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1984/03/15 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第2号
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1984/03/15 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第2号

#1
第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第2号
昭和六十年三月十五日(金曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    小委員長        大木 正吾君
    小委員
                大坪健一郎君
                倉田 寛之君
                高平 公友君
                松前 達郎君
                中西 珠子君
                柳澤 錬造君
    外交・総合安全保障に
    関する調査特別委員長  植木 光教君
    小委員外委員
                安孫子藤吉君
                石井 一二君
                関  嘉彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   参考人
       在日米国商工会
    議所会頭 ハーバート・F・ハイディ君
       京都精華大学教
       授  クントン・インタラタイ君
           (通訳 橋本 敬子君)
           (通訳 蜂屋美季子君)
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際経済問題に関する調査
 (経済摩擦に関する件)
    ─────────────
#2
○小委員長(大木正吾君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会を開会いたします。
 国際経済問題に関する調査のうち、経済摩擦に関する件を議題といたします。
 本日は、国際経済摩擦について、参考人として在日米国商工会議所会頭ハーバート・F・ハイディ君の御出席をお願いいたしております。なお、本日の通訳は蜂屋美季子さん及び橋本敬子さんの両君でございます。よろしくお願いいたします。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方におかれましては、本日は御多忙中のところ、当小委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 さて、本日の小委員会は、現在国際的な懸案となっております国際経済摩擦問題について広く外国の方から御意見を聴取し、もって問題を的確に把握し、今後の対策の樹立に資するための会議でございます。したがいまして、参考人の方には忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 最初にハイディ参考人に五十分程度、御意見をお述べいただき、その後、小委員からの御質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言の際はその都度小委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 それでは、ハイディ参考人にお願いいたします。
#3
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君橋本敬子君通訳) 小委員長また議員の先生の皆様、御参会の皆様、まず冒頭に、私、在日米国商工会議所にかわりましてごあいさつを申し上げたいと思います。また、日本における米国の財界人の意見をあらわす場としてこのような会合に出席させていただいたことに対し、お礼を申し上げたいと思います。きょう、日米間の貿易問題に関するさまざまな問題についてお話しすることに私は本当に熱意を持っております。
 在日米国商工会議所は、現在米国の五百七十五社を代表する千五百名までの大きさを誇るほど成長してまいりました。我々の在日商工会議所には二十二の常設委員会がございまして、その中の十五委員会は特に貿易問題だけを取り扱っております。この委員会の仕事は、米国商工会議所の仕事の背骨となる中心的な作業であります。日本、それから米国の政府及び政府機関の同僚の皆様とともに日米間の貿易問題を一緒に研究し、勉強し、そして日本における我々の商業面での仕事の理解を深め、問題の解決に我々の商工会議所は当たっております。
 また、我々は、経団連、ジェトロそれから米国本国における商工会議所やほかの機関とも密に連絡をとっておりまして、その作業を通じて現在の貿易摩擦を解決し得る問題にかえていこうと献身的に努力をしております。この精神にのっとって、また率直に、きょうは米国財界人から見たところの現在の状況についてお話しさせていただきたいと思います。
 過去三年間、米国の景気は上向きになり、それはかなりの強さを持っています。にもかかわらず、米国では保護主義立法の動き、また、それに対する声がかなり強く聞かれるようになりました。そして、もし日米双方の政府が迅速にそれらに対して共同の行動をとらない限り、我々の自由貿易体制そのものがかなり影響されてしまうものだと考えます。諸国間の自由な諸商品や財の交流、すなわち開かれた貿易体制は米国の国際貿易場面における指導力の基礎となる一部分で今まであってきたわけです。
 我々がよく知っているように、自由貿易体制は我々の国の経済全体にとって最良の方法だと考えておりますし、専門家もそのような意見を述べております。これは国内の競争にしても、外国からの競争にいたしましても、競争があるということは最もコストを下げようという努力を促しますし、また、消費者を満足させるために最も低い価格で商品を売ろうという、生産性を上げようとする力も競争は持っているわけであります。
 また、開かれた貿易体制はインフレ圧力も抑えます。というのは、消費者のお金を得ようと競争しながら財やサービスの供給をふやすことによってインフレ圧力を抑えてきたわけであります。また、民間における決定に対する政府の役割も最小限に抑える効果を持っておりますし、それによって市場における決定を、個人または会社自身が政府の介入なくして行うことができるわけです。
 保護主義を訴える声は我々の周りに多く聞こえるようになりました。また、巨額になってしまいました対外貿易赤字の問題を解決するために、輸入課徴金をかけようという考え方も最近聞かれるようになり、米国議会でもこの考え方が信憑性を持つようになってまいりました。ほかのいい代替案が余りないということ、そして恐怖感がこれに伴い、すなわち何かほかの絶対的な行動がすぐ必要なのではないかという恐怖感がこれに加わりまして、保護主義を、または輸入課徴金をかけるというような考え方が人気を博すようになってしまったわけであります。
 我々は、そのような課徴金が実施されますとかなり悪い影響が出てきてしまい、円高がさらに傾向として進んでしまうのではないかと心配しておりますし、それによってインフレも再発するのではないかと心配しております。在日米国商工会議所は、保護主義を決して賛成はしておりません。しかし、もし日米の両国が我々の間に存在する貿易の不均衡を是正するような即座の手段をとらない限り、深刻な保護主義の圧力が実ってしまうのではないかと懸念しております。現在では、日本の政策はどのようなものであるかというのが米国の中心的な貿易論争となっております。そして日本の財界、政府の指導者から支援を得ない限り、米国では破壊的な保護主義の波が打ち寄せてくるのではないかと思われます。
 最近、米国本土の商工会議所の会頭のリチャード・レッシャー博士が講演を行い、その中で次のように言っております。一九七〇年代にインフレは二けたに米国でなり、税率は高く、そしていろいろな規制が大きな負担となったので、経済はその重荷にかなり苦しんでいて、多くの経済学者は、これではドル安がさらに進んでしまうのではないかとドル安について心配したわけであります。ドイツマルクやスイスフランに比べますと、当時の米ドルはかなり弱くなってしまった。それによって、海外に行っても米国人の賃金や貯蓄が余り価値を持たないので、アメリカ人はそのためにより貧乏になってしまっていると当時言われたわけであります。しかし今日、この同じ経済学者は、新しい心配を抱えるようになりました。それはドルは強過ぎるようになったという心配です。
 一回目の経済学者の予想は確かに正しかったわけであります。ドルがそれだけ弱かったというのは、米国経済に対し不信任投票が行われたという意味であり、税金が高く、また余りにも規制が多かったために、米国は投資の場所として余り魅力がなくなってしまっていたわけであります。当時は、ドルで自分の貯金をふやそうと思っても、毎年一〇%ぐらいインフレのためにドルの価値が下がってしまうので余り貯金をしたがらなかったわけであります。しかし、それに対して、対照的に今日はほかの国の通貨に対してドルは記録的に高値を示しております。これはなぜでしょうか。それほどこの状況をわかるのには難しくはないと思います。
 というのも、米国経済は今非常に強く、また米国人そして世界は、米国経済またその将来に対して自信を持っておりますし、米国の政治的、経済的な強さが投資を促し、そして記録的な高いレベルまで押し上げているのではないかと思われます。過去二年間、米国の経済成長により七百万の新しい職場が提供されたわけであります。この七百万という新しい職場の数は、自由世界全体が過去十五年間創出した雇用機会に相当するものであります。ですからこそ、ドルはタカのように空を高く舞い上がっているわけであります。
 ドル高というのは、私どもが今までよりも少ないドルで外国製品を、またサービスを買うことができるということを意味しています。問題というのは、ではこういうことは本当に悪いことなのだろうか、なぜだろうかということです。よくドル高に対して言われている論点というのは、ドル高になりますと、他国がアメリカ製品を買う場合に非常に高くついてしまう、そのためにこれが貿易不均衡を起こすのだという論議であります。
 まず第一に、アメリカは最大の輸出国であります。今もそうでありますし、我々の輸出は下がるどころか上昇しておりまして、これは特にドル高の期間にそれを保持することができているわけです。第二に、もし外国製品との競合が非常に心配であるとしたならば、インフレの再燃を促し、そしてドル安を促すよりももっといい方法が考えられるのではないかと思います。
 アメリカの輸出を奨励するために考えられることは、私どもが関税引き下げの交渉をし、そして非関税障壁を取り去るような努力を交渉でもって行うということです。そしてこれらは現在存在するものであり、これらが出てきたのは、皆様方の国内そして経済の業界をこうしたならば助けることができるであろうという近視眼的な考え方から出たものであると考えています。ですから、私どもとしてはアメリカの製品のコストを下げるように努力し、そしてまた減税によって私どものアメリカの事業者や、また労働者の規制や税金面での負担を少なくしてあげるということが必要であると思います。
 日本におきまして営業しております一アメリカの企業として、私はこのドル高の問題というものを私の事業の観点から少し見させていただきたいと思います。
 一九八四年の第四・四半期に、私どもは一九八五年度の我が社の売り上げ、歳入、経費、利益という面で財務計画を立てました。私どもはこの事業計画を本社の方と十一月に話し合いまして、予算を援助してくれるように、サポートしてくれるように交渉したわけです。そして、私どもの話し合いでことしの交換レート二百四十一円で同意いたしました。御存じのようにこの交換レートは、ことしの年頭から二百六十円レベルになっております。ですから、これが私の会社にもたらした結果は、私どもの本部から製品を買うときに私は七%プラス以上に払わなければならないということになったわけです。それプラスで私どもがこの製品を日本で売ることになりますと、結果として利ざやも非常に少なくなってしまいます。つまりこれは、意図するところは、もう一つこの欠陥を補うために私どもは今四半期の私どもの財務計画を到達させるために、日本で物を私どもの会社から売るときには値上げをし、そして私どもの会社の生産性を向上していかなければいけないということを意味します。
 経費の項目では、私としましてはこの投資計画を引き続いて行うことができればと望んでおります。そして、そのためには日本における私どものエンジニアリング関係、製品開発の活動をさらに開発していかなければいけないと思います。これはもし私どもが今つくった収入や利益のゴールを維持することができなければ、配当金からそれらを支払うというよりも別の方法から市場によって資金を調達しなければいけなくなるであろうということです。
 私どもの方では新しく新社員を二百人雇うという公約をしております。そして、こういった従業員があと二、三日もすれば働き出すわけです。もちろん疑いもなく米国の財政赤字が米国における高金利の非常に重要な要素となっていることは確かであります。それにまた、アメリカにおいて経済的に政治的に安定しているということから現在のような円安、非常にドルが高いというような差異が生まれてきているわけです。
 私がこのように円が安いと申しましたのも、ちょうど日本の日銀の総裁がおっしゃったことしのお話を思い起こしたからであります。彼はドルに対して円が過小評価され、そして安定していないということを嘆いておられました。その理由というのは私が先ほど来申している理由からであります。私はまた、彼がこのように言ったことも非常にわかることであると思っております。つまり資本市場と金融市場の自由化を日本でおいて行い、そして円を国際化するということは疑いもなく自然に起こるものであるというふうにおっしゃいました。そしてまた、そのために国際共同体において日本はその役割を十分に果たさなければいけないということでありました。私どもとしましては、私が今まで申し上げた分野においてこれまで日本がとってくださった措置というものは非常に称賛に値するものであると思います。しかしながら、私どもとしましてはこれらのプロセスをさらに迅速化する、それを奨励することが不可欠であると思います。
 中曽根首相がさきのカリフォルニアの首脳会談からお帰りになって閣僚の皆さんとお会いになったときに、たしか首相みずから、市場開放については外国企業の意見を聞いてはどうかということを大臣におっしゃったと思います。そのために在日米国商工会議所としましては何度か大臣の皆様方の招待を受け、率直かつオープンな形で討論を持つことができました。私どもはこのような積極的なステップを非常に歓迎するものであります。と申しますのも、このような形で日米間の二カ国の関係のさまざまな問題を解決するための取っかかりができるというふうに思っているからです。過去何週間におきまして私どもは次のような省庁の代表の方と話し合いを持つことができました。郵政省、厚生省、農林水産省、通産省、また製品輸入対策会議のメンバーの方々です。
 これらの会議は非常に有益でありました。と申しますのも、こういった会議を通じて私どもは日本政府の高官の皆様と意見を交換する機会が得られたからであります。そしてそのたびに私どもは、この会合に出席することができてうれしいという感謝の気持ちを申し上げ、またさらに、我々のメンバーが具体的な推薦なりリコメンデーションを与えることができるようなさらなる討議をしてほしいということを要請いたしました。私は、きょう皆様方の前でこの会議で話された詳細について述べることは意図しておりません。しかしながら、一つだけ例としてお話し申し上げたいと思います。そうすることによりまして、私は、我々が今焦点を当てなければいけないのはこの点であるとなぜ申し上げるかというところをわかっていただきたいと思っているからです。
 一月の首脳会議におきまして、レーガン大統領と中曽根首相との間で、日米諮問委員会の報告に書かれております勧告を履行すべきであるということで一致点が見られました。そして、その報告書の中の重要な一つというのが基準、認証であります。その報告書には次のように書いてあります。
 日本における基準、認証手続は非常に厳しいものであり、また差別的なものである、これに対して米国のそのような過程はより簡単なものであると。また、もう一つの項目には、問題の一つは、日本の官僚分野における政策決定、またその実施の過程に透明さが欠けている。また、日本と米国はともに作業を進め、国際貿易に影響を及ぼすような政策を検討する際に透明さを持たさなければならない、例えば国際基準などを設定する、または変更させるときなどがそうである、と言っております。
 日米貿易研究会も同じような勧告を出しております。また、在日米国商工会議所も郵政省に対して一九八四年の初頭から要請をしております。すなわち、新しい電気通信法のもとでの基準や認証制度は今案としてどのようになっているのか、それについての詳細な情報をいただきたいと要求してまいりました。残念なことに日本の郵政省は勧告に沿っておりません。むしろその事項に及ぼすような行動はとっておりませんし、郵政省の行動によって透明さが欠けていることを確認しているわけであります。日本における米国の会社として、新しく設立されますVAN、付加価値通信網のサービスの新しい電気通信市場において我々は競争し、競合したいわけであります。
 一九八三年の終わりころに、我々は親会社にいろいろな案を出し、日本におけるVAN、付加価値通信網の市場で活躍するために我々は投資をし、開発プログラムをやりたいということで親会社と合意に達しました。また、新しい人を雇ったり、その人たちを訓練し、またこのプログラムの中で、プロジェクトにその人たちを任命するなどに必要な人的資源の開発のための資本を出してくれと、これに関しても親会社の承認を得、合意に達したわけであります。
 一九八四年の初めころになりまして、VANに対する外国の参加は二〇%に限られるということを我々は知りました。幸いこの規制は実際最終的な立法にはならなかったわけであります。というのも、国会にこの法案が送られる前に日米両国政府間で交渉が行われておりましたし、米国の財界人からこのような規制に対する強い反対の勧告が出されましたので、実際には国会は通過しなかったわけです。しかし、今日に至っても我々は我が社が最大限の努力をもって日本の電気通信市場に参加できるかどうかというのがまだわかりません。というのは、その法案がまだ公にされておりませんので、我々がそれを検討すること、また討議することもできないわけだからです。
 一九八四年の十二月にこの法律が通過した後に米国商工会議所の代表が郵政省の皆様と会合を開き、その場で、法案を我々は見たいと要請いたしました。そのときに郵政省から返ってきたお答えでは確かに、ではごらんいただいて結構ですと。それで我々としても商工会議所の代表を決め、いつ見せていただけるかというスケジュールも決めたわけであります。しかし、現在になってその同じ郵政省の高官の皆様は、日本の行政手続にそのような行動は反するので、その政府の法案の詳細についてお話しすることはできないとおっしゃるわけであります。ただ、すべての関係当事者の意見は聞く、そしてその意見を法案の中に組み入れることはします、しかしながら、法案を公にして一般の声を聞いたり、また、それについて話し合うということはしませんとおっしゃるわけです。
 数週間前、また郵政省で会合が開かれ、そのときに、その法案について公開ヒアリングで承認をするというような、以前我々が郵政省に出した要請に対する返答をいただいたわけであります。その会合で、私は郵政省の皆様に次のようにお話ししました。我々が今心配しております大きな問題は手続上の問題である、米国商工会議所は基準に関し事務レベルの郵政省の高官の前で証言をするようにと要請をされた、我々は、新しい電気通信法の特定の部分に関しコメントをするように要請されている、しかし、商工会議所として我々の会社はこの段階でそのような証言をするのは非常に難しい、または不可能に近いことであるとお話ししました。というのも、我々は事前に法案について検討する機会を与えられておりません。ですから、そのような機会をなくして、郵政省は我々に公正でそして公平なコメントをする機会を与えてくださったとは我々言えないわけであります。また、我々が証言で何を言ったとしても、そのようなコメントを真剣に郵政省が受けとめてくださるとも期待できないわけであります。
 今日のこの会合に至るところでは、米国の政府の代表者から私が聞いたところによりますと、この規制はまだ検討中ではありますが、今もって外国の会社に対して非常に規制をするものであると。基準、認証制度の過程は非常にゆっくりなものであります。また、我々の商品を市場で販売する際に、これは大きな問題の一部となしております。日本はメーカーや輸入業者に、非常に開放的な雰囲気のもとでどのような基準を満たせばいいのかということを迅速に知らせるというような制度がまだ確立されておりません。また、余りにもしばしば、このような認証制度は、明らかに輸入品を排除する一つの手段として使われているわけであります。また、日米間の政府のいろいろな合意があり、それに対して日本のさまざまなコミットメント、約束があるにもかかわらず、現在再び電気通信の分野で開放的な、透明な、そして非差別的な基準、認証制度のために我々は闘わざるを得ない形になってまいりました。
 さて、研究開発の側面を見てみたいと思います。
 最近出されました通産省からの新しい法案で、暫定的な題名は、民間部門と基礎技術研究促進センターにおける基礎技術研究の促進となっている法案についてでありますが、この基本構想がハイテク委員会の作業グループによって研究されました。そして、私どもがまず最初に思ったことというのは、研究開発を奨励しようとしている在日の外国企業に援助を与える、アシストするような非常に重要な法案であるということでありました。
 しかし、私どもはその中で一つ憂慮する点がありました。私どもは通産省の責任ある方々から、この法案のすべての側面の中には外国の参加ということが入っている、外国の参加にも道が開けているということを言われました。しかしながら、この法案を見た限りでは、フォーリンパーティシペーション、外国の参加というところは見当たらないわけです。ですから、この法案の意図するところは、この法案がもたらすであろうような便益とそして資金を私ども外国の参加にも機会を与えてくれるであろうと思うわけです。しかしながら、これにつきましてはやはりルール、法則と、私どもが参入できるように開放をしてくれるということをはっきりと教えていただきたいと思っています。
 さて、ソフトウエアについてでありますが、ここでもう一つ私どもが憂慮しておりますのは、情報処理事業を奨励するための既存の日本の法律の一部政正に関する法案についての最近の解釈であります。
 この法案を読ませていただきますと、私どもはその条項の中で、ソフトウエアを開発した開発事業者がそれを管理する所有権を失ってしまうのではないかと思われるような条項ざありました。私どもとしましては、ソフトウエア法案に関するすべての法案はやはりはっきりとソフトウエアを開発するデベロッパーを保護するものであっていただきたい、それを保証していただきたいと思っております。そして、それは米国のみならず、その他の産業国におきまして提供されたときに同じようなインパクトを持つものなのです。
 アメリカにおいての膨大な財政赤字による財政、貨幣関係の不均衡、そして日本における内需拡大よりも輸出に頼るという状況、これらはアメリカのみならず日本の公の政策立案者からも呼びかけられなければいけない、考えられなければいけないことだと思います。これらの問題がドルを過大評価させる一つの要因になっており、そしてアメリカの企業の競争におけるハンディキャップをもたらすものであります。さらにまた、日本が米国からの輸出に対して障壁を取り除くための行動をとっていただくことは不可欠であります。
 米国商工会議所といたしましては、最近の経団連の意見と提案という形で出されました勧告に非常に意を強くするものであります。これらは自由貿易の制度を強化し、保持し、そして貿易、通商に関する規則を改正するためにイニシアチブをとるという形の意見でありました。私どもはこういったプログラムが日本の政府の規制制度で私どもの今までの日本市場への参入を拒んできたいろいろな状況に対しての非常に重要な態度の変化をもたらすものであると思っております。私どもとしましては、中曽根総理が個人的にこの市場開放ということに関心を示してくださり、そして積極的にこれを考えてみようというふうにおっしゃってくださったのを非常にうれしく思っておりますし、私どもはその点に両側から協力して重要なイニシアチブをとって解決していかなければいけないと思っています。
 私どもは、理にかなった公正で透明で公平な法則、つまりゲームにおけるルールづくりをしていただくことを要請したいと思います。そして、このルールを公正に履行するということも必要であります。また私どもは、総理がおっしゃったことは本気でおっしゃったというふうに信じております。そして、このことこそが日本でビジネスを行っている米国の業者にとって非常に重要な意味を持つわけであります。しかし、総理がおっしゃったゴールに到達するためには、やはり法改正という面で国会の皆様方の支持も得なければならないでありましょうし、その点におきまして米国の商工会議所ではこの重要な側面で皆様方の積極的な支持を請うものであります。私が先ほど申しましたように、私どもの米国の商工会議所のメンバーの非常に重要な関心というのは、これらの重要なイニシアチブができるだけ早い形で効果的にフォローアップされるということであります。
 時間はだんだん押し迫ってきております。米国やその他の国における保護主義的な圧力はだんだんと高まりつつあります。ですから、日本が速やかにこれらの問題に関するプログラムを履行するということが、将来の日本の貿易のパートナーがとるアクションにも重要性を持ってくるでありましょうし、また、国際通商制度を継続的に行っていくためにも必要不可欠な重要性を持っております。日本がとるでありましょう行動は、日本の超大国としての利害と責任にぴったりと合ったものであるようになるでありましょう。
 さて皆様、今まで御清聴どうもありがとうございました。そして、これらの問題に解決を求める私どもの在日商工会議所の努力をサポートしていただきまして本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
#4
○小委員長(大木正吾君) 貴重な御意見をありがとうございました。
 以上でハイディ参考人の意見の開陳は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#5
○松前達郎君 社会党の松前でございます。
 きょうは、先ほどからハイディさんの貴重な御意見を伺ったわけでございますけれども、お忙しいところをどうもありがとうございました。
 いろいろお伺いした中で、二つほどまたさらに御意見を追加してお伺いできればと思うわけでありますが、また同時に、実は先ほどお話がありました通信市場の開放に関する法律、我々はこれを電電三法というふうに呼んでおります。これを担当したのが、今ここにおられる大木小委員長が前の逓信委員長、私がその後引き続いて現在逓信委員長をやっておりますので、二人ともそれを担当したことになるわけでございます。
 実を申しますと、今お話の中に、法律の内容が余り明確でないというお話がありました。法律ということもあろうと思いますが、それと同時に、郵政省の省令とか政令、これが細かい点を決めていくわけですが、このことも指しておられるのじゃないか、かように思うわけでございます。
 実はこの法案に関しての審議の中で、最終段階に至りますまで私どもも随分郵政省に質問もしたわけでありますが、この省令、政令等に関して余り明確でなかったわけでございます。これがやはり一番重要な点だったと私どもは考えておるわけでありますが、最終段階まで不明確であった。しかし、政治的な配慮といいますか動きからこの法案をそのまま成立をさしたということになるわけでありますから、その後、郵政省で省令、政令等の細かい面も詰めてきて大体決定したという話は伺っておりますけれども、その点を非常に残念にも思ったわけでございます。その点は御理解をいただければというふうに思います。
 さてそこで、アメリカの場合ですとATTがやはり同じような経過をたどりながら今日に来ているわけなのですが、その際、相当の時間をかけていろいろな検討をされたのじゃないかと思います。日本の今新しい名前でNTT、これに関しましてもおよそ一年程度の期間しか検討の期間がないままに民営化に移り変わっていくということでありまして、私どもがさっき申し上げたことと関連して、時間が短か過ぎたのじゃないか、検討が足らなかった面があるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。そういう経過をたどりながらこの法案が成立して通信市場が開放されるという段階までは至ったわけであります。
 さてそこで、さらに御意見をお伺いしたいのは、この通信市場の開放に当たって基準の問題、規則等の問題いろいろあると思いますが、私は規制は日米とも同じレベルでの規制であるから、これはアメリカに対してだけ特別厳しい規制をしようなどということは考えてないのじゃないかと思うのです。また同時に、貿易等に関する障壁の問題がいろいろあると思いますが、これについてハイディさんが、一体じゃ今後具体的にどういうふうにしていったらいいか、これに対しての何かお考えがございましたら、まず最初にそれをお伺いできたらと思います。
#6
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) 先ほどAT&Tのお話がありましたけれども、それが規制緩和で民営化された過程と、それから電電公社が民営化される過程と大きな違いがあると思われます。というのは、先ほど御指摘もありましたように、AT&Tの場合には、日本の電電公社が民営化されるという事前の予告の時間、すなわちリードタイムですけれども、AT&Tの方がかなり長かったと思います。また、米国では、実際ATTの民営化にまつわる法律などが実行されるかなり前から公にされた公聴会が、たしかニューヨークだったと思いますが開かれており、一般公開された開放的なもので、外国の参加者も行くことができ、それによって新しい規制で法律などにされていくものの理解を深める機会が与えられたわけです。FCCの規制も非常に明確で一般公開されたものであります。また、いろいろな機器の基準、認証、それから仕様、スペックでありますが、これもかなり事前にメーカーが市場に参入できるために公開されていたわけであります。その結果、すべてのものが同時に市場に参加できるという状況になったわけで、戦略的にビジネス面での計画を立て、資本なども十分用意し、そして米国の市場に入るに当たってのプログラムを十分練る時間が与えられていたわけです。
 また、たしか私の記憶が正しければ次のような結果が出てきております。日本の企業が、たしかテキサス州だったと思いますが、工場を設立し、米国市場における電話の受話器の市場でかなりの占有率を占めることができました。また、もう一つの日本の会社は、スイッチ類すなわち交換機、PBXの分野で大きな成果を上げ、たしか八四年の販売高が二十億米ドルになっていると思います。
 それに対して、我々の日本における状況と対比してみたいと思いますが、私は先ほどのお話でも申し上げましたように、我々は日本市場の中で仕事をしたいと思っております。特にクラスツー、VAN、付加価値通信網のビジネス、第二種電気通信事業で参加したいと思っております。
 また、我が社は長年に及んで日本で大きい顧客のベースを確立してまいりました。その顧客の皆様に対してこれからも継続的にサポートし、我が社としても成長し、さらに重要なことは、日本の電気通信の業界が発展し、新しい需要が出てくるに当たってはその需要を満たすための新しい製品を我々は供給し、そのためのサービスを提供したいと思うわけです。我が社はほかの会社と同様、顧客の方から、VANに対してどのような形で参入する計画なのかという質問を受けます。というのは、顧客の方で日本全国にわたってデータ通信のネットワークを持ち、それに対して関心を持っているからであります。我々はそのような問いかけに対して前向きな答えを出しておりますし、彼らに安心してくださいと言っております。すなわち、我々はその市場に入る意思は持っておりますし、できるだけ早くどのようなサービスを我々が提供し得るか、そしてどのようなサービスを顧客の方で考慮していただきたいのかということをお話しして、できるだけ早く提示したいとお答えしております。
 八二年、私が初めて日本に来たときの我が社の国内でのエンジニアリング、それから開発作業を行った全体のビジネスの中のパーセンテージですが、これが一六%で、それ以外は外国でということでありましたが、それに対して、八五年の数字は三五%、すなわち、全体のビジネスの三五%が日本国内でエンジニアリングをやれ、開発されたものであります。
 なぜこれを申し上げるかと申しますと、日本の市場のまたそのスペックに合うような機材を我々は提供しようと努力しているということを示しているからであります。我々はコミュニケーション分野で例えばプロセッサーとか端末機などを提供しておりますが、それを日本市場で販売するには、顧客から出されております数字を満たすのみならず、新しい電気通信法のもとでの承認を得、認証を得なければならないわけです。しかし、我々としては、具体的にその認証制度、その過程、またスペックがどのようなものであるかということがわからない限り、その商品の準備に当たることができない、そのエンジニアリングの過程を始めることができないわけです。
 それでお答えになりましたでしょうか。
#7
○大坪健一郎君 きょうはハイディさんほかお二方、お忙しいところをおいでくださってありがとうございました。私は大変申しわけなかったのですが、今ちょっと自由民主党の総務会で法案の説明をしなければなりませんでしたので中座をいたしまして、お許しをいただきたいと思います。
 それで、若干の御質問を申し上げたいと思うのですけれども、先ほどハイディさんが、アメリカの議会で最近保護主義を訴える声が非常に大きい、輸入課徴金を取れという声もある、というようなことをおっしゃいましたけれども、恐怖感が非常にあるのだ、というようなお話がございました。それから輸入課徴金がつくられるとドル高がもっと進むというようなお話もありましたが、そういう事情について、日本の国内で私どもが感じております状態よりも事態ははるかに深刻であるという議論と、率直に申し上げますけれども、アメリカ側の日本に向けてのプレッシャーではないかという議論とがございます。あなたのコメントをお願いしたいと思います。
#8
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(橋本敬子君通訳) さて、では私は、アメリカで現在存在していると理解しております一つのシナリオについて申し上げたいと思います。
 ほんの少し前でありますが、アメリカ全土が大景気後退に襲われたときに失業率はウナギ登りに上がりました。私の出身州で、私の親会社の本部が位置しております州はミシガン州でございまして、皆様方も御存じのとおり、米国のどこの州と比べましても失業率が最大になってしまった州であります。その当時、私はミシガン州に住んでおりまして、この目でいろいろな事業所が閉鎖されたり、そして失業がもたらすさまざまな問題を見る機会を得ました。
 その当時、人々は失業保険も底をつきますと、自分の貯蓄からお金を引き出して生計を立てなければいけないという状況が見られておりますし、そして私どもでフードキッチンと呼ばれております、無料で食糧を提供できるようなところから食糧を供給さして生計を立てていなければいけなかったわけです。こういう困難な状態がほんの少し前に米国には存在していたわけです。
 歴史は物語ると申しますが、こういった状況が我が自動車産業にもたらした影響というものも多大なものがありました。しかしそれ以来、私どもの自動車産業は一体となり再編成を続けてまいりまして、そして今再び収益性がある成長産業として復活したわけです。しかしその当時、レイオフされました多くの労働者たちは再び自動車業界に戻って働こうということはございませんでした。と申しますのも、その当時やっておくべきであったプラントとかエンジニアリングが今やっと近代化されるようになり、そして生産方法も非常に技術化した近代的なものになったからです。
 そして、その当時失業をしていた者ですが、まだ失業はあるわけですけれども、その当時のことをよく覚えているわけであります。そして、仕事に戻った者が自分たちの貯蓄をまた築き上げようということを始めたわけです。その間、人々はいろいろな形で我慢をしなければなりませんでした。古くなった車を新車にかえるということもしなかったわけですが、最近になってこれができるようになったわけです。そしてまた、新規住宅の投資も始まったわけであります。ですから、こういうアメリカの状況を見てみますと、新車を買う人も多くなったし、また住宅に投資する人も多くなったということにおきまして、日本にとりましてもこのような購買力は上がったということで一つの便益があったわけです。このアメリカの二年間の急速な経済成長の中でアメリカ人がこれをどのように見ているかといいますと、アメリカ人が製品を買った場合に、その製品またはその製品をつくっている会社の成長にいろいろな形で参画している日本企業があるということです。
 このようになりましたけれども、しかし、いつかまたアメリカの産業にとって景気後退が戻ってくるのではないかというおそれがあったわけです。そのおそれというのは日本がその当時に行ったアメリカに対する自動車の輸出自主規制、そしてアメリカの産業界もそれほど輸入によって打撃をこうむっているというようなマスコミの報道があったからであります。そして、主要なアメリカの産業界の大物たちは、このように日本からはどんどん輸入物が入ってくる、その一方、全くアメリカから対日の輸出は上がっていない、相互主義がここではないということを言っていたわけです。これでは二方向ならず、全く単一方向の貿易ではないかというふうにアメリカ市民も思うようになったわけです。
 私自身もアメリカに戻りまして話をしたことがあります。普通のアメリカ人というのは、日本に住んだこともなければ、また日本のことも余り知らないという人も多いわけです。そういう人がこのような相互主義に基づかない一方的な貿易に何とかして歯どめをかける必要があるというふうに言っているわけです。つまり、このようなムードが私としては感じられましたし、そして先ほど申し上げましたこういった声があるということから保護主義立法案ということで出てきているわけです。
#9
○大坪健一郎君 ここで問題になりますのは、日米の貿易が、日本の輸出が非常に数量的に多くなっておる、あるいは価格的に多くなっておるということで、極端に言えば片貿易ではないかという世論もあるというような御議論でございましたけれども、原因が一方にしかないような事象というのは人間の住んでいる社会にはないと思うのです。やはり原因は両方にあるのじゃないか。だから我々の方としても、中曽根総理大臣がレーガン大統領とこの一月に相談されたように、幾つかの問題について行政的に積極的な努力を払いましょうと。それはもちろん御承知のように、日本の行政ですから日本国民に対する説得を持った行政でなくちゃなりませんし、我々国会に対しても責任を持ってくれる行政でなくちゃならない。しかし、それを全力をもってやろうと。しかし、それだけで一体貿易摩擦の問題が解決するのだろうかという意見がございます。
 私どもの手元に報道されております状況では、アメリカの国会でもこの十二日に公聴会が開かれまして、ベンツェン上院議員がデータリソーセス社の調査報告をもとに、ドル高が貿易を非常に減らしておるぞという話をされております。一九八〇年から八四年の間に、半導体とか通信機とかエレクトロニクスなどのハイテク産業で貿易が赤字になって二百万人の雇用機会がなくなった、これはドル高のためだ、というような話をされた。それから、アメリカで一番大きなデュポンのエドワード・ジェファーソン会長は、やはりアメリカの上下両院経済合同委員会で、ドル高のために非常に貿易赤字がふえておる、例えば一般の石油化学製品とかエンジニアリングプラスチック、エレクトロニクスの素材、それからエレクトロニクスの部品などでも同じような現象が起きておって、会長の言によれば、これらは生産性の格差によるものではなくて、海外の競争相手がドル高のため安値で輸出できることによるのだ、ということを言っております。それからもう一つは、アメリカの農務省が、一九八五会計年度の農産物輸出が昨年に対して九%減るだろうというようなことを言っております。
 だから、ドル高の是正ということについては、これは国際金融市場の問題ではありますけれども、恐らくことしのサミットでも問題になると思います。アメリカにもやはりドル高是正のある意味で積極的な政策をとっていただかなくては、貿易問題というのはなかなか両方の努力が重ならないと解決できないのではないかという感じがいたしますが、あなたの御意見はどうでございましょうか。
#10
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(橋本敬子君通訳) 私、けさの私の発表の中で何度も繰り返して、米国と日本の両国が、私どもが面しております問題に何らかの解決を見出すために公平な形で両者が参画しなければならないということを申し上げました。また先ほども申し上げましたように、この両者の貿易不均衡をもたらしている主要な原因というのは非常に高いドルの価値である、ドル高であると申しました。そしてまた、疑いもなく米国に存在しております財政赤字を何とかして軽減してもらうようにという形で、アメリカのビジネス界の我々たちは努力をして勧告をしているわけです。私はエコノミストではございませんけれども、私のビジネスの同僚から聞いておりますところ、高金利がまたこの財政赤字をもたらしているというふうに聞いております。
 ですから、アメリカ側でビジネス界、財界では議会の方にも働きかけて、何とか私どもが面している財政赤字を減らすように努力しているわけですし、また彼らの方でも努力をさらに促進してもらうように懇願しているわけです。そしてまた、経済の状況が許してドルの価値が下がって、それとともに円の国際化が進み、円が通常要るべき国際通貨としてのレベルまで上がったとしたならば、私どもが持っております財政赤字というものがこれはさま変わりするでありましょうし、そしてその変わったものの中の赤字額というものは少なくなると思います。しかしながら、現状でこの貿易の不均衡を数字で見てみますと、貿易の流れを見ましても、対米輸出は日本からは一九八四年に三〇%を増加しておりますし、それと比較しまして日本に輸入される額というのは九%の上昇なわけです。
 私の隣の同僚からちょっと意見があったのですが、この三十六カ月の間に非常に危険なシグナルが見えているということであります。この危険なシグナルというのは、三十六カ月の間、日本側から六つの貿易市場開放の包括措置がとられております。その三十六カ月の貿易不均衡、つまり貿易赤字額を見てみますと、一九八二年の百八十億ドルが一九八四年には何と三百四十億ドルになっているわけです。そしてこの数字を見た場合、議会の方でもやはりこれを解決する唯一の方法というのは保護主義ではないかというふうに言っているわけです。
#11
○大坪健一郎君 どうもありがとうございました。
 そこで、その市場開放措置をいろいろ日本もとっておるし、例えば関税について見れば、ここ数年日本が関税を改善した速度は恐らく一番速いでしょう。それにもかかわらず貿易収支が変わらないということは、やはりドル高というものの異常な高さが問題となっていると思わざるを得ない。例えばおたくの会社でも、先ほどのお話のように二百四十円から四十一円で円、ドルレートをお決めになって予算をお立てになったでしょう。それが二百六十円になってしまったら、どうしても一割以上の問題点になってくるわけです。ですからドル高の是正についてはアメリカの責任だけでは私らはないと思いますけれども、世界的にこれを何らかの形で少しずつ直していかないといけないように思うのですが、私の意見に同意していただけますでしょうか。
#12
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) 今の御質問のお答えに、私、二、三部に分けてお答えしたいと思います。
 まず最初に、先ほども私申し上げましたように、やはりこの高くなってしまっているドルの価値を是正するために米国も努力しなければならない、それはおっしゃるとおりで、私も完全に同意する次第であります。しかし、さらにそこで加えたいのは、日本の方でも円をもっと通貨として強くする努力が必要だと思います。すなわち円を国際化して、資本市場を自由化することによって円を高くする努力が日本でも必要だと思います。さらにつけ加えたいのは、同じような現象がフランスフランまたはドイツマルクとに見られているかということでありますが、それらのほかの、すなわち米国以外のほかの国との貿易を見ておりますと必ずしも円高ではない。にもかかわらずフランスに対して、またドイツからの日本に対する輸出がそれほど我々が見たところではふえていないと思いますので、そのようなほかの国との対比で通貨だけの問題ではないということも御指摘したいと思います。
 先ほど関税率を下げるというお話も出ましたが、私も是正措置として確かに重要な分野の一つが関税率だと思います。しかし、この状況の賛否両論をちょっと見てみたいと思いますが、また私が所属しておりますエレクトロニクス業界の関税率を例に挙げてこの問題を見てみますと、確かに我々は外国から日本にエレクトロニクス部品、特にコンピューターの部品やまたはコンピューターの周辺機器などを輸入する際に関税がかけられます。日本の場合にはこれは三つの異なった税率がありまして、それによってそのようなものが日本に導入されるわけですけれども、それに相当する米国の状況を見てみますと、多くの日本のコンピューター関連機器などが米国に輸出されますが、その場合には単一の関税率、一つの関税なわけであります。そして、そのパーセンテージは全体で見ますと、日本の三つの種類の関税率の全体と比較して米国の方がまだ関税率としては低いという問題があります。
 私自身としては、双方さらに関税率を下げればいいと思うわけでありまして、コンピューターの業界では、私、日本のコンピューター関連業者が米国の市場で自由に競争するには全く異論がないわけですし、同じように米国のそのような業者も日本の市場で自由に競争するべきだと私は思うわけであります。ですから、最終的にこの分野では税率を全くなくす、すなわち税金をかけない、関税をかけないというのがいいのではないかと私は確信しています。
 ですから、私自身関税率を下げることは非常に賛成でありますけれども、と同時に、関税率を下げたとしましても全体の貿易不均衡の問題にはそれほど大きなインパクト、影響はないのではないかと思います。エレクトロニクスの分野ではそうだと思います。しかしながら、その関税率全体を見回した場合に、ではどこの関税率を最初に下げようかという検討作業に入った場合に、ここの分野の関税率を下げれば商品が米国から大量に日本に入ってくるであろう、そのような分野を選んでその分野の関税率を下げるべきではないかと思います。すなわち、貿易不均衡を是正するに当たって最も効果的な分野での関税の引き下げが必要ではないかと思います。
 最後のコメントでありますが、さらにこの状況をよくするためには日本の国内市場の成長を促すような措置、対策も考えなければならないということです。そのように日本の国内の市場が成長すれば日本の主要な産業もその恩恵に浴するわけでありまして、と同時に、多くの米国の商品も日本市場に流れ込むのではないかと思います。例えば住宅産業ですが、もし日本の住宅産業がこれから刺激をされて拡大するとするならば、日本の新住宅着工の数もふえるでしょうし、それによって、ただ単に木材または林産物、また労働力の需要が上がるのみならず、米国などからの例えば家具とか、そのような住宅の中に入れるような機材器具などの需要も上がるのではないかと思います。ですからこのような分野での日本国内市場の刺激というものが必要で、そのような刺激があれば多少日米間の貿易赤字問題も是正されるのではないかと思います。
#13
○高平公友君 時間がありませんので簡単に一つだけお伺いしたいと思います。私は高平というネームであります。
 きょうはハイディ会頭さんに先ほどからいろいろと貿易摩擦に関する御意見を述べていただきまして大変勉強になった次第であります。我々はこの貿易摩擦の問題というものを実は大変心配しております。今ほどお述べになりましたけれども、外需もそうだけれども内需を活発にしろということにつきましては、日本の国際収支から眺めまして何とかやはり貿易依存より内需中心に政策を転換すべきではないかというのは今度の国会の各党の皆さんの御意見であります。しかし、御承知の財政赤字等もありまして、民間活力によって何とか内需の振興を図らねばならぬということで努力を重ねておるわけであります。
 今、通信市場の開放の問題、それから通産の研究開発についていろいろと貴重な御意見がありました。大変我々参考になりましたけれども、ただ、特にその中で、日本のとっておる輸入の基準、認証手続というのは大変かた苦しいと御指摘がありましたが、我々もそんなふうに承っておるわけであります。とかくに役所というのは、これはどこでもそうでしょうけれども、なかなか時代についていけぬところもありまして、従来のしきたりだとか、従来はこういうぐあいにしていたからということで、急に転換できない面も輸入のいろいろな措置について障害になっておるのではないか、私はそんなことを思うわけであります。この機会でありますので率直に、一体これはケースにもよるでしょうし、品物にもよると思いますけれども、ここら辺はこうすべきだ、この問題についてはこうだと御指摘がありましたら、我々に参考までにお聞かせいただきたい、このことをひとつお願いしたいと思います。
#14
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) どうも先生の御質問、ありがとうございます。
 確かにこのように技術の進歩の速度がこれだけ速いと、これは日本のみならず米国でもそうですけれども、お役所、官僚の皆様がそれについていくというのは非常に大変なことであります。それはよくわかるわけですけれども、それを踏まえて、では具体的な提言をさしていただきますと、例えば米国の例をとりまして電気通信の分野ですけれども、その基準、認証制度などの一つの特徴を申し上げますと、セルフサーティフィケーション、自己認証制度というのがございます。これは自分の商品を市場で売りたいという場合には、このような仕様、またこのような水準に見合っていますと自分でその承認をし、その商品を認証するわけであります。ですから極端な話、あしたその市場でその商品を売ることもできるわけであります。ただ、明らかにその水準に見合っていなかった場合、すなわち自己で認証した水準を満たしていない場合には非常に大きな罰則規定があるわけであります。
 それに対して、では日本のそのような手続はどうなっているかといいますと、日本では事実上二つのシステムがあるわけです。
 日本の皆様はそのようにとらえていらっしゃらないかもしれませんけれども、そのような認証制度というのは片方では日本の商品のための認証制度があって、もう一つ外国製品のための認証制度があるわけであります。日本の方は当然その日本の商品を調べて認証するか否かというのを検討する場合には、日本の商品ですからよく知っているし、今までも似たようなものを扱ったことがあるというようなことなので、どうしてもその考え方が日本商品中心でありますし、その検査も、なれているということで検査しやすいということがあります。同じような商品でも、では外国のものとなりますとやはりなじみが薄い、このような商品の扱いになれていないということなのでどうしてもちゅうちょしがちである。また、扱い方がどうしても時間的に時間がかかってしまう、したがって、その認証をする過程そのものが長引いてしまうわけであります。手続上は表面上同じようなものに見えたとしても事実上は時間がそれだけかかってしまうということです。ですから私の提案として、またこれは政府間の話し合いでも電気通信分野で今話題に上っているものですけれども、その自己認証制度を取り入れてはいかがでしょうかということです。
 また、工場の段階でいろいろな人が検査に入るすなわちファクトリーインスペクションという制度も非常に時間が長くかかり問題のある制度であります。また、我々の直接競争する会社が認証にかかわっているということはいろいろと都合の悪い問題がありますし、それ自体問題を引き起こすことであります。
#15
○中西珠子君 きょうはお忙しいところをハイディさんにお越しいただきまして、大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。大変鮮やかに、また率直にいろいろな問題をお述べくださいまして、本当に私どもの理解を深めてくださいましたことを感謝いたします。
 特に私がお伺いしたいと思っていた問題はもうほとんど同僚の議員が聞いてしまいまして、これから新たにお伺いすることはないのでございますけれども、保護貿易主義の台頭だとか輸入課徴金問題、また保護立法の問題が起きているアメリカでの実情を大変上手にお話しになっていただきましたし、また貿易問題、殊に摩擦の問題の例示として電気通信事業の市場開放問題、それからエレクトロニクス、コンピューター関係の商品の問題とかいろいろお話しくださいました。また、過去二、三年にさかのぼっては自動車産業がアメリカにおいて失業を増大した、そして非常に悪影響を受けた労働者の話なども鮮やかになすってくださいまして、よく事情がわかったのでございますけれども、私どもとしてはやはりドル高の問題というものもトレードアンバランスの大きな原因の一つになっているのではないかというふうにも考えます。その他の分野でこれまで御指摘になりました分野以外の品目、例えば医療品などの問題とか木材関係の問題とかそういう分野での何が一番大きな問題とアメリカ側はお考えになっているかというふうなことをもし御指摘いただけましたら幸いと思いますが、いかがでございましょう。
#16
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) 今衣服とおっしゃいましたか。
#17
○中西珠子君 イリョウ――イリョウというのはクロージングの方じゃなくてメディカル。
#18
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) 我々は厚生省とそれらの分野についていろいろと会合を持っておりますし、現在問題となっておりますのは、医療機器などを輸入しようとする際に、その承認を得るのが非常に長い時間かかってしまうという問題であります。ですから、特に医薬品などに関しては外国で試験をしたデータをそのまま受け入れてほしいということを要請してまいりました。
 最近、医薬品に関してさまざまな会合が開かれておりますので、その結果外国での臨床試験データなどをそのまま日本が受け入れてくださるようになることを我々は現在期待しているわけであります。そのような状態になれば、外国からの医薬品がより多く日本に入ってくるのではないかというふうに考えております。
 また、医療機器の分野でも非常に承認を得るために長い時間がかかり、私自身ほかの業者から、いわゆる恐怖物語という形でいかに長いか、二、三年以上かかってしまったという話を聞いたことがあります。しかも、米国市場ではその同じ商品が何年も前から実際販売されて問題がなかったというにもかかわらず、その商品を入念に日本で検討しなければならないという問題があります。確かに日本人の方々の体形、体質というのは、例えば私の体と多少違うというのはよく理解できます。しかし、その違いは医学の専門職にある方々はよく理解し、わかっているわけであります。ですから、日本に医療機器などを導入する際に、その承認に必要な期間をより短くすることができれば大幅な進歩がこの分野で見られるのではないかと思います。
 また、いろいろな合意や販売方法というのが可能だと思いますので、例えば米国のある医療商品を日本に導入した場合に、日本の業者がその販売、流通に当たるということも可能だと思います。その際に、日本のその会社の代表者が、例えばアメリカの工場に行って試験の結果、またその商品について知識を深めれば何かの形で今以下の期間でその承認または認証ができるというような形が可能だと思いますので、その分野での進展を期待しているわけであります。
 木材製品などに関しては、これは確かに皆様が抱えている問題に私は同情する次第であります。非常に難しい分野だというのは私自身もよくわかりますし、不況産業、斜陽産業をどのように刺激するか、また、その策の難しさというのは私自身も非常によくわかっているわけであります。ただそこでも、少しでも助けになるかもしれないという策の中には、先ほど申し上げました住宅着工をふやせればそれだけ木材製品に対する需要も上がりますし、日本の製材業者にも一つの援助になるのではないかと思います。というのは、日本の製材所の多くは近代化が必要だというふうに伺っておりますので、住宅着工数をふやせばいいのではないかと思います。
 また、木材製品に関しては、時には競争相手が存在するということを一つのきっかけとして業界全体が成長するということもあり得ると思いますので、もし木材製品に関しても、これは非常に注意深く検討した結果、特定の木材製品の関税率を下げることができれば、輸入品とそれから国内品の非常に心地のいいバランスに到達できるのではないかと思いますし、そのいいバランスの点に到達できれば双方がその恩益に浴することができ、それによって市場がさらに成長し、業界全体にとっても成長を促すような結果になるのではないかと思います。
 同僚の方からちょっとこの問題もということでコメントしたいと思うのですけれども、米国では今MOSSの方法が討議されております。いわゆるセクターごとに取り扱っていくというこのMOSS方式ですが、林産物に関しましては私が伺ったところでは、日本側は今の段階では全く話し合いの余地がないとおっしゃっていらっしゃるそうです。ただ、このようなコメントがそのまま米国に伝わりますと、先ほど申し上げました保護主義が必要だというふうに唱える人たちをさらに影響することもあり得るということであります。やはり問題を解決するにはその問題に取り組まなければならない。どのような難しい問題であったとしてもまずそれに直面しなければならないと思いますので、交渉に当たっている皆様にここに御出席の皆様からもおっしゃっていただきたいのですけれども、まず問題を少なくとも話し合っていただきたいと思うわけです。
#19
○中西珠子君 非常に参考になる御意見を伺わせていただきましてありがとうございました。
 もしかして専門分野が違うから困るとおっしゃるかもしれません。でも、商工会議所の会頭の立場でいらっしゃるし、長い御経験がおありになるから御意見をもしよろしかったら伺いたいのですけれども、長年問題になっております農産物、畜産物の貿易摩擦の面ではどのようなお考えをお持ちでいらっしゃるか、また、米国側の主張の中でどうしてもこれはやはり自分としては支持するというふうなお立場もおありになるかとも思いますので、もし御意見を承らしていただければ幸いと思います。
#20
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(橋本敬子君通訳) 私が日本に参りましたのは一九八二年のことで、そのときはそれまでずっと引き続いておりました日米間の牛肉、かんきつ類の協議のちょうど最後のところであったように思います。この長い協議の結果、輸入枠の拡大ということで私が日本にいる間に変更があったわけであります。そして、これは米国の牛肉、かんきつ類、農産物の業者にとりましても非常にいいことだというふうに思われたものでありますし、また、私など日本に住んでいる消費者の一人としまして、日本のミカンのみならずアメリカのオレンジや牛肉が食べたいときには食べられるというのは非常に結構なことであると思いました。
 私がアメリカに住んでおりましたときに、もう牛肉気違いでございまして毎日食べていたくらいでありました。日本に住んで三年ぐらいになりますけれども、私の人生の中で牛肉を食べた経験というのがこれほど少なかったことはございません。私のお医者さんに言わせれば、それは結構なことじゃないかというふうに言われますし、また皆様方に私の体形を見ていただければ、それもよいのではないかというふうに思われるかもしれません。
 私もつけ加えますけれども、ステーキばかり申しておりましたけれども、うちの方では一週間に二回ぐらいは日本食をちゃんと食べております。妻と私はもう今では日本食の専門のコックになりました。しかし、それでも時にはステーキも食べたいなと思いますし、妻と同様私もマーケットの方にお肉を買いに参ります。そしてその牛肉の値札を見るごとに、こんな高いお金で買うような人は本当にいるのかな、そして多くの人々がもっと理にかなった価格でこういう牛肉を食べられることができたらなというふうに思うわけです。このように多くの人というのは、私よりも少し財政的に豊かでない人でも、もう少しこういった牛肉が味わえないかという気持ちになるわけです。私は、競争というのは市場を縮小してしまうものではなく、市場を活気づけるものであり、成長させるものであると信じております。もし、この牛肉におきましても、もっと理にかなった低い価格でたくさんの量が消費者にも提供できるとしたならば、それは競争が市場を非常に活気立たせ、そしてその恩恵が消費者にも安い牛肉という形で返ってくるのであるというふうに思うわけです。
 アメリカと日本を行き来しまして、また沖縄とか韓国の方にも参りますけれども、そのたびに帰るときに飛行場ですか、または飛行機に乗る前に日本人の友だちの皆様が、ここで牛肉を買っていかなければというふうに列をつくっておりますし、私もその列に加わることを常としております。ですから私は、競争のない状況というものはいけない、むしろ競争を奨励しているわけでありまして、このように低い価格で牛肉を提供するためにもっと輸入を促進していただき、それによりまして市場を活気立たさせ、そして刺激を与えるということがよろしいのではないかと思います。
#21
○中西珠子君 どうもありがとうございました。
#22
○柳澤錬造君 ハイディさんから大変御参考になるお話を聞かしていただきましたことを本当に感謝申し上げます。
 時間が余りありませんので、本当を言うと長い時間かけてもっとお聞きをしたいのですが、二点ほどだけ質問をしたいと思うのです。
 一つは、先ほどのお話の中で大変私が興味を持って聞きましたのは、今日アメリカが大変なドル高になった、ドル高になっても貿易は伸びている、そしてアメリカ経済というものが大変今強くなってきた、過去二年間に経済成長によって七百万人からの人たちを新しい職場に受け入れることができた、というお話を聞かしていただいたのです。このような好況というものが今後も続くのですかということ。
 それから、為替レートの円とドルの関係というものが何を根拠に決まっていくのか最近はわからなくなってしまったのです。その辺をどういうふうにお考えになって、それでハイディさんから見れば、大体円とドルの関係で一ドルが幾らぐらいになっておったならば一番妥当というふうにお考えになるか、そこのところをお聞かせいただきたい。
#23
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(橋本敬子君通訳) ありがとうございました。
 ドル高の結果により私どもは貿易を活気づけることができました。それは日米間のみならず、米国とその他の国との貿易を増加させることができたわけです。それによりまして経済は成長し、雇用を創出することができました。そして、私どもとしてはこれからも引き続いてこのようなことをすることができると自信を持っております。
 しかし、果たして経済成長はこのまま続くのであろうかということでありますが、私はビジネスマンといたしましていろいろな報告書に目を通しております。そして、そのような報告書を見て私自身ことしはどういうことをしたらいいのか、そして来年はどういう状況になるのかという研究もしております。また、エコノミストの書いた報告書を読んだり、彼らから送ってくる実際の報告書を受け取って目を通してもおります。しかし、そういった報告を見てみますと、二年前なり昨年の状況は、エコノミストの言うことを聞いていたならば、アメリカにおいても私どもはビジネスを削減、収縮し、そして投資をもっと減らさなければいけなかったということになります。しかし、やはり御存じのように、ビジネスマンというのは特にアメリカにおいては楽観主義者でございますから、どうもエコノミストの言うことはそのままうのみにしないということが往々にしてあります。ですから、私どもは引き続いて投資をしてまいりましたし、実際にその結果成長したわけで、今も成長をたどっているわけであります。私の企業の一例をとりましても、成長率はネットで一九八四年にはプラス二〇%に到達いたしました。そしてこれらは私どもが市場によってさらに投資をし、そして将来の企業のために新しい製品開発研究を続けてきた結果なわけであります。
 一九八五年でありますが、経済の成長は引き続いて起こるであろうというのが大体の見方であります。しかし同時に、そのペースは過去ほどは速くないであろうという見方が多いようであります。私の思いますのに、成長率についてはそういうふうに言っている人はある意味では正しいかもしれません。しかし、何度も申しますが、私もほかのビジネスマンも楽天主義者でありますから、やはり成長率も前と同じぐらい速く進むのではないかと思っております。と申しますのも、こういう状況というのは雪だるま式にふえるもので、一度走り出すともうとまらない、スローダウンをしないというふうに思うわけです。私どもは選挙も経験いたしましたし、そういう状況から、財界のコミュニティーでもまた財界のリーダーの皆様方の非常によいサインが私どもには見られているということでありまして、それはアメリカのみならずその他の国々においてもよいサインが見られていることだと思います。そして、財界と経済界における成長のゴールも今までと同じようなゴールをとれるのではないかというふうに非常に明るい見通しをとっているわけであります。私の会社一つをとりましても、今まで前年度比で非常に少なく成長率を見積もったというような予測をしたことはございませんでしたし、これからもそういうことはやるつもりはございません。
 為替レートについてでありますが、私の親会社の会長は元財務庁長官をしておりましたので、彼の方がこういう話はたけていると思いますけれども、私自身の為替レートについての理論がございまして、為替レートというものはいろいろな経済的な要因によってではなく、むしろ通貨の投機によって変動するものであるという持論がございます。先ほど、適切なドルに対する円のレベルはどういうふうなものかとおっしゃいましたが、私が聞いているところによりますと、一ドル当たり百八十から二百二十円の間であるというふうに聞いております。ですから、私は先ほど申し上げましたように、財務計画としまして立てたときには一ドル当たり二百四十一円でございましたので、今のレベルで二百円から二百二十円というふうになりますと、大体まだ喜ばなければいけないところだと思います。しかし、私が日本に参りましてこの会社を設立し、計画を立てた当時は、レートは一九八二年では二百三円だったわけです。そしてその投機の、末の結果を出したときには一ドル当たり二百七十六円という結果でございましたので、私の会社の収益性にかなりのインパクトを与えたわけです。どちらにいたしましても、銀行やその他のビジネスの同僚から聞いております最適のレベルというのは百八十から二百二十の間であるというふうに聞いております。
#24
○柳澤錬造君 もう一つ、保護主義の台頭ということが盛んに言われておったので、その関係から、直接お話の中には出てこなかったことなのですけれども、お聞きしたいのです。
 昨年の十月九日に、アメリカの上下両院の本会議でもって可決をした一括通商関税法案、大統領も十月三十日これに署名しているのですけれども……。
#25
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) 私自身その法律を直接読んでおりませんので、余りよく知らないのですけれども。
#26
○柳澤錬造君 では無理をしないで……。例えば鉄鋼輸入安定化というロステンコウスキー法案というのがその中の一部にあるわけだけれども、いわゆる鉄鋼の外国からの輸入の枠を一八・五%に抑えて、日本のシェアというのは五・八%です。だから、これはもちろん日本だけじゃない、外国から入ってくるのについてかなり厳しいことをして、それで鉄鋼メーカーはもっと利益を上げろ、上げてその利益でもって合理化をやらなくちゃいかぬという、言うならば先ほどからの保護主義的な政策なわけなのです。そういうことをやってい
ることについてハイディさんの御見解だけお聞かせいただければと思います。
#27
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) 米国の大統領は、皆様もよく御承知のように、保護主義に反対する姿勢を今までも強く示してまいりました。しかし、時によっては政治的な判断ということで特定の保護的な措置をとらざるを得ない場合も生じるわけであります。例えばオートバイの分野で、ハーレーダビッドソン社を保護するというような措置も以前ありました。御指摘の鉄の分野では、たしか私の記憶が正しければ、五カ国間の、多国間の合意で米国の鉄の輸入枠を決めたということであります。これは米国の製鉄業者の回復を助けようというのが目的でありまして、このような措置というのはほかの国でも見られるのではないかと思います。日本の場合ですと、私はマスコミが報道しているものしか直接は知りませんが、日本の不況産業もあり、日本もそれぞれの産業を助けようという措置を実施していらっしゃると思います。ですから、個々の産業を場合によっては回復させるために措置をとるというのは自然な現象ではないかと思います。特に不況産業などはそのような措置に今浴していると思います。
 また、もう一つの例は、日本が自主的に行った自動車の対米輸出規制でありまして、これは米国の自動車業界を回復させるのに非常に有益な手段であったわけであります。というのも、先ほど申し上げましたように、私自身米国の自動車産業の中心地から出ておりますので、どのような状況であって、また回復するために彼らはどのような苦労をしたかというのは私自身よく見てまいりました。ですから、そういう意味では日本の対米自主規制というのは大きな援護策であったと思います。また、この分野で最近になって米国大統領は、その継続はもう要請しないという決断を下しました。ですから、この措置によってまず第一に大統領は、基本的には保護主義に反対するという姿勢を再び明らかにしましたし、また二番目に、この状況から読み取れるのは、ある業界は一次的には不況であったとしても回復することができ、また再び競争力を持つことができるのだという証明をしたと思います。また一九八五年には今まで以上に多くの日本車が米国の道路を走ることになると思います。これは日本の自動車メーカーの努力の結果でもありますし、また、米国の会社などが日本車をそれだけ注文するということにもよるものであります。
#28
○小委員長(大木正吾君) 以上をもちましてハイディ参考人に対する質疑は終了いたしました。
 ハイディ参考人に一言お礼を申し上げます。
 長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせくださいましてまことにありがとうございました。今後の小委員会審議に活用いたしますとともに、本日の会議が国際経済摩擦の解消に必ずや役立つものと信じております。ハイディ参考人におかれましては、いよいよ御自愛の上、一層の御活躍をお祈り申し上げます。本日は御多忙中のところまことにありがとうございました。
#29
○参考人(ハーバート・F・ハイディ君)(蜂屋美季子君通訳) どうもありがとうございました。
 小委員長また国会議員の先生の皆様、在日米国商工会議所の理事を務めておりますクロップ氏、また元会頭のスノーデン氏も同僚としてきょう私とともにこの会合に出席さしていただきましたが、この機会をおかりして皆様に本当にお礼を申し上げたいと思います。また、今後ももしこのような機会があればぜひお会いして皆様とお話ししたいと思いますし、このような会合が今後の問題の解決に有益であることを切望しております。どうもありがとうございました。(拍手)
#30
○小委員長(大木正吾君) 午前の調査はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
   午後零時四十二分休憩
     ─────・─────
   午後二時一分開会
#31
○小委員長(大木正吾君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、国際経済問題に関する調査のうち、経済摩擦に関する件を議題とし、国際経済摩擦について、参考人として京都精華大学教授クントン・インタラタイ君の御出席をお願いいたしております。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方におかれましては、本日は御多忙のところ、当小委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 さて、本日の小委員会は、現在国際的な懸案となっております国際経済摩擦問題について広く外国の方から御意見を聴取し、もって問題を的確に把握し、今後の対策の樹立に資するための会議でございます。したがいまして、参考人の方には忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 最初にインタラタイ参考人に五十分程度御意見をお述べいただき、その後、小委員からの御質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言の際はその都度小委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 それでは、インタラタイ参考人にお願いいたします。
#32
○参考人(クントン・インタラタイ君)(蜂屋美季子君橋本敬子君通訳) 御参会の皆様こんにちは。きょう皆様にお話しする機会に恵まれたことを非常にうれしく思います。私が初めて来日しましてからもう二十年たちます。それで、きょう日本の政策決定をしていらっしゃいます皆様の前で意見を述べさせていただけることは私にとり特に大きな喜びであります。御承知のように、私は財界人でもなければ政府高官でもありません。日本と東南アジア諸国の関係について研究をしております一人の普通の研究人であります。
 では、日本と東南アジア諸国の関係についてお話を進めていきたいと思います。私はある程度日本語を話せますけれども、冒頭の私の発表は英語で行わさせていただきまして、後の質疑応答は日本語で直接皆様とお話ししたいと思います。
 御承知のように、日本とASEAN諸国の関係はいろいろな側面でかなり深くなってまいりました。例えば、ASEANの中の多くの国ではそれぞれの人々は日本の文化のいろいろな側面を楽しんでおります。例えば、テレビでは日本の漫画を見ることもできますし、日本の音楽また日本の庭園がいろいろなところでつくられたり、またレストランに参りますと日本食も味わうことができます。また、この地域でのほとんどの国立大学は日本語を学ぶプログラムがあり、多くの学生は日本語を主専攻として学びたいと思っており、外国語としては英語に次ぐ言葉になっております。
 私の今までの生涯で、今ほど東南アジア諸国の人々が日本に注目しているときはなかったと思います。特に、最近になりまして多くの観光客が東南アジア、特にマレーシアから日本に来ております。また、中にはシンガポール、マレーシアのように国の政策の中に日本から学ぼうという姿勢が組み込まれております。例えば、マレーシアの東方政策がその一つです。このような理由により、日本とASEAN諸国の関係をさらに改善したいとする人々の願望を無視することはできないわけです。日本にとってもASEAN諸国は非常に重要な存在になり、日本の存続にとってもASEAN諸国の健全な関係が重要になってまいりました。
 また、経済で見ましてもほとんどの重要な原材料がASEAN諸国から日本へ、日本の産業や一般消費者の消費のために輸入されるわけです。言うまでもなく、ASEAN諸国から日本の産業のために輸入されるものの中には、石油、天然ガス、ゴム、すず、銅などが含まれます。また丸太なども多く輸入されます。今後は石油の割合は多少減少するかもしれませんが、特にマレーシア、インドネシア、タイからの天然ガスの役割、またその規模はさらに大きくなるものと思われます。
 食料品に関しましても、日本は多量のものをASEAN諸国から輸入しております。例えばインドネシア、タイからのエビ、それからタイから豆類、バナナ、パーム油などが輸入されております。また、これからのASEANから日本への輸入を見てみますと、製品輸入の割合がさらに高くなるように思われます。
 また、もう一つの分野、輸出に関しましても、現在では日本の対ASEAN輸出は、米国またEC向けの輸出に比べますとそれほど重要ではないかもしれませんが、今後日本の輸出市場としてのASEANの役割はかなり大きいものになると思われます。私の考えではありますが、次のような理由により、今後ASEAN市場は日本の輸出市場として二番目の地位を占めるようになると思います。
 最初の理由は、まず人口の大きさということです。ASEAN諸国の人口は約二億七千万人です。世界の主要な人口区域から見ましてもASEAN諸国は三番目。すなわち、中国、インド、そして三番目にASEAN諸国ということになります。
 また、二番目の理由としましては、一人当たりの平均所得が中国またはインドなどに比べますとかなりASEANの方が高いわけです。ということは、それぞれの諸国よりもASEAN諸国の方が購買力を持っているということです。
 三番目の理由は、ASEANの非常に高い成長率です。世界各地を見ましても最も高い水準にあります。一九七二年から八二年を見てみますと、ASEANのGDPの成長率は七%で、それに対して米国のGDP平均年率の成長は二・八%でありました。また、今後に関してもASEAN諸国の成長率はかなり高い水準で推移するだろうという予想であります。それに比較して先進国、例えば米国やECの成長率はそれほどは高く推移しないと思われますので、比較でもASEAN諸国の購買力は高いものだと思われます。
 また、四番目の理由でありますが、米国、EC市場に今まで日本は輸出してまいりましたが、そのために現在非常に深刻な経済摩擦問題が生じております。ですから、今後日本がそれらの国の市場にさらに輸出をし、拡大しようと思っても、条件が厳しくなるばかりで、むしろ今の水準さえ維持することは難しくなると思われます。ですからこそ、日本にとって新しい市場を求めるのが非常に重要になり、その中でASEAN諸国は最も有力な候補となるわけです。
 また、五番目にはイデオロギーの面でありますが、ほとんどのASEAN諸国の指導者は日本の指導者と同じ政治的な信念を持っておりますので、協力関係も結びやすいということです。ですから、最も高いレベルで日本とASEAN諸国の指導者は非常に友好的な関係を結んでおります。しかし、この点に関して強調したいのは、そのようなよい関係は、ただ単に一番上のレベルだけではなく、むしろ草の根、すなわち国民レベルでも維持しなければならないと思います。基本的な問題を解決することは我々にとって非常に重要です。これによって今後も友好的なよい関係を日本と結び続けていきたいと考えております。
 もちろん、日本とASEANとの将来を展望してその他のいろいろな要素をここで申し上げることはできますけれども、あと最後に一言この項に関して申し上げますと、日本が必要としている天然資源を十分豊かにASEANは備えているということであります。
 また、もう一つの側面から見ますと、ASEANは日本にとって輸送ルートとして非常に重要な役割を果たしています。と申しますのも、日本は石油や天然資源を中東からASEANを通じて輸送ルートとして運び込むわけですし、また、日本の工業製品がASEANに輸出されるときにはマラッカ海峡を通って輸送されるわけです。ですから、この地域において日本が友好関係を維持するということは非常に必要なことであり、さらにまた、この地域の平和安定を図らなければなりません。輸送ルートというのは海上だけではありません。航空ルートもまた日本から西側に行くときにはASEANを通っていくわけです。
 もう一つの側面というのは政治的側面です。現在ASEANの加盟国は六カ国でございます。そのためにASEANというのは一カ国だけで成り立っているものでもありませんし、孤立しているような組織でもありません。ですから、日本はASEANと比べますとこういうふうな地域的組織に属しているということはありませんので、日本が国際的にも孤立しないために、やはり日本の国際的な活動のために我々信頼できる本当の意味での友人というものが必要なのではないでしょうか。
 次の分野は日本投資です。日本の対ASEANの資本投資は非常に大規模になっておりまして、ASEANの豊富な天然資源と安い労働力、しかもASEANの各指導者がそういった日本投資を歓迎しているということからこのような資本の流入が高まっております。他の発展途上国と比較いたしましても、ASEANは日本からの投資国としましては非常によい位置を保っておると思います。と申しますのも、その主要な理由は先ほど申しましたような私どもASEANが経済的な優位性を持っていることプラス各ASEANの指導者がこのような投資を心から歓迎しているというその態度にもあります。と申しますのも、私どもASEANはやはり発展途上国でありますから、私どもの方で日本の資本、日本の技術、そしてその他の例えば輸出面でのノーハウというものを必要といたします。最近いろいろな方面で日本からASEANへの技術移転ということが話題になっております。そういった理由から日本とASEAN両側にとって、現在の友好的な経済、政治関係を維持するとともに、将来これをさらによりよくしていくという必要があります。
 さて、ではただいまから私の報告の中で日本とASEANの貿易関係に目を向けてみたいと思います。ASEAN側からこの問題を見た場合、問題分野を二つに分けて考えてみたいと思います。まず第一に、ASEANを一つのグループとして見た場合の貿易の問題は何であるか、そして第二に、ASEANを個々の国別に見た場合に問題は何であるかということをお話ししたいと思います。
 まず第一点目のASEANをグループとして見た場合でありますが、ASEANはそういった状態では日本とは非常によい貿易関係にあります。これは黒字という意味でよい貿易ということであります。例えば一九八四年の日本のASEANからの輸入額は二百億米ドルでありました。それは日本の全輸入の一四・五%に当たります。その一方、昨年の対ASEANへの日本からの輸出は百四十億米ドルでありました。全日本の輸出の八・三%に当たる数字です。ですから貿易収支といたしましてはASEAN側の五十八億ドルの黒字ということになります。輸出と輸入を合わせた貿易面で見てみますと、対ASEANの日本の貿易は、日本の全貿易の一一%に当たります。二八・三%というアメリカに引き続いてこの数字は二番目の数字です。ですからこの数字を見た限りは、ASEAN全体として見ました場合貿易の問題はないということになります。しかしながら、これをもう少し慎重に中身をASEAN全体として見た場合に幾つかの問題が存在しています。
 その内容というのが、一つに、日本のASEAN側からの輸入の内容によります。そのほとんどは石油、天然ガスその他の天然資源です。もし先ほどの数字から天然ガスと石油の数字を引くといたしますと、対日のASEANの貿易は非常に赤字になってしまいます。そして製品輸入はASEAN側から見ますとかなり低くなっておりまして、大体六から八%ぐらいになっています。そしてASEANが世界に輸出しております全額の中で、製品輸入の占める割合が三〇%になります。そのためにASEAN諸国では、日本は製品を輸入しようとはしていない、むしろ付加価値の低い鉱山資源とか天然資源だけを買いたがっているというふうに批判が起きております。こういった意見は通常知的階級や政治家のところにも浸透しておりまして、日本はASEANを搾取しているのではないかという意見すら出ているわけです。
 あるとき、タイの商務大臣が言ったところによりますと、日本のASEANとの経済関係はちょうど植民地時代のそれと同じではないか、つまり、日本は植民地から原材料を買ってそして工業製品を輸出している、それと同じではないかという意見が出ています。例えばフィリピンやインドネシアで学生のデモ行進があった場合に、そのスローガンとして、日本は我々を搾取している、というような言葉も見られます。ASEANの指導者としては、工業化のプロセスをさらに迅速化していくということが必至であると願っております。そして、このような工業製品をつくりますと付加価値も高いわけですから、日本がASEA Nからこのような工業製品を買い入れていただくということが必要だと考えているわけです。
 例えば、昨年のことでありますが、インドネシア政府は合板などに使われる丸太の輸出を禁止いたしました。それによって合板などの製品化されたものを集中的に日本に輸出したいと思ったわけです。御存じのように、この合板の問題は日本とASEANの間で非常に論議を醸し出している問題です。
 では、農産品を見てみたいと思います。
 ほとんどのASEANの諸国は、シンガポールを除きまして農業経済国であります。ですから、農産品を輸出するということがこういった国では不可欠なわけです。多くの国、タイ、フィリピン、マレーシアでは外貨獲得のために農産品を輸出するということに依存しております。しかしながら、日本にこのような農産品を輸出するというときには非常に厳しい障壁が存在しているわけです。
 一つ目の問題は、非常に高い輸入関税です。例えばフィリピンからのバナナの場合、関税は次のようになっております。シーズンの場合の果物ですが、関税は三五%、そしてオフシーズンの場合は一七・五%となっています。
 次は非関税障壁ですが、ASEANのビジネスマンは、日本の基準に合った形でテストされ、認証されるのが非常に難しいと不平を言っております。例えば一つの例としまして、フィリピンは日本にパパイアを輸出したいと思っているわけですが、日本はこのテスト方法などについていろいろ検討するのに十年かかっておりまして、まだ最終的な報告書は出ておりません。
 ASEANからの農産品、野菜類そしてその他の食品に関して日本は非常に高い基準を設けておりますので、例えばタイからのマンゴーであるとかといったものは輸入されることができません。
   〔小委員長退席、松前達郎君着席〕
二、三年前まで日本はタイから非常に大規模にトウモロコシを輸入しておりました。しかし、このトウモロコシにはアフラトキシンが含まれるということで、日本はこのタイからのトウモロコシの輸入を完全にやめてしまいました。もちろん日本にとっては、日本の消費者のことを考え、衛生的な観点から高い基準を設け、このような措置をとったということは理にかなったことかもしれません。しかしながら、タイの農業生産者にとりましてはそれはもはやクーデターに等しいことであったわけです。タイの農家ではこういったものを栽培して生計を立てているわけですから、突然輸入禁止、ストップするということになりますと、もはや彼らにはチョイスはなく、今まで生計を立てておりましたトウモロコシの生産をやめなければいけなかったわけです。
   〔小委員長代理松前達郎君退席、小委員長着席〕
 もちろん、タイの農家も日本の基準に見合ったようなトウモロコシを提供するために、そのトウモロコシの品質改良もしていかなければいけないと思います。しかし、その質を向上するのには時間がかかるものです。ですから、このような形で突然農家の生計を脅かすようなクーデターを日本はするべきでないと考えます。タイのビジネスマンなどと話し合ったときに、日本は一般的にASEAN諸国からの食品、農産品に対して偏見を持っているのではないかという話を聞いたことがあります。つまり、日本というのは非常にきれいな国で、衛生面も非常にすばらしい、その一方、東南アジアは汚いというような意識を持っていると言われたわけです。つまり、こういうふうな態度が日本とASEANとの貿易の障壁になっているのではないかと考えられます。
 例えば日本からタイを見た場合に、日本からいらっしゃった観光客の方は、タイに来て、ああこんなおいしいものがあったのかというふうにマンゴーをお食べになります。タイの中でマンゴーを食べていただければ、それはもう死ぬというようなこともないし、おいしいだけの話なのですが、これが日本に持ってこられまして、タイのマンゴーを食べたら病気になるぞとかというような態度がどうも見られるのではないかと思います。そして、これがいわゆる一つの障壁となっているということで、こういった側面も考えていかなければならないのではないかと思います。したがいまして、日本とASEANやほかの発展途上国との貿易関係を考えますと、やはり日本人はその態度を多少変える必要があるのではないでしょうか。すなわち、他国に対する優越感を変えない限り、今の友好関係の維持が難しくなってしまうでしょう。
 また、非関税障壁の分野でもさまざまな側面、要因がございます。例えば、日本の規則や規制はほとんどすべて日本語で書かれており、それを理解できるASEAN諸国の人はごく限られております。したがいまして、将来の課題として、より国際的な言葉でこのような規則が書かれるようになれば、よりよいコミュニケーションとなることでしょう。また、これは書面に書いた言葉にとどまらず、やはり国際的な言葉を話せるような担当官まは高官を入れていただき、より多くのビジネスマンや外国人と話せるようにしていただければと思います。これは貿易には直接関係ないかもしれませんが、具体的な問題の例として、外国人が新宿駅に行きますと、出口がどこだかわからない。すなわち、漢字以外で出口をしるしている看板などは本当に数が限られております。
 もう一つの問題は、日本国内の取引や貿易のルート、すなわちその流れる道であります。またよく言われることでありますが、日本の方は前から顔なじみの方としか取引をやりたがらない。例えば、現在日韓貿易、それから日本と台湾との貿易はかなりよい状態にあります。というのは、既存の人と人とのつながり、すなわち人的なつながりによってよい関係が維持されております。ASEANのいろいろな人から私が聞いたところによりますと、確かに日本にはGSP、一般特恵関税制度というものがあり、これによって発展途上国を助けようという制度は存在しております。しかしながら、ASEANのような発展途上国は場合によってはこの制度を利用できないことがございます。すなわち、日本のこのような一般特恵制度の最も恩恵を受けているのは、人的なつながりを日本の方と持っている人々が一番得をしているわけです。
 また、もう一つの問題は、日本が他国と貿易をする際に、また特にASEANと貿易をする際に、ほとんどが日本の商社を介して取引が行われるわけであります。日本の商社は主に輸出をしたがります、特に東南アジアに対しては。また輸入をしたとしても、製品輸入ではなく原材料だけを輸入したがる傾向にあります。また、皆様もう既にお聞きのことかもしれませんが、今後数カ月で幾つかの日本のデパートの支店がASEAN諸国で開かれます。特にタイのバンコクで開かれまして、これらの支店が開店するために、より多い日本の商品が東南アジアで販売されることになると思われます。しかし、このようなデパートが東南アジアに進出するということで、そこで取引関係が成立しますので、それによってASEAN諸国の製品も日本市場に入りやすくなるのではないかと思います。
 もう一つの問題は、ASEAN加盟国の中には、同じASEANであってもその国によって日本は異なった待遇をしているという話があります。ASEAN諸国の中には、確かにGNPが高くまた一人当たりの収入が非常に高い国もあります。それらの国とそれから低所得の国と日本は異なった処遇をしているということです。これは確かに日本側から見た場合に理にかなったことかもしれませんが、このような異なった処遇をするということでASEAN諸国間の連帯感が打撃を受けてしまうわけです。
 また、ASEAN全体として見た場合の問題のこれは最後になりますが、最も重要な項目の一つは、米国やほかの先進諸国に比べると、日本はASEAN諸国を偏見を持って扱っている。特に関税構造などでその偏見があらわれているということです。皆様も御承知のように、具体的にはその問題は合板です。今の関税構造によりますと、広葉樹に対する関税、これは南洋材や熱帯地域からのものでありますが、現在では六ミリ以下のものに対して二〇%の関税がかけられております。しかし、それに対して米国などから主に輸入されます針葉樹のものですと一五%の関税しかかけられていないわけです。このような広葉樹からの製品は、インドネシアのみならずマレーシアからも日本に輸入されるわけであります。ですから、構造的に日本は偏見をこの分野では持ち、すなわちASEAN諸国のような弱い国と、それから強い交渉能力を持つ米国やほかの先進国と違った扱いをしているわけです。
 もう一つ具体的な問題は鳥肉の問題です。骨なし鳥肉に関してですが、これは日本は主にタイから輸入しておりますが、関税は一八%です。しかし、それに対して骨つきの鳥肉、これは主に米国から輸入されておりますが、この関税率は一三・五%。これがさらに一二・五%に下げられるということです。タイは、日本に対して少なくとも米国から輸入している製品の関税率と同じレベルに下げてくれと頼んでおりますが、日本側はこれに応じてくれません。やはりこのような状況を見ますと、タイの人々は日本はより強い貿易相手国、また米国のように強い交渉能力を持つ国に対してのみ耳をかすのであって、より弱い貿易相手国、例えばASEANなどの要求に対しては耳を傾けないと感じております。米国に対しては現行の一三・五%をさらに一%下げて一二・五%にするとおっしゃっているわけですから。この問題に対し、かなりタイの方では感情的になっておりますし、学生、政治家、農民ですら非常に強い感情をこの問題に対して持っており、最近バンコクの日本大使館の前でもデモが行われたわけです。
 最近、経団連の代表団が公式訪問ということでASEAN諸国に参りました。そしてこの代表団のASEAN歴訪の際に、特に合板そして鳥肉に関してASEAN側は非常に強い批判を表明したわけです。合板や鳥肉の問題は、実際金額に直しますと、特に日本側から見た場合にそれほど大きな金額にはなりません。しかし今後、日本がASEAN諸国と友好的な関係を持続したいかどうかを決める一つの象徴となってしまっているわけです。御承知のように、ASEAN諸国が日本に対して抱いているイメージまたその認識は構造的に非常に深く、また複雑なものであります。というのは、ASEAN諸国にもいろいろな団体、グループがあり、それぞれの見方をとっているからです。
 深刻な問題で、これから日本が対処していかなければならないのは、とかく東南アジアは、日本を利益を追求する国だと見ていることであります。すなわち、日本のみの利害を追求している国であり、日本はもう既に発展途上国ではないのに利益だけを追求している、もはや日本はアジアの一員ではないという考え方が東南アジアではかなり優勢になってきております。このような問題の対処に当たり我々は合理的な考え方をとらなければなりませんし、決して、合板や鳥肉のような小さな問題で日本とASEANの間の健全な基本的な関係をだめにしてしまってはならないと思います。ですから、このような問題をなるべく早く解決しなければなりませんし、それによって今後も日本と東南アジア諸国の間を非常に緊密な、そして基盤のしっかりした関係にしていかなければならないと思います。
 では次に、ASEANのメンバーとなっております国を各国別に見ていきたいと思います。
 先ほど申しましたように、ASEAN全体としては対日貿易は黒字になっております。しかし、ASEANの個々の国を見ますと、対日貿易赤字を示している国が幾つかあります。それらの国とはタイ、フィリピン、シンガポールであります。特に日本とタイとの貿易は特別な問題を呈しております。私の記憶が正しければ、一九五〇年代から現在まで常にタイ側の対日貿易赤字ということになっています。特に昨年一九八四年度のタイの対日貿易赤字は四百四十億バーツでありました。それは円に換算いたしますと三千四百億円となります。この対日赤字はタイの全赤字額の六〇%を占めています。このことがまた反日感情を特にタイにおいて起こしているわけです。他の東南アジア諸国と比べますと、日本とタイの関係というのは、歴史的に今まで悪い関係になったことはありませんでした。しかし、このような貿易構造が続くようなことになりますと、タイの人々の反日感情を高めるようなことになってしまいます。
 十年前ぐらいのことだと思いますけれども、覚えていらっしゃいますでしょうか。一九七四年にその当時の総理がタイを訪問なさったときに、タイの学生が日本製品のボイコット運動を起こしました。ボイコットのみならず、総理大臣のタイを訪問することに対してデモンストレーション、デモ行進も行いました。そして、最近また、日本のタイに対する経済的な進出に反対し、学生がさまざまな活動に入っております。日本政府もタイに対して経済援助を供与しておりますが、しかし、このような貿是構造がこれからも続くとしたならば、このような我々のよい関係が続くかどうかということはわからないとしか言いようがありません。私どもはASEANを一グループとして見ております。ですからタイに問題が起こった場合は、その問題はタイだけにとどまるということはないわけで、ひょっとしたならばこれがASEANの他の国にも浸透していく、インパクトを与えるであろうということはあり得るわけです。
 さて、日本とASEANとの現在の貿易構造が何を意味するかということを見てみたいと思います。
 もし石油と天然ガスが枯渇してしまいますと、日本との貿易というものはなくなってしまいます。そして、将来の日本の繁栄というのは東南アジアの健全な経済発展にかなり依存していると先ほども申し上げました。さらにまた、日本の消費者の利益のためにもさまざまな食品やASEANからの商品が享受できるということはいいことだと思います。例えば、日本の消費者は現在マンゴーを食べることはできません。東南アジアからの他のフルーツも食べることはできません。ですから、消費者のためにもやはりこういった東南アジアの製品にもアクセスをとれるということが必要なのではないでしょうか。この限られた時間の中で、将来の日本とASEANの貿易関係につきまして一言私の方から提案がございます。
 まず第一の提案でありますが、日本側が特に製品と農産品に関して輸入関税引き下げを意味のある形で行っていただくこと。第二番目として、ASEANのみならず、その他の発展途上国のためにGSP、一般特恵関税制度の上限に基づいてクオータ、輸入の割り当て枠を増大させるということ。第三番目として、日本はその製品の試験のプロセスを簡素化するということ、それによって特にASEANに対して非関税障壁を取り除くということ。第四番目として、日本はASEAN諸国に対して技術移転を奨励するということ、それによりまして製品開発をASEANが奨励し、特に農業産品、フルーツやマンゴーの分野において日本の品質基準に見合うような形で提供できるようにするということ。最近、学者やまたその他の人々が技術移転の話をよくいたします。しかし、多くの場合そういった話は抽象的な話に終始してしまいます。私どもはもっと具体的な形でこの話を取り上げるべきで、日本の市場に見合った形で製品の質を向上できるような努力がこの技術移転という中で考えられなければなりません。
 日本はもう既に高度経済成長を経験していらっしゃっております。そのために消費者の方でも安い製品は要らない、もう少し品質のよい高度な製品を求めていくようになるわけですし、消費者の嗜好自体も変わってきております。ですから、このような新しい状況に対処するためにASEANは新しいタイプの製品開発をしなければなりません。そういった面で、日本と東南アジアで合弁を築いていらっしゃる相手側の者がイニシアチブをとって、こういった製品が日本市場にも受け入れられるような努力をしなければいけないと思います。
 五番目といたしましては、日本が東南アジアやASEANの人々を見る場合に、そのイメージというものを変えていっていただきたいということです。また、先進国などの交渉力の強い国の言うことだけを聞くのではなくて、発展途上国、特にASEAN諸国の言うことにも耳を傾けていただきたいと思っています。
 その次にまた、東南アジアの人々の今までの印象としては、日本は強大である、日本は高度に成長し、先進国である、そして日本人はもはやアジア人ではないというような印象を抱かせてしまいます。ですから、私ども日本とアジアは同じ歴史を持ち、地理的にも同じ場所に位置し、文化的背景も同じなわけですから、日本はアジア人とともに生きるべきだと思います。また、経済協力をさらに高めるために、日本は全体としてASEAN諸国の文化的側面にも目を向けていただきたいと思います。そしてまた、私どもの文化というものを理解していただきたいと思います。この基本的な文化に対する理解なくしては健全な経済的関係、協力を続けていくことはできないと思います。
 最後の私の提案になりますが、国際分業ということにもやはり立ち返って考えなければならないと思います。もし私どもが世界を二つに発展途上国、先進国というふうに分けてしまいますと、これを貿易的な面で見ますと、私は北と南という言い方をしたいと思いますが、北の方は南から原材料を購入し、そして南に製品輸出をしたいわけです。そして現在までのところ、南の中でも天然ガスや石油など天然資源を提供することができた国だけが生存できたわけです。この製品の中には三つの種類がありまして、まず工業製品、農産品、そして鉱物ということになります。
 北の方でありますが、これはお互いに貿易とか、また工業製品の中でもいろいろな貿易や交換が行われているわけです。また、工業製品のみならず農産品の分野におきましては、北対北という形の貿易関係だけが行われております。例えば日本はその農産品のほとんどをアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアその他の工業先進国に依存しております。南にある農業国としては自分たちの市場がないわけです。ですからほとんどの発展途上国では貿易赤字と国際収支の悪化に苦しまなければなりません。そのためにこういった国々は借り入れに頼らなければならなくなっておりまして、ここ二、三年の間にはその借金すら返済することができないという状態が出てきております。これが現在国際経済秩序の状況の中で起こっている現実であります。この国際経済秩序を再編成し、立て直すために次のようなことを提案したいと思います。
 まず、先進工業国は発展途上国からもっと農産品を買ってほしいということ。そしてまた、産業の中でも一つが取ってかわるのではなく、三つの分野をカバーしなければいけないということです。まず第一にハイテクです。そして二番目としましては中間的な技術関連の分野です。そして三番目にはそれほど高い技術の要らない、低い技術だけでやっていればよいというような部門です。ですから、将来の貿易のためには日本のような先進工業国はハイテクの製品分野に集中するべきだと思います。そして、二番目と三番目の中級、低級の技術だけを必要とするような分野の製品に関しては、発展途上国にアクセスを持たせてあげるべきだと思います。
 こういった中でも、日本は先進工業国の中でいまだ比較的優位を保っている国であります。しかし、こういったアクセスを発展途上国もとれることによりまして付加価値を高め、そして貿易におきます能力を高める余地ができてくると思います。もしこのような秩序が確立されますと、将来の国際経済の秩序は健全に保たれ、そして日本にとっても便益がもたらされるでありましょう。
 これをもちまして私の方からの発表を終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。
#33
○小委員長(大木正吾君) ありがとうございました。
 以上でインタラタイ参考人の意見の開陳は終わりました。
 これよりインタラタイさんに対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#34
○大坪健一郎君 大変貴重な御意見をいろいろありがとうございました。
 実は、私ども安全保障の観点から貿易問題を議論するということになったものですから、先進国同士の貿易摩擦の問題が主要な関心事であったわけですけれども、一番大きな安全保障の持つ意味は、共存する我々アジアの地域の相互繁栄ということではないかと思いますので、インタラタイさんのお話にありますように、ASEAN諸国と日本との経済的な交流、発展が積極的にどうやって促されるかということが私どもの非常な関心であるわけでございます。
 問題が幾つかあるのですけれども、今最後の方でお触れになりましたように、国際分業の秩序立てをはっきりした方がいいのではないかという御意見がありますけれども、実際上あなたがおっしゃったように、日本の場合は非常に産業構造が重なっております。ハイテクノロジーの領域もありますけれども、またそのハイテクノロジーを支える中程度のテクノロジーとか、あるいは一次産品を生産する部門もたくさん国内に存在しているわけです。日本の場合、一番進んだ領域が日本をリードして、世界と日本の関係で日本を際立たせているとしても、そうでない大きな経済の領域というものを私どもは抱えておるわけですから、そういう意味では開発途上国の皆さんと同じ悩みと同じ苦労を実は持っているわけです。ですから、そこで言えば問題点は非常に似ているわけです。私どもが農産物について輸入に大変かたくなな態度をとるというおしかりを時々受けたり、あるいは合板のような領域で関税をもっと引き下げろというお話があるのですけれども、結局もとをただせば、国内のそういう条件と非常に深く関係をしていると思います。
 そこで、実は今あなたのおっしゃるように、国際分業を進めるということで、ハイテクノロジーの分野だけに先進国はあるいは工業国は向かえというふうに一概に言い切れるかどうか。例えば、日本の場合は六百万ちょっとから八百万ぐらいの農業関係に従事する方々、そのほか林業ですとか漁業ですとかという一次産業の方が一千万ぐらいおられますし、それから、工業の分野でも中小企業に従事している人が非常にたくさんおりますから、そういうことを考えると、日本の場合、経済全体がバランスがとれてうまく動くためには、日本国内の政策としてはそういう領域に対して非常に目を配らなくてはいけないわけです。そこが実はASEAN諸国の皆さん方との貿易問題で一番問題になる点だと思うのですけれども、そこはあなたはどういうふうにお考えになりますでしょうか。
#35
○参考人(クントン・インタラタイ君) 下手な日本語だけれども、日本語で答えてよろしいですか。もしわからなければ、通訳さんに聞いてくだ
さい。
#36
○小委員長(大木正吾君) どうぞ。
#37
○参考人(クントン・インタラタイ君) 先生のおっしゃったことは、本当に日本にとっては重要な選択だろうと思いますが、私は将来を考えてみますと、やはりどういう方向にいくのがいいのか考えなければならない。突然今、農業をやめましょうとか中小企業をやめましょうとか、私はこういうことはできないし、望まないと思います。ただ、将来の方向としては、さっき私が申し上げた方向に何か努力したらどうか、こういう形で答えたいと思います。
 または、日本の例えば中小企業でも、最近割合にハイテクの方でも力を入れていますし、政府の方からも何かこれから特別な対策があると聞きました。だから日本が、例えば付加価値が余りないローテクノロジーの方だけしても余り日本にとっても意味がないではないか、もうちょっと付加価値の高い方を選んでいく、それはいつ達成するか私はよくわかりませんが。ただ問題は、今のところでもう何でもかんでも日本で生産をしなければならないとか、日本人にとってもそれは好まないのではないか。また東南アジアみたいなASEAN諸国でも貿易ができなくなる、これが一つのポイント。
 また、農業問題に対してはこういうふうに見たらどうですか。戦争を終わったばかりのとき、日本の農民の数もこれより何倍でしょうか、あった。パーセントとしては多分五〇%ぐらいではないかと思います。今は多分九%とか、一〇%もいっていない。だから四〇%の方はどこへ行ったか、または何をしているのか、こういうふうに考えたら、将来何十年かたって、たとえ今九%の方が例えば五%になっても、多分昔のように何かもっと適当な仕事を探せるのではないか、私はこういうふうに見ています。または実は今、日本の農業はただ国内の消費のためではなくて、例えば私どもの国のマーケットを見ても、スーパーでも日本製が多いです、農業製品、キッコーマンからいろいろな形の味の素まで。それも食糧と関係あることです。だから日本はどこまで発展するのか。工業から農業の製品まで輸出するのは、やはりさっき申し上げたように、国際分業にとってはちょっと余りふさわしくないではないかと思います。または農業のことだけれども、いろいろな部門があります。例えば今、日本国内では米の生産が余っていると思いますが、米さえあれば多分何とか国家安全保障を達成すると思います。私が申し上げたのは、別の項目、例えば果物はどうか、ただ日本の生産だけでいいかどうか。または別の肉の種類とか、それはやはりバラエティーに富む方がいいのではないかと思います。我々外国人が、日本は米の生産をやめなさいとか多分言う権利はないと思いますが、ただ私個人の考え方としては、日本が米などを国内で生産する方がよいのですが、ただ別の分野、特に果物とかまた肉の種類とかいろいろなものももっと市場開放をして、日本の消費者にとってもよくなる国際貿易をもっとできるではないか、こういうふうに考えております。
#38
○大坪健一郎君 今、日本の食品工業の原料はほとんど外国から入れていると言われるぐらいなのですね、鳥の肉にしても、おすし屋さんの種にしても。国内の、付近でとれる魚よりも輸入してくるものの方がはるかに多い。それから牛や豚は国内で相当生産していますけれども、そのえさはほとんど輸入している。だから結局、おっしゃるように非常に大きな市場があるのだけれども、その輸入先が、日本のそういう品物を世界じゅうから持ってくる商社の人たちの考え方とか、日本国民の好みとか、それから製品が必要なときにさっと入ってこれるような条件があるかとか、品物の均一性がうまく保てているかとか、そういうような条件があるものだから、例えばエビはアフリカの方から入ってくるとか南アメリカの方から来るとか、鳥肉はタイとアメリカから来るとか、いろいろな状況があるのだと思います。その中で交易条件を等しくしろという御意見は私らも全く賛成で、同じ条件で同じような形で市場を開放すべきだ。
 今申しましたように、日本人の食べ物に対する好みにうまくマッチするような商売の仕方に、私ども日本の方からすると、もう少し外国に研究してもらいたいなというところもあるのです。これはアメリカに対しても同じですけれど、そういう意味で、ASEANの皆さんと我々の間でもう少しここのところをこういうふうに直した方がいいじゃないかとか、こういう話し合いをもっと進めた方がいいではないかとか、単に日本人がASEANの方を向いていないという御批判もあるけれども、そんなことは私はないと思うのです。日本人は基本的にはASEAN諸国と一緒に、太平洋地域をいかにして平和に安全に経済繁栄の地域にするか、そこにみんな頭が向いているわけですから、今まで不十分だったとすれば、どういう点をもう少し補っていけばいいのか、そこを先生の御意見を少し聞かせていただきたい。
#39
○参考人(クントン・インタラタイ君) やはり日本人もいろいろいるではないか、私はそう思います。先生みたいに我々はアジアの人間だとおっしゃる方もいますが、ただ私もいろいろな方と接触したように、アジアのことなんか余り関心がないのが多いと思います。いろいろな具体的なところを見ることができます。まあ具体的なことをどのくらいまで言うかどうか。ただ、今のところではやはり日本人の中ではまだアジアのことに対しては興味が浅いと思います。だから、皆さん先生方は、これからもアジアの一員としていろいろなことを多分考えていらっしゃると思いますが、ただ一般の日本の方の中でも、とてもバラエティーに富んだ考え方を持っている人がいる。私も個人的に接触しました。これから先生方の多分責任と思いますが、もうちょっと日本の方がアジアのことに関心を持つように、ぜひもっと努力されることをお願いいたします。または別のレベルで、例えば先生がおっしゃったことを私がわかっても、ただ東南アジアではさっき申し上げたように約二十億七千万人がいますが、日本に対してもさまざまな批判、もしかしたら誤解されるところが多いと思います。特にタイの方がだれでも見るように貿易巨大赤字だということ。またはさきの関税の問題とかそれも割合に感情的な問題になりやすいです。だから我々の説明は何人かの人がわかっても、ただ大衆がわからないとこういうふうに問題を解決できないのではないかと思います。
#40
○松前達郎君 どうもきょうはありがとうございます。
 ずっとお伺いしておりまして、なかなか耳の痛いような感じがあったわけですが、私も東南アジアの皆さんとはしょっちゅうつき合っていますから、今おっしゃったようなこともある程度は理解しておったのですけれども、やはり基本的な考え方として、我々がアジアの一員であると口では言うのだけれども、実質そうなはずなのです。ですから、やはり安全保障という面から考えても、アジアがそれぞれ協力しながら一つの安全というものに対して分担をしていくということが必要だと思っております。そうなってくると、やはりそれぞれの国がそれぞれの経済力をつけていってもらわなければならないのじゃないか。そこで初めて分担ができるようになり、共同して安全保障の問題にも取り組めるということになろうと思うのです。
 そこで、さっき最後におっしゃいました、日本はハイテクを担当すればいい、これは実質的に日本にハイテクが今相当のスピードで開発されつつあるからこれは一つの考え方でしょう。それからもう一つは、中間的な技術、それからレベルの比較的低い技術の分野を開発途上国が分担すればいいだろう、これは現実的にそうならざるを得ないような気もします。そうなってくると、さっき農業の話がずっと中心で、最後の方でありましたけれども、ある意味で言うと工業ですね、やはり開発途上国ができれば先進国になりたいという願望を達成するためには、ある程度の工業力というものも持っていかなきゃこれはできないだろうと思うのです。そういう面から考えて、先ほどの御提案にあった中間的な技術開発といいますか、これは大体どういう程度の範疇を考えておられるのか、まずその点ちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
#41
○参考人(クントン・インタラタイ君) どうもありがとうございます。
 私どもはこういうふうに考えております。ハイテクノロジーは、御存じのようにコンピューター関係とかいわゆるニューメディアとか多分さまざまの種類があると思います。またローというような場合は、私のデフィニション、個人の定義では農業と関係ある産業だと思います。いわゆる加工製品みたいに、農産物をとって、例えば広範の場合はローテクノロジーではないかと思います。つまり、農業、農産物を利用して何か加工製品にする、それが我々のローテクノロジー。例えばインターメディエートテクノロジー、中間の場合はその間ではないか。具体的に言いますと、例えば繊維ですか、テキスタイル、繊維の産物とか、または食糧でもただ農業と直接関係ない場合もあると思います。これからいろいろな新しいものが開発されるとか、または出版の関係の紙など、またはその関係のテクニックとか、または一部の現業からとってそれで何かほかのものに加工するとか生産する、私も実はまだ具体的な相手が多分ないと思います。さまざまな人によって解釈が違う。ただ、基本的考え方としてはこういう方向に考えたらいいのではないかと思います。
#42
○松前達郎君 それで、例えば農業生産だけを見ても、生産に使うべき技術、これは農業そのものの技術とそれから農業生産のための機械的な技術と二つありますね。例えば生産、農業生産のための機械技術なども加工技術とともに非常に要望されてくるのじゃないかと思うのです。私自身も、例えばキング・モンクットという大学、おたくの国にございますね。それからタマサート大学、あるいはソンクラーのハジャイにあるソンクラー大学とか、いろいろと関係を持っているのですけれども、いろいろそういう問題で話をしていくと、やはり技術というものは教育というものがその基本になければ、ただ物を輸入してそれで使ってというだけでは基盤が弱いわけです。ですから、やはり工業教育といいますか技術教育というか、こういうものを相当熱心にやっていかないとレベルが上がっていかないのじゃないか、こういうふうな話が往々にして出るし、私もそう思っておるのです。
 そこで、例えば教育に関する援助といいますか、教育そのものは国が主体性を持ってその主権でやるべき仕事ですけれども、それに対していろいろな面でアドバイスしたり援助をしたり、そういう面がどうも日本の場合はお金ばかりで全部済まそうとしているので、そういうところが足らないのじゃないかと私は思っているのですが、その点いかがですか。
#43
○参考人(クントン・インタラタイ君) やはり、さっき私が最後に申しましたプレゼンテーションですが、これは経済協力じゃなくてもうちょっと文化的なまたはもっとソフトの方で、それはもちろん教育も含んで申し上げたと思いますが、日本と東南アジアの関係は今まで何となく貿易とかなんとかかたい方が多かったわけです。ただ、これからもうちょっとソフトみたいな面、特に教育の場合はほとんど害がないと思います。だから、日本としても今先進国になって外貨もたくさんある、または能力もある。日本は最近、いわゆるバイオテクニックですか、世界でも一流レベルですが、なおそれもこれからただASEANだけじゃなくてほかの東南アジア、ほかの発展途上国へももうちょっと何か協力していただきたいなと思います。
 ただ先生、農業も二つのタイプに分けられるのではないかと思います、第三世界の場合、発展途上国の場合は。一つは食糧が足りない国、もう一つは食糧が余っている国。例えば私どものASEAN諸国は割合に食糧が余っています。今インドネシアでも米が余っています。だからこういう国にまたもっと米の生産を教えましょうとか、そういうことは余り意味がなさそうではないかと思います。
 ただ、別の地域、やはり我々が一緒に考えるアフリカとか本当にたくさんの人が死んでおるところ、そういうところへ日本のさっきの基本的な農業の技術を教えなければ、または私どもの国の技術者とか先生たちもいますから、日本の先生とともにアフリカへの援助をするとか、それの方が世界のためにもなる。我々アジア人間としても、ただアジアだけじゃなくてアフリカまで何か協力できる、その方が理想的なのではないかと思います。だから私が申し上げたいのは、農業の場合もただ何でも教えればいいのじゃなくて、相手の条件を考えなければならない。それから、日本もバイオテクニックとかこういう技術で高いレベルを持っているから、ほかの発展途上国にもっと協力できるのではないかと思います。
#44
○中西珠子君 どうもきょうは先生、お忙しいところをありがとうございました。そして大変貴重な御意見を聞かしてくださいまして本当に参考になりました。私は、いつも日本はアジアの一員であってアジアの国のどの国とも、殊にASEA Nとは仲よくして共存共栄を図っていかなければならないと考えているものですから、きょういろいろ御指摘くださったことは大変参考になったわけでございます。
 それで、先ほどもちょっと技術移転の問題が出ましたけれども、先生がおっしゃいました技術移転のインターメディエートテクノロジー、これはいわゆるアプロプリエートテクノロジーと呼ばれているものと同じものをお考えになっているわけですね。その国の経済情勢、それから社会的な条件というものに合っていて労働集約的で雇用機会も創設するという、そういうふうな技術ということをお考えになっているわけですか。その点が一つでございます。
#45
○参考人(クントン・インタラタイ君) それも関係がありますね、相手の条件とか。例えば私の国は、インドネシアもフィリピンも似ています、労働人口が割合余っています、特に地方の農民が。だから、ただもう何でも機械化していったら、農民にとってやっぱり失業なんかを誘うと思います。だからどんなテクノロジーがアプロプリエート、ふさわしいかどうか、国内の条件によって配慮しなければならない。それにもかかわらず、例えば先に機械がふえると失業がふえるとか、私はこういう簡単な関連性はないと思います。例えば労働者が余ったら別のレベルでもっと付加価値が高いもの、または文化のレベルの高い方に移動するのが人間社会にとっては進歩するのではないかと思います。だから、技術移転ということは単に今きょうのことじゃなくて、将来まで考えていかなければならないと思います。
 先生のおっしゃったことは、こういうレベルでは同感ですが、ただ、私が申し上げたのは、今、日本とASEANの貿易の問題を考えますと、何か東南アジアのものは質がよくないとか、日本のマーケットの条件に合わないとかよく言われます。それに対してもうちょっと何か日本の条件に合うようにやっぱり力を入れなければならないと思いますね。そうして日本の技術の協力、特に農業の先生の方とか、または工業製品の方とか、または零細とか、いろいろなことも関連がありますから、ぜひもっと具体的に協力していただきたいと思います。
#46
○中西珠子君 経済協力もやはりその国の文化をよく理解しなければ効果的にはできないというお話でございました。経済協力の中の殊に開発援助の問題、先ほどちょっと教育に関する援助のお話が出ましたけれども、もう少し広く日本がタイ国に対して行ってきました開発援助が、果たしてタイの歴史的な背景とか文化とか、本当のタイのニードに合ったものであったかどうかということを大変私は気にしているのですけれども、先生いかがでございましょうか、もし御感想をお漏らしいただければと思います。
#47
○参考人(クントン・インタラタイ君) 今まで日本の政府開発援助、いわゆるODAの場合は、ASEANに対して少なくとも三五%、三分の一くらい与えております。ただ、さまざまな考え方があると思います。大体日本の援助はほとんど円借款ですね。だからローンで、お金が必要だったらそれがいいと思います、金利も低いし。ただ、本当の援助といういわゆる贈与の割合が非常に少ないのです。それが本当に援助かどうか、また別の考え方があると思いますが、それにしても、今の日本の経済援助は本当に大衆のニーズにかなうかどうかということもさまざまの考え方があると思います。
 例えば、日本の一部の技術援助があります。いわゆるトレーニングセンター、タイの東北部で若者に機械のテクニックを教えています。こういう技術援助はいいのだけれども、ただ実際は、今タイで技術を持っている人が何万人いるかはっきりわかりませんが、今タイの労働者が約二十五万人か三十万人くらいアラブ、中近東で働いています。だから、例えば日本の技術援助でタイでトレーニングセンターをつくって、彼らが卒業しても働く場所がないとか、結果的に日本の援助が中近東に間接的援助をするみたいな形もあります。それが別に悪いとか私は言えないのですが、ただ問題は、いろいろなことを提案して、総合的に結果はどこにあるか。または別の話だけれども、例えば看護婦のナーシングスクールをつくって、日本のレベルでハイテクノロジーの建物をつくって、それに対して電気とかガスをたくさん使わなければならない。向こうの予算にとっては大変不経済的になっておりますとか、こういうことを聞いたことがあります。
 だから私の申し上げたいのは、援助をされたのはとてもありがたいのですが、総合的に最後の最後まで考えていただきたい。ただお金だけあげて、文化とかをよく知らないで……。またはさっき言ったように経済摩擦がありますね。貿易赤字がとても大きくなっても何も努力していないとか、それを考えてみますと、総合的に見ますと日本の経済協力は本当に我々が必要なところには来ないみたいですね。お答えになるかどうか……。
#48
○中西珠子君 もう一つ、このごろ、日本ではODAの中に人づくり政策というものを、殊に東南アジアの人づくりをお手伝いしようということで一生懸命になっておりまして、留学生を受け入れたり、また技術を習う研修生を受け入れたりしているわけです。そういう方たちが、こちらの受け入れ体制が悪いのだと思うのですけれども、お帰りになりまして、自分のお国で日本はいい国だとはなかなかおっしゃってくださらないという方もありまして、それで非常に対日的に反感を持った、早く言えば反日感情を持って、とにかくボイコットにも参加する人も出てくるというふうなことも聞いたことがあるのです。そして最近、タマサート大学とかチュラロンコン大学の教授たちにもお会いする機会があったのですけれども、日本では受け入れがとにかく悪い、受け入れが悪いばかりじゃなく、日本の大学でいろいろ講義をしている先生方も悪いので、反日になるようなそんな講義をいろいろやっている人もいるのだ、というお話も聞きました。私は本当に日本側の受け入れ態勢というものも、宿舎、食事から始まって、もうすべての面でよくしていかなければいけないし、心の通った温かいものにしていかなければいけないと思うと同時に、いろいろなことを考えさせられたわけでございますけれども、お国の方でもそういう現象がございますか、日本から帰ってどうも反日になってしまったなどというのが。
#49
○参考人(クントン・インタラタイ君) 私はいろいろな経験がありましたが、まず、二十年ぐらい前には日本の留学生でした。それで、今の留学生の問題は自分の問題でもありました。また、私はアメリカにも留学したことがあります。今は日本の大学で教えておりますし、日本の教育については多分ある程度わかると思いますが、考えてみますと、留学生の問題は非常に大きいですね。先生方がこれからもうちょっと関心を持った方がいいのではないかと思います。そうしないと、特に国費留学生が多いのですが、ただ何となくお金だけ出して、彼らが本当に勉強できるかどうか。それで何となく何年か日本の大学へ行って、卒業する場合もあるし、できない場合もある。
 ただ、ちょっと申し上げるのが非常に失礼になるかと思いますが、例えば日本の大学のあり方に対しても、留学生だけじゃなくて日本の学生に対して、本当に教育のところとしてはふさわしいかどうか、また改めて考えなければならない。留学生は国家レベルで試験があって本当に優秀な人が選ばれ、ただ日本に来て、勉強がそれほどどうかな。いつか卒業できる。国に戻ってもさまざまな考えがあると思いますね。一つは勉強の時間に、さっき私が申し上げたように、一般の日本の方がアジアに対しては何となく違ったような目で見ていますね。何年か日本に滞在したときに、割合に好ましくないことが起こった、人間関係がうまくいかなかったとか、また温かさが足りないとか、何でもお金だけ出したというわけで、だから帰ったら、私の国もそうです、反日感情を持っている人が少なくないですね。例えば、七四年の日本の総理大臣が東南アジアへ来たときに、デモの先頭に立った人々に留学生も何人かいました。こういう意味に対して、これからの留学生の受け入れ方をもうちょっと総合的に考える必要があるのではないか。ただお金だけ出すのじゃなくて、それに対しても、私は日本の政府がもっと東南アジアから留学生を受け入れていただきたいと思います。
 なぜかといいますと、人間の長い一生の中で、日本の青春時代を考えて、多少問題があっても、ただ将来に立って一番関係がうまくいくのは、お互いに言葉がわかる、または日本に対して嫌なことがあってもやっぱり友人もおりますし、または文化も理解できまして、本当に多分アジアと日本がもっと仲よくできるのではないかと思います。
#50
○中西珠子君 一言だけ。よくわかりましたし、私も日本の留学生受け入れ、研修生受け入れをよくしていかなくちゃいけないと思っているのです。
 今度はちょっと角度を変えまして、日本で勉強して帰った留学生なり、それから技術を身につけて帰った研修生なりがアジアの国にそれぞれ帰ってからの問題なのですね。やっぱりそれこそ欧米先進国、アメリカとかイギリスで勉強した人の方がいいポストにつける。これは政府でもそうだし、民間の企業でもいいポストにつける。日本なんかで勉強したのはいいポストにつけない。極端な例だと運転手、ショーファー、そういう職しか、日本でせっかく長い間早稲田で勉強したのになかったなどという話も最近聞いたのです。そういうふうに日本で勉強したのは二流、三流の留学であるという意識がタイとかそのほかの国に、タイはずっと独立国でいらしたからそういうことは余りないかもしれないけれども、殊にイギリスやアメリカをかつて宗主国としたことのある国では、アメリカの大学で勉強した方が偉い、イギリスで勉強した方が偉い、フランスの方が偉いという傾向があるらしいのです。そういう点はいかがですか。それは私が聞いている話だけでしょうか、本当にありますでしょうか。
#51
○参考人(クントン・インタラタイ君) 一つ誤解されたところもありますね、日本に来る留学生が何か二流とか三流とか。留学生の中にもいろいろおります。昔タイの高校で、三年生のときに日本の共通一次試験みたいのがあって、同じ試験で、それで出たらもう国のナンバーワン、ナンバーツーがわかりますね。我々留学生の中にナンバーワンの人が私が存じる限りでは三人もおりました。それから二番、三番なんかも割に多かったですね、高校出たときに。だから決してそんなに悪くないのではないかと思います。
 ただ問題は、日本に来て何かいろいろな条件で彼らの将来がそんなに発達できないとか。アメリカの場合とかヨーロッパの場合は日本よりはいいシステムがあると思います。それは何年間か勉強したらいわゆるPhDの博士を取ります。日本の場合は文科系なんかなかなか出さないです。だからタイとか東南アジアの場合はドクター何とかとつけていますね、博士とか。それにやっぱり社会的に大きい意味があります。ただ、日本は、国内では日本の大学の先生でもPhDなんか余り気にしないと思いますね。だから、社会とか環境が違いますから、日本の場合はこういうふうに留学生に対して何か不利にシステムとしてつくられたのではないかと思います。
 簡単に言いますと、例えば留学すると、アメリカで大学一年生から大学院まで多分八年間ぐらいでPhDを取ります。日本の場合はそのぐらいの時間で修士課程ですか、マスターしか取れないとか。そして国に帰ったらやっぱり何となく西洋とは何か違うなと思いますね。だから、私はもし留学生を一緒に考えますと、もうちょっと彼らの将来性まで、国に帰ったら本当に不利じゃなくて、もっと有利になれるところをつくらなければいけない。または別の意味で、日本のもとの留学生が、特に私の国ではとっても国に帰ったら役割が高いのが多かった。例えば今のタイの大蔵大臣も日本のもとの留学生であり、またいろいろな大臣もいた。経済のトップの人もいた。さきにインドネシア大使館に行って、今インドネシアの大臣も、まだ若くても日本のもとの留学生です。だから私が申し上げたいのは、さまざまな人がいますから、日本側としても留学生の将来まで何か考えていただきたいなと思います。
#52
○中西珠子君 どうもありがとうございました。
#53
○柳澤錬造君 インタラタイさんの貴重なお話、本当に感謝を申し上げます。前半は大分お褒めの言葉を聞かせていただいたのですが、そのうちにだんだん胸の痛むようなお話になっていって、その中の幾つかは同感する御意見もございました。
 ただ、先ほどのお話では二十年もいらっしゃっているというのですけれども、御理解をしていただきたいなと思うのは、日本の場合も、三十年前に今日のようなこれだけの経済力を持った日本の国になるなどと予想しておった人はそれこそ一人もいなかったのです。言うならば、いかに日本人が皆勤勉かということと。それから先ほど松前先生からも出ましたが教育なのです、私もいろいろ研究してみまして。日本全国、日本人ほど国民すべてがある程度の教育を身につけているというのは世界じゅうどこにもない。それが非常に高度成長に役に立って、余りにもスピードが速過ぎたけれども、今日の先進国になったのです。だからそういう点で、ASEANの国々にしても今の日本のような国に将来ならぬとは限らないのだということを私は申し上げたいと思うし、むしろ、日本の場合にそれこそ私なんかが心配するのは、二十年後の日本の国がどうなっているのだろうか、今のような状態が果たして維持できているかどうかという心配も持つくらいなのです。そういうことを冒頭に申し上げて、二、三お聞かせをいただきたいのです。
 一つは、先ほどから出ました一九七四年の、当時の田中総理がASEANの国々を回って、そうしてあのバンコクで、あれはデモでない、一種の暴動ですね、を受けたのです。翌年私が向こうを回ったときに、これはかなりの高い地位の人ですから名前を申し上げるわけにはいきませんけれども、あの学生の暴動については外国のある勢力から相当な資金が送り込まれてきて、そしてあれは、ああいうぐあいでもって、これこれしかじかでこうなったのだということを私は聞かされたのだけれども、インタラタイさんは、当時タイのお国にいらっしゃったかどうかは知りませんけれども、しかしタイのお国の事情には詳しかったと思うので、その辺について御存じだったら教えていただきたいのです。
#54
○参考人(クントン・インタラタイ君) 私は、当時アメリカに留学していました。ただ、その後一週間くらいでタイに戻りました。中に知り合いもいましたし、私の考えとしては、多分外部から資金が援助されたことは全くないと思います。というのは、当時でもいろいろな事情があって、例えば学生と政府の対立があって、または日本の経済進出も、当時までは日本がやったことがいいかどうか多分だれも余り考えなかったのではないか、例えば日本の企業のあり方とか。だから、それで大体の人にとってはハプニングではなかったかと思います。ただ、もしそのとき学生が外部からお金をもらったら今ももらっているのではないか、デモがまだ起こっているから。また将来ももらうのではないかということも考えられます。問題は、さっき申し上げたように、タイと日本の構造的な摩擦の問題があります。だから、それを解決できない限りはいつどんな形で学生のデモが起こるかだれも予測できないのではないかと思います。
#55
○柳澤錬造君 もうちょっと突っ込んでお聞きしようと思いますけれども、そのぐらいにして、次に、GSP、特恵関税制度の方のことです。
 いろいろ先ほどからお話の中に出てきたのですが、ASEAN側から見て、日本とアメリカとの特恵関税制度の扱いではかなりそこに差異があるのですか。
#56
○参考人(クントン・インタラタイ君) いや、GSPはアメリカに対してはございません、それは発展途上国に与える特別の関税ですから。だから問題は、今のGSPの中にASEANの関係あるものが少ない、こういうふうに聞きました。例えば、ASEANの場合は割合に農業製品とか。だからほかの地域に有利になる対策ではないかと思います。アメリカが問題になったのは一般の関税ですね。だから合板とか……。
#57
○柳澤錬造君 アメリカからも特恵関税制度を受けているでしょう。
#58
○参考人(クントン・インタラタイ君) はい、それは受けています。
#59
○柳澤錬造君 だから、アメリカから受けている数と言ってはなんですけれども、それと日本から受けているもののそれの比較でどうなのですか。
#60
○参考人(クントン・インタラタイ君) それは私の聞いたことによりますと、アメリカの方が割にやりやすいと言われた。だから答えを言いますと、東南アジアの工業製品がアメリカでもっと販売できますね。日本ではいろいろな意味で仕事をしにくいですから、貿易しにくい。だからアメリカでは割合に多いですね。特に私の国の工業製品がアメリカのマーケットやなんかで販売されています。
#61
○柳澤錬造君 それからもう一つは、学生の諸君が、日本が搾取をしているというプラカードを持ってデモをしたとかというお話も出てきたのですが、同時にまた、日本からの資本投下というか、そういうことも大変歓迎しているというお話があったので、それに関連をして申し上げてみたいことは、これは私は労働運動をやっていた方ですから、それでもう十年ぐらい前にどんどん日本の資本が現実なマレーシアなんかへも行って、それでそういう搾取という言葉に該当するような行為をしておったことの事実を見てきたのです。
 そういう中でもって、いわゆる政府と労働組合と資本の側の、今の日本で言えば日経連、その三者構成で協議会をつくりまして一つの基準みたいなものをつくって、それでやはり東南アジアの国々に出ていくのはその国々の経済の発展、産業の発展に役立つようなことでなくてはならないのだといって、いろいろと一つのルールみたいなものをつくりまして、それを監視といってはおかしいけれども、そういう点でやっていかなければアジアの国々と日本との関係がうまくいかないといってかなり努力もしておったのです。ですから、それは今でもたしかあれは続いているはずですから、そういう点で過去においては確かに出いてって低賃金のASEANの労働者を使っていろいろなことをやってきた。しかし、そういうふうなことがだんだんと改善されてきているはずなのだが、その辺はお感じになりますか、どうでしょうか。
#62
○参考人(クントン・インタラタイ君) 日本の工場で働いている労働者の問題ですか。
#63
○柳澤錬造君 向こうへ相当に企業が進出してやっておりますでしょう。
#64
○参考人(クントン・インタラタイ君) 一つは、私の個人の意見ですが、日本では誤解されるところが一つあると思います。それは、何か東南アジアの人が、日本の企業で働いている人が圧倒的に多いという印象があると思いますね。実際に、例えば私の国では日本の企業で働いている人が一%もないです、労働者の中では。シンガポールの場合は少し多いかもしれないですが、恐らくインドネシアもそんなに多くないです。だから、日本の経済進出はほとんど、日本の資本集約企業ですか、キャピタル・インテンシブ・インダストリーとか、だから雇用が余りふやせないとか、これは一つの問題があると思います。
 それは別として、例えば日本の企業で働いている人の条件はどうか、いろいろな先生方の調査があると思います。東南アジアは大体は賃金が安いですね。ただ、日本の企業は賃金が安い。賃金は安いのだけれども、ほかの企業と比べてそれほど差がない。国内並みの賃金の率と思いますが、ただ問題になっているのは、日本人の労働者とタイならタイの地元の労働者の賃金の格差が大き過ぎます。大体十倍以上。それだけじゃなくて、例えばただの家に住むとか、また車もあるとかほかの特権もあります。そうして何となく日本人と東南アジアの労働者が本当に友達になれないのです。十倍以上の収入とか、または日本から派遣された方が課長とか部長とか重役のレベルで地位も違います。私が個人で観察したのは、それが経済ではないけれども、何か文化か、または人間関係の問題ではないか。だから向こうから見ますと、日本人がボスとかマスターとか、または収入が高いとか、何となく友達になりにくい、私はそう思います。または中には、聞いた話によりますと、ある方が何かだまされたとか、例えば日本の本社からタイの労働者にそのくらいの給料を払わなければならないのですが、ただ何か課長か部長が自分のポケットに入れるとかという話、多いかどうか私は存じませんが、こういう話があります。
 または、タイの労働者は一般に農民が多かった。農民だったらマイペースで仕事をしていた。今度日本の企業で働くと、日本の習慣の基準に従わなければいけないとか、特にタイ人と日本人とは国民性が違います。タイ人の方はもうちょっと何でも言えるとか、もうちょっとにこにこしている人が多いと思います。日本の方は別の人格を持っていると思いますね。それで何となくコミュニケーションのギャップがあると思います。だから、こういうふうに考えてみたらいかがでしょうか。タイ人は、自分の国だけれども、いきなり外国の方が自分の国に入ってきて、そして何か彼らの習慣に従わなければならないとか、それは日本が悪いとか私は決して言えませんが、ただ、こういう今のところはいろいろな文化的な摩擦があると思います。
 または、労働組合のことなんかおっしゃいましたが、東南アジアでは労働組合、特に民間の方が余りありません。あっても大体としてストライキの権利とかがない。ストライキがないから賃金の交渉のメカニズムにはなれないということ。だから、日本と東南アジアの労働運動とかを一緒に考えたら、やっぱり国内の政治的、経済的な条件が違うと思います。例えば日本の場合は人口増加率が低いからそれほど失業問題が余りないです。ただ、東南アジアは農村の人口が多いから、彼らの願望は、賃金が安くても、または労働条件が悪くてもできるだけ工場で働きたい。日本の企業の場合は割合労働条件にも関係がありますね。ある会社が何か長く労働者を働かせている、こういうことも聞いたし、いろいろなことがあると思います。だから、こういう問題に対しては一言言うと、今の日本の海外投資は東南アジアの雇用にはそんなに貢献していないと思います。または、経済摩擦の問題よりやっぱり文化的な面の方が問題があるのではないかと思います。
#65
○柳澤錬造君 ちょっとだけ。インタラタイさん、長いこと日本にいらっしゃって今のような御発言を聞かされると、そのままそうですかということでまた間違いを犯すといけませんので、これはお調べいただくとわかるはずです。私もずっと十年も前からになりますから、日本の労働者とASEANの労働者の賃金の差がこうなっていることは事実なのですけれども、私たちが理解できなかったのは、工場長とか労働組合の幹部とかというのは日本のあれと賃金は同じなのです。そうして今度はその工場長とか部長、課長からずっときてこの労働者、この差が私たちから見るならば想像のつかないような形になっておる。日本の場合には下も上がってきている、上もそんなに上がっていない。だからその辺で労働者だけ比べたら十分の一じゃないかというけれども、日本のあれは全体がそういうぐあいでもって、私たちがあの低賃金の中でどうして工場長とか組合の幹部は日本の工場長や何かと同じだけの賃金を取っているかという、その辺はむしろ理解がつかなかったくらいなのですから、そういう点だけつけ加えてひとつ理解をしておってください。
 終わります。
#66
○高平公友君 一言御質問申し上げたいと思います。
 インタラタイ先生には本当にありがとうございました。いろいろと日本の足らざるところを大いに指摘いただきまして、我々も大変勉強になった次第でありますけれども、農産物の輸入の問題について基準の問題も話しておりました。この点は午前中もアメリカの参考人のハイディさんからの御指摘がありました。そういう面は今の日本の貿易摩擦が指摘されるこういう時期ですから、これはもっと広い時代の流れに応じて基準だとか許認可のことはやるべきだろうという感を深くしておるわけであります。特に今、日タイ、日韓ですね、人と人とのつながりの中でどうも他のASEAN諸国は、差別といいますか、有利に取り扱ってもらえないという御批判の言葉がありました。私は常識的に考えまして、やっぱり知り合いだとどうしても理解もしやすいし、有利に取り運ぶという御指摘のことは当たっておるのじゃないか、そんなぐあいに常識的に考えるわけです。
 そこで、これらの問題をこれから直すためには、いいぐあいに正常な格好で進んでいくためには何としても人と人とのつき合い、知り合いということが非常に大切じゃないか。今ほど留学生のお話が出ておりました。これは留学で勉強してもらうことも大切ですけれども、日本なら日本の風土に触れて、そして友達をつくっていただく。それからまた、日本においでの方は、商社とかそんなところに勤めたいといいますと、自分と一緒に学んだ友達のところを訪ねていくのが普通でありますので、留学というのは、政府が金だけ出して心がこもっておらぬじゃないかというような指摘もありましょう。また、ほかの国と対してみたら日本はおもしろくないというようなこともありますが、しかし、やがてタイの経済を背負って、タイの国を背負ってこれから立たんとする人が、私は勉強も大切ですけれども、知り合いも大切だと思うのです。そういう意味でこのことをやはり研修生、短期間でもいいですが、そういうものもどんどんと盛んにすべきじゃないか。
 それからもう一つ、最近ASEANの国々からどんどん日本に青年会議所とか各種のそういう団体でたくさんおいでになります。そうすると、我々のところに今晩ぜひお泊りになって家族と一緒にやってくれ、そういうことで何人か私はお迎えする機会もあったわけです。そうすると理解が深まって非常に好意を持って、私の孫あたりは本当にすっかりおっちゃん、おっちゃんということで、我々のところへ行くとおっちゃん、おっちゃんという言葉を使うわけですけれども、親しくなる。こんなことが大変大切でありまして、今では日本は何といってもASEANというのは大事な土地でありますから、日本も一緒にいろいろな発言はありますけれども、私はそうでないと思っております。しかし大事な土地であるがゆえに、もう少し緊密にこっちもやる、あなたの方もやっていただく、ASEANの国々もやっていただく。今申し上げましたことなども、これはやはりこれから取り上げてもらいたいと思いますが、私の考えに対してお答えをひとつ賜ればありがたいと思います。
#67
○参考人(クントン・インタラタイ君) どうも先生ありがとうございました。
 先生のおっしゃったとおりです。やっぱり経済の関係も大切だけれども、もうちょっと何か人間のレベルでお互いに理解してもらいたいとか、いわゆる友達になればとてもよろしいのではないかと思いますが、今のところを見ますと、日本と東南アジア、特にASEANの方の交流が本当に活発になっています。先生おっしゃったように留学生もいますし、または青年の船とか、また今、日本の政府が東南アジアの青年を各国から百五十人ぐらい日本に招待していますが、さまざまな努力があると思います。ただ問題は、今本当に日本の大衆の一般の方がASEANまたは東南アジアに対して興味があるかどうか、やはりいろいろなレベルで、特にマスコミとかはもっと正しい方向をとらなければならないのではないかと思います。
 だからいろいろな問題がありまして、交流の場合、例えば言葉ですか、日本語が難しいから留学するにはどうしたらいいかと。私、失礼なことを言いますが、最近私は本を書いています。名前はまだついていなくて、日本と東南アジアの関係で中に留学生の問題も取り上げました。夏ごろ出ると思いますが、その中で私が提案したのは、日本語が難しいから、例えば留学する一年前に試験をしたらどうか。大学に入るためには二年生のときに試験をして、それでだれか選んで一年間日本語を勉強させるとか、そういうやり方もできるのではないかと私は思います。だから言葉の方をオーバーカムして、それでもっと何か勉強できるのではないか、幾ら短時間でも、一年でも半年でも、言葉を知らないより。これを一つ政府に提案したいと思います。
 今びっくりするほど日本の若者が東南アジアへの旅行をしています。私の学生も割合多いですが、ただ、せっかく東南アジアへ行くにしても、基本的な情報が足りないとか、少なくとも言葉がわからない。例えばタイの場合は英語を使わない。インドネシアも使わないですから、だから向こうの言葉または基本的な情報とか、あるいは世話人がいればもっと交流ができるのではないか。それを日本の政府ももうちょっと指導していただきたいなと思います。これが一つ。また、今の東南アジアと日本の関係がある意味ではかわいそうみたいという形なのですね。かわいそうだから日本が呼んでくれた、またはかわいそうだから何か文化交流をしようとか。
 この前の日曜日に五人ぐらいの学生がうちに遊びに来ました。彼らはうちで食事をつくった。何かといいますとビルマ料理をつくった。本を持って、タイ人の先生にビルマ料理を食べさせた。私も初めて食べたがおいしかったと思います。というのはどういう意味かといいますと、東南アジアの人と会った場合、向こうも料理にしても歌にしても文学にしてもよいものがあるから、自分のよいものと交換するとか、またはつき合えうとかする。ただかわいそうとか、何かやってやらないといけないのじゃないかとかそういう意味じゃなくて、これからは日本の方の態度がもうちょっと積極的に東南アジアのことを理解していただきたいと思います。
 また、東南アジアの方も、我々の方も反省しなければいけない。ただ、今日本に来て、日本の文化が難しい、言葉が難しいとか、もう西洋へ行こうとか、日本には興味がないとか、それもいけない。日本へ来たらやっぱり日本の文化も風土ももっと研究しなければならないと思いますが、東南アジアでは何か日本の紹介の本が少ないです。あってもアメリカとか西洋の方の先生が書いた本を訳したものです。だから、これからもうちょっと東南アジアと日本を自分たちの目でお互いに理解することをもっと促進できるように、失礼なことですが、私も日本について三冊の本を出しました。これからももっと書きたいと思いますが、ただ我々は将来へ向けて個人で何か努力が必要ではないか、私はこういうふうに思っております。
#68
○高平公友君 わかりました。
 それで、農産物のことについてお話がありました。パパイア輸入について十年もかかっておる、いまだうまく日本でこれの輸入許可をくれないというような話。それからマンゴーは基準関係でなかなかちょっと輸入が困難であると。それとトウモロコシが、今までやっていたのが突然ストップして、これはタイの地域経済に大きな影響を与えたということなどですね、実は私は勉強しておりませんで、きょう初めて聞かしてもらいました。こんなことは当然我々は後でまた先生方の御意見を聞いて、貿易摩擦の問題その他について政府の関係者に意見を申し入れさせていただきたい。委員長も取り計らっていただきたいと思いますが、特に私は合板の問題であります。
 私は昨年、インドネシア、マレーシアへも行ってまいりました。タイは旅行の機会がありましたから、ずっと先に行っております。ここの方からも広葉樹の合板の関税が高いということを強く指摘されてきたわけであります。なお、骨なし鳥肉の問題でありますが、今ほど御指摘がありました。これも今、東南アジアとの貿易の課題ではこういうことが大きな課題になってきていることは我々はよく承知しておるわけです。そこで、合板の問題は、日本の林業家というのは、これはもうほとんど外材が六割五分でしょう、それでもって生きていく道がない、山をどうして守ろうかというような内面的な問題もあります。しかし、一方でどんどんと出すものを出して、これらの向こうの強い要望のものも考えてあげるのが当然でありますし、何かこれは政府で経過措置を考えながらその方向が出ないものだろうかと、そんなことを我々は思い、それからまた、これらに対して意見も申し上げておるわけであります。
 ただ、先ほど先生のお話の中で、合板や骨なし鳥肉、鶏肉の関係でどうも日本は我々に対して極めて冷ややかだとこう言われますと、それは額は少ないのですが、結局は感情の問題なのだろうと思います。それはやはり何とかして払拭すべきだて我々は思っておるわけですけれども、率直にそういう意見を聞かしてもらって勉強せにゃならぬし、考えるべきところは極めて多いと思います。しかし、もう少し長い将来の目で見ながら、この問題は国内の事情もありますけれども、先生の意見も我々はちょっと頭に受けとめましたのでこれから精いっぱい努力する。ただ単にそういうことだから、タイの学生の現況などお話しになりましたけれども、ちょっとそれは早急に過ぎぬだろうかという思いをいたします。
 問題は、日本は貿易振興も大切ですけれども、そんなことよりもむしろ国内の需要の振興です。国内需要がどんどん活発になれば住宅投資もあるでしょうし、それは当然そういった合板とかそういうものの市場も活発になるだろう。日本政府は国債百三十三兆円から借金しておりまして頭の痛いところでありますが、政府に言わせると、我々やかましく言いますと、民間の活力だと言います。民間の活力もそのとおりであります。国会でも今議論の最中でありますけれども、こういう道を開くために努力いたしますし、こんな問題も何とか経過措置等も考えながら善処してもらいたいという、これは私の願望ですけれども、ただこれがあるがゆえに、それはもう日本なんか相手にしない、直ちに暴動を起こしてやる、これはちょっと短絡に過がないだろうか。これは先生あたりから、そうではないのだという実情はよく承りますけれども、これじゃちょっと聞いておっても情けないなと思うので、お答えがあれば聞かしていただきたい。
 以上であります。
#69
○参考人(クントン・インタラタイ君) わかりました。答えまたは意見が必要ですか。
#70
○高平公友君 何か御意見があれば。
#71
○参考人(クントン・インタラタイ君) 先生のおっしゃったことはわかります。だから率直に言うと、日本の場合は国際貿易を充実しなければならないとか、いろんなレベルで発言しています。しかし、具体的になるとチキンの問題はどうか、合板の問題はどうですか、それに例えば先生ならどういうふうにお答えできますか。私も総合的にもし自由経済ですか、または自由貿易を守りたければ、東南アジアから見たら大人みたいな、日本がやっぱり指導力を発揮しなければならないのではないかと思います。だから、個人のレベルで私は先生の御説明したことは十分に理解していますけれども、さっき申し上げたように、二十億七千万人がどうしてもなかなか理解してくれないと、それもまた別の問題があるではないかと思います。だから、本当の友好関係になるためにはお互いに誤解されないとか、さきに申し上げた日本の方がまだ少しわからないことがあるのではないかな。特に東南アジアの人々は日本に対して本当にどう思っているか、また言葉でない場合もあるのではないかということ。だから、本当の友好関係になるために、ただ言葉とか、または理屈の説明とか、またはいろいろな統計とかを見せるだけじゃなくて、本当に彼らが納得できるように行動をとる必要があるのではないか、私はそう思います。だから、これから日本と東南アジアの関係は、私個人から言いますと、日本の今農業問題、国内事情もあると思いますが、今度は国内化はどうしたらいいか。例えば骨つきとつかないチキンの問題、言うのは失礼かもしれないですが、例えば今七千人ぐらいの業者がいますが、彼らに対してどういうふうに国内化したらみんな国内の方でも納得できるかどうか、そっちの方の努力も必要ではないか、そう思います。
#72
○高平公友君 委員長、それならもう一遍一言。
 それは、これからこの貿易摩擦問題をもう何としても決着せねばならぬ。これはアメリカだけよくしてASEANの国は大変悪いということになると大変な問題になるのです。だからそれらとともに検討すべき課題だろう。我々もこれらに対して大いに発言せねばならぬと思うておるわけです。だから、場合によれば経過措置を考えて、国内業者もこれは我慢してもらわなきゃならぬようなこともあろうと思います。むしろASEANの国から、日本はアジアのリーダー格になっている、我々仲間を苦しめてアメリカだけに頭を下げて歩くとは何だというお考えもあるかもしれぬ。そういうことのないように、なかなかこれはまた生産者とか、そういう関係者の意見もありますが、政府だって経過措置ぐらい考えて、このことぐらい善処せにゃいかぬじゃないかというような動きも持っておるわけでありますので、このことも申し添えさせていただきます。
#73
○小委員長(大木正吾君) 最近稲山代表団のASEAN訪問もございましたし、日本の新聞には太平洋圏とか環太平洋時代とかというような言葉が出ていますが、中身に入りますと、いろいろきょうお話がありましたとおり、相互に意見の食い違いなど、まだまだ調整すべき問題が残っておりますが、大変参考になりました。
 もし質問がなければ以上で。
 以上をもちましてインタラタイ参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方に一言御礼を申し上げます。
 長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせくださいましてまことにありがとうございました。今後の小委員会審議に活用いたしますとともに、本日の会議が国際経済摩擦の解消に必ずや役立つものと信じております。インタラタイ参考人におかれましては、いよいよ御自愛の上、一層の御活躍をお祈り申し上げます。本日は御多忙中のところまことにありがとうございました。
 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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