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1984/03/26 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第3号
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1984/03/26 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第3号

#1
第102回国会 法務委員会 第3号
昭和六十年三月二十六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十二月二十日
    辞任         補欠選任
     安武 洋子君     宮本 顕治君
 十二月二十一日
    辞任         補欠選任
     石井 道子君     石本  茂君
     佐藤栄佐久君     安井  謙君
     志村 哲良君     藤田 正明君
     出口 廣光君     河本嘉久蔵君
     松岡満寿男君     園田 清充君
     梶原 敬義君     小山 一平君
 三月二十六日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     水谷  力君
     河本嘉久蔵君     吉村 真事君
     園田 清充君     杉元 恒雄君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         大川 清幸君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                杉元 恒雄君
                土屋 義彦君
                名尾 良孝君
                水谷  力君
                吉村 真事君
                小山 一平君
                橋本  敦君
                柳澤 錬造君
                阿具根 登君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  嶋崎  均君
   政府委員
       警察庁長官官房
       審議官      福島 静雄君
       法務大臣官房長  岡村 泰孝君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  菊池 信男君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  筧  榮一君
       法務省矯正局長  石山  陽君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       勝見 嘉美君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   櫻井 文夫君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  上谷  清君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小野 幹雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁警務局人
       事課長      城内 康光君
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    上野 浩靖君
       警察庁警備局審
       議官       鳴海 国博君
       外務省アジア局
       北東アジア課長  渋谷 治彦君
       大蔵省主計局主
       計官       吉本 修二君
       厚生省健康政策
       局総務課長    多田  宏君
       海上保安庁警備
       救難部警備第二
       課長       姫野  浩君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○供託法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○派遣委員の報告に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十二月二十日、安武洋子君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。
 また、去る十二月二十一日、梶原敬義君、石井道子君、佐藤栄佐久君、志村哲良君、出口廣光君及び松岡満寿男君が委員を辞任され、その補欠として、小山一平君、石本茂君、安井謙君、藤田正明君、河本嘉久蔵君及び園田清充君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(大川清幸君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 法務行政の基本方針について、嶋崎法務大臣からその所信を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
#4
○国務大臣(嶋崎均君) 委員各位には、平素から法務行政の運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼を申し上げます。
 この機会に、法務行政に関する所信の一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
 昨年十二月、当委員会において就任のごあいさつをいたしました際にも申し述べたところでございますが、私は、法務行政の使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあると考えております。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利がよく保全されていることが肝要と存じます。私は、常にこのことを念頭に置き、全力を傾注して国民の期待する法務行政の推進に努めてまいりたいと存じます。
 以下、当面の重要施策について申し述べます。
 第一は、最近の犯罪情勢とこれに対処する検察態勢についてであります。
 最近における我が国の犯罪情勢は、全般的には平穏に推移していると認められますものの、犯罪の発生件数は近時漸増の傾向にあり、これを内容的に見ましても、保険金目当ての殺人、身の代金目的の誘拐、金融機関強盗等目的のために手段を選ばぬ凶悪事犯、店頭の食品に毒物を混入して国民生活に不安を与えるとともに関係企業に多額の金員を要求するなどの悪質事犯、コンピューターシステム等を利用した新たな形態の犯罪の発生を見ているほか、涜職、脱税等国民の社会的不公正感を助長する犯罪も後を絶たず、覚せい剤事犯が引き続き一般国民の間に広く拡散浸透しつつある上、少年非行も依然増加の一途をたどっておりま
す。また、過激派集団は、新東京国際空港第二期工事阻止を当面最大の闘争目標として、政党本部及び空港建設関連施設等に対する悪質なゲリラ事犯を反復敢行しているほか、これら過激派相互間の内ゲバ事件も依然としてその後を絶たない状況にあり、他方、右翼団体は、近時各地においてけん銃使用事犯を初めとする種々の不法事犯を敢行し、直接行動への志向を一段と強めているなど、今後の犯罪の動向には、引き続き警戒を要するものがあります。
 私は、このような事態に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実に意を用い、適正妥当な検察権の行使に遺憾なきを期し、良好な治安の確保と法秩序の維持に努めてまいる所存であります。
 なお、刑法の改正につきましては、かねてから政府案作成のための作業を進めているところでありますが、刑法が国の重要な基本法の一つであることにかんがみ、国民各層の意見をも十分考慮しつつ、真に現代社会の要請にかなう新しい刑法典をできる限り早期に実現すべく努力してまいりたいと考えております。
 第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正処遇と更正保護活動についてであります。
 犯罪者及び非行少年の改善更生につきましては、広く国民の理解と協力を得つつ、刑務所、少年院等における施設内処遇と保護観察等の社会内処遇を一層充実強化し、相互の有機的連携を図る等、その効果を高める措置を講じてまいる所存であります。
 そのためには、まず施設内処遇につき、時代の要請にこたえ得る適切な処遇の実現に努めるとともに、仮釈放のより適正妥当な運用を図り、また、保護観察等の社会内処遇において、保護観察官と保護司との協働態勢を一層充実強化し、関係機関、団体との連携を更に緊密にするなど、現下の情勢に即した有効適切な更生保護活動を展開してまいりたいと考えております。
 なお、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第九十六回国会に提出いたしましたところ、第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となりました。そこで、今国会への再提出を目指して努力を重ねてまいりましたが、関係省庁との意見調整がつかず、提出を見送らざるを得ないこととなりました。しかし、同法律案は、刑事施設の適正な管理運営を図り、被収容者の人権を尊重しつつ、収容の性質に応じた適切な処遇を行うことを目的として、被収容者の権利義務に関する事項を明らかにし、その生活水準の保障を図り、受刑者の改善更正を期する制度を整備するなど、被収容者の処遇全般にわたって大幅な改善をしようとするものであり、その早期成立を必要とする事情にはいささかも変更がありませんので、引き続き監獄法改正の実現に向けて最大の努力を傾ける所存であります。
 第三は、一般民事関係事務の処理、人権擁護活動及び訟務事件の処理についてであります。
 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化の傾向にあります。これに対処するため、かねてから人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織、機構の合理化、事務処理の能率化、省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民の権利保全と行政サービスの向上に努めてまいったところでありますが、登記申請件数並びに登記簿の謄抄本の交付及び閲覧の件数は、我が国経済の発展に伴って逐年増加を続けており、そのため、事務がふくそうし、既に事務処理の遅延、粗雑化等の弊害も生じており、このまま放置すれば登記行政に重大な支障が生じかねないという事態に立ち至っております。このような事態に対処し、登記事務処理の適正、円滑な遂行を図るためには、早急に登記事務のコンピューター化を初め、登記事務処理体制の抜本的改善を図る必要があり、そのため昭和六十年度予算の政府原案において登記特別会計を創設することとされております。
 なお、登記特別会計の創設に関連して、今国会に電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案を提出したところであり、十分な御審議をお願いしたいと考えております。
 このほか民事関係の立法につきましては、国の歳出の縮減を図るため、昭和五十七年度から昭和五十九年度までの間、供託金に利息を付することを停止しているところでありますが、国の財政の現状にかんがみ、さらに昭和六十六年三月三十一日まで右の停止期間を延長する必要があり、そのための供託法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところであります。
 また、いわゆる公共嘱託登記事件の適正、迅速な処理に資するため公共嘱託登記受託組織を法人化し、並びに司法書士及び土地家屋調査士の登録事務を資格者団体であるそれぞれの連合会に移譲するため、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところでありますので、いずれも十分な御審議を経て速やかに成立に至りますようお願いする次第であります。
 次に、人権擁護活動につきましては、国民の基本的人権の保障をより確かなものとするため、各種の広報活動によって、国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するよう努めるとともに、人権相談や人権侵犯事件の調査処理を通じて、関係者に人権思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいる所存であります。
 中でも、いわゆる差別事象につきましては、関係各省庁と緊密な連絡をとりつつ、その根絶に寄与してまいりたいと考えております。
 さらに、訟務事件の処理につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、近時の複雑多様化した社会情勢と国民の権利意識の高揚を反映して、社会的、法律的に新たな問題を内包する事件が増加しており、その結果いかんが国の政治、行政、経済等の各分野に重大な影響を及ぼすものも少なくありませんので、今後とも事務処理体制の充実強化を図り、事件の適正、円滑な処理に万全を期するよう努めてまいる所存であります。
 第四は、出入国管理事務の処理についてであります。
 国際交流の活発化に伴い、我が国に入出国する者の数は逐年増大し、また、我が国に在留する外国人の活動の範囲や内容も一層複雑多様化しており、出入国管理事務の重要性はますます高まっておりますので、このような情勢を踏まえ、国際協調の一層の推進を図りつつ、出入国者及び在留外国人の管理に関する事務の迅速適正な処理に努めてまいる所存であります。
 最後に、法務省の施設につきましては、昨年に引き続き整備を促進するとともに、事務処理の適正化と執務環境の改善に努めてまいりたいと考えております。
 以上、法務行政の重要施策について所信の一端を申し述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。
#5
○委員長(大川清幸君) 以上をもちまして所信聴取は終了いたしました。
    ─────────────
#6
○委員長(大川清幸君) ここで、委員の異動について御報告いたします。
 本日、石本茂君、河本嘉久蔵君及び園田清充君が委員を辞任され、その補欠として水谷力君、吉村直事君及び杉元恒雄君が選任されました。
    ─────────────
#7
○委員長(大川清幸君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び供託法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
#8
○国務大臣(嶋崎均君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所における事件の適正
迅速な処理を図るため、判事の定員を改めるとともに、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員の定員を改めるものでありまして、以下その要点を申し上げます。
 第一点は、判事の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件並びに家庭裁判所における少年一般保護事件の適正迅速な処理を図るため、判事の員数を九名増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の減少であります。これは、一方において、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件、家庭裁判所における少年一般保護事件並びに簡易裁判所における民事訴訟事件、民事調停事件及び督促事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所の職員を四十人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い、裁判官以外の裁判所の職員を四十二人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二人減少しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
 続いて、供託法の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明いたします。
 供託法は、供託された金銭について利息を付すべきこととしておりますが、国の財政再建に資するための特例措置として、昭和五十七年度から昭和五十九年度までの間、供託金に利息を付さないこととされてきたところであります。
 この法律案は、国の財政の現状にかんがみ、国の歳出の一層の縮減を図るため、いわゆる特例公債依存体質からの脱却の努力目標年次とされている昭和六十五年度まで、引き続き供託金に利息を付することを停止しようとするものであります。
 これにより、昭和六十年度から昭和六十五年度までの六年間で合計約百三十億円の歳出の縮減が見込まれております。
 以上が、この法律案の内容であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#9
○委員長(大川清幸君) 以上で趣旨説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#10
○寺田熊雄君 まず、大臣の所信表明にもありました刑事施設法案の不提出に関連してお尋ねをしたいのですけれども、その前に刑務所の問題で最近ちょっと新聞をにぎわしたものが二つほどございますので、その問題について先にお伺いをいたします。
 一つは、ことしの三月十四日に新聞報道がなされた大阪拘置所で覚せい剤の密売組織があるのではないだろうかということで捜査を始めたという問題があったようでありますが、これについてちょっと御報告をいただきたいと思います。
#11
○政府委員(石山陽君) ただいま委員御指摘のとおり、去る三月十四日に新聞報道でそのような趣旨の記事が登載されましたことに基づきまして、私どもとしまして直ちに現地を調査いたさせました。
 現在までに判明しております事情につきまして御報告申し上げますると、本年の一月二十九日、ある女性から収容者に対しまして雑誌が送られてまいりました。その雑誌をチェックしておりました保安課の職員が、雑誌の背表紙に一部破れがある、それをまたのりづけした跡があるということから、不審に思いまして、そこを開いてみましたところ、雑誌の背中の部分を薄くくりぬきまして、そこに細いビニールパイプ一本と注射針を一本、それから耳かきで四杯分ぐらいのセロハンに包んだ少量の覚せい剤らしい粉末、これがおさめられているのを発見したわけであります。そこで、直ちに関係当局にその旨を通報いたしました。内部事情につきましても調査をいたしましたところ、その結果、それは覚せい剤であるということが判明いたしました。その後、大阪府警に依頼をいたしまして現在捜査が進められておる、こういう概況でございます。
 ところで、その新聞記事に大阪拘置所内で密売組織があるように報道されましたので、この点につきまして、私どもも驚きまして、その点もあわせて現在捜査中でございまするが、現在までのところはこの差し入れの段階で未然に発覚できたという形で、その差し入れ防止ができたという事実は判明しておりまするが、これらの覚せい剤が既に多数回にわたって拘置所に入り、それから新聞報道によりますと約二百名にわたる密売組織ができておったようにも報道されておりまするが、現在までのところの調査ではそのような事実は全く見当たっておりません。
 なお、今後調査を続けて、私どもといたしましても真相を究明いたしたいと思っておりますし、それから司直の手をかりましてもその関係を明らかにしたいと思いまするが、これまでのところ、いわゆる差し入れ未遂を防止したという事実にとどまっておりまして、覚せい剤密売の事実があったというところまでは断定できる段階にはない、これが現状でございます。
#12
○寺田熊雄君 これを送った人間は既に検挙されたわけですか。
#13
○政府委員(石山陽君) この雑誌の送り主は山田某という女性の名前でございました。ところが架空の人間でございまして、住所その他には実在いたしておりません。恐らく女性の名前をかたって、だれか外部の第三者がそのあて先の人間に対して覚せい剤を送ったものではないかというふうに考えております。
 ところが、もう一つ不思議なことは、現在までの調査によりますると、そのあて先でありまする被収容者、仮にこの人をAといたしますが、この本人はもちろんその架空名義であります女性の心当たりは全くないばかりか、平素覚せい剤に親しんでおりませんという形で、全く心当たりがないというのが実情でございます。
#14
○寺田熊雄君 次に、これも三月二十四日の報道でありますが、外掃作業中の受刑者が逃走をしたという報道がありますが、それが刑務所職員の引っ越し作業を手伝っていたんだということでありますが、まずその事実について御報告をお願いします。
#15
○政府委員(石山陽君) これは先週の土曜日、三月二十三日の朝の出来事でございましたが、これは大阪拘置所ではない、大阪刑務所の構外作業に出役しておりました外掃夫のうち一人の者が、ただいま委員御指摘のように職員宿舎地域におきまして引っ越し荷物の積み込みを手伝っておりました際に逃走をいたしました。約七時間後の同日五時半に大阪市内で大阪刑務所職員によって発見され、逮捕され、連れ戻された、こういう事実がございました。
#16
○寺田熊雄君 刑務所内で受刑者を職員の私用に使うという問題は、今までにも例えば刑務所内で養豚をするという問題でしばしば決算委員会等で問題になったことがあります。公私の別をきちっとしないと刑務所の行動がいろいろ批判を受けることになりますが、あなた方としては職員の引っ越しなどという私用に受刑者を使用するということは今までもやっておったわけですか。そしてそれは正しい行為だと思われますか。その点いかがでしょう。
#17
○政府委員(石山陽君) 実は大阪刑務所ではいろいろな作業をやらしているわけでございまするが、たまたま本件の問題を起こしました逃走者の所属しておりましたのは外掃夫と申す業種に従事しております。この外掃夫に所属しております者は、刑期あるいは服役成績、そういう点から見まして、非常は行刑成績が優良な者でありまして、いわゆる塀の外に出しまして作業させても大丈夫だというふうに折紙つきのグループでありまして、大阪刑務所はたくさん収容者はおりまするけれども、その数は極めて限られております。
 本件はたまたま不幸でございますが、その外掃
夫の一員が起こしたものでありまするが、これらの外掃夫が外の職員宿舎地域におきましていわゆる雑草の摘み取りでありまするとか、あるいは土の運搬でありまするとか、そういった構外作業にふだんは従事しております。たまたま職員の引っ越し作業がありましたので、当該職員から、今先生御指摘のとおり公私の別を明らかにするということで、職員と大阪刑務所の間におきまして構外作業につきましての依頼書を出させまして、それによりまして職員が私費をもちまして刑務所側にいわゆる外掃夫の賃金相当分を支払うという契約のもとに本件作業を実は実施さしておったわけであります。先般決算委員会等で職員会の養豚というお話がございましたが、それに私どもかんがみまして、自来職員会の養豚作業につきましても、いわゆる被収容者を外役作業で使う場合には正規に職員会から国に対しまして作業出役契約を結んで賃金を支払うという形で現在実施しておる、こういう形に相なっておるわけでございます。
#18
○寺田熊雄君 普通刑務所では報奨金というものを受刑者の労働に対して支給するようですね。あなたのおっしゃる賃金というのは今の報奨金とは別物ですか。それは具体的にどのような計算で算出されるものですか。
#19
○政府委員(石山陽君) ただいま委員御指摘のとおり、賃金相当額のいわゆる契約金を払うという形で申し上げましたけれども、それは中でいわゆるその作業に従事いたしました外婦夫にその日その日の出来高払いとして支払いまする作業の報奨金とはこれは別の物でございます。しかしながら、例えば刑務作業で申しますると、民間からいろいろな作業を依頼されます。そうしますと、作業契約単価として一人当たり幾らの割合でというふうに賃金相当額を含めました諸費用を国庫に納入願いますが、これは歳入金として別会計になります。歳出の問題といたしましていわゆる作業賞与金というものが別の計算で一人当たり一日幾らという計算でその労働の質に応じて本人に支払われる形式になっておる、こういう形でございます。
#20
○寺田熊雄君 そうすると、一たんはその賃金が国家に納められて、つまり国庫に納められて、そして国庫の方からその受刑者に対して支払われるというわけですか。この場合、具体的にそれじゃどの程度の支払いがあったんですか。
#21
○政府委員(石山陽君) 例えば、本件の場合の詳細なデータはまだ入手しておりませんが、一つの例でごく一般的なことを申し上げます。
 大体民間から賃金収入作業と申しまするか、いろいろな品物をつくったりする製作のために依頼を受けます場合に、例えば一人当たりの賃金相当額分として払われる分が作業単価によりまして種種差はございまするが、平均しますると一日一時間当たり大体二百何円ぐらいが普通であろうと思います。そして、本人に支払われまする作業報償金の単価でございますが、これもやはり作業の性質によってさまざままちまちでございまするが、大体これは一月に三、四千円になるぐらいの額、ですから大体それの三十分の一ぐらいでお考えいただけばよろしいかと思います。
#22
○寺田熊雄君 一時間二百円の賃金と言われる、そしてそれが具体的に何時間働かしたかということははっきりしないけれども、どうも受刑者というような刑務所職員から絶対的な支配権を受けておる者を、やはりそういう賃金を支払うとはいうものの、受刑者を使うというのは好ましくないですね。第一、一般の労働者を雇えばとても一時間二百円では働いてもらえないでしょう。たまたま絶対的な支配権に服するそういう立場にある受刑者だから一時間二百円で働いてくれるわけでしょう。やはりそれは常識的な意味で、この刑務職員の役得的なものですね。それは好ましいことではない。前に私ども裁判官時代、戦前でも引っ越しのときは書記官などが手伝いにきてくれたことがあるけれども、もちろんその賃金などというものの支払いはない。全くこれは純粋の行為だったわけです。戦後はそういうこともないようですけれども。そういう命令服従、絶対支配下にある者を安い賃金で私用に使うということは、刑務所作業の公正さを疑わしめるものがある、よくないです。どう思われますか。
#23
○政府委員(石山陽君) ただいま委員の抑せは一々ごもっともでございます。私どもも必ずしもこの方法で万全だというふうには実は考えておりませんが、今回の作業の内容を調べましたところ、これは引っ越し作業の手伝いと申しまするが、実は引っ越し荷物のこん包、そういった段階はすべて職員は職員家族あるいは近所の職員の仲間、こういうものに手伝ってやってもらうわけでありまして、こん包できました分をトラックに積み込む際のいわゆる荷運びだけでございます。この力仕事の部分だけを実は一時間二百四十円の単価で、つまり一般の賃金よりやや高目の賃金でお願いをして契約したと、こういう実情にございます。
 正直のところ、これまで各施設で引っ越しの時期になりますると、大きな施設では十人、二十人と出てまいります。職員会の相互援助で刑務所は伝統的に賄っておりまするが、なかなか繁忙な時期になりますると、それが十分に賄い切れず、また、職員間でもお互いは気詰まりなことがあるというような形から、もちろん労務賃をはずんで民間の労働者に来ていただければ大変ありがたいわけでありまするが、その辺につきまして、委員御指摘のように多少甘い考えかもしれませんけれども、手元でそういう方法があるということでこれまでやっておったというのが偽らない実情でございます。私どもといたしましても、この方法を今後とも取り続けるのがいいかどうか、こういう点につきましては今後また十分に検討さしていただきたいと思いますが、実情といたしましてはそのような仕儀でこれまで行われておったということにつきまして御理解をいただければと思います。
#24
○寺田熊雄君 これはやはり受刑者と刑務所の職員という絶対的な支配、命令服従関係にありますから、いろいろな問題があるわけですよ。だから、やはりそういう点はもうきっちりと公私の別を区別してやっていただかないと、あなた方が一生懸命考えていらっしゃる刑事施設法案などについても、これはあなた方の誠意というか、熱情というようなものもやっぱり疑いを受けます、それは。そういう刑務所の実情を改めていかないと全般に影響を及ぼしますよ。大臣はどう思われますか。
#25
○国務大臣(嶋崎均君) 今矯正局長からお話があったような経過でございまして、実は私も新聞を読んだときは先生と同じような感覚を持ったわけでございます。したがって、どういうような状況になっておるのかということを至急調べていただきたいということを連絡したわけでございます。
 いろいろな経緯はあるようでございますけれども、今申し上げたような経過でございまして、従来、ちょうど四月の初めというのは刑務関係の職員の皆さん方の大異動の実は時期であるわけでございまして、まことにそういう時期はこういう事件が起きた、非常に残念至極なことであるというふうに思っておるわけでございますけれども、今お話がありましたような外で仕事ができるような方々を施設のいろいろな維持のために使っているということが、少しはみ出て引っ越しのところまで使うというのはどうなのかなという感触を実は私自身も持っているわけです。
 中をだんだん調べてみますと、そういう特定の人でございますので、事情ある程度わかるところもあるわけでございます。また、その処理も御承知のように正式に国庫に納めるというような形で費用を負担して、それとは別個に受刑者には国から別に支払われるというようなことも的確に行われておるというような話を聞いて、まあまあ事柄はそれだったかなというような実は感じを持っておるわけでございますけれども、最初に実は受けた印象というのがやっぱりいつまでも抜けない感触を持っておるわけでございます。したがいまして、今後やっぱりこれらの問題についてはどういうぐあいに取り扱うか、矯正局の方でも今後の取り扱いについてよく検討すると、先ほども申して
おりましたようなことでございますので、十分やっぱり検討して、少なくとも一般にそういう心配を受けないような形を考えていかなければいけない。また、そういうやり方というものについても十分工夫をしていかなければならぬところが多いのじゃないかというふうに思っておるのが実情でございます。
#26
○寺田熊雄君 これは一応主管局長も大臣も検討するということでありますので、そういう方向に行っていただきたいと思う。これは余り長くなってもいけませんが、また、私も言わなかったけれども、先ほど例に挙げなかったんですが、宇都宮病院の石川文之進という院長が盛んに収容している精神病者を個人の家のいろいろな用事に使ったということがありましたね。あれも我々非常に不当なことと思いますけれども、非常にこの点は不当でもあるし、また誤解を受けますので、さらによく検討していただきたい、できればやめてもらいたいと思います。
 次に、刑事施設法案が我々の思いがけない方向で今国会は決着を見たわけであります。あれほど法務省も警察庁も非常な熱意を持って法案の提出を準備しておられたのでありますけれども、それが全く意外な結末を見たということなので、これはどちらからお尋ねしたらいいのだろうか、まず、やはり法務委員会でありますからして、これは主管の石山局長の方へ、なぜ刑事施設法案の提出を今国会は取りやめたのか、その原因、それから経緯、今後の方針、この三つに分けて御説明をいただきたいと思います。
#27
○政府委員(石山陽君) ただいまお尋ねの刑事施設法案が、私ども法務省の方からいわゆる監獄法の改正問題として今国会にぜひ提出をさせていただきたいということでお願いをしてまいったことは各委員よく御存じいただいていると思うところでございます。何分にも刑事施設法案を提出いたしますには、やはり同時に提出を予定しておりました警察庁関係の留置施設法案との共同の歩調をとるという必要がございましたので、これまで両省庁間で緊密な連絡をとりまして作業を進め、あるいは国会方面につきましての御説明に当たってきておりましたわけでありまして、種々その間に調整を行っておりましたが、その過程におきまして事情の変更等がこれあり、警察庁側におきまして種々の御都合から今国会の提出は見合わせたいという御要望がありました。なお、その後両省庁間で調整をしておりましたけれども、結論的に申しまして、なおその意見調整にかなりの日時を要するという問題等がございまするので、今国会への提出期限には間に合わぬ、こういう判断から両省庁間で協議の上、両法案とも今国会の提出は取りやめるということにいたしたわけでございます。
 なお私どもといたしましては、刑事施設法案につきましては、先ほど大臣の所信表明にもございましたように、依然として緊急に早期改正を実現したい願望に変わりはございませんので、今後とも引き続き再提出に向けて鋭意最大限の努力を払ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#28
○寺田熊雄君 大体の経過というものはわかりましたが、もし警察庁の留置施設法案が提出されないといたしまして、その場合に刑事施設法案だけを単独で提出するということは立法技術的に難しいわけですか。
#29
○政府委員(石山陽君) 仮定の問題ではございまするが、いわゆる我々がこれまで国会方面にお願いし説明した中で申し上げてきましたように、刑事施設法案と留置施設法案がその立法構成上、車の両輪のような形になっておりまするので、もしこれを切り離してしまいまして私どもの刑事施設法案だけという形にします場合に、立法技術上及び立法政策上種々やはり問題点があったというふうに考えます。
 端的に申しますると、例えば立法技術的に見てこれは全く不可能であるかどうかという問題につきましては、私ども必ずしもそうではないように思われるのでございまするが、立法政策上、例えば留置施設法案が予定されておりまするいわゆる逮捕留置段階の被逮捕者の処遇問題、これにつきましては刑事施設法案一本化では手当てができませんので、その部分を残したままで、こちらが切り離して出すということにつきましては、立法政策上、法律的措置がきちんとなされる被勾留者段階と被逮捕者段階との処遇に余りにも大きな格差が生じてしまう、こういう点が立法政策上から見て果たして国民の御同意が得られるかどうか、こういう点は検討いたしたことがございます。
#30
○寺田熊雄君 正直に御説明いただくと、なおありがたいわけですが、警察庁の方で留置施設法案の提出は断念する、そうすると、あなたの方ではやはり刑事施設法案だけを提出する方途というものは見当たらないだろうかという、そういう検討はなさったわけでしょう。これは間違いないでしょう。
#31
○政府委員(石山陽君) その点につきまして、両省庁間の調整過程におきまして、それらを含めて検討はいたしました。
#32
○寺田熊雄君 その場合、やはり留置施設法案の内容を刑事施設法案の中に盛り込むということは、私ども立法技術的に十分肯定し得ると考えるわけですが、そういう点の検討もなさったわけでしょう。
#33
○政府委員(石山陽君) いわゆる刑事施設法案の内容に留置施設法案でなければ処理できない部門、先ほど例で申し上げましたような被逮捕者の処遇問題をも含めて一本化する、これは両方で申しますれば、いわば合体するような考え方でございまするが、これらにつきましてもその可能性は検討いたしました。
#34
○寺田熊雄君 仮に名づけるならば刑事施設及び留置施設法といいますか、両者合体法案といいますか、その場合、私ども、今局長がおっしゃった警察の専管事項と言うのは適当でないかもしれないけれども、逮捕する、それで四十八時間の間留置する、それはその合体法案の中に入れて考えるべきなんだろうか、それをやっぱり除外して考えるべきなんだろうか。その点はどういうふうに法務省では考えられたんでしょう。
#35
○政府委員(石山陽君) いわゆる合体化の方向におきましては入れて考えるべきだと考えておりました。
#36
○寺田熊雄君 大体の輪郭はわかりましたが、ここで、警察庁の方も審議官おいでですから、警察庁としてはなぜ留置施設法案の提出を断念されたのか、その後法務省の方との協議の内容、最終的にこの協議が成立しなかった事情、今後の方針、こういう段階で御説明いただきたいんですが。
#37
○政府委員(福島静雄君) お答えいたします。
 留置施設法案につきましては、今国会への提出のため鋭意努力をいたしてきたところでございます。しかし国会の会期からも十分な御審議をいただく時間のないこと、関係者の方々のなお十分な御理解を得るという必要があることから、今国会への提出は困難な情勢になってきたというふうに判断したものでございます。
 法務省との御協議につきましては、ただいま御説明がございましたけれども、いわゆる合体案等を含めまして両省庁間で真剣に協議を重ねてきたところでございますが、なおいろいろ調整すべき点に時間を要しますので、私どもといたしましてはさらに来国会へ向けてこの法案の提出に努力をしてまいりたい、かように考えている現状でございます。
#38
○寺田熊雄君 これは新聞記者の方々から私聞いたのだけれども、どうも警察庁は法務省の刑事施設法案だけを単独で提出するという方針には余り協力しなかったという報道があるけれども、この点はどうですか。
#39
○政府委員(福島静雄君) この点につきましては、法務省から御意見の照会もございましたけれども、これは一つには被勾留者につきまして拘置所と留置場においての処遇等の均衡の問題、あるいはまた留置場における被勾留者と被逮捕者との間の処遇の均衡の問題を生じるということがございますし、また昭和五十年六月に参議院の地方行
政委員会で指摘をされたところでございますが、代用監獄をめぐる事務の性格の明確化、あるいはまた費用負担関係の明確化等の課題がございますので、両法案合体の方式についてこちらからも御意見を申し上げたところでございますが、それらを含めまして両省庁間で真剣に検討をいたしまして、私ども誠意をもって対応してきたところでございます。
#40
○寺田熊雄君 あなた方としてはどうなんですか。やはり二つの法案をそろえて提出した方がいいと思っていらっしゃるのか、あるいは一本化して出しても差し支えないと思っていらっしゃるのか、その辺はどうでしょう。
#41
○政府委員(福島静雄君) 基本的には刑事施設法案と留置施設法案とそれぞれ御提出をするという考え方が基本であろうと思います。今後その点につきましてはよく法務省とも御協議をして調整してまいりたいというふうに思っております。
#42
○寺田熊雄君 あなたもよく御承知でしょうけれども、刑事施設法案と留置施設法案を、こう二つ並べますと、あなた方の本意ではないかもしれないけれども、どうやはり留置施設法案は国民の人権を侵害する悪法であると悪玉のように思いなされる傾向が現実にあるわけです。刑事施設法案もそのあおりを食ってストップしてしまうという現象が確かにあるんですね。日弁連などの猛反対というのも、もとをただせばやはり留置施設法案にその源があるわけで、代用監獄制度に源があるわけで、そういう点を考えますと、もう一遍この二つ耳をそろえて来通常国会に提出しても、どうもやはり同じような結果を生ずるのじゃないだろうかという感じがしないでもないわけです。
 だから、何とかやはりそこのところをあなた方もお考えになって、これはある新聞の社説にも出たところだけれども、刑事施設法案の中にできるだけ人権侵害のおそれのないような方法であなた方の庶幾される内容を盛り込んで、一本化して出した方がむしろベターではあるまいかと思うんですが、それをしかし絶対にあなた方としては排除するというお気持ちはないのでしょう。それもまあ考えてもいいというお気持ちなんでしょうね。その点どうでしょう。
#43
○政府委員(福島静雄君) 先生も御存じのとおり、法制審議会の答申が行われまして、受刑者を収容しないこととするほかは、ほぼ現行のいわゆる代用監獄制度を踏襲することとして答申が出されているわけでございます。で、監獄法が制定された当時とは違いまして、現在留置場は都道府県の施設でございますので、当然のことながら国の施設でございます拘置所とは、国と地方という点で行政組織あるいは指揮監督系統、費用の負担問題というところが異なっているわけでございます。したがいまして、やはり都道府県の施設である留置場を被勾留者の収容施設として用いる仕組みを初め、留置場についての法的な整備をきちんとすることが、やはり人権保障上からも極めて重要であるというふうに考えているところでございまして、私どもとしては基本的には留置施設法案として御提出をさしていただきたいというふうに考えておるところでございます。
#44
○寺田熊雄君 それはよくわかるんです。あなた方も御自分の仕事に熱意と誇りを持っていらっしゃるのだから、そういうことをおっしゃることは私は理解はできるんですよ。しかし、いろいろやはり国民的なコンセンサスを得ることも大事だから、そこに問題がある。そこで、基本的にはとおっしゃるのは、やはり合体法案として出すこともまたやむを得ない場合もあるという、そういう含みがあるのかどうか、その点をお伺いします。
#45
○政府委員(福島静雄君) 私どもといたしましては刑事施設法案、留置施設法案、両法案の形で御提出をいたしたいという考え方でございます。ただ、この点につきましてはまた法務省とよく御相談をして、調整をいたしたいというふうに考えているところでございます。
#46
○寺田熊雄君 なかなかあなたも苦しいところだな、これは。まあお気持ちはよくわかるんだ。
 そこで、もしも刑事施設法案の中に留置施設法案的内容を盛り込むとすると、それは今の留置施設法案の内容をそっくり盛り込まなければいけないのか。例えばあなた方警察プロパーの四十八時間というものは除いて考えていいのか。その辺はあなた方はどうお考えですか。
#47
○政府委員(福島静雄君) これは実は立法形式につきましてはいろいろな考え方があり得ると思われまして、十分検討を尽くさなければ明確なお答えは直ちにはいたしかねるというふうに考えております。
#48
○寺田熊雄君 確かに立法形式、立法政策ですか、その面から大変難しい問題だと思うんですけれども、一面において従来の監獄法を改むべき必要性というものもこれは否定できないわけですから、できるだけ国民的なコンセンサスを得るような方法で両省庁間の話し合いができて、法案ができれば一本化してまとまるということが望ましいと私どもは考えておる。まあ両省のお考えはよくわかりましたので、大臣としてはこの際どんなお考えでしょうか。大臣のお考えをちょっとお伺いしたいと思います。
#49
○国務大臣(嶋崎均君) お尋ねの刑事施設法案の問題につきましては、御承知のように、監獄法というようなものが明治四十一年から現在までずっと継続して動いておるという形になっておりますが、その内容等の点から考えまして、どうしても時代も変わっておるわけでございますから、ぜひともこの改正をやりたいというのが、私の強い念願であったわけでございます。また、そういう気持ちを受けて、法務省の幹部の皆さん方にも大変な御努力を願ったと私は思っておるわけでございます。
 特に第九十六回の提出の場合にも大変な苦心があった経過も聞いておりますし、それから非常に遅い時期に提出をされたというような経過になったことも十分承知をしておりまして、できるだけ事前に十二分の注意をして、国会の皆さん方にもある程度御理解を得た上で対処をしていかなければならない。かつまた、いろいろな議論がありました弁護士会等の関係につきましても、できるだけ耳を広くしていろいろな議論を消化して整理を進めなければいけないというような考え方で、この骨子の考え方自体をはみ出るというような気持ちは全然ありませんけれども、できるだけそういう線に沿うて整理をしていかなければいけないということで努力をして今日まで参ったわけでございます。
 しかし、いろいろな経緯がありましたけれども、今度の国会の模様というようなことを考えられまして、警察庁の方から留置施設法案について提出をあきらめるという話を三月の上旬になって承ったわけでございます。それまで相ともに出そうということで両法案別建ての形でずっと進めてまいってきたわけでございまして、そういう時期にそういう御判断になられたということは非常に私も残念なことであろうというふうに思います。その後も、先ほど来寺田先生いろいろな意味で側面からお聞きになっておられるようなこともありまして、何とかそれでは分離をした形で刑事施設法案として提出する工夫がないだろうか、そうしたような案もつくってみてくださいというようなことで、私も外には明らかにはしておりませんけれども、そういう工夫をやらした経緯もあるわけでございます。
 それもなかなか難しかろうというようなことで、まあ合体をするというような考え方でひとつ工夫をしてみたらどうかというようなことも考えてみたわけでございます。しかし一つは、純粋に立法技術の問題としてはともかくとして、やはりこういう問題を整理するのには両省庁間で政策的なある程度の合意というものができないとなかなかこの整理というのは難しいのが実態でなかろうかというような感じを私たち持ったわけでございます。
 今後いろいろな問題点もあろうと思いますけれども、先ほど私も申し上げましたように、どうしても監獄法の改正、刑事施設法案の提出というのは非常に大事な仕事であるので、ぜひ今後とも継
続して努力をしてやりたいというようなことでございますので、いろいろな政策的な判断の差異はあっても今後十二分にその調整に力を注ぎまして、今国会だめでありましても、いずれかの時期に何らか政策的な調整も行い、かつまた法技術的な面についての調整も十分行って皆さん方の御審議を賜りますように努力をしていかなければいけないというふうに思っているのが現在の心境でございます。
#50
○寺田熊雄君 それで大体今の問題の質問を終わりたいと思うんですが、ただ、大臣の所信表明の中でこういうくだりがありますね。今の監獄法の全面改正の問題の中で「第百回国会において衆議院が解散されたことに伴い廃案となりました。そこで、今国会への再提出を目指して努力を重ねてまいりましたが、関係省庁との意見調整がつかず、提出を見送らざるを得ないこととなりました。」と、こういう文言があるものだから、矯正局長にお尋ねしたいところは、「関係省庁との意見調整がつかず」というのは具体的にどの面だったんでしょうか。そこのところだけ一点、最後にお伺いしたいんです。
#51
○政府委員(石山陽君) この点は、私先ほど来申し上げましたような事情、それから警察庁側からもお話しになりました事情等を総合した判断になるわけでございますが、一つにはやはり留置施設法案につきましての国会審議の予定等の点から、いとまがないということ、それから留置施設法案につきまして必要以上に悪者扱いにされ過ぎておって、これの誤解を解くために、御理解をいただくためになお日時を要するという警察庁側の判断があったこと、それから、その後におきまして私どもがいろいろ考えました立法政策上につきまして警察庁との間の調整面におきまして短期間ではなかなか調整し切れない問題点がある。例えば一つの例示で申しますると、合体という場合にはどういう形の合体がいいのかという方法論等につきましてもまだなおもうしばらく調整さしていただかなければいかぬと、こういうような点がありましたことから、両省庁とも調整未了であるため今回は提出をあきらめざるを得ない、これらが主要な問題点でございました。
#52
○寺田熊雄君 その点は一応そう伺っておきましょう。
 それで、この際、ちょうど警察庁の方が出ていらっしゃるから、ついでと言っては失礼だが、お尋ねしたいのは、今回の三菱銀行横浜支店の強盗事件ですか、人質監禁事件というふうにあるが、この問題で私どもびっくりしたのは、またこれが退職してまだ半年しかならない巡査部長であるということであったわけでありますが、きょうの新聞報道によりますと、警察庁では五十九年中、悪に走って懲戒免職になった警官が二十一人もおる、諭旨免職は二十八人で、計四十九人に上る、最近五年間の平均は懲戒免職が十八人、諭旨免職が四十人から五十人となっているという報道があるんだけれども、こういう数字には間違いがないのかどうか。まずこれをお伺いしたいと思います。
#53
○説明員(城内康光君) お答えいたします。
 警察職員の懲戒免職の件数というのは、そこで報道されているようなとおりでございます。改めて申し上げますと、五十四年二十人、五十五年十八人、五十六年二十人、五十七年十七人、五十八年十五人、五十九年二十一人ということであります。これは警察職員ということでございまして、そのうち警察官の懲戒免職の数はどうかということを申し上げますと、五十四年に十八人、五十五年に十五人、五十六年に十七人、五十七年が十六人、五十八年が十五人、五十九年が十四人ということでやや減ってきておるわけでございます。
 それから、諭旨免職の件数というものは、警察庁において正確に掌握しているわけではございませんが、私どもに随時報告があったものから総合して、おおむね五十名前後であろう、こういうふうに理解しております。
#54
○寺田熊雄君 五十名というのは何年度が五十名というのですか。平均ですか。
#55
○説明員(城内康光君) 細かく申し上げれば、五十五年に諭旨免職の件数は六十四人、五十六年が三十六人、五十七年が五十一人、五十八年が四十七人、五十九年が二十八人、こういうことでございまして、これは実は警察庁に対して報告があったものをまとめたものでございまして、これを平均いたしますと約四十五人ということになりますので、まあそこら辺であろう、こういうふうに理解しておるわけであります。
#56
○寺田熊雄君 警察官は数が多いから、この程度はやむを得ないといえばやむを得ないのかもしれないけれども、しかし好ましいことでないことはもう言うまでもないので、警察庁としてはこういうふうに懲戒免や諭旨免職が多いことをどう考えていらっしゃるのか。これは審議官にちょっとお伺いしたいと思います。
#57
○政府委員(福島静雄君) お答えいたします。
 犯罪を取り締まるべき警察職員が犯罪を犯したり、あるいは犯罪に至らないまでも不祥事案として報道機関に取り上げられ、世の指弾を浴びるということはまことに残念に存じております。こうした不祥事案が起きておりますことは、現在の社会の病理現象が警察の内部にも及んできまして、一部の警察職員の職責の自覚に緩みが生じたというふうに考えられるところでございます。発生した不祥事案につきましてはそれぞれの府県警察におきまして事案の背景、原因、動機等を徹底的に究明し対策を講じているところでございます。警察庁におきましてもそれぞれの事案に対して厳正な処分を行うとともに、各種の再発防止措置をとってきてまいっているところでございまして、こういう事案が起きないように今後とも指導を強めてまいりたいというふうに考えております。
#58
○寺田熊雄君 大体あなたのおっしゃること、非常に私ももっともだと思うんですよ。やっぱり警察という大組織の中で多少全般的に何か規律が乱れているというのか、厳格な職務上の倫理観念というか、そういうものがやはり多少希薄になっているのじゃなかろうかというような感じもするので、これはよほどあなた方が今後御努力なさらなければいけませんね。
 それで、元警官というものの犯罪も非常に多いのだけれども、これはどうしようもないですか。元警官、一たんあなた方の職場から離れた者まで追いかけて道徳的な観念を守らせるというのは、あるいは不可能なのかもしれないけれども、しかし考えてみると、元裁判官というようなものが悪いことをしたというのも余り聞かないし、元検察官というのもそう悪事を働く者も聞かないし、たまたま警察官というものがしばしばこういうマスコミをにぎやかすものだから、これはやっぱりあなた方考えていただかないと、警察全般の規律というか、それから倫理観念というか、そういうものがきちっとしておれば、その中に育った者がそうやめてから悪いことをするということはないわけだろうと思うんですね。これはどう考えられますか、審議官。
#59
○説明員(城内康光君) 昨年来、元警察官による犯罪が相次いでおりまして、国民から厳しく批判されているところでありますが、警察官は法の執行者でございますので、退職後といえども堅実な生活を送ることが強く期待されておるわけであります。退職をいたしましたほとんどの者は立派に社会で活躍しているわけでありますが、少数とはいえ元警察官としての自覚に欠ける者がありましたことはまことに残念であるというふうに思います。
 退職者につきましては、再就職の相談とかあるいは退職後の生活設計等についての助言指導、そういうような機会を通じまして個々の退職者の退職後の状況ということを若干知ることができるわけでございますが、退職者全員について状況を把握するということは事の性質上どうしても難しいわけでございます。おのずと限界があるわけでございます。とりわけ問題があってやめた職員について、そういった状況を把握するということは大変難しいわけでございますけれども、私どももいろいろと現在そういったことについて今回のよう
な事件の再発を防止するために何か手はないかということを現在いろいろと検討している段階でございます。
#60
○寺田熊雄君 じゃ、警察庁の方結構です、これで済みましたから。
 次に、スパイ防止法についてお尋ねをしたいのですが、スパイ防止法というのは今までに大変各種委員会で論ぜられてまいりました。各大臣がそれぞれに答弁をなさっておりまして、大臣の人柄であるとか世界観までうかがい知ることができるので非常に興味を持ったわけですが、最近またスパイ防止法案の提出が論議されてまいりましたので、この際大臣の御所感をお伺いしたいと思っておるわけであります。
 今までに、例えば大平総理が生前に衆議院本会議で春日一幸さんの質問に対して答弁をなさった中に「いずれにいたしましても、機密保護法の制定というようなことを念頭に置いているわけではございません。」という答弁をなさったことがあります。これは五十五年一月二十九日であります。
 それから、この法務委員会で私の質問に対して五十五年四月八日に倉石法務大臣が「法務大臣としてお答えいたすことが、ただいまの段階で妥当であるとは思いませんが、一般論から申しまして、この種の法律というのは非常にいろいろな各方面に影響がありますので、ことに私どもの経験によりますというと、この種の法律案というのは一たん上程したら、やはりたなざらしにしておくことはよくないのでありますから、十分にやはり、何と申しますか、各方面の理解と協力を得るようにした上でなければなかなかむずかしいんではないかと思っておりますので、これは先ほど来寺田さんと刑事局長の間でお話し合いをなさっていらっしゃるのを承っておりましても、波及するところ非常に大きなことにも関係がございますので、やはり私はそういう意味で慎重に検討すべきものであると、このような感触を得ておるわけであります。」と、そういう答弁をしていらっしゃるわけです。
 それで、私と刑事局長とのお話し合いなるものはこの大臣答弁の前にありまして、当時の刑事局長、今の次官の前田さんでありますが、「先ほど申しましたのは、過日発表されたと言われております自民党の案についてのつもりでございまして、基本的にそういう法案が、あるいは法律が必要かということになりますと、まさしく御指摘のように憲法のいろいろな面の問題がそこにかかわってくるわけでございますので、それを要するに憲法との関係もこれあり、慎重に対処すべきものというのがお答えではなかろうかと思います。」、これは当時の前田刑事局長の答弁であります。
 中で秀逸なのは、外務省の大臣官房総務課長の中平という人が、これは五十五年四月九日に衆議院の法務委員会で答弁しておるところによりますと、「立法技術的な観点からこれこれというふうにお答えする立場には外務省は特にございませんが、自民党内における検討会で説明を求められたときに、外交機密の性格等を御説明いたしまして、検討しておられる法律には必ずしもなじまないものである、こういうふうにお答えしたわけでございまして、」という答弁があるわけです。外務省はかなり消極的な意見を自民党の機関に述べたということがうかがわれるわけであります。
 それから、伊東正義氏が、これは衆議院の外務委員会で答えておる。これは五十五年十一月五日のことでありますが、「私への質問はスパイ防止法の関係の御質問でございます。 これは国家機密とかいう問題、どこまでどうするかというような非常にむずかしい問題がございますし、政府で何も相談したわけじゃありませんが、私の個人の考えを申し述べれば、こういう法律はよほど慎重にしないと、戦前のこともいろいろわれわれは経験がございますし、慎重に考えなければいかぬ問題だというふうに考えております。」、これはかなり伊東さんの性格が出ておるのでありまして、どちらかというと否定的な見解のようであります。
 中で積極的に賛成の方針を述べたのは奥野法務大臣であって、これは五十五年十二月十八日、戸塚進也さんの質問に対して、「いまも私は、やはり防衛機密を守る何らかの立法がこれは検討されるべきじゃないかなあという気持ちを持ち続けておるわけでございまして、」という、積極的な感触を述べられたのは奥野さんだけのように思うのです。
 特に私がおもしろいと思いましたのは、警察官出身の後藤田さんが非常に含蓄のある答弁をしておられることに、これはびっくりしたわけであります。これは五十八年四月十八日、参議院の決算委員会における答弁でありますが、「しかしながら、機密保護法ということになりますと、どうしても収集探知の罪、これは構成要件の中に入れてそれを罰するという規定にならざるを得ないと思います。収集探知の罪を入れるということになると、これは運用いかんによっては民主主義の基本原則、開かれた社会という面を侵してくるおそれがある。したがって端的に言えば世の中が暗くなるおそれもあるわけでございます。ならばそういったことは適当ではあるまい、やはり社会の強靱性ということを考える場合には、そういったことはよろしくないんだという考え方も私はあると思います。」、最終的にこう言っておられる。「私自身はどちらかといえばこういうものについては消極的な立場を従来から党内においてとっておるものであると、これだけはつけ加えて申し上げておきたいと、かように思います。」、かなり自己の地位について自信を持っていらっしゃるのか、相当思い切った考えを率直に述べておられるわけです。
 それから、同じく警察官出身で大臣になられた山本氏が、これも五十八年五月、衆議院の地方行政委員会で、「将来のことはいざ知らず、現在のところは、いま直ちにそういうものをぜひつくらなければならないとまでは思っていないということであります。」、その前に、「何か亡霊のごときものとか幽霊のごときものとまでも思っていないのでございまして、しかし、いまは現行法の運用によって現在のそうした事態には対処していけるであろう、こう思っております。」、警察官出身の大臣がいずれも消極的な意見を述べておる。
 もっとも、秦野氏は衆議院の法務委員会で五十八年五月二十五日に、「スパイ防止法をいますぐ政治日程にのせるというようなことはどうもまだ熟してもいないという感じがいたしますが、少なくとも検討すべきであると私は考えております。」、やや肯定的なことを言っておられるのであります。
 これは大臣も御承知のように、自民党は昭和三十三年、岸内閣時代に情報活動取り締まり等に関する法律案大綱を発表し、五十五年、防衛秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案要綱、五十七年にはその第二次案を発表いたしました。その後、第三次案を発表したようでありますが、余りマスコミに乗らなかった。私はその内容を手に入れて、ある雑誌に論文を書いたのでありますけれども、その中には外交機密まで含めておったようであります。ところが、やはりさっき外務省の方が否定的な意見を述べたということがありましたけれども、そういうこともあったのでしょうか、外交機密は除くというふうに党内の論議が固まりつつあるというような報道もあるわけであります。
 これは大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。
#61
○国務大臣(嶋崎均君) いわゆるスパイ防止法の問題につきましては、今、寺田先生からお話がありましたように、非常に長い系譜があるわけでございます。そういう中で与党の中でもいろいろな論議を重ねて今日まで至っておるわけですし、また、最近になりましてもその内容等につきましていろいろな議論があるやに聞いております。そのこと自体は私自身承知をしているわけでございますが、自民党の中でもこれについてきちっとした意見が現在まだ整理をされていないというような段階になっておるようでございますので、法務大臣として意見を申し上げるという段階ではないと私は思っておるような次第でございます。
 いずれにしましても、この問題、日本はある意味で情報天国だというようなことが言われるような面も別に持っているということは事実のようでございますし、また、そういうことが指摘もされているところもないわけじゃありませんけれども、やはりこの問題を考える場合には各種のいろいろな立法、あるいは憲法のいろいろな表現の自由等々の問題、先ほど後藤田先生のお話にありました、それの前段階のいろいろな調査の問題等、非常にやっぱり多くの問題が重なっていまして、自民党の中でも今後いろいろな論議が尽くされていくのだろうというふうに私は思っておるわけでございます。それらの結果というものをよく見て判断をさしていただきたいと思いますけれども、何よりもまずこういう問題を考える場合には、やはり国民の皆さん方から十分その問題についての理解を得るという段階がぜひとも私は必要なんじゃないかと思います。そういう段階にはまだ至ってないような感じを私は持っておるというのが実情でございます。
#62
○寺田熊雄君 それでは、この問題は一応その程度にしておきましょう。
 次に、外登法の問題をお尋ねしたいのですが、これは御承知のように、指紋押捺と常時携帯の両義務、それからそれに伴って刑事罰をできれば民事罰に変えてもらいたいという意見が非常に最近強く起きてまいりました。法務省の方では、やはり非常に自己の職務に御熱心な面もありまして、なかなかこれをがえんじられないようであります。しかし、これは御承知のように、各自治体がどんどんと法改正を求める要請書を法務省の方に提出しておる状況もあるようであります。
 そこで、一体この今の常時携帯義務、指紋押捺義務、それから刑事罰を民事罰に変えることの是非、そういうことについて法務省としてはどう考えていらっしゃるのでしょうか。まず法務省のその全般的な問題についての御意見をお伺いしたいと思うんです。
#63
○政府委員(小林俊二君) お答え申し上げます。
 御承知のように外国人登録法は一定期間以上我が国に在留する外国人に対してその身分関係及び居住関係を明確に記録するために登録の義務を課しておるわけでございます。一般に外国人の我が国における身分関係及び居住関係は日本人に比して明確ではございません。それは、まず第一に我が国における外国人の親族関係あるいは友人知己関係が著しく限られておるということ、第二にその居住関係が流動的であるということから生ずるわけでございます。こういう特性に対応するために日本人の居住関係、身分関係の記録に比して追加の措置が必要となっておるわけでございます。
 先生御指摘の登録証明書の常時携帯義務あるいは指紋押捺制度というものはこういう必要から生じた追加の義務でございます。すなわち常時携帯義務は個々の外国人の身分関係等を即時的に把握するために設けられておる制度でございまして、また指紋押捺制度は外国人を誤りなく特定して登録し、かつ個々の外国人がその者として登録された人物と同一であるということを確認するために設けられておる制度でございます。そうしたことがただいま申し上げましたような事情がこういう日本人には課されていない追加の措置を必要としたわけでございます。
 なお、刑事罰の問題について御指摘がございましたが、常時携帯義務に対する罰則につきましては、御承知のように昭和五十七年の法改正におきまして自由刑を廃止いたしまして罰金のみの対象とするということに改めた経緯がございます。
#64
○寺田熊雄君 これは今の局長のお答えをそのまま承りますと、やはり私が先ほどお話したような法改正には反対だというふうに考えられますね。
 指紋押捺の必要性といいますか、これは衆議院の法務委員会における論議の中で、これは九十六国会の法務委員会の中で出た問題でありますが、大鷹局長がこういうことを言っていらっしゃる。「外国人登録法で指紋押捺義務を定めているのは、外国人登録法の目的からいってどうしても必要であるということからでございます。これは具体的に申しますならば、不法入国者、不法残留者、こういう者の防止、摘発ということのためでございます。」と、こういう答弁をしていらっしゃるんですね。そうなると、不法入国者であるとか不法残留者であるとか、こういう者は戦後一時期非常に多かったのだけれども、現在でもやはり指紋押捺義務を必要ならしめるほどたくさんいるんだろうかという疑問がありますね。これはどのぐらいおるというふうに把握していらっしゃるのでしょうか。まず法務省の方から。
#65
○政府委員(小林俊二君) これは性質からいたしまして不法入国者、不法残留者の数を特定するということは極めて困難でございます。もしそれがわかっておればすべて摘発されておるわけでございますから、そういうこと、その事実につきましての判断はかなり推論を必要とする、状況証拠等によってあるいは摘発の件数の推移によって推測するほかはないわけでございます。私が七年半ほど前に当局の課長をしておりましたころには全国で約十万の韓国、朝鮮半島出身者の不法潜在入国者が、不法入国して潜在しておる者がおるという推論もございました。過去七年半ほどの間にその数は減少しているのではないかという推論もなされております。
 その推論の根拠は摘発の推移からもございますけれども、またより根本的には韓国の経済情勢が好転して韓国における職業機会がふえておるということと、それから韓国自身が特に中近東を中心として労働力の輸出政策を組織的に進めておる結果、出稼ぎのためには危険を冒して密航しなくても中近東あたりに組織的に行って稼いでこられるという状況があるという事実がその傾向に貢献しているのではないかという推論がなされておるわけでございます。したがって、減少はしているとは思われますけれども、既に不法入国の上潜在している人間の数がなお数万に上るのではないかということは一般に考えられているところでございます。
#66
○寺田熊雄君 あなた方としては毎年の不法入国者というような数は把握してはおられないわけですか。少なくもそれが摘発された者の数というようなものは把握してはおられませんか。
#67
○政府委員(小林俊二君) 先ほど申し上げましたとおり、これはまことに明確さを欠くさまざまの要件、事情から推測するほかないわけでございまして、明確に把握することは物理的に不可能でございます。
#68
○寺田熊雄君 物理的に不可能だと言ったって、現実に摘発された人がいるのだから不可能なことはないでしょう。その数はわかるわけだ。警察庁の方は数を把握しておられますか。
#69
○説明員(鳴海国博君) 密入国者がどれくらい入ってきたかという数字は、ただいま入管局長から御説明がありましたとおり、私どもも把握をいたしておりませんが、警察が検挙いたしました数については承知いたしております。一応過去五年間に警察が検挙いたした取扱数は、これは朝鮮半島からの密入国者の数でございますが一千六百四十四名、年間にいたしまして、多い年少ない年ございますが、二百五十から四百ということでございます。ちなみに昨年、昭和五十九年中は二百六十五名の者を検挙いたしております。
#70
○政府委員(小林俊二君) 先ほど先生の御質問は不法入国者の数をお尋ねになったものと思いましたので物理的に把握不可能であると申し上げましたけれども、摘発された不法入国者の数は朝鮮半島出身者が主でございますが、フィリピン、タイ、中国その他を含めまして平均いたしますと年間四百名から六百名の間でございます。それが過去五年ほどの現況でございます。
#71
○寺田熊雄君 法務省と警察庁との数字の違いというのは、これはやっぱりそれなりの理由があるようですね。決してそれが私間違っておると言う気はありませんが、これは警察としてはその数字の違いはどういうふうな理由に基づくと把握しておられますか。
#72
○説明員(鳴海国博君) これはただいま警察の数字として申し上げましたものは警察が取り扱った
数字でございまして、それ以外に関係機関いろいろございます。入国管理局とかあるいは海上保安庁、その他いろいろございますので、私どもとしては警察が取り扱った数字だけを報告いたしたわけでございます。
#73
○寺田熊雄君 外国人登録法は法務省の所管事項でありますけれども、これを改正するかどうかということになりますと、外務省、警察庁の意見がかなり重きをなすと私どもは承知しておるわけです。これは警察庁としては今の指紋押捺義務、常時携帯義務、これをなくしてしまう、あるとしても刑事罰を民事罰に改める、こういう問題についてはどういうふうな見解を持っておられますか。
#74
○説明員(鳴海国博君) 外国人登録におきます指紋制度の具体的あり方、あるいは登録証明書の常時携帯義務のあり方、こういった問題については先生御指摘のとおり警察主管の問題ではございませんが、あえて意見を申し上げさしていただきますならば、まず指紋制度の関係につきましては、やはり在留外国人の公正な管理、これは公共の安全と秩序を維持していくという上においても極めて重要なことであると考えております。
 ところで、この在留外国人の管理を公正に行うというためには個々の外国人を特定するということが基本であろうと思います。そのためには指紋という絶対的な方法によることが最も有効であるものと考えております。また、我が国への密入国者等が後を絶たない現状にあるわけでございまして、現行の指紋押捺制度はこれらの不法行為に対する大きな歯どめになっているものと考えております。また、登録証明書の常時携帯義務の関係につきましては、今申しました不法在留者を適切に取り締まるというためには、在留外国人に適法な在留者であることを即座に証明し得る登録証明書を常時携帯していただくことが必要不可欠である、かように考えておるところでございます。
#75
○寺田熊雄君 きょうは時間がないので余り私の意見は披露しないことにしますが、大臣としてはこの今の問題、非常に自治体の方で指紋押捺義務について否定的な意見を持っておる人が多いですね。それからまた、その違反者に対して刑事訴訟法上の告発義務を履行しないということを宣言までしておる自治体も多いわけですが、この点に関してあなたはどういうふうにお考えでしょうか。
#76
○国務大臣(嶋崎均君) 御質問の外国人の法的な地位及びその待遇について、どのような制度が一番いいかというようなことにつきましては、国内的な事情なり、あるいはいろいろな国際的な関係なりというものを十二分に判断をして考えていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。とりわけ、御承知のように五十七年には外国人登録法の改正を行いまして、ある程度最低年限を十四歳から十六歳に最初のを変えるとか、あるいはいろいろな意味での改正をやって三年を五年に切りかえを変えるとか、あるいは登録証を持って外へ出るというようなことについての規制というようなことをやめるとかというような相当の改正を行っておるわけであります。そういう中で、国会の中でも十分議論をされておられたことでもありますから、やはりそういう事態というものを十分認識して考えていかなければならないのではないかというふうに思っておるわけでございます。また、そういう事実をよく御理解願って、地方自治団体の皆様方にもこの問題についての御理解をいただきたいというふうに思っております。
 我々自身としましては既に御承知のように日韓の共同声明のこともありますから、引き続いて何か検討していかなければならない、それは制度上の問題もそうですし、あるいは実行上の問題についても検討していかなければならぬのじゃないかというような気持ちを持って研究はしておりますけれども、やっぱり過去の五十七年の改正が行われた、そういう事態というものを認識して御判断をしていただくということが非常に大切なことじゃないかというふうに思うのです。
 どうも今までいろいろな市町村からそういう議論が出てきておりますが、個別に告発をしないというようなことについて、決定的な実は御意見は少ないわけでございます。大体市町村あたりから出てくるのは、もうともかく指紋制度全部やめていくように改正をしてくださいとか、携帯するのを全部やめなさいとか、相当何というか、ある意味では気楽なと言うと語弊があるかもしれないけれども、そういう議論が非常に多いわけでございます。しかし、私はその指紋制度の持つ意味というのは、今私の方からも御説明し、また警察庁からも御説明がありましたように、やっぱり長い歴史を持っておりまして、終戦直後から三十年ですか、昭和三十年ぐらいから正式にこの指紋制度を取り入れてやってきましたが、あの以後相当違反の事実がたくさんあったという現実もあるわけでございますし、現に今数字で挙げられたように、いろいろなこの問題をめぐるところの不正なものも相当あるわけでございます。そういうことをよく理解していただいて事柄を判断していただきたいものだなというような気持ちを実は持っておるわけでございます。
 しかし、いずれにしましても、最近何というか、一つも違反のないところも含めて、こういうことを告発しないのだというようなことをお決めになっているようなことがあるので、どういうことでこういうことになっているのかなという点、やっぱり世の中、情報化時代なものですから、非常にそういうことの伝染力というのは強いのだなというような感触も一部持っておるような次第でございます。しかし、いずれにしましても、やはりそういう五十七年の改正が行われまして、この制度が続いておるわけでございます。やはり外国人の皆さん方もぜひともこういう制度改正というものはいろいろな過程を経て今日まで及んでいるということを御理解願って、できるだけ協力していただきたいと思いますとともに、自治団体の皆さん方もやはり長らくの経緯というものをよく踏まえて事柄を判断していただきたいものだなというように思っておるわけでございます。
 しかし、どうしても告発をおやりにならないというようなことは、これはもう適当でないので、今までもそうでありますけれども、できるだけ説得をして出していただくというような手続をやっていただき、またそれが非常に経過をしたというようなものについては、やっぱり告発もやっていただくというようなことで、決まった法律を維持するというような意味で、ぜひとも自治団体の皆さん方にもそういう考え方で対処をしていただきたいと思っておる次第でございます。
#77
○寺田熊雄君 やっぱり衆議院の予算委員会で矢野公明党書記長の質問に対して大臣が何か法改正を検討するというふうにお答えになったわけですか。それが非常に大きく報道されておるわけですが、その検討というのはどういう趣旨でおっしゃったんでしょうか。
#78
○国務大臣(嶋崎均君) その際に、答弁の終わりの方でございましたけれども、共同声明の趣旨というものもありますわけでございますから、制度上及び運用上の各般の問題について関係省庁との間において鋭意検討を重ねており、可及的速やかに結論を得るよう努めているところであるというふうに申し上げたと思っておるわけでございます。
 これらの問題を整理する場合に、ちょうど五年に延長になった、その五年目に当たるわけでございまして、特に今年の夏ごろから相当大量切りかえがあるというようなことでございますけれども、私はあれはやっぱりこういう問題を考える場合には、日本に居住している在留外国人の皆さん方も、やっぱりそういう法改正が行われてきたという事実というものをよく踏まえまして、それにいろいろな意味で互いに協力をしていただく、そういう判断の中で本当に事柄が動いていくのではないか。やっぱりそういう点は朝令暮改のそしりを免れないというような意味でも、やっぱり私は今回は法改正をやるどうも時間的にもなかなか難しい状態でもありますこともありますけれども、やはり継続的に考えていくということでございまして、この国会の中で何か法令の改正を伴うよう
なことはなかなか難しいのじゃないかというふうに思っておるということも、後の何か分科会かその他のときに、あるいは法務委員会でも申し上げたかと思いますが、難しいとは思いますけれども、しかしそういう趣旨を踏まえて今後やっぱり検討していかなければならぬということを申し上げたというのが実情でございます。
#79
○寺田熊雄君 それはそれだけにいたしまして、次は最高裁の事務総長もおいでのようでありますので、裁判官の定員が十分に充足されていないということもあるんでしょうか。それから、裁判官以外の職員の充足状況、これも必ずしも完全に充足されておらないわけでしょうか。私は、個々の裁判官の職務に対する御努力というものは平素から高く評価しているわけですけれども、しかしやはり裁判の遅延という事実も現実に全国的に存在していますね。そういうことを考えますと、私はもっともっと裁判官をふやしてもらいたい、ふやさなければだめだというふうに考えておるのであります。それから、裁判官だけをふやして書記官、事務官、これは今のままでいいというわけのものでもないんで、やはり裁判官が増員すればその補助機関といいますか、書記官、事務官もしっかりと充足してもらわなければ困るという考えを持っておるんですけれども、事務総長としては現状のままでいいというふうにお考えか、さらにもっともっと裁判官も書記官もふやしていかなければいかぬというふうにお考えか、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
#80
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 具体的な前提事実がございますので、最初担当局長から答えさせていただきます。
#81
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) ここ五年来の裁判官、一般職の増員状況について御説明申し上げますと、例えば民事の特殊損害賠償事件の処理でございますとか、あるいは覚せい剤取締法違反というような刑事事件の処理でございますとか、さらには民事執行事件の処理、少年一般保護事件の処理等を柱にいたしまして、毎年判事の増員を要求してきたわけでございます。多いときでは二十数名、少ないときでございますと七名ぐらいでございまして、ここ五年間を通じて見ますと、年平均いたしますと十二人ぐらいずつの割合で判事の増員をお願いしてきておるわけでございます。一般職につきましては、ただいま申しましたような柱のほかに簡裁における督促事件の処理でございますとか、民事調停事件の処理等の柱もなお加えまして、大体年平均にいたしますと四十名前後の書記官、事務官等の増員をお願いしてきておりますし、昨年は家裁調査官三名の増員もお願いした、こういう状況でございます。
#82
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 充員の関係について申し上げます。
 裁判官の欠員の補充は、今回審議をいただいております判事の増員九名を含めましてこの春の人事異動においてほぼ充足する予定でございます。それから、一般職につきましては、裁判所書記官、家庭裁判所調査官いずれも今回増員の措置がとられておりますが、それらは例えば裁判所書記官研修所における養成とか裁判所書記官の任用試験による合格とか、その他裁判所書記官あるいは家庭裁判所調査官の再任用とか、そういった措置でほぼ充員できる予定でございます。ただ、裁判所速記官につきましては、これは以前から相当数の欠員がありまして、漸次充員いたしておりますが、今年度の春で四十名台の欠員にまで減少するという予定でございます。
#83
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 申し上げるまでもございませんが、裁判所の使命は適正迅速な裁判の実現ということに尽きるところであります。ただいま寺田委員御指摘のように迅速性につきましていろいろ批判のあるところでございますけれども、全体的に見ますと事件処理のいわゆる処理期間につきましては改善されつつあるように考えております。私ども事務当局といたしましては、適正迅速な裁判の実現に必要な人的の面はつきましての充実につきまして十分努力してきたところだと考えております。
 それから、こういう時勢、いろいろな技術面の発達等もございまして、裁判所内部の事務処理の問題、効率化、合理化の問題もあるわけでありますが、十分その点も考えまして、御指摘の各職種についてのバランスのとれた増員措置を講じていきたいというふうに考えております。
 補足させていただきますと、裁判は裁判官がもちろん主体になるわけでありますけれども、補助職がなければ裁判事務が遂行できませんので、ただいま申し上げました、また御指摘のありましたバランスのとれた増員措置を講じていきたいと考えております。
#84
○寺田熊雄君 私ども全司法労働組合からしばしばいろいろな陳情なり要請を受けるわけですね。組合の言われるのでは、例えばどこそこの簡易裁判所などは先般の事物管轄の拡大によって非常に事務量がふえて、仕事を夜持って帰らなければいけない、とても毎日毎日五時には帰れないような状況であるというような訴えを受けます。最高裁の事務総局からおいでをいただいてお尋ねをしますと、必ずしもそういうような認識をお持ちでないようなふうにも見受けるわけでありますが、私どもとしてはやはり事務総局の皆さんがそういう労働組合との話し合いということを嫌がらずに十分組合と協議をして、そういう点の意思の疎通を欠くことのないように努めてもらいたい。労働組合を毛嫌いするというのはその国のまだ民主化が十分発達していないという一つのバロメーターでありますから、あなた方嫌がっていらっしゃるとは思わないけれども、なおよく組合との話し合いをなさって、その間の意思の疎通を欠くことのないようにお願いしたいと思う。いかがでしょう。
#85
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 最高裁判所では全司法労働組合と常に意思の疎通は図るように努めております。具体的には、職員の増員の問題につきましても大体毎年五月から六月にかけまして担当の人事局の給与課長あるいは人事局長、さらには事務総長も交渉に当たりまして、職員組合の増員に関する要求に十分耳を傾け、そしてそこで出た御意見というものを担当局において検討していただき、その年の予算要求にもそれを参考にした上で要求に当たっていただいているわけでございます。
#86
○委員長(大川清幸君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#87
○委員長(大川清幸君) 速記を起こしてください。
#88
○寺田熊雄君 最後に一つだけ。時間がもう来てしまって申しわけないのですが、最高裁の刑事局長にお尋ねします。
 これは御承知のように、田中角榮さんが脳梗塞で倒れられたということで田中裁判がおくれるのじゃないかというようなことを云々する人もある。しかし、これは事後審ですから、今の制度が事後審なので、本人が病気で倒れたからといって従来定まった控訴趣意書の提出期間をいじるというようなことは、これはもう考えられないと私は考える。ですから、一般論として今の事後審の控訴審の制度を考えると、被告人本人の病気というようなことは控訴趣意書の提出期間等に影響を及ぼすということは考えられないのではないかと私は考える。一般論としてどうですか。
#89
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 具体的事件を離れまして、完全な一般論ということでお聞き取り願いたいわけでございますが、控訴趣意書の提出期限が決められました場合に、その控訴を申し立てている被告人が病気になったというような場合を考えてみますと、そのときに弁護人がついていればそれでいいのだというふうに言えるかどうかでございます。
 刑事訴訟規則などでも、やむを得ない場合には控訴趣意書提出期限の遅延を認めるというような場合もあるわけでございまして、要するに控訴趣意書を提出することがその病気によってやむを得ない場合があるのかどうかというような判断、当該裁判所の具体的な裁量に係る問題であろうというふうに考えますので、確かに控訴審では被告人は出頭の権利はありますが、出頭の義務はないと
いうことで出たくなければ出なくてもいいという建前にはなっておりますが、仮に病気であるけれども本当は病気でなければぜひ出たいのだ、あるいは自分の言い分を述べたいのだというような場合に、それでは、いや構わないのだと言って進められるかどうかというようないろいろなケースがあろうかと思います。また、その病気の状況もありましょう。あるいは控訴趣意書を提出するについて、病気ではあるけれども十分弁護人と打ち合わせできるという場合もあるかもしれませんし、あるいは全然今は弁護人と打ち合わせできないという場合もあろうかと思います。何しろいろいろな場合がございますので、一概にどうであるということは言えないのではなかろうかというふうに考えております。
#90
○委員長(大川清幸君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時四分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開会
#91
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再会いたします。
 休憩前に引き続き、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び供託法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#92
○飯田忠雄君 まず最初に、本日の議題でありまする法律の問題につきましてお尋ねを申し上げます。
 供託法の問題でございますが、今般利息を支払わないという制度を延長する、こういうことで法律改正をしていこうと、こうなったのですが、供託というその法律行為の本質を考えますと、このようなこそくな手段で推移すべきものではないのではないかと思われますので、二、三御質問を申し上げます。供託と申しますのは、多くの場合には私人間の取引に関しまして発生をしてくるものでございまして、その供託の結果、利息を払わねばならないというような事態に立ち至りました場合は、その利息というものは私人当事者間において処理すべき問題ではないかという問題でございます。これは民事問題でございますから、民事問題における損失という問題は非のあった方で支払う、負担するというのが民事法の建前であるわけなんでございます。
 ですから、もちろん供託には今申しましたような民事的な任意供託のほかに義務供託もございます。例えば公職選挙法における候補者の納める供託金、それからあるいは民事訴訟法における疎明が確実であるかどうかという真実を保証するための保証金の供託、こういうものもございます。ございますが、そういう義務的な供託を除けば、一般的には私の人間相互間の取引の間で生ずる問題であるわけでございます。ですから、こういう問題につきましては、当然裁判に負けた方が支払う、これが筋道なんでございます。それを国の予算に組んで、しかも一般会計の予算で支払う、こういうことはそもそも筋が違うのではないかと、こう思われるわけでございます。
 この点につきまして、政府御当局の御意見を承りたいと思います。まず最初に責任の局長さんから御説明いただきまして、後で法務大臣の御感想なり決意なりを承りたいと思います。まずこの問題、よろしくお願いします。
#93
○政府委員(枇杷田泰助君) 供託金に利子を付すべきか付すべきでないかという点につきましてはいろいろな議論があるわけでございまして、もともと利息は付する必要がないという見解を述べる方もおられます。
 ただ現在の供託制度におきましては、明治の時代に発足したころから、いわば供託制度をなるべく多くの人に利用していただこうというようなことも含めまして、供託金に利息を付するということになっております。そして八十年間その制度が続いておりますので、現在といたしますと、供託金につきましては利息が付されるのが当然だというふうな考え方が一般的になっております。そういう面で、なお私どもとしては供託金につきまして利息をつけるという制度をやめてしまうというのはどうかなという感触ではございます。しかしながら、供託金に利息はもともとつけなくてもいいのだというふうな考え方もあることはあるわけでございまして、外国の立法例でも、ただいま飯田委員がおっしゃいましたような私人間の紛争の解決のための供託金については利息をつけないというようなことをしている例もあるようでございます。
 そういうようなことで、いろいろな考え方はあろうかと思いますが、ただいま申し上げましたように、現段階におきましては、従来から八十年間利息をつけるという制度が続いてきたというようなことも含めまして、できればその制度は今後も維持していくのが適当ではないだろうか、基本的にはそのように思うわけであります。ただ、背景としてそういうことがございますので、財政が非常に苦しい時代にはひとつ利息をつけることをしばらく御勘弁いただきたいというのが今回の法案の趣旨と、そういうことになるわけでございます。
#94
○飯田忠雄君 供託という場合は、今おっしゃったように、これはいろいろの説がある、八十年間やってきたんだから、この際廃止するのは名残惜しい、こういう御趣旨のように思いますが、それではお尋ねしますが、国というものはこの供託金を集めて営利行為をやっているんでしょうか。これは営利行為をやっているんじゃないでしょう。
 もともと供託法の第一条を見ますと、あの文言をそのまま正直に受け取りますと、これは供託所の金庫に入れて保管しておくというふうに本来とれるんですよ。それを、そうすると間違いが起こるから日本銀行に預かってもらう。預かってもらうといったって、これは保管してもらうのですよ。日本銀行はそれを合わせて利息を取るというわけじゃない。そうすると、国は何ら利殖行為をしていないのに利子を払うということになると、その財源はどこに求めるかということになる。結局それは国の税金でしょう。国家予算に求める。しかも特別会計じゃない。一般会計なんです。それ以外に財源がないんですよ。
 そうなりますと、特定の一個人の間の損得関係の問題に国が特別に利益を与えるということになりますと、それはどうでしょうか。ほかにそういうような問題が起こった場合に全部国が補償するのならいいですよ。そうでないなら憲法の十四条に違反するじゃありませんか。そういう差別行為はすべきじゃないと私は考えるのですよ。しかも、その金額が、なるほど一・二%の利息で少ないからいいじゃないかという御議論もあるが、一・二%のわずかなものでも、ちりも積もれば山となる。先ほど法務大臣が所信表明でおっしゃった予算額、相当なものですよ。こういうものをなぜ国民の負担で一般的に背負わねばならぬのか、大変不思議に私は思うんですが、いかがですか。
#95
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまのような御意見もかねがねあるわけでございまして、私どもも頭からそれを否定するものではございませんが、先ほど申し上げましたように、ともかく八十年間、供託をすれば何がしかの利息がつくということで続いてきております。
 それからまた、この供託金というのは国が利殖をするとか、あるいは運用するとかいうことの目的のために受け入れるものではございません。しかしながら、保管金という形で国庫に入りますと、これは直接ではございませんけれども、間接的には何がしか国の利益になるという面も、これは否定しがたいわけでございます。これは計算上出てくることではございませんけれども。そういうことから考えますと、ただ一方的に税金で負担をするというだけの関係でもないような面もございます。
 そういうことをあれこれ考えまして、利息をつけるという制度それ自体はここでにわかに廃止ということに踏み切るというのはいかがなものであろうか、ただ、こういう財政事情のもとであえて税金の中から出すということは、これは少し御勘
弁いただきたいという趣旨での延長の措置を盛り込んだ法案ということになっておるわけでございます。
#96
○飯田忠雄君 これは大変お苦しい答弁で申しわけないですが、八十年間払ってきたと、払ってきたことが実はしなくともいいことをやってきたというのなら国民に対して申しわけないことだと思いますよ。つまり明治時代の法律を今なお踏襲したために国民に対して大変申しわけないことをしているということですからね。私は、国会としてもこの点については重大な関心を持たざるを得ないことではないかと思うわけです。これは政府の責任というよりもむしろ国会の責任だと思いますけれども、しかし政府案として今まで出されてきておるから、やはり政府の方でもお考え願わないと、政府を差しおいて勝手に国会というわけにいきませんから、その点は御研究を願いたいわけです。
 もう一つ関連してお尋ねをいたしますと、どうしても支払うのが筋道のものであるなら、これを支払わないような法律を出すこと自体がおかしいではないか、こういうことなんです。今度の法律は支払わねばならぬ利息だとお考えになっているのにそれを支払わないで、今まで支払わなくてもいい法律を特例法を決めてきた。それをまたこれからあと数年間やろうとしているのは、これはあなた、将来国の財政がどうなるかわからぬのに、先を見越してそういうことをやるということでおかしいではないかということがございますよ。
 しかし、こんなことは議論をしても始まらぬからこれ以上申しませんが、供託法の第三条というのは、これは早晩改正をすべきものだと私は考えるわけですよ。ことにあの第三条ではどう書いてあるかというと、「命令ノ定ムル所ニ依リ利息ヲ付スルコトヲ要ス」と書いてあるのであって、命令の定めるところによってつけるのですよ。この命令は政府の命令なんですね。国会が命令出すわけじゃないんです。政府の命令です。国の法律ではただ命令にと書いて政府に委任をしているだけなんですが、この場合にだれが利息を付するか。利息をつける人は法律では指定していないんですよ。だれでもいいんだ。政府の方でお決めになった人が払えということなんですよ。終戦後、民法の改正がございました。それから民事法の建前というものも確立されてきておりますね。そういう段階においてだれか一体利息を払ったらいいかという問題をお考えになって、その規則の中で裁判に負けた者が払えというふうにお決めになったらいいことじゃないですか。それをしないで頭からこれは政府が払うものだと決め込んでしまって、そして一般会計で支払うという、そういう措置をおとりになることがちょっと慎重を欠くのではないかと思いますが、いかがですか。
#97
○政府委員(枇杷田泰助君) なるほど供託法の三条には利息を支払う主体を明文で書いてはございませんけれども、供託というのは供託金は国が寄託を受けるわけでございます。したがって元本は国が保管することになるわけでございます。したがいまして、利息というのは元本について発生するものでございますから、したがいまして明文の規定で国がとは書いてございませんけれども、供託法三条の規定は寄託を受けた国が払うということを当然の前提にしているというふうに私どもは解しております。
 それからまた、この供託法が制定されました当時のいろいろな書物あるいは国会の議論などを拝見しましても、当然国が払うという前提でございますし、また八十年間それで国が支払ってきたわけでございます。したがいまして、明文上は国がということは書いてございませんけれども、私は事柄の性質上国がということが当然として表現されているというふうに理解をいたしておるわけでございます。したがいまして、規則の方では主体を定めることまで規則に委任しているというものではなくて、利息の利率であるとかあるいはその計算方法だとか、そういうものを省令にゆだねているというふうに解しております。
#98
○飯田忠雄君 供託法において制定当時、国が支払うようにしたからと、こういうお話でございますが、明治時代の体制と現在の体制は憲法体制も違うし民法体制も違うわけですね。それは当然社会制度の変革によって法の中身も変わってきていると解するのが私は正しいと思うんです。そこで私どもが一番問題にいたしたいのは、こうした私人間において解決すべきものを一般会計で処理しようという、そういう予算の立て方について私は問題にしているわけです。が、これは今までやってきたことですから、今ここで云々してもしようがないからこの辺にしておきます。
 そこでもう一つ、これは規則の中の問題をちょっと一つ取り上げたいわけです。規則の中を見ますと、利率につきまして、前はこんなことなかったんですけれども、最近一・二%という利率になっておるわけです。法定利息というものは一体一・二%なんでしょうか。一般の法定利息ですよ。いかがですか。
#99
○政府委員(枇杷田泰助君) 法定利息は民事の場合には年五%、商事の場合には年六%ということになっておるわけでございます。供託の関係につきまして一・二%というふうに定めてあるわけでございますけれども、これは法定利息当然ということではございませんで、民事なり商事なりの法定利息の場合には通常その金が運用されるならばどれぐらいの利息といいますか利益が上がるであろうかという、そのいわば最低的なものをといいますか、平均的なものといった方がいいのかもしれませんが、そういうものに標準を合わせて年五%とか六%とかが決められていると思います。
 ところが、供託金の関係につきましては、先ほど来申し上げておりますように、国がそれを運用して利殖を図るとか、そういうようなことは全く予定されておらないものでございます。したがいまして、その供託制度を円滑に運用していく、その制度を大いに利用していただくようにするためという目的、あるいは国の方がその国庫金を何がしかの形で利用するというようなこと、それから供託制度を維持するために法務局の方でいろいろな経費がかかっておる、そういうようなことも総合勘案しながら、もちろん市中金利の関係もそれは考慮の中に入れなければならぬでありましょうけれども、そういうものを考えながら決めていくということになるわけでございまして、したがいまして法定利息と違うといってもそれは言葉の性質上やむを得ないことであろうというふうに考えております。
#100
○飯田忠雄君 法定利息に差別をするということが私は憲法の十四条に反しないかということは言うてもいいんですけれども、そこまで言うのは大人げないからやめておきますが、供託法でいろいろ供託をするということを、これは国がおまえ供託しなさいと命ずるのじゃなしに、供託をしておいた方が権利保全に都合がいいからでございましょう。権利保全をするために供託をする。そうすると、それを国が預かってやるということは便宜供与なんたね。何ら国が得するわけじゃない。国民の便宜を図らうために供託所を設けていろいろ便宜を図らってあげているわけですから、本来申し上げますなら手数料を取ってもいいようなことなんですね。それを逆に利息を払うというのはそもそもおかしいのではないか。これは特別会計ならいいですよ、特別会計なら。それからまた、供託金は必ず銀行の預金通帳にして預けろ、供託しろ、こういう制度ならまだいいです。預金通帳で利子つきますからね。ちょうど国債で納めるのと同じだ。そういう制度になっているなら国が負担しなくて利息を払うことになりますからいいわけです。何らかそういうような制度を考えるべきじゃないかと私は思いますが、いかがですか。
#101
○政府委員(枇杷田泰助君) 供託につきまして手数料を徴収するのが適当ではないだろうかとか、あるいは国の保管金という形ではなくて何か別の考え方はないだろうかというような御意見はかねがねあるわけでございまして、私どももその点はこれからの研究課題としても取り上げていかなければならない点だろうとは思っております。ただ現在のところ、供託制度というものの本質を維持
しながら、いろいろな会計法規、その他の法規との関連で何かうまい方法がないだろうかということを模索中でございまして、具体的にどうこうという結論をまだ得ているわけじゃございませんが、ただいま御発言がありましたようなことは私どもも、結論はともかくといしまして、一つの検討の視野の中には入れておる事柄でございます。
#102
○飯田忠雄君 わかりました。それでは、民事供託の点はそのぐらいにしまして、義務供託につきまして、現在民事訴訟法上の義務供託はどのぐらい行われておりますか。余り行われておりませんか。
#103
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御質問のような形での統計をとっておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
#104
○飯田忠雄君 公選法による義務供託ですね。あれはまあ一カ月以内ですから利息をつけなくてもいいですね。現行法でもつかないでしょう。ただし、一カ月を超えるような場合が生ずるかもしれませんね。そういうような場合にはやはり利息をおつけになることになると思いますが、その期間を何らかお決めになる必要はないでしょうか。もう一月済んだらすぐ全部つけるなんということではなしに、義務供託というのは国の監督上のこれは問題ですから、当然供託する方には受忍義務があるはずですよ。その受忍義務を考えた上で適当な期間というものを決める必要があると考えられますが、いかがでしょうか。
#105
○政府委員(枇杷田泰助君) 現在は利息が停止されておりますので、選挙供託の場合でも利息はつかないわけでございますが、現在の利息のつける原則といたしますと、供託をした月、それから払い渡しをした月については利息をつけないということになっておりますので、選挙供託の場合には通常利息をつけるというふうなことが生じない。仮に利息をつけることが復活いたしましても、ケースとしては少ないだろうと思いますが、なおいろいろな訴訟などが起きまして選挙供託金がそのまま払い戻しができないというような場合には、若干長期間になる場合もあるでありましょうが、これはいろいろな種類の供託につきまして、何カ月間供託の期間が継続したものについてつけるというふうな決め方も、これは理論的には可能だろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、当該月と申しますか、供託した月あるいは払い戻しをした月については利息をつけないという原則で全部賄いますと、大体それで、何と申しましょうか、ある程度の妥当な線も出ているような気もいたします。
 また、事柄によっては検討しなければならぬものも出ようかと思いますが、ただいまのところ、そういう個別に存続期間の長さによって、またその供託の種類によって利息をつけたりつけなかったりするということをきめ細かく決めるという必要性は余り感じてないところでございます。
#106
○飯田忠雄君 民事局長の御説明は大変御親切な御説明でよくわかりましたが、本日の法律案の問題から離れまして、利息をつけることを延ばすという法律案の問題と離れまして、今私と局長との間でやりとりをしておりましたところをお聞きになって、法務大臣の御所感はいかがでございましょうか、お尋ねいたします。
#107
○国務大臣(嶋崎均君) 先ほど来飯田委員のお話をお聞きしておりまして、実は私も着任してこの問題早速議論になったのですが、過去三年間の経緯があり、今度は六年間利息を付さないということになる。しかしよく考えてみると、本当に利息をつけなければならないのかどうかというのは、私は出身が、元勤務していたのが大蔵省であったせいかどうかよく知りませんが、必ずつけなければならないのじゃないのじゃないかという実は疑問をまず最初に申し上げたというような経緯もあったわけでございます。
 先ほど来のお話のように大分長い制度になっておりまして、当初はあるいは指導奨励的な考え方で利息を付しておった、また一定の時期は利息を付さない時期も過去にはあったという経過をたどっておるわけでございます。そういう中で一つの制度として落ちついているものですから、そしてまた法律的な規定が実は利息を付するというようなことになっておる関係もありまして、今度のこの財政問題が非常に困難になった時期からやめて今日に至り、またこれから六年間お願いをするというような経緯になっておるように思っておるわけでございます。しかし考えてみますと、確かにこの資金が固定化するとか、あるいは長い期間そういう制度で運用してきたというようなことを離れまして、今後やっぱり延長されておる中で十分この供託制度の問題については吟味をしまして、やっぱりきちっとした制度をつくり上げていかなければいけないのではないかというような感触を深くしておるのが実情でございます。そういう場合に、飯田委員のおっしゃった御議論も十分参考にさしていただきまして事柄を検討さしていただきたいというふうに思っておる次第でございます。
#108
○飯田忠雄君 どうも大臣ありがとうございました。
 それでは、次の問題に入ります。
 次は、これは最近起こった訴訟問題が根拠になっておるわけですが、最近といいましても福岡高裁の昭和五十九年六月十九日の民事二部の判決でございます。福岡高裁は第一審の方の判決の一部を取り消して一部を認めるという形のものですが、事案の内容を簡単に申しますと、Aという人に隠し子があったわけです。女の子があったんです。その女の子が、父が死んでから認知請求をいたしました。ところが認知裁判において、検察官が被告になるわけですが、その認知を認めてしまったんですね。そうしますと、相続権が生ずるわけです。そういうことが、裁判が確定してしまいましてから、本当の息子がおりまして、それが知ってびっくりして、これじゃ自分の取り分が減る、こういうわけで裁判を持ち出した。裁判をしようとしたわけですね。
 ところが、もう判決が確定しておりますので、結局再審でないとうまくできないんです。再審請求をいたしたわけであります。ところが第一審の裁判所は、人事訴訟手続法の中に再審の規定がないからだめだというわけで棄却いたしました。控訴いたしましたところが、福岡高裁では再審の規定がないからだめだという、そういう言い方で裁判を受けるのはよろしくない、その点はだめだと、こういうわけですね。ただ、女の子が実子であるというふうに認知した点についてはこれは別だが、再審をさせるさせないというやり方はよろしくない、こういうことで判決をいたしたわけでございます。
 実際の言葉はこんないいかげんな言葉じゃありませんよ。もっと法律的な言葉なんですが、もっと正確に申しますと、「前記の事実関係にてらすと、控訴人らは本件認知訴訟に参加して訴訟活動をなし得たのに責めに帰すべき事由なくその機会を奪われ、自己に効力の及ぶ確定判決をうけてしまったのであるから、実質的に裁判を受ける権利を奪われたという意味で民事訴訟法四二〇条一項三号、四二五条の類推適用による再審事由があると認めるのが相当である。」、こういう福岡高裁は判断を示したわけでございます。そうして、こういう判断を示す前提として、法律の不備はこれは許されない、法律の不備によって憲法の認めた権利を奪うことは許されないという趣旨のことを述べておるわけです。
 憲法では法定手続の保障問題がございますね。それから、裁判を受ける権利、こういうものが認められておるではないか、それを法の不備のゆえに奪うということは許されない、こういうわけであります。ですから、これはいわば立法の過失とは言うていませんけれども、立法の過失でしょうね。はっきり言えば、国会は何をぼやぼやしておるか、しっかりしたいい法律をつくれということだと私は理解をいたしたわけであります。人事訴訟手続法はこれは政府提案の法律かどうか知りませんが、恐らく政府提案ではなかったかと思いますが、やはり改正すべきではなかろうかと思うわけです。つまり、はっきり申しますと、再審の訴
えを認める規定を設けるべきだと、このように私はまず裁判所の判決が求めているというふうに理解をするわけです。
 それから次に、法律上の利害関係を有する第三者がある場合に、その者に訴訟告知をする義務がある。この判決文では裁判所にあると言っています。裁判所が告知しないからいかぬのだと、こう言うておるんですよ。しかし裁判所が告知しなければいかぬという議論に対して、ある人はそんな一方に肩入れするようなことを裁判所がやってはいかぬと言う人がおりますから、私はそれをやれとは言いませんよ。言いませんが、だれかにどこかに告知義務を負わせなければ、結局再審をしようにもしようがない。たとえ再審の規定を設けましても、だれかに告知義務、訴訟が行われているということを知らせる義務を負わせなければどうにもしようがないという意味から、やはり告知義務を訴訟当事者に負わせるのが正しいのではないか、こう考えるわけです。裁判所に負わせるよりも、むしろ訴訟当事者に負わせる、告知義務を原告なり被告なりに負わせる、あるいは両方に負わせるという制度をつくるべきであろう、私はこのように考えるわけでございます。
 そこで、こういう問題につきまして、きょうはお尋ねをするわけでございます。まず、この高等裁判所の判決につきまして、法務省はどのようにお考えになるでしょうか、お尋ねを申し上げます。
#109
○政府委員(枇杷田泰助君) この福岡の高等裁判所の判決は、今まで余り議論されなかった面につきまして一つの裁判所の見解が示されたものでございますので、私どもも大きな関心を持っておるわけでございます。ただ、これは上告をされておりますので、近くこの問題についての最高裁判所の判断が示されるであろうということで、その結果どういうことになるか、これもまた重要な関心を持っておるわけでございます。
 ただ、私どもの考えておりますところからしますと、福岡高裁の考え方には一〇〇%といいますか、にわかに賛同しがたいというような感じもあるわけでございまして、むしろこの第一審の判決の方が従来私どもの考えていた考え方に沿うものだという感じはいたします。しかしながら、最初に申し上げましたように、余り議論されなかった問題につきまして新しい見解を示された判決としては私どもはそれなりに傾聴に値するものであろうという感じはいたしております。
#110
○飯田忠雄君 第一審の判決理由を見ますと、余りにも形式主義なんですね。事を処理するに当たりまして社会事象というものは変化するのですから、法律を立法どおりの法文のまま解釈しておったのじゃ、これは進歩する世の中に対応はとてもできないと思うんですよ。法律は常にこれは保守的であり、常に過去のものなんです。この過去のものを現在ならしめる作業が裁判であり法解釈だと私は思いますが、そういう意味におきまして、お言葉を返すようですが、第一審の方はこれは高裁の判決を見るための判断ではなかったかと思いますよ。よく高裁に任せるという言葉があるでしょう。多分それではないかと思いますよ。第一審の裁判官だって、これはちょっとおかしいと思っていると思いますよ。が、しかし形式的に判断する限り第一審のようになりますので、それを高裁において改めて現在の実情に合わせるための裁判をしたのだと思います。
 ただ、おっしゃるように全部が法律的に制度として正しいかといいますと、裁判官に告知義務を課するというのは私はいかがかと思うんです。やはり告知義務というものは当事者に負わせるべきだが、現在人事訴訟手続法には書いてないんです。そこが問題なんです。それで、こういうものを私は政府の方でおつくりになることを御遠慮なさるということであるならば、これは議員立法ででもつくるべき問題だと私は思っております。単なる一政党の宣伝のためのものじゃない。そうじゃなくて国民の利益を図るという立場からいきまするならば、当然政府の方で立法なさるか、あるいはこの国会で議員立法するかに踏み切るべき問題であろうと思います。
 そこでお尋ねしますが、告知義務をつけるのは反対でしょうか、それとも御賛成でしょうか。御賛成ならばどういうふうにしたらよろしいか、お尋ねをいたします。
#111
○政府委員(枇杷田泰助君) 立法論として告知義務をだれかに課するということにすべきかどうかということにつきまして、私どももまだ十分に煮詰めた検討はいたしておりませんけれども、現段階の考え方で申し上げますと、この告知義務というものを法律上定めるということに踏み切るのにはどうかという感じでございます。
 その理由は、御承知のとおり公益の代表者としての検察官が被告として出ておるわけでございます。公益の代表者という立場から、要するに利害関係人等との調節もとりながら真実の発見のための訴訟活動をするであろうということが法律上予定されておるわけでございまして、したがいまして、そういう意味での検察官の活動というものを運用上さらに強化をして遺憾ないようにするということで賄える面があるのではないか。
 それからもう一つは、人訴の場合には御承知のとおり裁判所の職権探知という主義がとられております。そういう面で、裁判所も告知するかどうかは別といたしまして、そういう利害関係人等も必要があれば証人等で呼んだりいたしまして事実の取り調べをすることが可能なわけでございます。そういうことで運用されれば告知義務という形で定めるという必要が必ずしもないのではないかという気がいたします。そういう運用の面での充実といいますか、そういうものを期待することでいけるのではないかという感触があるわけでございまして、その一つとして検察官がもう少し利害関係人等の存在を調査して、それと連絡をとったりするというような面が充実してもいいのではないかという問題がございましたので、ことしの二月に刑事局長から各検察庁についてのそういうような趣旨での通達を出していただいておるので、そういう面で充実が図られ、問題が解決するのではなかろうかというふうに考えております。
#112
○飯田忠雄君 局長の御処置は現行法のもとにおいては非常に懸命な御処置だと思いますけれども、ただ、そういう処置をしなければどうにもならぬという法律のあり方がおかしいと私は思うわけです。こういう裁判が起こってきたということ自体が、なかなかそういう処置ではうまくいかなかったという一つの例証なんですから、法律というものは、特に特別の処置をしなければならぬといったような形ではなくて、法律そのもので何でもそのとおりやっていけばうまくいくというふうなものがいいと私は考えるわけです。
 それから、例えば今検察官というお話がございましたが、これは当事者が死んでおる場合、被告になるべき者がおらぬ場合は検事になりますが、生きておる場合は当然これは検察官じゃなくて生きておる者ですね。親がまだ生きておるときだったら親が被告になりましょう。ですから、そういう場合に、親は親子の間だから何でもわかっているからうまくやるなんというお考えはちょっとおかしいので、親子でもけんかしていてうまくいかぬ間柄が幾らでもあるんです。それから、親だからこそ憎らしい子供の権利を奪ってやるということも起こってくる。ということになりますと、やはり当事者一般に告知義務を負わせる方が私は妥当ではないかと思うわけですが、これはひとつ研究を願います。
 それから次に、再審制度を設けるということについていかがでしょう、お尋ねいたします。
#113
○政府委員(枇杷田泰助君) 再審の関係につきまして、利害関係ある方が再審の訴えを提起する原告適格があるということについては、これは明文の規定ございませんけれども、争いがないところじゃないかと思います。そして、ただいまの御指摘は、民訴の四百二十条の中の再審事由の中に、そういう告知をしなかった場合のことを再審の直接の事由にするということのお話だと思いますけれども、私どもの感触といたしますと、告知しなかったことだけを、そのことのみを理由として再
審を認めるといいますか、再審事由とするということはいかがなものであろうか、むしろ実態的にもとの確定判決が内容的におかしいというようなことの非常に大きな証憑といいますか、そういうものがある場合に再審事由というものが考えられるのではなかろうかという意味で、民訴の四百二十条の六号とか七号とかに当たる事由があれば、これは利害関係の方が再審の訴えを提起することができるわけでございますので、そういう面で十分ではないだろうかという感じでございます。
 しかしながら、先ほど来のお話に出ております福岡高裁の判決について、上告審である最高裁判所がどういうふうなお考えをまた敷衍して示されるか等の問題もございますし、また裁判所での実態などについての最高裁事務総局との意見の交換の場の中でいろいろな議論も山てくることもあろうかと思いますので、そういう場合には検討の対象にはさせていただきたいと思いますけれども、現在のところではそのことのみをもって再審事由とするというのはいかがなものかという感触でおります。
#114
○飯田忠雄君 裁判を受ける権利というものは憲法で決められておるでしょう。それが事実上できないような制度、これが問題だというふうに高裁は言っておるわけですよ。そういう点で、裁判が受けられるようにする法の規定が不備のために受けることができなくなった、そういう事態がこれは許されないのだと、こう言っているんですから、そういう事態がないようにしなければいかぬ。そのためには再審制度を設けることが必要でしょう、今の状態ならば。
 それから、もし告知をする義務を課したとしても、告知しても何らかの事情で裁判を受けることができなかったということであれば、やはりその場合も再審の事由とすべきである。つまり憲法の裁判を受ける権利、それを保障するという意味での再審の規定なんですよ。そういう点についてはこれは早急に十分御検討を願わなければいけませんが、これは最高裁の判決が出る出ぬなんていったようなことはもう問題ではないと思うんです。もう道理なんです、これは。法律の道理ですよ。たとえ最高裁がそれに反する判決をなされたとしても、それは道理に反する判決だから国会として認めるわけにはいかぬということになりましょうね。そういう点もぜひお考えを願いたいんですが、こういう問題について法務大臣の御感想はいかがでございますか、御所見をお伺いいたします。
#115
○国務大臣(嶋崎均君) 非常に珍しい例のお話でございますので、私も十分その内容というのを承知しておるわけではないわけでございますけれども、先ほど来の論議を聞いておりまして、できるだけきちっとした裁判を受けられるようなチャンスが与えられるということは望ましいことだというふうには思っております。しかし、現在のいろいろな運用の仕方、先ほど民事局長からもお話があるように、運用のやり方で十分対処できるのではないかというような御意見もあるわけでございますので、そういう点十分慎重に検討さしていただきたいというふうに思っております。
#116
○飯田忠雄君 じゃ、次の問題に移ります。
 次は、最近起こりました問題で筑波大学の脳死者の臓器移植の問題、殺人罪で告発されておりますので、これにつきまして問題点を申し上げて今後の立法措置を考えていただきたいと思うわけでございます。
 このたびの事件の告発状の内容は、一口で言いますと、こういうことなんです。筑波大学のお医者さんは脳死段階で内臓を出したということではこれは殺人だ、こう言うておるわけですが、その理由づけとして、今の段階では人間が死ぬか生きるかという問題は、まず脈拍がとまる、呼吸がとまる、瞳孔が開く、そういう三つの兆候を見て死の判定を今の医者はやっているんだ、それが国民的な常識なんだ、脳が死んだから死と認めるようなことはまだ国民的コンセンサスを得ていない、こういうことを前提にしましてやっておるわけです。そこで私は非常に実はあきれておるんですが、人間の死というものは何をもって人間の死とするかということなんです。
 恐らく皆さん方はもう御承知だと思いますが、人間の脳髄というものの中に脳幹の部分がある。これは自律神経をつかさどる。私どもが呼吸をし心臓が打っているのは脳幹の指令によるのです。ですから、脳幹の機能がとまりますと呼吸も心動も間もなくとまるんです。ですから、簡単に申しますと、心臓を突き刺されて心臓は死んでも脳幹が生きておれば死ぬことはないんです。心臓を取りかえたらいいんです。心臓を取りかえたら生きているんです、脳幹が生きているうちは。ところが、脳幹をやられますと、やられた直後にまだ呼吸はしておるし心動はある。だから、たとえ器械でもって人工呼吸をやり肺臓の脈拍を保ったとしても、それは器械の力でそうなっているだけなんで、そこの命令を出すところがやられておりますから、もう死んでいるから、器械を外したらそれはそのままで死ぬんです。器械の力で動いているものが生なのか、生きるということなのかという疑問が一つあるんです。
 このお医者さんはどう言っているかといいますと、婦人が中気で倒れた、脳出血で倒れた、脳出血で倒れたら、それは頭蓋骨を外してそして手術をすれば治ったかもしれぬ。ところが、そういうことをしないで、呼吸がとまったからしばらく様子を見て、瞳孔も開いた、それから心臓もとまったからこれは死んだと、こう認定をして、早速人工呼吸器をつけて心臓の機能を回復さして生かしておいた。器械をつければ生きるのだから、もうそれは死じゃないのだから、その生きている者の内臓を取ったから殺人だとこう言うわけですね。つまりもともと死んでいるんだ、脳幹がやられたら死んでいるんですよ。器械で動かしているだけなんです。その部分を取れば一体どうして殺人なのか。これは非常な疑問なんですよ。ところが、そういうことで殺人だと、こう言うておられる。それが一つ。
 それからもう一つは、手術をすれば助かる者を手術をしなかったということは治療の放棄だ、治療の放棄をして死亡に至ったのを死として内臓を取り出して移殖をするのはこれはけしからぬ、これが第二点ですね。
 第三点は、死亡時期をごまかした。これはつまり実は依頼した家族が、手術をした後、早く火葬に付して早く持って帰りたいので、本当に死んだ時間から二十四時間ということになると汽車に間に合わぬから、どうか三十分ばかり縮めて書いてくれぬかとこう言うたので、それで医者はその程度ならよかろう、どうせ死んでいるんだからということで診断書を書いたのです。それを診断書偽造ということで訴えた。
 この三点ですが、私は、こういう告発の仕方はいいか悪いか、これ論評いたしませんが、余りにも非科学的であり、悪意に満ちたものだというふうに私は考えますので、ここで二、三質問を申し上げたいのですが、まず、厚生省の方に、自発呼吸が停止した後の心臓の自発的停止は発生しない場合がありますか。呼吸がとまってから心臓がとまらないような場合があるか。つまり心臓が停止するまでの間の所用時間はどのぐらいでしょうか。何秒か、何分かという、こういうことなんです。呼吸がとまってから心臓がとまるまでの間の時間、これは厚生省でおわかりでしょうか。
#117
○説明員(多田宏君) 呼吸がとまりましてから心臓がとまるまでは若干の時間の経過があると思いますけれども、とまらないことはない、それも恐らく数分まで持たないかどうかというぐらいの時間的なタイムラグではないかと思います。
#118
○飯田忠雄君 まあ若干の時間はあるということですが、それはそれでいいんですが、それで人工呼吸器をつけるのですが、呼吸がとまった、しかし若干の差があるからまだ心臓は動いている、それで人工呼吸器をつけましょう。人工呼吸器をつけるということは、脳がやられちゃって、脳はぐちゃぐちゃになっているのに、しかし呼吸はもうとまろうとしておるので早速人工呼吸器をつけた。まだ心臓は動いていますね。ほうっておけば
すぐとまりますよ。そういう場合に、その人工呼吸器をつけるという作業は、これは治療行為に当たるか、それとも死体の鮮度を保つ行為に当たるのでしょうか。どう理解しておられますか。
#119
○説明員(多田宏君) 具体的なケースでその医師の判断によってそれぞれ処理されているところでございますので、私どもとして現在医師が治療行為と考えてやっている場合はやはり治療行為と受けとめて考えている状態でございます。
#120
○飯田忠雄君 脳をやられてしまっております者をどういうふうに治療いたすのですか。心臓が呼吸して脈拍打つことは、これはどういう何の治療なんでしょうか。何の治療かという点についてどういうお考えでしょうか。
#121
○説明員(多田宏君) 脳死というもののとらえ方も非常にいろいろ考え方ございます。一応脳波学会の基準というのがございますけれども、その辺の考え方もいろいろございますので、現場において医師の判断としてこれはなお治療として行っているのだという考え方で努力しておられる医師の行為については、これは一応治療行為の継続というふうに私ども考えて処理をしておるところでございます。
#122
○飯田忠雄君 現場の医師に私は実は聞いてみましたが、だれも治療行為とは言わないんですよ。治療としては効果がない、もう頭脳やられてしまっておるときに人工呼吸器をつけてもそれは治療とは考えられない、何の効果もないんだ、そんなことにむだ金を使う必要はないと、こういう答弁が返ってきますが、厚生省ではそれに対する反論をお持ちでしょうか。
#123
○説明員(多田宏君) いわゆる心臓死に至るまでの間、医師が生命を維持する意図は持ちつつ行為を行っていれば、これは一応今の段階では治療行為というふうに認識をして処理しているところでございます。
#124
○飯田忠雄君 それでは、ひとつ質問を変えますが、いわゆる三兆候というようなこと御存じですね。脈拍がとまり、心臓がとまり、それから瞳孔が開く。こういう現象は、これはどうして起こると思いますか。人間の体の中でそういう現象が起こるのはいかなる場合に起こると思いますか。どうでしょう。――今の質問、もう厚生省に詳しくお聞きしてもこれはお気の毒だから、これは医学者の分野だから、医学者から私も聞いて、医学者の言うことを私信じておるから、そういうことを言うだけの話だから、場合によってはそうでない考えをしなければならぬ政策的配慮をしておられるかもしれぬから、もうこれ以上その点は追及するのはやめましょう、政策的配慮があると思って。本当は医学的には私の言う方が正しいのですよ。
 そこで私は、これはどこの方に対してやるべきものかわかりませんが、例えば今回の事件については、依頼者は、自分の妻は生前自分の内臓を全部提供するということを常々言っておった、こういうふうに言っておったので、脳出血で助からぬから、もう死んじゃって、相当ひどい脳出血だから助からぬ、だから内臓を提供いたしますと、こう言った。その言葉を受けて手術を行った。この場合に、いわゆる生前の承諾というものは伝聞だから信用するわけにはいかぬというふうに考えるべきか、あるいは伝聞でもその遺族が承諾したのだからそういうことも認めるというふうに理解すべきか、この点についての御見解はいかがでしょうか。これは刑事局長さんだね。
#125
○政府委員(筧榮一君) まさしくそれは具体的なケースの問題であろうかと思います。遺族といいますか、御本人がそういう真摯な意思を意思能力のあるときに漏らされたのを御主人が正確に記憶しておってそれを伝えたということ、それが真実であるというふうに客観的に認められれば、その亡くなられた方の意思ということで、伝聞とかということではなくて、亡くなられた方の意思として評価できるものかと思います。ただそれは評価できたから、あと犯罪がどうなるかということとはまた別だろうと思います。
#126
○飯田忠雄君 きょうは実は私質問したいと思いましたのは、いわゆる人間の死というものの法律的時期をもうぼつぼつ決める時期だということを申し上げたいからであります。
 我が国にはいろいろ内臓を移植する法律がございます。角膜及び腎臓移植の法律というのがございます。それからまた死体解剖法という法律もございます。いろいろございますが、死体という言葉はあるけれども死という言葉がない。死体という言葉はあるんですよ。しかも死体とは何ぞやという定義はどこにも書いてない。死体とは何ぞやという言葉がどこにも書いてないから起こる問題がこの臓器移植の場合の告訴事件です。殺人だと、こうなるわけです。死という言葉の定義がないからです。これは死という問題は法律上極めて重大な根拠になる問題ですから、当然死とは何ぞやということは法律で確認すべき問題であろうと思います。
 そうしなければ、せっかく角膜移植法をつくったけれども、あれは角膜を出すときにまだ角膜の細胞が生きておるから死でない、そういう理論が成り立つなら角膜が腐ってからでなければ移植できぬということになります。ほかは死んでも腎臓がまだ生活力があるから移植ができるのであって、ほかは死んでも臓器は生きているのですよ。だからその臓器の移植ができるのである。それを臓器が生きておるうちはだめだ、死なねばならぬといったようなことになりましたら、全部腐敗したものということになる。そんなことで移植ができますか。これが第一の問題です。
 移植をするときにはその臓器が生きていなければならぬ、新鮮でなければならぬということですね。個体は死んでおる、個体そのものは死んでおおるが臓器は生きておる。人間の死というものは御承知のように長い一つの継続として発生する事態なんですよ。一点じゃないんです。法律上の死は一点であるけれども、現実の死はこれはある一定の期間のものであります。人によって違いますが、二日ぐらいはかかるだろうし、ある人は三日かかるだろうし、ある人は一週間かかるだろう。ある人はひと月かかるでしょう。人間の細胞が全部死んでしまうまでの話ですよ。そうしますと、人間の死とは何ぞやということは、人間の価値はどこでもって認めるべきかというところに置かねばならぬでしょう。人間が自律神経も失ってしまった、そんな段階で一体生と認めるべきかということです。
 現在医者が御臨終ですと言うた。しかし、それから二十四時間たたなければ埋葬してはいかぬと法律には書いてある。しかし、二十四時間たったって全部の細胞が死んだとは限りませんよ。生きている細胞はあるんだ。それをどうして死としたのかということなんですよ。いいかげんな標準でしょう。そんないいかげんなことで決めないで、人間の法律上の死は何かという問題につきまして、まず法律行為は何によってやるかということを考えていただきたい。法律行為のできないようなものが人であるか、こういうことです。法律上の人とは何ぞや、この問題をもっと真剣に取り上げる必要があります。法律上の人ということだけでやったのでは医学上の点からいきますとちょっと早い。だから医学的な点も勘案して法律上死んだ時期を決める、これが必要だろうと思います。
 そうしなければ今まで出した法律はみんな死んでしもうておる。そして事ごとにこういう事件が起こるじゃありませんか。医者が責任を持って、時間をかけて脳死の判定をし、脳死だということをはっきり認めてからでもそれは殺人だという訴えが出てくる。なぜかといえば、法律でもって死の時期を決めていないからです。私はそういう意味でぜひ法律上、人の死とはいつをもって死とするかということは決めるべき時期に来ておると思います。
 三兆候によって死んだとおっしゃるが、三兆候と脳死との間は自然死をもって考えるならば数分間です。それ以上のものではないのです。自動車で頭を打たれて脳がぐじゃぐじゃになったとしましょう。脳が死んだ。それから心臓がとまり、あるいは呼吸がとまるまでは数分です。それから心
臓をやられた。心臓は死にました。それから脳が死ぬまでの間に、やはり数分間脳は生きているんです。心臓がとまっても脳は生きていますよ。ですから何をもって死とするかということは、これはもうこの際決めるべきだ。人間は脳が死ねばもはや人間ではない。心臓は取りかえることができます。肺臓も取りかえることができる。脳は取りかえることができないのです。脳を取りかえたら別人になる。本人ではなくなる。こういうことを根拠にして法律上の死を考えるべきだと思います。
 そうして、この臓器移植に当たっていたずらに告発事件が起こらないようにすべきだと思います。もちろんこのたびの筑波の事件は、十分治療をできるにもかかわらずしなかったからけしからぬということも一つあるようですから、これは別でしょうが、しかしそれにしても、本当に治療が可能であったかどうかはまだ検討を要するわけですが、要はこういうような事件が起こらないような処置を一日も早くすべきだと、こういう願いを私は持って、この質問をいたしたわけでございます。
 この所管は厚生省、法務省共同所管になると思いますが、ぜひ御検討を願いたいのです。どうですか。この点、法務省、それから厚生省の方の御意見、簡単にお伺いします。
#127
○政府委員(筧榮一君) 先生御指摘のように、死については法律上定義というものはございません。従来からの国民的合意といいますか、従来の国民的な感情としては、いわゆる心臓死、三兆候説が現在までに至っておると思います。ところが最近、臓器移植等をめぐりまして脳死の問題が起こり、脳死をもって死とすべきであるというような御意見があることは私どももよく承知しております。
 しかし、今いろいろ先生御指摘になりましたように、個体の死、それが一つの過程としていく中で、どの点でもって法律上の死と認めるかということにつきましては、やはり各人の倫理観とか価値観とか生命観とか宗教観というようなものに深くかかわってくることでございますし、そもそもは医学的な問題でございます。私も素人でよくわかりませんが、脳死と一口に言いましても、脳幹死をもって言うのか、また別の定義があるのか、脳死そのものについての定義がまだ定かでないというふうに考えておりますし、さらにその脳死の判定基準、これ、どういうふうな場合に脳死と判定できるのか、外からの検査を総合して決めるしかないわけでございますから、それについても学会等でいろいろな説がなされておるようでございます。
 そういう医学的な、医学技術的といいますか、医術上のコンセンサスがまず得られることが第一でございますし、さらにそれを受けまして死の時期をどこで認めるべきかという点についての広い国民的なコンセンサスが得られれば、それに沿って死の定義についても立法措置を講ずるとか、あるいはそうでなくて従来の解釈がそのようになるとか、いろいろな面でそういうような解決が図られてまいるのではないかと、そのように考えております。
#128
○飯田忠雄君 この死の問題は大変難しいので御研究を願いますが、まだまだ私は申し上げたいことありますが、この辺にしておきます。
 次は、最近発生しております毒物混入の事件でございます。毒物混入、毒物を塗って業者をおどかす事件、この事件につきましての法律問題について御質問を申し上げたいと思います。
 今度の今現在起こっておる事件でございますが、この事件は実際に毒を塗った菓子をばらまいたその犯人が責任を問われるということのほかに、被害者である企業が、あるいは小売人が責任を問われることになる事件でございます。その点、普通の犯罪とは違った重要な社会的な犯罪であると思われるわけであります。例えば毒を塗った菓子を小売店の店頭にこっそり置いていった者がおる、それをそこに入ってきた子供が取り上げて食べてしまったと、こういたしましょうね。この場合の責任は一体どうなるのかということです。その小売店の方がよく注意深くして、そういうものを置かれないように努力をしておれば起こらなかった、あるいはたとえ置かれても売るときに注意深く売ればそういうことは起こらなかった、あるいは万引きに遭わないような注意深い努力をしておれば起こらなかったと、こういうことになりますと、そういう努力をしなかったから発生した殺人です。明らかに業務上過失致死罪じゃありませんか。被害者が業務上過失致死罪を負うのです。業務上過失致死罪が認められるということになれば民事責任も認められるということになるでしょう、過失による民事責任。これは極めて重大な問題だと思います。
 それから、そればかりじゃなしに、こういう事態に対して国の警察力が弱くて、こういう事態の発生を防止し得なかったということ、それは過失はないでしょうか。警察力の強化について、日ごろからの訓練が足らぬということになれば、やはり国の過失でしょうね。賠償責任は国にもある。犯人は捕まらない、逃げてしまっておる、場合によっては脅迫に成功して大金もうけておるかもしれぬ。にもかかわらず検挙されないのに被害者である業者やらが責任を問われる。一生懸命に働いておる国が責任を問われる。そういう事態が生ずる法的構成になっているでしょう、現在の法律構成は。こういうことについてどのようにお考えになるのか。まず法務省の御意見をお伺いします。これは民事局長、刑事局長、両方の御意見を伺います。
#129
○政府委員(筧榮一君) 今、委員御指摘の毒を塗った菓子を小売店に置いておいたところが子供かなんかが来て食べてしまった場合に、その小売店の業者あるいは店員等に責任が及ぶような法制になっているという御指摘でございますが、現在の法制では当然にそのようにはなっていないかと思っております。もちろん過失致死、あるいは場合によっては重過失、あるいは業務上過失ということもあろうかと思いますが、であるためには、やはりそこの注意義務を持っておる者が相当な注意義務を尽くさないために起こることでございます。通常菓子屋でグリコでも森永でも菓子が並んでおって、その中に毒が入っておるかどうかということはまずないわけでございます。それを一々点検しないで知らない間にだれかが某夜ひそかに入れておったということについて、その業者なり店員なりの責任が問われるということは、通常の場合はちょっと考えられないのではないかというふうに考えております。
#130
○飯田忠雄君 某夜ひそかに入れられておったと、事実はそうであったかもしれませんね。しかし、某夜ひそかに入れられたものであるかどうか、不注意のために見逃したのではないかということについての立証ですね。立証困難です、これ、できませんわ、こういう問題について。立証が困難な場合には結局損害賠償を払う方が不利に扱われるのが今までの常例であります。有利にはならない。過失があるとだれかが言えば過失がないような方向へは解釈されないで、どっちかわからぬ場合は過失がある方に理解されてしまうというおそれがございます。それで私はお尋ねをするわけなんですが、こういうことでいいでしょうか。
#131
○政府委員(筧榮一君) まず刑事の関係について申し上げますれば、そのような場合でもやはり予見可能性あるいは結果回避義務というのが過失犯の要件でございますので、今の場合にその予見、そういう毒が入れられるということを考えるということは普通必要ない、まあ必要ないといいますか、通常時にとってはそこに予見可能性はないというふうに考えられますので、過失はないという判断になろうかと思っております。
#132
○政府委員(枇杷田泰助君) 民事責任につきましても、状況並びにその状況をもとにした社会通念上から注意義務違反があったという場合には民事責任が出てまいろうかと思いますけれども、ただいまの御設例のような場合には、ちょっとそこに過失責任が出てくるというふうには考えられない
と思います。損害賠償請求の場合に過失があるかないかがわからないときには、どちらかというと過失が認められがちだというふうな御指摘でございますけれども、私どもは民事の訴訟におきましてもそのようなことはないのであって、むしろ原告側の立証責任が尽くされなければ、どういう状況であったかとかわからなければ結局損害賠償義務は負わない、そういう形での判決になるであろうというふうに考えております。
 なお、国の民事責任のことについても言及されたわけでございますけれども、犯人が十分に何といいますか、早期に逮捕されなかったということで国家賠償法上の賠償責任が出てくるというふうには考えられないわけでございます。よほど特殊な何か、その犯人を捕まえながらまた放すとかなんとかというふうな特殊なことでもあれば、また議論になる余地があろうかと思いますけれども、現在のような状況のもとで国に民事責任が生ずるということはないのではないかと思います。
#133
○飯田忠雄君 製品を包装するでしょう。業者がつくったものは包装して運送しますね。その場合に運送手段を選定するのは業者だし、それから包装手段を選定するのも業者ですね。包装のやり方が悪かった、だから容易に毒を中に塗ることができるような包装ならやっぱり過失があるんじゃないか、もっとなぜ完全な包装にしないかと、こういうことになりましょう、不注意だと。それから運送屋をよく選定しないでいいかげんな運送屋にやったために、犯人が入ってきて変な薬を入れた毒を塗った、こういう事態が生じたということであれば運送人の選定についての不注意だと、だから不注意による過失というものが問われますね。こっちは菓子食べて死んだんです。死んだ者から見れば不注意じゃないか、あんな毒のついているものを売るのは不注意だと、こう言うわね。ところが業者は、いやあれは運搬中にやられたのだからと言ったら、それじゃ運搬したのはだれだ、運搬人を選んだ企業がやはり不注意じゃないかと、こういうことになりまして、そういうものはずっと不注意の中へ入ってくるわけですよ。そういうものの責任というものをどうするかということが今から考えておかねばならぬ問題であろうと思いますが、こういう点についてはどうですか。
#134
○政府委員(枇杷田泰助君) 何か事故が発生しました場合に、原因をさかのぼってまいりまして、このことがなければ自分はそんなに被害を受けなかったであろうというふうな因果関係に立つ事柄というものはあろうと思います。しかしながら、そういうことを防止するためにあらゆる注意を払って防止をしなければならぬというふうな注意義務が一般的にあるわけではございません。そういう状況、各事案といいますか、状況ごとに一般の人が払わなければならぬ、あるいは特殊な業者の場合にはその特殊な業者としての注意を払わなければならぬというものが、おのずから社会通念上出てくるわけでございます。ただいまの設例の場合に、何もない状況のもとで普通の形で運送しているときに、何か特殊なことを策して毒を混入したという場合に、直ちにそれで過失責任が生ずるとはいえないのではないかという気がいたします。
#135
○飯田忠雄君 私が申し上げましたのは、毒を塗った菓子を食べて人が死んだ場合の話、あるいはけがした場合の話ですね。その場合に、そういうことが至るところで起こった場合に、それに対する賠償責任は一体だれが負うのだろうかという問題なんですが、その場合に、やはり賠償責任は業者に求めざるを得ぬでしょう。犯人はつかまってない、国が払ってくれればいいが第一義的に国は支払わない。裁判の結果払うかもしれませんが、ですから、裁判に訴える、訴えて裁判をしてもらうということをやろうと思うと、結局過失責任を問うしかないんじゃありませんか、業者の過失責任。そういうことでやることになるんですが、いかにもこれはどうも理解しがたいことでしょう。犯人がのうのうとしてもうけておるのに、被害に遭った者が法律上やられる。そういうことになっているわけですね。これはどういうことだろうか。こういう問題を解決するためには何かいい方法はないだろうかということを考えていただく提案をしておるんですよ。
 一つの例を挙げますと、失火罪というのがございますね、過失失火罪。失火罪の場合には民事責任の軽減措置をしていましょう。それと同じような、これは不可抗力ではないか、行きずりの犯人に殺されたようなものではないか、そういう観念を持ち込む余裕はないだろうかということを申し上げているんですよ。いかがでしょうか。
#136
○政府委員(枇杷田泰助君) 確かに、もしそういう毒入りの菓子を食べて亡くなったような方があれば、その方をそのままの状態にしておくということはお気の毒なわけでありますが、そうかといって、お菓子屋さんにその責任を持っていくということも多くの場合には無理ではないかという気がいたします。国も責任は負わないということになるわけでございます。したがって、第一義的には毒を入れた犯人そのものに損害賠償の責任を追及するべきだろうと思いますが、御承知のように、そのような事案の場合には、ちょっと私どもの所管ではございませんけれども、犯罪被害者等給付金支給法というのがあるわけでございまして、この法律の適用によって死亡等の場合には給付金が支給される、その分だけ国は犯人に対する損害賠償請求権を代位して行使するということになろうかと思います。そういう救済の方法はないことはないということでございます。
#137
○飯田忠雄君 わかりました。それではこの問題はこれでやめておきまして、次の問題に入ります。
 次は、これは最近指紋の問題が起こっておりますが、在日外国人の指紋押捺事件ということでいろいろなことを聞いてきております。そこで、先ほど寺田委員からも御質問があった件なので重複する部分は抜いていただいて結構ですが、指紋押捺は一体何のためにやるのでしょうか。指紋押捺制度をつくったその歴史的経過及びその意味ですね。御説明をお願いいたします。
#138
○政府委員(小林俊二君) お答えいたします。
 指紋押捺は、指紋というものが同じ指紋が人によって存しない、すなわち万人不同である、あるいは一人の人間が有する指紋は一生変わらない、終生不変であるという特性を利用いたしまして、人物の同一人性を確認する手段として使われておるわけでございまして、外国人登録の関係におきましては、登録が正確に行われる、また一たん登録が行われたからは、その人として登録されている人物が登録された人物と同一であるということを確認する手段として用いられておるわけでございます。
#139
○飯田忠雄君 確認手段として用いられておるわけですね。そうしますと、指紋以外にもっといい確認手段はないでしょうか。例えば人間の顔というものは万人皆違うでしょう。こういうような問題はいかがでしょう。
#140
○政府委員(小林俊二君) 現に外国人登録法上、顔写真も同一人性確認の手段として用いられておるわけでございます。しかしながら、写真は容貌そのものが時とともに変化するということと、写真そのものが写真の撮影の仕方等によりまして必ずしも本人を確定する手段として万全ではない。また写真そのものには容貌の間に親族間における類似の容貌というものがあるわけでございますし、また他人のそら似というように全く血縁関係のない者の間における容貌の酷似性ということも存在するわけでございますので、確かに写真は同一人性確認の手段として用いられておるけれども、それだけで万全とは言いがたいのが現況でございまして、また指紋にまさる確認の手段が現在のところ発見されてない、存在しないというのが状況でございます。
#141
○飯田忠雄君 指紋以外で確認手段が今のところないということでございますが、何かほかに御研究なさっておるでしょうか。もっといい方法はないかどうか、御研究なさっておるかどうか。これから研究すれば出てくるかもしれませんね。諸外国の制度もお調べになったり、いろいろの科学者
に頼んでお調べになったりするということはおやりになる御意見はあるでしょうか。それともそんな面倒くさいことはもうやらないんだと、こういうことでございますか。
#142
○政府委員(小林俊二君) 諸外国の制度につきましては私どももいろいろ研究いたしております。例えば署名を同一人性確認の手段として用いるという慣行は各国には存在するわけでございますが、我が国におきましては署名がそういう手段として一般的には根づいていないというのが現状でございます。したがって、指紋の鑑定に比べれば、署名の同一性の鑑定という技術が一般的には確立していないというふうに言えるのではないかと存じます。署名そのものが今後一般的に鑑定手段が確立するという方向にいけば、あるいは将来は署名を同一人性確認の手段として用いるということもあり得ないことではないかと存じますけれども、いまだその段階には達しているようには思われないわけでございます。
#143
○飯田忠雄君 確認手段でございますが、どういう機会に何をどのように確認するんでしょうか。
#144
○政府委員(小林俊二君) 最も一般的に生ずる事例は、外国人登録証を所持しておる人間が真にそこに記載されておる人物であるかどうかということを確認するというのが最も一般的な事例でございます。すなわち適法に在留する外国人の外国人登録証を不正に入手して、それに自分の写真を張りつけて携行して、その適法に在留する外国人に成り済ますといったような事例が見られます。現に昨年五月にもそういった事例が摘発されておりますけれども、その場合にも写真は本人のものであった、写真は張りかえたものであるから本人のものであったけれども、結局指紋によって本人はそれが不正に入手したものであることを自白せざるを得なくなって密入国の事実が発覚したという例もあるわけでございまして、そういう意味で、登録された人物と、そこに現にその人物と称して在留しておる外国人とが同一の人間であるということを確認するために多く使われておるわけでございます。
#145
○飯田忠雄君 現在おる人、現在日本に住んでおる外国人が外国人登録証と一致するかどうかを確認ですか。それじゃ、現在住んでいない人の場合はどうしますか。よそから入ってくる密航者の場合はどうなるんでしょう。
#146
○政府委員(小林俊二君) 密航者の場合には多く外国人登録証そのものを携行いたしておりませんから、確認という問題が生ずる前に不法に入国した人間であることが発覚するわけでございますから、その場合には指紋云々をする必要はないわけでございますけれども、中には登録証明書を偽造するなり、あるいは他人の登録証明書を変改し、変造して所持するといったようなケースもございます。したがって、そういう場合には適法に在留する人間であるということを主張するわけでございますから、そこで指紋を含めて確認の必要が生ずるわけでございます。
#147
○飯田忠雄君 指紋のかわりに写真では張りかえがきく。現在の外国人登録証を見ますと、あれは確かに張りかえのきくようなふうになっているんです。しかし交通関係の運転免許証、あれ見ますと、張りかえできぬような装置しておりますね、ちょっとめくっても、とてもめくれそうもないような。しておりましょう。ああいう装置は外国人登録証には難しいのでしょうか。いかがですか。
#148
○政府委員(小林俊二君) 私どもでは、現在、指紋問題を含めまして外国人登録の実行上あるいは運用上の改善について種々研究いたしておりますので、登録証そのものの改善という点についても研究を進めておるところでございます。
 したがって、それに関連いたしまして、先生御指摘の運転免許証のような事例も参考にいたしておるわけでございますけれども、現在のところ外国人登録法に基づく登録事項が運転免許証に比べましてはるかに多いわけでございまして、全部で二十項目にわたるわけでございます。また、その二十項目の変更について、変更されたら変更の都度新しく登録し直すということも義務づけられておるわけでございますので、一枚のカードでそのすべてを記載するということが非常に難しいという問題がございます。現在の登録証明書は何ページかのページを含む冊子になっておるわけでございます。したがって、それをすべてプラスチック製のものにかえるということはなかなか物理的に難しいということと、もう一つは、経済的にもこれは人数が非常に多うございますので、今一冊を百円でつくっておりますわけでございますけれども、その質を改善して、そうしたものをすべて全部カバーできるような方向に持っていくということにつきましては、なかなか財政的な問題もございます。しかしながら、すべてそういう点を含んで研究はいたしておるところでございます。
#149
○飯田忠雄君 今の問題につきまして補足的にお尋ねいたしますが、外国人登録証はおっしゃったようないろいろの帳面になっているのだけれども、あれが正本としますと、ちょうど勲章に副章がございまして、本式の勲章のほかに副章がある。あれと同じように添えの物として自動車運転免許証のようなああいう形のものを一枚つける、平素はそれを持っていればいい、本物はうちに置いておいてもいいといったような方式は大変差し支えるわけでしょうか。何か差し支えが生ずるでしょうか。
#150
○政府委員(小林俊二君) 率直に申し上げまして、ただいまのような考え方は今初めて伺ったところでございまして、私どもまだ研究、検討をいたしておりませんが、しかしオフハンドと申しますか、今この場で私が伺った感触では研究してよろしい一つの方法ではないかという感じがいたします。しかしながら、これは私の個人的な感触でございます。
#151
○飯田忠雄君 きょう実は外国人登録証の問題につきまして、国内におる者の確認のために指紋が必要だということでございましたが、これは結局は密入国者が入ってくると困るので差別するためのものではなかったかというふうに実は初め私は考えたんです。密入国者が入ってくるのと区別するとなると、密入国者の大体数というものは、先ほども寺田さんがお尋ねになっておっしゃったんだが、あのときは陸の話だけだったんですね、陸の話だけ。密航者というものは海からやってくるので、海でどのぐらい一体犯罪が起こるのか。海上保安庁の人おりますか。
#152
○説明員(姫野浩君) お答えいたします。
 海上保安庁が最近五カ年間におきまして検挙した海上からの密航者の人数は三十八名でございます。その内訳は、韓国人三十四名、北朝鮮人一名、中国人三名となっております。
#153
○飯田忠雄君 現在御報告になりましたそれは、大体推測で実際の船に乗ってやってくる密航者の何%ぐらいを逮捕できたとお考えですか。
#154
○説明員(姫野浩君) お答えいたします。
 これまでそういうような観点でちょっと詰めたことございませんので、お答え申し上げかねます。
#155
○飯田忠雄君 午前中に出ましたいわゆる統計を見ましても、数はそんなに多くないんですね。何万人というものでもない。千人台のように聞きましたが、千人台の程度のものを見分けるための制度として現在確認制度が存在するということであれば、まあ嫌がるものを強制するということも一つの手だけれども、いい方法があればお考え願えるといいと思いますが、そういう御研究を将来やっていただいて、どうしても確認方法としてもう指紋以外ないんだということであれば、これはやむを得ぬと思います。その点のところをどのようにお考えになるのか、お尋ねをいたします。
#156
○政府委員(小林俊二君) 外国人登録法の目的は、先ほど午前中にもお答え申し上げましたように、在留外国人の身分関係、居住関係を正確に把握して公正な管理に資するということでございまして、特に朝鮮半島出身者からたびたび表明がございますような、指紋の押捺に伴う精神的な負担を課することが目的ではないわけでございますから、したがいまして、その法律の目的を達し得る範囲において、枠内において、その精神的な負担
を軽減することができれば、それが法律の最も望ましいあり方であろうと思いますので、そういう観点から法律の見直しをしておるということでございます。したがいまして、今後ともそうした感触なり意見なり希望なり要請なりを念願に置きまして、また韓国との関係も念頭に置きながら、本件についてはさらに改善の余地を検討しつつあるというのが現況でございます。
#157
○飯田忠雄君 指紋の件はわかりました。
 次は、犯罪捜査の性質についてお尋ねをいたします。簡単に言いますと、犯罪捜査は地方公共団体の事務かという題です。犯罪捜査は地方公共団体の事務なんだろうかということについてお尋ねするわけですが、これ、最高裁の判例がありまして、この最高裁の判例がどうも要領を得ぬのです。それでお尋ねをするわけです。
 これは交通犯罪の捜査を行うに当たって違法に他人に加えた損害、その損害の国家賠償は都道府県の責任だと、こういう判決でございます。その理由は、都道府県の警察官が交通犯罪の捜査をしておるのだから、それが間違えたことは国の責任ではなしに都道府県の責任だと、こういうわけですね。そこで、この交通犯罪の捜査という言葉を警察法の中で犯罪の捜査という言葉のほかに特に別に掲げてあるんですよ。ですから、交通犯罪の捜査ということだから最高裁がこういう判例を下したのかなとも思われますけれども、どうもこれを読んでいますと、犯罪捜査一般についてこれは都道府県の事務であるというふうに読めるものですから、これは大変だと私は思うわけです。
 司法という言葉がございます。現在、検察業務は行政事務であって司法でない、裁判だけが司法だと、こういう通説ですね。これは通説なんですが、こういう言葉で簡単に割り切っていいか、私は疑問だと思うのですよ。刑事訴訟法という法律がございます。刑事訴訟法に規定してあることは明らかに刑事裁判を前提として刑事裁判を行うためのあれは法律なんですね。その中にはっきりと章を起こして犯罪の捜査は書いてあるんです。「捜査」という項目があるから「捜査」という項目の中に犯罪捜査のことが書いてあるんですよ。しかも、その犯罪捜査は都道府県警察の警察官が「司法警察職員として職務を行う。」、こうなっている。司法警察職員として職務を行う、だれが行うかというと都道府県の警察官だと。しかし都道府県の警察官が警察官の資格において行うとは書いてない。警察官という行政官の資格において犯罪捜査をやるとは書いてないんですよ。司法警察職員として行うとある。この場合「司法」と書いてあります。
 普通、今日の観念で裁判官だけが司法だ、裁判所だけが司法を扱うものだという常識がありますけれども、司法ということは刑事裁判という点をとらえていきますならば裁判官だけでできるものじゃない。検察官と、それから司法警察職員の前提となる行為があって初めてでき上がるでしょう。そうなると、司法という言葉は必ずしも裁判官だけの専有物ではないと言わなければならないのです。司法という言葉は特別な意味合いを持つ。
 そうしますと、犯罪捜査というものは、これを簡単に都道府県警察が所管するから都道府県のものだと言っていいかどうか疑問です。もし犯罪捜査権が都道府県にあるとするならば県知事に犯罪捜査権が認められなければならぬ。県知事が犯罪捜査権のもとだということになります。今日、県知事に犯罪捜査権があるというふうに考える人は恐らくいないでしょう。犯罪捜査というのは国民の一人一人が悪いことをしたときにそれの人権を制限する行為なんです。人権制限行為です。その人権制限行為は権力行為であります。そういう権力行為が地方自治体の本質に合致するでしょうか。地方自治の本質というものはそのような権限行為を含むだろうか、私は疑問に思います。
 なるほど都道府県警察というものは行政機関として存在するし、県知事のもとにあります。しかし犯罪捜査については、犯罪捜査権というものは全国統一的に刑事訴訟法によって統制されておると考えなければならぬ。地方自治法の中に犯罪捜査を地方自治体の権限とするという規定は残念ながらどこを見てもありません。そういう点を私は考えますので、まことに僣越ではございますが、この最高裁判所の判例に対して国会議員として承服できないと思うものであります。これが単に交通警察の捜査だけに限るのでありまするならば別です。しかし犯罪捜査全般についてということでありますと問題である、このように考えるわけであります。
 したがいまして、ここで犯罪捜査の本質につきまして二、三質問をいたしたいと思うものであります。
 都道府県警察が行う業務だから地方公共団体の事務だ、こういうふうに最高裁は言うのですが、こういうことに的確な根拠があるかどうか。大変根拠薄弱ではないかと思うわけです。都道府県警察の警察官は司法警察員または司法巡査としての法的資格を刑事訴訟法で与えられている、犯罪捜査をするのでありまして、地方公共団体の職員の資格で犯罪捜査をするのではないのではないか。もし地方公共団体の職員の資格で犯罪捜査をするなら、それは県知事の指揮下においてやることになることになりますが、そういうことでよろしいかどうか、御質問を申し上げます。これは主管は地方自治法ですか、自治法だと法務省じゃ無理でしょうか。
#158
○政府委員(筧榮一君) まず犯罪捜査事務でございますが、今御指摘のように犯罪捜査事務は国家刑罰権の実現を目的とする刑事手続に属する手続であることは言うまでもないところでございます。したがいまして、この事務が本来的に国の事務であることは明らかでございます。
 今御指摘の最高裁判所の昭和五十四年七月一日の判決でございますが、国家賠償に関する訴訟でございますけれども、ここで判示をいたしておりますが、この判決自体でも犯罪捜査が本来的に国の事務であるということを否定しているものとは解されないと思っております。都道府県警察が行う捜査事務、現に行っておるわけですが、都道府県警察が行っている捜査事務の性質も本来的には国の事務であるわけでございますが、いわゆる団体委任事務として都道府県警察がこれを行っているというふうに私どもは理解いたしております。
#159
○飯田忠雄君 地方公共団体の事務の範囲ですが、これは地方自治法で規定しておるわけです。地方自治法では、法律または政令により地方公共団体に属する行政事務が都道府県の仕事だと、こうありますが、その中に犯罪捜査は含まれるという理解をしておられるかどうか、警察庁にお伺いいたします。
#160
○政府委員(福島静雄君) お答えいたします。
 警察法におきましては第三十六条で「都道府県に、都道府県警察を置く。」と規定しております。その「都道府県警察は、当該都道府県の区域につき、」警察法「第二条の責務に任ずる。」というふうに同様規定いたしているわけでございます。そこで、警察法の第二条におきましては、関係ない部分は省略させていただきますが、警察は「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕」等を「その責務とする。」と規定しているところでございまして、犯罪の捜査につきましては私どもは都道府県警察の事務であるというふうに理解をしているところでございます。
#161
○飯田忠雄君 犯罪の捜査は都道府県の事務だということになりますと、都道府県というものはこれは地方自治体でしょう。地方自治体というものは地方自治の精神から出てきておるものであって、人をひっくくるといったような権力的なことを内容とはしていないのではないかと思われるんです、地方自治法の精神は。
 そこで都道府県警察というのは、なるほど都道府県警察は県において治安維持に当たる、つまり県民の生活の安全を守る、そういう意味においての警察業務はそれは地方自治の性質に合うと思うんですよ、行政警察は。しかし司法警察でしょう、犯罪捜査は。司法警察のようなものが果たして地方自治の本質に合致するかどうか、これは疑問が
あると思いますのと、それから都道府県警察だからそのやることが全部都道府県の事務だということになるのかどうか、これは疑問だと思うんですよ。地方自治法の中では、法律で決めてあること、法律によってやれと決められておることは地方自治体でもやるんだと、こう書いてあるんですよ。そうしますと、都道府県警察は刑事訴訟法という法律で、その所属する警察官、都道府県警察がやるのじゃなしに、都道府県警察に所属する警察官に司法警察職員としての資格を与えている、それが犯罪捜査をやる、こういう建前なんですよ、現在の刑事訴訟法では。そういうことと今御答弁になりましたこととがどうもしっくり合わないのですが、どうですか、こういう点は。もう一度考え直して答弁いただけないですか。どうですか。
#162
○政府委員(福島静雄君) 警察法におきましては、犯罪の捜査はこれは都道府県の事務であるというふうに規定をいたしているところでございまして、刑事訴訟法におきまして、先生が指摘しておられるのは都道府県の職員である警察官に司法警察員としてのいわば職権行使の権能を与えているということであろうかと存じますが、全体としての捜査の事務、これは都道府県の公権力の行使に当たるものであるというふうに私どもは考えております。
#163
○飯田忠雄君 そうしますと、都道府県警察で行われる犯罪捜査は県知事の指揮下においておやりになることでしょうか。
#164
○政府委員(福島静雄君) これは県知事とは別の公安委員会の管理下において行われる他の警察事務と同様の性格を持つ事務というふうに理解します。
#165
○飯田忠雄君 都道府県公安委員会は犯罪捜査の権限を持つでしょうか。どうでしょう、刑事訴訟法にそういうものを持つと書いてありますか。どうですか、この点は。
#166
○政府委員(福島静雄君) 公安委員会自体は犯罪捜査を直接行う権限を有しているものではございませんが、警察業務全体を管理いたしているものでございます。
#167
○飯田忠雄君 警察業務全体を管理して行政警察を公安委員会でやるということはわかりますよ、それは。しかし、犯人を捜査して逮捕するということは、単なる治安、普通の交通整理とかなんとかいったような問題とは違いまして、直接強権力を加えて自由を奪ってしまって、これを処罰する行為ですからね。司法行為でしょう。一種の司法行為じゃありませんか、これは。司法行為についてはこれは県はやらないと書いてある。司法行為についてはやらないと書いてありますよ。
 ただ、これを司法行為と解釈しないなら、行政行為と解釈するなら別です。犯罪捜査というものは行政行為であって司法行為じゃないという、そういう解釈は一般的にあります。ありますが、司法とは何ぞや、行政と司法の違いはどこにあるか。もし犯罪捜査が行政行為であって司法でないとするならば、司法巡査の司法と書いてあるあの司法はどういう意味か、こういうことになりますが、なぜあれ行政と書かぬか、行政巡査と書けばいいじゃないか。わざわざ刑事訴訟法で司法巡査と書き、司法警察員と書いているのは、行政機関に所属してはおるけれども、行政機関に所属しておるその職員に司法業務をやらせるぞということでしょう。犯罪捜査という刑事裁判にかかわる問題をやらせるぞということでしょう。そういうことが司法という言葉のあらわれと思いますが、私のお聞きしているのは形式的な解釈じゃなくて実質的な問題ですよ。そういう点いかがですか。
#168
○政府委員(福島静雄君) 犯罪捜査は最終的には刑事裁判におきまして国の刑罰権を行使するという手続に向かっての活動であることは事実でございますけれども、犯罪捜査そのものは司法椎の行使ではなくて、やはり一種の行政活動であるというふうに私どもは理解しているところでございます。
#169
○飯田忠雄君 犯罪捜査が行政活動だということは普通言われておる言葉なんですよ、これは。それはそのとおりですが、それならば、なぜ刑事訴訟法の中でわざわざ「司法警察職員として職務を行う。」という条文を設けたかということなんです。あんなもの要らぬでしょう。警察官が警察官として犯罪捜査ができるのなら、そして都道府県公安委員会の規則によってできるのなら、条例で決めたらいいんです。別に刑事訴訟法で決める必要はないんですよ。そして、ああいう「司法警察職員として」云々という言葉なんか削ってしまったらいい。あれ、要らぬことだと思いますね。
 つまり警察法で犯罪捜査ができ、そのもとにおける都道府県公安委員会規則で犯罪捜査ができるのなら刑事訴訟法は要らないということなんですよ。ところが、わざわざ刑事訴訟法を設けたのは、犯罪捜査については都道府県警察やら警察法に書いてあるあの文言でやってはいかぬぞ、刑事訴訟法に書いてある文言でやれよということなんです。そして刑事訴訟法に書いてある手続をとれよということでしょう。もし犯罪捜査権が都道府県警察にあるのなら刑事訴訟法も要らないんです。条例でやったらいいということになりますね。こういう問題はどう考えますか。
#170
○政府委員(福島静雄君) 一般的に犯罪捜査を行うのは、これは検察官も行いますし、また警察官も行うわけでございますけれども、警察法におきましては都道府県の事務といたしまして犯罪捜査を行うということを国から団体委任しているものでございまして、刑事訴訟法におきましては個々の警察官が捜査権を行使する場合の権能を付与し、またその手続について定めているものであるというふうに私どもは考えております。
#171
○飯田忠雄君 これはここで議論しておっても始まらぬのですが、私は、犯罪捜査というものはこれは刑事訴訟法が根本だと考えざるを得ないと思うんですよ。刑事訴訟法抜きにして犯罪捜査はあり得ない。もし刑事訴訟法を廃止すれば犯罪捜査はないでしょう。
 それで、都道府県警察でおやりになる警察行為というのは地方自治体の県民の安全を図る仕事なんですね。自治体に住んでおるところの県民の安全を図る仕事と、それから犯罪の捜査とはおのずから性質が違う。性質が違うから刑事訴訟法という法律をわざわざ国が設けた。そして刑事訴訟法に書いてある方法以外で犯罪捜査をやることも厳禁しているんです。地方自治法はどんな規定を設けましても刑事訴訟法に反する規定は設け得ない。地方自治法の中に国の法律で決めたことに反してはいかぬと書いていますからね。そうなりますと、犯罪捜査について刑事訴訟法が根本なんだ。それについて、それをわざわざ地方自治体の権限だということを主張しなければならぬ根拠はどこにあるかという問題が一つ。
 それから、地方自治法の中にどこに犯罪捜査という言葉が書いてあるかということなんですよ。あの地方自治法の中にたくさんのできることが羅列されていますね。あの中に留置場という言葉まで書いてある。しかし犯罪捜査という言葉は書いてない。ということはなぜかというと、犯罪捜査ということは刑事訴訟法を除いてはあり得ないという根本的な問題があるからじゃありませんか。こういう点について法務省はどう思いますか。
#172
○政府委員(筧榮一君) 御指摘のように、犯罪の捜査については人権の問題その他慎重な手続を要する事柄でございますので、刑事訴訟法において細かくその手続等が規定されているところでございます。そこで、司法警察職員につきましても、その権限あるいはその行使の態様等について細かく規定されているところでありまして、そのことと、本来は国の事務である犯罪捜査を都道府県に団体委任しているということとは別のことであろうかというふうに考えております。
#173
○飯田忠雄君 団体委任か何委任か知りませんが、委任していても、もともとは国の業務だということがはっきりしておれば私はそれでいいと思いますよ。それはもとが国の業務だから。しかし、もともとこれは国の業務ではなしに都道府県の地方自治体の業務だというふうにおっしゃるから、それは筋が違うではないかと申し上げてい
る。
 地方自治体の業務なら国の業務じゃないんですよ。地方自治体の業務なら国の業務じゃありませんよ、これは所管というものははっきりしているんだから。国の業務であるなら地方自治体の業務じゃない。委任事務は別にしましてね。本質的に国の業務なら都道府県の業務ではない。本質的に都道府県の業務なら国の業務ではない。その辺のところは明確にしておかないと困る問題ですが、私は、この問題はこういう最高裁の判例があるので混乱を生じておるので、私は法務省、警察庁それから最高裁で合い議をしていただきたい。そうして国の根本的な問題ですから、この根本方針に二つ政府において見解があるなんというのでは困りますから、統一をとっていただきたいんです。こういう点につきまして、どうですか、法務大臣。これどうお考えになりますか。御所見をお伺いします。
#174
○国務大臣(嶋崎均君) 私ももう少し法律的なところを勉強してみなければよくわからぬところがありますが、今法務省で答えたこと、また警察庁からお答えの中では、そう矛盾がないというふうに思っておるわけでございますけれども、よく研究してみたいと思っております。
#175
○飯田忠雄君 これ大変矛盾しているんですよ。一方は国の業務が本筋だ、片一方はそうじゃない、地方自治体が本筋だと、こうなっているんですからね。それで私はこれ問題にするんですが、少なくとも刑事訴訟法の建前は国の業務としておると考えないとうまく理解がつかぬのですよ。
 それから、もし犯罪捜査が地方自治体の業務であるなら、刑事訴訟法の中に書いてある検察官による指揮ですね。指揮権、それから補助として使う権利、こういうものの根拠がなくなるのですよ。都道府県の犯罪捜査は犯罪捜査そのものが都道府県のものでしょう。なら、検察官はやる必要はないんですということになります。検察官もついでに、これは地方検察庁だけに限るかということであります。地方検察庁だけが犯罪捜査をやって、法務省は監督権もない、そういうことなのかということなんですが、いかがですか。
#176
○政府委員(筧榮一君) 先ほどお答え申し上げておりますが、本来は事の性質上、明らかに国の事務でございますが、団体委任によって地方公共団体の事務にもなっておるということでございます。国も、もちろん御指摘のように検察官は国の機関でございまして、犯罪捜査の事務に従事しておるわけでございますし、刑事訴訟法の規定に従いまして、都道府県警察の司法警察職員等に対しまして具体的指揮、あるいは一般的指揮等の権限を行使しているところでございます。
#177
○飯田忠雄君 この件はこれでやめます。また将来蒸し返すかもしれませんが、今回はこれにしておきます。
 それから、あとまだ数件ございましたが、時間が来てしまったので申しわけないですが、この次に私実はお尋ねしようとしましたのは、新聞によりますと三月八日の読売新聞です。それからこれは三月二十四日の週刊読売、こういうのに大きく報道されておるんですが、これは帝銀事件、いわゆる帝国銀行事件についてアメリカでGHQの機密文書が発見された、こういう記事なんです。
 この機密文書が発見されて、その文書によると、どうも最初犯人は平沢ではなくてほかの人のようだった、しかも、その行為のやり方を見ると、これは旧日本軍細菌戦部隊の七三一部隊に所属しておった者のようだ、というわけで、当時の警視庁はそういう観点から捜査を進めており、しばしばGHQの係官との会合を開いてやっておった。ところが、その七三一部隊の日本軍の細菌戦部隊ですが、これの技術というものは当時としては非常に貴重なものであって、アメリカ軍はこれをどうしても欲しいということで、それの関係者を全部隠して、戦犯にしないで保存をする必要があったのでそうされた。ところが、あの帝銀事件で捕まった犯人がこの部隊の所属であるということで、警視庁が執拗に追及をし、新聞記者も追い回すということになると、この真犯人が捕まれば七三一部隊のことが暴露されて、せっかく機密事項として処理しようとしておることができなくなる。したがって、それに対して特殊の工作を行う必要があったと思われるような、そう言わんばかりの内容のことが書いてあるわけです。
 そこで、これははっきり文書には出ておりませんが、平沢はその犠牲に供せられたのではないか、こういう疑いがあるということを弁護人は考えまして、再審請求をいたしておるわけでございますが、この再審請求は果たして受け入れられるかどうかはわからない。といいますのは、直接に平沢ではないという証拠ではなくて、情況証拠にすぎないからであります。が、しかし情況証拠にしろそういうものがあるとすると、平沢は公判廷で終始一貫犯行を否認してきた、捜査段階で自白をしただけである、こういうわけであります。
 捜査段階で、しかも毒物を持っておるということを追及されて、持っておると、こう言うた、自白したんだけれども、その毒物が犯行に使った毒物であるかどうかはわからない。にもかかわらず犯行に毒物が使われたから、平沢が毒物を持っておったと自供をしたから、それをあわせて犯人だと、こういうふうにした傾向が強い。こういうことで再審が出されておるわけであります。が、この問題につきまして、ここで時間がないからもうやりませんが、この次に質問いたしたいと思いますが、こういう問題、重大な問題であろうと思います。
 これは占領下における裁判というものは、あるいは占領下における行政というもの、警察というもの、私は当時海上保安庁におりました。しかも、こうした法律の取り締まり関係の責任の地位におりましたので痛切に感じております。したがいまして、あえてこの問題を提起し、もし疑わしいなら疑わしきは被告人に有利に、疑わしきは犯人に有利にという原則が通るものならと思うんですけれども、恐らく難しい。そこで、死刑の時効という問題にひっかけて仮釈放なり何なりかの処置をとれないものだろうか、こういう意味の質問を本日しようと考えたのであります。時間がないので残念ながらできません。これは後ほどの機会に譲ります。どうかひとつ御高察のほどをお願いいたしておきます。
 これでもってやめます。
#178
○柳澤錬造君 きょうの今までの中にも出てまいりましたんですが、在日外国人の指紋押捺制度について最初にお聞きをしてまいります。
 中曽根総理はよく日本は国際国家であるということを言われるわけなんです。この国会の冒頭の施政方針演説でもそのことを強調されておりました。また、事実そのとおりだと思うんです。しかるに、日本では外国人登録法によって十六歳以上の外国人が一年以上滞在するときは指紋を押捺することを義務づけている。違反すると一年以下の懲役か禁錮または二十万円以下の罰金刑だというふうになっているわけです。このようなことをしている国は、もう皆さん方も十分おわかりだと思いますけれども、世界の中ではもう少数なわけなんですよ。特に先進国の中ではアメリカぐらいであって、あとはほとんどやっていない。罰則については懲役だとか禁錮だなんて言っている国なんかは極めてもうごくまれにしかない。そういう世界の趨勢の中にあるにもかかわらず、これだけの先進国であり、これだけの経済力を持った日本の国が何でそこまでやらなければいけないんでしょうかということをまず冒頭お聞きしてまいります。
#179
○政府委員(小林俊二君) お答え申し上げます。
 指紋制度につきまして各国の例を調査いたしておるわけでございますが、私どもが調査いたしましたのは法体系あるいは社会制度が我が国の場合と比較し得る諸国五十カ国でございまして、世界には約百七十カ国の国が現在国連加盟国として存在いたしますけれども、そのすべてについて調査したわけではないのであります。何となれば、まず第一に、例えば共産圏諸国におきましては外国人についての管理制度が基本的に異なっております。例えば、外国人の行動範囲が一定の範囲に区
切られるとか、あるいは外国人の行動について警察ないしそれに類似した機関が行動を一々詳細にチェックするというような事例が極めて多いわけでございまして、こういった国の制度と我が国の制度を比較しても余り意味がないということで調査の対象から外したわけでございます。この五十カ国のうちに指紋制度を採用している国は二十四カ国、部分的に指紋制度を採用している国が九カ国ということでございますから、これをもって世界の大勢からまことに少数であるという結論は必ずしも出てこないのではないかと存じます。
 我が国につきましては、戸籍制度を初めといたしまして登録制度が各国に比べても極めて完備いたしております。そうした社会的な背景のもとで、あるいは法体制の背景のもとで指紋制度も我が国において採用されておるのでありまして、世界の大勢との関連において必ずしもこれが不必要であるという結論には達しがたいかと思います。
#180
○柳澤錬造君 入管局長、そういう答弁をなさるところが法務省の典型的なやっぱり私はスタイルだと思うんです。
 おっしゃるとおりに二十四カ国と九カ国のことは認めます。だけれども、部分的にといってやっている国の中ではイギリスなり、西ドイツなり、フランスなり、オランダなり、ベルギー、スウェーデン、オーストラリア、それらの国があるわけなんです。私が先ほど聞いているのは、アメリカはかなりいろいろなああいう合衆国でもってシビアにしているわけですけれども、そのほかのところというのは、今名前挙げたように、少なくとも日本の総理が出ていくサミットの対象になるような国ではアメリカ以外にはないでしょう。そういうことを考えていったときに、今日本がとられていることが、中曽根総理が絶えず日本は国際国家ですということをあの本会議の場で言っていることから見たときに、いささかこの面がそういう点においてはおくれているのではないんでしょうか。そういう点に立ってお考え直す気はないんですかということを聞いているわけなんですけれども、いかがですか。
#181
○政府委員(小林俊二君) 国際関係を円滑な状態のもとで維持し発展させるということは、我が国の国益に沿う一つの大きな視点として重要な問題でございますので、こういう観点から指紋制度につきましても、先ほどもちょっとお答え申し上げたところでございますけれども、法の目的を達成し得る枠内においてこれを改善する余地の有無について研究を進めておる、検討をしておる現状でございますので、そういう観点からは先生の提示された問題について否定的にお答えする必要はないかと存じます。むしろ前向きに検討しておるという現況であるということが申し上げられると思います。
#182
○柳澤錬造君 特に日本には韓国籍の人が多いわけでしょう。韓国籍というよりかも、戦前は日本の支配下にあったから日本人であって、昭和二十年八月十五日で国が分かれたから今度韓国籍の人になった。そのままずっとここに生活している人がたくさんおるわけなんですね。だから、韓国が大変な関心を持っているということも、これはおわかりのことだし、昨年の九月に全斗煥大統領がおいでになったときもいろいろこの問題ではお話があったはずだし、また中曽根総理自身が総理主催の午さん会で引き続き誠意を持って検討しますということを言っているわけなんで、変えるとはもちろん言っていません。しかし、外交上から言っても、引き続き誠意を持って検討しますということは、現状のままでこれは一歩も変えませんということにはならないわけなんで、ですからそういう点から立っても、少なくとも現状維持ではないんです、前向きに検討はしていきますという、そういうふうな判断とか解釈をしてよろしいのかどうかということを、もう一度その辺ちょっとお答えしてください。
#183
○政府委員(小林俊二君) 繰り返しになるかと存じますけれども、そうした問題、すなわち昨年の日韓共同声明の趣旨も踏まえて、また朝鮮半島出身者の組織的な希望表明も踏まえまして、この問題については引き続き検討を続けておる次第でございます。
#184
○柳澤錬造君 じゃ、そういう引き続き御検討なさっている中で、日本国内の、世論という言葉がこれ当てはまるかどうかはよくわからないんですけれども、それでもこの間の毎日新聞が、この三月一日でもって全国の六百五十一市と東京の二十三区を対象にして調査をしたものを、つい最近ですから皆さん方もごらんになったと思う。
 この中でもって五十五市と六区が押捺拒否をした人を直ちに告発はしない、粘り強く説得をしていく、告発ということについては留保をするという態度を決めていることになっているんですね。さらに、二百五十九市と東京の十三区がそれぞれの議会が意見書を採択しておる。これは今の調査の中からいけば約四割ぐらいのそういう市が意見書の採択をしているんですということであって、その意見書の内容というものに共通していることは、指紋押捺制度の廃止、二つ目が外国人登録証の常時携帯制度の廃止、三つ目に五年ごとの登録切りかえの廃止ということが入っている。さらにその前には、一昨年になりますか、五十八年七月に全国市長会でも指紋制度廃止の要望というものを決議していることもあるわけなんです。
 これらの地方自治体がこれだけこの問題について態度を表明しているということも大変なことだと思うんです。日本の国内でもこれだけ地方自治体が、みんながこういうことについては改正をしてくれなくちゃ困りますという、そういう意思表示をしているのであって、そういうことについてどういう御見解をお持ちか、お聞きいたします。
#185
○政府委員(小林俊二君) 全国に約三千三百ほどの地方自治体がございますが、そのうち約六百三十ほど、すなわち五分の一ほどの地方自治体から改正についての要望が提出されておるのは事実でございます。これらの要望につきましても私どもとしてはもちろん十分念頭に置いて、先ほど申し上げたような検討も進めておるわけでございます。
 ただし、各地方自治体の告発に関する態度の表明につきましては私どもも極めて重大な関心を持っておるわけでございまして、特に先般川崎市につきましては文書でその回答を求め、その文書について私どもとしての見解を表明したわけでございます。また、そのほかの地方自治体におきましても、市議会における答弁等を通じて、告発を直ちには行わないといったような答弁をしている例が時折報道されておるわけでございますが、そのうちの多くのものは現に指紋押捺拒否者が出ていない地方自治体でございます。
 そういった報道のなされました中で、川崎市を除いて現に指紋押捺拒否者が出ておるのは二件でございますが、その二件につきましては、口頭で県を通じてその状況あるいは事情を説明を求めたところ、説明の趣旨は、意向表明の趣旨は、指紋押捺拒否者が出た場合に、粘り強く説得の上、その指紋押捺に応ずるように努力するということであって、それが不可能である場合に、説得にどうしても応じない場合に、あくまで告発はしないということを表明したものではないといった口頭の説明を得ております。したがいまして、現に指紋押捺拒否者が出ておる地方自治体において今後一切告発は行わないということを表明したものではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 ただしかしながら、もしそういう方針をとるということであるとすれば、これは放置できないことでございまして、私どもとしてはあくまで刑事訴訟法に基づく義務に従って告発は行うようにということを指導していかねばならぬと考えておりますし、現にそのための文書による指導を現在考えておるところでございます。
#186
○柳澤錬造君 今の多くの地方自治体は押捺拒否者の出てないところで、出ているのは二つだけだとおっしゃられましたね。そうしてくると、この毎日新聞が調査をしたのが間違いということになるのかどうか。恐らく今百何名おるはずですよ。この毎日新聞が調査をした対象の六百五十一市、
その中には拒否者が百三名おって、今これずっと北海道から数えていっても、告発を留保しているのが十八ぐらいあります。その辺の違いはどういう違いですか。
#187
○政府委員(小林俊二君) ただいま私が答弁申し上げましたのは、毎日新聞の調査の結果ではございませんで、報道として市議会等において市の当局者が告発をしないといった意向の表明をしたという事例が伝えられた案件でございます。その案件につきまして調査したところ、そういった市の当局者による公の場における意向表明が行われた案件の中では現に押捺拒否者が出ていない自治体が多うございまして、押捺拒否者が出ておる自治体は川崎市を含めて三件であるということでございます。したがって、毎日新聞の調査についてお答えしたものではございません。
#188
○柳澤錬造君 いや、私はこの一番新しい調査のなにで先ほど言ったわけで、別にあなたの御答弁はこれで答えていないことぐらいはわかります。ただ、余りにも違い過ぎるので、これを数えると十八の県のところで、市といいましょうか、拒否者があって、そこはもう告発しないという数字が出ているわけですから、だからそういう点の違いというものがおかしいじゃないですかと言っただけのことなんです。だから、よって立つよりどころが違うのだからあれだけれども、しかし法務省の方でおつかみになっているものとの違いがそんなに違うということも、私はそこに一つの問題があることだと思うわけです。
 それはまた後でもって解明することにして、次には、先ほど言いましたように、韓国人が非常に多いわけです。韓国居留民団の本部がアンケート調査をした中で、いろいろやっているんですけれども、指紋押捺は犯罪者扱いであって人権じゅうりんだ、そう思うかということについて、三十歳以上では男性の七六%、女性の八一%がそう思うというふうに答えているわけでなんですね。いろいろここに持ってきていますけれども、たくさんいろいろアンケートを調べているわけなんです。だから、圧倒的に韓国の人たちがそういう考え方を持っておる。
 それから、居留民団の人たちも、何でもかんでも指紋をとることがいかぬと彼らも言っているわけじゃないんです。韓国自体は全部やっているわけですから。韓国の場合には国民が全部指紋をとられている。その中で外国から来た人たちも同じようにやっぱり指紋を押捺して、外国人登録法に基づいてやってくださいよという形で、外国から来た人たちも自分たちも同じように扱われているんです。日本に行ったら、日本人はだれもそういうことをやらないんです。なのに何で私たちだけそうやって犯罪者みたいなそういうことをおやりになるんですか。しかも、その指紋のとり方というのは、回転して、言うならば犯罪者のときにやるあれと同じ方法をとられている。その辺を、やっぱり外交関係も絡んでくることだし、考えられないのか。何でそこまでいこじになって現在の状態を固執しなければいけないのかということだと思うんです。
 それで、先ほどもちょっと触れたように、皆さん方の方から、これは警察庁から出てくる警察白書を見ても、大まかに言えば世界の中で日本ほど治安のいい国はございません、そういうことで殺人や強盗の大物を取り上げて、その数字まで挙げて、いかにそういう点について治安がいいかと。少なくとも世界の主要な国々と比較しても治安は非常によろしいんです。だったらなおのこと、それらの国々以上にこういうことについて、一人一人外国から入ってきたのを、きょうも午前中からずっと聞いていると、密入国がどうだとか、不法入国がどうだとか言っているけれども、そんなのだって外国にもあるわけですよ。アメリカなんというのは本当言ってけた外れに、十万とか何十万なんというものじゃないだけのものがどんどん入ってきて働いていて、そのためにアメリカ人自身が今失業しているといって文句を言っているぐらいなんですから。そういう点に立ってもう少し現状を改める、せめて国際水準並みに変えるという、そういうことについての考えが持てないんですか、どうですか。
#189
○政府委員(小林俊二君) ただいま韓国の例を御指摘になりましたけれども、指紋がもたらす影響と申しますか、指紋によって受ける苦痛が精神的なものである、精神的な負担であり精神的な苦痛であるというのは、指紋そのものがもたらす必然的な結果というよりは、韓国人、朝鮮人が戦前から我が国の社会において置かれておる状況、その中において現在もなお続いておる社会的な事態がもたらしたものではないかというふうに私どもは考えるわけでございまして、そういう意味においては非常に不幸なことであると思うわけでございます。また、逆に言えば、指紋制度を撤廃したからといって、そういった社会的な状況がなくなるものではなかろう、むしろそれは本末転倒ではないかとさえ思うのでありますけれども、したがって、そういう事態そのものは、これは社会全体の問題として取り組んでいかなければならないという我が国の社会の持つ課題だろうと思います。
 しかしながら、指紋そのものについて申し上げれば、先ほどもお答え申し上げましたように、外国人登録法の目的そのものは、そうした精神的な負担あるいは苦痛を与えるということと何ら関係のないことでございますので、その法の目的を達成する枠内において、そういった負担なり苦痛なりというものを軽減する道がないかということを現在も研究しておるということでございます。それがいわゆる法の見直しでございまして、現在までこの点について制定以来八回にわたって改正が行われてきたというのも、いずれもその法の見直しの結果でございます。ただ、当事者である韓国人、朝鮮人の団体から組織的な要求あるいは要請によって、要望によって改正が行われたというわけでございませんので、そういう意味において、現在新しい問題としてこれらの団体なり機関なりが運動を進めておるという状況かと思います。
 いずれにいたしましても、私どもとしては、合理的な法の目的の達成の枠内において、そうした悪影響と申しますか、副産物と申しますか、そうした精神的な負担というものを軽減することができ得るとすれば、それは当然なさなければならないことと認識いたしておりますので、そのために研究を進めておるということでございます。
#190
○柳澤錬造君 入管局長、今度は大臣の方も聞いていてくださいね。そして、そろそろ大臣にも答えてもらわなければならない。
 法の目的を達成するためのその枠内においてという、それは皆さん方の主観なんですよ。国民の側から見れば国民の側から見たまた物の見方、考え方があるわけなんです。それで、私も法は守らなければならないという方なんです。だから国鉄の違法ストライキをやるときでも、そういうストライキはよろしくないということを言う方なんです。だから法は守らなければいけないけれども、局長、よく考えてください。同時に法律というものは国民が守れるような法律にしておかなくちゃいけないんですよということです。そこのところを私はお考えいただかないとね。法は守らなければいけない、守らなければいけないけれども、同時に国民が守ってくれるような法律をつくるということがこの国会の、立法府の私は責任であり義務だと思うんですよ。それが主権在民の民主主義国家のあり方だと思うんです。
 だから、不合理だと思ったならば遠慮なくそれは変えて合理的なものにして、そして、そのかわり国民の皆さんよ、これはきちんと守ってくださいよ、守らなかったらそのときは告発しますよ、何をしますよ、処分しますよとあっていいと思う。その一つの例がグリーンカードじゃないですか。政府みずからがグリーンカードのこういうものをといって法律をつくって、それを何にもしないでもって政府みずからがそれをつぶしたわけでしょう。今までの入管局長の御答弁の中からは、そういうグリーンカードのああいう扱いというものの答えは出てこないんですよ。政府が提案して国会を通して成立させて法律にした、したけれども、国民のいろいろの声を聞いておったらなるほ
どこれはぐあいが悪い、不合理だと思ったから、そのときは、まあ遠慮会釈なくという言葉が当てはまるかどうかわからないが、ともかくそれはじゃやめようかといっておやめになったわけなんです。それが間違いだとかどうとかというのじゃなくて、そうやって気がついたら改めて何にもおかしくないじゃないでしょうか。
 この指紋押捺は、大臣もう御案内のように、ことしは更新する人たちが三十七万人出てくるわけでしょう。果たしてこの三十七万人の人たちの更新が指紋押捺に応じてくれてやれるんですか。先ほど入管局長の、それはまあお役目上やむを得ぬ意味での御答弁もあったかわからぬけれども、今の社会情勢におって、私はこの三十七万人のなにがやらなかったら告発するぞなんて、そんなおどしでもって、はいそうですかといって出て行ってやるような情勢ではないし、もしもそんな状況だと判断しておるのならば、私はとんでもない間違いだと思うんです。その辺大臣いかがですか。
#191
○国務大臣(嶋崎均君) お尋ねのこの指紋問題を含む在留外国人の法的な地位及び待遇の問題につきましては、どのような制度が一番いいのかというのは、やはりいろいろな過去の経緯その他を考えて検討しなければならぬ問題だというふうに思っております。ましてや国内的な問題だけじゃなしに、先ほど来御指摘のありましたように、やはり国際的な問題でもあるというふうに私は思っておるわけでございます。そんな意味から、今後とも慎重な研究、検討を進めていかなければならぬというふうには思っております。
 しかし、御承知のように外国人登録法の改正というのは昭和五十七年に行われておるわけでございます。その際に、やっぱり相当な論議があったわけでございます。そういう中で、ともかく全会一致で通った法案になっておるわけでございます。しかもその際、御承知のように十四歳というのを十六歳に直すとか、あるいは三年ごとの切りかえというのを五年ごとに切りかえるとか、あるいは外国へ登録証を持って出てもよろしいとかいうような、そういうような制度改正をやったわけでございます。ちょうどその五年目がことし来ておりまして、御指摘になりましたように、ことしは三十七万人ぐらい切りかえがあるだろうというふうに言われておるわけでございます。
 今私、内容を調べて私自身も御心配になるような心配を実はしたわけでございますが、現在まで私が着任してから半年ぐらいになりますけれども、その間に五万人以上の人が切りかえをやっておいでになる。今までこれがうまくいかないというのは百五十一人か二人かぐらいの数字になっておると思うのであります。私は各皆さん方もやはり日本の今の体制ということについて、五十七年に直したというような経緯を含んでいただいて御協力をいただいておるのではないかというふうに実は思っておるわけでございます。しかし、御承知のように日韓の共同声明にもありましたように、その中で引き続いて研究していきましょう、こういう努力をしていきましょうというようなことになっておるわけでございます。そういう事態を踏まえて、今後我々も制度上の問題あるいは運用上のいろいろな問題につきまして、関係省庁と十分連絡をとって研究を進めていきたい、こういうぐあいに思っておる次第でございます。
 しかし反面、自治体等の御議論の中でこちらがそういう研究を進めていくということが、先ほど御指摘の人道上の理由と二つあわせまして、何かそういうことだからやらないでもいいのじゃないかというような論理になっていきますと、どうも話の論理が少しどこかで合わないところがあるのではないか。私はそういう声が、非常に多くの意見があるということも十分承知をしているつもりでございますけれども、せっかくさきの五十七年の改正が行われて最初に迎えるこういう時期でございますので、やはりこの問題、互いに在留の外国人の皆さん方にも御理解願い、また我々自身もこういう声というものを真剣に受けとめて、制度の将来についていろいろな研究していく、そういう形になることが非常に望ましいことであるというふうに思っておる次第でございます。
 そういう意味で、先生の御指摘になるお気持ちはよくわかりますけれども、今までの状況、そういう経緯、また私自身の判断を申し上げた次第でございます。
#192
○柳澤錬造君 大臣の言わんとすることもよくわかります。だけれども、さっきも言ったように五十七年に改正したといって、あれからまだ二年ちょっとしかたってないじゃないかといって、そこのところは余りこだわらないでいただきたいし、先ほども言ったようにグリーンカードは政府が御提案をなさって、それでこの立法府を通ってちゃんと法律になったわけでしょう。法律になりながら法律というものを何の実施もしないで、結局それをまた政府みずからの手でもってつぶしたわけなんです。
 だから、そういう点で、五十七年にまだ改正したばかりだというのじゃなくて、さっきも入管局長言うたように、六百何十からのそういう市町村からもいろいろ要望が上がっている。国内からもいろいろな、もうとてもじゃないけれども大変だから、そういうことについては改正してほしいという声が上がってきている。当事者だけじゃないんです。だったら、そういうことについて思い切って、そういう改正の方向に一歩踏み出していただきたいし、といって今はこの国会のさなかで、これはもう四月ごろから大量に出てくると思うんです。そうすると、わずか二カ月か三カ月でといったってそれは私はとてもそれは無理があると思うんです。しかし、将来的に考えて、そして三年を五年にしたというけれども、何で、じゃ五年ごとにそれをやらなければいかぬのでしょうか。
 第一、入管局長、今こういうわずか数カ月後に出てくるのだけれども、三十七万人が仮に来たとするならば、その人たちの指紋をとって、それで本人であることが間違いないという照合をどうやってやるんですか。こんなことのできる市町村役場がどれだけあるんですか。市町村役場の諸君にしたって、それはまたぺたっと張ってきた写真のそれを見て、五年前のと比べて、それで写真を見て、間違いないから本人だといって確認するしかない。大臣、そういうことなんですよ。指紋のそれを照合して、うん、これは間違いなく本人だという、そんなこと、どこも、まあどこもといっちゃこれもいかぬけれども、ないんですよ。またそんなことできないんですよ、これはとてもじゃないけれども。それだけの鑑識の設備があってやるような状態にはないんですから。
 だから、そういう点からいくと、外国人登録法に基づいて、最初の一回は、日本におる以上はこれはやっていただかなければいかぬと思うんですよ。しかし、一回やっていただいたら、もうそれをきちっと証拠に残しておいたら、いつまででも役に立つのですから、そうしたらその次からは後はもう写真にするとか。先ほど飯田先生が言っているときにも、私は黙って局長の御答弁を聞いていたんですけれども、それは局長、御存じでそらとぼけたのか、あるいは本当に知らないでなにしておったかですけれども、今写真というのはそんなものじゃないんですよ。
 例えば山のなにのところなんかだって全部飛行機で行って写真とってきて、それで見れば、ここの谷の状態がどんなぐあいかなにか、平面じゃなくて立体的に見られるんですから。それじゃ、ダムつくるのならこうしたらいいとか、橋をなにするならどうしたらいいとかということを全然そんなところへ踏み込まないで、空から行って写真をとってきて、その立体写真を見てそういうことが幾らでもやれるようになっている。人間の場合だって、ですからそういうふうな形での写真とれるんですから。恐らく入管局長、そんなことは私は知らないはずはないと思って、飯田先生が質問しているときに、ああ承知の上で、あれはわざわざそんなことを知っているなんというといかぬから、そらとぼけて答弁しているのかなと思ったんですがね。
だから大臣、この国会でといったって、それは私は無理があると思うけれども、先ほども言った
ように、法律は守らなければいけないけれども、みんな国民が守ってくれるような法律にしておかなければいけないんです。それが為政者の私は責任です。だから、そういう点に立って、これだけいろいろ声が上がってきたということになるならば、そういう点でもって指紋なんかも最初の登録のときに一回だけにする。それからその次に五年後だったらそういうときは、もうそれは写真だけのあれで済ましてしまう。そういうふうなことでもって改正に取り組んでいきますというふうな、そういうことの御答弁ぐらいいただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
#193
○国務大臣(嶋崎均君) 先ほど来お話がありましたところでございますが、ともかくグリーンカードの話と連れ合いになりまして、日を見ないで消えた例に引かれているわけですが、どうもあれも余り感心したことでもなかったのだろうと、まあ民社党の方はどうだったかよくわかりませんけれども、一般的にはそういうぐあいのことが言われるわけでございます。
 実は、あの制度が動き出してからすぐ次に制度改正問題というのが明くる年あたりからにぎやかになってきているというのは、どうも私も困ったものだというような感じを実は持っております。それとともにやはりそういう制度の改正がありまして、そして非常に近い時期にもう一遍議論をするというようなところを迎えているものですから、やっぱり私はこういう制度というのはいわゆる在留の外国人の皆さん方にも御協力願う、我々も既に先ほど申し上げましたように日韓共同声明の中でそういう意思を訴えておられておるわけで、出しておられるわけでございますから、そういう気持ちで今後のいろいろ制度上あるいは運用上の問題を研究していきたいというふうに思います。
 御指摘の案等につきまして、これは御意見として承っておきたいと思いますけれども、なかなかそういう制度がうまく運用できるのか、そういう点については関係省庁とも十分打ち合わせをして、結局今度の国会だめだからもうあと直す気持ちはないんだ、そんな気持ちはさらさらありませんので、今後ともひとつ研究を続けてまいりたいというふうに思っております。
#194
○柳澤錬造君 外務省、時間も余りないので、もう今大臣にああいう答弁してもらったんで、外務省の立場から一言、せっかくおいでいただいたんだからもうちょっとお聞きしようと思ったんだけれども、御見解聞かせてください。
#195
○説明員(渋谷治彦君) お答えいたします。
 お尋ねの点につきましては、外国人登録法が昭和五十七年に改正されたという事情がございます。しかしながら、他方において指紋押捺制度の撤廃ないし緩和を求める意見があるということも私どもとしては十分承知しておりますし、かかる観点から昨年の日韓共同声明の趣旨をも踏まえて制度上及び運用上の問題点について目下関係省庁との間で検討を重ねているという状況にございます。
#196
○柳澤錬造君 時間かないですからやめますけれども、大臣、今答弁なさったように本気になって検討していただいて、それで法の改正にはかなりのやっぱり私時間がかかると思いますけれども、どういう態度にしても、それは私の意見として言ったように、私は一回はやっていただかなければいかぬ、しかし後はもう五年ごとは写真でいいじゃないかという、だからそういうことあたりをどういうふうになさるか御相談をしていただいて、それでこの種の問題を私が心配をするのは、いろいろとだんだん、これ見ていてください、さっきの三十七万人が動き始めたら、この騒ぎが大きくなってくると思うんですよ。そういう騒ぎが大きくなってから、これは大変だ、結局やれなかったわ、改正せざるを得ないわと言って改正するという、そういうぶざまなことだけはやらぬようにしていただきたい。その先を行くのが政治家なり政府なり、国会なりの私は責任だと思うんで、そのことだけ申し上げてこの問題は終わりたいと思います。
 それから、次には大臣のきょうの所信表明の中にも右翼団体云々といって簡単に書かれておったんですけれども、はっきり言って暴力団関係、それで、だんだんこの暴力団の存在というものが一般の市民にいろいろ恐怖や不安を与えていく。最近の状況なんかを見ていますと、このままの状況でいったならば民主主義社会の秩序が破壊されてしまうじゃないか。これは去年もここで聞いたんですが、警察の皆さんの努力で、そうしてだんだん暴力団員が減ってきたことも事実なんです。ずっと前のを調べてみましても、昭和三十九年には暴力団体が四千五百七十三あって、十七万七千三十五人おったわけです。それが十年後の四十八年には団体が二千七百二十三団体で、十一万四千五百六名になっている。それで五十八年に二千三百三十団体の九万八千七百七十一名といって、とうとう十万を割ってきたわけです。警察の皆さん方のこれも努力だと思うんです。
 ところが、私が心配になるのは、いわゆる暴力団体なり暴力団の構成員がそういうふうに減ってはきたけれども、いわゆる広域暴力団という方は逆にふえてきているんですね。三十九年には千二百四十二団体で四万九千六百九名だったのが四十八年には二千三十二団体の六万四千五百六名。この広域暴力団の方が最近の新しい数字でどのくらいになっているかということを一つお聞きしたいことと、それから昨年もこの委員会でいろいろこの問題なにしたときに、毎年五万人ずつ検挙していますと答弁があった。毎年五万人ずつ検挙している割合には減らないじゃないかと言って、そんなこともここで議論したはずなんだけれども、五万人検挙をした、その人たちが起訴して実刑判決が下ったとか、あるいは、いや取り調べてみたけれどもそこまでいかないで不起訴処分にしてしまったとかという、その細かい数字でなくていいですから、大体毎年五万人検挙したその人たちがどういうような処置になったんだという、その傾向をあわせてお聞きをしたいです。
#197
○説明員(上野浩靖君) 暴力団の勢力について私の方からお答えいたしたいと思います。
 先ほど先生御指摘のように、四十八年で広域暴力団は二千三十二団体で六万四千五百六人でございますが、十年後の五十八年では千八百七十八団体でございまして、五万八千四百九十人というふうに把握をいたしております。
#198
○国務大臣(嶋崎均君) 今御指摘になった問題、五万人ずつ検挙していてすっかり空にならないじゃないかというような御指摘でございます。実は私自身もいろいろ刑務所を見さしていただきまして、金沢の刑務所なんかは随分暴力団関係の人がたくさん入っている刑務所である、あるいは東京の近辺を見ましても相当の人が入っておいでになる、その比率が非常に高い状態になっておるのは事実であります。そういう意味で今後関係当局とよく連絡をとって、事前的に抑圧をしていくというための努力を積み重ねていくことが必要でありますとともに、我々の中でもやはり矯正関係の仕事というものをできるだけ的確にやりまして、その処理を求めるとともに、一方刑事のいろいろな訴追につきましては厳正的確に処理をするというような意味で総合的に対策を講じていかなければならないのじゃないかというふに思っておる次第でございます。
#199
○柳澤錬造君 それで、警察庁でその五万人の処置をどうしたかというんです。わかっておるはずなんだから、起訴したとか、不起訴にしちゃったとか、起訴のうちの実刑判決、その割合がどういうふうな結果になっているんですか。
#200
○政府委員(筧榮一君) その五万人の行方を追跡した資料はございませんので、一般に暴力団構成員の犯罪に対します起訴あるいは実刑等のパーセント等についてお答えいたしたいと思います。
 暴力団関係者による犯罪のうち、自動車による業務上過失あるいは道路交通法等のいわゆる交通犯罪、これを除きました事件について過去五年間の起訴率をまず見てみますと、昭和五十四年で八五・三%、五十五年で八四・五%、昭和五十六年で八四・一%、昭和五十七年で八四%、五十八年で
八四・七%ということでございまして、例えば昭和五十四年をとってみますと、全体のこれらを含めました全事件、今の交通関係を除きましたものの起訴率が四七・三%であることに比較いたしますと、いずれも八四%を超えておりまして、起訴率は非常に高い。したがいまして、大多数のものが起訴されておるということが明らかでございます。
 それから、次の実刑率、これも正確には資料がございませんが、裁判実務において暴力団関係者であるということについては警察官も公判におきましてその状況立証等に努めておりますので、そういうことから量刑は重くなっておるということは言えるわけでございますが、統計上これをうかがう資料といたしましては、例えば昭和五十七年の主要罪名別に見て、それを重いか軽いか、刑期別の構成比を見ましても、例えば殺人をとってみますと、刑期五年を超える者が暴力団加入者についてはその当該処せられた者の六三・二%であるのに対しまして、それ以外の者については五四・一%というふうに、量刑の面でも暴力団関係者とそれ以外の者については相当の差が見られるわけでございます。
 それから、これも横からの資料になろうかと思いますが、例えば、まあ例えばといいますか、新受刑者、新しく刑務所に入ってくる者、つまり実刑を受けた者でございますが、その者の中に占める暴力団加入者の割合、これは昭和五十五年から五十八年までの間の統計で見ますと約二五%弱、二四・何%という数字を占めております。ちなみに昭和四十五年ではこのパーセントは一六%でございますので、最近では新しく刑務所に入ってくる受刑者の四分の一は暴力団関係者であるということで、裏を返せば暴力団関係者に対する実刑率は高いということがうかがわれようかと思います。
#201
○柳澤錬造君 去年かおととしだったか、サラ金法案のときも、いろいろサラ金による被害のことでこれを聞いたときに、そういうデータが何もありませんと言って、一年たって今度調べたらこうこうというふうに、今聞いて、その暴力団だけを取り上げたそういうデータがそろってないというところに、私、警察が、警察署のところには暴力団何とか対策本部とか看板掲げているけれども、本気になっておやりになっていないなというものを受けるのですよ。生易しい問題じゃないと思うんですよ、この暴力団。
 それで現実に、これも何というのですか、私が言うまでもないことですが、私はこれを見ておって、暴力団の犯罪事件で二つのケースがあると思うんです。一つは、暴力団同士でもって、特に最近のように撃ち合って、そしてこの前のいわゆる山口組の竹中組長ら三人が射殺されて、それが発端になった。そして二月二十三日には、高知では競輪場でもって観客がみんないる中でもって、今度は一和会の組員が殺されたでしょう。三月四日になったら今度は加古川市のあそこで起きたのは、その襲撃をかけたのが暴力団の幹部の家と間違えて一般の会社員の家を明け方に襲って発砲していった。三月六日の四日市市の場合には、町中の喫茶店の中でピストルを撃って、あれを殺しちゃったし、ついこの間三月二十四日も大阪でもってまた発砲事件があった。
 だから、こうやって暴力団の組同士の対立抗争が、昔のお侍さんがどこかの原っぱへ行って切り合いするのとはわけが違って、一般住民が住んでいる市街の中でもってそういうことをやって、そしてそのために一般市民というものがどれだけの恐怖に陥れられているか。それで、たまには被害を一緒にこうむるような形になるんで、その辺について警察が本気になって暴力団取り締まりをおやりになっているのかどうか。おやりになったらこんなことにまでいかないと思うんだけれども、その辺はどうなんですか。
 それで、この山口組と一和会の事件が起きてから発砲事件が二十二件あって、そのうちの十四件というものが住宅街で、住宅街の中にある暴力団の事務所とか幹部の家がそういう格好で襲われているというふうに私が調べたら出ているんだけれども、警察の取り組む姿勢というのはどういうことなんですか。
#202
○説明員(上野浩靖君) 警察庁におきましては、今回の対立抗争事件を重大なものと受けとめまして、事件発生直後に山口組組長狙撃事件対策室を当庁に設置いたしますとともに、二月一日の日に大阪におきまして関係の三十二都道府県の暴力担当課長会議を開催いたしまして、一つには警戒活動の徹底によります市民の安全確保、二つといたしまして両団体の構成員の大量検挙とけん銃の摘発、三つといたしまして山口組及び一和会の幹部の検挙を目標といたしました頂上作戦の展開ということを指示いたしたところでございます。何といいましても市民に被害が及んではいけないということでございますので、現在全国警察におきまして、市民生活の安全の確保を徹底いたしますとともに、両団体の取り締まりを強力に推進しているところでございます。
 その結果でございますが、三月二十二日現在の数字でございますけれども、両派で一千五百七十二名を逮捕いたしております。また、けん銃八十三丁を押収しておりまして、強力な取り締まりをいたしているところでございます。警察といたしましては、今後とも市民の安全確保を図りますとともに、両団体の取り締まりに全力を挙げる考えでありますけれども、さらに各公共機関、民間団体等の御協力を得まして、これら暴力団を各地域、職域からできるだけ一掃するための暴力排除活動にも力を入れてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#203
○柳澤錬造君 一千五百七十二名逮捕したというんですから、そういう点においてはやっぱり警察の皆さん方大変御努力なさったことだと思いますし、そういう点では敬意を表して、撲滅と言ったってなかなか大変なことだけれども、それはやっぱり一般市民のことを考えて、ぜひ本当にとことんまで根絶するまでやっていただきたいということを申し上げておきます。
 それから、もう一つのケースは、暴力団同士じゃなくて今度は一般市民を相手にしての暴力団の犯罪ですね。結局サラ金なんかもそうだけれども、ああいう金融業者や、売り掛け代金なんかの債権の取り立てを暴力団に頼んでいって、おどして取り上げるようなこと、逆に金を借りて困った連中が暴力団に話をして、今度は債務者の方の立場になって、暴力団が債権者をおどし上げてしまうとか、それから不動産の売買だとか交通事故の示談の問題だとかいろいろあるんですけれども、これらについてどの程度の取り締まりというか、そういうことをなさっているか聞かせてくれませんか。
#204
○説明員(上野浩靖君) ただいま御指摘にありましたように、暴力団につきましては、資金源獲得といたしまして暴力団の伝統的資金源であります覚せい剤の密売とか、のみ行為、賭博などの枠にとどまりませんで、御指摘のような民事介入によって資金を得るというような活動も目立っているわけでございます。このため警察といたしましては、昭和五十四年十二月に警察庁に民事介入暴力対策センターを設置いたしますとともに、各都道府県警察にこれら事案の相談等の処理に当たります担当官を置きまして積極的に対応しているところでございます。
 全国の警察におきまして相談を受理しております件数でございますが、毎年約一万数千件を受理いたしておりまして、その内容を類型別に多い方から見ますと、交通事故の示談等に絡むもの、これが約一五%ぐらいございます。また、金銭貸借等に絡むものが一四%、それから債権取り立て等に絡むものが一二・五%というふうな数字になっております。また、この種事件で刑事事件として検挙いたしましたものは毎年二千数百件でございまして、その罪種別検挙を見てみますと、恐喝とか傷害、詐欺、暴力行為等となっておるところでございます。また、こういう相談がありました中で、直ちに犯罪を構成しない事案もあるわけでございまして、こういうものにつきましては関係者
への警告、これは主として暴力団関係者でございますが、警告を行いますとともに、あとは弁護士会等の関係機関、団体との連携を密にいたしまして、相談者に民事上の解決策の助言、指導等を行うなどの措置を講じまして市民保護の徹底を図っているところでございます。
#205
○柳澤錬造君 そういう努力を続けていただいて、私は、日本の警察が本気になってやったら相当なことがやれると思うんですよ。だから先ほど、やっと今十万人を割ったけれどもなかなか検挙しても減らないということは、そこにやっぱり抜け穴というか、落とし穴があるからだと思います。
 それで、これはもうこの間も明るみに出てきたことだけれども、東京の小岩署で暴力団の元組長を大変な破格な待遇をした。大臣はこれ御存じですか。御存じなければ、ちょっと聞いていてください。
 この男は千葉県習志野市生まれで、川崎市に本拠がある暴力団の元組長。一昨年十一月から昨年三月にかけて、東京都江戸川区や千葉県松戸市などで計五件の強盗、恐喝事件を起こし、昨年四月一日に新宿署で逮捕された。同日、捜査本部がある江戸川区の小岩署に移され、約四十日間、同署内の留置場に拘置され、調べを受けた。ところが、四十日間も拘置をしたんだけれども、そこへ逮捕の直前まで同棲をしておったスナックのママが二、三日おきに差し入れを持って訪ねてくるようになった。この女性は、計十回同署に来たが、五、六時間も長居をしたこともあった。自分が買ってきたすしや果物などを元組長と調べ室で一緒に食べて過ごした。元組長は、ときどき肩をもみ合ったり、体を触れ合ったり、その間、刑事は部屋の中で居眠りのふりをしたり、座を外すこともあった。それで、こうやって一緒に仲よくやっているところを何枚か写真まで撮らして、それで結局それが明るみに出てこういうことになった。
 今それで、元警察官という人が次から次から、きのうかおとといの横浜の三菱銀行の支店も、あれも警察官だというような形で、それで、せっかく大多数の警察官が一生懸命になって必死で命がけで治安に当たっているのを、そういう一部の警察官の人たちの悪いことをすることでもって信用を失墜するし、そういう中で、こんなこと日本じゅうの警察署でやっているわけではないと思う。たまたま小岩なら小岩のところでもって一カ所これやったら、もう日本じゅうの警察署というものは暴力団とぐるになって、そういう元組長なんか来れば、それは特別なことをしてやっているんだというふうに国民は思ってしまうわけだ。それだけに、よほどそこのところを引き締めて、警察署の方も、それから法務省の方でも、そういうことについてはシビアにやっていただかなければいけないと思うんだけれども、ここのところは大臣の方から私お聞きしたいと思うんです、そういうことについて。
#206
○国務大臣(嶋崎均君) 今お尋ねのケースにつきましては、よく内容は承知をしておりませんけれども、したがって一般的にどういうことでやったのかというようなことも知りませんので、お答えはしにくいところがあるわけでございますが、一般論として今申し上げるならば、刑事事件における警察当局の捜査の手続や、あるいは留置をされている人の処遇が法令に従って適正に行われるということは、言うまでもなく非常に大切なことであると思うのでございます。したがいまして、法務、検察当局といたしましても、これらの事案につきまして適切な処理が行われるように努力していくことが必要であろうし、また警察当局においてもそういう点について十二分の配慮をしていただきたいと思う次第でございます。
#207
○柳澤錬造君 まだいろいろあるんですけれども、時間もないですから暴力団関係終わりますけれども、大臣、それから警察庁の皆さんの方も本気になって取り組んでやっていただきたい。それで、ともかくピストルが相当出回って彼らの手に入っているというようなそういう情報もあるんだし、それから、さっきもちょっと御答弁の中で言われたけれども、やっぱり資金源を断つことですね。本気になってやっていただきたいと思うんです。そうでなければみんな市民が安心して寝ていられないようなことになってしまうんですから、その点はぜひとも御努力をいただきたいということを要望申し上げて、その他の点は省きまして、あと供託法の関係でこれはちょっとだけ、もう時間もないですから。
 私が理解いかないのは、国家財政が苦しいからといって、これは法律が切れるんだけれども、あとさらに六年間利子つけるのをやめさしてくれというのがこの法の改正だけれども、年間二十億ぐらいの金が国家財政が苦しいとか苦しくないとか、そんなことの理由でこんなことをやる必要があるんですかということだ。国家財政が苦しいから、たとえ二十億の金でも節約さしてください、利子払うのをやめさしてくださいというならば、個人の家庭だって苦しい中でもって税金納める。納めるんだけれども、納め切れないからといって確定申告のときに半分はそれじゃ延納税を認めてくださいと言ってやるわけだけれども、それじゃ、それも延滞利子取るのをやめたらいいじゃないか、苦しいのは国家だけじゃなくて個人も同じなんですから。ところが、一般国民の側がそうやって延納税さしてくださいよと言ってなにすれば認めてくれる。認めてくれるかわりにはもう延滞利子はぴしっと取る。少し勝手過ぎませんか。依然として昔のお上意識というようなものがこれ働いているんだけれども、その点はどうお考えでしょうか。
#208
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまの点につきましては、供託金の利子を払うかどうかということにつきましては、先ほども飯田委員からの御質問にもございましたように、当然国が利殖のために受け取っているというふうな性格のものではなくて、従来の経緯、それから資金が事実上長期間寝るとかいうようなことから利息をつけるというふうな制度になっておるわけでございます。したがいまして、一部ではそういう利息制度そのものをやめてしまったらどうだというような御意見もあるような事柄でございますので、したがいまして財政の苦しいときに歳出の縮減をしようということになりますと、そのような議論のある性質の供託金の利息についてはしばらく支払いを御猶予いただきたいというような考えになるわけでございます。
 また、ただいま例として出されました税金の関係につきましては、これはもう当然国民の義務として納めなければならぬ性質のものでございます。したがいまして、その両者については性質上の違いがございますので、供託金については、これは私どもとしては望ましい措置だというふうには必ずしも考えておりませんけれども、財政の苦しい折にひとつしばらくはまあ御勘弁をいただきたいという内容でございます。
#209
○柳澤錬造君 それが勝手だと言うんですよ、私はそういう考え方が。
 それで大蔵省、そのついでにだけれども、確定申告なさる人たちは、みんな予定納税するわけですね。あれは七月ぐらいか十一月ぐらいに二回、そして三回目の三月のところで。半年以上も前もって税金を納めさせておいて、そしてそれには一銭の利子もつけないわけでしょう。それで今言ったように、今度は三月十五日に全部納め切れない、半分だけは三カ月ばかり延ばして納めさせてくださいといえば、それはぴしっと言って延滞利子を取る。それは大蔵省、どういうことですか。
#210
○説明員(吉本修二君) 二点ほどお答え申し上げたいと思いますが、まず最初の財政上の問題でございますが、もう既に御高承のとおり、非常に国の財政状況は厳しゅうございます。二十億ぐらいとおっしゃいますけれども、私どもとしては非常に数万円単位なり、場合によっては千円単位のみみっちいところをずっと積み上げて、何とかこの三年間、対前年度一般歳出前年同額以下に抑えていくというような努力をしておるわけでございます。もちろん今回御審議いただいておりますような補助金整理特例法のような制度改革も含めまし
て、そういう努力をしてきておるわけでございますが、そういうことでやっと国債の一兆円減額というのも達成しておる。しかしながら、まだまだ毎年の利払い費が十兆円を超えるような状態になってきております。しかも今後の財政を展望いたしますと、ここ三カ年間ぐらいでも毎年四兆円から六兆円の財源不足額が見込まれる、こういうような状況でございまして、今後とも厳しい財政状況の中で歳出削減努力を続けていかなければならない、こういう状況でございます。したがって、そういう財政状況の中で従来三年間続けていただきました付利停止措置、とてもそれを撤回できるような状況にはないということはぜひ御理解いただきたいと思います。
 それから税金の問題でございますが、私は税制の専門家でないので恐縮でございますけれども、一言だけ注釈をつけ加えさせていただきますと、予定納税と申しますのは、毎年七月と十一月の前年度の確定申告をもとにして納税をする制度でございまして、これは三月に確定申告して納めるべき税金の前払いではございません。これは例えばサラリーマンをとってみますと、御存じのとおり既に源泉徴収制度というのがございます。それと同じような制度で、この予定納税というのは名前は予定納税ですが、七月と十一月に納税義務が発生するものでございまして、そこで納めないと当然それには利子がつく、こういうことになるわけでございます。
 なお、御参考までに申し上げますと、予定納税を二回やりまして三月に確定申告したときに、総額が予定納税額を下回って還付になるというような場合には還付加算金がつく、こういうような制度になっておりまして、サラリーマンとの権衡等からも当然必要な税制上の措置でございます。延滞税につきましても同様に税金を納めておられる方々との権衡の問題として、どうしても必要な税制上の問題でございます。
#211
○柳澤錬造君 それもへ理屈だというんです。何でサラリーマンが毎月毎月税金を納めなければいけないんですか。サラリーマンだって税金を納めなくたっていいわけでしょう。三月十五日にあそこへ行って書く。たまたま普通のサラリーマンは会社なら会社が給料を払うときに源泉徴収で取ってそれを税務署へ納めるよという、そういう法律があるからやっているだけのことなんです。何もサラリーマンが毎月納めるのが原則でも何でもないんですよ。あんな法律やめちゃったらいいわけでしょう。それでサラリーマンであろうが何であろうがみんな確定申告しなさい、その中で必要経費はちゃんと計算してやりなさいということになれば、みんなそれで済むわけなんだ。
 だから、もうちょっと皆さんも、特に入管局長、法務省の皆さん方なんか頭がかたいんだから、自分のところを中心に物を考えないで、もう少し世界の趨勢を眺めて、それでその中で日本の国がどういう状態に置かれているか、その日本の国の中でおれたち今何をしなければならぬか、そのくらいのことを考えて、そうして政治に携わって、そういう中から、もう時間がないから御答弁はよろしいですけれども、不合理な点は変えていく、そうして国民が喜んで法を守ってくれる、治安が維持できる、法治国家らしいなあという、そういう国になるように、それは努力をしていただかないと、それが皆さん方や私たちの責任だと思いますので、サラリーマンは毎月何か税金を納めるのが当たり前なんだ、それとのバランスでなんということなんかは通用しないんですから、そういうことだけを申し上げて、もう時間ですから終わります。
#212
○説明員(吉本修二君) 一言だけ。税の問題で恐縮でございますが、サラリーマンの源泉徴収制度、おっしゃるとおり現在の所得税法に基づいて行われている制度でございます。しかしながら、その所得税制がそうなっておるゆえんというものは、そういう制度を前提として現在の全体の所得税率なり給与所得控除なり、そういうシステムができ上がっているということだけ一言つけ加えさしていただきます。
#213
○柳澤錬造君 それが間違いだと言うんです。
#214
○委員長(大川清幸君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#215
○委員長(大川清幸君) この際、派遣委員の報告に関する件についてお諮りいたします。
 先般、当委員が行いました検察及び裁判の運営等に関する調査の一環として、最近における司法行政及び法務行政に関する実情調査のための委員派遣について、その報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#216
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 次回は来る二十八日木曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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