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1984/06/12 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 環境特別委員会 第8号
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1984/06/12 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 環境特別委員会 第8号

#1
第102回国会 環境特別委員会 第8号
昭和六十年六月十二日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     片山 甚市君     浜本 万三君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         粕谷 照美君
    理 事
                山東 昭子君
                原 文兵衛君
                丸谷 金保君
                飯田 忠雄君
    委 員
                石井 道子君
                上田  稔君
                梶木 又三君
                星  長治君
                森下  泰君
                矢野俊比古君
                柳川 覺治君
                吉川  博君
                寺田 熊雄君
                浜本 万三君
                高桑 栄松君
                近藤 忠孝君
                中村 鋭一君
                木本平八郎君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  石本  茂君
   政府委員
       環境庁長官官房
       長        岡崎  洋君
       環境庁自然保護
       局長       加藤 陸美君
   参考人
       千葉大学教養部
       教授
       全国歴史的風土
       保存連盟事務局
       長        木原 啓吉君
       天神崎保全市民
       協議会事務局長  外山 八郎君
       前斜里町長
       ナショナル・ト
       ラストを進める
       全国の会会長   藤谷  豊君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査
 (ナショナル・トラスト問題に関する件)
 (ナショナル・トラスト運動の促進等に関する決議の件)
    ─────────────
#2
○委員長(粕谷照美君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。
 公害及び環境保全対策樹立に関する調査のうちナショナル・トラスト問題に関する件を議題といたします。
 本日は、本件の調査のため、お手元に配付しております名簿の方々に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本件調査の参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げますが、まず木原参考人、外山参考人、藤谷参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと思います。
 それでは、まず千葉大学教養部教授、全国歴史的風土保存連盟事務局長木原啓吉参考人からお願いをいたします。木原参考人。
#3
○参考人(木原啓吉君) 本日は、参議院の環境特別委員会でナショナル・トラスト問題について公述さしていただくということを非常に光栄に思っております。また、皆様方が鎌倉の風致保存会を初め、各地の運動について深い御理解をお持ちになり、また、今年度の六十年度からの政府の税制改革について非常にお力添えいただいたことを感謝いたすとともに、敬意を表したいと思います。
 ここで、私はナショナル・トラスト問題について申しますが、我が国と海外の諸国の動向を御報告したいと思います。
 ナショナル・トラストとは、一言で言えば野放図な開発や都市化の波から自然環境や歴史的環境が壊されるのを未然に防止するために、広く国民から寄金を募って土地や建物などを買い取りあるいは寄贈を受けて保存、管理、公開する運動であります。その主体は、イギリスの場合は住民が中心になっておりますし、我が国では住民が中心になっているもの、あるいは自治体、あるいは自治体と住民が最初から協力関係にあるものとさまざまでございます。それぞれの国、地域の風土に根差した運動であります。その特徴は、住民の先見性と自発性に根差していると思います。将来、壊れるかもしれない環境を先手、先手を打って保存していくということと、そのために住民が身銭を切って守るということでありまして、これは、我が国においては新しい住民運動であり、新しい自治体活動であると思っております。
 ところで、このようなナショナル・トラスト運動は、イギリスでは十九世紀の末に始まったわけでございますが、現在ではオーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどでも行われておりますし、近年、フランスでも海岸線や湖沼の保全のための同様の運動があると聞いております。
 イギリスのナショナル・トラストは、一八九五年、十九世紀の末に三人の市民の運動によって始まりました。サー・ロバート・ハンターという弁護士と、オクタビア・ヒル女史、婦人運動家であります。さらに、キャノン・ローンズリーという牧師の三人が話し合ったわけであります。サー・ロバート・ハンター弁護士は共用地、コモンの保存運動に携わっております。オクタビア・ヒル女史はフローレンス・ナイチンゲールと並ぶイギリスにおける十九世紀の婦人の社会改良運動に貢献した婦人活動家であります。ナイチンゲールが既に病気になった病人の看護に当たったことで注目されているのに対し、オクタビア・ヒル女史は、貧しい人々が病気になる前にその生活環境を整えようと、特に住宅改良運動で活躍した先駆者であります。貧しい人々に太陽とその居間にきれいな空気をもたらそうということをこの運動の主眼にしてまいりました。このオクタビア・ヒル女史とサー・ロバート・ハンターの話し合いの中にナショナル・トラストの運動の萌芽が出てきたわけでございますが、ちょうどそのころ、十九世紀の末にイングランドの北西部にあります湖沼地帯といいますか、レークディストリクトと申しますが、そこの自然保護の運動に携わっていた牧師のキャノン・ローンズリーがこれに加わりました。キャノン・ローンズリーは非常に弁説の雄弁な方で、このナショナル・トラスト運動を全国に知らすのに大きな貢献をしております。
 当時、イギリスは産業革命から百年ほどたって、国連は非常に発展したわけでございますが、一方で自然環境あるいは歴史的環境が壊されるという事態が起こってまいりました。例えば十九世紀の末から二十世紀の初めの十五年間に全土で五十万エーカー、つまりおよそ二十万ヘクタールの農地と林地が消えたと言われております。これでは、イギリス国民の誇りとする自然環境と歴史的環境が取り返しのつかぬ事態になるということで、広く国民から募金を募って環境を買い取りあるいは寄贈を受けて保存しようということになったわけであります。
 一八九四年にグロブナーハウスで設立総会を開き、当時のビクトリア女王の夫君でありますウェストミンスター公が議長席に着かれて会議を持たれ、翌一八九五年一月十二日に、会社法に基づいて非営利法人として承認を受けました。定款は商務省の承認を得ております。歴史的名勝及び自然的景勝地のためのナショナル・トラストということになっております。このナショナルという意味は、「国家の」とかあるいは「国立の」という意味ではなくて「国民の」という意味であると、ナショナル・トラストは機会あるごとにそのパンフレットで強調しております。純粋の民間団体であります。
 それで、最初に入手した土地は、中部ウェールズ地方のカーディガン湾のバーマス入江を見おろすディナスオリョーというがけ地の四・五エーカーであります。これの寄贈を受けました。さらに、翌年一八九六年には、イングランドの東南のサセックス州のアルフリストンにあります十四世紀の牧師のやかた、ハーフティンバーの、木造の建物でありますが、それを買い取って保存しております。それ以来九十年の歳月がたったわけでありますが、ことし、一番新しいデータによりますと、会員は百十九万人になりました。昨年一年間で六万人も会員がふえております。私が初めてロンドンに参りまして一九七〇年にナショナル。トラストの本部を訪ねたときは二十五万人でしたから、この十五年ほどの間に五倍にふえております。特に七〇年代は環境保護について世界的に関心が高まったときでありますので、さらに若い青少年の会員の参加が多くてこのように会員が激増したと言われております。
 その結果、今までにイングランドとウェールズと北アイルランドの中に合計しまして二十万へクタールの土地を買い取りあるいは寄附を受けております。二十万ヘクタールと申しますと、我が国の大阪府の総面積と同じほどの広さでありまして、今やナショナル・トラストはイギリスにおける民間の土地保有機関としては最大のランドオーナーといいますか、土地保有機関だと言われております。そのほか、借り上げ地が三万ヘクタールあります。また、海洋線、自然海岸の保存に懸命でありまして、そのための特別のキャンペーンも進めておりますが、イングランド、ウェールズ、北アイルランドにある美しい海岸線の三分の一以上、すなわち七百キロメートルの自然海洋を買い取りあるいは寄贈を受けて入手しております。そのほか、歴史的な建物が二百、庭園が百あります。この歴史的な建物の中には、ウィンストン・チャーチル首相の家あるいはバーナード・ショー、カーライルなどといった政治家及び作家、思想家などの家も含まれております。
 それで、年間の総収入は、一九八三年一年間で百十六億円に上っております。支出が百二億円です。この支出を見ますと、資産の保護管理に七七%を使い、資産の購入に八%、組織の運営費に五%、広報とかそういう募金活動に五%、会員のサービスに五%を使っております。これでもわかりますように、今やナショナル・トラストは新たに資産を買い入れるということよりも、既に買い入れた、保管している資産の維持管理に多大の資金を使っていることがはっきりいたします。このことからもナショナル・トラストは単に土地を保有するだけではなくて、それを保護管理し、公開するということの重要性を示していると思います。
 このようにして、イングランドとウェールズと北アイルランドの各地に先史時代あるいはローマ時代の遺跡あるいは古いお城、教会、修道院、カントリーハウス、森林、農地、牧場、水車小屋、運河、納屋、公園、庭園、草原、荒れ地、沼沢地あるいは村落をそっくりそのまま保管しているところもあります。村落だけでも四十カ所も保管しております。このようにして、この九十年間に非常に巨大な組織になってきたわけでございますが、最初はそうでもなかったわけであります。これについては、イギリスの議会がナショナル・トラストの意義に非常に注目しまして、たびたび法律をつくってこの活動を支援していることが大きく影響しております。
 例えば、一九〇七年にナショナル・トラスト・アクトという法律をつくりました。そこでは、譲渡不能を宣言する権利をうたい出しております。譲渡不能の権利宣言といいますのは、ナショナル・トラストは保存の対象となる資産を譲渡不能と宣言する権利を持ち、この宣言を受けて資産は以後売却されず、抵当の対象にもなり得ず、また国会の特別の議決のない限り強制収用されることもないという非常に強い特権をナショナル・トラストに与えております。このために、人々は非常に安心して自分たちの基金を提供し、あるいは資産を提供しております。
 そのほか、一九三一年には財政法を改正しまして、ナショナル・トラストへの寄贈、遺贈された資産について相続税の非課税を決めております。寄贈者の子孫はテナントとしてその建物の一部に住み続けることも認められております。建物は人が住んでいないと非常に荒れるわけですが、こういうふうにして生き生きとした形で保存、さらに活用されているわけであります。また、その後も税制については一九四九年の財政法の改正、一九五一年の改正、一九七二年の改正とたびたび改正をしまして、手厚い税制の保護を加えております。
 会費は十二・五ポンドであります。きょうのポンドが一ポンド三百十九円ですから、大体年間四千円を払うことにしています。その家族あるいは十八歳以下の家族会員が含まれますとトータルで二十五ポンド、あるいは十八歳以下のジュニア会員は七ポンドとなっております。そのほか終身会員が三百ポンドというものもあります。このようにして平均毎年四千円の金を百十九万人の人が支払っているわけであります。
 組織は、エリザベス皇太后が総裁になっておられまして、総会が毎年一回開かれます。評議会もあります。常勤の職員が千五百人おりまして、業務部、資産部、歴史的建築部、広報部、財政部、会員部というふうに分かれておりまして、地方に事務所が十七もあります。
 このほか、自然海岸の保存などについてのネプチューン計画、あるいはガーデン計画といって庭園を買い取る運動、あるいはその他そのときどきの環境破壊に対して特別のキャンペーンを展開しております。これがイギリスのナショナルラストの歴史と現状でございますが、同様の運動が先ほども申しましたとおり各地で進められております。
 我が国のナショナル・トラスト運動は最近非常に目覚ましく広がってまいりました。例えば、きょうお話しになる知床あるいは天神崎の運動を先頭に、鎌倉の運動その他北海道の小清水町、斜里町、苫小牧のウトナイ湖、長野県の妻籠宿、埼玉県、足利市あるいは佐倉市、横浜市、鎌倉市、相模原市、田辺市、こういうふうに全国各地に広がっております。そして、その横の連絡も盛んになりまして、昭和五十八年二月に「ナショナル・トラストを進める全国の会」が発足しました。この会の会長は藤谷さんでありまして、私はその幹事長を務めさせてもらっております。
 最近の動向を見ますと、幾つかの特色が挙げられます。一つは、各地のナショナル・トラスト運動がそれぞれ苦労をしながらもかなりの成果を上げてき始めていることであります。第二には、従来どちらかといえば自然環境の保全に集中していたわけですが、最近では自然環境と並んで歴史的環境の保存問題に対する関心も高まってまいりま
した。第三に、単に土地を買い取り、保全するだけではなくて、身銭を切って環境を守るという自発性と参加意識を養う非常にいいチャンスを提供するもので、教育的効果も大きいと思っております。さらに、最近ではイギリスのナショナル・トラスト運動などとの国際的な交流も盛んになってまいりまして、昨年はイギリスからイギリスのナショナル・トラストの海外広報担当のローレンス・リッチ氏が参りまして、天神崎及び斜里町を視察し、国際的な交流をいたしております。
 この中で、最近のナショナル・トラストの特徴として言えることは、住民が主体になっているものあるいは住民と自治体が協力しているものといろいろあるわけですが、その中で自治体が非常にこの運動に関心を持ってきまして、例えば町レベル、市のレベル、県のレベルで活発に展開されております。町レベルでは斜里町の運動は有名でありますが、そのほか市のレベルでは昭和五十七年に足利市の「足利市民文化財団」を初め千葉県の佐倉市の「佐倉緑の銀行」、あるいは神奈川県相模原市の「みどりのまちづくり基金」、横浜市の「よこはま緑の街づくり基金」などが活発になっております。そのほか、県のレベルでは岡山県が昭和五十四年に「岡山県郷土文化財団」を設立しておりますが、さらに昨年は、埼玉県が「みどりのトラストづくり構想」を発表し、「さいたま緑のトラスト協会」という財団法人が発足しております。神奈川県にもことしの六月一日に財団法人の「みどりの県民会議」が発足しました。
 ここで神奈川県の組織について簡単に御説明したいと思います。
 神奈川県は、昭和三十五年から五十五年の二十年間に都市化の波によって県土の六分の一以上の面積の緑が消えていった。ちょうど横浜市と同じ面積だそうです。こういう危機感に裏打ちされまして、自治体及び県民が協力して自然を守ろう、あるいは歴史的環境を守ろうという運動が始まってまいりました。このために検討委員会ができまして、この運動を進めてきたわけでございますが、このほどその構想がまとまったわけであります。それによりますと、二つの組織を組み合わせることによって進めようとしております。一つは、民法三十四条による財団法人をつくります。財団法人は多くの県民参加が可能であり、県民主体の運動として盛り上げるのに非常に適切な組織だと思います。二番目に、事業の推進に際し、機動性や弾力性があります。しかし、財団法人が行う募金、資産の取得並びに維持に対しての税の優遇措置が必ずしも十分ではありません。
 そこで、もう一つ、条例基金というものを地方自治法二百四十一条一項で設定します。県条例による基金によりますと、自治体が設置するものであり、制度の運営に一般の県民の参加が困難でありますが、自治体の土地規制などに対して整合性もあり、効果的に買い入れることができますし、さらに、取得した資産の管理を自治体が行いますので、非常に県民の信頼性が高いわけです。さらに、自治体の資産の取得、維持については非課税であり、寄附者に対する税の優遇措置も大きいわけであります。このように財団法人と条例基金のメリットとデメリットをプラスマイナスして、車の両輪のようにして動かすわけであります。財団法人には「みどりの県民会議」という名前がつきました。さらに、条例基金は年内に発足する予定でありますが、これについては「神奈川トラストみどり基金」という仮称がついております。
 「みどりの県民会議」は、基金に対してどこを買い入れてほしいという買い入れの申し入れをする権限を持っております。寄贈、遺贈についてもどの資産を受け入れようということを決定する権限を持っております。このようにして県民のイニシアチブを確保しております。さらに、この財団は緑地保存契約を所有者と結びまして、緑の保全について契約を結び、地主が保存するかわりにそれに対して資金的援助を行います。並びに、市町村レベルのナショナル・トラストがいろいろ進んでおりますが、その買い入れへの助成もいたします。さらに資産の管理受託、地域団体への援助もします。あるいは普及啓発、調査研究活動もします。一方、基金の方は、資産の買い入れ、あるいは寄贈、遺贈の受け入れ、保有物件の維持管理をいたすわけであります。
 私は、こういう日本各地あるいは世界各国のナショナル・トラスト運動を見て感ずることは、住民の自発性に依拠しているわけでありますから、住民の自発性をいかにして高めるか、そのようなものについての対策が必要だと思っております。第二に公益性を堅持しなければなりません。第三に、公開の原則を確立すべきだと思います。さらに第四に、運動への拠出者に対する保護の万全を期さなければなりません。非常に貴重な資金を提供されるわけですから、基金の使途及び経理の公開なども確保しなければならないと思います。さらに、今後住民運動と自治体活動の協力ということも重要であります。
 こういうふうにしてナショナル・トラスト運動は今後広がっていくと確信しているわけでありますが、その際、幾つかのことが今後提言されるべきじゃないかと思います。詳しいことはまた後ほど申しますが、一つは、税制の充実、特に相続税の免除の問題であります。さらに、緊急な融資の必要性が出てまいりますので、それに対して長期低利の公的資金を融資する、すなわち政策金融が必要じゃないかと思います。これについてもまた後ほどお話ししたいと思います。さらに、財団法人を設立する必要がありますが、その基金の造成への援助、また、ナショナル・トラストの法制化については組織面と管理面の両方から詳しい対策が必要と思います。これについても後ほど機会があれば申し述べたいと思います。
 最後に、自然環境についてはナショナル・トラストの面で保存運動が非常に盛んになってきましたが、イギリス初めアメリカ、オーストラリアなどでは歴史的環境の保存に対してもナショナル・トラストが非常に大きな力を発揮しておりますので、今後、我が国でも歴史的環境の保存についてナショナル・トラスト運動が精力的に展開されることを期待しております。
 以上です。
#4
○委員長(粕谷照美君) どうもありがとうございました。
 次に、天神崎保全市民協議会事務局長外山八郎参考人にお願いいたします。外山参考人。
#5
○参考人(外山八郎君) 天神崎保全市民協議会事務局長の外山八郎でございます。
 せんだって、当特別委員会の委員長様初め皆様に現地を御視察いただきまして、直接自然に触れていただきましたことを心から感謝しております。
 きょうは、詳しいいろいろの知識を持っておりませんけれども、足かけ十二年この運動のために命を傾けてまいりましたその経験から、適当な道があればどんなによかったのにと思いながら、道のない道を歩み続けてまいりましたその苦しいいろいろのことを申し上げて、今後の適切な御施策を進めていただくための参考にしていただければ幸いと存じます。
 最初に、私どもが出会ってまいりました困難は数え切れないほどございますけれども、その一番大きなものについて二、三申し上げさしていただきます。
 第一に、天神崎は日本の皆さんにも余り知られておらない、地図の上でも天神崎という地名は載っていないほどの小さな岬でございます。しかしながら、この岬が突き出しております芳養湾と田辺湾の間の岬でございますが、田辺湾は外国の学者がよく知っているほどに海の生物の大変種類の多い、日本一の宝庫と言われております。この田辺湾がそのような特別な条件にありますことは、自然の不思議な特別な恵まれた条件が重なり合ってそのようになっておると聞かされております。一つは、暖流黒潮が南の海で生まれたいろいろの生物の芽生えを運んでまいります。その黒潮が栄養の適切な湾の中へ入り込まないと育たないそうでございますが、黒潮を送り込む働きをするのが季節風だということです。秋から冬にかけて、一
定方向で吹くその季節風に吹き送られて湾の中へ入る、その季節風を理想的に真正面から口を大きく開いて受け入れる形の湾が、日本では田辺湾と四国の宿毛湾の二つしかないと聞かされております。
 さらにもう一つ大事な条件は、外洋の水が急激に湾の中へ入ってまいりますと、変化が激し過ぎて生物の赤ちゃんは育つことができない。ところが、田辺湾は海底がまことに複雑でありまして、暗礁がいっぱいございます。ですから、外洋の水が入るのがだまされるようにだますように少しずつ緩やかに入ってくる。そのような全く別々の条件が重なり合って、田辺湾が本当に種類の多い海の生物の宝庫になっておる。それですから、京都大学の臨海実験所が南の湾の入り口の岬にございます。天神崎はそれと向かい合った北側の岬でございます。
 さらに、天神崎には広い広い二十一ヘクタールもの平らないそがございます。そのいそが、満潮になれば水につかりまして潮が引くにつれて姿をあらわしてくる、ちょうど満潮線と干潮線の間、潮間帯に全部ございます。いその生物は潮間帯に住み分けていろいろと住んでおるそうでございますが、直立した岩壁ですと二メータの幅しか観察の場がありませんけれども、天神崎は全部が潮間帯で、全域でいろいろの生物の生きた姿を安全な形で見ることができます。幼いころからこの不思議ないろいろの生物の生きざまに触れることができる、幼児があるいは大人もその姿に触れましてまことに感動し、目を開かれる、そういう学びの場でございます。さらに、そのいその背後には丘がございまして緑の森が茂っており、そこにも熱帯性のいろいろなものが住んでおり、植物も育っておる。海陸ともにまことにいろいろの生物に出会うことのできる本当に生きた学びの場と申すことができると思います。
 私どもの運動は、国のものでありますその大事な観察の場であるいそを守っております緑の森、緑の森が削られますならば泥水がいそへ流れ落ち、さらに、内湾でございますので湾の中の海水も濁ります。何年たってもその濁りが取れない、そういうことになって生物は大変な打撃を受けることが想像されます。昭和四十九年に、この天神崎の森の茂っております部分、これが県立自然公園の第三種地域でございますが、その一番自然の豊かな東南部四万平方メートルを十五、六年も前から買い占めております土地業者が造成許可申請を県へ出しました。第三種特別地域でありますから、建ぺい率二〇%を守れば建物を建てることができます。県ではこの許可申請を不許可にする根拠はないという、そういう状況でございました。私たちは、この大事な子供たちの学びの場を何とかして後々の子供たちに残したいということで立ち上がって、これを開発されないように県へお願いしましたけれども、行政の力ではどうすることもできない。市民がこれを業者から買い戻すよりほか仕方がない。こういうことで見通しの全くないままに、これよりほかにこの大事な命を救う道がないということで、やれるだけのことをしようということで努力を続けてまいりました。
 そのときに一番大きな障害になりましたのは、天神崎の自然に人工を加えて、多くの観光客を迎えていろいろの手を加えることによって有名な観光地にし、あるいは市町村にも税金が落ちる、こういうふうな動きでありますならばもっともっと理解され、行政の協力も得られただろうと思います。ところが、私どもは、この自然は人類がほかの生物とともにその不思議な大自然の営みの中で、大自然のバランスの中で生かされている、この自然の不思議な営みをそのままいつまでも残したい、その中で人類が目を開かれて、本当に地球上に生き続け得る人類としての大事な目覚めを与えられるまことに大事な学びの場である、こういう意味で手を加えないで自然のまま残したいというのが私たちの願いでございます。
 しかし、特に田辺は企業が余り誘致されないで経済的に苦しい状態にありますので、何とかして開発をしたいといろいろの工場誘致も願われております。その動きに対して、天神崎を自然のまま残すというその意義がなかなか理解してもらえません。特に行政との間では、最近までその考え方では協力ができない、そこへ何かをつくるという方向でなければ行政的に協力をしにくい、こういうことを言われて、行政との間の折衝がまことに困難をきわめてきております。
 最近におきましても、芳養湾に火力発電所を誘致するという動きが昨年まで非常に強力に展開されました。私どもはそういうことに対しては賛成とも反対とも言う立場ではありませんので、ただ、天神崎はこれほど大事なものであるということをよく御理解いただきたい、その上で後世の人たちが本当に得心する施策を立ててもらいたい、それだけを言って黙って行く末を見守っておりました。これがナショナル・トラスト運動があるために、火力発電所を誘致することは適切でないという市長の判断が出まして見送りになりました。
 ところが、それに続いてすぐ、南紀白浜空港にジェット機の十分な滑走路がないために、大きな滑走路のあるものにつくりかえなければならないという動きがあり、和歌山県下で何カ所か候補地の争いが起こりました。その争いの中で全く予想しなかった芳養湾沖へ人工島をつくるという計画が出てきて、それが一時非常に有力な動きでありました。これも幸いにして実現しなかったのでございますが、今はさらに港湾整備ということで、私たちがどこまで我慢するかということを求められておりますけれども、私どもはどこまで我慢するということは言えない、自然に手を加えるならば思いがけない結果が生まれる、思いがけない結果が生まれてからではどうにもならない。
 ですから、私たちはこの生きた天神崎の自然、子供たちが目を開かれ、本当に自発的に真理を探求していく子供たちが育つ、ほかにはない大事な学びの場を残してほしい、また田辺湾の日本一の海の生物の宝庫を本当にそのままの生きた海として残してほしい、そのことを願い続けております。このような理解は多くの人たちがだんだん理解されることになって、この小さな住民の奉仕活動が次第に大きく支えられて、業者の持っているところをいよいよ買い戻せそうな見通しがほとんど立つところまでおかげさまで進んでまいっております。
 それからもう一点非常に困難をしてまいりましたのは、市民は何も資力もありませんし、手だてもありません。ただ、全国に訴えて御理解のある方々の募金を集めて業者から買い戻すという運動でございます。そのためには大変時間がかかります。その長い時間の間どうやって持ち主に待ってもらうか。これが待ってもらうすべがございません。お金がない。それじゃいつまで待てばいいのかわかりません。いつまでかかるかわからない。 そのような全く虫のいいお願いで、ただ拝み倒すようにして今日まで待っていただいた。このことは、買い戻すための資金を私たちの願いに御理解いただいて、もしどこかでお力添えいただいたならばもっと早く事態が展開して、持ち主をこれほどまでに苦しめずに大事なところが市民の手に戻っただろうと思います。
 その場合に、私どものよりどころは行政でございます。和歌山県の自然保護課、そして田辺市の経済課にあります商工観光係、そこに御相談を申し上げて、市長さんにもお願いしていろいろの言葉をいただいた。その言葉をよりどころにして持ち主に、こういうことで行政の方も力になってくださるのだから待ってください、こういうふうにして行政からいただいた言葉をよりどころにして業者との折衝を進めてまいったのです。しかしながら、行政は担当官が次々とかわります。また一からそのような理解を得るために苦労のし直しです。また責任ある方々の言葉というものが変わっていきます。そのようなときに私たちの立場は全くなくなります。このようにして持ち主が待てない状況、あるいは行政が変わって前の話と違うじゃないかと言われれば、私どもはお金が集まらないのに借金してでも買い戻していかなければなら
ない、そういう羽目に追い込まれていきました。
 私たちは借金をするような力も何もないのですけれども、それよりほかに待ってもらうことができませんので、やむを得ず借金をして買い戻しを進めていきました。昭和五十一年の九月に第一次、五十三年の十一月に第二次、そして五十八年の三月に第三次、このようにして一番多いときには七千万余りの借金をしょい込んで、募金で利息を払うわけにはいきませんので、私たちが自腹を切ってその借金の利息を払い続けて買い戻しを進めてまいったのでございますが、五十七年にもう利息を払う見通しもなくなって、この先どうなるかわからないという事態の中でございましたが、幸いに、これだけ市民が苦しんでいるのだからということで、和歌山県知事が自然保護基金から特別に予算をつけて市民を励ましてくださいました。それに呼応して田辺市も予算をつけて私たちを支えてくだすった。この行政の動きがあり、環境庁にナショナル・トラスト研究会が発足した。
 このような新しい事態の中で初めてこの運動を行政が評価した、今までは行政が傍観していた、何かおかしい、信頼できないところがあるのではないかと見られておったのが、初めて信頼を得るようになって全国募金が盛り上がって、急速に半年で四千万の募金が集まりまして、借金を大半返済することができ、新しい時代に進むことができたのです。このような状況でございますので、小さな地方の運動を支える母体のようなものがもしありましたならば、もっと早く地方の真剣な素朴な運動が全国の方々に評価されることもできたでしょうし、大事なときには資金的にも支えていただく道が開かれたでありましょう。それがない中で進んでまいりました私たちの苦しさ、それが一つのいい参考材料になるかと存じます。
 それから次に、今後のことにもかかわりまして不安に思い続けてきておりますことは、全国の皆様の温かい御同情によって幸いにもこの大事な開発造成地が買い戻せ、やがて最後の地域も買い戻すことができるめどがついてまいりましたが、この多くの方々のお世話によって手に入れた自然が再びつぶされていくようなことがありはしないだろうか。あるいは税金の面で固定資産税その他がかかっていくようでは大変ですので、その点がかからないように、田辺市へ買い戻した地域は寄附をいたしますという約束を私たちはしておりますけれども、田辺市へ寄附をすることによって税金の面では道が開けると思いますけれども、いつまでも子供たちの学びの場として維持管理されていくだろうか。
 財政窮迫した場合にはこの大事な宝にどのような処分が行われるかわからない、こういう不安が私どもにもございますし、全国から寄附してくだすった方々も寄附をされる手紙の中に絶えずそのことを書いてこられます。不安です、何とかして永久に安全にこの大事な学びの場を残す道をとってもらいたい、こういうことを言ってこられます。その意味で、私どもはいろいろの形態を考えてみましたけれども、現在の法制では財団法人よりほかに適切な形態はないと考えております。
 ですから、私どもはことしからとりあえず財団法人になるための活動に入る準備を進めております。しかし、社員総会で最初の方針を変更するという社団法人のようなことはできませんけれども、財団法人の場合でもそのような可能性がないとは申せません。苦境に立てば財産を競売されるという危険も伴うと思います。そのようないろいろのことを考えて、どうすればいつまでもこの大事な宝が後々の人々に残されていくだろうか、これが一つの不安でございます。
 それから、税制の面で、今回大変ありがたい道を開いていただいたことを聞かされて喜んでおりますけれども、しかし、その恩典に浴するためには財団法人にならなければならない。あるいはそのほかの条件があるかどうか詳しくは存じませんけれども、私どもと同じ苦しみをしているほかの地域の動きなどを聞いてみますと、そこまでこぎつけるのはなかなか容易なことではないだろうと思います。そういう長い苦労を続ける間の支えというものを何らか考えていただくことが必要ではないだろうかと、私どもの立場から考えさせられます。
 それからもう一つは、私たちの願いにこたえて、開発をせずに我慢をして長い間待ってくだすった業者の方々は土地保有税という税金を負わされておるのです。固定資産税と土地保有税、土地保有税というのは、売らずに、造成せずに持っている、ただ持っていることに対する税金ですね。早く造成しろ、早く売れと、こういう税金だと聞いております。このような矛盾した税金に苦しめられておるということは、私ども待ってもらう立場からもとても我慢がならない気持ちでございましたので、私どもは田辺市へお願いをした。私たちのお願いで、全国の皆さんのお願いで、造成せずに待ってくだすっているのですからこの税金はストップしてください、固定資産税もストップしてくださいということをお願いして、田辺市が理解して一応待ってくだすっております。ですけれども、このような点についても、ほかの場合でも非常に問題のあることではないだろうかと思います。
 それから、せっかく確保できました地域をいつまでも自然のままで残したいということと同時に、多くの方々を迎えてそこで学んでいただきたい、公開をしたいということです。そうしますと、善意で来られる大勢の方々によって海のいその生物などは踏まれていきます。踏まれて死んでいきます。そのような大勢来られることによって踏まれて失われていくということが続きますと、これは回復不能になってしまいます。それを何とかして生かし続けながら多くの方々をお迎えできるような道はないものであろうか。天然記念物ということを考えましたけれども、そうなりますと公開ができません。ですから一番大事な点がうまくいかないということになると思います。
 それから最後に、ナショナル・トラスト全国の会が結成されて、日本にもイギリスの九十年も歴史のあるナショナル・トラストのようなものができていけばということを切望しております。そのために私どもが私どもの経験から感じますことは、自然を買い戻す、あるいは買収するということだけではだめで、それを本当にいつまでも自分たちが犠牲を払ってでも守り続けていく心が日本の国民みんなに育たなければ、一たん保全されたところでもまたつぶしてしまうというふうに思います。現に天神崎でもまだまだ来られる方々が汚していく、そういう点が本当に残念に想います。ですから、自分たちが身銭を切ってでも大事な自然を残していくんだという心がもっともっと広がり、育ち、また子孫へその心が受け継がれていくような教育が非常に大事であろうと思います。その意味で自然環境教育がもっともっと大切な課題ではないだろうか。私は自然保護憲章で天神崎の運動をする非常に大事なものを心に植えつけられました。自然保護憲章を通じてもっともっと多くの人たちが本当に自分たちで自然を愛し、自然を守り、そのためには喜んで犠牲を払う、こういう心が育っていくようになってほしい。こういう意味では環境庁の関係だけではなしに、やはり文教関係がこの問題について真剣に取り組んでほしい、こういうことを願ってやみません。
 それから、まだまだ各地のナショナル・トラストの芽ばえの動きが弱いですから、全国の会へ結集して力を合わせるという動きになっておりませんけれども、私どもの立場からしますと、一日も早く全国の会が法人格を持ってほしいということでございます。それは公益信託の形で私ども天神崎でやっと保全できました地域を信託会社へ信託しようとしましても、信託会社は金銭信託なら受けますけれども土地の信託は受けようといたしません。そうではなくて、本当に理解のあるナショナル・トラストを進める全国の会が法人格を持って公益信託を受けることのできる受託者になっていただくならば、私どもが取得いたしましたこの自然を全国の会に公益信託いたしたい、こういうふうに考えます。
 このようにして信託財産として全国の会に信託
いたしますならば、信託法によって信託財産は財産の安全地帯と言われておりますから、どちらに競売がかかってもどちらの競売の対象にもならない。そういう意味で本当に理解のあるところが私どもの取得した財産を受託していただくならば、非常な事態が出てきてもこの大事な自然はいつまでも維持され、残されていく。こういう意味で譲渡不能の宣言をしたのと同じような効果がごく早い時期に得られるのではないだろうか、このようなことを考えております。いろいろなことを考えまして、ナショナル・トラストを進める全国の会が、本当に早く全国の方々の募金を集めてでも法人の資格を持っていたたきたいと思います。
 私どもの経験からは、全国の方々は天神崎を知っておられて寄附をくださるのではないのです。一生涯そこへ行けないかもしれない、しかし、日本にそのような後々の人たちのための自然が残るということがどんなにかうれしい、そのために喜んでお金を送りますと言われて、全国の方々が、また全く天神崎へ来る見込みのない方が喜んで寄附を送ってくだすっております。これがもし、全国の会がそのような意味で今後働きをしてくださるならば、きっと日本の国の多くの心ある方々は喜んで寄附を寄せてくださるだろうと、このように信ずるわけでございます。まことに弱い私たちの運動を、本当に温かく全国の方々にお支えいただき、特に今回このようにして国会で注目をし、お支えをいただく道が開かれようとしておりますことは、本当に大きな励ましでございます。どうぞ今後ともよろしく御支援いただきとうございます。
 ありがとうございました。
#6
○委員長(粕谷照美君) どうもありがとうございました。
 次に、前斜里町長、ナショナル・トラストを進める全国の会会長藤谷豊参考人にお願いいたします。藤谷参考人。
#7
○参考人(藤谷豊君) 私、今委員長さんから御紹介をいただきましたように、北海道の斜里町長をしばらくしておりました。その中で「しれとこ一〇〇平方米運動」をみずから発案をし、提案をいたしてまいったその経験と、今、外山参考人から全国の会に対するいろいろ考え方等もお述べいただきましたので、それらにも触れながら、若干の意見を申し上げさせていただきたいと、このように考えるわけでございます。
 実は、北海道の知床半島は先生方いらした方もいらっしゃると思いますけれども、非常に遠隔の土地でございます。しかし、国立公園に指定されておりまして、その中に昭和二十五、六年ごろから、いわゆる戦後の緊急入植という形で主として宮城県出身の方々が入植された土地がございます。岩尾別地区というふうに呼んでおるわけでありますが、ここに入植されましたけれども、残念ながら過酷なる土地条件あるいは気象条件、そういったようなものの中で農業経営はほとんど不可能である、そういうことからせっかく農地造成をいたしましたけれども営農を続けられないというようなことで、折からの土地ブーム等もございまして、国立公園の中でありますから、いや別荘地にするとか、あるいはいろいろな建物を建てるとかといったような目的で、いわゆる観光開発と称する、そういうことを目指す方々が土地を買いあさる、こういう状況に相なったわけであります。
 しかし、国立公園の中というのはこれはそういったようなところではなくて、自然環境を、特に知床国立公園というのは全国の国立公園の中でも最も自然度の高い国立公園であるというふうに言われておりますので、私は当時、町長という立場から、これはどうしてもそういったようなところに使ってもらっては困る、あくまでも自然環境をそっくりそのまま残しておく地域でなければならないという考え方を持っておりましたので、この開拓者が離農いたしました跡地を何とかして、できれば町の独自の財源で買い上げたい、このように考えたわけでありますけれども、先生方も御承知のように、現在の地方自治体の財政事情は極めて困難な状況にございます。そういうことからイギリスのナショナル・トラストの運動のことを知りまして、この手法を取り入れることによって、いわば斜里町が、住民運動というよりも全国的な一種の国民運動の事務局を担当する。そしてこの土地を皆さんに買っていただく。しかしながら、買っていただいて勝手に自分でいろいろなことに使われたのではこれは問題にならないわけでありますから、いわば精神的な地主であります。
 そういう意味で、いわゆる知床で夢を買いませんかという実はスローガンを掲げたわけでございますが、その方法を申し上げますというと、土地百平方メートルを一口といたしまして、八千円で一口買っていただく、こういうことであります。ただし、土地の分筆登記などは行わないで一括して斜里町の町有地として町が責任を持って管理をいたします。必要な場所には植林をいたしまして、もう既に木が切られて畑になっておりますから、そういうところに植林をしていこう、そして自然の景観を修復したい、こういうことが趣旨でございます。
 それから、参加者には、やはり参加をした、要するに地主さんになっていただいたという証拠といいましょうか、それがなければならないというふうに考えまして、登録証書というものをつくりまして交付をする。同時に、町役場には登録台帳を整備いたしまして、登録者のお名前その他につきましてはこれは斜里町役場の永久保存の登録台帳にする、こういうことをお約束をいたしました。それから、運動の現地に皆さんがわかるように参加者のお名前を標示するということであります。さらにまた、ちょっと私きょうつけてまいりませんでしたけれども、運動に参加された方々にはシンボルバッジを差し上げる、こういったようなことでございますこれらのことを、やはり地方自治体が行う事業でありますから、みずからきちんとしなければならないということで、昭和五十三年の一月三十日付をもちまして資金の管理、いわゆる基金条例、それから自然景観保全林設置条例、この二つの条例を、ただいま申し上げたようなことなどを骨子にいたしましたところの町の条例を明確に制定いたしたわけであります。
 今、外山参考人も申し上げたわけでありますが、外山参考人のところの天神崎運動というのは全くの民間団体であります。しかしながら「知床百平方メートル運動につきましては、これは斜里町が事務局になった運動であります。ですから、その辺の企画というものが、先生方にもひとつ参考にしていただきたいと思うのでありますが、町の場合におきましてはやはり地方公共団体でありますから、まあ外部に向かっての信用度も比較的高いというようなことでもありますし、あるいは場合によっては事務費のようなものを、まあ町の一般会計の方から少しちょろまかしてこちらの方へ使わしてもらうということもこれはできるでありましょうし、そういう面では純然たる民間団体であるよりははるかに参加者の信用度とあわせてやりやすいというようなことも考えて、当時町長でありました私がみずから実は発案したわけでございます。その辺のところに同じ運動でありましても非常に性格の違いがございますので、後ほどまた御質問等いただければその辺にも触れてお答えをいたしたいと思いますけれども、そのように天神崎と知床の運動というのは大きく内容が迫っている。しかし、これは後で一緒になります。一緒に問題が提起されてくるわけでありますので申し上げたいと思うわけであります。
 この運動が開始されましてから既にもう八年余りになりました。四月末の数字を申し上げますと、参加者の数は二万二千四百三十一名であります。それから、拠出された金額は、一口八千円でありますが、一人で二口も三口もあるいは十口も入っている方々がいらっしゃいますので二億三千八百九十七万六千円の拠出があるわけでございます。これは五月末になりますと、大体百六十八名ぐらいふえておりますし、金額は百六十万ぐらいふえております。このように、大体一カ月平均百五十名ぐらいの方がコンスタントにこの運動に参加されてきておるというのが現状でございます。
それから、今まで土地を買い上げました面積は三百二十二・一四ヘクタール、これは目標にいたしております全面積が四百二十七ヘクタールでございますので、目標面積の六八・三%に到達いたしております。あと実は百五十ヘクタールほど残っておりますけれども、これはなかなか実は買いにくい土地であります。お金は実はございます。お金があってもなかなか買えないという土地になってきております。
 ということは、まあ土地ブームのときに別荘地にいかがですか、こんなに安いところがあるんですよ、知床国立公園の中ですよといったようなことで、非常に小さく分筆されてたくさんの方々に売られたというケースもあります。あるいは企業の方々がかなりまとまった面積を持っているというところもあります。私はここに名簿を全部持ってきております。しかし、これは公開をするべきものでもありませんので差し控えさせていただきますけれども、とにかくなかなか売ってくれない。ということは、もちろん高い金で買うということは買えば可能でありましょうけれども、実は今まで買ってまいりましたところの単価があるわけで、一番先に開拓者の残っていた方々が対象でありました。それからさらに、町内でもってその近辺の方々でお持ちになった方々もいらっしゃいます。こういう方々についてはまあ理解をしていただきましてかなり安い価格で譲っていただいておりますから、今これの三倍も五倍もといったような価格で買うことはとてもできない、いかに金があってもできない。こういうことから、実は私、今現職ではありませんけれども、担当の者にはしばらくの間しらばくれていろ、今に皆さんが理解をしてくだされば、やがて皆さんの希望に近い価格を我々も考えなければならぬけれども、本当に我々の運動に対する理解が深まれば土地は売っていただける、こういうようなことになるだろうからというようなことで、実は今持久戦に入ろうとしているわけでございます。
 それは別といたしまして、この運動参加者の内訳を先生方に見ていただきたいと思うのでありますが、東京都の方が一番多いのであります。二番目が北海道の地元の者で、三番目が神奈川県の方、四番目が大阪府、五番目が兵庫県、六番目が埼玉県、七番目千葉県というふうに、いわゆる大都市圏の方々がこの運動に参加されている。これは一体何だろうかというふうに私は考えてみました。ということは、やはり都会は――私久しぶりで東京へ出てまいりまして、東京も大分緑が多くなったなという感じを私は持ちました。しかしながらやはり都市砂漠であります。この中にお暮らしになっている方々がはるかもう遠い、北海道というよりも日本列島の一番最東北端にありますあの知床半島の自然を守ることによって、自分たちの何といいましょうか、本当に知床までつぶしてたまるか、こういったような希望が我々の運動に参加をしていただいておるということで、参加をしてくださるときには必ずお手紙を添えていただいております。これにはその気持ちがにじみ出ているわけですね。私は当時、毎日来るお手紙を拝見しながら本当に涙を流して拝見し、これからも頑張っていかなければならぬなと言って職員と一緒にやってまいったわけでございます。
 そういうようなこともございまして、うちの町が地方自治体が呼びかけて行う最初のナショナル・トラスト的な運動というふうに大体位置づけられておるわけでありますけれども、幸いなことには、土地の買い上げの場合におきましても、あるいは固定資産の問題におきましても、地方公共団体でありますから税金の関係については余り実は心配をする必要がないわけであります。それから、せんだって国会の皆さん方の御支援等もいただきまして、民間団体におきましても寄附金に対する所得控除の問題でありますとか、その他地方税の減免の問題でありますとか、こういう関係については若干御理解がいただけるような状態になったわけでありますけれども、私どもの場合には当初から町有地にしていこう、こういうスタイルでいきましたので、税金の関係だけは幸い余り心配のない状態になっておるわけであります。
 先ほど木原参考人からもお話がございましたように、昭和五十八年の二月に、私どもと同じような運動に取り組んでおる方々と一緒にナショナル・トラストを進める全国の会というのが発足いたしました。しかし、これは今、外山参考人からもお話がございましたように、法人格も何も持っておりません。ただお互いの連絡、情報をお互いに流したりなどするような、そういう親睦団体的なものにしかすぎないわけでございますが、これをひとつ将来に向かっては法人化することによって、ただいま外山参考人の御意見の中にもありましたような、それぞれの土地なり財産なりというものを、あるいは中央において管理をしたり、あるいは地方で集めた金をそれぞれの運動の単位運動体に援助をしたり、そういったようなことを本当はしていきたいものだというふうに思っているわけでありますが、まだ日本における運動は極めて歴史が浅うございますし、まだそこまでやれるような状況になっておらないわけであります。しかしながら、イギリスとの交流等も既に行われておりますし、今後、国会の諸先生方の御支援等もちょうだいいたしまして、諸般の問題を一つ一つつぶしていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。
 それで、税制のことについて若干申し上げたいと思うのでありますけれども、先般、自然環境保全財団、これは当然財団法人をつくらなければならないのだと思いますけれども、それに対する寄附金の所得控除、それから取得財産の不動産取得税あるいは固定資産税などのいわゆる地方税の減免――減免といいましてもこれは地方自治体の任意でありまして、そのかわり、これを減免したからといって地方交付税で補てんすることはしませんよといったような条件になっているようでございますけれども、とにかく一応の前進を見たわけであります。しかしながら、相続税の問題あるいは贈与税の問題、これらが実はまだたくさんの実例がないのでもう少し見送ろうじゃないかということなんだそうでありますけれども、実は税制が先に走っていただかないとこの相続税の問題は解決がつきません。
 税制の方で何とかひとつ面倒を見ようやというときになれば、相続税の関係というのは、たくさんの山をお持ちのお父さんが亡くなって息子さんがそれを相続するときには木を売らなかったならば相続税が払えないわけでありますから、そういうものをそっくりひとつナショトラへ寄附をしようではないかという機運が当然これは出てくるわけであります。私などたくさんの人に実はこの運動の関係について接する機会があるわけでありますけれども、そういったようなことの道が開かれればなというふうにおっしゃる方がたくさんいらっしゃる。そういう意味でぜひひとつ相続税の関係等については税制の面で先行してほしい、このようにお願いをしたいと思っているところでございます。
 それからさらに、取得財産を永久に保全する、譲渡不能にする。さらに、もちろん担保権とかなんとかの設定は一切できないようにする。こういうことは、先ほど木原参考人が申し上げましたように、イギリスのナショナル・トラスト法ではそれらを明確にしておる。明確にしたことによって非常に多くの方々が参加をされるという、そういうことになったということはもう明らかな事実なのでございます。私は、今の税制の中では公益信託という制度がございますから、私どもの場合も公益信託の制度を導入いたしまして、こういう面を解決したらどうかというふうに考えてきたことがあるわけでありますけれども、残念ながら地方公共団体が公益信託制度のいわゆる受託者になることは適当ではないという、自治法の番人でありますところの自治省の方々の賛成が得られないために、実はこのことが実現をしないでまいっております。
 したがいまして、これからの方法としては、地方公共団体がこの受託者になる、ならないということについてはまあ別問題といたしまして、何ら
かの形で永久保全ができ、譲渡不能の原則を確立する。今、外山参考人が心からのお願いとして意見を開陳されましたように、全国の皆さんが、この土地を守りなさいよ、この自然を大事にしなさいよと言って集めていただいたお金なんでありますから、これで買った財産はその地方自治体なり何なりが勝手に処分したりなんかすることはできないわけであります。できない原則を決めなければやはり信用は得られない、こういうことになろうかと思うわけでございまして、私は斜里町の場合におきましてはみずから条例を設定いたしておりますけれども、しかし、私ももう現職を退きました。
   〔委員長退席、理事山東昭子君着席〕幸いにして、私の次の町長もこの原則は尊重しながら努力をされております。しかし、また代がかわり、またどんな地方財政の問題が出てくるかわかりません。
 そういうときにはこの財産を処分しようじゃないかとか、あるいは用途変更をしようじゃないかといった交渉を一体だれがすることができるのでしょうか。そういうことを考えますと、やはり地方公共団体といえども決して信用のおけるものではない。また同時に、自治省あたりの見解からいうと、自分で売却をしたり、あるいは用途変更をしたりすることができないような財産を地方公共団体が管理するということは適当でないというような見解すら示しておるわけでありますから、そういう意味ではなかなか現行の信託法に基づく公益信託では地方公共団体が受託者となって行うということについては非常に困難性があろうかと思います。
 そういうことから考えますというと、別にイギリスのナショトラ法のようなそういう法制を何とか国会の諸先生方の御努力によって確立をしていただきたい。それこそが日本の自然を守る道であり、また同時に日本の歴史的環境を守っていく最大のエネルギーであろう、私はこのように考えるわけでございますので、その点を一つ御希望申し上げまして、また後ほど御質問等にお答えをして、それぞれ意見を申し上げたいと存じます。
 ありがとうございました。
#8
○理事(山東昭子君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
#9
○丸谷金保君 木原先生に御質問申し上げますが、このナショナル・トラスト運動というのは、国なりあるいは地方自治体の施策が宗全に行われて諸般の保護ができればいいのですが、なかなかそれが財政事情その他でできない、あるいはまた考え方の上でやらない、こういうところから起こったいわば国の施策の不備に対するアンチテーゼだ、こういうその始まりが一つあったのでないかと思うわけなんです。そこにただいま先生の言われた自発性というふうな住民運動、国民運動というふうなものにつながってきたと思うのですが、特にこの中で、先生は提言を含めた御意見を述べられておりますし、このことはほかの方々の中でも言われているのですが、いわゆる公益信託の問題でございます。
 私は、これは国会で取り上げて自治省ともやったことがあるのですが、結局、自治省の考え方というのは、地方自治体が自分で自分の手足を縛るようなことをやらない方が後々やりやすいという考えが基本にあるのです。これは実際問題としてなかなかそう簡単にいかない。この壁を被るために努力しますが、なかなか簡単にいかないとすれば、その他の方法でとりあえず突破口を見つけていかなければならぬと思いますが、全国的にいろいろな違いがありますけれども、この御提言のような公益信託でない場合、まず我々としてやらなければならない、それから実現可能なことで、先生のお考えでこういうことをまずやってもらいたいという点がありましたら御説明願いたいと思います。
#10
○参考人(木原啓吉君) 国の予算には限度がありますので、自然環境の保全についても予算の配分では優先順位がつくわけでございまして、我が国では自然公園法及び自然環境保全法というような法律で、都市から大きく離れたといいますか、大きな自然、日本を代表する大きな自然に対する保護がなされているわけであります。それに対して、我が国の住民の自然に対する関心も昭和四十五年ごろ、つまり七〇年代の初めは都市の自然に対しては非常に絶望的な状況でありましたために、かえって心理学的に言えば代償作用といいますか、都市を離れた大きな自然の保護運動に集中していったわけですが、そうすることによって自然に対する見方を強めまして、七〇年代の後半から八〇年代になりますとともに改めて身近な自然、すなわち小さな自然への関心が強まってまいりました。
 そういう小さな自然あるいは大きな自然と小さな自然の中間にある、例えば都市の郊外の雑木林とか、そういうものに対する関心も高まってまいったわけですが、この部分に対する環境に対しては法律的には自然公園法あるいは自然環境保全法に並ぶような強力な規制措置はとられておりませんし、またそれは非常に難しい状況であります。ですからそういうところをとりあえず住民が自分たちの身銭を切って守ろうということでナショナル・トラスト運動が展開された。先ほどの外山参考人のおっしゃった天神崎はまさにそういうふうな都市の近郊であります。天神崎の場合は県立公園に指定されてはいるわけですが、非常に規制は緩いところであります。そういうところを守るためのナショナル・トラスト運動なので、そういう法律のまだおくれといいますか、行政の対策のおくれを市民がカバーしているわけでありますから、これに対して国あるいは自治体が税制の援助をしていただくことは当然のことといえば当然のことと思っております。ただしかし、それにはかなり限度があることは承知しています。
 ところで、そういうナショナル・トラストをどういうふうにして強力に進めていくかということでございますが、先ほども私が申しましたとおり、法制化について二つの側面がある。
 イギリスでは中央に、ロンドンにナショナル・トラストの本部がありまして、全国に七つの支部もあります。そして千五百人の職員を抱えて単一法人で進めているわけでありますが、それに対して我が国の場合は各地で住民の自発的な意思あるいは自治体の自発的な意思によりまして、さまざまの手法で運動が展開されております。非常に多彩でありまして、それをイギリスのように今この段階で一本に絞って一つの傘のもとに組織化するということは極めて難しいし、むしろそうすることによってかえってそれぞれの運動の自発性をそぐ心配もあるわけであります。イギリスの場合は十九世紀の末にスタートしたわけですが、それに対して我が国の場合はまさに都市化の波が荒れ狂う二十世紀後半の運動でありますから、それなりにおのずから独自の住民運動あるいは自治体運動の自発性を尊重しなければならないのではないかと思っております。
 その場合、今度は管理の問題でございますが、先ほどの藤谷参考人のお話にもありましたとおりに、やはり我が国の風土に根差した譲渡不能の対策の確立が要求されるのではないかと思います。イギリスのようにナショナル・トラスト法で譲渡不能の原則を宣言する特権を与えるということは一番望ましいことでありますが、そこまで法律でうたうのがむずかしいとすれば、例えば、ナショナル・トラスト運動で入手した土地の規制を厳しくする、入手した土地は自動的に規制を厳しくするようにすればどうかと思います。例えば、国立公園の第三種のものは第二種に上げ、第二種のものは第一種に上げるということであります。県立公園でも同様であります。そしてまた、そのようなことは既に環境庁は斜里町の運動で獲得した地域を第三種から第二種へ格上げをしているわけで
あります。こういうふうに既に獲得した土地を法律で義務づけて、規制を厳しくすることによって実質的に売却されないようにする、そしてまた信頼性を確立するということが非常に重要ではないかと思っております。また、地元の県や市町村に対してこの獲得した土地をどのように管理するかということで、例えば、自然観察施設を自治体がつくる、そのための補助金を出すというような義務づけなども考えられるのではないかと思います。
 このようにして、もう一度もとに戻りますが、先ほど外山参考人のおっしゃったナショナル・トラストを進める全国の会というものを法制化する場合にも、その中央のセンターは各地の運動の情報の交流あるいは指導、啓蒙あるいは具体的な援助をする機関というふうにしてはいかがかと考えております。例えば、その情報の交流はこれは当然のことで、それによって国会の先生方に対してもいろいろ陳情を繰り返し、あるいは各関係省庁への陳情も行います。それから、例えば、そういう中央にできたセンターに土地などの不動産鑑定の専門家を配置する、これはどのくらいで買い上げたらいいかということについての専門家の集団が存在する。そうすれば不当に高い価格でその土地を買わされるということは防げると思います。
 さらに、学問的にも、歴史的あるいは自然保護の観点、生態学的にもこれは買い入れに値する、あるいは寄贈を受けるに値するものだということをアドバイスする専門家集団も備えればいかがかと思います。それは歴史学的にも、生態学あるいは倫理学とかさまざまな専門家がここに協力していただくことが幸いだと思います。
 それから、金融とか税制の面でも専門家がここに存在するということも必要であります。さらに、技術指導といいいますか、自然を復元したりあるいは歴史的な建造物を修復するに当たって専門技術が必要になるわけですが、そういう人たちも存在する、特に自然観察施設を自治体がつくる場合に専門家の存在は必須であります。
 さらに、このナショナル・トラスト運動は非常に教育的効果の大きい運動でありますから、ナチュラリストの養成とかあるいは歴史的環境の保存についての専門家の養成などもできるのではないか。さらに、広報宣伝といいますか、ナショナル・トラスト運動の重要性を国民に常時徹底してもらうということも必要ではないかと思います。さらに、藤谷参考人のおっしゃったとおりに、あるいは外山参考人も言われましたが、大口の寄附をこの中央の組織で引き受けてそれを他へ回すということも将来には可能ではないかと思っております。
 以上でございます。
#11
○寺田熊雄君 関連して。
 木原参考人にお伺いしますが、問題の土地ですね、それが永久に処分を不可能にするということが法律的にはどういう方法で可能になるのでしょうか。それについての御意見を聞かしていただければ……。
#12
○参考人(木原啓吉君) イギリスの場合から申し上げますが、イギリスでは一九〇七年にナショナル・トラスト法を議会が制定しました。そして、まずナショナル・トラストの目的を明示したわけであります。この明示によって、まずナショナル・トラストの目的は、美しい、あるいは歴史的に重要な土地や建物を国民の利益のために永久に保存するということを第四条で示しました。そして第二に、第二十一条で、保存管理する資産について譲渡不能、インアリフナブルと申しますが、を宣言する権利をナショナル・トラストに認めたものであります。ナショナル・トラストのみがこの保存の対象となる資産を譲渡不能と宣言することができまして、その宣言を受けた資産については以後売却されず、抵当の対象にもなり得ず、また国会の特別の議決のない限り強制収用されることもないということでございますが、実はイギリスでも譲渡不能の宣言をした資産についてこのところいろいろ問題が起こっております。
 例えば、イギリスには、スコットランドには独立心が強いですからスコットランド・ナショナル・トラストというのが別に一九三一年に設立されているわけですが、ここで獲得して譲渡不能の宣言をしているところがたまたま北海油田の石油精製基地の予定地になったわけであります。
   〔理事山東昭子君退席、委員長着席〕政府は一九七四年に沖合石油開発法案というものを議会に提出して現地を強制収用する権限を設定しようとしたのに対して、ナショナル・トラスト側は国内の自然保護団体の協力を得て、譲渡不能の原則を守れというふうにして立ち上がって、議会でもかなり激しいやり合いがありました。その結果、この強制収用の規定はナショナル・トラストの他の資産への適用の先例にしないとの担当大臣の声明を出させることによってようやく開発を認めたわけであります。ここでは、譲渡不能の原則をめぐって、ナショナル・トラストを支持する自然保護派の議員の方と政府の立場を推す開発促進派の議員の方との間で激しい討論があったと聞いております。
 それと同じようにまた、この北海油田というのはイギリスの経済にとっては起死回生の非常に重要な開発でありますが、そういうものにとってもこういう譲渡不能の原則というのが大きく自然保護の立場から力を発揮することもあります。さらに、風景画家のターナーが描いた非常に美しいウェストサセックス州のペットワース公園に自動車のバイパス道路をつくろうという計画がございまして、これがまたナショナル・トラストの譲渡不能宣言地区でございまして、この点についてもかなりの意見の交換がなされております。
 そのほかいろいろあるわけですが、では、我が国でそういう場合にどのようなことができるか、私もはっきりここで申し上げることはできないのですが、先ほど申し上げましたとおりに、入手した土地に対して規制を厳しくする、まずこれはやらなければならない問題ではないかと思います。それがなければこのナショナル・トラスト運動の信頼性という点で非常に問題があるわけなので、この点についてはまた国会の皆様方の御意見、お教えを願えれば幸いだと思います。
 十分な回答はできませんが、以上でございます。
#13
○参考人(藤谷豊君) 研究者であります木原参考人のただいまの御意見に関連をいたしまして、私どもは私どもなりに、現行法律の中で一体こういうことがやれるのかどうかということを実は検討いたしました経験を持っておりますので、そのことを御参考までに申し上げたいと思います。
 先ほどもちょっと触れましたが、地方自治体が受託者になって公益信託という制度を導入いたしますことには問題が非常に多うございますので、現実には今やれないでおりますけれども、これが別な民間団体、例えば財団法人その他ございますが、そういうところが受託者という形になって公に募集するいわゆる公益信託という制度をやりました場合、今、先生が御指摘になった譲渡不能あるいは担保権も設定できない、こういう制度が現行法律の中でございますけれども、今まで公益信託をやっております例というのは、大分最近はふえてきておりますけれども、非常に少のうございます。それで、その受託者というのはおおむねが信託銀行でございます。信託銀行が受託をいたしまして、その金を運用いたしまして、その運用利益は土地の買い上げをやったりなんかすることもやれるのですけれども、教育関係の補助をしていく、あるいは海外の後進地域の子供たちに対するいろいろな施策をしていく、こういうことにおおむね使われておりまして、自然保護のためにその金を使っていくという例はただ一件しかございません。しかしこれは残念ながら制度にみんなまだなれておりませんので、こういうことがこうやればこうやれるんだということについての議論が大変未熟なんでございますね。
 先ほど申し上げたように、法律の形態、ということは公益信託の場合これは民法の関係になりますし、それから地方公共団体の条件というのは、
御承知のように地方自治法でございますからこれは公法でございます。いわゆる私法と公法との整合性といいましょうか、こういうところに非常に問題があるということから、地方公共団体がいわゆる受託機関になって、受託者になって今のようなことをやるということについては残念ながら自治省の見解が我々には極めて不利なんでございます。しかし、法律の形態としては別に地方公共団体だからいけないとか、あるいは個人だからいけないとかということでは全くないわけでありまして、たった一人の、外山さんなら外山さんが受託者になってみんなが公益信託をひとつやっていこう、こういうことになれば法律的には可能なわけなんですね。
 ところが、なかなかそこまで運用の例もありませんし、大蔵省その他の関係省庁の理解が必ずしも得られないといったようなことがあるようでございまして、そういうことで一応私どもなりに研究いたしました結果では、やる気になれば、信託法の中の公益信託という制度でやっていけば譲渡不能とかあるいは担保権が設定できないとかそういう関係については可能である、こういうふうに理解をしてございます。
#14
○寺田熊雄君 それでは今の問題で、外山参考人の御意見をちょっと聞かせてください。
#15
○参考人(外山八郎君) 私、先ほど述べさせていただきましたのは、その点を考えております。現在の公益信託の制度は、実際にいたしておりますのは信託銀行であって、こういう自然保護の努力の結果の自然を信託するということは、銀行としても管理に非常に不安を感じて受けようといたしません。ところが、全国のナショナル・トラストを進める心ある方々が集まって全国の会ができ、その全国の会がだんだんといろいろの点で整備されて法人格を持つようになりますならば、その人格体が各地で努力をして保全したその自然を公益信託いたしますと、信託条項でもって約束が組まれますからその約束にお互いが縛られます。同時に、信託法によって、万一意思に反して競売にかけられるというふうなことが起こってきたときに、私どもの側が信託したとしますと、私どもの取得した財産を信託することによって所有権は受託者である全国の会に移ります。全国の会は所有権を受けますけれども、それは固有財産とは別個の財産として全国の会がたとえ競売にかけられるようなことが起こっても信託された土地を競売することはできない。ですから、意思的に譲渡不能になりますし、意思に反して競売にかけられるというふうな危険からも免れることができる。そういう意味で信託財産は財産の安全地帯であるというふうに言われておりますので、現在の法制の中でも譲渡不能の状態に置くことは可能だ、非常に早い道ではないか、このように考えるのです。
 以上です。
#16
○寺田熊雄君 今の問題は、信託者それから受託者の存続とかあるいはその意思決定機関による意思決定の変更とか、そういうことによって脅かされるおそれというものは絶無でしょうか。やはりそこに、木原参考人の言われるように、国の立法で何か絶対的に処分が禁止せられるような担保といいますか、例えば不動産の場合は登記面で処分は不能であるというようなことが明記されるというような、何か法的な担保がないとまだ若干の不安があるように思えますが、その点はいかがでしょうか。余り私だけが質問しては大変失礼になりますが、簡単でよろしいので、三参考人それぞれ今の問題についてお答えいただけますか。
#17
○参考人(木原啓吉君) 法律的に譲渡不能の、日本的な社会の風土に根差した対策が確立することが不可欠な非常に重要な問題だと思いますので、今後この問題について、我々のナショナル・トラストを進める全国の会でも討議を進めていきたいと思っております。
#18
○参考人(外山八郎君) 絶対に譲渡の可能性がなくなってしまうというふうに言い切ることはできないかもしれませんけれども、現行法の中で最もよい方法であると考えます。財団法人の寄附行為の中に定められた条項というものは特別な場合でないと変更できない、そういう制度になっております。両方が財団法人であり、その間にさらに公益信託という信託条項の中で約束をした約束条項がありますから、それでさらに縛られますから非常に確かさが増す。そして、意思に反する競売にかけられた場合からの危険をも防げる、こういうふうに考えます。
 同時に、私どもの立場からいたしますならば、私どもが苦労して取得した自然というものに対して、地方の自治体あるいは産業体から、開発という形でどこまで譲ってくれるのだと言って絶えず責められます。お互い同士の間で絶えず苦しい闘いの場に置かれます。この宝が、一個別個の中央の公的なところへ公益信託されるということになりますと、私たちを我慢させれば、いろいろな開発志向がこれを無視して破壊していくという動きがやりやすいですけれども、中央の公的の結びつきになりますならばそういうことができなくなりますから、私どもの地元の苦労というものが非常に大きく守られることになる。私どもの地方では、その危険が絶えず、半島法が制定されましたように、開発の動きが、あせりがあります。その中で、いかにして自然を守るか、こういう点でも、中央へ公益信託すればいろいろな面での危険が防げる、こういうこともあわせて考えております。
 以上です。
#19
○参考人(藤谷豊君) ただいまの先生の御指摘でございますが、私も法律家ではございませんので、きちんとしたことを申し上げる知識を持ちませんけれども、委託者と受託者との間に契約が結ばれるわけでありますから、この契約条項というものは、例えば、ここの土地を買って自然保護をするんですよということが契約条件であるとするならば、その契約条件を受託者は誠実に守らなければならない。そういう意味で、第三の公益信託財産としての登記ができるというふうに私は聞いております。そういうことでかなり法律面では解決されるかと思います。ただ、運用が非常に離しいんでございます。
#20
○丸谷金保君 いろいろまた問題もある。特に、固定資産税の基準財政需要額組み入れが、地方自治体が補助したものが認められないというふうな点で、税制の面でも問題がまだたくさんあると思います。
 ただ、時間もあれでございますので、あと一つだけ、どなたからでも結構でございますけれども、結局、今の制度の中でやっていくとすれば、例えば、県で認めることができる地域的な公益法人がございますね。その上に、中央にもう一つ今の皆さん方の会が公益法人としてあれば、寄附を受けた財産をその地域の公益法人と中央にある全国一本の公益法人の中で民法による受託契約をする、これがさしあたっての最善の道かというふうにお聞きしたのですが、そういう考え方でよろしゅうございますか。木原先生にお願いします。
#21
○参考人(木原啓吉君) 今、自治体レベルのナショナル・トラスト運動が非常に盛り上がってきたわけでございますが、県あるいは市町村レベルだと、この土地を守りたいと非常に具体的に特定される可能性が強いですから、各地の自治体レベルでなされるナショナル・トラスト運動は具体的な土地を買うために基金を出したいという人たちが多いのではないかと思います。
 それから、国レベルでそういう組織ができるとすれば、例えば斜里町の知床の自然を守りたいという方もおられると同時に、ここにまとまった基金があるのでこれを日本の自然環境あるいは歴史的環境の保存のために役立てたいという、対象を特定しない場合もかなり出てくるのではないかと思います。そういうふうに、自治体レベルと全国レベルとで使い分けて進めばいいのではないかと思っております。
#22
○原文兵衛君 参考人の皆様、御苦労さまでございます。
 それでは、二、三お尋ねしたいのでございますが、まず第一問は、お三方のそれぞれの御意見をお伺いいたしたいと思います。
 率直に申しますと、実は私、四年ほど前になりますが、環境庁長官になるまでは英国のナショナル・トラスト制度というものを全然知らなかったのです。ただ、英国のナショナル・トラストの歴史を知り、また、その活動状況というようなものを知ってから、その後は、私自分で言うのもおかしいのですが熱心な日本版ナショナル・トラストの推進論者になり、今も微力でございますが努力しているつもりでございます。
 昭和五十七年七日には環境庁長官の諮問機関としてナショナル・トラスト研究会というものを設置して、木原先生にも委員になっていただいたのでございますし、また私自身もナショナル・トラスト運動につきまして、英国に二度ほど参りまして勉強してまいりました。最初は昭和五十七年にロンドンのイングランド・ナショナル・トラスト本部とそれからドーバー海峡に面する海岸線で、トラストが持っておりまするクリュー・リオンという海岸線の草原地帯ですね、それとそれに連なるところのバーリング・ギャップというところに、さらにまた、ロンドンから約六十キロほど離れましたボールスデン・レイシーというところにあるトラスト財産のすばらしい邸宅と非常に広大な庭園、森というようなトラストの財産を視察して勉強してまいりました。
 二度目は、翌年の昭和五十八年にスコットランド・ナショナル・トラストの勉強に行きまして、エジンバラの本部を訪れますと同時に、すぐそれと同じ、大きな建物なんですが、建物の一部にありますところのジョージアン・ハウスという十八世紀の代表的な建築物ですね、これを見学しました。さらには、エジンバラから八十キロほど離れたところの海洋にカルロスという古い港町があるのですが、そこにトラストが持っている十数軒のリトルハウスというのがあるんです。これは古い海岸の町で、この町はもとは塩が出て、その塩の取引港になっていて、船が入ったり出たりするのを監視する監視塔のようなものがあるし、小さな建物なんですが海岸の古い町の一角をなしているわけで、それをスコットランド・ナショナル・トラストが買い入れて保管している。もちろんそこに住まわしてはいるわけですけれども、それも見学してまいりました。
 ちょっとそういうようなことを申して何か大変恐縮なんですが、イギリスはこのナショナル・トラスト運動が、先ほどの木原先生のお話のように三人の民間指導者らによって九十年前、一八九五年に設立されたということでございますが、先ほどこれも木原先生のお話にございましたように、一九三一年にスコットランド・ナショナル・トラストが独立をして現在に至ったわけでございますけれども、このイギリスのナショナル・トラスト運動も初めのうちはなかなかうまく、うまくというか一遍にはいかなかったようでございますが、しかし今大変な成功をおさめていると思うのです。
 これに対しまして日本では、実は法制的には自然保護とかあるいは文化財保護というのは日本の方がイギリスより大分早いのですね。民間運動としては日本はごく最近になってあれしたのですが、法制的には早い。それはもう既に六十六年前の一九一九年、大正八年に史跡名勝天然記念物保存法というのがもうできているんですね。それから一九三一年、昭和六年には今の自然公園法の前身である国立公園法が制定されている。こういうことを考えますと、日本の方が法制的には実はイギリスよりも早く発達したというふうに思うわけでございます。そういうことを考えますと、ある面では日本もこういうものを考えておったわけですが、ただ、日本の場合はそういう法律ができましても、民間運動としては当時ほとんど関心がなかった、民間運動としては全然動きがなかったと思うわけです。
 現在は一体どういう法律があるかというと、もうこれも法律的にはある程度整備されていると思うのですが、私ちょっと考えただけでも自然環境保全法それから自然公園法、森林法、海岸法、文化財保護法、古都保存法、その他いろいろなものがございます。狩猟に関するいろいろな法律などもございます。こういうふうにたくさん法律があるのですけれども、こういう法律でこう網羅しているが、その中にある私の所有権、これはなかなか法律で賄い切れないものがあるので、今度の日本の外山参考人の天神崎の買い取り運動とか、あるいは藤谷参考人がおやりになった知床の百平方メートル運動とかいうようなものが起きてきたと思うわけでございます。もっともこれはただ単にそういう法律で賄い切れないというだけじゃなくて、日本の国民の間にも最近は自然環境とか、あるいは歴史的文化財というようなものを保護しなくちゃいけないという関心も非常に高まってきたと思うわけでございます。そういうようなことを考えますと、これからも私はこの日本版ナショナル・トラスト運動は法律的にはもうほとんど網羅しておりますけれども、それで賄い切れないものを、それで覆い切れないものを進めるために日本版ナショナル・トラスト運動を大いに進めたいと思っている一人でございます。
 そこで、お三方に、もう大体先ほど来お話が出ているのでございますけれども、それをさらに確かめる意味でお伺いしたいのでございますが、日本の風土に適した日本型ナショナル・トラスト運動を進めるのに三つの方法が考えられると思いますね。その一つは、現在日本全国で起こっておりますいろいろなナショナル・トラスト運動を英国のナショナル・トラスト・アクトのような法律をつくって一本にまとめ、そして各地の運動、これは自治体がやっていたりあるいは民間団体がやっていたりしておりますが、その各地の運動の主体を一本にまとめたイギリスのナショナル・トラスト方式のものですが、そういう法律によって一本にまとめたものの支部にするのがよいのかというのが第一点ですね。
 それからその次は、今現在各地で起きているいろいろなナショナル・トラスト運動はそれぞれ独立した運動として発展させるようにする。ただ、現在連絡協力機関として先ほど来お話が出ておりまするナショナル・トラストを進める全国の会というのがございますが、この全国の会のようなものをもう少しそこに何か、さっき財産を信託したいというようなお話も出ておりましたが、そういうものを受けられるようなもう少し強力な組織にするというのがよろしいのか。
 第三番目には、そのほかの第三の進め方、方法が考えられるのか。この三つのやり方につきまして、大変恐縮でございますが木原先生から順次御意見を承りたいと思います。
#23
○参考人(木原啓吉君) 今、原委員のおっしゃいました三つのやり方の中の最初の一本にまとめる、各地の運動を支部にしてイギリス式にやる方法は、現在、日本の状況から見て私は極めて難しいのではないかと思っております。そういうことだと、各地で非常に意欲的にやっておられる運動のエネルギーがさらに燃え上がるものかどうかちょっとまだわかりません。
 それよりも、第二番目の各地に起こっている独立した運動の連絡協力機関として、日本のナショナル・トラストを進める全国の会的なものをもっと強力なものにする。そこを中心にする。そして各地の運動に対しては、例えばその獲得した資産についてそれをきちんと信頼性をもって保存する、管理する、あるいは公開するという義務づけを法律できちんと示していただければ各地の運動も非常に燃え上がるし、また全国的にも信頼性が出てくるのではないかと思っております。
 以上です。
#24
○参考人(外山八郎君) 私も、第一のおっしゃる方法は、一番大切な住民の自分たちで苦労してでも大事な宝を守り続けていこうという心が広がり育ちにくくなると思いますので、各地の努力は各地の努力としてやはり続けていくように、中央はそれを後ろから支える形であってほしいと、このように思います。ですから、第二におっしゃった案がよろしいのではないかと思います。
 第二の場合においても、早く人格を持てるようになっていただきたいということは切に願いま
す。その場合に、公的なお金が急速に注がれて人格を持つという形よりも、中央のナショナル・トラスト全国の会も、住民がそこへ温かい心を寄せてという形ででき上がる方がより本来の趣旨に沿うし、一番いい日本の、何といいますか、十分でない、自分たちがやるという心がもっともっと育っていくために必要ではないかと思います。
 以上です。
#25
○参考人(藤谷豊君) 今、原先生からの御質問というよりも、私どもに対する一つの指導的なお言葉であろうというふうに私は理解したわけでありますが、現状では、今、木原、外山両参考人から申し上げたように、ローカルに展開されております運動が主体でありますから、ここをやはり拠点にしていかざるを得ないということが現実だと私は思っております。しかし、理想像を言えといえばこれはやはり第一番目に御指摘をいただいたように、全国を網羅するといいましょうか、網羅するという表現は適当であるかどうかわかりませんけれども、いわゆるイギリスのナショナル・トラストのように一本化して一つで受けて、全部中央機関が土地をそれぞれ買い上げていくのだ、あるいは寄贈を受けていくのだというこのやり方が私は理想だとは思いますけれども、そこまでいくにはまだまだ日本の現状から言ってこれは困難性が多うございます。
 先ほど環境庁長官をされておりました先生がいろいろ在任中に御苦心をしていただきましたように、諸般の法律が日本ではあるわけでございますね。ところが、非常に残念なことには日本の官庁組織は縦割りでございますので、例えば文化財と自然保護とはおのおの所管が別でございます。これを一緒にしてやるということになりますと、文部省と環境庁とが本当に力を合わせたり気持ちを合わせたりしていただけばできないことはないと思うのですけれども、なかなかそれができない。先ほどの公益信託の問題にいたしましても所管がそれぞれございまして、それぞれの監督する省庁があって、その指揮監督下に入らなければならないというようなことで、地方自治体の独自性が発揮できないとかといったような問題点などが非常に多いわけであります。
 そういう面を乗り越えまして現実的に処理をしていくとするならば、やはり第二番目の各ローカルに展開されております団体あるいは地方自治体を中心とした動き、こういったようなものを重視していっていただきまして、何とかひとつ法制化できれば、今の縦割りのものを乗り越えて一本化するというようなことが一番望ましいと、こういうふうに思うのであります。ただ、私、全国の会を主宰しておりまして、委員の方々などから、こういう運動というのは零細な資金だけでは都市部等における土地の買い上げとか、あるいは緑化とか、こういうことはなかなか難しい。だから、できればひとつ大口企業といいましょうか、大企業の協力も得てやっていかなければならぬのじゃないかという御指摘も実は私ども何回も受けているわけであります。
 そのためには、中央にそういう受け入れの皿がありまして、大口寄付等を受けたり、あるいはどこへやろうかということじゃなくて、自然保護なりあるいは文化財保護なりに自分のせっかく蓄積した財産を寄付したいというような方を、どこということでなくて、日本全体のどこかで受けてくれないかといったような相談があるということも私は実は聞いておるのでございます。そうなりますと、でき得べくんば中央にそういういわば受け入れ口があって、そこからローカルの運動に対して支えになるような資金の配分をしてやる、こういったようなことがやってやれないことはないのじゃないかという感じがするわけでございますね。
 ですから、私どもがやっておりますのは一口八千円という額でございますし、外山参考人のところの運動は一口千円でございます。会員制になりますと、先ほど木原参考人から申し上げたように、その場合は年間約四千円を毎年出すわけでありますから、この金によっていろいろな管理なりあるいは新しい財産取得なりが可能になると思いますけれども、私どもの場合におきましてはこれは一回、お孫さんなりあるいはお子さんなりあるいは御親戚の方が輪を広げていっていただいておりますからそれなりに輪は広がっておりますけれども、やはり年幾らということじゃなくて、一回こっきりになっているということで問題がいろいろございます。
 これは、やり方はいろいろあろうかと思いますけれども、私は、これからの日本における土地が非常に高い、あるいは都市環境が今一番問題だというときにおけるナショナル・トラスト運動の果たすべき役割を考えましたときには、やはり大口な御寄付を、大きな会社は財団を持っていらっしゃるわけですから、そういうものの一部をここへもひとつやってやろうじゃないかということで出していただけるような機関があっていいのではないかというふうに思います。
 ただ、どちらかを選べということになりますというと、当面はやはり第二のローカルなものに力点を置いて法制化等も進めていただきたい、こういうふうに思いますけれども、あわせて今申し上げたような中央段階における受け皿も今後は条件としては絶対必要になってくるというふうに思いますので、でき得べくんばそういうふうなお考えでお進めをいただければ大変ありがたいと、こういうふうに思います。
#26
○原文兵衛君 大変参考になるいい御意見をありがとうございました。
 次に、木原教授にお伺いしたいのでございますが、先ほど来先生もおっしゃっておりましたが、私もイギリスのナショナル制度が非常に発展していったのは、もちろんイギリス国民の関心度もあるわけですけれども、一つにはやはり税制問題があったと思うのですね。イギリスのナショナル・トラスト運動も発足して十年間ぐらいは会員も千人に満たなかったというふうに私聞いておるのですが、それはお話があったように、一九〇七年のナショナル・トラスト・アクトの制定でもってナショナル・トラストの組織がしっかり固まった。さらに最も影響があったのは、一九三一年の財政法の改正で、特に先ほど来お話しの相続税ですね、ナショナル・トラストに寄贈または遺贈した財産については相続税が非課税になると、これでもってやかたとか領主側とかいろいろなものがどんどん寄附されたというふうに思うわけでございます。そういうことで、日本におきましてもこのナショナル・トラストを進める上において税金の問題が極めて大きいと私は思うのです。
 そういうことで、この問題についても微力を尽くさしていただくつもりでございますが、先ほどからお話がございましたように、ことしの四月一日から若干税金の面で進んだと思います。所得税法の施行令と法人税法の施行令の一部改正によりまして、一定の要件を備えたナショナル・トラスト公益法人に対する寄附金についての所得税と法人税について優遇措置が講ぜられた。やはり同じ四月一日から、これは政令の改正ではないですけれども、自治省の税務局長通達によりまして、同じような公益法人が取得しまたは所有する不動産については不動産取得税及び固定資産税の軽減措置が講ぜられると。私はこれだけでもかなりよかったなと皆さんとともに喜んでおる一人でございますけれども、残念ながら相続税の方は、先ほどお話もございましたけれども、そういう実例が余りまだないのではないかというような税務当局等の感じがあってこれは未着手でおられるわけでございます。先ほど藤谷参考人も、これは相続税の非課税が先に走ってそれでそういうものが出てくるのだと。私も同様の意見なんですが、木原参考人も同様なことだと思いますけれども、何かこの点につきましてイギリスの実情等で参考になる点があったらお教えいただきたいと思います。
#27
○参考人(木原啓吉君) 六十年度の税制改革で今、原委員のおっしゃったとおりに税制の面で風穴があいたといいますか、運動の前に立ちはだかっていた壁の一角が開けて、我々のこのナショナル・トラスト運動についても展望が開けたという
ことで、各地の運動に参加しておられる方々も精神的にも非常に力づけられたわけであります。ただ相続税については今後の検討課題ということになっております。相続税の場合は非常に多額の税金が動きますし、相続税隠しとかいろいろなことも考えられますので、そういうことの起こらないようにしながら手続をきちんとせよというための検討機関を設けられたものと考えております。
 イギリスの運動でございますが、まず一九一〇年に財政法を改正しまして、ナショナル・トラストのような公益団体への資産の譲渡または移転にかかわる印紙税が非課税とされました。この印紙税の非課税というのはかなり大きなことであったように思います。そして第二に、今、原先生のおっしゃいました一九三一年の財政法の改正で、ナショナル・トラストを特定した上でトラストへ寄贈、遺贈された保存対象資産については相続税を非課税とすることが決まりました。同時に、寄贈者の子孫はナショナル・トラストのテナントとして代々そこに住み続けることができるようにした。ただし、その場合、一定部分を公開することが義務づけられました。さらに、この非課税の制度はその後も適用の範囲が広げられていきまして、一九四九年財政法の改正がありまして、非課税の範囲をナショナル・トラストの基本財産にまで広げられ、さらに一九五一年財政法では、寄贈された建築物の内部の動産にまで拡張しました。さらに一九七二年財政法では、ナショナル・トラストへの一般の寄付について相続税やキャピタル・ゲイン税を非課税としております。
 なお、イギリスでは一九七三年の税体系の改正で、相続及び贈与による資産の移転に対してはこれまで相続税と申しておりましたが、それを変えて資産移転税が課せられることになったために、現在は資産移転税が非課税とされているわけであります。こういう相続税の非課税はアメリカだけではなくてオーストラリアでも進められております。
 オーストラリアでは七つの州でナショナル・トラスト運動が進められているわけでございますが、ここでもイギリスと同様に優遇措置がとられている。すなわち、ナショナル・トラストに対する法人税と印紙税を非課税とし、ナショナル・トラストに寄附が行われた場合には寄附金額を課税対象所得から控除しているということと並んで、ナショナル・トラストに寄贈、遺贈された資産の相続税は非課税としております。
 また、ニュージーランドでも同様のことがございまして、ナショナル・トラストに対しては法人税、それから土地税及び印紙税を非課税としております上に、ナショナル・トラストに寄附した場合は寄附金額を課税対象所得から控除する。さらに、トラストに寄贈、遺贈された資産の相続税は非課税というふうになっております。
 アメリカでも最近この問題が非常に問題になっていまして、いかにして税法上の優遇措置を実現するかということがアメリカ・ナショナル・トラストでは緊急の課題になっております。一九八一年の十二月から八二年の三月にかけてナショナル・パーク・サービスや全国の文化財保存担当官が会議を開きまして、文化財を保存するための税法上の誘導策について研究会を十三回も開いた。また、これには法律家や税理士とか計理士、建築家、都市計画関係者も参加したという報告がなされております。
 このようにして各国で相続税の免除を既に実施しておりますので、我が国でもぜひこのようなことを早急に御検討をいただければ非常に運動が進展するものと思います。さらに一部にはこの相続税の物納を求める声もあります。物納しましてそれを国有地にして、それをさらにナショナル・トラストの団体へ移転するということでございますが、こういうこともあるということを御報告したいと思います。
 以上です。
#28
○原文兵衛君 どうもありがとうございました。
 最後に一言だけ申し上げさしていただきますが、先ほど来ナショナル・トラスト運動の実践者でもありますし先駆者でもあります外山さんと藤谷さんの御苦心談を伺ったわけでございますが、私は、民間が主体でナショナル運動をしている場合にはどうしても行政の理解とバックアップが非常に重要である。また、藤谷さんが斜里の町長のときに進めたような自治体が主体で進める場合においてはこれはまた民間の理解と参加がどうしても必要である。日本におきましては、これからもやはり民間と行政の協力関係が日本版ナショナル・トラストを進める上において一番大事じゃないか。もちろん税制の問題も非常に大事なんですが、これもまた非常に大事な一つだと思います。私も微力でございますが、そういうことで協力をさしていただきたいと思います。
 もしお二人の間に何か御意見があったら一言お伺いして、終わりたいと思います。
#29
○委員長(粕谷照美君) 簡単にお願いいたします。
#30
○参考人(外山八郎君) 御指摘のとおり、私どもが一番願いながら苦しんだ点は行政の理解と協力の面でございます。土地を買い取る場合などは非常に大事なチャンスがございます。ところが、行政体の対応が非常に時間がかかり過ぎる、お願いしてから一年も一年半もかかるという間に情勢が変わって、希望の持てていた道が全く閉ざされてしまうというふうなこともございましたので、そういう点でも行政がもっとスピーディーに協力していただくことを非常に願っております。
 それから、私どもがやっと十年余りかかって買い戻すことができました地域は、天神崎の第三種地域の五分の一の部分です。そのほかの部分はまだ民間のままで、開発造成の計画はありませんけれども大勢の人が持っておられます。それがどうなるかということが、全国の努力が実るか実らないかの非常に大きな結びついた地域でございます。その地域に対して県がどうされるのか、市がどうされるのか見通しがありません。むしろ、この全国的な大事な地域に対して国が、なるほどそれほど大事な自然である、ただの景観ではない、子供たちが将来育つための大事な地域なんだから特別な配慮をそこへ注ぐというふうな形ででも手を差し伸べていただかないならば将来非常にその点で不安がある、こういうふうに思っておりますので、いろいろな面から、特に、国が対象とするには地域が狭過ぎるとおっしゃるのですけれども、狭くてもかけがえのない場所というのは特別の配慮をいただきたい、このように思うわけです。
#31
○参考人(藤谷豊君) 私の経験から申し上げたいと思いますが、私はこの運動を開始するときにはあくまでも民間の方々の運動であるというふうに位置づけをいたしました。斜里町という地方公共団体は事務局になろうではないか、事務的なことを我々がやっていくのだと。地方自治体のいわゆる役所仕事というのは、特に自然保護団体の方々などから非常に反発を食うんですね。今は大分違ってきておりますけれども。ですから、これはあなた方の運動だよと民間の方々に私は言ったのでございます。ただ、税制の問題とか、それから財産の管理の問題とか、そういったもろもろのことを考えると、斜里町の公有地にしていくんだという意味で斜里町があなた方民間団体の運動の事務局的な役割を果たしていこうではないか、こういうことがこれを始めた当初の考え方でありますので、これもひとつこれからの運動の展開の行き方として参考にしていただければと、こう思っております。
#32
○高桑栄松君 いろいろ皆さんの質問とお答えを私も大変参考にさしていただいて、もう質問することがなくなってきたように思いますけれども、二、三質問をさせていただきたいと思います。
 最初に外山参考人に承りたいのですが、全国の会の法人化を非常に熱望しておられるように承りましたが、それの見通しといいますか、隘路というのか、あるいは条件というのか、それがなぜまだ進まないかとか、どれくらいの見通しでそれができるのかとか、そういったことをちょっと伺いたいと思います。
#33
○参考人(外山八郎君) その点につきましては、私は、全国の会の中ではむしろ天神崎の立場でいろいろお世話になっておる立場でございますので、隘路という点はよくわかりませんけれども、同じ志を持った人たちが心を寄せて手をつないでおりますので理解の面では十分なものがあると思いますけれども、会として組織立つためには、各地の動きがもう手いっぱいでございますので、その点にもう少しゆとりができないと全国の会もおのずから組織立ったものになりにくいだろうと。もう一つは、財団法人の全国的なものになるためのかなり大きな基金が必要であろうと思いますので、その基金をどのようにして集めるか。しかも、私の願いでは、やはり民間からの浄財でその基金を集めるようであってほしいと思いますので、その点の時間をいかに早めるかという点に難しさがあるだろうと、このように思います。
 以上です。
#34
○高桑栄松君 次に、それでは木原参考人に承りたいのですが、先生は我が国に英国のナショナル・トラスト運動を御紹介されたお方と承っておりまして、私も敬意を払っている一人でございますが、先ほど来いろいろお話を承っておって、今の英国式のナショナル・トラスト方式が我が国にはまだなじまないのではないかと、こういったことが環境庁のナショナル・トラスト研究会からも出ておったようですが、承りますと皆さんそんなふうな御発言にも聞こえましたし、あるいは藤谷参考人は理想としては英国方式ではないかとおっしゃっておられたと思うのですが、木原参考人は現実の問題としては現状のようなやり方、しかし、理想とすればやはり英国方式なんでしょうか。それとも英国方式はもう日本では育たないというか、捨てた方がいいとか、そんなふうにお考えでしょうか。いかがでしょう。
#35
○参考人(木原啓吉君) これは非常に難しい問題で、我々のナショナル・トラストを進める全国の会でもいつも討議をしている問題でございますが、私は、日本の現状、日本のこれまでの歴史からかんがみまして、イギリスとは違った道をまず進んで、各地の運動の自主性を尊重しながら、その自主性を担保するような法的な支えをする、そういうことが広がったところで、先ほども申しましたけれども、全国組織も同時につくるわけですが、それは情報連絡という、あるいは陳情などの際の中心機関になるというようなことでスタートするのがまあ現実的ではないかと考えております。
#36
○高桑栄松君 次に、藤谷参考人にお話を承りたいと思います。
 私は長いこと北大におりましたので、当時講演会とか講習会で斜里町にも伺って、多分町長さんのころだったと思うのでお会いしておるのじゃないかと思っておりますけれども、二、三度お伺いいたしました。そのときからこの百平方メートル、夢を知床で買いましょうという運動を知っておりましたし、私も実は一こまいただきました。バッジは札幌に置いてきて、私もうっかりして、きょうはせっかくだからつけてくればよかったなと思ったのでございますが、あれはもらいますと、うちの家内はいいですねと言うんです。こんな枠の中に、私の土地があると何かやはり夢を買ったような気がして豊かな気持ちがするというふうな気が私いたしました。
 それで、税制の問題がいろいろ出ておったのですが、北海道のことですから藤谷さんは御承知だと思うのですが、阿寒湖畔の前田さんのあれがありましたね。あれはどういう仕掛けだったのか、どんなふうにあれがなったのか、自然保護関係なのか、税金みたいなのはどうなったのか私よくわからないので、簡単に御説明いただければ大変ありがたいと思うのです。
#37
○参考人(藤谷豊君) 前田一歩園財団のお尋ねだと、こう思いますが、私よりもこのことはあるいは木原参考人の方がよく知っていらっしゃるかもしれませんけれども、私の知る範囲をお答えいたしたいと思います。
 御承知のように、前田光子さんがあの膨大な山林をお持ちになっていらっしゃいまして、あの方はお子さんのない方でありますので、まあお子さんがあってもなくてもやはり近親者がそれぞれ相続することになるわけですが、相続をするとなったらあれはもう何十億になるんでしょうか何百億になるんでしょうか、大変な評価だと思うんでございますね。そうしますと、その相続税を払うためにはやはり木を切ってそれを金にかえなければ相続税は払えない、こういう問題があったんだろうと私は思います。
 前田光子さん御自身から聞いた話ではありませんけれども、あの方はいわゆる大変気性のお強い方でありまして、この財産を道庁か国に寄附をしようと思ってみたけれども、道庁や国に寄附をした場合には必ずどこかが切られてしまうということをあの人は申されておるのですね。したがって、それよりは、一人でつくった財団法人と言ったらいいと思うのですが、お金も二億何千万でしょうかを自分でお出しになって基本財産をつくって前田一歩園財団が発足したわけでありますが、自分でつくった財団に自分の財産をそっくり寄附しちゃった、こういうスタイルでありますので、あれはたしか試験研究法人になっていると思いますから、これに対する寄附というのは課税対象にはならないはずなんでございますね。したがって、現行法律を非常に上手にお使いになってあの財団にそっくり渡ったといいましょうか、そういうふうに聞いております。
#38
○高桑栄松君 藤谷さんにばかりお伺いして恐縮です。やはり北海道のことなものだからいろいろ私も知っている部分があるのです。あの知床横断道路というのが昭和五十五年ですか開通をして、まああのときにもあの生態系がどうなるだろうかという賛否両論があったと思うので、私も環境科学関係の研究者の一人としましても大変関心を持っておったのです。
 二つお伺いしたいのは、その当時心配されておったような生態系への影響というものは、そういう兆しが、まだ数年ですからどうだかわかりませんが、その兆しが出てきつつあるというふうにお考えなのかどうか。
 もう一つは、あそこに地の涯温泉というのがありましたね。私そこへ行ったときに、本当に地の果てへ吸い込まれるのかと思って何だか不安になったぐらい非常にしんしんとした深い谷底へおりていったんですが、あの辺は、今度横断道路ができたらもうわんさと人が、若者が行っていろいろな音楽が聞こえるようになってしまったのかなと思って、まあどっちがいいかは別としまして、現状についてお伺いしたいと思います。
#39
○参考人(藤谷豊君) 今お尋ねの知床横断道路、これは国道三百四十四号線のお尋ねでございますが、毎年環境の変化についての調査を実はうちの町の自然保護団体とそれから根室側の両方が協力し合いましてそれぞれ調査を進めております。まあやはり道路ができたわけでありますので、ことに短期間でありますけれども一日に何百台もの車が通るというような状況になりましたものですから、道路の両側につきましては残念ながらかなりの自然が弱められているといいましょうか、それぞれのやはり悪い影響を受けていることは事実だと思います。
 ただ、私の立場で申し上げますと、私も実はあの道路を促進する立場にあった一人でございますので、今にして思うとまことに汗顔の至りでありますけれども、ただやはり羅臼側を含めた私どもの地帯と、根室の地帯との交通の要路として今も大事な道路になっておりますし、私は自然観察路というふうに呼んでおるわけでありますが、あそこの道路を通過することによって、知床の大自然を眺める唯一のルートだというふうに理解をしております。しかしいろいろな自然破壊だけは間違いない事実でありますから、それの罪滅ぼしの意味でこの百平方メートル運動も始めさしていただいたということで、ひとつ皆さんお許しくださいということを、私、会合などでこれを突かれますと平謝りに謝ってたびたび申し上げているところでございます。
 それからもう一つは……。
#40
○高桑栄松君 地の涯温泉。
#41
○参考人(藤谷豊君) 地の涯温泉は、あの道路ができたからといって特にたくさん人が行くような状況になっておりません。全く昔と同じような状態でございますので、その点の御心配はなかろうかと思います。
#42
○高桑栄松君 ありがとうございました。
 委員の先生方に、地の涯温泉というのは本当にびっくりするような、もう何か恐ろしいような感じがするぐらい地の果てのような感じなんです。どうぞ一遍おいでください。元町長にかわってPRいたします。
 それで、もう一つ藤谷さんにお願いしたいのですが、この間、四月の末に釧路湿原が燃えたでしょう。いや、テレビを見て、あんなに燃えるものかと思ってびっくりしたのですが、何か二千二百ヘクタールですか燃えたとかいうんですね。今の藤谷さんのやっておられるこの場所も山火事の危険もあるだろうと思うのですが、山火事というのは起きちゃいけませんけれども、もし起きたら、こういう管理をしておられる場合に、責任追及というのではなくて、どんなことになるのか。 責任問題みたいなものはやはりあるのだろうかと思ったり、そのための維持管理に町費をお使いになっておるらしいということはさっき伺いましたが、その辺のことでちょっと御意見をと思います。
#43
○参考人(藤谷豊君) 私ども、皆さんのお金で取得した大事な財産でありますから森林保険は掛けてございます。これは町有財産という別な性格も持っておりますから、一般会計の方で一応賄いをいたしまして森林保険を掛けて守っているつもりでございます。
#44
○高桑栄松君 それでは、外山参考人にもう一つ伺いたいと思います。
 私たちこの環境特別委員会がお邪魔いたしまして、私もお伺いして大変御熱心な運動も見せていただきましたし、あのすばらしい生態系の非常に微妙なところも見さしていただいて初めて天神崎のことが私自身もわかったというような状況でございました。それでやはり行政のバックアップが必要だとおっしゃっておられて、田辺市に対するバックアップが期待されたように出てこないように僕は思って聞いておったのですけれども、何かその点はきっと運動しておられるのでしょうね。ですから、田辺市との関係についてもうちょっと何か、御希望なり何かを伺いたいなと思ったのです。
#45
○参考人(外山八郎君) 長い経過の間でございますので、全く募金が集まらない中で持ち主が非常に苦境に立ちました。私どもは大勢の力で持ち主を犠牲にすることはしないと言明しておりましたので、何とか持ち主に持ちこたえていただかなければならない。そのために田辺市にいろいろ御相談をし、また私どもの力のないところを力のある企業体に助けていただくお願いもしておりました。その企業体が乗り出すためにはどうしても行政体の長が適切な動きをしてくださらなければならない。ところが、予算を出す考えは全くないので、知事なり市長なりがお願いに行けば予算をどれだけつけるのかと聞かれたら恥をかくということで、どうしても動いていただけなかった。結局、文書を出して、親書を携えて係官が私どもと一緒にごあいさつに行く、そういうことになったのですけれども、結局、お願いしてから正式に親書を持っていくまでに一年半かかったのです。その間に事情が一変して、全くそれは望みのないことになってしまった、こういうこともございます。
 最近の状況では、全国の皆さんにお支えいただきましたので、全く民間の力が中心になって道が開けてまいりましたけれども、これからはあの自然に大勢の方々を迎える、おいでくださる方によって踏みつぶされて自然が死んでいくことのないように、これは行政体が適切に、何といいますか、車の規制をするとか、あるいはいそへ入るときにある地域は数年間は入らない、そのようにして交互に観察に入っていただくような規制をする必要があるかと思いますが、こういうことはどうしても行政体が理解を持って適切な手を打っていただかなければやれません。また、そのようないろいろな運びをするのに相談に乗ってください、県と市とが、私たちのこの公の使命を担ってする事柄に相談に乗る機会を定期的につくってください、こういうことをお願いし続けてきている。そのために市長にお会いしようとしてお願いするけれども会ってくださらない。やっと去年の七月三十一日に面会をしていただいたのです。
 その中で、私たちは幾つかの要望を出しましたが、一番大事なのは、協力して相談に乗っていただく定期的な機会を設けてください。検討いたしますという御返事でした。そこで、検討の結果を聞かしてくださいと何遍か言っておりますけれども、いまだに検討の結果は話されない。こういうことで、一番大事な時期が来ておりますのに、私たちが単独で進むより仕方がないという状況はまことに残念なことです。これはやはり田辺市全体の経済発展の問題と結びついて、あそこが自然のまま残るということが、いろいろ構想を持たれている開発計画との間で難しさがある、こういうことからきているのかもわかりません。ですけれども、そのような点についても私たちは十分に知り得ない中で非常に苦しんでいる実情です。
 以上でございます。
#46
○高桑栄松君 それでは最後に、木原参考人に一つお伺いして私の質問を終わらしていただきたいと思います。
 先ほど藤谷さんがおっしゃっておられたことですが、税制が先行しなければ新しい進展がないという意味のことだったと思うのです。原委員のお話でわかったことは、現実の問題としては余りケースがないのじゃないか、そういうことで、大蔵省の方もこれはためらっているのじゃないかみたいなお話だったかと思うのですけれども、また一方では、確かに藤谷参考人がおっしゃったように、あればそれじゃという、先行すれば続くということはあるかと思うのですが、その意味の相続税、贈与税ですね、そういったことについてのお考えと見通しはどんなものでしょうか。
#47
○参考人(木原啓吉君) 最近各地で、ナショナル・トラストを考えて、そういう組織をつくろうという動きが活発になってまいりまして、最初に申し上げましたのですが、自治体がこれに関心を持って、町のレベル、市のレベル、あるいは県のレベルでも大きく動き出しておりますし、また、先ほど高桑先生の藤谷参考人への御質問の中に前田一歩園のことが出ておりましたけれども、環境を守るために個人が一人で資産を拠出して財団法人や公益信託といった公益法人を組織して社会に尽くしたいという動きも、前田一歩園のほかに、例えば、横浜の家庭裁判所の調査官を三十年間勤めて退職された横浜市に住む遠藤淑子さんという方が、退職金の一部、一千万円を信託銀行に寄託されまして、それで今、多摩地方の自然保護運動の人たちにその果実を提供するということが進んでおります。そのほか企業などもそういうのをやっておりますが、こういう少数の人々の、ナショナル・トラスト運動と言っていいかどうかわかりませんが、そういうたった一人のナショナル・トラスト運動といったようなものも進んでおります。
 ナショナル・トラストを進める全国の会の会員も今四十団体ほどになっておりますが、毎年総会を開きます。第一回は五十八年に天神崎で開いたのですが、第二回は昨年十一月に横浜で開きました。年々参加者も多くなっております。しかもそれは、住民の代表だけではなくて、各地方自治体の職員の方あるいは環境庁や国の方たちもその発言を聞きにいらっしゃいますし、また研究者とかあるいは主婦の方たちも参加されますので、今後この運動は、新しいといいますか、二十一世紀を目指す一つの住民運動あるいは自治体活動の典型を切り開くものではないかと思っております。
#48
○近藤忠孝君 きょう御出席の参考人の皆さんがナショナル・トラスト問題に大変努力をされ、啓蒙活動また研究等に大変先駆的な活動をされていることに敬意を表したいと思いますし、私自身も
皆さんの運動を支持する立場から若干の質問をさせていただきたいと思うのです。
 まず藤谷参考人でありますが、私も二年前お伺いいたしまして、自分の住まい以外の土地を初めて買わせていただきまして大変ありがとうございました。そこで、民間の団体の運動が主体である、町は運動の事務局だ、まさに私はその発想に敬意を表するのですが、町として本当に住民の運動を育てょうというお気持ちからだと思うのですが、もう一つ、財政上いろいろな御苦労があると思うのですね。それからまた自治省から、こんなこと少しやり過ぎじゃないかとか、さっきちらっと、ちょろまかしたというような話もあったけれども、その辺で制度的に何らか問題があるのか、これが質問であります。
 それから外山参考人に、先ほど、大変御苦労なすって、しかもかけがえのない土地をぎりぎり確保するという最後の努力に大変な御苦心をなすっているということがわかったのですが、問題は、そこだけ確保しましても周りがどうなっていくのか。単にすぐ近くの土地の問題だけではなくて、あの付近全体、そういう点では先ほどあった火電の話、空港の話など、そういう大きな環境が問題だと思うのです。それについては、ただ、賛否を発言する立場でないという御発言もあったのですが、しかし、大変な、一番心労はその辺にあるのじゃないかと思うのですが、その辺についての、これは御感想でも結構であります。
 それから木原参考人でありますが、イギリスのナショナル・トラストについてのお話の中で、現在集まった金に対して、支出の七七%が維持管理費だというお話がございましたね。となると、イギリスでも今後継続性について問題が出てくるのじゃないか。新しく土地を確保するというのならまだ問題はありませんけれども、維持管理費にこれだけ金がかかるということについて果たして問題がないのかどうか。そしてその関連で申しますと、イギリスでこのナショナル・トラストが出現しましたのは十九世紀の末期でありますが、所有権絶対の法思想のもとですからこういう法体制が必要だったと思うんですね。
 しかし、我が国の場合には、この運動が起こったのは所有権に対しても内在的制約という考えが出ていますし、それから自然保護という、これは公共の利益のために所有権をある程度規制してもいいというこういう社会的な状況で、またそういう立法も存在しておるんですね。しかし、その法制度が十分でない、また機能も十分でないために皆さんの御苦労があるのですが、その欠陥を補完するものとしてのナショナル・トラスト運動が起きてきたという、そういう点では私はイギリスの場合とはかなり発生の経過が違うのではないか、こう思うのです。となりますとこういう日本の社会状況から見ますと、片方は所有権の横暴、それに対して所有権の絶対でもって対処するというのがこのナショナル・トラスト運動なんですね、土地を買い取るわけですから。しかし、その買い取る土地は商品としては、特に日本の場合には、日本を全部買い取る資力があればアメリカを全部買い取れる、こういう話もあるくらい大変高いわけでありますから、こういう高価な土地を購入することによって解決するという方法は、自然保護を図るための原則的、基本的方向ではないのではないか。
 私は皆さんのやっている運動を支持するので、土地を買い取ってもぎりぎりこれを守るということについては決して反対でないし、これは大変な御苦労だと思うし、むしろ全面的な応援をしたいのですが、しかし、自然保護を図るための原則的、基本的方向ではないのではないかと思うんですね。ですから、ナショナル・トラスト運動を進めるに当たって市民から寄附金を募って所有権を取得して自然保護を図るという方法それだけに頼るべきではなくて、むしろ基本は国や自治体に対して有効な法制度を、しかも果敢に適用させるという運動がむしろ同時に、あるいはもっとナショナル・トラスト運動の前段階としてやることが必要なのではないか、こう考えるのですが、これについてのお考えをそれぞれお聞かせいただきたいと思います。
#49
○参考人(藤谷豊君) 私どもが現在やっております知床の運動につきましての財政上の問題点についてのお尋ねでございますが、先ほど来申し上げておりますのは、地方公共団体がいわゆる公益信託の受託者になるという場合において大変自治省の方から問題点を指摘されておる、こういうことを申し上げたわけでございまして、現在は町が基金条例を制定し、保全林設置条例を制定いたしましていわば自治的な条例制定によりまして進めてございますから、これに対して若干の一般会計からの方の支出があるということにつきましてはそれほど問題点として自治省から指摘を受けておりません。そういう点をひとつ御理解をいただきたいと思います。
#50
○参考人(外山八郎君) 御指摘のとおり、民間の力で、特に市街地の隣り合わせのあのすばらしい自然でございますので、あれを買い戻すということはごく限られた、つまり公園指定よりもはるか以前に業者が買い取って法的に許される形で造成しようというところでしたので、その点だけはどうすることもできない、民間で買い戻して保全してもらうよりほかない、こういうことでそこだけを私たちは対象として努力をしてまいりました。しかし、その努力の中で天神崎の自然全体あるいは田辺湾の海の大事さ、そういうことも関連して、これは後世に残すべき大事な宝であるということを知っていただいてきております。そういう点で県がこの運動を評価して、県の自然保護基金を補助金として出された、田辺市もそれに応じて予算をつけられた。この点でやはり行政の面としても、あの天神崎全体を全国の方々の募金の意思に即して責任を負ったと私どもは考えております。
 さらに、私たちは田辺市に対して請願を二回しております。田辺市の将来のためにもそこの自然を後世に残すということはどんなに大事か、そのためには民間に任せておかないで市が先頭に立ってこれと取り組んでいただきたいと。それが全面的に採択されております。請願が二回採択されているという点からも、行政は私たちが買い取った部分だけというふうなことは言えない立場に立っていると思いますので、私たちは、あの半島の一番大事な部分の方向を全国の皆さんの意思で方向づけたのですから、今後に対してもやはりその線が尊重されていくであろう、そのための世論がもっと広く盛り上がっていくことを大事にして努力をしていきたい、このように思っております。しかし、かなり離れたところから、空からの火力発電のばい煙とか、あるいは人工島の影響とか、そういうことになってまいりますと本当に私たちの手の届かない心配でございます。その意味では、やはり目先の開発よりも本当に長い将来を考えた大事なことを大事にしていく、そういう行政であってほしいし、みんながその点を願い続ける目覚めた国民を、何といいますか、市民の盛り上がりといいますか、それより仕方がないと考えておるんです。
#51
○参考人(木原啓吉君) イギリスのナショナル・トラストで維持管理費が七七%も占めていると申しましたが、これはつまりイギリスのこれまで九十年間に獲得したものを維持管理することが大変に重要で、また大変なことであるということを示すものだと思います。これは当然のことでありまして、獲得した以上はそれをきちんと管理し公開する、多くの人々にそれを見てもらうというために必要だと思っております。そのためにナショナル・トラスト運動が今後頭打ちになることはないかという御質問でございますが、私はそういうことはないのではないか。やはり毎年出ます資産目録では、ことしはこういうところを買い取ったということが非常に詳しく出ておりますし、あるいは買い取るだけではなくて寄贈を受けたものが出ておりまして、かなりうまくいっているのではないかと思っております。
 その際、やはりイギリスでも買い取るだけではなくて、所有者との間に保存誓約を結ぼうという
ことが非常に最近強くなっております。一九三七年のナショナル・トラスト法の改正によりまして、この保存誓約の制度が導入されたわけですが、貴重な土地や建物を持っている人とナショナル・トラストとの間で、例えば所有者がその土地を宅地用に開発しない、あるいは木を伐採しない、建物の外部の現状を変更することをしないというような保存誓約を取り交わすことができるというものであります。そのような保存誓約をした資産には相続税の減額の特典が与えられる。この制度は我が国でも既に横浜市などでは保存樹林に対して固定資産税に見合う分を市が出しておりますし、東京でも世田谷区などでもそういう保存樹林制度がございます。今後我が国のナショナル・トラスト運動も、非常に高価な土地を買うということではそう面積を広く買うことができないことは当然でありますが、住民とナショナル・トラスト団体の間に契約を結んで保存を進めていくということが運動の進展のために非常に重要ではないかと思っております。
 私は、こういうふうにして人々がお金を出し合って、イギリスのように一人の人の一万ポンドより一万人の人の一ポンドずつというふうに、草の根の庶民がそういう環境を守るためにお金を出し合う。あるいは子供たちが学校で一人二百円ずつお小遣いをためて八千円になったので知床の基金に送る、自分たちはまだ小さいので北海道には行けないけれども、大きくなったら知床で同窓会を開くのでぜひ大切に守ってくださいというようなことを手紙に書くとか、あるいは三重県の伊勢市の七十二のおばあさんの場合は、御主人が脳溢血で倒れている、それにまた未娘が体の不自由な方だと。その二人の寝たきりの方を看病して非常に疲れているわけですが、その方が不自由な体の未娘のために一口八千円、それから七人の孫のために一口八千円、計一万六千円を送りますというふうに、恐らく生涯のうち知床に行くこともない方がこういうふうにして送ってきているわけですが、そういう教育的な効果という点で自然保護運動の中でも存在意義があるのではないかと思っております。
#52
○近藤忠孝君 立法、法制度との関係の問題ですが。
#53
○参考人(木原啓吉君) 法制度に関しても、こういう保存契約の制度というのは今後進められるべきだと思っております。
 それから、自然保護運動はいろいろな多様性を持って進められるわけでありまして、ナショナル・トラストの運動が、外山さんの運動に見られるように、最初は本当に少数の人で進められたのが、和歌山県あるいは田辺市もそれを傍観できなくなる。いわゆる自治体を巻き込んで進む住民運動ということで、これも一つの自然保護の非常に重要な運動の仕方ではないか。その点では、琵琶湖の周りの主婦の方たちが燐を含んだ合成洗剤をやめて粉石けんを使う。この運動は昨年世界湖沼環境会議が開かれたときに発表されまして、世界各国から参加した研究者あるいは自治体、それに住民運動の方たちが非常に強い感銘を受けたわけですが、そういう自分たちのライフスタイルを変えてまで自然を守ろうという、敵は我々自身の中にもあるのだということを自覚しながら運動を広げていくという、そういう運動の倫理性と、それに伴うモラルの、士気の高揚といいますか、そういう点でも注目すべきものではないかと私は思っております。
#54
○近藤忠孝君 終わります。
#55
○中村鋭一君 参考人の皆さん方、きょうは大変御苦労様でございます。私は、個人的にも、実は江州の出身でございますので、琵琶湖という大きな湖を持っておりますので、自然環境を広い意味で保護して、それから貴重な文化財を大切にして後世に伝えるということにつきましては人後に落ちない熱意と情熱を持っているつもりでございますし、これからも立法府の一員といたしまして、むしろ私の政策課題の第一等にこれを掲げて今後も行動するつもりでございますので、ひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと、こう思います。
 木原先生にお尋ねいたしますが、このナショナル・トラスト運動の、少し私自分の観念を整合するためにもお聞かせ願いたいのですが、定義といいますか、例えば自然環境を良好に保存するためにナショナル・トラスト運動が始まったということでありますが、その場合における自然環境というものは何でもいいというものでもないと思うんですね。だから、どういうような条件がある場合にこのナショナル・トラストというものが発生すべきであるのか、こういう運動が進められるべきであるのか。
 これは木原先生の最初のお話にもありましたけれども、最初は美しい景観とか自然環境ということなんでしょうが、だんだんとこれが、例えば文化財でありますとか、古代遺跡あるいは遺構、それからまた、場合によれば絶滅を心配される動物にまでこういった運動が適用されるということになりますと、やはりそういった場合の定義というものをはっきりしておかないとだんだんとあいまいになってくるような気もするのですけれども、今現在、先生の御認識によりますそういった定義ほどの辺にありますでしょうか。
#56
○参考人(木原啓吉君) ナショナル・トラストとは、私なりの定義としましては、例えば、野放図な開発や都市化の波から自然環境や歴史的環境が破壊されるのを未然に防止するために、住民やあるいは自治体が中心になって広く国民から基金を募って土地などを買い取り、あるいは寄贈を受けて保存、管理、公開する運動であると考えております。今、中村先生のおっしゃったとおりに、私は自然環境と歴史的環境、その双方にわたって広く進められるべきものだと思っております。
 イギリスでは、一八九五年にスタートしたときからイギリス国民の誇りとする自然環境と歴史的環境を守ろうという形でスタートしました。我が国では高度成長期が始まりました昭和三十年代の半ばごろから、公害も自然破壊もあるいは歴史的環境の破壊も同時に並行して発生したのですが、余りにも公害が激しかったために、例えば、水俣病あるいは四日市ぜんそくとか、そういう世界に類のない非常に激しい公害があったために、人々はまず目の前の公害を解決しようというふうに取り組んだわけでありますが、そういう公害と取り組むことによって人々の環境を見つめる目が鋭くなって研ぎ澄まされて、改めて身の回りを見て自然破壊のひどさに気づいた。
 昭和四十五年ごろから各地で自然保護運動が起こってきたのですが、さらに五十年代になりましてから、各地で今度は第三の段階として歴史的環境の重要さということに気づいてきたと思います。すなわち、公害が人間の肉体に対する攻撃であるとすれば、歴史的環境の破壊は人間の精神に対する攻撃であり、破壊であると思います。そのように、住民が公害という現状を横に切る横軸の視線と、歴史的環境という時代をつなぐ縦軸の視線、あるいは空間軸と時間軸の双方から総合的、立体的にとらえるようになったと思います。
 それで、我がナショナル・トラスト運動もまたそのように、今は自然環境の保全が非常に正面に出ておりますが、既に長野県に一昨年、財団法人妻籠宿保存財団ができましたし、またこの六月にスタートしました神奈川のナショナル・トラスト運動でも自然環境と、また自然環境と密接な関係にある歴史的環境というふうにうたっておりまして、今後この二つが総合的にとらえられていくのではないかと期待しております。現に、全国歴史的風土保存連盟の会議、あるいは町並み保存連盟の会議でも常にこの歴史的環境のナショナル・トラスト運動を推し進めようということが話題になっております。
#57
○中村鋭一君 その今の町並み保存なんかは、これは自然環境とはまた別の次元で、御説明でよくわかるのです。滋賀県でも例えば近江八幡市ですね、あの近江八幡の町並み保存、これをナショナル・トラスト的にとらえて地元のJCの諸君なんかが頑張っておりますね。それから八丁堀、たしか、かんがい用のクリークがございます。あれも
今地元の皆さんが非常に熱心に取り組んでおられる。それはわかるのですが、例えば先生、トキですね、あるいはニホンカワウソ、こういったものの絶滅が心配されておりますね。こういうものにはいろいろな行政面または立法面からの保護措置が既に加えられているわけでございまして、こういったものを将来、例えばナショナル・トラスト運動の一環として滅びゆく動物を守ろうといった場合に、それは既にあります法的規制あるいは法的保護措置と整合するものでしょうか。
#58
○参考人(木原啓吉君) 非常に望ましい形としては整合するものだと思っております。ただ、そういうトキとか貴重な絶滅の危機に瀕した動植物については、それぞれの法律がありまして、御存じのとおり行政が動いているわけでございますが、例えば鹿児島県の出水のナベヅルが物すごくふえまして、そういうものの保存に対して、どうすれば保護していけるか、周りの田んぼのえさを害するというようなことがあるのですが、そのときに地元の小学校の子供たちがお金を出し合ってッルのえさ代を出して、一カ所でツルが食餌をすればほかの方へ飛んでいかないというふうにしてやっておりますが、これなども一種の子供ながらのナショナル・トラスト運動ではないかと思います。
 それで、本来そういう貴重な動植物は国で管理するわけですけれども、やはり住民がそういうものに対する強い関心を持つということで、ナショナル・トラスト運動は単に保護管理するだけではなくて、そういうものに携わる一種の住民参加といいますか、そういうことを通じて住民の環境観が変わる、あるいは日本の文化が変わっていく一つの手だてになるのではないかと思って期待しているわけでございます。
#59
○中村鋭一君 先生、私が少し心配いたしますのは、今のナショナル・トラストが自然環境の保護にある程度リミテッドされていればいいのですけれども、こだわるようですが、例えば、動物なんかになりますと、ニホンカモシカがふえますね、そうすると、例えばニホンカモシカを大事にしようというナショナル・トラスト的な運動が始まった場合に、一方では林害を引き起こすからこれはある程度間引く必要があるという強い意見があるわけです。その辺でいわば法というもの、行政というものとナショナル・トラスト運動が先鋭に対決をしていく方向に向かっていったのではぐあいが悪いので、そういうものにはやはり明確な定義を将来ともにつくっていく必要があるのではないだろうか、私の個人的な所感でございます。
 現在、先生の方で、既に運動があるものだけではなくて、将来、日本列島で、特に自然環境の保護というものに限定いたしまして、その対象の適地というものをもし把握しておられましたら何カ所で、その面積はどれぐらいあるかということを御存じでございましたらお教えいただけますか。
#60
○参考人(木原啓吉君) これまでに展開されている自然保護の場所はかなりあるわけですが、今後どれぐらい出てくるかというのは地元のナショナル・トラスト運動を進めていく住民の意思といいますか、そういうものとの関係でありまして、そこに自然があるから自動的にナショナル・トラスト運動が起こるということは、今までの外山先生などの御発言でもわかりますとおり非常に大変なことでありまして、法律では規定されていないけれども、身近な自然、いわゆる法律に指定されないのは白地地域と言いますが、白地地域に対する関心というのがだんだんと強まってまいりますので、ちょっと今ここでどれほどということは説明できませんけれども、そういう可能性は人々の環境観が鋭くなるにつれて広がっていくのではないかと思っております。
#61
○中村鋭一君 藤谷参考人がおっしゃいましたけれども、藤谷さんが町長をしていらした、それで後任の町長さん、これはしっかりやっていらっしゃる。将来斜里町の町当局の意思が変わるかもわからない、こうおっしゃいましたね。それは今現にやっていらっしゃる皆さん、買う側に回られた皆さんの意思が将来変わらないとも限らない。我々ここに何百人連名で署名を集めてきた、一たん買い取ったのだけれども都合で返してもらいたいというようなことを申し入れる人がないとも限りませんね。だからこそ立法化ということをおっしゃっているのだろう、こう思いますけれども、どうなんでしょう。
 今現に、例えば天神崎にいたしましても、知床にいたしましても、天神崎は住民運動ですね。斜里町の場合は行政当局がやっていらっしゃるわけですが、一応いろいろな取り決めをしていらっしゃいますが、それは法律ができるまでは十分にそういった懸念を担保し得るだけのものは既につくっておられるのでしょうか、それとも悪い人がいて、つけ込めばつけ込み得る余地は、悪く利用するためにあるものなんでしょうか。
#62
○参考人(藤谷豊君) 先ほど来、私何回か申し上げておりますように、斜里町の場合は自律的なものでありますけれども、条例を制定いたしまして、我が町はこの方針でいくのですよということを天下に表明しておるわけでございます。 いわゆる基金条例がありますから、これに参加してくださる方はこれこれの仕事をして、こういうことをやるのですよという目的を明確にしておるわけであります。もちろん、人間の気持ちでありますから変わるかもしれませんけれども、少なくとも、我々は皆さんの意を体して、しかも、こういうことをやるのですから皆さんそれぞれ参加をしてください、応援をしてくださいということで、目的をはっきり知っておりますので、参加された方々は途中で変わることは私はないと思っております。
 ただ心配なのは、首長がかわるあるいは議会の皆さん方がかわっていくということになった場合、条例というのは町の条例でありますから、条例を変えることはできるわけですね。だから、そのときに処分をしようじゃないか、あるいは用途変更をしようじゃないかというそれが一番怖いわけでございます。やはり地方自治体でありますから、自分で条例をつくった以上はこれを守っていくのは当然だと言えばそれまでですけれども、やる気になれば幾らでも変えられるということですから、さらに国の方で規制をするような、そういうことをやろうとしても地方自治体だけではやれないよといったような規制が欲しいというのが運動を展開した張本人の私の気持ちなんでございます。
 ところが、自治省では、そういう自分の意思でもって用途変更なり売却なりその他ができないような財産を地方自治体が持つということ自体がおかしいではないかとは言っています。しかし、これは公益信託の場合でありまして、今はそういうことでやっておりますから、現在やっております関係については自治省からの特別な指摘もございませんので何とかやれるだろう、こう思っておるわけでございます。
#63
○中村鋭一君 私は、ナショナル・トラスト運動そのものがやはり住民の意思に基づいてあるものですから、やはり矛盾する点があると思うんですね。というのは、法律というものはそういった住民運動をエンカレッジする限りにおいてはこれはいいと思うのですよ。しかし、それが今、藤谷さんがおっしゃいましたように、皆さんの方から法律をつくってくれ、ナショトラ法をつくってくれ、こうおっしゃいました。つくりますね。しかし、今、自治省のお話にもありましたように、法律というのはひとり歩きし出しますと結果においてそれをエンカレッジするというよりも、むしろ介入したり制肘したりする働きがあってはいけないと思いますので、これは我々立法府の人間もその点は十二分に気をつけてこういった法律なんかつくる場合はやっていかなければいけない、こう思います。
 終わります。
    ─────────────
#64
○委員長(粕谷照美君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、片山甚市君が委員を辞任され、その補欠として浜本万三君が選任されました。
    ─────────────
#65
○木本平八郎君 私も、今中村委員から問題提起がありました行政と国民運動との限界というか、あり方という点について外山さんにまずお伺いしたいわけです。
 先ほどお話がありまして、天神崎のいそに微生物がおる、それから山の方に上がっていきますと、あそこを荒らされるとまたいその方の生態系も変わるというふうなことも大分いろいろ現地でもお伺いしたわけですけれども、例えば、将来小学生がどんどんあそこへ見学に行く、そのために生態系が狂ってしまうという場合に、先ほどは行政によって中へ入る車とか何かを規制しなければいかぬというふうにおっしゃいましたけれども、今、中村さんからもちょっとそういう話がありましたが、行政がそういうことに対して介入するというのは私は反対なんですね。むしろ、そういう状況になれば国民運動の皆さん方が来る人たちに訴えて、ここはもう汚さないでくれ、こういう状況で一年間はここを育てるために閉鎖しますので御協力くださいとかいうことでやはり説得する必要があるのじゃないか。だから、今お話がありましたように、エンカレッジしてそれをつくり上げていくためには行政がうんと協力しなければいかぬ。しかしながら、でき上がってしまったもの、あるいはその管理維持というのはあくまで住民というか、その国民運動をやった人が中心になってやっていくということが必要なのではないかという気がするわけですね。
 それからもう一つは、自然保護というのはあくまで人間のためですから、人間が生きていく、人間が中心なわけですから、ただ単に何でも自然のままにほうっておけばいいということじゃなくて、人間が生活していくためにいいように保つ。だから、小学生の勉強になる、後世の子孫のための一つの教育になるという面では生かさなければいけないので、幾ら保存だといって、永久にそこを囲って鉄条網を張って中へ入れなくしてしまったんじゃこれは意味がないのではないかというふうに思うわけです。その辺のまず御意見をお伺いしたいわけです。
#66
○参考人(外山八郎君) 私たちが説得をして、皆さんに自然をつぶしてしまわないようにという方法でやるのが確かに理想でございます。しかし、大変な数でございます。既にNHKの教育テレビを見て百校に余る学校の子たちが真剣に作文を書き、お金を集め、また自分たちも訪ねていきたい、こういう動きがございますし、また観光業者もバスを仕立ててあそこへ送り込んでくる動きが出ております。しかし、それに対して私どもは、普通の観光とは違いますから短時間見て通られるだけでは何にもわかりません、十分時間をかけて学んでいただきたい、こういうことで理解のある方々をお迎えできるような工夫をしております。
 しかし、それに対して、私どもみんな仕事を持っておりますからお世話をすることができません。それが対応できる範囲で踏みとどまってくださればいいのですけれども、自由にバスで送り込んでこられます。ですから、そういう場合についてもやはり行政が一方的に動くのではなくて、私たちの願いと相談に乗ってくださって、その辺に適当な規制を加えてくださるということができればずっと違ってくると思いますし、私たちはそういう理解のもとで、釣りをする人たちにもみんな御協力を仰いでいこう、こういうふうに考えております。ですから、やはり公の力に頼り切ってしまうという気持ちはないのですけれども、私たちが正面に出ますと、余計なことをしてくれた、そのためにみんなが迷惑しているというふうに言っている人たちもいっぱいいるのです。そういう中でのまことに苦しい歩みでございまして、本当に理解をして御協力いただく形をできるだけ進めていけるように今後も努力をいたします。
#67
○木本平八郎君 確かにそうだと思いますね。それで、日本人の悪いところで、今まで天神崎というのは全然知らなかった、NHKで放送されて一遍にわっと行っちゃうというふうな、行って踏みつぶしてめちゃくちゃにしてしまうというふうなことがあって、自然保護をしようと思ったのがかえって自然を破壊しちゃったという結果になりかねない。
 私は先ほどからのお話を聞いていて思うのですけれども、英国なんかの場合は長い一つの伝統と歴史がありまして、ナショナル・トラストというのは一つの文化になっていると思うんです。ところが、日本の方は、まず国立公園だとか環境保全というのは政府ベースというか行政ベースできて、それから国民運動というのは非常におくれてきた。今もう大急ぎでキャッチアップしているというところで、その辺に非常にギャップがあって、今後はやはり今おっしゃったように、どういうふうに国民運動をしていくか。例えば、バスのガイドさんがこの自然はこういうことなんで皆さん余りミカンの皮なんか――まあミカンの皮どころじゃないでしょうけれども、こういうふうにしてくださいとか、みんながやはりわかって、自分で自分たちを規制していくというふうな方向に持っていかなければいかぬことは確かだと思うのですね。しかし、私がこういうものについて非常に考えるのは、行政が余り関与してくるとどうしても責任の問題がありますから、完璧主義をとっていってかえってぎくしゃくしていくのじゃないか。したがって、今、外山さんがおっしゃったように、やはり協力はしてもらわなければいかぬけれども、行政が前に出ていくというのは反対だと思うのです。
 その点藤谷さんにお伺いしたいのですけれども、私は知床に行きまして、町当局の行政が非常にうまくやっているという感じなんですね。そうしますと、そこに環境庁長官がおられますけれども、行政が出ていく限界は斜里町のようなああいう単位がもう限界じゃないかという気がするのです。それで斜里町の担当の方の話を聞きますと、自分で長靴を履いてクマザサの中へ入っていき、いろいろ植樹なんかもやっておられますね。ああいうふうに本当にわかっていて、本当に情熱を持ってそこをかわいがっている人が行政をやっていくというのなら非常にうまくいくのじゃないかと思うのですけれども、その辺は実際におやりになって、そこでも北海道庁とか環境庁とかいろいろ指導もあると思うのですけれども、その辺はいかがでございますか。
#68
○参考人(藤谷豊君) 私もう現職を離れておりますので、職員の意識がどういうふうに変わったのかわかりませんけれども、少なくとも私がこの運動を始めるときにおきましては、町の条例で方向を定めて、これは我が町における極めて重要な行政行為であるということで、したがって、職員たる者はこのことについては全力を挙げて推進をし、実行し、実効の上がる方向で皆さん方にお報いしなければならぬ、こういうことを実は全職員に向かって私は言ってまいりました。幸いにしてこのことを理解いたしまして、今この運動を進めております斜里町の職員は、少なくとも誇りを持ってこの仕事に携わっているというふうに私は確信をしております。誇りに持つくらいの仕事でなければいかぬというふうに行政の当事者はやっていっていただきたいものだと私は希望したいと思います。
#69
○木本平八郎君 確かに、現地へお伺いしますとそういうふうな意気込みというか、そういう心構えで職員の方がやっておられるということも非常によくわかるわけです。したがって、そういう点で自治体が先頭に立ってああいうことをやられたというのは非常に大成功だと思います。
 もう一つお聞きしたいのですけれども、知床五湖の方へ行く道ですね、何か横断道路と分かれて、あそこが夏になったら物すごく込むんで、駐車場をつくってそこからバスで運ぼうというふうなことをお考えのようですし、それから、今現実におやりになっているかどうか知りませんけれども、小学生の教育を目的としてあそこでキャンプなんかをやらして、生活体験をやらせようというふうなことをいろいろお考えなんですけれども、今あそこの維持は町当局も多少補助されているのですか、それともこの集まった基金でやっておられるか。ということは私は、阿寒の方ではみんな
各駐車場が、あれは何というんですか、別の法人みたいにしてそして非常に自治的にやっていますね。そういう点でやはり今後あれを維持をしていくためには何かそういう収入源を確保していかなければいかぬのじゃないかと思うのですけれども、私、ちょっとあの辺で聞き漏らしたんですけれども、どういうふうにおやりになっていますか。
#70
○参考人(藤谷豊君) 今のお話と、この百平方メートル運動というのは実は余り関係がないのでございます。百平方メートル運動の方は、あくまでも旧開拓跡地の民有地を買い上げて、そして適当なところには木を植えていく。ということは、自然の昔の景観を回復させるということが目的でございます。それと、今、先生が御指摘になったのは幌別地区というところなんでございますが、あそこは国道が今の知床峠の方へ上っていくところと、それから奥知床というふうに我々は呼んでいるんですけれども、さらに知床五湖とかそういうところへ行くところが二つに分かれるところなんです。
 これは別の考え方で、やはりこれからの知床の本当に自然性を守るためには、あそこのところでマイカーをストップさせてしまって、そして専用のバスを通しまして、それに乗りかえてもらうときにそのバスの中にいわゆる自然の案内人を乗せる。植物、動物いろいろな関連がありますから、ここからここにはこういうものがあるとかなんとかというようなことをそれぞれあれしながら、要するに自然教育の場をバスの中でやろうと、こういう計画をまず持っております。それから、もちろんマイカーをストップさせるわけですからモータープールが必要であります。
 それからさらに、青少年の自然教育の場であるというために子供たちの研修施設をつくりたい。それからこの百平方メートル運動のお名前を、先生も見ていただいたと思いますけれども野ざらしにして立ててございます。これは永久に地主さんでございますので――私どもは地主と言っているのですから、地主さんの名前をあそこに野ざらしにするわけにはいかないので「百平方メートルハウス」というものを来年建てます。これは百平方メートルの建物を建てます。この中の内壁にお名前をずらっと並べょうと思っている。先ほど木原先生もおっしゃったように、ここにみんなが来て、子供たちや参加した人たちが来て、何か会合を開こうじゃないか、クラス会をやろうじゃないかというときにはこれを使いなさいよというような、そういうスペースをここにつくってあげたい。このくらいのことを大体あそこに集約させて、あとはもう一切マイカーは入れませんというような、そういう新しい利用方法を考えていきたいというのが目的でございます。
#71
○木本平八郎君 終わります。
#72
○委員長(粕谷照美君) 以上で、本日御出席をいただきました参考人に対する質疑は終わります。
 参考人の皆様に一言お礼を申し上げます。
 本日は貴重な御意見をお聞かせいただきまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 この際、理事会の御了解に基づきまして、本日のテーマでありますナショナル・トラスト問題について、私から環境庁長官に若干御質問いたします。
 第一問。ナショナル・トラスト活動が円滑に発展するためには、税制面の配慮が重要であります。今年度から所得税、法人税等について税制上の優遇措置の道が開かれたことは、その発展を促す上で大きな役割を果たすものと期待されます。しかしながら、この優遇税制の適用の準備がまだ整っていない団体もかなり多いものと思われます。今後の指導の方針をどうするのか、また、来年度に向けて税制改革を一層進めるためにどのように対処するつもりか、お伺いをいたします。
 第二問。ナショナル・トラスト運動を進めている人々から法制定の要望が出されています。一つは、法制化によってナショナル・トラスト運動の目的、方針等が明確にされること。二つは、保全すべく定めた地域についての継承に安心感が生ずること。さらに、運動の奨励的性格を持たせ得ること等の期待がかけられています。環境庁長官の現段階における法制化への考え方及びナショナル・トラスト運動に対する今後の取り組みの方向を示されたい。
 第三問。近年、住民がみずから土地を買い取るなどして自然を守っていこうとする気運が広がってきた背景には、土地利用規制が有効に機能していない点が挙げられると思います。今後、自然保全の実を上げていくためには、各省にまたがっている土地利用規制の運用を積極的に行い、ナショナル・トラスト運動と協力していくことが必要であります。環境庁長官は都市近郊の身近な自然環境の保全についてどのように取り組まれるのか、お聞かせ願いたいと思います。
 第四問。ナショナル・トラスト運動を進めるには、住民の自発性と地方公共団体の理解と協力が不可欠です。特に地方公共団体の理解と協力については、予算の面等よりも当該地点の自然を守るという方針を確立することが一番大きな支えになります。この点についての環境庁の働きかけに期待したいと思いますが、長官の決意はいかがですか。
#73
○政府委員(加藤陸美君) 大臣にお答えいただきますが、その前に若干事務的な部分がございますので、特に一番最初の御質問の部分を中心にいたしまして、かわってお答えさせていただきたいと思います。
 実は、今般税制上の優遇措置がとられたわけでございます。この点につきましては、委員長の御質問の中にあったわけでございますが、この税制上の優遇措置はナショナル・トラスト活動を進める公益法人について適用されるものでございます。したがって、その適用を受けますためには、公益法人になるといった一定の要件が必要となっておりますことは御指摘のとおりでございます。環境庁といたしましては、今般の措置の内容の周知に努めますとともに、関係者からの相談にも十分対応して、御相談に乗ってまいりたいと考えておるわけでございます。
 また、都道府県、市町村の皆様方、地方公共団体の皆様に対しましてもこの旨の御指導を申し上げているところでございます。私ども常日ごろ都道府県及び市町村の長の方及び担当の方々と、自然保護の問題はもとよりでございますが、幅広く環境一般の問題について情報連絡を密にいたすべく努力しておるところでございますが、このような常日ごろの連携を持っておりますので、それを活用いたしまして、委員長の御趣旨が生かされますようにいろいろと知恵を絞って努力してまいろうと思っております。
#74
○国務大臣(石本茂君) 第一問、続きまして私からお答えいたします。
 ナショナル・トラスト活動を一層推進していくためには、相続税に関する特例を設けるなど、今後とも税制改正を一層進める必要があるというふうに考えております。
 なお、環境庁としましては、税制改正の実現へ向けまして関係方面と連絡をとりながら積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 それから第二問につきましてでございますが、我が国のナショナル・トラスト活動の現状から見まして、法制化の問題は今後の活動の方向を見きわめまして、そして活動の自主性を尊重しながらどのような内容のものとすべきかを検討すべきではないかというふうに考えております。なお、環境庁としましてはこのような問題点の整理を進めるほか、普及、啓発活動を行うなど、今後とも活動発展のための基盤整備に積極的に取り組んでいかなければならないというふうに考えております。
 それから第三問でございますが、今日、生活の質の向上を求める国民の声が非常に高まってきております。身近な自然環境を保全しまして、緑が豊かで潤いのある快適な環境を創造していくことがますます大切な課題となってきております。環境庁としましては、自然公園法などの適切な運用
や、特に都市近傍におきましての野鳥との触れ合いを図るための「小鳥がさえずる森」でございますとか、あるいは大都市近傍において身近な自然に親しむための「自然観察の森」でございますとか、母と子がともに自然に接することを通じまして、子供たちのみずみずしい感性や創造力を身につけるための「母と子の森」などの整備を進めるとともに、関係各方面とも十分な連絡をとりながら、身近かな自然環境を保全し、緑豊かで潤いのある快適な環境の創造ということに努めていきたいというふうに考えております。
 それから第四問でございますが、ナショナル・トラスト活動はそれぞれの地域の貴重な自然を守ろうとする活動でございまして、地域の自然保護にかかわり合いの深い地方公共団体の理解と協力が必要不可欠なことは言うまでもないことであるというふうに考えております。環境庁としましては、御指摘の趣旨を踏まえまして、地方公共団体に対しナショナル・トラスト活動への理解と協力を引き続きお願いしてまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
#75
○委員長(粕谷照美君) 以上をもちまして本件に対する質疑は終了いたしました。
 この際、丸谷君から発言を求められておりますので、これを許します。丸谷君。
#76
○丸谷金保君 私は、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案によるナショナル・トラスト運動の促進等に関する決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   ナショナル・トラスト運動の促進等に関する決議(案)
  近年、国民の間では身近な自然や歴史的環境への関心が高まり、自然の風景地、歴史的建造物等を自らの手で保全しようとする運動が盛んになってきている。
  このような運動に対して本年度から税制上の優遇措置の途が開かれたことは、その発展を促す上で大きな役割を果たすものと期待されるところである。
  政府は、この機会に更にナショナル・トラスト運動を発展させるとともに、自然環境の保全を推進するため、左記の措置を講ずべきである。
 一、ナショナル・トラスト運動に対する税制優遇措置を拡充するとともに、必要な法制度整備の検討を含め、有効な育成策を進めること。
 二、関係諸法令等を最大限に活用すること等により、都市近郊等の身近な自然環境の保全に万全を期すること。
 三、自然公園等の民有地買い上げ制度の積極的活用を図ること。
  右決議する。
 以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#77
○委員長(粕谷照美君) ただいまの丸谷君提出の決議案を議題とし、採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#78
○委員長(粕谷照美君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、石本環境庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。石本環境庁長官。
#79
○国務大臣(石本茂君) ただいまの御決議につきましては、その趣旨を体しまして、今後十分に努力する所存でございます。
 ありがとうございました。
#80
○委員長(粕谷照美君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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