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1984/05/13 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 外務委員会 第9号
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1984/05/13 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 外務委員会 第9号

#1
第102回国会 外務委員会 第9号
昭和六十年五月十三日(月曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     藤井 恒男君     抜山 映子君
 五月九日
    辞任         補欠選任
     秦野  章君     園田 清充君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     秋山 長造君     菅野 久光君
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     嶋崎  均君     志村 哲良君
     園田 清充君     吉川 芳男君
     中西 一郎君     杉元 恒雄君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         平井 卓志君
    理 事
                宮澤  弘君
                久保田真苗君
                抜山 映子君
    委 員
                大鷹 淑子君
                後藤 正夫君
                志村 哲良君
                杉元 恒雄君
                夏目 忠雄君
                原 文兵衛君
                吉川 芳男君
                菅野 久光君
                黒柳  明君
                和田 教美君
                立木  洋君
                関  嘉彦君
                秦   豊君
   国務大臣
       外 務 大 臣  安倍晋太郎君
       農林水産大臣   佐藤 守良君
   政府委員
       外務大臣官房審
       議官       都甲 岳洋君
       外務大臣官房審
       議官       斉藤 邦彦君
       外務省北米局長  栗山 尚一君
       外務省欧亜局長  西山 健彦君
       水産庁次長    斉藤 達夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       警察庁警備局外
       事課長      赤木 孝志君
       海上保安庁警備
       救難部警備第二
       課長       西山 知範君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る四月二十五日、藤井恒男君が委員を辞任され、その補欠として抜山映子君が選任されました。
 また、去る九日、秦野章君が委員を辞任され、その補欠として園田清充君が選任されました。
 また、去る十日、秋山長造君が委員を辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。
 また、本日、嶋崎均君、園田清充君及び中西一郎君が委員を辞任され、その補欠として志村哲良君、吉川芳男君及び杉元恒雄君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(平井卓志君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(平井卓志君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に抜山映子君を指名いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(平井卓志君) 漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣。
#6
○国務大臣(安倍晋太郎君) ただいま議題となりました漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
 北西太平洋の二百海里外の水域における我が国のサケ・マス漁獲は、従来、昭和五十三年に締結されたいわゆる旧日ソ漁業協力協定を基本的枠組みとして、同協定に従って毎年締結されてきたいわゆるさけ・ます議定書に基づき行われてきました。
 しかるに、昨年五月、ソ連側は、国連海洋法条約の採択、経済水域に関するソ連邦最高会議幹部会令の発効等の新たな状況を踏まえ、同協定の再検討を行うことを提案し、さらに、その後六月下旬に至り、同協定の終了通告を行ってきたため、同協定は、昭和五十九年末日をもって終了した次第であります。
 このため政府は、北西太平洋の二百海里外の水域における我が国のサケ・マス漁獲の継続を確保するため、旧日ソ漁業協力協定及びさけ・ます議定書にかわる新たな協定を締結すべく、ソ連側と数次にわたり交渉を行ってまいりました。その結果、本年五月十二日にモスクワにおいて、我が方鹿取駐ソ大使と先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの協定の署名が行われた次第であります。
 この協定は、九カ条から成っており、北西太平洋の二百海里外の水域におけるソ連の川に発生するサケ・マスの我が国による漁獲について定めるとともに、北西太平洋の生物資源の保存、管理等のための協力を初め日ソ間の漁業の分野における協力について定めております。この協定の有効期間は、一九八七年末日までとされ、その後は一年ずつ自動的に延長されることとなっております。
 なお、今後、北西太平洋の二百海里外の水域におけるソ連の川に発生するサケ・マスの我が国による毎年の漁獲については、この協定に基づぎ設置される日ソ漁業合同委員会において実態交渉を行い、同合同委員会における協議の結果を日ソ両政府が承認した後に、これに従って行われることとなります。
 この協定の締結により、北西太平洋の二百海里
外の水域におけるソ連の川に発生するサケ・マスの我が国による漁獲の継続が確保され、また、日ソ間の漁業の分野における協力関係が強化されることとなります。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#7
○委員長(平井卓志君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#8
○菅野久光君 ただいま御提案になった本協定は、実に一年間という長い時間をかけて、しかも六回に及ぶ交渉を重ねてようやく締結されて、昨十二日調印式が行われ、本日我が国の国会での承認手続を済ませて、いよいよ漁獲量などに関する実態交渉が始まるわけでありますが、まず、外務大臣にお尋ねしたいのは、これほどまでに難航した理由は何だったのか、特に、基本的な対立点はどんなところにあったのか、ひとつ御説明をいただきたい、このように思います。
#9
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今次交渉の最大の焦点は、日本漁船による二百海里外でのサケ・マス漁獲の取り扱いであったわけですが、日ソ双方が国連海洋法条約の規定ぶりを念頭に置きつつも、母川国と漁獲国との間の権利義務関係のあり方をどう規定するかという点について、その意見調整が難航することは政府として当初から予想をしていたところでありまして、そのため早期に交渉を開始いたしまして、いわば腰を据えて実は交渉をしてまいったわけでございます。
 本協定は、今後毎年行われることとなる我が国のサケ・マス漁獲の実態交渉の基本的枠組みとなるものであります。今次交渉における安易な妥協は我が国のサケ・マス漁獲の実態に長期的にわたりまして重大な影響をもたらす結果となりますので、我が方の立場を最大限確保すべく努力をした次第でございまして、交渉を通じまして、ソ連は母川国としての権限の拡張解釈を図ろうといたしましたし、我が方としてはこれを抑えるように多大の努力を行ったわけであります。また、ソ連側としては、日本漁船の違反操業への不信感も非常に根強く、かかる違反の抑止を確保するための規則の強化を図ったのに対しまして、我が方は、伝統的な我が国のサケ・マス漁獲の継続を確保すべく努力をした次第でございまして、以上申し上げた点が、交渉が長引きました背景でございます。
#10
○菅野久光君 今回の交渉の問題について業界紙などがいろいろ報道をされておりましたが、この基本的な対立点も、最終的には海洋法条約六十六条の規定とほぼ同じ表現で反映させることでどうにか合意までこぎつけたけれども、基本的な考え方の差は依然払拭されておらず、今後に多くの問題を残しているというふうに報じられております。いえば玉虫色での決着というようなことも書かれているわけであります。もしそうであるなら、そのことが実態交渉にも何らかの形で影響するおそれもあるというふうに思うわけでありますが、そんなことはないんだ、基本的な考え方はきちっと一致している、だから実態交渉への影響も考えられないというふうに大臣はお考えになっておられるかどうか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
#11
○国務大臣(安倍晋太郎君) この点につきましては、大変難航した、いわゆる、母川国の管轄権を強化しようというソ連の主張と、漁獲国としての日本のこれまでの既定権益を守りたいという我が国の立場とぶつかる、そういう中で、海洋法条約に基づいて最終的な合意がなされたわけでありまして、私は、基本的には日本の立場も貫かれた、こういうふうに考えております。しかし、実態交渉は恐らく日本時間できょうの晩から行われるようになるわけで、これは毎年のサケ・マスの議定書の交渉に見られるような問題等も含めた厳しい交渉にもなると思うわけでありますが、まず基本的な枠組みが決まったわけでありますから、それをもとに一日も早く実態交渉を成立させなければならない、こういうふうに思っております。
#12
○菅野久光君 この協定の交渉で、先ほど申し上げたような、非常に難航してやっとこの協定までこぎつけたというようなことで、この後実態交渉に入った場合に、やはり漁民の方たちも心配するのは、その実態交渉が、この協定を締結するに至ったそのことと同じように大変難航して、それでなくてさえ五月一日の出漁期が大幅におくれるというようなことで心配をしておるわけで、たとえ玉虫色であったにしろ、一応の基本的な枠組みが決まったわけでありますから、そういう点を十分に踏まえて、何とか早くこの実態交渉がまとまるようにひとつ努力をしてもらいたいというふうに思います。特に海洋法に明記されている例外規定の経済的混乱の問題についてはなかなか厳しい対立と解釈の不一致があったというようなことなども伝えられていますが、そういったような問題等いろいろ難しい問題があるんだろうというふうに思いますが、その辺のところはどのように御判断なっておられるか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。
#13
○政府委員(都甲岳洋君) 経済的混乱の問題につきましては交渉の当初からかなりやはり中心的な問題として議論された論点の一つでございます。最終的に御案内のように二条の三の一という形でこの点が海洋法どおりに盛られておりますけれども、ソ連側としてはこの問題については日本に経済的混乱があるかどうかわからないという主張を当初しておりました。しかし、私どもとしてはこれは海洋法条約に盛り込まれた重要な原則規定の例外であるので、これを一緒にして盛り込むべきだという主張を強く行い、最終的にこのような形で盛られることにソ連側も同意した経緯がございます。
#14
○菅野久光君 ソ連側が日本において経済的な混乱はまあ云々という問題はやはり国の体制の違いなども大きくあるのではないかというふうに思いますし、そこのところが大変な私は日本にとっては問題だというふうに思うわけです。それで今日まで延びたわけで、そのことによって出漁がおくれた。それに伴う問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、本協定の締結がおくれたために実態交渉はいよいよ今夜からでも始まるというようなことになっているわけですが、先ほども申し上げましたように従来は五月一日から出漁ということで、実際にはもう漁期が来ているのに出漁ができないという状態にあるわけです。それでこのおくれた理由が先ほどから外務大臣を初め皆さん方からの御説明でよくわかりますが、途中で日ソ地先沖合漁業協定の締結交渉だとかあるいはこの実態交渉が入ったこともおくれたことの中の一つにあるのではないかというふうに思います。そういうようなものが入りながらしかしここまでこぎつけた当局の御努力については私も評価するにやぶさかではありません。しかし、この協定の締結の大幅なおくれが漁業者に大変大きな損害を与えている事実はこれは厳として存在しているわけで、政府間の交渉によっておくれたということで政府にとってもその責任は私は免れることはできないのではないかというふうに思います。
 今、全国のサケ・マス漁業者とかあるいはこれに関連することもあって地域関係者、そういった市民が集まって去る二日には根室で約千五百人、それから七日には釧路で約五千人、これは釧路だけではなくて全国からサケ・マスの関係の方々が集まった危機突破大会、それが開かれたわけであります。その決議文が外務大臣とかあるいは農林水産大臣を初め関係する行政当局にも陳情として出されているというふうに思いますが、両大臣は当然内容を承知しておられると思いますが、いかがでしょうか。
#15
○国務大臣(安倍晋太郎君) 本年における我が国のサケ・マス操業の開始が既に大幅におくれておるわけでございまして、地元の関係者の方々が事態を極めて深刻に受けとめられておることは私も十分承知をいたしております。また政府としてもこのような状態を深く憂慮をいたしておる次第です。今日としては政府としてまずやはり地元の
方々の一刻も早い出漁を求める声を真剣に受けとめまして、今次の実態交渉の一刻も早い妥結に向けて引き続き全力を傾けてまいる決意でございます。
#16
○国務大臣(佐藤守良君) 菅野先生にお答えいたします。
 今、外務大臣が申されたとおりでございますが、出漁の時期が遅延していることから、全国の関係漁業者等から早期出漁の確保とかあるいは漁場転換の実現等四項目の要望が出ていることは承知しております。私も実は関係漁業者と直接会ってお話を聞いたわけでございますが、昨十二日にこれは外務省の御高配によりまして、実態交渉のため水産庁長官を訪ソさせたところでございます。そんなことで、私としては関係漁業者等の切実な要望に対しできるだけ早期に安定的な操業条件が確保されるよう最大限の努力をいたしたいと、このように考えているわけでございます。
#17
○菅野久光君 出漁のおくれは漁業者だけが困るのではないことはだれしもよくわかっていることであります。特に関連する加工業者とかあるいは流通業者など幅広く甚大な影響が出てきております。根室では何か床屋さんでさえ例年と違って客足が少ない、外を歩く人の数さえ少ないありさまだということが言われておりますし、北海道新聞では、先月末には自殺者も出た、漁船用照明器具を売っていた根室の電機商でサケ・マス危機による商売の前途を悲観してのことという。この事実一つでもサケ・マス漁業に依存する釧路、根室など地元関係者の気持ちは察するに余りあると、こんなような状況が出ているわけであります。
 とにもかくにも一日も早く出漁できるように、また従来の実績が確保できるように実態交渉の妥結に政府は全力を尽くしてもらいたいというふうに思いますし、先ほど来経済的混乱云々という問題もありました。私も先ほど言いましたように、国の体制の違いということからなかなか日本の国内のこういったような状況ということがソ連側に理解できない部分があるのではないかというふうに思うわけです。それだけにこんな状況になっているということをできるだけやはり具体的に向こうのソ連の方々にも知っていただいて、長い歴史のあるサケ・マスの漁業の問題について実態交渉が妥結できるようにひとつ御努力をいただきたいというふうに思うわけであります。それと同時に、大きな打撃を受けることになった漁業者を初め関係業界の救済対策にも全力を挙げて取り組んでもらいたいというふうに思いますが、当局の決意のほどを伺っておきたいというふうに思います。
#18
○国務大臣(佐藤守良君) お答えいたします。
 先ほどちょっと申し上げたようなことでございますが、昨日、十二日に実態交渉のため水産庁長官以下を訪ソさせたところでございます。私としては関係漁業者等の切実な要望を体しまして、できるだけ早期に安定的な操業条件が確保されるよう最大限の努力をいたしたいと、このように考えています。
#19
○菅野久光君 先ほども申し上げましたけれども、五月一日出漁ということで、サケは水温に従ってだんだん北の方に行ってしまうわけですね。何か近くにいるのがどんどん北の方に、逃げて行ってしまうという言葉は適切でないかもしれませんけれども、いなくなってしまう。そういうことで、また実態交渉が今回の協定の交渉のように長引くんじゃないかということで、本当に一日、一時間という時間が漁業者にとってはたまらない思いでいるということなんです。ですから、何とか実態交渉がやっと始まるばかりなんですけれども、その辺の推移も見てということになるのかもしれませんが、実態交渉をやっている間にでも暫定的に出漁できるようにソ連と交渉することはできないのか。例えばことし一月に日ソ地先沖合漁業交渉でとられたような措置、暫定出漁、これはサケ・マスの交渉の方でも何とかとるように交渉してみてはどうか。地先沖合漁業協定のような相互に入れ合う場合とはちょっと事情が異なることはよくわかるのですけれども、しかし、おくれているこの実態、そのことによる大変な経済的な打撃、そういうことを含めてその辺いかがでしょうか。
#20
○政府委員(斉藤達夫君) 菅野先生御指摘のように、日ソ地先沖合協定のときには十二月の交渉が難航いたしまして、一カ月間だけ暫定出漁したわけでございます。この点につきましては、まさにこれも先生御指摘のように日ソ双方がお互いの海域に入って操業するという関係にありましたが、今回のサケ・マスにつきましては日本だけが公海で操業するという点で状況が違っております。それともう一つは、日ソ地先沖合の場合には双方が年間にわたって操業するわけでございますが、この漁業の場合には漁期がかなり短い、その中で、初めから暫定操業ということでの交渉はなかなかしにくい、それだけのためにまたいろいろな手がかかってしまう。まず始まる交渉に全力を尽くさせていただきたいと思うわけでございます。
#21
○菅野久光君 私も、事情がわからないのではないわけです。それで、一方的にということで申し上げたわけですけれども、先ほど申し上げたようなそういう事態で、またこの実態交渉の決着が延びるということになったときに、これは本当に大変な事態になるなということが想定されるものですから、先ほどからのお話のように日本の国内における経済的な混乱というものについて政治体制の違いからちょっと理解がされていない。もしもそうであれば、そういったような実態があるから早期にこの実態交渉も妥結するような、そういう努力というものは当然政府としてはなさるというふうに思うんですけれども、漁業者にしてみれば何としてでも、暫定でも何でもとにかく船を出させてくれというのが願いだということを踏まえながらやっていただきたいと思います。
 特に、そのうちで我が国二百海里内での小型漁船、これが直ちに操業に入ることくらいは何とかソ連を説得して認めさせるべきだというふうに思うんです。ソ連の母川国主義ということが非常に強くあるということはわかりますけれども、今のこういったような出漁がおくれているということなども含めて、我が国の二百海里内での操業は特別な考慮が払われてしかるべきではないだろうか。そうでないとすれば、何か我が国の主権が損なわれることにはならないかということもちょっと心配するわけであります。零細な小型漁船がいたずらに漁期の過ぎていくのを指をくわえて待っている、その気持ちを考えたときに、本当にソ連側にこの気持ちを何とかわからせるように全力を尽くしてほしいというふうに思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
#22
○政府委員(斉藤達夫君) 御指摘の日本の二百海里水域、日本海は既に出漁しておりますですけれども、太平洋の二百海里水域、この水域におきましては確かにサケ・マスの北上時期が早いわけでございます。御指摘の、まさに日本の二百海里の中の水域でございます。他方、今回の協定におきましては、日本の二百海里水域内でのソ連のサケ・マスの保存、管理に日本側が協力するという規定がございます。それからまた、一応出漁が実態交渉全体に及ぼす影響もある程度考えなくてはいけないというふうに考えます。しかしながら、基本的にはこれは日本の二百海里の水域であるという考え方に立ちまして、できるだけ早期にこの二百海里内の操業の分が出漁できるように検討をさせていただきたいと思います。
#23
○菅野久光君 できるだけということで、そのできるだけが本当にできるだけという、極めて近い時期にというふうになるようにお願いをしたいわけでありますが、ことしはやはり特殊事情だと思うんですね。この協力協定の締結がおくれたという特殊事情、これが決まれば三年間、後は一年間特になければ自動的にということでありますから、実態交渉などももっと早くにやれることになるわけでありますけれども、ことしは特殊な状況だという日本の国内の事情、そういうものをソ連側にも十分わかってもらうような努力をしていただいて、実態交渉が長引くような事態であれば、ぜひ政府としてもひとつ決断をしてもらいたいと
いうことをお願いをしておきたいというふうに思います。
 次に、中型サケ・マス漁業の漁場転換問題でありますが、太平洋の中型サケ・マス漁業の漁場転換問題は昨年初めて日ソ交渉の場に上ったわけであります。それで、この問題についてのその後の経緯について御説明をいただぎたい、このように思います。
#24
○政府委員(斉藤達夫君) 昨年の日ソのサケ・マス漁業交渉の際に日本側から太平洋の中型サケ・マス流し網につきましては、漁業経営の改善と資源保護の観点から、従来北緯四十四度を北限としておりましたけれども、北緯四十度以南での操業をやめまして、四十四度と北緯四十八度のより北の水域で操業させてほしいという要求を出したわけでございます。
 これは、理由といたしましては、サケ・マスは北に上がるに従いまして魚体が大きくなる、だから同じ一匹をとりましてもトン数が大きい、あるいは同じトン数をとる場合には少ない尾数で済むという資源保存の観点が一つと、それからもう一つは、同じ種類のサケ・マスであっても大型のサケの方が一キログラム当たりの単価が高い、経営上その方がいいのであるという理由から主張したわけでございまして、粘り強く交渉したわけでございますが、昨年はソ連側から肯定的な回答は得られなかったわけでございます。その後、昨年の九月、山村前大臣が訪ソされました折にカーメンツェフ漁業大臣にこの問題をもう一度提起されまして、両大臣の間ではしかるべき時期に科学者会議を持とう、ただしそれは今度の協力協定が締結されてからだということになっておりまして、残念ながらその科学者会議がいまだに開かれずにおったわけでございます。
#25
○菅野久光君 もしことしも漁場転換が実現できない場合には、出漁のおくれも重なって業界がいよいよ深刻な状況に陥ることは必至ですね。当局は今後この問題にどう対処していかれるのか、またどのような見通しを持っておられるのか、それをお伺いいたしたいと思います。特に、今お話がありましたが、科学者会議の開催についての方針、そういったようなものもあればひとつ明らかにしていただきたいと思います。
#26
○政府委員(斉藤達夫君) 先ほど申し上げましたように、ソ連側は日本側に対して今のところ肯定的な回答をしておりません。ソ連側が肯定的な回答をしておらない理由といたしましては、一つには、北に上がるに従いまして魚群が周密化いたしまして、特定の魚種をたくさんとるのではないかというようなこと、それからもう一つは、北に上がりますと、今までは漁場の北限だけを取り締まればよかった、ところが北に上がったときには北の限界と南の限界と両方の限界を取り締まりをしなきゃいかぬというような問題があるというのがソ連の反対する理由でございます。
 日本側は、先ほど申し上げました資源保存上の利点と、それからもう一つは経営上の利点と挙げて主張しておるわけでございます。これにつきまして、科学者会議を開催いたしますためには時間がかなり限られておりますので、科学者も今回の代表団に同行しておりますので、科学者の議論とそれから行政官の代表間の議論と重ねまして、関係漁業者が切に望んでおります漁場転換の実現に最大限の努力をいたしたいと思っております。
#27
○菅野久光君 念のために、昨年の交渉では漁場転換が実現しなかったわけでありますが、そのために中型のサケ・マス業界は大変大きな打撃を受けたわけでありますが、その実態について政府はどのように把握しておられるのか、それをお伺いいたしたいと思います。
#28
○政府委員(斉藤達夫君) 昨年漁場転換が実現しなかったことだけのために起きたのかどうなのかということはかなり難しいんでございます。年々の海況、漁況がかなり違っておるというようなこともありまして、一律には申せませんし、それから昨年も出漁の時期が五月十日におくれたというような事情がございました。特に、昨年におきましては中型流し網船のクォータ一万九千四百トンに対しまして一万四千七百八十二トン、クォータ消化率が約七六%であったということになっておりますが、これが一つには漁期のおくれと、それから昨年沖合での漁場の水温が早く上昇したというようなことが絡み合っておりますので、どの部分が漁場転換が実現しなかったことによるロスなのかということは確実には申し上げられないわけでございます。
#29
○菅野久光君 漁期のおくれだとかなんかいろいろなことがありますが、今までの調査研究の結果では、大体水温の上昇に従って北の方に上がっていくということだけは間違いがないわけですね。そういうことで、今回のように、いよいよこういうふうにおくれるということになれば、漁場の転換というものは何といっても漁獲量にも大きく影響するということで漁業者が強くその希望を持っているということだけは間違いかないことでありますので、その点についても今回の交渉の中では、漁場転換の問題については強くソ連側に要求をするということで出かけられているわけですね。
#30
○政府委員(斉藤達夫君) 御指摘のとおり、最大の問題の一つとして主張してまいりたいと思っておるわけでございます。
#31
○菅野久光君 ソ連は、非常に資源保護ということを含めて科学者会議について何か重視をしているようであります。そういう意味で、我が国の水産関係の試験研究体制、これも見直して、やはりソ連側が非常に資源調査関係を重点的にやられて、そのことがいろいろな水産の交渉の場合に強く出されてくるというようなことを考えれば、我が国のそういう体制もそういう方向に行くべきだ、そのことを充実させるべきだというふうに思うわけですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
#32
○政府委員(斉藤達夫君) これまでもサケ・マスの調査について水産庁の研究所、それから都道府県の試験場、総力を挙げて取り組んでおるところでございます。ただ、サケ・マスの調査につきましては二つの面がございまして、一つは沖合での調査、これは漁場でどの辺の海域に何月ごろにどういう種類のどのぐらいの大きさのサケが出てくるかというような問題が一つあるわけですし、それがどこの川と関係を持っておるかというようなことを、例えばうろこや血液型をとることによって調べるというような調査がございます。ただ、資源の、何匹サケ・マスが次の漁期にあらわれるかということになりますと、沿岸での調査、沿岸でのデータが十分整いませんと十分な資源の推計ができないわけです。率直に申し上げまして、ソ連側がその点で十分完全な資料を今持っているようには必ずしも思われないわけでございまして、これは今後の日ソの新しい枠組みでの委員会の中で科学的なデータを十分要求してまいりたいと思っておるわけでございます。
#33
○菅野久光君 時間もありませんので、協力事業の関係なんですけれども、これももう実に二百五十億円を超える協力をしているわけでありますね。それで、サケの資源関係なんかについてもかなり日本としても協力をしているという実態もあるわけで、お互いのそういったような事情等も踏まえて本協定を、せっかくここまできたわけでありますから、実態交渉についても今後の長期的な枠組みができたわけでありますから、これを生かすも殺すもこの実態交渉いかんにかかっているというふうに思いますので、漁業者の満足のいく内容でいわば一日も早く実態交渉が妥結できるように当局の御努力を心から期待をして、私の質問を終わります。
#34
○和田教美君 日ソ漁業協力新協定の交渉は、今お話がございましたように、約一年間、非常に難航したということでございますが、なぜ難航したかということについて先ほど外務大臣のお答えもございました。つまり、ソ連は母川国主義に基づいて母川国の権利を非常に強く主張したことに対して、日本側がいわば伝統的な漁業国としての実績の確保を主張して対立をして難航したということの説明でございましたけれども、それはそれで
よくわかるんですけれども、ひとつ外務大臣にお答え願いたいんですけれども、この交渉期間の大部分はいわゆる米ソ対立が非常に激しかった、そして日ソ関係も非常に冷却化しておった、こういう厳しい国際環境のもとで行われた交渉で、そういう国際関係、特に日ソ関係の冷却化というふうな関係がこの交渉の難航をさらに加速したというふうな側面がなかったのかどうか、その辺の総括をどういうふうにされておるか、お答えを願いたいと思います。
#35
○国務大臣(安倍晋太郎君) 確かに今回の協定は交渉が長引いたわけですが、これはやはり新しい海洋法時代になりまして、先ほどから申し上げましたような、ソ連の幹部会令がそれに基づいて発出をされるということで、新海洋法の秩序を、これを徹底させよう、そして母川国としての管轄権というものを強力に盛り込みたいというソ連側の考え方と、伝統的な漁獲国である日本のこれまでの権益というものをやはり守っていこうという日本の立場と、そこに大きな焦点を置いて調整が行われたわけでありまして、日本としても新海洋法に従って日本の立場を守り抜きたい、そしてこの漁業国としての、漁獲国としての漁獲の確保を図っていかなきゃならぬということで全力を傾けたわけで、これはやはり問題が問題であっただけに、そしてこれまでは毎年毎年議定書でやってきましたが、これからはこの協定でもってずっと行っていくわけですから、あとは実態交渉で行っていくわけです。
 この枠組みが大事なものですから、やはりこの枠組みということには腰を据えて日本としても頑張らざるを得なかったということであったわけで、私は全体的には日ソ間の漁業問題というのは、これはもう伝統的に、歴史的に実務的な問題として日ソ間で処理されてきました。いろいろと世界情勢が変化する中でも、この日ソ間の漁業問題だけは、漁業関係だけは実務的に処理されてきましたから、そう全体的な空気が影響したと、こういうふうには思っておりません。むしろ、全体的な空気としては緊張緩和という状況の方が出てまいりましたし、やはりそういう中でソ連もこの協定を結ばなきゃならないという、むしろソ連側の考え方というものを相当この交渉では主張しながらもその底には流れておったんじゃないかと、こういうふうに思っております。
#36
○和田教美君 新協定の第二条によりますと、まず溯河性の魚種のサケ・マスの漁獲については、母川国が第一義的利益及び責任を有することを認めるということになっております。そして、二百海里水域内と二百海里外の水域における漁獲に対する規制措置をソ連は一方的に決めることができるというふうな規定もございます。ただし、規制を実施する場合には日本との協議、合意が必要だということで、日本側のいわば何といいますか、反対意見というふうなものは認めておる、こういう建前になっておるわけでございます。また、サケ・マスの漁獲は原則として二百海里水域内においてのみ行われるというソ連の主張も入っております。
 ただ、例外として、さっきから出ております母川国以外の国に経済的混乱をもたらす場合はこの限りでないという国連海洋法条約第六十六条の例外規定の趣旨が援用されておる。それによって日本の公海での漁獲を認めるという、そういう構成になっておるわけでございます。さっきもお話ございましたように、結局玉虫色の妥協だということのようですけれども、しかしこの協定の全体を読んでみますと、やはりソ連の母川国主義という主張が非常に強く出ているように思われるわけでございます。
 そこで一つお尋ねしたいんですけれども、今言ったような規制の実施の場合には日本との協議、合意が必要だというふうなことの規定を盛り込んだことによって基本的には日本の漁獲の権利というものは認められた、日本の主張は大体七、八割通ったというふうに理解すべきなのかどうか、その辺は将来にわたってそういうことがはっきり言えるのかどうか、その辺をまずお答え願いたいと思います。
#37
○政府委員(斉藤邦彦君) 御指摘のとおり、この協定第二条三の一におきまして、原則としてサケ・マス漁獲は二百海里水域の内側でやるということを決めながらも、それが伝統的に漁獲を行ってきた国の経済的混乱をもたらす場合はその例外とするということが決められております。我が国は長年にわたりましてソ連の二百海里水域の外で漁獲を行ってきておりますので、これが漁獲が急にできなくなるという場合は当然経済的混乱が起こるわけでございます。したがいまして、この括弧の中に書いてあります原則に対する例外の規定によりまして、我が国がソ連のサケ・マス漁獲を二百海里水域の外で続けていくという権利は確保されているわけでございます。
 この規定のほかにもこの協定の中には、この二百海里外での我が国サケ・マス漁獲の条件について日ソ間で合意に達するため協議をするという規定とか、あるいは規制の実施に関する規定その他の関連規定、いずれも我が国がソ連の二百海里水域の外でサケ・マス漁獲を継続するということを前提として書かれております。したがいましてこの協定上、全体として我が国が二百海里の外で漁獲を行うことが確保されていると言える次第でございます。
#38
○和田教美君 交渉が長引いたもう一つの焦点といいますか、これは操業に対する取り締まりの問題であったというふうに聞いておるわけでございます。
 ソ連は母川国主義に基づきまして、日本側の漁獲を例外的に認めてやるんだから取り締まりについての主導権をとりたいというふうなことの主張だったということですが、日本側はもちろんこれに反対したということのようです。結局協定第二条四によりまして、規制の実施は日ソ両政府間の合意に基づいてやるということになって、すべて漁業委員会の合意が必要ということになったわけですが、これは大筋では従来どおりと変わらないというふうに見ていいのか、ソ連側は日本漁船を臨検、拿捕できるとか、あるいは裁判管轄権は日本側のみにあるというふうなこと、これは従来どおりでございますが、全体の規定の仕方は従来どおりというふうに見ていいのかどうか、その辺はどうでございますか。
 それと、こういう規定によって今後ソ連が一方的に規制についての判断、解釈をして、それによって取り締まりが強化されるというふうな可能性がないかどうか、その辺のところをお答えを願いたい。
#39
○政府委員(斉藤邦彦君) 御指摘のとおり、日本漁船の取り締まりの問題というのはこの協定の難航した主な理由の一つでございました。その結果できましたこの協定におきまして、ただいま御質問の従来どおりかという点でございますが、大筋としては従来どおりと言っていいかと存じます。日本漁船が遵守すべきものはこの日ソ漁業合同委員会の場で協議を経て、日ソ間で合意されたものに限られるわけでございますし、ただいま御指定のありましたとおり臨検、拿捕それから裁判管轄権の問題、これらはいずれも従来どおりでございます。
 ただし、国連海洋法条約が採択されたという新事態のもとで交渉されたということを反映いたしまして、必ずしも詳細に末端と申しますか、すべての点で従来どおりと言えないかと存じますが、その一つは規制措置はソ連側が決めるという規定が入っているところでございます。これは従来にはなかった点でございますが、国連海洋法条約の規定をそのまま採用した次第でございます。
 我が方といたしましては、こういう規定はございますけれども、漁獲の条件を合意するために協議するとか、あるいは規制の実施は両国間の合意によるというような規定を入れたことによって我が方の立場も確保し得たというふうに考えている次第でございます。
#40
○和田教美君 これももう既に質問に出ておりましたけれども、これからの最大の焦点は言うまでもなくこの新協定に基づく実態交渉でございま
す。今度は漁期が非常に大幅におくれるというふうなことで、既に太平洋中型流し網あるいは小型流し網などに対する影響は非常に深刻だということでございますけれども、最近の新聞情報によると、ソ連側もできれば今月の二十日ぐらいまでにはひとつ妥結をしたいということを言っているというような報道もございましたし、一般には日本側では相当おくれる、早くても今月いっぱいぐらいかかるんではないかというふうな予想もしておられたようですが、既に水産庁は現地に交渉団を派遣をしているわけなんですけれども、その辺はどういうふうな情報でございますか。多少はソ連側も何といいますかね、前向きになってきたというふうに見ていいのかどうか。やはり相当難航すると判断をされておるのか。
#41
○政府委員(斉藤達夫君) 昨日協定に署名をしました際に、カーメンツェフ漁業大臣と鹿取大使との間でいろいろお話があったように伺っておりますが、先方としては、できるならばあるいはできる限り一週間ぐらいで交渉を終えたいということを言っているようでございます。しかしながら、早く終えるということが我が方にとって内容のいいもので早く終えるということであれば歓迎でございますけれども、そうでない場合にはやはりいたずらに早くということで内容をとり損うということかないように心がけなくてはいけない、非常に苦しいところだと思います。
#42
○和田教美君 まだ何とも判断はできないということですか。
#43
○政府委員(斉藤達夫君) おっしゃるとおりでございます。
#44
○和田教美君 そうすると、漁期が仮におくれるというふうなことになった場合に、今月末ぐらいまでもかかるというふうなことになった場合には、サケ・マスはどんどん北に上っていくわけですから漁獲量にも相当影響してくるというふうに考えざるを得ないわけなんですけれども、その漁獲量についても大体今までは四万二千五百トンかでずっと一定をしておったのが、去年は四万トンになっておりますね。これは今度の新しい協定に基づく実態交渉によってさらにそれがソ連側の厳しい要求で減るというふうな可能性はないんでございますか。
#45
○政府委員(斉藤達夫君) ソ連側の一貫した主張といたしまして、最近の資源水準というのは実はこの十年ぐらい前と比べてみますとかなり改善されているはずなんでございますけれども、先方は一九三〇年代の資源と比べまして、そのときと比べて低い水準にあるということを強く言っておるのが昨年あるいはそれ以後のいろいろな折衝を通じての先方の言い分でございます。したがいまして、本年におきましてもソ連側があるいはクォータの削減を厳しく要求してくるという可能性はどうしても排除できないのではないかと思うわけでございますが、やはり北洋サケ・マスに依存している漁業者、関連業者のことを考えますと、私どもといたしましては安定的な操業条件が確保できますように最大の努力をいたしたいというふうに考えるわけでございます。
#46
○和田教美君 交渉がおくれた場合に、先ほども言いましたようにサケ・マスが北に上るから漁獲量が減ってくる危険性があるというふうなことを食いとめるために、先ほども議論が出ておりましたけれども、従来の漁場を北方に拡大してもらうという要求ですね。この問題については今の水産庁の御説明によると、ソ連の態度はなかなかかたくてそう簡単にいかない、科学者の会議の結論を待つというふうなこともあってそう簡単にいかないということだとすると、今度の交渉で間に合わないという可能性がかなりあるのでございますか。
#47
○政府委員(斉藤達夫君) これから交渉いたします内容のうちの最も重要な部分でございまして、これの実現に最大限の努力をしたいということしか今の段階では申し上げられないわけでございます。
#48
○和田教美君 もう時間もなくなりましたので、ひとつ安倍外務大臣にお答え願いたいんですけれども、外務大臣は八日の記者会見で、ボン・サミット後の外交展開について、世界情勢は緊張緩和に動いておりその流れをさらに増幅させなければならないというふうに語られたという記事が出ておりました。これはもちろんベトナム、イラン、イラクというふうな問題への取り組みを積極的にするということ以外に、ソ連との対話、平和外交に積極姿勢を見せたものだと思いますし、私は非常にそれは結構なことだというふうに思うんです。ソ連の副首相がもう来日しましたね。それから今月下旬から東京で租税条約交渉が始まったり、また文化協定の問題について日本側から近く提案をするというふうないろんな動きをされておるようでございますけれども、今、私冒頭に申しましたように、日ソ漁業協力協定の交渉一つを見ても、ソ連との間に対話の積み上げということは非常に重要なことであるというふうに思うわけでございますけれども、その辺について外務大臣としてはこの緊張緩和を積極的に進めるというための構想、具体的にどういうふうな大構想をお持ちなのか、その辺をお答えを願いたいと思います。
#49
○国務大臣(安倍晋太郎君) やはり私は米ソの核軍縮交渉が再開をされ、そして米ソ首脳会議が行われる可能性が非常に濃厚に出てきた。世界には地域紛争は続いておりますが、しかし、世界全体のそうした米ソの対立、東西対立という状況が少し緩んでき始めて、場合によりましては、これが一挙に進んでいく可能性も出てきたという方向に進んでおる、やはりこの機を日本外交は外してはならないというのが私の考えでありまして、この機を外さずに日本としても日ソ関係の改善をできるだけ行っていかなきゃならぬし、あるいはまた地域紛争に対しても日本の貢献というものを行っていかなきゃならぬと、こういうふうに思っております。したがって、日ソ関係におきましても、領土問題という基本的な対立はありますが、昨年来から我が国のイニシアチブによりまして種々のレベルでの対話、交流が行われてきておりますし、また日ソ関係改善のための環境づくりに一定の効果を上げていると思うわけでございます。
 今、文化協定等も近く提案しようと思っております。その他いろんな協定、租税協定等についても、支払い協定等についても見通しもつく、そういう状況でございますし、こうした積み上げによって理解を深め、そしてグロムイコ外相の来日を求めていきたい、そういう中で懸案問題も徐々に解決の方向へ何とか向けていきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、全体的に、今申し上げましたような日ソを初めとしまして、今、日本のできる平和への貢献を積極的にやっていくべきじゃないか、こういうことで努力をしておるわけであります。
#50
○和田教美君 終わります。
#51
○抜山映子君 この交渉は約一年ぐらい数次にわたって継続されてきたわけで、しかも五月一日に出漁期が来るということは、日本サイドとしては明確にわかっておったにもかかわらず、このようにおくれてしまって、実際の漁業に携わっている人に甚大な損害を与えてしまった。特に数カ月前に、もちろん日本サイドとしては早く締結しなければいけないという意識はあったと思うんですが、この五月に迫る時期においてもなおできなかった理由は、やはり先ほどおっしゃったような母川国としての権利と経済的損害ですか、混乱ですか、それとの対立に終始しておったんでしょうか。その点はいかがでしょうか。
#52
○政府委員(都甲岳洋君) 本件につきましては、私どもとしても漁期が考慮の中に絶えずあったわけでございますけれども、やはり基本的に新しい海洋法条約のもとで母川国としての権限とそれから伝統的な漁獲国として、特に公海で漁獲を行う日本国の立場というものの調整に苦慮をしてきたわけでございます。
 特に公海におきましては、伝統的な国際法上のいろいろな原則もございますし、それとの調和が明確に図られることが必要だということでございましたので、その原則的な問題については譲れない点が多くあったわけでございます。それと同時
に、今回の協定というのは長年にわたって今後の実態交渉の基本的枠組みをなすものでございますので、そこでどのような枠組みをつくるかということは、単に理論の面からだけでなく実態面からも漁業者にとっても重大な関心事項であったと私どもは承知しております。そういう意味で筋を通すところは通し、しかもバランスのとれた協定を結ぶということに時間がかかったので、漁期直前になって妥結をしたという状況にあったことを御了解いただきたいと思います。
#53
○抜山映子君 経済的混乱の資料の提供ですが、日本サイドとしてはどのようなものをお出しになったんでしょうか。
#54
○政府委員(都甲岳洋君) この点につきましては、交渉の経緯におきまして、我が方から我が国における北洋漁業の持つ意味、従来の実績、それからそれが地域社会に与える経済的な影響等を詳細なデータにしてソ連側に説明を何回か行った経緯がございます。
#55
○抜山映子君 協定の第二条の三の二でございますけれども、「再生産のための措置に参加し、特に、この目的のための経費を負担している場合には」と、このようにございますけれども、「再生産のための措置に参加」というのは現状はどういう形で参加しておられるわけですか。
#56
○政府委員(斉藤達夫君) 従来はソ連の河川でのサケ・マスのふ化増殖のためのいろいろな資材、あるいはそこで稚魚等を育成いたします飼料をつくる工場ですね、そういうところへの機械の供給、それらのための協力費を提供してきております。
#57
○抜山映子君 技術協力などは行われておるんでしょうか。
#58
○政府委員(斉藤達夫君) ただいま申し上げました協力費の支払いのほかに、相互の科学調査船への科学者の相互乗船とか、あるいはいろいろな新しい品種の種苗の交換とか、あるいは専門家間のいろいろな資源状態についての意見交換、あるいは科学者の相互派遣というようなことを繰り返してきております。
#59
○抜山映子君 特別の考慮を払うというこれの具体的意味はどういうことでしょうか。
#60
○政府委員(斉藤邦彦君) この特別の考慮を払うという表現が具体的にどのような意味を持つかということは、今後のこの協定の運用を通じまして明らかにされてくるものだと存じますけれども、原則といたしましては、日本がここに書かれてありますような形でソ連のサケ・マス資源の管理等に貢献をしてきたということを、ソ連側もこの漁獲の条件等を日本と協議して決めるに際して考慮に入れなければいけないという規定でございますので、この規定があるために今後のいわゆる実態交渉において我が国の立場が強まっているという事情にあると存じます。
#61
○抜山映子君 同条の四の二の(d)でございますけれども、「刑を科する管轄権を有する。」とございますね。これは漁業法で刑を科することになると思うんですけれども、従来、地先沖海域での操業違反はソ連の国内法で処罰されておったわけですね。これは大体罰金はどれぐらい実例がございますでしょうか。
#62
○政府委員(斉藤達夫君) ソ連の二百海里水域内での操業条件の違反につきましては、昨年二月二十八日付のソ連邦の経済水域に関する最高会議幹部会令第十九条の規定によりまして、一万ルーブルまでの罰金が科されるということになっております。最近見ますると、一件当たり平均約二百万円程度の罰金を取られておるというのが現状でございます。
#63
○抜山映子君 日本の漁業法の法定刑に比して、ソ連のは漁業者に経済的にダメージがかなり大きいように思うんですが、日本の漁業者に科せられる処罰は大体どれぐらいかおわかりになっていませんか。
#64
○政府委員(斉藤達夫君) 漁業法に基づきます国内漁業者の違反に関しましては、漁業法及びこれに基づく省令によりまして、行政処分としての停泊処分、あるいは三年以下の懲役、または二百万円以下の罰金ということになっております。
#65
○抜山映子君 よく日本漁船が拿捕されるという実例がございますが、この協定に基づく拿捕はその場で帰されるわけですね。
#66
○政府委員(斉藤達夫君) 御指摘のとおり、拿捕された場合には早急に日本側の当局と連絡をとって、日本側に引き渡しをするということになっております。
#67
○抜山映子君 地先沖海域で拿捕された場合に、向こうに抑留といいますか、よくされておるようですが、この期間は大体どれぐらいなんでしょうか。
#68
○政府委員(斉藤達夫君) 地先沖合協定に基づく違反の場合には、先ほど申し上げた罰金ないしはある種の担保金の支払いによって大抵の場合は即時釈放されております。
#69
○抜山映子君 しかし、場合によっては二年に及ぶようなケースもあるんじゃないですか。
#70
○政府委員(都甲岳洋君) 御指摘の件は、いわゆる領海内とソ連が主張しております水域での拿捕の事件の場合が多いと思います。その場合につきましては、二日から一番長い期間で十五カ月の間先方にとどめ置かれたという例が今までございます。
#71
○抜山映子君 警察庁に伺いますけれども、よくレポ船が横行しているということが言われますけど、これは地先沖とそれからこの本件のサケ・マス協定の海域ですね、この両方に分けてどのような実態でございましょうか。
#72
○説明員(赤木孝志君) いわゆるレポ船と申しますのは、ソ連側の働きかけを受けまして、あるいは利益を得るためにみずから進んでソ連側と連絡をとりまして、我が国の情報や資料、または金品をひそかにソ連側に提供いたしまして、その見返りに北方領土周辺海域におきましてソ連の承認のもとに拿捕のおそれなく安全に操業できる漁船、こういうふうに考えておるわけでありまして、過去警察といたしまして四件のこの種の事件を検挙いたしているところでございます。
#73
○抜山映子君 いかなる法律に基づいて今取り締まっておられるわけですか。
#74
○説明員(赤木孝志君) いわゆるレポ船と申しますのは、例えば我が国から物品をひそかに持ち出しますとか、あるいは検疫関係あるいは漁業関連法令に違反をするといったケースが多うございまして、この種の各種の法令によりまして私どもとしてはこれの取り締まりを行っておるところでございます。
#75
○抜山映子君 実際に現場は海の上のことですから、当然海上保安庁が取り締まりの管轄官庁になると思うんですけれども、海上保安庁の方で実際の検挙例なんかはございますんでしょうか。
#76
○説明員(西山知範君) 海上保安庁といたしましてはこれまでにレポ船を検挙した事例はございません。
#77
○抜山映子君 それはどうして、理由はどういうことでしょうか。実際にありながら検挙できないというのはどういうわけでしょうか。
#78
○説明員(西山知範君) レポ船にかかわる行為につきましては、関税法、検疫法、漁業関係法令違反がありました場合に、それぞれの法令違反として検挙することになりますが、レポ行為が専らソ連の主張領海内で行われておるということから、非常にそれの解明、検挙は難しい現状にございます。
#79
○抜山映子君 現行法における取り締まりの規定では多少不便であるというような面はございませんでしょうか。
#80
○説明員(西山知範君) 現行の国内法でできますが、なかなか実態の解明が難しいということでございます。
#81
○抜山映子君 最近、日本の河川におけるサケ・マスの増殖を図るためにいろいろ措置をしておられるというニュースを聞くんですが、実際にはどういうような対策をとっておられるでしょうか。
#82
○政府委員(斉藤達夫君) 水産庁といたしましては、サケ・マスの国民への安定的な供給と沿岸漁
業の振興を図るという見地から、サケ・マスがもとの川へ戻るという特性を利用いたしまして積極的にそのふ化放流事業をやっております。特に北海道におきましては、国営のサケ・マスふ化場を中心に道営、民営のふ化場が協力してふ化放流事業をやりますし、また本州におきましては、民営ないしは県営等のふ化場が育成した稚魚を県が買い上げまして放流する県営事業として実施しておるわけでございます。これらに対して国から一部の助成をやっておるわけでございます。最近では、放流尾数が全体で約二十億尾放流いたしますと、二十億尾より少ない親からかえったわけでございますが、五十九年の回帰量は約三千八百万尾、約十三万八千トン、これだけのサケが帰ってきております。今後ともサケ・マス類の需給動向を見きわめながら、食生活の高級化、多様化等に合わせた形で高品質のサケ・マスのふ化放流、造成に努めてまいりたいと考える次第でございます。
#83
○抜山映子君 今相当、十四万トン近くの数字を言われましたけれど、この協定に基づいて昨年の量が四万二千五百トンですか、それに比べましてかなりの量だということが言えると思うのです。国民の食生活という、こういうものをバックに交渉をするわけでございますので、日本としてそのスタンスを強めてソ連と交渉する意味におきましても、国内の先ほど言われましたような措置は今後もひとつ強力に取り組んでいただきたい、このように切望するわけでございます。
 最後に、一つお伺いしたいんですけれども、この更新期間が自動更新にはなっておりますが、一年ごとになっておるわけですね。この協定の内容を見ますと、実務的な量とか、細かい実際に刻一刻変わるような事柄はほとんど省いて、海洋条約ですか、そちらの方をほとんど引き移したような内容が多いにもかかわらず一年ごとの更新ということで、これは技術的には自動更新をして三年ぐらいに持っていけなかったかと思うんですけれども、このあたりについては交渉の経過はいかがだったんでしょうか。
#84
○政府委員(都甲岳洋君) 本件につきましては、我が方といたしましては、五年間の期間、その後一年ごとの自動更新という案を主張したわけでございますけれども、先方はやはり日ソ地先沖合協定に合わせて一九八七年の末まで、すなわち三年間をカバーするだけの期間にし、その後、一年間の自動更新という形を強く主張いたしまして、最終的にはそれに同意をしたという経緯がございます。
#85
○抜山映子君 終わります。
#86
○立木洋君 今までいろいろお尋ねしてきた同僚議員の内容と大して基本的に変わるわけじゃありませんけれども、早期の出漁の問題ですね、交渉上においてはこれは一つの重要な問題ですし、さらに漁獲量の確保、これもゆるがせにできない問題だし、さらには漁場の転換、交換ですね、これも極めて重視されなければならないという御答弁でした。
 問題は、これらのすべてをあらゆる面でこちらが有利な形で確保できるということは、これはもう最上ですけれども、しかし問題は、先ほども言われたように、ソ連側としては大体一週間ぐらいの実態交渉で何とか見通しをつけるようにしたい。しかし、その一週間の中身でいい中身になるかどうかというのが問題だというお話ですね。ところが、一週間たってさらに漁場の交換などの問題で努力をしてみたけれども、実際には漁場の交換もできなかった、そして出漁の時期がやはり非常におくれた。すると、今の四十四度以南ではもう魚がほとんどいなくなるというふうなことになると、これは最悪の事態になるんですね。だから一定の時期に、やはり早期に出漁する問題と、漁場の交換の問題や漁獲量の確保の問題を、一定の時期で決断を出さなければならない時期があるだろうと思うんですね。
 だから、水産庁としてはいろいろ、外務省もそうですが、どの時期にその決断を大体出さなければならないのか。仮に漁場の交換ができて六月から出漁が開始になっても、これは相当、四十八度以南ぐらいまで行ければある程度確保できますわね。だけど、そういうふうにならない最悪の事態ということも考慮に入れながら、最終的に決断を出す時期というのも念頭に入れておかなければ私はならないだろう。そうしないと、全く最悪の事態を避けて漁民や、あるいは漁業関係者の生活を維持していくためにも、つまり安定的な操業をしていくためにも、これは非常に重要だと思うんですが、そういうめどというか、見通しというか、どういうふうにお考えになっておられるのか、いかがですか。
#87
○政府委員(斉藤達夫君) すべての難しい問題を含んだ御質問でございまして、非常に交渉の中身自体、これからどう展開するか、最大限の努力をするわけでございますけれども、それにつきまして、いつごろどうするという今の先生のお答えに私がここで何か申し上げますと、それはそのまま新聞等で報道されまして、我が方の交渉団、足元を見られるのではないかということが心配されますので、御寛恕願いたいと思うわけでございます。
#88
○立木洋君 その意味はわからないわけではありません。しかし、そのことを十分に見きわめて、念頭に入れておいて交渉に私は立ち向かっていただきたい。最悪の事態になるということはいかなる場合でも避けなければならないわけですから、そのことは十分にお考えになっていただきたいということを要望しておきます。
#89
○政府委員(斉藤達夫君) 承知いたしました。
#90
○立木洋君 それから、当面の問題に限ってあれですが、先ほど農水大臣の方からお答えいただいて、同僚議員の方に、できるだけ早期に出漁ができるように、そして安定した操業ができるように全力を尽くしたいという決意のほどをお述べいただいたわけですが、実際に今の根室の事態などを見てみましても、これは根室の関連産業就業者、漁業就業の人口、全就業人口の中で見れば三五%を占めている。だが、ただ単に漁業関係者だけではなくて、関連産業の就業者についても非常に大きな影響をする。これが五十九年は五十八年に比べて九十二億円、つまり三八・七%水揚高が減少している。そして水産製品生産高でもこれは百二十八億円、前年比で減るというふうな状態になっているわけですね。倒産件数も年々ふえてきておりますし、もう四月までの間に既に根室だけでも七件発生している。あるいは今度釧路の方の状態、先日届けられた新聞を見てみましても、釧路市の漁協によっても小型船一隻平均一千万円近い先行投資をしている。これの一部借金の返済が、五月の末から六月の初旬の決済が始まるという状況で、大変なことになるというわけですね。これは早期に出漁し、漁場の交換などの問題、漁獲量の確保など、交渉の舞台では全力を挙げていただくということはもちろんなんですが、しかし、こういう実態に対して、やはりこれをこのまま放置しておくということは、根室あるいは釧路の漁民あるいは漁業関係就業者の人々にとっての生活にも大変な影響になるわけですから、こういう事態に対しては何らかの補償措置というのか、実態をよく調査していただいて、そういう手だてを講じることも必要ではないだろうかというふうに思うんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
#91
○国務大臣(佐藤守良君) 立木先生にお答えいたしますが、実は今おっしゃったようなことでございまして、きのう十二日にサケ・マスの実態交渉のため、これは外務省の御高配によりまして水産庁長官以下を訪ソさせたところでございます。
 私は、先ほども申し上げたようなことでございまして、先生のおっしゃるのは非常によくわかるのです。したがって実態調査はいたします。いたしますけれども、やはり基本的には関係漁業者等の切実な要望を体し、先ほど水産庁次長がお答えしたと思いますが、いろいろな角度におきましてできるだけ被害が少ないような形で早く妥結したい、そんなことで、いわゆる早期に安定的な操業条件を確保することに最大限の努力をいたしたい、このように思っておるわけでございます。
#92
○立木洋君 交渉の面で全力を挙げていただくのは当然ですが、そういう漁業関係者の実態もよくつかんでいただいて、本当に生活が元も子もなくなるような状態では、これはまさに日本の食糧資源である、たんぱく源のこの漁業の育成の問題にも大きく影響するわけですから、これは何としても双方兼ね合わせて全力を尽くしていただくように、このことを強く要望しておきたいと思うんです。
 それから、最後に外務大臣の方にお尋ねしておきたいんですが、御承知のように三年間のあれでという形に今度はなったわけですけれども、しかし、内容を見てみますと、同僚議員が既に指摘していますように母川国主義、この利益を第一義的に挙げて、しかもその規制措置までソ連によって行われる。それは合意においてということがもちろん入っていますけれども、こういう問題になると、やはり今後、毎年交渉が難航するという事態も繰り返されるのではないかというふうなことも懸念されるわけですね。
 ですから、そういう意味では今後のそういう交渉などの問題も考えて、恒久的な対策を考えていく必要があるのではないだろうか、外交交渉のあり方として。そういうことを兼ね合わせて進めていかないと、やはり一方では二百海里時代における漁業の抜本的な対策を講じると同時に、これはもう今や漁業問題というのは外交問題と切り離せない事態になっておるわけですから、そういう点でも根本的な対策をひとつ外務大臣、この際よくお考えいただきたいんですが、その点についての御所見をお伺いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#93
○国務大臣(安倍晋太郎君) 日ソ間の漁業問題は、これまでも伝統的、歴史的に、実務的に処理されてきましたし、そして交渉のあり方も込めて、新海洋法が実施されるという段階で新しい形をとって、今回、毎年毎年議定書でもってやってきたものを今度実態交渉は毎年やるとしても、新しい枠組みでもって協定をつくってこれは自動的に延長するという形をとったわけですから、私はこの一つのあり方というものが今後定着をして、そういう中で実態交渉で日本の漁獲国としての立場をいかに確保していくかという努力をこれから積み重ねていけばいいんじゃないか、こういうふうに思いますし、そのためにひとつ努力を傾けたいと思います。
#94
○秦豊君 水産庁お見えですか。
 今度の協定の第二条八項それから第三条、第四条にも当然これは広範にかかわっていく問題ですけれども、明記されている日ソ両国による科学的調査、これはまあかねてから言われている古い命題のはずだけれども、今年度以降どういうふうに具体化していくのか、何か一体重点なのか、この辺を聞かしてください。
#95
○政府委員(斉藤達夫君) 従来、日ソ間におきましては、日ソ漁業協力協定に基づきまして科学技術協力が実施されてまいったわけでございます。新協定下におきましても、従来日ソ間で実施してきた漁業に関する科学技術の協力というのが今後とも重要となると考えておりまして、その具体的内容につきましては新協定に基づく日ソ漁業合同委員会における協議によって決定されることとなるわけでございますが、この内容につきましてはほぼ旧協定における協力事項と同様に、日ソ双方の科学調査船への科学者の乗船とか、あるいは乗船いたしまして主要魚種についての資源の調査をやる、あるいは共同で専門家会議をやる、例えばサンマとかサバとか双方が共通の関心を持っておる資源についての合同資源評価会議をやる、あるいは双方で専門家を受け入れる、あるいは種苗の交換等を行うというようなものになるものと考えるわけでございます。
#96
○秦豊君 外務大臣、しょせんこれは広範な日ソ関係の重要な分野ですね。今度三年間、一応枠組みはできたけれども、一人の日本人の意識としてとらえ直すとこれで安心できる条件というのは何も見出せない、これが私自身の実感ですね。そうすると、やはり基本的な命題としては今後の日ソ外交に返っていく。
 そこで、外務大臣は方々で御発言になっていますけれども、グロムイコ外相の日本訪問問題、これがやや当面の手段、日ソ外交展開の手段の一つなんだけれども非常に目的化されている、また目的化してもいいほどの大きな意味合い、波及効果を持った問題だと思います。今この時点で安倍外務大臣の中では、グロムイコ訪日の公算、可能性というのは年度内というふうにかなりもつれ込んで長引いても実現するというお見通しなのか、あるいはそうではない、六十年という暦年の中において実現するというふうな展望をお持ちなのか、いかがですか。
#97
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは漁業問題とは離れた中で、日ソ全体のいわゆる関係改善、もちろん漁業問題も一分野であることは間違いありませんけれども、日ソ全体の改善問題の大きな一環としてとらえておりますし、これまでの対話をずっと続けております。また、米ソの軍縮交渉も再開されましたし、米ソの首脳会談も行われるという見通しもだんだん強まってきておりますから、そうした中で今日本がいろいろな文化協定等も提案しようとしておりますし、実務会談等もこれから進めていくわけでありますし、ソ連側としても我々の推測する限りにおいてはグロムイコ外相の訪日を前向きにとらえているという点もありますので、できれば年内にでも実現してもらいたいものだ、こういうふうに思っておるわけであります。しかしこれは今後の情勢次第だと、こういうふうに思います。
#98
○秦豊君 確かにそういう希望、強い願望をお持ちだろうと思いますし、ソ連側の空気も少しはやわらかになっている、これは私の持論のゴルバチョフ幻想の範囲には入らないと思うんですがね、それがはっきり時期が見えてくるのは、やはり安倍外務大臣がこの秋にニューヨーク、国連総会に出席をされ、そこでグロムイコ外相と会談が必ず持たれると思いますが、そのときにはその時期が見えてくるんじゃないでしょうか。
#99
○国務大臣(安倍晋太郎君) 時期的なことははっきり言える段階ではありませんけれども、早く見通しはつけたいものだということでいろいろと折衝しているわけなんです。秋ということになるともう秋以降ということになりますから、その段階で決めるということよりはむしろそれ以前に何とか見通しをつければつけたいものだと思っておりますけれど、しかしこれはそう簡単にいけるかどうか、相手があることですからはっきりしたことは申し上げられる状況ではありません。
#100
○秦豊君 私、実は勝手にとらえていましてね、国連総会の場で向こうの訪日日程が見えてくるんじゃないかなと思っていたら、大臣の意欲としてはそれ以前にもと、何とかつかみ取りたい、それは非常に大変結構だと思うんですが、安倍外交のアプローチの中ではニューヨークの国連総会を最大限度に活用してグロムイコ会談、それから一方の外交的なアプローチとしては中曽根総理のレベルとゴルバチョフ氏との会談というふうなものをもやはりこの秋の外交場裏で実現してみたいというふうなアプローチはかなり強力にお考えですか。
#101
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは日ソ関係について言えば、まずやはり定期外相会談でありますし、グロムイコ外相がこちらに来る番ですから、基本がまず満たされなければならないと私は思っておるわけなんですね。そのことによって日本の外相の訪ソということも可能にたりますし、あるいはまた場合によっては首相の訪ソということもあり得るわけなんです。もちろん国連の場における外交というのは、これは外務大臣レベルあるいは首脳のレベルにおいてもこれが活発に行われるのは当然だろうと私は思っております。その機はやはり外さずにやる必要があるんだろう、こういうふうに思います。
#102
○秦豊君 それから、文化協定は何とかまとめるという方向だし、ソ連側の対応もいいようですね。もう一つ視野を変えて考えてみると、やがて対話がやや軌道に乗り始めると、ソ連側は年来日ソの経済協力に執着をしているわけであり、その
場合には特に東部シベリア地区一帯の第二バム鉄道の開設、その沿線開発を含めた経済協力の中でも中長期的なプロジェクトについて日本側の強力かつ応分の貢献をという願望が強いようです。それを具体化する日ソの経済協力協定というふうなものがやがて浮かび上がってくるのは一つの勢いではないかと私は思っていますけれども、やはり安倍外務大臣の中では日ソ間の対話あるいは日ソ間の交流、関係打開の中ではいつかは経済協力協定にも真剣に立ち向かわなければならない、こういうふうなお考えはお持ちでしょうか。
#103
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは日ソの長期経済協定の締結問題については、ソ連側はそういう要請といいますか希望を持っておりますが、今の日本の立場からいえば、やはり基本的には領土問題というのが横たわっております。したがって、やはり政治の問題となかなか長期協定の問題というものを切り離しては考えられない、政経分離という立場で考えられないという立場にありますから、今ここでこの問題を浮上させよう、また浮上するような状況には私はない、やはり一つ一つ詰めていく必要がある。ですから、文化協定、租税協定あるいは貿易支払い協定といった、まずできるものを積み上げていく、あるいはまた事務レベルの間の協議といったものも積み上げていくことの必要があるのではないか。そしてグロムイコ外相の訪日を求める、それによって成果を得て、また新しい段階が開けてくるということから、やはり進めていくべきじゃないだろうか。ですから、日ソ関係というのは少し好転してくる可能性は出ておりますが、これはじっくり腰を据えて積み上げ方式でいくという必要があるのではないだろうか、こういうふうに思っております。
#104
○委員長(平井卓志君) 他に御発言もないようですから本件に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 漁業の分野における協力に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の採決を行います。
 本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#105
○委員長(平井卓志君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#106
○委員長(平井卓志君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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