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1984/04/02 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第5号
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1984/04/02 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第5号

#1
第102回国会 法務委員会 第5号
昭和六十年四月二日(火曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十九日
    辞任         補欠選任
     松岡満寿男君     石本  茂君
     柳川 覺治君     河本嘉久蔵君
     福田 宏一君     安井  謙君
     藤田  栄君     園田 清充君
 四月二日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     柳川 覺治君
     河本嘉久蔵君     藤田  栄君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         大川 清幸君
    理 事
                海江田鶴造君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                土屋 義彦君
                徳永 正利君
                名尾 良孝君
                藤田  栄君
                柳川 覺治君
                小山 一平君
                橋本  敦君
                柳澤 錬造君
                宇都宮徳馬者
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  嶋崎  均君
   政府委員
       内閣法制局第一
       部長       前田 正道君
       警察庁刑事局審
       議官       於久 昭臣君
       法務大臣官房長  岡村 泰孝君
       法務大臣官房会
       計課長      清水  湛君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  筧  榮一君
       法務省矯正局長  石山  陽君
       法務省保護局長  俵谷 利幸君
       法務省人権擁護
       局長       野崎 幸雄君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小野 幹雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁長官官房
       企画課長     関根 謙一君
       警察庁刑事局刑
       事企画課長    中門  弘君
       警察庁刑事局保
       安部公害課長   上野 治男君
       文部省初等中等
       教育局小学校課
       長        熱海 則夫君
       厚生省保健医療
       局結核難病課長  窪木 外造君
       海上保安庁警備
       救難部警備第一
       課長       神谷 拓雄君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○昭和六十年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和六十年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和六十年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (法務省所管)
    ─────────────
#2
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る三月二十九日、松岡満寿男君、柳川豊覺君、福田宏一君及び藤田栄君が委員を辞任され、その補欠として石本茂君、河本鏡久蔵君、安井謙君及び園田清充君が選任されました。
 また、本日、石本茂君及び河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として柳川豊治君及び藤田栄君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(大川清幸君) 去る三月二十九日、予算委員会から、四月二日の午後一時から四月三日の午後三時までの間、昭和六十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所及び法務省所管について審査の委嘱がありました。
 この際、同総予算中、法務省所管を議題といたします。
 嶋崎法務大臣から説明を求めます。嶋崎法務大臣。
#4
○国務大臣(嶋崎均君) 昭和六十年度法務省所管予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、法務省所管の一般会計予算額は三千八百十八億九千七百五十三万三千円でありますが、このほか昭和六十年七月一日から登記特別会計を創設することとしており、これに五百五十五億七千三百三十二万九千円を計上しておりまして、それらの純計額は四千六十七億四千十八万四千円となります。
 これを前年度当初予算額三千七百四十七億八千二百九十三万四千円と比較しますと、三百十九億五千七百二十五万円の増額となっております。
 次に、重点事項別に予算案の内容について御説明申し上げます。
 まず、定員の関係でありますが、昭和六十年度末定員で申し上げますと、当省の総定員数は四万九千九百十七人で、うち一万五百六十七人が登記特別会計の定員となっております。
 昭和六十年度の増員は、新規に四百二十三人、部門間配置転換等による振りかえ増員三十三人の合計四百五十六人となっております。
 その内容を申し上げますと、一、検察庁における特殊事件、財政経済事件、公安労働事件等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため、検察事務官百一人、二、国の利害に関係のある争訟事件及び人権侵犯事件に対処するため、法務事務官七人、三、刑務所はおける保安体制及び医療体制の充実を図るため、看守部長二十六人、看守九十三人、看護婦(士)三人、四、少年院及び少年鑑別所における処遇体制の充実を図るため、少年院教官十八人、少年鑑別所教官十四人、五、保護観察活動等の充実を図るため、保護観察官二十二人、六、出入国審査及び在留資格審査業務に対処するため、入国審査官十六人、七、登記事件に対処するため、登記特別会計創設後の増員を含めて、法務事務官百五十六人となっております。
 他方、減員は、昭和五十六年九月の閣議決定に基づく「定員削減計画(第六次)の実施について」による昭和六十年度定員削減分として四百四十三人、定年制施行に伴う欠員不補充分二十人、その他削減分として十三人、合計四百七十六人となっております。
 次に、主要事項について御説明申し上げます。
 第一に、法秩序の確保につきましては、関係組織の人件費を含めて二千百六十七億七百万円を計上し、前年度予算額と比較して六十二億八百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げます。
 まず、検察庁関係としては、検察活動の充実を図る経費として六百七十六億九千八百万円を計上しております。
 矯正施設関係としては、刑務所等矯正機能の充実を図るため一千二百四十八億八千四百万円を計上しており、この経費の中には、矯正職員の執務体制の整備のための保安機能充実経費等一億三千二百万円の増並びに被収容者の処遇の確保のための生活備品、日用品の改善及び食糧費の主食、副食の単価改定等に要する経費八億七千九百万円の増を含んでおります。
 更生保護関係としては、保護観察の充実を図る経費として百八億四千百万円を計上しております。
 訟務関係としては、国の利害に関係のある争訟事件の処理経費として八億八千三百万円を計上しております。
 公安調査庁関係としては、公安調査活動の充実を図る経費として百二十四億百万円を計上しております。
 第二に、国民の権利保全の強化につきましては、一般会計に人件費を含めて二百六十七億七千九百万円、登記特別会計に人件費を含めて五百五十五億七千三百万円をそれぞれ計上しております。
 この合計額八百二十三億五千二百方円を前年度予算額と比較いたしますと百八十三億八百万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、まず、登記事務関係としては、一般会計に、登記特別会計創設までの登記事務処理経費等として二百六十二億六千四百万円を計上し、登記特別会計に登記のコンピューター化経費、登記事件処理経費等の事務取扱費四百九十五億九千万円及び登記所等の施設の整備経費三十億一百万円等合計五百五十五億七千三百万円を計上しております。
 人権擁護関係としては、人権擁護活動の充実を図る経費として五億一千五百万円を計上しております。
 第三に、非行青少年対策の充実につきましては、一部法秩序の確保と重複しておりますが、関係職員の人件費並びに少年院等の収容関係諸費を含めて三百三十億一千百万円を計上し、前年度予算額と比較しますと九億四千万円の増額となっております。
 その内容について申し上げますと、青少年検察の充実経費として十一億二千百万円、少年院教化活動の充実経費として百四十九億五千七百万円、少年鑑別所業務の充実経費として七十億五千五百万円及び青少年保護観察の充実経費として九十八億七千八百万円をそれぞれ計上しております。
 第四に、出入国管理業務の充実につきましては、関係職員の人件費を含めまして百八億八千七百万円を計上し、前年度予算額と比較しますと八億二千八百万円の増額となっております。
 その内容を申し上げますと、出入国及び在留管理業務の充実経費として五億一千九百万円及び外国人登録事務処理経費として十七億一千七百万円等を計上しております。
 第五に、施設の整備につきましては、検察庁等の庁舎及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備に要する経費として、九十一億六千百万円を計上し、前年度予算額と比較して一億三千八百万円の減額となっております。
 以上をもちまして、法務省関係の昭和六十年度予算についての御説明を終わります。
#5
○委員長(大川清幸君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○寺田熊雄君 法務省の予算につきましては、法務省の仕事というのはいずれの部門をとりましても職員の働きによって賄うという、そういう仕事が大部分で、余り事業官庁、産業官庁のように投資を伴ったり、あるいは事業を行うために経費を必要とするという、その方の経費が人件費をはるかに上回るというのと大分趣を異にしております。全般としてはどうももうちょっと増加してしかるべきではないかと思われる分野が多いのでありますが、その細かい点はまた後でいろいろお尋ねすることにしまして、きょうは、我が国の治安面はおいてゆるがせにできない事件の一つとしてグリコ・森永事件があるわけであります。そのことで警察庁の刑事局審議官においでをいただいておりますので、そのことをまず先にお尋ねをしたいと思うわけであります。
 グリコ・森永事件あるいは怪人二十一面相といいますか、この事件は犯人がマスコミにしきりに働きかける、マスコミの記事にも関心を寄せていろいろと工作をするというようなことがありますし、不二家には二千万円をばらまけというようなことを申し入れたりいたしまして、果たして本当にこれは金銭を喝取したり強取したりする意図を持っておるのか、あるいは単に世間を騒がして快哉を叫ぶという俗に言う愉快犯的なものか、時として疑問を抱かざるを得ない面があるわけであります。警察当局としては、この事件は果たして愉快犯と見ておるのか、それとも本当に金銭を奪取するという目的を持った犯罪を行っておるやからと見ておるのか、その点はどうでしょう。まずそれからお伺いしたいと思います。
#7
○政府委員(於久昭臣君) このグリコ・森永事件、俗にそういうふうに言われておりますこの一連の事件の発生状況から見まして、正確なことは検挙してからでないとわからないわけでございますけれども、私どもは一応その犯罪の動機といったものにつきまして、金目当ては当然のことでございますけれども、それに怨恨という線も考えられるということで、そういうことを一応頭に置いて捜査を行っておるわけでございます。いろいろないわゆる挑戦状と言われておりますものが送られてきております。そういったものを見ますと、御指摘のような愉快犯ではないかというふうなことも言えようかと思いますけれども、この犯人は二つの顔を持っておりまして、一つは表の湖、一つは裏の顔でございまして、表の顔は確かに警察を嘲弄することを初め、いろいろなことをおもしろおかしく言うような愉快犯的な要素が見えるわけでございますけれども、企業等に対してきばをむいてまいりますその裏の顔というものは、まことにどぎついものがございます。凶悪そのものという彼らの本性がうかがえるわけでございまして、そういうことから私どもは愉快犯というふうには考えていないということでございます。
#8
○寺田熊雄君 随分マスコミをにぎわした犯人でありますが、一体この犯人は今まで何社に対して働きかけ、あるいは何人の被害者に対して働きかけ、犯行を重ねておるのですか。その点まず少し数字を明らかにしていただきたいと思います。
#9
○政府委員(於久昭臣君) 現在捜査中の事件でございますので、詳細についてはお答えをするのを控えさしていただきたいと思いますが、現在まで脅迫状が送られてきました企業は三十二社でございます。金品の要求がございましたものは江崎グリコあるいは森永製菓、こういったものを含めて数社でございます。
#10
○寺田熊雄君 脅迫状を送ったのが三十二社で金品要求が数社というと、その脅迫状の目的というのは金品の要求じゃなくて何をねらったものですか。
#11
○政府委員(於久昭臣君) 例えば昨年の十月であったと記憶しておりますけれども、毒入りの菓子をスーパー等の店頭に置いたということがございましたけれども、それに関連をいたしまして多数の企業に脅迫状を送りまして、森永の製品をおまえたちの店に置くとおまえたちの店のほかの食品にも毒を入れるぞ、青酸を入れるぞ、だから森永の製品を置いてはいかぬというふうな形での脅迫を行ったということが一つの例でございます。
#12
○寺田熊雄君 これは衆議院の法務委員会で、稲葉議員から法務省の刑事局長に対して、果たして
これらの犯人に対してはどの程度の重罰が適用し得るかということで既に質問もあったようでありますが、警察当局の把握しておるところでは、この二十一面相が犯した行為、刑法の罰条に触れる、あるいは刑法以外のまた単行法でも結構ですが、どういう罪名に触れる行為があったんでしょう。警察の把握しておるところをちょっとおっしゃってみてください。
#13
○政府委員(於久昭臣君) 現在捜査中でございますので確定的ではございませんけれども、これまでの捜査の状況から一応身の代金目的の誘拐あるいは偽計または威力業務妨害あるいは恐喝未遂等の罪に該当する、そういう事案であろうと考えております。
#14
○寺田熊雄君 これは衆議院では、たしか強盗とか放火とか、あるいは監禁とかいうような罪名も出たような記憶がしますが、そういう点は把握しておられないんですか。
#15
○政府委員(於久昭臣君) お答えいたします。
 代表的なことを申し上げたわけでございまして、江崎グリコの本社兼工場に放火した事案もございますが、これがこの犯人グループの犯行であろう、同一グループの犯行であろうと一応考えておりますけれども、そうであるとすれば、この放火の犯罪も成立をするというわけでございます。もちろん監禁致傷罪は江崎グリコの社長を誘拐して監禁したというケースで、そういうこともあるわけでございます。一つ一つ挙げればたくさんありますので、代表的なことを申し上げたわけでございます。
#16
○寺田熊雄君 こういうようないろいろな犯行を犯したのですが、結局彼らは今までに一文も金員奪取の目的は達していないとあなた方は見ておられるんですか。何らかあなた方の方ではやっぱり金品奪取の目的をある程度は遂げておると見ておられるんですか。その点どうでしょう。
#17
○政府委員(於久昭臣君) いろいろなことがこの事件について憶測を交えて言われておりますけれども、私どもは昨年三月十八日の本事件発生以来の捜査状況を踏まえまして、犯人は金品奪取に成功していない、いまだ一文も金を手に入れていないというふうに信じております。
#18
○寺田熊雄君 彼らの行ってきた行動は非常に詳細はマスコミの報道するところであり、それを私どもが見て警察に対して何か異常な敵がい心を示しておるように思えるのでありますが、一体なぜ彼らは警察に対してそんな異常な敵がい心を燃やしているのか、その原因はどこにあるんでしょう。あなた方はどういうふうにそれを考えておられますか。
#19
○政府委員(於久昭臣君) いわゆる挑戦状等におきまして警察を愚弄することがしばしばございます。そういったことからいろいろなことがまた推測されているわけでございますけれども、この一連の犯罪の展開ぶりからいたしまして、私どもは、それは警察に何らかの形で敵意を持つ、少なくとも権力に対して反感を持つ、そういう犯罪者のグループであろうと思いますけれども、とりあえず警察をいろいろ嘲弄し愚弄する、あるいは警察の無力感を強調するような、そういった彼らの行動はしょせんは裏取引を迫る彼らのターゲット、企業と警察とを離間させる、それによって裏取引を成功に導く、そのための手段であろうというふうに考えております。
#20
○寺田熊雄君 なるほどね。彼らのターゲットと警察とを離間させる、あるいはその狙っている被害者となるべき業者に対して警察に対する不信感を与えるというようなことなのかもしれぬですね。それにもかかわらず最近ちょっと彼らの行動が下火になったところを見ると、やはり警察の取り締まりがある程度効を奏して、新しいタイプの犯行が不可能に陥っているというようにも見えないではないのでありますが、その点はあなた方はどういうふうに考えておられるのでしょう。
#21
○政府委員(於久昭臣君) 確かに先生御指摘のように、昨年十一月中旬以降、彼らの動きはかなり調子が変わってきたという感じがいたします。二千万円をどこからかばらまけといったようなことに見られますように、金品奪取をはかると一応思われる行動につきましても、なかなか実際はそういうことが実現し得ないような形で言ってくるというふうなこともございます。また、しばしば送ってまいります挑戦状にしても、だんだんその内容も少し調子が下がっておりまして、ことしに入りましてから若干動きがございましたけれども、動きというのは挑戦状を含めてでございますけれども、ございましたけれども、三月十七日、大阪城の天守閣に挑戦状を置いてから、その後彼らの動きはないということもございます。
 これらのことにつきまして、これまたいろいろな推測がなされているわけでございますけれども、我々が昨年の三月以来鋭意捜査をしてきた、その我々の追及を恐れて少し調子が狂ったということも考えられますし、また先ほども申し上げましたように、何度か試みてその都度現実に金を手に入れることができなかった彼らの従来の現金奪取計画についての限界を彼ら自身が感じたのかどうか、いろいろなことがあろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、私どもはいろいろなことに思いはめぐらしはいたしますけれども、ともかく捕まえることが先決だということで全力を挙げているというのが現状でございます。
#22
○寺田熊雄君 そこで、我々が仄聞するところでありますから事実はどうかわかりませんが、自民党におかれては政調会長が犯人を捕まえる法律をつくれとおっしゃったそうでありますが、これは事実を我々確かめたわけではありませんが、それに基づいて流通食品毒物混入罪というような新しい犯罪類型をつくる。しかもそれが非常に刑が重くて、見方によっては刑法草案の法定刑を非常に引き上げないと均衡がとれないのではないかと思われるような立法計画もあるというようなことであります。
 これは犯人を捕まえてしまえば、いら立ちといっては悪いのですけれども、そういうような法感情のほとばしりのようなものも消えていくのではないだろうかと思うので捕まえることが先決でありますが、あなた方は犯人逮捕の自信が今この段階でおありになるのかどうか。それともやはりさまざまな情報であるとか、さまざまな犯罪に伴う資料等を粘り強く一つ一つ追及していくことによって可能なものと考えていらっしゃるのか。それとも何か彼らが新しい犯行を計画して、そのしおに現行犯逮捕しなければこの犯人は到底捕まらないと思っていらっしゃるのか。その辺どういうふうに考えておられますか。
#23
○政府委員(於久昭臣君) いわゆるグリコ・森永事件は国民全体をお菓子という食品を通じて人質にとったとまで言ってもよい大変凶悪な事件でございまして、国民の間に大きな不安感を醸成しているという現状につきましては私ども厳しく認識をしております。警察といたしましては、本事件を言ってみれば社会に対する挑戦であるというふうに受けとめまして、捜査本部を設置しております兵庫、京都、大阪等の府県警はもとより、全国の警察を挙げて捜査に取り組んでおりまして、早期解決を目指しているわけでございます。
 この犯人グループは大変用心深くて、犯人に直結するような手がかりをほとんど残していないというのが率直なところでございまして、したがって、犯人像を絞り込むことが非常に難しい。捜査は必然的に広範囲にわたるということで、物の捜査、人の捜査、昨年以来総力を挙げて昼夜を分かたず行ってまいりましたけれども、事件発生以来一年を経過した今日においても犯人検挙に至ってない。その点まことに遺憾であると思うわけでございますけれども、ともかく私どもは絶対に犯人は捕まえる、必ず検挙するんだということで、膨大な物の捜査あるいは国民から寄せられますいわゆるビデオの男、あるいは似顔絵の男等に関する多数の情報等のつぶしといったようなことをこれからも精力的に行いまして、一日も早く犯人を捕まえるということで全力を挙げているわけでございます。
 犯人が現金奪取というふうな形で動いて、その際の現行犯逮捕でなければ犯人を検挙することは
難しいというふうなことは毛頭考えておりませんで、ともかく犯人が、それはそういう現行犯逮捕のチャンスを生ずるような挙に出ればもちろんそれも最大生かしていきますし、そうでなくても今までの捜査を積極的に展開することによりまして一日も早く犯人を逮捕する、その決意で臨んでおりますので、御理解をいただきたいと思います。
#24
○寺田熊雄君 あなた方のお仕事の成功を恐らく全国民が希望し期待しておるのではないかと私どもは考えておるんです。
 さて、犯人が今までにいろいろと国民の前にあらわれては消え、消えてはあらわれる。そしてビデオの男であるとか、キツネ目の男であるとか、あるいは交通警察官の検問を受けて盗難自動車で逃亡した男であるとか、あるいはその同じ夜に盗難自転車に乗って逃げた男であるとかいう者が出たり入ったり場面にあらわれておるわけでありますが、この点では警察も大変社会から非難を受けているという、非常にお気の毒な面もある。これは昨年十二月十一日の参議院の地方行政委員会における金澤刑事局長の佐藤三吾議員の質問に対する答弁などを見ますと、いろいろ反省しておりますという率直な答弁も見えておるわけであります。
 私ども、例えば無線機を積んだ盗難自動車で交通警察官の制止を振り切って逃亡した男、この男などは相当土地勘を持っていないと狭い県道上を八十キロで逃げおおせるというようなことは到底考えられないわけであります。また、運転技術にもたけた男と言わざるを得ないわけであります。その年齢も警察官が見たところでは四十蔵前後であるとか、体も百六十五センチから百七十センチであるとかいろいろ言われておりますね。我々としてはあの近県で自動車免許証を持っているに違いないのじゃないかというような考えもできる。その自動車免許証で、年齢であるとかなどというようなもので一人一人つぶして捜査するようなことはできないだろうかというようなことを考えているわけで、これはあなた方玄人だから当然そういうような捜査もなさっておるのではないかと思うんですが、そういう点はどうでしょう。
#25
○政府委員(於久昭臣君) 具体的な捜査の内容につきましては御容赦をいただきたいと思います。私どもは考えられるやるべきすべてのことについて行っているということでございます。我々が必要だと考える捜査はともかく手ぬかりなく、手を抜くことなく行っておるということで御理解をいただきたいと思います。
#26
○寺田熊雄君 まあそうあってほしいと思いますが、それで、よく批判に出ますのが、犯人たちが去年の五十九年十一月十四日の夜、大津で現金運搬車の行く先を書いた指示書を張っているとした何かレストランわきの高速道路周辺案内図というのがあったようでありますが、そのあたりの様子をうかがっている男、これを警察官が尾行しようとしたけれども、何度も後ろを振り向いているので尾行を断念したというような報道がありますね。それは黒っぽい野球帽を深くかぶってサングラスをかけた百七十センチ前後の男であったということのようであります。
 それから、たくさんの警察官が尾行をまかれたというキツネ目の男であるとか、そういう人間は、この事犯が非常に捜査が困難である点にかんがみましても、一応警察官が職務質問をして、できれば一応交番の方に来てもらって、そうしていろいろと質問をするというようなことによってかなりな収穫が期待されたのではないだろうか。もしそれが本当の犯人ならあるいは抵抗したかもしれぬ。あるいは逃亡したかもしれぬ。あるいはそうでなくても警察官が何らかの収穫をそれによって得ることができたのじゃないだろうか。もちろん人権の問題がありますから、言語その他のことは非常に丁重に扱ってみなければいかぬ。乱暴に強引に連行するというようなことは避けなければいかぬけれども、一応紳士的に質問をし、紳士的に交番に来てもらうというような努力、そういうことはしてもよかったんじゃないかと私は考えるのだけれども、尾行を断念したとか、あるいはまかれてしまったというようなことは余りにも工夫がなさ過ぎるという批判なりそしりを免れないように思うんだけれども、あなたはどういうふうに考えられますか。
#27
○政府委員(於久昭臣君) この事件につきましてはいろいろな報道がされておりまして、先生御指摘の場面がいつのどのような場面なのか必ずしもよくわからないわけでございますけれども、昨年の十一月十四日のケースでありますならば、これは職質しようにも警察官がかなり離れた距離で見かけた、ひょっとしてあれかなと思っているうちにもう遠くの方で姿を消してしまったということで、物理的に呼びとめて職務質問をするようなそういった状況ではなかったわけでございます。また、これは結果的にそれが今公開をしております似顔絵の男と関連してのお話でございます。この似顔絵の男につきましては、その十一月十四日の段階での問題と、今先生御指摘のような意味で職務質問したらどうだったのかというふうなことを含めてありますけれども、それは今申し上げましたように物理的にあるいは状況的にちょっと非常に困難な場面であったろうと思います。
 その同じキツネ目の人物につきまして、昨年の六月二十八日に実は大勢のといいましょうか、七人ぐらいの捜査員が不審な男ということで見ているわけでございますけれども、それが最終的に京都駅で失尾をしたということについてもいろいろ御批判をいただいており、むしろそのときの方が取り逃がしたのじゃないかという御批判が多いわけでございますけれども、実はこれは余り具体的に御説明もしがたいわけでございますけれども、あの当時の六月の時点におきましては当然次の取引があるということが前提でございます。したがって、犯人との関係におきましては徹底して裏取引であると思わせなければいけない。裏を返せば警察が絡んでいるということを絶対に犯人に気取られてはいけないというのが我々の作戦の大前提でございまして、そういった前提のもとに不審者を、どうもおかしいという人物を発見して、細心の注意を払いながらともかく面体を似顔絵を自信を持ってかける程度にまで確認したというわけでございます。
 結果的にその人物につきましては京都駅で見失ったわけでございますけれども、その京都駅で見失ったということをもって不手際であると責めるのは、どうもそういうのは少し酷過ぎるのではないか、私どもはむしろよくそこまで粘ってやれたなと、やったなというふうに評価したぐらいの気持ちを持っているわけでございます。いろいろな見方があろうと思いますけれども、実情を申せばそういうことでございます。
 いずれにいたしましても、今回、今進行中のこの事件を通じまして、私どもは警察官の実践的な捜査技術の向上ということにおきまして、今後とも一層力を入れていかなければいかぬということについては十分感じておりますし、今までも力を入れてきましたけれども、今後とも一層磨きをかける努力を続けたいと思っているわけでございます。
#28
○寺田熊雄君 確かにここでやっぱり職務質問をする、ここで交番に連れていく、それともそれをせずに尾行だけにとどめるかというようなことになると、第一線の警察官の判断なり決断というか、そういうものに任せざるを得ないわけですね。後でいろいろと捜査技術の研修の場面で、ここではやっぱり思い切って当たってみるべきであった、いやそれは当たってみるべきではなくやっぱり尾行にとどまるべきであろうかというようなことを、これはやはり捜査技術の錬磨というか研修というか、そういう場を十分つくって捜査技術を向上さしていかないと、どうもこの事件ではあなた方には気の毒だけれども、やはり捜査の技術がまずいぞ、だらしがないぞというような国民の批判を浴びかねない。事実大失態であるというようなことを社説に書いた新聞社もあるくらいでありますからして、これはもう他山の石と言ってはおかしいが、この事件それ自体でありますからして、やはり審議官、これは相当第一線の刑事とい
いますか、捜査に当たる人々の捜査技術の錬磨、決断力、判断力、そういうものを十分これから向上させる努力をしていく必要があると思いますね。
 それからもう一つは、やはりそういうときにばっちりと写真を撮ってはいけないのかもしれない。これ肖像権の問題が出て人権の問題ともかかわりますけれども、こういう場合にはそれも許されるのじゃないだろうかというような感じもするわけであります。だから第一線の警察官が七人も八人も張り込んでいたというような場合には、そのうちの一人はやはりそういう証拠を残す機械力といいますか、それを持っていてもよかったのではないだろうかというふうに考えるのですね。
 まあ言うてもかいなきことだけれども、この十一月十四日の夜は何か犯人が盗難自転車に乗って逃亡したんじゃなかろうか、それを誰何した警察官がとまれと言ったけれども逃げちゃった、追いかけようにもバイクがエンストをしたんだというようなことに至っては、少し近代的な警察ということにふさわしくないわけですね。ですから、そういう点十分反省をして捜査技術の向上と同時にやっぱり機械力も十分活用するというふうにしてほしいと私は思いますが、どうでしょうか。
#29
○政府委員(於久昭臣君) この事件は、犯人も今後とも何かやるというふうなことで予告しているほど三月以来ずっと継続した事件でございまして、いろいろな場があるわけでございます。またマスコミ等に対しまして挑戦状という形でいろいろなことを言っておりますし、それだけにいろいろなことが真偽織りまぜて伝わっているようなこともございまして、現実にこの犯人を検挙するに至っていないわけでございますので、いろいろな御批判の中には大変無理な御注文だなと思うような場面もございますけれども、犯人を検挙していない以上一々反論するのもどうかということでございます。
 十一月十四日のパトカーが職質をして車が逃げた、結果的にそれが盗難車両であり、本件との関連が非常に濃いというふうに思わせるそういう事案でございましたけれども、結果的にはそれを逃がしてしまったということについては、パトカーの職務質問といいましょうか、犯人捕捉といいましょうか、そういう面では結果的に逃がしたので、それはどうしたのだと責められても、その点におきましては二言はないわけでございますけれども、いろいろな場面におきましてどういうふうに展開していくか、その場に至ってみなければわからないというのがこの犯罪のもう一つの特徴でございまして、何とか我々の裏をかこうとして犯人がいろいろな仕掛けをしてまいります。あちこち引き回されて、それがどこにどういう形で展開するのかそこに行ってみなければわからないということで、なかなか対応に難しいという面もあるわけでございます。
 したがって、私どもは今まで非常に重大な手落ちがあったというふうには思っておりません。今まで最善を尽くして捜査をやってきたというつもりはございます。ございますけれども、この事件を一つの大きな教訓といたしまして、当面は早期に捕まえるということでございますけれども、事件解決後、あるいは今からも、こういう新しいタイプの犯罪に対して的確に対応できるようにもっともっと技術的な磨きをかけていかなければいかぬ、それは装備資器材を含めてでございますけれども、そういった気持ちは十分持っているつもりでございます。
#30
○寺田熊雄君 それじゃ、大体この事件のお尋ねをこれで終わります。
 次に、法務省の矯正局長にお尋ねをしたいのでありますが、これは昨日御無理を言いまして拘置所、刑務所、その他に関するいろいろな資料を出していただいて、大変参考になったわけでありますが、まず刑務官の数を考えてみたいのであります。
 先ほどもお話をしましたように、法務省の仕事というのは大部分がもう人間が努力をしていくという面のそういう仕事ばかりであります。ところが、刑務官の数をこの十年間の分を出していただきますと、刑務官が五十年には一万四千六百八十八人おった。それが次第次第に五十一年にも、五十二年にも、五十三年にも、五十四年、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年と少しずつ減ってきておりますね。それで、五十九年の数を見ますと一万四千六百八十四人というのでありますから、五十年度と比較をして五十九年度は四人の減員であるという数字が出ておるようであります。
 一方、受刑者の数を見ますと、五十年が三万七千七百四十四人、これが次第に増加の一途をたどりまして、五十三年には四万一千三百十九人という四万台にふえてきておる。それも五十六年からはまたこれが四万三千、四万四千、五十九年には四万五千人台に突入しておる。あなた方の出してくださった数字によりますと四万五千三百七十六人である。そうすると、先ほどの刑務官で割ってみますと、五十年には刑務官一人が二・五七人を管理しておったのが、五十九年には三・〇九人を管理するようになる。しかも最近のように警察の暴力団取り締まりが強くなりまして、暴力団のように扱いにくい受刑者がふえてきたという現象も一面にあるわけでありますから、これは刑務官の負担が前と比べて著しくふえたと我々は考えざるを得ないわけであります。
 これは矯正局長、やはりあなた方がもうちょっとお考えになって、勇敢に大蔵当局に増員を要求していく。ちょうど今までは登記関係の業務、法務局の業務に我々の目も向いておりまして、これは何人も、超党派で登記官の増員が必要だということを声を大にして今まで叫んできて多少でも増員が実現した。不十分で今度は特別会計を設けることになったというようなことになりましたけれども、我々の目もこの刑務官の増員の必要ということから少し離れておったきらいはありますけれども、しかし責任者であるあなた方がやはりこういう事例を直視して、もう少し刑務官の増員にエネルギーを注ぐべきではなかったのだろうかと考えるんですが、いかがですか。
#31
○政府委員(石山陽君) 法務省の中でも大変地味で日の当たりません矯正関係の職員につきまして、御理解のあるお言葉をいただきましてありがとうございます。
 私どもといたしましては、大変地味ではございまするけれども、国家の治安、秩序維持のために必要な刑務関係の各施設というものを維持するための定員増強につきましては、かねがね関心を抱いているところでございまして、毎年、ここ数年間は特に行刑施設の刑務官の増員ということを矯正施設全体の増員要求の中で最重点の形で要求さしていただいております。最近、暴力団とか覚せい剤関係の受刑者というものがふえてきておる現状を踏まえまして、先ほど委員御指摘のように、負担率が上がっておると言いますが、これは数的な負担率でございまして、質的なものを加味いたしまするとさらにその数は倍加していくというふうにお考えいただいてもよろしいかと思います。
 そのため、職員に大変過酷な勤務を強いざるを得ませんので、私どもといたしましては、この点につきまして関係御当局に御理解を得るべく、毎年予算要求時あるいは増員の査定時に当たりましては関係省庁に対する説明を重点的に行っておりますが、幸い昨年あるいは本年につきましては関係当局からかなり深い御理解を得られた。その結果が、先ほどお読み上げのありました数字のように、ここ数年ずっと下がっておりました刑務所関係の、特に行刑施設の刑務官の増員が上向きに転じてきたという結果になってあらわれたのではないかというふうに理解しておるところでございます。
#32
○寺田熊雄君 これは今局長の言われたように、五十五年と比較いたしますと五十六年は一人ふえておる、五十七年は五十六年に比較して七人ふえておる、五十八年は十人ふえておる、それから五十九年が二十二人ふえておると、こういうことになるわけですか。それ自体は大変結構なことだけれども、先ほども私が申しましたように、五十
年、十年前と比べまして四人減っているという数字も、これは否定できないわけですね。一方、先ほどお話ししましたように受刑者は大幅にふえておるということでありますから、最近のあなた方の成功でこれは満足してはいけませんね。やっぱり五十年と比較しますと五十九年は受刑者が八千人近くふえておるわけですね。
 それで、あなたが御自分でおっしゃった質的な困難さの増大と行刑上の困難、実質的にふえておるというお話でありますので、質量ともに十年前と比べると刑務官のお仕事というものは非常に難しくなり負担がふえておるわけでありますから、これはやはり今後もこの勢いで引き続き増員にあなた方の熱情なりエネルギーを思い切って注いでいただきたいと私は考えるんですが、そのお気持ちがありますか。
#33
○政府委員(石山陽君) そのように今後とも努めたいと考えております。
#34
○寺田熊雄君 大臣、これはやはり局長も大蔵官僚相手に奮闘はなさるでしょうけれども、こうなると多分に政治的な力を必要とするというふうにも思われますので、大臣におかれても、まあ長く大臣としてお勤めになると私は思っておりますから、頑張っていただくように御決意のほどを伺います。
#35
○国務大臣(嶋崎均君) ただいま御指摘になりましたように、矯正関係の施設、私行ってみまして本当に丸腰の状態でこれだけたくさんの受刑者をきちっと整理をして、ある程度作業訓練までやって措置をしているというのを、矯正職員の皆さん方、長い伝統の上に立ってはおると思いますけれども、非常に努力をされて今日まで来られた姿というのを私は現に見ておるわけでございます。しかも、御承知だと思いますが、先ほど局長からも説明がありましたように、だんだん暴力関係の人とか、あるいは麻薬関係の方々というようなのがふえておる。なかなか厄介な状態になってくる。
 しかも、中を見ますとちょうどある意味で新陳交代期でございまして、相当世の中をよく見てこられたような人が中に入っておられる場合が多いわけでございますけれども、矯正の皆さん方というのはちょうど今その新陳交代で若い人が非常に多いわけですね。したがって、そういう若い人が相当世間を見てこられた人をいろいろな意味で訓練をしていくということは、それを見てもなかなか私は大変なことだと思うのでございます。したがいまして、幹部の皆さん方も非常に苦労してそれを育てていただくことに努力をしてもらっておりますけれども、私は今の状態から言いますと本当に全く日の当たらない職場なわけですね。街の明るい灯を見るのにも、大分近いところもできましたけれども、非常に寂しいところにありますし、そういう意味で本当に孤立した職場であるというふうに私は思っておるわけでございます。一般の人もなかなかこういうところに目が届くというチャンスも少ないものですから、なかなか日の目に会うというのですか、目が行き届かない部面であるような感じがするわけでございます。
 したがいまして、今年度の予算におきましても、御承知のようにことしは相当大幅な削減を全体的にはやったわけでございますけれども、そういう中で何とかひとつ法務省関係を見てもらいたい、特に矯正の関係のような仕事については十二分にひとつ御配慮を願いたいということで、やっとこさっとこ、こういう数字になっているというのが現実であるわけでございます。将来ともやっぱりそういう職場であり、しかも今の現状、それから職員構成というようなこともよく考えまして、やっぱりその充実に十分配意をしていかなければいけないだろうというふうに思っておるわけでございます。
 とりわけ、給与その他の面でもいろいろなことは面倒を見ていただいておるつもりではおりますけれども、まだまだどうもそういう面も配慮しなければならぬこともあるのではないかというようなことも心配しておるのが実態であるわけでございます。今後とも御指摘になりました点については十二分に配慮をしてやっていきたいというふうに思っておる次第でございます。
#36
○寺田熊雄君 次に、拘置所の問題で、今度は刑事施設法案をお出しにならなかった。留置施設法案も事実上つぶれてしまったようなわけでありますけれども、局長御存じのように、この問題は代用監獄制度に対する反対論といいますか、これが一番大きな法案阻止の理由であったわけであります。私どもとしては、できればもうちょっとやっぱり拘置所とか支所とか、そういうものをふやしていかないと代用監獄制度の永久化につながるという印象を与えかねないと考えておるわけであります。
 そこで、拘置所並びに拘置支所のこの十年間の数字を出していただいたところが、昭和五十年から五十九年の十年間に拘置所は全然ふえておらない。七である。拘置支所に至っては五十年に百七であったものが五十九年に百六になって一つ減っておる。こういう数字をそのまま直視いたしますと、法務省みずからがやはり代用監獄制度を是認して、これを漸進的に縮小をしていく、そして拘置所なり拘置支所に収容するというお気持ちを全く持っていないのではなかろうか、これは代用監獄制度の永久化を前提にしているのではないだろうかというふうに思われるわけであります。
 そうすると、これは来年あなた方はやはり刑事施設法をお出しになるとしても、この問題についてあなた方のお考えに変更がなくて根本的な態度というものは同じだということになりますと、これはやはり刑事施設法の成立に大変な障害にならざるを得ないですよ。その点どんなふうにお考えになっていますか。
#37
○政府委員(石山陽君) 今寺田委員仰せのとおり、昭和五十年のときに全国に拘置所の本所が七カ所、拘置支所が百七カ所ございましたものが、現在は支所の方が一つ減っておる。これは数的にはそのとおりでございます。この差は、実は昭和五十年、今回の監獄法改正の論議がたけなわになりまして、法制審議会が始まる直前までは、私どもは定員の合理化その他に備えまして、収容人員が一日平均収容人員としていわゆる基準に達しないものをむしろ大きい施設に統合し、職員をいわゆる計画削減に備えて有効に活用したい、そういう政策が先行しておった、そのあらわれがございました。ところが、五十年代のこの先に、実はこの年も四つ拘置所を整理しまして、二つ拘置支所を新営した、それが結果といたしまして百七が翌年差引マイナス二で百五になったわけでございます。その後現在までの間に一つふえましたので百六になっておると、こういう数字でございます。
 もちろん、私どもといたしましては、拘置支所が監獄法改正の問題に絡みまして増強の必要に迫られていることは言うに及ばないものと認識いたしておりまするから、新たな新設、それから収容能力の増強という意味での増設あるいは改築、この問題につきましても現在真剣に取り組んでおるところでございます。今後におきましても私どもはプランといたしまして各地区におきます拘置支所あるいは拘置本所、これらにつきまして必要な数を満たすように今後とも努力はしてまいりたいと思っています。
 ただ、委員特に御存じのことと思いまするが、実は私ども矯正関係施設の新たな新営というのは極めて困難な状況にあるという点、これはおわかりいただけると思いまするが、地域社会にお住みの住民の皆さん方の御同意を得、そしてまた必要な面積あるいは必要な条件の土地を入手して新営するという点が、最近の行革時代でございますから、財政上の問題から見ましてもなかなか困難でございます。これらの点は十二分に承知しました上で、今後とも私どもなりに施設の増強には努めていく、この決意には変わりないつもりでおります。
#38
○寺田熊雄君 大臣、今お聞きのように、来年法務省の多年の念願の一つである監獄法の改正、これについてやはり刑事施設法案をお出しになると私は考えておるのですが、今お話ししておる代用監獄の恒久化といいますか永続化、そういうふう
なことでありますと、やはり法案の成立に大変これは障害にならざるを得ないわけでありますので、一定のやっぱり年次計画をお立てになって、今は局長が言われたように財政的な事情の困難さというものは私もよく知っておるけれども、それにおびえたり、ちゅうちょしたりしておったのではしようがないから、勇敢にぶつかっていかないといけないと思いますね。あなたは大蔵省の方は非常にホームグラウンドのようなお方だから、その困難をやはり克服する能力をお持ちだと思いますよ。あとはもう決意の問題、努力の問題だ。これは事務当局を鞭撻して強い指導力を発揮して、やはりこの代用監獄制度の将来の廃止といいますか、縮小を目指して御努力になる、それはやっぱり必要だと思いますが、どうでしょう。
#39
○国務大臣(嶋崎均君) せっかくのお話でございますが、何しろ卒業してから十五年以上もたっておりますので、もう余りそちらの方の力はないわけでございますが、せっかくのお話ですから精いっぱいの努力はやっていかなければいかぬというふうに思っているわけでございます。
 ただ、非常に難しいのは、私的な自由というのは非常に謳歌されるような時代になってきておりますけれども、何か公共的な施設に対して社会の同意というのですか、そういうものを求めていくという気分がたんだん落ちていると言うと非常に語弊があるかもしれませんけれども、そういう点が多分にあるのだろうと思います。ましてや、今後、矯正関係のところ、あるいは今指摘になりました拘置所の問題等につきましても、これは東京だけ考えても正式な拘置所というのは一カ所しかないわけでございますから、その中でそれをふやしていくというようなことになりますと、これはいろいろな意味でなかなか難しい問題があるわけでございます。
 したがって、今何か年次的な計画をつくってやっていけというのは、何かこの年次的計画をつくるときにベースになる話というものがある程度なければ、なかなか絵にかいたもちだというようなことでは困るわけでございまして、これから矯正関係の施設の充実につきましてはやっぱり十二分に意を配りながら処理をしていかなければいけないのじゃないか。我々はそういう難しい環境にあるだけに、それだけにいろいろ地域についてのその理解をどういうぐあいに求めていくとか、あるいは少なくとも現にいろいろな整理を行うときにそれを上手に活用した形でどれくらいのことが全国的にできていくのかというようなことを気配りをしてやっていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
 なお、そうは申しましても、皆さん方余り応援をしていただいて、廃止の方向でなんというお話をのっけからやられますと、かえって留置施設法案との絡みが話が難しくなっていくという、ひいきの引き倒しにならないように十分その辺はひとつ気をつけて応援をしていただくことをお願い申し上げたいと思う次第でございます。
#40
○寺田熊雄君 しかしこの刑事施設、留置施設両法案に対して日弁連初め反対がどこにあるかということはあなた方百も承知なわけでしょう。だから一定の構想は持っていただかないと、全然無構想で、ただ通してくれ通してくれとおっしゃっても、その反対論を緩和させることは恐らく不可能でしょう。だから、我々はやはりこういう構想を持っているんです、そしてこれに向かって努力していきますということだけは何らか説明がないといけませんね。それを私はお話しているわけですからね。
 それから、保護局長に仮出獄の問題をお尋ねしたいんですが、今までに仮出獄した者はどのぐらいあるのだろうか、統計を出してもらいたいということをお願いしたところが、この統計が出てまいりまして、これも五十年の一万四千九百三十三人に比べますと五十九年は一万八千七百十四人であると、大変ふえておるわけであります。これはこのように仮出獄囚がふえた直接の理由というのはどこにあるんでしょう。
#41
○政府委員(俵谷利幸君) この提出いたしました統計によりまして申し上げますと、五十年以後五十八年までは漸増いたしております。しかしながら、この数は刑務所の収容者の数もややふえております関係上、仮出獄率から申しますと必ずしも増加してなくて、むしろ減少しておるというのが実態をあらわすのでございますが、それは別といたしまして、御指摘の仮出獄の数がふえたということは、結局は仮釈放が多く決定されておるということになろうと思います。つまり仮釈放の運用ということになろうかと思います。
#42
○寺田熊雄君 ところが、累犯の数をまた対比して調べていただくと、仮釈放された人の中で五十年は累犯者が五千六百七十二人である、それから五十八年は七千六百九十四人である、そうすると累犯者が五十年は三八%であったものが五十八年は四五%に増大しておるわけですね。これについてはどういうふうにお考えになるんですか。
#43
○政府委員(俵谷利幸君) 御指摘のように、数はこのようにふえておるわけでございます。その比率も確かに累犯者の比率はふえておるというふうに見られるわけでございます。
 この中身がどうなっておるかということは矯正関係の数字を詳細に分析いたしませんと正確にはわかりませんが、私が調べたところで申し上げますならば、この表にはございませんが、例えば五十七年、五十八年の主要な罪名別の仮釈放者の数というものを調べてみましたところが、窃盗罪で仮釈放になった者が大変多いわけでございます。五十八年を見ますと、それが五千三百二十六という数字がございます。それから覚せい剤を見ますと四千三百九十人という数字がございます。このように窃盗、覚せい剤というのが大変多い。覚せい剤の中にはいろいろ事案が含まれておると思いますが、こういうものにつきましても、所定の要件が整いまして仮釈放をすることが適当であると、かようになりますと仮釈放を行いますので、累犯者が多い。特に覚せい剤その他窃盗、こういうものには割合累犯者が多いということがうかがわれますので、そのような観点で仮出獄者の中に累犯者がかなり含まれてきておるというふうになっておるのではなかろうかと、かように思っております。
#44
○寺田熊雄君 それで、仮釈放にせよあるいは刑期満了による釈放にせよ、引き取り手が全くない、そして職もないという受刑者はどの程度あるんでしょう。これは何か統計みたいなものありますか。
#45
○政府委員(俵谷利幸君) 特に統計というものはございませんが、仮釈放をいたします場合に身元引受人がないという場合には、仮釈放、つまり仮出獄は認めておりません。したがって、仮に家がないというような者につきましては更生保護会等を用意いたしまして、そこに収容する、そして住居を与え食事を与え、さらには就職のあっせんをするということで、出所後の保護のめどが立ちまして仮釈放をする、こういうことになります。
#46
○寺田熊雄君 更生保護会に家のない者は収容すると言いますが、これは永久的に収容は不可能なんでしょうね。そういう場合に、あなた方としては家を見つけてやるとか職を見つけてやるとかいうような努力なり能力といいますか、そういうものはどうなりますか。
#47
○政府委員(俵谷利幸君) 私どものこの更生保護の仕事は、改悛の情があり、かつ再犯のおそれがない、そして自立の能力がある者にこれを援助して更生を助けるというのが建前でございます。そこで、その仕事を担当するのはいわゆる保護観察所でございまして、ここの保護観察官が種々努力をいたしまして、仕事につきましては平素から協力雇用主というものを開拓いたしております。こういうところにあっせんをして職業を与える。住居等につきましても、その際に可能ならばこちらに移させるということでございます。
 そして、この保護会での収容は、やはり予算的な問題もございまして、法的には制限はございませんけれども、予算面の関係から申しまして、大体の方針といたしましては一人につきまして食事をつけて宿泊させるという場合は大体二十四日ぐ
らい、二十二、三日ぐらい、それから宿泊だけ、なおもう少し泊まらなければならぬというような場合には宿泊だけの援助を認めていまして、これが二十八日ぐらい、合わせて五十日ぐらいは宿泊、食事の供与等の援助ができる、こういうことになっております。いつまでもと、これは予算的な問題でありますから本人の状況によりまして多少の伸縮はございますが、できるだけ早く本人の自立を期待いたしまして、それに向かって指導援助するという建前になっておるわけでございます。
#48
○寺田熊雄君 これを余り面倒を見るということになると、第二臨調の小さな政府論に真っ向から反対することになるのでしょうね。だから終生面倒を見るなんていうことは、とてもそれは財政的にもできないし、今の第二臨調的な政治論から言いますと不可能なのかもしれないけれども、しかし家もない職もないという受刑者をある程度まで面倒は見るが、それから先はおれは知らないんだ、自分で生きていけと言っても、実際上は非常に難しいわけでしょう。そうしたら、また犯罪を犯して刑務所に舞い戻るほかはない。この矛盾についてはあなた方はどういうふうにお考えなんでしょうね。もう全く手がつかないと言って投げ出してしまうのか、何らかの意味で自分たちもその解決策というものを見出さなければいかぬと思っておると言われるのか。その点はいかがでしょう。
#49
○政府委員(俵谷利幸君) 大変難しい御質問でございますが、現実には保護観察所の職員あるいは民間の保護司さん、こういう方々の御協力によりまして、自分で自立の意志があり能力もあるのに全く行く先もなくなったと、こういう事例についての報告はまだ受けておりませんが、仮にそういうことがございましたら大変困った取り扱いということになろうかと思っておりますが、むしろ広い社会福祉的な観点で取り扱いを願うということになるのではなかろうかと、かように愚考いたしますが。
#50
○寺田熊雄君 そうすると、できる程度面倒は見るが、それからはもう社会福祉の分野であって我我のあずかり知らぬところであると、そういう結論になるわけですか。これは大臣はどういうふうにお考えになりますか。もう受刑者、出て何日かは面倒見る、しかしそれ以上は面倒は見れぬ、これはもう社会福祉の分野で法務当局のあずかり知らぬところであるとおっしゃるのか。そうなると、実際はまたもう一遍累犯をして舞い戻ってくることは確実だと思いますけれども、どうでしょう。
#51
○国務大臣(嶋崎均君) できるだけ職業的な訓練を積み重ねて出てこられるわけでございますが、出られましてから、そういうところで、先ほど来説明しましたように、相当の期間の面倒を見られるというような形になっておるわけでございます。それからまたいろいろ民間の皆さん方にも応援をしていただきまして、ある程度その雇用についていろいろ判断をしていただくというようなグループもあるわけでございます。そういう中で、やっぱり整理をしてできるだけ長期にわたるというようなことがないような処理をしていくというのが現実的なやり方ではないかと思います。それからまた、現にある程度そういう面をすぐ何か社会福祉的なところと言うと語弊があるかもしれませんけれども、そういう施設というか、そういう状態というのは戦後大分いろいろな意味で進歩してきておりますから、そういうところと密接な連絡をとってやらなければならぬというふうに思っております。
 ただ、六十歳、六十五歳をうんと超えたというような方々になってきますと、これらにつきましては非常に話が難しいと思いますけれども、そういうときにはやっぱりある程度我々は、現に恩赦その他の中を見ましてもそういう方もある程度出てきているというようなことも見受けられるわけでございますから、そういうところはそういうことと調整をしてやっていくということで、やっぱりできる限り社会に早く復帰していただく。そのためのいろいろな努力をする。あるいは民間の皆さん方の御協力を得るとともに、いろいろな施設を運用していく皆さん方にも御苦労を願って、できるだけそういう問題を早期に解決するような努力をする。その後の話として、今後そういう具体的なものをどう個別に面倒を見ていくかという判断の問題になってくるだろうというふうに思っております。
#52
○寺田熊雄君 もう時間が来てしまったのですが、ちょっと入国管理局長に、あなた方から日本人、外国人の出入国の表をいただきまして、職員の十年間の増員の模様もいただいたわけですね。いろいろ事務の簡素化によって事務的な手間を省いていらっしゃるということはよくわかるんですが、基本的にはやっぱりお仕事の量と職員の数とのバランスがちょっととれていないような気がするので、これからもやはり思い切って、増員を要求する合理的な理由というものはあると思いますから、事務量の増大に伴うことですから、これはやっぱり勇敢にやっていただきたいと思うんです。この点の御決意を伺いたいと思うんです。
 それから、刑事局長にもひとつ。旭川の日通の営業所長殺しで裁判所が検察官の請求した証拠を調べてことごとく却下して、殺人について無罪の判決をしましたね。これはやっぱり警察の代用監獄制度の弊害を判決でも何かうたったというように聞いておるんですが、この自白偏重の捜査方法については、もうちょっと厳しくあなた方が警察官に対して指導を強めていかなければいかぬし、検察官みずからもやはり自白偏重の弊に陥っていやしないかということの絶えず検討なり反省が必要だと思いますが、その点どうでしょうか。
 入国管理局長と刑事局長にその点だけお伺いして、きょうはもう質問を終わります。
#53
○政府委員(小林俊二君) 大変御理解のある御指摘でございまして、私どもも心に銘記いたしまして今後とも努力を続けたいと存ずる次第でございます。
 過去十年間を振り返ってみますと、日本人の出入国が約一・九倍、外国人の出入国が二・六倍、それから入国管理法違反による収容者数が二倍強、送還者、これは強制送還でございますが、五倍弱ということでございまして、非常に業務量は増加いたしておりますが、過去十年間における地方入国管理局の職員の増大は、五十年度を一〇〇といたしまして五十九年度が一〇三にすぎないということで、特に過去五年間の増加はほとんどないに等しいわけでございます。五十年代の前半におきましては年間約十人ぐらいづつの純増があったのでございますけれども、五十五年以降は全く停滞いたしております。こういう状況でございますので、今後の増員につきましては関係各位の御理解をも得まして、ぜひとも旧に倍する努力を続けたいと存じております。ありがとうございました。
#54
○政府委員(筧榮一君) 御指摘の旭川の事件、今委員御指摘のように、二十何通かの自白調書については任意性がないということではねられ、裁判所が証拠申請を却下したということになっております。判決文自体あるいはその却下決定の決定自体の中で代監制度がいかぬということを直接には言っておりませんが、やはり代監といいますか警察署における取り調べについて遺憾な点があった、その結果、任意性が否定されるということで、いろいろ具体的な点を挙げて述べておるところでございます。この点につきましては、自白が証拠として重要なものであるということは申すまでもございませんけれども、それはあくまでも真実の自白であるということが必要であるわけで、自白を得た場合にそれを十分吟味し、さらにその他の物証によって十分その真実性を確認するということが必要であることは従来言われておりますし、この事件においても痛感されるところでございます。
 御指摘のように、自白偏重に陥るということのないように、警察当局におかれてもこのような判決あるいは決定の内容を受けとめて検討しておられることと思いますし、検察当局におきまして
も、この判決を受けとめまして、今後さらに自白の偏重に陥ることのないよう、その吟味にさらに万全を期するという方針でまいるというふうに考えております。
#55
○飯田忠雄君 本日は犯罪捜査の予算に関連をいたしましてお尋ねをいたしたいと思います。
 これは昭和五十四年七月十日の最高裁第三小法廷の判決でございますが、都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査を行うに当たりまして適法に他人に加えた損害賠償はこれは都道府県が負うべきだ、こういう趣旨の判決でございますが、この中で、犯罪捜査というものは都道府県の警察官が行っておるし、また都道府県の費用で賄われておるのだから、だからこれは都道府県の事務なんだ、こういう論旨が展開をされております。そこで本日はそういう考え方が一般的な考え方として通用するかどうかという問題についてお尋ねをするわけです。
 交通犯罪につきましては、交通の取り締まりですから、交通の取り締まりというものは交通ルール違反者に対して交通ルールを守れよということで科する一つの罰でございます。そういうものと、刑法犯、本来的に人間として非難さるべき行為、そういう行為に対して処罰を加えるという刑法的な犯罪と同一視することが一体正しいのかという問題が私は根本的にあると思うんです。ルール違反というものはそのときそのときの行政のあり方によって内容が変わっていく問題ですね。しかし刑法犯はよほどのことでない限り社会道義に反する問題ですから変わらない。そういうものを同一視していくということは問題ではないか。交通ルールの違反のような行政罰則の違反については、これは都道府県の事務として差し支えない。地方公共団体の仕事にふさわしいものと考えてもいいものなんです。ですから私はそれはそれでいいと思います。それから、都道府県が犯罪捜査の費用を持つという問題は、法律によって持つことを義務づけられておるというだけの問題でして、そういうことから犯罪捜査が直ちに都道府県の事務だと言い得るか、これは問題だと思うわけです。
 そこで、きょうはそういう問題についてお尋ねをするわけでございます。もちろん、私は警察事務一般がこれは都道府県の事務であるということを否定するものではありません。地方自治法の二条六項二号には警察の管理及び運営を都道府県の事務の一つとして規定しております。また、警察法の三十六条では、都道府県に都道府県警察を置いて、その区域内の警察の責務に当たらせる、こういう規定もありますし、また同時に三十七条では、その経費は原則として都道府県が負担することとしております。こういうような規定があることは十分承知の上での質問でございます。
 警察の仕事は普通一般に行政事務である。行政事務の場合に、これが都道府県の事務であるということは、これはもう通説であってだれも疑わないのですが、犯罪捜査のように、これは犯罪というのはいわゆる社会道義に反する問題ですから、こういうものは当然憲法によって基本的人権を侵害されても受忍すべきである、こういう建前が貫かれておるわけです。犯罪捜査について人権侵害が合法化される根拠は憲法にある。そういう問題でありますから、そういうことについて一般的に日本国民にあるいは外国人に対しても、違法な行為を犯した者についてその者の人権に制限を加えるという行為、こういうものが都道府県別々に一体行われていいのか。
 犯罪捜査がもし都道府県の事務でありまするならば、条例でもってその内容を決め、条例ほよって処分が行われるということに法論理上はならざるを得ない。ところが、そうではなくて、今日は全部刑法は国の法律であって、人を処罰する場合は国が、国会が決めた法律で罰する以外に方法がないのであります。そういうことから考えていきますと、国が決めた刑法は反した者を、これをひっくくって監獄に入れるといったような場合に、そういう作業を行うことが都道府県別々であっていいのか、これは根本的な問題であろうと思うわけであります。
 そういう観点から本日は御質問を申し上げるわけですが、まず警察にお尋ねしますが、国家公安委員会は警察法の第五条に所掌事務が規定されております。その所掌事務の中に犯罪捜査という言葉があるかどうか、犯罪捜査を国家公安委員会は所管しておるかどうかお尋ねを申し上げます。
#56
○説明員(中門弘君) お答えいたします。
 警察法の五条には犯罪捜査という明文の言葉はございませんけれども、いろいろ羅列してあります最後に「警察行政に関する調整」というふうな規定を持っておりまして、犯罪捜査はこの警察行政の中で読むというふうな解釈をしているところでございます。
#57
○飯田忠雄君 犯罪捜査は普通、行政だと、こう言われておりますけれども、それは言葉で行政だと言っておるだけであって、司法と行政との区別をまず明らかにしなければいかぬと思うんです。司法はどういう内容を持ち、行政はどういう内容を持つか、お尋ねいたします。
#58
○説明員(中門弘君) まず、司法と申しますのは刑事訴追に絡まります事務でございますし、行政の方はこれに対しまして警察の領域で申しますと都道府県の公安を維持する一連の事務が含まれるというふうに思います。
#59
○飯田忠雄君 ちょっと質問の順序が変わってきますけれども、これはやむを得ませんが、地方自治法という法律がございますが、地方自治法の第二条第十項をちょっと開いてみてください。そこに「地方公共団体は、次に掲げるような国の事務を処理することができない。」、こうありまして「一 司法に関する事務 二 刑罰及び国の懲戒に関する事務」と、こうあるんですよ。司法に関する事務は地方公共団体は所管することができない、そうなっている。ここで司法とは何ぞやということが非常な重大な意味を持ってくるのでお尋ねしたんですよ。そこで、司法というものが刑事事務である、こういうお話しでございました。犯罪捜査というものは、そうしますと、これは刑事裁判を前提として行うものですから司法ではないか、この点についてはいかがですか。
#60
○説明員(中門弘君) 確かに御指摘のように司法と行政とのボーダーラインというものは非常に厳格に区別することが困難な実態にはございます。したがいまして、どの領域までが一〇〇%司法でどの領域までが一〇〇%行政だというふうなことはなかなか明確に区別しにくいかと存じます。
#61
○飯田忠雄君 これは刑事局長なり内閣法制局の方おいででしたらお尋ねしますが、これは重要な問題でして、司法は裁判のことのように通常言われておりますけれども、裁判だけが司法じゃないんですよ。もし裁判が司法なら、司法という言葉を使わないで裁判という言葉を法律に使ってほしいわけだ。そんな煩わしい司法なんという言葉を使ってもらいたくない。法律でわざわざ裁判という言葉を使わずに司法という言葉を使った以上は、これは裁判とは違ったもっと範囲の広い意味を持つのではないか。私にはそういうふうに読めますが、この点について専門の方はどういうふうにお読みになりますか。刑事局長はどうお読みになりますか。
#62
○政府委員(筧榮一君) 地方自治法は私ども所管ではございませんので正確なお答えはできるかどうかわかりませんが、司法というのは、私考えるには、今先生御指摘のように、やはり裁判所の裁判といいますか、それが中心であって、例えば検察官の場合いろいろな公訴提起とかやりますけれども、検察官は何だというと準司法的な機関である、司法に準ずるというような言葉をよく使います。したがいまして、司法という場合に厳格に解すればやっぱり裁判といいますか、裁判所の行う事務といいますか、そのことであって、それに一番密接するのが公訴提起のようなことであり、さらにそのための犯罪捜査ということになればそれは司法という概念からは離れてくるというふうに考えております。
#63
○飯田忠雄君 犯罪捜査をする場合、刑法に反しておるかどうかを見つけ出して、反しておる者を
これは引っ張ってくることでしょう。裁判だって刑法に反しておるかどうかを見つけて、そうして罰するものでしょう。内容は同じなんだ、これ。検察官だってやはりそういう刑法に反する者を捜し出してくることでしょうが、これは司法なんだ。
 裁判を司法だというそういう考え方は終戦後に起こった問題ですよ。そうして厳格に、司法という言葉を余り範囲を広げられると困るものだから、したがってそういうことに制約を加えるために学者がこういう裁判だけに決めようじゃないか、限定しようじゃないかということでしてしまった。戦前はそうじゃなかったんですよ、戦前における司法という言葉の解釈は。そこで、ここに法律にわざわざ「司法に関する事務」と書いて、その次に「刑罰及び国の懲戒に関する事務」と書いてありますが、この場合、なぜ裁判に関する事務と書かぬのか。もし司法というものが裁判ということであるならば、「司法に関する事務」なんてあいまいなことを書かぬで、はっきりとここには裁判に関する事務と書くべきではないだろうか。
 これは終戦後の問題ですが、終戦後は明らかに学者は司法とは裁判所、裁判のことだ、確かにこう言いました。しかし、それは法の条文とはどうもしっくりいかぬのではないか、こういうことなんですが、これは法制局はどうお考えになりますか。
#64
○政府委員(前田正道君) 地方自治法の二条十項第一号が「司法」の文言を使っておりますのは、我が国の統治構造が立法、行政、司法の三権分立をとっていることを前提としてこの文言を使っているものと考えます。そういたしました場合に、ここに用いております「司法」という用語は、立法、行政に対しまして、法規を適用いたしまして、ある事項につきましての適法違法、あるいはこれを規制します権利義務の関係を確定するということによりまして、具体的な争訟を解決する国家作用を指して用いたものと考えております。
#65
○飯田忠雄君 刑事裁判というのをもし裁判所だけだったらどうしてやるんですか。刑事訴訟法には明確に項目設けて捜査まで書いていますね。捜査事項が書いてありまして、捜査権限は刑事訴訟法によって与えられている。刑事訴訟法の適用がなければ捜査のしようもないでしょう。裁判というものが、刑事裁判があり得るためにはその前提として必ず捜査が必要なんですよ。ですから、その捜査は一般の行政事務と区別されているでしょう。一般の行政事務なら、例えば犯罪捜査が都道府県の事務であるというなら県知事が犯罪捜査権を持つことになる。一般の捜査事務として理解するならですよ。現在の地方自治法で県知事が犯罪捜査権があると認めることのできる規定は第何条でありますか、お尋ねいたします。これ、法制局どうですか。
#66
○政府委員(前田正道君) ちょっと、もう一回言ってください。
#67
○飯田忠雄君 わかりませんか。こういうことです。
 地方自治法の中に県知事が犯罪捜査権を持っておるということをうかがい知らせるような、そういう規定はありますか。あればそれは第何条でしょうか、こう聞いている。
#68
○政府委員(前田正道君) 今御指摘の点についてはございません。
#69
○飯田忠雄君 都道府県の事務で都道府県が所管しているものであるなら、都道府県を所管している長は県知事でしょうが。県知事があずかり知らぬような事務が都道府県の事務と言えますか。どうですか。
#70
○政府委員(前田正道君) そこはまさに警察事務の警察事務たるゆえんであろうと存じます。警察法の三十八条第一項をごらんいただきますと、「都道府県知事の所轄の下に、都道府県公安委員会を置く。」という規定がございますけれども、ここに言っております所轄と申しますのは、この規定について申し上げますならば、組織の所属の関係におきまして都道府県公安委員会が都道府県知事の管轄のもとにあるということを意味するにとどまりまして、その所掌事務につきまして都道府県知事の指揮命令を受けるものではないということでございます。その意味におきまして都道府県知事が犯罪捜査の権限を有するものではございません。しかしながら、組織の面におきましては都道府県知事の管轄のもとに立つという意味におきましてこのような規定が置かれているものでございます。
#71
○飯田忠雄君 組織の上において立つ、それはそれでいいですよ。それで、都道府県というには、これは事務は行政でしょう。行政ですね。都道府県の事務は行政なんですよ。行政でありますが、その行政というものに線を引くならば、行政違反について、それをいろいろ行政法規を守らせる、そのためのいろいろの罰金だとかそういうようなものなら明らかに行政の範囲内、それはそれでいいですよ。しかし、犯罪人として刑罰を科するということになりますと、これは普通の行政ではないじゃないか。
 例えば自動車や汽車を爆破した、そういう場合にそういう犯罪と交通ルール違反と一体一緒にできるかという問題です。交通ルール違反ならこれは県民の交通道徳を守らせるために言うことを聞かぬ者におきゅうを据える、そういう意味で懲罰もあるでしょう。しかし、その懲罰は懲罰をするための懲罰じゃない。行政を確保するためのものでしょう。
 ところが、犯罪はそうじゃないですよ。犯罪は何もそういう行政法現を確保するためのものではない。社会秩序に反する、人を殺したり他人の物をとったり、他人の財産を爆破さしたり、そういう行為に対して懲罰を加えるものである。懲罰の意味はそれはいろいろ学者が言うでしょうね。教育刑だとかなんか言いますが、そういうことは一応差しおいて、懲罰であることは間違いない。そういうものでございますね。そういうものは都道府県自治体の地方自治の本旨というものに合わない、国民を処罰するようなものは。行政罰則の場合は行政そのものが主ですから、当然行政の内容として都道府県の仕事としてふさわしいのだね。これは根本問題ですよ。一体都道府県の事務にしていいのか、国の事務であるべきかという問題の根本問題だ。
 それから、犯罪の処罰をしたりするのになぜ国が統一して裁判官を国のものとしているか。それは統一ある裁判をしなければならぬから。もしばらばらでいいのなら都道府県に裁判官置いたらいいんですよ。都道府県の裁判官、アメリカにあるでしょう。州の裁判官ある。州が広いから、国ぐらいの広さだからいいけれども、日本の場合だって、もしばらばらでいいのなら都道府県に裁判官を置けばいいんです。そうしないゆえんは一体どこにあるかということを考えなければいかぬですね。それが犯罪捜査を国が統一してやっているという根拠なんです。そういう問題でございましょう。そういう問題について法制局はどうお考えになりますか。
#72
○政府委員(前田正道君) ただいまいろいろなことをお話しになりましたので、どれからお答えしてよろしいかわかりませんが、まず司法権に関しましては、御承知のように憲法第七十六条第一項が「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」と規定をしておりますから、国家の統治構造の基本といたしましてこういう裁判所が国の機関に属するということはもう憲法上明らかであろうと思います。
 それから、刑罰のお話がございましたけれども、刑罰に関しましては、これまた御承知のように憲法第三十一条が「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」、こう規定しておりまして、この規定は、明文はございませんけれども、罪刑法定主義を定めるものだというふうに解されます。それから、続きまして第三十二条で「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」ということで基本的人権の一つである裁判を受ける権利を保障されております
けれども、この裁判を受ける権利は先ほど読み上げました七十六条第一項に規定をしております裁判所によって保障されるものだと考えます。
#73
○飯田忠雄君 そうしますと、刑事事件を捜査する行為は普通の行政行為とは違うではないか。普通の行政行為の場合は、御承知のように国民の福利を図るためにいろいろ行政を行いますね。それから、警察業務といいましても、交通整理をやるということは国民の日常生活を安泰ならしめる一つのルールを守らせるためでしょう。そういうものは行政なんだね。ところが、刑事裁判にかけるために、監獄に送るために引っ張ってくる。犯人として検挙する。犯人として検挙する行為はこれは普通の行政じゃないでしょう。特定の人間に対して、その男が悪いことをした、だから引っ張るのですが、これは明らかに刑事裁判に直結したものでしょう。これは人を処罰する行為、処罰するための次元の行為のものですね。そういうものは当然普通の行政とは違っておるのではないか。行政機関が所管しておるという問題と、行為の性質が行政とは区別すべきだという問題とは別ですよ。そういう点をどのようにお考えになりますか。
#74
○政府委員(前田正道君) 国家作用を先ほど申し上げました立法、行政、司法というものに分類をいたしました場合に、委員おっしゃるように、一般的な意味で申し上げれば、先ほどの捜査事務とか、あるいは検察事務もそうでございましょうが、純粋の行政事務というものと対比いたしました場合には、司法事務との関連性というものが非常に深い。その意味におきましては、典型的な意味の行政事務とは異なる性格を有しているということにつきましては委員御指摘のとおりだと存じます。
#75
○飯田忠雄君 そこで、お尋ねを申しますが、先般刑事局長に犯罪捜査は国の事務か都道府県の事務かということをお尋ね申しましたところが、警察の方は犯罪捜査はこれは都道府県の事務だとおっしゃった。それに対して刑事局長は国の事務である、国の事務であるのだがこれは都道府県に団体委任をしたと、こういうふうに答えていただいたわけでございます。この団体委任説が今日政府で一応統一された説であることは知っておりますが、存じておりますが、そのことを刑事局長はおっしゃったのであろうと思います。
 それで、私のこれからする質問は筧さん個人を責めるつもりは全然ありません。いいですか。そういうつもりじゃないですよ。そうじゃなしに、もっと広い意味から法律上どう考えるかという点についてお尋ねをするんですが、団体委任だということになりますと、つまり国の仕事を都道府県に委任する以上は、都道府県という公共団体に委任する以上は、法の根拠なしにするということはおかしいのじゃありませんか。やはり法の根拠が要るのではないかと思うんです。これは団体委任説は法制局のお説であるということを私は聞いておりますので、本来法制局に聞いた方がいいかもしれぬけれども、この前刑事局長がそういうふうにおっしゃったので、刑事局長と法制局の両方にお尋ねをいたしますが、団体委任というのであるならば何法の何条に基づいて団体委任をするのであるか、こういう点についてお尋ねいたします。
#76
○政府委員(筧榮一君) 犯罪捜査は本来国の事務でありますが、地方自治体への団体委任事務であるというふうに先般お答えしたところでございます。
 その根拠といたしましては、まず地方自治法の二条六項、警察の管理及び運営を都道府県の事務の一つと定めておる規定がございます。それから警察法三十六条、いずれも飯田委員先ほどお挙げになった条文でございますが、三十六条あるいは三十八条、それから直接は関係ございませんが、費用負担に関する三十七条というようなものが根拠と言えようかと思います。これらのことから、犯罪捜査は地方自治法二条二項に言う「法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属するもの」としていわゆる団体委任事務に該当するというふうに解しております。
#77
○政府委員(前田正道君) ただいま刑事局長がお答えになりましたのと同じことになるかと思いますけれども、地方自治法の第二条第二項は「普通地方公共団体は、」「法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属するもの」「を処理する」、ちょっと途中省略いたしましたが、と定めておりまして、地方自治法の別表の第一には「都道府県警察を置くこと」ということが掲げられておりますほか、地方自治法の二条六項第二号では、先ほど委員お挙げになりましたように「警察の管理及び運営」に関することを「処理する」と規定しております。他方、警察法の第二条を見ますと「「警察は、」「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕」「に当ることをもってその責務とする。」と定めておりまして、さらに第三十六条におきまして「都道府県に、都道府県警察を置く。都道府県警察は、当該都道府県の区域につき、第二条の責務に任ずる。」というふうな定めを置いております。
 こういうような規定からいたしますと、結論といたしまして、警察の行います犯罪捜査事務というものは都道府県に団体委任をされたものであるというふうに解しております。
#78
○飯田忠雄君 ただいまのようなお説であれば、それは団体委任じゃなしに法の規定に基づくということでしょう。法律の規定に基づくことだ。つまり警察法、自治法に書いてあるからそうだという御説ですね。団体委任じゃないでしょう。法そのものに基づいていると、こういうことなんですね。
 私は法そのものに基づくということにつきまして今疑問を持ちますのは、「警察の管理及び運営」云々という、こういうことが書いてありますが、これは警察事務一般の問題で、普通、行政警察ですね。行政に関する警察の問題であるはずですよ。もしここに警察の管理運営が全部都道府県の事務だ、犯罪捜査もそのうち含まれるといたしますと、それじゃ犯罪捜査について県知事はここに書いてあるように管理したり運営したりするのかと、こういう問題が起こるのですよ。そこでお尋ねをしたんですが、どうですか。これは県知事は犯罪捜査を管理し運営いたすのですか。どうでしょう。
#79
○政府委員(前田正道君) 先ほど申し上げましたように、都道府県公安委員会の所轄上の、所轄する機関というだけにとどまりまして、犯罪捜査の権限というものはお持ちではございません。
#80
○飯田忠雄君 この問題はもう少しぜひ御研究をお願いいたしたいと思います。おろそかに扱うべき問題ではないと思いますが、犯罪捜査の費用を都道府県に負担させるということは法律でそう決めたんです。だから都道府県は払っているんですよ。そのことに遠慮して、犯罪捜査の業務まで都道府県の事務だと言う必要はないと思いますよ。都道府県の事務じゃなくたって、国の事務でもその費用を都道府県に支払わせることはあるわけです。国の費用を我々は法律で税金として払わされておるでしょう。私どもは税金を払うときに何も法律がなかったら払う必要はない。法律で義務づけられておる。
 それと同じで、都道府県に対して、犯罪捜査の費用は、君のところの職員である警察官がやっておるものだから、資格はどうあろうと、犯罪捜査の仕事は国の仕事だけれどもそれを都道府県の職員がやっていることだから、費用も都道府県が持ちなさいよという、そういうふうに警察法で決めただけのことですよ。警察法に基づいて都道府県は費用を払うのですからね。別に遠慮する必要はちっともない。そういう規定があるから犯罪捜査は都道府県の仕事だといったような説明の仕方はこれはおかしいと思いますよ。その点についてどうですか。
#81
○政府委員(前田正道君) 警察法第三十七条第二項の規定が犯罪捜査事務が都道府県警察の事務であることの直接の根拠となるものでないことは、ただいま御指摘のとおりに存じます。
#82
○飯田忠雄君 犯罪捜査権につきましては刑事訴
訟法で決めておりますね。犯罪捜査権はだれに与えたものだという問題は刑事訴訟法が決めておることでございます。その刑事訴訟法の中では、御承知のように警察に限って申しまするならば都道府県の警察官と法律が指定しているわけです。都道府県の警察官は犯罪捜査権を行使しろよと書いてあるんだね。その犯罪捜査権は国の犯罪捜査権ですよ。それを都道府県の警察官にそういう資格を与えているのが刑事訴訟法でございましょう。そういう刑事訴訟法があるにもかかわらず、犯罪捜査は地方公共団体の事務であるといたしまするならば、刑事訴訟法は地方公共団体の仕事を決めた法律かと、こういうことになりますが、その点いかがですか。
#83
○政府委員(筧榮一君) 御指摘のように刑事訴訟法百八十九条では司法警察職員という言葉が使われておりまして、「警察官は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。」というふうに規定してあるわけでございます。この規定は警察官は司法警察職員として職務を行うということでございますが、この司法警察職員とは刑事訴訟法上の捜査権限を行使し得る資格の一つを示すものでございまして、都道府県警察の警察官の行う捜査が司法警察職員としての職務であるということから直ちに犯罪捜査が団体委任事務であるということと矛盾するというふうには考えておりません。
#84
○飯田忠雄君 それでは、逆の方から御質問を申し上げますが、犯罪捜査を都道府県の事務といたしますと、それは都道府県の知事の権限になってくるわけでございますが、それを刑事訴訟法で都道府県知事の権限を剥奪したのか、そういう意味を持つ規定でありますかと、こういうことなんですが、どうですか。
#85
○政府委員(筧榮一君) 先ほど法制局から御答弁ありましたように、知事が犯罪捜査を行うわけではございません。刑事訴訟法はあくまで犯罪捜査についての一般法として、人権等も考慮しながら、どういう資格の人間がどういう場合にどういう権限を行使し得るかということを規定しておるわけで、その中の一つの権限主体に司法警察職員というものがあるというにすぎないと考えております。
#86
○飯田忠雄君 それはそのぐらいにしておきますが、団体委任という表現の仕方は実はおかしいわけですね。ということはぜひ御研究願いたい。
 次の問題に入りますが、犯罪捜査の管轄がどこにあるかという問題、これが権限行使の範囲を決めることに決定的な要素であろうと思います。犯罪捜査をどこが管轄しておるかという問題ですね。もし都道府県の警察事務であるということになりますと、その犯罪捜査をなし得る範囲は都道府県の範囲に限られてしまって、よその都道府県に出ていって捜査することはできない。権限がないことになってしまうのですが、今日の体制はそうなっておるのかということがまず第一。もしそういうことであれば、全国的な広域捜査が制度上できなくなるが、その点よろしいかという問題です。警察庁どうですか。
#87
○説明員(中門弘君) お答えいたします。
 警察法第六十一条には管轄区域外における職権につきまして規定がございまして、他の都道府県等に必要な限度で出ていって権限行使をすることも可能の規定が設けられております。
#88
○飯田忠雄君 現在、重要な犯罪、例えば先ほど同僚議員から御質問がございました毒入りの事件ですね。こういうような事件、これは全国的な捜査にならざるを得ない。こういう場合に、そのような都道府県の事務だということにこだわって、そして都道府県の範囲でなければ原則として捜査ができないといったような観念にとらわれておって、一体適切な対応ができるかという問題ですよ。司法警察職員という職務は地域には関係ない。もし関係があるとすると、権限行使の範囲だけの問題です。どの範囲内でできるかという問題だけです。ですから、そういう問題につきましてもう少し警察庁は御関心を持っていただきたいと思います。
 時間の都合で次の方へまいりますが、やはり管轄の問題でお尋ねをいたしたいのですが、現在、警察という言葉であらわされる官庁は、国の機関としては警察庁、それから同時に海上保安庁、こういうものが私はあると考えておるわけなんですが、海上保安庁の性格について、これを警察機関と解釈するのが正しいのか、あるいはアメリカのコーストガードのように準軍隊であると考えるのが正しいのか、あるいは福祉機関として考えるのが正しいのか、こういう問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。この点について海上保安庁はどのように従来からお考えになっておりましたか。
#89
○説明員(神谷拓雄君) お答え申し上げます。
 海上保安庁法には海難救助事務と並びまして「海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕」「に関する事務をつかさどる」というふうに規定されておりまして、当庁が警察機関であることには間違いございません。
#90
○飯田忠雄君 それではちょっと何のことかわからぬが、一体警察機関なのか警察機関じゃないのか、明確に答えてください。
#91
○説明員(神谷拓雄君) 警察機関だと考えております。
#92
○飯田忠雄君 警察機関であるならば、海上保安庁にあるところの海上保安部署、それから巡視船艇、こういうものは警察機関であるかどうか、お尋ねします。
#93
○説明員(神谷拓雄君) 先ほどお答え申し上げましたように、海上保安庁は警察機関でございますので、その地方下部組織は警察機関でございます。
#94
○飯田忠雄君 行政法上の用語として警察官署という言葉があります。警察官署という言葉は行政法上の用語なんですが、その警察官署に海上保安部とか海上保安署とか、それから何々巡視船というものは該当するか該当しないか、お尋ねします。
#95
○説明員(神谷拓雄君) 警察官署という言葉でございますけれども、これは先ほど申し上げました警察機関という言葉とは若干ニュアンスが異なろうかと思います。それで、警察官署に私どもの海上保安部署が該当するか否かということにつきましては、個々の法律ごとに解釈すべき問題と考えております。ちなみに、警察官署という言葉が使われている法律というものは余り多うございませんで、監獄法等にございますが、監獄法等につきましては当該法律を所管している法務省の御見解を待つことにしたいというふうに考えます。
#96
○飯田忠雄君 私は個々の法律のことを聞いたのじゃないんです。警察官署という言葉は行政法上の用語として存在する。その行政法上の言葉である警察官署に海上保安部署は該当するかということを聞いたので、これは法律問題ですからね。きょう私は海上保安庁に対して長官もしくは警備救難部長が出るようにお願いしたはずです。あなた、長官ですか。
#97
○説明員(神谷拓雄君) 先生からそのようなお話があったことは存じておりますけれども、長官、警備救難部長とも所用がございますので、失礼ながら私が参上いたしました。
#98
○飯田忠雄君 これは予算委員会の委嘱審査のあれですから、本来政府委員が出頭していただくのが筋道なんです。政府委員でない人が出られる場合は、これは委員長の許可をとっていただかなければいかぬ。そうしないと、こういう本筋に関する議論ができない。あなたをどんなにとっちめてみても海上保安庁の法律関係はこれはわからないんです。でも、やむを得ぬので、もう次に行きます。
 海上犯罪の捜査の所管についてお尋ねをするわけなんですが、行政組織法の第二条というのがございまして、行政組織法の第二条では明確な所管を決めていなければならぬ、所管が内閣の内部における各官庁において重複することはよろしくないよということになっておるわけなんですよ。行政組織法の第二条、読めとおっしゃれば読みます
よ。御存じでしょう。そうなりますと、この海上における犯人の逮捕、海上犯罪の捜査ということがはっきりと海上保安庁法に書いてある。海上保安庁の所管事項です。そうすると、海上保安庁はそういうものを所管しておる。政府部内においていろいろの官庁があるわけなんだが、海上保安庁が所管しておるところの行政事務をほかの官庁で所管できるかと、こういう問題についてお尋ねをいたします。こういう点、どうでしょうね。法制局の方にお願いしておきます。
#99
○政府委員(前田正道君) 一般的には権限分配なり所掌事務の分配といたしまして別々のものが定められるというのが通常であろうと思いますけれども、一つの事務につきまして、合理的な理由があります場合に複数の行政機関が関与するということまでをこの国家行政組織法第二条第一項が否定しているものとまでは考えません。
#100
○飯田忠雄君 個々の事件につきまして、その事件を解決するために各官庁がお互いに共助し合う、助け合うということは法律にも書いてあるんですよ。だから当然のことなんです。海上保安庁法にも書いてある。当然のことなんだ。ただ、私がお尋ねしておるのは一般の管轄の問題。一般的な管轄が重複するということは、これはないはずでしょう。別の管轄のものがお互いに助け合うということはあるわね。そういう点について法制局の御見解どうですか。
#101
○政府委員(前田正道君) 恐らく委員は、警察法二条の規定によります警察の事務と、それから海上保安庁法第二条によります海上保安庁の事務との関係を念頭に置かれましてのお尋ねと存じますけれども、海上におきます犯罪の捜査等につきましては海上保安庁と警察との間の業務調整により行われているというふうに承知しております。
#102
○飯田忠雄君 その問題は管轄の問題じゃなしに業務協定の問題なんですよ。業務協定の問題だということを明確にしておきますよ。こういう業務協定の問題を管轄の問題として実際にそういう行政をやられますと、予算を組むときに非常に困るんです。どこの官庁に組む予算かという問題が混乱してしまう。業務調整の問題は予算の基礎にならない、こういう問題は。予算の基礎になる管轄の問題を私はお尋ねしているんですよ。
 そこで、もう一度念を押しますが、海上犯罪の捜査、海上犯人の逮捕というのは海上保安庁の所管になっておる。その所管に重複する官庁が認められるかという質問です。どうですか。
#103
○政府委員(前田正道君) 犯罪の捜査等につきましては、申し上げるまでもなく刑事訴訟法上、第一義的には司法警察職員が当たることになるわけでございますが、この司法警察職員には、これまた御承知のように一般司法警察職員と特別司法警察職員とがございまして、特別の事項につきましては犯罪の捜査権というものが重畳的に付与されるという場合があるわけでございますが、これは犯罪の捜査等を最も効果的にまた効率的に行うためのものでございまして、このことが先ほど来問題になっております国家行政組織法第二条との関係で、その趣旨に反するものではないというふうに考えております。
#104
○飯田忠雄君 法制局の御答弁は、業務調整の問題とか、いろいろ業務調整上一緒に仕事をやるという問題を管轄の問題と混乱しておいでになるんじゃないかと思いますよ。今ここで余りとっちめるのもよくないから、ここでやめますが。
 次の問題にいきます。
 それで、海上保安部署は犯罪捜査権限を持っておる海上保安官で構成されておりますね。海上保安官は犯罪捜査権限を持っておるところの一般司法警察職員です。すべての法律について捜査権限を持っている。そうでしょう。特殊の海事法制だけについて捜査権限を持っているんじゃありませんよ。特殊の法律だけなら特別司法警察職員だ。すべての法律について所管しておる以上、一般司法警察職員です。ただ、捜査の場所が警察は陸上であり、海上保安庁は海だというだけなんです。そういうことなんですから、それで海上保安部署とか巡視船、これは警察官署であることは間違いないんですよ。あなた、そういうことまでわからぬようなことでは、これは困る。こういう問題はね。
 それで、そういう警察官署である海上保安部署及び巡視船が犯人を逮捕した。犯人を逮捕をいたしましたときに、刑事訴訟法に基づいてその被疑者を引致しなければならぬね。引致する場所は、例えば遠い海上で捕まえた、その場合に巡視船は一番最寄りの港に入る、こう決められておる。何も東京まで来るわけじゃない。最寄りの港に入る。その最寄りの港は島ですよ。いいですか、島なんだ。そういう島に立ち寄るわけですが、その前に巡視船にまず引っ張ってくる。巡視船に乗っておるところの司法警察員のところへ引っ張ってくるでしょう。司法警察員はこれを留置する必要があるかどうかを判断しまして、留置する必要があれば留置所に入れる、留置する必要がなければ釈放する、こうなっている。海上保安庁ではどうしておりますか。
#105
○説明員(神谷拓雄君) 御質問につきまして一つ例を挙げて御説明申し上げたいと思いますけれども、例えば小笠原等の外洋の遠隔地におきまして巡視船により被疑者を逮捕した場合について申し上げたいと思います。こういう場合、通常は最寄りに検察庁とかあるいは裁判所がございませんので、当該場所におきまして以後の刑事手続をとるということができません。したがいまして、巡視船が所属するところの海上保安部署まで被疑者を連行し、刑事訴訟法に定められた以後の所要の手続をとることとなろうかと思います。この間、被疑者をどうしておくかという問題があるわけなんですけれども、いろいろ船内を自由に行動させるわけにはまいりませず、また数日にわたり、例えば手錠をかけたままで拘束しているというようなことは人権上許されませんので、巡視船に設けられました隔離場所に隔離しておるような次第でございます。
 以上でございます。
#106
○飯田忠雄君 巡視船は警察官署ですよ。警察官署には被疑者を留置する留置所をつくってあるはずです。現につくってあるんです。私は知っております。つくってある。そういうところへ留置するのであって、手錠をかけてぶらぶらさせたりするようなことじゃ困るわけだ。それから、そういう被疑者を留置しないのなら、いいですか、留置しないのなら釈放しなければいかぬ。付近を通りかかる船に渡して釈放するなり、あるいは近くの島へ寄って釈放するなりしなければいかぬ。そういうことをしないで、そんないいかげんなことをされちゃいけませんよ。まあいいわ。その点、時間がないから。よく覚えておいてもらわぬと困るんですが。
 それで、海上犯罪捜査に要する予算だが、予算はどうなっておりますか。これは海上犯罪というのは海上保安庁が所管すると同時に、また先ほどのお話では業務協定上いろいろ警察庁もやっておる、こういうお話でしたね。そういう予算はどういうふうに組んでおりますか。どの官庁に組んでおるか。業務調整上の予算は一体どこの官庁に組んでおるのか。あるいは海上犯罪については一括して都道府県警察は組んでおるのか、あるいは警察庁に組んでおるのか、海上保安庁に組んでおるのか、その辺のところはどうなっておりますか。これは関係の官庁皆ひとつ言うてください。警察、海上保安庁。
#107
○説明員(関根謙一君) 警察関係の予算につきましてお答えを申し上げます。
 警察関係の犯罪捜査に要する経費につきましては、海上犯罪であるか否かを問わず、警察法の三十七条の定めるところによりまして、国、都道府県で負担しております。
#108
○説明員(神谷拓雄君) 海上保安庁におきましては、海上における犯罪捜査のための予算を組んでおります。
#109
○飯田忠雄君 どのぐらい組んでいるのか。
#110
○説明員(神谷拓雄君) 犯罪捜査にかかわる費用と申しましてもいろいろな項目に分かれておりまして、例えば巡視船艇の建造費、これは巡視船は
御承知のとおり海難救助等にも使いますので、これを分けて計算したことございませんので、はっきりした犯罪捜査のために幾らということはちょっと申し上げにくいわけでございますが。
#111
○飯田忠雄君 それでは次の問題に入ります。
 最近、いじめの問題、いわゆる学校でのいじめの問題が発生をいたしまして、その人権侵害性が云々されてきております。そこで、きょうは時間は余りたくさんありませんけれども、この次に続きをやるとして、少しお尋ねをいたしますが、まず、学校教育法の十一条に懲戒に関する規定がございます。その懲戒ですが、これはどのように実施しておりますか。例えばいじめの事件が発生した、その場合にそれを懲戒しているのかしていないのかという問題がございますが、どうしておられますか。
#112
○説明員(熱海則夫君) お答え申し上げます。
 学校教育法の第十一条には「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」、こういう規定がございます。それに基づいて、この場合の監督庁は百六条で文部大臣となっておりますので、学校教育法の施行規則の第十三条にその懲戒に関する規定が、文部大臣の定めがございます。それによりますと「校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当つては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。」、それから第二項は「懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長がこれを行う。」、それから第四項に「第二項の停学は、学齢児童又は学齢生徒に対しては、行うことができない。」、ですから、停学あるいは退学、こういったものは小中学校の子供にはこれは該当しないということです。
 ですから、法的な措置を伴うものについてはおおむね小中学校では該当しないことになるわけで、一般的ないわば法的効果を伴わない事実上の懲戒、例えば叱責をしたりあるいは立たせたり、こういったものが一般的な懲戒に当たるわけであります。
 それから、このことについて現実にどの程度行われているかというのは、これは毎日各教師が教室の中で行っている問題でもありますので、全体をつかむことはできませんが、このような例えばいじめなどのような行為に対して、やはり毅然たる態度で訓戒など必要な懲戒を加えることはこれは当然のことでございますから、皆それぞれやっておるということであろうと思います。なお、いじめの問題は懲戒だけでは真の解決にはならない場合が多いので、これとあわせてその原因、背景、あるいは当事者のみならず周囲の子供とかやっぱり全体的な指導の問題が大きい問題だろう、こういうふうに考えております。
#113
○飯田忠雄君 それでは、こういういじめの問題が起こりましたときの責任の問題ですが、これは学校の責任、教師の責任、加害者の責任あるいは加害者の保護者の責任、いろいろございますね。こういう責任につきまして、これをどのように考え、どのように責任追及をしておいでなのかお尋ねをするわけです。まず学校の責任はどうか。その次に教師の責任はどうか。教師の責任の範囲はどの範囲において責任を問われるか。それから加害者の責任、これは十四歳未満の者の場合は保護者がございますので保護者の責任となりますね。どういうふうに責任を認め追及しておられますか。これにつきまして、まず文部省、警察庁、法務省の御答弁を求めます。
#114
○説明員(熱海則夫君) 学校におけるいじめの実態というのは、いじめというのはそもそも何かということに対するきちんとした定義といったものがまだ確立されておりませんし、例えばけんかとか、あるいは悪ふざけとか、こういったものとの区別はどうなのかとか、いろいろこの辺のところが明確でもありません。それから、その態様がいろいろでございますので、いじめのいわば件数とかその状況というのはやっぱり個別に判断せざるを得ない。ですから、個別に応じて、例えば教師が親に訴えられたにもかかわらず放置した場合のその教師の責任、あるいは教師が学校のいわば責任者である校長に相談をした場合、校長が放置した場合の責任、あるいは実際にそれに対して何らかの手を加えた場合、いろいろなケースに応じてやっぱりその責任は考えられます。
 ですから、一般的にこうだということは言いにくいのですが、そのケースケースに応じてやはり教師それから学校、それには責任があろうかと思います。また親についても、これは一般的に小学生ぐらいの場合には必ずしも本人の責任能力があるかどうかという判断もございます。これもケース・バイ・ケースで親の責任もないわけじゃございません。ですから、この辺のところはケース・バイ・ケースで考えていかざるを得ない、こういうように考えております。
#115
○政府委員(枇杷田泰助君) いじめの内容につきまして具体的にどういうことがあるのかわかりませんけれども、ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないと思いますが、場合によっては学校、教師の民事上の責任、あるいは親権者である親の責任というものが出てくる場合もあり得ようかと思います。
#116
○飯田忠雄君 もう時間が来ましたのでこれでやめますが、明日また続きをやりますので、まことに済みませんが、文部省お願いいたします。
 これで終わります。
#117
○橋本敦君 私は、まず最初に、弁護人の職務の遂行と裁判所、法務省側の対応に関連をしてお伺いをしたい問題がございます。
 今日、言うまでもありませんが、法曹になるための司法試験は大変な難関でございまして、五体自由な立場でもなかなか勉強しませんと合格いたしません。ましてや目の不自由な人、また耳の聞こえにくい人、こういった障害を持った人がこの司法試験の難関に合格するというのは並み大抵の努力ではなかろうと思うわけであります。その難関を突破して見事に法曹資格を得て弁護士になって、勇躍そういった障害を持っている人のためにも、また多くの貧しい人のためにも働きたい、こう決意をして若い法曹が心も新たに仕事に立ち向かっていくことは私は本当に大事にしなくてはならぬ、こう思うわけですが、たまたま新聞でも報道されましたけれども、この問題について見逃せない事件があったわけですね。
 といいますのは、障害を持って耳の聞こえにくい弁護士さんで山田さんという方がいらっしゃるんですが、この方が貧しいために私選弁護人を雇えない被告人のために国選弁護を引き受けて、受任をして弁護したいということで、東京弁護士会を通じて国選弁護を受任する手続をとりまして、弁護士ですから当然事件本人となっている被告人と接見をして、その主張や言い分をよく聞いて弁護方針を立てなくてはなりませんから、早速拘置所に赴いて接見の手続をとるのは当然であります。ところが、この山田弁護士が、去年の四月のことであったそうでありますが、覚せい剤事件で勾留されている被告人に接見を申し出ますと、拘置所側から、耳が聞こえないために筆記通訳者を連れていかざるを得ない、そういう通訳者の同行についてはこれを認めるかどうかという問題が解決していないので接見を許すわけにいかないといって断わられたという事実が報道されているわけであります。こうなりますと弁護活動ができないわけですね。
 この事実について、どういう理由で拘置所側が接見を拒否したのか、その後どう対応したのか、この問題について矯正局長も事実をお調べいただいていると思いますので、まずこの点を明らかにしていただきたいと思います。
#118
○政府委員(石山陽君) お尋ねがございましたので早速現場に問い合わせまして、今までに判明している限りで経緯を御説明申し上げたいと思います。
 まず、今お名前をお挙げになりましたが、私一応Y弁護士というふうに申し上げておきます。この方と恐らく御質問の方が一致するだろうと思いますが、東京弁護士会所属のY弁護士さんが実は
おととしの十月に三回東京拘置所にお見えになりまして、その際の被疑者の名前まではちょっと調べが足りませんでしたが、国選弁護人受任ということで接見の申し出がございました。この際にやはり女性の筆記通訳という方を同道されました上で無立会接見のお申し出がありましたので、御存じのとおり、後でも申し上げますが、これは刑訴の運営問題にもかかわりますので、一応その点につきまして当時はしかるべき公務所の証明あるいは裁判所の立会部におきます署名のようなものが欲しいというふうに申し上げたそうでありまして、その後、裁判所から接見につき便宜供与方の依頼書という公文書が東京拘置所に届きましたので、一昨年の十月、三回、無事にこの方は接見を済まされたわけです。
 それから、お尋ねの時期に一致するかはっきりいたしませんが、昨年の五月になりましてもう一度同一人物であるY弁護士が今度は男性の筆記通訳者の方を同行されまして、やはり同所に収容中の被告人の国選弁護人という形で接見をお申し出になりました。そこで、この際にはいわゆる裁判所の便宜供与の依頼書もございませんでしたので、同所におきましてはいわゆる非弁護士でありまする筆記通訳者というものが同席する無立会接見につきましては、刑事訴訟法上いろいろ疑問がある点がございますので、この点につきましては取り扱いは慎重にせざるを得ない、そこで、とりあえずお急ぎであるならばきょうのところは何とか筆談でやられてはどうか、もちろん耳が不自由な方でございますそうですから、その接見の時間はしたがって長引くであろうから、それについては配慮をいたします旨を申し出ましたが、たまたまその日は土曜日でございまして、午後から用事があるということなので、時間がかかるならば改めて出直すということで、その際は接見の申し込みを取り消されてお帰りになりました。
 それから、同じ月の十四日と十八日の二回にわたりまして、今度は同弁護士の所属事務所あるいは東京弁護士会の担当副会長名によります当該筆記通訳につきまして今回限りの措置としてとりあえずその身元を明らかにする弁護士会発行の証明書を持参させるので何とか接見につき便宜供与方お願いしたいというお申し入れがございましたので、私どもといたしましては拘置所の方からこの事件の担当検察官に連絡をし、その了解を得ました上で、今回限りの措置ということで二回にわたる接見をその際していただくことになりました。
 その後、実はこの方にはもう一回ケースがありまして、昨年の十一月十四日でございますが、これは一審で判決のありました事件の控訴事件につきまして、今度は私選弁護人として受任したということによりまして前同様特別の措置による接見を申し出られました。この際私どもといたしましては、こういう異例の措置でありまするので、何回も無制限にやられても困るので、東京弁護士会と連絡をとりまして、まことに御迷惑であるけれども今回も前回同様特別の措置として図ってほしいというお申し出がございましたので、この場合もいわゆる筆記通訳つきの無立会接見を認めております。したがいまして、新聞報道等一部のところで伝えられましたように、当拘置所、つまり東京拘置所でございまするが、無批判にこの接見のお申し出を断り拒絶して御迷惑をかけたという客観的事実は、まずなくて済んだようであります。
 本件につきましては、その後私どもといたしましては、東京弁護士会に次のような申し入れを行っております。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、筆記通訳という形で弁護士資格のない第三者が、刑事訴訟法三十九条に基づきます弁護人の秘密接見交通権の運用上、同席されるということになりますれば、弁護士さんの場合には御存じのとおり秘密の守秘義務がございまして、法律上それは保障され、それに対する違反については罰則もつきまするが、一般第三者にそれがございません。まして刑事訴訟法の八十一条に基づきまするいわゆる接見禁止指定があった場合、この場合でも弁護士さんには接見交通権がございまするが、それとの関連で一般第三者が通訳とはいえ立ち会っておられる場合、これは機械ではございません。人間でございまするので、その後のお聞きになられ、見聞した事項についてどういう形で秘密の保護をしていただけるのか、これらに対する弁護士会側の対策を明示していただかないと、たびたび異例の扱いはできないと、こういうことでございます。
 そこで、これにつきましては一単位弁護士会にとどまる問題ではございませんので、できれば私どもといたしましては、例えば日本弁護士連合会、全国マターとして取り上げていただきまして、法曹三者及び私どもも交えていただいて、こういう身体に障害をお持ちの弁護士さんたちの弁護士活動がより円滑に行えるような具体的方策について十分協議してほしいというふうに考えまして、東京弁護士会にもその旨申し入れをしたわけであります。その後同弁護士会からは、それを了承し、何とか上部機関に上げて法曹三者全体の問題として協議したいという、これは個人的な意向としての担当者の御意向の表明がありましたけれども、現在までのところその正式申し入れはまだ来ておりません。
 しかし、私どもといたしましてはこの問題はゆるがせにできませんので、もしまたこういう同様のケースがあちこちに出ました場合をおもんぱかりまして、その際にはただいま申しましたような経緯に出ました臨時の措置ということを一、二回は便宜供与という形で考慮できぬこともありませんが、なるべく早くこの問題を正式機関で協議していただいて、弁護権の活動に遺憾なからしめるようにしたいというふうに考えておるところでございます。
 以上、経緯とその結果について御報告申し上げておきます。
#119
○橋本敦君 今までの経緯については今のお話で理解はできました。
 そこで問題は、今までの処置はそれなりの一回限りの処置あるいは臨時の処置ということで運用なさっていただいておる。その条件として、実は弁護士会の証明書が一つ問題になる。あるいは裁判所からの今おっしゃいましたような便宜供与についての依頼書があるという条件があったわけですね。そこで、基本的にこの問題をどう考えるかということについて、これからの協議がなされるにしても、法務省側の考え方、あるいは裁判所の考え方、これをこの機会に明確にしておいていただきたいということも一つは質問の趣旨にあるわけなんです。
 その点で申し上げますと、なるほど通訳者は通訳者であって弁護士そのものではありません。しかし、言ってみれば身体障害を持つ弁護士にとっては、その通訳者というのはこれはまさに職務上欠くことのできない補助者ということは客観的に明らかであります。したがって、刑訴法上の弁護士が持つ秘密交通権、弁護士が立ち会いなしに接見できるというこのことについて、この補助者と同席した場合にそれをどう見るか、こういうことが基本的な問題になるわけですね。だから身体障害を持つ弁護士にとってはその補助者なしには職務の遂行が十分できない。逆に言えば、弁護してもらう方の被告人の利益を十分守るということの上でも欠くことができないということはもうだれが見ても明らかですから、その通訳者となる人がみだりに本来弁護士が持っている秘密交通権の権利を侵害するような守秘義務違反ということをしないということが明らかであるならば、私は一つは基本的に問題解決できると思うんです。
 そこのところ、私は一つは信頼関係であると同時に、弁護士自体もそういう職務上の職責を十分果たすという立場に立って仕事をしているということについての信頼関係が一つは要ると思うんですね。だから、したがって仮に今局長がおっしゃったように、その通訳者となった人が接見を立ち会いなしにやったということを通じて得た知識その他を、これをみだりに開披をする、あるいは漏らすというようなことをやった場合に、これは弁護士自体が持っている弁護士に課せられた守秘義務を弁護士自体がみずからの責任において違反し
たと同等とは言いませんが、その弁護士にそれ自体職務上の義務違背の責任があるということを弁護士が自覚的に確認をするならば、私はそれはそれでカバーできる基本的な問題ではないか。
 つまりこの仕事はその通訳者と弁護士との間の信頼関係なしに機械的にできないんです。だから、そういう意味で信頼関係があることを前提として通訳者が選ばれているし、そして仕事もなし得るという関係ですから、弁護士そのものと一体というわけにいかないけれども、そういう信頼関係があるということを前提として考えたならば、私はその問題についてあえて困難な論議をしなくても運用上の特殊条件として解決し得るのではないかということを一つ考えている。
 それからもう一つは、今局長がおっしゃったように、弁護士会の証明書を出す、あるいは裁判所からの便宜供与の依頼を持ってくる。こういたしましても、臨時の措置としておやりいただいたことは結構ですが、将来それを恒久的に続けるということによって、それでは局長がおっしゃったような守秘義務を保持するということについての心配が一切解消できるかといいますと、その場合でもそれは全部解消できないと言えばできないわけですね。だから、したがって今局長がおっしゃった今後法曹三者を通じての協議ということになった場合でも、一体法務省としてはどういうようになればいいとお考えになっているのかということをひとつ聞きたいのと、今私が言ったような職務上の信頼関係を前提として確立するというそのことの合意をきっちりやっておくならば、私はもうそれで十分運用上配慮していただける問題ではないかということを基本的に考えておるんですが、いかがでしょうか。
#120
○政府委員(石山陽君) この問題の取り扱いにつきましては、私ども矯正はいわゆる収容施設といたしまして被収容者をお預かりしている立場でございますものですから、具体的な場といたしましてはやはり刑事訴訟法の運用マターとして法曹三者のそれぞれのお立場で働かれまする機関の方々との接触、連携を特に密にしないと一律な解決はできないというふうに考えまして先ほど申し上げておるわけです。
 したがいまして、今矯正だけの立場でこの問題についてかくあるべしということをここの場で申し上げるのは差し控えさしていただきたいのでありまするが、今のお話を伺っておりまして一、二私なりのちょっと感想めいたことを申し上げますと、おっしゃるとおり、私といたしますれば身体に障害のある方でも立派に司法試験を通られて弁護士活動をなさっている方でありまするから、これらの弁護士活動がなるべく十全にかつスムーズに行われるような体制づくり、法曹全体の問題としてこれに協力しよう、また施設側もこれに対する御協力を申し上げる、この姿勢には変わりないわけであります。
 今委員仰せのように、この問題は特に信頼関係が重要であるということでございましたが、口幅ったいようですが一つの例を挙げますると、同じようにある程度身体に障害を持つ方との面会を申し出られた弁護士さんの例がありまするが、この場合に弁護士さんは大丈夫なんでございますが、被収容者の方に障害がありました。その際に手話通訳をお連れになりましたが、この手話通訳が実は毎日毎日被収容者の支援活動をされている団体のメンバーでありました。それでお断りしましたところ、大変な悶着を起こされた。こういうこともございまして、要するにやはりそれは今委員仰せのとおり、まさに人間と人間の信頼関係を損なうような行動をされないという前提が欲しいわけであります。それと同時に、証明書を持ちますとか、あるいは依頼書をよこしていただくということは、これは確かに次善の策であります。それだけで、いわゆる刑事訴訟法の解釈といたしまして、弁護人のみに認められた秘密接見交通権を、機械ではございません、人間が立ち会っておった場合は無立会接見の趣旨がもし運用上おかしなことにならないという保証はお互いにないわけでありますので、これはやはり弁護士さんの倫理の問題、それから立ち会う方の倫理の問題として十二分にお考えいただく必要があると思います。
 これらをひとつ前提といたしまして、私どもに対しましても法曹三者のいろいろな場面で施設側の意見を申し上げる機会をもしお与えいただければ、運用上の配慮事項としてお願いしたいことも多々ありまするけれども、その結果としていい方法が速やかに確立されたならば私としてはそれに御協力申し上げるにやぶさかではない、こういう個人的な感想を持っていることを申し上げておきたいと思います。
#121
○橋本敦君 裁判所の方は、この問題について今御説明のように便宜の措置として便宜供与の依頼書をお出しいただいて当面接見はできたという事実はあるわけですが、この問題について裁判所側のお考えとして今後の基本的な方針も含めて、今現在どのようにお考えをいただいておりますでしょうか。
#122
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この前の五十八年十月のときは今仰せのような裁判所から接見について配慮していただきたいという依頼書を出しまして、それを持ってきていただいて便宜を図っていただいたということでありますが、その依頼書というのはあくまでも事実上のことでございまして、法律的に何ら根拠のないことでございます。
 裁判所といたしましては、訴訟の進行を円滑かつ適正に行うためにはやはり弁護人が無立会で接見できるということは非常に大切なことだというふうに考えておりますが、この身柄を確保しておられるのは矯正局の方でございまして、今矯正局長から仰せになりましたようないろいろな弊害ということも全く無視できないことでございます。たまたまこの場合に依頼書ということで便宜を図っていただいたわけですが、裁判所でもしその通訳人なりの身元なり何なりを完全に保証できるかということになりますと、これはかなりいろいろ調査してみないと裁判所としては責任持ちかねるという場面があろうかと思いますので、何とかいろいろ話し合いでつけば結構なことでございます。
 私どもが承知しておりましたところではこの五十八年十月のときにはそういうことになっておったようでございますが、五十九年五月のときの事件の三者のこの事件の事前打ち合わせの段階で、この弁護人がみずから、実はこれは弁護士会の方から通訳人についての証明書を発行してもらって、それを持っていけば配慮してもらえるようになったんだということをみずから述べておられたということで、私どもとしてはそれで落着しているのかなというふうに考えておったわけでございますが、今、矯正局長のお話ですと、それはそのときだけのことであるということでございますので、もしそういうことであれば、さらに弁護士会あるいは検察庁ともいろいろ協議をしていかなければならないなというふうに考えております。
#123
○橋本敦君 いずれにしても、その身体障害のある弁護人が弁護士としての職務を十分に尽くし得るように法務省としても裁判所としてもできるだけの配慮と、いい方向に検討を加えるということについてはやぶさかではないというようにもお聞きするわけですが、その点は法務省も裁判所も変りありませんか。
#124
○政府委員(石山陽君) 矯正局に関します限りはそのようにお受け取りいただいて結構でございます。
#125
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 私どもも同様でございます。
#126
○橋本敦君 ここではもちろん日弁連の代表はいないわけですが、今おっしゃった法曹三者の協議を通じてこういった問題がスムーズに解決されるよう、そしてまた、身体障害がある弁護士さんであっても、その職務が憲法と法に基づいて被告人の権利を十分に守るということも含めて職務が十分遂行できますように、将来いずれ法曹三者の協議ということになる可能性もある問題でございますので、法務大臣の一段の努力をお願いし、お考えを伺ってこの点の質問は終わります。
#127
○国務大臣(嶋崎均君) お話のように、身体のハンディを克服して弁護士の資格を取られた方についていろいろな弁護士としての御活躍をされるというようなことにできるだけ支障がないように配慮していかなければならぬということは私は当然のことだというふうに思っておるわけでございます。ただ、弁護人の接見に弁護士でない介添え者を同席させるというようなことになりますと、御承知のように秘密交通権を弁護士だけに限って与えておるというような特殊な事例もありますし、また具体的ないろいろな問題ということを考えてみますと、やはりここのところは何かきちっとした制度をつくっていくということがまず第一番目に大切なことだというふうに思っておるわけでございます。
 まあこの話、新聞にも出まして非常に気を使って事柄をやっており、今までいろいろな曲折はあったかもしれないけれども何とかうまく当面をしのいできておるというわけでございますけれども、できるだけそういう法曹三者の間及び矯正関係との連絡につきましては実情に即して慎重に整理をしていくことが必要であろうというふうに私も思っておる次第でございます。したがいまして、こういうことで何か矯正が非常に窮屈過ぎるような話のように初めのお話を受け取っておりましたので、そういうことじゃないということだけまたよく御理解を願っておきたいというふうに思っております。
#128
○橋本敦君 それじゃ、この問題は終わって、次の問題に移りたいと思います。
 私が次にお伺いしたいのは旭川日通事件に関連してでありますが、この事件は御存じのとおり、せんだって三月二十日に判決の言い渡しがなされまして、殺人についてはこれは無罪の判決が下されたわけであります。この事件についてけさの各紙を拝見いたしますと、検察庁は控訴を断念される、この一審判決が確定するというに至ったようでございますが、検察庁がこの事件について種々検討を加えられた結果、控訴を断念されたという、その経緯についてかいつまんでお話しをいただきたいのであります。
#129
○政府委員(筧榮一君) 判決を受けましてから詳細に現地において検討を加え、さらに高等検察庁あるいは最高検等とも協議を重ねた結論として控訴は申し立てないという結論に達して、その旨の発表があったところでございます。
 簡単に申し上げますと、結局御承知のように公判の途中で被告人の自白調書あるいは実況検分調書等を含めまして、これが証拠能力なしということで証拠申請を却下されまして、そのことが一番問題であるわけでございます。その却下につきましては、公判におきまして検察官から異議の申し立てをなし、それを却下されておるわけでございます。控訴の要否の場合に、その点については検察官としては遺憾といいますか不服はある、しかしながらこれを控訴した場合、その証拠能力というものを離れまして、自白の証明力というものについても裁判所は疑問を投げておるわけで、それらの諸点を検討いたしました結果、控訴審においてこれを証明力をさらに高めるということが実際上不可能といいますか、不可能である、あるいは見込みが少ない、したがって公訴を維持する見込みが少ないということで控訴をしないという結論に達したと承知しております。
#130
○橋本敦君 今局長がお話しのような検討をなさって、そういう慎重な配慮から控訴をなさらなかったという処置については、私はそれ自体結構なことであったというように思っております。問題は、この事件の検察官の論告も放棄せざるを得なかったという今のお話にもかかわって出てまいります問題点を、この際はっきりと私どもとしては教訓としてつかんでおかなくちゃならぬという気がするわけであります。
 まず法務大臣に申し上げたいのでありますが、御存じのとおり免田事件、財田川事件、松山事件と一連の冤罪事件が続きまして、いずれも虚偽の自白ということで何十年たった後に初めて再審で無罪ということになった重要な事件であります。こういう事件について前の秦野法務大臣は、率直に言ってあれは戦後の混乱期なので、正直言ってその混乱期に警察の捜査が多少荒っぽかったということも事実なのでしょうねと、そういうことで捜査のずさんさを認められざるを得なかったような事情もあったわけです。ところが、戦後はるかにたった後においても、やっぱり捜査のずさんさということはこの旭川日通事件のようにあるんだということについて、警察並びに検察の姿勢を正す必要があるということを、私はこの事件を通じて基本的に大事な問題だというように考えるわけであります。
 まずこの点で、自白調書が今局長がおっしゃったように二十四通、実況検分調書が四通、いずれも証拠能力がないとして証拠採用されなかった、その大きな背景にこの事件の捜査でいわゆる違法な別件逮捕、これが行われて、その上でとられた調書である、そういうことが原判決によってこの点は指摘をされている点が、これは私はまず第一に重要な問題ではないかというように思うのであります。
 具体的に申し上げますと、この事件が起こりましたのは八一年十月三十一日、小野さんという方が殺害をされた。そしてこの被告人はその直後の十一月一日に事情聴取を受けておりますが、横領についてはこれは殺人とは関係ありませんが、その際自白をしておりまして申し述べているのでありますが、横領については逮捕されずに帰されております。ところが、十カ月ほどたった八二年の八月十七日にその横領で逮捕されたのであります。そして取り調べが行われることになったのですが、逮捕状請求について見ますと昭和五十六年に行われた十八回の横領についてだけまず請求をされ、それで逮捕をされ、取り調べをされた。
 それから、昭和五十四年から五十五年にかけての二十九回の被告人の横領については、追起訴処分として起訴後の勾留によって取り調べるということを初めから予定して捜査がなされたのではないかということを原判決は疑問を持っているわけであります。そして、その過程で殺人事件について調べられて、その中で自白をするに至ったという、こういう関係でありますから、裁判所はこの点をとらえて、捜査当局が当初から業務上横領事件による起訴後の勾留を利用して、被告人に対し本件殺人事件の取り調べをなす目的または意図をもって業務上横領事件で被告人を逮捕勾留の上、起訴したのではないかとの疑いをなお払拭し切れないと裁判所は決定の中で述べているわけであります。
 この点について検察官は裁判所がこのように認定せざるを得なかった状況については今どうお考えになっておられますか。
#131
○政府委員(筧榮一君) 事実の経過といたしまして詳細は承知いたしておりませんが、最初に横領ということで簡単にといいますか、調べて十カ月たって逮捕したという点についてはやはりそれなりの理由があった、その十カ月前の時点では内容もまだ少なく、必ずしも全貌がはっきりしていなかったというふうに承知いたしております。いずれにしましても、本件は追起訴も含めまして横領の犯罪事実も大豆六百九十トン、これを二千八百万円で売り払った、時価はそれより相当高かったと思いますが、それ自体が懲役二年六カ月に処せられたことから見ましても極めてといいますか、重大な犯罪であるというふうに考えられますので、これがいわゆる別件逮捕であったという点については必ずしも検察当局としてこれは承服しがたい面があろうかと思います。
 ただ、先生御指摘のように、業務上横領で逮捕、調べをして起訴して、その後殺人についての調べがあり自白があって、それで殺人の逮捕状をとったという、その殺人については自白を得る過程でいろいろ無理があったという点を裁判所は指摘し、その結果証拠能力を否定しておる。その点についての捜査の経過といいますか、内容といいますか、その点については裁判所の批判を我々としても率直に受けとめて、今後の反省にいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
#132
○橋本敦君 この事件は、多くの冤罪事件と同じように、一つは殺害に使ったという凶器のあいくちが発見されない問題があります。それから裁判所も言っておりますが、裁判所の判決要旨の言葉どおりで言うならば、犯行現場などの状況に照らして相当の返り血を浴びていると考えられる犯人の犯行時の着衣、これも発見されていない。だからそういう意味では、本人の自白があるということでずっと進んできた事件でありますが、ついに最後まで一つは凶器あるいは着衣などの物的証拠が全くと言っていいほどないという状況が非常に重要な事実としてあるわけですね。
 しかも、その凶器については、被告人の主張について考えてみますと、この凶器は犯行から二年ほど前に旭川の護国神社の店で買ったのだ、それは自宅の物置に置いておったという供述があるようですが、それを見た者もなければそういう事実も確証されない。着衣について言うならば、本人は返り血がついていないので、ズボンは洗わずにそのままにしておいたというようなことも言っておるようですが、現場状況から見て、とてもそんな状況であるとは通念として考えられないというようなこともあって、物証なき事件ということになりますから、これは本人が自白したとしても、その自白については、その自白した状況、自白内容の合理性、経験則に照らしてどうかということも含め、慎重に検討すると同時に、その自白に照合するような物的証拠の発見と、それの確保に全力を挙げなくてはならぬという事件であったはずであります。
 ところが、最後までそういう物的証拠は発見されなかった。しかも、その自白について言うならば、裁判所の判決でも言っておりますように、まさに横領で逮捕、起訴された後に、代用監獄である旭川警察署に留置をされて、そしてこの取り調べについて言うならば、裁判所の言葉をかりれば、連日のように長時間かつ深夜にまで及び、また取り調べに当たった警察官による暴行まであったと疑わせるような、極めて過酷なものであり、被告人の受けた肉体的、精神的疲労、痛手は相当大きかった。こういうことが裁判所の判決によっても認定をされています。
 基本的に被告人は検察官主張の犯行日時には自宅でテレビの劇映画を見ていたという、そういうアリバイが一応認められるということにまで判決の結果、認定された事件でありますから、これはもう捜査官としては、先ほど局長がおっしゃった控訴審での証明力に十分自信が持てないという状況だけじゃなくて、そもそも起訴、公訴提起をする段階で、これで公訴が維持できるかどうかを含めて、もっと慎重に考えるべき事案であったのではないかというように私は思わざるを得ないのですが、いかがお考えですか。
#133
○政府委員(筧榮一君) 自供を得ました場合にも、それを裏づける物的証拠の収集が大事であるということは改めて申すまでもないところで、捜査官としては第一に考えるべきことであろうかと思います。現にこの警察あるいは当時の検察官においても、最後まで凶器あるいは着衣について、その所在を捜したわけですが、結局発見できなかったという実情であろうかと思います。その他テレビのアリバイ等いろいろございますけれども、基本的にはやはり自供を裏づける物証がないというところが一番肝心な点であろうと思います。その点では判決の指摘を受け、今となって考えればということになるかもしれませんが、さらに慎重な捜査をすべきであったというふうに考えておるわけでございます。
#134
○橋本敦君 この事件で大きく新聞にも報道されましたが、異例なことですが、検察官は論告求刑を放棄せざるを得なかったという状況にまでなったわけであります。それというのも自白調書が証拠採用されなかったら、あとに物証は何もないのですから、それは論告のしようもないと思います。
 そこで、刑事局長に聞きますが、検察官が論告を事実上放棄せざるを得ないような事件のケースというのは長い局長の経験でもそうあるものじゃないと思いますが、本当に希有の例といってよろしいのじゃありませんか。
#135
○政府委員(筧榮一君) まさしく希有の例であろうかと思います。私自身の個人の経験によりますと、何年か前に最高検におりましたときに一件、四日市の事件でほぼ同様の経過をたどって自白証書が却下され、同じようなことになったわけですが、その一件を記憶しておるだけで、ほかには承知いたしておりませんので、まさしく希有の例であるというふうに考えております。
#136
○橋本敦君 法務大臣もお聞きのように、まさに自白偏重になってはならぬという現在の刑訴の基本的建前は十分おわかりになっていらっしゃるはずであるにもかかわらず、やっぱり捜査の問題としては、この事件から重要な教訓を引き出さなくてはならぬという問題があるわけですね。
 もう一つ、最近大変これも希有な事件の一つだと私は思いますが、判決の言い渡しがありました。それは三月二十九日に言い渡されまして、被告東京都が警察官の少年に対する取り調べが違法であったことを理由に損害賠償請求で、損害賠償金を払いなさいという判決を東京地裁で下された事件であります。
 この事件で私はこの判決を読んでみてまことに驚いたのでありますけれども、窃盗をたくさんやったという少年に対する取り調べで、その被害者と称する人物を連れてきて、そしてこの少年の目の前でこの男に対して、この人がスナックエムの宮田さんだ、宮田さんが早くゴルフ道具を返してくれと言っているから出してやれ、こういうようにその少年に申し向けて、そして少年がこの宮田という人物からゴルフ道具一式あるいは洋酒、こういったものを窃取したという事実を自白させたという問題であります。
 しかも、この宮田という人物がどういう人物かといいますと、裁判所の判決を読んでみますと、「右の各証拠によれば、宮田」なる者は「服装及び髪型から見て、一見して暴力団員風に見える男であり、また現に暴力団員であつて、」警察官もその事実を知っていたことが認められる、こうまで認定をしているわけですね。そこで裁判所は「少年である窃盗事件の被疑者と一面識もない暴力団員の被害者を面接させること自体が既に異常かつ非常識であつて、少年法の目的とするところと背馳するもの」であるということで厳しくこれを批判して、結局この男に返還しなかったら後日被害者から危害が加えられることがあり得るかもしれぬということを暗に告知するようなことで、まさに脅迫したものと評価されても仕方のないやり方で自白をとったということで、まさにこれは適法な行為と断ずるほかはないと裁判所が認定したわけであります。こういうような非常識なことまで警察段階でやられて、そして間違った自白調書がとられるということは、これはまさに言語道断と言わなくてはならぬわけであります。
 これは警察がやった仕事でありますが、私はここで刑事局長なり法務大臣に聞きたいのは、警察がこういう違法な捜査をやることは許せぬ。あるいは旭川日通事件でも、警察が暴行、脅迫まがいの行為をやって自白を強要することは許せない、それはそのとおりであります。しかし検察官が公訴を提起する、そういう責任と権限がある立場ですね。第一次捜査権は警察だということであっても、検察官はその捜査を裏づけて、そして公訴を提起するかしないかをまさに公益者の立場で判断をして、警察の行き過ぎはチェックをし、そして公判が維持できないようなことは公訴してはならないわけですから、それにおのずから自省をして正確な判断を下すという責任がある。これがまさに検察官が国民に対して負っている責任だと思うんですが、警察の違法な捜査をそのまま追随したり、うのみにするようなことで国民の人権を侵害したら、これは検察官の責任が十分果たせないことになるのではないか。
 私は、この事件でもこういう不当な警察の調べがやられたことを検察官はなぜチェックできなかったのだろうか。そして検察官はこの警察の適法な捜査の結果をそのままうのみにして家裁へ送致
をして、その結果、この少年事件でも私は驚くべきことだと思うんですが、何とこの少年について家裁送りになった窃盗五十一件の事件のうち、前から犯行を認めていた一部の事件はこれはありますけれども、三十一件の送致についていずれも裁判所は非行事実なし、こういう審判をしているわけですね。その理由は、この三十一件の窃盗、これは供述の内容が極めて真実性に乏しい、そしてまた供述どおりの方法では窃盗という犯行が不可能となるものが入っている。こういうようなことまで含めて裁判所がチェックをして、これらについては非行事実なし、こういう審判を下しているのでありますから、警察のでたらめな捜査を検察官が本当に真剣にチェックしようと思えばこれはできたはずの事件だと私は思わざるを得ないのであります。
 そこで、局長に伺いますけれども、検察官の捜査というのは警察の上に安住しておっていいものじゃないはずなので、警察の不当な捜査をなぜチェックできないという、こういう重大な事態が起こるのかどうかについて、反省を含めて御意見を聞かしていただきたいのであります。
#137
○政府委員(筧榮一君) 申し上げるまでもなく、検察官は公訴を提起する権限を一身に持っておるわけでございます。特に今の窃盗あるいは殺人等の事件につきましては警察が第一次捜査権を持つといいますか、通常そこでやって、それをある程度調べて送ってきて、それを検察官がさらに調べて起訴の要否を決するということは御指摘のとおりでございます。その責任上果たして公訴を維持できるか、あるいは公訴すべきものかどうかという点については警察の捜査をチェックといいますか、見た上でさらにみずから必要な範囲内での捜査を補充してその上で決することになるわけで、その意味での責任は極めて大きいわけで、たまにといいますか、たまたま警察官の捜査に遺漏があった、あるいは遺憾な点があったということでその責任を免れることはできないというふうに考えております。
 個々の事件、いろいろたくさん事件ございますので、その間に今申し上げたようなチェックあるいは慎重な検討の点で遺憾な点があったようにも思いますけれども、常々そういうことのないように決していわゆる上塗り捜査をしてはいけない、新しい目でもう一回見直して、それで自分の判断で公訴の要否、公訴維持の可能性というものを考えるべきだということでございます。今後ともこれらの事件を反省の資としてその方向でさらに慎重な職務の遂行に当たるべきものというふうに考えております。
#138
○橋本敦君 法務大臣に最後にお伺いしたいのですが、今局長もおっしゃったように検察官として期待される職務を本当に遂行するためには、時としてあり得る警察の違法な捜査を検察官の立場で本当に捜査段階でチェックしていただく。裁判になって無罪になって、私はもう本当に時間もかかり過ぎる、国民の人権の侵害された態様からいっても、これはもう本当に無罪になってよかっただけで済まされない問題が多々あるわけですね。
 したがって、この日通事件、今回は控訴をされなかったというのは私はそれ自体当然の処置だと思いますけれども、ここから今私が指摘した検察官の本当に職務に立ち返った反省も酌み取っていただいて、今後とも自白偏重にならないように、しかも警察の不当な捜査があれば検察官の澄んだ眼で見抜いて、きちっとこれをチェックしていただくということで決然と職務を果たしていただく、そういうことで決意を新たにこれからもやってほしいわけですが、法務大臣のこの日通事件、今度控訴しなかったというのがきょう発表になっておりますが、これについての教訓も踏まえてお考えを伺って質問を終わりたいと思います。
#139
○国務大臣(嶋崎均君) ただいま承った二つの事件等につきまして今日なお自白を得る過程でその取り調べの方法等につきまして自白の任意性というのですか、あるいは信用性を失わしめるような事態が存在するということはまことに遺憾なことであるというふうに思っておるわけでございます。とかく殺人といったような事件のように凶悪犯というようなものにつきましては、やっぱり警察の捜査というのは確かに必要なことでありますけれども、こういう指摘を受けるようなことが絶対ないように処理をしてもらわなければいけないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
 また、検察当局としましても警察当局の捜査手続が法令に従い適正に行われるように従来からいろいろと事案に応じて指導をし、あるいは助言をしておるということはもちろんやっておるはずだと私は思うのでございますけれども、万が一御指摘のような事案が出てくるというようなことになりますれば非常に問題が多いわけでございますから、検察当局としましてこれを是正して、真相の究明のために所要の努力を払うというような気持ちで事件を処理するということが非常に大切なことであるというふうに思っておりまして、強くそういう点を検察官の皆さん方にも理解をしていただきたいと思っておる次第でございます。
#140
○柳澤錬造君 きょうは、法務省が人権擁護活動というものに従事しておられますので、それの関連でもって北朝鮮の日本人妻の問題を取り上げてこれから御質問してまいりたいと思います。
 これはもう私が言わなくても御存じのはずですが、昭和三十四年の一月に、当時の藤山外務大臣が人道主義に基づいて北朝鮮帰還事業を開始するということを了解しまして、二月の閣議においてその実務を国際赤十字委員会に依頼をいたしまして、八月に日本赤十字社と北朝鮮赤十字会との間でカルカッタ協定が結ばれたことは御存じだと思います。その年の十二月十四日に新潟港から第一次船が出港いたしまして、自来百八十七次にわたって九万三千三百四十人の在日朝鮮人が帰還をしているはずなんです。その際同行した日本国籍保有者というのが六千六百人、そして日本人妻と言われる人たちが千八百三十一人というふうに把握をしているわけなんですが、この数字が間違いないかどうかということをまず御質問いたします。
#141
○政府委員(小林俊二君) 先生御指摘のとおり、総数九万三千三百四十人、日本国籍保有者六千六百七十九名、その内訳といたしまして、いわゆる日本人妻と把握されておる人物が千八百三十一名でございます。
#142
○柳澤錬造君 これは二十四、五年にもなるのですから大変だと思うんですけれども、帰還事業を開始して以来、第一次、第二次、第三次というふうにして帰還者の総数がそのときに幾らいたのか、日本国籍の保有者数というものが男女別に分けてどのくらいいたのか、日本人妻がどのくらいいたのかということを、ここですぐと言ってもこれは大変ですから、資料にして御提出をいただきたいのですが、よろしいですか。
#143
○政府委員(小林俊二君) いわゆる北鮮帰還は三つの段階に分かれて行われた経緯がございます。第一の段階がいわゆる協定帰還、カルカッタ協定そのものに基づく北鮮帰還でございました。次が暫定措置と言われている措置に基づく帰還、最後に事後措置と呼ばれているのが現在でも続いておるわけでございますけれども、第三の段階としてございます。
 この三つの段階のうち、第二段階と第三段階につきましては各船別の極めて正確な統計が存在するのでございますけれども、一番数の多い第一段階につきましては、これは政府が直接行った事業ではなく、日赤を通じて行ったという事情も若干の影響、関連がございますが、各船ごとの統計がやや正確さを欠いておるような状況にございまして、各船ごとの正確な内訳を自信を持って差し上げるという状況に必ずしもないわけでございます。ただ総数につきましては、と申しますのは、第一段階全体の数の内訳、第二段階の内訳、第三段階の内訳については正確な数がございますので差し上げることができます。
#144
○柳澤錬造君 その第二段階からは正確に把握されているというのですから、そこからは各地ごとにおつくりをいただいて、それから第一段階のところはいつからいつまでに何便出ていった、その
合計の内訳はこうだというふうな、できるだけ把握なさっている範囲で正確な数字を挙げて資料としてお出しをいただきたいと思います。
 次には、この前私がこの問題取り上げたのは五十六年の三月二十七日に予算委員会の第四分科会で取り上げましたんです。ですから、このときの議事録を読んできょうはぜひ出てきてくださいよとお願いをしておいたんですが、お読みになって来ていただいたかどうかわかりませんが、このときにあちらから来た一部の手紙を私は読み上げたんです。それで、園田厚生大臣でして、厚生大臣どうお感じになりますかと言って、いろいろ書いてあるんですけれども、ともかく要点的に言えば、もう実情は察するに余りある、自分としても中国孤児の道が開けたので今度は北朝鮮の日本人妻の問題だと思っている、これはもう人道上の問題として、主管は外務省だけれども、そんなこと言ってないで、責任は私にあると思って取り組むということを時の厚生大臣がお答えをいただいたわけなんです。
 それで、続いて、帰れるようになったら、そこでまた入管が何だかんだ言ってややこしくなったのではどうにもならないので、法務省の方としては温かく迎えてくれるかとただしたときに、法務省の方は、それはもう人道上の問題です、難しいこと言わないで受け入れますし何も問題はございませんというふうに大変温かいそういう答弁をいただいたんです。ところがなかなか現実の問題としては進展をしないで、それでその後も私も外務大臣なり園田厚生大臣なりとも非公式に何回かお話もしてきたんですが、実際にこちらに帰ってくるということが実現しないまま四年ももう過ぎてしまったんです。
 何で実現しないか、問題がどこにあるというふうに把握をなさっているのか、少なくとも皆さん方も人道上の問題と言っていらっしゃるんですから、そういう点で何らかの解決の方法がないのかという点でもって、この点できれば法務大臣お答えをいただきたいんです。
#145
○政府委員(小林俊二君) 北朝鮮に帰りました日本人妻の帰還そのものにつきましては、これは基本的に在外におる日本人の保護の問題となりますので、第一義的には外務省の方に努力を願う必要があるわけですし、現に可能な限りの努力をしておるものと確信いたしますけれども、それが今日まで進展を見ていない事情につきましては、これは推測以外に実際に確かめてみる方法がないわけでございます。
 ただ、この問題について北朝鮮側が述べておるところを間接的に承知するところでは、北朝鮮側では、この北へ帰った日本人妻は北鮮に入国した時点において北鮮国籍を取得しておるので北鮮の国籍保有者となっておる、したがってこれらの人人の処遇問題は北鮮の国内問題であるとも述べておるようでありますし、また今後のこの関係者、旧、まあ旧と申しますか、日本人妻の意向につきましては、日本へ里帰りするその希望を持っておる者がいないというようなことも公式には述べておるようでございます。こうした説明等、それからまた別途いろいろな資料で耳に入ってきますこれらの人々の状況あるいは意向というものの間ににかなりの食い違いがあるわけでございまして、その間の食い違いを直接ただす道は非常に限られておる、直接ただす道はむしろないという現況でございます。
 したがいまして、その間には北鮮政府の立場あるいは政策なるものが介在するのではないかというような推測をするほかはないということでございまして、直接に先生の御質問にお答えする確たる根拠はないというのが現実でございます。
#146
○柳澤錬造君 議事録をお読みになっていないでしょう、局長。今の御答弁なさったこともそれなりに私も把握はしているわけですけれども、この四年前のときには私はこの場でずっと手紙を読み上げたんですよ。それで、それなりに厚生大臣の御答弁もいただいたんですけれども、今言われていることは、北朝鮮側がそういうことを言っているんだということも私も承知をしているんです。しかし、もし手紙のあれを、これはほかのでもいいですけれども、そういうものをお読みをいただいておったならば今のような御答弁は出てこないことなんです。
 それはまたさておいて、もう一つ数字を聞かしてほしいのは、一たんあちらへ帰還した人が今度は向こうから再入国してくるのですね。その再入国を許可している数で一九七六年と一九八四年、ここを教えていただきたいということと、今日まで再入国を認めた人数は全体で何名ぐらいお認めになっているかということ。
#147
○政府委員(小林俊二君) 先ほど先生が御指摘になられた御質問の内容と御答弁、かつて拝見したことがあると思います。したがって北朝鮮におる日本人妻から送られてきたという手紙の内容も私何回か拝見いたしております。したがって、その内容については承知しておりますので、先ほど申し上げました際、私が種々のソースから承知しておる情報とは食い違いがございますがと申し上げたわけでございます。
 それはそれといたしまして、いまお二つの件でございますが、在日朝鮮人に対する再入国許可数は過去五年ほどの間、過去六年ほどでございますか、毎年ほぼ四千から四千数百に上っております。そして最初に再入国許可が与えられましたのが昭和四十年でございますが、四十年以来昨年いっぱいで与えられました総数は二万八千二百四十二件となっております。なお、昨年五十九年は四千七百二十八件でございました。
#148
○柳澤錬造君 一九七六年は。
#149
○政府委員(小林俊二君) 昭和五十一年でございますが、四百八十二件でございます。
#150
○柳澤錬造君 今の食い違いの点はさておいて、今度、私がここでやったそれから後の昭和五十六年七月十七日の閣議で、当時の奥野法務大臣が、我が国が在日朝鮮人の北朝鮮訪問について人道的配慮をしているにもかかわらず北朝鮮当局が日本人妻の里帰りを今なお認めないことはまことに残念である、そういう発言をしまして、政府が挙げてこの実現に取り組まなければいけないではないかということを強調されたということが新聞に出ているわけなんです。それで、その奥野法務大臣の発言に引き続いて宮澤官房長官も、直接の国交がないためいろいろな国を介し実現に努力している、とにかく相互主義で実現にこぎつけたいということを述べたという。現法務大臣の嶋崎大臣はそういう点に立ちましてこの北朝鮮日本人妻の問題についてどうお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思うんです。
#151
○国務大臣(嶋崎均君) 日本人妻の里帰り問題につきましては、外務省の方でもいろいろ検討をしておるというふうに聞いておるわけでございますけれども、法務省としましても一日も早くこれが実現できますように大きな期待を持っておるところでございます。また、里帰りが実現をするためには、我々自身も日本国籍を持っておるとか持ってないとかということにかかわりなく、親族関係の問題でございますから、これを受け入れてまいりたいというふうに思っております。
 また、今お話しのありました奥野法務大臣の閣議発言につきましては、私も全部読ましてもらっておるわけでございます。政府としても人道上の見地から従来よりその早期実現のために真剣に取り組んできておるところは当時と全く変わらないわけでございますが、しかしながら、いろいろな北鮮側の事情等もあるのだろうと思うのでございますが、今日まで実現していないというのはまことに遺憾だというふうに思っておるわけでございます。法務省としては、最初に申し上げたような気持ちで、今後日本人妻の希望が実現できるようにできる限りの努力をしていかなければならぬというふうに思っております。今お話しの相互主義というような言葉がどういう内容かよくわかりませんけれども、私自身はやっぱり一刻も早くそれが自由に実現できるような気持ちを持って対処しなければならぬのではないかというふうに思っております。
#152
○柳澤錬造君 大臣ありがとうございます。そう
いう形で一日も早く実現するような努力をしていただきたいと思うんです。
 それで、ここでお聞きしたいことは、さっき御答弁あったように、再入国を認めた人数というのが二万八千二百四十二名もいるということなんです。一九六五年からこれを認めたわけですから、もう約二十年になる。数もそれだけ今お話があったようなことになっているんですけれども、この再入国許可をお認めになるその辺の経過がどういう経過をたどってそういうことをお認めになるように判断をなさったのか、日本政府としてのその辺の基本的な、基本的と言ったらちょっと大げさになるけれども、考え方の基盤というものはどういうところからそういうふうになさったのか。
 特に、今もありましたように、私も調べてみますと、五年前から毎年もう四千人以上も入ってくるんですから、これはもう国交のない国との間でいえば驚異的なものだと思うんです。国交がないからなかなか話ができない、先ほども食い違いをただすことができない、そのとおりであります。しかし、にもかかわらず日本の政府の方はそうやって向こうから一年に四千人以上の人も入れてあげているわけなんでしょう。これは驚異的なことであって、日本政府がそこまで言うならば好意的に配慮をしてやっているにもかかわらず、あちらの方は何らそれに対しての、報いないというか、その反応がないわけなんです。その再入国の方は今後も今のような状態でずっとお続けになるというお考えなのか、将来的にはどういうお考えを持っているのか、その辺をお聞かせいただきたいんです。
#153
○政府委員(小林俊二君) 我が国に在留する朝鮮人の北鮮訪問を認めるに至りましたのは、先ほどちょっと申し上げましたように昭和四十年からでございますが、直接の契機は韓国との間の国交が正常化したということであるわけです。と申しますのは、韓国との間の国交が正常化いたしまして、韓国との間の往来が正常化するに至ったわけでございますので、その時点以降、韓国籍を持っておる在日の朝鮮半島出身者は韓国との間の往来をかなり自由に行うことができるようになったという事情がございます。
 それとの権衡といったような観点もございまして、韓国籍を有しない朝鮮半島出身者、いわゆる朝鮮人と言われている人々の北との交流につきましても、人道ケースを中心として、ということは最も端的には親族訪問でございますけれども、人道的な観点から認めるべきであるというものについて徐々に認めていったというのが実情でございます。そして、その範囲を年とともに広げていったことによって最近のように五千人近くも毎年日本から北へ帰って、行ってくる者が出てくるようになったということでございます。最近では人道ケースもかなり広がりまして、親族訪問のみならず学術、文化あるいはスポーツの交流といったような面まで広がっておりますが、なお政治的な色彩の強いものにつきましてはこれを制限的に取り扱っております。
 したがって、今後の方針についてのお尋ねでございましたが、これは朝鮮半島における情勢の今後の推移によってかなり影響される面も多いかと思います。そうした状況を注視しながら、少なくとも人道的な観点から必要と思われるものについては今後とも続けていくというふうにお答えできるかと存じます。
#154
○柳澤錬造君 向こうから来るのを入れてはいかぬなんて私言うつもりはないんですね。さっきから申し上げておることはおわかりだと思うのだけれども、日本側から言っていることが不当なのかどうなのか、何で北朝鮮側がそうやって言うことを聞かないんでしょうか。
 それで、これももう御存じだと思いますけれども、昭和四十九年の四月七日にこの日本人妻の家族の皆さん方が心配をして、そうして日本人妻自由往来実現運動の会というものを結成いたしまして、池田文子さんが代表世話人になってずっとこの運動をやってきているわけです。それで、だれもが取り上げてくれない。そういう中でもって、あちらから来た手紙をガリ版に刷って国会の中で配って歩いて、そういう中でもって我が党の永末英一議員が衆議院で取り上げたのがきっかけで、その後は各党がずっとやられてきているんだけれども、いまだに日の目を見ないわけなんでしょう。
 中曽根総理もこの間の施政方針演説でも、日本は国際国家だ、こう言うわけです。歴代の総理は日本は経済大国だと言った。国際国家だと言い、経済大国だと総理が言われるんだけれども、この北朝鮮の日本人妻の問題がこういう状態で二十五年たっても、いまだにどうにもこうにもならぬ、片がつかない。それで日本の政府として手も足も出ないというのはそういうことなんですか。そこのところは皆さん方の知恵を出して、それこそ政府が総力を挙げてこの問題を解決するんだといっておやりになったら私は道は開けるのじゃないかと思うんですよ。
 だから、そのやり方は大体最初が日本赤十字社北朝鮮赤十字会の間でもって協定を結んで始まったのですから、赤十字社に行って、そしておまえたち少し話をして何とかせいということでやらせるか、あるいは第三国を通じてあっせんを依瀕して北朝鮮側に働きかけるか、ともかくやりようはあると思うんです。
 今イランとイラクとの戦争の中にも、ああやって日本の政府が、あれも私は数年前に予算委員会で聞いたことがあるんです。せめてアジアにいる日本として、あのイランとイラクが戦争をおっ始めようとしているんだから、そこのところ何とかして戦争が拡大しないように手を出したらどうかと言ったんだけれども、そのときの外務大臣はとてもそんなもの手に負えるような代物ではありませんという答弁をいただいた。しかし今外務大臣は現実に首都爆撃はするな、そういうことを今一生懸命政府の皆さんおやりになっているわけなんですよ。
 だからそういう点に立ってこの問題だけは大臣、もう党派を超えて、与党だ野党だ、そんなことなしに乗り越えて、本当に人道的立場に立って取り組んでいただかなければならないし、そういう点でもって嶋崎法務大臣、今大臣のいすにおられるのですから、わしが法務大臣の間にこの問題については取り組んで道を開くのだという御決意でもってお取り組みいただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
#155
○国務大臣(嶋崎均君) 何しろイラン・イラクの問題にしても、出かけていかれる外務大臣がおいでになるわけでございますから、近くの問題はもちろんその外務省の所掌事務でございますから精いっぱいやられることであろうというふうに思います。私自身もそういう気持ちでいるわけでございますから、そういう気持ちで対処していただきたいということを篤と話をしたいと思います。
#156
○柳澤錬造君 いや、さっきの四年前のときも、園田厚生大臣は、主管は外務省だ、しかし主管が外務省だなんてことはわしは言わぬ、これはわしの責任だと思ってやると言って、時の厚生大臣がお取り上げをいただいたんです。だから法務省にも関係が深いのですから、そういう点でもっていろいろの手を通じて、こういう方法でもっておれもやってみるし、何とかしてわしの責任で実現するから待っていろと言って、そう言ってちゃんとお答えがいただきたい。そうでなければ何にも意味ないじゃないですか。そして、このくらいのことが片がつかないようだったら、日本政府としてのメンツがないんでしょう。
 だから、そういう意味で、北朝鮮と何もけんかするんじゃなしに、こちらだってさっきからもお話があるとおり四千から五千近いのを毎年入れてあげている。だったらこちらからも、おい、そうやって日本人妻でもって、向こうにいたい人はいいんですが、里帰りしたいという人がいる、いたらその人たちはやっぱり里帰りでこちらへ帰してやってくれよと言って、そのくらいのことはやはりどういうルートをとろうとやれないことはないんで、それを大臣に私はお願いしているんです。本当に人道的とはどういうことかということを大
臣考えて、それでもう一回お聞かせ下さい。
#157
○国務大臣(嶋崎均君) 園田厚生大臣と同じような羽目になってもなんだろうと思いますが、そういう推進の気持ちは、御指摘になりますように日本と北朝鮮の間の交流というのは、先ほど数字で申し上げたように、非常に何というか、多くの数の人が永住できるようなそういう状態をつくり上げておるわけでございますから、日本人妻についてぜひともそういうことで実現をしたいという気持ちは最初に申し上げたとおり変わっておらないわけでございます。ただ、私の仕事で何ができるかという話になると、それぞれ主管のところがありましょうから、そういうところにも十分お話を申し上げましょう、こう申し上げたわけでございます。気持ちは全然変わっておらないつもりでございますので、その実現方について努力をさしていただきたいと思います。
#158
○柳澤錬造君 よくわかりました。だから大臣、閣議のときに外務大臣にハッパをかけて、本来はおまえらの方でやることだぞと言って、そうして督促をして推進をしていただきたいと思います。
 それで、時間がなくなっちゃいましたので、これは御質問というか、申し上げて、これも後で資料でお出しをいただきたいと思うんですが、現在有効な法律というものは何本ぐらいあるのかということを知りたいんです。それで、その中で区分していただきたいのは、いつかも大臣の御答弁の中に出てきたように、明治のものがまだあるわけでしょう。だから明治時代のものでいまだに有効なのが幾ら、次に大正の年代、それから昭和の中で戦前と戦後に分けて、その四つの区分に分けて、それで今どのくらいの法律があって、その中でその区分で分けるとどうなるというのを、これは今すぐなんて申し上げませんので、そういう資料にしてお出しをいただければと思います。それを申し上げて終わります。
#159
○委員長(大川清幸君) では、これはよく打ち合わせをして資料は出してください。
#160
○国務大臣(嶋崎均君) できるだけ努力してみます。
#161
○中山千夏君 一九八五年度の予算に関連して二つばかりお伺いしたいと思います。
 初めに、被収容者の食糧費一人一日当たりどのくらいになるのかという資料をお出しいただきまして、ここに持っております。これを拝見したわけなんですけれども、これについてちょっと細かいことを教えていただきたいんですが、刑務所の方は主食、これカロリーが決まっていまして、千七百カロリーから二千四百カロリーを「労働の程度はより区分する」というふうになっておりますけれども、この労働の程度というのはどういうふうに分けられているんでしょうか。
#162
○政府委員(石山陽君) 刑務所におきまして労働の程度といいますのは、卑近な例で申し上げますると作業でございます。その作業は、特に行刑施設におきましては、肉体的にある程度かなりの重労働になる、それからそれほどではないがかなり労働のきついもの、それから一般的な作業、それからそれほどでもない全くの軽作業と俗に言うもの、それからそれ以下の段階でございますけれども、これは例えばそうでございますね、病気その他で休養しているもの。ですから、大ざっぱに言いますと五段階ぐらいに分かれるというふうに御理解いただければよろしいかと思います。
#163
○中山千夏君 これ、例えば何というんですか、中でいろいろ法規というか、規則の違反なんかがありますね。そういうときに違反に対する一つの罰として、例えば作業の賃金を減らすというようなことはあるそうですが、御飯をちょっと減らすというようなことはあるんでしょうか。
#164
○政府委員(石山陽君) 現行の監獄法には懲罰の一種として減食罰というのはございます。しかしながら、戦後それを実行したことございません。運用上廃止しております。
#165
○中山千夏君 やっぱり幾ら何か法規、規則に違反してもおなかはすくのですから、運用上廃止されていることはとても心強いことだと思います。
 それからもう一つ。刑務所の中で少年受刑者、これが主食副食ともカロリーが同じになっておりますけれども、この少年受刑者の方にもやはり労働の程度によって区分するという方法があるんでしょうか。
#166
○政府委員(石山陽君) 委員のお手元にお出ししました資料は平均的なものを出してございますから、現実の給食面におきましてはその少年受刑者なら少年受刑者が作業に従事するその作業の形態によりまして、先ほどのような、つまりかなり程度の重い重労働であるか、あるいは軽作業であるかということによりまして、俗に言う一等食あるいは五等食まで区分がございますので、それによって配分をいたしますから、個々の少年受刑者で見ますと、作業の種類によって重いものにはよりカロリーを必要とするというので食事の給養の量が多くなる、こういう運用になっております。
#167
○中山千夏君 その場合、その最低カロリー、最高カロリーというのは成人と同じになっているんでしょうか。
#168
○政府委員(石山陽君) 成人の場合に比べまして、少年の場合はいわゆる心身の発育期でございますから、基準自体が成人よりも少し高目に設定されておるはずでございます。
#169
○中山千夏君 その詳しいことは今わからないですね。
#170
○政府委員(石山陽君) お時間をいただければ今お答えいたします。
#171
○中山千夏君 それじゃ、お願いします。
#172
○政府委員(石山陽君) 少年の場合には、主食の熱量におきまして成人の場合に例えば最高の熱量が三千カロリー程度になる場合、数百カロリー余計にするということが主食でもう認められております。それから、一般に副食の例で申し上げますると、成人の場合は大体一人一日当たりの副食でとりますカロリーが平均すると八百カロリー程度でございますが、少年は百カロリー多い九百カロリーというのが一応の基準になっております。
#173
○中山千夏君 そうすると、大体少年院ですとか少年鑑別所なんかが副食九百カロリーというふうにありますので、それと同じような考え方になっているのだろうと思うんですが、その少年院と少年鑑別所なんですけれども、これはきっと何か単純な理由があるのだろうと思うんですが、同じカロリーなんだけれども単価の方がこれ少年鑑別所は遠いますね。これはどうしてこういう違いが出てくるんですか。
#174
○政府委員(石山陽君) 少年院の場合は収容者がある程度まとまっておりますので、給食設備その他運用上合理的な炊飯ができますから単価が比較的安くつく、鑑別所の場合には個々で少数の食事をその都度つくらなければいかぬ、どうしても一回当たりの単価が高くつく、その点を考慮してできている差でございます。
#175
○中山千夏君 それからもう一つは、少年院とそれから少年鑑別所とで主食の方のカロリー、これ平均だそうですが、これ差がありますね。これはどういう理由で差がついているのか。
#176
○政府委員(石山陽君) 少年鑑別所の場合にはいわば鑑別所特有の仕事でございます家庭裁判所に対しまして科学的な少年の性向、心理その他に関しまする検査を行うという形で、いわばその検査を受ける立場でございまするから、余り運動量が多くございません。少年院の場合には実科訓練、教育訓練、いろいろやりますし、戸外の運動時間等もございますし、あるいは軽作業に従事させるという構外作業を行う場合もございますので、どうしても余計におなかがすくということによってその差がついているわけでございます。
#177
○中山千夏君 専門的なことは全然わからなくて、二百カロリーが果たしてどの程度の運動量になるのかというのはよくわからないのですが、どうも大ざっぱに考えますと、鑑別所にいる子供も少年院の方にいる子供も同じような年齢で育ち盛りで、あの年ごろというのは、じっとしていてもおなかがすくので、この差というのは余りにもちょっときめ細かにお考えになり過ぎなんじゃなかろうかという気がするんですが、その辺のところいかがでしょう。もちろん専門的な栄養士さんだ
とかいろいろな方の御意見もお聞きになってのことだろうとは思いますが。
#178
○政府委員(石山陽君) 少年の給食につきまして、先ほど御説明申し上げましたように、成人に比べまするとカロリーはもともと配慮して多目になっております。ですから、今委員のせっかくの仰せでございますが、少年院におります子供たち、これも平均カロリーで申していますから、少年院の場合でも一等食に相当するような量を主食副食ともに鑑別所の在院中の少年たちにもし給食いたしましたら、恐らく大分食べ残しが出てしまうような、そういう実態ではないかというふうに考えます。二百カロリーと申しましても、水一CCを要するに二百度まで上げる熱量になりますので、子供たちとして見ればかなりの運動量の差、カロリー計算すればその程度あると相当な違いが出てくるというふうに考えております。
#179
○中山千夏君 この食糧費一人当たり、これは前に比べてどの程度上がったんでしょうか。
#180
○政府委員(石山陽君) お手元にお出ししました資料見ましても、行刑施設に入っている者と少年院あるいは少年鑑別所等に入っております者の食費の関係の単価がちょっと違っておりますので、代表的な例で一、二申し上げてみたいと思います。
 成人の受刑者というのを例にとりますると、昨年度は主食副食合わせまして一日当たりの単価が四百四円七十銭、これが予算単価でございました。本年度はそれに対しまして十一円七十三銭一人一日当たり増加しまして、四百十六円四十三銭というふうになっています。
 次に、少年の場合で申し上げますると、少年院の場合、主食副食合計しまして、少年はどうしても先ほど申しましたカロリーを多くとる必要がありまするし、少し食事の単価も高めに設定されておりまするが、これが昨年度は四百六十二円五銭、本年度は四百七十四円五十八銭で、単価にしまして十二円五十三銭一人一日当たり高くなったと、こういう現状になっております。
#181
○中山千夏君 今物価も特に食料品高いですし、去年もたしかお話し申し上げたと思うんですけれども、大変この食費は苦しい感じが私などはするんですが、適正であるとお考えなのか。それともことしの予算に関してはかなり頑張ったというふうにお思いなのか、その辺の感想をお聞かせいただきたいんですが。
#182
○政府委員(石山陽君) 人間、欲は限りなくございますので、その意味におきますればもっともっとという気持ちはないわけじゃございませんが、この国家財政のもとにおきましては本年度例えば副食で平均三・七%アップ、それから主食につきましても、これは内地米あるいは徳用米、麦、それぞれ違いまするが、それぞれ所要のアップをいただいておりまするので、乏しい予算の中ではまあまあのところをいただいたのではないかというふうに考えております。
#183
○中山千夏君 また頑張って、なるべくいい食料を皆さんに食べさせてあげるようにしていただきたいと思います。
 それから次に、この間ちょっと触れましたけれども、拘置所の問題についてお伺いをしたいと思います。今後の拘置所の新築ですとか増改築の予定をちょっと教えてください。できましたら予算との関連なんかもお願いいたします。
#184
○政府委員(石山陽君) 午前中に寺田委員からも御質問ありました件でございますが、増改築ということでございまするが、増改築に限って御説明させていただきたいと思います。
 本年度の予算案におきましては、もしこれが成立しました暁におきまして、拘置所の増改築費用としては大体三庁程度が今現在予定されておるところでございます。過去の例で申し上げますると、昨年は増改築しました施設は四庁、それからおととしが二庁それぞれ増改築が完成いたしております。
#185
○中山千夏君 この増改築を決められるときなんですけれども、計画をお立てになるときなんですけれども、定員というものはどうなんでしょう。まず設計というか、土地が決まって設計を決める階段で定員というものが決まっていくのか、それとも、もうこれだけはとにかく引き受けなくちゃいけないという定員がまずあって、それから設計を非常に工夫なさるのか、その辺のところを伺いたいんです。
#186
○政府委員(石山陽君) 私どもの矯正施設を増改築するに当たりましては、いろいろな要素をまず一番最初の計画段階で考えるわけでございますけれども、例えて例示申し上げますると、まずその周辺におきまする最寄りの警察署の留置場の収容人員の現況でございますとか、検察庁の受理の事件数でありますとか、それから過去数年間の当該地域におきます人口の増加率、こういったような環境要件というものを一応条件に入れまして、大体この施設には新築後何年にわたって有効耐用年数があるとして、そのうちどのくらい割り増しで定員というものをはじけばいいかということをまず考えるわけでございます。その定員が収容定員として大体決まりますれば、おのずから配置職員数がはじけますので、その収容定員プラス職員数、これの執務室その他舎房等を含めた全体計画を立てます。次に、その建てます地域でありまする現在地なら現在地改築の場合で申しますると、それに必要な建物面積がその所在地でとれるかどうか、次にその検討をいたします。そして例えば平屋建てでは無理なので二階建てにしなければいかぬ、こういうような格好でいろいろの計画を練っていくという形でございますから、定員がまず一つの要素であるという点については御指摘のとおりであろうと、こういうふうに考えております。
#187
○中山千夏君 そうすると、留置場に入っている人たちの数というものも十分に勘案なすって、そして定員を決めていらっしゃると。そうすると、局長の方では、あるいはその計画を立てる方々の方では、各拘置所のある地域、そのあたりにどのくらい現状として留置所に人が入っているかというような数は、いつも把握していらっしゃるわけですね。
#188
○政府委員(石山陽君) 計画の段階で一応把握に努めております。
#189
○中山千夏君 実は私ちょっと前質問するときにそれを伺いましたら、全体の数はわかるけれどもといって出てこなかったのですね。それで、これがわからなくてどうやって次の計画を立てるのだろうと思って心配をいたしておりましたが、局長の方ではおわかりになっているということなので安心いたしました。
 それから、この間の委員会のときに非常に収容率の低いところがあるというお話を申し上げたのですけれども、そういうところに関して、もちろんどうしてこんなにあいてしまうのだろうかとか、もう少しこれを有効に施設を利用するためにはどうしたらいいだろうかというようなことを当然お考えになると思うんですが、例えばいろいろな理由がその個々の場所であると思うんですけれども、広島の場合とか小倉の場合とか具体的にでも構いませんし、そういう原因をどういうふうにつかんでいらっしゃるか、お答えいただきたいんですが。
#190
○政府委員(石山陽君) 拘置所につきましては、この間の御質問の際に御説明いたしましたように、収容定員一〇〇%ぎりぎり入れるということはもちろん物理的に可能ではございますけれども、それでは職員事情、あるいは被収容者の衆情その他の面から見てむしろ危険な状態になるので、少し少な目の、例えば七、八〇%で運営できるのが一番望ましいことだというふうにお答え申し上げておるわけでありまするが、その場合におきましても、それを割りましたから直ちにこれは非効率な施設だというふうには一概に言えないと思うのであります。
 それはいろいろな要素がございまするが、例えばこの間も申し上げましたように、季節波動期というのがまずありまして、収容は待ったなしで必要を生じる場合がございますので、例えば年末の歳末取り締まり警戒時期ということになりまする
と、それらの影響を受けまして、少し時間的な差はできまするけれども収容者が大分ふえてくる、こういうのが毎年繰り返されております。それから地域によりまして、いついかなる状態で多数の集団犯罪が起きないとも限りません。そういう場合に受け皿がないということはやはり私ども収容施設として非常に困る事態が起きます。ですから、それぞれの余裕をとるということが大事であります。
 それから、それがさらに極端に低下いたしまして、例えば一日平均収容人員が十人を切ってしまうというような形になりますると、私どもの施設ではどんな小さな施設でも最低職員は十人ぐらいはおるものだというふうにお考えいただきたいと思います。その十人使って一日平均十人以下であるということになりますると、これは人員配置上といいましょうか、運営効率上というか、これはやはり一つ問題になるだろうと思います。そういうような観点から、かつては拘置所の統廃合もある程度やらなければいかぬのじゃないかという政策を推し進めた時代があるということは午前中お答え申し上げたわけでありますけれども、それらとの関連におきまして、今後やはり地域住民がおいおいと居住者がふえられて人口が増加するようなところでは、今余裕があるからといって軽視できる問題じゃありませんし、今後ますます収容がふえてくる場合が当然予測できるわけでありますから、そういうものは現状で直ちに統廃合というような問題は考えられない。
 こういったような具体的な態様に応じましてそれぞれ施策を考えて、非効率組織にならないように運営上気を配っておる、これが現状でございます。
#191
○中山千夏君 聞きますと、地理的な条件なんかもやっぱり拘置所の方に人が回ってこない原因の一つであるとか、それから取り調べ室というんですか、そういう設備の問題が留置場の方がいいんだとか、それから面通しというのでしょうか、そういうものが地理的、設備的に留置場の方がしやすいんだというような意見も聞くのですけれども、そういうこともやはりあるとお思いになりますか。
#192
○政府委員(石山陽君) 現在の矯正施設におきます拘置所というものは、発足以来の性格がそもそも取り調べを前提にする取り調べの場所という形では運営されてこなかったわけであります。ですから、おっしゃいますように、これは留置場の設備と比べまして、すぐそばに取り調べ室があるかないかという点では、明らかに現在の拘置所は取り調べ室が完備されている施設は極めて少のうございます。また、あってもその数は足りないというのが現状でありますし、今おっしゃいました面通し室、いわばマジックガラスを張ってありまして参考人と被疑者との間で面識があるかどうかを確認するための設備、こういったものを持っておりますところはほとんどありません。こういう点でございますので、いわゆる代監廃止問題にかわりまするが、私どもが現在拘置所が物理的にすいているからといって、直ちにそれが代監廃止につながらない一つの理由に、御説明した中ではそのような事情を申し上げたことがある、こういうわけでございます。
#193
○中山千夏君 それから、この間、名古屋の新しい拘置所を拝見しましたときに、すごく立派な部屋がありましてテレビの監視システムというのが備わっていたんです。今後拘置所をつくっていかれる中で、ああいうシステムを取り入れていくという計画はおありですか。
#194
○政府委員(石山陽君) 今委員お尋ねの設備は総合警備システムと申しまして、大体五、六年前から計画的に年次計画で導入を始めた設備であります。現在、主要な、特に保安上注意しなければならないB級施設と申しまして、累犯者を多く入れている施設ですけれども、これはほとんど配置し終わりました。そのほかの大きなA級施設あるいは拘置所本所、支所、こういったところに現在年次計画で着々と整備をしておる、これが現状であります。
#195
○中山千夏君 システムとしては一つ一つの部屋が映る、それを一つの部屋で監視することができるという形になっていたんですが、そこで伺ったときには、所長のお話では未決囚の方に限ってテレビをつけて監視をしている、対象は全部未決囚の人たちだということだったんです。それ以上ちょっと深いお話は聞きそびれたのですけれども、何かテレビのシステムを使うについて基準といいましょうか、そういうものについてのお話は内部でございますか。
#196
○政府委員(石山陽君) 現在の設備では全舎房を全部テレビで見るというわけにまいりません。数量的にも足りません。特に明確な基準はございませんが、今当時の御説明が足りなかったかと思っておりまするけれども、私どもは優先してテレビをつけております房は、いわゆる部内で、俗称でございまするけれども、自己の身体に危害を加えるおそれのある、いわば保護房的に、自殺その他を図るおそれのあるような人、それから非常に中で暴れて仕方がない人、こういうような人の特殊な房でございますが、そこにだけつけるようにしております。それから現実に保護房と申しまして、行刑施設等の場合に、大声を発していわば同房者の制止も聞かず職員の制止も聞かず、そして自傷他害のおそれがあるというような者につきまして保護房に入れる場合がございます。この保護房の中にもテレビをつけておるというのが多うございますが、このような現状でありまして、一般房全部につけて、普通の舎房生活を送っております被収用者全部の日常の行動を全部テレビで監視するということは現在もやっておりませんし、将来とも考えておりません。
#197
○中山千夏君 特に、そうしたことの何か文章にした規定ですとか、通達であるとか、そういうものはおつくりになってはいらっしゃらないんですか。
#198
○政府委員(石山陽君) 現在のところ、そういった内部通達等は特に出しておりません。
#199
○中山千夏君 いつも技術というのは大変に進歩して便利なところ、取り柄のあるところがあるんですが、往々にしてテレビカメラですとか、ああいうものは今度人権問題と格みが出てくることがありますでしょう。だから私のこれはお願いになりますが、お願いとしてはどんどん先に機械がついてしまって、そうして慣例としていろいろなことができてしまったりしない前に、きちんとした人権を守るということもちゃんと考えた立場から何か基準を打ち出して、そしてそれに従ってテレビなんかを使っていくように、使うのであれば使っていくようにぜひしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#200
○政府委員(石山陽君) 仰せの趣旨はまことにごもっともでありますし、私ども通達行政の中でのいわゆる基準というようなものは今のところ考えておりませんが、総合警備システムのいわば設備基準と申しましょうか、技術上のいろいろな注意事項等の中で、その備えつけるべき場所はこういうことだということで現地を指導しておりますから、その意味におきましても一般監視用に使われるものではないのだと、この性格は今後とも十分注意してまいりたいというふうに考えます。
#201
○中山千夏君 二つお伺いしたいことはそれで終わりなんですが、この間ちょっと聞き漏らしまして、女性の刑務所長が二人いらっしゃるというお話で、そのときにもう一つ今後女性の刑務所長をふやしていくお考えがあるかどうか、お考えになっただけではふえないわけですが、女の方も頑張らなくちゃいけないのですけれども、そうして今後の見通し、女性の刑務所長をふやしていく上での見通しというのを伺ってお答えいただくのを忘れました。それをきょうちょっと伺って最後にしたいと思います。
#202
○政府委員(石山陽君) 今私どもが女子施設の刑務官を採用し育てていく上で一番つらいのは、こういう女子の職員が余り定着してもらえないという、そういう現実であります。
 これはどういうことかと申しますると、例えば女性の犯罪者は逐次やはり社会現象につれまして
高年齢化しております。我が国の女子施設の一般看守の平均年齢が二十二から二十三ぐらいまででございます。そうすると、相手をする被収容者が四十代後半でございます。そういう自分の母親のような者を相手にして、いろいろと作業の指導をしあるいは生活上の注意をしながら規律、秩序を維持するという刑務所本来の仕事をしているわけでございまするけれども、これらの人々をどうやって使命感を持ち組織に定着さして育てていくか、これを私ども非常に今考えておるところでございます。
 女性にはもちろん特有の結婚問題その他もございまするし、そのかわり一遍使命感を持って結婚しても頑張るという人も多々あるわけでございますけれども、そういう中で将来の幹部候補生が育ってくれれば私は喜んで女性の幹部を出したいというふうに考えておるわけでございまして、今女性施設長が刑務施設では二人しかいないというふうに申し上げましたが、少年院長やあるいは鑑別所長等の女性出身者が現在既に何名か出ております。これが現状でございまして、しかるべき育て方ができて、それの任にたえられる女性が残ってさえくだされば、私どもは女性に対する登用の門戸を閉ざすつもりは全くございません。
#203
○中山千夏君 ありがとうございました。終わります。
#204
○海江田鶴造君 私は最初に、最近マスコミの一部で騒がれております腎臓売買、生体の腎臓売買について申し上げてみたいと思います。
 この問題は昨年十一月に新聞が取り上げまして、その後テレビが十一月下旬から現在まで既にもう六回ぐらいでしょうか、大変センセーショナルに取り上げました。また週刊誌も一月一日号の週刊誌で報ぜられまして、大変大きなショックを腎臓病患者等に与えておるわけでございます。既に我が参議院でも先般の予算委員会で同僚議員から二回ほど取り上げられておりますが、私はやはり法秩序を守るこの法務委員会で一応取り上げておくべきではないかと思ってきょうは質問をする次第でございます。
 もう既に私も十一月以来この問題をフォローしておりますが、既に約二十年間近くの間は日本で腎臓移植が行われましたのは二千七百八十三回、そのうち日本は死体腎ではなくて生体腎の移植が多くて二千二百八十八の生体腎の移植が行われておる、既にまた現在約五万三千人の腎臓病患者が毎日透析を受けておる。その人たちの半数以上は何とか機会があれば腎臓を移植してほしい、このように希望をしておるということであります。
 既に私も新聞記事あるいは週刊誌、特にテレビは私は二回これを見たのでございますけれども、これは何とかいうサラ金業者、まことに特異な不可思議なる人物を登場させて大変大きな報道をしておりまして、その者の言うことには、サラ金で困っている人たちをおどして、暴力団を使って、そして腎臓を売らせることを約束さして、既に千二百件もそういうことをやった、そして約七十億もうけて二十億を政党に寄附した、政治家に政治献金をしておる、こういう報道でございました。
 私はこの報道をずっとフォローしておりまして、どうもこの報道はおかしい、必ずしも事実じゃないじゃなかろうか。こういうものを正々堂々とテレビあたりがいかにも本当らしく報道をして、それによって本当に真剣に病気を考えておる病院、あるいは移植に従事しておるお医者さん、またその腎臓病患者、またその家族、こういうものを冒涜しておるのではないか。このように考えておりまして、当局の方にもできるだけ早く実態調査を急ぐべきではないか、このように要望しておったのでございます。
 きょうは厚生省並びに警察庁が見えていると思いますが、このような報道について、私は、当局は一生懸命全力を挙げて実態調査をして、その結果を国民に公表すべきである、国会を通じてなりあるいは新聞報道を通じてなり、公表すべきであると思うのですが、まず厚生省、次に警察庁からこれまでの実態調査の結果について御報告をいただきたいと思います。
#205
○説明員(窪木外造君) お答えいたします。
 厚生省といたしましては腎を売買の対象とすることなどはもとよりあってはならないと考えております。生体腎売買に関する報道がありましたので、さまざまの方面でその情報を集めているわけでございますが、現在までのところ、そのようなことがあったという事実の報告はございません。今後とも関係機関と密接に連携をとりながら厳重に目を光らせていく所存でございます。なお調査を続け、事実が判明した場合にはその結果を明らかにしていきたいと考えております。
#206
○説明員(上野治男君) 私どもは医療の実態を必ずしも十分承知しているわけではございませんので、また腎移植そのものがどのぐらい行われているかということは必ずしも承知している立場にございません。したがって、今言った千何百件というのがどれぐらい信憑性があるのかということがよくわからないのですが、少なくとも報道されているような話というのは、厚生省で今お話しのように調べてみても一件もなかったということでございまして、私どもそれなりに調べてみたのですが、今までのところ一件も出ていないということから、この話はかなりオーバーな話じゃなかろうかと、そう感じておる次第でございます。
#207
○海江田鶴造君 私はマスコミというのは天下の公器だと思う。そこで報道されておるのは、サラ金に苦しんでおる者に暴力団を使っておどして、生きている人から、とにかくおまえらはおまえらの腎臓を売れと、一千万とか六百万とか二千万とか、そういう話をしておる。これは犯罪ですよ。犯罪であって、そういうものがしかも一般に信用されているかどうか知らぬが報道されておる。テレビを通じて報道されておる。そういうものを放置しておっていいのか。私は厚生省はこれは恐らくインチキだろうとこのように思っておられるのじゃないでしょうか。またテレビの中にも、一部の者は、あれはやらせではないか、こういうようなことを言っている人も相当おります。
 こういうものについて少なくとも事実ではない、オーバーであるというならば、私は政府はそのテレビ会社に対して抗議を申し入れるなり、やはり事実の報道をするように要求すべきである。そのためにも実態調査を急いで、ある程度の判断が出たならばそういう措置をとるべきだとこのように思うんですが、いかがでしょう、厚生省。
#208
○説明員(窪木外造君) 昨年の十一月に新聞で報道があったわけでございますけれども、その事実につきましては、これは大阪府の衛生部を通じまして回生会から事情聴取を行い、また大阪府内にございます腎移植の施設につきまして腎移植の状況について調査を行ったわけでございます。また、各部道府県の衛生部の方に照会をいたしましたけれども、現在までのところ、いずれも同様の事実の報告はございません。そういう状況でございます。
 それで、先ほど申しましたように、先般来、生体腎の売買のあっせんなどはもとよりあってはならないという考えでございますので、各部道府県に対しまして事実の把握に留意し、万一そのような事実があれば厳重な指導を行い、また、報告されたいということを文書で通知しているところでございます。
#209
○海江田鶴造君 移植学会の中であのような無責任な報道をこれ以上許してはいかぬという発言が極めて強いと私は承知しております。私はやはりこういうものについては本当にまじめな医者、一生懸命苦しんでおる患者、その家族に対してやはり守るべき報道のマスコミ倫理というものがあるはずだと思う。私は、かつてここでもずっと一貫してマスコミの行き過ぎ、特に人権侵害についていつもただしてまいったわけでございますが、人権保護の立場に立たれる法務大臣として、今のお聞きの問題についてどのようにお考えかをお聞かせを願いたい。
 なお、これは言っておきますが、既にこの問題については我が自民党を初め、各党の中にも、この際アメリカが昨年十月にこの生体腎についての禁止の法規制を行っておりますので、我が日本で
もこれを行うべきじゃないかということでかなりの動きがあるわけでございます。少なくとも偽れる報道に基づいて国会がそういうことで動かされてはかなわぬ、私はそう思いますので、この点について法務大臣の御意見を賜りたいと思います。
#210
○国務大臣(嶋崎均君) 御指摘の問題については、今厚生省からもお話がありましたようなことでございます。基本的には医療のあり方の問題というように判断をされるわけでございますが、やっぱりこれらの問題を考える場合には、国民の道義的な感情というんですか、そういうものを十分考慮して行わなければならない問題じゃないか。特に移植用の腎臓の入手問題に当たっていろいろな報道がされているというふうに聞いておりますけれども、国民の健全な道義的感情というものを十分判断して行わなければならぬことであると思うし、また現在までのところ、そういう極端な状態になっているという話を私自身は聞いておりませんので、よくその辺の事情を調査して判断をしてみたいと思います。
#211
○海江田鶴造君 それでは、ひとつ警察庁も厚生省も実態調査を急いでもらって、できるだけ早く事実を公表して、いたずらなる患者その他の不安を除去するように御努力を願いたいことを要望しまして、もうきょうは結構でございます。
 次に、ちょっと問題が細かくなりますけれども、刑事局長、昨年七月の参議院のこの法務委員会で、私がロッキード問題に関連して質問したことについての刑事局長の御答弁についてでありますけれども、私が質問の中で、検事総長、検事正が刑事免責の決定をして、それを宣明して、それを最高裁がその宣明を確認するという形で、そしてそれをアメリカのロサンゼルスの地方裁判所に送った。この検事正、検事総長の免責の宣明書の中に、今後後に続く者、後継者をもこの決定は拘束するのだというのがありましたけれども、その前でしたか、地裁の判決の中で、この法の拘束力はないのだというような判決がありましたね。
 そういう点で、私がそういう質問をしましたら、刑事局長の御答弁の中で、検事総長が決定をし、そういう宣明をし、さらに最高裁がさらにそれの確認の宣明をして、それが国家意思としてアメリカの地方裁判所に伝達された以上は、外交チャンネルを通じてなされた以上は、これはやはり国際信義上、国際的な義務としてこの国家意思は守られなくてはならない、したがってこれは有効だと、こういうような御答弁を、これはたしか検察官の法廷での釈明という形でされたと思うんですが、しておられます。どうもこれは私ちょっと本末転倒ではないか。少なくも国家意思としてアメリカの地方裁判所に伝達する場合には、国内で法的に正しいと思うことを、しっかりしたものを伝達すべきであって、ただそれを詰めないで伝達して、伝達したから、外交チャンネルを通じてやったから国家意思として国際上の国際的な義務になるのだという考え方はちょっとおかしいのではないかと、こう思うんですが、いかがでしょうか。
#212
○政府委員(筧榮一君) 御指摘の点、申し上げるまでもございませんが、現在東京高裁あるいは最高裁で審理中の具体的事件にかかわることでございますし、今御指摘の嘱託証人尋問調書をめぐる法的評価というのは今後の法廷での重要な論争の論点の一つになることが必至と見られておるわけでございます。そういう状況にございますので、私どもの考えをここで申し述べるということは差し控えさしていただきたいと思います。その意味で、前回海江田委員のお尋ねに対しましても、従来の公判において検察官側が主張している点はこういう理由でございますという形で御説明をいたしたと思います。繰り返せばまた同じようなことにならざるを得ないかと思います。
 その検事総長あるいは検事正の確約というものが国内法上問題がないかを確めてからやるべきだと。その点については、検察庁あるいは裁判所としては十分その点は確認した上で、国内法上も有効であり適法であるという前提のもとに、これを地裁の裁判官を通じまして、外務省を通じてアメリカの尋問する裁判所へ伝達したわけでございます。そういう意味で、国家意思として向こうの裁判所に伝達されたということから、今後将来にわたって遵守しなければならない義務を負うに至り、したがって、これを取り消したりすることは許されない。そういうような意味で右不起訴の確約が法的確定力を有して、検事総長及び東京地検検事正の後継者が拘束されるのだというふうに申し上げた次第でございます。
#213
○海江田鶴造君 この問題は確かに今裁判で争っている問題でありますから、これ以上の質問は避けたいと思います。
 最後に、先般の当委員会でも同僚委員からの質問がありましたが、今自民党の中で、国家機密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案、いわゆるスパイ防止法案というものを制定すべきではないかという動きがございます。これについては自民党内でもまだ一部には反対意見もあり、またその国家機密をどの程度までやるのか、これについてもまだ若干話し合いがなされておるというところでございます。ただ、これは既に刑法改正案の立案に当たりましても、法制審議会でかなり詳細に論ぜられてもおりまして、結局私はこれは刑法に入れるべきじゃなくて特別法で論ずべき問題というふうに結論が出たと承知をしております。この前、同僚委員のお話の中にもありまして、かなりな人の中にやっぱりそういうものができると暗い気分になる、また収集、探知ということで大変嫌な世の中になるのじゃないかというような意見も確かにございます。
 ただ、私も今現在の日本であるのは、日本に駐留する米軍の機密保護と、それからMSAですね。装備ですかの機密保護と、あとは国家公務員法、地方公務員法で罰則がある。職務上知り得た秘密を漏らしてはならぬという、その程度の法的な規制があるだけでございます。私も、終戦直後刑法からスパイ罪が全部削除されて、それからずっときておるわけですが、何かやはり世界第二のGNPを誇るこれだけの豊かな国になってきまして、ある程度防衛力というものもできてきた。私も外務省はおったことがありますけれども、やはり外交機密などというものもあって、これを一生懸命各国が他国の外交機密等を収集しておるのも事実です。そういう場合に、国家公務員法程度でいいのかということになってくると、ちょっと私も長い目で見て、やはりこれではちょっと不十分なのではないかなという気がします。かといって、一挙に一〇〇%立派な法律をつくろうと思ったらこれもやっぱり行き過ぎだろうと思いまして、やはりとりあえず我が国の防衛機密あるいは外交機密の中でも防衛、安全に関係する機密ぐらいはあるいは何らか守る法律が必要なのではないか、そのように長い目で見て考える。それから、これからいずれはそうなってくるのじゃなかろうかなと、こういう気がするわけです。
 これからもずっと日本がそういう機密防止法というものをつくらないでやっていけるかというと、なかなか厳しい世の中で、厳しい国際社会の中でできない。もちろん、そのほかにいわゆる産業スパイとかいうものもありますけれども、その段階はまだずっと後であろうけれども、現段階ではやはり何らかそういうスパイ防止法というか、機密防止法というのか、そういうものが必要ではないかなと、これはまじめに実は考えておるわけで、当法務委員会でもやはりこの問題も一回は取り上げておった方がいいんじゃないかと、こう思っておりまして、この点について法務大臣の差し支えない範囲内での御所見を賜りたい。
 これをもって私の質問を終わりたいと思います。
#214
○国務大臣(嶋崎均君) 先ほど来、海江田委員の方から日本が非常に情報がとりやすい国だというようなことが言われており、またそういうことに絡んで国家の安全保障という問題を考えながらスパイ防止法といったような法律を決めたらどうかというような御意見が開陳されたわけでございますが、あるいはそういうことが必要なんではないかというようなお考えが表明されたわけでござい
ます。
 御承知のように今刑事特別法とかあるいは秘密保護法などの特別法がもちろんありますけれども、そのほかは国家公務員法とかいうような公務員法上のいろいろな規定に基づくところの秘密漏えいを処罰する法律があるというだけの存在になっておる。それではなかなか不十分じゃないかというような御意見だろうというふうに思っておるわけでございます。しかし、スパイ防止法の問題については最近にわかに問題になったのじゃなしに相当長い経歴と議論が積み重ねられて今日まで来ておるというような実態があるわけでございまして、今自民党の中でもいろいろな論議が行われておるということ、そういうこと自体は私は承知しておりますけれども、現在の段階でこれをいろいろな意味でとやかく議論をするような段階ではないような感じを法務大臣としては持っておるわけでございます。
 ただ、一般論として申し上げるならば、この種の立法については報道を含めていろいろ表現の自由との関係の問題といったような問題があるわけでございますから、やはり十分国民の皆さん方の共感を得て物を考えていかなければならない、そういう問題じゃないかというふうに私は思っておるわけでございまして、そういう意味で党の中でもいろいろな意味で慎重な検討が行われるということを期待しておるというのが実態でございます。
#215
○委員長(大川清幸君) 以上をもちまして法務省所管に関する質疑は終了いたしました。
 次回は明三日水曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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