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1985/04/11 第104回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第104回国会 本会議 第19号
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1985/04/11 第104回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第104回国会 本会議 第19号

#1
第104回国会 本会議 第19号
昭和六十一年四月十一日(金曜日)
    ─────────────
 議事日程 第十六号
  昭和六十一年四月十一日
    午後一時開議
 第一 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第五 農業改良資金助成法による貸付金等の財源に充てるための日本中央競馬会の国庫納付金の納付等に関する臨時措置法案(内閣提出)
 第六 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
○本日の会議に付した案件
 フィリピンに対する経済援助等に関する調査をなすため委員二十五人よりなる対フィリピン経済援助に関する調査特別委員会を設置するの件(議長発議)
 年金福祉事業団法及び国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 日程第一 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第四 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第五 農業改良資金助成法による貸付金等の財源に充てるための日本中央競馬会の国庫納付金の納付等に関する臨時措置法案(内閣提出)
 日程第六 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(坂田道太君) これより会議を開きます。
     ────◇─────
 特別委員会設置の件
#3
○議長(坂田道太君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
 フィリピンに対する経済援助等に関する調査をなすため委員二十五人よりなる対フィリピン経済援助に関する調査特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
 ただいま議決せられました特別委員会の委員は追って指名いたします。
     ────◇─────
#5
○議長(坂田道太君) お諮りいたします。
 参議院から、内閣提出、年金福祉事業団法及び国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案が回付されました。この際、議事日程に追加して、右両回付案を一括して議題とするに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
    ─────────────
 年金福祉事業団法及び国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)
#7
○議長(坂田道太君) 年金福祉事業団法及び国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の参議院回付案、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案の参議院回付案、右両案を一括して議題といたします。
    ─────────────
 年金福祉事業団法及び国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の参議院回付案
 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案の参議院回付案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#8
○議長(坂田道太君) 両案を一括して採決いたします。
 両案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも参議院の修正に同意するに決しました。
     ────◇─────
 日程第一 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第二 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#10
○議長(坂田道太君) 日程第一、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案、日程第二、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。社会労働委員長山崎拓君。
    ─────────────
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案及び同報告書
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔山崎拓君登壇〕
#11
○山崎拓君 ただいま議題となりました二法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、我が国が本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、中小企業退職金共済制度をより一層充実強化するとともに、その積極的な普及を図るため、所要の改善を行おうとするもので、その主な内容は、
 第一に、掛金月額の最低額を千二百円から三千円に、最高額を一万六千円から二万円にそれぞれ引き上げること、
 第二に、転職前の掛金納付月数が二十四月以上であるときは、退職の理由のいかんを問わず、掛金納付月数を通算することができるものとすること、
 第三に、中小企業退職金共済事業団及び特定業種退職金共済組合は、事業主が本制度へ加入すること及び掛金月額を増額することを促進するため、掛金の負担軽減措置を講ずることができるものとすること、
 第四に、余裕金の運用方法の範囲を拡大し、被共済者を被保険者とする生命保険の保険料の払い込みを加えるものとすること、
 第五に、事業団等が行う掛金の負担軽減措置に要する費用を国が補助することとし、退職金給付に対する国庫補助は廃止すること等であります。
 本案は、去る二月十三日付託となり、三月二十五日林労働大臣から提案理由の説明を聴取し、四月八日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、戦傷病者、戦没者遺族等の処遇の改善を図るため、障害年金、遺族年金等の額を恩給法の改善に準じて引き上げるとともに、戦傷病者等の妻に対して引き続き国債による特別給付金を支給しようとすること等であります。
 本案は、去る二月十七日に付託となり、三月二十日今井厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、昨日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#12
○議長(坂田道太君) 両案を一括して採決いたします。
 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
     ────◇─────
 日程第三 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#14
○議長(坂田道太君) 日程第三、港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長山下徳夫君。
    ─────────────
 港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔山下徳夫君登壇〕
#15
○山下徳夫君 ただいま議題となりました港湾整備緊急措置法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、昭和六十年代においても、貨物輸送の合理化、海外に依存する各種資源の安定的確保、港湾の利用の高度化への対応、地域振興のための基盤施設の整備、船舶航行等の安全性の向上、港湾及び海洋の環境の整備等の必要性が増大している実情にかんがみ、港湾の整備を引き続き強力かつ計画的に実施するため、昭和六十一年度を初年度とする新しい港湾整備五カ年計画を策定することとしようとするものであります。
 本案は、去る二月二十五日本委員会に付託され、三月二十八日三塚運輸大臣から提案理由の説明を聴取した後、四月八日質疑を行いました。
 その質疑の主な事項を申し上げますと、新港湾整備五カ年計画の投資規模、重点事項の内容及び今後の港湾整備のあり方等についてでありますが、その詳細は委員会議録によって御承知願いたいと存じます。
 かくて、同日質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#16
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#17
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ────◇─────
 日程第四 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#18
○議長(坂田道太君) 日程第四、郵便貯金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。逓信委員長宮崎茂一君。
    ─────────────
 郵便貯金法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔宮崎茂一君登壇〕
#19
○宮崎茂一君 ただいま議題となりました郵便貯金法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、郵便貯金振興会の経営の活性化のため、その役員の選任が自主的に行われるようにする等により、その経営の自立化を図るとともに、郵便貯金業務の総合機械化の進展等に伴い関係規定の整備を図ろうとするもので、その主な内容は、
 第一に、郵便貯金振興会の役員である理事長及び監事の選任については、郵政大臣の任命を認可に改めること、
 第二に、郵便貯金振興会に、その運営に関する重要事項を審議する機関として評議員会を置くこと、
 第三に、その他郵便貯金の取り扱いに関する事務手続的事項の省令委任を行うこと等所要の規定の整備を行うこととしております。
 本案は、二月二十五日本委員会に付託され、四月三日佐藤郵政大臣から提案理由の説明を聴取し、九日質疑を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#20
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#21
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ────◇─────
 日程第五 農業改良資金助成法による貸付金等の財源に充てるための日本中央競馬会の国庫納付金の納付等に関する臨時措置法案(内閣提出)
#22
○議長(坂田道太君) 日程第五、農業改良資金助成法による貸付金等の財源に充てるための日本中央競馬会の国庫納付金の納付等に関する臨時措置法案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。農林水産委員長大石千八君。
    ─────────────
 農業改良資金助成法による貸付金等の財源に充てるための日本中央競馬会の国庫納付金の納付等に関する臨時措置法案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔大石千八君登壇〕
#23
○大石千八君 ただいま議題となりました農業改良資金助成法による貸付金等の財源に充てるための日本中央競馬会の国庫納付金の納付等に関する臨時措置法案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、農業改良資金の政府貸付金等の財源を緊急に確保するため、昭和六十一、六十二両年度限りの特例措置として、日本中央競馬会の特別積立金の一部をその財源に充てる措置を講じようとするものであります。
 本案は、去る二月十四日本委員会に付託され、三月二十五日羽田農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、四月九日質疑を行い、同日質疑を終局いたしましたところ、自由民主党・新自由国民連合から、法律の施行期日を公布の日に改める修正案が提出され、採決の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
#24
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。     ────◇─────
 日程第六 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
#26
○議長(坂田道太君) 日程第六、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長志賀節君。
    ─────────────
 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
    〔志賀節君登壇〕
#27
○志賀節君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を報告させていただきます。
 本案の内容は、スペインのバルセロナに総領事館を設置するとともに、同総領事館に勤務する在外職員の在勤基本手当の基準額を定めようとするものであります。
 本案は、二月五日本委員会に付託され、三月二十七日安倍外務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、慎重に審査を行いました。
 質疑におきましては、バルセロナに総領事館を設置する理由、円高の影響による在勤基本手当の支給状況、我が国の経済協力のあり方等、広範多岐にわたる質疑応答が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。
 かくて、四月十日質疑終了後、宮下創平君外一名から、施行期日の「四月一日」を「公布の日」に改める修正案が提出され、趣旨説明の後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対して附帯決議が付されました。
 以上、報告させていただきます。(拍手)
    ─────────────
#28
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありません
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○議長(坂田道太君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ────◇─────
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#30
○議長(坂田道太君) この際、内閣提出、老人保健法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣今井勇君。
    〔国務大臣今井勇君登壇〕
#31
○国務大臣(今井勇君) 老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 人口の高齢化が急速に進む中で、老人医療費の増加は避けられないところでありますが、最近著しい伸びを示しております老人医療費を適正なものとし、国民がいかに公平に負担していくかということは、老人保健制度を長期的に安定したものとしていく上で不可欠の課題であります。
 また、人口の高齢化に伴い、今後急増すると予想される寝たきり老人等の要介護老人に対し、保健、医療、福祉を通じた総合的な施策の展開が求められております。
 こうした状況等を踏まえ、老人保健制度を幅広く見直すこととし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、一部負担の改正であります。
 現在、外来の場合一月四百円、入院の場合二カ月を限度として一日三百円となっておりますが、これを改め、外来については一月千円に、入院については期限を撤廃して一日五百円に改定することといたしております。増大し続ける老人医療費の負担の現状にかんがみ、健康に対する自覚と適正な受診、さらには世代間の負担の公平という観点から、被用者保険本人や在宅療養者とのバランスも勘案して、定額制を維持しつつ、一部負担金の額の引き上げをお願いするものであります。
 第二は、加入者按分率の引き上げであります。
 昭和六十一年度の六月一日以降八〇%、昭和六十二年度以降は一〇〇%に引き上げることとしております。老人医療費につきましては、一人当たりで他の世代の五倍となっているため、老人加入率の高い保険者ほど老人医療費の負担は重たいものとなっており、各保険者間の老人医療費の負担の不均衡は一層拡大しております。このため、加入者按分率を引き上げ、どの保険者も同じ割合で老人を抱えるようにし、負担の一層の公平化を図ることといたしております。
 第三は、老人保健施設の創設であります。
 寝たきり老人等の要介護老人にふさわしい医療サービスと生活サービスを提供する施設として、老人保健施設を創設するとともに、この施設を利用する老人に対する新たな給付として、老人保健施設療養費を支給することとしております。これらの施策を講ずることにより、国民が安心して老後を託せる老人保健制度を確立しようとするものであります。
 以上のほか、医療保険各法に準じて特定療養費制度を導入するとともに、老人保健施設の創設に伴う医療法、社会福祉事業法の改正なども行うこととしております。
 また、医療保険各制度を通ずる老人医療費の公平な負担を図るため、国民健康保険法を改正し、正当な理由がないのに保険料を滞納している者に対し、給付を一時差しとめる等の措置を講ずることといたしております。
 なお、この法律の施行期日は、本年六月一日からとしておりますが、老人保健施設に関する事項は公布の日から起算して一年六カ月を超えない範囲内において政令で定める日から、また、関係審議会への諮問に関する事項は公布の日からとしております。
 以上が老人保健法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ────◇─────
 老人保健法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#32
○議長(坂田道太君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。辻一彦君。
    〔辻一彦君登壇〕
#33
○辻一彦君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま提案されました老人保健法等の一部を改正する法律案に対し質問をいたします。
 今、お年寄りの皆さんの有病率は、昭和四十年の一八%から五十九年の四七%へと、急速にふえているのであります。これは、老人保健法の対象には、経済成長期において、老後の健康を著しく損なうほどに働き過ぎた国民が多数含まれているということであります。このお年寄りは、三、四十年一生懸命働いて、老後はお医者さんにかかっても心配は要らない世の中になったと思ったのもつかの間、五十八年二月から一部負担が導入され、さらに今回の改悪によって、六カ月入院した場合、患者負担は今の一万八千円から九万円と五倍に、一年間では十八万円と十倍にはね上がるものであります。このように長年働き続けたお年寄りに重い負担を強いる法改悪は、福祉国家の重大なる後退と言わなくてはなりません。(拍手)
 また、現役サラリーマンの保険からの拠出が、老人医療費の伸びとリンクをして歯どめなく増大する危険を回避するため導入されたのが、現行のシステム、すなわち拠出の増加率を老齢人口の伸び率以下に抑えるというルールなのであります。したがって、按分率の変更によってこれをなくするということは、今後、被用者保険からの拠出に歯どめをなくしてしまう暴挙と言わなくてはなりません。我々は、断じてこれを許すことはできません。これについてどうお考えであるか、総理の御意見をお伺いいたしたいと思います。
 さらに、中曽根総理にお尋ねをいたします。
 そもそも、国民に負担の増加を求める場合には、二、三十年間の中長期的な計画を示して、政府としてもこのように努力をするから、国民の皆さんもよろしくというのが筋ではないでしょうか。ところが、老人医療費に占める国庫負担の割合は、今の三八・五%が昭和七十五年度に三四%まで落ち込むというもので、話は全く逆なのであります。総理、いかがにお考えになるか、お伺いいたしたいと思います。
 今日の高齢化社会の中で、寝たきり老人や痴呆性老人の看護、介護問題は、大きな問題となっております。人間は、将来どんなに体が不自由になっても、できる限り病院や施設に入らずに家族に見てもらいたいと願っております。しかしまた、寝たきり老人の家庭における看護、介護は、家族にとり重い負担であることも事実であります。私の周辺におきましても、長い間寝たきり老人の重介護に苦しんでいる家族がありますが、せめて月に一日は介護休日が欲しいと訴えております。この切実な声にこたえることは、焦眉の急と言わねばなりません。
 これらの願いにこたえるためには、一つには、医療、機能訓練、看護及び介護など専門的なサービスを出前もしくは宅配をするシステム、二つには、小学校区に一カ所程度、整備された地域の介護施設が、いわゆる中間施設の役割に加えて、日帰りの利用や短期利用の機能をあわせ持つようにするということ、三つ目には、住宅の構造や設備の改善を助成すること、以上の三条件が不可欠と考えますが、総理の方針を承りたいのであります。
 一方、政府案の老人保健施設は、病院と比べて医師、看護婦が少なく、特別養護老人ホーム、これに比べて介護職員が少ないという構想であります。これでは、医療費と措置費の単なる削減策にすぎないのではないかとさえ思われるのでありますが、厚生大臣、この点はいかがでありましょうか。厚生省は、昭和七十五年度までにこれを二十八万床整備するとし、その結果、同年度までの老人医療費の伸びを二%程度抑制できるというのであります。一体どんな根拠でこのような予測が成り立つと言うのか、また、それは病院病床の転用及び特別養護老人ホームの転用なのかについても明らかにすべきであります。
 なお、老人保健施設の機能の一つとして、リハビリテーションを挙げているにもかかわらず、作業療法士、理学療法士、言語訓練士など専門職員の配置が方針化をされていないことは、まことに不可解と言わなければなりません。政府は、まず、リハビリ専門職員の需要を予測し、これに基づいた養成計画を策定すべきであり、また、言語訓練士の身分法制定の必要もあります。これらの点について、厚生大臣の具体的な方針を聞かせていただきたいのであります。
 次に、提案理由でも指摘された老人医療費の適正化についてであります。
 果たしてこれを適正化できるかどうかは、投薬、注射の繰り返しによっては効果が上がらない長期慢性病患者に対し、第一線の医師がどう取り組むかにかかっているのでないでしょうか。そうだとすると、患者に生活指導のできる医師、すなわち家庭医または生活医を養成しなくてはなりません。このため、医師の臨床研修において、専門医でなく家庭医重視のカリキュラム、すなわち総合ローテート方式の普及徹底を図らねばならないと思いますが、関係大臣の姿勢を明らかにしていただきたいのであります。
 特に、僻地の医師を養成する自治医大の責任は大きいのでないでしょうか。なぜなら、僻地は既に超高齢化社会であり、したがって、これを担当する医師は、長期慢性疾患のエキスパートでなければならないからであります。このように考えますと、自治医大は、慢性病を中心とする生活医学、生活療法のセンターへと発展させねばならないと思いますが、自治大臣の御見解をお伺いをいたします。
 なお、差額室料やお世話料といった法外負担を一切なくすることが、医療費適正化の第一歩ではないでしょうか。民間医療保険がこれらの負担をカバーし始めた今日、法外負担の規制は極めて困難になってきたと思われますが、厚生大臣の見解を伺うとともに、保険業界の開発する疾病保険の認可に当たってどのような方針で臨まれるか、大蔵大臣の方針を承りたいと思います。
 なお、国民健康保険料の滞納者にかかわる法改正は、老人保健制度とは切り離して提案すべきであります。大体、医療機関のない僻地ほど保険料が異常に高いという制度矛盾をほっておいて、それを払えない者におきゅうを据えるということ、このことは、理不尽のきわみと言わなくてはなりません。今、国保の保険料の一番高いのは北海道網走市で、世帯員一人当たり平均年額六万一千五百円にも上り、四人家族ならば、何と年間に二十五万円近く納めているのであります。このように高い保険料を払っても自己負担は三割という現状では、滞納が多くてもやむを得ない一面があると考えるべきではないでしょうか。このため、給付率の改善、保険料免除枠の拡大、都道府県ごとの財政調整、そして国庫負担率の引き上げなどが急務であると考えますが、厚生大臣、いかがでしょうか。
 農山村では、子供を一人でなく二人、三人と育て、教育をし、若い労働力として都会に送っております。加えて、老後の社会保障の不備のため、退職後農山村にUターンする高齢者も少なくありません。このため特に、山村僻地は老齢人口が高く、したがって有病率は高く、国民健康保険は赤字となるのは当然であります。言うなれば、これは日本の高成長、経済大国を支えたためであり、したがって、この赤字を国庫負担で埋めるのは自明の理であり、当然なことであります。過疎地市町村に対しては、国庫負担の特別増額という新たな制度をつくるべきでないか、前向きの答弁を期待したいのであります。
 私の好きな言葉に、老壮青の三結合というのがあります。家庭も地域も世の中もよくなるには、青年の情熱、壮年の行動力と分別、老年の豊かな人生経験が結びつかなくてはならないということであります。それには、第一に健康が必要であり、お年寄りの健康維持のためにどう対処しているかを総理にお伺いいたします。(拍手)また、最近、村や町でお年寄りによるゲートボール等のレクリエーション活動が非常に盛んであります。これらの施設等を拡充することも大切と思いますが、その対策はどうか、総理にこれもお尋ねをいたします。
 最後に、このような老人医療や福祉の後退は、高齢者のみならず、壮年、中堅層にも、将来の病気や老後の不安に備えてさらに貯蓄を高めることにならないか。このことは、国内外から要求されている日本経済の内需拡大への大きな支障となるおそれがあります。政府は、八日の経済対策閣僚会議で、内需拡大のための総合経済政策を決めましたが、このような考え方が欠落しているのではないでしょうか。内需拡大のためにも、貯蓄性向を高めるおそれのある本法案の撤回と福祉の充実を総理に強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#34
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 辻議員にお答えをいたします。
 まず、加入者按分率の引き上げの問題でございますが、老人保健制度の長期安定を図るという観点から、老人加入率の格差による負担の不均衡を是正し、どの医療保険も同じ割合で老人を抱えるようにすることにより、老人医療費の負担の公平を図るものでございます。したがいまして、被用者保険の拠出金について、御指摘のような歯どめをかける措置を設けることは適当でないと判断したものでございます。
 次に、老人医療費の中長期的見通しでございますが、ことしの予算におきましても、社会保障費が大体九兆八千億円で、その中でも、老人医療関係がたしか四兆二千億円ぐらいに及んでいると記憶しております。しかも大体、医療費は毎年毎年自然増でふえつつあります。そういうような状況を踏まえまして、いかに国民が公平に負担して、長期的に、安定的にこの制度を維持していくかということが我々の関心事でございます。今回の改正は、このような観点から、老人保健制度を長期的に安定させ、二十一世紀においても国民が安心して老後を託せるようにするものでありまして、単に国庫負担の削減を目的とするものではございません。これらの負担の内容等については、厚生大臣から御答弁申し上げます。
 次に、地域在宅福祉のための政策でございますが、御提唱の三条件については、寝たきり老人等の在宅対策を進める上で、極めて重要なものと認識しております。今後は、高齢者の方々ができるだけ家庭で生活していけるよう、御提唱の点を踏まえつつ、在宅対策に重点を置いてまいる考えでおります。
 次に、老人の健康を増進する方策も極めて重要であります。若いときからの病気の予防あるいは健康管理ということは非常に重要でありまして、その効果も大きいのでございます。したがって、今後とも、この事業を積極的に推進してまいりたいと思っております。
 老人のレクリエーション施設、特に例えば、ゲートボール等の施設につきましては、老人クラブ等を通じて社会参加の一環としても、積極的に御参加を願えれば非常に結構であると思っております。そして、このような老人福祉センターの整備には、積極的に協力してまいる所存でございます。
 次に、総合経済対策と福祉の問題でございますが、去る八日に決定した政策は、内需を中心とした景気の維持拡大を図るものであり、大体一兆円に及ぶ電力、ガスの料金引き下げ等の円高差益の還元は、個人消費の拡大に資するものであります。
 さらに最後に、老人保健法案を撤回する考えはございません。
 残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣今井勇君登壇〕
#35
○国務大臣(今井勇君) 辻先生にお答え申し上げます。
 まず、将来の老人医療費の負担に関するお尋ねでございますが、仮に今後の老人医療費につきまして、過去の趨勢を基礎として一定の前提のもとに現時点で可能な限りの試算を行いますと、老人医療費は、昭和六十一年度約四兆二千億円、二十一世紀に入る七十五年度には約十五兆五千億円になるものと見込まれております。また、この間に国庫負担は、約一兆六千億から約五兆四千億円になるものと見込まれます。今回の改正によりまして国庫負担の割合が低下するとの御指摘でありますが、これは、医療保険制度間の負担の不均衡を是正することによりまして、国民健康保険の拠出金が軽減することに伴うものでございまして、国庫負担の削減を目的として改正を行った結果ではございません。
 次に、老人保健施設についてでありますが、人口の高齢化とともに増大化します寝たきり等の要介護老人のために、医療サービスと生活サービスをあわせ持つ新しい施設が必要とされております。老人保健施設は、このような観点から、要介護老人の多様なニーズに対応する施設として、今回制度化を図るものでございまして、単なる医療費や措置費の削減をねらいとしたものではございません。
 また、老人保健施設の医療費に及ぼす影響についてでありますが、老人保健施設は、手厚い看護や介護を提供する施設でございまして、その整備を進めることによりまして、いわゆる社会的入院の解消が図られまして、中長期的には老人医療費の適正化にも資するものと考えております。仮に昭和七十五年度までに三十万床程度の整備を図るという前提を置いて長期的に推計をいたしますと、老人医療費の伸び率は、現状のままの場合に比べまして、約二ポイント程度低下するものと見込まれます。この老人保健施設の整備に当たりましては、地域におきます要介護老人の実態を踏まえ、病院の病床転換や特別養護老人ホームへの併設などを重点に、段階的に整備を進めていくことといたしております。
 次に、リハビリ専門職員についてでありますが、近年、理学療法士、作業療法士の養成に格段の努力を行ってきたところでありまして、その将来の需給見通しにつきましては、昭和五十八年に医療関係者審議会から意見書をいただきまして、現状の養成体制で昭和六十七年ごろには需要と供給が均衡するものとされております。したがいまして、現段階におきまして新たな養成計画を策定することはないと考えておりますが、今後、需給の動向を見きわめながら適切に対処してまいりたいと考えております。なお、老人保健施設の職員配置につきましては、リハビリ専門職員のあり方を含めて、老人保健審議会での審議を踏まえ検討することとしております。また、いわゆる言語訓練士につきましては、その業務内容などにつきまして関係団体間で合意が得られておりませんことから、現在のところ関係団体の調整を見守っているところでございます。
 次に、医師の臨床研修についてでありますが、医師が地域医療におきまして通常見られます疾患に幅広く対応できますように、昭和六十年度から特定診療科に偏らない総合的な研修を行います総合診療方式を導入するなど、施策の充実に努めているところであります。なお、プライマリーケアの中心的な担い手といたしましての家庭医が必要であると考えておりまして、現在、家庭医に関する懇談会を設けて、検討を進めているところでございます。
 次に、いわゆる保険外負担についてでありますが、このうち、差額ベッド代につきましては、その負担を適正な範囲のものとするように指導してきております。また、いわゆるお世話料につきましては、保険給付と重複するものにつきまして、その是正について指導を行っているところであります。今後とも、こうした指導の徹底を図ってまいる所存であります。
 最後に、国民健康保険に関するお尋ねについてでありますが、近年、保険料の滞納が増加いたしまして、保険料を納めている方と滞納している方との間の負担の不均衡が拡大をしてきております。このため、負担の公平化を図る観点から、滞納者のうち、特に悪質な者について保険給付を一時差しとめることといたしておりますが、これは、負担の公平化を図ろうとする今回の老人保健法の改正と趣旨、内容につきまして密接な関係を持っておりますことから、同一の法案によりまして御提案をするものであります。国保の給付率の問題につきましては、医療保険制度の一元化との関連におきまして検討してまいりたいと考えております。次に、国保の保険料の減免につきましては、本年度もその軽減基準額の引き上げを図っております。
 国保の国庫負担につきましては、現在、医療給付費の二分の一という高率の補助を行っているところでございまして、現下の厳しい財政事情から見ても、補助率の引き上げというのは極めて困難と考えております。また、国保の財政調整につきましては、財政調整交付金の仕組みや各都道府県ごとに実施されております高額医療費の共同負担事業によりまして、市町村間の財政力の格差の是正を図っているところでございまして、こういった措置を通じまして、過疎地の市町村に対しましても配慮してまいりたいと考えております。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣小沢一郎君登壇〕
#36
○国務大臣(小沢一郎君) 辻先生にお答えいたします。
 自治医大は、御承知のとおり、医療に恵まれない僻地等における地域医療に進んで挺身する気概と高度な医療能力を有する臨床医の養成を目的といたしまして、全国の都道府県が共同してつくったものでございます。僻地、離島等におきましては、あらゆる疾病に適切に対応する必要があり、包括医療の実践が現実問題として要請されております。したがいまして、大学卒業後、県立病院等で実施される臨床研修におきましても、できるだけ多くの診療科にわたりまして研修が行われるよう努めてきておるところであります。今後ともその方針を徹底させていきたいと考えております。
 次に、いわゆるセンターのお尋ねでございますが、自治医大を卒業しました医師の勤務する地域におきましては、高血圧等の慢性疾患患者が多く見られる傾向にございまして、これらに対する医療及び生活指導が重要であると私どもも考えております。したがいまして、自治医大では、僻地等の医療需要の実態に即した教育内容の整備に努めるとともに、関係者に対する医学知識や技術の普及向上のための研修会等の充実を図るよう、今後とも督励してまいる所存であります。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#37
○国務大臣(竹下登君) 私に対する最初のお尋ねは、生命保険会社及び損害保険会社が行います公的保険制度を補完する医療保険、このことについてでございます。
 民間医療保険は、疾病、傷害という保険事故に対して給付を行う保険でありまして、生命、損害両保険会社から、それぞれの特色を生かした商品が販売されておるところでございます。当局としては、国民のニーズ及び公的医療保険制度との関係に十分配慮をしながら、保険としての健全性も念頭に置いて認可をしてきておりまして、今後とも、基本的にそのような考え方で対処していく所存でございます。
 次は、国保保険料対策についての御意見を交えた御質疑でございますが、厚生大臣からもお答えが既にございました。国民健康保険の保険料の納付に際しては、所得に応じて保険料の一部が軽減されることとなっておりますが、この保険料軽減措置のあり方につきましては、被保険者間の負担の公平及び保険財政の安定化等の観点から検討さるべき問題と考えております。また、現在、国民健康保険に対しましては、厚生大臣のお答えにもありましたように、給付費の二分の一という多額の国庫負担を行い、その配分に当たりましては、財政調整交付金によって保険者の財政状況等に対処して、きめ細かな配慮をしておるところであります。さらに、老人人口の差から生じます負担の不公平を解消するため、現在、加入者按分率の引き上げを内容とするまさに老人保健法改正案を御提案しているところでございまして、老人人口の多い過疎市町村のためにも、老人保健法改正案の早期成立をぜひともお願いする次第であります。(拍手)
    ─────────────
#38
○議長(坂田道太君) 森田景一君。
    〔森田景一君登壇〕
#39
○森田景一君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま趣旨説明の行われました老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に若干の質問を行うものであります。
 人生八十年時代を迎え、超スピードで高齢化社会が進行している中で、昭和四十八年度から発足していた老人医療費公費負担制度、いわゆる老人医療無料制度は、老人の方々に大変喜ばれましたが、医療費の支払い側や診療の受け方等をめぐりさまざまな問題が生じたために、疾病の予防、治療、機能訓練等を一貫した総合的保健事業を実施することを条件として、医療費の一部負担が導入された老人保健法が昭和五十七年に創設されました。創設当時は、予防、治療、リハビリテーションの一貫体系の老人保健法は、画期的なものと評価されたものでありましたが、法律施行後におきましても、保健事業の総合的実施は遅々として計画どおりに進まず、その対策の強化が問題視されておりました。
 そこで我が党は、昨年、老人対策緊急百億円プランと銘打ち、その強化を図ってきたところであります。すなわち、一、専門保健福祉施設の整備のため、特別養護老人ホームの施設整備を追加すること。二、寝たきり老人訪問保健指導の徹底。三、在宅介護支援体制の強化、すなわちホームヘルプサービスの改善、ショートステイ、デイサービス実施箇所数の増加等。四、在宅寝たきり老人介護控除制度の創設。五、ひとり暮らし老人などのための住宅対策の確立。六、老人問題に関する総合研究機関の設立等を提唱したのでありますが、幸いこのプランは、各党の御理解をいただきまして、六十一年度予算に大きく反映され、その実現の運びとなりました。しかしながら、政府の老人福祉サービスは、なお公的施策の立ちおくれが目立ち、社会保障制度審議会からも、「在宅福祉の在り方について」との指摘を受けているところであります。
 我が党は、こうした状況を一日も早く打開するため、本年も健康アップ緊急百五十億円プランの提案を行い、予算の修正要求に盛り込んだところであります。
 その内容は、一、家庭婦人等の健康診査体制の拡充整備。二、がん予防検診の充実。三、健康増進対策の充実拡大。四、エイズ対策の推進。五、中毒一一〇番体制の整備充実。六、中間施設整備促進。七、独居老人健康コールシステムの確立などでありますが、これも是が非でも実現せしめ、福祉の後退に歯どめをかけなければならないものであります。
 以下、順次質問に入りたいと思います。
 まず質問の第一は、中間施設についてであります。
 中間施設の整備については、関係各方面から強い要望のあるところでありますが、本改正法案にも、老人保健施設として、この中間施設を創設することが提案されております。本年度は、病院併設八カ所、特別養護老人ホーム併設二カ所の合計十カ所をモデル実施する計画であります。施設の内容は、現行の老人病院と特別養護老人ホームとの両方の機能を同時に備えた中間施設を考えているようでありますが、政府も定義が必ずしも定着していないと答弁しておりますとおり、この中間施設についてはなお性格があいまいであります。
 いずれにせよ、これらの中間施設は、地域のニーズに合わせて弾力的につくられなければなりません。したがって、国が画一的に定型を押しつけることも避けなければなりませんし、当然、本年度予算における十カ所のモデル中間施設では不十分であります。各種タイプのモデル中間施設をもっとつくるべきでありましょう。健康アップ緊急百五十億円プランでも、中間施設整備の国庫補助を増額し、特養老人ホーム、病院の中間施設化及び新設施設を含め、モデル実施箇所を大幅にふやし、速やかに制度化を図るよう要望しているところであります。総理、大蔵、厚生各大臣の御所見を承りたい。
 質問の第二は、中毒一一〇番についてであります。
 筑波大学の中毒一一〇番が資金難により廃止されましてから、もう一年を経過しております。この間、中毒一一〇番の復活を求める声は大きく、増岡前厚生大臣は昨年秋までには復活させると約束されましたが、約束が実現しないまま辞任されてしまいました。しかし、関係者の方々は、大変な努力を重ねられまして、中毒一一〇番を財団法人中毒情報センターとして復活させる寸前まで参りましたが、財団法人設立にあと一歩のところで足踏みしている状態です。電力、ガス会社では一兆円に上る円高差益を消費者に還元することを決めましたが、円高差益のほんの一部、一億円か二億円をこの財団設立資金に寄附してもらえればすぐ発足できるのです。生命尊重の立場に立てば、これは直ちに解決すべき問題であります。それがスタートできないでいるのは、中曽根内閣が生命を軽視しているからだと言われても仕方がないでありましょう。本来、中毒一一〇番のような重要な仕事は、国の責任で対処すべきものであります。総理はどう対処されるおつもりであるか、明確な答弁を求めるものであります。
 質問の第三は、老人医療費一部負担金の大幅引き上げについてであります。
 本改正案では、外来自己負担が、現在一月四百円であるのを一月千円に引き上げ、入院自己負担については、現在一日三百円を二カ月間だけ支払えばよいものを、今度は入院全期間にわたって一日五百円にしようというものであります。これは通院の場合では、月二・五倍の大幅値上げであります。入院の場合は、さらに厳しく、一カ月目の入院費が現行九千円であるのに、これが一万五千円になります。しかも、二カ月の限度期間が撤廃されると、一年間の入院生活では、現在の一万八千円から約十八万円と、一挙に十倍に負担がふえることになります。入院の場合は、このほかに基準外支出の差額ベッド料や付添看護料があります。全国の老人団体や東京都の付添看護料調査で、月額十万円以上の負担をしている人が百十二人中五十人を超えております。お年寄りは、年金受給額も少なく、退職老齢年金の受給額も低い。そうした中で、このように大幅な負担金引き上げは、弱者切り捨ての暴挙であると言わざるを得ません。
 老人保健法は、本来、健やかに老い行くための壮年期からの健康対策立法であり、疾病予防の充実、老人医療の質の向上が柱であり目的であるにもかかわらず、その本質を忘れ、単に保険財政の収支のつじつま合わせの医療費収集法に変質させているとしか言いようがありません。老人に負担増を求める前に、多額の差額ベッド代、紙おむつ代、寝具代等の保険外負担等を解消するか、軽減を図るべきでありましょう。総理及び大蔵、厚生各大臣の答弁を求めるものであります。
 質問の第四は、加入者按分率の引き上げについてであります。
 老人保健制度では、老人医療費の各保険制度からの拠出金については、全体の五〇%を医療費の実績額、すなわち医療費按分、五〇%は、老人加入率を全加入保険者平均に置きかえて計算し加入者調整した額、すなわち加入者按分との合計額となっております。今回の改正案では、加入者按分率を六十一年六月から八〇%、六十二年度以降を一〇〇%にしようとするものであります。老人の医療費を国民全体で公平に負担するとの趣旨そのものは理解されるものの、加入者按分率や一部負担金などの引き上げには理論と実態とのギャップがあり、通常、激変緩和措置がとられなければなりません。それをあえて急激に大幅引き上げを強行しようとしている背景には、中曽根内閣の福祉切り捨て政策が強く影響しているからだと言わざるを得ないのであります。
 すなわち、昭和六十一年度の厚生省予算要求案では、国庫負担ベースで一兆五千億円の当然増が予定されていたにもかかわらず、例外的増枠経費が四千億円ほど認められただけで、結局、差し引き一兆一千億円を削減しなければならなかったと伝えられております。この一兆一千億円を削減するために、老人保健法から一千九百億円ひねり出そうというわけであります。そこで、加入者按分率を八〇%に引き上げれば、国民健康保険の拠出金が二千九百億円減少し、それに伴って国庫負担は一千九百億円減少して、ちょうどそろばんが合う勘定になります。激変緩和措置も何もあったものではありません。福祉切り捨て政策そのものと言っても過言ではないでありましょう。加入者按分率の引き上げを急ぐ前に、おくれている保健事業の計画達成やリハビリ、すなわち福祉施設の充実強化こそ肝心であります。また、人口高齢化に伴う医療費や年金等の社会保障関係費は、大幅な当然増が見込まれていることから、別枠予算にして福祉の後退をとめるべきであるとの議論が盛んになっておりますが、政府としてはどのように対処されるお考えであるか、あわせて答弁をお願いしたいものであります。
 質問の第五は、老人問題総合研究機関の設立についてであります。
 我が国の高齢化は、平均寿命の伸長と出生率の低下によりまして、確実に進行しております。総人口に占める六十五歳以上の人口比率、すなわち高齢化率は、五十九年には九・九%に至りましたが、七十五年には一五・六%に達すると推定されております。老年人口は毎年三ないし四%ずつふえておりまして、八十五年ごろから年少人口を上回ると見られております。高齢化の進展に伴い、寝たきり及び痴呆性老人の発現が問題になってまいります。高齢者が病気がちになることも避けられません。しかし、老化とは何か、なぜ老化するのか等々、そのプロセスは解明されておりません。
 今後、医学的老化研究は、生理的老化と病的老化の二つの側面から推進する必要があるとされております。しかし、我が国における老化研究はかなりおくれておりまして、現在、全国レベルで研究の総合的役割を果たす機関はありません。老化研究機関としても、東京都老人総合研究所、日本医科大学老人病研究所、その他東大、京大などの老人教室、国立精神衛生研究所、国立理化学研究所などが挙げられる程度であります。米国、ソ連を初め諸外国は、老化研究専門の国立研究機関を設置しております。我が国でも、早急に研究体制を確立する必要がありますが、総理の決意のほどをお聞かせいただきたい。
 最後に、悪質な国保保険料滞納者には、被保険者証を返還させ、給付を一時差しとめることができるように改正されるわけでありますが、これが拡大解釈され、乱用されることのないよう、また、保険料の徴収については、当事者の市町村が格段の企業努力をすべきであります。
 いろいろと申し上げましたが、いずれにいたしましても、本改正法案は問題が山積しており、この際、廃案として出直すべきことを主張して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#40
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 森田議員にお答えをいたします。
 まず、中間施設の問題でございますが、六十一年度に所要のモデルの実施を行い、これを踏まえまして六十二年度から本格的に実施することといたしております。できるだけこれをふやしてまいりたいと思っております。
 次に、中毒情報センターの設立でございますが、これは極めて重要かつ意義あるものと考えております。政府といたしましては、その重要性にかんがみまして、データベースの整備費を昭和六十一年度予算に計上しており、近く財団法人の設立認可の申請があると聞いておりますので、申請があり次第、速やかに認可を行いたいと考えております。
 次に、保険外負担の解消、軽減の問題でございますが、今回の一部負担の改正は、健康に対する自覚を持っていただくという点も若干ございますとともに、適正な受診をお願いし、また、老人医療費を世代間で公平に負担するという観点からもお願いしておるものでございます。御質問の保険外負担につきましては、今後とも適切な指導を行ってまいる所存でございます。
 最後に、総合研究機関の設立の問題でございます。
 老人の老化現象あるいは老人病に対する研究を進めることは、極めて重要な課題であり、世界に最高水準の長寿を誇る我が国におきましては、緊要な問題でございます。研究機関の設立につきましては、天皇陛下御在位六十年の慶祝事業の一環として、長寿科学研究組織に関する調査検討を進めていくことにいたしております。
 残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#41
○国務大臣(竹下登君) まず、十カ所のモデル中間施設の問題でございます。
 総理からお答えがございましたが、制度の具体的運用に係る諸基準を定めるのに必要な基礎データの収集を行うことを目的としておりますので、私は十カ所で所期の目的が達成できるものと考えております。
 それから、二番目の問題につきましても、総理からお答えがございました。差額ベッド代につきましては、その負担を適正なものとするよう、まさに厚生省において具体的内容、いわゆる通達等を適切に出して対処しておられるというふうに理解しております。
 最後の問題は、いわゆる別枠予算ということでありますが、福祉目的税に関連して、社会保障特別会計あるいは社会保障勘定の創設等の提言についての御指摘であろうと思います。
 この問題は、今後の財政再建の具体的な進め方とか、社会保障に対する負担のあり方等を検討していくためには、示唆に富んだ考えであると受けとめておりますものの、一方また、いわゆる社会保障関係費が聖域となりはしないか、あるいは硬直するのではないか、他の関係に対して別枠という説明で納得が得られるかどうか、幾つかの問題もございますので、いわば受益と負担との関係において、これからも検討を重ねていかなければならぬ課題だという問題意識は持っております。(拍手)
    〔国務大臣今井勇君登壇〕
#42
○国務大臣(今井勇君) 森田先生にお答え申し上げます。
 まず、いわゆる中間施設に関するお尋ねでございますが、今後増大いたします寝たきり等の介護を必要とします老人の多様なニーズに対応しまして、医療サービスと生活サービスをあわせ行います老人保健施設を制度化して、昭和六十二年度以降本格実施を図ることといたしております。昭和六十一年度のモデル実施は、この本格的な実施に備えまして、基礎データの収集を行うことを目的とするものでございまして、全国十カ所程度のモデル実施によりまして、十分この目的を達成できるものだと考えております。
 次に、いわゆる保険外の負担でございますが、このうちの差額ベッド代につきましては、その負担を適正な範囲のものとするように指導してきております。また、おむつ代等の実費を徴収することは、これはやむを得ないと考えておりますが、保険給付と重複するものにつきましては、その是正につきまして指導を行っているところであります。今後とも、こうした指導の徹底を図ってまいりたいと思っております。
 次に、加入者按分率の引き上げにつきましては、医療保険制度の老人加入率の格差によります負担の不均衡を是正をし、老人医療費の負担の公平を図ろうとするものでありまして、単に国庫負担の削減を目的とするようなものではございません。本格的な高齢化社会の到来を控えまして、御指摘のように、保健事業や福祉施設の充実というのは極めて重要でございまして、六十一年度におきましても、老人保健事業を一層強力に推進しますと同時に、特別養護老人ホームを重点的に整備するなど、各般にわたりまして施策を展開することといたしております。
 次に、社会保障予算につきましては、高齢化の進展や年金の成熟化などによりまして毎年、相当規模の当然増が避けられませんという、こういう性格を持っているものでありますが、これを一般会計から切り離しまして、社会保障に関します給付と負担の関係を明確に示すということは、極めて示唆に富んだ考え方であります。しかしながら、この問題は、国の財政構造全体にも、また、今後の社会保障の進め方にも大きくかかわる問題でありまして、この考え方を含めまして、幅広い角度から検討を行ってまいりたい、こう考えております。
 なお、国民健康保険の保険料滞納者に対します給付の差しとめの措置につきましては、納付の指導を一段と徹底しまして、むやみに給付の差しとめを行うことのないよう十分指導してまいりたいと考えておるものでございます。
 以上でございます。(拍手)
    ─────────────
#43
○議長(坂田道太君) 塩田晋君。
    〔塩田晋君登壇〕
#44
○塩田晋君 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま趣旨説明が行われました老人保健法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係各大臣に質問を行うものであります。
 民社党は、結党以来、福祉国家の建設を目標とし、常に現実的かつ建設的な政策の提案を行ってまいりました。国民各界、そして我々の努力の結果、社会保障政策や完全雇用政策などは、制度的にも水準的にも、諸外国に比べ相当のレベルに達しつつあると考えます。しかし、これに満足することなく、二十一世紀に向けて、中長期的な展望に立ち、温かい心、生きがい、ゆとりといったより高次の、質の高い高度福祉社会の構築に邁進すべきであると考えます。とりわけ、我が国は、急スピードで超高齢化社会に向かいつつある今日、新たな高度福祉社会づくりは政治に課せられた重大な責務であります。そこで、総理の高齢者対策についての基本的な認識と今後の福祉ビジョンは何か、まずお伺いいたします。
 今や、高齢化社会に対応して、ぬくもりのある福祉政治の確立が求められているにもかかわらず、政府が予算編成に当たり固執しているマイナス概算要求方式のもとでは、これまで築いてきた福祉制度の根幹が切り崩され、国民に大きな犠牲を強いることになり、新たな福祉政策を展開する余地がなくなるものと考えます。総理は、福祉充実を声高で叫ばれますが、政府が実際にやられることは、健康保険法の改悪であったり、補助金一律カットなどの地方負担の増大、そして老人保健法の改悪と、福祉の後退を進めるものであります。財政の論理が先行し、福祉後退にしわ寄せする政治は、邪道の政治と言わざるを得ません。(拍手)これは世論支持率の高い中曽根総理の真意ではないと思うのですが、いかがでございましょうか、お伺いいたします。
 国民は今、健康、老後等に強い不安を抱いております。こうした不安を解消するためにも、社会保障予算をマイナスシーリングの対象外とすべきであります。福祉の前進や高齢化による当然増の経費は、福祉、経済、生活の基礎である防衛費と並んで、その必要額を確保する予算編成を行うべきであると考えますが、総理並びに大蔵、厚生各大臣はいかがお考えか、お伺いいたします。
 社会保障予算の自然増経費を全額確保するためにも、行政改革を一層推進するとともに、社会保障予算を一般歳出から切り離し、新たに社会保障勘定を創設すべきであると考えますが、総理の御見解をお伺いしたいと存じます。これと関連して、福祉目的税につきましては、従来、財政の硬直化を招き効率的配分を阻害する、社会保障関係費の重点化、効率化のための政策的努力を弱めるおそれがある、また一種の増税にも連動するなどの問題点が指摘されております。これらにつきまして、総理並びに大蔵大臣の具体的なお考えをお示しいただきたいのであります。
 次に、本法案に関しまして、数点にわたりお伺いいたします。
 まず第一は、老人の一部負担であります。
 政府案によりますと、外来時の一部負担は、現行の一カ月四百円を千円に、実に二・五倍という大幅な引き上げを行おうとしております。また、入院時一部負担は、現行一日三百円、二カ月を限度とするものを、一日五百円に引き上げ、二カ月限度を撤廃するというものです。仮に六カ月入院しますと、その負担は、現在一万八千円で済むものが、政府案では九万円と、一挙に五倍の負担となります。
 老人保健法の対象となっている高齢者の方々は、戦時中、戦後、その厳しい時代に額に汗して働き、戦い、今日の我が国の繁栄を築いてこられた方々であり、心を込めて老後をいたわり、感謝の念をささげるべき人々であります。これらの方々に政府案のように大幅な負担増を求めることは、その生活を容赦なく圧迫することになり、恨みがうっせきすることになるでしょう。このような血も涙もない冷たい政治の結果は、あえてマルコス氏からアキノ大統領への政変の例をまつまでもなく、巨大なものがちょっとしたきっかけで一挙に崩壊する土壌を培養するものと思われます。このことを篤とお考えいただきたいのであります。私は、中曽根総理が偉大な政治家として日本の歴史にその名を刻まれるときに、福祉を後退させた総理と言われないように、この際、一大勇断をもってこの一部負担の増大を撤回されるよう強く要求するものであります。総理の御所見を伺いたいのであります。(拍手)
 第二に、加入者按分率の引き上げについても反対いたします。
 私は、現行五〇%の加入者按分率による財政調整そのものを否定いたしませんが、今回の措置は、取りやすいところから取り、国庫負担を削減しようとする、まさに財政優先、財政至上主義のあらわれであります。加入者按分率が八〇%に引き上げられますと、組合健保で七百八十億円、政管健保で四百六十億円の負担増となりますから、一〇〇%になればさらにふえます。被用者保険は、保険料の引き上げや本人の一割負担、審査の厳正化などの大変な努力と犠牲によって、ようやく黒字となったものであります。加入者按分率の引き上げは実質的な増税であるとする広範な国民の声を厳粛に受けとめられ、これを撤回するお考えはないか、総理の御見解をお伺いいたします。
 政府は、退職者医療制度の新設に当たり、国庫補助率を引き下げても国民健保の保険料が上がらないと約束をされましたが、現実には、加入者数の見込み違い等から保険料の引き上げを余儀なくされております。これは明らかに公約違反であります。しかも、昨年度は、見込み違いによる財政不足二千八十億円のうち、千三百六十億円しか国庫負担を計上しませんでした。この退職者医療での失策を、今回の老人保健法による加入者按分率の引き上げで対処しようとする姿勢は明々白々であります。退職者医療は、国の責任において対処すべきものと考えますが、厚生大臣の明確な御答弁をいただきたいのであります。
 次に、老人保健施設についてお伺いいたします。
 我々は、全国で約四十五万人と言われる寝たきり老人や、さらに多くのデイケア等を要するお年寄りのために、いわゆる中間施設の整備を進めるべしとかねがね主張してまいりました。政府がこの問題を取り上げたことは、認めるものでありますが、本年度予算で十カ所総額四億円の建設、運営費は余りにもわずかであり、血の通った介護ができる、本来望まれている施設になるかどうかを危惧するものであります。物事は最初が大切で、安上がり意識を持って当たってはならないと考えますが、厚生大臣の具体的な御答弁をいただきたいのであります。
 また、老人保健施設の本人負担分を自由料金としたのは、いかなる理由によるものか、平均は月五万円程度と見込んでいるようでございますが、そのとおりにいくか、過重負担にならないか、厚生大臣にお伺いいたします。さらに、入所者一人につき月二十万円を公費と各医療保険の拠出金で負担するようですが、拠出金は将来どの程度になるか、示していただきたいのであります。また、定額方式は現行の出来高払い方式の変更にも発展するのではないか、ならないとすれば定額方式とする根拠は何か、お伺いいたします。
 最後に、国民健保の滞納者に対し医療給付を停止することができる旨の法律改正でありますが、これは国民の基本的権利に抵触するおそれはないか、厚生大臣にお伺いいたします。
 以上、私は、日本の現在の繁栄をもたらした主力ともいうべきお年寄りに大幅な負担を強い、そしてまた、現役の勤労者に実質的な増税を求める今回の老人保健法等の改正に強く反対し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#45
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 塩田議員にお答えをいたします。
 まず、高齢者福祉対策に対する認識の問題でございます。
 本格的な高齢化社会に向けまして、社会保障制度については、長期にわたり安定的で整合性のあるものとして、かつ、国民から信頼されるものにすることが必要であると考えます。長寿社会対策を総合的に推進するため、昨年七月に長寿社会対策関係閣僚会議を設置いたしました。本年半ばを目途に長寿社会対策大綱を策定して、さらに総合的かつ効果的に施策を推進してまいります。
 次に、一連の改革に対する御批判でございますが、今までの医療保険、年金等の改革及び現在進めている老人保健の改革は、長寿社会の到来に備えて、今後とも揺るぎのないものにしようという意図から行っておるものであります。これは国と地方の役割分担の見直しの一環として、地方の自主性を尊重する観点から、事務のあり方等を見直し、あわせて補助率の変更も行っておるものであります。いずれも、単に財政的見地のみから見直しを行ったものではなく、福祉の後退を招くものではございません。
 次に、社会保障関係予算の確保でございますが、今後とも、人口の高齢化等に伴い、多額の当然増を生ずるものと考えられますが、厳しい財政事情の中でも、引き続いて社会保障予算の確保を図るように努力してまいりたいと思います。
 次に、社会保障勘定の創設の問題でございますが、社会保障については、高齢化の進行に伴い、経費の増大が避けられないが、こうした性格を有する社会保障予算について、一般歳出から切り離して社会保障に関する給付と負担の関係を明確に示すことは、一つの示唆に富むお考えであります。他方、この問題は、国の財政構造全体にもかかわる問題でもありますので、慎重に検討いたしたいと思います。
 社会福祉目的税のことでございますが、財政の一般論としては、目的税は、資源の適正な配分をゆがめて硬直化を招く傾向から、好ましくないというのが一般論でありますが、しかしまた一面、将来の高齢化時代に対応するために、年金等社会福祉財源確保の観点から、この目的税を検討すべきであるという御意見も聞こえるのでございます。この問題については、今後、税制全般にわたる見直しの中で、幅広い角度から議論さるべき問題であると思っております。
 次に、一部負担の引き上げを撤回せよという御質問でございますが、今回の改正は、老人の医療費を世代間で公平に負担するという観点からお願いしておるものでございまして、ぜひとも実態に対する御理解と御協力をいただぎたいと思うのでございます。特に、老人保健制度を長期的に安定して、二十一世紀においても安心して老後が暮らせるような体制の基礎づくりを今やっておかなければならない、こういう考えでありまして、撤回することは考えておりません。
 加入者按分率の引き上げの問題も、先ほど来申し上げているところでございまして、老人加入率の格差による負担の不均衡を是正して、どの医療保険も同じ割合で老人を抱えるようにすることにより、老人医療費の負担の公平を図るものであり、その意味で、撤回する考えはございません。残余の答弁は関係大臣からいたします。(拍手)
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
#46
○国務大臣(竹下登君) 私に対する質問は、二つでございます。
 まず、社会保障予算をマイナスシーリングの対象外とすべきではないか、この御質問でございますが、人口の高齢化の進展等に伴いまして、多額の当然増が生ずるという面は、否定できない事実であります。したがって、社会保障が国民生活の基盤として長期的に安定かつ有効に機能していくためにはどうすべきかということは、やはり引き続き検討を進めなければならぬ課題だと思います。たがを緩めてしまってはならぬというふうに考えておる次第であります。
 次の、目的税構想でございますが、まさに塩田さんおっしゃるとおり、財政の硬直化を招く、効率的配分を阻害する、あるいは社会保障関係費の重点化、効率化のための政策的努力を弱めるおそれがある、また、これは一種の増税につながるおそれがある、この指摘がございますのは私どもも十分に承知をいたしておりますが、一方、社会福祉財源確保の観点から検討すべきとする意見もございますし、実際問題、最近特に福祉目的税に関連して、社会保障特別会計とか社会保障勘定とか、そういう創設の提言が各方面からなされておることも事実でございます。したがって、そういう提言をも含めて、結局、受益者も国民、そして負担するのも国民の皆さん方でございますから、それが歳入歳出構造のあり方とどのように関係していくかというようなことで、かなり詰めた議論を進めていかなければならぬ課題だという問題意識を持っております。(拍手)
    〔国務大臣今井勇君登壇〕
#47
○国務大臣(今井勇君) 塩田先生にお答え申し上げたいと存じます。
 まず、お尋ねの社会保障予算につきましては、毎年多額の当然増が生じますことから、いわゆるシーリングにおきまして、年金の成熟化等に伴います増につき例外的な増加枠が認められてきておりますけれども、あわせて、制度の長期的な安定を確保する見地から、医療保険の基本的な改革などに取り組んできたほか、厚生年金国庫負担の繰り延べなど、いろいろな財政上の工夫を重ねてきたところであります。厳しい財政事情が続く中で、社会保障予算の編成というのは一層難しくなると思われますが、今後とも、社会保障の実質的な水準を確保するために、具体的な方策につきまして幅広い観点からいろいろ検討を進めてまいる所存でございます。
 次に、退職者医療についてでありますが、今回の老人保健制度の見直しは、各医療保険制度間の老人医療費の負担の不均衡を是正しようとするものでありまして、退職者医療によります財政影響の補てんを目的とするものではありません。政府としましては、厳しい財政事情のもとで、市町村国保について特別の財政措置を講じてきたところでありまして、今後とも、その安定的な運営が行われますように、最大限の努力をいたしたいと考えておるものでございます。
 次に、老人保健施設に関するお尋ねでありますが、先ほどお答え申し上げましたとおり、本年度の予算は、昭和六十二年度以降の本格実施に備えまして、基礎データの収集を行いますことを目的とするモデル実施のためのものでありまして、実施主体の御協力も得まして、適切なモデル実施を行いまして、要介護老人にふさわしい施設として本格実施をしてまいる所存でございます。
 また、老人保健施設におきます利用者負担につきましては、家庭においても必要とされます食事代などについてお願いすることといたしております。この利用者負担の額につきましては、多様なニーズに対応できるように、原則として施設が定めることといたしておりますけれども、老人にとりまして過重な負担にならないよう、老人保健施設の運営基準においてガイドラインを示して指導をしてまいる所存でございます。
 老人保健施設の拠出金の将来見通しにつきましては、昭和七十五年度までに仮に三十万床程度老人保健施設が整備された場合には、約一兆円となり、老人医療費拠出金と合わせて約八兆五千億円程度になるものと見込まれます。老人保健施設を導入しない場合に比べて、拠出金全体の伸び率は、約二ポイント程度低下するものと見込んでおるものでございます。
 また、老人保健施設の給付を定額制といたしましたのは、入所者が入院治療の必要のない、症状の安定した寝たきりなどの要介護老人でありまして、必要とされますサービスも、看護や介護あるいは機能訓練など比較的定型的なものが中心でありますために、出来高払い制より定額制の方がふさわしいと考えられたためであります。
 最後に、国保の滞納者の問題についてでありますが、今回の改正は、先ほどお答え申し上げましたとおり、国保被保険者間の負担の一層の公平を図るために、資力がありながら故意に保険料を滞納している悪質な滞納者に限りまして措置を講じようとするものでありまして、国民の基本的な権利に抵触するおそれはないと考えておるものでございます。
 以上でございます。(拍手)
    ─────────────
#48
○議長(坂田道太君) 田中美智子君。
    〔田中美智子君登壇〕
#49
○田中美智子君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、老人保健法等一部改正案について、総理並びに関係閣僚に質問いたします。
 ことしに入ってから老夫婦の心中事件は、十数件にもなると報じられています。その原因のほとんどが病苦です。日本人の寿命は確かに延びましたが、老人の病気にかかる率も確実に高くなっています。お年寄りの自殺や心中は、高齢化社会のひずみを浮き彫りにしていると言えます。
 臨調行革の名による福祉切り捨てが始まってから、社会保障関係予算は、制度改悪によりこの五年間で極端に削減され、その総額は、控え目に試算しても約五兆円になります。一方、同じ時期に軍事費が約四〇%もふえたことは、総理、あなたが推し進めてきた臨調路線なるものが、軍拡と大企業奉仕のために、いかに福祉と国民の暮らしを犠牲にするものであったかを端的に示しています。ところが、総理、あなたがことしの一月、シェワルナゼ・ソ連外相との会談で、軍事費削減は人類の道だ、日本は軍事費を福祉に回していると語ったという報道がありました。私はびっくりして、福祉を削って軍事費に回しているの間違いではないかと思ったほどです。あなたがこのように言い切る以上、はっきりした根拠があるはずです。一体、軍事費を福祉のどの分野に回しているのか、この機会に総理の説明をぜひ聞いておきたいと思います。(拍手)
 総理、あなたが政権を担当してから、八三年老人医療費を有料化し、八四年健保本人一割負担を強行し、八五年年金給付を大幅にカットし掛金を上げるという大暴挙をやってのけました。そして八六年、今回の老人保健法改悪や国立医療機関の統廃合、福祉施設の措置費補助率の大幅切り下げなど、あなたが実際におやりになっている社会保障切り捨ての実態を見るとき、アメリカのレーガン政権が、一層の軍拡を進める上で、その費用は社会保障こそまさにこの源であると言ったことに学んで、あなたも社会保障を犠牲にしてきたというのが真実ではないでしょうか。(拍手)
 老人の医療費が一九七三年に無料化されたとき、六十五歳以上の年代の自殺率は、際立った減少を見せました。ところが、老人保健法が実施された八三年から、これが急上昇しているという事実を御存じでしょうか。このことは、老人が医療費の負担を心配せず、安心して受診し、治療を受けられるようにすることが、高齢化社会を迎える政治の重要な責任であることを物語っています。ところがあなたは、社会保障や福祉における公的責任を次々と後退させてきました。そして、年金、医療、福祉といった国民生活に不可欠な分野までを、民間活力と称して、営利を目的とした民間企業の市場として提供し、福祉の有料化を進めていることは重大です。あなたの閣僚から、働かない老人がいつまでも生きておってなどと言われて、心を傷つけられているお年寄りをさらに窮地に追い込めることであり、こんな残酷な仕打ちはありません。総理、これは政府による陰湿な老人いじめです。今回の老人保健法改悪は、憲法三十五条の生存権や、老人福祉法のすべての老人は健康で安らかな生活を保障されるという条項と両立しないのではないか。この点についてお答えください。
 さらに、政府が社会保障予算を一般会計から外し、特別会計を創設しようとしていることは重大です。これが大型間接税導入の突破口となることは明らかです。特別会計制度の導入は、絶対にやめるべきだと思いますが、見解をお聞きしたい。
 総理、あなたが今再び老人医療を目のかたきにして、これを手始めに、健保本人二割負担、国保の全面改悪など、福祉攻撃の第二ラウンドを開始しようとしていることを、私は絶対に見逃すことはできません。あなたは、今国会の施政方針演説で、お年寄りにはきめ細かな配慮をと言われましたが、それが本心なら、老人医療費の無料化をこそ復活させるべきではないでしょうか。無料化復活のためには、今回の改悪による患者負担増の九百六十億円、さらに六百十億円を加えた千五百七十億円が必要です。これは、新防衛計画に盛り込まれている軍艦、AEGIS艦一隻の購入をやめるだけですぐに実現できるものです。その努力をする気持ちがあるのかどうか、お答えください。(拍手)
 さて、老人保健法改正案について、具体的な質問をいたします。
 第一は、患者負担を、外来現行一カ月四百円から千円に、入院で現行二カ月限度一日三百円から期限なし一日五百円に引き上げることです。外来は二・五倍、入院一年で何と十倍にもなります。六十五歳以上の有病率はほぼ二人に一人という実態の中で、中途退院を余儀なくされたり、疾患の早期発見のおくれから重症化し、治療が困難になったりする事態がさらに進むことになります。今回の医療費削減のための措置が、お年寄りの命を縮めることになるとどうしてあなたはお気づきにならないのですか。あえて値上げを強行する理由は何か、率直にお答えください。
 第二は、総理が給付と負担の公平について述べていることです。あなたは、公平という言葉を使いながら、老人保健への各保険制度からの拠出金の加入者按分率を変更し、国庫負担を千九百六十三億円も削減し、被用者保険へ新たに千四百七十五億円も負担を押しつけようとしています。政府の言う負担の公平とは、みずからつくり出した財政の危機を国民や労働者の犠牲で切り抜け、政府の負担は大幅に削減して、政府ひとりが負担の公平から逃れるという驚くべき内容です。公平を言うのなら、国の責任を明確にし、在宅老人福祉への充実や国保の給付率の改善など、おくれている部分を引き上げるべきです。総理と厚生大臣に見解を求めます。
 第三は、老人保健施設、いわゆる中間施設の新設問題です。このねらいは、施設整備費補助がないことにあらわれているように、既存の病院や国立病院の統廃合で浮いたベッドを転用し、医者や看護婦を減らし、政府にとって安上がりな施設をつくることにあります。しかも、重大なのは、食費や生活費、サービスの一部は月額五万円を基準とする料金を定め、利用者に負担させようとしていることです。そして、それ以上のサービスを希望する場合は自由契約で高額の差額を払わせ、処遇に差別を持ち込もうとしています。これは、特別養護老人ホームなどの措置費制度を解体し、社会福祉制度の根幹を破壊するものであり、絶対に容認できません。(拍手)
 さらに政府は、老人に対する診療報酬制度で、長期入院の患者があれば病院の採算がとれないようにして、お年寄りの病院からの締め出しを進めてきました。今回の老人保健施設の新設は、さらに老人の病院締め出しを強化するものです。このような国民の望むものとは似て非なる施設構想を撤回し、さらに、お世話料などの名目で保険外負担を広げる老人診療報酬も撤廃することをあわせて要求します。お答えください。
 第四の問題は、今回の老人保健法改悪案と抱き合わせに、国保料・税の滞納者から健康保険証を取り上げ、医療給付を一時差しとめる制裁措置を国民健康保険法に盛り込んだことです。こうした制裁措置は、厚生省みずからがこれまで違法であるとしてきたものです。もともと国保料・税の滞納者の増大は、政府が国保財政への国の補助率を大幅に削減したため、昨年度は全国九〇%を超す自治体で、国保料・税を引き上げざるを得なくなったところにあります。こうした原因をつくり出した政府の悪政を棚に上げ、金のない者は医療の場から外していくという考えは、まさに悪魔の発想です。国民皆保険の精神に反することになりませんか。さらに、行き着くところは国民健康保険制度の崩壊です。国民の健康には国が責任を持つという立場を、憲法に照らしてもう一度考えるべきです。国保への国の補助率を現行の三八・五%から四五%へ戻すことと、保険証を取り上げるといった制裁措置はとらないこと、きっぱり国民に約束していただきたい。
 以上、本改正案のいずれを見ても、露骨な福祉の破壊そのものであり、福祉暗黒時代の到来と危惧を抱く人たちが多いのも当然です。総理、日本のお年寄りは、戦前、戦中、戦後の苦難の時代を生き抜き、今日の社会を築いてきた人たちです。経済的にも、年金受給者の三分の二は、月二万円台の水準です。今回の措置は、余りにもお年寄りにとって残酷な追い打ちと言わねばなりません。今や多くの国民は、福祉切り捨ての原因が、あなたの軍拡と大企業奉仕を最優先する路線にあることに気づいております。だからこそ、本改正案に、会員八百万人を擁する全国老人クラブ連合会や日本医師会、労働組合、婦人団体、市民団体など、圧倒的国民が反対を表明しています。総理は、こうした国民の声に真摯に耳を傾け、潔く本法案を撤回すべきです。(拍手)
 おごれる者は久しからず、ただ春の夜の夢のごとしといいます。あくまで本法案を強行すれば、必ずや国民から手痛い反撃を受けるであろうことを強く申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
#50
○内閣総理大臣(中曽根康弘君) 田中議員にお答えいたします。
 まず、シェワルナゼ氏との会談と軍事費の問題でございますが、あのときの会談では、私は、日本では福祉を重視して、軍事費の膨張を抑制して一%以内にとどめている、そういうふうに言ったのです。シェワルナゼ氏は、それについて何にも言いませんで、あなた方には友人がおりますからね、こう言ったのです。恐らく米国との安保条約の有効性を承認したのではないかと考えておりました。我々の方では、今御存じのように、社会保障費は九兆八千億円、防衛費は三兆三千億円、約三分の一でありますから、世界的な水準から見れば、防衛費は極めて低い水準に抑えられておるわけであります。
 次に、憲法二十五条との関係でありますが、今回の措置は、老人医療費の負担の公平を図るとともに、介護を必要とする老人のための老人保健施設の創設を図り、二十一世紀においても安心できるような老後の体制の確立を目指しておるものであり、憲法第二十五条や老人福祉法の趣旨に沿うものであります。
 次に、特別会計の問題でございますが、税の問題とともに、これに関する御質問をしばしばいただいております。これは一つの検討すべき課題であると思いますが、今までは保険という思想でやってまいりましたのを、果たして税というやり方で日本人の体質に合うかどうか、特に、税というようなことにした場合に、中小企業の算定基準をどういうふうにしたらいいのか、こういうような問題もございまして、これは検討課題であり、税に関する部分は、政府の税調等において検討される問題だと思います。
 負担の公平と国の責任の問題でございますが、加入者按分率の引き上げは、老人医療費を各医療保険制度が公平に負担するために行うものであり、国の負担を減らすために行うというものではございません。在宅福祉の充実や国民健康保険の安定についても、国としてはできるだけの努力をいたしておるところでございます。
 本法案を撤回する考えはございません。
 残余の答弁は厚生大臣がいたします。(拍手)
    〔国務大臣今井勇君登壇〕
#51
○国務大臣(今井勇君) 田中先生にお答え申し上げます。
 まず、加入者按分率の引き上げに関するお尋ねでございますが、これは、各医療保険制度の老人加入率の格差を是正しまして、どの保険者も同じ割合で老人を抱えるようにすることによりまして、老人医療費の公平な負担を図るものでありまして、御批判は当たらないものと考えます。また、在宅老人福祉につきましては、ショートステイあるいはデイサービスといった事業を拡充すると同時に、その国庫補助率を引き上げるなど格段の配慮を行っているほか、国保の給付率の問題につきましては、医療保険制度の一元化との関連において検討することといたしております。
 次に、老人保健施設についてでありますが、寝たきり老人などの切実なニーズにこたえまして、こういった方々の心身の状況に最もふさわしい施設サービスを提供する施設として制度化を図るものでございまして、撤回する考えはございません。もとより、特別養護老人ホームなどの社会福祉施設の充実には、今後とも努力をいたしてまいる所存でございます。
 次に、老人診療報酬についてでありますが、老人診療報酬は、老人の心身の特性を踏まえた適切な医療が確保されることを目指したものでありまして、これを撤回する考えはございません。なお、いわゆるお世話料につきましては、保険給付と重複するものについて、その是正について指導を行っているところでありまして、今後とも、こうした指導の徹底を図ってまいる所存でございます。
 最後に、国民健康保険に関するお尋ねについてでありますけれども、国民健康保険の悪質滞納者に対します給付差しとめの措置は、これによって被保険者の資格そのものを奪うものではなく、国民皆保険の原則を崩すものとは考えておりません。国保の国庫負担率の引き上げにつきましては、先ほどお答えをいたしましたとおり、現下の厳しい財政事情から見ても、極めて困難と考えております。
 以上でございます。(拍手)
#52
○議長(坂田道太君) これにて質疑は終了いたしました。
     ────◇─────
#53
○議長(坂田道太君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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