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1985/01/29 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 本会議 第3号
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1985/01/29 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 本会議 第3号

#1
第104回国会 本会議 第3号
昭和六十一年一月二十九日(水曜日)
    ─────────────
 議事日程 第三号
  昭和六十一年一月二十九日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ─────────────
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員林百郎君に対し、院議をもつて功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
     ────◇─────
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(坂田道太君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました林百郎君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員林百郎君は衆議院議員に当選すること九回
 在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ─────────────
#5
○議長(坂田道太君) この際、林百郎君から発言を求められております。これを許します。林百郎君。
    〔林百郎君登壇〕
#6
○林百郎君 ただいま私が永年在職議員として本院から表彰をいただいたことに対し、同僚議員の皆様に衷心より御礼を申し上げます。(拍手)
 また、この二十五年の長きにわたり、幾多の困難にもかかわらず、私を国会に送り出していただいた長野県の皆さんに、心からこの壇上からお礼を申し上げます。(拍手)
 私は、一九四七年の四月、日本国憲法公布後、最初の総選挙で初当選を果たして以来、当選すること九回、今日に至ったのであります。
 振り返りますに、当時、私が三十四歳で立候補いたしましたのは、あの悲惨きわまりない戦争を再び起こしてはならないとかたく決意したからであります。戦前は、治安維持法等による弾圧のあらしが吹きすさび、国民の思想信条、良心の自由はじゅうりんされ、あの侵略戦争への道に突き進んでいったのであります。再びあのような暗黒の歴史を絶対に繰り返してはなりません。
 私は、日本共産党の一員として、侵略戦争と軍国主義復活に反対し、独立、平和、民主主義を守るために一貫して力を尽くしてまいりました。
 今、世界には、広島に落とされた原子爆弾の百万倍もの破壊力を持つ核兵器が存在し、その一部が使用されただけでも、日本民族はもちろん、全人類を破滅に追い込む危険な事態にあります。核戦争の阻止、核兵器の全面禁止・廃絶こそ人類の緊急の重要課題であり、私は、世界で唯一の被爆国日本の国会議員として、その実現のために全力を尽くしてまいりたいとかたく決意をしております。(拍手)
 私は、幸い健康に恵まれておりますので、今後とも、国民から負託された議員としての任務を誠実に実行し、真の独立と平和、民主、中立の日本実現のため努力することをお誓いし、国民と同僚議員諸公によって与えられた栄誉にこたえる覚悟であります。(拍手)
 以上のことを申し上げ、私の謝辞といたす次第でございます。
 まことにありがとうございました。哀心より感謝申し上げます。(拍手)
     ────◇─────
#7
○議長(坂田道太君) ただいま徳仁親王殿下が傍聴にお見えになりました。
    〔起立、敬礼、拍手〕
     ────◇─────
 国務大臣の演説に対する質疑
#8
○議長(坂田道太君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。石橋政嗣君。
    〔石橋政嗣君登壇〕
#9
○石橋政嗣君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、中曽根首相に対して、中曽根内閣の足跡を検証しながら、施政方針演説に関連する若干の質問を行いたいと思います。(拍手)
 改めて言うまでもないことでありますが、昨年は、第二次世界大戦が終結してからちょうど四十年という節目の年でございました。それも、ただ単に区切りがよいというだけでなく、十一月のレーガン、ゴルバチョフ両首脳の会談を契機として、世界の流れは、長期にわたった米ソの対決を軸とする新冷戦ともいうべき緊張激化の時代から、対話の時代、緊張緩和の方向へと再び大きく変わる兆しを見せ始め、まさに転換期ともいうべき年となっているのであります。
 米ソのトップ会談においては、ことしから明年にかけての相互訪問が確認され、核軍拡から軍縮への転換を目指す具体的な提案も、会談を挟んで次々と発表され、世界じゅうをほっとさせていることは御承知のとおりであります。我々は、このような新しい流れを絶対に後戻りさせるようなことがあってはならないのです。それどころか、このような流れをより大きく、より速くするために、我々に一体何ができるかを真剣に考え、実行に移すときなのであります。とりわけ、ことしは国連の国際平和年でもあり、平和憲法を持つ被爆国日本の責任と役割は特段に大きいと言わなければなりません。
 総理、あなたは、このような国際情勢の変化をどのように見ておられるのですか、私はまず第一にそれをお伺いいたしたいと思います。特に、一月十五日、ソ連のゴルバチョフ書記長が、今世紀中にすべての核兵器を廃棄するという、我々が長年にわたって主張し続けてきた核廃絶を目標にした初めての提案を提起したのですが、これをどのように受けとめているかも含めてお答え願いたいと思います。(拍手)
 デクエヤル国連事務総長は、毎日新聞の新春インタビューの中で、「ことしこそ世界の政治指導者たちは、平和への「言葉」を「行為」として推し進めるべきである。各国指導者は、国連で美しい言葉を並べた演説をした後、すぐ忘れてしまうことが多い。平和への好条件が実際に生かされるかどうかを、指導者たちの行為を通じて見届けていかなければならない」と述べております。総理、あなたは、この国連事務総長の的確な指摘を、どのような気持ちでお聞きになったか、それをもぜひお聞かせください。なぜ私がこのようなことを言うかといえば、昨年秋の国連創立四十周年の記念総会におけるあなたの演説と、このデクエヤル事務総長の言葉とを、どうしても重ね合わせてみないではおれないからであります。
 あなたは、国連総会において、世界の平和維持と軍縮の推進、それに核兵器を地球上から追放する努力を強調し、通常兵器の削減を訴え、我が国は一般的に武器の輸出を慎むという政策を堅持しているといったふうに、申し分のない演説をいたしました。しかし、この名演説とあなたが実際に行っている政治とは、一体どこでどのように結びつくのか、私にも事務総長同様わからないからであります。(拍手)時代の流れに逆らうばかりか、国連演説と明確に食い違う中曽根政治の最たるものは、軍縮を口にしながら、実際には軍事力増強に血道を上げている点であります。
 総理、新しい情勢に即して、アメリカは、一九九一年までに財政赤字をゼロにするとして財政収支均衡法を成立させ、軍事費削減に手を染め始め、ソ連もまた、八六年国防予算を前年度水準に据え置いていることは、御承知のことと思います。なぜに日本だけが、総額十八兆四千億円にも上る新中期防衛力整備計画を策定し、来年度予算案においても、対前年度比六・五八%増という軍拡予算を組まなければならないのでありますか。これで軍縮に取り組んでいると言えるのですか。また、世界に向かって軍縮の必要性を説く資格があるというのですか。総理の明快な解明をお願いいたしたいものであります。(拍手)
 言うまでもないことですが、軍事費はGNPの一%以内をめどとするという閣議決定がございます。これは、自己増殖という軍隊の持つ本能に対する歯どめであり、日本が再び軍事大国にならないというあかしでもあります。しかし、この一%枠問題に対する総理の態度は、極めてあいまいであり、すきあらばこれを撤廃しようという意図が余りにも明白であります。既にアジアの各地において、靖国神社公式参拝や教科書の記述改ざん等と相まって、日本に対する警戒と危惧が高まっていることは御承知のとおりです。今こそ一%枠を断固守ると確約すべきときだと思うのでありますが、その意思があるかどうか、お答え願いたいと思います。(拍手)
 なお、私は、軍事費の突出、なかんずく対GNP比一%枠撤廃問題と靖国神社公式参拝、それに国家秘密法案の提出とは三位一体をなすものであり、あなたの体質をあらわにしたものと指摘してきたのでありますが、総理、あなたは、これからも大道を行くと称して公式参拝を続け、国民の目を覆い、口をふさぐ法律の制定をあきらめないつもりでございますか、これまた明確にお答え願いたいと思います。(拍手)
 さらに、国連総会における演説に偽りはないと言うのであれば、日本政府がもっと反核・軍縮のためにイニシアチブを発揮するといったような、具体的な行動があってよいのではないかと思うのです。この問題は、米ソの話し合いに任せておけばよいという性格のものではないはずです。米ソ首脳会談が開かれ、核兵器の五〇%削減案や三段階廃絶案といった具体案が出てきたのも、人類が生んだ文明が人類を破滅させ、文明を終末に追い込む悪魔の道具になろうとしている現実に直面して、多くの政府や国民が危機感を強め、世界の各地で反核・軍縮のために立ち上がったからではありませんか。それを思えば、各自治体が進めている非核自治体宣言の採択を妨害するなどというがごときは、断じて許さるべきではないと思うのですが、いかがですか。逆に、積極的に協力する意思があるかどうかをお伺いいたしたいと思います。
 アジア・太平洋地域においても、昨年、関係諸国の粘り強い努力によって、南太平洋非核地帯条約が成立し、ニュージーランドでは、一切の核艦船の寄港を禁止する法案が準備され、その成立が期待されております。日本政府も、このような動きに負けずに行動すべきです。最近、とみに回数のふえてきたアメリカ原子力潜水艦の横須賀、佐世保への寄港をやめさせ、さきに国会であなたが行った、核兵器を使うか使わないかは核保有国の自由であるとか、日米安保条約が主で非核三原則は従であるといった、そのような発言は取り消されるべきであると思いますが、その意思があるかどうか、明快なお答えをお願いいたします。(拍手)
 さらに、もう一つ明確にしてもらいたい問題は、SDIに対する態度であります。
 総理、あなたは、SDI問題について、理解を示すとか研究開発には道義があるなどと言っていますが、これは一体どういう意味ですか。私には、あなたの言う理解とは、協力もしくは協力への第一段階をカムフラージュする言葉のように思えてならないのであります。現に、政府は、第一次及び第二次SDI調査団をアメリカに派遣し、今また第三次調査団を送ろうとしております。しかも、その調査団には、防衛庁も参加しており、これは明らかに宇宙の平和利用に関する国会決議にも違反する、重大な国民に対する背信行為と言わなければなりません。あなたは、理解するなどと言っていますが、軍拡競争が宇宙にまで拡大されたときの地球と人類の運命を真剣に考えたことがあるのですか。アメリカは、SDIは防衛構想だなどと言いくるめようとしていますが、どんな口実を設けようと、宇宙の軍事化は人類の名において断じて許さるべきではないのです。理解するなどというあいまいな言葉で真相を覆い隠し、その間に既成事実をつくっていくというあなた一流のやり方を、断じて見逃すわけにはまいりません。そんなことはないというのであれば、この席で明確に、SDIへの協力はしないと言明していただきたいと思います。(拍手)
 なお、今朝未明のスペースシャトルの痛ましい事故に直面し、私は、平和利用の面でまだなすべきことが山ほどあり、軍事利用に莫大な金を使うことがいかに愚かなことであるかを、改めて思い知らされました。人類はみずからの知識や技術におぼれてはならないし、平和利用に徹し、あくまでも安全、完璧を期して全力を尽くすべきであります。それこそが、宇宙の神秘を探求するために犠牲になった人たちに対する真の供養であり、死をむだにしない唯一の道ではないのですか。哀悼の気持ちを込めてお尋ねいたしますが、この事故についての御報告と総理の御意見を承りたいと思います。
 とにかく、国連演説とは裏腹に、あなたのしていることは、軍縮ではなく軍拡、それも、福祉切り捨て、教育予算の削減、年金、恩給、給与の抑制、自治体への補助金一律カット、各種公共料金等の値上げ等々、事ごとに国民生活を犠牲にした上での軍事費突出、軍事力増強最優先の政治であり、日米軍事同盟強化路線にほかなりません。しかも、この軍事同盟は、イコールパートナーどころか、我が国の自主性いずこにありやという代物でもあるのであります。
 総理、あなたは、昨年八月アメリカの上下両院において、日本の軍事力増強が一九九〇年までにシーレーン防衛を達成するよう十分に行われているかどうか、毎年一回議会に対して報告するよう大統領に義務づける法案が可決されたことを御承知だと思います。驚くべきことは、このようなアメリカの宗主国然とした態度に接しながら、日本政府が、抗議することも撤回を求めることもなく、ただ事態を見守るという官房長官談話を発表しただけで今日に至っているという事実であります。総理、こんなことをされても、独立国の首相として何にも感じないのですか。ぜひ本問題についての所信をお聞かせいただきたいものであります。(拍手)
 さらに、このことに関連してお聞きしておきたいことは、去る一月十八日の日米安保協議委員会において、アメリカ側が我が国の「防衛計画の大綱」を評価し、見直す必要はないと述べたことであります。従来は、我が国に対し、今指摘したような極端な内政干渉をすら行い、「防衛計画の大綱」についてもデタントぼけなどと批判してきたアメリカが、突然このような変化を見せたことについて、あなたはその理由なりアメリカ側の意図なりをどのように見ておられるのか、それをもあわせてお答え願います。あなたのお得意の私的諮問機関たる平和問題研究会が大綱の見直し論を出し、あなた自身もその気になっていた節があるだけに、この点はぜひ聞いておきたいと思う次第であります。
 さらにもう一つ、政府は、今国会に安全保障会議設置法案を提出するということですが、一体何を意図しているのか、お伺いいたします。
 従来の国防会議は、シビリアンコントロールの機能を発揮するために設けられたものですが、御承知のとおり、全く有名無実の存在となっております。だからといって、これを改組したら強化されるというものではないのです。自衛隊が憲法違反という運命を背負っている以上、機構をどんなにいじっても解決されるわけはありませんし、コントロールする側に立つ者の識見、能力の問題でもあるのです。重大緊急事態に対処するためなどと意味不明の目的をつけ加えて、本来の目的をさらにぼかすばかりか、国民に新たな不安と不審の感を与えるようなものを認めるわけにはまいりません。提案を思いとどまるよう要求するものでございます。(拍手)
 次に、国際情勢の流れに沿った唯一の政府の動きとも言える対ソ外交についてお伺いいたします。
 朝日新聞は、年頭の「主張」の中で、「大切なのはお互いに引越しできない隣人であることを自覚し、緊張緩和をはかりながら、相手を、自分にとって危険のない存在に変える工夫、また相手に、自分を危険な存在だと思わせない工夫であろう」と述べていますが、全く同感でございます。我が党は、長い間、ソ連の脅威を叫び、いたずらに軍事力増強と軍事同盟強化の道をひた走るのではなく、日ソの関係を日中の関係と同じように改善するため努力すべきだと主張し続けてきましたが、ようやく外相会議が持たれ、久しぶりに両国間に対話のレールが敷かれたことは、まことに喜ばしいことでございます。
 現在、日ソ間には、領土問題を初め経済、文化、科学技術、漁業等、多くの懸案がございます。どれ一つをとってみても、両国間の対話が進み、友好関係の確立が実現しなければ解決が難しいものばかりです。あなたは、日ソの関係改善のためにみずから乗り出す意欲を持っているように見えますが、こちらが先に訪ソしてでもとお考えなのか、また、その際の条件は何だと考えているのか、お伺いしたいと思います。
 さきに来日したシェワルナゼ外相は、私との会談の際に、日ソ関係改善のためには、完全に平等であること、双方ともに同じ程度の関心を持つこと、両国の関係改善が第三国に悪影響を及ぼさないことの三つが必要だと述べたのでございますが、これについての総理の御見解、これにつけ加えるものがあるかどうかをも含めてお答え願いたいと思います。
 私は、鳩山元首相がソ連との国交回復に傾けた情熱、田中元首相が中国との国交回復に尽くした努力は、その成果とともに歴史に残る大事業であると高く評価するにやぶさかではありません。あなたもぜひ日ソの関係改善、そしていま一つ、朝鮮民主主義人民共和国との関係正常化に取り組んでいただきたいと思います。
 日朝間の不正常な関係は、過去の歴史を直視する限り、まさに日本国民の良心と道義が問われる問題なのです。幸いに現在、紆余曲折はあっても、南北朝鮮の対話は続き、着実に前進を見せつつあります。まさに機は熟していると言ってよいのではないかと思うのですが、関係正常化に踏み出す意思があるかどうか、総理の見解をお聞かせください。新聞の伝えるところによりますと、さきに朝鮮民主主義人民共和国を訪問した谷日朝友好議員連盟会長代行は、ホ・ダム前外務大臣の訪日を招請し、氏もこれを受諾したということでありますが、ホ・ダム氏の入国が実現すれば、関係改善に向かって大きく第一歩を踏み出すことになるのは間違いないと思うのでありますが、ぜひ入国が実現するよう強く要望いたす次第であります。(拍手)
 次に、財政経済問題についてお伺いいたします。総理自身が日本経済の現状をどう見ているのか、これから先どんな政策によってどのように展望を切り開こうとしているのか、少なくとも施政方針演説を聞き、六十一年度予算案を見る限りでは、その輪郭すら浮かんでこないのであります。
 そこで、まず第一にお尋ねしたいことは、あなたは、政府が今日まで進めてきた輸出主導の経済政策が、国際的には深刻な貿易摩擦を生み、国内においては、国民生活や福祉、社会資本の充実が犠牲になるというような矛盾をさらけ出し、行き詰まっている事実と、それを解決する唯一の方法が、内需を重点とする経済に転換する以外にないということを、お認めになるのかどうかということであります。
 来年度予算案を見る限り、防衛費の六・五八%増しという異常突出、大型所得税減税の見送り、福祉の抑圧、地方財政への一層のしわ寄せといった面や、一時しのぎのさまざまな小細工による粉飾ばかりが目立ち、内需拡大は全くのかけ声倒れに終わっているとしか言いようがありません。これでは、幾ら政府が名目五・一%、実質四%の成長を目指すと言っても、だれも信用しないのは当然であります。また、国債費が前年度比一〇・七%増の十一兆三千億円、一般会計に占める割合が二〇%を超えるというありさまでは、六十五年度に赤字国債をゼロにするという公約も、今や全く色あせたものになったと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 私は、以上のような観点から、予算案の主要なポイントについてお尋ねいたしたいと思います。
 その第一は、あなたの公約した六十五年度赤字国債脱却という財政再建目標についてであります。
 六十一年度の赤字国債の減額幅は四千八百四十億円、目標の半分以下にすぎません。他方、来年度末の国債発行残高は、実に百四十三兆円の巨額に上ります。これでもなお、六十五年度赤字国債ゼロは努力目標であるというような無責任な言葉が許されてよいものでありましょうか。あなたの口から、公約の実現が不可能になったことを率直に認め、責任を明らかにすべきだと思いますが、いかがでございますか。(拍手)
 第二は、税制改革についてであります。
 我が党は、六十一年度に所得税及び地方税合わせて二兆三千億円程度、さらに、数年間のうちに四兆円程度の減税を行うべきであると主張してまいりました。これは、内需拡大のために必要な要件であることは言うまでもありませんが、八年間も本格的な減税が行われなかったことによって生じたゆがみや不公平を解消するためにも、絶対に必要なことなのであります。その財源は、総合課税の強化、法人税制の改革など、徹底的な不公平税制の是正措置等で十分に対処することができます。
 総理、あなたは、公平、公正、簡素、選択など幾つかの改革目標を述べておりますが、国民の求めているのは、そういう抽象的な言葉ではありません。公平を旨とした具体的な大幅減税の実施なのであります。来年度の減税見送りは重大な怠慢であり、国民への裏切りだと思いますが、あなたの所信を承りたいものであります。なおその上に、あなたは、政府税調に対し、まず減税案を出してもらい、秋以降その財源を考えるという方法を求めているようですが、それは、選挙前は減税、選挙が終わったら増税ということですか。これでは、全く国民を欺くも甚だしいと言わなければなりません。名称のいかんを問わず、大型間接税を導入する意図があるのかないのかを含めて、総理の明確な答弁をお願いいたします。(拍手)
 第三は、公共事業の手法と地方財政についてであります。
 政府は、東京湾横断道路や明石海峡大橋など、大型プロジュクトを目玉にして公共事業を推進しようとしていますが、その内容と効果は、大企業優遇以外の何物でもありません。今我が国にとって必要なものは、さまざまな社会福祉施設、文化、スポーツ施設、公園、緑地帯、下水道、住宅等々、国民生活に直結した生活、福祉関連の公共投資であります。これらを推進するため、我が党は住宅、社会資本の計画的充実五カ年計画案を提案していますが、これは二十一世紀に向けての福祉社会の創造と文化立国を目指すものであります。これこそが、輸出依存から抜け出し、国際的な非難の対象となっている貿易摩擦を解消し、働きバチ、ウサギ小屋と言われる状態から脱却する道でもあるのです。ぜひ検討するようお願いいたします。
 また、この方向を進めるためにも、地方財政圧迫をやめ、分権型財政に転換する必要があるのです。ましてや、本年度限りと約束したはずの補助金一括削減法案を再び提出するなどということは、国の責任を放棄し、自治体や住民にそのしわ寄せを転嫁するものとして絶対に容認できません。総理、これはあなた自身がこの国会で約束したことでございます。そのような法律案は提出しないことを、ここに明確にしていただきたいと思います。(拍手)
 第四は、円高によるデフレ現象が進む中で、そのしわ寄せが専ら下請中小零細企業に集中しており、他方では、石油業界等が膨大な不労所得を得ている状況についてであります。
 昨年の五カ国蔵相会議以降、既に四カ月になるのに、円高差益の還元のための政策も、輸出関連中小企業、下請業者への対応も見るべき措置がとられておりません。しかも、中小企業の倒産件数は依然高水準であり、倒産金額では史上最高だというのに、来年度予算案では、依然として中小企業関連予算は極めて冷遇されているのであります。総理、あなたは、昨年来のこの深刻な状況をただ傍観しているつもりですか、ここに明確な具体策を示していただきたいと思います。
 第五は、軍事費の突出と国民生活関連予算についてであります。
 来年度予算案の大きな特徴は、先ほども触れましたが、防衛関係費の聖域化と社会保障関係費の削減によって、経済的に社会的に弱い層に負担が集中しているということです。総理、あなたは、日本人の平均寿命が大きく延びたこと、特に女性の平均寿命が世界一になったことをよく口にいたしますが、七十五歳以上の日本女性の自殺率が十万人につき五十五人と、アメリカの五・四人の実に十倍、先進工業国では世界一であることを知っておられますか。長生きは結構なことであり、喜ぶべきことに違いありませんけれども、我々政治家にとってもっと大切なことは、お年寄りたちが本当に長生きしてよかったと思ってくれているかどうか、この点ではないかと思うのであります。
 要するに、お年寄りの自殺率といった数字一つとってみても、あなたの手によってつくられた予算案は、基本的な過ちを犯しているのです。政治も経済も、そして財政も、すべては国民生活の手段であるはずなのに、実は逆になっているということです。私は、国民生活を底支えするために不可欠な財源は、景気や税収の動きに影響を受けずに、優先的に確保するという財政原則を打ち立てるべきだと思うのです。換言すれば、必要なのは、軍事費の聖域化ではなく、最低生活財源の聖域化だということであります。このような考えに同意し、政策を転換する気はありませんか、お伺いいたします。
 ところで、総理大臣の職にあること三年余、この予算案は、あなたが提出する最後のものとなるでありましょう。しかし今回も、財政再建の見通しの立たない、日本経済や国民生活に明るい展望を約束することもできない、単なる数字合わせの予算案になってしまったようであります。総理、思い切って政策の転換を図るよう、もう一度要求いたします。それができないというのであれば、潔く行き詰まりの責任をとっていただくしかないということも、ここに明らかにしておきたいと思うものです。(拍手)
 次に、衆議院の定数是正についてお伺いいたします。
 言うまでもないことですが、院の構成について、最高裁判所から憲法違反という判決が下された以上、異常事態解消のために全力を尽くすことは、我々の当然の務めであります。
 さて総理、この緊急かつ重要な課題がなぜ前国会において処理できなかったのか、その理由をあなたはどのように見ておられるのですか。それは、野党ばかりか、自民党の一部さえも反対している二名区を含む案を、あなた方が固守したからにほかなりません。(拍手)御承知のとおり、普通選挙法制定以来、ほぼ六十年の長さにわたって続いた中選挙区制は、今や国民の間に完全に定着し、いわば日本の民主主義を育てた土壌と言ってよいのであります。この中選挙区制からはみ出た二名区をつくるということは、選挙制度の根幹に触れる問題であり、今問われている定数の是正問題に便乗して変更するなどということが、許されてよいはずはないのであります。前国会において坂田議長から「見解」が示された折にも、私は、中選挙区制に風穴をあげ、小選挙区制に道を開くおそれのある二名区には、反対である旨述べておいたのでありますが、今度もまた性懲りもなく二名区を押しつけてくるようなことのないよう、ここで改めて強くくぎを刺しておく次第であります。
 なお、あなたは、議長のもとに第三者機関を設けるという構想を持っておられるようですが、その内容を明らかにしていただきたいのです。我々もかねてから、自民党が二名区案を撤回すれば、合区、分区や境界線の画定は、公正にして権威ある第三者機関にゆだねてもよいという案を示してきました。しかしそれは、二名区をどうするかといった選挙区制度の改正問題も含めて、第三者機関に任せてもよいということでは決してないことを、明確にしておきたいと思います。この際、総理の言う第三者機関とは、一体、法律に基づくものなのか、私的なものなのか、どんな構成で何を議論するのか、ここで明確に御説明願いたいと思います。(拍手)
 なお、定数是正問題に関連して、どうしてもただしておきたいことがもう一つあります。それは、本年一月四日の伊勢神宮参拝後の記者会見におけるあなたの発言についてであります。
 あなたは、その席で、戦後四十年たち、立法、司法、行政の三権の関係を見直すべきときだと思うとか、司法がオーバーランしていないかなどと述べていますが、これらは、民主主義の根幹に触れる、いわば現憲法体制に対する挑戦と言っても過言ではないほどの重大な発言と言わざるを得ません。(拍手)みずからを憲法改正論者と認め、「戦後政治の総決算」というスローガンを掲げて政治に取り組んできたあなたの発言だけに、単なる一般論とか、その場限りの思いつき発言として見逃すことはできないのであります。一体、あなたは何を言いたかったのですか。憲法違反という司法の判決をオーバーランと言いたかったのですか。そうだとすれば、憲法違反といいながら選挙を無効と断定しなかったのはなぜだと思いますか。とにかく、このような発言は潔く撤回すべきだと思いますが、いかがですか、明確な答弁をお願いいたします。
 次に、教育問題についてお伺いいたします。
 教育といえば、今国民がひとしく憂えているのは、いじめなど教育の荒廃等の問題であり、その意味では、教育改革もまた重要な課題であることは言うまでもありません。しかし、問題は、改革の基本方針なのであります。欧米諸国の大勢が、専門を早い時期に決めることを避けて、幅広い教養を身につけさせる方向に向かっているときに、我が国においては、臨教審の第一次答申の六年制中学校の提案に代表されるように、逆の方向に向かっているのではないかと思われる点です。これは明らかに改悪ではないでしょうか。
 また、臨教審は、改革の基本的な方向として個性主義を挙げていますが、欧米諸国に比べて、はるかに一学級当たりの生徒数の多い我が国においては、かけ声倒れに終わるばかりか、当面のいじめや非行対策にしても、とても教職員の目が行き届かず、これを根絶することは非常に難しいのではないかと思われるのです。画一的、管理主義的な教育を改めるためにも、子供たちの個性を尊重し伸ばすためにも、まず学級編制基準を直ちに四十人とし、さらにヨーロッパ並みの三十五人以下にすることを目標とすること、また教職員の定数増を実現することが必要だと思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。(拍手)
 次に、国鉄問題についてお尋ねいたします。
 総理は、国鉄改革に並み並みならぬ決意を見せていますが、国鉄経営が完全に行き詰まりを見せている以上、それは当然と言えましょう。しかし、問題は、再建監理委員会の答申に基づく改革が、果たして正しいと言えるかどうかということであります。
 第一、再建監理委員会の審議自体が、事前に国民の声も聞かず、我々の再三の要求にもかかわらず、国会に会議録も提出しないという、全くの密室で行われたものではありませんか。分割・民営といいますが、せっかく全国的なつながりを持っている交通網をずたずたに分割して、利用者に不便を与えることはないのですか。重複によるむだや、国民に一層の負担を強いることはないのでしょうか。また、民営といいますが、もうからない路線を民間が引き受けてくれますか。それは結局、廃止を意味するのではないのですか。そして、ねらわれているのは、琵琶湖の広さに匹敵すると言われる国鉄保有地の問題であります。これが切り売りされることによって、国民共有の財産が特定の者の利益に供されるということはないのでありますか。
 このように、疑問は多く、そのほとんどは全く解明されていないのであります。にもかかわらず、答申の線は絶対であるかのごとくに喧伝し、一方的に準備作業が進められるということは、それこそオーバーランではありませんか。総理、最近全国的に実施された署名運動において、分割・民営に反対した人の数が三千四百万人にも達したことを御存じですか。きょう国会に到着いたしております。知っていてなお一顧だに値しない、既定方針どおりやるとおっしゃるのか、お伺いいたします。
 もし総理が、分割はしない、地方ローカル線を廃止しない、職員の雇用は絶対に確保すると約束するのであれば、経営形態についてはあくまでも柔政に対処し、全国民的立場に立って、各党が一致できる結論を見出すために我々も努力することを約束いたします。要は、相互信頼の上に立った協議の場が保障され、論議を尽くして、真の再建の道を協力して見出すことが必要だということであります。総理の再考を心から願ってやまない次第であります。(拍手)
 最後に、財政再建もだめ、内需拡大も景気の回復も貿易摩擦の解消もだめ、日ソの関係改善や日朝両国関係の正常化もだめといったことにならないようにするためにも、残りの任期を虚心にやってもらいたいということを申し上げておきたいと思います。もう一度繰り返せば、ポイントは、緊張緩和へと動き出した世界の流れに沿って、国連演説どおりに平和と軍縮、核兵器追放のために全力を尽くすこと、内需拡大を求める内外の声に耳を傾けて、政策の転換を断行すること、これです。これをやって初めて、東京サミットが開催される意味もあろうというものであります。そして、それこそが、世界経済の安定と発展を目指すサミット本来の目的にもかなうものであるはずであります。
 総理の決断と実行を要求して、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 石橋議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、スペースシャトル・チャレンジャーの不慮の事故に対しまして、心からお見舞いを出し上げたいと思います。七名の犠牲者につきましては、その勇気をたたえ、また、御家族の皆様方に対して心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 私は、レーガン大統領に早速お見舞いの電報を打ち、外務大臣、科学技術庁長官、それぞれ相手方の大臣に対してお見舞いの電報を打ちましたが、徹底的に今回の事故の調査をやっていただきまして、十分安心のできる体制をつくった上で、さらに勇気を持って前進されんことを期待しておるものでございます。
 次に、国際情勢とゴルバチョフ提案の問題でございます。
 私は、昨年の下半期から世界情勢が、少し潮の流れが変わりつつある兆しが見え始めたかなとも感じておるのです。それは一つは、レーガン・ゴルバチョフ会談が行われたということと、もう一つは、G5の蔵相会議が行われまして、世界の通貨や経済の上にやや変化が生じ得るという、そういう情勢判断も生まれつつあるからであります。その意味において、レーガン・ゴルバチョフ会談を、世界の平和のために非常に歓迎するものでありますが、しかし、国際情勢の実態は、実は厳しいものであって、そう急に変わるものではない、そう思っておるのであります。
 例えば軍縮、平和の問題につきましては、核兵器の廃絶を我々は常に国際的にも訴えてきておるところでございますが、ゴルバチョフ提案を見ましても、核兵器の廃絶については、一年や五年でさっとやめられるというものでないという認識を持っております。紀元二〇〇〇年までかかって、三段階かかって初めて核兵器がなくなる。そういうように、やはり政治の現実から見ますと、両方が安心のできる体制を構築しつつ、現実的に一歩一歩進めよう、そういう態度をとっておるのでありまして、私は、核兵器の廃絶を望む全国民の声を代表いたしまして、国連でも演説をし、訴えてきたところでありますが、政治の現実としては、我々は常に、現実的な立場に立って冷厳に事態を直視しつつ、着実に一歩一歩前進していかなければならない、そのように考えております。(拍手)
 次に、国連事務総長の言明でございますが、私は、国連におきましてデクエヤル事務総長とも会談をして、完全に意見の一致を見たところであり、事務総長の指摘にも同感でございます。その意味におきまして、現在、この平和が米ソ間でいかにして維持されているかと考えますと、遺憾ながら抑止と均衡によって維持されている、こういう現実であります。これは、事務総長もそのように認めておるところでございます。したがって、抑止と均衡をレベルダウンをしながら核廃絶にまで持っていくというのが、我々の立場であります。(拍手)
 そのために大事なことは、両方が安心ができる体制を現実につくり上げていくということであります。両方が安心ができる体制を現実につくり上げていくために大事なことは、例えば検証の措置であります。今回、ゴルバチョフ提案の中において我々が注目しているのは、ここまで進み寄りつつあるということであります。お互いがその核を持っている場所まで見に行こう、あるいは実験、研究の場所まで見に行こう、あるいは化学兵器をつくっている場所まで見に行こう、こういう可能性をゴルバチョフ書記長が暗示してきたということは、私は非常に興味深く、注目しているところでありまして、これらの点が着実に前進して、核廃絶あるいは化学兵器の廃絶にまで持っていくように私は全面的に努力していきたい、このように考えておるところであります。(拍手)
 我が国の防衛につきましては、我が国は、憲法及び基本的防衛政策に従いまして、自衛のために必要な最小限度の防衛力の整備を図る、それと同時に、国際的にも軍備管理、軍縮の実質的進展に努力しているということであります。我が国ぐらいのこれだけのGNPや経済力を持っておりまして、GNP一%以内にとどめる努力をしておる国というのは、大国ではほかにありません。そのように我々は自制をしていて、そして、国民負担をできるだけかけないように努力しつつ、懸命に国際的にも調和させておるというのが、我々の立場でございます。現に、社会保障費と防衛費を比較してみますと、本年度予算におきましても、社会保障費は九兆八千億円です。防衛費は三兆三千億円であります。これを見ましても、社会保障について我々がいかに努力しておるかということは、お認め願えると思うのであります。
 次に、三木内閣の防衛関係費に係る閣議決定については、六十一年度予算案においても守ったところでございます。今後の防衛関係費の対GNP比につきましては、GNPの動向であるとか、あるいは給与費がどういうふうに動くかとか、景気の情勢がどうなるとか、そういう問題にも関係しておりますが、いずれにせよ、三木内閣の防衛関係費に係る閣議決定については、これを尊重し、守っていきたいと念願をいたしております。
 靖国神社の公式参拝につきましては、昨年八月十五日の公式参拝は、国民や遺族の方々の多くが、靖国神社を我が国の戦没者追悼の中心的施設であるとして、同神社において公式参拝が実施されることを強く望んでいるという実情を踏まえ、祖国や同胞のために犠牲になられた方々の追悼を行い、あわせて我が国と世界の平和への決意を新たにする、言いかえれば、不再戦の誓いを新たにするという目的で行ったものであります。(拍手)今後の靖国神社に対する参拝につきましては、そのときの情勢によりまして具体的に検討してまいりたいと考えております。
 国家秘密保護法の問題については、前から申し上げておりますように、日本はよくスパイ天国と言われておるのであります。これは、今までのいろいろな事件を見ましても、国民が御承知のとおりなのであり、どの国家におきましても、外交や防衛等に関する重大な国家秘密は、皆法律を持って守っているというのが、普通の国のあり方なのであります。しかし、この種の立法については、人権の問題であるとか、あるいは知る権利の問題であるとか、あるいは行政の公開の問題であるとか、そういういろいろな問題もあり、先般の議会におきましても、野党の御意見も聞き、国民の十分な御意見をお聞きして、その上で検討したいと申し上げているのでありまして、私は、そのような慎重な配慮をした上で納得のできる法案を、あるいは議員立法によるか政府提案によるか、ともかく提案いたしたいと検討してまいる所存であります。(拍手)
 次に、地方の非核宣言の問題でございまして、これは、地方自治体が地方自治の本旨に基づいて意見表明を行っているところでございまして、我々は、それはそれなりに参考にしてまいる、そういう考えに立っておるわけでございます。
 原潜の寄港の問題につきましては、これは我々は、安保条約の取り決めに基づきまして、あくまで非核三原則の上に立って事前協議の対象になっております。今後も、ここで御答弁申し上げましたような姿勢で一貫してまいるつもりでおります。
 次に、安保条約が主か非核三原則が従かという御質問でございますが、歴史的に見れば、安保条約が主であることは明らかであります。これは、日本が独立するときに、吉田元首相が先方と締結して、それで、その運用の上に立って非核三原則というものがその後に生まれてきた、そういう歴史的過程をとっているわけであります。そうして、日米安全保障体制は、我が国の安全保障確保のための枢要な一つでありまして、その上に立って、核持ち込みについては、日米安全保障条約の事前協議といたしまして、厳重にこれをコントロールしておるわけであります。もし事前協議が行われた場合には、政府はこれを拒否する、そういう態度をとっておるのでありまして、非核三原則は安保条約上の事前協議制度の運用によって確保されることとなるとの制度上の仕組みを説明して申し上げているというものなのであります。
 核の使用につきましては、核兵器のようなあのような凄惨な大量殺りくの兵器は用いられてはならないし、用うべきではないと私は確信しておるものであります。しかし、国際法上、じゃどうであるかと法解釈を見ますと、これは現在の国際法上においては禁ぜられておるものではないのであります。だからといって、使っていいという問題ではないのであります。我々は、あくまで核兵器の廃絶を目指して、今後とも一貫して進んでまいりたいと考えておるものなのであります。
 SDIにつきましては、レーガン大統領より、これが非核の防御手段であり、究極的には核兵器の廃絶を目指すものである、その説明を受けまして、我々は理解の意思表明をしたところでございます。しかし、SDIという内容、これからの発展につきましては、さまざまな変化が将来も考えられると思いますし、発展も考えられると思うのであります。そういう情勢をよく把握した上で判断すべきである、そう考えまして、慎重に今検討中であると申し上げる次第でございます。
 次に、SDIの調査団への防衛庁の参加及び国会決議の問題でございますが、これは政府全体の問題でございます。したがって、防衛庁も政府の一員として調査に参加しておるということであります。この調査に参加するということが、国会の決議に反するとは考えておりません。
 次に、米国が日本の防衛努力を求める国会決議、授権法を行ったという問題でございますが、アメリカは安保条約を結んでいる相手でありまして、アメリカは、日本に有事があった場合には守る義務と責任を負っているわけでございます。そういう意味において、アメリカの国会議員が、相手である日本側の防衛力の程度等について、いろいろ関心を持つことは当然であり、アメリカの税金を払っている市民に対する議員としてのある意味においては、責任でもあるかもしれないと我々は了解できるところであります。しかし、日本の防衛は、あくまで日本の権威において、日本の自主性において行うところでありまして、アメリカ側のそのような関心というものは、我々はこれを参考にしておく、そういうことであると御理解願いたいと思うのであります。
 防衛計画大綱の見直しに関するアメリカ側の考え方でございますけれども、これは、従来とそれほど大きく変わった表現をしているのではないのであります。石橋議員も、あのとき日米会議のいろいろなテキストをごらんいただきますと、それほど変わったものでないということはおわかりいただけると思うのであります。先方が言ったということは、日本が例えば独力で、核兵器を含むような大量の侵略事態に独力で対処できるようなものに変えるということは、関係周辺諸国の心配を招き、それは必ずしも得策でありません、そういうことを言っておるのでありまして、我々の「防衛計画の大綱」は、そんな核兵器も含むような大量の侵略事態に我々が対処しようとしているのではないのであります。我々は、限定的な、そして局部的な侵略に対して対応できるという、そういうものであって、それ以上のものについては、安保条約に基づく米軍の協力を期待している、そういう態度で「防衛計画の大綱」もできておるのでありまして、我々はその線を一貫して今も持っているわけであり、アメリカがこの線について心配をしているということはないのであります。むしろ「防衛計画の大綱」を充実してもらいたいというのが、アメリカの従来の態度であり、今においてもそういう基本的態度は変わっていない、そのように理解しておるものであります。
 次に、安全保障会議設置法の問題でございますが、これは、行革審の答申に基づきまして、政府として今回、この会議の法律を提出いたしたいと思っておるのでございます。それは、今までは国防会議の所掌の、例えば外国が日本に侵略してくる場合の防衛出動であるとか、そういう国防上の緊急事態を対象にしておったのでございますが、例えばあの大韓航空機の事件のような問題、あるいはダッカにおけるあのハイジャックのような問題、こういう国際関係において緊急事態で出てくる問題に対する対処方針、連絡方針について十全の備えをしておこうと、今までの経験にかんがみてそのような措置をとるというものでございまして、そう御心配をいただくようなものではないということをここで申し上げるものなのであります。
 次に、武器輸出三原則と対米武器技術供与の問題でございますが、対米武器技術供与は、日米安保体制の効果的運用の確保の観点から、武器輸出三原則等の例外として、その方途が開かれているものであります。対米武器技術供与は、日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで実施されることになっており、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則のよって立つ平和国家としての基本理念は、あくまで確保されているものなのでございます。
 日ソ間の諸懸案の対話の問題でございますが、今般、シェワルナゼ・ソ連外相の来日につきましては、これを歓迎し、日本に来ていただいたということを大いに多とするものであります。私は、日本全国民の念願として、北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、我が国の重要な隣国であるソ連との間に、真の相互理解に基づく長期的な安定的関係を築きたい、その一貫した方針で対処し、また、今後も対処するものなのでございます。
 今回の会談によりまして、外相間の定期協議が、これが正式にまた再確認されて、安倍外務大臣が次はモスコーに行き、次はシェワルナゼ外務大臣が日本に来ることになりました。もう一つは、私とゴルバチョフ書記長間の相互訪問が約束された、これは意義深いものがあると考えておるものであります。我々は、先般の外相会談及び私とシェワルナゼ外務大臣との対談等を基礎にいたしまして、今後も、粘り強く両国の関係を打開するために努力してまいりたいと考えておる次第であります。
 私の訪ソについては、その際、私はシェワルナゼ氏に数点のことを申したのであります。第一は、最近における極東におけるソ連軍の増強の状態について、極めて憂慮しているということ。あるいは、アジアにおけるSS20の展開について、ヨーロッパ側においてこれが削減されるならば、アジアにおいても並行してこれが削減されることを期待する。それから、北方領土における最近におけるソ連の軍事力の増強については、日本全国民が非常に憂慮して見ている。これらの問題は、我々の憂慮を解いてもらいたい。そういうことを強く私は申したのでございます。(拍手)
 それで、首脳間の訪問につきましては、我が方の総理大臣は、鳩山総理大臣以後四人が既にモスコーに行っておる。今回はゴルバチョフさんが日本においでになる番であるから、どうぞゴルバチョフさんよ、東京にぜひおいでください、大歓迎をいたします。その次に、今度は私がモスコーへ参りましょう。そういうことを私は申し上げたのであります。もっとも、国民が喜び、また、私の訪ソは意味あるという、そういう結果をもたらすような場合には、私は訪ソすることも、それは考慮しても結構です、そういうことを言ってありまして、国民が喜び、私が行くことが意味があることが出てくるか出てこないかということが中心であるということも、申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)
 対ソ基本方針に関する石橋書記長の三点の御方針については、私は一般論としては全く同感でございます。先ほど申し上げましたような考えに立ちまして、長期的安定を築くために、相手方が手ごわければ手ごわいほど対話をしなければいけないとは、私が申しておるところで、その精神に基づいて実行してまいるつもりであります。
 日朝関係につきましては、外交関係はございません。経済、文化等の分野において民間レベルの交流を重ねていくという、従来の方針を続けてまいるつもりでございます。やはり韓国と北朝鮮との友好関係がどういうふうに進展していくか、これが一番大事なことです。二番目は、北朝鮮の外交政策が今後どういうふうに世界的に変化していくか。あるいはまた、日本としては、私の記憶ではたしか八百億円ぐらいの日本の債権がございます。日本の会社が持っている債権がある。この利子を最近は払わないわけであります。谷君が行きましたのは個人的な立場で参りまして、特に、この利子をまず返したらどうですかという話が第一であったのであります。そのように、国際間の債権債務に関するような約束は、これは実行してもらうことがやはり大事である、そう思っておるのであります。(拍手)
 そのほか、漁業問題等についても、両国間の問題がございますから、両国間におきまして、できるだけ意思疎通を行い、そして理解が進むように積極的に努力していくことは結構である、そのように考えておるところであり、御指摘のお方が日本に来るか来ないかという問題は、まだ別にビザが申請されたわけでもなし、先方のお考えも承知しているところではないのでありまして、これが現実化したときによく検討してみたいと考える次第でございます。
 次に、内需中心への経済の転換でございますが、これは御存じのように今、日本の国債の累積額が、書記長御指摘のように、来年三月には……(発言する者あり)失礼いたしました。石橋委員長が御指摘のように、百四十三兆になります。そういう意味におきまして、ことしは予算上、国債費も十一兆三千億円になるわけであります。そういうような情勢からいたしまして、財政的には極めて厳しい状況にございます。したがって今後は、内需中心の景気の持続的拡大を図るために、円レートの動向とその国内経済に及ぼす影響等に注意を払いながら、引き続き適切な、機動的な経済運営に努めてまいります。また、民活が最大限に発揮されるように、法制度についても検討を加えていきたいと考えております。
 政府は、昨年十月に、また十二月に、おのおの内需拡大の政策を発表いたしました。一般公共事業費の拡大につきまして、また住宅減税あるいは設備投資促進のための税制上の措置等につきまして、住宅まで入れますと、事業量において五%以上増加するという今回の予算の編成をやっております。また、民間活力活用のための所要の措置等も、いろいろ苦労いたしまして、例えば東京湾の横断の架橋であるとか、明石海峡に対する大橋の建設であるとか、それらの問題もいよいよ実行に移すという考えに立ったわけでございます。今後も、内外の経済動向及び国際通貨情勢を注視しながら、金融政策の適切かつ機動的な運営を図る所存であります。これによりまして、六十一年度の実質経済成長率は四%程度と見込んでおります。
 六十五年度赤字公債依存体質からの脱却は、財政状況が極めて厳しい情勢ではございますけれども、この旗をおろすわけにはまいりません。この旗をおろすということは、ややもすれば、今まで努力してきたことが水泡に帰する、予算の膨大、増長を招くという危険性すら出てくると考えまして、我々は最大限の努力をして、この六十五年度赤字公債依存体質からの脱却という方針に向かって努力してまいるつもりでおります。
 減税につきましては、シャウプ税制以来三十数年を経過いたしまして、ゆがみやひずみが出てきておりますから、今、税調に諮問しておるところでございます。まず、所得税あるいは法人税あるいは相続税等の全面的な改革案をお出し願いたい、そして、秋にそれに対する包括的な財源措置を考える。順序は、やはり国民の一番熱望しているところにこたえるのが順序ですから、まず減税を考え、次にその後始末を考えるという、そういう順序を考えたわけであります。
 次に、公共投資の拡充の問題でございます。
 六十一年度予算におきましては、厳しい財政事情のもとで、住宅対策、防災対策、あるいは下水道あるいは公園、社会資本の整備に配慮をいたしました。そして、一般公共事業費につきましても、民間資金の活用など種々の工夫も行いまして、事業量としては前年度以上の伸びを確保したところでございます。
 補助金の特例法案の問題でございますが、昭和六十年度において、一年間の暫定措置として、この整理合理化に御協力をいただいたわけでございますが、六十一年度以降のあり方につきましては、国と地方の間の役割分担、費用負担の見直し等とともに十分検討を進め、結論を得るようにしたところであり、この経緯の上に立って、補助金問題関係閣僚会議の決定に基づきまして、補助金問題検討会の報告の趣旨を踏まえまして、政策分野の特性に配慮しつつ、社会保障等を中心に事務事業の見直しを行いながら、補助率の見直しを行ったという結果でございまして、所要の立法措置を要するものについては、いずれ国会に提出いたしたいと考えておりますので、よろしく御審議をお願いする次第でございます。
 中小企業の円高対策につきましては、昨年十二月、政府系中小企業金融三機関による特別融資制度等緊急対策を実施し、さらに本年一月、同特別融資の金利を引き下げました。六・八%から五・五%に下げたわけでございます。また、中小企業者の事業転換の円滑化等のために、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法案を、今国会できるだけ早い時期に提出したいと考えております。また、下請取引の適正化等につきましても、円高等も考えまして、指導を強化してまいりたいと思っておる次第でございます。
 石油産業等の円高差益還元の問題でございますが、石油製品の価格は、市場メカニズムによって決定されて、政府は介入しておりません。したがって、円高差益の問題は、市場メカニズムを通じて、石油につきましては広範に需要者に還元されつつあるものもあるわけであります。石油産業は、市況低迷によりまして、本年度上半期で千億円強の赤字を計上するなど、経営基盤は極めて脆弱でございます。やはり石油産業の体質強化ということも大事ではないかと考えております。
 次に、長寿社会の問題でございますが、我が国は、今や人生八十年時代となっており、国民一人一人が安心して老後を迎え、健やかな充実した日を過ごすことができるように政策を行いたいと念願しております。このために、年金、保健医療、雇用、生涯教育等総合的な施策の推進が必要でありまして、本年半ばを目途として長寿社会対策大綱を策定し、政府全体として積極的に取り組む考え方でおります。
 防衛関係費と社会保障費関係につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、社会保障関係費については、今後の高齢化社会の進展に対応しまして、各種施策が長期的に安定的かつ有効に機能するように、制度面や運用面におきましても細心の注意をしてまいりたいと思う次第でございます。
 次に、定数是正の問題でございますが、現行の衆議院議員の定数配分規定は、さきの最高裁判決によって違憲とされたものであり、その速急な是正が立法府に課せられた責務であります。先般の国会におきましても、各党でも真剣な御努力をいただきまして、各党とも案を提出されたのであります。いろいろ審議したところでございますが、しかし、意見の一致を見なく、ついに廃案になったことは、極めて遺憾でございます。
 いずれにせよ、各党は、合意をいたしまして、国会決議を行いました。また、議長見解に対しましては、各党はこれを了承した次第でございますが、これらを踏まえまして、国会全体の責任と仕事といたしまして、国会決議を実践し、議長見解が実現できるように、速やかに我が党も協力いたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)二人区の問題についての御発言がございましたが、これはいずれも、今国会におきまして各党で御協議願う対象ではないかと思う次第でございます。
 第三者機関の問題は、旧臘の党の委員長、書記長、我々の幹事長、総裁との首脳会談におきまして、実は公明党、民社党の皆さんの御案の中に、そういう第三者機関という考え方が示されておりましたので、私は、これは非常に結構だと思いますと、賛意を表明いたしました。そういうわけでございまして、自民党が率先して先に言ったという問題ではないのでございます。むしろ公明党、民社党に従ったというのが実相でございます。しかし、これらはいずれも、国会の各党におきまして御協議願う問題でございまして、自民党だけが独走するというような考えはございません。各党において十分御協議願いたいと思う次第でございます。
 次に、司法のオーバーランの問題でございますが、私は、戦後四十年の日本の議会政治や政治全般を常に点検し、反省していくことが、我々国会議員や政治家の責任であると考えております。したがいまして、立法、司法、行政の三権の調和がうまくいっているかどうか、機能しているかどうか、これらは、我々はある意味においては、立法府の構成員であり、私はまた行政機関の長でもございます。そういう意味におきまして、この三権の関係を、常にうまくいっているかどうか反省する責任の一端を持っております。そういう意味におきまして、一つの例といたしまして、例えば行政が独善に陥っていないかとか、あるいは司法がオーバーランをしていないかとか、そういうような例示として申し上げたのであります。独善とかオーバーランということは、相通ずる言葉であります。独善になればオーバーランになるのである。オーバーランする場合は、独善に決まっておるわけであります。そういう意味におきまして例示として申し上げたと、そのようにお考え願いたいのであります。
 教育の改革につきましては、今次教育改革は、個性重視の原則、基礎、基本の重視、創造性の育成、選択機会の拡大等を中心に進められております。六年制中等学校は、臨教審の第一次答申において、このような考え方に立って提案されたものであり、我々は、今これを鋭意検討しているところでございます。四十人学級につきましては、昭和五十五年度から六十六年度までの十二年計画により、これを実施するということにいたしまして、その目標に前進しておるところでございます。
 国鉄監理委員会の審議内容の問題でございますが、これは監理委員会は、関係方面の意見をお聞きいたしまして、「国鉄改革に関する意見」を作成したと理解しております。この委員の皆さんに自由闊達な意見を表明させるためには、やはり申し合わせによりまして非公開にした方が自由が保障される、そういう御意見によって今のような措置がとられた、そのように認識しております。
 国鉄改革の問題につきましては、これは、国鉄をむだのない効率的経営形態に改革して、真に利用者の利便にこたえられるような鉄道として再生したい、そういう認識によりまして行ったものなのでありまして、現在のままいきましたら、三十七兆円の大借金を抱えておりまして、国鉄の年金すら払えないという状況になっておるわけでございます。このままいったら国鉄の運命がどうなるか、そういう意味におきまして、合理化、効率化、民間手法の取り入れ、そういう面に重点を置きまして、今回のような分割・民営案になったのでございます。その中でも大事な問題は、長期債務の処理の問題と、それから雇用者の問題でございます。これらにつきましては、政府は、責任を持って今措置をしておるところであり、特に、雇用者の問題につきましては、全内閣を挙げて今努力しているところでございまして、行政官庁はもとより、公社公団においても、地方公共団体におきましても、あるいは経済界におきましても受け入れていただきますように、内閣挙げて努力して、国鉄の従業員の皆様には御心配をかけない、そういう決心で今進めておるところでございます。
 不採算路線の維持につきましても、現状のままいったならば、国鉄自体が崩壊して、採算路線までもこれはどうなるかわからぬという状態にあるわけでございます。したがいまして、まず親をしっかりさせて、親がしっかりすれば子供の方も直ってくる、こういう考えに基づいて国鉄全体の改革を行っているという考え方であります。
 国鉄保有の資産の処分につきましては、これは普通、会社でも個人でも、借金で動きがとれなくなった場合には、やはり株を売り、土地を売り、自分の借金を、まず自分の財産を売り払って、人に迷惑をかけないというのが、こういう場合のやり方でありまして、国鉄といえども、自分の財産を売って迷惑をかけないようにするというのは、世の中の常識ではないかと私は思っておるのであります。問題は、これが適正にうまく行われるかどうかということでありまして、それらにつきましては、我々は、慎重かつ厳正に行われるように努力していくつもりでおります。
 改革の手順につきましては、いよいよ今議会に法案を提出いたす予定でございます。その上に、これが成立を見た上は、来年これをいよいよ実行に移す、そういう段取りで鋭意努力してまいりますので、国会審議も十分皆様方の御協力を得たいと考えておるところでございます。
 最後に、平和と軍縮の問題でございますが、平和の維持と軍縮、なかんずく核軍縮の促進は、人類共通の大きな問題でございます。特に、広島、長崎の惨劇を受けた日本民族としては、全民族の悲願として、一日も早く核廃絶に向かって前進していきたいと思っております。ただし、それを実現するためには、現実的な実効性ある措置をとりまして、みんなが安心してやめられる体制をつくっていく。そのためには、検証問題をさらに深くきわめていくという必要もございましょう。あるいは、信頼醸成措置をさらに深めていく問題もございましょう。あらゆる問題について我々は懸命に努力してまいるつもりでございます。
 以上で御答弁を終わりにいたします。(拍手)
    ─────────────
#11
○議長(坂田道太君) 藤尾正行君。
    〔藤尾正行君登壇〕
#12
○藤尾正行君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、中曽根総理の施政方針に対して質問を行います。
 質問に先立ち、本年は、天皇陛下御在位六十年のまことに慶賀すべき年であり、天皇陛下の御長寿を心からお祝いを申し上げます。(拍手)
 本朝午前一時三十八分、アメリカのスペースシャトル・チャレンジャーが打ち上げられて間もなく、爆発を起こし、F・スコビー船長を初め七名の搭乗者が犠牲になられました。私はここに、とうとい生命をなくされた搭乗者の方々に対し、心から御冥福をお祈りするとともに、レーガン大統領を初めアメリカ国民に対し、哀悼の意を表するものであります。科学技術のすべてを結集して取り組んでおられる宇宙開発の中にあって、予期されない大事故の遭遇でありますが、アメリカはこれにくじけることなく、大きな勇気を持って、全人類のためになし遂げなければならない宇宙開発計画に取り組んでいかれることを、強く願うものであります。(拍手)
 衆議院議員の定数是正について、最高裁は違憲判決を下されました。我々は、前国会において解決することができず、次期国会において速やかに是正の実現を期することを決議いたしました。国権の最高機関である国会は、衆議院の構成に関する基本事項である定数配分、これを違憲であるとされたまま放置することは、いかなる理由があろうと絶対に許されることではございません。定数是正は、各党、各議員に課せられた喫緊の責任であり、一刻も早く速やかに解決し、国民の負託にこたえるべきであることを、ここに強く訴えるものであります。
 さて、中曽根総理は、自民党総裁に再選されて以来、早くも一年余を経過し、党則によれば、総裁の任期はわずか九カ月となりました。中曽根内閣が発足をして以来三年余の間に、総理は、「戦後政治の総決算」を目指して、行政改革、財政改革、教育改革等に精力的に取り組まれ、また、世界経済の発展と平和軍縮外交の推進に努力され、我が国の国際的地位を高めてこられました。私は、中曽根総理が今日まで、これら山積する多くの問題に対し、積極的に精力を傾倒されてこられたことについて、心より敬意を表するものであります。(拍手)
 しかし、内外の諸情勢はなお厳しく、解決を要する困難な課題が多く残されております。行政改革も、まだまだこれからが正念場であり、その中心的課題である民営・分割による国鉄改革は、この国会から審議が始まるのであります。そして、さらに新たな分野の改革にも踏み込まなければならないのであります。財政再建も、政府の懸命の努力にもかかわらず、目標達成は容易ならざるものであり、教育改革も、臨教審の答申を受けて、これからどう実行されるかが問題なのであります。我が国は、国民皆様方の御努力によって今日、世界のGNP一割国家としての地位を確立いたしましたが、そのために引き起こされた対外不均衡と貿易摩擦により、我が国を取り巻く当面の国際経済環境はますます厳しさを加える等、これを克服するための内外にわたる政治的重要課題が、解決を要請されているのであります。このような情勢のもとで、中曽根総理は、いよいよ仕上げのときとも言える残された九カ月の間に、高邁な政治哲学とは別に、解決すべき課題の選択手順と解決のための具体的スケジュールを、国民に明らかにする責任があると考えます。総理のお考えをまずお伺いいたします。(拍手)
 次に、日本を取り巻く国際経済環境の認識と対応についてであります。
 我が国を取り巻く国際経済環境には、極めて厳しいものがあります。すなわち、経常収支不均衡の拡大と、みずからを守ることのみに専念する保護主義の高まりは、依然として衰えを見せず、かつての世界経済を主導してまいりました闊達な自由貿易体制の展開を根底から揺るがせております。事実、米国を初めとする先進国の経済の成長は、従来の考え方からすれば鈍化しつつあり、中でも、一次産品の価格の低落は、累積債務に悩む開発途上諸国に底知れぬ不安と暗い影を落としております。この時期に、年間五百億ドルにも達しようとする我が国の経常収支の黒字が、米欧諸国を初め世界的な経済摩擦を一層加速しようとしております。黒字問題への対処を含め、いかにして我が国の経済社会を国際的調和に即したものにするか、また、国際経済社会のために我が国がいかなる貢献を行っていくのか、今日ほど厳しく問われているときはないと考えます。
 過去一年、我が国は、かかる認識のもとに、市場アクセス改善のためのアクションプログラムを策定し、これを早期に実施するための法律改正を行い、円高を定着させるための努力、内需の拡大等に懸命の努力をしてまいりました。しかし、状況はますます厳しさを増す中で、改めて抜本的な発想の転換をしなければならないのではないでしょうか、総理の基本的な考えをお伺いするものであります。我が国の持つ黒字を、世界の秩序回復、ひいては世界平和のために思い切って提供すべきではないでしょうか。また、我が国の経済構造を調整し、思い切った新ラウンドの実現に向けて勇敢に取り組むべきではないでしょうか、お伺いをいたすものであります。
 南北問題の解決、開発途上国の安定と発展なくして、世界平和と安定はありません。貧困と飢餓を救済し、累積債務問題を解決して、世界の自由と平和安定を回復するために、もうそれほどに時間の余裕はありません。一つ間違えば、あすの国際経済の協調が破れ、世界経済全体の破滅さえ予見されるのであります。開発途上国の安定と発展に、思い切った積極的協力が要請されております。政府開発援助の抜本的拡充と質的改善が最も肝要であります。六十一年度予算において、厳しい財政の状況の中で、ODA第三次中期目標を立て、他のすべての政策経費を大幅に上回る伸び率の予算を計上したのも、これがためであると考えます。政府開発援助に対する国際国家日本を代表をする総理の所信をお伺いいたします。
 本年五月に行われる東京サミットは、このような世界経済の運営に責任を有する先進諸国首脳が、二十一世紀に向けて、自由率直な意見交換を行い、どのような方策を見出すのか、また、米ソ首脳の会談を控えて、世界の平和、軍縮のためいかなる腹固めをするのか、極めて重要な会議となるものと考えます。総理は、本サミットを世界政治の中にどのように位置づけておられるのか、主催国首脳として、その決意についてお伺いいたしたいと思います。
 次は、さきに行われた日ソ関係についてであります。
 本年は、一九五六年の日ソ共同宣言によって、日ソ両国間の国交が回復されて三十年という節目の年に当たります。しかし、両国間では、北方領土問題という基本的な問題が未解決のまま残されており、今日なお、平和条約が締結されるに至っておりません。北方領土問題について、ソ連が歯舞、色丹の二島返還を示唆しているかのごとき報道があります。しかし、我が国は、歯舞、色丹とともに、我が国固有の領土である国後、択捉の二島を含む北方四島の一括返還を求めているのであります。(拍手)北方領土問題の解決なくして、日ソ間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することはできません。この機会に、改めて北方領土問題に対する政府の基本的考えを確認したいと思います。
 近年、政府が、日ソ関係の厳しい状況を踏まえつつ、両国間の対話の拡大強化に努め、このたび、十年ぶりにソ連外相の訪日を得て外相間定期協議を行い、その結果、領土問題を含む平和条約交渉の再開と両外相の相互訪問につき合意したことは、我が党の大きな評価をかち得ております。私は、このたびの定期協議の結果を、従来凍りついていた両国関係を、話し合いのスタートラインに戻したものであり、協議折衝はこれから軌道に乗って始まると期待いたしますけれども、政府はいかに評価しているか。また、定期協議の結果を踏まえ、今後いかに取り進めていくのか。特に、総理とゴルバチョフ書記長との相互訪問につき合意を見たのでありますが、過去数回の最高首脳の対談は、いずれも日本側の訪ソでモスクワにおいて行われております。極めて一方的な感を免れません。北方四島を返還する確かな手ごたえが示されない以上、いたずらに総理が訪ソされる必要はないと信じます。今度はゴルバチョフ書記長が訪日すべきであると考えますが、総理の最高首脳間の直接対話についての所信をお示しいただきたいと思います。
 次に、内政問題についてお尋ねいたします。
 その第一は、財政改革についてであります。
 我が国財政は、極めて巨額の借金を抱え、六十一年度末における公債残高は百四十兆円を超えると見込まれ、その利払い等に要する経費も、六十一年度予算では十一兆三千億円、実に歳出の二〇%を超えるという厳しい状況になっております。このような状態では、財政が本来期待されている内外における責務を果たすことが困難となっているのみならず、次の世代に大きな負担を残すこととなり、我が国の将来の安定と発展のためにも、極めてゆゆしい事態になっていると言わざるを得ません。したがって、このような不健全な状態から一日でも早く抜け出し、財政がそのあるべき姿を取り戻すためにも、財政改革は国政の最重要課題の一つであります。
 このため、六十一年度予算も、一般歳出を四年連続のマイナスの伸びに抑え、公債発行額を減額し、財政改革の歩を進めたのであります。また、各種制度、施策についての積極的見直し、国と地方との間の役割分担、費用負担の見直しを行う一方、景気への配慮や国際的責務の増大への配慮を行い、限られた枠の中で最大限の努力をいたしました。総理は、財政改革を進める中で編成されたこの六十一年度予算の基本的性格と意義について、どのように考えておられるか、お伺いをいたします。
 ところで、六十一年度予算では、公債発行額を減額したとはいえ、なお五兆円余りの赤字公債を含む十一兆円近い新規公債の発行を予定されております。六十五年度までに赤字公債依存体質から脱却するという目標の達成が、難しくなったという声も聞かれます。しかし、財政改革は今こそ全力を挙げて取り組むべき課題であり、過去数年間国民の協力のもとに行ってきた努力を無にしないためにも、この目標はあくまで堅持すべきであると考えます。総理の決意を改めて国民の前に明らかにしていただきたいのであります。具体的にどのような方策とスケジュールで、六十五年度までに赤字公債依存から脱却しようとするのか、その基本的な考え方と今後の財政改革の中長期の見通しが、国民の最も理解したいところであります。総理の御所見をお伺いいたします。
 税制改革については、総理は、施政方針演説においても、税制改革の強力な推進をうたい、税制調査会の審議に対し強い期待を表明しておられます。税制は、財政全体を支える基盤であり、また、幅広く国民生活にかかわり合う政治の出発点とも言えると思います。戦後我が国の税制の礎を築いたシャウプ税制改革以来、三十五年が経過いたしました。激しく移り変わる環境の変化は、産業、就業構造、所得水準と分布、消費構造、人口構造の変化等、社会経済を一変いたしました。また、将来を展望すると、ますます速度を速めて変化するものと考えられます。このような変化に対応できる税制を確立することは、最も重要な政治課題の一つであります。我が自民党は、このような変化に対応し、中長期的な視野に立って思い切った改革に取り組んでおりますが、真の改革を実現するためには、全国民の御協力を得ることが肝要であり、総理の確固たる決意と強力なリーダーシップが成否を決するかぎとなります。税制改革に対する総理の決意をこの際、国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
 我が国経済は、自由貿易体制の恩恵を最大限に享受し、今日の繁栄を築いてまいりました。しかしながら、米国の巨額の財政、貿易赤字の継続、経済成長率の鈍化、欧州の高失業率等を背景に、暗い保護貿易主義の影が世界の各地の空を覆い始めました。世界経済に活力を与えるためには、世界経済の活性化、持続的成長に積極的に貢献していくことが、我が国の国際的責務であります。他方、五十八年年初以来順調に拡大を続けてきた国内の景気も、このところ力強さを欠き、鉱工業生産活動も一進一退の動きとなっております。また、昨年秋の円高進展から、中小企業を初め我が国経済の経営環境は悪化し始め、企業マインドの冷え込みが懸念されるに至っております。こうした状況の中で、国内景気を持続的に拡大させ、国民生活の安定、向上を図っていくことが、今後の国際、国内経済運営における最大の課題となっております。
 内需の振興に対する総理の決意のほどをお伺いするとともに、先般決定をいたしました四%の経済成長を実現するためにどのような施策を講じられるのか。特に、社会資本の充実に民間活力を積極的に発揮させるという考え方は、一時的な思いつき施策ではなく、継続的、革命的な産業改革のてことして活用していかなければなりません。お考えを承りたいと思います。
 昨年九月の五カ国蔵相・中央銀行総裁会議以降、急速な円高が進展しております。我が国は、機会あるごとに、国際収支の不均衡の主たる原因は、アメリカの財政赤字と円安・ドル高にあることを主張してまいりましたゆえに、為替相場の動きは、これを歓迎し、その定着を望むものであります。しかしながら、円高が極めて急激かつ大幅に進展したため、輸出依存度の高い中小企業を中心に、一部の業界等において深刻な影響が出ていることも事実であります。これは、円高による国際収支の黒字の縮小という政策の当然の帰結でありますけれども、国の政策により大きな被害のしわ寄せを一身に受けた中小企業者に対して、きめ細かな対策を講じることは、政治の責務であります。円高によって現実に被害を受けている中小企業者に対する総理の基本的な考え方をお示しいただきたい。
 また、これらの環境変化は、一時的一過性のものではなく、長期にわたる構造的な環境変化であると考えます。したがって、これらの国際的環境の変化に対応するための中小企業対策は、経営危機の回避にとどまらず、中長期的な将来を展望した思い切ったものである必要があり、例えば、輸出関連産業から内需関連産業への進出など、事業転換まで考えなければならないと思います。現況を踏まえた総理の温かい御配慮を率直にお示し願いたいと存じます。
 次は、国際軍事情勢と防衛問題についてお尋ねいたします。
 昨年十一月米ソ首脳会談が行われ、対話の拡大など明るい動きも見られてまいりますが、具体的な成果は今後の交渉を待たなければなりません。また、最近の国際軍事情勢は、ソ連の一貫した軍事力増強と、これを背景とした周辺諸国や第三世界への勢力拡張の動きもあって、依然として厳しいものがあります。我が国周辺地域では、米ソ両国の軍事的対峙のほか、中ソ間、さらには朝鮮半島における大規模な軍事的対峙、カンボジア問題など複雑な様相が絡み合っております。このような中で、ソ連は、極東地域に既に強大な核戦力及び通常戦力を配備しておりますけれども、さらに一貫して質量両面にわたる増強を図っておるのが現状であります。
 今日の国際社会の平和と安全は、国家間の力の均衡によって保持されていることは、冷厳な事実であります。このような中で我が国が、国際社会の有力な一員として、みずからの手で国の平和と安全を維持することは、当然の責務であります。そのためには、日米安全保障体制を堅持し、その一層の効率的運用を図るとともに、我が国みずからが、適切かつ有効な防衛力の整備を着実に進めていかなければなりません。政府が、四次防以来十数年ぶりに防衛整備計画を策定し、防衛計画大綱の水準の達成を明確にしたことは評価するものでありますが、今後は、この計画を着実に進め、国の内外に対して、我が国の防衛努力の一貫した姿勢を示し、その信頼を確保していくことが重要であります。(拍手)
 同時に、有効な防衛体制を整備していくに当たっては、科学技術の進展に対応した政戦略、防衛のあり方について、不断の改革、検討が行われ、勇気を持ってこれを推進する必要があります。自衛隊が発足してから既に三十年、この間の内外の諸情勢の変化や軍事技術の進歩に対応し、旧来の考え方にとらわれることなく、進歩と未来を目指した新しい発想のもとに、陸海空の自衛隊の役割を改めて検討し、三自衛隊の統合機能の強化を図ることは、有効かつ効率的な防衛力を整備する上で極めて重要であると考えます。国の防衛を全うするため、正面装備の整備充実とともに、後方支援能力の拡充整備、防衛施設の安定的使用の確保が極めて重要であります。また、最近におけるいわゆる基地問題は、三宅島における艦載機着陸訓練場建設問題、あるいは逗子市における米軍家族住宅建設問題に見られるように、反対のための反対を排し、地域住民の生活環境も自然環境も積極的に守るという姿勢も必要であります。(拍手)
 以上、国際及び我が国周辺の軍事情勢の認識、防衛力整備の推進と自衛隊の効率化、合理化問題、基地問題等に対する総理の御所見についてお尋ねいたします。
 長寿社会と社会保障についてお尋ねをいたします。
 我が国国民の平均寿命は、男子七十四・五四歳、女子八十・一八歳に達しており、まさに人生八十年時代を迎えております。世界一の長寿国となった我が国の課題は、国民だれしもがこの長寿を心から喜ぶことのできる社会を建設することにあります。私は、二十一世紀を展望した明るく活力ある社会を実現するためには、老いも若きも、積極的に社会に参加し、個性的で豊かな生活を送ることができる社会を築き上げていくことが、最も肝要であると考えます。
 社会保障制度は、弱い立場に立つ方々にはもちろん、国民生活の安定のために基幹的な役割を担うものであり、国民の信頼と期待に十二分にこたえていかなければならないと考えます。言うまでもなく、社会保障を支える費用は、国民の負担により賄われるものであり、経済の安定成長時代における国民所得及び国の財政収入などを十分に見きわめ、国民の負担の限界にも目を向けていく必要があります。
 老い、病という避けられない人生の運命に適切に対応し、揺るぎない国民生活の安心を確立していくために、我々は医療保険制度、年金制度等の改革を実行してまいりました。老人保健制度の改革も、この立場から考えられなければなりません。幸せを手に入れるためさらに重要なことは、お年寄りが健康で社会とのつながりを持ち、家族の愛情に囲まれた暮らしを続けることであります。社会福祉の各種のサービスは、基本的には、我が家において享受することのできるよう施策を展開していくべきであると考えます。活力ある日本型福祉社会の形成を目指す総理のお考えについてお伺いいたしたいと存じます。
 次は、教育改革についてであります。
 教育こそは、国家、民族の将来の運命を決する国策の基本であります。これからの日本を担う青少年が、豊かな心と創造性に富み、自主、自律の気概に満ちた日本人として、また豊かな国際人として責任のとれる国民に育つような教育の推進が、国の重要な責任であります。しかし、立身出世を競うこと、金や物を追い求めること、できるだけ楽をするために手段を選ばぬ技術を身につけること、そのような人間を養成するために高等教育機関が利用されているとすれば、国民の血税を投じる意味はありません。そのような教育は排除さるべきであります。
 臨時教育審議会は、教育改革に関する第一次答申に引き続いて、本年春には、教育改革の基本的答申ともいうべき第二次答申が提出されることになっております。臨教審の審議においては、例えば、二十一世紀に向けての教育の基本的あり方、教員の資質の向上のための方策、高等教育の改革など、我が国教育改革にとって重要な課題が取り上げられておりますが、これらの答申がなされた場合、口頭禅に終わることのないよう、総理の取り組みについてお尋ねいたします。
 最後に、科学技術政策についてお伺いいたします。
 核戦争の脅威や人間の尊厳にかかわる遺伝子操作等、科学技術だけでは人間の幸福を保障できないことがあります。まさに、総理の思索と倫理は尊重されなければなりません。科学技術の振興は、二十一世紀、次世代に対する我が国の基本政策の重点とすべきであり、私は特に、次の二点についてお伺いしたいのであります。
 まず第一は、基礎研究の重視であります。今日、独創的な科学技術の創出が強く求められておりますが、これは一朝一夕になし得ることではありません。地道な基礎研究の積み重ねにより初めて達成できるものであります。このために、産学官の英知を結集し、全力を挙げて基礎研究の強化に取り組んでいく必要があると考えます。
 第二は、国際性を重視した科学技術の展開であります。今日、私たちは、南北問題、地球環境問題、食糧問題、人口問題等、地球的取り組みを要するさまざまな問題に直面しており、これらに対する有力な解決手段として、人類文化を進めるために、我が国は、発展途上国を初め国際社会全体に対する責務として、積極的に局面の打開のため奮励しなければなりません。二十一世紀を豊かで希望に満ちたものにするために、全世界人類の尊敬と協力をかち取れる哲学、芸術、文化の創造を含めて、香り高い新しい世界秩序の樹立を目指して、国を挙げて全力を尽くしていく必要があると考えております。総理の基本的考え方をお尋ねし、私の質問を終わります。(拍手)
     ────◇─────
#13
○議長(坂田道太君) ただいま徳仁親王殿下が御退場になります。
    〔起立、敬礼、拍手〕
     ────◇─────
#14
○議長(坂田道太君) 内閣総理大臣中曽根康弘君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 藤尾議員にお答えをいたします。
 まず第一に、私の任期中に解決すべき課題とスケジュールの御質問でございます。
 その前に、今回のスペースシャトル・チャレンジャーの不慮の事故に対しまして、重ねて哀悼の意を表する次第でございます。
 私は、「戦後政治の総決算」を標榜いたしまして、行政改革、財政改革、それに教育の改革を唱え、かつまた、国際国家日本を目指して鋭意努力してきたところでございます。浅学非才のために御期待に沿い得なかったことを、大変恥ずかしく思う次第でございますが、しかし、全力を傾けまして、責任を果たしてまいりたいと思う次第であります。
 現在は、行革の法案も提出され、また、近く国鉄の改革法案も提出されます。これらをぜひとも成立させまして、長年にわたる行革の一大眼目を解決してまいりたいと思います。さらに、当面経済摩擦の問題が提起されております。アメリカあるいはヨーロッパあるいは東南アジア諸国、これらの関係におきまして、経済摩擦をできるだけ早期に、同じくこれを解決し、また、東京サミットを成功裏に終了させまして、世界全体の向こうべき方向について有益なサミットであったというサミットにいたしたいと念願いたしております。なおまた、減税の問題、教育改革の問題も、近くいろいろ勧告案やら答申が出てくると思いますが、これらに対しましても適切な処理を行って、二十一世紀に対する準備を逐次、軌道に乗せてまいりたいと思う次第であります。なお、私は前から申し上げているように、政治は文化に奉仕するにありと申し上げております。芸術、科学、スポーツ、戦後日本文化の高揚につきまして、さらに懸命の努力をいたしていきたいと考えております。
 次に、経常黒字の活用あるいは経済構造の改革の御質問でございます。
 私は、世界の繁栄の中に日本の繁栄があるという考えのもとに、国際国家日本の役割を主体的に果たしていくように努力しているつもりでございます。しかし、現在のように日本が五百億ドルに及ぶ貿易黒字を計上して、いつまで続けていけるか。私はやはり国際関係をうまく調整して、このような五百億ドルに及ぶような大きな黒字額を逐次解消し、段階的に国民経済をその方向に誘導していくということが、大事であると思っております。
 もとより、我が国は貿易国家でございまして、資源を買うためのインベントリー資金であるとか、あるいは海外経済協力を行うための基礎資金であるとか、あるいは日本の会社が外国に直接投資するための資本であるとか、そういう意味におきまして、日本にはある程度の適正外貨量というものが必要であると思っております。これを持たずして、日本の国際経済は運行し得ないわけであります。その適正外貨量が必要以上に膨大になり過ぎて、外国と摩擦を起こしたり、迷惑を及ぼすということになってはいけないのであります。
 そういう意味において、適正な外貨量を保有しつつ、内需の振興あるいは為替の調整、あらゆるものを組み合わせまして、しかも、我が国の社会経済体質に輸出万能というような、そういうような形跡は残っていないかよく点検もいたしまして、あらゆる方面から日本の社会経済構造体質の再点検を行いつつ、以上のような考えに立って、国際経済に調和した日本国民経済の構造というものを考えていきたい、そう思いまして、先般来研究会を行いまして、けさも私は出席して御意見を拝聴したところでございます。これらの意見を参考にいたしまして、今のような国際経済に調和した日本へ逐次前進するように改革を行っていきたい。
 先般、ECのドロール委員長が参りましたときにも、この趣旨のことも申し上げ、先方は、日本の輸入目標の数量設定あるいはビジョンをつくってくれというような御意思でございましたが、日本は自由経済をやっておるので、そういう数量をもって目標をつくるというようなことはなじまないということで、私はその考えには賛成しません、しかし、今のような状態が長続きするとも私は考えていない、そういう意味において、適正な外貨量を保有した、国際摩擦を起こさない日本のあり得べき、望ましき経済構造というものを目指して、国民的努力目標としてそういう目標を考えつつ、国民に御協力も願うように努力いたしたい、そういう答弁をしておるのでございまして、その線に沿って今後も努力してまいりたいと思います。
 また、本年九月の閣僚会議に向けまして、ガットのニューラウンドの討議が進められようとしております。このニューラウンドにつきましては、お示しのとおり、ぜひとも自由貿易推進のためにも、成功に導くように全力を尽くすつもりでありますし、東京サミットもそういう意味で、その前進のよすがになるように努力してまいりたいと思う次第でございます。
 ODAにつきましては、我々はその重要性はつとに認識しておりまして、既に先般、第三次中期目標を設定し、九二年までに四百億ドル以上という中期目標を設定して、この努力に入っておるところであり、今後は、質の改善等についてもさらに努力してまいりたいと思います。
 東京サミットにおきましては、現在の国際情勢を踏まえつつ、世界経済のインフレなき持続的成長の確保、それから国際的な通貨の安定、自由貿易体制の推進強化、あるいは途上国が抱えている諸問題への取り組み、あるいはさらに東西の対話、平和と軍縮の推進、あるいはさらに太平洋と大西洋の協力関係の設定等々の問題について、諸外国の協力と、我が国がそれにふさわしい、国際的地位にふさわしい貢献を行えるように努力してまいりたいと思う次第でございます。
 領土問題に対する藤尾議員のお考えには、私は全く同感でございまして、お示しの線に従いまして、全力を傾倒するつもりでございます。
 また、外相会議あるいは首脳相互訪問という問題につきましても、日本の国益と立場を堅持しつつ、粘り強く相手と交渉する、そういう考えに立ちまして、粘り強く今後も話し合いを広げて、強めていきたいと思うわけであります。ゴルバチョフ書記長の訪日に関しましては、先ほどもお答え申し上げましたように、四回も日本の総理大臣が行っておりまして、今回は先方がいらっしゃる番でございますので、大いに歓迎いたしたい、そう思っておるわけでございます。もっとも、日本国民が喜び、私の訪ソが意味のあるものである、そういう場合には、私の訪ソも考慮して結構である、そういうこともつけ加えて言っております。
 次に、六十一年度予算でございますが、我が国を取り巻く財政環境は極めて厳しい状況にございます。この予算につきましては、歳出歳入両面にわたりまして最大限の努力を行いまして、公債発行額を前年度当初予算に比して七千三百四十億円減額いたしました。政調会長にもいろいろ御努力いただいたところでございます。今後も、この行革あるいは財政再建の示された線に従いまして、懸命の努力をしてまいりたいと思います。昭和六十五年度赤字国債依存体質脱却ということも、もとよりこの線に向かって努力していくつもりでございます。
 具体的な財政再建の方策につきましては、毎年度の予算編成過程によって慎重に検討しているところでございますが、中期的な展望については、企画庁を中心に「展望と指針」があり、これが毎年リボルビングをいたしております。さらに、大蔵省からは、中期展望のほかに仮定計算例というものを国会にお示しして、努力目標の一つの試算を示しておるところでございます。今後も、これらの試算等を参考にしながら、国民の選択がどのように向かうかという点もよく勘案しつつ、総合的に所期の目的を達するように努力してまいりたいと思うところでございます。
 税制の抜本的見直しにつきましては、シャウプ税制以来のゆがみ、ひずみ、あるいは重税感というものを解決するために今、税調で御努力願っておるところでございます。この春に、ゆがみ是正、重税感の解放というような、減税を中心にした案をつくっていただきまして、秋にその財源措置も考えた案をつくって、一体となって法案を提出していく準備をいたしたいと思います。
 内需の振興につきましては、円為替レートの動向を注目しつつ、景気の持続的拡大を図るためにさまざまな、あらゆる手を使いまして、そして機動的かつ適切な運営を経済について行って、民間活力が最大限に発揮されるように法制度を含めて環境の整備を行う予定であります。既に十月十五日並びに十二月二十八日に内需増大の施策を発表しておりますが、公共事業費の問題にいたしましても、あるいは住宅減税、設備投資促進のための措置にいたしましても、民間活力活用ということを中心にいたしまして、今後も積極的に努力してまいるつもりであります。そして、六十一年度の実質経済成長率は四%になる見込みであり、その線に向かって努力してまいりたいと思います。
 民間活力の問題につきましては、今回は、東京湾横断道路や明石海峡大橋の建設とか、あるいは技術革新あるいは各地域における都市の開発等々、あらゆる面について民間活力を導入するための努力をしてまいるつもりであります。公有地や国鉄所有地の開放等についても、それが資するように努力してまいる考え方であります。
 円高に伴う中小企業対策につきましては、特に地域別に重点的にその対策を進めておりまして、事業転換あるいは経営危機の回避等のための金融措置等も講じておるところであります。昨年の十二月二日から、政府系中小企業金融三機関等による特別融資制度の創設も行いました。また、六十一年度予算において、これらの施策を拡充強化して、五十五億円の財政上の措置も講じたところでございます。なお、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法案も準備して、提出いたしたいと思っております。
 国際軍事情勢につきましては、お示しのとおり、周囲の状況は極めて厳しい状況であり、かつ、アフガニスタンやカンボジアやあるいは朝鮮半島の緊張も、急に大幅に緩和している状態ではございません。大体、ソ連は、三分の一ないし四分の一に当たる軍事力を極東に配備しているという情報でございます。我が国は、別にどの国を敵視してかかるという対策を講じているというわけではございません。仮想敵国は設けておりませんが、しかし、必要最小限の防衛力は整備していかなければならない、そのように考えております。
 防衛力の整備の基準は、大綱の水準達成であります。今後の防衛力整備に当たりましても、自由な発想に基づきまして、統合機能の強化あるいは自衛隊の再編、効率化等も含めまして検討し、推進してまいりたいと考えておるところでございます。
 基地問題に関しましては、自衛隊及び在日米軍の防衛施設の確保と安定使用を図るということは、我が国の安全保障上重要な施策でございます。基地問題の解決に当たっては、住民の御協力を得ることが大切でございますが、環境保全にも最大限の努力を行うように配慮いたしております。三宅島の問題あるいは逗子における問題等につきましても、このような観点に立ちまして、早期解決を図るべく全力を尽くすつもりでございます。
 活力ある日本型福祉社会につきましては、人生八十年時代を迎えまして、今日の社会保障の役割は極めて重大でありまして、長寿社会に向けて、制度の長期的安定と整合性のある発展が大事でございます。そのために、できるだけ早目にこの長寿時代に対応する対策を内閣として整備いたしまして、これを推進いたしたいと考えております。お年寄りが地域や家庭で生き生きと安心して暮らすようなシステムをつくることが、我々の悲願でございます。
 教育改革につきましては、二十一世紀に向けて、創造的でかつ国際的な日本、個人を重んじて、同時に、我が国の伝統と文化を継承する国際的日本人をつくり上げるということが、我々の目標であると思っております。第二次答申が出されました場合には、第一次答申に対すると同様に最大限に尊重して、国民の皆さんの御理解と御協力をいただきまして実行してまいりたいと思います。
 なお、二十一世紀を展望した科学技術の振興は、極めて重要でございます。我が国が今日、これだけ繁栄しているのは、実に戦後における科学技術、特に技術関係の飛躍的上昇にもよります。しかし、これだけ成熟してまいりますと、もはや基礎科学を重視して、ここに重点を入れなければならない段階になってきたと思います。したがいまして、お示しのように、基礎科学につきましても十分注目もし、施策の重点も活用いたしまして、積極的な国際交流を図ると同時に、自主的な科学技術を開発し、促進してまいりますように、努力してまいる決意でございます。
 以上で御答弁を終わります。(拍手)
    ─────────────
#16
○副議長(勝間田清一君) 清水勇君。
    〔清水勇君登壇〕
#17
○清水勇君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、今、政治が問われている平和にして豊かな国民生活の基盤を確立するために、そのことを念頭に置きながら、一昨日行われた中曽根総理大臣以下四大臣の施政方針演説に対して質問を行いたいと思います。(拍手)
 この際、質問に入る前に、去る二十六日夜遅く、表層雪崩の発生を受け、新潟県能生町の住民十三名がとうとい命を失われ、また多くの方々が被災をされたわけでございますが、深く哀悼の意を表すると同時に、被災をされた皆様の一日も早い立ち上がりを心から念願をし、政府も積極的にその対策を進めることを要望する次第であります。(拍手)
 言うまでもなく、民主政治の要諦は、自分の好みに合う声だけを取り上げるのではなく、市井にあって政治に期待する国民大衆の切実な声を吸収し、常に国民多数が求めるところに誠実にこたえるものでなければなりません。美辞麗句に走り、「巧言令色鮮し仁」などと言われてはならないのであります。私は、このことをあえて申し上げ、以下、重点的にお尋ねしていくつもりであります。
 総理、あなたは、一昨日の演説の中で、戦後政治について、かつてない高い生活水準と、社会的にも経済的にも非軍事的な平和な日本を実現したと述べているのであります。しかしながら、総理の施政方針を聞いた国民は、自分の身の回りを振り返りながら、本当に商い生活水準で、平和で安定した状態であると自負できたでありましょうか。あなたの政権が誕生して三年になりますが、率直に言って私は、中曽根症候群とも言うべき社会病理現象が、とどまるところを知らずに広がっていると言わざるを得ないのであります。(拍手)教育の荒廃はますます進み、いじめや中学生の自殺という報道が相次いでおります。交通事故によるお年寄りや子供の死亡者も、毎年記録を書きかえるという悲しい現実もあります。また、五十九年は史上最高の企業倒産を数え、六十年においても、倒産企業の負債総額は実に四兆円の大台を記録し、失業率も二・八%という戦後最悪となったのであります。ちょっと挙げただけでも、中曽根症候群の病状重しと言わなければなりません。(拍手)
 しかし、中曽根総理は、国民の八割はみずから中流意識と言われるわけでありますが、それは木を見て森を見ない、一面的な見方と言わざるを得ません。現に、中流という家庭でも、突然一家の大黒柱を失うとき、生活保護世帯に転落せざるを得ないという冷厳な現実があるのであります。ストックが乏しく、西欧先進国とは質的なギャップがあるのであります。私は、このことを冒頭にあえて申し上げ、この際、中曽根政治を通じて広がりを見せる社会病理現象をどう解消、克服されるおつもりか、総理の御所信を承りたいのであります。
 ところで、総理、あなたは年頭から物騒な発言を重ねてこられました。戦後四十年、立法、司法、行政の三権を見直すべきだと言い、司法のオーバーランと特に言及しましたが、それは、議員定数に関する最高裁の違憲判決によって、解散権が制約をされた腹いせなのでありましょうか。いかに大統領的な首相を目指すというあなたでも、立法及び司法府を行政府の制約下に置くとは考えていないと思いますが、見解をお聞かせいただきたいと思います。(拍手)あわせて、定数是正なしに解散することは憲法違反と思うのでありますが、総理はどう思われるか、この点もお伺いをいたします。
 また、あなたは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」との例えを持ち出し、虎穴に入る必要があれば勇気を持って入ると言われました。確かにさきの国会では、定数是正も国家秘密法案も廃案となり、総理の無念ぶりが想像できます。自民党総裁三選に向けての焦りもわからなくはありませんが、あなたが虎穴に入って得ようとする虎子は一体何であるか、国民の前にはっきりさせていただきたいのであります。
 さて、総理は、一昨日も「戦後政治の総決算」を強調されました。くどくは申しませんが、一貫している憲法改正論、ロン・ヤス関係による防衛力増強、GNP一%突破、SDI、戦略防衛構想支持など、徹底した軍事大国志向が真のねらいでありましょうか。また、臨調行革による福祉、教育の切り捨て、自助努力の強制、行政責任を放棄した民活政策、そして臨教審による教育改革、税制改革と続くのでありますが、総理の言う「戦後政治の総決算」とは、こうして国民生活を犠牲にしてまで米国の軍事戦略の肩がわり体制をつくろうというのでありましょうか、この際明確にしていただきたいのであります。
 国民は、ともすれば、テレビをうまく使う総理の姿に幻惑をされ、水泳姿に格好よさを感ずるようであります。しかし、ロンが言うことはヤス受け合いをするといった危険な実像がカムフラージュされ、高い支持をあなたに与えているのかもしれません。そんな総理の政治姿勢で黙視できない一つは、昨年七月軽井沢で、「日本は戦前は皇国史観があった。戦争に負けると太平洋史観ができた。文明の名で平和の名で日本を裁いた。しかし、勝っても国家、負けても国家、栄光を求めて進むのが国家である」とうたい上げたのでありますが、これは、かつてのドイツの独裁者の言とうり二つではありませんか。一体総理は、太平洋戦争の悲惨かつ貴重な体験から何を学んだのか、この際伺っておく次第であります。(拍手)
 次に、六十一年度予算を初め経済財政政策について質問をいたします。
 総理、我が国経済は、現在大きな転換期を迎えております。特に、外需依存の経済は、経済摩擦の深刻化とアメリカ経済の停滞という両面から、内需主導型の経済に転換すべきとぎを迎えているのであります。しかし、その点で、政府の経済政策と財政とは、まことに矛盾に満ちた内容と言わなければなりません。経済成長を名目で五・一%、実質で四%と見込み、成長をすべて内需拡大によって達成しようというのでありますが、この点は私も同感であります。しかし、問題は、内需拡大への政策努力が余りにも貧困と言わなければなりません。
 総理、我が党は、かねてから、内需拡大の効果的な対策として、大幅減税を行い、福祉の充実や週休二日制などによる国民生活の向上を基盤とした消費の拡大を初め、社会資本の拡充、福祉都市づくりを社会目標とする新たな公共事業を積極的に推進することを提案しております。このため、軍拡の財政から軍縮の財政への転換を主張しているのであります。ところが、六十一年度予算案はどうでしょうか。緊急課題とされる円高不況対策と経済摩擦解消のための内需拡大対策は、単なる東京サミット向けのお題目にすぎず、超緊縮予算によって見る影もありません。民活の名において、東京湾横断道路、明石大橋といった大都市圏の特定大企業向けの大型プロジュクトにアクセントをつけているだけであります。これは明らかに問題です。
 総理、現在の我が国経済の停滞は、多分に政府の政策選択に誤りがあるからであります。中曽根内閣は、一貫して国債発行削減による財政再建、そして、歳出削減一本やりの身動きのとれないほどの縮小型の財政運営を行い、これが不景気、税収落ち込みという悪循環を生んでいるのであります。しかし、今や景気の減速と円高不況のもとで国民生活の安定をどう図るか、年間五百億ドルを超す貿易黒字と経済摩擦をどう解消するか、そして、円高不況対策としての内需拡大のための低金利政策を考えるとき、お題目ではなく、実効ある内需拡大策が真剣に選択されるときなのであります。
 特に、内需振興のかぎは、何といっても、GNPの六割を占める個人消費支出が伸びることであります。そのため、勤労者を中心とする可処分所得を引き上げる減税などの政策努力は、不可欠の緊急課題と言わなければなりません。(拍手)そこで、この際、六十一年度に所得税、住民税を中心に二兆三千億円の減税を行うこと、財源対策を含めて不公平税制の是正を行うべきだと考えますが、以上について明快な見解を伺うものであります。
 さて、去る二十日総理は、産業労働懇話会の席上で、六十二年度には思い切った大幅減税をしたいと言明されました。冗談じゃありません。あなたは、昨年もしばしば、六十年度は無理だが、六十一年度には大幅な減税をやりたいと言っていたのであります。国民に大きな期待を持たせておいては約束をほごにし、今また六十二年度を口にするやり方は、まさにペテンだと言わなければなりません。(拍手)ついでにお聞きしますが、産労懇での言明の裏に、大型間接税の導入という大増税を隠しているのではないでしょうか。増減税抱き合わせ、あめとむらの税制改革をねらっているのではないでしょうか。この際あわせて、総理の言う税制改革の真意を、国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
 ところで、総理、石橋委員長も触れましたように、総理が金看板とし、最大の政治課題としてきた六十五年度赤字国債脱却という財政再建目標は、早くも破綻をしたと言って過言ではありません。かつて鈴木前総理は、五十九年度赤字国債脱却という公約が崩壊したとき、政治責任をとって辞任したことは周知のとおりであります。中曽根総理はどのような政治責任をとるおつもりか、伺いたいのであります。また、総理は、「増税なき財政再建」の公約もほごにしようとしております。すなわち、所得税減税を見送る反面、たばこ消費税二千四百億円の増税、赤字法人への実質課税など四千億円を超える増税を行おうとしておりますが、もはや「増税なき財政再建」の公約を捨て去ったのでありましょうか、責任を問うものであります。
 さて、私はここで、内需拡大策にも関連をし、社会資本の充実を図るため、具体的な提言を申し上げたいのであります。生活関連公共投資を中心とした内需の拡大は、一つは、生活の質的向上に確実に役立つこと、二つには、財源づくりを含めて、自治体と住民による自治的活力によって推進されることが必要であります。その立場から社会党は、有効な対策として、高齢化社会に向けた都市改造プランを提言しているのであります。
 我が国の主要都市は、高度成長期に急速に形成され、若年労働者中心の生産型構造になっております。そこで、公共施設にスロープやエレベーターをつけ、歩道、車道を立体的に分離し、公園の整備や住宅の改造を一体的に進め、高齢者や子供たちにとって安心して生活できる福祉型町づくりを興そうというのであります。その必要な財源は、国の援助のもとに、町づくり市民債を地方債として認めようと考えておりますが、このいわば自治体ルネッサンスともいうべき発想に、心の触れ合う地域社会の建設を一昨日も言われた総理の心ある賛同を得たいと思うのであります。
 そのためには、土地の確保が必要でありますが、総理が今陣頭指揮をとって進めている国公有地の民間払い下げをやめて、自治体に優先利用をさせることが必要であります。現在政府は、国民の共有財産を広く公共の利用に役立てる方向ではなく、専ら大企業の企業活動に便宜を図る誤りを犯しております。例えば、東京新宿区の公務員宿舎跡地はその典型的なもので、時価の半値で買い受けた企業は、そこにマンションをつくろうというのでありますが、こうしたかご抜け的手法は到底納得できません。この際、総理の所信を承りたいのであります。
 ここで私は、国鉄問題等に触れてお尋ねをいたします。
 総理、政府は国民共有の財産の維持管理を信託されているのでありますが、国立病院や国鉄のあり方に対しても、政府は、国民の生命と健康を守る拠点、国民の足を守る手段として、その公共的使命を果たせるよう最善の努力を尽くすべきであります。しかるに、中曽根内閣は、民活と称して、公共財産を民間企業に売却することに狂奔しており、まことにもって遺憾千万であります。民間経営では採算のとれないところは、無医地区や陸の孤島になることは必至であり、国民生活の質を落とす結果となるのであります。こうした事態を避けるには、国立病院や国鉄の経営形態が仮に変わることがあったとしても、病院や公共輸送機関として存続できる確実な保証を与えることが絶対に必要だと考えますが、総理の明快な答弁を求める次第であります。(拍手)
 特に国鉄の分割・民営化の考えは、まだ何らの法的措置が講じられていないにもかかわらず、あたかも既定の事実であるかのごとく位置づけたり、五兆八千億円もの土地売却を閣議決定するとはどういうことでありましょう。国会軽視も甚だしいと言わなければなりません。(拍手)総理も御承知のように、全国の自治体や利用者が、国鉄はみんなのものとして乗車率向上運動等を展開している事実を高く評価し、このような草の根民活を支援し、国鉄財産を国民生活に広く役立てる方策を、自治体などとともに考える姿勢に立つべきであります。いずれにせよ、再建策について国会の場で真剣に議論を尽くし、結論が出るまでは切り売りをしないという約束をすべきであり、総理の確たる答弁を求める次第であります。(拍手)
 この際、私は、以上の提言に関連して、急を要する三点についてお尋ねをいたします。
 その第一は、福祉の利用者の負担を強めるというならば、その所得の底上げを図るべきであります。例えば、今二万六千五百円の老齢福祉年金を基礎年金並みの五万円水準に引き上げ、障害者にも最低賃金法を適用すべきであります。第二は、厚生年金や健保から場当たり的な借金をやめ、これまでの借金、一兆五千億円の返済を早急に行うべきであります。第三は、政府は、どんなハンディキャップのある人でも普通の市民として当たり前に生活できるよう、きめ細かな施策を展開すべきであります。例えば、教育臨調第一次答申では、「個性重視の原則」を掲げておりますが、その個性尊重の意義をいかに大きくうたっても、一学級当たりの児童生徒数が他の先進国に比較して著しく多い現状では、行き届いた教育はできません。そこで、四十人学級の達成と三十五人学級実現に向けた計画を先行させる、あるいは非行や登校拒否など問題のある子や障害を持つ子を排除せず、通常の学校で温かく受けとめることが必要と思うのでありますが、総理の見解を伺うものであります。
 さて、この際私は、人権関係条約の早期批准と国内法整備についてお尋ねをいたします。
 御承知のように、我が国は、いまだ国際人権規約の完全批准をしておりませんし、百二十四カ国が批准している人種差別撤廃条約も、約束だけで批准をしておりません。総理も周知のごとく、国連は平和と人権は不可分としておりますが、これら人権関係条約の早期批准について、総理の見解を承りたいのであります。また、国内法整備で言えば、我が国最大の人権問題は部落問題でありますが、その根本的解決はまだ緒についたところであります。もちろん、十七年に及ぶ同和対策、地域改善事業特別措置法による環境改善への努力と実績は評価をしつつも、なお残事業も多く、ソフト面といわれる結婚、就職、教育を初めさまざまな差別実態に対して、抜本的、総合的に解決する施策が求められなければなりません。この際あわせて、総理の見解を明らかにしていただきたいと思います。
 次に、私は、自治体に対する補助金カット、公務員の給与改善費等についてお伺いをいたします。
 政府が六十年度限りの暫定措置としていた地方自治体への補助金削減を、しかも倍増の一兆一千七百億円を、今後三年間続けようとしておりますが、石橋委員長触れられたとおり、断じて容認できません。地方六団体のみならず、国会の意思を踏みにじる暴挙だからであります。重ねて政府に、百二国会での約束の履行と、補助金カットの撤回を強く求めるものであります。また、公務員の給与改善費を当初予算に計上することは、年間予算を適正に見積もるという点で予算編成上の常識であります。初めから補正で処理しようとする態度は誤りであり、欠陥予算と言わなければなりません。あわせて、総理と大蔵大臣の答弁を求めるものであります。(拍手)
 ここで、私は、中小企業対策並びに農業と緑の対策について質問をいたします。
 今日、輸出依存度の高い中小企業は、円高の直撃を受ける産地、親企業による発注量削減や単価切り下げ等為替リスクの転嫁を受けて、深刻な危機に直面をしております。言うまでもなく、今回の円高は、昨年九月の五カ国蔵相会議を契機とする政治介入によるものであり、急激な円高と変化に対応し切れない中小企業、金属鉱山等の苦境に対して、政府が特段の救済策を講ずることは当然であります。政府の現在進めている特別融資制度等では極めて不十分であり、この際、内需振興を含め、緊急かつ効果的な施策を用意すべきと考えますが、いかがでありましょうか。ところで、総理、先ほども触れましたが、円高差益の取り扱いであります。企業体質の強化ばかりに使うのではなく、国民大衆の納得できる、広く社会的還元の措置をとるべきだと考えますが、総理の所信のほどをお聞かせいただきたいと思います。
 さて、下請取引をめぐり、親企業が優位的立場から下請企業に不当な取引条件を強要していることは、かねて指摘をされるとおりであります。この際、ざる法と言われる下請関係法の見直しを図り、取引の近代化を初め、下請対策を抜本的に強化すべきであります。また、中小企業の受注機会の確保を図るため、官公需の中小企業向け発注率を、法制定の際目標とした五〇%達成に向けてどのような努力をするというのか、これまた総理並びに通産大臣から明らかにしていただきたいのであります。
 さて、総理は事あるごとに、農業は国のもと、食糧自給力向上は重要な課題と言うのでありますが、大幅削減の六十一年度予算に見る限り、それは口先だけと非難されても仕方がありません。農業は自然を無視しては成り立たない産業であり、人間はまた農産物がなければ生きられないのであります。しかるに総理は、ひたすら臨調路線に立って、市場原理や経済効率性のみを強調し、当然の補助政策までなし崩しにし、あまつさえ貿易摩擦解消、そのいけにえに供しているのであります。これでどうして我が国の農業を基幹産業として健全に維持発展させられるでありましょうか。私は、この際、食糧自給率向上、総合食糧管理制度に向けた農政の転換を図るべきだと思うのでありますが、総理の所信を明らかにしていただきたいのであります。
 総理、アフリカの飢餓の原因は、森林を失ったからであります。しかも、現在地球上では毎年、我が国の本州に相当する千百三十万ヘクタールの森林が消滅し、砂漠化しているのであります。我が国でも、森林・林業は、過疎化による労働力不足、外材輸入、国産材の売れ行き不振等で危機的な状況に立っております。二十一世紀の未来社会に向けて人類が避けて通れない課題は資源と環境問題であることは、総理も御承知のとおりであります。その意味で、緑をいかに育てていくか、総理並びに農水大臣の御所見を承りたいと思います。総理がもし森林・林業を活性化するというのであれば、国産材使用に対する優遇措置、間伐に必要な予算措置、国有林野事業に対する一般会計からの繰り入れなどを行い、もって国家百年の大計を図るべきであります。
#18
○副議長(勝間田清一君) 清水君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
#19
○清水勇君(続) あわせて、東京サミットにおいて、世界の緑の復権に主導的役割を果たすべきだと思うが、所見を伺う次第であります。
 最後に、総理、ことしは国際平和年であります。総理は、一昨日も触れられましたが、昨年の国連創設四十周年特別総会の場で、かけがえのない地球の保持と人類の生存の維持のために新しい地球的倫理の確立を提唱し、核軍縮と差別の撤廃、環境の保護を訴えられたのであります。私は、世界に向かってそれを言うならば、まず国際平和年に向けた行動計画をつくり、着実な実践を積み重ねるべきだと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
 新しいデタント、軍縮に向かう世界の潮流に逆行する六十一年度における防衛費予算、私は、この際総理は、軍拡ではなく軍縮の道を明示すべきであると思うのであります。そうでなければ、国連におけるあなたの主張とも……
#20
○副議長(勝間田清一君) 清水君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単にお願いいたします。
#21
○清水勇君(続) 日ソ外相会議を踏まえた段階とも余りに乖離があると言わなければなりません。この際、防衛費を圧縮すべきだと思うし、対GNP比一%枠を引き続き堅持することは当然と考えますが、総理に明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 清水議員にお答えをいたします。
 まず、戦後の社会病理現象をどう見るかということでありますが、それは、日本が高密激動社会として非常は激しい振動作用を起こしておる。ともかく、これだけの小さな列島で、これだけの高度成長をやっておるわけでございますから、さまざまなひずみや病理現象も出ておるわけであり、その一つに、犯罪やいじめや自殺やその他のものもあると思います。しかし、いずれもこれは最終的には、政治の責任にも帰すべきことでありまして、我々も大いに自粛自戒して、これらのことが起きないように誠意を持って努力しなければならないと思う次第でございます。なおまた、最近の情勢から見ますと、中流意識というものが相当広がってきております。これもまた新しい現象でございましょう。そういう意味におきまして、明暗こもごもまざっておるというところがあるわけであります。我々は、明るさをますます増して、陰を消していくように努力すべきものと考えております。
 なお、新潟県の雪崩の遭難者に対しましては、この席をかりまして心からお悔やみを申し上げ、政府も、国土庁長官をお見舞いに参上させまして、各省挙げて、今対策を講じさしておるところでございます。
 この戦後の病理現象の中で、倒産件数と失業率を申されておりましたが、五十九年に比べて六十年は、多少成績がよくなっておるのであります。倒産件数にいたしましても、大体二万件、五十九年が二万三百六十三という統計に対して、六十年は、四月から十二月でありますが、一万四千件ぐらいでございます。それから、交通事故による死亡者も、五十九年が九千二百六十二人に対して、六十年が九千二百六十一人、大体同じぐらいで推移しておる。しかし、我々としては、今後も努力しなければならぬと思っております。
 司法のオーバーランにつきましては、先ほども申し上げましたように、三権おのおのが調和して機能するように努力すべきものであり、そういう意味におきまして、立法は立法、行政は行政、司法は司法で、大いに常に見直して努力すべきであると、一般論を申し上げたのでございます。
 衆議院の解散権につきましては、前から何回も申し上げますように、最高裁判決によりまして、現行の定数配分規定が違憲とされた以上、国会においても最大限の努力を行って、速急な法改正が実現さるべきであり、政府としても最大限努力すると申し上げたとおりでございます。解散権の行使につきましては、憲法が国政の重大な局面において民意を問う手段として内閣に付与した基本的に重要な権能であり、憲法上、解散権の行使を制約する規定はありません。解散権の行使とこれに伴う総選挙の施行とは、それぞれ別の規定に従って行われる別個のものでありまして、解散権が法律に制約されるということはないのであります。
 次に、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」、虎子とは何であるかということでありますが、私は、政権担当以来、困難にたじろがない、波に向かって船のへさきを向けて進むと、施政方針第一回から申し上げているとおりでありまして、そういう意味で申し上げたのであります。虎子とは何であるかと言えば、結論的に言えば国民の幸せであり、国民の満足である、こういうことであります。(拍手)
 次に、「戦後政治の総決算」に関しまして、米国の軍事戦略の肩がわりをするのではないかという御質問でございますが、そういうことは全くございません。日本は、独自に平和を求め、自主独立を守るために必要最小限の防衛力を整備しておるのであります。
 太平洋戦争から学んだものは何であるかという御質問でございますが、やはり国家というものは、一つの生活共同体で、歴史と文化を共有して存立しているものであります。戦争というものはあってはならぬものであるし、太平洋戦争も同じように、あってはならぬ戦争であったと私は思っております。今後とも、日本を戦争に巻き込まないようにすることが、我々の大きな努力であると考えております。しかし、戦後におきまして、皇国史観であるとか、お示しのように太平洋戦争史観であるとか、マルキシズム史観であるとか、いろいろなものが入ってきましたけれども日本人みずからが独自の立場に立って、よく実証的に科学的に、日本はどういうものであるかということを分析し、反省する時期に来たと思っておるのであります。そこには、やはり自分自身を確立するという意欲が必要であります。社会党においても、階級的大衆政党から国民政党に最近脱皮したばかりではないかと私は思うのでありまして、やはり歴史というものはとうといものであると考えておるのであります。
 次に、税制の問題でございますが、これは、ゆがみやひずみや重圧感を解消しよう、そういう意味で今調査を願っておるところでございまして、秋には総合的な税制改革大綱を決めて、いずれ法案提出の準備をしたい、そう考えておるところでございます。
 次に、財政再建の目標でございますが、やはり六十五年赤字公債依存体質からの脱却というものは、あくまで貫徹すべく、今後も最善の努力を尽くしてまいります。
 「増税なき財政再建」という御議論でございますが、歳入面、歳出面にも、臨調の線に沿った最大限の努力をしておりまして、今回の税に関する提案等は、いずれも今までの程度のものであり、例えば、租税特別措置法の整理合理化を行うほか、法人税の繰越欠損控除制度の一部停止、あるいはたばこ消費税の臨時的引き上げ等行うということは、これも大体、数年来とられてきた調整措置と同程度のものであると解釈願いたいと思うのでございます。
 次に、社会党の都市改造プランに対する見解でございますが、このようなきめ細かないろいろな案が出てくることは、我々は歓迎し、参考にいたしたいと思っております。
 国有地の利用につきましては、やはり公共団体を第一に考え、そして、民活を適用しつつ、これを大いに活用してまいりたいと思っております。
 国立病院の存続問題等につきましては、実施に当たっては地元と十分協議して、地域の医療に支障を来さないように配慮してまいるつもりであります。
 国鉄事業につきましては、国鉄を鉄道の輸送機関として存立させるということは今急務でございます。このままいったら、国鉄体系自体が崩壊しかねまじき状態にあるわけでございます。そういう意味において、長い間勉強していただきまして、今回の再建案を提出するということになったのでございます。国鉄の保有資産の処分の問題も、その一環としてお考え願いたいと思うのでございます。これは三十七兆に及ぶ債務の累積から見ましても、財産処分をするということは、国民の皆様も御納得いけることであります。
 老齢福祉年金につきましては、六十一年度においても、拠出制年金の引き上げに準じて四月から額の引き上げを図る所存でございます。しかし、現下の厳しい財政事情等を考えると、基礎年金と同じ水準に上げることは困難でございます。年金額として、二万六千五百円を二万七千二百円に上げるつもりで今、努力しておるところでございます。
 障害者に対する最低賃金法の問題につきましては、最低賃金は、原則として障害者を含むすべての労働者に適用されるものであります。労働能力の著しく低い労働者につきましては、雇用機会を確保する観点から適用除外制度が設けられておりますが、障害者の保護に欠けることのないように、慎重に運用してまいりたいと思います。
 厚生年金と政管健保の繰り入れの特例措置でございますが、昭和六十一年度における厚生年金保険及び政管健保の特例措置は、国家財政が一段と厳しい状況のもとで、社会保障の実質的水準を確保するためにとられたやむを得ない措置であり、繰り戻しにつきましては、年金財政及び政管健保財政の安定が損なわれないように適切に対処してまいります。
 次に、社会的弱者に対する福祉政策につきましては、身体障害者やお年寄りなどの社会的に弱い立場にある方々に対しては、なれ親しんだ地域や家庭で安心して暮らせるようにすることが目標であり、在宅福祉サービスの充実等、きめ細かい制度を推進してまいります。
 四十人学級につきましては、五十五年度から六十六年度までの十二年間、計画により実施することといたしております。あるいは、問題児や障害児の教育の問題につきましては、これらの児童に対する指導を行うことがまず基本であり、それは、学校がまず第一に責任を持つことであります。しかし、個々の児童の状況によりまして、関係機関の協力を得て適切な指導を行いたい。心身障害児の教育については、障害の種類と程度に応じた適切な教育、障害の軽い子供は小中学校で、障害の重い子供は養護学校等で手厚い指導を行う。そしてあわせて、心身障害児に対する正しい理解、認識の推進を社会的に図ることが肝要であると考えます。
 暴力団につきましては、社会全体の敵であり、従来からと同じように厳しく取り締まってまいるつもりで、国民の御協力もお願いいたしたいと思います。
 人権条約につきましては、基本的人権の尊重及び擁護のために人権関係条約が果たす役割も十分認識して、国際人権規約及び女子差別撤廃条約は既に締結したところであります。未締結の問題についても、条約の目的や意義、国内法制との整合性等を勘案の上、検討してまいるつもりであります。
 差別の問題については、同和問題の早期解決について、地域改善対策特別措置法の期限もあと一年有余であり、この間に所期の成果を上げるべく努力してまいりたいと思います。また、社会的啓発についても努力をしてまいりたいと思います。
 補助金のカットについては、六十年度において一年間の暫定措置としてお願いしたのでございますが、本年におきましても、いろいろ検討の結果、結論を得られたものであり、特に、補助金問題関係閣僚会議、補助金問題検討会の報告の趣旨等を踏まえて、これを実行したもので、御理解を願いたいと思うのであります。
 給与改善費については、公務員給与改定に備えるための単なる財源措置でありまして、給与改定の目安とする趣旨のものではないのでございます。この点も御理解を願いたいと思うのであり、人事院勧告制度尊重の基本姿勢はいささかも変わっているものではございません。
 次に、円高対策、中小企業対策でございますが、円高基調は、貿易摩擦の解消の観点からは好ましいのでございますが、中小企業の一部に対しては、きめ細かな対策や、事業転換の円滑化、緊急の経営危機の回避を図ることが必要でございまして、十二月から既に、中小企業金融三機関による特別融資制度の創設等も行い、六十一年度予算においても、五十五億円の財政上の措置を講じて、今後も機動的、弾力的に実行もし、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法案を提出する考えでおります。下請取引の適正化、支払い遅延防止等についても、従前どおり努力してまいりますし、中小企業の官公需につきましても、毎年目標を設けて努力しておりますが、五十九年度の実績は三六・八%でありますが、六十年度の目標は三九・五%、六十年度はその努力でやっております。我々もさらに努力を継続してまいりたい。一挙に五〇%までに上げるということは、困難ではないかと思います。
 電力等の円高差益還元等につきましては、為替レートの動向や決算の状況等、事態の推移を見きわめることが必要であります。電力等の円高差益の活用に当たっては、料金の長期安定を初め、電力等の使用者の利益のために使うことを原則としつつ、慎重に検討していく必要があると思います。
 農林水産予算の確保につきましては、六十一年度においても、厳しい財政事情のもとで質的充実を図り、食糧の安定供給に必要な予算は確保したところでございます。今後も、生産性あるいは新しいバイオテクノロジーの活用等、農山漁村の活力ある発展のために努力してまいります。
 次に、農政の基本的方向でございますが、私は、農は国のもと、生命産業であると申し上げており、さらに、国土や自然環境の保全、社会の安定等のためにも、重要な役割を果たしておるということを意識しつつ、政策を強めてまいります。
 森林政策につきましては、国土の保全、水資源の涵養等々、公益的機能も十分有しております。国際森林年のこともあり、世界的に我々は努力していかなければならぬ部分もございます。今後とも、活力回復五カ年計画の実施など、引き続き積極的振興政策を行います。国有林野事業については、その経営改善に資するため、所要の予算について、一般会計からの繰り入れを引き続き実施しております。東京サミットにおきましても、昨年の国際森林年の成果を踏まえ、地球環境の保全等のために、さらに努力してまいりたいと思っております。
 国際平和年につきましては、我々といたしましては、この思想を国民の皆様方にできるだけ広く、深く浸透させまして、平和達成への努力を、国民的な広がりのものとして努力してまいりたいと思います。
 日ソの外相間定期協議については、今回のシェワルナゼ外相の来日を歓迎し、これを評価するものでございます。今後も、定期的にこの対話が継続され、一歩一歩事態が改善されるように願ってやみません。さらに、防衛力の問題につきましては、我が国は、特定の国を敵視するとか、仮想敵国を設けるというようなことは考えておりません。やはり必要最小限の防衛力を、憲法及び基本的な防衛政策に従って行うという考えで今後も一貫してまいります。軍縮につきましても、我々は、我が国の平和と独立を守るという基本線を維持しつつ、できるだけ軍縮が世界的にも達成されるように、協力してまいるつもりでおります。
 一%の問題につきましても、三木内閣のこの閣議決定につきましては、我々は、今後もこれを尊重して守っていきたいと念願いたしております。
 残余の答弁は関係閣僚からいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#23
○国務大臣(竹下登君) まず、実効ある内需拡大策に関連しての減税に対する御質問でありました。
 これは、総理からもお答えがありましたように、税制調査会において今、シャウプ税制以来の全般の見直し作業を行っておるまさにさなかでございます。したがって、本年秋ごろをめどに取りまとめることとされておりますので、今は鋭意御審議をいただいておる。したがって、この問題につきましては、税制調査会の検討結果を踏まえて対処していく課題であるというふうに考えておる次第であります。
 そこで、この機会をかりまして、内需振興策についてのお答えがあっておりましたが、これは、十月十五日の「内需拡大に関する対策」、さらに、十二月二十八日の公共事業、住宅減税、設備投資促進のための税制上の措置等を含めた「内需拡大に関する対策」を決定しておりますが、さらに、ただいま日本銀行から、公定歩合を五・〇%から四・五%へ〇・五%引き下げ、あすから実施することを決定した旨の連絡がございました。この措置は、景気、物価、為替相場の状況等に照らしまして、時宜を得た適切なものであって、そして、預貯金金利を初めとする市中金利全般の引き下げが促進されまして、景気の維持拡大に資することが期待されるであろうというふうに考えます。
 それから次の問題は、いわゆる補助金カットの問題についてでございます。
 六十年度におきます高率補助率の引き下げは、一年間の暫定措置であって、六十一年度以降の補助率のあり方はどうするか、これにつきましては、たびたびお答えいたしましたように、政府部内において検討を進めて、一年以内に結論を得る旨を申し上げてまいりました。そこで、そういう検討の場として、補助金問題関係閣僚会議、補助金問題検討会、これを随時開催をいたしまして、六十年十二月二十一日の最終的な補助金問題関係閣僚会議の決定に基づいて、そして今度、このような措置を行ったわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
 それから次が、公務員給与のいわゆる財源措置の問題でございます。
 そもそも給与改善費というのは、公務員給与改定に備えるためのいわば単なる財源措置でありますので、翌年度の人事院勧告そのものが、具体的にどういうようになるかを予測するということは困難な問題でございます。したがいまして、給与改善費につきましては、現下の厳しい財政事情を勘案して計上しないことといたしたわけでございますが、これはそもそも、人事院勧告制度尊重の基本姿勢はいささかも変わるものではない、人事院勧告の完全実施に向けて誠意を持って対処していくというのが、まさに本来の姿であります。(拍手)
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#24
○国務大臣(渡辺美智雄君) このたび通商産業大臣に任命をされました。どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)
 まず、円高に伴う中小企業対策をどうするかということでございますが、この件につきましては、総理大臣からお答えがございましたので、省略をさせていただきます。これに補足をいたしてまいりたいと存じます。
 事業転換の円滑化を図るために、信用保険、それから税制の特例を盛り込んだ特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、こういう法律を今国会にできるだけ早い時期に提出をいたしますので、これもよろしくお願いを申し上げます。
 それから、下請代金の支払遅延等防止法を改正して、もっと下請対策を抜本的に強化をすべしという御意見でございます。
 この下請取引の適正化につきましては、従来から、調査とか検査対象事業所をふやしたり検査官を増員したりして、いろいろやってはおるのです。下請代金の支払遅延等防止法をもっと厳正に、まず運用をもっと厳正にきめ細かくやるように徹底をしてまいりたい、そう思っております。それから、特に今回の円高について、親会社等が不利に、輸出業者が不利になるものですから、それを下請業者に不当にしわ寄せをしないように、これは親事業者団体等をよく指導をしてまいりたい。もう既に十二月の十六日、五十六の親事業者の団体の長に大臣名で直接要請をいたしました。今後とも、下請の問題につきましては、極力御趣旨に沿って努力をしてまいります。
 なお、官公需の中小企業向け発注比率を五〇%ぐらいに目標を引き上げてはどうかということでありますが、これはなかなか五〇%というのはちょっと難しいわけであります。御承知のとおり、国等の官公需の中には、ダムその他の非常に大規模なものや、あるいは高性能を要するものや、防衛庁の発注するもの等いろいろございまして、中小企業者に発注することが難しいものもかなりある、これも事実であります。しかし、できるだけ中小企業者が受注できるようなチャンスをつくるということが大切でございますので、そういうものはできるだけ中小企業者に発注していただきたいということを今後もお願いをしていきたい、そう思っております。(「思っているだけじゃだめだ」と呼ぶ者あり)いや、実行をさせて、努力をさせていただきます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣羽田孜君登壇〕
#25
○国務大臣(羽田孜君) お答えを申し上げます。
 先ほど総理大臣からも御指摘がございましたけれども、森林の持つ機能は、大変幅広く、木材等林産物を供給するだけではなくて、国土の保全、水資源の涵養、大気の浄化あるいは憩いの場を提供する、多くの機能を持っております。これらのもろもろの機能を発揮するためには、健全な林業生産活動、これを通じて森林を適正に管理することによって初めて、高度に発揮されると信じております。
 このため、森林・林業の果たしている重要な機能について、国民各層の幅広い理解をいただきながら、まず木材の需要の拡大、このためには、関係機関のいろいろな御協力もいただきながら、進めてまいらなければならないと思います。なお、林道など林業生産基盤の整備と林業地域の生活環境整備を含めた活性化、これを図ること。三番目として、国産材主産地の形成と林業担い手の確保。また四番目としては、総合的な間伐対策の実施。五番目は、治山事業の推進等国土保全対策の充実等、それぞれの施策を積極的に推進するとともに、国有林野事業につきましても、五十九年六月策定の国有林野事業の改善に関する計画に基づいて、鋭意経営の改善に努めているところであります。特に、六十年度からは、森林・林業、木材産業の活性化を図るための五カ年計画を実施することとしており、これらの諸施策の推進により、森林・林業の振興を積極的に図り、単に守るだけでなく、森林を真に豊かなものとして育てるために努めることを申し上げて、御答弁といたします。(拍手)
     ────◇─────
#26
○桜井新君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三十日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#27
○副議長(勝間田清一君) 桜井新君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○副議長(勝間田清一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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