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1984/03/08 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会外交問題小委員会 第2号
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1984/03/08 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会外交問題小委員会 第2号

#1
第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会外交問題小委員会 第2号
昭和六十年三月八日(金曜日)
   午前十時三分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    小委員長        大木  浩君
    小委員
                大鷹 淑子君
                宮澤  弘君
                久保田真苗君
                和田 教実君
                立木  洋君
    小委員外委員
                中西 珠子君
                関  嘉彦君
   政府委員
       外務省情報調査
       局長       渡辺 幸治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       外務大臣官房総
       務課長      松浦晃一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○外交問題に関する調査
 (我が国の外交の現状と今後の強化策等に関する件)
    ─────────────
#2
○小委員長(大木浩君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査特別委員会外交問題小委員会を開会いたします。
 外交問題に関する調査のうち、我が国外交の現状、今後の強化策等に関する件を議題とし、外務省から意見を聴取いたします。渡辺情報調査局長。
#3
○政府委員(渡辺幸治君) 本日は、小委員長の御指摘によりまして、外務省の日本外交の特徴、基本理念等について説明させていただきます。
 我が国は、戦後の荒廃から復興いたしまして、今や自由世界第二の経済力を持つまでになりました。これは、戦後我が国がその置かれた国際環境に恵まれていたということに加えまして、日本国民のすぐれた素質と絶えざる努力によるところが大きかったと考えます。これまで四十年間の日本外交の特徴は、以下のとおり要約して申せるのではないかと考えます。
 第一に、我が国の平和と繁栄の確保のためには、アジアそして世界全体の平和と繁栄を維持することが不可欠であるという認識に立脚していること。
 第二に、日米安全保障条約と憲法の許容する自衛権の範囲内の防衛力を維持するとともに、自由及び民主主義といった価値観を共有する自由民主主義諸国の一員として行動してきたこと。
 第三に、経済面においては、ガット、IMF、OECD等の国際機関において正規の加盟国としての資格を獲得するとともに、自由貿易体制のもとで経済発展を図ってきたことが挙げられます。
 経済協力、国連、広報文化の各分野につきましては前回関係部局の出席者から申し述べたとおりであります。本日は、日本外交の基本理念と課題とでもいうべき点について申し述べ、小委員会の皆様の御議論の素材としていただければ幸いと思います。
 日本外交の基本理念ということでございますけれども、戦後の日本外交の重点分野はその時代により若干異なることはありましても、基本理念は一貫していると考えます。それは、自由民主主義諸国の一員であるという立場と、アジア・太平洋地域の国としての立場であります。さらに、一つ挙げるとすれば、国際協力すなわち、国連などの国際機関を通ずる国際協力であります。
 第一の理念、すなわち自由民主主義諸国の一員という理念は、戦後我が国が選択した枠組みから来るものであります。第二の理念、アジア・太平洋地域の国としての立場は、日本の置かれたいわば地政学的な条件によるものであります。また、第三の理念は、国際社会の一員として広く国際協力のもとに、日本そして世界の平和と繁栄を維持するための努力を行うという戦後日本外交のいわば起点であったと言えます。
 以上の基本理念に基づきまして、かつ日本の有するもろもろの制約条件等を勘案いたしますと、推進すべき日本外交の姿は以下のようなものであり、今後もそうあり続けると考えられます。
 第一に、米国を初めとする自由民主主義諸国との協力の推進であります。
 我が国としては、自由と民主主義及び市場経済という価値観を共有する諸国との政治的、経済的連帯と協調を強化することが緊要であります。特に、米国との緊密な協力関係は我が国外交の基軸であり、日米安保体制は我が国安全保障の基盤であります。さらに、米国との関係は、政治、経済、文化、科学技術を含めた広範で奥深いものであり、緊密な協力関係を維持することが重要であります。米国以外の西欧主要国を含めた自由民主主義諸国との協力の必要性は近年ますます増加しつつあり、主要国主脳会議、OECD等の場で協力を行っております。
 第二に、アジア・太平洋地域の国々との協力であります。
 我が国は地理的にアジア・太平洋地域に位置するとともに、その地域の他の諸国と歴史的、文化的遺産を共有し、政治的、経済的にも深いつながりを持っております。この地域の安定と発展なくして我が国の平和と繁栄もなく、我が国として、この地域の安定と発展のため積極的に貢献することが肝要であります。
 そのため、第一に、この地域の緊張緩和、紛争の解決に寄与すべく外交努力を行うこと、第二に、この地域の経済発展のために、我が国の国力にふさわしい貢献を行っていくこと、第三に、我が国とアジア・太平洋地域の国々との間で国民レベルでの相互交流、相互理解を深めることが重要であります。
 第三に、平和外交の推進がございます。
 我が国の平和と繁栄を守るためには、あらゆる外交努力を払って平和で安定した国際環境を醸成することが緊要であります。そのためには、第一に、東西関係の中心である米ソ関係の安定のための努力、わけても米ソ間の力の均衡を保ちつつ、その均衡をできるだけ低い水準に引き下げるため、米ソの軍備管理、軍縮交渉ができる限り早期に実質的な成果を生むよう我が国としてもできる範囲で働きかけることが重要であると考えます。また、我が国は従来から、国連やジュネーブの軍縮会議等多国間の場において実効的な軍縮措置を一つ一つ積み上げていく国際的努力に積極的に参加してきております。
 第二に、ソ連との関係については、日ソ間の最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、ソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することが基本であります。特に、関係が厳しければ厳しいほど対話の道を閉ざさず、むしろこれを強化拡大し、対話を通じて問題の解決に一歩でも近づくよう努力していくべきであります。
 さらに、ソ連以外の我が国と体制を異にする国々とも積極的に対話を促進していくべきであり
ます。
 第三に、朝鮮半島、カンボジア問題、イラン・イラク紛争等の地域紛争ないし対立の早期、平和的解決に寄与するための努力も重要であります。また、国連の平和維持活動への協力等、国際機関を通じて平和に貢献していくことも重要であります。
 次に、世界経済の健全な発展に対する貢献がございます。
 世界経済は、景気拡大傾向にありますが、高水準の失業、構造的財政赤字、産業における構造調整のおくれ、根強い保護主義的動き等の問題に直面しており、また、開発途上国の経済的困難は続いております。我が国としては、バランスのとれた経済運営を図り、貿易拡大措置の一層の推進に努力するとともに、自由貿易体制の維持強化、累積債務問題への積極的な取り組み等の努力を継続しております。特に、日本を対外的に開かれた社会、開かれた経済とすることが重要であります。
 次に、開発途上国の安定と発展への協力がございます。
 開発途上国の政治的安定及び経済的発展は、世界の平和と繁栄の確保のために不可欠であります。ますます相互依存の高まる今日の国際社会において、我が国として開発途上国の発展のため経済、技術協力を進めることは、人道的見地のみならず国際社会に対する責務でもあり、同時に、対外依存度の極めて高い我が国の国益にもかなうものであります。かかる認識のもと、我が国としては引き続き政府開発援助の計画的拡充に努め、アフリカ等の難民、飢餓問題にも積極的に取り組むことが必要であります。また、開発途上国の自立的経済発展を支援していくためには、開発途上国の産品の輸入を拡大していく努力が重要になってきております。
 次に、今後の日本外交の課題とでも申すべき点について触れさせていただきたいと思います。
 日本外交の現状は、以上申し述べましたとおりでありますが、今後の日本外交を展望する場合、幾つかの新しい課題に当面することが予見され、これらに対する適切な対応を図っていく必要があります。
 まず、現在、我が国の世界経済に占める比重は国民総生産で自由世界第二位の約一〇%となっておりますが、今後この比重は次第に増大すると思われます。このように日本の世界における比重が増大するにつれて、我が国の国際社会における政治的、経済的役割に対する期待はますます強まっていくものと思われます。同時に、国際社会における相互依存関係はますます深まると思われ、我が国としては、今後、その国際的地位にふさわしい政治的、経済的役割を果たすとともに、我が国自身、経済的にも社会的にも世界に開かれた国を目指し、もって世界の平和と繁栄に一層積極的に貢献することが、我が国自身の平和と繁栄の維持のためにも欠くべからざることとなっております。また、海外における経済活動等が増加するに伴って我が国の在外資産、企業あるいは邦人の保護の問題がますます重要な外交当局の責任となってきております。
 第二に、近年の科学技術の著しい進歩に伴う高度情報社会の到来は、外交や安全保障の面でも新たな対応を必要としてきております。高度情報社会の到来は、瞬時に大量の情報が国境を越えて流通するといった現象をもたらすこととなります。同時に、我が国の外交にとっても、このような高度情報化の事態に即応して大量の情報を迅速かつ的確に処理して、ますます流動化する国際情勢に対してこれを正しく判断し、その対応に誤りなきを期することが急務となっております。
 さらに、経済面においては、先端技術の発達が産業に新しい成長分野をもたらし、世界経済の活性化に寄与するという明るい未来を呈示しておりますが、他方、こうした技術の急速な発達が、各国、各地域の経済発展にひとしく恩恵を及ぼすか否かの問題があります。特に技術先進国における産業構造の急激な変革が、先進国と開発途上国間はもちろん、先進工業国間でもその発展の差を縮めるどころかむしろ逆に拡大する可能性があるといった新しい問題があり、この点についても取り組まねばなりません。
 また、世界は戦後四十年を経て、これまで強い底流をなしていた国際主義の後退を示す兆候もあらわれており、政治的な孤立主義や経済的な保護主義のような、いわば国際主義に対する閉鎖主義とでもいうべき傾向となってあらわれてきております。この意味でも、我が国としては、みずから世界に開かれた国際国家を目指すことにより、こうした諸外国における国際主義からの退潮を食いとめるべく努力をいたしてまいることが今後ますます重要になってくるものと思われます。
 次に、国民外交の推進でございます。我が国の外交を推進する上での国民外交の重要性について申し述べたいと思います。
 今日、海外で起きる事象と我が国の対応は国民生活に直ちに影響を及ぼし得る状況にあります。外交と内政はますます深く関係するようになっております。こうした状況下で、外交を支えるものとして、国民レベルでの外交に対する理解と支援がますます重要となっております。このためには、国民各層にわかりやすい外交を展開し、外交に対する国民の理解と支持を求めること、地方自治体や民間とも協力し、国民レベルで行われる国際交流の促進に努力し、特に青少年の人的交流を進めていくこと等が重要でありますし、こうした国民の支持のもと、諸外国との間で文化面での交流や協力及び対日理解増進のための海外広報活動を積極的に推進していくことが必要であります。そしてこのためには、まず、各方面に国民外交の意義を十分認識願うとともに、この分野での人的、予算的措置を拡充していくことが重要であります。これは、我が国の外交にとって諸外国との相互理解を促進することが不可欠であるとの認識に立脚するものであります。
 次に、外務省の抱える機能面での問題について若干述べさせていただきたいと思います。
 以上、日本外交の基本理念と課題とでもいうべき点について説明申し上げましたが、これらの考え方に沿って我が国の外交を展開するに際しましては、機能面での問題がございます。ここで、現在外務省が抱えております機能面での幾つかの問題につき申し述べさせていただきます。
 第一に、外交一元化という問題があります。
 今日の国際社会においては、政治、経済、社会等あらゆる分野の問題が相乗的に影響し合いますので、ある分野での政策の決定に当たっては、他の分野への波及、国内へのはね返り、第三国への影響等を総合的に判断する必要があります。特に、我が国経済の世界経済に占める重要性が高まった今日、我が国経済の動向と政策運営いかんは世界経済に大きな影響を及ぼすようになり、それだけに経済問題が容易に政治、外交問題化する可能性が高まっております。
 外務省といたしましては、このような認識に立って、我が国の国益を維持増進するため一層強力な外交活動を展開していきたいと考えておりますが、その際の前提として国の内外政策の一貫性、整合性を確保するため、外交の一元性を保つことが不可欠であると考えます。近年我が国と諸外国との関係が多様化し、一層複雑化しつつある状況のもとにおいてこそ、外務省の行う総合調整機能の重要性はますます増大していると考えます。
 第二に、邦人保護の問題でございます。
 我が国の経済力の向上と国際化の広がりにつれて、在外邦人の数が飛躍的に増大するとともに、その地理的分布、人的構成等が多様化する傾向も見られます。これに伴い、在外邦人の保護、援護のための行政需要も急激に増加しており、内容的にも、在外における邦人の救護、犯罪、事故等の処理といった伝統的な領事事務が増加しているとともに、国際的、国内的な諸条件の変化を反映して、伝統的な領事事務の枠を超えた子女教育等在外邦人の福祉増進のための新たな課題が発生しており、それに取り組まなければならないと考えております。
 資源、貿易等の面で海外依存度の高い我が国にとって、海外における民間企業関係者の活動は我が国の存立と繁栄を支える重要な柱となっており、また、経済面のみならず、在外邦人を通ずる文化等の分野における交流も、諸外国の国民との相互理解を深め、幅広い国民的基盤に立った友好協力関係の増進に不可欠であると思います。外務省としてはかかる見地から、今後とも邦人の保護及び福祉増進のためあらゆる努力を払っていく所存であります。
 次に、情報機能の強化でございます。
 国際情勢についての総合的かつ的確な情勢判断をすることは、すべての外交活動の前提をなすものでありまして、かかる情勢判断が国の命運を左右し得ると言っても過言ではないと思います。特に、防衛力は憲法の許容する範囲にとどめ、外交活動などの機能を通じて総合的に安全保障を確保しようとする我が国の場合、すぐれた情報機能を持つことは重要な課題であります。
 現代社会においては、ニューメディアの登場も相まって、瞬時に大量の情報が流通するようになり、情報通信手段も日々進歩しておりますが、外務省としてもこのような変化に対応して、収集、伝達、分析、判断の各段階における情報機能を強化し、必要な情報を迅速に処理し、的確な判断を下していくことが、我が国の平和と繁栄を確保していく上での至上命題であると考えております。
 また、このような情報機能強化の一環として、ハイジャックその他の緊急時における危機管理体制の整備もますます急務となっており、外務省としても、夜間、休日を分かたぬ二十四時間体制を昨年一月からしいて、対応に万全を期するよう努力しております。
 第四に、外交実施体制の強化の問題でございます。
 外務省といたしましては、以上述べたような政治、経済あるいは文化交流、邦人保護などの外交実務を行うと同時に、情報収集機能を強化し、広範多岐かつ急速に増大しつつある外交機能を果たし、もって我が国の国際的な責任を全うすることにより、我が国の平和と繁栄を確保していきたいと考えており、そのためには五千人体制の早期実現等外交実施体制を強化拡充することが急務であり、引き続き努力していく所存であります。
 以上、日本外交の当面する課題とその実施体制の抱える諸問題について意見を述べさせていただきましたが、変化する国際情勢と時代の進歩、変動を絶えず見きわめ、外務省として予想される変化に有効かつ機動的に対応して、いわゆる創造的外交を展開していくことが私どもに課された課題であると考えております。
 本日、こうした問題をお話し申し上げ、皆様の御意見をお聞かせいただける機会をおつくりいただきましたことに御礼を申し上げて、私の発言を終えたいと思います。
#4
○小委員長(大木浩君) どうも渡辺局長ありがとうございました。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
 ちょっと速記をとめてください。
   〔午前十時二十四分速記中止〕
   〔午前十一時五十二分速記開始〕
#5
○小委員長(大木浩君) 速記を起こしてください。
 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午前十一時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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