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1984/06/06 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 農林水産委員会 第21号
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1984/06/06 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 農林水産委員会 第21号

#1
第102回国会 農林水産委員会 第21号
昭和六十年六月六日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         北  修二君
    理 事
                高木 正明君
                谷川 寛三君
                最上  進君
                村沢  牧君
                藤原 房雄君
    委 員
                岩崎 純三君
                浦田  勝君
                大城 眞順君
                岡部 三郎君
                熊谷太三郎君
                小林 国司君
                坂元 親男君
                竹山  裕君
                初村滝一郎君
                星  長治君
                水谷  力君
                稲村 稔夫君
                菅野 久光君
                山田  譲君
                刈田 貞子君
                塩出 啓典君
                下田 京子君
                田渕 哲也君
                喜屋武眞榮君
   国務大臣
       農林水産大臣   佐藤 守良君
   政府委員
       農林水産大臣官
       房審議官     吉國  隆君
       農林水産省経済
       局長       後藤 康夫君
       農林水産省構造
       改善局長     井上 喜一君
       農林水産省農蚕
       園芸局長     関谷 俊作君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        安達  正君
   参考人
       全国農業会議所
       専務理事     池田  斉君
       明治大学農学部
       教授       井上 和衛君
       長野県農業協同
       組合中央会農業
       者年金農林年金
       連絡協議会事務
       局長       上島 久人君
       農業者年金基金
       理事長      森実 孝郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(北修二君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 農業者年金基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案につきまして、お手元の名簿にございます参考人の方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。
 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。
 御意見をお述べ願う時間は議事の都合上お一人十五分間程度とし、その順序は、池田参考人、井上参考人、上島参考人、森実参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 それでは、池田参考人からお願いをいたします。池田参考人。
#3
○参考人(池田斉君) 当委員会におきまして今御審議が進んでおります農業者年金基金法の一部改正につきまして、参考人として意見を申し上げる機会を得ましたことを、厚く御礼を申し上げたいと存じます。
 私は、いわゆる農業者の立場を踏まえまして、若干所見を申し上げたいと存じます。
 まず最初に、この制度の制定と私どもが組織をしております農業委員会組織の対応につきまして、簡単に若干申し上げたいと存じます。
 農業者年金制度の発足並びに発足以来、御案内のように数次にわたる制度改正が行われましたが、その都度、各先生方には大変お世話になりました。この機会に厚く御礼を申し上げたいと存じます。
 私ども農業委員会系統組織は、昭和四十二年以来農業者年金制度の確立を図るために、組織を挙げてその実現に努めてまいりました。そして、今日、本制度は農業者にとってはなくてはならない制度として定着し、農業者に非常に喜ばれておるということは御案内のとおりであります。現在、我々系統組織は、土地と人という面から構造政策の実施、推進を担当し、農用地の確保及び流動化の促進による規模拡大を通じまして、担い手の育成確保を図るべく総力を挙げて努力をしておるところでございます。このような観点に立って、本制度は重要な役割を果たしておりまして、また実務担当である市町村の農業委員会、都道府県農業会議の業務の中でも、今非常に大きな仕事のウエートを占めておるわけでございます。
 次に、現時点におきまして、現在の農業者年金制度の評価なり認識を若干申し上げたいと思います。
 制度が発足いたしまして十五年になるわけでございますが、既に御案内のように、経営移譲年金の受給者は三十七万人、また農業者老齢年金の受給者は十七万人を超え、年金の受給額も全体で見ますと、昭和五十九年度には一年間に千五百五十億円という大きな額になっております。その中の経営移譲率が当初の予想をはるかに上回り、これは御案内のような制度改正がその支えをなしたわけでございますが、約九〇%になっております。経営移譲を受けて経営主になった後継者の年齢は今平均三十二歳と非常に若返っておるわけでございまして、こういう若返りを土台として、新しい感覚で農業経営に精進をしているというふうに考えてよろしいかと思います。
 さらに、私ども農業会議所の調査によりますと、本制度によりまして経営移譲をしているため相続の際に五五%の農家で農地を一括経営移譲できた
というふうになっております。また、今後相続が見込まれる農家は、経営移譲による細分化防止に大きな期待をこの制度にかけておるような状態でございます。御案内のように、新しい民法での均分相続制度に対する農業資産の細分化防止対策、これはいろいろ議論が過去においてされ、農業基本法制定の段階でもいろいろ議論がされましたが、いまだに実現されておりません。そういうような姿の中で、この制度がいわゆる農地の細分化防止のかわりの役割を果たしているという点は、私は非常に高く評価をしなきゃならぬ問題であるというふうに考えるわけでございます。
 この経営移譲の中におきまして、御案内のように一つの大きな柱である第三者への経営移譲でございますが、これを受けた者の経営規模は都府県で一・八三ヘクタールから二・四八ヘクタールというふうに拡大されております。それなりのやはり成果が規模拡大の線で上がっているというふうに私は理解をいたしております。しかし、残念なことには、この第三者への経営移譲は全体の一〇%程度というところにとどまっておることは残念でございます。
 以上、申し上げましたような制度の仕組みとの関係でいろいろ問題はあるにいたしましても、本制度の現状につきましては、全体的に農業者から高い評価を受けており、我々もそのように考えておるものであります。
 次に、今回の改正に関しまして若干意見を申し上げたいと思います。
 既に御案内のように、今回の改正は三つ大きく分かれておるというふうに考えます。その一つは、国民年金、厚生年金の改正と関連する給付水準等の改正でございます。二つ目の問題は、政策年金として構造政策を一層推進するための年金格差等の問題であると思います。三つ目は、私どもが今まで制度改善の要望をしてまいりました老齢年金の支給要件の緩和等に関連する二、三の問題が今度の改正の内容になっておることは、御案内のとおりであります。
 その第一点につきましては、給付水準の引き下げ、保険料水準の引き上げ、また拠出時の国庫負担の打ち切り等かなり厳しい問題がこの改正案の中にあるわけでございます。しかし、改正案は、厚生年金並みの給付水準を維持するという本来のこの制度発足以来の目標があるわけでございまして、また経営移譲という問題を含めまして、政策年金としての特別の国庫負担がほかの年金と違いまして大きく出され、それで支えられているという問題がございますが、今回の改正におきましても、一応特別の国庫負担を認めようということに相なり、五〇%水準を割らないという線での歯どめをかけておるという点につきましては評価するものであります。
 また、この年金財政の健全性から見まして、本制度が将来にわたって存立し安定的に運営される、こういう点を総合的に考えますと、今回のこの第一点の改正は、私はやむを得ないというふうに考えておるわけでございます。しかし、本年金制度は、構造政策の重要な一翼を担うものでありまして、専業的な担い手が減少する中におきましては、やはり後代負担に一定の限界があるということは御承知のとおりでございます。したがいまして、今後におきましても国庫助成につきまして、法律は当面と書いてありますけれども、ひとつ引き続きこの特別の助成措置につきましての配慮を私は望むものでございます。
 第二点目は、これはかなり大きな議論がされておる問題でございます。いわゆる構造政策効果と関連いたしまして、サラリーマン後継者に経営移譲した場合に、年金給付額に格差を導入するということに相なっておるわけでございます。この点につきましては、経営移譲が望ましい自立経営農家の育成に結びつくよう推進する我々の立場から見ますと、将来的にはそうあるべきだというふうに私も考えるのにやぶさかではございません。
 しかし、今やられておるものを途中からその給付条件が変更されるという点につきましては、種々問題があると思うわけでございます。この点は、私も年金研究会の一員として参加しましたが、一番強くこれをどこにおさめるかという問題意識を持ちながら努力をした人間の一人でございます。
 今の経営移譲の実態から見ますと、半数以上がサラリーマン後継者への移譲である、これは事実でございます。また、それらの後継者は厚生年金や共済年金の加入者で、いわゆる年金財政全体から見ますと、農業者年金の支えになるというところから外れておる存在になるという点は、確かに問題が年金財政の中においてあるような気がいたします。また、専業農家の農業者年金加入者からも、これらの問題についてはいろいろ指摘をされておるわけでございます。しかし、現実にこの問題が制度として定着をしておる中で格差の導入ということはいろいろ問題がございますが、少なくとも十分の経過措置をとりながら、段階的にこの問題を持っていくという以外に私はないのではないかと思います。
 一応、今回の改正案では四分の三は確保する、四分の一につきまして五年間にわたって経過措置をとるというふうになっておるわけでございます。そういう関係で、年金研究会にも参加した者として、まあこの程度で、四分の三が確保される、それも五年間の経過措置があるというようなことで、やむを得ないというふうに私は考えております。
 なお、構造政策の関連におきましては、農業者年金制度研究会の報告にもありますように、特定処分対象農地の支給停止要件の緩和、これは私どもが強く主張したところであります。この問題は法律事項ではなくて、政省令問題で解決をされる問題だと思いますが、農地の有効利用の観点から、十分ひとつ当委員会におきましても御意見をおまとめいただきまして、政府がこれを実現する方向で対処されるということを、特に要望しておきたいと存じます。
 また、構造政策関連におきまして、以上のほかに農業生産法人の構成員の被保険者資格につきまして、厚生年金の改正との絡みにおきまして今後問題が出るわけでございますけれども、今後この辺はさらに検討をしていただきまして、農業者年金に農業生産法人の構成員が加入できるというような方向で、将来の問題の御解決を願いたいということをつけ加えておきたいと思います。
 第三番目の問題は、今回の改正案にはそのほかに、既に御審議を願っておるわけでございますが、老齢者年金の支給停止要件の緩和の問題がございます。それから死亡一時金の支給対象の拡大、これは遺族年金のちょっと窓口に足をかけたという程度でございますけれども、そういう問題が解決されようとしております。また、農協等の常勤職員の受給資格期間の通算措置、これが可能になり追加されたわけでございます。
 これらの問題は、我々が従来からずっと要望してきた問題でございまして、そういう点が、全部ではありませんが、この三点につきましてある程度今回の改正に織り込まれたということにつきましては非常に評価をいたし、また農業経営や農家生活の実態に一歩近づいたというふうに考えておるところでございます。
 今回の改正案につきましては、いろいろ問題はありますけれども、以上のような私の見解に基づきまして、私は本法案に賛成をするものでございます。
 次に、今後の問題につきまして若干意見を述べさしていただきます。
 農業者は、言うまでもなく、本制度が長期にわたり安定して存続するということを望んでおるわけでございます。そのためには、私どもの組織は、組織を挙げまして未加入者の加入促進に取り組んでおり、その成果も着々上がっております。昨年は、御案内のように、三万人の未加入者が加入するというようなことに相なったことは慶賀にたえません。また、それらの問題との関連におきまして、加入者、受給者の組織化等を進めまして、そういう受給者、加入者の組織化というものが、本制度の長続きをする一つの背景として力強くこれを
動かすべきであると、こういうような観点からこの組織化に努力をいたしており、今後もさらに努力を続けたいというふうに考えておるわけでございます。現在、十七の都道府県におきましてそういう組織ができており、本年じゅうにはさらに三つほどふえるというようなことに相なるような実情でございます。当委員会の委員長も北海道のこの組織の会長さんでございます。
 同時に、本制度は、過去の数次にわたる改正によりまして、一段と実態に即した制度となってきておりますが、それでもなおかつ今後の問題といたしまして幾つかの問題があるわけでございます。これらの問題につきましては、相当基本的な問題に絡む点でございまして、この短期間の対応の中では十分検討が煮詰まらないというようなことでございます。制度研究会におきましても、改めて別途検討を続けていくというふうに相なっており、恐らく政府もそのような方向で検討をしていくのではないかというふうに考えるわけでございます。
 いずれにいたしましても、この辺の問題はやはり長期、安定的になお政策年金としての効果を保有していくと、こういう側面から、一つは年金財政の安定化の問題、それから政策年金としての基本的なあり方の問題、これらが基本的な問題であると思いますが、これは中長期的な視点に立って別途検討を開始するように、政府に当委員会も激励をしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。
 なお、最後になりますけれども、本制度は、加入資格、経営移譲に伴う農地処分、またそれらと関連して農地法、税法等との整合性の確認と、非常に諸手続がほかの年金と違いまして複雑になっております。このため、業務の実務機関である、この認定業務をやっております農業委員会におきましては、皆さんも御案内のように非常にトラブルが種々起こっており、不幸な事態まで発生をしておることは御案内のとおりでありまして、非常に第一線では苦労しているということを強調しておきたいと思います。
 したがいまして、今後この制度が、実務の世界を含めまして、十分ひとつ所期の目的を末端でもそれを的確にこなし得るというような方向におきましては、業務体制のやはり整備の問題、それから業務委託費がいかにも少ない、これの増額の問題、できますればこれらの業務を専門的に担当する年金主事等の設置、それらにつきまして、特段のひとつ御配慮をお願いするわけでございます。
 最後に、今申し上げましたが、今度の改正が行われましても、ある意味ではさらに複雑になるというようなことでございます。私は将来の問題としては、何とかこれを簡素化するというような方向での枠組みができないかということを念願をいたしますけれども、いずれにいたしましても非常に複雑である。そこで、改正後の事務を円滑にするためには、やはり相当の準備期間、それから農業者へのPR、これが都道府県段階、市町村段階を通じて必要でございます。そういうような意味におきまして、先生方の御協力によりまして、やはり早くひとつ成立をさせていただく。そして、そういう問題が本当に趣旨が徹底をして、実務の線におきまして間違いなく行われるというようなことを、私は実務を担当する組織の代表的な立場からお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
 以上をもちまして私の意見といたします。
 ありがとうございました。
#4
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、井上参考人にお願いいたします。井上参考人。
#5
○参考人(井上和衛君) 井上和衛でございます。
 私の専門領域は農業経済ですが、主な研究分野は農家の就業構造についてでございます。具体的に申し上げますと、農業・農村における就業者の労働と生活に関する研究でございます。言ってみれば、農業・農村の人をめぐる問題が私の研究課題ということになります。研究手法といたしましては、私が現在の大学に移る前に労働科学研究所に在籍したということもありまして、労働科学的知見を取り入れたフィールドワークが中心となっております。
 そこで、私は、私の研究分野である農家の就業構造の実態から見た農業者年金制度についての意見、感想を述べてみたいと思います。
 農業者年金制度の評価をめぐってはいろいろな議論があろうかと存じますが、私は先ほど御意見を述べられた全国農業会議所の池田専務さんの評価と基本的に同じであります。
 とにかく、私の農村調査経験では、農業者年金制度は、年金受給者の農村のお年寄りから大変喜ばれていると思います。この農業者年金制度は、制度のなかった時代と比べると、まだ不満足な点が多いとはいえ、農業者の老後保障の点で一定の成果を上げていると言ってよいと思います。とはいえ、現行制度にはいろいろ改善すべき点もあろうかと存じます。
 そこで、私は、まず現行制度の運用面での問題点を一つ挙げておきたいと思います。
 農業者年金制度における経営移譲は、御承知のように後継者移譲と第三者移譲から成り、後継者移譲が約九割、第三者移譲が約一割ということですが、経営移譲の実態を調べてみて一般的に言えることは、どこでも後継者がいる場合には、後継者が農業専従者であろうと農外兼業従事者であろうと、とにかく後継者移譲となるのが普通で、第三者移譲は後継者がいないのでやむを得ず仕方なくということになっていると思います。すなわち、第三者移譲は後継ぎが他出し後継者が欠如している農家において、より多く見られると言っていいと思います。
 言うまでもなく、そうした農家は、他産業の就業機会の乏しい山村、農山村地域において、より多く見られます。そこで問題なのは、そうした地域では後継者の欠如だけでなく、経営移譲すべき第三者すら見つからないということがあるという点です。
 現行制度でも、御承知のように、第三者移譲の相手には基金、農地保有合理化法人、農協等も含まれているのですが、各地の実態からすると、上記の公的機関はそうした点で十分に機能しているとは思えません。したがって、私は農業者の老後保障の観点からも、第三者移譲の相手が見つからない場合には、もっと積極的に対応できるような措置を講じる必要があるのではないかと思います。同時に、こうした公的機関の土地確保を通じ、最近注目されている非農家出身青年の新規参入を促進するような条件整備を図る必要があるのではないかと思います。とにかく、今日、日本農業にとって若い担い手の確保は差し迫った課題ですので、若い農業者にとって農業者年金制度を魅力ある制度にする必要があると思います。
 さて次に、私の研究分野から見た問題に限定して、今回の改正案に対する私の意見を申し述べたいと思います。
 今回の改正案によりますと、経営移譲に当たって譲り受け後継者が、いわゆる特定譲り受け者とそうでない者とで経営移譲年金給付額に格差を導入することになっていますが、それは年金財政の節約という点では効果があるかもしれませんが、構造政策上の効果という点では、農家の就業実態並びに地域農業の抱えている課題との関連で、なお検討を要する点が含まれていると思います。
 そこで、まず、今日の農家の就業実態について簡単に触れておきたいと思います。
 今日の農家世帯員の就業形態は、農業白書も指摘しているように、多様化、多重化が著しく進んでおります。白書によると、農家労働力の六割までが恒常的勤務や臨時的賃労働、自営業といった形で他産業に投入されております。私は率直に申し上げて、そうした農家労働力の他産業就業が日本の労働市場の底辺を支え、国際競争力の強い日本の工業を支えているのだと思います。そして、そうした農工間の不均等発展が、今日の日本農業の就業構造を規定しているのだと思います。
 農業に片足を置き、他産業就業で生活の安定維持を図るといったことが、他産業に良質の労働力
を安く供給することを可能にし、それが国際競争力に強い日本の工業を支えているのだということになるのですが、そのことは逆に見ると、農家世帯員は恒常的勤務者であっても、世帯主、後継ぎともなれば、その年間従事日数が少ないとはいえ、休日・朝晩農業の形で農業に従事しなければならないことになっております。そうした状況は、稲作を中心とした土地利用型農業において、より強く見られます。白書も指摘しているように、恒常的勤務者の中には、稲作機械のオペレーターとして活躍している人も少なくありません。
 本来、農業は、農業専従の人によって担われるのが理想的であると言えますが、今日の日本の農業は、恒常的勤務者となっている農家労働力にも依存しなければ農業生産を維持できないような状態になっているのが、今日の実態だろうと思います。
 とにかく、稲作を例にとりますと、機械化、省力化が進んだ結果、世帯主と後継ぎの二人が農業専従となった場合、いわゆる過剰就業となってしまう農家が、経営耕地規模別に見ますと、かなり上層農家に及んでいます。したがって、後継ぎは、世帯主が現役の基幹的農業労働力であるうちは恒常的勤務者となり、世帯主が基幹的労働力から補助的労働力に移行し、農業からリタイアする段階で、農業にUターンする事例を多く見ることができます。
 すなわち、かつての人力、畜力段階当時の稲作における馬耕作業は、労働科学的に言いますと重筋労働だったので、男子でも四十歳代後半になりますと体力的に無理になってくるので、その仕事を後継ぎに譲るといったことになっておりました。ところが、今日のトラクター段階では、それが五十歳代後半以降に延びてきていると思います。とにかく、以上のような農業における就業構造の変化が、農家後継ぎ層の恒常的勤務化を一般化し、いわゆるUターン後継者を生み出す要因になっているのだと思います。
 恒常的勤務の後継ぎ層の農業従事の内容を見ますと、トラクター、田植え機、コンバインなど、機械作業に従事している者が多いと言えます。とにかく、今日の日本農業においては、恒常的勤務者であっても農業の担い手として重要な役割を果たしているという認識を持つ必要があると思います。
 今日、以上のような兼業化が進んだ状況のもとで、地域の専業農家、兼業農家、高齢者、青年、婦人が一体となって、地域ぐるみの営農集団活動を展開し、生産性の高い農業を実現している事例を各地に見ることができます。その具体的内容は、ブロックローテーションに見るような集団的土地利用調整、土地利用の高度化、機械、施設の効率的利用などですが、そうした営農集団活動の中で、恒常的勤務の後継ぎ層も交代で農業機械のオペレーターとなり活躍しているわけです。
 白書も指摘しているように、今日、農業構造の改善を図るためには、兼業化の進んだ実態を踏まえ、地域ぐるみの話し合い活動等集団的取り組みを強めていく必要があると思います。すなわち、専兼一体となった地域ぐるみの集団的活動の展開が要請されているわけですが、今回の改正案のように、経営移譲年金給付額で専兼別の格差をつけるようなことをすると、金額はともあれ、専兼一体で進めている地域ぐるみの集団活動に水を差すようなことになりはしないかと心配いたしております。
 なお、専兼別格差の導入については、いろいろな理屈があると思いますが、年金加入者の立場からすれば、同じ掛金を掛けたのだから到底納得のできないことだろうと思います。これは政治不信につながり、農業者年金制度自体の存続を疑問視する機運を増長し、今後の加入促進にブレーキをかける要因になるのではないかと心配いたします。
 今回の経営移譲年金給付額における専兼別格差の導入は、政策年金だからという理屈があるにしろ、その直接的動機は年金財政の今後の見通しによるものだと推察いたします。私は財政については素人ですから、責任のある意見は申し上げられませんが、社会保障制度は、本来国民所得の再分配機能を持つものでなければならないと思います。とすれば、先ほど申し上げたような農工間の不均等発展の状況からすれば、農業者年金制度を充実するために国庫負担をさらにふやすといった考え方も、決して不当なものではないということを申し上げておきたいと思います。
 なお、私は、農業者年金が公的年金で、かつ政策年金であるならば、適格な第三者移譲の場合には年金給付額に割り増しをつけるべきではないかと思います。先ほど述べました山村、農山村地域における第三者移譲後の高齢者世帯の実態を見ますと、生活費の中で公的年金の占める比重が高く、かつ生活費を確保するために日雇いに出ている高齢者が少なくありません。したがって、そうした高齢者の老後保障の意味からも、適格な第三者移譲の場合は割り増しをつけるべきであろうと考えられます。
 とにかく、私は、今日の農村の状態を考えますと、今後の日本農業の担い手を確保するという意味で、農業者年金制度はさらに充実する方向で検討されるべきだと思います。
 以上で終わりにしたいと思います。
 失礼いたしました。
#6
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、上島参考人にお願いいたします。上島参考人。
#7
○参考人(上島久人君) 私は、長野県農協中央会の農業者年金と農林年金連絡協議会事務局長の上島でございます。
 当委員会におきまして、農業者年金基金法の一部改正が審議されるに当たりまして、参考人として意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、厚く御礼申し上げる次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
 そこで、私は、日ごろ県段階におきまして農業者年金の実務に携わり、市町村や農協の実務担当者、それに農業者年金の加入者あるいは受給者に直接接しております立場から、今回の改正法案に対する意見を、これらの人たちの意見も代弁しながら申し述べてみたいと思うわけでございます。
 既に各先生方御承知のとおり、農業者年金制度は、昭和四十六年一月発足以来十五年目を迎えまして、農業者にとって欠かすことのできない重要な制度であり、重要な農業政策として定着しておるのでございます。それは制度発足以来七回にわたりまして前向きの法改正が行われ、順次前進しましたことが、農業者の間にその定着を見たものと思うわけでございます。その間における先生方の御尽力に対しまして、この際、深く感謝申し上げる次第でございます。
 それだけに、これまでは現場における実務者にとりまして、加入促進その他もろもろの業務遂行に当たりまして非常にやりやすかったわけでありますけれども、その一例を申し上げまするならば、例えば保険料を徴収する権利は二年で時効により消滅いたしまして、その消滅した期間を救済するための保険料の特例納付などにつきましても、過去三回にわたりましてその改善を実施いただいておるところでございますし、また、経営移譲の円滑化と経営主の若返りを図るために、後継者に対する使用収益権の設定を経営移譲の要件に加えまして、経営移譲をやりやすくするなどの前進する改正が行われてきたわけであります。
 ところが、今回の改正につきましては、公的年金全般にわたる一大改革の関連と相まちまして、農業者年金制度そのものの将来展望に立って抜本的な見直しがなされております関係から、かなり厳しい内容も含まれておるものと存じます。
 まずその一つは、年金額の改定と保険料の改定であります。つまり、給付と負担の適正化を図るという大義名分のあることは十分承知しております。二十年という経過措置による給付の引き下げであることも理解できますけれども、その給付水準を六〇%という大幅な低減を図ろうというところにあるわけでございます。
 さらに、特定譲り受け者以外の者に経営移譲し
た場合に支給される経営移譲年金につきましては、先ほどもお話が出ておりますけれども、毎年度二十分の一ずつの差を広げまして、五年で四分の一、つまり二五%の差をつけようということにつきましては、いわゆるサラリーマン後継者への経営移譲が半数以上を占め、今後もさらに増加するであろう傾向にありますだけに、この反響は極めて大きなものがあると思います。
 本長野県におきましては、去る四月の中、下旬に県下六会場で農協なり農業委員会の実務担当者およそ三百余名の出席を得まして地区別会議を開催しました際に、農業者年金基金法の一部改正案の大綱を説明申し上げましたところ、先ほど私が申し上げました給付率の低減であるとか、あるいは四分の一の減額格差などにつきまして、今後の加入促進に大きなブレーキがかかり実務を預かる者として全く頭の痛いことであるといった意見であるとか、農業者年金制度発足当初から農協、農業委員会がこの制度の有利性を説いて加入促進を強行してきましたけれども、五十一年度に給付が始まりましてわずか十年を経過しただけで期待権は奪われ、既得権すらも侵害されるのではないかという改悪であるといった問題。特に、若い世代層におきましては、農業者年金の将来は全く当てにならないという不信感や不満が募りまして、農業者からは最先端の実務者が責められておるという意見なども各地区から数多く出されておる実情でございます。
 さらに、年金給付が不利になるにもかかわらず、保険料負担が急激に増高しまして、国民年金の保険料の増高にあわせますと長期の負担に耐えられないので、この際脱退したいといった被保険者の声すらあるという意見を聞かされておるのでございます。
 このことは、私、一昨年十月から農業者年金相談員という委嘱を受けまして、年間少なくとも三十カ所以上の市町村に出向きまして加入者や受給者から直接年金相談を受けておりますけれども、年金の将来を危惧する意見はよく耳にするところでございます。
 ただいま申し上げましたような率直な、そしてまた素朴な意見に対しまして、私ども現場の実務者といたしましては、世界にも例を見ないところのスピードで進行しております我が国の人口構造の実情であるとか、あるいは産業構造や就業構造の大変革がもたらす年金制度全般への影響などにつきまして、できるだけ納得いただけるような解説をもいたしておる次第でございます。
 しかしながら、これらに対しまして産業構造、なかんずく農業構造の大変革や就業構造の変革は、工業優先の我が国がとってきた政策によるものではないかといった反論もしばしば受けるわけでございます。特に、人口構造の高齢化は、山間地ほど進行いたしまして、本長野県全体といたしましても、全国平均の一〇%を三%上回っておるというのが現状でございます。したがいまして、若者が大都市や地方都市に流出しまして、農業に専従するような農村の実態になっていないのが実情ではなかろうかと思うわけでございます。農業は現在の親たちの代で終わり、先祖伝来の美田はその力を十分発揮できない方向になりつつあるのではなかろうかという危惧さえあるのが実態だろうと思われるのでございます。
 農業者年金制度は、農業者にもサラリーマン並みの年金を支給し、老後の保障と経営主の若返りを図るなどの政策にあわせまして創設されたいわゆる政策年金であることは、今さら私がここで申し上げるまでもありませんけれども、今の若者にとって、果たしてこの年金がどれほどの魅力あるものとして受けとめられておりますか、甚だ疑問のあるところでもございます。
 ちなみに、本年三月末現在の被保険者八十八万五千人中二十歳代はわずか一万八千五百人で、二%ちょっとの加入にとどまっているのが現状であります。
 私は、ここで、五十九年度末現在の被保険者の年齢階層別比率を参考に申し上げ、年金財政の将来に及ぼす影響の危惧される点を強調しておきたいと思うわけでございます。
 二十歳代は先ほど申し上げたとおり二%余りで一万八千五百人、三十歳代は一四・五%で十三万人弱、四十歳代がおおむね四分の一の二五・五%、二十二万五千人、五十歳代の高齢者の加入が大半を占めて五七・八%の五十一万二千人となっておるのが実情でございます。
 さらに、その五十歳代を分析してみますと、五十五歳から五十九歳の階層で占める割合は、何と全体の三分の一に当たるところの二十九万人となっておるのでございます。
 ちなみに、加入者平均年齢は四十九・五歳となっておりまして、他の年金には見られないところの高齢者年金であることは間違いございません。
 したがいまして、ここ数年を経ますと、被保険者は減り続け、受給者は逆にふえ続けることは必至でありますので、その比率は完全に逆転しまして、国鉄年金グループの二の舞となることは明白な事実だろうと思われます。ただ、財政的には国鉄のそれとは多少相違がありますことは、農業者年金に対する国庫補助は、その方法が変更されようとしておりますけれども、給付費に対しまして二分の一という極めて高率の補助金が当分の間保証されていることであります。どうか、この補助率につきましては当分の間と言わずに、この制度の存続する限り継続していただきたいことをこの際特にお願い申し上げておきたいと思うわけでございます。
 この制度の長期安定的な運用は、ただいまお願い申しました国の手厚い補助政策はもちろんでありますけれども、まず加入促進を強力に進めまして、先ほど申し上げましたが、加入者年齢の若返りを図らなければなりませんし、また財政の健全化を図るためには、他の公的年金の改革と同様に、給付と負担の適正化にかかわる改定はどうしても避けて通れないものとして、本改正案は反対意見のあることも十分承知しておりますし、問題点がなしとはいたしませんけれども、私といたしましてはやむを得ないものと考えておるところでございます。
 特に、多くの経営移譲者に影響の出ますサラリーマン後継者への経営移譲につきまして四分の一減額という格差は、かねて専業農家から出されておりました不満、不平、矛盾の是正を図るという意味合いからいたしますと、これまたやむを得ないというふうに私は考えておる次第であります。
 本改正案は、やむを得ない後退部分はありますけれども、従来から私どもが要望してまいりました幾つかの改善事項につきましてもそれぞれ配慮されておりますことにつきましては、この際、敬意と感謝を申し上げたいと存じます。
 例えば、被保険者資格の中で六十歳から六十五歳までの高齢任意加入制度の創設、また農林漁業団体役員の受給資格期間の通算措置の問題、あるいは農業者老齢年金の支給要件の緩和、死亡一時金の支給対象の拡大等々、その前進が図られますことは、今まで抱えておりました問題解決の一助ともなりまして大変喜ばしいところでございます。しかし、今までに要望してまいりましたそれぞれの事項のすべてが解決しておるわけではございませんので、今後におきましてさらに御検討をお願いし、その実現に向けて御努力賜りたいことをつけ加えておきたいと思います。
 その一例をちょっと申し上げてみますと、農業者遺族年金の創設でございます。御承知のように、他の被用者年金は、基礎年金の上に二階建て、あるいは三階建て部分がありまして、その分につきましては遺族年金があるわけでございます。農業経営が世帯主義をとっておりますし、農業者年金そのものが基礎年金の二階建て部分に相当しておりますので、ぜひこの点も御検討いただければ幸いと存ずる次第でございます。
 さらに、この年金制度は複雑多岐にわたっておりますことは、被用者年金の一つでございます農林年金の業務にも私携わっております関係から、そのことを痛感いたしております。したがいまし
て、この制度ができるだけ簡素化できますよう、御配慮をいただきたいところでございます。
 以上、いろいろ申し上げてまいりましたが、今回の大きな改正は、本法はもちろんのこと、政省令にゆだねる部分を含めまして、これらの施行に当たりまして、実務現場における窓口事務はさらに複雑になってまいりまして大変なことが予想されます。したがいまして、事前の準備期間や農業者への十分なPR期間が必要でありますので、この改正法案の一日も早い成立を心からお願い申し上げ、賛意を表明しまして、私の意見を終わります。
 ありがとうございました。
#8
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 次に、森実参考人にお願いいたします。森実参考人。
#9
○参考人(森実孝郎君) 農業者年金制度の実施機関を預かっております立場から、制度の現状、業務運営上の問題並びに今回の改正案につきまして、所見を申し上げたいと思っております。
 まず、現状でございます。十五年目に入るわけでございまして、ようやく定着、成熟してきているというのが実感でございます。加入者数について見ますと、実は五十九年度は関係者の大変な御尽力で新規加入者は三万人を超えました。しかし、加入者から受給者への移行が大幅にあるために、なお現在加入者は減少傾向にございまして、五十九年末の時点では九十万人を下回っている水準になっております。
 年金給付でございますが、受給者の数を申し上げますと、現在経営移譲年金が三十七万四千人、農業者老齢年金が十七万二千人にまでふえてきております。年金額も物価スライド制の実施や、それからもう一つは加入年数が延びたという事情がございまして、五万三千円の月額を経営移譲年金については六十五歳末満の方はもらえるというところまで来ております。
 なお、制度を考える場合、非常な問題になります経営移譲率の問題でございますけれども、制度発足後における経営移譲要件の緩和ということもありまして、当初は御案内のように三、四割を見込んでおったものが、現在では九〇%という水準になっているわけでございます。そこで、こういった事情が当然農業者年金の財政事情に鋭く反映してきているということでございます。つまり、経営移譲率の大幅な上昇、物価スライド等によります年金支給額の増大、それから被保険者数の減少もありまして、確かに現在お預りしております年金の資産額は五千七百億ございまして、当面の年金支給には支障がございませんし、なお若干はふえ続けておりますけれども、単年度収支の幅も五十九年度には、一時は毎年六、七百億プラスだったわけでございますが、二百六十億前後まで減少しておりまして、六十年は恐らく百億強ということになるだろうと思われます。恐らく早晩、単年度収支は逆転いたしまして、資産の取り崩しに入らなければならないというのが偽らざる状況でございます。
 そこで、制度運営上の問題点なり課題について申し上げたいと思うわけでございます。
 加入の問題でございます。構造政策の進展という意味からも、また制度の長期的安定という意味からも最重要課題だろうと思っております。五十六年以降、未加入者の加入促進を積極的に実施しているわけでございます。業務受託機関や関係者の熱心な御努力もありまして、先ほど申し上げましたように、五十九年度は新規加入者は三万人を超えたわけでございます。現状では加入率は約八〇%程度ということでございまして、なお二十万人を超える未加入者が存在しているものと推定されるわけでございます。
 私が申すまでもなく、年金制度は世代間の相互扶助を前提とした制度でございますし、将来の制度の安定的確保を図るためには、従来にも増して重要だろうと思っております。そういう意味において、制度の果たす役割、相対的な有利性、加入資格の改善等につきまして十分なPRを進め、加入促進を強力に進めなければならない状況にあると思っております。
 もう一つは、構造政策の推進という視点から見た農年制度の評価なり、あり方の問題でございます。私ども考えまするに、やはりこの制度が定着することによって、単独相続実現への誘導等農地保有の細分化防止という基本的な効果は非常に果たされているのではないか。さらに、当然のことながら、農業経営の若返りも大幅に進んだことは事実でございますし、また、規模拡大にも役割を果たしていることも事実でございます。
 ただ、問題は、後継者移譲につきまして、譲り受けた後継者の約半数がサラリーマンであるということについて、これは一体政策年金としてどう評価するかという批判が一部にあることは事実でございます。私ども、日本農業の今日の状況から考えますと、サラリーマン後継者であっても、土地保有の細分化防止なり若返り促進という機能は十分確保していると考えられますけれども、やはり構造政策のさらに十全の活用という点を考えるならば、農業者年金の加入者等農業に専従する方にできるだけ移譲が集中するような誘導ということは、やはり考えなければならない課題ではないかと思っているわけでございます。
 もう一つ大きな課題がございます。それは業務の適正かつ円滑な運営、特に経営移譲に関する適正な業務運営という問題でございます。経営移譲につきましては、先ほど申し上げましたように、移譲率も上がって件数も著しく増加したわけでございますが、その一部については必ずしも十分な経営移譲の実態を具備していないと見られるものも散見されることは否定できないところでございます。やはり高率の国庫補助のもとに行われる政策年金であるということを考えますと、実態に裏づけられました適正な経営移譲が実現されますように、さらに指導を強化することが必要ではないかと思っているわけでございます。
 また、このほかに、被保険者の資格の確認、管理の問題、保険料の収納、年金の裁定の問題等につきましては、私ども年金業務を預かる者は、被保険者の方々や、こういった受給者の方々と常時密接に関係を持っているわけでございますから、そういった点を重視しながら、業務の円滑な処理ということをこれから考えていかなければならないと思っております。
 そこで最後に、今回の制度改正につきまして若干の所見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。
 まず、基本になります給付と負担の適正化という問題についてでございます。やはり公的年金制度の改革の一環として厚生年金保険制度の改正が行われた、これとの関連による見直しということも当然必要でございましょうが、今まで申し上げましたような農業者年金独自の財政の立場から申しますと、やはり独自の対応自体が必要になってくるのではないかと思うわけでございます。
 加入につきましては、やはり高齢化社会への移行、農村の特に老齢化が先行している事情ということを考えますと、また農業の兼業化の状況を考えますと、相当の努力を払っても加入者数はなお当面減少をすることは避けられないと思います。一方、経営委譲率は、先ほども申し上げましたように、制度の発足当初は三、四割を頭に置いたわけでございます。その後のいわゆる経営委譲要件の大幅な緩和によりまして、今日十人中九人までが年金に結びつくという実態が生まれてきているわけでございまして、受給者は年々当然のことながら増加しているわけでございます。それから、数次にわたります物価スライドもありますし、既裁定年金は増額していることは当然のことでございます。
 こういった状況をどう受けとめるかでございますが、やはりそういったことが関係者の幅広い支持を得て、農村に農業者年金制度が定着した大きな要因になっているというふうに積極的な評価はできると思いますが、同時に、反面、そのことが農業者年金の財政を厳しい状況に置いているということも言えるわけでございます。そういう意味において、一部の学識者等の中からは、農業者年金
の加入者と受給者の対比や、その他の点から見て、年金方式は無理ではないかという議論もあったわけでございますが、私ども見まするに、やはり農民の大部分の方はこの定着、成熟した本制度という意味の枠組みを守ってほしいという強い要望を持っておられると思います。
 そういう意味において、やはりこの成熟、定着した本制度の枠組みを基本的に維持していくという選択の上に立って、どうやって長期にわたる運営の安定を図るかということになりますと、やはり給付と負担の適正化という問題は避けられないものと考えられます。
 もう一つ、ここで申し上げなければならない問題は、やはり国民年金も同様でございますが、制度発足当時の経過措置として、いわゆる年金受給資格期間の短縮と年金額の加算という優遇措置を講ぜられている方があるわけでございまして、それが現在の既裁定者は皆そうでございますし、また近々に裁定を受けることになる昭和一けたの方々もこの優遇措置を受ける立場になるわけでございます。これが後代に負担が及ぶことは大数法則としては当然避けられないことでございますけれども、やはり戦中、戦後の歴史や、制度発足の沿革を考えますと、後代の若い農業者の方々にも御理解をいただけるものと考えております。
 今日の厳しい国の財政事情のもとでありながら、やはり五割という高率の国庫補助の枠組みが守られたという点、こういった財政状況なり、農村社会に定着している実情等を順におますと、今回の法改正が基本的枠組みを維持しながら給付と負担の適正化が図られたことについては、やむを得ないものとトータルとして私は見ているわけでございます。
 次に、構造政策の進展という視点から年金額に差を設ける措置についてでございます。
 政策年金という視点からいけば、やはり農業者年金加入者等、農業に専従する見込みの方に施策が集中するように誘導するということは、政策の論理としては当然のことだろうと思います。
 今回の改正案を見ますと、確かに四分の一の格差ということは微温的であるという議論も一部にはございますけれども、とにかく一つの考え方として、構造政策効果の発現を図るという筋道において当然考えられているわけでございますし、実はこのことが、加入者の保険料負担の増加を抑制するという年金財政上の独自の立場というものも当然あるわけでございますし、またさらに現実的な処理として、関係者の皆さんの中から、急激な変化を避けるためのいわゆる衝撃緩和措置と申しますか、経過措置という要望があったわけでございますが、これについても五カ年間に段階的にカットしていくという、かなり実情に配慮した経過措置が講ぜられているという点から見て妥当なものではないだろうかと思うわけでございます。この問題は、議論の問題としても、それから地域によっても、かなり意見が分かれている問題であることは私事実だろうと思います。
 そういう意味においては、一つの立場から見れば、今回の改正についてかなりの批判があり、また逆の立場から見れば不徹底であるという議論もあることは私も存じておりますが、そういった点を総合的に判断してみると、現実的な措置として評価できるものではないかと私は見ているわけでございます。
 これ以外に、私ども実施機関の立場から、関係者等の要望を踏まえまして主務省にお願いした問題がたくさんございます。それらの中には、制度の本来の仕組みとか、ねらいというものとか、今日の年金の財政事情から見て必ずしも全部が全部取り上げられたわけではございませんけれども、そういった中でもやはり経営移譲年金の受給者が短期間で死亡した場合の死亡一時金を遺族に支給をする措置あるいは六十歳以降の任意加入制の創設、さらに農業者老齢年金についての加入要件の緩和、物価スライド制のいわゆる明定化等が織り込まれたことはメリットをもたらすものと考えております。
 以上、今回の改正案につきまして、全体としてながめてみますと、関係者の皆さんの大変な御尽力のもとに、厳しい状況下でありますが、制度のまず基本的枠組みが守られた、と同時に、将来に向けてその運営を安定させる措置も講ぜられている、懸案事項についてもある程度まで前進と解決があったという点で、私どもこれからその準備にかからなければなりませんけれども、この準備なりPRはなかなかの努力なり期間を要すると思います。できるだけ早期にこの法案が成立いたしますことを、この機会にお願いしたいと申し上げるわけでございます。
 農業者年金基金といたしましても、改正法が成立いたしました暁におきましては、背景、内容またその必要性について十分関係者と協力してそのPRを精力的に実施すると同時に、切りかえの準備体制に万全を期したいと思っているわけでございます。
 以上をもちまして、私の意見といたします。
#10
○委員長(北修二君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳を終わります。
 それでは、これより参考人の方々に対し質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#11
○山田譲君 きょうは、大変お忙しいところを御出席をいただきまして、それぞれの立場からの大変貴重な御意見を伺うことができて非常にありがたく思います。心から感謝を申し上げたいと存じます。与えられた時間も少ないものですから、いろいろ御質問申し上げたいこともあるわけでありますけれども、なるべく端的に要点だけを御質問申し上げますので、どうかひとつよろしくお願いしたいと思います。
 まず、池田参考人にお伺いしたいんでありますけれども、二つばかりございます。
 最初に、経営移譲は土地の細分化防止には非常に役立っている。そしてまた、経営規模の拡大にも役立っているというふうなお話がありましたけれども、確かに細分化の防止にはかなり効果があるかもしれません。しかし、どうも経営規模拡大の方からいいますと、そう大きな効果が出ていないじゃないかというふうに思われてなりませんが、その辺についての御意見をもう一遍お伺いしたいというふうに思います。
 それからもう一つは、非常に事務が複雑でいろいろなトラブルが起きているというふうにおっしゃいましたわけですが、私も何となくそれを感じておりまして、おとといの当委員会の審議でもいろいろ質問したのでありますけれども、できれば、ここでどのようなトラブルが起きているか、そしてまたその原因はどの辺にあるかということについて、参考人のお考えがありましたらお伺いしたいと思うのであります。
 まず、その二つをお願いします。
#12
○参考人(池田斉君) この年金制度の今果たしている効果について、特に規模拡大には余り効果がないではないか、これは先ほど私申し上げましたように、第三者移譲につきましてはそれなりの規模拡大の成果を挙げておる、こういうことを申し上げました。しかし、第三者移譲が一割程度であるというようなところに、国全体としての規模拡大にある程度の限界があることは事実でございます。
 そもそもこの規模拡大の問題は、農業者年金だけに期待をするということは無理であることは御案内のとおりであります。したがいまして、農地三法等が制定されまして、今そういう側面から農用地利用増進法等を軸として規模拡大を一生懸命やっている、そういうものとの相乗効果を含めますと、それなりに年金の経営移譲につきましても規模拡大が行われている、こういうふうに私は理解をし、ただこれだけに期待をするということはなかなかそう簡単ではないと思います。しかし、将来第三者移譲が相当大きく進むというようなことを、やはりこの年金制度の枠組みの中でも基本的な問題としては考えた方がいいではないかということを考えますけれども、今すぐにそういうことにつきましては限界がある。
 それから第二の御質問は、まことにこれは残念なことが時々起こっております。これはやはり非常に複雑であるというような問題、しかももうほかの年金と違って、農地法その他いろんな問題との絡みを含めまして、これをきちっと処理をしないといかないわけですが、それがやはり余り十全でなかったという問題が後からそのトラブルの原因になる。掛金を掛けておったがおまえ資格がないと、まだそれはいいんですが、年金をもらい出したけれども、それは間違っておった、だから全部返還しろというような問題がたまたま起こってくることが事例的にあるわけです。これは制度開始のときに、この複雑な制度を末端の当事者と農家の間で十分な点検がやはり行われていなかったというようなところに原因があり、それはそれなりに今改善をしておりますが、今日十五年たってそういう問題がやっぱりあるということは極めて残念でございます。
 そういう意味では、私もきょう強調いたしましたように、やはりこの業務体制の整備をどうするか、もう一つは、基本的にもう少し枠組みが簡素化できないか、こういうような問題をぜひ将来の問題としてはお願いをいたしたいというふうに考えております。
#13
○山田譲君 大変ありがとうございました。
 特に事務の簡素化の問題につきましては、私もそのとおりだというふうに思います。これはいろんな機会を通じて、さらに私もいろいろ質問していったりなんかしていかなきゃいけないというふうに思っております。
 その次に、明治大学の井上先生にお伺いしたいんでありますが、いわゆる中核農家という考え方がもちろん非常に重要な問題を占めておりまして、何か農政の重点がまず中核農家を育成してやっていこうというふうなことで、どちらかというと兼業農家といいますか、規模の小さい農家が割とないがしろにされるといいますか、そういう傾向がありはしないかというふうに思うわけです。私は、やっぱりさっきの先生のお話のように、地域ぐるみというふうなことから考えていきますと、必ずしも中核農家だけじゃなくて、兼業農家でもいいなら、やはり地域ぐるみで農業を発展さしていくというふうなことを考えるべきであるという考え方、私も賛成でありますが、それについて、今の農政に何か先生の御意見がおありでしたら承りたいということが一つであります。
 それからもう一つは、移譲すべき第三者すらいないというふうな現実が出てきているというふうにおっしゃいました。これは大変なことだと思うんですが、しからば、もちろん子供もいない、第三者の相手もいない、そうなるというと、そこの土地は現実にあるわけでありますから、それがどういうふうになっていくか、その辺について先生のお立場で実態調査かなんかなされた結果、何かありましたらひとつ教えていただきたいというふうに思うわけであります。
 この二点ですが、どうぞよろしくお願いします。
#14
○参考人(井上和衛君) お答えいたします。二点目の方から先にお答えいたしたいと思います。
 一つは、先ほど言ったような第三者も見つからないというような事態は、私の調査経験では、これは主として離農給付金段階で起きていたことが多かったわけでございますけれども、その場合、離農給付金につながらないでそのままそこを去るというようなことになりまして、山間地でございますから、それは結局残された農地は荒廃化していくというようなことで、大変痛ましい話だというふうに思います。二点目についてはそういうことでございます。
 それから一点目は、農政についてどう思うかという御質問でございますけれども、私は先ほど申し上げましたように、基本的には、やはり今とにかく農業は基本的な国の産業として位置づけるということがまず必要ですし、それから現在非常に複雑な形で兼業化が進んでいる、その中でもとにかく農業をやる意思のある兼業農家もあるわけですから、そういう人たちの土地、エネルギー、資本、そういうものを全体として引き出す、それぞれの能力に応じて参加できるような体制、それでないと日本農業は再建できないんじゃないかというふうに考えております。
#15
○山田譲君 どうもありがとうございました。
 次に、上島参考人にお伺いしたいんでありますが、まず最初にお伺いしたいのは、今、事務局長をしていらっしゃいます農業者年金農林年金連絡協議会というこの協議会の性格でございますね、これはどういうものであるか。
 それから、どういうお仕事をこの協議会はやられるのかということについて、まずお伺いしたいと思います。
#16
○参考人(上島久人君) 長野県の農林年金の協議会の性格でございますけれども、農林年金の協議会構成団体は、法に定められておりますところの農協各連合会、これは県段階にございます。それから森林組合、土地改良組合、漁業協同組合、たばこ耕作組合等々、それぞれ構成団体が十四ございまして、県段階で組織をいたしております。そして、この団体の主たる業務といたしますれば、各市町村農協なり、あるいは今申し上げました十四団体の縦割りの事務局がそれぞれ業務に携わっておるわけでありますけれども、これらの業務が円滑に推進できますような指導をいたしておりますし、また相互の連絡協調を図るための組織に相なっておるわけでございます。
 それからもう一つは、先ほど池田参考人からもお話しございましたけれども、農業者年金の推進協議会というのが県の段階で各市町村の受給者あるいは加入者を含めまして組織されておりまして、この市町村の組織、それに県の段階では県農政部あるいは国民年金課、それから農協におきましては中央会それに信連、それから市町村会、市長会、こういったところで構成をいたしまして、農業者年金の円滑な業務を推進するということを主たる目的として組織化されておるのでございます。
#17
○山田譲君 それで、実際にやっていらっしゃる仕事、この農業者年金の問題に関連して、実際にやっていらっしゃる仕事としてどういうことがあるかということをお伺いしたいと思うのでございます。
 先ほど池田参考人のお話にもありましたけれども、どうも組織が非常に複雑多岐にわたっていてその間がはっきりしない、もっとやっぱりすっきりした形にすべきじゃないかというふうな御意見がありまして、私もそう思うわけであります。つまり、現在の法律を見ますと農業者年金基金があって、それといわゆる委託という民法上の契約を結んで市町村と農協にやらせようとしている、しかも市町村の中では農業委員会にやらせるようなことを委託契約の中身に書いて出しているんですね。
 その辺、私本当はおかしいと思うんですけれども、それに対してまた片方では都道府県あるいは県の農政部というふうなところ、そういう関係が幾つかあって、非常にそこの関係が指導をする人もだれが責任を持って指導するのか、あるいは加入促進の運動も、だれが責任を持ってやるのかというふうなことがどうもはっきりしないというところが、私は法律的にも問題があろうかと思いますが、その辺について、今、参考人のいらっしゃるところがどういうことをやっていらっしゃるのか、それでそういう複雑なことがどういうふうに解決されておられるか、その辺を、もしお考えがあったらお伺いしたいと思います。
#18
○参考人(上島久人君) 本県におきましては、先ほど申し上げました農業者年金業務推進協議会というものを、事務局は主として農業会議に存置さしておりますけれども、中央会、信連がこれに加わりまして、つまり業務委託を基金から受けておる農業会議、農協中央会、信連、こういったところが事務局を構成いたしております。そして、この推進協議会は一体となりまして、例えば加入促進につきましては市町村の組織と連携をしながら加入促進を推進する、あるいは農業会議の中に事務局があるわけでありますけれども、二名の相談員、それに私ども中央会にも二名の相談員を設置いた
しまして、この推進協議会と相談員と二枚看板によりまして、先ほど申し上げましたとおり市町村に出向きまして個々の相談を承り円滑な運用を図っていく、こういうことに専念をいたしておるわけでございます。
#19
○山田譲君 例えば、当然加入すべき人で加入をしてない、その人に加入するようにしてくださいというふうなことを頼みに行く、そういうふうなことは一体どこのだれがおやりになっているのか、長野県の実態をちょっとお伺いしたいと思うんです。
#20
○参考人(上島久人君) これにつきましては、市町村のやはり農業者年金業務推進協議会、この組織を通じまして事務局なり、あるいは農業委員会なり農協の役員あるいは事務局が直接農家に出向きまして、戸別訪問によるところの加入促進を図っておるというのが実情でございます。
#21
○山田譲君 どうもありがとうございました。
 次に、森実参考人にお伺いしたいんですが、先ほどいろいろ現状のお話がありましてよくわかったんですが、私どもが一番心配しますのは、いわゆる単年度赤字になるのは六十二年とかなんとか言っております。そして、資産を結局食いつぶして完全にパンクするのが七十二、三年ごろですか、というふうな話もちょっと聞いたわけでありますけれども、そういうことに関して、七十二、三年と言えばもう十年そこそこでありますから、これを一体どういうふうに基金として考えていらっしゃるか、特に社会保障制度審議会あたりも相当厳しいことを言って指摘しているわけでありますけれども、それらをどういうふうに受けとめて今後やっていけばいいというふうにお考えになるか、そこをお伺いしたいと思います。
#22
○参考人(森実孝郎君) すぐれて政策的な判断でございますけれども、今御指摘がございましたように、六十二、三年から取り崩しに入って、底をつくのは七十年を少し過ぎたところということでございますが、それからは今の大数計算では、水準の回復に向かっていくということだろうと思います。
 率直に申し上げまして、一つは、急速に老齢化が農村社会が先行して進んだというファクターが働いております。それから、先ほど申し上げましたように、経過措置で優遇を受ける方の負担というものもかなりあるわけでございます。全体としては、いわゆる我々卒業生と申しておりますけれども、加入者から受給者への変化のパターンがどう変わってくるかという問題でございまして、楽観的という見方もあるかもしれませんけれども、一番悪い状態が続くのはいろんな現状のファクターから見ますとやはり六十年代、それも六十年代の中ごろではないか、むしろ七十年代に入ると、その他のファクターはある程度改善されてくるというふうに見ていいんじゃないかと思っております。
 それからもう一つは、研究会の議論に関連してでございますが、実は年金制度の枠組みを維持するということに対する批判なり議論が従来からもあるわけでございます。むしろ、農業者年金という政策年金を今の国民年金や厚生年金や、そういったその他の年金と別につくるということに対する反対の方も一部にあるということは事実でございます。しかし、問題は、やはり先ほど申し上げましたように、定着してきて農民の皆さんがこの制度を選択しているし、それが大勢だろうと思います。と同時に、それなりの政策を考えてきているということから考えますと、やはりそれを前提に考えるべきだろう。
 そういうふうに考えますと、他の年金制度でも議論が出ておりますし、研究会の報告にもありましたけれども、いわゆる支給開始年齢の繰り上げ等を含む次の段階での制度の検討という問題は、やはり中長期的に見ますと避けて通れない問題ではないだろうか、避けられぬではないか、そういう意味において、私どもも今後の政府を中心といたしました研究会の進め方に重要な関心を持っておりますし、私どもも関係者の皆さんの意向を踏まえた意見の具申をしてまいりたいと思っております。
#23
○山田譲君 どうもありがとうございました。
 それじゃ、もう結構です。
#24
○稲村稔夫君 本日は、参考人の皆さん方には大変貴重な御意見をそれぞれお聞かせをいただきまして、心から感謝を申し上げます。
 私どもの質問をします持ち時間というのはそれぞれ決まっておりまして、私は二十分ということになりますので、お一人それぞれいろいろとお聞かせをいただきながらという順番でやっていきますと時間が足りなくなります。大変恐縮でありますけれども、最初に私の方でそれぞれの参考人の皆さんにそれぞれ質問の方を先に申し上げまして、そしてお答えをいただいて、残った時間の中でまた疑問があればどなたかにそれぞれ御質問申し上げる、そういう形態をとらせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 最初に、池田参考人にお伺いをしたいのでありますけれども、農業者年金といいますけれども、農民にも恩給をというのは、私が知っているのでは、戦後もうかなり長く農民の皆さんの中にはいろいろスローガンになったり要求としてあったわけであります。そうした農民にも恩給をという、そういう観点から見て、現在の農業者年金というのはどのように農業者の側で受けとめているであろうか、こういうことについて御見解があればお聞かせをいただきたいと思うのであります。これは特に今の農業者年金、主として経営移譲年金の方に大きな役割がかかっているものですから、そういう点を絡めて御見解を伺いたい、こういうふうに思います。
 それからまたさらに、今いろいろと今後の課題として検討すべきものがあるというふうにお述べになりました。短い時間の中でそれぞれを細かくは無理なんでございましょうけれども、今後検討すべき課題というのはどういうものがあるのかということについて、お聞かせをいただきたいと存じます。
 次に、井上参考人にお伺いをしたいのでありますが、私は、構造政策を推進するという意味での経営移譲年金、こういうものがセットをされていて、同時に農業者老齢年金というようなものもセットをされている、言ってみれば極めて政策的な農業政策上の制度と、それから社会保障としての制度といった、これを混在させた形になっているというところに、受け取る側のいろんな混乱もあるでしょうし、意識の問題としての混乱も出てくるでしょうし、制度的にこういうあり方というのは一体どうなんだろうかという疑問を持っているわけでございますけれども、その辺、先生のお考えがお聞かせいただければ大変ありがたいというふうに思います。
 次に、上島参考人にお伺いをしたいのでありますけれども、前半のお話の中では、かなり今度の改正というものが厳しい点が強調されたのでありますけれども、後の方に行きましたら、何かこうやむを得ないというふうに言われているわけであります。私は今、参考人が一方ではこの政策の推進の一端を担うそういう末端の組織というものの責任も負っておられる、そういう観点からやむを得ないということを発言されなければならないというお気持ちはわかりますけれども、同時に、前半の方の厳しさのお話を聞いていますと、とてもこのままだったらそう簡単に今回の改正はやむを得ないなどというふうには言えないのではないだろうかという感じがいたしました。それで、あえて結論をお聞きしたいというふうには申しませんけれども、要は、今の厳しさというふうにいろいろと言われたものは、具体的に何か世論調査なり会合なりというような具体的な手法を通じて受けとめられたものなのかどうか、こういうことをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
 最後に、森実参考人にお伺いしたいのでありますが、加入者が減少していくという問題、特に当初予想したよりも急速に経営移譲というものが行われてきたという、そのことを指摘をしておられましたけれども、ということは、要するに、そもそもこういう推進をして一生懸命皆さんが協力をす
ればするほど保険財政が厳しくなるという運命を大体担ってしまうんじゃないかと思うんですよね、この制度そのものが。保険制度として経営移譲年金というものが設定をされています。そうすると、予想されたよりも速いスピードで経営移譲が進めば、予想よりも受給者にどんどんと早く変わっていくわけですから、そうすると掛金がたまっていくよりも支払いの方がスピードが速いということになっていきます。そういうことで、これは保険設計ということ自身にそういう点では問題があるのではないかと私は思うんですけれども、その辺、どのように考えておられるかということをお聞かせいただきたいと思います。
 以上であります。
#25
○参考人(池田斉君) 二点の御質問、農民にも恩給をと、これは長い間農業者の願望であり、たまたま佐藤総理がこの問題を選挙公約で出した、そういうことが契機で非常に大きくこれが実現に向かって力を持ってきた、こういう経過がございまして、四十五年にこの制度ができた。ただその前は、農民の素朴な感じは、御案内のように国民年金に入る資格はもちろんありますが、それだけでは、これだけ食糧増産その他やった我々農業者が、いわゆるサラリーマン階級が厚生年金ですから、何かその辺にプラスをしたものを国が考えていいじゃないか、こういう素朴な意見だったと思います。
 私も、実はこの問題発足以来関係をし、政府の研究会その他審議会等にも参加しまして、一体どういうふうに仕組んだらいいか、こういう厳粛な問題を踏まえてやりますと、やはり一つは、老後の保障の問題はさらにプラスをしなければならぬ、しかしそれだけではやっぱり不十分で、何かここに政策的なメリットができる、こういう制度を考えなきゃならぬというのでこういう制度の枠組みをつくりまして、それがスタートを切ったという歴史があるわけでございますので、農民の要求を政策的に分解をしまして、そしてこの制度の枠組みをつくった、私もその責任がありますが、そういうふうに理解をして担当した経過がございます。
 それから今後の問題は、これはいろいろあるわけですが、一つは、やはり被保険者の資格と関連した問題で、例えば先ほど申しましたように、農業生産法人の構成員の加入問題が厚生年金の改正でちょっとあやふやになってきております。この辺は、生産法人は近代農業の一つの姿として農地法でもこれを認知したという経過があるわけでございますから、これなどはやはりその辺を踏まえた加入資格の問題を解決してもらわなければならぬ、あるいは任意の後継者の加入要件、これは農業従事経験三年以上というチェックがございますが、これなどはやはり再検討をする問題ではないか、また遣族年金的な物の考え方、一時死亡金で今度は若干前進をいたしますけれども、この辺は、被保険者が六十歳前に死亡した場合の資格を配偶者へ継承するというような問題は、やはり一つの課題として、今後の問題として考える問題ではないか。
 二つ目は、経営移譲との関連を持ちまして、これは先ほど森実参考人も申し上げましたが、支給開始年齢のあり方、今の姿、これは年金財政とも絡みますけれども、もう一つは、高齢化社会の中の農業労働の強度その他の問題、もう少し年をとった者を含めて考えるというようなこともありましょうし、非常に難しい問題でございますけれども、支給開始年齢のあり方の問題等が当然あると思います。
 それから、第三者移譲につきまして一割程度である、本来ならばやはり第三者移譲がもっとふえなきゃならぬ、これが構造政策の一つの前進の姿になると思いますが、その辺に絡んだ問題をほかの政策を含めながらどうやったらいいかというような問題は、やはり基本問題の一つではないか。
 それから、どうしてもこの制度を安定して長期にやるという視点から、これは今度の改正におきましていろいろ問題が出されておるわけで、農家負担の水準と年金給付の水準ですね、それらの問題は、もう少し長期的な展望の中でどうするかということは考えなきゃならぬ問題ではないか。
 また、年金の加入者に焦点を当てまして、金融や税制面での優遇する措置はないものかどうか、これらもやはり長期安定の線に対応する一つの政策の問題意識ではないかと、こんなことを考えておりますが、なかなか一つ一つが容易ではないので、長期的課題として、これからさらに検討しなきゃならぬというふうに考えております。
#26
○参考人(井上和衛君) お尋ねの点は、現在の農業者年金制度が政策年金とそれからいわゆる公的年金との混合であることは問題ではないか、その点についての意見を求められていると思うんですが、その問題に入る前に、社会保障制度全体について、先ほど申し上げましたように、私は国民所得の再分配機能を持ったものでなければ本来ならない、これは今できるかどうかは別といたしまして、そういうふうに考えているわけです。という考え方からいたしますと、本来、産業別あるいは職域別に積立年金方式の年金制度をつくるということには、長期展望で見た場合にはいろいろ無理が生ずるのは当然だと思うんですね。というのは、産業は時代が変われば消長があるわけであります。人員が少なくなっていく産業もあれば、ふえていく産業もあるわけですから、だからそういう意味では、しょせん積立方式でそういう形をとるということには、将来的には問題があるというふうに考えております。
 ただし、現在の農業者年金制度というものを考えた場合に、他の年金制度が御承知のようにばらばらになっている状態でありますし、農業者についてはいろいろこれができる前は格差があったわけですから、さらに少しでも格差を縮めるという意味で農業者年金制度ができたということは私は評価するわけです。
 それから、政策年金との混合の問題でございますけれども、実態としては混合しているから必ずしも悪いということにはならないというふうに思うんですね。まず実態とすれば、後継者移譲が九〇%ということになりますと、これはある意味では、若返り効果と同時に実質的な老齢年金化しているというふうに言ってもいいんではないかというふうに思うんですね。ですから、政策的なことを今後強めるとすれば、別途さらに検討しなきゃならない課題は抱えているというふうに思っています。
 以上です。
#27
○参考人(上島久人君) 先生のお尋ねは、前段厳しいことを強調しておきながら、後からはやむを得ない、賛意を表している、これは一体どうかと、こういう御質問だろうと思いますけれども、前段は、実はお断りを申し上げましたとおり、地域の実務者あるいは加入者、受給者の言葉をそのまま代弁申し上げたつもりで強調いたしたわけでございます。しかしながら、他の公的年金と対比いたしまして、ひとり農業者年金だけが特殊な取り扱いができるかと申しますと、なかなかそうはまいらない。中でも八十八万五千人の内容を御披露申し上げましたけれども、まさに高齢者年金の状態になっておりまして、非常に厳しい将来を持っているわけでございます。したがいまして、これは実務担当者といたしますれば、何とかこの法案改正につきまして、現場において理解を求める方向でいかざるを得ない。
 例えば、厳しいという一点を単純にとらえておると思います。例えば、六十一年四月から三千七百十円の給付というものを、二十年という歳月はかけますけれども、六〇%相当の二千二百三十三円と、これを単純に受けとめますと、加入者にしましても、あるいは受給者にしましても、地域の担当者にしても、大変なこれはダウンだ、こう受けとめられがちでございます。しかし、これはまさに現時点で、しかも五十九年度価格でとらえて二十年はこうだと、こう言っているだけの話でございます。やがて二十年を振り返ってみると、二千二百三十三円がアップ等が続けられていくならば六千円にも七千円にもあるいはなるかもしれない。そういった解説を地域においては私ども実
務者が進めつつ、御理解をいただかなければならないんではなかろうか、こう感じておるところでございます。
 以上です。
#28
○参考人(森実孝郎君) 御指摘のございました経営移譲率と年金財政の関係でございますが、まず計算上の問題として申しますと、当初の設計では確か三八%だったと思いますが織り込んでいたわけでございますが、後継者移譲につきまして使用貸借による使用収益権の設定を認めるというとき以降は八〇%の移譲率を織り込み、今回の財政再計算では、もう実績を考慮いたしまして八九・一%という経営移譲率を織り込んでおります。その限りにおいては、計数的には織り込まれているわけでございます。ただ、これは物価修正の場合も同様でございますが、保険料というのは既応の保険料にさかのぼって修正するわけにはいきませんので、そういう意味においては後代に負担をかける要因になっている、こういう意味でございます。
 それから二番目に、これをどう考えるかという問題でございますが、私も方々へ参りまして皆さんとお話しする際に、やっぱり現在の経営移譲率を頭に置いて、つまり十人のうち九人の方々がもらえる年金として頭に置いて、ある程度給付は抑え保険料は引き上げていくという選択をとるのか、それとも十人のうちの三人か四人しかもらえない厳しい要件の政策年金にして、そのかわり安い保険料、高い給付で考えるかという選択の問題としていろいろ問いかけてみているわけでございますが、やはり今の大部分の人がもらえる制度というものを選択される反応が強いという意味で、先ほど申し上げたわけでございます。
#29
○岡部三郎君 大変御多用なところを本委員会においでいただきまして、貴重な御意見をいろいろと伺わせていただきまして、参考になったわけでございます。
 そこで、私も限られた時間でございますから、二、三の点に絞ってお伺いをしたいと思います。
 最初に、池田専務並びに井上先生にお願いをしたいと思うわけでございますが、農業者年金というのは他の年金と異なりまして、農業の構造改善を図るための政策年金である、そのために多額の国庫補助も受けておるということでございますし、今後も政策年金としての性格を明確にしながら、制度の安定を図っていかなきゃいかぬということは言うまでもないと思うわけです。
 そこで、そういった政策効果を高めるための一つの考え方として、今回の改正案では、サラリーマン後継者への移譲の際に年金額を四分の一カットする、こういう案が出ておるわけでございますが、これに対しまして池田専務さんからは、五年かけて徐々にやるという前提のもとにそういう考え方は賛成であるという御意見がございましたし、それから井上先生からは、現在の農村の就業実態といいますか、工場勤務者でも農業に重要な役割を果たしておるのだ、そういうことから考えると、こういった専兼格差をつけるということはおかしいではないかという御意見があったわけでございますが、これについて、こういった農政のいわば基本的な考え方にも触れることだと思いますので、まず池田専務さんから、先ほどの井上先生のお考えについてどうお感じになっておられるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
#30
○参考人(池田斉君) これは、本当に政策の将来の問題に対するそれぞれの見解に若干の食い違いが私もあると思います。私は、地域の村ぐるみの農業の振興ということを決して否定するものではございません。しかし、やはりこれだけ国際的な環境の中で日本の農業の体質をどうするかという場合には、やっぱり専業で本当に将来農業に精進をする、こういう農家層が我が国の農業の生産のシェアを相当程度担当をするというような問題が、やはり基本的には政策が追求しなければならぬ課題であるという考え方を私は持っております。そういう面で、この年金制度は、老後の保障という老齢年金も一つございますが、やはり政策効果を政策年金としてどう出していくかという面から、今後もやはりそのあり方を追求していく必要がある、そういう形で初めて国の大きな補助も受けられ、長期的に安定をするというふうに考えておるわけでございます。
 そういう意味で、今度の格差問題、私はやむを得ないというふうに申し上げたわけでございますが、ただ、使用収益権を経営移譲の要件にしたということを契機として非常に経営移譲が進展をして九〇%、しかし、よく洗うと半分はサラリーマン農家である、このこと自体を否定はしませんけれども、しかし、そういう姿で日本の構造政策はよろしいのかどうかということは、やはり疑問を持っております。ただ、現実に、今ここでこれが急激に変化を起こしますと、これは加入促進その他に重大な支障が出るわけで、研究会というものにおきましても非常に厳しい意見がございました。私は方向としては是認をするが、できるだけ要件緩和をして加入促進等に支障のない、十分説得のできる、そういうことのために、経過措置だけは十分とれという主張をいたしたものでございます。その辺が、今回の改正におきまして四分の三は確保する、四分の一については五年間の経過措置でやるというようなことになりましたので、この辺の問題でそれほど大きな混乱を起こさないで説得をしながら加入促進ができるんではないか、こういう判断で私の意見を申し上げたわけでございます。
#31
○参考人(井上和衛君) 政策年金としての効果を高めるためにどういうことを考えられるかというような御質問と、それから池田専務さんと私の間に若干意見の食い違いがあるわけでございますが、それはもうそのとおり見解の違いだと思います。
 それから私が言いたいのは、少数の専業農家で、それで日本の国民の利用する食糧を将来ともつくっていけるという状況に今なくなってきているということが、むしろ問題だというふうに思っているわけであります。その場合、農業専従の人が規模拡大をしまして、例えば稲作においては借地型経営が御承知のように各地に出てきております。十ヘクタール、二十ヘクタールという経営もございます。
 その経営を調査いたしますと、その二十ヘクタールほどの農地が非常にばらばらに存在しているのですね。そうしますと、幾ら機械化一貫体系になったといっても、農繁期ともなりますと、トラクターで農道を駆けずり回らなければならない、こういう状況があるわけでございます。現に、そういう人たちにいろいろ話を聞いてみますと、もう五十代後半になったらとても規模拡大なんて気は起きない、というのは、御承知のように、トラクターは振動があり、それから騒音があり、決して楽なものじゃないのです。肉体的なエネルギー消費は少ないけれども精神神経疲労というものは大変なものでございまして、これを農繁期に一日十時間労働をやるというようなことを、いわゆる借地型経営の方はかなりやっております。
 そういう状況の中で考えますと、やはり合理的な農業に展開していくためには、それぞれの集落の中で土地利用の集団的な面的な確保の中でお互いに協定していかなければできないと思うのです。その場合には、どうしてもこれは専兼、それぞれの能力に応じた一体化、ですから私は、今そういった借地型経営でやっている人も今後生き抜いていくためには、兼業農家に相互依存しなければやっていけない、こういう感じだと思うのです。そういうこところで格差を導入するところに一つ問題がある。
 御承知のように、農村社会学の分野になりますが、農村には一つ平等原理というのがございまして、これはある意味では悪平等になる場合もあります。しかし、平等であることによってお互いにおさまるということがあるのですね。話もまとまるということがあるのです。そういう点からいって、私は非常に心配だということを先ほど言ったわけでございます。
 以上でございます。
#32
○岡部三郎君 ありがとうございました。
 それでは次に、上島さんにお願いをしたいと思うのですが、上島さんは第一線で年金の実務に携わられておられまして、この事業の円滑な運営のために日夜御努力をされておる、そういった経験の上に立って先ほどはいろいろな御苦心談を承ったわけでありますけれども、そういういろいろな困難なことはあるけれども、先ほどお話もありましたように、全般的に考えればこの改正案にはやむを得ない、こういう結論であったと思うのですが、今後若い加入者の協力を得てこの年金制度を支えていくために、一体どういうふうなPRをされていかれようとしておられるのか。さっきもとょっとお話がございましたけれども、さらにこういう点については今後若干考えてもらいたい、政府なり基金なりで考えてもらいたいというふうな御意見がありましたら、ひとつ率直にお聞かせを願いたいと思うのです。
#33
○参考人(上島久人君) まず、若い人への加入の促進等については、どんな手法なりを講じていくのかという御質問だろうと思います。
 先ほど私申し上げましたように、特に本長野県のような山間僻地を抱えておりますところは、実際の後継者としてはその存在が都会に流れまして非常に少なくなっていることは、高齢の率が一三%と申し上げましたけれども、そういう状態でございまして、どの町村へ参りましても非常に若い後継者が在村しないという実態にございます。それから、おったにいたしましても、これがまたサラリーマン後継者である、こういうことでございますけれども、これらにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、組織を十分に活用しまして、そして戸別訪問による個々加入促進を今後強力に進めてまいりたい。
 その際に、必ず反発されるのが、いわゆる五年から十九年という短縮期間で優遇措置のありました高齢者の方と比較いたしますと、若い方々の給付の内容が、先ほど来申し上げておりますように六〇%にダウンしてしまう、こういうところに非常に魅力がない、こういうことが口をついて出るわけでございますので、この辺を先ほど申し上げましたように、当面で比較対照すると三千七百十円が二千二百三十三円ということで大変なダウンだという感覚になるわけでありますけれども、二十年後になればこれが必ずやアップを続けまして、物価スライドがございますので、二千二百三十三円にとどまっていないんだというような手法も用いながら、若い人へこの年金の真の意味を一つ一つ伝えながら御指導申し上げ、御協力を得ていきたいというふうに考えております。
 それから、今後この制度に対する御意見、希望をということでございますけれども、今回ある程度前進の方向で改善をされた面もございますけれども、特に農村における遺族年金等の創設の問題は非常に御婦人方から多く出されております。さらに婦人の加入のしやすい年金にひとつしていただけないかという問題もございます。つまり、農業者年金に対する婦人の年金権と申しますか、この確立なども願い得るならばありがたい、こんなふうに考えておるところでございます。
#34
○岡部三郎君 最後に、森実理事長にお伺いをしたいんですが、農業者年金基金制度を安定的に存続させるというためには、やはり何といいましても被保険者数と受給権者数とのバランスをとっていくということが非常に大事である、そういった面から大変に御努力いただいて、昨年は三万人以上もの加入者を得たということでもあります。そうですが、今後やはりこの農業就業者というものはだんだん減っていくでありましょうし、給付と負担の適正化を図るといっても、なかなかこれはまた限度があることでありますから、この年金財政を健全に保っていくということはなかなかこれは困難な問題があろうと思うんですが、そうした面で責任者でもあられるので、今後どういうふうな見通しをお持ちか、ひとつお伺いをしたいと思います。
#35
○参考人(森実孝郎君) 今回の財政再計算を通じまして、やはりかなり実態に近いものがはっきり織り込まれたと思っております。しかし、先ほども申し上げましたように、なおこれだけで安定できるかどうかという問題は残っていると思います。特に、支給開始年齢の問題等は、当然研究会の御報告にもありましたように論議されてくる問題だろうと思います。そういう形を通じて少し勉強を進めていかなければならないと思うわけでございますけれども、しかし、やはり基本的には、どうやって適正な経営移譲が行われ、適格な経営移譲が行われるという実態を把握した業務の適切な運営と、それからもう一つは、加入の促進という問題が大きな課題だろうと思います。
 農業委員会組織、つまり市町村の農業委員会組織、あるいは全国、地方を通じてでございますが、それと農協組織は、例えば農業委員会組織が資格審査をやるとか、あるいは裁定を担当するとか、それから保険料の収納とか現金の支払いは農協がやるというふうにおのずから分担が決まっておりますが、事、加入につきましては、きちんと系統組織と農業委員会組織が一体となりまして今までも取り組んでおりますし、最近は非常に県も、これだけ多くの方が受給するようになりましたので関心を持っていただけるようになりましたので、できるだけ関係者の協力を得て働きかけをやってまいりたいと思います。特に重点といたしましては、実は地域によって非常に加入率に差がございます、市町村によって。これは農業の違いだけではなくて、やはり末端の指導者の熱意の問題とか熟達度というふうなことも問題がある点があります。そういうやはり加入率の低い地域をどう考えていくか。
 それから、もう一つは、後継者の未加入の問題がございます。この問題に重点を置いて、加入の促進を呼びかけてまいりたい。また同時に、制度改正を頭に置きまして農民の皆さんに事実を訴え、やはり有利性を訴え、それを頭に置いたPRの内容なり手法を考えていきたいと思っております。実は、本日、昨日二日かけて全国の担当者会議をやっておりますが、私も冒頭お願いしましたのは、制度改正を頭に置いてどういう内容のPRをしたらいいか、それからどういう手法を使ったらいいかということの意見を求めているところでございまして、末端の指導者の皆さんの意見もよく聞いて、その努力を重ねてまいりたいと思っております。
#36
○刈田貞子君 参考人の皆様、きょうは大変ありがとうございます。御苦労さまでございました。
 私は一点についてすべての先生にお伺いをしたいと思うわけでありますが、実はきょう午後から婦人の年金加入についての問題の質疑をさせていただく関係で、そのことについてお伺いさせていただきたいと思います。
 まず、池田参考人にお伺いするわけですが、参考人は農業者年金制度研究会の構成メンバーのお一人であるというふうに伺いましたけれども、その中では婦人の年金加入に関する問題がどんなふうに論議されたのかをお伺いしたいと思います。
 それから、井上先生には、大変に恐縮なんですけれども、この法律もそうですが、農村社会における婦人の就業状況と、その老後を保障する年金権の問題についてどんなふうに考えておられるか。先ほどお話の中では、機械化、省力化が進んで経営主体の年齢が五十代後半にまで及んできているというふうに先ほどお話でございましたけれども、実は機械化、省力化が進むことによって、女子の労働者も実は深く農業に就業する機会を得てきているということが一つございますわけで、地域農業の主体者というのは今女子を欠かしてはこれは考えられない実情があるわけでございまして、基幹労働者でも六三・五%ですかを女子が占めているという実情がありますね。こういう実情に対して、この法律はどんな形をとっても、つまり農村社会における地権というような問題、財産権というような問題に対して非常に意識が希薄である女子にとっては、なかなか参画の道が開かれてこないという問題が、この法律と対面するとあるわけですね。私は、こうした女子に対して、基本的に農村社会における婦人の年金権を保障していくにはどんな道があるだろうかということを、お伺い
したいわけです。
 それから、先ほど上島参考人からは、図らずも婦人の年金権のお話が出ましたけれども、長野県等の実情では今女子加入率がどんな状況にあって、そしてそれは使用収益権の設定で恐らく入っておられるんではないかと思うんですが、その実情等をお伺いしたいと思います。
 そして、森実参考人には、これも衆議院の段階で御答弁なさっていたというふうに記憶していますけれども、この農業者年金基金法で、今の農村社会で主体的な働きをしている女子農業者の老後を保障する道は本当に開かれないのかどうなのかということを、今お伺いしたいわけであります。いろいろと御回答なさっているのを研究してみましたけれども、いかんせん地権の問題がやはりネックになっているように私は思っておりますのでお伺いいたします。
#37
○参考人(池田斉君) 従来、農業者の中からは婦人の加入問題が前から出されており、続けられております。研究会の議論を踏まえてということでございますが、研究会の中では、ややこれにつきましては消極的であるというのが実態であったというふうに私は感じております。それは今、先生もお話がございましたように、世帯主義という経営の中におきまして、農地を一括して使用するか、あるいは婦人でも使用収益権を全部移譲すればこれは当然入れるわけで、その辺の土地制度の問題との絡みと年金の基本的な考え方の中に、婦人の加入問題につきましていろいろ難しさが私はあるような感じがいたします。
 むしろ、やはり私は遺族年金的な方向を何とかできないか、そういう形で、夫婦が一体になって経営をしておるという実態に即応したそういう年金の手法を将来改定する。現在でも婦人が入れないことはないわけで、土地の権利を婦人に移せばそれは当然入れるわけですが、それを夫婦で分割をするというのは、やはり土地制度の面から見ていろいろ問題があるわけです。ですから、むしろ遺族年金的な方向への問題の解決の方が正しいのではないか。一般的に何となく婦人の加入権を認めろ、これはややこの制度になじまない問題が底に流れておりますから、その辺をどうするかが今後の問題ではないかというふうに私は考えております。
#38
○参考人(井上和衛君) 農村の婦人が特に農家の労働力として、しかも兼業農家等においてはかなり重要な役割を果たしている、これはおっしゃるとおりでございます。そこで、農業者年金制度とのかかわりでございますが、今、池田専務さんからお話ございましたように、この制度が土地とリンクしている限り、その辺の問題は私はかなり難しい問題を抱えているんじゃなかろうかというふうに思います。ただし、私の調査事例でも、主婦が経営主になって一応の使用貸借なり何なりのあれをもって、経営主として年金に加入しているということは現行制度の中でもできるわけです。ですから、その辺を抜きに、ただ加入するというわけにはなかなかいかないのではないかというふうに思っております。
 それからもう一つは、検討されてしかるべき点なんですけれども、家族経営は御承知のように夫婦一体化して経営をやっているわけです。その場合に、御主人が年金加入者で、途中で亡くなるというようなことがあるわけです。その年金を配偶者が継承するというような問題、これは議論されていると思いますが、年金制度の中では非常に難しい問題を抱えておりますけれども、やはり家族経営の一体性といいますか、そういう点では今後検討されてしかるべき課題ではないかというふうに思っております。
#39
○参考人(上島久人君) お尋ねの長野県における御婦人の加入率等はどうか、あるいはその内容は使用収益権が大部分ではなかろうかという御質問でございますけれども、実は手元に確たる資料を持ち合わせておりませんので、数字的には申し上げかねますけれども、おおむね二万四千人の被保険者のうちざっと千人程度、つまり五%程度は婦人が加入されておるように感じております。
 それで、しかもその加入の方法といたしますれば、大半は使用収益権の設定に基づいての加入が多いというふうに承知をいたしております。ただ、たまたま御養子さんをお迎えする立場にあられる御婦人の場合には、既に土地の所有権を持っておりまして、当然の加入資格があっての加入、こういう方々もある程度の数字に上っておると思います。
 以上でございます。
#40
○参考人(森実孝郎君) ちょっと数字の問題で申し上げますと、実は農業者年金に加入している農家は、中心はいわゆる専業農家と第一種兼業農家でございます。一体専業農家と第一種兼業農家ではどのくらい基幹的な男子の専従者があるかということを申し上げますと、約七六%でございます。これに対して第二種兼業農家はほとんど農年に加入しておられない、加入しているとしても、ごく一部の第二種兼業農家については、実は基幹的な男子の専従者のある経営比率というのは二二%しかないわけでございます。そこで、やはり数字の話として、農年に加入している農家について言うならば、男子が中心になった経営が行われている比率が圧倒的に高い。それはサラリーマン農家と違うという実態があることは、まず御理解を賜る必要があると思います。そのことが四%前後という婦人加入率に反映しておるのが、まず基本だろうと思います。
 それからもう一つは、制度の枠組みは、先生御指摘のように、まさに土地の権利名義に着目して制度を仕組んでいるということで、これは基本的な枠組みでございますから、そのこと自体は変えられないと思いますが、実態を見ますと、実は今までの初めの婦人加入というのは入り婿の農家での、これも婦人が権利意識、地権意識が弱いということではなくて、むしろ非常によそから入った人に土地の名義を与えないという従来の習慣が強かったということがあって、逆に婦人加入というのは入り婿の農家に非常に多かったわけです。ところが最近では、先ほどもお話がございましたように、使用収益権を奥さんに設定して加入するという形が逐次出てきております。
 そういう意味においては、数字は変わらなくても、意識には逐次変革が見えているというふうに見ているわけでございます。本当に農業経営をやっているのが婦人であって、その中心労働力が婦人であれば、土地の名義も使用収益権を設定し、移し、それからまた生産物の販売名義も移し、組合員名義も移すという形で、経営者たる実体をもって加入していただくことは当然のことであり評価すべきことだろうと思っております。その点、十分御理解を得る努力は、今までもやってきたつもりでございますが、これからもやってまいりたいと思っているわけでございます。
 ただ、一部地域で、婦人加入という名前で経営移譲の実体を伴わないものが散見されます点は、特に配偶者変換という形で散見されますので、これはこれでやっぱり適切な措置を考えていかなきゃならないと思っております。
#41
○藤原房雄君 本日は参考人の皆様方、本当にありがとうございました。
 時間も限られておりますので、最初に池田専務理事にお伺いを申し上げるわけでございますが、確かにこの法律ができて、この十五年の間それなりの効果が、効果といいますか、それなりの評価すべき点については、先ほどもお話がございましたし、私どももやっぱり農家に行ってまいりまして実態としてそういう点はよくわかるわけでありますが、何せこのたびの改正は、老後の保障という根幹にかかわる問題、それから農畜産物の価格低迷という中での掛金の引き上げということで、農家にとりましても非常に厳しい状況の中でありますから、ほかの年金も横並びということで、他産業はそれなりにベースアップをしておるわけですけれども、農家にとりましては非常に厳しい環境の中だということで、非常に私どもも危惧するところがそこにあるわけであります。
 それと、そういう環境の中にありまして、農業者年金ということですから、他産業の方は加入は
できないわけで当然限定される、そういう中で、このたびの改正のように国庫補助がだんだん削られるようなことになりますと、今回ももう平均五〇%と、こう言われておりますが、今後ますます財政がよくなるなんという環境にございません。そういうことになりますと、今後の運営、また五年後に見直しになるという時期にはどういうことになるんだろうかという非常に危惧を抱く、今回は一つのそのステップかというようなことで、そういう心配を抱くわけであります。
 そういう中でお聞きしたいのは、全国を見ますと、非常に加入者のアンバランスが各都道府県でございまして、さっきも加入促進ということのために組織をつくっておるのが十幾つというお話ございました。そういう加入促進のための県段階、市町村段階の強力な促進形態というものも十分でない県がまだあるような感じを受けるんでありますが、これは昨年の新規加入者三万ということですから、もっももっとPRすればできるのかもしれません。これも大いに進めていただかなきゃならない年金財政の根幹にかかわる重要な問題でありますけれども、しかし、これはいろんな制約の中で、やはり加入する条件がございますから非常に難しい、将来に対して私もどうなるかという非常な不安を持つわけであります。
 そういうことは別にしまして、当面としましては、この現状に対してよく説得をし、そしてまた加入を促進する、こういうことが大事なことだろうと思うんでありますが、今日まで各都道府県で非常にアンバランスがあるというのは、おとといですか、委員会でもこれはいろいろ議論したんですけれども、一番責任ある立場に立っております専務理事という立場で、どういうところにこのアンバランスが出てきた原因があるのか。今後大いにこれに力を入れることによってそういうアンバランスというものはある程度解消されるのかどうか、今後の加入促進という面から、全国的な面についてどのようなお考えを持っていらっしゃるかということをお聞きしておきたいと思うんであります。
 それと、現場では非常に御苦労していらっしゃって、さっきもお話ございましたが、業務体制、予算、それから専従の方々がそれぞれの市町村になければならないんじゃないかというお話もございました。過日、岩手県でちょっと聞きましたら、各市町村でそれに対する事務費というのは平均しますと、多い小さいありますけれども、平均して二十万そこそこだということで、とてもこういうことでは複雑化する事務、これは厳しいということで、しかもその方が年金をもらえるかもらえないかという非常に大事なことを判断する立場にある。過日、宮城県で担当の方が自殺したなんていうことも新聞に出ておりましたけれども、それほど真剣にまじめな方というのは心を痛めていらっしゃる。そういうことに対して、ただしりをたたくだけではなくて、実態に即した形でやはりこういう業務といいますか、仕事を進めなければならないんじゃないかという、こんな気がしてならないんですけれども、そのようなことについてはどのようにお考えなんてしょうか。
#42
○参考人(池田斉君) 今、先生からお話しのように、今回の改正は、やむを得ない問題ですけれどもかなり厳しい、したがってこれが加入促進にさらに苦労が加わる、これは否めないと思います。私ども、加入者、受給者の組織化をできるだけ推進をしておりますが、まだ十七県、ことし三県ぐらいができる。これもやはり年金に対する何といいますか、農業者の反応といいますか、そういうものが強いところから逐次できておる。したがって、そういうものができていないというのは、やや関心が低いと申しますか、したがってこの加入者のアンバランスもおのずからそういうような問題とつながっている、非常に残念ですが、そういう感じがいたします。
 少なくとも、日本の北海道から南まで考えまして、農業が中心の地域あるいは農業が非常に大事な地域、将来の日本の農業を担当する地域、こういうところは非常にこの制度に関心が強くて組織化が進んでいるというふうに私は理解をいたしております。特に太平洋ベルト地帯、兼業農家が圧倒的に多い、そういうところはやはり未加入者がかなりたくさん残されておる、こんなような感じで、そこはひとつこの制度を十分PRをして、今後やはりそういう組織化をしまして自分たちのこれは将来の展望につながる年金制度である、したがって受給者もできるだけひとつ加入の勧誘をするというようなことを含めまして、年金に大きな関心を総体として持ってもらう、こういう努力は今後も続けてまいりたいというふうに考えております。
 それから、先生がおっしゃるように非常に制度が複雑である、土地問題に絡んでおる、そういうようなことを含めまして、なかなかこれをチェックしていくのには非常に大変な苦労が要るわけで、不幸な事態までが新聞をにぎわすというようなことはまことに残念でございます。農業委員会も全力を挙げてこの問題に取り組んでおり、本当にこれは皆さんも農業委員会に行かれて、この年金業務にどれだけの苦労と時間をさかれているかということは、お行きになって聞けば直ちにこれはわかることでございます。そういう意味で、今後その業務体制を何とかひとつもっと整備をする、できればそういう担当の専任職員ぐらいは設置をするというようなことが私は必要で、そういう意味でひとつ予算等につきましても十分の御配慮を願いたい。
 私はかつて、こういうことを言うと森実理事長がおってぐあいが悪いんですが、年金基金の理事をしておりまして、一体これを年金基金がみずから末端まで組織をしてこの業務をやったらどのくらい金がかかるかと、天文学的な金がかかる、したがって、そういうことには触れてもらいたくないというようなお話があったわけで、本当にこれに完全に専念をする体制では御案内のように農業委員会がございませんので、非常に大変だということだけは事実でございますので、今後業務体制、予算等につきましても格段の御配慮をお願いいたしたいと存じます。
#43
○藤原房雄君 先ほど来、専務さんのお話を聞いても、またどなたのお話を聞いても、本当に今回の改正には反対という言葉が出てくるのかと思うぐらい大変だ、大変だというお話で、まあしかしやむを得ない。これは全体的に見ましてそれの意味合いは我々もよくわかるんでありますが、ちょっと今回の改正は根幹に触れる大事な問題点が、しかも、お仕事をなさる立場の人としてはなかなか難しい問題点が非常に多いということで、先ほどちょっと申し上げたわけてありますが、時間もございませんからあれですが、今お話ございましたように、過日の質疑のときにも大臣に、農業会議所一カ所でいいから自分の選挙区のところへ行ってこいなんて言ったところですけれども、今お話ありましたように、実態は我々の想像以上に御苦労なさっていることだろうと思います。
 関心の度合いということですが、昭和四十六年ごろできた当時はまだこの年金制度もしっかり、ほかの方の年金制度につきましても、国民皆年金という言葉はありましたけれども、実体的にはまだそこまでいっていませんでしたが、最近はいろいろなものが体制が整いましたし、それから保険業務につきましてもいろいろな商品が出るようになりまして、そういうものとの比較の中でやはりよりよいものに入る、関心を持つ、こういうことですから、そういうことも十分に勘案した上で改正という問題についても、それは財源という根本的な問題はありますけれども、構造政策とあわせてという政策年金ということの上からいうと、私も非常に今回の改正は大変なことだという認識を持っておるわけです。
 特に、次に井上先生にお尋ねを申し上げるんでありますが、さっきもお話ございましたけれども、山村地域では移譲する方もいらっしゃらない。私もそういうところを何カ所か見て大変なところだなあと、まあごく一部でありますからあれですけれども、先生は全国のいろんなところをごらんになっていらっしゃるんだろうと思いますけれど
も、実際山村地域でそういうところこそ農業をどなたかがしていただかなきゃならぬ、そういうところに実際後継者がいらっしゃらない、そしてだんだん田畑が荒れていくという、こういう現象が最近見られる。非常に将来の日本農業に危惧を抱くんでありますけれども、そこら辺のことについてもう少しひとつ詳しくといいますか、先生のお調べになった全国的な実態等をあわせてお述べいただければと思うんでありますが。
#44
○参考人(井上和衛君) 御案内のように、山間地域はいわば経済学的に見ると限界地ということになってくるわけですが、耕境がどんどん後退するというような状況で、そのことを何とかするという問題になりますと、結局これは農業政策全体の問題にかかわってくることだろうと思います。第三者移譲をしたくともいないというような地域でございますね。それにつきましては、先ほど意見を申し上げましたように、やはり公的機関が土地を取得していくという方向が今後必要だろうというふうに思います。
 それから、実態とのかかわりで言いますと、これは公的機関の土地取得の問題もございますが、実際には調査してみますと、大体これは中国山地の過疎地域であるとか新潟県の山間部であるとか、そういうところで多く発生しているわけでございます。特に豪雪地帯の山間部になりますと、これは何といいますか、息子さんたちが、町村合併などをいたしますと冬場通勤もできない。例えば、役場に勤めている息子がいたとしますね。そういう息子さんは、先にもとの住まいを離れて転居してしまう。そうすると、残っているのはあと老齢者だけだというような状況になりますね。結局そういうところへ行きますと、先に出た方が勝ちというような話があるわけですね。結局、早く出た人は何とかだれかに頼んで、それで離農給付金ももらえた、ところが後までいたのは、結局だれも引受手がなくなったというような話を、現場調査の中ではいろいろ聞かされております。
 簡単でございますが、以上でございます。
#45
○下田京子君 参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 時間が限られていまして、簡潔にお答えいただければと思います。
 最初に、池田、上島両参考人にお尋ねいたします。
 問題はあるがやむなしというお話でございましたけれども、その際に、まず第一に挙げましたのが、やはり給付水準の引き下げが出されております。言うまでもございませんけれども、今後四十年間続けていっても、特にサラリーマン後継者への移譲の場合には、最終的には五五%も給付水準が下がるというのは御承知のとおりでありまして、この農業者年金が発足当時から、やはり老後の生活の保障と同時に政策効果ということは一体のものとして取り上げられ、そして改善もなされてきたかと思うんです。そういう点から見ますと、基本的に今回の改正というのは、年金額が老後の保障につながっているんだろうかという点で私も問題にしまして、生活保護水準よりも低いという実態の中にあって果たしてこれが政策的な効果にもつながるんだろうか、若返り、経営移譲、規模拡大等々にどういう格好で影響が出るんだろうか、こう疑問を持つわけなんです。この点についてお二人にお聞きいたします。
#46
○参考人(池田斉君) ちょっと御質問の趣旨が十分のみ込めないわけですが、給付水準、掛金との絡みを含めましてなかなか厳しいわけですが、六〇%程度に二十年かかって落ちると、それは今の給付水準での問題。ただ、これは発足以来、厚生年金水準というのが基本的な一つの目標で設定をされた。したがって、私どもは今回の改正は一応厚生年金の中長期の展望につなげて、この問題の掛金、給付水準が考えられておる。そういう意味で、これは農業者も苦しいが全体がそういう姿である、これへひとつシフトをするということはやむを得ないという考え方をとっておるわけです。
 老後の保障につきましては、もちろん十分ではございませんが、老齢年金の仕組みも残っておるわけでございます。それで十分な生活が国民年金の給付に合わせて可能かどうかということは、これは社会保障全体の問題との絡みでございますから、ここでいろいろ言うことはございませんが、若干、政策年金に老齢年金的な問題が付加されるというふうな点に、老後の保障の問題がある。
 どうやってこの制度をさらに前進をさしていくかというような問題は、なかなか十分な成果は上がってはいませんけれども、少なくとも農地の細分化の防止にはつながり、若返りの方向は少なくとも行われてきておる。ただ、第三者移譲が十分まだ進展をしていないというようなところに、その規模拡大等の問題はまだ不十分である、その辺をひっくるめながら、この制度が年金の手法ということで長期に安定をどうするかというような形で考えますと、今回の改正は相当厳しいことは我々もそう思いますけれども、それを十分今後の加入者によく説明をしながら、この制度が長期に安定をするという方向を探ってまいりたいというふうに考え、私は総体としてこれに賛成せざるを得ないということで意見を申し上げた、こういうことでございます。
 何かポイントになる趣旨がちょっとはっきり受け取れなかったので、失礼でございますが、これで終わります。
#47
○参考人(上島久人君) ただいま池田参考人からもお話がございましたけれども、将来の給付水準が五五%に引き下げられる、これにつきまして一体老後の保障になるのかどうかというようなお話でございますけれども、私はやむなしという見解をとりましたことは、他の公的年金のいわゆる将来の財政それから農業者年金の将来の財政の観点から見ますと、これは何といたしましても給付と負担のバランスをとらざるを得ないというところでやむなしという結論づけを実はいたしておるわけでございます。元来、社会保障制度の中における年金制度、こういったものは経済変動がまさに長期にわたって、人一生の間、安定的に推移するならば、これは年金はいわゆる積立方式なりで十分賄えるわけでございますけれども、経済変動に対しまして積立方式的な年金制度というものは成り立たないことは、すべての被用者年金等が如実に物語っておるわけでございまして、そういうことからいきますと賦課方式をとらざるを得ない、そうなりますと、勢い負担と給付のバランスということに相なろうかと思います。
 さらに、年金によって将来の老後保障すべてをといっても、実はなかなかそうまいらないというのが現実だろうと思います。為政者の御意見なども、あるいは学識経験者などの先生方の御意見等もお聞きし、あるいはあらゆる文献等を見てみましても、やはり老後の保障というものは年金にゆだねられる部分はせいぜい六〇%ではなかろうか、あとの四〇%は自助努力でいかざるを得ない、この点につきまして私は常に同感をいたしておるわけでございます。したがいまして、この給付水準はどの辺がいいのかという点につきましては非常に難しいところでありますけれども、財政の健全化の意味合いからいきまして、すべての公的年金が同様な給付と負担のバランスに取り組もうといたしておる中で、この農業者年金もやむを得ないのではなかろうか、こういうふうに結論づけたわけでございます。
#48
○下田京子君 時間が大変なくなってまいりましたが、井上参考人とそれから森実参考人、お二方に別々にお伺いしますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。
 井上参考人は、社会保障という概念から見れば産業別、職業別の年金制度には問題があるけれども、今農村にあって老人、青年、婦人と一体になって農業、農村の活動を進めているという点から見て、専兼一体となったそういうものを基本にした農業者年金の充実をというお話があったと思うんですが、その点から見ましてさらにもうちょっと聞きたいのは、確かに婦人が御主人との間で使用収益権の設定をすれば加入の道はあるわけですけれども、年金制度という点から見てどうなのか、新たに抜本的なということになると、どんなもの
が考えられるかという問題でございます。
 同時に、今回サラリーマン後継者の問題でもって格差をつけたわけですけれども、先ほどもお話ございましたが、今後のやっぱり年金のあり方という点から見まして、もうちょっとお聞かせいただきたい。
 それから森実参考人に伺いたい点は、御承知のように、六十一年の一月以降になりますと、国民年金と農業者年金と合わせまして保険料というものは二万二千円になります。六十六年一月以降になりますと、何と二万七千六百円になります。算定の基準に使っております農業所得の月額というのは十三万一千円ですから、その中で占める割合というのは大変なものでございます。こういう状況の中にあって、本当に二十一世紀、つまり昭和七十五年あるいは八十年にどのような受給者の状態になるのか、被保険者数や財政問題、その辺の見通し等、もしお持ちでしたら聞かしてください。
#49
○委員長(北修二君) 簡潔にお願いいたします。
#50
○参考人(井上和衛君) 御承知のように、農業者年金は国民年金に付加された年金だと思います。国民年金について言えば、これは別に年金権は婦人にもあるわけでございますから、自営業者は農業だけじゃなくて都市にも自営業者がいっぱいいるわけでございます。そういたしますと、今後の方向としては、これは将来といっていつになるかわかりませんが、私は現行の国民年金制度をもっと充実していく方向というのが一つは必要だろうというふうに思っています。
#51
○参考人(森実孝郎君) 社会保障制度審議会等の御意見を見てみますと、大体所得の一二、三%までが保険料の支払いとしては状況として今限度じゃないか、そこで今回の計算をやってみますと、ちょっと今正確な数字ではなく、たしか農業所得に対して農業年金の保険料は六、七%でございます。それから農家所得に対して国民年金と農業者年金の保険料を加えますと、たしか六、七%だろうと思います。そういう意味においては、通常許容されている限度の枠内には入っているだろうと思います。
 なお、長期的な見通しの問題でございますが、はっきり申し上げますと、七十年代に入りますと、ある程度農村地域が先行していた老齢化の問題はそう他の地域と差がなくなってくるという感じ、それからもう一つは、新規加入者も大体平準化するような姿になるんではないか。そういう意味においては、やはり農業老年金の財政状態の悪化が六十年代、大体六十五年を境にする前後に先行して出てきているという姿は大数的な姿としてはあるだろうと思います。しかし、先生御指摘のような二十一世紀という問題になりますと、結局日本の中核的な農家数をどのくらいと見るか、それ以外に農業者年金に加入する人がどのくらいと見るかという問題に帰着するわけでございまして、そのことと、先ほども申し上げましたいわゆる農業から完全にリタイアする時期、つまり年金制度でいえば支給開始年齢をどう見るかという問題との兼ね合いで、問題をさらに詰めてみる必要があるだろうと思います。
#52
○田渕哲也君 時間の関係で質問を先に全部申し上げ、お答えは順次お願いしたいと思います。
 まず、池田参考人にお伺いしますが、今回の給付水準の引き下げ、あるいは保険料の値上げ、また政策年金のゆえをもってするサラリーマン後継者と農業後継者の給付格差の問題、こういう点がやはり加入促進に対して大きなブレーキとなると予想されるわけですけれども、今後の加入状況がこの改正でかなり悪くなるという見通しはできるのかどうか、その辺をお伺いしたいことと、もう一つは、この給付水準の格差をつけることによってサラリーマン後継者が減るのかどうか。恐らく後継者にバトンタッチする場合に、保険金が減るからサラリーマン後継者をやめて農業者年金加入の後継者にしようかという選択の余地はないのではないかと思いますが、この二点についてお伺いしたいと思います。
 それから、井上参考人にお伺いしますが、第三者移譲に割り増しをつけるべきだと、私は政策的な効果とすれば、これは非常にもっともなお考えだと思います。そこで、私もよくわからないんですけれども、ECにおきましても大体同じような時期に離農奨励金とか離農年金というような制度が設けられたと聞いておりますけれども、それの効果はどうなのか、また日本との違う点はどうなのか、お伺いをしたいと思います。
 それから、最後に森実参考人にお伺いしますけれども、年金の保険制度というものは世代間の相互扶助だということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、農業という一つの業種に限られた制度でありますから、農業の構造改善ということと関連して、やはり農業人口はどんどん減っていかなくてはならない。我が国の全国の耕地の総量が飛躍的にふえない限りは、構造改善を進めるということは農業人口が減るということにほかならないと思います。そういう中では、世代間の相互扶助といっても、なかなか基本的に保険の経理というものが成り立たないのではないか、この点についてどうお考えか、お伺いをしたいと思います。
 以上です。
#53
○参考人(池田斉君) 今、先生お話しのように、非常に厳しい内容が今回はほかの社会保障制度との関連を含みながらあるわけで、それにさらに格差がつけられる。加入者促進に非常に困難な問題、それは率直に私も認めざるを得ないと思います。しかし、やはり長い目でこの制度が長期に安定をするということは、農業の近代化なり農業者の幸せのためにどうしてもこれは存続させなきゃならない。したがって、問題は、そういうものを中長期の展望の中でどういうふうにPRして困難を打開するか、こういうことで、この問題にはひとつ今後も全力を挙げて、PRを含めながら加入者の促進を図りたいというふうに考えております。
 サラリーマン後継者の問題は、お話しのように、サラリーマンをやめて適当な時期に農業者に復帰をして加入資格を取れば、それはそういう問題は確かになくなると思います。しかし、現実の今の農家経済の中で、サラリーマン農家として定着している者がどれだけそういうような年金をおやじさんに満足に渡すために手当てを考えるか、なかなかそう簡単に踏ん切れる問題ではないと思いますので、皆無ではないと思いますが、これは非常に少ないのではないか。特にこの四分の三で歯どめがかけられておるというようなことで、これはサラリーマン後継者も納得をし、おやじさんも納得をする。むしろその方へシフトをするような説得をやっぱりやるということではないか。したがって、サラリーマン後継者が私は総体として減るんではなくて、地域によって違いますけれども、流れは別でございますが、やっぱり今後もある程度ふえていくのではないか、こんな感じを持っております。
#54
○参考人(井上和衛君) 外国農業、特にEC農業につきまして私十分に研究しておりませんのでお許しいただきたいわけでございますけれども、EC研究をやっている専門家から伺ったところによりますと、一つは離農給付金、向こうは離農年金でございますけれども、離農年金等の資格要件等は当初非常に細かく決められていたそうですけれども、だんだんだんだんそれは単純化の方向に向かっているということを伺っております。日本の場合は、逆に複雑にしていくということで、若干私は逆行しているんじゃないかというふうに思っております。
#55
○参考人(森実孝郎君) 今回の財政再計算では、やはり手がたく、今御指摘のありましたような農業の見通しを織り込んで保険設計を行うということを考えたつもりでございます。
 例えば、中核農家数も五十九年の九十万戸が六十万戸までに七十年には減るだろう、それから男子の中核労働力も百八十万人が百二十万人まで減るだろう、そういう前提で加入資格者の母集団を出し、今百十七万人ある母集団が六十三万人ぐらいまで減るんじゃないか、そういう前提で被保険者数を出しております。加入率につきましては何割に見るかという問題がございますが、これは一応九割という水準で、数は減るが加入率は上がっ
てくるということで、そういう意味で新規加入者を七十年代は二万人と織り込んで、手がたく財政計算をしたはずでございます。
#56
○喜屋武眞榮君 私も、時間の関係で一問ずつお尋ねいたしたいと思います。
 その骨子は、御高見大変ありがとうございました。御高見に基づいて一問ずつお願いいたします。
 まず、池田参考人に対しては長期安定の見通しに向けて希望の持てるものでなければいかぬということを強調しておられました。そのことと関連して、十アール程度の施設経営者についてはどのようにお考えでしょうかという点。
 次に、井上参考人におかれましては、農業経営の後継者である若い者に魅力あるものにするかしないかということは非常に大事な問題である、こう強調しておられましたが、この点から先生が強調なさりたい問題点といいますかね、それをお聞かせ願えたらと、こう思っております。
 次に、上島参考人に対しては、財政の健全と加入者との関係は非常に重大な関係があると思っております。その点から加入促進のブレーキになっておるものは一体何だろうか、この点お聞きしたいと思います。
 次に、森実参考人に対しては、業務の円滑な処理が非常に大事であるけれども、滞りがあるようなことを言っておられましたが、その業務処理の上からの問題点といいますか、あるいは要望点と申しますか、そういう点からお聞かせ願えたらと思っております。
 以上でございます。
#57
○参考人(池田斉君) 日本農業の近代化の筋道、土地利用型農業が基本でありますけれども、施設型農業もやはり大事な問題である。その場合に、この制度は土地と結びついて枠組みができているというところに、今お話しのような問題が十分解決できない。その辺は、やはり私は日本の農業の近代化という筋道の中で、農業には違いないわけですから、将来どういうふうにこの枠組みの中に、真っすぐは入りませんけれども、何かやはり基本的な中長期的な課題としては考えてみる必要があるのではないか、こういうことを衆議院の方でも申し上げたんですが、同じようなことを申し上げておきたいと思います。
#58
○参考人(井上和衛君) 先ほど申し上げました点では、例えば新規参入の条件を整備しろというようなことを一つ申し上げましたけれども、もう一つの点に関しましては、現在の現行制度では三年、農業後継者が三年ということが一つ条件になっておるわけでございますけれども、Uターン青年の場合、必ずしも三年ということでいいのかどうか、もう少しその期間については検討をしていただく必要があるんじゃないかというような点を考えております。
#59
○参考人(上島久人君) 加入促進のブレーキになるという大きな原因となるものは、実はこの年金のシステムが生年月日、つまり大正五年の一月二日から昭和十年の一月一日までの間に生まれた高齢者に対しましては五年から十九年という加入短縮特例の期間がございますし、さらにこれらの方々につきましては加算がつけられておる優遇措置があるわけでございます。
 ところが、昭和十年以降生まれの方につきましては最低二十年以上、しかも加算額はないわけでございます。しかも、この方々に対して、今回の改正によれば、将来二十年は掛けるんだけれども六〇%ダウン、低減をしていくんだよ、さらにサラリーマン後継者に対しましては四分の三に減額するよと、こういうことでございまして、みずからが負担したものに対する給付の段階になりますと、言うなら往復びんたを食らうというような、こういった点が最大の加入促進に対するネックになりはしないかというふうに感じております。
#60
○参考人(森実孝郎君) いろいろございますが、一つは、やはり重点市町村地域と後継者に重点を置いた加入の促進ということだろうと思います。
 第二は、適正な経営移譲をどうやってギャランティーしていくかという問題でございまして、やはり各種の名義の移転を適格に実施させることと、それからもう一つは、やはり配偶者変換とか迂回作戦等の、ややもすれば脱法的と見られる指弾を受けております行為について、従来からも講じておりました指導監督措置を強化するということだろうと思います。
 三番目は、やはり新しい制度改正のPRに本気に取り組むという問題だろうと思います。
 その意味で、内容、手法については、皆さんの御意見をこれからも聞いて考えたいと思いますし、また同時に、制度の切りかえに伴い電算システムの完備を図るということが緊急の課題であろうと思っております。
#61
○委員長(北修二君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑を終わります。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、皆様には御多忙中にもかかわりませず当委員会に御出席をいただきまして、大変貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 午前の審査はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
   午後一時三分休憩
     ─────・─────
   午後二時一分開会
#62
○委員長(北修二君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、農業者年金基金法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#63
○稲村稔夫君 きょうは、年前中に参考人の方々に御出席いただいて、いろいろと貴重な御意見を伺いながら、また多くの示唆も得たところであります。しかし、そのことも、きょう私はいろいろと質問の経過の中では触れていきたいというふうに思っておりますけれども、最初に、前回の委員会て山田委員の質問にいろいろとお答えをいただいたことの中で、若干勉強中であるとか、あるいは検討をするというんでしょうか、検討の方向が見えたやに見えた、そんな部分がありましたけれども、それであるとするならば、聞かれた点についてはそういうふうに答えるけれどもということてはなしに、この際いろいろと今後の問題点として御検討いただいているものがあるならば、どういうことを検討しておられるのかというようなことについては、一応先に出していただいた方がいいんではないだろうか、そう思いますので、今後の問題として御検討になっておる点、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
#64
○政府委員(井上喜一君) 今回の年金法の改正につきましては、農業者年金制度が定着をしてきているというそういう実態を踏まえまして、より安定した制度にしていく、そういう方向で検討いたしまして、まとまりました検討結果について今回の改正案として提出した次第でございます。
 中身につきましては、公的年金制度の改革の方向を踏まえまして、給付と負担の適正を図るとか、あるいは一層構造改善を促進するための措置等を織り込んだところでございます。
 しかしながら、農業者年金制度が長期に安定をしていくためには年金財政の安定というものがございまして、これにつきましてはさらに検討を要する点が残っているわけでございます。一番大きな問題は、給付と負担の関係でありますとか、あるいは最近の高齢化に伴いまして年金の支給開始年齢の問題等もありますが、この委員会等において提案されました問題もあわせて検討する必要があると考えております。
 私どもといたしましては、それらの問題を全部整理をいたしまして、その事項がこれこれであるというところまでには至っておりませんが、いずれにいたしましても、ただいま申し上げました基本的問題のほかに、これまで提起されてきた問題も含めまして十分検討さしていただきたい、このように考えているわけであります。
#65
○稲村稔夫君 そういたしますと、きょうの午前中の参考人の御意見の中でも、例えば池田参考人
等からいろいろと、いわゆる農業者の方の側からの要望というようなものが述べられましたし、上島参考人もかなり切実な農業者の要求というようなものを出しておられました。そうした農業者の要求というのは、これはどういうふうに取り扱っていただけるようになりますか。
#66
○政府委員(井上喜一君) 具体的にどういうような要求なり要望が出てくるかわかりませんけれども、いずれ土俵は農業者年金制度というものでございますので、そういう中で提案されます問題については十分検討してまいりたいと考えております。
#67
○稲村稔夫君 そうすると、この問題は、具体的にどういうことが問題であるということを整理もまだしていないということですね。それで、これから先いろいろな問題点というものを整理していって、それに従ってまた法案の改正というようなことを提起することもあり得る、これはあり得るの段階ということでしょうか。
#68
○政府委員(井上喜一君) まだ今後検討する事項につきましては正式に整理をしている段階でないわけでございまして、いずれにいたしましても、年金財政を長期に安定していくための事項でありますとか、あるいはより構造政策を進めていくための検討事項でありますとか、そのほかいろんな問題があると思います。加入促進のための対策でありますとか、あるいは資産の運用問題でありますとか、婦人の加入の問題等々、各般の問題があろうかと思いますけれども、まだ整理をいたしまして項目としては絞っているという状況にはございません。
#69
○稲村稔夫君 局長の御答弁を聞いていますと、やっぱり政府の側から考えている問題点だけしか出てこないわけですよね。先ほどの参考人の意見の中でも、後ほどまたほかの委員からもそれはかなり大きな問題として取り上げられるでありましょうけれども、例えば遺族年金だとか婦人の加入についての強い要望とか、そういうものが農業者の側からはずっとこう続いてきてあるわけですよ、経過として。そういう経過がずっと片方の方にはあるのに、今後の問題点はどこにありますかと伺うと、政府の側から考えている問題点だけが出てくるというところにも、私は何か、まあ考え方がおかしいとまでは言いませんけれども、要するに、問題を整理していくときに重点がどこにかかっているかということを勘ぐらざるを得ない、こういうことになってくるわけなんでありまして、そういった農業者の要求というものを具体的に取り入れていくというような作業というものはお考えになっているんですか。
#70
○政府委員(井上喜一君) 制度についての各般の問題を検討するわけでありますので、私どもといたしまして検討すべき項目はもちろん出すわけでございますけれども、私どものほかからの問題につきましても検討すべき問題については十分検討していく、こういう考えで私は答弁申し上げたわけでございます。
#71
○稲村稔夫君 少ししつこいように聞いていて申しわけありませんけれども、実はこの点は非常に大事なところなんでありまして、山田委員の質問に対してお答えになった中で、例えば、この制度が発足したのは、佐藤総理が農民にも恩給をというそういう提起の中から始まった、こういうふうに御答弁になっていますけれども、しかし、私どもの基本からいきますと、佐藤総理はたまたま農民の要求がかなり強いものがずっとありましたから、だからそこで制度的に検討をということに踏み切られたということなんであって、問題は、やっぱり農民の方にかなり強い歴史的な一つのあれがあったことです。そして、しかもその農民の要求と言われるものの中の非常に重要な部分というのは、それは構造政策的なものというよりも農業ということで貢献をしたということに対しての、やっぱり言葉として恩給という言葉に表現をされている、そういうものであると思うんです。
 それが、私どもからいえば、いつの間にか、だんだんだんだん構造政策の方に重点がかかった、そういう制度になってきている。その辺のところに、実際の農家の皆さんとの間に随分問題のずれがあるんではないだろうか、そう思うからなんでありまして、そうすると、私は常にそういう感じがするんですよね。農業者の要求というもの、農業者の希望、そういうものがどう政策的に反映されるのか。そして、その政策的に反映されたものが果たして農業者の要望とのかかわりで正しかったのかどうか、これは常に検証されていかなきゃならない問題だと思うんですよ。
 けさの池田参考人のお話の中にも、随分長い間の農民の要求だったということは言っておられますので、その辺のところをどう踏まえておられるかというのを、私はこれは本当にくどいようですけれども、そこのところが一番気になるということで申し上げた。
 そこで、それではこれは今後の問題として、こういう農業者の要求というものを具体的にくみ上げていくような、そういうシステムをお考えになりますか。
#72
○政府委員(井上喜一君) 現在、私どもが新しい制度をつくりますとか、あるいは制度を改正いたします場合に、部内で検討することはもちろんでありますけれども、通常、関係者の意見を団体等を通じて伺っているわけでございますし、また検討いたします場合も、例えば農業者年金でありますと農業者年金制度研究会等の場を設けまして、各界の意見を伺っているわけでございます。決して一方的に私どもの意見だけを検討をいただきまして、それで結論を出すという、そういう方法はとってないわけでございます。
 今回の改正案につきましても、確かに従来からのいろんな御希望もございましたけれども、そういう点を含めまして検討いたしました結果、結論をまとめまして改正案にまとめた、こういうことでございまして、決して私どもだけの問題にしている事項を検討する、まとめる、そういう状況にはなってないわけでございます。
#73
○稲村稔夫君 それじゃどうして、随分もう前から要求として出てきている遺族年金の制度とかそういうことが具体化されてこないんですか。
 それから、きょうの上島参考人の意見陳述の中でも、地元でそれぞれとあれしていったら、素朴な意見というのはすべて大変だという、そういう感覚だというんですよね、今度の改正案についても。ところが、それが上へ上がっていくに従って、だんだんやむを得ない。もう上島参考人クラスのところにくるとやむを得ないということ、まあいろんな関係もありますから、そう言わざるを得なくなってくるんでありましょう。
 だから、私は本当に農業者の声が政策的にきちっと反映をされた、そういう仕組みというものができていないのじゃないかと思うんですよ。そういう仕組みを工夫する意思がありますかどうですかということを私は伺いたい。
#74
○政府委員(井上喜一君) 私どもが農業者年金制度を検討いたします場合に、やはり農業者年金の基本的な枠組みというのがございます。そういう枠組みの中で検討を基本的にするわけでありますので、そういう基本的な目的、枠組みに照らして、果たしてそれが取り入れられるかどうかと、こういう検討をするわけでございます。
 今お話しになりました遺族年金につきましても、現在農業者年金が国民年金の付加年金であるということでございまして、国民年金の方で遺族年金を出す、そういう仕組みになっているわけでございますので、国民年金との調整をどのようにしていくかというような問題もあるわけでございます。あるいは政策年金として農業者年金があるわけでありますけれども、そういう政策年金の目的、性格との関連をどのように位置づけていくのか、こういった問題もあるわけでございまして、なかなか制度の基本にかかわる問題だけに簡単に結論が出ない、こういうことでございます。
 私どもといたしましては、農業者なり農業者団体の意見は十分伺っているわけでありますけれども、制度の改正の中に取り込むというのには一定の限界があるわけでございまして、やはり制度全体の仕組み等の中で検討して、取り入れられるも
のでなければ取り入れることができない、こういう実情にあるわけでございます。
#75
○稲村稔夫君 おかしいじゃないですか。枠を初めから決めてかかっているんでしょう、今の御答弁は。農業者の要望というものが、それがその枠の中にはどうしても入らない、枠を外さなければ。言ってみれば制度を根本的に変えなきゃならぬ、そういうことだって農業者の要求の中からは出てくることがあり得るんですよ。頭から枠をはめて、その枠の中でなければ何もできないというんだったら、何のために法案というものは審議するんですか。
 ですから、私ちょっと声を荒げて申しわけないけれども、随分時間が長くかかっているんです、一つのことの要望で。それでもなおかつまだ実現しないでいる。このことに農家の皆さんの方からは、本当に靴の底からかかとをかいているような、そんなあせりというようなものがあると思うんですよ。そういうことで、私はむしろ積極的にそういう農家の皆さんの声というものをどうやったら聞くことができるのか、そのことを真剣に、もちろん私は討議してないとは言わない。だけれども、そういう形で農業者の希望をどうやったら取り入れられるかという、そのための仕組みというものをぜひ考えていただきたい。農業者の皆さんの声を聞いているということはわかるけれども、聞いたって枠組みの中で、この枠は変えられません、こう言っているんだったら、いつまでたったってその枠の中でということになっちゃうんですからね。
 ということで、その点は局長の判断というのは無理かもしれませんので、大臣のひとつ御判断というのをお伺いしたい。
#76
○国務大臣(佐藤守良君) 稲村先生にお答えします。
 今仰せの話を聞いていまして、実は率直な話、私も婦人の加入の問題、遺族年金の問題は何とかしたいなあと、率直にこういう気持ちを持っておるということで、きのうも実は局長と話をしたわけです。局長はかたいことを言っていますけれども、できれば何とかしたい気持ちを実は腹では持っておりますので、その点は御理解していただきたい。まあそんなことでございます。
 ただ、問題は、今言ったように、この年金が国民年金の付加年金であるということ。制度の根幹にかかわる。これを一体どうするかということで、正直言いまして私は、これはやれば善政じゃないかというようなことで、知恵を出している、今知恵を出させている最中と、こう御理解をいただきたい。したがって、私はこの問題はとにかく全力を挙げて検討してみたいと、こう思っております。
#77
○稲村稔夫君 大臣の御答弁がありましたので、そういう御検討をぜひお願いしたいと思いますし、そして今のような、それは一つの例ですからね、婦人の加入あるいは遺族年金の問題は。ですから、要するに直接かかわりがある農家の声が反映させられるようなそういう仕組みというものを、これは本当に疑い深く申し上げて恐縮なんですけれども、やっぱり私もそういうことに携わったことがありますからね。ですけれども、一つのことを通そうと思うと、それにあわせて大体声を聞くということというのは、よくやっぱりやられざるを得ないんです。そういう側面がありますので、それだけにもっと率直に聞いて取り入れていかれるような、そういう仕組みをひとつ今後の問題として考えていただきたいというふうに思います。
 それでは次に移らせていただきまして、この制度というのは諸外国でも若干似たような制度というものを持っているところもあるわけであります。ECでは例の構造政策の推進ということで、ECの指令として各国で離農年金だとかなんかに取り組むようにというようなことを指示したということがあるようであります。ただ、それも、実を言うと国によってなかなか簡単にはいかないで、結果としては、何かイギリスは大分離農政策をそれでやってみたけれども失敗したということのようでありますが、今制度として残っているので参考にすべきものはフランスと西ドイツくらいかなというふうな感じもいたしますけれども、その辺、諸外国の例はどういうふうになっておりますか。
#78
○政府委員(井上喜一君) 諸外国の制度につきましては、農業者年金制度をつくります場合にいろいろ検討したわけでございまして、その後十分なフォローはできているような状況ではございませんけれども、私どもが承知している限りのことを申し上げますと、やはり離農年金というのが中心のようでございます。したがいまして、日本流に言いますと第三者への移譲年金というのが中心になっているようでございまして、そのほかに農業というその職域の年金、日本で言いますと国民年金だとかほかの厚生年金のような制度がありますけれども、そういう農業の中での職域年金、そういうような部分も持っている、そういった二本立てのようでございますけれども、日本の農業者年金制度との比較におきましては、向こうの方では第三者移譲を中心にいたしました離農年金制度になっている、このように考えております。
#79
○稲村稔夫君 中心的なものは、第三者移譲に目標といったらあれですけれども、考え方の最初ではそういうところにあったようですね。しかし、やはり後継者移譲が非常に多いというふうに聞いておりますけれども、その辺はいかがですか。
#80
○政府委員(井上喜一君) 当初は第三者移譲ということであったようでございますが、最近は後継者移譲がフランスなどではふえておりまして、五〇%から六〇%ぐらいになっているんじゃないか、このような状況でございます。
#81
○稲村稔夫君 それは、その場合の年金の財源はどこに求めていますか。
#82
○政府委員(井上喜一君) 離農年金につきましては、これは全額国庫でございますし、それから農業者職域年金につきましては、拠出制でまた補助制度がある、このように承知をいたしております。
#83
○稲村稔夫君 それじゃ、もう少し具体的に伺ってみたいと思いますけれども、フランスの例でいきますと、今の局長の御答弁のように、一応職域年金、共済年金とでも訳すんでしょうかね、そういうものがあって、それにいわゆる離農年金というべきもの、何かIVDと言っているようでありますけれども、そういう制度があるということになっております。ところが、それの離農年金に関する部分というのは、これは全額国庫で財源を確保している、こういうことになっておるのは今の局長の御答弁のとおりのようです。ただ、私が調べている範囲の中でいきますと、このIVDという部分にも幾つかの対応の違いがあるようでありまして、農業者のあり方によって対応の違いがあるようでありますけれども、その辺は御承知になっていますか。
#84
○政府委員(井上喜一君) 詳細につきましては、残念ながら私ども承知をいたしておりません。
#85
○稲村稔夫君 詳細に承知をしていないとおっしゃるけれども、私は何もフランス語のあれを読んだわけではないのでして、日本語に翻訳されたものを読んでいるんです。それですから、皆さんのところで少なくとも私よりは少しくらい詳しく知っていてもらわなければならないはずなんてあります。
 そのことはさておきましても、それでは今のIVDの制度の中では、これはフランスの担当する責任者の方が書かれた論文の中でいろいろと触れられているんですけれども、その離農年金というものが、これが家族構成によって多少変わるというようなことも書かれております。例えば画一的に三千フランと定められているけれども、受給者が結婚していたり、扶養すべき子のいる場合には四千五百フランであるというようなことなども、このIVDの中のそういう種類の年金もある、こういうことなんですね。こういうあり方についてはどういうふうにお考えになりますか。
#86
○政府委員(井上喜一君) 確かにフランス、西ドイツの場合もそうでありますけれども、離農年金にいたしましても、老齢年金にいたしましても、配偶者があります場合と単身者の場合で差がついております。これは日本の場合には国民年金の付
加年金という形で制度が仕組まれておりますので、そういう歴史的な経緯といいますか、制度の仕組みの違いというのが出てきているのではないかというふうに考えております。
#87
○稲村稔夫君 制度の歴史的な違い、それは当然あることですよね。しかし、フランスにいたしましても、西ドイツにいたしましても、やはり老後の生活ということを一つの思想的な流れ、基点に置いておる、こういうところを私は本質的な問題としてとらえなければいかぬのじゃないかと思うんですよ。その点は、我が国の今のこの制度はそうなっていますか。
#88
○政府委員(井上喜一君) 我が国の場合には我が国の状況ということを十分勘案した制度になっておりまして、国民年金の上乗せ制度ということでありまして、向こうの方はそういう一般年金の上乗せ年金でない、職域年金等として簡潔にしているわけでございます。我が国の年金制度の場合は、これは構造政策との関連を持っておりまして、西ドイツなりフランスの制度とは仕組みが違うわけでございます。目的は構造政策的な目的を持っているわけでございますけれども、仕組みが違う。
 どうしてそういう仕組みが違うのかといいますと、やはり社会保障制度の制度が違うというふうなこと、あるいは農業事情とか農業政策自身も違っている、その国に応じましてそれぞれ独自の考え方があるわけでございまして、そういったことがこういう差になってきている、そのように考えております。
#89
○稲村稔夫君 仕組みが違うとか、そういうことはそれはもう私の方も承知し、現実に仕組みの違うものを同じ仕組みにまねをしろとかなんとかいうことを申し上げるつもりで言っているのではないのですよ。要するに、この離農年金というものの考え方は、農業という現職からリタイアをする、リタイアをすれば当然その生活を保障しなきゃならぬ、そういう考え方で老後の生活保障という考え方が出発点になっておる。我が国の年金は必ずしもそうなってないでしょう、今の農業者年金はね。
 そこで、私が聞いているのは、そういう老後の生活保障ということを基礎に置いたこういう年金のあり方をどう考えているか、そういうものは必要ないんだと考えているか、それともそういうことを考えなきゃならぬと考えているのかということも含めて、ひとつ御判断を聞きたいと思います。
#90
○政府委員(井上喜一君) 日本の場合には、給付水準につきましては厚生年金水準、こういうことで従来からやってきたわけでございまして、今回の改正案におきましてもそういう考え方を踏襲してきているわけでございまして、この農業者年金の考え方につきましては、日本では定着してきているものというふうに考えているわけでございます。
 ちなみに、フランスの場合を例にとってみますと、離農年金でございますが、これは六十五歳まで支給される、六十歳から六十五歳末満までの金額でございますけれども、二十五年加入の場合のようでございますが、配偶者があります場合には三万三千五百円、それから単身者の場合には二万二千三百二十四円ということでございます。それから、農業者老齢年金といいますのはこれは六十五歳からでありますけれども、配偶者があります場合には四万二千五百十六円、単身者の場合にはこれは一万五千九百五十九円、こういうぐあいになっているようでございます。
#91
○稲村稔夫君 今のフランの換算をどういうふうにされたのかということにもよるんですけれども、若干金額的にはちょっとよくわからぬなと思う点もないわけではありませんが、私が問題を申し上げているのは、離農をするのに当たってはその老後の生活の保障をするということを考え方の基礎にして、それを出発点にして、だからということで全額その分は国庫で財源措置をする、こういう仕組みになっていることが私は我が国と基本的に違うところだ。本来、我が国も思想的にはそういう考え方があってもいいんではないかと私は思うんですけれども、その辺はどうですか。
#92
○政府委員(井上喜一君) この年金を仕組みます場合にはいろんな考え方があろうと思うわけでありますが、フランス、西ドイツの場合には、離農年金については国庫が全額負担をするという形をとっておりますし、日本の場合には年金保険制度をとっているわけでございまして、相互扶助でお互いに助け合ってそれを財源にして年金を支給していくということでございますが、ただ日本の場合は政策年金であるという性格に着目いたしまして、かなり高率の国庫補助をやっている、こういうことで、国庫補助を組み合わせた年金制度ということになっているわけでございまして、これはやはり社会保障制度全体の仕組みが違うとか、あるいは農業事情なり、あるいは農業政策の進め方等が違うわけで、そういう年金制度につきましても制度の違いが出てきているんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございまして、ですから一概に外国のことと比較をいたしましてどちらがいい、どちらが悪いというふうな判断をすべき問題ではなかろうというふうに考える次第であります。
#93
○稲村稔夫君 しかし、私は制度そのものを比較して、その一つ一つがいいとか悪いとかということで物を言おうと言っているんではないんです。要するに、物の考え方として、同じ構造政策を進めるとしても、その構造政策を進めるに当たってはそのリタイアをする人たちの生活ということを重視をしなければならぬ、そのことを第一の条件にして考えなければならぬ、そういうことが基礎になければならないのではないか。
 しかるに、我が国の現在のあれは、前回からの委員会のいろいろな御答弁を聞いていると、社会保障的な老後保障の問題と構造政策の問題とが両方大体同じ水準にありますと、こういうふうに御答弁をいただいているけれども、実際の話、いろいろと伺っている中や現実の流れ、そしてまたきょうも参考人の皆さんの御意見等を伺っても、やはり経営移譲年金のところにほとんど全体が集中しているんですよ。要するに、構造政策としてのことが先行しているんです。重点としては構造政策になっているんですよ。
 だから、社会保障的な考え方がと言うけれども、現実は構造政策重点の政策なんですよ。こう言わざるを得ないんですよ、現実の流れは。
 ですから、私はそういう中で、むしろそういう社会保障的な考え方というものを積極的にこの中へ取り入れていくということが必要なんではないか、こういう立場で質問を申し上げているわけで、一つ一つの制度を比べてそのよしあしを議論しようとしているのではないが、そこで先ほどの局長の御答弁でいくと、我が国の制度は厚生年金並みということに一応しているから、そうすると、社会保障制度の水準としても大体まあまあ他の産業従事者と同レベルに置いておるわい、こういう言ってみれば御答弁のように聞こえるんですけれども、本当に厚生年金並みになっているんでしょうか。
 その辺のところが私はどうも疑問になるわけでありますが、この農業者年金の基礎になります厚生年金と比較しての標準報酬月額、厚生年金で言えば標準月額報酬ですか、それに当たるものはそれは十三万一千円ということになるわけですね。この十三万一千円というのは、厚生年金の受給者では大体どの辺のレベルになるとお考えになりますか。
#94
○政府委員(井上喜一君) 厚生年金並みと申しておりますのは、農業者年金に加入しております農業者の平均的な所得で厚生年金に加入していたとすればどれだけの水準が得られるかということを、厚生年金の算定方式に当てはめまして算定した水準と、こういうことでございまして、現在――現在といいますか、今回の改正案ではその農業所得を十三万一千円というぐあいにしたわけでございます。
 これが厚生年金保険の中ではどの程度のところに位置するのか、こういう御質問かと思いますけれども、被保険者の報酬月額に基づきまして、これは厚生年金の現行法では月額が四万五千円の第
一級から四十一万円の第三十五級まで、三十五の標準報酬に区分をされております。また改正後の厚生年金保険法では月額が六万八千円から四十七万円まで、三十一の標準報酬等級に区分されることになっております。それで、これにこの農業所得の十三万一千円を当てはめてみますと、現行の等級では、三十五の等級中第十八級に相なります。それから改正後の等級では、三十一の等級中第十二級ということになるわけでございます。
 ですから、区分といいますか、等級の区分としては真ん中ぐらいになるわけでありますけれども、ただ被保険者の数の方から見ますと、これは昭和五十九年三月末をとりますと、標準報酬月額が十三万一千円の者が属する十八級以下の厚生年金保険の被保険者は全総数の約二七%でございます。
 それから、同じ時点でとりまして厚生年金保険の標準報酬月額の平均は二十一万三千四十一円でございまして、十三万一千円といいますのはこの約六一%、こういうふうになっております。
#95
○稲村稔夫君 そうしますと、局長、厚生年金並みとおっしゃるけれども、それはたまたま農業による収入というものをそれを標準月額と仮定をして、そこに当てはまる厚生年金並みの言ってみれば手当てをいろいろとする、こういうのであれば、結果としては、今の厚生年金の受給者の水準でいきますと十三万一千円というのはかなり低い水準の人たちになりますね。金額的にはいろいろとあって真ん中ぐらいだと言ったって、実際にもらっている人がどの程度いるかということがこれが一番問題なわけですから、低い水準の方になっていくわけでしょう。そうすると、その低い水準を固定化してしまうということになるのじゃないですか。
#96
○政府委員(井上喜一君) 経営移譲年金といいますのは、やはり所得に見合う水準で給付される仕組みでありますので、当然平均的な農業所得が基準になるわけでございます。したがいまして、年金額を上げていくためには農業所得全体をふやすといいますか、増加させる、そういう方法をどうしても全体的な対策としてとっていく必要がある、こういうことでございます。年金制度の中におきましては、どうしてもそういう現実の報酬ということを前提とせざるを得ないために、最近時点の農業所得をとるわけでありまして、それが十三万一千円というぐあいになっているわけでございます。
#97
○稲村稔夫君 だから、やっぱり社会保障的な発想はなくなっていくんでしょうと私はまた言わざるを得なくなるんですよ。というのは、要するにリタイアをするということは、これはまず生活の面でいっても大変なことですね。同時に、精神的な面からいったら、もっとまた大変なものがいっぱいくっついて回るわけですね、特に農村の従来からの慣行その他の中で。
 そういうことの中で、私はやっぱりリタイアをするということは、老後の生活の保障ということ、そのことを出発点にして物を考えていく、そういうふうに発想がなっていれば、今のように厚生年金並みの水準でこの程度になります、逆算をしてこうなりますというような、そういう御答弁には私はならないと思うんだけれども、どうなんですか。厚生年金並みとおっしゃるけれども、現実には厚生年金並みにはなっていないということになると、それは移譲年金という性格上やむを得ない、こういうふうに今のは受け取れるんですけれども、そうなればそれじゃ老後保障という社会保障の観点というのはどこへ行ったんですかと、こういうふうになるんですけれども、その点いかがですか。
#98
○政府委員(井上喜一君) その保障水準でありますけれども、農業者年金の場合は所得が基準になる、ならざるを得ないわけでございます。したがいまして、所得が総体的に低い場合にはやはりその低い金額を基準にするということになるわけでございまして、要は、農業者が高い所得を上げられるような、そういう政策を全体としてとっていく必要があろうと思うわけでございます。現実的な制度であります以上、そういうような農業所得を上げるための全体的な政策をとりつつも、やはり現実にそういう所得が実現をしていない場合には、現実のその所得を基礎にして年金額を決定していかざるを得ないというふうに考えているわけでございます。
#99
○稲村稔夫君 そうすると、局長、農業所得を上げていくという努力をしなきゃならないと、こうおっしゃったんだけれども、それじゃ農業所得を上げていくための努力というのはどのようにされてきましたか。
#100
○政府委員(井上喜一君) 最近の農業所得の状況を見ますと、農産物需要が全体として伸び悩んできておりますし、また農産物の需給を見ましても、需給状況が緩和をいたしまして価格が上昇しないような状況でありまして、加えまして、最近の冷害等によりまして農業所得の増大を図るということが非常に難しくなってきているわけでございます。
 私どもといたしましては、基本的には、経営規模を拡大していきまして生産性の向上を図って所得の確保を図っていくということが基本であろうかと思います。また、これとあわせまして、その地域ごとに特徴のある農業をするということで、各作目を合わせました複合経営の確立でありますとか、あるいは消費者のニーズに対応いたしました特産物の生産振興とか、また付加価値を高めるための農産加工業の育成等によりまして、全体といたしまして農業所得を確保するための対策を進めているところでございます。
#101
○稲村稔夫君 いろいろと言われるけれども、どうも口だけでいろいろと言われてもよくわからぬので、少しわかりやすくするような数字を出してもらいたいと思うんですけれども、例えば労働者の賃金について、この制度が発足したのは昭和四十六年でありますから、四十六年と比較をして労働者の賃金は大体何倍くらいになっていますか、それに対して農業所得は何倍くらいになっていますか。
#102
○政府委員(井上喜一君) 直接お答えする数字とはならないかと思いますけれども、製造業賃金と全国の農家の平均を比較してみますと、常用者が五人以上の平均でとりますと、昭和四十五年の時点では農業所得が六〇・八でございます。それが昭和五十年では六二・五、それから五十六年が四一・一、最近時点の五十八年は三九・二というぐあいになっております。
#103
○稲村稔夫君 これは何のパーセンテージですか。
#104
○政府委員(井上喜一君) これは、常用労働者五人以上の企業の平均賃金を一〇〇にいたしました場合の農家の平均所得でございます。
#105
○稲村稔夫君 一時的には少し格差が縮まってきたときもあったけれども、総体としては格差はだんだん開いていっているわけでしょう。とすると、農業所得というのは、先ほどの局長の御答弁の中にもいろいろあったように、いろいろな要素が加わってなかなか思うように伸びていませんと、こういうのが過去の実態ですよね。しかし、これから先のことを計算していくときも、この所得を中心にして物を考えていくとしたならば、現在の十三万一千円という平均所得が、これが他の産業と同じように伸びていくというふうに推計をしておられますか。
#106
○政府委員(井上喜一君) 農業者年金の農業所得につきましては、これは過去の期間、つまり制度発足時以来最近時点までの農業所得の動向をとりまして、それから推定をいたしたわけでございます。したがいまして、過去のそういう趨勢値から判断をいたしまして十三万一千円という所得としたわけでございます。
#107
○稲村稔夫君 ですから、今度これは法案改正で提案をされているわけですからね。そうすると、これからこの法案の中で問題になるのは、過去のことを幾ら言っても仕方がないんで、これからの推計が今度はどうなるか、こういうことになるわけです。ですから、現時点では十三万一千円ということで推定でもって出しておられるけれども、
これが今後農家の所得として製造業等との間の格差が開いていくということになりますか、格差は縮めていくということになりますか、大体同じ水準で推移するというふうになりますか、その辺をどういうふうに見ておられますかということです。
#108
○政府委員(井上喜一君) この農業所得につきましては従来から同じような方法でもって算定してきているわけでございますが、四十六年から最近時点までの趨勢値をもとに五十九年度価格で十三万一千円としたわけでございまして、それ以降のことにつきましては、この制度の中におきましては物価のスライドがありました場合にその分だけまた訂正をされていく、アップされていく、こういうことになるわけてあります。
#109
○稲村稔夫君 それでは、農産物の上昇が平均的な物価の上昇を下回る場合でも、物価の上昇に修正して計算をするということですか。
#110
○政府委員(井上喜一君) 今の制度では、消費者物価指数が変動いたしますと年金額も変動をいたすことになっているわけでございまして、したがいまして所得の方も変動する、こういうことになるわけでございます。
#111
○稲村稔夫君 ちょっと僕もまだわからないですけれども、そうすると、今の厚生年金でいけば、基準報酬額になるこの農業収入というものは、そのときの実際の所得というものとはかかわりなく、いつの時点かが基準になって物価等の値上がりを勘案して計算をされる。ただ単純に算出というと言葉があれだけれども、算出をされるというものであって、これは実態とはかなり違う、こういうことにもなるわけですか。
#112
○政府委員(井上喜一君) 若干正確に申し上げたいと思いますが、この十三万一千円といいますのは、五十九年度におきます農業所得といたしまして十三万一千円ということにいたしまして、以降年金額を計算いたします場合の基礎になるわけでございます。年金額につきましては、消費者物価が上がりますればその分だけ物価スライドしていくということに相なっておりますが、所得の基礎としては、次の財政再計算の期間まではそれは変わらないわけでございます。要するに、年金額自身が物価スライドをされましたら上がる、こういうことになるわけでございまして、したがって農業所得そのものについてはその期間中は動かない。次の財政再計算の時点におきましては、またこれまでと同じような形で制度発足以降の趨勢値等を勘案いたしまして決める、こういうことになるわけでございます。
#113
○稲村稔夫君 そうしますと、もし今のこの趨勢のように労働賃金と農業所得の格差というのが開くという方向にありますと、五年後に再計算をするときは、この傾向がとまっていなければ、再計算するときにはもうかなりまた格差がついてしまう、開いてしまう、こういうことになるんじゃないですか。そうすると、年金額そのものには物価のスライド分は加味されてくるけれども、再計算のときに所得の面でかなり今度また年金額が本来ならあるべき姿というようなものの足を引っ張るとか、こういうような形になりませんか。
#114
○政府委員(井上喜一君) 次の財政再計算までの期間に農業所得がどのように動くかというその実績が、次の再計算のときの農業所得を決める非常に大きなポイントになるわけでございます。農林省といたしましては、農業所得の確保のためにいろんな努力をするわけでございますけれども、さらに努力をいたしまして、なるべく今のほかの産業とのバランスが崩れないような、そういう努力はしていく必要があろうかと考えております。
 いずれにいたしましても、次の再計算までの時期の農業所得の実績というのに左右されるところが非常に大きい、このように考えます。
#115
○稲村稔夫君 だから聞いているんですよ。だから聞いているんですよということで伺いたいんですけれども、その前に気がついたことをひとつ注意したいんです。
 この間から私は気になっているんですけれども、局長の御答弁の中で、言葉じりをつかまえて申しわけないけれども「農林省」という言葉が出てくるんです。ちゃんと「農林水産省」と答えてもらいたいんです。言ってもらいたいんです。それはそれなりの担当している場所によってやっぱりウエートのかかり方が違うからついついそういうことがあるんだと思いますけれども、でもやっぱり水産庁の方から見れば魚の問題、漁民から見れば魚の問題となります。ちょっとその点で時間をとって申しわけないけれども、やっぱりきちんとそういうふうにするようにひとつ心がけてください。これは注文をしておきます。
 そこで、要するに、そうするとこれから先農業所得と賃金との間の格差というのは縮まると考えていますか、離れると考えていますか。
#116
○政府委員(井上喜一君) なかなか難しい問題でありますけれども、私どもといたしましては格差がこれ以上開かないように、縮まるように努力をしていなかくちゃいけない、このように考えております。
#117
○稲村稔夫君 開かないように、縮まるように努力をしていきたいというふうに言われたけれども、それでは言ってみれば、かなり所得をこれから大幅に拡大していかなければ縮まないんですよね、片方の賃金も上がっていきますからね。ということになりますけれども、それではそういう所得を拡大していくというためにはどういう施策を展開されますか、これは構造改善局長ということではちょっと無理なんだと思うんです、かえってそこの部分だけでは。相対的に今後農業所得というものをそれでは増していくという、こういうふうにして拡大をしていくという、そういうプランといいましょうか、計画といいますか、英語はいけないから計画と言いますが、それはどういうふうにお考えになっておられるか、これはひとつ大臣からお答えいただきたいと思います。
#118
○国務大臣(佐藤守良君) 先生にお答えいたします。
 いつも申しておりますように、やはり私は日本の農業の特殊性を考えて三つの施策を中心にやっていきたい。
 その一つは、生産性を高めて経営規模の拡大を図る、それから二番目にバイテク、ニューメディア、これを駆使した新しい構築をするということ、あと豊かな村づくり、そのためにどうするかということになってくると思うんですが、そこで、実はこの三つをやればできるかというと、そこがなかなかで、例えば率直に言いますと、経営規模の拡大にしてもそう簡単にいきません。実際問題として六十五年まで四・八ヘクタールどうするかということ。それから、今の局長の答弁は大変非常に苦しい答弁を率直にしているわけでございますが、例えば基準でも何へクタール以上がどうかということで、常用雇用者が五人以上といいましてもこれは非常に厳しいということ、それから現実問題とすれば、なかなか今の農業からすれば、よほどバイテクその他で技術革新をしないとすぐ簡単にはいかない。したがって格差は、もう局長が最大限答弁したように、何とか格差が開かぬように努力するというのが手いっぱいだと思いますね。
 そういうことで、私は三つの施策をどのようにやっていくかということの中でやっぱり今の所得の増大を図りたい、こういうふうに考えているわけでございます。
 それともう一つは、日本の景気がどうなるかという問題。ただ問題は、基本的には、先生御存じのことですが、農産物には価格政策とそれから構造政策がございますが、価格政策はある程度限度に来ております。そんなことで、構造政策をより重点にやっていきたいというふうなことを局長は言っていると、このように御理解願いたいと思うわけでございます。
#119
○稲村稔夫君 大臣の御答弁は、それこそこうありたいということでの御答弁だと思うんですね。ということは、現実は相当厳しいわけです。それで、今規模拡大のお話も出ましたけれども、規模拡大だって簡単にそれこそできるものではないし、農産物の価格問題も、もう間もなく、またもう
一度私は大臣にいろいろと聞かなきゃならないという暑い時期がやってくるわけであります。米価を決めなきゃならぬということになります。そうすると、その米価に対しての問題一つをとらえてみても、農業所得を今この五年間の再計算の間に増していく、あるいはもう十年ぐらいの先までにこういうふうに増していけるというような、そうなかなか現実は展開をしていかないだろう、そう思うんですね。そこへもってきて、今まさに、この委員会でも決議をしましたように、外国の畜産物と競争もさせられる、こういう条件の中に置かれるということになりますね。
 そうすると、確かに願望はある程度あっても、現実の展開としては、農業所得というのがこれからしばらくの間にそう伸びるということは考えられません。ということになりますと、その所得を一応厚生年金並みにという設定の理屈がどうなるんですか。所得は伸びないのです。片一方の労働者の賃金は、どの程度が順調かわかりませんけれども、あるいは二%か一%かなんとかといいながらも伸びていきます。こういう中で、片一方の方は伸びがなかなかいきません。こういうときに、これで厚生年金並みですというふうに言っていられるんでしょうか。その辺、局長どうですか。
#120
○政府委員(井上喜一君) 厚生年金並みといいますのは、絶対水準が厚生年金並みということではなしに、今農業所得のそういう報酬を持っている人が、厚生年金のもらえるであろう、受けるであろうその年金額に相当するのを農業者の方にも確保していく、こういう考え方だろうと思うわけでございます。制度の仕組みといたしましてはそのようになっているわけでありまして、したがって、やはり農業所得につきまして、農業所得を増加さしていく対策、方策が別途なくてはいけないわけでございます。
 この農業者年金制度の中におきましては、やはり現実に受けておる報酬というのが基準になりまして年金を支給するということになっておりますので、この制度の中自身で農業所得自身を上げていくというのは適当ではないというふうに考えております。
#121
○稲村稔夫君 この制度の中で所得を上げていくと言ったって、年金でもって所得を上げるということは不可能ですよね、そういうことでやることは。もし仮にそこだけを考えて、年金だけで所得が上がっていく分を保障していこうなんていったら、これはちょっと大変なことだろうと思いますよ。
 だから、それが総合的な農政の中で行われなければならないという、そういうことではありますけれども、そうすると、この年金というものを組んでいく上で、計画をしていく上で、そういう農業所得のあり方だということを踏まえて、そして、言ってみればリタイアをするときに生活に問題が起こらないようにと、こういう思想を持って対応するとしたら、制度的にはもっと根本的な改革をやらなきゃならぬ、こういうことになるのではないかと思うんですけれども、その辺はいかがですか。
#122
○政府委員(井上喜一君) この制度の仕組み自身が、あるべき給付の水準を設定いたしまして給付をしていくということじゃないわけでございまして、厚生年金に加入している人と同じように、その同じような水準の報酬であれば農業者にも同じような年金を支給していく、こういう仕組みになっているわけでございまして、私どもといたしましては、農業者年金の仕組みとしては、年金というふうな制度から来る仕組みといたしましては、そういう制度しかないのではないかというふうに考えております。
#123
○稲村稔夫君 局長の言われるのは私と意見は相当食い違っているようでありますから、百歩譲りまして、局長の言っておられるようにこういう制度しかないと考えていくといたしましても、それでも私は、今の農業所得そのものが伸びない中で構造政策を進めていく、その構造政策に協力をしてください、協力をしてくださった方には一定の見返りと言うと言葉がちょっと適当じゃないかもしれないけれども、その構造政策に協力していただいた方にはそれなりに生活保障なり何なりの足しになるように対応をしますよ、こういうことであれば、今度は逆に、私はそういう構造政策に協力したという観点の者に対して掛金を払いなさいというのがおかしいんだと思うんですけれども、その辺はいかがですか。
#124
○政府委員(井上喜一君) これは、農業者年金制度が年金保険制度という仕組みを持ってつくられている、こういうことによるわけでございます。発足当初、発足といいますか、制度検討の段階におきましてはいろんな考え方があったかと思いますけれども、お互いが助け合ってやっていこうとこういう制度でございます。加入者相互間あるいは加入者の次の世代の世代間の相互扶助と、こういうことを前提に仕組まれた制度でございます。これに対しまして高率の国庫補助をしている、こういうことで、その政策目的に合ったそれなりの応分の国庫の負担はしているというふうに考えております。
#125
○稲村稔夫君 発足までの間はいろいろとあったかもしれないけれども、これで発足をしたんだから仕方がない、言ってしまえばそういうことだと思うんですね。今言われていることは。しかし、そうすると、農業所得は伸びないんですよ。農業所得は伸びてないのに保険料はどんどん上がっているんですよ、掛金分は。そうすると、掛金があるのはおかしいというのに対して、出発したんだから仕方がないやということは、それはそれで認めるとしても、今度は、片一方の基準になる所得は伸びないでいるのに掛金の方だけがどんどん上がっていく、それで構造政策に協力した者に高い掛金をさらにさらに負担をしてください、こういう行き方というのはどういうわけですか。
#126
○政府委員(井上喜一君) 農業者年金制度を安定して運営するためには、どうしても長期にわたります年金財政の安定というのが必要でございます。各年金ごとに財政状況が違っているわけでございまして、農業者年金の場合には非常に年金財政の点から問題があるわけでございます。
 これにつきましては幾つかの要因がありまして、当初考えておりました以上に平均余命が延びてきているということでありますとか、あるいは経営移譲率が予想以上に高くなってきている、こういった状況等があるわけでございまして、あるいは被保険者数といいますか、新規加入者数が減少する、新規加入者が当初予定したほど入ってこない、こういうような状況がありまして、年金財政が非常に苦しい状況になってきているわけでございます。
 そういう中で、これを健全化するためには、どうしても給付の問題、あるいは負担の問題について検討をせざるを得ない今状況であります。保険料も、今回六十二年度から八千円、五十九年度価格で八千円ということになるわけでありますけれども、これも平準保険料からいたしますとまだかなり低いところに設定しているわけでございます。農業者年金財政の現状からいたしまして、農家に負担可能なところまではどうしても負担をしていただかないといけない、こういうことになっているわけでございます。
#127
○稲村稔夫君 いや、局長、いろいろと言われますけれども、発足当時の昭和四十六年、保険料の掛金というのは七百五十円で始まったんでしょう。そうすると、それが五十九年現在で幾らですか。そして、農業所得が四十六年の時代には幾らでしたか。私のあれしているところでは四十六万九千六百円というようなことになっておりますが、それが五十九年でどのくらいになっていますか。倍率でひとつ比べてみてください。おわかりになりますか。
#128
○政府委員(井上喜一君) 制度発足のときの保険料が七百五十円でございましたのが、六十年では六千六百八十円になっておりますので、倍率からいきますと八・九倍と、こういうことになります。
#129
○稲村稔夫君 農業所得。
#130
○政府委員(井上喜一君) 制度発足のときには、月額でありますが四万円でありましたが、今回はたびたび申し上げますように十三万一千円であり
ますので、三・三倍になっております。
#131
○稲村稔夫君 ちょっと数字がおかしいんじゃないんですか。四十六年に四万円、そして現在が十三万。それは五十九年ですか、十三万一千円というのは。それで三・何倍ということですね。まあいいですよ。それじゃ、その計算でいったとしても、どうなんですか、農業所得の方は三倍でしょう、伸びはね。そして、保険料は何と約九倍ですよ。もう一つ比べるので私も計算してみたら、農家の責任ということにはならない租税公課諸負担、これでいきましても、四十六年に対して五十九年、私は六十年がちょっとわかりませんから、五十九年で計算しましても、これは五・三倍になっているんですよ。いいですか。
 そうすると、所得は伸びてないわ、そして租税公課諸負担などというものよりもさらに上回って掛金の方が上がっている、上がっていく、こういう形で、ここで私ちょっと疑問になるんですけれども、前回の五十六年の改正のときに本委員会での附帯決議がある。その附帯決議では、農家の負担の能力の問題をちゃんと言っているはずです。附帯決議の中でもそれが入っているはずですけれども、その点についてはどういうふうに御検討になりましたか。
#132
○政府委員(井上喜一君) 前回の附帯決議におきましては、農家負担のことでありますとか、あるいは年金財政の健全化等につきましても同様に附帯決議の中に入っていたように記憶するわけでございますが、私どもといたしましては、年金財政健全化のために、公的年金制度の改正の趣旨を踏まえまして、給付と負担の適正化を図ることといたしているわけでございますが、その場合に農家負担、農家の負担能力ということも検討したわけでございますけれども、月八千円の負担というのは現状の農業所得から見まして、確かに負担の増にはなりますけれども、負担はしていただけるものと、このように考えたわけでございます。
#133
○稲村稔夫君 この制度が発足した、これを審議した一番最初のときの委員会の審議の中では、農家の負担能力についていろいろと議論をされていますよね、そこでは。そして、当時どうしてこの七百五十円という水準が決められたのかというのは、そのころの審議の中でみんな明らかにされています。そして、そのときに、当時の国民年金の負担とも全部合わせて当時で二千円以内にどうしてもとどめてもらいたい、こういう強い要望等もあってということで、いろいろと苦心をして計算をされ、算出をされた金額が七百五十円だったわけですよね。
 それで、その当時にも随分、その後また値上げされるんではないかという懸念などいろいろと議論をされました。しかし、その議論の中でも、筋としては財政再計算の中で変動はいろいろとあるだろうけれども、しかし、言ってみれば、この辺のところの割合みたいなものが大幅に大きく動くというようなことは想定は余りしていないという、こういう議論の中の経過なんですけれども、この今のあれを見てごらんなさい。所得の方は三倍で、そして保険料は九倍。これは発足当時の精神から考えていったら、もう大変な後退だということを言わざるを得ないんですけれども、その辺はどういうふうに考えていますか。
#134
○政府委員(井上喜一君) 農家の負担になります保険料につきましては、なるべく低い水準が望ましいことであることは当然のことでありますけれども、現状の農業者年金の財政の状況から見ますと、なかなかそういう低い保険料の水準では財政の健全化につながらないわけでございますので、農家の負担能力から見て、限度以上につきましてはなかなか負担をするというのは難しいかと思いますが、ここに提案しております程度のことについては負担をしていただけるのじゃないかというふうに考えたわけでございます。年間の農業者年金の保険料負担から言いますと、年間の所得に対しまして六十二年度は四・七%というふうに考えるわけでございまして、まずまず負担可能の金額ではないか、このように考えたわけでございます。
#135
○稲村稔夫君 私は、局長があれしておられるのは、結局農家は今農業所得が落ちてきているけれども、しかし農家所得ということでいけば、そうすれば兼業収入等もあって、結構農家そのものの収入はそう落ちていないから、だから負担能力があると、こういうふうに判断をしておられるんではないだろうか、そう思うんですけれども、そうですね。まず、そう考えておられるのかどうか、そこを聞きましょう。
#136
○政府委員(井上喜一君) ただいま申し上げましたのは、年間の農業所得に対する農業者年金の年間の保険料の比率を申し上げたわけでございます。国民年金の保険料等を加えました場合には、農家負担全体で見るのが適当だろうと思いますが、そういうことで見ますと六十二年には五・一%というふうになるわけでございます。
#137
○稲村稔夫君 私は、現在の負担能力ということを問題にしてまいりますときに、いろいろと議論を今されて、御答弁の中でも何%であるからというように言われましたけれども、私は実は何%であるからなどということはなかなか決めかねることなんだというふうに思っています。ということは、農業生産にとって農業収入というものがその農家の維持、生活のためにぎりぎりなものであれば、一%の支出だって苦しいということだってあり得るわけでありまして、何%だから負担し得るということは私は言えないと思うんです。
 そこで、お伺いをいたしますが、この制度出発時においては国民年金の負担と合わせて二千円という範囲の中、それを絶対超えては困るというような意見聴取というのがされた中で計算をされたというふうになっておりますけれども、今度の改正案を提出するに当たっては、その負担については何かそういう面で具体的にお調べになったわけですか。
#138
○政府委員(井上喜一君) 八千円と決めましたのは、六十年の保険料、それから六十一年の予想の保険料、それらを勘案いたしまして六十二年八千円というふうに決めたわけでございます。この点につきましては、農業者年金制度研究会の御意見も伺ったわけでございますけれども、特別な異論はなかったように記憶をいたしております。
#139
○稲村稔夫君 まず、計算の方法として前後の時期のこととの経過を見ながらそれで計算をしたと。これはわからぬわけではありません。しかし、同時に、きょうの参考人の御意見の中でもそれは伺うことができたわけでありますけれども、やはり掛金と給付の問題という形でいろいろと問題にしているんですよ、それは。特別議論がありませんでしたと、私は聞き方がそれじゃ悪かったんだと思うんですけれども、どうですか、その辺は。
#140
○政府委員(井上喜一君) 研究会におきましては、もっと多くの保険料を取るべきではないかという意見もあったわけでございますけれども、八千円という金額については、まずほとんど意見がなかったといいますか、反対者はなかったというふうに考えております。
#141
○稲村稔夫君 それじゃ、研究会はどういう方がなって、どういう方がそういう意見、もっとふやした方がいいというふうにおっしゃったんですか。
#142
○政府委員(井上喜一君) メンバーをアイウエオ順から申しますと、阿部委員、日本経済新聞社の方でございます。それから池田委員、全国農業会議所でございます。それから伊藤委員、全国町村会の理事の方でございます。それから小山委員、上智大学の先生でございます。櫻井委員、農協中央会の常務理事でございます。それから杉山委員、水資源開発公団の副総裁でございます。高畑委員、農業者年金基金の理事でございます。中野委員、前農林漁業金融公庫の総裁でございます。並木委員、食料・農業政策研究センターの食料政策研究所長でございます。それから福武委員、社会保障研究所長でございます。八木委員、年金福祉事業団の理事長でございます。矢口委員、農村生活総合研究センターの専務理事でございます。それから吉岡委員、北海道東北開発公庫の副総裁でございます。
 まあ、どちらかといいますと、学識経験者とい
いますか、従来年金業務に非常に関連しておられた方は、平準保険料に近い保険料を取るべきであるという意見が非常に強かったわけでございます。
#143
○稲村稔夫君 今ずうっとお名前を伺っていましたけれども、その中で日本の標準的農業を実際にやっておられる方はどなたですか。
#144
○政府委員(井上喜一君) 農家は入っておりません。
#145
○稲村稔夫君 切実な話というのは、直接にやっている人に聞かなかったらわからないのですよ。どなたも御意見がありませんでしたと、私は聞き方が悪かったのじゃないかというふうにも言ったわけですけれども、今の研究会のメンバーの方を伺っていると、それは確かにそれぞれの見識を持っておられる方だと思いますよ。しかし、この制度はだれのためにやるんですか。何のためにやるんですか。構造政策を進めています、その構造政策に協力していただいた方に対してこうしますよと、こういう形でやっているわけでしょう。対象は構造政策に協力してくれる人が対象なんですよ。ということになったら、その協力してくれる人の直接の声というのをなぜお聞きにならないのですか。
#146
○政府委員(井上喜一君) 検討いたします場合に、それぞれの制度によりまして御意見を伺う方が異なるかと思いますけれども、何分多数の方に関係するものでございますので、全体としましてそういう方を代表する方、こういうことで団体の方にお願いするとか、あるいは年金関係につきまして、農業者年金ばかりでなしに、国民年金とか厚生年金等の状況にも精通しておられる方、それから我が省におきましてそういう年金問題に関与、関係してきた人、そういった人たちの御意見を総合的に伺うのが適当であろう、こういう判断をいたしまして、ただいまのような人選でもって検討をお願いしたと、こういうことでございます。
#147
○稲村稔夫君 大臣、今の局長の答弁を伺っているから、私は実は最初の方の質問というのをしたわけなんです。これから先のことについて農家の要望、声というものをよく聞く仕組みをつくっていただきたい、こういうふうに申し上げたわけですね。
 今の研究会の御意見を聞いてという、確かに手続としていけば農林水産省だけで決めたんじゃなくて、一応関係者から聞いたという形をとっています。しかし、関係者の皆さん方でどれだけ本当に切実な声が反映をされてきたか。これは私は、例えば中には農業会議所の先生もいますし、ですからその方が全然代表してないとは言いません。代表していると思います。しかし、そのときの雰囲気とか、あるいはそのときの議論の流れとかいろいろなことがあって、例えば言いたいと思っていたことを言うチャンスがなかったとか、あるいはとうとう言いそびれてしまったとか、いろいろなそういうこともあるでしょう。ですから、言ってみれば、こういう農家の直接の経済にかかわってくるものなわけでありますから、そういう農家の皆さんの声というものが、農業者の声というものが本当に反映できるような仕組みをやっぱりどうしても考えてもらわなければならぬ、そう思うんです。
 そこで、もう一度念を押して恐縮なんですけれども、最初のときの質問と同じようなことになりますけれども、今後の問題としてその辺は仕組みとしてお考えおきをいただけますか。
#148
○国務大臣(佐藤守良君) 稲村先生にお答えいたします。
 今、局長から答弁したように、研究会の人選というのは私は間違っていない、各界の権威ある人で、恐らく私は全中とか全農の方もそういう意見があったんじゃないかと思います。それをどう取り入れたかどうか。私は恐らく、この二人は専門家で非常に詳しい方でございます。そんなことであったと思うんですが、それを一遍よく調べまして、今後はそういう意味におきましては人選に手落ちのないように十分に受け入れるような形をとりたい、こう思っております。
#149
○稲村稔夫君 それはぜひお願いいたします。
 ただ、もう一度、これもくどいようで恐縮でありますけれども、念を押しておきますのは、私は池田さんもよく存じておりますし櫻井さんもよく知っております。しかし、農民の実態の把握の問題では見解が違ってくることがよくございます。ということで、それが確かに私は正しい、いろいろと実際の声を反映してくれると思いますけれども、それがすべてを反映しているというふうにはいきません。そういうことも、ひとつ念頭に置いていただきたいというふうに思います。大臣の御答弁で、今後のその辺の運営というものには、ひとつ関心を持って期待をしていきたいというふうに思っております。
 しかし、それにしましても、そうすると私は八千円という水準に決めたそのことが農家の負担能力には余り影響がないだろう、そういうふうに判断したということに対しては、私どうしても承服しかねますということをこの際は申し上げておきたいと思うんです。これは幾らどう判断するかといったって水かけ論になりそうですから、そういうふうに申し上げておきます。どうも議論をしていて常にそういうふうに感ずるんでありますけれども、実際の末端の苦労というものを本当に踏まえていただかないと困るというふうに思います。
 そこで、今度は次へ移らしていただきますが、財政再計算というものが五年ごとに行われてくるわけでありますが、この再計算で随分見込み違いというのがずっと起こってきているんじゃないかというふうに思うんですよ。例えば出発した当時の議論を見ていますと、大体二百万加入というふうに想定をして議論をしていました。それが再計算をしていくごとにどんどん減っていって、修正をしていって、そして前回の五十六年の改正のときに山田委員が随分詳しくそのとき質問しておられますね。そのときの見通しでは六十五年には八十万くらいになるだろう、こういうふうに答えておられます。そういう見込みの違ったことについて随分山田委員から当時も厳しく指摘がいろいろとされているわけでありますけれども、今回は、こっちで言うよりもそちらの方が正しいわけでしょうから、今回の再計算では六十五年だと幾ら、何人ぐらいになりますか。
#150
○政府委員(井上喜一君) 今回の計算といいますか、被保険者数の見通しでは六十五年が六十六万九千人になっております。約六十七万人でございます。
#151
○稲村稔夫君 どういう理由でこういうふうになるのか、かなり大幅ですね、再計算に見込み違いがあるのはこれはやむを得ないと思うのです、多少の見込み違いというのは。何回か再計算をやってくれば、その見込み違いというものの幅はどんどん減ってほぼ正確になってくる、こういうのが普通だと思うんですけれども、これはとどまるところを知らぬみたいな感じになっているのはどういうわけなんですか。
#152
○政府委員(井上喜一君) 御指摘のとおりでございますが、やはり当初におきましては、これは最初のことでありますのでいろんな仮定を置いてこういう数字を、被保険者数の見通しをしたのではないかと思いますが、やっぱり原則的には見通しをいたしますときまでの時点、直近の時点までの状況を把握、検討いたしまして、それから見通しを立てるわけでございます。そういう意味で、全体の見通しがよくなってきているとは思いますが、それにいたしましても今回と前回とでかなり違うわけでございます。今回は、この被保険者数につきましては、これまでの状況の検討を十分いたしまして出したつもりでございます。
#153
○稲村稔夫君 五年後にまた再計算されますね。そのときにまた見通しが大きく狂うということはありませんか。
#154
○政府委員(井上喜一君) 見通しでございますので、そのものずばりといく場合もあろうかと思いますが、そうでない場合もあるわけでございます。私どもといたしては、ただこの数字を漫然と出したということではなしに、これまでの状況を十分検討いたしまして出したわけでございます。六十
五年段階で余りこの数字に開きのないように、そういうことを希望しているといいますか、内心そういうぐあいに願っているわけでございます。
#155
○稲村稔夫君 内心願う気持ち、祈るような気持ちはわからぬわけでもありませんけれども、私ども心配をしますのは、今まで予想をしてくる予想を下回って下回ってという被保険者数になってきていますね。そうすると、五年後にこれがまた下回ると、そのときにまた恐る恐る、保険財政運用上の問題もこれあり、保険料を引き上げ給付の方を少し削らなきゃなりませんという改正案を出すということになってしまったのでは困るんですけれども、その辺はどうなんですか。
#156
○政府委員(井上喜一君) 被保険者数の見通しでありますけれども、新規に加入してくる人、それから一応脱退して再加入をしてくる人、それから中途脱退あるいは死亡する人、それから六十歳に到達をいたしますと脱退するわけでございます。こういった各要素別に積み上げまして推計したわけでございまして、絶対これで間違いないとは私ども申しませんけれども、現時点では最大の努力をいたしましてこういった数字を出したわけでございます。
#157
○稲村稔夫君 この農業者年金というのは、移譲年金というものを中心にして考えていく限り、私は一方では年金財政がもたなくなってくるという、そういう宿命を一つ背負っているんじゃないかというふうに思うんですよね。そうでしょう。構造政策の上で進めるのでしょう。構造政策に協力してください、協力して移譲してくださり拡大してくださった人には移譲年金を差し上げますと。そうすると、それはいいことだといってどんと協力をされれば、一挙に被保険者数が減って受給権者がふえるという、そういうことだって起こり得るわけですね。要するに、私は政府のやった構造政策がうまく進んでいってそういうふうになったとは、必ずしもそうばかりとは考えられない面を持っていますけれども、そのことはさておいて、構造政策が進められていけば進められていくほど、年金財政そのものは逼迫してくるという、そういう宿命を背負っているんではないかと思うんですけれども、その辺はどのように考えておられますか。
#158
○政府委員(井上喜一君) 年金財政といいますのは、農業者年金、今、発足時にかなりの加入促進をいたしましたし、また高齢者に対しまして加入期間について特例を認めるとか、あるいは年金額について割り増しをするとかという制度がありまして、やや正常な形といいますか、当初の何といいますか、あるべき姿といいますか、非常に原形から加入者の加入を認めていくという形ではなかったものですから、今のような年金財政になっている一因もそこにあるんじゃないかというふうに我々は考えております。
 ただ、今御指摘がありましたように、被保険者数の推移を見てまいりますと、ずっと減少をしてきているわけでございます。こういった減少は今後も若干の期間続くと思いますけれども、ただこれが永久に減少していくというふうには我々は必ずしも考えないわけでございまして、いずれこの減少はこれからもずっと緩和をしていくと思います。これまでのような状況がこれからも続くということではなしに、これからはずっと減少が緩和をしていくと思いますし、ある時点ではやはり一定の数、私どもは五十万人程度というふうに考えておりますが、こういった程度で加入者といいますか、被保険者と受給者がバランスしていくんではないか、こんなふうに考えているわけでございます。
#159
○稲村稔夫君 そうすると、構造政策推進の方はほぼあきらめるということになりますかな、今経営移譲の後継者に移譲というのが大半なわけでしょう、現在。後継者に移譲というのはこれは一定程度のあれで、ある時期でだんだんと、ある時期にぽんと膨らめば後だんだん量は量的に減っていくということになっていくと思います。それはわかります。だけれども、そうすると、そういう面からいって、私は必ずしも今構造政策にのっとってうまくあれが進んだというふうには思っていない。つまり、後継者に移譲されて、そして、それで構造政策として思っているように大きな経営にだんだんと家計が拡大をしていくというふうに必ずしもうまく進んではいないと思うんですよね。それが第三者移譲の少なさということになってあらわれていると思います。
 だから、そうすると、これから先は私はむしろ第三者移譲のようなことが進んでいかなければ構造政策としては余り効果がないということになっていくんじゃないだろうか、そう思うんです。今、局長の方のお話でいけば、これからだんだんとバランスがとれて安定していくだろう。安定していくだろうということになると、それじゃ構造政策の方は当分お預けですねと、こういうことになるんじゃないかというのですけれども、どうですか。
#160
○政府委員(井上喜一君) 御指摘のように、これから第三者移譲などが多くなっていくと思いますし、またそういったことも進める必要があろうかと思います。ただ、これまでの被保険者数の減少、見込みよりもかなり少なくなったということ、それから減少してきたということでありますが、これはやっぱり主たる原因は、構造政策の結果、規模拡大をしまして農家数が非常に減少したということではなしに、やはり兼業化が進みました結果、被用者年金に経営主が加入して加入資格を失った結果、こういう被保険者数が少なくなってきているという、そこが非常に大きな要素じゃないかと思います。
 これから構造政策を推進いたしまして規模の大きい農家をつくり出していく必要があるわけでございますけれども、そういうことを前提といたしましても、私が今申しました五十万人といいますのは、これは後継者も含めての数字でございますので、決してこれは構造政策をやめて五十万人にするということじゃございませんで、進めましてもこの程度の後継者を含めた被保険者数は確保していけるんじゃないか、こういうことを申し上げたわけでございます。
#161
○稲村稔夫君 大体、皮算用と言うと言葉が悪くて申しわけありませんが、皮算用の方はわかりましたが、しかし、そうすると、これから先農業が置かれている厳しい条件、これは皆さんがおっしゃる。農林水産省もその厳しい条件はもう本当によく感じておられると思うんですね。そういう状況の中で、今現在の農家が農業に依存をする部分というのがもっとふえていくとか、あるいは現状維持でずっといけるということを前提にして考えていけば、ある程度その皮算用もわからぬわけではない。そうすると、その厳しい条件にかかわらず、大体農業依存度は現在程度で推移するというふうに考えておられますか。
#162
○政府委員(井上喜一君) これは具体的に将来の農家戸数が幾らというふうなことから私ども被保険者数を出しているわけじゃないわけでございまして、例えば「八〇年代の農政の基本方向」などでは中核農家七十万戸というようなことを言っておるわけですが、こういうことを前提にいたしまして私どもの計算、被保険者の見通しをやっておりませんで、あくまで今までの加入状況でありますとか、あるいは脱退後の加入状況、それから中途脱退、死亡というようなことから算定しているわけでございますけれども、こういう基本方向などに出ております数字を見ましても、必ずしも矛盾しないものだというふうな理解でいるわけでございます。
#163
○稲村稔夫君 そうすると、今までそれぞれ再計算時にかなり狂ってきたのはなぜ狂ったということになりますか。これからの見通し、今までのやつは狂ったけれどもこれからは狂いません、ほぼ狂わないでいくと思いますと、こういう根拠というのはあるんですか。
#164
○政府委員(井上喜一君) 今回の見通しは絶対狂いませんということを申し上げているわけじゃないのですが、狂わないように最大の努力をしたということでございます。私どもが検討いたしますデータも多くなってきております。
 それからもう一つは、やっぱり農業事情がかな
り安定をしてきているわけでございまして、そういう意味で最近時点のデータからいたしますと、従来のような見通しとは違うのではなかろうかというように考えているわけでございます。
#165
○稲村稔夫君 ちょっと言葉がはっきりとわからなかったところがあるんですが、農業事情が安定してきているんですか。農業事情ですか。市場じゃなくて事情ですか。
#166
○政府委員(井上喜一君) 事情です。
#167
○稲村稔夫君 安定しているとおっしゃるその評価は、これはまた私にとってはとてもじゃないけれども受け入れることができませんね、その評価というのは。というのは、私のところは局長も御存じだと思いますけれども、私は新潟県ですからね。全国でも有数の米産地域でありますし、経営規模だって大きい方ですよ。そういう中でかなり深刻にいろいろな話があるんですよ。例えば、一町七、八反から二町五反くらいまでの間の農家で、四十過ぎてまだ嫁探しをしている人たちというのが何人もいるんですよ。何で嫁探しをしていると思いますか。少なくとも農業の未来というものに希望が持てたら、嫁がないなんということはないはずですよ。平場の条件のいいところでそうなんですよ。逆に農業に一生懸命やろうという専業農家というのが、今専業農家を目指そうという人たちが一番苦悩しているという、残念ながらそういう姿が今あるんですよ。これで局長、安定しているということが言えるのですか。
#168
○政府委員(井上喜一君) 私が申しましたのは、どちらかといいますと農業の労働力と言った方がよろしいかと思うんですけれども、そういう労働力の事情がかってのような高度成長あるいはその時期の後を受けた状況とは大分変わってきていまして安定をしてきているんじゃないか、こういうふうに申し上げるのが適当かと思います。
 確かに、今農村で嫁問題が大きな問題になってきておりまして、その状況の一つに、農業についての問題と各般の問題と絡んでいることもあろうかと思いますし、また農村の全体の状況というのに原因するところもあろうかと思いますけれども、御指摘の点は私どもとしても承知はいたしているつもりでございます。
#169
○稲村稔夫君 労働力の問題からいきましても問題なんですよ。ということは、そういうところでは一つは後継者がいないんです。それはそういう点では局長の思うつぼかもしれません。第三者移譲するしか方法がないということになるのかもしれません、そういう人たちは。しかし、そういう中で、僕らのところへ深刻に、二ヘクタール近い人から、この際やめようかどうしようか、将来の判断を聞かせてくれという相談を受けてショックを受けているんですよ。僕らも返事のしようがないですよね。これから先、本当に百姓を続けたらいいのか、それとも、もう今ここで見切りをつけて、今おれは四十幾つだ、ここで今ならまだ何とか勤め口が見つかる、しかし、かなり地場産業その他では景気が厳しいですから、就業する場所もなくなってきているから、大分焦りが出てきていますというようなことがあるんですよ。そういう人たちは、だけれど、本当に彼が元気な間は、やっぱり第三者移譲ということになると深刻だと思うんですよ。残念なことだけれども、今や農地というのは、生産手段であると同時に財産視されるようになってきていますね。この自分の財産になっているものを第三者に譲るなんということを、そう簡単に決意できるものではありません。そうすると、その人たちはどうするんですか。
 結局、僕のところへ相談に来たのも、不安定な、例えば時期的に土木仕事に出るとかなんとかという臨時の仕事をやっているというよりも、継続的な安定した職場へ就くということを相談を受けるわけですけれども、そうすると結局捨てづくりになるか、朝晩・休日農業をみんなやっていますから、そういうものである程度切り抜けようということになるのかして、今度は厚生年金の受給者の立場に立っている。今度厚生年金が改正をされましたでしょう、改正か改悪かという議論がありますけれども。必ずしも私はすべてがいいとは思いませんけれども、そのことは別にして、そうすると、五人未満の事業所にも今度どんどんと適用を拡大されていきますということになったときに、そういう人たちが厚生年金にどんどんと加入をしていくということが起こってきたら、今計算している状況よりも急速にまた加入資格を失う人たちがふえるんじゃないか、そんなことも懸念されるんですよね。これは減ったときには、再計算でその分が今度はまた保険料としてはね返ってくることになるんでしょう。
#170
○政府委員(井上喜一君) 原則的には御指摘のとおりであります。今回五人未満の事業所にも厚生年金が適用されていくということになるわけでありますけれども、これはあくまで農業関係の法人につきましては、決まって給与を支払うような法人じゃないといけないわけでございます。私ども的確にそれを把握するデータがないわけですが、各種のデータから類推いたしますと、決まって賃金を払っているようなところは大体三〇%ぐらいじゃないかというふうな推測をしているわけでございまして、大体七〇%程度は全体年間締めてその報酬といいますか、所得を分配するというような形をとっているようでございますので、今この五人未満事業所に対する厚生年金の適用によりまして、財政再計算に大きく影響するようなそういう結果にはならないんじゃないかというふうに考えているわけてあります。
#171
○稲村稔夫君 ならないんじゃないだろうかとおっしゃるけれども、私はそれを心配して今聞いているんですよね。というのは、衆議院の委員会の議論の中では、農村工業導入法によって、そういう地域に導入されたところに就労する者に対しても考えなきゃならぬというふうなことの議論もあったやに、あれを見ると出ていますけれども、そのこともありますけれども、大方の者が農業だけでは生活ができないというのが現実なわけですね。例えば専業だと言っているけれども、専業農家であっても、おじいちゃん、おばあちゃんといったらあれかもしらぬが、年配の方が農業に専業しているのであって、子供の方はどっかへ勤めていて、結局その経費は全員で出し合うなんていう形はとっていないとしても、比較的目に見えない形で経費の分担のし合いというようなものをしている部分というのが結構あるわけですよ、一家というあれの中で。だから、本当の意味での農業だけでという人は極めて少ない形になっています。それが今はそういう中でも、厚生年金の適用になっていない人たちというのがかなり大勢います。
 例えば、私の町の例で大変恐縮ですけれども、非常に小さい企業が多いんです、中小零細、地場産業と称するのは。だから、厚生年金にも入っていないような小さな事業所というのがいっぱいあって、そういう事業所へ一人、二人と親戚の手づるをたどってとかなんとかというような形で就労している人たちというのが、現実にはまず農家の場合の半分を超えていますよ。そうすると、今度はそういうところが厚生年金の適用になりますと、そこで働いているためにこっちの農業者年金に入る資格を失う、こういうことになる。私は、そういう例というのは、決して私の周りばかりじゃないと思うんですよ。結構あると思う。それだけに、その見通しは少し甘いんじゃないかと私は思うんですが、どうでしょうか。
#172
○政府委員(井上喜一君) 確かに五人未満の工場に勤めておりまして、今まで厚生年金に加入してなかった人が今度は加入になるというような状況もあろうかと思いますが、私どもそこまで詰めてこういう被保険者数の見通しを出したわけじゃございませんけれども、従来のような状況からいえば、今回出しました見通しになるわけでございまして、ただいまの御意見を聞いておりましても、相当のオーダーでこの見通しが狂うというようには考えないわけでございます。
#173
○稲村稔夫君 この見通しの問題も水かけ論みたいですから、そうして見通しのことですから、どう見るかというふうなことでは、それぞれ意見が分かれたら、そのまま頑張っていれば、それはお
互いにそうだということになっちゃう。でも、私は見込みが狂うということが怖いんですよ、農家の立場に立って言ったら。狂うことがないことを望んでいるという点では、私は局長とやっぱり同じだと思うんですよ。それだけに私は、この農業者年金というものの仕組みそのものにそこでまた考えなければならない問題があるんじゃないか、こういうふうに思うんです。
 いろいろと今まで議論をずっとしてきましたけれども、それらの議論というものと、またずっともとへ戻って初めの方で伺った外国の例というのがありました。外国の例で、離農年金というものについて国の財政で財源補てんをしている。ここのところが、構造政策がいいか悪いかということは別にしまして、そういう財政的な矛盾が起こってくるということもあり得るので、構造政策を進めれば当然そういうことも起こり得るのでということで、私はそれだけが原因だとは思いませんけれども、諸外国はもっていると思うんです。だから、そういう面でいったら、構造政策を進めていくという観点でいったら、農業者に負担をさせて年金という形で支出するというこの制度そのものに問題があるのではないかと私は考えるんです。
 この点は大臣にひとつ御見解を伺いたいと思うんでありますけれども、今の農村の状況、農業の状況というもの、将来を展望していって相当厳しい要件ばかりです。そういう厳しい要件ばかりの中で、またさらに急速に農家の兼業化が進むなどということがあった場合には、私はこの移譲年金というものは財政的破綻をせざるを得ないところへ追い込まれてしまう可能性がある、そう思うんであります。
   〔委員長退席、理事高木正明君着席〕
そういう動向を見ながら、やはり場合によっては英断をもって抜本的な改正というものを考えなきゃならぬのじゃないかと思うんでありますけれども、その辺、大臣はどのようにお考えでしょうか。
#174
○政府委員(井上喜一君) 西ドイツ、フランスの制度と日本の制度の違いにつきましては、歴史、伝統あるいは社会保障制度、農業政策等についても違いが背景にあるわけでございますけれども、また一つ、ヨーロッパの離農年金制度といいますのは期限が切られているという立法でございます。つまり一定期間の間に政策効果を出していく、こういう制度になっておりまして、現に西ドイツにおきましては一九八三年以降は新規裁定をやっていないということでありますし、フランスにおきましても一九八五年をもって期限とする、こういう法律になっているわけでございます。そういうような立法の制度とも絡んでいると思うわけでございます。その点、日本の制度の方は、これは相互扶助を前提に仕組まれた制度でございますので、制度的にはより安定したものになるのではないか、そのような制度だと考えるわけでございます。
 これからのこの農業者年金制度の長期に安定させていく方策については十分検討をするわけでございますけれども、やはり私どもといたしましては、現在の農業者年金制度はそれなりに日本の中に定着をしてきている制度、そういうとらえ方をした上で検討していくべきじゃないか、このように考えているわけでございます。
#175
○稲村稔夫君 局長、そういうふうに言われるけれども、先ほどから言っているように、外国の例と日本とは違うということは私も百も承知で、ただ、その構え、思想として問題にしているんですから。
 そこで、さっきから言っているように、例えば今の局長が言われるように一定の期間を切ってと、それはそれでいいんじゃないですか。構造政策として一定の期間を切って、その間に協力した人たちにはそれだけの手当てをしましょう、それはそれなりの一つの考え方だと僕は思う。それはそれでいいが、とにかくその構造政策というものに協力をした者に対して、対応する者は国の財政で補てんをします、この考え方が私はやっぱりそういう面では正しいんではないか。
   〔理事高木正明君退席、理事谷川寛三君着席〕
なぜかといったら、さっきからずっと議論している見込み違いは、その時点その時点で構造改善局長が計算をしてこられた。あなたの前の局長もずっと計算をしてこられて、その都度その都度見込みを誤ることはない、そんなに大きく変わることはないと、そう思って計算してこられたんですよ。しかし、人知の範囲を超える動きというものが社会の中では起こってくるんでしょう。その起こったという現実が、今まで私たちのところにはある。起こってきたときには、財政的にそれがだんだんと負担になってくる。
 その財政を相互扶助のところで何とかしていこうとすれば、どうしたって負担金をふやしていかなきゃならぬわけでしょう。構造政策を進めていく、政府がこのようにやってください、それに協力をしてください、こう頼んだことに対して、最初はこの程度の負担以上のものは無理ですよ、この程度の負担ということで了解しますよ、こういって出発をしてきたものが、見込みが違いましたということで、そしてその保険財政のかかわりで保険料は九倍に上がりました、だけれども所得の方は三倍にしかなっていないという状況の中に置かれている。
 さらに、これから先だって、まだ急速に落ちないという保証はないんですよ。見込みが狂ってこないという保証はないんです。加入者がふえるということがあるなら、それはまた財政上の面では相互扶助、掛金でやっていくんだったらそれはプラス面は出てきますけれども、減っていく。その減り方が、見込みよりもかなり大幅に上回るという可能性がないわけじゃない。その可能性というものを僕らは心配するんです、自分の周りを見ていて。だから、局長が言われているようなのはまだ甘いというふうに私は申し上げた。ということであるから、本来的にこういう構造政策に協力をしてもらおうというそういう年金というものについては相互扶助、この年金基金制度というものは無理があるんではないか、これが朝からずっと平行線をたどってきている議論の食い違いです。
 そして、さらに私の方は、これから見込みが狂うというようなことがあったら、そのときは今度は抜本的にその辺のところを見直して大改正をしないともう年金財政はもたないということが起こりますよ、こういうことを懸念して申し上げているんです。だから、局長が今の段階で私の計算が狂っていますということ、これは狂うかもしれませんということは、口がくさったって言えないと思うんですよ。
 そこで、さっき私は大臣にひとつ見解を伺いたいと、こういうふうに申し上げたんです。それはもう政治的判断の問題も含まれてまいりますので、ひとつお願いをいたします。
#176
○国務大臣(佐藤守良君) お答えします。
 実は私は基本的に、聞いておりまして、今のこの年金の問題で一番大きな問題は日本の農業がどうなるかという問題と、それから果たして農業が魅力ある農業になるかどうか、これが一番ポイントだと思うんです。それにつきましては、先生の方はどう先行き見てもよくならないんじゃないかという御意見、局長の方は、いやいや今はそうよくないけれどもこれからいろんな努力をしてよくなるんだ、この辺の見解の相違があると、こう思うんです。したがって私は、これはどんなことをしても日本の農業を魅力ある農業にしなくちゃいかぬと、こう思っております。
 実は、これは再々申し上げますが、基本的にはこれが付加年金であるということ。それから大きな問題は二つありまして、これは先生御存じのことでございますが、財政的問題と政策的問題、この二つをどうするかということです。やはり財政の重さの方が強いと思います。そんなことですが、魅力がなくなれば加入者が減っていきます。その場合は負担が大きくなる。そうすると、今の八・九倍よりもっと大きくなるということ、その辺どうするかというようなこと。
 そんなことで、やはり私は今後いろいろな検討
をやります。先ほどの例えば婦人の加入の問題、遺族年金の問題やりますが、そういうのを含めて一遍十分検討してみたいと思います。そうしないと、年金財政が大変なことになります。せっかくいいものができても逆に農家の負担がふえる、ふえると逆にマイナスになる、そんなことがございますゆえ、十分将来検討してみたい、こう思っております。
#177
○稲村稔夫君 ありがとうございました。
 局長、大臣がそういうふうに言われている。だから私は、やっぱり今回の改正というものについても、年金財政という面での独自の観点からの問題点もそれぞれあったと思います。しかし、それが出発当初の趣旨に沿っていろいろと対応していくとすれば、国の負担というものをもっとふやしていかなければ、当初のような姿というものはなかなか維持できなくなってきています。しかし財政、それこそ国家財政の側からの要望もこれあり、その財政負担をふやしていくわけにはいかぬ。言ってみれば、その使命感の方があると思うんですね。
 僕は、局長としてそういう使命感を持っておられるということがそのままけしからぬというふうには申し上げません。しかし、農家というものの立場から考えていったならば、それこそ、ここのところはどうしても譲れないというところは、極端な物の言い方をして恐縮ですけれども、職を賭してでも財政当局をくどき落とすというくらいの姿勢はやっぱりあって対応をしていただかないと、いろいろと言いわけをされたけれども、結局全体でいけば掛金は上がって給付は下がる、これは間違いないんでしょう。そういうことになるんですから、これは大臣も言われたように、魅力はだんだんなくなっていくんですよ。魅力がなくなる。これだけははっきりしているんですよ。そうでしょう。魅力をなくさないようにするためには、財政措置がどうしても要るんですよ。だから、そうすると、財政措置ということを考えて、大臣は今、一つのあれを示されましたけれども、やっぱり局長のその辺の気概というものも一度きちっと示してもらいたいと思うのですが、いかがですか。
#178
○政府委員(井上喜一君) 農業者年金は政策年金でありまして、非常に高率の国家補助が行われているわけでございます。財政状況は、もう私から申すまでもなく、現状のような非常に厳しい状況でございますので制約があることは当然でございます。そういう枠の中で、これからの農業者年金制度を長期に安定していく方策を考える必要があるわけでございます。その場合には、当然給付と負担の関係等があるわけでありまして、そういった問題につきまして十分検討する必要があるだろう、こういうふうに考えているわけでございます。
#179
○稲村稔夫君 ぼそぼそぼそと答弁をされたんで、どうも気概だというふうには受け取れませんね、そういうふうな表現では申しわけないけれども。
 そこで、違う言い方をしますと、やっぱり大臣は、魅力があるようにしなきゃなりません、魅力がなかったら減ってきますと。では、今度の改正で魅力になる部分というのはどの部分でしょうか。どの部分が魅力だということでしょうか。女性に例えたら悪いけれども、私のセールスポイントはここよというのがよくありますけれども、今度の年金では、セールスポイントはどこですか。
#180
○政府委員(井上喜一君) 制度改正でございまして、いろんな点の改正を含んでいるわけでございますけれども、やはり私といたしましては、年金財政を健全化するために、公的年金制度の改正の趣旨を踏まえまして、長期に安定するような給付と負担の関係を導入してきているというような点でありますとか、あるいはより構造政策的な効果を高めるために、経営移譲の形態によりまして格差を導入してきている点等については、全体として十分御理解をいただける点じゃないかと思います。
 その他の点につきましても、私どもといたしましては、全体として魅力がないから改正するとかということではありませんで、まさに改正案でございまして、個々の点について検討いたしまして、やはり現状ではこのように改正するのがよろしかろうということで改正案を提案しているわけでございます。
#181
○稲村稔夫君 どうも私は、掛金が上がって給付金が下がるという、これは非常に大きなデメリットだと思うんですよね。魅力を失っていく大きなあれになると思うんですよ。だけれども、あえて魅力あるものにという方向で考えるとしたらどこですかというふうに伺ったのでして、こんな表現は、女性の議員の方がおいでになってまことに申しわけありませんが、今女性に例えちゃったからあれですけれども、だんだんと年金も年をとってきまして、年をとってくるに従って今まであった魅力を失っていっています。ごめんなさい。掛金は上がっていく、給付は下がる、そうしたら、ここでこれをさらに魅力あるものにしていかなければ加入者が減っていくというのは、これは当たり前でしょう。後継者がどんどんと入ってくれなければ困るんですね。後継者が進んで入ってもらえるような、そういう魅力というものを持たなければならないわけでしょう。
 それじゃ、一方で出てくるデメリットの分に対して、どういうメリットがあるというふうに考えていますか。こういうふうにお聞きしましょう。
#182
○政府委員(井上喜一君) 今回の改正案では、保険料を引き上げる、給付水準が引き下がるという非常に厳しい一面がありますことは、私どもも十分承知をしているわけでございますけれども、ただいまの魅力の点になりますと、魅力は個々の点ではなしに全体としての魅力ということになるわけでございまして、私どもは、その全体の魅力といいますのは、年金財政を長期に安定さしていくということだと思うわけでございまして、あるいは構造政策的な効果をさらに高めていくということだと思います。
 このような観点から御判断いただければ、私どもの今回提案しております制度の中身につきましても御理解をいただけるのではないか、このように考えているわけでございます。
#183
○稲村稔夫君 私は、女性に例えて大変申しわけありませんでしたけれども、制度だって人間と同じでありまして、活力というようなものが非常に大事だと思うんですよ。そして、いろいろと社会の進展とのかかわりの中で、その制度が活力を失っていくという要因もここでは働いてきます。そういう活力を、どっかで失うものがあれば、どっかでもってその活力を新たに注入していかなければ、その制度というものは死を招かざるを得ない。だけれども、今の局長の答弁を聞いていれば、ただただ長期安定、長生きさえしていればいいということになるんじゃないですか、それだったら。活力をもっと与えるというのは、どこのところで活力を与えようとしているんですか。具体的に言ってください。
#184
○政府委員(井上喜一君) 私は、農業者年金制度が多数の加入者を抱えまして農村社会の中に定着をしてきているわけでございます。そういう意味におきまして、この制度が長期に安定していくということが一番重要であるというふうに考えているわけでございまして、そういうことを主眼にいたして改正をした、このように申し上げているわけでございまして、まさに農村の活力というようなものも、そういう年金制度の長期安定の上でないと発揮できないわけでござます。そういう点の御理解をいただきたいわけでございます。
#185
○稲村稔夫君 いろいろと抽象的な表現をしていてもなかなからちが明かないと思ったので、私は今具体的に、じゃメリットになる部分はどういうんですかということを聞いているんですけれどもね。例えば改正点の中で、被保険者の資格が六十歳から六十五歳までにというようなことが一つあると思うんです。そうすると、私の方からすると、それじゃ六十歳から六十五歳までの人たちの、今度は受給資格期間が不足する者については、これを満たすまでの間任意加入することができると、こういうふうに改正をすることによってどの程度救われる人たちが出るんでしょうか。こういうことが聞きたいわけですよ。だから、僕は具体的に
言ってください、こう言っているんです。それをあなたの方は、常に抽象的、抽象的にしか答えてないんですね。困るんです。
 それで、もう時間が来てしまうので、仕方がありませんから、私は最後にこれは大臣にぜひ御見解としてお聞かせをいただきたいというふうに思いますけれども、今度のこの改正によって、例えば今のように六十歳から六十五歳までの者が任意加入で救われるという面が出てきます。あるいは協同組合等の農業関係のところに常勤の役員になった人たちで救われるような人が出てきます。あるいは死亡一時金の面で、先ほど参考人の方が大変おもしろい表現をしておられましたね、遺族年金制度の窓口に足を一歩かけたと、なかなかうまい表現だと思って聞いていましたけれども、足がかかっただけでその中へ入るかどうかはまだわかってない、こういうことだと思うんですけれども、とにかくその点は前のときよりは前進をしています。そのほかに幾つかありますけれども、しかし、やっぱり全体の流れの中でいけば、掛金が高くなって給付が減る、これだけは事実なんです。厳然たる事実なんです。
 そうすると、この制度については幾つかの点でもってやっぱり御検討いただかなきゃならない。その一つは、先ほどからずっと議論してきて平行線になっている部分です。要するに、根本的にこういう政策的な年金についての考え方、これをぜひ御検討いただきたいということが一つ。それからもう一つは、本委員会での決議になっておりますね、農家の負担能力というものを勘案して掛金を決めなさいと、この点について、私はこういうふうに上げていくということは附帯決議を逸脱していると思います。ですから、附帯決議の扱いについては、厳正にひとつ今後対処をしていただきたいというふうに思います。それからさらに、その附帯決議の中で婦人名義の加入の問題も触れております。そういう問題について厳正に対処をしていただきたい、今後の問題として。その点についての大臣のひとつ御見解を伺って、時間が来ましたので終わりたいと思います。
#186
○国務大臣(佐藤守良君) お答えいたします。
 先ほどちょっと申し上げましたが、やっぱり日本の農業をどう見るかによって非常に違ってくると思います。それで、実は局長の答弁しておりましたのは特に農家所得がこれからどうなるかということですが、かなりやっぱり局長は、経営規模の拡大等を通じたり、あるいはいろいろな形をしまして農家所得も向上するという自信を持っておると思います。経営規模の拡大もやはり機が熟してきた。そんなこともございますゆえ、私はやはりニューメディア等を駆使すれば、かなり農家所得はふえてくると思います。そういうことでございますので、その意味においては局長の言を信用してやってもらいたい、このように思うわけでございます。
 それからもう一つ、実は先ほどからございましたいろいろの検討事項、おっしゃるとおりでございます。その中で私は婦人の加入の問題、遺族年金の問題等、また実は年金財政、これが先ほどから言いましたことで、農業に魅力ができれば加入者はふえてくると思います。農業に魅力がなければ加入者は減ってきます。これはもう当然です。そんなことで、私は農業に魅力がふえてくると農家所得もふえるというようなことをもちまして、恐らく年金財政も健全化してくるのじゃないか。こんな形で、しかもこれは国民年金の付加年金ということ、そういう形の中にやっぱり保険の形をとっている、こういうことでございますが、一応今の点は基本的問題を含めて十分検討いたしたい、こう思っております。よろしくお願いいたします。
#187
○稲村稔夫君 終わります。
#188
○刈田貞子君 農業者年金基金法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。
 今、同僚委員の長時間にわたる御質疑を聞いていまして私も大変いろいろ勉強になるわけでありますが、まず、今回の改正は公的年金制度の改定に伴うものでありますが、具体的な内容を検討すると、今もずっと言われてきたように、問題が多い、基本的部分で問題が多いというふうに思います。年金の給付水準の引き下げ、そして保険料の大幅な引き上げという問題が最大の問題点であろうというふうに思いますし、また午前中参考人の方々からも出ておりましたが、サラリーマン後継者等に経営移譲した場合の年金支給額に格差を設けること、あるいは国庫補助体系の改正等、考えてみますとまことに厳しいものがあり、私は大変遺憾であるというふうに思いますし、今後に多くの問題を残すものであろうというふうに思いますので、まず見解を申し上げておきたいと思います。
 それできょう私は、今回のこの改正の大綱に表立って盛られているものではないのでありますが、婦人のこの農業者年金に加入をすることの問題について少し質問をさせていただき、あとその他の問題について質問いたします。
 まず、一番最初に大臣にお伺いします。日本の農業における婦人の果たした役割及び今後の役割ということについて、どのようにお考えでしょうか。
#189
○国務大臣(佐藤守良君) 刈田先生にお答えいたします。
 農村婦人というのは、今までは農業生産や農家生活の面で大きな役割りを果たしてきましたが、現在におきましては農村社会においても重要な役割を果たしてきております。そのようなことで、我が省といたしましても生活改善普及事業を初めとする各般の施策を進め、今後とも婦人の地位の向上に努めてまいりたい、このように思っているわけでございます。
#190
○刈田貞子君 それで私も、その農村で婦人が果たしてきた役割というものを少し数字的に拾ってみようと思って調べてみました。
 第一に、これはいつも申し上げているように、五十九年度段階で農業就業人口に占める女性の割合が六一・一であるということはこの前のときも大臣と確認をし合ったわけでありますが、男子が二百四十九万二千人に対して女子は三百九十万七千人ですから、六一・一の割合で女性が農業に就業しているわけでございます。
 それから二番目としては、年間百五十日以上農業に従事する女性の割合も男性よりも進んでおりまして、女性が六五・五に対して男性は五八・一ですから、この基幹労働でも女性の方が上です。
 それから、夫婦が営農の基本となっているということについては全くそのとおりでありまして、今日、農家の平均的な農業従事者数は約二・五人だと言われるわけでありますけれども、農家主婦に農家の主な農業従事者はだれかというふうに尋ねますと、私であるというふうに答える者が九二%、夫であると答える者は八四%しかいない、これはダブっているのだと思いますけれども、九二%が私が営農の主体者であるというふうに答えています。まさにその自覚があるということだと思います。
 それからもう一つ、先ほど午前中にも参考人の方に申し上げたのですけれども、農村社会は機械化等の省力化等に伴って変貌を遂げてきています。しかし、その機械が導入されたことによって、実は軽労働化した農事に逆に女性が多く組み込まれていっているという実態が数字の上であるようでございます。農家の家族総労働時間を五十四年から五十八年までで比較しますと、その数字は減っているわけですね。五十四年が五千六十時間、それが五十八年では四千九百八十九時間と減ってきている。これは家族総労働時間です。けれども、農家の女子の単独の一人当たり自家農業労働時間というのは減ってない。平行です。だから、結局省力化等進んできているけれども、農村における女の人の労働力というのは、むしろ省力化が進み機械化が進んでも、それに参加することによって逆に労働時間がふえているような実態があるということを見るにつけても、私は女性はすごいなというふうに思いますし、あなたが使用できる農業機械は何ですかというのは対して、平均二種ぐらいの機種はみんな運転する。自動車は七二・四%までが農村婦人は運転するという数字がありまし
て、これは都会よりも高いのです。
 私は、農村における女性の働きというものを数字でほんの少々拾ってみただけでも、その果たしている役割は大変に大きいのではないかというふうに思いますので、これを今、大臣に確認をしてみたいというふうに思っているわけでございます。
 ところが、こうした労働力の主体になっている女性に対して、先ほどから、午前中も話が出たんですが、今回の農業者年金の中では、女性の年金権がなかなか保障しにくい実態があるということを再三伺いました。それで私も、難しかろうという状況があるのは、よく何かのみ込めてきたんですね。だけれど、ここでのみ込んでは大変なので、少しいろいろと申し上げてみたいわけでありますけれども、午前中も申し上げましたように、この制度は、地権者が相続者へというこの流れがあるために、農村社会の女性が地権を持っていない限りはこの制度に該当していかない。これが、私はやっぱり一番問題ではなかろうかなというふうに思います。制度そのものは当局からも何回も御説明を伺いましたが、女性にも門戸は開いていると、こういうことなんですよね。そうですね。この点伺います。
#191
○政府委員(井上喜一君) 農業者年金制度は、まさに老後保障とあわせまして構造政策を推進するという、そういう目的を持っております。そういうことで、対象になりますのが経営主である地権者になります。どうしてもこれは後継者に経営を移譲いたします場合、あるいは第三者に移譲いたします場合にも、やはり土地に対する権利を持たないと、そういう移譲ができないわけであります。したがいまして、そのような仕組みになっておりますけれども、また別の面からいいますと、そういう経営主である地権者であれば、夫であろうと妻であろうとそこは全く問わない、このような中身の制度になっております。
#192
○刈田貞子君 そこで、先ほど参考人の方にも私はお尋ねしたんですけれども、参考人の方の御意見では、そこのところを補完するとすれば、遺族年金制度のようなものを導入することしかないであろうというふうなこともおっしゃられたわけでありますけれども、一番がっかりしたのは、農業者年金制度研究会でこの婦人の問題についてどのような論議がなされましたかということを伺ったらば、話は積極的に出なかったということで、私は大変がっかりしておるわけでございます。これはこれまでの何回かの改正の中でも焦点になってきた話でありますし、附帯決議もついてきている。にもかかわらず、研究会では非常に消極的な話としてしか扱われなかったということは非常に遺憾であろうかというふうに思いますし、このたび衆議院の方の附帯決議にもまたついているわけですね。これはぜひ真剣に検討していただきたいわけでありますが、先ほどの参考人の方が言われた遺族年金制度の問題、これを導入するということについては、私は会議録等読んで、局長がたびたび答弁しておられるように、この制度にはなじまないというふうにおっしゃっておるわけですよね。遺族年金制度を取り入れることは、なじまないというふうにおっしゃっているわけですね。
#193
○政府委員(井上喜一君) まず、婦人の加入問題でありますけれども、現行制度でも、経営をやっておられる方で地権者の方は入っておられる、加入しておられるわけでございます。そういう経営主である地権者という立場でなしに、いわゆる農業労働をする婦人一般を加入させてはどうかというのが婦人の加入の問題だと思います。これは附帯決議にもついておりまして、私どもも内々検討はしたわけでございます。してきたわけでありますけれども、やはりどうしてもこの政策年金、経営移譲年金でございます。経営移譲というのを年金を出す場合の要件にしているわけでありますので、土地に対する権利を全く持たない人を入れていくというのは非常に問題があるわけでございまして、その点が一つ。
 それから、もし仮に、しかし農業労働をしているという実態あるいは配偶者であるというような事実に着目して入れました場合に、それでは経営移譲という場合にどういう状況を指すのか、夫婦で農業労働をやっている場合に。そういう非常に難しい問題があるわけでありまして、なかなか結論が出ないわけでございます。
 したがいまして、年金制度研究会におきましても、私どもはこの婦人の加入の問題を出したわけであります。特別にこちらの方からは案は出しませんでしたが、御意見を伺うという形で議題として申し上げたわけでございますけれども、何分その取り扱いが非常に難しいわけでありまして、なかなか難しい問題だなということで、積極的にこのような仕組みを考えたらどうだろうかというふうな、あるいはこういう方向で少し検討してみたらどうだろうかというふうなことは出なかったわけでございます。御意見として出ましたのは、やっぱり婦人加入の問題はいろんな問題、難しい問題がありましても、少し検討すべきじゃないのかというふうな御意見を女性の代表の方は言っておられたわけでありますけれども、なかなか具体的な検討の方向としては出なかった、こういうような経緯がございます。
   〔理事谷川寛三君退席、委員長着席〕
 それから、遺族年金につきましても、これも農業者年金の目的であります経営移譲との関連が非常に問題になってくると思いますし、それ以前に、農業者年金は国民年金の付加年金でありまして、国民年金の方で対応するということになっておりまして、ここの関係を調整するというのが非常に難しい問題だと思います。要するに、制度の基本的な部分にかかわる問題でありまして、なかなか結論が出ないわけでございます。そういうことで、この遺族年金につきましても、今回の改正の中には直接には出てこなかったわけでございます。ただ、ただいまのお話にもございましたように、死亡一時金の対象範囲の拡大ということで若干の前進はさしておりますけれども、附帯決議等で取り上げられているようなそういうところまではいってないわけでございます。
#194
○刈田貞子君 これは、このたび衆議院の参考人質疑のときに宮崎参考人から出ている御意見なので、私ちょっとこれを伺ってみたいんですが、実は理論的に、純粋に学問的に申すと、それよりも実際に経営の采配まで任されて御婦人がやっていらっしゃる場合には、それは決して無断耕作といいますか、不法耕作ではないので、農地の所有名義を持っておる主人なら主人との合意のもとにやっているわけでありますと、いろいろ言っていて、時効法理を使うということも一つかもしれませんし、時効法理その他何らかの法理の活用によって、その農業をやっていらっしゃる奥さんが使用収益権に基づいて農業をしているという認定をする道はあると思う、こういうことを言っておられるので、これを一つ伺うことと、二番目は、後継者は直系卑属と書いてありますので、養子縁組をすれば後継者になりますので、彼女の状況いかんによっては後継者に加入できるということで、これは女子の加入権の獲得のためのお嫁さんの話をしている。これは私はちょっと疑問に思いますけれども、こういうことの意見を述べておられるので、御見解を伺いたい。
 それから三番目ですけれども、もう一つは、このお嫁さんが権利を得るための方策として、農業生産法人の構成員となって常時従事すれば、これは農地の権利と無関係に農業者年金の加入資格が取れます、こういうふうに言っています。
 この三つについて、ちょっと説明をしてください。
#195
○政府委員(井上喜一君) 私も必ずしも十分意味が把握できないわけでございますけれども、一番最初は、夫と死別して農業経営を継続している妻が、夫のいろんな権利を相続するというか、引き継ぐというんですか、そういうことで言われているのか私よくわからないんですが、地権者が死亡いたしますと当然相続の問題が起こってくるわけでありまして、今言われるようなケースはどういうケースであるのか、私も十分理解できないわけでございます。
 それから、養子縁組みの話は、養子縁組みをしまして、その養子に対して経営移譲していくという話ならばわかるんですが、それが女子の場合、養女ですか。
#196
○刈田貞子君 養女です、嫁だから。
#197
○政府委員(井上喜一君) 婦人の場合とどういうふうな関連で言っておられるのか私はよく理解できないわけでありますが、ここに農業会議所の方で出しております農業者年金のPR版があるんですが、長男が会社員の場合に、その奥さんを後継者指定するような場合の方法があるかと、こういうような御質問ですが、そういうことであれば、それは後継者として養子縁組みをすれば指定ができる、こういうことになっているわけでございまして、ですから、今の御質問の趣旨が私が言っておりますとおりであるとすれば、それは可能であるということでございます。
 繰り返して言いますと、長男が会社員で結婚している、その奥さんと養子縁組みをする、その場合には後継者に指定できる、こういうことでございますね。
 それから、生産法人の場合はそれは可能なケースであると思います。
#198
○刈田貞子君 皆さんが、この法律では女性の加入が、ただ労力になっているということだけではなかなかなじまないということをおっしゃっておられる中で、この参考人は非常に真剣に考えてくださって、懇切丁寧にこういう回答をしておるんですね。私はしかと読んでみました。これはぜひ宮崎参考人のこの第一段目のところの時効法理の問題について、ちょっと御研究なさってみていただきたいんです。時間がございませんので、これはぜひお願いをすることでございます。つまり、先ほど稲村委員の方からも話がありましたように、枠組みは枠組み、仕組みは仕組みなんだけれども、現場からは切実な声があるということに対してどうこたえられるかといういろんな方策をやっぱり考えるべきでなかろうかというふうに私は思っておりますので、ぜひそういうふうに考えていただきたい。
 先ほど、こちらの参考人の中で井上参考人は、この仕組みの中では、やはり考えられるとすれば遺族年金制度の導入というふうな形しかないだろう、だけれども、この農業者年金というのは国民年金の実は付加的な意味があるのだから、そのベースになる、つまり国民年金の方の分でしょうね、この基礎年金部分のところの底上げがやっぱり一番農家の婦人にとっては大事であろうという御見解を述べられたんですが、実は私も前々からそう思っていたわけです。基本の部分のところが孫のあめ玉代ではしようがないわけで、ここの部分のところの底上げというのは、これは農水省の仕事ではなくなるわけですけれども、この辺についての他省庁との兼ね合いをしながらの話し合いをなさったことがありますか。
#199
○政府委員(井上喜一君) 農業者年金制度の検討におきましては、そこまで厚生省の方と打ち合わせをしたことはございません。
#200
○刈田貞子君 これは自首業という概念に入っているわけですけれども、ぜひ私は検討していく必要があろうかというふうに思いますし、一番地権だとか相続人とかいう問題を考えないでできる部分の話なんですから、ぜひ農水省の方からそういう声をお出しいただいて検討していただきたいというふうに私は思います。
 婦人の年金権については、実は私、私見を申し上げれば、遺族年金で補完をするという考え方も時代的ではないのではないかというふうに思うわけです。今回の公的年金改正の一番の基本は、やっぱり個人の年金権が保障されていくということに基本がありますから、やはり夫との関連で、遺族年金の中で保障されていくという考え方は時代的ではないように思う。暫定的には私は賛成です。しかし将来に向けては、基本的に農家の一婦人の年金権を保障していくためのあらゆる方策を農林水産省としても考えていかなければならないというふうに思いますが、大臣、この点いかがですか。
#201
○政府委員(井上喜一君) これは農家だけじゃなしに、農家を含めた自営業全体の問題でありまして、農業の側だけから接近するのは、そこはやっぱり限界があるのではないか。つまり、農業者年金という中で仕組んでいくということにつきましては、いろいろと問題があるというふうに考えておるわけでございます。やはり国民年金の付加年金であるという性格がありますので、そういう基本的な性格を変えない以上、これは非常に難しい問題があるのではないかというふうに思います。
#202
○刈田貞子君 年金の問題でいろいろ申し上げましたけれども、私は農村社会の中には、やっぱり婦人の問題についてまだまだいろんな課題があろうかというふうに思っておるんです。そういう問題が一つの権利意識になって解決されて出てこない限りは、農村の女性たち自身の力によってこういうものは獲得されていかなければならないというふうに思っておるんです。
 その一つの例として、これは伺っておく事柄ではございません。私の聞いてきた話としてお伝えしておきますけれども、例えば中核農家の概念の中に、年間百五十日の農事に従事するという十六歳から六十歳未満までの基幹男子という概念があるわけですね。そうすると、農用地利用増進法なんかによる中核農家対象の施策の対象には、婦人が経営している中核農家は対象になっていないという、そういう運用の仕方をしているところがまだあるというふうに私は聞いてびっくりしておるわけでございますけれども、そうすると、中核農家の定義から変えていかなければならなくなるわけですね。この問題なんかもまだ農村社会に十分あるということを私は聞かされて、大変びっくりしているわけです。ましてや、社会的通念とか、あるいは日常の慣習、慣行に至っては、本当に婦人にかかわる問題の不平等とか権利意識の低さというようなものがいっぱいあるわけです。そういう中で、なおかつ婦人が年金権を欲しいというふうに言っているのだから、この問題はすごく切実な中からやっぱり出てきているのではないかなと思いますので、このことをお伝えいたしておきます。
 時間がたくさんありませんので、婦人の年金の問題については大臣にくれぐれもお願いをしておきますので、よろしくお願いいたします。
 次に移ります。部分的な細かい問題を一つ一つ伺いますので、簡潔にお答えください。
 私は、この法案の改正を勉強するに当たって、ずっと見てきて関心を持ったのが離農給付金に対する考え方の問題です。先ほども稲村委員から話がちょっと出ていたわけでありますけれども、この離農給付金に対する考え方を一つ伺うのと、これは農業者年金事業の補完的な措置としてとられてきている制度であることはわかるわけでありますけれども、今日、これが六十二万といういかにも低額で抑えられていることと、その算定の仕方を一つ伺います。そして、五十五年改正前まではこれが百三十八万と五十九万の二本立てになっていたんですけれども、その理由はどういうことなのかをお伺いします。
 それから、先ほど井上参考人の御意見の中に、第三者移譲をした場合には割り増しなどを付加することによってより魅力のあるものにするべきであるというような御意見がありましたけれども、それはどんなお考えでしょうか。
 この三点についてまずお伺いします。
#203
○政府委員(井上喜一君) お答えいたします。
 離農給付金のこの制度は、制度の発足当初におきましては農業者年金の加入対象から除外された高齢者などがありまして、そういった人たちを救済すると同時に経営規模の拡大を図っていくということで、十年間を限りまして支給をした給付金でございます。これは五十五年五月にその期限が到来いたしまして、その後さらに十年間を延長したわけでございまして、現在は全額国庫負担ということで、一件につき六十二万円を給付しております。これは、農業者年金に加入できない農業者が第三者に経営移譲する、つまり、離農したというのが条件になっているわけでございます。
 この金額の基礎につきましては、不動産を処分いたします場合に若干損をする、その損失額に対
する補てんというような、そういった考えで六十二万円が決められたと、そういう経緯がございます。
 それから、それ以前の場合には、今お話しのように二本立てであったわけでありますけれども、この金額の多い方につきましては、年金に加入できないというそういうようなことで、年金に加入できなかった場合には、年金に対する国庫助成がございますので、そういう国庫助成の額を勘案いたしまして百三十八万円という金額が積算されたわけでございます。それから五十九万円につきましては、厚生年金等に加入をしているということのために農業者年金に加入できない者に交付された金額でございまして、兼業の実態が考慮されましてこのような金額になっているということでございます。
 それから、第三者移譲につきましてきょうの参考人の方からただいま言われましたような御意見が出たようなわけでございますが、これにつきましては、将来の検討事項として考えさせていただきたいと思います。
#204
○刈田貞子君 次に、基金が行う事業の中で農地の売買事業それから融資事業などがありますけれども、この問題を伺うわけですが、何といったって、先ほどから出ているように財政が厳しくなる一方ですね。それはつまり農地売買勘定にしても、それから融資勘定にしても、みんな年金勘定から借りて動かすわけでしょう。だから、加入者が少なくなっていって年金勘定が厳しくなっていくということは、この事業もまた厳しくなっていくことになるわけでありますけれども、こちらの事業については、事業計画あるいは資金計画等立てられ、そして実績を上げてこられたということになるのでしょうが、その計画と実績の状況はどんなになっておりますか。
#205
○政府委員(井上喜一君) まず、実績でございますけれども、農業者年金基金が行いました農地の売買事業から申しますと、五十八年度末までの累計で、買い入れ面積は四千九百四十四ヘクタール、約五千ヘクタールでございます。売り渡し面積は四千八百四十六ヘクタールということでございます。また、基金から農地等の売り渡しを受けた者の売り渡し前後の経営面積の動向を見ますと、五十八年度で、北海道では一七・七ヘクタールから二一・九ヘクタール、それから都府県においては一・八六ヘクタールから二・三一へクタールへとそれぞれ拡大をしております。また、売り渡しを受けました者の平均年齢を見ますと、北海道は三十八歳、都府県では三十歳というふうに若い経営者に売り渡しをされているわけでございます。
 それから、農地取得資金の融資事業の実績でありますが、これも五十八年度末までの累計で申しますと、面積で一万三千四百十五ヘクタール、金額で四百十三億三千七百万円となっております。それから同様に、五十八年度におきます貸付農家の平均経営面積は、北海道で、融資前の一一・七ヘクタールが一七・二ヘクタール、それから都府県で、融資前三・七ヘクタールが四・七ヘクタールに拡大をしておりまして、融資を受けました者の平均年齢は、北海道で四十歳、都府県で四十二歳と、これも本当に中堅の経営者となっております。
 こういうことで、この売買事業あるいは融資事業を見ますと、年金制度の円滑な実施を補完するそういう事業としてかなりの役割を果たしてきたと思います。あわせまして、農地の集約化でありますとか規模拡大に役割を果たしてきているという状況でございます。
 ところで、この取り扱いであります。私どもといたしましては、ただいま申し上げましたように農業者年金基金の業務を補完する事業でありますので、そういう点については今後も留意をしていく必要がありますが、ただ積立金が昭和六十二年度に単年度収支が赤字ということになりまして、それ以後徐々に減少をしていくわけでございますので、この積立金の安全かつ効率的な運営をやっていく必要があるわけでございます。これらとの関連につきまして今後十分検討をした上で、どのような規模でこの事業を実施していくのか検討していく必要があろうかと考えております。
#206
○刈田貞子君 先ほど参考人の方からも、井上参考人ですか、山村の農地を引き受ける人がいない、経営移譲をしたいけれども引き受ける人がいないというような話が出ておりました。この農地は置いておくとやっぱり荒廃してそのまま放置されていくんだという話が出ていたわけですけれども、そういうことについてもこの事業は的確にやっぱり機能していかなければならないのではないかというふうに思います。特に耕地の壊廃等最近言われておりますし、この基金がこの面で果たす役割、政策目的というのも私は大きいのではないかというふうに思いますので、何とかこれを有効に回転させていかなければならないのではないかなというふうに思っておりますので、希望を述べておきます。
 それから次には、後継者移譲についての要件の中の引き続き三年という問題について少しお伺いをするわけでありますが、引き続き三年というこの三年の持つ意味について少し伺ってみたいんです。これは租税特別措置法の政令四十条の四ですか、ここに引き続き三年以上の耕作または養畜の事業に従事していることという要件があるわけですけれども、それをそのまま踏襲しただけなのか、それとも農業政策的な根拠を持たしてあるのか、どうなのかということを伺います。
#207
○政府委員(井上喜一君) この後継者移譲の要件になっております引き続き三年以上農業に従事をしているということでありますが、これもただいまお話しになりました租税特別措置法によります農地の生前一括贈与につきまして納税猶予の特例措置がありますが、その場合にも同様に三年の農業従事要件というのが設けられておるわけでございまして、そういう意味では制度の整合性が保たれているわけであります。
 しかし、こういった制度がなぜできたのかといいますのは、やはり農業の実態から来ているわけでございまして、農業のように土地と自然とを相手にいたしまして経営をする業種でございます。全く新しく農業を始めるという場合は、まず農業とはどういうものかというそういうことから勉強する必要もありましょうし、自然を相手にして経営をしていく場合にどういうことを注意すればいいのかというようなことは、なかなか一年ではこれは習得できないと思うわけでございます。いろんな失敗等もあります。それで二年、三年、あるいは四、五年ぐらいかかるかもわかりませんけれども、やっぱり数年間の経験がなければこれから農業をずっと継続していくという意思も固まらないのではないかと思いますし、また経営を移譲する側から見ましても、本当に農業をやっていく後継者として任すには、そういった期間の経験が必要ではないかというふうに考えているわけでございます。
 ただ、後継者移譲の場合には、こういう三年という要件をつけてはおりますけれども、その三年も三年間ずっと継続して農業に従事をするというほど厳しい条件ではございませんで、大学とか高等学校の農業に関する学科で勉強している場合にはそういった期間も通算されますし、また給与所得者が農繁期とか休みの日に農業に従事をしているような場合にもその期間は含めて考えられる、こういうことでございますので、現行のこの後継者移譲要件になっております引き続き三年以上の農業従事というのはそんなに厳しい条件ではないのではないか、当然農業の場合にはこの程度の期間が必要なのではないかというふうに考えております。
#208
○刈田貞子君 当然加入の場合は三年だけれども、任意加入の場合には必要ではないのではないかという話があります。それから、先ほどやはり午前中の井上参考人の御意見では、Uターン青年の要件としても引き続き三年ということがついてありますね。それで、これは経営移譲終了日まで引き続き六カ月以上の農業従事経験があり、その後も農業を営むことと認められる場合ということが書いてあるわけですけれども、このUターン青年の問題については引き続き三年というのはどう
でしょうか。
#209
○政府委員(井上喜一君) Uターン青年の場合には、三年間という要件はついておりますが、引き続きという部分につきましては六カ月というぐあいになっているわけでございまして、引き続き六カ月の要件がありまして、ただしそれ以前の期間を合わせまして三年と、そういう要件を満たす必要があるということでございまして、そういう意味では、一般の後継者移譲の場合よりも若干緩和をされているというふうに言えるかと思います。
#210
○刈田貞子君 二年半ということですか。
#211
○政府委員(井上喜一君) 引き続き六カ月以上ということでございますので、三年という要件があります以上、二年半以上はその以前の経験でもよろしい、こういうぐあいになるわけでございます。
#212
○刈田貞子君 それから、つまみ食い的で大変申しわけございませんが、自留地の考え方についてちょっとお伺いをしたいわけでありますが、第三者移譲の場合には十アールの自留地を認められておりますね。これについては十アールを拡大してほしいという声があるのは御存じのところでありますが、これは法律的には大変に創造性のない注文になることはわかるんですけれども、後継者移譲をしたときにも十アール程度のおらが畑が欲しい、こういうものについてはどのように考えればいいですか。
#213
○政府委員(井上喜一君) 後継者移譲の場合にもいろんな形があろうかと思うんですが、普通、後継者と指定したのがなるわけでございますので、そういう経営の中で農作業の手伝いをするというのが普通かと思いますので、特別に自留地という制度を認めなくても、片手間に農作業をするとか、あるいは趣味として農作業をするということで、そういった希望は満たされるのではないかというふうに考えております。
#214
○刈田貞子君 拡大、十アールの拡大。
#215
○政府委員(井上喜一君) この第三者移譲の場合におきます自留地十アールでございますけれども、たしかこれは自留地を持ちますのが大体五〇%ぐらいの方が自留地を持っておりまして、したがいまして、あとの半分の方はもう全部第三者に移譲されるというようなことでございます。しかも、自留地を持ちます場合にも〇・五アールぐらいの規模の自留地でございますので、これはいろんなケースがあろうかと思いますけれども、まずまず今の十アールということで対応していけるんじゃないか、このように考えております。
#216
○刈田貞子君 その自留地の十アールというのは、どういうことが根拠になっているのかということを私は伺いたいのですが、それで自分の家の食べる量を生産していくという考え方の十アールですか。
#217
○政府委員(井上喜一君) この十アールというのが認められましたといいますか、定められました根拠は、自給自足というような考え方が基礎になったということでございます。つまり、自分のところの基本的な食糧についてはそこから生産をするというような考え方だと思います。
#218
○刈田貞子君 それから、後継者移譲した場合に十アールというのは、やっぱり一括移譲しなければ税の恩典も受けられませんしいたしますので、無理な要求であることは私もわかりますけれども、ここにも質問がありますように、私はことし六十歳で経営移譲年金がもらえることになるので、近日中に次男に農地の贈与登記の手続をとりたいのだ、ついては十アール程度の畑を自分のものとして残しておきたいのだがという質問がありまして、自分の息子にこれを移譲するということでありながら、やっぱり自分の畑が欲しいという農民の心情みたいなものはあると思いますよ。だから、規則は規則で、枠組みは枠組みなんだけれども、こういう心情みたいなものも何とか救い上げてやりたいというような気持ちは私は持っておりますので、こういう質問をさしていただいたわけでありますが、時間ですからやめます。けれども、この法案についてはまだまだいろいろ伺いたいことがありまして、これから先、出稼ぎの問題に入りますと大変長くなりますので、これで打ち切ります。
 大変ありがとうございました。
#219
○委員長(北修二君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#220
○委員長(北修二君) 次に、昭和四十四年以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣。
#221
○国務大臣(佐藤守良君) 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改正に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 この法律案は、農林漁業団体職員共済組合による給付に関し、恩給制度、国家公務員等共済組合制度その他の共済組合制度の改正に準じて、既裁定年金の額の引き上げ等による給付水準の引き上げ等を行おうとするものであります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。
 第一は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは、退職年金等の年金額の算定の基礎となった平均標準給与を昭和六十年四月分以後、昭和五十九年度の国家公務員の給与の上昇率を基準として引き上げ、年金額の増額を行おうとするものであります。
 第二は、退職年金等についての最低保障額の引き上げであります。これは、恩給制度の改善に準じ、退職年金、遺族年金等に係る最低保障額を引き上げようとするものであります。
 第三は、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。
 以上であります。
 なお、この法律案に対する衆議院における修正の趣旨につきまして、便宜政府側から御説明申し上げます。
 修正の内容は、この法律案の施行期日である昭和六十年四月一日が既に経過していることにかんがみ、施行期日を公布の日に改めるとともに、標準給与の月額の引き上げについて、昭和六十年四月一日から遡及して適用する等所要の規定の整備を行うものであります。
 以上が衆議院における修正の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
#222
○委員長(北修二君) 以上で趣旨説明は終わりました。
 次に、補足説明を聴取いたします。後藤経済局長。
#223
○政府委員(後藤康夫君) 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。
 この法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。
 第一は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは、昭和五十九年三月三十一日以前に給付事由が生じた退職年金、減額退職年金、障害年金、遺族年金、通算退職年金及び通算遺族年金につきまして、その年金額の算定の基礎となった平均標準給与を、昭和六十年四月分以後、昭和五十九年度の国家公務員の給与の上昇率、平均三・三七%を基準として引き上げるものであります。
 第二は、最低保障額の引き上げであります。これは、退職年金、障害年金及び遺族年金につきまして、年齢及び組合員期間の区分に応じ、その最低保障額を昭和六十年四月分から引き上げるとともに、遺族年金については同年八月分からさらに引き上げるものであります。
 例えば、六十五歳以上の者の退職年金の最低保障額については、昭和六十年四月分以後八十万六
千八百円から八十三万五千円に引き上げることとしております。
 第三は、標準給与の下限及び上限の引き上げであります。これは、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額につきまして、その下限を農林漁業団体職員の給与の実態等を考慮して七万七千円から八万円に引き上げるとともに、その上限を国家公務員等共済組合制度に準じて四十五万円から四十六万円に引き上げるものであります。
 このほか、所要の規定の整備を図ることとしております。
 以上をもちましてこの法律案の提案理由の補足説明を終わります。
#224
○委員長(北修二君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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