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1984/06/04 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 文教委員会 第10号
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1984/06/04 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 文教委員会 第10号

#1
第102回国会 文教委員会 第10号
昭和六十年六月四日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月三十一日
    辞任         補欠選任
     伏見 康治君     高木健太郎君
 六月四日
    辞任         補欠選任
     小西 博行君     藤井 恒男君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         真鍋 賢二君
    理 事
                杉山 令肇君
                仲川 幸男君
                久保  亘君
                吉川 春子君
    委 員
                井上  裕君
                山東 昭子君
                林  ゆう君
                柳川 覺治君
                粕谷 照美君
                中村  哲君
                安永 英雄君
                高木健太郎君
                高桑 栄松君
                小西 博行君
   国務大臣
       文 部 大 臣  松永  光君
   政府委員
       文部大臣官房長  西崎 清久君
       文部省初等中等
       教育局長     高石 邦男君
       文部省社会教育
       局長       齊藤 尚夫君
       文化庁次長    加戸 守行君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        佐々木定典君
   参考人
       日本音楽著作権
       協会理事長    芥川也寸志君
       日本書籍出版協
       会理事長     服部 敏幸君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(真鍋賢二君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る五月三十一日、伏見康治君が委員を辞任され、その補欠として高木健太郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(真鍋賢二君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に日本音楽著作権協会理事長芥川也寸志君及び日本書籍出版協会理事長服部敏幸君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(真鍋賢二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(真鍋賢二君) 次に、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○粕谷照美君 著作権思想というのは一つの国の文化のバロメーターではないだろうか、私はこういうふうに考えているわけですけれども、最近新しい器材、機器、コンピューター等がこう出てまいりまして、国民がそれを簡単に使うことができるようになってきたというところから、この著作権思想というものが非常に薄れてきているのではないか、そういう意味で著作権法は時代に合ったように改正をされていかなければならないと、こういうふうに思っておりますけれども、今国民の著作権思想というものがどういうふうな認識でいるか、このことについて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
#7
○国務大臣(松永光君) 知的活動の所産につきまして、それを尊重して、そしてその結果として知的活動がさらに一層進むということが文化の発展に大きく寄与するものだというふうに私は考えております。
 ところで、日本の古くから最近までの国民の意識を考えてみますというと、ややともすれば肉体的な労働の成果、あるいは生産物として見えるもの、そういったものに対しては代価を払うという慣行が定着しておりましたが、知的活動に対しては必ずしも適切な代価を払うという慣行は十分定着をしてなかった面があるように私は感じました。私ごとを申して恐縮ですが、例えば物をつくる、あるいは物を買うという場合には代償を払います。しかし、知的活動、例えば弁護士などが相談に応じるその相談料にしても、あるいは依頼者の代理をしていろんな訴訟活動をするような場合にも、その活動というのは知的活動です。そういったものに対して適切な代価を払うという慣行は、最近はやや定着してきましたけれども、古くはそれほどそういう慣行はなかったように思います。お医者さんの場合もそうでありまして、注射をしたり薬を与えたりすればこれは当然代価を払わなければいかぬが、診察をして判断をしたというだけでは――これは非常に大事な点なんでありますけれども、必ずしも適切な代価を払うという習慣は古くはなかったように感じます。
 そういったものの延長線上で、知的活動の所産に対してこれを尊重をして、そしてそれはただでは使わない、その代償を払うという慣行、必ずしもかつては十分定着していなかったような感じがするわけでありまして、そういう日本の風土等もありまして、最近まではややともすれば他人の著作権に対してこれを尊重をして、そしていやしくもその権利を侵害するようなことはしてはならぬというようなことは必ずしも十分日本の社会の中で定着しているとは言いがたい面もあったような私には感じがするわけであります。しかし、最近におきましては貸しレコードの問題等から著作権の問題が国民の間に相当広まってまいりまして、著作権というものについてこれを尊重し、かりそめにもそれを侵害するようなことをしてはならぬというようなことが定着しかけてきているという感じがいたします。
 先生も御指摘のように、著作権等に対する関心が高まり、それを尊重するということが結果的にはその国の文化の発展、向上につながっていくわけでありますから、今後とも我々としては著作権に関するいろんな資料の作成、配付、あるいは講演会等々の活動を通じまして著作権思想の一層の普及と啓蒙をいたしまして、そして著作権思想の定着を図っていかなきゃならぬというふうに考えているところでございます。
#8
○粕谷照美君 文化庁としては、この著作権思想を国民の中に定着をさせていく、広げていくということについて具体的にどういうことをやっていらっしゃるか。例えば今の弁護士さんの話にしてもお医者さんの話にしても、お医者さんが相談を受ける、そして適当なアドバイスを出す、それに対する診療報酬を欲しい、こういうふうに著作権者が自己主張をするということは非常に大事なことだというふうに思うんですね。だけどその以前に、もっと子供たちのときからといいますか社会的にといいますか、そういう組織的な動きというものが行われなければならない。動きというのは一つの教育だというふうに思いますけれども、具体的にどのようなことをやっていらっしゃいますか。
#9
○政府委員(加戸守行君) 文化庁といたしましても、著作権思想の普及徹底、非常に大切な仕事だと理解いたしております。
 文化庁の著作権課、わずか人間が十名程度でございますけれども、数少ない職員ではございますが、その中でもまず各種の講習会等を開催いたしておりまして、定例的には全国で七回の著作権講習会を開催いたしまして一般的な著作権思想の普及に努めております。そのほか都道府県の著作権事務担当者の講習会、あるいは図書館等職員の著作権実務講習会等、こういった各種の会合を毎年開催いたしておりますほかに、そのほか各官公庁等の主催講習会につきましても著作権の分野を取り上げていただきまして、当方から職員を派遣して講習等実施いただいております。ほかに、先生おっしゃいました例えば弁護士関係の方々あるいは新聞協会とか、そういった民間関係団体の方にも講師を派遣する等の措置を講じておりまして、大体例年でございますと、年間こういった講習会の参加人員が四千名を超えておりまして、まあ、こういった講習会等の積み重ねによって徐々に著作権思想が浸透していくことを期待しているわけでございます。このほかに著作権資料といたしましては、毎年、著作権法ハンドブックという形で、難しい著作権法でございますが、なるべくわかりやすくかみ砕いた形でのPR文書も出しておりますし、諸般の施策を通じてこういった普及を努めてまいりたいと思っているわけでございます。
 ただ、著作権と申しますのは事柄が極めて専門的でございますし、また一般の国民にはなかなか理解しがたい面もございます。そこで、諸外国等におきまして、日本ほどのこういう著作権思想普及徹底を行われていないと思いますが、国民の意識はむしろ日本よりははるかに著作権尊重の精神が高い。といいますのは、やはり人の権利とかあるいは人の気持ちを大切にするというそういった風潮が小さいうちから培われている、そういった土壌の中にあって、著作権思想が、著作権尊重の精神が自然のような形で浸透していっているんではないかという考え方も私ども持っているわけでございまして、その意味では学校教育におきます、まあ著作権そのものではございませんけれども、他人の権利の尊重といった考え方の指導もかなり有効なものではないかと考えておるわけでもございます。
#10
○粕谷照美君 去年随分貸しレコードのことが問題になりましたね。最終的に商業レンタル組合ですか、貸しレコードの組合ができまして、日本レコード協会や芸団協あるいは音楽の著作権協議会、こういうようなところと話し合いがつきまして、そして一枚のレコード、今まで二百円で貸し出していたんだけれども、まあ五十円値上げをしてくださいと、二百五十円にしてください、あるいは二百五十円で貸したところは三百円にしてくださいと。著作権料を払わなきゃならないんだからというような、企業努力もあるけれども、著作権料を払わなければならないんだからレコードの貸し出しのお金を少し上げなければならないんだという話をしているわけですね。それに対して借り手の高校生、大学生などはもうよくわかってくれると、話をすると。これは一つのあの著作権法改正によって大きな国民的といいますか、教育になったんではないだろうか、こんなことを考えているわけでありますが、私は先日NTTへ行ってまいりまして、まだ日本電電公社と言っていた時代ではありますけれども、公社に行っていろんなものを見てきたもんですから、NTTのパンフレットを拝見をしております。まあこういうふうになりますよというふうなことはマスコミを通じて聞いてはおりましたけれども、大変なんですね。これですと、もうやっぱりコンピューターのことを知らなければ、あるいは使わなければ今の子供が大人になったときに生活していくのに非常に困るのではないだろうか、こういうことな感じないわけにはまいりません。それと同時に、また子供たちもこういうことを知らなければ取り残されてしまうんではないか、こんな不安に陥ってしまうのではないかというような感じがしております。
 ちょうど、きのうのある新聞の夕刊を見ましたら、アメリカのパソコン教育について記事が載っておりました。大変なコンピューターが学校に配備をされ、家庭に配備をされ、もう当たり前のことのようにして使われているわけですね。それで、諸外国の学校ではコンピューターというのはどのような普及をしているかということについてお伺いいたします。
#11
○政府委員(齊藤尚夫君) OECDのCERIで一九八三年、昭和五十八年に調査したものがございます。
 まずアメリカでございますが、一九八三年一月現在、初等学校の四二%が一合以上のマイクロコンピューターを保有しておる。それから五台以上保有している学校数は約一〇%に達しているという。それから中等学校につきましては、八五%が一合以上保有し、五台以上保有する学校が四〇%であるということでございます。
 それからイギリスでございますが、一九八三年の十二月現在でございますが、初等学校の四三%が一合から二台のマイクロコンピューターを保有している。それから中等学校につきましては、ほとんどすべての学校が五台から十台を保有している。五十台以上保有している学校もあるということでございます。これによりますと、初等学校における保有率が一九八五年までに九〇%を超えることになるだろうという予想がございます。
 それからフランスでございますが、初等学校では一九八三年から八四年の学年度末までに二千台のマイクロコンピューターが導入される予定で、中学校につきましては八十四の指定校に六合ずつのマイクロコンピューターを導入するという計画がある。それから十六県、全部の県の数がフランスでは九十五でございますが、そのうち十六県におきまして一校当たり六合から十二台、計二千三百台が導入済みである。高等学校では既に千校につきまして四台から八台ずつ導入されている。で、一九八七年末までにすべての学校に導入する計画であるというようなことが、CERIの調査で出されておるわけでございます。
 欧米諸国はおおむね日本よりもマイクロコンピューターの普及の状況が著しいというふうに考えられるわけでございます。
#12
○粕谷照美君 今の御説明ですけれども、日本よりは普及をしているという程度のことでしょうか。私はもう天文学的差があるんではないだろうかというような感じがしてならないんですけれども、いかがですか。
#13
○政府委員(齊藤尚夫君) 日本の状況でございますが、これは私どもが昭和五十八年五月一日現在で公立の教育機関につきまして調査をした結果がございます。で、全国の公立学校でマイクロコンピューターを保有している率でございますが、一台以上保有している学校の割合でございますが、高等学校は五六・四%、それから中学校が三・一%、小学校は〇・六%という数字があるわけでございます。高等学校は職業に関する学科等もございますので、他国と遜色はないと思うわけでございますが、小学校、中学校の段階では比較してまだ導入は欧米諸国に比べて少ないということは言えるかと思います。
#14
○粕谷照美君 このコンピューターの普及について、文部省としてはどういう考え方を持っていらっしゃるんでしょうか。私はコンピューター機器を学校が購入をするということはいいことだというふうに思いますけれども、何かこう教育産業としてコンピューターを売りつけようというような感じがしてならないわけでありますけれども、じゃコンピューターをどのように教育に利用していったらいいのかということについて、真剣に考えなければならないときだというふうに思いますが、その点は大臣いかがお考えでしょう。
#15
○国務大臣(松永光君) 先生もよく御承知のとおり、最近におけるコンピューターの一般社会における普及、これは大変なものなんでございます。そこで、このコンピューターと学校教育との関係をどう理解をし、またどう活用していくかという問題でございますが、私はコンピューターと教育とのかかわりでは三つの視点があると思うんです。一つは、教育に関するいろんな事務処理を含めたいわゆる教育に関する情報処理にいかにコンピューターを利用するかという面が一つあると思います。で、これは私はできる限り活用した方が事務能率が上がりますし、情報処理が的確に行われますから、さして問題はない。できるだけ普及した方がよかろうというふうに考えますが、もう一つは、実際の教育をする場合に、コンピューターという機械をどう利用していくか、教育の手段としてのコンピューターの利用方法でございます。もう一つは、コンピューターそのものに対する知識や技術を、学校の教育で、どの段階でどの程度教育をしたり技術を習得させるかという問題。この三つの問題があると思うんでありますが、一番最初に申し上げた点は、先ほど申したとおり、事務処理あるいは情報処理の問題でありますから、普及する方は何ら問題はない、むしろ普及すべきである、これはそう問題ないと思うんでございます。問題は第二点と第三点でありますが、第二点の場合は、余りコンピューターの利用をずさんにやりますというと、ある意味では知徳体のバランスのとれた教育が果たしてうまくいくかどうかという問題もあろうかと思います。それから第三の問題につきましては、余り子供の発達段階が進んでない段階でコンピューターという難しいものを教えていって果たして適当かどうかなという問題がありますので、そこで文部省としては、この二月に情報化社会に対応する初等中等教育の在り方に関する調査研究協力者会議を発足させたわけでありまして、この専門家の会議におきまして、学校へのコンピューターの導入の適否、それからまたコンピューターに関する基本的な知識とか技術をいかなる段階で、どの程度教えることが望ましいか等々も含めて検討していただきまして、その結論を待って各学校段階におけるコンピューター利用やコンピューター教育の位置づけを明らかにして、適切に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#16
○粕谷照美君 大臣がおっしゃったこと、非常にいいと思うんですけれども、私はその協力者会議のメンバーが一体どういうメンバーで構成をされているのかなということが気になりますけれども、どうでしょうか。
#17
○政府委員(高石邦男君) まず、学識経験者で教育の関係のわかる方々、それから医学的な観点で、コンピューターと健康ということもありますので、そういう医学的な面からの知識を持っている方々、それから現場の小中学校の先生方々、それから民間でそういう研究をされている関係の方方、こういうことで、通産省の協力も得てかなり幅広い観点で、従来の協力者会議と違った分野の方々も参加していただいて研究を進めているところでございます。
#18
○粕谷照美君 私は、その内容の中に現場の人たちが、あるいは教育関係者が具体的に入っているということに大変安心をいたしました。
 日教組が昨年、国際シンポジウムで教育改革を考えるというのをやったわけですけれども、その中でドイツの連邦政府教育大臣が、コンピューターの学校導入に関連して大きな会議を開催した、その会議には大臣と政治家と大企業の代表が参加したけれども、教育関係者は発言する権利を与えられずに、ただお呼ばれしただけだったと、こんなことを言って不満を漏らしているわけですけれども、現在の子供たちに新しい科学技術を導入されるべきであるけれども、それは単にコンピューターの使い方だけではいけないんだ、子供たちが新しい科学技術について批判的な知識を得ること、新しい科学技術の導入に関連した諸問題、特にロボットの導入によって職場がなくなるというようなことまで問題を知らせるべきであるというようなことも言っておりますし、またコンピューターの導入の結果として新しい労働条件の問題もあるし、私生活がのぞかれるという問題もあるし、在宅勤務のできる家庭コンピューターも多くなっているけれども、こういう場合の労働条件に何のコントロールもない。そういうこともちゃんと教えていかなければならないというような発言が取り上げられなかったという意味のことを述べていられるわけであります。
 その協力者会議だけではなしに、前に社会教育審議会教育放送分科会は「教育におけるマイクロコンピューターの利用について」ということで報告をしておりますけれども、この中で、特にこんなところが問題なんだということが幾つか挙げられていましたね。それ、どういうふうに皆さんに知らせていただけるか、御報告をいただきたいと思います。
#19
○政府委員(齊藤尚夫君) 社会教育審議会の教育放送分科会で昭和五十八年九月からマイクロコンピューターの教育利用の問題につきまして一般的、概括的な審議を行ってまいりまして、その結果をまとめたものが先生御指摘の報告であるわけでございます。
 この動機でございますが、ニューメディア、特にマイコンが職場だけでなくて家庭や地域の日常生活にも影響を与え始めておるという現実を踏まえまして、教育の面からこれにアプローチする必要があるんだという点が一つと、それからマイコンが教育方法の改善充実にいろんな意味で可能性を持っているのではないかというような観点から審議をいたしたわけでございます。
 その審議の中身は、利用の利点及びその利用の問題点、それぞれを一般的、概括的に整理をしておるということでございます。
 先生御指摘の利用の問題点でございますが、その中で幾つかの視点を掲げておりますが、特に本法案に関係あるものといたしましては倫理上あるいはまた法律上の問題、倫理上と申しますと、どうしても個人のデータを蓄積するということになりますので、プライバシーの問題というのが起こり得る点、それから法律上の問題といいますのは、著作権の問題というようなことが指摘をされておりますし、またコンピューターを長期に利用することに伴う利用者の健康の問題等々の指摘をいたしておるわけでございます。
#20
○粕谷照美君 そのような指摘に対して、現場にも今コンピューターが配置されていますね、幾つか小・中・高等学校なんかにおいて。こういうコンピューターの使い方、今心配されているようなことについて教師がどのように受けとめるかということは非常に重大な問題だというふうに思うわけであります。その教師自身の教育の仕方というものはどういう対策が具体的に行われておりますか。
#21
○政府委員(高石邦男君) まずコンピューターの利用についての基本的な方針をまた固めておりませんので、したがいまして小・中・高、どのような段階で、どういう形で教育の場に取り入れていくかというような基本方針を固めることがまず先決だと思っております。
 それから、何といっても学習指導上にコンピューターを使う場合には、やはりどういうソフトウエアを開発していくかということが非常に重要な問題でございます。したがいまして、そういうような点の研究開発ということを進めていくということが必要であろうと思います。
 その次の段階に出てくるのが、やはり指導者養成、教師に対する研修ということになろうと思いますので、今の段階で文部省が計画的に一定の方針で現場に対する、教師に対する研修を計画的に実施するという段階まで至っていないのでございます。
#22
○粕谷照美君 文化庁にお伺いをいたしますけれども、人間が知的な活動でつくり出したものが、新しい利用手段が次々と送り出されていっているわけですね。そうすると、その新しい状態に対して常に著作権は原則のままで、今まで昔のままで行き通すということにはならない。貸しレコード法のときもそうですし、今回のコンピュータープログラムについてどのようにするかという著作権法改正についてもそうでありますが、そのよって立つべき基盤といいますか、著作権法のここまでは書いてよろしいと、教育で言えば教育基本法、日本の国で言ったら憲法みたいなものはどこに置いているのでしょうか。
#23
○政府委員(加戸守行君) 先生御承知のように、日本国憲法におきまして財産権の内容は法律でこれを定めるということが二十九条で規定されておりまして、基本的には我が国におきます著作権法の法源といたしましては憲法に基づくわけでございます。
 その場合に、いかなる内容のものをどの程度権利として保護するかということにつきましては、もちろん日本国内におきます権利意識あるいは国民の認識というものが大きく左右するわけでございますが、先生御承知のように我が国は一八八六年にできました国際的な著作権を保護いたしますベルヌ条約、並びに一九五二年に制定されました万国著作権条約というこの二つの国際的著作権条約に加盟いたしておりまして、この条約の中で当該加盟国がそれぞれ義務として定めなければならないものあるいは世界的なパイロット指針といたしましてこの程度のものを保護するということを基準として定めているもの、そういった考え方、条約上の義務なり考え方を受け継ぎまして、国際的な整合性を保ちつつ日本国内の実情に即した権利内容を定めていくというのが著作権法制のあり方でございます。
 ただ、先生おっしゃいますように、著作物利用手段というのは、技術革新によりましてどんどん進歩するものでございます。過去の歴史を見てみましても、当初は小説とか音楽とか絵画といったものにつきまして、その印刷、出版、演奏、そういった程度の利用手段でございましたけれども、その後、歴史的な過程を追ってみますと、映画ができ、あるいは放送ができ、あるいは録音という手段が発達する、そういった新しいメディアの発達によりましてそれぞれ各国の国内法制も整備し、かつ条約上もそれぞれの放送あるいは映画あるいはレコード、録音といったような手段に対応した制度を導入して整備をしてきている。ある意味では後追いのような形になっているわけでございます。
 ところが、最近になってまいりますと、この技術革新の進歩がいわゆる著作物利用産業におけるメディアとしての手段のみならず、いわゆる一般国民が直接の著作物利用産業のような立場に立つというような傾向が出てまいりまして、具体的にはゼロックス等の複写機器の発達あるいはホームテーピングで象徴されますように、家庭内で個人が録音、緑画し、一種の著作物利用産業が家庭の中で行われているような状況になってまいりますと、こういったエンドユーザーの立場というものを著作権制度上どう位置づけるかというような課題も出てきたわけでございまして、いずれにいたしましても、今や著作権制度がこういった著作物利用手段の普及、発達に伴いましてある意味の変革の時期に来ているという認識は各国ともに持っているわけでございまして、そういう意味での著作権制度への対応というのは困難かつ複雑な問題をいかに理論的にあるいは実態に即して解決していくかというのはこれからの課題だと考えているわけでございます。
#24
○粕谷照美君 確かにそういう難しい問題を含んでいると思いますけれども、私は加戸さんがある座談会で、世界人権宣言にその基礎を置いたらよろしいのではないか、こういうことをおっしゃっていたのを読みまして、ベルヌ条約もそうだし万国のあの条約もそうだけれども、それが国民には一番わかりやすいんじゃないかなと思いますけれども、それはいかがですか。
#25
○政府委員(加戸守行君) 著作権の歴史と申しますのは、国際的な規範としては先ほど申し上げました一八八六年のベルヌ条約でございますけれども、第二次大戦後におきまして、先生おっしゃいました世界人権宣言あるいは国連におきます人権規約、そういった国際的な諸規範の中で人間の知的創造活動に対します権利の尊重ということが具体的に規定されまして、こういった文化的な権利あるいは人間の知的活動によって生み出された権利について各国はそれぞれ規範性を有するこういった世界人権宣言あるいは国連人権規約等によりまして、抽象的ではございますが、そういった権利の保護を図るべき旨が明定されているわけでございまして、先生おっしゃいますように、歴史的な順序から申しますとベルヌ条約からスタートしたものでございますが、第二次大戦後におきましては、そういった国際共通のいわゆる人権とかというような形で人間の持っている基本的な権利の一つとして押さえようとする方向に向かっておりますし、また、それが正しい考え方ではないかと理解いたしております。
#26
○粕谷照美君 そういう高邁な精神というものは、現場で汗して働いている人たちには簡単にはわかりづらい部分がある。しかし、よく高い教育レベルの方々だったらわかるんだろうか、こう考えてみますと、逆に言えばそういうコピーをしやすいような機器を生み出す企業のトップクラスの人だとか、そういうアイデアをつくり出すクラスの方々というのは大変な教育を受けていらっしゃると思うんですね。それから、そういう方々がそれをつくり出していって著作権を侵害するような状況をつくっていくということだとか、これに対する批判も非常に巻き起こっているわけです。
 それから、大学なんか行っている大学の先生なんかについて言いますと、大学の先生だとか博士だとか、あるいは大臣までは難しいけれどもというようなそういうトップレベルの方々がいらっしゃる教育の現場、高等教育の現場はおいてもコピーなんというものがまかり通っているというこの現実をどのように指導していくかということは、私は大変難しいことだというふうに思うんです。年間四千人ぐらいおいでになったとしても、具体的に国立の学校でそういうことが行われている。それが当たり前のようにしかも行われているというところが問題なんだというふうに思います。これはどういう教育をやっていかれますか。
#27
○政府委員(加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、従来は大きな著作物利用産業、具体的には出版業であるとか放送事業であるとか、あるいはレコード産業、そういった形で著作物の利用が有力な態様であったわけでございますけれども、最近のこういった複写複製機器の普及あるいは録音、録画機器の普及によりまして個々のエンドユーザーがそれぞれの著作物を直接利用する関係に立ってまいりますし、まずその問題といたしましては、個別的には零細な利用関係対応でございますけれども、それが集積いたしますと全国民としては膨大な量の著作物を利用している、使用しているという状況に立ち至っているわけでございますので、従来の伝統的な著作権法制でカバーするということが極めて難しい、そのために各国ともに頭を痛めているわけでございまして、その問題としては基本的にこの抜本的解決を図るための前提としては国民一人一人が認識として自分たちの利用自体は零細であるとしても、それが結果的には全国で見れば膨大な著作物を利用している結果になって、そのことが権利者に対していろんな形での経済的な利益に不利益を与えている、そういう認識を持つこと、そのことが基本的に必要でございますし、国民の間にそういった認識が得られれば問題の解決はそれほど難しいことではないと思うわけでございます。
 その意味におきまして、人間の、先ほど大臣がお答えを申し上げましたような知的活動の所産というものを国民としてどのような形で評価し、その尊重の精神を培っていくのか、あるいは認識を深めていただくのか、そういった迂遠な道ではございますけれども、私ども今までに比べまして最近におきます著作権に対する理解というのはどんどんと進んできているようにも思いますし、そういう意味の解決を早く何とかしたいと思って努力している段階でございます。
#28
○粕谷照美君 それでは法律の中身に入っていきたいと思います。
 大臣の提案理由、先日お述べいただいたのを伺っているわけですが、気がつきましたのは、今まで私はこういう提案の御説明を聞いたことがないわけなんですけれども、
  このような状況に対応して、コンピュータ・プログラムの法的保護が重要な課題となつてきており、国際的には、著作権法を適用してプログラムの著作物の著作者の権利を保護する方向が大勢となってきております。このたび、このような国際的な動向等を踏まえ、著作権法によりプログラムの著作物の著作者の権利の保護を図ることで政府内における意見の一致をみたところであります。
と、わざわざ「政府内における意見の一致をみたところであります。」と入れているんですね。普通法律を出すときには、政府内の意見が一致するから出すのではないか。六・六案については政府でなくて議員提案らしいですからあれですけれども、わざわざこの一項目、一言が入ったということはどういう意味を持っていらっしゃるのか。
#29
○国務大臣(松永光君) これは念入りな御説明という形になっているわけでございますが、先生よく御承知のとおり、コンピュータープログラムにつきまして適切な法的保護を与える、そういう法体系を整備すべきである、法律を整備すべきであるという点についてはこれは異論はないところであると思うんです。ただ、どういう法律でこれを保護していくかという点につきまして、先生御承知のとおり、通産省の側では特別立法、プログラム権法という工業所有権法の一つとして新たな立法をして、それで保護していこうと、それが適切であるという考え方をお持ちのようでございました。一方文化庁としては、先進諸外国が著作権法の保護の対象である著作物と見るべきであるという考え方、そしてまた、我が国の裁判所も数回にわたって同様な判例を出していただいておるというようなことから、この文化庁の考え方と通産省の考え方とある時期には対立をして、そして議論をしておったわけでありますけれども、世界の大勢がそうなっておるというようなこと、それから我が国の裁判所もそういう判断を下しておるというふうなこと等々から、通産省の方でも著作権法で保護すべき著作物と見るのが適当であるというふうに我々の考え方に歩み寄っていただきましたので、そこで政府部内の意見も完全に一致をした、そこで今回出したというふうな経過なんでございます。
#30
○粕谷照美君 通産省に文部省が、著作権法のいかに重要であるかということについて説得勝ちであるという法律なんだなと今の御説明で私はわかったわけですけれども、その通産省と文化庁との間で最も対立した部分、そこはどこであるかということと、一体なぜその対立をしていたのかということについて御説明ください。
#31
○政府委員(加戸守行君) 御承知のように、通産省が構想いたしておりましたプログラム権法構想と当方の著作権法一部改正案とは、まず法形式において基本的な違いがあったわけでございますので、この法形式の問題というのが基本的には一番重要な対立点ではございました。ただし、これはいわゆる法形式の問題でございまして、内容としては両省庁ともにプログラムのよりよい適切な保護を図りたいという考え方では共通認識、共通の方向性があったわけでございますので、この法形式の問題を取っ払いますと、内容的な問題としては、両省庁間で考え方の基本的な違いとして大きな問題は、一つは保護期間の問題でございます。二つ目が使用権の問題でございます。そのほか強制許諾制度の問題であるとか登録制度の問題、あるいは人格権の問題と、各種の意見の差はあったわけでございますが、特に大きな問題といたしましては保護期間、つまり著作権法によりますれば、ベルヌ条約上の義務が五十年という保護期間がございますので、我が国の法制でプログラムを保護するといたしますれば五十年の最低保護期間は設けなければならない。これに対しまして、プログラム権法構想では、当初、産業構造審議会の答申の中では十五年程度という考え方でございまして、その後、通産省も国際的状況を見ながら、ある程度の弾力性は考慮したようでございますが、年数は何年ということはございませんが、いずれにしても五十年は長過ぎるという形で両省庁間の考え方の違いがあったわけでございます。この点につきましては、今回の法改正は条約上の義務である五十年を踏襲しつつも、さらに両省庁間の合意事項といたしまして、中長期的観点から保護期間が何年であるべきかということにつきましては、なお検討を続けるという形で両省庁間の合意に達したわけでございます。
 そのほか使用権の問題にいたしましても、現在の段階で使用権を導入するということは、世界各国著作権法の上で使用権を導入いたしておりません。そういう意味の中で、この後、使用権の問題をどのように取り扱うかも両省庁間で国際的あるいは国内的動向を見きわめつつ、やはり中長期的に検討するという考え方で合意をしたわけでございます。
 なお、強制許諾制度につきましては、これは導入はしない。それから、登録制度につきましては、権利の発生に影響を与える制度としては導入いたしませんか、今回提案申し上げています中に、創作年月日登録の制度を導入するという形で一応の解決を見ているわけでございます。
 そのほか人格権につきましては、今回の法案の中でそれぞれの手当てを講ずることによりまして、内容的には通産省の考え方とほぼ近いものになっているということでございます。したがいまして、問題の対立の大きな事柄でございました特に保護期間の問題については、中長期的な課題という形で今回は合意に達したわけでございますので、現時点で法案を提出しております中では、両省庁間のもう既に対立は解消していると私どもは理解しているわけでございます。
#32
○粕谷照美君 先日の参考人の意見をお伺いし、質疑があった中で、五十年という期間については、これはもうベルヌ条約に入っていますから自動的ですと、こういうふうにおっしゃいましたね。WIPOはモデルとして大体二十年ぐらいというようなことがたしかあったというふうに思いますけれども、そんなものを踏まえて中長期間に検討するということは、五十年を変えるということもあり得るという含みだと思うんですね。そうすると、ベルヌ条約に入っているということとの整合性はどのようになりますか。
#33
○政府委員(加戸守行君) まず、先生今おっしゃいましたWIPOでかつて二十年の保護期間を内容とするモデル規定が作成されたということでございますが、これはWIPOの中にも著作権を所掌するベルヌ同盟部門と、工業所有権を所掌するパリ同盟部門の二つの分野がございまして、いわゆる工業所有権サイドのパリ条約をベースとしますパリ同盟部門の中でつくられました試案が二十年のモデル規定でございまして、言うなれば一種の工業所有権的アプローチに基づく試案であったわけでございます。それは既にWIPOでの専門家会議等におきます検討の結果、世界の大勢が著作権でいくという方向になっておりますので、このモデル規定の考え方はほぼ完全に近い形で否定されたと理解はいたしております。
 そこで、今の五十年の問題でございますが、先生おっしゃいますように、確かにベルヌ条約上の五十年が義務づけられておるわけでございますから、条約を改正することなしにベルヌ同盟、ベルヌ条約加盟国が五十年を短縮することは条約違反になるのでできません。通産省との間の合意に達しました中長期的検討と申しますのも、いずれベルヌ条約の改正の機会が遠からずございますので、その際、その時点におきまして世界の各国がコンピュータープログラムの保護期間として五十年に完全に満足しているのか、あるいは五十年は長過ぎるから少し再考する余地ありと考えるのか、そういった世界各国の動向あるいは条約加盟国の考え方をベースといたしまして、その時点で日本として再検討の余地ありという考え方で、例えば条約改正によりましてプログラムの保護期間は、例えばベルヌ条約の中でも原則五十年でございますけれども、写真の著作物あるいは応用美術の著作物につきましては二十五年の保護期間という特例が設けられておりますが、それと同様な形でコンピュータープログラムについても保護期間を短縮する可能性というのが理論上も、あるいは実際上もあり得るわけでございますので、そういった世界各国の動向等を踏まえながら条約改正の際にどう対応するかということを通産省、文化庁両省庁間でなお検討を続けようという意味でございまして、あくまでも日本の国内法でコンピュータープログラムの保護期間を短縮する場合には、条約の改正によって保護期間が短縮された場合のみであると当方は理解いたしております。
#34
○粕谷照美君 そこがまたもう一つの問題があると思うのですよね。五十年でよろしいという態度でもってベルヌ条約に臨んでいって、どこかの国が、そうではなくて、もうちょっと短くしたらよろしいんじゃないかというようなときに通産省のことを思い出し、そうだというふうになっていくのか、逆に言えば通産省とのかかわりでこの点はもう少し短くしなければならない、積極的にこの五十年というものについてさっきの写真だとか応用美術のように二十五年とか、あるいは三十年とか二十年とか、こういうふうにベルヌ条約を変えていきましょうという態度で臨まれますのか、それはどこの場所で討議をされるのか。
#35
○政府委員(加戸守行君) この問題につきましては、通産省と文化庁の両省庁間で検討をするわけでございますが、基本的には国内の例えばソフトメーター、あるいは逆にコンピューターソフトウエアを利用する者、そういった関係者の方々の御意見あるいは意向というものを十分見きわめる必要があろうかと思います。それが第一点でございます。と同時に世界各国におきましても、既に著作権法制によって保護するという方向を示した国におきましても、現時点では五十年でいくけれども、将来的には短くすべきではないかという考え方を持っている国も幾つかございますし、そういった国際的な動向も見きわめながら、条約改正の時期におきまして日本国としての態度を決めるということになろうかと思います。いずれにいたしましても、国内のそういった利用関係等、状況を踏まえるということと国際的な動向を見きわめるということで、そういった様子を見きわめながらというのが現時点での考え方でございます。なお、現時点におきましてはまだコンピュータープログラム自体の生命がそれほど長くはございませんで、幾らプログラムとして現在残っているものといたしましても、十年とか二十年までいくものはほとんどございませんから、五十年が長いかどうかというのは正直申し上げますとあと二、三十年たった時点でそんなに保護する必要があるのかというようなことがもっと真剣な議論になるだろうと思いますし、現時点では若干観念的な議論のやりとりになっている傾向なきにしもあらずでございます。そういった点でこれからのコンピュータープログラムの使われ方、消耗の度合い、あるいは取引の実態等を踏まえ、各国内的な状況、国際的な状況、両方見きわめながら検討していくということでございます。
#36
○粕谷照美君 諸外国の状況を見きわめるなんていう、それはちょっと風見鶏的にすぎるのではないかと思いますね。日本の国の態度をきちっとしていくということが大事なんですから。
 それで、今加戸さんもおっしゃった関係者の意向を聞いてとおっしゃるけれども、この関係者の意向がうんとあったからこそ通産省の独立法というものが出てきたのではありませんですか。そうしたら結論は自明の理ではないかと思いますけれども、いかがですか。
#37
○政府委員(加戸守行君) 確かに日本におきますソフトウエアメーカーとして、いわゆる権利者サイドの意見は保護期間が短い方がいいという、どちらかと申しますと通産省のプログラム権法構想に賛成をいたしました理由はそこにあったのではなかろうかと思います。ただ、日本の立場といたしまして、文化庁サイドといたしましては著作権条約上の義務というのがございましたけれども、それ以外にもアメリカ、EC諸国がそれぞれ五十年ということを強く主張しておりましたものですから、国際的に流通するソフトウエアといたしまして、やはり世界と水準を並べるということが適切ではなかろうかというような考え方で今回の妥結を見たわけでございます。もちろん将来の条約改正の時期におきまして、今のような考え方が、つまり保護期間は短い方がよろしいという考え方が依然として続き、かつそういった意向が国内関係業界に強いといたしますれば、日本国政府のとる態度もそのような方向に向かう可能性が強いと思います。
#38
○粕谷照美君 それでは次、十五条に関連してお伺いをいたします。
 この著作権法が保護するという、その保護の客体を一体どこに置いているのだろうかということであります。
 まず第一にこのプログラムを発注する会社のことであるのか、これを受注してつくった企業のことであるのか、またこの企業の中で実際にプログラムを開発した技術者のことなんでしょうか、これはどうですか。
#39
○政府委員(加戸守行君) 著作権制度におきましては、著作物の創作というのは基本的には自然人主義をとっておりまして、それぞれ個人個人の頭脳活動によって著作物が作成される。したがって著作者は個人であり著作権者は個人であるというのが基本でございます。ただ、社会の実態を見てみますときに、いろんな著作物が創作されますが、ある法人等、会社のような法人等におきまして、その発意に基づいてそこの職務に従事する者が、その職務として職務上作成するものについてはこれを著作者は法人等であるという考え方が十五条の規定でございまして、その考え方としてはその著作物についての責任はだれが負うのであるか、だれの発想に基づきどういう形でつくられて、しかもその個性はどこに具現されているのか、そういった諸般の状況を考えてみますときに、実体的にも企業等の法人が著作者であるという実態を踏まえまして現在の十五条が規定されているわけでございます。
 今回十五条の二項を追加申し上げましたのは、それに若干プログラムの特性に見合いました、あるいは作成の実態等を踏まえた上で法人名義の要件を取り払っておりますけれども、そういった修正は別といたしまして、基本的な考え方はそういった社会的実態に適合するような法制をとっているわけでございます。
 ところで、先生今おっしゃいましたプログラムの発注した者、あるいは受注した者のいずれがプログラムの著作者になるかという御質問でございますれば、それは当然に受注をした、つまりプログラムの製作を委託されて、そのプログラムの製作の知的活動を行ったのが受託者でございますので、発注を受けた者がプログラムの製作者あるいは著作者となるということでございます。そこで、問題はプログラムを現実につくっておりますのが会社の従業員である場合の問題でございますけれども、その場合にはこの十五条、提案申し上げております十五条の要件に合致する場合には、つまり法人等の発意に基づいて、その法人等の業務に従事する者が、その職務上作成するという実態がございますれば、その場合には会社等の法人が著作者となる。それ以外のケースは個人が、いわゆる個人である従業者が著作者となるということでございます。
#40
○粕谷照美君 今のことですけれども、会社の、あるいは法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラム、確かに従事する者でありますから月給もらっていますね。そして研究に要するいろいろな材料などというものも会社あるいは法人から出されている、自分は頭脳だけ出している、頭脳だけでない、その技術も出していますよ。こういうことから考えてみると、幾ら法律でそんなこと言ったってやっぱりこれつくったのはおれたちなんだ、おれたちの権利がなぜ認められないのだ、これは現場でやっぱり働く人たちの強い不満だというふうに思うのですけれどもね。それはどうですか。
#41
○政府委員(加戸守行君) 職務上著作の考え方につきましては、コンピュータープログラムに限らず、一般的にあり得ることでございまして、私どもは国家公務員として国の行政に従事して、あるいは仕事の上で自分としては非常に一生懸命考えた名文をつくり出したといたしましても、著作権は文化庁、国に所属するわけでございます。そういうような問題もございますが、プログラムの場合は特に多数人が一つの大きなプログラムをつくるため、多数のシステムエンジニアが参画し共同体でつくり上げるという性格のものであるということが一つ。それから、でき上がったプログラムについての責任をだれが負うのかということになりますと、プログラムはどの会社のものであり、あるいはどの会社が責任を持ってそのプログラムについての社会的ないろいろな追及を受けるか。そういった考え方を見ますと、もはやそのプログラムは会社のものあるいは法人のものであると考えることが社会的実態に適合するということで、今の十五条二項を提案申し上げているわけでございまして、個人の努力そのものは買うわけでございますけれども、仕事としてそのためにつくるものであるということが基本的にその著作権の所在を決める大きな理由づけになるのではないかと思うわけでございます。
 例えは悪うございますが、職務として従事している結果、その付随的にできるものにつきましては、これは十五条二項の適用を受けないわけでございます。現在の十五条におきましても、例えば大学の教授が大学で講義をするために講義案をつくるという場合を考えてみましても、それは自分の職務として講義案をつくっているのではなくて、大学において講義をすることが職務である、しかしその講義に使うためにつくる講義案というものは職務の過程に付随してできるものでありまして、講義案をつくって印刷発行することが国の仕事あるいはその大学教授の仕事というぐあいには理解いたしておりません。この場合には大学教授が著作者であり著作権を持つというようなこともあるわけでございまして、一般的に申し上げますれば、まさにプログラムをつくるために雇用され、プログラムをつくることを職務とし、またそのことによって報酬を受けているという場合につきましては、十五条二項の適用を受けて、プログラムの著作者が法人等であり、かつ著作権が帰属するというのが合理的であり、かつ実態に適合していると理解しているわけでございます。
#42
○粕谷照美君 現場で働く人たちがなぜこういうことを強く思い不満を述べるかということなんです。私はこの間再就職の方々とお会いして言ったんですけれども、やっぱり一つにはそういう技術者が非常に足りない。本当に足りないから今大事にされているんです。大事にされている割には、
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
先日の参考人の意見ではありませんけれども、中村参考人は、そういえば労に報いるには少し低い支払いしかしていないかなあというふうに言っていらっしゃったわけでありますけれども、そこが問題だと思うんです。
 発注をする会社は受注をする会社に対してこれこれで請け負ってくれと大体言うわけです。その請負の単位といいますか、それは大体今平均的にどういうような形式で行われておりますか。
#43
○政府委員(加戸守行君) この辺のコンピュータープログラム作成の実態、当方としてはそれほどつまびらかにしているわけではございませんので、先生の受注の単位という御質問に的確にお答えすることはちょっと難しいかと思いますが、通常の場合でございますと、一つのプログラムそのものの丸々発注というケースよりも、大きなプログラムをつくるために部分的なプログラムについてそれを下請あるいは受注会社に発注をするという形態はよくあるように聞いております。その場合のそれぞれの大きなプログラムを構成する一部分としてのプログラムの発注ということが実態的には一般的に行われているケースではなかろうかと思うわけでございますけれども、小さなプログラムの場合には丸々発注というケースも、ケースとしては少のうございましょうが、あり得るものと理解しております。
#44
○粕谷照美君 私の質問が明確でなかったのかもしれません。大体依頼をするときには人月、十人で何月というような単位でもって請け負ってくださいと、こういうわけですね。そうすると、受注をした会社は従業員に対してこれだけの期間で頑張れと、こういうわけです。こういう創作性を持つものでありますから、八時間労働でなんか終わらないわけです。そして夜もやるし、機械が動いていて途中でとめるわけにいかないから、本当に八時間なんていったって十六時間もやることもあります。これが現実だというふうに思いますけれども、そういう割には報われ方が足りないという不満から出ているんだというふうに思っているわけであります。それと同時に、発注をする側にしてみればその期間内にきちんとやってもらわなければ契約違反である、こういうことでものすごい大変な、それは経済のルールとすればそういうことになろうかと思いますけれども、違約金を支払わなければならない。そのために労働者の労働なんというのは大変なものがある。こういうやっぱり不満というものがうっせきしているんだというふうに思います。
 これは著作権そのものではありませんけれども、著作権法の学者は確かに法律については詳しいかもしれない。しかし、その場で働く人たちを大事にするような法律でなければ、これは働く者の創造性をかき立てるなんというようなことにはならないんだ、こういうことを指摘しているわけでありますので、十分に御注意をいただきたい、御留意をいただきたいというふうに思います。
 ところで、先ほど私が、発注した会社に権利があるのか、これを受注した会社か開発した者かということについてもう一つ質問をいたします。私は新潟出身のものですから新潟鉄工というのはすごく身近にあるわけですけれども、この新潟鉄工に働く人、これは管理職でありましたけれども、この管理職が、数億円かけたシステムが完成して、完成した後で自分がそのソフトを持ち出したという事件があるの御存じだと思いますけれども、御説明いただけますか、詳しく。
#45
○政府委員(加戸守行君) ただいまのお答えを申し上げます前に、粕谷先生の今の取引慣行のことについてちょっと感想めいて恐縮でございますが、文化庁の立場といたしましても創作活動というものを奨励するという観点からすれば、著作権が会社に帰属するといたしましても、そのプログラムがヒットした場合等におきます褒賞金制度のようなものが取り入れられれば、今の著作権法プロパーの問題ではございませんけれども、知的活動の創作奨励という観点からは好ましいことではないかという感想は持っております。余分でございました。
 そこで、新潟鉄工事件の概要でございますけれども、これは新潟鉄工所が開発しましたコンピューターシステムに関する資料をその研究に従事した技術者らが無断でコピーするために社外へ持ち出したという事件でございまして、これが業務上横領罪ということで五十八年に逮捕されまして、起訴されたわけでございまして、本年の二月十三日に東京地裁で全員有罪の判決が出たところでございます。
 この判断は当たりまして、いわゆる争われましたのは刑法上の業務上横領罪とそれから詐欺未遂罪でございますけれども、著作権法の観点からの議論もございましたのは、ちょうどそのコンピューターシステムに関します資料の著作権はいずれに属するのかということで、著作権法十五条の法人著作の規定の適用を認めておりまして、このソフトウエアに関する著作権は会社に帰属するということが傍論として述べられております。
 なお、事柄の本質は、今申し上げましたように業務上横領罪の有無が争われた事例でございます。
#46
○粕谷照美君 そうしますと、その場合、新潟鉄工とそれを持ち出した者との間に契約が成り立っていたということなんでしょうか、この所属は会社のものでありますよという。それはどうなっておりましたか。
#47
○政府委員(加戸守行君) 著作権法の現行法十五条におきましては、法人等の使用者の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成する著作物で、その法人等が自己の著作の名義のもとに公表するものの著作者は、その法人等とするという規定がございまして、この新潟鉄工所事件の場合には、この新潟鉄工所の名前で公表されたソフトウエアではございませんでした。いわゆる未公表のものでございますけれども、裁判所の判断といたしましては、「自己の著作の名義の下に公表するもの」という解釈といたしまして、
   〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕
既に公表されたもののみならず、これから公表するとすれば当然新潟鉄工所の名前で公表されたであろうという場合には十五条の規定の適用があるという形で、公表予定のものも含めまして新潟鉄工所の公表名義になるという考え方を示したわけでございまして、そういたしますれば十五条の要件に合致する。したがって、このソフトウェアの著作者は新潟鉄工所である、そういう判断を示したわけでございます。
#48
○粕谷照美君 そうしますと、明確は著作権法違反という判決になりますか。
#49
○政府委員(加戸守行君) 先ほど申し上げましたように、起訴されましたのはこういったコピーするための無断社外持ち出し行為が業務上横領罪に該当するかどうかという形で争われたわけでございますので、その限りでは著作権法とは関係ないわけでございますが、その判決の中で、先ほど申し上げましたように傍論といたしまして、そのソフトウエアの著作権者はいずれにありやという判断が示されたわけでございます。と申しますのは、被告側で、自分たちがつくったものであるから自分たちの著作物である、したがって、それを社外に持ち出すことは許されるという意味の主張をされたことに対します判断でございます。
#50
○粕谷照美君 そうすると、会社側はこれ著作権法違反で訴えてもよかった、反論してもよかったということになりませんでしょうか。結論が出たから安心して著作権法違反だというふうに考えているのかもしれませんが、そのあたりは実情としてどんな感じをお考えですか。
#51
○政府委員(加戸守行君) 争われました事例が、ソフトウエア関係資料の社外持ち出し行為が争われたわけでございますが、粕谷先生おっしゃいますように、確かに持ち出してコピーをしているわけでございますから、そのコピー行為はプログラムあるいはソフトウエア関係資料いずれも著作権法の観点からコピー行為が著作権法上の複製に当たるという主張は可能であったろうと思います。ただ、五十八年二月に逮捕された時点につきましてそれほどしかくプログラムあるいはソフトウエア関係の著作権問題というのが必ずしも明確には十分認識はされていなかった面もあるし、検察側の態度としても一番はっきりして起訴しやすいのが業務上横領罪であったということで、訴訟技術上の、あるいは立証可能といいますか、理論づけがはっきりしているという視点からの対応ではなかったかと考えております。
#52
○粕谷照美君 そういう意味では今回の著作権法改正というのは非常に大きな意味を持つものだというふうに思っておりますが、もう一つありますね。トランプの任天堂の事件がある。任天堂が下請にやらせていた。その下請が初めのうちは一生懸命任天堂のために受注をして納めていたわけですけれども、ある日気がついたわけですね。これは自分のところに著作権があるんだということで頑張ったわけです。これも結局下請が勝ったんですね。それもやっぱり、さっきの新潟鉄工のものとは違いますけれども、会社側と下請側との間に契約が行われていなかったということが原因ではないかというふうに思いますが、これは質問通告してなかったので資料多分集めてないんじゃないかと思いますが、この実態はどういう理解をしたらよろしいですか。
#53
○政府委員(加戸守行君) 著作権法上はあくまでもその著作物をつくり出した、つまり創作活動をだれが行ったかという形で著作権が発生するわけでございますので、先ほどもお答え申し上げましたように、発注側と受注側の関係で申し上げれば当然に受注側が著作権者の地位に立つわけでございます。したがって、通常の場合でございますと契約によりまして発注側が受注側の著作権を買い取るといいますか、譲渡を受けるという形で処理されているのが通例でございますが、そういった措置がなされてない場合には法律上明確に受注側が著作権者の地位に立つことは当然でございます。
#54
○粕谷照美君 ところで、先ほどおっしゃった、私の先ほどの質問に対してつけ加えて御説明をいただきました現場で具体的に創作活動をやっている技術者に対してすばらしいソフトができた場合には褒賞金の制度などというものが考えられるんじゃないか、そういうことで創作意欲を増させることもできるのではないかという感想をお持ちになったというのであります。私は感想であっては困るんであって、それはもう当然のことであろうというふうに思うんですけれども、そういうようなことがこの契約の中に盛り込まれることが望ましいというふうに思っておられますか、どうでしょうか。
#55
○政府委員(加戸守行君) ただいまの御質問の事柄は通産省あるいは労働省の方からお答えいただくのが適切な事柄でございまして、文化庁といたしましてはそういった事柄に関する職務権限あるいは行政指導権限はございません。しかしながら、先ほどお答え申し上げましたように文化、知的活動の創作奨励という視点から見れば、文化庁としてはそのような感想を持っているということを申し上げたわけでございまして、それは具体的指導を行う立場にはないということを御了解いただければと思います。
#56
○粕谷照美君 私はもう一つこれに関連してちょっと質問してみたいと思いますのは、法人などの著作権に及ぶ範囲ということであります。例えば転職をした場合、退職をした場合、さっきの新潟鉄工のようにソフトは持ち出さない、コピーはしない、だけれども頭の中に入っているものはこれはどうしようもないわけでありまして、同じようなものをつくったとしても、このことはどういうことになりますでしょうか。
#57
○政府委員(加戸守行君) もちろん、そのコンピュータープログラムは具体的な作製行為に参画された方は頭の中に当然あると思います。問題は、著作権法によりまして今回保護を明確にしようとしております事柄はコンピュータープログラムの複製その他の利用行為についての規制でございまして、コンピュータープログラムのつくられるもととなりましたアイデア、アルゴリズム、原理といったものについての保護はいたしておりませんから、同じような原理、システムというものをベースに別個のプログラムをつくられることは退職後も自由でございます。しかしながら、同じような表現を使ってつくるとすれば、それはかつて新潟鉄工所のためにつくったプログラムと全く同様のプログラムを一種の盗作行為と同じような形で評価を受けるわけでございますから、その場合には許されないということでございます。
 この関係は例えて申し上げれば、私が国のためにいろんな文書をつくって文化庁の文書として発表したものをそっくり同じような表現を使って同じような中身のものを雑誌に発表して原稿料をもらうというのと似たような関係に立つのではないかと思います。やはりある程度の換骨奪胎といいますか、プログラムの原理は使ってよろしゅうございますけれども、プログラムの表現が同じようなものでは困るという意味の縛りはかかるわけでございます。
#58
○粕谷照美君 では、次の二十条に関連をして伺います。
 著作権者は人格権として十八条の公表権、それから十九条の氏名表示権、また二十条の同一性保持権というものを持っているわけですが、この同一性保持権はベルヌ条約によれば、著作者の「名誉又は声望を害するおそれ」ある場合に限って保障されると、こうあるわけであります。体や命などというその人格権と違って厳格さに欠ける、これは当然のことだというふうに思うわけですけれども、文学、芸術作品と違って技術的作品でありますから、変更だとか切除だとか、その他の改変は著作者の人格的利益を必ずしも害することにはならないのではないか。法の認める改変の必要性の判断は一体どこにあるのかということはいかがお答えになりますか。
#59
○政府委員(加戸守行君) ただいま先生御指摘なさいましたように、ベルヌ条約の六条の二の一項で著作老人格権の規定がございます。それは確かに著作者の「名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利を保有する。」という規定でございまして、我が国の著作権法に規定してございます十八条から二十条までの著作者人格権はこのベルヌ条約を受けたものではございますが、これと全く同一内容のものであるとは必ずしも考えておりません。条約で要求しておりますのは最低限の権利でございますので、それを若干敷衍し、あるいは日本の国内情勢に見合った形で十八条から二十条までの各種人格権の内容を規定したものでございます。しかしながら、基本的にこの精神といたしますところは著作者の名誉、声望を害されないようにするということを担保するための規定が、具体的には例えばこの第二十条の同一性保持権でございます。
 ところでコンピュータープログラムの場合につきましては、もともとがプログラムの使命と申しますのはコンピューターに作動させるその機能性というものに大きなウエートがあるわけでございますから、当然に内容の改変等がそのコンピュータープログラムを利用するために必要な場合が生じてくるわけでございまして、その場合は当然にそういうことを想定してプログラムがつくられているという理解のもとに立ちますれば、同一性保持権の侵害ということの考え方が出てくる余地はないわけでございます。しかしながら、そういうことは一般的に著作権法の二十条におきましても現行の第三号でございますが、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」を許容いたしておりますけれども、その中で完全に読めるのかどうかについて疑義がある、あるいは昨年来のプログラム権法構想等の議論の中におきましても、同一性保持権がプログラム利用の大きなネックになるというような御主張等もございました点も勘案いたしまして、具体的にこういう利用は人格権を侵害するような改変には当たらないということを明確にした方が適切であろう、そういう判断に立ちまして新しく三号を追加して提案を申し上げている次第でございます。
#60
○粕谷照美君 ここが通産省との非常に問題点だったんだろうというふうに考えますが、それで整合性が得られたとしても私にはどうしてもわからないのは、やむを得ないと認められる程度という、やむを得ないのは一体だれが判断をし、どの程度のことになっているのかということであります。
#61
○政府委員(加戸守行君) 確かに、やむを得ないと認められるといいますのは客観的に認められるということでございまして、争いがございますれば最終的には裁判所の判断によらざるを得ないわけでございます。しかしながら、この同一性保持権の立法理由、趣旨自体が先ほど申し上げましたように、著作者にとって著作物を改ざん、変更されることは精神的に耐えがたいものであるかどうかという事柄でございますから、例えば小説の場合でございますと、自分の書いた文章というのは貴重なものでございますので、一字一句たりとも変更されることについて極端なアレルギーをお持ちの先生方もいらっしゃるでございましょうし、そういう意味の、言葉の表現自体が命であるというような文芸作品の場合についてはシビアな判断が加えられると思います。一方プログラムの場合には、著作物の特性、性質からいたしまして、先ほど申し上げましたように、コンピューターの機能そのものが命でございますので、そのための改変をすることについてプログラマーなりあるいはプログラムをつくられた方が、そこの表現が変わることは耐えがたいというような認識をお持ちのようには考えられませんし、また社会的実態からしてもそれは許容される。したがいまして、一般社会通念によって判断をされるということになろうかと思います。
#62
○粕谷照美君 そこのところが大変難しいんだろうというふうに思います。やっぱり常にバージョンアップをしながらやっていくわけですから、一体どこのところで変わっていっているのか、このところからやむを得なくなるのか得るのかという判断というのは非常に難しいだろうというふうに思います。
 裁判にということでありますから、最終的には私は裁判の部分といいますか、紛争の解決の部分でこの辺をまた質問をしてみたいというふうに思いますけれども、プログラムが常に改変されて利用されていく、その翻案権の及ぶ範囲について第六小委員会が中間報告を出しているのではないかと思いますが、具体的にわかりやすく御説明いただきたいと思います。
#63
○政府委員(加戸守行君) 著作物の翻案と申しますのはいろいろな著作物につきましてもかなり微妙な、解釈の難しい問題がございます。特にプログラムの翻案という考え方の場合についてはそのことが強く言えるわけでございます。昨年一月発表されました第六小委員会報告の中でもかなりブレイクダウンした形でプログラムの翻案についての考え方を示しております。一般的には小説等のように基本的な筋、仕組みをベースとしてでき上がったものが、例えばドラマになる、映画になるといった場合につきましては、その内容性としましてその権利が及ぶ、つまり翻案という概念で押さえられる範囲が広いわけでございまして、一方、それに対しましてプログラムの翻案と申しますのは、この著作権法の提案の中でも明記してございますように、いわゆるアイデア、アルゴリズムというものを保護いたしておりません。そういう観点からそういうアルゴリズムを保護しないという基本的観点からしますと、プログラムの翻案権が及ぶ範囲というのは極めて狭くなるだろうというのが一般的に言えるわけでございます。
 そういったことを冒頭に述べまして、次に一つのプログラムに基づいて、これを別のプログラムに変更する場合の考え方でございまして、もとのプログラムをAといたしまして、次にできるプログラムをA′といたしますれば、Aプログラムの実質的な内容及びその表現というものをそのまま受け継いで、そのA′プログラムがAプログラムに付加した状態といいますか、新たな創作性を加えて、例えば言葉は適当であるかどうかわかりませんけれども、Aプログラムの内容が八〇あるいは七〇であり、それに対して二〇なり三〇の創作性が加えられたA′プログラムという場合には、このA′プログラムはAプログラムの翻案に該当する、そういう考え方を示しております。
 それから既存のプログラム、つまりAプログラムをベースとしてその機能を向上さしたプログラムを同様な目的を達成するためにBというプログラムができた場合を想定いたしまして、この場合に、そのAプログラムがねらいとしております機能は達成されるわけでございますが、その作成の過程がAプログラムの表現形式を踏襲するんではなくて、そのAプログラムの内容を分析いたしまして、そこに含まれておりますいわゆるアルゴリズムという原理に立ち返りまして、その基本からプログラムをつくり直す結果としてBプログラムができたという場合には、これは別個のプログラムである、Aのプログラムの著作権を侵害することなくつくられたプログラムであるという考え方を示しておるわけでございます。
 こういうような一般的な考え方を第六小委員会報告の中で一応考え方を示すことによりまして実務的な扱いにおきましてプログラムの翻案に該当するかしないかの一応の交通整理はできようかと思っております。ただし、どの程度の変更が翻案に該当するのかということになりますと、それはケース・バイ・ケース、ボーダーラインの微妙な場合も当然出てこようかと思われます。
#64
○粕谷照美君 それだからこそ裁判というのはなおさら専門的で長く、難しいものがあるんだろうというふうに考えております。しかし、一応の指針ができた、ガイドラインができたということについては私は評価をいたしますが、もう一つそれにやっぱり深く関連する問題では登録制度があろうかと思います。第七十八条の二になりましょうか、この法律案には登録に関する部分は本法案と一緒に提出をしないで別につくると、こうなっております。それはなぜそういうことになっているんですか、普通法律だったらそういう制度をつくりますよと言ったら、一緒にその法律も出してくる、これが当たり前なんではないかと思いますが、あるいは政令にゆだねるのでしょうか、これはどうなっておりますか。
#65
○政府委員(加戸守行君) 提案申し上げております改正案の中で第七十六条の二といたしまして、創作年月日登録の制度を設けつつ、第七十八条の二におきましてその登録に関しましては別に法律で定めることといたしております。そこで、この別に法律で定める法律の内容といたしましては、登録の手続あるいはプログラムの複製物を納付させる、あるいは登録にかかるプログラムの名称、機能の概要等を掲載した広報の発行などの考え方を盛り込む予定でございますけれども、例えば広報に掲載すべき事項といたしまして、ねらいは流通の円滑化でございますけれども、一方におきまして企業秘密を確保するという関係もどのように調整するかということにつきましては慎重な検討が必要でございますし、また関係業界の意見も聞く必要があるわけでございます。それから、場合によりましてはプログラムに関する登録申請件数がどのようになるのかということが今のところはっきりつかめませんけれども、先般の参考人の意見聴取でもございましたように、相当膨大な件数が登録されるんではないかということが予想される、あるいはその場合におきましては登録事務を文化庁として十分に行い得るのかどうかという問題も検討の必要性が出てくる可能性もございます。そういったことでこれらの関係規定の整備というのを、率直に申し上げまして通産省と文化庁とで合意に達し、今国会での成立を期して法案を提出する段階までには詰める時間的余裕もございませんでしたし、また関係団体等からの意見も十分聴取する時間的余裕もございませんでしたので、大変恐縮でございますが、別建ての法律といたしまして次の通常国会に提案をさしていただきたい、それまでの間に通産省との間並びに関係団体の御意見等も十分聴取をして適切な登録関係に関します法律を提案申し上げたいと考えておる次第でございます。
#66
○粕谷照美君 大臣にお伺いいたしますけれども、今の説明によりますと、先日の参考人の御意見によればかなり膨大な数の登録が行われるであろう、それが文化庁として事務をやれるかどうか、今十人しかいないわけですからね、やれるかどうかについてもこれから通産省と話し合いをすると、こういうことでありますね。来年の四月一日から突如として登録がふえたということにはならないだろうと思いますけれども、文化庁の事務としてやれるかどうかという事務処理能力ということは結局人数に関連してくるわけですね。そのあたりは今後の予算編成に関連をいたしまして何かありますでしょうか、どうですか。
#67
○政府委員(加戸守行君) 先生御承知のように行政改革の時代でございますし、また国家公務員の定数も削減の方向に向かっておるわけでございますので、このために膨大な人員等を要求して整備をするという考え方は持っておりません。具体的には文化庁で対応できるかどうかという予測をすると同時に、仮に登録事務あるいは登録された現物の保管とか、そういった諸般の事務等が文化庁として対応がもし事実上不可能に近い状態であるという認識を持てば、私ども考えておりますのは場合によりましては民間の適切な機関に登録を委託し、その登録に関する文化庁の監督規定を設けるというようなことも一つの方法ではないかという形で今後十分にその辺の状況を見きわめたいということでございまして、決してこの登録事務に伴いまして文化庁の著作権課に膨大な人間、定員を要求しようというつもりではございません。
#68
○粕谷照美君 このコンピューターソフトというのは、プログラムというのは非常に秘密性を要する部分があるわけでしょう。絶対に人に見せたくないと、知られたら困るというそういう部分もたくさんあるわけですね。それが民間の、文化庁がちゃんと運用規定をつくるとはいいましても、そのようなところに登録をするのでしょうか、うんと低いレベルのものだけが登録されるというふうにお考えになりませんか、どうでしょうか。
#69
○政府委員(加戸守行君) 今回の登録制度は創作年月日の登録制度でございまして、内容を実態的に審査するものでございませんので、申請主義に基づきまして形式さえ整えば受理するという、ある程度機械的なといいますか、形式審査による登録でございますので、内容審査に例えば工業所有権のような実態審査に立ち入りません。そういう意味ではその登録に関する仕事の対応の仕方としては高度の専門性が必要とは必ずしも考えていない。ただ、問題は今申し上げましたように秘密の問題でございまして、国家公務員には当然秘密を守る義務がございますけれども、そういった場合には信頼のできる民間の機関がございますればそれに行わせる場合を想定いたしますと、これは仮定の話でございますが、当然に国家公務員と同様の秘密を守る義務というのも別の法律におきまして規定する必要が出てこようかと思います。そういった秘密性というのは一番基本でございまして、その意味におきましてプログラム、特に納付されましたオブジェクトプログラムの複製物というものにつきましての扱いは極めて慎重を要する事柄があろうかと思いますけれども、通常はそれを対外的に見せたり出したりするわけじゃございませんので、倉庫にしまってそれが厳重な管理が行われるという状態があり、しかも公的な機関の監督が十分及ぶ場合であるならばそれも可能ではなかろうかということを今考えておるわけでございまして、もちろん今後の問題でございますけれども、そういった問題も含めまして別に定める法律の内容を検討していきたいということでございます。
#70
○粕谷照美君 次に、先日の参考人のときにも私は質問したんですけれども、日本産のH社のコンピューターを使用していたユーザーがIBMにH社が訴えられている、で和解をした、その和解をしたために使用契約を結びなさいと、こういうふうに言われた。使用契約なんということを考えてもみなかったのでどうしたことかと思ってあちらこちらを見渡したところが、東大あたりでも使用契約を結んでいるということがわかったので自分のところも結んだということが、あれは新聞の「論壇」に載っていたと思いますけれども、この新設の第百十三条第二項と関連をいたしまして「情を知つて」と、この部分に関連して質問するわけですが、著作権侵害には知らなかったんですからならないのじゃないか、契約を結ぶということは必要ないと思うのですけれども、それはどうですか。
#71
○政府委員(加戸守行君) もちろん先生今おっしゃいました事案は著作権法の改正提案の前でございますし、また現に改正案も整理していないわけでございますから、旧といいますか、改正前の著作権法で判断されるといたしましても、いずれにいたしましてもその著作権法の上におきましてはプログラムを使用する行為につきましては規定は現行法にもございませんし、今回の百十三条二項も情を知って使用する場合でございますので、当該事案は情を知らなかったわけでございますので、いずれはいたしましても著作権法の規制が動く事柄ではございません。しかしながら想像いたしまするに、I社とH社との関係におきましてどのような話し合いがあったのかわかりませんが、その力関係でH社から東大あるいは神奈川県に対してのI社との契約を結ぶようにという要請が行われ、事実問題としてそのような処理がされたというぐあいに理解しておりまして、これは著作権法の問題といいますよりも両者間におきます商取引の内容としてそのような形の要請があり、それを受けて、それがユーザーである東大なりあるいは神奈川県にそういった処理をするように協力要請があったものと、事実上の商取引の一環として行われたものと理解しております。この事柄自体が適切であるかどうかという問題は別といたしまして、著作権法とは関係のない事柄であり、また今回の改正案によりましても規制を受ける事柄ではございません。
#72
○粕谷照美君 プログラムの使用に関する文化庁とそれから文部省といいましょうか、文部省と通産省の見解の相違があるのではないかと思います。そこのところは非常に裏から考えれば同じようなことを言っているんじゃないかと、こう思いますけれども、それは明確にどこの点が違ってどういうお互いに利点といいますか、主張する根拠を持っていらっしゃるんですか。
#73
○政府委員(加戸守行君) プログラム権法構想の中におきましてはプログラムをコンピューターに使用する行為につきまして使用権という概念で規定しようと考えていたようでございます。その事柄はコンピューターを作動させるためにプログラムを使用する行為すべてに権利が動くという立て方をとったわけでございまして、プログラム権法構想につきましてはそういう意味で一々コンピューターを動かすたびにプログラムが使われるから、その都度権利が動くという概念構成は極めて問題が多くて慎重であるべきであるというのが当方の考え方だったわけでございます。もちろん、プログラム権法構想におきましても、すべてのコンピュータープログラムの利用行為を規制しようとしたわけではございませんで、善意で取得したプログラムを使っている場合には、プログラム権侵害ではなくて、相当な額の補償金を支払えば足りる、つまり今までどおり使ってもよろしいがそのかわりお金を払いなさいというような概念構成になっていたわけでございます。しかしながら、その問題も、理論的には使用権というものを、権利を設定しておきながら、善意で使い始めれば、先使用権といいますか、通常使用権が発生するかのごとき法理論構成ということにつきましては著作権法学者の中でも厳しい強い御批判のあったところでございまして、世界に類例のない権利の概念構成であるというような批判もございました。そういう意味で、この問題については、当方といたしまして使用権の導入は慎重であるべきである。実態的に問題となっておりましたのは何かと申しますと、例えばゲームセンターで海賊版とわかっているゲームソフトを買ってそこで利用させているというような場合につきまして、それが海賊版業者がアングラ業者でございますので抑えられない。しかしながら、違法海賊版のゲームソフトがあちらこちらのゲームセンターで大手を振って使われている状態は何とか規制しなくてはいけないではないかというのが使用権発想の一つであったわけでございますので、その意味で今回百十三条二項を提案申し上げましたのも、具体的な極端なケースにつきまして、本来の使用権概念は導入はいたしませんけれども、そういった海賊版プログラムを利用する行為が大っぴらに行われるということだけは何とかして防ぎたいというのが百十三条二項を提案申し上げた趣旨でございまして、結果的にはプログラム権法欄想とほぼ似た形の規制になりますが、基本的な違いは、善意で使い始めたものであってもプログラム権法構想では補償金を払わなければならないという点が今回の提案とは基本的に異なる、内容的に異なるところでございます。
#74
○粕谷照美君 善意でというよりは「情を」という言葉、事情というふうに言えば私はよくわかるんですけれども、何か「情を」というふうに言われますとちょっと昔の国会の事件を思い出しまして非常に不思議な気がするわけですけれども、それではここのところでは明確に通産省側の意見と文部省側の意見は合致をしたという理解をしてよろしいかというふうに思いまして、それはわかりました。
 ところで、先ほどからいろんな事件が起きたということに関連してですけれども、権利侵害があった場合の紛争処理の制度であります。文化庁の見解はどのようになっておりますか。
#75
○政府委員(加戸守行君) すべての分野でございますが、こういった権利関係の訴訟、争いにつきましては、最終的には訴訟によりまして裁判所の判断で解決されるものでございます。ただ、そのための便宜的な事前段階としては、例えば民事調停のような制度もございます。しかし、訴訟以外の問題といたしましては、両当事者が合意しなければ最終的にはどうしても訴訟に持ち込まれるわけでございますので、あくまでも途中のあっせん、調停、いろんな制度にいたしましても、両当事者がその解決に合意をするということが前提となるわけでございます。その意味で、いろんな紛争解決の問題というのは、例えば著作権法におきましては著作権紛争解決あっせん委員の制度を設けてあっせんを行うことといたしておりますけれども、これとても両当事者がそのあっせんに同意をしなければ成立しない事柄である。そういう意味で、訴訟以外の方法で強制的に行政庁が介入して一方的に国民の権利義務を裁くということは現在の法制度の中では存在しないものでございます。となりますと、このあっせん制度というものがいかに簡易迅速に行われるかということにつきましては、手続問題、内容の実質面はございますけれども、制度といたしますれば現在の紛争解決あっせん委員の制度を活用していただく。両当事者が合意できなければそれはどうしても訴訟になるという二者択一のような状況になるのではないかと考えておるわけでございます。
#76
○粕谷照美君 文部大臣は法律的なことを非常に御専門家でいらっしゃるみたいですけれども、こういう技術、コンピューターソフトウェア、もう言葉を覚えるだけでも大変ですよね。そういうような言葉を一々裁判官に説明をして、裁判官も一回説明されたらそれをうんと言ってのみこむような今実態にあるのだろうか。例えば今三十五歳を過ぎた人たちはこういうコンピューターそのものについてたって大変な抵抗があるのではないかというふうに思いますけれども、そうでなくても裁判そのものは随分長くかかる。プログラムの命というのは非常に短い。そんなに長くかかっていたらもう意味もない。こういうことについて一体迅速公正な裁判というのは具体的にできる保障といいますか、条件下に今ありますでしょうか。
#77
○国務大臣(松永光君) 先ほど次長もお答えいたしましたけれども、我が国の当事者間の紛争処理に関する裁判制度、訴訟制度は、最終的な判定をするのは一般の裁判所というふうな仕組みになっておりまして、かつてのように行政裁判所とかあるいはその他特別の裁判所は設けてはならぬというふうに憲法上の規定もあったかと思うのでありますが、そういう仕組みになっております。したがいまして、技術的な要素をたくさん含んでいる紛争あるいは特別な知識を必要とするような紛争等の場合にも、一般の普通の裁判所で最終的な判定をするという仕組みになっておるわけであります。したがって、それではとてもじゃないが迅速な解決ができにくいということから、その事前の段階としてあっせんの制度それから一般的な紛争解決の手続でありますけれども、調停という制度等々が実はあるわけであります。一般的に裁判所の刑事、民事両方ともそうでございますけれども、どうも訴訟期間が長いじゃないかという問題はしばしば言われているところなのであります。長いのはではいかなる理由によるのか、こういうことになってくるわけでありますが、これは私が言う立場じゃありませんけれども、どうしても両方の主張を十分聞きたい、あるいは双方が申請する証拠をできるだけ詳細に調べたいということになってまいりますというとどうしても長くなってくるというのが実情のようでございます。そういうことでありますので、実際問題としては権利保護に欠けるうらみもないわけじゃありません。
 それからもう一つの問題は、そういう特別の知識を持っていないというと判定できないという面があるわけでありますが、これにつきましては、これも一般的でございますけれども、訴訟の中で鑑定という仕組みがございまして、裁判所が特別の知識について判断の材料を得んとする場合には知識経験を持っている人を鑑定人に選任をして、その人が宣誓をした上、厳正公平な立場で鑑定をしていただく。その鑑定の結果を裁判所の判断の資料にする。こういう実は仕組みになって、それによって専門的な分野につきましても裁判所が最終的には判定を下す、こういう訴訟の仕組みに、あるいは紛争解決の仕組みに我が国の法体系はなっておる、こういうことだろうと思うわけでございます。
#78
○粕谷照美君 諸外国ではこういう点についてはどういうような状況をとっておられますでしょうか。
#79
○政府委員(加戸守行君) つまびらかにはいたしませんが、一般的に著作権制度の中におきましては、いずれの国も訴訟による解決というので途中にこの日本のような紛争解決あっせんの制度というのを設けている国はそれほどは多くないように思います。したがいまして、特にプログラムという問題が、これは日本だけじゃなくて恐らく世界各国でも非常にこれから頭の痛い難しい判断を求められる事項になってくるだろうと思いますけれども、そういった対応の仕方等につきましては、状況は十分に把握いたしておりません。ただ、我が国の場合について申し上げれば、最近におきます著作権紛争事例の頻発等もございました関係で、例えば東京地方裁判所では第二十九部という専門の部を設けまして著作権紛争はそこですべて処理をするという体制をとっておりますので、プログラム関係も著作権制度による保護が明確化され、今後の問題も、例えば東京を管轄とします事案でございますれば、今申し上げた二十九部でそれぞれのそういった事項を深く掘り下げている裁判官によりまして判断がされるものと思っております。
#80
○粕谷照美君 今回の法律改正そのものについての質問はここで終わりますけれども、著作権法に関連いたしまして、今のあっせん制度ですね。百一国会でできました貸しレコードの貸与権の問題があるわけですけれども、あの中に、あっせんをするということでこれが解決するだろうかという大変な危惧を持ったような状況が現実にこの文教委員会の中でも展開をされました。レンタル業界の代表とレコード協会の代表、それぞれ激突するわけですね。そして、権利を持っている三者のオーケーがとれなければこれはだめだと、こういうことでありまして、六月一日からたしか施行になったんじゃないかというふうに思いますが、これ無事に解決したでしょうか、どうでしょうか。
#81
○政府委員(加戸守行君) 昨年の六月一日に、いわゆる貸しレコード暫定措置法、議員立法によります暫定措置法が施行されまして、それ以後におきましては、日本音楽著作権協会、日本芸能実演家団体協議会、並びに日本レコード協会という三者、権利者側の三団体とレコードレンタル商業組合との間におきまして話し合いが進められまして、まず暫定措置法下におきましては暫定的な仮契約といいますか、暫定的な処理という形で許諾が与えられて実際的に機能いたしておりまして、問題は、政府提案によります著作権の一部改正法が本年六月二日から施行されたわけでございまして、既に日本音楽著作権協会とレコードレンタル商業組合との間におきましては合意に達しまして、文化庁長官の認可を受けました使用料規程に基づきまして現実に契約が成立し、既に日本音楽著作権協会関係といたしましては、本年の四月現在でございますが、千八百十三店の貸しレコード店と契約が成立し、円滑に施行されております。
 一方、レコード協会側と実演家団体協議会と、それから今申し上げた貸しレコード側との話し合いが若干おくれておりましたけれども、両者間で暫定的な措置は先ほど申し上げたようにあるわけでございますが、基本的な合意にほぼ両者達しておりまして、今、内容のPR等を行っておりまして、正式な契約は今月中にもスタートして円滑に実施が進むものというぐあいに考えております。
#82
○粕谷照美君 今のあっせんのところなんですけれども、非常に困難な状況の中で条件づきで許諾をするようにとの行政指導があった、こういうふうにして、今文化庁の努力を高く評価しているのがレンタル商業組合の機関誌は載っておりました。本当に御苦労さまだったと思いますけれども、そういう意味でレンタル業界は商業組合をつくって自主規制をしております、自助努力を払っている。しかし、千九百あるであろうと言われるこの業界の中に、ここに結集をしているのが千六百五十から千七百ぐらいなんですね。残っているアウトサイダーがあるわけですね。この辺のところも自分たちの努力で統合していきたいとこう思っているわけですが、今一番の問題は、貸しレコードとあわせて貸しビデオだというふうに思います。このビデオの現状がどんなふうになっているか御存じでしょうか。
#83
○政府委員(加戸守行君) 貸しビデオの問題につきましてはいろんなルートございますけれども、一つはビデオ協会という団体がございまして、そこでは適法なライセンスを得てビデオのレンタルができるようなビデオレンタルシステムというものをとりまして、現在レンタル店の約四百五十店が加盟しておりまして、その四百五十店との間には、ビデオ協会との間におきまして契約により適切な処理がされているということでございます。
 そのほか、ワーナー・パイオニア関係、あるいは日本ビクタービデオ系といろいろな形のそれぞれの系列店がございまして、八百店程度でございますがそれぞれの系列がございまして適法なレンタル契約が結ばれております。しかしながら、それ以外のいわゆるアウトサイダーと申しますか、今のビデオ協会、あるいはワーナー・パイオニア、あるいは日本ビクタービデオといったようなところ以外、つまりそれらと契約を結ばないで現実に行われている貸しビデオ店がたくさんございまして、現在私ども承知しております限りでは、公国で貸しビデオ店が約二千店あるというぐあいに理解しておりますが、先ほど申し上げた四百五十とか八百、八百と申しますのは、それぞれオーバーラップした、それぞれビデオ協会にもあるいはワーナー・パイオニアにも両方の契約もございますので、そういった点ではまだ相当数の無契約によります、あるいは無許諾のビデオレンタル店が営業を継続している状況にあると理解しております。
 そのためにも、現在そのビデオ協会では、ビデオ著作権保護監視機構というのを昨年の十月に設立いたしまして、未契約店あるいは無許諾店に対します監視を強めまして、契約の方向へ持っていくようにそれぞれの自助努力をしている状況にございます。
#84
○粕谷照美君 この問題は、今おっしゃったとおりだと思いますけれども、私はこのレコードレンタルの方で、ビデオレンタルも一緒にやりたい、同じ店で、こういうことを申請しているんだけれどもなかなか許可がもらえないとか、あるいは、まじめにやっていたら、これはつぶれてしまうんだと、こういうことを言っておりましたね。まじめにやらなければ営業ができて、まじめにやったら営業ができないというのも不思議な話ですが、大体ビデオをつくっている側からすればこれは二千本売れれば採算が成り立つんだそうですね。したがって、違法店が二千あってそこに一本ずつ買ってもらえれば十分採算がとれると。そういう意味では日本レコード協会のように厳しい追及がない、指摘がないという商売上の問題点もあろうかと思いますが、私が言いたいのは、こういうビデオとあわせまして今パソコンレンタルが出現をしているというのであります。これは二十六条の二に関連いたしまして、今度の改正案で貸与権による規制が働くのではないかというふうに思いますけれども、大変大きな意味を持っておりますね。文化庁としてはそれを意図してつくられたのでしょうか。
#85
○政府委員(加戸守行君) 前国会におきまして貸しレコード関係の改正として第二十六条の二に貸与権を創設さしていただきました。このときにも国会の答弁で申し上げたと思いますが、プログラムの著作権問題は当時通産省との間に議論はあったわけでございますけれども、当然に当文化庁といたしますればプログラムが著作物であり、かつ著作権法の適用を受けるということを前提として、パソコンソフトのレンタルについても権利が動くという認識のもとに提案さしていただいたわけでございまして、ただし、もちろんプログラム権法との調整をしたわけでございますが、仮にプログラム権法ほよってプログラムの保護を図るという事態になれば、著作権法の規定の適用を排除するわけでございますから二十六条の二も動かなくなるということでございますけれども、現在のようにプログラムの著作権による保護を明確にする提案を申し上げている段階におきましては、昨年の文化庁としての提案意図はそのまま受け継がれて自動的に二十六条の二の貸与権がパソコンソフトについても適用されるということでございます。
#86
○粕谷照美君 午前中はこれで終わります。
#87
○委員長(真鍋賢二君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時二分開会
#88
○委員長(真鍋賢二君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#89
○粕谷照美君 芥川先生、大変お忙しいところ私の質問のためにおいでいただきましてありがとうございました。
 先生のお名前も入りまして、日本音楽著作権・著作隣接権団体協議会から私あてに「著作権法上当面する重要問題の解決についてのお願い」という書類が届いております。これは多分、文化庁にも出しました、文教委員長にも出しましたということが別のところに載っておりますから皆さん御存じなんだと思いますけれども、ホームテーピングの問題とローマ条約への加盟問題が中心で、何とかしてもらわなければ困るという御要望なんだというふうに思います。そしてまた、日本音楽著作権協会の会報というのを私拝見をさせていただきましたけれども、世界会議が東京で開かれているようでありますね。それで、そこでもまたいろいろなことが話し合われて、特に今御要望のことが中心になっているようであります。中曽根総理のお顔なんかも出ているわけで、多分ごあいさつの中にはたくましい文化の話なんかもおやりになったんではないかと、こう思っておりますが、私どもは著作権の基本にかかわる問題として今の二つの項目を受けとめております。
 それで、この二つの項目に入る前に著作権そのものに関する先生の御見解をお伺いしたいと思います。
#90
○参考人(芥川也寸志君) まず、発言の機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。
 私のように音楽に携わる者あるいは文学に携わる者といっても同じことだと思いますが、そういう者たちにとりまして、著作権法というものは自分を守ってくれる救いの神でございます。私ごとで大変恐縮なんですが、私の父は小説家でありまして、私が二歳のときに死にました。それから、当時、龍之介の小説はかなり広く一般に読まれておりましたので、私は母の手で戦争がかなり激しくなる昭和十九年ごろまでは何不自由なく暮らし成長いたしまして、音楽の勉強しまして音楽家になることができたわけでございます。ですから著作権の持つ経済的な意味というものは極めて大きいと言わざるを得ません。しかし、これは全く仮定の問題でございますけれども、その龍之介という人物がもし音楽家であって、それで昭和の初期にホームテーピングというふうなものが存在していたとしますと、恐らく私は路頭に迷いまして、全く別の人生を歩んだだろうと思います。
 今申し上げましたのが著作権法における経済的な意味だと思いますが、著作権法にはもう一つの大きな側面、これは第一条の目的に掲げられております文化的な意味だと思います。つまり、経済的な意味は人の人生を左右いたしますけれども、文化的な意味は民族の運命を左右いたしますし、場合によっては一国の運命をも左右いたします。
 今問題になっておりますホームテーピング、私的録音・録画問題でございますけれども、私たちはつくり手といいますか、音楽をつくるつくり手としていわば無言の要求を一般公衆から感じて音楽を創作いたします。これはつくり手としての立場でございます。それで、私が楽譜を書きますと、それはただ単なる楽譜でありまして、音楽の営みは生まれません。この楽譜が今度演奏する立場の実演者の手に渡ります、あるいはレコード製作者の手に渡ります。この人たちはいわば社会への送り手であって、その送り手によって音楽が演奏されますと、初めてその音楽が受け手である公衆に伝達されまして、そこで初めて音楽としての営みが成立いたします。そうしますと、今度聴衆の方は、受け手はもう少しこういう音楽が欲しい、もう少しああいう音楽が欲しいという無言のまた要求を送り手の方にぶつけまして、それで創作者というものはそれをまた感じ取って新しい創作に励むものでございます。
 ところが、ホームテーピングといいますのは、人類が太古の時代から現在まで続けてきたこういう音楽の営みというのを非常に破壊するものでございまして、今の例を引いて申しますと、送り手から受け手へ行った音楽を受け手の中でまた複製してしまう。複製するということはまた新たなつくり手がそこにいるわけでございまして、それをまただれかに貸すとか与えるということによってその人はまた送り手になる。つまり、その受け手の公衆の中で小さなつくり手、送り手、受け手という関係が乱立するというような関係になります。そうしますと、本来のつくり手と送り手とのパイプというものが非常に細い、もうあってもなくてもいいような存在になってきてしまいます。つまり、これが創造的な意味を失わせるという根本的な意味でございます。
 それで、昨今、科学技術の発達によりまして著作物の利用媒体がいろんなふうに新しい媒体が生まれてくるわけでございますけども、今まで著作権制度というものは、適当にその新しい媒体が生まれるたびに改正が加えられまして近代化を遂げてきたと思います。しかし、大体対応がおくれがちでございまして、著作権者のための保護の手段というのは多くの場合時代おくれという感じになりますけれども、このホームテーピングの場合には技術の進歩が予期しないくらい非常な速さで進みましたために、法制度の対応のおくれというものがひときわ非常に目立つ存在になっております。
 それで、いろいろな心配することがございますが、その一つは、こういう状態を放置しておきますと、著作権軽視という風潮を生むことになると思います。今まで著作権制度の発達のために非常に努力を重ねてこられたそういう先人の努力というものが無になりかねないという状態であると思います。
 こういうふうに、ホームテーピングというものはとかく経済的な問題というふうに、そういう側面だけでとらえられがちでございますけれども、この問題の中にはもっと大きな文化の問題や民族の問題やそういう大きな問題が含まれているということを初めに申し上げたかったわけでございまして、それと私自身著作者でございますので、その著作者の抱いている不安な気持ちというものを申し上げたわけでございます。
#91
○粕谷照美君 どうもありがとうございました。
 今のような先生のお話を伺いながら、ホームテーピングというものは非常に著作者に不安を与えているということの御要望ではないかと思うわけですが、ホームテーピングの現状について御報告もなさっているようでありますけれども、今この場でお話をいただき、そして、そういう機器の普及についてどのような影響が具体的にあるかということについてお話をいただきたいと思います。
#92
○参考人(芥川也寸志君) 私ども日本音楽著作権協会、略称でJASRACと申しますが、このJASRACと芸団協、日本芸能実演家団体協議会、それともう一つレコード協会、この三つの団体が昨年全国調査をいたしました。その結果をちょっとお話したいと思うんですが、過去一年間にホームテーピングを経験したまず人数でございますが、三千八百万人、これはアメリカの調査がありましてハリー・フォックスの調査でございますが、アメリカの場合は四千五百八十万人。アメリカの方が日本を上回っておりますけれども、総人口との対比で申しますと、アメリカは二〇%に対しまして日本は三二・八%。日本の方が上回っております。それからホームテーピングをする年齢、年齢別に調べてみますと一番多いのが十三歳から二十三歳、この年齢層が八〇%を占めております。それから何を録音するかという質問をしてみますと、そのうちの九三%が音楽という答えでございます。これはヨーロッパなどと比較してみますと、ヨーロッパはIFPIの調査がございますが、ヨーロッパは九〇%以上が音楽、アメリカの場合は八四%が音楽ということで、ホームテーピングの場合には音楽が圧倒的に多数であるということがよくわかります。ちょっと計数的な数字ばかり並べまして大変恐縮でございますけれども、一人が平均年に十・三回ホームテーピングをしていることになりまして、一回のホームテーピングで十・一曲をテープしております、録音、複製しております。それで、この数字をもとにしましてホームテーピングされる著作物の量を、数を推定いたしますと、一年間でホームテーピングされる曲数は八十億八千万曲という膨大な数になります。アメリカの調査ですと、もしあなたがホームテーピングをしなかったらレコードを購入しましたかというクエスチョンがありまして、それに対するアンサーとしまして、その答えを総合いたしますと、購入の機会を失ったレコードは年に三億二千四百七十万枚という非常に多くの数に上ります。この割合を、パーセントを我が国に当てはめてみますと、ホームテーピングによりまして一年間に三億八千七百万枚のレコードが購入の機会を奪われたという結果になります。これは一々細かく計算しますと、いろいろ金額も出ますけれども、まあ大ざっぱに考えまして、以上の結果から音楽著作者の経済的な損失というのはいかに大きいかということがわかっていただけるかと思います。
 それから、そういう権利者、著作者並びに著作隣接権者に与える影響も極めて大きいわけでございますが、先ほど申し上げましたように、本物じゃなくて、複製でもってすべて物を代用してしまうと、本物はどうでもいいから複製でもいいんだという風潮が社会全体にみなぎりますと、本物をつくるのが大変なわけでございますから、汗みずたらして何にもないところから一生懸命本物をつくろうという、そういう努力がだんだん失われていってしまいます。つまり、そういう創造というものに対する価値がなくなってきますから、これは民族でいいますと種の保存ということがなくなりますから、少しオーバーな言い方をしますと民族は滅びるかもしれないと、そういう極めて大きな内容を含んでいるということが言えるかと思います。
#93
○粕谷照美君 文化庁にお伺いしますけれども、今の一年間に八十億八千万枚とか何億という数字ですけれども、正式に御調査なさっていらっしゃるわけですから、それはそのとおりに受けとめてみたいと思いますが、一応調査でありますので、文化庁としては今の御報告大体そのとおりだというように御理解をされております。
#94
○政府委員(加戸守行君) ただいま著隣協、日本音楽著作権・著作隣接権団体協議会で調査されました数字の御報告が芥川参考人からあったわけでございます。
 ただ、この調査自体は、サンプリング数が約千四百、特にそのうち東京都で八百、それから静岡、佐賀で三百、三百という調査でございますので、やや都市部に少しウエートのかかった調査ではないかという意味で、今の推計に基づきました数字自体がそのままであるとは思いませんが、おおよその都市型の傾向を反映しているという意味で、そういった今の現状をかなりの程度に反映した数字であろうと理解いたしております。
#95
○粕谷照美君 そうしますと、やっぱり私的録音、録画問題は著作権者の権利を侵しているということは文化庁としても強く認識をしてらっしゃるように思います。こういう状況はアメリカでもイギリスでもフランスでもドイツでも、まあヨーロッパでも同じ問題点があろうかというふうに思いますけれども、諸外国にも大きな影響を与えていると思いますが、その対応はどんなふうだったのでしょうか。CISACの総会あたりで報告がありませんでしたでしょうか。
#96
○参考人(芥川也寸志君) 今CISACのお話がございましたので、ちょっと御説明さしていただきたいと思いますが、CISACと申しますのは、日本の呼称では著作者作曲者協会国際連合というふうに申しまして、簡単に言いますと著作権協会の国際連合でございます。ここには五十八カ国、百二十団体が加盟しておりまして、世界各国の著作権協会が加盟している民間の組織でございます。そして二年に一遍、各国回り持ちで総会を開いておりまして、昨年は私どものJASRACが主催いたしまして東京で開催いたしました。そのときは参加国は四十九カ国プラス二地域、団体数は七十七、海外よりの参加は三百四十六名、日本からの参加を入れますと五百名を超えるという大変大きな国際会議でございました。
 昨年の十一月十二日から六日間にわたって開催されました著作権会議で、開会式には今先生がおっしゃいましたように中曽根総理も出席されましてごあいさつをいただきました。この中曽根総理のごあいさつはかなり格調の高いものであったと思います。そして、しかも具体的な問題に触れておられまして、実はこの会議が大変成功いたしまして、最終日には感謝決議などが採択されたわけでございますが、その大変な好評の一つの引き金になったのではないかというふうに思っております。
 全部は省略いたしますけれども、前段ではこういうことを言われました。
  一国の政治は、申し上げるまでもなく「最大多数の最大幸福」を求めるものでありますが、私は、就中、芸術文化の尊重とその振興しなくて、人々の幸福や繁栄をはかることも、また、世界の平和を実現することができないと確信いたしております。
  そして、文化の振興を考える上で、著作権を保護することが極めて重要であることは申すまでもありません。しかし、今日のような技術革新に伴う媒体の多様化の中で著作権保護を全うすることは極めて難しい状況になつてきております。
という前置きに始まりまして、CISACやJASRACの活動に触れられた後で、
  近年日本においても、海外における事情と同様、解決を求められている著作権問題は枚挙にいとまがありません。これらの解決は、もとより容易なことではありませんが、私は国際社会における我が国の責任にも十分な配慮を加えつつ、国民各層の協力を求め、一つ一つの問題に取り組んで参りたいと考えております。著作者の権利をより一層明確にするため、貸与権の創設をもりこんだ著作権法の一部修正に関する政府提案は国会において可決され、来年一月一日から施行される運びとなりました。このほか、私的録音録画、コンピューター・ソフトウエアの保護の問題については、海外の諸法制に鑑がみ、前向きに対処すべき旨の国会における付帯決議が採択されておりますが、政府としてもこの趣旨を十分尊重いたす所存であります。
というふうに私的録音・録画についての附帯決議にも触れておられます。
 で、このCISAC総会は会議の冒頭で「日本における私的録音・録画問題について」という基調報告を私が行いまして、各国代表の討論が行われました。
 それで、東京でCISAC総会を開いた意義についてでございますけれども、一つはもちろん日本におけるホームテーピングの問題、これを世界のひのき舞台で訴えかけて問題提起をすると、そしてその問題提起をすることによって一つのアクションを起こしていきたいということでありまして、大会の最終日にはホームテーピングに関する決議文が全会一致で採択されております。
 それで、この決議文は、昨年の十二月十一日付で、安倍外務大臣、松永文部大臣、鈴木前文化庁長官、阿部衆議院文教委員長及び真鍋参議院文教委員長あてにレオポルド・サンゴール氏の名前で送付されております。
 この決議文はやや長いものでありますが、最後のところだけちょっと御紹介しておきますと、少し堅い訳文でございますが、
  著作権の保護および文化の発展に資格のいかんを問わず関与しているすべての人々に対し、ホームテーピングに関する著作物使用料支払いの制度を導入する国内法の改正をまだ行っていない国々の政府に、これ以上遅らせずに、その法改正を行うことを強く要求するよう呼びかけることを、全会一致で決議する。
というものでございます。
 もう少しよろしゅうございますか。――一応……。
#97
○粕谷照美君 国会の附帯決議は一体どういうふうなものが挙げられていますでしょうか、今までに。
#98
○政府委員(加戸守行君) 昭和四十五年の著作権法全面改正の際にいろいろな積み残し課題の附帯決議がございました。例えば写真の保護期間の問題、映画の著作権の帰属の問題、あるいは実演家の人格権の問題等々の問題もございますが、いわゆる著作物の利用手段の発達に伴って考えられる著作権問題については時宜を失することなく対応することという附帯決議がございまして、その後その附帯決議を受けた形でいろんな審議等を著作権審議会にお願いをし、一つ一つその段階的な解決を目指してまいったわけでございますが、昨年の当文教委員会におきましても貸しレコード関係の著作権法全面改正に際しまして、コンピュータープログラムの保護の問題であるとか、隣接権条約への加入の問題であるとか、あるいは複写、複製機器に関します解決の問題と並びまして録音・録画機器の急激な発達に伴います、それに対する「賦課金制度の導入など諸外国の制度も参考にして抜本的解決を図るための対応をすすめること。」というような附帯決議もちょうだいいたしております。
#99
○粕谷照美君 その附帯決議を尊重していきますということを総理が著作権協会の世界会議でお話をなさって、感謝決議まで行われたというんですから、これはもう我が国としても早く何とかしなければならないなあという感じを私は持っております。
 この録音・録画機器あるいは衆議院では機材が入っておりますけれども、この問題に対する賦課金制度の導入について文部省としては一体今までどういう経過で審議が行われ、具体的な対策、つまり四十五年のときに国会決議があるように「時宜を失することなく」という、これに合致するような行動をとってこられたかということを質問いたします。
#100
○政府委員(加戸守行君) 著作権制度、各般の問題が多々あるわけでございまして、それを段階的に年を追いながらいろいろな審議を重ねてきているわけでございますが、具体的にはその私的録音・録画関係につきましては、著作権審議会の中に第五小委員会と申しますものを昭和五十二年に設置いたしまして、事柄が事柄でございまして、従来の著作権制度の中にある意味では革命的といいますか、意識の変革を伴いますような制度的対応でもございますし、また関係者間にいろいろな反発といいますか、強い抵抗等もございました関係があり、また法理論的にもいろいろ議論のあったところでございまして、したがいまして年月的には約三年八カ月という長い期間をかけまして第五小委員会に昭和五十六年六月に結論を出していただいたわけでございます。
 その報告の中身としましては、関係者の合意が現段階では得られないという理由によりまして、早急に特定の対応策を請ずることは困難であるというのが報告の第一点でございます。
 しかし第二点といたしまして、この問題を放置するのは妥当でないので、国民の理解を深めるため関係者、文化庁は適切な措置をとるべきであるというのが第二点。
 それから第三点といたしまして、将来制度面で対応する場合でも、関係者の基本的合意の存在が必要なので、文化庁として関係者間の話し合いの促進に配慮をするというのがこの第五小委員会での報告の概要でございます。
 これを受けまして、いわゆる文化庁といたしましては、国民の間にこの問題に関する認識を深めていただくという各種の著作権思想普及という観点からの施策を講じますとともに、一方におきまして関係者間の基本的な合意の形成ということへ向けての努力をする必要があるだろうという観点に立ちまして、私的な団体でございますが、社団法人の著作権資料協会と申します団体に著作権問題に関する懇談会と銘打ちまして、この私的録音・録画の問題のみに限りまして関係者間の懇談を重ねることとしたわけでございまして、五十七年の二月に設置したこの懇談会におきましては、権利者団体としましては、先ほどの著隣協の構成メンバーでございますJASRACと芸団協並びにレコード協会が関係権利者団体として代表を送っていただきまして、一方、使用者団体、メーカー側の団体としまして日本電子機械工業会並びに磁気テープ工業会、いわゆる録音録画の機器並びに器材のメーカー団体でございますが、その代表の方並びに学識経験者の三者構成をとりまして、現在まで約二十回にわたる会合を重ねまして、いろいろ問題点の討議なり方向性を見つけ出すべく、打開の糸口をつかむべくいろいろな話し合いをしているわけでございます。そして、昨年の附帯決議を受けましてこの懇談会におきましてもいろいろ解決への模索をしておるわけでございますが、少なくとも過去におきます状況に比べますと、相当程度のメーカー側にも理解が得られ、一つの方向性へ向けての協力の姿勢というのがあらわれてきているのではないか。そういう意味で、特に権利者団体がいろんな形での働きかけ、あるいは国内的並びに国際的ないろんな働きかけもある程度功を奏しつつあるというような状況にあると私どもは理解をしておるわけでございます。
#101
○粕谷照美君 芥川先生はそのお話し合いの場に出ていらっしゃると思いますが、あるいは団体の代表あたりが出ていらっしゃると思いますけれども、一番このネックになるところというのはどこになりますか。
#102
○参考人(芥川也寸志君) この御質問は結局具体的な解決策へ向かう一番ポイントのところだと思いますが、一番のネックというのは何と申しましてもメーカーサイドでございまして、私たちは今メーカーサイドと何とかして合意したいというふうに思いまして、協議を続けております。しかし、これは先ほどの加戸次長の言葉にありましたように、非常に大きな、著作権法の上においては、私は素人でございますが、非常に大きな改革だと私にもわかります。したがいまして、この合意というのはかなり難しいものだと思います。しかし、私どもは決してあきらめずに、合意にたどり着くように努力を続けておりますが、しかしこの合意がどう考えても得られそうもない、あるいは極めて遠い時期でなければ合意しそうにないという判断をしましたときには、やはりもう一方で、例えば私たちの団結をもう一層強めるように努力するなり、あるいは国民へのPRをもう一層努力するなり、もう少し別な努力の方向を見つけていかなければいけないのじゃないかというふうに思っております。
#103
○粕谷照美君 日本レコード協会の機関誌を見てみますと、国際レコード・ビデオ製作者連盟、IFPIですか、この理事会が東京であった。そこにおいでになった方々が、ぜひこの問題を解決するために一番暗礁に乗り上げている日本電子機械工業会との話し合いをしたいと、こういうふうに申し込んでいたんですけれども「日本電子機械工業会は出てもこなかった。話をすることもできなかった。そういうことで、まことに残念だ、ぜひ、パートナーとしての対話をしてもらいたいという声明を発して帰られているわけですね。その声明の中の最後のあたりに、私は大変困ったことだなと思うんですけれども、「日本の産業がひたすら頑固な態度を取りつづけるなら、その結果はネガティヴな反動を日本の産業にもたらすことになるでしょう。私たちはそれぞれの国の政府に請願するに当り、日本の産業は著作権の敵であり、わが業界の才能と権利とを深謀を以て利己的に略奪する者として描写するしか方法かないでしょう。そうなれば、悲劇的な行動の数々――通商的な制裁という形での報復措置、」、まことに厳しいですね。「すなわちそれぞれの国で広汎な国内産業の大同団結により、然るべき救済を求めるキャンペーン――を不可避的に招くでしょう。」、こういう言葉が出されているわけです。「ただし、こうした事態はすべて、避けようと思えば避けられることなのです。」と、こうあるんですけれどもね、本当にこの問題はゆっくりしていられない、私はそういうふうに思うわけであります。
 社労委員会において、男女の差別をなくするという意味で雇用における機会均等法が出たときに前坂本労働大臣は、この法律はまさにコペルニクス的発想のものであると、こういうふうにおっしゃいましたけれども、今、芥川先生の特にJASRACのこの御要望のことを実施をするということは、本当に日本の産業界においてはコペルニクス的発想のことになるのではないか。加戸次長のおっしゃったように大変困難なことであるけれども、しかし、その困難なことを諸外国において解決してないわけではないと思うんですね。具体的にどのような解決方法がなされていますでしょうか。
#104
○政府委員(加戸守行君) 時代の先取りと申しますか、この問題に最初に取り組みましたのが西ドイツでございまして、既に一九六六年には西ドイツにおきます著作権法の改正によりまして、録音・録画機器に対します賦課金制度を導入いたしておりまして、この先進国である西ドイツが、本年、伝えられるところによりますと、録音録画の今度器材につきましても同じく賦課金制度の導入をする著作権法の改正を行ったという情報を得ております。そのほかの国につきましては、一九八○年代に入っての措置でございますが、アイスランドが一九八四年に録音録画への機器器材両方につきまして賦課金制度を導入いたしております。それから録音録画用の器材のみ、いわゆるテープ関係でございますが、器材のみを対象とする賦課金制度を導入した国が、一九八一年から二年にかけましてオーストリア、それから一九八二年にコンゴ、一九八三年にハンガリー、一九八四年にフィンランドということで、現在六カ国が賦課金制度を導入いたしております。そのほかノルウェー、スウェーデン、フランス、デンマークがいずれも一九八〇年代に入りまして、録音録画用の機器または器材、あるいは双方を対象とするいわゆる一種の課税方式を取り入れておりまして、これは賦課金そのものでございませんが、一種の税金という形で取りまして、文化目的に使用するというような制度を取り入れております。そのほか、今申し上げた十カ国が一応法的な制度の対応をした国でございますが、私ども得ております情報では、そのほかに現在アメリカ、スイス、ベルギー、ポルトガル、ブラジル、イタリアの六カ国におきましてこの賦課金制度を導入する著作権法改正案が、政府提案または議員提案によりまして国会で審議中であるというのが現在つかみ得ている情報でございます。そのほか、この賦課金制度を導入すべく検討を進めている国としましては、オランダ、スペイン、イギリス、オーストリアなどが現在法改正案を準備中であるという情報を得ております。
#105
○粕谷照美君 芥川参考人にお伺いしますけれども、諸外国がそういう機器に対して、あるいは器材のところもあるわけです。テープに対してのところもあるわけですけれども、こういう賦課金制度を入れたというその根本には、録音の機器というのはもうほとんど日本製じゃないんですか、九五%が日本製。しかもその中にはダブルカセット、高速ダビング機器のようなものが集中豪雨のように流れ込んでいるという、こういう不安も一つあったのではないだろうか。日本のメーカーが日本でつくり日本で販売するものとまた違って大変大きな危機感があったのではないかというふうに思いますけれども、この問題で業界は安定状況になってきたというような報告がありますでしょうか。あるいは著作権協会に対してその賦課金が公正に配分されるというような状況などありますでしょうか。例えば西ドイツにおいて賦課金制度がとられた、その賦課金は一体どういうようにしてその配分をされるのか。そんな質問だとか報告だとかありませんでしたでしょうか。
#106
○参考人(芥川也寸志君) ちょっと御質問の意味をはかりかねる部分もございますけれども、先ほど加戸次長から御説明いただきましたように、西ドイツは先進国でございまして一九六六年に機器の賦課金を既に徴収しておりますけれども、ことしの五月二十三日、ついこの間でございますけれども、テープにつきましても賦課金を課す法案が連邦議会において採択されております。大変皮肉なことでございますけれども、この五月二十三日という日は、我が国におきましては、衆議院で「賦課金制度の導入など抜本的解決のための制度的対応について検討を進めること」という附帯決議が決議されたと同じ日でございます。
 それで、粕谷先生のおっしゃいました日本製品が非常に多いということはそのとおりでございまして、日本は世界一の機器・機材の生産国でございます。ちょっと計数的なことを申し上げますが、録音機器、ブランクテープの生産量は世界の需要の大体四〇%。それからVTRの録画機器に至りましては九五%でございまして、ヘッドが回転する丸いベアリングをつくる技術が日本は非常にすぐれているそうでございまして、しかもその中の録音機器では六三%、録画機器では八〇%が輸出されている、こういう事情でございまして、世界の市場に非常に大きなシェアを得ております。
 それで、このように生産も輸出も非常に大量であることから、ホームテーピングの問題は日本が非常に大きな世界的な信義の問題になっているわけでありまして、ここまで私の立場で申し上げるのは適当ではないかもしれないんですが、メーカーサイドが今のように余りにも消極的に否定的な態度をずっとお続けになりますと、将来国外のそういう権利者からも、非常に強い反発が出てきまして、メーカーにとってもかえって不利になる状況が生まれるんじゃないかというふうに思っております。つまりホームテーピングの問題というのはいろんな問題がありますけれども、同時にこれは国際信義上の大きな問題でもあるということをぜひ申し上げたいと思います。
#107
○粕谷照美君 確かにそうだというふうに思うんです。それで、例えばイギリスの政府ですけれども、グリーンペーパーの諮問文書というものを出しているわけですね、ブランクテープに賦課金をということで。この賦課金はどういうふうに使われるかといいますと、私的複製の対象とされた著作物の権利者だけのために徴収をされ、管理費を除いた後権利者の間だけで配分される、これは税金とは違います。こういうことを言っているので、私が先ほど芥川先生にお伺いしたかったことはそういうことの実態がどうなっているかということをお伺いしたかったわけです。
 ここで文化庁にお伺いしたいのは、政府がこういう態度でもって諮問をするというのと、あちらの御意見もお伺いしましょう、こちらの御意見もお伺いしましょう、そしてその判断をしましょうということとは違うと思うのですね。国会でもこれだけ決議がされてきている。もう決断をすべき時に来ているんではないか、こういうふうに思います。文化庁及び文部大臣の御見解を承りたい。
#108
○政府委員(加戸守行君) 状況、バックグラウンド、その他の違いはございましょうが、先ほど申し上げましたように、著作権審議会の第五小委員会が特定の方策をとにかく現段階ではというのは、五十六年の時点でございますけれども、特定の対応策を講ずるのが、とることは困難であるという前提、報告を受けまして、関係者間の合意の形成を図るような努力をしろという御報告をちょうだいした上で現在進めておるわけでございますので、確かにその後客観的な状況も変化しましたし、特に一九八〇年代に入って、世界の各国がおくれじと、こういう対応に進んでいる状況の中にあって、日本がこのままでよいかというのは、確かに附帯決議等の趣旨も受けまして私ども考えなければならない大きな問題だと思っております。ただ、著作権制度の改正と申しますのは、現在の建前としまして、著作権審議会では著作権制度の重要課題を御審議いただいて、その御報告なり答申なりをちょうだいして制度改正をするというのが従来のパターンでございましたし、全面改正の際もそうでございますし、貸しレコードの問題、あるいは今回提案申し上げておりますコンピュータープログラムの保護の問題もすべてそのようなプロセスを経ておりますものですから、私ども行政的な手続の対応といたしますれば、現在の懇談会におきます合意の形成がある程度の方向性というものが出ました、見通しがつきました段階で、再度著作権審議会にお諮りをし、制度改正を法案として国会に提案申し上げるという形になろうかと、これが事務的なやり方でございますが、とろうとしておる、考えております手続面での話でございます。
 要は、現在の内容的な問題として、世界のこのような動向あるいは関係権利者側の意向、あるいは国際的な動きというのを踏まえて、国内におきますメーカー側の理解を得ながら進めるべき事柄だと。その理解を得るという努力の面での力不足、努力不足を今痛感しておるわけでございますけれども、よい方向へ向けてそういう合意の形成ができますれば、後は手続面としては一気かせいに行く事柄ではないかと考えております。
#109
○国務大臣(松永光君) 録音・録画機器並びに機材の革命的とも言うべき発展の結果、家庭でいとも手軽に録音・録画ができる。その結果として著作権者ないし著作隣接権者の経済的な利益が害されておる、御指摘のとおりだと思いますし、私もそのことを認識いたしております。
 そこで、そうしたことによる著作権者や著作隣接権者の正当な利益が侵されておる、経済的な利益が侵されておる。それをいかなる方法によっててん補するかという方法論だと思うんでありますが、その方法論として、先ほどから話が出ていますように、賦課金制度を導入して、そして録音・録画の機器ないしは機材について賦課金をかけて、そして録音機器、録画機器・機材等が販売されたたびごとに、あるいは製作されたたびごとに、それなりの賦課金を徴収して、そのお金で経済的な利益が侵された人たちに対するその損害のてん補をしていく。これが一つの有力な考え方であると思います。また、評価に値する考え方であると思います。
 問題はこれは理屈の問題になりますけれども、ならば、録音機器、録画機器等は、不正な録画・録音のためのみに使用される機器・機材であろうか。我々の日常生活を見ましても、必要な自分で書類をつくる。これは昔はカーボン紙を入れて書きましたけれども、最近は一枚書いて、後は全部ゼロックスにかければ何十枚でも配れる。これなどのごときは全く正当な利用方法であって、何人の権利も利益も侵してないわけであります。そういう利用の仕方もある。録音の場合にも類した例があろうと思うのであります。
 そこで、最終的には国民、消費者が、さはさりながら、やはり著作権者や著作隣接権者の経済的な利益を侵害する、その道具として使われるものであるから、したがって侵された人の経済的な利益を補てんするためには、みんながやむなしということで了承していただけるようなそういう状態になれば、これはもう一気かせいにやれる問題だと思うんであります。
 したがいまして、今大事なことは、先ほどからメーカーの話も出ておりましたが、メーカーもさることながら、一般国民が結構である、そういう機器に賦課金がかけられたら、そのものを私どもは購入することに何らの抵抗もありませんということで、国民が、消費者が了承してくれるならば、それでまた解決する問題だろうというふうに思うんでありまして、要は関係者、消費者、こういう人たちの了承が得られるかどうか、こういうことでその理解と了解を得るための努力を真剣にやっていくべきではなかろうかというふうに思う次第でございます。
#110
○粕谷照美君 今の最後の一般国民がどのように思うかということについては、私もそのように思います、本当に。でも、午前中に質問いたしましたけれども、貸しレコードの値段を上げなきゃならない、なぜその貸し出す値段を上げなきゃならないかというと、こうこうこういうわけで著作権者の権利を保障しなきゃならない、そうすると、わかってちゃんと金を払ってくれるというんですよね。この問題についてたしかJAS RACで調査をされたものがあると思いますけれども、御報告ください。
#111
○参考人(芥川也寸志君) 先ほどからたびたび出ておりますが、昨年、著隣協三団体が実施しました全国調査の中で、ホームテーピングによってこうむる著作者の不利益に対して何らかの救済措置を講ずることの必要性について質問いたしました。その結果、オーディオ経験者の七三・二%、それからビデオ経験者の六八・二%、この方々が何らかの法的な救済措置を設けることに賛成でございます。このそれぞれの賛成の方々の中の九〇%が機器またはテープに賦課金を課すという方法に賛成でございます。この結果は私どもも少し意外なくらいに国民の中にかなりの程度著作権思想といいますか、そういうものが普及しているなという感じを強めたわけでございます。
 それからついでに申し上げますが、諸外国の中で西ドイツとかオーストリアとかハンガリーとか、そういう賦課金制度を既に導入した国からは、我が国の権利者に対して既に送金が分配がなされております。
 それから重ねて申し上げますけれども、そのホームテーピングの問題は、日本が機器、機材の世界最大の生産国であるということもありまして、世界じゅうが注目しておりまして、その責任は極めて大きいと思います。もしもこの制度の対応がおくれますと、これは非常に大きな、取り返しのつかない、世界から孤立するという結果も生まれるのではないかというふうに危惧いたします。これは私は権利者でございますが、権利者の利益という立場からではなくて、むしろ日本の利益を守るという立場から申し上げております。
#112
○粕谷照美君 日本の著作権協会がょその国からお金を受け、こちらで出さないなんてこんな恥ずかしいことはないと思うんですよね。ぜひ国会の中でも抜本的解決を図るための対応を進めることというふうになっておりますので、私どももこれからまた努力をしていきたいというふうに思いますが、もう一つの御要望であります隣接権条約に加盟をすることというのがありますが、もうあと五分しか私の持ち時間がありませんので、加入の障害というのは一体どこにあるというふうにお考えでございますか。
#113
○参考人(芥川也寸志君) 隣接権条約につきましては、これは私どもJASRACは著作権団体でございまして、直接の関係はないんでございますけれども、当然のこととしまして著作権団体と著作隣接権団体というものはこれは当然協調し合うものというふうに私は理解しておりますので、当然、その隣接権条約の加盟問題につきましても関心を抱いております。かつては放送事業者の方々、まあネックとおっしゃいましたけれども、放送事業者の方々は絶対反対という態度をかなり強く崩さなかったのでございますけれども、最近は私も審議会の席に出ておりまして感ずることは、絶対反対ではなくて、反対はしないけれどもというような表現をなさるようになりまして、したがいまして、運用上の問題に焦点が移っていけば、この問題は自然に道が開けるのではないかという感じを持っております。
#114
○粕谷照美君 加戸次長にお伺いしますけれども、この隣接権条約に加盟をするということは、具体的に言いますと、日本の国内で何か音楽の面では大きな変革がありますでしょうか。
#115
○政府委員(加戸守行君) 隣接権条約の内容といたしておりますのは、実演家、レコード製作者並びに放送事業者、この三者の権利を保護するということでございまして、具体的には例えば実演の複製あるいはレコードの複製あるいは放送の複製といったような基本的な権利もございますけれども、経済的な意味で一番大きな意味が出てまいりますのが、日本の場合外国のレコードにつきましても原則的にはレコード保護条約によるもの以外は隣接権条約加盟国のレコードは保護しておりませんけれども、現実には外国の原盤をベースに国内で作成されたものにつきましては、著作権法上罰則によって担保をいたしておりますので、したがいまして、隣接権条約に加入することに伴います最大の経済的な効果と申しますのは、いわゆる商業用レコードの放送におけるあるいは有線放送における二次使用の問題でございます。現在国内的に放送で使用されております邦盤、洋盤の比率というのは、NHK、民放で相当な違いございますけれども、マクロ的にトータルで言いますと約フィフティー・フィフティーと見ますれば、現在国内の実演家あるいはレコード製作者に支払っております放送の二次使用料の倍額に相当するものが放送事業者側の負担になるということが究極の大きな経済的変動の意味があろうかと思います。
 もちろん現時点におきましては、アメリカとかフランスという大手の国が入っておりませんもんですから、さしあたりの実害はそれほど大きくございませんが、アメリカ、フランスが将来加入したということを想定いたしますれば、現在放送事業者が支払っている負担が倍になるというような将来を見通した意味におきまして、その経済的な意味におきます放送事業者側からの消極的なといいますか、この問題に関する姿勢が出てくるんではないかと思っております。
 それで、ほかの今の複製権の問題につきましては、現在実務上それほど大きな変動が経済的に来るというぐあいには考えられないと想定いたしております。
#116
○粕谷照美君 どうりで私どもの耳に入ってくるテレビ放送だとか有線放送、外国音楽多いですね。あれ使ってもお金を払わなくてもよろしい、日本の人が作曲し、日本でつくったレコードを使用した場合にはこれはお金を払わなきゃならない、だから、向こうのものをただで使ったらよろしいという、この発想はちょっと文化日本には恥ずかしい話だというふうに思うわけであります。こういうことになってきますと、本当のいい音楽をつくろうという意欲が、先ほどの芥川参考人の話じゃありませんけれども、出てこない。日本の立派な音楽家というのは育たないのではないだろうか、こんなふうな感じがしてなりません。それ、芥川参考人の御意見をお伺いして、私は参考人に対する質問を終わりたいと思います。
#117
○参考人(芥川也寸志君) 今の先生のお言葉のとおりでございまして、ホームテーピングという問題は、重ねて申し上げることになりますが、とかく経済的な問題ということが非常にクローズアップされるんでありますけれども、もちろんその経済的な問題も大きいわけでございますが、一番心配されますことは、つまり創造、新しい文化が生まれてくる、その文化というのは日本では非常に乱用されているというくらいにいろんなものに文化という言葉が使われておりますけれども、やはり文化というものは、その時代の生き方といいますか、その民族の生き方、その時代における民族の生き方が文化そのものではないかというふうに思っております。かけがえのないもので、私たちの一番大事にしなければならない、そういう文化が、こういうことのためにないがしろにされていくというのはまことに残念だと思っております。
#118
○粕谷照美君 文部大臣にも出ております先ほどからのこの二点の御要望ですね、請願書という形をとっておりませんから、請願の審議の対象にはならないのではないかというふうに思いますけれども、国会決議もずっと行われていることでありますし、尊重していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
#119
○国務大臣(松永光君) 国会の決議は、行政側としては最大限の尊重をする義務があると考えておりますので、この決議の趣旨を尊重して、そして問題の速やかな解決に向けて努力をしていきたいというふうに考えます。
#120
○粕谷照美君 終わります。
#121
○仲川幸男君 芥川参考人には大変お忙しいところお越しをいただきましてありがとうございます。
 これから、実は参考人にお話を承って、参考人の部分が終わりましてと思っておりましたのですが、それで、ちょっと今、粕谷委員の方からいろいろお話がございまして、私がお尋ねしようと思っておりましたことの大体六割はお話がございましたので、そういう意味におきまして、ちょっと変わった角度から物事をひとつ大臣とお話しして、お尋ねしてみたいと思うわけであります。
 参議院だけではありません、衆議院もですが、どの委員会も採決のときに附帯決議が出てまいります。そして、その附帯決議に対して大臣の方から、御趣旨のとおりに、ひとつ最大の努力を払いましょうという御答弁があって終わるわけでございます。そういう意味では、百一国会で、当委員会で附形決議をいたしましたことに対して、文化庁もちろん、大臣もちろんでありますが、文化庁を督励して、よくもろもろの問題を片づけてこられた。その中の一つが今度の案件であります。第一の問題を今から翻ってみますと、著作者等の貸与権の行使に当たっては、公正な使用料によって著作関係者と、先ほど加戸次長からお話があったような、大変努力をしてそれぞれのところに問題を解決し、解決しつつあるということであろうと思うわけであります。
 実演家、レコード製作者及び放送事業の問題は、今、直前にお話があったようなことでございまするから、これは課題を大きく残してであります。
   〔委員長退席、理事杉山令肇君着席〕
 そして、第三番目の問題が、このための法案であります。
 そして、第四の問題が、先ほどからるる芥川参考人からもお話がございました、また粕谷委員からお尋ねがありましてお答えのあった問題でありまして、これから振興をしていかなければならない最大の問題であろうと思うのであります。
 そして、これは第五の問題でありますが、「著作権法の趣旨にのっとり、著作物の公正な利用について良い慣行が育成されるよう著作権思想の一層の普及に努めること。」、先ほどからお話もございました。私は、この問題ができれば比較的前段の問題の解決が非常にしよくなる、こう思うわけであります。
 臨教審の問題を時々持ち出してなにでございますが、私は、やはり日本のもろもろの文化の振興、継承、あらゆるものに教育の焦点を合わさなければいかぬということは、私が申し上げるまでもないことであろうと思うのであります。
 第五の問題が解決をいたしましたら、今の機器を製造をしている業者との問題も自然と世論としてここに沸き起こってきて解決がしていくわけであります。いろいろの問題、臨教審でもお取り上げをいただいておりますけれども、私はやはり臨教審の一番関係の深い大住のあたりで、この問題がこのことにも影響する、また、今教育の中で一番難しい問題は六年制の問題でもない、私はやはり正常な学校の教室、その周辺の教育にあると思うのであります。その教育の根源をなす文化の問題を、スポーツもありましょう、いろいろありましょうが、一角をなす文化の問題を、もう少し重要視した形で答申に出していただけるようなことができれば大変ありがたいんではないかと思います。ここまでで大伍のまずお考えを伺ってからにいたしたいと思います。
#122
○国務大臣(松永光君) 先生の御所論、まことにそのとおりだと思います。抽象的に言えばそのとおりだと思うわけでありますが、ところで問題は著作権思想の普及、定着、やはり年月のかかる問題でありますし、理屈はわかっておっても、つい音楽の録音をして、そして自分で楽しむということがどうもなされがちな点も実はあるわけでありまして、私は著作権思想の普及、徹底、そして定着ということのための努力をさらに一層進めると同時に、やはり録音機器、機材というものが売られておれば、実際問題としてはそれを利用して、そして録音をして、結果的には著作権者、著作隣接権者の経済的な利益を害するという事態はやはり相当あるんじゃなかろうというふうにも思うわけなんでありまして、その意味では、著作権思想の普及、徹底と同時に、もう一つ録音・録画機器、機材の製作者、最終的には私は購入者に結果的にはかぶっていくと思いますけれども、賦課金の問題というのはやはり十分検討して、関係者の理解が得られるならば前向きに対処していかざるを得ないじゃなかろうか、実際問題としては、やはりそこに帰着するんじゃなかろうかという感じを私は持つわけであります。
#123
○仲川幸男君 お断りをしたようなことで、問題の重複を避けておりますので、そういうお尋ねになって大変お答えにくかったろうと思うわけでありますが、そういう形でお尋ねをいたします。
 私が申し上げたのは、臨教審の一項目にもやはり文化というものを大きく浮かび上がらしたらどうですかと、それぐらいのことはあってしかるべきではございませんかと。もう一つ、初中局長もおいでになりませんけれども、やはり教科書の中にも、この種のものをうたい込むべきではないか、こういうことを言おうとしておるわけでございますので、ひとつ御理解をいただいて、お答えは要りませんが、そのように御理解をいただいておきますと、あとの問題が非常にスムーズに片づいていくのではないか、こう思うわけであります。
 それでは、芥川参考人にお尋ねを申し上げたいと思います。
 まず私は、CISACの総会が日本で開かれたということ、大変にうれしく思いますし、意義深かったと思います。先ほどから総理大臣の演説も引き出されていろいろお話がございましたが、その席で先生CISACの副会長になられたそうで、大変おめでたい限りでありまして、お喜びを申し上げておきたいと思います。と申しますのは、芥川先生個人の問題ではなく、私はやはり日本の文化を支えるその代表的な人が全世界のCISAC、あれはフランスに本部があるんであろうと思うんですが、副会長になられたということは、意味が少し芥川先生自体の問題ではなしに、日本の文化というものに対してもいささかのものが感じられるのではないか、こう思って、お喜びをそういう意味で申し上げておきたいと思います。
 小さい問題をお尋ねをして、最後に先ほどお話しになりました、お答えもいただきましたホームテーピングの手法の問題、いささかお話ございましたけれども、これを最後に承りたいと思うのですが、ちょっとそれまでに機器の問題、録画機器の問題等が日本で、先ほど数字もお示しいただいた一部のものもありますが、私が手元に持っております数字では、録音機器においては四〇%、テープその他の問題では大体九五%を生産しておると、こういうことのようです。そこで、ちょっとこのことがおわかりになればお教えをいただきたい。外国の、NHKを筆頭にしてたくさんなものを使っておるんですが、日本から幾ら外国へお金を一年間にお払いになっておるのであろうか。そして、日本へ、このことでございます、日本へどのぐらいお金が入っておるんでございましょうか。おわかりでございましたら、あらかたの数字で結構でございます。
#124
○参考人(芥川也寸志君) ただいま貿易摩擦等で非常に世上は騒がしいわけでございますが、音楽の世界では実は全く反対の現象でございまして、今私どもに入ってきております総徴収額の、外国から入ってまいりますのは百分の一にも満ちません。要するに、国内から入ってくる金額の方がはるかに大きくて、外国から入ってくるお金は百分の一にも満たないのに比べまして、日本から外国へ送金しておりますのは、年によって違いますが、四十億から五十億ぐらいのお金を外に出しております。そういう意味から言いますと、規模は小さいかもしれませんが、いささか国家に貢献しているのではないかという自負心を持っております。
#125
○仲川幸男君 文化庁にお尋ねをいたしますが、今までの法律の中でこれからこの法律を新しく施行するということに対しての係争、またこの本法が通らなくっても解決をし、係争であり、また係争するに値しないというような例がございましたら、二、三お挙げいただいたらよく理解ができると思うのであります。というのは、ある意味では本法がなくっても今まで裁判でやってきておったと、こういうことも言われておったわけですから、そのあたりのことの全体的な像がそこへ浮かび上がるものがございましたらお示し願いたいと思います。
#126
○政府委員(加戸守行君) 著作権に関します紛争の多くは、当事者間での話し合い等によりまして妥結を見るものが多いわけでございますが、当事者間で話し合いがつかなければ、当然法廷の場へ持ち出されるわけでございます。そういった形で、著作権の紛争というのは年とともにいろいろふえてまいっております。最近におきます著作権の大きな事例としては、最高裁まで行って争われたというふうな事例としましては、一つは、モンタージュ写真事件というのがございまして、これはある写真をパロディー風に合成をしたということにつきましての争いでございまして、上告審が昭和五十五年で原判決差し戻しとなりまして、高裁で五十八年に決着をしたという例が一つございます。それから役所の刊行物でございますが、その報告書を無断で複製した事件が争われた事例が同じく最高裁まで行きまして、昭和五十九年に確定いたした事件がございます。そのほかに、ある画伯の絵画掲載の問題でございまして、出版社が発行いたします中に参考図版として絵画を掲載した事件が争われておりまして、これが現在東京高裁まで行っておるという事例等もございます。
 そこで、今回の法改正の提案でございますけれども、コンピューターソフトウェア関係といたしましては、既に最近の当方が承知しております事例だけで、民事事件として現在までに五十二件という数字を承知いたしております、裁判になった例でございますが。そのうち、現在までに判決あるいは決定等によりまして終局いたしました事例が十六件、そのうち、決定によりまして確定いたしましたのが十二件、判決が出たものが四件でございます。これは昭和五十七年、八年、九年、六十年、七、八、九、十という形で、東京、横浜、大阪、また東京という各地裁で、コンピュータープログラムの著作物性について争われた事例でございます。そのほか、現在までに和解とか取り下げ等によりまして解決いたしました事什が二十件ございまして、そのうち、和解が十四件、取り下げが六件でございます。したがいまして、残りました十六件が現在コンピュータープログラムの著作権問題として係争中の事柄でございます。以上が民事事件でございますが、このほかに刑事事件として当方が承知しております範囲では、四件が刑事裁判で争われております。
 ということでございまして、今回の法改正によりまして、これらの問題が訴訟に持ち込まずに解決するかどうかといいますと、当然に両当事者が合意に達すれば別でございますけれども、そうでない限りにおきまして、法改正後においても当然紛争はあり得るだろうと思いますが、少なくともコンピュータープログラムの著作権適用についての明確化が図られました段階におきましては、少なくとも従来のように争われている事例よりも、既にこういう法律で法改正によって明確化されたという形で、そもそもの侵害等が行われなくなるということを期待したわけでございますが、いずれにいたしましても、いろいろな実務取引の社会でございますし、またあるいは脱法的行為、違法行為を行う事例というのは当然出てくるだろうと思いますので、法改正によりまして、争われる事例がふえるか減るかというような御質問だといたしますれば、ちょっと見通しはつきかねるというぐあいに思いますけれども、いずれにしても、法改正をすることによりまして、国民の意識あるいは実務家の認識というものが深まる点におきましては、相当有効な手段であろうと思っておるわけでございます。
#127
○仲川幸男君 現在までの法的の争いと、これから起こるであろうと思うものは、全然別個のものが起こるんではないでしょうか。そのあたりのことの御認識のほどが、私の質問が十分御理解をいただくかどうかわかりませんが、大変変わったものが起こってくるのではないだろうか。というのは、プログラムといいましても、たくさんたくさんで、これも御説明をちょっと願えれば大変参考になるのですが、小さいものはどの程度のものから、大きいものはどういうものまであるのか、ちょっと我々にも想像のつかないような、小学校一年生が、あれは今、なんですね、学校へ持っていって、皆さんと交換をして、帰ってきてやるわけなんですが、そういうものから始まってであろうと思うんですが、そういうものから、大きいものがどの程度のものまでできてくるのであろうか、この法案に相当するものができてくるのであろうか、ちょっとそのあたりをお教えを願ったら大変よくわかると思うんですが。
#128
○政府委員(加戸守行君) 通常裁判所にまで持ち込まれて私どもがフォローできるような事例と申しますのは、やはり事柄としては内容的にも金額的にも大きなものでございまして、小さいトラブルというのは訴訟にまで持ち込まれない段階で解決する場合が多いのではないかと。そういう意味で、法廷にまで持ち込まれる事件は、いずれにいたしましてもかなり経済的な価値の高いもの、あるいは係争金額の大きいものになるだろうと思います。
 そこで、現在争われております今までのコンピュータープログラム関係といいますのは、主としていわゆるゲームセンター等で利用されますゲームソフトあるいはビデオゲームと呼ばれておりますようなプログラムが多うございまして、いわゆる商業的に多数市販され価値を生み出すというような性格のものでございまして、その盗作関係でございますので、やはり法律が改正になりましてもこのような事例、つまり人の物をまねて商品化して売り出すという行為は依然としてあり得るだろうという意味におきまして、質的な意味の違いはその面に関して余りないのではないかという感じがいたしますが、先生おっしゃいますように、プログラムに関します著作権制度が明確化されることによりまして、それ以外の分野で別個のケースが出てくるということも考えられますし、多分、これは推測でございますが、いわゆる商品化されたプログラムのみならず、企業内部で使われる特定の基本プログラムあるいは一種のアプリケーションプログラムといいましたものについての盗作であるかないかというような事例が出てくる可能性が十分ありますし、その場合は企業秘密との関連等の問題もあろうと思いますけれども、著作権法の改正によってその辺が明確に今後起きないという保証はない、むしろそういう事例は、今後のプログラムの世界におきます競争とも相まちまして、十分起こり得る紛争ではないかと想定いたしております。
#129
○仲川幸男君 芥川参考人に一つ、二つお尋ねをして参考人への質問を終わりたいと思います。
   〔理事杉山令肇君退席、委員長着席〕
 先ほど粕谷委員からお話がございましたし、私たちもそのことをいささか感じておるわけで、感じておるというか、率直に思っておるわけでありますが、問題のホームテーピングの問題の解決の手法をもう一度ちょっと御説明をいただけませんか。企業の問題とのお話はなかなかそこで参考人が発言がしにくいのではないかと先ほどから承っておったわけでございますが、私たちもお話の趣十分わかるのでありますが、もう一度おさらいをしてみていただけませんか。これが実はこれから我々に課せられました一番重要な問題でもあるわけであります。
 私は、このレコードの問題には、日比谷で貸しレコードが大会を暑いのにやったときに行って演説してからのかかわり合いで、党内でもこれにずっとかかわってきた者の一人でありますので、今後の問題の対応に大変苦慮を関係者はいたしておるわけであります。そういう意味で、手法をどうすることが――先ほど大きい問題では教育の問題がございまして、そこから、いやそれじゃ即効薬になりませんでしょうから、そのことはそのこととして、現在時点でどうであるかということをひとつお聞かせを願いたいと思います。
#130
○参考人(芥川也寸志君) 今先生御指摘の大きな問題につきましては、私、作曲家が本業でございますけれども、著作権協会の仕事をしておりまして、日常的に細々とした仕事をしておりますけれども、ときどき考えますことは、結局は何のためにこれほど努力しなきゃいけないのかと考えますと、それは、とどのつまり、先ほど来お話の出ております著作権思想の普及ということに尽きるような気がしております。著作権思想の普及というものがありさえすれば著作権に対する問題というのはほとんどがすべて解決するのではないかというふうに思っております。貸しレコードの問題などもいろいろ問題を残しましたけれども、公衆に対する教育という点では、反面教師という面もありましょうけれども、大変大きな役割を果たしたんじゃないかというふうに考えております。
 それから、先ほどからお話の出ております世界著作権大会、著作権協会国際連合の総会も、実は私どもは著作権思想の普及というねらいもありましてやったわけでございまして、これから先もあらゆる方策を考えていかなければいけない、一番大切なのはこの点じゃないかと思っております。その中で殊に大切なのは学校教育ではないかというふうに思っております。ホームテーピングの年齢層は、先ほど申しましたけれども十三歳から二十二歳、これが八〇%ということを考えますと、これは中学校から高校、大学までのいわゆる若年層の年齢でございます。つまり、自分の権利を守ろうと思ったら、まず人の権利を守りなさい、自分の権利を大事にするんだったら、まず人の権利を大事にしなさいということを学校教育の中で徹底的に教えていただくということが、やはり大きく言えば日本の文化を守るということにつながっていくのではないかと思います。
 私から申し上げるまでもないと思うんですが、著作権法というものは権利者と利用者との関係を律するものでありまして、権利者は原則として個個の利用者を権利行使の対象としているわけでございます。ところが、このホームテーピングの問題は、利用が家庭内である、プライバシーの中であるということから、個々の利用者から報酬を徴収するということは事実上不可能でございまして、たとえその個々の使用者を支払いの義務者というふうに定めましても、それは実効性がほとんど期しがたいと言わざるを得ません。したがって、解決の方法は、既にいろいろ今までお話が出ましたように、西ドイツあるいはオーストリアの例がございますように、ホームテーピングの原因をつくっているそういう録音・録画機器、機材のメーカーから賦課金を徴収するということよりほかに全く道がないように思われます。録音・録画の機器、機材メーカーは、個人にこれらを提供しましてホームテーピングを可能にしておりまして、これによりまして莫大な経済的な損失を権利者に与えている一方で利益を上げております。したがって、機器、機材のメーカーは、個々の利用者とともに連帯して責任を負うべきだというふうに考えております。そして、私たちの賦課金についての考え方は、基本的には著作者個人にこれを還元するというものでありまして、現在、そのような基本姿勢のもとにメーカーの方々との合意の形成を図っているところでございます。
 しかし、先ほども申し上げましたように、メーカーの方々の消極的な姿勢というのは非常にかたいものがございます。
 それと、これは非常に感情的な言い方になるかもしれませんが、現実の状況とそれから法制度との間のギャップというものが、もう技術革新が非常に急速に進んだために、余りにも大き過ぎるということが挙げられます。国会における附帯決議を踏まえまして、文化庁が審議会の中に第五小委員会をつくりまして議論を始めました。これが昭和五十二年でございます。四年間議論いたしまして、皆様御承知のとおりに、関係者の中で合意がない、国民間のコンセンサスが十分ではない、外国の国際的な傾向を見定める必要があるというようなことから、結論が出ないで、また懇談会で議論を続けているわけでありますけれども、もう八年を経過しております。この八年の間の技術革新というのは非常なものでありまして、この技術革新の進歩とあわせまして、法制度と私どもの現状とのギャップというのは非常に広がるばかりでございまして、正直申しましてもう待ち切れないというのが正直な気持ちでございます。
#131
○仲川幸男君 機器、機材メーカーの問題、わりかたはっきりとそのあたりを御発言をいただいたので、私たちもそうであろうと思いますが、ただここでテープが不正に使われるか使われないかというところにも、全部が使われるのでありますとまず問題はごくごく早く簡単に片がつくわけでありますが、テープそのものが全部複製に使われるかどうかというところに、ここにもうずっと長い何年かの悩みがあるわけでございまして、我が党のこの種の会合でもここで行き詰まっておるわけであります。
 もう一つだけひとつお尋ねを……。それを形で取ったという言葉は非常になんですが、徴収をしたものの分配という問題になるとどういう形になりましょうか。
#132
○参考人(芥川也寸志君) これは今御説明申し上げましたように、私どもは権利者にそれを分配するという基本的な立場でございます。しかし、これは隣接権団体――芸団協あるいはレコード協会との関係もございます。これはそういうことについて、具体的なことについてはまだ詰めておりません。しかし、私ども著作権団体としましては当然これは個々の著作者に分配する、還元するという考えでございます。
#133
○仲川幸男君 私が聞いた話で余り愉快でない話を申し上げて、これは芥川参考人、大臣両方にお聞きをいただいてお答えを願ったらと思うわけであります。いささか関係があることでございますから、大臣の方も御調査が十分できなかったらそれで結構だと思います。参考人の方も何かそういう問題をお聞き及びであればお教えを願いたい、またお聞き及びでなければ御両所にひとつ御調査方もお願いをいたしておきたい、こう思うわけであります。
 フランスの話であると思うのでありますが、時期は本年の三月ぐらいではないであろうかと思います。日本の機器機材メーカーの方が法制度の確立をしないような御発言を先方の高官になさったという話、これは事実のほどが十分でありませんから名前も相手の名前も申し上げませんが、私は大変不愉快な話であるし、きょう先ほどから問題は、機器機材のメーカーとの問題がここで大変重要な問題になってくる。どちらにいたしましても、前進をすることにいたしましても。ところが、外国で事実こういうことがあったとするなれば、私は大変日本の文化の悔辱である。それは文化庁、これで腹を立てなければ立てるときはないのではないかと思うほどであります。私はこの質問で終わりたいと実は思っておるわけであります。ほかたくさんお聞きをする問題は、粕谷さんのところからお聞きをしてお答えをここで聞いておりましたので、情に通ずる話までございましたから情に通ずる話も私はここでメモ書きをしておったんですが、法律用語としてもう少しなじむ言葉はないかなと思っておったわけですが、そこまでお聞きをいたしておりますのでこれで終わりたいと思いますが、まず仮定としてそういう問題が本当にあったとするなれば私は大変ゆゆしさ問題だと思うのであります。
 まず、芥川参考人もフランスに本部があっておいでになっておると思いますので、お聞き及びであれば、この問題は今後私たちがメーカーとの話し合いに大変大切なことが起こってくると思うのでありますので、いろいろ先ほどから遠慮をしながらお話を、私の方が引き出し引き出ししたらあくまでお話をいただいたわけでございますから当たりさわりが今後の交渉の中であるとするなればお控えいただいていいと思いますが、御調査方だけはお願いをいたしておきたい、こう思うわけであります。
 大臣には、そのような話があったということが何かからお聞きをしておるのではないであろうか、お聞きをしておらぬとすれば何かの機会にひとつ、恐らくどこか公の場であったことには間違いはないでございましょうから、ひとつお調べをいただければありがたい、適当なときにお教えを願えればありがたいと思います。お答えをいただいて私の質問はこれで終わりたいと思います。
#134
○国務大臣(松永光君) 今先生の申されたようなことが事実あったとするならば大変遺憾なことであり残念なことであるわけですけれども、私どもの方としては日本の企業がフランスにおいて先生申されたようなことをしたということは承知いたしておりません。承知いたしておりませんが、どの程度調べられるかわかりませんけれども、関係方面を通じて調べてみたいと、その結果をまた先生の方に御報告申し上げたいというふうに思いますが、現在のところさようなわけで承知してないわけでございます。
#135
○参考人(芥川也寸志君) 日本の企業が海外で商業活動をするというのは極めて当然なことだと思います。ただ、その活動の様子が時には誤解を受けるということも中には起きるのではないかというふうに思います。
 それで、実はこの著作権協会国際連合の、CISACの理事会がありましたときに、これは五十人ぐらいの理事がおりましたからそういうところから話は漏れたかもしれませんが、あるフランスの代表が日本の大手の企業の代表の方がフランスの政府に対して賦課金等の制度を採用しないようにというような陳情をしたということをその理事会の席上で発言されたのは事実でございます。しかし、私はそういうことは多分なかったろうというふうに信じておりますが、先ほど粕谷先生もちょっと引用なさったんですが、IFPIの、これは国際レコード・ビデオ製作者連盟と訳されますけれども、この定例理事会がことしの三月十三日に日本で初めて開催されまして、その理事会の翌日に理事二十名が出席しまして新聞記者会見が行われました。それでこのときにゴルティコフさんという有名な方がこういうことを実は新聞記者に向かっておっしゃっております。これは公の席ではっきりおっしゃったことでありますから私が引用しても差し支えないと思うんですが、私はあなた方の御高察と道理に対する訴えを抱いてやってきましたと。一方、あなた方は過分な要求を私たちの下院議会はアプローチしておりますと。「貴方がたの代理人がワシントンでどんな発言をおこなっているか、最近発売された有力誌に出ていますので、お聴き下さい。「日本のオーディオおよびビデオ・カセット・レコーダーの生産者並びにブランク・テープの生産者は、ワシントンのロビイスト達に、米国下院で今後討議が予定されている、音楽産業に影響のある幾つかの著作権法案の件で、自分たちは一歩の譲歩もしないということを連絡した。」さらに、貴方がたは「レコード会社、アーティスト、プロデューサー、出版者およびソングライターを悪役に見立てた消費者運動」としてこのキャンペーンを組織する意図である、とこの記事は書いています。これに対し、私が申し上げたいのは「そのような言動はいささか羞恥心に欠けている。」ということです。」、少し飛ばしまして、「日本の産業は著作権の敵であり、我が業界の才能と権利とを深謀を以て利己的に略奪する者として描写するしか方法がないでしょう。」、ここは先ほどちょっと粕谷先生が引用されたと思いますが、「そうなれば、悲劇的な行動の数々――通商的な制裁という形での報復措置、」「を不可避的に招くでしょう。」、こうまで言い切っておられまして、そして一番最後に、「私たちは貴方がたのパートナーになることを望んでいます。しかし、貴方がたの犠牲にさせられるのは嫌です。」、こういう言葉で結んでおられます。気持ちを相手に伝えたいためにやや表現がオーバーになっているのかもしれません。しかし、その分を差し引いたとしましても、こういうような表現が公の場でなされるということはいささか問題があるのではないかというふうに考えます。私たちは今メーカーの方々と交渉中でありますから、解決に向かっての責任ということは私たちも同様に責任があるわけであります。いたずらにメーカーの方たちを非難するということは慎まなければいけないと思いますが、しかしこの点については私どもは責任を負う必要はないんではないかというふうに考えております。
#136
○仲川幸男君 私の入手したのとはいささか先生のお答えは違うと思いますけれども、精神的な問題が流れておりましたので……。わかりました。今大臣からも、このことに対してあれば大変遺憾なことだというお話がありました。もちろんこれから大切なときでございますから、私たちも刺激しようとは思っておりません。おりませんが、そういうことでやはり企業に対してもこれから十分アプローチをしていかなけりゃならないものの一つとして受けとめておきたいと思います。ありがとうございました。
#137
○委員長(真鍋賢二君) この際、芥川参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席願い、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
#138
○参考人(芥川也寸志君) 重ねて発言の機会を与えていただきまして深く感謝いたします。それと、仲川先生に先ほど大変過分なお言葉をいただきまして厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
#139
○安永英雄君 「コンピュータ・プログラムの保護のための著作権法の改正について」という表題で三月十八日に文部省からこの文書をいただいたわけであります。去年の今ごろは私もこの問題を取り上げまして、文化庁を盛んに応援したつもりでございますが、結果としていわゆる著作権法に基づいたコンピューターの処理ができたということにつきましては非常に喜んでおるわけでございます。この文書を見て感じることは、昨年だけではありませんが、長い間通産省の言い分としては、プログラムが、広く経済活動、企業活動に利用される経済財、小説や絵画や音楽等の現行法の中にある著作物とは随分違うんだ、だから著作権法の対象にはならないんだという主張が非常に強かったわけです。これは文化庁の方もはっきりと人間の精神活動の直接な表現というものの性格を著作物は当然持っておるわけですから、単なる工業製品とは著しく性格は異なるんだということを非常に強調をされていて、これは全く異質な性格の意見が合うだろうか、こう思っておったわけです。ところが、聞くところによりますと、日米の経済摩擦その他の問題も一つの促進剤みたいな形になったというふうにも聞いておりますし、通産省としてはもう随分引かなければならぬような状態のところで話がついたというふうに聞いておるわけです。
 そこで私は、話し合いかついた文書の中で一番目の項目を見てみますと、要約すれば大筋においては著作権審議会第六小委員会の提言の趣旨を踏まえるということですから、これは著作権法の中で取り扱ってくださいということをはっきり通産省も認めたというふうに考えられますが、「これに加えて」というところから、「コンピュータ・プログラムの創作年月日の登録等の制度を新たに設けることを主たる内容とするものであること。」という注文がついている。これは恐らく通産省のせめてもの考え方というものがここで、妥協の産物かどうか知りませんが、法律つくるのに妥協の産物という言い方はまずいとは思いますけれども、ここの項目は通産省の主張というものを入れたというふうにとってよろしいかどうか、まず一番初めにお聞きします。
#140
○政府委員(加戸守行君) 先生御指摘なさいました創作年月日登録の制度の問題でございます。
 これは一昨年来両省庁間で対立しておりました、あるいは議論いたしておりました過程におきまして、プログラム権法構想の中にはユーザー保護という観点から、二重投資の防止であるとか流通の円滑化促進というような観点から登録公示制度というのを設けておりまして、それがプログラム権法の一つの大きな柱でもあったわけでございます。で、当方の著作権法の一部改正案につきましては、登録制度について何らの提言を受けておりません。それは著作権条約、特に一八八六年のベルヌ条約の中では無方式主義と申しまして、権利の発生あるいは権利内容に影響を与えるような登録制度は禁止されております。したがいまして、現在著作権法におきましても実名登録の制度とか、第一発行年月日登録、あるいは第一公表年月日登録と申します、言うなれば権利内容には直接関係のない事柄で一種の推定制度、それを担保するような制度しか設けていなかったわけでございますが、両省庁間の法案の考え方、内容の基本的な合意に達するに当たりまして、通産省が考えているユーザーサイドの保護といった観点からの登録制度を何とか著作権法で取り入れてもらえないかというお話もございまして、当方といたしましても、権利の発生あるいは権利内容に影響を与える登録制度は困るけれども、現在ある第一公表年月日あるいは第一発行年月日登録と同様な趣旨でプログラムが登録できないという意味で、この創作年月日登録によって同様の効果を期待することができ、かつ、この制度を設ければ結果的に二重投資の防止とかあるいは流通の促進円滑化ということが図れるのではないかということで合意に達したということが、当初文化庁で考えておりました著作禍法改正案にプラスして無理なく通産省の考え方を取り入れられる要素はこれであるということで、内容の一つにつけ加えさしていただいてまとめたという経緯でございます。
#141
○安永英雄君 この文面を見ますと、今おっしゃた点は今から聞いてまいりますが、主たる内容とするものであることというこういう表現というのは、私は、相当やっぱりこの創作年月日の登録制度、ここには等という問題も書いてある、等。したがって、これは相当やっぱり通産省の考え方を取り入れてもらいたいという相当意欲的なものがうかがわれるように感じられる。と申しますのは、この前参考人呼びましたときもやっぱりここのところがこの法律案の一番決め手になるところである、後で聞きますけれども。特にまた他の法律でこれは定めるというところあたりはこれは非常にやっぱり今のこの話をつける場合の通産省の意向が非常に強いんじゃないかというふうに私は感じたからお聞きをしたわけなんです。したがってその点が一つ。もう一つは、このコンピュータープログラムのよりよい権利保護のあり方については云々ということで、今後両省が協力するという立場を話し合いの結果つけておる。これ等につきましても内容は具体的に示されてはおりませんけれども、結局通産省側としましては、これは非常な熱意を持って、そして我が国の主導的な立場に立って国際的保護のための特別条約の制定を世界各国に呼びかけるべきであるというふうな、これは去年も私はここのところで取り上げて非難をしたところでございますけれども、これは相当強い特別法をつくろうというところの意向のはしりだろうと思いますけれども、これは非常に強かったわけです。ところがこれに対しての文化庁の態度、これが全く反対でございまして、あの当時の意見としては。日本国内におけるソフトウェアの開発、流通の業を専らにするときは国際的に孤立することである、だからこういうことをやっちゃいかぬと、積極的に働きかけるなどということは。長期的に見ればむしろこれは損失になりかねない、こう割り切って反論をしておったところです。これあたりが話の結果として両者とも今後とも中期的観点から国内的、国際的検討を行うことについて両省が協力することに話し合いがついたというのは、ここらあたりの考え方というものは全く、先ほど保護期間の問題でお答えになりましたけれども、恐らくこれあたりは二項目の中等では項目は新たにされていませんけれども、恐らくその保護期間等もこの中に入っておると思うんですよ、激しい隔たりがあったわけでありますから。こういった点についても将来文化庁とも話し合いをしてという問題がありますが、これは保護期間の問題は後で聞きますけれども、総体的に意向というのは、やっぱり通産省の意向等も取り上げて通産省が言っておったようにやはり文化庁の見通しではちょっと世界的な趨勢から見てもこれは大きく変わるというふうなことはない、こういうふうなこともはっきり言っておったわけでありますが、この協力というのはどういった形になりますか。例えばというのは先ほど聞きました。例えばというのは、世界的な保護期間という問題については世界の趨勢が大体そうなって、そしてベルヌ条約その他の問題ではっきりこの期間が例えば短縮されると、五十年が三十年になったりするという機会が来たときに初めてこの目的が達せられるということであって、そう積極的に通産と一緒に協力をしてこれを推進していくというふうなことはない、ここらあたりの意味は短い文章ですから、お互いに妥協をしたわけですから、そこらあたりはどう入っておりますか。例えば気持ちの中ではやっぱり彼らが言うように五十年ではちょっと長過ぎる、こういったことで国内的にも話し合いをして、そういった働きかけをやっていこうというふうな考え方が例えばこういう中に入っておるのかどうか、ちょっと長くなりましたけれども、お答え願いたいと思います。
#142
○政府委員(加戸守行君) 一昨年来のプログラム権法構想と著作権法の一部改正案との議論におきましては、これは両省庁ともに自分のところで考えているのが百点満点だという主張をするわけでございますので、その議論をどちらかにお互いに話をまとめるといたしました場合には、こちらは百点、こちらは零点というわけにはなかなかまいらないわけでございまして、その意味では相方の中で歩み寄れるところを相互理解を示しながらやっとこのような合意に達したということでございます。したがいまして、今後の中長期的観点から検討すべき事柄としましては、先生がおっしゃいますように、両省庁間で事実上の了解に達しておりますのは、保護期間並びに使用権の問題につきましては個々の具体的な問題として今後中長期的に検討しようということで、両省庁間が協力をするという考え方でございます。問題はこれからの国内的な動向あるいは国際的な動向を踏まえるわけでございますが、今まで文化庁としては保護期間五十年が絶対であるという前提をとり、通産省サイドは五十年は長過ぎる、だめだという考え方であったわけでございますが、今回の法案におきましては著作権制度のルールどおり五十年で提案することに通産省は同意したわけでございます。しかしながら、通産省としましては保護期間が長いという気持ちは捨て切れないので、今後その問題については十分検討を進めてくれと、文化庁も協力してほしいということでございますし、当方は現時点では五十年が妥当であるという考え方をとっておりますが、国内の関係団体、関係者の気持ち、意向というのも十分これから踏まえていく必要もございますし、また実際上コンピュータープログラムの取引あるいは寿命というようなものがどのような形で動いていくのかという状況も見きわめる必要もございますし、また国際的にもどんな動きになるのかというようなそういった点を十分両省庁間で問題点を拾い上げ、意見を聞き、その検討を重ねていって対応を進める、その姿勢として両方が共同して考えましょうというのがこの第二項の趣旨でございます。そういう意味で、昨年のように文化庁としては五十年以外に絶対ないのだという姿勢ではなくて弾力的な対応をするし、通産も五十年では一応今回同意したけれども十分考えてほしいという形で、両省庁間が手を握りながら一緒に同じ次元に立って、同じ問題認識のもとに今後の対応を進めると、そういう趣旨でございます。
#143
○安永英雄君 いろいろ説明をされましたけれども、やっぱり妥協すればある程度間かなきゃならぬし、五十年というところを一応我々の方の立場を認めてくれれば、今後弾力的に考えていって短くするという趨勢が生まれてくればそういう方向にもいきましょうという話し合いになったということで、やはり私は一項、二項、そういった妥協的な通産の考え方も入れた結果であるし、大勢的にはこの文化庁が考えておった趣旨というものがこのプログラムの問題については達成できたというふうにとるべきだろうと思います。
 そこで、二項目の方は私はわかりますが、問題はやっぱり一項目の方の登録制度という問題、これは現行法にありながら、さらにこれを妥協の結果といえばそうでありますけれども、この登録という問題について先ほど答弁がありましたけれども、私はそれ以上の問題をやっぱりはらんでいるのではないかと思います。と申しますのは、著作権法でプログラムを保護することになれば、これはもうベルヌ条約の著作権保護に関するいわゆる模倣主義をとっておるわけですから、プログラムの権利発生の要件にするわけにはいかない。したがいまして、結局著作権の効力の発生の要件じゃないわけですから、現行でも登録制度がある、また今度新しく登録制度を加える、こうなっても登録をしようとしまいとこの著作権が消えるとかなんとかいうことはもう全くないわけでございます。それに殊さらに、現行法で私はいいんじゃないかと思うんだけれども、殊さらに今の登録制度を妥協の産物とは言わないけれども、通産省の意向を入れるとすれば、彼らがかつて言っておりましたように、いわゆる商業主義的な、はっきり言ったら特許権、特許局でやっておる特許権みたいなはっきりした登録、しかも登録されたらもう相当の絶対の権力が生じるんだというところを初めからねらっておったわけですからね、そのために別法つくろうと、こう言っておったのを、これは本案の中心なんですよ、別の法律をつくろうという、著作権じゃいけない。そこで、その残滓がやっぱり残っておりはしないかという私は懸念を抱くわけです。
 ちなみにここでちょっと聞いておきますが、現行法の登録制度によって今登録されておりますこの件数、それからその件数につきましてもどういう種類の著作物が出ているか、こういったものについて説明願いたい。
#144
○政府委員(加戸守行君) 現行法におきましては、登録制度としまして、一つが実名登録の制度がございます。これは無名または変名で公表された著作物につきましてだれが真実の著作者であるかということを登録する制度でございまして、これにつきましては昭和五十九年度の数字でございますが、九件の登録がございます。
 それからその次が第一発行年月日の登録制度でございまして、いつ最初に発行したかということを登録する制度でございまして、昭和五十九年度では三十八件の登録がございました。
 それから第一公表年月日の登録制度がございまして、これは世の中で発行以外の形態で演奏をしたとか放送したという形で著作物を世に公表したその日の登録制度でございまして昨年度は八十件の登録がございます。
 そのほかに移転の登録制度がございまして、著作権をAからBに、著作権者が変わったという場合の移転の登録制度でございますが、これが五十二件でございます。そのほか、その他の登録が二件ございますが、これは質権の登録であるとか、そういった一種の処分の制限の登録とか付随的な権利の内容の変動等に伴います登録制度。合わせまして前年度の登録件数は百七十九件でございます。なお、五十八年度が百八十一件でございますけれども、例年この程度の登録が従来からされているということでございます。
#145
○安永英雄君 通産省とは言わないですが、今の場合はこれはもうすべて登録制度の問題は文化庁の方に来ているわけですけれども、この登録制度を設ける主たる理由というのは何ですか。
#146
○政府委員(加戸守行君) ただいま申し上げましたように、現行の著作権法におきましては、第一発行年月日登録、あるいは第一公表年月日登録という形で、世の中にいつ出したかということを登録する制度がございます。例えば書籍出版あるいは音楽録音レコード発行というような形で世の中へ出ていく場合にはこういった制度が利用できるわけでございますが、コンピュータープログラムの場合にはもちろん、例えばゲームソフトのように市販商品として、あるいはパソコンソフトのように、市販されるというようなプログラムにつきましては第一発行年月日登録制度が利用できるわけでございますけれども、プログラムの中でも価値の高いもの、特に企業内部において利用するとか、そういった世の中には公表しないで、まさにコンピューターに、内部的に利用するだけのプログラムが非常に経済的価値の高いものがたくさんございます。こういったものは、このような第一発行年月日登録あるいは第一公表年月日登録を利用できませんものですから、登録をするに由ないわけでございまして、一般的には著作物の世界で未公表のものを登録する必要は余りないわけでございますが、プログラムにつきましてはそういう意味で実際上使われてはいても世の中には発行、公表という形態がないというものが多いわけでございますので、このようなプログラムにつきまして創作年月日登録制度を導入することによりまして他の著作物が発行、公表される場合と同様にその登録をすることができるという制度を導入することがプログラムの権利保全のために必要であろうという認識に立ったわけでございます。
 これは法律論的に今申し上げているわけでございますが、実態的には先ほど先生が御指摘なさいましたように、通産省側の要望もあったわけでございまして、プログラム権法構想の中で登録公示制度というのを考えていて、しかもその考え方の基本となっておりましたのは、どんなプログラムがあるかということを世に示すことによってそのプログラムが活用される、あるいはこんなプログラムがあるならば二重投資を、膨大な投資をしてまで同じものをつくる必要はない。これを借りてくればいいというような意味で二重投資の防止であるとか流通の促進というような観点から登録制度法があった方がいいという考え方もわかります。理解できるわけでございまして、このようなプログラムについても創作年月日登録制度を導入する結果といたしまして、今通産省が考えておりましたような二重投資の防止であるとか、流通の促進という付随的な効果も期待できる、そういう意味で一石二鳥というような観点からこのような登録制度を導入することとしたわけでございます。
#147
○安永英雄君 私は、そう別に通産省から押したくられてそこのところをつくったというふうには私は思わないんだけれども、実際には先行投資あるいは重複投資、こういったものを避けていくという意向も入れにゃいくまいと、私はここなんですよ、ここらの問題が一番重要なんでありまして、今もおっしゃったように、文化庁では著作物、これの保護という立場からこの今の登録制度をということになっていますけれども、しかしこれは登録しようとしまいと、これは著作権法の精神からいくならば、あくまでもこれは一つの登録をしたというだけのことであって、私はむしろこの問題については逆に利用される場合もあり得るんじゃないかと思うくらいですよ。
 と申しますのは、何の効力もないわけで、登録をしようとしまいとこの著作権の変動はいささかも揺るがないという、こういう立場を著作補法とっておるとするならば、これはまあ余計なことじゃないかと思う人もおる。例えば、この著作権ここで登録しようという、何月何日に登録する。これは今でも紛争があれですが、先ほど、この前の参考人の方で、もう率直に、紛争があったときにこれは役立ちますという説明がありました。私は、それでも紛争に役立つという、その登録が、ということになれば、私は多少著作権法の精神から外れるじゃないか、少し出ているんじゃないかというふうな気もするんですよ、これは。だから、登録をした日に閲覧をやり、何月何日にここのところで登録していると思ったら、盗もうと思ったら登録しない人がそれを見といて、日にち変えていっちゃって登録をやれば、裁判、紛争で役立つということになれば、これはあなた、そういう操作もできますよ。これはあなた、後で質問しようと思うんですけれども、わかっていると思いますが、あの特許のときに、同じ時間に特許の申請をどんとやって、中同じものだったといったときにはどう特許庁は始末しますか、御存じですか。同じ構想で同じ物が同時に出たと、そこまでやっていますよ、特許庁は。およそ余りあり得ぬことだけれども、特許庁としては登録という問題、これは厳格に時間まで一分でも早かった方がいいと、同時になったときはどうするかという検討までやっていましょう。これは規則で決まっていますよ、くじ引きですよ、同時になったときにはくじ引きですよ。およそあり得ぬことですけれども、そういうところまでやっている。これを大体通産としてはねらっておったわけだけれども、せめてとにかく紛争とかなんとかに何か役立たなきゃいかぬということで、先行投資とかそれから重複投資、これを避けるという、それ以上のねらいがあったわけですよ。これは著作権法の中で、登録しようとしまいと、大体この著作権は微動だにもしないという原則をやっているのに、登録したことによって、それが紛争のときに有利になるということのためにこの登録をする制度を設けたということになると、これが拡大していきますと、著作権じゃとてもこれはもたないような状態になってくると思うんです。そういうところが私は心配なんですよ。通産から押されて無理して著作権で入れたものだから、そこのところになってくると、やっぱり商業権等見てやらなきゃいかぬということになると、登録制度で何とか報いてやりたい。登録制度の中で、今私は、登録しようとしまいと同じだというのに登録をあえて強引に持っていくと、しかもそれが登録したことによって紛争のときには有利になる。これを文化庁の方の著作権の中で認めるということになれば、これはコンピューターだけじゃない。先ほどもお話がありましたけれども、参考人は一遍で五百件持ってくると、こう言われた、五百件みんな処理できますかと、こう言っておるんですね。私はコンピューター以外の著作物、これもこれによって準ずるような形で今からいくとするなら、これは早く著作物を登録しておくということでないと危ないという形になってくる。他に波及しますよ、この考え方は。今の現行ならば、先ほど言われた数字ぐらいでまあまあ登録しようとしまいとこれは私の権利は侵されないんだからと、こう言っておるけれども、事このコンピュータープログラムは登録しておかないと損だ損だということになれば、これは私はちょっと著作権法には似つかわしくないものを背負い込んだなという気がするんだけれども、どうですか。
#148
○政府委員(加戸守行君) この創作年月日登録の制度は、いわゆる一種の権利保全のための登録制度でございまして、趣旨は先ほど申し上げた第一発行年月日の登録あるいは第一公表年月日の登録と同様でございます。
 で、今回の創作年月日登録は、法律的に申しますと創作年月日の推定効果を付与しているというだけでございますけれども、実質的には、創作年月日登録が確定いたしておきますれば、将来それと似たプログラムも、いわゆる盗作ではないかというような事例が出た場合には、登録があることによってこのプログラムをまねしたというような意味での、実際上、訴訟上も有利になるであろうという付随的な効果が出てくるわけでございます。それは、もちろん登録をしてなくても権利は当然自動的に発生いたしますし、訴訟になりました場合に、どちらがどちらをまねたかというのは、どちらが先につくられたということが立証できれば登録しておく必要はないわけでございますけれども、そういう訴訟上の争いになった場合には、そういう一々盗作したプログラムよりも私の盗作されたプログラムの方が先につくってあったんですよということを立証が容易にできれば必要はないということになりますけれども、なかなかそういった点が面倒でございましょうから、こうしておいた方が将来盗まれた場合に訴訟上容易に争えるという意味合いがあるわけでございまして、そのことは、実質的には著作権というものの実効性といいますか、を担保するような結果になるわけでございまして、しかしながら、それはあくまでも申し上げましたベルヌ条約上の無方式主義に抵触するわけではございません。ただ、実務的にこうした制度があった方が権利者が安心しておれるという意味合いでございまして、ただ、どちらが先にするかなんていうことは、お互いが盗作関係でなければこれは意味のないことでございまして、同時に来ても同時に受け付ければ足りる、あるいは登録すれば足りる事柄でございまして、要するに将来コピーなり盗作なりが出た場合における、先につくった人の権利者として安心しておけるという意味の制度であろうと思います。
#149
○安永英雄君 私は安心できないという立場をとっているわけですよ。登録をして、コンピューターは全部登録をしなきゃならぬというわけではないでしょう。登録をした人と登録してない人がある、それを登録しておると文化庁の方から紛争のときに有利になるという言い方をするというのは、これは逸脱だと私は思うんですよ。それは紛争が起こったときに当事者が言うことだし、裁判所でそれを採択するかどうかの問題であって、今この立法をするときにこれが有利になるという立場をあなたの方でとるならば、著作権にはこれはもうなじまないですよ、そういう考え方は。特に私は、それ以前紛争といったときに立証しやすいと、なるほど文化庁かどこか知りませんけれども、行けばわかる。片一方の方も紛争したときには、それだけのことは立証しますよ。立証はどちらがしやすいか、相手側は何月何日と、こう言っている、登録している。片一方はそれでも先だという立証は、それはできますよ、やれば。私は事実登録をした日よりも前に自分は確実にやっておったという人が出てきたら、これは立証するときの紛争の場所が裁判所になるとすれば、裁判官がそこに行って立証すればいいわけです。弁護士の方、片一方の方は弁護士が盛んにこう言ってその人の先だったという立証をすればいいわけです。これが紛争のときのためにいいんだという言い方は、これは撤回してもらった方がいいような気がする。極端に言うなら、もう別に定めるというふうなところはもう出さないと。先ほどから別に定めるという内容はどういうことですかという質問に対していろいろ答えられたけれども、これは通産省との打ち合わせがある、団体との打ち合わせもしなきゃならぬ。私は疑えば疑うほどあれなんだけれども、今度の国会に変則ですよれ、これ。別に定めるなんていうようなことじゃなくて、この問題についてはここが一番大事なところなんだ。これを今度の国会で審議しなきゃ何にもならぬということですよ、これは実際載せるとすれば。それが次の国会にいっておる。間に合わなかったという理由もいろいろ言われたけれども、私は通産とここの別に定めるというところが話がつかぬのじゃないか、通産のやっぱり要求というのは強いんじゃないか、もう少し、というふうに私は考えて、この問題の別に定めるということにして一息ついたというふうに私は思っているんですが、それはどうですか。
#150
○政府委員(加戸守行君) 別に法律で定める内容としましては、先ほども答弁申し上げましたが、登録の手続であるとか、あるいはプログラムの登録でございますので、プログラムの内容というものを確定するために、いわゆるオブジェクトプログラムのコピーを納付していただくということを規定する必要があろうと思います。そのほか、登録にかかりますプログラムの名称、機能の概要等を公報掲載をするというようなことを想定しておるわけでございますが、言うなればどのような形で登録をすべきなのか、その場合に何をおさめるべきなのかということにつきましては、十分まだ実態をつまびらかにして検討する必要もございますし、特にこのプログラムの登録に関してその実効を確定するためには、相当程度慎重な検討をしなればならないという意味で別に時期をずらして定めようとしているわけでございまして、これがほかのプログラム以外の著作物であるならばこのような神経をそんなに使わなくてもよろしいわけでございますが、登録するといいましても実際には目で見えないわけでございまして、電気信号で入っているもの、しかもそれはすぐわかっては困る、その秘密をどう守るかという問題もございますし、それから概要を記載させるにしても、中も相当具体的な内容になりますと、プログラムの内容がある程度理解できて、盗作を推進する結果となってもいけない、そういった慎重な手続を考えなければならないという意味で、いわゆるそのプログラムの秘密をどうやって保つかということを考えながら、かつこれが登録するという場合にインチキ登録ではないということをある程度心証としてつかむ必要もある、そういった点で若干プログラムの登録に関しては難しい問題がいろいろある。その辺は関係団体からの御意見等も聴取して、それを踏まえながら対応していくのが実際に適しているであろうという考え方で一つの国会をずらさしていただいただけで、それ以外の他意は何もございませんし、また通産省からこういう点というふうな強い形での要求が出ているわけでもございません。今のところ両省庁間のおおよそのこういう方向でいこうという考え方自体はそんなにずれてないと思いますし、実態的な内容、事実関係、あるいはどうすれば適切であるかという点を確定することに時間が手間取るというような意味合いで一つの国会をずらしているわけでございます。
#151
○安永英雄君 次に、別に定める法律が出ると思いますけれども、別に定めたところでこれは母法は著作権法ですから、著作権法全般にとにかく影響するような内容にならないように、今あなたがおっしゃったように今できている、今度改正するそれに基づいた当然の手続だというふうなものが出ることを私は期待しておりますので、この点は十分検討してもらうとともに、先ほど言いましたあながち私は登録制度をさらに入れたということで必ずしも安全ではない場面も考えられる。したがって、登録の効果というものが、今後また検討の機会はあるわけですから、次に出るわけですから、少し考えて工夫をされたらどうかということを要望しておきます、この点を。著作権の中に入ったということになれば著作権法らしい取り扱いを、プログラムをしなきゃならぬという私は趣旨で申し上げておるわけで、妥協の産物だからここのところつけましたというふうなことは許されないということを申し上げておきます。
 時間もたちましたが、もう少しどうしても納得できない、私はもうこの前の国会もやったんですが、この何条でしたかね、著作権がもう法人に帰属するというこの問題ですね、個人がこれはもう著作権を得るというのは、著作権の中でやっぱりこれは建前としてはそうなっていますね、個人が。これはいろいろあるんですけれども、法人に帰属させる理由は何ですか。
#152
○政府委員(加戸守行君) 著作物はもともと個人のいわゆる知的創作活動によって生み出されるものでございます。しかしながら、社会的実態といたしましては、ある企業が、会社がその企業目的のためにこのようなものを著作物としてつくってほしいという形でその命を受けてその職員が仕事としてつくる、つくられた成果はその企業なり会社なりの創作物として世の中に流布され、かつそのことに関する責任は会社が持つというような社会的実態があるわけでございますので、それは一種のフィクションといたしましてそういった法人等が著作者であるという立て方をとりまして、自然人と同様な形での権利能力を与えるというのがこの著作権法十五条の考え方でございまして、しかもこれは日本国だけの特別措置ではございませんで、諸外国におきましてもそれぞれ法人等の使用者が著作者となる国あるいは著作権者とする国、相当数ございますし、実態的な意味合いにおきましても各国で同様な取り扱いがされているわけでございます。
#153
○安永英雄君 これはしかし、先ほどいろいろ論議されましたのでくどくは申しませんけれども、映画の場合だってこれは制作者といってもあれは一つの法人の代表なんだから法人と見てもいいわけで、これがあのときの理由は、いわゆる資金、金、これがここから出ている、だから丸々監督も俳優もいろんなものを全部自分で金出してそしてこういうものをつくるという、いわゆる法人のこういう映画をつくるという発意に基づいてできたんで、その中における俳優の固有な任務、監督の任務、こういうのは当然だ、したがってそこらには著作権というのは存在しないんだ、こういう論法で押し切られたわけですが、これと同じような形で、あんたはコンピューターをつくるために社員として入社して、そして私がこういうコンピューターをつくれと言って発意をしてそしてできたものなんだからこれは個人のものじゃないんだ、こういう立場もありますけれども、それは確かに映画の著作権が制作者に行ったときのあの考え方と全く同じな気がする。だから、先ほどの答弁では、まあつくった個人、グループ等については報賞金ぐらいはと、こういう話ですわね。映画の方もたしか今の古いフィルムを倉庫から出してきて、この前も「椿三十郎」をやっておったですが、あの「椿三十郎」のを倉庫から出してきてNHKが放送するとあのフィルム代を出すわけですね、著作権料を払うわけです。そうすると、それは制作はどこでしたかな、あれは、大映でしたか、そこに行くわけですね。大映の方は監督だけにはその分け前を少し内々に払っておるような話ですが、俳優には行っていない。俳優固有の所作とかいろんな芸、こういったものがその作品の、映画作品のこれは中心になっているという場合もあるし、「椿三十郎」じゃありませんけれども、やっぱり黒澤明という監督がシナリオを書いて監督をして仕上げたもんだと、この映画そのものはもう黒澤の作品なんだと、芸術品なんだと、著作品なんだとこう言っても、そうじゃないということで何とかいうあの社長さんが著作権を持っている。これと同じような形でプログラムをエンジニアがつくる、つくったのは、おまえ初めから入社するときにこれつくるために入って、雇っておるんだから、おまえができたものはおれのものだ、こういうふうにもっていっていいものかどうか。
 この前も言いましたけれども、安達さんがあの当時、著作権のあれで文化庁の責任者でここで縦横無尽に答弁したんだけれども、涙流して言いましたよ、一晩でひっくり返ったんだから。全く政治的な動きですよ。あの当時の大映の社長の永田ですか、それと自民党の、名前は言いませんけれども、亡くなられましたけれども、あそこであっという間に、審議しているときにこうなりましたという決定でやられた。しかし、これはどうしても腑に落ちませんというのが文化庁の考え方だったわけです。そこに涙が出たわけです。だから、今後やっぱりこの問題については法人に帰する、金出した者に全部行くという問題については検討しなきゃならぬという安達さんの文章等も出ていますよ。私は、この点もう現行法にこの法人の問題があって、それにまたさらにプログラムが加わったということですから、あえて今から十年も二十年も前に話を戻そうとは思いませんけれども、これは一つのやっぱり検討事項じゃないかと思うんですね。
 例えば、話に聞くと、コンピューターの開発あたりは普通の工場で自分の分担でここつくれ、ここつくれとこう言われておる社員よりも、だれか別に家に帰っておると、違った人もいろいろやると開発ができるというふうなこともちょっと聞いたこともあるし、月給払っているから自分自身が開発したものは全部社長さんにとられるという、これはちょっと私は解せないような気がするんだけれども、これは例外なしに、例外は初めから入社するときに私が開発したものはあなたの方のあれでございますという契約をしない限り、私の方の権限ですぞ、権利に属するものですよという約束がない限り、もう自動的にいくということになっているんですけれども、これあたりは私は今おっしゃったことわからぬことはないんだけれども、ある程度報賞金というふうなことはこれは文化庁として言うべき言葉じゃないし、制度でも何でもないし要らぬことですわな。言うとすれば、ある程度の制度的なものを考えて言うならいいけれども、そこらあたりは何か考えありませんか。明らかにとにかくそこで開発したグループなり個人というものについて、社長さんあなた報賞金出しなさいよということじゃなくて、何か権利というものは、これはできないものですか、どうです。
#154
○政府委員(加戸守行君) 著作権法におきましては、本来的にこの著作物についてその人格の発露としてこれがだれの著作物であるのかということを定めるのが著作者に関する十五条の規定でございます。その意味におきまして、プログラムのように多数人が共同してつくる実態が多い、しかもそれは自分の職務としてつくるというようなケースにつきましては、常識的に判断いたしまして実態に適合しているというのがこの十五条を規定した理由でもございます。しかしながら、先生おっしゃっていますような個人が何らかの形で報われるべきであるという発想は、それはむしろ著作権制度というよりも労働契約あるいは雇用の実態あるいは業界における取り扱いの問題として、その個人に対し例えばある一定のプログラムが特別な評価を得られ価値を生み出した場合にどうするかという問題でありまして、著作権法が触れるべき問題ではなかろうというような感じがしておるわけでございます。ただし、あくまでも著作権法で言っておりますのは、権利関係の所在あるいは人格の発露と言うべき著作者人格権の所在というものを法で規定するわけでございまして、その権利の上に眠るかどうか、あるいは権利に実効性を生かすかどうか、それはまさにそれぞれの職場あるいは労働契約の実態によって決まり得る事柄でございまして、著作権法としての規定する限度があるという意味でお答えをさしていただいておるわけでございます。
#155
○安永英雄君 これはちょっと議員提案でも出さなきゃ、これは議論になりませんわな。
 プログラムを著作権法で保護することになると、プログラムの種類、形態、使用目的、開発作成の態様などに関係なく、プログラムに創作性があるかどうか、こういうことで著作物であるというふうにこれは判断されるわけでありますが、ここで電気炊飯器ですな、あの電気炊飯器の中に自動調整器等でプログラムがこの中に入りまして、そしてこれが今特許庁あたりの考え方で、いわゆるそれが入った炊飯器そのものを特許権を申請すると特許権が得られるというふうな形になりまして、特許権とプログラムとその炊飯器は二つの権利を持っていくような状態が生まれてくる。これは炊飯器だけじゃなくて、もういろんな今からの開発ではいろんなところにこのコンピューターのプログラムがずっと入っていって一つの製品をつくり出すという場合が多くなりますわね。これはアメリカあたりの宇宙開発あたりの機械その他の問題については、もうあらゆるものがコンピューターが入っている、いろんなものが入って、それぞれの権利がいろいろある、何十種類の権利が一つの作成物としてできている。非常にごく最近の簡単なあれとして、炊飯器の中にコンピューターが入っている。こういう二重の権利を持った特許物、こういったものが出てくるということになれば、このところでコンピュータープログラムを、著作権を与える、著作物として保護するという立場に立ってくると、多少やっぱりこれとの関連を見ていかなければならぬと思います。これは炊飯器だけじゃないと思います。そういった場合のことについて、次長の方で動きあたりがわかっておればお話しを願いたい。
#156
○政府委員(加戸守行君) コンピュータープログラムに対します特許法の適用につきましては、現在のところ、もちろんプログラム自体を特許の対象とする可能性もあり得るわけでございますが、現実の問題としましては、プログラムが一種のハード、機械と連結いたしまして機械に組み込まれて、そして例えば自動制御装置のような形で動く、具体的には先生おっしゃいましたような自動炊飯器であるとか、電子レンジであるとか、そういうようなものに対してもプログラムの特許を認めた事例等もございます、ケースはそんなに多くないと思いますが。その場合には、いわゆるプログラムの中に含まれております技術的な思想そのものを保護するというのが特許権でございますので、機械とセットになったプログラムという、その原理を保護するわけでございます。
 一方、著作権法で保護しておりますのは、プログラムによって表現された表現形式を保護いたしておりますものですから、言うなれば、ある仮定の話でございますが、一つの電気がまについて特許を得たプログラムが組み込まれているとするならば、それと全く同じものをつくれば当然中にあるプログラムも複製していることになりますので、特許権侵害であると同時に著作権侵害にもなります。しかし、保護の対象としている保護区域が違うわけでございまして、今の原理そのものの保護でございますから、例えばある一つの自動制御装置を使ったもののプログラムを、プログラムの表現形式を変えまして、原理的には同じでございますがプログラムそのものを取りかえたものをつくれば、それは特許権侵害ではあってもプログラムの著作権侵害にはならないということで、同一の機能目的を達成する場合でもそのような違いがあるわけでございます。
 しかしながら、一般の国民的な感覚、素人的に見れば一つの行為、つまり一つの電気がまなら電気がまそっくりそのままの製品をつくってしまえば、特許権侵害であると同時に著作権侵害になるというケースは当然に出てくると考えられます。
#157
○安永英雄君 先ほど言われたように、その数は今のところ少ないと思います。特許法の二十九条では「産業上利用することができる発明」、そして新規性、進歩性を有するものが特許を受けられる、そしてさらに「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と、なかなか二重にかぶっておるわけですから、この「自然法則を利用」するというふうなところの項目にぶち当たると特許はなかなか取れないわけで、確かに今おっしゃったように、給与計算法のプログラムとか在庫のあれをするプログラムといったものは、これはもう確かに自然のあれで初めからこれはぽいされると思うけれども、やっぱり特許庁の方でそれなりに検討しておって、マイクロコンピューターの審査運用方針、こういったものを出して、やっぱりこのコンピューターに組み込まれたプログラムは自然法則を利用したものというふうにみなしていいんじゃないかというふうな傾向にあるわけで、今後コンピューターの特許庁としての見る目というのは、やっぱり特許法に基づいてこれは保護すべきじゃないかという方向にだんだん行くというふうに私は聞いておるわけなんで、この点今のところなかなか難しい。数が今の特許法に基づく条件から言えばなかなか入りにくいとは思うけれども、これは炊飯器に限らず続々出てきて、今あなたの方で簡単におっしゃったけれども、やっぱりこれは著作権を持っておる炊飯器、それと特許権を持っておる炊飯器、そして特許の場合は、あれは十五年ですわね、存続期間は十五年あるいは二十年を超してはならないという形。こちらの方のあれは今のところ五十年、こういうことで、かまそのもの、炊飯器そのものは、もうこれは特許としてのあれは切れても、中に入っておるコンピューターはどっこい五十年生きているということで、うっかり他の方で製作をしますと、特許権の方じゃなくて著作権の方が発動しまして、何でつくっておると、複製じゃないかと、こういうことで、これは強大な私は権力を、二つの権力を持ったら、これはもうコンピューターを使ったそういったものの開発は阻害される、こういう気がするんですけれども、これは将来のことでしょうか、次あたりもうおたくの方で検討に入っておる問題でしょうか、ちょっとお聞きをしたいです、この点。
#158
○政府委員(加戸守行君) 確かに特許法によります保護期間が出願公告の日から十五年でございますので、特許権が切れた後に同じようなものをつくれば著作権侵害になる可能性があるという御質問でございますけれども、そのような場合のプログラムは極めてといいますか、プログラムの中としては比較的つくりやすいプログラムであろうと思いますし、原理はそのまま踏襲しても、特許権が切れた後、そのプログラム自体を取りかえれば、つまりその同じ機能、性能を有するプログラムをつくりさえすれば可能でございますので、それは著作権侵害という形で全くデッドコピーではなくて、まさにその特許権を得ていたものと同じ原理、システムによりまして別個の表現形式をとったプログラムをつくれば足りる話でありまして、著作権法による保護が実際的に産業界に支障を与えるというぐあいには理解していないわけでございます。
#159
○安永英雄君 今のいわゆる特許権と著作権の関係につきましては、時間が来ましたので、後でまた機会があればしたいと思います。
 日本書籍出版協会の理事長をされております服部さん、きょうは本当に御多忙のところを御出席いただきましてありがとうございました。
 複写機の目覚ましい発展、それと普及、こういうことで学術雑誌や専門図書の複写が著しく増加をしておる、そして著作権法で許容されない複写がかなり行われておるというふうに私は聞いております。そこで、この複写問題に対するために、日本書籍出版協会を中心にして集中的な権利処理機構設立へ努力がどんどん進められておると聞いております。
 そこで、早速ですけれども、参考人にお聞きをいたしたいと思いますが、この集中的な処理機構設立の努力が行われておりますが、現在どのような状況にあるかお聞かせを願いたいと思います。
#160
○参考人(服部敏幸君) ただいま御指名いただきました服部でございます。きょうは出版界の今大変関心事でございます集中処理機構の件につきまして、参考人として当所に出ましていろいろと御説明する機会を得ましたことを非常にありがたく、まずもってお礼を申し上げたいと思います。
 さて、御質問の件でございますが、御承知のように複写の問題というのは、その解決策につきましては我々も常に念頭に置いて、どのように対処したらいいかということは我々も常に考えてやっているところでございますが、当文教委員会でもかねてより審議を重ねていただいているところでございます。したがいまして、私どもは安易なコピーのはんらんによって著作者の権利が不当に侵害されているとともに、出版社の利益も不当に損われておるわけでございます。これがひいては学術関係の出版にやがて大きな影響が出てくると。この影響が出てくることは、新しい学術関係なら学術関係の研究発表が狭隘なところに追い込まれるということにつながってまいりますので、これは決して日本の文化あるいは利用者の利便に、また利益にならないということでございますので、いろいろとこの点をリードして十数年来苦慮してきたところでございます。この件につきましては、今こちらにいらっしゃる文化庁の加戸次長以下の皆さんとも、いろいろ御指導なり御連絡を受けながら、我々が現在集中権利処理機構実行委員会を昨年の六月結成いたしまして、この設置に具体的な準備に入ってきているところでございます。今四つの部門に小委員会を分けましていろいろと検討をしていただいているところで、まだ結論に至っておりませんが、しかし処理機構というものは著作者と出版社からコピーに関する権利処理の委任を受けまして、そして利用者側に包括的な許諾を与えて、そして使用料を徴収してこれを分配するというのが大きな任務であるわけでございますけれども、しかしこれは、そのために利用者に不便をかけてはいけないということであるわけでございますので、我々としてはコピーをする側の人々が簡単な手続で、公正な経済的負担のもとに安心してコピーができるような体制をつくりたいということで、そのような組織をつくろうということでやっておるわけでございますので、現在は、昨年四月に発表されました協力者会議報告書を基本に据えて検討を重ねておるところでございまして、近く設立案をつくりまして公表するようにいたしたいと、こう存じております。今秋以降各著作者団体と話し合いを詰めていく必要が出てくるわけでございます。これは我々だけでやるわけではございませんので、著作者の団体、それに関連する方たちと我々がまず案をつくって、そしてそういう方たちの意見を聞き、共同してこれを設立していくようにしていきたい、このように考えて今極力準備中でございます。
#161
○安永英雄君 確かに著作者自身のコピーの被害というのはこれは痛いだろうと思います。しかし、複写の最大の被害者は学術雑誌やあるいは専門図書を発行しております出版社、ここが一番やっぱりこの被害が大きいわけでございます。この点は私もそれを基本に据えていろいろお聞きしたいと思うのであります。
 先ほども、今参考人がお座りになっているところに芥川さんが座っておったわけです。ここはなかなか集中的な処理機構というのはうまくいっておると私は思います。図書の方は今も経過のお話がありましたけれども、なかなか難しいというのは、今も著作者団体と話をするとおっしゃるわけですが、どうも学者先生とか著作者というのはのんびりしておるというか、芥川さんみたいに先頭に立ってレコード会社と演奏の著作者と一緒になってやっているということがなくて、何といいますか関心が薄い。調べてみますと、著作者というのはしごくあっさり他の著作物からどんどん持ってきている。そして、一つの学術書をつくっている。学術書をよくよく見ると、他の方の著作物からどんどん入ってきているというふうなところもみずからがやっている。それから、学者先生ですからどんなにコピーされてもなるべく広く読まれた方がいい。大学で教えるときに、その先生のコピーをコピー屋に持っていってコピーをたくさん持っている学生が幾らでもおる。こういうことでそれはいい、なるべく自分の研究は広く読んでもらった方がいいんだというふうなところがあって、しごくルーズなところがあって、なかなか出版社と一緒になって著作者自身のこの権利を守るというのに非常にそこのところが難しいということも聞きます。ちょっと私もいつも音楽関係のと比べるんですけれども、どうでしょうかそこらは難しいところはありますか。
#162
○参考人(服部敏幸君) 大変御理解ある御質問をいただきましてどうもありがとうございます。
 確かに今先生おっしゃるように著作者がいろいろ加害者であったり被害者であったりするということは事実でございます。したがって、特に学術専門書関係ばかりじゃございませんけれども、これを発行するに当たって著作権を侵害していないかどうかというのは出版社、編集人の非常に神経を使うところでございまして、怪しいところはいろいろ調査いたしまして、そういうところが発見されれば著者にお話しして書きかえてもらうとか、そういうことは当然行われているわけでございますが、たまたま侵害事件が起きますと、それはやはりそこまでなかなか目が通らなかったということはある。これは編集者の常に悩んでいるところでございます。
 そういう意味で、なかなか、我々が機構をつくる上においても、一つの大きな障壁になっていることは事実でございますが、今いろいろと私たちも調べまして、学術関係の団体、これがたくさんあるらしいのですが、それを統括していく連合体というのが、現在甚だもって困るわけですが、ないという現状です。したがって、これをつくる場合にどのようにするかというようなことで、我々が常に今検討しておるんですが、また学者の先生方のいろいろ有力者にも今御意見を伺いながら、どのようにしていくかということを、今討議しておりますので、どうしても進行が予定よりもおくれているというのが現状でございます。よろしゅうございましょうか。
#163
○安永英雄君 そこで、私どももよく新聞等で読んだり、あるいはテレビでよく聞くんですが、今や野放し状態になっておるという学術書等の高価な出版物、こういったものが、ただどりのコピーでどんどん出ていっているということをよく聞きます。協会の方でそういった状態についての把握がされておるならば、その状態についてお話をしていただければ幸いだと思います。
#164
○参考人(服部敏幸君) その件でございますが、私の方は被害を受けておることはよくわかるわけですが、それが実際にどの程度か、確実性についてはまだ数字をはっきり押えていないわけでございますが、現在市中に企業とか個人とかあるいは商店その他で専業者、そういったところにコピーの機械が百五十万台ぐらいはあるだろうと。しかし、そのほかに償却を終わって中古になったそういう機械もやっぱり五十万台ぐらい出て利用されているのじゃないか。そうすると二百万台ぐらいが市中にあってコピーされているのじゃないかというふうに我々は想像しております。
 また、PPCの用紙の需要量などを「紙之新聞」あたりに出ているのを見ますと、五十八年の一年間の需要量が十八万トンといいます。したがいまして、これをA四版の紙の寸法に直しますと、五百億枚になるということになります。したがって、一年間の需要が五百億、そしてそのほかにそういった正規の紙以外でも、今コピーができるようになっておりますので、それを上回っていることだけは確かでございます。これは総体で出版物ばかりに使用されているのではございませんで、私どもの自然科学書協会の人たちが調べたところでは三年ぐらい前ですが、コピーを二十五億枚ぐらいとられている。恐らく現在はだから三十億枚ぐらいになっているんじゃないか、このように思いますので、それは膨大なものになるわけでございます。先生が御心配のようにこの量というのは、大変出版界のものを恐らく三十億枚ぐらいは利用されているのではないか、このように我々は判断しております。
#165
○安永英雄君 これも新聞で見たんですけれども、韓国から販売目録が大量に出ている。その販売目録を見てみると、とにかく定価の五〇%か六〇%の安さで仏教専門書、これは海賊版だと思いますが、それがずっと書いてあって、もう既にそれを手にしている人もたくさんおる。これは金額も相当高いんですね。そういうことで、これが韓国から来ているということで、韓国はこの条約に入っていない、こういうことがあるわけです。
 日本書籍協会を通じて外務省とか韓国に対してのいろいろ事態の改善を求める申し入れになっているということですが、この点あたりは国内じゃなくて国外からという一つの典型的な形のものですから、ちょっと別に聞きたいんですが、どういう実態で、どういう大体働きかけをして、どういう反応ですか、これは。
#166
○参考人(服部敏幸君) いわゆる世上海賊版と呼ばれているものでございますが、この海賊版の中にも世界の著作権条約へ入らないおのおのの国、特にアジア関係にも多いわけでございますが、その中でも海賊して国内で売っているだけのものと、むしろそれをまた輸出している場合とあるわけでございます。今先生の御指摘の仏教書のことは、これはまさに日本に逆輸出する、だから日本は輸入される憂いがあったものでございます。これは国内でまだ売られている場合は、これは著作権条約へ入ってないものですから手の施しようがない、道徳的の要請をするだけになるわけなんでございますが、これが逆輸出されるということになりますとこれは大変なことでございますし、これがもし日本に入ってきて、輸入業者にそれが渡って販売されると日本の著作権法にひっかかるわけでございます。やはり著作権の普及が少のうございますので、そういうことを御存じないで売るおそれがやはりあるわけでございます。国内で売られているということは、私ども――私どもの会社は講談社でございますけれども、徳川家康なんというのはよくよく聞いてみますと、三社、四社が競合で海賊しているという話も聞いておりますけれども、それは向こうの言葉で出ているものですからわからないわけです。我々が行ってみても向こうの言葉ですからわかりません。むしろタイトルを徳川家康じゃなくて大望という名前で、タイトルで出していたりするということは聞いておるわけでございます。それから三、四年前、イギリスの出版社が韓国で音楽大全集がやっぱり半額ぐらいの値段で海賊されているというのを見て、びっくりして大使館を通じて韓国政府に注意をした。それで政府が慌ててそれをとめたんだけれども、一年ぐらいたったらまた野放しになったというようなことも聞いておりますし、私どもが調べますと、海賊版というのは韓国や東アジアあたりで三カ所ぐらい、こういうものを特に多くつくっているというところがございます。しかし、どういうところでつくっているかというのは私どもはわかりませんけれども、これをよくよく調べてまいりますと、日本の出版社はわかっているだけでも九十三社ぐらいが被害を受けているだろう、こういうように言われておりますし、しかし韓国の中でもし売られたり他の製造している国で使われているということになりますと、なかなか証拠はつかめない。
 それで昨年の十一月に、英国の出版協会の海賊版問題委員長、英国が一番被害を受けていると言われておるわけでございますが、そのマクミランの出版会長が日本に来られまして、英米は駐在ソウル大使を通じて韓国政府に対策を要望して、あわせて韓国が早期に国際的著作権条約に加盟するよう働きかけるから、日本もどうぞ韓国の駐在日本大使にそのことも含んでおいてもらって、機会があったらやはりそのことを伝えるようにお願いしたいというようなことを言ってきましたので、とりあえず私から事態だけをソウルの前田利一大使に手紙で申し上げまして、その手紙の写しを文化庁にお渡ししたというようなことが昨年ございました。その結果そのままでまだその結果は聞いておりません。
 それで今お話がございました仏教書でございますね、もうこれこそ日本に逆輸出されそうになったものでございますけれども、あるソウル市にある出版社でございますが、こっちの輸入業者とかあるいはそういう必要なところに仏教書の総目録が送られてきまして、仏教全集の予約をとられ始め、そのほかの書もたくさんこの中に出されているわけでございます。中身はほとんど日本の出版社の本で、中村元先生を初め、日本の著名な学者方の出版物でございます。目録に掲載されているのは日本の二十九社ですね。で、オックスフォードの出版社のものもここへ一点入っております。合わせますと三十社、百六十九点がこの中に収録されて注文をとっているというのが現状でございます。
 そこで、日本の図書組合あるいは被害の出版社が協議いたしまして、図書組合や書店、図書館、大学研究室あてに百三十五通の要望書を出しまして、買わないように、買えば法に触れるというようなことで、協力を要請したということでありますし、書協にもその対策を要望されておりますので、これは文化庁の方にも御相談申し上げて、その処置をこれから文書をもってお願いすることになっております。
 海賊と申しましても、日本の値段の二分の一ぐらいの値段で今度逆に日本へ入ってくるわけですから、もう何ともいたし方ないわけでございますが、このようにして我々もその出版社の共同体から向こうの出版社にもそのことを抗議いたしまして、向こうからわび状が来ておりますけれども、それも一時的なものかどうか、現在もしつくってあるとすれば、いずれの機会にまた入ってくることが予想されますので、その辺のところも十分注意をしていかなきゃならぬ、このように考えております。
#167
○安永英雄君 今もいろいろお言葉の中で文化庁という言葉が出ましたが、こういう外国からの関係のはね返ってくるようないわゆる海賊版に対する対策といいますか、これは外務省でもあろうし、業界自身も自分のことですから一生懸命やられましょうが、文化庁としてこの種の問題についてどういう対処をされていますか。
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
#168
○政府委員(加戸守行君) 事柄が二つございまして、例えば韓国のように条約未加盟国におきましてどのような行為が行われているかということは条約上も法律上も要求できないことでございまして、ただ基本的には著作権条約に加盟してもらうという形の働きかけが必要だろうと思いますし、現に韓国との関係につきましては、著作権条約の加盟方を公式、非公式、いろいろの会合等、接触の機会がございますたびに申し上げております。韓国におきましても、昨年末だと思いますが、昨年現在死後三十年の著作権法を改正いたしまして、五十年ということで改正法案が提案されましたが、廃案になっております。引き続きことしの国会にも提案する予定である旨、先般文化保護省の方からそういう情報は入手いたしております。いずれにしましても、一九八八年にソウルオリンピックを控えておりますので、それまでには法改正をし、かつ、条約に加盟するという方向で進んでいるようでございます。
 第二の問題としましては、ただいま服部参考人の方からもございましたようないわゆる海賊版が日本に流入してくるというようなケースの問題でございまして、この事柄につきましては、いろいろな対応の仕方難しいわけでございますけれども、先ほどお話ございましたような書協、――書籍出版協会の方からも情報は入手いたしましたし、先般韓国の文化公報部の高官がお見えになりましたときに、当方の文化庁長官との間の懇談の席でもそのような話題に上ったということもございますし、やはりその著作権を尊重するという気持ちを双方の間で持っていくということが当然必要なことでもございますし、余り形式張りますと角が立つ話ではございますが、そういういろいろな非公式等の交流の際に意見交換、情報交換あるいは御忠告を申し上げるというような形で処理をしているのが現状でございます。
#169
○安永英雄君 そこで、出版協会として集中的な処理機構の設定については御努力を願わにゃならぬし、また著作者自身にいろいろ問題があるのはわかりますけれども、いずれにせよやっぱり著作権を保護していくという立場、そしてみずから出版社自身もその被害を食いとめるというふうな立場から、この機構の設定についてはさらに御尽力を願わなきゃならぬと思うわけでありますが、それとあわせて、版面権という出版社関係から版面権の設定について要望が出ておるということも聞いておりますし、私ども自身ももう既にこの版面権の問題については知っておるわけでありますが、どういう立場で、この版面権の設定について文化庁の方に要望書を出されておるわけでありますが、その要望書の内容についてその概略をひとつ御説明願えればいいと思いますのでよろしくお願いします。
#170
○参考人(服部敏幸君) かねて私どもも文化庁に出版社の版面権を認めていただくように要望書を出しておるわけでございます。このことにつきましては、既に先生も御存じだろうと思いますが、前の衆参両議院の附帯決議とかあるいは昭和四十一年の四月の著作権制度審議会が答申した折にも、出版社に版面権についての何らかの形で権利を認めることが必要であろうというような答申もいただいておるわけでございます。
 そこで、我々も今度の集中処理機構というものを設立するに当たって、いろいろ問題を討議してまいりました。そこで、この際何としてでもやはり出版社の権利というものを認めていただく必要がある、その理由といたしまして先ほどもちょっと申し上げましたが、先生がおっしゃったようにあっちの一部を持ってき、こっちの一部を持ってきて本を編集で編さんしているというようなことをちょっとお出しになりましたけれども、そういうようなものを全部編集者がそういうことのないようにあらゆる努力を重ねておるわけでございますが、出版界で本を一冊つくるのに、オーソドックスなことを申し上げますとやはり編集者が企画を立てた場合にこれをいろいろその部署で、これが学問的にも現況に応じて必要なものであろうか、あるいは一年後、二年後に相当需要が喚起されるものであろうか、そういった学問的の立場の著作物についてはそういう見通しを立てる研究調査もいたしますし、またその他のものでも社会的に必要なものであるかを調査研究してこれを出すか出さないかということを会社として決定するわけでございますが、決定いたしますと、編集者はじゃどのような方にこの企画を執筆していただいたらよろしいかという選定をやはりするわけでございます。そしてあるいはこれは新しいものだから新しい執筆者にこれをお願いして、執筆者の育成に努めるというようなことも当然考えながら著者の選定に当たるわけでございます。その間、資料が足りなければ編集者も資料収集に協力をするとか、いろんなことをやはりやっているのが現状でございます。そして原稿が出てまいりますと、いろいろと編集者がそれを見まして著作権に違反していないか、あるいはこれが我々が設定した読者層にはちょっと表現が合わないんじゃないかとか、いろいろなことでまたもう少しやさしくしていただくとか、もっと資料を提示して書き直していただくという努力は編集者はするわけでございます。そしてそういうものができ上がりますと、今度は編集者はそれをどのような版にしたらいいか、活字の選定からレイアウトから全部工夫をして、そういう方面の創作活動をするわけでございます。そして活字になったものをまた校正をし、訂正して本にするということになりますので、その努力たるや皆様よくおわかりにならないかもしれませんけれども、その努力たるや大変なもので、そういう努力を払ってあの本の版面ができてくるわけでございます。
 そういう意味からしまして、当然その努力と創作力に対して版面権――まあ適当な言葉じゃないかもしれません。むしろ版権と言った方がいいのかもしれませんけれども、現在著作権のことを版権と言い伝えられておりますので、あえてここで版面権という言葉を使っておるわけでございますけれども、そういう意味で、版面権をぜひ出版社にも与えるように著作権法を改正していただきたいというふうにお願いしているわけでございます。
#171
○安永英雄君 そこで少し内容について、いわゆる版面権の内容についてお聞きしていきたいと思うのですけれども、この趣旨はすべての著作権のすべての出版物、この権利を要求されておるのか、いわゆる全部のとにかく著作ですね、先ほど私は部分的な問題として学術書とか今仏教書とか何とかを言いましたが、これは著作物全部についての配慮を希望されておるわけですか。
#172
○参考人(服部敏幸君) 私どもはすべての出版物に設定をしていただきたいということでございます。
#173
○安永英雄君 次に存続期間でございますが、これはやっぱり著作権と同じように五十年という形を考えていらっしゃいますか。
#174
○参考人(服部敏幸君) この問題は非常に難しい問題でございますけれども、
   〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕
よく文化庁の方たちと御相談申し上げてやっていきたいと思うのですが、我々としては短くても二十年、長くて五十年、著作権法と同じようにしていただきたいなと、このように考えて今検討を進めております。
#175
○安永英雄君 今説明をいただきました中で、出版社の立場からして非常に重責を担っておるし、大きな仕事もしているんだということで、学問的、社会的意義、こういったものまで調査をして研究し、そして場合によっては著作者を出版社の方から選定をする、こういう方向で今社会で必要なんだ、あなたひとつこれを書きなさい、まとめなさいというふうな仕事もしておるということも強調されておりますし、それから新しい著作者を発掘するという仕事も出版者はやっている。そういう重責を自分たちも今日まで尽くしてきているんだということを要望書の中に書いてありますが、著作者の創作活動を助け、よきパートナーとして努力をしておるというのが現状の出版者の立場なんだ、そういう立場にある者に対して版面権をひとつぜひ出してもらいたい、設定してもらいたい、保護してもらいたいという意向と、それからまた違った角度から、版の大きさ、活字の選択、それから割りつけ、レイアウトを含む編集活動、そこには創作的な能力が発掘されなきゃならぬ。さらには校正、造本、装丁にも各種の配慮を加えている。ここにやっぱり版面権の必要性を強調されておるわけです。いわゆる創意と苦心の成果というものを認めてほしい、そこに版面権というものを設定してほしいという、要約しますとこの二つの理由が一番強いように私は感じます。
 そこで、著作権法の二条一項一号あたりを見ますと、著作者の思想や感情が外部から感知できるよう具体的に表現されており、しかもそこにその著作者自身の創作性があらわれておればこれは保護するというふうになっておるわけでありまして、そのことが先ほどの理由の後段の部分ではなかろうかと思います。著作者の目的、方法、著作物の用途のいかんによって著作物であるかどうか左右されることはないというわけですから、前段の部分ですね、これあたりは直接著作権の中に入るという理由にはちょっと二次的なものに私は感じられるんですけれども、この点文化庁の方はどんなふうにお考えですか。
#176
○政府委員(加戸守行君) 確かに先生おっしゃいますように、ただいま御要望の出ておりますいわゆる版面の権利につきましては、版組みそのものを著作物と考えることにはかなり心理的な抵抗もございますし、また著作権法の定義の上でも読むことは極めて難しかろうかと思います。と申しますのは、いわゆる著作者の「思想又は感情を創作的に表現したもの」という現在の二条一項一号の定義に該当すると読むには極めて難しい、むしろ困難ではないかという感じがいたします。
 そこで、今の版面に関する権利の考え方というのは、外国にも立法例はあるわけでございますけれども、言うなれば現在著作権法の中で保護をいたしております例えばレコード製作者の権利といいますものは、著作物である作詩作曲を音楽的な形で音として表現したものをテープにとる、あるいはレコードに入れる、そういった形の行為を準創作的な行為、つまり著作者の創作活動に準ずる行為という考え方をとりまして著作隣接権の保護の対象にしているわけでございますから、それと類似したような考え方で、例えば小説家あるいは学者の書かれた著作物をそのような版組みのような形で印刷をしたという行為をレコード製作者と同様な観点から隣接権的な発想で保護するという考え方は一理あることではないかというぐあいに理解しておるわけでございます。
#177
○安永英雄君 服部さんにお伺いいたしますけれども、文化庁の解釈というのは今おっしゃったとおりでございますが、これは協会としていわゆる著作権そのものずばりという形の権利を要求されておるのか、隣接権的な、いわゆるレコードと同じような形でこの権利を主張されておるのか、この点どうでしょうか。
#178
○参考人(服部敏幸君) これにはいろいろ意見があるわけでございますが、もちろん文化庁の方たちとよく相談してやらなければなりませんが、私どもとしては、やはり複製権といいますか、それから貸与権といいますか、そういうものの形で具体的なもので欲しいなと、こういうふうに私らは現在は考えているわけでございます。
#179
○安永英雄君 わかりました。
 そこで、これはもう出版協会としては当然やはりそのものずばり保護してもらいたいという意向は私はわからぬことはないと思う。ただ、今ちょっとつけ加えられました出版権設定制度というのは今あるわけですが、あれじゃ足りませんか。
#180
○参考人(服部敏幸君) あれではもう現在の状況からいくと全くもって不十分だと、このように考えております。
#181
○安永英雄君 それともう一つこの際お聞きしておきたいと思うんですが、出版者自身が著作権を持っておるところがありますか。例えば移譲でもいいですが、移譲されたもので出版者自身が一つの書籍の著作権を持っている、移譲を受けたりそういった形で持っているということはありますか。
#182
○参考人(服部敏幸君) それは出版者自体が持っているものもございます。しかしそれはわずかなものでございます。
#183
○安永英雄君 この要求されておりますいわゆる版面権というものが、これがそのものずばりだかあるいは隣接権かどうか知りませんけれども、著作権で保護されるというふうな立場に立ったときに、先ほどいろいろお話し申し上げました集中的な処理機構設置というものは、著作者自身の方で今努力されておるあの機構と、この版面権が設定をされた場合には出版者関係でまたもう一つの集中処理機構を設定するというお考えがあるのか、そこらはどうでしょう。
#184
○参考人(服部敏幸君) 利用者に対しては別々にそういうものを設定する意思はございませんで、一括して一本化してやりたい。いずれにしても利用者の利便ということを念頭に置いてやるものですから、それを区分はしないで一括で一本化でいきたいと、このように思っております。
#185
○安永英雄君 そのほか皆さんの方で版面権の権利の内容等について、私は今多少基本的なところはお聞きしましたが、そのほかございますか。今大体私は聞いてきたわけですが、そのほかこういった点も設定してもらわなきゃならぬ、こういうところも問題点なんだというところがありましたらおっしゃっていただきたい。
#186
○参考人(服部敏幸君) このことはよほどうまく説明しませんと誤解を生むおそれが非常にあるわけですね。例えば放送権についてもということになりますと、じゃ放送権とは何だ、複写権というのはどういうんだ、貸与権というのはどういうことだというと、それぞれの関係の人が何か誤解を生むおそれがあるんですが、今のところ我々としては隣接権というものよりも強い、例えば複写権、貸与権というものをきちっと選定していただきたいというのが現在の考え方でおるわけです。
#187
○安永英雄君 有効期間の問題ですけれども、今おっしゃったように五十年ないし二十年という話ですが、著作権の期間というのがいわゆる版面権という形で例えば五十年とこうなってくると、その書籍の版面権を得たときと著作権を得たとき、これが恐らくずれるだろうと思うんです。あるいは同時のときもある。あるいは絶版になったときもある。そうするとその本は五十年たったからというので自由に複写できるという状態が来たにかかわらず、版面権だけはそれにくっついていっているという状態もありますので、これはやっぱりその本、書籍そのものが著作権が終わったときと同時にやっぱり版面権もこれはなくなるというふうな期間の設定をやらないと、そういう絶版になったもの、著作権がなくなったものを今からそれをどんどんどこでも出せるといったときに、その者の版面権がいつまでもついていっているという形になるとこれは権限が大きくなるというふうな心配もちょっとあるんですが、そこらのところ先ほど五十年ないし二十年というお考えもこれは概念として出された問題だろうと思うんですけれども、具体的なそういった状態が来たときにはどうなりますか。
#188
○参考人(服部敏幸君) 著作権が切れているものというお話がございましたけれども、著作権が切れているものを、例えば古典のようなものを、これは出版社がいろいろ工夫してやはり版面をつくる場合が当然あるわけです。そういう場合は版面権というのが生じてくるわけでございますけれども、ただ普通古典あたりは頭注をつけたりいろんな注をつけたりしますので新たな著作権が出てくる場合が九九%じゃないか、このように思われますので、その危惧はほとんどないじゃないだろうかというふうに思われます。
 それから絶版になった場合のお話でございますが、絶版になりましても、これは著作権というものはやはり死後五十年生きているわけでございますので、それとの関連になろうか、このように思いますのですが、よろしゅうございますか。
#189
○安永英雄君 はいわかりました。
 これは文化庁の方にお聞きしますけれども、こういった版面権というのは世界にも非常に少ないということを聞きますけれども、イギリスにあるということらしいんですが、イギリスの著作権法の中における我々が言う版面権の取り扱いはどうなっておりますか。
#190
○政府委員(加戸守行君) 確かに先生おっしゃいますように、このような形の権利は世界でも少ないわけでございまして、私ども承知しております範囲では、一つはイギリスの著作権法におきましていわゆる著作物の発行された版、エディションと言っておりますけれども、版についての著作権を認めております。ただし、この著作権と申しますのも、いわゆる我が国で保護しておりますような著作権とは性格が異なりまして、版の活版印刷の紙型の複製物を写真術または類似の方法により作成することが英国におきます版の著作権でございまして、具体的にはゼロックス等の複写、複製の方法による複製が一つの態様、もう一つは写真製版という形で原版と同じものを写真製版して出版をする、この二つの態様が具体的に押さえられる権利でございます。したがいまして、英国におきます版の権利につきましては先ほどちょっと服部参考人の方からございました頒布権であるとか、あるいは放送権であるとか、そういう形のものは規定はいたしておりません。しかし英国の著作権法の中で著作権という名前も使いながら、特殊な法制度として構成しているということが一つございます。そのほか西ドイツの著作権法におきましても、これはちょっと特殊な例でございますが、著作権の保護を受けない著作物または原文の出版物で学術的な性質を有する学術調査研究の結果であると認められるようなものにつきましては一定の複製権を認めております。ちょっと前後いたしましたが、イギリスの著作権法におきましては今の版の著作権は二十五年の存続期間、発行後二十五年でございますし、西ドイツの場合は版の発行後十年間という保護法制がとられておるわけでございます。
#191
○安永英雄君 以上で私の質問は終わりますが、どうかひとつ協会におきましてもぐずぐずしている著作者等も引き起こして早くやってもらわぬと、ちょっとレコードのあの問題から外されておりますからね、この複写は。そういった点で複写の外された理由は集中的な機構というものがまだできていないというのが表向きの理由で後回しになっておるわけですから、ぜひひとつ御努力を願って、そして今の海賊版の問題とか、あるいは盗み取りその他の問題は日本の文化を壊していくばかりですから、ぜひひとつ御尽力を願いたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#192
○参考人(服部敏幸君) ただいま大変御理解あるお話しをいただき、また非常に啓発されるお話しを伺いまして、この点につきまして厚く感謝を申し上げたいと思います。
 これはいたずらにおくれているわけじゃございませんで、いろいろ著作者の関係もございますし、また著作権の制限規定の明確化とか厳正化、そういったものの改定についていろいろまたお願いしていることがあるわけでございますし、また経営上、もう御承知のようにカラーで複写できるものやデジタルでやれるものなど、どんどん技術は進歩をしてきておるわけです。そういうふうになってまいりますと、ますます手が届かないような面がたくさん出てくるんだろう、そして家庭にもどんどん入り込んでくるだろうと思いますんで、そういうことを考えますと何らかの形で賦課金制度も検討していただかなければならぬというようなこともありまして、そういう面もいろいろ検討しておりますんで、できるだけ早くやりたいと思っておりますんで、どうぞ今後ともお力添えをぜひお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#193
○委員長(真鍋賢二君) この際、服部参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多忙中のところ、当委員会に御出席願い、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。
 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後四時三十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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