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1984/12/13 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 社会労働委員会 第3号
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1984/12/13 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 社会労働委員会 第3号

#1
第102回国会 社会労働委員会 第3号
昭和五十九年十二月十三日(木曜日)
   午後一時二分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         遠藤 政夫君
    理 事
                佐々木 満君
                関口 恵造君
                高杉 廸忠君
                中野 鉄造君
    委 員
                石井 道子君
                大浜 方栄君
                曽根田郁夫君
                田中 正巳君
                前島英三郎君
                村上 正邦君
                森下  泰君
                糸久八重子君
                浜本 万三君
                和田 静夫君
                中西 珠子君
                橋本  敦君
                藤井 恒男君
                下村  泰君
   国務大臣
       労 働 大 臣  山口 敏夫君
   政府委員
       労働大臣官房長  小粥 義朗君
       労働省労政局長  谷口 隆志君
       労働省労働基準
       局長       寺園 成章君
       労働省婦人局長  赤松 良子君
       労働省職業安定
       局長       加藤  孝君
       労働省職業能力
       開発局長     宮川 知雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        今藤 省三君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○労働問題に関する調査
 (労働大臣就任に伴う労働行政に対する基本施策に関する件)
 (昭和六十年度労働省予算に対する基本姿勢に関する件)
 (六十歳定年一般化に関する件)
 (身体障害者の雇用問題に関する件)
 (精神障害者の労働実態に関する件)
 (パート労働者の労働条件問題に関する件)
 (ME導入に伴う労働問題に関する件)
 (最近における雇用失業情勢に関する件)
 (人材派遣事業の法制化等に関する件)
 (労働時間短縮問題に関する件)
 (二硫化炭素中毒に伴う労働災害認定に関する件)
 (グリコ、森永事件に伴う雇用調整問題に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(遠藤政夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 労働問題に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○浜本万三君 労働大臣に質問をいたしたいと思います。
 まず最初に、労働大臣の基本姿勢についてお尋ねをさしてもらいたいと思います。
 今回大臣は、御希望の労働大臣に就任をされまして、大変おめでとうございます。労働行政を取り巻く状況は大変厳しいものがあると思うのでございますが、大臣に大変期待をしておる向きも多いようでございますので、頑張っていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
 基本姿勢の問題の第一は、大臣が新自由クラブの最高幹部の一人でございまするし、今度の第二次中曽根内閣に、引き続いて御協力をされるという立場でございますので、新自由クラブの幹事長さんという意味も含めまして、今度の中曽根内閣に御参加をなさいましたときに自由民主党と新自由クラブの間に一定のお約束があったというふうに新聞で拝見をしておるわけでございますが、まず、その内容につきましてお伺いをいたしたいと思います。
#4
○国務大臣(山口敏夫君) このたびの第二次中曽根内閣におきまして労働大臣を拝命したわけでございますが、日ごろ社労委員会等を通じまして、国民の福祉、また、労働者の雇用問題等々に大変御活躍いただいております浜本先生の御質問の中で、しっかり頑張れ、こういう激励、御助言をいただきまして、大変感謝をし、光栄に存じておる次第でございます。
 私は、今回も引き続き自由民主党と新自由クラブと政策協定のもとに連立を継続したわけでございますが、これは国民の皆さんの多様な価値観、御意見の中で、これからの政治の必然として、大きな政策協議あるいは政策連合、ひいては地方自治体等にも、保守・革新を超えた部分連合のような形でそれぞれの政策を進めておる、こういう経過もあるわけでございまして、国政の場におきましても、各党の掲げておる政策を通じて、国や国民生活に貢献すべき一つの政治のあり方として、今回も連立を通じて政局の安定でございますとか、また、基本的には、厳しい財政事情でございますので、そうした中で、国民福祉の立場におきまして、より効果的な政治の進め方というものを考えましたときに、この政策連合ということの必要性というものも非常に大事なことだというふうに考えておる者の一人でございます。
 特に、自民党と新自由クラブとの間につきましては、政治倫理の問題でございますとか、平和外交の問題でございますとかあるわけでございますが、私が今回就任した労働大臣の労働行政という立場における総括的な政策協定の中にそれ自体が入っておるということではございませんが、やはりこの連立を通じて国民福祉のかなめである労働行政の問題も大変大事である、こういう認識のもとで、あえて閣内協力の一つの選択として労働大臣のポストを総理にも要求をし、今回私が就任をした、こういう経過でございまして、この連立、労働大臣のポストを通じて、今日までいろいろ労働団体でございますとか、また各種団体等と意見交換をしてきた問題につきましても、先生の御助言も含めて、ひとつ労働行政に存分に考え方を反映すべく努力していきたい、かように決意をしておるところでございます。
#5
○浜本万三君 今お話しがございましたように、協定なさいました課題の中には、教育問題でありますとか、行政改革でありますとか、政治倫理とか、あるいは平和外交とかがあるということは拝見をしておるわけでございますが、それらの問題は、場所も多少違いまするので別の機会にまた大臣の御見解を伺うこともあると思うのでございますので、きょうは特に労働行政に絞りましてお話を承りたいと考えます。
 そこで、先般、新大臣に質問するに当たりまして、新自由クラブの労働政策はどういうものだろうかということで、多少勉強さしていただきました。特にこれから御質問する内容の中に二つの問題がございましたので、例えば六十五歳を目標に定年延長を図るということでありますとか、労働時間の短縮、週休二日制の目標年次を設定して実現を図るでありますとかという課題がございますので、そういう問題だけに絞って見解を承りたいと思うのでございます。つまり、新自由クラブの幹事長としてそういう政策を国民の皆さんに公約なさった、自民党と連合された内閣の中でそういう新自由クラブの政策をどのような手だてで実現されようとしておるのか、この点につきまして伺いたいと思います。
#6
○国務大臣(山口敏夫君) 特に今先生御指摘の、六十五歳の定年延長というこの基本的な考え方の上に立って、当面六十歳の定年延長を一層推進をしていく、こういうこともうたっておるわけでございますし、労働時間の短縮の問題につきましてもその必然性を私十分承知さしていただいておるつもりでございますが、これは新自由クラブという党に限らず、社会党におかれましても、各党におかれましても、労働条件の改善という立場の中でそれぞれ熱心にお取り組みをいただいておる一つの政策課題であろうと思います。
 特に、先生も御承知のとおり、我が国の急激な高齢化社会への移行というものを考えますときに、人生五十年が、あっという間に六十年を過ぎてもう七十年あるいは八十年という時代の中にあるわけでございまして、まだまだ元気に活躍できるというときに、五十五歳で定年を迎えるとか、あるいは六十歳で定年を迎えるということは、御本人の生活条件等もさることながら、社会的に見ても大きな損失というふうに考えるわけでございます。特に、働くという勤労を通じての人生の生きがい、喜びというものは、我々国民生活を考えますときに、精神的、肉体的な安定の上からも非常に大切なことである、こういうことで、私、就任以来、省の幹部に対しましても、幸いお集まりの先生方の御努力で、既に六十歳定年も企業の約半数近くにまでこれが実施が促進をされております。残りの五〇%に何とかこうしたルールを広げていただくことをお願いしつつ、六十五歳定年へ向けての作業を早急に進める必要があるのではないか。こういうことで、安定局長を初め、省の会議におきましても再三問題を提起さしていただいておるところでございます。
 また、時間短縮の問題も、二千時間へ近づけるということに対しましては、正直申し上げて、労働省はこの勤勉をもって鳴る日本人に遊び癖をつけようとしておるのか、怠け者をつくる手伝いをしているのか、こういう実態とかけ離れた御批判をいただく場合もございますが、これは国際社会からも、関税とか経済協力以上に労働摩擦の問題も非常に大きな問題にもなっておるわけでございまして、そういう立場からも、またこれからの我が国の経済的な動向、あるいは雇用問題の立場からも、時間短縮の問題はひとつ今から真剣に取り組み、これを促進していかなきゃならない、こういう基本的な考え方の上に立って作業を進めていこうというふうに申しておるところでございます。
 また、具体的な作業やスケジュールの日程につきましては、安定局長、婦人局長からお答え申し上げさしていただきたいと思うわけでございますが、そういう大きな方針を、何とか皆さんの御協力もいただき、路線をひとつきちっとしいておきたいという考え方に立っております。
#7
○浜本万三君 先ほどの二つの課題につきましては、また後ほど具体的にお尋ねをさしていただきたいと考えております。
 特に今の時期というのは、政府の方でも六十年度予算の編成がほぼ終わって、二十四日には大蔵原案が示されるのではないかという時期でございますので、予算、政策を中心に若干のお尋ねをしてみたいというふうに思います。
 先ほど大臣からお話しございましたように、今日の労働行政を取り巻く内外の情勢というのは非常に厳しい、特に高齢化社会でありますとか技術革新でありますとか、あるいは女子の労働問題等が山積をしておるというふうに思います。ところが一方では、財政の再建計画が示されておりますように、財政再建下の中で予算編成をしなきゃならぬ、そういう事情でございますので、労働省の予算も大変厳しい状態と伺うわけでございます。しかし、大臣には大変期待をしておると先ほど申し上げましたので、そういう問題について六十年度の予算の中でどのように取り組まれようとしておるのか、そういう点につきましてお尋ねをさしていただきたいと思います。
#8
○国務大臣(山口敏夫君) 御承知のとおり、今予算編成の作業が国会と並行して進んでおるところでございまして、また御指摘のとおり、厳しい財政事情の中で各省の政策要求が大変値切られているといいますか、厳しい査定の中で論議も続けておるところでございます。しかし、国民生活にとりまして、雇用を通じた経済政策の安定というものは即福祉の問題にもかかってくるわけでございますので、何としてもこうした委員会で御論議いただいた問題点をひとつ具体的に施策の中に反映する、こういうための努力を取りまとめまして、この六十年度予算に、各局ごとにそれぞれ項目を定めて、今大蔵当局と作業を進めさしていただいておるわけでございます。
 特に労働省といたしましては、高齢化社会の到来に対応した雇用就業対策、また、MEを中心とした技術革新に対応した労働対策、そして経済社会の変化に対応した能力開発対策、そしてまた、変動する国際社会に即応する労働外交という問題等を中心といたしまして予算の要求を進めておるところでございます。
 さらに、雇用情勢に対応した雇用対策というものもあわせて大蔵省と今協議しておるところでございまして、特に労働者の派遣事業に関する法的な整備、就業構造の変化に対応した労働力の需給調整対策の推進、雇用調整の助成制度の拡充や改正雇用保険制度の適正な運営等、機動的な雇用対策の推進、またさらには高齢者の職域拡大のためのME機器の研究開発、技術革新に対応した能力開発対策の推進、こうした技術革新に対しましても、高齢者も含めてそうした時代に十分対応でき得るような施策も進めていきたいということで努力しておるところでございます。
 また、パートバンクを通じた職業紹介体制の充実、パートタイマーに対する雇用対策の推進、さらに六十歳定年一般化のための定年延長の促進、雇用就業対策の推進等、高齢化社会の進展に対応した雇用対策の推進という問題につきましてもあわせて予算を確保したいということで今日努力しております。
 特に、先ほど申しました労働外交の問題につきましては、労働界は国際的な交流等も非常に熱心に進めておるわけでございまして、企業も大変海外に進出をして、いわゆる経済摩擦や貿易摩擦に対して、ひとつ新たな観点から、海外企業進出という立場からこうした問題にも努力しようじゃないかと言っておるところでございますので、労働省といたしましても、そうした労働団体、また経済団体とも十分連絡をとりながら、国際的な立場における労働シンポジウムや意見交換の場を求めたいということで、率直に申し上げて私就任いたしましたときは予算の骨格は既に大体固まっておったわけでございますが、新たにこうした予算もひとつ大蔵省と交渉してぜひ予算化を進めるようにと、こういうことで今努力をさしていただいておるところでございます。
#9
○浜本万三君 先ほどの一つ一つ述べられました政策課題につきましては後ほどまたお尋ねをいたしたいと思います。
 もう一つ基本的な問題で伺いたいと思いますのは、最近の政府の発表によりますと、経済成長を上方修正をするとか、あるいはきょうの新聞等によりましても、予想どおり経済成長が行われておるというような発表があるわけなんでございますが、従来の雇用と景気の問題から言いますと、景気がよくなれば雇用失業情勢はよくなるんだという状態でございましたが、最近は景気回復基調にありながら雇用失業情勢はだんだん悪化をしておる、将来もその心配がある、こういうことになっておるわけなんでございますが、その要因についてはいかように把握されておられるでしょうか。また、特にその重要な問題について六十年度予算ではどのようにお考えでしょうか。
#10
○政府委員(加藤孝君) 確かに、御指摘ございましたように、景気がよくなれば失業者が減る、景気が悪くなれば失業者がふえる、こういうのが従来の一般的なパターンでございましたが、御指摘のように、最近は景気が上昇過程におきましてなかなか失業率も高水準のまま推移しておる、あるいはまた求人倍率の方も〇・六四とか〇・六五といったような状態で横ばいが続いておる、こういうような状況になっておるわけでございます。
 私ども、この辺については懸命にその内容について分析、あるいは対応を進めなきゃならぬということでやっておるわけでございますが、簡単に申しますと、景気上昇過程におきまして、家庭の主婦等が急速に求職者という形で安定所の窓口にあらわれてきておるという問題が一つございます。それから、さらに景気の上昇過程におきまして、よりよい求人へ移ろうというような形での転職希望者というものも相当ふえておるわけでございます。そういうような中で、何といいますか、本当に解雇される、あるいはまた定年でやむなくやめざるを得ないというような方は完全失業者の中の約三分の一というようなことでございます。そういう意味におきまして、いわゆる路頭に迷う失業者というようなものがこういう景気上昇過程においてふえておるとか減らないということでは必ずしもないわけでございまして、そういう意味におきましては、こういう種類の自発的な形での転職希望者、あるいはまた家庭の主婦の職場進出の形で出てきております求職者に対しましては、例えばパートバンクの増設なり、あるいはまたそこの相談機能の充実なりというような形での対応を進めていきたい。
 それからまた、こういう方たちが就職が進まない理由の大きなものは、求人の方はある程度いろいろな技能を持っている人を求めておる。一方、求職者の方は無技能が多いとか、あるいはまた一般事務を希望する方が非常に多いというような形の中で、いわゆる求人と求職のミスマッチ、技能間のミスマッチというような問題が大きくクローズアップされておりますので、特に能力開発行政という点についての大きな前進を予算的に図りながら、こういうミスマッチによる失業者の増あるいは求職者の増というものに対応していきたい、そんなようなところを来年度予算において特に力点を置いておるところでございます。
#11
○浜本万三君 では、大分具体的な問題に入りましたので、これから若干の問題につきましてさらにお尋ねをさしてもらいたいと思います。
 まず、定年制の問題なんでございますが、急速に高齢化が進む中で、政府は、歴代の労働大臣を含めまして、昭和六十年までに六十歳定年を一般化する、こういうお約束をされておるわけでございます。ところが、資料を見ますと、これは労働省の調べで、六十歳以上の定年を決定しております企業は半分に足りない、そういう状態が出ておるわけでございます。政府の言う一般化とは一体七〇%なのか八〇%なのか、そういう具体的なお考えを承りたい、かように思います。また、現状どうなっているかということもあわせてお答えをいただきたいと思います。
#12
○政府委員(加藤孝君) 今先生からお示しありましたように、ことしの一月現在の定年制につきましての調査によりますと、六十歳以上の定年制を採用する企業の割合がようやく五二%ということで半数を辛うじて超えたというような状況ではございますが、ともかく初めて五〇%を超えた、こういうような状況であり、また逆に、これまで主流でございました五十五歳定年というものが二九・六%ということで三割を割ったというような新しい局面が出てきておるわけでございまして、そういう意味では六十歳定年制というものが主流になったということは言えると思うわけでございます。さらに、近く六十歳以上の定年制を決めるという企業を入れますとそれが六五%になるという意味におきましては、この六十歳定年制の問題は着々進展をしておる、こういう見方をしておるわけでございます。特に、例えば五千人以上の大企業になりますと、近く六十歳定年にするというところを含めますと九三%が六十歳定年制を決めておる、あるいはまた近く決めるというところまで来ておるわけでございます。
 そういう意味では、この六十歳定年制問題は次第に進んできておりますが、ただ、私どもまだこれが一般化したということを言う段階ではとてもないという認識を持っておるわけでございます。しかしながら、一般化というのが何%か、何割か、こういう問題につきましては、実は雇用審議会の場におきましても、例えば使用者側の方は五割を超えればこれは一般化である、あるいはまた労働側の方は、九割を超えなきゃ一般化とは言えないんだということでいろいろ激論もあったようなこともございまして、とにかく日本において六十歳定年制というものが、もう一般的に六十歳定年になっているんだと言えるような状態に持っていこうじゃないか、こういうふうなことで労使公益を含めたコンセンサスというようなことになっておりまして、そういう意味では数字で何割が一般化かということは、私ども言いかねますが、いずれにしても半数を超えただけで一般化したということは言えない。そして、六十年というのはまさにあと一年ということでございますので、この一年間にとにかく六十歳定年制というものをさらに定着させ、そしてまた、さらに広範に普及させるような努力をいたしたい、こう考えておるところでございます。
#13
○浜本万三君 局長の答弁ではございますが、一般化しつつあるというところは大体一致しますよね。今までは労使の努力によってできるだけ六十歳定年を一般化させたい、したがって、定年の法制化はなじまないという話だったんですが、大臣、お聞きのようになかなかできないんですよ。できない理由はいろいろあるんで、この際、一般化しつつあるという認識のもとに六十歳定年の法制化をしてはどうかという考え方を私は申し上げたいんです。この件につきましては四野党――社会、公明、民社、共産及び大臣のところの新自由クラブもそういう御提起をなさっていらっしゃるわけですね。六十歳の法制化をして六十五歳を一般化させるというのが今日の人生八十年の時代における重要な雇用政策ではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#14
○国務大臣(山口敏夫君) 私は、高齢化社会に伴う行政の措置として努力すべき問題認識の中で、そうしたことも十分検討しなきゃならないというふうに考えておる一人でございますが、しかし、基本的に五十歳定年、五十五歳定年から大変短期間に六十歳定年への取り組みを行政も努力しつつ、労使双方、企業間にも認識を広げていただいて、今努力をしていただいている最中という、最終的な最中ということでもございまして、私は、こうしたこの六十五歳定年の問題をあえて我々労働省としても政策的な提言をしておるということは、六十歳定年を一層定着化させるというための一つの努力目標として申し上げておる、こういうことでもございます。今雇用審議会等におきましても、その法制化の問題が適当か否かということも含めまして早速に議論をいただきまして、先生の御指摘の問題点も含めて御論議をいただく、こういう段取りになっておるところでもございます。
#15
○浜本万三君 法制化の問題でもう一つ、私の希望を述べて大臣の見解を承りたいと思うんでございます。
 それは、高齢者及び身障者の雇用率達成についてでございます。この資料を拝見いたしますと、いずれも大企業での未達成企業の割合が多いわけでございます。この制度が施行されましてからもうかれこれ十年になるわけなんでございますが、制度化されて十年もたって依然としてこういう状態では、これはやっぱり法律で縛る以外にもう達成率を上げる手段はないのではないか、こういう気がしてなりません。例えば、高齢者については未達成企業が六七・四、それから身障者については実に七六・七という数字も千人以上の企業には出ておるわけなんでございます。この点いかがでしょうか。これはそろそろはっきりしてもらいたいと私は思いますが。
#16
○国務大臣(山口敏夫君) 大きな企業がそれぞれの企業間の市場の競争原理の中で、ややもすれば合理性、効率性を追うが余り、こうした基本的な社会的な責任といいますか、雇用における企業責任という問題でいま一つ認識が欠けておるのではないかというところに、こうした高齢者を初め障害者の雇用に対する企業努力というものがおくれておるということも言えると思います。
 そうした問題につきまして、私といたしましては、職安審議会でございますとか、雇用審議会、また身障者の問題につきましては身障者の審議会等を通じまして、こうした問題に対する今後促進方をどうしたらいいかということでこれまた御論議をいただいて、ただそうした議論いただくだけじゃなくて、一つの方向づけもしっかりとまた御提案もいただき、あわせて、私どもとしてはそうした審議会と並行して、やはり既にそうした問題認識というものは社会的にも制度的にも提起されておるわけでございますので、ひとつこの点につきましても、我々としては真剣に取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。
 先般も、就任早々国立職業リハビリセンター等も視察をさせていただきまして、障害者の方々の社会参加に対する強い意欲と大変な御努力をいただいておるということを私も目の当たりにいたしまして、何としてもこうした問題につきまして、雇用の拡大というものにつきましてさらにさらに努力しなければいけない。と同時に、企業に対しましても、こうした目標達成のためのお願いも進めていきたいというふうに決意しておるところでもございます。
 特に、労働団体あるいは経営者団体、また中小企業団体、農業団体も含めまして、労働省の政策を御説明かたがたお願いすべきものはお願いをするという一連の会議をここ二、三週間の間に持たしていただいておるわけでもございますが、そうした機会にも必ず、今浜本先生が御指摘のような問題につきましても私自身の立場からも強く要請をした、こういう経過もございます。
 したがいまして、そうした問題に対しましても、審議会の論議と同時に、労働省としても積極的にこれらの問題に取り組みたいということを申し上げておきたいと思います。
#17
○浜本万三君 もう私の時間がないので、今の問題はぜひお答えのように実効が確保できるように、ひとつ御指導を願いたいと、かように思います。
 次は、パート労働の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
 十二月九日だったと思いますが、ある新聞報道によりますと、労働省の労働経済動向調査というのが発表されまして、その中に、企業の六割がパートタイマーの労働者を雇っており、これに伴い正社員は減少しておる。また、パート採用の理由は人件費の節約である。そして、今後もパート志向は強まるという趣旨の報道がなされておるわけでございます。
 まず、その調査結果について、労働省の見解とさらに今後の対策をあわせてお答えをいただきたいと思います。
#18
○政府委員(赤松良子君) ただいま先生の御指摘のございました労働経済動向調査の内容につきましては御指摘のとおりでございまして、この調査は、景気の動向、労働力需給の変化が企業に及ぼす影響や今後の短期的な見通しなどを把握するために四半期ごとに実施をしておりますが、今回は五十九年の十一月に、パートタイム労働者の動向については特に項目をつけ加えて調査したものでございます。
 同調査の結果によりますと、パートタイム労働者を雇用している事業所六割、御指摘のとおりでございます。また、一年先の見通しでも、パート労働者がさらにふえるであろうと予測をしている事業所がこれまた多いということが明らかになっておりますが、これまで私どもが他の種類の調査等からも予測をいたしておりますように、あるいは実態を把握いたしておりますように、パートタイム労働者は、その労働者の方の要請と企業の方の必要性とがマッチをした形での就業状態ということがございますので、これまでも増加をしてまいりましたし、また、今後ともやはり増加の傾向はたどるものというふうに考えている次第でございます。
 そのために、これらの方々に対する対策というものはぜひ総合的に立てる必要があるというふうに考えまして、今般パート労働者に対する対策を総合的にまとめたパートタイム労働対策要綱というものを策定いたしまして、この要綱に基づいて総合的に対策を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
#19
○浜本万三君 今お話しのように、これは雇う方と雇われる方の意思が一致しておるんだということなんでございますが、私はやはり雇われる方が非常に不利な立場といいましょうか、そういう立場で事実上採用が行われておるんじゃないかというふうに思います。したがって、パートタイマーの労働条件というのは、一般の労働者に比べますと低賃金であるとか、あるいは不当な解雇が行われるとか、あるいは社会保険になかなか入れてもらえないとかいうような劣悪な条件があるというふうに思います。現に、最近の先端企業の一次、二次、三次という下請を誘致しておりますところの県議会、これは愛知県会議長から要請が参っておるわけでございますが、その要請文によりますと、パート等の保護法を制定して、臨時工、パートタイマーの労働条件の引き上げ、社外工の差別撤廃、身分保障等を図ってもらいたい、こういう要望書が来ておるわけでございます。このように、パートタイマー労働者の労働条件というものが非常に劣悪だから何とかしろという声が世間では非常に高くなっておるのではないかと思います。
 私は、この要綱も見せていただきましたけれども、一番問題なのは、パートタイマーの労働者というのは労働時間が一般の労働者に比べて短いんだ、一般の労働者が一日八時間ならばパートタイマーの労働者は大体五、六時間だというふうにこの報告書ではなっておるわけですね。そうすると、その労働者の労働条件というのは、賃金にいたしましてもその他の労働条件にいたしましても、例えばボーナスにいたしましても退職金にいたしましても、一般の労働者の八時間の人が一〇〇だとするならば八分の五労働条件を確保することが正しい政策ではないか、私はかように思うわけですね。
 どうもこの要綱では、時間の差が労働条件の差になるんだということに必ずしも一致していないわけなんであります。パートタイマーということによってすべての条件が劣悪になっておるということを考えますと、労働省の特に婦人局の方ではよほどこれはしっかりしてもらわなきゃ女子労働者の労働条件は守れないんじゃないか。ことに男女雇用均等法が論議されておる中で、この問題だけでも、産業の中で非常に大きな比重を占めておるパートタイマー労働者の問題だけでも解決をしなければならないんじゃないか心こういう気がするわけなんですがね。もう一遍ひとつ婦人の立場から婦人局長、お答えを願いたいと思います。
#20
○政府委員(赤松良子君) パートタイマーの中に占める女性の比率が大変大きいということは確かでございますが、これは、主婦が就業する場合に、パートタイムという短い時間で働くということが非常に便利であるということからきているものというふうに考えている次第でございます。
 しかし、パートタイムであるからといって、労働基準法あるいは最低賃金法等のいろいろな保護が及ばないというふうに思うことは全くの誤解でございまして、これらの基本的な保護法の内容はパートタイマーであってもこれは必ず及ぶわけでございます。その点が一般には誤解があるということも承知いたしておりますので、このたびの対策要綱を周知するに当たりましては、パートタイム労働者といえどもそれらの法令の保護が及ぶ、適用されるということも同時に周知徹底をいたしたいというふうに思うわけでございます。
 また、パートタイマーの雇い入れに当たって労働条件をはっきりさせない、あるいはあいまいなままに雇い入れたために後でいろいろな問題が起こるとか、その他いろいろな問題が指摘されておりますので、これらについてはよく問題を把握いたしまして、このたびの対策要綱の中に盛り込んで、当面は少なくともこの対策要綱に基づいて施策を進めたいというふうに考えている次第でございます。
#21
○浜本万三君 まだ御質問したいんですが、もう時間がほとんどないので、次の課題に移りたいと思います。
 まず、MEの問題なんでございますが、MEも、職業訓練でありますとかということもお尋ねしたかったんでございますが、一つだけに絞って端的に伺いたいと思うわけでございます。
 「週刊労働ニュース」の中にも報道されておりますが、「ME対策、政策課題」として、各労働組合の対応が載っておるわけです。電機労連、金属労協、自動車総連等々載っておりますが、各労働組合とも何を言っておるかというと、事前協議を十分やりなさいということが非常に強調されておるわけでございます。私どもは、ME等の導入に当たっての規制法と言ってはおかしいんでございますが、事前協議制の議員立法をつくるために今研究をしておるわけでございますが、事前協議制を積極的にさせるような法制化をしたらどうかという考え方を持っておるわけです。例えば、計画を立案した段階で、それから第二は実施の段階で、それから第三は実施後の段階で事前協議を十分いたしまして、雇用、それから労働条件、安全衛生等々について問題が起きないようにきちっとしたらどうかという考え方を持っておりますが、これは特に労働大臣から御回答をいただきたいと思います。
#22
○政府委員(加藤孝君) 大臣からお答えいたします前に一言申し上げます。
 先生今御指摘の事前協議制の問題につきましては、実は、労働大臣の諮問機関になっております雇用問題政策会議からも、ことしの四月にME化対策の五原則というものが提言され、その五原則の一つとして労使間の意思疎通の問題、これを産業レベル、そして企業レベル、職場レベルでのこういう意思疎通を図れということがございます。さらにまた、ナショナルレベルでも政労使間のこういう意思疎通の促進を図る、こういうことがございまして、私どもとしてはこの五原則、中でもこの労使間の意思疎通問題は大変重要なことであるという認識のもとに、いろんな機会をとらえまして、産業レベル、あるいはまた地域レベルでこういう原則が一般化されるように鋭意今普及に努めておるところでございます。
 ただ、法制化という問題になりますと、これがまた労働組合、相手方の労働組合があるとかないとかというような問題であるとか、あるいはまたどういう単位でとか、いろいろまた難しい問題があるのではないか、検討を要する問題があるのではないか、こんなふうに思っておるわけでございます。
#23
○浜本万三君 時間がないので、これで質問を終わらざるを得ないので終わりますが、次の一般質問のときに通告をいたしました残余の部分につきましてはまたお尋ねをいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
#24
○高杉廸忠君 本来、大臣の所信をいただいてからと思いましたが、せっかくの機会ですので、以下、総論的になろうかと存じますが、質問をいたしたいと思います。なお、詳細はいずれ大臣の所信をいただいてから、その機会を得たいと考えます。
 先ほど浜本委員からも御質問がありましたので、少し角度を変えて、まず労働大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 労相就仕の理由、先ほどは新自由クラブ幹事長としてのいろいろな立場からのお話もいただいたわけでありますが、積極的に労働大臣に御就任をされた労働行政に対する抱負を大臣に伺いたいと思います。
 新聞報道によりますと、労働大臣は入閣の際に、みずから中曽根首相に労働大臣のいすの要求をしたと、こう伝えられているわけです。あえて労働大臣に御就任の要求をされたその理由、そしてその背景、これについて伺い、またこの際、労働大臣御就住の所信、そして今後の労働行政に対する抱負、あわせましてまずお伺いをいたします。
#25
○国務大臣(山口敏夫君) たまたまこのたび入閣する機会を得まして、せっかく閣僚として先生方とともに国民生活に責任を持つ、こういう立場に立たしていただくならば、これはもうひとえに労働行政を担当したいとううことは、私の前々からの一つの決意でもございました。
 なぜ労働行政が大切か。それぞれ役所は、皆それぞれの分野で国民生活に責任を持っておるわけでございますが、特に私の認識といたしましては、先ほど来浜本先生とも御論議申し上げましたように、急激な高齢化社会を我が国が迎えておる。そしてまた、そうした高齢化時代の中におきましても、やはり日本人の特性といたしまして、勤労を通じての生きがい、喜びというものは大変普遍的なものがあるわけでございまして、そうした社会的な展開と日本人の一つの特性というものを考えましたときに、どうしても雇用の問題、高齢化社会における働く場所の確保というものは大変重要な問題であるということでもございます。また、ME化の問題でございますとか、オフィスオートメーションの問題でございますとか、これまた技術革新の時代の中にありまして、こうした雇用環境、職場条件の変化にどう人間が対応していくことが必要かということを考えましたときにも、これまた労働行政を通じての問題解決、政策の提示というものが大変大事な要素になってくることでもございます。そういう意味で、時間短縮の問題も含めまして、労働省が抱えておる政策課題というものは、広く言えば、これは二十一世紀の日本の諸課題にもことごとく通じていくと、こういうことでもございますので、ぜひ労働政策というものに一層の努力を励みたいということでもあったわけでございます。
 また、私かつて、労働大臣を務められました石田博英先生の労働大臣秘書官を務めた経過もございまして、三井三池の流血の大争議というものもあったわけでございますが、こうしたいろいろな事情や問題があったわけでございますが、やはり私の考えの一つといたしまして、エネルギーの主役が石油に移行している中におきまして、石炭政策というものからの転換というものの立ちおくれも一つの大きな理由にもあったのではないか。時代の変化、転換の中で、やはり政治や政策が先取りをしながら国民生活の安定、雇用者の生活の安定というものを図ることはもう政治の必須条件でもある、こういうことでもあろうかと思います。そうした点を含めまして、微力ではございますけれども、諸先生方の御助言もいただきつつ、ぜひ労働行政を通じて国民生活に大きくひとつ貢献をしたいという私なりの考えもございまして、労働大臣に就任をさしていただいたような次第でございます。
 大変微力でございますけれども、どうかそういう決意の一端が行政の中に反映すべく、今後ともの御助言、御叱正も心からお願いを申し上げておきたいと思う次第でございます。
#26
○高杉廸忠君 次に、労働行政と労働運動の関係について伺いたいと思うんです。
 最近の労働運動や春闘、あるいは社会保障に対する大臣の認識と今後の基本的な姿勢について伺いたいと思うんです。また、今後労働行政を展開する上で、労働者側あるいはまた労働組合の意見を十分聞いた上で、改善すべき点は直ちに改善をしていくというふうに私は願うところなんです。行動力には定評のある大臣でありますから、これをぜひひとつ実現をしていただきたい。いかがでしよう。
#27
○国務大臣(山口敏夫君) 労働団体の意見を、あるいは労働者の皆さんの生活と意見を十分行政の中を通じて、政治に政策に反映していくということはもう当然のことでございまして、私も就任以来労働団体の指導者の方々はもちろんでございますが、そうした職場までも出向きまして、今まで以上に一層の御意見を拝聴し、勉強もさしていただきたいということでいろいろ出向いてもおるわけでございます。
 また、春闘の問題につきましても、これは労使双方で十分御協議をいただきまして、その年度における経済的な情報や状況を十分把握しながら最終的な方向を決着をつける、こういう今日までの経過もあるわけでございますので、そうした労使双方の協議というものを十分尊重して見守っていきたい。ただ、政府全体といたしましては、景気の回復の問題あるいは内需の喚起というものは、閣議の場所におきましても、政府・与党会議におきましても再三論議されている最重要政策課題ということでもございますので、そうした点におきましても、この経済の問題にも労働大臣としての立場からもいろいろ意見も申し上げていきたいというふうに考えております。
#28
○高杉廸忠君 ぜひひとつ改善すべき点は速やかに改善をしていただきたい。
 そして次に、厚生行政にもぜひひとつ十分な配慮をいただきたいと願う立場であえて申しますが、最近の労働組合の要求を見ればおわかりのごとく、労働問題は社会保障政策と一体不可分であるわけであります。したがって、労働大臣であるからといって、労働行政の枠にとどまらないで、厚生行政についても積極的に閣議等でもひとつ取り組んでいただきたい。例えば高齢化社会への対応、これを見ますと、労働省と厚生省の間の行政の壁ですね、これをひとつ取っ払って総合的な検討を要する問題であると、こう考えるわけなんです。大臣は、先ほどもお答えがありましたとおりに、かつて石田博英労働大臣の秘書官、また厚生政務次官を経験されて、労働、厚生行政には精通をされて多くの実績を持っておられる方であります。ぜひひとつ、積極的な取り組みに大きな期待を寄せているわけでありますが、大臣のひとつ決意を伺います。
#29
○国務大臣(山口敏夫君) 先生の御指摘のとおり、高齢化時代を迎えての政府の諸施策というものを考えましたときには、一労働省だけで解決できるものではございません。特に厚生省と労働省が非常に大きな責任を果たしていくということは、これはもう非常に大事なことでございまして、労働省と厚生省の間における政策協議という問題につきましても、そうした御意見も踏まえまして、既に両省の官房長の間で作業日程を詰めておりまして、年内じゅうにも――今たまたま厚生省は年金法案で大変国会で論議をしておる最中でもございますので、年内じゅうにも第一回の厚生省と労働省における政策協議を開催をしたい。これを第一といたしまして、今後、いわゆる行政の縦割の中で、かりそめにも高齢者問題の政策がおくれるということのないように、十分両者が真剣に問題討議をして、まとまった問題につきましてはこれを政府の考えとして、国会での御議論も踏まえてひとつ高齢者対策を進めていきたいというふうに考えております。
#30
○高杉廸忠君 次に、雇用関係については先ほど浜本委員から御質問がありましたから重複をすることを避けまして、今お話しの高齢者の対策の強化拡充について少し具体的に伺いたいと思うんです。
 大臣も御承知のとおりに、我が国の人口は世界に例を見ない速度で高齢化しておるわけです。来るべき本格的な高齢化社会のもとにおいて、我が国の経済社会の活力ですね、これを維持発展させていくためには高齢者に対する雇用それから就業保障、これは極めて重要な課題だと考えるんです。この点に対する大臣の認識、それから高齢化対策の拡充に向けての大臣の姿勢、これについてひとつ伺います。
#31
○国務大臣(山口敏夫君) こうした問題につきましても、各種審議会におきまして御論議もいただいておるところでございますが、まさに高杉先生御指摘のとおり、高齢者の方々の雇用の確保、また就業に至る政府としての積極的な行政指導というものは、これはまさに日本経済の中におきましても非常に大きな私は貢献がなされるというふうに確信をしておるものでございます。
 ただ、今までは定年が五十歳あるいは五十五歳というものが、ついこの間までそうした定年制度の中で就業条件が決められておった、こういうことでございますので、ややもしますと企業側におきましても、何か五十歳代になりますと、若い労働力に対しまして、気力、迫力といいますか、年齢的、体力的にも一つの新たなハンディがあるような受けとめ方もしておる面も多分にあると思うのでございますけれども、そうした点につきましても、これが今労働省が進めておりますように、六十歳定年からさらに六十五歳定年という政府や国会におきましても大きな方向が進んでまいりますと、私はもう五十五歳、六十歳の方が若い労働力や雇用者に負けないような経験や一つの実績を踏まえて、経済における新たな労働力、活力としての貢献は十分なされると、こういうやはり受けとめ方が非常に経済界においてもっともっと広がることが大事なことだというふうに考えるわけでございます。
 現在における六十歳の定年延長が五割ということにつきましては、まだ五割かという御批判もございますが、これから先の六十歳定年の定着化というものはかなり加速度的にこれを広げるということができ得るのではないか。また、しなければいけないという責任をもちましてこれに取り組みたいというふうに基本的には考えておるわけでございます。
#32
○高杉廸忠君 次に、最近の雇用失業情勢とその対応策について伺います。
 景気の拡大へと切りかえられてから数カ月を経ましたが、実質経済成長率が四・一%から五・三%へと上方に修正されましたね。雇用失業面では停滞ぎみで明るさが見えないんですね。非常に残念なところなんです。この要因及び今後の雇用対策についての見解とその施策ですね、これをひとつ伺います。
#33
○政府委員(加藤孝君) 景気の拡大に伴いまして、求人は確かに増加傾向を続けております。また、これに伴いまして就職件数も増加をしております。しかし、一方におきまして求職者も増加をしておる。その内容について見ますと、やはり高齢化の進展の中で高齢者の再就職というものがはかばかしくない、あるいはまた、女子の職場進出というものが進んでおります中で、なかなか希望者全員というわけには進んでいない、さらにはまた、素材産業等産業構造の転換ということで、やはり業種によりましては厳しい状況にもある。こういうような各種の構造変化というものが進んでおるということを背景といたしまして、労働力の需要と供給というものが円滑に結合するというところがなかなか、いわゆるミスマッチ問題という形で進みにくくなっておる。この辺が、景気は上昇しても雇用失業情勢がなかなか改善しない、あるいは改善のテンポが鈍いという原因である、こういうふうに考えておるところでございます。
 こういう構造変化に的確に対応して雇用の安定を確保していくというのが私どもの当面の最大の問題であるわけでございます。そのために、基本的には昨年の十月に策定されました第五次雇用対策基本計画というものに基づきまして、こういう技術革新の進展であるとか産業構造の転換等に対しまして総合的かつ積極的な対応を進めていかなきゃならぬ、あるいはまた、高齢化対策について、特に高齢者の雇用の安定という面での対応をさらに積極化しなければならない。さらにまた製造業、いわゆる第二次産業から第三次産業へ、いわゆるサービス経済化というものが進んでおるわけでございまして、こういうサービス経済化への進展に対する労働対策面での対応を進めていく必要がある。さらにはまた、このミスマッチ問題の解消のために、労働市場の変化に対応して労働力の需要と供給というものが円滑に結びついていくような労働力需給調整政策とその体制の整備というようなものを基本に今後進めていかなければならぬ。また、そのための必要な予算というようなものもまた確保しながらやっていかなきゃならぬ。こんなような考え方でこういう動きに対して対応していきたいと考えておるところでございます。
#34
○高杉廸忠君 雇用失業情勢を労働経済指標で見ますと、完全失業率は二・七%から二・八%の高水準で推移しているんです。また、〇・六四程度で停滞をしているんですね。特に十月の労働力調査では、完全失業者のうちの定年、人員整理、パートタイマー等の期限切れなどによるものが五十二万人、三二・七%にも達しているわけですね。そこで、従来のマンネリ行政ではこの厳しい雇用失業情勢は改善されないのではないか、こういうふうに考えるんです。どうですか。
#35
○政府委員(加藤孝君) 確かに、先ほどもお答えいたしましたように、大きな構造変化が進んでおるわけでございます。そういう意味におきまして、こういう変化が進んでおるにかかわらず従来どおりのマンネリ化したやり方で対応が十分であるというわけにはまいらないと考えておるわけでございます。
 そういうようなことも含みまして、本年の夏には雇用保険法の改正を成立さしていただきましてこういうような新しい動きにも対応していこう。あるいはまた、現在需給調整機能の整備ということの一つの新しい方向として、労働者派遣事業というものに対する法的整備というような形での労働力需給調整システムの整備を進めていかなければならぬ。あるいはまた、さらには、大臣からも申しておりますように、高齢者の雇用対策について、今後の中長期的な方向をにらんだ上での高齢者対策についての法的整備というものも検討を進めていかなければならぬというようなことを考えておるところでございまして、現在、こういった面についても懸命に関係審議会等にお諮りしながら準備、検討を進めておるという段階でございます。
#36
○高杉廸忠君 今御説明ありましたが、どうも労働省は景気回復の跛行性や求職活動の変化等を雇用停滞の理由に挙げていると思うんですね。しかし私は、基本的には、まず第一に急速な高齢化、第二に産業構造の転換、第三に技術革新の進展、第四にパートなど女子労働者の職場進出、第五に長時間労働、これらの諸要素が複合的に関連して今日の厳しい雇用失業情勢、こういうふうになっていると考えるんです。私は、今後も楽観できないのではないかと、こう思うんです。
 そこで大臣、大臣からこれらの諸問題に対する取り組みの姿勢についてぜひひとつ伺っておきたいと思うんです。大臣いかがですか。
#37
○国務大臣(山口敏夫君) やはりこの技術革新の時代、あるいはニューメディア等々、経済構造といいますか、非常に大きな変革の中にあるわけでございますが、必ずしもこうした新しい時代における産業活力というものが雇用に結びついておらない、こういう御指摘も含めていろいろ御意見をいただいたと思うわけでございますが、我々としては、そうした時代の変化といいますか、新しい産業構造の変化を先取りするようなそういう雇用政策、あるいは雇用の拡充という問題への取り組みの中で今の雇用拡大ということを一層考えていかなければいけないんじゃないかというふうに我々認識するものでございます。
#38
○高杉廸忠君 先ほど浜本委員からMEに対する問題もありましたから、私は次に、精神障害者の雇用及び安全衛生対策について伺います。
 第一に、精神障害者雇用の実態及び求職登録状況、これはどのようになっているか、まず伺います。
 第二に、特にこれらの雇用について、どのような対策を講じているのか、あわせまして伺います。
#39
○政府委員(加藤孝君) 精神障害者の雇用の実態につきましては、率直に申しまして、プライバシーの問題等がございましてなかなかその辺についての実態の把握というのは難航をいたしておりまして、私どもも十分な把握ができておりません。
 また、精神障害のあった方々でその病状が回復いたしましたいわゆる精神病緩解者、これにつきましては、現在公共職業安定所におきまして、求職申し込みがあれば身体障害者あるいは精神薄弱者と同様に求職登録制度というものを適用しておるところでございますが、統計という形におきましては、身体障害者以外の障害者として一括扱われておるというふうな形で処理をいたしておりまして、その辺の数的な実態把握というものはいたしていないわけでございます。
 ただ、これらの方々について安定所の窓口におきまして求職登録制度というものを活用いたしまして、ケースワーク方式というもので求職受理から就職後の職場適応指導に至るまで、できる限りきめ細かな一貫したサービスをやっていくということで、その雇用の促進、安定に努めておるところでございます。
 しかしながら、精神病緩解者につきましては、どの程度の医学的管理が必要であるか必ずしもまだ明確でない。あるいはまた、社会生活指導面におきましても特別の配慮が必要とされる。さらには、先ほど申し上げましたようにプライバシーの問題がございます。そういうようないろいろ問題も内包しておるところでございまして、今後のこの精神病緩解者等の雇用の促進問題等につきましては、さらに雇用職業総合研究所においての研究を進めておる、こういうような段階でございます。
#40
○高杉廸忠君 それでは局長、労働基準法第五十一条、現在削除になっていますね。簡潔にその経緯というものを示していただければ結構なんですが、詳細はまたいずれ機会があると思いますから、簡潔にひとつ示していただいて結構です。
 それからまた、労働安全衛生法の制定に伴うものであれば、五十一条の削除が、その法律条文は精神障害者を対象にしていないと考えてよいか、この点もひとつ、確認ですけれども、伺います。
#41
○政府委員(寺園成章君) 昭和四十七年の労働安全衛生法の制定施行に伴いまして、病者の就業禁止をいたしておりました旧労働基準法五十一条は安衛法の六十八条に引き継がれたところでございます。
 従来の基準法におきましては、精神病等にかかった者の就業禁止を規定をいたしまして、具体的な精神病名を規定をした規則を持っておったわけでございます。新しい安全衛生法におきましては、法律上は精神病という規定は置いておりませんけれども、労働省令で就業禁止を定めることにしておりまして、その労働省令におきましては、「精神障害のために、現に自身を傷つけ、又は他人に害を及ぼすおそれのある者」、これを就業禁止の対象にいたしておるところでございます。
 考え方といたしましては、健康管理技術の進歩に対応いたしまして、個別の病名を規定をするということは適当ではないという考え方に基づくものであるというふうに承知をいたしております。
#42
○高杉廸忠君 局長ね、大企業において無人化だとか、オートメ化が進んで、これに伴って職業病としての新しいノイローゼが労災適用となったケースがあるわけですね。新しい問題として注目をされているわけです。
 そこで伺うんですが、大企業等で企業内産業精神衛生コンサルタントなどがつくられているんです。その実態をどこまで把握されていますか、まず伺います。
#43
○政府委員(寺園成章君) 労働省におきましては、昭和五十四年に労働力の高齢化に伴う健康問題に対処いたしますために、中高年齢労働者の健康づくり運動を提唱いたしまして、心身両面にわたる積極的健康づくりを各企業に推進をしておるところでございます。その一環といたしまして、産業医の研修でありますとか、企業内のヘルス・ケア・リーダーの養成などを行っておるところでございます。
 実態につきましては、五十七年に実施をいたしました労働者の健康状況調査によりますと、精神衛生対策の実施をいたしております事業所数は三五%ございます。内容といたしましては、いろいろございますが、特に大企業におきましては相談制度が高い率で実施をされておりまして、相談の担当者は産業医、医師が最も多く、次いで専門医または専門のカウンセラー、衛生管理者等々の順になっておるというふうに実態を承知いたしておるところでございます。
#44
○高杉廸忠君 大臣、ぜひひとつ御答弁いただきたいんですが、精神障害者の社会復帰及び雇用確保については重要な課題だとして今日に至っていると思うんです。
   〔委員長退席、理事佐々木満君首席〕
ぜひとも労働大臣山口さんが在任中にこれら問題についてのめどをつけてほしい。特に私どもは期待を寄せているんで、ひとつ大臣、前向きに決意を伺いたいんです。
#45
○国務大臣(山口敏夫君) こうした問題に対しまして大変きめ細かいと申しますか、非常に大きな関心と問題の指摘をしていただいておりまして、私も心から敬意を表し申し上げるわけでございますが、先ほどからの加藤局長の答弁にもございますように、プライバシーの問題でございますとか、あるいは社会生活の指導面における特別の配慮が必要とされるという問題でございますとか、あるいは医学的管理の問題でございますとか、こうしたいわゆる職場と精神障害者の社会復帰という問題につきましては、大変難しい点が多々あるということも、私今一層認識をさせられているところでございます。何とかこうした問題に対しましても、一人一人の特性を配慮した職業指導でございますとか、職業紹介というものの施策をどういう形で進めていくことが一番大事かということにつきまして、私なりにまた研究もさしていただきたいというふうにお答えをしたいわけでございます。
 また、こういう問題も、先ほどの厚生省との政策協議ということは高齢化社会における対応というのが中心でございますが、今高杉先生の御指摘の精神障害者の社会復帰の問題、こうした問題も、厚生省ともいろいろ相談する意味のある課題でもあるというふうにも考えるわけでございまして、ここでこういう方針で取り組んでまいりたいということの具体的な御答弁を申し上げられないのは大変恐縮に存ずるわけでございますが、さらにこうした問題の状況、事実認識を私なりに勉強させていただきまして、またこの社労委の場所でも御答弁申し上げたいというふうに考えております。
#46
○高杉廸忠君 一つお願いがあるんですが、去る八月二十六日付の朝日新聞に報道されておりますAさんの問題、かつて精神病院に入院していたことを理由に解雇されたこの問題ですね。詳細は資料として政府委員を通じて渡してありますから、きょうは簡潔にお答えを、確認という意味で伺いたいんですけれども、ぜひともひとつ御調査の上、こういうことのないように御指導と善処をいただきたい。お願いをするんですが、いかがでしょう。
#47
○政府委員(加藤孝君) 御指摘の資料は私どもも拝見させていただいております。実情につきましてよく調査させていただきまして、必要な指導をしてまいりたいと考えております。
#48
○高杉廸忠君 たくさんの質問用意をしましたが、中小企業問題、あるいはMEの問題、あるいは雇用問題等々でありますが、制約された時間でありますから、残り少ないわけであります。したがって、時間の関係で締めくくりではありませんけれども、ひとつ大臣を激励したいし、ぜひ実現をしたいということを含めて申し上げたいと思うんです。
 先ほど来指摘したように、今日労働行政の抱える課題というのは山積しているわけです。ME化、あるいは技術革新に伴う産業構造、あるいは就業構造の変化、急速に進む高齢化社会への対応、あるいは雇用安定対策等の緊急性、あるいは今お願いをしました障害者の雇用、多岐にわたって社会の変化に即応した積極的な労働行政が強く今日求められていると考えます。こうした中で、労働政策の一層の充実のためには、予算面で裏づけが十分確保されなければならないことは言うまでもないんです。いよいよこれから昭和六十年度の予算編成が本格化してくる状況にあるわけです。労働大臣としてどのような施策の上に重点を置き、どう臨むか、この際、大事な問題でありますから、大臣の考え方、取り組みについて、決意も含めてお伺いをいたしたいと思うんです。
#49
○国務大臣(山口敏夫君) 先ほど浜本先生にもお答え申し上げさしていただきましたが、今御指摘の、労働行政が抱えておる諸課題を具体的に予算の中にどうこれを取り入れていくかということで六十年度の要求項目をまとめさしていただきました。
 具体的には、本格的な高齢化社会に対応した六十歳定年の一般化のための定年延長指導、六十歳代前半層の雇用就業対策、シルバー人材センターの拡充などでございます。そして、さらに、MEを中心とした技術革新への対応、産業構造、就業構造の変化に対応した労働対策、これは高齢者の方々の職域拡大を図るためのME機器の研究開発等にもこの際ひとつ予算を確保しようということで大蔵当局とも今折衝中でございます。また、経済社会の変化に対応した能力開発対策、これは職業能力開発法の整備ですね。それから四番目といたしまして、変動する国際社会に対応するための労働外交。これは労働団体でございますとか、経営者側でございますとか、そうした学者の専門家の方々、幅広い労働シンポジウムのような場面を通じまして、またアメリカとかEC等との意見交換、さらにはアジアでございますとかアフリカでございますとか、そうした諸国との技術協力、あるいは職業訓練というと大変語弊がありますが、そういった面における御協力を申し上げるというための予算の確保というものも大きな重点施策として何としても予算確保にひとつ全力を挙げたい、こういう状況でございます。
#50
○高杉廸忠君 最後になりましたから申し上げたいと思うんですが、今も大臣から予算に対する決意も伺いました。山積する諸問題、また、抱える問題のいずれもが深刻度を増す中で、マイナスシーリングの制約が課せられる大変厳しい中での予算編成になると思うんです。しかし、社会の変化に即応した対策の芽を伸ばし、労働行政の一段の前進のために、私は終始山口労働大臣に大きな期待を寄せながら、山積する諸問題についてもただし、かつ、幾つかの提案をいたしました。この際、大臣の特色を生かして、従来とは一味も二味も違う労働行政の実現、これを期待しているんです。意欲的な大臣の前向きな姿勢に私は敬意を表しているのですが、その真価は予算が裏づけになるわけであります。その実現にあると考えるのです。厳しい情勢でありますが、大臣のひとつ奮闘を心から願い、ここに激励をしたいと思うんです。
 詳細には、いずれ機会を得ましてからまた御質問の機会があろうと思いますので、最後に大臣の決意を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
#51
○国務大臣(山口敏夫君) こうした社労委の席で適当かどうかと思いますが、十年ほど前に厚生省で政務次官をしておりましたときも、高杉先生は藤原道子先生の政策スタッフとして御活躍をいただいておったわけでございまして、その折も大変な御助言、御協力もいただきまして、十八年来不毛の対立といいますか、大変問題になっておりました森永砒素ミルク事件の救済を何とか進めていかなきゃならないということで、全く画期的な、ひかり協会という被害者救済のための財団を設立いたしました。それがサリドマイドでございますとか、スモンでございますとか、その後の薬害あるいは食品公害その他の行政の中に大きな一つの方向づけをした、こういうことで、その当時以来先生の御見識や政策的な助言ということに大変敬意を表しておるわけでございます。
 私も、大変微力ではございますが、このたび労働行政を通じて国民生活の安定、また、二十一世紀時代に対応する日本経済、国民生活というもののかなめは労働行政である、こういう強い認識と決意を持っておりますので、今日までの参議院に限らず、衆議院に限らず、こうした委員会において御論議いただきました先生方の問題提起を何とかともにひとつ論議の中でまとめさしていただきまして、いろいろな施策の実行、また、その路線をしくべく全力を挙げて労働行政に取り組みたい。そしてまた、御指摘のように、やはりその裏づけになる予算という問題におきましても大変大きな、一つの実行がそこに伴ってくるわけでございますので、予算編成を前にいたしまして、我々もこれらの施策のための予算の確保に、これまた真剣に努力をしたいということでございますので、一層の御協力、また御助力をこの席をおかりしましてお願いさしていただきたいと思う次第でございます。
#52
○中西珠子君 労働大臣は、図らずも労働大臣におなりになったのではなくて、みずから進んで労働大臣のポストを希望されまして労働大臣におなりになって、そして意欲的に労働行政を展開しようとなすっているという御決意のほどを、先ほど来の質問におきましても、また新聞記者との会見におきましても、また私どもの方に御丁寧に御送付くださいましたごあいさつ状の中におきましても、その非常な積極的な御姿勢というものがありありとうかがわれまして、大変期待しているところでございます。
 労働行政に対しまして、何ですか、最近どうも経営者側寄りだとか使用者側寄りであり過ぎる。労働者の立場はあんまり考えてくれないのではないかとか、労働者の保護がどうも二の次、三の次というふうになって後手後手に回っているとかいろいろな批判があるわけでございますね。そのような批判を耳にいたしますと、これは労働大臣は今度どのような御決意で、どのような基本姿勢で労働行政に取り組もうとしていらっしゃるのかなということをもう一度大臣からお伺いしたいような気がいたしますんですが、いかがでございます
#53
○国務大臣(山口敏夫君) 諸外国から見ていただきますと、我が国の労使の関係、あるいは労働を取り巻く諸問題につきましては、それなりに大変高い評価、また日本のことを勉強せにゃならぬ、こういう方もふえておるわけでございますが、やはり日本自身の中でいろいろ考えますときに、今中西先生から御指摘のように、まだ労使双方の中にいろいろな問題、課題を抱えておるということも事実であろうと思います。
 特にそういう中におきまして、私は、労使双方の関係が国会における政党間の論議というものと必ずしも同質のものではないと思いますが、率直に申し上げまして、国会におきましても政権はたまたま自民党政権が続いておるわけでございますが、しかし国会で与野党が論議した問題が、あるいは先生方が提言をした政策がその日のうちに実行されるというものばかりではございませんが、そういう論議を通じてかなり政府や与党の政策の中にもこれが取り入れられて、そしてそれが結果的に、経過的に大きく国民生活に貢献をしておるということは厳然たる事実でございまして、やはり労使双方の関係におきましても、いろいろ経営者側、労働者側の厳しいやりとりの中で、その瞬間的に問題の取り入れということはならない場面におきましても、やがてその問題が一つの労使双方のコンセンサス、合意の中でこれが取り入れられて労働者や雇用者の方々の福祉に大変役立っておる。そして、それがまたひいては安定した日本経済というものをより強固にしておるということは言えると思うわけでございます。
   〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕
 しかし、今日は非常に高齢化社会、また技術革新の時代ということでございますから、過去のペースで今日の問題が乗り切れるかということになりますと、問題認識を一層速めて一つの合意や方向づけというものをしなきゃならない、こういうことでもあろうと思いますので、労使双方の問題は労働大臣及び労働省が積極的に介入するという性格のものではございませんが、そういう時代的な状況変化に対応して、政府として、あるいは労働省として、ひとつ適時国民生活の安定、国民福祉を守るという立場から、こうした労使の問題、あるいは労働問題にも一つの考え方は積極的にやはり申し上げていくということが私どもに課せられた一つの大きな責任ではないかというふうに考えておるものでございます。
#54
○中西珠子君 私は、労働大臣の御発言の記事は全部切り抜いてこのように持っているわけでございますが、十一月八日付の毎日新聞で「新内閣の政策」というのがございまして、労働大臣のお顔がこのように出ておりまして、その中で、最近の労働行政は経営側寄りという声がありますが、どうなんでしょうかという記者の質問に対しまして労働大臣は、「労働界に6、産業界に4の比重を置いてバランスが保てるのではないか。」とおっしゃっているわけでございます。この御発言はこのとおり信じてよろしゅうございましょうか。
#55
○国務大臣(山口敏夫君) どうしても経営という立場に立ちますと、経済の持つ合理性や効率性というものが優先されがちでございますが、やはり最終的には、労働者といいますか、給与雇用者の方々の、あるいは国民の経済的な安定というものなくして自由経済、日本経済というものは成り立たないわけでございますから、その辺の意見を私ども伺っておる中に、やはり五、五とか七、三とかありますけども、私の基本的な認識といいますか、イデオロギーとしては労働問題を考えるときに四と六の比率、ウエートの置き方というのが一つのバランス感覚ではないかというふうな認識を持っておるということをインタビューでお答えさしていただいたわけでございます。
#56
○中西珠子君 どうもありがとうございました。どうぞその比重を曲げておしまいにならないで、労働側のためにも大いにやっていただきたいということを御要望申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 先ほどから労働行政の中の重点項目、そしてまた予算要求に当たりましての重点事項というものの中に労働外交というのが入っておりました。それで、その労働外交はこれまで労働省が海外技術協力の面や国際会議の面、いろんな面で大いに推進していらしたところなんでございますし、また、新たに労働大臣が、これからもっとこれの強力な推進を図るということで大変結構と思うのでございますが、ただいまレーバーアタッシェという人たちが、これは労働省から派遣されて各国で労働事情の調査をされたり、また労働関係、日本の労働事情の理解を任地の国で推し進めるために努力をされたりしているわけでございますけれども、このレーバーアタッシェが今たしか十三人いらっしゃいまして、その方々がみんな西側の国々に駐在していらっしゃるわけでございますけれども、東側の国々には一切レーバーアタッシェなど置く必要はないと大臣お考えでいらっしゃるんでしょうか。
#57
○政府委員(小粥義朗君) いわゆるレーバーアタッシェ、先生御指摘のように世界に十数人置いておるわけでございますが、いわゆる東側の世界に置いたことはないというわけじゃございませんで、例えばチェコにはかつて置いたことがあるわけでございます。ただ、何分限られた数でございますので、より需要の高いところということで今ベルギーの方に移っておりますけれども、必ずしも東側を全く排除するとか、そういう趣旨のものではございません。
#58
○中西珠子君 チェコをやめてベルギーのブラッセルに、EC関係のためにお置きになったということは承知しておるのでございますが、予算要求をなさるに当たりましては、東側の国にもやはり要求なすってお置きになったらいかがかと思ったものですから申し上げたわけでございます。
 それから、雇用対策の重要性ということはもちろん重点施策として打ち出しておられるわけでございまして、また、私の前に質問なすった方々が、高齢化社会に突入するに当たっての高齢者の対策とか、それからまたMEの進展に対応するための政策、また、女性の職場進出に対応するための政策、いろいろな政策についてお聞きにもなりましたし、また大臣からお答えにもなりましたので、余り同じことをお聞きしても同じようなお言葉をちょうだいするのでは大臣もお疲れになると思いますので、私はちょっと角度を変えまして、今回、労働者派遣事業、これを制度化するための立法化作業を労働省がお始めになったと伺ったものでございますから、その立法化作業をなさることにお決めになりました理由につきましてお伺いいたしたいと思います。
#59
○政府委員(加藤孝君) 近年、企業内におきましていろんな専門的な職業群、コンピューター関係であるとかプログラマーだとか、そういうようないろんな専門的な職業群が増加をしてきております。あるいはまた、従来の労働のパターンと違いまして、自分の都合のいい日に、あるいは都合のいい時間帯に専門的な知識、経験を生かして就業したい、そういうことを希望する労働者も出てきた。あるいはまた企業の方におきましても、コンピューター関係の導入あるいはその設備の運営であるとかいうような一時的なそういう事情に対応してこういう人たちを使うというような形での労働者派遣事業的な形態の事業が増加をしてきておるわけでございます。
 これは、一応こういった事業は労働側にもそういう形の就業の希望がある、それからまた企業側にもそういうものに対するニーズがある、こういうようなことで、労働力需給の調整機能を持ったものという面では、従来の職業紹介であるとか請負であるとか、そういうような形では必ずしも十分に果たし得ないような機能を、役割を担って一応お役に立ってきたというような面がある一方、この事業で働いております労働者の保護とか雇用の安定、こういった面では一方いろいろ問題がある。あるいはまた、だれが雇用の責任を負うのか、あるいは使用者はだれなんだというような問題等も起こっておる。さらにまた、大きな問題といたしまして、これが職業安定法の禁止をしております労働者供給事業に当たるのではないか、こういうような関係の問題も一面抱えておる、こんなような事情にあるわけでございます。
 こういうような新しい派遣事業的なものが社会経済の中で一つの役割を果たしている、あるいはまた果たすようになってきた、こういうような変化というのは昭和二十二年の職業安定法制定当時では全く考えられていなかったものでございまして、この労働者供給事業を禁止しております現行法のこの辺の面から見ますと、形の上では問題があるにいたしましても、果たしてこの労働者供給事業が本当に禁止をしようとしていた強制労働の禁止であるとか、あるいはまた中間搾取の排除であるとか、こういったような面から見てそういった反社会性というものがこういう事業に認められないではないかというような形でいろいろこの扱いについての論議が行われてきたわけでございます。
 日時的に見ますと、昭和五十三年に行政管理庁からこの問題についての提起がございました。労働省としては、その年にこの労働者派遣事業問題の需給システム研究会というものを設けまして研究を進めてまいりました。さらにはその後労使も入りました三者構成の労働者派遣事業問題調査会というような形での研究も進めてまいりました。また、その調査会報告というものを受けまして、ことしの初めから中央職業安定審議会におきまして労働者派遣事業等小委員会というものが労使公益三者構成で設けられまして、先月この小委員会報告が提出をされ、これがまた審議会の本委員会におきましても、こういう方向でひとつ早急に立法化に取り組むべきだと、こういうような御報告をいただいた、こういうような実態の推移、そしてまた研究なり、審議なりの経過を経まして、私どもこういう事業というものを、労働者の保護あるいは雇用の安定というものに十分配慮をしながら一定のルールのもとにこれを認めていく、こういう方向を打ち出していくことが必要である。一方、また、かねて禁止をされておりました労働者供給事業禁止そのものの基本的な精神というものは厳として維持をしていく、こういうようなことでこの派遣事業法案というものを今度御提案申し上げていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。
#60
○中西珠子君 いわゆる労働者派遣事業というのが非常に盛んになりまして、専門的な分野の仕事ばかりでなく、一般の事務の取り扱いとか、それから清掃関係とか、警備の関係とか、パーティーのコンパニオンに至るまで、いろいろ労働者派遣事業というのが花盛りという状況になってきたわけでございます。これまで一応職業安定法の四十四条で今局長がおっしゃったように禁止されている労働者供給の事業というものが、四十五条によりまして労働大臣の許可を受けた場合は労働組合は行うことができるけれども、それ以外は禁止ということになっていたのに、このように労働者派遣事業と言われるものが今まで非常に繁栄してきた。そしてそれは労働者側のニードもあったし、使う側のニードも非常にあったんだというお話でございますが、一応これは業務処理請負事業として大目に見られていたということでございますか。
#61
○政府委員(加藤孝君) この辺は大目に見てきたということよりも、私どもの指導方針としては、労働者供給事業にならないようにやっていただきたい。具体的に申し上げれば、非常に運営を誤てば現行の労働者供給事業、具体的には職業安定法の施行規則四条というのがございまして、そういった施行規則四条に触れないような形で、はっきり請負なら請負という形で明確にやっていただきたい、そうであれば私どもがとやかく言う事業ではない、こういうタッチで来たわけでございます。
 しかし、そういう請負の形でやりながらも、時に派遣先においてのいわば使用関係が、派遣先とその労働者との間の使用関係というものがいろいろ出てくる。また、その辺を認めないと実際には業務が円滑にいかないというような問題等も出てきておるということでございまして、その辺について、だからそういうものは禁止すればいいんだという説もございますが、しかしそれを禁止をするということに伴ういろいろな弊害というものもあるわけでございます。逆にまた、それをある程度一定の規制、一定のルールを設けることによりまして、それが労働者の保護の面で遺憾のないような配慮をしながら認めていくという立場もあるわけでございまして、今回はいろいろ長年の議論を経まして後者のそういう立場でこれを認めていこうということで踏み切りをしようということでございます。
#62
○中西珠子君 職業安定法の施行規則第四条で、労働者供給事業ではない、請負事業として認めることができる要件というのが列挙してございますね。これに合っているからいいということでこれまで労働者派遣事業というものが行われてきたわけでございます。
 そもそも職業安定法が労働者供給事業というものを労働組合以外には認めなかったというその立法の精神というのは、先ほど局長もおっしゃいましたけれども、中間搾取の排除とか強制労働を排除するという御趣旨というふうに考えているわけでございますけれども、実際において労働者派遣事業で派遣されてくる労働者の中には、これもういろんな、労働者派遣事業によって雇われている人とか登録している人から陳情があったり、話を聞いたり、調査したりした結果なんですけれども、中間搾取というものがないとは言えないのではないかと思うんですね、現在の実態におきましては。結局賃金は三割から四割は派遣先の会社が取ってしまう。そして本人に渡るのは六割とか七割。よくて七割、普通六割ということだというわけでございまして、こういう点は今度立法化に当たりましてはもう厳しく監督ができるように立法の内容をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
#63
○政府委員(加藤孝君) 今御指摘の問題については、この派遣事業問題を論議されました労働者派遣事業等小委員会、職安審の専門委員会として論議された中の大きな問題でございまして、ただ中間搾取というものが、一体幾らなら中間搾取で幾らなら中間搾取でないのかという問題もございます。それからさらに、こういう専門的な業務になってまいりますと、そのための必要な訓練というようなものも常時やらなきゃならぬという意味で、いろいろまた、単に労働者を抱えておるということではなくて、単に雇用しておるというだけではなくて、そういう各種の訓練費用とかいうようなものもいろいろある。さらにまた、そういう派遣先の獲得というような問題も絡みまして、なかなかその中間搾取論に対して決め手になる具体的な方法論というものは見つけにくいというようなことで、この報告書におきましては、これはもう労使公益の三者でおまとめいただいた報告書でございますが、そこでは、この派遣事業所における経理帳簿類の提出というような形で、こういった問題について問題のあるものはチェックできるようにする形を残すというような中で一応やったらどうだろうか、こんなような考え方での報告がなされておるということでございます。
#64
○中西珠子君 民間の職業紹介所、実費ではなくて営利の方ですね。これも手数料は受付手数料プラス半年間は手数料として一割取っていいというふうなことが現行の規則だと思うんでございますけれども、こういう民間の職業紹介所と労働者派遣事業として今度認知されて制度化されるものとのつり合いというものをやはりお考えにならないとちょっとまずいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
#65
○政府委員(加藤孝君) その点につきましても、やはりこの小委員会の場で論議がございます。問題提起もございまして、これにつきましては現在の営利職業紹介事業という形で行っておりますものの手数料問題を含めまして、現行の制度についての改善を加えるということで、今御指摘の問題等も含めまして、今後具体的に論議を深めていく予定にいたしておるところでございます。
#66
○中西珠子君 労働者派遣事業というものを定義づけられまして、またそれを二つに分類して、いわば登録型というもの、それは許可が必要。それから常用雇用型、これは届け出でいいというふうになさるというのが労働者派遣事業等の小委員会ですか、そういったものの立法構想の中にあるというふうに伺っておりますが、殊に登録型の労働者派遣事業というものは、登録しておいて何か仕事の口があったその時点において雇用契約を結ぶ、そして、派遣先から帰ってきたらその雇用契約は消滅すると、そういうことですか。
#67
○政府委員(加藤孝君) 典型的な型としてはそういったものを考えております。
#68
○中西珠子君 そうすると、派遣事業をやっている会社で登録した人の雇用の不安定というものは余りなくならないということになりますね。
 その問題も一つございますが、派遣先の企業に対して、今度労働者派遣事業が大っぴらに制度化されますと、派遣先の企業が、どの企業でも労務費はできる限り削減したい、減量経営をしたいという会社が多いわけですから、派遣労働者を使う方が便利だ、社会保険から労働保険なんかも余り考えてやらなくてもいいし、いろいろ労務費がかかる面は自分たちの方で考えなくてもいいから、まあいわば安上がりの労働力ということで、そういう人たちを使った方がいいという考えの会社が大分ふえまして、そして常用雇用の労働者というものを最小限に減らしてしまうという傾向が出てこないか。常用雇用の代替として派遣労働者を使うという傾向が出てこないかという心配がございます。また、派遣先の企業の労働者の賃金や労働条件が引き下げられることに結果的になるのではないか。また、労働力の合理化の結果、そういった派遣先企業の労働者の雇用が不安定になるという、そういう心配があるわけでございますけれども、そういった傾向に対する歯どめというふうなものはお考えになっておりますか。
#69
○政府委員(加藤孝君) 今先生御指摘のございましたような問題は、やはりこの中職審の派遣事業等小委員会でもいろいろ論議のあったところでございます。そういうような論議を踏まえましてこの小委員会報告におきましては、我が国における終身雇用制、こういう雇用慣行というものとの調和に十分留意する必要がある。そして、御指摘のあったような、派遣事業が常用雇用の代替を促すというようなことにならないように十分配慮する必要がある。こういうような基本的な観点に立ちまして、この派遣事業が認められる対象の業務をこれは限定すべきである、こういうことで、一応認める業務の範囲といたしまして、専門的知識や経験を有する者に行わせる必要のある業務、あるいはまた、その業務に従事する労働者について特別の雇用管理の行われている業務というような基準等も設けておるわけでございます。
 また、具体的にその対象業務というものを確定するに当たりましては、やはり社会的、一般的な合意が得られるものであるということが適当であるということで、この例示は一応十四業務が例示をされておりますけれども、具体的には今後中職審の場におきまして意見を関係者等から、あるいはまた委員の意見等十分論議、審議をいたしまして定める、こういうことで対応しようということにいたしておるわけでございます。
#70
○中西珠子君 対象業務を限定するということは大変結構なんでございますが、専門職的なものに限定するといった場合に、今まで単純な事務補助というふうなものをやるために登録されていて、そして派遣されて働いてきたというふうな人たちが労働者派遣業務の対象というふうにならないという心配があるという陳情も受けているわけでございますけれども、その点が一つ。それから、ただ対象業務の限定だけではいけないのではないか。やっぱり労働者派遣事業というものは、時期を限って短期的もしくは繁忙なときにどうしても要員が足らないからその確保のために派遣を受けるというふうな限定が必要なのじゃないか。また、この中央職業安定審議会の小委員会の方の労働者意見として出ている部分でございますが、例えば、「特定企業へ、恒常的に反覆して、労働者の派遣を行うことを目的とする事業活動は禁止されるべきである」と、これは労働者意見なんですが、このような配慮も立法化の過程においてはしていただく必要があるのではないかと思うのです。というのは、常用雇用の代替として使われるという心配が非常にあるということもありますし、そのような御配慮はしておりますか。それが一点でございます。
 もう一つは、逆に、派遣労働者が派遣先の企業でとても気に入られてしまって、ぜひここで常用雇用労働者になってほしいと言われた場合、御本人が、いや派遣先の企業での常用雇用をお受けすることはできません。というのは、自分は派遣元の企業で前もって契約をしておりまして、派遣先の企業でここへずっと来ないかと言われても絶対受けてはいけないというふうな契約をしているからと、こういうお答えが時々あるわけでございますが、この二点ですね、いかがでございますか。
#71
○政府委員(加藤孝君) 対象業務といたしまして、例えば単純労務であるとかあるいは一般の無技能的な形での一般事務というようなものにつきましては、これは今までの論議の経過からいいまして、具体的には職安審でさらに決められるものではありますが、今までの論議の中では、こういうものは認めるべきではないんじゃないかというような意見が強い中で、例示の中には入ってきていないものでございます。しかし、これも先ほどから申しておりますように、具体的には今後の審議会での論議を待ってということで定めるものでございます。
 それからまた、派遣期間の問題、あるいはまた相手方の方に、派遣先にとられてしまう問題というような関係の問題も、やはり小委員会の場でいろいろ論議もされ、また関係業界のヒアリング等の場でもいろいろ出されておる問題でございますが、こういった点について、それでは一定の期間を限ってしまうと、逆にまた、そういう派遣労働者の雇用の安定という面からいって、せっかく向こうも使いたいと言っておりますのを無理やりそこで切ってしまうというのもまた一面問題もあるということ等もございますし、それからまた、こういう労働者を企業間で、いい労働者は私のところへ来てくれという形で、言葉は悪いんですが、いわゆる引き抜くというような、そういったことがどんな企業間においても今法律で禁止をされておるというものでもないというような中でいろいろ論議がございまして、一応そういった問題について特別の歯どめをかけるというようなことはこの報告には出ていないわけでございます。
 しかし、先生御承知のように、これは五十三年から論議してきました問題で、いろんなケースがある、もう一律に派遣事業というのはこうなんだああなんだということを言えないいろんなケースもございますし、そしてまた、いろいろ動きつつもあるというような中で、一応こういうような形でルール化してやってみよう、そしてその上で、三年程度の施行の上で改めて再検討をするということもやっていいではないか。そういうような基本的なスタンスで、いろいろ意見なり実情のいろんなばらつきがあるという中での一つの踏み切りをしようと、こんな考え方で出されておるものでございます。
#72
○中西珠子君 私は、立法化に反対しているわけではなくて、これから立法化作業をなさるときに、もちろんそれが終わりましたら中央職業安定審議会におかけになって、そしてオーケーということになりましたら法案提出ということになるだろうと思いますが、やはり立法作業をなさるに当たりまして私が申し上げたような点も配慮をしていただいて、そして本当の意味で労働者の保護、雇用の安定というものに役立つ、そしてまたいわゆる労働力の需給のミスマッチというものを――よくミスマッチとおっしゃいますから同じような言葉を使わしていただきますけれども、ミスマッチを防ぐ、そして円滑な経済の発展を期すということと同時に、社会問題として、いろいろ労働者の保護の問題が出てきたり、雇用の不安定の問題が出てくるということは困ることでございますので、そういうことを予防していただきたい。それで、基準法の適用とか労働保険、社会保険の適用、そういったことについての派遣先事業と派遣元の事業主の責任分担というものをこれからもちろん明確になさる。立法化の構想の中にも一応出ておりますけれども、それを明確になさる。
 そして、労働者の保護、雇用の安定のために、また日本経済社会の発展のためにやっていくというに当たりましては、やはり行政のサイドからの指導と監督が非常に必要だと思うんです。法律がちゃんとするばかりでなくですね。三年たったら見直しをするんだからとおっしゃいましたけれども、三年間にひどい目に遭う人も出てくるかもしれないということもありますので、やはり行政の面の指導監督強化ということをしていただきたい。殊に職業安定所の職員それから労働基準監督官の増員と教育訓練というものを大いにやっていただきたいと思うわけです。技術革新がどんどん進むし、高齢化の進む中で、そしてまたいろいろな就業の形態が出てくるし、またいろいろな雇用の形態に対する志向が変わってきている、志向の多様化の中でやはり迅速に的確に判断して対応していただくという面でのやはり教育訓練というものも必要だし、絶対数が足りないということもありますから増員もやっていただきたい、このように考えているわけでございまして、予算の中でぜひそれをお入れいただきたいと思うわけでございます。
 大臣、いかがでございましょうか。
#73
○国務大臣(山口敏夫君) 今先生が御指摘のような監督署の監察官等につきましても、行革の折でございますけれども、毎年若干でございますけれども増員を認めていただいて、そして健全な雇用環境が確保されるよう鋭意努めたいと努力しておるところでございます。
#74
○中西珠子君 私はこの前、この春の予算委員会でも基準監督署の監督官が足らないのではないかということと、その増員と教育訓練の問題を、殊に幾ら行財政改革の中とはいえ、必要なものはやはりどんどんおとりになっていただきたいということを申し上げたわけでございますので、どうぞ大臣頑張ってください。
 それから時間短縮につきましては、これまでの質問者の社会党の方が随分お話しになりましたし、大臣からの御所信も伺いましたのでございますが、まあ大臣は年間の労働時間をなるだけ二千時間以内に減らすという方向に御努力くださる、また、既に通牒もお出しになっていることでございますが、ゴールデンウイーク、これを継続的な休暇をとらせることを奨励するという御趣旨と承っておりますが、最近労働基準法研究会の中間報告が出まして、一週四十五時間、一日九時間などという提言がなされて、これは労働側から一斉に時代錯誤ではないかという反発を受けたわけでございます。そして労働団体は時短闘争に春闘から本腰を入れるということでございます。そういったことでございますが、労働大臣は、一日の労働時間、一週間の労働時間というものについては短縮をするおつもりなのかどうか。
 私は最近婦人団体の集会なんかに参りますと、日本の男性の長時間労働はもう本当にこれは貿易摩擦の一原因として欧米諸国からいろいろ、私も回ってみますと言われるのでございますけれども、そればかりでなく、主婦の代表がやはり日本の男性の労働時間は長過ぎる、時間を短縮してそして夫を家庭に帰してほしいというふうな訴えをされているのをあちらこちらで聞きまして、私はちょっと胸が詰まるような思いがしたわけでございます。
 また、子供たちにいたしましても、父親は会社人間で朝早く出て夜遅く帰ってくる、ほとんど父親とはすれ違いのような生活であって、父親と触れ合うということが余りない日常生活、家庭の団らんも余りないというふうな日常生活をしていて、子供の養育というものは母親が一人で引き受けざるを得ない状態で、その結果、教育ママがうんとふえましたり、それも教育ママは結構ですけれども、過度の教育ママというのは困るわけでございまして、子供が圧迫を感じますし、それからまた一方過保護のママがふえまして、このごろよく言われますいわゆるピーターパンシンドロームですか、そういう本当に無関心で無気力で無責任な大人子供というふうな若い人たちがふえているという状況もございます。
 それで、もう少し労働時間を短縮する、一日の労働時間を短縮、過の労働時間を短縮というふうな方向で少しお考えいただきたい。この時間短縮というのは労働問題でもございますが、今申し上げたような面では社会問題、教育問題というものにもなりかねないような問題だと思いますので、労働大臣は、その年間の労働時間の短縮も結構でございますが、一日の時間外労働の規制とか週の時間外労働の規制とか、それを男女ともに必要というふうにお考えでいらっしゃるかどうか。欧米諸国を回ってみますと、時間外労働の規制は男女ともにやっているところもございます。また、割り増し賃金も日本のように低くなくて、たとえ日本と同じに二割五分という割り増し賃金を決めておりましても、時間外労働の初めの一時間もしくは初めの二時間だけは二割五分でいいけれども、後は五割増し、十割増しというところが多いわけでございまして、御承知のとおり初めからもう五割増しという国々もあるわけでございます。
 ですから、こういった時間外労働の規制とか時間外労働の割り増し賃金率の問題を労働大臣はどのようにお考えになっているかということをちょっとお聞きしたいわけでございます。いかがでございますか。
#75
○国務大臣(山口敏夫君) 中西先生がいろいろ御指摘いただきましたように、私も労働時間の問題は当事者の方々の問題のみにとどまらずに、こうした社会状況を考えますと、教育的な立場からも、あるいは家庭的な問題の中からもこうした問題は、幅広い問題認識の中で一つの方向を決めていくということは非常に大事なことだというふうに考えております。特にそういう点におきまして、今度基準局の中で、労働時間問題懇談会という中にも労使の、労働団体、経営団体はもちろんでございますが、消費者団体、婦人団体、学識経験者あるいは報道関係者等々広範な国民の皆さんの御意見を集約すべく、このメンバーについても非常に配慮して、議論の展開を待ちたいというふうに考えておるわけでございます。
 また、基準法研究会の一日九時間の問題につきましては、私は、有給休暇という問題がもっと正常な形でこれが行使されるということが時間短縮の問題の中で一番最初に考えていただかなければならない問題ということでもございますし、それから週休二日制というものを考えましたときには、基準法研究会の討議の中で出てきた一日九時間という問題もそういう議論の中で一つの考えとして出された、こういうことでございまして、これが即基準法の中で時間設定される、こういうことではなく、来年の八月ごろまでいろいろこの研究会の中で御論議をいただいて、当然そういう現在労働界側からの御意見なども十分踏まえて今後とも論議を続けていく、そういう一つの方向の中で私どもといたしましてもどういう取りまとめをしたらいいか、こういう手続になっておるわけでございますので、週四十五時間、一日九時間というものが一つの形として固まっておる、こういうことではないわけでございますので、その点の御理解もよろしくお願いを申し上げたいと思うわけでございます。
#76
○中西珠子君 もちろん労働基準法研究会は労働大臣の私的な諮問機関でありまして、おまけにこれは中間報告ということはよく承知しておりますわけでございますが、欧米諸国を回ってみますと、案外日本の労働時間の問題をよく知っているので驚くわけでございますね。女性の労働時間は時間外労働規制とか深夜業の禁止とかがあるのは知っているけれども、日本の男性はどうも危険有害業務を除くと三六協定さえ結べばほとんど無制限に時間外労働ができる、おまけに割り増し賃金は非常に安い、こういうふうなことをあちこちで言われるわけでございます。それで、ILOの世界労働報告にもちょっとそれが出ておりましたけれども、そのような労働条件、ことに長時間労働というものは貿易摩擦の一因にもなっているわけでございますから、その点はどうぞぜひ何とか時間外労働の規制の方向に向かって、また、割り増し賃金の率の引き上げという方向に向かって御努力をお願いしたいということを要望させていただきます。
 また、有給休暇の方をふやすということは大変結構なことで、これもまた大変細切れにしかとれない。また、法定の最低基準は非常に低うございまして、ILOの調査によりますと、百五十カ国の中で日本は一番おしまいから二番目なんですね。フィリピンが法定の最低基準が五日です。日本は六日ということですね。最低基準でございますよ。六日というのはどういう国がほかにあるかというと、タイとかそれからマラウイとか、そういう発展途上国以外にはないわけでございますので、今労働大臣が御努力になっていらっしゃる方向をぜひ大いに頑張って実現していただきたいと期待しているわけでございますので、よろしくお願いをいたします。
 もう私の時間が本当になくなってきましたけれども、もう一つよろしいですか。――パートタイムの労働者の保護という面で、これまでも社労委で本当に何度も何度も申し上げまして、また今度十月の三十一日に御発表になりましたパート労働対策要綱の中にも二、三取り上げていただいておりまして、大変私はありがたいと思っているんでございますけれども、私最近二度欧米を回ってきたんですけれども、ことにECの欧州議会、ルクセンブルクにございますが、そこに参りましたら、今度ECディレクティブ、ECの指令の中に、やはり欧米におけるパート労働者、ことに婦人のパート労働者がふえていることにかんがみ、また労働条件、賃金、それから社会保険、労働保険の適用状況というものが常用雇用の労働者に比べると悪いという状況にかんがみて、EC各国でパート労働法を制定するようにというEC指令を今度出すことにしたそうでございます。
 欧米の労働条件は、パートにつきましても日本よりはよくて、御承知のとおりに時間当たりの賃金も六五、六%から九〇%、オーストリアになりますと一〇〇%以上というのが常用雇用との対比において出ているわけでございます。日本におきましても、もちろん法案としては廃案になってしまっておりますけれども、社会党もお出しになったし、公明党もパート労働法というものを出しました。このパートの労働というものは日本においても欧米と同じようにどんどんふえていくという状況にもあると思いますので、パート労働対策要綱も結構なんでございますが、行政指導だけでは対応し切れない面もあるのではないかと考えますので、パート労働法を制定していただく方向で御検討願いたいと思うのでございますが、いかがですか。
#77
○政府委員(赤松良子君) 先生の御指摘のように、パート労働者が増加をし、その労働条件等についていろいろと問題があるということは御指摘のとおりでございます。ECダイレクトにつきましては、今後十分よく研究をいたしたいというふうに考えておりますが、また公明党の先国会にお出しになりました短時間労働者保議法案につきましてはよく研究をさせていただいたところでございます。
 このような法制化ということについての方向というものがあるということもよく承知いたしておりますが、労働省といたしましては、当面は今般策定をいたしましたパートタイム労働対策要綱に基づいて総合的に施策を推進をし、その状況をよく見守りまして、また問題があれば考えを新たにするというようなこともあろうかと存じますが、当分は、少なくともこの対策要綱ができたばかりでございますので、この周知徹底に努めたいとかように考えておる次第でございます。
#78
○中西珠子君 もう一言。
 来年ナイロビでございます国連の世界婦人会議の準備会議がヨーロッパでも開かれまして、御承知のとおりヨーロッパ経済委員会の主催でございましたが、そこにはアメリカとカナダ、そのほかヨーロッパの二十六カ国が参加したんでございますけれども、その会議が勧告を出しまして、もう本当にたくさんいろいろのことを盛り込んだ勧告なんでございますけれども、その中にも、ヨーロッパ経済委員会に属する国々は、パート労働法を制定するようにという勧告が一つ含まれておりますので、それもちょっと御参考のために申し上げます。
 それで、十月三十一日にやっとおできになりましたパート労働対策要綱でございますし、内容は大変結構なんですけれども、強制力がない、拘束力がないということでは、強力な効果的な行政指導をなさるとは思いますけれども、しかしそれが果たしてどのくらい行くか。またさっきの基準監督官の人数が足りないところに戻ってしまいますけれども、そういったところだとか職業安定所の方々の御指導、また婦人局が上に立って婦人少年室に対して御指導ということでなさるんだと思いますが、大いに効果的に総括的に御指導をしていただきますことを希望いたしますけれども、またそれがうまくいかない場合はあっさりと法律にしていただきたいということを要望さしていただきます。
 時間がなくなりましたのでちょっとしり切れトンボになりましたけれども、労働大臣も婦人局長もすべての労働省の方々が大いに労働行政のために頑張っていただきますように、社労委は本当に労働行政の後押しをする立場でございますから、私も予算獲得でも婦人局の予算は全然カットしないようにしてくださいと党首会談に申し入れたわけでございまして、そういうふうなことでございますから、労働大臣を初め労働省の方、大いに労働者のためにもなり、また日本経済の発展、社会の発展のために非常に大きな役割りを演じていらっしゃることを御自覚になりまして頑張っていただきたいと思います。
 終わります。
#79
○橋本敦君 私は、熊本県の興人八代工場、ここに集中的に発生しております二硫化炭素中毒による労災問題について、これから質問をしたいと思います。
 言うまでもありませんけれども、業務に起因する労働災害や職業病、これについてその速やかな救済を図ること。同時に、そういった労働災害や職業病が発生しないように職場環境の整備を進めていくという問題は、まさに労働者の命と健康にかかわる重大な問題でありますから、これ自体政府が責任を持つ労働行政の重要な根幹の一つであることは疑いがない、私どもこう思っておるのでありますが、まずこの点について、新しく労働大臣におなりになった山口労働大臣の所見を、簡単に一言伺いたいと思います。
#80
○政府委員(寺園成章君) 大臣が申し上げます前に、ちょっと申し上げます。
 働く人たちの命と健康を大切にしていくというのは、単に労働基準行政の重要課題であるだけではなくて、労働行政全体の最重点課題の一つであろうという認識を持っております。労働災害の減少のために従来から計画を策定をいたしまして取り組んできておるところでございます。全体的には低下傾向にはございますけれども、なお年間二千六百人近くの方々が亡くなられるというような状況もございますので、現在の第六次の労働災害防止計画に基づきましてこれからも積極的に、また、関係者の一層の努力も促しながら、労働災害防止対策というものを進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#81
○国務大臣(山口敏夫君) ただいま労働基準局長からも申し上げさしていただきましたように、やはり労働行政にとりまして最重点の課題といたしまして、労働災害というものをなくしていく、これはもう予算の問題でございますとか、あるいは諸政策にまず優先する非常に重要な問題である、こういう認識のもとに、省幹部ともども労働災害を防止していくための最善最大の努力を傾注したい。私自身も就任以来そうした労働災害の問題の現場にも伺いまして、労働災害の問題に対する大臣としての関心を一層提起していると、こういうことでございます。
#82
○橋本敦君 以下お尋ねをする問題について、今局長なり大臣がお話しになったそういう立場でぜひとも答弁をしていただきたいということをまず要求をしておきたいんです。
   〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕
 問題の二硫化炭素中毒、これの労災、職業病の認定を受けた数、まずここから伺いますが、これは興人の八代工場で三十人、日東紡の富久山工場で十四人、現在までのところ四十四人という数字かと思いますが、間違いございませんか。
#83
○政府委員(寺園成章君) 本年の十一月末現在におきます二硫化炭素に係る労災認定者数は、ただいま先生がおっしゃいましたように全国で四十四人でございます。
#84
○橋本敦君 まず、この二硫化炭素中毒というのがどういう実態なのかということを局長等は御存じだろうと思いますけれども、二、三明らかにしておく必要があると思うんです。
 まことに悲惨な問題であります。例えば五十六年に五十歳で亡くなった高野さんは、きれいな空気を腹いっぱい吸いたいと、こういうまことに人間的な要求といいますか悲痛な要求ですが、こういうことを言いながら汚染の職場を離れた、会社をやめたわけですが、その後肝臓肥大、あるいはミシンや電気がまなどを手当たり次第に投げつけるという衝動的状況、寝ている赤ちゃんを踏みつける、あるいはほうり投げるというようなこともやるという、こういう状況も呈して、それがCS2中毒らしいということがわかったのは死の直前だったという、こういう悲惨な状況が起こっている。
 それからさらには、この中毒は脳血管が侵されますから、そういう意味では精神障害が進行いたしまして発作的な衝動が起きる。だからこの病気で認定された患者が突然焼身自殺をしたり、あるいは病院を抜け出して道路に寝ていてひかれて死亡するという、言ってみれば廃人同様の状態に追い込まれるという、こういう悲惨な状態も明らかにされて大きな社会的問題の一つになっているわけであります。
   〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕
 そこで、この八代工場の認定患者の死亡調査、これを見てみますと、これは大変なことでありますけれども、二十八名の認定された患者のうち十一名が亡くなっている。つまり、四〇%ほどが認定された患者のうちで亡くなるという、死亡率が高い。死亡率が高いだけではなくてその平均寿命を見てみますと四十八歳程度。人生八十年時代に人生五十年にもならないという、こういう悲惨な症例が実態調査ということで報告されているのであります。
 こういう状況であるというそのことについて、労働省は認識を持っておられますか。
#85
○政府委員(寺園成章君) 興人関係におきまして、業務上の認定を受けられました方が三十名あるというふうに承知いたしておりますが、そのうち死亡されました者が先生おっしゃいますように十一人ございます。そのうち業務上で死亡されたというのは九人、それからお二人の方につきましてはただいま先生が御指摘のような形でお亡くなりになったという事実は承知をいたしております。
#86
○橋本敦君 別の調査によりますと、この興人のガスが発生する、汚染する職場で働いた、昭和二十八年から三十五年までに紡糸工程で働いた労働者約七十名を調査をした例があるんですが、ここでは十五名が亡くなっておって、死亡年齢の平均は同じく四十八・三三歳という数字が出ている。この問題については長年にわたってこの中毒問題と取り組んでこられた熊本の菊陽病院の総院長をしておられる平田宗男医師がこうおっしゃっています。「脳血管がやられ、全身の動脈が硬化する全身病だ。じん障害、脳卒中などで死亡するのが典型で精神、神経障害を伴うことが多く、進行が早いので若死にしがちだ。」、こうおっしゃっていますが、まさに調査の事実によってそういう状況が明らかにされているわけですね。
 こういう大変な状況を呈する中毒問題について、この危険物質である二硫化炭素の職場での許容濃度は一体どのように規制されておるのか。これは重大な問題ですが、労働省どうなっておりますか。
#87
○政府委員(寺園成章君) 二硫化炭素中毒の予防につきましては、昭和三十一年以降、二硫化炭素を製造する工程、人絹、スフ、セロハンを製造する工程におきまして、二硫化炭素に暴露されるおそれのある作業に従事する労働者に対しまして特殊健康診断を実施をするよう、事業者に勧奨を行ったところでございます。その後、三十五年以降は有機溶剤中毒予防規則によりまして、二硫化炭素を第一種有機溶剤といたしまして厳重な管理を行うよう規制をいたしておるところでございます。
 その規制の内容といたしましては、二硫化炭素の主な規制の内容でございますが、密閉設備または局所排気装置の設置、有機溶剤作業主任者の選任、作業環境測定の実施、特殊健康診断の実施等について規則で定めておるというのが現在の状況でございます。
#88
○橋本敦君 私が聞いておりますのは、その今おっしゃった最も肝心な中身の問題、つまり、この基準許容量がどのように定められておるのか定められていないのかと、この点を伺っておるんですよ。答弁になっていない。
#89
○政府委員(寺園成章君) 現在の段階におきましては、濃度規制は二硫化炭素につきましてはいたしておりません。
#90
○橋本敦君 大臣、お聞きのように、こういう危険な生命侵害を起こす中毒について、濃度規制において法的規制が全然ないというんですよ。これは大変なことですね。
 そういう状況で、今日までこの問題での労災認定の申請が絶えないわけです。つい最近でも、五十九年十月、ついこの間、八代労働基準監督署には谷本さんと丸山さんというこのお二人が申請をされているというふうに聞いております。したがって、この問題について、これほど深刻な悲惨な災害に関して労働省の姿勢は甘過ぎるのではないか。
 ついでに基準局長に聞きますが、測定の結果、この八代工場ではどういう報告が上がっておりますか。
#91
○政府委員(寺園成章君) 八代工場におきましては、漸次この暴露を少なくするための措置をとっております。例えば、回収設備を設置するとか諸般の対策を講じておりますが、各工程別に濃度は逐年減少をいたしておるところでございます。
 先生が御指摘の、一つの職場でございます紡糸作業について申し上げますと、これは五十六年の数字でございますけれども、最高が六ppm、最低は一ppmという状況でございます。
#92
○橋本敦君 それは会社側の自主測定ですね。監督署が測定した数字ではありませんね。
#93
○政府委員(寺園成章君) 会社の測定でございます。
#94
○橋本敦君 その基準について、今、日本産業衛生学会が一応決めている職場内の許容濃度一〇ppm以下ということを基準にしているように伺っておりますが、それは御存じですか。
#95
○政府委員(寺園成章君) アメリカのACGIHの許容濃度は一〇ppmであるというふうに承知をいたしております。
#96
○橋本敦君 私が聞いたのは、日本産業衛生学会が決めているのも一〇ppmで、一応これを目安にしているということなのかどうかと聞いているんです。そうでなかったらないでいいんです。
#97
○政府委員(寺園成章君) 先生おっしゃったような基準をめどにしておるということではございません。
#98
○橋本敦君 そうすると、何ppmを基準に労働省は考えて報告を受理しておりますか。
#99
○政府委員(寺園成章君) 一つの念頭に置きます材料といたしましては、先ほど申し上げましたアメリカのACGIHの許容濃度であります一〇ppmというものを念頭に置きながらこの報告を受理をしておるということでございます。
#100
○橋本敦君 ということで、積極的にこの職場でのこういった中毒症状を業務起因性からなくしていくという観点で、どのように濃度基準をやるのが安全対策上妥当かどうか、全く労働省は検討せず、他人任せの基準で、それでしかも、会社の自主的測定報告を一方的に信用して受理しておるという状況にとどまっておる。そこで一方で確定患者の申請がずっと相次いで絶えないという状況である。大変なことですね。
 しかも、この労災の認定についての審査についても数多くの問題があると思うんですね。例えば、労災認定が却下をされて、今この不支給の決定について審査請求が出されておるのに加来さんという方があります。これはそちらで資料で御存じと思いますけれども、この加来さんの場合を見ますと、昭和四十一年から十八年間の長きにわたって八代工場の精錬職場その他合計通年二十五年余りも危険なこの職場でCS2の被曝を受けているという職場経歴が明らかな人ですね。だから、このこと一つをとってみても、この加来さんが、現在、全身の麻痺あるいはぜんそく傾向あるいは眼球運動障害あるいは脳波異常、こういったことでまさに中毒患者であるという症状を呈していることとあわせますと、まさに業務起因性を認めていいのではないかと思うのに、これが排除されている。これは問題ですね。そうなっている一つに認定基準の問題に研究すべき問題があるのではないか、この問題を私は指摘をしたいのであります。
 その一つの問題は、例えば、この認定基準について労働省は通達を出しているわけでありますけれども、この通達によりますと、患者が眼底検査をいたしまして、そこで微細動脈瘤、これが認められるということがこの認定の非常に大事な要素だというようにしているように見受けます。これは昭和五十一年一月三十日の「二硫化炭素による疾病の認定基準について」という通達であります。そういう扱いをしていることは間違いありませんか。
#101
○政府委員(寺園成章君) 間違いございません。
#102
○橋本敦君 ところが、これが明確に認められるというのは、これは時期の問題が大変重要でありまして、すぐに出てくるという保証はない。だが、例えば、私が手元に調査しております山田茂利さんとおっしゃるこの方は、今も審査請求をなさっておる一人でありますが、この人について見てみますと、昭和五十六年に認定申請をいたしましたが、そのときはこの微小動脈瘤は眼底になかった。ところが、三年たった五十九年になりますとこの微小動脈瘤一個が認められるに至ったという医師の診断書が出てくるわけですね。
 したがってこの認定基準としてCS2中毒の診断にこの微小動脈瘤があるかどうかということだけに重点を置いて認定基準を考えるということは、今日までの研究やあるいは実際の患者の症例から見て再検討する必要があるのではないかという問題も起こっているのですが、その点どう認識されておりますか。
#103
○政府委員(寺園成章君) 二硫化炭素による疾病につきましての労災の業務上の認定につきましては、認定基準を定めて現在実施をいたしておるところでございます。すなわち暴露の条件を考慮しながら二硫化炭素性網膜症と呼ばれる症状などを補償の対象にしておるということでございます。
 いずれにいたしましても二硫化炭素に暴露されたことに起因をする、そういう意味で、業務に起因する疾病というものが労災補償の対象になるという原則に基づきながら制度を運用しておるということでございます。
#104
○橋本敦君 それは当然のことですね。当たり前のことです。
 それで、この問題について長い臨床経験を持ち研究されております熊本の菊陽病院の院長である樺島啓吉さんという先生が「医学評論」に論文を書いて発表されておるんですけれども、これで見ましても、一つはこの中毒症状による病状が高血圧、脳血管障害、ぜんそく、脳卒中、こういったことで、言ってみれば一般的に慢性二硫化中毒症状であるけれども、一般の成人病その他の病名で見逃される傾向があるというそういう状況があるのですね。だから、今おっしゃった業務起因性をしっかりとらえるということ、ここのところにひとつ視点を置くと同時に、こういうように一般の病気と見逃されやすい、つまり業務起因性を外されてしまう危険性があるという、そういう病状を呈するということに十分な注意を払う必要があるわけですね。
 だから、そういう意味で私が指摘した問題の一つは、動脈瘤があるかどうかということだけにとどまってはならないということが一つと、それからもう一つは、同じ職場で同じような働き、経歴を持っている人で認定された人があるという状況であるならば、やっぱりそれとの並びで、そういう例も参考にして業務起因性を明らかにしていかなくちゃならぬ、こういうことも当然必要ですね。このことは認定基準にもそう書いてある。
 こういうようなことも含めまして、この認定に当たっては現在申請中の人あるいは再審査を請求している人、こういう審査に当たって今までの認定基準だけにとらわれずに、これまでの多くの患者の症例やあるいは臨床の経験、これらを総合的に生かして速やかに救済できるように万全の処置をとるべきだと、こう思いますが、いかがですか。
#105
○政府委員(寺園成章君) 現在の認定基準は、二硫化炭素との業務起因性というものを考慮しながら認定基準を定めておるわけでございますが、ただいま先生が御指摘の症状と二硫化炭素の業務起因性という問題についての医学的見解というものは、専門家の方々の意見も十分聞いてみたいというふうに存じます。
#106
○橋本敦君 わかりました。今おっしゃったように、専門家の意見を十分聞いて検討を前向きに進められるということは非常に私は大事なことだと思うわけであります。
 興人慢性二硫化炭素中毒被災者の会というのがありまして、会長は桑原繁雄さんという方ですが、この会がお医者さんと共同して最近、昭和二十年、三十年代にこの興人の紡糸職場その他の工程で働いた人約三百人を追跡調査をいたしますと、やっぱりこの中毒症状にそれぞれアピール、つまりお医者さんに対する訴えがあり、症状があり不安が広がっているということで、かなり広い範囲にわたってこの中毒症状が労働者の中に広まっているんじゃないかという重大な問題があるんですね。
 そこで、質問時間ももうありませんが、労働大臣にもお願いをしたいんですが、この危険なCS2中毒という問題が、これはレーヨン、スフ製造過程で集中的に発生しておりますが、一つはこの興人の八代、それから日東紡の富久山だけではなくて、全国にまだまだ工場があるわけですから、例えば十二社、十五工場がレーヨン製造工場としてあるように私ども調べておりますから、そういう意味で、実態的な調査を全国的にやるということをこの二硫化炭素中毒問題についてはやってもらいたい。
 それからもう一つは、先ほども指摘をしましたが、何といっても有害物質の許容基準を法的に規制しておるというのは今日もう行政として当たり前ですが、肝心かなめのこの二硫化炭素中毒について職場の許容量、今お聞きのように、自主的に労働省が法的に規制していない。まさに言ってみれば、アメリカでこうだから一〇ppmだと、しかもその測定も、積極的に労働省が監督してやるんじゃなくて職場の自主報告。これはごまかされたってわかりませんよ。そういうことで甘んじているという状況は、これは改善しなくちゃならぬのじゃないか。
 そういう意味で、今後この問題についての実態調査を進め、かつ許容基準についても法的規制を含めて厳格にやっていくという検討をすること、こういうことも含めて今後の対応をお尋ねをしたいと思うんですが、いかがですか。
#107
○政府委員(寺園成章君) 二硫化炭素中毒につきましては、御指摘のように、現在まで日東紡績それから興人の関係で労災の認定が出ておりますが、その他の企業におきましては有機溶剤中毒予防規則に基づく規制、その他、自己のところでできるだけ疾病が発生しないような自己規制というものもやっておりまして、それに基づく健康診断というようなものもまた実施をいたしております。そういう報告をちょうだいをいたしているところでございますので、その状況を見てまいりたいというふうに思っております。
#108
○橋本敦君 大臣の答弁をいただく前に。
 健康診断その他をやっていると言いますが、実際産業医で、この認定ができるような診断をぴしっと下して労働者を救済した例というのはほとんどないんですよ。だからそういう意味ではそれに甘んじることなく積極的に実態をつかんで、そして私が言ったように濃度基準についての法的規制もきちっとやって、それで労働者の救済には専門家の意見を聞いて万全の処置をとるという思い切った方策を進めていかなくちゃならぬ、こうなっているのではないかと聞いておりますので、もう時間が参りましたから大臣のお考えを伺って終わりますが、いかがですか。
#109
○国務大臣(山口敏夫君) 職場の中で起こっております健康障害の問題でございますから、それが労災業務の認定の問題でございますとか、あるいは基準局長からも答弁いたしましたように、これは医学的な問題ということで、事の追跡といいますか、そうした臨床医のデータとか状況も十分踏まえまして、労働省としてもそういった問題に検討をしつつやっておるわけでございますけれども、一層この先生の御指摘に対しまして実情を把握して、労働者の健康の問題、命の問題でございますから、十分その事態に即応した形で対処したいというふうに考えております。
#110
○橋本敦君 許容量の法的規制、これだけはやっぱり早速研究に手をつけるべきだと思いますが、いかがですか。これはもう慢然とほっておけないですよ。
#111
○国務大臣(山口敏夫君) そうした問題も含めまして、ひとつ検討をしていきたいというふうに考えております。
#112
○橋本敦君 ぜひやってください。
 以上で終わります。
#113
○下村泰君 お見受けしたところ、大臣も就任してからいろんなことで引っ張り回されているせいか大分お疲れのようですが、ちょいと拝見しておりますと、上のまぶたと下のまぶたが健やかに合いそうな形になっておりますから、比較的手短にいきたいと思います。
 今話題になっておりますグリコ・森永事件に関連してお尋ねしたいんですけれども、今回の事件で、まあ事件というものは、だれの目から見ても、事件というふうな言葉で表現されるものにいいというものは一つもありませんけれども、私は、今回のこのグリコ・森永事件ほど許せない犯人はおらぬと思うんです。
 我々が子供のころを思い出します。一銭の駄菓子というのが我々の憩いの場所でございましたね、駄菓子屋というのが。私らのときにはまだ大正時代からの五厘銭というのが残っておりまして、五厘銭というのは一つ持っていくと鉄砲玉という黒いのが一つ買える。一銭持っていくと二つ買える。この駄菓子屋的存在が今のスーパーで子供さんたちが求めている森永であるとかグリコの製品だろうと思うんです。少なくともそう高級な製品はないわけですね。百円あるいは五十円あるいは六十円、こういう金額で子供たちが一番安らぎを求められるのはこの製品なんだ。こういうものに毒物を入れて、そして子供に恐怖心を与え、今や日本の国全体に恐怖をまき散らしています、この犯人は。
 その上なお許せないのは、警察を嘲笑し、報道機関を嘲笑し、自分たちの頭の中で精密に計算した行動を、これを警察が、司法当局がミスすれば、これ見よがしに、また上乗せして世間に挑戦している。今や日本全体の社会に対して挑戦しているように私は思うんですよ。そうすることによって、何だか知らぬけど闇に紛れて、真っ暗闇の中で、ざまあみろとほくそ笑んでいる、こんな感じがする。もうどこに血が通っているのかなと思うんです、こういうやからは。私は一番許せないんですな、こういう子供を相手にするのは。
 としますと、森永が標的になり今度ハウス食品が標的になる。それ以前のグリコ、お前はもう勘弁したるなどというタイプを打っている。すると、グリコの場合には裏取引をしたんじゃないかと。あれだけ緻密に計算して、あれだけ事件を起こして、しかも目の前の警察の桜のマークを笑いものにするような犯人、それに拉致されたグリコのあの社長が、そう簡単に一人で逃げられるとは私は思えぬ、どう想像しても。その後になって、もうやめたるわなどというような文章を送るということは、当然私は裏取引があったと思うんです。だから、今回の森永もそのぐらい簡単にやれると思ったら、森永は筋を通しまして、一生懸命頑張っている。それが犯人にはおもしろくない。その上今度はハウスの方にも手を伸ばしてきたというように私は、簡単にそう考えます。
 ところが、この事件によりましていろんな災いがほかに出ておりますね。森永は月商百二十億円、月間。これが十二月に入りまして一割程度までに落ち込んでいる。親の方がこれですから、子の方はもっとひどい。九十人ぐらいの従業員を抱えているところは全面ストップ、こういったような状況になっています。
 それで、こういう方々の訴えもあったことだとは思いますけれども、いわゆる雇用助成金の適用せざるを得ないような状態になった。そこで、労働大臣も大分お心を砕いてくださったようですが、現在までのその雇用助成金の適用されている実態、これをちょっと御説明願いたいと思います。
#114
○政府委員(加藤孝君) まず、江崎グリコ、それからグリコ栄養食品に係る事案につきまして、従来は大型倒産の場合に限って指定をする、こういうことになっておりましたのを、この事件を契機といたしまして、急激かつ大幅な生産量等の減少が生じている場合に下請にも適用するということで、倒産はしていないけれどもこういうような急激な減少というような場合にも適用できるように制度改正をしたわけでございます。しかし、グリコの場合には、この指定の決定直後に今お話しの犯人から終息宣言が出まして、結局回復をした。今までパートで離職していた人も全部職場に戻るというようなことがございましたために、この助成金の適用を受けたのは一件でございます。
 それから森永の関係につきましては、十月三十一日から関連下請中小企業に、この助成金の対象にするということでやりましたけれども、その後これが下請だけではなくて本社の方にも及んできたということでございまして、十二月一日に菓子製造業及び菓子卸売業というものを対象業種にいたしましてこの指定をいたしたわけでございます。
 しかし、まだこれにつきましては、PRはいたしておりますが、今、関係事業主から制度の利用の仕方等についての照会がいろいろ来ておるという段階でございまして、適用実績というのは、森永関係についてはまだ出ていない、こんな状況でございます。
#115
○下村泰君 報道によりますれば、とにかくこういった事件が発生してから十月―十二月の三カ月間で生産量が一六%落ち込んでいる。それで、菓子製造業の皆さんは全部恐怖を感じているわけですね。殊にテレビとかあるいはラジオのマイクが大阪の地方のスーパーへ入りますると、期せずして経営者は、あきまへんなあ、子供はんがよう来まへんと。それから、今度は主婦に、つまりお母さん方にマイクロホンを向けると、怖くて買えません、いつどこでどうなるかと。これは当たり前ですわな。
 こういうような状況に追い込まれて、目下のところ、今局長がお話しになったように、森永は一生懸命頑張っておるようですけれども、今申し上げましたパートの方とかあるいは身体障害者の方とかあるいは高年齢者の方とかということになりますると、一番先にそこへしわ寄せが来る。こういう方たちに対する助成方法というのを労働省としては考えていらっしゃいますか。
#116
○政府委員(加藤孝君) 先ほど先生は子供に対する犯罪ということが非常に許せないということでおっしゃったわけでございますが、もちろんそれもございますが、私どもにとりましてもまた、こういう関連の企業に雇用されているいわば労働者に対する犯罪でもあるという意味において、私どももまことに許しがたいという感を持っておるわけでございます。
 この関係につきまして私どもも、これでパートの労働者が解雇されるというような事態に発展をいたしておりまして、江崎グリコで六月に八十一人、森永では十一月までに四百四十九人、合わせて五百三十人のパートが契約期間の満了で離職を余儀なくされたというような事情にあるわけでございます。
 それで、私どもとしては、もしこういうことでどこか他の事業所へあっせんをしてくれということであれば、ぜひ我々もその期待にこたえたいということで、集団的な説明会をやるとか求人情報の提供をするとか、あるいはまた相談をいたしまして各工場ごとに希望条件の把握、個別の職業相談というものをいたしまして――ただ、現実には多くのパートの方々が、事件の解決を待ってぜひまたもとの会社へ戻りたいということで、大部分の方は自宅においでになるというのが現状でございますが、その間、ぜひよその会社でも行きたいというような希望をされた方につきましては就職のあっせんをいたしておりまして、現在この中で八名の方を他の企業へのあっせんをしておるというような状況でございます。
#117
○下村泰君 それから、大臣の方からも報道機関の方にお答えになっておりますけれども、その雇用助成金ですね、期間が五十九年十二月の一日から六十年の十一月三十日までと、こういうふうに一応なっています。適用の対象が、菓子製造業が二千五百社、従業員が四万三千。菓子卸売業者が千五百社の従業員が三万。七万三千名。随分大きな数になっています。一日の最高限度額が七千三百三十円、こういうことになっています。もし仮にこの助成金の支給が適用されるようになりますると、一日に五億円消えていくわけであります。労働省にそれだけの余計なと言っては失礼かもしれませんが、あり余るというほどじゃないはずです。マイナスの予算の編成を夢中になってやっているときですからね。果たしてそれだけの余裕があるのかどうか。私はそれが心配なんですが、どうですか。
#118
○政府委員(加藤孝君) 御心配をいただきまして大変恐縮でございますが、これに関連いたします予算といたしまして、五十九年度二百九十四億円の予算を雇用調整助成金の予算として持っております。これはことしの九月末現在でまだ三十六億円しか出ていないというような状況でございます。昨年の場合には九月末現在で九十八億円出たということでございますが、景気の回復過程にあるという状況を背景にいたしまして、ことしは九月末でまだ三十六億というようなことでございまして、予算全体としては二百九十四億特っておりますので、まず御心配になるような場面にはならぬと思いますが、万々一不足ということになれば、これはまた雇用安定事業に係る予算というものでいろいろ積み立てなどもいたしておるわけでございますので、そういうものを取り崩すということもあるわけでございまして、予算的にはとにかく何らかの対応は可能であるというふうに見ておるわけでございます。
#119
○下村泰君 会計検査院の調べでも出ているんですが、本年は労働省だけで九億一千八百十四万円もの不正が指摘されているわけですね。こういうむだな金が出ていくくらいですからそのくらいの余裕はあると思うんですがね、嫌みになるかもわかりませんけれども。
 そこで、大臣に伺いますけれども、森永の方の組合その他からいろいろの御注文があったようです。それに対しまして労働大臣はどういうふうにこれから対処なさっていくおつもりなのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
#120
○国務大臣(山口敏夫君) 労働省の立場といたしましては、先ほどから加藤局長からも御答弁申し上げておりますように、雇用調整助成金の支給でございますとか、あるいはパートの方々、関連企業の方々で、一応操業を停止しておるという状況に応じて、新たな雇用の確保の問題にひとつ一生懸命御協力申し上げるということでおります。
 基本的には、今下村先生の御指摘いただいておりますように、やっぱりこうした情報化時代における情報犯罪によって労働者の生活権が脅かされる、既に脅かされておるということで、森永等におきましてもボーナスが二〇%カットされた、あるいは役員等においては一〇〇%今回はボーナス返上というようなここ数日の状況の中で、一層脅迫犯に対する憤りと今後の会社の運営に対する不安というものも感じておる、こういうことでございまして、私はこの事件の当初から、閣議におきまして、あるいは政府・与党会議におきましても、これは一グリコ、森永、ハウスの問題だけにとどまらない、我々は労働者の生活権、こういう立場で万全を期すつもりでおります。
 同時に、こうした新手の犯罪に対しては、これはもう社会秩序、経済秩序の立場から国民全体の問題として取り組んでいかなければならない。当然犯人を逮捕するということが最も大事な問題でございますが、同時に、こうした難航している捜査でありながらも、草の根を分けてもという態勢をとるためには、まず脅迫されておる企業、あるいはそれに付随する雇用者の方々の生活不安というものを、政府全体でこれに応援をしなきゃならないという中でこうした問題の解決をしていかなきゃならないということで、労働省としての対応は今申し上げたとおりでございますが、新たに関係各省の政務次官で、これは労働省、農水省それから流通業界も言いかえてみれば、はがき一枚の脅迫状からこうした関西地方で起こっている犯罪に対して北海道でも商品がボイコットといいますか、商品を置いていただけない、こういう現状もあるわけでありますから、そうした流通業界もこうした問題を自分の問題としてぜひ真剣に対応してもらいたいということで、警察庁、農水省、通産省、労働省、そういう関係省庁で総合的な、内閣としてもこの事件に対して取り組む。こういうことで、グリコ・森永事件に対する影響を、犯人逮捕と同時に最小限度にこの被害を食いとめるための措置を講じておるというところでございます。
#121
○下村泰君 日本だけでなくて東南アジアでも、あの事件が発生してから断られている国もありますわね。それから持ち直しているところもあります。ですから、せんじ詰めますと本当に社会に対する、日本の国全体、日本の国民全部を相手にしている犯罪と見て私は間違いないと思うんですね。もしこれが今大臣のおっしゃったように、各省庁にまたがって、皆さんで協力して、おまえらこういう犯罪は得にはならないというような成果を上げるならば二度とこんなものは起きないと思う。
 ところが、現在の状況からいけばこれはどこまで波及していくかわかりません。一日も早く犯人を、昔の言葉で言えば召し上げなきゃいかぬのですけれども、その召し上げる態勢が今なっておらぬのですね。本来ならばここに警察庁の方に来ていただいていろいろどこまでいっているのか私は知りたかったのですけれども、そんなことを聞いても今のところはお苦しみになるだけじゃないかと思いますので、あえてきょうはお尋ねしませんでしたけれども、こんな息の詰まるような、こんな陰湿な犯罪は一日も早くなくしてほしいと私は思うんです。
 組合の方々も、これは各省庁にまたがる問題であるから統一して対処してほしいというようなことも言われております。今の労働大臣のお答えの中にそれは全部含まれておると確認いたします。したがいまして、どうぞひとつ、一番弱い立場に置かれる方々が常に犠牲になりますので、そういう方々に特に配慮していただきたいと思います。その御返事をいただきまして質問を終わります。
#122
○国務大臣(山口敏夫君) 明朝閣議もございますし、またそうした各省連絡会議もございますので、本日の社労委におきまして下村先生からグリコ・森永問題に対して内閣全体として一層心して取り組め、こういう御指示があったことも報告をして、さらに労働省の立場での努力も含めて、こうした問題が国民の生活不安に決定的なことにならないように努力したいというふうに考えております。
#123
○委員長(遠藤政夫君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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