大臣させたら何をしてかすかわからぬ、本当に。国会も閣議も行政も要らないことになっちゃうかもわからぬ、そういう危険性があるから、独裁化を防ぐということ。
 それに、政変にかかわりなく一貫した国防計画などの樹立ということが、国防会議を設置し、国防会議事務局を置くということなんですね。
 そしてもう一つ大事なことは、塩田さん、あなたも防衛庁に長いことおったから、国防会議事務局はまず防衛庁をチェックしなければいかぬですよ、制服を。そして制服をチェックできる機能を備えるべきだったと思う。反面、国会は、同時に国防会議事務局をチェックする、もちろん防衛庁を含めてですよ、そういうバランスがとれて初めてシビコンというものは有効に確立てきるのですね。私はそう思うのです。
 だが、今回の安全保障会議を設置することによって、この国防会議及びその事務局は完全に消滅するのですよ。本当にどこでやるの。この間も私、申し上げましたが、純国防論からいうと、防衛諭からいうと、こういうやり方というのは、いずれ皆さんはしまったと思うことがあるかもしれませんよ。その点を私は警鐘として申し上げておきたいと思う。
 そこで、シビリアンコントロールというものはそういう前提でなされている。同時にこれからの問題として、じゃどこで、国防会議というものの機能があれば今言ったようなことができたはずだが、しかもこの「国防に関する基本方針」であるとかあるいは重要な防衛政策であるとかというのは、まず統合幕僚会議がつくるのでしょう、原案は。そうでしょう。統合幕僚会議がそれをつくって、国防会議でただ、わからぬ人々がお茶を飲みながら、ああ、これは上等だと決めてしまった、こんなものじゃないですか。それじゃいかないのよ、塩田さん。そうじゃなくして、この国防会議という機能が、本当に外交面、経済面、財政面、思想――思想というのに抵抗があれば、憲法概念あるいは世論の動向など、それらのすべての材料によって判断できる事務局というものが必要なんですよ、シビリアンコントロールを本当にやるというのならば。
 そういう機能がないままに、そして今回その機能を果たし得ずして、しかも真のシビコン確立もできずして、国防会議の事務局を内閣官房の一室として取り込むことによって、果たして今私が言ったようなシビリアンコントロールの確立ができますか。そのことを我々は問題にしている。まさにこれは、国防会議の事務局を内閣の機能強化に取り込むための一つのトリックにすぎない。したがって、こういう面ではシビコンの強化というのは絶対にあり得ない。まさに防衛庁がつくる原案というものを行政全体がバックアップをしてやる、国会との関係も不明瞭のままに。これじゃシビリアンコントロールの確立というものは私は絶対にできないと思うのですが、今私が具体的にある程度の経過を追って申し上げたことに対して、総理も防衛庁長官もどのようにお考えか、ひとつ御所見を聞いておきたいと思います。
#513
○加藤国務大臣 私は、今回の法改正によって、いわゆる防衛問題についてのシビリアンコントロールの機能が損なわれるとは思っておりません。
 そしてまた、今委員がおっしゃったことを一つ反論させていただきますけれども、シビリアンコントロールの精神が現在の防衛庁の中には十分根づいてないという御発言がありましたけれども、そんなことはございません。私たちは、いわゆる純軍事的な観点から物を考えるのを一つの機能といたしております制服に対しまして、内局というものがしりかり存在して、それぞれの政治的な判断、それから外交上の判断、また財政上の判断を加えてしっかりと政策を決めているという自信がございます。
 ただ、その防衛庁だけの判断ではいろんな意味での判断が十分ではないという可能性があるからこそ、国防会議という場においてほかの大臣も入れてしっかりと御討議いただき、そしてそこで討議されたことに基づいて総理大臣がまた内閣として全体として御判断される、そして行政府だけではだめですから。最後の最後のシビコンのとりでとして、私たち防衛出動するにしましても、治安出動するにしましても、国会に報告し、その承認を受けるわけでございます。今度の法改正でその部分がいささかも損なわれてはおりませんし、また従来、国防会議というものの設置の法案が防衛庁設置法の中にあったのが独自の内閣法の中でつくられるということは、若干形式論議ではありますけれども、一歩の大きな前進ではないかと思います。
 それから、事務局が内閣官房の中に入っだということは意味ないではないかという御説明でございますが、これについては官房長官も御答弁くださったと思います。内閣の中には十分なる情報が集まります。それで、従来のいわゆる国防会議事務局であっても、当然のことながらそれは行政府の内部の話でございまして、その中で最も情報の集まる内閣官房におきまして種々の判断を加えてその作業が進められることは、シビリアンコントロール上、防衛庁だけの判断ではないことが加味されていくわけで、しっかりとした体制ができているものだと思っております。
#514
○上原委員 見解の相違といえばそうなるかもしれませんが、物事に対する基本認識の違いですね。大変失礼な言い方かもしれませんが、それではシビコンの問題とか防衛の重要性ということについてちょっと疑問ですね、加藤さん。
 私はそう思わないのは、独立の法律として事務局があったのと、それとさっきも塩田さんおっしゃいましたが、これは国会というのがシビコンの最高の場ですよ。法律の改正とか、法律があって初めてこういう議論もできるんだよ。それを一つ一つ失っていって、あなた、国会による、政治による何のコントロールができますか。内閣の一機能になった場合のこのあり方というものは、これは問題ですよ。その点指摘しておきたいと思う。
 そこで、総理大臣のシビリアンコントロールに対する御見解、これは本会議でも聞いたが、余りさえなかったですね。おとといからあなたの顔色、さえないの。何かの煩悩がうずうずとしているのかな。どうですか、このシビコンに対する御認識。
 同時に、今防衛庁長官は、安全保障会議を設置することによってシビリアンコントロールの機能はいささかも損なわないとおっしゃるのですが、最高責任者であるあなたの御見解もお聞かせをいただきたいと思います。
#515
○中曽根内閣総理大臣 昭和三十年の初めごろ、私は今の防衛庁設置法や国防会議設置法等をつくった作案者の一人でありまして、そのころからシビリアンシュープレマシー、シビリアンコントロールについては一番熱心に注意してやってきた人間であります。今も同様であります。
#516
○上原委員 いずれまたそういう議論をやる場があるいはあるかもしれませんので、きょうは聞きおく程度にしますが、そうじゃないのだ。あなたはあのころから軍拡路線を突っ走れだよ。進軍ラッパを鳴らした方なんだ。全部会議録もある程度読んでみたんですよ、首相公選諭から始まって。そういう格好よさというのは、わからぬ人はこれをうのみにするから、これまではあなたの支持率が上がっておったかもしらぬ、これまではですよ。
 最後に、時間がもう来ましたので、できるだけ約束の範囲内でやりたいと思います。
 沖縄の問題についても、きょうは五月八日ですが、この十五日で満十四年になるんだな。総理大臣、あなたが防衛庁長官をしておったから、はしりだったからあのころも私いろいろやりましたが、せっかくの時間ですから聞いておきたいわけです。
 一つは、総理の在沖米軍基地に対する御認識はいかがかということです。この間私が聞いたら、外務大臣に答えさせて、あなたは全然答えなかった。今も申し上げましたように、来週五月十五日は沖縄復帰満十四年である。にもかかわらず、米軍専用基地の七五%が今も沖縄に集中しているんですよ。非核三原則とあわせて、沖縄の米軍基地の整理縮小も国会決議がなされた。しかし、これは絵にかいたもちになっていますね。加えて、これは直接ということではないかもしらぬが、重大緊急事態に対する実行部隊というかグリーンベレーも沖縄に再配置をした。あるいはフィリピンの政情もアキノ政権誕生によって一段落されたと見ることができると思うのですが、巷間ではフィリピンのクラーク、スビック米軍基地の沖縄移駐等の問題もしばしば取りざたされている。
 そこで、大多数の県民が基地の整理縮小あるいは撤去を望んでおると私たちは信じております。そういう状況にあるということで、総理は、沖縄の米軍基地に対する認識、私が今指摘をした幾らかの例示に対してどのように考え、これらの問題解決にどうこたえていかれようとするのか、所見をお聞かせいただきたいと存じます。
#517
○中曽根内閣総理大臣 日米安保条約による基地あるいは施設の提供等につきまして、沖縄の皆さんが負担しておられる御苦労については、本当に感謝しておる次第でございます。事故を起こさないように、そして沖縄の福祉、民生がさらに向上するように、我々は振興法をつくったり、その他できるだけ努力をしてまいりましたが、今後もそういう点については細心の注意を行うと同時に、米軍等による事故がないように、そして適切に、基地が縮小し得れば縮小していくように我々も努力してまいりたいと思っております。
#518
○上原委員 あれだけ膨大な基地が居座っていることに対してはどう思うのかというのです。
 それと、これは仮定のことですが、仮に近い将来フィリピン米軍基地の沖縄移駐というような問題が起きたとする。今でも専用基地の七五%はあるわけでしょう。それにさらに移駐させるとかあるいは部分的移駐をさせる、仮にそういうことが米側なり、あなたの好きなレーガンさんからでも申し入れられた場合は、そこは拒否できますね。
#519
○中曽根内閣総理大臣 そんな話は全く聞いておりません。
#520
○上原委員 あったらどうするかということなんですよ、あったら。
#521
○中曽根内閣総理大臣 日米間は安保条約を結んでおる間柄でありますから、常にいろいろ話し合い、協議をしておりますが、相手が何を言ってくるか、もしそういう場合には、聞いてからよくこちらは判断をする。日本の自主的立場、日本の国益を考えるということは当然のことです。
#522
○上原委員 まあ国益をお考えになったのだろうが、円高もちっともよくならぬですね。どうなさいます。そういうその場限りの御答弁では、私も納得しなければ、県民もこれは納得しませんよ。
 あと一点。きょうから沖縄現地からも約三百四、五十名の要請行動団が上京しているわけですが、いわゆる二十年の強制土地使用の問題、これは総理大臣、強制使用期間二十年間といいますと、来年から、一九八七年の五月十五日以降二〇〇七年までですよ、まさに二十一世紀まで。復帰後から通算すると三十五年間、米軍占領後からは六十二年間になりますよ。先祖伝来の土地を平和のために使用したいとする地主の願望が、実に半世紀以上にわたって強権収用されるという、こんなことがあってよいですか。しかも、米軍用地特措法の本土における適用期間というものは過去最高二年五カ月、まさに沖縄に対する差別じゃないですか。差別政治じゃないですか。この二十年間の期間が県民に明示されたのは昨年八月五日、総理はこの差別的な期間を知っておったのか、あなたが知ったのはいつなのかというのが質問の一つ。
 従来、復帰時点では、いわゆる特別立法で五年間、その後は地籍明確化法と抱き合わして五年間、五年間で来たわけね。それで、この間のあれは特措法。しかし、私が仄聞するところによると、五年間では短い、日米の安定的基地使用の上からは二十年くらいが妥当だからというのはあなたが指示したと聞いている、あなた御自身が防衛庁長官、防衛施設庁長官に。その真否はどうなのか。二十年というのは余りにも長過ぎる。日米安保だって十年で更改できるわけでしょう。そういう差別と、一番崇高な土地所有権、所有権に及ぼす非憲法的侵害というものは、行政権、政治権でやるべきじゃないと私は思うんですがね。これに対していかようにお考えなのか。ひとつ二十年の期間については再検討していただきたい。私は、認めるわけじゃないですよ。二十年というと、二〇〇七年までですよ。私なんか国会にもうとっくにいなくなっている。だれがこういう論議をしますか、あの時点になって。冗談じゃないですよ。明確にお答えください。
#523
○中曽根内閣総理大臣 私が数字を言ったかどうかは記憶にありませんが、割合に基地というような問題は安定性を必要とするだろう、そういうような考えは持っておりました。具体的な問題については、政府委員より答弁させます。
#524
○佐々政府委員 お答えいたします。
 まず、二十年の期間の問題でございますが、再々御答弁をいたしておりますように、九九・六%の方は既に御理解をいただきまして、自由契約によって賃貸借契約を結んでおるわけでございます。わずか〇・四%の方々の反対、しかも一坪運動が起こった、こういうことから二十年という期間を採用したものでございます。
 二十年を総理からの御指示によって決めたということはございません。私ども防衛施設庁の検討の結果、民法の最大賃貸借期限の二十年を決めたものでございます。
#525
○上原委員 あなたが答弁するとそういうことを再々言うから、要らないと言ったんだ。佐々さん、さっさと引っ込んでもらったらいい。あなた、そうおっしゃいますが、じゃあ、大の虫を生かすには小の虫は殺していいのか。人間一人の命は地球より重いのですよ。〇・四%の土地所有権者なら勝手に二十年であろうが何十年であろうが召し上げていいのか。そういう諭理はいかぬと言うのです。
 総理、あなたが何年かは指示しなかったと言うのですが、指示したのは間違いないんです。それは総理をかばうでしょう、施設庁長官も。
 改めて、二十年は長過ぎる。沖縄の今の基地の現状からしても、大きな混乱を起こしている。土地収用委員会でも、委員の除斥問題も出ている。そういう面で、この件についてはもう少し御検討いただきたいと私は思うのですが、改めて御見解を聞きましょう。
#526
○中曽根内閣総理大臣 沖縄の関係者の皆様方にぜひ御理解をいただきまして、そして先ほど施設庁長官が御答弁申し上げたとおり実施いたしたいと考えております。
#527
○上原委員 これで終えますが、そういうことでは、これは納得できません。あなたのお顔が少し引きつつただけでも、問題だろうということは御認識したかもしれませんから、終わります。
#528
○志賀委員長 市川雄一君。
#529
○市川委員 安全保障会議設置法について総理の御認識を伺いたいと思います。
 この委員会でずっと議論を伺っておりました。私も官房長官に一時間近く伺ったわけですが、要するに、今もって、なぜ安全保障会議をつくるのか。従来の体制では対処措置が各省ばらばらで困る、各省庁がなかなか動かない、こういう御答弁も官房長官からございました。各省庁が動かないだけのことでつくるのか。何のために総理大臣がいて、閣僚会議があるんだ、こういう質問もしたわけですが、ボトムアップ方式をトップダウン方式にするんだとか。しかし、今まで各省庁が動かなかった、縦割りで十分に連携がとれなかったのが、単なる諮問機関をつくった程度で果たして有効に動くのかという疑問も実はわいてくるわけであります。
 それから、ボトムアップ方式とかトップダウン方式とかとおっしゃいますけれども、これは運用の問題ですから、総理のリーダーシップがあれば、何もボトムアップ方式に従っていなければならないという理由はないわけで、緊急事態ですから、トップダウン方式でやれば従来の体制でも十分できたんじゃないのかというふうに思いますし、あるいは重大緊急事態というのが、いろいろな方からここで指摘されておりますけれども、要するに定義があいまいである。国防事態を除く通常の緊急事態以外の重大緊急事態、こういう言い方で、非常に抽象的なことでよくわからない。
 そこで、まず総理にお伺いしますが、総理は先とからダッカの事件とか大韓航空機の事件とか、いろいろ過去の例を挙げておられますけれども、そういう事件の中で、何か今までの体制だとこれはまずいな、不都合だな、こう総理が強く感じたことがあったのかどうか、もしあったとすれば具体的にどういうことなのか、総理の御認識を伺いたいと思います。
#530
○中曽根内閣総理大臣 ダッカの事件の際のことを、私、後でいろいろ緊急事態の例として勉強してみました。あれは急な事件でもあったのでありますけれども、やはり外務省あるいは法務省あるいはそのほかの関係各省との調整、準備というものがまるきりなかったわけです、急に起きたわけでありますから。そういう意味で、やはりふだんからちゃんとしたそういうものに対する体系、対応力というものをつくっておく必要がある。
 大韓航空機の事件は私は自分でも扱ってみたわけでございますが、これもやはり同じだな、そういう気を非常に強くいたしました。あのときはあのときでまた事実上いろいろな指示を出したりやったわけでございますけれども、やはり各省の間でスムーズに整然として物が的確に行われるようにしておくというためには、内閣における調整力を発揮できるような体制を整えておくということが望ましい、そう考えて、行革審がそういう答申を出してきたものでございますから、それを尊重したということでございます。
#531
○市川委員 具体的にどうだったのかというヒとをお聞きしたかったのですけれども、要するに閣議があって、また必要に応じて総理は関係の閣僚を招集して打ち合わせすることも可能なわけですね。内閣の審議室というスタッフもいらっしゃるわけでしょう。ですから、安全保障会議をつくらなければ重大緊急事態に対処できないんだという今の御答弁は説明になっていないと思うのです。
 それからもう一つは、必ずしもダッカとか大韓航空機の事件が今度起きるわけではないわけですね。それを聞くと、いやそうじゃないと。重大緊急事態というのは具体的にどういうことを言っているのかと聞くと、何が起きてくるかそれはわからない。総理、何だかわからないのですよ。それでさらに聞くと、例えば過去の例で言うとということで、過去の事例として出てくるのがダッカであり、大韓航空機の事件であり、ミグ25の亡命事件を出すわけです。ではこれからどんな事態を想定しているんだと伺いますと、それはわかりません、こう言うわけです。今の総理は、何かそういうことが起きた場合に打ち合わせをしておいた方がいいんじゃないかということなんですが、要するに、わからなかったら打ち合わせしようがないわけでしょう。何が起きるかわからない。どういう事態がと聞くと、わからない。
 ですから、今までも内閣の審議室とかそういうスタッフがいらっしゃるわけですから、過去の事件の教訓を踏まえてそのスタッフを強化するなり何なりして、総理がリーダーシップを発揮されれば、わざわざ国防会議の機能とあわせ持つこの安全保障会議というものをつくる必要というのはどこにあるんだろうか、こういう疑問を強くするわけです。その点について総理、何か具体的に、こういうことがあってこうだとかいうことは、我々が納得するような具体的な御指摘がございませんか、どうですか。
#532
○中曽根内閣総理大臣 やはり大韓航空機の事件というのは非常にいい教訓であったと思います。これは、外交にも防衛にも、あるいは日本の安全保障あるいはそのほか、すべての問題に関係する問題でありました。非常に緊急を要する問題でもありました。そういうようなことを考えてみまして、やはり常時それに対応できるシステムをつくっておく必要はある、そういうふうに感じておりました。
#533
○市川委員 要するに、何となくああいう事件が起きたときに困るからつくっておくんだということで、何となくわかるようなわからぬような感じなんですよ。何か具体的に不都合があったということ、ございますか。
 だって、内閣の最高の意思決定は閣議でなさるわけでしょう。それから内閣の官房のスタッフもいらっしゃるわけだし、国防会議もあるわけです。総理がリーダーシップを発揮して、官房長官もいらっしゃるわけだし、必要な閣僚を集めて、どういう方針で事態に対処するかというトップの意思をある程度決めればそれは下におりていくわけですから、おりていって各省が言うことを聞かない、そんなことはあるのですか。そんなに総理のリーダーシップというのは弱いのですか。僕はそんなことはないと思うのです。その辺がどうも今の総理の答弁を伺っても納得できない。こういう点で何か具体的に不都合な点があるのだ、もうちょっと具体的に御指摘していただけませんか。
#534
○中曽根内閣総理大臣 やはりそういうことが起きてから慌てて人を集めてやるというのではどうしても能率的によくありませんし、日本の官庁は縄張り争いみたいなものがありまして、そういう点から見ましても、ふだんからよく協調してそういうものに対する備えをやっておくということは非常に有益であると考えておる次第です。
#535
○市川委員 どうも余り納得する返事がないのですけれども。
 先ほどからシビリアンコントロールの問題が議論されておりました。総理、安全保障会議が設置される、今までの国防会議の機能がそのまま受け継がれる、こういうことなんですけれども、これはシビリアンコントロールという観点から見て、その機能が強化されるのかあるいは弱くなるのか、今までどおりなのか、この三つの選択のうち総理はどういう評価を持っていらっしゃいますか。
#536
○中曽根内閣総理大臣 私は、シビリアンコントロールは強化される方にいくだろうと思います。
#537
○市川委員 その根拠は、どういう根拠でございますか。
#538
○中曽根内閣総理大臣 防衛の問題は国防会議を引き継いでやりますけれども、緊急事態に対するいろいろな備えや措置というもの等も考えてみますと、各省間の意見の疎通あるいは平素のいろいろな対応の検討が進んでまいります。そういう意味におきまして、安全保障その他の問題につきましても一般各省の発言力というものも出てまいりますし、政治家も上におって常にそれをよく勉強するチャンスが多くなるわけでありますから、そういう意味においてはシビリアンコントロールは強まる、そう考えておるわけでございます。
#539
○市川委員 先ほど防衛庁長官からもここで答弁がございました。シビリアンコントロール、一つは防衛庁内部におきまして、制服の決めること、考えることについて内局がチェックをする。防衛庁全体として意思決定した問題を今度は内閣の立場でチェックする。そのために国防会議というものができたんだ。行政府の内閣が決定したことを今度は国会がチェックをする。こういう関係にあると思います。
 問題は、もちろん内局対制服というチェックの関係はあるのでしょうけれども、防衛庁が決定したものを内閣という政治家の立場でまたもう一回チェックしてみる。その場合、防衛庁というのは防衛の専門家ですよ。言ってみれば相当詳しいですよね。装備についてもいろいろな知識を常日ごろ蓄えているわけです。政治家は防衛についての一定の見識は持っているかもしれないけれども、そう日常毎日防衛問題を勉強しているわけではありませんから、やはり専門的な知識についてはどうしても欠ける面が出てしまう。大局的な判断はできるかもしれないけれども、専門的な知識に欠ける。しかし、専門的な知識に欠けていたのでは防衛庁がなかなか言うことを聞かないということが起きてくる。そういうことを補佐するスタッフが当然必要になってくるわけです。
 そういう意味で、私たちは、国防会議の今の事務局のあり方そのものにも不満を持っているわけですけれども、少なくとも法律で設置が位置づけられた事務局がある。お茶くみだとかいろいろ言われてはおりますけれども、その事務局をもうちょっと、むしろスタッフを充実して、総理なり内閣に対してもっと有効な助言ができる、シビリアンコントロールという観点で考えた助言ができる、そういう機能を事務局にむしろ我々は期待をしていたわけです。
 そういう観点で今回の安全保障会議設置法を拝見しますと、国防会議の構成等に関する法律におきまして、第八条で「国防会議に、国防会議の事務のほか、国防会議に関する事務を処理させるため、事務局を置く。」事務局を設置する。その事務局の性格的なものが八条にうたわれているわけですね。安全保障会議設置法には、この事務局の位置づけとかそんなのは法律からなくなってしまっているわけですね。政令事項にゆだねられてしまう。これから事務局を充実して、総理大臣なり内閣の政治的な判断としての防衛庁に対するシビリアンコントロールを補佐する機能を充実させてほしい、またさせるべきだ、こう私たちは考えておりましたが、どうもそれに逆行する、こういう感じがしてならないわけです。
 したがって、シビリアンコントロールという観点から見た場合には、法律事項から消されてしまう、事務局の位置づけもはっきりしない、性格づけもはっきりしない、こういう感じを強く受けているわけですが、総理は、その点についてどういうお考えですか。
#540
○中曽根内閣総理大臣 今度は安全保障室というのがたしかできることになっておりまして、そこには防衛関係のみならず、各省からも来ておる優秀なスタッフがおるわけでありまして、非常に視野の広い見方でいろいろ議論も行われ、また政策の立案も考えられる、そういう点ではシビリアンコントロールにはさらにプラスになると考えておるわけであります。
#541
○市川委員 要するにシビリアンコントロールにプラスになる、それは言葉としておっしゃっているわけで、その内実というのか、なぜシビリアンコントロールが強化されて充実するのだと伺いますと、具体性がないわけです。
 次に、もう一問。先ほども社会党の委員から御質問がございました。私も官房長官に先日伺ったわけでありますけれども、総理は過去の事例としてダッカの事件を最初に挙げられました。ダッカの場合は、超法規的措置をとられたわけですね。もちろん、安全保障会議というものが新しい権限や新しい機能を付与するものではないと官房長官は説明をしておられる。それはそのとおりだろうと思うのです、この法律を読む限りにおいては。
 ただ、つくられた安全保障会議で、ある事件が起きて、どうしても超法規的措置をとらざるを得ないという事態は起きてくる、そういう決定を下すという可能性は全くないかと言うと、それはあり得ますという御答弁が返ってきた。その場合、行政府は立法府である国会に、これは報告ではなくて、やはり超法規的措置をとった場合は承認を求めるべきだというふうに思うのです。行政府と立法府、三権分立という機能から考えてこれは当然のことだと思う、立法府の決めた法律を超えた決定を行政府が行うわけですから。もちろん緊急事態で事後になる可能性は強いだろうとは思いますが、そういうときは間違いなく国会に承認を求めるということが必要だと私は思うのですが、総理の御認識はいかがですか。
#542
○中曽根内閣総理大臣 超法規的措置というようなものは、この法律の前提に考えておりません。
#543
○市川委員 この法律が超法規的措置を前提として考えているということを申し上げているわけではありません。安全保障会議が設置されまして、ダッカのような事件が起きて、安全保障会議を招集して討論をした結果、超法規的措置をとらざるを得ないという事態はあるのかと官房長官に聞いたんですよ、総理。あり得ますと既に官房長官がお答えになっているのです。そういう事態のときは、国会に報告じゃなくて、国会に承認を求める必要があるのじゃないですかということを聞いているわけです。どうですか。
#544
○後藤田国務大臣 私の答弁に関連しておることでございますからお答えいたします。
 私は、やはりそういう場合は緊急の処理を要する、基本方針を決めなければならぬ問題でございますから、あらかじめ国会の承認というのは無理ではなかろうか。私は、これは国会に報告をして、その報告の結果によって、内容によって国会の厳しい御批判を幾らでも受けるのが行政府のあり方であろう、かように理解をいたします。
#545
○市川委員 総理も同じお考えですか。
#546
○中曽根内閣総理大臣 私は超法規的措置というものは考えていないのです。
#547
○市川委員 今は考えていないかもしれませんけれども、さっきから総理は、重要緊急事態の例として真っ先にダッカの事件を持ち出すじゃないですか。ダッカのときは超法規的措置をとったじゃないですか。おかしいじゃないですか、考えていないなんて。今は考えていないかもしれませんよ。しかし、そういう事態が起きるのかと言ったら、そういう事態も可能性としては考えられますという官房長官の答弁があったわけです。そういう事態のときにはダッカと同じように超法規的な措置がとられるのかと聞くと、その可能性もあります、こう答えています。じゃ、国会へ報告、承認ということを聞いたら、今そういう答弁があった。私は考えていませんというのでは、ちょっと議論になりませんね、総理。
#548
○中曽根内閣総理大臣 つまり、仮定の質問というものは私は余り適当でないと思うのです。法律というものがある以上は、法律に従っていくのが政府の立場であるのでありまして、市川さんがそう御質問なさいますから、官房長官は親切に、丁寧に御答弁申し上げたと思うのです。しかし、行政を預かる者の基本的立場としては、やはり法を守っていくというのが基本的立場であると私は思っておるのであります。
 しかし、あえてあなたがそれだけ御質問になれば、官房長官の答弁のとおりであろう。しかし、これはあくまで仮定の話です。
#549
○市川委員 しかし、仮定の話とおっしゃるけれども、重要緊急事態というのはどういう事態ですかと聞くと、わかりません、どういう想定ですかと聞くと、わかりませんという答えが返ってくる。過去の例で言うと、ダッカと出てくる。だから伺っているわけです。
 そういうことで、私たちとしてはどうも、先ほどから指摘した三点、すっきりしない、納得できないものが残っております。そのことを強く申し上げて、この問題は終わりたいと思います。
 次に、サミットの関係の問題でございます。
 開催国の総理として、総理は何かと大変であったろうというふうに思います。サミットの評価は別として、総理の御労苦に対しては心から敬意を表する次第でございます。
 そこで伺いたいのでありますが、先ほども触れられておりましたけれども、円高問題ですね、総理。新聞、テレビはみんなこの問題に触れているわけです。どうも、総理がサミット前に、サミットが終われば円が安定するんだという期待感を持たせ過ぎたんじゃないですか。総理、今ごろになって、サミットの場は特定通貨、個別通貨を話し合う場所ではないとおっしゃっているけれども、それだったらサミットの前にそういうことをはっきり言っておけばいいのですよ。終わってから、円高は協調介入のコンセンサスというのはとれなかった、失敗じゃないのかと言われ出したら、いや、そういう特定通貨を話し合う場所ではないのだ、こうおっしゃる。ちょっとおかしいのじゃないかというふうに思いますね。だから、総理がどうも期待を持たせ過ぎた。ですからみんながっかりした。がっかりしたという談話が新聞にずらずら出ているじゃないですか。期待がなかったらがっかりしませんよ。財界のメンバーみんなががっかりした。がっかりした、がっかりしたと出ている。(「がっくりだろう」と呼ぶ者あり)総理も何か、がっくりしたという話も聞きましたけれどもね。
 そこで伺いたいのですが、ほかの国の首脳は余り理解ある態度を示していないですね。円高基調いいことだ、対外不均衡がこれで是正されると、全然涼やかな、冷ややかな感じですね、反応は。それで、総合監視機構ができたというけれども、一年先でしょう、実際は。今すぐ機能するわけじゃないでしょう。長期、中期の問題ですよね。今日本が当面している円高、どこで落ちっくのかわからない、非常に安定性がない。総理、これについて、今具体的に何かお考えをお持ちですか。
#550
○中曽根内閣総理大臣 サミットは、ドルとか円とかマルクとかあるいはポンドとかいう個別通貨の価値を云々する場所ではないということは、初めからそういう場であるわけです。PRが足りなかったと言われれば、確かにPRは足りなかったかもしれませんが、期待される方も、そういう国際会議で個別通貨をどうするかということを一つ一つ取り上げるはずはないと一応はお考えになっていただきたいものだと思うわけであります。
 それから、今の個別通貨の上がったり下がったりするというのは、そのときの市場の状況あるいは投機筋が何をねらっているか、そのとき出てくるそういうさまざまの条件が反応するのでありまして、一カ月とかあるいは二カ月とかというある程度のスパンで物を見なければ、それは必ずしも正しいとは言えないのであります。そういう意味で、我々も予算を編成するときには、では六十一年度予算の場合は円ドルは幾らぐらいを基準にするかという場合には、たしか前二カ月の平均値を基準にしてやったと思っております。そういうわけでありますから、毎日毎日、相場師はスペキュレーション、投機のために虎視たんたんとして売ったり買ったりしておるわけでありますから、一一市場の状況というものについて、毎日毎日について一喜一憂するというのは、相場師にやられるという危険性が強いのであります。
 しかし、一番の基本的なことはあります。それは、政治意思というものが去年のG5がそれを則らかに証明しておるし、それからやはり経済政策の基本というものが出てまいりますね。そういういろいろな基本的な問題あるいは政策協調という問題については国家間において話し合うべきであり、それがこの間のサミットにおいてもサーベーランスというようなこと等々で出てきておるわけでありまして、我々はこれを大いに活用しようと思っておる。あの中には、協調介入も有用であると思うときにはやる、そうはっきり書いてあるわけであります。
#551
○市川委員 サミットが円とかマルクとかドルとか、そういう個別の通貨を話し合う場所ではない。すると、経団連の会長とか東京電力の会長さんとか、偉い人がずっと新聞に談話が出ておりましたけれども、そういうことを余りにも知らない方々である、こういうふうに聞こえるわけですけれども、いいんですか。考えてみると、おかしいと思うのですね。ドルというのは、国際通貨の基軸通貨です。これは本当に世界に広がっておるわけです。ドルというのは国際性があるわけです。ドルを論じなければ国際経済は論じられませんよ。ドルを論じないで国際経済、国際金融を論じられますか。また円にしたって、昔と違って今は国際性を持っておりますよ。外国の大体の地域で円でじかに物が買えるという時代です。円も国際性を持っておる。各国も円の動向を非常に注目しておる。
 ですから、それは確かに総理のおっしゃるように、サミットというのは一般の政策を議論するのであって、個別の通貨を議論する場所ではない。しかし、それはオール・オア・ナッシングじゃないですね。一般政策と個別通貨を議論することが、全く別のものではなくて、本質的に切り離せない問題だと私は思うのです。やはり一般政策を議論するには、ドルを論じたり円を論じなければ議論できないじゃありませんか。そういうことだってありますよ。ですから、そういう意味で、私は何となく言いわけに聞こえてならないのですね。東京サミットに期待を持たせ過ぎた。しかし、円高基調がとまらない。失敗だと言われて、いや、そんなことを議論する場所でないのですと言う。何か総理の弁解というふうに聞こえてなりません。
 そこで、具体的に伺いたいのですが、円高が長期化の様相を示しておると思うのです。いろいろな専門家の予測が出ておりますけれども、下手すると百五十円台にすぱんといくのではないかという予測も出ておるし、企業は要するに予測が立たないで困ってしまう、こういうことも言われておるわけであります。自民党の有力な役員の中にも、総理の見通しは甘かったのではないのか、昨年のG5では為替相場の安定のために各国が協調介入する約束があったはずである、総理はレーガン大統領と何を話してきたのか、そういう質問をして総理を大分難詰した方がいらっしゃるというふうにも聞いておりますし、また、総理は、内需拡大をおろそかにして為替市場への口先介入だけで円高に持っていこうとした、そこに失敗があるのではないかという御批判もされている。円高が長期化の様相を示している。何か簡単におさまるというふうには思えない。したがって、建設国債を財源とする生活関連の公共事業を思い切ってやるとかそのための補正予算を組むとか、昨日の参議院の本会議で何かそれに近いようなお話をなさっていたようでありますけれども、この場でもう一度総理の考えを確かめたいと思いますが、そういうお考えはありませんか。
#552
○中曽根内閣総理大臣 円高が長期化するかしないかということは神様以外にはわからぬので、それは断定するのは……(発言する者あり)一体幾らが円高がということもまだ決まっているわけではないわけですね。基本的に言えることは、経済のファンダメンタルズを反映するということが一番長続きするであろう、そういうことはやはり技術的に言える、そう私は思っております。
 それから、最近の円の上昇というものは余り急過ぎる、これは、私は、アメリカや各国の諸君にも日本経済の説明のときに強く言ってきておるところでありまして、過去半年間に四〇%の急上昇をやっておる。これは政治家や評論家ならば四〇%という数字だろうけれども、実際会社をやっている人から見たら、半年の間に四〇%も上がったら計算の基礎が立たぬ、事業計画も立たぬ、それが今日の日本の情勢である。したがって我々は、日本からすればこれは行き過ぎである、行き過ぎに対しては我々は適当な措置をすべきである、そう考えておる。外国も日本のこういう状況についてはよく認識してもらいたい、そういうことも言ってきておるわけであります。
 それで、このサミットになる前に、私は、経済企画庁長官、通産大臣、大蔵大臣及び官房長官に対しまして、中小企業対策そのほかをやる必要がある、そういう意味でこのサミットの間に研究しておくように指示してきたところであります。サミットも終わりましたから、それをこれからどの程度勉強が進んでおるか見たいと思いますが、党とも打ち合わせをしなければならぬ問題でございます。党ともよく協力した上で必要な措置はやらなければいかぬ、そう思っておるのです。
 それで、四月八日にいろいろな政策をやりました。一兆円に及ぶ電気料やガス代金の還元とか公共事業の繰り上げを八〇%近くまで、今までの最高をやろうというようなさまざまなことを決め、金利も下げて、ドイツと日本が今三・五%で一番安いところまで来ておるわけであります。さまざまなことをやったけれども、緊急対策に近いことをやはり勉強しておく必要がある、そういう意味において今やらせておるところでございまして、仮に公共事業等を例にとれば、これを繰り上げていけば下期には仕事がなくなるおそれもある、そういうことも考えてみて、必要あらば補正予算も考える必要がある。公共事業費等についても、昨年もいろいろ知恵を絞ってやっておりました。災害については、建設国債を出してやるとかあるいは予算外国庫負担契約でやった場合もありますし、財投を活用するという場合もございますし、さまざまな方法が考えられる。そういうようなことで十分勉強しておく。そういう私の心構えと申しますか、特に公共事業費が繰り上がって秋、冬にかけて仕事がなくなるというようなことがもし起こってはいけないから、そういうことに対する勉強も今から十分研究しておく。そういう意味で申し上げたのであります。
#553
○市川委員 総理もいみじくもおっしゃったのですけれども、今企業は本当に困っているわけですよ。神様でなければわからないと総理はおっしゃったのですが、また同時に、政治意思の問題でもあるというふうにおっしゃったわけです。
 今勉強し、検討していらっしゃるということですが、いつごろまでにお決めになるのですか。早く手を打たないと困るのではないでしょうか。解散の問題と絡むのかもしれませんけれども、今総理がおっしゃった、日本の国として、政府としてできること、中小企業対策とか、公共事業の前倒しによる秋口から冬に向かっての仕事がなくなる問題とか、建設国債を発行して公共事業を追加するとか、補正予算――補正予算の問題は、今ここでやるとかやらないとかははっきりはおっしゃれないだろうとは思いますけれども、そういう円高についての日本政府としての対策を大体いつごろお決めになるわけですか。
#554
○中曽根内閣総理大臣 必要ある場合に備えて検討する、そういうことで今検討中でございます。時期等についても検討しておる、そういうことであります。
#555
○市川委員 今の事態は余り必要性がないという御判断ですか。こういう質問はお答えしづらいかもしれませんけれども、幾らぐらいになればやる気なのですか。百五十円台ですか。こういう質問をすると、当然仮定の問題というふうにお逃げになると思うのですけれども、必要とあればということは、今の事態は必要ない、こういう御認識ですか。それとも決まり次第早くやろう、こういうことですか。
#556
○中曽根内閣総理大臣 情勢に応じて必要な手はどんどん打っていきたいと思っております。
#557
○市川委員 今の事態はすぐ手を打つ必要はないのか。その点はどうですか。
#558
○中曽根内閣総理大臣 経済企画庁その他に今検討させておるわけです。
#559
○市川委員 問題を変えましょう。先ほども出ましたけれども、リビアの問題でございます。
 外務大臣は、その後米国から詳細な報告を伺って、リビアが国際テロに関与しているという認識を深めた、こういう御答弁です。総理もお聞きになっていたと思うのです。認識を深めたということは、これはやはり認識を共有したことにもなります。日本の国民に向かって説明できるような具体的なことが何かありますか。認識を深めたという言葉だけでは、何か哲学的な日本語でよくわからない。こういうことなんだという具体的に言えることがありますか、総理。
#560
○中曽根内閣総理大臣 認識を深めたということで十分御認識いただけるのではないかと思うのであります。ああ、そうか、そうだったかというような認識を深める、一つの表現ではありますね。
#561
○市川委員 認識を深めたということは、過日の米軍によるリビア攻撃を日本政府としては追認した、こういうことですか。
#562
○中曽根内閣総理大臣 その問題どこの問題はまた別の話であります。
#563
○市川委員 この内閣委員会ではそういう区別をおっしゃれるかもしれないが、国際的には通用しないのじゃないでしょうか、そんな認識は。やはりリビアが国際テロに関与している認識を深めたということは、そのテロに対する自衛措置としてリビアを攻撃したと米国は言っているわけですから、その米国のとったリビアに対する攻撃は米国の自衛措置として日本が認めた、アラブ側は当然こういうふうに受け取ると私は思うのです。そういうふうに受け取ってもおかしくないと思うのです。そう受け取られてもいいというお考えですか。
#564
○中曽根内閣総理大臣 認識を深めたということでありまして、アラブ諸国に対する日本の中東政策、中東和平に対する我々の努力、あるいはアラブの国々の福祉や平和、安定のための経済協力、こういう政策は不変であるということも、今それぞれの筋を通じて関係当局に説明を、もう済んだと思います。
#565
○市川委員 日本政府として当然そういう理解を求めることは必要だと思います。思いますが、しかし、かつての日本の中東政策というのはニュートラルな姿勢というものが強く出ていたと思うのですね、中立的な姿勢というものが。したがって、イラン、イラクについても両方の国と話ができる国だというふうに、外務大臣は胸を張っておられたわけです。アラブとも話ができるのだ。
 しかし、リビアの方は、今回のテロ声明の中にリビアを特定することについて、日本が結果として賛成したことについて、中東政策が変わったのかという声があるやに伺っております。したがって、こっちは、変わってないんだ、変わってないんだ、こう幾ら言いわけをしても、国際テロに関与しているという認識を深めた。また、当初外務省の予想では、リビアという名指しはしたくなかった、それがサミットのテロ声明にリビアという名指しが入った、日本が議長国としてやった、こういうイメージというものはかなり強く残るのじゃないですか。今後の中東政策として中東側の理解が十分に得られる、こういうお見通しですか。
#566
○中曽根内閣総理大臣 大多数の国の理解は得られると思っております。アラブの国の内情も、いろいろ聞いてみますというと、必ずしも一本の反応だけではない、リビアの行為については批判している国もなきにしもあらずです。新聞によると、エジプトなんかもニュアンスが違うようですね。そういうようないろんな、さまざまな国家利害がふくそうして絡まっておる点もありまして、そういう点は一本だけで見るわけにいかぬ。ただ、パレスチナ人に対して独立国家を与えよう、パレスチナの地を回復しよう、それはアラブの大義として普遍性を持ってあると私は思いますけれども、おのおのの国家利害に関係する部分になるとまた微妙な面があるのであります。
 あの悪質な、無事の市民を傷つけるような残虐な国際テロというものについては、中立はないと私は思っております。やはりこれらは断固として糾弾して防圧しなければならぬ。それまで中立をとるということは、国際社会において名誉ある地位を占めようとする日本国憲法の理想に反すると私は思っております。
#567
○市川委員 要するに、国際テロに中立をとれというふうに私は申し上げているわけではありません。テロはどんなに非難しても非難し過ぎることはない、これは私もそう思っております。
 そこで、時間が迫ってきましたので、今私たちが一番最大の関心を持っておる問題を、ちょっと最後に総理に伺いたいと思います。
 解散風が強いので風邪引いたという人が多いのですけれども、総理、自民党の中にも反対がありますね。きょう何か、朝日新聞の夕刊に、総理と金丸幹事長が電話で解散問題を話し合った、金丸氏は、解散は困難である、定数決着は会期末になる、会期延長は難しい、円高対策が急務である、したがって解散は困難であるという認識を総理に伝えた、こんな記事も出ているわけです。また自民党内にも、この急激な円高に対して何らかの手を打つべきである、したがって、ここで政治の空白は許されない、こういう声も自民党の中にもあります。また自民党外のところにもございます。
 総理、お伺いしますが、今の状況はそういう空白が許される、あるいは許されない、どういうふうにお考えですか。
#568
○中曽根内閣総理大臣 新聞記者にもさっき聞かれましたが、ある新聞の、金丸幹事長と私が電話をしたとか云々というのは、まるっきり事実無根です。あれは誤報ですね。誤報というよりも虚報というふうに近いものであります。
 それから、今私は、サミットが終わって、それで重要法案を成立させようと全力を注いで、今も夜遅くまで御審議を煩わしている状況で、ほかのことを考えている暇はありません。
#569
○市川委員 しかし、中曽根派の方に伺いますと、内閣委員会の方は別として、大体解散はある。東京都内はポスターだらけ。総理の発言、漏れ承るところによりますと、大義名分がない解散はできないということを金丸幹事長は言っておるわけですけれども、総理は政局の安定ということをおっしゃっている。政局の安定というのは自民党の安定ということですから、これはちょっと野党には通用しない大義名分。あるいは定数是正が行われると、違憲状態を解消する、これは一つの大義名分になるのではないかというふうに言われておるわけでありますが、総理、定数是正が行われた場合直ちに解散するに足る大義名分であると、総理はそういうふうにお考えですか。
#570
○中曽根内閣総理大臣 ともかく夜中まで重要法案審議をやっておる状況で、ほかのことを考える暇はありません。
#571
○市川委員 有能な総理がそんなことはないと思うのですね。それこそ虚報ですね。いつ解散をするかということをじっくりとお考えになっているんだろうと思うのですが、以上で質問を終わります。
#572
○志賀委員長 吉田之久君。
#573
○吉田委員 先ほどから上原、市川両氏からも、国際テロの問題につきましていろいろ御質問がありました。また、今度のこの安全保障会議設置法とテロの問題は極めて重要なかかわりを持っておるわけでございます。したがって私も、なお御答弁の中で理解できない二、三の点がございますので、まずその点から御質問をいたしたいと思います。
 今度の国際テロに関するサミットの声明、大変見事だと思います。この東京に参集した七カ国は、「あらゆる形態の国際テロリズム、その共犯者、及び、政府を含めそれを主唱若しくは支援する者に対する非難を断固として再確認する。」国際テロに対しては「仮借なくかつ妥協することなく闘わねばならない。」「この害悪と闘うために最大限の努力を払うことを誓約する。テロリズムに対しては、国としてとる措置を国際協力と結びつけつつ、決然とした、粘り強い、緻密な、かつ忍耐強い行動をとることによって効果的に闘わねばならない。」大変見事な決意だと思うわけでございます。
 だとするならば、もしもアメリカが場合によってはリビアに対して第二次、第三次の攻撃を開始した場合、この宣言に従うべき日本としてはこの攻撃を是認することになると私は思うわけでございますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
#574
○中曽根内閣総理大臣 軍事力の行使というものはできるだけ慎むべきである。我が国の憲法は、日本が国際紛争を武力解決するということはやらないようになっておるのでありますから、我々は、そういうものを軍事的に解決するということについては消極的な国家であります。しかし、その場の状況がどういう状況であるか、そういうものも実際実情をよく調べた上で最終判定はすべきであると考えております。
#575
○吉田委員 まず、我が国の場合、我が国自身がそういう武力的な報復によってこのテロを鎮圧するはずはないと思います。しかし、諸外国がやむにやまれぬ事情によってそういう行動をとる場合、さて日本は何をなすべきであるか。ただ傍観していることは許されないと思うのです。武力を行使することは我が国是としてできるはずはありません。そういたしますと、先ほど来いろいろ質問が出ておったわけでございますが、我が国の中東外交政策、これが先ほど外務大臣がおっしゃったとおり何ら変わることはない、どの国に対しても経済的援助を続けていく、こういう立場であり得ない場合が時に生じてくると思うわけでございますが、この場合、総理はどのように御決断なさいますか。
#576
○中曽根内閣総理大臣 それは、そのテロの様相、真相、原因等々をよく調べた上でないと御回答することは困難でございます。
#577
○吉田委員 恐らく、この先進国の各国々の指導者は、そういうテロの実相、要因、そういうものを調べ尽くして対処していくはずでございます。他の国々がそういう対処をしているときに、なお日本は静かにその原因を探求するのでありますか。
#578
○中曽根内閣総理大臣 あの声明の中にも、国内法とかあるいは国際法というものの原則の上に立って考えるという文章があったと思います。やはり各国が独自の判断を持つということはあり得る。声明を読んでごらんになればおわかりになることであります。したがいまして、そのときの真相やら原因やらを正確によく調べ、証拠を確かめた上で判決すべきものであると考えております。
#579
○吉田委員 大いに慎重にその辺は間違いない探求をなされなければならないと思いますが、そうした上でなお目に余る場合は、やっぱり日本としても何らかの対応措置を講じなければ、この宣言をともにした責任を果たすことにはならないと思うわけなんでございます。ところが、国民の側から心配いたしますことは、我々は中東から原油の供給を今後も受けなければならない、そういう点で、みだりに事を構えたり、またその機嫌を損ねるようなことはとりたくはない。しかも一方においてテロは断じて防圧しなければならない。何かそこにジレンマのようなものを感じておるわけであると思います。
 アラブの国々にも強硬派や穏健派、いろいろあります。そういう穏健な国々とはさらに変わりなき友好を保つべきではありますけれども、どうしても世界のために対処しなければならない場合に、先ほどのような外務大臣の御答弁だけでは、国際的に日本が信用されなくなるのではないかという心配を私はいたしております。この辺につきまして再度お答えをいただきたいと思います。
#580
○中曽根内閣総理大臣 凶悪なる国際テロに対しては相協力し合うという点は、話し合って約束しているところであります。しかし、具体的にどのケースがどうなるかという問題については、それぞれよく真相を確かめた上で、しかも国際法や国内法というものを考慮して、妥当な判断を下して行うべきである、そう考えております。
#581
○吉田委員 安全保障会議が設置されるこの段階におきまして、特に、今申しましたような問題につきましても真剣に対応を始められたいと思うわけでございます。
 次に、重大緊急事態が生じた場合にどうするか、それを今度の設置目的の重要な柱になさっているわけでございます。大変結構だと思うわけでございますが、重大緊急事態とは何か。それはハイジャック、ダッカ事件、ミグ25事件、大韓航空機撃墜事件などが挙げられておるわけでございますけれども、そこで私どもがひっかかりますのは、このテロを排除しなければならないという国際的なお互いの誓いの中で、顧みてみるとダッカ事件は、先ほどもいろいろ質問がありましたけれども、超法規的に対処されたわけであります。仮にあの場合はあの処理しかなかったといたしましても、今後再びこの種の事件が起きたときに、そのような対処の仕方は、乗客を助けるためにかえって世界にゲリラの種をまいたことになるそしりを免れることはできなくなると思うわけでございます。したがって、こういうことの対処の仕方について本当に真剣な検討を急がなければならない時期に来ていると思います。先ほどの官房長官の答弁との食い違いに対して質問者は大変問題であると指摘されたけれども、まさにそのとおりだと思うわけでございます。この際、この安全保障委員会を設置しようとする段階において、顧みてみてダッカ事件をどう反省し、今後に対してどう対処しようとなさるのか、総理の御答弁をお願い申し上げます。
#582
○中曽根内閣総理大臣 あの事態を前提にしてああいうことがまた起こるかどうか、これはまた非常に疑問でありますし、おのおの違った条件、国際環境あるいはその地域の情勢のもと、すべてにおいて問題は起こってくるのでありまして、この前のああいう事件についてはそれなりの検討、反省、そういうものもいたしております。しかし、将来の問題については、そのとき起こった事態をよく分析し、そして妥当な態度を決めなければならないということで、今から予測することは難しいと思うのです。
#583
○吉田委員 ふだんからそうした問題に心構えをしておくところに、この設置法の意義があると思うわけでございます。再びあってはならない事件でありますけれども、ひとつこの機会に十二分に心構えや検討をなさるべきであると思います。
 さて、この安全保障会議設置法それ自身の問題についてでありますけれども、私どもは、シビリアンコントロールを強化するために、今日までの国防会議がとかく形式主義に流れておる、本当にもっと機能する、そして国家国民の生命と財産を守るに値する組織をつくるべきである、そういう意味で国家安全保障会議を設置すべきであることを常に総理に対しても党として正式に提唱し続けてきたわけでございます。にもかかわらず、今度のこの法案は「国家」という言葉が抜けておるわけでございます。この件につきましては、さきの本会議におきましても我が党の代表が質問いたしました。このときの答弁では、ややもするといかめしい感じがして狭くなる心配があるので、「国家」という言葉を外すことにした、というような総理の御答弁がありました。この答弁に対しては、かなり数多くの国民が幻滅を感じたと思います。総理の国家観に対してはそれなりの評価を持っておった国民は、その総理みずからが、こういう重大な安全保障会議をつくるときに「国家」という言葉を外され、また「国家」という言葉をつけることによって何かいかめしい感じを与えはしないかという言葉を述べられたことに対しまして、非常に困惑し、また幻滅を感じている人たちも多いはずでございます。
 今日現在、総理はこのお考え方を変えようとはなさっていないのでございますか。
#584
○中曽根内閣総理大臣 今回の安全保障会議の法案の提出については、民社党の考えを大いに参考にいたしまして、党首会談等における党の委員長の御発言等も大いに拝借させていただいて、法案ができているわけです。ただ、「国家」という名前を除いたという点において違う点があるように思いますが、その点は、国家安全保障条約という安全保障の問題にいたしましても、いわゆる総合安全保障というので、防衛だけではない、防衛庁だけではない、やはり経済、エネルギー、食糧あるいは運輸、すべてにかかってくる問題でありますから、そういう総合安全保障的観点から防衛という問題も取り上げるべきである、そういう考えが一つで、幅広くこれを考えようということと、それから、さっき申し上げた非常災害だとかそのほかの我々が予期しないような緊急非常事態、大韓航空機みたいな事件も起こる、そういう場合に「国家」という名前をつけた場合にいかめし過ぎるという印象と、もう一つは国防に編しはしないかという、そういう誤解を与えないようにという配慮もあったわけでございます。つまり、関東大震災みたいな大規模な非常災害あるいは大韓航空機みたい在事件、これも実は重大な問題なのでありまして、そういう面も配慮に入れて今のような法案にいたした次第なのでございます。
#585
○吉田委員 そういう説明も成り立たないわけではございませんけれども、しかし安全保障会議、安全保障という言葉を非常に広範囲にとりますと、それは国民の生活ことごとくが安全でなければならないわけでありますし、また健康保険もあるいは年金もやはり安全保障の中に入るのかなと、どうしても対象が広がり過ぎた感じ、焦点がぼけ過ぎてしまったような感じ、名は体をあらわすと申しますけれども、何かそういう危惧を感じてならないわけでございます。
 そこで、その中身につきましてさらに御質問をしたいと思うわけでございますが、会議には専属の事務局を置くべきではないか。内閣官房の安全保障室で事務を処理させるというのは、事実上の事務局の格下げなのではないかという心配が随所に出ておるわけでございます。特に、今までは総理直属であった国防会議そして事務局長、それが今度は総理から官房長官を経て、当然官房副長官を経由いたしまして、内政調整室、外政調整室、安全保障室など、その他大勢の中の一員としてこの室が設けられる。議長である総理の指揮権が大変間接的なものになったのではないかという感じを受けるわけでございますが、総理はそういう御心配をなさりませんでしょうか。
#586
○中曽根内閣総理大臣 これはやはり、行政組織というものはちゃんとした系統を経て、つかさ、つかさを経なければ有効的には発動し得ないものでございまして、今までもすべてそういうふうにやっておるわけでございますから、御心配は要らないと思うのです。私が直接すぐその所掌、所掌の人たちに指示するなんということは、今までもなかったわけであります。ちゃんと官房長官を通じてしかるべき大臣にとか、あるいは大臣から事務次官に行くとか、そういうようなちゃんとしたコースをたどっていかないと行政というものは動かないものなのでございます。
#587
○吉田委員 かなり昔のことでございますけれども、私が国会議員になりました当初であったと思います。総理が当時防衛長官でいらっしゃいました。いろいろな防衛論議から、たまたま当時の国防会議の事務局長は海原さんでありましたが、その話が出たときに、総理がはしなくも、国防会議の事務局長というのは、いろいろと会議を設定したり、お茶を運んだりすることを指導する人にすぎないのだと言われたことが、まだひっかかってくるわけでございます。そういう御認識でおられる総理が、今後こういう安全保障会議をつくり、こういう安全保障室を設け、事務局長が室長になる、何かそういう極めて形式的な認識を持って対処される場合には、事志とは大変違ったことになる。もちろん、このメンバーであります閣僚各位も重要な存在ではありますけれども、シビリアン中のシビリアンであり、かつ、いろいろな経験、見識を誇る在来の事務局長的なもの、そしてそれを取り巻く事務局というものがよほどしっかりしていないと、やはり形式的な会議で終わってしまうという心配を私どもはするわけなんでございますが、その点は大丈夫でございますか。
#588
○中曽根内閣総理大臣 事務局及び事務局長、言いかえれば室員及び室長というようなものが非常に重要であるということは、あくまで認識しております。しかし、防衛問題等に関しましては、やはり決定権というものは国務大臣あるいは総理大臣あるいは閣議がなさるべきもので、その中間にあるいわゆる一般職の公務員がやるべきではない、それはシビリアンコントロールに反する、私はそう考えてそういう発言をしたのでありまして、やはり閣議あるいは国務大臣あるいは総理大臣、おのおのがその法令に従って適切に実行していく、そしてそれを国会が監督していく、そういう実を上げていかなければならぬと思っておるのであります。
#589
○吉田委員 在来の国防会議であるならば総理のおっしゃることも一つの理論として成り立つかもしれませんけれども、今度の安全保障会議というものは、より範囲を広げて、いわゆる重大緊急事態にもいつでも対処できる、そういう会議になるべきはずでございます。だとするならば、その事務局といいますかその壷といいますか、あるいはその構成員と申しますか、その辺がまさに四六時中体制をとっていなければ、まさかのときに間に合わなくなるのではないかという心配を私どもはするわけでございまして、これは今後の運営の中で十分にひとつ間違いない対処をしていただきたいと思う次第でございます。
 それに関連いたしまして、今度の議員の選任の基準でございますけれども、経済企画庁長官は他の議員に比べて、国防に関する重要事項や重大緊急事態の対処に関しては必要性が低いと思うのです。それは長い経済プランをどう立てていくかという点では非常に大事な存在でありますけれども、ハイジャックが起こった、いろいろなテロ事件が起こった、それと経済企画庁長官とは余り関係ないと思うのでございます。むしろ、これからのこの会議に必要なのは運輸大臣とか郵政大臣であるとか、火急の場合に対応すべき省庁の責任者を加える必要があるのではないかと私どもは強く思うわけなんでございますが、そうはお考えになりませんでしょうか。
#590
○中曽根内閣総理大臣 やはり物価とか金融というのは重大な問題もありまして、国民生活の安定に関する大きな部分は経済企画庁に負うところが多いわけであります。そういう意味において経済企画庁を入れてあるということで、もとより運輸大臣や郵政大臣も重要な役目でありまして、これは必要に応じて出席してもらう、そういう配慮もいたしたいと思っております。
#591
○吉田委員 何かこの議員の選任の基準、その目的とするところと余りびったりピントが合っていないような気がするわけでございます。
 さて、総理が会議に諮問しなければならないとされている項目の中に、「産業等に関する調整計画」というものがあります。これは、暗い戦時中の戦時経済体制を再びとることなのであろうかという懸念も、国民の中に出ておるわけでございます。むしろ、この際、そういう調整計画を特記するのではなくして、その他国防に関する重要事項の中で対処されていいのではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
#592
○中曽根内閣総理大臣 これは例えばガソリン、エネルギーの使用とか、あるいは鉄鋼やそのほかの使用とか、そういう点で、民需とそれから防衛関係の方との調整をとる、そういう場合も将来はないとは言えない、そういう意味をも含めまして規定しておるわけなのでございます。
#593
○吉田委員 以上で、私の質問を終わります。
#594
○志賀委員長 三浦久君。
#595
○三浦(久)委員 まず、総理にお尋ねをいたしたいと思います。
 日本が議長国を務めました東京サミットが終わりました。このサミットでテロに関する声明が発表されまして、その中でリビアを名指しで非難をして、そしてテロに対して、仮借なくかつ妥協することのない闘いということを宣言しておりますね。
 そこでお尋ねしたいのですが、この仮借なき、妥協なきテロとの闘いというものの中に、アメリカによるリビア爆撃というようなものも含まれているのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
#596
○中曽根内閣総理大臣 それは先ほど申し上げましたとおり、理解を深めたということと、今のアメリカの行為とは別のことであると考えます。
#597
○三浦(久)委員 そうすると、含まれていないということですね。そうすると、米国によるリビア爆撃が行われて余り目がたっていない今日、東京サミットが開かれた。そこで、アメリカのリビブ爆撃については何ら言及することなく、リビアだけを名指しで非難をする。こういうことは、まさに国際法に違反をする、国際法を完全に踏みにじってリビアに対してアメリカがああいう攻撃をしかけていったわけでありますけれども、そういうアメリカの侵略行動というものを正当化するという政治的な効果を世界の人に与えたということは、まず間違いがないだろうというふうに私は思うわけであります。
 私どもは、無差別の犠牲を引き起こす国際テロには断固反対であります。反対するのは当然であります。したがって、国際テロを防止するための措置をとる、これもまた当然のことだと思っております。しかし、テロを防止することとリビアに対するああいうアメリカの侵略行動というものを正当化することとは、これはまた全く別の問題だというふうに考えているわけですね。
 中曽根総理が東京サミットでとった立場、これは日本国民を極めて重大な不安に陥れているというふうに私は思います。例えば、これから日本人が国際テロのえじきにされるのじゃないかというような心配を持つに至っているだろうと思いますし、また、こういう東京サミットの声明を背景にいたしましてアメリカが元気づいて、そして今後もリビアヘの侵略行動を拡大してきはしないか、そうするとリビアがそれに対して本格的な反撃をしていきはしないか、あそこで大きな戦争が起きたらどうなる、それがまたアジアに波及する危険性はないのか、いろいろなことが当然心配されていくわけですね。そうして、アジアにそういうものが波及をしてくるということになると、今度は「日米防衛協力のための指針」に記されておりますような、日本に武力攻撃が行われる、そういうおそれのある場合というような事態に発展をしていきはしないか、こういう心配が次から次へと起きてくるわけです。この日米ガイドラインで規定されている、日本が武力攻撃を受けるおそれがある、そういう事態がもしも発生したとすれば、自衛隊はアメリカと一緒になって作戦準備行動をしなければならないようになっておりますね。ですから、そういう国民の心配というのは非常に大きいというふうに私は思うわけであります。
 そこで、この法案の問題に関連してお尋ねしたいのですが、この日本に「武力攻撃がなされるおそれのある場合」、いわゆるおそれがあるとあなたが判断をされた場合ですね、これに対して今言いましたように作戦準備行動が日米共同で行われるわけでありますけれども、それを行うに当たって、この安全保障会議に諮ってそして決定をされますか、どうなんでしょうか。
#598
○中曽根内閣総理大臣 今度のサミットの国際テロに関する声明については、アメリカのリビア爆撃に関する明示的な条文というのは一つもないわけであります。それから、私は驚きましたのは、あのフランスやイタリーのように割合に消極的態度をとっておった国が、東京へ来て会議をやってみると、非常に強い強硬論を実は出して、全部が、リビアに対して強い態度を明示するように、そういう態度であった。私は、議長国といたしまして、その大勢の考え方についてその方向でやはりステートメントをつくらなければならなかった、そういう立場にあって、実はヨーロッパの国々の変化に非常に驚いたわけなのであります。
 それから、リビアに関する問題についても独立の声明というような、別の項目に書けとか独立の声明にせよという議論も多少ございました。しかしそれを、あの文章の中にイン・パティキュラーという言葉を使って入れたということで、リビアのことだけを特に取り出して大きく出すということについては、私は議長の職権を使って皆さんに同調してもらった、そういう点もあるのであります。
 それから、あとの御質問は、日本の国内法に関する構成要件の問題でございますから、これは政府委員から説明させます。
#599
○塩田政府委員 ガイドラインとの関係での御質問でございますが、「日米防衛協力のための指針」との関連いかんにかかわりませず、自衛隊の行動について会議で審議されるかどうかは、その具体的態様等によって決まりますので、一概に、諮ることになるとかならないとかいうふうに申し上げることはできないわけでございます。
#600
○三浦(久)委員 私が言っているのは、一つの前提を置いているわけですね。日本がいわゆるガイドラインで言う武力攻撃を受けるおそれがあると判断をした場合にどうなんだということを聞いているのですが、いかがでしょうか。
#601
○塩田政府委員 先生も御存じのように、ガイドラインで言う「おそれのある場合」というのは、自衛隊法七十六条で言う「おそれのある場合」よりかなり前の段階からでございます。したがいまして、その段階でいろいろな状況報告を受けたりすることはあると思いますけれども、ここで、会議に諮るという事態になるかならないかはそのときの状態によって判断して決めるというふうに申し上げたわけであります。
#602
○三浦(久)委員 そうすると、かけなければならぬという場合にはかけるということですな。
#603
○塩田政府委員 そういう必要があると判断される場合もあり得ると思います。
#604
○三浦(久)委員 それから総理、今の総理の御答弁に関連してお尋ねしたいのですが、このテロに関する声明には、総理は今、アメリカの行動については何ら明示していない、こういうことを言われましたね。アメリカのああいうリビアの主権を侵害するような爆撃行動について、何も話題にはならなかったのですか。どういうような話し合いがされたのでしょうか。それをちょっとお尋ねしたいと思います。
#605
○中曽根内閣総理大臣 特に表立った議論は記憶に残っていませんですね。ともかく、最近のテロは国際的な連関を持って非常に残虐に行われている、各国が自分たちの例を一々持ち出して説明し合った、そういうことは強く記憶に残っております。
#606
○三浦(久)委員 安全保障会議設置の根拠というのは、内閣法十二条四項によるものだと言われているのです。ですから、これは結局合議体たる内閣の補助機関だ、内閣の事務を助ける機関だというふうになっております。決して総理大臣の補助機関ということにはなっていないのですね。
 私は、こんなことをなぜお尋ねするかといいますと、安全保障会議で決定をした、それに基づいて総理は、その決定を実行させるために行政各部をいろいろ指揮監督されるだろうと思うのですね。ところが、この安全保障会議で決定はしても、閣議にかけないで、閣議を飛び越えて、いろいろとその決定の実行のための指揮監督をする場合がある、こうおっしゃるのですね。これは後藤田官房長官が何回もそうおっしゃる。そうしますと、これはちょっとおかしいのじゃないか。内閣の補助機関なんです、この安全保障会議というのは。内閣の補助機関が総理大臣に意見を出して、そしてその意見が実行されるという場合には全然閣議にかからない。そうすると、それじゃ内閣の補助機関としておかしいのじゃないか。やはりこの安全保障会議で審議しそして決定されたこと、そのことを実行するに当たっては、私はすべて閣議にかけるべきだ、そういうふうに思うのですが、総理大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
#607
○中曽根内閣総理大臣 それは案件によりけりでありまして、閣議にかける必要のあるものは閣議にかけるし、各省設置法上各省が単独でやり得るものあるいは緊急を要するもの、こういうものは行政権に基づいてその省はおのおのやり得るわけでありますから、総理大臣がいろいろ助言しあるいは指示して、それを一緒になってやる、そういうことは今まで慣例でもありますし、幾らも前例のあることであります。
#608
○三浦(久)委員 しかし、内閣の補助機関でありながら、内閣を飛び越してぽんと行政各部を指揮監督する、そんなことは考えられないことですし、それからまた、閣議にかける場合とかけない場合というような基準はありますね。基準はありますが、少なくともいわゆる重大緊急事態ですから国の安全に重大な影響を及ぼすおそれがある、そういうものに対する対処方針でしょう。それを閣議にかけないなんということは考えられないことですね。
 私、もう時間がありませんので、最後に一点だけお尋ねします。
 何で、こういう重大緊急事態が発生した場合に閣議では間に合わないのですか。閣議でちゃんとおやりになればそれで十分じゃありませんか。その点、総理大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
#609
○中曽根内閣総理大臣 防衛出動のような大事な問題で、法でも明記してあるような問題は、もちろん閣議にかけます。しかし、大韓航空機のような問題で、時々刻々と移っていく事態に対応する、そういうような問題については、各省大臣が担当している問題について直接一緒に対処する、そういうことももちろんあり得る。それが行政というものだろうと思うのです。
#610
○三浦(久)委員 閣議というのは全員そろわなくてもいいということになっているでしょう。それから、これは角田前法制局長官が、緊急の場合にはおられる大臣だけでやっていいのだと言っているわけですよ。そして、後で持ち回りあるいは連絡によって同意を得ればそれで閣議として成立すると言っている。後藤田長官は、いや、次官会議を経てそれでやってくるのだから、そんなこと一々間に合わない場合があるのだ、こう言われるでしょう。
 しかし、あなたたちがつくっている「文書法令事務の手引」というのを見ましても、例えば次官会議が終わってしまって、すぐ閣議にかけたいというようなものは、次官会議の議を経ないでちゃんと閣議にかけるようになっているのですよ。一々言いませんけれども、次官会議を経ないで閣議にかけるという手続までここに全部書いてありますよ。ですから、いわゆる刻々と変化する事態、そういうものは当然あると私は思います。しかし、それに対処する場合に、何も安全保障会議をつくらなければ対応できないというようなものではないのですね。閣議をうまく運用していけばそこでできる。そしてその閣議というのは行政の最高の決議機関ですから、ここで十分審議をすればそれで、屋上屋を重ねるような安全保障会議なんというものをつくる必要は全くない、私はそういう意見を申し述べて、質問を終わりたいと思います。
#611
○志賀委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#612
○志賀委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。深谷隆司君。
#613
○深谷委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております安全保障会議設置法案に対し、賛成の討論を行います。
 この法律案は、現行の国防会議の任務を継承するとともに、「重大緊急事態」への対処措置等を審議する機関として、内閣に安全保障会議を設置しようとするものであります。
 御承知のとおり、国防会議は、自衛隊の発足後二年日に設置されたものでありますが、同会議の機能等について従来さまざまな議論が行われており、政府においてもかねてから、そのあり方について検討を行ってこられたところであります。
 今回、この法律に基づいて安全保障会議が設けられ、そこで「国防に関する重要事項」と「重大緊急事態」への対処に関する重要事項の双方を統一的に扱うということになれば、まさに情報の収集、分析機能の充実等が図られるわけでありまして、私は、これによって国防会議に付与されていた機能が活性化し、シビリアンコントロールを十分に確保することができるものと確信いたす次第であります。
 次に、近年における社会全体の複雑高度化、また我が国の国際的役割の拡大と我が国周辺地域の国際政治面での重要性の増大等により、国家の安全にかかわるような重大緊急事態発生の可能性は潜在的に高まっておりますが、このような事態の処理に当たっては、関連する行政分野がしばしば多岐にわたり、その総合調整は必ずしも容易ではなく、従来の処理方法によっていては迅速。的確な対処が極めて困難な成り行きとなっております。
 特に、我が国の行政の通常の政策決定方式は、いわゆるボトムアップ方式が支配的であり、決定までに長時間を要することが少なくありません。したがって、このようなボトムアップ方式による政策決定に頼るだけではなく、事柄によってはトップダウン方式による政府の意思決定を得なければ、適宜適切な対応ができない場合が生じてくるのであります。
 今回の措置は、このような観点から、内閣における総合調整機能を強化して、国家及び国民の安全をより一層確保しようとするものでありまして、私はこれに心から賛意を表する次第であります。
 また、これまで私が申し述べましたことは、臨時行政調査会あるいは臨時行政改革推進審議会の答申においてもほぼ同様のことが提言されている次第でありまして、私は、一日も早くこの法律案が成立することを祈ってやみません。
 ただ、この際、政府に対し若干の希望を申し上げたいと存じます。
 それは、まず第一に、従来の国防会議は、発足以来いろいろと文民統制上重要な役割を果たしてまいりましたが、必ずしもその機能が適切に発揮していたとは言えないという指摘もなされております。この法律によって安全保障会議が設置された後は、定例的に会議を開催するとか、随時国防政策にかかわる諸問題を検討するなど、適切かつ有効な運営の確保について、特段の努力を払われるよう要望いたしておきます。
 第二に、安全保障会議に関する事務は、内閣官房再編成後の安全保障室において処理することになりますが、トップダウン方式による政府の意思決定を誤りなからしめるためには、これを補佐するスタッフが、日ごろから各省との連携または情報の収集等を適確に行い、重大緊急事態発生の際には、正確・機敏な指導方針を決定し得るような準備態勢を整えておくことが必要不可欠であろうと思われます。したがいまして、内閣の補佐体制の充実強化については、特段の配慮をされるようお願いいたしておきます。
 以上、要望を申し上げ、賛成討論を終わります。(拍手)
#614
○志賀委員長 元信堯君。
#615
○元信委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま質疑終局いたしました安全保障会議設置法に反対する討論を行います。
 私どもがこの法案に反対する根本的な理由は、この法案が目的とするところの安全保障措置が日本国憲法の精神に背馳するからにほかなりません。
 すなわち、日本国憲法は、安全保障の根本を「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、その前文に述べ、さらに第九条において、戦争放棄を明文において規定しているのであります。
 しかるに、近年の政府の防衛外交政策は、これら憲法の精神から乖離することおびただしく、財政再建と称して超緊縮予算を編成する一方で、軍備予算を連年にわたって異様に突出させ、他方アメリカの言いなりになってその世界戦略のお先棒を担ぎ、我が国の国民の生命・財産を危険にさらし続けているのであります。
 この法案の当委員会における審議によって明らかになったことは、この法案の目指すものが臨調、中曽根首相の持論である「大統領的首相」へ向けて、内閣官房の強化、すなわち首相への権限集中にほかならぬことでありました。
 定義することすらできない「重大緊急事態」を想定し、あれこれその対処措置を検討するなどは、まさに形容矛盾そのものであり、これらに口をかりて、実質的な有事対応を超法規的に行うというねらいを持つものとの疑いは否定できないところであります。
 実際、法案提出者である政府が、この法案の必要にどの程度の確信を抱いているかは、例えば、この会議の議長たる内閣総理大臣に事故あるときまたは欠けたるときの職務代理者を、さしたる理由もなく指定していないことでも明らかであります。国内外のテロリズムがちょうちょうされる今日、首相の代理者をすらあらかじめ指定しないなどというのんびりした態度と言うところの「重大緊急事態」をいたずらに強調するところのふつり合いは明らかであると考えます。
 実体なき国防会議を内閣官房に取り込み、ますます首相の独裁を強め、国会への承認報告すら義務づけられないことは、我が国の議会制民主主義あるいは議院内閣制と相克することは、到底否みがたいところであります。
 さらに、国防会議の安全保障会議への移行は、今日でも怪しい自衛隊へのシビリアンコントロールをさらに空洞化するおそれが多分にあります。「大統領的首相」を目指す中曽根内閣ではありますが、さきのサミットで明らかなごとく、その強引に国民を引きずっていく方向が、アメリカは称賛しても国民には失望ばかりを与えている今日、この法案の成立がますます我が国の政治を憲法の精神から遠ざけるものとして、私どもは改めて反対を申し上げまして、討論を終わりたいと思います。(拍手)
#616
○志賀委員長 日笠勝之君。
#617
○日笠委員 私は、公明党・国民会議を代表し、安全保障会議設置法緊に反対の討論を行うものであります。
 安全保障の問題は、単なる軍事面の問題だけではなく、資源、エネルギー、食糧等幅広い視野と長期的展望に立って検討する必要があります。なかんずく、総合的安全保障政策の中で、軍事面の役割と対応についての位置づけを明確にする必要があります。
 我が党は、このような考えに基づき、現在の国防会議を解消し、政府部内での防衛庁、自衛隊に対するシビリアンコントロールを充実させるとともに、総合的安全保障政策の具体化のための「総合安全保障会議」を政府部内に設置すべきことを従来から提唱してきたところであります。
 このような立場から、今回の政府の安全保障会議設置法案を見ますと、名称的には我が党の「総合安全保障会議」と似通っておりますが、その内容は、全くもって似て非なるものと言う以外にないのであります。
 且一体的に反対理由を明らかにすれば、第一は、「重大緊急事態」の定義が極めてあいまいなことであります。そのことに起因して、安全保障会議自体を設置する必然性も不明確になっているのであります。この点に関しては、国会審議を通じ、再三指摘されたところであります。ところが、政府からは、具体的かつ説得力ある説明は何ら行われなかったのであります。
 第二は、「重大緊急事態」という予測できないことを思定し、そのことへの対応措置の必要性を考えていますが、通常の体制、通常の政府の対応で対処することが可能ではないのかということであります。すなわち、通常の閣議あるいは関係閣僚会議で十分対応が可能であると思うのであります。
 第三は、安全保障会議を設置することにより現在の国防会議の欠陥が改められるならば、それなりの意味があります。我が党が従来から指摘してきたシビリアンコントロールの充実強化、具体的には事務部門の権限強化とスタッフの充実が図られるのであれば、反対するところではありません。ところが、本法案は、現状の国防会議と何ら変わらないところか、かえってシビリアンコントロールを低下させるおそれなしとしないのであります。
 第四は、内閣機能の強化という大義名分に隠れ、屋上屋の機構いじりの感が強く、外交については二元外交を生むおそれも存在しているのであります。
 このように問題のある安全保障会議設置法案に対し、我が党は反対するものであります。
 以上。(拍手)
#618
○志賀委員長 和田一仁君。
#619
○和田(一)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりました安全保障会議設置法案に対し、反対の討論を行うものであります。
 我が党は、既に昭和四十三年以来、シビリアンコントロールを強化すべく、現在の同防会議を「国家安全保障会議」に改組・強化するよう提唱し、以来今日までこの政策を主張し続け、党首会談の場などを通じて再三にわたって政府・自民党に申し入れをしてきたのであります。特に昨年の十二月には、この主張に基づいて我が党としての設置法案の骨子を発表したのであります。
 我が党の主張は、会議の権限や事務局の機能を強化拡充し、国防に関する重要問題や安全保障に関する基本政策などを審議し、チェックするとともに、緊急事態には迅速に対処できるものとせよというものでありました。
 しかるに、本法案は、会議の設置を単独法で位置づけてはいるものの、その基本思想は行革審の答申そのままであります。私は、内閣の総合調整機能を強化することに異を唱えるものではありません。しかし、本問題は、国政の大本にある重要政策にかかわるものであり、取り組みの姿勢そのものが安易であり、シビリアンコントロールの強化や国防会議の果たし得なかった機能強化につながる改善は何もないと言わざるを得ないのであります。そればかりか、事務局をなくして内閣官房につくる安全保障室が会議の事務を処理するようにするなど、シビリアンコントロールの強化に逆行する内容さえ見られるのであります。
 そもそも、会議の名称から「国家」という文字を外し、単に安全保障会議としたことについて、「国家」という名前をつけるとややもするといかめしい感じがして狭くなるとの総理の答弁は、不可解かっ不見識と言わざるを得ません。
 我が党は、こうした立場から、本法案に関し、第一に、会議の名称を「国家安全保障会議」とすること、第二に、事務局に関する規定は少なくとも現在の国防会議より後退させ一ないこと、第三に、経済企画庁長官にかえて運輸大臣及び郵政大臣を議員とすること、第四に、これとの関係で、総理の諮問項目の中から「産業に関する調整計画」を外すこと、の四点を修正するよう政府・自民党に強く要求したのであります。しかし、これらの修正要求は一切認められなかったのであります。
 本法案がこのままの形で成立し、これに基づいて安全保障会議が設置されることは、決して一歩前進ではなく、むしろ会議の形式化、空洞化を今後長期にわたって固定化することになると言わざるを得ません。よって、我が党は、本法案に反対するものであります。
 最後に、民社党は、今後とも、国政の根幹にかかわる安全保障問題に真剣に取り組み、シビリアンコントロールが十分に機能するよう全力を尽くすことを付言して、私の討論を終わります。
 以上です。(拍手)
#620
○志賀委員長 柴田睦夫君。
#621
○柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、安全保障会議設置法案に対し反対の討論を行います。
 本法案に反対する理由の第一は、安全保障会議が、憲法に違反する自衛隊を運用する現行国防会議を格段に強化し、アメリカが引き起こす戦争に日米共同作戦として日本を参戦させる態勢づくりのために設置されるものであり、到底容認できるものではないということであります。
 反対理由の第二は、安全保障会議が対処するとしている「重大緊急事態」の内容が全くあいまいであり、このあいまいな「重大緊急事態」への対処を口実に、防衛出動命令、防衛出動待機命令が下令される以前の日米共同作戦準備行動などを、同会議の結論だとして超法規的に実行するおそれがあるということであります。
 反対理由の第三は、安全保障会議の設置は、自民党政治に反対する国民的な運動を「重大緊急事態」と一方的に決めつけて、機動的な弾圧体制をつくろうとするものであることです。内閣調査室の改組・強化や合同情報会議の設置による情報体制の整備等が、情報収集と機密保全、報道統制、世論操作のためのものであり、国民弾圧体制強化をねらったものであることが審議の中で浮き彫りにされたのであります。
 第四に、安全保障会議の設置が、アメリカの国家安全保障会議をモデルに、平時から戦時国家体制を構築することにあることです。この会議を、有事立法や政党法などのファッショ立法を具体的に推進する機関として利用しょうとしていることからも明らかです。
 反対理由の第五は、首相に権限を集中して、政府の中の政府をっくろうとしていることであります。安全保障会議の設置は、現行政府の中に、総理を中心とする特定の閣僚による機関を内閣の中につくり、ここに行政権の重要な部分を担わせようとするもので、憲法体系の上からも断じて容認できません。
 最後に、国の平和や安全など国民に重大な影響を及ぼす本法案の重要性に照らし、我が党は十分な審議を求めたのにもかかわらず、これを行わないばかりか、我が党の質問時間を削るなど不十分な審議で採決に付すことに強く抗議するとともに、本法案の撤回を断固要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
#622
○志賀委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#623
○志賀委員長 これより採決に入ります。
 安全保障会議設置法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#624
○志賀委員長 起立多数、よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#625
○志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#626
○志賀委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。
 地域改善対策調査のため小委員十一名からなる地域改善対策に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#627
○志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#628
○志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。
 また、小委員及び小委員長の辞任の許可及び補欠選任並びに委員の辞任に伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#629
○志賀委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後十時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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