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1984/04/24 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会 第3号
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1984/04/24 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会 第3号

#1
第102回国会 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会 第3号
昭和六十年四月二十四日(水曜日)
   午後一時三分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         植木 光教君
    理 事
                大鷹 淑子君
                大坪健一郎君
                中西 一郎君
                大木 正吾君
                黒柳  明君
                上田耕一郎君
                関  嘉彦君
    委 員
                安孫子藤吉君
                石井 一二君
                大木  浩君
                倉田 寛之君
                源田  実君
                佐藤栄佐久君
                杉元 恒雄君
                曽根田郁夫君
                鳩山威一郎君
                堀江 正夫君
                久保田真苗君
                野田  哲君
                松前 達郎君
                和田 教美君
                立木  洋君
                秦   豊君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   参考人
       対外経済問題諮
       問委員会座長   大來佐武郎君
       西武セゾングル
       ープ代表     堤  清二君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○外交・総合安全保障に関する調査
 (国際経済摩擦に関する件)
○派遣委員の報告に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(植木光教君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査特別委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 本日の外交・総合安全保障に関する調査のため、参考人として対外経済問題諮問委員会座長大來佐武郎君、西武セゾングループ代表堤清二君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(植木光教君) 外交・総合安全保障に関する調査のうち、国際経済摩擦に関する件を議題とし、国際経済摩擦について参考人から意見を聴取いたします。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、国際経済摩擦について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 これより参考人の方に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人の方から御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、大來参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(大來佐武郎君) 本日、お招きいただきまして対外問題について申し上げるわけでございますが、御承知のように、日本の対外関係、特に貿易摩擦ということで最近大分いろいろな問題が出てまいったことは御存じのところでございますが、一つは、特にアメリカとの関係でいろいろ問題が出てきておったわけでございます。
 もともとは一九六〇年代の末から繊維摩擦が始まり、鉄鋼問題、それからテレビを含む、コンシューマーエレクトロニクスと申しておりますが、家電関係、それから自動車、最近ではハイテクというような形で、次から次に選手交代はしておりますが、いろいろな形で摩擦が出ております。同時に、アメリカに大量に日本から輸出をするわけでありますので、アメリカ側が日本の市場を開放すべきだという意味での摩擦、これは代表的には牛肉、オレンジ問題、電電公社の調達問題、それから最近では全面的な市場開放要求という形で、対米貿易、輸出、輸入両面でいろいろな形で摩擦が出てきておるわけでございます。
 ヨーロッパでも同様に、日本からの輸出に対するある程度の規制とそれから日本市場に対する売り込みと両面での要求が繰り返しございますし、近年ではまた、東南アジアから、あるいはお隣の韓国等からも日本の市場をもっと開放してほしいと。特にアジア諸国の場合には農林水産物関係がかなり多いわけでございまして、そういう点はなかなか日本としても市場の開放が国内事情で難しい点がございます関係もありまして、このアジア諸国が日本に輸出したいという品目については、税の点あるいは輸入制限の点で欧米に比べて厳しい面がございます。工業製品の関税は平均して二・五%と日本の場合アメリカ、ヨーロッパよりも低いのだということになっておりますが、例えばバナナは三五%とか合板は二〇%とか、あるいは骨なしの鶏が一八%ですか、そういうようなことがございまして、アジア諸国からは、日本は市場開放というけれども主として欧米向けの開放であって、我々アジア諸国に対して十分な考慮が払われていないという不満も近年だんだん高まってまいっておるわけでございます。
 そういう全面的な情勢で昨年の暮れに政府が対外経済問題の閣僚会議をつくられると同時に、民間人十名で対外経済問題諮問委員会というのが設置されまして、私にその座長をやれということで、以来十数回の会合を開いてまいりまして、四月九日に報告書を政府に提出いたしたわけでございます。
 十人の委員は各方面の代表の方々でありまして、座長代理には最近まで日銀総裁をやられました前川さん、それから大蔵のOBでは経済協力基金総裁の細見卓さん、それから通産のOBでジェトロ理事長の赤澤さん、労働界からは宇佐美さん、農業関係からは池田斉さん、それから財界、経済界からはソニーの盛田さんと三菱商事の副会長の山田さん、それから外務省のOBというか先輩で加藤元駐英大使、経済学者で篠原三代平先生、私とこれで多分十人になるかと思いますが、そういう顔ぶれで論議、検討を重ねてまいったわけでございます。
 この報告書の要旨は、今お手元に行っております二枚紙に大体書いてあるわけでございますが、基本的な考え方としては原則自由、例外制限という形を打ち出しておるわけでありまして、これは日本も従来貿易の自由化それからさらに資本の自由化、第三の段階としてサービス、あるいは場合によると制度についても、国際的にできるだけ調和できるような形での自由化が必要だということであったわけであります。
 諸外国の日本に対する不満、特にアメリカの不満といいますか問題にしております点、私どもいろいろな機会に意見の交換をいたしてまいってきておるわけですけれども、殊にことしに入りまして、一月の末にハワイで日米財界人会議の運営委員会がございました。アメリカから主要な財界人十数名、それにブロック通商代表とスミス通商代表代理、この二人がゲストで出席いたしまして、私も日本側財界人十数名の方からゲストとして出席を求められたわけでございますが、この席上で何人かのアメリカの財界の人から、実は二、三カ月でワシントンの空気が急変したのだという話がございました。日本の市場開放を求める声が急激に強くなってまいった。これはいろいろ事情があると思うのですが、前から日本は何度かの総合対策をやってきているけれども、目に見えて日本の輸出が減るとか、あるいは日米貿易の赤字が縮まるということはなくて、毎年これは拡大しておる。殊に昨年一年の貿易では、アメリカから見た対日貿易が三百七十億ドルの赤字になった。三百七十億ドルというとこれは日本の防衛費の三倍ぐらいの規模でございますから、日本のGNPの約三%でありますから、とにかく相当大きな規模であることは間違いございません。十年余り前に日米貿易摩擦の始まったころは、アメリカの対日貿易赤字が四十億ドルになったといってアメリカ側が非常に問題にしたわけでございますが、その十倍近い規模に昨年は達したということで、とにかくこれがアメリカ側で問題にしておることの一つだと思います。
 三月の初めにはこの諮問委員会、私、座長という資格で、それからソニーの盛田会長がやはりメンバーでございますので、我々二人ニューヨーク、ワシントンに参りまして、政府、議会、経済界、ジャーナリズム、そういう各方面の人々と懇談の機会を持ったわけでありますが、単に貿易の規模が不均衡だ、非常に大きな対日貿易赤字があるということだけではなくて、もう一つは、アメリカの市場が開放されているのに比べて日本の市場は閉鎖的だ、こういう形で自由貿易をやるのはアメリカにとってアンフェアな形になるのだという言い分でございます。
 これは日本側としては前から、いやそうじゃない、日本の市場は開放されているということをしばしば言っておるわけですけれども、ただ、アメリカ人の議論としては、例えば昨年アメリカの経済が拡大した、その結果非常に大きな輸入の増加が起こった、日本も経済成長をやっているけれどもさっぱり輸入はふえないではないか、このこと一つ見ても、アメリカの市場は開放されていて日本の市場は必ずしも開放的でない、これは我々アメリカ人が言うだけではなくて、ヨーロッパの人たちも、あるいはアジア各国の人たちも同じような不平、不満を持っておる、だから日本の市場をできるだけ開放したものにする、少なくともアメリカの市場が開放されている程度に日本の市場は開放されてしかるべきだ、こういう議論がございます。
 第三に、アメリカ側の言い分としましては、日本がGNP大国になり、アメリカに次ぐ世界第二の経済力を持つという状態になったにもかかわらず、日本の政策は世界的な、国際的な責任を果たすという面でどうも不十分なのではないか。これはニューヨーク・タイムズのシルクというシニアエディトリアルのスタッフですか、ベテランの論説委員と懇談をいたしましたときに、今の日本の経済の状態は第二次大戦後のアメリカの経済の状態に似ている、非常に圧倒的な強さを持っているわけで、当時、アメリカはその強い経済力を背景にしてマーシャルプランというようなことも、これはヨーロッパの復興のためにアメリカが低利の資金を援助したわけですけれども、それからまた、世界貿易の自由化を進めるためにアメリカの国内にとっては苦しいこと、やりたくないこともあえて世界貿易の自由化のためにやってきた、犠牲を払ってきた、現在の日本は非常に経済力が強くなって、非常に大きな輸出超過があるのにかかわらず、そういう意味で十分な国際的な役割を果たしていないのではないか、一口に言って日本の対外政策はナロリーセルフィッシュじゃないか、狭く利己主義的ではないか、これはシルク論説委員が言ったことでございます。こういった意味で、貿易の赤字の額が巨大なものになった。それから、どうも日本の市場はまだ閉鎖的だ、第三に、日本は経済大国としての国際的役割を十分果たそうとしない、こういう三つぐらいの不満が結びついておるように思うわけでございます。
 そういう意味では、なかなか簡単に摩擦問題が解消しない。今後もいろいろな形で、一つの問題が解決するとまた次の問題が出てくるというような状態が予想されるわけでございますけれども、一方において、日米関係が非常に重要だという認識はアメリカ側にもあるわけでございます。きょう来られるマンスフィールド大使も「日本ほど重要な国はない」という本を書かれたわけでありますけれども、私どももせんだって三月の初めにシュルツ国務長官に会いましたときも、自分はアメリカにとって日本との外交関係は非常に重要なものと考えている、国務長官に就任して以来もそのために努力を重ねてきているつもりなのだけれども、ここにきて経済問題で大きな摩擦が起こり、議会が非常にいら立っている、こういうことの結果非常に重要な日米関係にひびが入るというようなことがあっては自分としても非常に不本意だ、何とかこの問題を解決するために、日本側としても電気通信問題は三月いっぱい、その他の三つの重要分野については五月のサミットの以前に大体話がつくということにしてもらえれば非常にありがたい、というような言い方をシュルツ長官がいたしました。
 これは大統領も同じ認識を持っておられるのだろうと思いますが、とにかく、アメリカにとっても、アジアに日本が政治的に安定し、経済的に繁栄して、国としてしかも議会制民主主義という形で存在するということはアメリカの外交政策から考えても非常に大きなプラスといいますか、重要性を持つことだろうと思います。日本にとっても、逆に対米貿易というのは、対米関係というのは輸出市場として二割五分から三割の大きさになりますし、食糧、穀物の輸入の六、七割はアメリカ一国から来ているというようなことも考えますと、経済の面で非常に重要でございます。同時に、政治問題あるいは安全保障といろいろな面での重要性はもちろん改めて申し上げることじゃないと思いますが、そんな基本的な認識は両国の間にあると思いますけれども、具体的には次から次に貿易摩擦、経済摩擦が起こってくるというのが状況でございまして、その背景には今申しましたような三つの不満といいますか、アメリカ側にあるように思います。これに対する対応として、やはり日本市場が開放的である、余り文句をつけられないようにするということがまず一つだと思います。
 せんだっても参りましたあるアメリカ人が、せめて日本がドイツと同じ程度に市場が開放されていれば我々もそう文句は言わないというようなことを申しておりましたが、とにかくこれだけ巨大な、昨年四百四十億ドルの輸出超過を持つという経済になっておりますので、この市場をできるだけ外に向かって開放する、これは世界の自由貿易のシステムを維持するためにも必要な条件でございますし、また、それを日本側が本気に進めていかなければ、ガットのニューラウンドのような自由貿易を維持していこうという主張を日本がしても十分な力を持ち得ない。また、自由貿易がもし崩れた場合に、最大の被害を受けるのは日本だろうということも前から言われておるわけでございますから、これは日本の国益という立場からも市場開放の努力をしなきゃならぬという立場に置かれているように思います。
 この点で、国内の産業との調整がいろいろ難しい問題があることは私どもも十分承知しておりますけれども、同時に、やはり全体的に見た日本の国益、国際関係、国内関係を全体として見た国益という立場から考えなきゃならぬ問題が多いのではないか。個々の部門を見れば、外国からの輸入によって打撃を受ける部面が当然ございます。それでこの我々の報告書の中でも、原則自由、例外制限で、その例外としては国の安全に関すること、環境の保全に関すること、それから国民生活の基本に関すること、そういう分野についてある程度の例外は必要だけれども、しかし、この例外を最小限にするということと、その例外について諸外国に説明して納得が得られる、国際的に理解が得られるはっきりした理由がなければならないというようなことをこの中でも言っておるわけでございます。政府に対しまして、中期のこの市場開放についての政策を立てるように、そういう勧告もいたしておるわけでございますが、これは私どもも報告を出しまして、政府の方もこれを受けて、早急に政府側の体制を整えて七月いっぱいには具体的なプログラムの骨組みをつくるというお話をいただいているわけであります。
 もちろん、アメリカの貿易赤字、単に日本に対してだけではありませんで、昨年一年で千二百三十億ドルという巨大な貿易赤字をつくり出した。日本に対しては三百七十億ドル近くでございますが、大体アメリカの貿易赤字の約三割が日本ということになるわけであります。これは日本の責任に属さない、アメリカの経済政策、その他ビジネスの慣習といいますか、に属する部分も相当大きいと我々も考えておりますので、機会あるごとにそういう点も指摘はしておるわけであります。ことに、アメリカの財政の二千億ドルに近い赤字がアメリカの国内の金利水準を高める、それがまた外国からの資本の流入を促進してドルの為替相場を強める、こういう関係はアメリカでも多数の経済学者あるいは政治家の中でも認めておる人がおるわけでございます。ですから、日本との貿易の不均衡を議論する場合に、やはりアメリカ政府の政策としてやってもらわなければならないことも今のような点でいろいろあるわけでございます。ただ、何といっても日本が巨大な貿易黒字を抱えておるものですから、日本としてできることをできるだけやる、こちらの手をきれいにしておかないと、なかなか相手に文句を言っても、説得力が弱いというような点を私ども感じておるわけであります。
 それから、日本に対しては、市場のアクセス、市場の開放ということと並んで、内需の拡大という問題がございます。これもなかなか経済政策として議論の多い点でありますけれども、最近私ども、ヨーロッパの会議に出てまいりましたが、ことしはアメリカの経済成長率が去年より下がる。去年六・九%でございましたけれども、ことしは四%、またはそれを下回る。したがって、輸入需要も去年ほど急に伸びるわけにはいかない。昨年はアメリカの急激な輸入の増加が日本、ヨーロッパの景気をある程度上向かせる力になりましたし、また、南米各国などの債務累積国の対米輸出が急激に伸びまして、これが債務累積問題の緩和にも役立ったわけでありますが、アメリカの経済が成長が低くなってまいりますと、今度は世界貿易にもマイナスの影響が出てくる。その際、日本及びヨーロッパは、ある程度国内の需要をふやして成長を高めるということが、世界経済全体として余り落ち込みが深くならないために必要だ、こういう理屈でございまして、これが日本及びヨーロッパにおける内需拡大をしてほしいという要求とも結びついてまいるわけであります。
 この問題については、非常に国内でも論議は多いところであります。しかし、考えてみますと、これは私、ボルカー連銀の議長と話し合ったときに、私からは、アメリカは日本の貿易の黒字を非常に批判するけれども、資本収支では五百億ドル近くの資本の流出超過になって、そのかなりの部分がアメリカに送られておる、それがアメリカのインフレを抑え、間接的にはアメリカの財政の赤字を一部埋めているような形にもなるのだが、それをどう考えるのかという質問をいたしたのですが、それに対してボルカー議長は、それは自分もわかっておるけれども、一つには、数字が大き過ぎる、それから一つには、財政の赤字を減らすというのはアメリカ国民の責任、アメリカ政府の責任であって、外国の貯蓄を入れてそれをふさぐということをやっておったのでは将来非常に問題が多い、だから、自分も議会や政府に対して繰り返し、そういう点で今の財政赤字を続けては、アメリカ経済にとって非常に困ったことになるということを訴えているのだと。
 ところで、日本は五百億ドルも資本を外に出して、あなたの方はもう国内で何もやることはないのですかという逆の質問を受けたわけでございますが、こういう点で内需問題もある程度対外的な摩擦に関連しております。
 ごく駆け足でございますけれども、時間になりましたので、これで一応終わりたいと思います。
#6
○委員長(植木光教君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は、委員長の許可を得て順次御発言を願います。
#7
○中西一郎君 先ほどお話しのマンスフィールドさんが、アメリカにとって日本ほど大切な国はない、逆に私から言うと、日本にとってアメリカほど大切な国はないとも言えると思うのです。そういった意味で、短期的あるいは中期的、長期的に話し合いも進めなければならないし、対応もしていかなければならない、かような所見は持っております。
 お聞きしたいことは、やや各論じみるのですけれども、一つは聞くところによると、例えば電話機、騒音が入るような電話機は日本は輸入を許可しない、あるいはお薬も――砒素などが入っておる化粧品なんかのケースには許可しない。ところが向こう側の考え方で言うと、そういったものは政府が介入すべきじゃないので、マーケットで消費者が選択をすべきことなのだというような話を聞くのです。ということは、何か国民の生活習慣というのか、日本の行政の今までやってきた長い歴史、そういったものにかかわっておる問題が相当あるのじゃないか。この解決は大変難しいのだけれども、大來さん、これについてどういうふうにお考えになっておるかということが第一点。
 それから、もう一点あるのです。それは、矢島さんがかねてよく言われるのですけれども、武器輸出の代金がアメリカの財政収支の外になっているというのか隠れているというのですか、裏予算という言葉が使われますが、財政の面でも国際収支の面でもその部分が表に出ていないのじゃないかという議論がいまだに日本国内で相当根強く残っていますが、こういった点についてどういうふうにお考えか、その二点についてお伺いしたいと思います。
#8
○参考人(大來佐武郎君) 第一点でございますが、これは今度の電気通信の問題で非常に出てきた問題でございます。郵政省を初め電話機、末端機の検査基準七十項目ぐらい挙げると、アメリカはこれを思い切り減らせということでございまして、日本は非常に技術的な規格を厳重にして質を保つという伝統がございまして、私は商務長官ボルドリッジに三月に会いましたときにもそういう議論をいろいろしたわけであります。アメリカは、電話機などはセルフサーティスフィケーションシステム、会社に品質を保証させる、もし悪いものがあったら、それを使用者あるいは消費者が裁判で訴える、それで会社に損害賠償をさせるというようなやり方で、アメリカでは商務省で三人の役人がその全部の仕事をやっているのだ、こういうことがなぜ日本でできないかという話がございました。これは薬品の場合などは生命の安全にかかわりますからちょっと違うと思うのですが、一般の商品なれば確かに市場で競争して悪いものは売れなくなるというわけで、電話機の場合、アメリカ側は電話の回路に障害を与えないという保証さえあればあとは自由に競争さしたらいいじゃないか、自由に消費者に選択さしたらいいじゃないかという言い分でございます。
 このセルフサーティスフィケーションというのはアメリカで広く行われているわけですが、一つは、これは私ども議論しておるのですが、アメリカには六十万人の弁護士がいて日本には一万五千人しかいない。日本人は裁判ざたは非常に嫌がる。だからアメリカでは裁判所でやることを日本は役人がやっている点が相当ある。国民の安全を守るというような意味で、役所が中へ入って品質保証等をやっている点があるということを申すわけですが、この辺はやはり制度の違いで、しかも、日本から非常に輸出超過が大きいというようなこともありまして、アメリカ側としては、できるだけアメリカ側の制度に日本も合わせてほしいのだというような全体的な考え方がございます。日本としてもこれは現在の段階になりますと、多少役所がオーバーケアといいますか、余りに細かいことまで役所が面倒を見なきゃいけないのだ、国民に任しておいたらいろいろ被害をこうむるかもしれないから役所が安全を見てやるのだというような点で、これは絶対必要なものはやらなきゃいけませんけれども、少しその辺が国際的な標準から見ると行き過ぎの点があるのかもしれないという気もいたします。
 薬品については、今の御指摘の点もありましたが、私、前にヨーロッパで言われたことは、従来日本の役所はなかなか薬品を認可しない。二年、三年、まあだんだん今度変わってきましたけれども、動物実験のデータを外国のものを利用できないとか、今度は人体についての試験は体が違うからというようなことで外国のデータを認めない、二、三年かかってやっと許可がおりたころには日本で同じものができている、余り売れない、これはやっぱりそういう意図があってわざとおくらせているのじゃないかというような疑惑を持たれるような点もございまして、この点は外によく説明できるような形、それからやはり外国との関係で差し支えないものは外国の基準、国際的に通用する基準や検査、データをできるだけ使うように持っていかざるを得ないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
 武器輸出については、私も余り詳細は知りませんが、一部は財政及び貿易の中に入っておる、一部は表に出ていない部分がある。ただ日本の場合について考えますと、防衛費がGNPの一%というと百二、三十億ドル、そのうち正面装備、ハードウエア的なものは半分以下と聞いておりますので、その中でまた外国から調達するものは一割程度というようなことで、仮に統計に出ていないとしても数億ドルのオーダーではないかと思います。ですから三百七十億ドルという数字に比べればかなりけたが違うように思うのでございます。
#9
○中西一郎君 武器輸出の点、私が申し上げたのはアメリカ全体で、日本だけに限らないで、全体の国際収支とかあるいは全体の国の財政、連邦の財政についてどうだろうかという点でございます。
#10
○参考人(大來佐武郎君) 武器輸出はアメリカが第一で、ソ連が第二でフランスが第三位ということで、私の記憶ではアメリカの武器輸出が年間二百億ドルぐらいというふうに承知しております。それからアメリカの国際収支の統計にはかなり統計上のふつき合いというのがございまして、その中に一部こういうものが入っているのじゃないかということも言われております。全体のピクチャーからいえば多少表に出た数字と食い違いがある。それから表に出ない形で外国がドル投資、ドルのお金を持ち込むというようなものも統計でつかまれていない面もあるようですけれども、こういうふつき合いというのがたしか三百億ドル前後あったのじゃないかと思います。ですからその程度数字の食い違いはあり得ると思います。
#11
○大木正吾君 私自身感じていますことは、政府の側も随分と認識が甘いという感じがいたしておりまして、大來先生に大変御苦労を願ったことについてまず感謝いたしたいと思っているわけですが、最近アメリカの景気が下降ぎみということもありまして、今、日本の状態で急激なことはできないかもしれませんが、やはりある程度は思い切った内需拡大政策をとらなくちゃいけない、こういう感じを持っているわけなのです。
 大來先生の座長を務められました報告書を拝見いたしますと、内需問題について幾つか御指摘がございます。ただ、政府の方が取り上げた閣議の決定等を見ていきますと、その部分が非常に薄くなっておりまして、そういう点でやはり政府の側の認識が甘いというふうに考えております。内需問題についてこの報告書八ページに四つほど問題点の御指摘がありまして、その中に、公共事業なりあるいは税制関係等についての御指摘等があるわけですが、政府の現在の対応について先生はどういうふうな御感触で見ておられましょうか、これが一つ問題です。
 二つ目のことは、ボン・サミットでも恐らくアメリカの財政赤字と日本の経済問題が内需問題等を含めて相当たたかれるかもしれませんが、どうも個別の商品のインバランス問題をやっておりましても、なかなか片がつかないという感じが根底にあるという感じを持っておりまして、例えば日本で二百五十円で一ドル買って旅行者がアメリカに行きまして、似たようなものを買ったときに百五十円くらいの価値しかないという話もよく聞くわけです。むしろ、今の変動相場の為替レートそのものにつきまして何ら新しい、いえば中央銀行の方々が、先進国の方々が集まってそういった為替レート等を中心としたサミット的なものをやった方が根底的な問題について見直しが可能じゃないか、こんな感じを持っているわけですが、この二つについて先生の御見解を承りたい、こう思っています。
#12
○参考人(大來佐武郎君) 第一の内需拡大でございます。これはいろいろ意見が分かれておるように思いますけれども、一つには財政再建の問題と絡みまして、財政の赤字をこの際ふやすことはやるべきじゃないということと、それから民間の金利を下げて内需を刺激するということは、内外の金利差を拡大してさらに円安相場に持っていく可能性がある、こういう二つの点で、内需拡大といっても実際はそう簡単にやれないのだという意見が相当あるわけでございます。ただ、もう少し内需拡大を広く考えれば、財政赤字を余りふやさないでも内需を拡大する方法が工夫によってはいろいろあり得るのじゃないかという気もいたします。これは差しさわりがありますけれども、こういう際にもう少し賃金を上げてもいいのじゃないか。これはボーナスという形でもいいですけれども、これは一番端的に内需拡大になるわけであります。しかも、税収は逆にふえるのじゃないかと思います。所得税がふえますから財政赤字を大きくするということにはならない。
 それから住宅について、これはアメリカもやっていることですが、やはり日本人にとって一番おくれているのは住宅なので、住宅ローンで苦しんでいる人たちは相当多いわけですから、住宅ローンの返済分は課税対象から外す、免税にするというふうなことでもかなり内需刺激に役立つのじゃないか。それは多少税収が減るかもしれませんが、しかし、国内の経済活動を刺激することによって税収の自然増加も考えられるわけでございます。それから公共事業でも、一〇〇%税金でやる公共事業と、一部を民間資金で賄うやり方も少し考えられるのじゃないかという気がいたします。
 日本経済をマクロ的に見れば、今民間の資金はだぶついておって五百億ドルも外へ流れているという状態で、財政は赤字でひいひい言っておるといいますか、そういう点でやはり政府の金と民間の余った資金を組み合わせて、従来いわゆる公共事業といわれているようなことを推進する余地がないかどうか。これもそんなに財政赤字は拡大しないでも内需拡大ができる面ではないか。そういうことをこの際考えてみたらどうか。これは私の個人的な意見でございます。
 為替レートについては、固定レートにしたらどうかという意見も経済界などにございます。あるいはあるバンドで変動幅を抑える。しかし、これは各国の国内経済の情勢、例えばインフレの度合いとか生産性の上昇率とか、そういうものがそれぞれ違っておりますので、なかなか人為的に為替レートを決めてもそれが崩れていく可能性がある。ヨーロッパではある程度やっておるわけで、ヨーロッパ各国の間ではやっておりますけれども、世界的な規模でこれをやろうとすると、各国のマクロ政策の調整からまずやっていかなきゃいかぬというような問題がございまして、現在は短期的に余り変動しないようにその幅を抑えようということは、最近では各国だんだん合意してきておると思いますが、それ以上に為替をフィックスするということは現実から見て非常に難しい点があるのではないか。
 ただ問題は、過去と違いまして最近では為替レートが商品の取引、商品の競争力よりもむしろ資本の取引によって決まってくる面がございまして、アメリカの場合なんか明らかにドル高になっておる一つの大きな原因は、商品の競争力は弱まっているけれども、資本が大量に流れてくるのでドルが強くなる。その間を埋めるのに輸入課徴金を取ったらどうかという議論も出てまいるわけでございますが、これもいろいろ海外でも議論があるところで、私ども少し心配しておるのは、もしもこの日米関係の貿易のバランスが今後も当分余りよくならないということになると、日本だけに向けた輸入課徴金というアイデアが出てくる可能性が全くないとは言えない。これは行政府はそういうことを極力抑えるでしょうし、恐らく大統領も拒否権を発動するだろうと言われていますが、ただ、議会が非常に圧倒的にそういう動きをした場合にどこまで行政府が抑えられるか。これは今のところの日米間の摩擦、多少日本も対策を発表したので、もう少しお手並みを見ようという感じになっておりますが、ことしの秋以降、情勢によってはそういう問題がまた出てくる可能性がないとは言えないような気がしております。
#13
○黒柳明君 大來参考人、お忙しいところ御苦労さまでございます。
 言うまでもなく、アメリカの大統領の経済諮問委員長というのは閣僚級で相当の影響力と力がありますが、日本は立場が違いますから、今ある面におきまして非常に経済危機の我が国におきまして、大來座長の長い経験と抱負というものは非常に必要とされている、こう私は思う次第でございますが、その観点からぜひ今後ともの御活躍を期待する次第であります。時間がございませんで、三点お伺いいたしたいと思います。
 まず第一点に、あの宮澤総務会長の資産倍増論、これは持論でございますが、一昨昨日の講演では、当面のアメリカの貿易摩擦に関して、工業製品を一律に二五%ダウンしたらどうか、こういう案も発言されましたが、この点につきまして座長はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
 第二点は、私も三月アメリカに二回行かしていただきました。大來座長は政府の代表として各方面の責任者と話されたわけでありますが、一応行政政府間では話し合いのめどがついた。しかし、今座長がおっしゃいましたように議会筋、私もある意味においては非常に感情的であり、異常な反応だとは思いますが、それにしても今までにない議会筋の強硬対日姿勢が一応イースター明けにはまた起こるのじゃなかろうか、こんな感じもしましたが、今のところ議会筋から特別な動きがないようであります。イースター前におきましてもドール上院院内総務が対日報復決議案はちょっとペンディングにする、法案として通過させるのはペンディングにする、こういう非常に隠し玉もあるわけでありますから、座長としましては、今秋ごろという発言もありましたが、当分議会筋も日本の市場開放に対する努力、誠意を見守るというところで、静観という姿勢をとるという感じでございましょうか、あるいはサミットなんかを見てまた動き出すというような感触があるとお感じでしょうか。その点、米議会筋のこれからの動きというものはどのように感じていられましょうか。
 三番目は、今も内需拡大の点についてお触れになりましたが、この答申の骨子あるいは答申を見ましても、内需拡大について項目別に明示されております。今も個人的意見とおっしゃいましたけれども、賃金の値上げとかあるいは住宅問題とかこういうことをおっしゃいました。基本的には座長あるいは大來元外務大臣個人としては内需拡大策をとれ、こういう意見に私は聞きました。言うまでもなく、先週はシュルツ国務長官の内需拡大策という日本に対する意見を踏まえて政府・与党が非常に賛否両論で意見が分裂したまま、今マスコミの活字にはなっておりませんが、一応分裂したままになって推移して、私たちはどうなるのかな、こういう危惧もあるわけであります。今回の答申につきましてはこれは総括的、中期的なものであり、あるいは七月には政府のこれに基づいた政策が出てくるというのですが、当面アメリカに対する貿易摩擦につきましての内需拡大策、その賛否が非常にあることは御案内のとおりであります。これにつきまして大來座長の意見はどうなのでしょうか。
 というのは、つけ加えますが、御存じのように一昨々日は民間六十社を通産大臣が呼んで、ひとつ輸入を促進してくれ、あるいは総理大臣が、百ドルずつ国民に買ってもらえないか、あるいはポスターも出している。こういうまだ私は政府がやることが、できることがあると思うのです、今座長が個人的と言ったようなそういう中においても。しかもアメリカ側は貿易摩擦の中では、行政の許認可あるいは大型コンテナーで見られますようなああいう行政の煩雑さというものについてまだできる余地がある。先般、ある省では外車二台買えと大臣が指示したとか、国会におきましても、政府におきましても四十年代は外車をどんどん使っていたわけであります。政府ができることがまだまだあるのじゃなかろうか。それを私に言わせると、おいて、国民に、民間にしわ寄せをする姿勢があるのではなかろうか、こういう感じもするのですが、ひとつ内需拡大策につきまして、当面対アメリカとの摩擦についての内需拡大賛否についての意見、それと同時に、政府がいろいろなことを国民、民間に打ち出しておりますが、まだ政府行政当局としてやれることがあるのじゃなかろうか、こういうことについての御意見。
 以上、お願いします。
#14
○参考人(大來佐武郎君) 第一に、宮澤さんが言われた工業製品の関税二五%引き下げ、これは将来ゼロをめどにしてということであろうと我々推察しておるわけですが、ただ、工業製品が平均して今二・五%というようなところになっておりますから、その影響は、その二・五%の四分の一を下げるということですから、考えようによっては影響はそれほど大きくないということも申せます。
 私どもの報告書の中でも、「工業製品の関税率を先進各国とともに零にまで引き下げる用意のある旨」を表明するべきだという答申になっておるわけでございますが、「先進各国とともに」という、これはいろいろの議論がありましたのですが、「ともに」と言っている中には、場合によれば一部の場合は一方的にやる場合も含まれているというふうに少なくとも私は解釈をいたしております。
 大分前ですけれども、ケネディ・ラウンドを推進するときに、アメリカが初めに率先して関税を五〇%下げようということを言い出したわけでございますから、日本としても新しいニューラウンドを推進しようとするのであれば、かなり思い切った態度表明、先ほどシルク・ニューヨーク・タイムズ記者のお話も申し上げましたけれども、そういう意味では何か必要なのじゃないかというふうに思っております。
 それから、第二のアメリカ議会の反応でございますが、これもハインツという上院議員に会いましたときに、これは三月の上旬でございますが、今、日米の間は黒雲が立ち込めておって、だんだん電気がたまっていつ雷が落ちるかわからぬような情勢だということを私に申しておりまして、議会はもしかするとサドン、急激な、ストロング、強い、アンプレディクタブルな、予測できない動きに出るかもしれない。それはその後を考えますと上院及び下院の日本非難決議などになったのだろうと思いますけれども、当面はイースター後また何か出るかという心配もございましたが、最近参りますアメリカの新聞の論調などは、やや議会も行き過ぎだ、もう少し相手の立場も考えるべきだというような論調がかなりふえておりまして、かたがた日本政府も何かやろうとしているらしいというようなことで、しばらく模様を見るということではなかろうか。タイミングがよく予測できませんが、その結果を見てもどうも全く満足できないと議会の人たちが考えるようですと、秋ごろからまた少し難しい情勢が出てくるのではないか、これは私の判断で、当たるかどうかわかりませんですけれども……。
 それから、内需拡大につきましては、先ほど申し上げましたように、財政赤字をふやさないでできることをできるだけ考えるべきだろうということでございます。役所でも買えるものはできるだけ外国からも買う。役所の随契、随意契約ですか、のやり方がやっぱり透明ではない、外国の企業に差別をするような結果にもなりやすい、ですから政府の調達、特に随意契約のやり方を再検討すべきだということを私どもの報告でもうたっておるわけでございまして、買えるものがあれば政府もできるだけ外国のものも買うということでいくべきだろうと思いますが。
#15
○立木洋君 二点お尋ねしたいと思います。
 この数年来のアメリカの財政状況を見てみますと、レーガン大統領が登場してから御承知のようにレーガノミックスを進めてきたわけですが、実際には予算収支のバランスというのは御承知のように崩れてきて、実際破綻している。レーガン大統領が登場した当時の状況を見てみますと、財政赤字が五百八十億ドルのマイナスでしたが、それが去年の段階ではもう三倍にも膨れ上がっているわけです。ことしではその財政赤字が二千二百億ドルを超えるのではないかということまで言われておる。結局、これの問題というのは最大限、最も大きな原因というのが国防支出にあったということがこれは認められているわけですが、こうした状態が結局は高金利さらにドル高ということで今日の状態なんかのことを招いている問題として考えられるのじゃないかと思うのです。
 それから、経済収支の問題も、赤字の問題も一九八二年以降大幅にふえまして、御承知のように八一年の段階ではこれが黒字で六十三億ドルという状態だったのが、去年の段階ではもう千億ドル超えて、御承知のように債務国に転落するというふうな状態にまでなっている。こういう状況の悪化ということを、こういう状態をどういうようにお考えになっているのか。また、こうした状況とアメリカの財政状態との関係を、経済摩擦との関連をどのようにお考えになるのか、これが一点であります。
 もう一つの点は、やはり経済摩擦の問題をよく考えていくならば、先ほど日本側が努力しなければ相手に対して説得がない、文句を言ってもというお話がございましたけれども、しかし、この財政赤字の問題というのが解決されなければ根本的な問題解決にはならないだろう。これは非常に大きな問題を占めるだろう。それで、結局これまでアメリカがそうした点で努力をしてきたのかどうなのかということを見てみますと、実質的には何ら効果が上げられていない。それどころか大変逆行する事態が進んでいる。これは日米欧委員会の渡辺日本委員長が述べられていますけれども、財政赤字をふやした最大の原因は防衛関係費用の増加にあるということをはっきり指摘しているわけです。
 一九八六年度の予算を編成する場合どうするかということが、政府と議会の中でアメリカで議論されておりましたけれども、結局は防衛予算を削減すべきだという議会の主張に対して、レーガンはそれを押し切って、結局は国内勘定支出部分を三百億ドルぐらい削減したのが全部防衛支出の方に回される。それだけでなくて、御承知のようにSDIの問題が問題になり、これが今後進められていけば一兆ドルにもなるのではないかというふうなことまで言われて、こうした状況というのは今の事態のまま考えていきますと、実際にはアメリカの財政状態というのは改善される方向にいかないのじゃないか。そうすると、こうした経済摩擦の要因を日本側に求めてくるという事態がますます強まるのではないかということを非常に憂うるわけですが、こういう将来的な展望の見通しについて、本当に経済摩擦の解決ということから考えられて、こうした動向をどういうふうにごらんになっているのか、この二点お伺いしたいと思います。
#16
○参考人(大來佐武郎君) 第一のアメリカの財政でございますが、御指摘のように非常に大規模になってまいりました。会計年度が十月から始まりますので、もうことしの分は去年の予算で決まっているということにもなるわけですけれども、今度、昨年の夏まで大統領経済諮問委員会の委員長をやっておりましたマーチン・フェルドスタインさんが日米欧委員会に参りまして、アメリカ経済の見通しの報告というか話もございましたが、最近議会の方も財政赤字を縮めなければいけないという意識は非常に強まってきて、来年の予算からはその効果がかなり出てくるものと予想しているという話でございました。
 これは国防費も一部削るし、民生関係も一部削るというような形で、大統領は増税に反対しておるわけですけれども、最後の段階では、所得税はなかなか増税には同意しないけれども、間接税的なものとか、石油税あたりは結局承認するのじゃなかろうかというような観測も述べておりました。ですから、やや財政赤字を減らそうということが、今まではなかなか実績が出ておりませんでしたけれども、来年あたりからはある程度実際に出てくる可能性はあるように思われます。殊に米ソ関係の交渉がある程度進みますと、これも一つの財政赤字削減の要素になると思います。
 アメリカの財政赤字でドル高なために非常に大きな輸入超過になって、それが諸外国から見ればアメリカに対する輸出の急増になったわけでありまして、日本の対米輸出は昨年一年で四〇%伸びたわけであります。ヨーロッパ各国も原則としてアメリカのこういうやり方は問題だと言っていますが、割合利益を受けているということもございまして、その辺が当面はアメリカの輸入がふえることは好ましい点がある、しかし長期的に問題だという見方は、これは日本でもヨーロッパでもアメリカの国内でも多くの人が問題にしておることだと思いますので、やはりその基本は財政赤字にある。
 これは一部のアメリカのアドミニストレーション、行政府の人で、財政赤字と高金利、ドル高とは関係がないと言う人もいるわけですけれども、しかし、最近は大勢としてそれを認める方向に動いておると思いますし、従来いろいろな例から見ましても、アメリカ政府はあるところまでいくと軌道修正の能力を示す場合が多いように思いますので、これから今のような点、財政の赤字と国際収支の大幅赤字という二本の赤字の柱に立ったアメリカ経済の現状を直していこうという努力は、だんだん強化されていくのではないかと一応思っております。
#17
○関嘉彦君 大來さんには今度の諮問委員会の座長をして以来、いろいろ御苦労を願っていることに対して敬意を表します。初め三つほど質問予定しましたけれども、大使がお見えになったので短くしてくれというので、二つほどに削減いたします。
 一つは、先ほどおっしゃいました外国から見て、特に欧米から見て日本の非関税障壁の問題なんかがアンフェアであるというふうな非難がかなりあるように思いますが、日本の従来の考え方から見ると、必ずしもアンフェアじゃない、当たり前のことだというふうな意識のずれがあるように思うのであります。しかし、これは理屈を言っていたのでは、双方に言い分があるわけですけれども、理屈を言ってお互いに相手を非難していたのでは、これはますます対立が激化してくるわけであります。結局やはり、外国が保護貿易主義になることが日本にとって損か得か、損得の問題として私は考えるべきだろうと思うのであります。
 その点からいいますと、私は日本が自由世界の一員として生きていく以上、やはり自由貿易、自由経済的な物の考え方に意識を変革することが必要ではないか。今までの官庁による過度の干渉、過保護的なやり方を改めて、国民が自分で責任を持って選択をするという考え方に変わっていくことが必要だろうと思うのですけれども、そのためには国民の意識変革をもっと訴える必要があるのじゃないかということを感じます。それでなければ、何か日本人は外圧に屈してやむを得ず譲歩したのだといったフラストレーションが残りますし、外国に対しては、日本は圧力さえ加えれば幾らでも譲歩するという間違ったイメージを与えるのじゃないかと思います。それを防ぐためには、国民自身が自由貿易時代に合致したような意識の変革をすることが必要ではないか。それに対する宣伝がもっと足りないのじゃないかと思いますけれども、どうお考えでしょうか。そこのところが第一点。
 それから第二点は、この報告書の八ページにあります、「内需中心の持続的成長」というところの「第四に、内需中心の持続的成長に役立つ税制の見直しが重要である。基本的には貯蓄・消費・投資のバランスを図る観点から検討を行う必要がある。」という点です。抽象的で、よく具体的にわからないのですけれども、例えば私はアメリカと日本の税制が逆じゃないかという気がするのです。と申しますのは、アメリカは先ほど大來さんもおっしゃいましたように消費を奨励するような税制をとっている。日本は逆に貯蓄を奨励するような税制をとっているわけですが、むしろこれは逆になるべきじゃないか。そのために日本ではつまり過剰貯蓄ということが問題になる。意識的に貯蓄を減らすことは必要ないと思うのですけれども、意識的に貯蓄をエンカレッジするような政策をとる必要があるかどうか、その点を考えているのですが、この第四に書かれていることはそういうことも含めて提案されているのかどうか、その二点、お伺いいたしたいと思います。
#18
○参考人(大來佐武郎君) 第一の点で、アンフェアと言われることは私ども日本人全体としても非常におもしろくないことで、私どもがアメリカ人と議論する場合に、そうやたらにアンフェアと言わないでくれ、これはやはり日本のいろいろな歴史的な背景の違いなどがあって、結果としてそうなっている面がある、対応がおくれているということは幾ら議論されてもいいけれども、余りやたらにアンフェアと言わないでくれというようなことを言っておるわけです。
 先ほどちょっと触れましたようなことで、外から見ると、何か意識的に輸入を抑えて、その間に日本で競争できるものをつくって、競争できるものができるとやっとあげるというような、そういう解釈があることは事実でございまして、もう日本もここまでくればそういうふうに受け取られるようなことはできるだけ避けた方がいいと思いますし、全体に意識変革、これはある意味じゃ第二、第三の開国みたいな面があるので、第一の開国が徳川の鎖国時代、黒船開国、第二が敗戦によっていろいろな改革をやった、それから第三が、今新たな世界の国として、GNPの一〇%を持つような経済大国としての外に開かれた日本。これは、我々も前に留学生の数を今の一万人から十万人ぐらいにふやすような考え方も必要ではないか、外に開かれた日本というようなことも申したわけでございますけれども、いろいろな意味で、今の関先生の御指摘のように、意識変革が必要な時期に来ておるように思います。
 第二の内需の問題で、私ども税制の見直しを提案しておるわけでございまして、これは税制改革の中でぜひこの項目を含めてほしい、公平とか簡素化とかということと並んで、税制が内需を拡大するのに役立つように可能な限り変えてほしいという考えがございます。確かに、とにかく貯蓄率は日本は世界で一番高い。アメリカは貯蓄率を上げるべきだし、日本は今御指摘のように下げる必要はない。政府の政策は中立であってよろしいのじゃないか。貯蓄を下げるための政策も要らない。しかし、今までとられている貯蓄を奨励する政策はやはり外した方が対外的な日本に対するイメージからいっても望ましいのじゃないかというふうに思っております。この点は、この報告書にどの程度具体的に書くか、委員の間でも非常に議論がございましたが、まあこの程度の表現で一応中身はわかっていただけるだろうということでおさまったわけでございます。
 以上でございます。
#19
○秦豊君 大來さんに伺いたいのは一つ二つですけれども、アメリカの我が国に対するアプローチというか交渉の様式を見てみますと、やはり最近アメリカの大統領に与えられた例の一つの権限、つまりイスラエルとの自由貿易協定ですね。それから、やがてこれをカナダに援用しようとしている。つまり、ワシントンから東京を見れば、流通サービス部門も含めてあらゆる日本市場のアクセスをアメリカと同じレベルと方向にする、これが非常に根強い、根っこにある動機、目標ではないか。したがって、まだイスラエルとの自由貿易協定が全部まとまったわけでもなし、やがてカナダに援用するといっても内容が定かでない面もありますけれども、アメリカが日本に求めている最終的なものを考える場合に、私が申し上げたイスラエルとの自由貿易協定の方向というのは何か示唆を与えるものではないかという点が一つです。
 それから、ダンフォース氏が専ら悪役のような役柄を演じつつあり、一定のパワーも持っているようだけれども、ある意味でいえば交渉にたけた議会人特有のビヘービアで、報復決議をちらつかして、いつでも議員立法をするぞと、こういうテクニックはよく使う、それは私はよくわかるのです。しかし、そんなものを議員立法しなくても、例えば一九八四年、アメリカ通商関税法のあの九編の内容を見ると、例えばサービス、貿易、投資、ハイテク分野の相互主義なんという分野がちゃんと確定されていて、もちろん大統領の拒否権限があるにしても、私はそんな片々たる議員立法などよりも、現にある法の体系と法律を活用することによって、いつでも場合によっては具体的な報復行動に出ることができるという実感をぬぐい得ないのですけれども、今の二つの点について大來さんの感触を伺っておきたいと思う。
#20
○参考人(大來佐武郎君) 第一の点でございますけれども、これはブロック通商代表もしばしば言っておるのですが、ガットを中心とする多角的自由化を促進しなきゃいけない、しかし、なかなか全部の国がその話に乗ってこないような場合には、話のつく国と個別的にある程度進めることもやむを得ない、それをだんだん広げていけばいいじゃないかというのが最近の哲学といいますか考え方のようです。イスラエル、カナダというような形で、あるいはカリビアンとの自由化もございますが、カナダの側の話を最近のいろいろな会議で聞いてみますと、そういう動きはカナダ側にもあるようでございます。これは政党が変わったという点もあると思いますけれども、カナダとしてはもう少し経済をむしろアメリカと一体化した方がいいのじゃないかというような議論もあって、この半年ぐらいがどっちの方向にカナダがいくかという一つの重要な時期だということをカナダ人からこの間聞いたわけでございます。
 ねらいは、アメリカ側の説明としては、あくまでもグローバルといいますか、多角的な貿易自化を進めるのだけれども、待っているわけにいかない、だから、話がわかるところから進めていくことも考えなきゃだめだ、そういう説明でございます。これは日本側としては、そうはいっても、もしもそういうバイラテラルな形をだんだん積み上げていくとそれでとまってしまうおそれがある、そうすればやはり世界貿易の無差別な自由化というガットの原則が崩れてまいるというので、こういう動きは余り好ましい動きではないというふうに私どもも考えておるわけでございます。
 それから第二の点は、ダンフォースの議員立法。これは確かにアメリカでは議会と行政府の連携プレー的な面がございますから、必ずしも立法なしにも、八四年通商法でやれることも相当ある。あるいは輸入課徴金というのは七四年の通商法でできるようになっておりますし、また、アメリカの国際収支悪化の大きな原因が特定の国にある場合には、その特定の国に対して輸入課徴金をかけることができる。ただ、あれはたしか一五%まで、それから一年半までは行政府に任しておく。それ以上のことをやろうとしたら法律の改正が必要だという面があったと思いますので、八四年通商法あるいは七四年通商法でできる範囲のことを超えて何かやろうとすれば、やはり議員立法が必要になるのではないかというふうに見ております。
#21
○秦豊君 なるほど、わかりました。
#22
○委員長(植木光教君) 以上で質疑は終わりました。
 参考人にお礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、お忙しい中を本委員会に御出席願い、貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございます。
 ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本委員会の調査の参考にいたしたいと存じます。
 暫時休憩いたします。
   午後二時二十一分休憩
     ─────・─────
   午後三時二十五分開会
#23
○委員長(植木光教君) ただいまから外交・総合安全保障に関する調査特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、外交・総合安全保障に関する調査のうち、国際経済摩擦に関する件を議題とし、国際経済摩擦について参考人から意見を聴取いたします。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、国際経済摩擦について忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 これより参考人の方に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人の方から御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、堤参考人にお願い申し上げます。
#24
○参考人(堤清二君) 私は参考人の堤清二でございます。この外交・総合安全保障に関する調査特別委員会という場所におきまして、国際経済摩擦について参考人としての意見を申し述べる機会を与えられましたことを非常に光栄に存じております。
 私の参考人としての立場は、外国の製品輸入について多種類かつ比較的多量の完成品を輸入している業者という立場であり、したがって一般論と同時に具体的な経験を踏まえた参考意見を申し上げるのが役割であろうというふうに心得て出てまいったわけです。
 この完成品の輸入という問題は、実は非常に難しい問題、現実的には困難な問題、と申しますのは、卑近な例を取り上げさしていただいて恐縮でございますけれども、私どものような業種でも、精いっぱい完成品の輸入に努力をいたしましても、全体の一%強ぐらいの比率にしか、国内品と比較いたしますとシェアは完成品に関する限りでは出てこないという現実があるわけでございます。したがって、これをふやすにつきましては、にわかにふやすことはなかなか困難である、しかし、努力をいたしましてそれ相当の体制を整えますならばふやすことは可能であるというふうに私は存じております。
 それで、言うまでもなく、経済摩擦を解消する手段としての完成品の輸入は幾つかある手段のうちの一つにしかすぎない、したがって、その他の手段が並行して進められるという前提が成り立ちませんと完成品の輸入もまたなかなか増大しにくい、困難が多いのだということをまず冒頭に申し上げておきたいというふうに思います。
 輸入の促進のほかに例えばどういうものがあるかといいますと、資本の輸出による外国法人としてのジョイントベンチャーの設立、あるいはノンタリフバリアー、タリフバリアーの排除等々、幾つかあるわけでございますけれども、そういったものの一つとして、貿易摩擦解消のための流通部門の企業が果たすべき役割について、やや具体的に参考意見を申し上げてみたいと存じます。
   〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕
 一つは、努力の方向といたしましては、海外における日本市場への適品の開発という努力を我々はすべきであるというふうに考えております。
 この日本市場への適品、これはやはり日本の消費者、日本の生産者が実は一番よく日本の市場を知っているわけです。したがって、海外へ出かけてまいりましてその目で見て適品を開発する。これまた卑近な経験で恐縮でございますけれども、昨年、私の関係している会社がフランス展、フランス産業展及びフランス物産展というものを行いました。この際は、パリそれから大メーカーのものばかりを対象とせずに、アルザスあるいはプロバンス地方の中小メーカー、フランス政府の指示によりまして、約一年にわたりまして二百名以上のバイヤーが入り込んで中小メーカーと相談をして、日本の市場への適品を発掘あるいは委託生産をしてもらいました。そのような努力をいたしますと、前年対比でございますけれども、五〇%ぐらい製品の販売額がふえるというふうな結果が、ごく最近私どもの経験したところでございます。このように二百人のバイヤーは二十五年前からパリに設けました商品買い付け事務所のサポートを得て、一年間で作業ができたわけであります。そういう点では、長い時間をかけてそういった適品の開発、開発能力のある人材を養成していくというふうなこともまた極めて必要な措置である。
 第二には、日本の市場志向型の貿易業務を拡大するという必要があろうかと思います。
 と申しますのは、今までの我が国の貿易は、これは今後もそうであろうと思いますけれども、やはり原料、天然素材等を外国から輸入いたしまして、それを完成品にして外国へ再び輸出をするというふうな構造が定着をいたしております。
   〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕
したがって、貿易業務と国内における末端の消費とは必ずしも十分に結びついていないというのが今までの産業構造上からくる一つの我が国貿易の特殊性でございます。
 それに対して、少量多品種の輸入を行う貿易会社、輸入業務を実行する組織機構をやはり整備をしていく必要があるだろう。この際、それに従事する企業は、例えばその企業が小売を営んできた企業であるとすれば、自分の店にだけ供給する商品を輸入しておりましたのではなかなか数量がまとまりません、コスト高になりますので。したがって、小売業を離れて卸売業の立場に立って、中量多品種、少量から中量へ、中量多品種のものを輸入できるように努力をしなければならない。
 そこで、やはり小売業者、流通業者の体質転換であると同時に、また大きな商社もこういった末端の川下の消費につながるような組織をつくっていくというような、川に例えますと、川上と川下の両方から日本市場志向型の貿易業務を拡大する必要があるのではないか。現実的に小売部門が外国商品を輸入しようとしてまずぶつかるのは、それを取り扱ってくれる、そういう意味での輸入業者がそれほど数が多くないというネックでございます。
 それから三番目には、やはり私たちとすれば、つまり流通業界とすれば、海外商品のイメージを日本の国内マスマーケットの中でつくっていくという点での貿易拡大、協力という方向があろうかと思うのです。
 そのためには、海外の産業及び伝統的な生産物の展示、PRを行う必要がある。この点につきまして、例えばヨーロッパ、アメリカでもそうですけれども、殊にヨーロッパの場合には歴史的に形成された見本市開催の伝統あるいは見本市開催を促進する専門機構がある。ある場合には政府、パブリックな形で、ある場合には私企業の形で実に多数存在をいたしております。これは近代以前、中世のころからの交易の習慣、ライプチヒだとかハノーバーだとか、そういうもともと中世時代から交易の中心地であったところに歴史的に形成された見本市業者とでもいいますか、見本市促進機構とでもいいますか、そういうものが数多くあるわけであります。我が国にもそういった装置が、これは民間であれあるいは第三セクターのような形であれ今後さらに各地につくられますことが、非常に外国製品に対する消費者の知識とイメージを形成する上で大事であるだろう。
 したがって、そういう点では何と申しましても、つい四十年ほど前まではそういうものがなかなかやりにくい社会経済体制にあった。また、実質的にはこの二十年ぐらいで貿易がかなり活発に行われるようになったわけであります。三百年、四百年あるいは六百年というふうな歴史的伝統を持っているEC諸国あるいはヨーロッパと、二百年しか伝統を持っておりませんけれども、いろいろな面でつながりの深いアメリカの間の貿易とは違った歴史、社会的なハンディキャップが我が国にはあるのだということを十分考えた上で、外国の商品のイメージ形成のためのいろいろな機構をつくる必要があり、そういった面で流通業者も末端の消費者に接触をしているという利点を生かして協力をする義務があるだろうというふうに私は考えております。
 また、四番目には、日本の消費市場に適品をつくるということを先ほど申しましたけれども、日本の消費市場がどのように変化しつつあるか、今後どのような方向で日本の消費市場が非常に広がるだろう、深まるだろうというようなことについて日本の市場に関する情報提供、いわゆるマーケティングの力を海外の生産者に与えるあるいは供給するという、これは一種の国際的なシステムの構築、これに流通業者も協力をする必要があるだろう。
 と申しますのは、やはり我が国はヨーロッパ諸国あるいはアメリカ諸国とは違った文化圏に属しているわけでありまして、そのような違った文化圏に属しているということからしばしば誤解が生じたりトラブルが生じたりしている。その点は少数多品種、また、海外の大メーカーばかりではなくて中小メーカーのところに入り込んで商品開発をすれば、いよいよいわゆるパーセプションギャップと言われておりますものはほうっておけば拡大する危険もあるわけでございます。したがって、日本の生活慣習などについて正しい情報を提供する。例えば、具体的に申し上げますと、大型家具のようなものは日本の家屋にはどうしても入り切らないというようなことがあるわけでありますけれども、日本の家屋構造などを知りませんと全くそれは向こう側から見て輸出ができないわけであります。そういうような非常に単純な例を申し上げましたけれども、そのパーセプションギャップを的確に取り除いているメーカーも海外にもぽつぽつとあるわけであります。これが全般に及ぶようなマーケティングの業務を海外の生産者のために行う機能の評価ということが必要であろうかと思われます。
 それから五番目には、製品輸入に関連する業務の体制の強化ということがございます。
 と申しますのは、製品を輸入するだけではなくて、例えば輸入した製品が故障した場合に、これを修理するいわゆるメンテナンス工場あるいは修理工場、あるいは故障した部品を取りかえる部品を入れておく倉庫の整備等、そういったものが十分に並行して展開されておりませんと消費者が非常な迷惑をこうむりまして、二度と海外のその会社の製品は買わないというようなことが起こってくるわけであります。今までにもそういった点で流通業者が用意不十分でありましたために、その製品についての不信感を日本の消費者に与えたケースがなかったわけではないわけであります。今後はそういうことのあり得ないように、そういった製品輸入の周辺業務について十分な体制をとるように、また、テスト輸入の期間というふうなものも設ける必要が商品によってはあろうかと思います。ただ、そのテスト輸入の期間が必要以上に長期化しております場合もありまして、そうなりますと、海外のメーカーから見てこれはノンタリフバリアーであるというような誤解を持っている部門もあるやに伺っております。これらについては十分にお考えをいただきたい点であるというふうに申し上げたいと思います。
 最後に、やはり流通企業は取り扱い分野を拡大して貿易のインバランスの解消に協力をすべきであるだろうというふうに考えております。
 新しい分野における輸入の拡大という点では、これは国内の既存の生産者を圧迫するということも非常に少ないわけでありまして、海外製品を比較的楽に拡大できる分野ではないか。そのためには日常消費商品ばかりではなくて、例えばアメリカとの取引など例に挙げますと、大型医療機械だとか大型レジャー用品だとか、我が国にはまだ十分な市場が形成されておりませんけれども、これからそういった市場が形成されてくるであろうというようなものを見越して、今からそういった商品についてのテストマーケティング、あるいはそういった製品を取り扱うことができるセールスマンの養成、エクステリアと申しますと、例えば都市のパブリックスペースなどで使われるいろいろな機材、これは都市のパブリックスペースが非常に今我が国では少ないわけでありますけれども、これが当然いずれ多くなってこなければならないだろう。そういったもののテストマーケティング等とか、また、形のある商品ばかりではなくて、保険商品だとかあるいは旅行商品だとか、音とか映像といったものの輸入の拡大、いわゆる文化商品と申しますか、そういったものの輸入の拡大、これは商品という名前をつけるのは必ずしも適切ではないかと思いますが、そういった一種の文化交流という線に沿った輸出入、これは相互のパーセプションギャップを解消する上でも役に立つ取り扱い分野の拡大ではないだろうかと私は存じております。
 そういうような点で、思いつくままに六つの項目を挙げさしていただきましたけれども、国際経済摩擦を解消する上での完成品の輸入、あるいは流通資本の果たすべき役割及びその可能性についてこのようなことを考えておりますので、諸先生方におかれまして、ひとつよろしく御検討また御批判、御示唆を賜わりますようお願い申し上げまして、参考人としての意見開陳を終わらしていただきます。
#25
○委員長(植木光教君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は、委員長の許可を得て順次御発言を願います。
#26
○大坪健一郎君 きょうは参考人、大変お忙しいのにお出かけくださいましてありがとうございました。
 持ち時間が大変それぞれ少のうございますので、簡単に御質問さしていただきますけれども、このごろ中曽根さんが町に出て買い物をしたりしてデモンストレーションをしましたけれども、あれを見ても、いかにも国内消費の拡大について分野がこう国民の目に見えるように広くないように思われます。今の堤さんのお話でも、日本の市場構造の特殊性からどうも輸出入をつかさどる貿易業務の関係者と末端の消費がうまく結合していないというお話がございましたけれども、やっぱり非常にそこら辺のことがすっきりしない。何かさっと輸入して国民の活用にすぐなるという領域が非常に少ないように私どもには思われますけれども、あなたがふだんいろいろなさっておられるお仕事の関連で、もう少し具体的にその領域についてお話しいただければありがたいと思います。
#27
○参考人(堤清二君) この問題につきまして、いわゆる総合商社と言われます貿易商社も努力はいたしておられるわけでございますけれども、何分一品単価が小さくて手数の多い消費財などを輸入するよりも、やはり戦闘機一機輸入することを決めた方がずっとマンパワーのイフシェンシーからいきますと効率的であるという事情がございますので、どうしてもそこいらが大きな機構の中ですとやりにくい面がある。それでどうしてもそういった完成品や消費財を専門に扱わなければ会社が成り立っていかないというふうな組織が数多くいろいろできて、消費者あるいは末端の消費者に接触している小売業者などと連絡を緊密にとる必要があるのではないかというふうなことでございます。
#28
○大坪健一郎君 これは外国からも指摘がありましたけれども、住宅についてもう少し思い切った対策をとれば関連の輸入品が相当あるのじゃないかという議論がありますけれども、これについては、先ほどの家具などは日本の住宅にどうも合わないようなものが多いようにも思います。しかし、やっぱり家具の伝統などもヨーロッパでは大分あるようですし、そのほか関連機器、住宅には相当大きな消費需要の源があるようですが、日本の住宅政策について一言それらの関連で何かございましたら。
#29
○参考人(堤清二君) 住宅については、実は私どもの立場からすると、これからだというふうに思っております。つまり、家具や家庭用品の輸入がビジネスとして成り立ってくるのはこれからだ。今までは、何といいましても二DKよりは三DK、三DKよりは三LDKという、そういう絶対的な需要を居住者も追っかけておりまして、それをどんな家具で使いやすく、あるいは気分よく構成するかというふうなゆとりがございませんでした。しかし、これからはそういったマーケットが生まれてまいりますので、先生のおっしゃるように、住宅について今からいろいろな勢力が共同して外国製品の輸入が拡大するような開発努力を続けるならば、何年か後には必ずそれは大きな数値としてまとまってくるのではないかと思っております。
#30
○大坪健一郎君 それじゃ最後に、為替問題が大分輸入に支障があるように思われますけれども、これについて何か。
#31
○参考人(堤清二君) やはり、今のフローティングしておりますと、為替リスクをヘッジするためにマージンを上げないと輸入業者としては非常に怖い。その結果が末端価格の値上がりということで反映している。それが売りにくさといいますか、輸入量の増大にマイナスになっているという現実はございます。二割為替レートが上がりますと、やはり末端でそれなりのはね返りがあるわけでございますので、リスクヘッジというコマーシャルベースでいきますと、どうしてもそれをヘッジせざるを得ないというふうな現実があることは承知いたしております。
#32
○大坪健一郎君 どうもありがとうございました。
#33
○久保田真苗君 堤さんには女性労働力の活用などでいつもユニークなアイデアを出していただいてありがたく思っております。今回のことにもきっといいお知恵があるのじゃないかと、さっきからお話を伺っておりましてある程度の疑問は既に解消したのですけれども、まず伺いたいのは、先ほどマンスフィールド大使が、日本にとってのキーワードはアクセスだと強調しておられたのです。ところでこのアクセスですが、ノンタリフバリアー、それから官庁のいろいろな介入ですね。それからさっき関議員も言われたような、日本人の自由化に対する意識革命というようないろいろな要素があるとは思いますけれども、堤さんのお考えでは、このアクセスの問題というのはそんなに日本にとって問題があることなのかどうか、それを伺いたいと思います。
#34
○参考人(堤清二君) 確かに、外国の方の目から見るとアクセスに非常に障害があるというふうに見えると思います。それは役所の機構が悪いばかりではなくて、やはり日本のビジネスマンの態度にも誤解を助長させるような態度がございます。つまり、ぐあいが悪くなると、いや、日本の役所の許可がとれないからぐあいが悪いのだというふうに、役所を盾にとってぐあいの悪さをカバーしようというふうな行為もないわけじゃないのです。ですから、そういった面を差し引いてお考えいただきたいのでありますけれども、そういった面を差し引いてお考えいただきますと、やはり縦割り行政機構に障害があるという面は確かにございます。
 幾つかの役所の許可を、例えば車の輸入というふうなことになりますと、これは最近大分改善をされましたけれども、通産省と運輸省と警察というようなことで、いろいろな役所での関門をスルーしなきゃいけない。したがって、あるいは型式証明といいましょうか、新しい製品を向こうでつくり出しましたときにもその問題がありますし、また、排気ガス規制などにつきましても、国によって基準が違いますので、これはどうしても我が国の基準でやらなければならないことでございますけれども、そこらを事前に輸入業者が先方によく説明していないというふうなそういう意味で、そういったものをひっくるめまして、向こうのメーカーからするとアクセスに支障があるという印象を持つのではないだろうか。ですから、一つ一つこれは辛抱強くどこの点でそういう印象を持ったかを解明していきますと、そんなに決定的な障害は現在では私は存在していないような気がしておりますけれども。
#35
○久保田真苗君 そのアクセスは確かに問題なのですね。機会均等ということでやっていけばそれで片がつくのかどうか。私は、アクセスがたとえどうであろうと、日本の黒字が減らない限り問題は残り続けると思うのです。そういたしますと、現在でも既に日本国内ではどういうふうにやっても結局この黒字は解消されないのみか増大するおそれがあるという、こういう予測まで立っておりますのでこれは助からない。結局日本は、自分の首を絞めるようなことになるのじゃないかと懸念しておるのですが、この辺はどういうふうに先をごらんになりますでしょうか。
#36
○参考人(堤清二君) おっしゃるように、実はこの貿易黒字、貿易のインバランスの問題はやはりECあるいはアメリカと我が国との社会経済構造全体の問題でありますので一朝一夕にはなかなか解消しない。相当長期間かかる問題だというふうに心得ております。したがって、長期間かかる問題でございますから、現実的な一つ一つ土台の石を積み上げていくような努力を継続し続ける必要があります。消費者の関心を引くディスプレーあるいはショーも必要ではございますが、ショーばかりではなくて、土台石を積み上げる非常に実際的な努力の継続、五年間、十年間というふうな期間を設定しての努力の継続が、おっしゃるようにどうしても必要になってくるのではないだろうかというふうに私は考えております。
#37
○久保田真苗君 先ほど外国品のイメージの問題を言われたのですが、イメージについて言いますと、伝統的ながらある程度イメージはあるわけです。イタリアの靴とかフランスの香水、衣装といったような感じであるわけです。ところが、閣僚の方たちも集まって外国品輸入のことを話されたときに、どうも舶来品は高くてということがございまして、私なんかもイタリアへ行って靴を買えば、一万五千円程度のものがこちらへ来ると三万、四万、これは妥当なのでしょうか、それともどこに問題があるのでしょうか。
#38
○参考人(堤清二君) これは御指摘のとおりでございまして、妥当だとは思っておりませんが、現状のシステムではやむを得ない結果になっているというふうに考えております。
 と申しますのは、やはりその輸入したものを翻訳するとか、その組成を日本語に訳さないとこれは品質表示法に触れますので、シルクと書いてあっても消費者の方からしかられて、絹と書き直しなさいというような御命令を受けるわけです。そういうものを全部書き直すわけですね、そういった翻訳。それから機械類ですとマニュアルの変更、それから値札つけ、それから在庫の金利、倉敷料、宣伝費、アフターサービスの費用、クレームリスク、保険料、それに運賃等を入れますとどうしてもやはり倍は超してしまう。輸入コストを一〇〇といたしますと、一〇〇から一五〇ぐらいそれに乗せませんと業者としてはなかなか採算がとれていかない。輸入業者にそういう点で残る利益がせいぜい一%か二%ということで、なかなか輸入業者自体会社の機構を拡大強化することができない。ですからそのような値段をつけましても、強力な輸入業者がなかなか出現しないというふうなことに結果としてはなっています。したがって、好ましいとは少しも思っておりませんけれども、現状のシステムではそうなってしまうのかなというのが偽らない私の実感でございます。
#39
○和田教美君 自民党の藤尾政調会長の話を聞きましたら、名古屋のアメリカンフェアというのがございましたね。非常に人気があったのだけれども、結局売れたのはカリフォルニアワインと牛肉だというのです。さっきも久保田さんがおっしゃったように、要するに理由は簡単で、安いからだ。高い物は一向に売れなかったということのようですが、日本の消費者もなかなか最近は利口で、幾ら中曽根総理が輸入品を買ってくれと言っても、高い物じゃだめなのですね。
 そこで、今堤さんがおっしゃったように、そういういろいろな手続的なものからどうしても倍ぐらいにはなるということなのですが、それじゃとても舶来品は大量に売れないと思うのです。その辺の解決策というのは何かございますですか。
#40
○参考人(堤清二君) 御指摘のとおりでございまして、そのために日本から資本輸出をして、向こうの国内で、売れ残りのリスクなどは非常に低い、日本の市場に完全に適応しているものを一緒につくっていくというふうな資本輸出によるジョイントベンチャーの設立とか、あるいはパーツで輸入して日本で完成品にする。その場合に、日本の市場を見ながら少しずつ製品化していくとか、そういう点で向こうで完成してしまったものをただ輸入するというだけではない、生産構造にまで入り込んだ努力が必要だろう。
 あるいは殊に食品のようなものになりますと、例えばオーストラリア製のバターには塩がほとんど入ってない。ところが、日本人は塩のかなり入ったバターになれているというような味覚の差がございます。そういった味覚の差をこれはなかなかちょっとやそっと説明しただけでは、向こうのメーカーの方はおわかりにならない。そこで、そういった例えばオーストラリアの場合ですと、私の知っておりますのは、日本の食品市場を調査する機関をオーストラリアのトップのメーカーと日本の流通資本がジョイントで日本につくりまして、日本で出回っているバター、チーズあるいはソーセージのようなものをオーストラリアへ持ってまいりまして、それで共同研究をしているというふうな、やはりそういうところまでいきませんと、どうしてもフェアをやっても売れるのはワインと牛肉というふうなことになってまうのじゃないか、御指摘のとおりだと思います。
#41
○和田教美君 何といいますか、目に見えない非関税障壁というか、きのうも通産大臣が六十社の幹部を呼ばれて、いろいろ輸入をしてくれということで懇談をされたようですけれども、そのときも出ていた話ですが、要するに、今も自動車のお話がございました。自動車の輸入手続が非常に複雑だというふうなことがございましたけれども、例えばスーパーマーケットなんかでそういうフェアみたいなものをやろうと思ってもなかなか制限があるのですか、そういういろいろな形の輸入品のPRに差し支えのあるような事例というのはかなりあるのでございますか。
#42
○参考人(堤清二君) 現状では、例えば車なんかの場合は非常にやりやすくなってまいりましたけれども、まだ海外のメーカーには昔のイメージが残っているという面もある。ただ、フェアなんかをやります場合に、これは今までの商慣習と抵触する場合は、業界同士でトラブルが起こるというようなことは過去になかったわけではございません。ですから、それは非常に問題でございまして、やっぱり業界自身で自主解決をするのが最も望ましいと思いますけれども、むしろ行政官庁の介入はそういった面で完成品の輸入にふさわしいような介入が今後ふえてくるのではないだろうかと期待をいたしております。
 と申しますのは、やはり今までの全体のシステムが日本の産業を守り、育成するということでずっと百年近く来ておりますので、法律が変わりましても、その運用が必ずしもまだ習熟していないという面はまだ古い体制の遺制として残っている場合があるだろうと思います。したがって、そういう点では基本が変わりましたので、今後徐々に輸入を促進していく方向に行政指導その他が、そういった方向の末端までそういった考え方で浸透していくのを非常に期待を私はしておるわけでございます。
#43
○和田教美君 最後に、内需拡大という問題が盛んに政府・自民党の中でも論じられていろいろな意見が対立しているわけなのですけれども、消費者大衆というのを特に相手にされている堤さんの場合に、内需拡大論ということについてどういう御見解をお持ちなのか。しかも内需拡大の具体的な方法、もしそれが必要だとすれば、それについて何かお知恵があったらお聞かせ願いたいと思います。
#44
○参考人(堤清二君) 私は、全く政治の議論あるいはマクロの議論については不案内な一業者でございますけれども、恐らく、内需が拡大して消費者が幸せに毎日を暮らすことを望んでいない政治家は一人もいらっしゃらないのではないかと素朴な信頼感を持っておりますので、内需拡大には賛成でございます。
#45
○立木洋君 先ほど流通部門としての役割ということから六点御説明いただきましたし、またアクセスの問題では同僚委員からの質問もあったわけです。それと若干関連しますけれども、流通機構やそれから流通のあり方という点で、特にアメリカの場合と日本の場合を比較してどういう点に特別の違いがあるのか。つまり経済摩擦が生じるような問題点があり得るのか、あるいは全くないのか、そこらあたりはどういうふうになっているのでしょうか。
#46
○参考人(堤清二君) 大変本質的な御質問でございまして、私、十分答えられるかどうか自信がございませんが、一つは問屋制度でございます。アメリカの場合には、我が国のような非常にかゆいところまで手の届くという表現が当てはまるような問屋制度はございません、新しい国でございますから。したがって、メーカーの製品をそのままバルクで地方へ送りつけて大型店がそれを販売する。ですから、大型店の総小売業に占めるシェアは今でも我が国より一五、六%アメリカの方がシェアは大きいかと思います。
 それから、流通のあり方でもう一つは、消費者の品質に対する要求が我が国の場合には非常に厳密である。アメリカの場合は、例えばミシンの筋が曲がっていてもちゃんとほころびずに着られればお客さんは納得する。つまりそういう点では日本の消費者の方が長い間いい製品になれているというふうにも言えるかと思います。ですから、いわゆるソフトグッズについては非常に品質上のネックがございます。
 と申しますことは、消費市場の質が少し違うことと、それから大型店の総小売業に占めるシェアがアメリカの方がかなり多いこと。それからその先にホールセーラー、問屋機構が我が国の方が非常に多段階であって緻密にできている。ですから、これがしばしば誤解されまして、日本の流通機構は不可解である、これがノンタリフバリアーのアクセスの障害だというふうに言われる場合もあるわけでありますけれども、この流通機構は歴史的に形成されてきたものでございまして、そこにやっぱり何百万という人が働いているわけでありまして、これはお互いにリスクをヘッジしてバランスを保っているという歴史的な形成物でありますから、これを一朝一夕に壊すことはむしろかえってその結果アクセスを断絶させてしまうよう
な場合もあるわけでございます。そこで、新しい製品などについては、そういう歴史的に形成された流通機構がございませんので、比較的生産者と消費者とを短いパイプでつなぐということは可能でございます。ただ、これにつきましても、時間をかけて辛抱強く短くなるようにやはり努力をしていく必要はあろうかと思います。
#47
○立木洋君 もう一つ。今同僚議員からも質問があって、内需拡大の問題ですが、もちろんそういう御答弁でお答えにくければ結構なのですけれども、内需拡大するというのは、個人消費がやっぱり六割近く占めるわけで、そういう点から見まして、当面内需拡大する場合にはどういうふうなことに特に力を注いだらいいかという点で、何か御意見があれば聞かしていただきたいのですが。
#48
○参考人(堤清二君) 個人消費について、私は今その価値観がちょうど切りかわる境目ぐらいにあるかなという感じがいたしております。と申しますのは、御年配の方は何といっても勤倹貯蓄ということで、それが美徳でございましたから、よく私は例に引くのですけれども、ある自動車メーカーの偉い方が、最近の若い者はけしからぬ、わずか一駅ぐらいでもタクシーに乗る、あんなことでは国民が弱くなる一方だというふうなお話がございました。私は大変不思議に思いまして、でも、それだからあなたのところの車が売れているのじゃないですかと言ったら、大変ちょっと、私が何を言ったのかもおわかりにならなかったというふうなことがありまして、そういった価値観のギャップがやっぱり一つ、今まで御答弁申し上げたほかに、個人消費に適正な理論上の、あるいは観念上の認知をまだ十分に与えられていないというふうな要素として残っているかと私は思います。
 それから、内需の拡大については、やはり先ほど御質問がございましたように、一番物質的な内需という面でおくれておりますのは住まいに関連する需要でありまして、外国のジャーナリストが我が国の住宅をウサギ小屋というふうに表現してひんしゅくを買ったことがございます。ひんしゅくを買ったことがございますが、これはみすぼらしいとか、貧しいのでウサギ小屋と言ったというばかりではなくて、日本の居住者が生活様式の選択とか、そのセンスの面で非常にまだおくれているという、これはやはりカルチャーギャップと言いましょうか、そういったものについて彼らの無理解。そいった彼らの目から見ますと、東京や大阪のような都市は人間の住むところではないというふうな認識を持つようでございまして、一人当たりの緑地面積が東京はロンドンの二十分の一以下だというようなこと、そういったようなことがウサギ小屋発言の背景にあるようでございます。したがって、そういう面で社会体制が今以上に住宅面で変わってまいりますと、内需拡大には非常に大きな効果があると思います。それと同時に、今開発されつつあります新しい先端の技術をそういった内需拡大に、つまり消費者の立場から使いこなす視点がもう一つ新しく出てまいりますと、内需拡大には大きな弾みがつくのではないかというふうに考えております。
#49
○関嘉彦君 重複する質問はすべて省略いたしまして、ただ一つだけ、久保田委員の質問に関連しまして、堤さんお答えになったのですけれども、例えば品物のシルクとあるのを絹にしないといけないという、そういう規則がある、あるいはマニュアルなんかも翻訳しなくちゃいけないというお話があったのですけれども、業者としてそういうふうな規制が必要であるとお考えでしょうか。というのは、日本人、ことに若い人たちであれば、大体一応英語は習っているし、あるいは日本語の表示がなくても、店員が説明してやればそれでわかることである。そういったふうな、何かパターナリスティックといいますか、家父長的な干渉が非常に日本人は多過ぎる。そのことがかえって消費者を甘やかしている、政府に対して甘やかしている、そういう風潮を生んできているのじゃないかと思うのですけれども、そういう規制が果たして必要であるというふうにお考えでしょうか。
#50
○参考人(堤清二君) 大変これはお答えにくい点も含まれている御質問なのですけれども、消費者保護、一般論として非常に大事なことでございますが、ちょうど我が国の消費者の場合にはまだ、戦争前に教育を受けた人と、戦争が終わって十年ぐらいしてから教育を受けた人との間に大変大きなカルチャーギャップがございます。したがって、シルクを絹と書かないといけないのではないかというふうな御意見も一定の存在理由があるわけでございます。しかし、若い、シルクと書いたらそれぐらいわかるだろうという御意見は大変ごもっともでございまして、これは間もなくシルクと書くだけで済むようなことにはなってくるだろうと思いますが、今なかなか全廃しにくいというところがやはり業者としても非常につらい、そういう意味でお答え申し上げにくい点なのでございます。だから一番いいことは、最初から、日本に輸出するものについては海外のメーカーでつくるときに絹という表示を海外のメーカーにつけてもらうようにすれば、その問題は当然なくなってくるわけでございます。やはりそういう意味でも、生産時点にまで流通業者が入り込んで日本向けのものをつくるという努力を今後ミクロ的にもマクロ的にも強化してまいらねばならないと考えております。
#51
○秦豊君 きょうはどうも……。堤さんの前に大使がいらっしゃって、大來さんもいらっしゃったのですけれども、これをずっと私は伺っていて、結局私の中に残った感じというのは、今いろいろやっているわけですね、アクションプログラムをやる、アメリカも見詰めている。しかし、ことしの秋からは中間選挙を目指したそれこそアクションがアメリカのハウスを中心にずっと高まってくる。秋になっても帳じりは余り変わっていないのです。結局、アメリカの中のフラストレーションはむしろ急角度に高まっていく。そうなると、貿易と防衛はリンクしないというふうに切って捨てていますけれども、私は、そうじゃなくて、帰っていくところはやはりそこだと。これは堤さんへの直接の質問じゃなくて、私のとらえ方なのです。
 それで、実業家としての堤さんが冒頭に言われたことは、私もそのとおりだと思うのは、完成品でも半製品でも、いざふやせといったら難しいですよ、だから、日本市場にフィットする商品の将来動向も含めた開発が必要なのだ、それはそのとおりだと思うのですけれども、私は、中曽根さんがデパートに行って、入り口に並んでいたヤンキーガールはいらっしゃった方に全部カリフォルニアオレンジを一個ずつ差し上げた。中曽根さんは三百ドルばかり買い物をしたのだけれども、中にはアメリカ製品が一つもなかった。これは私は、アメリカの媒体では漫画になっているのですね。私はむしろ逆にブラックユーモアだと思っているのです。あれは秘書官でもだれでもいいから無理して、総理、これはアメリカ製品ですよと、一品か二品それをアップで撮らして、これこのとおりというふうなショーアップ効果をねらった方がよかったので、あの人にしては案外ラフなのかなと思ったのだけれども、それはいいです。
 一つだけ質問をさせていただきたいのですが、これは西武グループの総帥としての実業家堤さんじゃなくて、やはり詩や文学を自分の奥深いところで御一緒していらっしゃる堤さん、そういう面なのですけれども、大來さんのリポートを拝見すると、一番最後のところにこんなことが書いてあるのです。一層の国際化を推進するに当たっては国民的なコンセンサスの形成が不可欠である、そのためには国民のマインドの国際化を図る必要性がある、それを述べて結びにしているのですね。私自身も第三の黒船などという意識よりは能動的にとらえるべきだし、東京の郊外に住んでいる平均的なコンシューマーの感覚からいうと能動的にとらえるという論者なのですけれども、最後に堤さんの、今の国民のマインドの国際化を図る、これは短期対策じゃないですね。中長期対策ですけれども、これは意識革命と思うのですが、これについてはどんなことを考えていらっしゃいますか。
#52
○参考人(堤清二君) これも大変難しい御質問でございますが、私はその前に緊急的な措置と長期的な措置とやはり両方とも必要だろうというふうに思っております。ですから我々の側に緊急的な措置をとってしまいますと、もうそれで長期的な措置の方がややおろそかになるというケースが今までいろいろございますので、私はきょうはやや長期的な措置の方に力点を置いて意見を述べさせていただいたわけです。
 その長期的な措置の一つに、国民のマインドの国際化という問題があろうかと思います。何といっても我々が日常外国の人、違った文化体系の人と接触する機会は、ヨーロッパの人あるいはアメリカの人が違った文化体系の人と接触する機会に比べれば、現在でも非常に少ないというところがございまして、それがやはりマインドの国際化を唱えてもなかなか国際化していかない大きな我々自身のハンディキャップだろう。本当の国際化というのは、日常生活をしていく上で違った文化体系の人を理解しなければならない必要性を感じるということが国際化にとって非常に大事な条件です。ですから、日本で国際化といいますと、一つは大体ヨーロッパとアメリカのことを学ぶという姿勢での国際化が多うございます。しかし、ヨーロッパの人を例にとれば、隣国、近隣諸国のことを理解するのが国際感覚というふうに、これは当然のことに思われているわけです。そこで、国際化ということの言葉の中身も、隣国のことを理解する態度を持つ人はやはりアメリカのことも理解しやすい態度を持てるわけでございまして、国際化問題、これがやはり非常に多くの面でパーセプションギャップを広げている我々の方の弱みだろうと思います。
 ですから、そういう点では貿易、長期的な構造という点から申し上げますと、やはりいろいろな文化交流だとかいうふうなことも貿易摩擦解消になくてはならない一つでございます。海外に行きました場合に一番恥ずかしい思いをいたしますのは、アメリカでも、イギリスでも、フランスでも、ドイツでも、例えば東南アジアの国にいろいろと経済的な関係を結ぶときに、その国へ必ず文化的な投資が並行して行われている。ところが、我が国の場合には、経済人だけが行ってしまうというふうなところもやはり非常な摩擦を大きくしている我々の方のハンディキャップではないだろうか。ですから、そういう点で長期的な貿易摩擦の解消という点になりますと、単に経済という面ばかりではなくて、文化、社会総体の中でひとつ諸先生方が御討議、御指導いただきますことを、本当にこういう機会を利用してお願いを申し上げたいと思っております。
#53
○委員長(植木光教君) 以上で質疑は終わりました。
 参考人にお礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、お忙しい中を本委員会に御出席願い、貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。
 ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本委員会の調査の参考にいたしたいと存じます。ありがとうございました。
    ─────────────
#54
○委員長(植木光教君) この際、派遣委員の報告に関する件についてお諮りいたします。
 先般、当委員会が行いました外交・総合安全保障に関する実情調査のための委員派遣については、報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○委員長(植木光教君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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