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1984/06/06 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 外務委員会 第16号
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1984/06/06 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 外務委員会 第16号

#1
第102回国会 外務委員会 第16号
昭和六十年六月六日(木曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月四日
    辞任         補欠選任
     河本嘉久蔵君     園田 清充君
 六月五日
    辞任         補欠選任
     水谷  力君     嶋崎  均君
     吉村 真事君     中山 太郎君
     八百板 正君     粕谷 照美君
 六月六日
    辞任         補欠選任
     嶋崎  均君     水谷  力君
     後藤 正夫君     吉川  博君
     中西 一郎君     倉田 寛之君
     粕谷 照美君     八百板 正君
     関  嘉彦君     小西 博行君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         平井 卓志君
    理 事
                鳩山威一郎君
                宮澤  弘君
                久保田真苗君
                抜山 映子君
    委 員
                大鷹 淑子君
                倉田 寛之君
                夏目 忠雄君
                原 文兵衛君
                水谷  力君
                吉川  博君
                秋山 長造君
                粕谷 照美君
                黒柳  明君
                和田 教美君
                立木  洋君
   国務大臣
       外 務 大 臣  安倍晋太郎君
   政府委員
       内閣総理大臣官
       房参事官     松本 康子君
       外務大臣官房審
       議官       斉藤 邦彦君
       外務省国際連合
       局長       山田 中正君
       労働省婦人局長  赤松 良子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山本 義彰君
   説明員
       人事院事務総局
       任用局企画課長  竹澤 正格君
       防衛庁人事局人
       事第二課長    鈴木 正孝君
       法務省民事局参
       事官       永井 紀昭君
       大蔵省主税局調
       査課長      薄井 信明君
       文部大臣官房人
       事課長      横瀬 庄次君
       文部省初等中等
       教育局職業教育
       課長       菊川  治君
       文部省初等中等
       教育局教科書検
       定課長      小埜寺直巳君
       文部省教育助成
       局地方課長    逸見 博昌君
       文部省高等教育
       局企画課長    前畑 安宏君
       文部省社会教育
       局婦人教育課長  前田 瑞枝君
       労働省労働基準
       局企画官     畠中 信夫君
       自治省行政局公
       務員部公務員第
       二課長      安田 達男君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の締結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る四日、河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として園田清充君が選任されました。
 また昨日、水谷力君、吉村真事君及び八百板正君が委員を辞任され、その補欠として嶋崎均君、中山太郎君及び粕谷照美君が選任されました。
 また本日、関嘉彦君及び嶋崎均君が委員を辞任され、その補欠として小西博行君及び水谷力君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(平井卓志君) 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○粕谷照美君 本条約案がいよいよ批准されるときが近づいてまいりました。参議院では先回の国会対策委員会で、ケニアの世界会議に向けて五名の議員を派遣するということをお決めいただきました。しかし、この五名だけではとてもこの歴史的な条約を締結する世界的な会議に出席するには、私どもも参加したいという、そういう熱望に燃えまして、自費であるいはそれぞれ党からも協力がありまして、正規参加は五名でありますけれども、六名の婦人議員が参加をするということが決まりました。
 あわせまして、この十年間にわたりまして国連婦人の十年議員連盟というのがつくられまして、結成当時は二百三十名、今百八十名に減りましたけれども、党派を超えてそして性別を超えてこの条約批准に向けて大きな努力をしてきたということを私どもは誇りに思っております。毎月五百円の会費でありますが、今その会費の中から、政府の出した五十万ドルという額には足元にも及びませんけれども、五千ドル、百二十五万円を出して国連婦人の十年の基金にカンパをしたい、こういうことも決まっているわけであります。
 そういう意味でこの条約批准はもう心から待ち望んだものでありますけれども、この十年間にいろいろな運動が、政府、団体あるいは国会、起きておりましたけれども、これらの運動の役割といいますか国連婦人の十年というものの意義を外務大臣はどのようにとらえて、そしてどのような決意をお持ちかということをお伺いいたします。
#5
○国務大臣(安倍晋太郎君) この条約は、あらゆる分野における女子に対する差別を撤廃し、男女の完全な平等を確保することを目的とした画期的なものであります。この条約を批准することは、我が国における男女平等を一層促進するとともに、この問題に関する我が国の積極的姿勢を外的に明らかにする上で極めて意義深いと思うわけであります。
 この国連婦人の十年につきましては、平等を三大目標の一つとして掲げまして、その実現のための施策をとる上でのガイドラインとなる世界行動計画の作成、女子差別撤廃条約の採択、国連婦人の十年後半期行動プログラムの作成を初めとしまして、各国等においてさまざまな分野における男女平等実現へ向けての諸活動の促進に大きく寄与したものと考えております。
 我が国におきましても、国連婦人の十年は、男女平等の促進のための大きなはずみとなり、法制の整備、婦人関係施策の充実等の成果をもたらしたものと考えております。
   〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
#6
○粕谷照美君 大臣は、この婦人差別撤廃条約に我が国の法制がその精神に沿うようにきちんと改正をされてきた、ゴーサインが出せる、こういうふうにお考えでございましょうか。
#7
○国務大臣(安倍晋太郎君) 政府としては、条約を批准する条件が整った、整備されたと、こういう判断のもとに国会に承認を求めておるわけです。
#8
○粕谷照美君 外務省としては、どういうことをやったから条件が整ったというふうにお考えになっておりますか。
#9
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 一九八〇年のデンマークの会議におきまして署名いたしまして以来、本年これを批准するという目標で関係各省庁といろいろ協議を重ね努力をしてまいりました。幸いにもいろいろな御協力がございまして、条約が対象といたしております非常に大きな三つの分野がございます。
 一つは国籍の分野でございますが、国籍につきましては、昨年の国会で国籍法改正を御立法いただきました。
 教育の分野につきましては、学校教育における同一教育課程を決める必要があるわけでございますが、先生御承知のように、我が国におきましては中学、高校において家庭・技術「家庭一般」についての同一の教育課程になっておりません。この点につきましては、文部省におかれていろいろ御努力いただきました結果、これについて同一化を図るという方針を打ち出していただきました。その実現にはまだ時間がかかるわけでございますが、方針が確定したということでこの分野での要件も整ったと、条約批准の要件も整ったと考えております。
 また、非常に大きな分野でございます雇用の分野におきましても、先般均等法を御立法いただきました。この運用に際しましても、条約遵守ということを頭に置いて条約が誠実に遵守できるということで運用していただくということになっております。
 その他公職における女子への門戸開放でございますとか、生活保護の男女均一化でございますとか、社会保障関係の均一化、いろいろ整備が整ったわけでございます。ただ、条約を批准いたしました後におきましてもこの条約の内容というものをよりよく充実させていくためにたくさん努力すべきことがまだ残されておる、このように考えておりますが、その点につきましては引き続き努力してまいりたいと考えております。
#10
○粕谷照美君 マスコミで私はちょっと耳にしたり目にしたりしているわけですけれども、外務政務次官は今回の改正については評価をすれば中の上だと、こういうふうにおっしゃっております。それからそこにおいでになります赤松局長は、テレビで均等法は八十点ぐらいのものだろうか、こんなことをおっしゃったのを私は見ておりました。努力の数々は認めるんですけれども、私はとても喜んで八十点だなんというすばらしい点数にはならないだろう。それから中の上なんという日本人の中流意識みたいなそんな条件ではないだろうというふうに思うんですね。まあようやく合格すれすれか、もっと厳しく言えば私は落第してもやむを得ないんじゃないだろうかというような評価をしているわけであります。それは何かと言えば、それぞれ今御説明をいただいた法律の内容について問題が極めて大きい、その大きい問題を解決していない、その三つだけではなくてまだ落ちこぼれがたくさんあるではないか。これから努力をしなければならないとおっしゃるのも本当にそうだというふうに思います。しかしそういう問題ももっと掘り下げていってよかったのではないか、こういう評価をしながらも、しかしこの条約が批准をされ、そして国連で締結をされていくということについては心からの喜びを持っています。
   〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕
そういう問題意識を持ちながらとにかく国民の意識を変えていかなければならない。変えていかなければ条約批准の意味がないだろうと、こういうふうに思いますが、この十年間に国民意識というのは大きく変化をしたものでしょうか。それは本当にこの条約に取り組んできた国連婦人十年の運動の成果も問われることでありますのでお伺いいたします。
#11
○政府委員(松本康子君) 意識面について見ますと、男女の固定的役割分担意識は徐々に改善されているわけでございます。私ども総理府で調べました婦人に関する世論調査によりますと、男は仕事、女は家庭という考え方につきまして、昭和五十一年には四八・八%の女性が同感しておりましたけれども、五十九年にはその割合は三五・九%に低下しております。それから女子の教育については、女子にも職業人として自立できるような教育が必要だと思う女性の割合は、五十一年の六二・九%から五十九年には六八・七%へと高まっております。それから女性の職業についての意識を、これは四十七年と五十九年を比べてみますと、男女ともなんですが、結婚・出産後も仕事を続ける、いわゆる職業を継続するというような考え、あるいは結婚や出産などで一時家庭に入っても育児が終わったらまた職業を持つという、つまり女性は家庭にいるばかりじゃなく社会的にも活躍すべきだというような、そういう考えが男女ともに増加しておりまして、女性は職業を持たない方がよいとか、結婚や出産までは職業を持つ方がいいという者は減少しているわけでございます。
 このように、固定的役割分担意識は少しずつ改善を見ておりますけれども、なお根強く残っているというのが実態かと思うわけでございます。
#12
○粕谷照美君 今お話がありましたように、固定的な役割分担の意識はなお残っているけれども統計の面では前進を見ている。このことは私も本当にそうだというふうに思うんですよ。しかし、人口動態のグラフなんかを見てみますといまだにひのえうまの年というのは子供たちの数が激減しているわけですね。月の世界に行こうなんという時代にまだひのえうま年生まれの女は男を食い殺すだとか、そんなようなことが国民の意識の中に残っているということを考えると、この意識を変えていくというのは大変容易なことじゃないというふうに思っております。この意識変革というのはどのようにして今後やっていったらいいんだろうか、具体的な方策というものはどのようにお考えになっておられますか。
#13
○政府委員(松本康子君) 意識を変えるというのには大変長い時間と努力を要すると思われるんですが、その解消を図るためには、一つは関係各省の行政を通じましてあらゆる場での男女の固定的役割分担意識を改善するための方策をさらに進めるということがあろうかと思います。それからまた、地方公共団体、民間諸団体等の御協力も得てそういうところでもお進めいただくということ、それから国民一人一人の固定的役割分担意識の解消というのが浸透しますように啓発活動を行いまして、さまざまな分野、さまざまな段階におきまして固定的役割分担意識、慣行、慣習、そういうものをみずから見直すように促すというようなことが必要ではないかと考えております。
#14
○粕谷照美君 国民の意識を変えていく、固定的な役割分担を変えていくというために非常に教育というものが果たす役割は大きいというふうに思うわけですけども、文部省としてはこの辺はどういう方策をとろうとしていらっしゃいますか。
#15
○説明員(前田瑞枝君) 文部省におきましては、社会教育施策の中で従来から婦人学級、家庭教育学級、国立婦人教育会館の事業などの学習機会を通じまして固定的な男女の役割分担意識に基づく社会的慣習の払拭を図ってきたところでございます。本年は「国連婦人の十年」最終年であることをも考慮いたしまして、全都道府県にわたって婦人問題を学習する婦人学級を開設するため婦人学級を拡充したところでございます。
#16
○粕谷照美君 それにはどのくらいの人数が参加をしておりますでしょうか。
#17
○説明員(前田瑞枝君) 五十八年度について申しますと、婦人学級につきましては、学級数にいたしまして三万四千三百学級が開設されておりまして、参加者人数にいたしまして百五十五万の婦人が参加いたしております。家庭教育学級につきましては婦人学級とほぼ同数の人数が参加いたしておりまして、学級数は婦人学級よりも若干下回っております。
#18
○粕谷照美君 その数字についてのこれからの成果というものは今後に出てくるものだというふうに思いますので、またその時点で質問いたしますが、特にその学校教育の中でも私は今焦点になっているのは何かといえば、高等学校における女子のみ必修の家庭科、これが差別撤廃条約批准上問題ありと外務省から文部省は指摘を受けていたわけですね。国会でもそのことについては厳しい指摘がずっと続いていたというふうに思います。また、民間の方々からもそのことについて文部省に対して強い要望、とにかく必修、男女共修にしてくれという要望があったというふうに思いますが、文部省が家庭科問題についての検討会議を設置するに至るまで相当の時間を要したという理由は何でしょうか。
#19
○説明員(菊川治君) 先生御指摘のように、現行の家庭科の取り扱いにつきまして、女子差別撤廃条約との関係で問題があるかどうかということにつきまして外務省と文部省とこれまでも協議してきたところでございます。
 家庭科につきましては、長年の我が国の伝統と歴史にのっとりまして実施されているという面もございまして、その検討の過程におきまして、現行の取り扱いは我が国の現実を踏まえた教育的配慮ではないかという意見もあったわけでございますが、そういった点につきましても協議もしましたし、またその過程におきまして教育課程が改訂されまして、中学校の「技術・家庭」につきましては、これまでは男子領域、女子領域という形態でございましたけれども、技術領域、家庭領域という領域を設けながらも、男女相互にその一部を履修するという方式になりましたし、また高等学校の「家庭一般」につきましても男子が選択をするという方向も出たわけでございます。そしてその方向を具述することによって、その条約との関係はどうであろうかという点も踏まえて、外務省とも相談をしてきたところでございますが、結論的に言いまして、やはり現行の家庭科の取り扱いは、条約の趣旨からいって問題があろうということで、昨年の六月、文部省の中に検討会議を設けまして、昨年の十二月に報告をいただいたところでございます。
#20
○粕谷照美君 そうすると、文部省としては、昨年の六月といいますから九年間にわたって、あるいは中間年会議で日本が条約に署名をしてからでいえば四年間にわたって随分頑強にこれでよろしいんだという態度を持ってきたのは一体どういうことですか。
 それとあわせまして、今伝統と歴史というふうにおっしゃったんですが、何が伝統かということについては、私はあなたのおっしゃることについては全面的に納得をするわけにはいかないわけですね。明治の初めに家庭科の授業はどのようにあったか、戦後、憲法が新しくなって教育基本法が出されたときに、家庭科というものは男女別学であったのか、そういうことをもう一遍復習をしてみたいと思うんですね。どういうふうに把握をしていらっしゃるか。
#21
○説明員(菊川治君) 先ほどこの条約と家庭科の点につきまして、これまで外務省とも相談しながら検討してきたということは申し上げたところでございます。
 それで、その中の一つの意見としまして、現行の家庭科の取り扱いが我が国の実情を踏まえた教育的配慮ではないかという意見も一部ありましたものでございますので、そういった点も含めまして外務省とも相談してきたわけでございます。
 家庭科の取り扱いにつきましては高等学校におきましても、戦後、昭和二十四年の段階におきましては、家庭科につきましては女子につきましては七単位から十四単位を履修させることが望ましいというふうなことであったわけでございますが、三十一年の改訂によりまして、女子の家庭科は四単位必修が望ましいということであったわけでございます。それがその後三十五年の改訂の際には、普通科女子につきましては「家庭一般」四単位を必修とするというふうな措置がとられてきたところでございます。
#22
○粕谷照美君 説明は私は不十分だというふうに思いますけれども、しかし戦後においては男女ともに家庭科を学んできた、小学校の五年生から高校の三年まで、これは事実だというふうに思うんですね。それが伝統と歴史だということで、何か昔からもう男女別学で家庭科をやっていたというように御説明をいただくことについては納得がいきません。事実をもう少し調べていただきたいというふうに思います。
 私は、文部省がそういう考え方をずうっと固持していたからこそだというふうに思うんですが、ここにある五十三年一月の総理府の出しました「婦人の現状と施策 国内行動計画に関する報告書(第一回)」を読んでみました。随分分厚いですけれども、教育については非常に簡単なんですね。そして中学校では技術・家庭科については「「男子向き」、「女子向き」の区分を取りやめ、男子にも家庭系列の領域を、女子にも技術系列の領域をそれぞれ選択履修できるように配慮したところである。」と、これでよろしいんだという態度が最初の国内行動計画に明確になっている。相互乗り入れだけでよろしいんだということは、私は条約をよく読んでいない、条約を理解していないのではないかというふうに思わないわけにはまいりません。
 特に高等学校の家庭科につきましてはどういうことを書いているかといいますと、「高等学校教育においても、中学校教育を踏まえて、男女の平等及び相互の協力・理解についての学習を、社会科を中心として、学校の教育活動全体を通じて推進している。」こういうふうに出しているんで、全く家庭科の女子のみ必修については触れていないんですね。意識が全然ないんです。考えてもいなかったというところからこの立ち遅れが出てきているんじゃないかと思うんですよ。もう国会の中でもあと何日かの後には批准をする、七月の十五日からのケニアの世界会議では、この条約についての締結の態度を日本の国が明らかにするというそういう段階において、家庭科においては展望が見えたというだけで条約批准の条件が整いましたということについては、私はどうしても納得ができないわけであります。
 それで、これの取り扱いなんですけれども、近い将来、同一の取り扱いを約束するという政府の方針だというんですね。外務省はこれで抵触しないというふうにおっしゃっているんですけれども、これは外務省自体のお考え方なんですか。大体国連の中において討議が行われた、そういう中での明確な判断になるんでしょうか、どうでしょう。
#23
○政府委員(斉藤邦彦君) 外務省といたしましても、現在の状況のもとにおきましてこの条約を批准する要件が満たされたと思っております。必ずしも国連における討議におきましてその点が明確になったということではないと存じますけれども、この条約を締結するに際しまして具体的にどのような措置をとるべきかという判断は、第一義的には各締約国が判断すべきものと考えておりますので、我が国といたしましては現状で批准の要件が整ったというふうに判断している次第でございます。
#24
○粕谷照美君 条約は、第五条及び第十条の(c)項で、男女の固定化された役割分担意識の払拭を求めておりますね。家庭科においては外務省の説明はただいまおっしゃったとおりです。しかし、単に方向が明らかにされただけで条約の精神に合致するのかという疑問はどうしても残ります。私はどうしてもそれは納得できないんです。
 それで、お伺いをしますけれども、方向が明らかにされたということは、それは直さなきゃならないというふうになると思いますが、この直すという日程、具体的にそういうことに至る手段、それは文部省としてはどのようにお考えになっておりますか。
#25
○説明員(菊川治君) 先ほど御説明申し上げましたように、昨年の十二月十九日に家庭科教育に関する検討会議から報告をいただきまして、その中で高等学校「家庭一般」につきましては、男女とも選択必修とすることが望ましいという御報告をいただいておるわけでございます。その際に、しかしこれは教育課程の全体のあり方に関連する問題でありますので、その際に方法が二つございまして、一つは現行の「家庭一般」と、そのほかに新しいタイプの家庭に関する科目を設けまして、その中から一科目を選択させる選択必修、いわば家庭に関する科目の中では男女とも事実上必修的な感じになろうかと思いますが、それともう一つは、現行の「家庭一般」とその他の教科科目、予想されますものとしましては、体育あるいは職業科目等があろうかと思いますけれども、その中から一科目選択する方法が考えられる。その二つの方法を提示いただきまして、そしてそのいずれかを選択するかは、教育課程の全体にかかわることでもございますので、教育課程審議会の判断にゆだねたいというふうにされておるところでございます。
 教育課程審議会の発足でございますけれども、三月二十八日に粕谷先生から文部大臣の方にもその関係の御質問をいただいたところでございます。そのときに大臣あるいは局長から、臨時教育審議会で教育に関する基本的な方策を御検討いただいておりますので、それとの関連で教育課程審議会の発足を考える必要がありますが、いずれにしろ一、二年の後には発足したいという答弁であったわけでございますが、その後臨時教育審議会の方の情勢も変わってまいりまして、この六月の末には第一次答申が出されようかというふうなところでございます。
 そういうこともございまして、五月三十日の衆議院外務・文教委員会連合審査の際にそのことが問題になりまして、文部大臣はその際に、臨時教育審議会第一次答申の中にも、教育課程審議会にかけて御審議いただく事項も含まれますので、臨教審の答申が出た後余り時間をかけずに教育課程審議会は発足させたい、というふうな答弁を申し上げておるところでございます。
#26
○粕谷照美君 私もそういうふうに思ったんですよね。それで六月の二十五日ですか、臨教審の第一次答申が出るのは。その中に明確にそのことが出ていくのかどうか。
#27
○説明員(菊川治君) 現在のところ、この問題につきましては臨教審で議論がなされたというふうには承知していないわけでございますけれども、大臣が五月三十日に答弁申し上げましたのは、臨教審の第一次答申の中に教育課程審議会に諮って検討をしていく事項も含まれるであろうと、そのことを考えますと、その答申を受けた後余り時間を置かずに教育課程審議会を発足させる必要があるのではないかというふうに考えておる、というふうな答弁だったと思います。
#28
○粕谷照美君 あなたは大臣でないので、私は余り質問するのは悪いんですけれども、しかし、臨教審が答申を出したら必ずそういう方向に動くのかということについては大変不信感を持っているわけですね。臨教審自体が、自由化だの個性化だの個性主義だの、まだ教育の基本そのものについてだって随分やり合っているような状況の中で、果たしてこういうところまで進んでいくんだろうかという不安を持たないわけにはまいりません。
 それで、その検討会議の力というのは一体どのくらいの力を持っているものなのか。あの報告書というのはもう審議会の答申と同じような力を持っておりますか。
#29
○説明員(菊川治君) 検討会議の委員には十六名の委員をお願いしたわけでございますが、その中には大学教授、家庭科に学識経験がございます大学の教授、あるいは学校現場で家庭科を担当されておる先生、地方教育行政の家庭科の担当者あるいはマスコミの関係の方々という幅広い範囲の方々に入っていただきまして、広い視野から御意見をいただいたわけでございます。そして文部省としましては、そこでその条約の関係に抵触しない方針を出していただきましたので、その趣旨を教育課程審議会に反映していこうというふうに考えておるところでございます。
#30
○粕谷照美君 その日程についてですけれども、連合審査の中で随分衆議院は問題になりましたね、随分長いことかかるんじゃないかと。そのときの文部省の説明というのは一体どのような説明をされましたか。
#31
○説明員(菊川治君) 教育課程の改訂がどういうスケジュールで行われていくのかという御質問がございまして、その際には、先ほども申しましたように、教育課程につきましては幼稚園から大学までの全体のあり方をどう考えるか、その中で高等学校をどう位置づけていくかというふうな全体的な理念を踏まえて高等学校の教育内容をどうするか、その際の教科科目をどう扱っていくかというふうな議論も必要でございますので教育課程審議会に御審議をいただいて、その結果を学習指導要領としてまとめまして告示し、それに従って教科書会社によりまして教科書が作製され検定が行われ、採択されていくという手続が必要でございまして、過去の例を見ますと、教育課程審議会が発足してから五年という例もあり、それからまた、八年五カ月という例もあるというふうに申し上げました。
#32
○粕谷照美君 普通ならそういうことになるというんですね。普通であれば五年あるいは八年もかかる。国連婦人の十年が終わってしまうんじゃないですか。そういうことで私は、合格点に達しない、そういうことを認めた外務省自体もおかしいということを先ほどから申し上げているわけであります。これに対しまして、また、衆議院では婦人問題対策の最高責任者であります中曽根総理が出ておいでになって、一応の御返答があったやに伺っておりますけれども、どういう御返答があったんですか。
#33
○説明員(菊川治君) 条約の趣旨に沿ってできるだけ早く家庭科につきましても男女同一の教育課程が実現するように努力したいというふうな御答弁であったかと思います。
#34
○粕谷照美君 できるだけ早くという、そういう抽象的な言葉だったんですか。私はゆうべ土井議員から連絡がありまして、三年から五年という明確な数字を出されたというように伺っておりますけれども、あなたは聞いておられませんですか。
#35
○説明員(菊川治君) 三年、五年という御発言もあったとは聞いております。あったと思います。
#36
○粕谷照美君 それでは文部省としては、三年から五年もかけずに、というその総理の言葉、これは最高責任者の言葉ですからね。三年後中曽根総理であるかどうかは別といたしまして、やっぱりその言葉に忠実に、もっとあるいは早くという意味を込めて私は言っているんですが、やらなければならない責任、これは立法府に対してもそう御答弁をいただいたわけですから、そういう責任があると思いますけれども、どうでしょう。
#37
○説明員(菊川治君) 先ほども申し上げましたように、過去の例としては五年あるいは八年五カ月という例もあるわけでございますが、大臣の答弁によりますと、教育課程審議会はできるだけ早く発足させたい、というふうに言っておりますので、まずとりあえず教育課程審議会が発足しない限りはその審議が進められないわけでございますので、教育課程審議会が発足いたしますと、先ほどの総理の発言等あるいは条約の趣旨を踏まえながら、できるだけ早く努力していくというふうに考えておるわけでございます。
#38
○粕谷照美君 例年今までは大体五年から八年かかったと、こういうふうにさっきからおっしゃっていますけれども、これが三年から長くて五年ということは、今までの常識を打ち破るという作業になりますね、やれますか。
#39
○説明員(菊川治君) それはやはり教育課程審議会を発足させてその審議を進める中で、そういった趣旨を踏まえながら、できるだけ早く対応していくということになろうかと思います。
#40
○粕谷照美君 外務省にお伺いします。
 文部省は非常に苦悩しながら、できるだけ早くと、こういうふうに先ほどから答弁をしているわけでありますけれども、外務省が出しました「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の説明書」というのがありますが、この三ページから四ページにかけてですけれども、「条約の締結により我が国が負うこととなる義務 この条約の締結により我が国が負うこととなる義務の概要は、次のとおりである。女子に対する差別、すなわち、性に基づく区別、排除又は制限であって、女子が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものを撤廃する政策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求すること。」、これはどういうことを意味するんですか。「追求する」というのは、ただ追求だけしていればよろしいんですか。
#41
○政府委員(斉藤邦彦君) ただいまお読み上げになりましたこの説明書の書き方は、主として条約第一条、第二条、総論的な部分を取りまとめて書いたものでございます。
 「遅滞なく追求すること。」、これがただ追求すればいいかという御質問でございますけれども、我々といたしましては、この条約に規定されております幾つかの事項に関しまして、ただそちらの方向へ進んでいけばいいということではなくて、できる限り具体的な施策によりまして、この条約が目指しているところを実現する義務を締約国としては負っているというふうに考えております。
#42
○粕谷照美君 そうしますと、文部省はこれに沿いまして早くやらなければならないという義務を負ったと、こう理解してよろしゅうございますか。
#43
○政府委員(斉藤邦彦君) 文部省と申しますよりは、日本政府としてそのような義務を負ったというふうに考えております。
#44
○粕谷照美君 文部省はこの男女必修の家庭科をやっている国々の状態などをつかんでおりますでしょうか。
#45
○説明員(菊川治君) 家庭科に関する諸外国での履修形態の状況でございますが、一般的にいいまして、初等教育段階におきましては男女とも必修にしておるところが多うございます。それ以上の段階、特に高等学校の段階におきましては男女とも選択というふうになっている国が多いというふうに承知いたしております。
#46
○粕谷照美君 それらの国々の状態などももう一遍よく調べあわせて、本当に恥ずかしくないような条件というものをつくり出してもらいたいと思いますけれども、私がさっき心配して申し上げましたのは、家庭科で、憲法、教育基本法の理念にのっとって男女共学が発足をしたあの昭和二十三年時代に比べて、昭和三十四年ぐらいからぐっとまた別学の方向というものが強まってきているわけですね。そうして、高等学校においては女子のみ必修だということが強く要望されるようになってきた。波があるわけですね。早く文部省というものが態度を決めないと、また揺り戻しが来まして、もとのように、やっぱりこれは今までの方がよろしいのだと、伝統にのっとってやらなければならないのだというようなことが来るのではないかというふうに思いましたので、何回も何回も念を押して確認をしましたのは、そういうような状況になれば、外務省が言うように、国としてももう諸外国に対してそういうことを声明したんですから、守っていかなきゃならないということに、揺り戻しが来れば文部省としてはきちんとして反論をしていくというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
#47
○説明員(菊川治君) 家庭科の歴史に関しましては、昭和二十四年ごろにも男女にひとしく必要なことであるがという表現もありますけれども、特に女子はその将来の生活の要求に基づき、十四単位必修させることが望ましいというふうな表現もあったところでございます。
 それはそれとしまして、先ほどの最後の方の第二点の御指摘につきまして、いろいろこれまでの検討の経緯はあったわけでございますが、文部省としましては女子差別撤廃条約の関係からいって、現行の家庭科の履修の形態は見直す必要があろうということで、昨年検討会議を設けたわけでございます。そしてその検討の報告の趣旨にのっとって、今後条約に矛盾しない、支障のない家庭科の履修形態をとっていこうというふうに考えております。
#48
○粕谷照美君 家庭科の問題は大体理解をいたしました。
 しかし問題は、この固定的な役割分担意識を変えるということは家庭科に限らない。教育全体の中で行われなければならないという、そういうことを先ほどから申し上げておりましたが、教科書の中でこの辺がなおざりになっているのではないか。こういうふうに思われてならない部分がありますが、文部省としてはその辺は大丈夫だというように理解していらっしゃいますか。
#49
○説明員(小埜寺直巳君) お答え申し上げます。
 先生も御存じのとおり、現在教科書につきましては検定制度をとっているわけでございますけれども、小学校、中学校、高等学校の検定教科書約千三百種類ほどございますけれども、その記述内容につきまして男女差別の観点から記述されている教科書はないというふうに考えております。しかしながら、教科書の内容、先生も御存じのとおり、基本的には検定制度でございますので、どのように教科書の内容を書くかというのは、これは執筆者の創意工夫にゆだねられておりまして、基本的には執筆者の基本方針の問題でございます。しかしながら、私ども検定の立場からいたしますと、学習指導要領あるいは教育基本法、学校教育法の趣旨にのっとりまして、検定の態度といたしましては男女の平等、相互の協力、理解という観点に立ちまして検定をしている次第でございます。
#50
○粕谷照美君 教科書検定制度については、私は反対の立場をとりますが、具体的に言えば今現にあるわけですからね。あるということは事実ですから、その行われる検定については固定的な役割分担の思想というものはもうなくしていかなければならない。そういう思想を持った方が検定委員にならない限り、いつまでもこの固定的な役割分担の思想がまかり通っていくだろうというふうに思います。教科書を教えるのじゃありません。しかし、教科書は一つの教材でありますけれども、非常に重要な教材ですね、大きな影響を与えるものだというふうに思います。その内容についてちょっと調べたものがあるんですけれどもね。
 例えば、家庭の仕事をどのようにだれがやっているかという調査でありますが、やっぱりお母さんがもうほとんど仕事をしていますよということが教科書の中に載っているわけですね。それから子供も、私というのは女の子、それから弟というのが出てきますけれども、弟につきましてはほとんど家事分担なんというのが行われていない、こういう記述が出てきているわけですね。挿絵だってやっぱりそのとおりです。最近違いましてね、共働きのお母さんのことなどが載ってきたりしておりますけれども、この辺のことをどういうふうにお考えになっておられますか。
#51
○説明員(小埜寺直巳君) ただいま先生も御指摘になりましたけれども、確かにその教科書の内容というのはどうしても社会の現実が反映される面というものもありますので、教科書の中身には将来のあるべき姿を考慮しつつ、男女の異なった状況や場面、今先生御指摘になったとおりでございますけれども、そういったその男女の異なった状況や場面が記述される箇所は確かにございますけれども、これらの記述は指導要領の趣旨にのっとって書かれているものでございまして、男女差別の観点で記述されているというふうには私ども考えておらないわけでございます。
#52
○粕谷照美君 社会の現実が反映をする、確かにそうだと思います。しかし、じゃ、社会の現実のどの部分に焦点を当てて反映をさせているのかという見方が大事なんですね。やっぱり将来あるべき姿、国会でももう常に口を開けば二十一世紀という言葉が出てくるわけです。その二十一世紀の女子、家庭というものは一体どのようにしてあるべきか、政府の考えているのはどうも問題があるというふうに思いますけれども。しかし、今この女子差別撤廃条約が批准をされる、日本の国が批准をしようというときに当たって、やっぱりそういう物の考え方を変えていくということは非常に大事なことだというふうに思いますので、十分御留意をいただきたい。
 それと同時に、その教育の場面でやっぱり女性の地位の向上というのは大変大きなことで、子供たちの目の前に見えるわけですね。この辺は今どんな状況になっておりますか。具体的に言えば、管理職の数なんかは一体どういうふうになっておりますか。
#53
○説明員(逸見博昌君) 小中高等学校を丸めたものでございますが、五十八年五月一日現在におきまして、校長が一・七%、教頭につきましては二・五%でございます。この数字は徐々にではございますが、向上に向かっておる、こういうふうに把握をいたしております。
#54
○粕谷照美君 審議会に婦人が入っているというその比率などはどんなでしょうね。
#55
○説明員(横瀬庄次君) これは文部省の中にございます審議会十六の六月現在の数字でございますが、委員総数が四百六十八人の中で婦人委員が三十人、比率は六・四%ということになっております。
#56
○粕谷照美君 その内容についてはまた別の機会にやりたいと思いますけれども、しかし一・七%というのは少ないですね。百人校長がいれば一・七人ですから二人も校長はいない、もう男の社会になっているわけですね。
 それから教頭については二・五ですから百人のうち三人いればいい方だ、こういうことになりますかね。積極的にこれは伸ばしていこうという、こういう努力はあるんでしょうか。
#57
○説明員(逸見博昌君) 私も女子を積極的に管理職に登用するようなそういった指導はいたしておりますが、しかし、各県におきますそれぞれの状況がございますので、例えば管理職適齢期にあります者が男に比べてやっぱり総体的に極めて少ないというようなことからこのような状況になっておるというふうに把握をいたしております。
#58
○粕谷照美君 積極的な指導をしないということは、積極的な指導をすると女性に対して、そういう指導することは男性に対して差別だ、優遇し過ぎだという理由からおやりにならないのですか。
#59
○説明員(逸見博昌君) そういう意識ではございません。男女全く平等に扱われるべきである。全く不合理な理由による差別は一切行ってはいけない、こういった観点から指導していくつもりでございます。
#60
○粕谷照美君 差別をしてはいけないとは言いながらも、そういうところに出るための教育訓練が男性、ほとんど中心ですね、現実をごらんになってください。よく調べていただきたいと思います。私は、教頭や校長になることがいいことだというふうには思いませんけれども、現実にその職場がありそういうポストがある中に、やっぱり女性がどんどん進出をしていくということは大事なことだというふうに思いますので、一体何がネックになっているのか、それを調べてください。おわかりでしたらお答えください。
#61
○説明員(逸見博昌君) さまざまな原因があろうかと思います。例えば女子教員の場合には男子教員に比べまして結婚等により退職をされるというふうなこともございまして、そもそも管理職適齢期にある者が少ないというふうなことが一般的には言えようかと思います。
#62
○粕谷照美君 それは表面的なことですよね。管理職適齢期にある人たちがどんな運命の中で生きているかということを一つ例をもってお話ししたいと思います。
 ある県の教育委員会が某女教師に出した手紙です。手紙とはいいながらも、これは活字になっておりますから、非常に大勢の人に出されている手紙であります。前段は大変いんぎん、私に言わせると無礼な言葉だというふうに思いますけれども、一応の社交的な言葉がありました。「とりわけ先生の豊富な教育経験と、御熱心に教鞭をとられたことのたまものと存じ県教育委員会として深甚なる感謝と敬意を表するしだいであります。」その女の先生に県の教育委員会が、あなたはよく頑張ってきたと、こう言って敬意を表しているわけですね。その敬意を表した後にどういうことを言うかといいますと、「したがいまして今後も先生の優れた指導力に期待するところ大なるものがありますが、」云々と、こうきまして、「一方教育現場の実情をみますと、教職員の年齢構成の老齢化傾向が進んでいることから新人を起用し、年齢構成の若返りを図ることの重要性を痛感いたします。」みんな年をとったから若い人を入れたい。自分は年とってないつもりなんですね。相手の女教師だけが年をとっているように見えるわけであります。そして、その次にこう言っているんですね。ここが問題なんです。「このような事情からご主人が校長先生である貴殿から特に後進に道を開いていただくことは、右のような困難な現状を打開することに通ずることのひとつと考えます。」。そしてさらに問題なのは、「管理職であるご主人が心おきなくその職責に尽すいされることのためにも十分ご検討いただき、わたくしどもの意のあるところを御賢察の上心よくご協力いただければ幸いと存じお願い申し上げるしだいであります。」。つまりこれは、夫が校長なんだから、その校長が思う存分働けるようにあなたは仕事をやめなさい、もう明確に役割が固定をしているという思想のもとに退職をいんぎん無礼に強要をしているわけですね。この国会の中にも、御主人が大臣で、奥様が高級の官僚で重要な職で大活躍をしていらっしゃる、あるいは御夫婦で国会の議員として立派な活躍をしていらっしゃる方がおられますけれども、そういうのをだれが見ても、一生懸命に働いて立派にやっていれば、すばらしい御夫婦だと思いこそすれ、片っ方はやめて、奥さん、うちの中にいた方がいいじゃないかなんということを言う人はいないと思うんですよね。こういう実態があるから、適齢期と言われる人たちがみんな落とされていくんですよ。その事実はつかんでいらっしゃいますか。
#63
○説明員(逸見博昌君) 私自身も十数年前ある県の人事担当課長をしておりまして、そのころには、今おっしゃいましたような形で、御主人が校長先生になられる、そういった際にはひとつ後進に道を譲っていただけないか、こういった勧奨をしたようなこともございます。ところが、最近では、その県も含めまして、そういった状況はないというふうに私どもは把握しております。ただ、今先生がおっしゃいましたように、具体にそういった県がございましたら、私ども、合理的な理由に基づく差別ではございませんので、適切な指導をしてまいりたいと考えます。
#64
○粕谷照美君 あなたの目から見えないけれども、私の目には見えるんですよね。この間も夜中に電話がかかってきましてね。四十分間も延々として訴えられました。
 赤松局長にお伺いしますけれども、こういう実態があるなどということは、労働省としてやっぱりつかんでいらっしゃるのじゃないですか。公務員にはそういう男女差別はないというふうに法律上はなっていますけれども、いかがですか。
#65
○政府委員(赤松良子君) 直接そういう調査をいたしたことはございませんが、いろいろ非公式の情報等でそのような事実は、前はなかなか多かったというような認識を持っておりますが、だんだんにそういうことは減ってきているのではないかというふうに考えております。
#66
○粕谷照美君 これは赤松局長もちょっとアンテナが低過ぎるんじゃないんでしょうかね。陰惨になって、巧妙になってきているんですね。そのことは、もうちょっとアンテナを高く掲げまして、いろんな情報が入ってくるように、そして労働省と文部省は横並びだから、労働省としてもなかなか行政指導なんかできないとか、自治省に対してもやっぱり横並びだからそういうことは言えないなどというようなことのないように十分御配慮をいただきたいというふうに思います。
 今の話をしたついでに自治省、来ておられますでしょうか。――社会労働委員会で私はこの問題についてやっぱり質問いたしましたけれども、募集差別が各地でいまだにある。五年前にも指摘したけれども、まだ残っているのはまことにけしからぬ、早く行政指導をするようにということで、そうしたらその数日後、新聞に自治省がそういう行政指導をしましたというのが載っておりまして、大変小さな記事だったんですけれども、私その対応の素早さと的確さに敬意を表したわけですけれども、どんな場所でどういうことをおっしゃったんですか。
#67
○説明員(安田達男君) 四月二十五日の社会労働委員会で先生から御質問がございまして、その直後、五月八日でございましたが、全国の人事委員会の事務局長を集めました会議がございました。その席におきまして自治省公務員部長から、何らかの形で採用の公示に当たりまして男子女子別枠に行っているとか、男女というような性別によりまして区分を行っているものにつきましては今後改めるように申し上げました。と同時に、それぞれの団体の任命権者、知事部局に対しましても、人事当局に対しましても、個別にそのような方向で検討してほしい旨の連絡を行っております。
#68
○粕谷照美君 ところが、またその直後に九州の某県で、結婚したら退職しなきゃならないなどという、そういうことがいまだにまかり通っていた。組合の方もようやく今度はやめましょうというようなことになったらしいですけれども、そういうことのニュースがなぜ入ってこないのでしょうか。やっぱり自治省、ちょっと調査活動が足りなかったんじゃないんですか。今後どういうふうにしてそういうような問題点を掘り起こしていく、というよりも的確に把握していくかということも含めてお答えいただきたいと思います。
#69
○説明員(安田達男君) 御指摘賜りました熊本県の事例でございますが、私ども極めて残念なことと思っております。その事件も含めまして、できるだけ機会をつかまえて、県、市町村、あわせて指導してまいりたいと存じます。
#70
○粕谷照美君 公務員がちょっとストライキなんかやりますと、すぐ停職だとか減給だとか厳しい処分を受けるんです。今度この条約を批准していくということになりますと、さらにまた均等法、私どもはこれも全く力にならない、頼りにならない法律だとは思いながらも、しかしそれでも山口労働大臣に言わせますと、これはすばらしい法律だ、不満かもしれないけれども、大した力があるんだとおっしゃるんですね。ある日ひょっとして、後ろを振り向いてみたら、男どもは太古のマンモスや恐竜のようにいなくなっちゃって、重要なポストには全部女性が座っているのではないかなどというようなユニークなお話なんかもあったわけですけれども、そういう法律が通っていきますと、このようなことをやったという自治体の責任者は何らかの私はやっぱり責任をとってもらわなきゃだめだと思います。文書を出した人がそういうふうになるのか、首長がそういうことになるのか、それはわかりませんけれども、その辺はどのようにお考えになりますか。
#71
○説明員(安田達男君) それぞれの自治体におきます行為につきましては、当該団体の内部で議会も含めまして検討されることと私ども存じております。個別具体的なことは、首長も含めまして当該団体の中で検討されてしかるべきものと存じます。
#72
○粕谷照美君 外務大臣、法律違反のようなことがあるいは条約の精神違反のようなことがいわゆる地方自治体において堂々とまかり通るというような状態を許しておいては、条約を締結するなんというのではちょっと恥ずかしいんではないでしょうか、いかがですか。
#73
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは条約を批准すれば条約を守っていかなければならぬ国際的な日本は責任が出てくるわけですから、今後ともそうした条約違反ということが少なくともないように十分政府として監視もしたり、あるいはいろいろな面で努力をしなきゃならぬと思います。ただ、条約の批准の要件としてまだ満たされていないといいますか、条件は一応満たされているわけですが、残っている面があることは事実で、それは条約の漸進性というところから条件の中でこれは満たされていると我々は判断をして批准しているわけですから、これから時間は多少かかる問題はあると思いますけれども、それはそれなりにこれから条約の究極的な目指すところに向かって改めていくように努力は重ねていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
#74
○粕谷照美君 私も大臣のおっしゃるとおりだと思います。そしてとにかく女性自身も努力をしていかなきゃならないし、それはお互いに頑張ること以外にないというふうに思うのですけれども、でもそれにしてもそういうふうな教育を受けて育ってこなかったわけでありまして、大変なこれからの努力が必要になるなと思います。
 労働省にお伺いいたしますけれども、先日私友人からこういう話を聞いたんですが、三月に学校を卒業して四月に就職をした。就職をして一カ月間もう夢中になって仕事を覚えようとして努力をしていたら、いろんな話からそこの会社では結婚をしたらやめなければならないということになっている。一人も結婚しても働き続ける人がいないから、やっぱりみんなやめなきゃならないということになっている。お母さん、この会社をやめたらいいだろうか、どうしようと相談を娘から受けたと言うのです。まだ均等法の通らないときに卒業し就職したわけですから、この法律は来年の四月にならなければ該当しないというふうに思いますけれども、就職指導の先生方は大変なんですよ。今後そういうようなことが明らかになった場合には労働省としてはどういう指導をなさいますか。
#75
○政府委員(赤松良子君) 結婚退職制につきましては、国連婦人の十年の前半から既に行政指導を重点的にしてこれをなくそうという努力を婦人少年室を通じて行政指導をしてきたわけでございますが、これについては法律の根拠がないという点で弱点がございました。しかし、今度法律の根拠ができるわけでございまして、今までの行政指導にもかかわらず、なお結婚退職制を持っている企業が少しまだございますが、これはもはや存在し続けるというわけにいかないということをよく指導をいたしたいと思います。
 来年の四月からの施行でございますが、それは強行規定でもございますし、その前に今度はこういうふうになるのだということを事前によく周知をいたしたいというふうに思っておりまして、六月一日から公布でございますので、施行を待たずに七月の一日に重点的なキャンペーンを開始して、一カ月はこれを特に全国都道府県の婦人少年室で周知徹底のための期間といたしてできるだけ早くそういうふうに法律がなり、それに違反する契約その他は無効であるということを周知いたしたいと思っております。
#76
○粕谷照美君 ぜひそういう強力な行政指導をやっていただきたいと思いますが、文部省に伺いますけれども、新卒の就職というのは企業から直接学校に対して行われるわけですね。それを受けて教師は生徒に張り紙を出すなり、あるいは個別面談で指導していく。そのときに、そのような男女差別があるというようなことについて十分知り得る情報が現状では出されているのかどうなのか、それはどうなっていますでしょうか。
#77
○説明員(菊川治君) 大学の就職の関係の者が来ておりませんですけれども、高等学校に関しましては求人票はすべて職業安定所を通じて受けつけ、それから学校へ回付されるというふうなシステムになっております。
#78
○粕谷照美君 私の質問は、そのようなことが内容の中に明確になっていないということを、入社して仕事をやって一カ月もたってから知るような職業指導というのは、非常に問題があるのではないかということを言っているわけでございます。現状についてまだ御存じなければそれはそれでこれから十分注意をしていただきたいというふうに思っております。そういうことでありませんと、もう国税の専門官が誕生いたしました、皇居の護衛官が誕生いたしました、防衛医大にも生徒が入りましたなどといっても、自分の町や村や自分の娘たちが就職している状況の中で大きく差別されているというんでは、これはこの条約を批准したという意味がないから、私は先ほどから細かなことを申し上げたわけであります。
 さて次に移ります。
 法務省にお伺いしますけれども、待婚期間の問題で伺います。これはこの条約批准に問題がないというふうにお考えになっておられますか。
#79
○説明員(永井紀昭君) 待婚期間を定めております民法七百三十三条でございますが、御承知のとおり、これは嫡出推定の重複を避けるということ、それから父と子すなわち父子関係の混同あるいは混乱を防止するという、こういう観点から定められているものでございまして、子供の福祉を確保するために必要なものである、こういうふうに解釈されております。世界的に見ましても、まだ待婚期間を定めている法制はたくさんございますし、また待婚期間を廃止したり持っていない法制上でも、離婚手続において一定の期間別居を定めるということでそれを防止しているということでございまして、まあ私どもとしては特段男女差別に当たらないと、こういうように考えております。
#80
○粕谷照美君 しかしここのところは問題なんで、現実的にはもう一緒になっている例なんというのはたくさんあるわけですから、その間にいろいろな問題が逆の意味で起きることもあり得るわけでありまして、もう少しこの点については御検討を真剣にやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
#81
○説明員(永井紀昭君) 廃止論でありますとか、あるいはもう少し合理的な改正ができないかということは、かねてから御議論があります。法務省の法制審議会でも過去に何度か検討はしたこともございます。しかし、廃止するというところまでは至っておりません。と申しますのは、単に待婚期間だけをさわるということにつきましては、親子関係の他の規定、例えば七百七十二条の嫡出推定の規定でありますとか、それから七百七十四条以下の嫡出否認の訴えの規定をどう整備するかということ、あるいは離婚手続についてどのように考えていくかということなど、総合的な観点で検討しなければならないというふうにされておりまして、それで過去にも特に親子関係についての検討をやったことがあるんですが、これはなかなか名案が浮かびません。甲案、乙案、丙案と、幾つもの案が出るわけですが、なかなかいろんなぴしっと待婚期間を含めて整理できる案がないわけでございまして、将来検討する機会がありましたらまたそのときに考えていかなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
#82
○粕谷照美君 中国残留孤児だって親子の判定が行われるような時代に、あなたのおっしゃるほどの困難性があるというふうには私は思いません。これは女性の幸福にも直接につながることでありますし、もう少し前向きに。この六カ月がちょっと長過ぎるんですよね。私は平等にしてもいいんじゃないかというふうに思いますけれども、検討する用意はありますか。
#83
○説明員(永井紀昭君) 六カ月が長いかどうかということになりますと、諸外国に比べれば最も短いことになっておりまして、明治年間に定められました当時も専ら倫理的な要素を抜きにして、現在でもございますが、諸外国では大体三百日というのが待婚期間でございます。西ドイツなんかは十カ月という。こういうようなことでは女性の再婚を妨げるということで、これは純粋に嫡出推定の重複を避けるという方向で決められたものでございまして、むしろ我が国では六カ月というのは短い方ではないかと思っておるわけでございまして、外国でも現に離婚手続では大体多くの国が二年ないし三年の別居をしなければ離婚ができないわけでございまして、我が国はきょうにもあすにもできるわけでございまして、協議離婚で届け出ればすぐできるわけでございまして、そういう現実があるわけでございまして、しかも、委員御承知だと思いますが、離婚件数の九割が協議離婚なんでございます。そして、実態を把握してみますと、協議離婚を届けますときには必ず別居をした月はいつかということを書くようになっておりまして、で、実態の数字を見ますと離婚届をした半数以上の人がその届け出を出した月かその前の月に別居をしたということになっておりまして、こういう実態もございますので、なかなかそういうことは直ちにはいかない場面もあるのではないかと思っております。
 ただ、法制審議会ではかねてからずっと民法関係の特に身分法関係につきましては全般的な見直しをやっておりまして、現在親子関係のうちの養子法について検討をやっております。そういう検討が進みました段階では、あるいは婚姻、離婚、親子につきましてもう一度再検討する機会があるのではないかと、こういうふうに考えておりますので、その場合にも当然のことながらこういう待婚期間を含めて議論がされる、こういうふうに考えておる次第でございます。
#84
○粕谷照美君 どうも離婚の話ばかりしているとめいってしまうわけでありますけれども、今おっしゃった嫡出子のことに関連をいたしまして、非嫡出子というのは母親との関係は出生そのものによって明らかですから、相続関係は母親との間には問題がない。しかし、父親との関係で言えば、たとえ親子の血縁ではあっても認知ということが必要になってくる、そういうのが相続関係に出てくるわけですね。しかも、その相続分というのはいわゆる嫡出子に比べて二分の一だというんです。これは、この条約の上ではどういうふうにお考えになっておりますか。
#85
○説明員(永井紀昭君) この問題は、昭和五十五年の法律改正のときに一度議論があったわけでございます。女性と申しますか、配偶者の相続分を例えば子供とともに相続いたします場合には、従来三分の一であったのを二分の一に変えたという法改正があったわけでございます。これは五十六年一月一日から施行されておりますが、この改正のときに、非嫡出子についても他の嫡出子と同様の相続分を与えるべきではないかという、こういう諮問が現実にあったわけでございます。それで、随分議論がされたわけでございますが、総理府その他の統計あるいは世論調査等によりますと、国民の大半が反対という意見でございました。それで、法制審議会の方としましても、こういう国民の合意ができてないものを急激に変更するということはいかがなものであろうかという、こういう議論になりまして、見送ったわけでございます。これは男女の差別ではなくて、もっと違った観点からの差別の問題ではないかと我々考えておるわけでございます。
#86
○粕谷照美君 これは私は男女の差別、女子差別ということよりは、条約そのもので考えていったらいいのではないかというふうに思うんですね。人間の意識なんというのはだんだん変わっていくわけですから、これは子供の立場に立って考えなければならない。そういう意味で、条約そのものは第十六条、外務省、どんなことが入っておりますか、今私の質問したことに関連して。
#87
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 先生が今具体的な例を挙げて御質問になりましたのに実は該当する条項といたしましては、第十六条の、今御審議いただいているテキストにございません、第十六条の三項というのが婦人の地位委員会の段階でございました。そのときには、子供が生まれた状況にかかわりなく、すべての子供が同じ権利と同じ法的、社会的保護を受けるという原案があったわけでございますが、この点につきましては、我が国の見解の場合を申し上げますと、この条項について特に賛成とか反対ということを申したのではないんですが、コメントといたしまして、合法的婚姻を保護する見地から、もしこのような条項が嫡出子と非嫡出子を相続に関して同等に扱うというのであれば問題が起こり得るという問題提起をした経緯がございます。ただこの条項は、その後の審議におきまして削除されておりまして、お手元のテキストの中にはないわけでございますので、この問題については国際的な、この条約をつくる際の合意ということで落ちた問題でございます。
#88
○粕谷照美君 いえ、私は資料を取り寄せて、これは外務省の訳だというふうに思うんですけれども、十六条の1の(d)項にありますね、「子に関する事項についての親としての同一の権利及び責任。」、その次の「あらゆる場合において、子の利益は至上である。」こう書いてあるんですね。だから、男女の差別ではなくて、子供の利益は至上であるという立場に立てば、子供は何もそんなふうにして生まれてきたかったわけでないわけですから、子供に責任はないんですから、そういうことをいろいろの婦人団体としては、非常に非道徳的なことであるからそんなことは許せないとは言っても、やっぱり子供のことを考えれば考え直す必要があるのではないか、こういうふうに思いますけれども、法務省、どうですか。
#89
○説明員(永井紀昭君) これはいろいろな考え方があることは十分承知をしておりまして、ただ国民感情とか現実のそういう世界的な動向といいますか、そういうことも十分勘案しながら検討してまいらないと難しいのではないかと思っております。
 世界的にも、私の承知しております範囲では、やはり非嫡出子については、嫡出子の場合と異なった取り扱いをしている法制は多数あるようでございまして、また一方で、実際の非嫡出子の実態といいますものは、我が国では非常に数が少ないわけでございまして、出産者の出生子の約一%弱というのが非嫡出子でございます。ところが諸外国、西欧諸国におきますと、二〇%から三〇%というものが非嫡出子の形になっておるという国が多いというふうに聞いております。したがいまして、そういう社会的な現実やその他を総合的に勘案しなければ、そう軽々には判断できないのではないか、このように考えておりますが、ただ、委員御指摘の物の考え方というものは、十分うなずける点があると思っておりますし、我々が今後検討はしなければならない、このように考えておるわけでございます。
#90
○粕谷照美君 五十五年に調査をなさったそうでありますけれども、この辺についてはまた女性の生き方自体も変わってくるわけでありますから、しばしば調査をいたしまして、まず子の利益を優先すべきだというこの条約の精神を生かすように法律を変えていく必要があるのではないだろうかというふうに思います。
 次に、ILO関係の十一条約が未批准であるということが明らかになっておりますけれども、その名前、ちょっと報告をしてください。
#91
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 ILO条約で特に婦人関係に関します条約が十四件ございますが、先生御指摘ございましたように、十一件が我が国につきましていまだ批准をいたしておらないわけでございます。その条約を読み上げさせていただきますと、母性保護条約、第百三号条約でございます。それからベンゼン条約、第百三十六号条約でございます。それから差別待遇に関する条約、第百十一号条約でございます。それから雇用政策条約、第百二十二号条約でございます。人的資源開発条約、第百四十二号条約でございます。看護職員条約、第百四十九号条約でございます。家族責任を有する労働者条約、第百五十六号条約でございます。白鉛条約、第十三号条約でございます。夜業条約、第八十九号条約でございます。最大重量条約、第百二十七号条約でございます。それから最後に障害、老齢、遺族給付条約、第百二十八号条約でございます。申し上げました名前、いずれも私どもの略称でございます。
#92
○粕谷照美君 一つ一つ、なぜまだ批准していないのかなどということを聞く時間的余裕がありませんので、私は百五十六号条約そのものについて中心的に伺いたいと思います。
 この条約は、本条約と不離一体というふうに思いますけれども、簡単に言って百五十六号条約というのはどういうことを言っているのでありますか。
#93
○政府委員(山田中正君) 先生御指摘ございましたように、第百五十六号条約、現在御審議いただいております条約と非常に関連いたしておると思います。第百五十六号条約の前文自体に、今御審議いただいております女子差別撤廃条約が引用されておるという経緯もございます。
 この百五十六号条約の目指しておりますところは、男女の労働者が育児を含む家庭的責任を有しておることを前提といたしまして、このような責任を有する男女労働者が雇用、職業面におきまして、そのような責任を持っておらない労働者との差別を受けることのないよう、また就業にかかわる責任と家族的責任が相反することとなることなく就業する権利を行使することができるようにすること、これを規定しておるものでございます。
#94
○粕谷照美君 そうしますと、この女子差別撤廃条約を批准するということと、この百五十六号条約の批准の方向というのは同じでなければならないというふうに思うわけですけれども、百五十六号条約批准に向けての姿勢というのはどうなっておりますか。
#95
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 女子差別撤廃条約とこの百五十六号条約、達成しようとしている目的、大きな目的は同一でございますし、この女子差別撤廃条約が扱っております家族的責任の分野の内容を具体的に定める条約が、このILO百五十六号条約と認識いたしております。
 外務省といたしましては、やはり、先ほどからも申し上げておりますように、この現在御検討いただいております条約の内容をより充実していくという見地からも百五十六号条約につきましては何とか批准の方向に持っていけるよう前向きに鋭意関係省庁と協議させていただきたいと考えております。
#96
○粕谷照美君 非常に重大なことでありまして、百五十六号条約を批准に向けて関係省庁と協議をしたい。協議をしたいということはこれは批准をするということが腹の中にあるから私はおやりになるんだというふうに思いますけれども、大臣、これはいかがですか。
#97
○国務大臣(安倍晋太郎君) 百五十六号条約につきましては、外務省としてもこの条約批准に伴いましてこれを取り上げて検討していかなきゃならぬ、こういうふうに思っています。
#98
○粕谷照美君 そうしますと、一応そういう方向が決まったということは作業を開始するということになろうかというふうに思います。次の国会あたりまでに何か情勢の報告などをいただけますでしょうか。
#99
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは各省の関係もありますから調整等も必要になってきますが、そうした外務省の努力につきましては次の国会に報告をさしていただきたい、そして、これを前向きに進めていきたい、こういうふうに思います。
#100
○粕谷照美君 今のことは外務省主導でおやりになる、こういうことになりますか。
#101
○政府委員(山田中正君) ILO条約を主管いたしております外務省といたしましては、それぞれの条約が規定いたしております実施官庁はそれぞれの関係の各省庁がございますが、そういう取りまとめをいたしますのは、調整するのは外務省しかないと考えておりますので、外務省として作業をさせていただきたいと考えております。
#102
○粕谷照美君 労働省はいかがお考えでしょうか。
#103
○政府委員(赤松良子君) 百五十六号条約につきましては、女子差別撤廃条約と目指すところは共通したものがあるというふうに考えております。したがって、百五十六号条約の内容について、国内法との関係をよく厳密に検討いたしまして、百五十六号条約が批准をされるための条件としてはなお何が残されているかということを考えていかなければならないというふうに思っております。
#104
○粕谷照美君 労働省は、この百五十六号条約批准の方向に向くという外務省の方針を受けますと、やっぱり育児休業法を今のままの奨励法みたいなあんな形ではぐあいが悪いんじゃないんだろうかと思いますが、どうお考えですか。
#105
○政府委員(赤松良子君) 育児休業法が奨励的といいますか、努力義務になっているということよりもむしろ今の育児休業が女子を対象にするということになっておりまして、男女ともにこの育児休業を与えるという規定でございませんので、その点がむしろ問題になるのではないかというふうに考えているわけでございます。
#106
○粕谷照美君 そうしますと、仮定の問題にはお答えできないかもしれませんけれども、文部省には女子教職員の育児休業法というのがありますね。これはもう女子というのをとらなきゃならないということになりますかね。男女ともにということになるわけでしょう。百五十六号条約を批准するためには国内法を改正していかなきやならない。そのためにはそういう問題は整理をしなきゃならない。理論的にそうなりませんか。
#107
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 百五十六号条約との関係で先生が御指摘になっております育児関係、これが我が国の場合非常に大きな問題点と申しますか、検討課題であろうと思います。先生が御指摘になりましたような面をこれから検討させていただきたいと思っております。
#108
○粕谷照美君 実態の方を先に優先さしていくということも一つ重要なことでありますが、私は故早川元大臣ですね、自民党のあの大臣がヨーロッパ各国をお回りになって、その育児休業制度について随分綿密な調査をやっておいでになったことを感動をもってお読みしていたわけであります。それと同時に、我が党もまた男女ともにとれる育児休業法という法律を提案をしております。それから、公明党も共産党も民社党もまた出しているわけでありまして、こういう情勢を踏まえて、私は労働省としては育児休業法の制度というものをもっと積極的に考えていく必要があるということを申し述べてこの件については終わります。
 最後に、報告をしなければならないだろうと思う、そのことについてお伺いします。
 条約の十八条によれば、締約国は批准のときから一年以内に、その後は少なくとも四年ごとに条約実現のためにとった措置、もたらされた進歩を国連事務総長に提出しなければならないことになっております。この報告を担当する部局は一体どこなのか。出された報告書はどのように扱われるのかということをお答えください。
#109
○政府委員(山田中正君) 先生御指摘ございましたように、条約を締結いたしますと、第十八条にございますような内容の報告、条約の実施に関する報告、我が国の立法上、司法上、行政上等の措置、それからこの条約実施のためにもたらされた進歩等を報告することになっております。この条約が対象といたしております範囲が非常に広い範囲でございますので、関係各省庁と御協議させていただいて、外務省で取りまとめをいたす予定でございます。
 なお、国連に報告を提出いたしました際には直ちに公表するようにいたしたいと考えております。
#110
○粕谷照美君 私はこの報告というものが充実した報告であること、それから公正な報告でなければならないというふうに思います。一九七九年の我が国が批准しました人権規約にもこの条約と同じように報告の制度が定められておりまして、我が国は報告を出しました。その内容が極めて簡単だというので人権委員会で質問攻めに遭っていたというようなことが報道されておりますので、そういうことにならないように十分注意をしていただきたい。そして報告作成に当たってはどういう方法で資料を収集していくのか、一般国民やまた女性団体などの意見を聴取して報告書の中に十分取り入れるようなこともやっていただきたい、こういうふうに思っております。
 これは私の要望でありますが、今までの質問をずっと大臣お聞きになって、女子差別撤廃条約を批准するということは、これからまた今まで以上に大きな作業が残る、大きな課題が課せられたのではないかと思いますので、御決意のほどを伺って質問を終わりたいと思います。
#111
○国務大臣(安倍晋太郎君) この女子差別撤廃条約はまさに画期的な条約であろうと思いますし、ここまでこぎつけた経過の中では政府も努力しましたし、各方面の大変な御協力があったからだと思います。しかし、この条約が批准されたからといってすべてが解決するわけではないわけで、政府としても国民の協力を求めながらこの条約の趣旨が確実に実現されるようにあらゆる面にこれから努力を重ねてまいらなきゃならぬ、こういうふうに思います。
#112
○黒柳明君 本論に入ります前に、外務大臣、ちょっと当面の外交案件で一、二質問したいと思います。
 また、外務大臣はあしたから日本を離れるんで御苦労で大変だと思うんですが、八日からストックホルムで開かれます貿易に関する閣僚会議、初めて大臣出席される。これが新ラウンド開始に対する発展途上国に対してアプローチする最後のチャンスだと。保護貿易を何とか打破しませんと、日米貿易問題もまだ、これまたくすぶっているわけでありまして、果たして、この最後のチャンスに対して初めて出席されて説得できるのかどうか。早期開催についてはサミットでは一応合意はできておりますけれども、果たしてどうなのか、ひとつ大臣の見通しをお聞かせいただけますか。
#113
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今度のCG18タイプの会議は現在の世界の貿易の実情等をめぐりまして議論が闘わされると思いますし、特に大きな問題はニューラウンドの問題になってくると思いますが、ニューラウンドにつきましては、サミット参加国等は意見の多少の食い違いはありましたけれども、早期開始ということには一致しておりますが、しかし開発途上国、このストックホルムでの会議の開発途上国、特に有力なインドとかあるいはまたブラジル等も参加しております。こうした国々についてはまだ非常に警戒心があるわけでありまして、今回私も参加をしまして何とか早期開始、そして早く準備会合を開くべきであるということを主張するとともに、やはりニューラウンドを開始することが開発途上国に対しても有利になるんだということを説明して協力を求めてまいりたいと思っております。
 ただしかし、その後の貿易の状況等を見ると、必ずしも好転をしていない、アメリカにも保護主義がますます台頭をする可能性が出ておる、あるいはまた一次産品等の輸出が思うように伸びていかないということもあって、この会議は相当厳しい雰囲気で行われるんじゃないか、また日本の黒字問題等もいろいろと指摘がされるのではないかと思うわけでございます。こういうものは十分覚悟をしていかなきやならぬ。同時にまた、やはり一番怖いのはアメリカの保護主義、そしてこれが蔓延することですから、こういう点について十分説明をし、理解を求めて、何としてもニューランドの来年開始といいますか、早期開始という方向へ何とか合意を見たいものだ、こういうふうに思います。反対といいますか、いろいろと難色を示しておる国々とは、私も個人的にその国々の外相とか貿易大臣等と会って十分ひざを交えてひとつ話し合いたい、こういうふうに思っています。
#114
○黒柳明君 昨日、全斗煥大統領が南北首脳会談の開催を提唱しました、まあ、これは新しいものじゃありませんけれども。ただ、今、南北の赤十字会談がいいムードで行われておりますが、若干環境が違うかな、こんなふうにも考えられるんですが、外務大臣、全斗煥大統領の提案、果たして実現の可能性ありや否や、ここらあたりの感触はいかがでしょう。
#115
○国務大臣(安倍晋太郎君) これは実現されれば南北統一という方向へ向かって大きな前進につながっていくんじゃないかと思うわけでありますし、そういう意味では全斗煥大統領の提案というものは大変画期的なものじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、しかしこれから経済会談あるいはまた国会会談というものが行われるわけでございますから、そういう中でこうした提案等をめぐって両国の意見の交換が進められる、こういうふうに思いますが、全体としては、赤十字会談でも今までにない具体的な問題についての合意がありましたし、全体的にはそういう意味では少しずつ南北融和といいますか、南北対話の前進という方向に空気が進んでいるんではないか、こういうふうに思っておりまして、そういう中でいろいろな会談が進んで、終局的にやはり南北の首脳会談が実現されることを心から日本としても期待をするものであります。
#116
○黒柳明君 国連局長いらっしゃるんで、せんだって新聞で見た職員の採用ですけれども、何か分担金は我が国は多いんですが、二百数十名のうち百何名ですか、実際に日本人職員は。関心を持っている人は多いんだけれども実際の応募が少ない。どこにこれはネックがあるんですか。
#117
○政府委員(山田中正君) 先生今御指摘ございましたように、国連職員の邦人職員の方が適正水準に達していない、約半分ぐらいにしか達していないというのが実情でございます。それを何とか改善するということで外務省といたしましても、また国連当局もやはりそれを改善する必要があるということを認めてくれておりまして、その一環といたしまして、日本につきましては採用試験を東京で実施してくれるという制度が発足いたしておりまして、本年九月にまたそれが予定されております。本年九月の試験で採用が予定されますポストは約十でございますが、先ほど先生御指摘ございましたように、現在のところ関心を持っておられまして私どもの方に御照会がございましたのは千九百名程度、非常に多いのでございますが、現実に申請書を出されましたのは約二十名ということで、従前に比しましてちょっとスタートが遅いという事情がございます。
 どこに原因があるかというお尋ねでございますが、これは、国連の職員というものが要求されておりますのが一般に大学院卒、MAを持っておるということでございます。我が国の場合、そのMAというのが必ずしも国連が対象としておりますような一般の行政関係に入ります場合に、MAを修得されておる方というのは非常に少ないという事情がございます。それからまた、国連の場合には、日本のように学校を出てすぐ就職するということじゃなくて、どこかでの経験をされた方を求めておるわけでございますが、我が国の場合は一度就職いたしますとその企業にとどまるという方が多い、こういう辺が隘路になっておると考えております。
#118
○黒柳明君 もう一つ、事前のPRと言っても、一般のPRがどういうことが必要かどうかというのはこれは疑問ですけれども、やっぱりそういう点も欠けているんじゃないかというふうな感じがします。MAを持っている方で博士浪人なんという者も相当おりますし、国際感覚は日本人は今そんなに他国におくれているわけはないし、また語学も、これは日本人にとっては難物には難物ですけれども、日本でやるならば斉藤審議官あたりがテスト官になるとこれは相当情状酌量の余地があるんで、非常に人柄もいいしね。するとどこにネックがあるかと言えば、やっぱりひとつ事前のPRと言いますか、周知徹底と申しますか、そういう人たちに、公募してからそれで接触するんですと、考える余地というものがありませんと、果たしてニューヨークまで行ってあるいはその後どうなるのかと、こんなこともいろいろ人間の一生を決めることでありますので、何かそこらあたりもちょっと足らないのかな、こんな感じもいたします。現実に関心を持っている方に私もいろいろ話をしてみますと、とっさに決めかねる、もうちょっと考える余裕があると、またそれに対する準備期間があると応募して何とか受けてみよう、採用させてもらいたい、こういうこともあるんだというようなことも断片的に話は聞いておりますし、当然、枠があるんですから、それだけの経済的な負担もしているんですから、もうちょっと何かそれなりに、私どもアウトサイダーですけれども、当事者がお考えいただきまして、積極的にやっぱりそういうところで日本人の国際的な活躍をさせていただきたい、こういうふうに思うんですが、一回考えていただきたい、こういうことであります。
 人事院いらっしゃっていますか。――国家公務員の一般職また特別職で女子の受験ができない部門は今どことどこでしょうか。
#119
○説明員(竹澤正格君) お答えをいたします。
 国家公務員の採用試験におきまして、女子に受験資格がない試験はIII種試験、これは従来の初級試験でございますが、III種試験の郵政事務B区分のみでございます。
#120
○黒柳明君 特別職は。
#121
○説明員(竹澤正格君) 特別職の方は私ども人事院の所掌ではございませんのでお答えできません。
#122
○黒柳明君 今の郵政事務Bというのはどういう職種ですか。
#123
○説明員(竹澤正格君) お答えをいたします。
 郵政事務のB区分の対象官職と申しますのは、郵便局におきまして郵袋の授受あるいは開披あるいは郵便物の区分けをするのが主たる仕事でございまして、内勤事務に従事をするわけでございますが、この職務は深夜勤務、交替制勤務というものを伴っておるわけでございます。
#124
○黒柳明君 だから女子職員には無理であると。
#125
○説明員(竹澤正格君) したがいまして、先生御案内のように、労働基準法によりまして女子の深夜就業というものが制限をされておるわけでございまして、かかる状況下で女子をこの官職に採用するというのは困難であるわけでございます。したがいまして、この試験について受験資格を男子に限定をしておるというのが実情でございます。
#126
○黒柳明君 今の審議している条約は、あらゆる形ですね、すべてのフォームにおける女子差別を撤廃する、こういうことであるわけですけれども、確かに深夜勤務というのは一方労働基準法で女子に対しての問題点があるんですけれども、ただ、そうなりますと、必ずしも女子を深夜執務させなくても、幾らも便法はとられるわけですね。反面、こういう差別条約を締結するんですが、今言った郵政事務Bだけはこれはもう永遠に残る、こういう一面がある。ですから、そこらあたり労働基準法を考えながら女子の就務条件というものを考えるということ、これはできないことではない。そうすると、その残ったたった一つの一般職に対する国内的な差別というもの、差別と言えるかどうか若干疑問だと思いますね、これにつきましては。決して必ずしも差別という意味での差別じゃありませんけれども、これからあの均等法なんかも民間にPRをしようというときですから、政府関係がそういうものを抱えているということについてやっぱり問題があるんじゃなかろうか、こういうふうに思うんですが、どうでしょう。
#127
○説明員(竹澤正格君) 私どもは、今後基本的に女子の深夜就業に関する労働基準法上の法的な取り扱いというものを注意深く見守ってまいりたいというふうに考えておりまして、この制限がなくなるというようなことになりますれば、郵政事業の主管官庁であります郵政省とも十分連絡協議をいたしまして検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
#128
○黒柳明君 それともう一つは、要するに就職、就務状態を女子だけは男子と一緒にしなきゃいいんですよ、深夜勤務させなきゃいいわけですから、何も。三部交代を二部交代の中に入れるとか、そういうことは幾らも考えられるんじゃないですか。そういうことも含めてやっぱりただ一つのものを残すことについて外から見た場合にどうかなと、こういうことも考えた方がいいんじゃないでしょうか、こういうことです。
 それから、もう一つ特別職、防衛庁かな、防衛大学、これは残っているね。
#129
○説明員(鈴木正孝君) お尋ねの防衛大学校につきましては、ただいまのところ男子ということで女子の入学は認めておりません。その理由でございますが、防衛大学校におきましては将来の各自衛隊の戦闘部隊の指揮官であるとか幕僚であるとかそういうような者を養成するというのが目的でございまして、そういう戦闘部隊に配置することが任務の厳しさ等から見まして男子に限るということが適当ではないか、そういうような事柄、あるいは現在行っております教育訓練の状況等から非常に厳しい内容でございますので、その辺から見ましても現在のところはいかがかということで男子に一応限定している、そういうことでございます。
#130
○黒柳明君 私も、自衛隊の幹部、どう養成され、どういう任務につくかはっきりはわかりませんけれども、各国そんなに条件は変わらないと思いますね。日本だけが特に厳しくて、欧米の場合には厳しくない、東南アジアは厳しくないなんてことじゃないと思う。ほかの国は言うまでもなくみんな女子だって立派にあれしていますですね。先頭に立って兵隊さんを指揮するだけが将校さんの任務じゃないですな。参謀だってちゃんといますし、後方の指揮をとる将校さんだっていっぱいいます。ですから、今言った厳しいから男子なんていうのはちょっと当てはまらないんじゃないのかなと私は考えるんですが、確かに厳しくないとは言えませんね、厳しいことは間違いない。海上保安庁ももう女性が船に乗っている。絶対女性は船に乗っけちゃいけなかったわけでしょう。だから、自衛隊の場合にはまだ陸の上だ。船に女性が乗っかる時代ですから、陸なんかは、ある意味において何も先頭に立って兵隊さんを指揮するということを言うんじゃなくて、幾らもポジションが自衛隊の中にあるわけですから、そういう意味ではどうもこれもあらゆる形の差別をなくすという中においては、しかも各国を見た場合において日本だけが何か、これも果たして差別と言えるかどうかわかりませんよ。ですけれども、必ずしも差別という言葉の差別じゃないにしても、やっぱり国外的にそういう盛んに論議がされているような法的な整備がされているのか、こういうことになると二つしか残っていない一つになることはこれは間違いないわけですよ。しかも厳しいからということについては、各国がどのようにこれを聞くかということになるとちょっと疑問かな、こういうふうに思いますね。まあ長官がいらっしゃるわけじゃありませんから、おたくが、わかりました、それじゃなんて言う立場じゃないこともわかりますけれども、ちょっと今の答弁の中では納得できない面が私だけじゃなくてあるんじゃなかろうかなと、私は素直だから納得しますけどね。やっぱり各国から日本が国内的にこういう何か問題を抱えていておかしいじゃないかと思われたときに、あなたが立って、いや戦闘は厳しいからですなんて言ったときはばかにフェミニストであると同時にまた逆説的におかしいななんというようなことにもなる。防衛医科大学の方は昨年からですか二人か既にお入りになったわけでしょう。これはお医者さんの分野ですから先頭に立つわけじゃないし、厳しいということにはならないと思うんですが、大臣じゃないから無理かと思うんですけれども、まあいいですよ、おたく様の感触どうですか。
#131
○説明員(鈴木正孝君) ただいま先生の方からいろいろとお話をお伺いしたわけでございますけれども、防大の入学につきましてはいろいろな御意見があろうかというふうには私どもよく承知しております。各国の軍の士官学校等への入学状況を見ましても入れているところもあればそうでないところもございまして、いろいろと国民意識、国民感情等の反映されているところも多分にあるんではないかというふうな理解もしているわけでございます。
 また、防衛医科大学校につきましては五十九年度から女子学生にも門戸を開きまして若干ではございますが、この四月から入学しております。そういうような状況の中で、今後の社会状況あるいは意識の進展等のぐあいを見ながら私どもも検討を引き続きやっていきたい、そのように考えております。
#132
○黒柳明君 総理府いらっしゃいますか。――政府の各審議会がありますね。婦人問題の推進本部で五十二年の六月十四日ですかね、女性を登用して一〇%ぐらいにしなさいと、こういうようなあれが出ていますが、今どのぐらいになっていますか。
#133
○政府委員(松本康子君) 現在、国の審議会等における婦人の委員の割合は、五十九年の六月一日現在で五・二%でございます。
#134
○黒柳明君 私が知っている限りでは、社会保障制度審議会ですか、三十四名でゼロだね、それから航空の審議会も五十何名でゼロかな、それから薬事審議会も五十六名でゼロかな。まあ審議会というのは政府、中曽根さんの肌に合わないと、あんまり変な人を入れると困るんで、いろいろ事情もあると思うんですが、これは婦人問題推進本部ですか、もう八年もたつわけですな。それで、肝心な政府機関が、私は社会保障制度とか薬事審議会等、立派な女性の方がいっぱいいらっしゃる、ここに手元に詳しい資料ありますが、もうそちらがよく知っている。なぜそういうところに女性を入れないのかな、入れるべしだと政府みずから言いながら、政府みずからがなぜそういうことをやらないのかなと、こういうふうに感ずるんですが、個々にはそれなりの、一つ一つ各省庁においでいただきまして、なぜですか、これはなぜですかと一つ一つ吟味すればそれなりの理由は出るんだと思いますけれども、理由はいざ知らず、ともかく一〇%女性の方も入れるべしと言ったんですから、やっぱりそうしなきゃならない。これは私だけじゃなくて、政府関係者がそうすべしだと、こう言うんですが、ここらあたりいかがでしょうか。促進するというのか、やっぱりこの条約を締結する前にそこらあたりはもう閣議で、安倍大臣あたりはこれは主務大臣ですからむしろ督促しなきゃならないことかと思うんですが、現状はそういう状態なんですけれども、ここはどうです。
#135
○政府委員(松本康子君) 私ども国連婦人の十年の後半期にこれを一〇%にしたいと思いまして、各省にいろいろ連絡を強めているところでございまして、おっしゃいますように閣議におきましても過去二年ほどの間に総理、それから官房長官から各大臣に所管審議会への婦人の登用につきまして格段の努力を要請したところでございます。また、婦人問題企画推進本部の幹事から関係団体の代表、審議会会長などへ事情を御説明して、御理解と御協力を要請するような努力をしております。また、私どもやはり婦人の委員をふやすのには何といっても委員の任命がえのときに婦人を入れていただくということでございますので、各審議会委員の任命の時期を調べまして、その都度関係省庁に連絡するなど努力しているところでございまして、今後とも各省と十分連絡をとってまいりたいというふうに存じております。
#136
○黒柳明君 大臣、努力はしているわけだけれども、八年たっている。それから、審議会によっては任期は二年、三年、四年とあるわけですけれども、今申しましたように社会保障問題とか薬事審議会とか、特別なところもありますね、そういうところはやっぱり女性の方が、あるいは特別なポストですから、似つかないというところもこれはあるかと思いますけれども、そういうような社会問題やいろんなものを、女性がむしろ関心を持っているところでもう何回も何回も総理府の方が督促して各審議会にあれして、それでもなおかつ婦人を入れないということは非常にやっぱりこれは国内的にうまくないと、こう思いますが、大臣、特別にこういうことについては関心をお持ちじゃなかったかと思うんですが、現状は非常にひどいものなんです。二百四ありまして、四千六百二十六委員がいまして、女性は二百四十二名、五・二%、今おっしゃったように。非常にやっぱり低い。しかもその中でも三十とか五十とか大量に委員がいる中で、五人、六人になりますと、外務省は御立派なんですよ、外務省は二つしかありませんからね。二十四名のうち二名、非常に御立派なんです。ところが、御立派じゃないところがいっぱいありまして、全体的にはもう半分以下なんです。ですから、ここはどうでしょう、今のこの条約をもうこれは締結するということは既成事実になっているにせよ、総理府の参事官が一生懸命おやりになっていたんじゃ大変ですよ、婦人ですから。婦人やっぱり擁護しなきゃ、一生懸命ね。もう大臣が先頭に立ちまして、もう一回これは閣議で言っていただいて、もう条約を締結すると、しかしながら政府みずからが八年もたってもこういう問題が残っているんじゃうまくないから、ひとつ各省庁で関係の審議会、今おっしゃったように確かに役員の改選時期じゃないとならないということはもう当然ですけれども、厳しくこれをひとつ、女性を登用するようにやってくれと、やるべしだと。どうでしょうか。
#137
○国務大臣(安倍晋太郎君) 各省も努力はしておると思いますけれども、今おっしゃるようにまだ目標に達してないわけですから、そういう中で今せっかくこの女子差別撤廃条約も国会で承認していただこうという段階ですから、御意見はもっともだと思います。私からも官房長官にも申し入れをいたしまして、またさらに閣議でもそういう点について申し合わせといいますか、努力を要請するような方向でひとつ考えていきたいと思います。
#138
○黒柳明君 個々に担当の各省庁おいでいただいて聞けばよかったんですけれども、事前にいろいろ聞きました。聞いて、確かに入れませんなんて言うところはないわけでありまして、努力はしているんですがというようなところで、一応もっともらしい言いわけはします。言いわけはしますけれども、どうもそれはただ単なる言いわけのための言いわけというような感じしかしないわけでありまして、これは各担当省庁がおりませんですから個々にはできませんけれども、ひとつ外務大臣にお願いするよりない、こう思います。
 自治省いらっしゃいますか。――国家公務員の方はいいんですけれども、地方公務員、これは採用に対してまだ拒否しているところが二十一団体あるとか。そういうことですか。
#139
○説明員(安田達男君) 二十一団体と申しますのは、都道府県におきまして昨年の初級試験の募集要項において、例えば男子に限るラインと女子に限るラインと二通りの試験を行っておりますとかいう形で何らかの理由で一般事務職について男女の区分を設けている団体でございます。
#140
○黒柳明君 それが二十一。それは改善の方向というのはないんですか、今後。
#141
○説明員(安田達男君) 自治省といたしましては、そのような区分は適切でないと存じまして、現在改善の方向を指導中でございます。
#142
○黒柳明君 二十一団体というのはどこなんですか。東京都も入っていますか。
#143
○説明員(安田達男君) 個別の団体は差し控えたいと思いますが、東京都は入っておりません。そして、それらの中で多くの団体が現在改善の方向で取り組んでおります。
#144
○黒柳明君 五団体が改善。
#145
○説明員(安田達男君) 二十一団体のほとんどが改善という方向を打ち出す予定でございます。
#146
○黒柳明君 外務大臣のこれは守備範囲じゃありませんけれども、そういうこともまだ残っているわけですよ。ですから、改善の方向に行っていればそれでいいんだと一概に言えませんし、これは前から懸案なんです。何なんですか、これはどうしてその内容は言っちゃいけない。言うと今度はどっか行けなくなっちゃうから、副知事に。その配慮しなければね、やっぱり。
#147
○説明員(安田達男君) 個別の団体を言ってはいけないということではないんで、現在検討中としてさらに残っているのは三重県と福井県でございます。
#148
○黒柳明君 それは検討しないということ。
#149
○説明員(安田達男君) 検討中ですが、まだ最終決定の段階に至っていないところでございます。ほかのところは私どもが電話照会などによりまして改める方向で検討中と承っております。
#150
○黒柳明君 二十一のうちそうすると十九はもう改める方向でどんどん進んでいると。それからあとの今おっしゃった二つがまだ検討を。
#151
○説明員(安田達男君) その二団体のために申すならば、現在検討中ということでございまして、結論が出ていない状態であるということであります。
#152
○黒柳明君 それが二つであると。
#153
○説明員(安田達男君) そうでございます。
#154
○黒柳明君 あとは一応検討の方向に行っていると、こういうことなの。例えばどんなことなんですか、それは。いいですよ、個々に挙げなくたっていいですよ。だから県名挙げなければ当たらないわけだから。あなたの将来も考えねばならないから。非常に、公明党も男女均等だけじゃないですよ、いろんな均等も考えているわけですから。例えばどんなことなんですか。その事務職の男女のラインを引くというのはどういうことなんですか、例えば。
#155
○説明員(安田達男君) それぞれの団体の事情があるわけでございますけれども、過去からずっとそうやってきたのでなかなか改めにくいというのが多かったように私ども存じておるわけです。
#156
○黒柳明君 過去からもうやってきちゃったから。今の三重とその二つも同じこと、過去からやってきちゃったから。
#157
○説明員(安田達男君) そのとおりでございます。
#158
○黒柳明君 わかりました。
 そういうことで、もう大臣こんなことは十二分に御存じのことかと思いますけれども、これもそのままになって締結される、こんなことでありますので、何もそれがすべて締結に対してこれもいけないあれもいけない、不備だ不備だということになるかどうかわかりませんが、一応すべての、あらゆるものですから、これの差別を撤廃するという条約の締結ですから、国際法を整備するにはやっぱり国内的な条件がまだそろってない、そろってないと盛んにおっしゃった中に、まだまだ言うと出てくるんですけれども、個々に呼ぶと大変なんだ、ずらっとなっちゃいまして。予算委員会じゃありませんし、この外務委員会というのは平穏裏にやっていく、ゼントルマンシップを発揮する、こういう委員会だと私は先輩に教えられています。ですけれども、残っているものについて所管の大臣としましてやっぱりうまくない。国際会議に出てそういう問題を指摘されるとうまくない。これは当然でありますので、そういうことを含めてひとつ大臣としての決意なんといったら何かもっともらしい当たり前のようなことになりますけれども、ひとつ最後を締めて、やっぱり大臣が発言しないと終わりませんので、済みません。
#159
○国務大臣(安倍晋太郎君) 今いろいろと具体的な事例についてまだ残っていると思われる問題の御指摘がありました。
#160
○黒柳明君 まだあります。
#161
○国務大臣(安倍晋太郎君) まだほかにあるかもしれません。
 やはりこうした条約をせっかく批准するわけですから、そしてこれを国際的にもやりましょうということを約束するわけですから、政府としてもできるだけの態勢を進めていかなきゃならぬ。多少の時間はかかる面もあるかもしれませんけれども、関係方面に外務省としましても注意を喚起いたしまして、そして漸次改善をされるような方向で進めていきたい、こういうふうに思います。
#162
○黒柳明君 結構です。
#163
○委員長(平井卓志君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。
   午後零時十三分休憩
     ─────・─────
   午後二時三十一分開会
#164
○委員長(平井卓志君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#165
○抜山映子君 条約の第十条の関係で家庭科の必須問題が先般来取り上げられてまいりましたけれども、この問題については戦後から今日に至るまでかなり変遷があるようなんですね。昭和二十三年四月に発足した新制高校の教科課程においては、家庭科は選択教科として置かれてきた、十四単位を必修させることが望ましいとなっておったわけですね。それが、昭和二十六年の学習指導要領によりますと、七単位のうち五単位は学校で学習し二単位は家庭実習として課することが望ましい、こうなっていた。ところが昭和三十年の学習指導要領によりますと、全日制普通課程の女子については家庭科四単位履修が望ましい。で、その後昭和三十五年の学習指導要領の改訂により、普通科の女子に対しては「家庭一般」四単位がここで必須となった、こういうように変わっておりまして、昭和四十五年には高等学校学習指導要領の改訂により、今度はすべての女子に「家庭一般」を履修させることになった。こういうように目まぐるしく変わっておるわけでございます。
 大きな流れを見ますと、むしろ選択から必須へというように流れが変わっておるわけでございますが、このように流れが変わったことについてのバックグラウンドを文部省の方から御説明いただきたいと思います。
#166
○説明員(菊川治君) 先生御指摘のように、高等学校「家庭一般」の履修のあり方につきましては戦後いろんな変遷を経ておるところでございます。
 まず、二十三年四月に発足しました新制高等学校では、当初必修科目を非常に少なくしまして、大部分の科目は選択教科ということで扱っておったわけでございます。その中で、家庭に関する一般課程につきましても七単位から十四単位を選択教科として置かれておったわけでございます。その履修のあり方につきまして、当時の学習指導要領家庭科高等学校用の指導によりますと、男女にひとしく必要なことであるが、特に女子はその将来の生活の要求に基づき少なくとも家庭生活の一般に関する学習を十四単位必修させることが望ましいというふうな指導がされておったところでございます。
 その後、先ほどの先生の二十六年の改訂につきましては、その十四単位というものを一年と二年とに分けて履修するのが望ましいのではないか、その場合七単位、七単位になるわけでございますが、七単位のうち五単位分は学校で学習し二単位は家庭実習だというふうな指導が示されたところでございます。
 その後、高等学校の教科の全体のあり方で必修科目をだんだんふやしていくという全体の傾向がございまして、昭和三十年の学習指導要領の改訂におきましても、それまでは六科目の必修科目でございましたが、昭和三十年からは九科目が必修科目になったということがございます。それに関連いたしまして、全日制の普通科のすべての生徒に、芸術科、家庭科、それから農業等の職業に関係します科目でございますが、それらの中から六単位以上を履修させる、いわばそういった科目の中から六単位を選択必修させるという制度ができたわけでございます。その際に、女子については家庭科の四単位を履修させることが望ましいということになったわけでございます。
 それから三十五年の改訂におきましては、御指摘のように普通科の女子に対しまして「家庭一般」四単位が必修ということになったわけでございます。この当時、この背景につきまして当時の資料を見ますと、女子は大部分の者が家庭生活に入るという現実や女子の特性にかんがみ、高等学校段階で女子に家庭生活の改善向上に必要な基本的考え方や能力を与えるべきであるという観点から、普通科の女子に対しては原則として「家庭一般」必修というふうな定めが行われたという資料がございます。
 その後、四十五年の改訂、十年後の改訂でございますが、その三十五年の改訂の際には普通科の女子のみ必修、そのほか専門教科につきましては四単位が望ましいという形であったわけでございますが、四十五年の改訂では普通科以外の専門教科の生徒にも必修ということになったわけでございます。これは、三十五年当時は女子の場合どちらかといいますと普通科の生徒が多かったわけでございまして、職業の学科等には生徒が少ないという実情もありまして、そこへ、その少ない生徒のところにすべて必修にするのは問題点もあろうということで三十五年の段階では普通科のみ必修だったわけでございますが、その後、職業学科に女性も進学するという状況もふえてまいりましたので、そのふえてまいりました女子にはやはり「家庭一般」が必要だろうということで四十五年から必修になったわけでございます。
 その後、この五十三年の改訂におきましては、男子につきましても選択履修ができるという制度になっておるところでございます。
    ─────────────
#167
○委員長(平井卓志君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、後藤正夫君、中西一郎君及び粕谷照美君が委員を辞任され、その補欠として吉川博君、倉田寛之君及び八百板正君が選任されました。
    ─────────────
#168
○抜山映子君 一般論から言いますと、十年前、二十年前と比較いたしますと家庭科の必須にする必要性はむしろ低くなってきているんではないか。すなわち、昔でございますと御飯の炊き方一つにしてもこれは家庭科で教えていたわけですが、今はもう電気がまがある。それから洋服、洋裁の仕立てなんかにつきましても、昔は自分の洋服は自分でミシンを踏んでつくっておりましたが、今ではそんなことをするよりレディーメードで買った方がうんと安くて、しかもたくさんの型がそろっている。ましてや、昔は着物を仕立てなければいけなかったわけですが、着物を仕立てる必要は、着物はほとんど着ませんし、よほどの晴れ着を着るような場合には自分で仕立てたような着物はちょっとみっともなくて着れない。こういうことから家庭科の必要性というのは非常に少なくなってきた。プロを志す人は家庭科というよりも特別に専門学校で勉強した方がいい。日常のことはむしろ根源的な非常に初歩的なボタンをつけるとか、すそをかがるとか、あるいは保育の一般的な知識とかそういうことで事足りるようになってきておると思うのですが、その点はいかがでしょう。
#169
○説明員(菊川治君) 確かに先生御指摘のように、社会の変化によりまして、かつては女子教育の中で中心が裁縫であったというふうな、あるいは料理という状態であったわけでございますが、その裁縫、料理につきましても、特に裁縫につきましては、既製服産業の進展等によりまして既製服で足りるというふうな面も出てきておりますし、あるいはまた、料理につきましても加工食品が多くなってきておるということで、そういうことから見ますと、そういった面での教育の必要性は低下してきている、少なくなってきているということも言えようかと思いますが、昨年の十二月に、今後の家庭科のあり方につきまして御検討いただきました検討会議の報告の中ではそういう面もございますけれども、一方では、時代の進展に伴って家庭生活や社会生活が変化してきており、家庭を取り巻く環境も変わってきておる、そういった観点から家庭生活に必要な新しい知識や技術などを取り入れて家庭科を充実させるべきではないかという御意見も出ておるところでございます。
#170
○抜山映子君 昭和二十四年のころは十四単位必修させることが望ましいというのが、二十六年には、七単位のうち五単位は学校で学習し、二単位は家庭実習として課することが望ましいと、こういうようになってきておるわけですけれども、このようにむしろ家庭科の単位が非常に少なくなってきた、しかも二単位は家庭実習させる、こういうような動きは家庭科を学校で必修させる必要性が少なくなってきた、そういう時代の流れを踏まえての改革ではなかったんですか。
#171
○説明員(菊川治君) 先生の御指摘の面があるわけでございまして、戦前は裁縫が高等女学校におきましては週四時間、現在で言いますと四単位毎学年やっておりましたわけでございまして、四年制の場合ですと十六単位、五年制の場合ですと二十単位が履修だったわけでございます。それで二十四年の学習指導要領で十四単位必修というふうになりましたのも、そういった経緯を踏まえてそのようになったのではないかというふうにも思っております。
 それがその後単位数としましては七単位、七単位、合計十四単位でございますけれども、五単位は学校で学習し二単位は家庭実習となり、その後「家庭一般」が四単位になったというふうな傾向からしますと、その当時ではだんだん家庭科のウエートを低めるといいますか、あるいは普通教育への重要性が高まってきたという面があろうかと思いますけれども、そういった傾向があったというふうに思っております。
#172
○抜山映子君 ところが、昭和三十五年になって普通科の女子に対して四単位が必須となった、このように時代の流れに逆行するような変更が行われたのはどのような経過から出てきたんでしょうか。
#173
○説明員(菊川治君) この学習指導要領の改訂は、教育課程審議会で全体の教育課程の中で家庭科をどう扱うかという御審議をいただいてそのような制度になったわけでございますが、その背景等を当時の資料によって見ますと、先ほどもちょっと申し上げたんでございますけれども、この家庭科について、女子には原則として「家庭一般」を必修とした理由としましては、女子が大部分の者が家庭生活に入るという現実や女子の特性にかんがみ、高等学校段階で女子に家庭生活の改善、向上に必要な基本的考え方や能力を与えるべきであるという観点から、普通科の女子に対して「家庭一般」の必修が定められたということになっておるところでございます。
#174
○抜山映子君 女性の大部分がほとんど家庭に入るということから言えば、むしろ昭和二十四年のころの方がもっとその傾向は強かったと思うんです。だからどうもそこらあたり理解できないんですが、どのグループから声が出てこのような必須ということになったんでしょうか。
#175
○説明員(菊川治君) いろいろ過去の経緯を調べてみましたのですが、先ほど申しました理由というのがわかっただけでございまして、それがさらにどういう背景からそういうことになったかというのは不明でございました。
#176
○抜山映子君 これによって女性の方がこれは必須になったために、もちろん学校ごとによって少し違うようでございますが、男子が普通の大学受験科目を勉強しているときに女性が家庭科の必須のためにいわゆる受験科目が勉強できないということで、非常に女子の生徒にとって不利であったということが言われておるわけでございます。昭和四十五年にはさらにすべての女子に「家庭一般」を履修させる、さらにこれが強化されたわけでございまして、どうもこの流れは余り時代の要請にマッチしておらないのではないか、こういうように思われるわけです。ここで女子差別撤廃条約の条文にも反するということで見直しが迫られるようになったわけでございますが、従来、例えば昭和三十五年に必須となったときに、これは選択から必須に変えるについてどのような審議過程がとられたんですか。
#177
○説明員(菊川治君) その背景は、先ほどもちょっと申し上げましたように、大部分の者が家庭生活に入るということであったわけでございます。先生の御質問はその審議経過でございましょうか。
#178
○抜山映子君 私の疑問は、このたび条約の条文に合わせて家庭科の問題について見直しを行うというのでありますけれども、午前中も聞いておりましたが、大変に今後長くかかるというような御趣旨の御答弁がございました。そうなりますと、過去の選択から必須に変わったときにはやはり今回のようにあるいは十年もかかるかもしれないとか、五年でできたらいいぐらいというようなことであったのかどうかということが私は非常に疑問なので、三十五年の改正についてはどのような経過で、どれぐらいかかってこのような重大な方針転換が行われたのか、こういうことをお聞きしたいわけです。
#179
○説明員(菊川治君) 三十五年の改訂の際は、改訂の経過でございますが、教育課程審議会に三十四年の七月に諮問をいたしまして同審議会から答申が三十五年の三月に出ております。それから三十五年十月に学習指導要領の告示がございまして、その後教科書の作製、検定、採択を経まして三十八年四月から施行ということになっておるところでございます。しかし、このときには教育課程審議会の審議が小学校、中学校につきましてはもう既に高等学校の審議が始まる前に審議が終わっておりまして、それを踏まえて高等学校をどうするかということの検討だけでよかったわけでございまして、そういう意味で教育課程審議会の審議の期間が、最近の審議から比べまして非常に短くなっているように感じております。
#180
○抜山映子君 高等学校だけであったから一年ぐらいで非常に短かったと、こういうことのようでございますけれども、それにしても、今回一番短い発言でも三年から五年とか、事によるとまだ十年もかかるとか、これでは余りにもひどいと思うんですね。おまけに、条約によってこれはやらなくてはいけないということで進路がはっきりしておるわけでございまして、そんなに紆余曲折、討論に討論を重ねなければいけないというような問題はないと思うんですが、何かこの結論を出すのに障害となるようなことがあるんでしょうか。
#181
○説明員(菊川治君) 特段結論を出すのに障害ということはないわけでございますけれども、教育課程の改訂につきましては、幼稚園から大学までの教育の全体の体系をどう考えていくか、その中で高等学校の役割をどう考えていくか、その場合に高等学校の教育内容をどのようにし、教科科目をどのようにしていくかというふうな検討が必要でございまして、教育課程を幼稚園から大学まで通じて見直していく必要があろうかと思っておるわけでございます。それに関連しまして、御承知のように昨年九月から臨時教育審議会が発足いたしまして、教育改革の基本的方策を検討されておりますので、それの審議の推移を見ながら教育課程審議会を発足させなければならないというふうに思っておるのが一つの理由でございます。
#182
○抜山映子君 おかしいですね。午前中には、臨教審の方は家庭科の教習の問題には関与しておらないという御発言だったと思うので、臨教審の回答が出るのを待つ必要も全くないと思うのでございます。
 いずれにしましても、昭和三十五年、全体的に家庭科に対するウエートを軽くした方がいいというような時代の流れがある中において、必須にするという重要な変更については案外簡単に行っておいて、すべて既製服ができた、家庭的な省力化のいろんな器具も発明された、そういうような時代の流れと、さらにこの条約の精神に合わせるという差し迫った必要があるものについて今度は慎重に何年もかけてやるというのは、私は筋が通らないと思います。したがいまして、ひとつこの家庭科の問題は、早急に条約の精神並びに条文に見合うように速やかに直していただきたい、このように切望するわけでございます。ひとつ、外務省の方にも文部省と協力して、文部省の方をむしろプッシュしてこの条約に見合った実情をつくっていただきたいと思います。
 そこで、午前中、同僚委員が防衛大学の女子に対する門戸の開放の問題を申しました。確かに、一般論から言えば、肉体的に女性はそういう軍事行動には適さないという面もございますが、一方において、すべてがボタン一つで動くような時代になりました。自動車にしてもそうでございますし、あらゆる機器についてもコンピューター化によってボタン一つで操作される事態が生じておるわけです。また、いろいろな参謀的な仕事につきましては肉体的な力は要しないということがございまして、やはり門戸を開いていない大学はないのだという形をつくることが大事だと思うのですが、この防衛大学の門戸を女性にも開くということについて今後の展望をお聞かせいただきたいと思うんです。
#183
○政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。
 自衛隊におきましては女子隊員への職場を徐々に拡大してきておられます。先生も御承知のように、防衛医科大学校につきましては昨年から開放いたしました。防衛大学校につきましては、まだ現在のところ、大学校の趣旨が戦闘部隊の指揮官を養成するというものでございますし、まだ自衛隊におきましても戦闘部隊に女子を配属するという状況になっておらないということがございまして、いまだに女子への受験資格を認めておらないわけでございますが、この点につきましては、防衛庁におきましても社会通念の変更、それから国民感情の変遷、そういうものも慎重に考慮しつつ、また自衛隊におきます女子隊員の実績というものを考慮しつつ前向きに検討をしていきたいというふうに言っておられます。そのような社会の動きを見つつ善処していただきたいと考えております。
#184
○抜山映子君 実際に門戸を開きましても、女性というのは余りそういう戦略活動、軍事活動に関心のある女性も非常に少ないでしょうし、志望する者は少ないと思うんですが、私が指摘したいのは、国立の大学あるいは官界というものはやはり民間に与える影響というものが大変に大きい。しかも、男女平等という観点については、いつもそういう官の方が先にイニシアチブをとっていただいて民に影響を及ぼしていくという、こういう要素があると思うんです。したがいまして、防衛大学もほとんど女性が志望してくることは数としてはごくまれであろうということが考えられるのですが、ひとつ今後前向きに開放することについて検討していただきたい、こういうように思うわけでございます。
 なお、現在、国立大学で、これはむしろ男性に対する差別にならないかという声もあるんですが、お茶の水女子大と奈良女子大が国立大学でありながら男性には門戸を開いておらないわけでございます。この二大学の前身は、それぞれ東京女子高等師範、そして奈良女子高等師範であったわけでございます。しかし、戦前にもう一つ、広島女子高等師範というのがございましたが、これは現在広島大学となって男女ともに門戸が開放されておるわけでございます。お茶の水女子大と奈良女子大が女子だけの学校になった経緯というのは、設立の当初に女子教育の振興というねらいがあったということは私も十分理解いたしております。しかし、現在すべての男子の大学が伝統とか建学魂とかそういうことにこだわることなく女子に広く門戸を開いており、女子の大学進学率も非常にふえてきた今日、特にこの二つの女子大が男子に門戸を閉ざしているというのはいかがかと思いますが、文部省の御見解はいかがですか。
#185
○説明員(前畑安宏君) お答えいたします。
 今先生御指摘ございましたように、お茶の水と奈良の両女子大学が設置をされましたのは戦後の学制改革によります新制大学発足のときに一県一大学といったようなことと同様に十一の原則を押さえましたときに女子教育振興のために特に国立の女子大学を東西二カ所に設けるということで設置をしたわけでございます。今御指摘ございますように、女子の進学率ももちろん伸びてきております。ちなみに申し上げますと、昭和三十年度には男子が一三・一%に対して女子は二・四%、こういう状況でございましたが、現在女子の進学率は一二・二%、これは五十八年度でございます。しかしながら、他方男子の方は三六・一%でございまして、その間にはなお大きな開きがあるというようなことがあるわけでございます。そういうようなことで、現在女子大学というものは国公私立を通じて八十六ほどあるわけでございますが、その中で国立が二大学あるということは、やはりそれなりに女子の教育の振興のために役割を果たしているんではなかろうか、このように考えるわけでございます。特に、大学院、博士過程を設置している女子大学はごく少数でございまして、お茶の水、奈良女子大はその中の二つでございまして、その点でもやはり女子教育のために大きな役割を果たしていると思います。
 なお、国立大学の中では商船大学それから高等専門学校で、船舶職員養成の商船高等専門学校というのが五校ございますが、これらはいずれも女子に開放する措置を終わっておるところでございます。
#186
○抜山映子君 国立大学の大学院は今全部女性にも開放されておるわけであって、奈良女子大とお茶の水女子大に大学院があるから、この二校については女子だけに入学を許すというのは理屈に合わないと思うんですね。お茶の水でございますと、比較的東京には大学も多うございますので別に男の学生がお茶の水に入らなくてもほかに選ぶべき大学はたくさんあるわけです。ところが、奈良女子大になりますと、これは周辺に大学の数も少のうございますし、奈良在住の男性が、あれが男子に門戸が開放されておればあそこに行きたいのに、女性に限っておるから行けない、学費の負担あるいは下宿の問題等から近い国立大学に行きたいのに、なぜ女性だけに限っているのか、こういうような声も間々聞くのでございます。もちろん、お茶の水女子大、奈良女子大をお出になった方あるいは大学の先生方にとっては、何か伝統が失われる、そんな男子に門戸を開いたら伝統が失われるというような寂しさはあるかもしれませんが、そんなことを言えば、戦後、東大、京大を初め全部の大学が女性に門戸を開いたときには、建学の精神にもとるものだと、女人禁制の男子の園に女性がハイヒールをもって通ってくるなどとは許されないことだというような意見があったにもかかわらず、そういうことにこだわらずに男女平等に門戸を開いたということを考えれば、今もうお茶の水と奈良女子大のみの二校を男子に門戸を閉ざす理由はなくなった、こう思うんですが、再度御見解をお願いいたします。
#187
○説明員(前畑安宏君) 確かに先生おっしゃるように、このような時代で女子だけに入学資格を限定する大学についていろんな御意見があることもよく理解できるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、女子の四年制大学への進学率をとってみても、なお男子とは大きな開きがあるというような状況でございますので、仮に国立の女子大学につきまして男子にも門戸を開いた場合に、それが結果として女子の進学の道を幾らかでも狭めることにはなりはしないだろうかというようなことも一方では考える必要があろうかと思います。せっかくの御指摘でございますので、御趣旨は十分体しまして今後女子の進学率の動向等もにらみながら今後のあり方については関係方面あるいは学校側とも相談をさせていただきたいと考える次第でございます。
#188
○抜山映子君 私が特に指摘したいのは、お茶の水女子大、奈良女子大については私立ではなくて国立の大学であるという点なんです。私立の大学、女子大でございましたら、それぞれ私的自治というものが大幅に認められて、女子教育に特に重点を置いていきたいから建学の精神にのっとって女子だけを入れるようにしたい、これは十分理解されるんでございますが、いやしくも国立大学ということになりますと、これは国民の税金で大きな補助を受けておるわけですね。そのような大きな国庫補助を受けていながら男子には入学を許さない、こういうことになりますとやはりこれも差別ということにならざるを得ないと思うんです。
 そこでお伺いしたいんですが、お茶の水女子大の学部は幾つあって、それぞれ今何人おるんでしょうか。
#189
○説明員(前畑安宏君) お茶の水女子大学は現在三学部ございまして、文教育学部、理学部、家政学部となっております。それぞれ入学定員は、文教育学部が二百二人、理学部が八十五人、家政学部が百二十五人、こういう状況でございます。
#190
○抜山映子君 奈良女子大の方はいかがですか。
#191
○説明員(前畑安宏君) 奈良女子大学も三学部でございまして、文学部、理学部、家政学部となっております。文学部の入学定員が百四十五人、理学部の入学定員が百十五人、家政学部が百二十五人、合計三百八十五人という状況でございます。
#192
○抜山映子君 そうしますと、お茶の水女子大では全部合わせると四百十二名、こういう数字になると思うんですが、このお茶の水女子大に対する国の補助額が昭和五十八年度で三十七億七千五百万、こういう数字が出ておるわけです。一方、お茶の水とほぼ規模を同じくする東京女子大の方を見ますと総計五百九十人いるわけですね。こちらの方が多いわけなんですが、こちらの方は補助額として六億三千百八十一万円、こういうことでざっと六倍以上の国の補助を受けておる。それだけ国立大学というものは公共的な使命を有しているということが言えると思うのです。ですから、やはり今後はこういう女子大も男子に門戸を開いてお互いの切磋琢磨の中でよりよい大学をつくっていくということが大切だと思うのでございます。ひとつ前向きに検討していただきたいと切望するものでございます。
 次に大蔵省の方にお伺いしたいと思います。
 先般、パートタイマーに対する課税枠が七十九万円から九十万円にアップいたしました。これは女性にとっては朗報ではございますが、実は絶えずこの枠のアップを追っかけていってそこまで働く、この枠をちょっとたとえ一万でも超えますとだんな様の方の扶養手当がもらえなくなる、あるいは扶養控除がなくなってしまう、こういうことで九十万円のところ九十一万まで働きますと、だんな様の方の収入が五、六万円減ってしまう、ひどいときにはもう十万近くも減ってしまう、こういうような事態が生じておるわけです。ですから、枠は上がったんだけれどもやっぱり問題の所在は残っている、こういうことが言えるわけでございます。
 そこで、これは要請が各界各様にあるわけです。働く女性にとっては、本当は働きたいんだけれども九十万円を超えたらばかばかしいからもう年度末には働くのをやめよう、だんな様の方も奥さんに働いてほしいけれども、働いてもらっちゃ全体の収入が減るんだからやめてもらおうと。また、経営者の側にいたしますと、どうせ月給分、収入をちょっと上げたいと本当は思うんだけれども、上げるとあなたかえって家計の全体の収入が減るからだから上げないんですよといって賃金を抑える口実にもなっている。あるいは経営者側には、熟練した従業員が暮れのころになって九十万円を突破しそうになるとみんな働くのをやめてしまう、そういうことで従業員の確保に困る。こういうようなそれぞれの要請があるわけです。そこで、枠組みを超えて働いた場合に、配偶者控除がいきなりなくなるというんでなくて、その控除額が収入に応じて徐々に低減するという方式をとれば妻の、働けば働くほど家計収入が多くなる、こういうように非常に合理的な結果が生じると思うんですが、この点について従来検討されたことはありませんか。
#193
○説明員(薄井信明君) 今御指摘の点につきましては、検討は行っておりまして、政府の税制調査会におきましてもこの辺の御議論があったこと、あるいは今もあることにつきましては紹介がされております。したがいまして、昭和五十八年だったかと思いますが、いわゆる中期答申におきましてもその点には触れております。読ませていただきますと、配偶者控除を徐々に縮減するといった仕組み、これについてどう考えるかということにつきまして、税制の簡素化の観点から、現行制度のようなものがベストとは言えないまでも適当ではないかということを述べておる次第でございます。
#194
○抜山映子君 今後この改正について実現させるお気持ちはありませんか。
#195
○説明員(薄井信明君) パートの課税という観点から御指摘なわけですが、税制の仕組み、そもそもどういう税制をとるかということからアプローチしていきますと非常に大きな問題にぶち当たります。といいますのは、日本の税制は稼得者単位の課税といいまして、所得のある方に個別に課税するという制度を基本的にとっております。したがいまして、御主人が給与所得者である、奥様も給与所得者であるという場合には、本来は両方とも課税されるという形になるわけです。その場合には御主人の配偶者控除は適用にならないという仕分けになりますが、それでは少ない所得の奥様がいた場合にこれは問題があるということで、昭和五十六年度の改正におきまして配偶者控除の額までの所得、その前に給与所得控除というのがございますから、それを加えた額までは御主人の方の配偶者控除を認めてもいいんではないかということで、ぎりぎりの線として制度が今でき上がっております。したがいまして、確かに先生おっしゃるような部分の問題の指摘はございますけれども、税制の骨組みからすると非常にとりにくい問題であると私ども認識しております。
#196
○抜山映子君 まあしかし、私の提案が採用された場合の結果の合理性については十分お認めになると思います。制度上変えるのが非常に難しい面もあるかもしれませんけれども、合理的な結果を生むことは間違いないんですから、ひとつ前向きに今後検討していただきたいと切望いたしますが、御決意はいかがでございましょうか。
#197
○説明員(薄井信明君) 先ほど申し上げましたように、委員の御指摘の方向から分析をしていきますと確かにそういう面はあろうかと思いますが、逆に委員御指摘のように制度を変えた場合にどうなるかといいますと、二つの点で現在と変わってきます。
 といいますのは、御主人の所得がなかなか決定しないということになりますので、奥様の所得が決まるまで所得者課税単位でありながら税額が決まっていかない。この結果、年末調整等ができにくくなる。そういたしますと確定申告をお願いしなければならないといった問題が出るかと思います。それからもう一つ、決して問題ということではないんですが、奥様が例えば三十三万円を超えて、これは給与所得でございますが、給与所得控除を加えて九十万円を超えて所得があればこれは課税されます。そうすると、奥様が課税されていながら、一方で御主人が少額とはいえ給与所得控除を受けるということがほかの給与所得控除制度との仕組みからいうとちょっとなじみにくいという問題も他方にある。
 したがいまして、先ほどの、税制調査会からお話を私どもいただいているわけですが、税制の簡素化という点からすると確かにメリットはあるとしても、そこは総合的に判断するとなかなかとりにくいということかと思います。先日、アメリカのレーガン大統領が税制改革提案をしておりますが、この際にも、シンプリシティーといいますか、簡素な税制にする、その場合にはどうしてもきめ細かな配慮というものとトレードオフになってしまうわけですね。一件一件の細かい逆転現象を直していこうとすると、制度が非常に複雑になってかえって不公平が出てくる面もあると言われております。
 先生の御指摘につきましては、私ども今後とも税制調査会の答申等を踏まえながら考えていかなければならないと思っておりますが、基本的には今申し上げたような気持ちでおります。
#198
○抜山映子君 手続が煩瑣になる点は十分にわかりました。しかし、合理性のある改革と思いますので十分に御検討いただきたいと切望しましてこの点に関する私の質問は打ち切ります。
 次に、夫婦同姓の現行の民法の規定についてお伺いしたいんですけれども、現在の民法七百五十条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」こういうことになっております。いずれかの姓を選ばなくちゃいけないというところが問題なわけでございまして、私の漏れ聞くところによりますと、赤松局長さんなんかも結婚なさるときにだんな様の姓をとるか赤松さんの姓をとるかということでフィアンセ同士問題があった、じゃ、じゃんけんで決めようというところまでいったけれども、結果的には恐らく赤松局長にすっかり参っていた御主人様の方が折れて局長さんの方の姓をとって赤松という名字になったということを漏れ聞いております。
 姓というのは、簡単なことのように思いながら、実はよく考えてみますと、結婚前の一つの社交あるいは職業生活あるいは同一性の認定とかということにつきまして非常に大きな影響をもたらすわけでございます。
 これも大分前の件でございましたが、さる国会議員の女性の方が離婚するに当たって、旧姓に戻ってしまったのではもう選挙に次は出られない、出ても落ちてしまう、だから御主人の名字と同じところに養子に行って同じ名字を保った。このときはまだ離婚によって復氏しなくちゃいけない時代でございましたのでそういうことをしなくちゃいけなかったわけですけれども、この氏の問題について、もし婚前の姓を称することができるというような弾力的な扱いがあれば、非常に働く女性、社会的に活躍する女性にとって朗報になると思いますが、この点について法務省の御見解はいかがでしょうか。
#199
○説明員(永井紀昭君) ただいま委員の方から御指摘がありました意見はかねてから見られたところでございまして、法制審議会の方でも過去に二回これが検討されたことがあるわけでございます。要するに夫婦別姓というものが現在の社会的な活動の場が広がってきた場合には必要なのではないかという、そういう認識のもとにいろいろ議論がされたわけでございます。しかし、結果的には二回とも支持はされなかったわけでございます。幾つかその理由の考えられるところを申し述べてみますと、三点ぐらいあるんでございますが、まず第一は、我が国におきましては夫婦同姓の原則というのが戸籍制度と相まちまして非常に社会的に定着している。それで、夫婦別姓の制度を緊急に取り入れるべきかどうかということにつきましては、どうも社会的要請は婚氏続称制度の要請が非常に小さい、こういうふうに見られていたわけでございます。五十一年度に民法の改正によりまして七百六十七条に二項が新設されまして、婚氏すなわち婚姻中の氏をそのまま継続して使用することが認められたわけでございますが、むしろそちらの方の要望の方が非常に強かったということが大きな原因だと思われます。
 それから第二点は、夫婦別姓を取り入れますことは、これによって社会生活上の不都合とか混乱が意外に予想されるのではないかということでございます。それで、国民感情にも必ずしも合致していないという、こういう見方があったわけでございます。と申しますのは、実は親子で氏が異なってくる、あるいは兄弟間で氏が異なってくるという現象が出てくるわけでございます。それで、婚氏続称を認めた理由の中に、実は親子間で氏が異なるようなことがあってはかわいそうではないかということから、むしろ婚氏続称ということが認められたわけでございます。
 それで、これに関連しまして、例えば子供さんが生まれた場合に、夫婦別姓を認めておりますとどちらの姓にするのかということが、例えばこれは多分夫婦の協議で決めるということになろうかと思います。ところがこの協議が調わなかった場合はどのように決めるのか。委員も想像されるところであれば、大体実務家としては多分家庭裁判所で決めることになるんではないか、こういう発想が浮かぶかと思うんですが、実は家庭裁判所でもこれは決めようがないわけでございます。この決めることについて、夫婦間で、あるいは親子間でいたずらな確執が起きるようなことがあっては必ずしも望ましくないという、そういうような考え方があったわけでございます。
 それから第三番目には、夫婦別姓といたしますと戸籍制度の根幹を全面的に変えていかなければならないということが起きるわけでございます。これは現行戸籍制度は、御承知のとおり夫婦とそれから氏を同じくする子供を一つの単位として編製しております。この編製方法は非常にメリットがあるとされているわけでございます。一覧性といいますか、非常に調査がしやすい、相続人の範囲なんかを調査する場合に非常にメリットがあるとされておりまして、これは現に外国の法律実務家が日本の戸籍制度については非常にうらやましいという、こういうようなことを我々も聞いているわけでございます。その上さらに、夫婦別姓にいたしますと完全に個人登録という問題になってくるんではないかと思います。個人登録になってきますと、やはりいろんな相続人の範囲なんかを確認する場合に非常に複雑な手だてをとらなきゃならない。さらに、実はこれはちょっと言いにくいことではございますが、完全にこの個人登録を突き詰めていきますと、国民総背番号制の導入への道になるんじゃないかということも一時言われていたわけでございまして、こういった観点から見ますと、どうも夫婦別姓を一部的にせよ取り入れることについては問題があるのではないかという、こういったような議論が大体出てきていたように思われるわけでございます。
#200
○抜山映子君 離婚の場合につきましては数年前改正が行われまして、離婚の日から三カ月以内に届け出を行うことによって離婚の際に称していた氏を称することができるようになったわけでございます。こうしますと、氏というのは本当に個人の特定の手段である、こういうように考え方が変わってきておるわけですね。
 一方、世界的に見た場合に、それじゃどこの国も夫婦同氏かというとそうじゃなくて、中華人民共和国、韓国、ベトナム、いずれも理由は違うかもしれませんけれども、夫の氏と妻の氏とはそれぞれ別々に称するわけです。ヨーロッパなんかにおきましても、妻の旧姓を夫の姓と並べて書くことを権利として認めている西独とか、あるいはフランスは結婚後の女性は旧姓を失わないで夫の氏を使用することができる。ソビエトなんかでは、夫婦それぞれの姓を引き続き名のるかあるいは共通の姓にするかは当事者が婚姻の際に決定する、こういうように選択の幅を認めている。
 こういうようなことから見ますと、いろいろ先ほど理由を挙げておられましたが、だから日本で一切夫婦同氏でなくちゃいけない、制度的にもとても実現の見込みがないということは余り理由にならないと思うのでございます。また、日本において夫婦同氏の原則がとられましたのが明治のたしか九年のことだと思いますので、その前はそうじゃなかったわけで、そんなに大昔からの日本の伝統であった、慣行であったということも言えない。そうなりますと、やはり望む夫婦については妻が引き続き旧姓を称するということを認めてもいいんではないか、こういうように思うんですが、いかがでございましょうか。
#201
○説明員(永井紀昭君) 確かに世界的に見ますと夫婦別姓を認める国もございます。ただ、もちろんのことでございますが、夫婦同姓を原則としている、法制上そうである国、あるいは慣行上そう取り扱っている国も数多くあるわけでございまして、これは各国とも身分登録の制度であるとか、伝統や社会慣行、そういったことに非常に裏づけられたいろんな物の考え方がされているのではないか、こう思っているわけでございます。
 ただいま委員がお話されました考え方は、実は理論的には十分成り立ち得る考え方でございまして、前からそういう議論をされているということは先ほども申し上げたとおりでございます。それで法制審議会等におきましても、こういう夫婦別姓をおよそナンセンスであるとか、そういうことを言っているわけではございません。現実論としてはなかなかとりにくいなということで、何度も検討しているというのが実情でございます。
#202
○抜山映子君 結婚による改姓というものは、結婚前の社会生活、職業生活、友情に至るまで遮断するような悪影響をもたらす点が非常にあるわけでございます。今後女性が職場に進出いたしますと、姓、名字が変わるということは非常に影響甚大なものがあるのでございます。
 過去の裁判事例でございますけれども、これはまだ離婚による復氏ということが強制的になっておったときのことでございますけれども、ある有名なデザイナーがだんな様の名字で看板をかけて仕事をしておった。ところが離婚するに至りまして、本当は看板を書きかえなくちゃいけなかったわけですけれども、看板を書きかえると当然これはお客さんが減ってしまう、同一性が失われてしまうということで引き続きその看板を使っておった。そうするとだんな様が、離婚したのにおれの名字を使うとは何事かと言って、使っちゃいけないという仮処分を申請した事例がございました。こういうような例を考慮して、女性が離婚しても引き続きだんな様の名字を継続することができるようにして、女性の活動に支障を来さないようにするとともに、もちろん子供と名字が変わったりするようなことは教育上好ましくないということで改正が行われたと思うのでございますが、これと同じような理由で、やっぱり結婚のときに姓が変わらないで済むということは非常にこれは恩典だと思うのです。女性の立場からだけではなくて、これはどちらかの姓に変えなくちゃいけないわけですから、今子供が長男長女同士の結婚が大変に多くなりました。そういうときに、どっちも自分の名字を主張して譲らない、親御さんも主張して譲らない、そういうことで結婚が破談になったという例も大変に多いのでございます。で、男性の方が女性の方の親の要望によって泣く泣く名字を変える、そうすると、社会生活上も彼は今までAという名字で会社で通っていて、例えばAさんいますかと外から電話がかかってきたときに、いやそんな人はいませんと電話を切られてしまって非常に職業生活にもその男性は支障を生ずる。これは男女ともにこの夫婦同氏の原則が支障になっているわけでございまして、ひとつこの点も前向きに検討していただきたい、こういうように思うわけでございます。
 時間の切りの関係で、私はここで終わります。
#203
○立木洋君 一昨日は、この条約草案が審議される過程で日本政府がどのような態度をとられたのかということを重点に置いてお尋ねをいたしました。きょうは、この条文に関して幾つかの点をお尋ねしたいと思います。
 最初に、この条約の前文、これはどういう位置づけに条約の中ではなっているのか、またこの前文をどのように理解されるのか、そのことをまずお伺いしておきたいと思います。
#204
○政府委員(斉藤邦彦君) 一般に条約の前文というのは、その条約がどのような経過をたどってできたものであるかとか、それからその条約が目指しているものはどのようなことかというような事項を記すのが通常でございます。したがいまして、この条約の内容自体と違いまして、具体的な権利義務を設定するというものではなく、ただいま申し上げましたような作成経過とか条約の目標とするところ、これを掲げるのが通例でございます。で、この条約の前文も、ここにごらんのように非常に長い前文でございますけれども、この条約の成立経緯とか、それからそのよって立つ背景あるいはねらいとしているところ、こういうことが列挙されているというふうに理解しております。
#205
○立木洋君 かつてこの条約が国連で採択されたその直後に外務省が作成された文書の中で、これは外務省からいただいた文書ですが、この前文の問題に関して、「前文パラ九乃至十一において、本条約とは必ずしも直接関連があるとは思われない新国際経済秩序、アパルトヘイト、植民地主義等々に言及している。」という若干否定的なニュアンスを持った文書を外務省では作成されているんですが、これは今日の時点でもそういうふうにお考えになっているんでしょうか。
#206
○政府委員(山田中正君) 先生御指摘ございましたように、前文のパラグラフの九の新国際経済秩序、それから十、十一にアパルトヘイト等の問題と軍縮等の問題がございますが、条約作成の過程でこれについてのいろいろの議論がございました。そこでこれらのパラグラフに含まれております内容自体については、これは我が国として特に異議があるとかいうことではございません。それからまた非常に広い意味で人権というものが、発展でございますとか平和、そういうことに関係があるということも我が国は認めておりますが、この条約の主たる目的が女子の差別を撤廃するということでございまして、前文にその女子の差別を撤廃するということに至る経緯でございますとか原則を書く場合に、この三項についてはやや別のと申しますか、直接的でない要素がある、そういう意向を持っておりましたのと、またそれぞれの事項が非常に政治的な議論が行われて、必ずしも全加盟国が一致して支持するのに表現の仕方としても問題がある、そういうところからこの三項について、策定の過程で特に問題になりましたのは十項と十一項でございますが、これが分割投票になりましたときには、我が国は棄権いたしております。ただ、先ほども申しましたように、これの中に書いてあること自体に反対ではございませんので、この条約をこの項目も含めた全体として採択する場合には我が方は支持した次第でございます。
#207
○立木洋君 全体としてもちろん否定されたという意味じゃないということを前段でお述べになりましたけれども、しかし、先日の質疑のときに、同僚議員がアパルトヘイトの問題で現在問題になっているこの差別を撤廃するという点については、森山次官が、これはやはり大切なことだから積極的に実現するように努力しなければならないということを述べ、大臣もそれに全く賛成だという答弁をされているわけですね。だから、ここで言われているのは、政府自身が今国際的に問題になる人権問題にやっぱり積極的に全面的にそれを考えていくという立場をとるかどうかということで、ここにも書いてあるのはアパルトヘイトの問題についてもこうしたものが、男女の権利の完全な享有に不可欠である、あるいは植民地主義の問題についても、ひいては男女の完全な平等の達成に貢献するという意味合いで、その関連も明確にしながら内容を述べているわけですから、そういう点についてはやはり政府自身がもっと前向きに人権の問題を考えるという立場をとられるべきで、この点でやはり棄権をされたというのは遺憾のことだったというふうに思いますが、大臣、今後こういう人権問題、ひとつ前向きにいろいろ国際的な舞台で問題にされないように努力していただきたいということをこの点で申し述べておきたいんですが、いかがでしょうか。
#208
○国務大臣(安倍晋太郎君) 人権問題は、これは極めて大事なことでもあろうと思いますし、我が国としましても人権を守る、あるいはまた世界に人権の擁護を訴える、こういう点についても国連等でも努力しておりますし、日本自身も世界の中で人権尊重という立場を貫いてきておるわけでございます。
#209
○立木洋君 その点特に強く要望しておきたいと思うんです。
 次に、第二条の(e)項で、ここで述べられていることについては、ただ単に締約国だけではなくて、ここには「個人、団体又は企業による女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。」ということが義務づけられているわけですが、これまでも国際舞台での人権問題に関しては、これがいわゆる私的な個人に及ぶのかどうかというふうな問題等々いろいろ議論があったところですが、ここでこういう「個人、団体又は企業」という形にまで差別撤廃を義務づけるというようになっていることは一歩前進したというふうに評価できるわけですけれども、人権問題で国連舞台での審議の経過等を見るならば。これはそういうふうに解釈していいのかどうなのか。その点についての政府のお考えをひとつ聞いておきたいんですが。
#210
○政府委員(山田中正君) 先生御指摘のように、第二条の(e)で、いわゆる第一部は総則でございますが、そしてその原則の中で個人、団体、企業にも適用があるんだと、どういう場合に適用があるかということは第二部以降のそれぞれの分野で決めておりますこと、それについて適用があるということでございます。したがいまして、例えば雇用の問題、これは国家の公務員に限らず私企業で働かれる方々についてももちろん適用があるという意味でございますが、こういう形ではっきり書いておるということは先生御指摘のとおりでございますが、一般的に申しまして人権関係の条約、さきに御承認いただきました人権規約関係、A規約、B規約、これもやはり個人にも適用があるものでございますが、条約の枠組みとしては個人、団体、企業、そういうところにおいても人権が保障されるということを締約国としてそういう枠組みをつくらなくてはならないという構成になっております。
#211
○立木洋君 この点の問題というのはいろいろ今まで国際人権規約が議論された経過の中で私人にまで及ぶのかどうかという問題がいろいろ問題にされてきた経緯があるわけですから、この点については実行していく過程で十分にやっぱり配慮して、この趣旨が生かされるように努力していっていただきたいということを述べておきたいと思うんです。
 それから次に、あらゆる差別撤廃条約の審議の過程の中で問題になってきたのは、女子に対するあらゆる差別を撤廃する、差別の形態ですね。あらゆる形態、一方ではそういう差別を撤廃していくという方向が明確にされると同時に、一方では今までの母性保護をどうするかという問題とのかかわりというのが一つの大きなやっぱり問題だったと思うんです。この点でこれまでILOで審議されてきた経過を踏まえた宣言等々見てみますと、例えば一九七五年六月に行われたILO六十回総会で、つまりこうした女性保護、母性保護の法規の検討の問題に関して、その保護が適切なものなのか、あるいは適当なものであるかどうかということを考える場合、あるいは修正もしくは補強を要するのかどうかというふうな問題を検討する場合、あるいは全労働者に拡大されるという方向で解決するのか、あるいは廃止するのかというふうな問題が提起されて、そして継続して検討するこれらの措置は生活の質の改善を目的とすべきであるという、いわゆるこういう問題を検討、解決していく方向づけとしては、ここで出されているように生活の質の改善を目的とすべきであるという方向が示されているわけですね。また、ILOの婦人労働者の機会及び待遇の均衡に関する宣言の中でも、「女性労働者の保護は、全ての労働者の生活および労働の条件の継続的な向上および改善のための努力の統合された一部でなければならない」というふうにも規定されているわけですが、こういうあらゆる差別の撤廃ということと母性保護の問題とのかかわりで、今後これは検討されていく、具体的な問題で検討されていくという状況の中ではこういう方向づけがされているわけですが、こういうILOの精神について賛成されるのかどうなのか。その点はいかがでしょうか。
#212
○政府委員(山田中正君) 先生御指摘の問題には母性保護の問題といわゆる女子保護の問題とがあろうかと思います。先生御指摘ございましたようこ、ILOにおきましては、従来雇用における女性の地位が劣っておるという現実を踏まえまして女子保護規定を設けております。例えば百十一号条約におきましてもILO諸条約に言う女子保護は差別ではないという規定がされておるわけでございます。国連におきましても一九六七年でございますか、女子差別撤廃宣言当時においては女子保護を認めるという方向でございました。ただ、現在御審議いただいております女子差別撤廃条約におきましては非常に大きな変革がございます。これは母性保護、これは認める。認めると申しますか、これは非常に重要なものである。それを充実することは差別ではない。これはこの条約第四条にも規定しておるわけでございますが、女子保護につきましては社会の発展に伴ってまいりまして、女子保護規定を置いておくことがかえって女子の雇用機会を妨げておる、したがって差別の効果を持っておるという意識が世界的に広がってまいりました。したがって、この条約では原則としては、女子保護規定というのは、女子保護措置というのは撤廃していくという方向というのを打ち出しておるわけでございますが、ただ現在はまだ過渡期ということでそれをある程度残しておいて見直しをしながら撤廃していくということがこの条約では認められておるわけでございます。
 一方ILOにおきましてもこの条約成立後従来の女子保護問題を見直す動きがございます。そこでことしのILO総会におきましては雇用の分野における男女平等の問題についての新たな議論をすることが議題になっておるわけでございますので、この新しい概念と申しますか、基本的には女子保護規定はなくしていくという方向についてILOの中でそれをどのように検討していくかということがこれから具体的に取り組まれていくことになると思いますが、その方向については我が方としては賛成の方向で取り組んでまいりたいと考えております。
#213
○立木洋君 二つの問題がたしかあると思うんです。今言われたように、母性保護の問題については第四条のところに、第二項ですか、ここに書かれてあるように「母性を保護することを目的とする特別措置」という形と、第一項のところにはその「事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置」をとることは定義に対する差別ではないと。もちろんこれは暫定的なものですよね。こういう二つのことが四条で述べられている。これはもちろん私が言っているのは、女子労働者に対する保護という問題と母性保護との問題がすべて完全に一致しているというふうなことを言うつもりはないんですよ。しかし、こういう問題を解決していく場合にどういう方法で解決するのか、より前進的な方向で解決していくのか、より悪い形に解決していくのか。つまり先ほど言われた問題、これはアメリカなんかで特に主張されておった見解だと思うんですね、さっき局長が言われたような見解については。それで、私は特にここで問題にしたいのは、例えば従来母性保護の範疇に組み入れられていた時間外労働や休日労働や深夜労働や危険有害労働業務等々に関する制限または禁止の規定というのがあったわけですね。これはそれを取っ払っていわゆる休日労働にしても時間外労働にしても無制限にしていくという方向に女性に対する今までの保護を、つまり悪い条件にあった条件に合わせていくというやり方ではなくて、男性の労働者自身にもこういうよりよい、時間外労働なんかについても諸外国では規制がいろいろあるわけですから、そういう方向に合わせて平等にしていくという方向で、前向きに考えるべきじゃないか、前進的に考えるべきじゃないか、生活の向上という見地から考えるべきじゃないか、こういう私の問題提起なんですよ。その点についての考え方をお尋ねしているわけです。これは条約上の解釈ではなくて、あれでしたら赤松局長さんの方に聞いた方がいいのかな。
#214
○政府委員(赤松良子君) 基本的には国連局長と全く同じ考えでおりますが、先生の後で御指摘になったようにその男女同一にするというやり方はいろいろとある、それは国内の労働政策の問題でございますから、女性の方にだけ特別置かれている規定を変える方法もあれば、男性に及ぼすやり方も論理的にあり得るものと思いますが、このたびの改正は女性の方の規定を撤廃する、あるいは緩和するという形でなされたことは御承知のとおりでございます。しかし、なお残された女子保護の規定が母性保護以外にも存続するということは、一挙に男子に合わせて女子に対する保護を撤廃することが適当でないという判断のもとに行われたものでございまして、それぞれ実情に合った労働政策の観点から女子保護の規定、また男子を含めた一般の労働基準の規定というものを見直していくということが今後ともとられてしかるべきことと存じております。
#215
○立木洋君 もちろん先般の雇用機会均等法という経過がありますから、なかなか局長さんも答えにくい面があるかもしれませんけどもね。
 そこで、私は国際的な分野から見た労働時間の問題や労働者の条件の問題について若干お尋ねしたいんですが、ILOの第七十回総会で、これは去年ですね、提出された報告を見てみますと、前回調査したのが一九六四年に年次休暇が検討され、一九六七年に労働時間が検討された。それ以後の一九八四年までにこの有給休暇や労働時間で進歩のあった諸国として何カ国が挙げられているでしょうか。
#216
○説明員(畠中信夫君) それにつきましては、私ども数は数えておりませんけれども、相当の国がリストアップされておるところでございまして、例えば基本的に……
#217
○立木洋君 いや、数だけでいいんですよ、数がわからなかったらたくさんありますだけで結構です。
#218
○説明員(畠中信夫君) はい、たくさんございます。
#219
○立木洋君 私はおたくの方からいただいたものの数を勘定したんですよ。これは五十八カ国あるんですがね。それでこの五十八カ国、つまり年次休暇や労働時間の問題で進歩のあった国、五十八カ国の中に日本は入っていないですね。
#220
○説明員(畠中信夫君) 入っておりません。
#221
○立木洋君 入っていないですね。例えばこれを見てみますと、有給休暇の状態を仮に見てみると、日本の場合は今最低基準は何日になっていますか。
#222
○説明員(畠中信夫君) 労働基準法の第三十九条におきまして年六日間、六労働日というふうになっております。
#223
○立木洋君 この改善されたところを見てみますと、例えばほとんど五十八カ国のうち五十二カ国までは全部二週間以上ですね、最低基準が。そして三十日、つまり一カ月に及ぶという国が十二カ国もここにありますね。
 それから、労働時間について言いますと、日本の場合は現在四十八時間ですね。この問題も、これを見てみますと、先進資本主義諸国、例えばカナダの場合には、一九六七年の場合四十時間だったのが今は協約では三十五時間から四十時間。デンマークでは四十四時間だったのが四十時間。フィンランドでは四十時間だったのが三十五から四十協約時間になっていますね。フランスでは四十時間だったのが三十九時間。西ドイツでも四十八時間だったのが協約で四十時間。イタリアでも四十八時間だったのが協約では四十時間。ノルウェーが四十五時間だったのが四十時間。スペインが四十八時間だったのが四十時間。スウェーデンが四十五時間だったのが四十時間。スイスが四十六時間が四十五時間。こういうふうに大変この期間に進歩を遂げてきているわけですが、この先進国を見て、例えば我が国のように週四十八時間、週休一日、年次有給休暇の最低保障六日というふうな先進諸国というのはほかにあるんでしょうか。
#224
○説明員(畠中信夫君) 例えば労働時間で見てみますと、サミット構成国七カ国をとってみますと、イタリアでは法定労働時間と申しますのは一日八時間、一週四十八時間でございますし、それから西ドイツにおきましては一日八時間、それから週当たりの労働時間は規制をいたしておりませんが、休日は一日でございますので八掛ける六で四十八時間ということになります。それからイギリスにおきましては、そもそも労働時間そのものの規制がございません。
#225
○立木洋君 あなた、日本の労働組合との場合とこのヨーロッパにおける協約というのは違うんですよ。ここでは四十時間になっているんですよ。そして私が言ったのは、週四十八時間、週休一日、有給休暇最低保障が六日、これが全部それと同じような条件になっている先進国というのはないんですよ。あなたが今挙げた西ドイツだって最低有給休暇というのが、この休暇は十八日ですよ。それからイタリアでも十日になっていますね。協約では四週間から五週間というふうになっているんですよ。これは日本の場合と同じ条件になっている状態というのはどこの先進資本主義国もないんですよ。
 それからもう一つ、時間外労働の問題については、これは外国で時間外労働について厳しく規制している国、例えば西ドイツだとかフランスだとかというような場合にはどんなふうな規制がやられていますか。
#226
○説明員(畠中信夫君) 西ドイツにおきましては、年間六十時間を超える場合には労働基準監督機関の許可によってさらに時間外労働が行われる。それからフランスにおきましては、原則といたしまして年間百三十時間を超える場合には労働基準監督機関の許可を要するということになっております。
#227
○立木洋君 もうこれは繰り返して言いませんけれども、つまり先進国の状況を見てみますと、この有給休暇の最低基準、それから所定労働時間、それから週休の関係、それから時間外労働の問題等々見てみますと、日本と同じような状態になっておる先進国というのはない。今回の場合、例えば我が国の女子労働者の問題で先般議論された経過の中で政府がとった措置というのは、結局時間外労働の規制等々についてもこれを緩和措置をするという方向で、これが平等化の方向だ、差別の撤廃の方向だという形でやられているわけですね。つまり、より悪い条件の形に合わせることによって差別の撤廃という形を整えようとする。これは本当にあらゆる形態での差別を撤廃するという精神からいうならば、私はそういう方向で問題が解決されるべきではない、全体の労働者の水準を引き上げていく、そういうよりよい方向で差別はなくしていくべきだ。だから私は、確かに今女子労働者の差別の問題等々について、技術が進歩し、生活条件が変わっていけば、これは検討されなければならないということはわかりますよ、このことも条約の中に書いてあるわけですから。何もそのことを一概に否定しているわけではない。しかしそれを改善していく方向がどういう方向で改善されなければならないのか。いうならば先般行われたような雇用機会均等法というので女子労働者に対する時間外労働、この規制等々が取り除かれるという方向でやるんではなくて、国際的に見た日本の労働者の労働条件というのはこれほどやっぱり好ましくないわけですから、休暇の問題にしたって労働時間の問題にしたって。だから労働時間を短縮していく方向、時間外労働について規制していく方向、これはこの条約の中でもここに述べられている十一条の第一項(f)の、例えば「作業条件に係る健康の保護及び安全(生殖機能の保護を含む。)についての権利」これが男女平等としてやらなければならないというふうになっているわけですね。これは議論の過程の中ではアメリカの代表たちも、条約の草案の審議の過程の中で主張した点だと思うんですね。だからそういうふうにいい方向に改善していく、そしてあらゆる差別をなくして平等をつくり上げていく。悪い方向に改悪して、そしてこれで同じ条件になったからというふうなことは、私は少なくともこれまで国際的な人権を尊重するという機関で審議されてきた精神から見ても、また本来、あらゆる差別を撤廃しなければならないという女子差別撤廃の条約の精神から見ても、そういう方向で態度をとるべきではないというふうに考えるんですが、この点についての局長とそれから大臣のちょっと御意見をお伺いしたいんですが。労働省の方と外務省。
#228
○政府委員(赤松良子君) 先ほども申し上げましたように、望ましいあり方というのがよりよい水準で一致させるということにあるというのは私もそのとおりだと思うわけでございます。
 しかし一方、労働基準法が制定されました当時と今日と比べまして、男子、女子ともに労働条件その他が格段に前進をしたということもあるわけでございまして、労働基準法の全般的な見直しというものは数年前に行われておりますが、そのときも労働条件の全般的な向上ということを背景に置き、また技術革新等によって労働の内容が著しく変わってきたということをも考え合わせまして検討されたというふうに記憶いたしているところでございます。
#229
○政府委員(山田中正君) この条約自体は男女同等と女子の差別をなくすということに主眼点があるわけでございますが、先生おっしゃいますように、機械的にと申しますか、男女の権利を同じにして、男女ともに後退したような悪い条件にするということを、条約自体が直接触れておるわけではございませんが、そういうことを予想しておる条約ではもちろんないと考えております。女子の差別を撤廃するとともに、撤廃されたそれぞれの分野での内容の充実といいますか、これはもちろん各国それぞれ努力しなければならないことであろうと考えております。
#230
○立木洋君 もちろんこの条約自身がそういう精神のもとでつくられて、悪い方向へ行くなんというようなふうに私は言っているわけじゃないんですね。実際にこれが個々の国で、締約国でこれを実施していく場合にどういうふうな方向、どういう精神で実際に差別を撤廃して、男女の平等というのをどういう精神でつくり上げていくのかという問題での私の意見を述べたわけです。
 ですから今、大臣に最後にお聞きしたいんだけれども、やはり日本の労働者の条件というのは、国際的に見て、先進国の状態から見て、極めて好ましくない状態なんですね。だから実際にこういう女子労働者の問題あるいは母性保護の問題等々考える場合に、日本の労働者の全体の水準を高めていく方向でよく考えるべきだ、これは大臣もいつも頭を悩まされておる経済摩擦の問題でも、これが国際的にいろいろ批判の的になる一つの点なんですよ。だからこれは経済摩擦を解消していくためにも、そのためにという意味ではありませんよ、ためにもこういう問題というのは考えていく必要があるだろう。だからそういう方向で、そういう考え方で努力をしてほしいというふうに思うんですが、最後に大臣の御所見をお伺いしておきたいんですが。
#231
○国務大臣(安倍晋太郎君) 条約の趣旨を尊重してこの目的を達成するために努力していかなきゃならぬと思います。
 条約は漸進性をうたっておりますから、いろいろ残った問題もありますけれどもやはりこれは条約というものを目標にしてやっていくべきだ。もちろんその中には現実と理想とのいろいろと乖離の問題もあると思うわけでありますが、いずれにしても労働条件等についても条約というものを踏まえながら、しかしこれが今改善もされてきておりますし、より改善されるという方向も大事じゃないか、こういうふうに思います。
#232
○委員長(平井卓志君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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