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1984/06/06 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 文教委員会 第11号
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1984/06/06 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 文教委員会 第11号

#1
第102回国会 文教委員会 第11号
昭和六十年六月六日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月五日
    辞任         補欠選任
     粕谷 照美君     八百板 正君
     高桑 栄松君     伏見 康治君
     藤井 恒男君     小西 博行君
 六月六日
    辞任         補欠選任
     八百板 正君     粕谷 照美君
     小西 博行君     関  嘉彦君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         真鍋 賢二君
    理 事
                杉山 令肇君
                仲川 幸男君
                久保  亘君
                吉川 春子君
    委 員
                井上  裕君
                山東 昭子君
                世耕 政隆君
                田沢 智治君
                林 健太郎君
                林  ゆう君
                柳川 覺治君
                粕谷 照美君
                中村  哲君
                安永 英雄君
                高木健太郎君
                伏見 康治君
                関  嘉彦君
   国務大臣
       文 部 大 臣  松永  光君
   政府委員
       文部大臣官房審
       議官       菱村 幸彦君
       文部省高等教育
       局長       宮地 貫一君
       文化庁次長    加戸 守行君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        佐々木定典君
   説明員
       通商産業省機械
       情報産業局総務
       課企画官     越智 謙二君
       労働省職業安定
       局業務指導課長  矢田貝寛文君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(真鍋賢二君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨五日、粕谷照美君及び高桑栄松君が委員を辞任され、その補欠として八百板正君及び伏見康治君が選任されました。
 また、本日、小西博行君が委員を辞任され、その補欠として関嘉彦君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(真鍋賢二君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○柳川覺治君 本委員会におかれまして既に著作権法の一部を改正する法律案につきましては委員の先生方また参考人の先生方の御意見の開陳がございまして、この法案につきまして大きな評価がなされておるわけでございますが、著作権を初めといたします知的所有権の保護につきましては、今後文化の発展あるいは経済社会の進展等の観点からますます重要な課題になってくると存じます。知識が産業を興し、頭脳が経済を開発するということが言われております。またコンピューターあるいはニューメディアの発展等によりましてますます情報社会が出現しておる。その情報は、従来の人、物、金、それに続くところの第四の経済財源であるということも言われておりますし、情報社会は国際的なコミュニケーションの大きな問題をこれからますます広げていきますし、またある面で、情報社会は経済の進展と同時に人間の文化的健全な生活を確保していくという面でかなりの多くの問題を抱えている問題でございます。それだけに、情報社会においては人の知性と器量が問われる社会だということが一般に言われております。
 今回の著作権法の一部改正につきましては、新たなコンピューターのプログラムという課題に取り組まれまして、政府部内でも幾つか対立の意見もあったようでございますが、文部大臣、また加戸次長を中心とする文化庁が知性と器量を発揮されまして今回の改正の案を提案されました。またこの案は、委員の先生方から長い著作権に関する審議の歴史を通した大変造詣深い御質疑を通されまして、特に昨年四月の本委員会におきましての附帯決議、国内はもとより国際的な協調の上に立ってのコンピュータープログラムの保護、ソフトウエアの保護につきましての附帯決議があったわけでございますが、この附帯決議の趣旨も踏まえたということの御指摘もあるわけでございまして、この法案が提案され、本委員会におきまして成立の運びに至っておりますことを心から歓迎を申し上げる次第でございます。
 そこで、大方のことは参考人の御意見、あるいは造詣深い委員の先生方の御質疑で尽きているわけでございますが、私は少し音楽著作権の問題につきましてまず御質問をさしていただきたいと思う次第でございます。
 著作権法の目的で、「著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与する」ということが目的としてうたわれておるわけでございますが、この「隣接する権利」あるいは「公正な利用」、むしろ利用の拡大という、そういう観点から見まして若干御質問さしていただきたいと思います。
 まず音楽著作物の使用料の徴収、分配のシステムにつきまして、簡単にどのようになっておるのか御説明を賜りたいと思います。
#5
○政府委員(加戸守行君) 音楽著作物の著作権につきましては、我が国においては日本音楽著作権協会という仲介業務団体がございまして、文化庁長官の許可を受けて業務を執行しているわけでございます。昭和十四年に制定されました著作権仲介業務法に基づきまして、そういった枠内での仕事の処理をいたしておるわけでございますが、現在のところ音楽著作権につきましては日本国民のみならず外国人の著作権についても管理委託を受けておりまして、我が国におきます音楽使用のほとんどは日本音楽著作権協会によって権利処理がなされておる状況にございます。
 先生御質問の使用料の問題でございますけれど
も、昭和五十八年度の実績といたしましては音楽著作権使用料収入が二百四十億円でございまして、その使用料の徴収方法としましてはいろいろな態様がございますが、一つは、放送とか有線放送というような利用の態様につきましてはブランケット使用料、いわゆる包括使用料という形で、例えば一定の電波料の収入の、あるいは営業収入の何%というような比率で、つかみで徴収をいたしております。それから第二の分野が出版とか録音のように一曲ごと、いわゆる曲別使用料と言いまして一曲ごとの単位で使用料を徴収をしておる。それから第三の分野としましては、演奏のように曲別使用料で徴収する場合と包括使用料で徴収する場合の二通りがございまして、そのいずれかの形態によるいわゆる併用方式でございまして、大まかに申し上げますと使用料徴収方法としましては今のような三つの態様があるわけでございます。
 それから分配方法でございますが、これもそれぞれの利用形態ごとの特性に見合った分配をいたしておりまして、例えば演奏でございますと、先ほどの曲別使用料の場合でございますれば使用曲目報告によりますけれども、包括使用料の場合につきましてはサンプリング調査によっての比例配分という形態をとっております。それから放送につきましては、生放送は使用者の使用曲目報告によりまして分配いたしますけれども、レコード放送等につきましてはサンプリング調査によって比例配分をいたしております。それから有線放送の場合も同様なサンプリング調査でございます。先ほど申し上げました出版とか録音の場合はまさに曲別使用料でございますので、申請があって許可をしたその曲ごとにこれは自動的に配分されるわけでございます。そういう意味で、徴収方法とややリンクした形で分配方法も定められておりますが、今のような状況で処理をしているという実情でございます。
#6
○柳川覺治君 従来、この種の著作物の音楽の演奏等は音楽会のできる劇場等が主でございましたが、最近身近な文化というような観点から社交業界の場においてこれらの演奏がなされ、また個人の要請に応じてバンド演奏がなされるというようないろんな広がりが起こってきております。そこで具体に、音楽の場合に演奏会などで演奏する場合と、キャバレー等で、あるいはもう一つもっと下がったところの居酒屋的なところでの場合がございますが、そういうような場で演奏される場合、そしてその演奏も、演奏者が演奏したものを聞かせるという場合と個人の歌うことに合わせて伴奏するというようないろいろの場合があるわけでございますが、この演奏会という大仕掛けで行う場合とそれから場を変えて身近なところで演奏される場合、そういうような場合の使用料には差があるのか、その辺の差はどうなっているのかお聞きしたいと思います。
#7
○政府委員(加戸守行君) 音楽著作権使用料につきましては先ほど申し上げましたように仲介業務法の規定に基づきまして文化庁長官の許可を得ました音楽著作物使用料規程というのを日本音楽著作権協会で設けておりまして、その中で使用料の額等が定められております。
 先生御質問の演奏会形式によります演奏と社交場におきます演奏等の場合におきましては料金の差がございます。具体的には演奏会におきます演奏につきましては、例えば入場料金が幾らであるかという段階別並びに入場定員が何名であるかというような段階別にそれぞれ金額が定められておりまして、具体的に申し上げますと、例えば入場料が千円で入場人員が千人の場合の一曲使用料が千百円というような形で細かい規程がございます。利用者の場合にはそういった曲別使用料も選択できますが、例えば公演一日当たりに幾らという形で包括使用料の場合ですと二万二千円で処理、それは曲目のいかんにかかわらずというような形で包括使用料の形態を選ぶこともできます。
 そこで社交場におきます演奏というのは、これは先生御承知のように日により演奏の曲目も違う、曲数も違う、あるいはお客の好みに合わせるというような状況、しかも大量、毎日反復継続して使用される形態もございますので、使用料規程の上では演奏会形式によります演奏の料金の百分の五十をベースといたしまして、社交場におきます演奏料金を決めることができるようになっております。したがいまして、実態的には特に年間契約を結ぶというような場合の割引規程もございまして、いわゆる曲別換算で演奏会におきます演奏の料金に比べればはるかに社交場におきます演奏料金の方が一曲別にカウントいたしますと極めて安い料金にはなっているという状況にございます。
#8
○柳川覺治君 時間がありませんからあれですが、この辺の音楽が愛好される場が家庭内はもとよりいろんな場面に、文化の時代というのはいろんな場面での機会がふえてくると思います。この辺につきましてはそれぞれの立場、状況に即した対応が使用料規程の方でもこれから細かく設けられていくようになっていくんじゃないかと思いますが、そこで著作物の利用拡大と申しますか、公正な利用、そういう場がいろんな形で展開してきておる。そういたしますときに演奏の場を提供する人、これはある面では経営者でございましょうが、この経営者の役割、あるいは実際にギターを弾いてそれぞれの人の好みに、要求に応じて音楽を演奏する人たち、この人たちにつきましては隣接権の上ではどういうようになりますか。演奏者は実演者としての立場の保護があるということでしょうし、あるいは場を提供している人、それについてはむしろ広い意味での演出の場を提供しているわけでございますから、実演家の中の演出家に相当するのかどうか、その辺の問題をちょっと御説明を賜りたいと思います。
 それからこういう著作物普及の媒介の役割をしている人たちに対して何らかの著作権法上の見返りと申しますか、そういうものが今後考えられるのかどうか、いろんな意味で文化の振興の問題が従来の形と違った新しい展開をしてきておりますから、そういう方面に対する文化の普及の担い手、損失を与えるのではなくてむしろその著作物の利用拡大の担い手になっている人たちというのがかなりの層あるわけでございますから、そういうものを著作権法上もうひとつかばい得ないのか、その辺につきましてお気づきの点をちょっとお示しいただきたいと思います。
#9
○政府委員(加戸守行君) もちろん著作物は利用されることによりまして経済的な利益を上げることができるわけでございますから、その意味におきまして著作物利用サイド、特に今先生おっしゃいましたような一つの興行あるいは演奏会等をプロデュースする、あるいは場を提供するという方々も著作物利用者、いわゆる有力な著作物産業の担い手というような形で著作権の普及に貢献をされているわけでございます。
 ところで、著作権法の中におきましては思想、感情を創作的に表現したいわゆる創作者としての著作者を保護すると同時に、実演家あるいはレコード製作者といったような著作隣接権によって保護される分野もございます。この場合の実演家と申しますのは、著作物を利用しているからというよりも、もちろん著作物を利用する立場でありますと同時に、その実演を通じまして著作物に準じた創作活動を行っている、その創作活動の面に着目いたしまして著作隣接権を認める、そういう考え方であるわけでございます。そういう観点から見ますと、著作物をプロデュースする、あるいは場を提供するという方々は、そこにおきます知的な創作活動というような意味で実演家に準じた、あるいは同様な純創作的な活動があるとはちょっと言い切れない。その意味で知的創作活動を保護するという著作権法のエリアとしては保護の対象とする、あるいは権利を認めるというような性格のものではなかろうかと思います。
 ところで、今先生のおっしゃいましたそういった方々に報いる方法がないのかという御質問でございますけれども、私ども感想めいた申し上げ方になりますが、例えば今の日本音楽著作権協会は公益法人としてこの仲介業務を実施しているわけ
でございますから、単に使用料を集めて配るということだけではなくて、例えば芸術性の高い、あるいは非常に創作的な企画というものを実施して、一種の音楽芸術の普及あるいは振興というような役割を果たすような分野につきましてはそれを助成するとかいうようなことが当然仲介業務団体の当然の役割という意味ではなくて、公益法人としての性格からそういうようなこともあってもしかるべきではなかろうかという感じを持っておりますし、そういった音楽著作物の利用普及あるいは振興に役割を果たす面についての配慮もそういう面では配慮があってほしいなという気持ちは持っておる次第でございます。
#10
○柳川覺治君 昨年私はニューヨークへ参りまして、ニューヨークは今世界の芸術都市、パリ、東京、それ以上の芸術都市、文化都市になっておりますが、そこで活躍している日本の芸術家の方々に集まっていただきまして夕食をともにしながら懇談をさしていただきました。十日ほど前の朝日新聞に「「ミュージック・フロム・ジャパン」に参加して」という記事が出ておりましたが、その中で三浦さんという方が十年間日本の音楽文化を紹介してこられた。また今日本に来ておりますが、アメリカの音楽の紹介等もしておられる。その人たちと相談いたしまして、何か文化振興のファンドをつくろうということで、どのような形でファンドがつくれるのか案を相談して今つくっておるわけでございますけれども、これからの文化の時代あるいは文化産業の時代とも言われておりますが、そういう中でそういう文化の普及の支え手というような方々を激励し、またそれに対して大いに奨励していくというような分野が大変大事になってきたなということを今感じておる次第でございます。その辺がこれからの文化行政の一つの課題ではあろうと、著作権だけでこなし得るのかという問題はございますけれども、そういう問題を今感じておる次第でございます。
 したがって、それともまた関連いたしまして、本委員会でもしばしば問題になっております家庭内の録音、録画による権利者の経済的利益が侵されているという問題が生じております。この問題に対応するために著作権制度の中で対応する補償金方式ということも論じられておりますが、一方、大きな意味で著作権が個人の著作物が専ら個人の利用に供する場合は認められておる、この原則はやはり依然として守るべきものであろうと思いますし、また実際にお聞きしまして、この録画・録音をとる者は若者でございます。十三歳から二十二歳の者が大部分だということ、これは、将来にわたって日本の音楽文化のみならず、文化の担い手の若者でございます。それらの者たちが録画・録音を通してこの文化的な所産に、知的な所産に触れるということは大変大事なことでございます。そういうような面から考えますと、大きな意味での税金による、税制によってこの面をカバーしていく方途というようなことも考えられるわけでございまして、補償金方式あるいは税制による方式が考えられますが、この辺につきまして諸外国の例がもしわかりましたらお教えいただきたいと思います。
#11
○政府委員(加戸守行君) この家庭内録音・録画の対応策といたしましては、先生御承知のように、先進国は西ドイツでございまして、一九六六年に録音・録画用の機器から賦課金を徴収する方式を導入いたしまして、情報によりますと、本年、テープ等の機材からも徴収をする法案を可決いたしておりまして、録音・録画用の機器、機材からの賦課金方式あるいは補償金方式をとっているわけでございます。
 一九八〇年代に入りまして、この西ドイツのパターンをまねましてこういった制度を導入しました国といたしましては、アイスランド、ハンガリー、オーストリア、コンゴ、フィンランドの五カ国があるわけでございまして、西ドイツと合わせまして現在六カ国がこのような補償金方式、賦課金方式をとっているわけでございます。
 一方、今先生おっしゃいましたような課税方式という形で税金として取りまして、それを文化目的に使用するという目的税的な考え方を採用いたしました国がノルウェー、スウェーデン、フランス、デンマークの四カ国がございます。しかしながら、この課税方式につきましては、権利者サイドからは、直接権利者の方には還元されないという形で不評でございまして、そういう意味の批判等もございます。そういった点もありますから、フランスにおきましては、今現在録音・録画用の機材を対象とした補償金方式の改正の案が国会で審議中だと承っております。そのほか、現在アメリカ、スイス、ベルギー、ポルトガル、ブラジル、イタリア等がそれぞれ賦課金方式あるいは補償金方式の著作権法改正案が国会に上程されまして審議中でございまして、課税方式をとろうとする国はもうございませんし、あるいは賦課金方式へ直そうとする国がフランスのような場合があるというほか、そのほかオランダ、スペイン、イギリス、オーストラリア等でもそれぞれ補償金方式が検討されておりますし、先ほど申し上げました北欧諸国におきましても補償金方式あるいは賦課金方式へ切りかえていこうというような検討がなされている状況で、世界の大勢としては課税方式と補償金方式の二方式ございますが、雪崩をうつように補償金方式、賦課金方式の方へ向いているというのが現状だと認識いたしておるわけでございます。
#12
○柳川覺治君 今後文化庁でお取り組みになるに当たって、この課税方式あるいは補償金、賦課金方式、まあ今世界の動向は補償金方式だということが言われておりますが、私は大きな意味での文化振興という観点へのこの問題が、この観点も含めた形での知恵があれば一番いいなという感じがするわけでございますが、今後文化庁としては、方向としてはどういう方向をお考えでございますか。
#13
○政府委員(加戸守行君) この問題につきましては、昭和五十六年に出されました著作権審議会第五小委員会の報告を受けまして、現在著作権資料協会の中で、著作権に関する懇談会というところで関係者間の合意形成に向けての話し合いが進められております。その懇談会の考え方、一応の方向を見きわめながら文化庁としての対応をする必要があるわけでございますが、具体的な方式等が確定したわけではございませんが、今の世界の諸情勢あるいは国内の権利者団体の意向から考えますと、賦課金方式あるいは補償金方式が極めて有力な態様であるという認識を持っておりますので、方向性としてはそんな考え方で今取り組みをしているという状況でございます。
#14
○柳川覺治君 補償金方式を採用した場合、配分は、なかなか使われた実態の把握等に大変な労力を要するでしょうし、また、実際問題として権利者に対する公平な配分が可能なのかどうかということが一般に言われておりますが、この辺、最近の外国では、既にそういう制度をとっておる国が先ほど来ございますわけで、その面につきましてはそれなりの問題を生じておらないのか、この点につきましてお教えいただきたいと思います。
#15
○政府委員(加戸守行君) この賦課金制度につきましての外国の分配方式としましては、先ほど申し上げましたように長い歴史を持っております西ドイツでは、一九八三年、二年前の実績でございますが、総額六十二億円がこの賦課方式によって徴収されておりまして、その分配の仕方としましては、そのうちの四二%が、GEMAと申しますいわゆる音楽の著作権者団体――演奏権、録音権を所管する団体でございます、に配分をされ、それから四二%が、実演家、レコード製作者といった著作隣接権を管理するGVLと申します団体に配分される、いわゆるフィフティー・フィフティーの配分でございまして、残り一六%が、管理協会ボルトと申しまして、これは出版権関係の団体が中心でございますけれども、今のような四二、四二、一六という配分が行われております。
 これで配分されました団体がそれぞれのまた権利者に配分をするわけでございますが、一つの例としまして、著作権を管理いたします団体としてのGEMAにつきましては、その使用の、配分の
仕方は、いわゆる放送部門、つまりエアチェックと言いますから放送から録音されるという実態が西ドイツの場合多いわけでございましょうが、総収入の七五%を放送分野で分配をする。と申しますのは、放送におきまして使われた音楽の曲目別に、つまり言うなれば放送における音楽使用の実態に合わせて個人に分配する。それから残り二五%は、レコードから録音されるという前提で、レコード、テープの売り上げを基準といたしまして著作権者に配分をするという形でございます。そういう意味では、一応腰だめで、現在使われている放送の分野あるいはレコードの分野における使用実績に見合ったような分配になっております。これが合理的かどうかという問題はあろうかと思いますし、家庭内録音の場合には同比率で録音が行われるとは考えられませんから、そのままの方式を維持するのか、今後、例えばサンプリング調査等によりまして、家庭内の録音の実績に見合った配分になるのか、それは今後の問題だと思いますが、現在はそのような便宜的方式を講じているように理解いたしております。
 それから、新しい例としまして、オーストリアでも徴収分配を行っておりますけれども、このオーストリアの分配の仕方も西ドイツに似ておりますが、音楽著作権の管理協会に四九%の配分、それから文芸著作権の管理協会に七%、それから実演家並びにレコード製作者協会関係の団体に三七%、それからラジオ著作権業務協会に七%という形でそれぞれの分配が行われ、またその団体からは個々の権利者への配分が行われていますが、その内容はつまびらかにはいたしておりません。
 以上のようなことを考えてみますと、我が国において将来こういった賦課金方式あるいは課税方式をとった場合の対応の仕方、それぞれお国柄でございますから、今申し上げたように、レコードに使用された実績あるいは放送に使用された実績をベースにするのか、あるいはサンプリング調査によって個々人の使用量を推計し比例配分をするのか、あるいはその折衷方式にするのか。そういった方式の問題についてはまだ検討がなされておりません。と申しますのは、先刻申し上げましたように、どのような賦課金方式でいくのかというふうなこと自体もまだ決まっておりませんので、そういった方向性が出た段階で分配についての考え方をまとめていくことになろうかと思います。
#16
○柳川覺治君 録音、録画等によりレコードが売れなくなるという損失補償、もちろんそのことはかねてからの本委員会でも御指摘になっているところでございます。それに対する適切な対応、同時に善意によるところの文化の担い手、あるいは音楽愛好という形での著作物の利用、活用があるわけでございまして、そのことがまた逆に言えば著作権者の今後の活躍に対しても大きな声援になっていくという、そういう文化の面の絡みがございます。なかなか難しい問題でございますが、必ずしも損失によるという観点に、もう一つ補てんの観点と同時に大きな意味での文化を支え身近な文化の質を高めていく、そういう観点へのひとつ福音のようなものがささいでも芽を出していただくというようなことにもしお知恵を働かしていただければありがたいということをちょっと感じますがね。
#17
○政府委員(加戸守行君) 確かに、先ほど申し上げた著作権懇談会での御議論の中でも、現在レコード録音等によりまして多額の収入を得ている、それは使用比率が高いわけですから、家庭内録音もそれにスライドして高いであろうと。そうすると、このような賦課金方式を導入をすれば今まで収入をたくさん得ている人のところへなおかつ賦課的な多額の収入がいくというようなことについてどうであろうかというような考え方もございます。今先生おっしゃいましたように、文化振興の観点からというものを何か取り入れられないだろうかという点は御指摘ごもっともでございますし、先ほど申し上げました、例えばオーストリア方式の場合でも文芸著作権の管理協会へ七%行っているというのは、文芸の作品がそれだけ私的録音で七%も果たしてシェアがあるのかというと、多分そうではないだろうと思います。そういう意味では、そういったある意味の文化振興の見地も加味されているんじゃないかという感じがいたしますし、また日本でこれから考えていきます場合に、個人分配だけにしてしまうのが本当にいいのかどうかという点を考えますと、広く音楽文化の大局的な総合的な観点からの振興、あるいは芸術性を高めるというような観点から、単純な配分ではなくって、そういった分野に対しましても均てんしていくとか、あるいは権利者側の認識として、個人配分ではなくて文化振興、文化共通のためにそれを拠出するというようなことも方法論としてあるでございましょうし、そういった点も総合的に判断して一つの方策が、あるいは具体的な解決策が見出されるべきだろうと思っております。また、このことが逆に権利者、メーカーサイドに対する理解を求めた場合も、権利者が自分のところへ、懐へ直接全部入れちゃうんじゃなくて、文化振興のためにも使うんだということになれば、メーカー側としてもこの賦課金あるいは補償金方式についての協力の姿勢をいただくという点にも一助になろうかというぐあいに思われるわけでございます。
#18
○柳川覺治君 日本人の従来の権利意識というのはむしろ諸外国よりか薄いということでございますから、著作権者の権益保護ということを第一義的に考えつつ、今広い意味での文化の普及、特に日本は文化輸入国でございます。大いに日本の文化の交流を諸外国にというような課題がそれなりに今起こってきておるわけでございまして、そういうような面からも広い意味での文化振興につながるお知恵を出していただければありがたいということを重ねて希望いたしておきます。
 そこで、コンピュータープログラムの件でございますが、もう御審議の中でもいろいろの御指摘がございましたが、一つビデオゲームの場合に、プログラムにより画面に映像が表示されます。この場合のプログラムと出力される映像との関係は著作権法上どういうような関係になるのか。確認の意味でございますが、御説明賜りたいと思います。
#19
○政府委員(加戸守行君) 今回提案申し上げておりますプログラムの保護を明確化する措置に伴いまして、コンピュータープログラムは学術的思想を表現したものとしてプログラムにおきます表現そのものが著作物として保護されるわけでございまして、具体的には〇一〇一の信号で表現されたものが著作物として保護されるわけでございます。一方、今おっしゃいましたビデオゲーム等の場合でございますと、そのプログラムをコンピューターに作動させることによりまして、結果として画面として映像が出てまいる、言うなれば一種のコンピュータープログラムを用いましてコンピューターを作動させた結果としてのアウトプットが映像になるわけでございますので、それを一つの映画の著作物と考えることもできるわけでございまして、既に争われました裁判の中でも、本年東京地裁で出されました判決におきましても、ビデオゲームに用いますプログラムが著作物であると同時に、画面として出てまいります映像につきましても映画の著作物であるという、いわゆる二面性の判決を出しておりまして、事柄はあくまでもプログラムそのものとプログラムをコンピュータに作動させた結果として出てくるアウトプットの成果物を著作物という形で評価しているわけでございますので、事柄は別でございますが、原因としては著作物として保護されるプログラムを用いた結果として出てくる画面についても著作物性を認めたということでございます。
#20
○柳川覺治君 この辺のところは一般の国民のやはり関心のあるところでございますから、機会あるごとに理解できるように御説明をしていただきたいと思います。
 そこで、今回の改正につきまして、幾つか紛争の生じておりましたビデオゲームに関しましては、今の映像の著作権それからプログラムの著作権の明確化によりまして、紛争は今後は解決され
るという自信がございますか。
#21
○政府委員(加戸守行君) 法制度が不明確であるからトラブルが起こるということにつきましては、明確にされますことによって多少の減少はするだろうと思いますが、事柄は法制度の問題ではなくって、まさに商取引上あるいは実際の社会的な風習の中でどうしても、これはコンピュータープログラムに限りませんが、著作権紛争というのは常にあるわけでございますので、今回の法改正によって解決されるかという御質問でございますと、やはり浜の真砂と何とかの種は尽きずという言葉がございますので、紛争は依然としてあり得るだろう、その問題は基本的にやはり著作権思想の普及徹底に待たなければならないと考えている次第でございます。
#22
○柳川覺治君 コンピューターのプログラムの場合は類似のプログラムが無数に――無数と申しますか、数多く出てくるのではないかというように考えられます。それが果たして既に著作権を持っているその著作権を侵害しているのかどうかはどのように判断するのか。目に見えないものでもございますから、その辺が一つの課題でございましょうし、また既に登録されているプログラムと類似のプログラムの登録の申請があった場合、登録に際してどのようにそういう場合に対処するのか、この辺についてお尋ねいたします。
#23
○政府委員(加戸守行君) 著作権の場合は特許権と異なりまして、相対的な独占権でございますので、ある著作物が保護されるといたしました場合に、全く独自の観点から創作した結果が既存の著作物と類似のものができる可能性はございます。しかし、それは著作権法上は著作権侵害とはしないわけでございます。したがって、盗作であるかどうかというのは、類似の著作物を比べてみました場合にまさに前の著作物に、既存の著作物にアクセスするチャンスがあった、あるいは当然それを念頭に置きながらつくったであろうというところの事実認定が極めて難しいわけでございまして、過去の音楽著作権の問題につきましてもワン・レイニー・ナイト・イン・東京事件というのがございまして、アメリカの著作物をベースにつくったのか独自につくったのかというのが長年争われたというような事例もあって、まさに事実認定が難しい問題でございます。同様のことは特にこの場合のコンピュータープログラムについては起こり得ることだろうと思います。その意味で、いわゆる既存のプログラムがある程度流通をして当然それに接近するチャンスがあってそれを解析した結果としてつくられたものであるのかどうか、その辺が裁判におきましても多分事実認定としては難しい問題が出ることは十分想定されるわけでございまして、独自につくったのかそれを盗作したのかということは諸般の状況、材料、資料等から判断していかざるを得ない。要するに盗作した本人と神のみぞ知る話でございますので、そういう難しさは常につきまとうものだと思います。
 ただ、登録の場合につきましては、そういった実体審査をいたすわけではございませんので、申請されれば、要件が書式さえ整えば形式的に受けつけるという考え方を現在とっております。しかしながら、一般常識で申し上げますと、盗作をしたプログラムが盗作だということを追及されることを覚悟の上で登録に持ってくるだろうかということを考えますと、蓋然性としては極めて低いのではないかなと思います。
#24
○柳川覺治君 御指摘のとおり実質審査というのは極めて専門的、技術的なことでございますから、ほとんど不可能。そこで、形式主義による登録の受け付けということにならざるを得ないということはやむを得ないのかと存じますが、それだけにこれからプログラム開発の紛争のように極めて技術的、専門的な問題であり、かつそのことは与える影響が多うございますから迅速性が要求されます。そういうような専門の紛争処理につきまして何か紛争処理機関が現在のあっせんあるいは裁判にゆだねている、そういう形のところの中で何かもう少し紛争処理の機関が必要ではないのかと一般的には感ずるわけでございますが、ぎりぎりの、争いの極めて難しい問題でございますので、そういうことは実際にはあり得ない、そういう機関を設けることは大変難しいんだというようなことでもあろうかと思いますが、いずれにいたしましても紛争処理の問題もありますし、また文化量が大いに拡大し、また今後いろいろの形のニューメディア、電気通信機器の開発等の問題とも絡みますので、この辺の専門的な紛争処理機関等の問題につきまして、文部大臣、お考えがございましたら御所見を賜りたいと思います。
#25
○国務大臣(松永光君) 我が国の紛争解決の仕組みといたしましては、最終的には一般の裁判所の裁判、これが最終的な紛争解決機関であります。そしてまた、憲法上一般の裁判所のほかに特別の裁判所をつくっちゃいかぬ、こうなっておるわけでありますから、そういう意味では最終的な当事者間の紛争解決の仕組みとしては裁判所の裁判、こうなるわけでありますけれども、実際問題としては我が国の裁判、決してスピーディーに行われていないというのが実情でありますし、加えてプログラムに関する紛争のような高度の技術的な専門的な事柄についての紛争でありますから、相当長期化が予想されるわけであります。しかし、実際におきましては早期の解決が望まれるわけでありまして、そこで次善的な制度、仕組みの問題でありますが、一般的には調停というのもありますし、あるいは和解というのもあるわけでありますけれども、この著作権紛争の解決あっせんの機関として、著作権法第五章に著作権紛争解決あっせんという制度が設けられておりまして、この制度を効果的に活用することによって迅速かつ簡易な紛争解決を図っていくと、こういったことで対処していかなければならぬというふうに思うわけであります。
#26
○柳川覺治君 プログラムの登録件数が年間五百件という話が参考人等からもございましたが、実際に問題として、登録すると企業機密に関することとのかかわり等もございまして企業秘密の公開につながるんじゃないかというようなことの懸念から、必ずしも登録件数が本法の改正によって、登録年月日の登録申請がそう多く出てこないのかなというふうな感じもいたしますが、この辺は次長どう考えておられますか。
#27
○政府委員(加戸守行君) 既存の著作物につきましての登録件数が一昨年が百八十一件、昨年が百七十九件でございまして、多分現在提案申し上げております登録制度が導入されました場合に、参考人の答弁にもございましたようにゲームソフトとして考えておりますのが年間五百件でございますので、多分それ以外の汎用プログラムあるいはアプリケーションプログラム等についての登録件数も相当膨大な数に上るのではないかと予想しているわけでございます。
 そこで、先生御質問されました企業秘密との関係でございますが、まさに七十八条の二の規定によりまして、別に法律で定めた場合の登録手続あるいは納付すべきもの、あるいはプログラムの内容、概要の公示といったような諸制度の取り入れ方の工夫の必要があろうかと思いまして、現在のところ私ども考えておりますのは、少なくともプログラムの表現形式がわかるような形で登録することは、これは企業秘密との関係がある問題でございましょうので、プログラムの概要をどの程度のものとして、つまり文書で記載させて、その概要を読んだだけではプログラムの機能、目的はわかっても、プログラムの表現形式がどうなっているかということはわからないような形での書類にしておけば、少なくとも企業秘密はそのことによって漏れるということはないわけでございますので、登録の件数がそれによって減るという可能性はないと思います。問題は、例えばオブジェクトプログラムの複製物を納付させるといたしました場合に、そのプログラムの秘密性というのをどうやって確保するのか、そういった実務的に登録したときに、現物を納付してその現物が解析されて中身がわかるというようなことはもちろん絶対に避けなければならない問題でございますので、そういった諸般のいろいろな手続等につきまし
て、別に法律で定める場合には、業界等の意見も十分聴取しながら適切な対応をしたいと考えているわけでございます。
#28
○柳川覺治君 登録件数もふえてき、またかねて紛争にかかわったプログラムに関する登録業務の問題でございますので、文化庁でもこれからその面の体制づくりは大変だろうと思いますが、この面につきましての御努力を御期待申し上げる次第でございます。
 時間が参りましたので、最後に文部大臣にこれからの技術の開発、普及に伴いますデータベースの問題、あるいはニューメディアなど新たな著作権制度上の課題が多く生じてきております。また、これらについて本委員会でも委員の先生方からまた新たな御指摘もあるわけでございまして、これに伴い今後どのように取り組んでいくのか、文部大臣の所見をお伺いいたしまして質問を終わりたいと思います。
#29
○国務大臣(松永光君) 先生御指摘のように、科学技術の目覚ましい進歩、発展によって著作物を利用する手段の開発が非常に進んでおるわけであります。またそれが非常に大きく普及しておるわけでありまして、それに伴ってさまざまな著作権制度上の課題が生じてきておるということは先生御指摘のとおりでありまして、そこで今回のプログラムの保護について法整備をすることもその一つの課題の解決でありますけれども、これから起こってくるであろう、また起こりつつあるさまざまな課題につきましては、著作権審議会等の御検討をいただき、その検討の結果を踏まえて適宜適切に時期を失することなく対応策を実施してまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#30
○伏見康治君 文部大臣がおられる間に、実はプログラム権法とは直接は関係ないんですが、強いてこじつければ関係のないこともない。実は昨日経験したほやほやの件を、ちょっと御意見を伺っておきたいと思いますが、要するに人間の名前の表現法の問題でございます。
 今、欧州評議会の方々が見えておりまして、毎日のようにおつき合いをしておりましたんですが、その席にベルギーの自由大学の先生でプリゴジンというノーベル賞をもらわれた先生が来ておられまして、その講演を伺ったりいろいろお話をしたりしています。この先生と私とは三十年ほど前には研究の対象が非常によく似ておりましたので長いおつき合い、論文の上でのおつき合いであったんですが、お会いしたことは二、三あるんですが、ところが今度の欧州評議会の会で外務省が世話するものですからここにぶら下げる名礼はヘボン式で書いてあるわけです。ところが、私の学術論文における表現法は日本式ローマ字というやつでHusimiと書いてある。ヨーロッパ人にとってHusimiというようなものはFushimiというのとは全然関係がありませんので、プリゴジンさんは三日間つき合っていたんですけれども、昨晩になって初めて僕がもとのHusimiであるということをアイデンティファイしていただきました。
 文部省が訓令式というものをお出しになったのは随分久しい以前でございますが、ローマ字の標準的なものをおつくりになったんですが、それは大体日本式、つまり私の先生であります田丸先生がおつくりになったもので、私はその先生から教えていただいたとおりに書いておるわけなんですけれども、ですから先生とのなじみもあり、それから長年使っていたということであって、このHusimiというのは私にとっては非常に大事な表現法なんですね。それが外務省に行くとパスポートをつくるようなときに必ずヘボン式で書けと言われまして非常に不愉快な思いをするわけですが、半分文部省にも責任がおありになる。訓令式というのは大体日本式をとっておつくりになったわけです。日本としてこの名前の表現法についての統一ということをぜひ文部大臣にお考え願いたいということでこの際お願いしておきますが、三日目になってようやくHusimiと認められたわけです。
 著作権法というものがいろんな意味でちゃんと過去大いなる役割を果たしてきた。実はプリゴジン先生に私のもう一人の先生である寺田寅彦先生の著書を差し上げようと思っていきましたら、ちょうど寺田先生は半世紀ほど前に亡くなられておられます。ちょうど著作権法が切れるか切れないかという間際でございますが、幸い岩波書店からその本を一部買ってお贈りすることができたわけですけれども、そういうものを買いますというと、改めて著作権法が存在していたということを意識するわけです。
 さて、この著作権法が日本の文化といったようなものを支えてきた非常に大事な法律であったということは私は認めるにやぶさかでないんですが、今度出てまいりましたプログラム権法とも言うべきものは、いわゆる著作権法の性格から申しますと非常に異質的なような感じがいたします。つまり、プログラムというのはやはり経済活動と非常に密接に関係のあるもので、文化活動という面よりはその方があるいは強いのではないかと思うんですが、その辺の基本的な物の考え方をひとつ教えていただきたいと思います。
#31
○政府委員(加戸守行君) 確かに先生おっしゃいますように、従来の伝統的な著作物といいますか、代表的な著作物といいますものは芸術、文化関係のものが多いわけでございまして、その意味でコンピュータープログラムが経済活動を主体としたというような観点があるということは事実でございまして、その辺に心理的な違和感がわいてくるのはある意味では当然のことかもしれません。しかしながら、私ども今回のプログラムを著作物として著作権法で保護する視点に立ちました場合、もちろん国際的な情勢も踏まえながらでございますが、我が国におきます著作権審議会の検討の段階でもいろいろな御議論をちょうだいいたしまして、その中でプログラムというのは単にソフトウエアメーカーの工場あるいはオフィスにおいて制作され使用されるもののみならず、一般の企業、大学、あるいは研究機関、あるいは家庭などあらゆる場で制作されておりますし、また実際の利用の面を考えてみましても一般の事務処理とか科学研究、教育活動、医療、交通管制、通信、それから芸術、あるいはビデオゲームのような娯楽といった面で社会活動のあらゆる側面に及んでいるわけでございまして、そういう意味で非常に広範な場で制作され、かつ人間が活動するありとあらゆる場で利用されている、人間生活の各分野に深くかかわって大きな役割を果たしているという意味で、このプログラムといいますものにつきましても保護することによりまして終局的には文化の発展に寄与する、そういう見解をとったわけでございます。
 もちろんプログラム権法構想におきます考え方も一理あるわけでございまして、そういった理念的な違いということが当初この一昨年来の通産、文部両省間におきます議論の場であったわけでございますけれども、ねらいとします保護の目的を達成するということにつきましての共通認識が得られまして今回の提案を申し上げたというような状況でございます。
#32
○伏見康治君 そういうことだとは思うんでございますが、そういうふうに意見がまとまるまで文化庁と通産省の間で随分長い間御議論があったように伺っておりますが、その中でどういうことが見解の分かれるところであり、またどういうところでいわば折り合いがついたか、その辺のところの経緯をお話し願いたいと思います。
#33
○政府委員(加戸守行君) 基本的にはプログラム権法構想と著作権法一部改正案との考え方の違いは、ただいま申し上げましたような法の目的あるいは法形式の違いということが基本にあったわけでございますけれども、具体的な保護の対応、内容といたしましての問題としましては両省庁間で考え方の違いがありました。
 具体例を申し上げますと、第一が使用権の問題でございまして、プログラム権法におきましては使用権を設定する、文化庁といたしましては使用権は設定をしない。それから第二点が、人格権をプログラム権法では否定をする、著作権法におき
ましては基本的に必要だという認識に立つ。それから第三点が、保護期間につきまして、著作権法でいきます場合には五十年の保護期間、プログラム権法の場合にはそれよりも短い期間という考え方。それから第四点が強制許諾制度あるいは裁定制度と呼ばれるものでございまして、プログラム権法構想におきましてはこういった裁定制度、強制許諾制度が必要である。一方、著作権法の建前からいたしますとそれについては慎重を要する。それから登録制度につきまして、プログラム権法構想におきましては登録を認める、文化庁におきましては登録の制度を設ける必要は必ずしもないという考え方、そのほかこれは通産、文化庁の基本的なスタンスの違いございますが、ユーザー保護の観点を規定するというのがプログラム権法構想でございまして、これは業法的な視点でございますので著作権法では規定しない、そういったようないろいろな違いはございました。しかし、いろいろコンピュータープログラムの効率的な保護を図るという点で両省庁間で十分調整をいたしまして、大きく残された問題としては使用権と保護期間の問題でございまして、この問題については、両省庁間の合意に当たりまして将来におきます国内的あるいは国際的動向を十分踏まえながら検討を続けていくという形で両省庁間でなお協力しながら検討を続けるという今後の課題として積み残しました。残りの問題といたしましては、一応人格権の問題といたしましても通産省の考え方を十分取り入れて実態的に運用上支障がこないような形で今回の提案を申し上げさせていただく。それから強制許諾制度あるいは裁定制度については導入をしない。それから登録制度につきましては文化庁としてできる範囲内で、つまり条約上の権利、義務、内容等に影響を与えない形で登録公示制度を導入し、プログラムの流通促進あるいは二重投資の防止ということに結果的に資することができるような措置を講ずるという七十六条の二並びに七十八条の二の提案によってこの問題を処理する。それからユーザー保護の問題につきましては著作権法ではカバーできませんので、今申し上げた登録制度の結果として現実にそのような付随的な効果が期待できるというようなことで一応両省庁間で合意に達したわけでございます。
#34
○伏見康治君 今挙げられたいろいろな点についてここでこれから順次もう少し詳しく伺いたいと思いますが、この法律ができる以前から、まだできていないわけですが、プログラムに関するいろいろと紛争が起こりまして、そして、それが裁判所に持ち込まれていろいろな判例があったというふうに伺っておりますが、そのティピカルなものをひとつどんなものであったかということを御紹介願いたいわけです。
#35
○政府委員(加戸守行君) コンピュータープログラムの著作物性あるいは著作権を認めた判決といたしましては最初のものが昭和五十七年十二月の東京地裁の判決でございます。これはビデオゲームに関連した問題でございますが、ある会社がビデオゲームのコンピュータープログラムを再製作、販売あるいは貸与等を行っていたわけでございますが、この別の会社がそのビデオゲームのプログラムを無断でコピーして販売をしたという事例でございまして、これに対しまして新会社に対しプログラムの著作権を侵害するということで損害賠償を求める訴訟を提起したわけでございます。
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
これに対しまして東京地方裁判所では、コンピュータープログラムは学術的思想の創作的表現であり、著作権法上保護される著作物であるという認定をいたしまして、具体的にはそのゲームソフトの中のソースプログラム、いわゆるCOBOL、FORTRANといったようなプログラミング言語によって記述されたプログラムから、その変換されてROMと申しますが、リード・オンリー・メモリーの略でございますが、ROMと申します読み取り専用記憶装置に出納されましたオブジェクトプログラム、言うなれば〇一〇一の機械的な信号、機械言語として表現されておりますオブジェクトプログラムにつきましてそれはソースプログラムの複製物に該当するということで、したがいましてビデオゲーム用のソフトを格納いたしましたROMの複制という行為はソースプログラムの複製に該当するという認定を下しました。したがって損害賠償の支払いを命じたというのが判決の概要でございます。
 これと同様なケースがその後昭和五十八年三月に横浜地裁、昭和五十九年一月に大阪地裁、それから昭和六十年三月に東京地裁で判決が出されておりますけれども、いずれもただいま申し上げました昭和五十七年十二月の東京地裁の判決と同様な理論構成、同様な認定をいたしておりまして、もちろん訴訟の内容となりましたビデオゲーム自体は異なりますけれども、ケースとしてはほぼ同様のものでございます。
 なお、このコンピュータープログラムのみならず、先ほど柳川先生からの御質問にございました、ビデオゲームによりまして画面に出てくる映像として映画の著作物であるという認定をした事例が、昭和五十九年九月の東京地裁の判決がございますし、それから先ほど申し上げました昭和六十年三月の東京地裁の判決もコンピュータープログラムの著作物性と同時に、画面に出てくる映像につきましての映画の著作物性の両面性を認めた判決になっているということがございます。
#36
○伏見康治君 新聞に出ましたコンピューター関係の紛争では、IBMと日立との間のごたごたが私たちの記憶にあるんですが、これについてはどういう経過であるのか、教えていただきたいと思います。
#37
○政府委員(加戸守行君) 事柄といたしましてこの問題につきましては通産省の方が詳しいわけでございますが、当方が新聞その他あるいは情報によって承知しております範囲のものといたしましては、アメリカにおきましてその情報提供者に扮していたFBI職員からIBMの情報といいますか、秘密情報を入手したという容疑で日立の社員あるいは三菱電機の技術者が逮捕されたという事件でございまして、その後一種の和解というような形でこの問題が処理をされたというぐあいに理解しております。詳細は通産省の方がよく承知していると思います。
#38
○説明員(越智謙二君) ただいまの事件でございますが、日立の社員等がIBMの秘密情報を不正に入手しようとした等の理由によりまして、五十七年の六月二十二日、米国のFBIに逮捕されまして、いわゆる刑事事件としまして米国カリフォルニア州の連邦地裁において扱われたものでございます。ただいま文化庁から御答弁がございましたように、日立側が有罪を認めまして、五十八年の二月に、アメリカの制度でございますけれども、いわゆる司法取引が成立をしまして、刑事事件としての決着を見たわけでございます。
#39
○伏見康治君 今のお話はアメリカの裁判の判決の話だと思うんでございますが、日本の国内ではこの問題はどうなるんでしょうか。私の承知している限りでは東京大学の大型計算機、一昨年の暮れだったかな、華々しくデビューして私もそこへ紹かれたのですが、その機械は世界最高級のものだと聞かされて大いに――しかし、その直後何週間にいざこざが出てまいりまして、いささかショックを受けたわけですけれども、その東大の計算機あたりは今どういうふうにその問題の、いわば何というのかな、とばっちりを受けているのかいないのか。
#40
○説明員(越智謙二君) 御指摘のように、ソフトウエアの取り扱いにつきまして、IBMと日立の間でいわゆる和解ができたわけでございますが、
   〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕
この解決の一環としまして、日立の特定のソフトウエアについて新しいソフトウエアに切りかえることとしておりますけれども、これが間に合わないユーザーについては暫時ユーザーと日本IBMの間でも場合によってはソフトウエアの使用契約を結ぶことがあるということが昨年十一月に企業から伺った内容でございますが、合意の詳細につ
きましては企業秘密にかかることでございますので、コメントを差し控えさしていただきます。
#41
○伏見康治君 私は東大の卒業生なものですから、東大が迷惑したかどうかを伺っているわけなんですが、日立のつくった機械とその機械を動かすためのソフトウエアというものはどういう関係にあるのか知りませんが、とにかくそのソフトウエアの中にIBMのものが入ってたわけでしょうね。そうすると、ユーザーとしての東大がIBMにいわば許諾を得ずに勝手に使ってたという形になるんですか、どうなんですか。
#42
○説明員(越智謙二君) 著作権法上プログラムの使用そのものというのは権利の直接の対象ではないわけでございますけれども、これはIBMと日立の間では、そういうIBMのプログラムの内容と一部同じものが使われているということは問題でございますので、その和解契約の内容におきましてそういうユーザーのプログラムを漸次新しいものに取りかえていくということをしたわけでございまして、日立とそのユーザーとの間では、日立の義務としてユーザーにお願いをしてプログラムを取りかえていって、現在では問題がないんだというふうに伺っております。
#43
○伏見康治君 ちょっと御返答の歯切れが悪いように思うんですが。計算機のハードウエアとソフトウエアというのはある程度くっついて売られているんだとは思いますが、しかし東大当局が自分で勝手に日立の持ってこないソフトウエアを使ったっていいはずだと私は思うんですが、そうでないとハードウエアにいつも日立が持ってきたソフトウエアしか使わないというのは一種の独占禁止法になると私は思いますがね。つまり、そういう意味でどういうプログラムを東大が採用しているかということは僕は東大の責任だと思うんですが、そうではないんですか。
#44
○説明員(越智謙二君) 東大がどういうプログラムを使うかというのは、御指摘のように東大の責任でございますけれども、ハードを入れます場合に、それに使いますソフトも同時に供給するというのが通常でございますので、先ほどのような御答弁を申し上げたわけでございます。
#45
○伏見康治君 私質問は午後まで続くと思いますから、また改めて返答をしていただきたいと思いますが、今の答弁ではちょっとわかりません。
 さて、また文化庁にお伺いいたしたいわけですが、先ほど伺った中に、裁判では現在の著作権法を援用していろいろな判決を下されて、一応処理が行われているというふうに伺いました。それならば今後もその調子でやればいいので、新しく何か法律をつくる必要はないのではないかという疑問も持たないわけにいかないんです。私は妙な因縁で国会に入りまして、そして毎日法律のお世話をしておりますというと、いささか法律に食傷いたしまして、新しい法律余りつくらない方がいいという感じを持たざるを得ないものですから、古い法律で間に合うものならそれでやったらいいじゃないかという感じを禁じ得ないんですが、そこはどういうふうになってますか。
#46
○政府委員(加戸守行君) このコンピュータープログラムの保護につきましては、過去長い間いろんな議論があったわけでございますし、現実に訴訟等も起きまして、例えば著作権法での適用の有無についても争われ、もちろん私申し上げましたようにプログラムの著作物性を認めた、地裁段階でございますが、判決が四つ出ていることも事実でございます。しかしながら、こういった国内的な取り扱いにつきましても考え方の違いあるいは主張というのがあり得るということを勘案いたしますれば、当然法制度を明確にするという必要性があろうかと考えているわけでございます。と同時に、国際的にもアメリカ、オーストラリア、あるいはインド、ハンガリーと、既に四カ国において著作権法の改正が行われ、また多数の欧州先進国におきましても著作権法の改正案が国会で審議中だというような状況もございますし、日本の場合アメリカに次いでコンピュータープログラムの生産のシェアが大きい国でございます。そういう意味では、世界における日本といたしましてもその姿勢を明らかにして、保護の明確化を図るということが当然必要なことでもございますし、単に判決があるからいいではないかということではなくて、その国際情勢の中、あるいは日本の国内実情に適合した法制度の整備を図るということが今後のコンピュータープログラムの流通の円滑化にも資するわけでございますし、そういう視点で提案をさしていただいたということでございます。
#47
○伏見康治君 もう少し別の観点もあり得ると思うんですが、それは、判決が実際に行われたのは、いわばテレビゲームのようなプログラム全体の中から言いますというと非常に末端的な、文化というような基準から考えますと非常に低いところの問題でしかないわけで、もっと大事なのは例えば東大の大型計算機のようなところに入っている非常に高度の科学技術的なことをやるといったようなプログラムといったようなものの方がいわば高いレベルのもので、したがって国として真剣に保護すべきものというのはむしろそちらの方ではないかと思うんですが、そちらの方に関する判例は今までのところないわけですね。今度の法律をつくる際には、そういうハイレベルの問題をどうするかということが主眼であるべきではなかったかと私は思うんですが、実際上皆さんのイメージの中にあるのはそうでなくて、専らテレビゲーム的な紛争ではなかったかと思うんですが、その辺はどうですか。
#48
○政府委員(加戸守行君) 確かに具体的な訴訟になりましたケースとしては、こういったテレビゲームのようなプログラムが中心でございました。しかし、事柄はあくまでもやはりコンピュータープログラムすべてについての保護の問題でございまして、そういう意味で当然このコンピュータープログラムの保護を考えます場合には、大は汎用コンピューターにおきますオペレーションシステムから、小はビデオゲームあるいは電気がまの中に入っておりますROMに格納されましたプログラムに至るまで大小さまざま、機能、目的も違うわけでございますけれども、著作物の観点から見ますと人間の思想、感情、創作的に表現したと言えるようなそういったプログラムにすべて共通する属性としての権利保護内容を定めるわけでございますし、またコンピュータープログラムの特質に見合った手直し、整備というのも必要なわけでございまして、その際の考え方としては大型のコンピューターに使われますOSのような価値の高いものから低いものまでのありとあらゆるものに共通した属性として認識し、法制度を基準的には一本化したもので考えるという立て方で、これは従来の伝統的な著作物についての考え方とまた同様でもございます。
 例えば文芸の著作物と申しましても、小は俳句から大は長編小説に至るまでのものがございますし、また形態としては、文芸の著作物といいましても暗号文なんかの場合も言語の著作物でございますし、それから例えはようございませんけれども、絵画でございますればデッサンから壁画に至るまで、小から大までの各般にわたるものもございますし、また技術的な観点から申し上げれば、例えば橋のような場合でも一つの著作物たり得るわけでございます。そういう意味でいろんな目的的に考えましても、音楽の場合も鑑賞用の音楽からあるいは単なる能率促進の観点でBGMとして用いられるような場合もございますし、著作物の価値の大小あるいは目的用途のいかんを問わず、人間の知的活動の所産としてのプログラムを法律制度上どう保護するかというのが今回の問題として著作権審議会でも御議論をいただき、また提案申し上げた次第でございます。
#49
○伏見康治君 今いろいろな具体的な例を挙げられたんですが、例えば自動炊飯器の中に何か入れておいていろんなものを自動的にするという場合は、これは全く常識的に考えて、自動炊飯器というものの工業所有権的な処置でもって済んでしまうのではないかという感じが受けられるわけです。
 また、一方、テレビゲームのようなものは、先ほど前の質問者が言われましたように、画面の芸術
性といったようなものがむしろ大事なのであって、同じ芸術性をどう実現するかという方は、むしろどうにでもできるような感じがするわけですね。そっちの方は従来の著作権法で処置したらいいのではないか。そういうふうに分解して考えると、プログラムとして本当に守らなきゃならないものは、本当は非常に高度の本物だけで、非常に抽象的なものだけであって、日常出てくるようなものは、どっちかで片づいてしまうのではないかという印象を受けるのですが、その点どうですか。
#50
○政府委員(加戸守行君) 著作権制度と申しますのは、あくまでもその価値の大小、用途、目的のいかんを問わず、人間の知的活動の所産として表現されたものを保護するということでございまして、しかも、それはすべてに共通する統一の基準、ルールのもとに運用されてきているわけでございまして、これは一八八六年にできましたベルヌ条約が国際的な規範として存在するわけでございますけれども、この制度の極めてすぐれた点は、まさに今申し上げましたように、価値のいかんを問わず、目的、用途のいかんを問わず、それに一つの知的所産に対する共通のルールという形で、統一的に運用されているところに極めてすぐれた法制度だという理解があるわけでございます。
 もちろん、個々の著作物の具体的な利用態様に伴いまして、実用に即しない、あるいは不合理性がある場合につきましては、その部分に伴います手直しといいますか、例外措置あるいは著作権の制限措置等はあり得るわけでございますけれども、基本的には、今申し上げましたように、用途、価値によりまして、これは保護する、これは保護しないという考え方をとらないという点で、著作権条約上は、子供がなぐりがきをした絵であろうと、画家が大きくかかれた価値の高い絵であろうと、すべて著作物という観点からは、共通の取り扱いになっているわけでございます。
#51
○伏見康治君 私の質問と少し向きが変わっている。おっしゃるとおりに、従来の著作権の文化といったような観点からいえば、それを内容によって区別するといったようなことがもしあったとすると、それは思想統制のようなことになるわけでして、そういうものは峻厳に排除しなければならない要素であるということは、これはもう非常に明らかだと思うのですが、しかしプログラムのようなものは、思想性といったって、技術的思想性であって、いわゆる政治思想的なものとはまるで話が違うんでありますね。何かそこのところが少しこんがらかったのではないかというふうに私には考えられます。
 今の問題で、プログラムにいろいろな形のものがあって、それを別々に処理したらどうかという私の意見のようなものが恐らくあったと思われるのに、著作権審議会第六小委員会というので何かいろいろな御議論があったという話を聞いておるんですが、そこの議論のいわば要約でもしていただけましょうかしら。
#52
○政府委員(加戸守行君) 第六小委員会におきましては、各般の御議論をちょうだいしたわけでございますが、基本的には、プログラムにつきまして、種類あるいは用途等につきましての分析も十分さしていただいております。
 例えば、プログラムにつきましても、オブジェクトプログラムとソースプログラムに、あるいはプログラムの単位ごと、モジュールと呼んでおりますけれども、プログラムの単位ごとの御議論もちょうだいいたしております。
 また、そういったプログラムの性格上、使われる用途として、汎用プログラムあるいはアプリケーションプログラムといったような形での区分もいたしまして、各般の御議論をちょうだいしたわけでございますが、基本的には、先ほど申し上げまたように、人間の生活の各分野にかかわっていろんな形で各般に使われておりますプログラムについては、統一的にどういうようなルールで保護をするという考え方が大勢を占めたわけでございます。
 これは、もちろん著作物として保護すべきであるという御議論でございますが、審議会の中にはプログラムはコンピューターの利用技術であって、従来の著作物とは、効率、効用の向上を目的とする点で異なる性格を有するということから、産業政策的な観点に立って保護を図るべきであるというような御意見もありました。その意見も報告書の中には記載されております。確かに議論があったことは事実でございます。
#53
○伏見康治君 今、御説明がありましたように、プログラムの中にはいろいろな性格のものが雑多に入っているんですが、例えばモジュールといったようなものは、一つのユニットとしてそれの組み合わせでいろいろな新しいものができる。そのできるというようなことが容易につくられるようにするというのが、むしろ国としての保護であろうと思うんです。
 普通の著作権で、例えば文芸作品のような場合には、その文芸作品をもとにしてほかの文芸作品とくっつけて別なものをつくるといったような話は余り聞かないんですが、プログラムの場合には、むしろいろいろなプログラムをつけたり離したり、分割したり、要するに切ったりはいだりする、そういう操作が非常に常識的に行われるはずだと思うんですね。したがって、同じ著作権という形でもって両方をカバーするというのは、考え方の上で随分困るんじゃないかと思うんですが、その辺はどういうふうに理解するんですか。
#54
○政府委員(加戸守行君) 確かにモジュールを取り上げて考えます場合に、それも一つの学術的思想の表現としての塊を持つわけでございますので、それ自体がプログラムの著作物性を持ち得るというのが審議会でのお考え方でございました。政策の実態からすれば、先生おっしゃいますように、個々のモジュールを組み合わせて、また総合的なプログラムをつくっていく、そういう形では従来の伝統的な意味の著作物の利用態様とは違う。それはあくまでもプログラムがコンピューターを作動させる機能性という点から考えました場合に、コンピュータープログラムの特質として当然に内在する問題でございます。
 この点は、特に第六小委員会でも議論の中心となりましたのは、今のような考え方で政策の実態がそうであるとすると、著作者人格権特に同一性保持権との関係あるいは翻案との関係でいろいろ議論のあったところでございますし、そういう意味では、今回提案申し上げております法案の中におきましても、コンピューターの特性に見合った措置というのが、著作権法上従来の伝統的な著作物について必要とされていた規制よりも緩和するといいますか、もともとコンピュータープログラムというのは、そういう性格のものであるということを想定した形での法的な整備を提案しているような状況でもございます。
#55
○伏見康治君 そういうことをよく考えられた上でつくられたものだと了解いたします。
 次に、今度の法律をつくられるについては、いろいろな国際関係がもちろん非常に物を言っているわけで、日本だけの話だと随分楽であったろうと思うんですが、国際的なプログラム保護の動向はどういうふうに認識されておられるのか、それと今度の立法との関係を教えていただきたいと思います。
#56
○政府委員(加戸守行君) プログラムに関します法整備といたしましては、アメリカ合衆国におきまして一九七六年、一九八〇年の二回にわたる改正によりまして保護が明確化されたわけでございます。そのほか一九八三年にはハンガリー、一九八四年にはオーストラリア並びにインドにおきまして著作権法改正が行われ、それぞれ保護が明確化されております。そのほか、現在、イギリスと西ドイツにおきまして国会でこの著作権法改正案が上程され、審議中であると理解をいたしております。
 特に西ドイツの場合には、連邦司法省が、かつてコンピュータープログラムは著作物であり、著作権によって保護されるので、著作権法改正の必要なしという政府見解を示しておきながら、やはり具体的な明確化の提案がなされているという状況の変化等もございます。そのほかスウェーデン、
ノルウェー、フィンランド、デンマークと申します北欧諸国、あるいはオランダ、スペイン、アルゼンチン、カナダの諸国におきまして著作権法改正案の作業が進んでいるというぐあいに理解いたしております。
 それから内容的にはあくまでも、コンピュータープログラムを著作物の例示に挙げるとか、あるいはそれを明確化するというような程度でございまして、特にプログラムのために特別の権利を設定したり例外を設けたりというような措置は余りございません。アメリカにおきましては、コンピュータープログラムの複製物の所有者がそれをコピーができるとか保護ができると、そういうような当方が現在提案申し上げております四十七条の二でございますか、に規定に相当するような内容はございますけれども、一般的には簡単な体制であると理解いたしております。
#57
○伏見康治君 プログラムの法的保護については各国の動きを今説明していただきましたが、WIPOとかいう国際機関があって、そこが何かコンピューターソフトウエア保護に関するモデル規定といったようなものをつくったというふうに伺っておりますが、それはどういうものなんでしょうか。
#58
○政府委員(加戸守行君) WIPO、いわゆる世界知的所有権機関の中には二つの部門がございまして、一つが工業所有権を所掌いたしますパリ条約に基づくパリ同盟の部門と、著作権関係を所掌いたしますベルヌ条約をベースといたしますベルヌ同盟の部門でございまして、そのうちいわゆるパリ同盟部門、工業所有権サイドの方からつくられましたのがコンピューターソフトウエアの保護に関するモデル規定でございまして、この規定の内容といたしましては、コンピューターソフトウエアについての権利を認めまして、そのいわゆる複製権を中心といたします利用権についての権利内容を定め、かつ権利の存続期間は二十年の期間という形で規定をしたモデル規定を参考例として提案をされたということでございます。
#59
○伏見康治君 そのWIPOの方がまだ要するに見解を出しただけで、それを国際的に何か効力のあるものにするという段階には来ていないですかね。
 それと、日本はそのWIPOに参加して日本としての主張をやっているんですか。全く受け身に受け取っているんですか。どうなんですか。
#60
○政府委員(加戸守行君) このコンピューターソフトウエアに関しますモデル規定をベースといたしまして、新しい条約、つまり国際的な条約をつくろうではないかという考え方でパリ同盟部門の専門家会議が一昨年招集されまして、そこで議論があったわけでございますが、多くの国がその必要はない、著作権条約の枠の中でできるではないかという御議論がございまして、それを受けまして、本年の二月の末から三月にかけましてのいわゆる著作権サイドにおきますWIPO並びにユネスコの合同専門家会合で、現在の著作権条約あるいは国内著作権法によって対処できるという意見が大勢を占めたという形でございまして、今のパリ同盟サイドの動きは結局げたを著作権サイドに預けた、で、著作権サイドの考え方を受けて再度検討するというような現在の動きになっておりますので、国際的な状況からいたしますれば、著作権条約、著作権制度のフレームの中で対応していくというこの現在の国際的趨勢を受けて、パリ同盟サイドでの動きというのは多分これでストップする状態になるのではないかという理解をいたしております。
#61
○伏見康治君 日本の役割は。
#62
○政府委員(加戸守行君) 大変失礼しました。
 この会合におきます日本政府の対応でございますが、先生御承知のように、一昨年来、プログラム権法構想と著作権法一部改正案構想との議論の対立があったわけでございまして、これらの国際会議におきましては、日本において通産省サイドと文部省サイドでそれぞれ検討を進めているという二つの対応が政府部内であるという旨の事実の報告、並びに国内的には判例によりまして保護が認められた例があるという報告をしたということでございまして、意見表明、つまりどちらに寄るかという意見表明はしないで今日まで推移している状況でございます。
#63
○伏見康治君 日本はハードウエアの方では世界に冠たるコンピューター国家になっていると思うんですが、そういうものを動かす法律の方でも、受け身の形で国際的に物事がどうおさまるかを眺めているんではなくて、日本の考えを先に打ち立てて、そして世界をリードするというぐらいの気概を持っていただきたいと思いますが、それはそれぐらいのことで。
 今は主として特定の国の話ではなかったんですが、アメリカではもう、その話も先ほどちょっとございましたが、日本はいろんな意味でアメリカから強い影響を受けております。今度の法律をつくるに際しては、アメリカでどういうことが行われたということが非常に強く響いてきたんではないかと私は想像いたしますが、その辺のところの事情を教えていただきたい。
#64
○政府委員(加戸守行君) コンピュータープログラムのいわゆる生産量と申しますか、世界におけるシェアは圧倒的にアメリカ合衆国が占めているわけでございますし、またアメリカ国内におきましてもコンピュータープログラムをめぐる紛争も多発いたしておりますし、幾つかの裁判例も示されております。そういった状況の中で、アメリカ合衆国では一九七六年に著作権法改正をいたしまして著作物の中にプログラムが解釈上読めるような手直しをいたしております。その段階ではコンピュータープログラムという具体的な用語が法律の中に入ったわけではございませんで、一九八〇年になりましてプログラムの定義規定を新設いたしますと同時にプログラムに関します特例規定を設けまして、プログラムの複製物の正当な所有者は一定の条件のもとにプログラムの複製物あるいは翻案物を作成できるというような規定を設けることによりまして保護の明確化を図ったわけでございます。これらのアメリカの法制度等の動きというのは、我が国にとりましても一つの参考材料でありますと同時に、アメリカにおきます保護の実態あるいはそういった取り扱いの方向性というのが国際的にもかなり影響したことも事実であろうかと思いますが、あくまでも今回の改正につきましては、欧米先進諸国の動きのみならず国内的な状況も判断し、通産省、文部省両省庁間での協議の結果として提案を申し上げた次第でございます。
#65
○伏見康治君 実際は国は一種の応援団体のようなもので、実際はコンピューターの世界というのは民間でどんどん話が進んでいるんだと思うんですが、そういう意味で結局は関係のある民間のいろんな団体等の意見というものを聴取するのが非常に大事だと思うんですが、この民間からの意見の吸い上げといったようなことについてはどういうことをなすってこられましたか。
#66
○政府委員(加戸守行君) 昨年の一月に著作権審議会第六小委員会の報告を受けまして、文化庁といたしまして著作権法の一部改正案を準備いたしましてそれを文化庁試案として公表いたしました。これをベースに関係団体からの意見聴取をさせていただきました。ただ、その時点におきましては、いわゆる通産省のプログラム権法構想と当方の著作権法一部改正案との意見の食い違いがあったわけでございますので、関係業界からの御意見もどちらかと申し上げればプログラム権法構想を支援する御意見の方が多かったわけでございますが、いろんな文化庁試案につきましての具体的な御意見等も多々ちょうだいいたしておりますし、今回の改正案に当たりましては、法制度、著作権条約をベースといたしました義務、あるいは国内の著作権法の整合性というものを考えながら、取り入れられる御意見につきましては十分な配慮をし、また通産省とも協議をして今回の改正案には実態に即したものとなるべくなるような方向での努力をさせていただいたということでございます。
#67
○伏見康治君 そして皆様のいろんな御意見を聞
かれたというお話でしたが、その中で特に伺いたいのは、その紛争が起こった解決の手段というのは、法律のような解決の手段でよろしいかどうかという点についての御議論はどうだったかを教えていただきたい。
#68
○政府委員(加戸守行君) 関係団体の御意見の中には現在著作権法によりますその紛争解決あっせん制度では不十分で、それ以上に強い効力を持つ仲裁裁定等の制度を導入すべきである、導入してほしいという御意見があったことは事実でございます。ただ、この問題につきましては、いわゆる訴訟、紛争の解決は終局的には裁判所であると。それの前段階といたしましての事実上、行政庁が関与できる程度というのは、両当事者の意向にかかわらず、それを拘束するというような形での裁判に準ずる強い手続を設けることは今の日本国の法制度上は難しいという観点に立ちまして現在のあっせん制度によるという考え方で御意見はちょうだいいたしかねたということでございます。
#69
○伏見康治君 紛争というのがこういう法律をつくる一つの大きな推進力だと思うのでございますが、先ほど裁判ざたになったお話の事例をお伺いいたしました。しかし、裁判ざたにならないでいざこざが起こって、それを何となくどなたかが仲裁しておさまったといったような事例がたくさんあると思うんですが、そういうようなものの実態はどの程度把握しておられますか。
#70
○政府委員(加戸守行君) 当方におきましては、いわゆる訴訟事件として民事事件あるいは刑事事件として裁判所に係属したもの、あるいはもちろん途中段階で和解または取り下げ等の事例も含みますけれども、そのような実態はある程度は把握はさしていただいておりますが、訴訟に至らない段階での事前のトラブル等につきましては十分には実情は把握いたしておりません。
#71
○伏見康治君 そういう潜在的な、いわば紛争というものをよく把握していないと、例えば後で問題になる登録制度といったようなものを考えるときに、相手が少数であるか非常にたくさんのものを取り扱うかによって随分話が変わってくるはずだと思うんですが、それはそれとして、この紛争が起こったときの一番大きな問題点は結局二つのプログラムが提出されていて、片方が片方のコピーだと言われたときに、どこまで似ていれば同一のものと認めるかという、そういう判断が文芸作品のような場合には非常に難しいはずだとは思うけれども、案外人間の総合判断というものがきくと思うんですが、プログラムの場合にはその文芸作品の場合の総合的な判断に相当することは、恐らく非常に難しいだろうと思うんですね。何かそれについて確信がいわばおありになるか、その点をお伺いしたい。
#72
○政府委員(加戸守行君) プログラムに限らず、著作権の世界におきましては盗作であるか否かというのを立証するのは極めて難しい問題が多々ございます。しかし、従来の著作権判例等におきましても、やはり盗作であるかないかの判断をいたします場合には、相当程度権威のある鑑定人等によります鑑定、あるいは参考人の意見等を十分聴取した上で裁判が行われておりますし、またプログラムの場合には特にそういった分野の専門家の高度な専門家の鑑定ということが活用されるだろうと思います。また、一方におきまして著作権紛争解決あっせん制度によりましてプログラムのトラブルを解決する場合におきましても、当然にそのコンピュータープログラムにおきます専門家を登用いたしまして、十分な対応をしたいと考えておるところでございます。具体的には、あるプログラムの盗作であるかないかと言われました場合の判断基準といたしましては、その専門家の方々の、具体的にこれは盗作しなければできなかったであろうとか、独自に開発したとは思えないというような総合的な心証形成ということがあると思いますけれども、もう一つの材料としては、盗作されたもとのプログラムにいわゆる接近する、アクセスするチャンスがあったかどうかということも一つの大きな有力な判断材料になり得ることだろうと思います。
#73
○伏見康治君 後で言われたアクセスしたかどうかというのは、いわば状況証拠的な判断ですね、それがむしろないと本当に困るんじゃないかと私は実際上思うんですが、その専門家の鑑定をお願いするというのは、専門家の総合判断によるということなんでしょうが、そうなると、むしろ裁判官は要らなくなっちゃう。つまり普通の裁判の場合の専門家の鑑定というのは、その部分部分の客観性の、証拠なら証拠が客観性を持っているかどうかといったようなことの判定だと思うんですね。全体が盗作であるかどうかという判断を鑑定人に任せると裁判官はすることがなくなるんじゃないかと思うんですが。
#74
○政府委員(加戸守行君) もちろん鑑定人の意見はあくまでも鑑定人の意見でございまして、それを終局的に採用するかどうかは裁判官が判断する問題であろうかと思います。先ほど私が一つの例として引きました著作権の盗作事件として争われましたワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件におきましても、相当数の鑑定人が高度の音楽の専門的な見地から、リズム、手法、音階等を分析いたしまして、その類似性についてのいろいろな判断をいたしております。ただ、この事例はどちらかというと、いわゆる盗作とは断定できないという形で原告の訴えが退けられたものでございますけれども、その場合の大きな判断材料となりましたのがいわゆる原作にアクセスするチャンスがあったかないか、いわゆるチャンスがあったとしても、それを参考としたと言えるのかどうかというような判断がかなり有力な材料になっていたというぐあいに理解いたしております。
#75
○伏見康治君 しかし、それにしても、僕は普通の問題を処置しておられる、殺人とか詐欺事件をしておられる裁判官にこのプログラムの道程のようなことまでお願いするのは何か非常に無理な負担をおかけしているような感じがするんですが、何か事前に、つまりいわば専門家だけで話が済んでしまうような審判機関、例えば海難に対して何か審判機関があります、それほど独立してなくてもいいんですが、何か専門の審判機関に相当するものをおつくりになって、現在の裁判が非常に過重な負担にあえいでいるというのにそれにさらに余計な負担をかけないようにするというお考えはないんでしょうか。
#76
○政府委員(加戸守行君) いわゆる著作権の問題といいますのは、私権――私人間の権利の争いでございますので、その争いを終局的に判断するのは裁判所であり、その前段階としてはいわゆる事実上の法律相談的なものが一つ、それから紛争解決あっせん制度のように両当事者間で合意した場合に行政庁が関与をするというシステムになろうかと思います。その意味で、もともとこの問題は盗作問題になりますれば、お互いに話し合って解決しようといってもなかなかそうはいかないものが多いんじゃないかと思いますけれども、少なくとも事前のトラブルを避けるためには、そういった法律相談的な機関があり、いわゆる法を知らざるがために、あるいは法に無知のためにトラブルが発生することがないようにすることがまず基本であろうかと思います。その意味で、これは関係業界におきましてもそういった法律相談のような機関があれば、あるいはそういうのを自主的に形成して業界内部での秩序形成をするというのも一つの考え方であり得るだろうと思いますし、特別の機関を公的に設けるというのが今の時期にかつかなり強い拘束力を持ったものとして制定することが法制度上はちょっと難しいということを考えました場合には、事実上の紛争の事前解決、つまりプログラムに関します法的な制度の理解、認識というものを深めていただくということが基本的には重要ではないかと思います。
#77
○伏見康治君 先ほど言うべくして言い忘れたんですが、特許の方にも何か審判制度がございますね。いろんな意味で今度つくられるものは、プログラム権法というのは通産省との争いがあったことからもわかるように、工業所有権の方と非常に絡み合っているわけなんですが、工業所有権の方にある審判制度に似たものが行政上非常に無理だ
というふうには私には理解できないんですが。
#78
○政府委員(加戸守行君) 特許法の上にございます特許審判制度と申しますのは、特許の出願公告をしてそれを拒絶された場合とか、あるいはその出願公告が認められたけれども、それに対しては異議がある者が、言うなれば特許庁を相手にその審判の請求をするわけでございまして、行政庁対私人の間を裁く機関でございます。現在問題となっておりますのは私人間の権利の問題でございますので、今申し上げたような特許審判あるいは海難審判のような制度は著作権の私人間の紛争について設けることはいかがかという感じがいたします。
#79
○伏見康治君 コンピューターが発達してどんどんいきますと、今考えているようなプログラムといったようなものの役割だけで話がいわば済まなくなって、例えばコンピューターの使い方の中に入ってまいりますが、例えばデータベースであるといったようなものを考え始めますと、そのデータベースをつくったそれの保護といったようなことが問題になったりいたしますね。つまりコンピューターをめぐるいろいろなプログラム以外の、しかしそれに非常に似たあるいは非常に絡み合いの大きないろいろな保護すべきものがいろいろ出てくる可能性があると思うんですが、それとの関連ですね。つまりコンピューター世界がますます情報化社会が進展すればするほどいろんな問題が次から次へ出てくる可能性があるんですが、それに対する見通しはどういうふうになさっておりますか。
#80
○政府委員(加戸守行君) 先生おっしゃいますように確かに情報伝達集団としてのいろいろな科学技術の進歩がございますし、このコンピューターの世界だけとってみましてもさまざまな現象がこれからも出てくるだろうと想定されます。その意味におきまして、現在著作権審議会に第七小委員会を設けましてニューメディア並びにデータベースに関します審議をお願いしているわけでございまして、本年の秋には一応の報告をちょうだいしたいという考え方で今進めております。
 それから今後の課題といたしましては、コンピューター関連のものとしましてはコンピューターがつくり出す創作物というのが多数出てくるであろう、その場合のコンピューター創作物をどのような観点で著作権制度上対応するのかということも大きな課題でございます。いずれこれも時宜を失することなく検討に入らなければならないと考えております。
#81
○伏見康治君 その一こまかとも思うんですが、五月の末の新聞にはCATVの番組の著作権法のルールづくりという話がありましたが、これはどんな話なんですか。
#82
○政府委員(加戸守行君) これはニューメディアに関連いたしまして、今著作権審議会の第七小委員会で御議論をいただいておるわけでございますが、もちろんニューメディアの中にはCATV、特に双方向性のCATV等いろんな問題もございます。この法制度の問題のみならず、現実に今CATVに関します著作権処理というものについてのひとつの統一的なルールづくりというのを並行して進める必要があるという観点から、五月末に一種の調査研究のための協力者会議というのを設置いたしまして、そこで権利者、利用者並びに学識経験者の三者構成で懇談会形式で、そういったCATVに関します著作権処理の統一的なルールづくりをスタートさせたということでございまして、これは実務的な意味合いのものでございます。と同時に、先ほど申し上げた第七小委員会におきますニューメディア関係の著作権制度の法的整備、問題点の整備とあわせて法制度と実務面におきます相互、いわゆる制度の、CATVに関します著作権処理の円滑化を図りたいという観点から進めている作業でございます。
#83
○委員長(真鍋賢二君) 午前の質疑はこの程度として、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十六分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開会
#84
○委員長(真鍋賢二君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#85
○伏見康治君 午前中に引き続いて、今度は法案の内容の中に少し入った御質問を申し上げたいと思います。
 まず第二条、著作権の定義の中でプログラムという新しい項目を取り入れるためにプログラムの定義があるわけですが、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」、随分苦心された表現だと思いますが、この中で「電子計算機」というのはどの程度の範囲のものを言うんでございましょうか。随分ピンからキリまであると思うんですが。
#86
○政府委員(加戸守行君) 通常電子計算機と申しますのは、電子回路を用いて演算とか論理、判断などのデータ処理を高速で行う計算機のこととされておりまして、電子計算機システムの基本的な構成としては、入力装置、記憶装置、演算装置、制御装置、それから出力装置のこの装置が備わっているものでございますけれども、実際にプログラムを実行いたします場合には記憶装置、演算装置と制御装置の三装置が備わって連携された形で計算が行われるわけでございますので、この三つの装置を備えておれば一応電子計算機ということが言えるわけでございます。したがいまして、この著作権法で規定しております電子計算機といたしましては、通常の汎用電子計算機を初めといたしまして、卓上用のオフィスコンピューターとかあるいはパーソナルコンピューターなどもありますほかに、ワードプロセッサーなどのOA機器あるいは電子レンジなどの電気機器に組み込まれまして制御等に利用されておりますマイクロプロセッサーもこの電子計算機に含まれると考えております。
#87
○伏見康治君 次に、第十条ではやっぱりプログラムに関しての特例が書いてあると思うのでございますが、その中に言語、規約及び解法等は著作権法で保護されないと書いてあるわけですが、こういうものだけをプログラムからいわば切り離したというその理由を伺いたいと思います。
#88
○政府委員(加戸守行君) 著作権法で保護いたします著作物は、思想、感情を創作的に表現したもの、いわゆる表現されたものを保護するわけでございまして、その表現の前提となっておりますアイデアとかアルゴリズム、そういった原理につきましては保護をしないという考え方を明記したのがこの十条の三項でございまして、いわゆるプログラム言語と申しますのは、例えば文章を書くときに英語で書く場合、英語の文章は保護しますけれども英語そのものは保護しないといった同様の趣旨で、いわゆるプログラム言語、具体的に申しますと、コボル言語、フォートラン言語、あるいはベーシック言語、アセンブラ言語といった、そういった言語そのものを保護するものでないということが第一点でございます。
 第二点といたしまして、プログラムが他のプログラムによりまして直接あるいは間接に連結されてコンピューターで使用される場合に必要な特別の約束のことを規約と呼んでおりまして、いわゆるその約束ごとにつきましても保護をしない、それからプログラムの解法といたしまして、プログラムの中に具体化されております一定の処理の手順を忠実に実行するだけの機能を有するにすぎない、そういう手順あるいは原理といったものがここで言っております解法でございまして、今申し上げたプログラム言語、規約、解法は当然にこの保護の対象にはならない、そういう趣旨を明確にしたのが十条三項の規定でございます。
#89
○伏見康治君 現時点で今おっしゃったようないろいろなこと、概念、そういうものを別扱いするということは考えられなくもないんですけれども、例えば解法といったようなことは、先ほど午前中の御質問の中に出てまいりましたモジュールといったようなことを考えますと、直接には私た
ち役に立つ結果には到達しないけれども、プログラムの中のある段階の部分だけを一つの能率よくまとめるといったようなことがどんどん考えられていくというわけだと思うのですが、それは今ここでお話になっている解法といったようなものとプログラムとのちょうど中間みたいな存在になってくると思うのですね。その辺のところの区別が不明瞭になるおそれがあると思うのですが、いかがでしょうか。
#90
○政府委員(加戸守行君) モジュールにいたしましても、一つの一定の論理的な手順によって構成されました、言うなれば電子計算機に対します指令の組み合わせでございますので、それ自体も一つの固まりとして著作権法上の著作物として保護され得るものでございますので、言うなればそういった多数のモジュールによって構成されますプログラムの場合には一種の編集著作物的な感じになりますが、著作物が多数複合されて組み上がった、また一つの全体としての著作物という考え方になるわけでございます。
 ここで規定しております解法と申しますのは、そのプログラムなりあるいはそのモジュールの中にあらわされております論理的な手順を指すわけでございますので、その原理とかアルゴリズムといったものを保護する趣旨ではないということを明確にしたものでございまして、そのモジュール自体の著作物性を否定するわけではございません。
#91
○伏見康治君 次に、数日前もこの方面の専門家である猪瀬博君と話をしていたんですが、専門家の立場になりますと、何か法律に保護されたいものはむしろ言語であるとか解法であるとかいったようなところに重心があるような感じがするんですね、専門家の立場からいいますと。つまり例えば新しい言語体系をつくり出して、それが今までの言語よりもはるかに合理的であり、はるかに使いやすくてだれでもアプローチできるといったようなものが発明されたとすると、それは大いに保護されてしかるべきものではないかという感じがするんですが、そういう方面はこのプログラムの保護法の中には入らないにしても、独立にそういうものを保護するといったようなことは考えられませんか、どうでしょうか。
#92
○政府委員(加戸守行君) 現在WIPO――世界知的所有権機関におきまして、知的所有権というものにつきまして著作権であるとか工業所有権であるとか、そのほかいろいろな権利の保護を考えるわけでございますが、将来の課題といたしましては、一つは例えばノーハウの権利みたいなものも将来の課題としてはあり得ると思います。しかしながら、全世界共通でございますが、日本も含めまして今の知的所有権として保護しております範囲が、例えば工業所有権のエリアとそれから思想、感情を創作的に表現したという著作権の世界とに大分されますけれども、今先生おっしゃいましたような、確かに原理、解法というのは非常に貴重なノーハウであり、アイデアでございますけれども、例えて申し上げればゲートボールのルールであるとか、あるいは一つのお料理をつくる料理の処方せんであるとか、そういう考え方でございまして、今の段階でそれを保護するという国際的なコンセンサスもございませんし、また逆に保護することによって生活の利便に支障を来す、あるいは社会の進歩発展に障害をもたらすという危険性もございますし、この問題は非常に検討に値する問題ではございますが、そういった方向でノーハウあるいは原理、アイデアといったものを保護するという考え方は工業所有権におきます例えば技術的思想を保護する領域は別といたしまして、一般の社会ではまだそこまでの考え方は進んでいないのではないかと思います。
#93
○伏見康治君 うっかり例えば言語なら言語を何かいわゆるお上がオーソライズいたしますとほかの言語が使えなくなるといったようなおそれも出てくるので、そういうものを保護するということについてはいろいろな問題点があるということは私もよく重々承知しているわけなんですが、しかし、もともと特許といったような思想が芽生えてきたのは、その特許の成果を大いに利用させよう利用させながらしかもその特許のアイデアを抱いた人の利益は守ってあげようという二つの目的を追求した結果出てきたのが特許法というものであろうと思いますですね。ですから、うっかり保護規定をつくると普及が損なわれるという考え方はもちろんあり得るんですが、それを損なわないように権利を保護するという方向で物事を探求するということは、前例があるんですから私は大いにやるべき価値があると思っているんですが、なお今後とも御研究くださるようにお願いしておきたいと思います。
 さて、第十五条、法人著作というところで、法人等の発意に基づき、業務に従事する者の職務上の作成というような項目がずっとあるんですが、その四つの条件のうち法人等の名義での公表というのが、これを削るという条件緩和をプログラムに対してはしているんですが、その理由はどういうところにあるんでしょうか。
#94
○政府委員(加戸守行君) 先生おっしゃいますように、現行法の十五条におきましては四つの条件を課しているわけでございますが、そのうち「その法人等が自己の著作の名義の下に公表する」という四番目の条件につきましては、プログラムの場合にはそれを外しまして新しい第二項として今提案申し上げております。
 その理由としましては、本来プログラムの多くは法人等の組織の中で作成されておりますけれども、その中には、例えばゲームソフトのように市販商品として出ていくものよりもむしろ会社の内部利用のみに供される場合など本来公表を予定されていないプログラム、あるいはオペレーションシステムにしてもアプリケーションプログラムにしてもそうでございますけれども、そういう価値の高いものにつきましてはそういうケースがかなり多いわけでございまして、また一般市販商品として作成されますROMのようなケースにいたしましても、それはROMに固定されておりますプログラムを名義を付して公表するということはあり得ないわけでございますので、今申し上げたような形態からすると本来法人等の名義で公表することを予定するものは極めて数が限られている、大多数がそうでない、あるいは大部分がそうでないといたしますと、この要件を課することの問題が一つあるわけでございます。
 さらに、プログラムはもともとこの利用目的といいますのは機能面を重視しているわけでございまして、コンピューターを作動させるというねらいがあるわけで、しかもそれが本質でございますので、今一般的に法人等の組織内でたくさんの従業者によりまして作成されるプログラム、多数人が関与するわけでございますけれども、それが社会的に評価され、そのプログラムについての責任をだれが有するかということになりますと、通常はプログラムをつくっております法人等でございますので、人格的な個人の発露といいますよりもその人格性はむしろ法人に求めるべきではないか。そういった二つの理由によりまして、この十五条の二項を設けまして、法人等の名義の要件を外して法人等が著作者であるあとの三つの要件を課すにとどめたというのが提案の趣旨でございます。
#95
○伏見康治君 具体的な事件が新潟鉄工に関連して何かあったようでございますが、裁判所は、その開発したプログラム資料などは本来公表しないものであるが、仮に公表するなら法人名で公表するものだと判断して結局つくった人の権利を認めなかった。法人にその権利が帰属するものと裁判官がみなしたようでございまして、それが今の第十五条のその条件緩和というものと軌が合っているわけですが、その新潟鉄工の事件についてもうちょっと説明していただけますでしょうか。
#96
○政府委員(加戸守行君) 新潟鉄工の事件は、新潟鉄工が多額の費用を投じて研究開発しましたコンピューターシステムに関します資料、具体的に申し上げますと、システム設計書、仕様書、説明書、あるいは回路図、プログラムリストなどでございますけれども、それを研究に従事した技術者
が無断でコピーするために社外に持ち出した事件でございまして、業務上横領罪と詐欺未遂罪で起訴されまして全員有罪の判決が本年の二月に出されております。
 この場合におきます著作権法十五条との関連につきましては、プログラムそのものと申しますよりも、プログラム文書と申しますか関係書類、いわゆるシステム設計書、仕様書、説明書と申し上げるような、今回の改正案で言いますとプログラムの著作物ではなくてそれ以外の一般の著作物、文書の著作物に該当するようなものが大多数でございますけれども、それを含めまして、そういったものについてもし公表するとするならば法人等の名義、新潟鉄工の名前で公表するものだという判断が下されたわけでございまして、文書についてはそれが言えますけれども、プログラムそのものにつきましてはもともと公表を予定しないで新潟鉄工の社内利用の予定されるものでございましょうから、十五条をプログラムそのものにつきましてもそう読めるのかどうか、そこまでの判断ではなかろうというぐあいに理解しているわけでございまして、事柄としては、判断の主体はシステム設計書などの附属文書にあったのではないかと考えております。
#97
○伏見康治君 新潟鉄工の事件はそういう意味ではむしろ文書の方が盗まれたという点にあって内容の問題では余りないというお話なんですが、物事が本当の内容、抽象的な内容である場合にどうかなという感じを私は受けるんです。
 例え話で申しわけありませんが、ルビーレーザーという赤い光を出す装置がございますが、このレーザーを発明されたメーマンという方はベルテレホンの研究所で長らく五年間ぐらいそれを発明するためにじっと考えていた。その研究所のファシリティーを利用して、しかし何も実物は動かさないで頭の中だけで研究していたわけです。そしてこれなら必ずできるという見通しを立てた上でベル研究所をおやめになりまして、そして別の会社をおつくりになって大もうけをなすったということになっているんですが、そういうのは全くその方の頭の中だけにあるわけです。
 プログラムも、大きな組織がつくるという場合もございますけれども、場合によっては全く一人の人の頭の作品であるという場合もあり得るのですが、そういう場合にその頭脳の活動を何か会社が取り上げてしまう、当人から全部取り上げてしまうというのはいかがかと思うんですが、その辺についての御意見を伺いたい。
#98
○政府委員(加戸守行君) 著作権法上で保護をいたしておりますのは、思想、感情を創作的に表現したもの、つまり具体的に外部から覚知し得る状態で、一つの精神的、抽象的な存在ではございますがこれが著作物として認識し得るようなもの、プログラムも一つの例でございますけれども、そういうものを保護しようとするわけでございます。したがいまして、まだ人間の頭の中に一応存在はしていますけれども外部からそれが著作物として認識し得ないものについては保護をしていないわけでございますから、例えば今の新潟鉄工の事件にいたしましても、それが従業員の研究の成果としてつくり上げられたものを保護の客体といたしております。したがって、まだその研究者の頭の中に存在しているものを保護しているわけではございませんので、その道徳的な可否は別といたしまして、ある研究所に勤めていた方がその成果を頭の中に納めて、退社後それを自分の作品として、あるいは著作物として、プログラムとしておつくりになる、発表なさるということを著作権法は規制するものではございません。
#99
○伏見康治君 その辺やや微妙なところがあると思うんです。つまり、頭の中の段階で会社をやめて外へ出てしまって何か現実に役に立つプログラムをおつくりになるという場合には権利があって、会社の組織の中にそれを入れてしまうというと全然権利がなくなるというのは何か飛躍があるような感じがいたしますが、どうでしょうか。
#100
○政府委員(加戸守行君) 著作権法十五条で規定いたしておりますのは、法人等の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成する著作物でございまして、まさに仕事として会社の命を受け、その会社のために自分の職務としてつくったという作品でございました場合の著作者を法人等とする規定でございます。つまりそれは基本的にはやはり労働契約の問題になろうかと思いますが、その仕事に従事するということ、雇用契約を結びその職務に従事することによりまして自分の知的労働の成果としてつくり上げたものは会社のものになるよということを前提としてつくっていると理解されるわけでございまして、そのことが労働条件としてどうであるかという問題は別途の著作権法以外の観点から判断されるべき事柄ではなかろうか。著作権法といたしましては労働者保護の観点からというような思想を入れるわけではございませんで、著作物そのものがだれの著作物と言い得るのか、それは社会的実態から見てどうであるのか、その辺を合理的あるいは合目的的に判断をいたしまして規定をしているのが十五条の趣旨でございます。
#101
○伏見康治君 今の御説明では私のような学者商売をやってきた観点から申しますと承知しがたいところが残るわけです。大学の教授の場合にはしばしばいろんなパテントをお取りになりますけれども、大体個人でお取りになる方が圧倒的に多いわけでして、国立大学の場合であっても必ずしも大学を経ないでいろいろな権利を持っておいでになる先生方が私は相当あると思うんですが、そういう常識から考えますと、もう少し個人の知的労作といったようなものに対する権利を高く評価すべきものだと思うんですが、これは後で文部大臣からお伺いいたしたいと思います。最後の段階でよろしいと思います。
 次に同一性の保持権という問題、プログラムはほかの著作物と異なりまして、あるプログラムに次々に改良が加えられていくようなものです。先ほど来何度も申し上げているように、例えばモジュールのようなものをいろいろ組み合わせて全く新しい作用をするプログラムをつくり上げるといったようなことが絶えず行われる、そのことをむしろ前提としているいろいろなプログラムがあるわけであります。つまりそういうふうにむしろ改良されていく、あるいは組み合わされる、要するに使われるということを前提としたいわば著作物なんでしょうが、それは普通の著作物が何か人格権を持っていて、それをそういうふうに形を変えるということに対して非常な抵抗を持っていてつくられたということと非常に感じが違うわけですが、その辺はどういうふうに折り合わせるつもりなんでしょうか。
#102
○政府委員(加戸守行君) 確かにプログラムに関します著作者人格権、特に同一性保持権の問題に関しましては日本国内では議論のあったところでございます。ただ国際的にはこれは余り議論になっておりませんのは、もともとこの同一性保持権あるいは著作者人格権の国際的な法源といたしましては一八八六年のベルヌ条約がございまして、その条約がございまして、その条約の六条の二に著作者人格権の規定が設けられております。それは著作者の名誉、声望を害しないという形で規定をされているわけでございまして、同じく日本の法制におきましても基本的には著作者の意に反して変更、切除その他の改変を受けない、つまり著作者の名誉、声望が害されない権利として二十条の同一性保持権が規定されているわけでございます。その意味におきまして一般の著作物、特に小説でございますと、書いた著作者の個性がそのままにじみ出ているわけでございますから、極端なことを申し上げれば一字一句たりとも変更する場合に、それはやはり著作者の人格を傷つけるという場合が多いわけでございます。ところがプログラムはもともとそういった著作者の人格の発露としての精神性よりも、むしろ機能面が重視されるわけでございますので、コンピューターに作動させて一定の結果を得るためにその目的的に考えますれば、その機能をよりよく果たさせるために当然の改変等が加えられていく宿命にある、そういった必然的な宿命を負った著作物ではない
か。そういう意味からいたしますとプログラムは当然に改良を加えられていくということが著作物の宿命でもございますし、またそのことがプログラム創作者の名誉、声望を害するといった性格のものではない、そういった視点にかんがみまして、本来条約上、あるいは日本国内法におきまして想定いたしました同一性保持権あるいは著作者人格権というものを考えましたときに、プログラムについてこれを適用する範囲は極めて限られてくる。そういった点で今回の改正案もその趣旨を明確にした措置をとりたいと考えて提案をさしていただいている次第でございます。
#103
○伏見康治君 第四十七条の二関係で自己が使う場合に限り複製、翻案ができるとしているんですが、実情としては常に複製、翻案され利用されることを考えますと、翻案などの範囲で明確にしておく必要があると思いますがどうでしょうか。
#104
○政府委員(加戸守行君) この問題につきましては著作権審議会の第六小委員会でもかなりの議論がございました。先生がおっしゃいますように、翻案の考え方というのはある程度一般国民にもわかりやすい形で考え方が示される必要があろうと、そういった観点で具体的に報告書の中で書かれておりますのが、翻案というものの基本的な考え方は従来の小説等のような場合の基本的な筋とか仕組み、そういったものまでも保護する場合とは異なりまして、先ほど先生から御質問もございましたが、言語、規約、解法といった思想、アイデア、アルゴリズムを保護しないということを明確にしていることからもうかがわれますように、一般的に翻案権として動く範囲は狭くなるだろうということでございます。
 その具体的な例としましては、例えばある既存のプログラムに基づきまして、これを変更して別途のプログラムをつくる場合に、本来の既存のプログラムの実質的な内容とか、その表現というものを受け継いで新たに創作性を加えたという場合に、つまりそれは既存のプログラムをAとし、新しいプログラムをA′とした場合にA対A′の関係は翻案に該当するということでございます。
 一方、既存のプログラムを参考にしまして、それの機能を向上させるために新たなプログラムをつくるという場合でございましても、既存のプログラムのアルゴリズムに立ち返りまして、その機能、目的は同一でございますけれども、表現形式が異なったプログラム、例えばBというプログラムを作成いたします場合には、それは翻案には該当しない新たな著作物の創作である、そういう考え方を一応第六小委員会の報告の中では記載されているわけでございまして、実務的に申し上げますと、翻案に該当するかしないかの議論はある程度明らかになるであろうと思われます。と同時に、翻案の場合の認めるか認めないかという議論は、むしろ新たな創作行為を、Aというプログラムをベースとして次のプログラムをつくっていく場合の問題というよりも、つくられた人が、つまりA′なりBというプログラムについて、そのプログラムの付加行為なり翻案行為を行った人に権利が認められるかどうかという観点から重要な議論になってくるわけでございますが、Aプログラムの著作者の立場といたしますれば、自分のプログラムが翻案されているかいないかというのはかかわりなく、自分の複製権でまず押さえられる、あるいは複製権と翻案権が二重に動くかどうかということで、権利の作用形態としてはそれほど大きな問題ではない。むしろプログラムの付加行為を行った者が翻案した二次的な著作者という立場に立つか立たないかがここの議論としては大きな意味を持つんではないかと考えております。
#105
○伏見康治君 プログラムの著作物あるいは複製物の所有者だけが複製とか翻案をしてもよろしいという項目があったと思うんですが、そのプログラムをつまり借りてくるといったようなことで使用するという人たちはどういうふうに考えられるんでしょうか。
#106
○政府委員(加戸守行君) 実は四十七条の二の規定を提案申し上げておりますのは、プログラムの著作物の複製物の所有者が複製または翻案が行い得るという規定でございまして、先生御指摘のようにプログラムのレンタルを受けた者、つまりプログラムの今の所持者全部に及ぶわけではございません。
 昨年、文化庁私案として発表いたしました案の中では、いわゆるプログラムの適法な所持者、つまりレンタルを受けた者も同様な機能ができるような規定であったわけでございますが、その後これを変更いたしまして、提案申し上げている場合には所有者のみに限っております。
 と申しますのは、いわゆるプログラムの複製物が転々移っていく場合に、所有権を離れた場合の規制というのは原プログラム製作者にとりましてはもう手が及ばないわけでございますので、その部分につきましては複製権なり翻案権を認め、かつそれを制限するという立て方が必要でございますけれども、プログラムのレンタルあるいはリースの場合でございますれば、いわゆるプログラムメーカーとあるいはプログラム権者との間に相互の取引関係、契約関係があるわけでございますから、レンタルなりリースの条件としてかくかくしかじかの行為は認める、このような行為は認めないというような契約によって担保できるわけでございますので、一応両当事者間の問題は契約にゆだねる。契約で措置できない、つまり所有権が離れて転々譲渡、移転していく複製物についての複製権あるいは翻案権の問題について規定すれば足りるというのが四十七条の二の提案申し上げた趣旨でございます。
 ちなみに、アメリカの著作権法におきましても我が国の四十七条の二と同様に複製物の所有者についてのみこのような行為を認める規定を設けております。
#107
○伏見康治君 実は私の割り当ての時間が過ぎたと思いますが、次の高木先生が少し時間をお譲りくださるそうなので、大目に見ていただきたいと思います。
 次に登録制度についていろいろ伺いたいと思います。
 現行法による著作物の登録制度にはどのようなものがあるのでしょうか。その点をまず伺います。
#108
○政府委員(加戸守行君) 著作権法におきましては、現在七十五条で実名登録の制度がございまして、無名または変名で公表された著作物の著作者がその実名を登録する制度がございます。
 それから第七十六条で第一発行年月日の登録がございまして、著作権者がその著作物をいつ最初に発行したかを登録する制度がございます。
 それから同じく第七十六条で第一発行年月日とそれから第一公表年月日登録の制度がございまして、いつ最初に公表したかを登録する制度がございます。
 それから三番目に、著作権のその他の登録制度としまして、著作権の移転または処分の制限あるいは著作権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅といったような、言うなれば著作権そのものについての移転あるいは処分の制限、処分といったような事柄に関する第三者対抗要件としての登録がございます。
 大まかに言いますと、実名登録と、第一発行または第一公表年月日登録、それとその他の登録との三種類の対応になろうかと思います。
#109
○伏見康治君 それで今までの普通の著作権の場合の登録に関する制度のお話を承ったわけですが、今度の新しく入ってきたプログラムの登録制度というものをお考えになっているわけですが、それはどういうふうに違うのか、同じなのかという点をどうぞ。
#110
○政府委員(加戸守行君) もちろんプログラムにつきましても、今申し上げましたように実名登録の制度、第一発行年月日登録あるいは第一公表年月日登録、その他著作権の移転の登録等も受けられるわけでございますが、今回提案申し上げております七十六条の二の規定は「創作年月日の登録」でございまして、プログラムにつきましてだけ創作年月日の登録を受けることができるようにいたしております。
 と申します理由は、現在プログラムそのものが、
先ほども申し上げましたように公表または発行を前提としない、内部利用を目的としたプログラムが多数ございますので、そのようなプログラムにつきましては、先ほど申し上げた第一発行年月日登録あるいは第一公表年月日登録を利用することができません。したがって、登録の手段がないという形になりますので、権利保全を図るために一つの方法といたしましてこのような創作年月日登録制度を認めることによりましてプログラムの登録の道を開く。その結果として、例えばプログラムの流通の促進であるとかあるいは二重投資の防止であるといったような付随的な効果も実質的に期待できるという両方の趣旨から提案をさしていただいているわけでございます。
#111
○伏見康治君 創作というのは内容的には大変いいお話だと思うんですが、それの証拠みたいなものは、客観的証拠みたいなものは当人しか知らないといったような感じがする項目であって、特許権のような場合には登録した時点といったようなものがいつも問題になっていて、本当に発明したというのはアメリカでは問題になっているけれども、日本では問題にしておりませんね。その辺の思想の違いはどういうところにあるんでしょうか。
#112
○政府委員(加戸守行君) 特許権におきます登録の場合にはまさに権利の発生要件でございまして、また実質的な審査もございます。それからアメリカにおきます登録制度というのは一種の著作権侵害訴訟を提起する要件として登録が要求されているわけでございまして、そういう意味の権利保全性の極めて高いものの性格でございます。
 ところが我が国におきます登録制度といいますのは、ベルヌ条約という無方式主義を前提といたします国際著作権条約をベースにいたしておりますので、権利の発生、内容等に変動を与えるようなものは登録制度としてはとれないわけでございまして、したがってこの創作年月日の登録制度もいわゆる無審査で、申請で書式さえ整っておれば登録を受け付ける制度のものでございます。
 その場合に、じゃ実態的にいつ創作されたということは本人しか知らないとおっしゃるのはまことにそのとおりでございまして、その意味で申請者の言い分を信ずるしかないわけでございますが、その弊害を防止する策といたしまして、いつまでも、これは私が十年前につくったんだというような登録制度を認めるわけにいきませんので、一定の猶予期間として六カ月内に、創作後六カ月を経過した場合は登録を認めないということをただし書きに規定いたしまして、期間は真実に創作されてから六カ月以内。しかし先ほど申し上げましたように真実であるかどうかというのは本人しかわかりませんから、いやこれは五カ月前につくったんだと言われればそれまででございますけれども、一応のただし書きにおきます創作後六カ月を登録の期間とする規定を設けているわけでございます。
#113
○伏見康治君 余り時間がありませんので少し飛ばしていきたいと思いますが、登録制度の内容についてちょっと伺いたいんですが、何かが登録されたということは広く公表される、例えば官報なんかに載るというようなことがあるんでしょうか。
#114
○政府委員(加戸守行君) 現行の著作権法におきましては実名登録の制度だけは官報に公示することが義務づけられております。と申しますのは、無名、変名で発行された著作物の保護期間は公表後五十年でございますけれども、実名登録をいたしますれば著作者の死後五十年に期間が延びますものですから、一般国民が著作権侵害を起こすことのないようにその旨は対外的に明らかにしておく必要があるからでございます。
 しかし、そのほかの第一発行年月日あるいは第一公表年月日の登録あるいは著作権の移転登録等につきましては、これは当事者間で争いになった場合文化庁に問い合わせれば足りる問題でございまして、一般国民に周知させる必要はないという点で公示を義務づけられておりません。
 今回の創作年月日登録の問題でございますけれども、創作年月日登録の制度を導入しました趣旨が、先ほど申し上げましたように付随的には流通の促進であるとか二重投資の防止ということを考えておりますので、プログラムの内容の概要等を記載した公報の発行というようなものを想定いたしております。
#115
○伏見康治君 この登録というのは私はなかなか実際上の意味で大事だと思うんですが、詳しいことは「別に法律で定める」ということになっているんですが、その法案はもう準備されているんですか、いつごろ提出されるものなんでしょうか。
#116
○政府委員(加戸守行君) 別に法律で定める内容といたしましては、登録の手続であるとかプログラムの複製物を納付させるかどうか、あるいは登録に係りますプログラムの名称、概要等を掲載した公報の発行というような事柄を規定したいという大まかなところまでは考えておるわけでございますけれども、例えば公報に掲載すべき事項につきましてもその流通の円滑化ということがねらいではございますが、反面、トレードシークレットの確保をどうするかという調整をまた考えなければなりませんし、そういった点の慎重な検討も必要とする。さらに登録の申請件数がどの程度に上るであろうか、実態的にはどのような登録が合理的であるのか、あるいはその申請件数がもし膨大になるといたしますれば、文化庁としては登録事務を円滑に遂行するに由ない結果となりますので、登録事務を民間に委託することも考慮する必要がございましょうし、そういった点を含めまして関係の団体あるいは関係省庁とも十分協議をして内容を詰めたいということでございまして、基本的な大まかな骨格は腹案としてはございますけれども、具体案をまだ作成する段階に至っておりませんので、次の通常国会までに内容を調整し、固めまして提案をさしていただきたいと考えておる次第でございます。
#117
○伏見康治君 そういうふうに考えますと、今審議しております著作権法の改正案というのをもう半年か一年お延ばしになってそういうこともちゃんと考えた上でお出しになってもいいんではないかという感じがするんですが、これだけを後回しになさっていわば半分だけ先に出すというのはどういうことなんですか。
#118
○政府委員(加戸守行君) 今回提案申し上げております著作権法の一部改正におきましては、プログラムの保護を明確にし、かつプログラムの特性に見合った法的整備を図ることといたしまして、プログラムの著作権に関しますあるいは著作者人格権を含めました権利関係を規制した、それは法的な整備を行おうとしているものでございまして、別に法律で定めようとしておりますのは登録関係でございまして、権利の内容あるいは動き方とはかかわりのない事柄で、ある意味では著作権の周辺的な事柄でもございますし、また事務形式的な手続の問題もあるということで、このことがおくれているがゆえに内容の本質の著作権の法整備を同時にあわせておくらせるということは本末転倒ではないかと考えております。もちろん今回の提案で別に定める法律が同時に提案できれば理想的でございますけれども、今申し上げたような諸般の事情、これから調整を要する事柄もございますし、また一番登録しやすく、かつそれが権利の保全にも資し、かつ経済流通あるいはユーザーの保護にもつながるということをいろいろ考えていきたいということでございますので、権利の本質とはかかわりございませんが、その著作権法に付随した別の法律という形で、ウエートから見ますと今回の法的整備に比べればはるかにウエートはそれほど高くないと理解をいたしております。
#119
○伏見康治君 それでは権利をとにかく導入するということだけに今度の意味があるんだ、それをいわば円滑にするための次の手段である登録制度はゆっくりお考えになるというお話でございましたが、登録制度をお考えになる際に、近ごろ現在の政府の基本方針である民間活力をできるだけ利用するといったようなフィロソフィーがおありのようです。したがって登録制度もお役所におつくりにならないで、むしろ民間の何かいわば同業組
合的なものをおつくりになるんじゃないかと想像するんですが、そういうふうになさるのが私もいいと考えているんですが、その辺はどういうふうにお考えになっているんでしょうか。
#120
○政府委員(加戸守行君) 現在文化庁の著作権課十数名で極めて大きな課題かつ多岐多様な問題を抱えながら対応しているわけでございまして、登録事務も現在乏しいスタッフで行っておりますが、プログラムの場合には相当数のものが予想されるわけでございまして、これは十分どの程度出てくるかを見きわめなければなりませんが、そういった意味でもし文化庁が十分な監督ができる対応を備えた一種の公益法人が存在するとすれば、これは業界にお願いするわけにいきませんので、一応社会的な人格を持ち、責任を持った法人で処理できるというようなことがございますれば、そういった法人に登録事務を委託することも一つの方法であろうかと思っております。ただし、その場合は当該登録事務が極めて厳正、公平に行われ、かつ秘密を守る義務等の保持等の諸般の観点の要素が導入される必要があろうと思いますけれども、そういった意味合いも含めまして今後の検討課題とさして早急に詰めていきたいと考えているわけでございます。
#121
○伏見康治君 百十三条で、プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された物と知っていた場合に限り、著作権侵害となるというその説明をしていただけますか。
#122
○政府委員(加戸守行君) 今回の法律案におきましてはプログラムの著作物の使用権に関しましては規定を設けておりません。しかしながら、よくビデオゲームセンター等で行われておりますようなビデオゲームに海賊版プログラムが使用されているという事例があるわけでございまして、その場合にもちろん海賊版プログラムを頒布した者につきましては著作権侵害で押さえられるわけでございますが、アングラ業者の場合には押さえられない、しかも海賊版が出回って現に公衆の面前で機能しているというような実態だけは何とか避けたいというのが百十三条の趣旨でございまして、そういった海賊版プログラムであることを知りながらそれを使用しているということについての一定の規制をかけたいというのが百十三条三項の趣旨でございまして、著作権侵害行為によって作成された複製物を業務上コンピューターで使用する行為は、その海賊版プログラムを取得した際に情を知っていた場合、つまり事情を知っていた場合に限り著作権侵害とみなすというのが百十三条二項の規定でございます。
#123
○伏見康治君 ここで午前中の質問の少し私が不満であったことを通産省の方にお伺いしたいんですが、要するに東大の大型計算機の場合、IBMと日立と東大とこの三者の間の関係は結局どういうふうになっているんですか。
#124
○説明員(越智謙二君) 午前中に御答弁申し上げましたように、日立とIBMの間では大分和解がございまして、一部IBMのプログラムに類似する部分につきまして切りかえを行っていくということになっているわけでございます。
 それから、これから東大とIBMとの関係におきましては、著作権法の関係におきましては別に特段の権利義務関係は一切ないわけでございます。ただ一般論としまして日立がユーザーにハードを販売いたす場合にそれのいわゆるOSといいますか、それを動かすプログラムを一緒につけまして使用契約を結んでおるわけでございます。日立とIBMとの和解に基づきまして日立がほかのユーザーと使用契約を結んでいるプログラムを順次自分のものに取りかえていったというのが経緯でございまして、午前中に御答弁申し上げましたように、現時点において東大とIBMというものは関係がないというふうに理解をしております。
#125
○伏見康治君 それでもう一遍伺いますが、新しい法律ができた時点ではこの件がもし裁判にかかったといたしますとどういうことになるんですか。
#126
○説明員(越智謙二君) 個別のケースにつきまして、ちょっと司法の問題をあらかじめ申し上げるのは問題でございますので、一般論として申し上げますと、仮にそのユーザーがそういう違法複製プログラムを使用していたとしましても、使用を始めた、使用する権限を取得したときにこれが違法な複製プログラムであるというその事情を知らなかったという事例だろうと思いますので、そのような場合には別に著作権法のみなし侵害の規定の適用で違法であると言われるおそれはないかと考えます。
#127
○伏見康治君 元東大の卒業生としていいことを伺ったと思いますが、ただ東大の計算機を動かしている連中が全然情を知らなかったと言い切れるかどうか、ちょっと心もとないところがございますが、つまりそんなにめくらで、ただ日立の言うとおりに物を買っていたというのでは、東大の方の技術的精神が疑われるおそれがあると思うんですね。
 ところで、大分時間を超過いたしましたので、最後にもう一遍大臣に。
 この著作権法を拡張なさいましてプログラムの権利を擁護なすってくださるということは大変結構なことだと思うんですが、その際、著作権法の方の元来の持っていた、つまり高い文化水準を維持するという高邁なる精神の方もお忘れにならないように、テレビゲームの権利を保護するというだけのことに終わらないようにぜひ考えていただきたいと思うんですが、その辺を含めて大臣のフィロソフィーを聞かせていただきたいと思います。
#128
○国務大臣(松永光君) 先生の先ほどからの御意見の中にありましたように、本来著作権法を改正してプログラムの著作物をこの法律によって保護するということに法律上明確にするその趣旨は、高い技術水準の、そしてまた学術的な意味においてレベルの高いプログラムが本来の対象であろうかと思いますけれども、しかしコンピュータープログラムに変わりがないならば、レベルの低いテレビゲームというんでしょうか、そういったものもその保護の対象に入ってくるという、そういう法的構成になろうかと思います。しかし、本来のこうした保護の法制を整えるというのは、知的活動をなさる方々の権利、利益を擁護することによって知的活動をより一層促進していくという、そういう目的から法整備がなされるわけでありますので、今後ともこの法律の整備に基づきまして、知的活動、学術的研究の成果としてのいろいろな創作活動というものがより一層推進をされて、そして我が国の学術文化の発展に貢献するというふうにしていかなきゃならぬというふうに思うわけでございます。
#129
○伏見康治君 終わります。
#130
○高木健太郎君 私の予定しておりました質問のかなりの部分を既に伏見先生から聞いていただきましたけれども、少し重複するところもあるかと存じますが、お許しをいただきたいと思います。
 まず、著作権で保護する根拠はどこにあるんだろうかということですが、コンピュータープログラムというのは結局は計算方法またはコンピューターの使用方法ということでありまして、現実的にはソフトウエアというのは経済財として取引の対象となっておりまして、その経済的の重要性は今後ますます増加する傾向にあると思います。このようなソフトウエアの性質上、著作権法がソフトウエアの保護形態として最良なものであるかどうかということが私はまだしっくり頭にこないわけでございまして、この点は伏見先生もそれと同様の趣旨のことを言われたと思います。
 そこで、大臣に最初にお伺いしたいと思いますが、今回の著作権法の改正によりまして、プログラムの法的の保護につきまして、基本的な問題はこれで全部片づいたというようにお考えになっていらっしゃるかどうか。その点をまず最初にお伺いしたいと思います。
#131
○国務大臣(松永光君) コンピュータープログラムを著作権法の保護する著作物として明確に規定をするということにつきまして、このプログラムの利用価値といいますか、使用目的というものが新たな経済財を生み出す、そういう利用方法に貢
献するものでありますから、そういう意味では伝統的な著作物、音楽とか小説とか、そういったものと利用形態あるいは利用価値がやや異なる、そういう意味でコンピュータープログラムを著作権法の保護する著作物として規定するということについては少し違和感があるかもしれませんけれども、しかしこのプログラムも音楽とかあるいはその他の伝統的な著作物と同じように人間の知的活動の所産であり、学術的思想の創作的な表現であるという点においては全く変わらないわけでありまして、そういう点で著作権法の保護する著作物に規定するということが適正であるということの結論に達しまして今回の法改正をお願いしたわけであります。
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
諸外国の例も大体そうなっておるようでありますし、先ほどから次長が答弁いたしましたように、我が国の裁判所でもそのような判断をいたしておるということもありますし、あるいは先ほどWIPOといいましたかな、そういう国際的な機関でも著作権法の保護する著作物に明記することが妥当であるという意見も出ておるということもありまして今回の改正をお願いすることにしたわけでありますが、今回の改正によりましてプログラムの保護が法律上明確になりますこと、それからプログラムの特性に応じた規定も著作権法の中に書き加えられたということでございますので、このプログラムの法的保護についての基本的な問題は解決をしたというふうに考えるわけであります。しかし、このプログラムの特性からいろんな問題が将来起こり得ると思います。したがいまして、この権利保護のあり方については今後とも国内的あるいは国際的な動向を踏まえながら中長期的な観点から検討を行ってまいりたいというふうに考えるわけでございます。
#132
○高木健太郎君 重ねてお伺いいたしますけれども、今後は次長からひとつお答えをいただきたいと思います。
 御承知のように著作権法とは、先ほどから何回も次長からもお話ございましたように、人間の思想、感情、良心などの表現を保護する、そういうものである。したがって、これは著作者の人格権と密接な関連性を有しているということは、これはもう我々よく存じておるわけでございます。換言すると、著作権法というのは、工業所有権法と比較しまして、産業政策的な要素が非常に薄いと、産業政策上の効果は非常に弱いというふうに考えるわけでございます。このような観点から言いましても、ソフトウエアのような実用品であり、経済財として機能しているものは著作権法で保護するということに問題が多いんじゃないかというように考えるわけですが、次長どのようにお考えでございますか。
#133
○政府委員(加戸守行君) 著作物の保護は、著作者の知的活動、精神活動の所産を保護するわけでございまして、基本的には文化発展を目的とするものでございますが、と同時に、著作物といいますのは当然著作物利用産業において利用されるわけでございますので、産業とも大きなかかわりを有するものでございます。例えて申し上げれば、小説の場合でございますれば出版産業、音楽の場合であればレコード産業、あるいは放送産業、映画産業と、いろんな形で著作物が産業と結びつき、また経済の発展にも資しているわけでございますので、そういった面は当然「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、」という著作権法第一条の目的を踏まえながら法体系として組み上げるわけでございますので、ねらいはもちろん文化の発展でございますが、と同時にそれぞれの著作物が経済的な側面を有することはありとあらゆる分野について言えるわけでございまして、これはプログラムのみの問題ではなかろうと思うわけでございます。また、プログラムが、先ほど申し上げましたように、産業財、経済財的な意味のみならず、もう既に娯楽の分野あるいは家庭の分野にまで及んでおるわけでございまして、それを一律にプログラムを経済財として位置づけるという考え方はとらないわけでございます。したがいまして、著作権法の中での保護の仕方が若干、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、プログラムそのものが従来の伝統的な著作物とはちょっと違うなという違和感、心理的な違和感というのがあることは事実でございますけれども、経済的な側面に着目する限りにおきまして著作物はすべてといいますか、大多数のものは、大きく利用されるものは著作物産業、利用産業、先ほど申し上げた経済の伸展にも大きなかかわりを有するものと考えておりますし、今言った側面も当然念頭に置きながら法体系を整備すべきものであり、今回の提案もそういった点を十分考えた上のことであるというぐあいに御理解いただければ幸いでございます。
#134
○高木健太郎君 私は、どちらかというと工業生産的な政策的な面の方が、今までの著作権、著作者といいますか著作物に比べてこちらの方にウエートが多いというふうに考えたものですからそういうふうにお伺いしたわけでございますが、その点も今後何か進めていかれる上でぜひその点を考慮して進めていただきたいと、こう思うわけです。
 それで、同じような意味で著作権法で保護することに不都合な点を二、三挙げてみますので、その点についてお答えをいただきたいと思いますが、最初は人格権でございまして、この点は伏見先生ももう既にお聞きになったことでございますけれども、一般に工業製品というのは強い人格権をそれに認めますと、その流通やあるいは修理、そういうものに阻害要因となるわけでございます。特にソフトウエアは絶えずバージョンアップを繰り返さなきゃならぬ、そういうものでございまして、普通の著作物と違いまして同一性保持権というものに例外が多いのではないかと、こういうことを考えるのですが、これは伏見先生も御質問になりましたが、もう一度ひとつお聞かせいただきたいと思います。
#135
○政府委員(加戸守行君) コンピュータープログラムの場合、もちろんその機能性が重視されるわけでございますので、プログラムの本来の目的を達成するためにはプログラムの改良が加えられていく、これは必然的な宿命を負った著作物であろうかと思います。ただ、これはプログラムのみの特質ではございませんで、他の著作物の世界におきましても、例えば建築物を美術の範囲に属する著作物として保護いたしておりますけれども、例えば建築物につきましてそれを生活の利便のために改造をするという場合につきましては著作者人格権についての制限を加えているわけでございまして、これはもちろん建物である以上、そこに居住する人が自分の居住環境に適するように変えた結果が外観上当初予定した建築物と若干異なる形になってくるということは避けられないものでございまして、これはあえて申し上げれば建築物の宿命であろうかと思います。
 そういった意味合いで、著作物の中にも本来著作者の人格の発露として、小説のように一宇一句たりとも変えてはならないというものもございましょうし、建築物のように時代の変遷あるいは生活形態が変化いたしますに伴って変更される結果が建築の著作物の改変につながる場合もございましょうし、そういった側面が極めて強いのがプログラムの著作物であろうかと思います。
#136
○高木健太郎君 そういうことになりますと、今までの著作物というものの概念が、余りきちっとしたものではなくて、やや、だんだん変わっていきつつあるものであるというふうにとらえてもよろしゅうございましょうか。
#137
○政府委員(加戸守行君) 従来の伝統的な著作物と申しますのが、どちらかと申しますと、小説にいたしましても音楽、絵画にいたしましても、人間の知情意に訴えるあるいは鑑賞的な要素の強い、つまりその著作物そのものの成果を個人個人が受けとめて、心の中の感受性を高めるとか心理的に影響を与えるというような性格のものが強いのに比べますと、プログラムの場合にはまさに機械を、コンピューターを作動さす、そういった機能性が重視されるものでございまして、人間の心に訴えかけるものではないという点ではかなり従
来の著作物の分野とは違った意味合いのものが入ってきているということは事実でございます。
 ただ、著作権法が目的といたしておりますのは、そういった目的、用途を問うているわけではございませんで、本来、人間の知的活動、頭脳労働の結果として生み出された表現であるかどうかということだけを問うているわけでございますので、その限りでは従来の著作物の概念を変更するわけではない。ただ、多く保護されてきた従来の著作物とは少し意味合いが違うなという点は、確かにそういう感じはいたしますけれども、原理的に申し上げれば、例えば、じゃ、数学の問題集というようなものと、あるいは職業別電話帳と、あるいはコンピュータープログラムと暗号指令文というようなものを並べて比較した場合に、それぞれのいろんな共通性もあれば違ったところもあるでございましょうし、一般的なふわあっとした感覚的にはそうでございますが、著作権理論上は何ら従来の伝統的著作権理論を変更するものではないと考えております。
#138
○高木健太郎君 同じようなことでございますが、例えば翻案があるわけでございますが、プログラムを翻案すると。ソフトウエアの開発には既存のプログラムに対する依存度が非常に大きいのではないかと思います。どこまでが翻案の範囲に含まれるかが明確でない限り、今後開発していこうとする人が常に不安定な立場に置かれることになります。また、その違反の範囲をどのようにして今後お決めになるのかということについてお伺いしたいと思います。
#139
○政府委員(加戸守行君) 翻案につきましては、先ほども答弁申し上げましたように、一応の考え方は第六小委員会の中でも整理されているわけではございます。しかしながら、具体的な事例に当たりまして、プログラムが改良を加えられていく結果、当初は同一性人格権の問題としてどの程度まで修正できるのか、それが大きくなってまいりますと、まさに翻案権の問題になってくるわけでございます。したがって、ここのところを一律にどうということを具体的な事例を用いて説明することは極めて難しゅうございますけれども、要は人のふんどしで相撲をとっているかどうかという、俗な言葉でございますけれども、既存のプログラムの表現形式あるいは実質内容を受け継ぎながら新たにそこに創作性が付加されていると言えるのかどうか。つまり、著作権の世界では原著作物と二次的著作物という言葉を使いますが、端的な例が小説とシナリオとかそういうような関係が翻案の典型的な事例でございますけれども、そういうようにもとの表現形式、実質的内容を踏まえつつも、そこに新たなやっぱりプログラムの創作活動が付加されているという場合には翻案と言えるわけでございまして、お答えとしてはなかなかおわかりにくいお答えになったかと思いますけれども、一般的に翻案そのもののことは著作権一般の世界でもかなり難しい議論でございまして、プログラムについては特に難しい議論を呼ぶ可能性があることは重々承知はいたしております。
#140
○高木健太郎君 それにつながった問題ですけれども、著作権というものには人格的な要素が非常に強く含まれております。したがって、一般的な裁定実施制度を設けることには非常に大きな問題がございます。しかるに、ソフトウエアは一方においては経済財であり、資源の有効活用という意味から特許法に見られるような裁定実施制度が必要であると思うのですけれども、そういう裁定制度、裁定制度といいますか、裁定実施制度というものについては今後どのようにお考えでございますか。
#141
○政府委員(加戸守行君) 特許法の中で裁定制度が設けられておりますのは、御承知のように、特許法は自然法則を利用した技術的思想の創作というものを保護いたすわけでございますので、一つの考え方、アイデアによりまして方法の発明が行われますと、他の人が全く独自の立場で発想してつくり出した、考え出したものが同一の内容、ほぼ類似した内容のものでありましても抵触して実施ができない、そういう関係になるわけでございまして、私ども、これを絶対的な独占権と呼んでおりますけれども、だれかが一つの原理、方法を生み出した場合にはほかの人はそれをまねができないというところの問題があるわけでございます。したがいまして、一種の絶対的な独占権を発明者に与えるわけでございますので、その発明者の恣意によりましてその特許は実施させないとかいうような、公益を害するような行為が出ることが予想されますので、そのための制度として特許庁長官の裁定を受けて利用できるような裁定制度が設けられているわけでございます。
 一方、著作権の世界では、いわゆる表現形式を、思想、感情の創作された表現形式を保護いたしますものですから、あるプログラムの著作物が存在したといたしましても、他の人が独自の発想でつくり出した結果が類似または同一であってもそれは新たな著作物として別個独立の保護を受ける、前の著作権には抵触しないという関係になるわけでございまして、これを私ども、相対的な独占権と呼んでおりますけれども、したがって、ある一定のシステムが開発されたといたしまして、その機能と同様な目的を達するプログラムは別途幾らでもつくれるわけでございますので、その原理、システムを独占させるわけじゃございませんから、特段、著作権の世界では裁定制度を導入する必要性というのは薄いと考えられるわけでございます。
#142
○高木健太郎君 一つ、今後ファームウエアが大いに発達することが予想されるわけでございまして自動車のエンジンとか電子レンジとか、先ほどお話のあったようなそういうファームウエアがございますが、その中にはソフトウエアが組み込まれているわけでございます。その組み込まれたファームウエアは当然特許の対象であると思うわけです。それが、その安全とか効率を上げるとかいうためにソフトウエアを変えました場合に、保護形態が特許法から著作権法に移るということがあり得るのではないか、これはちょっと不自然なことではないか、変えるたびに著作権法にひっかかるというようなことになるのではないか、ファームウエアそのものとしてのいわゆる著作権というふうなものはどうなるでしょうか。要するに、ソフトウエアだけでなしにファームウエア全体としての著作権というものはお考えになるのかどうか、そこで特許権とどのような関係が生ずるのかということについてお伺いしたいんです。
#143
○政府委員(加戸守行君) プログラムのファームウエア化と申しますのは、今大規模に各方面において行われておるわけでございまして、特にリード・オンリー・モメリーのような、ROMと申されるものの普及によりまして、
   〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕
テレビとか電子レンジとか電気がまとか、あるいは冷蔵庫であるとか、いろんな形での家庭用品、あるいは自動車というような形で、そのプログラムがファームウエア化された形で利用されてきているわけでございます。しかし、今のファームウエア化されたプログラムにつきましては、そのハードとソフトを一体にした形での特許ということが認められた例もございますし、現実にそのプログラムがハードウエアと一体化された形での特許の例もあるわけでございまして、その場合は、あくまでもその特許法が保護いたしますのは、自然法則を利用した技術的思想というものを保護するわけでございますので、原理あるいはアルゴリズムというものを保護いたします関係上、例えば自動的に自動炊飯器が一定の時間になればスイッチが入り、種火がつき、何分かして切れるというような原理を考え出したといたしまして、その特許があったといたしましても、保護されているのは技術的思想でございますから、同様なものを製品として作製すれば結果的に内部に複製されているプログラムも同時に複製するわけですので、特許権侵害であると同時に著作権侵害という事例は起こり得るわけでございます。ところが、プログラムは別途目的を変えればつくれるわけでございますので、その原理を利用した別個のプログラムを組みかえてつくる、ハードは同じでございます
が、プログラムのみを取りかえるといった場合には著作権法上の問題は全く生じないわけでございまして――これは別個のプログラムでございますから。ところが、特許法から申しますと、そのプログラムの表現形式が異なっておりましても、原理そのものが同じ原理を使うのであれば特許権侵害にはなる、そういった関係になるわけでございまして、事柄としては、表現形式を保護する著作権と、思想、技術的思想そのものを保護する特許権との関係は、当然に交通整理は理論的にも実態的にも整理可能な問題ではございます。しかし、コンピューターのファームウエア化されたプログラムとして特許をとるケースはそれほどは多くはないのではないかなと実態的には考えております。
#144
○高木健太郎君 時間もなくなりましたので、いわゆる登録制度のことをお聞きしたいと思ったのですが、もう一つお聞きしたいと思います。
 今度は技術者の養成のことについてお聞きしたいと思っております。
 高度情報化社会が急ピッチで進んでおりますが、コンピューターは、通信回線と結合いたしまして、複雑多様化したシステムが円滑に作動するようにコンピューターソフトウエアというのは働いているものじゃないかと思うんです。この需要はウナギ登りに上っておりまして、いろんなところからそういう報告が出されておることは御存じのとおりだと存じます。例えば、ここ数年間、ソフトウエア市場は年率二〇ないし三〇%の高い成長率を上げております。しかし、ソフトウエア開発の技術者の手当てが余りそれに間に合わないのではないかと思うわけです。関連の各社は人手不足に頭を痛めておりますし、あるいは、経営者の考えとしては、まず要員の頭数を確保する、それから技術者の習熟度を向上させる、そういうことによってソフトの生産性を高める工夫をしているということも御存じだと存じます。したがって、大きなコンピューターメーカーは、人材を求めて各地に地域のソフトウエア会社を設立したり、あるいは電電公社もソフトの子会社をつくろうとしているのでございます。
 これに対して、実は、学校教育の面でこれにどう対応していったらよいかということをお聞きしたいわけでございます。スタンフオード大学のある研究グループの発表によりますと、このような状態が続くと、二〇二五年には地球上の人間を全部動員してもソフトが間に合わないのではないかというような極端な言い方も言っております。少なくとも、現在の計算によれば、六十五年末には約六十万人のソフトウエアの技術者が必要であろうと言われておるわけです。
 そこで局長にお聞きいたしますが、このような技術者の養成ということについて、どのように文部省としてはお考えになっておられるのか。大学の、これは工学部に属する学科とは存じますけれども、現在、工学部は非常に講座が多いわけでございますが、それをさらにふやしていかれるのか、あるいは講座の整理あるいは統合というようなこともお考えになっておられるのか、いずれにしても大学教育は、この技術者の急速なる養成に対してどのようにこれに対応していこうとされておるのか、その点についてお考えがありましたらお聞きしたいと思います。
#145
○政府委員(宮地貫一君) 先生御指摘のように、我が国の社会の急激な変化といいますか、情報化が進んでいるわけでございまして、それに対応して教育の面でその人材を養成することが必要であることは御指摘のとおりかと思います。大学においては、ハードウエアとソフトウエアシステムの開発に当たります技術者でございますとか研究者の養成を目的とする学科といたしましては、工学部を中心に、情報工学科、計算機科学科等の情報関係学科を置いておりますし、また、大学院の研究科に情報工学の専攻等を増設してきておるわけでございます。国立大学の最近の例で申し上げますと、大変財政状況厳しい中でございますけれども、昭和五十九年度では、東北大学工学部に情報工学科を新設をいたしております。昭和六十年度には名古屋大学工学部に情報工学科を新設をするというようなことで対応をしてきておるわけでございまして、大学の情報関係学科でございますが、昭和六十年度国公私立全体で六十七大学に七十七学科、入学定員で五千二百六十名ということになっておりまして、この入学定員は約十年前と比較いたしますと約二倍の入学定員ということでございまして、いずれも時代の要請に対する対応としてはいたしておるわけでございます。
 そのほか、工業高等専門学校とか短期大学、さらに専修学校の専門課程においても近年情報処理関係技術者の要請が積極的に行われてきておるわけでございます。例えば高等専門学校の学科につきましても、商船高専等については学科の改組転換を図っていくということで、例えば航海学科が二学科あるようなところについてはそのうちの一クラスを情報関係の学科に改組いたしますとか、そういうようなことで私どもとしてもできる限りの対応をいたしておるわけでございます。
 全体で約六十万人の技術者が不足されているというようなお話がただいま言われたわけでございますけれども、私どもとしては現在それに直接対応する特別な計画ということは持っていないわけでございますが、いずれにいたしましてもそういう急速な技術革新の動向に対応した大学教育のあり方、あるいはそういう技術者、研究者の養成というようなものについては長期的な視点に立って検討を行う必要があろうかと思っております。
 そのためには関係の学者、その他の方々の御参加も得て、具体的な研究のための取り組みということも考えていかなければならないというぐあいに考えておりますが、基本的には一つには、やはり大学教育の基本そのものは、そういうようなものの基本的なところをしっかり身につけさせるように教育をしていくということが根底であろうかと、かように考えております。
 なお、若干補足しますと、専修学校の専門課程の情報処理関係学科のものが、これは五十九年五月の状況でございますけれども、これは修業年限がそれぞれ二年未満あるいは三年未満、四年のものといろいろございますが、全体では在学生が約四万二千余りおりまして、年間の卒業者としてはそういう専修学校の専門課程では約一万三千ぐらいが卒業をしているというぐあいに私ども見ているわけでございます。
#146
○高木健太郎君 現在が六十万人不足しているんじゃなくて、六十五年度には六十万人不足するだろう、そういうことでございますから、ぜひその要求に応ずるような教育のいわゆる弾力化をひとつ考えていただきたいと思います。大学の改編というのは非常に難しい問題でございますので、それをどのようにされるかが私の聞きたかったポイントでございます。
 最後に文部大臣にお伺い申し上げます。
 複写機器が非常に普及をいたしまして、学術書を初めとした出版物の複写が非常に盛んに行われるようになったことは御存じのとおりでございます。そのことが出版物の販売に大きな影響を与える、そういう事態が生じております。これに関して出版業界から版面権の制定について要望が出ていると聞いておりますが、文部省としてはどのようにこれに対応していかれるのか、そのことをお伺い申し上げたいと思います。
#147
○国務大臣(松永光君) 先生御指摘のように複写機器が大変な発達をし、普及をしてきた。その影響もあってでしょう、著作物を複製する、そして学術書等につきましてそういう本が出回って、著作者の権利を侵害しておる。そしてさらには、出版社の利益も害しておるという面が指摘されているところであります。そこで、先般関係団体から出版物の版面に関する出版社の権利についてしかるべき立法措置等をという要望がございました。
 文部省としては、出版社が出版活動をしていただくことによってすぐれた著作権者の著作物が国民の利用の対象になりまして、そのことによって学術や文化の発展が図られるわけでありますから、そういう観点からすると、出版社の利益というものも正当に守らなければならぬというふうに思うわけでありますが、いかなる方法でそれを
守っていくか、大変難しい問題もありますので、近いうちに著作権審議会に検討をお願いをいたしまして、その検討の結果を踏まえて適切な対処をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#148
○高木健太郎君 時間が参りましたが、この点は私もそういう著作物を書く、著述をやっておる人間といたしまして大変出版会社あたりから強い要望がございます。確かにこのままでは非常によい出版会社の倒産ということも起こりかねないというふうに思いますので、ビデオとかそういうものと同じように出版物の保護というふうなものも考えていただければ大変ありがたいと思っておるわけです。
 これで私の質問を終わります。
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#149
○委員長(真鍋賢二君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 ただいま八百板正君が委員を辞任され、その補欠として粕谷照美君が選任されました。
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#150
○吉川春子君 著作物とは何かということが今回の法改正の中で大きな疑問点の一つでもありますので、私もこの点から質問に入りたいと思います。
 コンピュータープログラムをどういう形で保護すべきかについてはいろんな考え方が従来からあったわけですけれども、著作権法による保護ということに政府は踏み切りました。改正案では、第二条の十号の二として、プログラムを著作物として加えて、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」というふうにしています。そして二条の十号では、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」とされています。コンピュータープログラムが従来の著作権法の言う著作物の概念にそのままぴたりと当てはまるものでないということは、今まで国会答弁の中で大臣もおっしゃられましたし、文化庁も通産省も述べておられます。だからこそ例示的に著作権法に書き加える必要もあったのであろうと思います。これは著作物の概念を変更したものではないと答弁されておりますが、変更されていなくても従来よりも広く解することにはなるのではないかと思いますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。
#151
○政府委員(加戸守行君) 著作物につきましては、一八八六年に制定されました国際著作権条約であるベルヌ条約でも定義は設けられておりません。言うなれば、創作者の創作活動としてつくられた作品というような観点から、具体的に小説であるとか、音楽であるとか、絵画であるとかいう例示がなされて、時代の変遷に伴いまして新たな著作物がつくられてまいりますと、それが例示の中に広がっていっているというのが条約上の立て方でございます。
 一つの例といたしまして、かって写真というものが著作物の例示に加えられました段階でも、国際的にも議論がございました。写真というのはシャッターを押せば写るものであって、人間の頭脳活動、知的労働の成果であるかどうかということも議論の対象になったわけでございますが、もちろんそれは一つの風景の中から一つの構図を切り取るという点におきまして構図の設定あるいはシャッタースピード、絞り、そういったものについての知的な活動の成果であるという考え方から、著作物であることは現在においては全く異論なく受け入れられておりますけれども、写真という手段ができた時点においては一つの議論があったところでございます。
 と申し上げますように、いろいろな著作物というものについて従来とは違ったメディアによって物が出てまいりますと著作物なりや否やという議論は常にあり得ることでございますし、また著作権条約の歴史上もそういった写真、映画、放送、録音というようなメディアの発達に伴っていろいろ議論のあったところでございます。そういう意味でプログラムにつきましても議論は当然あり得るところでございますが、基本は人間の思想、感情を創作的に表現したものと言えるのかどうか、そこによって決まるわけでございますので、概念としては従来の概念の中で新たなそういった支持媒体に支えられましたところのプログラムというものが存在する、できてきたということでございまして、概念の拡張であるというぐあいには理解いたしておりません。
#152
○吉川春子君 著作権として保護されるプログラムが「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であるというふうにすれば、コンピューターを動かすことをただ一つの目的としてつくられているソースプログラムなどは、改正案の方ですけれども、第二条一項十号に言う「プログラム」とは言えないというふうに私には思われてならないわけです。しかし、文部省の説明を聞いておりますと、こういうものも含めて考えるんだということであります。そういう形ですべてのプログラムを著作物とするということによって著作物の範囲をいよいよ広くして著作権法の本質が徐々に変わってくるおそれがあるのではないか、こういう感じがするわけなんです。大体、著作権の概念というのはそもそもないんだと今お答えがありまして、その時代の変化によりいろんなものがつけ加わってきて、それが著作権の概念という形に結果としてはなっているんだということでしたけれども、しかし、やはり法律で保護をし、刑法的な処罰もあるということになれば、その概念をきちっと決めるということは人権保護の上からももちろん言うまでもなく非常に必要なことです。そうしますと範囲が非常に無限定に広くなるような概念の持ち込みというのはこれはよくないんじゃないか、著作権法の本質を変えるおそれも出てくるんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
#153
○政府委員(加戸守行君) 日本の著作権法というのはかなり精密でございまして、その定義規定を設けておりますが、諸外国で定義を設けている国は余りございませんし、条約上も余りない。しかしながら、著作権の概念がはっきりしていないわけではなくて、これは判例、学説等の積み上げによりまして一応確定した考え方があるわけでございまして、それを日本の著作権法では二条一項一号に規定をしたということでございまして、新たな概念創設したわけではないことを申し添えさしていただきます。
 そこで、何が著作物なり何が知的所産として保護するのかというのは、例えば人権に関する世界宣言というのがございまして、そこでは何人もその創作した科学的、文学的または美術的の制作品から生ずる無形及び有形の利益の保護を受ける権利を有するとか、あるいは経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約というのがございますけれども、その中でも「自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益が保護されることを享受する権利」ということをそれぞれ各国が保障するように求めております。そういった考え方の中には、いわゆる人間の知的活動によって生み出された科学的作品、文学的作品、芸術的作品というものについての権利を認めなさいということでございまして、こういった一般の国際共通の認識の中におきましてコンピュータープログラムも当然に包含されるものであると考えております。
 ただ、先ほどから繰り返しになりますが、若干の心理的違和感があるというのが否定できない理由は、従来の著作物がともすれば人間の感情、気持ちに訴えかける小説であるとか音楽であるとか絵画であるとか、そういうものが著作物の代表的例示として考えられているからでございまして、著作物の中には例えば数学の問題集もあれば、職業別電話帳もあれば、あるいは単なるグラフもあれば、図表もある、あるいは設計図もあれば、建築物もある、そういった分野で考えました場合に、コンピュータープログラムがそれとは特段異なった大きな相違点を持つものとは理解いたしていない次第でございます。
#154
○吉川春子君 職業別電話帳も著作物だということでそれを認めるとしても、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」というわけだから、ちょっとやっぱり違うと思うんですよ。
 それで、今の質問の中で、つまり機械を動かすことをただ一つの目的としてつくられたプログラムもそういう著作物ということについて、私は非常に心理的な抵抗も感じ、またその概念に入らないと思うんですけれども、こういうようなものも含めて要するにあらゆるプログラムが著作物である、こういうお立場なんでしょうか。
#155
○政府委員(加戸守行君) 先ほども申し上げましたように、著作物と申しますのは思想、感情を創作的に表現したものであるかどうかによって判断されるわけでございます。その意味では、言うなれば著作物であるかどうかのメルクマールといたしましては、人間が頭脳活動の結果として創作的な創意工夫を凝らしてつくり上げたものであるかどうかというのが第一点、しかもそれが著作物として対外的に覚知し得るような状態に置かれているかどうか、つまり頭の中だけの存在ではだめでそれが対外的に認められる存在になる、この二つの要件が必要なわけでございまして、その限りにおきましては二つの要件を備えれば、その目的、用途のいかんを問わず、あるいは価値のいかんを問わず著作物として保護するというのが著作物の理論でございます。
 そういう意味で「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせた」という定義で、まさに機械に機能を果たさせることのみが目的なのだから著作物ではないのではないかという先生の御指摘であろうかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、人間の感情に訴えかける、知情意に訴えかけるものが大部分の従来の伝統的な著作物であったといたしましても、それはたまたまといいますか、そういうことが主たる目的ではございますけれども、用途だけを目的だけを考えるのであれば、例えば動物をおとなしくさせるための音楽というのもあり得るでございましょうし、その他目的によっては何にも、必ずしも人間の精神作用に訴えかけないような著作物が当然あり得る話でございますし、また将来もたくさん出てくるだろうと思います。事柄は人間の思想、感情を創作的に表現したものかどうかにかかっていると思うわけでございます。
#156
○吉川春子君 端的にお答えいただきたいんですけれども、そうしますとすべてのプログラムは著作物という概念で包括し得るわけですね。
#157
○政府委員(加戸守行君) 問題は創作されたと言い得るような創作性があるかないかだけでございます。
#158
○吉川春子君 「一の結果を得ることができるように」という言葉が入っているわけですけれども、そうしますとこれによって著作権法によって保護されるプログラムかどうかということを分ける、だから極端に言えば保護されないプログラムもあり得るという意味でこのメルクマールを設定されたんですか。
#159
○政府委員(加戸守行君) 提案申し上げております第二条第一項第十号の二の規定はプログラムの定義でございまして、この著作権法で保護しようとするものはプログラムの著作物でございます。したがいまして、著作物ではない、つまり創作性が極めて薄い、低い著作権法の保護の対象とならないプログラムもあり得るという意味でございます。それは例えば音楽は保護しませんけれども、音楽の著作物は保護するというのと同様な関係に立つわけでございます。
#160
○吉川春子君 通産省にお伺いいたしますが、思想、感情を表現したものが著作物という立場でいえば、単に機械を動かすプログラムは著作物とは言えないのではないんでしょうか。
#161
○説明員(越智謙二君) プログラムは、主としまして産業経済活動に用いられるものでございまして、御指摘のように使用されることに意味があるというようなことで伝統的著作物と比べますとやや特色があることは事実でございます。しかしながら他方で、プログラムは御指摘のものも含めまして思想の創作的表現としての性格を持つことも事実でございまして、判例においても著作物と認められているわけでございます。それから、WIPO等の国際的な検討の結果も著作権法で保護しようというのが国際的な流れとなっているというふうに理解しております。
#162
○吉川春子君 通産省はそういたしますと著作権法で将来ともコンピュータープログラムを保護すべきものというふうに考えている文部省と考えが一致しているわけですね。
#163
○説明員(越智謙二君) 現時点におきまして、今回文部省が御提案されているような形でコンピュータープログラムの保護を行うということについては一致しているわけでございます。
#164
○吉川春子君 現時点のことについて伺っておりませんで、今後の問題としてコンピュータープログラムの保護という点でいろんな複雑な問題が出てくると思われますが、文部省は将来とも著作権でいくんだと、こういうふうにはっきり言っておられるんですが、通産省はいかがでしょうか。
#165
○説明員(越智謙二君) 文部省との間におきましても、コンピュータープログラムのよりよい保護のあり方については中長期的な視点から国の内外におきまして国際的動向に留意しつつさらに検討を続けるということになっているわけでございます。また、技術革新の非常に早い分野でございますから、これらの動向も十分踏まえながら検討を続けていく必要があろうかと思っております。
 御指摘のように、将来的に現在の著作権条約あるいは著作権法の一部改正でずっと対処していけるのか、あるいはさらにそれに加えて何か新しい法律なるものを必要とするのかどうかという点につきましては、これらの将来の中長期的な検討の動向いかんによるわけでございまして、私どもとしては現時点においては白紙でございます。
#166
○吉川春子君 わかりました。通産省と文部省のお考えは少し違うような印象を受けました。
 もう少し突っ込んでお伺いしたいんですけれども、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」が著作物の一つの要件とされていますが、この文芸、学術、美術、音楽をそれぞれ区分けしてどの分野に属するかという考え方ではなくてこれを一気に読む、つまり文芸、学術、美術、音楽という知的、文化的な包括概念の範囲に属するものであるというふうに本には説明されていますが、文化庁はもちろんこういうお立場なんですね。
#167
○政府委員(加戸守行君) 先生おっしゃるとおりでございまして、昭和四十五年に全面改正をいたしました著作権法を、案文を練りました際には考え方といたしまして、文芸、学術、美術、音楽というものを一気に読んでその範囲の中に属するものを著作物として保護するという考え方をとったわけでございます。理由といたしましては、先ほど申し上げましたベルヌ条約でも文学的または美術的著作物という翻訳はなされておりますけれども、英語で申しますとりタラリー・アンド・アーティスティック・ワークスという言葉を使っておりますが、これは狭い意味の文芸とか美術という意味ではなくてもっと広い言語的な表現をされた著作物並びに美的なあるいは芸術的な要素を持つ著作物と解すべきでございまして、その意味でベルヌ条約で使っておりますリタラリーワークス、いわゆる文学的著作物という中には文芸、学術の分野を包含し、美術的著作物という概念の中には美術、音楽の範囲に属するものが含まれるだろうと考えております。その意味で今の表現――日本語、言葉というのは非常に難しゅうございますし、同じ用語を使いましても外国でもそれぞれ言語についての感覚が違うわけでございますが、著作物の属する範囲としては今世界的に態様はそういった言語体系、言語という中にはもちろん記号、符号も含まれますけれども、そういった表現手段によるものと芸術的な価値を持った芸術的な表現といいますか、音とか色とか構図とか図面とか、そういう形で表現されているもの、こういったもの
を包含して著作物という概念が国際的なコンセンサスになっているわけでございます。
#168
○吉川春子君 昭和四十八年六月の著作権審議会の第二小委員会ですか、ここでは「プログラムの多くは、いくつかの命令の組み合わせ方にプログラムの作成者の学術的思想が表現され、」こういうことが出てくるんですが、今の加戸次長の御説明とまたちょっとニュアンスが違うように思いますが、そうではありませんか。
#169
○政府委員(加戸守行君) 第二小委員会の報告、昭和四十八年のものでございますが、そこで御審議いただきました段階におきましては、言うなればプログラムというのが記号によって表現されたものでございますけれども、それが幾つか、単発的に一つの指令はイエスかノーか、あるいは〇か一かということでございますので意味ないわけでございますけれども、そういった命令を組み合わせることによって一つの学術的な思想が表現されているという考え方をとり、かつ、我が国の判例もその第二小委員会報告をベースといたしまして学術的な思想を表現した著作物というような言い方をしております。しかし、例えば外国の例でございますと、学術的と考えている国もございますし、先ほど申し上げたリタラリーワークスという、日本語で翻訳しますと文学的著作物でございますが、リタラリーワークスの中に入れてコンピュータープログラムを理解している国もかなりございますし、そういう意味では、言葉をどういう形で表現するかは別といたしまして、それぞれのお国柄はございます。ただ、我が国におきましては学術的な思想を創作的に表現したという考え方が主流になっているわけでございます。
#170
○吉川春子君 私はこの小委員会の報告と今の説明を聞いて、やはり今までの著作物の概念から少し幅を広げないとコンピュータープログラムは著作物の中に入らない、そういう苦心の跡をここに見ることができるわけなんです。コンピュータープログラムを著作物として保護すべしという立場に立ったとしても、そういう学術、文化、美術、音楽を一気に読むというような形で考えると、その範囲というのは狭くならざるを得ないんじゃないかというふうに思います。
 というのは、コンピュータープログラムが知的、文化的包括概念の範囲よりは経済的な目的、用途に基づいてつくられているからで、その概念からはみ出しているものが多いというふうに私には思われます。コンピュータープログラムが著作物に全く当てはまらないというふうには私も考えないわけで、当てはまるものもあるとは思います。しかし思想感情を創作的に表現したものを財産権の側面に着目して保護しようというのが著作権の思想ではないでしょうか。本来が財産権として、経済活動の一環として経済的な利益を得ることを主たる目的としてつくられているコンピュータープログラムは著作権法でフォローすること自体いろいろな無理がある、両者は本来は別物ではないか、こういう感じがいたします。コンピュータープログラムを著作権で保護するということは、したがって便宜的にといいますか、そういう立場から包含せざるを得ないんじゃないか、こういうふうに私は考えるんですけれども、この点は大臣はいかがお考えでしょうか。
#171
○国務大臣(松永光君) 吉川委員は、プログラムの機能が新たな経済財を生み出す、そういう機能を持っておるという点が従来からの伝統的な著作物とやや機能的に違うなと、そういう点からの御質問だろうと思うんです。先ほどから次長がよく説明をいたしておりますように、「思想感情の創作的な表現」であるならば、機能がどうかということについてはこれは機能のいかんによって区別をするんじゃないんだと。先ほど同じ音楽でも人間の感情に訴えて人間の鑑賞の対象になる音楽もあれば、犬をよく眠らせる、黙らせるというふうな機能もあるそうでありまして、それは人間の感情に訴えようが、犬の感情に訴えようが、その機能によって区別はないんだという非常にわかりやすい説明もあったわけてありますが、さようなわけでありまして、在来からの伝統的な著作物の主たるものは、人間の感情その他、要するに鑑賞の対象が主たるものであったわけでありますが、このプログラムというのは、コンピュータープログラムというのは、この人間の感情とか、あるいは鑑賞の対象とか、そういったものじゃなくして、新たな経済財を生み出す、そういう機能を持っているという、そういう特性はあります。特性はありますが、人間の知的活動の所産であり、学術的な思想を創作的に表現したものという点については、在来からの伝統的な著作物とその本質は同じなんであります。機能がやや異なるという点なんでありまして、その機能の面でも音楽の場合でいえば、人間の鑑賞の対象でもあれば、あるいは犬をうまく使う場合の機能を持っている場合もあるという差はありますけれども、さようなことでありますので、著作物として著作権法でこれを保護していくというのは、まさに適切であるというふうに思っているわけであります。
#172
○吉川春子君 これはもう平行線をたどっておりますので、次の問題に移ります。
 文部省と通産省が和解をされたというふうに私は受け取っているわけですけれども、その経緯について若干お伺いしたいと思います。
 通産省は、ことし一月十九日、「著作権審議会中間報告について」という文書を発表して、著作権審議会の中間報告についての中で全面的な反論を展開しておられるわけです。文部省と通産省との間には基本的な点で互いに歩み寄れない幾つかの問題点があることを国民に示したと思います。しかし、それから二カ月、二カ月弱ですね、たった三月十八日、通産省は突如著作権法によるコンピュータープログラムの保護という百八十度の方向転換とも言えることを行いました。そこで通産省に伺いたいんですが、この文書の3に「今回の決定は、昨年来、日米通商問題上の最大の懸案の一つとなっていたコンピュータ・プログラムの権利保護問題を解決するものであり、日米経済関係改善に寄与するものとして高い評価が与えられるものと考え」ているとされています。この内容を具体的に御説明いただきたいと思います。
#173
○説明員(越智謙二君) まず御指摘の一月十九日付の通産省の文書でございますが、これはことしではなくて、昨年の一月十九日に文部省の方の御提案が世に明らかにされましたときに提出したものでございまして、その後御案内のようにいろいろな議論があったわけでございます。
 それから、日米の関係でございますが、具体的に申し上げますと、三月十八日に開催されました日米エレクトロニクス協議の席上、我が方からコンピュータープログラムを著作権法で保護をすることにつき、政府部内で合意に達したという旨を伝えましたところ、米側からこれを評価するという発言があったものでございます。
 それで、米側からは、かねてから我が国におきまして、コンピュータープログラムに関する法的保護のあり方が明確でないということが、米国製品の日本市場への参入を妨げているという旨の批判をしていたわけでございまして、今回の合意がこのような批判を解消せしめるものとして日米経済関係の改善に寄与するものと考えている次第でございます。
#174
○吉川春子君 四月九日付の経済対策閣僚会議の対外経済政策の中にはエレクトロニクスの項目があります。ここでは、「エレクトロニクス分野における知的所有権の適切な保護を確保するため、半導体チップの権利保護に関する法律案及びコンピュータ・プログラムの権利保護に関する著作権法改正案を閣議決定し、今国会での成立に全力を挙げる。」、こういうふうにされているわけです。これは日米貿易摩擦の政治的な決着によって、通産省も今度の文部省との論争といいますか、考え方の違いに決着をつけて、一応歩み寄った最大の原因ではないか、こういうふうに思うわけですけれども、この受け取り方は違っていますか。
#175
○説明員(越智謙二君) 通産省といたしまして、著作権法の改正によりコンピュータープログラムを保護するという結論に達しましたのは、ここ一、二年間のWIPO等における国際的な議論の動向
あるいはプログラム保護の緊急性等を総合的に勘案した結果、このような解決が妥当であると判断したためでございます。特に、本年二月に開催されましたWIPOの専門家会合におきましても、米国のみならず、欧州、カナダ等の各国が基本的には著作権法で対処する方向である旨の見解を述べたところであります。
 なお、本件につきまして、著作権法の改正による解決を図ったことは、先ほど御答弁申し上げましたように、日米エレクトロニクス協議においても高く評価され、日米経済関係の改善に資するものであるのは事実でございますけれども、プログラム権法の断念はあくまで今申し上げましたような総合的な判断の結果でございまして、御指摘のような米国のだけのために解決を図ったというような性格のものではございません。
#176
○吉川春子君 日米エレクトロニクス協議会で高く評価されたということなんですけれども、具体的にはどういうことなんでしょうか。
#177
○説明員(越智謙二君) 先ほど御答弁いたしましたように、三月十八日に開催されましたエレクトロニクス協議の席上、今回の方向を米国にも伝えまして、先方からこれを評価する旨の発言があったわけでございます。これが従来コンピュータープログラムに関する法的保護のあり方について我が国が非常に不明確であるので、米国のソフトウエア製品の日本市場への参入を妨げているという旨の批判があったわけでございますけれども、これらの問題点を解消せしめるという意味において、日米経済関係の改善に寄与するというふうに考えているわけでございます。
#178
○吉川春子君 アメリカのエレクトロニクス製品が日本に非常に入りやすい条件ができた、こういうことで高く評価されたわけですが、アメリカが通産省の従来主張しておりましたプログラム権法に強い反対の意を表していたわけですけれども、それはどういうところに理由があったんだとお考えですか。
#179
○説明員(越智謙二君) 米国側の批判は大きく分けますと、三点あったかと思います。一番全般的なものとしては、コンピュータープログラムの保護は国際的なレベルで考えるべきであって、その点から考えると、著作権法で対処すべきである。それから私どものプログラム権法の具体的提案の内容としましては、権利保護の期間が非常に短縮される。それからこれはかなり誤解がございますけれども、裁定制度というような制度を提案していたわけでございますが、アメリカがコンパルサリーライセンス、強制許諾という名称で呼びまして、強制的に米国のプログラムが取り上げられて使用されるのではないかというような懸念を持っておりまして、そのような点から批判をしていたわけでございます。
#180
○吉川春子君 アメリカはなぜ日本のコンピュータープログラムの保護期間が、権利保護の期間が短い、この点に不満を表明していたんでしょうか、その理由です。
#181
○説明員(越智謙二君) これは言葉どおりでございまして、私どもの産業構造審議会の中間報告では、権利の保護期間については最終的に何年というのを明言したわけではございませんけれども、十五年程度が目途になるという提言であったわけでございますけれども、米国の著作権法では、御承知のように法人著作で七十五年というような長期の保護を現にしているわけでございます。そういう長期間にわたって経済価値を保有しているプログラムも存在する、しかも我が国におきまして判例も認めておりますように、既に日本でも著作権法の適用が認められているのに、その権利期間をプログラム権法によって極端に短くするのは、いわば既にある既得権といいますか、そういうものを壊すものであるという点にあったかと考えます。
#182
○吉川春子君 権利の保護期間については後でもう一度お伺いいたしますが、アメリカがソフトウエアの先進国であるということはもう事実ですが、その実態と、日本とアメリカはどの程度ソフトウエアの産業の分野で差があるんでしょうか。
#183
○説明員(越智謙二君) 世界のソフトウエア産業の現状を概観いたしますと、米国の生産高が群を抜いて大きゅうございまして、日本、西独、英国等がほぼ同規模でこれに続いております。これはなかなか統計が難しゅうございますけれども、我が国のソフトウエア産業の規模は米国の約四分の一というふうに言われております。
 それから我が国の特色といたしましては、これらのソフトウエアの売り上げに占めますいわゆる汎用のソフトウエアの割合がアメリカ等に比較しまして相当に低いという特色がございます。
#184
○吉川春子君 科学技術庁の外国技術導入年次報告昭和五十八年度版を私見てみました。そうしましたら最近三年間の先端技術の導入傾向を分野別に見てみますと、電子計算機関連は著しい増加となっております。先端技術導入は五十六年が二百二十四件、五十七年が二百九十七、五十八年が四百八十四件と、もう三年間で二倍以上に伸びています。パーセントで見ても、五十六年の一〇・八%に対して五十八年は新規全体の数の二一・九%をこの分野で占めているわけです。さらにその中でソフトウエアについてはもっと著しい数字になっております。ソフトウエアは五十六年で百九十二件、五十七年で二百六十八件、五十八年は四百九件と、これも倍以上です。これは電子計算機関係の中で八五%から九〇%という物すごい数字を示しております。
 しかも、その中でアメリカの占める割合、これが一番今の私の質問にとっては関連の深い重要な点ですけれども、これがまた非常に高いわけです。五十六年はアメリカの占める割合は百八十一件で八〇%、五十七年は二百六十一件で八七・九%、五十八年度が四百二十一件で八七%、こういう割合を占めていて、いかに外国技術の導入の中でアメリカの占める割合が多いか、そしてソフトの分野でアメリカの占める割合が大きいかということは政府の発表している資料によっても明らかです。そういう中で、アメリカがソフトウエアの先進国であり、日本の市場の中で他国を圧して、大きく支配していることがわかります。
 これらの技術導入における契約期間は、これも科学技術庁の資料によりますと、一年以上五年未満のものがソフトウエアの場合で最も多く、十五年以上というものは全体の一割弱であります。コンピュータープログラムを著作権として日本で保護するようになると、今契約で決められている期間にどのような影響が及ぶのか、あるいは全く影響が及ばないのか、通産省のお考えを伺いたいと思います。
#185
○説明員(越智謙二君) ちょっと将来のことにつきまして確たるお答えは申し上げにくいんでございますが、プログラムの経済価値の寿命といいますか、そういうものいっぱいに契約されているということではございませんで、今御指摘のございましたように一から五年というようなそのときの必要性に応じて必要な期間だけ契約をしているということが実態であろうと思いますので、これからの発展の動向にもよりますけれども、権利の保護期間がかなり長期になったからこの契約期間が短くなるとか長くなるとかという直接的な関係は薄いかと考えております。
#186
○吉川春子君 例えばアメリカからソフトウエアの技術を導入して、そして契約期間を五年程度ということでスタートいたします。その場合に、じゃ著作権法で今度五十年保護されるということになりますと、そうしますと五年の契約のソフトウエアはどうなるんですか。簡単でいいんですけれども、どうなるんですか、この期間についてはどうなりますか。
#187
○説明員(越智謙二君) 契約の問題でございますので、さらに使用する必要性があれば契約を更改して延長するということになるかと思います。
#188
○吉川春子君 契約が切れた場合、このアメリカから導入したソフトウエアの権利は著作権法で保護されるということになるんじゃないんですか。
#189
○説明員(越智謙二君) 契約の問題と法律の問題でございますけれども、当然でございますけれども、契約を結んでいる期間も著作権法の対象であ
るわけでございますので、契約期間あるいはその切れた後も著作権法で保護されるというふうに考えております。
#190
○吉川春子君 IBMなどアメリカの大企業あるいはソフトウエア関係の企業は膨大なソフトウエアを在庫として持っていて、これを日本を初め世界各国あるいは開発途上国にこれからどんどんといいますか、技術を輸出していくという関係になると思うんですね。そういう場合に、通産省のプログラム権法で十五年の保護、文部省の考え方で言うと五十年の保護ということになりますと、このプログラムを何年保護する価値があるかという問題はさておいても、非常に長くアメリカのソフトの技術が法律でもって保護されて、そしてその結果このソフトウエアに基づいてさらにいろんなものを技術開発していくとか、科学が進歩していくとか、そういう側面の活動が鈍るのではないか、このように思いますけれども、これは通産省と文化庁と両方にお答えいただきたいんですが、いかがでしょうか。
#191
○説明員(越智謙二君) プログラムの権利の期間あるいはそういう経済価値が続く期間というのを見きわめるのはなかなか難しい問題でございまして、私どものプログラム権法では、投資の回収に十分な期間というようなことで、相対的に短い期間とすべきではないかという提案をいたしたわけでございますけれども、同時に、これは国際的な動向を十分に踏まえなければいけないということで、国際的合意により短縮を図ることを前提にある程度長期間として制度を発足させることも検討するというようなことも書かれていたわけでございます。今回御提案申し上げておりますような、著作権法改正をお願いしているわけでございますが、中長期的には、そういう国際的な検討の中でさらにこの問題は検討を続けていくべきだというふうに考えておるわけでございます。
   〔委員長退席、理事杉山令肇君着席〕
 御指摘の懸念につきましては、まだこれから先、プログラムの実態、発展の動向等によりましてはっきりしませんけれども、ただ、プログラムにかかわる知的財産はそもそも尊重されるべきでございますので、そういう前提で今後コンピューターメーカー各社ともソフトウエア技術開発に全力を挙げて取り組んでいくということでございまして、今後ともそういうようなソフトウエアの技術開発ということで努力することによって十分そういう懸念を払拭していくことができるというふうに考えております。
#192
○政府委員(加戸守行君) プログラムにつきましては、ケース・バイ・ケースでございましょうけれども、多くは数年間で利用価値が失われると言われておりまして、しかし、プログラムの中でも特に基本プログラムのような場合には長期にわたって利用されるものもあるわけでございますし、また、利用価値がある限り、やはりその期間は保障するという考え方に立つのが至当ではなかろうかと文化庁としては考えたわけでございます。
 現実の問題といたしましては、現在権利主張がされているプログラムといいましてもせいぜい十数年程度を経たものでございまして、まだ、二十年、三十年、五十年という議論が現実、具体性の問題として顕在化しているわけではございません。しかしながら、一般的にプログラムの保護期間がいかにあるべきかということは当然それ自体としても議論する価値のある事柄でもございます。現時点におきましては、我が国が加盟しておりますベルヌ条約におきまして五十年の保護期間が義務づけられておりますので、それによることとして特段の支障はないというのが文化庁の現在のスタンスでございますけれども、もちろん、我が国の関係者の中には保護期間が長過ぎるという意見もございますし、また、諸外国の中で著作権法制によって保護しようとしている国におきましても五十年はいかがかという意見がある国もあることは事実でございます。
 そういった点で、今回合意に達しました両省庁間におきまして、国内情勢あるいは国際的な状況をも踏まえながら、今後中長期的に、本来プログラムの保護期間は何年であるべきかということを虚心に各般の情勢を見ながら、その推移を見ながら検討していく課題であろうと考えているわけでございます。
#193
○吉川春子君 今の御答弁の中で、利用価値のある限り著作権法として権利を保護していくと、こういうふうに言われました。極端な話が、例えば源氏物語、枕草子はいまだにすごく読まれているわけで、音楽にいたしましても、ベートーベンの音楽とかもっと古い音楽とか、そういう意味で言えば、利用価値のある限り保護していくというのは、著作権法で死後五十年というふうに決めた考え方にも当てはまらないと思うんですよね。プログラムをどうするかという問題から離れて一般論としても、利用価値がある限り保護していくんだという考え方はおかしいんじゃないですか。
#194
○政府委員(加戸守行君) 言葉足らずでございますが、利用価値がある限り保護すべきであるという考え方は第六小委員会で御議論いただいたわけでございますが、もちろん、上限は五十年ということを念頭に置きまして、利用価値がある限り五十年まで保護することが適当であるというのが御議論いただいたことでございますし、私が申し上げたかったことでもございます。
 ただ、外国の場合でございましても、これは変わった例でございますが、ニカラグアでは無期限の保護というケースもございますし、それからスペインにおきましては死後八十年、西ドイツにおきましては死後七十年という例もございまして、五十年が画一ではございません。五十年というのはベルヌ条約上の最低の保護期間だと、そういう意味でございます。もちろん、プログラムの場合はそれとは離れまして、先ほども申し上げましたように、プログラム本来の姿として、いわゆる著作物一律の五十年の保護期間がいいかどうかにつきましては十分検討すべき課題だと考えていることは先ほど申し上げたとおりでございます。
#195
○吉川春子君 工業所有権で権利の保護は十五年というふうになっているわけですけれども、これはどういう理由に基づくものでしょうか、通産省に伺います。
#196
○説明員(越智謙二君) おっしゃるように、いわゆる特許法で十五年の保護期間になっておりますが、これは、発明者の利益と利用者の利益のバランスを考慮いたしまして、特許というものは十五年間非常に強い独占権を付与しておりますので、その辺のバランスを考慮して保護期間を定めているわけでございます。
#197
○吉川春子君 そうしますと、工業所有権の保護は、発明者の権利の保護とそれから技術、産業の進歩発展を図る、そういう調和のもとに十五年という比較的短い期間の権利保護というふうに決めているんだと、こういうことでいいんですね。
#198
○説明員(越智謙二君) 私、特許法の専門家でございませんのでちょっとなんでございますが、特許法は、発明の保護及び利用を図ることによって発明を奨励しまして、もって産業の発達に寄与することを目的としているわけでございます。この存続期間につきましては、明治十八年専売特許条例において十五年と定められて以来ほぼ一貫して現在に至っておりまして、当時において、特許制度の目的を踏まえまして、諸外国の権利期間の現状等を考慮しつつ定めたものと聞いております。
#199
○吉川春子君 工業所有権の権利の保護を得るためには非常に厳しい審査があるというふうに聞いております。コンピュータープログラムを著作権として保護すれば、工業所有権としては認められないような価値の少ないと申しますか、そういうものでもさらに長い五十年という期間保護されるということは非常に不合理ではないかと思うんですけれども、この点についてはどういうふうに対処されるんでしょうか。
#200
○政府委員(加戸守行君) 著作物の保護期間につきましては、機械的に基準が五十年という形で、著作物の価値のいかんを問わず、目的、用途のいかんを問わず保護されているわけでございます。例えて申し上げれば、赤ん坊がなぐり書きをした絵でございましょうとそれは死後五十年の保護を
受けるわけでございまして、作品の価値が高いか低いか、何に使うかということによって保護期間の差異をつけているわけではございません。もちろん、価値の低いものは、創作されて間もなくその寿命が、実質的には既にもう活用されていないことによって実質的意味を失うでございましょうけれども、価値のあるものは五十年間利用され続けるであろうと、そういう意味で著作物の目的、用途、価値によりまして保護期間の差をつけるという考え方はとっていないわけでございます。ただ、著作物そのものの性質に着目いたしまして五十年を義務づけなくてもよいという考え方はあり得るわけでございまして、先ほど申し上げましたベルヌ条約の場合でも、写真の著作物と応用美術の著作物につきましては二十五年間の保護を最低限で義務づけておりまして、五十年を義務づけていないというようなケースもございます。
#201
○吉川春子君 著作物としてのコンピュータープログラムの保護の場合は、極論すれば百年ぐらい保護されるプログラムも出てくるということになると思うわけですね。生前個人に属するものについてはそういうことも出てくると思うし、百年も保護をする必要のあるプログラムがあるのか、こういう疑問もあり、非常に工業所有権に近いような感じのコンピュータープログラムを五十年著作権法で保護するということは、こういう点でも非常に納得のいかない面を残しているというふうに思うわけです。先ほども言いましたけれども、著作権もやっぱり権利の保護ということと、それから文化の普及という、こういう両方の側面があるし、工業所有権もやはり技術の進歩ということと権利の保護と、こういう両方の面があると思うんです。コンピュータープログラムについて言えば、投資を回収するという一定の要件が満たされればいいのであって、そういうことが一つ権利保護の期間の参考になるのではないかと思うんですけれども、通産省としていかがでしょう。
#202
○説明員(越智謙二君) プログラムを著作物として保護する以上は、著作権条約との関係もありまして現時点では五十年とせざるを得ないわけでございますが、仮に立法論的に議論をするといたしますれば、プログラム開発の利益と利用者の利益のバランスを考慮して保護期間を定めるということも一案かと考えております。ただ、先ほど文化庁から御答弁がございましたように、現在三十年、四十年のコンピュータープログラムがあって、何かその辺で問題を生じておるということではございませんので、まだ十分に検討の期間があるわけでございまして、今後中長期的な検討課題としての国の内外において検討を続けるべきであるというふうに考えておるわけでございます。
#203
○吉川春子君 それでは、私の質問の三番目は、労働者の権利保護と著作権の法人帰属の問題について伺いたいと思います。
 著作権審議会の第六小委員会の中間報告、五十九年一月によりますと、ソフトウエアについての権利の帰属について二十九条、これは映画の著作物の著作権者ですけれども、「第二十九条のように著作者以外に権利を帰属させる特別の規定を考える必要があるかどうかについては、基本的には第十五条の法人著作の規定の適用によって妥当な解決を図ることが可能であるので、当面は特別の規定は必要ない」と述べています。これは、著作権者は自然人であるのが建前であるが、一定の要件が満たされれば法人にも帰属し得るという著作権法の原則的な考え方に立っているものと理解してよろしいのでしょうか。
#204
○政府委員(加戸守行君) おっしゃいますように、権利の帰属関係と申しますのは、個人が著作者の場合に、その個人が著作者としてかつ著作権を有した状態でよろしいのかどうかということを議論していただいたのが今先生がお読み上げになった部分であろうと思います。したがいまして、このことに関します限りは、個人著作主義あるいは個人の権利帰属を前提としておるわけでございますが、同じ第六小委員会の報告の中では、著作者の問題、つまり十五条の適用問題も同時に御議論いただいておりまして、そのまとめとしましては、十五条の規定を適用した場合に、著作名義、つまり法人著作名義という形で公表する要件が解釈によってのみでは実態に合理的に対応し切れない面があるので法律上の取り扱いは明確にする必要があると考えられるという結論をちょうだいしているわけでございます。
#205
○吉川春子君 今回の改正案では、この中間報告の考え方を捨てて、第十五条二項を特別に加えて、プログラムの著作者は原則として法人であるというふうにしているわけですが、その理由について御説明いただきたいと思います。これは非常に短い期間に文化庁の考え方が変化したと私は受けとめているわけですけれども、何が原因だったんでしょうか。
#206
○政府委員(加戸守行君) 第六小委員会報告では、個人が著作者であり著作権者である場合に、映画のように会社に権利を帰属させるというような規定を設ける必要はないということとあわせて、だれが著作者であるかについて十五条の規定の適用関係が不明確であるので十五条の法人著作の規定を整備する必要があるという御提言をいただいておりまして、それを受けまして文化庁試案におきまして、職務上作成する著作物についての法人名義公表の要件を外した改正案を既に昨年の段階で準備したわけでございまして、第六小委員会の報告を受けて文化庁が対応した考え方と現在提案申し上げております十五条の改正案との間のそごはないわけでございます。ただ、昨年の文化庁試案との相違点につきましては、コンピュータープログラムの職務上の著作についての法人名義公表の要件を外すことを、プログラムのみならず、全著作物について外すというのが昨年の文化庁試案でございまして、これにつきましてプログラム以外の権利者、いわゆる伝統的な従来の著作物の権利者側から、プログラムに引きずられて現在の十五条を改正するのはおかしいという御意見もございましたものですから、プログラムのみを独立して十五条二項として提案をし、従来の十五条の規定は十五条第一項として存置をするという二本立ての立て方をとったわけでございます。少なくともプログラムに関しましては考え方が異なってきたわけではございません。
#207
○吉川春子君 ちょっともう一度今のところを伺いますが、十五条にある「法人等が自己の著作の名義の下に公表する」、こういう要件を今回削られたわけですね、プログラムに関しては。この理由はどういうことなのでしょうか。
#208
○政府委員(加戸守行君) 通常のプログラムでございますと、例えば文芸作品であれが出版、音楽の作品であればレコード発売という形でそれぞれ市場に発行または公表の形で出ていくのが通例でございますし、しかもその場合には当然例えば会社の従業員が作成したものは会社の名義で公表され、あるいは発行されるという実態があるわけでございます。
   〔理事杉山令肇君退席、委員長着席〕
したがって、従来の十五条は特段の支障はないわけでございますが、コンピュータープログラムにつきましては、先ほども申し上げましたように本来会社の内部使用にとどまるということでございまして、発行、公表の形態をとらないプログラムで価値の高いものが随分あるということ、それから市販商品の場合でも、ゲームソフトのような場合は別といたしまして、例えばRMに組み込まれて電子レンジあるいはテレビ、自動車等に組み込まれていくようなプログラムの複製物の場合には、そのROMの中に法人名義で公表するという形態はございませんから、全く無名で公表されるという形態でございますので、従来の十五条をそのまま適用することはプログラムの著作物の特性にかんがみまして適当でない。実態に合わせるためにこの法人著作名義の公表の要件を外したというのが提案の理由でございます。
#209
○吉川春子君 今答弁にありましたように、やはり現行著作権法の中にプログラムを著作物として加えるということは、今の法律ではなかなか対応できない部分があって改正を迫られたわけですね。その点についてはちょっときょうはこれ以上
は踏み込みません。
 それで、労働省にお見えいただいていると思いますが、改正案の第十五条二項の後段には、作成時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、著作権は法人に帰属するというふうにされています。これは著作権法からいえば例外規定と言えますけれども、プログラムの特異性に着目した立法なわけですが、労働省としてこういう契約とか勤務規則その他で労働者に権利が帰属するような事例をつかんでおられるでしょうか。
#210
○説明員(矢田貝寛文君) 御質問の点につきましては、私ども派遣等との絡みの中でいろんな実態を把握しておりますが、この場合、請負契約で行われたかどうかというような観点で把握してございますので、著作権等についてどのように取り扱っているかということについては実態的に把握いたしておりません。
#211
○吉川春子君 ちょっと答弁がわかりにくかったんですけれども、労働者が使用者と契約を取り交わして、そしてプログラマー、システムエンジニアが自分のつくったものについては著作権が帰属するような、そういう事例というのはないという御答弁だったんですか。
#212
○説明員(矢田貝寛文君) ないということを申し上げたんではなくて、私どもとしては実態を把握してない、そういった調査をしたことはございませんということを申し上げたわけでございます。
#213
○吉川春子君 私は実際は、労使の力関係の中で、著作権法が新しく予定しているような契約を結んで個々の労働者に著作権の権利が帰属するということは難しいというふうに考えます。労働省は労働者の権利を守るところですが、今回の著作権の帰属の問題について何か対策を考えておいででしょうか。
#214
○説明員(矢田貝寛文君) 御質問の点でございますけれども、現在私どもは参議院におきまして労働者の派遣法等の御審議を願っておりますが、そういった形態の中で派遣された労働者等が派遣先の事業所等でプログラム作成等に関与して著作権問題が生じてくるという実態はあろうかと思います。ただ、この点につきましては私どもといたしましては、先ほど来御議論のございます著作権法の中でその保護を図られるべきであって、労働者保護の規定のいわゆる労働者派遣法、そういった体系の中で特別な措置を講ずるということはいかがなものか、このように考えているところでございます。
#215
○吉川春子君 著作権法の中で、なかなか難しいので、立法的な対策という意味だけではなくて、やはり労働省としても労働者の権利保護のための何らかの対策が必要ではないか、このように私は申し上げたわけです。
 それで文化庁にお伺いいたしますが、コンピュータープログラムが派遣労働者によってつくられているということはもう実態としてあるわけですけれども、この場合の著作権の帰属はどういう形になるんでしょうか。派遣先の企業と派遣労働者の共同著作物になるのか、あるいは派遣先の企業と派遣した方の企業との共同著作物になるのか、その辺の帰属についてはどういうふうに理解したらよろしいんてしょうか。
#216
○政府委員(加戸守行君) 人材派遣によりますプログラムの開発、作成の実態をつまびらかにいたしませんので、一般論という形になりますが、もちろんケース・バイ・ケースの問題でもあろうと思いますけれども、まず一般的に申し上げますれば、派遣を受けた先で企画をし、プログラムの作成をする場合に、通常の場合、派遣を受けた先の従業員、プログラマーあるいはシステムエンジニアとそれから派遣されてきた職員が同じくプログラム作成に参加するという共同作業の形態が一般的に多いのではないかと思います。そのような場合には少なくともそのプログラムを開発している会社の従業員については当然職務著作となるわけでございますけれども、派遣されてきた職員というのは基本的には雇用関係がございませんから、理論的に申し上げますと一応その会社の著作物と派遣されてきた職員または派遣先の会社との間の共同著作になる可能性が多いのではないかと考えられます。
#217
○吉川春子君 そういたしますと、実際にコンピュータープログラムあるいはソフトをつくっている労働者といいますか、法人の職員などについては著作権が帰属するという可能性は非常に少ないわけなんですね。
 派遣労働者の増加ということは、終身雇用制という日本の従来の慣行を崩していわゆる労働力の流動化という現象をもたらしているわけです。労働者の身分保証が非常に不安定になって権利も守られにくくなっている、この実態については労働省はよくつかんでおられると思います。ソフト労働者と言われる人たちがみずからの労作によって健康を犠牲にし、長時間労働の中で、劣悪な労働環境の中で作成したコンピュータープログラムを本来はそういう人たちに帰属させるのが著作権法だと思うんですけれども、実際にはそうでないということが今度の法改正で行われるわけなんですね。そういう意味で言うと、非常にソフト労働者の置かれている立場というのは幾重にもひどい目に遭わされているという感じがするんですけれども、私は労働省としてこういう具体的な問題に即応した対策がどうしても必要ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#218
○説明員(矢田貝寛文君) 先ほど文化庁の方から御答弁ございましたように、そういった派遣の場合の著作権の帰属がいかがという問題につきましては、基本的にはこの法案にございますような契約その他で決まってくるということかと思います。したがいまして、そういった一つのケースとして申し上げますと、まずその派遣元と派遣先の派遣契約の中でそういったプログラムを開発した場合の報酬とかそういったものをどのように定めるか、そういった契約の中でお定めになるということが一つあろうかと思います。
 それから同時に、派遣元の労働者のそういったいわゆる労働によりましてプログラム等を開発した場合の報酬と申しましょうか、そういったものにつきましては派遣元と本人との間での労働契約といいましょうか、そういった中で一定の例えば報酬をあれするとか、そういったような方法論もあるわけでございまして、一般的に派遣事業というものが適正に行われるようにそういった派遣元の事業所等から派遣事業に関してのいろんな資料等も提出させるようになっておりますので、そういった中で派遣労働者の保護という点につきまして、著しき問題等があればいろんな御助言等をしていく、そんなような考え方でおります。
#219
○吉川春子君 労働基準法等でいろんな権利が保障されていてもなかなか実際にはそれは守られていないという実情があるわけで、ましてや法律上も労働者個人、自然人に帰属する余地が断たれているというのが今度の著作権法の一つの改正部分だと思いますので、そういう点では私はやはり労働省がそういう実態をつかんで積極的な対応が求められているんじゃないかということを強く指摘しておきたいと思います。
 本改正案の特徴の一つですが、本来自然人を権利者とする著作権法をプログラムに適用するというふうにしながら、結局、例外的な規定である第五条が主に適用されて、権利が法人に帰属するものとされて創作者の権利が完全に消えるというふうになっているわけなんですね。権利保護を言うならば、創作に費用がかかり、コピーされると開発の意欲がそがれるということから、法人の権利の保護をのみ考えるのではなくて、まさに技術者の権利の保護、この工夫ですね、立法上の工夫こそするべきではなかったか、こういうふうに思うんですけれども、こういう問題も含めて、今度の非常に複雑な著作権法の改正と今後の運用について大臣から御所見をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
#220
○国務大臣(松永光君) 先ほど、対外経済対策の中でのプログラムの権利保護に関する著作権の閣議決定、今国会での成立、こういったものをいかにもアメリカとの関係をさらに改善するという意味におとりになった向きもあったようであります
が、そもそもこの対外経済対策はどういう趣旨、目的でやったのかといえば、御承知のとおり我が国は自由貿易体制を堅持することが致命的に重要な事柄なんでありまして、その見地からすれば、我が国の法律や行政あるいは産業に関する制度、仕組み、そういったものを国際的なレベルに引き上げる、そのことが我が国の国際的な信用を高める道である、こういったことからこういった対策も立てられたわけであります。
 プログラムの問題につきましても、我が国では既に実際の裁判所で数件にわたってプログラムは著作権法で保護すべきであるという判例も出ておる。それからまた、著作権に関する審議会におきましても、数回にわたってプログラムは著作物として著作権法で保護すべきであるという、そういう報告も受けておる。あるいはユネスコの専門家会議におきましても、著作物として著作権法で保護すべきであるというふうな見解も出ておる。こういった等々踏まえまして、国際的なレベルに我が国の法制を高めていくということが極めて大事であるという考え方のもとに今回の法案の提案をしておると、こういうことなんであります。
 その他のいろんな条文等につきましても、大体国際的なレベルに合うような形での条文になっておるわけなんてありまして、そうした趣旨であるということを御理解願いたいわけであります。
#221
○関嘉彦君 本日の議題になっておりますコンピューターのプログラムを著作物として保護するために、著作権法の一部を改正する法案について、民社党としては基本的には賛成でございます。ただ、若干問題点があるので、それについて質問する予定でしたけれども、本日の同僚議員の質問でほとんど全部カバーされてしまって、同じことを質問するのもいささか気が引けるんでございますけれども、ただ、まあ最後の締めくくりの質疑でございますので、あえて重複をいとわず、民社党の考え方を確認しておくために若干質問申し上げたいと思います。
 個々の問題に入ります前に、まず最初に大臣にお伺いしておきたいと思いますが、今回の著作権法の改正の意義と申しますか、どういう目的を持っているか、そのことを最初にお伺いしておきたいと思います。
#222
○国務大臣(松永光君) コンピュータープログラムについて著作物として著作権法による保護を明確にすべきであるというのがアメリカ、その他先進国では既に実施されておるところでありますし、先ほど申し上げましたように、ユネスコの専門家の会議でも同様の意見が大勢を占めておる。国内の裁判所でも数件にわたって同趣旨の判例も出ておる。こういった情勢にかんがみまして、我が国の法律制度を国際水準に引き上げるということが一つの趣旨でありますが、同時に、著作権法によって著作物の保護を明確にやるということによりまして、プログラムの関係業界のより一層の振興を図ると同時に、それを通じてコンピューター関係の我が国の技術水準をより一層高めていく、こういったことを趣旨、目的として今回の法案の提案となった次第でありまして、この法律が成立することによって、プログラムに関する我が国の法制も世界の水準に達するというふうに考えておる次第でございます。
#223
○関嘉彦君 以下、次長に具体的な問題をお伺いしたいと思いますけれども、コンピューターのプログラムを著作物とみなして著作権法によって保護することの妥当性については、先ほど同僚議員からの質問もございまして、正直申しまして、私も若干の心理的な抵抗は感ずるところであります。
 しかし、著作権の歴史を見てみますと、最初は学術的な論文であるとかあるいは小説、絵画、音楽、そういったふうなものであったのが、技術の変化、社会の変化に応じて、あるいは映画であるとかあるいはレコードであるとかあるいは写真というふうなものも著作物として考えられるようになってきて、今日コンピューターの普及、コンピューター時代になりまして、そのプログラムは著作物とみなすということが今日の国際的な潮流になってきているわけでございます。
 確かに、先ほど次長も言われましたように、写真が初めてできたときに、これを著作物とみなすかどうかということについてはいろいろなやっぱり心理的な抵抗があっただろうと思います。それと同じような心理的な抵抗、我々戦前派で、コンピューターゲームを孫からいろいろしかられながら習っているような世代にとっては、若干やはり抵抗を感ずるわけですけれども、しかし、こういった言葉の概念というのは時代によっていろいろ変わってきている。技術的な変化によっていろいろ変わってきている。これはいろいろたくさんの例があるわけでありまして、著作物についても同じことが言えるだろうと思います。
 その意味で著作物として著作権法によって保護するのは私はやむを得ないと思うんですけれども、ただ、やはりコンピュータープログラムというのはいろいろな特性があるわけで、やっぱりその特性に応じた保護の仕方をしなければいけないだろうと思う。
 いろいろな点を挙げられると思いますけれども、一番大きな違いは、やはり従来の著作物というのは一応完成されたもの、これも程度の問題ですけれども、一応完成されたものということが言えるのに対して、プログラムは絶えず改変していく。改変していくことによって次々に新しい、あるいはよいものができてくる。これが一つの大きな特色ではないかというふうに考えられます。極端に言うと、一つのプログラムというのは改良が加えられるごとに、改良が加えられる限り、無限に続いていくわけで、なかなか完成品にはならないということが言えるし、その改良、改変のスピードも非常に速いわけであります。あるいはさらに、コンピューターのソフトの場合は、産業上の利用がほかの著作物に比べて非常に大きいということも言えると思います。
 したがって、その権利の保護がプログラムの発展、あるいはひいてはコンピューターを利用する産業全体の発展に障害を来さないようにすることが重要であると考えるわけですけれども、この両者のバランスを保っていくことが必要であるというふうに考えますけれども、その点の配慮をこの法案においてはどのようにしてなされておられるか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
#224
○政府委員(加戸守行君) 確かにプログラムは改良を加えることによってより機能を発揮するわけでございますし、その意味でいろんなコンピューターが機能重視という観点からする特性があるわけでございます。ただ、改変が加えられていくという、時代の進展に適合した改変が加えられていくというケースはコンピュータープログラムだけには限りませんで、例えば職業別電話帳も一年たてば電話が変わっていく。あるいは百科事典にいたしましても、新しい用語ができてくる。時代が進展していくという場合によって、それぞれの改訂が行われていくわけでございます。
 ただ、この場合は同一の著作者がみずから直す場合で問題がございませんけれども、コンピュータープログラムにつきましてはそれを商品として買った者がみずから改良を加えていくというケースでございますので、そういった視点に立ちまして著作権法の中では第二十条の同一性人格権に規定を設けまして、プログラムの効率的な利用の観点からする改変は許容するというのが著作権法二十条の改正でございますし、また同じく四十七条の二の新提案でございますけれども、プログラムの複製物の所有者がみずからそのコピーをとるあるいは改良を加えて翻案をするということはその複製物を適法に利用する者が自己の所有しているプログラムについて改変を加え、あるいは翻案を加えるということを可能にするための改正提案も申し上げているわけでございまして、これらはコンピューターの持っております改良を加えるという宿命的な性格というのを前提といたしまして、その機能面を重視し、かつ効率的な利用を図るための措置は著作者人格権あるいは著作権の侵害にならないというような措置を講じたのがコンピューターの特性に見合った措置であろうかと思
います。
 そのほか、従来の著作物と若干異なりますのは、いわゆる著作物の利用といいますか、コンピュータープログラムがコンピューターを操作することによって初めて意味を持つものでございますので、そういった使用権の問題があるわけでございますけれども、これは中長期的な検討課題にはいたしておりますが、当面の措置といたしまして、海賊版プログラムが例えばビデオゲームのゲームセンターにおいて利用されているようなケースにつきまして、これを著作権侵害とみなすという措置を一応百十三条二項の提案によって措置しているわけでございます。いずれも二十条の三号追加あるいは四十七条の二の創設あるいは百十三条の第二項の改正規定はいずれもコンピューターの特性に見合った著作物、コンピュータープログラムの著作物の属性として合理的な規定として設けようとしているわけでございます。
#225
○関嘉彦君 今、次長言われましたように、コンピューターのプログラムというのは絶えず改変されていくあるいは翻案されていく、しかしその場合にそれが改変あるいは翻案であるのか、新しい著作物であるのかということはなかなか難しい。したがってしばしばトラブルが起こることが予想されるわけであります。現在の著作権制度でも著作権に伴うところの紛争につきましては、それを処理するためにあっせん制度が文化庁の中に設けられているわけですけれども、今までそういった従来の著作権についての紛争のあっせんはどの程度今まで利用されてきましたですか。
#226
○政府委員(加戸守行君) 昭和四十五年の著作権法全面改正の際、著作権紛争解決あっせんの制度を設けたわけでございますが、制度創設以来、と申しますのは四十六年一月一日の法施行以来今日まであっせんという形で正式にこのあっせんの申請があったケースは十五件でございまして、それ以前の段階で事実上の御相談を受け、いろいろ助言を申し上げて、事態が事前に解決された事例等は相当数ございますが、法律上のあっせん制度の活用の申請があったケースは、ここ十四年間で約十五件、つまり年に平均いたしますと一件程度ということでございます。
#227
○関嘉彦君 あんまり利用されていないと言っていいと思うんですけれども、その利用されないのはどういうところに原因があるんですか。
#228
○政府委員(加戸守行君) 著作権をめぐりますトラブルの多くは盗作あるいは海賊版というようなケースでございまして、これは両当事者の話し合いによってとか、あるいは文化庁のあっせん制度によって解決するにはもともとなじまない性格のものでもございますし、そういう意味では法解釈上の疑義あるいは十分な著作権法の理解がないために両者間に考え方の食い違いがある。そこを専門的な見地からあっせんを行うというのがあっせん制度でございますので、実態的にはいわゆる盗作問題というのは訴訟にまず持ってまいりますし、あっせん制度にまいる事例は少ない、そういう意味で法解釈上の疑義といいますか、認識の相違というものであっせん制度によって両者が歩み寄る余地があるものというのが、ケースとしてはそれほど多くなかったのではないかというぐあいに考えております。
#229
○関嘉彦君 今度、そのプログラムが著作権の中に加えられるようになった場合に、そのあっせん制度がどの程度利用されるか、どういうふうにお考えか、そのことと、それから、そのあっせんのためのあっせん委員といいますか、それが必要になると思いますけれども、どういう人たちをそのあっせん委員に選ばれる考えでおられるか。それからまた、このプログラムの問題は非常にスピーディーに処理する必要があると思うんですけれども、その対策をどういうふうに考えておられるか、このことをお伺いしたいと思います。
#230
○政府委員(加戸守行君) プログラムに関する著作権の紛争が想定されるわけでございますが、やはり盗作問題等につきましてはあっせんには必ずしもなじまないといいますか、両当事者が合意しないということが考えられますので、両当事者間の申請としてはいわゆる例えば今回の改変に該当するのか、複製、翻案に該当するのかというような特例規定の解釈の問題等で双方に権利者あるいはユーザー側における認識の差とかいうようなものがあっせんとして申請されるケースがあり得るだろうと考えておるわけでございます。
 ところで、あっせんの制度といたしましては、三名の委員によって、三名以内の学識経験者によって構成する建前をとっておりますが、従来のあっせん制度におきまして、これまでの事例といたしましては、一人が弁護士、一人が著作権関係の学者、一人が実務家という観点で三者構成をとっております。その趣旨で申し上げれば、プログラムに関するあっせんが申請されるといたしますれば、当然同様な観点から無体財産権関係の弁護士、それから著作権法関係の学者、並びにコンピューター関係の実務家という形で三者構成をとることを予定いたしております。
 なお、このあっせん制度は趣旨といたしまして簡易かつ迅速な解決を目途といたしておりますので、長い時間をかけて慎重に審議するということではなくて、両者の考え方を聞いて専門的見地からのあっせんを行うという形でスピーディーな処理を期しておるわけでございます。
#231
○関嘉彦君 このコンピュータープログラムを著作権法で保護することについて業界の考え方は、従来はむしろ反対であったというふうに聞いているんですけれども、この間当委員会で参考人の意見陳述があったんですけれども、その意見では、基本的には賛成だ、業界の人たちは賛成だと。しかし、そういった業界の考え方というのは大体その参考人の意見によって代弁されていると考えてよろしいでしょうか。
#232
○政府委員(加戸守行君) 昨年著作権法改正を内容といたします文化庁試案を公表いたしまして、それをベースに関係団体から御意見を聴取しました段階におきましては、例えばこのあっせん制度につきましてはもっと強力なあっせん制度、仲裁裁定制度というのが欲しいというような御意見等があったことは事実でございますが、先ほどお答え申し上げましたように、いわゆる司法に準ずる強制的な手段というものを法制度として設けるのはいかがかという形で見送りになった経緯もございます。
 なお、それ以外の分野、つまり著作権法の一部改正案につきましては、昨年の段階では通産省のプログラム権法構想もございましたし、どちらかというと関係業界はプログラム権法の肩を持つといいますか、支持の方向が強かったような感じはいたします。しかしながら、本年度になりまして通産省との協議が整いました結果として、関係団体の方の意見も著作権法による改正案について賛成をいただいておるわけでございますし、先般の参考人陳述で三次参考人あるいはゲームセンター関係の協会の中村参考人等から開陳されました意見が、現在の業界あるいは関係者の意向を代弁しているものと理解いたしております。
#233
○関嘉彦君 このコンピュータープログラムというのは、先ほども申しましたように、経済的な利益を伴う産業界に非常に影響するところが大きい問題だと思うんですけれども、そういったプログラムに関する情報を国内においては中小企業なんかの人たちに対して十分提供することが必要だろうと思いますし、また国際的な公益の点で非常に密接な関係があると思うんですけれども、国際的にも絶えず情報の交換というふうなことが必要ではないかというふうに考えられます。それに対してどういう対応策を考えておられるのか。
#234
○政府委員(加戸守行君) 従来から著作権制度の問題につきましては、文化庁の取り組みの仕方といたしまして、常に制度改正に当たりましては審議会に審議をいただき、かつその都度報告等をいただきました段階、あるいはその途中段階でも関係団体からのヒアリングをいたしますし、あるいは結果が出まして一つの法改正の方向で試案を公表し、また御意見を求めるという形で関係団体との連絡を密にし、かつ意見を吸収することに努めてまいっておるわけでございまして、そういった
システムは今後とも続けてまいりたいと考えております。
 一方、国際関係におきましても、毎年いろんな形で著作権に関します国際会議が開かれておりまして、当方からもそのメンバーの一員として参加をしているわけでございまして、国際会議の場におきましても情報交換、意見交換等が常にあるわけでございます。ただ、コンピュータープログラムの保護の問題につきましては今までの会合におきまして、また特に本年の二月二十五日から三月一日までジュネーブで開催されましたユネスコ・WIPOの合同の専門家会議等におきましても、日本政府としてはプログラム権法構想と著作権法一部改正案との考え方の二つがございまして、その事実関係を報告するにとどめ、我が日本政府としての統一的態度の表明ができなかった状況もございまして、外国の著作権関係者の方からは、ソフトウエアの世界第二の生産国である日本がまだ態度が決まらないのはおかしいではないかということを、大分苦情を言われたということも事実でございますし、そういった面の反省はしているわけでございます。
#235
○関嘉彦君 最初に申しましたように、コンピュータープログラムを著作権法で保護することについては原則的に賛成なんですけれども、しかし同僚議員から質問がありましたようにいろいろ問題点はあるわけであって、例えば保護期間の問題、著作権の保護は五十年ということになっていますけれども、一つのプログラムが次々に翻案されあるいは改変され続けていくと著作権を持つ人がそれだけ非常にふえてくる。しかもそのスピードもかなり速くなっていくんじゃないかというふうに考えられ、それに伴って現在では予測されないようないろんな障害も起こってくるんではないかということが考えられます。
 また、著作権では使用権というものがなくて、このために海賊版なんかつくられた場合でも、海賊版つくった人は処罰できますけれども、それを使う人に対してどういうふうにして対処するかというふうな問題もあるように思うのであります。
 それで、こういったふうな問題は、単に日本だけじゃなしに諸外国でも直面している問題だと思うんですけれども、日本もそういった諸外国の動向を絶えず考慮しながら対応していくことが必要だと思うわけです。こういったふうな問題、保護期間であるとか使用権の問題について諸外国では一体どういうふうに考えているのか、あるいはどういうふうに対処しようとしているのか、そのことをまずお伺いしたいと思います。
#236
○政府委員(加戸守行君) 現在のところ、ベルヌ条約上では五十年の保護期間が義務づけられておりますし、一方、万国著作権条約の上では二十五年の保護期間が義務づけられているわけでございまして、世界各国、ベルヌ条約加盟国であれば一般の著作物と同じように五十年以上の保護期間をプログラムについても適用する。一方、万国著作権条約加盟国の場合におきますれば二十五年以上の保護期間を適用するという考え方で、特段一般の著作物とプログラムとの間の差異は設けていないし、また設けようとする動きも現時点ではないわけでございますが、ただベルヌ条約加盟国の中にありましても、具体的には例えばオーストラリアが昨年著作権法を改正いたしましてプログラムの保護を図りましたけれども、長期的にはこの保護期間の問題については再考の余地ありという考え方をとっておるような国もございますし、そういう意味では、この五十年がプログラムの保護として妥当するのかどうかということは一議論いずれあるだろうという感じはいたします。これからのプログラムの流通の実態あるいはその寿命、実態的な社会取引の状況等も勘案する必要もございますし、関係業界の意見もございますし、また国際的な動きも当然あり得るだろうと想定はいたしているわけでございます。
 一方、使用権の問題でございますが、この問題は、著作権法上のあるいは著作権制度の枠の中で設けるといたしますとかなり強力な権利でございまして、従来の著作権法の立て方からするならばかなり慎重を要する事柄でもございます。そういう意味で、現時点におきまして世界各国の動きの中で使用権を設定しようとする動きは今のところ見られません。ただ、使用権的な考え方についてはそれぞれ理解を持ち、あるいはそういう方向での検討もあり得ると思いますし、それは今後の推移を見なければなりませんが、今のところ直ちに使用権を取り入れようという動きは出てこないのではないか。しかし、今後のコンピュータープログラムの使用の実態、あるいは社会におきます使用権の必要性というものの認識がどの程度深まっていくかによっても考えられる問題でございますと同時に、今申し上げた実態問題のほかに、理論的な面でも、それが著作権制度に妥当するかどうかというのは一議論あり得るだろうと思います。非常に難しい問題でございますが、将来の中長期的な課題として検討していくべき事柄だと考えております。
#237
○関嘉彦君 今、次長からお話がありましたように、プログラムの保護に関してはいろんな問題が予想されますし、殊に今後の技術変化、技術の進歩によっては現在の予測を越えたいろんな問題が起こってくるんじゃないかというふうに考えられます。つきましては、こういったふうな変化に対応するためには非常にフレキシブルに、柔軟に対応していくことが必要ではないかというふうに考えます。それについて文部大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
#238
○国務大臣(松永光君) 先生、御指摘のように、技術革新が非常に影響する、また技術革新のスピードが大変速い、そういう分野の著作物であるわけでありますから、この保護のあり方、今回の法改正ですべてこれで終わりというふうなことてはなくして、やはり国際的な動向、国内のいろんな動き等々を十分配意しながら、時代に合うような形でよりよい保護のあり方に持っていくことが大事なことだというふうに思いますので、そういう点については今後とも十分配意していきたいというふうに考えるわけでございます。
#239
○関嘉彦君 以下はコンピュータープログラムに直接関係する問題ではなしに、著作権に関連する新しい課題とでも申しますか、プログラム以外にニューメディアでありますとかあるいはデータベース、そういったふうな問題なんかも出てくるだろうと思います。
 それで、これらについては現在、著作権審議会で検討されているというふうに承っておりますけれども、その状況についてごく簡単で結構ですから御報告願いたいと思います。
#240
○政府委員(加戸守行君) 昨年から著作権審議会の第七小委員会におきまして、ニューメディア並びにデータベースに関する著作権問題の御検討をお願いしているわけでございます。第七小委員会には分科会を二つ設けまして、ニューメディア分科会とデータベース分科会を設けておりまして、そのうちデータベース分科会からは昨年の十二月に一応中間報告をちょうだいいたしております。そこでは、データベースに蓄積されます情報のうち、例えば論文、新聞記事などの全文または抄録は著作物であり、コンピューターの記憶装置への蓄積については複製権が及ぶというような考え方が示されております。さらに、データベースそれ自体につきましては、その作成過程に創作行為という知的活動があるということで、著作物であるとの考え方、判断を示していただきまして、なおそのデータベースの全部あるいはある程度まとまりを持った一部分を複製すればデータベース作成者の複製権が及ぶという考え方も示されております。そのほか、データベース及びそこに蓄積されます著作物の送信とかあるいは改変あるいは音声映像形式のアウトプット等につきましては著作権法の一般原則が適用されるわけでございますが、例えばデータベースのオンラインシステムによりますサービスのように問題点もございますので、これらに関しましてはニューメディア分科会との議論と並行しながらなお詰めていくという形でございまして、一応の概括的な現時点での考え方はございますが、ニューメディア分科会からも一応
の今秋、秋までに報告をいただき、両者を総合した方で第七小委員会としての結論をまとめたいという考え方で進めているわけでございます。
#241
○関嘉彦君 これは先ほども同僚議員が質問されたことですけれども、著作物の大量複写、コピー、ゼロックスコピーなんかでとる大量複写の問題、図書館であるとか教育機関以外のところでの複製は事前にその著作者の許諾、許可を得なければならないということになっているんですけれども、現状ではほとんど野放し状態ではないかと思うんです。それに対して文化庁、どういう今後取り組みしていかれるか、そのことをお伺いしたいと思います。
#242
○政府委員(加戸守行君) この問題につきましては、文化庁におきまして集中的権利処理機構に関します協力者会議、調査研究の協力者会議というのを設置いたしまして、昨年の四月に最終の報告をちょうだいいたしております。その中で、いわゆる大量の複写、複製問題に関しましては集中的権利機構の設立によって対応するというのが現時点において適切な方策であるということを前提といたしまして、当該機構は著作者団体と出版社団体とが協議、協力してつくるという方向を示しております。
 その集中的権利処理機構で管理します著作物の範囲としましては、当初は学術関係の著作物を中心として進めたらどうであろうかというのが第一点。それから、集中的権利処理機構が権利処理を求めます複写といたしましては、例えば企業内複写のように無断で行えば違法となる複写というものが中心になるわけでございまして、なお図書館や学校等におきましてもそういった大量の複写が行われているわけでございますけれども、これは一応著作権法の規定に基づき厳正な運用がされるということが必要でございますし、そういった著作権法に基づく適法な複写、そうでない複写との間に当事者間でガイドラインを取り決める必要があるのではないかという考え方をちょうだいいたしております。さらに、集中的権利処理機構が利用者と包括的な許諾を結びまして、許諾につきましては包括許諾方式といたしますけれども、金額の徴収方式にしましては包括徴収方式にするかあるいは個別的な利用ごとの積算による個別徴収方式によるか、いずれかの形で使用料を徴収する、それから徴収した使用料はできる限り個々の著作者あるいは出版社に分配をするというような考え方で報告をまとめていただいたわけでございます。
 なおこの報告を受けまして、現在日本書籍出版協会を中心といたしまして御検討願っておりまして、現在書籍出版協会の中に集中的権利処理機構実行委員会というのが設置されておりまして、そこで今精力的な取り組みをしていただいておりますが、聞くところによりますれば、八月末にでも一応小委員会としての各四つの傘下の小委員会の検討結果を取りまとめるという方向で進められておるわけでございまして、そういった関係団体の自主的な取り組みの姿勢が一応進んでおる段階でございますし、そういった検討結果を待ちまして、具体的な設立の方向へいずれ向かうものと期待をしている段階でございます。
#243
○関嘉彦君 最後に大臣にちょっとお伺いしておきたいんですけれども、今後プログラムに限らず著作権をめぐっては時代の変化でありますとか技術の進歩などによって新しい問題が次々に生じてくることが予想されるわけであります。それらの問題に対しては、やはり十分国際的にも協力しながら、同時に専門家の意見を聞いて適切に対処していただきたいということを希望するわけですけれども、それについての大臣の所感をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
#244
○国務大臣(松永光君) 先生、御指摘のとおり、著作物の利用方法が非常に技術革新によって進歩発展をしておりますし、そのことの影響で著作物の保護のあり方につきましてもいろんな課題が現在も起こっておりますし、将来も出てくるであろう、想像にかたくないわけであります。したがいまして、先生御指摘のように、そういう課題につきましては国際的な動向、国内の専門家の意見等々を十分お聞きしながら時宜に適した対応策を樹立をし、実施をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#245
○関嘉彦君 終わります。
#246
○委員長(真鍋賢二君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#247
○委員長(真鍋賢二君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#248
○吉川春子君 私は著作権法の改正について反対の立場から討論をいたします。
 我が党は、目覚ましく発達するコンピューターのプログラムを知的生産物として保護することは重要であると考えており、自主的、民主的な発達を確保し、その利用開発が人類の福祉に役立てられるべきであること、したがって、ごく少数の巨大企業の利益にのみ活用させてはならないということを主張するものであります。この見地から本法案を見ますと、以下の理由で反対をせざるを得ません。
 第一に、著作権法によるプログラムの五十年という長期保護は、アメリカと日本の巨大コンピューターメーカーに長期にわたる独占的な利益を保障することを意味しており、今日、技術開発が急速に進んでいるもとでその障害となり、コンピューター利用技術の多様な発展を阻害すると考えるからであります。特許権が十五年としていることを見ましても、WIPO――世界知的所有権機関のモデル規定が二十年を提起したことから見ても、本法案は極めて長期の保護を保障するものであります。
 第二に、プログラムの無体財産権としての性格は、著作物とは極めて異質であり、その保護のあり方については文化庁と通産省、郵政省等の間においても、また学者、法律家等の間においても真に合意は得られておりません。それにもかかわらずアメリカの強い圧力によって本法が立法化されたのであります。日米貿易摩擦の解消や著作権法が国際的な大勢という理由は決して納得できるものではありません。
 第三に、本法案は、プログラムを著作権で保護することを目的としながら、法人の従業員で実際上の創作者であるプログラムの技術者の精神的所有権について全く配慮がなされていないことであります。契約または勤務規則等の規定によって自然人である従業員の権利保護の道が開かれていると言われますが、これが実際上空文であることは法人、企業と従業員及び派遣労働者等のプログラムの基本設計書等の著作物に対する権利の実態からも明らかであります。
 現行著作権法では映画の著作者は製作、監督、演出、撮影、美術等を担当し、その映画の全体的形成に創作的に寄与したものとして著作権は会社に帰属しますが、監督等は著作者であります。
 今日、プログラムを中心としたコンピューターソフトウエアの基本部分は周知のようにIBMを中心とするアメリカの独占企業が圧倒的に優位に立ち、日本のコンピューター産業をも支配下に置こうとしています。本法案は全体としてこのアメリカと日本の独占大企業の世界支配に手をかすことにならざるを得ません。つまり、日本の市場において優位を占めるアメリカの基本ソフトが秘密保持の契約のもとで公開されることなく五十年という長期にわたり保護され、IBM等に排他的に専有する権利が保障されるのであります。このことは我が国の自主的なプログラムの開発はもとより、産業、経済の発展を妨げるものであります。
 以上、反対理由を述べて討論を終わります。
#249
○委員長(真鍋賢二君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#250
○委員長(真鍋賢二君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 仲川君から発言を求められておりますので、これを許します。仲川君。
#251
○仲川幸男君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出します。
 案文を朗読いたします。
   著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、文化の発展に果たす著作権保護の重要性にかんがみ、あらゆる教育の場を通じて、著作権思想の一層の普及に努めるとともに、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
 一、プログラムの登録に関し別に定める法律の制定については、関係各方面との意見の調整を行い、速やかに対応を進めるとともに、今後ともプログラムの権利保護の在り方については、国際的調和に留意しつつ、中長期的観点から検討を行うこと。
 二、複写複製問題については、文献複写に関する著作権の集中的処理体制の確立に努めるとともに、出版者を保護するため出版物の版面の利用に関する出版者の権利の創設について検討を行うこと。
 三、私的録音・録画問題については、国際的動向にかんがみ、録音・録画の機器・機材に対する賦課金制度の導入など抜本的解決のための制度的対応について検討を進めること。
 四、著作隣接権保護の徹底を図るため、現在行っている「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」への加入についての検討を急ぎ、適切な対応を講ずること。
 五、ニューメディア、データベースに関する著作権問題については、早急に検討を行い、制度改正を含め必要な措置を講ずること。
 右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ御賛同くださいますようお願いをいたします。
#252
○委員長(真鍋賢二君) ただいま仲川君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#253
○委員長(真鍋賢二君) 多数と認めます。よって、仲川君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、松永文部大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。松永文部大臣。
#254
○国務大臣(松永光君) ただいまの御決議につきましては、御趣旨を体しまして今後努力をいたしたいと考えております。
#255
○委員長(真鍋賢二君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#256
○委員長(真鍋賢二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#257
○委員長(真鍋賢二君) 次に、昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。松永文部大臣。
#258
○国務大臣(松永光君) このたび政府から提出いたしました昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 私立学校教職員共済組合の給付については、共済組合設立以来、国公立学校の教職員に対する給付の水準と均衡を保つことを建前とし、逐次改善が進められ、現在に至っております。
 今回は、昭和六十年度における国公立学校の教職員の年金の額の改定措置等に準じて、私立学校教職員共済組合法の規定による既裁定年金の額の改定等を行うため、この法律案を提出することといたしたのであります。
 次に、この法律案の概要について申し上げます。
 第一に、私立学校教職員共済組合法の規定による退職年金等の額を、昭和五十九年度の国家公務員の給与の改善内容に基づいて行われる国公立学校の教職員の退職年金等の額の改定に準じ、昭和五十八年度以前の退職者に係る年金について、昭和六十年四月分から引き上げること等といたしております。
 第二に、既裁定の退職年金等の最低保障額を国公立学校の教職員の既裁定年金の最低保障額の引き上げに準じ、昭和六十年四月分から引き上げるとともに、遺族年金については同年八月分以後、さらにその額を引き上げることといたしております。
 第三に、掛金等の算定の基礎となる標準給与の月額の最高額を四十五万円から四十六万円に引き上げるとともに、最低額についても七万七千円から八万円に引き上げることといたしております。
 最後に、この法律の施行日につきましては、昭和六十年四月一日といたしております。
 以上がこの法律案の提案理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。
 なお、衆議院において施行期日等に関する附則の規定の一部が修正されましたので、念のため申し添えます。
#259
○委員長(真鍋賢二君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日行うことといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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