くにさくロゴ
1984/04/10 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 農林水産委員会 第11号
姉妹サイト
 
1984/04/10 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 農林水産委員会 第11号

#1
第102回国会 農林水産委員会 第11号
昭和六十年四月十日(水曜日)
   午後一時二分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         北  修二君
    理 事
                高木 正明君
                谷川 寛三君
                最上  進君
                村沢  牧君
                藤原 房雄君
    委 員
                岩崎 純三君
                浦田  勝君
                大城 眞順君
                岡部 三郎君
                熊谷太三郎君
                小林 国司君
                坂元 親男君
                竹山  裕君
                初村滝一郎君
                星  長治君
                水谷  力君
                稲村 稔夫君
                山田  譲君
                塩出 啓典君
                下田 京子君
                喜屋武眞榮君
   政府委員
       農林水産省農蚕
       園芸局長     関谷 俊作君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        安達  正君
   参考人
       全国養蚕農業協
       同組合連合会理
       事        新井 芳男君
       日本生糸販売農
       業協同組合連合
       会会長      北原 岩男君
       養 蚕 農 家  宮田 忠助君
       蚕糸科学研究所
       長        福田 紀文君
       日本絹人繊織物
       工業組合連合会
       副理事長     白杉儀一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(北修二君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして、お手元の名簿にございます参考人の方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 本日は、繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。
 御意見をお述べ願う時間は議事の都合上お一人十五分間程度とし、その順序は、新井参考人、北原参考人、宮田参考人、福田参考人、白杉参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、新井参考人からお願いいたします。新井参考人。
#3
○参考人(新井芳男君) 私は、全国養蚕連の理事であり、また群馬県養蚕連合会の会長を務めております新井でございます。
 蚕糸業の振興につきましては、平素大変先生方にはお世話になっておりまして、心から感謝を申し上げるものでございます。
 群馬県は、養蚕農家が二万七千五百戸、畑地の四一%、約二万五千ヘクタールが桑園でございまして、中山間地の軽鬆火山灰地帯の基幹作物として農業経営の中心的な役割を果たしてきており、繭生産も全国総生産の二六%を占めるまさに養蚕の主産県でございます。
 なお私は、赤城山南ろくの勢多郡粕川村で総合農協の組合長も務めておりますが、村の農家戸数千百戸のうち四五%が養蚕に取り組み、地域環境から見て他の作物に転換が極めて困難な地域で、農協の農産物販売扱い高も繭が一位でございます。そのような中で、私たちは制度をよりどころとして、多少の価格変動にも制度を信頼し、国策に沿い、繭づくりに誇りを持って取り組んできたところでございます。
 ところが、昨年の一月以降、にわかに制度不安の問題が浮上してまいりました。それは生糸、絹の需給の不均衡、事業団生糸在庫の累増、事業団財政の悪化等を背景とし、第二次臨調等の指摘もあり、制度不安を醸す結果となりました。このため、五十九年度に入って生糸価格は基準糸価を大幅に割って推移することになりました。
 繭生産者はこれら事態に対し、五十八年秋には繭の凍結三千三百トンを決め、その凍結金利負担、さらに五十九年度に入ってからは断腸の思いで繭の二割生産制限を行い、みずから制度維持のために努力をしたわけでございます。しかし、市中は先行き不安をあおり、実勢糸価は急速に低落していきました。時あたかも春蚕の出荷期を迎えまして、製糸の基準繭価保証が危うくなるなど、繭取引に混乱を生じかねない様相を呈してきたわけでございます。そこで養蚕、製糸両者は、制度を守り蚕糸業の安定を図るべく、制度維持のための特別対策を講じてきたところでありますが、事態は極めて深刻な様相を深め、制度は危急存亡の期に突入、私どもとしても全く不本意ながら、基準糸価の期中改定をのまざるを得ぬ事態に立ち至ったわけでございます。こうした未曾有の荒療治により、生糸価格は落ちつきを取り戻し、生糸実需も活性化を呼ぶに至った次第でございます。
 この実態からしましても、蚕糸絹業がいかに価格安定制度をよりどころとしているか、御理解いただけると思います。したがって、蚕糸絹業の安定のためにも、制度の早期成立が望まれるところであります。
 新制度に対する要望といたしましては、我々養蚕農家は大きな犠牲を払ったが、糸価が順調に推移していることは、今後を見通したとき、まずまずは好ましい方向にあると考えられます。しかし、新たに制定される制度は、蚕糸業の実態と遊離したものであってはならない。我々の養蚕経営が損なわれないように、十分配慮いただきたいと思います。特に、その適用に当たりましては、蚕糸生産者が安心をして取り組み得るような特段の御配慮をお願いする次第でございます。
 その第一点といたしましては、基準となる価格レベルの問題でありますが、繭生産の実態を踏まえ、その生産条件等を十分勘案し、養蚕農家の安心して経営に取り組み得る価格レベルになるよう、お願いをする次第でございます。
 なお、六十年度の生糸、基準繭価等につきましては、既に昨年の期中改定の際に、引き続き六十年度も維持する、そういう約束をいただいておりますので、そのような形で今年度については特にお願いをする次第でございます。
 次に、第二点は、価格安定帯の問題でありますが、改正案では、異常変動防止措置が廃止をされ、価格安定帯が従来二重構造でありましたのが一重構造となるわけでございますが、私どもにとってこれに対する不安がないわけではございません。従来は安定下位価格並びに最低繭価は、生産費を基準としてその八五%を下回らない範囲で決めることになっておりましたが、改正案ではこれが撤廃されることになっておりますので、年々引き下げられる不安があります。したがいまして、価格安定帯の設定に当たりましては、生産費をしんしゃくして決定されるとともに、決定をされた安定帯価格については必ず守っていただくことについて、特にお願いを申し上げるものでございます。
 次に、第三点は、安定基準価格等の決定期日でありますが、改正案では五月までとされておりますが、五月は飼育期に入り、養蚕準備はすべて春先より始められております。したがって、養蚕経営の安定を考えれば、従来同様三月が望ましいところであり、私どもとしても計画性が立つことになるので、この点十分御配慮をいただきたいと思います。
 第四点は、事業団在庫生糸の処理の方法でありますが、私どもとしても在庫処理は早急にお願いしたいところであります。ただ、市況のいかんにかかわらず放出することは絶対に避けていただきたいということを、特にお願いを申し上げます。在庫生糸の放出を優先すると生糸価格は低落すること必至であり、したがって糸価の状況を見ながら放出をいただきたい。特にお願いいたしたいのは、実割りの生糸の廃止でございますが、従来の例から言いましても、実割り生糸価格が実勢の価格をかなり引っ張るという、そういうような作用もございますので、その放出に当たっては、価格を勘案することでなく、銘柄等を優先して実需者につなぐという方法を十分に考慮されたいと思います。
 これら事業団在庫生糸の軽減を図るためにも、輸入削減には最大限の力を注いでいただきたいと思います。輸入をそのままにしておけば、需要が活性化しましても国産生糸の需要は停滞し、事業団の積み増しになる危険性をはらんでおるからでございます。よって、輸入は断固抑制をお願いしたいと思います。なぜならば、絹需要が減退したとはいえ、まだまだ国産生糸は総需要の三分の二しかないというのが実態でございます。
 なお、事業団在庫生糸増大の原因は、輸入の増大にあったと考える。そこで、新制度の運用を一層効果あらしめるためには、何といいましても輸入の削減が必要であるというふうに私ども考えておるわけでございます。
 ここで輸入の実態について申し上げてみたいと思いますが、現在、生糸等の輸入は一元輸入制度あるいは蚕糸主産国の中国、韓国と二国間協定によりやや減少の傾向にあるものの、絹糸、二次製品については必ずしもそうではないわけでございまして、絹糸については、五十九暦年で二万二十四俵、前年対比三三%の増でございます。二次製品は二万六千二百四十七俵、前年対比一七%の増でございます。このようにして急激な増加を見ているわけでございます。
 なお、絹織物については、前年に比べてやや減ってはいるものの、六%減ということでございますが、今なお五万俵を超える輸入がございます。これら輸入絹織物等がふえればふえるほど、国内生糸の使用量が減少することとなります。私どもとしては見過ごし得ないことでございます。
 五十九暦年で輸入の総量を見ますと十二万二千七百三十二俵でございますが、これは繭に換算をすると約三万九千トンに相当いたします。また、輸入と国内生産とを生糸換算で比較しますと、国内生産が十七万九千六百六十二俵、五十九年ではございます。なお、輸入が十二万二千七百三十二俵ということでございまして、国産と輸入糸の比率は、国産が五九%、輸入が四一%。五十八年では国産が六一%、輸入が三九%でございますので、この数字からもわかりますように、輸入は数量的には減ってはおりますが、国産と輸入の割合を見ますと、輸入のシェアが拡大しつつあります。私どもが昨年において繭の二割の生産制限を行い、需給改善に努めているにもかかわらず、今なおこれだけの輸入があることは、生産者にとってなかなか納得できないというものでございます。国内の繭、生糸生産者が塗炭の苦しみにあえいでいるときに、輸入抑制は諸外国に理解をしていただけるのじゃないかなと、こんなふうにも考えるわけでございますので、この点十分御配慮いただきたいと、このようにお願い申し上げ、なお、輸入削減の努力を怠って、いたずらに国内産の繭の生産量を減らせということのないように、私どもとして特にお願いをする次第でございます。
 また、最近、昨年の繭の生産削減に伴い、一部で原料繭の不足を来している、このようなために乾繭相場が高騰しております。この現象を理由に、一部業者より外国産繭の輸入を要請する動きがありますが、私たちは政策の整合性から見ましても断じて許し得ないことでございまして、よって断固としてこれについては反対をするものでございます。
 以上、制度の適用等に当たって幾つかの要請を行ってきましたが、さらに蚕糸業の振興資金の活用に際しましては、制度研究会の報告並びに政府方針として、今後の養蚕については主産地の形成と中核的農家の育成を推進するとありますが、蚕糸振興資金や国庫補助金をもって集中した施策を講じ、生産性の高い養蚕農家を育成し経営安定が図られるよう、お願いを申し上げます。また、生糸の需要増進についても、特段の御配慮をいただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、新しい制度につきましては、現行の中間安定制度の根幹は維持されるという点と、生糸の一元輸入制度は維持される、私どもはそのように理解しております。どうか運用に当たりましては、制度、事業団が残って養蚕農家がなくならないよう、万全の御指導をお願いを申し上げる次第でございます。
 終わりに当たりまして、新制度が一日も早く成立し、私ども養蚕農家が安んじて繭生産に当たれるよう、特段の御指導と御配慮をお願い申し上げまして、意見の開陳を終わります。
#4
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、北原参考人にお願いいたします。北原参考人。
#5
○参考人(北原岩男君) 私は、全国の組合製糸の連合会である日本生糸販売農業協同組合連合会の会長を務めます北原岩男でございます。
 御高承のとおり、組合製糸とは、養蚕農家が共同出資をして製糸工場を設備し、みずから生産した繭をみずから製糸加工して生糸を生産して付加価値を高め、さらに販売に要する諸経費を軽減するために共同販売を行い、その利益を養蚕農家に還元し、農家経営の安定と向上に役立てるための組織でございます。
 蚕糸業の振興、なかんずく養蚕による農家経営の向上につきましては、先生方、平素より格別の御高配を賜りまして、深く感謝を申し上げる次第でございます。
 先生方御案内のとおり、蚕糸業は近年来低迷を続けておりますが、特に昨年は、現行の繭糸価格安定法を根幹とした制度に不安が生じ、蚕糸業も絹業も大変に混乱をいたしました。このために、制度価格を期中に改定するといった思い切った措置がとられ、個々には問題はあるものの一応混乱
がおさまりまして、生糸は流通も一時のような停滞もなく、現在は徐々に流れ出しております。しかしながら、今なお底流には制度に対する不安感がありまして、確実に安定したとは言い切れない実情であります。
 御審議中の法改正案は、現行の中間安定制度を基本とした生糸の一元輸入措置の継続という現行制度の根幹は維持されるものと私は理解をしております。
 生糸の需要増進は、価格の安定こそ最も重要なことであると思っております。そのためには、ぜひとも御審議中の法律改正を早期に実現させていただき、制度不安を一掃させて、長期展望に立った適切な運用によって価格も流通も安定させていただき、目前に迫っておる今年初の春蚕の掃き立てを安心してできますように、お願いをいたしたいと思います。
 新制度の運用につきましては、いろいろお願いすることがございます。
 まず第一は、改正案による安定基準価格のレベルでありますが、これは現行のままぜひ六十年度も据え置いていただき、設定された価格は、あらゆる政策を集中していただきこれを守っていただきたいと願っております。と申しますのは、昨年の期中改定によってようやくある程度の安定感が生じ、生糸需要者は生糸を計画的に買い入れることができるようになり、経営の目算が可能となったため、流通が活発化しました。したがいまして、価格が長期間変動がなく安定していることが、需要増を呼び起こす原動力となるからであります。
 第二は、蚕糖事業団の在庫生糸の処理であります。現在御審議中の法案で、事業団在庫生糸の特別売り渡しの方途が開かれると伺っておりますが、事業団在庫生糸の軽減が急務であることは私も承知をいたしておりますが、放出に当たりましては、時価に悪影響を及ぼさないことを最優先の上、長期的な需要の見通しを立てていただき、その上に立った計画的放出の調整をお願いしたいと思います。在庫生糸の放出を急ぐ余り、定時定量の放出をやみくもに行いますと、縮小した需要の枠のもとでは、実勢糸価の足を引っ張ることが明白であります。これがため、放出に当たっては、糸価の状況、需給の状況を十分に見きわめて、せっかくの安定制度が崩れないように御高配をお願いしたいと思います。
 第三は、生糸、絹織物等の輸入問題であります。我が国は、自由貿易を内外に示し、貿易の拡大によって今日の経済を築いていることは御承知のとおりであります。蚕糸類の輸入規制は、相手国のあることで困難なことと私も理解するところでありますが、しかしながら、国内において零細な農家や、そのなりわいに携わる小さな業者が減産を強いられ、やむなく経営を縮小せざるを得ない現状や、事業団に約一年分の多量の在庫生糸があって苦しんでいる昨今、これらの輸入について何らかの削減策を実施されることを望みます。
 御高承のことではありまするが、五十九歴年における絹織物の輸入は、二次製品を含めて生糸に換算して七万七千俵余りになり、我が国の絹業界を苦況に追い込んでおります。私は、この数量を皆無にされたいとは申しません。どうか事業団在庫生糸の正常範囲になるまでの当分の間、この輸入絹織物等の数量削減を強くお願いしたいのであります。幸いに御審議中の法案には、生糸に関しては、従前からの一元輸入措置を継続するということになっていると伺っております。どうか、困難なことは十分に承知をしておりますが、これなくして我が国の蚕糸絹業が残ることはあり得ないと思われます。よろしくお願い申し上げます。
 次に、事業団法における蚕糸業振興資金の拡充につきましては、ぜひとも実現させていただき、蚕糸業基盤の補強及び需要増進を促す方途に活用できますようにされたいと思います。また、事業団の累積損失につきましては、国家財政の現状にもかかわらず、その補てんの道が開かれると伺っております。御高承のとおり、我々蚕糸業界は事業団が唯一のよりどころであります。安定制度の維持の中心的機関であります。事業団機能の回復こそ、我々蚕糸生産者の最も望むところであります。
 終わりに当たりまして、この業界も縮小された産業とはいえ、山村において農家経営の柱として今なお営々と養蚕を営んで、国の大切な農地を守り、農村社会の維持に懸命に携わっている多くの人たちや、伝統産業として長い歴史のある製糸業、そして絹業の人々がともに、関係法規が一日も早く整備され、新しい制度が力強く発揮してくれることを望んでおることを申し上げ、私の陳述を終わりといたします。
 ありがとうございました。
#6
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、宮田参考人にお願いいたします。宮田参考人。
#7
○参考人(宮田忠助君) 私は、群馬県利根郡川場村で養蚕を営んでいる宮田忠助であります。このたびの繭糸価格安定法の改正に対して、生産者の立場から率直な意見を申し上げたいと思います。
 我が川場村は、標高約五百メートル、人口四千人の小さな準農村地帯でございまして、養蚕、水田、酪農、果樹、野菜等が主な作目でございまして、農家収入のうち約四〇%が養蚕の収入で占められております。
 私は、昭和四十一年、三十一歳のとき父親より経営を移譲され、従来の水田コンニャク経営から養蚕を基幹とした経営に転換を計画いたしました。養蚕を選んだ最大の理由は、収益性においては決して有利な作目とは言えないが、価格安定制度によって、基準糸価が保証され、これを大きなよりどころとして規模の拡大を図ってまいりました。
 山間高冷地における養蚕経営は極めて厳しいものがあり、労働生産性の向上を図るため、計画的な多回育を導入し、経営移譲後七年目にして待望の三トンを達成することができました。さらに、長男は群馬県立農業大学の蚕業学科を卒業させ、親子三人で力を合わせてここまで頑張ってまいりました。しかしながら、蚕糸業を取り巻く諸情勢は一段と厳しさを増し、特に昨年は繭の大幅減産と糸価の暴落、ついには安定帯価格の期中改定が行われたため、我が家の経営は減産と低迷により大きな打撃をこうむったばかりか、目の前が真っ暗となってまいりました。
 養蚕が、今後さらに減少または衰退の傾向をたどるとしても、私はもちろん、私の地域ではほかに転換する適当な作目はありません。我が村内では、先ほど申し上げた作目で経済が支えられておりますが、桑園を転換しますと野菜等生産過剰となり、価格が大暴落することは明らかであります。
 このような状況の中で、このたび制度研究会の提言等をもとに繭糸価格安定法の改正が進められておりますが、当初は安定制度が大幅に後退するのではないかと一層不安が募っておりましたが、新しい制度によって基本となる中間安定制度の根幹は維持され、生糸の一元輸入措置についても継続されることが確認できましたので、安堵の胸をなでおろした次第ございます。しかしながら、懸念される点もございまして、生産者の立場から率直に申し上げ、運用の面で適切なる措置を講じていただきたいと思います。
 まず第一に、改正によって異常変動防止措置が廃止されますと、従来繭の生産費を基準としてその八五%を下らない範囲内で最低繭価が決められてきましたが、これが撤廃となり、かわりに制度研究会報告にも示されている内外価格差の是正を考慮して決められることになりますと、基準繭価等は大幅に引き下げられるのではないかと心配されます。したがいまして、特に基準繭価につきましては、繭の生産条件の中にぜひとも繭生産費を十分考慮して決定し、私たち生産農家が将来にわたって再生産可能な繭価を実現していただきたく、強くお願い申し上げるものでございます。
 次は、先ほどの方も申しておりましたが、事業団在庫の生糸の処理についてであり、「生糸の時価に悪影響を及ぼさない方法」で売り渡すとして
ありますが、安心できません。一方で放出し一方で輸入をするイタチごっこのようなことは理屈が立ちませんし、在庫処理の効果も上がらないと思います。さらに、減産対策を実施しておきながら乾繭を輸入することは絶対に納得できません。長期的な需給の見通しを立て、生糸価格の維持を前提として計画的に放出する方法を講じていただくとともに、事業団在庫の適正化するまで輸入を停止または大幅削減を行うことが必要ではないでしょうか。事業団在庫の軽減が急務とすれば、輸入の軽減もまた急務であると私は考えます。
 第三は、従来、価格の決定時期は法第四条の規定により、「毎年三月」に決められるとありますが、改正によって「毎年五月までに」定めるようになっております。これはお役所中心的な考え方であり、極めて不親切な改正と言わざるを得ません。役所や企業においては年度初めには必ず事業計画、収支予算を立てるように、私ども農家も春先には少なくとも大まかな営農計画を立てます。それが、春蚕の掃き立て時期になっても基準繭価が決まらないのでは、繭の生産計画が立ちません。どうか養蚕農家に不安を持たせないよう、従来どおり毎年三月に決定をいただきたいと思います。
 第四点としては、政府の方針として、今後の養蚕については極力生産性の高い主産地の形成あるいは中核的養蚕農家の育成による体質の強化を推進するとありますが、かけ声だけでなしに、蚕糸業振興資金や国庫補助金をもって集中した施策を講じていただきたいと、かようにお願いいたします。もちろん、私たちも、生産コストの低減と付加価値の高い優良繭の生産に努める所存でありますが、養蚕こそ唯一の生きる道として懸命に頑張っている私どもが意欲を燃やして繭生産に邁進できますよう、特段の御配慮を賜りたくお願い申し上げます。
 終わりに臨み、今回の繭糸価格安定法並びに蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部改正に当たり、私たち養蚕農家の置かれている立場を十分御理解の上、成立の暁には一日も早く基準価格等をお決めいただき、さらに厳正な運用によって実勢糸価が基準価格以上並びに再生産可能な価格水準に安定することを期待してやみません。そして、次代を担う若き後継者に夢と希望を持たせ、明るい未来に向かって邁進できますようお願いいたします。
 以上、簡単でございますが、一言申し上げまして、私の諸先生方に対しての意見の発表を終わります。
 ありがとうございました。
#8
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、福田参考人にお願いいたします。福田参考人。
#9
○参考人(福田紀文君) 財団法人大日本蚕糸会の蚕糸科学研究所の所長をいたしております福田紀文でございます。
 法律案に対しまして、試験研究サイドから私見を申し上げたいと思っております。
 既に国内産業になっております我が国の蚕糸業におきまして、生糸の基準糸価というのは、原則としては需要と供給の関係において定められているのが基本かとも思いますが、伝統産業である蚕糸業を我が国において維持発展させるためには、生糸の生産費もまた他の農作物との比較収益性というものも十分加味して定められるべきであると思っております。
 農水省では、農家所得を四百五十万円と期待しておるようでございますが、養蚕専業農家において所得を四百五十万にしようとすれば、非常に大まかに見まして繭価を仮に二千円、所得率を五〇%というふうにいたしましても、年間四・五トンの繭を生産しなければなりませんが、このような超大型養蚕農家というのは我が国においては百戸にも満たないと思っております。また、一トン以上の繭を生産する一トン農家というのは、今日大規模養蚕農家として取り扱われて既に一万戸を超しているというふうに思いますが、それにいたしましても所得にすればわずか百万円程度でありまして、他の農作物との比較収益性から見ても、養蚕をやる魅力というのは最近になってかなり失われているようにも思います。養蚕農家がなくなれば元も子もなくなってしまうわけでございますので、生糸の基準糸価は原則として需要と供給の関係において定められるにいたしましても、生糸の生産費もまた他の作物との比較収益性も十分配慮した価格であってほしいというふうに思っております。
 次に、蚕糸砂糖類価格安定事業団の生糸在庫が十七万俵以上にも達しているということでもあり、これは我が国における生糸の約一年分の生産量にも当たるものでございまして、このこと自体が繭及び生糸の価格安定を妨げる大きな要因の一つにもなっておりますので、速やかに解消をする方途を見出すべきでもありますし、同時に、今後このような事態が生じないような対策というものもあらかじめ講じておくということが必要ではないかというふうに思います。
 この在庫生糸は、かつては約半量が、最近では約三分の一が外国糸と伺っておりますが、我が国の蚕糸業の現状から見れば、生糸輸入の一元化措置というのは、当分の間やはり継続すべきであるというふうに思っております。この相手国が中国及び韓国でもございますし、今日経済摩擦を起こしているアメリカではなかったということは、ある意味においては幸いであったというふうにも思っております。生糸輸入の一元化措置を講じている間に、私は我が国の蚕糸業が国際競争に伍していけるように、その体制の強化を図るべきではなかろうかというふうに思っております。
 約百年ほど前になりますが、世界の主要な養蚕国でもありましたフランスの蚕糸業の崩壊過程というものを、私、数年ほど前に調べたことがございますが、その事情というのは、今日の日本のそれと非常によく似ているという点が多いということに気づきました。
 第一は、高賃金の問題でございますが、フランスを一としたような場合に、当時のイタリーというのは三分の二、日本が二分の一、清国が三分の一であったというふうに言われております。今日、世界最大の生糸生産国である中国におきまして、養蚕農民の一人当たりの年間所得を千元、要するに日本円にして十万円とし、一戸の農家の働き手を三人とした場合には三千元、要するに三十万円であり、日本の農家所得四百五十万と比較いたしますと十五分の一強ということで、その格差が非常に大きいというふうに思います。
 それから第二は、当時のフランスにおいては、東洋生糸の追い上げということが言われておりますが、東洋生糸というのは、東洋は日本と清国がそれでございまして、今日の日本では中国がこれに当たるかというふうにも思います。
 それから次は、ブドウとの競合ということが挙げられておりますが、当時のフランスでは、養蚕とブドウとは競合関係にあったようでございまして、今日の日本では、非常に有利な作目である畜産あるいは園芸等の進出が著しいものがございます。
 それから、四番目に挙げられている理由としては、レーヨンの台頭ということがございます。当時のフランスでは、化学繊維でありますレーヨンの台頭が挙げられておりますが、今日の日本では合成繊維、特にシルキー繊維の進出が著しいものがございます。
 その間に講じられた主な政策というものを少し調べてみますと、一八九二年、ちょうど明治二十五年ぐらいに当たると思いますが、奨励金交付制度というものがされております。製糸家は東洋生糸の輸入禁止もしくは課税を主張したわけでございますが、既に東洋生糸を使用していた絹業サイドの強い反対で、養蚕家は生産された繭一キロ当たりについて、製糸家に対しては一かま当たり何がしかの奨励金が交付されたようでありますが、この間、やはり蚕糸業の衰退というのはとまらなかったようでございます。
 それで、一九三一年、昭和六年になると思いますが、輸入割り当て制の実施がされております。
生糸の輸入に割り当てを課するとともに、撚糸であるとか、あるいは絹織物についても課税の引き上げを行ったわけですが、それにしても養蚕農家の脱落というのは防止することができず、一九三五年、要するに昭和十年というようなころには一万戸にもなり、一九四〇年、昭和十五年には壊滅するに至っております。また、一九六五年、昭和四十年には、南フランスにあった唯一の製糸工場というのが閉鎖されているというふうに言われております。
 私は、フランスの蚕糸業の崩壊の原因も、またその間に講じられた政策というのも、今日の日本のそれと対比してみますと、かなり似通った点が多いというように思います。当時のフランスというのは、微粒子病の対策としてルイ・パスツールの袋取り法があるにしても、概して養蚕には技術らしいものがなかったようでございまして、蚕作が常に不安定であって、脱落というのは、小規模よりも大規模養蚕農家の方から起こったというふうにも言われております。また、養蚕の科学及び技術についての関心というのも非常に薄く、これを重視しなかったので、特に養蚕業におきましては脆弱な体質しか残らなかったというように言われております。
 当時のフランスと今日の日本との最も大きな違いというのは、私は蚕糸科学と技術があるかないか、その有無によるというふうに思っております。今日の日本では、世界の水準をはるかに超える蚕糸科学と技術を持っていることでもございますし、これを活用し、我が国の蚕糸業の体質強化というものを図って、国際競争に伍していけるようにすべきであるというふうに思います。
 近代化した今日の日本で、労賃の非常に安い開発途上国と全く同じ仕組みの養蚕を実施する限り、将来、日本で養蚕業が成立する条件はないというふうに常々考えており、新しい技術というのを積極的に導入をし、そして追いつかれれば引き離していくということが重要であり、今日の状態では、ここ数年間、蚕糸科学と技術に大きく期待するしか方策がないというふうに考えております。しかるに、最近の風潮というのは、今日の蚕糸業というのは往年の蚕糸業ほど重要性がないということで、また蚕糸業の規模が縮小されているということから、蚕糸関係の大学であるとか国公立の試験研究機関等の縮小というのが図られておりますことは私はまことに遺憾でもあり、今こそむしろ蚕糸科学と技術者の充実と投資というものが行わるべきであるというふうに考えております。
 一例を申し上げますと、今日、日本の大学ではもう既に製糸科、糸を繰る製糸科というものがなくなりまして、製糸工場において専門家な知識を持った工務担当者の後継者養成というものの道が閉ざされておりますが、私はむしろこのような方面から、我が国の蚕糸業の維持発展には大きな支障を来すんでなかろうかというふうに思っております。革新的な一つの技術の問題といたしましては、養蚕につきましては既にもう人工飼料というものなり、あるいは最近よく言われるバイオテクノロジーの導入の問題もございますし、あるいは土地生産性の向上とか、あるいは蚕の飼料効率というものの向上などを通じて、土地及び労働生産性の飛躍的な向上を図るということが必要ではないかと思っております。
 それから、利潤の非常に少ない製糸の分野においては、やはり当面の問題解決に当たるとともに、高騰するところの賃金対策として、コンピューター等を使って製糸工場の人手をできるだけ削減した経営技術というものを確立をし、それから二十一世紀においても生き残れるような技術の蓄積を今から始めておくべきではなかろうかというふうに思っております。
 次に、絹の用途拡大の問題については、日本人の着物離れによって絹の需要というのは減退をいたしておりますが、生糸の性能から見れば和装に一番向いているわけでもありますし、着物の需要をふやすということが第一義でありますけれども、また一方では洋装分野への進出をも図らなければなりませんけれども、この洋装分野には既存の繊維というのがもう既にありまして、絹の進出を必ずしも歓迎しているわけでもありませんので、その進出というのは容易ではないという覚悟の上において、洋装分野や、あるいはニットの分野に進出すべきであろうというふうに思っています。しかし、生糸の性能にはおのずから限界がございますので、洋装分野あるいはニットへの進出には、それに適した生糸、いわゆる新形質生糸の創製ということが必要でございますし、また価格面等も含めて、他繊維との複合絹織物の開発も必要なんではなかろうかというふうに考えております。
 よく二十一世紀は文化産業の時代でもあるとも言われていますし、付加価値の高い絹製品の輸出というのは考えられないんであろうかというふうにも思っております。絹織物には長い歴史と伝統があり、卓越した技術というものが今日まで継承されております。衣服は、もう既に美しさを着る時代にも入っているとも言いますし、また、東洋的センスも十分国際的にも高く評価され始めようとしております。我が国の蚕糸絹業というのは今日極めて厳しい局面を迎えていますが、これを打開するには絹の用途拡大しかその道がないんではなかろうかと思います。
 最後になりましたが、蚕糸絹業において、私は生糸価格問題というのも極めて重要な問題であると思いますが、それ以上にやはり国際競争に伍していけるような体制づくりの方が、先ほど申し上げたフランスの例を見ても明らかなように、より重要なんではなかろうかと考えております。
 終わります。
#10
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、白杉参考人にお願いいたします。白杉参考人。
#11
○参考人(白杉儀一郎君) 私は、日本絹人織織物工業組合連合会の副理事長といたしまして、国内絹織物関係並びに生糸関係を担当いたしますと同時に、生糸消費の約三五%を消費いたしますところの丹後織物工業組合の理事長をいたしております。
 まず、諸先生方にお礼を申し上げたいと思っておりますが、平素、蚕糸絹業のために大変な御高配をいただいておりますことを、厚くお礼を申し上げる次第でございます。
 私たち織物業者は、何といたしましても原料がなければやっていけないわけでございまして、養蚕、製糸の方々とは本当にもう三位一体であるという形で、いろいろの面で協力し合ってまいっておるわけでございます。特に私たちの組織の絹織物業界は、呉服をつくっておるわけではなくして、呉服になる素材をつくっているわけでございまして、全く生糸を売っておるに等しいような非常に付加価値の少ない仕事をやっておるわけでございまして、そういう面からも養蚕、製糸の方々とはもう本当に協力し合わねばならないというふうに考えております。ただ、残念ながら、いろいろの面で利害が衝突するわけでございまして、特に最近、私たちの団体の全国絹織物業界は、織機の台数にいたしますと約五〇%に落ち込んでまいろうとしております、今年度廃棄をやりますと。また、織物生産数量もここ十年ほどの間に約四〇%に落ち込んできつつあるというような状況でございまして、全く各産地ともこのままでは各団体組織さえ維持ができ得ないというような状況で、転廃業が続くと同時に、一方では化学繊維なり綿繊維なり、そうしたものに転出をいたすというような実情の中にあります。
 したがって、本当に利害は一つであるべきでありますのにもかかわりませず、ややもいたしますと、私たちの団体はいろいろの面で養蚕、製糸の方々と反対のことを申し上げねばならないというような心苦しい状況でこざいます。本日も率直に我々の団体のことを申し上げ、しかし、あくまでこうした苦しいときにこそ蚕糸絹業が一体になってこの危機を乗り切らなければならないんだという気持ちは持っておるわけでございまして、そうしたものについてはお互いに辛抱し合い譲り合っ
て、そしてやっていくんだという精神はかたく持っておることを、まず申し上げておきたいと思っております。
 まず、具体的に申し上げてまいりたいと思っておるわけでございますけれども、一つは、今回の法律改正の骨子は、生糸の価格安定措置の改善を図ることと、また一方では、事業団にあります大量の糸を円滑に処分を図っていくという法律改正案であるというふうに私たちは感じておりました。まず、大きな前進であるということで賛成いたしておりまして、一日も早く法改正がなされることをお願い申し上げたいと思っております。ただし、改正後につきましては、法律の運用というものが非常に大切だというふうに考えておりまして、さきに農水省並びに通産省で研究の結果がいろいろと発表されておりますけれども、そういう指摘事項を着実にいろいろの面で実行に移していただくというような方向で、特にこうした点をお願いを申し上げたいというふうに考えております。
 また、現在、私ども絹織物業者が抱えている問題はいろいろございますけれども、特にお願いしたいことを要約いたしますと、次の二点でございます。
 一点は、生糸価格水準の内外の格差の圧縮が、でき得るなら極力早く、少しずつでも達成していただくように、お願いをいたしたいというふうに考えております。これの理由といたしましては、なぜ国内の絹織物業者がこれほどまでに落ち込んでおるかということは、和装需要の末端売れ行きとかいろんなことが言われておりますけれども、最大の原因は、やはり輸入絹織物のために大きな打撃を受けております。
 いま一点は、国内の化合繊、綿でありますとか、そうした分野から絹織物分野に入ってこられたシェアの大きな問題に関係しておるというふうに御理解いただきたいと思っております。昔から、生糸と綿と化合繊との価格というものは自然に需要と供給の中で出ておりまして、大体毛糸に対しましては生糸は三倍ぐらいのものが妥当であるということで、長い間そうした状況が続いておりましたけれども、現在はそれの約倍ぐらいに生糸はなっておるという状況でございます。また、綿糸につきましては大体七倍ぐらいのものであるという状況でございましたけれども、現在は十六倍のものに生糸はなっておるという状況でございます。特に化繊関係のそうしたものが大きい開きをしておりまして、従来ポリエステル等におきましては二・三倍の差であるという状況でございましたものが、現在では二十三倍にまで生糸はなっておるという状況でございまして、この合繊関係の浸透が、いろんな状況の中で、具体的に申しますと、裏物でありますとか兵児帯でありますとか襟でありますとか、もう大変な分野に化合繊の関係が入ってきておるということを申し上げておきたいと思っております。
 私たちが昨年末におきまして、基準糸価を一万円に下げていただきたいということを勇気を持って要望いたしてお願いをしたわけでございます。一万円に下げられたらどれだけ我々の織物業界はつぶれるんだということを予測いたしますと、なかなか重大な決心ではございましたけれども、このまま推移するなれば、こうした先ほど申しましたような状況で、輸入織物とその他の繊維によって絹織物業界は崩壊されるんだ。そうなれば、ここで一度何とかひとつ絹織物業界が立っていけるようなところまでお願いがしたいというようなことでお願いをいたしたわけでございます。これは、すなわち輸入織物と対抗し洋装分野へ入り、またいろいろシェアを奪われたものに絹織物が取ってかわって取り返していきたいというような考え方で申し上げたことを、この機会に申し上げておきたいと思っております。
 次にお願いしたいことは、実割り生糸を極力増枠されたいということをお願いしたいわけでございます。ややもいたしますと、実割り生糸を機屋に与えると、その分だけ国産糸の消費を減少させ、生糸の市場価格を引き下げるものだとのいろいろ先ほどからの御意見もあるわけでございますけれども、これは本当に絹織物業界、すなわち養蚕の方々、製糸の方々がつくったものはだれがそいつを消費するんだということを御理解いただくなれば、織物業界もやはり生き残れなかったら幾ら養蚕をやっていただいても生糸をつくっていただいても、これは消費するものがないんじゃないかというようなことを考えておるわけでございまして、この実割り生糸は高い国産糸を使わせることの一つの消化剤としてわずかなものをいただいておるという状況でございまして、この実割り糸が出ないというような状況になってまいりますと、国内の絹織物業界は急激な崩壊をいたすだろうというようなことを考えておるわけでございます。
 私たち絹織物業者といたしましては、生糸の一元輸入が続く限りは、何とか絹織物業界も一元輸入をしていただくべきは当然じゃないかというようなことを考えまして、そして二度にわたりまして、五十二年、五十五年に猛運動をいたしまして、少なくとも一元輸入の続く限り絹織物もそうしたことをやっていただきたいということで運動をいたしたわけでございますけれども、工業製品であるからこれはだめであるというようなことから、それの代償として、三省――農水、通産、大蔵の了解、閣議の了解事項として、実割り制度というものが設置されたわけでございまして、当時は三万俵ということでございましたけれども、逐次そうしたものが減らされてきておるというような状況でございます。
 先ほど来より、基準糸価を割ったら実割りをとめろとか減らせとかいう話がいろいろ出るわけでございますけれども、基準糸価を割るのは何で割るんだ、すなわち織物業者が一番の苦しいときに立ち向かっておるんではないか、それで基準糸価が守れないんだというようなことを考えていただくなれば、本当に実割り生糸というものが大きな役割を果たしておるんだということを、ひとつ先生方にぜひ御承知をいただきたいというふうに考えております。
 なお、織物にはいろいろのデニールの生糸が要るわけでございますけれども、国内では全然生産されておらないデニールも今ではあるということでございまして、特に十四中のごときは皆無でございます。それから二十中、二十一中は、日本の生産は七%程度であるというような状況でございまして、従来からのいろいろの織物をやっていくがためには、どうしてもそうした今の実割り生糸を配分していただかなければならないというようなことも、ひとつ御了承いただきたいと思っております。
 大体、実割り生糸は、本来は二国間協定で瞬間タッチ方式でいただいておりましたけれども、現在事業団にあります五年、六年以上、この間までは七年の生糸が出ておったわけでございまして、そうしたものを国内消費の生糸にスライドいたして毎月約二千俵の糸をいただいておるわけでございますけれども、それを私たちで割り出しいたしますと、国産生糸の一一%に当たるものをお出しをいただいておるというような状況でございまして、全く微々たるものの対策であるということから考えていただきたいと思っておるわけでございます。どうかひとつ、こういう面でいかに実割り生糸が重要なものであるかということを、特にお願いを申したいと思っております。
 簡単に今、織物関係の実情を申し上げますと、京都室町で、輸入織物と私たちの製造します国内の織物とが、一反三千円ぐらいの価格差で取引をされておるわけでございまして、随分私たちも輸入織物よりも負けないものということで、新商品の開発を次々やっていくわけでございますけれども、約一カ月半か二カ月たちますと、もうそれが韓国ででき台湾ででき、現在ではシンガポールであるとか本当にビルマの方でまでそうしたものができてくるということでございまして、どんどんどんどん低賃金のところへ織物が流れていくということでございます。織物の紋のようなものでも、もうきょうでは、すぐそうしたものが持って
いかれるというような、コンピューターの関係で出ていくという状況でございます。こうした安い織物に絶えず牽制されまして、非常に絹織物産地が日に日に落ち込んでいっておるという状況でございます。
 ちょうど私たちの統計で、事業団の発表なりそうしたものからやってまいりますと、輸入織物は五十九年一月から十二月で大体生糸に換算いたしますと五万一千百俵、約二十八%、我々の国内消費のものの中から出てきております。また二次製品で一五%、二万六千二百俵ほど輸入されておるわけでございます。これも、だんだんだんだん二国間協定が数量を狭めてまいりますと、今度は二次製品なり三次製品に化けてまいりまして、最近では着物に仕立てたものまで、黒の紋付の羽織でありますとか喪服でありますとか、そういう仕立てたものまで国内に輸入されてくるという状況でございまして、これは完全に二国間協定の数量の中から外れておるという状況でございまして、こうしたものをいろいろの量で測ってまいりますならば、まだまだ相当なものが輸入されておるというふうに考えておるわけでございます。
 何とか今、絹織物業界の私たちは、少なくとも実削り生糸を四千俵ぐらいに、倍ぐらいにひとつふやしていただきたい。このふやしていただいたのは、決して輸入してきた生糸をいただきたいと言うておるわけではないわけなんでありまして、事業団にある糸を出していただいて、そしてこれによって織物業界が何とか消費のため、本当に少しでも海外の産地と対抗ができるような措置をとっていただくことが、ひいては蚕糸絹業なり、そうした皆さんにも影響を及ぼしてくるんだろうというふうに考えておるわけでございます。
 今、丹後も三月末で前年対比を出してまいりますと、八%の昨年対比落ち込みでございます。これから四月、五月、六月、七月とずっと不需要期を控えてまいりますと、かなりの消費落ち込みが出てくるだろうと思っております。三月までは二国間協定のクォータが切れておりまして、若干輸入織物が入るのがとろくなっておったわけでございますけれども、この年度がわりになりましてから急激に今度は織物がまた入ってくるだろうというふうに考えておるわけでございます。これをいたしていただくのには、何とかしてひとつ闘えるように実割り生糸をふやしていただくということを重ねてお願いをいたしまして、私の話を終わりたいと思います。
#12
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳を終わります。
 それでは、これより参考人の方々に対し質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#13
○村沢牧君 参考人の皆様方には、きょうはお忙しいところを御出席いただきまして、いろいろと貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。私たちの今後の審議の参考に供させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、私の方からそれぞれの参考人の皆さん方に御質問申し上げますが、時間も余りありませんので、簡潔に申し上げますので、ぜひ御答弁の方もよろしくお願いしたいというふうに思います。
 まず、全養連の新井参考人にお伺いいたしますが、全養連は昨年の十一月九日に日比谷公会堂に全国から五千人の養蚕家を集めて、安定制度を守ること、あるいは六十年度も一万四千円の基準糸価を堅持すること、それから輸入を全面的に停止をする、こういう集会を開いたわけであります。多くの国会議員の皆さん方の決意表明や激励を受けたということでありますが、残念ながら私どもにはそういう御招待がなかったわけでございます。
 そういうことは別といたしまして、しかし、その大会の後一週間足らずして、暴挙とも言われるような期中改定をされた。実は私は、出席した養蚕家の皆さん方から、何としてもやるせない気持ちだということをよく聞いておるんですが、全養連としてはこういう養蚕家の皆さん方の気持ちをどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。なるほど、昨年は激変緩和措置として補給金も出したわけですが、ことしからそういうものもない。どういうふうにこの養蚕家の皆さんの気持ちを受けとめておられるのか。さらにまた、全養連としては、この期中改定をしたことについてどのように評価をされておられるのか、そのことが一点であります。
 二番目には、お話がありましたように、異常変動防止措置が今度の改正案によってなくなる。したがって、これからの糸価、絹価は需給あるいは内外格差あるいは経済事情等を考慮して価格を決めるということになって、生産費を基準として価格を決めるという、こういう法的根拠はなくなったわけですね。そうすると、やっぱりこれもいろいろ心配が出てくるわけです。先ほどそのお気持ちの一端をお聞きをしたわけでありますけれども、そういう場合になっても現行の糸価、最低絹価の水準はやっぱりこれ以上下がってはいけないというような気持ちも私は養蚕家の皆さん方から聞いておりますけれども、全養連としてはどのように受けとめていらっしゃるのか。
 もう一点でありますけれども、農蚕園芸局長の諮問機関であるいわゆる研究会、この報告を見ても、その後、農林水産省の我々の質問に対する答弁を聞いておりましても、今後はさらに養蚕や製糸が縮小される、こういうようなことを言っているわけですね。そうしたことに対して、制度は残っても、お話がありましたように養蚕家がだんだん減っていってしまう。これに対しては全養連としてはどういうふうに養蚕家の、あるいは行政の方向というのを受けとめており、行政に対しては何を求めていこうとされるのか。
 以上、三点について、ぜひお考えをお聞かせ願いたいというふうに思うのであります。
#14
○参考人(新井芳男君) ただいまの村沢先生の御質問に対しましてお答えいたします。
 最初に、今の期中改定に対する評価の関係でございますけれども、これにつきましては、事業団の在庫が十八万俵に近いそういう異常在庫に膨張したということについては、私どもとしても認めざるを得ない。このようにして在庫が膨張したということについてはいろいろの理由もあるわけでございますけれども、しかしながら、このような状況の中でこれをどう今後ここで切り抜けるのかという、そういう局面に立ち至ったわけでございますけれども、私ども団体とすれば、何としても需要の減少、それから、さらにはまたそれに対する輸人の増加あるいはそういうようないろいろのものが相乗いたしまして需給のバランスが崩れてきたということでございますので、この際、需給のバランスを一日も早く改善しなくちゃならないということが当面の課題でございます。それに従いましての今回蚕糸業に対する活性化を求める、そういう面で一応国があえて期中ではあるけれども一万二千円に引き下げたということでございますので、私どもとしては非常に遺憾でございますが、何としてもこの局面打開をするためにはやむを得ざる措置であろう、このように評価をせざるを得ないんじゃないか。それをすることによって、その後、非常に糸価が順調に回復をいたしましても活性化が出てきたということでございますので、今回の期中改定は、非常に私どもとしても苦しい今回の改定ではございますけれども、その後の市況がかなり活性化が出てきたということについては一応の評価はしているという、そういうことでございますので、今後これをさらに引き下げをする、そういうことのないように特段の御配慮をいただきたいというのが、私どものお願いでございます。
 次に、二重構造の廃止によりまして、生産費の八五%を保証するというこのことが今回は外されてきたわけでございますけれども、これについては私どもとしては不安がないわけではございません。当然一応心配はしておりますが、しかしながら、今回の安定制度の根幹は維持するというふう
に私ども評価しておりますので、問題は、価格制度を確実に国が守っていただくならば、一応今回の二重構造が異常変動防止帯がなくなりまして一重構造になりましたけれども、特に生産費に対する保証の面のなくなった分を農林水産大臣が決定をするというふうに、今回のいろいろの価格の設定につきましては、従来事業団設定のものが多かったわけでございますが、今回の改正でいきますと農水大臣の決定というふうに変わってきておりますので、国の介入の力がかなり強くなってきている、そういう面を考え合わせますと、一応そういうことで決められた価格については必ず守っていただけるんじゃないか、そういうような期待を申し上げてございますので、不安はありますけれども、一応今回のことについては評価をしている、そういうことでございます。
 さらにまた、研究会の報告の中で、養蚕、製糸は縮小され、そして養蚕、製糸がなくなって制度が残るという、そういう心配があるじゃないかというような、そういう御指摘でございますけれども、全く私どもとしてもそれについてはそういう心配はしてございます。しかしながら、今の養蚕の置かれている現況が、ほとんどほかに転作のできない地域であるというふうに私ども全国的に見ておりますので、農業問題すべてが非常に難しい情勢の中にありまして、何に転作してもこれといって確実に養蚕よりも所得が上がり、しかも価格的にも安定していると、そういうものがなかなか見当たらないという現状でございますし、なおまた、現在養蚕に取り組んでいる地域というのは中山間地帯で、ほかに転作をすることのできない地域が非常に多いということでございますので、確かに苦しいです。苦しいことは苦しいですし、五十八年の前の生産費からいきましても、農林統計でまいりますと第一次生産費でもキロ当たり三千九十八円、第二次生産費では三千四百十一円という、そういう生産費が一応農林統計で出ておりますけれども、しかしながら、ほかにこれといって転作のできない地域では、今回一万二千円に下がったけれども、合理化をしながら、そしてさらに一番問題なのは、やはりこの生産費の中で高いウエートを占めているのが労働費でございますので、労働費を圧縮するということでございますので、労働の配分といいますか、これが養蚕農家が受け取りが少なくなるんだと、そういうような評価でございますので、この一万二千円でも苦しいけれども、ほかに転作がないのでやらざるを得ないというのが実態でございますので、当分の間まだこれが制度があって養蚕家がなくなると、そういうことのないように私ども団体としても真剣に取り組んでいき、また指導していきたい、こんなふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
#15
○村沢牧君 どうもありがとうございました。
 次に、北原参考人にお伺いしたいんですが、輸入を抑制しろということは多くの皆さんから御要請いただきまして、私たち国会の論議の中でも政府に強く要請をいたしているところであります。残念ながら政府の力が弱いのか、農水省の力が弱いのか、私たちの力か弱いのか、皆さんの御期待に必ずしも報いておらないわけでありますが、その中で特に乾繭、繭ですね、繭が不足をする、繭の相場が上がってくると、組合生糸はそんなことはないんですけれども、ひとつ繭を輸入してくれというようなこともぼちぼち言われておるんですが、これについて実際製糸工場をやっておってどのようにお考えになっておられるのかということが一点。
 第二番目には、期中改定によってこの価格が下げられた。実勢糸価が一万二千円以上ならいいですけれども、この基準糸価すれすれだとするならば、生糸の生産工程というか生産コストというか、糸価は下がったって生糸はそんなに安く生糸ができるというわけじゃないというふうに思うんですけれども、そういう面から糸価を下げたことと製糸工場の経営というものの関係、これは実際問題としてどういうふうになっていらっしゃるのでしょうか。
 その二点についてお伺いしたいと思います。
#16
○参考人(北原岩男君) お答えいたします。
 繭の輸入問題でありますが、昨年が五万一千トン余の全国の繭の生産数量であったわけでございます。そこでこの工業組合が三三%の設備の消減をしたと、こういうことでありまして、昨今、乾繭市場が暴騰を続けております。そこで、我々はこの全然工賃のないような一万三千円掛けなんという価格で、今豊橋も前橋も乾繭の相場が動いているということでございまして、生糸は新繭、新しい繭の時期を控えて非常に苦しんでおるわけでございます。生糸自体としてもそれに対する対応を考えておりますが、これが我々中に入ってみますというと、この繭が四月、五月、六月の間に逐次新繭が出てまいりますから、七月になりますと極端に繭が下がっております。そこで、この価格は一、二カ月たてば下がると思います。これは仕手筋が繭を動かしておりますからああいうばかな相場が出ておりますが、私の感覚では、恐らくこの繭相場は逐次平静の場面になってまいると考えております。我々の販売機関も前橋に乾繭の市場を持っておりますから、玉の動きを見ておりまして、今の言うような一万三千円掛け以上なんというばかなことは長く続かないものと私は考えております。したがいまして鎮静をするだろうと、そういうことでございますから、期中改定をしていただきまして輸入はぜひしないでくださいという中に、これで繭を輸入するということは筋が通りませんもので、しばらくひとつ絹に関するものは輸入しないでほしいというのが我々の考え方であります。
 そこで、先ほども白杉さんからいろいろ御意見があるわけでございまして、私も前には機をやったことがございますからよくその状況はわかりますが、よって来る原因は一切輸入にあります。輸入に問題があるわけでございまして、この輸入の数量を逐次漸減をいたしますれば、この白杉さんの悩みの問題も解決をすると私は考えております。ぜひともひとついましばらく静観をしていただきますれば、乾繭市場は逐次冷静になるのではなかろうかと、このように考えております。
 そこで、この新年度になりますと四万六、七千トンの繭の生産数量になるではなかろうかと私は判断をいたしております。これは想像であるわけでありますが、先生方の御心配で三三%の設備の廃棄をいたしましたから、その結果、三三%の設備を消滅をした設備に対して四万六、七千トンの繭がどうなるか、この設備に対するものがどうなるかと、こういう問題でありますが、余りにも繭が高くなりますと、製糸は採算がとれませんと休みます。そういう方策もやらざるを得ないというような状況になりますから、いま一、二カ月で逐次平静の方向に向かうと、このように考えております。
 次に、二番目の期中改定の問題でございますが、これは今の新井参考人の御説明のとおりでございまして、この期中改定はいろいろ問題がございまして、工業組合の指示で糸連がこの買い支えをして一万三千二百というものをやっと買い支えをして、先は一万円そこそこというような価格まで落ち込んだ中でまことにやむを得ない期中改定でございまして、その後、期中改定を実施をした後は幸い順調に糸は流れておりますし、糸価も一万二千五、六百円と、こういう状態にいっておるわけでございますが、今村沢先生のお話のように、製糸の経営はどうなるかという問題、これは二つ問題があるわけでございます。
 その一つは、何としてもこの六十年度は減産であります。この減産の問題は、これは当初新井参考人が言われましたように、期中改定で非常に力が落ちたけれども、幸い一万二千五、六百円の糸価を維持しておりますから、養蚕家は政府の今度の一部改正法案に期待をして、よしひとつことしも蚕をやってみようと、こういう考え方でおるのは一万二千五、六百、七百という価格をしておりますから、それに期待をいたしておるわけでございますが、そこで年齢によります自然減、何とし
てもこの養蚕は五万一千トンが四万五、六千トンに減りますから、したがって繭を集める範囲が広くなります。繭を集める範囲が広くなるから経費がかかる。そうして糸値が下がりますから、それに逆に今度は工賃の方は高くなります。そうしますと、昨年のこの工賃が副蚕を引いてキロ三千三百円と、こういうふうに言われております。それが今度の基準糸価の一万二千円で勘定しますと二千五百五十円にしかなりません。
 そうしますと、今、先生の言われますように、製糸の経営構造というものが重大な危機に立ち至るわけでございますが、そこで今度の法律改正によりまして今度の一部改正で心配になります問題は、この事業団の定時に出す三千俵内外と言われております定量で出す問題と輸入の問題というようないろいろな問題を我々は心配しておるわけでございまして、この定時定量のこの問題は、糸価の現状をよく踏まえた上で事業団の糸を出していただきませんと、せっかく一万二千五、六百になった糸がまた下がってしまいます。そうしますと、何としても製糸の段階ではこの工賃が、労働賃金が上がってきて広い範囲から繭を集めるというようになりますから経費が高くなりますから、逆にせっかく一万二千円で二千五、六百円しかならぬものを、その糸価が上がるところに期待をしておりますものが下がってくると、こういう問題。
 そうして、この輸入という問題に最大関心を持っておりますから、この点に特に注意をされまして先生方は厳重にひとつ、白杉さんからもいろいろ言われましたけれども、ぜひこの輸入の問題につきましては会議のたびに先生方にお願い申し上げてございますけれども、相手の国があることでございますから難しいことはわかっておりますけれども、何としても二十九万俵の消費の中でことしは恐らく我々の生産する数量がどうしても十六、七万俵、その中で糸が五万俵、織物第二次製品が七万五千俵と。そこに十二万俵も十三万俵もそんなに入ってきては、私は無理だと思うんですよ。そこで消費が減退する消費が減退すると申しましても、私が子供のころ教わっている数字は、日本の生糸がアメリカへ出る。当時は日本で二十万俵と、こう言われておったけれども、それが三十万俵近くのものが消費されるんですから、決して消費が減退しているとは私は思っておりません。ぜひともひとつ希望を持っておりますから、この輸入という線には先生方お力をかしていただきましてこの輸入の抑制に一段のお力をおかりしたいと、このように思います。
 失礼を申し上げました。
#17
○村沢牧君 ありがとうございました。輸入を抑制するために私たちも頑張っておりますから、ぜひひとつ頑張ってください。
 大変お招きをいたしまして申しわけありません。答弁は簡潔にひとつお願いしたいと思いますが、宮田参考人にお伺いしたいんですけれども、今後の養蚕を考える場合に一トン規模以上の中核農家を育成していく、さらにまた、主産地形成を誘導していくんだということは農水省も常に言っておるんですけれども、しかし、日本の養蚕家を見ると、一トン未満の農家というのが六〇%もあるわけですね。小規模の農家がある。群馬県にもそういう小規模な農家もあるというふうに思うんですけれども、こういう小規模の養蚕農家を今後どういうふうに誘導していったらいいんでしょうか。自分の御体験から、ぜひひとつお示しを願いたいと思います。
 もう一つは、従来、基準糸価や繭価が高過ぎたために、行政価格が高過ぎたために在庫が多くなったんだとか、あるいは需給のバランスがとれなかったというふうに言われるんですけれども、したがって今度は期中改定によって下げるということですね。将来また下がるかもしれない。一体今までの価格というのは、皆さん養蚕をやってみて高いというふうにお感じになられるでしょうか。
 その二点についてお答え願いたいと思うんですが。
#18
○参考人(宮田忠助君) お答えします。
 御承知のように、本当の私、農家の生産者でございまして、非常に数字的には疎いわけでございますが、今までは私の村を見てみますと約八〇%ぐらいは養蚕に関係したと思われます。いろいろ事情もございますし、時の流れ、あるいは先ほど申し上げたような状況下の中で、大分小さい農家はやめていく農家が多くなりました。がしかし、現在であっても、概略五〇%は養蚕でなければほかに転業、転作しようがないという農家が現在ございます。これが一番困るわけでございまして、できることならばもっとほかの作目に転作したいわけでございますが、もうこれ以上はできないわけで、たとえ悪条件が続こうとも、これに携わっていかなければならないという本当に苦境に立たされてしまったのが現状でございます。小さい農家は、できれば今までどおり続けていきたいんですけれども、やはり収益性と申しますか、養蚕以上に小面積で上がる作目の方へ行くなり、あるいは農家以外で収入を得るというような方向で行っていますので、何度も申しますようですけれども、残された私どもが一番今困っているわけでございます。
 それから、繭の価格ということでお答えしたいと思うんですけれども、もちろん欲を離れて高いほど結構なんですけれども、現在の、昨年あたりの私の記帳を見てみますと二千円ちょっと強でございます。これが本当にもうぎりぎりの線でございまして、実際に記帳していろいろしてみるというと、二千円ではどこでも足りないわけでございますが、自分の手間の見返りとしてある程度六〇%ぐらいな見返りがあるんで、それで養蚕の経営を補っているわけでございますが、これ以下にもう下げられたら、基準糸価が一万二千円ということになると二千円を三百円弱割るわけでございますが、そうしたことになりますと、非常に私たちも死活問題になってまいります。ですから、この価格等につきましては先生方の力をおかりして、ぜひほかに転業しようのない農家がこれ以下ではやっていけないんだというところを考慮していただきまして、お助けいただきたいと思います。
#19
○村沢牧君 どうもありがとうございました。
 次に、福田参考人にお伺いいたします。先生は研究会のメンバーでもあられますものですからお聞きしたいんですが、研究会の報告を見ておりますと、養蚕、製糸業の生産規模は今後縮小、合理化は避けて通れないというような結論になっておるわけでありますが、日本の養蚕業というのは将来さらに縮小せざるを得ない、そういうふうに先生はお考えになっておられるでしょうか。また、養蚕業が現行の水準を維持していくためには、あるいはまた経営の安定を図っていくためにはどうすべきか。先生のさっきのお話の中でも伺うことができたんですけれども、この点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのかということ。
 もう一つは、先生は今後の養蚕のあり方として技術の開発あるいは蚕糸価格について強調されておったわけでありますが、技術面で見ても、例えば私も感じておるんですが、桑の品種改良なんかで随分試験場なんかでもやっていますけれども、五十年前からできたような、例えば私は長野県ですけれども、一ノ瀬だとか鼠返しだとか、その品種がずっと今も続いているわけですね。しかし、試験研究機関では研究しておるが、それが現場におりないんですね。ですから、そういうことを見て、技術というのは、バイテクの時代でありますが、どういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
 この二点についてお伺いしたいと思うんです。
#20
○参考人(福田紀文君) 私、確かに研究会の委員でございましたが、この研究会で出された報告をもとにして今度の法律が改正をされたものというふうに理解をいたしてございますが、あと中身の問題というものについては、たしかあの際においては非公開というふうな形になっていたというふうに思いますので、どんなような論議があったかというようなことについてはここでは申し上げま
せんけれども、私個人の一つの考え方の中では、先ほど申し上げましたように、フランスの例を一つとらえてみても、かなり似通った状態にもなっておりますし、それから相当その体質の改善というものを、価格問題ばかりではなくて、体質強化というものも図っていかないと、日本の中においてはなかなか定着しにくくなるんじゃなかろうか。価格問題も重要ですが、同時に、体質強化を図るということを、ここ数年私たちの精力を上げてやるべきではなかろうかということを申し上げたわけでございます。
 需給など、先ほど冒頭に申し上げましたように、国内産業というような形になっておりますし、需要と供給という関係の中において価格問題というのは決められていくということは、私はやはりある意味においては基本であろうと思いますけれども、やはり生産費なり比較収益性といった観点からも、十分日本において日本の養蚕、製糸が定着するようなものの価格でなければならないというふうに思います。これが第一点でございます。
 それから第二点の方の問題でございますが、私ある段階で少し調べて、今御指摘になった問題は桑品種の問題だと思いますが、私、昭和二年の場合と昭和五十二年という段階で、ちょうど五十年という期間の中で、一体蚕糸技術というものが蚕糸業にどのように貢献をしているであろうかというようなことを調べてみました。時間が長くなりますから中身は申し上げませんが、箱当たりの収繭量が昭和二年の場合に二十三キロしかとれなかったものが、昭和五十二年で私が調査をしたわけですが、三十一キロというふうにもなっておりますし、それから生糸量歩合は昭和二年のころに一〇・四二であったものが、今五十二年が一八・七七というような数字になっておりますのは、これはかなり蚕の品種改良というものの成果であるというふうに思っています。それから、自動繰糸機というのが日本で開発されたこともありまして、繰糸工一日当たりの生糸量というのが昭和二年に五百十七グラムであったものが、昭和五十二年に一万三千百八十三グラムという形で、非常に技術それ自身が蚕糸業の中に大きく私は貢献をいたしてきていると思います。
 御指摘になりました桑品種の問題につきましては、確かに桑の品種というものは、従来国の試験場というよりも、もう少し前からはやはり農家の方が出されたものが非常に多うございました。一番普及いたしております一ノ瀬もそのとおりだと思います。その後、やはり蚕の桑の品種の改良というものも国の試験場の方でかなり進められてまいっております。今、既に五品種なり、それからあと国それから公立の研究機関というものとが一体になった形で品種を出してまいってきておりますが、しんいちのせであるとかアツバミドリとかいろんな品種が出てまいっております。確かに御指摘のように、桑の品種の場合においては農家サイドにおいてつくられたところのものが、やはり一ノ瀬が主力をなしておりますが、今後の研究によっては非常に新しいものもできてまいってきておりますし、特に一ノ瀬が山梨県以外のところにおいては倒伏するというような性質もございますが、しんいちのせにおいては、倒伏というものもしないというような改良もされてしんいちのせというような名前になっております。
 蚕の品種の方は相当いろんな意味において改良されていますが、御指摘の桑品種の方においては、もともとやっぱり農家の方からつくられたもの、今後は恐らく国あるいは公立の中で出てくるものであろうというふうに思っております。
 終わります。
#21
○村沢牧君 ありがとうございました。
 白杉参考人にお伺いいたしますが、いずれにしても織物の輸入、絶対これはもっと抑制しなきゃいけませんが、その中で参考人のこういう団体なんかにおいても生糸の一元化輸入、これをやっぱり堅持をしていくことによって他の織物等も抑制をしていくということになるというふうに思うんですが、この生糸の一元化輸入は私はずっと堅持をしていかなければならないと思いますが、どのようにお考えになっていらっしゃるのかということ。
 もう一つ、大変皆さん方が努力して織っておるんですけれども、いずれにしても労賃をいかにして高くするかということですね。そのためには、流通段階におけるコストマージンがまだちょっと高過ぎるような気がするんです。そのことが、やっぱり流通改善をすることによって皆さんのところへはね返りも多くなってくるのではないかというふうに思うんですが、その辺についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか。大変申しわけございませんが、簡潔にひとつ教えてもらいたいと思います。
#22
○参考人(白杉儀一郎君) お答えいたします。
 実はいつも考えておるんですけれども、私は通産に行ってもはばからずに言っているんですけれども、私たち織物業者は農水の所管に入らなければおかしいんじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、養蚕の方が繭をとられ生糸をやって、それを分けていただいて私たちが織物につくって売りに参りますと、半値の織物を輸入してきた輸入商社の方々と競合するわけでございまして、全くここに大きな矛盾が生じておるわけでございまして、生糸の一元輸入制度を続けていただけるなら、少なくともこのつくられた生糸を消費するものをどうして守っていただくかということをお考えいただかなかったら、これはどうしてもやっていけないということを強くお願いをしたいと思っております。できたら農水省の所管に我々の団体、織物業者を入れていただいて、そして一元輸入制度の同じような保護をしていただかなければやっていけないということが一つでございます。
 それから労賃の方ですけれども、やはり分野が変わっておりまして、我々は生糸を使って素材をつくる、丹後ちりめんを、私は丹後ちりめんでございますけれども、そうしたものの素材をつくりまして京都の室町なり東京なり名古屋なりのそうした呉服業者に売りまして、そこで加工されるということなんでございますけれども、今一反の無地なんかは、十二メーターの着物用のもので織り工費は千円でございます。それから紋の織り工費は大体一反に着物一枚分が二千円で織っているという状況でございまして、二千円の中には、ややもいたしますと金利であるとか、それから型紙代であるとかいうものまで入っておりまして、今丹後の私の工業組合でも八千八百五十名の組合員がおりますけれども、恐らく七〇%の者が赤字経営を続けておるという状況でございます。悲しいかな、もっと大都会に近ければ転廃業してこんな織物業から離れていくわけなんでございますけれども、雪は降る、何もかわるところはないという状況で、本当にこの一元輸入撤廃がなかったら我々は生きていけるんだということから、五十八年にストまで打ち出したという状況でございまして、八千八百五十軒の者で機台数にしますと三万八千台の機をやっておるわけなんで、いかに零細な者がこれに携わっておるかということも、ひとつこの際に御理解をいただきたいと思っております。
#23
○山田譲君 時間もありませんし、今、同僚委員の村沢さんの方から御質問もありましたから、私はごく端的にお伺いをしていきたいと思います。
 まず最初に、宮田参考人にお伺いしたいんですが、今まであったコンニャク畑を一挙にやめて、そして背水の陣で養蚕業を始められて、そして非常に立派な成績を上げていらっしゃる宮田さんには心から敬意を表する次第であります。
 先ほどのお話、大変参考になりましたが、たまたまお話の中で、価格もさることながら、自分たちもやはり相当いろんなコストの面での下げるということに努力をしなきゃいけない、こういうふうなことをおっしゃいましたけれども、一体まだそういうコストを下げるような余地があるのかないのか、そこら辺のところをお伺いしたいんですが、どうでしょうか。
#24
○参考人(宮田忠助君) お答えします。
 繭の相場は、やはり私ども百姓ではどうにもな
りませんで、それに立ち向かって自分の生活を支えていくには、やはり先生の言われたコストを下げて自分の取り分を多くするというのが原則でございまして、私の場合を申し上げますと、桑を生産するにも、今指導機関等では十アール当たり三十キロの袋を十袋くれろと言われているんですが、それが一袋もう二千円からしますから、そうしますと十袋くれるともう二万円なんですよ、一反歩の肥料代というのが。それで、ああした山間高冷地になりますと十駄ぐらいしか出ないので、もう肥料代だけでも二千円かかってしまいます。十駄ということは、昔から言われているように、一駄一貫目と言われているんですけれども、一貫目というのは三・七五でございまして、そのほかに土壌改良剤だとかいろいろあるので、自分でよい桑をつくれば一番手間が省けるということなんですけれども、やはりいろいろの肥料代あるいは改良剤が高い関係上、私の場合は平たん部と掃き立てを見合わせて、平たん部が上蔟する時点で自分の蚕が最盛期に入るように残桑を安く買ってくるとか、あるいは国や県の補助を得まして共同飼育所というものを稚蚕飼育のために建てたんですけれども、やはり借金をして建てたのでございまして、そこで飼わなければならないんですけれども、飼育料の中からだんだん捻出していって共同体の中でその借金をこなしているんです。
 私の場合は、それをしていきますと、養蚕が専業だけにコスト的になかなかコストが落ちないので、自分の家で種を買ってきて稚蚕の蚕を飼うわけなんです。そうしたことによってコストを下げるわけなんですけれども、実は自分のうちで種を掃き立てますと、種代というのが去年の場合で四千四百円でございました。二眠蚕を購入しますと、同じ箱数、二万三千粒単位で一箱でもう一万八百円からかかりますし、三眠しますともう一万七千二百円もかかりますので、そうしたことによって自分のうちで手間をつくって稚蚕飼育をして、要するに売り値の二千円というものは私どもにはどうにもならないので、先ほど申し上げたようにコストを下げてやっていますが、だれしもこれはできることじゃないんで、どうにも自然にかてなければほかに転業、転作という傾向になると思いますが、どこまでもこの状態でもかじりついているということは、ごく限られた戸数に限られると思います。
#25
○山田譲君 大変苦しい中でいろいろ工夫をして、そしてできるだけコストを下げるというふうなことで頑張っていらっしゃるのに、大変私も意を強うしたわけでありますけれども、これからもひとつ養蚕業の発展のためにぜひとも頑張っていただきたい、かように考えます。
 その次に、これは白杉参考人にお伺いしていいかどうか、適当な問題かどうかはよくわからないんですけれども、繭あるいは製糸、糸になってさらに織られていく、それから実際に消費者の手に渡るのには、その間にいろいろな段階を経ると思うんです。しかし、それにしても、余りにも生産費、最初の繭の値段と最後に消費者の手に渡るまでの間に、流通経路そのものに非常に問題があるんじゃないか。何十倍となって何十万円というふうな額でもって、まあフォーマルになってくるともっと高いものもいっぱいあるでしょうけれども、特殊なものは別としまして、一般論としてどうも余りにも消費者の方が高くなっている。ですから、基準糸価を例えば二千円下げたって消費者価格が二千円下がるというふうなわけのものじゃないとすると、どこか途中で複雑な流通経路のために消費者が非常に高いものを買ってしまう、買わされているというふうな実情があるのじゃないかと思うんですけれども、その辺について参考人、どうお考えでしょうか。もしわかっていたらお伺いしたいと思うんです。
#26
○参考人(白杉儀一郎君) 先生のおっしゃるように、いろいろ小売段階で不当な利潤を取っているというようなこともよく耳にいたすわけでございます。これは和装に限らずすべての問題がそうだろうというふうに考えておりますけれども、和装の関係は非常に複雑でございまして、本当に一反の、一枚の着物を売るのにでも、本当にひどいことになりますと三遍、四遍通わなければならないというようなことがあるように聞いておりますし、また後のアフターケアと申しますか、着せたりいろんなことをやったりしていろんな面倒を見るというようなこともあるようでございまして、本当にそういう面から、私たちの織物製造の段階では非常に付加価値が高いんですけれども、それから先がたくさんの利潤を取っているんだからどんどん金持ちになっているかということになってまいりますと、絶えず信用不安が立っておりますし、それから各地に出ておりましたところの呉服屋はほとんどもう閉店してわずかのものしか残ってないというような状況でございまして、私たちがいろいろ伺ってまいりますと、決してそうした不当な利潤を取ってないんだ、たくさんかかるんだ、しかも特にフォーマル商品なんかのああしたものは、もう書画に等しいほどの、何か手がきでかくというようなことで、これは例外で、付加価値を高めておるようでございますけれども、そう問題はないんではないか。
 私たちも、背広であるとか車であるとか化粧品であるとかいうものを調査をしてまいりますと、やっぱり化粧品なんかはもっとひどいことになっているようでございますし、車なんかも、いろいろの状態から考えてまいりますと、決して和装だけがそうしたものでないというようなことを、最近私の方の団体も調査しておるのが実情でございます。
 ただ、今、先生に申しましたように、非常に手間のかかる染めをやってまいりまして、そうしたものが、同じ一生一代に買うなら何か一枚とっぴなものが買いたいという層が出かけたことにより、また枚数が売れないから、そういうものを一枚売ってというようなことで、マージンは取ったようでございますけれども、扱い商品に分けてまいりますと非常に利潤は少ないんだというようなことを、そうした方々からは聞いておるというのが実情でございます。
#27
○山田譲君 新井参考人にお伺いしたいんですが、さっきもちょっと話が出ましたけれども、農水省が考えているいわゆる中核農家という考え方でございますけれども、中核農家をできるだけ育成していく、そうして零細の生産をしている人についてはできるだけ、見捨てていくというわけでもないんでしょうけれども、何となくそういうふうな感じがあるんですけれども、その辺はどうお考えでしょうか。
#28
○参考人(新井芳男君) お答えします。
 中核農家の育成と零細農家の関係をどうするのかということでございますが、もちろん現在養蚕に取り組んでいる中核的な農家というのは、これを一応中心として、中核として養蚕業を営んでおるわけでございますので、これに対する育成については、我々団体としても積極的に真剣に育成をしなくちゃいけないということはもちろんでございます。
 また、零細農家の関係をどうするかということでございますが、これはやはり複合経営あるいはまた兼業経営の農家もかなりあるわけでございますし、従来から農地があり、そしてまたかなり中高年の老齢化しているそういう現況の中でなかなか転作もできない、こういう現状で零細農家はやっているわけでございますので、これを、だからどうなってもいいと見捨てることはできない、そういう現状でございますので、そういう現状の中で、やはり零細農家に対しても今後できるだけいろいろ合理化をしながら、合理化といいましてもなかなか合理化にも限界がございますけれども、いろいろ人工飼料等の関係を飼育段階に取り入れて、それをまたそれぞれの農協段階で農協直営の人工飼料の飼育所等を着々と今つくっておりますので、これがそれぞれの主産地の農協にできてまいりますと、かなりその面に対する合理化も進んでまいりますので、したがってかなりの中高齢者におきましても、また零細養蚕家におきましてもそれによってまだまだ当分はやっていける、そういうふうに私どもとしても中核農家の育成と
同時に、零細農家に対してもできるだけ今後養蚕を続けていくようなそういう団体としての指導と配慮をしていきたいと、こんなふうに考えております。
#29
○山田譲君 どうもありがとうございました。終わります。
#30
○最上進君 参考人の皆様には、大変お忙しいところを本日は御出席をいただきましてありがとうございます。
 早速質問に入らせていただきたいと思いますが、昨年の二割減産あるいはまた期中改定という大変なハプニングに遭遇をされまして、養蚕団体のリーダーといたしまして、本日御出席をいただいております新井会長初めまた関係の方々には、大変な苦境に置かれていらっしゃるのではないかと拝察をいたしているところでございます。当時、政府はもとより団体役員に対しましても、一般の養蚕農家の不信感というものは大変なものでございまして、私も実感として選挙区を回りながら得ております。
 そこで、実際に昨年の期中改定あるいはまた大幅減産、その後の一般養蚕農家での反応といいましょうか、影響というものが一体どのようなものであるか、また、後遺症といいましょうか、今もなおそういうものを引きずっているかどうか、その辺につきまして、まず新井組合長からお伺いをしたいと思います。
#31
○参考人(新井芳男君) お答えいたします。
 昨年の期中改定以後の反応あるいはまた、その後遺症があるかどうかということでございますが、期中改定以降、一時は確かに養蚕農家は大きなショックを受けダメージを受けたわけでございます。このままでは養蚕はいよいよ終わりになるんじゃないかというような、そういうような悲壮感を持った養蚕家もかなりあったことは事実でございます。しかしながら、その後非常に糸価が順調に回復をしてまいりまして、事業団の在庫も徐々にではございますけれども圧縮をされている。そういう現況の中で、下げられたけれどもかなり活性化は出てきて、今現在一万二千円の上にかなりの水準で糸価が推移している。そういう状況を眺めるときに、やはり一時はショックを受けたけれども、これでまだまだ見捨てたわけじゃない、我々はなかなか転換、転作するわけにいかないのだから、何とか歯を食いしばってもこれについていかなくちゃならない。そのためには、団体は責任を持ってこれ以下に下げないようにひとつ踏ん張っていただきたい、それによって我々も希望を持って養蚕に取り組むからという、そういうような明るい兆しが徐々に出てきているというのが実態でございます。
 しかしながら、また一面、後遺症といたしましては、転作が比較的すぐにできるような地域に若干はありますので、そういう地域は、やはりこの際それでは桑を抜こう、そういうような農家が地域によってはある程度出ていることは事実でございます。群馬県におきましても、特に一番この桑園を転換しようという地域は、西毛地帯の一部、特にコンニャク地帯に多いわけでございますけれども、昨年、一昨年とコンニャクが非常に高かったというようなことから、この際ひとつコンニャクに転換したいというような希望の農家がある程度出てまいりまして、しかしながら私どもはそれをとめることはできないけれども、コンニャクは暴騰、暴落が激しい作目だから、転換をしてようやく生産が軌道に乗るころにはまた暴落するんじゃないかという、そういう心配もあるかもしれない、そういうことは申し上げてございますけれども、しかしながら一部については、確かに転作をできる地域は、徐々に幾らかずつは転作というか転換をしているというのが実態でございます。
 それからもう一つは、特に市街化地域の農家が、実はなかなか農地保全が適当なものがないということで、桑を植えてそれを養蚕農家に売っておったという実態があったわけでございますが、昨年の期中改定、そしてさらにまた、昨年春以来減産ということが出てまいりまして、養蚕農家が桑を買ってまで養蚕をできない、今まで市街化地域の農地の保全を図るための桑園から購入をしながら養蚕を続けてきたわけでございますけれども、それを全部お断りをした、そういうことがございますので、その売り桑をしていた農地保全のための市街化地域の農家の桑は確かに抜根されております。というのは、売れなくなったからということでございますので、じゃ売れなくなったらここへ何をつくるのかというと、ここですっとつくる決め手のものがございません。私も随分そういう農家を回ってみたんですけれども、つくるものがとりあえずはないので、麦でもまいてということで、とりあえず昨年は麦をまいたようです。じゃ夏はどうするんですかと言ったら、夏はこれといって今のところ当てがないんですよ、そういうことでございますので、後遺症というのは極めてそういうような形でいろいろ出てきておりますけれども、やはり前段に申し上げましたように、かなり最近の糸価が活性化をしてきたし、将来また幾らかいい時期も来るんじゃないか。養蚕は長い歴史の中で非常に上がったり下がったりという暴騰、暴落を繰り返してきた、そういう歴史を十分承知しておりますので、ここしばらく歯を食いしばって頑張ったらまた幾らかでもいい時期が来るんじゃなかろうかということで、そして真剣に取り組もうという意欲もかなりあるということを、一応申し上げておきます。
 以上で終わります。
#32
○最上進君 昨日のこの農林水産委員会におきましても種々論議が行われまして、きょうも農水省の幹部の皆さんそこにお見えでございますが、高木繭糸課長は群馬県の出身でございますから、我々も大きな期待を抱いております。
 そういう中で、実際に農水省が養蚕業を我が国の基幹産業としてきちんとやはり農政の中に位置づけて守っていく考え方があるのかという質問に対しましても、昨日農林水産大臣からきちんとした答弁があったわけでございます。農林水産大臣の答弁を要約いたしますと、昨日、何回も何回も四つの項目というものが出てまいりました。その第一は、中間安定制度をもとにした新しい安定価格制度のもとで繭と生糸の価格安定を図っていく、第二は、需要の振興と輸入の調整で需給の均衡を図っていきたい、第三は、事業団在庫の適切な処理等、第四は、主産地形成あるいはまた中核養蚕農家育成を図っていきたいという、以上大体四点であったわけでございます。
 これが今回の法改正の大きな柱につながっているわけでございますけれども、どう見ましても年々縮小の一途をたどっております我が国の養蚕業で、新井組合長にお伺いをしたいのは、第一線で指導をなさっている組合長としても、大臣が四項目、四項目とおっしゃいます今回の法改正の大きな柱に対して、農水省の皆様方がいるいい機会でもございますから、ぜひひとつこの機会に忌憚のないお考えを承りたいというふうに考えております。
#33
○参考人(新井芳男君) お答えいたします。
 ただいま最上先生から四つの項目につきまして御指摘がございまして、全く私どもとしてもそのとおりでございます。特に、今回の期中改定によりまして根幹は維持をされるということを私どもも理解をしておりますし、必ずやこれをぜひとも守っていただきたいということを特にお願いをするのは、先ほど冒頭の意見でも申し上げてございます。
 なお、需要の増進の関係につきましても、非常に最近、総理までこれに対する御理解をいただきまして、業界等も、かなりこれはいけるんじゃないかな、そういう期待感を大変持っておるので、これに対しても、ぜひとも農水当局におきましても特段の御配慮をいただきたい、このようにお願い申し上げます。
 それから、問題の事業団の在庫の放出の関係ですけれども、先ほど申し上げましたように、今回の改正によりまして確かに計画的に放出をしていくということでございますが、この放出の仕方によってはかなり糸価に影響をするということは冒頭申し上げているとおりでございますので、この
運用を誤らないようにしていただくならば、必ずや段階的に事業団在庫は圧縮されていくであろう。事業団の在庫を圧縮することによって蚕糸業は必ずや明るい展望が開けてくるであろう、このように期待をしておりますし、そのためには、何といたしましても輸入を抑えるということにほかならないわけでございますので、輸入をして、そしてまたそれを放出をするということになりますと、やはり悪循環になりますので、まだまだ日本の総需要に対して総生産は三分の二しかない、そういう現況でございますから、輸入をコントロールすることによって事業団在庫も計画的に圧縮をされるというふうに私どもも考えておりますので、ぜひともその運用についても特段の御指導、御協力をお願い申し上げます。
 さらにまた、中核農家の育成の関係については、これに対する今回蚕糸振興資金の活用を図るということになっておりますので、地域においてかなり従来この育成に対する補助金あるいは利子補給等については使いづらいような形の援助措置が講じられておったんですけれども、今回はぜひ中核農家の育成のために蚕糸振興資金の活用等についてはできるだけ弾力的な活用のできるような、そういうことでぜひ御配慮をいただければ幸いである、こんなふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
#34
○最上進君 ありがとうございました。
 次に、宮田参考人にちょっとお伺いをしたいのでございますが、やはり昨日の委員会におきまして、繭の生産費につきましてもいろいろ議論があったわけでございます。五十八年の繭の試算によりまして千二百三十七円という数値が出ておりまして、これは農水省の答弁では、実際には千七百五十五円との価格差であるキロ当たり五百十八円が実質上農家の手取り、利益として残るという、そういう御答弁があったわけでございます。しかし、私は感じるんでありますけれども、一日一人当たりの家族労働費をその際千九百七十二円と考えているという数値を明らかに試算の中で示されたわけでございますけれども、これは先ほど来宮田参考人のお話を伺っておりましても、二千円を割るようになると非常にやはり厳しいという再三お話がございました。
 そこで、一日一人当たり今どき千九百七十二円という、そういう労賃の計算で今後若い人たちが養蚕に期待を持って後継としてつないでいくという、そういう気持ちに果たしてなるかどうかということを考えますと、私はむしろ否定せざるを得ない感じ方をいたしているわけでございますけれども、実際に繭一キロ生産をするのにどのくらいのやはり生産費がかかっているのか、その辺、ひとつおわかりでしたら明らかにしていただきたいと思います。
#35
○参考人(宮田忠助君) お答えします。
 昨年、五十九年度でございますが、青色申告と申しますか、そうした関係で細かい私の経営のデータは出してないんですけれども、粗収入が七百万ちょっとあったわけでございます。それで、養蚕の収入というのがそのうちに私の場合は五百三十二万ばかりになるわけでございますが、その五百三十二万の養蚕だけの粗収入のうちに百五十九万、約百六十万円の実際に懐から金を出したものがかかっているわけでございます。それで、時間的に申しますと大変よろしい数字が出るんでございますけれども、何せ高冷地でございますので、五月の末から十月の半ば、正味日数で四カ月でございますので、冬季間は養蚕としての収入は全く皆無でございますので、なかなか養蚕一本でやっていくにはやれない。したがって、冬季間のハウス物をやるわけでございますけれども、現実に私の家でも長男が後継者としてやっておりますが、なかなか養蚕はこれからも厳しいんだなということを実感として感じているようでございますので、もちろんやめるわけにはいかないし、やめようともしませんけれども、苦しいことは事実でございます。
 以上です。
#36
○最上進君 最後に、福田参考人にちょっとお伺いをしたいのでございますが、フランスでのいわゆる蚕糸業の崩壊の過程をお話しをいただきまして、大変関心を持って実は聞かせていただいたわけでございます。最終的には我が国の蚕糸業の生き残り策としては蚕糸価格と技術に期待する方策しかない、一元輸入をしている間に体質を強化して国際競争力をつける以外にないというお話、御指摘だったというふうに伺っておりますけれども、実際にやはり土地生産性向上あるいはまた労働生産性向上ということがこれが一番大事であるということは私どももよくわかっているわけでございますけれども、具体的にこれはどういう方策をお示しをいただいているのか、その辺ひとつお教えをいただきたいと思います。
#37
○参考人(福田紀文君) お答えいたします。
 まず、土地生産性の問題につきましては、たしか昭和三十年から三十八年にかけまして、当時の桑園というのは十六万ヘクタールございました。そのうちの十二万ヘクタールにつきまして土壌調査を国あるいは公立の研究機関を中心にして行いました。その土壌類型に基づいて、多収穫の栽桑法というのを確立いたしてございます。ですから、日本では重粘性の赤黄色土とかいろんな土がございますが、技術サイドから見れば、日本のどのような土地においても少なくとも十アール当たり百キロ以上の繭を生産するということは可能であるというふうに技術サイドとしては思っております。
 あと、この問題につきましては、今全国的な中においてはたしか十アール当たり六十キロを切るというような数字があったり、あるいはまた実際に使われているところの桑園ということになれば、七十キロあるいは八十キロというお話がございますが、ともかく技術面としてはでき上がっておりますし、あとは普及面として考えていくべき問題であろうと思っています。
 それから第二の問題の中においては、飼料効率という言葉がございます。御案内のように、蚕が五齢の期間中において桑なり、あるいは人工飼料を食べましても、三〇%しか消化吸収をしないで、六〇%というのはふんとして排せつをされているものでございます。一方、私が調べたところでは、ブロイラーの飼料効率というのは、ブロイラーも蚕も遺伝性は割に劣るものでございますが、ブロイラーの場合においては、普通の場合に二グラムの生のえさで一グラムの生の肉ができるというところまで飼料効率というものが研究をされております。ですから五〇%ということになりますし、蚕の場合におきましては、二十五グラムの生の葉を食べて繭としては〇・五グラムですから、二%しかないという問題がございます。今後の一つの研究というものにつきましては、その消化吸収率の三〇%を倍以上にひとつ上げてみるということが、ある意味においては生産性というものの向上に大いに役立つであろうというふうに考えております。
 これは目下、今研究中の段階にある問題だと思いますし、それから第三の問題としては、昭和三十五年に蚕の場合にも人工飼料というものができてまいりました。そして稚蚕の人工飼料に、椎蚕の飼育にこれが使われておりますし、昭和五十年ごろから始められておりますが、毎年倍々というような形で、現在段階では普通の蚕では二八%ぐらい、種繭で二七%ぐらいというところまで普及をいたしております。
 それから、もう一つの可能性の問題につきましては、御案内のようなバイテクの問題であろうかと思います。非常にポピュラーになっておりますのが、御案内のようにポマトだろうと思います。ということは、トマトとそれからジャガイモ、ポテトとをかけ合わせたポマトという意味で、地上部の方ではトマトをとり、地下部においてジャガイモをとろうというような、話として非常によく新聞あたりにも出てまいっておりますが、私はバイテクのような問題というものにつきましても、蚕の場合には、先ほども御指摘もありましたが、桑なり、あるいは蚕なりというものの品種の改良
というもので日本に大いに役立っていくであろう。従来、これまでの場合には雌雄、要するに交雑というような形でつくられてまいりましたけれども、非常にほかの交雑できないもの、例えば繭糸虫類における天蚕のようなものは、日本の山繭という非常にいい性質を持っていても蚕とかけ合わすことはできませんが、その天蚕の持つ遺伝子を蚕の中に導入することによって形質的によりいいものをつくり上げていく、こういうものが総合された中で、非常に生産性あるいは土地生産性あるいは労働生産性というものを今から十分固めていって、足腰の強いやっぱり養蚕農家を育成すべきであると私は考えております。
 以上です。
#38
○最上進君 ありがとうございました。
#39
○藤原房雄君 公明党の藤原でございます。きょうはまた参考人の方々におきましては、大変お忙しいところまことにありがとうございます。
 同僚委員からもいろいろお話がございましたが、先ほどお話を聞いておりまして、押しなべてきょう御出席の皆さん方、それぞれの団体の責任ある立場にいらっしゃるわけでございますが、このたびのこの法案につきましては御賛成の御意向のように承ったわけであります。しかしながら、この法案には、運用上の問題については大変に不安を持っていらっしゃる。二十六年にできましたこの繭の法律、これが八回も改正になり、昨年はまた期中改定とかいろんな対策を講じなきゃならぬということで、養蚕業界は非常に時代の波に乗りにくいといいますか、時代の急激な変化の荒波の中で非常に苦闘していらっしゃる、そういうことを痛感いたすわけであります。
 最初にお伺いしたいのは、そういう中にありまして、しかし大臣の所信にもございましたが、地域産業として非常に位置を占めておるという、こういうことから言いますと、新井参考人にまずお聞きをしたいのでありますが、地域経済としまして非常に重要な位置を占めておる。それだけに、先ほど来お話ございましたように、一生懸命農家の方は頑張っていらっしゃるということでありますが、運用面についての大変な御心配については、私も福島を初めとして養蚕農家を見ておるんですが、確かにほかのものに転換するということの厳しい養蚕農家というのは非常に難しいなと、こう思うんですが、最近の統計を見ますと、非常に養蚕を離れる方々が多い。そしてまた、一戸当たりの面積がふえているように統計数字なんかで見ておるんですが、ほかの水田農家やなんかと違って、土地の集約化ということは非常にむずかしいことなんだろうと私は思うんです。
 そういうことで、生産性を上げるということも、先ほど来ずっといろいろお話しになっておりますけれども、生産性を上げると一言で言いましても、その立地条件とか、またお働きになる方々の家族数とか、こういうことで非常に制約があるだろうと思うんですが、そういうことでお聞きしたいのは、生産性の向上ということでいろいろ現在検討されておることがおありだと思うんです。先ほどのお話の中にもございましたが、振興資金を大いに活用するような方向でというお話でございましたけれども、この事業団の振興資金、またそのほか農業関係のいろんな事業がございますけれども、そういうものを集中的にやりましてもっと基盤を強化するという、こういう施策というのは当然大事なことだろうし、またいろいろお考えになっていらっしゃるんだと思いますが、ほかのものに転作するということが非常に難しい、そういう中で生産性を上げる、どっちを見ましても非常に困難な難しい中で指導をする立場におありの新井参考人は、今後の問題についてはいろいろ御検討なり、またお考えがあろうかと思いますが、その辺のことについて、最初にお聞きしておきたいと思うんです。
#40
○参考人(新井芳男君) お答えいたします。
 ただいま養蚕農家が減る現状の中で戸当たり面積はだんだんふえていくという、そういうような御指摘もございました。そういう中で生産性の向上を今後どう図るのかということだと思いますけれども、私ども団体の立場からは、やはりこれが一番の課題でございますし、しかしながら非常に難しい問題でございます。農家の規模あるいは労働人員それから農家の構造それぞれ差異がございまして、そういう中での一貫性を持った生産性の向上対策というのは非常に難しいわけでございますので、今どのようにしてこれでコストを下げることができるかというのは、あらゆる技術がもう全部、ほとんど今出されている技術というのはかなり各地域、各農家に全部浸透していると、そういう状況の中でございまして、コストを下げながら向上させるというには、とにかく今後の人工飼料の普及に力を入れるよりほかに方法がないんじゃないか。そういうようなことで、今それに対する指導、対策を真剣に取り組んでおります。
 実際問題として、かなり人工飼料に対する養蚕農家の期待は大きくなってきております。繭代金がなかなか上がらない中で養蚕をやめられない、そういうことでございますので、かなり養蚕農家は農閑期等については複合的にほかの事業をやるなり、あるいはまた出稼ぎをやるなりという、そういう中でしのいでおるわけでございますので、従来のように稚蚕からずっと壮蚕まで飼い上げるということになりますと、かなり労働的に無理があってなかなかコストが高くなる。そういうことでございますので、今それぞれの地域で、先ほども申し上げましたけれども、農協単位で稚蚕の人工飼料の飼育センターをつくるような、そういう指導をしておるわけでございます。これについて、できるだけ設置あるいは運営等についての蚕糸振興資金等の活用ができれば幸せであると、こんなふうに考えておりますが、この人工飼料の飼育センターを農協等が直営でやることによって、恐らく二齢までぐらいは全部養蚕農家は手をかけずにお蚕が二齢で配蚕になってくる。そういうことでございますので、その間はまだ出稼ぎができると、そういうこともございますので、飼育代以上に出稼ぎで稼げる。そういうような養蚕農家の要望もございまして、そのような形でできるだけコストを下げるように、そして総合的に農家所得が上がってくれはいいんだと、そういうような形で対策をしております。
 なおまた、大型養蚕農家等につきましても、先ほど宮田さんからもございましたが、稚蚕から一貫して全部やれればこれが一番コストが安く上がり、これは人工飼料でやるよりもむしろ自分の桑でやればかなり安く上がるわけでございますから、それが理想でございますけれども、農家規模によっては一律になかなかそうもいきませんので、中以下の養蚕農家に対してはそのような方法で生産性の向上を図り、そしてあわせて農家所得の向上を図りながら、何とか繭生産に対する意欲を持たしていきたい、こんなふうに考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 さらにまた、蚕糸振興資金の活用等については、できるだけ弾力性を持たしたような形で利用いただけるような、そういうことで、運用に当たっては農水当局にもぜひともお願いする次第でございますので、よろしくお願いいたします。
#41
○藤原房雄君 北原参考人にお伺い申し上げますが、要するに生糸の需要というのは決して減ってはいないんだ、輸入が諸悪の根源であるという趣旨のお話かと承ったのであります。私どもそれは十分にわかるわけでありますが、データなんか見ますと、五十三年、四年、五年あたりまでなかなか需要というのは伸びなかった経緯がございまして、その後、物によりましては需要が回復したのもあるんだと思いますが、非常に厳しい状況にあるように私どもは承っておるんです。消費は決して停滞はしていない、生糸、糸の輸入さえ何とかしてくれればというような趣旨のお話だったと思うんですが、その辺の現状等について、参考人の現在置かれている立場から御報告をいただきたいと思いますが。
#42
○参考人(北原岩男君) 先ほど状況をざっと申し上げましたけれども、消費の現況は俗に二十九万俵と言われております。そこで、四十年代の末には四十万俵の消費までいったわけでありますが、
その時点を見ますと、二十九万俵というものは非常に減ってきたではないか、こういうふうに言われるわけでございますが、生産の数量も減ってまいりまして、五十年の初期には三十三万俵の生産数量があったわけでございますが、ことしは大体において二十万俵、来年は十七、八万俵、こんなふうに減ってきておる現状であります。
 そこで、消費の現状はそのようでございまして、私が余り数字が減らぬじゃないかということを申し上げますのは、過去、戦後から三十年ごろに比較をいたしまして、その当時は大体二十万俵程度の消費でありましたから、その時代と比べてみて三十万俵というものはそう少ないものではないじゃないか、したがって、私は悲観的な数字ではないということを申し上げたわけでございまして、四十五年から五十年にかけての四十万俵もしくは四十五万俵の消費の当時と比べますというと、消費は減退をしているということが言われるわけであります。
 そこで、消費の増進につきましては日ごろ先生方にも格段の御協力をいただきまして、全養連といたしましても洋服の生地あるいはネクタイ等これは推進をいたしておりますし、また、丸の内の蚕糸会館には一角にホールを設けまして、いろいろなものを二週間ずつ交代をして展即の場を設けてございますし、また、大日本蚕糸会あたりが中心になりまして、年に一、二回農水省の後援を得まして、三年間に数億の財貨をつぎ込んで着物の展示会等をやって、一生懸命に着物の促進運動を実施をしているというような現況であります。そこで、製糸全体から申しますと、各製糸は挙げて製糸の中に業務部というような名前を設けて、その地区に着物の販売機関を設けて一生懸命に織物の販売をいたしております。こういう状況であります。
 そこで、悲しいかな、大製糸はともかくとして、一般の製糸におきましては、製糸機械そのものが生糸の八〇ないし九〇%というものは和装をつくる生糸の規格でございますから、機械そのものがそういう糸をつくるようなふうにできておりますから、いろいろなものをつくるような方向にできておりませんもので、今後新しいものをつくるという段階になりますと、今後研究を重ねていただきまして新しい機械をつくったり、そうして新しいものを研究をしたりするという段階になりますと、これはやはり筑波の研究所でつくっていただいたり、また大日本蚕糸会の傘下にあります試験場等で研究をしていただきまして、新しい製品の製作にひとつ御研究を賜りたいと、このように思うわけであります。しかしながら、何といたしましても製糸の段階ではそこまで手が回りませんもので、今のところ我々のつくっておる糸は挙げて和装の糸をつくっております。
 したがいまして、逆の方向に行くわけでございまして、我々のつくる糸は節がありますと検査が通りません。しかしながら、新しい製品になりましてワンピースとかいうようなものになりますと、節があるものがいいというような逆の方向になりますもので、そこに難しさが加わってくるわけでございまして、今後におきましては、やはり機屋の段階あるいは製織の段階、こういう段階に移ってまいりますから、今後新しい製品を設けてそうして需要の促進を図ってまいりたい、このように考えておりますから、よろしくひとつお願いを申し上げたいと、このように思うわけであります。
#43
○藤原房雄君 時間がございませんのでまことに申しわけございません。最後になりますが福田参考人に、先ほどのお話の中で技術的な問題いろいろあるわけですが、大学で製糸なんか専攻する方、学科がなくなったという、これは時代の一つの流れの中でそういう技術者を必要としなくなったということではないと思うんですが、どうなのか、また、そういうものを希望する人がいなくなったということなのか、やはり伝統的なものということについては我々は非常に執着心を持っているわけですけれども、あらゆる産業に過去何百年、何千年我々の父祖伝来、父祖以来受け継いだもの、私どもは直接的にそれにかかわっておるわけではないものですから、郷愁みたいなものがあって、そういうもので感ずるのか、それとも現実はもっと厳しいものであって、そこで技術を磨くという、そういう人たちがだんだんいなくなってしまったためにそういうふうになったのか、その辺あたりはどうなんでしょうか。ちょっとお伺いしてみたいと思います。
#44
○参考人(福田紀文君) お答えいたします。
 養蚕、製糸といったところにつきましては、昔から大きな意味では三校というのがございました。一つは、東京の今の農工大学でございますし、それから第二の方は信州の信州大学、それから京都工芸繊維大学、それら三つでございます。その他のところにも養蚕、製糸を研究しておるところがございます。
 大学のことですから十分承知はいたしてはおりませんけれども、私が伺うところによりますと、やはり日本の蚕糸業の背景というものが非常に厳しくなってまいりましたし、大学の場合には、ふえました学生というものの就職の問題もかなり絡んでくるわけでございますから、既に信州大学あるいは東京農工大学においても製糸科というようなものはございません。ただ一つ、今度京都工芸繊維というのは、背景が京都にあるということもございますし、それからノーベル賞を受賞された福井さんが学長になられてことし四月から新しい仕組みで進められてまいってきております。
 そのときに伺った話でございますが、福井学長が文部省の方へ行かれて、当時いろいろ蚕糸の問題があるから、大学の場合でも蚕という名前のつくような学科なんというものはほかに変えるべきじゃないかというような御意見も多々あったという背景の中で文部省の方にお出かけになられて、そして京都を背景にし、また伝統的な産業であるというようなものにつきましては、少なくとも京都工芸繊維大学においては研究というもの、あるいは後継者養成をやっておくべきであるというような御意見が通った。この間、学会があって、その学校の先生に伺いましたが、四月から生物のコースという中で桑と蚕とそして糸というような分野、それから応用化学分野という形において遺伝、生理とかいうような形で二コースをつくって、従来よりもある意味においては充実した形で進められていっていると思います。
 別段、京都工芸繊維だけで、ほかの学長さんがどうこうと言うわけではございませんが、一番大切なことは、やはり当面の技術者というものをある程度確保しておくということがなければ、今後の日本の蚕糸業が発展をしていく場合に非常に大きな支障を来す。また、むしろその面の方から崩壊というものが起こるんではなかろうかということを危惧して申し上げたわけでございます。
 以上です。
#45
○塩出啓典君 参考人の皆さんには、いろいろ大変有益なお話を承りまして、心から御礼申し上げます。
 非常に養蚕業も厳しい環境に置かれておるわけでありますが、そういう中で主産地の形成あるいは中核的農家の養成あるいは国際競争力をつける、こういうようなお話が各参考人からあったわけでありますが、そこで、実際に養蚕農家であられ、またいろいろ努力をされておる宮田参考人にお尋ねしたいわけでありますが、今、日本は、いろいろ競争しようとしている国々に比べれば非常に賃金も高いわけでありまして、そういう差はどうしようもない。しかし、いろいろ技術力とか、あるいはもちろんこれは製品になる場合はファッション性、そういう問題になると思うんですが、農家としていわゆる繭をつくる、そういう点でどの程度を目標にされておられるのか、どの程度ぐらいならいけるという可能性があるとお考えなのか、その点、率直に承りたいと思います。
#46
○参考人(宮田忠助君) お答えします。
 ただの農家ですもので、近所のことで申し上げるようで恐縮でございますが、利根、沼田では私が収繭量だけでは上位の方だと思います。その私が二トンから三トン生産をしていて、養蚕一本で
は本当に苦しいというのが実情でございます。かといって、私どももかつては比較的他の作物に比べていいときもあったんでございます。それで、ここまで経営が私の場合来られたのは、やはり金融機関あるいは農協等で制度融資、金を借りてここまで来られたので現在の経営があるわけでございます。ただ、借りただけでなしに、借りた金はやはり返さなければならない、この返す時期に来て、こうした低迷といいますか、こういうことになりまして、借金返済で非常に苦しんでおります。
 それで、今の二千円を割ったんでは本当に生活程度でございまして、農協あるいは制度融資を受けている分をほかのもので補って、例えば冬季間のハウス物であるとか、あるいは先祖からいただいた立木を金にかえて借金返済をしているというのが現状でございますので、本当に理想からいいますと二千三百円ぐらいは最低欲しいわけでございますが、いろいろの現状を見まして、二千円を割られたら絶対にもうやっていけない、これが心境でございます。
#47
○塩出啓典君 これは福田参考人にお尋ねをしたいと思いますが、きょういろいろお話を承りまして、白杉参考人とそれから新井参考人、宮田参考人等の生産者の立場とは、輸入の自由化の問題についてはこれはむしろ立場は逆ではなかったかと思うんですが、やっぱり生産者から見れば繭の値段、糸の値段は高いにこしたことはない。しかし、また余り高くなりますと、これはやっぱり消費というものが伸びていかないんではないか。そういう点から考えればどのあたりを目標にすべきなのか。見方をかえますと、やっぱり消費拡大ということをどう考えればいいのか。いろいろ努力をされておるようですが、これはもちろん生産者のコストダウンもあるんでしょうけれども、しかし、またこういうファッション性というか、やはり織物以降の段階においてのいろいろな研究開発というか、そういうような点もかなり影響してくるんじゃないか。
 そういう意味で、消費拡大の見通しというものは、もっとこのようにやるべきではないかという、そういう御意見、またそういう立場から、やっぱり糸の価格というものはこの程度が適正であるという、また生産者の立場も配慮しながらどの程度が適正であるとお考えであるのか、この点の御意見をお伺いしたいと思います。
#48
○参考人(福田紀文君) お答えいたします。
 まず、消費の拡大の方でございますが、やはり我が国において日本人の着物離れというような現象によって、特にフォーマルよりもカジュアルな部門がずっと消費が減少いたしてまいってきております。それぞれの努力というものは、先ほどもお話がございましたように、センターをつくったり、あるいは着物振興会議においてやったり、あるいはまた消費の拡大なり、いろんな意味において事業団が売り渡しをやったり、いろんな形において進められているというふうに思いますが、私たちが見ておりましても消費というものが非常に減退をしていったという点から見て、ある意味においては価格の高いものを一時ねらったというふうにも見ております。
 ですから、消費の減退を非常に高価なものによって賄っていこうというような考え方が一時あったと思います。最近の場合においては、振りそでとか非常に高価なものばかりではなくて、消費全体のものを考えるとすれば、やはりカジュアルな部分が落ちているわけですから、やはりその分野の問題についてもある程度の手を打っていかなければならないであろう。一つの問題というものを、ただ高価格というような形のものだけではなくて、私はやっぱり両面作戦というような意味において、非常に高価なようなものをつくっていくことも決して悪いというふうには思っておりませんし、またしかし、カジュアルな部門というものを伸ばしていこうとすれば、どうしても価格の問題が絡んでまいりますから、比較的安い形のものでしていかなければならないであろうというふうに思っております。
 この消費の拡大の問題について見ましても、また日本の今の農家の事情から見て、繭の値段をこれ以上下げるということはほとんど不可能に近いだろうと思うんですが、そういう観点から見ると、日本の場合においては非常に高価格のものであってもやはりユニークなものをつくって、そして先ほど冒頭、最初のときの所見で申し上げましたが、あるいは絹製品というような分野の中にある意味においては出ていくということができないであろうかということを考えるべきであって、非常に安いというものは国内の生糸の場合においては求められないんではなかろうかというふうに思っています。
 結論から申しますと、非常に高いものも結構ですが、私はもう少し全体の消費をふやそうということになれば、それはもう少し安いところのカジュアルの分野というふうな問題についてもやっぱり注目をしていく必要があるのではなかろうか。
 それから、大きな意味においては日本人の着物離れというような問題が起こっているわけでございますから、やはりこの需要を通じ、また絹の性能から者えてみますと、洋装分野よりも一番よく絹が適しておるのは私、和装分野であろうと思っています。長繊維でもあるし、あるいは二重構造を持っているし、あるいは染色性なり、いろんな意味で一番向いていると思いますが、私一つ思っておりますのは、着物の需要の場合には、よく絹が一〇〇%、要するに絹の場合に一〇〇%の着物ということが盛んに言われると思いますが、私はまず着物の需要というものがふえてくるための努力というものをやるべきであって、その素材が合成繊維であろうとウールであろうと絹であろうと、今の段階においては、まず着物というものを着るということについてやっぱりやるべきであって、そしてもし着物を着るような人が出れば、その中で一番いいものが何であるかと言えば、それは経済が許すならば絹であるということはどなたも知っているわけですからその消費がふえるんですが、一部の伺っている段階の中では、どうしても絹一〇〇%でなければならないというような形より、まず一番落ちているのが着物というものの需要が落ちているわけですから、まずそれを着ていただくということを前提に考えていくべきではなかろうかということを考えております。
 それから、何でしたか、第二の問題は。
#49
○塩出啓典君 第二の問題は、価格の問題ですね。
#50
○参考人(福田紀文君) わかりました。
 非常に難しい問題で、絹という問題は国内的な問題として考えなけりゃいけませんし、一面また国際的な観点からも見ていかなければならない問題のようにも思っております。ですから、国内だけの問題であれば、繭というものも高ければ高いほど、先ほど申し上げたように、比較優位性の観点から見て、それほど養蚕というものが昔ほどもうかるような形にはなっておりませんから、それはそれなりのところにおいて価格というのが高いところに置かれることが望ましいというふうに思っていますけれども、国際的な観点というような立場から見ますと、やはり日本の場合においては相当高い。たしかECあたりのところで、中国から来ているやつが七千円というふうに聞いておりますし、日本の場合が今度一万二千円になりましたが、ちょっと前までは一万四千円でしたから、約倍というような価格というふうにもなってきている。先ほど白杉参考人の方からもいろいろのお話が出ているのも、やはり自由化商品でございますから、国際的な観点の中からも考えていかなければならないと思います。
 どれぐらいの価格が一番適当なのであろうかということについても直接申し上げませんが、私は試験研究というサイドからこの価格というものを見ておりますと、生糸価格の中の大半というのはやはり繭というものの生産でございますし、その八割というものが繭の値段になっていますし、非常に所得率が高いといいながらも、養蚕の場合においては五〇%ぐらいの大体所得率を持っておりまして、畜産とかほかのと比較して非常に高いと
思います。そういうようなものですが、試験研究の方から見ますと、国際価格が仮に七千円といたしますと、それと倍の一万四千円もいたしますと、試験研究なり、あるいは技術サイドにおいて関与する余地がもうなくなっていると思います。それから、試験研究サイドの方から見た価格の問題というのは、私は少なくとも一・五倍ぐらいの、二倍ではなくて、一・五倍ぐらいのところで生糸の価格というのがとどめられていることが一番望ましいと思います。
 今の日本の蚕糸の技術をもってすれば、その差額の〇・五ぐらいのものは十分カバーすることができますが、二倍になりますともう蚕を飼えば飼うだけマイナスという形になる。また、技術が参加する余地もございませんので、今の段階の中で価格が幾らになるのが一番妥当なのかという御質問でございますが、私は試験研究というサイドから見れば、少なくともそれが一・五倍ぐらいのところでとめておいていただきたいということだけを申し上げて、お答えといたしたいと思います。
#51
○下田京子君 参考人の皆さん、貴重な御意見を本当にありがとうございました。新井参考人、宮田参考人、白杉参考人とお三方に続いて御質問申し上げますので、ひとつよろしくお願いいたします。
 まず新井参考人にお尋ねしたい点なんですけれども、制度運用に当たっていろいろお話がありましたが、最大の力を輸入削減にという御意見がございました。絹需要が今後減少し、事業団の大量の過剰在庫を放出していくということになれば、生糸、絹織物の輸入の大幅削減がない限りは、結局国内の蚕糸業の一層の縮小という結果になるのではないかと思います。それだけに、皆さんが言われております事業団の在庫処分中は輸入ストップ措置をしてくれというのは大変当然だと思うんです。現実に、今お話にもございましたが、数量的には減っているというけれども、国産糸に比べて輸入糸の割合がふえてきているという指摘もございました。
 特に私申し上げたいのは、生糸の保税加工用、これは五十年当時一万俵そこそこでしたが、現在は二万俵を超えております。幾ら輸出用といえども、国内養蚕家が大変減産で苦労している中で、これは認めがたいと私ども思います。この保税加工用の輸入生糸を、御承知のように、農水大臣の認定により輸入しておりますから、大臣が保税加工用を削減するということは可能なんです。その削減分を事業団在庫糸で充てる、こういうことにいたしますと在庫糸処分が生糸の時価に悪影響も与えませんし、財政負担上も損失分を十年繰り延べで償還していくということになりますと、単年度でざっと三億五千万円程度で済むと思うわけです。この点についてどう思われますか。
 それからもう一点なんですが、今回生産費を基準とした異常変動防止措置を廃止しまして、基準糸価、改正案では安定基準価格といいますが、これがより需給実勢を反映したものに改められるわけです。問題は、この需給が事業団の大量の在庫糸の放出というもとでさらに需給実勢価格ということになって、基準糸価の一層の引き下げにつながりかねない、こう心配します。この二点。
 それから、宮田参考人、本当に三トンの生産御苦労さまでございます。最後にお話がございました、政府が中核農家育成、主産地形成と言うがかけ声だけで終わらないように再生産の確保を、そして後継者に夢を、未来に明るいものをと結ばれましたが、この点で政府が言われる一トン以上の中核的担い手育成というこの問題なんですけれども、繭価格が今日のように生産費を大幅に割っていく、二千円でぎりぎりだ。それを割るようなことになりましたら、これは養蚕を事業的に大規模にやっている皆さんほどストレートに打撃があって、中核農家育成というふうなこととは逆行していくだろう、こう考えますが、この点はどうか。
 それから、白杉参考人に三点まとめて恐縮でございますが、いろいろ申された中で、輸入が最大の打撃だ、特に絹織物の輸入、これには困ったというお話ございました。とりわけ着物地の輸入が韓国等からふえ続けております。白杉参考人、丹後等の白地の産地で直撃を受けているというお話もございました。
 そこでお尋ねしたいんですが、韓国の絹織物の生産の実情についてなんです。
 一つは、韓国が海外に輸出される織物について、その原料となる糸、国産では七割で、逆に韓国が輸入糸を三〇%使っているというお話を聞いておりますが、その点詳しくもし実情がおわかりでしたら聞かしていただきたい。
 また、韓国絹織物業が、日本の商社などと合弁会社であったり、日本からの技術の輸入によるものではないかというふうにも思われるんですが、この点がどうか。
 それから最後になりますが、参考人もおっしゃいました、今後養蚕、製糸、絹業と三位一体となって発展するのが基本だとお話ございましたけれども、そういう点で絹織物の輸入の効果的な規制とあわせて、同時に養蚕、製糸業者にとっても繭や生糸の価格が再生産が確保されるようなものでなければ、お話の三位一体という方向はこれは保証できないんではないか。
 以上、三点詳しく申し上げましたが、私の持ち時間は十二分というようなことで、恐縮でございますけれども御答弁いただきたいと思います。
#52
○委員長(北修二君) 参考人の皆様にお願いします。
 委員のおのおのの時間がございますので、簡潔にお願いをいたします。
#53
○参考人(新井芳男君) それではお答えいたします。時間がないというので簡潔に申し上げます。
 最初の保税部分を放出で補てんするならばという御指摘でございますけれども、私どもとすればやはり問題は輸入の削減、抑制、これしか方法はないということは意見が一致しておるわけでございますので、当然このことについても御理解いただいてこのような措置をしてもらうことについては、私どもとしても決してやぶさかでないし、ぜひともこのような方法はお願いしなきゃならないと、このように考えておりますし、さらにまた異常変動防止措置の廃止に従いましてということで、先ほども私の意見の中でも申し上げましたように、不安がないわけではございません。しかしながら、生産条件を勘案してというようなそういうことで、確かに生産費の八五%というその条項が消えてまいりましたけれども、今回の安定制度は根幹は守るというふうに理解をしておりますし、さらにまた、今回の運用につきましては、政府の決める介入が非常に強くなってきたということでございますので、ほとんどこれは政府の管理価格的な性格が強いわけでございますので、この根幹を守りながら、どうか今回の二重構造の廃止に従いまして、この条件が後退することのないようにお願いしたいということでございますので、あわせてお願いを申し上げて、私のお答えといたします。
#54
○参考人(宮田忠助君) お答えします。
 養蚕の高値と申しますか、ブームのときには非常に私どもも力が入りましたし、部落全体で力を入れ、なおほかの作目に比べて非常に後継者も進んで大勢入ってまいりました。が、しかし、こうした状態になり、なおほかの作物でありますコンニャクでありますとかハウス物でありますとかいうものが非常に反収の面で、あるいは労働報酬の面で上がる額が違うわけでございます。それで、今の後継者の考え方としては、決して養蚕が嫌いであるとか、あるいは力仕事を望まないとか、骨を折るのが嫌いだとか、そういう意味でなくて、要するに採算がとれないから養蚕を嫌うわけでございまして、そうした条件さえ整えてくれれば自然に農家も、後継者も流れをそちらに変えてくると思います。
 それで、養蚕のよさというものが、ほかの作物、コンニャクや何かに比べまして、一度失敗してもその年に何度でも掃き直しができて回収ができるというよさもございますし、酪農や何かに比べて、ある一定期間を飼えばその仕事が終了するという目標が立ちますんで、養蚕本旨とすれば苦
者には割合魅力は持たれるんですけれども、ただ採算性ということに対して後継者に嫌われていることは事実でございます。ですから、その辺を緩和していただきまして夢を持たしていただきたいと、これを訴えたわけでございます。
#55
○参考人(白杉儀一郎君) 韓国の実情でございますけれども、先月の、三月の二十八日に、まだ十日余りでございますけれども、韓国から輸入の絹撚糸を買ってくれということでいろいろ出てまいっておりまして、詳しく最近の実情を聞いたわけでございます。今、韓国では大体三万俵ぐらいの生糸を生産しておる、そのうち国内で消費できるものは八千俵から一万俵というようなことを言っておりましたが、あとの二万俵ほどは輸出をするということを言っておりました。それで、広幅の織物にして輸出をした場合は、輸入の糸を五〇%充てている。それから小幅の織物の場合は四〇%、三〇%であったものが四〇%ということを言っておりました。それから生糸で輸出をした場合には二八・三%と記憶しておりますけれども、ちょっと若干ここに食い違いがあるかわかりませんけれども、生糸で輸出した場合もそうしたものでやっておるようでございます。大体そうしたものは香港で、中国糸並びにブラジル、特にブラジルの糸なんかを買っておるようなことを言っておりました。日本の生糸が一万一千円に下げられたらもう致命的な二万俵ぐらいの生産になると言っておりましたけれども、一万二千円でとめられたので、まだちょっと状況が、ようやく助かっているんだというようなことを言っておりました。
 それから、技術の面につきましては、一部のものは非常に我々の技術に及んできたと言ってもいいものがあると思っております。しかし、特に技術の面というよりも、生糸を先方、向こうはいいものを使っておるという状況でございまして、私たちの、日本国内の織物業者は二十七中を中心にして使っておるという状況でございまして、中には三十中を使わざるを得ぬ、二十一中はほとんど採算が、二十一中を買おうと思いますと千円ぐらい少なくとも高く買わなければならないということでありますし、そういうことから細い二十一中の糸、二十中の糸を使っておるがために非常にいい織物をつくっておる。特にフォーマル商品的なものにまでそういう状況で、かなりの段階、技術的にはもう甲乙つけがたいというところまで来ておるということでございます。
 しかし、絹織物状況全体は、やはり韓国も非常に厳しくございまして、少なくとも今かなりの倒産が起きておるということも言っておりましたし、どんどん広幅物に変わっていかざるを得ぬというようなことを若干言っておったわけでこざいまして、しかし、本当に今、先生の御質問のありました向こうに技術を導入するのは全部商社が、我々の織物産地で勤めたような者を引き抜いて、そして向こうへ派遣しておるというような実情でございます。こういう面からも、先ほどお願いいたしました何とか実割りの糸をふやしていただきたいということを、重ねてお願いしておきたいと思っております。
#56
○喜屋武眞榮君 時間の制約がございますので、私はこのようにお尋ねいたしたいと思います。まず五名の皆さんの御意見を拝聴いたしまして、結論的には、皆さんがいかに熱烈にこのたびの法改正を願っておられるか、こういうことがよくお伺いできました。大変ありがとうございました。
 それで、今まで多くの皆さんから大事な点、お尋ねがありましたので、繰り返す時間もありませんし、またその必要もありませんので、新井参考人に、新井さんはお国は群馬とおっしゃいましたね。それで思い当たる節がありますが、戦前の群馬県における養蚕、そして今日の群馬県における養蚕業の状況の比較、どちらが進んでおるでしょうか。質の問題、量の問題もあると思いますが、この点を時間の制約がございますのでお聞きしたい。今は問題だけ提示しておきます。
 次に北原参考人にお尋ねしたいことは、お話の中で非常に強調しておられたことは、輸入と国内需給とのバランスの問題が非常に大事であるということを私は感じたわけです。そこでお尋ねしたいことは、国内需給の実態、それをお伺いいたしたい。もう一遍承りたい。
 それから宮田参考人にお聞きいたしたい点は、四千戸の村の戸数で基幹作目である養蚕業の収入が四〇%を占めておるというお話でありましたですね。ところが去年、暴落をしたというお話がございました。その暴落の原因は何であったのかということを、済みませんがお聞かせ願いたいと思います。
 それから福田参考人にお聞きしたいことは、近代的な養蚕技術の開発についての御所見をお聞かせ願いたい、こう思います。
 それから白杉参考人にお願いしたいことは、輸入織物の圧力が国内絹織物業を落ち込ませておる、こういうことを強調しておられましたが、それならば輸入と国内需給との需給の調整をどのように考えていらっしゃるだろうか。
 以上、お尋ねをいたしますので、よろしくお願いいたします。
#57
○参考人(新井芳男君) お答えいたします。
 群馬県における戦前と今日の養蚕の比較をということでございますが、なかなか正確な数字がわかっておりませんけれども、手元にある資料で申し上げます。昭和五年の統計でまいりますと、養蚕戸数が群馬県で八万一千九百七十戸でございます。そして、そのときの収繭量が二万五千三百二十九トンになっております。その後ずうっとまいりまして昭和二十年、これは終戦の年でございますけれども、終戦の年が養蚕戸数が七万四百六十戸、それから繭の収繭量は九千六百三十トンと、これは極端に少なくなっております。
 それから、養蚕戸数の一番最大にふえましたのが昭和三十二年でございます。昭和三十二年が八万四千百七十戸でございます。そして、繭の収繭量が二万二千七十四トンでございます。
 それから繭の総生産で戦前、戦後を通じて一番年間の総生産の多かったのは昭和十四年でございまして、三万トンの収繭量が出ております。
 それから現在、昭和五十九年度でございますが、養蚕農家の戸数が二万七千五百戸、収繭量が一万三千四百五十三トンということでございますので、養蚕戸数それから収繭量ともに、昨年は特に二割の減産問題がありましたので特別に急激な減少をしたわけでございますけれども、五十八年、要するに減産の指導のなかった五十八年は三万五百二十戸で、収繭量は一万六千五百十七トンでございますので、ここで約二〇%ほどの減産がされている、そういうことでございます。
#58
○参考人(北原岩男君) 輸入糸と内需の関係を申し上げます。
 私の申し上げる数字は、これは若干一、二万俵ずつの相違があるかもしれませんが、おおむね言われている数字は、全世界の生産数量が八十九万俵と言われております。そのうち大体日本の消費量が三十万俵で、そのうち輸入量が織物その他で生糸換算七万五千俵。そして糸及び撚糸で五万俵。我々の製作する糸が十八万俵、合計で約三十万強になります。そのうち、二万ないし二万五千俵が出てまいります。そうすると、この二万ないし二万五千俵出てまいりますと、それをこの一部改正の中で定時に定量、事業団から出してくるということが法律としてあるわけです。そしてぐあいよく合わせようという形になっておりますが、それが入ってくる糸や織物が余計になったりいたしますと、そこに狂いがくる、こういうことでございますが、おおむね我々のような者の常識はこういう数字であります。
 以上であります。
#59
○参考人(宮田忠助君) お答えします。
 一番の原因は、やはり先ほどから申し上げているように、採算がとれないということでございますが、やはり我が村はコンニャクの主産地でございまして、非常にここ二、三年暴騰しているわけでございます。そちらに大分流れが変わったということと、新聞等で御承知だと思いますけれども、東京の世田谷区が川場村と試買提携を結びまして、産地直送ということで野菜が比較的中間
マージンがなく消費者に送れるということで、合わない養蚕からだんだん離れていったんだと、こういうことだと思います。
 それで、先ほど四〇%、農協の農業収入の売上高で占めておりますよと申し上げましたけれども、実際には三七、八%だと思います。それで、何というんですか、この数字は、現状で言いますとやはり農協としてはもっと下がるだろうというような見方をしておりますし、四千戸でなくて、四千人の人口でございまして、農家数は八百戸のうち、約六百八十戸ぐらいの養蚕生産農家でこざいます。これがもっと減るような現状でございます。
 以上で終わります。
#60
○参考人(福田紀文君) お答えいたします。
 私には近代養蚕というものに対するところの考え方の御質問であったと思うんでございますが、最初のところでも申し上げましたように、これだけ賃金の高い、また近代化された日本の中で、労賃の非常に安い開発途上国と全く同じような養蚕というような形の仕組みをもってやろうとすれば、私は成立する条件というのはないということを申し上げた。それには、日本において太刀打ちしていくには、新しいところの技術というものをどんどん導入しながら、そして追いつかれればまた追い越していくというようなことが必要である。
 先ほども申し上げましたように、これからの、今まで既にある技術もございますし、またこれから開発していかなければならぬ技術がございます。人工飼料のような問題もございますし、また品種改良の問題あるいは土地生産性なり飼料効率といった問題もございます。あるいはまたバイテクのような問題も導入しながら、足腰の強い養蚕農家というものが育成をされ、ある意味においてはこの養蚕問題という最終の問題は、国内的な問題と同時に国際的な問題としてもやっぱり考えてまいらなければなりませんので、それに十分伍していけるようなそういう養蚕業というものを育成するのが、私は近代的養蚕であるというふうに考えております。
 以上です。
#61
○参考人(白杉儀一郎君) 私が理事長をしております丹後が和装表地の五七、八%をつくっておるというふうに考えておりますけれども、四十八年、四十九年は丹後のピークでございまして、九百八十万反、九百九十万反という数量をつくっておったわけでございます。昨年は四百三十七万反にそれが落ち込んでおります。一元輸入ができます五十一年ぐらいまでは、表生地は一反の輸入もなかったという状況でございますけれども、五十九年の四百三十七万反に対しまして、輸入織物の表生地丹後を直撃するものが約三百万反入っておるというふうに私たちは考えております。したがって、今国内でいろんなフォーマルに染められたものもございますけれども、二点に一点は輸入織物を使っておるんだというようなところまで大きく、むしろ裏地であるとか、それからいろんな軽目の羽二重であるものから、どんどん輸入のものを面積を狭めたがために、そうした重量のつく重目に転向してきたという状況でございまして、これが今日の非常に大きなものに及ぼしてきておるということを申し上げたいと思っております。
#62
○委員長(北修二君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑を終わります。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、皆様には御多忙中にもかかわりませず当委員会に御出席をいただきまして、大変貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   四時二十三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト