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1984/05/17 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第3号
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1984/05/17 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第3号

#1
第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会 第3号
昭和六十年五月十七日(金曜日)
   午後一時六分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    小委員長        大木 正吾君
    小委員
                岩動 道行君
                大坪健一郎君
                倉田 寛之君
                高平 公友君
                柳澤 錬造君
    外交・総合安全保障に
    関する調査特別委員長  植木 光教君
    小委員外委員
                安孫子藤吉君
                久保田真苗君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   参考人
       欧州ビジネス協
 議会議長 クラウディオ・E・ベラヴィータ君
          (通訳  杉田美都子君)
          (通訳 田草川美紗子君)
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際経済問題に関する調査
 (経済摩擦に関する件)
    ─────────────
#2
○小委員長(大木正吾君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査特別委員会国際経済問題小委員会を開会いたします。
 国際経済問題に関する調査のうち、経済摩擦に関する件を議題とし、経済摩擦について参考人から意見を聴取いたします。
 本日は、欧州ビジネス協議会議長クラウディオ・E・ベラヴィータ君に御出席いただいております。なお、本日の通訳は田草川美紗子さん及び杉田美都子さんの二人にお願いいたします。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、経済摩擦問題につきまして参考人の方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 これより参考人の方に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人の方から御意見をお述べいただき、その後小委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、ベラヴィータ参考人、どうぞよろしくお願いいたします。
#3
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) どうも御紹介ありがとうございます。用意してまいりましたものを読ませていただく前に、若干ごあいさつを申し上げたいと思います。
 きょうここに用意してまいりましたものは、一人の長年日本に住んだ経験を持つ者のコメントとして聞いていただきたいと思います。そうしてまた、その出身国とそれから日本との間の貿易摩擦が長引くことによって、こうした国々の関係が破綻を来すのではないかということに真の懸念を感じている者の意見としてお聞きいただければ幸いでございます。また、私どものコメントはあくまでも建設的なそして友好的なトーンの中で言われているというふうにお受け取りいただきたいと思います。友人は必ずしも常に耳に響きのよい言葉だけを発するのではないということを御理解いただければ幸いであります。
 まず、当小委員会が日本で事業活動をしております欧州の企業の考え方を発表する機会を与えてくださいましたことに対して感謝したいと思います。特に現段階におきましては、お互いになるべく頻繁に意見を交換し合い、そして誠実に互いの考え方に耳を傾けることが非常な重要性を持っていると考えます。私がここで言わんとしているのは、この種の機会をなるべく互いに有効に使い、そして真の話し合いをすべきであるということです。ただ単に、お互いに儀礼的な話し合いに終わらせてしまうべきではありません。
 まず、私は数年にわたって日本に住んでおる者でありますが、一般に考えられているよりは、ヨーロッパと日本の間には数多くの共通性があるように見受けられます。その割には欧州は、日本において余り注目されていないということを感じております。私どもは、ともに何千年もの古い文明を持っております。そして芸術や伝統の豊かな遺産を共有しており、これが、文化的なやり方で、さらに我々の成長を促進、強化する豊かな基盤を提供してくれていると思われます。
 我々は、余り一次産品には恵まれてはおりませんけれども、我々の主要な資源は人的資源であります。この人的資源ゆえに我々は多くの苦難を乗り越え、成長し、そして繁栄してまいりました。ただ、一つ大きな違いは、欧州では互いに密接なかかわりを持つ関係が維持されてまいりましたけれども、日本は何世紀かにわたって鎖国を選び、ゆえに外国人や外国のものに対しては、若干控え目な態度が見られます。
 しかし、例えば私の父親が子供のときに私に教えた勤勉の精神、そして一生懸命働き、貯蓄をし、むだをしないというような労働倫理は、日本にやってまいりまして、日本人があたかもそれを自分たちのユニークな特質だと信じているように見受けられ、びっくりいたしました。ですから、我々の多くにとって、日本は考えられているよりもよりわかりやすい国であります。私の意見では、この種の誤解があるということは、いろいろな本や記事、インタビューそして公式、非公式の報告によって生まれてくるのでありますが、この誤解が一つの便利な煙幕を提供していると考えられます。そして、その煙幕ゆえに問題解決は言わずもがな、問題があるという認識さえもおくらせているように見受けられます。
 私、便利なと申し上げましたが、また同時に、大変危険なと言うべきであります。というのは、問題はそれに対処しなければなくなってしまうというものではなく、むしろさらに大きく、そして解決が困難になるからであります。今日においても誤解に関してはいろいろなことが言われ、また書かれております。ここで非常に象徴的な一例を引用させていただきます。
 外務省のある高官が、日本の通商政策に対する批判は誤解に基づいている、そして米国議会の反応は日本の市場が閉鎖的であるという認識に基づいているという発言をしております。私は、この高官、またこの高官と同じ意見を持つ方々にぜひお目にかかって、もし日本の市場が開放されているのであれば、なぜ日本政府が今日までに第七次市場開放策までを発表するようになったのか、ぜひ聞いてみたいものだと思っております。
 また、同じように、三月に米国に二週間の政府ミッションで訪米したメンバーの一人が、次のように帰国して発言しております。この人は、結びにおいて、我々はさらに広報活動を強化し、文化交流を深め、そして相互理解また日常的なコミュニケーションの改善をする必要があると言ってお
られます。もちろんこれが重要であることは言うまでもありませんが、しかし実質的な問題に焦点を当てた発言ではありません。我々が今日直面している問題は、決して広報関係、PR関係の問題ではありません。より実質的な問題であります。
 しかし、より事実に基づいたデータにのっとって問題に対処する場合でも、例えば米国の対日赤字がこれほど巨額な理由はドル高であるというような意見が大半を占めております。もちろんこれも一理ありましょう。しかし、ではなぜ、一九七〇年には欧州の対日貿易赤字が十億ドル以下であったものが昨年には百十億ドルにも膨らんでしまったのでありましょうか。この間、円はすべての欧州通貨に対して上がったのであります。
 我々がよく耳にする理由は、我々の方で質的にも価格面でも競争力を強化するための十分な努力をしていないからだということですが、それは真の理由ではありません。中曽根首相みずからが、より外国製品を買おうということを提唱なさり、そしてみずからイタリーのネクタイを二万五千円で買われたという記事を目にいたしました。しかし、実際あのネクタイの工場渡し価格は大体三千円ぐらいであります。ですから問題は、我々の価格を値下げするということではないのです。八倍も値段が上がってしまった理由はそれ以外のところにあります。同じような例は多々挙げることができますが、皆様もこれに関しては何度も耳にされたことでありましょうし、私の話でもって皆様を退屈させてしまってはいけませんので、もうこれ以上は例を挙げません。
 皆様御存じのように、欧州ビジネス協議会は昨年の十月、日本政府及び東京の日本及び外国の報道関係者、ブリュッセルのEC委員会及び欧州の財界、経済団体及び報道関係者に対して「ドゥーイング・ビジネス・イン・ジャパン」という出版物を配付いたしました。この小冊子は非常に明確に、そしてかなり詳細に我々の意見を述べたものであると感じております。そしてこれに加えて、EC委員会は一九八四年四月二日に日本政府に対して対日要求リストを提出いたしました。また、ECの特使がこれに加えて、ことしの二月に開催されましたECとの貿易拡大小委員会の会合の終わりにさらに追加的なリストを提出いたしました。こうした一連の資料は欧州側の見解を詳細に御理解いただくための一つの非常にいい基盤を提供するものであり、これはそれぞれ現在でも意味を持っているものばかりであります。
 ここで私は、日本と欧州諸国とのより広い枠組みからの関係を見てまいりたいと思っております。
 日本は、過去数年の間に西側世界経済の中で第二位の地位を占める大国として台頭してまいりました。そしてまた同時に、日本の多くの特質を維持してこられました。確かに個々の日本人は外国製品に非常に関心を持っておられます。また同時に、日本の官僚機構は余り輸入業者が輸入をしやすくないようにするのが本来の義務であると感じているようであります。つい最近まで輸入に関してはかなりの禁止があり、そして輸入が許可されている場合でも、日本の市場を制覇することのないような措置がとられておりました。
 一九六一年に、タイプライターのメーカーでありますオリベッティ社は最初の輸入許可を認められました。しかし、その額はたった一万ドルでありました。ですから、これは必ずしも我々側が努力をしないというのが問題ではなく、その努力を試みることさえも許されていなかったということであります。今日、時に試みることが許されていた状況にあっても、保護主義的な障壁の後ろで巨大な企業として育った企業を競争相手にしなければなりません。それとは対象的に、日本企業は我々の国に進出する際には、そのような問題に直面することはありませんでした。我々の考えでは、日本が市場を実質的に外国製品に対して開放していくことに何ら恐怖の念を覚える必要はない。むしろ、その開放が日本の利益にかなったものであると感じております。私、いろいろな筋からの試算を集めたのでありますが、偶然にもその意見の一致が見られたこととして、日本の国内市場を開放しても、せいぜい日本の黒字は二五%ぐらいしか減らないであろうということでありました。日本は、そうすればまだ日本の貿易収支面では巨額の黒字を享受しながらも、主要貿易相手国との関係においては深刻な頭痛の種を完全に除去することができるでありましょう。
 戦後の自由貿易体制の中にあって、日本は特段の経済面での成功を達成してこられました。日本のGNPは世界のGNPの約一〇%を占めております。ですから、当然日本経済の動向が世界経済に影響を及ぼし、またその反対に、日本の繁栄した社会の存続は自由貿易体制を抜きにしては考えられないのであります。今日、自由貿易体制が戦後最大の難関に直面しているという明確な認識が必要とされております。ということは、日本が市場を維持するためにできる措置はすべてとらなければならないということを意味しております。今日、多くの先進国の経済状況を見ますと、高い失業率に悩まされております。そして日本の成功は、こうした国々の協力なくしては維持し続けることはできません。ですから、日本は短期的には痛みを感ずるような措置をとっても、それは長期的には日本の利益にかなったものでありましょう。
 一九八五年三月三十日現在のEC加盟国の失業人口が千三百五十万、一一・五%の失業率であるということは、問題は政治的な問題であり、その解決策も政治的な解決策にならざるを得ないという点であります。言うまでもなく、一番簡単な解決策は保護主義法案であります。保護主義的な措置は経済的には割が合いません。しかし、問題はもはやコントロールできる規模のものではなく、そしてもはやただ単なる経済問題ではありません。日本は自由市場体制から最も多くの利益を享受してこられた国であります。そしてまた、この体制が破綻を来せば、そこで最も多くの痛手を受けるのも日本であります。ですから、これを回避するための措置をとるというのはお国の国益にかなったことであります。開放された貿易こそが各国の最大限の貢献を可能にする最良の方法であります。そして日本は、いかにその市場を開放するかという問題に関して、誠実に、そして実質的に対処すべきであります。
 最近の市場開放策に対して、日本経済の社説では次のように言っております。それを引用させていただきますと、我々のこの一連の経済対策に対する率直な印象は、今日までこのように数多くの障壁が残っていたことに対する驚きと失望であると。また、先回発表いたしました対外経済対策も、やはりこうした受け身の姿勢に色づけられており、あくまでも米国及びその他の国々の要求に対して対応をするということで、日本としての将来の具体的かつ積極的な方向性に欠けているように思われる、そして、我々としては米国及び他の主要貿易相手国がこのパッケージによって日本に対する批判を軽減しないのではないかと懸念している、というのがその社説の最後であります。
 議員の先生の皆さん方は、何か手を打たなければならないというふうにお考えであると思われます。しかし、その何かというのは意味のある何かでなければなりません。つまり、世界に対して日本が実質的な問題が何であるかを理解し、そしてそれを解決するために全力を尽くしているということを示すことのできるものでなければなりません。日本は、日本の果たさなければならない責任に対する認識が育つペースよりもはるかに速いペースで経済成長を達成されました。世界市場を相手にこれほどの競争力を発揮してこられた国は他にありません。しかしまた同時に、幾つかの古い、そして不適切な政策変更面での変化の速度が遅かったという国々もあります。日本の孤立した、そして傷つきやすいという、もはやなじみはありますけれども、時代おくれのイメージにしがみつくことによって多くの日本人は、日本の将来はより国際社会に責任のあるメンバーとして活発に参加することによって日本の将来が保障され、そしてその立場がさらに強化され得るのだということを
なかなか認識しておられません。
 ここで必要とされている変更は長期の構造的な変化であります。そして日本は、現在よりもより輸入志向型の社会になることを要求されております。それは日本の国益にかなったことであり、また、日本の消費者の利益にかなったことだと感じます。我々は決して日本の国内市場における市場占有率を保証してもらいたいなどとお願いしているのではありません。しかし、我々の国の製品がお国の市場でのある占有率を確保するために自由に競争できてしかるべきであると感じております。この小冊子の結論でも指摘しておりますが、こうした一連の変化を実現する力は皆さんの手中にあります。しかし、そうした変革がなされても、まだ我々欧州側がその環境をうまく利用できなかったとすれば、それはまさに我々の責任でありましょう。
 私は長いレクチャーのようなものをするつもりはございません。むしろこの機会を皆様との対話の機会にさせていただければと思いますので、これで私の発表は終わりにいたしまして、ぜひ質疑応答させていただきたいと思います。
#4
○小委員長(大木正吾君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
#5
○大坪健一郎君 きょうはクラウディオ・E・ベラヴィータさん、それからもう一人イギリスの方、大変お忙しいのにこの委員会にお出向きくださいましてありがとうございました。
 実は、外交と安全保障に関する特別の調査委員会でございますから、経済問題そのものに余り深入りした議論をすべきではないと思いますけれども、最近日本に対する諸外国の御注文が大変多いので、我々としては自由主義陣営の中で意見の対立が余り激しくなることを、経済的理由からだけでなくて、政治的理由から考え直さなくてはいけないと思っております。
 そこで、幾つか今の御説明に関連して御質疑を申し上げたいのですけれども、貿易摩擦の問題というのは非常にセンシティブなところがあって、国内のいろいろな関係の方は大変関心を持っておる問題でございます。したがって、日本の政府が中曽根総理大臣を中心に行動計画をつくろうということで、今非常に努力を始めたところですから、我々としては、やはり国会としてその努力を大いにサポートしたいと思っております。そういう観点でいろいろ質疑をさしていただきたいと思います。
 一つは、ヨーロッパの皆さん方が日本においでになって日本での商売をされて、そこで御経験になったいろいろな経験から考えてですけれども、関税を低くするというような関税の操作では、日本からの輸出超過をもう抑えることはできないのじゃないかという議論があるそうです。つまり、日本の国へ輸出をする場合に、国内の競争力が非常に強いので、関税だけではこれは克服できないという意見が一般的なように言われておりますけれども、欧州各国では果たしてそういうことになっておるのでしょうか、どうでしょうか。
#6
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) その点に関しましては、ただいま先生がおっしゃったことに完全に同意いたしております。ある意味では、単に関税に関して行動を起こすことでは問題を解決することはできないと考えております。そして、お気づきかもしれませんが、私の発表の中では関税の問題に関しては一言も触れておりません。私が述べようとしたことをまさしく非常に的確に今御表現いただいたと思いましたので、私自身それ以上にさらにつけ加えることはございません。
 単に関税だけでは問題を解決することができないと思います。と申しますのも、現時点において既に日本の関税率というのは非常に低い水準でございまして、中には我々にとって重要な商品の分野に関税が残っているものもありますし、その他の関税に関しては我々にとってそれほど重要でない分野にとどまっているにすぎません。しかし、例え明日の朝までにすべての関税が撤廃されたとしても、それでも私どもにとっての赤字、そして日本にとっての黒字というのは残存する、残るというふうに考えております。
#7
○大坪健一郎君 一般的に言って、貿易の障壁は関税が主ですね。ノンタリフバリアーという話がありますけれども、このノンタリフバリアーという言い方になると非常に話がはっきりしなくなりまして、さっきの一番最初の御説明では、誤解のあることがいわば煙幕になっておって、誤解がある、誤解があるということで事態の解決ができていないのだという話がありました。誤解というのは、日本側にも説明不足もあるし、慣習の違う点もあるし、外国側でも日本の状況でわかりにくい点もあって、そこがうまくいかない。そこで、どうも日本での輸入が進まないというような御批判があるかもしれません。しかし、そういう形のものは非常に水かけ論になりやすいのだけれども、ノンタリフバリアーの中でも、例えば通産省が非常に小さな規則とか検査の仕方とかで障壁を設けておるとか、あるいは農水省が農産物の輸入については特に細かい検査なり輸入制限措置をとっておるとか、そういう指摘が具体的にあって、それが直されていくということならはっきりするけれども、一般的に日本の生活慣習にまで入るような問題のノンタリフバリアーの議論というのは、どうも日本人には受け取りにくいところがあるのですけれども、その辺はどのようにお考えでございますか。
#8
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) 再び御指摘の点は非常に常識的な、理にかなったものだと思います。私自身日本人ではありませんけれども、今先生がおっしゃった観点は非常によく理解することができます。私どもにとって非関税障壁と映るような非関税障壁が、皆様方にとってはごく普通のビヘービア、ごく普通の行状であるという場合が存在することは私自身はよく理解することができる次第であります。ここで私が望んでおりますのは、もし双方にとって受け入れることができるような共通のビヘービア、共通の行状というようなものに関して双方が合意に達することができればという点であります。
 例えば、ここで農業部門を取り上げてみましょう。私の知る限り、世界じゅうのあらゆる諸国におきましては農業部門、少なくともその農業部門の一部に関しては保護しようという傾向がございます。したがって、この農業部門を避けようとしているではないかと御指摘いただくようなリスクは存在すると思いますけれども、それでもこの農業の部門に関しては非常に困難な問題でありますので、私、ここで直接議論することは避けたいと思いまして、関係政府にその措置に関しては任せたいと考えております。したがって、農業以外の分野からほかに例を求めたいと存じます。そして、その例におきまして、非関税障壁に関して日本の政府あるいは関係省庁が、全く、善意に基づいてではありますけれども、必ずしも正しい方向に努力を払っていない例というものを御指摘させていただきます。
 例えば、ごく一例でありますけれども、パンとかパスタのたぐいを加工するための食料加工機械の例を挙げさせていただきます。この機械に関しましては、関係省庁におきまして輸入の段階において検査が遂行されております。しかし、実際の目的地に到達した場合にさらに県庁から検査が求められる場合があります。しかし、この県庁からの再検査というのは、私どもの観点から見たら全く必要のないもののように思われるわけです。その輸入に関して責任を抱いている関係省庁の方で既に検査済みの商品でありますので、県庁から再検査を行うということは全く時間と金のむだであるというふうに私どもとしてはとらえている次第です。
 また、別の分野から例を引かせていただきます
けれども、食料であるとか化粧品であるとか、日本に輸入された製品の化学成分に関することでございます。
 私どもの本国と同様に、日本におきましてもこの化学成分に関しましては法律が存在しておりまして、いわゆるポジティブリストというのがございます。このポジティブリストと申しますのは、検査を受けなくても既に認可されている製品、成分のリストでございます。そして、この化学成分に関する日本のポジティブリストにおきましては二万五千項目が含まれておりますが、私どもの本国のポジティブリストにおいてはその二倍の項目、五万項目がカバーされております。これが何を意味しているかと申しますと、その本国のポジティブリストに含まれていて日本のリストに含まれていない二万五千項目に関しましては、私どもがケース・バイ・ケースで担当当局に対して認可を求めなければいけない。やはりいろいろな試験を行ったり検査を行ったりということで、前回と同様にむだな時間とお金を費やさなければいけないという状況になっております。
 また、もう一つの具体例ですけれども、これは、最初に関税についてなさった御質問とも関連が出てまいりますけれども、機械工具、マシンツールに関するものであります。工作機械の問題であります。
 この工作機械の関税というのは昨年撤廃されました。しかし、この工作機械の交換部品並びに附属品に関する関税というのはまだ残存しております。そして、日本の市場の要件を満たすためには、この工作機械は、日本のお客様の方で必要となっているいろいろな附属品とか部品などの条件を満たさなければ輸出ということは考えられませんので、実質的には工作機械の関税は、その附属品と交換部品の関税が残っているということから、残っているに等しくなってしまっております。
 そして、最後になってしまいましたけれども、やはり重要な問題といたしましては、商標と特許の問題がございます。そして、この商標と特許の問題に関しましてはヨーロッパ諸国の多数の国が影響をこうむっております。そして、これはファッションからワインに至るまであらゆる商品を網羅している問題であります。例えば日本の国産のワインがあたかもフランスあるいはドイツ製であるようなラベルがついていたり、あるいはミザン・ブーテイユ・オー・シャトーという商標を模倣してシャトー・メルシャンというような形で、そのメルシャンの人も聞いてびっくりというような間違った商標をつけていたりする例があります。これは単に日本の独自の習慣で、外国人の理解が難しいような習慣というよりは、むしろ誤った行いであるとはっきりと御指摘したいと考えております。
 したがって、元来の御質問に議論を戻らせていただきますけれども、日本では日本の流通制度のような幾つかの事実がございまして、私ども理解はできるけれども、対処することが大変難しいいろいろな事実というものが存在しております。しかし、この日本の流通制度というのは、日本の歴史と社会機構に基づいて長年にわたって発展してきたものだということはよく認識しておりますので、例えば法律を改正することによって一夜にして変革することができないということはわかっております。一つの既成事実でありまして、我々もそれに対処していかなければならないというふうに感じております。しかし、そのほかのものに関しましては、私が例を挙げさしていただいたように、非常に事態ははっきりしていてわかっていただけると思います。
#9
○大坪健一郎君 今そこに安孫子先生がおられました。用事で退席されましたけれども、安孫子先生は県の知事さんをしておられましたから、県庁で再検査を受けるというのが理解できないと言っておられるのですけれども、どこだったかひとつ教えていただきたいのです、食品、機械の輸入について。そういうことはないはずだと言っておりますけれども。
#10
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) 今ちょっとその県の名前を思い出せないのですけれども、ぜひ調べましてその具体例の説明と添えてぜひお伝えしたいと思います。あるいはその御質問をなさった安孫子先生にお伝えしたいというふうに思います。
#11
○大坪健一郎君 それから、結局なかなか輸入がふえないわけですね、製品の場合は大体日本の国内のものでほとんど私ども用が足りてしまうから。この間の総理大臣の百ドル買い物のように、特別にその気になって買わないと、なかなか外国の品物を買わないということもあるのです。ただ、製品の輸入率を定めてそれを達成するようにしたらどうだという話もあるようですけれども、自由貿易のシステムで製品の輸入率を決めるという議論はなかなか難しいように思うけれども、どうでしょうか。拝見したこの欧州ビジネス協議会の議論の中にはそういう議論があるのですけれども。
#12
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) 問題の所在というのは、そのように製品の輸入率を定めるというところにあるわけではないと思います。
 ただ、私どもが望んでおりますのは、私どもヨーロッパ諸国からのビジネスマンが日本にやってきて、日本のビジネスマンがヨーロッパ諸国においてビジネスをなさる上で享受なさっていらっしゃるような状況を欲しているというわけです。すなわち、日本市場においてヨーロッパのビジネスマンがビジネスするに当たって、より障害や問題に直面する機会を減らしていただきたいとお願いしているわけです。というのは、現時点におきましては、そのような障害と問題というのはまだたくさん存在していると感じているからであります。例えば七百に上る品目に関してそれぞれ個別にいろいろ要求しようという気持ちはございません。そのような議論になりましたら非常に細かな話になってしまって、むしろそういう細かな話というよりは、一般的な姿勢についての議論に終始したいと考えているからであります。
 例えば、毎回非常に具体的な質問を日本側にさせていただいたときに、必ずしもそれに対して具体的なお答えを受け取れないことがあります。しかし、御指摘は非常に正しいと思います。というのは、例えばここに二万本の鉛筆を売るという保証を欲しいというふうにお願いすることはできないと思います。日本政府はそのような保証をしないと思いますし、第一にするべきではないと思いますし、それ以上に我々としてもそのようなことを求めるつもりはないわけです。単に我々が日本において、例えば三菱がドイツにおいて鉛筆の輸出を行う認可を得られるのと同じ容易さをもって我々が日本において鉛筆を輸出するライセンスをいただきたいというふうにお願いしているのみであります。その後の段階、実際我々が何本鉛筆を売ることができるかというのは全く私どもの問題でありまして、それに対して実際何本という保証を日本政府にしていただきたいというつもりは全くございません。
#13
○大坪健一郎君 それで、最後になりますけれども、非常に重要な問題があるのは、リシプロシティーを要求するということは当然のことですが、つまりヨーロッパ諸国と日本の間の相互性と同時に、日本の国内の普通の人たちと同じような条件、この二つの問題があるのですね。ですから、形の上で完全に同じような均等な待遇を国家と国家の形ではできないということはあっても、しかし、ヨーロッパの人が日本に来た場合には日本の商人が受けておると同じような待遇は受けておるはずだ、法の下では平等だというふうにしなくてはいけないというのが私どもの考えです。だから、その日本の人たちが受けているのと違う待遇になっているとすれば、それは全部直していかなければならない。ところが、日本の人も難しい問題で頭を悩ましながら商売をやっていることがある。そのことについては、外国の人も同じようにならなくてはならない。そうなると、むしろ問題は言葉の問題じゃなかろうかという感じもしますけれども、その辺どうでしょう。
#14
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) 御指摘の点がいま一つはっきりわかりません。もう一度御説明していただけますでしょうか。
#15
○大坪健一郎君 我々の国であなた方外国の方が受けておるようなものを我々もあなたの国で受けたい、こういうわけです。そう言うでしょう。例えば三菱がドイツで受けておるようにドイツの鉛筆も日本で同じようにやってほしい。それはリシプロシティーですね。ところが、日本の場合も、どこの国でもそうだけれども、そこの国内の法律で全く平等な扱いを受けるということとその問題とはちょっと違うでしょう。
#16
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) その点に関して私どももともとお願いするつもりはありません。日本に国内のシステムまで変革してほしいとお願いするつもりはございません。むしろ変えていただきたいのは、外にいて日本の国内のビジネスに参入したいと考える場合のいろいろな規則に関して、若干改正していただきたい点があるというのみでございます。私どもがまだ日本に入る前に、外に位置しているときに、その中に入るためにちょっと変えていただきたいことがあるということでありまして、一たん中に入ってしまえば、日本のほかの方々と全く同じ条件のもとでビジネスを行おうと思いますし、この小冊子を準備した者たちも、すべて長年日本国内に暮らして日本人の条件と同じ条件で仕事を行っている者たちであります。問題は、国外にあって国内に参入したいときにまつわる問題であります。したがって、その意味でもやはり御指摘は正しいわけであります。日本の国内のビジネスの環境というのは非常に困難でありまして、競争も激しく厳しいものだということは私どもよく存じておりますし、その事態をおそれているわけではありません。したがって、御指摘は非常に正しいのですけれども、もともと私どもとしてはその日本の国内の条件まで変えてほしいというふうにお願いしているわけではないのです。お願いしているのは、単に外にあって中に参入しようとしているときに関するいろいろな問題に関して、中には除去していただきたい、解決していただきたいものもある、こういう点でございます。
#17
○大坪健一郎君 そういうお気持ちはよくわかります。
 ありがとうございました。
#18
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) ここで、今話していることと関連があると思われますので、日本経済新聞の英文版でありますジャパン・エコノミック・ジャーナルの一九八五年四月三十日付の記事を引用させていただきたいと思います。これは村田通産大臣が企業六十社のトップを集めて、いかに輸入製品をもっと買うことが重要であるかというレクチャーをした際の記事であります。その記事の一部を読み上げさせていただきます。「この六十の企業がより真剣に輸入に取り組むに当たって、こうした企業は輸入の円滑な拡大を阻止する一連の政府の規制があることを認識しつつある。例えば六十社の中に入っていた大手スーパーマーケットこ関して言えば、このスーパーは通産省に対して既存の法律の緩和を要請することによってより多くの輸入酒類を取り扱えるように要請しております。また、メーカーも、通産省がスポンサーをした会議において外国製の機械部品及びコンポーネントに対する関税を引き下げるように要求をしていました。」そして、これら一連の国内企業からの要求が、海外に対しての市場開放圧力に関して、強力な圧力となって政府官僚機構に影響を及ぼすことができるであろう、と書いてあります。
 最後に、もう何度も耳にしたことであり、日本の財界のトップの一人が口にしたということで、私も驚いている一つの発言をもう一度ここで被露してみたいと思います。それは、日本はもはや外から買うものは何もない、日本国内ですべてを調達できるという発言であります。
 米国は私の専門外でありますが、もともと米国経済はそれほど輸出に熱心な経済ではありませんでした。しかし、欧州では決してそうではありません。GNPに占める輸出の比率を私の国イタリーを例にとってみますと、多分二五%ぐらいだと思います。日本のGNPに占める輸出の比率は、間違っていたら訂正していただきたいのですが、約一七から一八%ではないかと思いますので、比率として見れば我が国の比率の方が日本のそれを上回るということになります。もし生産の四分の一が輸出に向けられているということであれば、その輸出製品の質が悪ければ売れるはずがありません。そして、イタリーを例にとれば、主要貿易相手国はドイツであります。日本においてさえも、ドイツは日本の企業の能力に匹敵する能力を持っていると認められております。ですから、もし西独がイタリーの製品を買い続けているのであれば、イタリーの製品は日本において売れないはずがないというのが私の論点でございます。
#19
○小委員長(大木正吾君) 質問者が交代いたしまして、次に久保田さんからも御質問させていただきます。
#20
○小委員外委員(久保田真苗君) きょうはありがとうございます。私、野党でございます日本社会党という党の議員でございます。
 幾つも御質問したいことはあるのですけれども、初めに一つお伝えしておきたいのは、ことしの国会では貿易摩擦が大変大きい問題になりました。
   〔小委員長退席、大坪健一郎君着席〕
それで、いかに私どもが貿易摩擦を解消していい関係をよその国と持ちたいと思っているかを知っていただきたいと思うのです。もちろん、さっき御指摘になりましたような、アメリカはドル高なのだ、あるいは欧米で輸出努力が足りないのだといったようなそういう議論はもちろんございました。けれども、相対的に言えば、やはり一国でもって貿易黒字をかき集めるというようなことは成り立たないのだ、だから何とかしなきゃいけないのだというそういう大勢の議論が野党はもちろん、与党からも出ておりますことを御承知いただきたいと思います。
 そこで、まず第一にお伺いしたいと思いますのは、先ほどおっしゃいました、中曽根さんがイタリアのネクタイを買った、その値段は二万五千円だけれども、工場で卸す値段は三千円ぐらい、つまり八倍にもなっているという御指摘をなさったのです。私もそのことはとても強く感じます。例えば私がイタリアの靴をイタリアで買えば一万五千円、日本で買えば三万円から四万円になります。でも私は、消耗品である靴を一々四万円を出して買うことはとてもできません。この値段が改まらない限り欧州の商品は日本で売れっこはないと私は思うのです。ですから、教えていただきたいのは、この八倍になることについてベラヴィータさんはその理由を具体的にお挙げになりませんでしたけれども、一体どこが悪くてこんな値段になるのかということを御指摘いただきたいと思います。
#21
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) その御質問は先ほど大坪先生も触れられたとおり、日本の流通機構に問題があると思います。ただ、日本は私の母国ではありませんし、自分の国の流通機構に対してであれば意見も申せますが、日本の流通機構をどのように変更すべきであるというようなことは、私の口からは申し上げることはできません。
   〔小委員長代理大坪健一郎君退席、小委員長着席〕
ただ、先ほど御指摘のあったネクタイや靴の価格が日本の消費者価格においては六から十倍にも上がっているという点に関しては、それは流通の段階で何段階もの中間業者の手の介入があるからだというふうに理解しております。
 我々、常に欧州側の努力が足りないということを言われます。例えば質の面に関しては、ニコンF3などはイタリーのデザイナーがデザインしたものでありますけれども、質ということはあくまでも個人の判断でありまして、いろいろな見方が
あると思いますので、ここではさておき、価格面に関しては、日本においても欧州においても出荷時のコスト自体は大体同じであります。そして、関税は非常に低いか、または撤廃されておりますから。
 では、なぜ欧州産の製品の価格がこのように高くなってしまうかといえば、それはやはり流通機構がその原因であると思われます。そして、それに対しては我々でできることは何もないというふうに感じます。そして、短期的に日本においてこの問題が解決されるとは思えないのであります。だからこそ、日本の消費者は天文学的な高い価格のものを買っておられるというふうに理解しております。
#22
○小委員外委員(久保田真苗君) ベラヴィータさん、それですと非常に困ったことになりますね。私は、日本のものの方が質がいいなどと言っているものではないのです。質がいいものもあるし欧州の方が質のいいものもあるでしょう。例えば靴なんかは、イタリアの靴は日本で大変人気があります。私もイタリアの靴がいいと思います、丈夫で軽くて履きいいのですから。だけれども高過ぎるのですね。今おっしゃったように、それは流通機構の問題で、そちらで何もできないということになりますと、これは解決ができないと思うのです。ただ流通機構の問題は、恐らく日本でできる商品も同じような流通機構を通っているのだと思うのです。ですから、イタリア、ヨーロッパの商品を売るときに、そちらの方でも何か別の工夫ができないのか。どうなのでしょうか。
#23
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) それに関しては、何もできないと思います。日本の流通機構を通さないで日本において販売することはできないということは、先生の方が日本の流通機構に関してはよく御存じであられると思いますので、よくわかっていただけると思いますが。
 そして、外国企業が日本の流通機構の中に割って入るのが非常に困難なのは、一つには日本の生産者と問屋とそして流通業者との間に培われた長年の関係があるからではないかと思います。そして、その関係というのは非常に密接な関係であります。しかし、にもかかわらず我々はこの問題解決を試みるべきであります。かなり解決は難しい問題ではありますが、解決不可能だとは思いません。
#24
○小委員外委員(久保田真苗君) そういうことだということはわかりました。
 ただ、私一言申し上げておきたいのは、このままではアクセスを直してもそこから先は余り改善しないだろうと、大変残念に思う次第です。
 次にお伺いしたいのは、ここにございます、先ほどお話にも出ておりましたけれど、今ヨーロッパとそれから日本の貿易の差は約百億ドルでございますね。これは一九八一年までずっと増加してきて、そして八一年ごろから約百億ドルで横ばいになっているということです。したがいまして、非常に格差が、インバランスが大きいのですけれども、一応最近四、五年のところは大体横ばいになっている。これに対して、日本の方がヨーロッパの商品を輸入していけば、大変これを改善していくことが恐らくできるだろうと思います。私どももまた、適当な品物を輸入して生活を豊かにするということは大変いいことだと思います。
 そこで、先ほどベラヴィータさんが御指摘になりました西ドイツで売れるものは日本でも売れるはずだとおっしゃるのですけれども、確かに西ドイツで売れるものは日本でも売れるかもしれない。しかし、西ドイツで売れるものが日本で売れないかも知れない。なぜなら生活様式は相当に違うと思うのです。日本は西ドイツの二倍の人口を持っておりまして、狭いところに住んでおりますから、いろいろな意味で日本の必要というのは西ドイツとは違う点もあると思うのです。ベラヴィータさんは、例えば日本に住んでいらっしゃるので、日本のいいところも悪いところもおわかりになっていると思います。ヨーロッパからどういうものを日本に持ってきたらば、単に売れるというだけじゃなくて、私ども日本人の生活をもっと豊かにすることができるか、どういうお考えをお持ちでしょうか。
#25
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君杉田美都子君通訳) 幾つか御質問をされたようでございますので、終わりの方から一つ一つお答えさせていただきます。
 まず、西独で売れれば日本でも売れるはずだという私の発言は、余り明確でなかった点、見事に指摘されました。私が、イタリーの製品が西独で売れているから日本で売れないはずがないと言ったのは、決して同じ製品を日本にも売っていこうということではございません。西独を引用いたしましたのは、西独が非常に品質的には厳しい要求を出すところであり、顧客の要求も大変うるさい。そうした環境の中にあって我が国の製品がその要件を満足することができるということを指摘したかったのであります。ですから、日本の消費者の要求をも満たしていくだけの品質の高い製品を供給できるという意味で申し上げたのであり、西独に輸出しているものをそのまま日本にもということを言ったのではございません、当然日本が必要とされている製品と西独のそれとは違ってしかるべきでありますから。
 それからもう一つの、どういった欧州の製品が日本でよく売れるだろうかという御質問に関しては、これはとても私一人では手に負える質問ではございません。ただ、中曽根首相がもっと外国製品を買おうということで、その発言をされた後、通産省が一連のリストを発表されましたけれども、私がリストを出しても大したリストは出せませんが、通産省のリストも大したことはなかったというふうに見受けられます。例えば、中にフォンジュのセットなどという品目がありましたけれども、そのフォンジュのセットが何であるかよく知らない方には全く何の意味も持たない項目ではないかと思います。
 一連の御質問の中で最初の御質問が最も重要であったように記憶しておりますけれども、最後の御質問からお答えいたしましたので、ちょっと最初の御質問をもう一度繰り返していただけますでしょうか。
#26
○小委員外委員(久保田真苗君) 最初にいたしました質問は、ヨーロッパと日本のトレードのインバランスが今百億ドルからある。しかし、一九八一年ごろまではどんどんそのインバランスが広がってきたけれども、八一年からは高い水準ではあるけれども、その百億ドルで一応横ばいになっていると思う。これについては一応その水準でこれ以上は増加していないということをどういうふうにごらんになるか。したがって、私の言いますのは、日本側の輸入がだんだんにふえていけば改善が可能じゃなかろうか、そういうふうに思うけれども、どうでしょうかとお伺いしました。
#27
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) それでは、その点に関して私の意見を述べさせていただきます。
 ヨーロッパと日本の貿易不均衡のレベルが拡大しなかった理由というのは、本当は私、こういうふうに申し上げては失礼になるかもしれないのですけれども、それはヨーロッパ人が時には日本の方々と同じような行動を示したからではないでしょうか。フランスのポワティエの通関については既に皆様よく御存じだと思います。私は学生時代に歴史の時間にポワティエの戦いということでこの地名を覚えましたけれども、今日このポワティエという地名は全く別の意味で有名になっておりまして、これはフランス国内で唯一日本のVTRの製品の対仏輸出の通関を行っている地名として、このポワティエの通関規制というのは二年間継続されたわけであります。そして、そのような対抗措置がヨーロッパ側でとられたからこそ、この貿易不均衡の幅というのはここ数年来拡大しなかったのだと思います。
 また、もう一つの例ですけれども、これは非公式の協定がイギリス政府と日本の間に取り結ばれたわけです。日本の自動車の自主規制ということでありまして、日本の自動車の対英輸出がちょっ
とコントロールできない範囲に及んでいるというふうに感じられた時期にこの自主規制が開始されたわけですけれども、まだこれから二、三年間は継続する見込みだと思います。これによりまして、イギリス国内で新たに供給される自動車の台数の一一%に日本からの輸入自動車の台数が規制されているわけであります。すなわち、こういった一連の措置というのは、それぞれ分断した別個の一種の報復措置であるわけですけれども、このような行動というのはどのような観点から眺めてみても決して建設的なものではないわけです。
 私、既にスピーチでも申し上げましたように、私どもの諸政府が直面している主な問題というのは政治的な問題であります。すなわち、ECにおきまして千三百五十万人にも及ぶ失業者が、職もなく、給料も受け取ることができずに街頭をさまよっているという状態は非常に深刻な問題であるわけです。皆様方は国会議員のお立場でいらして、政治家でいらっしゃいますので、非常に政治的見地から物事を考えることに慣れていらっしゃると思いますので、もしヨーロッパ側の状況を政治的な観点からごらんいただきましたら、まさに悪夢であるという点では御同意いただけるのではないでしょうか。
 日本の人口における同じような比率の失業者を想定していただきますと、恐らく八百万から九百万人にも及ぶ失業者が日本の街頭にあふれているということになってしまうわけであります。そういたしますと、国会議員のお立場にある皆様方といたしましては、自由貿易体制といった原則はもうどこかに忘れておしまいになって、何らかの措置で、どのような犠牲を払ってもこの大量の失業者を再び職につける方策を探られることと思います。それはよく御理解いただけることだと思います。
 本日、私がこちらに伺わせていただきました主な理由と申しますのは、そしてまた私、在日ヨーロッパのビジネスコミュニティーを代表してこのようにお話しする機会をいただいたことに非常に感謝申し上げておりますけれども、日本の経済のすばらしい業績というものを批判しようとして参ったわけではありません。それは全く私は意図しておりませんし、また、日本の経済のすばらしい実績に関しては批判するようなところは何ら存在しないと思いますし、全く私はそのような批判を行いたいとは望んでおりません。私の意図というのは別なところにありまして、私どもヨーロッパが本国で直面している問題に対するいろいろな考え方を先生方と共有する機会を持ちたいという気持ちで参ったわけであります。そして、本国でヨーロッパが直面している問題というのは非常に現実的な問題でありまして、無視することができないものであります。
 問題というのは、一たび問題が政治的なものとして発生してしまった場合には、その解決も政治的なものでなければならないという点であります。したがって、我々の方の議会の議員もやはり選挙民が望んでいる対策をとらないと再選されないわけでありますので、そして、彼らとしてはそういった状態を望まない。先生方も日本で再選されないというような事態は望まないのと同様に望んでいないわけでありますから、そういった方策をとらざるを得なくなってしまうわけであります。したがって、選挙民の観点から見て正しいと思われるような施策をとることになってしまうわけであります。
 そして、彼らといたしましては、例え我々が国を閉鎖して輸入に対する障壁を設け、また、自動車の購入価格が五百ドル上昇したとしても問題ではないわけです。もし失業者が再び職につくことができれば、そちらの方がより重要であるわけです。したがって、この種の問題に我々が本国で直面しているということを皆様方の方でもぜひ御理解いただかなければならないと思うわけです。私自身、事態はそこまで、悪いところまで進展はしないというふうに信じておりますけれども、その危険性というのは現実的なものであります。
 しかし、ヨーロッパではアメリカとはちょっと状況が異なっておりまして、アメリカでは毎日のように反日的な、日本を批判するような記事がありとあらゆるところに散らばっております。しかし、ヨーロッパではこのような事態ではありません。ヨーロッパでは、私のイタリーにいたしましても、またこちらのイギリスにいたしましても、各国いろいろ新聞がございますけれども、それらの新聞を見てみますと、日本を非難しているような記事は全く一つとして見られません。したがって、これは本当にこのようなヨーロッパにおける反日感情のなさというのは日本にとって一つの有利な状況だと思いますので、ぜひこの有利な状況、ヨーロッパの日本に対する善意を利用していただきたいと考えている次第であります。そして、その事態を利用するということは、皆様方の方でもヨーロッパの問題をよく御理解いただかなければならないということを指しております。
#28
○柳澤錬造君 ベラヴィータさん、本当にいろいろありがとうございました。柳澤と申します。
 幾つかの点で御質問をしていきますから、簡潔にお答えをいただきたいと思うのです。
 現在、貿易摩擦の問題が日本の国内でも大きな問題になっているのです。決してこれがいいとは私たちも思いません。昨年の状況を見ましても、輸出が千六百八十二億六千八百万ドル、輸入が千二百三十九億一千七百万ドル、貿易収支の黒が四百四十三億五千百万ドルになったのです。こんな大きな黒字が出るということを予測した日本人は一人もいないのです。政府の中にも民間企業の中にもいなかったのです。にもかかわらず、為替レートの方が一ドルが二百五十円前後という大変円が安くなっている。その辺の点についてベラヴィータさんはどういうふうなお考えを持ちますか。
#29
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子君通訳) 私のその点に関する意見というのは、既に触れましたけれども、非常にミックスされた意見を持っております。しかし、御質問の趣旨はよく理解することができます。純粋に数学的な観点から見ても、もし為替相場が一ドルに対して二百円であれば黒字は幾ら幾らということ、それに対してまた為替相場が一ドル当たり二百五十円であった場合には、それが変わってきて黒字幅が幾ら幾らになるというところまでは理解できますけれども、しかし、私自身は為替相場の問題というのが問題の中で主要な点だというふうにはとらえておりません。為替相場はもちろん大幅な黒字に貢献している要因の一つかもしれませんけれども、主要な要因というふうにはとらえておりません。
 例えば、私、質問を逆にさせていただきたいと思うのですけれども、日本の円がヨーロッパの主要通貨に対して非常に強いにもかかわらず、なぜ日本のヨーロッパに対する貿易黒字というのは減らないのでありましょうか。
#30
○柳澤錬造君 私の方で質問したいことを皆してしまってから、時間があったらまたその点もお聞きしたいと思います。
 それから次に、EBCの資料でヨーロッパから日本に進出している企業が一九七三年に四百社であった。それが現在は一千百社になった。このスピードは予想よりか速いのですか、遅いのですか、どちらですか。速いとするならば、その要因は何だったのかと判断されますか。
#31
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉田美都子通訳) まず第一に申し上げなければならないのは、ヨーロッパの対日進出企業の数というのは、いまだに非常に限られているというふうにとらえていただきたいわけです。私自身の本国の経験に照らし合わせて再びお答えしたいのですけれども、イタリー一カ国をとってみても既に四百社の日本企業が進出しております。それに対して対日進出企業、ここで話題にしておりますのはイタリー一カ国ということではなくて、ヨーロッパ全体の企業の数として千百社ということでありますので、非常に限られた数字だと思います。
#32
○柳澤錬造君 日本に進出するのを何か規制しているものはあるのですか。
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(杉
田美都子君通訳) 最初の根本的な規制要因といたしましては、日本に進出して実際どのような事業を行うか、どのような可能性が存在するか、すなわち、日本に進出して成功をおさめることができるというそれだけの背景があるか、それがないから規制されているという要因が一つ挙げられます。
 それから二番目には、日本に進出するために必要な極端に高いコストという要因が挙げられます。もちろんこのコストというのは、日本の国内の企業がやはり直面しているのと同じコストでありますけれども、それにもかかわらず、私どもヨーロッパ企業にとっては日本に進出するというのは信じられないぐらいに巨額なコストを伴うものであります。
 それから次に挙げたい点は、私個人の経験に照らし合わせて申し上げる次第ですけれども、日本で五年以上居住した場合には、恒久的な居住者ということで税金を納めなければならなくなります。したがって、日本の国民の皆様と同じ比率の税金を私は支払っているわけです。そのこと自体は原則的に考えると間違ったことではないと思うのですけれども、実際的には間違っている点というのがやはりあると思います。
 例えば、私は子供たちを日本で学校にやるに当たって、日本の学校にやることはできないわけです。というのは、あと何年ぐらい滞在するかわかりませんし、もし日本語の学校にやった場合には、私は日本語で勉強を見てやることができませんので、残念ながら外国人向けの学校にやっているわけです。この月謝というものが非常に高価でありまして、小学校に行っている十二歳の娘ですけれども、年間の授業料が百五十万円であります。単にABCDとアルファベットを習って、パパやママといった簡単な読み書きを習うだけで百五十万円の年間授業料を納めなければならないということ、そしてまた、この教育費というのも非課税対象にはならず課税対象となっているわけです。
#33
○柳澤錬造君 日本に進出してコストが非常に高くなるというのは、私は土地のことだと思うのです。それから、今教育費の問題いろいろ出ましたけれども、それは日本の場合も同じ条件に置かれているのであって、これは参考に申し上げるのですけれども、日本の企業が外国へ物を売るときには、向こうのマーケットがどういうものを求めているかということを調べてきて、それにこたえられるような製品をつくって輸出をする。外国から日本に送り込んでくる品物というものは、衣料品なんかも一番いい例だと思うのです。あの外国人の大きな体に合わしたものをつくって、そして外国で売るものをそのまま日本に送り込んでくるから日本人にはなかなか合わない、したがって買わない。だから、これはすべてではないけれども、やっぱり日本のマーケットでもって買わせるには、日本人のそういうふうな、今何をしようとしているか、どういうふうなサイズが一番喜ばれるかというところまでお調べになって商売なさるということが必要だと思うのですが、その点はいかがですか。
#34
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) 柳澤先生、ファッションに関しては問題はないと思います。フランスやイタリーの対日輸出産品の大半はファッション製品でありまして、色及びサイズ的にも十分に日本のファッション界の要件を満たしておりますので、今指摘された点は欧州ではなくて、ほかの国の問題ではないかと理解しております。
 また、これに関してさらにつけ加えたい一つの例があります。これに関しては既にいろいろ耳にしたりまた記事で読んだりした例でありますが、車の例であります。
 アメリカの車は左ハンドルであるので、大量に日本には輸出できないのだという議論であります。しかし、私の知る限り、アメリカは世界のどの国においても大量に米国車を輸出しているという実績はありません。まあイリノイ州からテキサスへというような移出はあるにしろ、欧州や日本に輸出したという実績はありません。問題は、では左ハンドルにあるのかといえば、決してそうではありません。例えば日本の輸入車の中でも最も売れているメルセデス・ベンツ、BMWなどは左ハンドルではありますけれども、十分日本市場において成功をおさめております。ですから問題はやはりハンドルではなくて、車そのものの質が日本の消費者に受け入れられないということだと理解しております。
 それから、先ほど日本企業は海外に進出する場合、十分な市場調査をしてから販売活動を行うとおっしゃったのは、まさにそのとおりだと思います。我々はできれば数年前に進出していたかったというのが実感でありますが、その数年前には進出が可能ではなかったという背景があります。また、規制、手続及び検査においても今日において問題を抱えております。日本ではいまだ国際検査基準を受け入れていませんから。
#35
○柳澤錬造君 もう少し。さっき久保田先生のお話しのときに、流通経路の問題でやりとりしておったのですが、日本の流通経路というものが非常に複雑だということは御指摘のとおりです。しかし、あれは二十年以上前だけども、アメリカのコカ・コーラ、あれが入ってくるころには日本の業者は、複雑な、もう何段階にもなっているのだから、そんなものは入ってきたって売れやせぬといってたかをくくっておったのです。そうしたらコカ・コーラは入ってきて、みんな支社をつくって、日本の流通経路を全部通さずでもって自分で最後の消費者まで販売するあの新しいルートをつくってしまって、日本全国にあれだけの爆発的な人気を呼んだのです。そういうことも御参考になさったらと思うのです。
 それからもう一つ、今、日本人が海外に出ていくのが約五百万人ぐらいいるのです。それで、これは数年前にも私がパリでもって向こうの人に質問されたのです。あのパリのシャネルだとかクリスチャン・ディオールだとか、それからヘルメスですか、一流の……。日本の女性が来ると、わっとあそこの本店に入っていって、私たちがびっくりするような高価なものをわんさと買いあさって帰っていく、日本の国というのはどういう国なのですか、私たちフランス人だって、よっぽどの大金持ちはあのお店に行くけれども、あとはみんなデパートへ行って物を買うと言うのです。ですから、この五百万人から海外へ出ていっているのが相当外国でお金を落としてきている。一人二千ドルといったら百億ドルになるのですから。これはほとんど統計の数字のところへあらわれてこないのです。だから、そういうもので外国へ行って日本がお金を落としているということも理解をしておいていただきたいと思うのです。いかがですか。
#36
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) 我が国の人口は日本の半分ですけれども、しかし、海外に旅行する観光客の数は日本のそれを上回っております。しかし、彼らの落とす金というのは決して統計にはあらわれませんから、その辺はしようがないのじゃないでしょうか。
 問題は、どこに行ってどれぐらい金を落とすかという、そういった問題ではなくて、むしろ日本に進出を希望する企業に対する日本政府の態度ではないかと思います。我々が望んでいるのは、日本企業が我々の国に進出した場合に受けるのと同じような待遇を、対日進出を希望する欧州の企業に対しても認めてもらいたいということであります。私、日本におりまして感じるのは、日本のテレビ、新聞がごく普通の消費者のニードに余り注目をしていないという点であります。例えば、先ほど久保田先生が指摘されたようなことはほとんど報道されません。むしろ大企業がこうした問題に悩んでいる。失業率がこうである、日本は百年前と同じような捕鯨がもはやできないといったような、ごく高いレベルの話に終始しているようでありまして、例えばこれから私が例を挙げようと思います、スペインを旅行し毎日新聞に投稿いたしました一青年の記事などは余り目にしないので
はないかと思います。
 その手紙を読み上げたいと思います。
  最近、私はスペインに旅行しました。スペインでは普通のレストランで百五十グラムのステーキが大体日本円にして千二百円でありますが、日本で同じものを食べれば、これは少なくとも五千円はかかるでありましょう。日本ほど牛肉が高い国は世界においてほかにはありません。これではとても自由貿易などとは呼べません。これは、ただ単に農業分野だけでなく他の分野においても言えることであります。企業に対する政府の保護は自由貿易を骨抜きにしております。当然、他の国々がいら立つのも当然でありましょう。こうした状況ゆえに高い品物を買わされている日本人は、もっと自分の主張を声高にすべきであると考えます。
#37
○柳澤錬造君 時間がなくなってしまったから……。
 今、牛肉のことを言われたけれども、それは私もこの国会では二回か三回、取り上げてやっているのです。
 それから、先ほど海外旅行のことに触れたのですけれども、ベラヴィータさんも日本にもう長くいるのですからおわかりだと思うけれども、ヨーロッパの人が海外旅行するのと日本人が海外旅行するのは違うのです。日本で例えば大阪へ行ったり九州へ行ったりぐらいの距離を行けば、もうヨーロッパの場合は外国に行くようになるのです。ですから、その辺が、海外へ出ていく人間の数がどのくらいかという比較ではないのです。それから、日本に外国から来たお客さんたちがどのくらいお金を落とすかということは、東京オリンピックのときに、日本の観光地は全部不況になったのです、外国からお客さんが来るだろうというので待っていたところが、ちっともお金を落としてくれなかったといって。その点が、日本は外国へ出ていったらぱっぱっぱっと派手にお金を使って歩くのです。
 それから、先ほど、ヨーロッパが進出するのには日本はコストが高くてということは、日本の企業もその高いコストのところでもって物をつくっているのです、世界一高い土地の上に工場をつくって。ただ、ここで一つだけ御参考までにこれを申し上げておきたいことは、ヨーロッパと大きく違うのは日本の労使関係のあり方なのです。かなり仕事がなくなってきたといって、アイドルが出た。一〇%、一五%ぐらいのアイドルが出ても、日本の経営者というのは首切りはやらないのです。耐えて、それはみんな確保しているのです。二〇%から二五%にもなると、もうとてもじゃないけれどもというところは合理化をやるわけだけれども、そのかわり労働組合の方も、今度は仕事が忙しくなってきた、そうすると、そのオーバータイムについては、ある程度のところまで手当を余計出さしてそのオーバータイムを受け入れるというところがある。ですから、かなり伸縮が日本の労使関係というものはなにしていますから、少々アイドルが出ても失業者は出さない。仕事が忙しくなってくれば労働組合の方がオーバータイムでもってそれも消化をするという、そういうシステムにあるということも御参考までに申し上げておきます。
#38
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) ぜひこの点に関してもっと話を継続したいところでありますが、というのは労使問題は我々にとっても大変重要な問題でありますから。
 ただ、今御指摘の問題は、欧州の問題ではありません。例えばイタリーにおいてはレイオフをすることはできません。また、レイオフできるためには、政府及び労組の承認が必要であります。そして、レイオフされた後においても労働者は九〇%の賃金を支払われます。この賃金の原資は政府及び企業の特別基金から出るわけでありまして、これに対しては毎月企業側で積み立てを行うというシステムをとっております。
 確かに、日本の労使関係はより調和的であり、欧州においては労働と経営側がはっきりと分かれており、むしろその関係は協力的というよりは対立的な関係でありますが、しかし、ほかの国で見られるように簡単にレイオフすることは法律によって禁じられております。
#39
○柳澤錬造君 いや、そのことは知っているのです。ただ、さっき千三百五十万人の失業者がおると言ったから私はそう言ったことであって、レイオフはないのです。もう切りがないから、時間が……。
#40
○参考人(クラウディオ・E・ベラヴィータ君)(田草川美紗子君通訳) なぜこの失業率に対して政府が大きな懸念を抱いているかと申しますと、大学卒の初めて社会に出た若い層に失業率が高いからでありまして、これは一番危険な年代であります。もし六十歳で失業するのであれば、ゴルフでもやるか、また、それだけのお金がなければ日比谷公園でひなたぼっこでもしていればいいわけですけれども、二十四歳で失業ということになりますと、ゴルフもやるお金もなければ、ひなたぼっこもしたくないということで、当然窃盗犯とか、それから都市のテロリストになる可能性があるということから、政府はこの問題に対して大変な懸念を抱いているのであります。
#41
○小委員長(大木正吾君) 座長からお願いいたしますが、ディスカッションはまだまだお互いに際限なく続けたいとは思いますが、一応予定の時間が参りましたので、以上できょうの質疑、討論を終わりとさせていただきます。
 ベラヴィータ参考人にお礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、お忙しい中を本小委員会に御出席願い、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。
 ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本小委員会の調査の参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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