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1984/03/28 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第4号
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1984/03/28 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第4号

#1
第102回国会 法務委員会 第4号
昭和六十年三月二十八日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十七日
    辞任         補欠選任
     杉元 恒雄君     園田 清充君
     水谷  力君     石本  茂君
     吉村 眞事君     河本嘉久蔵君
 三月二十八日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     松岡満寿男君
     河本嘉久蔵君     柳川 覺治君
     園田 清充君     藤田  栄君
     安井  謙君     福田 宏一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         大川 清幸君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                名尾 良孝君
                福田 宏一君
                藤田  栄君
                藤田 正明君
                松岡満寿男君
                柳川 覺治君
                小山 一平君
                橋本  敦君
                柳澤 錬造君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  嶋崎  均君
   政府委員
       警察庁長官官房
       審議官      福島 静雄君
       警察庁刑事局審
       譲官       於久 昭臣君
       法務大臣官房長  岡村 泰孝君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  菊池 信男君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  筧  榮一君
       法務省矯正局長  石山  陽君
       法務省人権擁護
       局長       野崎 幸雄君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
       外務大臣官房審
       議官       有馬 龍夫君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       勝見 嘉美君
       最高裁判所事務
       総局総務局長   山口  繁君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   櫻井 文夫君
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   猪瀬愼一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       外務省アジア局
       北東アジア課長  渋谷 治彦君
       大蔵省理財局国
       有財産総括課長  田中 誠二君
       大蔵省証券局質
       本市場課長    金野 俊美君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○供託法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ─────────────
#2
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十七日、水谷力君、吉村眞事君及び杉元恒雄君が委員を辞任され、その補欠として石本茂君、河本嘉久蔵君及び園田清充君が選任されました。
 なお委員の異動について御報告いたします。
 本日、石本茂君及び河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として松岡満寿男君及び柳川覺治君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(大川清幸君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び供託法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○寺田熊雄君 一昨日のこの委員会におきまして、私は刑事施設法案並びに留置施設法案についてお尋ねをしたわけであります。その際、警察庁の福島審議官の御答弁によりますと、刑事施設法案と留置施設法案との合体法案、刑事施設並びに留置施設法案という仮称ですが、この合体法案は来通常国会に法案が提出される際にもやはりあり得るだろうかということをお尋ねしたわけであります。ところが、福島審議官は刑事施設法案並びに留置施設法案の二本立てで出すのが筋でありますということをひたすら強調されて、合体法案で提出することもあり得るかという私の質問に対して明確な答弁をなさらなかったわけであります。しかし、自民党の法務部会の関係者その他に私が直接いろいろと尋ねますと、この合体法案はむしろ警察庁の方が提案したようでありますというふうに私は説明を受けておる。そうとしますと、みずからが提案したものをこの期に及んであえて避けるがごとき答弁をするというのはどうも合点がいかない。この点について審議官にもう一度お尋ねをしたい。
#5
○政府委員(福島静雄君) お答えいたします。
 この法案を再提出する方法につきましてはいろいろ考えられると存じます。先日の答弁で二法案の形で出すのが基本的には望ましいと申し上げましたのは、昭和五十七年に一たん提出いたしましたときの経緯から私の気持ちとして申し上げたわけでございますが、先生の御示唆のような両法案の合体という方法も十分考えられるところでございまして、そのような方向について調整努力をしてきた経緯もございます。そこで今後におきましては、その合体方式も含めましてよく検討を進めてまいりたいと、かように考えております。
#6
○寺田熊雄君 大変明確なお答えをいただいたわけでありますが、ただ、合体法案ということになりますと、やはり警察庁が法務省に相当誠心誠意協力しませんと合体法案は成立しないことは明瞭であります。自民党の法務部会の方々にお尋ねをすると、どうも内心は警察庁はそれを望んでおらぬかのごとき印象を受けておられるようであります。そうといたしますと、その協議が必ずしも成立に至らないということも十分考えられるわけで
ありますが、果たして警察庁としては、合体法案の方途がもしも選択された場合には誠心誠意それに協力する意図があるのかどうか。内心はそれを望まない、したがって協力は形だけであって実態はむしろ反対の方向に向いておるということであってはどうかという印象も受けますが、その点いかがでしょうか。
#7
○政府委員(福島静雄君) 今後よく御協議をすることが必要であると思いますが、警察庁といたしましては、誠意を持ちましてその方式についても検討してまいりたいと存じております。
#8
○寺田熊雄君 さて、それぞれの官庁がそれぞれ自己が善と信ずるところを主張するということ、これはまことに当然のことで、結構なことでもあるわけであります。そこで、もしも誠心誠意相互が協議を尽くしてもまとまらない場合、そのときはどうなるのかということが考えられるわけであります。
 自民党の法務部会では来国会は刑事施設法案単独でも絶対に出すべきであるという決議をしたということを私は仄聞をいたしておるのでありますが、法務省の矯正局長はそれを御存じかどうか、そしてどんなふうに今考えておられるのか、その点をお伺いしたい。
#9
○政府委員(石山陽君) ただいま寺田委員仰せのような形で法務部会から御激励をいただいておることは事実ございます。私どもといたしましては、刑事施設法案を何とか早急に国会に提出させていただき、慎重御審議の上速やかにその成立を図りたいという本来の希望に変わりはございませんので、今後ともその方策について関係省庁と十分協議をしながら話を進めたいと思っております。ただ、先般の御質疑の際に私が申し上げましたように、いろいろな選択肢がございまするけれども、それなりに立法政策または立法技術上の問題点のある点もございまするので、それらの今御指摘のような方向も含めまして十分今後検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#10
○寺田熊雄君 あなたのお気持ちはよくわかったが、それで、やっぱり協議が成立しないことも、望ましいことではないけれども、ないとは言えないでしょう。そのときはやっぱり刑事施設法案単独で提出されるということになるわけですか。
#11
○政府委員(石山陽君) 協議が成立しないと最初から決めてしまうのもいかがかと思いますので、協議が成立しますようこれから誠心誠意やっていく、その結果によりたいと思っております。
#12
○寺田熊雄君 それはそうだ。初めから成立しない場合を想定するというのもなんだけれども、ただ自民党の法務部会があなたに対して、単独でも絶対来国会は出すんだといって決議した、今国会は藤尾政調会長の裁断に従うということであったようでありますから、そういう決議があるということはやっぱり自民党の皆さんも一抹の不安というものをそこに感じておるわけだね。それだから私もあえてお尋ねしたわけで、だから全くこれは理論的な問題になるかもしれないが、あなた方が誠心誠意両省庁で協議してくださるように私も希望しますし、そうなると思うけれども、もし不幸にしてならぬ場合には自民党の法務部会の激励にこたえる形もあり得るということなんでしょう。
#13
○政府委員(石山陽君) 大変激励のお言葉をちょうだいして恐縮でございます。私どもとしましてはそのような御裁定があったことも否定できませんし、それから、今回の国会情勢を踏まえまして、党の法務部会の諸先生方に大変温かい御支援をいただいたことを感謝申し上げておるわけでございまして、これらを前提といたしまして十分に話を詰めてまいりたいと思いますが、先般申し上げましたような問題点があることも事実でございますし、やはり立法政策上、両省庁で完全に同意ができる方向で進めなければならぬという一つの命題は確かにあるかと思いますので、この点を含めて検討した結果、その選択肢のうちの最善の方法を選びたいというふうに考えておるところでございます。
#14
○寺田熊雄君 言葉は丁寧だが、やっぱり自己のあれを押し通した形だね。大臣、やはりこれは局長としては今のように答えざるを得ないかもしれませんが、監獄法の改正というのは、これは日弁連もその必要性がありとして、もう既に二十年ぐらい前から審議を始めているような経緯もあるわけです。それ自体は日弁連も反対しておるわけじゃないので、反対はあくまでも代用監獄制の維持という一点にかかっておるわけですが、その点大臣としてはどういうふうに今構想を練っておられるのでしょうか。
#15
○国務大臣(嶋崎均君) ただいまの刑事施設法案の問題でございますが、監獄法の全面的な改正をぜひやりたいというような気持ち、それが前々から弁護士会の方からも、あるいは野党の皆さん方からもこれは直したらどうかという経緯は我々も十二分に承知をしておるわけでございます。今回いろいろな経緯がありましたけれども、監獄法改正の早期実現が必要であるという事情はいささかも変わっておらないというふうに私自身は思っておるわけでございます。
 実際的な運用は今の制度でも何とかうまくこなしているじゃないかというような御議論もないわけじゃありませんけれども、しかし何しろ明治四十一年からあの法律に基づいて運用しているということ、時代が相当変わっておるわけでございますから、私はもうぜひともそれを改正して、意図しておりますように、監獄に入った人の処遇の問題、あるいは人権その他の問題、あるいは国際化の問題、いろいろな問題があると思うのでございます。それらの問題もぜひとも十分に弁護士会その他とも論議を重ねて、譲るべきところは譲らなければいけませんし、守るところは守らなければいけないというような意味で今まで整備努力をしてもらったつもりでおるわけでございます。したがいまして、ぜひともこれは成立させたいという気持ちは少しも変わつておらないわけでございます。
 御指摘のように、何というか、国会に提出すべく準備をして、昨年以来非常に事務当局にも努力をしていただき、また警察庁の方との関係も当初からいろいろな調整をやりまして、同時にこれを提出しようという意味での努力を積み重ねてまいったわけでございます。それが三月の初めになって、まあ国会の事情もありましょうし、またいろいろ各般の意見を十分聴取して整理をしなければならぬというようなお考えもありましょうし、そういうことで警察庁の方で留置施設法案につきまして提出をしないというようなことに相なったわけでございます。
 したがって、私はどこまでも出したいというような気持ちがあったものですから、そういう気持ちが伝わってから後も、何とかそれじゃ単独でこれを処理する方法がないだろうか、あるいはそれが難しいのなら、警察庁の方からもお話がありましたから合体的な物の考え方もできるのではないだろうか、苦労のあるだけはひとつやってみたらどうだろうかということで、矯正局の皆さん方にも大変な御努力を願って積み重ねてやってまいりました。しかし、御承知のように、立法技術上純粋に単独で整理をする、あるいは合体で整理をするというようなことを考えてみましても、まあとことん技術的に全然関係なしに処理するというようなことになればこれは技術的にできるかもしれません。しかし、やはりこういう問題というのは、飯田先生の方からも要するに捜査権の問題についていろいろな議論がありましたように、やっぱり政策的な判断というもの、調整というものが前提になって、そういう中で整理をしなければ技術的な問題もある程度解決しない分野というのも私はあるのだろうと思うんです。私自身は直接その折衝の場に出たわけじゃありませんけれども、大変な苦労を重ねて、結局この国会に提出するのには調整すべき点が非常に多いというような結論になったわけでございます。
 この問題を提出しないというのは、自民党の中での政策判断でこれはしようがないということになったわけじゃありませんで、十二分に省庁間の調整というものも別にやっておりますし、それか
ら私自身もこの問題について表に出るか出ぬかは別にしまして努力をすることは努力をさしていただいたつもりでおるわけでございますけれども、結局今日のような事態に相なったというのが現実であるわけです。したがいまして、次の国会にはぜひ我々も出したいと思いますし、そういうときにはことしの経緯というものをよく考えた上で両方がやっぱりそういう気持ちでもって努力をする、そういう形でぜひとも問題の解決を図りたい。
 やり方はいろいろあると思うんですが、スタートはやはり既にもう九十六国会から両法案別建てで出ておるわけでございますから、そこで一応の調整というものはできているわけです。その上にある程度の検討、修正ということを考えて今度の法案をつくった現実があるわけでございますから、そこをスタートにして御議論をしたいというのが警察庁の御意向でもあったろうと思うし、我々もやっぱりスタートはそういうところから出発するのが妥当であろうというような意味で発言が行われたのだろうというふうに理解をしておるというのが現実でございます。
 いずれにしましても、当初申し上げましたように、早期にこの改正を実現したいという気持ちは変わっておりませんので、どうか委員の皆さん方にも今後積極的にひとついろいろな意味で御協力を賜りますことを心からお願いを申し上げる次第でございます。
#16
○寺田熊雄君 それならば一応この問題はこの程度にいたしまして、福島審議官大変御苦労さまでした。
 次は外国人登録法の改正についてお尋ねをいたします。
 これは一昨日もお尋ねをしたわけですが、指紋押捺義務、登録証の常時携帯義務、両義務違反の場合の刑事罰の点で、なかんずく指紋押捺義務につきまして、これは外務、法務、まあ主管は法務でありますが、外務を含めてこれについて日韓首脳の共同声明の線に沿って改正の検討をしているという法務省入管局長の御答弁があったわけであります。もっともこの問題に非常にかかわりのある警察庁の見解を求めますと、警備局審議官の答弁ではかなりこの法改正に対して厳しい見解が返ってくるわけであります。そこで、法務省、警察庁、外務省、それぞれがやはりそれぞれの善と信ずるところを一応主張していくということ、これも当然のことでありますが、外務省としてはどんなふうに考えておられるのか、一応外務省の見解をお尋ねしたいわけです。
#17
○政府委員(有馬龍夫君) お答え申し上げます。
 指紋押捺等の在日外国人に課せられております具体的義務は、直接外務省が所掌していることではございませんけれども、在日外国人の法的地位及び待遇について、どのような制度が最も適切、妥当であるかということにつきましては、国内的な諸事情に加えまして外国の事情、外国における姿といったようなものをも勘案して、幅広くかつ慎重な研究、検討が必要であると考えております。
 それで、お尋ねの点でございますけれども、外国人登録法は昭和五十七年に改定されたばかりであるという事情がございますが、他方、指紋押捺などについていろいろな意見が寄せられていることも私どもは十分承知しているわけでございまして、先ほど先生も言及されました日韓共同声明の趣旨をも踏まえて、制度上あるいは運用面での各般の問題点について、今関係省庁間で鋭意検討しているというところでございまして、外務省もその中に入っておる、こういうことでございます。
#18
○寺田熊雄君 私どもの聞くところによりますと、近く大量の切りかえがなされるわけでありますが、この切りかえのときに今すぐどうこうということは、これはなかなか言うべくして行われがたいところだというふうに私も考えておるんだけれども、ただその方向は、やはり指紋押捺義務の望むらくはその廃止、常時携帯義務の廃止というところに持っていきたいと私どもは考えておる。またそれが在日朝鮮人諸君の一貫した願望でもあるし、国際人権規約等の精神にもかなうと私どもは考えておるわけであります。したがって、あなた方がおっしゃる日韓共同声明の線に沿って改正を検討しておるということは、そういう在日朝鮮人の願望の実現に向けて前向きのものなんでしょうね。そこをお尋ねしたいわけですが、これは審議官としてはどうなんでしょう。
#19
○政府委員(有馬龍夫君) 先ほどお話し申し上げましたとおり、外国人登録法は外務省が所管している法律ではございません。この共同声明の中には、よく御承知のとおり、在日の韓国人の人たちの法的地位及び待遇の問題が両国民間の友好関係の増進に深くかかわっていることに両首脳が留意したというふうに書かれておりまして、これに沿って、先ほど私が申し上げましたように今幅広くかつ慎重な研究を行っているということでございまして、まさにその日韓共同声明の趣旨をも踏まえてというのは、今のようなことを踏まえてということでございます。
#20
○寺田熊雄君 なかなか苦心の答弁というふうに拝聴したけれども、これは入管局長の所管事項ですし、あなたも一言なかるべからずというところのようですから、どうですか。
#21
○政府委員(小林俊二君) 指紋押捺制度を含みます外国人登録法の問題につきましては、韓国政府の要望があることは十分承知しておりますし、また韓国政府の要望の背後に在日韓国人の要望があるということも十分承知しておるわけでございます。ただ、私どもの検討の基本的な立場、視点というものは、そういった要因も念頭には置いておるわけでございますけれども、基本的には外国人登録法という法律の目的を達成するということが前提でございまして、それを確保する枠内において現在の制度あるいは現在の運用方法というものが十分かつ妥当なものであるか否かということでございます。
 現在の方式あるいは制度が妥当であるか否かということは、社会情勢によって大きく影響を及ぼされる問題でございます。すなわち社会情勢が非常にそういった目的達成を困難ならしめているような状態であるならば制度を厳しくする必要がございますし、そういう情勢が緩和されておるならばその方式も緩和する余地が出てくるということで、したがってそういう社会情勢の評価というものがこのあり方の基本となるということでございます。したがって、私どもといたしましてはそういった評価の基礎に立って現在の方式をどう見るか、どうあるべきであるかという結論を出すべきものと考えております。要するに、その方式のあり方そのものが私どもの検討の主たる視点でございます。そういった観点を基礎といたしまして、先生が御指摘のような外交上の問題も念頭に置いて検討を進めておるということでございます。
 そういったことを前提として申し上げますと、全体の社会的な情勢が従前に比して悪化しつつあるという認識はございませんので、これを改善する、したがって要望に沿うという余地がどこまであるかという観点で検討しておるわけでございます。したがって、方向としては現在の方式を強化するとか、あるいはもっと厳しいものにするとかというような方向で検討をしているということではございません。
#22
○寺田熊雄君 いずれも苦心の答弁でありますけれども、大体あなた方のお気持ちは私もわかりました。客観情勢の推移を見てというような、私どもにとっては新しい考え方も示されたわけでありますが、最後にちょっとこの点でお尋ねしたいのは、この日韓共同声明の線に沿ってということであるわけでありますが、日韓共同声明は御承知のように中曽根総理と全斗煥大統領との間でなされたものであります。その第九項は「在日韓国人の特殊な歴史的背景を考慮し、その法的地位及び待遇の問題が両国民間の友好関係の増進に深くかかわっていることに留意した。」とあるわけであります。したがって、この声明の「背景を考慮し」ということは、今あなた方が検討しておられる法改正なり運用の問題なりというのは、主として在日韓国人あるいは朝鮮人のことを考えてのものな
んでしょうね。その点どうでしょうか。
#23
○政府委員(小林俊二君) この指紋押捺問題を含む外国人登録法の問題が本来あるべき状況以上に複雑困難なものとなっておるのは、我が国に在留する八十数万の外国人のうちの約八割が朝鮮半島出身者である、しかもその朝鮮半島出身者が過去の歴史のしがらみを背負っておる、またそのしがらみに起因する社会的な情勢を背景としておるということにあるわけでございます。そのことがこの外国人在留管理を非常に難しくしている面も否定し得ないわけでございます。
 しかしながら、外国人在留管理ということを前提とする限りにおきましては、その歴史的なしがらみはしがらみといたしまして、やはりその外国人であるということを前提として対応せざるを得ないわけでございます。したがって、そういった特殊な状況にある在留外国人の立場というものを基本として外国人在留管理を処理するわけにはいかない面も多いわけでございます。ということは、私ども再々申し上げておりますとおり、外国人の居住関係あるいは身分関係を把握するといった場合に、外国人の特性としてその身分関係が親族、知己関係の限定あるいは居住関係の流動性といった面から日本人に比べてその把握により緻密な措置が必要とされるという前提を排除するわけにはいかないわけでございます。
 在留朝鮮人、韓国人のみを考えた場合におきましてはそういった親族関係あるいは居住関係というものが、通常のその余の外国人、すなわち二〇%の通常の在留外国人の場合に比して日本人に近いという事実はあったといたしましても、外国人を外国人として処理する限りにおきましては、そういったただいま申し上げたような前提を前提としないで制度を考えるということが難しいということになるわけでございまして、したがって、その外国人登録法の問題を考える場合に、第一義的にそういった特殊な状況にある八〇%の在留外国人、すなわち朝鮮半島出身者のことを第一義的に前提として処理あるいは対応していくことが難しいという状況にあるわけでございます。
#24
○寺田熊雄君 かつて日本国民であった、そして自己の意思によらずして国籍を奪われた、そういう人々と根っから外国人であったという人とはやっぱりおのずから異なるものがあるわけであります。そして、もともと旅券を持たずして我が国に在留しておる、そういう点でも旅券を持って入ってくる根っからの外国人と在日朝鮮人とでは法的にもその出発点が大いに違うわけであります。
 したがって、親族関係とか居住関係とか、日本人の生活になじんで生活の本拠なり生業というものをしっかりとしたものを持って親子、孫にずっと来ておる。これは大阪の生野区などに行きますと、おやじの代から魚屋をしております、おやじの代から八百屋をしておりますというような、もう日本の土地に定着しておる人々がたくさんおりますね。そういうものはやっぱり通常の外国人とは異なるものがあるということはもう明瞭でありますし、これがやはり中曽根・全斗煥の共同声明というものの骨子になっておると私は見るわけです。だから、その特殊性というものはやっぱり無視できないでしょう。どうでしょうか。
#25
○政府委員(小林俊二君) 日韓の国交回復の過程におきまして、日韓法的地位協定というものが締結されたわけでございますが、その法的地位協定、その交渉の過程におきまして、あるいは締結の過程におきまして、そういった特殊性というものが十分に考慮されて議論の基礎となったものと了解いたしております。したがって、日韓法的地位協定の内容そのものはそういった特殊性を前提といたしまして、在日韓国人に普通の外国人の在留管理とはかなり違った取り扱いを供与、付与したわけでございます。それによって協定永住というものが認められ、協定永住の場合におきましては、通常の外国人が例えば一般犯罪によって一年以上の禁錮に付された、禁錮以上の刑に付された場合には退去強制の対象となるけれども、協定永住を受けた在日韓国人につきましては、七年の禁錮以上の重刑に処せられない限り退去強制の対象にならないといった特殊な特別の待遇も供与されておるわけでございます。
 しかしながら、同時に、日韓法的地位協定の第五条におきましては、その協定に明記されていること以外の点についてはその在留あるいは出入国の問題について通常の外国人と同様の取り扱いを受けるということが同時に明記されておるわけでございます。したがって、韓国政府自体がそこで特に審議され、交渉され、決定された問題事項以外につきましては通常の外国人と同様の取り扱いを受けるということを既に受け入れておるのでございますから、それに加えてさらに新たな特別の取り扱いを行うということは、少なくとも日韓両国間の関係における現状におきまして要求されておることではないと私どもは了解いたしております。
#26
○寺田熊雄君 あなたの言われることはわからぬではないけれども、そうすると、この日韓共同声明がしきりに在日韓国人の特殊な地位というものを強調しておることがおかしくなるでしょう。やはり通常の外国人とは異なるものがあるよということを両国の首脳が認め合った、この共同声明はそういうものなんでしょう。だから、あなたのおっしゃるのは、過去の歴史的なものはあったが現在の法律関係においては変わりませんという、そういう議論もなされないではないけれども、しかしここに言う特殊な歴史的背景を考慮して、その法的地位なり待遇というような問題を考えていくことが両国間の友好増進につながるんだということは、期待は、何らかのやはり考慮がそこになさるべきだということを意味しておるんじゃないですか。でないと、この声明が意味をなさないでしょう。どうですか。
#27
○政府委員(小林俊二君) これは外交文書でございますので、有権的解釈は第一義的に外務省の見解を徴する必要があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、我が国に在留する外国人の八割が朝鮮半島出身者であるということを前提といたしまして、それを念頭に置いて、在日外国人一般の取り扱いを検討する場合に前向きにあるいは好意的に配慮してもらいたいという希望の表明であるというふうに了解いたしております。あるいは私どもの入国管理局の所管事項を若干離れますけれども、例えば帰化の問題なんかにつきましては在日の朝鮮半島出身者の要請について好意的な取り扱いをしてほしいといったようなものがあるいはあるかもしれません。その場合におきまして、これは個別的な問題でございますから個別的な取り扱いは可能になると思うわけでございますけれども、外国人を外国人として取り扱う限りにおきましては、その外国人の中で韓国の国籍を持っている者だけを優遇するような取り扱いを先方が明示的に要求したというふうには私どもは受け取っておらないわけでございます。
#28
○寺田熊雄君 それだったら、あなた方がこれをもとにして検討している、これの線に沿うて検討しているというのは意味をなさなくなる。あなたはおのずからこれに沿って前向きにということも今おっしゃったんだからね。だから、やはりそういう一般の外国人とは違ったものがあるというその歴史的な事情と、それから現実にもう親子代々定着しておるというその客観的な事実というものを直視すれば、通り一遍の外国人とはおのずから異なるものがあるということは認めざるを得ないのじゃないでしょうか。そうでないと、これに沿うて検討しているということが意味をなさなくなるでしょう。もうこれは一片の外交文書だ、法律的な条約とは違いますよといって、これを無視するわけにはいかないでしょう。
#29
○政府委員(小林俊二君) ただいま申し上げたことと若干重複することになるおそれがございますけれども、私どもといたしましては在日外国人全般の問題として処理していく中で、その在日韓国人、朝鮮人の要望にできる範囲内で応じていくというのが基本的な立場でございます。もちろん、例えば永住外国人だけを優遇するといったような観点から、国籍を離れて実際上その在日韓国人の
要望に応ずるということも物理的には可能なわけでございますけれども、指紋押捺の問題に限って申し上げますと、永住外国人のみを特別の扱いにするということは、またそれで一つの矛盾が生ずる問題がございます。
 と申しますのは、先生御存じのように指紋押捺は日本に一年以上在住する外国人を対象として現在行われておるわけでございますが、もし永住外国人をその枠外といたしますと、なぜ一年以上有期で在住する外国人だけに指紋押捺を要求するのかという説明が非常に難しくなりますし、また一般に有期で在留を認められております外国人につきましては、たとえ外国人登録法がなくても、その在留期間の更新あるいは在留活動の制約といった面から、むしろ入国管理法上の問題として把握し管理していくことが可能なんでございますけれども、永住外国人は在留期間の制約がございませんから、在留期間の更新という行政措置の対象ともなりませんし、またその在留活動において制限がございませんから、在留活動が認められた範囲内であるかどうかという観点からの管理もないわけでございます。
 したがって、永住外国人こそ外国人登録法によって管理の対象とする必要が最も多いわけでございまして、その最も多いカテゴリーに属する外国人をその管理の対象から外すということは法の目的からいって矛盾を生ずるわけでございます。そういうことから申しまして、国籍を離れて永住外国人のみを対象として緩和の措置を講ずることはできないかという点も検討はいたしたのでございますが、現在のところ、それは矛盾を招くという結論になりつつあるということでございます。
#30
○寺田熊雄君 これは若干両国首脳の願望であるかもしれませんが、意思の合致の声明とは少し離れたような印象も受けざるを得ないんですが、外務審議官も何か一言お話ししたいようですからどうですか。
#31
○政府委員(有馬龍夫君) この共同声明の中には、さきの全斗煥大統領が訪日されました際に日本側からは日本側が今までとってきた措置を説明しておりまして、それで韓国側はこれを評価しておりますということを申し、そして日本政府側のこの問題について今後とも努力を継続されるように望みますということを言っておられるわけですけれども、このところでは、この努力の中に、既に入管局長が言われたことでもございますけれども、この努力というものは我が国が行っていくということなんでございまして、その努力がまさに今の幅広い検討であり研究であるわけでございますが、その中にいろいろなことが念頭に置かれ、勘案されていくということだろうと思います。
#32
○寺田熊雄君 どうもよくぴんと来ないけれども、まあいろいろ難しい面もあるし、あなた方のお立場もあるからきょうはこの程度でおさめておきます。有馬審議官、どうも御苦労さまでした。
 次は、最近、暴力団、それから右翼、同和と称するえせ同和団体、こういうものの企業恐喝の傾向が非常に顕著になってきたようであります。これは朝日新聞の三月十八日の夕刊に「ルポ85」、これは一九八五年の意味でしょうが、「「同和」団体・暴力団連合 建設工事にたかる 大阪・京都に実態を見る」というかなり長文のレポート記事があるわけであります。私はこの記事を見る前から、実は岡山市、岡山県におきましてこういう傾向が顕著になっているという情報を聞きまして、いろいろと実は調べておったのであります。
 ちっぽけなところは、ある建設会社が道路工事を請け負っておった、そしてU字型のコンクリートの溝ですか、あれをつくるコンクリートの器具を道路に置いておった、それにつまずいてけがをしたという者が一万数千円の治療費であったものを百万円要求したという事実を直接私見聞した。そして結局二十万円で折り合ったということでありますが、これはちっぽけなことでありますが、大規模なものからそういう小規模のものまで、暴力団的なものの猛威というものが盛んに振るわれておるというのであります。
 それで、今でもやはりすべての公共事業には談合が実際行われておるようであります。その談合を取り仕切る人間を土建業者はゼネコンゼネコンと言っておるようであります。これはどういう意味か、ゼネラルコントローラーというような意味でしょうか。ゼネコンゼネコンと言っておる。ゼネコンには普通三%の足場代を払っておりますというのがよく私どもが聞くことであります。これは長い慣例になっておって、これはもう初めからあきらめておる。ところが、その三%の足場代、これは今の朝日新聞のルポによりますと、しのぎ料ですか、しのぎ料ということで言われておるということでありますが、私ども岡山市の場合は足場代というふうに言われておるようであります。このゼネコン以外の暴力団からまた要求があって、出せ出さないというトラブルが起きますとなかなか工事に入れないというのであります。
 私が直接訴えを聞きましたものに、岡山市が発注した市内の幼稚園の建設工事、これは昨年十月に着工してことし三月十五日に完工の予定であったというのが、多少おくれたようでありますが、それは有名な暴力団がそこに入りまして、特定の下請を要求した、これを下請にしろということを要求した。やむを得ずそれを下請にしたところが、その下請がまたさらに孫請のものに基礎工事をやらした。鉄筋くい打ちですか、そういうものが入ったけれども、もちろん技術もない、仕事はしないということで、工事がおくれて困って、結局親がそれをやってやっと工期に追いつくようになったという訴えを受けたわけであります。
 それから、岡山市の東部に千町川という川がある。そのしゅんせつ護岸工事に、これは千町川の自然を守る会というのが生まれて、その幹部の者が工事を落札する業者、これは一人じゃない、それから三%をやはり取っておるという、そういう情報であります。全体の工事が百億円でありますから、三%というとかなり大きな金額になる。
 それから、富山地区というところに操南中学校という中学校の分離校ができる、これは二十五億円の工事である。その工事の予定地のすぐ隣接の空き地に右翼団体のプレハブ二階建てのバラックができた。やはりこの右翼団体のプレハブは、恐らくその工事が始まったときに何やら騒音その他でほこりが出たとかいろいろな因縁をつけて金をせびるのではないだろうかというふうに恐れられておるわけであります。これはまだこれからの問題のようであります。
 それから、岡山市に日本赤十字の新しい建物ができた。ここにはもう有名な暴力団が三組、三社入っておさまりがつかない。今お話ししたゼネコンが往生してしまって、広島のある有名な暴力団に頼んで、そしてそれをおさめてもらった。一般の建設業者に聞いてみますと、いずれもそういううわさは聞いておりますと。それを請け負った大手の会社、それから岡山県内の最大手の会社、いずれも口を貝にして言いませんから正確なところは我々もつかめないのだけれども、三億円も取られておるということを言うわけであります。これは警察の方も、業者もなかなか口が固いので捜査が非常に困難ではあると思いますけれども、そういう事実がある。
 これは警察の方ももうよく知っておられると思うけれども、岡山県のゴルフ場協会が暴力団追放の決議を先般したわけであります。これもやはりゴルフ場に今まで暴力団が入ってみんな困っておったということを証明するわけであります。
 最近、岡山県が岡山市内に新しい飛行場を建設しておる。その飛行場にも盛んに右翼団体が騒音をまき散らして示威行動をしておる。いつの間にかその右翼がまた下請に入ったという情報も私どもは得ておるわけであります。そこで、岡山市議会も、直接自分たちが議決をした建設工事にかかわる問題でありますから、ある程度それを調査したようであります。やはりそういう事実があるということを認めまして、去る三月二十二日に「公共工事等にかかわる企業恐喝等の追放に関する決議 最近、公共工事を初め、種々の工事をめぐって、暴力団等による企業恐喝等の不正事件が多発している実情にかんがみ、本市議会は、企業の早
急な被害届けの勇気を喚起するとともに、断固として、これら不正行為に対処する警察当局の不断の努力を切望して、公共工事はもちろん、各種工事等から、企業恐喝、暴力行為等の不正事件を排除し、後顧に憂いのないよう、公共工事の遂行に努めることを決議する。」、こういう市議会の決議が三月二十二日になされておるわけであります。これはかなりそういう企業恐喝の不正事件が多発しているということを前提にこういう決議をしておるわけであります。企業に対しても警察にこのことを言え、警察も断固としてこれを摘発しろという両者に対する希望を述べておる。
 私もいろいろ直接建設会社に当たったわけでありますが、いずれも後難を恐れてはっきりは言わない。しかし、例えばあなたのところに名刺を持ってきた者はないか、それはありますよということで、ある企業は私にその名刺を見せたんですが、同和団体でもこれはえせ同和団体ではないかと思いますが全日本同和会というものがそろってその役員なり青年部長とか調査員とかいう肩書きで訪れておる。これは御承知のように同和団体の中では正統な部落解放同盟という団体が厳としてあるわけですが、それはもちろんそういうことはしない。これは本当の同和団体かどうかわかりませんが、全日本同和会というものが盛んにそういう企業等を訪れておるようであります。
 それで私はちょっとお尋ねするんだけれども、まず最初に、警察はこういうような暴力団、右翼、えせ同和団体の企業恐喝の実態というものを把握していらっしゃるのだろうか、まずこれから先にお伺いしたいと思います。
#33
○政府委員(於久昭臣君) お答え申し上げます。
 最近の暴力団の活動状況を見ますと、その資金源の形態というものがかなり変わってきつつあるように思います。例えば今までは賭博であるとか、あるいは覚せい剤、こういったものが伝統的な資金源であったわけでございますけれども、先ほどから先生が御指摘されているようなこと、私ども全部承知しているわけではございませんけれども、そういった企業の活動なりあるいは民事問題に介入していくという、私どもはこれを知能暴力と称しておりますけれども、そういった分野にだんだん拡大してきているというのが現状でございまして、暴力団対策の一環といたしまして私どもはそれについて大変強い厳しい姿勢で臨んでいるわけでございます。
 とりわけ企業を対象とします恐喝等につきましても積極的に対処しようということで、それぞれの警察、都道府県警察に民事介入暴力担当対策官あるいは総会屋対策官、前者の方は四十七都道府県に全部置いておりますし、総会屋対策官の方は十六都道府県でございますけれども、警察の中にそういう仕組みをつくる。あるいは企業の方にも呼びかけまして、企業防衛対策協議会、あるいは特殊暴力対策協議会、こういった組織をつくらせており、現在四十五都道府県でできております。ないところは二県だけという状況にございます。
 こういった警察自体の体制あるいは企業の自主的な努力、こういったことを通じまして、企業に対していろいろな啓発活動を行っておりまして、積極的にいろいろな被害状況をできるだけ早期の段階で警察に言ってくれ、被害申告をしてくれという呼びかけをしております。その被害申告がありました場合には、私どもは恐喝罪なりあるいは脅迫罪、あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律、こういったものを適用いたしまして厳正に対処しているわけでございます。
 ちなみに、五十九年中に民事介入暴力、民事問題に暴力団の絡んだ犯罪という形で、これは企業のみならず個人、一般国民からのものも入っているわけでございますけれども、相談を受けました数というものは全国で一万二千余りになっております。この相談等を端緒といたしまして検挙いたしましたのが二千二百件に上っておるわけでございます。もちろん相談を受け、あるいは被害申告を受けましたものがすべて犯罪を構成するわけではございません。そういった犯罪を構成しない事案につきましても、私どもは看過することなく、場合によれば関係者への警告を行う、あるいは弁護士会等の関係機関団体との連携を密にいたしまして、相談者に民事上の解決策の助言指導を行う、こういった措置により、ともかく積極的にこの種の暴力団の蠢動を封じ込めていこう、これが私どもの現在行っておる対策でございます。
 ただ、実態をどれだけつかんでおるかということにつきましては、これは極めて暗数が考えられる分野でございますので、数字的には今申し上げましたような相談を受理した件数、書類を処理した数字でお許しをいただきたいと思います。
#34
○寺田熊雄君 全国的な傾向というものはわかりましたけれども、私自身が今岡山市におるものだから、岡山県、市のそういう具体的な事件の相談というか実態を聞くわけで、何とかしてくれないと困るというのが多くの建設関係者の訴えのようであります。
 今あなたもちょっとおっしゃったけれども、総会屋の取り締まりというのはかなり効果を上げたのじゃないだろうかと私も見ておる。これは私どもが見て、どちらかというと警察の方が積極的に企業に働きかけたという印象を受けておる。やったらあなた方も検挙しますよと言わんばかりの、まあ警察がきついことを言うたからといってこれは脅迫にはならないけれども、おどかしともとれるくらい強い態度で臨んだ。それが非常にてきめんに効果を上げて、私どもの知っている総会屋だとかいうのは非常に縮こまってしまった。姿を消してしまった。中には新聞、いわゆる赤新聞のたぐいも盛んに不満を鳴らすのだけれども、事実上閉口しておるというような状態も見受けるわけであります。あのぐらい警察が積極的に取り組めば効果が生まれるのじゃないかと私は見ておる。
 実は先般、岡山県の社会党が結党三十周年のレセプションというのを催した。そのときに警察が本腰を入れて右翼の跳梁ばっこというのを取り締まった。だから右翼が全く手も足も出なかったという事実があるわけであります。だから警察が本当に本腰を入れれば、右翼団体であるとか暴力団であるとかいうようなものも正常な市民のところにそう近づいて暴力を働く、脅迫を行うということができないのだろうと私は考えておる。だから総会屋の取り締まりとか、あるいは賭博、それからいわゆる赤線関係、それから覚せい剤、まだまだあるけれども、しかし一時から見ると大変こういうような取り締まりの効果が上がっておるんじゃないかと私は見ておる。
 そういう点から、資金源を奪われた暴力団や右翼というものが今一斉に建設関係の事業者、企業に押し寄せておる。それが下請をやらせるとか、いろいろな名目をくっつけて、すぐには恐喝として捕まえられないような逃げ口上を用いておるので、あなた方も非常に摘発が難しいかもしれないけれども、一方で抑えつけると他方に出てくるという実態ですね。これがあるんでしょう。だから絶えず網の目をくぐろうとする人間をやはりあなた方が抑えつけてくれないと困る。これはそうじゃないでしょうか。
#35
○政府委員(於久昭臣君) 先生の御指摘の、警察の強い取り締まりによって暴力団がいろいろ戦術を変えてくるということは、これは確かにそういうことがあるわけでございまして、先ほど申し上げました賭博であるとか、覚せい剤であるとかいった在来型の資金源の形態から、そういったものももちろん多くございますけれども、いわゆる知能暴力といったような分野にだんだん彼らの進出が多くなってきたというのは、あるいは従来の取り締まりの一つの成果といいましょうか、影響と見ることもできるわけでございますけれども、私どもはともかく暴力団対策というものは、一方をたたいて一方を緩めておくと彼らがそちらの方に流れていくということは先生の御指摘のとおりでありますので、ともかくあらゆる面で彼らをたたこうということで、八方にらみといいましょうか、十分な気配りでおるわけでございます。
 最近山口組と一和会の対立抗争がいろいろ国民の御心配をいただいておりますけれども、あの対策にいたしましても、私どもは正面きっての私ど
も仕事でありますけん銃の摘発なり、あるいはいろいろな犯罪を全部ほうり出して、ともかく彼らを根こそぎに検挙して市民生活の場から隔離するという、そういったこと、これは我々の本筋の仕事でございますけれども、それによって現在山口、一和両組の構成員の一割を超します千六百余りを既に一月以来検挙しているわけでございますけれども、その活動だけではやっぱり不十分だということで、今そういった検挙活動と並行して力を入れておりますのが、市民生活のあらゆる場から彼らを締め出していこうということで、公営ギャンブル場からの締め出しであるとか、その他ゴルフ場もそうでございますけれども、いろいろなホテルだとか、あるいはマンションなんかもどうにかならぬかと今検討をやっておりますけれども、そういったいわゆる国民の暴力排除の意識を背景とした彼らをできるだけ社会生活の表の場から締め出そうということも大変力を入れてやっているわけでございます。
 先ほどから先生御指摘の、建設業者の問題をいろいろ御指摘がございますけれども、そういった問題ももとより我々が現在非常に力を入れてやっている分野でございます。ともかく覚せい剤や賭博を訴えたから、ほかの面で彼らが跳梁ばっこするというのは、これは許せないことでございますので、すべての面でたたいていこうという姿勢でございます。ただ残念なのは、企業側に、何とかまあ世間体といいましょうか、あるいは信用といいましょうか、そういったことを恐れたり、あるいは多少の金銭で解決するのならというふうなことで、なかなか警察ざたにしないという風潮があることも事実でございまして、そこら辺をできるだけ理解をさせ説得をして、警察の方に申告をしていただくということに今これは大変腐心をしているわけでございます。
 警察に御申告をいただければ、もちろん犯罪になるものは直ちに強い姿勢で検挙いたしますし、また犯罪に直接ならないというものも、先ほど申し上げましたように、警告をしてやめさせるとか、あるいは日弁連と今警察はそういった面で、民事介入暴力という面で大変連係を強くしておりまして、実は昨日も日弁連と我々の会合があったわけでございますけれども、日弁連の方も警察とタイアップして積極的に暴力団から一般市民を守ろうという強い姿勢を持っておりまして、そこらとタイアップしてやる、そういう構えを我々は十分とっておりますので、ぜひとも企業のそういった意識の目覚めというものを期待したいと思っているわけでございます。
#36
○寺田熊雄君 あなたのおっしゃるように、企業の場合には工事費をふやして、これは入札を支配する親分がそういうことができるんでしょうが、そしてそれが結局施主の方に負担がかかる。ところが公共工事の方は、市などは別段そういうことでふやすということはなかなかできにくいわけですから、つまり企業は出したものを交際費で落とすとか、あるいは使途不明金で落とすとか、そういう便法があるから、これもまた税法上も何とかなる。公共事業はそれができない。
 そこで、公共事業で生きておる業者というもの、中堅の業者というものが今一番困る。警察へもう言いなさいと言いますと、これはちょうど朝日のレポートにもありましたように、これは審議官、あなたちょっと耳に痛いことを言うんだけれども、なかなかすぐ対応してくれないんです、それから自分が言っていたということがすぐ犯人にわかってしまうというんですと。筒抜けになるというんですね。これはどういうわけで筒抜けになるのかという点もあるけれども、この点をやはりあなた方、気をつけてくださらぬといけませんよ。すぐ対応するということと、被害者の訴えによったというようなことがわからないように対応していただかないと困りますからね。どうでしょうか。
#37
○政府委員(於久昭臣君) 先生の御指摘をまつまでもなく、従来からそういった方針で厳しく対処しているわけでございます。今後とも一層そういった面については努力をしてまいりたいと思っております。
#38
○寺田熊雄君 それから、これは答弁要らぬのですが、岡山市はこういう暴力団あるいは右翼、そういうものの企業恐喝を何とかして絶滅する議決をした。ところが県議会はやらない。これはどういうわけかということになりますと、これは県会議員のかなりの実力者がやはり背後に暴力団を持っておるというふうに市の議員の諸君は見ておるわけですね。甚だどうもけしからぬのだけれども。その県会議員の上には国会議員がおると、こういうんですね。これはまた実にけしからぬ話だけれども。これは証明しろと言ってもなかなか証明できないかもしれないけれども、やはり大衆はそういうふうに見ておるということであります。
 今お話ししたように、企業暴力というもの、企業に対する恐喝というその暴力団のばっこ跳梁、これに対しては今後も警察におかれて強く取り締まっていただきたい。そして企業がなかなか協力しないというんですから、企業に対して安心感を与えて、そしてどんどんと警察の方にこれを申告するように十分指導してもらいたい、こう思います。よろしいですか。
#39
○政府委員(於久昭臣君) 企業に対する啓発については今後とも一層力を入れてやってまいりたいと考えております。
#40
○寺田熊雄君 審議官、もう結構です。終わりました。
 次は、最高裁判所事務総長もおいでのようでありますが、これは過去十年間の司法修習生の数と裁判官希望者の数はどうかということで事務総局の方にお願いをいたしましたところ、すぐにその表をつくってくださったわけであります。それによりますと、司法修習生の数も五十年から五十九年までの十年間にやや減っておりますね。例えば五十年が五百四十三人、五十一年が五百三十七人、五十二年が四百八十七人、五十三年が四百六十三人、五十四年が四百六十五人、これは二人ふえておる。五十五年が四百五十四人、五十六年が四百八十四人、それもちょっとふえておりますね。五十七年が四百九十九人、五十八年が四百八十三人、五十九年が四百三十六人。これは司法修習生の数がこのように五十年と比べますと百人も減っておる、そういう漸減の傾向にあるように見えるんですが、これはどういうわけなんでしょうか。何か理由があるんでしょうか。
#41
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 司法修習生は毎年その年度の司法試験に合格した者を採用しているわけでございます。したがいまして、ただいまおっしゃいました昭和五十年以降の司法修習生の数といいますのは、要するに各年度の司法試験の合格者数がほぼその程度の数であったということになるわけでございます。
#42
○寺田熊雄君 そうすると、これはいわゆる法曹人口をどういうふうにしようという政策的な考慮というようなものはなくて、本当に事務的に一定の成績をとらなければもうだめだ、法曹人口が減ってもそんなことはへともないというような、大きな意味の司法政策といいますか、そういうものによるのでしょうか、この点はいかがでしょうか。
#43
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) いわゆる法曹人口が現在の日本社会においてどの程度の数であるべきかという大きな問題が、まず大前提になろうかと思います。今、私どもの人事局長から御答弁申し上げましたように、現在、御承知のように法曹になるためには司法試験を合格しなければならないわけでございますので、論理的といいますか、司法試験の採用がまた前提となるわけでございます。御承知のように、司法試験は法務省の司法試験管理委員会の方でやっていただいておりますので、その関係につきましては、前段の法曹人口がどうあるべきかというのは法曹の一員として申し上げる立場にありますけれども、具体的に司法試験の合格者をどのようにして決めていただいているかということは、私どもといたしましてはちょっと答弁は申し上げる立場になく、法務省の司法試験管理委員会の方でおやりになっていることでございますので、その点の御理解をいた
だきたいと思います。
#44
○寺田熊雄君 どうもやっぱり大学卒業者の学力低下ということなんでしょうか。そういうふうに見たらいいんでしょうか。
#45
○政府委員(岡村泰孝君) その点は非常に難しい問題でございますが、司法試験の制度といたしまして、一定の能力を持った者を選抜するということでやっておるわけでございまして、特別の政策的配慮というものではないわけでございます。
#46
○寺田熊雄君 しかし考えてみますと、私どもが戦前に司法試験を受けましたときは、たしか合格者が三百人ぐらいだったですか、その後、法曹人口をふやすという政策から五百人採るというようなことも聞きましたから、だから、やはり政策的な考慮がそこに働くのじゃないでしょうか。ただ単に学力が低下したのだというふうに見るべきかどうか、その点、ちょっとよくわからないんでお尋ねしたわけですが、これは後でまたお気づきになったら御説明いただくとして、それが主じゃないんです。
 私がお尋ねしたかったのは、裁判官の希望者が昭和五十年が九十二人、五十一年が八十六人、五十二年が七十八人、五十三年が何か異常だったのか、八十四人とふえておる。五十四年が七十三人、五十五年が六十八人、五十六年が六十三人、五十七年が六十七人、五十八年が六十三人、五十九年が六十一人。裁判官希望者が五十年と比べますと五十九年の十年後には約五割減っておる。これは一体どういう現象に基づくのでしょうか。これはちょっとどういうふうに見ていらっしゃいますか。
#47
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 御指摘のように、裁判官の希望者数は途中で数がふえている時期もございますけれども、この十年間ほぼ減少してきております。ただ、これは一つは昭和五十年というのが非常に多い時期でありまして、それより前にはまだ少ない時期もあったわけではありますが、しかしこの十年間をとった場合に減少していることは事実でございます。
 一つの原因といたしましては、先ほど寺田委員がおっしゃいました司法修習生の数自体の減少ということもあろうかと思います。この裁判官希望者数と司法修習生の数との比率を見てみますと、パーセンテージで見てみますと、昭和五十年の裁判官希望者数は全体の中の一六・九%でございます。それがその後一六%、あるいは年度によっては一八%という年もございますが、その後五十九年、一番最近のところで一三・九%ということになっております。比率自体は三%程度の範囲内で動いているわけでございます。したがって司法修習生の数自体が減ったということも一つの原因であろうかということも考えられます。
 それ以外にどういうことが考えられるかということでありますが、やはり裁判官の仕事というものが、司法修習生が実務修習等で見ておりまして、責任が重い割には割合地味な仕事でございます。裁判官の日常の執務といいますのは、法廷での仕事もございますけれども、しかし裁判官室では記録に埋もれて、そして記録をこつこつと読んで、そして次の開廷の準備をしていくといった比較的地味な仕事でございます。司法修習生から見ますと、例えば弁護士の仕事あるいは検察官の仕事というものが見た目には生き生きと活動的に見えるというようなところがあって、最近の若い人たちの気持ちにはその裁判官の仕事が必ずしもぴったり合わないというようなことも一つあろうかという感じがいたします。
 それから、そのほかに考えられますことといたしましては、やはり裁判官の仕事はあちこちへの転勤を伴っております。最近、家族構成は人数が減ってきたというようなことが言われておりまして、この修習生の年代の人たちになりますと、一人っ子とか、あるいは子供が二人であるとかというような人たちが割合多いわけでございます。そうしますと、どうもあちこちへ移動していく仕事というものが、例えばその人たちの親であるとか、あるいは周りの人たちから必ずしも好まれないようなところがあって、それよりは一カ所に落ちついて仕事のできる例えば弁護士のような仕事の方に引かれていくというようなこともあるのではなかろうかというふうに思います。
 これは必ずしも司法修習生全員についてどういうふうな気持ちで志望を決めていくかというところを当たっているわけではございませんので、確かなことは申せないわけでありますが、一応考えられることといたしましては、そういったようなところが大きな原因としてあるのではなかろうかというふうに思っているわけであります。
#48
○寺田熊雄君 今の人事局長の御説明によりますと、まず仕事が非常に地味である、これは裁判官の職務に内在する本質的なもの。それからもう一つは核家族であって、親元で働きたい、これは社会的な原因によるもの。この二つを原因として挙げられたわけだけれども、それからパーセンテージを盛んに強調なさるけれども、しかしパーセンテージはともあれ、判事の定員であるとか、あるいは必要な人員であるとかいうものは、これは一定不動なもの、むしろ少し漸増の傾向にある。ところが修習生の数が減っていく。パーセンテージもやや減って、判事の希望者が少ないということになると、その原因はともあれ、人事面で困りはせぬのですか。その点の補充は一向差し支えないというのか、その点どうでしょう。
#49
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 確かにおっしゃいますとおり、裁判官希望者の数がこの傾向そのままで減っていくといたしますと、それはやはり困ったことになるわけでございます。やはりたくさんの優秀な後輩を得るということは私どもにとって一番大事なことでございますので、その点はこの数の傾向につきましては重大な関心は持っているわけでございます。もちろん、このままでいくかどうかという点につきましても、そこははっきりした将来の傾向というものを見通すことはできないわけでございますが、私たちとしましては全力を挙げてその後輩を獲得していくということに努めたいと思っているわけでございます。そのためには、いろいろなことを考えなければならないわけでありますが、とにかく裁判官に内在する仕事の宿命のようなもの、そういったものについては、これは若い司法修習生にも十分理解してもらって、そういったことが妨げにならないようにしていかなければならないと思っているわけであります。
#50
○寺田熊雄君 きょうわざわざ事務総長においでいただいたのは、そういう点でやっぱり困った現象だというふうに人事局長おっしゃるでしょう。裁判官の職務に内在するものは、これはあなた方が取ろうとしても取れません。それから核家族化の傾向、そういう社会的な原因も、これはあなた方の威力をもってしてもいかんともしがたいでしょう。だから、そうなると、これはその困った現象を取り除くには工夫が要りますね。どういうふうにして若い優秀な人間を裁判所に引き寄せようとなさるのか、そこにあなた方の工夫なり努力というものが当然要請されるわけでしょう。これはやっぱり事務総長でないとちょっと答弁しにくいのじゃないだろうかと考えて、おいでをいただいたのですが、その点いかがでしょう。
#51
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) 裁判所の将来を御心配いただいてのお尋ねだというふうに承りました。
 先ほど人事局長から申し上げましたとおり、司法の重責を全うするためには何よりも裁判官に優秀な人材が必要であることはもちろんのことであります。現在の人的構成を年齢、期別に見ますと先細りの傾向にあることは御指摘のとおりでございます。重複いたしますけれども、このような事態につきましては、司法行政に携わる者といたしまして重大な関心を持っているところでございます。具体的にどのような方策を講ずべきかとお尋ねになりますけれども、先ほど来から申し上げておりますように、若い修習生諸君に裁判官の仕事がいかに重要なものであるかということの認識といいますか、それを得させることが必要であろうかと思います。
 そのためには、司法修習生にコンタクトいたし
ます裁判官がいかに後輩に対して今申し上げたようなことを日々理解するように接触していくかということに尽きようかと思います。この問題は、いわば限定された司法修習生のグループの中から判事補志望という一定の数を確保するという、ある意味では難しい問題でございまして、先ほど御指摘がありましたように、戦後発足以来の傾向を見ましても、どうしてこういうふうに増減があるのか、一〇〇%的確に分析することはこれまた事実上不可能なことではないかと思っておりますが、結局は裁判官の仕事についての認識をしていただいて優秀な若い人材に数多く裁判所に来ていただきたいという念願とともに、繰り返しになりますけれども、修習生に接触する機会のある裁判官方に、先輩の裁判官として十分そこのところを認識してもらうように努力していただくほかないというふうに考えております。
#52
○寺田熊雄君 あなた方のような非常にすぐれた方々が若い修習生に接触をする、そして裁判官の仕事がいかに大切なものかということをインスパイアして、そしてそこに進路を定める、自己の使命感といいますか、そういうものを自覚させる。それも総長のおっしゃるように極めて重大な、なくてはならないことだと私も思いますけれども、ただいつの時代でも年寄りは若い者は軽佻浮薄であるとか何とかと言うのだけれども、私はそんなことはないと思うけれども、しかしやはり今の多少若い諸君の価値観というものに変化があることも、またあながち否定はできないということを考えますと、やはり裁判官の社会的地位といいますか、社会的評価といいますか、そういうものを高めていくということは絶対必要じゃないかという感じはするわけですね。
 そうすると、早い話が判事補の月給なんていうものが余り低くて、若い弁護士と比べるともう全く話にならぬということではやっぱり困るので、裁判官も長い間勤めるとそれなりの生活の安定というものも得てくるようだけれども、判事補の若いうちは見ておっても気の毒なような安月給で、これじゃやっぱりいかんと思いますね。だから、大蔵省との折衝なども非常に困難であると思うけれども、もうちょっとやっぱり若い者が入ってくるような社会的、経済的なよさといいますか、そういうものも考慮しませんと、全くそういうものを度外視して、ただ精神的な面だけを強調してもいかぬように思いますけれども、どうでしょうか。これは最高裁判所だけじゃありません、法務大臣におかれても、やっぱり考えていただかないと。
 ということは、私がこういうことを言いますと、昔の裁判官は、例えば我々が見てこの事件は勝つよと言うと大体勝っているんですよ。それほど我々が何も当てるのがうまいというのじゃなくて、大体裁判官の考え方なり学力の程度なりというものが安定しておるわけですね。ところが、このごろはそれがなかなか予測しがたいような、だれが考えてもこれは負ける事件じゃないやつを負かしちゃったり、とんでもない判決をする裁判官が出てくる。これは私だけじゃないんで、大体私どもの同期の者が一致して指摘している。だから、それはやっぱり優秀な裁判官が、このごろは若い者にときどき変なのが入ってくる現象があるわけですが、それじゃ困る。やっぱり優秀な人間がもうどんどんと司法官を目指すようにあなた方が御指導くださらぬといけません。それは教育も大事でしょうけれども、もとの素質も大事ですから、それにはやはり先ほど人事局長が言われたようにいろいろな原因があるでしょうけれども、もう少し若い判事補の社会的地位なり経済的なものを引き上げていくという御努力は要りはしませんか。これは総長にお伺いします。
#53
○最高裁判所長官代理者(勝見嘉美君) いろいろ多岐な点につきまして御発言、御意見をいただいたわけでありますが、物的な条件といいますか、そういうことについてもお尋ねでございます。私どもといたしましては、裁判官全体の報酬の問題につきましては国会の方々にも御審議いただいているところでございまして、実情はよく御承知のところだと思います。一般論を申し上げますと、裁判官の報酬が一般の公務員と比べてより優遇されているということは、これは事実でございますが、ただいま御指摘の問題、若い後輩の採用という面から考えまして、果たして現在のいわゆる初任給といいますか、判事補採用の際の処遇も影響しているのではないかというふうに思われないわけではございません。したがいまして、その点につきましては私どもといたしましても何らかの形で実質的な処遇の改善を、今問題になっております判事補の採用という点から具体的な方策を検討いたしている段階でございます。
#54
○寺田熊雄君 まだほかにもたくさんお聞きしたいことがありますが、もう時間が二分ほど超過しているということでありますので、きょうはこの程度にしておきますが、法務大臣、やはりこの裁判官の問題はもう最高裁判所の専管事項ではありますけれども、あなた方もやっぱり側面から御援助くださいませんと、これは実現しません。実現がなかなか難しいわけでありますので、法務大臣におかれてもやはり御関心を持たれて協力してあげていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#55
○国務大臣(嶋崎均君) 我が国の場合に、司法に対する信頼というのは確かに総体的に現在の中で非常に高いというふうに思っております。それだけに今後いよいよそういう権威というものを保ち得るような状態をつくり上げていくということが非常に大切なことであるというふうに思っておるわけでございます。
 先ほど来いろいろ御質問があった点でございますけれども、私は、やはりこれからだんだん社会が複雑化していく世の中でございますし、そういうことを受けて訴訟事件も非常にふえていくというような傾向をだんだんたどっていくのではないかというふうに思っておるわけでございまして、そういう意味では法曹三者の資格を得られる司法試験というものがそういう需要に十分こたえられるような状態になるということが非常に望ましいことだというふうにある程度考えておるわけでございます。
 ただ、現在の試験の状態等を見ますと、たしか合格者の平均年齢が二十八・何歳というような状態になっておりまして、そういうことも、非常に試験のあり方等も問題があるのではないかということをよそでも聞きますし、私自身もそういう内容を聞いてみまして、やっぱり考えなければならないところも多いのじゃないか、そういうことで順次いろいろな工夫をやっておられるようでございますけれども、私はこういう司法関係のお仕事、どちらかというと、私はしょっちゅう言っておるんですけれども、なかなか裁判なりあるいは検察の仕事をやっている人というのは、いろいろなことがあっても余り人に知っていただくチャンスもない、そういう立場にある人でございますから、それにこたえるようなやっぱり条件というものをいろいろ考えていかなければならぬというふうに思いますとともに、やっぱりそういうことに耐えられるような、将来に希望を持てる若い人がどんどん志願をして、ともかく司法試験を受けて、若い時分から入っていただくというようなことでないといろいろ問題が多いのではないか。これからの司法試験の将来というようなことも事務的にはいろいろ考えてもらわなければいけないというような点があると思いますけれども、そういう工夫もやっていかなければならぬ。そういうことを通じまして裁判官なり検察官なりになる人を十分確保するような道を考慮していかなければいけないのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
 寺田委員の方はもうそういう経験もお持ちでございますから、十二分に今の裁判を見ての御判断もおありでしょうけれども、ともかく本当に的確な裁判が行われ、また的確な訴追が実施されるというようなことの中で法秩序がきちっと守られていく、また国民の権利の保全が確実に行われるような、そういう条件というものをつくるように、やっぱりこの前提の段階のところから事柄を考え
ていく必要があるのじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
#56
○寺田熊雄君 終わります。
#57
○委員長(大川清幸君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十六分休憩
     ─────・─────
   午後一時十一分開会
#58
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び供託法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#59
○橋本敦君 きょうは幾つかの点をお伺いさしていただきたいと思っておりますが、まず初めに、当委員会でもいろいろ法務大臣の御見解も伺い、議論になりましたいわゆる刑事施設法案並びに留置施設法案が今国会見送りになったということに関連をして質問したいと思っております。
 この問題についていろいろな経緯の御説明もございましたが、結局のところ提出に至らなかった一番大きな原因は何か。いろいろな経過はありますが、一番大きな協議が整わなかった原因は何かという点がもう一つ明確なように思えないのでありますが、ずばりと言ってそれは何だったというように御説明いただけるのでしょうか。大臣いかがですか。
#60
○国務大臣(嶋崎均君) 法務省としてはかねてから刑事施設法案に、監獄法の改正でございますから、ぜひとも皆さん方に御審議をいただきたいというようなことで、昨年の暮れからいろいろな準備を進めて今日までまいったわけでございます。
 そういう中で今回提出をしないようになったということの基本的な原因は何かということでございますが、結局御承知のように留置場法案と両立てで御審議を願うという考え方できました。また、その法律の体系も一応そういうことで二本立ての整理ということで進めてまいりました。ところが、警察庁の方で留置場法案について国会の審議の模様であるとか、あるいは対外的な意見調整というような問題が残っておるので提出を見合わすというようなことに相なったわけでございまして、やはり両法案ある意味ではオーバーラップしているところが相当あるわけでございますから、何らかの意味で政策的に調整をし、あるいは法案としても技術的な調整をしなければならぬということでございます。そういうときに片方の法案が提出されなくなった、しかもそれを具体的に整理をしていく段階で調整すべき問題が残っておるということでございます。したがって、その点が提出をしなかったということの最大の理由であるというふうに思っておるわけでございます。
#61
○橋本敦君 今の大臣の答弁を明確にもう一度整理いたしますと、両立ての両法案について技術的に整理をすべき詰めが残っておった、つまりその部分の協議をまだ尽くす必要があった、こういうことが一つと、それからもう一つは、大臣がおっしゃった留置施設法案を警察庁の方が諸般の状況から今国会に提出しなくなったということで、両立てで出す方が妥当だという意見もありと、二つの理由をおっしゃったように伺ったのですが、そういう二つの理由が根本的な理由だと、こういうことですか。
#62
○国務大臣(嶋崎均君) そんなつもりで申し上げたのではありませんで、両立てで整理をしてずっと話を進めてまいったわけでございます。ある程度オーバーラップしたところもあります。そういう中で片方の留置場法案の提出がされなくなってきた。そうなれば、単独で走る場合にしてもあるいは合体するにしても、何らかの政策的な配慮と技術的な調整によることをやらなければいけない。ところがその調整に時間がかかったということでございまして、考え方としては、将来におきましても多分出発点に戻って次また御審議を願いたいと思っておりますから、両立ての形を中心にしてこれからの法案をどうして進めていくか、つまり広範に問題を整理して進めてまいりたいと思っております。
#63
○橋本敦君 そういたしますと、留置施設法案が見送りになった事情も踏まえて、刑事施設法案を合体法案のような形にするか、あるいは刑事施設法案だけ出すにしても片方が見送りになったということの事情の中で技術的な問題の詰めも必要になってきた、こういうことですから、だからしたがって、そういう意味で言えば、法務省としては単法ででも、あるいは合体法的なものにでもしてできれば出したいという御意向もあったように推測もするんです。その点について日弁連の方に法務省は法務省が単独の合体法的単法として出すことも検討するということを表明されたという事実はあったのではないかと仄聞しておるんですが、いかがでしょうか。
#64
○国務大臣(嶋崎均君) 正式に文書でやりとりしたとかなんとかいうようなことはないにしましても、これほどの長らくの経過を持っておるわけでございますし、第百国会で流れまして、あと臨時国会見送って、その間長い協議を続けてきたという関係にある弁護士会でございますから、表立っての話はともかくとして、いろいろ腐心をしているということは、まあ場外におってもわかるはずでございますし、場外ではない方々でございますから、その辺の経緯についてはある程度承知をされておったということは当然だろうというふうに思っております。
#65
○橋本敦君 そこで、事態がこういうことになって、言ってみれば、もとに返ってもう一遍仕切り直しをするか、あるいは検討なさっておった経過を踏まえてさらにいくか、両者の協議を詰めるか、いろいろなファクターが今度出てきたわけですね。そういうことになりますと、時間の余裕も出てきたというようなこともありまして、一つは留置施設法案について日弁連とほどんど協議が進んでいないという事情もあるように私も日弁連から聞いておりますので、法務省と日弁連の協議も含めて、日弁連との協議をさらにやっていくというようなお考えでやっていただけるのかどうか、そのあたりの大臣のお考えをこの際伺っておきたいのであります。
#66
○国務大臣(嶋崎均君) 何しろ五十八年の二月から両者の協議が始まりまして、一回の寄り合いに我々の方から八人、弁護士会から十二人出られて二十二回に及んだ会議を積み重ねてまいってきておるわけでございます。我々自身としてもこの法案の処理について、やっぱり矯正関係の仕事を的確に運用するといって譲れないところはある程度あることは、これは事実だろうと思います。しかし、できる限り意見を十分に酌み取って、またそういう意見も入れながら法案の作成に尽力をしてきたところでございます。
 何しろそういう過程がありますから、ある意味では、皆さん方のお耳にはどう聞こえているかよくわかりませんけれども、私たちの立場としては本当に誠心誠意努力をしてきたつもりであるわけでございます。しかし日弁連の組織というものは御承知のようにああいう形態のところでございますから、いろいろそれに参加をしている人もおいでになりますし、またそういうことを間接的にしか御承知でない方もいろいろおありだろうと私は思うのでございます。しかし、こういう積み重ねていった経緯というものがあるわけでございますから、それらのことについては互いに十分認識の徹底を図るための努力というものを積み重ねていかなければならぬことは当然であろうとは思いますけれども、そう基本的に今後大幅な修正その他の問題を考える余地というのは余りないというふうに私たちは思っているというのが実情であろうと思っておる次第でございます。
#67
○橋本敦君 大臣の今の趣旨は、これまでに基本的に誠意を持って協議を尽くして大体話すべきところは話しておるということに加えて、これからの問題としての検討も今まで出ておった話以外に大きな変化というものも予想されないので、積極的に日弁連との協議を再開するという必要はないというように受け取れるわけですね。しかし、そ
ういう面があるにしても、長年にわたっての協議というのは、それだけ大きな問題であるから続けられてきたことでもありますし、依然としてこの法案を断念せずに出すというお考えもあるわけですから、こういう事情で延びたということをまた一つの機会として、日弁連の申し出もあれば日弁連と必要な範囲で協議を尽くすこと、そのこと自体を全然やらないと断言される必要も私はない、こう思っておるんですが、いかがですか。
#68
○国務大臣(嶋崎均君) 先ほど来も申し上げましたように、我々はあくまでもこの刑事施設法案というのを御審議願って、ともかく監獄法の改正を進めてまいりたいという基本的な考え方は全く変わっておりませんので、今後ともそういう努力をしていかなければならぬというふうに思います。今度のいろいろな動きの中でも、非常にある意味では重要な点もあるのかもしれません。しかし両者の間ではできるだけ意思の疎通を図って、これは打ち切るとか打ち切らぬとかいう問題ではなしに、やはり同じ法曹三者でございまして、これから大事な司法行政に携わる人たちの協力関係というものを築き上げていかなければならぬ関係でありましょうから、そういう点については十二分配慮して連絡を保って整理を推し進めてまいりたいというふうに思っております。
#69
○橋本敦君 若干の協議が調わなかったその背景に、私は警察庁と法務省との間で考え方の大きな違いというのがやはりあったのではないかというように一つは推測するんです。
 端的に言いますと、警察の方が逮捕状で逮捕を執行して四十八時間警察署に留置する、それから後は今度は検察官の取り調べ段階に入って、身柄は言ってみれば刑事訴訟法と検察官ということのルールと支配の中に入っていく。このけじめが非常に大事だと思うんですが、代用監獄制度を置くということを通じて、身柄がずっと警察署に置かれるという限りにおいて、四十八時間の逮捕状の効力から検察官段階に入り、勾留段階に入っていった後にも、警察の方の被疑者に対する警察官の権限に基づく支配のルール、これをやっぱりこの際はっきりしておこうじゃないか、こういう考え方が警察庁にある。しかし法務省としてはそうは簡単にいかないのではないかという理論問題もあり、また事実そう簡単にいかないのじゃないかということもあって、技術的な詰めの協議の背景には今言った警察庁との大きな法の制度をめぐる考え方の違いが実はあるのではないかというようにも推測できるんですが、その点はいかがでしょうか。
#70
○政府委員(石山陽君) ただいま橋本委員御指摘のように、この法案につきまして、特に代監制度を接点といたしまして留置施設法案と私どもの刑事施設法案が接点になり、機能的に連関しておる、こういう関係にございますものですから、私どもといたしましてもいわゆる代監制度に対する国民の御批判、これは重々承知しておりますが、ある一面におきまして、現在の我が国の警察、あるいは検察、裁判、いわゆる広い意味での司法制度全般の運営が刑事訴訟法を接点といたしまして非常に機能的に組織され働いておるという現実がございます。それをある一点だけをとられて直ちに代監廃止と言っても、これは言うべくして行いがたい面がある。こういう点から種々関係省庁間におきましてはともに国民の理解を得られて進むべきものは進むべきではないかということの御議論を願おうと思っておったわけであります。
 たまたま今回はいろいろな諸般の情勢から留置施設法案につきましていわば多少風当たりが強過ぎた、こういう面もありましたために警察庁の方でやむなく断念されるというような御事情が出てまいったわけであります。私どもといたしましては、現在の刑事訴訟法を接点とする法体系を新たに見直すという時代が来れば別でございまするが、それを現在直ちに行い得ないという状況のもとで、現在の捜査制度あるいは検察、裁判の制度をどういうふうに有機的に関連させ機能させるか、こういう面からやはり現在の私どもがとりましたような選択の方法しかないということにつきましては今後とも十分国民の御理解が得られるように説得に努め、あるいは御理解が得られるための運動を起こしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
#71
○橋本敦君 今お話しのことにも関連をいたしますが、確かに留置施設法案についてはやっぱり風当たりが本当に強かったというのは事実であります。刑事施設法案については、大臣もかねがねおっしゃっているように、明治四十一年以来の古い監獄法というのはそのまま名前まで監獄法ということで置いておいていいのかという問題もあり、日弁連としても監獄法の改正としてその近代化、国際化、あるいは収容者の人権保障をめぐる処遇の改善、それから今後の開放処遇を含めた近代化を含めて議論をしていることは事実ですね。ところが、やっぱり代用監獄制度を存置するということとの関連で留置施設法が出てきて、その留置施設法がいろいろな意味で人権侵害を及ぼさないか、弁護人との接見交通権を侵害しないか、警察の管理権を理由としてそれが実は不当な制約を加える根拠として拡張されないか、いろいろな問題が出てきて国民的合意が一層難しくなってきた、こういう経緯があるわけですね。そこで私は抜本的な問題としては、まさにやっぱり基本はこの代用監獄制度をどう見るか、どうするかという課題が依然として根本問題としてあることは間違いないと思うんですね。
 そこで、これに関連をして二、三伺いたいと思うんですが、なぜ代用監獄制度を早くなくせということをしきりに私どもが言わなくてはならぬか。それは一つは憲法でも不当に長期に拘禁された自白の証拠能力を否定しておりますけれども、不当な長期の拘禁に至らずとも警察署に長く身柄を代用監獄制度で留置しておく、そのことが実はこれまで裁判の歴史上事実として多くの教訓を生み出してきているからですね。その点で言うなら、法務大臣もっとに御承知と思いますが、最近の冤罪事件、そうしてまた最近は検察官が論告求刑を放棄せざるを得なかったということで新聞にも多く出ましたあの事件に見られるように、自白は証拠の王ではなくなったにかかわらず、自白偏重という捜査の中から間違った自白が往々にして裁判を誤らしめる原因としてあるということが依然として問題として出ておるわけですね。したがって、まさに間違った自白を生む温床が代用監獄制度ということにあるんだというこの指摘については、これは歴史的に見て一概に否定できないではないかと、こう思うのですが、刑事局長いかにお考えでしょうか。
#72
○政府委員(筧榮一君) 先生御指摘のように最近の再審等の無罪事件、あるいは旭川の日通事件でございますかのように、この無罪事件を見ますと、代用監獄と申しますか、警察署に留置中に自白をした、そうしてその自白が後に裁判によって任意性がない、信用性がないというふうに否定した事例があることは承知しております。ほかにもそういう事例がそれにとどまらずあることは事実でございますが、そのことはやはり今先生御指摘のように、自白偏重というようなことが行き過ぎますと、やはり自白に無理をして虚偽の自白を得るというふうなことになりかねないわけであります。
 自白を得ることはこれは証拠の王とは申しませんが、重要な証拠であるということはこれは捜査上変わらないと思います。ただ、自白を得た場合にも、それが強制にわたるようなことはもちろん避けねばなりませんし、自白を得た場合には、それを客観証拠等によって十分に吟味をしてその真実性を確かめるという近代的な捜査方法がとられるべきことも言うまでもないところであります。したがいまして、その捜査方法は警察あるいは検察においても、今指摘しましたような悪い自白偏重といいますか、そういうことは逐次改められておると思いますし、今後ともそういう方向で捜査は進められると思います。そのことと代用監獄があるということは直ちにイコールというわけにはまいらないというふうに私どもは考えております。
#73
○橋本敦君 直ちにイコールというように私も質問しているのじゃなくて、いろいろな事情もあるんですが、間違った自白を生む温床として代用監獄というものがやっぱりその温床になっておるという、そういう今までの歴史的経過と事実は一概に否定し切れるものではなかろうと、こういう意味で私は聞いたわけです。局長はそれを厳密に答弁なさったということでしょうけれども、そういう問題がなければ代用監獄問題をこれだけ議論するわけはないんですからね。
 だから、そこで法務大臣のお考えと認識を聞きたいんですが、代用監獄制度を早く廃止せよ、早くなくせということを私どもがしきりに主張し、日弁連も主張している。そのこと自体、代用監獄はいつまでも永久的に固定していいのだとまではお考えになっていないのではないか。法務大臣としても、できれば代用監獄制度というものはなくなった方がいい、またなくすために将来とも努力をする課題であると、こういうようにおとりになっていらっしゃるのか。いやこれはいつまでも置いておいていいというようにおとりになっていらっしゃるのか。そこのところを聞きたいために今言ったような質問をしてみたわけです。いかがでしょうか。
#74
○国務大臣(嶋崎均君) 長い系譜のある話でございますけれども、ともかく現在の刑事訴訟法を中心として一つの背景があるわけでございまして、そういう中で今この代用監獄の問題というのは論議をされておるわけでございます。
 しかし、私は世界全体のいろいろな制度との絡みというものを考えなければならぬと思うのでございますけれども、四十八時間という制度はずっと長い伝統を持っておるわけでございますけれども、よその国のいろいろな制度とのバランスから見て、今の刑事訴訟法の考え方に立脚している日本の政治とのバランス、そういうようなこともやっぱりよく十分吟味してみなければならぬ余地はあるのだろうと思う。しかし、そういう改正というのは早晩なされる可能性が少ないということになれば、やっぱり長らくの伝統を持っている代用監獄問題というのはそれなりに真剣に考えていかなければならぬというふうに思っております。
 ただ、御承知のように、刑務所、少年院あるいは拘置所等々の刑事関係の施設につきましては、これは皆さん公共のためですから都合のいいときにどんどん建物を建てていくことに協力してあげましょうというような気分になかなかなってない現実もあるわけだろうと思うのでございます。したがいまして、そういう制度的な問題というのは、これは相当の努力をしても残っていく問題であろうというふうに思うわけでございます。
 しかし、制度全体として、うんと長期のことを考えれば、これはある程度漸減をしていくという方向で事柄を考えなければいかぬことは、これは当然であろうというふうには思っておりますけれども、しかしそれにはそういう環境の問題というのが随分重なっておりますから、そういうことも十分配慮して事柄を考えていただかなければならない。また、そうでないと、現にいろいろ接見その他の問題を考えてみましても、非常に多くの問題が残っておることもこれは否定できない事実だろうというふうに思います。したがって、そういう問題についてはやっぱりもう少し冷静に事柄を考えていかなければならないのじゃないか。
 ところが、余り理想を追い過ぎて、そうでなければならぬ、それでなければ承知しないんだというようなことを言われると、進むべきものも進めないような論議すら一部に出るというようなことが、かえって法案の整理その他に難しい問題を残しているのじゃないかというふうに思っておるわけでございます。当たっているかどうかよくわかりませんけれども、どうも今度の経緯の中でそういう感覚も一部持ったというのが現実でございます。
#75
○橋本敦君 現実問題の難しさということは、それは私どもも否定はいたしません。大臣がおっしゃった長期の展望ということであれば、次第に減らしていく漸減の方向もこれは否定はすべきものではないということは今おっしゃるとおりでございます。
 私が言うのは、まさに明治四十一年以来の一つの大きな節目の転機の改革ですから、この機会にこの大問題の、しかも一番大きな争点の問題になっているこの問題については、まさに一つのこれからの長期にわたる日本の刑事制度の中における哲学をどうあらわすかという問題もかかるのですから、今すぐ全国に刑事施設全部たくさんつくれということを言っているんじゃなくて、やっぱりそこのところの理念は明確にする、それが政治の場で必要ではないかということを申し上げたわけですね。
 大臣はこの点は慎重にお答えになったわけですが、私どもとしてはそういうことがはっきりしない限りは、この刑事施設法それから留置施設法二本立てでまた出てくるのかもしれませんけれども、これはそういうような基本的な理念抜きには賛成できないし、またそういう理念抜きに現状のままでお出しになるということについても厳重にこれは再考していただいて、人権保障や将来過ちなきを期するために積極的な再検討をお願いしておきたいというのが私どもの立場でありますが、この問題はこの程度にいたしまして次の問題に質問を移さしていただきたいと思います。
 次に、私はこの間判決がありました誠備事件の判決に関連をして、これはどうしても検察庁にお聞きをしておかなくてはならぬ問題があるなということを痛感をいたしましたので、これについてお伺いをしていきたいと思います。
 この事件については、私の手元に判決全文がまだできておりませんで、判決要旨をいただいておりますが、この事件の概要、そして大部分無罪になった脱税の問題について検察庁はどう対応され、どうお考えになっておられるのか。この判決について、まず検察庁の受けとめ方を伺いたいのであります。
#76
○政府委員(筧榮一君) 今回の加藤ロに対する税法違反の事件につきましては、今月の二十二日に一部無罪と申しますか、加藤ロ自身の脱税については無罪、金丞泰との共犯の脱税については有罪という判決が下されたところであります。この無罪部分につきまして検察として控訴すべきかどうか、ただいま慎重に検討中でございますので、その検討の結果によって検察庁としては控訴するあるいはしないという結論を下すことになろうかと思います。
#77
○橋本敦君 控訴するかしないか慎重に検討されること自体は結構ですが、この一審判決で、加藤にかかわる三十二口座をめぐる二十四億余りの脱税という事実で起訴した部分、これが無罪になったということが大きな問題なんですね。
 これについて、加藤がこの誠備グループとして証券業界で大変な注目を浴びた重大な事件になったんですが、この莫大な株取引をやる背景に、三十二口座の口座はこれは架空名義であって、その背景に、彼の言葉によれば二けた以上の政治家が資金を提供しているとか、あるいは裁判所の判決でも出ておりますけれども、高級官僚が背景にあるとか、あるいは博徒稲川会の横須賀一家の総長の石井進がこれの一つであるとかというようなことが出てきているわけですね。したがって、こういう何十億という株操作のマネーゲームをめぐって、その徹底的な解明をひとつはやらなくてはならぬという非常に大事な事件であったはずでありますが、それらがほとんど解明されずに、しかも検察官が加藤自身の脱税として起訴したその部分が全部無罪で落とされてしまったということは、検察庁のこれまでの捜査及び立件のあり方として反省すべき点はあるのかないのか。そこらあたりをどう受けとめていらっしゃるのか。この点はいかがですか。
#78
○政府委員(筧榮一君) 本件につきましては、御承知のように金丞泰なるものの脱税がまず告発されまして、その捜査の過程で、それの共犯ということで加藤ロを共犯として捜査をし起訴した、その過程で加藤自身についての脱税の嫌疑があり告発を受けてこれを起訴したという関係でございま
す。その過程で、先ほど二十四億でございますかの利益の帰属につきまして加藤の言い分いろいろあったわけでございますが、検察官としては架空の三十二口座等がございますけれども、それをひっくるめて、いわば懐は一つである、加藤自身の懐勘定といいますか加藤自身の計算において株の取引がなされたという結論に達し、したがって加藤自身の脱税であるということで起訴をいたしたわけでございます。
 今回の裁判所の判断は検察官の主張とは違う判断になったわけでございますが、検察官としてはそういう主張を続けてまいったわけでございまして、それを控訴で争うかどうかをただいま検討中であると先ほど申し上げたところでございます。
#79
○橋本敦君 そこで、具体的にそれに関連して伺いますが、報道されているところによりますと、その背後の、架空口座の後ろの人物として、その中に財界人や高級官僚や二けたの国会議員があるんだというように加藤が法廷で言っておったという事実、これは間違いありませんね。
#80
○政府委員(筧榮一君) いろいろなことを加藤は法廷で述べていると承知しております。
#81
○橋本敦君 その中の一つに、実際は玉置代議士の元の秘書、この取引で十億円の出資金をその秘書から受け取るために事務所へ行ったとか、あるいは小坂代議士の元秘書との間では、これも十五億円の資金を受けて、それを運用して毎月六千万の利益を渡したと、こういうことも加藤は法廷で言っておる事実、これも彼の供述としてあることは間違いありませんね。
#82
○政府委員(筧榮一君) 徹底的に全文は私も承知しておりませんが、そのような趣旨の供述であったと承知しております。
#83
○橋本敦君 そこで局長、この三十二の架空口座をめぐる株の運用取引、それが一つの加藤の懐で、だからその利益は彼に帰属する。したがって、ここから上がった株売買の利益二十四億は彼に帰属するのだから、だから彼の脱税ということで、そこにねらいを定めて捜査し立件をし起訴したというような今お話を伺いました。
 ところが、もし加藤が言うように、それぞれの口座の後ろにそれぞれの資金提供者があり、その後ろの政治家なり高級官僚なり財界人なりが資金を提供し、そしてその口座を通じての運用で利益を得ているということになれば、それは加藤の利益、脱税の問題ではなくて、その利益を得た、その口座の真の利益が帰属する人間がその利益に応じて脱税をしているかしていないかということも含めて、捜査の焦点というものはその架空口座の本当の利益が帰属する主体に捜査が及ばなくてはならぬ、こうなるわけですね。
 ところがそうじゃなくて、この口座は加藤の利益に帰属する懐一つの要するに金のプールなんだというように見れば背後関係の追及がそれほど必要でもなくなる、あるいはそれほど意識しなくてもいいと、こうなって、捜査の方針と具体的内容に、つまり背後まで、真の利益帰属者まで追及するかそこまでしなくていいかという判断で捜査の観点としては非常に大きな違いが生ずることは事実だと思うんですが、いかがですか。
#84
○政府委員(筧榮一君) 捜査の観点の違いでどれほど差が出るかという点はちょっと表現が難しいかと思いますが、検察官としては、今、橋本委員御指摘のように、いろいろ捜査をした結果、これは結論としては加藤一人の懐勘定であるという結論に達して、その線で起訴をしたわけでございます。もちろんその場合でも、その背後関係といいますか、たとえ懐が一つであってもその懐へ資金を提供したといいますか、そういう意味での背後関係についての捜査が全く要らないというわけではございませんで、もちろん検察官としても可能な限りの捜査を遂げたわけでございます。その関係については判決の結論のところでも言っておるようないろいろな事情もございまして、公判で明らかになったような事実の立証にとどまっておるということでございます。
#85
○橋本敦君 そこで、実際は審理の中で裁判所が認定しておりますように、この三十二の架空名儀口座に基づく取引ということは、全部これは一括加藤ということではなくて、実際にはこれは加藤以外の者の取引とが大変入り組んでおって、そういう意味ではこれは三十二口座全部が加藤のもので利益が加藤に帰属すると、こういうわけにいかない、事実関係として、証拠としてやっぱり入り組んでいるという状況が出てきたというように裁判所は事実で認定をしておりますが、これは間違いありませんか。
#86
○政府委員(筧榮一君) 大体橋本委員御指摘のとおりでございまして、結局この三十二口座の、いろいろ入り組んでおるわけでございますが、その中には加藤以外の者の責任における金の出し入れが相乗りとかいろいろございますけれどもうかがわれる。もちろん加藤の懐でという部分もある。その間がどこまでが加藤の責任に属する範囲であるかということを証拠上明確にすることができない、したがって公訴事実の立証は不十分であるというのが裁判所の結論でございます。
#87
○橋本敦君 なるほど捜査の困難があったことは裁判所も指摘しております。例えば有力な証拠資料が全部持ち去られた、特に共犯関係と見られる金沢千賀子ですか、その他事件の重要関係者二名が今なお所在を不明にしておるというようなことで検察官の捜査が大変難航したということは、これはここに書いてあります。事実そうでしょう。
 が、しかし裁判所はこう認定しているわけですね。これは私が今お尋ねしたことと深くかかわるんですが、「それにもかかわらず、焦点を被告人加藤一人、しかも三二の加藤口座にのみ絞り、被告人加藤自身の所得税の脱税容疑のみで訴追したことが、かえって直接顧客や黒川木徳証券関係者から真実により近い証言を引き出すことを難しくし、事件の解明を困難にしたものといえないではない。」、こう言っているわけです。つまり、これは珍しいことですが、裁判所が捜査の基本的な姿勢と観点に若干問題があったのではないかという批判を加えざるを得なかったということですね。
 だからこの批判は謙虚に受けとめる必要が私はあるのではないかと、こう思うわけですが、ここに指摘されておりますように、まさに直接顧客となって加藤と一緒に株運用に携わった、しかも資金も提供した本当の後ろの黒幕を全部きっちりそこを押さえていくという、そういう全貌的な捜査を広い視野でなぜ徹底してやらなかったのか。その上で、その結果として三十二口座が全部直接顧客との入り込みなしに加藤のものであるということを認定して起訴するならそれはわかるんですが、加藤のものだという認定を主眼に置いて起訴したそういう経過が見られるので、裁判所は厳しく批判しているのではないかと、こう思うんですね。そういう意味でいえば私は捜査上の一つの反省すべき点を指摘されたのではないか、謙虚に受けとめるべきではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#88
○政府委員(筧榮一君) 冒頭申し上げましたように、この判決についてはただいま控訴の要否検討中でございますので、判決の部分についての論評は私どもちょっと差し控えたいと存じます。
#89
○橋本敦君 私が聞きたいのは判決の論評というよりも、むしろ捜査の問題として指摘をされた点について今の時点で検察庁はどうお考えどう受けとめておられるかということなんですね。
 問題は、この事件の国民が期待した真相というものは加藤の単なる脱税ではなくて、まさに加藤と組んでマネーゲームをやり莫大な利益を得ようとして株運用に加わった背後関係を明らかにすることが非常に大事だった事件ではないか。その点でこの加藤は法廷でも一貫して真の直接の顧客者の名前はこれは高級官僚だとかあるいは政治家だとか、こう言うけれどもその名前は言わない、こう言っているわけですね。これは本人には黙秘権があるんですから、これはそうです。だがしかし、事案の真相を見きわめる検察のあり方としては、本人がそう言っているにしても、本人自身は自分の全部取引じゃなくて直接顧客がいるんだ、こう言っているんですから、そこのところを徹底的に追及するという点でもっと厳しくやるべきでな
かつたか。
 例えば金沢ほか重要関係者二名がこれはもう捜査中からいなくなっているわけですけれども、こういった証拠隠滅工作についても未然に防止をして完全に証拠をやっぱりつかみ切るというような捜査の点でぬかりがあったのかなかったのか、今厳しく反省をする必要があるのではないか、こう思うわけですが、そこらの点について加藤の取引の背後関係にまで徹底してメスを入れないと加藤の罪状、罪責それ自体も含めて全貌が明らかにならないという、そういうとらえ方が足らなかったという点はやっぱり私は残るのではないかと思うんですが、重ねて聞きますが、そういう面を指摘した裁判所の指摘を謙虚に受けとめる必要があると思いますが、いかがですか。
#90
○政府委員(筧榮一君) ただいま検察庁の方で判決全文を慎重に検討しているところと思います。その間において検察庁としてあるいは反省すべき点が指摘されておれば、それはそれなりに検察庁としても今後の捜査を進める上での反省とすることと考えております。
#91
○橋本敦君 そういう観点で見ていきますと、例えば裁判所は一つの問題として下村博名義の口座、この「口座で昭和五四年六月中ころ以前に行われた取引は、高級公務員のものとみられ」ると、はっきり証拠によって裁判所は認定しているわけですね。だから検察官の法廷に提出した証拠、弁護側が提出した証拠、それを総合しますと、裁判所は証拠によっても直接顧客があり、その一つが高級公務員であることが認定できておる。それから今私が指摘をした問題で言うならば、政治家関係でも、この判決の中で黒川証券に五つの口座が開設されておりますが、その帰属主体が菅茂雄という人物の「背後にいる人物一人である」ということまで、名は伏せていますが裁判所ははっきりと断定しておる。これは証拠によって認定している事実ですね。それからさらに、先ほど言ったように博徒稲川会の石井進、彼が直接顧客であったということも証拠によって認定しているわけですね。
 だから、検察官はこれは全部加藤のものだということで起訴し立証されたつもりでありましょうが、公判の中で出てきた証拠を総合すると検察官の立証そのとおりではなくて、逆に今私が指摘したような事実が認定できる証拠がもう出てきているわけですね。だからそういう意味では、この事件は何といっても背後関係を調べればもっと明らかになったはずだと、こう考えざるを得ない状況がこの判決からあるわけですよ。
 そこで私が言いたいのはこういう高級官僚や財界やあるいは政治家が背景にいるのではないかと加藤がにおわしているこの事件について、そこまで徹底してメスを入れるという、そういうことをしなかったのは、加藤の脱税容疑ということを主眼に置いて捜査し起訴したという手法もさることながら、その背後関係を徹底的に暴くということ、つまりここにうごめく高級官僚や政界にメスを入れるということについて検察官は勇気と決断が足らなかったのではないかとさえ思われかねない裁判所の認定だということで私は問題にしているわけですよ。そうではないということが本当に言えるだろうか。やっぱりこの事件の背景にある政財官界のグループにもっとメスを入れるべきであった、これが国民の期待にこたえる正義の検察の道だと私は思うのですが、事実どうなんでしょうか。
#92
○政府委員(筧榮一君) 裁判所のこの判決の判断につきましての評価といいますか判断はまた今検察庁で検討中でございますので、差し控えさしていただきますが、その当時の捜査の具体的な細かい内容はともかくといたしまして、検察当局としては加藤ロの脱税の容疑を中心に可能な限りその背後関係に至るまで捜査を遂げるべく努力をしたものと考えております。その結果、先ほど申し上げましたような結論になり、公判廷での立証が行われたと。決して政界、財界、官界云々であるということによって手を緩めるとか勇気がなくなったとか、そういうことではなくて、可能な限り最善の力を尽くしたというふうに考えております。
#93
○橋本敦君 それが甘いと裁判所は批判しているんじゃないですか。証拠によっても、今私が指摘したように、背後におるのは実際名前の出ている一人の人物だという政界関係では指摘をし、背後にいる直接顧客者は高級官僚の一人だとまで裁判所は認定している。そこまで証拠によって認定される状況であったのにその事実を徹底的に捜査をし追及し究明できなかったというのは、私はやっぱり検察として一つの手落ちがあったというように思わざるを得ないですね。
 そこまで出ておる関係でいいますと、真の顧客者、今言った高級官僚とか、あるいは秘書の名前の後ろにいる一人の人物とか、あるいは財界のだれかとか、証拠によってほぼ裁判所も認定したそういう人物について、利益が帰属しているそれについて税務調査をやってみれば、この加藤と一緒に起訴された被告の金が脱税で有罪になっておりますが、同じように脱税の容疑がなかったとは断定できない。脱税の容疑があったかもしれない、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#94
○政府委員(筧榮一君) 先ほど来申し上げておりますように、検察庁としてはその当時懐一つで加藤ロの脱税という結論に達したわけでございまして、今から振り返ってその当時のことを考えてこういうふうにすればよかったのではないかという御意見もいろいろあろうかと思いますが、検察庁としてはそのときに達した結論に従って公訴を提起したというふうに考えております。
#95
○橋本敦君 それは何遍も聞きましたよ。それが問題になって聞いているわけだ。例えば裁判所が言っておる昭和五十四年六月中ごろに行われたこの下村名義の架空口座は実は高級公務員のものと認められると証拠で言っている。これは調べてみれば架空名義でやっているんですから、これによって得た利益は税務申告上脱税ということになっておった可能性が否定し切れないのではないか、こう聞いているんですよ。どうですか、否定し切れないんじゃないですか。
#96
○政府委員(筧榮一君) ただいまの例えば下村何がしの関係でございますが、個々の裁判所の判断について、それの見方については現在検察庁でその控訴の要否の過程で検討中でございますので、個々の点についてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
#97
○橋本敦君 だから、検討して裁判所が証拠によって認定した認定が事実そうであれば、今私がお話ししたように、この一連の事件との絡みでいうならば、その利益が秘匿をされて脱税されておったという可能性もあり得るということは考えられるじゃないですか、どうですか。
#98
○政府委員(筧榮一君) この判決の結論をもとにすればそういうことも考えられるということは御指摘のとおりでございますが、検察官としては当時そうではないという別の結論を持っていたわけでございます。
#99
○橋本敦君 その別の結論が誤りであったということが明らかになりつつあるのですね。
 そういう意味で、私は捜査というものは非常にやっぱり大事だということを思い改めてこの事件を通じて痛感したんですが、法務大臣に伺いますけれども、政界、官界、財界の大きなところが絡んだような事件であれば、検察官の鋭い正義のやいばは一層入れられなくてはならぬのであって、ロッキード事件でも国会決議に基づいて徹底解明ということで検察庁は力を入れて解明に努力をされてきたわけですが、政界が絡んだ、あるいは財界が絡んだという事件で、検察庁としては絶対にそういうことで左右されない、断固として法律的に必要な糾明はやるという姿勢に変わりはないと思いますが、大臣の所信の一つとして伺っておきたいのであります。
#100
○国務大臣(嶋崎均君) ただいま御質問の事件につきましては、第一審の判決がありまして、その内容につきまして先ほど来刑事局長からお話がありましたように、それをどう取り扱うかということを検討中のことでございますので、内容についてはとやかく発言すべき立場に私はないと思うの
でございます。しかし、いずれにしましても、一般論として申し上げるならば、個々の事件につきまして本当に的確な判断と処理が行われて、日本の司法制度の存在というものについて信頼が得られるように、またそういう中における検察官のいろいろな努力というものがきちっと評価されるような、そういう気持ちで努力されることが一般論として必要であろうというふうに思っております。
#101
○橋本敦君 次の問題に移りますけれども、私はそういう検察の姿勢というものと国民から寄せられた信頼というものを、不正を許さないという立場で貫いていただきたいということで、この判決が指摘した問題に関連をして聞いたわけですが、刑事局長、これからの検討として、時効になっているものはもうしょうがないですよ。だけれども、今あなたがおっしゃったような判決の検討から、当該事件について控訴するかどうかということは一つあるとして、この事件について真の直接の顧客、仮空名義を使って加藤と一緒に株取引をやった、そこらあたりの真相と、それから脱税の有無について、あなたもおっしゃったように裁判所の認定どおりであるならば、脱税の可能性がないとは言い切れない一連の事件から生まれていることですから、今後改めて裁判所が指摘した背景的事実までも含めて、今逃亡中の容疑者もいるようですが、引き続き捜査を遂げるということが可能なのかどうか、そこらあたりの所見はどうですか。
#102
○政府委員(筧榮一君) 二十二日に判決があって、ただいま検討中でございます。その過程で今御指摘の仮定の問題として脱税になる、時期からいって一般論として申し上げてほとんど時効になっているかと思います。しかし先ほど判決にもございましたように、逃亡しているという関係もあるわけでございます。それらについては検察当局でその推移を見守っていくものと考えております。
#103
○橋本敦君 逃亡している金沢外二人というのは、私は加藤と共犯関係にあるというように当然見るべきだと思いますが、いかがですか。
#104
○政府委員(筧榮一君) 逃亡しているということは捜査中のことでございますので、その内容については差し控えさしていただきたいと思います。
#105
○橋本敦君 どっちにしても、そこのところを一つの起点としても、捜査継続は法律上可能な範囲があるわけですから、裁判所の指摘を無にしないで、背後関係を含めて目を光らしていただきたいと思うわけであります。
 ところで、話題は変わりますけれども、いよいよきょうは新電電が設立総会を開かれて発足をすることになりました。この問題に関連をして私がちょっと考えている問題を明らかにしていきたいのでありますが、この新電電は、言うまでもありませんが、まさに我が国最大の会社としていよいよ発足に至りました。資本金は七千八百億円、きょうの設立総会で決まるでしょうが、株は当面設立と同時に発行されるのが一千五百六十万株、変態設立で授権資本がありますから全部で六千二百四十万株に将来なりますが、当面は千五百六十万株、この一株の発行価格が、額面とは別に発行価格が二十一万、こういう優良株でありますし、十分の資産がありますからそういう状況で発足するわけであります。
 そこで、大蔵省の方に手続としてお伺いをしたいんですが、将来これは国が三分の一保有をしてこの株は売り出すということが予定されておることは明らかですが、この株を将来売り渡す時期、方法等については、今後どこでどのように議論が進められていくことになっているのでしょうか。
#106
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 今回の電電公社の民営化につきましては、これは将来の情報化社会に向けまして、事業の公共性に留意しつつ、民間活力を導入いたしまして事業の経営の一層の活性化を図るということを目的としておるわけでございます。この趣旨からいたしまして、政府がいつまでも全株式を保有するということは望ましくないことでございますので、政府といたしましても漸次売却を行っていきたい、こういうふうに考えております。
 ただ、今御質問のございました具体的にいつになるかと、この具体的な売却時期でございますが、これは会社の運営、それから経済の動向、そういうものを総合的に勘案して決定していく必要があるわけでございまして、現段階におきまして確たることを申し上げることは困難でございます。そして今後こういった点を十分検討いたしまして適切な時期に売却を行ってまいりたい。また売却の方法でございますけれども、これは電電株式は国民共有の貴重な財産でございますし、その売却に当たりましてはいささかも国益を損うことのないよう、また国民に疑惑を抱かせることのないようにしていかなければいけない。そういう意味で、今後、公正かつ適切な売却方法等につきまして、過去の例も参考にいたしまして、民間有識者等の意見も聞きながら十分慎重に検討していくこととしたいと思っております。
#107
○橋本敦君 どちらにしても今あなたがおっしゃったようにいずれ株は売却するということは決まっておるわけで、早ければ六十一年度予算に売却利益を歳入として計上するということも四月一日発足以後可能になるわけで、早ければことしの秋ぐらいから今あなたがおっしゃった株の売却の時期、方法等いよいよ具体的な議論に上ってくる状況になる、一つはこう思うんですが、いかがですか。
#108
○説明員(田中誠二君) ただいま申し上げましたように、まだその具体的な時期、それから売却方法につきましては先ほど申し上げましたとおりでございまして、今後十分その点慎重に検討していきたいと、そういうふうに我々は考えておりますし、今後も、先ほども申しました繰り返しになりますけれども、国益を損うことのないように十分慎重にやっていきたい、こういうふうに考えております。
#109
○橋本敦君 いいですよ。慎重にやるのは結構だが、株を売却する時期というのはそう遠くない時期に具体的に検討に入らなくちゃならぬようになるじゃないか、ことしの秋はその一つの時期ということも考えられるじゃないか。全然ことしじゅうは売るつもりは大蔵省ありませんというのなら、そう答えてほしいのですが、そうじゃないでしょう。だから、順次慎重にやるけれども、具体的には来年度予算ということもあり、ことしの秋ぐらいから具体的な検討を必要とする時期に来ると、こう見てもいいのではありませんか。
#110
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 その辺も含めまして、すべてまだ今から慎重に検討していきたいと、こういうふうに我々は考えております。
#111
○橋本敦君 私はその時期を、そればかりを特にここで問題にするわけじゃありませんので次を進めますが、これは言ってみれば国の財産であり、国民共有の財産、だからこの処分については当然慎重でなくてはならぬというのは当然でありますし、国会の附帯決議もある。そこで、一つの問題は発行価格が一株二十一万ですか、売り出されるときはどういう価格を政府として考えるのが妥当か。それはそれが市場に出回ったときの時価を勘案しながら考えないと、安く売ったのでは国の財産を不当に処分したことになりかねない。そういう関係があって、価格をどれくらいにするかということは非常に慎重を要するのですが、これはどこで決めますか。
#112
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 国が所有する電電株式というのは国有財産になりますので、その電電株式の処分事務というのは大蔵省が所掌することになると思いますけれども、その売却方法をどうするか、また今おっしゃいましたように価格をどのようにして決めるか、こういうものにつきましては今後民間有識者等の意見を聞きながら公正かつ適切な方法で売却をしていきますよう、十分注意して慎重に検討してまいりたい、このように思っております。
#113
○橋本敦君 その最終決定、責任を負うのは大蔵省のどの部局ですか。あるいは大蔵大臣そのもの
ですか。
#114
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 先ほども申しましたように、この売却方法を検討いたしますときには過去の先例でございますとか、それから民間有識者の意見も聞きながら十分慎重に検討していきたい、こういうふうに思っておるわけでございまして、これは政府全体で責任を持つような非常に大きな問題でございますので、この点十分慎重に検討していきたいと、こういうふうに思っております。
#115
○橋本敦君 政府全体で責任を持つような事件だと。
 そこで、この株は一たん市場に売り出されたら、たちまち数倍どころか十倍、二十倍という値がつく、まさに超優良株だといううわさが高いのですが、大蔵省は、価格は別としてそういう超優良株の一つだ、そういう国民の重大な関心を持って見られている株になるということは認識されていますか。
#116
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 そこら辺の問題につきましては、先ほどから繰り返して恐縮でございますけれども、いろいろ国民の疑惑を招かないような方法で十分慎重に検討していきたいということでございます。
#117
○橋本敦君 疑惑を招かない招かないばかり先走る必要はないんで、大蔵省はこの電電株が極めて優良株だというように国民並びに投資家からは嘱目をされ刮目をされている、そういう株だという、そういう認識はお持ちでしょうかと聞いているのです。値が出ない株ですか、それとも値が出る株ですか、こういうふうに聞いている。
#118
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 そこら辺の判断になりますと、今ここで申し上げる状況にないと思いますので、そのお答えに直接はなりませんけれども、我々といたしましては売却方法その他先ほどから申し上げておりますように、十分慎重に今後検討していきたいと、こういうふうに思っておる次第でございます。
#119
○橋本敦君 あなたが、これは簡単に局長やそこらで決まらぬ、政府全体で決めなければならぬ大きな問題だと言ったそのことの重要性は、この株がそういう優良株で刮目されているということも含めて慎重にやらなくてはならぬという、そういう認識でおやりになっているんだと私は理解しておったのですが、違いますか。
#120
○説明員(田中誠二君) お答え申し上げます。
 この売却方法、それから先ほどの時期、そういうものにつきましては今後慎重に検討していかなければいけないということでございまして、我々といたしましてはこの電電株式というのが国民共有の貴重な財産である、そういう前提において国民の国益を損わないように今後とも十分に慎重に検討していきたい、こういうように考えておるわけでございます。
#121
○橋本敦君 課長さんね。余り難しいこと言わぬで、ざっくばらんでいいですよ。新聞でも雑誌でも書いてあるんだ。本当に優良株なんだから、私も買いたいとは言わぬけれども刮目している株ですよ。
 それで、先例も考え今後の処分方法は慎重に学識者の意見も聞いてとおっしゃるが、具体的に言うと国有財産である株式の処分については、法の規定としては私が調べた限りでも会計法二十九条の三を初め、国有財産法第九条の三とか、予算決算及び会計令臨時特例第五条とか、いろいろあります。時間がありませんから一々詳しいこと聞きません。
 端的に伺いますが、この株の処分は全部完全入札ということでやるという方法も一つあるでしょう。それからもう一つは、日航株を処分したときもそうでしたが、有力証券会社及びそれを中心とする証券会社シンジケートをつくらせて、そこのところで国との話し合い契約で引き受けてもらって処分するという方法もあるでしょう。こういう方法がいずれにしてもあることは間違いありませんか。
#122
○説明員(田中誠二君) お答えいたします。
 電電株式の売却方法といたしましては、今先生おっしゃいましたようにいろいろあると思いますが、競争入札の方法によるか、またはその他の方法、例えばシンジケート団による方法にするか、こういうものにつきましては、また今後十分慎重に検討していかなければいけないというふうに思っております。
#123
○橋本敦君 ちなみに伺いますが、証券会社がこの株の売却を引き受けた場合に手数料はどういうように決まっておりますか。
#124
○説明員(金野俊美君) お答えをいたします。
 御質問の趣旨は、ちなみに仮に証券会社が引き受けた場合において、こういう前提つきのお話でございますけれども、その前提はまだ決まってございませんので、仮にとおっしゃられましても大変お答えしにくいお話でございますが、一般論として、電電公社の株ということではなくて一般的に株が売り出された場合の引受手数料はどうなっているか、こういう御質問の趣旨として理解して答弁さしていただきます。
 これは引受会社と売り出す株の保有者との間で一件一件契約で今決まっている、こういうことでございますが、その結果を見てみますと、売り出し価格の三・五%というケースが多いわけでございまして、ただ新規上場に伴う場合には、これは価格によりまして若干差がございますけれども、百七十二円以上の高価格のものにつきましては一株二円がさらに追加されているというようなことになっているように理解をしております。
#125
○橋本敦君 そうしますと、この電電株は発行価格が二十一万ですか。恐らく売りに出されるときの売り出し価格は識者が予想するところでは二十一万どころか、その倍として四十万前後ですか、最低三十万以上からという価格がつくであろう、こう言われているわけですね。だから、したがって売り出し価格が何ぼになるかわかりませんが、一般的通例のように三・五%の手数料ということになりましても、国が何回に分けて売り出すかわかりませんけれども、少なくとも一千万株あるいは数百万株という単位で出されるとすれば、計算してみただけでもその手数料というのは莫大なものになるわけですね。仮に売り出し価格三十万として手数料がその三・五%、上乗せの二円がなしとして五百万株まず売り出されたとしましょう。そうするとその手数料は幾らになるか、ちょっと計算できますか。ちょっとやってみてください。後でもう一遍聞きます。かなり莫大なものだと思いますよ。一般論としての計算です。
 そこで、我が国の証券業界がこの優良株の、しかも目の前に当然予定されている国からの売り出し、売却ということについて、これは黙って見ておるはずがない。まさにここがこれからの問題なんですよ。
 既に新聞は新電電株の主幹事をねらえということで四大証券が綱引きを激化させておるということを書いておるし、ある会社は新電電の対策室を設けてその対策に当たっておる、こういうことであるわけですが、問題は完全に国が入札にやってしまうならば、証券会社が引き受けて手数料をもらい、そしてまた引き受けた以上自分が顧客への割り当て権をかなり裁量で持てますから、そういううまみもなくなりますので、証券会社としては完全入札で株が売却されるのではなくて、一路まさに証券会社への引き受け、これを通じて国が処分するように熱望することは目に見えておるわけですね。そこで、証券会社に引き受けさせることはあり得ないということはないので、今お話しのようにあり得ることであるわけで、これをめぐってまさにこれから重大な疑惑が生じないようにどうしていくかということが非常に大事な問題になってくるというように思うわけです。
 ちなみに、私は四大証券会社の最近の政治献金を自治省に届け出られた公報から拾ってみました。そういたしますと、四大証券の野村、日興、大和、山一、この四つで昭和五十四年から五十八年までの五年間で国民政治協会へなされた献金が合計五億二千八百八十二万八千円という金額になっております。つまり一年間で平均して四大証券が一億少々献金しているわけで、中でも野村証
券は他の証券会社を抜いて五年間で一億八千五百万、日興証券は一億二千百万、大和は一億一千万、山一は一億一千万。拮抗しております。こういう四大証券会社の五年間の国民協会への表に出た献金を献金会社総額から見ますと約三割に及んでおります。かなり莫大なものですね。つまり私が言いたいのは、これらの証券会社は政治献金を通じて政界と無縁ではない存在だということであります。
 刑事局長にお伺いしたいんですが、もしも仮にこの戦争が激化をして、ある証券会社が何としてもこの株式の売却は入札は困る、証券会社引き受けという方向でやってもらいたいと政治家やあるいはお役人に働きかけて、そしてもしもそれがうまくいったならば、我が社が割り当てあるいは引き受ける株のうち幾らかをあなたに持ってもらえるようにお約束しましょう、こういうことを言って話をしていくというようなことになれば、これは私はりっぱなわいろ収受の約束ということで刑法上の犯罪を構成するおそれが出てくる、こう思うんですが、いかがですか。
#126
○政府委員(筧榮一君) ただいま大分まだ将来の仮定の話でございますが、今のお話の中で問題は一つ一つあるのかと思いますが、一つはそういう株式がわいろの対象になるかどうかという点、これは先生御承知の殖産住宅の裁判が裁判例の一つございます。この事件では、上場予定の株式で、かつ上場後値上がりが確実に期待される客観的状況がある場合に、その上場予定の株式を引き受けさせるのや、引き受けてもらうということはわいろの対象となり得るという判示がございます。ただ、今の先生御指摘の場合が、今申し上げた上場予定の株式で、かつ上場後値上がりが確実に期待される客観的状況がある場合でございますから、そういう状況が、わいろといいますか、引き受けがなされた事態、約束がなされた事態のときにそういう状況があるかないかということが大きな問題であろうかと思います。そういう状況があれば観念的にはわいろの対象にはなり得るということでございます。
 それからもう一つは、これは一般論で申し上げるまでもないのですが、当該政治家やお役人の職務に関するかどうか、どういう人がどういう方法で決めるかはまだこれからの話という大蔵省のお話でもございますので、その辺の具体的事実が認定されればなり得る場合もあるというふうに考えております。
#127
○橋本敦君 刑事局長の答弁はまさに法律的にはごもっともだと思います。だから、今刑事局長がおっしゃったような条件ということで十分犯罪が成立し得る可能性が出てくるわけですね。特に、この電電株については私がさっきから言っているように、優良株としての値上がりが当然期待されるという客観的状況はこれはぬぐえないということが一つあると思います。
 それからもう一つは、職務権限その他でいうならば慎重に処分しなくてはならぬということが国会決議で決められ、今も大蔵省からお話があったように、処分の方法、時期等を含めてこれは広く政府を挙げて全体の責任で公正になっていかなくてはならぬという大きな問題だというようなお話もあり、私はこれをめぐって職務権限という点からいえばかなり重大な問題が多くの範囲で広がっているケースになり得るというように見ているわけであります。
 今刑事局長おっしゃった同種の判例は、私が調べてみますと、大変古いのでありますけれども、大審院時代に、これは昭和七年の判決でありますけれども、山手急行電鉄株式会社事件というのがございまして、これは東京ですけれども、山手急行電鉄が電車を走らせたいということで会社をつくる準備をして、そして鉄道軌道を敷くのですから免許が要りますので申請をいたしました。そうすると多数競合いたしましてなかなか決まらぬ。そこでこの事件で被告になった皆さんが何とかしなくてはならぬというので、時の鉄道政務次官に、ぜひ免許を我が社に下さい、もし下さったらお礼として現金二十万と、それからこれから設立される会社の株式一万株をあなたに渡しましょうという話をして、よしわかったということで、その約束をして、それが事犯に問われてこれが有罪になった事件で、今局長がお話になったと同じように、将来設立される会社であるけれどもそれが確実であり、かつプレミアもつくような、そういうような状況の中であったということも含まれて、わいろ罪が成立をしております。
 そこで、法務大臣に私は伺いたいんですが、現にこの証券会社は今私がお話ししたように莫大な手数料だけにとどまらず、将来ともこれが売り出されていくこと、それからさらに将来は新株が発行されれば、この最初の売り出し株式を手に入れれば当然新株引受権が手に入るし、無償で引き受けができるなんということになれば物すごいプレミアムですからね。そういうことをめぐって、この最初の株売り出しをめぐっては、これは大変な暗躍が各所でなされ得る危険性を含んでいる、こう思うわけであります。そういうことの中で国は厳正に対処していかなければならぬ。しかしその処分方法として今言ったように証券会社に引き受けさせるということもあり得るということはもうはっきりしている。そこで、証券会社がやると言いませんよ。だれがどこでやるかわかりませんが、これから国の放出が自己に有利になるようにいろいろな策動があり得るかもしれない。経済事犯が激化するかもしれない。現にこの巨大な利権をめぐって四大証券の主幹事争いが激化しているという前哨戦が新聞にも報道されているというような事情でございます。
 そこで、この問題について私はなぜ誠備事件から話を始めたかといいますと、誠備事件では政界のマネーゲームに手を突っ込んで介入するというところまで検察は断固やらなかったという、そういう批判が裁判所から判決でもなされておるぐらいのことでありますので、そうなってはいかぬ。だから今後この電電株をめぐって大蔵省は大蔵省で厳正にやるでしょう。政府を挙げて公正を期していかなくてはならぬという意味で検察庁も、犯罪の予防ということには直接どうこうせよと言いませんが、厳しく目を光らして、政治家、官界、財界を含めあらゆるところで一切の不正が起こらないように断固たる決意で目を光らしていかなくてはならぬということを私は思うのですが、大臣としての御意見はいかがでありましょうか。
#128
○国務大臣(嶋崎均君) ただいまの問題につきましては、もう先生自体もそれだけ御興味を持っていられるように、またいろいろな報道も行われているわけでございまして、実は私不勉強で、余りその点はよく勉強はしておりませんけれども、しかし非常に重要な問題であろうというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、その処理についてはどこまでも厳正に行われるであろうということを確信し、またそういうぐあいに運行されることを私も心から念願をしておるわけでございます。
 また、今お話しになったことは幾つかの前提を置いての将来のお話でございますので、その一つ一つについて論評することは避けたいと思っておりますけれども、こういう新聞等でも十分報道されていることでもあり、また検察当局もしたがってそういうものについて十分承知をする環境にあることも事実であろうというふうに思っておるわけでございまして、事態の推移に応じて適切にいろいろな判断をしてくれるだろうと私は信じておるわけでございます。私自身もそういう点につきましては間違いのないような処理が行われるように、何か力が出せることがあり、お役に立つことがあったら、そういう気持ちを出していきたいというふうに思っております。
#129
○橋本敦君 さっきお願いした一般論ですが、計算できましたか。わかりますか。
#130
○説明員(金野俊美君) お答えいたします。
 甚だ先生には御要望に沿えない話でございますけれども、料率の方は一般論として三・五%が多いということはお話しできるわけでございますが、実額として手数料は幾らになるかということは、御案内のように売り出される株数と、その株
についての売り出し価格、これで決まってくるわけでございますが、いずれも全く未定でございまして、しかも株数につきましては国会の議決というものが必要でございまして、今の時点で一般論としてでもちょっとお答えしがたい状況にございます。御理解いただきたいと思います。
#131
○橋本敦君 じゃ、次へ行きますので、大蔵省ありがとうございました。結構でございます。
 刑事局長にお伺いいたしますが、ロッキード事件の丸紅ルートの控訴審公判に関連をしてであります。
 まず最初に、弁護人側の控訴趣意書の提出期限はいつというように裁判所から御指定になっておるのか、もし御存じでしたら、ちょっと教えていただきたいんですが。
#132
○政府委員(筧榮一君) 丸紅関係の田中角榮、榎本敏夫、両被告人に対します控訴趣意書の提出期限は本年の五月三十一日でございます。
#133
○橋本敦君 そこで、本年の五月三十一日というと、もうあと二カ月でございます。私の弁護士の経験から言いましても、まさに今ごろは書面作成の一番大事な議論と研究と起案の時期ということになっておるわけでございますが、田中さんが残念ながら御病気で療養されていらっしゃる。そこで弁護人の方がどうなさるか。この控訴趣意書の提出期限を特例をもって裁判所で延期をしてもらいたいというような御意向があるのかどうか。そういう申し出があれば検察官にも当然裁判所は意見回付があるかと思うんですが、そこらの状況は耳に入っておりませんか。
#134
○政府委員(筧榮一君) その点に関しては何も聞いておりません。
#135
○橋本敦君 控訴審の性質から言って本人は出頭義務はありませんし、十分の余裕をもって期限が決められておりますので、今のところそういう動きもないということですから、それはそれとしておきたいと思いますが、今度の控訴審では、多くの議論で出ておりますように、弁護側の争点として出してくる論点というのが大体もう幾つか想定されるような状況に一つはなっていますね。それだけロッキード事件の裁判というのは国民的注目を浴び、公開の法廷で行われ、国民注視の中で判決が下され、国民はもちろん法律家の中でも多くの議論になってきた経過があるからであります。
 その弁護人が主張する論点の一つに、嘱託尋問調書の証拠能力、これが大きな問題になるであろうということは一般に言われていることですね。その中の一つとして、嘱託尋問を外国で行う直接の法の規定がないのにこれをやったのは違法であるという論点が一つと、それからもう一つは、あの調書ができ上がった、その調書を裁判所が証拠採用するに関連をして、反対尋問を経ていないから、反対尋問を経ていないものを証拠能力ありとするということは、これは反対尋問権を保障した憲法の規定に真っ向から反するという主張、こういうことが言われておるわけであります。
 こういう議論に対して検察庁はどう対応されるか。一審の論告で検事総長は、法律論も含めて田中有罪を論告したあの検察官の論告は歴史に耐え得る論告であると胸を張っておっしゃったわけでありますが、こういった法律論についても控訴審対策として検察庁は十分の検討と確信を持っておられるのであろうか。持っておられるに違いないと、こう思って聞くわけでありますが、いかがですか。
#136
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、最終的に控訴趣意書が五月三十一日までに提出ということに現在もなっておるわけでございます。それを提出されますれば、それに対して検察側の方からの答弁書というものが作成提出されることは先生御承知のとおりでございます。
 いろいろな論点があるといたしましても、今までの一審の経過等から見まして、論点は大体ある意味では想像がつくといいますか、出てみないと新しい主張があるかもわかりませんけれども、それでございますので、その控訴趣意書が出ました段階で答弁書の作成をするということでございますが、今先生御指摘の主要な点であります嘱託証人尋問の証拠能力につきましては御承知のように第一審で三決定がございますし、小佐野関係の東京高裁の判決がございます。いずれもその証拠能力を認めているところでございます。
 また、弁護人の方から新たな論点が出てくるということになれば、それに対して検察官の方の答弁書でそれに対する意見を述べるということになろうかと思いますが、基本的には今の反対尋問の点に限って従来の検察当局の主張を申し上げますと、一審の公判で検察当局は本件の場合において、その嘱託証人尋問調書に関してでありますが、刑事訴訟法二百二十六条に基づいてコーチャン氏ら三名に対し証人尋問の請求を受けた東京地裁の裁判官は、右証人尋問に被疑者、被告人または弁護人を立ち会わせることは捜査に支障を生ずるおそれがあると判断し、同法二百二十八条二項でございますが、そういう判断をいたしまして、司法共助に当たりアメリカ合衆国の司法機関に対し、嘱託書に証人尋問は連邦検事、日本国検事及び尋問にかかる証人の弁護人のみが立ち会い、他の者の立ち会いを禁止した非公開のもとで行われたい旨要請をいたし、アメリカ合衆国連邦地方裁判所は右要請に従い証人尋問を実施したものである。しこうして、刑訴法二百二十八条二項が憲法三十七条二項に違反しないとするのが最高裁判所の一貫した判例であるという主張をして、その適法性を主張したわけでございます。
 この主張に対しまして、ただいま申し上げました東京地裁における三決定及び小佐野事件の控訴審判決、それぞれ多少論理構成に違いはございますが、結論として本件嘱託尋問調書の証拠能力は肯定されておるということでございます。したがいまして、基本的には一審における検察官の主張、これに対する三決定、あるいは控訴審判決というものを基調といたし、弁護人側の控訴趣意書の内容に応じて的確な答弁書を作成し、検察官の主張を展開するものというふうに考えております。
#137
○橋本敦君 わかりました。この問題は一審でも双方論じてきた問題であるし、一審判決で判断が下された問題であるし、今言った控訴審でも判断が下されるということで、検察側の主張はずっと認められているという強みは検察庁側にあるということはわかります。
 小佐野控訴審判決でもう一つ聞きたいのは、コーチャン等に対する免責ですね。あの免責が違法だという主張も弁護人はしておったはずでありますが、それに対する裁判所の判断はいかがでしたか。
#138
○政府委員(筧榮一君) 結論として裁判所はやはり適法であるという判断を下しております。
#139
○橋本敦君 私は、そういうことを通じて、ここでは細かい法律論争をやるつもりは全然ないんですが、聞きたいのは、ロッキード事件丸紅ルートの控訴審の対応として、伝えられる嘱託尋問あるいは免責の問題、こういった論点については一審では論議がされてきたし、小佐野判決もあるし、検察官としては控訴趣意書でどういう主張が出るかは慎重に見なくてはならぬが、基本的にはこういった田中側が言ってくるであろう主張については、十分検察官のこれまでの主張が控訴審段階でも裁判所によって維持されるであろうという展望を持っているというようにお考えになっていらっしゃると見てよろしいわけですね。
#140
○政府委員(筧榮一君) 五月三十一日の弁護側の控訴趣意書を見ないと何とも言えません。その内容に従って対応するものと考えております。
#141
○橋本敦君 細かいことはそうですが、私が指摘した論点に関して言うなら、嘱託尋問調書の証拠能力、免責の問題、それから反対尋問を経ない証拠能力の問題、憲法論、こういった問題については、これは新しくありませんから、基本的にこれらの問題については小佐野判決も出たし、控訴審でも十分検察側の主張を維持できるという、そういう確信はお持ちだろうと、こう思って聞いているんです。それはそうでしょう。
#142
○政府委員(筧榮一君) そのとおりでございます。
#143
○橋本敦君 そこで検察官、全然新しい観点からの私の問題指摘にどう考えるか、ちょっと伺いたいことがございます。
 それは、コーチャン、クラッターなどの嘱託尋問を弁護側が控訴審段階で請求をした場合、反対尋問を経ていないからというのは、しきりに彼らはあの裁判が間違いだということに使ってきたんですが、それは法律論として排斥されたとして、田中側がクラッターやコーチャンの証人尋問を一審でも終わりごろに請求しているんですが、余り力を入れなかったんですが、反対尋問を経ない嘱託尋問調書の証拠能力を否定し憲法違反だと言うなら、積極的に彼らは論として、筋としてはコーチャン、クラッターの証人尋問を実現するようにすればいいわけですね。控訴審という法律上の構造がありますから、取り調べに必要な範囲であれば裁判所もお許しになることになるわけですが、弁護側がコーチャン、クラッターの証人尋問を請求するなら、真実発見のために、真相解明のために検察側もこれに反対しない、大いに結構だ、やりましょうということで、直接コーチャン、クラッターから検察官もお聞きになればよろしいし、真相を究明するために証人尋問はその手続が合法的に行われるのであれば積極的に賛成をするというぐらいの英断があってもよろしいのじゃないか。
 私は本当に真相はどんどん明らかにしたらいいと思うんですね。そういうようにも私は思うんですが、こういう私の考えについて、現に一審でも尋問請求があったということですから控訴審もあり得るわけで、検察側も大いに反対しないでやるという姿勢にお立ちになったらどうかと、こう思ったりしておるんですが、いかがですか。
#144
○政府委員(筧榮一君) まだ丸紅ルート、これから始まるところで、第一回公判期日の指定もございませんし、その後でのことになりますので、弁護人の側からそのような請求があるかどうか漠としてわかりません。したがいまして、その段階になって、その間の訴訟の経過もございましょうし、どういう理由で請求するかということもございますので、その段階で今申し上げたような点を検討して対応するということになろうかと思います。
 ただ、今御指摘のように、第一審では弁護側から、大分後の段階でございますが証人の請求がございまして、これに対して裁判所が却下いたしております。却下の理由は、証人尋問の必要性につきまして弁護人提出の立証事項を検討すると昭和五十三年云々で、証拠能力を肯定して採用した嘱託証人尋問調書でありますが、証人尋問調書の一部の内容の証明力に関する判断は、その立証事項にもかんがみ、その内容自体の検討及びその後本件においてあらわれた全証拠と比較対照しての吟味によってすれば十分であり、その証明力に関する判断は十分である。また、右両名に対する証人尋問によって新たに立証を必要とする事情も認められない。結局、両名に対する証人尋問請求はいずれも必要性がないということで、裁判所は却下いたしております。
 その際、その決定が下るに際しまして、検察官の意見としては不同意といいますか、不相当、不必要ということを述べております。その理由としては、弁護人の尋問事項が証人らの不知の事項に関するものであるとか、あるいは前提事実を誤り、誤導にわたるものであると認められる上、コーチャンらは証人尋問に応じられない態度であるから実施は不可能である、弁護人の請求は不相当、不必要であるという意見を述べております。その意見を受けてと申しますか、裁判所の独自の判断で不必要ということで却下されたという事情はございます。
#145
○橋本敦君 ですから、採否は裁判所がお決めになるんで、特に控訴審となればそれなりの法的控訴審構造からくる制約もありますから、どうなるかわかりませんが、そしてまた一審の段階では弁護人の請求にかかわらず裁判所はそれまでの証拠調べで十分事実認定を含めた心証がとれるという御判断があったようですからいいんですが、私が言うのは反対尋問がないから憲法違反だ、憲法違反だと言うなら、そんなことを今さら言うなら、そしてまた免責の問題で云々言うなら証人尋問を実現して解決すれば早いということもあるので、検察庁の英断いかがかと、こう聞いたわけです。わかりました。
 もう時間が参りましたので、あとはいじめの問題について、法務省が最近新しい立場で通達もお出しになって、これの解決に乗り出すという一助に努力をされておるようでございますので、あとはこの問題と、それから供託法、特会、コンピューター関係、これをめぐってお伺いして質問を終わることにします。
 まず、いじめの問題でありますけれども、まことにこのいじめの問題というのは教育的な面から見てあってほしくないことでありますし、若い者、子供たちの心を、いじめる者も、いじめられる者はもちろん周りの者も含めて大変傷つける、そういうことですから、まことに心が痛む事犯であります。にもかかわらず、これがふえているということは社会的現象として私どもも無視できないわけですね。この際、法務省がこの問題に着目をされて人権擁護局長通達をお出しになったようでありますが、その目的、そして具体的な処理としてこの通達に基づいて今いかがな態勢が進められておりますのか、そこらあたり、局長からお話をいただきたいと思います。
#146
○政府委員(野崎幸雄君) ただいま先生から御指摘がございましたように、学校等におきますいじめの問題は今や全国的に広がりを見せておりまして、いじめというものが原因ではないかと見られる自殺であるとか、殺人、傷害事件というようなものまで発生してまいっておりまして、今やこの問題は大きな社会問題になっておると考えております。
 この問題につきましては従来から学校及び教育関係機関におきましても真剣に対処されてきておられるところでございますけれども、必ずしもその実効を上げておらない。いろいろ伺いますところによりますと、いじめの問題につきましては、学校内で起きているにもかかわらず、現場の先生方がそれを認知するという率が非常に低いというふうに言われております。これは、いじめられた子供というものも後難を恐れて親や先生にその事実を申告しない。また、この間に入って仲裁をしよう、とめようというような生徒が出てくると、その子もまたいじめの対象とされるというようなことになっておるのだそうでございまして、これがいじめの問題をますます陰湿化、深刻化させ、また表にあらわさない原因になっておるように思われます。
 いじめが行われております原因としては、あるいはその被害者となる子供が行動が鈍いとか、あるいは身体的な欠陥がある、あるいは社交性に欠けるといったようなことがあるのだというふうに言われておるのでございますけれども、これらの理由はいずれの観点から見ましても理由のない、いわれのないものでございまして、その結果、心理的あるいは時には肉体的な苦痛を与えられる子供にとってはもう人権侵害であり、この問題は人権問題以外の何物でもないというふうに考えられるわけであります。
 そこで、私どもではこの三月一日付をもちまして全国の法務局長、地方法務局長に対し、この問題を人権問題としてとらえ積極的に取り組むことを指示いたしました。その内容は、まず人権相談などを強化することによって、あらゆる機会を通じまだ表面化していないいじめというものに関する情報を収集する。そして収集した情報については、すぐ関係する学校に通報をして的確な対応を学校当局としてとられることを要請する。同時に学校当局と協力をして、その加害者である子供の家庭あるいは地域の社会に対し、いじめというものの本質が人権問題であるということを訴えて、人権意識を高めることによって、地域社会全体としてこの問題に取り組み、この問題の根絶を期していきたい、こういうことでございます。同様の趣旨から、全国人権擁護委員連合会長からも各県
の人権擁護委員連合会長を通じて、全国の人権擁護委員にこの問題の解決に積極的に取り組むようにということを要請してございます。
#147
○橋本敦君 趣旨はわかりました。今局長もおっしゃった言葉にもあるんですが、このいじめの問題というのは人権問題ということであると同時に、すぐれて教育問題でもあるわけですね。だからしたがって、その情報を得たらすぐに学校に通報し学校と協力するという態勢をとるというのは私は当然のことだし、ぜひやらねばならぬと思うんですが、何といっても法務省はこれはお役所でございますし、言ってみれば国家権力の一機能を持つところです。そういう意味で、教育の場と人権擁護局の仕事ということとの接点を本当にうまくやりませんと、逆に教育への介入というようなことになってはこれはもう大変なことになるわけですね。
 だから、そこらあたりについて、教育への介入ということにならないということと同時に、教育現場での教師の教育的配慮を問題解決の上ではやっぱり最優先させるような取り組みというものを主眼に踏まえておきませんといかぬのじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#148
○政府委員(野崎幸雄君) この問題につきましては、ただいま先生御指摘のような問題があることでございますので、通達の中におきましてもこの問題が学校教育、学校行政の問題に深くかかわる問題であるということに留意をして、かりそめにもそれに対する干渉になると言われるような非難を受けることのないよう慎重にやってもらいたいということは明記してあるところでございます。
 ただ私どもは御承知のように人権思想を高揚するための啓発機関でございます。私どもがこれからやろうとしておりますことは、学校現場における問題は先生方にお任かせをする。ただ、こういう問題は社会全体が真剣に取り組んでいかないといけないのじゃないか。いろいろ聞いてみますると、子供の間ではだれだれが非常にいじめに遭っておるということは話題になっているようでありますし、また、その子たちが家庭では話しておるケースが多いと言われておるわけでございます。ただ、そこからこの問題が表に出てこない。例えば保護者でも自分の子供がいじめられていないときには、それを持ち出して学校に持っていくということをしないという問題があると言われておるわけであります。
 そういった点を考えますと、全国におられます一万一千五百の人権擁護委員は、そういったニュースを比較的キャッチしやすい立場にあるのじゃないか。そういうものをキャッチしたときには、まず学校にこういう問題が起こっていることを御存じですかということを申し上げることによって、学校でもそれに適切に対処をしていただくことにしたい。同時に地域の住民の方にも、こういった問題は放置しておくといろいろ差別を起こすことにもなりかねないという観点から、いじめの持つ問題の重要性を啓発していきたい、かように考えておるのでございます。
#149
○橋本敦君 そこで、具体的にどこかで情報を収集探知した、それを学校に連絡した、こういうようにうまくいった、あるいはおっしゃる啓蒙活動で具体的なプログラムができたとか、そういうような状況にまで今至っておりますのか、全くこれからですか。そこらあたりいかがですか。
#150
○政府委員(野崎幸雄君) ちょうどこの通達を出しましたのが今月の十二日のことでございます。また全連の会長から通知が出されたのも同日付でございまして、現在これが各人権擁護委員のところに回っておる段階でございます。いろいろ聞いてみますると、既に幾つかの情報が寄せられおるようでございますけれども、先生が先ほど来おっしゃっておられますように、いろいろ重大な問題もございますので、それを収集しました上で我々の方でも具体的にどういった方向で取り組んでいくかということを検討して、その上で啓発活動に乗り出していきたい、かように考えておるところでございます。
#151
○橋本敦君 わかりました。私もお願いしたい一点はそこにあったわけで、情報を集めてすぐ伝える、これだけというのじゃなくて、情報を集めても、人権問題として検討すると同時に、教育的配慮を十分にする余裕と機会を教師グループ、地域等を含めてお持ちになるような、そういう姿勢でやっていただきたい。何といっても子供の世界のこと、教育の現場のことですから。
 そういう意味で大臣としては、これは新しい企画、試みではありますが、これを推進する上で文部大臣あるいは文部当局とも十分必要な協議があればそれを尽くしていただいて、教育的配慮もぜひお忘れなく進めていただきたいと私は希望いたしますが、いかがでしょうか。
#152
○国務大臣(嶋崎均君) 最近社会的な注目を集めているこのいじめの問題につきましては、先生御指摘になるまでもなく、我々としましても人権上の問題である以上に教育的な問題が非常に大きなウェートを占めておるということは重々承知をしておるわけでございます。したがいまして、こういう通達を出すときには、文部省との間にも連絡をとりながら実際は処理をしておるというようなことであるわけでございます。
 考えてみますと、だんだん核家族化が進んでおる、あるいは小さい家庭がふえておるというような状況になっておるわけでございます。また受験競争というようなこともありますし、地域社会の連帯感というのがだんだん薄れてきているというような、そういう社会的な事情の変化ということも背景にはあるように思うのでございます。しかし基本的にはこのいじめの問題というのは、ただ単にそういう問題を通り越しまして、やっぱり我々が心配しておるように根底には他人に対する思いやりの欠如であるとか、あるいはいたわりの心が欠けておるとかいったような人権意識の問題に絡むような問題もあるのではないか。そういう意味合いから、やっぱり総体的な問題として事柄を処理する方がいいのではないかというような意味でこの通達を出していただいたわけでございます。
 したがって、今後学校との関係はもちろんのことでございますが、地域社会全体の人権意識を高めるという背景の中でこういう社会的な変化に少しでもうまく対応していく、そういう中でこのいじめの問題を解決していきたいというような気持ちでございますので、御了承いただきたいと思います。
#153
○橋本敦君 そこで、教育的配慮、人権問題いろいろ出ております片方に、少年事件の処理を裁判所が責任を持って非行克服のためにどうやっていくのがいいかという、常に問われる問題が依然としてあるように思います。そこで、裁判所にここ数年の少年事件の推移、そして少年事件を担当なさる裁判官が少年事件の増加に見合って十分にいらっしゃるのかどうか。あるいはその審判の前提となる適正な調査を行う必要があるわけですが、その調査で調査官の数が私は足らないという話をよく聞くのですが、調査に遺漏なきように期せられておるのかどうか。裁判所職員定員法も出ておるわけですが、裁判所の増員がままならぬという状況の中でいかがなものか心配しておりますのでお話をいただきたいのであります。
#154
○最高裁判所長官代理者(山口繁君) まず最初に、最近十年間の少年事件数の動向を御説明いたします。
 昭和五十年の少年事件の新受件数は、一般保護事件が約二十万件、道路交通保護事件が約二十四万件、合計約四十四万件でございました。昭和五十九年になりますと、一般保護事件が約二十九万五千件、道路交通保護事件が約三十九万件、合計六十八万五千件と増加しているわけでございます。一方、裁判官の数は昭和五十年当時が三百四十一人でございました。昭和五十九年には三百四十四人、それから調査官数は昭和五十年当時が千四百六十四人でございましたが、五十九年は千四百六十七名。そういたしますと、事件数が非常にふえているのに、裁判官、調査官はたかだか三名ずつの増ではないかという御指摘が当然あろうかと思います。
 確かに昭和五十年と五十九年とを比較いたしますと、二十四万五千件の事件の増加がございます。しかしながら、その内訳を見てまいりますと、道路交通事件の増加が約十五万件でございます。一般保護事件の増加は約九万五千件、その一般保護事件の増加のうち約七割が万引きあるいはオートバイ、自転車の乗り逃げによります窃盗、さらには放置されている自転車の乗り逃げによる遺失物横領等が占めております。かたがた非行の低年齢化ということによりまして中学生を中心といたします低年齢少年の非行が一般保護事件の半数を占めております。これらの多くは遊び型非行と言われますように一過性の要保護性の強くない軽微な事案でございますので、事件数に示されるほど負担がふえるものではなかろうかと思います。
 それにいたしましても、事件数が多いのでございますから、それなりに負担もふえてくるわけでございますが、道路交通保護事件について申しますと、実は昭和四十年前後には七、八十万件あったわけでございますが、その当時と比較いたしますと、現在の事件数はそれほど負担過重でもないだろう。それから、一般保護事件につきましても、昭和四十一年当時は約二十五万件ございました。その内容は、傷害、恐喝、暴行というような粗暴犯あるいは強盗、殺人、放火、強姦という凶悪犯、これが非常に多うございました。内容的にも非常に難しかったわけでございます。そういう状況もございますので、事件数の増はございましても、今回要求いたしております裁判官三名、調査官三名、事務官三名の増員措置が講ぜられますならば、それほどの負担過重もなく、適正迅速に少年一般保護事件の処理がなし得られるものと考えております。
 今後もなお少年一般保議事件等の事件の推移を十分見きわめまして、必要な増員措置はお願いしてまいりたいというように考えております。
#155
○橋本敦君 局長の御説明は理路整然とお話しをいただいて、それなりによくわかるわけですが、それにしてもこの数の増大で、これだけの人員の増大ではという感じが残るんですね。
 そこで、私も全司法の皆さんともよく話しますが、やっぱり少年調査官の増員というのはいつも要求の一つに、ほかにいろいろありますが、出てまいります。そこで、一説では今局長がお話しのようなことで、事件数は保護事件でこの十年ほどで九万、それから道交法関係では十数万ふえているというようなこともあって、簡易迅速に処理するということに主眼を置いて、モデル試案をつくられて、極めて簡易迅速にいくような方式をおとりになっているのではないだろうか。それが結局少年事件の、一つは家庭環境も含めた慎重な調査、子供たちの性格、資質を含む評価、時間がかかる問題がネグレクトされてしまって、約束手形訴訟事件のように形の決まった判決ということで、機械的にどんどん出てくるようになれば、これは家定裁判所の審判あるいは取り扱いとしていかがなものかということを危惧する向きが耳に入ってまいりましたので、そこらあたりそんなものじゃないのだろうと思いますが、どういう御方針なのか教えていただきたいわけであります。
#156
○最高裁判所長官代理者(猪瀬愼一郎君) 家庭裁判所が取り扱います少年事件には、万引きとか自転車のいわば乗り逃げ等の事件に多く見られますような一過性の軽微な事件から、少年の資質や環境に問題の見受けられます複雑、困難な事件まで多種多様ございます。これらの事件に対して家庭裁判所としましては一律な取り扱いをするというのは適当ではないと考えておるわけでございまして、複雑、困難な事件に対しては綿密な調査を行うことが必要でございますし、他方、一過性の軽微な事件につきましては、必要な限度での簡略な調査によりまして、早期に少年に対して手当てを施して、早期治療を図っていくという基本的な方針で事件処理を行うということが少年の健全育成の理念にも沿った適正妥当な処理であるというふうに考えております。
 こういう方針に基づきまして、既に昭和四十年代からでございますけれども、家庭裁判所の一部では軽微事件の処理要領というようなものを作成し始めておりまして、現在では全国の大多数の家庭裁判所において、こういった方針に基づいた処理要領を作成して、綿密な調査を要する事件とそうでない事件とを選別して、事案に応じた適正迅速な事件処理を行うというやり方に工夫を払ってきております。
 こういった状況のもとにございますけれども、少年事件の処理手続の運用が、各家庭裁判所を個別的に見ますと処理要領の内容におきましてある程度の格差が見られるわけでございまして、全国的にはやはりこれらの運用の格差をできるだけ解消して運用の標準化を図っていくと同時に、その手続の運用が適切妥当なものになるようにしていく必要があるということは、これは適正処理の観点からも、また法的な安定というような観点からも、さらには少年に対する教育効果を確保するという観点からも望ましいことでございます。この点につきましては、全国の家庭裁判所の裁判官の間におきましてもおおむね異論のないところでございまして、かねてから各庁より標準的なモデルをつくってもらいたいという声が高くなっていたところでございます。私どもはそういうような要望を受けまして、各庁で処理要領の作成をする場合、あるいは既にお持ちの庁ではそれを改定する場合に参考に供する趣旨で標準的な内容のモデルを検討しておるところでございまして、その準備として各庁の意見をあらかじめ聞くためにたたき台としてモデル試案を作成したものでございます。
 こういうような経過でございますので、モデル試案の主眼としますのは少年事件の適正な処理、これがあくまでも主眼でございまして、その適正な処理の範囲内において迅速な処理をも図っていくということはもちろん考えているわけでございますけれども、適正な処理を犠牲にして迅速な処理を図るという考えは持っていないところでございます。モデル試案の内容は、今御説明申し上げましたように、各家庭裁判所の処理要領を十分参酌して作成しておりますので、全国的に見ますと、平均的、標準的な内容のものとなっております。したがいまして、このモデル試案によりまして、適正な処理というものをいわば犠牲にして効率的な処理を図っていこう、そして現状の処理を大幅に変更しようと、そういうような考えは持っていないわけでございます。
#157
○橋本敦君 御趣旨はよくわかりました。これからそのモデル試案に基づく運用でずっと合理的にやっていくということが実際出てくれば、これはいいわけで、慎重に各家庭裁判所の御意見を聞きながらやっていただいておるようですが、他方、少年法制定というような動きもあり、依然として非行事件ということが社会的に問題になり、私は広い視野で、時間をかけてもこの問題というのは慎重に考えていく必要があるだろうと、こう思っておりますが、きょうは時間がありませんのでこの程度で、またの機会にお教えをいただきたいと、こう思っております。それにしても、定員法にも関連をしますが、この家庭裁判所について、増員の方も局長の方でひとつ引き続きよろしくお願いしておきたいと思います。
 次は、供託に関連をして一、二点お伺いをしておきたいと思いますが、端的に言いまして、これから六年、この前は三年でしたが、六年ということになりますね。六年たったらまた今度十年かと、こういうことも考えられないわけじゃないのですが、ここらあたりの見通しというのは、私は国民に対して政府が責任を持ってやっていることなので、余りずさんに受けとめるわけにいかない大事な問題だなと、こう思うんですね。
 そこで、当初の三年というのは、これはやっぱり延びるという含みが実際は法務省にあったのか、いややっぱり三年ということでいけるという見通しだったのか、それならなぜそこが狂ったのか、今後の六年の問題はまた狂うのじゃないか、そこらあたりの疑問がありますので、この際お考えをお聞きかせいただきたいと思います。
#158
○政府委員(枇杷田泰助君) 昭和五十七年から三
年間供託金の利子の停止をいたしておるわけでございますが、その三年間の停止の措置を考えましたときには、政府の財政再建が三年間でできるであろうという見込みで、私どももそれを信じ、かつ期待をしておったわけでございます。ところが、その後財政状況が必ずしも好転をいたしませんので、やはり歳出縮減を考えなければいけないという状況が三年前と比べましてまさるとも劣らない状況でございますので、これをまたさらに延長をお願いをしておるわけでございます。
 その将来の見込みといたしますと、昭和五十八年の閣議決定で昭和六十五年度中には赤字公債依存体質から脱却するという目標を掲げておりますので、それまでには財政が再建されるであろうという期待を私どもは強く持っておるわけであります。したがいまして、六年後には財政的に申しましても供託金の利子が復活できるようになるのではないかということで考えております。
 しかしながら、基本的に考えますと、国の財政がよかったり悪かったりすることによって供託金の利子がついたりつかなかったりするということは問題ではないかという問題意識を持っております。したがいまして、そういう財政との問題とは切り離して、何かこの供託制度を考えて運用する方法はないだろうかということも同時にこれからの研究課題としては私どもは受けとめておるわけでございます。ただ、いろいろなことも考えておりますけれども、なかなか現在のところは妙案がないというところでございますけれども、これは真剣に考えていかなければならないことだというふうに思っております。
#159
○橋本敦君 私が言いたかったのはそこなんですね。
 そもそも供託制度が発足して以来、利息をつけない制度で発足したら、これはまたそれなりのことなんです。しかし供託法で利息を付す、旧法で言えば「付スルコトヲ要ス」とまできっぱりと言って、それが多年にわたって行われてきた以上は、それ自体国民の受ける利益になっておるわけですから、だから、それを財政事情という漠たる展望で切っていくということが、そういうことが国民の利益を奪う合理的理由として成り立つかどうかということで私はいささか疑問を持っているわけですね。現にこの供託制度ができてから今日まで歴史は八十年、長いわけですが、いろいろ国の財政事情が逼迫した状況は戦前においてもあったし戦後においてもあったし、いろいろあったわけですが、こういう国の財政事情逼迫という理由でもって供託の利息支払いをやめるというようなことを法をつくってやったという事例はこれまでどうなんですか。
#160
○政府委員(枇杷田泰助君) 昭和に入りましてからは、利息を払わないような措置をしたというのはこの五十七年度からが最初でございます。
#161
○橋本敦君 昭和以前はどうですか。
#162
○政府委員(枇杷田泰助君) 明治三十二年以前には一時供託金の利息を払わなかった時代がございます。
#163
○橋本敦君 私は知らないんですが、その一時というのは何か国の財政事情があったのですか。その古い話を私知らぬのですが、ちょっと調べてこなかったのですが。
#164
○政府委員(枇杷田泰助君) 財政事情ということも背景にあったのかもしれませんが、利息は供託金についてはつけなくてもいい性質のものではないかという議論からつかなかったものだろうと思います。ただしかし、やってみましたけれども結局つけた方がいいという議論がまた大勢を占めて復活したというふうに承知いたしております。
#165
○橋本敦君 ということで、大臣もお聞きのように、私の知る限りでも財政事情逼迫は歴史のいろいろな波の中であったわけですね。あったわけですが、言ってみれば、金額もわずかな、国民への利益として慣習的にも法的にも定着しているこの利息を財政逼迫だからといって切ってしまうというのは本当に前回から初めてなんですね。だからしたがって、こういうものを、国の財政事情で一々命がつながったりつながらなかったりというようなことで将来どうかという点もありますので、今局長もおっしゃいましたけれども、全くそういう意味で合理性がないどころか不安定性が強まるわけで、今後どういうように処理するか、六年たった以後、私はこういう財政事情という不安定なようなことで切ってはならぬと思うんですが、これからの積極的な検討は基本的な姿勢の問題としてお考えいただきたい、こう思うんですが、いかがですか。
#166
○国務大臣(嶋崎均君) この供託金の問題につきましては、各国の事例というようなこともよく調べてみなければならない、その中でやっぱりつけておるところと、つけておらないところもあるようでございます。また、日本の歴史を比べてみましても、つけないというようなときもあります。ある意味では指導奨励的な発足当時の意味というものもあったのかと思うのでございますが、その後、漸次漸減をして、非常に残念なことでありますけれども、財政事情が逼迫をしたというようなことで、非常に法務省の予算、窮屈な状況の中でございますので、財政再建という基本的な認識というものを理解した上で五十七年から三年間停止をした。今回財政の事情というのはより以上厳しい事態を迎えておりまして、少なくとも六十五年には国債依存体質から脱却をしたいというような気持ちで、引き続き無利子でお願いをするというようなことになったのが段取りであるわけでございます。
 しかし、この問題を考える場合に、先ほど民事局長からもお話がありましたように、財政事情がどうだからつけたりつけなかったりというのは、これはやっぱり制度の本質から考えて、私は余り適当なことではないというふうに思っておるわけでございます。前からこういう無利子で来ているというようなことで、引き続き復活するということを意図しておりましたようなこともあったかと思うのですが、今回は六年というような長い期間でもあるわけでございまして、この次いろいろな法案を御審議していただくというような段階までに、やはり制度を根本的に整理をして、やっぱりきちっとしたものにするための努力をしなければいけないのではないかというふうに思っておる次第でございますので、そういう点で御了承願いたいと思います。
#167
○橋本敦君 時間が参りましたので最後の質問になるわけですが、今の点で言いますと、国の財政赤字の場合でも約二千億に上る供託の運用金というのは運用によってそれ自体利益部分は出ておるわけでして、それが直接どういう利益かは別として財政赤字のもとでも運用利益というのは上がってくるわけで、財政赤字だけを理由にしてはどうかなという気が私もしておったわけです。
 最後に法務大臣、一点だけ、もう時間がなくなりましたので伺いますが、いわゆる登記特別会計の新設、これに関連をして、将来コンピューター化ということでいくのですが、なかなか大蔵省が難色を示しておった登記特別会計が、大臣、皆さんの奮闘でようやく認められたということにもなるのだろうと思うんですよ。しかし、その裏に私が心配するのは、法務省民事局が出された登記特別会計とコンピューター化というのを見ますと、稼働人員の推移予測として、現在約四千人、ところが今の登記事務の激化で十年後には六千人にふえなければならぬだろう、しかしコンピューター化をやるならば二千人程度に減るだろうという、こういう図示があるんですよ。
 つまり私が言いたいのは、もうずばりと質問しますが、特別会計制度、特会を大蔵省に認めてもらうというその裏に、法務省は合理化によって、機械化によって職員の人員削減をやりますよということをおっしゃって、そして大蔵はそれを認めて特会を認めたというようなことで、この裏に合理化と人員整理の約束があるのではないかと心配をしている向きがあるんですが、それがこの表に出ているような絵にもなっておるのじゃないかと心配するんですが、そういうことはあるのかないのか、その点ひとつはっきりおっしゃっていただいて質問を終わります。
#168
○政府委員(枇杷田泰助君) そのような約束は大蔵省との間にはありません。現に昭和六十年度で特別会計の予算が計上されたわけでございますが、同時に昭和六十年度におきましても登記関係につきましては純増で二十数名の増員が計上されておるわけでございます。
#169
○橋本敦君 大臣、間違いないですね。
#170
○国務大臣(嶋崎均君) 民事局長の答弁のとおりでございます。
#171
○橋本敦君 そうですか。ありがとうございました。
#172
○中山千夏君 まず最初に、死刑確定者の処遇についてお伺いをしたいと思います。
 その前に、死刑制度の現状というようなことについてちょっとお話をしたいのですが、今のところ死刑の全廃国、これがアイスランド、オーストリア、オランダ、デンマーク、スウェーデン、西ドイツ、ノルウェー、フィンランド、フランスなどなど二十五カ国に上っているそうです。それから戦時下などを除いて廃止をしている、つまり通常犯罪について廃止をしているという国がイギリス、イスラエル、イタリア、カナダ、スイス、ネパール、ブラジル、メキシコなどなどの十五カ国、州によって違う国、州の中に廃止をしているのが少なからずあるという国がアメリカ、オーストラリアの二カ国だそうです。今申し上げた国々の中に西側先進諸国と呼ばれる国はほとんどすべて入っているわけなんですね。
 それで、よほどの天変地異とか大戦争とか、そういうことでも起こらないで平和に発展が続けば、やがては日本の国もこの廃止国あるいは準廃止国の仲間に入らざるを得ないだろうというのが識者の大方の意見みたいです。でも、残念ながら今では死刑制度はまだ存置されていますし、政府は廃止の方針を持っておられません。世論も存置を支持しているというふうに言われていますし、そういう数字もいろいろな調査で出てきています。
 世論調査の一つなんですけれども、ちょっとおもしろいのがあったので御紹介したいと思うんですが、一九八三年の六月にNHK放送世論調査所が調査をしたものの一部ですが、全国の有権者千八百人を無作為抽出して、個人面接法で行った調査だそうです。その人たちに死刑についてどう考えますか、次のリストの中から選んでくださいというふうに質問をして、その答えが、一、すぐにでも廃止する、これが二・八%、二、徐々に廃止の方向に向かう、一〇・六%、三、死刑制度は残すが猶予制度などの運用面で死刑を少なくしていく、二八・七%、四、現在どおりの死刑制度を存続させる、四一・五%、五、このようなことは考えたことがない、九・五%、六、わからない、無回答、六・八%、こういう結果だったそうです。
 これ見まして、死刑存置という意見の人でも必ずしも冷厳な意見ばかりではないんだなということに気がつきまして、何となくやっぱり生命尊重という日本人の心根といいますか、そういうものがあるんだなと思ったのは、三番目の死刑制度は残すが猶予制度などの運用面で死刑を少なくしていくというのが二八・七%もあったということなんですね。それと死刑は今すぐやめよというような意見を足してみますと四二・一%になるわけなんです。その反映かどうかわかりませんけれども、執行数はわずかながら減ってきているし、それでも世界の死刑存置国の中では非常に日本は執行率が高いということで有名なんですけれども、少なくとも著しく執行が増加するというような感じはないと思います。
 結局こういう現状の中で死刑確定者として獄中で何年も過ごすというのが割合一般的になってきているんですね。そこで、未決であるけれども未決じゃないという非常に特別な立場の死刑囚をどう扱うかという大きな問題が出てくるのだと思うんです。
 私は、死刑因の人権を守るというような立場から、処遇の一端、接見と信書発受について、きょうはちょっと質問をしたいと思って考えてきたのですが、最初に、死刑囚はどの程度の接見や信書発受を現実に許されているのかということを教えていただきたいと思います。
#173
○政府委員(石山陽君) 現在、全国七カ所の施設にそれぞれ分散されまして死刑の確定者が収容されておりまするが、現在の監獄法下におきます死刑囚と一般人あるいは親族との面会につきましては、各施設長のいわば裁量行為としての許可の運用によって行われているのが実情でございます。そのために、これを統一した数量的な基準というのは現在ありません。そこで、各自各施設によりまして運用上の差がございまするけれども、おおむね例えて一つの例を申しますると、一般的な施設でありますれば、死刑囚の人々と外部の人の面会は月に数回程度、発受回数ということで信書の数になりますると、これはかなり上回っておりまするが、毎日一回あるいは二回、通数にして二通ないし三通というような例が多いように承知いたしております。
#174
○中山千夏君 もう少し各所で、今現実に例えば去年あたりはこうだったというような調べはなすっていらっしゃいませんか。
#175
○政府委員(石山陽君) 実は中山委員の御質問がございましたのですが、急なお話でございましたので、全部の七施設についての収容者全員につきまして総トータルをやっている暇がございませんでした。
 ただ、おおむねの傾向を申し上げたいと思いますが、大体接見は個人差がありまして、親族が全くいない人もおります。そういう場合には年間通じてゼロ回という人もおりますし、再審の申し立てその他がありまして支援団体の方が非常に後援をされておるという関係で、面接数が著しく多くなっている場合もございます。特に東北にございまする宮城県の仙台拘置支所でございますが、この場合には多少有名な死刑囚がたくさん入っておるという関係がありますので、支援団体の数も多く、あそこはちょっと突出して回数あるいは発受回数が多いようでございまするが、それを除いた場合、大体これまでの実績を報告を中心にして見ますると、おおむね接見については押しなべて年間五、六回程度、それから信書の発受の回数は年に百回前後、このくらいが趨勢ではないかと思っております。
#176
○中山千夏君 それは一人の方がということですね。
#177
○政府委員(石山陽君) そのとおりでございます。
#178
○中山千夏君 未決囚の方たちはどうなっているんでしょうか。
#179
○政府委員(石山陽君) 未決と申しますか、いわゆる刑事被告人の立場にあります被勾留者を中心に申し上げますると、これは現在のところ、特に接見交通につきまして、裁判所の指定のある場合以外、原則として自由でございますので、通数、回数の制限はございません。
#180
○中山千夏君 そうすると、刑を受けている方、既決の方はどうなっているのですか。
#181
○政府委員(石山陽君) 既決になりまして、いわゆる受刑者の段階になりますると、各施設で既決の処遇を受けるわけでございまして、こちらになりますると、最初の段階では、例えて申しますると行刑累進処遇令という今私どもの内部省令によって処遇が行われるわけでありますが、最初四級に格づけされました受刑者につきましては親族に限って月に一回だけ接見ができる、あるいは信書も月に一回だけ出せる、こういうふうな最低限の処遇から始まりまして、順次施設内の行刑成績等勘案して進級してまいります。一級になりますると被勾留者と同じように発信回数とかあるいは面接の回数については制限がなくなる、こういうような措置をとることにいたしております。
#182
○中山千夏君 私も少し弁護士さんなんかに実情を伺ったんですけれども、今のお話でもそうですが、ばらつきはあるけれども全体として未決囚や既決囚に比べると死刑囚の外部交通の制限はかなりなされているという感じがあるんですね。その制限は昭和三十八年三月十五日の矯正局長通達矯正甲九六号というものに端を発しているというこ
とを聞きました。それで実際、先日死刑囚の外部交通について法務省に問い合わせましたら、矯正局の方から説明書をいただいたんですけれども、その文書の内容も矯正甲九六号という通達とほぼ同文でした。ですから、今もこの昭和三十八年の通達に基づいて制限が行われていると思うんです。
 そこで、その通達を読んでみたんですが、そうするといろいろ疑問が出てきましたので、この機会にちょっと伺いたいと思うんですが、まず冒頭で「接見及び信書に関する監獄法第九章の規定は、在監者一般につき接見及び信書の発受の許されることを認めているが、これは在監者の接見及び信書の発受を無制限に許すことを認めた趣旨ではなく、条理上各種の在監者につきそれぞれその拘禁の目的に応じてその制限の行なわれるべきことを基本的な趣旨としているものと解すべきである。」とあるんですね。これ、確かに私も監獄法見てみますと、四十五条の二項、四十六条の二項なんかあって、無制限に許すことを認めたものではないですね。だけれども、四十五条、四十六条ともまず接見を許す、信書の発受を許すとあるわけなんですよ。だから基本的に許すけれども在監者のそれぞれの拘禁目的に応じて制限をしますよというのが本旨だと思うんですね。
 その制限にしても、四十五条の二項、四十六条の二項を見ますと「但特ニ必要アリト認ムル場合ハ此限ニ在ラス」というふうに書いてあって、制限も絶対的なものではないわけですね。だから、第九章は全体として制限をつけながら接見、信書発受を許そうとするものと読むのが普通の読み方、妥当な読み方であって、通達みたいに「制限の行なわれるべきことを基本的な趣旨としているものと解すべきである。」というのは曲解に近いように思うんですが、いかがでしょう。
#183
○政府委員(石山陽君) まさにその辺が私どもが今回監獄法の改正をしたいということでお願いをした本来の趣旨でありまして、ただ明治時代、この法律ができました際に、何々することを得、あるいは何々することを許すというのは施設長の裁量行為によるという趣旨によるべきだと私どもは理解しておるわけでございます。ですから、許すという表現が今日の時代に即応するかどうかということで、新しい監獄法であります刑事施設法のもとにおきましては、被収用者の信書の発受あるいは接見は権利としてこれを法的に保証する、制限はむしろ原則としてしないという方向に持っていきたかったわけであります。
 したがいまして、現在の監獄法下におきます解釈としては、四十五条、六条を御指摘になりましたけれども、私どもの理解ではまさにこの通牒の頭にあります理解、これが現在までの監獄法の有権解釈だという実情になるわけでございます。
#184
○中山千夏君 その辺が普通の世の中と違うのかなと思うんですけれども、法というのがありますね。だけれども法を運用するのは人でしょう。そのときに通達なんかが出されるのは、結局その法を効果的にというか、実情に即して運用するために通達が出されるのだと思うわけです。そうすると、収容されている方たちの人権を守るために監獄法も改正したいんだというようなお気持ちをお持ちなら、今の監獄法を実行なさる際にもそのお気持ちでもってなされば、何も監獄法をつくった当時の気持ちに戻ってやることはないので、人権を守る立場のお気持ちでなさればいい。その人権を守る立場から言わせていただければ、私は通達のように解してはだめだと思います。これは、いや解してよろしい、正しいのですと言われれば、私は法律の専門家ではありませんから、正しいかどうかは別として、監獄法を直したいというほどの人権を守る気持ちをお持ちならば、ぜひともそういう解釈で、つまり人権を守る立場の解釈でやっていただきたいとお願いをしておきます。
 それからもう一つ。次のところに移りますけれども、その先に「ところで、死刑確定者には監獄法上被告人に関する特別の規定が存する場合、その準用があるものとされているものの、接見又は信書の発受については、同法上被告人に関する特別の規定は存在せず、かつ、この点に関する限り、刑事訴訟法上当事者たる地位を有する被告人とは全くその性格を異にするものというべきであるから、その制限は専らこれを監獄に拘置する目的に照らして行なわれるべきものと考えられる。」、これも何度も読まないと私なんかよくわからなかったんですが、「この点に関する限り、刑事訴訟法上当事者たる地位を有する」以下のところは意味わかるのですね。その前の「死刑確定者には監獄法上被告人に関する特別の規定が存する場合、その準用があるものとされているものの、接見又は信書の発受については、同法上被告人に関する特別の規定は存在せず、」と、ここまでのところを私にわかるようにちょっと説明をしていただきたいんです。私は学歴は高卒、それで法律は素人、そういう人にわかるようにちょっと説明をしていただきたいと思いますけれども。
#185
○政府委員(石山陽君) 天下の国会議員に教授をする役を仰せつかりまして大変恐縮でございまするけれども、それでは簡単に申し上げます。
 監獄法の第九条というのがございまして、これは準用規定と申しまして、この現在の監獄法は非常に簡素にできた法律でございまして、大体同じような規定につきましては通則を書いて、それをほかの分野に被収容者にも準用するという建前でできております。その第九条の頭に「本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク外刑事被告人ニ適用ス可キ規定ハ」以下云々とありまして、「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用シ」と書いてございます。
 そこで、その次の先ほど来おっしゃっております四十五条の接見のところをもし条文おありでしたらごらんいただきたいのでありますが、「在監者ニ接見センコトヲ請フ者アルトキハ之ヲ許ス」というのが第一項にございます。ここには在監者と書いてありますが、刑事被告人という言葉にはなっておりません。ただし、そのちょっと前に三十六条がございます。「在監者の頭髪鬚髯ハ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得」、何のことやらおわかりにならぬかもしれませんが、頭やひげはこれはそらしたり切らしたりすることはできるという、これも監獄法が難解でぜひ国民にわかるように改正したい理由の一つでございます。余談を申し上げて恐縮でございます。「但刑事被告人の頭髪鬚髯ハ衛生上特ニ必要アリト認ムル場合ヲ除ク外其意思ニ反シテ之ヲ翦剃セシムルコトヲ得ス」と、こうなっております。
 すなわち、平たく申し上げますれば在監者に官側の衛生保持の見地からある程度その長さ、いわゆる丸坊主を含めて規制することができるのだけれども、刑事被告人という未決の段階の人々については衛生上特に必要ありと認められる場合以外はその意思に反しては翦剃せしめることができない、つまり刑事被告人は一般の受刑者とそれだけ処遇上の差異があるわけです。このように刑事被告人を特に書いてあります規定があれば、その例によって死刑確定者の場合も準ずることができる、そういう趣旨でございます。
 したがいまして、四十五条の接見は在監者一般を通則として書いておりまして、刑事被告人に関する特則の適用がございませんので、明治の監獄法のもとにおきましては、いわゆる刑事被告人と同じ待遇はできない、こういうように解釈する、こういうことであります。おわかりいただけましたでしょうか。
#186
○中山千夏君 大変よくわかりました。前にこれをいただいたときにもやっぱりわからなくて電話をして保安課長さんが今と似たような御説明をしてくださったのですが、まだ私は自信がなかったので確かめてみたかったわけなんです。
 それといいますのは、つまり私流の言葉に直しますと、第九条の準用規定のところでは「刑事被告人ニ適用ス可キ規定ハ」と「刑事被告人ニ」と書いてある。四十五条の接見とか、それから四十六条の信書に関しては「在監者」としか書いてない。だからこの第九章の「接見及ヒ信書」の規定は準用規定に当たらないのだと、そういうことですね。そのときに、そういうことですねと念を押したら、課長さんが、そうですとおっしゃったん
ですね。
 ただ、私なんかがこれを解釈しますと、九条は、刑事被告人に適用すべき規定は死刑囚に準用すと、こう言っているわけですね。そうすると九章は、つまり接見、信書の方は在監者一般に接見、信書を許している。もちろん個別制限はありますけれども許している。そして在監者とは当然刑事被告人を含む。それで、だから九章全体は刑事被告人に適用すべき規定であって、また第九条には「本法中別段ノ規定アルモノヲ除ク」とありますけれども、接見、信書の第九章には死刑囚について別段の規定はないので、第九章は死刑囚に準用されるべき規定だとこういうふうに読むわけですよ。
 つまり監獄法は原則として接見、信書規定を死刑囚に準用するとしている、こういうふうに解釈するのが、文字面じゃなくて、つまり刑事被告人というふうに書いてないからといっても在監者の中には含まれるわけですから、そういうふうに読むのが素直な読み方であろうと私は思うのですが、いかがですか。
#187
○政府委員(石山陽君) 今委員仰せのように、在監者という形は広義の概念でございまするから、未決、既決を両方含むという意味においては同じでございます。ただ、それがどういう法律効果になるかというと、既決、未決の区別なく一律に押しなべてという解釈になっているのが現在の監獄法でありますから、刑事被告人はかつて特則があり、特に受刑者より処遇上緩和できた規定がないから、一律に受刑者もあるいは刑事被告人も同じように取り扱われてきたということを意味するということになります。
#188
○中山千夏君 ですから、私が言いたいのは、原則としては九章は準用規定に当たらないというのではなくて、原則としては準用規定に当たる、しかしながら死刑囚というのは刑事被告人とは違うのであるから例外の規定、制限があって当然であるという言い方なら全然抵抗がないわけですよ。だけれども、この通達を読みますと、もう原則からして監獄法にはそもそも接見、信書の項目は準用規定には当たらないのである、それこそが監獄法の原則なのであるという書き方ですね。そうなるとちょっとおかしいと思うのですよ。
 私はやはり制限をするなとか、してはいかぬとか、制限の内容とかいう問題より先に、例外として実際に行政をやっていく中でいろいろな制限とか例外とかが出てきて、それが通達でなされるということは否定はしないわけです。だけれども、それをする際に原則をねじ曲げた上でもってやるのは、例えば収容されている人たちの管理に非常に悪い影響を及ぼすというふうに思うんですね。それはどうお考えになりますか。
#189
○政府委員(石山陽君) 気持ちは同じでございますので、別にこれ余り理論的にお手向かいするつもりはないわけでございまするけれども、準用ということに対して先ほどの第九条でございますが、「刑事被告人ニ適用ス可キ規定ハ」「死刑ノ言渡ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用シ」と書いてありまして、在監者に適用すべき規定は在監者に準用するというのでは同じことになってしまうわけでなんでございますね。その「刑事被告人ニ適用ス可キ規定」というのが在監者と書いてあったのでは、法律の読みではこれは刑事被告人も含まれるではないかと、一般観念としてはわかりまするけれども、それは特則を決めたことにならないから適用に、あるいは準用にならない、これを申し上げておるわけでございます。
#190
○中山千夏君 気持ちは一緒だとおっしゃるので、そこはいいんですけれども、私、これ法律的に見たらおかしいのかなと思いまして、専門家に御質問するのだからと思って事前に弁護士さんにここのところをお話を聞いたんです。その弁護士さんも決していわゆるこっち方に偏向している方ではなくて、どちらかというと、田中角榮さんの弁護団に入っていらっしゃる弁護士さんに聞いたんですけれども、その方も原則としてはやっぱり準用、原則としては接見、信書は刑事被告人に適用さるべきものであって、それは死刑囚に準用さるべきものである、それが監獄法の原則であるということを伺ったので、私はほとほと安心した次第なんです。
 それで、お気持ちも一緒だったならば、同じ制限をするにしても原則をねじ曲げたような表現のこの昭和三十八年という通達はやめにして、原則を踏まえた通達を出し直すとかとするわけにはいかないのですか。
#191
○政府委員(石山陽君) 先ほど気持ちは同じだと申し上げましたのは、このように現行法の監獄法におきましては刑事被告人に準用すべき規定がないために在監者一律の接見交通制限という格好にならざるを得ないわけであります。
 そこで、私どもの先輩と申しましょうか、明治以来の行刑の実務家たちは、例えば昭和八年につくりました行刑累進処遇令によりまして、監獄法の本則で申しますと、例えば懲役受刑者は月に一回、禁錮受刑者は十五日に一回しか接見ができない、こういう規定を運用上省令で改めまして、先ほど申しました四級の場合は月一回であるが一級の受刑者になれば制限をせずに会わせることができる、こういうふうにいわば生活の知恵と申しましょうか運用してまいったわけであります。それと同時に、死刑の確定者につきましても、戦後新しい刑事訴訟法もできましたし、新憲法の理念によりまして、接見交通につきましても単なる明治時代の在監者一律の制度でいいかということになりましたので、運用上はある程度刑事被告人、つまり未決の段階でございますが、その収容者に合わせられるように、各個の裁量について大幅に施設長に任せたわけでございます。
 ところが、その運用が各個の施設長によってばらばらになりました。それをある程度統一して一応の基準をつくりたいというのが昭和三十八年に通達を出した趣旨でございまして、これはむやみに制限しようとか、受刑者と同じようにしようという意味ではなくて、一遍広げましたけれども、それが乱用されたり、あるいは回数が著しく多くならないように、これはなぜ私がこういうことを申し上げるかと言いますると、接見の際には必ず職員が付き添わなければいけません。それから現在の監獄法の規定でございますると、接見を請う一般の方がお見えになったときには身元が確実な人かどうかを調査しなければならぬ。これは法律上決まっております。そういう方々がたくさん一日に何回もお見えになると管理運営上も困ってしまう。こういうこともございましたので、適正な接見交通が行われるようにという趣旨から三十八年に通達を決めたものでありまして、要するに私どもは明治時代の監獄法に加えて追い打ちをかけるような意味で三十八年の通達を出したという意味ではないわけであります。
#192
○中山千夏君 通達出してはいけないと言っているわけじゃないし、制限があってはいけないと言っているわけじゃないんですよ。同じ制限するのも、制限するのが当然なんだという、原則としては制限があってはならないとまでは言わなくても、制限するのが当然だという原則でないにもかかわらず、それを私に言わせれば曲解して制限するのが正しいのである、当然なのである、だから制限をするのだという通達の論法が、それを受け取って各所で管理されるわけでしょうけれども、それに対して非常に悪影響があるだろうと私は思うわけです。
 だから、こういう前文のところで、監獄法の趣旨は制限こそが趣旨であるとか、それから監獄法を文字づらで読んで制限をするのがむしろ原則なのであるといったようなことを冒頭にうたっている通達じゃなくて、そういう考え方じゃない方法で制限なり何なりをなすったらどうかと、そう申し上げたわけです。それはひとつそういう通達の出し直しはできませんかとお伺いしたけれども、お答えがないところを見ると、できないらしいので、こればかりにこだわっていても仕方がないので、私自身はこういう通達はやめてほしい、こういう考え方はやめてほしい、それで同じ制限をするにしても原則にのっとった制限にしてほしいと切なるお願いだけを申し上げておきます。
 それから、制限の方ですけれども、これはちょっと大臣に御意見を伺いたいんですが、死刑囚の外部交通、今実情を伺ってもむしろ既決の人々よりもかなり制限を受けているわけですね。この制限は再審の作業ですとか手続を阻む大きな壁になっているわけなんです。冤罪というのはあってはいけないものだと思いますし、そういう努力を皆さんなすっていると思いますけれども、あり得ることですし、それからこのところその実例にも事欠かないわけです。幾ら死刑確定者といっても、自分が無実だと信じたときにはその罪を晴らす努力をするというのは当然の権利だろうと思うし、それをいたずらに国家が妨害してはならないと私は思うんです。その意味からも死刑囚の外部交通というものを著しく制限するのはどうかと私は思うんですが、大臣はどうお考えですか。大臣の御意見を聞かせてください。
#193
○政府委員(石山陽君) 実務の運用でございますので、先に私からお答えをさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
 今委員の御質問の中で一点気になりましたのは、既決よりも死刑囚の方が制限されている、強化されているという前提で御質問がありましたけれども、既決の人よりはむしろ制限は緩和されておるというのが前提でございます。それから、私どももいわゆる死刑の確定者という人々の処遇につきましては、新しい刑事施設法の中で特に一章設けまして、それなりに現行の監獄法よりもはるかに進んだ処遇が行われるようにと配意しておったつもりでございまするけれども、実際の運用といたしましては、死刑の確定者というのは受刑者でもなく未決者でもないという、非常に特殊な法的地位にあるということをまず御理解賜りたいわけであります。
 言うまでもなく死刑確定者といいますのは既決であって、刑の執行を受けるまでの間、監獄に拘置されるという身分の人であります。もしこれらの人々が真実犯罪を犯し、その結果として裁判によって死刑を言い渡されたということが、まさに神の声であり、人の声であるということであれば、これらの人々に安心立命の心境になっていただいて、心情を安定させて被害者の冥福を祈りながら刑の執行を受ける、そういう気持ちにさせなければいけないというのが、私ども行刑施設に勤めております職員の願いであります。
 ただ、その一面で人間のやることでございまするから、裁判を重ねた結果とはいいながら、あるいは無実の罪に泣く人があるかもしれません。そういう人々の再審に関する願いと申しましょうか、あるいは恩赦に関する願いと申しましょうか、こういったものは、これはとめることはできないものでありましょうから、その場合には、私どもも現在の運用の中でできる限りそれらの人々との接見交通権についても配意しておるというのが実情でございまして、決してこれらの人々に会わせないようにするために制限を強化する方向に向かっているということはないわけでございます。この辺は実情をよく御理解願いたいと思って申し上げたわけであります。
#194
○中山千夏君 ただ、既決の方は、さっきおっしゃったように、級で進級があったりするわけですね。そういうことが死刑囚の場合はないわけです。実務的な問題じゃなくて、法務大臣は全般の法務行政を見ていかれるわけですから、死刑囚の制限ということについて、これ矛盾する問題ですけれども、死刑囚自身が例えば外部交通を活発にして再審の開始をしたい、それがままならないという訴えが実際あるわけなんですね。そういう状態がもしあるとすれば、それはいけないことだと私は思うんですが、実務的な問題としてではなく、その辺のことをどう考えていらっしゃるか。
#195
○国務大臣(嶋崎均君) 犯人の存在を否定するという冷厳な死刑という問題を考える場合に、私は本当にこの問題は真剣に考えていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
 今御指摘の問題でございますけれども、今の運用上はそう非常に制限をしておるというような状態になってないというふうに私は聞いておるわけでございますが、ただやはり刑務所に入っておられる人につきましては、一般的に、何というか、均衡のとれた取り扱いをしていくというのが一応の原則でなければいけないというふうに思っておるわけでございます。しかし、そういう中で、とりわけ先ほど申しましたような死刑の性格というものから考えますと、これは本当にその取り扱いというのは慎重でなければならぬというふうに私も思っておるわけでございます。したがって、接見交通等の面につきましても、死刑の判決を受けた人に対しても相当緩和をされた措置をとっておる。ただ、先ほどお話がありましたように、一部のところでそれが頻繁の度が過ぎるというような形になっておるというところもないわけではないように私は思うのでございます。そういう意味で、ある程度きちっとした整理をしていっていただきたいというようなことをやっているのが私は現在の状態ではないかというふうに思っております。
 また、再審その他の問題につきましてもいろいろな論議があると思いますけれども、我が国の再審制度は、諸外国の制度をいろいろ調べてみましても、特異性はあるかもしれないけれども、ある程度十分に配意をされた運用をしておるというふうに聞いておりますので、そのことが再審に移るための非常に障害になっているというような話を今まで余り聞いたことはないのですけれども、また現に、御承知だろうと思いますが、十七回も再審をやり恩赦が五回にも及んでおる、しかも六カ月の間に処理をしなければならぬということになっておりますが、もう三十年たっても、あいた日は、空間の時間は八十二日しかないというようなことになっているぐらい運用は相当自由にできているような感覚を私は持っておるわけでございまして、もしそういう事例があるのなら御指摘を願いたいと思っております。
#196
○中山千夏君 じゃ、その問題は、ぜひともその辺のところをよく考えて運用していただきたいということで、次に移りたいと思います。
 きのうから刑事施設法案の話がいっぱい出てきて、お話を伺っていたんですけれども、大臣の御意見もよくたくさん承りましたが、拘置施設ですね、拘置所。拘置所については現在代用監獄をなくす方針は当面ないし、それから長期的に見ればそれは減らしていくという見方もあるというお考えをお持ちなようですけれども、拘置施設の整備拡充ということについては、やっぱり配慮していかなければいけないというふうには考えていらっしゃるのでしょうか。
#197
○国務大臣(嶋崎均君) 先ほど来いろいろなお話も申し上げておるわけでございますけれども、刑務所あるいは少年院等々矯正関係の施設につきましては、共通的に大事な施設であるということは皆さん方一般的にはよく理解をしていただいているわけでございますけれども、いよいよそれが各論に入っていきますと、どうもなかなか話が難しいというのが現実であるわけでございます。
 また、そういう施設をつくった時代は相当へんぴなところにと思って建設したものも、都市に人口が集中する等々の事由によりまして、そういう近辺にどんどん住宅が建っていて、大阪の例で考えてみても、あるいは府中の例で考えてみましても、住宅地の真ん中にそういう施設が残っておるというような時代になっておるわけでございます。例えば拘置所をどんどんつくるというようなお話がありましても、これはどの範囲でどうつくるのかという人それぞれの判断もあると思いますけれども、これは東京の真ん中にそういうものをつくろうというようなことになりますと、御承知のように相当の状態になっておることでございますから、なかなか容易なことではないというふうに思っておるわけでございます。
 したがいまして、考え方としては、刑事施設法案をつくるときにも、そういうものは骨子の中で漸減の方向で事柄を考えるべきだろうという基本的な認識を持っておるわけです。そういう努力というのは私たちは十二分に踏まえてやらなければいけないと思いますけれども、理屈はよくわかっ
ても現実の問題になるとなかなか難しいというのが実態であろうというふうに思っておるわけでございます。
#198
○中山千夏君 それで、現在ある拘置所ですが、それがどのように使われているのだろうかと思いまして、拘置所が非常に足りない足りないというふうに伺うものですから、過去五年間について拘置施設の定員数に対して収容人員はどのくらいなんだろうかというのを調べたいと思いまして、ちょっと数を出していただいたのです。元の資料は施設の未決の定員数と未決の収容人数を要求しまして法務省に出していただきました。対象の施設が、東京、大阪、京都、神戸、名古屋、広島、小倉各拘置所、それから横浜、浦和、福岡、仙台、札幌各拘置支所、それから千葉刑務所、岡山刑務所、高松刑務所、これは刑務所の中に拘置施設があるということで出してもらったんです。
 それを私が計算をしましたら、東京では定員に対して収容人員の一番少ないときが八二年で七一%なんですね。そして多いときで八四%、平均すると七五%。それから大阪は六一%から七三%で平均が六七%。それから小倉は一番少ないときが四一%、多いときで六一%等々でございまして、大体平均九〇%を超しますのは福岡支所と岡山刑務所の二カ所だけなんですね。この福岡支所はこれは八二年に一〇三%、つまりあふれちゃっているわけです。それから八四年にもあふれちゃっている。それから岡山刑務所は八二年、八三年、八四年と定員をオーバーしています。九〇%を超すのはさっき申しましたように二カ所だけで、ほかは八〇%台が三カ所、七〇%台が三カ所、六〇%台が四カ所、五〇%台が三カ所という結果になっているんですね。かなりこれを悠々と拘置所は使われているんだなとこれを見て思ったわけですが、これはどうなっているんでしょうか。
#199
○政府委員(石山陽君) 大体刑事施設の場合に収容定員というものがございまするが、これは物理的にぎりぎりまで入れて何人入るかという数字を一応出したのが定員でございます。それに対しまして、現実に刑事施設を運営する場合の適正規模定員と申しましょうか、これは大体八割から九割ぐらいで運用されるのが最も職員にとってもいわゆる能率的に適正な処遇が行える、こういうふうに実務上言いならわされているわけでございます。
 ですから、御指摘の数字をとりますれば、大体八〇%を上回っておる施設は、それなりに大体処遇としてはかなり無理をしながらやっておるという実例になろうかと思います。それから、少ないところで五〇%を切るということは、これは間々管内にあります警察署からの送致人員その他の関係で少なくなることは十分考え得ますし、季節波動期がございまして、年末の例えば歳末警戒時期になればどうしても検挙者が多くなり、したがって警察の留置場もいっぱいになるので、ぜひ拘置所の方に引き取ってほしいというようなお話のため、季節波動的に拘置所が年末になりますとこの傾向でふえてくる、こういうこともあり得るわけでございます。
 それから、もう一つ申し上げたいのは、現在、代監を廃止せよという御議論の中で、拘置所が今みたいに五〇%台であいているところもあるのだから、そこへ入れれば十分足りるのではないかという御議論があるわけでございます。ただ、これは物理的に可能だということをおっしゃっているのでありまして、拘置所の絶対数が極めて少ないということを無視した御議論になるわけであります。例えば我が国に現在あります拘置所は、本所が七カ所、支所が百六カ所、合計百十三カ所しかございません。一方、警察の留置場の数は、つまびらかにいたしませんが、大体千二百カ所ぐらいあると思います。そうしますると、十の警察に対応して一つの拘置所あるいは拘置支所しかございませんので、そこへ集めますれば物理的には可能かもしれませんが、弁護人、家族の接見交通に著しい不便を生ずるこういう実態がございますので、もう少し拘置施設をふやしてからでないとその議論ができない、こういう現状にございます。
#200
○中山千夏君 私は今おっしゃったことは理解しているわけなんですが、これでなおかつ五〇%台のところでも、同じところの警察の留置場に、代用監獄に入っている人がいっぱいいるわけですね。それが素人としてはどうなっているのだと、こういう状態では拘置所を幾ら増設しても、やっぱり代用監獄の方にいっぱい人が入っていて、そして拘置所の方は割合悠々と使っているということでは仕方がないじゃないかという気がするんです。
 この間、名古屋の拘置所を視察させていただいたときにも、適正定員というのがあってそれは大体七、八〇%なんだという御意見を伺ったんですね。人数の面から、そのときは名古屋の拘置所に関しては詳しいことがわかっていましたので、独房の一人部屋と、それから雑居部屋が幾つあるかみたいなこともわかっていましたので、私は家へ帰ってから、そのときの定員数、それから部屋の数、それから実際に収容されている方たちの数というものを合わせていろいろな計算をしてみたんです。それでもやっぱり今の収容状態では少なくとも人間のスペースということで言えばあき過ぎなんですね。とても立派な建物で、拘置所もすごく立派になってよかったなと思ったんですけれども、そういうふうに建てかえたりなんかお金をかけてしてもあき過ぎだという問題が片一方にある。片一方では代用監獄をいっぱい使っている。そういう状態じゃしょうがないなと思ったんですが、それはどうお考えになりますか。
#201
○政府委員(石山陽君) たまたまお目にとまりました名古屋の拘置所は、近隣周辺の御理解を得まして今般建ちました立派な施設で、日本一の拘置施設と申していいかもしれません。ただ、あれを建てます場合に、私どもは将来計画というものを考えますので、建物を現実に必要数だけでつくってしまいましたら、今後の情勢いかんによりましてアローアンスがなくなりますので、そのために従来の施設にどのくらい増しで建てたらいいかということを基本計画に当然入れるわけでございますから、建てまして数年の間はむしろあきぎみであるというのが当然だろうと思います。
 それからまた、それらの施設の運用関係につきましても、先ほど申しましたように、一地域で大きな事件、特に集団事件が起きました場合には、あっという間に物理的定員を超えるほど収容しなければならぬということもございます。そのための危険負担も考えますると、ある程度運用上の幅を持つ施設をつくる、それが職員にとりましても職務執行上非常に過酷な勤務をさせないで済むという一つの理由にもなるわけでございまして、この辺が現実の行政運営の難しさと申しましょうか、御理解をいただきたいところでございます。
#202
○中山千夏君 私の話も本当はわかっていただいていると思うんですが、今ある拘置所の今の利用状況を見ていると、いろいろ御事情はあるんでしょうけれども、代用監獄が問題視されているときにあって非常に活用されているとは言えない状況だと思います。ですから、その辺の方法は私にはわかりませんけれども、きちんと活用できるように考えていただく。もちろん増設も必要ですけれども、今ある施設がむだにならないようにきちんと活用を考えていただきたいわけです。どうでしょう。
#203
○政府委員(石山陽君) 拘置所に入りまする者はいわゆる未決の段階でございまするので、私どもの拘置所は主として未決のうちでも特に捜査中の被勾留者及び公判中の被勾留者、この二種類の方たちが圧倒的でございます。これらの人々につきましては、実は勾留請求を検察官がいたしました場合に司法判断によって裁判官が勾留の場所をお決めになります。したがいまして、私どもがあいているからいらっしゃいよということでお誘いをするわけにはまいらぬわけでございますので、その辺をひとつ御勘案いただきたいと思います。
#204
○中山千夏君 全くおっしゃるとおりです。それは裁判所にも問題があるだろうと思うんですが、きょうはその裁判所まで聞く時間がありませんの
で、だけれども全然知らない間柄ではなくて、少なくとも皆さんお話し合いなすったりするわけですから、法務省全体の問題としてこれから考えていっていただきたいということです。いかがでしょう、大臣。
#205
○国務大臣(嶋崎均君) 捜査の手続というのは、御承知のように制約された時間内に事案の真相を究明していかなければならぬ、その実態に即した適切な運用処理を行うことが必要になっていくわけでございます。そういう中から、被疑者の有利、不利というようなことを問わず、御承知のように参考人によりいろいろ見ていただかなければならぬというようなケースもあるでしょうし、また被害者の立ち合いのもとでいろいろな実況見分をやらなければならぬというようなこともあります。また、多数の証拠品があるわけでございますから、そういうことの取り調べをしなければならぬというようなことがあるわけでございまして、そういう各種の調査との必要性から、やっぱり留置場の施設というか、あるいは代用監獄というのですか、そういうことが活用される面もあるわけでございます。
 ただ、大事なことは、今いろいろな議論になっているようなこともありますから、できるだけ拘置所で処理をするというような基本的な考え方というのは、どこまでも私は大切なことだというふうに思っておるわけでございます。ただ、そういういろいろな事情があるということをよく御理解を願って御判断していただきたいと思っておる次第でございます。
#206
○中山千夏君 では、次の問題に移ります。
 外国人登録法の指紋押捺、登録証常時携帯についてちょっとお伺いしたいのですけれども、おとといからずっといろいろこれについてお話が出ているところですが、当面は法改正はしないということは聞いたんです。それから、うかがいますところでは、新聞報道なんかではちょっと夏ごろまでに運用緩和の方針を打ち出すみたいなことがあったけれども、事前に伺いましたところ、そういうふうに期限は切っていないという御返事でした。しかし長い目で見て考えていくということですね。その考えていく中で、運用緩和を考えていくあるいは法改正を考えていく方法の中で、特定国籍を持っている在留外国人についてだけ特別の処置をするというようなことがあり得るかどうか、それをちょっとお聞きしたいんですが。
#207
○国務大臣(嶋崎均君) 今御質問になりました指紋の問題を含めて、在留外国人の待遇等の問題につきましては、いろいろな意味で広範な判断をしていかなければならぬという問題があります。特に最近、この問題をめぐって非常に多くの議論があるということを私たちも承知しておるわけでございます。そういう意味で、御承知のように、省庁の中におきまして、さきの日韓共同声明の趣旨もあるわけでございますから、できるだけその実態を検討していこうというようなことで努力をしている。これはいつの期限を切るということじゃなしに、常時そういう努力をしていかなければならぬという気持ちで現在我々もおるわけでございます。ただ問題は、御承知のように国会でいろいろ議論をされるということになりますと、これはどちらかというと私どもの所管の制度上の問題になってくるだろう、そうしますと、いろいろこの問題を整理するのには、なかなかこの国会難しかろうというような意味のことを私は申し上げておるような次第でございます。そういうことを前提に御判断をしていただきたいと思うのでございます。
 それから、特に御質問になった特定居留の皆さん方、すなわち長く日本に在留されている方々、主として韓国関係あるいは台湾関係の方が多いわけでございますが、御承知のように、こういう制度を考えていく場合に、外国の事例を見ましても、どちらかというと長期に滞在をされる人に対しては厳格な取り扱いをしているというのが、居住関係あるいは身分関係等の特定その他の意味合いから、またいろいろな諸手続の段取りから申しまして、大体そういうことになっているのが通例であるわけでございます。
 そこで、共同声明の中で言われておりますように、十二分にそういう点は配慮していかなければならぬけれども、逆にそういう長期におられる人の対策ということを念頭に置いて考えるということでございますから、今申し上げたように、そこのところをきちっとしないと、一般的に短期に滞在をされる人にどういう対策を考えていくかということは皆絡んで問題になってくるわけでございます。したがって、何というか、そこの部分だけ特定に事柄を処理するということはなかなか難しいのじゃないか。指紋の問題以外のところについては、御承知のようにある程度の違った取り扱いをしているというような部面もあるわけでございますので、そういうこととして御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。
#208
○中山千夏君 大臣は特定な条件というところに話を絞ってお答えをいただいたのですが、入管の方に、特定国籍を持つ方たちに対してのみ何か特別処遇をするというようなことがあり得るかどうか、ちょっと伺いたいんです。
#209
○政府委員(小林俊二君) 出入国管理及びその在留管理全般について申し上げますと、特に出入国の条件につきましては、相互主義で査証免除というようなことは現に行われておるわけでございますけれども、在留管理の面で既に国の中に入ってしまっておる外国人の取り扱いにつきまして、一般には相互主義等によって国籍別の扱いをするということは行われていないわけでございます。
 ただ、先ほど大臣からもちょっと御説明ございましたように、韓国につきましては、その歴史的な背景のために日韓両国の国交回復の際に特別の法的地位に関する協定が締結されまして、一定の範囲内で特別の処遇を与えることになりましたけれども、それはまことに例外的な処遇でございまして、またその条文に明記されてある事項に限られた処置でございました。したがって、それが既に発効して十数年にもなります現在、新しく特定の国籍を持つ者に対して在留管理の面で特別の処遇を行うということは実際上も考えられておりませんし、また考えられていないのみならず、行政技術的にも非常に難しい点があるということでございます。
#210
○中山千夏君 今同じ問題を外務省の方にお伺いしたいんですが、今ほとんどないというお話でしたけれども、特別国籍を持つ者にだけもし特別処遇をするというような、国内でそういう処置がされるというようなことについては、外務省の方としてはどういう考えをお持ちでしょうか。
#211
○説明員(渋谷治彦君) 外国人登録法の基本は、国籍のいかんを問わず、在留経緯のいかんを問わず、在留外国人はすべて同等に扱うというものであるというぐあいに承知しておりますけれども、今の仮定の御質問につきましては、まことに申しわけございませんけれども、答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
#212
○中山千夏君 それでは時間も迫ってきましたので、次の問題に移らしていただきたいと思います。
 最高裁にお伺いしたいと思いますが、私たち普通、選挙のときに最高裁判所の裁判官の、何というんですか、信任投票というのでしょうか、あれはマル・バツというのをやって、一般になじみがあるわけですが、ほかの裁判官の任期というのはちょっと気がつきませんで、私なんかも勉強不足で、こういう国会議員になったりなんかして初めて、こういう法務委員会なんかに入って、ああそういえばというふうに思ったような次第なんです。それで、憲法の八十条でしたかに裁判官の任期というのが定められていますけれども、十年間という、それを裁判所の方ではどういうふうに解釈というか、理解をしていらっしゃるのでしょうか。
#213
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) ただいま御指摘がありましたように、憲法の第八十条で「下級裁判所の裁判官は、」「任期を十年とし、再任されることができる。」という定めがございます。そしてまた、それを受けまして裁判所法の第
四十条でもほぼ似たような規定がございます。
 一般に言われておりますのは、これは戦後の憲法のもとでできた制度でございまして、戦後の裁判官が現行憲法のもとで非常に強い権限と強い身分保障が与えられた、そうすると、この裁判官を戦前の制度のように採用されてから後ずっと終身官として置くということは裁判官の独善と人事の停滞を招いていくというおそれがある。したがって、その強い権限及び身分保障と、それから人事の停滞とのバランスをとるためにこのような任期制が設けられたものだというふうに言われております。そのほかに付加的な理由といたしまして、戦後の裁判官の制度といいますのは、裁判官からだけではなくて、弁護士なり検察官なりから判事を任命していくという、そのような発想もありまして、そういう裁判官以外の法曹の世界から裁判官を任命していくという、そのような発想からもこういった任期制というものができたのだというふうに言われております。
 私たちはやはりそれはそのような趣旨に受けとめておりまして、現実の問題としてこの十年間の任期というものは裁判官の一つの仕事の区切りと申しますか、あるいは身の振り方の区切りのようなものとして受けとめられております。したがって、それほど多くはございませんけれども、十年経過したところでやめていく、あるいは任期終了のその近辺で裁判官をやめて他に転身していくというような方が毎年ある程度あるわけでございます。
#214
○中山千夏君 なるほど、その十年という任期が定められているところには非常に深い意味合いがあって、その意味合いを認識しているということは判事というお仕事をなさる上でも大変重要なわけなんですね。私全然わからないのですけれども、裁判官が任命されますね。そうすると、そのときに何か辞令が出ると思うんです。それに任期というのが書いてあるんですか。それから十年たつとまた再任という形になりますね。続けてやる場合にはまた辞令が出て、そしてそれにもまた任期が書いてあるのかどうか。それをちょっと伺いたいと思います。
#215
○最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官と申しましても一番数が多いのは司法修習生を終えて最初に任命される判事補と、それから十年を経過した判事補が任命されていく判事と、この二種類でございます。判事補あるいは判事に任命するときには内閣から辞令、官記と言われておりますけれども、官記が出ます。この官記には単に判事補に任命する、あるいは判事に任命するということが書いてあるだけでございます。これをもらった判事補なり判事は憲法あるいは裁判所法の規定から当然その任期は十年間であるということは観念しているわけでありまして、十年たって新たに再任されるというときにはまた同じような形式の官記をもらうわけであります。
#216
○中山千夏君 どうもありがとうございました。本当はやっぱりそれだけ大切な意味を持っている任期だったら、辞令にちゃんと書いてあった方が、何というか、気構えがまたしっかりするからいいのじゃないかしらと思うんですが、これは裁判所に申し上げても仕方がないことで、何かの機会があったら内閣の方にでも言ってみようかと思います。
 それで次の問題、これ最後になると思うんですが、矯生局長に、ちょっと男性を相手にお話しするには適当な話ではないような問題なんですが、こういう状況なので仕方がないので伺います。
 今母性保護という観念はかなり世の中で一般的になってきまして、女性が本来全人類の必要のために持っている女性の生理、つまり月経であるとか妊娠、出産のために何かリスクを負うようなことがあってはならない、そういう考え方も余りあからさまには反対されないような世の中になってきました。それで刑事施設に収容されている女性についてもやはりその母性保護というものは配慮されなければならないし、配慮していらっしゃるところであろうと思います。
 その中の一つをちょっと現実にどのように対応しておられるかを伺いたいんですが、月経についてどんなふうに対応しておられますか。生理用品の官給があるということを聞いているんですけれども、現実にはどのように行われておりましょうか。
#217
○政府委員(石山陽君) 私ども体験ございませんで、ちょっと戸惑いを感じつつお答えせざるを得ませんが、お許し願いたいと思います。
 女性議員ならではの御質問でございますので、早速女子を収容しております刑務所の方へ聞き合わせましたところ、現在、生理用品は官給いたしておりまして、それはどのような種類のものかと申しますると、いわゆる生理用のナプキンと、それから生理用ショーツの二種類であるということでございます。おおむね一人当たり、症状によって多寡がございまするが、月に二ダース程度のナプキン、それからショーツにつきましては年に二枚程度ということで官給しているという報告がございました。
#218
○中山千夏君 これは経験談だし、所によってもいろいろ違うだろうと思うんですが、官給のされ方が非常に一律であって、なかなか個人差に応じた官給をしてもらえないということを聞いたんですね。それで、御経験がないと思いますが、月経というものは非常に個人差がありまして、とても短くて済んでしまう人もいれば、とてもかかる人もいるわけなんです。そのかかる人が官給が足りないために、中では買うこともできるのだそうですけれども、そのために働けない立場でありながらそれを買わなければならないというようなことになるのはちょっと筋が違うと思いますので、今後その個人差というものを十分に頭に入れて、普通のこととは違いますので、対処していただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
 それからもう一つ。これが最後になりますが、やはり今も女性のことは余り体験がないからわからないとおっしゃいましたけれども、少なくとも女子刑務所の所長さんにはやはり女性がおられた方が何かと便利だろうと私は思うんですね。それで女子刑務所は今幾つでしょうか、七つぐらいか、五つでしたか。それで、その中で女子の刑務所長さんはどれぐらいおいでになるのか。それからまた今後ふやしていかれるお気持ちはあられるのかどうか。それを最後の質問にしたいと思います。
#219
○政府委員(石山陽君) 女子施設におきます生理用品につきましてはもちろん女性の生理現象の症状の軽重というのがあるということは私どもも観念的にわかりますが、実際の運用といたしましては、自弁物品で購入することをもちろん認めておりまするが、それ以外にそういう費用のない収容者については申し出によって支給量の多寡は加減いたしておるという報告でございます。
 それからもう一つのお尋ねの女子施設五カ所ございますが、現在女子が刑務所長をしております施設は二カ所でございます。それから男性が所長をしている場合には保安課長その他所内の幹部には必ず女性を登用している、これが現実でございます。
#220
○中山千夏君 終わります。
#221
○委員長(大川清幸君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#222
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。
    ─────────────
#223
○委員長(大川清幸君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、園田清充君及び安井謙君が委員を辞任され、その補欠として藤田栄君及び福田宏一君が選任されました。
    ─────────────
#224
○委員長(大川清幸君) それではこれより両案に対する討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#225
○橋本敦君 議題となりました裁判所職員定員法
の一部を改正する法律案並びに供託法の一部を改正する法律案について、それぞれ反対という立場で簡単に討論をさしていただきます。
 まず裁判所職員定員法でありますけれども、裁判所職員の定員の確保は、増大する事件の処理というだけにとどまらず、国民から信頼を受ける公正な裁判、憲法が要請する迅速な裁判、これを遂行する上で特別の重要性を持っている課題であります。したがって、今年度予算でも裁判所当局は当面の厳しい人員抑制ということの中で、ぎりぎりの線として職員は一般職員についても一名増という、そういう要求をされておったことにも見られておりますように、現状ではこれを減らすということは裁判所本来の職務からいってかなり重大な問題を持っているわけであります。
 この委員会でも私は家庭裁判所の扱う少年事件についてお尋ねをいたしましたが、昭和五十年から五十九年まで九年間に少年関係事件は、もちろん軽微な事件も含めてでありますが、十数万件ふえております。ところが、裁判官並びに家裁調査官は、それぞれ三名ないし四名しかふえていないという状況の答弁がありました。もちろんそれぞれの努力によって円滑に事務がやられているとはいえ、それにしてもこういった状況に見られますように、裁判所の裁判官の増員もまた少年事件に劣らず、その他増大する事件に対応する上では極めて重要な課題であります。
 裁判所の現状では全国で裁判官が常駐しない裁判所が百四十九庁、地裁家裁支部でも二百四十二庁のうち九十八庁が裁判官非常駐庁、こういうことになっているように私も把握しておりまして、当面九名の増員というだけではとても賄い切れないという現状でありますし、それに加えて職員を二名減ずるということは、これは重大な影響を及ぼすと、こういうように考えざるを得ません。
 以上の次第で、国民の負託にこたえる司法行政事務の円滑な遂行のためには本法案は反対ということを表明せざるを得ないわけであります。
 続きまして、供託法改正案でございますが、当委員会の審査でも明らかになりましたが、これは供託制度本来どういう趣旨かということとは別としましても、法によって利息を付すと決められてきた問題であります。したがって、軽々に法によって国民の利益となっているこの問題を剥奪するような法を制定するということは極めて慎重でなくてはならないはずであります。それが国家財政の事情によって過去三年がさらに六年延長されるということでありますから、政府の見通しの誤りということだけにとどまらず、こういった財政事情の逼迫が政府の政治の責任にかかわる問題であることを考えましても、その利息を剥奪するということで国民に転嫁するということにどれだけの合理性があるか問題であります。
 私も質問いたしましたが、供託金に利息を付す制度が発足して八十年、その間戦前戦後を通じて我が国では厳しい財政事情がいろいろな段階であったわけでありますけれども、わずか年間二十ないし三十億に満たない国民の供託金に付す利息までこれを払わないというようなことをやられた例はこれまでにもかつてない次第であります。したがって、この供託金に利息を付さないという今回の改正については根本的に合理的な理由がないというように考えまして、反対の意見を表明する次第でございます。
 以上です。
#226
○委員長(大川清幸君) ほかに御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#227
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#228
○委員長(大川清幸君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、供託法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#229
○委員長(大川清幸君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#230
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#231
○委員長(大川清幸君) 次に、証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
#232
○国務大臣(嶋崎均君) 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、刑事訴訟法の規定に基づいて裁判所または裁判長が被告人に付した国選弁護人またはその近親者が、国選弁護人の職務の遂行に関して被告人もしくはその事件の被害者またはこれらの者の支援者等から身体または生命に害を加えられた場合に国において療養その他の給付を行うこととし、これにより国選弁護人の職務の遂行の円滑化を図り、もって刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現に寄与しようとするものであります。
 現行法では、刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現に寄与することを目的として、刑事事件の証人もしくは参考人またはその近親者が証人または参考人の供述または出頭に関して他人からその身体または生命に害を加えられた場合には国において一定の給付を行うこととされているところ、いわゆる過激派裁判等を契機として、裁判所または裁判長によって被告人に付された国選弁護人の弁護方針と被告人等の裁判への対応方針の相違等から国選弁護人がその身体に害を加えられ、または加えられるおそれが生じた事例も発生していることにかんがみ、刑罰法令の適正かつ迅速な適用実現を図るためには、国選弁護人またはその近親者が国選弁護人の職務の遂行に関して被害を受けた場合にも、刑事事件の証人及び参考人の場合と同様に国において一定の給付を行うこととする必要があると認められますので、本法律案を提出することとしたものであります。
 この法律案による改正点は、国選弁護人がその職務を行い、または行おうとしたことによって、国選弁護人またはその配偶者、直系血族もしくは同居の親族が、他人からその身体または生命に害を加えられた場合に、その被害者等に対して国において療養給付、傷病給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付または休業給付を行うこととするものであります。
 以上が証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#233
○委員長(大川清幸君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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