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1984/04/12 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 国民生活・経済に関する調査特別委員会 第4号
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1984/04/12 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 国民生活・経済に関する調査特別委員会 第4号

#1
第102回国会 国民生活・経済に関する調査特別委員会 第4号
昭和六十年四月十二日(金曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         対馬 孝且君
    理 事
                岡部 三郎君
                梶木 又三君
                亀長 友義君
                糸久八重子君
                刈田 貞子君
                橋本  敦君
    委 員
                岩上 二郎君
                大島 友治君
                海江田鶴造君
                坂野 重信君
                杉山 令肇君
                関口 恵造君
                長谷川 信君
                松岡満寿男君
                水谷  力君
                最上  進君
                山内 一郎君
                竹田 四郎君
                山田  譲君
                高木健太郎君
                矢原 秀男君
                吉川 春子君
                抜山 映子君
                青木  茂君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        桐澤  猛君
   参考人
       前日本銀行総裁  前川 春雄君
       東洋大学教授   新田 俊三君
       東京大学教授   村上 泰亮君
       生活評論家    藤原 房子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○国民生活・経済に関する調査
 (派遣委員の報告)
 (国民生活・経済の長期的課題について)
    ─────────────
#2
○委員長(対馬孝且君) ただいまから国民生活・経済に関する調査特別委員会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国民生活・経済に関する調査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(対馬孝且君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(対馬孝且君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(対馬孝且君) 国民生活・経済に関する調査を議題といたします。
 まず、先般当委員会が三班に分かれて行いました委員派遣につきまして、各班の派遣委員から報告を聴取いたします。
 まず、第一班の御報告を願います。梶木君。
#6
○梶木又三君 第一班は、長谷川委員、山田委員、矢原委員、吉川委員と私、梶木の五名で、去る二月七日から九日までの三日間にわたり、日本経済・国民生活の長期的動向、とりわけ技術革新と産業・雇用に関する問題について実情を調査するため、岩手県及び宮城県に行ってまいりました。
 岩手県においては、岩手東芝エレクトロニクス株式会社で超LSIの生産状況を視察した後、県庁で県の経済等の概況説明を聴取いたしました。
 また、宮城県においては、県庁で宮城県及び仙台通産局から、それぞれの所管事項に関する概況説明を聴取した後、東北金属工業株式会社で新素材産業の現状を、財団法人半導体研究振興会で先端技術分野における産学協同の実情を視察してまいりました。
 以下、調査結果の概要を、技術革新と産業・雇用の問題を中心に御報告申し上げます。
 まず、東北地域経済の最近の動向について申し上げます。
 二度にわたるオイルショックを通じて日本経済の成長が長期にわたって鈍化している中で、最近の技術革新の急速な進展とともに、高度先端技術の加工組み立て産業が著しい発展を遂げており、これら産業群は成長率が非常に高く、今後の我が国の経済成長を支えていくものと考えられております。
 そこで、全国各地域において地域産業振興をこれらの新しい先端技術産業分野に期待する傾向が強まっており、東北地域においても地域経済の発展を図るため、先端技術産業の積極的導入と地元中小企業の技術先端化による内発的な先端技術産業の形成が強く要請されているところであります。
 東北地域においては、近年、東北自動車道の整備、東北新幹線の開通、各空港のジェット化など高速交通体系が急速に整備され、また、むつ小川原大規模開発を初めとして地域振興整備公団が造成分譲中の中核工業団地が五カ所に上るほか、県独自の工業団地も数多く、工業用地・用水の整備等も急速な進展を見せております。
 こうした産業基盤の整備とともに、昭和五十年代の中ごろから電気機械、精密機械など先端型業種の工場立地が相次ぎ、これら加工組み立て業種を中心に鉱工業生産活動も高水準に推移、また工場立地等による新規求人数の増加など雇用面での改善も進んでおります。
 東北地域の中小企業は事業所数で域内全企業の九九・八%、従業者数で九一・〇%と地域経済に大きな比重を占めておりますが、先端技術産業の域内立地は、これら地元中小企業に対する下請発注の増加及び技術指導、技術移転の二点で期待されるところであります。しかしながら、現在のところ地元中小企業の技術力不足のため、地元への発注率はコンデンサー、IC、OA機器等において約一割程度にとどまっており、東北地域経済の発展にとって地元中小企業の技術力の向上が今後の課題となっております。
 次に、岩手県における先端技術産業の動向等について申し上げます。
 技術革新の進展とともに我が国の成長産業分野が、これまでの重化学工業から先端技術型の加工組み立て工業へ移行し、工業立地の形態も臨海型から内陸型へ変化しておりますが、臨海型工業に不向きであった岩手県においても、高速交通網の整備が進むとともに大企業の立地等による雇用機会の拡大が進むなど、産業経済活動が活発化しております。
 岩手県においては、最近の技術革新の急速な進展に対応して先端技術産業と地元企業との連携を強化するとともに、地域に集積された技術をもとに新たな技術の開発を促進し、産業技術の高度化を図ることが肝要であるとして、地元企業の振興
と企業誘致に重点を置いた施策の展開を図っております。
 地元企業の振興のためには、経営者の意識改革、技術力の向上、資金力の強化が重要であるとして各般にわたる施策を積極的に推進しております。
 また企業誘致については、県内には既に岩手東芝エレクトロニクス等の半導体工業を初めとして数多くの大企業が立地しておりますが、これら誘致企業は事業所数では約四%ながら従業者数では約三〇%、工業出荷額では約四〇%と県内経済に大きな役割を果たしており、今後とも企業誘致活動を積極的に推進していくこととしております。
 岩手東芝エレクトロニクスも岩手県と北上市の熱心な誘致運動により、我が国屈指の半導体メーカーである東芝が北上工業団地に進出したもので、このような超LSI工場の県内立地は雇用の場を広げ、県内経済に大きな波及効果をもたらすものと期待されております。
 これら優良大企業の県内立地は、その周辺に部品供給等の関連企業の立地を促進するとともに地元中小企業にもインパクトを与え、地元中小企業の中には、これら大企業等の外注に支えられながら技術高度化を図っている企業群や独自の製品開発を進めている企業群もあり、次第に先端技術産業の集積が高まってきております。
 このように技術革新の進展は岩手県の産業構造の高度化に貢献しつつありますが、県内中小企業全体として見ると、先端技術等への取り組み状況はまだ十分とは言えず、特に研究者、技術者等の人材不足、情報収集能力等の面で今後の技術革新の進展への対応に大きな課題を抱えているということでありました。
 次に、宮城県における先端技術産業の動向等について申し上げます。
 宮城県における先端技術関連産業の立地件数は、昭和五十年から五十七年までの間に六十四件と全国の千六十一件の実に六%を占めており、県内の先端技術産業の生成、展開に大きな刺激となっております。
 県内の中小企業で先端技術産業分野の製品を生産しているのは全体の一〇%、新たに先端技術産業分野へ参入したいとする企業は一六%と県内企業の技術先端化への取り組みは活発であります。
 宮城県においては、県内中小企業の技術力の向上を実現するためには、企業自身における自主的な研究開発活動への取り組みとともに、外部企業、大学、公設試験研究機関などとの交流を深め、技術導入、共同研究などを促進して技術力の向上を図っていくという二面の活動が必要であるとして、先端技術産業の導入、集積を高めるため企業誘致体制を一層強化するとともに、県内中小企業の技術の先端化・高度化による内発的な先端技術産業の育成と振興を図るため、大学等との緊密な連携のもとに、工業技術センター内に先端技術相談コーナーを開設し、産業の技術ニーズと大学の技術シーズの交流を推進し、産学協同の機運の醸成を促進するハイテクカウンセリング事業のほか、産学コミュニケーションプラザ事業、産学協同技術研究会館運営事業等の施策を推進しております。
 今回視察いたしました東北金属工業及び半導体研究振興会も産学連携を軸に創造的技術開発を追求し、大きな成果を上げております。東北金属工業は電子材料の分野で数多くの通信機器用磁性材料を開発、我が国の通信技術の発展に貢献しておりますが、さらに県の先端技術関係懇談会の構成メンバーとして東北大学との密接な連携のもとに、現在のエレクトロニクス産業の先端的なニーズである新素材の研究開発にも力を注ぎ着実に成果を上げております。また、半導体研究振興会は半導体電子工学の分野で独創的研究を育成発展させることを目的とし、特に大学の基礎研究と産業界の開発研究との間の橋渡しとしてのパイオニア的役割を担い、我が国科学技術界の弱点と取り組んで異色ある活動をしております。
 なお、技術革新と雇用の問題については、県内中小企業においても産業用ロボット等高度自動化機械によるFA化が進み、その省力効果による労働問題全般への影響が懸念されるところでありますが、県内中小企業で高度自動化機械を導入している事業所は約三〇%、導入事業所のうち、導入により部分的に人員過剰となり事業所全体として削減したとするものは約四%と少なく、その内容についても解雇ではなく、臨時工、パートタイマー、新規採用予定者の不補充もしくは採用の手控え等という形で行ったとしており、現在までのところ雇用面で人員削減等の問題が表面化するには至っていないということでありました。
 以上で報告を終わります。
#7
○委員長(対馬孝且君) ありがとうございました。
 次に、第二班の御報告を願います。糸久君。
#8
○糸久八重子君 第二班は、去る二月六日から八日までの三日間にわたり、岡部理事、橋本理事、高木委員、抜山委員、青木委員と私、糸久の六名で、本委員会及び高齢化社会の諸問題について滋賀県、三重県における概要を聴取するとともに、これと関連して滋賀県立むれやま荘、科研製薬株式会社滋賀工場、滋賀県立成人病センター、守山中高年齢労働者福祉センターを、また、三重県立美術館、小山田特別養護老人ホーム及び東芝三重工場を視察してまいりました。
 以下、調査項目のうち主なる概要について御報告いたします。
 まず、滋賀県における人口の推移と福祉、保健医療対策について申し上げます。
 県人口に占める六十五歳以上の高齢者の割合は、昭和五十五年で一〇%と全国平均九%を若干上回っておりますが、市町村別で見ますと、湖南地域は大阪、京都からの弱年労働者の流入もあり、七%台の地域がある一方、湖北地域においては一五%を超えている地域も見られるなど、地域差があります。したがって、今後、それぞれの地域に適した多様な対策が必要になってきております。
 すなわち、県は高齢者が長生きを喜ぶことができ、潤いと活力のある豊かな老後を築くことができることを基本目標として老人のクラブ活動、大学校の開校、ミニ牧場等の対策を積極的に推進しております。
 また、これとあわせて高齢者に対する健康保持の増進から疾病の予防、治療、リハビリテーションまでの一貫したシステムづくりを進めるとともに、寝たきり老人になったり、痴呆になった場合には、給食、入浴サービス及び家庭奉仕員派遣事業等の在宅対策を行うほか、施設対策として短期保護事業、特別養護老人ホーム等の増設、拡充を積極的に推進しております。
 なお、要援護老人を在宅で支えることのできる体制確立のため、積極的な諸制度の整備等について県から要望がありました。
 次に、高齢者の雇用情勢及び雇用対策について申し上げます。
 有効求人倍率で雇用情勢を見ると、五十五歳以上の高齢者の雇用状況は〇・一三と極めて低い水準にあり、高齢者の就職は困難な状況に置かれています。このような雇用情勢のもとで県は定年制延長の計画的推進、中高年齢者の就業訓練、シルバー人材センターの育成等の雇用対策を実施しております。
 次に、私どもが視察いたしました施設等について申し上げます。
 まず、県立むれやま荘は、肢体不自由者更生施設と重度身体障害者更生援護施設とがあり、中、軽度の肢体不自由者に対して一年間で社会復帰を目指した情報処理・印刷、事務、基礎作業等を中心とした更生訓練を行い、目覚ましい成果を上げております。重度の肢体不自由者に対しては自助動作の機能回復のために治療、訓練を行っております。
 次に、科研製薬株式会社滋賀工場は、医薬品の総合工場で、最近では高齢化に伴い成人病の医薬品の需要も増大してきており、新しい医薬品の開発、研究及び生産工程の自動化に力を入れておりました。
 次に、県立成人病センターは、成人病に関する予防及び調査研究を含む総合的なセンターとして設立して以来、施設、設備の充実に努めたこともあり、がん集団及び子宮がん検診による早期発見から高度技術を駆使した治療に至るまで一貫した医療を行い、目覚ましい成果を上げているとのことでした。ただ、需要に応ずるだけの看護婦の数の不足等の問題を指摘されました。
 次に、サンライフ守山中高年齢労働者福祉センターは、中高年齢労働者のための雇用の促進と福祉の向上を図るため、雇用促進事業団によって建設され、現在、守山市が管理、運営しており、職業情報の提供、職業相談、職業講習を行うとともに、労働者の健康保持と体力づくり、教養文化のための事業や施設の提供を行っています。
 次に、三重県における人口の推移と福祉、保健医療対策について申し上げます。
 県人口に占める六十五歳以上の高齢者の割合は五十五年で一一%と全国平均に比べて十年早いテンポで進んでおります。このため県においては高齢者福祉対策総合推進会議を設け、長期的、統合的視点で高齢化対策に取り組んでおります。
 本県の特徴としては、県が老人クラブの育成に当たったこともあり、高齢者のクラブ活動が盛んであることです。六十歳以上の人口の六一%以上が参加しており、その加入率は全国高位にランクされております。
 本県は「健康で明るい社会をつくる」ことを県政の基本とし、このため、健康の日の制定、健康づくり県民大会、県民健康大学等を設けることにより高齢者の健康増進を図るとともに、成人病、がん等の予防、早期発見のため対策を講じております。
 特に痴呆性老人問題に関して知事から、三重県が高齢者を受け入れやすい条件を持つ農山漁村や農林水産業、地場産業の存在などもあって痴呆性老人の出現率が都市と比べて極めて低いとの説明がありました。県としても痴呆老人特別設備改善事業、老人ホームへの精神科医の配置等を行っているとのことであります。
 次に、高齢者の雇用情勢及び雇用対策について申し上げます。
 高齢者の雇用情勢は滋賀県と同様に厳しく、このため、県においては六十歳定年の普及を目指して事業主に対する指導に努めるとともに、定年延長奨励金の活用を図るほか、シルバー人材センターの育成強化及び高齢者の就業能力再開発の訓練等を行っております。
 次に、私どもが視察いたしました施設等について申し上げます。
 まず、第二小山田特別養護老人ホームは、五十六年に全国で初めて建設された痴呆性老人専門の看護及び介護を行う専門施設であり、現在九十名が入居しており、痴呆性老人に対して、軽重、精神症状、問題行動の多少により等質集団としてのグループ分けを行い、集団処遇を行っております。施設の担当者の説明によれば、この結果、痴呆性老人同士がなじみになり、情緒的に安定し、人間的な側面を見せるようになり、問題行動が著しく改善されたとのことであります。
 また、特別養護老人ホームに隣接して病院施設が存在し、高齢者が疾病にかかった場合、何の不安も抱くことなく治療や機能回復訓練が受けることができる医療と福祉のコンビネーションシステムが確立しております。
 最後に、東芝三重工場は、電動機、回路基板、ロボット等を生産しており、主要製品も技術革新の影響を受けてハイテク製品に急速に変わってきております。なお、生産工程においても既にNC工作機、ロボットが導入されており、さらに本年四月からは完全自動化された回路基板工場が稼働するとのことでした。また高齢者対策としては六十歳定年を実施しており、退職後も本人の希望により関連会社への再就職などを図っているとのことでした。
 以上、御報告申し上げます。
 なお、調査の際、提出されました要望事項の会議録末尾掲載方を委員長においてお取り計らいいただきますようお願い申し上げます。
#9
○委員長(対馬孝且君) どうもありがとうございました。
 次に、第三班の御報告を願います。最上君。
#10
○最上進君 第三班は、去る二月七日から九日まで三日間にわたりまして、刈田理事、松岡、水谷、竹田の各委員と小委員長の代理といたしまして私、最上の五名で、本委員会及び生活条件整備、特にまちづくりの諸問題について京都、大阪府等における概況を聴取するとともに、これと関連いたしまして西陣織会館、伝統的建造物保存地区、洛西ニュータウン、関西文化学術研究都市建設予定地、大阪城ホール及び大阪ビジネスパーク等の整備状況などの実情を調査してまいりました。
 以下、調査項目のうち、主なる概要について御報告をいたします。
 まず、京都府における第三次総合開発計画について申し上げます。
 本計画は、今後の経済社会情勢の変化に対応して二十一世紀を展望しつつ、昭和六十五年までの期間に活力とうるおいのある、あすの京都を目指そうとするものであります。このため、当面の諸課題のうち、歴史、文化を生かした快適で住みよい生活環境、健康で安定した生きがいのある社会、時代の変化に応じた活力ある地域及び創造にあふれる心豊かな人間形成を実現するための施策を行政の基本といたしております。
 また、計画の作成に際しては、府民の総意に基づく共通の目標として地域整備と開発の方向を明らかにした上で各種事業、施策を採用するとともに、国等の事業についてはその着実な推進を要望しているほか、行財政の効果的な運用と民間活力の活用等に重点を置いております。
 さらに、総合開発の背景となります広域的計画課題として、道路、鉄道網等の整備などの主要プロジェクトをおのおの推進することとし、このための進行管理計画の策定、あるいは調査検討を進めているとのことであります。
 一方、京都市においても二十一世紀へ向けての市民のまちづくりの指針となるべき基本構想をまとめるとともに、これに基づき市政の各般における施策を具体化するための計画を策定し、その実現に努めております。
 なお、まちづくり構想の中で、市の周辺山ろく部に秩序整然とした大規模住宅団地が創出された例として、洛西ニュータウンについて申しますと、同ニュータウンは、乱開発の防止と公的資金による施策住宅の大量供給を基本とし、将来、桂川右岸地域における中心的役割を担い得るような町として西京区大枝・大原野地区の一部に四十七年に着工、五十八年に概成をいたしております。しかしながら、なお、今後周辺の土地利用との連携、道路鉄道等交通アクセスの拡充など解決すべき課題が残されているものと推察されました。
 また、これとは対照的に古い町並み保存の例といたしまして、嵯峨鳥居本地区約二・六ヘクタールにおける伝統的建造物群の修理、修景等の保存状況のほか、地場産業としての西陣織の保護、育成等に努めている西陣織会館をおのおの調査してまいりました。
 次に、関西文化学術研究都市構想について申し上げます。
 この構想は、国際社会に貢献をする学術研究の新しい展開を図るため、京都、大阪、奈良三府県にまたがる広大な京阪奈丘陵のうち、二千五百ヘクタールを開発対象区域といたしまして、文化・学術・研究振興、地域整備、産業振興及び新しい都市づくりという四つの目的を同時に実現しようとするものであります。
 既に、関係府県におきましても五十三年以降におのおの基本構想ないし基本計画案が発表されておりまして、また、関係省庁によります京阪奈地域総合整備計画等が進められております。
 今回視察をいたしました京都府域に係る基本計画案について申しますと、木津川左岸に広がる丘陵地に、既成市街地との均衡を図りつつ魅力ある都市環境を整備しようとするものであります。
 具体的には、おおむね七十年ころまでに第二国
立国会図書館、国立総合芸術センター及び国際高等研究所等を誘致するとともに、道路鉄道等交通網、河川、上下水道等の住環境の整備に努めることとするが、当面、開発区域の造成は、住宅・都市整備公団並びに民間デベロッパーの手により着工するとのことであります。
 次に、大阪府における総合開発計画について申し上げます。
 本計画は、大阪における人口、産業の集中による過密問題、さらには人口流出、経済活動の停滞など地域の活力低下などに対応いたしまして、七十五年を見通しつつ、おおむね六十五年を目途に新たな発展のための官民諸活動の指針を提示したものであります。
 このため、定住ないし国際化時代にふさわしい大阪づくりを基本理念といたしまして、安全で快適な人間環境の創造、人間連携に立つ福祉社会の形成、個性と創造性を伸ばす文化の推進、豊かな生活を保障する活力ある産業社会づくり及び関西国際空港建設の具体化など、内外に開かれた大都市圏の形成に努めるとともに、近畿各地域の有する歴史・文化・風土等の多様性を十分に生かしつつ、我が国の国土構造を柔軟な多元構造に転換していこうとするものであります。
 したがいまして、これらの目標を実現するため、国、自治体の連携強化及び民間活力の活用と府民参加の計画推進に努めるとともに、効率的、機動的な行財政システムを確立することといたしております。
 また、大阪市においても、歴史を振り返って二十一世紀への展望を開くとともに、市民に愛され、市民が誇りとする国際都市の実現を目指して積極的に所要の施策を推進いたしております。
 さらに、府の総合開発計画の推進等を側面から支援するため、二十一世紀にふさわしい世界都市大阪を目指して、官民産業界により構成された大阪21世紀協会を設立するとともに、調査、研究、提言等を行っております。
 最後に、大阪ビジネスパークいわゆるOBPの整備状況について申し上げます。
 今回視察いたしましたOBPは、大阪城の北、官庁街、京橋ターミナルに近接をした約二十六ヘクタールの用地に、民間企業から構成されました開発協議会等により、新しい都市の創造を目指して業務、商業、文化情報サービスの三機能を備えた調和と活動のまちづくりを進めております。
 なお、今回の視察を通じまして、都市再開発事業を進めるために際しての民間活力の活用は、公共性と市場経済原理をどのように調和させていくかということについての認識を深めることができました。
 以上、御報告を申し上げます。
#11
○委員長(対馬孝且君) ありがとうございました。
 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 なお、ただいま第二班の糸久君の報告の中にありました要望事項等につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○委員長(対馬孝且君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
    ─────────────
#13
○委員長(対馬孝且君) 次に、国民生活・経済の長期的課題について、参考人から意見を聴取をいたします。
 本日は、お手元に配付の参考人の名簿のとおり、前日本銀行総裁前川春雄君、東洋大学教授新田俊三君、東京大学教授村上泰亮君及び生活評論家藤原房子君の四名の方々に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。本日は、国民生活・経済の長期的課題につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 また、議事の進め方といたしましては、まず各参考人の方々からそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後二時間程度委員の方々の御質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、まず前川参考人にお願いをいたしたいと存じます。前川参考人。
#14
○参考人(前川春雄君) せっかくの機会でございまするので、我が国の経済運営につきまして日ごろ考えておりますことを申し述べたいと存じます。
 先進主要国におきましては、過去数年間、国内経済運営の基本目標といたしまして、インフレなき持続的成長という共通のスローガンを掲げてその実現に取り組んでまいりました。これはかつての成長政策が世界的に激しいインフレを誘発し、石油価格の高騰あるいはそれに続く長い不況をもたらしたことへの深い反省に基づいております。一九六〇年から七〇年代のアメリカなどでとられました政策は、経済成長や雇用の増加を追求する余り、少々の物価上昇には目をつぶるという、インフレに甚だ寛容な政策でありました。しかし、インフレーションを適度にコントロールするといったことは実際問題として不可能でありまして、インフレ心理が広がってまいりまするにつれまして、賃金等には物価スライド条項が織り込まれるとか、それが次の物価上昇の要因になる。また物価の上昇率が次第に加速していくような状況下にありましては、合理的な投資行動が困難となりまするので、それにかわってむしろ投機的な行動が増加する傾向がございます。当然そういうことになりますると、経済の基盤が脆弱化していくわけであります。アメリカの場合には約二十年間にわたる成長優先の政策の結果、次第にそうした状況に陥っていきまして、一九七九年に始まりまする厳しい金融引き締めによりまして、ようやくこうした悪循環が断ち切られたのでありました。今日、アメリカの物価上昇率は三%台まで改善しておりまするが、金融当局ではこれをなお極めて不十分であるということで、インフレ再燃への警戒感を解いておりません。これも以上のような経験を踏まえたものであろうと思います。
 翻って、我が国でありまするが、第一次の石油危機が発生いたしました当時は、たまたま国内景気が過熱しておりましたこともありまして、激しいインフレーションに見舞われたことはなお記憶に新しいところであります。このときの教訓を生かしまして、第二次の石油危機のときには早目に輸入インフレを克服するということに成功したわけでありまするが、これがその後の世界同時不況局面にありましても、我が国景気の落ち込みを諸外国に比べてむしろマイルドなものにとどめることに貢献したと思っております。今日、設備投資が活況を呈しておりまするが、これも技術革新の花が開いたということに加えまして、やはり日本経済の安定的な拡大に対する企業の信認があればこそできたことであろうと思います。また、個人であるとか家計にとりましても、物価の安定は生活安定のよりどころでありましょう。こうした意味におきまして、物価の安定は経済の健全な発展にとって最も重要な要素であって、常に経済運営の基本に据えられなければならないと思っております。
 以上述べてまいりましたようなインフレなき成長という目標につきましては、近年の先進国首脳会議の場でも繰り返し確認され、その方向に向けて各国の政策を収れんしていくという申し合わせが行われております。実際、世界経済は一昨年来長期にわたる不況から抜け出し、物価安定下における景気拡大という望ましい状況にありまするが、他方、主要国間における貿易収支、経常収支の不均衡、特に米国の赤字と我が国の黒子が拡大をたどっております。現下の大きな問題になっておることは御承知のとおりであります。貿易立国を旨といたしまする我が国にとりまして、我が国の黒字自体が各国の保護主義への傾斜を誘発するということは極めて不都合なことでございまして、国際経済社会におきまして我が国の孤立化を
防ぐことは非常に重要な課題であります。
 貿易面で不均衡が生じる要因につきましては、極めて多岐にわたっております。各国の経済情勢であるとか、あるいは経済構造自体が大きな背景であることは疑いを入れません。短期的には、各国間の景気局面の違いであるとか、これが貿易動向に影響することは当然でありまして、また、やや中期的には、価格あるいは品質面での競争力、あるいは世界の需要構造に対する生産面での適応力といったようなことが重要な要素であります。最近のように技術水準が高度化してまいりますると、人的あるいは物的、知識面を合わせました総合的な生産力が大きく物を言うようになっております。最近、米国は欧州諸国に対しまして供給面での硬直性を是正すべしという批判を行っておりまするが、これもそうした認識によるものであろうと思います。
 ところで、これらの実体的な要因で貿易収支の不均衡が生じましたときに、為替の変動相場制のもとでは為替相場がこの不均衡を調整するように動くことが期待されるわけであります。もちろん、為替相場の調整作用だけでは不均衡是正に限界がありまするが、時間をかければ確実に効果を期待できるはずであります。しかし、現実にはドルとその他通貨との間の関係は、ここ数年来貿易収支動向とはほとんど無関係に変動してまいりました。我が国のように高い技術水準を持ちつつ需要構造の変化に柔軟に適応し、かつ省エネルギー体質を徹底してつくり上げてまいりました国にとりましては、為替相場がこれを反映するように動かない場合には、どうしても対外不均衡の拡大が避けられません。これが行き過ぎますると、世界経済の安定にとって問題が生じてしまうわけであります。
 振り返ってみますると、アメリカのドルが米国とその他の国のインフレ率格差、あるいは経常収支のポジションを反映するように動かなくなっておりまするのは、おおむね一九八〇年ごろからのことであります。これは、そのころから世界的に米国への資本の流入が大きくなり、これが為替相場に与える影響が著しく強まってきたからであります。
 なぜアメリカへの資本流入が持続しているのか、これにつきましては、最近では米国の経済成長力が大きな要因として指摘されております。この側面は無視できません。特にここ一、二年のように、インフレがおおむね鎮静した中でほかの国より速い成長を遂げるという状況は、アメリカの経済のいわゆるファンダメンタルズが改善したと見ることもできるわけであります。ただ、それと同時に、アメリカの金利、特に長期金利が極めて高水準にあり、これが米国の金融資産に対する強力な投資誘因になっておることも見逃すわけにはいかないと思います。我が国の長期資本収支の統計を見ましても、一九八四年中、昨年でございまするが、における本邦からの対外投資のうち債券投資のウエートが極めて高いわけでありまして、これは主としてアメリカの高金利によるものと言うことができると思います。
 アメリカで二けたの高金利が長期間続くもとで、どのようにして高い成長が可能になっておるのか、これはいまだ十分には解明されておらない問題でありまするが、やはり巨額の財政赤字に由来するところが大きいように思われます。年間二千億ドルにも及ぶアメリカの財政赤字は、民間経済活動を刺激する効果と相まって投資超過の状態、すなわち経常収支の大幅赤字をつくり出しておるわけでありまして、これは通常ドル相場を下落させるはずでありまするけれども、同じ財政赤字が金融資本市場において強い金利の上昇圧力を生み、世界じゅうから資本を吸引することを通じてドルの全面高をもたらしておるわけであります。このドル高がインフレの鎮静を促す大きな力となり、それがアメリカの経済への信認回復に寄与するという一種の好循環が生じておるわけであります。
 問題は、このようなプロセスがいつまでも続くとは思われないことでありまして、アメリカの連邦準備制度のボルカー議長が繰り返し警告しておるのもこの点でありまして、巨額の財政赤字を抱えたままではいずれ安定成長の持続が困難になり、米国経済への信認の低下とドルの大幅な下落が生じかねないということを訴えておるわけであります。したがって、望ましいことは、アメリカの財政赤字が是正され、金利の低下に見合ってドル高が是正されるという展開でありまするが、財政政策の転換がない場合にはドル高の修正がいつから起こるかは何とも言えないわけでありまして、その間の政策運営が我が国にとっても改めて課題になるわけであります。
 以上述べましたようなドルの全面高のもとで、我が国は経常収支の大幅黒字、つまり国内的には貯蓄超過の状態にあるわけであります。これが諸外国との経済摩擦を激化させていることを見ますれば、より内外需の均衡のとれた状態が望ましいことは言うまでもありません。世界貿易の拡大均衡を図る見地からいえば、特に輸入の増大によって経常黒字の縮小を目指すことが望ましく、これは先進諸国のみならず、日本と貿易関係にある途上国にとっても一層切実な要望であろうと思われます。
 こうした観点から、例えば拡張的な財政政策の採用によって国内の貯蓄超過を吸収し、対外黒字を減少させるといった考えが内外において提起されておるわけであります。しかし、今日財政面でそうした政策をとることにつきましては、コストと効果を十分慎重に検討しなければならないというふうに思います。財政政策によって経常黒字をどの程度減少させることができるかは、そのときの経済情勢いかんによることで、明確には予測しがたいわけでありまするが、現在の貿易構造のもとでは大きな効果を期待することは無理であろうと思います。一方、我が国は目下財政再建に向けて最大限の努力を傾けている最中でありまして、これを基本的に修正するような政策転換はぜひとも避けるべきであろうと思います。財政の再建は、我が国経済の健全な発展を図る上で、それ自体重要な課題でありまするが、対外黒字減らしを目的に拡張的な財政政策に踏み切るようなことがあれば、為替市場におきましてはむしろ円相場にかえって悪い影響が及ばないとも限らないと思います。
 一方、金融政策による内需の喚起につきましては、仮に金利を引き下げるならば、それは何がしか企業投資の増大に寄与するであろうと思います。物価の現在の状況のもとでは、金利は引き下げられれば引き下げた方がいいというふうに思うわけであります。しかし、海外の金利が低下しない限り、内外金利差の拡大によって円相場を軟化させ、対外黒字をさらに増大させるというリスクがあるわけであります。しかも、円相場への影響は即時にあらわれまするけれども、一般に内需拡大の効果はかなりおくれてあらわれることに留意する必要があろうと思います。
 要するに、内需の増大とそれを通じる対外黒字の縮小は、もとより望ましいことではありまするけれども、通常のマクロ経済政策の選択の幅は、現在のところ極めて限られていると言わざるを得ないと思います。私は最近、対外経済問題諮問委員会の一員として報告書の作成に携わった者でありまするけれども、そこでの結論も、当面の内需拡大の方策といたしましては、通常の財政金融政策のほかにある四項目、すなわち、一つは公的規制の緩和、第二は週休二日制の普及と労働時間の短縮、第三に公共事業分野への民間活力の導入、第四に貯蓄・消費・投資の相互のバランスを図る観点からの税制の見直し、この四つに取り組むのが適当であるというのが報告の内容でございます。
 それでは発想を変えまして、経常収支の黒字に見合って資本を輸出している側面に着目しまして、これを貯蓄不足の国に我が国が資本を供給している状態として積極的に評価するという考え方はどうであろうかという問題があります。確かに資本の輸出はそのような側面を持っておりまするし、かつてイギリスあるいはアメリカ両国が世界
経済の中でそうした役割を果たしたのも事実でありまするが、今日のように各国が雇用の確保、増大に鋭敏になっておりまするときに、経常収支において大きな黒字を記録しながら資本輸出を行うという経済の形が諸外国からどのように評価されるのか、それは疑問が残るところであろうと思います。この点は、かつてOPEC諸国が膨大な石油収入を先進国向けのさまざまな投資に振り向けましたときに、どのように受けとめられたかを想起すれば足りるであろうと思います。諮問委員会の報告にも、資本輸出の果たしまする役割というものがあるわけでありまするが、それをもって市場開放をおくらせる口実にしてはいけないということが報告にも書いてございます。
 結局、このように考えてまいりますると、貿易収支の黒字が余りに大きくなるのは望ましくないわけでありまする。しかし、現状のような不均衡を一刀両断に是正するような妙案は見当たりません。可能な限りの施策を積み上げていくほかはないと思います。その基本は為替相場の調整作用に置かれるべきであろうというふうに考えております。為替相場は通貨と通貨との相対的な関係でありまするから、我が国だけの状況で決め得るものではありませんけれども、少なくとも我が国のサイドで円安を招くような措置は厳に避けつつ、米国に対しては極端な財政赤字と高金利の是正を求めていくべきであろうと思います。米国におきましても、現在の高金利政策をとり続けるのであれば、その結果であるドル高と経常収支の赤字を甘受するだけの政策的一貫性が望まれるところであろうと思います。
 また、我が国は自由貿易を最も強く擁護していくべき立場にありまする以上、引き続き市場開放には積極的に取り組んでいく必要があろうと思います。これは諸外国をこれ以上保護主義の方向に走らせないためばかりでなく、我が国経済の効率化を促すという意味でも大切であろうと思います。
 最後に、長期的には、我が国の輸出依存を減らし、輸入をふやす方向で輸出入構造自体を修正していくことが必要かもしれません。これは為替相場の適度の上昇による産業構造の転換という形で、市場原理にのっとって行われるのが最も有効かつ適切な方法であろうと思います。
 かつて世界的なインフレ傾向の中で、西ドイツが安定の中の孤島であると言われたことがありましたが、我が国も物価安定のむしろとりでとなるべく、安定的で効率的な国内経済をつくり上げていくことが世界経済の安定的成長に貢献する一方で、いずれは為替の円高化実現にもつながるものと考えておる次第でございます。
 以上をもって私の陳述を終わります。
#15
○委員長(対馬孝且君) どうもありがとうございました。
 次に、新田参考人にお願いいたしたいと存じます。新田参考人。
#16
○参考人(新田俊三君) 新田でございます。
 日本経済の中期展望というテーマでお話し申し上げたいと思います。
 中期展望という場合の分析の対象期間でございますが、大体二十一世紀初頭に焦点を合わせるのがこの際は適切ではなかろうかと思います。
 論述の順序に従いまして、まず最初に、二十一世紀初頭にかけての日本の経済成長に関する代表的な説を二つ取り上げてみたいと思います。重要なことは、いずれの説におきましても、二十一世紀初頭にかけて日本の経済成長率が実質で三%台の水準に低下するという結論がほぼ共通の内容となっているということでございます。
 代表的な諸説の検討の最初に取り上げましたのがデニソンの生産関数論による予測でございます。大変よく知られた予測でございますが、お手元にある資料の第三図を見ていただきながらその大まかな数値を御説明申し上げようと思います。
 デニソンによりますと、日本経済は一九七七年から八二年にかけて六・四%、あと予測が入りますが、八二年から九〇年にかけて五・七、九〇年から二〇〇二年にかけて五%、そうして二〇〇二年以降は三・二%で成長するという予測を出しておるわけでございます。この分析方法はいわゆるソースアプローチと申しまして、投入された生産要素の組み合わせでその貢献度を分析しつつ将来を予測するという方法でございます。お手元にある資料、一九六一年から七一年までの日本の経済成長率九・五六%、それを二つの部分に分解いたします。一つは、「永続する部分」と書かれているところでございまして三・二四%、「過渡的な部分」六・三二%。結論的に申しますと、やがてこの過渡的な部分と言われる貢献度部分が消滅してまいりまして、そうして永続要因だけが残るということでございます。わかりやすく申しますと、過渡的な部分というのは、日本が後進的性格を持っていた間に成長を刺激し得た要因でございまして、先進国的な水準になるほど次第に消滅していく部分というふうにお考えになればよろしいと思います。いずれにしましても、このような生産関数論の分析によりまして、永続する部分だけ残留させますと成長率が三%台に落ちるということでございます。
 時間もございませんので、この方法によるにはどういう欠点があるのかということには立ち入りませんが、簡単に申しますと、国際的変動要因、特に資源問題等々をこの分析の焦点に入れてないというのがこの予測の欠点とされているわけでありますが、しかし、生産関数論による予測で将来の成長能力の可能性を見てみるという意味で評価する専門家も多いわけでございます。
 次に、簡単にレジュメでは「国民所得成熟仮説」というふうに書いてありますが、これは、一人当たりGNPの水準が、一人当たり実質所得と言いかえても同じでございますが、アメリカ並みに近寄っていくに従ってアメリカ並みの成長率に落ちていくであろうという仮説でございます。仮説ではございますが、この仮説に基づいて日本経済研究センターが一つのケースとして試算したことがございます。これによりますと、アメリカの経済成長率を七〇年から八五年で三・六%、八五年から二〇〇〇年で三・三%と計算いたしまして、日本の成長率は、七〇年から八五年で六%、八五年から二〇〇〇年までで三・九%という数値になるわけでございます。ただ、日経センターの分析は、単純に一人当たり実質所得という計算だけではなくて、さらに細かい推計がなされておるわけであります。貯蓄率に関する問題であるとか、産業構造の変化に関する問題等々の要因が入っておりますが、いずれにしても、これまでの代表的な将来の成長率予測に関しては、日本の経済が次第に三%台の成長率の水準に近寄っていくという共通のほぼコンセンサスが得られているわけでございます。
 さて、そういう物の見方に対しまして、私が実はきょう申し上げたいことは少し性格を異にした内容を有しているわけでございますが、それは、多くの経済モデルによる成長予測の中に、社会的な変動要因の経済成長に対して与える分析が組み込まれてないということでございます。また、簡単に申し上げますと、皆様のお手元にある第一図をごらんになっていただければその意味はおわかりになると思うのでありますが、これは三菱総合研究所のデルファイ調査の資料を使ったわけでございますが、これから二十一世紀初頭にかけて二〇〇〇年までに生ずるであろうと予想される社会的な変動要因が大変多く挙げられているわけでございます。時間の都合で全部読み上げる暇はございませんが、老年人口比率の増大、資源エネルギー制約、食糧不足、インフレの高進、都市の過密・老朽化、国際間の利害対立、さらに政治不安の増大、自由時間の増大、世界人口の激増、地価の上昇、エゴイズムの増大、高学歴化。いわゆる私ども経済学者が成長率の予測をする場合に、これまではとかくするとこういう社会的変動要因はモデルの与件として抽象してしまって、専ら経済的な要因で将来予測をやっていたわけでございますが、これからの日本はこういう社会的変動要因を抜きにした成長予測はおよそ意味がないだろうということがここでの一つの結論でございます。
しかも、その社会的変動要因の多くが、この試算で示されておりますように、経済成長にとっては阻害要因になっているということを重視していただきたいと思います。第一図の右側の棒線グラフの左側の黒い棒がマイナス要因であり、右側の白い棒グラフがプラス要因でございますが、これから生ずる社会的な変動要因の圧倒的多数が経済成長にとってはマイナス要因になるということを重視すべきだろうかと思います。
 さて、先ほど取り上げたデニソンの予測あるいは日経センターの予測等々の経済的な要因という比較的限定された領域で成長の将来を予測いたしますと、私は、過去の定説と違って、日本の経済的なパフォーマンスのよさ、あるいは国際競争力の強さ、あるいは技術開発力の強さをむしろ過去の説よりは高く見たいと思うのであります。デニソンの生産関数論の一つの欠点と言っていいと思うのでありますが、むしろ個々のマクロ的な生産関数の問題をもう少し基本的に規定する問題として、産業構造の変化の問題というのが非常に大きな問題ではないかと思うのですね。日本経済全体がオイルショックに対して産業構造をフレキシブルに対応させていったということとか、あるいは新しいイノベーションをどんどん行い、先端産業を開発していったということのむしろ潜在的な競争能力の強さというのが、強くなることがあっても今後落ちることは恐らくないんではないかと思うのであります。そういう意味からいいますと、産業構造論のレベルだけに問題をとどめますと、第五図で示しておりますように、ハイテクノロジー産業の成長予測というのは恐らく国際的に見て最も高いだろう。恐らくこれに欧米諸国がキャッチアップするのはあるいは相当な努力を必要とするのかもしれないというふうに私は思うのであります。にもかかわらず、結論的に申しますと、恐らく二十一世紀初頭における日本の経済成長率は相当に低下することを免れないのではないか。つまり、これからの将来成長予測に対して社会的変動要因分析を導入した場合には、国際競争力の強さ、産業構造の高度化あるいは知識集約化というダイナミックな経済面での発展があるにもかかわらず、社会的要因によって相当制約される、その問題が私にとっては決定的に重要であろうかと思われるのであります。
 さて、そういう社会的な変動要因を組み込んだモデル分析があるかと申しますと、今私が提起したような問題に近い形でのケースが余りないわけでございますけれども、一つの例として小川モデルをここで紹介しておきたいと思うのであります。
 日本大学の小川教授は、高齢化が進展するということが経済成長に対してどのような影響を与えるかということについて四つのチャンネルを設けたモデルをつくられたわけでございます。時間がございませんので、このモデルの詳細な報告はもし後で御質問がありましたらお答えいたしますが、簡単に申しますと、高齢化が進展することによって労働市場の構造が変わってくる、特に労働市場における労働力の質が変わってくるということのインパクト、あるいは高齢化が進展することによる貯蓄率の変化、あるいは高齢化が進展することによる国民経済的なレベルにおける年金制度に対する影響等々をモデル化いたしまして一つの結論を下されているわけでございます。それによりますと、デニソンあるいは日経センターの予測よりもはるかに低い二%台の成長率を予測されているわけでございます。
 こういうような問題意識を持って、さて日本の将来を展望したときに、いかなる対策が立てられるべきかということについてごく簡単に問題を提起しておきたいと思います。
 まず、今私が申し上げたような社会的な変動要因を導入したときの成長モデルというのは、国民経済の安定度をはかる指標として一つの新しい尺度を求める必要がありはしないかということでございます。それは社会的安定指数とでもいうべきマクロ的指標でございます。ここの資料の第四図「最も安定した国は」という分析を、少し古いんでありますが、アメリカの未来予測機関の機関誌であるザ・フューチャリストが毎年分析しているわけでございますが、これによりますと、日本の経済成長率の高さや国際競争力の強さにもかかわらず、今後社会的安定度は、むしろ先進国の中で最も不安な国に次第に低下していくのではないかという指摘がなされております。ただ、社会的安定度指数を構成する要因というのは何であるかということになりますと、大変複雑な計算の問題になるわけでありますが、例えば一つの例を挙げますと、教育水準の問題であるとか福祉水準、年金水準であるとか失業率であるとか、あるいは離婚率であるとか、さまざまな経済的要因以外のファクターを導入して総合指数をつくる。その点日本が二十一世紀にかけて社会的に不安定度を増すという指摘は大変重要な意味を持つのではないかと思うのであります。
 そういうことで私が最後に申し上げたいことは、基本的な政策提言のフレームになるわけでありますが、ひとまずは在来型の社会開発産業に関する質を変えていけということが一点でございます。在来型の公共投資が既に経済成長に対する刺激要因としても、あるいは雇用問題の改善に関しても一定の制約があると申しますか欠点があることははっきりしてまいっております。むしろ今後はハードな発想をもっとソフトな発想に変えていく、つまり、公共投資というと道路であるとか鉄道であるという発想よりも、国民経済のソフト化を進める領域にもっと投資を行え、具体的には情報インフラストラクチャーの整備を行えということが一点でございます。これによって国民経済の効率化を進めていくということでございます。雇用構造に関しましても、当然在来型の雇用構造とは違ったソフトウエアの領域が拡大していくという効果を伴います。その方法に関してはもう思い切って分権化した投資構造をとられる方がいい。情報化が進み、あるいは高齢化のインパクトが進む、そういう社会構造のもとでは問題の処置をマクロ的に解くということは次第に困難になります。技術的に言いましても、二十一世紀型の社会は分権化構造を要求してくる。そういう分権化された社会システムの中で問題の解決を図る。その中心は、やはり二十世紀型の工業生産中心的パターンから地域の生活を中心としたシステムに次第にその中身を移しかえていく、そういう時代が来ているのではないかと思うのであります。そういうような、結論的に申しますと、新しい社会システムの形成とつながるような産業政策をとるということ自身がまた日本に対して新しい産業市場をつくり、成長産業をつくり出していく糸口にもなるのではないかと考えるわけでございます。
 以上で論述を終わりたいと思います。
#17
○委員長(対馬孝且君) どうもありがとうございました。
 次に、村上参考人にお願いをいたしたいと存じます。村上参考人。
#18
○参考人(村上泰亮君) 時間も十分ではございませんので、私は長期的な問題を中心にして若干意見を申し上げてみたいと思います。
 現在、いろんな形で変化が起こっているということが言われておりまして、いわゆるパクスアメリカーナが終えんしつつあるとか、あるいは情報化社会が出現しつつあるとか、いろいろな形で人々の考え方が変わっておるといったような変化が指摘されております。このような変化の大きさが一体どの程度、これは地震の例えですが、マグニチュードであろうかということは大変重要であるというふうに思うわけでありまして、これがたまたま短期的な波を我々が過度に、過敏に感じているということにすぎないのであればそれなりの対応がございますけれども、もっと大きな地震であるというふうに考えるならば、我々も問題の枠を広げて大きな対策を考えていかなければならないわけであります。私の判断では、過去の例と比較をしてみますと一世紀に一遍起ころぐらいの変化、つまり相当大きな変化が起こっているというふうに考えるわけでありまして、後で若干述べますように、一世紀の変化以上の意味がひょっとし
たらあるかもしれませんけれども、とりあえず少なくとも一世紀一遍という形の大きさととらえたらどうかと思います。そこに、私差し上げましたメモの最初にありますように、十九世紀のシステム、二十世紀のシステムから二十一世紀のシステムという形の変化が今起こっているのであって、新田参考人もその言葉を使われましたが、二十世紀のシステムから二十一世紀のシステムへの変化が起こっている、こう考えてはどうかと思います。
 ここでシステムという言葉をあえて使いました理由は、さまざまな要因の総合的なつながり、一体化した一つの仕組みというつもりで使っているわけでございまして、このシステムを構成するにはいろいろな要素がございます。その要素は私のメモの第二項目のところに書いてございますように、供給、需要、国内組織、国際組織という四つの要素として大まかに整理できるだろうと思います。システムと言う以上は、この四つの要素が互いにうまくかみ合って円滑に働いていかなければならないわけでありまして、十九世紀、二十世紀あるいは今後の二十一世紀についてもこれらの四つの要素がうまく調和していくかということが非常に大きな問題になるわけであります。十九世紀、二十世紀のシステムについては皆様御承知のとおりでありまして、ここで時間をとって御説明するつもりはございません。
 二十一世紀のシステムがどうなってくるかということを中心にして申し上げますが、しかし、そのために私が二十世紀システムと呼びますさまざまな政治経済あるいは国際環境のあり方の最終局面、これがいつであって、いつ終わり、どういう内容であったかということについては若干御説明をしたいと思います。
 実は戦後のこれまでの、これはかつてない大繁栄期と言っていいと思いますが、戦後の三十年なりあるいは四十年なり、私としては一九七三年の変動為替レートの採用、石油危機の到来というのが二十世紀システムの終えんの年であるというふうに考えておりますから、戦後の三十年余りということになりますわけですが、この時期は二十世紀システムの完熟期という言葉を私のメモの第三項目に使っておりますけれども、完成し、かつ成熟した時期であるというふうに思っております。この時期は技術が創造、クリエーションといいますか、技術が創造される時期というよりも応用される時期でございまして、経済的には実りが非常に高かったわけであります。それから消費の面あるいは需要の面で申しますと、さまざまな耐久消費財が国民のあるいは大衆の一人一人に行き渡りまして、非常に強い需要の波が生じた時期であります。
 それから国際関係について申しますと、パクスアメリカーナという言葉がよく使われますけれども、少なくとも西側の社会ではアメリカを指導者としたそれなりに調和のとれたシステムができ上がりまして、自由貿易の原則のもとで各国間の貿易による相互関係は次第に緊密化するという状況がございました。過去の例を見てみますと、これだけいろいろなことが、先ほど申し上げた言葉で言えば供給、需要、国内組織、国際組織の四つの面がうまくかみ合った時期というのはそうはないわけでありまして、あえて申し上げれば今まで例がないと言ってもいいと思いますが、そういった非常にうまく物事が進んだ時代でございます。この時期が終わったということをまず我々としては考えておかなくてはならないと思います。
 終わったということは、今申し上げました四つの側面についてそれぞれ指摘できるわけでありまして、まず第一の供給あるいは技術の面について申しますと、過去の三十年に使われました技術、これの多くはとことんまで精緻なものになり、大規模化され、システム化されるという形で使われたと思います。例外はこの時期に登場した計算機関係の技術、マイクロエレクトロニクスの技術でありますが、これを例外といたしますと、他の二十世紀型の技術はその飽和点に達したというふうに考えます。
 第二点が需要でございますが、需要については先ほど申しましたとおり、耐久消費財が隅々まで行き渡るというタイプの需要でございましたが、これは先進諸国、日本の例を見ましても、いずれも普及率がほとんど一〇〇%に達しているという状況にございます。ですから、これ以上需要は伸びないというふうに考えるのが常識的な予測でございます。
 それから国際組織が今どう変わっているか、このことはまた後でもう一度申し上げたいと思うので簡単にだけ申しますと、いろいろな意味で大きなほころびが見えるということだろうと思います。
 いずれにしましても、二十世紀の最後の時期、戦後の三十年間は終わったと思います。そのときに何が生まれたか、いわゆる豊かな社会の到来ということを言っております。私は、豊かなというのはある意味では括弧つきの言葉、問題がある言葉だと思いますけれども、しかしそれなりの内容を持った言葉でありまして、これを否定し去ることはできません。豊かな社会が到来いたしました。その結果としまして物的な欲望が飽和状態に近づいているということが言えると思います。これまでのさまざまな伝統的な美徳、節約とか勤労とかあるいは家族様式の維持であるとかいろんな伝統的な美徳がございますが、これらの美徳は実は多かれ少なかれ物的な欲望あるいは物的な目標が満たされていないこととつながっているのでありまして、これが満たされた現在、この伝統的な美徳の支えがなくなりまして、緩んでいるという現象がいろいろな形で見られるわけであります。こういったような価値の変化は容易には社会の前面に出てくるものではございませんから、部分的な現象としてちらちらと目に映るというふうにとらえた方がいいと思いますけれども、しかし、萌芽としてはそれにかわる新しい価値観のようなものが出つつある状況だというふうに考えるわけであります。
 このようにして、産業社会と普通言っておりますけれども、十八世紀末の産業革命以来二百年を経まして、先進国においてはこれまでのさまざまな人類といいますか、人間の営みがある天井に突き当たった、ある飽和状況に差しかかったということが言えると思います。ですから、これを乗り越えるためにはさまざまな新しい、そして観点の広い発想が必要な時期に入っていると思います。
 ここで、二十一世紀に移るという、そういう課題を念頭に置きまして、現在起こっている問題点の側から申し上げてみたいと思います。
 二十一世紀を支えるいろいろな要素、これはそこの表で御説明しましたように、供給、需要、国内組織、国際組織という四つの面から整理していくことができると思いますが、このうちで技術の面及び国際組織の面につきましては変化が非常にはっきりと出てきております。
 技術の面については、ここで今さら御説明する必要がないと思いますけれども、二十世紀型の技術とは違ったマイクロエレクトロニクスの技術が出てきておりまして、これをどう評価するか、まだ議論はいろいろ賛成あるいは懐疑論さまざまにあると思いますけれども、私としましては、過去の技術の発展史をチェックしてみまして、やはりこれは一世紀に一度の大きな変化だというふうに判断するのが妥当であろうと思っております。さらに、マイクロエレクトロニクスを追いかけて、遺伝子工学の技術が出てきているということもほぼ確かであろうと思います。こういったような技術の発展に注目いたしまして、新しい技術の時代、そして日本人がその中で大きな役割を果たすという楽観的な見通しが出ていることも皆さん御承知のとおりでございますが、私は、それに対して一つ問題点があろうということを後ほど申し上げてみます。
 もう一点は、国際組織の点でありまして、パクスアメリカーナといいますか、これまでのアメリカ中心の国際経済のあり方が大きな変革期に差しかかっているということも私はほぼ確かであろうと思います。これは前川参考人もお触れになりま
したが、現在の世界経済の制度にはいろいろなひずみがあるわけでございまして、この点については私はかなり構造的なひずみの存在を気にする方であります。議論を繰り返すことはいたしませんけれども、現在日本が抱えております経常収支の黒字、これはアメリカの資本輸入の赤字に対応しているわけでございまして、日本以外にアメリカに資本を輸出してやる国がもちろんありましょうけれども、アメリカに対して資本を輸出してやる国として一番可能性が大きいのは、技術、経済への対応能力から見てまずは日本でございます。そして、アメリカはなぜこのように資本輸入を必要とするのであろうかということを考えてみますと、前川参考人の御意見でもありましたように、これは大きな政府財政の赤字という形に典型的にあらわれております。政府財政の赤字が何で出てくるかということを考えてみますと、私は基本的には、アメリカがこれまでの世界経済のシステムの指導者あるいは、問題のある言い方ですけれども、警察官等々として振る舞ってきたその役割を継続していくためのコストだというふうに思うわけであります。典型的には防衛支出でございまして、これを維持していかなければならない。単に防衛支出ばかりでなく、広い意味での対外援助、開発途上国に対する直接間接の経済的な援助ということがございまして、これをアメリカ経済はしょっているわけでございます。このようなコミットメント、このような負担を打ち切りまして、アメリカがリーダーシップを放棄するということであればとにかく、そうでなければアメリカとしてはこのような政府財政の負担というのを今後も続けていかざるを得ない、こういう状況にあると思います。ですから、パクスアメリカーナを維持するための最後の努力が今行われているという状況だと思います。これは、アメリカとしては高金利をあえてしても世界から資本を集めるという形の行動をとらざるを得ない形になるわけでありまして、このような新しい世界経済システムの変化に対応して日本が何をするか、ほかの国が何をするかということが問われているということであろうと思います。アメリカの現在の経済の力、これは巨大なものではありますけれども、同時に、さらに一層巨大化した世界全体の世話を見るというコストを一人で負担するということは不可能になってきたという状況だと私は考えるわけでありまして、その意味ではパクスアメリカーナ型の、つまり単一の超大国が西側世界を世話するという形のシステムは不可能になってきているのではないかというふうに思うわけであります。
 しかし、これまでの世界のシステムは、十九世紀型から二十世紀型へ変化するときの状況を考えてみますと、実は世界大戦があったわけでございまして、世界大戦を一つの大きな分水嶺として世界のリーダーシップの変化が起こりました。そういうことは、現在それ自体非常に幸いなことでありますが不可能であります。このためにリーダーシップの切りかえのための政治的な知恵ということが非常に必要になってきているわけでありまして、これを果たして我々があるいは人類が達成できるのかというフェーズに入っていると思います。
 先ほど申し上げました技術の発展になぜ問題があるかということについて簡単に申し上げてみますと、問題は、この表に書きましたように、供給に対しては需要が常に必要だということでありまして、新しい先端技術が登場したときにどういう需要が長期的にそれを支えていくかということであります。これはとりあえずは今典型的にロボット、工場あるいは事務所の無人化という形にあらわれておりますような投資の需要がしばらくは出てまいりましょう。それは事実だと思いますが、こういったような無人化された、自動化された工場でつくられる製品をだれが買うか、どこが買うかというのが次に出てくる問題になるわけでありまして、この需要が安定して出てきませんと、技術の意味はなくなってしまうということであろうと思います。
 過去の例を見ますと、それぞれそこに表が書いてございますが、綿織物とか鉄道とか自動車とか耐久消費財とか、うまい形で消費に近い形の需要が出てきたわけでありますが、それに当たるものは何であろうか、マイクロエレクトロニクスの技術をどうしても必要とするような消費需要とは何であろうかということが問題になるわけであります。これは現在例えばINSであるとかあるいはワードプロセッサーであるとか、いろいろな形の家庭でも使えそうな消費が出てきかけてはおりますけれども、しかしその伸びは不確かでありまして、これがかつての耐久消費財にかわるような大きな伸びになるかどうかについては疑問があると思います。
 それに対して、今消費の需要は一般的にはサービス需要に向いております。これは先ほど申し上げた物的欲望の方は新しい価値観の萌芽というところにつながるわけでありまして、数年前まで考えられなかったような優雅なといいますか、最近感性という言葉がはやるようですが、感性的な消費の方向への動きが見えます。しかし、こういったような新しい需要あるいは感性的な消費が果たしてどこかでハイテクノロジーを要求するかということになりますと、そのつながりはまた不明瞭でありまして、その意味で私は、現在新しい技術を支えるための需要構造は世界的に模索状態にあるというふうに考えるわけであります。
 これは、実はこれまでの歴史の上でもしばしば見られたことでございまして、二十世紀のシステム、これは十九世紀の最後の四半世紀に始まったと言っていいと思いますが、十九世紀末になります。十九世紀末が二十世紀システムの最初ですが、この時期には新しい技術が出てきたにもかかわらず、需要がうまくいかなくて景気のジグザグが起こり、それから軍事的な問題もアメリカ、イギリスとドイツの間において起こったという非常に不安定な時期であります。私はこれからの時期は、技術的にはクリエーションの時期、それから需要の点では模索の時期、国際システムについてはパクスアメリカーナにかわるものを模索する時期というふうに考えるわけでありまして、その点について簡単に悲観論を抱くということは問題があると思いますけれども、しかし我々としては不安定の時期、好況もあるかもしれないけれども不況もあるだろうし、国際的な話し合いのシステムの円滑な進行ということはなかなか難しい時期と、そういうふうに考えているわけであります。
 国民生活に直接関係する点について申し上げる時間があればと思いましたが、簡単に問題点は第二ページ目に書いておきましたので、もし御質問があれば討論の過程でお答えしたいと思います。
#19
○委員長(対馬孝且君) どうもありがとうございました。
 次に、藤原参考人にお願いいたしたいと存じます。藤原参考人。
#20
○参考人(藤原房子君) 藤原でございます。私は生活という視点からきょうの話をさせていただきたいと思います。
 先ほど、経済予測の中でいろいろな社会変動要因があって、それは一つの与件として考えられているというお話がございましたけれども、まさに生活というのは一つの与件でございまして、経済学の中では家庭というのは具体的に立ち入って分析するということがほとんどないという場でございます。
 ところで、私はそういう生活問題についていろいろと見たり考えたりしてきた立場から幾つか気のついたことを申し上げてみたいと思うわけでございますけれども、現在の生活を見ておりますと、先ほど来御指摘がありましたように、一見豊かな社会になりまして、何となく生きようと思えば生きられるという、そういう状況になってきておりますし、しかもその上に消費の構造的変化が始まりつつありまして、そういう前向きに急いでいく姿勢の中でたくさんのものを積み残しのまま、あるいは未解決のまま前へテークオフしようというような大変無理なといいますか、ある意味では強引な前進というものが考えられているような気がしてならないのでございまして、私はそう
いう観点から大まかに分けて、現在どういうことを考えるべきかということと、既に見られている問題点の中で長期的に何を考えるべきかと、二つに分けてお話をさせていただきたいと思います。
 まず第一点の「今、求められる視点」ということで考えておりますことは、マクロ的な経済というものが国全体の成長や発展、繁栄を象徴するものであったということは事実でございますし、そのことによって生活が潤った、あるいは個人生活が安定してきたということは紛れもない事実でございますけれども、私は、この間に公的領域と私的領域との大変な格差というかアンバランスが生まれてきたということに大きな問題を感じているわけでございます。私的領域というものは、今まで公の場に奉仕するものというような価値観が日本では連綿としてありまして、これは何も高度成長期のみならず、戦前をさかのぼり明治百年以来そうだと思いますけれども、公のために私を滅するというような価値観が日本の国の全体のコンセンサスとしてあったと思います。そして公の進展というものがそのおこぼれで私的生活を潤す、それで自然にそういうふうに循環していくという発想がありまして、これはある意味では正しかったと思いますけれども、現在の生活の問題、端的な例で申しますならば、家庭が病んでいるというような状況、これだけ物的に豊かになった中でなぜ家庭が壊れるのか、なぜ生活者の悲鳴が聞こえてくるのかというふうな問題がありまして、そこら辺で私的領域に対する価値観というものが極めて今までないがしろにされていたのではないかということを思います。こういうことを次なる曲がり角に立っているときに一度見直してみる必要があるのではないかということで、まず第一に挙げさしていただきたいと思います。
 二つ目には「人間の側からの発想」ということで、これも先ほど御指摘がありましたけれども、高齢化が進みますと、この高齢化ということも一つの大きな社会変動要因でございますが、その中でさまざまな問題が出てくるわけでございます。例えば人口ピラミッドがちょうちん型になっていくということを一つ考えてみても、これは社会全体の活力、あるいは今までのやり方が果たしてそのまま将来も続き得るかどうかというような問題というふうなものにもつながってまいりますし、それから、そういうピラミッド型のものがちょうちん型になることの中で、生活する場のいろいろな問題、地域あるいは家庭、あるいはそういう中で見られる人間を取り巻くベーシックミニマムというものをどう考えるか、そういったことをもう一度見直してみる必要があるのではないかと思います。
 それから第三に「情報化の進展と影響」ということを書きましたが、科学技術というものが必ず人間の生活を潤すという今までのパターンが必ずしもそうでなくなったということは先ほどの参考人がおっしゃったとおりでございまして、巨大技術というものが果たして人間に親しめる技術となり得るか否か、これが問われる時期に今来ているのではないかと思います。従来の技術というのは確かに身の周りを豊かにしてくれたし、それは人間の幸せにつながっていったわけですけれども、今後需要と結びつくものになり得るか否かということで、情報化というものは非常に大きな厄介な問題を抱えていると思います。
 その情報化の中で一つ見逃してならないことは、主体性というものが確立していないと情報というものは意味をなさないというのはこれはもう常識的なことでございますけれども、今までの我々の生活の流れあるいは歴史の中で主体性を養うということが果たしてどれぐらい熱を込めて語られたか、あるいは教育の場で力を入れられたかということになりますと、そういうことがまだ不十分なまま情報化社会にテークオフするということの問題点というものも一つ指摘しておかなければならないと思っています。
 それからもう一つ、これもさっきの方々がお触れになられた中の一部でございますけれども、例えば公的規制の緩和というふうなことに代表されますように、行政がやるべきことと民間がやるべきこととの役割分担というようなことは今日もっと弾力的に考え直す必要があると私は常々思っておりますので、役割の再編成、つまり国と自治体、あるいは行政と民間企業、あるいは公と私あるいは市民というような中でどういうふうに役割分担をすればこれからの生活がより満足度の高いものになるか、あるいは経済の世界の中での摩擦が少ないものになるかということも一つ考えるべき点ではないかと思います。
 いずれにしましても、この四つの点というのはかなり基本的な暮らしに対する考え方について私の好みで選んだポイントでございまして、以下これに合わせて現代生活でどういうことが今問題になっているかということをちょっと触れさせていただきたいと思うのです。
 次の「現代の生活に見る問題点」という中で、まず物的な側面からということでお話し申し上げたいのですけれども、今盛んに心の豊かさということが言われます。確かに昭和五十二年の国民生活に関する世論調査では、もう物の豊かさよりも心の豊かさを重視するという意見の方が多かったのでございますが、私は果たしてそうでしょうかという疑問をちょっとここで申し上げたいと思います。
 つまり、基盤整備というか暮らしの本当の根っこを支えるための条件整備はまだ終わっていないのだということがいろいろあると思います。もちろんいろいろな数字を見ますと、家庭電化製品の普及率が世界で一番であるとか、その他さまざまな経済指標の中で日本の生活が欧米先進国と比べて非常にいい水準にあるということはもう周知の事実でありまして、私もそれは否定いたしませんけれども、平均で物を言うことの危険さ及びそれだけで楽観的に物を決めつけられないということを私は生活者の視点から申し上げてみたいと思うのです。
 例えば下水道であるとか歩道整備であるとか、あるいは外の階段のステップであるとか電柱の埋設であるとかごみ処理であるとか、これはもう至って日常的レベルのささいな問題というふうに片づけられかねないところでございますけれども、そういったところで、実はこれからふえていく高齢者のために、あるいは弱者と言われる人たちのためにどれぐらいの配慮がなされているかということになると、個々に見れば極めて問題が多いということを申し上げておきたいと思います。
 時間がないので詳細なことは申し上げられませんけれども、例えば電柱一つをとってみても、あれは目の見えない人にとっては歩くときに大変に不自由を感じるもので、これは生まれたときからの方ならともかく、途中失明者にとっては非常に道を歩くのに恐怖を感ずるものだというふうな話を聞いたことがありまして、そういうことがない段階で基盤整備が終わったということは決して言えない。これはもうほんの一例でございます。
 それから二つ目に「地域環境」と書きましたのは、地域の生活というもの、これが気持ちよく安心して営めるということが本当に人間の資質を養うということにつながっていくと思います。最近、感性というふうなことが盛んに言われるわけでございますけれども、豊かな感性というのはどこで育つかといいますと、これは別に本を読んだり音楽を聞いたりすることだけじゃなくて、すっきりとした気持ちのいい環境に暮らしているか否かによって決まるものでありまして、そういう意味では日本の地域生活、特に都市生活ではそういった点がないがしろにされているということが言えると思います。
 その一例として緑の問題というのをちょっと申し上げてみたいんですけれども、緑といいますと必ず緑被率、要するに緑で覆われている比率というのが引き合いに出されまして、日本は緑被率の高い国でございます。これは山林が多いから当然数字上はそうなってくるわけですけれども、地形的に山林が多いということと都市生活者が緑に恵まれているということは全く別問題でありまして、私は、むしろ生活者の視点から言うならば緑
視率、つまり緑を見る率というものを考えるというような発想の転換をいたしませんと、地域環境は決して質的にはよくなるという手がかりを持ち得ないと思うんです。そういうことで地域環境というのは極めてつかみどころのない、また効果の測定も甚だあいまいな問題がいっぱいあると思うんですけれども、そこへお金をつぎ込む、あるいはそこでみんなが何かの力を果たすというような条件づくりがありませんと、今の物的環境というのはいたずらに貧しくなり、あるいはいたずらによそよそしいものになるだけではないだろうかということを思います。
 それから、先ほど申し上げた基盤整備にしても地域環境への投資にしても、いずれもこれはGNPには増幅してはね返ってくるという問題ではないと思うんです。道路建設とか橋をつくるとかいう問題とは異なりますので、そういった点での経済への波及効果というのがこれも大変あいまいなものですから二の次、三の次になってくると思いますが、これからは生活、そして人間を育てるということになると当然そこに眼点が行くべきではないかと思います。
 それから「住宅と生活のミスマッチ」ということで特に申し上げたいのは、今、昭和五十年にはもう住の戦後は終わったというふうに言われておりまして、一戸一世帯というのはもう四十年代半ばに達成されているわけでございます。そういう中で、では住の問題は終わったかといいますと、いろいろな波及があります。
 例えば一つの例を挙げますと、持ち家政策の結果、そのことが国内での個人消費を非常に抑える結果になっている。住宅ローンと個人消費というのはトレードオフの関係になるということはいろいろな経済指標が示すとおりでございまして、個人消費が停滞する、あるいは中高年の生活が総体的に苦しいということと持ち家政策というのは裏腹の関係にあるわけでございます。しかし、これは資産が残るから結構だということにはなるんですけれども、この問題と実は人間のライフサイクルとがまたミスマッチを起こしております。例えば、五十歳前後になりましてようやく我が家が持てたという段階で子供たちが巣立っていく、そういう中で広いスペースをもてあましている老夫婦あるいは単身者というのが最近の都市の中での問題になってきておりして、人間のライフサイクルの中で住宅というものをどのように弾力的に位置づけていくか、これは相当大きな政策課題ではないかと思います。また、住宅のために単身赴任をするというようなことがありまして、持ち家というものの持つ功罪両面をやはり直視する必要があるのではないかと思っております。
 それから四つ目の点として、私は「所有価値と使用価値のギャップ」ということをこのごろ痛感しているんでございますけれども、例えば過疎地に参りまして過疎対策としてりっぱな公共施設が建てられているということは幾つも見聞きしているんですが、そういうものの利用価値あるいは利用率というものをもう少し冷静に分析する必要があるのではないか。これは何も過疎地と限らず都市の中でもそうでございますが、公民館、図書館という公共施設というものの利用状況、これが極めてばらつきの大きいものでありまして、そういうもののソフトの開発ということが今までなおざりになっていたというふうに思います。つまり手持ちのものを生かすという、平たく言えばそういうことでございますけれども、手持ちのものをふやすということばかりを今までやってきて、生かすということが後回しになっていたということを私は物的側面で非常に痛感いたします。これは個人生活の場はもちろんでございますけれども、私がここで強調したいのは公共的な場での問題でございます。
 それから第二番目に、「金銭・家計の立場から」ということでお話をしたいんですけれども、相対的な貧困感というのがなぜ出てくるのか。これも今いろいろと経済指標で既に皆様方御存じでいらっしゃると思いますけれども、家計の中において契約型の貯蓄あるいは契約型の消費の比率がふえたために自由裁量度が落ちてきている、そのために何となく窮屈だということがふえてきている。あるいは非消費支出の比率の増大、今でも一五%を上回っておりますけれども、そういったことから生じていることでありますし、それからサービス支出の増大、これはサービスコストというものが人件費によって押し上げられていっているという傾向からも簡単に納得のいくことでございますが、そういったことが相対的な窮屈さというものを生んでいるわけですが、一つここで特に申し上げたいのは、単身者世帯の消費生活の問題でございます。
 現在の日本では、約七百八十万戸の単身者世帯が存在しているわけで、これは未婚のサラリーマンとか、それから高齢者のひとり暮らしあるいは高齢者で未婚の子供と住んでいる方、あるいは単身赴任の方、そういう方を全部含むわけですけれども、単身者世帯というのは言うまでもなくコストは割高になるわけです。住宅費でも食費でも、その他サービス関連費でも割高になってまいります。この人たちは日本の全世帯の約四分の一弱を占めているわけですから、そういうことを考えますと、これからの家計に対する配慮、あるいは個人の経済生活に対する配慮ではこういった点をもう少し注目する必要があると思っております。
 その次に、「中高年世代」というふうに書きましたけれども、中高年世代が実は今教育費の問題でも最も負担が重い、それから住宅ローンの支払いその他も続いている、それから高齢期への準備もしなければならないということで大変負担の重い世代でございますけれども、これから総体的に中高年人口がふえる社会になってまいりますので、そういうつぼ型の人口構成になった日に、くたびれた中高年が国民の中の比率の多くを占めるということは、これはゆゆしい問題でありまして、そこら辺への課税の対策、特に課税の累進度がどうなっているのか、特に所得階層別の平均税負担率というものをもう少し細かく見る必要があるのではないだろうかというふうに思っております。
 それから「生活者への援助」というのは、これは先ほどの情報化の問題と密接に絡むわけでございますけれども、情報化の進展というものと消費者保護、あるいはプライバシー保護というようなこと、あるいは機器の普及とコスト負担の問題、あるいは情報化の進展の中で生じてくる社会的落ちこぼれ問題というようなことにこれからは日本は相当大きな勢力を割かなければならないのではないかと思いますので、そういったことが行政からの援助として、あるいは政治的な配慮として必要ではないかということを特に強調したいと思います。
 それから、家計の面から申しますと、必要に応じて働けるということが最も安心感を抱かせる条件でございますけれども、この点女性と高齢者ということから申しますと実に働くチャンスが少ない、あるいはあっても不利である、あるいは極めて雇用形態が硬直的で出入りが不自由であるというようなことがありまして、そういった点にもっと弾力的な対応が必要ではないかと思います。
 それから三番目の「時間消費をめぐって」ということで私が申し上げたいのは労働時間でございます。
 私は、仕事柄いろいろと消費生活運動あるいはその他のさまざまな市民運動をやっていらっしゃる方と出会うんですけれども、生活のために日夜を分かたず運動をしていらっしゃる方々が、実はその夫たちが家庭にほとんどいる時間がない、いい食品を選んで理想的な食事を用意して待っていてもほとんど夫たちは家庭で食事をしないという現実が、これは日本のサラリーマン家庭では一般的でございます。つまり、生活を大事にするという理念は確かに社会ではコンセサスがあるんですけれども、実態としてそれは何ら保証されていないということになりますと、運動家の方々の意欲をくじくというようなことも私は最近聞いておりまして、そういったことからも労働時間の問題というのはもう少しいろいろな配慮をする、単に労働者自身が休暇をとるとらないということじゃな
くて、法的な規制を考えるというふうなことをしませんと、本当に国民生活を長期的に大切にするのだという姿勢はそこからは出てこないのではないだろうかと思います。と同時に、勤労観の問題、労働時間が短縮すると勤労観がだんだん退嬰的になるのではないかというような危惧もあるようでございますが、これは誘導の仕方というのはいろいろあると思います。
 大変古い話を持ち出して恐縮でございますけれども、イギリスの労働衛生の大家のバーノンという人が「バーノンの法則」というのを報告したのは有名な話でございまして、労働時間を短縮することによって単位時間当たりの生産性が上がり、そして時間短縮をした結果生産数量が上がったということが、これは非常に古い話ですけれども、そういう例もあるわけで、必ずしも時間短縮が停滞には結びつかないのではないだろうかというふうに私は思っています。
 以上、一、二、三と申し上げましたことは、主としてフォーマル部門とのかかわりで申し上げたのでございますが、私はインフォーマルの部門についてもう少し時間をちょうだいしたいと思います。
 インフォーマル活動というのは、これは国の経済とかかわりのない民間の自主的、自発的な活動でございまして、この活動は経済の物差しでは評価されないために余り重視されていない嫌いがございますけれども、これからは個人の満足度を高める、あるいは行政の届かないところへの配慮をする、あるいは近隣で連帯をし合う、さまざまな目に見えない価値を生み出すために大きな役割を持つ部門であると思っております。
 先ごろ、この委員会の中間報告書を送っていただきましたときに、その中に自主的社会参加活動についてかなりのスペースを割かれておりましたので、私はその背景その他を申し上げることは避けますけれども、ここでちょっと一つだけ触れておきたいのは、参加促進への条件づくりということでございます。
 私は、この点では日本のさまざまな公的な制度、特に税制というものが公平を期するために極めてリジッドに運用されているということはよく承知しておりますし、それの中身も伺ってはおります。しかし、民間の自由な意思による資金の動かし方というものに対してもう少し公的な規制を緩和した方がさまざまな創造的な活動を触発する役割を果たすのではないかと思っておりまして、極めてその点では残念だというふうに思っております。なぜ参加しやすい条件づくりと金とが結びつくかということになるわけでございますけれども、諸先生方はお金というものの利用価値及びそれの影響力というものはもう重々御承知でございますので、そんなことを申し上げる必要はないかと思いますが、そういった点で、私は日本の制度というものがインフォーマル部門についてまだまだ配慮が不足しているということが言えると思います。
 生活の面でいいますと、質の高い生活ということになると、まず不安がないということが第一でありますし、二番目には、自己実現が可能であるということが考えられますし、三番目には、人間相互の連帯が得られるということ、それから四番目に、地域環境あるいは生活環境が整っているというふうなことが挙げられるかと思いますけれども、それらを考えましたときに、インフォーマル活動というものは、将来自由時間も増大してくる、あるいはくるべき環境の中で大きな条件ではないかと思います。
 以上、大変急いで申し上げましたけれども、私が国民生活を長期的に見た場合に重点を置いて考えたいポイントでございます。
#21
○委員長(対馬孝且君) どうもありがとうございました。
 以上で、各参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は、委員長の許可を得て順次御発言を願います。
#22
○山田譲君 参考人の方々、大変いろいろな意味で有意義なお話を伺いまして、心から感謝をしているところであります。
 質問の時間も極めて限られておるものですから、お聞きしたいこといっぱいあるんですけれども、重点を絞ってお伺いしていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
 まず、前川参考人にお伺いしたいわけでありますけれども、例の貿易摩擦の問題に端を発して諮問委員会が報告書を出され、そしてまた政府がそれに対する経済対策閣僚会議を開いて一定の対外経済対策というものを出したのは御承知のとおりでございます。前川参考人もこの諮問委員会のメンバーになっていらっしゃいますから、場合によってはもちろんお話しにくい点もあろうかと思いますけれども、そこはもう遠慮なさらないで構いませんから、どうぞちょっと話しにくいとおっしゃっていただいて結構でございます。
 そこで、この問題をめぐって緊急に本会議も開かれて、いろいろときょう午前中、各党からこれについての総理大臣あるいは担当大臣に対する質問なども行われました。そういう状態で、いろいろ生々しい問題であるわけですけれども、その中で、やはり何といっても一番大きな問題に大体取り上げられましたことは、アメリカの高金利とかドル高の問題であるとか、あるいは保護主義の問題であるとか、そういうことだったわけです。
 そこで参考人にお伺いしたいのは、まず一つ、保護主義の問題でありますけれども、具体的には日米という関係でよく言われますけれども、世界の状況を見ていますと、多かれ少なかれ保護主義の問題というのがどこにも出ているんじゃないかというふうな気がしてなりません。さらに気がつくことは、いわゆる先進国と言われているようなところがむしろ保護主義で、そして発展途上国というふうなところがむしろ自由貿易をしろというふうな要求をしているというふうな状況が若干見られるわけでありますけれども、世界的にそういう保護主義が台頭してきたというふうなことは一体どういう理由なのかということをまずお聞きしたいと思うんですが、よろしくお願いします。
#23
○参考人(前川春雄君) 保護主義の動きが非常に強まってきている、しかもそれが先進国の方にむしろ多くて、開発途上国は自由主義貿易体制というものを非常に要求しているというのはそのとおりであろうと思います。
 なぜそういうふうになっているかということにはいろいろの原因がございまするけれども、一つは雇用の問題であろうと思います。雇用確保ということが、これはもちろん最近になって始まったことではございませんで、雇用あるいは福祉、そういうことが経済政策の一つの大きな目標になってきましたので、各国とも雇用確保ということのためには相当の努力をしなければいけないということになってまいりました。御承知のように、日本の輸出競争力が非常に強いということの結果、またしかも日本の輸出品が極めて技術的には高度のもの、付加価値の高いものになってきたということから、そういうものを需要する国というのは先進国が多いわけでございます。しかも、アメリカの景気が真っ先に回復したということから対米輸出が非常にふえたという背景であろうと思います。また、そういうことが西欧諸国にも及んでおるわけでございまして、ヨーロッパは殊に失業がまだ一〇%ぐらいになっているということになりますると、どうしても日本からの輸出に対する保護主義的な動きというものが出てくるのは当然であろうというふうに思います。そういう事態に対しまして開発途上国の方は、むしろ自分たちの輸出品が自由に売れなければ到底経済の発展ということはあり得ないわけでございまするから、それを主張するということであろうと思います。
 まだほかにもいろいろ理由はあると思いますけれども、大きな要因としてはそういうことがあろうかと思います。
#24
○山田譲君 その次に、きょう午前中にもいろいろ問題になったところですが、要するにアメリカの高金利あるいはドル高というふうなのが非常に
問題の根っこになっているんだと、こういうふうなところで大体皆さんも同じようなことを言っておられたわけですが、ただアメリカの高金利、特にドル高というふうな問題については、これは単に日米の問題ではなくて世界のいろんな問題になるんじゃないか。一概にアメリカの政策がけしからぬというふうな言い方で片づけられない事情がやっぱりそれなりにあるんじゃないかと。その事情が解決されない限り、アメリカの高金利あるいはドル高というような問題も解決されないということじゃないかと思うんです。
 そういう点で前川参考人は、さっきもちょっとお話が出たわけでありますけれども、なぜアメリカは高金利、ドル高になっているかということを、もう一遍ちょっと教えていただきたいと思うんです。
#25
○参考人(前川春雄君) アメリカの景気が非常に早く回復したということから、アメリカに対する投資が非常に多いということは、資本がアメリカに流入しておる、アメリカはそういうふうな借金が多くなって債務超過国になってしまうかもしれないという事情がございます。アメリカの産業の収益率が高い、それは確かに一つの要素であり、またアメリカの政治が非常に安定しておるということも大きな要素であろうと思います。しかし、そのほかに高金利ということがありまするために資本が流入するということからドル高になってしまう。なぜ高金利になっておるかということは、要するにアメリカの国内の貯蓄ではアメリカの今の財政需要並びに民間の資金需要を賄えないということがあるわけでございます。そういうことからどうしても今のような海外からの資本の流入を必要とする。またそういう結果、アメリカの金利がそういう流入がなければもっと上がったかもしれない。しかし、アメリカの高金利がそれだけ抑えられておるという要素もあるわけでございます。
 それでは、問題は、財政需要あるいは民間需要というのは貯蓄以上に大きくなり過ぎておるというところに問題があるとすれば、やはり財政需要というものを、財政の赤字というものをもう少し削減するという努力が払われてしかるべきではないか。今の高金利あるいはドル高というのはアメリカの安定要素にはなっておりまするけれども、しかし世界的にはそれによって非常に苦しむ国が多いということであれば、何らかの手が打たれることが世界経済の順調な発展のために必要じゃないかということになるわけであろうと思います。
 財政赤字がなぜ大きいかということは、先ほど村上参考人からもお話がございました。一つはパクスアメリカーナということでありましょうか、世界の警察官、そういう役割をアメリカは好むと好まざるとにかかわらず持っておるということが防衛費というものをなかなか削減できない要因になっておるのだろうと思います。
 また、国内の問題からいえば、社会保障というものが福祉国家として非常に一九六〇年代から、御記憶のように、一時は大砲とバターと両方を国民に供給するというような国であったわけで、一遍膨らみました社会保障というのはなかなか切れないわけでございまするので、そういう要素から財政赤字というのがなかなか圧縮が困難だという環境になっておるのだと思います。
 しかし、問題はどういう価値観、どういう優先度をつけるかということで、世界経済の安定という、世界経済の発展ということにもアメリカは責任がある、また先進国はみんな責任があるわけでありまするから、そのためには今の赤字をむしろ切って、ドル高というものを抑制する方がいいと。これは今のところは、アメリカも今のような状態がいつまでも続くとは思っていないわけでありまするから、そういうことで漸進的な解決策がそこで図られることが必要であろうというふうに考えております。
#26
○山田譲君 午前中もちょっと話が出たんですが、日本のアメリカに対する輸出が非常にふえていったその原因の一つとして、アメリカの景気が非常に急激によくなった、技術水準も日本よりもはるかに高いと、そういうことで日本もかなりおくれているから何となく輸出がふえているんだと、そういうふうなことをちょっと言われた大臣もいたんですけれども、そういうふうに前川参考人もお考えになられるかどうか。つまり、私がお伺いしたいのは、アメリカの景気がどうして日本なんかよりも急激によくなっていったのかというところはどういうことでしょうか。
#27
○参考人(前川春雄君) 今のお話のアメリカの景気回復とそれ以外の先進国の景気回復にタイミングのずれがあったということは確かに言えるだろうと思います。世界同時不況という戦後最大の不況を経験いたしまして、全世界全部不況になってしまったということは、戦後初めての経験でございました。しかも、戦後初めての大きな不況であったわけでございまするが、その不況からいち早く回復をいたしましたのはアメリカでございます。そういうことで、アメリカの景気が非常に回復し、それが、先ほど申し上げました日本の輸出品というものは非常に付加価値の高いものでありましたので、アメリカ向けの輸出が伸びる環境にあったということで、日本の同時不況下からの回復も輸出の増進から始まったわけでございます。しかし、その輸出がふえてまいりましたのがだんだん内需の方に波及して、今では企業の設備投資というものがかなり活発になってきて、必ずしも外需だけでない内需がこれに伴う景気回復になりつつあるわけでございまして、そういう意味ではアメリカの方が先に参りましたけれども、日本あるいはヨーロッパの方も少しおくれまして、輸出の回復からさらに内需の方の回復による景気回復の段階になっておるだろうと思います。
 そういう意味におきまして、いつまでも輸出には頼れない、内需がその中で自律的に回復してくるということがまたこれは必要であろうと思います。そういうことが日本にとりましては対外的な大きな黒字が減る一つの大きな要因であろうと、こういうふうに考えるわけでございます。
 アメリカの景気がそれじゃなぜそういうふうに一番先に回復したかというには、これはいろいろのあれがございまするけれども、レーガン大統領になりましてからの今申し上げました財政の赤字が極めて大きいということから申しますると、やっぱり財政による刺激、大きな減税をいたしましたし、あるいは防衛費というものをさらにふやすというようなことが、そういうふうな景気回復が真っ先にアメリカにおいて行われたということの大きな原動力になっておるのではないかというふうに考えております。
#28
○山田譲君 最後に一つだけ前川参考人にお伺いしたいんですが、日本において内需を振興させなきゃいかぬということは、皆さん大体同じ考えだと思うんですが、いかにして内需を振興さしていくかという具体的なものが非常にこれからの問題になっていくんじゃないかというふうに思います。
 そこで、諮問委員会の答申を拝見しまして、さっきもちょっとお話がありましたところで私わからないのは、非常に具体的な問題で恐縮でありますけれども、「内需中心の持続的成長」という項目がありまして、その中で四つほどですか、いろいろ書かれておりますが、その第二に「週休二日制の一層の普及、」とか「労働時間の短縮が必要である。」というふうなことを言っておられますけれども、これが内需の持続的成長にどういうふうにして結びつくのか。ちょっとそこのところわからないものですから教えていただきたいと思います。
#29
○参考人(前川春雄君) 諮問委員会のメンバーは民間の方ばかり十人でございまするが、その中に労働関係の委員もおられまして、この点の主張は非常に強くされたわけでございます。これはなぜ内需拡大につながるのかという点は、先ほど藤原参考人からもお話があったと思います。労働時間の短縮、そういうことが全体の生産効率を高めるということもありましょう。また、消費機会がそれだけ多くなるだろうと。今の消費というものの形態も、ただ物を買うということが消費ではなく
なってきている。消費支出というものは、サービス関係というものが非常にふえてきておるというような環境から申しますると、そういうふうな労働時間の短縮、あるいは週休二日制というものが持つ消費機会の増大ということはやはりあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 そういう経済的な論理がここへ入っておるんであって、それがどの程度消費の拡大に直結するのかというのは、これはなかなか数字でははじけない問題でございまするけれども、今申し上げましたように経済的な論理からそういうことが言えるわけでございます。
#30
○山田譲君 どうもありがとうございました。
 その次に、新田参考人にちょっとお伺いしたいのは、一つだけでございますけれども、一番最後の結びのところで分権化というふうな言葉が出ておりましたけれども、この分権化というのは果たしてどういうことを考えていらっしゃるか、それをお願いしたいと思います。
#31
○参考人(新田俊三君) 分権化という言葉は、専門家の用語で時々分散化というような用語で使われる場合もございます。非常に具体的に申しますと、地方自治体が、例えば投資の問題に関して申しますと、公共投資に関するプラン、それから実施責任、そういったものを持つということですね。ですから、私が公述の中で申し上げた分権化という問題提起は、いささか経済社会政策的な観点で申し上げたわけでございますが、これはわかりやすく申しますと、従来の、例えば景気が悪くて公共投資をやるという公共投資のあり方が、とかくすると集権型のナショナルプロジェクトに傾きがちであったということに対してもっと地方自治体に投資の権限をおろしていく、そして地域の事情に合わせた社会資本形成をやっていくというようなことを念頭に置いていたわけです。ただし、この分権化というのは、そういう社会経済政策的なレベルで分権化という意味を実は二十一世紀論としてはもう少し掘り下げなくてはいけないわけで、恐らくこれは政治システムの問題に最後はかかわる問題になろうかと思いますね。
 さて、こういうような意味での先例が先進国にどういう形であるかという一つの挙証事項として申し上げますと、例えば西ドイツの経済政策ですね。社会市場経済方式で大変市場メカニズムを有効に使って戦後回復した国、自由主義体制の模範的な国と言われているわけですが、西ドイツほど分権化が徹底している国はないという事実も同時に考えていただきたいと思うんですね。州レベルで行う投資、その投資に関する主体性といったもの、それから最近の事例ですと、あれほど集権的であったフランスが、地方分権法という制度をもって在来型の知事を中央から派遣するというシステムを根本的に改めまして、そしてこの地方分権法によって新しい産業政策を現在展開しているわけです。この地域をレジオンという二十二の地域に分けまして、そうしてその産業政策は州独自の条件に従って行うし、かつその関連で雇用政策もまた展開されると。ただし、技術的にまだ未成熟なところがいろいろあるためにさまざまなトラブルが起こっているようですが、その主たる問題点は、中央の全体の経済政策との関連をどうつけるかという問題であろうかと思います。この問題に関しては、まさに先進国でそういう意味での試行錯誤が特に西ヨーロッパ諸国では行われているわけでございまして、最近はスウェーデンもほぼ経済政策のパターンは分権化を徹底するという方向で改めつつあります。フランスの場合の分権化と中央の全体政策の整合性は主として中央政府と州、日本でいえば自治体でございますが、その間で行われる一種の社会契約をもって行われるということです。投資に関する事項について中央政府と契約を結んで、社会的に承認された事項については財政的援助が与えられるとか、そういうような新しいメカニズムを念頭に置いているわけでございますが、先ほど私が申し上げた分権というのは、まだそういう政治社会システムとしての問題まで含んではおりませんでした。さしあたり新しい経済社会政策を二十一世紀初頭で考えるとすると、現存の自治体を前提として、あるいは自治体がある程度連合するという形も想定されますが、もう少し投資の権限を下におろしていく、そういうことが必要だろうということでございます。
#32
○山田譲君 どうもありがとうございました。
 次に、村上参考人にこれまた一つだけお伺いしたいのでございますけれども、アメリカの非常な財政赤字というふうなものは、これはもうパクスアメリカーナを維持するためのコストであるというふうなお考えを言われまして、私も非常に勉強になったんですが、そうすると、日本も財政赤字でもって悩んでいるわけですけれども、日本の財政赤字とアメリカの財政赤字とは質的には全然違うというふうにお考えになるのでしょうか、そこら辺どんなものですか。
#33
○参考人(村上泰亮君) 質的には全く性格が違うと思います。アメリカの財政赤字の原因は私が申し上げたとおりですし、基本的には貯蓄が不足であるという状況がありますが、日本と全く反対の状況にありますから、それぞれの国内政策というものをもしも独立にとることができるとすれば、それは全く違う方向を考える必要があると思います。
#34
○山田譲君 それでは、最後に藤原参考人にお伺いしますが、いわゆる貧乏感というふうなものはやはり相対的な観念であるということで、私は必ずしも最近の傾向じゃなくて、昔からおれは貧乏だとか貧乏でないというのはあくまで相対的な観念ではないかと。ですから、必ずしも最近起こった気持ちじゃなくて、どんな世の中でもどんな時代でも常にあるものじゃないかというふうに思うんですけれども、そこら辺はどんなものでしょうか。
#35
○参考人(藤原房子君) おっしゃるとおり昔からあったわけですけれども、現在は価値観が極めて画一化しているといいますか、九割中流意識を持っているという日本の国民の特徴からいいまして、やはりみんなと一緒ということを極めて熱望するわけでございまして、そういう中で相対的に膨らんでくる感覚ではないかというふうに私は思っております。もちろん終戦直後は絶対的な窮乏というのがありまして、それがなくなってもはや今や窮乏ということはないわけでございますけれども、貧困感という感がつくというところが少しくせ者なんでございますけれども、少し自分より上のクラスを見て生活するというようなことから、これはたくさんの人たちが持ち合わせている意識であり、それがある意味では日本の経済を前進させてきた原動力でもあったわけですけれども、ある程度それが停滞し始めますと、マイナスにも働きかねないという要因ではないかと思います。そしてそのことが、さっき申し上げましたような家族構造の変化の中でさらに増幅される可能性もあるのではないかというふうに思っているわけでございます。
#36
○山田譲君 それに関連をして、私も常々思っていますことは、昔はそういう相対的な貧乏感というものがあるにしても、おのずから分と言っちゃあれですけれども、クラスが決まっていて、例えばピアノなんかについても私はいつも思うんですけれども、私の子供時代はピアノを持っているなんと言えばそれこそ大富豪のお嬢さんくらいしかなかったんですが、最近になりますとむしろ一般的にピアノくらいみんな持っている。そしてピアノを持っているのは特別なお嬢さんじゃないんだというふうなことになってきまして、そういうことが逆に言いますとかえって貧乏を助長さしている、そういうふうなことが思われてならないんですけれども、そこら辺はどういうものでしょうか。
#37
○参考人(藤原房子君) 耐久消費財が一つのステータスシンボルであった時期も確かにございまして、今おっしゃるようなピアノの普及率というのはそういうものを象徴している事例だと思います。しかし、最近は耐久消費財がほぼ飽和状態に達しまして、持ちたいと思うほどの人は持ってしまって、持っていない人は持ちたくないという、
割合にそういった点では個人の考え方というものがある程度反映するようにはなっていると思うんです。ところが、やはりそれにかわる一つのまた目標というのが出てまいりまして、ピアノが今や学歴であったり、それから一種のカルチャーブームに象徴されるようなその人の素養であったりいたしまして、無形のものに変わってきていると思うんですね。それは物離れというふうに言われると思うんですけれども、この無形の素養というものは一朝一夕で何万か投資してすぐ手に入るものではございませんから、それだけに差別感というのが深刻になっていくということもあり得ると思います。ですから、物で代償された時代はまだ問題は簡単に片がついたのではないか。これからはそれをさらに根の深いことでいろいろと国民が焦ったり悩んだりするということがふえてくるのではないだろうかというふうに思っておりまして、さっき最後に申し上げましたインフォーマル活動のようなところでもし自己実現というものが図れたら、それの代償にもなり得るのではないかなというふうに私は考えるわけでございます。
#38
○山田譲君 ありがとうございました。
 これで終わります。
#39
○松岡満寿男君 私ども国民生活・経済の長期的課題につきまして各参考人からそれぞれのお立場からの有意義なお話いただきまして、まことにありがとうございました。
 先行委員の方からも話がございましたが、御承知のように、現下経済摩擦の問題がいわゆるトピックスになっておるわけであります。私は地方で行政を担当しておった時期があるんですけれども、何と申しましても国民の福祉、こういうものも国の経済力の範囲内においてしか行われないということでありますので、経済を安定的に成長さしていくということが政治におきましても最大の課題だというふうに考えておるわけであります。我が国はそういう中におきましていわゆる貿易立国という形で今まで成長してまいったわけでありますから、自由貿易を建前として各国との安定的なつき合いをしていくということが基本になければならないと思うわけであります。そういう中で、けさは対外経済問題につきまして緊急質問が行われたわけでありますが、昨日シュルツ国務長官が我が国に対するいろいろな考え方を述べております。
 そこで、まず前川参考人にお伺いいたしたいのですけれども、我が国の貯蓄の問題に触れておられるわけであります。御承知のように、国民経済計算ベースで我が国の国民個人の金融資産、これは四百兆を超えるような状況になっております。
   〔委員長退席、理事梶木又三君着席〕
もちろんその中に郵貯が八十兆。過去におきましても我が国の貯蓄の問題はいろいろな角度から論議がなされたところでありまして、今回も、先ほど来前川参考人の方からお話が出ましたように、大変な資金がアメリカにも日本から流入しておるという問題があるわけであります。また、我が国の現在の経済の中におきまして、貯蓄というものは非常に大きな役割も果たしておるわけであります。このシュルツ国務長官の我が国の貯蓄に対する指摘につきましてのお考え。
 それと、国内ではいろいろ貯蓄の問題につきましてもっと有効に活用すべきじゃないかという議論もあるわけでありますが、それぞれ我が国において国内で対応すべき、先ほど来論議がありました内需を振興していく問題、あるいはアメリカにおきましてはドル高、高金利の是正、また、両国においては財政赤字をどうしていくかというそれぞれの問題の中で、今回の我が国の貯蓄につきましての問題点につきまして御所見を伺いたいと思います。
#40
○参考人(前川春雄君) シュルツ国務長官が言われたことの演説の内容をまだ読んでおりません、新聞で読んだだけなものでございますから、私も若干――若干ではございません、かなりの程度において疑問を持っておるわけでございます。
 貯蓄超過というものがあることは事実でございます。ここに経済学の先生方たくさんおられますが、私は余りそう学識があるわけではございませんけれども、貯蓄超過というものは対外的な経常の黒字を反映しておるわけで、貯蓄超過があるからいけないのではなくて、貯蓄超過というものがあるということは経常の黒があるということでございますから、貯蓄超過がいけないと言えば経常の黒がいけないということと同じで、当然のことというわけでもありませんけれども、どうやってそれを減らすかということが問題なんです。
 貯蓄、今お話がございました四百兆、数字を私も正確にはあれしておりませんけれども、日本の貯蓄率というのはアメリカよりも非常に高い。家計の中の貯蓄率というものは日本は非常に高い、一七、八%でございましょうかね。アメリカがまた極端に低い、六%ぐらいでございます。そういうふうに貯蓄が、率は高いんですけれども、ただそういう貯蓄がどこかにたまりまして、その金が民間の投資か何かに使われる、したがいまして民間の貯蓄超過、つまり貯蓄と投資を引いたものでございますね、それが問題なわけであります。
   〔理事梶木又三君退席、委員長着席〕
したがって、民間で貯蓄もありまするけれども、一方それを活用する道もあるわけでありまするので、それが非常に大きく行われれば貯蓄超過というのは少なくなる、経常の黒は少なくなると、こういうことになるんだろうと思います。
 シュルツ長官がそのうちの何を問題にしておられるのか、どうもそういう意味で私もよくわかりません。ただ、国内でもう少し貯蓄を活用する道がないのか、それで貯蓄をもっと活用したらいいじゃないか、そうすれば貯蓄超過が少なくなるじゃないかと。それはそのとおりでございまして、それで内需振興をどうやってやるか。内需振興をする方がいいことはもう当然でありまするけれども、それはどうやってやるのか。そのときに、先ほど申し上げましたように、財政面からあるいは金融面からの選択の余地というのは今のところ非常に限られておるわけでございまするので、それではどういうふうにすればいいのか。しかし貯蓄はそこにあるわけだから、それなら民間活力の活用、そういうことをやるというふうに考えざるを得ない。先ほども申し上げましたように、今度の諮問委員会の中に内需拡大のところではそういう幾つかの問題点を指摘しておるわけでございます。公的規制というのをできるだけ外して民間が自由にそういう投資活動ができるようにする、民間の活力を利用して社会資本の充実を図る、そういう余地があれば今のような貯蓄との関係では貯蓄超過というものは少なくなるということになるのだろうというふうに思います。
 先ほど申し上げましたように、内需拡大というのは、あるいは黒字対策というのはそう一発でぱっと効くような方法はございませんので、幾つかの施策を積み上げていくよりしようがない。しかし、基本的にはやはり今のドル高というのがおさまりませんと、なかなか黒字というものに対しては内需拡大だけでは――内需拡大だけではというのはちょっと言い過ぎでございまするけれども、なかなか大きな黒字削減対策にはなり得ないのではないかというふうに感じております。
#41
○松岡満寿男君 我が国は物ばかりじゃなく資本の輸出国になってしまっておるわけですけれども、この問題につきまして国際金融機関、そういう国際金融センターというものはロンドンやニューヨークと同じように東京に持ったらどうかという意見がこれからの国際化に際して出ておるようでありますけれども、こういう問題につきまして参考人の御見解があれば承りたいと思うのです。
#42
○参考人(前川春雄君) 円を強くするためには資本の輸出ではなくて、資本の輸出をしますとどうしても円が安くなる方に働くわけでございまするから、むしろ日本の資本市場に海外から金が入ってくれば円が強くなると、こういう筋合いになるわけでございます。日本のそういう金融資本市場というものを世界的にも魅力のあるマーケットにした方がいいじゃないかと、これは当然でありまして、円・ドル委員会におけるいろいろの施策、
あれは主として行政的な制限というのをなるたけやめようということから始まっておるわけでございまするが、それによって日本の金融市場あるいは資本市場というものを魅力のあるものにする、そういうことをすれば海外から資金が入ってくる、円が強くなるではないか、円の国際化ということが進展するではないかという考え方でございます。
 筋道はそうでございまするけれども、それではどうすれば日本の金融市場というのは魅力的なものになるのか。今では、あの円・ドル委員会の中でもございますが、ヨーロッパで円がどんどん使われるような世の中になってまいりました。自由化でございますから、ユーロ円というものを使ってする取引、これは非常に自由な市場でございまするので、日本の一流企業もヨーロッパに行ってそういうことを起債すれば非常に自由に資金の調達もできる。また一流企業でないとなかなか行かれないということ。ところが一方、日本の国内の資本市場なり何なりを育成しようと思いまするときに、日本の一流企業はみんな海外へ行ってやってしまうというのじゃ日本の国内の資本市場なり金融市場というのはいつまでたっても育成されないわけでございますね。そういうことから、アメリカ的な考え方で自由なら自由なほどいいという考え方ではなくて、国内のそういう市場とのバランスをとりながらやっぱり自由化というものはやっていかなければいけないということが、あの委員会の内容にもございまするように、段階的に外していくということの考え方の基本でございます。
 そういう意味で、今お話がありましたように、日本のマーケットをどうやって魅力あるものにすることができるか。ここに金融のセンターをつくればすぐ金が集まってくるかというと、必ずしも金というのはそう簡単なものではない。やはり一つのマーケットとしての機能があり、そこで自由な流通市場としての機能が十分備わっていないとなかなか集まってこない。今でも日本の資本市場というのは、一時OPECからもかなり金が入ってまいりました。日本の国債というものを買うようなマーケットになったわけでございます。国債を買ってもいつでも必要なときは売れる、また相場も余り大きく変動しないというようなことがございませんと、なかなか魅力ある市場というわけにはいかないわけでございまして、そういう意味でやっぱり基本的には国内の金融資本市場というものの自由化を進めるということが一番基本であろうと思います。
 東京にそういうマーケットをつくればいいじゃないか、あるいはオフショアマーケットをつくったらいいじゃないかという議論もございますが、オフショアマーケットというのはいわゆる外、外でございまして、これをつくるというのは、国内で規制が非常にあるから、そういうものをつくって少しでも国内の規制を自由化する促進剤にしようという意味では意味がないわけではないと思いますけれども、もしそういうことがメリットだと考えられるなら、やっぱりもっと勇気を持って国内の自由化というものを進めるべきであろうというふうに私は考えております。
#43
○松岡満寿男君 今の円の実力からいくと百八十円から実際二百円ぐらいだと、しかし、それで買おうとは思わないというような状況で二百五十円ということになっておるわけですけれども、私どもはどうも円高円安の決まり方、いろいろ諸説あるようでございますけれども、その辺は余りよくわからない部分もあるんです。
 先ほど参考人がおっしゃいました、円安を招く措置を避けるのだと、これからはそれが最大の一つの行き方じゃないかというような御指摘があったわけでございますけれども、具体的な方法としてはそれじゃどういう対応というものが金融政策としてはあり得るのか、その辺をちょっとお聞かせいただけないでしょうか。
#44
○参考人(前川春雄君) 円相場というのはどういう要件で決まるかというのにはいろいろな要素がございまして、もちろん貿易の黒があれば普通ならば円が強くなるはずでございまするけれども、現在のところ、そういうふうな大幅な黒字にもかかわらずなかなか円が強くなりませんのは資本の流出があるからでございまして、昨年中の数字で申しますれば、経常勘定の黒は三百五十億ドルぐらいあったわけでございまするけれども、長期資本の輸出超過が五百億ドルあったということでございまするから、それを差し引きいたしますれば百五十億ドルぐらいいわゆる基礎収支が赤になっていたと、そういうような環境ではなかなか円は強くならないわけでございますね。ことし年がかわりましてからはややそれほど大きなアンバランスではなくなっておりまするけれども、やはり長期資本の流出は続いておるということでございます。そういうふうな資本の移動ということが為替相場に非常に大きな要素になってきているのが最近の状態でございまして、世界的にはユーロダラーマーケットその他かなり流動性と申しますか、金が余っておる状態でございまするから、そういう金利を求めて金が大きく動くということは否定できないわけでございます。
 もう一つ最近の相場を大きく動かしておりまするのは期待感と申しますか、エクスペクテーション。アメリカの景気がいい、ドルは強いだろうというふうな市場のドルの先高感というものがあるとみんなドルを買う。それが経済的には余り説明できないけれども、そのときどきの期待感で為替を買うという動きが非常に強くなってまいりましたので、それがまた相場を非常に大きく動かすというのが最近の状況でございます。
 そういう中でどうやって円を強くするのかというのは、今申し上げたような幾つかの要素というものをやっぱり利用するよりしようがない。その中の大きな要素である資本の移動に対してはやっぱり金利差というものがある間はなかなかうまくいかないわけでございますね。アメリカの金利が高過ぎるからこれを下げてもらわなければいけない。日本の方は、国内の内需拡大ということからいえば、あるいは物価の情勢からいえば金利は下げた方がいいかもしれないけれども、そういうことをすれば金利差がまた広がってしまう。したがって、先ほど申し上げましたのは、金融当局の措置によって内外金利差がさらに広がるということは今の段階では避けた方がいいんじゃないだろうかということでございます。そういうことで、日本の金利をどんどん上げればあるいは円が多少強くなるかもしれませんけれども、なかなかそういうこともできない。そういうふうに選択の余地の非常に狭いところを走っておるわけでございまするので、なかなか的確にこれをやれば円が強くなるという方法がないわけでございまするが、今申し上げましたような幾つかの要素を考えれば、やっぱり日本の経済というものに対する信頼感というものが高まれば、しかもドルの金利が若干下がるということであれば、日本に対する資本の流入があり、それが円高につながるということは期待できるであろうというように考えております。
#45
○松岡満寿男君 参考人の「私の国際化論」というのをちょっと読ましていただきました。お互いに共通の価値感を持った人間同士としての関係を深めていくことが必要だということでありますが、やはり今後の貿易摩擦等につきましては、まさにアメリカと我が国はそういうお互いの努力が必要だということを感じております。
 時間がございませんので先に進めたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、新田参考人の方にお伺いをいたしたいと思います。
 先ほどのお話の中に、社会開発産業の問題や名前が出てまいったわけであります。過去、我が国産業を振り返ってみますると、いわゆる鉄鋼、化学、自動車、それから造船ですね、さらにこれからの問題としてはエレクトロニクス関連であるとかバイオテクノロジー、そういう関連の業種に産業が展開していくだろうと思うんですけれども、都市開発産業というものは、今までも既成の産業はいろいろありましたが、そういうのはハードで、今度はソフトの分野だということをおっしゃるんですけれども、従来の産業と比較してそれぞ
れの時代をリードしていくいわゆるリーディング産業といいましょうか、そういうものになり得るものなんでしょうか。中身を伺ってみると、住宅問題とか道路とかあるいは公害関係、ごみ処理とかずっとあるようでございますけれども、その辺につきましてもう少し具体的なお話を伺えたらと思いますが。
#46
○参考人(新田俊三君) 今の問題を考える前提として、日本の経済における社会資本ストック水準の国際的に見た低水準ということをまず問題にしなきゃならないと思います。
 よく経済学でフローという概念とストックという概念を使い分けるわけですけれども、どうも我が国が豊かであるという意味が主としてフローのレベルで言われてきたわけですね。それは簡単に言いますと、耐久消費財を中心とした消費生活のレベルで高いと。ところで、私ども毎年のように外国に行って、時には長期滞在したりして感じます点は、いわば社会環境、生活環境に対する投資水準の違いということでございます。ですから、GNPの規模に対する社会資本の水準を国際的に比較した場合に、今、経済で落ち目であると言われているイギリスのはるか足元にも及ばないというレベルになっているわけですね。ですから、一般にこれから日本が内需主導型でどこに投資領域を見出していくかというときには、まずこれまで蓄積の不足している社会資本部門に投資を行っていくということが政策的に最も適切だろうと思うんです。問題はその方法と内容でございます。
 社会開発産業という言葉を私ここで取り上げておりますのは、差し上げたお手元の資料の中で幾分参考になるかと思いまして表を掲げておきましたが、災害防止であるとか用水供給、環境保全そして都市開発ですね、それと関連で住宅がある。それで一番真ん中に情報・通信という領域がございますが、過去、社会資本という領域は、やれ道路であるとか交通、鉄道網であるとかというそういう領域に加えて、先ほど私が公述の中で申し上げましたような単なるハードのレベルだけじゃなくて、ソフトの機能拡充を含んだような、つまり社会システムに対する投資をふやしていけと。それで、これが効果がありますのは、一つはその投資効果によって新しい市場が形成されていく可能性が大変強いからです。それは量的に申しましても、ここでちょっと幾分古いデータでございますが、掲げられているような市場規模で、非常に市場として有望であるということだけじゃなくて、実はこの新しい社会開発産業というのは多くがシステム産業の領域に属するわけなんです。システム産業という概念は、一つの総合産業と言い直してもよろしいわけですが、いろいろな分野の技術が結合して形成される有機的な総合産業でございますから、そういう産業を形成する場としては都市地域開発というのが最も有望な市場であるということになろうかと思います。ですから、都市地域開発産業というものを具体的に一つ一つチェックしてまいりますと、その多くが先端技術に結びついているということがおわかりになると思うんですね。
 これを逆に言いますと、日本は自動車、テレビで強くて輸出で諸外国に圧勝するという形をとって、次いで技術発展の段階としては、資料の別な項目で示しているとおり、ハイテクノロジーの領域に今競争の中心を移しつつあると。ここでも非常に強いわけですけれども、私は、この先端技術の領域で輸出競争力の強さだけで日本の将来の成長を図るのは大変危険だという判断を持っているわけです。これは絶えざる摩擦の中心になるだろう。私は公述で申しましたように、産業面での力は抜群だが社会面での不均衡は高まるだろう。この問題が二つ結びついたときに、日本の社会環境の保全やあるいは社会を安定せしめる装置としてのシステムを形成していくことに日本の強い技術力が使えないか。その場が一番適切なのが社会開発産業の領域ではないかということでございます。
 ですから、一、二例を挙げますと、最近例えば都市再開発でビルを建てるにしましても、単にれんがとかわらを建てるんじゃなくて、その建設には多くのシステム機器を導入するわけですね。さらに政策的に見ますと、公害対策あるいは産業廃棄物処理、それから新しい交通システム、そういったところでシステム産業というのは多くの技術の応用の場を見出すことができるわけです。
 今、こういった市場の形成の可能性についても既に財界でいろいろな試算が出ておりますけれども、例えば一昨年でしたか、都市再開発法の規制緩和でどういう新しい市場が構成されるかという試算などを私ども見ておりましても、もしこれが都市計画法のレベルまで含んだ規模ですと、年間一兆五、六千億円の市場が直ちに形成されるだろうということですね。それが市場規模だけじゃなくて新しいハイテクノロジーの応用領域を持った分野であるということ、できればそういう技術が社会開発産業の育成を通じて国民生活の安定、国民生活の環境改善につながるという政策目的と結びつけば、その市場形成は大変大きな意味がある、そういうふうに考えております。
#47
○松岡満寿男君 分権化の問題でございますけれども、先ほど来の御説明と先刻の委員の質問に対するお答えで大体想像がつくんですけれども、これは当然広域化を考えていかなきゃいけないと思うんですね。現在三千三百の都道府県市町村の数、これはかつて日本商工会議所あたりが道州制という問題を出してきていますけれども、さらに今全国に三百五十ぐらいの広域市町村圏というのができ上がっているわけですけれども、こういう行政の分権の単位につきましてお考えをちょっと伺いたいと思うんですが。
#48
○参考人(新田俊三君) これは、実は社会開発産業と申しましても、今御質問の問題に対しては、投資の対象によって当然性格が違うわけですね。ですから、例えば最近問題になっている交通問題なんかに関しましても、どのような地域でどういう設備投資をやるかという内容上の問題にかかわります。
 今お挙げになった市町村の広域にわたるということで一つの例を挙げますと、西ドイツで水資源の開発を行う際に、これはシュツットガルトの例なんでありますけれども、その周辺の市町村が出資し合って水資源の開発投資をやり、その利益を一種の共同体的な収益という形で分配するという形をとっております。それは一つの例なんですけれどもね。
 ですから、それは社会開発産業の具体的な内容に従って、比較的小さな規模でできるケースと幾つかの市町村にわたらなければできないケースとさまざまでございますので、一概には言えませんけれども、ナショナルプロジェクトにかわって社会開発産業という定義でやるときは、余りいきなり小さな町村レベルの投資を想定するわけにはいかないわけですから、一定程度の広域の利害を考えた投資にならざるを得ないんじゃないかと思います。
#49
○松岡満寿男君 ありがとうございました。
 村上参考人に、ちょっと時間がございませんけれども、パクスXでございますね、三十一世紀の日本の経済成長率はどうも悲観的な状況でありますけれども、また、ただいま新田参考人の第四図を見ますると、非常に日本は不安な状況になるようでありますけれども、このパクスXにつきましてはどのような国々が予測されるわけでございましょうか。一言だけで結構でございます。
#50
○参考人(村上泰亮君) パクスXの担い手が依然としてアメリカである可能性が随分あると思います。しかし、恐らく今までのパクスアメリカーナとの違いは、仮にアメリカが中心にあったとしても、幾つかの有力国がいろんな形でそれに協力するという形をとらざるを得ないことであろうと思います。その中で世界的な防衛のあり方、南北問題についての考え方の多少の変更が恐らく含まれるというふうに私個人の意見としては考えております。
#51
○松岡満寿男君 藤原参考人には時間がございませんので、どうも済みません。
#52
○高木健太郎君 先ほどから大変有益なお話を承
りまして、私は医学をやっておりまして全く専門違いでございますので、経済の方には暗いのです。ただ、私が常日ごろ疑問に思っておることをこの際お聞きしまして、お教えいただきたい、こう考えております。大変初歩的な質問をして失礼でございますが、お許し願いたいと存じます。
 まず最初にお聞きしたいことは、我が国は輸出超過で現在三百億ドルとか四百億ドルの輸出超過がある、それだけのドルが日本に流れ込んでいるということでありますが、先ほど藤原参考人も言われましたように、国民の一人一人はそう裕福な感じは持っていない。どちらかと言えば自分の生涯に何か不安を持っている。また住宅ローンとかあるいは教育費なんかにもかなり苦しんでいるというのが状態ではないか。一方、これを外国から見ますというと、よく国際会議が開かれますけれども、日本は非常に裕福であるから国際会議の費用を日本で持ってはどうだ、あるいは日本の参加のための会費をもっと上げたらどうだというようなことを時折そういう国際的なコンファレンスの場で言われるわけでございますが、一体この輸出超過のお金がどこへ行っているんだろうか。これは非常に初歩的で恐縮でございます。
 一方、そのくせにいわゆる政府の金が実は赤字百三十三兆円である。国民はしかし世界一の貯蓄傾向の民族であって、大変貯蓄が多い。四百兆円ぐらいは持っているんじゃないか。何かどこかちぐはぐなところがございまして、これをどういうふうに考えたらよいものか、ひとつ前川参考人にまず最初にお教えいただきたい。
#53
○参考人(前川春雄君) 輸出がそれだけありますれば、何ほどかその代金というものはどこかに入っておるわけでございますが、それはだれかの所得になっておるわけでございまして、今必ずしも裕福な感じはしないということでございまするけれども、そういうことがあっても全体の国民所得はそれだけ膨らんでおるわけでございます。それでもなお裕福な気持ちになっていないということでございまするので、私もよくわかりませんけれども、それはあるいはそういうふうな金の流れと申しますか、フローではなくてやっぱりストックの問題、過去の蓄積の問題ではないかというふうに考えます。ちょっとこれは私余り自信がありませんけれども、そうじゃないかなというふうな感じでございます。
 貯蓄が非常に大きいのに財政は大きな赤字になっておるということでございまするけれども、財政の赤字が一体大きいのか少ないのか。これはほかの国、総体的な話でございまするけれども、これは地方財政を入れますとまた多少あれでございますが、今の国家財政そのものにつきましては、ああいうふうな赤字はGNPの比率に対しますると非常に高い、アメリカに次いで高い、ヨーロッパの方ははるかにその点はよくなっているというのが現状であろうというふうに思っております。
 そういうことで、国は貧乏ですけれども、国民の方の所得はだんだんふえているというのが現状でございますが、その中でも日本の国民は貯蓄性向が高いということでございまして、この貯蓄が高いというのは一体裕福なのか、あるいは余り裕福でないので将来を考えて貯蓄をするのか、その辺は人によって違うかもしれませんけれども、必ずしも裕福だから貯蓄するということではないのかもしれないという感じを持っております。
#54
○高木健太郎君 もう一つお聞きしたいと思うのですが、アメリカの景気がよくなったということは、アメリカでは減税がしかれたとか、あるいはドル高で金が集まってきたとかというようなことで裕福になったのかもしれませんが、現実にはアメリカは大変私困っているんじゃないかなというふうに思うわけです。それはパクスアメリカーナといいますか、自由諸国の中の途上国を援助しなければならぬというので、メキシコとかブラジルとか、そういういわゆるラテンアメリカの方にたくさんの金を貸し出している。だから、アメリカの銀行なんかではほとんど利益の四分の一とかあるいは二分の一を途上国の利子によって賄っているということでございますが、メキシコは八百億ドルとかそういう負債を抱えて、そのために倒産同然である。ブラジルもそうではないかと思いますし、ラテンアメリカ一般にそういう負債の大きなものを抱えていると言いますね。その債務は、今までは自分の国から出るいわゆる原産物といいますか、そういうもので賄っておりましたけれども、もうそういうものも要らない、石油ならば要るけれどもほかのものは要らない。彼らは返す手段がないのではないか。そうすると、アメリカはたくさんの債権を抱え込んでおる、不渡り債権を抱えているというような状態で大変困っているんではないかなというふうに私は思うわけですね。そういうことが現在のアメリカの何か先詰まりの、あるいは経済の行き詰まりを示唆しておりまして、貿易の自由化を日本に幾ら言いましても、あるいは日本がかなりの自由化をしましても、それを支えるだけの、いわゆるアメリカの貿易赤字を消していくだけのとても輸入といいますか、収入がないのにそういうことをやらなきゃならぬというような羽目に陥っているんじゃないかなと、こう思うわけです。
 私は、北の方の国ですね、いわゆる先進国がもう売るところは全部売っちゃいまして、先進国同士はかなりの物資で飽和している。売るところは南であったんだけれども、その南に売る物がない。加工するだけの技術をまだ持たない。だから、基本的にこれを解決するためには南の途上国の技術をいかにして盛んにして、そして彼らの負債を返していくかということにあるんじゃないかなと。それが解決しないでは、ただ日本とアメリカ、あるいはヨーロッパと日本というだけの貿易収支だけではもう片づかないんじゃないかと思いますが、そういう南の方の途上国の負債あるいは債務というようなものをひっくるめて考えて、今後どういうふうに日本はしたらいいんだろうかと。聞くところによると、日本もかなり南の方にお金を貸しているんじゃないかと思いますし、投資をしている。しかしそれが償還できないという不安もあるんじゃないか、アメリカと日本は一緒にだんだん低落に陥っていくんじゃないかという不安も持っておるわけですが、この点前川先生はどういうふうにお考えでございますか、ひとつお教え願いたいと思います。
#55
○参考人(前川春雄君) 今の御質問、非常にいろいろの問題を含んでおりまするので、そのうちの低開発国、しかも債務累積問題に絞ってお答え申し上げたいと思います。
 ああいうふうな債務累積国というのが困難な状態に陥りましたのは中南米諸国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、チリ、ペルーというところでございまするが、どうしてもアメリカが一番近いところでございまするので、アメリカの銀行が非常にたくさん金を貸しておったことは事実でございます。また、日本もメキシコに石油の供給源をシフトしようとした、あるいはブラジルとは昔から特別の関係もございまするので、そういう国に対してヨーロッパの銀行以上に日本の銀行が金を貸しておったということも事実でございます。ただ、先ほど申し上げましたような世界同時不況というようなこと、しかもそれに伴って起こりましたアメリカの金利が高いということもありまして、そういうふうな幾つかの国が生産品が売れなくなった、それが借金の利払いもできなくなったということの大きな背景であろうと思います。この問題は、それだけ貸した方が悪いじゃないかというような議論もありまするけれども、貸した事実はこれをほうっておくわけにいかない。しかも、この処置を過ちますと世界の信用秩序あるいは信用組織というものに非常に大きな影響が出てくる。どこかが利払いをしないということになりますると、ほかの国もみんな借金の重圧にあえいでおりまするから、みんなそれに倣うということになりますると、もう世界的には恐慌状態になるということは不可避であったというふうに思います。
 そういうことで、そういうことが起こらないように未然に防ごうということが債務累積問題に対
する先進国の共通の認識であったわけで、幸い最悪の事態は過ぎましたけれども、今お話がございましたように、こういう国は自分の生産品を売って生きていかなきゃいけない、過去の借金の利払いもその生産品の輸出代金によって払うということでございまするから、やっぱりそれができませんとこの債務累積問題というのは再び深刻な問題になり得るわけで、最悪の事態は過ぎましたけれども、今はさらにそれを中長期的にどういうふうに考えていくかということを先進国の間でいろいろ討議しておる段階でございます。
 やはり世界経済が順調に発展するということが大事なことでございまして、それによって低開発国の製品を先進国が受け入れるということがございませんとこの問題は基本的に解決しない。したがいまして、世界経済のインフレなき持続的成長ということがあることが基本的には一番大事なことであろうと思います。その後で今もお話がございました低開発国がその輸出品を一次産品だけでなしにさらに多様化していく、先進国の需要にマッチしたものにするということも必要でございまして、そのための技術供与ということも非常に大事なことであるというふうに考えております。
 低開発国問題あるいは南北問題につきましてはそういう点でお答えしたいと思います。
#56
○高木健太郎君 大変これ重要な問題でございますが、原産品は余りもう売れない、石油以外のものはもう余り要らない、そして付加価値性の非常に多いものはまだまだすぐにはできないというような状態でございますから、債務による先進国の苦悩といいますか、そういうものは今後長く続くんじゃないか。これを早く何とか解決しなければアメリカのドル高もなかなかとまらないんじゃないかなという危惧を私は持っておるものでございますので、一つお尋ねしたわけでございます。
 次に、新田先生にお伺い申し上げますが、私、小川モデルというのはきょう初めてお聞きいたしましたけれども、高齢化とはどのように関係しているのか、ひとつ御説明をお願いしたいと思います。
#57
○参考人(新田俊三君) 小川モデルというのは、高齢化が進展することが経済成長にどういう影響を与えるかということをモデル化した理論でございます。これは、人口の高齢化のスピード、それから男女間の労働市場の構成の変化、それから労働市場における質の変化、さらに国民保険制度に対する影響、さらに公的年金、私が挙げました四つのチャンネルを通じて成長率にどういうふうに影響していくかということを分析したものでございます。
 ですから、公述の際にばらばらに項目ごとに、この項目は経済成長にマイナスの影響を与える、こういう図をお示ししたわけですが、ほかの要因を考えなくて高齢化一つ取り上げても、成長に対するマイナス要因が大変大きいということの例解として取り上げたわけでございます。ですから、例えば労働市場の問題からいいますと、だんだん労働市場における高齢者の持つウエートがふえてくるということが日本型の経営機構とか経営基盤に大きな影響を与えるわけですね。例えば年功序列賃金のあり方とか終身雇用制に対する影響とか、これは大変大きな衝撃を与えるわけでして、今、日本型経営モデルというのが世界的に大きな関心を持たれて、最もよいパフォーマンスを示す経営システムとしてだれもが勉強するパターンになっておりますが、そういうことを可能ならしめていた社会的な基盤が高齢化の進展とともに次第に変質してくる。例えば終身雇用制というのが維持できなくなるとか、年功序列賃金制度というのが一定程度変質してくるとか、そういうことの影響は恐らく免れ得ないんじゃないかと思いますね。そういうことを一つの理論体系として実証した貴重な例としてお話ししたわけでございます。
#58
○高木健太郎君 ありがとうございました。
 時間がございませんので、一言だけ新田先生からお伺いしたわけでございます。
 村上先生からも大変おもしろい、まとまったお話をお聞きいたしまして、大変勉強になりました。私も元来ちょっとペシミスチックな考えを持つ方でございますが、村上先生のお話を聞いておりますと、なかなか将来は模索しなければならぬような暗い面も多いわけでございます。これは村上先生にお聞きしたいんですが、非常にオプチミスチックな考えを持っている人は、先生と全く逆の考えを持っている人はどんなふうに考えておられるでしょうか。もし御存じならば御紹介をお願いしたいと、こう思いますが。
#59
○参考人(村上泰亮君) 私の考えていることの逆を申し上げればいいわけですから、うまくいきますかどうか試みてみますけれども、結局、全体的に申しますと、今発展してきております技術を使ういろいろな需要がうまく出てくればいい。先ほど新田参考人から社会開発産業というお話がありました。私個人はかなり疑問を持ちますけれども、仮にそういうものが出てきて、そこへ技術が組み込まれていって、先進国の中でそういう勢いがついてくる。とりわけアメリカがそういう点で勢いをつけてきて、貯蓄もふえ、それから政府の収入もふえてくるという状況になれば全体が伸びていく。そういう可能性はないことはないと思いますので、私は一〇〇%悲観的というのではございません。アメリカのレーガン政権はそういう可能性にかけて今やっていると思いますが、そこがまさに問題の分かれ目かと思います。よろしゅうございましょうか。
#60
○高木健太郎君 世論調査がよくございまして、日本の将来はどうだというので、割と暗い意見の方が多いようでございますね。私もそういうふうに思っておるんですが、今までは人まねをして、それを技術加工して、それの付加価値によって我々は生活するというようなことをしておったんですが、より創造的なものをつくらないとこれから先はだめじゃないかという、いわゆる発展途上国とは言いませんが、後進国がだんだん我々に技術ならすぐ追いついてきますから、もう少し創造的なものをつくって、恩恵を施しながら、日本が愛されて、貿易摩擦なんか起こさないようにというような感じでおったんですけれども、しかしその創造的なものも、どう使われるかによって、それが価値があるかどうかが決まるものですから、創造的、個性的な教育を盛んにしろと言ったところで、その効果がどんなものかは大変難しい問題だなと私は考えておるわけです。といって、初めからある目的を持って研究をするということもできませんし、そこら辺は今後どういうように教育の中に取り入れていくかということも考えておりましたので、もっと先生から、一番最後の第五項目の方が残っておりましたので、それもお聞きしたいと思ったのですが、時間がございませんので、これではしょらせていただきますが、ありがとうございました。
 最後に藤原先生に一言だけ。これも大変よくまとめていただきまして、私たち考えさせられるものが多かったわけでございまして、厚く御礼を申し上げます。
 一言だけ、時間がございませんのでお聞きしたいと存じますが、将来に向かってどういうふうな家庭といいますか、これは一口にはなかなか言えないでしょうが、どうなれば一番理想的な我々国民の生活だとお考えでしょうか。とても一口じゃ言えないことだと思いますが、例えば足るを知るというような限界をおのおのが東洋的に考えるべきであるというふうなお考えだとか、そういう抽象的なお答えでも結構でございますので、お答えいただければ、時間がございませんので許していただきたいと思います。
#61
○参考人(藤原房子君) 基本的には、やはりストックの充実ということは安定感を高める要素だと思いますけれども、それに加えて、暮らしに対して興味を持つということが大事ではないかと思うんですね。つまり、時間をかけられないということは興味を持ち得ないということでありまして、さっき労働時間短縮ということでちょっと触れましたけれども、男女ともにもう少しゆとりを持って暮らしを楽しむという場を持てば、私は家庭とか地域というのは今の日本の社会でかなり発
展の潜在エネルギーを持ったフロンティアだと思っております。
#62
○高木健太郎君 どうも先生方ありがとうございました。
#63
○橋本敦君 きょうは先生方ありがとうございます。大変限られた時間でございますけれども、私からもお聞きをさせていただきたいと思います。
 まず、前川先生にお伺いをしたいんでありますが、今、当面の問題になっております貿易摩擦につきまして、問題は我が国だけにもちろん原因があるのではなくて、アメリカの財政赤字、高金利、ドル高、こういったところにも重要な原因があるということは御指摘をいただいてもおりますし、よくわかっております。ところで、そうなりますと、ここのところをアメリカ自身がどのように手直しをしていく政策をとるのかということも私どもとしては見きわめたいわけでありますけれども、そこのところが今もう一つ分明ではない。そういうところで今後のアメリカ自身のこの点についての動き、若干でも先生の方に情報その他、御見解がおありになれば、ひとつ御指摘をいただきたいということが一つであります。
 それから第二点の問題としては、我が国自身の問題として内需の拡大ということをやっぱり一層やらなければならぬということも重要な課題であるわけですが、その場合には、内需の重要部分を占める個人消費の支出をどれだけ伸ばすかということが一つは非常に大事だと思うわけであります。その点でいえば、個人消費が我が国経済の中では非常に伸び悩んでいるということは、これははっきりしておる事実でありますが、今の我が国の財政事情からいって、例えば大幅減税を私どもは要求しておりますが、そういった減税などという財政の力で個人消費を伸ばすということにもなかなか踏み切れないと、いつも政府は言っておるわけであります。そういたしますと、どうやって個人消費を基軸としながら内需の拡大をやっていくかということについてはかなり知恵を絞らなくてはならぬと、こう思うわけですが、その点についてのお考えがおありでしたらお教えいただきたいと、こう思うわけであります。
 一口に言って、私どもとしては今日の日本経済の一つの姿として、輸出産業を中心にして大きな黒字、それから前川先生もおっしゃった、それに基づく対外投資が非常にふえておるということが一方であり、一方の局面では中小企業の倒産が続く、個人の消費支出の伸びが鈍化をしていくという、こういう意味で日本経済の二極構造という問題が大きな基底にある。だから長期的な展望としては、この二極構造を調整のとれたものに転換さしていくという、そういう政策的努力が国としては求められるのではないかというようにも考えておるのでありますが、そこらを含めて御意見を賜りたいのであります。
#64
○参考人(前川春雄君) 今の貿易摩擦の問題は、もちろん大きな対外黒字ということが背景にございまするけれども、当面問題になっておりまするのは、日本の市場が政府としていろいろ措置をとったけれども実際は開放されておらない、しかも日本のやることは、口では言っているけれども実際はやらないという、非常にアンフェアだ、フェアでないというところからきておるわけでございます。私どもの諮問委員会のあれも、市場開放ということは、それじゃもうアメリカ側から文句を言われないようにやろうじゃないか、原則自由でやろうじゃないか、制限はある程度してもいいけれども、それは国際的に妥当だと思われるような制限に限る、しかも最小限度に限る、しかも行政的に制限してもそれは透明度を持つ、余り官僚の裁量権というものにゆだねない、そういうことでアンフェアであるということをまず払拭しないといけない、その上でなおかつ黒字があれば、それはマクロの政策ということを考えていかなきゃいけないということでございます。
 それで、内需拡大とかいろいろ言いますけれども、先ほども申し上げましたように、やはりアメリカの方にもやってもらわないといけないことがございまして、財政の赤字削減ということをやれば、あるいはドルが弱くなるという、つまり高金利が若干緩和されるかもしれない、こういうことでございます。どういうふうな政策がとられますかわかりませんが、今アメリカの議会がやっておりまするのは予算案でございます。アメリカの会計年度は十月からでございますから、八六年度の歳出で二千億ドルの赤字のうち五百億ドルぐらい何とかして減らさないと金利が下がらないというふうに一般に言われておるわけでございますが、その歳出削減のことをどうやるかということが今、議会で議論されている。それができました後、今度は歳入の方の税の問題になるんだと思います。それがまとまりまするのは、やっぱり夏以降でございましょう。そういうことがあれば、非常に希望的なあれも入りまするけれども、あるいはドル高、あるいは高金利というものに若干の変化が出るかもしれない、そういうことを期待しておるということでございます。
 第二の内需拡大、消費はどうやればふえるのか、財政の力では何にもやれないじゃないだろうかということがございます。つまり貯蓄性向というのが、貯蓄率が非常に高いわけでございますが、家計調査で一八%が貯蓄だということならば八十何%は何ほどか消費に回っておる、その貯蓄性向を下げるということがどうしてできるかということでございましょう。なかなかこれはできないんだろうと思うんですね。そう簡単に変わるものではないというふうに思います。ただ一つ、物価が安定しておりませんときは、物価が非常に上がるようなときには自己防衛ということで貯蓄がふえる、消費が減るというのが今までの過去の経験でございます。私どもが物価を安定させることが第一だということを申し上げましたのはそういう意味でございまして、もし物価安定ということが続けば消費性向というものも上がる可能性もあるというふうに思います。
 二極構造の問題は、おっしゃるとおりに、日本の経済にはそういうふうなものがございまするけれども、中小の今の倒産その他はいろいろな問題がございますが、一つはやっぱり、こういうふうな技術革新の中の産業構造の転換期に入っておるということが大きな背景になっておるのではないかというように考えております。
#65
○橋本敦君 そこで、今おっしゃった物価高要因を抑えるということは、これは我が国だけでなく、国際経済でも非常に大事だと思うんですが、私が一つ新聞記事から心配をしておりますのは、日銀が「最近における欧米主要国の物価動向」というリポートをまとめられたようでございまして、この中で言っていることは、要するにアメリカのドル高が続きますとヨーロッパも含めて世界的に物価を押し上げる要因という、各国とも対ドル為替相場が下がっていきますというようなことから、今度は輸入インフレの傾向が助長されていくのではないかということで、そのこと自体が物価上昇を呼ぶのではないかという懸念を表明されたリポートが出ている、こういうわけですね。そうなりますと、貿易問題の解決ということでドル高問題が挙がっておるというだけじゃなくて、今度は物価問題ということで国際的にも問題になってくるということが心配されているというような状況でありますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
#66
○参考人(前川春雄君) ドル高ということは、どこの国でも自国通貨為替が安くなることでございまするので、輸入品がそれだけ値段が上がるということでございます。現在のところ日本でも、こういうふうに原燃料一切ほとんど全部輸入しなければならない国でございまするから、円が安くなればそれだけ原料価格が上がる、コストが上がるということにつながるわけでございます。ところが、幸いにして現在のところそれほど大きな弊害が出ておらない。と申しまするのは、原燃料の価格それ自身が上がってない。端的な例は、油のようにむしろ下がっているものもある。それ以外の日本が需要いたしまする原料価格が、世界的に国際商品価格が下がっておるということがございまするので、円安であるにかかわらず輸入品価格
が上がらないでおるということでございます。
 したがいまして、そういう事態が、もし原燃料価格、国際商品価格が今のような低迷状態でなくなったということになりますれば、非常な物価上昇圧力になるわけでございまして、その点は私どもも今物価が安定しているからといって円安でも構わないとは言っておられないだろうというふうに考えております。
#67
○橋本敦君 ありがとうございました。
 続きまして、今度は新田先生にお伺いしたいと思うのでありますが、要するに先生の御指摘になりました今後の経済見通しの中で、どういうような要因を考えなくちゃならぬかということが多々あるわけでございますけれども、要するに経済成長を阻害する要因というのが考慮の対象として非常に多く考えなきゃならぬという現状に我々はあると。そういたしますと、それを転嫁して、克服して持続的な経済成長へという展望を切り開いていくためには基本的にどうやらなくちゃならぬかということが課題になるわけですが、そこのところで先生が一つの問題として分権化構造への方向ということを御指摘になっているわけであります。この点について先生がお書きになりました
 「五%成長への中期戦略」という論文を私も拝読さしていただいたんですが、そこで一つの具体化の問題としては、地域分権化の問題、地域整備の問題として在来の都市地域開発、開発方式ではなくて都市計画法のレベルで進めることがよかろうではないか、こういうふうに御指摘をなさっておるんですが、これは一口で言うならば、地域の生活関連基盤投資へ向けて活力を持たせるという意味を含んでいるのか、それとも住民参加による地域づくりということを主眼に置いてその方向が展望されているというのか、そこらあたりどうなのかということでございます。
 そして、今日の状況からいえば、政府の方としては地域に対しては補助金一律カットというような、こういう非常事態もとらざるを得ないというふうに政府は言っておるわけで、そうなりますと、投資と財源という問題が先生の御指摘の中でどうなってくるかという問題も出てくるわけですね。そこらあたりひとつ、ただ一問でございますけれども、お伺いしたいわけであります。
#68
○参考人(新田俊三君) 時間がございませんので、ごく基本的な考えだけ申し上げますと、都市地域開発を都市計画法のレベルできちっとやるということは、あくまでもこれは公的な観点からのプランニングがあって、それには当然地域住民の参加という問題が名実ともに含まれていると思います。そういう秩序ある都市地域開発でなくて、今問題になっておるデレギュレーションの問題にしましても、余り無秩序にこれが進むと都市計画そのものが大変それ自身無秩序なものになるので、これは都市計画法というレベルでしっかり組み直す必要があるだろう。投資配分というものも、ただ有効需要がつくという観点だけじゃなくて、地域のニーズにいかに合致しているかというのが大前提でございますから、そこでそういう計画の問題を出したということです。できれば西ドイツ程度の地区詳細計画をきちっとつくる、そういう習慣をつける方が日本もよろしいんじゃないかと思いますね。
 それからもう一つ、地域に関して補助金ということでございますが、私が提言している都市地域開発は、中央からの財政補てんでやれと言っているのじゃございません。逆でございまして、都市地域開発を行うということは、財政金融面でも地域が自律性を持てということでございます。それがいかにして可能かということについては、今取り上げていただいた論文で多少サゼストしておりますが、一方においては社会資本に関する資金不足があって、片方で貯蓄率が高いという、この二つの問題を結びつけるのは、私はもっとグローバルなソーシャルアカウンティングが必要だと思います。社会的な投資資本勘定が必要だと思うんですね。それもできればフローのレベルだけじゃなくて、ストック形成の問題を含めた全体の資産勘定体系をつくる必要がありはしないか。ただ、こうなりますと、投資と資本形成の関係あるいは貯蓄の関係は一つの国民経済的なマネーフローのシステムになりますので、例えば郵便貯金の問題なんかを含めまして、いかに投資と国民的な資金の貯蓄を結びつけるかという政策金融的な発想が私は大事だと思いますが、ただそれは、在来型の固定的な金利体系が金利自由化によって非常に変更をこうむっている市場をそのままやれと言っているわけじゃございませんので、金融自由化はこれは必然でございますから、そういう新しい状況に対応しながらそういう政策金融の新しいあり方について少し議論を深める必要がありはしないかということでございます。
#69
○橋本敦君 最後に一問だけ、藤原先生それから村上先生、両方から意見をいただきたいんですが、最近の朝日新聞の興味ある世論調査で、色で国民意識を問いますと、今の世の中は灰色だというのが一番多い数で出ているんですね。これはやっぱり二十一世紀への展望なり現状から見て、国民意識としては将来不安を中心に意識が広がっているのではないかというように感じるのですが、村上先生のおっしゃった二十一世紀へのシステムづくりという問題も、やっぱり灰色ということは転換しにくい状況なのではないか。また、藤原先生の御指摘になった国民生活の面から見て、多くのミスマッチとかあるいは現状整備ができていない問題とかいうことが反映されているのではないかと思いますが、この灰色だという国民意識の世論調査について御感想を一言ずつお伺いして終わりたいと思います。
#70
○参考人(村上泰亮君) 灰色ということはいろいろな解釈が可能だと思いますが、一つには、豊かな生活といいますか、生活の安楽さの要素と不安な要素がミックスしているというところから出てきていると思います。それと同時に、見通しが非常に不安定だという全体的な不安感、それが背景にあると思いますが、一言だけ申し上げてよければ、その見通しの中に世界の状態がどうなっていくかということが非常に不安であって、にもかかわらず国内ではある意味ではいかにも安楽に暮らせる状態、その意味ではこの灰色をどこかで日本人が突破して黒と白に仕分けて、黒には正面からぶつかるということが必要ではなかろうかと思っております。個人的な意見を申しました。
#71
○参考人(藤原房子君) 将来に対する不透明感があるということから当然ではないかと思います。そしてそれは、単に資産があるかないかということではなく、仮に資産があったとしても安心して暮らせるだけの保障が見当たらないという現状から当然ではないかと思います。
#72
○橋本敦君 どうもありがとうございました。
 終わります。
#73
○抜山映子君 最初に、前川先生にお伺いいたしますけれども、アメリカは財政赤字に貿易赤字という双子の赤字を抱えていながら資本の方は大変流入しているわけですけれども、資本流入が日本を含めて主要国からどれぐらい、五百億ドルを超えるとか何か言われておりますけれども、内訳はわかりますでしょうか。
#74
○参考人(前川春雄君) 余りはっきり覚えておりませんけれども、この間ボルカー議長が議会で説明いたしましたときに、昨年中千億ドルぐらいじゃないだろうかということを言ったと記憶しております。そのぐらいだろうと思います。日本から幾らかちょっとわかりませんけれども。
#75
○抜山映子君 それからもう一つ、これは雑誌で読んだ記事なんですけれども、アメリカの高金利政策は対ソ政策の意味もあるんだという記事を読んだのですが、そのような面についての御見解をお聞かせください。
#76
○参考人(前川春雄君) そういう意図があるかどうかは私もよくわかりませんけれども、結果から言ってああいうふうな財政赤字というのが大きい、その中で防衛費というものが割合大きな要素であるということが関係ないとも言えないと思いますが、意図して高金利になってもいいんだということを、しかも高金利にすることが対ソ政策として有利だというふうに考えておるとはちょっと
私はそう思っておりません。
#77
○抜山映子君 それでは、新田参考人にお伺いいたしますけれども、今、法案なんかで人材派遣法というのが出ておりまして、非常に専門化が進んで、一方において人件費が非常に高くなっている、そういうことから今後就業形態が大きく変わるんじゃないか、現にパートタイマーの数も数年前と現在と比べますと大変に今日ふえておる。そういうことから、これからの就業構造の変化についての見通しをちょっとお話しくだされば。
#78
○参考人(新田俊三君) 経済の情報化が進むということ、これはソフト化が進むとも言ってよろしいと思うのですが、恐らく二十一世紀の就業構造は二十世紀型のパターンとは相当に変わってくると見てよろしいと思いますね。これはいろいろな形で解説されておりますけれども、一口に言えば、二十世紀型の工業生産社会における定型的、定時的な勤務体制がだんだん解体していく。男性中心の就業構造であったわけですね。男性は働きにいって家庭に所得をもたらす。それに対して就業構造のソフト化が進むということの一つの典型的な動向は、女子就業者の増高だと思います。過去四、五年の経過を見てみましても、もう女子就業者の増加テンポが男子就業者のそれを上回ってきております。これは高齢化の問題と大変関係がある問題ですが、一口に言いますと、学歴が高く、しかも自由時間がふえる女性が増大してまいりますと、在来の就業観を超えたパターンが出てくるんですね。企業に従ってどこかに行くというような今単身赴任の問題が大変大きくなっておりますが、これからの就業構造は女性就業者に象徴されるように、自分のキャリア、考え、生活環境に基づいて職を選ぶというパターンの生活観が出てくる。しかもそれを可能ならしめる技術条件もまた出てくるわけです。それは在宅勤務制の問題とかデータ通信の発達だとかいう技術的な裏づけもございますが、いずれにしても経済構造自身がソフト化していくということが新しい就業パターンをもたらして、次第にフレックスタイム等々に示されるような弾力的な就業構造をつくってくるだろうと。労働力調査の最近のデータを見ておりますと、現在直ちに求職活動はしてないけれども、何らかの意味で就業を希望している女性が六百八十万ぐらいいるというようなデータが出ておりますけれども、ただ、この人たちが就業を希望したが職がないといった場合に、果たして彼女たちを失業者と言えるかどうかが一つの技術的な大きな今後論争点になろうかと思います。
 いずれにしましても、簡単に申し上げますと、女子就業者の最近の増加とその就業パターンは、かつての単純なパートタイマーとはちょっと性格が違ってきている側面もございまして、二十一世紀の方向に向かう一つの質を示す事例ではないかと思います。そのことが、だから今後の雇用対策として、在来型の不況であれば公共投資をやれば失業が救えるという政策では十分効果を上げないと、したがって、それゆえに地域できめの細かいソフト関連部門を含めた雇用対策が必要になってくるという論理にもつながると思います。
 以上でございます。
#79
○抜山映子君 それでは、村上先生にお伺いしたいと思いますけれども、政府の役割の後退ということをお話しになりましたんですけれども、そこのところをもうちょっと具体的に例を挙げて教えていただければと思います。
#80
○参考人(村上泰亮君) 高度成長時代のやり方は基本的な形が決まっておりまして、これを官僚層が十分に勉強して、そしてシナリオを書いていくという形で、それはそれなりにうまく進んできたと思います。しかし、それが今できなくなった状況だというのはみんな同意するところだと思いますから、そこで将来の道を探っていくには、官僚層のガイダンスといいますか、誘導では事態は解決できないわけで、その意味ではもっと広く、官僚層からの指導でない形の発想、これが出てこなきゃいけないというのが私が申し上げた政府の後退ということの基本的な原因といいますか、理由です。それが実際に具体的にどうなっていくかというのは、地方であるとか、インフォーマルとおっしゃった藤原参考人の御意見も参考になりましょうし、多様な形が考えられると思います。
#81
○抜山映子君 村上先生にちょっと引き続きお教えいただきたいんですけれども、最近MOSS方式という、貿易摩擦の問題で次官級の協議が行われるようになっておりますけれども、これをもっと、それこそ政府の後退ということになりますと民間企業同士の話し合いと、こういう大胆な考え方も出てくると思うんですが、こういうことについての御意見はいかがでしょう。
#82
○参考人(村上泰亮君) 難しい御質問だと思いますが、政府の役割の後退ということを申し上げましたけれども、ある面では国際化を通じて政府の仲立ちの役割が強くなる面もあると思っております。ですから、今御指摘の点については、私としてはむしろ次官級といったような官僚レベルの会議を仲介にして貿易摩擦を考えるよりも、さらに高い層の、政治指導者層ではっきりした意見の集約が行われて議論する方がいいというふうに考えております。
 少し説明をつけ加えさしていただければ、次官級あるいは官庁の局長級の会議の場では各業界の利益がそのまま相手国にぶつけられる形になりまして、いろんな相互理解上の問題点を引き起こしているという点がございますから、国際的な場においてはむしろ政府が一つの国を代表して、責任を持って政策協調を行う側面がふえてくるのではないかと。先ほど申し上げたのは、主として国内のこれからのやり方についての考え方でございます。
#83
○抜山映子君 藤原参考人にお教えいただきたいのでございますけれども、ボランティア活動、これはインフォーマル活動の中に広く含まれるんじゃないかとも思いますけれども、ボランティア活動のあり方について教えていただきたい。先生の考えておられる構想を教えていただきたいわけです。
 私、ボランティア活動で一つ考えられますのが、純粋にボランティアに任しておきますと、どうしても各地域でばらばらになってしまうので、例えば老人介護の問題なんかについては国家的にもうちょっと組織化して、例えば、東京で自分の親が見れない者が他人の親を見れば、それを地方で返してもらえるような組織ができるとか、それから、今ボランティアをやっておけば、自分が老後に返してもらえるというシステムをとっているところもございますし、あるいはまた、大学の福祉科なんかでは教科に取り入れているところもあるとか伺っていますので、ボランティア活動のあり方について先生が考えておられる構想をちょっとお漏らしいただきたいと思います。
#84
○参考人(藤原房子君) 日本においてボランティア活動というのは極めて厳密な意味合いを持っておりまして、自主的で、かつ無償の行為であり、反対給付を期待しないということになっております。したがって、そういう純粋な伝統的な考え方から申しますと、今おっしゃられました幾つかの例はボランティア活動に該当しないというものも出てくるわけですね。つまり労力をどこかでカウントして、そこに蓄積をしておいて、その分を何年かたったら引き出して使えるというような、そういうギブ・アンド・テークというものをきちっと取り込んだインフォーマル活動のあり方というのは、もしかするとボランティアに該当しないという言い方もできるわけでございます。しかし、おっしゃいましたように、日本の現実からいいますと、実際問題としてそういう無償の行為をどこまでみんなができるか、経済的にも時間的にもゆとりがない中でどうやって相互に連帯・保障ができるかということを考えますと、ある程度蓄積をする、ある程度または有償という部分を取り入れる、さまざまな工夫が私は必要ではないかと思っております。
 したがって、古典的なボランティアといいますか、そういう純粋な形でのあり方はもちろん原則的に大切だと思いますけれども、これからの社会ニーズに応じて多段階的なさまざまなサービスの
やりとりというものを工夫する必要がありまして、おっしゃいましたように広域的なものもあれば、地元でフェイス・ツー・フェイスでやる場合もあれば、さまざまな形がこれは現在既に始まっております。したがって、そういった民間の自主的な活動というものを行政がどういうふうにバックアップするか、あるいは利潤動機で動いていらっしゃるそういう産業がどういうふうにそれをとらえていくか、これはこれから整理するべき問題だと思うんですけれども、いずれにせよ私は、そういった活動の多様化というものがこれから期待するべき姿ではないかと思っております。
#85
○抜山映子君 ありがとうございました。
#86
○青木茂君 委員長を初め、理事の皆さんの御好意で時間を少しふやしていただいたんですけれども、それでも足りませんから、大変失礼でございますけれども、村上先生と藤原先生に絞らしていただきまして御質問を申し上げさしていただきたいと思います。
 まず、村上先生にお教えをいただきたいんですけれども、よく九割中流ということが言われておるんですけれども、しかし何となく生活そのものがぎくしゃくと申しますか、こせこせと申しますか、中流の安定感がなくて、むしろアノミー度がふえているんじゃないかという感じがする。先生も何かそのように伺っていますけれども、私も半世紀ぐらい前に例の大塚久雄先生の歴史学にあこがれて大学の門をたたいたんですけれども、あのとき出てまいりますいわゆるヨーマン、ああいう中流の生活が今の日本の中流に何となくない。あのヨーマンが、エンクロージャーで「羊が人を食い殺す」というので崩壊しますね。そうすると、二十一世紀の日本の中流に対してエンクロージャーはないのか。貿易摩擦がそうなのか、高齢化社会がそうなのか、住宅ローンがそうなのか、あるいは税金がそうなのか。何か中流崩壊のエンクロージャーがありそうな気がしてしようがないんですけれども、そこら辺についてまず御見解を承りたいんですけれども。
#87
○参考人(村上泰亮君) 九割中流という言い方は、今御指摘がありましたように、昔考えていたような中流ではなくて、上流とも下流とも言いかねる、はっきりしたランキングがつかない膨大な日本人の固まりが出てきたということ以上のものではないと思います。
 ですから、昔考えていたような生活のしきたりに乗ってこれから安定した生活が営めるかといいますと、御指摘のようなさまざまな問題点があって、昔のエンクロージャーの話も確かに思い出すわけですが、私としては、もしも目を開くならば、日本人にとって最大の問題点はやはり国際化、実は外からいろんな形で押し寄せてきている責任をとれという形の言葉に対して、日本人全体が政治の上にどういう反応をまとめることができるかということが結局は大きいと考えております。住宅の問題、税の問題、高齢化の問題その他いろんな問題がありますけれども、どうやら大きさとしては国際化の問題が一番大きいのではないだろうかというのが私の意見でございます。
#88
○青木茂君 そういたしますと、かつて四十年代でございますか、昭和元禄という言葉がはやりましたんですけれども、そこで貿易摩擦の問題、国際化の問題が一番大きなエンクロージャー的なものだとするならば、今はちょっと元禄じゃなくて文化・文政時代に近いような感じがするんではないか。そうすると、今の貿易摩擦というのは、あのときの黒船的なインパクトを与えるんじゃないかと。そうすると、それに対して我々がそれを脱却するというのか、切り抜けるためにはどうしたらいいのかと。何か今の大蔵大臣の顔がどうしても僕は、水野忠邦と言うと失礼だけれども、松平定信に見えてきてしようがないんですよね。どうやって二十一世紀の黒船来航を切り抜けることができるかどうかということについては、先生の御見解はどうでしょうか。
#89
○参考人(村上泰亮君) 先ほど少し申し上げましたが、結局アメリカが相当中心になって動いていくという情勢は、これは大きな世界の戦争がないということからしてもはっきりしておりますから、アメリカの力がどれだけ回復するかということ、これが問題でありまして、これは多分にアメリカ自身の政策決定に依存すると思います。
 先ほど私申し上げようと思って申し上げなかったんですが、それとやや違う。これは高木委員が御指摘になりましたが、南北問題の絡みで、開発途上国における需要をどれだけこれから生かしていけるかということがもう一つの可能性としてあると思います。ですから、アメリカは軍事支出にウエートをかけていく方向と、それからデタントの中で世界全体の経済的な可能性を高めていくという方向の選択を迫られているという点があると思います。それに対して日本の政府当局者がどういう対応でそれに対処していくかという非常に重大な点に来ておるというふうに私は思います。
 ですから、黒船のときにはこちら側は国を開いた後一生懸命に追いかければよかったわけですが、今度は、国を開きますと責任者の一端になるわけですから、当時よりもむしろ大変な面もあるというふうに申し上げたいと思います。
#90
○青木茂君 私どもが二十一世紀を展望いたしまして政治的なシナリオをこれから書いていかなければならないわけなんですけれども、悲劇的なシナリオを書く方が現状に合っているのか、あるいはドン・キホーテ的というのか、喜劇的なシナリオを書く方が現状に合っているのか、あるいはロン・ヤス的というのか、メロドラマ的なシナリオを書くべきなのか、あるいは二十一世紀は日本の世紀だと、サクセスストーリー的なシナリオを政治的に書けばいいのか。ここら辺のところはいかがでしょうか、これからの日本を展望した場合に。
#91
○参考人(村上泰亮君) 日本人はまじめな民族ですから、なかなかシナリオの幅をうまく広げることができなくて、生まじめなシナリオあるいは悲劇的なシナリオにこだわるかもしれません。悲劇喜劇というのはいろいろな解釈ができますから、それで割り切って私申し上げられませんけれども、シナリオの幅を広くして、そして余り狭いところに落ち込まないような形――お答えにならないと思いますけれども、シナリオの広さを期待したいという感じでございます。
#92
○青木茂君 村上先生、ありがとうございました。
 時間が時間ですから、藤原先生にお願いしたいんですけれども、確かにマクロ的に見ますと、日本経済のファンダメンタルズというのか基礎的条件は悪くないですね。ただ、ミクロと申しますか、家計と申しますか、そういう立場から見ると、今申し上げたようにファンダメンタルズがいいとは言えない面がある。
 ところが、政策立案の方はいわゆる家計黒字論、実収入の二割ぐらい黒字が出ておるではないかと。黒字がそれだけ出ているのだから、もう少し税金出してもいいじゃないかというような家計黒字論というのか、家庭経済の方もファンダメンタルズがいいという前提で僕は政策が立案されているような気がするんですよ。
 この点について、先生は生活者の立場でどういうふうにお考えですか。
#93
○参考人(藤原房子君) 数字的には確かに黒字何割ということがはじき出されるわけですけれども、私は、金額に加えて質の問題をやはり加味することが大事ではないかと思っています。つまり、二割の黒字はいかなる苦労を伴って生み出されたかということであって、やすやすと生み出された余剰ではないという読み方が必要ではないかと思います。
#94
○青木茂君 こうも言えないでしょうか。先ほどちょっとお話がありましたように、非常に平均のトリックから生み出された黒字であって、どうも生活の実態というものはそれほどゆとりがない。それをゆとりがある前提で政策の立案をやったら我々は方向を違えてしまうのではないか、そういうふうな考えが成り立つかどうかですね。
#95
○参考人(藤原房子君) 申し足りませんでしたけれども、まさにおっしゃることを私もちょっと申
し忘れましたけれども、問題を抱えたグループがどこにいるかということをもう少しきめ細かくとらえる必要があると思うんですね。さっき申し上げました中高年世代というのが一見所得が最も多い、それから働き盛りの世代ではありますけれども、その人たちが将来に対して最も不安を抱えており、かつ生活で苦しんでいる世代だと思うんですね。しかも、その世代を多少なりと経済的にゆとりがあるということで見ておりますと、その人たちは将来高齢者の中心になっていくわけで、中高年期に非常に苦労をした人たちというのは、高齢期になって豊かで楽しい生活者にはなり得ないという、これは物の道理だと思います。したがって、そこら辺の処遇をし間違えますと、将来の日本の社会は灰色になりかねない。高齢者文化が極めてお粗末であるというのも、中高年対策に私は盲点が一つ潜んでおるのではないかと思います。
#96
○委員長(対馬孝且君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 参考人の方々には、お忙しい中を長時間にわたり本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。
 ただいまお述べをいただきました御意見等につきましては、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。本当にきょうはありがとうございました。(拍手)
 なお、本日参考人の方々から御提出いただきました参考資料等につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#97
○委員長(対馬孝且君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時散会
ソース: 国立国会図書館
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