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1984/04/19 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 国民生活・経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会 第2号
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1984/04/19 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 国民生活・経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会 第2号

#1
第102回国会 国民生活・経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会 第2号
昭和六十年四月十九日(金曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   小委員の異動
 二月二十五日
    辞任         補欠選任
     矢原 秀男君     高木健太郎君
 四月十八日
    辞任         補欠選任
     高杉 廸忠君     久保田真苗君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    小委員長        糸久八重子君
    小委員
                岩上 二郎君
                大島 友治君
                岡部 三郎君
                坂野 重信君
                沢田 一精君
                松岡満寿男君
                久保田真苗君
                高木健太郎君
                橋本  敦君
                抜山 映子君
                青木  茂君
   参考人
       日本経営者団体
       連盟事務局長   中宮 勇一君
       日本労働組合総
       評議会副事務局
       長        内山達四郎君
       健康保険組合連
       合会企画部次長  石本 忠義君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○高齢化社会に関する件
 (我が国及び欧米の高齢化対策について)
    ─────────────
#2
○小委員長(糸久八重子君) ただいまから国民生活・経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会を開会いたします。
 高齢化社会に関する件を議題とし、我が国及び欧米の高齢化対策について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、日本経営者団体連盟事務局長中宮勇一君、日本労働組合総評議会副事務局長内山達四郎君及び健康保険組合連合会企画部次長石本忠義君の三名の方方に参考人として御出席いただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、我が国及び欧米の高齢化対策につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 また、議事の進め方といたしましては、まず参考人の方々からお一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後、各小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。
 それでは、まず中宮参考人からお願いをいたします。中宮参考人。
#3
○参考人(中宮勇一君) 私、日本経営者団体連盟、略称日経連の事務局長をいたしております中宮でございます。
 経営者の立場、企業側における高齢化対策について述べよということであろうかと存じます。個人的な見解を述べるのは適当じゃないと思います。日経連が正式に発表いたしております考え方を中心にいたしましてお話をさせていただきたいと思います。そういたしますと、現在労働問題研究委員会と呼んでおります報告書で触れていることを申し述べるということになろうかと思います。
 この委員会の報告書は、沿革的に申し上げますと、昭和四十九年に最初に報告書を出しました。御承知のように、昭和四十九年は大幅賃上げが行われた年でございまして、その経験にかんがみまして、大幅賃上げの行方研究委員会という委員会をつくりまして、五十年の賃金交渉に対する経営者側としての対応に資するために報告書を出しました。これが最初でございます。その後、賃金問題研究委員会、労働問題研究委員会と名称が変わってまいりましたが、毎年発表いたしております。本年は一月に報告書を出しております。本年で十一冊目になるわけでございますが、この報告書を見てまいりますと、かなり早い時期から高齢者雇用問題の重要性ないしは高齢化社会への対応の必要性ということについて言及をしてまいっております。
 具体的に申し上げますと、五十一年十二月の報告書におきましては、高齢者の雇用問題というのは日本経済が初めて経験する大問題である、経営者側としても高齢者の雇用問題を真剣に考慮しなければいけないという指摘をいたしております。また、五十四年十二月の報告書におきましては、特に副題といたしまして、「インフレ再燃の防止」と並びまして「中高年齢層雇用問題の解決を」という副題をつけております。また、五十五年十二月に発表いたしました報告書におきましては、特に一章を設けまして「高齢化社会への対応」ということについての見解を述べているような状況でございます。
 この報告書は、最近でございますと約十三万部ほど出ております。経営者の方々だけではなくて労働組合の幹部の方々、あるいは学者、評論家にもお読みいただいておりますし、国会の先生方にも毎年お送りを申し上げているものでございます。この報告書におきまして、ただいま申し上げましたように、高齢者雇用の重要性ということについて指摘してまいりましたことは、企業側における定年延長を初めとする雇用問題、雇用延長の促進あるいは高齢化対策に企業側の関心を高めるという点でかなり役立ってきているんではないかというふうに考えております。
 次に、レジュメで申し上げますと2になりますが、これらの報告書の指摘の中で、高齢化社会への対応として基本的な考え方とも言えるものをピックアップして申し上げますと次のような点になろうかと思います。
 まず第一点といたしましては、これから日本経済のバイタリティーを維持していくためには高齢者の積極的な活用を図っていかなければならぬだろうという考え方でございます。いわゆる合計特殊出生率、女性が一生涯に産む子供の数は、昭和二十五年三・六五人、五十八年は一・八〇人になっております。にもかかわらず、人口は御案内のようにふえ続けているわけでございまして、今や一億二千万をオーバーするという状況になっております。その原因として考えられますのは、やはり平均寿命が大いに延びたということであろうかと思います。昭和十三年、厚生省ができました年の平均寿命は、男が四十七歳、女子が四十九歳でございました。最近におきましては、男が七十四歳前後、女子は七十九歳前後というような状況になっておりまして、いわゆる高齢化社会という状況になっているわけでございます。
 これを労働経済面から見てまいりますと、我が国の労働力が、総体で見ますと若年労働力が減少をし、中高年労働力が増加をするということになろうかと存じます。十五歳以上二十五歳未満の若年労働力人口について見ますと、昭和三十五年を
一〇〇といたしますと昭和五十七年には六六・六になっております。約三分の二に減っているわけであります。一方、四十五歳以上の中高年齢労働力は、三十五年を一〇〇といたしまして五十七年が一六一・四でございます。六割、三分の二程度ふえているという状況でございます。しかも、我が国の場合におきましては今後高齢化がさらに進んでいく、そのスピードも速い、高齢化水準も欧米諸国に比べて高いということでございます。そしてまた、不確実性の社会あるいは不透明の時代、こう言われる中で、このことだけはもう確実で、それを政策的に妨げるということはまず無理な問題であろうかと思います。やはりこういうことを前提として考えていかなければならない。企業側としては、いや応なしに総体的に若年労働力が減り、中高年齢労働力がふえるという状況の中で、中高年齢労働力の活用といいますか、このことをやっていきませんと、我が国経済のバイタリティーを今後とも維持していくことはできないんではなかろうか。五十三年に出しました先ほど申し上げました報告書におきましては、このことは労使の国家的使命であるというふうにも言っているわけでございます。単に労働者の就労年限を延ばすということだけではなくて、さらに積極的に中高年労働力の積極的な活用を図っていくという考え方に立つことが必要であろうということが第一点でございます。
 第二点といたしましては、中高年齢者労働者自身の自助努力ということを強調いたしております。中高年齢者自身も高齢化社会に生きていくためには自己研さんが必要ではないか。自立心を持って、老人になれば社会からあるいは国から面倒を見てもらって当たり前ということではなくて、仕事の面でも、あるいは家庭におきましても地域社会においても、いてもらわなくては困るような老人になることを考えていかなければいけないんではないかという考え方でございます。
 また、さらに申しますと、今若い人たちもいずれは中高年齢層になるわけでございまして、若いときから長期的、計画的な能力開発を心がけていく必要があるんではないか、そういう努力が行われませんと、日本経済自体が老朽化をしていく心配もあろうということを申しております。
 第三点といたしましては、社会全体としての労働生産性の低下に対する対応ということを考えていかなければいけないんではなかろうかと。高齢化社会ということになってまいりますと、勤勉と言われております日本人でございますけれども、やはり労働生産性が全体として見ますと低下をするということは避けられないんではないかと。今後とも日本経済を維持発展させていくためには、今からこれに対する対応を考えていく必要があろうと。例えば、労働力の資本装備率を高めると申しますか、あるいは省力化のための技術導入を考える、そのための生産設備への投資あるいは技術研究開発投資をやっていく、そして、高齢化する中でやはり労働生産性が全体としては安定して向上していくように配慮をしていく必要があろうということでございます。
 第四点は、今後ともやはりインフレ防止ということについて政策努力が続けられなければいけないであろうということでございます。インフレは、労働者にとってもそうでございますし、特に年金生活者にとって最大の敵はインフレ。インフレによって最も被害を受けるのは年金生活者というふうに言えようかと思います。年金生活者も今や九百六十九万人でございますか、五十八年三月末で一千万に近い数字になっているわけでございます。国民すべてがやがて年をとって年金を受給するということになるわけでございます。今後ともインフレ回避のために最大限の努力をしていく必要があろう、インフレ防止ということが高齢化社会における基本政策とならなければならないんではないかという考えを申し述べております。
 次に、レジュメの3でございますが「高齢化社会への対応」、企業がどのような対応をしているかということについて申し上げます。
 まず第一は、定年延長を含む雇用延長でございます。昨年一月の労働省が行いました雇用管理調査結果によりますと、今既に六十歳定年は実施予定を含めますと企業数の六五%に達しております。本年一月の調査結果がやがて発表されましょうが、さらに延びることは間違いなかろうかと思います。
 労働省が六十歳定年延長という行政施策を打ち出しましたときにおきましては、振り返ってみますと、率直に申し上げまして企業側、経営側といたしましては少し及び腰の点があったかと思います。五十五歳定年が一般化しておった現状において、六十歳までに定年を延ばすことについては必ずしも自信があったとは言えないかと思います。しかし、その後の推移を見ますと、私ども考えました以上に比較的順調に六十歳定年へ移行しつつあると、六十歳定年が大勢となっていると、そういう方向にあるというふうに申し上げてもよろしいんじゃなかろうかと存じます。
 定年延長を行うに当たりまして企業側として一番考えておりますことは、その際、年功序列賃金体系あるいは勤続年数が延びるに従って退職金もふえるという退職金制度の見直し、あるいは人事処遇制度の見直しということ、こういうことが行われませんと定年延長がなかなか実現しにくいという点でございました。幸いこの点につきましては、労働組合との交渉におきましても理解、協力が得られて六十歳定年へ進んでいるということであろうかと思います。
 なお、現在も雇用審議会におきまして六十歳定年の法制化問題が審議されている状況でございますが、この法制化につきましては経営側といたしましては賛成しかねるという態度をとってきております。
 その主たる理由といたしましては、ただいま申し上げましたように、定年延長に際しましては年功序列賃金体系あるいは退職金制度、人事処遇制度の見直しが必要でございます。これまでの結果を見ましても、その内容はなかなか画一的ではない、非常に企業ごとに多種多様な工夫をこらしているわけでございます。細かく見てまいりますと、同じようなやり方をしているところがないと言ってもいいくらいでございます。これらの点につきましては、申し上げるまでもなく、経営者側が一方的に決めることはできないものでございます。労働組合との団体交渉で決定をしていかなければならない、賃金決定と全く同様でございまして、画一的な規制にはなじまないものであろうかと存じます。
 また現在、定年延長が比較的おくれていると見られておりますところは、規模でいいますと三百人から一千人未満というところでございます。小企業、零細企業になりますと、これまでも比較的高齢労働者を使っておりまして、三百人―九百九十九人層でおくれているという事実がございます。これら中小企業におきましては、なかなか企業を取り巻く環境が厳しいということでございまして、行政指導がありましてもなかなか簡単には進めにくいという事情がございます。
 この定年延長のほかに、企業におきましては、定年後におきましても再雇用あるいは勤務延長という形で雇用をし続けるというやり方をとっているところが多いわけであります。その中には、例えば松下電器のように、四十七年から既に六十歳定年を実施し、五十七年には熟年ライフプラン、定年退職後も希望者で心身ともに健康な人については六十五歳まで雇用するというような制度をとったところもございますし、また伊勢丹は、四十八年に既に六十歳定年を実施し、五十年には六十五歳までの再雇用制度を確立しているわけでございます。これらはいわば先進的な事例でございますが、多くの企業において六十歳後の再雇用あるいは勤務延長についてもこれを実施し、あるいはそれについて検討をしている段階でございます。ただ、企業側のお話を伺いますと、六十歳後につきましては非常に個人差が大きく出てきている、したがいましてやはり全員無条件で勤務延長、再雇用というわけにもいかない、限定的な取り扱いをせざるを得ないという事情がござい
ます。
 そのほか企業側として行っております高齢者対策として項目を挙げてみますと、一つは中高年齢者向け職場の開発、あるいは職務再設計、個々人の能力、知識あるいは経験等に合わせて職務を再編成するというやり方でございます。あるいは、老人になってまいりますのでしんどい作業姿勢をなくすというようなこともやっている企業がございます。ただ、この点につきましてはなかなか取り組んでみると難しいという声も聞かれます。それから、中高年向けの受け皿会社と申しますか新会社の設立、あるいは退職後に備えて公的な資格取得について企業側が援助をするというような制度もございます。それから、中高年齢者の再訓練というようなことにも関心が向けられるようになってきております。そのほか人生設計、退職準備プログラム。会社人間として生きてきた人たちが多いわけでございます。退職後の生きがいづくりについても企業側として面倒を見ていこうということが行われ、あるいは検討されつつございます。
 最後に、定年延長、高年齢者の雇用と関連いたしますが、労働災害との関連ということも無視するわけにはまいらぬかと思います。かつて私鉄総連が老眼鏡をかける年ごろの運転手が大型バスを運転するということは、本人にとってはもちろん、乗客にとっても大変危険だということを言われたことがございます。また、沖縄が右側通行から左側通行へ変わりましたときに事故が割合ふえたそうでございますが、特に高齢者のベテラン運転手で事故を起こす方が多かったというような話もございます。やはり高齢化いたしますと適応性に欠けるという点もございまして、安全教育に力を注いでいく必要があろうかと存じます。
 レジュメの「(3)最低賃金制との関連」でございますが、御承知のように、現在地域別最低賃金制度がございまして、年々最低賃金が引き上げられております。このことに関連をいたしまして企業側からは、最低賃金の額もかなり高くなってきております、毎年上げられると高齢者の雇用に影響をするという声が強まってきております。
 企業側として行っております対策は以上でございますが、やはり高齢化社会への対応ということになりますと、社会保障制度、特に年金制度あるいは医療保険制度のあり方につきましても大きな問題となってまいろうかと思います。
 年金制度につきましては、現在国民年金法等の一部改正法案が参議院で御審議の最中であろうかと思いますが、私どもといたしましては、やはり年金財政はこのままでいきますと破綻することは明らかでございますので、今の政府案が速やかに成立してほしいというふうに考えております。また関連をいたしまして、厚生年金積立金の有利運用につきましてやはり年金財政の破綻を少しでも引き延ばすために考えてほしいと、資金運用部資金に全額入れられているわけでございますが、一部を自主的かつ有利運用方法がとれるように変更をしてほしいという要望がございました。労働組合側もこの点については同意見であろうかと思っております。
 なお、この行政機構について申し上げますと、やはり定年延長とそれから年金、特に支給開始年齢の問題は切り離し得ないものであろうかと思います。現在定年延長は労働省、厚生年金は厚生省所管でございますが、高齢化対策を円滑かつ効果的に進めていくという見地に立ちますと、労働、厚生両省を統合して一元化したらどうかという考え方も発表をいたしております。
 次に、医療保険制度について申しますと、やはり年々一兆円ずつふえる医療費の増大傾向に歯どめをかけなければいけないであろうと。乱診乱療を抑えていかなければいかぬだろうし、また医師の架空、水増し請求等の不正請求もなくしていくような努力が必要であろう。老人医療費につきましても一部負担ということになりましたが、やはり自己負担についても自助努力という観点からやむを得ないと申しますか、そういう方向がとられてしかるべきであろうということでございます。社会保障負担、これは年金にしましても医療にいたしましても保険料は労使折半負担でございまして、保険料が上がるということは企業経営にとってもかなりのものがございます。法定福利費の現金給与総額に対する割合を見ますと、昭和四十八年度におきましては五・九%でございましたが、五十五年度は八・二%に急上昇しているわけであります。やはり負担と公平のバランスということを考えていく必要があろうかと思います。
 時間が延びまして恐縮でございますが、以上で説明を終わらしていただきます。
#4
○小委員長(糸久八重子君) どうもありがとうございました。
 次に、内山参考人にお願いをいたします。
#5
○参考人(内山達四郎君) 総評の内山でございます。
 一応レジュメをつくってまいりましたけれども、限られた時間の中でこれ全部について申し上げられるかどうかわかりません。言い残した分については後ほどの質疑の中でお答えをしたいというふうに思っております。
 私は、主として高齢者雇用の問題を中心にして意見を申し上げたいと思うんです。
 先ほど日経連の中宮さんから「高齢者の積極的活用による日本経済のバイタリティの維持を」という御発言がございましたけれども、私どもも、働く意思と能力あるいは体力を持っている高齢者は雇用機会が確保される、そのことが国民経済の立場に立っても一番望ましいことではないかというふうに考えているわけなんですけれども、残念ながら現状の高齢者雇用をめぐる状況というのは必ずしもそうはなっていないのではないかというふうに言わざるを得ません。昭和五十八年現在、五十五歳以上の労働力人口は一千二十一万人、一七・三%でございますが、七十五年には千四百八十五万人、二三%と急増する。急速な高齢化社会への移行が進むわけですけれども、それに伴って高齢者の失業率も、五十八年では二・六%百五十六万人のうち、五十五歳以上の失業率は三・一%三十二万人、五十五歳から五十九歳では三・三%、六十歳から六十四歳層では四・五%というふうに、全体の失業率に比べて高齢者の失業率は非常に厳しいものになっておりますし、失業期間も六カ月を超えるものが五十五歳以上では全体の四二%というふうに長期失業が非常に多くなっているという現実がございます。あるいは有効求人倍率についても、詳しい数字は申し上げませんけれども、今平均〇・六%という有効求人倍率の中で、五十五歳以上は〇・一%、十人のうち一人しか職にありつくことができないという状況になっております。したがって、現状のまま放置をいたしますと、技術革新の進展なり産業構造の変化と相まって、高齢者雇用は一層厳しさを加えるのではないかという懸念を私どもは持っております。
 そこで、高齢者雇用の中での問題点ですけれども、定年延長の状況については、先ほど中宮さんから労働省の調査結果が報告をされました。第四次雇用対策基本計画では、六十歳定年を昭和六十年度、ことしには一般化するという基本計画が示されたわけですけれども、現状の六十歳定年が五〇%から六〇%という状況が果たして一般化と言えるのかどうか。やはりかなり六十歳定年に到達していない企業が残されているのが現状ではないだろうかというふうに思います。
 それから、高齢者の雇用率は法律によって六%と定められていますけれども、全体を見ますと七・三%というふうに上昇しておりますけれども、特徴的なことは、中堅、中小企業の場合には六%を超えて高齢者を雇用している企業が多いんですけれども、千人以上の大企業になりますと、これが五・九%というふうに六%という法定雇用率が達成をしていないという現状がございます。したがって、この点でも高齢者雇用については問題があるのではないかというふうに私どもは考えております。
 それからもう一つの問題点は、高齢者の労働条件が、これはもちろん不均等性はありますけれども、一般的に言って非常に低下をし続ける傾向に
あるということを指摘しないわけにはいきません。定年延長に伴って賃金は従来どおりの水準を維持する企業もございますけれども、多くのところでは昇給やベースアップに差をつけるとか、あるいは基本給を二割とか三割下げるとか、年々段階的に下げていくとか、あるいは退職金は五十五歳時点で据え置きにするとか、あるいは役職は一定の年齢に来れば外すというような形で、定年延長はもちろん進んでいますけれども、定年延長に伴って高齢者の労働条件が低下をしていく傾向も指摘をしないわけにはまいらないというふうに思うんです。
 それから、勤務延長や再雇用を採用する企業もふえておりますけれども、これも必ずしも本人が希望すれば全員を雇用延長なり再雇用するというところは三〇%にとどまっておりまして、会社が指名をするというような、会社が指名をしなければ本人が勤務延長や再雇用を望んでもなかなかその望みが達成できないという状況も出ていることを指摘しなければならないと思うんです。
 そうした高齢労働者全般の労働条件の低下の傾向に伴って求人の賃金は、これは詳しい統計は申し上げませんけれども、一般的に言って五十五歳以上の求人条件というのは、男は十三万円、女は十一万円、高くても十五万円程度が求人の条件になっているという問題点があるというふうに思うのです。
 そこで、ちょっと三番目にBを落としてしまったのですけれども、「高齢者雇用の必要性と可能性の増大」という一項を落としました。これは詳しく申し上げる必要はないのですけれども、これもいろいろな調査を見ますと、高齢者の就労意欲というのは非常に強いものがあるわけですね。例えば高齢者就業実態調査によりますと、昨年の五月の一カ月間で収入のある仕事を一日以上した者は、五十五歳から五十九歳で八七%、六十歳から六十四歳で七一%、六十五歳から六十九歳で五九%と就労率は非常に高いし、また、就労する意思があるかどうかという質問に対して、やはり自分や家族の生活を維持するためにぜひ就労したいという意欲は高齢者は持っているのが現実ではないかと思うのです。
 そしてまた、先ほども御指摘がありましたけれども、高齢になるに従って職業能力は低下をするという問題がございますけれども、これもさまざまな調査結果を含めますと、先ほどバスの運転手の例が出ましたけれども、職種によっては年齢が加わることによって職務遂行能力が低下をするというものもありますけれども、しかし職種によっては高齢になっても職務を十分に遂行する能力がある。これはもちろん仕事の分担の問題、勤務時間帯の問題、労働時間や休暇や教育活動、作業環境等について一定の配慮をするならば、六十歳以降も働くことが可能と判断することができるのではないかと思うのです。これは詳しくは申し上げませんけれども、その意味では高齢者を雇用する必要性、可能性というのは、一定の対策が講ぜられるならば十分に遂行することができるのではないかというふうに思います。
 それから二番目に、高齢者雇用の課題でございますけれども、ごく簡潔に申し上げますと、この@にありますように、高齢者雇用促進のための当面の緊急課題は、やはり六十歳の定年延長を一般化していく、それと同時に、六十歳台前半層の雇用延長というものについて真剣に取り組んでいくことが必要ではないだろうかというふうに思うわけです。御承知のように、昭和六十年に入ってから大体六十年台前半は五十五歳から六十歳層の労働者が急速にふえて六十歳台層も増加をしていくわけですけれども、これは定年が延長されませんと年々解雇される労働者は増大をしていく。恐らく十万人程度は五十五歳定年でいけば解雇労働者は増大をするのではないだろうか。そうした解雇を防止するためにも、当面の六十歳定年延長は緊急の課題となっているというふうに思うわけです。そして同時に、六十歳定年延長を実現したところは、六十歳台前半層の勤務延長なり再雇用などによって六十歳前半層の雇用問題についても真剣に取り組む必要があるのではないだろうか。そのためには労働省も高齢者短時間雇用助成金、定年退職者等雇用促進助成金、高齢者雇用確保助成金などを新設して、行政の面から積極的に取り組んでおりますけれども、まだまだ不十分なところがあるのではないだろうか。あるいはまた、選択定年制、早期退職優遇制度などによって転職、出向が促進されていることも私たちは重視をして対応しなければならないのではないだろうか。と申しますのは、六十歳定年延長が実施をされても、一方的な選択定年制なり早期退職優遇制度が進行しますと、六十歳定年延長も形骸化することになるのではないだろうかというふうに思います。
 次に、「高齢者雇用の制度的課題」についてイ、ロ、ハ、ニ、ホと挙げておりますけれども、先ほど日経連の中宮さんは、定年制の法制化には反対であるというふうに申されましたけれども、私どもは今の定年制延長の現状から考えますと、国の制度なり法律によって定年制を延長する、つい最近野党が定年制及び中高年齢者の雇入れの拒否の制限等に関する法律案を提案されましたけれども、私どもはこうした法案によって六十歳定年制を法制化することがやはり今の高齢化社会への対応の中ではどうしても必要なことではないだろうかというふうに思っております。
 それから、高齢者雇用率についても、これも実施以来九年たって全体の雇用率が七・三%というふうに一応平均的な水準は超えておりますけれども、先ほど申し上げましたように、未達成企業はまだかなりの数に上っております。したがって、こうした雇用率を守らない企業を放置するということは社会的公正を欠き、社会的責任を分かち合うことにはならないのではないだろうか。したがって、その意味では雇用率制度の改善も取り組まなければならない問題ではないだろうかというふうに思います。
 それから三番目には、高齢者雇用を促進するための援助措置の改善というものもぜひ進めていく必要がある。今労働省は労働対策の上限を一応六十五歳というふうに置いていますけれども、六十五歳以上で就業している者が五九%も存在をしている中では、雇用促進の援助措置を六十五歳以上に適用しないということには若干の問題があるのではないか。最初に申し上げましたように、働く意思と能力のある高齢者に対しては六十五歳を超えても適用する、少なくとも当面七十歳ぐらいまでは援助措置の延長を行っていく必要があるのではないかというふうに思っております。
 また、法律によって中高年の手帳制度があり、就職促進、職業訓練など手当を支給して促進する制度となっておりますけれども、しかし、いろいろな面の制約がございまして、現実には余り活用されていない。現在、五十五歳以上の失業者が三十万人を超えている状態で、雇用促進のためには職安による登録制度を拡大し、就職促進手当、特定求職者雇用開発助成金など各種の助成金制度を改善する、あるいは職業相談、職業紹介、能力開発、訓練なども改善をする必要があるのではないかというふうに思うんです。
 それから、三年ほど前から高齢者の雇用を確保するために職場改善融資制度が実施をされておりますけれども、これもまだ率直に言って高齢者雇用を確保するための職場改善の融資としては不十分さがあるのではないか。財政投融資資金の活用などによって、高齢労働者が安心して安全に働ける職場をつくり出していく必要があるのではないだろうかというふうに思います。
 それから雇用と年金問題について、先ほど中宮さんもお触れになりましたけれども、私どもは基本的には年金の支給開始年齢と定年年齢とはドッキングをしなければならない。現在婦人は五十五歳、男子は六十歳というふうに年金の支給開始年齢は定められていますけれども、年金財政の逼迫の中で、年金の支給開始年齢を段階的に六十五歳にまで延長するという動きも今度の年金法の改正案の中に出ておりますけれども、しかし私どもは、もし六十五歳に年金の支給開始年齢というものを繰り下げるという場合には、当然六十五歳ま
での雇用が確保される、年金支給開始年齢と定年年齢とがドッキングされる必要があるのではないかというふうに思います。
 それから最後に、国や地方自治体による雇用創出基金制度、これは詳しくお話をするもう時間的な余裕がありませんけれども、民間の活力によって雇用を吸収することは基本でありますけれども、果たして民間活力だけで、民間の企業だけですべての失業者を吸収することができるかどうか、この点には私どもは若干の疑念を持っております。現行の失業対策事業はそのままに肯定されるとは思いませんけれども、何らかの形で法的な就労事業というようなものを考えていく必要があるのではないか。これは第三セクターといいますか、政府や地方公共団体、民間、これが力を出し合って第三セクターをつくって、半ば公的な就労事業、これは今高齢者事業団等々がありますけれども、そういったものの確立もこれからは必要になってくるのではないだろうか。
 あるいは二番目に、特定地域開発就労事業が失対事業のほかに現在緊就事業なり産炭地開発就労事業等とともに存在をしておりますけれども、特に中高年齢者の雇用の促進に関する特別措置法によって実施をされている特定地域開発事業の改善が取り組まれなければならないのではないだろうか。やはり失業情勢に見合って実施地域の拡大なり、就労する者の要件なり就労期間、事業運営、補助金などの見直し改善を図る必要があるのではないかと思います。
 それからシルバー人材センターが既に発足をしまして数年間が経過をし、現在二百三十五カ所、十一万人が会員として登録をされております。地域的にかなりの不均等性はありますけれども、私は、シルバー人材センターというものも労働省が補助金を出してやっているわけですけれども、このシルバー人材センターを改善し、五年間の実績があるわけですから、その実態の上に立って単なる生きがい対策としてだけではなしに、雇用対策、労働者保護の立場からの改善が必要ではないだろうかというふうに思っております。
 それから雇用開発基金制度という、これは仮称なんですけれども、現在の雇用保険の中の四事業ですね、四事業のお金の運用というものをもう少し検討する必要があるのではないだろうか。雇用の安定、雇用改善、雇用開発等の雇用保険の四事業のお金がありますけれども、これをもう少し工夫をこらして雇用を積極的に創出していく、これは地方公共団体の地域開発等の事業と結びつけて、一村一品運動等々の運動が地方公共団体によっては展開をされていますけれども、そういうものと結びつけて積極的に高齢者の雇用機会を創出していくための制度、それに充当するための基金というものも確立をしていく必要があるのではないかというふうに思っております。
 若干時間が超過しましたけれども、以上をもって私の公述を終わりたいと思います。
#6
○小委員長(糸久八重子君) ありがとうございました。
 次に、石本参考人にお願いを申し上げます。
#7
○参考人(石本忠義君) 石本でございます。
 本日は、欧米諸国の老人医療問題とその対策ということで限定して私の説明をいたしたいと思っております。私は、健保連に属しておりますけれども、主として研究調査の分野を担当しておりまして、本日は専門家として御意見、御説明をいたしたいというふうに考えております。
 きょうのお話の骨子は、欧米諸国の老人医療制度の現状、それから欧米諸国の老人医療費問題と対策、この二点でございます。参考資料といたしまして三点提出いたしました。
 まず、欧米諸国の老人医療制度の現状でございますが、老人に対して特別の制度を設けているという国は意外と少ないわけであります。西ドイツ、アメリカ、オランダ、この三カ国が老人の特別の保険制度を設けております。
 簡単に御説明申し上げますと、まず西ドイツは、一九四〇年代に年金受給者を対象にいたしました医療保険制度を導入いたしまして、現在、全被保険者の約三分の一、一千万人程度が加入しております。それからアメリカは、多くの方々は民間の医療保険等に加入しているわけでありますが、六十五歳以上の老人とそれから障害者、それから肝疾患、人工透析とかその他腎、肝の疾病患者に対しましてメディケアという老人、障害者の特別の医療保険制度を設けております。一九六五年から導入しております。オランダは、老人に対しまして特別の老人医療保険というものを導入しております。
 現在、世界で老人の医療保険として導入しているものは、私の知る限りではこの三カ国の三つの制度であります。
 西ドイツは、制度的にも非常にはっきりしておりまして、先ほど申し上げましたように、全被保険者の三分の一の年金受給者がこれに加入しております。その医療保険の費用は現在のところ、年金保険から五〇%、それから一般の被保険者から連帯保険料という形で費用の五〇%を負担するようにいたしております。最近西ドイツでは、後ほど御説明いたしますが、医療費抑制策ということで大変強力な政策をとっておりまして、医療費の伸びは非常に低いわけでありますけれども、やはり老人の医療費はその中でも比較的高い伸びを示しておりまして、老人の医療費による年金受給者の費用の増大というのは今のところ避けられない状況であります。そのために、年金保険の方からの繰り入れというものが相対的に少なくなっておりまして、一般の被保険者からの財源投入というのがふえつつあります。将来的には恐らく現在の五十対五十が六十対四十、あるいは七十対三十というふうに変わる可能性があると思います。
 アメリカでありますけれども、アメリカは人口の約一二%に当たる、先ほど御説明しました六十五歳以上の老人と障害者が加入しておりますが、その特別の制度であるメディケアが唯一の公的な制度であります。この公的な制度の費用は、入院保険と、それからその他の一般の医療保険を行う二つの保険制度があるわけですが、そのうちの入院保険の財源は六十五歳未満の人たちが負担いたします目的税としての社会保障税によって賄われているわけであります。それから一般の医療、これを補足医療保険と言っておりますが、それを賄う保険は、加入しております老人等からの一定の保険料と、それから政府が補助する財源とによって賄われております。政府が補助いたします財源は、一般の老人の場合と障害者の場合とでは差がございまして、一般の老人に比べまして障害者に対する補助金の方が高いわけであります。アメリカの場合には、そのように主として租税によってその費用を賄うという方式がとられております。
 それからオランダの場合には、これはアメリカに似ているわけでありますけれども、保険料を加入者からも取るようにしております。残りの財源は一般の被保険者の保険料から繰り入れるようにしております。
 西ドイツの場合は、先ほど財源を現在のところ一般の被保険者と年金からの繰り入れで賄うというふうに申し上げたわけでありますが、一九八三年から老人に対しても保険料を課すという政策がとられるようになりまして、現在のところ、年金受給者が受ける年金額の五%を保険料として課しております。ただし、この保険に対しましては、原則的には強制加入でありますけれども、就職してから二十年以上たっていない者については、本人が自由意思で入るか入らないかを決めるというような政策がとられておりまして、その場合にはもちろん保険に入るかどうかということは自由意思で決めるわけであります。
 このように西ドイツ、アメリカ、オランダともに老人医療保険というそれぞれの方式でやっているわけでありますが、最近三カ国における老人医療保険というのは財政的に大変深刻化してきております。そこで、先ほど御紹介しましたように、西ドイツでも当初は一般の被保険者と年金保険から財源を賄っていたのが、それでは十分でないということになって、加入者自身に負担を課すということになってきたわけであります。アメリカの
場合も、これは後代負担という形をとっておりますけれども、保険料を引き上げる、あるいは社会保障税を引き上げるというようなことになっております。オランダの場合もやはり加入者の保険料を引き上げたりしております。
 これに対しまして、財源政策だけでは十分ではないのではないかという考え方がございまして、日本でもいろいろ議論されておりますけれども、老人医療対策というものは支出抑制策だとかあるいは財源対策だけでやるのではなくて、老人に対する医療そのもののあり方というものを考えていかなければならないのじゃないかというような段階に入ってきております。
 現在、老人に対して比較的医療供給体制の面で整備されているという国は北欧諸国、それからフランス、オランダというような国であります。もちろんアメリカも老人に対する施設というのがございますけれども、少し性格の違ったものがあると思います。北欧諸国、フランス、オランダというような国々の施設は多くは公的な施設であります。それに対しましてアメリカの施設は、老人医療、社会福祉施設というのはほとんどが私的なものであります。北欧諸国、フランス、オランダの老人医療、社会福祉施設の現状を見てみますと、老人の医療施設とかあるいは社会福祉施設というのがそれぞれの国によって非常に特徴がございます。北欧諸国の中でもノルウェー、デンマーク、スウェーデンというような国々によってそれぞれ施設の性格というものも違ってきておりますし、その構造的なものも違っております。
 細かい点は省きますが、二、三例を挙げさせていただきますと、ノルウェーの場合にはナーシングホームというような施設が医療法に基づきまして病院の施設として位置づけられております。それに対しましてスウェーデンの場合には、社会福祉施設としての性格づけが行われております。オランダの場合もやはり同じように社会福祉施設というような位置づけが行われております。また、デンマークの場合には両方に分かれておりまして、一部は医療施設、一部は社会福祉施設というような位置づけが行われております。
 次に、老人の医療費問題に対してどういうような対策が行われているかということについて御説明をしたいと思います。
 現在日本でもいろいろ議論されております中間施設とかあるいは在宅ケア等の拡充の問題は世界的に共通の問題になっております。先ほども申し上げましたように、老人医療問題を考える場合に、単に保険料の引き上げだとか支出の抑制策あるいは財政調整ということだけでは問題は解決しないという考え方が一般的でありまして、医療供給体制そのものを変えていくようにしなければならないということが大きな課題になっております。また緊急な課題になっております。この課題というのは非常に長期的な課題でございまして、短期的な効果というのは期待しがたいわけであります。当初は老人医療問題に対しましては財源対策を先行さしたわけであります。その結果余り効果的でない、要するに短期的な効果しか得られないということになりまして、医療供給体制そのものを変更していかなければならないということになったわけであります。現在の段階では、中間施設、在宅ケア等の拡充というのは老人医療費問題に対する対策の一環として位置づけられているということであります。しかし私は、これは今後医療費対策ではなくて、老人医療の将来方向の中核をなすものになっていくんじゃないかというふうに見ているわけであります。
 欧米諸国の中間施設、在宅ケア等の拡充の政策でありますけれども、それぞれの国はまだ十分でございません。必ずしも完璧な政策をとっているところは少ないわけでありまして、北欧諸国におきましてもやっと老人医療に対して力を入れるようになったというわけであります。一般的に欧米諸国の場合は、老人に対する政策というのが進んでいると言われているわけでありますが、これは社会福祉の面でそのことが言われていたわけであります。しかし、老人医療という点になりますとまだそんなに進んでいる状況ではないと申し上げていいと思います。現在これらの国で課題になっておりますのは、医療と社会福祉との連携をいかに保っていくかということが課題でございまして、よく言われていることでありますけれども、老人の医療、社会福祉というものを総合的に行うことによって効率的、効果的な老人医療対策ができるんだという政策がとられてきております。
 本日参考資料として御提供いたしました資料の中で(1)の資料をごらんいただきたいと思います。(1)の資料の三ページ目にオランダに関する記述がございます。そのオランダに関する記述の中で表2というのがございます。「オランダにおける老人の各種施策に対する需要予測」というのがございます。これをごらんいただきたいと思いますが、この中で、老人ホーム、ナーシングホーム、在宅ケア等々施策の種類として挙げてございます。現在一九八五年の数字として、老人ホームの場合、老人のうち九・六%、約十六万五千人が老人ホームに入る必要があるというふうに思われているわけであります。それからナーシングホームの場合には四万三千人が、パーセンテージにしまして約二・五%が入る必要があるというふうに思われているわけであります。それから在宅ケアの場合には約十三万人、パーセンテージにしまして八・五%の者が入りたいというふうに思われているわけであります。これに対しまして一九九〇年には、五年先でありますけれども、それぞれ九・八%、二・五%、それから八・五%というふうに需要があるであろうというふうに見られております。これに対しまして、次のページをお開きいただきたいと思いますが、表3の「オランダのベッド配分と需要計画」という表題の表がございます。政府は一応の基準を立てているわけであります。老人ホームは基準といたしまして一応六十五歳以上の人口に対しまして七%ぐらいを満たすようなものであればいいんじゃないかと、またナーシングホームに対しては二・五%ぐらいのものでいいんじゃないかと、病院に対しましては一ぐらいでいいと、こういう基準を立てております。これに対しまして現実には、一九八五年には九・六%、これは老人ホームでございます、ナーシングホームは二・五%、病院は一・三%、それから一九九〇年にはそれぞれ九・八%、二・五%、一・三%というふうにしようという計画でございます。これは基準を老人ホームの方は上回っております。ナーシングホームと病院に対しましては基準どおりに行うという計画なわけでございます。
 このように、オランダでは老人に対してどの程度の施策を行うかということを需給計画を立ててやっているわけであります。実際にはそのとおりにいかないわけでありますけれども、ほかの国では余りこういう計画を立てたのを見たことがございません。私は、やはりこれからの高齢化社会に向けてこういう施策を立てるに当たっては需給計画というものを策定していく必要があるんではないか、ただ漠然と中間施設とか在宅ケアというようなものを拡大すればいいという方向では十分ではないんじゃないかという気がします。
 時間に限りがございますので、十分な御説明ではございませんでしたけれども、あと二つの資料は後ほど御質問ございましたら御説明をさしていただきたいというふうに思っております。
#8
○小委員長(糸久八重子君) 大変ありがとうございました。
 以上で参考人の意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のあります方は、小委員長の許可を得て順次御発言をお願いいたします。
#9
○岡部三郎君 大変貴重な御意見を承らせていただきましてありがとうございました。二、三の点につきましてお伺いをいたしたいと思う次第でございます。
 最初に、中宮さんにお伺いをしたいんですが、「高齢化対策の基本的視点」というところで、日本経済のバイタリティーを維持していくためには高齢者の活用ということが大変に必要であるとい
う御意見でございました。その具体的な方法として、自己研さんであるとか、あるいは若いころからの能力開発であるとか、あるいは資本装備率を高める、技術開発投資をふやすというような対策をお述べになったわけでございますが、ただ私考えますのに、最近技術革新等によりまして、確かに体力を要する職種というのはだんだん減ってきたと思うわけですが、一方で、非常に高度の技術であるとかあるいは緻密な思考であるとか細心な注意だとか粘り強さだとか、こういったような素質といいますか、を必要とするような職種がだんだんふえてきたんではないか。例えば、最近経済の情報化とかソフト化とかいうことから情報処理技術者というふうなものが爆発的にふえていくというふうな見通しが立てられているわけでありますが、こういういわゆるソフトエンジニアというふうなものも大体いいところ四十歳から五十歳ぐらいまでが限度だと。もちろんそれ以降でも使えないわけではないんでしょうが、余り高齢者には適さない職種が技術革新によってだんだんふえてきているんではないかと思うわけでございますけれども、今後どういった面に高齢者の活用ということが考えられるのか、その辺をお伺いしたいと思うわけであります。
#10
○参考人(中宮勇一君) 確かに御指摘ございましたように、情報産業関係でございますと、例えば三十歳ぐらいまでしかもたないとかいう話がございますけれども、一方では、まだ経験したことのないことでこれからの問題ではあろうかと思いますけれども、説によりますと、いわゆるソフト関係になりますとかなり高齢者でも今までの経験を生かして十分対応できるという話もございますので、これからのことでございますから余り確定的なことも言えないのかと思いますけれども、そう高齢者は情報関係には対応できないと断定しなくてもよろしいんじゃなかろうかという気がいたします。
 それはそれといたしまして、高齢者向きの職場開発ということを今後とも進めていかなければならないだろうと思いますが、やはりこれからの吸収源である第三次産業、サービス産業関係で雇用機会が拡大されるならば、高齢者雇用にも役立っていくんじゃなかろうかという気がいたします。
#11
○岡部三郎君 もう一つ、これは内山さんにお伺いをしたいと思うんですが、最後のところで、民間の活力だけじゃ失業者はなかなか吸収できない、どうしても第三セクター等による公的就労事業というものが必要だ、失対事業にかわるべきこういった事業が必要だというふうなお話がございましたが、これは恒常的な就労事業としてお考えなんでしょうか。といいますのは、失対事業というのは、御案内のようにいわば一時的な事業である、それが恒常化したというところに大変問題が出たんだろうと思うんですが、これにかわるべき事業としてどういうふうな公的な就労事業というのをお考えか、お伺いしたいと思います。
#12
○参考人(内山達四郎君) 今御指摘ございましたように、現在の失対事業というのは、いわば緊急避難的な事業制度として発足をしたわけですけれども、結局滞留をしてしまって、失対それ自体が事業目的みたいになってしまったという傾向があると思うんですね。その意味では、私は現在の失対事業と同じような公的就労事業ということになれば、これは問題があるんじゃないか。もちろん緊急避難的な失対事業というものは必要だと思うんですけれども、今高齢者事業団というようなものを東京都なんかは始めていますけれども、シルバー人材センターもそれとかかわり合いを持っているんですけれども、いわば高齢者に適応するような作業、これを例えば民間からも出す、あるいは地方公共団体からも発注をする、そういう高齢者向けの仕事、そういうようなものをいわば第三セクター的な事業団としてつくっておくことが、これは緊急避難ではなしに、その中で高齢者の働ける雇用機会をつくり出していく。これは調べていけばいろんな仕事があると思うんですね、高齢者に適応したような。そういうようなものは考えられないだろうか。その意味ではやっぱり失対事業とは違って、一定の採算性なり効率性、これは民間の一般企業との競合の関係が起きる可能性もあると思うんですけれども、そういうものも、考える必要があるのではないだろうかというふうに思うんです。
#13
○岡部三郎君 どうもありがとうございました。
#14
○松岡満寿男君 大変御苦労さまです。
 石本参考人にちょっとお伺いしたいんですが、この前社会保障制度審議会の方から、二月ですか、老人福祉の問題についての答申が出まして、その中で、いわゆる老人病院とそれから特別養護老人ホーム、これの中間的な施設を考えたらどうだろうという提案が実はあったわけでありますね、御承知と思いますけれども。これはしかし、それぞれ我が国の中におきましては役所の所管が違う部分もあるし、なかなか難しい問題だなと思っておるんですけれども、これをどのように考えておられるのか。
 それと、そういう中間的なものが、先ほどオランダのいろんな老人ホームとかいろいろございますですね、そういうものが欧米に存在しておるのかどうなのか。その点につきましてちょっとまずお伺いをしてみたいと思うんです。
#15
○参考人(石本忠義君) 逆から御説明するようになりますけれども、欧米諸国では、先ほども申し上げましたように、老人専門の医療施設というのを設置運営しているケースというのは比較的少ないわけであります。また、先生の御質問の中間的な性格のものというのも少ないわけであります。
 それで日本の場合には、欧米における社会福祉施設、それから病院を中心とする医療施設、そういうものを何かうまくミックスして日本的な施設をつくることができないのか、それから現在ある日本の社会福祉施設というものをうまく活用できないか、そういうような観点から恐らく先ほど先生がおっしゃったような中間施設というようなものが構想されていると思うんです。これにつきましては、もしそういうものが日本的な努力でできるならば非常に結構じゃないかと思うんですが、ただ先ほどもちょっと触れましたように、そういうような施設がどういうような需要に基づいて必要なのか、ただ漠然と何かこれまでの医療施設と社会福祉施設をミックスしたものがいいんだ、中間的なものがいいんだという考え方で設置運営されることはかえって費用の増大等を招くし、また医療供給制度そのものの混乱を招くことにもなりかねないなという感じがいたします。
#16
○松岡満寿男君 ですから、欧米でも在宅ケアというものに中心を移していくというような方向づけもあるようですし、我が国においても、我が国の良好な家族制度という面から見ても、あるいは単身でも在宅という問題が最近出てきております。そういう方向にいろんな条件整備をしていくというのがやはり基本だろうと思うんですけれども、そういう施設でいろいろな看護をしていくという立場の方もおられるわけですから、そういうこともまた必要だろうと思うんですけれども、在宅ケアの問題についてのお考えをちょっと伺ってみたいんですがね。
#17
○参考人(石本忠義君) 先ほど在宅ケアが拡充されているということは申し上げたんですが、これが中心になっているかどうかという点につきましてはちょっと申し忘れたわけなんですが、先生の御指摘の点、大変重要な点だと思います。
 ヨーロッパに参りまして感じることは、確かに施設も大変充実される方向にありますけれども、どうも施設によるケアというものが、病院に入院させない、要するに代替ケアとしての役割を持ってコストをやや下げることにはなりますけれども、費用がそれによって著しく引き下げられるということにはならないということなんですね。それで、最近では在宅ケアをできるだけ進めていく、これまでの施設ケアから在宅ケアへという方向が推し進められておりまして、できるだけ施設はもうつくらないようにしようという方向になっております。これは国によって差がございますが、北欧諸国は一般的に施設から在宅ケアという方向へ向かっておりますし、また西ドイツ、フラン
スはもう施設はつくらないでいきなり在宅ケアの方へいこうという考え方でございます。要するに北欧の経験というものを参考にしているわけです。在宅ケアにかかわるいろんな看護の費用、その他関連の費用は医療保険の方から見れるものは見よう、それから社会福祉施設で見るものは見ようというような政策がとられております。
 特にフランスの場合には、在宅ケアをやる場合に、老人が家で治療とか看護あるいは生活がしやすいようにということで、住宅の改善、それから買い物等が容易にできるようにというようなことで、社会福祉とかそれから医療保障とかという分野に限定しませんで、住宅の改善、道路の整備あるいはその他の生活環境の整備ということで行政の各部門が協力し合って、国とか地方自治体が連携し合って総合的な対策をとるという方向を打ち出しております。これは特に現政権が発足してからその方向がとられておりまして、フランスの各地方にそれらの政策をうまく連携総合するような国の機関というものが設置されております。そういうことの中で在宅ケアというのが老人に関しては中心になって行われているというような現状でございます。
#18
○松岡満寿男君 石本先生、どうもありがとうございました。
 内山参考人と中宮参考人にお伺いしたいんですが、これからの我が国の状況というのは、アメリカ経済もちょっと陰りがまた出てきたようですし、なかなか厳しい道のりだと思うんですね。そういう中で労使問題は、やはりこれから高度技術の問題あるいは女性問題、情報化、そういう大きな中でいろいろの変動がこれからあるだろうと思うんです。
 私自身も、この委員会でせんだってトヨタですか、視察さしていただいたんですけれども、ロボット化がこう進んでいく、さらに第五世代コンピューターを今進めておるわけですから、さらに日本の場合はロボット、そういう無人化が進んでいくだろうと思うんですね。片方でやはり女性の職場進出がずっと行われてくる、その中でまた高齢化がずっと進んでいく。だから、小さなパイをどのように配分をお互いがしていくかという厳しい状況があると思うんです。全体的にはこれからの高齢化社会に向かってお年寄りを一体どこに住まし、生きがいを持って働いてもらうかという問題がある。しかし、そういうことを余りやっていくと、今度は新しく学校を出て社会に出ていく若い人たちの職場というものが一体どうなっていくんだろうか。片方では最近消費飽和説ということが言われておりまして、消費を伸ばせといったってなかなかもう伸びていかない。さらに、貿易摩擦でアメリカの物を買えといったってもう買えるような物もない。そうしますと、今までの賃金決定の一つのパターンでありました消費者物価プラスアルファという方式というものがいつまでもこれは続くわけでもないだろう。そういう厳しい環境の中でこの高齢化問題をどうやっていくかというのは、やはり総合的な立場での調整機能がどっかで働いていかないと、老人問題は老人問題でやっていく、女性問題は女性問題、ロボットはロボットでやっていくなんということをやっていたらこれはとんでもない話になりはしないかと思うんですね。
 そういう中で、せんだって青森銀行の訴訟問題が出てきておりますね。これはやはりまさにこれからの高齢者雇用について非常に大きな私はポイントがあるんじゃないかと思うんですね。そういうものをやっていくと、今度はせっかく定年延長をしようにも、経営者側の方から見るとこれは慎重に対応せざるを得ない。そうすると若い人たちの雇用もできなくなってくる。そういう全体的な問題をそれぞれ経営者側も労働者側もやはり今までの発想を変えて広い立場から取り組んでいかないと、ただお互いに立場を主張してやっていくというだけでは解決できない問題がありはしないか。その辺を私は非常に憂慮いたしておるんですけれども、青森銀行の問題は生々しい話でしょうけれども、そういう問題を一つの具体的な問題として、今、私申し上げましたような諸問題につきまして、それぞれのお立場から御高説を承ることができればと思うんです。
#19
○参考人(内山達四郎君) 実は、青森銀行の問題は雇用審議会の定年延長部会でも若干問題になったんですけれども、私は率直に言って、青森銀行のあの例というのは非常に極端な例ではないかと。つまり、賃金が四割ないし五割近くダウンしてしまうというような、そういう非常に極端な例であるために、恐らく管理職に近い方だと思うんですけれども、訴訟を起こされたということだと思うんですね。
 私たちは、労働組合の立場からいえば、定年の延長に伴う賃金の問題、これは何も定年以前のように、年功序列賃金でそのままずっと定年まで延長しろというような主張をしている労働組合はほとんど少なくなったんじゃないかと思うんですね。やっぱり横ばいといいますか、当然定年延長すれば人件費がかさむわけですから、人件費のふくらみというものをできるだけ抑制するために賃金の上昇カーブを抑えるとか、あるいはこれは人事管理の面については一挙に一定の年齢になってしまえば、例えば五十五歳なら五十五歳になってしまうと全部役職から外して窓際族にしてしまうというようなやり方は、これは極端な例だと思うんですけれども、人事管理についてもかなりの弾力性を持って対応しなければやっぱりならないじゃないかと。あるいはその他の退職金の問題についても、定年延長に伴ってそれを全部年齢に加算をしてしまえば、これは退職金原資がふくらんでしまいますから、これはやっぱり企業にとっての負担は大きくなりますから、退職金についてもかなり弾力的な対応をしなければならないと。
 いずれにしても、賃金問題あるいは人事管理の問題、それから退職金の問題、定年延長に伴って起こる人件費負担の増大の問題については、労働組合の立場からいっても、今までと同じようにというような主張ではなしに、かなり弾力的に、柔軟に対応しながら定年延長をしていきませんと、今先生が御指摘になりましたように、結局は、今のところまだ私は日本では若年労働者の失業問題というものはそれほど深刻にはなっていないと思うんですけれども、これから先のいろんな状況の変化を考えますと、そこに若年層の失業問題が発生をするような対応であってはならないと。かなり弾力的に柔軟に対応しつつ、高齢者雇用の場を定年延長を初めとして確保していくということが労働組合の基本的な立場だと思うんですね。
 ただ、経営側とどうしても意見が合いませんのは、そういうのは当然労使の自主的な交渉でやられているんですけれども、私どもがやっぱり定年制の法制化、年齢による雇用差別の禁止的なものを一つの社会的な流れとして定着をさしていきませんと、どうしても定年問題というのは一定のところまでは、六十歳定年の昭和六十年度の一般化という流れは、これは労使の努力なり行政指導によってある程度流れはきているんですけれども、率直に言ってここのところへきてちょっととまったような感じなんですね。ですから、社会的な慣行、社会的な制度として定年は六十歳なんですよというようなものがやっぱり出されていて、それに向かって労使が自主的に交渉しながら弾力的にかつ柔軟に対応していくことが望ましいのではないだろうか。これは経営者団体は非常に強くそういう法律や制度によって定年を決めるのは反対だというふうにおっしゃっておられますけれども、私はそういう社会的な規範みたいなものがやっぱりあることが必要ではないだろうかというふうに思うんです。対応としては、御指摘になられましたように、柔軟な対応をしなければならないというふうに思っております。
#20
○参考人(中宮勇一君) 先生の御指摘になられましたのは大変重要な点をついておられるんじゃないかという気がいたします。
 ある学者が、確かにこれから高齢化していくわけでございますが、一方、昭和六十二年ぐらいまでは若年労働者層が数としてふえていく、そこでこれからは雇用の場をめぐる親子紛争が起きるよ
と、親が就職して息子が失業するのか、息子が就職して親が失業するのか、そういう事態になるよということを言っておられました。確かに高齢者雇用の問題を考えていきます場合に、やっぱり御指摘のように、一方若年層の雇用の問題あるいは女子の職場進出の問題、あわせて考えていかなきゃいかぬと、そういう視点が必要だろうと思います。特に欧米と日本を比べますと、欧米の方は高齢者雇用問題がなくて若年層の就職問題、日本と逆だと、こう言われておりますが、御指摘ございましたように、今、年齢別に見ていきますと、二十歳未満の失業率が一番高いんでございます。有効求人倍率は一を超えているわけなんです。いわゆる青い鳥症候群と申しますか、東大の学生も卒業恐怖症、拒否症候群が多くなったとか言われておりますが、そういう点を考えますと、やはり日本も若年層の雇用問題の方が深刻化してくるという懸念もないわけではなかろうと思います。やはり総合的に考えるということが大事だろうと思います。
 なお、青森銀行の事件でございますが、私具体的な事実関係を承知しておりませんので軽々なコメントをすべきじゃないと思いますが、新聞で拝見しますと、あそこは組合が三つあると。一つは管理職の組合のようでございます。ほかの二組合とは定年延長、それに伴う賃金体系あるいは退職金問題についても合意に達したようでございますが、管理職組合が同意しなかったと、その中で訴訟事件にまでも発展したのかと思います。そう考えますと、やはり定年延長にしましても若い層と定年間近の人と、考え方、意見というのは必ずしも一致しない、相対立する場合がある、年金制度についても同じことが言えるのかと思いますけれども。その辺、一般的には一企業一組合で両者のバランスを考えて手直しなり定年延長に伴う労働条件の手直しが決まっているんだろうと思いますが、青森銀行の場合には数組合併存ということからああいうケースになったのかなと想像いたしております。
#21
○抜山映子君 中宮参考人の方にお伺いいたしたいと思います。
 日本の六十歳定年が六五%という数字を伺いましたんですけれども、六十歳で再雇用している会社はどれぐらいあるか、それから六十五歳定年、伊勢丹があると言いましたが、これがたった一つのケースか、そのことをお伺いいたしたいと思います。
 それから内山参考人にお伺いしたいんですが、労働組合が最近は、勤務期間だけでなくて生涯ステージを通じて生活設計に協力しようということで、第二の就職を会社側の子会社なんかをつくって積極的にやっている会社もあるように聞いておりますんですが、そのような実情をもし御存じでしたらお教えいただきたいと思います。
#22
○参考人(中宮勇一君) ただいまの数字でございますが、六十歳定年を実施している企業でさらに勤務延長、再雇用制度をとっているところがどの程度あるかという統計的な数字はないんじゃなかろうかと思います。労働省の雇用管理調査によりますと、定年制を定めている企業で、これは五十五歳定年も五十八歳定年も六十歳定年もあるんだろうと思いますが、そのうち勤務延長制度あるいは再雇用制度がある企業は七五・七%、こういう数字が出ております。これは五十七年の調査でちょっと古い数字でございます。勤務延長制度のみが二一・四、再雇用制度のみの企業が四〇・五%というような数字が出ております。
#23
○参考人(内山達四郎君) 今御指摘がありましたように、高齢者のための会社をつくって、そこで定年退職をされた方あるいは定年退職直前の方を受け入れて高齢者会社といいますか、そういう会社をつくっているケースは、最近は、私どもの知る範囲でもかなりふえてきているのではないかと思うんですね。ただ率直に申し上げまして、私も二、三そういう会社の実情、実態を見たんですけれども、必ずしも全部が全部うまくいっているというケースだけでもないようなんですね。結局、やっぱり年寄りもいる、それから中年の人もいる、若い人もいる、そういう老・壮・青といいますか、そういう人員構成の中で全体としての勤労意欲も上がっていくということもありまして、高齢者会社をつくってうまくやっているところもありますけれども、しかしやはり高齢者だけの職場で果たして全体としてのバイタリティーといいますか、勤労意欲が上がるかどうかといいますと、私が見聞した範囲はごく少数なんですけれども、そういう悩みをやっぱり持っておられるところもあるようです。ですから、その辺は高齢者だけの会社をつくること、これはもちろん私はいいことだと思うんですけれども、それだけで高齢者雇用問題がすべて解決をするというわけにはいかないのではないかというような気持ちを私は持っております。
#24
○抜山映子君 ありがとうございました。
#25
○橋本敦君 先ほどもお話にありましたんですが、定年の延長ということとも絡みまして、それ自体が延びることは大いに結構ですが、逆に、高齢者の労働条件が非常に低下しているというこれは一つの非常に大きな問題で、今も論ぜられているわけですね。
 そこで、この問題をどうやって歯どめをかけるか、この問題について内山参考人にお伺いしたいんですが、一つは、会社との交渉、労働協約で歯どめをかけていくという方法が一つあるでしょう。それからもう一 つは、やっぱり国の方で高齢者の労働条件に目配りをするとすれば、基準法かあるいは特別法をつくるか、どういうことが可能であろうかということでもし御意見があればお聞かせいただきたいということです。
 これは、今度は中宮さんにお伺いしたいんですが、経営者の側からすると、それに対する対応というのはどういうことが可能として考えられるかということですね。これはやっぱり経営者のサイドとしてもいろいろ御研究になる課題だろうと思いますので、お考えを聞かしていただきたい。
 それから第二点目は、年金の受給開始年齢と定年がリンクするというのが望ましい、これは一般に言えることですね。そうしますと、現在六十歳定年が六十年で一般化するようにということだけれども、今お話しのように六〇%程度。ところが、年金の受給開始年齢というのは、民間の動向とかかわりなしに国の方が年金法で決めてきて、六十五なら六十五でかけてくるわけですから、私は、このリンクをやっていく上では年金の受給開始年齢に見合う定年の問題はやっぱり法規制するというのが解決としては最も合理的でないかという意味で、内山参考人のおっしゃる定年の法制化ということにも私は賛成なんですが、この点中宮参考人の方は御意見があるようでございますので、今言った年金とのリンクをどう具体的にうまくやっていくかという観点からもう一度御意見をお聞かせいただきたいということ、二点でございます。
#26
○参考人(内山達四郎君) 先ほども私申し上げましたように、結局高齢者の需給バランスが供給過多であるために、先ほども失業率が非常に高いとか、有効求人倍率も非常に低いという、供給過多であるためにどうしても高齢労働者の賃金なり労働条件が低下をしてしまう、これが現実の姿だということを私は申し上げたんですけれども、それを解決していくためには、もちろんこれは労使の自主的な交渉も大事だと思うんですけれども、根本的な解決策というのはこの需給のアンバランスをどうなくしていくのか、つまり積極的な高齢者の雇用創出ですね、高齢者が働ける機会というものをつくり出していく、このことがやられていきませんとやっぱり根本的な解決にはならないのではないだろうか。幾ら労使が自主的交渉をしても、もう十万でも十一万でも、仮に十万切っても働かなければやっていけないという高齢者がいる場合には、どうしても賃金が引き下がってしまう。ですから、その意味では抜本的な解決は、先ほど私は高齢者事業団とか、あるいは第三セクター方式の雇用開発基金による高齢者雇用機会の創出というようなことを申し上げましたけれども、そういう努力がやっぱり国なり地方公共団体
としての施策としては必要ではないだろうか。労使の自主的交渉はもちろん必要ですけれども、そういうものがないと結局は労働市場の需給関係によって高齢労働者の労働条件が低下をしてしまう。
 それからもう一つは、これは労働団体と経営者団体とは鋭く対立をしているんですけれども、最低賃金制度の問題ですね。中宮さんの方は、そういう状況の中で最低賃金というものが高齢者を雇用する場合の一つの足かせになっていると、つまり最低賃金という、これは私どもは決して高い水準だと思わないんですけれども、そういう最低賃金が法的に存在をしていればなかなか雇い切れないというふうに経営者側の方はおっしゃるんですけれども、しかし私はやはり高齢労働者に関しても、さっき言った抜本的な施策が前提になりますけれども、最低賃金というものを適用していかないと、もう一定の年齢以上は最低賃金も適用しないでやるというようなことになりますと、やっぱり高齢者の賃金、労働条件というものは低下をしてしまうのではないかというふうに思います。
 それから、やっぱり年金と定年のドッキングというものはどうしてもやらないと、今厚生年金の場合に六十歳から五十五歳定年、そこの五年間の生活をどうするかということになりますと、さっき申し上げましたように、五十五歳から六十歳の有効求人倍率が〇・一倍というような状況の中では、結局年金までの生活を維持するということは非常に大変なことになると思うのです。ですから、その点では厚生年金による年金受給開始年齢と、私たちが主張しております定年制の法制化による定年年齢というものがきちっとドッキングをするような制度的なシステムというものをつくらなければならないのではないだろうかというふうに私どもは考えておるところです。
#27
○参考人(中宮勇一君) 定年延長いたします場合に、現在の年功序列賃金体系あるいは退職金をそのままにして定年延長しろということになりますと、企業としてのコスト負担にたえられないという問題が出てまいります。もし、そういうことでありますと、全体としての雇用減というようなことにもなりかねない。やはり賃金体系あるいは退職金手直しが必要であろう。この点につきましては労働組合の御理解も得られて、実際に交渉で定年延長に伴う手直しが行われてきているわけで、そこで従業員全体からしますとまあまあこの点ならやむを得ないという形で決まっている、それが一般的だろうと思います。
 それから、年金の支給開始年齢と定年年齢との関係でございますが、何年か前に、たしか野呂厚生大臣の時代であったかと思いますが、厚生省は六十五歳へ支給開始年齢を延ばすという考えを明らかにされました。一方、労働省はそのときに六十歳定年へという施策を打ち出しておったときでございます。確かに年金制度、年金財政の今後を考えますと、やはり支給開始年齢を延ばすか、あるいは厚生年金の水準を下げるか、あるいは保険料を上げるか、この三つの方策、あるいはそのミックスしかないわけであって、六十五歳へ支給開始年齢を延ばすということは一つの課題であろうかと思いますけれども、かっての野呂厚生大臣が言われたときに、経営側としましても直ちに賛成はいたしかねたわけでございます。それはなぜかといいますと、やはり当時はまだ五十五歳から六十歳へ定年を延ばしていこうやという状況でございまして、六十五歳から年金を支給するということになった場合に、その間の雇用について経営側として自信が持てなかったからだと思います。ですから、全く定年年齢と年金の支給開始年齢とを無関係に論じていいとは言い切れないと思います。
#28
○青木茂君 石本参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、高齢化問題になるとどうしても老人医療の問題が出てくるんですけれども、医療の需要側についてはいろいろ言われているのですけれども、医療の供給体制というのが、いわゆるモラルという面から見てどうも我々としては納得しがたいいろんな問題があるわけですね。きょうのお話には出なかったけれども、いわゆる健保連として医薬分業というのはどういうふうにお考えでしょうかね。
#29
○参考人(石本忠義君) 本日冒頭にちょっとお断り申し上げたのでございますが、健保連の立場を代表したような意見は申し述べないと申し上げたのですが、関連する問題でございますので、ちょっと雰囲気をお伝えしたいと思っております。
 やはり医薬分業というのは保険者の立場では当然すべきであるという考え方でございます。特に医療費の中心になっておりますのが薬でございます。欧米諸国を見ましても医薬分業をしてない国というのが少ないわけでございます。むしろ、医薬分業は国営医療であろうと医療保険の方式をとろうとも全部行われておるわけです。また、医師が薬を処方し、かつ患者に直接提供するというようなシステムもとられてないわけであります。したがいまして、医療費問題の立場からいきますと、医薬分業が行われるのが当然であるという考え方を健保連としてはとっております。
 ただ、現実問題としまして、それでは医薬分業すればそれで医療費の問題は片づくかといいますと、必ずしもそうではないわけでございまして、結局は現在の医師と薬局、それからまた患者という関係をできるだけ改善しながら、現実的な方法で何か医療の薬離れというものを具体的に実施することができればというような考えを持っております。
#30
○青木茂君 今の健康保険制度で仮に保険薬局あたりで投薬を受けたら、同じものが十倍ぐらいになっちゃうんですよね。医師からもらうのと同じ薬を仮に保険薬局あたりでもらったとしたら、同じ薬に対して我々は十倍払わなきゃならぬというような全くもって非常識なシステムというものがある。だから、ここら辺のところを基本的に改めていきませんと、医薬分業をやったがために医療の需要側の支払いが物すごくふえてしまう。私も基本的に医薬分業をやらないといけないと思いますけれども、今の制度でそのままやってしまうとこれはかなり問題があると思いますね。
 それからもう一つ、医療のことばかりですけれどもお伺いしたいのは、お医者さん側の出来高払いという制度、これで我々が高齢化社会に突っ込んだ場合、これは医療面において高齢化社会、つまり老人医療の基本的なところが崩壊してしまうんではないかという感じがしてしようがないんですね。例えばCTスキャナーというのがありますな。あんな高い器械を使い方がろくにわかりもしない医者が買いまくるわけですよ。それで保険点数が高いでしょう。だから、水虫になってもCTスキャナーをかけるやつがいますからね。そして保険請求料が多くなってくるというようなシステムをそのまま残しておいて、私はこの高齢化社会の問題は論じられないという気がして仕方がないんですけれども、今個人のお立場とおっしゃったからこれ以上はあれしませんけれども、とにかく患者側の利益を守っていただかなきゃならぬ団体なんだから、ひとつそういう点は頑張っていただきたい。医者には遠慮するなということですね。
#31
○小委員長(糸久八重子君) 御意見でよろしゅうございますね。石本参考人ございますか。
#32
○参考人(石本忠義君) それでは、ちょっと御参考までに青木先生の御質問あるいは御意見に関連しまして申し述べさしていただきます。
 日本のように薬価基準制度という制度を設けている国というのがまたないわけなんですね。日本の場合には、実際に購入いたします薬の価格と基準価格との間に差益があるというところに一 つ問題があるわけです。多くの国では、医薬分業の場合に薬局のマージン、それから問屋のマージンというものを法定しているわけなんです。そのことによって適正な利潤を認めるということで、実際の購入価格と薬価基準との差益を云々するということは全くないわけです。したがいまして、医薬分業する場合にはそういうものが一つの基礎的な前提になろうかと思います。
 それから、出来高払いの方式をとっている国は日本のほかにいろいろございます。ありますけれ
ども、現在出来高払い制度ということに対しましては大変メリットもありますけれどもデメリットも大きい。特に医療費を抑制するという立場からは、出来高払いそのものを全部改革することは難しいけれども、何か修正を加えたらどうかという研究が西ドイツとかフランスで行われておりますが、なかなかいい案が出てこないわけであります。出来高払いというのは、医療保険が拡大される時期といいますか、皆保険体制に近づく段階では大変有力な手段だったわけなんですが、今やこういう情勢になったときにこれが逆に働いている、逆作用しているということが問題になっているわけでございます。
 それからCTスキャナーの問題でありますけれども、実際CTスキャナーがアメリカに次いで日本ではたくさん導入されていて、これが医療費にはね返ってきているということが大きな問題になっております。西ドイツとかフランスは大体人口に対してどのぐらいのCTスキャナーを設置するかというようないわば需給計画というものをもとにして導入をしているわけでございます。そういうようなことからしますと、日本のようにとにかく医療機関の自由意思で何の規制もなく導入し、それを活用するというような形は少なからず医療費に大きな影響を与えておることは事実であります。ただ、患者にとりましてはそれではそういう事態はマイナスかといいますと、必ずしも今の段階では断言できないわけです。ただ、将来的にはそういうものが医療費にはね返ってきて患者に負担としてはね返ってくるという可能性はありますので、その点やはり今後十分に考えていかなければならないんじゃないかという気がいたします。
#33
○青木茂君 もう一問だけよろしいですか。
 そのCTスキャナーですけれども、おっしゃるとおりだと思うけれども、今日本にあるCTスキャナーの台数がヨーロッパ総合計よりはるかに多いわけですね。これはやっぱり僕は異常だと思うんですよね。どうも僕は医療側のもうけ主義に医療制度が、というよりは我々の高齢化社会が振り回されているんじゃないかというおそれを持って仕方がない。それだけです。
#34
○高木健太郎君 お聞きしているとなかなかこれは難しい問題だな、あるいは非常に厳しい状態だと思うわけですが、先ほども松岡先生でしたか、お話のありましたように、今まで余り職場には出なかった女性の方も働きたいという意欲が非常に強くなっている、その上に老人という人口がふえてきた、そしてその方々は割と元気であるからやはり働きたいという意欲を持っている。しかも、企業側としてはできるだけ少ない労働力でもって生産性を高めていきたいというんでいろんな機械化が進んでいる。だから、できるだけ労働人口は減らしたい。こういうことですから、逆行している二つのものをここで何とかしなきゃいけない。一方では、しかし我々人間として最低限の生活が保障されなければならぬという、そういう気持ちはみんなが持っているわけなんですね。これをどうやって折り合いをつけるかということは非常に私難しい問題だと思うわけです。
 そこで、そういうことを私は頭の中へ含みながらいろいろ考えておったわけですけれども、二、三お聞きしたいことがございますので、どなたでも結構です。主として中宮さんと内山さんにお伺いしたいんですけれども、若年者というけれども、五十五ぐらいまでの方がおられるわけで、そこに例えば六十五なりあるいは七十近い人が働くという場合の何か人間関係というものはどうなんでしょうか。どれぐらいにまじっておると非常にいいというようなことはあるでしょうか。例えばある職場によっては少しお年寄りのおられる方がいいとか、あるいは女性がまじっている方がいいとか、いわゆる効率を上げるためには単に労働の能力というだけじゃなしに、そういう者がまじっているためにそこの生産性が上がるというようなことは何か御研究あるいはお調べになったことはございますでしょうか。中宮先生にお願いいたしたいんですがね。
#35
○参考人(中宮勇一君) 御指摘のような問題はあるのかと思いますが、まとまった調査結果について私はちょっと知識を持っておりません。
#36
○高木健太郎君 内山先生いかがでしょうか。
#37
○参考人(内山達四郎君) 私も率直に言って余りそのことについては的確なことを申し上げることはできないんですけれども、私が先ほど申し上げましたように、やっぱり職場というものを見ましたときに、女性が圧倒的に多い職場とかはございますね。業種なり職種によってありますけれども、私は機械金属関係の職場の出身なんですけれども、一般的に言えることは、例えば家庭電器とか電子関係なんかは圧倒的に女性が多いんですけれども、私なんか一番よく見ている職場を見ますと、やっぱり若い女性もいる、中年の女性もいる、若い労働者もいる、そして年寄りもいる、何かそういう世代というものがある程度そろっているようなところで一定の雰囲気みたいなものが生まれてきて、勤労意欲といいますか、そういうものにもプラスをされる。どこかやっぱり偏ってしまうときにはそこに何らかの問題が起きるのではないだろうかというふうに、これは非常に狭い見聞かもしれませんけれども、そんなふうに私は思います。
#38
○高木健太郎君 私がこんなことを申し上げるのは、企業側としては生産性だけを考えますから、いわば人間を機械化して、そのある能力だけを非常にピックアップしちゃって、あるいは抽出しちゃって、それに合う者だけを集めている、だから一種の機械化みたいなものですね。ただ私は、これから将来欧米も含めて考えなきゃいかぬことは、もっと人間関係、ヒューマンリレーションというものを将来の職場というものは考えなきゃいかぬ。例えば現在の家庭でもそうですけれども、とにかく年寄りは年寄りだけで住んでいる、若い者は若い者だけで住んでいる。こういうことでいい面ももちろんあるとは思いますけれども、それが何らか人間社会の形成に何となくおもしろくないものを生み出しているという、そういうことは私は一面においてまたあると思うんですね。だから職場においてもやっぱり年寄りもおれば女性もおる、男性も若い人もおるというような職場関係をつくっていかないと長続きしないんじゃないか。現在の若い人はしゃにむにその能力の限り働かされている、それでどこかでストレスを解消してやっているというような状況で、これが長持ちするかなと、将来はかえってこれの方が損失が大きいんじゃないかなという、これは感じですけれどもするわけなんです。そういう意味では、相手は人間であるということをもう少し考えれば、年寄りというものもある程度必要じゃないかなと、私が年寄りだから言うわけじゃないんですけれども、そういう感じがしますので、一度もし何らかの機会にお調べが願えれば、それから年寄りがまじっている職場というものにはこういういいものがあるというようなことを私は一方においてお調べになることは今後の日本にとって重要だ。というのは、ほかにこれはもう解決の方法がないような気がするんです。行き詰まっているような気がするんですね。年寄りも女性もみんなふえるんですから、労働人口はふえているのに、片一方ではなるたけ人間を減らそうという考えでやっているわけですから、ただ何となくこれはうまくいかない厳しい状況だなと思うので、そういうふうな気がしたのでお伺いしたわけです。
 もう一つのことは、いわゆる効率ということだけ、あるいは生産性ということだけを考えますというと、ちょうど入学試験のように、その能力の落ちた者は切るということになるわけですね。しかしこれは現在はそういう労働法等によって保護されているために、悪くてもいわゆる終身雇用というような形でこれが守られている。もしも老人を能力だけで切るというなら、五年なり十年ごとにチェックをしていって、能率の悪い者はどんどんやめさせていくというようなことにもなりかねないというふうに私は思うわけですね。だから六十とか六十五の定年というようなことがありますと、年寄りは働きが悪いからもうそこでやめても
らう、今まではそう慣習的にやっていたんだから六十ぐらいでやめてもらいましょうというわけですが、先ほどもお話しのように、六十になってもまだ能力のある人もある、そこのところにアンバランスができるからちょうど六十ぐらいのところでこれだけは残してこれだけはやめてもらうというような選択がそこで行われると思うんですけれども、もしもそういうところで選択をするなら、途中でも選択をしなきゃならぬというふうなことになるわけですが、これは使用者側にとりましても労働者側にとりましても大変重要な問題だと思うわけですが、そういう極端なことをおやりになる気持ちというか、そんなことをどうしてやってはいかぬのだと、もしも効率だけを考えたらそうやってもいいんじゃないかなという気が私も半分はするんです。しかしやってはいかぬことだと思うならば、老人という年だけでやってはいかぬのじゃないかなという気もするわけです。そんなふうなことでどんな今お考えでしょうか。中宮先生にお願いします。
#39
○参考人(中宮勇一君) 御指摘ございましたように、企業も一つの人間集団でございまして、企業は人なりと言われますけれども、人間集団の運営という点がうまくいきませんと企業も維持発展していかないだろうと思います。そういう点で人間関係を重視するということは御指摘のとおりであり、また、我が国の企業経営の場合には欧米に比べればその点で非常な特色があるんじゃなかろうかと思います。
 ロボットの導入、ME化等の進展に伴ってかなり雇用量が減ってくるんではないか、失業問題が起きるんじゃないかという見方もございます。ただ、これまでのところでいいますとそういう心配が起きていない。それじゃ今後どうなるのか。これはなかなか的確な見通しは困難だろうと思いますが、企業側として、大量に失業者が出てそれが大きな社会問題になるというような方向を選択するとはどうも思えない、そういうことはないんじゃなかろうかというふうに私は思います。
 また、定年延長あるいは勤務延長、再雇用に伴う労働条件の問題にも関連してまいりますが、やはりこういう状況の中で、今までに比べますと年功序列賃金体系の修正ということはどうしても不可避だろうと思います。それから高齢化、六十歳あるいは六十歳を過ぎてからはやはり能力主義的な賃金あるいは処遇という要素が今まで以上に強く出てくることになろうと思いますが、ただ基本的にアメリカ、欧米並みのような賃金体系になるかと言えばそうはならない。やはり年功序列賃金制のメリットを生かしながら能力主義を導入していくという方向へ進んでいくんじゃなかろうかという気がいたします。
#40
○高木健太郎君 内山参考人、何かお話ございますか。
#41
○参考人(内山達四郎君) 先ほども私最初の公述のときに申し上げましたけれども、年齢による雇用差別というものがあってはならないと、そういう基本的な考え方を私ども労働団体は持っているわけですね。これは一九八〇年にILOは高齢労働者の労働及び引退に関する百六十二号勧告というものを採択したわけなんですけれども、ちょっと今正確な表現は忘れましたけれども、年齢によって、つまり加齢によって解雇を強制してはならないという、正確な条文は忘れましたけれども、そういう考え方があるわけなんですね。しかし、それは無制限にいつまでも働くということじゃなしに、高齢になれば、加齢をしていけば当然労働能力は衰えていく、個人差もありますし、職種による違いもあるでしょうけれども、その場合にやはり緩やかな引退、リタイアですね、そういうものがやっぱり望ましいのであって、一定の年齢が来たら、そこで本人が働く意思と能力、体力があるにもかかわらず解雇を強制するような考え方というものは、百六十二号勧告ではこれは否定されているわけですね。ですからその意味で、これは経営側ともう長い間論争しているわけですけれども、いわゆる日本における定年というのは、欧米的な意味でのリタイアではなしに、やっぱり一定の年齢が来ちゃうと本人は働きたくてもいや応なしにやめさせられてしまう、そういうシステムというものは変わらなければいけないんじゃないか。徐々に引退をしていくような、そのためには選択定年制というようなことも考えなければいけないでしょうし、本人によってはやめたいという人も出てくるわけですから、働きたいという人も出てくるわけですから、そういうものはやっぱり個人の選択に任して、ヨーロッパのように年金の支給開始年齢が来た場合に年金生活者の道に入るのか、あるいは引き続いて職場に残るのか、そういう選択ができるようなシステムというものは、日本の場合に、今、中宮さん言われたように、年功序列賃金というようなものもありますから簡単にはいかないでしょうけれども、そういう緩やかな引退というものをつくり上げていくようなことが必要ではないだろうかというふうに私は考えます。
#42
○高木健太郎君 確かにおっしゃるように個人差がございますから、六十になったならばやめたい人、あるいはそこで能力でチェックをするならばいいと、また六十でチェックするというようなことをもしやったとしますね、それの方が会社としてもいいわけですから、単に本人の希望だけでなしに。だから六十というのは定年退職の時期ではなくて、一種のチェックの時期であるというようなことをもし容認しますと、今度は五十五でもやろう、五十でもやろうというようなことにもなりかねない。しかしそれも何か弾力的にチェック時期を置いてみるというふうにすれば六十というのは少しぼけてきまして、それである人は七十まで働けるということになるんじゃないかなということを思いますが、しかし六十歳というところがチェックの時期であるというようなことをしますと、それを今度は五十五に下げられ、五十に下げられるというようなことになって、合法的に馘首されるというようなことにもなりかねない。だから定年というのは、まだ働きたい能力のある人でもやめさせてしまっていたという今までのやり方、それにもやっぱりいいところがあるんですね。そうでないとそのチェックというのが下へ下がっていくという危険性もある。こういう意味で私申し上げたわけなんです。しかし、それじゃ日本的な今までの年功序列式でいつまででも働ける著は働きたいということになるとこれもお困りだろうと、だから欧米式のああいうドライな、クールなやり方を一応は頭の中へ入れながら、しかも六十というのは定年でだれでもやめるというんじゃないんだと、特殊な能力を持つ者はやっぱりそこのところでもまだおってもらうんだというぐらいのことにしておかないとどうかなというふうに思ったんですが、どうでしょうか。これは私の感想として申し上げましたので、お聞き願っておれば私それで結構だと思いますが、どこもかもふえていく状況であって、しかも加工産業によって我々日本の国がもっておるわけですから、何らかそこを調和していかなきゃならぬというようなことはもちろんでございますので、ひとつお考えをいただければありがたいと、こう思います。
 それから石本さんにお聞きしたいんですけれども、私、医療と患者という関係で、今、青木先生も言われたとおりなんですが、医療をチェックするということは今三者会談なんかでやっておられるわけですね。中央医療審議会なんかでやっておられるわけでしょう。ただ、労働者と企業というものは両方利益を受けておって、両方はいわゆる対等の立場で議論ができるわけなんですね。ところが、医者と患者というのは日本ではまだまだ対等の関係にないというような気がするんです。というのは、医者も悪いのかもしれないけれども、患者も悪いんじゃないかというように思うんです。というのは、お医者さんに何でも聞く、何でも頼る。だから医師に対して批判をする、医師に対して問いただすというような姿勢が患者側にも欠けているんじゃないかと思うんですね。もう少し私は医師と患者の人間関係が対等でなくてはいけない。ちょうど今男女均等法が言われておりますけれども、患者と医師の対等の地位を何とかし
て確保するというのが一番私最初じゃないかと思うんですね。現在例えば患者さんが医師のところに行きますね、そうしてその患者が入院しますと、そこからなかなか出れないんですね、今度は。出て向こうへ行くと何をされるかわからぬと、お医者さんから不親切にされるかもしれないというようなことでやれないとかですね。というのは、お医者さんがオールマイティーであって、患者はそれに従属しているという関係が根本である、それが労使関係とは非常に大きな違いじゃないかなと思うんですね。だから、医師がもうけるとかもうけないとかじゃなくて、患者ももっと医師を選択し、自分の権利が主張されるような立場に患者を置かなきゃいけないんじゃないか。こうすれば私はよくなる。何回でもレントゲンを撮られる、幾らでも検査をされる、それに対して検査をしますときに、そういう検査は何のためにするか、なぜそれが必要なのかというようなことを問いただして、自分が納得した上で検査をしてもらうというようなことにでもなれば私随分違ってくるんじゃないかな。こういうことについては健康保険の組合の方ではどういうふうに言われているんですか。
#43
○参考人(石本忠義君) 大変難しい御質問でございます。保険者の立場では患者と医師との関係というのはやはり先生がおっしゃったように、できれば対等の立場でありたいというふうに願っているわけであります。また同時に、診療側とそれから支払い側の立場も対等であってほしいというふうに思っているわけでございます。しかし、御指摘のように現実はそうなっていないわけです。そこで、この課題は実は世界的な共通の課題でございまして、現在その問題で一番進んでいる国としましてアメリカを挙げることができると思います。アメリカではやはり患者の病気等に対する知る権利、それから医師と患者が一緒に医療のあり方というものを考えていくというようなことが言われておりまして、かつてのように医師を聖職者として見て、そしてその聖職者の言葉には絶対服従するという医師と患者の関係というのはもう既に終わったんだという考え方がございます。日本でもそうした考え方というのが徐々に出てきておりまして、いずれそういう問題が大きな課題として取り上げられるようになると思います。
 特に最近、医師が患者に病気の真実をどの程度伝えたらいいかというようなことが医師の間で議論されているわけであります。仮に医師がある事実を患者に伝えたことによって責任問題が生じたときにどうなるのかというような大きな問題がございます。今日本では患者の側からもそうした気持ちとか主張があると同時に、医師の側からも診断とか医療の内容をどの程度どういう方法で患者に伝えるかという模索をしている段階でございまして、いずれそういう問題が大きな問題として医療の中で議論されるようになるんじゃないかと思いますし、またそれが医療の問題を解決していくやはり基本的な問題ではないかという感じがいたします。非常に重要な問題点を御指摘くださったと思っております。
#44
○高木健太郎君 じゃもう一つだけ。
 今、石本先生がおっしゃいましたように、確かにアメリカなんかではトルーステリング、いわゆる患者に対しては真実を述べるということで、それじゃ、がんであるときに、あなたはがんであると言ってよいか、そのためにがっかりして早く亡くなってしまうんじゃないかというようなことから、トルーステリングということについても議論が非常に多いわけです。それにしても、行って黙っていると何遍レントゲンを撮られるかわからないというそういう状況であるので、あるいはこれは何の薬ですかということさえ医者には聞かない、もらうだけもらって帰ってくるというようなことをしているわけですね。そういう点で医療費が非常に高騰しているということも私はあり得るんじゃないか。またそれに悪乗りした医者がないとは私は言えないと思います。そういう意味では、こういう組合連合会に関係しておられる方がそういう中央医療審議会のような場でトルーステリングでやる、それからお互いに相談の上医療を進める、その権利を患者に十分与えるということが非常に大事であるんじゃないかと思います。
 また、大学病院なんかでは、研究のための患者という感じがまだあるんじゃないか。それは、そういうことを門の前に張り出した大学もございまして、私は非常に不愉快だったんですけれども、大学病院であっても、もちろん研究のためではあるんですけれども、研究のマテリアル、材料、モルモットであるというような考えはこれはもう古い考え方じゃないかなというふうに思いますので、ぜひ今後、医師あるいは保険者あるいは被保険者側、この三者会議の場では、患者さん側にぜひそういう意識を高めていただければ、日本の労使の関係は世界で一番うまくいっていると言われておりますが、とにかくそういう関係にまでは持っていくことができる、これによって医療費を減らすことができる、そこが私は根本じゃないかなと、こう思いますので、私の意見を申し上げたわけでございます。よろしくお願い申し上げます。
#45
○久保田真苗君 さっきから大変おもしろく伺わせていただいておりまして、大概の質問は皆様がもうなさいましたので、私は一つの感想と、それから一つの質問をさせていただきたいと思います。
 まず、感想なんですけれども、高齢化社会厳しいと、大変だ大変だというのはあるんですけれども、これほど数量的に将来がはっきりわかっている問題はなくて、そして高齢化社会は確かに大変なんですけれども、そして労働力、高年者も働く、女性も働くという、そういうことがあって大変厳しい。しかし、今の雇用収容範囲の枠内だけで考えておりますと、特に二次産業について考えますと、そこにはそれほどの収容能力はないかもしれないけれども、高齢化社会自体が需要を生み出すという、そのことはやはり非常に大きな問題であると同時に、光でもあるんじゃないかという気がいたします。ただ、その需要が人間の知恵で有効需要に転化されなければならない。有効需要に転化されるためには、世の中にはもうかる部門ともうからない部門がある。それはどうしたって仕事の性質上あるんですから、そこに所得の移転がなければならない。それができるかどうかということが私はやっぱり政治に関係する者の責任じゃないかと、そんなふうな感想を持った次第です。
 御質問は一つだけさせていただいて、三人の先生の中で参考になることを聞かしていただけましたら、お答えいただければ大変ありがたいと思います。
 それは、先ほども出ておりました年金基金の自主運営の問題ですが、年金ばかりでなく、健康保険の基金につきましても同様だと思いますが、自主運営の問題が出ておりまして、私は予算委員会を通じて大変興味深く聞いておりますと同時に、これは非常に困った問題だと思うんですね。
 一つは、厚生年金につきましては最近まともにスライドをしていないわけです。しかも年金の基金が五十兆もたまっている。で、スライドをしないで、そして今、政府の財政赤字のおかげで国庫負担金の繰り入れが延期されたこのような状態、これは一体どこに責任があるのか。こういう状態を許していたのでは高齢化社会への対応はとてもできないと思います。健康保険の基金につきましても同じようなことが国庫負担金の関係で起こったわけです。
 それで私がお伺いしたいのは、自主運営ということは確かに大事なことだと思いますのですけれども、さりとて、それじゃ自主運営にお任せしたらとてもいい結果になるかということについては、どうも疑問なきを得ないんですね。それで、もしこの財源の自主運営について改善すべきポイント、あるいはその責任体制、それから今後のサービスの構想などにつきまして御意見がございましたらお聞かせいただければありがたいと思います。
#46
○参考人(中宮勇一君) 年金基金の一部自主運営
方式へということを申しているわけでございますが、それじゃ、さて具体的にどういう方式でやったらいいのかということになりますと、私どもはっきりしたものを打ち出しているわけではございません。素人がやったのではいけませんので、例えば労使の委員会方式でやって効果が上がるとも思えませんので、やはり専門家の意見を考慮した仕組みを考えていかなきゃならぬという話にはなっておりますが、それ以上具体的なことはまだまとまっておりません。
#47
○参考人(内山達四郎君) 私も余り詳しいことは承知をしておりませんので、具体的なことは申し上げられませんけれども、しかし、ごく素人的な感想を申し上げれば、今の年金の運用のあり方がそのまま続いてしまうと、むしろ公的年金よりも私的な年金の方へのシフトが始まってしまうのではないだろうか。それは利率が高ければ高いほどいいというふうには申しませんけれども、何かそんな感じが私はしてならないと思うんです。
 したがって、自主運用ということになれば、これは使用者側の代表なり労働者側の代表だけではなしに、やっぱり専門的な知識を持った方が参加をされて、そこでできるだけ効率的な運用をするようなシステムが望ましいのではないだろうかというふうに思います。
#48
○参考人(石本忠義君) 私は自主運営ということについてちょっと御意見を述べさせていただきたいと思うんですが、日本で社会保障への労使の参加というのは、こういう組織を通じてしかないわけなんですね。確かに結果としては、今御指摘のように、いろいろな事情から年金のスライドがストップするとかというような問題がございます。ただ、この傾向というのは日本に限らず、西ドイツとかフランスとかいろいろな国でやはり財政経済的な事情で一時的にそういう政策をとっているわけでございます。先生の御懸念というのはよくわかります。したがいまして、せっかくこういう組織を持って自主運営をしているわけですから、その自主運営が効果を上げるような方向にやっぱり持っていかないといけないと思う。この自主運営が悪いのではなくて、そのいろんな状況だとか、そのやり方に問題があるんではないかと思いますね。特に、健康保険のような場合も一番国庫負担の削減とかなんとかという問題で影響を受けているのは、御存じのように、国民健康保険だとかあるいは政府管掌健康保険とかというような国が介入しているといいますか支援しているシェアが大きいところでございます。西ドイツの例なんかですと、国庫負担というのは全体の費用の一、二%でございます。あとは労使の負担で行っている。したがいまして、国の財政が悪くなったからといって健康保険に直接的に影響があるということはないわけでございます。したがいまして、逆に言えば、国が大きく関与することによって国の財政が悪くなってその影響が大きいというデメリットもございますので、ここはやはり私としましては社会保障はあくまでも国民の参加というものが残されているべきではないか、要するに自主運営のやり方を少し見直す時期ではないかという感じがいたします。
#49
○小委員長(糸久八重子君) 各委員の方、御質問ございませんか。
#50
○松岡満寿男君 先ほどロボットの問題をちょっと話したんですけれども、時間の関係があるからお答えもなかったわけですけれども、実際に日本人は割とロボットについての抵抗感がないようですけれども、第五世代コンピューターあたり、あれは今一千億ぐらいかけて十カ年計画でやっておるわけですけれども、やはり危険な仕事なんかに対しては当然これはロボットを使用してもいいんですけれども、その辺について我が国の組合は比較的寛容に対応しておられるようで、それもまた結構だと思うんですが、ある程度これが進んでいくとやはり若年労働者に対する影響が出てくるだろうと思うんですね。そういう点についてのお考えを内山参考人と中宮参考人にちょっとお伺いしたいと思います。
 もう一つは、せんだって経済摩擦の問題でシュルツ国務長官が日本人の貯蓄率の高さについての言及をしておられるわけで、いよいよ貯金箱の底の方までアメリカの方からのぞき込んできているようですけれども、例えば個人の金融資産は四百兆円とも今言われておるようですね、国民経済計算ベースで。そういう貯蓄率が非常に高いというものがいろんな経済面でも影響を大きく与えておるのですけれども、こういう問題については労使それぞれにどのような考え方をしておられるんでしょうかね。
 それと、先ほど消費飽和説の話もしたんですけれども、賃金を上げることによって消費を拡大していこうじゃないかという考え方がいろいろ言われますね。しかし、それは果たしてベースアップしたものが需要に結びついていくのか、貯蓄に回るんじゃないかという感じがせぬでもないですがね。そういう貯蓄率の高さについての御感想と、それからそういう問題についてのプラス面、マイナス面、それぞれどう考えておられるのか、あるいはべースアップと貯蓄との関連、こういう三点ぐらいについて御感想なり御所見なりございましたらひとつ、老人問題とちょっと離れているかもわかりませんけれども、せっかくの機会ですから、労使そろっておられるわけですから、伺いたいと思います。
#51
○参考人(内山達四郎君) MEを中心としてロボットがこれから先の雇用に与える影響については、率直に言って私は二、三年前ぐらいまではかなり楽観論が強かったように思うんです。それほど雇用削減に至らないのではないか。しかし、ここ最近になってMEを中心とした技術革新の進展、ロボット問題なんかそうですけれども、これはやはり放置をしておけば雇用に対してかなりの影響を与えるのではないかという気持ちを、私どもはいるんな調査をやってみますとそういう気持ちを持たざるを得ないわけです。その場合に、これはとっぴな構想かもしれませんけれども、技術革新そのものを否定するのではなしに、技術革新のもたらすひずみへの対応というものを考えた場合には、まあ一部で言われていますけれども、ロボット税的なものをやっぱり考えて、そこで雇用に回すようなことも考えなければいけないのではないかというふうに、これはごく私の私見ですけれども、そういうような考え方を持っております。
 それから貯蓄とベースアップの問題なんですけれども、これは私ども労働団体は減税なりあるいは賃金の引き上げによって個人の消費をふやして内需を拡大すべきだという主張をしておったんですけれども、実はこれは私どもの調査を十年以上やっているんですけれども、去年十月の家計調査の結果を見ますと、減税によって実質賃金もそれから実質可処分所得もふえているんですね。ところが、消費の方は十年ぶりにマイナスになってしまっているんです。そして調べてみますと、結局借金の返済と貯蓄の方の伸びにそれが行ってしまっている。せっかく減税をやって可処分所得がたしか去年の十月の段階では私どもの調査では五・九%ぐらい伸びているのに、支出は逆にダウンしてしまっている。調べてみますと、結局借金の返済、これは住宅ローンの返済を急ぎたい、こういう言い方はもちろん反対の御意見もあるでしょうけれども、例えば老後の生活保障とか、あるいは教育費負担の増大とか、それから住宅の取得とか、そういうものが非常に厳しい状況になってきているために、その備えとしてやっぱり貯蓄をふやすというような方向に行ってしまっているんではないだろうか。そうしますと、住宅の問題なりあるいは老後の生活の問題なり、そういうものについての対応策が出てきませんと、私は消費飽和論ではないと思うんですね、買いたい物はあるけれども、買いたい物も我慢をして貯蓄に回すというような、今言った住宅とか教育とか、あるいは老後の生活とか、そういう懸念が今言ったような結果をもたらしているのではないか。私どもも実はこの調査結果を見て、減税なり賃金の引き上げによって消費の拡大をという主張が事実は逆の結果になっていることに非常にショックを受け
たんですけれども、やっぱりそこらの対応策を考えませんと、賃金の引き上げがそのまま消費の拡大につながるという論理が果たしてそのままに妥当するかどうかということについては、調査の結果からいうとやっぱり疑念を持たざるを得ませんでした。率直に申し上げましてそういう気持ちを持ちました。
#52
○参考人(中宮勇一君) 第一の問題でございますが、日経連といたしましても数年前にFA、OAを進めておられる企業の担当の部課長さんをメンバーとする委員会で検討をいたしました。その検討結果は、先ほども申し述べましたように、これまでのところは雇用へのマイナスの影響はない、むしろプラスの影響になっている。じゃ今後どうなるかという点になりますと、率直に言って余りはっきりした見通しが立てられないということでございます。まあ楽観論をとりたいんでございますけれども、余り楽観論ばかり持っておってもいけない、慎重に見ていかなければいかぬと思いますが、いずれにしましても、これは労使でどういう道を選択するかということでございますので、やはり日本人は賢明な選択をしていくんじゃなかろうかと思っております。
 第二の貯蓄率の高さの問題でございますが、やはり貯蓄イコール投資ということになるわけでございましょうから、貯蓄率がもっと下がってもいいんだというふうには言えないんじゃなかろうかと思います。雇用との関係でいきましても、一言で言えば、企業なくして雇用なしということになろうかと思います。雇用機会を維持し、さらに拡大していくためにも企業が設備投資を行って伸びていくということが前提条件になろうかと思います。そういう点でも貯蓄率が下がるということは日本経済の将来にとってはやっぱり望ましいことではないんではないか。
 第三点でございますが、労働組合は本年の場合も内需拡大春闘というふうに言っておられる。私どもはやはり基本的には生産性の伸びとの関連で賃金が決まっていくということが一番基本ではなかろうか。生産性を上回る賃金決定がなされますと、そのときは名目的に消費は伸びるかもしれませんけれども、物価上昇によって食われてしまって、実質消費は伸びないという結果に終わるのではないか。日経連流に言いますと、生産性基準原理に基づく賃金決定が実質消費を伸ばすためにも一番望ましいという考え方でございます。
#53
○松岡満寿男君 ありがとうございました。
#54
○小委員長(糸久八重子君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々には、大変お忙しい中を本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
 なお、本日参考人の方々から御提出いただきました参考資料等につきましては、その取り扱いを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○小委員長(糸久八重子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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