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1984/04/11 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第7号
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1984/04/11 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第7号

#1
第102回国会 法務委員会 第7号
昭和六十年四月十一日(木曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月四日
    辞任         補欠選任
     竹山  裕君     河本嘉久蔵君
     柳川 覺治君     石本  茂君
     秋山 長造君     寺田 熊雄君
 四月十一日
    辞任         補欠選任
     園田 清充君     出口 廣光君
     徳永 正利君     吉川 芳男君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         大川 清幸君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                土屋 義彦君
                出口 廣光君
                名尾 良孝君
                吉川 芳男君
                小山 一平君
                橋本  敦君
                柳澤 錬造君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  嶋崎  均君
   政府委員
       法務大臣官房長  岡村 泰孝君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  筧  榮一君
       法務省矯正局長  石山  陽君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小野 幹雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る四日、秋山長造君、柳川覺治君及び竹山裕君が委員を辞任され、その補欠として寺田熊雄君、石本茂君及び河本嘉久蔵君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(大川清幸君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(大川清幸君) 異議ないと認めます。
 それでは、理事に寺田熊雄君を指名いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(大川清幸君) 証人等の被害についての給付に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は、去る三月二十八日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○寺田熊雄君 前回の委員会で法務大臣からこの法律案の提案理由の説明がございました。その説明書の中に「いわゆる過激派裁判等を契機として、裁判所又は裁判長によって被告人に付された国選弁護人の弁護方針と被告人等の裁判への対応方針の相違等から国選弁護人がその身体に害を加えられ」るような事態が発生していることにかんがみという御説明があるわけでありますが、私どもも弁護士の一人としまして、依頼者と事案の見方であるとか、あるいは特に防御の方針について意見が異なる場合に非常に苦慮することが多うございます。その場合、私選弁護、民事でもこれは自分で依頼者との間で契約を結んだという場合には、もうどんどん辞任してしまうということでこの問題の解消を図るということが可能でありますけれども、国選弁護人の場合は裁判所から特に命ぜられてその地位についておるわけであります。したがって、直ちに辞任をなしがたいという事情があるわけであります。
 その場合に、自分は辞任したいと思うときに、その辞任の理由が正当なものであるかどうか、辞任が裁判所によって認められるかどうかという点で若干迷う場合があるわけでありますが、また事実裁判所が解任してくれないという場合も判例の中には見受けられるわけであります。いかなる場合が辞任を正当とする事由となるのか。これ、法務省の刑事局長、最高裁判所の刑事局長、お二方ともいらっしゃるわけですから、これについての御見解をお伺いしたいと思います。
#7
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 国選弁護人が選任されまして、被告人との間で弁護方針あるいは法廷の活動等をめぐっていろいろ対立するというような事例、これは特に昭和四十年代のいわゆる学生事件というようなものがあったときに非常に先鋭化した問題であろうかと思いますが、結局はそれを認めるか認めないかということは個々具体的なその裁判所がその実情に応じて決することでございますが、今までに裁判所の判例などにあらわれましたところを見ますと、例えば暴行脅迫というような、弁護人に対して差し迫った危害を加える、そういうおそれがあるというような場合には解任するのもやむを得ないというように認めている場合が多いように思われます。
 ただ、そこまでいかないで、単に弁護方針が対立したというようなこと、要するに自分たちは弁護人に法廷には出てほしくないというようなことを強く要求する、弁護人としては弁護人の職責上法廷には出ざるを得ない、しかし法廷に出ることはそれは審理の進行に協力することになるので、それは困るのだというような強い要求を受けたというようなことで、非常に弁護人の立場上困ったという事例があるようでございますが、そういう事例につきましては弁護人の立場というものはよく理解できるけれども、しかしそれはやはり弁護人の職責にかんがみて、やっぱり国選弁護人としての職責を尽くしていただくべきであろうというようなことで解任をしなかったという例が多いように見ております。
#8
○政府委員(筧榮一君) ただいま最高裁からお答えのあったとおりに考えております。単に意見の対立があった、あるいは方針が違うという程度で直ちに正当な事由で辞任ということになります
と、やはり弁護人の職責ということから考えますと、ちょっと早いというと変ですけれども、まだ足りないのではないかというふうに私どもも考えております。
#9
○寺田熊雄君 今、両局長のおっしゃったのが大体大部分の判例の指し示しておるところのように思いますが、私もその判例を読みまして、ちょっと弁護人の実務経験とこれ非常に距離があるのではないだろうかというふうに考えざるを得ないんです。
 というのは、被告人と弁護人とが意見を異にしまして、被告人は無罪だと言う、弁護人は有罪だと記録を読みまして考えましても、それはやはり弁護人としては依頼者の利益を守るというそのことによって一国の刑事司法に貢献するのであって、何でもかんでも自己の正義感を貫いて、被告人と違ったことでも構わない、言ってしまうんだと、被告人が無罪と言うのに弁護人が有罪であるというようなことを言うことは、やはり弁護士として弁護人のモラルに反するのではないだろうか。したがって、被告人と弁護人との間の防御方針に関する意見が対立した場合には当然辞任すべきであるし、裁判所もそれを容認して解任すべきであると私は考えておる。必ずしも被告人から重大な侮辱を受けるとか暴行を受けるとか、あるいは脅迫を加えられるとか、そういうようなことだけに限局するのは不適当であると私は考えるんですね。
 これは最高裁判所の五十四年七月二十四日の判決に「被告人が国選弁護人を通じて正当な防御活動を行う意思がないことを自らの行動によって表明したものと評価すべき」ときは「裁判所が国選弁護人の辞意を容れてこれを解任してもやむを得ない。」という判例がありますね。それから、「国選弁護人は私選弁護人のように被告人との信頼関係を地位存続の本質的要素とするものではなく、裁判所によって選任され、法律専門家としての立場から被告人の正当な利益を擁護することにより刑事司法に協力するという公的性格を持つものであるから被告人右が弁護人の弁護を受けることを拒否し、」弁護人も「辞任の意向を表明したからといって直ちに右弁護人を解任しなければならないものではない。」という、これは東京高裁の五十四年一月二十四日の判決もある。それからまた「弁護人は、被告人の正当な利益の擁護者であって、被告人の主観的利益の単なる代弁者ではないのであるから、被告人の主張、要求するところが不当なもので、それに固執することが被告人に不利益な結果をもたらすと考えられ、その旨被告人を説得しても被告人がこれを聞き入れないような場合には、被告人の意思に拘束されず、被告人の正当な利益を擁護するため独自の弁護活動を行うことが要求され」るという、これは大阪高裁の五十六年十二月十五日の判決がある。
 つまり高裁段階では、必ずしも被告人との信頼関係が地位存続の本質的要素とは言えないとか、あるいは被告人の正当な理益の擁護者であって、被告人の主観的利益の単なる代弁者ではないというようなことで辞任を正当としないという見方と、それからまた最高裁判所のように、国選弁護人を通じて正当な防御活動を行う意思がないことをみずからの行動によって表明したものと評価すべきときはその辞意を入れて解任してもやむを得ないという、その積極、消極と見られる二つの流れがあるように思うんですね。私は、やはり被告人と弁護人とが意見が対立する、事件の見方について、とりわけ防御の方針について意見が対立したときは、当然辞任の正当な理由があると認めて解任すべきであると考えるんですが、この点いかがでしょうか。
#10
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 弁護人の立場としてはいろいろお苦しいことがおありだということは私どもも十分理解できるわけでございます。どういう場合にどうしなければいけないかということは、まさに先ほども仰せられましたように、ある意味では弁護士倫理の問題でもあろうかと思いますので、私どもとやかく申し上げるわけにはいきませんが、ただ、裁判所の側から見ますと、やはりある意味では国選弁護というのは専門的な知識を持ったそういう方をつけて被告人の立場を守ってあげるということにあるわけでございまして、やはりそれは被告人の余りわがままというようなことはいかがなものであるのか。
 これは私選弁護人と違いまして国選弁護というのは多くの弁護士さんの中から要するにそういう資格のある方についていただくという、そういうことで被告人の権利擁護ということを図ろうという制度でございますので、個々具体的に一々被告人が弁護人と弁護方針がどうであるとか、あるいは信頼関係がどうであるとかいうようなことになりますと、被告人の気の緩む弁護人に当たるまではみんな解任しなければいかぬというようなことにもなりかねないわけでございまして、果たしてそういうようなことが許されるのだろうか。やはり国選という法の保障している弁護制度というものは、要するに資格のある弁護人の専門的な立場から、あるいは経験に基づいたそういう権利擁護を受けられるのだということで十分ではないか、それ以上のことはやはり被告人としてはわがままではなかろうか。しかし弁護人が非常に危害を受けるとか、そういうようなことになりますと、これは裁判所としても弁護人にお気の毒でとてもそういうことは看過できない、弁護人が辞任されたいというのもやむを得ないというようなことで解任を認めている、こういうことではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
#11
○寺田熊雄君 いかに弁護人が辞任をしたいと思って辞任届を出したとしても、国選弁護人の場合は裁判所が解任してくれるまではその国選弁護人たる地位というものは消滅しませんので、大変そこのところが国選弁護人にとっては苦しいわけであります。なお、いろいろこの方面の著書を見てみましても、弁護士である人の意見と裁判官の意見とはやっぱり多少違うようですね、著書を読んでみましても。私は、被告人との意見の相違が防御権の行使に関するものである場合、そして到底円満な弁護権の行使が不可能と考えられる場合は、これは裁判所が解任を認めるべきであると考えておるのでありますが、これは意見の相違になりますのでこの程度にしておきます。
 それから、この法律の適用の問題ですけれども、例えば証人なり参考人は、その証言が自己に非常に不利益であったということで憤慨をした被告人が証人の証言終了後にこの証人を襲って危害を加えたという場合でも、これはこの法律の適用があることはこれはもう言うまでもありません。ところが国選弁護人の場合は、ずっと弁護活動を続けてきた、ところが中途において被告人と意見が異なる、信頼関係が断絶してしまった、そこで辞任を申し出る、解任されるという、解任されたら国選弁護人でなくなりますね。地位が失われる。その後に危害を加えられた場合はどうなるのか。つまり国選弁護人として職務を行った、その期間における行為が自己の有罪の一つのきっかけとなったというふうに恨みを抱いた被告人あるいは被告人の身内の者が、その国選弁護人の解任された後に国選弁護人を襲って危害を加えた場合は、この法律の適用があるのかどうかという問題がありますが、これはどうでしょうか。
#12
○政府委員(筧榮一君) 結論から申し上げますと適用があるということになろうかと思います。その理由といたしましては、この法案の第三条に、今寺田委員御指摘のとおり「国選弁護人がその職務を行い、若しくは行おうとしたことにより、」国選弁護人が「他人からその身体又は生命に害を加えられたとき」ということでございますので、国選弁護人であった当時、国選弁護人としての職務を行いまして、それによって、そのことを原因として、その後国選弁護人を解任された後に被害を受けたという場合でございますから、この三条の規定によりまして、その間に因果関係が認められる限りにおいては、その後何年たった後でもやはり本法の適用があるというふうに考えております。
#13
○寺田熊雄君 なるほどね。これは第三条の解釈として国選弁護人が解任された後の被害であってもやはり適用がある。これは非常に結果的には結構なことで、もしそういう事態があった場合には刑事局長の答弁が当然これからの一つの基準になるでしょうから、これは大変結構だと思います。
 それから、この法律の中に国選弁護人の被害を受けた者を挿入すべきかどうか、あるいは単独の立法でこれを規定すべきかどうかというような点では随分前から議論がありましたね。これたしかこの法律の給付金額の引き上げを行ったのが昭和五十七年でしたか。そのときに既にもう日弁連、最高裁、法務省の間で三者協議が行われておりまして、そのときにこの国選弁護人の被害の問題をどうすべきかということが三者協議の議題になっておったように思うんですけれども、それが六十年まで立法的な方法についての解決が得られないで、今回これがこの法案の中に挿入されたというのはどういう事情に基づくのか。それをちょっと説明していただきたいと思うんです。
#14
○政府委員(筧榮一君) この今回の改正で国選弁護人に対する被害補償を加えることになったわけでございますが、そのもとはと申しますと、昭和五十三、四年ごろ過激派の裁判で弁護人と被告人との争いが非常に生じまして、その関係で国選弁護人の選任が非常に難しくなったというような事情がございます。
 そういうようなことで、御指摘の三者協議会で刑事裁判のあり方という点について協議を重ねておったわけでございますが、昭和五十四年の三月三十日の三者協議会の協議の結果によりまして、三者それぞれこういうことを今後行うということが取り決められて、その一つに国選弁護人の被害補償についての立法を法務省で検討し、その成立に努力するということが定められたといいますか、お互いの間で取り決められたということでございます。その後、主として日弁連と私どもの間、もちろん裁判所も加えました三者の間でこの立法について協議を進めてまいったわけでございます。
 その間、やはり日弁連の方の希望としては御指摘の単独立法が望ましい、その単独立法が望ましいという理由として、やはり補償の内容につきまして補償の範囲を広げる、あるいは金額もこの証人被害給付法よりも高くするというようなことが理由になりますけれども、単独立法をお願いしたいという意向は強く出されておりました。その五十四年三月以降、その辺を中心に話し合いをし、私どもの方でも鋭意検討を続けておったわけであります。
 ただ、今の日弁連の希望については、その御希望はごもっともなことかと思いますけれども、これをいざ立法化する場合にいろいろな難点がございます。ほかの補償関係の法律との均衡とか、あるいは被害補償についての範囲とかというようなことで、結局結論としましてはこの証人被害給付法の中へ国選弁護人を入れる改正を行うということで日弁連の方でも納得をされまして、その結果その後立法化の作業を行った、そして今日にいたったという経緯でございます。
    ─────────────
#15
○委員長(大川清幸君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、徳永正利君及び園田清充君が委員を辞任され、その補欠として吉川芳男君及び出口廣光君が選任されました。
    ─────────────
#16
○寺田熊雄君 今の御説明で大体のところがわかりましたが、補償金額をもっと一般の証人等と比べて国選弁護人の場合は引き上げるというのはよくわかりますが、補償の範囲を広げてほしいという要求があったというのは、それはどういうことでしょうか。
#17
○政府委員(筧榮一君) 日弁連の方のお立場としてはできるだけ金額も高く範囲も広くという御希望になるわけでございますが、その一、二を申し上げますと、対象の被害者、この証人被害給付法ではやはりその当該証人なら証人とその近親者ということになっております。これに対しまして日弁連側の方の当初の御希望は、そのほかにやはり弁護士事務所の事務員、害を受ける場合事務員が害を受けることもある、あるいは同居の弁護士、弁護士事務所で複数以上の弁護士さんがやっておられる場合、その同僚弁護士が害を受けることもあり得るというようなことで、その人的範囲の拡大という点、それからさらに被害の種類と申しますか、証人被害給付法によりますと生命、身体に害を受けた場合に限られております。これに対しまして日弁連の方では身体、生命の被害に限らずに物的損害、物を壊されたとか焼かれたとか、そういうような物的損害、さらには精神的な損害というようなものも含むべきである、あるいは含む方が望ましいというような御意見があったわけでございます。
#18
○寺田熊雄君 これは昭和五十七年四月十五日の法務委員会会議録第八号の中に、これは公明党の小平議員がこの問題について随分詳しく質問なさって当時の前田刑事局長が非常に詳しい答弁をしておるわけです。今刑事局長が言われたように当時の刑事局長も「立法技術といたしましていろいろな方法が考えられると思うわけでございまして、独立の法律をつくるということもございましょうし、また国家公務員災害補償法のような、それを準用するようなことも考えられるでございましょうし、」またこの証人等の被害についての給付に関する法律の中に盛り込むことも「考えられるわけでございます。その点につきまして一長一短実はございまして、日弁連の御意向によってもなかなかうまくはまりにくい点が実はございまして、」云々という答弁をしておられるわけであります。
 これは独立の立法によってはなぜできなかったのだろうか。私も実はこれは証人と国選弁護人とを同一のレベルにおいて考えるということは必ずしも実態にそぐわないような感じもするわけです。独立の法律による方が立法技術としてもまさると私は考えるんですが、これができなかったのはどういうわけなんでしょうか。
#19
○政府委員(筧榮一君) その点もこの三者協議あるいは日弁連との交渉の過程でいろいろ議論がなされたわけでございます。先生御指摘のように証人等とそれから国選弁護人、よく弁護人というのは訴訟法上の地位も違うし社会的地位も違うというようないろいろなことが論議されたわけでございますけれども、やはり国選弁護人あるいは証人という者につきまして刑事司法に対する協力者であるという点では同じ共通しておるのではないかということで、それを区別する理由もちょっと見当たらないのではないか。また、ただ収入の点とかその他で証人とは違うという議論がなされたわけでございますけれども、証人といっても大会社の社長からそうでない収入の少ない人まで千差万別あるわけでございますし、それと比べれば弁護士さんの方はそれは高いということは言えようかと思いますけれども、それを区別して全然別の法律で別の体系にするというほどの差が果たしてあるのだろうかというようなこともございまして、やはり刑事司法に協力した者に対し、その被害を補償することによって刑事司法の円滑なる運営を図りたいという趣旨は共通であるわけでございますから、その他の例えば収入の差というようなことは、現実にその被害が発生した場合の運用の中で当然考慮されるべきことはもう言うまでもないと思いますけれども、法律の中でそれを明確に二本立てとし区別するまでの必要はないのではないかというようなことから、結論としてこのような立法に落ちついたと承知しております。
#20
○寺田熊雄君 それから、今局長の御説明の中にありましたが、日弁連としては弁護士が受けるであろう物的な被害についても補償なり給付を考えるべきじゃないかという意見だったという点がありましたね。私も考えるんですが、例えば非常に過激な連中が国選弁護人に危害を加えるということも、もちろん当時は考えられたわけですが、同時に国選弁護人の住んでおる家屋に放火をするというようなこともその当時考えられたと思うんですが、したがって、この中にやはりそういう手段による被害についての補償なり給付ということも考えるべきではなかったのだろうかと思います。それができないというのでしたら、それは証人等についてそういう規定がないことのゆえに国選弁護人の場合も横並びにさせられたわけで、やはり単独の立法にしたならば、そういう被害についての規定もなし得たのではなかろうかと考えるわけですね。これはどう考えられますか。
#21
○政府委員(筧榮一君) 証人につきましても、あるいは国選弁護人につきましても同じことが言えようかと思いますが、その損害というものは物的損害あるいは精神的損害まで広い意味では損害になる。それをどの範囲で補償するかということは、一つは政策的な問題であろうかと思いますが、やはり適正な刑罰権を実現するという刑事政策的な見地から、被害の補償を図る場合にはその被害のうち重大な被害である身体または生命に害を加えられた場合に限って一定額での給付を行うというふうに証人等被害でもされたわけでございますし、あるいはもう一点はほかの補償等の制度がたくさんあるわけでございますが、その制度との均衡を見ましても、直ちにそこまでいく、補償するということは均衡を失する面があるのではないか。さればといって国選弁護人に関する部分だけを特別立法でした場合に、その部分だけが、その部分といいますか、国選弁護人に関することだけを他の補償関係の規定、制度と比べて格段広く補償するというだけの実質的な必要性というものが説明できるかどうか、やはり同じことになるのではないかということで、身体または生命に対する被害に限定したというふうに承知しております。
#22
○寺田熊雄君 一国の刑事司法に対する協力者が、その協力をしたことによって乱暴な者からいろいろな被害を受ける、そのときは主として暴行であり重大なる悔辱であったわけですね。したがって、それをとらえて被害を補償するという結論になったと思うんですが、しかし今お話ししましたように、十分他の物的なものに対する被害ということも考えられる。暴力団などは御承知のようにやたらにお店に乱入してお店の物を壊すなんということも今までに幾多実例があったわけであります。最近はできるだけ国家は余りいろいろ国民の困窮に対して面倒は見ない、小さな政府の方がいいんだというような財界の哲学が支配をしておりますので、なかなかそういう被害補償というものを制度化することは困難であると思いますけれども、本質的にはそれが望ましいと思うんですよ。大臣はどんなふうにお考えになりますか。
#23
○国務大臣(嶋崎均君) 今回の規定の改正、今まで御説明申し上げたようなことでございまして、やはり心理的なところからあるいは物的な被害というような分野の問題にまで補償の対象を広げるということは、一つはよそのいろいろな制度とのバランス問題というのがあるんだろうと思います。それからもう一つは、世上一般のいろいろな仕事をやっていきましても、やっぱり物的な被害に関連する場合と身体のそういう問題との間にはおのずから対処の仕方にも方法的な違いもあるように思うのでございます。そんな意味から、特にそれらの問題を取り上げて整理をするということは、実際の問題としてなかなか難しいというようなことで整理をせざるを得ないのだろうというぐあいに判断をしておるわけでございます。
#24
○寺田熊雄君 確かに他の制度との比較均衡の問題もありますし、何よりも大蔵省の存在があって、これは刑事局長も余り表面おっしゃらなかったが、これが実際は一番の難関で、なかなか被害の範囲といいますか給付の範囲を広げるということは事実上困難であるということは私もよく知っているんですが、ただ、できるだけ合理的なものであってほしいと私は考えて、そういう提案をしてみたわけであります。
 それから、この法律の、もう既に法律化している部分の第四条の一号であるとか、五条の四号、五号であるとか、これは加害者と被害者が親族関係にあるときは給付を行わないと規定があります。もっとも四条の方は行わない「ことができる。」というのでありますから、法務大臣の裁量の範囲にそれが入っておるわけでありますが、五条の四号、五号の方はちょっとこれは裁量の余地のないような規定になっておるわけであります。
 しかし考えてみると、これはいつの時代でもそうなんでしょうけれども、親子であるとか兄弟であるとか、そういう親族関係があってもなおかつ傷つけ合う事件が頻発するわけで、ことに夫婦関係などは、これはまだ離婚しない間でも厳しい敵対関係にある男女というようなものも現実にあるわけでありますからして、一概に親族関係にあった場合には給付を行わないという考え方には疑問が生ぜざるを得ないわけであります。それはケース・バイ・ケースで、刑事局長が補佐をし法務大臣が決定するということでいいのじゃないかと考えておるんです。四条の方はそういう規定になっているように思うのだけれども、五条の四号、五号の方はちょっと裁量の余地がないように規定の上では見えますが、これは刑事局長、いかがですか。
#25
○政府委員(筧榮一君) 御指摘のように、四条につきましては裁量でその「全部又は一部をしないことができる。」となっており、五条の方はそういう裁量の余地かないということになっております。五条についてだけ申し上げますと、その給付を受けるべき遺族が加害者と親族関係にあるような場合、そこまでも国が補償を行うということは健全な社会通念あるいは国民一般の法的感情からして納得しがたい面があるという理由で制限を加えておるわけでございます。しかし、その趣旨は四条についても同様のことが言えるわけでございます。五条の方が裁量がないという点については、将来の問題として具体的な案件の実態に応じてさらに検討をしたいというふうに考えております。
#26
○寺田熊雄君 これは大臣、あなたの最高の補佐役である、まあ最高かどうか知らぬが、補佐役である刑事局長がああいうふうにおっしゃったんですが、確かに四条は裁量になって五条は裁量の余地がないというのはちょっとおかしいのですね。また事実問題として、こういうふうに給付を行わないことが現実の事態に合わないということが私は必ずあり得ると思うんです。しかし、これも刑事局長が言われたように、大臣も念頭に置いてくださってひとつ考えていただきたいと思いますが。
#27
○国務大臣(嶋崎均君) ただいまの刑事局長の答弁のように考えていきたいというふうに思っておるわけでございますが、過去のいろいろな事例等の集積の中からいろいろな判断をしてみまして、今のようなところで現段階は整理できるのじゃないかというようなことで整理したものであると考えておるわけです。
#28
○寺田熊雄君 そういう実例が今までになかったのかもしれませんけれども、十分あり得ますから、これは考えてください。
 それで、国選弁護については給付をした実例はないようですね。しかし、あの当時の我々の常識では国選弁護人が現実に被害を受けたように聞いておったんですが、この点はどうでしょう。刑事局長の方で把握しておられますか。
#29
○政府委員(筧榮一君) 国選弁護人がその職務に関する関係で生命、身体に被害を受けたという事例につきましては、私どもが承知しておりますのは一件でございまして、昭和五十三年ごろの強盗殺人等被告人の国選弁護人が被告人の支援団体等七、八名から国選弁護人を早くやめろというようなことを言われ、暴行を受けて手にけがをされたという事案があったと聞いております。ただ、このときはどれぐらいのけがであったか、それ以上当該被害者の方が被害を申告されてもおりませんので、それ以外の詳細はわかりかねるわけでございます。そのほかの事件についてもあるかもしれませんが、やはりこういう法律もまだないわけでございますから、弁護人の方で特にこれを表ざたにするとかということがあるいはなかったせいかもしれませんが、この一件だけしか承知しておらないところでございます。
#30
○寺田熊雄君 国選弁護人については実例が今一件だったようでありますが、ただ給付請求がないので給付をしなかったということのようであります。
 証人の場合は、これは五十九年版の犯罪白書を見ますと、その七十一ページに「この法律は、昭和三十三年から施行されているが、その給付状況を見ると、三十六年に二件、三十九年に一件、四十四年に一件、五十八年に一件となっている。五十八年の事例は、公判廷で証言中の証人が被告人によって顔面を殴打されて全治六日間の挫傷を負わされたもので、療養給付金五千五十円が支給されている。」、こういう記述があるわけでありますが、これ以外にはないわけですか。
#31
○政府委員(筧榮一君) 今御指摘の五件でございます。
#32
○寺田熊雄君 それから、どうも我々のいつもの癖で、一体これは諸外国ではどういうふうに扱っているんだろうか。今いろいろこの法案の批判であるとか、それから法案のある意味で言えば欠陥であるとかいうことを若干指摘してみたんですが、諸外国ではどうなっているだろうかと我々の癖で考えるわけでありますが、これはどうでしょうか。
#33
○政府委員(筧榮一君) この種の法律について諸外国で同種のものがあるということは承知しておりません。したがいまして、諸外国で同種のものがあるかと言われれば、私どもの知る限りはないというふうにお答えせざるを得ないかと思います。
#34
○寺田熊雄君 私は今ちょっと聞きそびれたんだが、諸外国には同種の法律はないとおっしゃったんですか。その諸外国というのは、大体あなたのお調べになったのはやっぱり民主主義国家なんでしょうね。
#35
○政府委員(筧榮一君) 可能な限り世界各国と申し上げたいところでございますが、通常は西欧諸国、アメリカも含めますが、あるいはアジアの主な国ぐらいが、この法律に限らず一般にその国の法律制度について調査をいたしておるところでございます。
#36
○寺田熊雄君 諸外国にないとすると、日本の官僚は極めて優秀だ、またヒューマニズムの精神に富んでおるということにならざるを得ないわけで、ちょっと意外であったですね。
 それから、この法案の執行に関して毎年予算額を十万円というふうに計上していますね。これはもちろん不足がある場合は予備費によるというのでしょうが、何らか十万円計上というのは理由があるわけですか。
#37
○政府委員(筧榮一君) 十万円という金額はどうかわかりませんが、御指摘のように、項、法務本省、目が証人等被害給付金ということで、五十九年度予算でも十万円計上されております。
 先ほどお答え申し上げましたように、過去三十六年以来五件しか発生いたしておりませんので、しかしいつ発生するかわからないということで予算の目としては設けてあるわけですが、現実に被害が発生いたしました場合には、恐らく十万円で賄える場合は少ないのではないかと思いますが、その場合には特別の増額の予算措置が講ぜられてきておりますし、今後もそういうことになろうかと思います。一応そういう性質の予算で予算額として掲げる場合に十万円というのが割合多いのじゃないかという気がいたしております。
#38
○寺田熊雄君 それから、この法律ができましたときには、同時に証人威迫罪が刑法に挿入されたようでありますが、これは両者相伴って立法の世界に上ってきたわけでありますが、実際、証人に対するお礼参りというのか、お礼参りというのはいろいろあるんで必ずしも証人威迫罪の構成要件を充当するとは限らないし、また起訴されるとも限らないと思いますけれども、この被害件数をちょっと裁判所と法務省で御説明いただけますか。
#39
○政府委員(筧榮一君) 事件になったものについての統計でございますが、証人威迫罪につきましての過去五年間の検察庁で受理した件数、あるいは起訴した件数について御説明をいたしたいと思います。ちょっと受理と処理と違いますので、その年間に処理をした件数で申し上げますと、新受件数も大体それに似たようなことになるわけでございますが、五十四年に処理いたしましたのが三十三件、そのうち起訴したのが十九件でございます。それから五十五年が処理したのが五十六件で、うち三十一件が起訴、五十六年が六十三件処理いたしまして三十二件が起訴、それから五十七年は五十一件処理いたしておりますが、起訴は三十二件、五十八年が四十二件の処理で起訴が十八件ということになっております。
#40
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 裁判の関係で申し上げますと、これは証人威迫罪ということで終局した人員を申し上げます。これはそれぞれ年度申し上げますのは、その年に終局したということでございまして、私どもの方では受理の件数は把握しておりません。終局で申し上げますと、五十四年に証人威迫で終局した件数は十件、それから五十五年には二十件、五十六年には二十五件、五十七年には二十五件、五十八年には七件というふうになっております。
#41
○寺田熊雄君 これは先ほど刑事局長がおっしゃった新左翼のものがあるんでしょうか。それとも、そうでなくて大部分は暴力団関係者でしょうか。
#42
○政府委員(筧榮一君) この内訳についてはちょっと調べておりませんので正確には申し上げられませんが、やはり暴力団関係のものが多いかと思います。
#43
○寺田熊雄君 これは法案の規定の解釈についてちょっと細かいことをお尋ねするんだけれども、この法律の第一条の「出頭に関し」というのがありますね。この中にはもちろん自宅から法廷に行くまでの間にこうむった被害を含むと思いますが、刑訴法第百五十二条によって勾引されている場合の被害も当然含まれると思いますね。これはそのとおり解釈していいんでしょう。
#44
○政府委員(筧榮一君) 「出頭に関し」でございますが、「供述の目的で出頭し、若しくは出頭しようとしたことにより」という第三条とも同じ意味であろうかと思います。証人が証言のために裁判所へ出かける、自宅から出かけている途中で害を受けたという場合は当然これに含まれようかと思います。ただ、勾引されている場合につきましては、この法律が私人または参考人の自発的な供述及び出頭によりまして刑事司法への協力を確保するということを目的といたしておりますので、その点から勾引された場合はこの出頭には当たらないのではないかというふうに考えております。
#45
○寺田熊雄君 これは最高裁の刑事局長、今法務省の刑事局長が言われた任意に家から裁判所に証言のために向かう場合は当然この給付の対象になるが出頭しなかったために勾引されていくときには含まれないと思うという、そういう解釈を言われましたね。これはあなたとしてはどういうふうにお考えになりますか。
#46
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 法解釈の問題でございますので、私どもとしてはちょっと意見は差し控えさしていただきたいと思います。
#47
○寺田熊雄君 それでは、証人として喚問せられて、これに応ずべく準備はしておったけれどもまだ玄関を出ない、家にあった場合に、その証人としての出頭を阻もうとした被告人、つまりその証言が自己に不利になるであろうと考えた被告人であるとか被告人の身内であるとか、そういう者が襲撃をした、それで負傷した場合、これは裁判所までの道筋にあった者とは違ってまだ家の中にある、しかし出頭の意思はあったという場合でありますが、これはどうですか。含まれますか。
#48
○政府委員(筧榮一君) 第三条には「出頭しようとした」という言葉があるわけでございます。したがいまして、証人あるいは参考人が自宅あるいは勤務先等で通常居住する場所にまだいる。その後に出頭して供述するという意思はあったといたしましても、その場合にやはり家あるいは勤務先から裁判所へ向けて出発するという時点からが本件の対象になる。結局この場合には当該証人自体の行為としてはまだ刑事司法に協力する行為があったとは言えないではないかということで、やはり家から行動を起こすということが必要ではなかろうかというふうに考えております。
#49
○寺田熊雄君 出頭の意思があったけれどもまだ家を出ないときに襲撃された場合には給付の対象にならない、家を一歩出たら給付の対象になると。両者同じものじゃないか、ちょっと均衡を失するというふうな感じを受けないでもないんですが、これは刑事局長は先ほど国選弁護人の解任後のものも給付の対象になると言って、なかなかいい解釈をなさったんだけれども、この場合はだめですか。どうですか。
#50
○政府委員(筧榮一君) なかなか難しい問題であろうかと思います。確かに委員御指摘のように家にいても外へ出ても大差ないのじゃないか、実質的には同じではないかという御指摘かと思いますが、そういたしますと、裁判所から証人の喚問状が来てまだ一週間後、十日後というような場合に、どの時点から害を受けた場合に本件になるか。すべて被害を補償すれば手厚いということは言えるかもしれませんが、そうすると、またさらに証人として喚問されることが予想されるというような状態ということで、いろいろ広がるといいますか、どこかで切るということになりますと、出頭しようとしたということを根拠にと申しますか、やはり当該証人の行為あるいは行動で、刑事司法への協力が行動であらわされた時点からだというふうに解釈すべきではないかというふうに考えているわけでございます。
#51
○寺田熊雄君 その外見にあらわれたということになると、家で老夫婦が背広に着かえた、妻も病身の夫をいたわって外出着に着かえたというような事実があれば、これは十分出頭の意思が具現したというふうに見られないでもないわけで、その点はちょっとやはりもう少し考えていただいた方がいいように思いますけれども、これは余り細かいことのようだけれども、なおよく考慮していただくように、これは要望だけしておきます。
 それから、証人として証言をする、それから帰宅する、帰宅後相当期間を経た後に襲撃を受けても、それが証言のゆえの事故であるという場合は、それがその証言によったということさえ認められれば期間の経過というものは問題にならぬのでしょうね。例えば被告人が刑務所で五年の刑を終えて襲撃したという場合を頭の中へ入れて考えているわけですが、これはどういうふうに考えられますか。
#52
○政府委員(筧榮一君) その証言によるということがございますれば、その後被害を受けるまでの期間の長短は問わないということで、先ほど御指摘の例えば有罪になって何年か服役をして出てきて、やはりあいつが変なことを言ったのでおれは刑務所へ何年も行ったと恨みを持って乗り込んでこれを刺すというような場合には、当然に本法の対象になるわけだと考えております。
#53
○寺田熊雄君 それから、第四条第三号に「虚偽の陳述」というのがありますね。これは客観的な事実に反するという場合をもって足るのか。虚偽であることを知って証言することを要するのか。つまり故意を必要とするのかどうかという問題がありますが、これはどういうふうに考えられますか。
#54
○政府委員(筧榮一君) この場合はやはり故意を要する、供述者自身が虚偽であることを知りながら虚偽の陳述をするという場合に限られるというふうに考えております。
#55
○寺田熊雄君 時間がもうないので、これは駆け足になるんですけれども、第九条で二年間は除斥期間になっていますね。ところが、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律、これはこの法律と肩を並べていく法律でありますが、その第九条は「この法律による給付を受ける権利は、二年間行わないときは、時効により消滅する。」という規定になっておる。一方は時効による、一方は除斥期間とした、これをあえて制度を異にした理由はどこにありますか。
#56
○政府委員(筧榮一君) 本法、証人被害給付法によります給付につきましては、受給権者からの請求に基づいて法務大臣が裁定するというふうにされておるわけでございます。そして、その請求を行う時期は二年間ということで除斥期間と解されておりますけれども、一般に国に対し処分を求める期間はその性質上除斥期間とされているのが通例であるようでございます。また、この法律で証人等の被害が発生いたしまして適用される事案、これは多くの場合は刑事事件として立件され、加害行為地を管轄する検察庁において処理されることとなるわけでございますから、特に時効ということにして中断等を認めなくても被害者の救済に遺漏を生ずることはないのではないか。むしろ事実関係の明瞭な間に速やかに裁定を行うべきであるという観点から時効としないで除斥期間にしたというふうに承知しております。
#57
○寺田熊雄君 しかし、これはやはり請求を行う場合にも、例えば被告人であるとか、あるいは被告人の親族であるとかいうことは請求者に分明でなくちゃいかぬでしょう。ところが分明でなくて請求ができないという場合には、この法律による給付請求はできないわけでしょう。だから、それが後でわかった場合、あるときはわかる場合もあり得るわけだから、ちょっとやっぱり時効にした方が親切であったんじゃないでしょうか。それはどう考えられますか。
#58
○政府委員(筧榮一君) 今申し上げましたように、そういう証人等の被害があるということは当然これは通常は捜査あるいは公判の過程で生ずることでございますし、そういう場合で、それも刑事事件にもすぐなるわけでございますから、やはり当該地の検察庁でわかる。わかれば、事件になれば当該被害者に対してこういう法律があって補償が受けられるということは知らされるわけでございますから、そういう意味で時効にしなくても除斥期間で被害者の救済に遺漏があるということではないというふうに考えております。
#59
○寺田熊雄君 時間ですから結構です。
#60
○飯田忠雄君 本日の質問の前提として事実関係を少しくお尋ねをいたしますが、先ほど寺田委員からの御質問によって御答弁がございました。大体それでわかったんではないかということになるかと思いますが、ひとつもう一度簡単にお教えを願いたいと思います。
 それは、まず第一が国選弁護人とかその近親者が国選弁護人の職務の遂行に関しまして被害を受けた事例というものがどのぐらいあるのかということと、それからもし複数あるようなことであればその年度別の件数をお伺いをいたしたいのですが、これにつきましては先ほどの御答弁では余りないようなことでございましたが、もう一度お教えを願います。
 それから、ついでにそれに関連しまして、被害に遭われた人はどういうような状態で被害に遭われたのかという問題、それからその被害の程度はこれを金額に見積もるとどのぐらいのものになったろうか、こういうような点ひっくるめまして、簡単でいいですから、先ほどの寺田委員の御質問を補充するぐらいの程度でよろしゅうございますのでお願いいたします。
#61
○政府委員(筧榮一君) 先ほどお答えいたしましたとおり、国選弁護人が職務の遂行に関して被害を受けたということで私どもが承知しておりますのは一件だけでございまして、昭和五十三年ごろの事件で、その状況は被告人の支援団体員等七、八名がその国選弁護人に対して、お前のような者は国選弁護人を早くやめろというようなことを言いながら暴行、殴った、その結果上膊部、腕に全治五日間ぐらいの傷害を受けたという事件を承知いたしております。近親者に対する被害というものは私どもまだ承知いたしておりません。
 それから、今申し上げました一件の被害、当時の状況等から推測をいたしまして、この法律を適用したらばどうなるだろうかということでございますが、全治五日間ぐらいの傷害でございますので、療養給付が四千円ちょっとぐらいではなかったろうかというふうに考えております。
#62
○飯田忠雄君 このたびの法律改正につきましては、これは従来のような証人等の証言に関連するものというよりも、むしろ自己の職務上生じた被害について給付をする制度である、そういう制度を新しくつくるんだというふうに解されるわけですが、そうであるといたしますと、このたびの法改正によって追加される受給者が国選弁護人及びその近親者だけに限定されたというその理由でございますが、どのようなものでございますか。
#63
○政府委員(筧榮一君) 先ほども申し上げましたように、被害を補償するという観点から言えば、補償の範囲をできるだけ広げる方が手厚いということはすべての補償について言えようかと思います。この法律に国選弁護人と近親者というふうに限定いたしましたのは、やはり本件の給付のような場合、他の補償等に関する制度との均衡あるいは給付の一般的、現実的な必要性というものを考慮いたしまして、その範囲に限ったということでございます。
 先ほど申し上げましたように、国選弁護人については、私どもの承知しておりますのは一件でございますが、あるいはほかにも潜在的といいますか、承知していないものがあったかとも考えられます。また、近親者についてはそのような事例は承知しておりませんけれども、場合によってはやはり近親者に被害が及ぶということも相当考えられるということからこれは加える、しかし、それをさらに給付対象者を広げるということについては今までの経過、あるいは実績等から見まして、その必要性はまだないのではないかということで限定をしたということでございます。
#64
○飯田忠雄君 現行法によりますと、近親者は直系血族あるいは同居の親族、こうなっておるのでございますが、同居の親族というふうにお書きになった意味は、これは例えば傍系の血族あるいは姻族、こういうものについては同居をしていなければ被害給付はしないよと、こういう意味のように解されますが、そうでございますか。
#65
○政府委員(筧榮一君) その同居の親族に限った点でございますけれども、やはり国民一般の社会生活上、いわゆる近親者として親近感を抱くといいますか、そういう範囲というのはやはり直系血族あるいは同居の親族というものではなかろうかということでございます。あるいはまた、さらに過去における実例等、あるいは今後起こり得べきことを考えてみましても、やはり証人等の供述あるいは出頭に関連して害を受けるおそれのあるのはその範囲ではなかろうかという二つの理由から、同居の親族に限ったというふうに承知しております。
#66
○飯田忠雄君 例えば妻の妹がたまたまよそにいた、同居していない。こういう場合に、危害を加える方はそれを人質にするなりそれに危害を加えるということを通告してくるとか、あるいは直系血族じゃなくて傍系血族が、例えば兄弟とか姉妹とか、あるいはいとことかそういう人たちがいて同居していない。そういう者に対して危害を加えるという場合、これは証言をしたということが原因でそうした傍系の血族とか姻族が害を加えられるわけですから、証言ということがもとだということを中心にして考えるなら、そういう者の被害を除くということはどうもこれは身分による差別ではないかというふうに考えられるんですが、その点についてはいかがでございますか。
#67
○政府委員(筧榮一君) 確かに飯田委員御指摘のように、そういうふうに同居をしていない親族がいることを加害者がたまたま知っておったか、あるいはどこかで探り出してきて、それに対して害を加えるということもあり得ないことではないかと思います。ただ、この法律で一定範囲にその受給者を限定するわけでございますから、その場合には、やはり考えてみればそうありそうもない、たまたま起こるかもしれませんけれども、その者は別にして、通常親族というか親しい近親者と考えられる範囲、あるいは現実に同居しておるとして被害を受けるおそれの強いという範囲に絞ったわけでございまして、特にその身分等によって差別をするということではないと思っております。
#68
○飯田忠雄君 先ほど具体的な事件につきまして被害の程度をお伺いしましたらば、大体四千円ぐらいだろうということでございました。この法律の施行令には給付基礎額が書いてあるわけですが、これは施行令の四条に給付基礎額としまして五千九百円を基礎として、それにいろいろの倍数を掛けて具体的には算定する、こうなっておるわけでございますが、この給付基礎額を五千九百円とした根拠、これは具体的な何か根拠がございましょうか。
#69
○政府委員(筧榮一君) 最初にお断り申し上げたいのでございますが、この資料には五千九百円とございますが、その後政令が改正されまして、これは四月五日か六日であったかと思いますが、ごく最近政令を改正されまして、現在では六千百円となっておりますので、その点御了承いただきたいと思います。
 六千百円となっておりますのは、この法律に書いてございますように、警察官等に協力した者の被害に関する法律がございますが、それの額をもって給付基礎額にすることになっております。片や警察官の方については警察官のあるランクの人の大体の日額というものを計算しまして、それを給付基礎額と定め、それで場合によってはその人の性質によってその上へ加算することが、もう少し給付基礎額を高額にすることができるという立て方をしておるわけで、現在その警察官等の法律におきまして六千百円となっており、それを受けてこの法律あるいはその施行令におきましても六千百円となっております。その根拠は今申し上げましたような基準的な警察官の給与の日額というふうに御理解をいただきたいと思います。
#70
○飯田忠雄君 警察官の問題は、どうも法務省の問題ではないからおわかりにならぬかと思いますけれども、警察官に協力した者の災害給付に関する法律でそういうような基準を設けた。それが六千百円なら六千百円という基準なんですが、これは現在の国民一般の生活費なのか、あるいは病院の基礎的な治療代なのか、あるいはそのほかの何かお調べになった根拠があって、そういう数字が出たのではないかと推測をいたすわけでございますが、これはお聞きになっていないでしょうか。例えば警察法の方で決める場合に、どういうことで決めたかという問題ですが。
#71
○政府委員(筧榮一君) 私の承知しておりますところでは、警察官の、これは警察官は公安職俸給表の(一)の適用を受けておりますが、それの巡査でも上の方かと思いますが、それの俸給の一日分を計算いたしまして六千百円となっておる。それから、その上限につきましては警視クラスのやはり同じ月額を三十で割りまして、一日一万三百円というふうに給付基礎額の範囲が定められておるわけでございます。それを算定いたしまして、これをいわば証人その他の被害の場合の基礎にする。
 それで、傷病その他療養の場合にはそれの基礎額に、療養の場合は療養費になりますけれども、障害給付というような場合には、その程度に応じて倍率を定めまして、その倍率を掛けるということになっておりまして、その倍率は労災等の倍率をそのまま持ってきておるということで、その他現在の社会において妥当と思われる金額を算出しているものというふうに考えております。
#72
○飯田忠雄君 実は遺族給付年金の額につきまして、これは一年について、五十五歳以上の妻の場合、給付基礎額に百七十五を掛けた額だ、こうなっております。そこで、今度は改正になった値段では、まだ計算する余裕がないからやっておりませんが、五千九百円を基準とした場合に、一年の計算をしますと月割り八万六千円ばかりになるわけです。それで、五十五歳以上といいますと、もうこれは働くことが少ない人でございますが、こういう人たちの生活金としてその程度のものでいいのかどうかという点につきまして御検討になったのでしょうか。それともそこまではしていない、こういうことでしょうか。
#73
○政府委員(筧榮一君) その警察官の額を定める場合に、今御指摘のようないろいろな事情を考慮して倍率というものが定められたものというふうに考えております。
#74
○飯田忠雄君 それでは、まだ時間がありますので次に参りますが、このたびの法律改正は、これは結局証人等に対する問題というよりも、自己の職務上から生じた被害の問題だと思います。証言
の場合ですと、他人のことを面倒見てやって害をこうむった、だからそれを面倒見よう、こういうことになるわけですが、国選弁護人の場合になりますと、これは国選弁護人の職務上から生じた被害に対して給付する制度でございますが、そうでありまするならば、別に国選弁護人だけに限る必要はないのではないかと思われるわけですね。
 例えば普通の弁護人の場合、これが普通の弁護人で熱心に弁護をしたら恨みを受けて害を加えられた。この場合に国選弁護人はもらっている報酬が少ないから補償する、そうでない弁護人はたくさん金もらっているから補償しない、こういうように解釈するのでしょうか、それともそのほかの理由があるんでしょうか。いかがでございますか。
#75
○政府委員(筧榮一君) その収入が多い少ないということではないと思います。国選弁護人の場合には裁判長により選任をされ、辞任をするにつきましても裁判長の解任命令によるということになっておりまして、いわば受任あるいは辞任がすべて自由に認められるものではないというのに対しまして、私選弁護人につきましてはあくまでも私人である被告人らの依頼を受けて引き受けるということでございますので、その間意見が衝突する、あるいは気に入らなければというと変ですが、やめたいと思えばやめられるという状況にあるわけでございます。したがって、この国において給付を行うという場合には、そういう性質の差異にかんがみまして国選弁護人に限るというふうになっていると思っております。
#76
○飯田忠雄君 それでは次の問題に移りますが、国家公務員とか地方公務員、こういう人たちの公務上の災害あるいは通勤時に起こった災害につきましてはそれぞれ災害補償法が定められております。しかし、この人たちの家族が災害を受けた、あるいは近親者が災害を受けたという場合に災害補償がなされるのでしょうか。この点について、もしなされないのなら公務員にも証人等被害給付法の適用があると考えた方がいいのではないかと思われるんですが、従来いろいろお話を聞きますと、この辺があいまいでございます。法律があるんだからそのある法律によるべきであって、証人等被害給付法は適用にならぬとか言うお方も中にはありますので、この点につきまして政府の御見解をお尋ねいたします。
#77
○政府委員(筧榮一君) まず公務員の家族が害を受けました場合でございますが、その場合は扶養親族という場合に当たりますと国家公務員等共済組合法に基づきまして療養費について家族療養費の支給が行われるわけでございます。そういう意味で、その被害の補償というと変でございますが、療養費が支給されるという関係になっております。
 それと、公務員に対する適用でございますが、公務員でありましても裁判所に証人として喚問されるあるいは証言するということは間々あることでございまして、その場合に公務員が証人として出頭あるいは証言したことにより害を受けました場合には、当然この法律が適用されるというふうに考えております。
#78
○飯田忠雄君 もう一度ちょっとはっきりしなかったからお伺いしますが、公務員が証人に呼ばれた、そして公務員の家族が被害をこうむった、その場合にいわゆる先ほどおっしゃった法律の適用があるからこの証人等被害給付法は適用にならないのではないかという疑問を提示する人もありますが、そうすると、仮にそうだとしますと給付をされる範囲、額というものが大体同じようなものであるかどうかが問題だと思いますが、こういうような点につきまして御研究になっておるのかどうか。御研究になった上で額が同じだから適用しないということであるのならいいわけですが、そうでないとすると、先ほど刑事局長もおっしゃったように、公務員が証人となった場合に家族に被害が生ずればこの法律を適用するというのが正しいのではないか、このように思われるわけですね。念のためもう一度確認いたしたいんですが、いかがでございますか。
#79
○政府委員(筧榮一君) 公務員が証人になりまして証言あるいは出頭するという場合、そのことによって近親者が害を受けた場合、当然この法律が適用されるわけでございます。そしてその場合、公務員の場合ですと災害補償もございますし、近親者の場合は今の共済組合の療養費が出るわけでございます。それとの額の高低はちょっと研究しておりませんけれども、いずれにいたしましてもこの法律の七条によりまして「他の法令の規定により、この法律による給付に相当する給付が行われたときは、当該給付の支給原因たる事実と同一の事実については、当該給付の限度において、この法律による給付を行わない。」ということで、結局どちらかといいますか、高い方に統一されるといいますか、それを二重に給付を受けるということはないようになっております。
#80
○飯田忠雄君 公務員が証言をするということは必ずしもこれは公務ではないというふうに理解されます。公務で証言するという場合にはどういう場合があるか私ははっきりわかりませんが、多くの場合公務ではないのではないか、証言をする場合。そうしますと公務員災害補償法というものの適用はしないで、むしろこの証人等被害給付法の適用をすべきではないかというふうにも解されますが、この点いかがですか。
#81
○政府委員(筧榮一君) 公務員が例えば何か犯罪の目撃者というようなことで証人喚問された場合はそういう資格で証言するわけでございますから、この法律を適用された補償を受ける、公務災害の方の適用はその場合にはないのではないかというふうに考えております。
#82
○飯田忠雄君 それでは次に、国選弁護人が弁護行為を行ったことによって本人もしくは近親者に災害が及んだ場合にこの法律で被害給付をするというわけなんですが、そういうことでありまするならば裁判官とか裁判所職員の場合も同じではないか、こう思われるわけであります。そこでお尋ねいたしますが、裁判官が今まで裁判をしたことについて被害をこうむったことはなかったかどうか、あるいは裁判官の近親者が被害を受けたことがなかったかどうか、こういう点についてお伺いをいたします。
#83
○政府委員(筧榮一君) 私どもではその事例は承知いたしておりません。
#84
○飯田忠雄君 これは私もはっきりした事実はわからないんですが、九州の方で何か暴力団に監禁されたような事件がございましたね。ああいうような事件はどうでしょうね。この場合には該当せぬけれども、もしあの人が国選弁護人であれば、例えば裁判官が国選弁護人の地位におれば該当したようなことではないか、こう思われますが、いかがでしょう。
#85
○政府委員(筧榮一君) 九州のたしかあれは大村であったかと思いますが、今御指摘のような事案が発生いたしたことは承知しております。内容が傷害にまで至ったかどうか今記憶いたしておりませんが、その裁判官が国選弁護人の地位にあったとしたらということでございますが、国選弁護人の立場にある者が傷害を受けた場合であれば当然今後この法律の適用を受けるということになろうかと思います。
#86
○飯田忠雄君 この法律で被害という場合には形式上身体に傷があるとかなんとかという場合に限られるのか、あるいは精神的な傷害を受けたことにも及ぶのかという問題がございますが、そういう点はいかがですか。
#87
○政府委員(筧榮一君) 先ほど寺田委員の御質問にお答えしましたとおり、精神的損害というもの、いわば慰謝料的なものでございますが、そういうものは含まれておらないわけでございます。しかし体に傷が残らなくても障害と認められる結果が発生すれば当然に本件に該当する、この法律に該当するということになろうかと思います。
#88
○飯田忠雄君 それでは、脅迫を受けまして、余り脅迫がひどいので気が狂ったということになりますと、これは体の障害なのか精神の障害なのか、問題が起こると思いますが、こういう場合どうでしょう。
#89
○政府委員(筧榮一君) いわゆる障害には当たらないのではないかというふうに考えております。
#90
○飯田忠雄君 これはどのように御認定になるかによって法の適用が変わってくるのですから、御研究を願いたいと思うわけです。刑事局長の御判断はそういうものとして私どもも承知しておきますが、果たして精神的な障害が含まれないとしていいかどうかということは疑問が残るのではないかと私は存じておるわけでございますので、御研究をお願いいたしたいと思います。
 それから、これは裁判官ばかりでなしに、一番直接被害を受けそうなのは検察官じゃないか。警察の場合は被害を受けた場合に補償されておりますが、検察官が被害を受けた場合、その検察官本人または検察官の近親者、こういう人たちはどういうことになるのでしょうか。
#91
○政府委員(筧榮一君) 余り害を受けた事例はないかと思っておりますが、先ほど裁判官あるいは裁判所の職員等についてと同様に、やはり、先ほど申し落としましたが、犯罪被害者等給付金支給法というのもございます。いずれにしましても、負傷、死亡した場合に、本人であれ家族であれ、犯罪被害者等給付金支給法の支給を受けるということは押しなべてそうであろうかと思います。が、そのほかに、やはり検察官あるいは家族につきましては、先ほど申し上げました国家公務員等共済組合法に基づく療養費等の支給が受けられるということでございます。
#92
○飯田忠雄君 前に警視総監の奥さんが災難に遭われましたね。ですから検察官といえども、警視総監ぐらいの危険度はあるではないかと思いますが、そこで現在検察官自身に対する補償は法律があると思いますが、しかし近親者に対してはどういう補償法があるのだろうか。ちょっと私は実はわからないんですが、お教えを願います。
#93
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、犯罪被害者等給付金支給法で一般的に支給されるわけでございます。そのほかにはやはり国家公務員等共済組合法に基づいての療養費等の支給がなされるというふうに承知いたしております。
#94
○飯田忠雄君 そうしますと、検察官の近親者の場合は行きずりの犯人にやられた、こう解釈するんでしょうか。
#95
○政府委員(筧榮一君) 行きずりの犯人にやられた場合にはそういうことになる、あるいは犯罪被害者等給付金支給法の要件を満たせば支給されるということでございます。
#96
○飯田忠雄君 犯罪被害者の給付金の場合に、これはどの範囲の人が含まれるんでしょうか。
#97
○政府委員(筧榮一君) まず支給対象者は犯罪被害によって死亡した者、それから重障害の結果が発生した者ということで、障害の結果が大きい場合を対象としているわけでございます。給付内容は一時金で遺族給付金、あるいは本人の場合障害給付金というものが支給されるということになっております。
#98
○飯田忠雄君 これは検察官だけに限られた法律でしょうか。それともほかの者には適用にならないんでしょうか。
#99
○政府委員(筧榮一君) 犯罪被害者等給付金支給法は別に警察官あるいは検察官というようなわけではございませんで、一般人についての規定であろうかと思っております。
#100
○飯田忠雄君 そういうことでございますと、国選弁護人も該当するということになりませんか。
#101
○政府委員(筧榮一君) やはりこの要件を満たせば対象になるということになろうかと思います。
#102
○飯田忠雄君 そこで、どうも私は頭が混乱してわからないんですが、もし要件を満たせば国選弁護人にも適用になるというのであるならば、このたびの法改正は要らぬことではないかと思われますし、このたびの法改正では要件なるものを満たさない状態であるからこの法律をつくるということでありまするならば、同じ理由で検察官の近親者に対しても裁判官の近親者に対しても法律が必要ではないか、こう思われますが、いかがですか。
#103
○政府委員(筧榮一君) 国選弁護人につきましては両方の要件を満たせば両方支給される、その場合に先ほど申し上げましたように七条で両方の調整が図られるということになっておるわけでございます。近親者に関して、検察官等についても国選弁護人と同様の被害補償をすべきであるという御意見でございますが、検察官につきましては国家公務員としていろいろな補償の手段があるわけでございます。片や弁護人につきましてはそういう制度はないわけでございます。その中で、特に裁判所から選任され、そういう害を受けるおそれがあるという国選弁護人の方について特別にこの法律をつくって補償をするという趣旨でございますので、直ちに検察官の近親者に関する立法の必要があるとまでは考えておりません。
#104
○飯田忠雄君 けがをいたしました場合には、もちろん公務員の場合は共済組合法がございまして、その共済組合の関係の病院にかかって治してもらえる、あるいは国選弁護人でもこれは国民年金でやれる。そういうことならば、そういうことで済むのならそれでいいわけなんですが、今日、証人等被害給付法をわざわざ改正をしてまいりますのは、そういう病気のときに共済組合だとか国民保険だとかいうもので賄い切れないものがある。例えばいろいろのほかの、国家公務員の場合には遺族年金というものがあるからいいんだということならばそれでもいいんですが、年金があるからということであるならば、国選弁護人の場合も年金があるではないかということになってきますので、その辺のところがどうも明確でないんです。
 それでお尋ねをしておるわけなんですが、今の遺族年金があるからもうあとは全部要らぬということでいいかどうか。例えば同居の親族、傍系血族、姻族、こういう者が被害を受けた場合に、そういう検察官の共済組合のもので一体これの補償ができるのだろうかということが私は疑問に思いますので、それでお尋ねしているんですよ。そういう点についてはもう少し御研究になる必要はないでしょうか、お尋ねします。
#105
○政府委員(筧榮一君) 先生御指摘のような点もあろうかと思いますけれども、国選弁護人につきましては先ほど来お話申し上げておりますように、過去過激派等に関連して生命、身体に害が加えられるという危険性が非常に強かった、今後もその危険性があるということからこういう制度をつくって補償する必要性が認められたというふうに考えておるわけでございまして、私ども、検察官について現在の補償では不十分であるし、さらにまた被害を受ける可能性が強い、したがって必要性があるというまでには考えておらず、やはり国選弁護人の特殊な地位から害を受ける可能性が強い、その場合の補償を法律によって整備しておく必要があるという判断になっておるわけでございます。
#106
○飯田忠雄君 私はこの法律に反対で質問を申し上げているのではなくて、賛成で質問を申し上げているんですけれども、ただ、もう少しこれだけでなしに、金がないから、予算がないからできぬから遠慮するという問題と法の理論的な問題とは違いますから、今は金がないから我慢してくれということであるだろうと思いますが、その点はわかりますので、これ以上追及はいたしません。
 そこで、刑事事件の証人についてだけが今般問題になっておるわけですが、民事証人については被害給付が認められない、こういうことになっておるんですが、これもやはり身分による差別ではないかというふうに考えられないこともないわけですね。こういう問題についても将来御検討を願いたいのです。きょうは時間がないから、最後の締めくくりに大臣にお尋ねいたしますが、きょういろいろ論議をいたしておりましたことをお聞きになってどのような御感想をお持ちになったのかお尋ねいたします。
#107
○国務大臣(嶋崎均君) 今回の法改正については、かねてこの問題が議論をされておって、それを制度化するというときに具体的にどういう問題点があるのかというようなことは相当論議をされた経過があるように聞いております。また、諸外国でもそういう制度があるかというようなこともよく調べたらというようなことで、そういうようなことも調べてまいったわけでございますが、いずれにしましても、何というか、的確な制度というのがなかなか見当たらない。そういう中でだんだん問題を整理してみまして、具体的な事例もあったわけでございますし、国選弁護人につきましては御承知のように今それらの人の権利保全をさせるというような意味合いから、専門家をつけて国選弁護人として対応さしていこうというような立場をとっておるわけでございますから、そういう私選弁護人の場合とは性格的に違った存在になっておるだろう、したがいまして、そういうことを対象にして、過去のいろいろな事例というようなことも判断をしてみて、そしてこういう制度をつくり上げてきたというのが現実であるわけでございます。したがいまして、ぜひひとつこういう、何というか、新しい試みであるのかもしれませんけれども、そのこと自身が逆に国選弁護人を引き受けていただくことについての我々の気持ちというものも十分理解をしていただくというような意味合いを持っておるというふうに思っておるわけでございまして、ぜひそういう意味でこの法案について御賛同願いたいというふうに思っておるような次第でございます。
#108
○飯田忠雄君 終わります。
#109
○橋本敦君 国選弁護人あるいはその近親者がその職務の執行に関して生命、身体に不法に損害を受けた場合に国の責任でそれに対して一定の給付を行うという、こういう制度の改正については私も賛成の立場でありますが、こういう制度改正が行われたということの根本的なとらえ方としては、国選弁護制度というのが憲法体系下の我が国の人権保障の民主的な司法制度を支える重要な柱である。そういうわけで国選弁護人の職務の遂行というのはまさに憲法理念実現のプロセスそのものにほかならない。そうだとすれば、そこで不法に損害を受けたということに対しては国がその責任において一定額の補償的給付をするのは当然だと、こういう考え方があってしかるべきではないかというように思いますが、その点はいかがでしょうか。
#110
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、最近の事態にかんがみ国選弁護人に対する危害のおそれが強くなったということから、広く刑事司法の円滑な運営を図る、その協力を願うという趣旨で国としてこういう補償を考えたわけでございます。その精神とするところは、今橋本委員御指摘のとおりかと思います。
#111
○橋本敦君 そういう考え方でこの法律を見ていく必要があることになるわけですが、そうした場合に二、三の問題点を私も指摘をしてお伺いしたいのであります。
 その第一は、第三条の条文に即して伺いますと、「国選弁護人がその職務を行い、若しくは行おうとしたことにより、」と、こうなっております。これはある意味で言えば、要件を広く解釈し得るということで、補償され得る状況を広めて救済あるいは補償の効果を高からしめるということにも役立つわけですが、法文の解釈としてはこの「職務を行い、」というのと「行おうとしたことにより、」というのと特段の差異があるのでしょうか。あるいはこの二つをあわせてその職務の遂行に関連をしてというように幅広に解釈をしていいのでしょうか。この点はどうですか。
#112
○政府委員(筧榮一君) 行うというふうに限定をいたしますと極めて限定されますので、「行おうとした」というふうに加えた趣旨でございますから、その趣旨とするところは今橋本委員御指摘のとおりかと思います。
#113
○橋本敦君 その場合に、その職務を国選弁護人として行う場合には、例えば記録の謄写を行いに行く、あるいは接見に行く、あるいは法廷で弁論その他の活動をするということもいろいろ含まれるわけですが、事務所を出て拘置所に接見に行くそのプロセス、あるいは裁判所から事務所に帰るというその道すがら、こういったこともいろいろ職務を行う過程としてあるわけですが、そういう過程も含めて合理的な範囲であれば救済の対象になると解してよろしいわけですか。
#114
○政府委員(筧榮一君) その被害を受けたことが「職務を行い、若しくは行おうとしたことにより、」という要件が満たされますれば、どこで害を受けようとその点は関係なく認定されるというように考えております。
#115
○橋本敦君 そうしますと、問題は職務遂行との因果関係、関連性ということであって、危害を受けた場所は問わないということでよろしいわけですか。
#116
○政府委員(筧榮一君) そのとおりでございます。
#117
○橋本敦君 そこで、今度は被害の内容について先ほどから議論も出ておるわけですが、「身体又は生命に害を加えられたとき」、これは解釈も極めて幅広にというよりも明快な規定でありますから、精神的損害というのは先ほど各委員が御指摘のようにこれは入らないということから問題がやはり指摘されてくるわけですね。私は一つの生命、身体に害を加える態様として事務所に押しかけ強談をする、あるいは不法に監禁をする、そういう態様がこれは間々あり得る態様だと思うんですね。その場合に、監禁も、ある場合は暴力を用いて監禁する場合もあるでしょう。ある場合は何人かの多数の威力を用いて監禁する場合もある。そういう場合、監禁というのはこれは単にその損害の中身は精神的損害にとどまるから、この規定から言えば給付の対象にならないとされてしまうには、監禁という態様はそれなりに身体に対する暴行その他を伴いやすいわけでありますから、監禁というような状況については、これはこの規定の給付の対象外にしてしまうということはどうであろうかというようにも思うんですが、それは態様いかんによって考え得る余地はあるのでしょうか、どうでしょうか。
#118
○政府委員(筧榮一君) 監禁の場合は直接被害がない場合が多いわけでございます。もちろん暴行の結果、傷害の結果が発生しますれば本法の適用を受けるわけでございます。やはり先ほどから申し上げておりますように、被害の範囲を考えれば、切りがなくというと語弊がありますが、物的損害あるいは精神的損害等広がるわけでございます。特に重大な被害である生命、身体に対する被害、死亡あるいは傷害の結果ということに限定したわけでございますので、監禁につきまして、傷害の結果が発生しますれば別として、その点についてはちょっと入る場合はないというふうに考えております。
#119
○橋本敦君 いささか問題が残り得る可能性があるという感じがしますね。
 それから、もう一つ私が考えますのは、弁護士というのはそれなりに社会的名誉と地位を重んずる職務上の問題があるわけですね。そこで、国選弁護人に対して明らかに虚偽とわかる事実を流布して誹謗したり、その能力を疑わしめるような故意の宣伝をしたり、いろいろなことによって名誉を具体的に棄損する行為がこれまたあり得るわけですね。そしてそれと同時に、そのことによって職業上、仕事上の不利益をも惹起するという可能性だって出てくる場合がある。そういう弁護士の社会的名誉や信頼、そういうものを重んじなければならない職業の特質に照らして、そこのところに不法な行為を加えるという、そういう加え方もあり得るということを考えますと、その場合は、それは精神的損害にとどまるからというのでこの法律による給付から全く外れてしまうということは、これは国選弁護人の弁護士という立場を本当に尊重するならば、それは野放しにしてよいのであろうか。それを救済するのは名誉侵害に対してみずから訴訟を起こすなり何なりしなくてはならぬということに放置をされるのはどうであろうかというようなことも考えますと、名誉棄損を不法な方法でやった場合には、それに対する損害の発生に応じた給付というのはしてもいいんじゃないかという気もするんですが、そういうことは一切考慮の対象にはなりませんか。
#120
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、広く補償するという趣旨からいきますれば、およそ今御指摘の損害賠償で請求できるような被害はすべて補償すべきであるということになろうかと思います。やはり従来の経過からの必要性等から考えまして、重大な被害である生命、身体に限定したということでございますので、不法な方法による誹謗あるいは名誉棄損、それに伴っていろいろの不利益あるいは損害が発生することは十分考えられるところでございますけれども、そこまで国の補償というのは現在必要はない、現在はそこまでの必要は認められないというふうに考えております。
#121
○橋本敦君 今おっしゃったように、身体、生命が重要なやっぱり法益であることは言うまでもありませんが、弁護士という職業にとっては、ほかの人もすべてそうでしょうが、特に職業上、職務上の名誉というものはこれは高くやっぱり守られねばならぬという、そういうことですから、今のお話だけでは私はまだ問題が残るのではないかという気がするわけですね。この法案では今おっしゃった範囲でしかございませんが、弁護士会が単独法で国選弁護人のこういった問題についての補償を考えるという意向を持っていたのも、私はそういう弁護士の職務の特性と国選弁護というそのこと自体が、本人の意思いかんにかかわらずその職務の遂行は重要な我が国司法制度の一環として位置づけられるという国の責任から来る問題として、それなりの意味があったし、そういうことの中で今私が指摘したようなことも将来総合的に考慮されねばならない余地があるかもしれぬ、こういう気はしておりますが、この問題は将来のことに譲って次に進みたいと、こう思います。
 この機会に私は国選弁護そのものについて裁判所にもお伺いをさしていただきたいと思っておりますが、私の手元にあります資料によりますと、国選弁護は次第にその比率がふえておるようであります。昭和五十一年度では私選弁護人の割合が五二・六%、国選弁護人の割合が四五・九%、こういう状況でありましたが、五十五年には私選弁護が四六・七%に対して国選弁護人が五一・四%というように比率がずっとふえておるようでございます。こういう傾向は今も続いておるのではないかと思うのですが、最高裁としてこの状況は具体的にどのように把握していらっしゃいますでしょうか。
#122
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 御指摘のように国選弁護人の割合が非常にふえてきております。ただいま五十五年について五一・四%ということでございましたが、五十六年には五五・一%、五十七年には五七・四%、五十八年には五八%、五十九年はまだ正確には出ておりませんが、これをさらに上回って六〇%近くなっているように思われます。ただいまのはこれは地裁でございますが、簡易裁判所につきましても年々割合がふえておりまして、五十八年には七五・五%、五十九年には八〇%近いところまで来ているように思われます。
#123
○橋本敦君 そういう傾向が進むのは、一つには私選弁護を依頼できないという経済的事情が一般的に広がっているということも一つはあり得るわけですが、それなりに国選弁護の果たしている裁判制度の中での機能というのはますます重要になっているというように言っていいと思うのであります。そこで、これに対応して、国選弁護料ということでのここ数年の予算はどのような動きを示しているのか教えていただけますか。
#124
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 五年間について見てみますと、昭和五十六年が二十億七千万余りでございます。五十七年が二十一億七千万余り、五十八年が二十一億九千万、五十九年が二十三億二千万、それから六十年が二十五億二千万余りというようになっております。
#125
○橋本敦君 国選弁護人に支払う報酬、費用ですが、これは裁判所の報酬基準によって定められていると思うのですが、ここ数年、改定はどのようになっておりますでしょうか。
#126
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 地方裁判所の三開廷基準ということで、一応の標準で大蔵省と折衝して予算を組んでおるわけでございますが、それで申し上げますと、五十六年には四万四千百円でございます。五十七年が四万六千九百円、五十八年は改定をいたしませんで、それを据え置きました。五十九年は四万八千二百円、六十年が五万三百円ということでございまして、比率で申し上げますと五十六年から五十七年までは六・三%、五十九年は二・八%、今回六十年は四・四%のアップということになっております。
#127
○橋本敦君 今お示しいただきましたアップは、何か標準あるいは基準、例えば人事院勧告とか物価とかいうようなものがあるのでしょうか。特にありませんか。
#128
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 弁護士会から国選弁護人の報酬の増額については毎年御要望がございます。私どもといたしましては、先ほど先生から御指摘がございましたように、裁判の適正あるいはその円滑な進行のためには弁護人に負うところが非常に大きいということで、国選の費用も何とか上げたいというふうに常々考えているところでございます。特に昨今日本弁護士会でお決めになりました私選弁護人とのいわゆる基準額の格差が非常に開いているというようなこともございまして、私どもとしては何とか増額をということはかねがね考えているところでございます。財政のかなり豊かな時代には二けた台の要求をいたしまして、それも実現したというような時代もございますが、昨今の御承知のような厳しい財政事情というようなことで、マイナスシーリングというようなことも言われている中で何とかできるだけのというようなことを考えておりまして、ここ数年は人事院勧告の実際の公務員給与の改定率、それを少なくとも一%ぐらいは上回るところでしなければというようなことで努力して、大体今まで最近はそういうところで落ちついているというのが実情でございます。
#129
○橋本敦君 日弁連は日弁連として国選弁護の報酬基準を定めておるわけですが、例えば今局長がおっしゃった六十年度で大体三開廷と見て報酬費用五万三百円ということですが、大体三開廷で地裁で刑事事件が解決したとして、日弁連の報酬基準どおりでいきますと着手金と謝金を含めてどれくらいになるように御理解なさっていらっしゃいますでしょうか。
#130
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 詳しく執行猶予になった場合とかいろいろあるようでございますけれども、大まかに言いまして合議事件では三十万、単独事件は二十万というようになっているように承知しております。
#131
○橋本敦君 ですから、したがって大体五分の一前後ということになっているわけであります。そこで、一つの考え方の問題として、国選弁護の報酬はどれくらいが妥当とされる筋合いのものであろうかということをひとつもう一遍考え直してみる必要もこの際あるのではないかと思うのですね。
 その点で言いますと、古いことですが、昭和四十七年の第六十八回国会の参議院法務委員会、当法務委員会での議事録がございますが、それによりますと最高裁判所長官代理者として当時牧圭次さんが答弁をなさっていらっしゃいますが、その要旨は要するにこうおっしゃっているわけですね。私選弁護人の報酬との比較ということはしにくいわけではございますけれども、「ただ、私どもが一応考えておりますのは、日本弁護士連合会で報酬等基準規程というのをお定めになっております。その報酬等基準規程を一応の基準といたしまして、できるだけそれに近づけた報酬を支給できるようにいたしたいということで私どもはせっかく努力いたしておるわけでございます。」と、こう御答弁なさっていらっしゃるわけですね。だから日弁連の報酬等基準規程そのままがいいという御趣旨ではありませんが、余り格差があってはいかぬだろう、できるだけそれに近づける努力をしたいと、こうおっしゃっておるのですが、こういうお考えは現在も最高裁としてはお変わりになっていないと思うのですが、いかがでしょうか。
#132
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 実はその当時はたしか日弁連の報酬基準額は二万円であったかと思います。国選弁護が四十六年で言います
とたしか一万二千三百円であったかと思います。その格差は比較的少なかったわけでございまして、私どもといたしましては何とかそれを接近したいということで、その翌年は一万三千五百円、一万四千九百円、それから一万六千四百円と、こう接近していったわけでございます。ところが、四十八年に日弁連の方ではいきなり三倍という六万円にアップされてしまいました。その二年後の五十年にはさらにその約三倍、単独は十五万、合議は二十万というようにアップをなさったわけでございます。そういたしますと、これは私どもなるべく格差は少なくという方向でおったわけでございますが、確かにこの二万円というのは九年か十年続いたようでございますけれども、それにしてもこの二、三年の間に三倍に上がりさらに三倍ぐらいに上がってしまうということで、一躍九倍ぐらいになってしまったということでございまして、私どもの考えていたのとちょっとかけ離れ過ぎてしまった。
 そういたしますと、これ日弁連のことについてとやかく申す筋合いではないわけでございますが、私選弁護の実際はどうなっているのかというようなこと、私どもは実際を知りたいわけでございますが、それを調査の方法もない。そうしますと、その実際の支給基準額で現実に行われているのかどうか、あるいはそれが本当に客観的に正しいものであるのかどうかということになりますと、今までの何とか接近をというふうに考えていたことはちょっと放棄せざるを得なくなったという、軌道修正と申しますか、そういうことに立ち至ったわけでございます。
 また、五十八年にはさらに先ほど申し上げましたように一・五倍でございましょうか、単独二十万、合議三十万というふうにまたアップしたということでございますので、私どもとしてはただいまのところは国家の財政事情というようなこともありますので、それと接近しなければいけない、これはそう考えましても、にわかに実現はまことに困難であるということで、ただいまはその考え方はとっておらないのでございます。
#133
○橋本敦君 そうしますと、その考え方はとっていないとすれば、どういう考え方でおられるわけですか。
#134
○最高裁判所長宮代理者(小野幹雄君) そもそも国選弁護人の報酬はどのような額が妥当かということは、これは非常に難しいことでございます。
 抽象的に申しますと、結局は国選弁護人の活動に十分見合った額ということになるものと思いますけれども、それが果たしていかなる額であるかということは、これは非常に難しいことのように思います。私どもといたしましては、日弁連から毎年大体十万円ぐらいというような御要望もあります。今の額がこれは私どもも決して高いものだというふうには思っているわけではございませんが、そういうような御要望でありますとか、あるいは今の財政事情でありますとか、先ほど申し上げましたような国家公務員の給与改定というようなもの、そういうものもにらんで何とかやはりこれは国民の税金で賄われるというようなこともございますので、そういうような四囲の情勢の中からやはり国民の皆さんの御納得のいただくような額にとどめざるを得ないのじゃないか、今のところはそういうことでございまして、幾らというようなことを念頭に置いてやっているということではないわけでございます。
#135
○橋本敦君 そうなりますと、言ってみれば羅針盤のない船のようなことにもなりかねぬし、理念のない司法行政ということにもなりかねませんので、この際そこのところはしっかり議論していかなくてはならぬと思うのですが、例えばアメリカあたりの判例では、弁護士というのはそれぞれ単独で仕事をするのじゃなくて、事務所を持って、日本でもそうですが、事務所を維持するという非常に大事な仕事もあるわけで、それはまさに報酬ということを中心にして、それ以外の利益は入りませんから、だから、したがって国選弁護を考える場合でも私選弁護と同等、つまり市場のマーケットプライスと同等である必要はないけれども、いやしくも弁護士の職務の遂行を困難ならしめるような、弁護士の事務所の継続を危うくせしめるようなそういう低廉な国選弁護料の決定、官選弁護料の決定というものは、それは違法だとするような原則がアメリカの裁判例でもあるというように聞いておるんです。
 それがどの程度かは問題として、下の方はそういうことで一つの民主的な原則があって、それ以下は違法だという考え方もあります。上の方はまさに国選弁護といえども弁護人の事件に注ぐ力、手間、時間、あらゆるものを含めて私選弁護より軽易にやってよろしいなどということは職務上あり得ないのであって、全力投球することはそれ自体当然でありますから、資格を有する弁護人の弁護活動として、職務活動としては国選私選を問わないわけですから、一面から言えば私選弁護人の報酬とそう格差があってはならぬというこういう上の方の問題もある。こういうようなところでどこに線を引いてどこに理想を位置づけていくかという、その問題をやはり考究する必要があるわけですね。
 ですから、それを考える上では日弁連の要望も十分にしんしゃくし、そして報酬規定も考え、同時に実態も考えるという、そこらを勘案してできるだけ実情に見合って国選弁護の機能を十分に阻害しない、そして弁護士の社会的職務活動を保障し得る最低限のものは裁判所としても十分に考慮していくという考え方は当然持たなくてはならぬのではないかと私は思っているんですが、そこらあたりはいかがですか。
#136
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 仰せのとおりでございまして、私どももそういうことから努力しているつもりでございます。ただ、今予算単価で申し上げましたが、これはもう長年の慣行で地裁三開廷、二開廷ということできているわけでございますが、最近ではなるべく三回だらだらということではなくて、できれば弁護人もお忙しいわけですから、一回で、あるいはせいぜい二回で審議を終えていただく。そのかわり報酬の方でも考えさしていただくということで現実いろいろと配慮をさしていただいて、何とか実質的な十分な手当をというような努力はしているところでございます。
#137
○橋本敦君 考え方として今の現状で十分だということにはならないということは、これは今の現状でよいとは思っていらっしゃらない、やっぱり引き上げる努力はすべきだというようにお考えになっていらっしゃることはこれは間違いないわけでしょう。その点もう一遍ちょっと確認しておきます。
#138
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 厳しい財政事情のもとでございますけれども、私どもとしてはなお一層努力していきたいというふうに考えております。
#139
○橋本敦君 そこで局長、実態はどうかという先ほどのお話がありましたが、これは日弁連と協議をしていただきますと資料は幾らでもあると思うのですね。例えば私が手元にあります日弁連の資料で見ますと、地方裁判所の刑事事件で手数料、謝金を見ますと、十万円以上十五万円未満というのが三一・七八%、それから十五万円以上二十万円未満というのは二七・九八%、つまり二つ合わせますと六〇%ですから大体地方裁判所の刑事事件は十万円から二十万円までというのが圧倒的に多いという実情があるわけですね。これが実情だと一つは考えられます。ですから、こういう実情から見ても低いということは、これはもう程度の問題は別としても五万円というのは余りに低いということは言えるわけですね。
 そこで、これの引き上げということが毎年日弁連から要望されておるわけですが、この国選弁護人の報酬規定というのは弁護士会との協議、そういうことではなくて、言ってみれば一つの裁判として行われるというような関係がありますから、裁判所が独自に基準をお決めになるわけでしょう。それはそうだけれども、日弁連からの強い要望も毎年あることですし、裁判所の国選弁護人の報酬規定の決め方についても予算その他の問題がありますが、引き上げねばならぬという方向づけははっきりしているのであって、積極的に日弁連との協議を詰めていかれましたならば、今局長がおっしゃった知りたい実情もどんどん出てくると思うのですが、これからこれの引き上げについて日弁連と必要に応じて一層の協議も進めていただきたいと希望するのですが、いかがですか。
#140
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 予算の編成時期になりますと、弁護士会の担当の役員の方もおいでになって、いろいろ実情などもお話しになるというようなことでございますので、今後ともそういう機会はつくっていくつもりでおります。
#141
○橋本敦君 この予算の問題については大臣にも特段の御尽力を私はお願いしたいと思うのですが、今お聞きのように国選弁護人の報酬というのは裁判所がお決めになりますから、いわば弁護士の意見抜きに一方的に裁判を受けるようなものなんですね。決められたその額に不服で抗告をして取り消して新たな給付をというのは、そういうことが法律上もできない。私選弁護の場合はそれなりに行った実費、謄写費用、交通費も含め、そして謝金も含め依頼者と協議をして、相談をして決めるという手続があるのですが、まさにお仕着せになっている。しかしそういう国選弁護が数からいっても、刑事裁判制度の中で占める比率からいっても、先ほどお話しのように簡裁ではもう八〇%を占めるという、そういう実情のもとにあるわけですから、だから弁護士もかなり多くの労力をこれに割いて、今の刑事司法制度の一翼を担って頑張っておるわけであります。
 そういうことの中で現在の実情は日弁連の報酬規定の五分の一程度ということで、どの程度がいいかは別として、余りにも低いことだけははっきりしておりまして、裁判所も今後要望に応じてこれの増額には予算を含めて努力するとおっしゃっていただいておるわけですが、こういうことについて予算の問題となれば大臣にも側面から積極的な御援助をお願いして国選弁護制度の健全な発展にひとつ力をおかしいただきたいということを強く要望するわけでありますが、いかがでしょう。
#142
○国務大臣(嶋崎均君) 何しろ最高裁の関係でやられる予算のことでございますので、私の方から余りとやかく言うべき筋合いではないと思うのでございます。しかし過去の経緯等から見まして、説明にありましたように昔と随分違ったような形になっている。しかし基本的なところは、やはり世の中もどんどん変わっておるのかもしれませんけれども、どうも国選とその他の場合との格差の開き方というのは、ちょっと極端な姿になり過ぎているような感じも実はするわけでございます。その場合にどちらの方がどちらの方に整理するのかよくわかりませんけれども、今お聞きした内容等から考えまして、また的確な国選弁護人の活躍というものを御期待をするという意味でも、できる限りの配慮をしていかなければならぬのじゃないかというふうに思っております。
#143
○橋本敦君 終わります。
#144
○柳澤錬造君 この種の問題は私は素人なので、余り専門的なことはわかりませんので、初歩的なことを若干お聞きをしてまいりたいと思うのです。
 刑事訴訟法の三十八条一項で「法律の規定に基いて裁判所又は裁判長が附すべき弁護人は、弁護士の中からこれを選任しなければならない。」とあるわけなんです。この国選弁護人の選任というのはどのような方法で行われるのでしょうかということがまず第一です。それから、その場合に断ることができるのかどうか、そのこともあわせてお答えをいただきたいと思います。
#145
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 裁判所は公訴の提起、要するに起訴でございますが、あった場合に、被告人に弁護人が選任されていないというときは遅滞なく被告人に対して起訴状の謄本とともに弁護人選任照会書というものを送りまして、必要的弁護事件というのがございますが、これについては弁護人を選任するかどうか、その他の事件につきましては国選弁護人の選任を請求するかどうかということを確かめるわけでございます。
 そして、その照会書には回答書というのがついておりまして、その回答書を返してもらうということになるわけでございます。その照会に対しまして被告人から、いろいろこちらでもう書いてありまして、そこに丸をつけたり、あるいは理由というのは別な理由があればそこに書くというようなことになっておるわけでございますが、そういうもので、被告人が貧困その他の事由によってみずから弁護人を選任することができない、国選弁護人を選任してほしいというようなことが、欄があってそこに記載があるということになりますと、裁判所は国選弁護人の選任の手続をとるわけでございます。
 そのほかに、必要的弁護事件というのがございますが、これにつきましては、回答があろうとなかろうと、要するに被告人に弁護人が選任されていないということになれば、やはり選任の手続をとる。そのほかに被告人が未成年者であるとか、あるいは弁護人なしで十分な防御活動ができないだろうというように認める事件についても弁護人選任の手続をとるわけでございます。
 この弁護人の選任の手続といいますのは、裁判所の方から弁護士会の方に弁護人の推薦の依頼をするわけでございます。これは裁判所が直接法的には選任しても構わないわけでございますが、これは昭和二十三年でございますか、最高裁と日本弁護士連合会との間で協議をいたしまして、これは裁判所の方から依頼をしたら弁護士会の方で推薦するというような扱いになっているわけでございます。この各弁護士会の方に裁判所から推薦の依頼をいたしますと、それぞれの弁護士会で人選をなさるわけでございます。私どもその弁護士会の中の会則の詳細は承知しておりませんが、それぞれこの国選弁護に関する規則と申しますか、そういうものを設けていらっしゃるようでございます。
 私どもの承知しているところでは、多くは国選弁護人を受けたいという希望をなさる弁護士さんが申し出をしまして、そういう方の名簿が大体できておりまして、その名簿の中から大体順序立てて順次推薦をしていくというような扱いが多いようでございます。それが裁判所に、この事件についてはこの人を推薦するということで回答が返ってまいりますと、裁判所もしくは裁判長がその弁護人を国選弁護人に選任するということになるわけでございます。
 それで、弁護士さんが国弁を辞退することができるかどうかということですが、その事前の推薦を受ける段階であらかじめ希望をしないということになっていますと、何か名簿に載せないで、もう国弁は割り当てないというような運用がなされているやに聞いております。また、名簿には登載しておりますけれども、その場合に、いや自分は今は困るんだとかいうようなことがあれば、その場合にはまたそれを聞き入れる。しかし、あるいは何か会によっては、そういう場合でもその正当な理由を書かなければいけないんだという厳しい扱いをしておられるとか、何かいろいろあるようでございますが、いずれにしましてもそういうことになっております。
#146
○柳澤錬造君 そうすると、裁判所の方から弁護士会の方に依頼が行って、弁護士会の中が名簿に登載されている者の中から本人に言って、それで本人が受けますということで出てくるわけですね。そうすると、本人が知らないのに国選弁護人になることはまずないと判断してよろしいと思うんですけれども、今度はそういう国選弁護人になってやっておって、どうもぐあいが悪いというか、何というんですか、気が進まぬというか、そういうときの辞任というか、やめる場合のことなんですが、国選弁護人というのは正当な理由がある場合には裁判長に対して辞任の申し出ができるんだ、また裁判長も正当な理由があると認めた場合は解任命令を出さなければならないというふうになっているんですが、そこのこの正当な理由というところは、今度はどういうものなのかというこ
とをお聞きしたいんですけれども。
#147
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この正当な理由といいますのは、先ほど寺田委員の際にもちょっと申し上げましたが、今までの裁判例等によりますと、要するに国選弁護人としてその職責を遂行するのがまことに困難だという、やむを得ないというような事情がある場合というように判例なんかは言っているようでございまして、その例えば具体的な場合といいますのは、弁護人が被告人からあるいはその支援者などから暴行、脅迫を受けた、あるいはその受けるおそれが現実のものであるというような場合を例に引いているようでございます。そのほかに例えば弁護人が病気でありますとか、長期の旅行であるとか、あるいはその後から委任者と自分が特定の関係があってこれはまずいというようなこと、そういうような例がいろいろ挙げられているところだと思います。
#148
○柳澤錬造君 裁判というのは、起訴している検事の方と弁護士の方と両方いないと裁判はできないんでしょう。その点はどうなんですか。
#149
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 必要的弁護事件というのがございますが、比較的重い事件でございますが、これは弁護人がなければ開廷することができないというふうになっておりますが、あるいはそのほかには、例えば心身の状況、あるいは若年であるとかいうような場合にもまた弁護人がなければいけないというのがありますが、そういうものでない事件につきましては必ずしも弁護人がいなくても審理はできるということになっております。
#150
○柳澤錬造君 この場合はこれはどういう解釈したらよろしいんですか。昭和四十四年四月二十八日の沖縄デーの事件、この東京地裁の判決の文書を見ますと、「被告人らが自らの責に帰すべき事由により、国選弁護人の選任またはその保護を受ける機会を失わせた場合には、憲法および刑訴法が保障している、国選弁護人の選任を受ける権利を放棄したものであって、その責に帰すべき事由が消滅しないかぎり、国は国選弁護人を附す義務を負わないもの」と解する、いわゆる被告人たちが国選弁護人に、その弁護活動に対して誹謗したり罵倒したりした発言をして、あまつさえ暴力行為までしたということで、弁護人が辞任を申し出て、それを裁判長が認めて解任をした。そして、そのままその弁護人はつけなくてもよろしいのだということをこの東京地裁は言っているのだと思うんですが、そういうことは成り立つのかどうか。その辺はどうなんでしょうか。
#151
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 刑事訴訟法の三十六条でございますが、ここに国選弁護人についての規定がございまして、これは「被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所は、その請求により、被告人のため弁護人を附しなければならない。」、こう規定しているわけでございます。先ほど申し上げましたように、弁護人がなければ開廷できないという事件がございますが、それ以外の事件でありましても、被告人から弁護人をつけてくれという請求がありますと、これはここにありますように「貧困その他の事由」ということで、貧困の場合は当然でございますが、「その他の事由」、これはいろいろ解釈もあるようでございますが、とにかくそういう理由があって請求があった場合には裁判所は国選弁護人をつける義務を負っているわけでございます。先ほども選任照会のところでちょっと申し上げましたが、被告人が弁護人は要りませんというような場合で、それでもいいだろうというような事件にはつけないで済むわけでございます。
 ところが、この事件では弁護人をつけてほしいという請求をしたわけでございます。これは今御指摘がありましたように、国選弁護人をつけておいたところが国選弁護人に対して暴行等を働いたということで、弁護人は辞任したいと申し出た、裁判所はそれはやむを得ないということで、解任せざるを得ないということで解任したわけでございます。そこで被告人たちに弁護人がなくなったわけでございますが、被告人の方からもう一度国選弁護人をつけてくれという請求があったわけでございます。そこで裁判所は、再び弁護人にそういう乱暴なことをしたり弁護人の法廷活動を阻害するというようなことでは弁護人をまたつけても弁護人に御迷惑をかけるだけだということで、被告人を一人ずつ裁判長がお呼びになったようでございまして、もうそういうことは二度としないということを確約しなさいということまでしたようでございます。しかし被告人たちはそういうことは確約できないということでしなかった。
 そこで裁判所としては、被告人たちの国選弁護人請求はあるけれども、これは第一審ではそれはもう権利の放棄であるというような解釈をしてつけないままで審理をした。高裁と最高裁ではそれは弁護人請求権の乱用であるというふうに見られて、それが是認せられている、こういうことでございます。
#152
○柳澤錬造君 わかりました。国選弁護人がやめたいというのを認めた、その後、今度は被告人たちの方からまた弁護人をつけてくれと申し出て、そのときに裁判長がその被告人たちを呼んで確かめたときに、二度とそういうことをしないということを約束せいというときに、その約束をしなかったというわけなんですね。そこが一つのキーポイントというか、それだから、じゃ、もうつけないでこの裁判を進めるということになったわけですね。わかりました。
 次に、補償の問題、この法案の補償の問題なんですけれども、いろいろ身体に危害を加えられたりいろいろあるということで、この補償のあれを上げたいと言っているわけだけれども、今までのこういうものの事例がどのようなものがあるかということをお聞きしたいことと、先ほどもちょっと出ておりましたけれども、この補償の計算方式というのは、これはどういうところではじき出しているんですか。いろいろ普通の民間なら労災があるわけだけれども、そういうものとの関係といいますか、比較していくとどういうことになるんでしょうか。
#153
○政府委員(筧榮一君) まず第一のこれまでの事例でございますが、これから法律が施行された場合に適用されるであろう国選弁護人につきまして過去の被害の例は、先ほど申し上げましたように昭和五十三年ごろの一件だけでございます。それから、証人等の被害について、従来、このもとでございます証人等の被害についての法律施行以来の例は五件、昭和三十六年が二件、昭和三十九年一件、四十四年一件、五十八年一件という五件でございます。その五件の内容につきましては、先ほど申し上げましたように証言を恨んで服役した後で行って刺し殺したというようなものでございますとか、最近の例では、昭和五十八年の二月に仙台高裁の法廷で、証人である被害者が証言中に、おりました被告人が手で顔面を殴ったということでございます。その他同種、まあ似たような事例で過去五件が発生しておるわけでございます。
 それから、第二の給付額の基準といいますか、計算方法でございますが、給付の中で療養給付、けがをしてそれの手当てをするという関係は現物給付、つまり療養とか手術とかというものを指定された病院で行う場合、それと、それから病院で治療を受けたような場合にその要しました医療費の実費を支給するという、これはもう額がおのずから決まるわけでございます。その他の給付につきましては、給付基礎額というものを定めまして、その給付基礎額に、負傷でございますればけがの程度等に応じ、その程度等を政令で幾つかに分けておりますが、その程度に応じてその倍数を乗ずるということで給付額が決定されるわけでございます。
 現実には先ほど来申し上げておりますように、警察官等の職務に協力した者の被害に関する法律を持ってくるわけでございますから……
#154
○柳澤錬造君 警察官とか何とかいうよりかも、私が聞きたいのは、民間の場合には労災があるでしょう。労災保険の補償、あれと比較して高いのか安いのか同じにしてあるのかという、その方をお答えいただければ、それでもうすぐ判断つくわけですから、それをお答えいただきたい。
 それから、ついでにもう一つこの機会にお聞きしておきたいのは、国選弁護人というもののふだん弁護しているその報酬というものも、普通の一般の私選と比べて、被告人が自分で選んだのと比べたら恐らく安いと思うんですよ。だから、その辺がどういうところを基礎にして報酬額を決めているのか。それから、やはり一般の場合と同じ程度にある程度額を上げなければいけないのじゃないかと思うんですけれども、これ見てもよくわからないけれども、その辺はどうなんですか。
#155
○政府委員(筧榮一君) 要するに給付基礎額を定めましてそれに倍率を定めるということでございます。片や国家公務員災害補償法あるいは労働者災害補償保険法、これは当該公務員または労働者の過去三カ月間の平均給与を基礎としておるわけでございます。それで、こちらの法律の場合には現行では六千百円が基礎でございまして、一万三百円まで場合によってこれを上げる「ことができる。」となっておりますから、したがいまして公務員の場合あるいは労働者災害補償保険法の場合と比べますと多いこともあり少ないこともあるということになろうかと思います。ただ、負傷等の倍率でございますが、倍率は同様の倍率を採用いたしております。
#156
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 国選弁護人の報酬でございますが、今から十年前の昭和五十一年、これは地方裁判所の三開廷の基準ということで申し上げますと、その当時は二万五千六百円でございました。それが五十五年には四万九百円、年々改定しておりまして、五十八年だけは公務員のベースアップも据え置かれたというようなことで改定できませんでしたが、その後もずっと上げておりまして、六十年は五万三百円、約倍近くまでいったということでございます。
 私選弁護人との比較でございますが、これは先ほどもちょっと申し上げたところでございますが、昭和四十八年までは日弁連の基準額が二万円であったわけでございまして、当時はたしか国選の方は一万四千九百円で、一万六千四百円の値上げを考えて非常に接近を図っていたわけでございます。ところが四十八年でございますが、六万円になった。それからその二年後の五十年にはさらに単独十五万、合議二十万ということでまた三倍近く上がった。それからたしか五十八年でございましたか九年でございましたかにさらに約一・五倍の改定があったということでございます。
 四十六、七年当時には何とか私選と接近したいということで努力を重ねておったわけでございますが、一躍三倍というようなことになりますと、とても国家財政上今までの経緯もありまして到底そういうことは困難であるというようなことになりまして、それからというのはなるべく上げたいということで二けた台の要求をいたしまして、そういうことで入れていただいたということもあるわけでございますが、昨今は非常に国家の財政事情も厳しいというようなこともございまして、しかし弁護士会から何とか十万ぐらいにしてくれという強い御要望もございます。そういうような御要望、あるいは国選弁護の重要性というようなことも考慮いたしまして、また、あるいは国家公務員の給与の改善率というようなことも考慮いたしまして、どんなに困っても何とか国家公務員の給与改善率よりは上回ってほしいということで、財政当局の御理解も得まして、大体最近この厳しい中でも国家公務員の給与改善率の一%は上回っていただくようなところで何とかやっているということでございます。
#157
○中山千夏君 初めにちょっと矯正局の方にお伺いをしたいと思いますが、お着きになって早々申しわけありませんが、八四年の六月に新潟刑務所で不審死が相次いだという事件がありました。その後、この件に関しましては新潟刑務所の方で適切な対応をなすって、死因についてもいわゆるポックリ病だったという結論が出まして一応の解決を見たということを伺っています。
 ところで、この件は新潟刑務所の受刑者である男性、仮にA氏としますが、この方が弁護士会の人権擁護委員会に不審な死が相次いでいるということについて調査申し立てをしたことから世の中に知られるところとなったわけなんです。私も七月末ごろでしたか、この委員会でこの件を取り上げました。ところで、その翌月の八月にそのA氏が突然独居拘禁を言い渡されたということを聞いたんです。このA氏という人は入所以来二年間にわたって無事故で大変成績がよろしくて、当時は二級者として雑居房にいたということなんですが、八月になって突然独居拘禁の処遇を受けた。これは十日で解けたんですけれども、その後三級に落とされて無事故証は剥奪され、面会、信書は月に二回に減ったし、毛布も薄いものにかえられて、賞与金は月五千円あったものが千円台になっているという、これは懲罰の結果だと思うんですけれども、これはどういうわけなんてしょうか。
#158
○政府委員(石山陽君) 今のAさんという人の名前でございます。私どもの調査で恐らく間違いないと思いますので、Aさんのままで一応お答えさせていただきます、人違いがないことを祈っておりますけれども。
 この人は今委員御指摘のとおり新潟刑務所で現在服役中でございまするが、問題は今おっしゃいましたように、本件について外部の弁護士会等を通じ人権擁護の見地から申し立てをしようとしたら懲罰的にこういう処遇を受けた、こういう点でいろいろ御批判をお持ちになるかもしれませんが、実はポックリ病事件につきましては、あの際御報告申し上げましたとおり、私どもはあの四件の連続的なポックリ病を非常に事態として重視いたしまして、そのうち最後の一例だけは病理解剖を遺族に承諾していただいたということがございましたので、その病理解剖につきましては地元の大学病院にお願いをいたしまして十二分に調査をお願いし、外部所見以外の病理学的な組織検査も十分やってほしいということでそのお答えを待っておったわけであります。
 一方、この間にただいま仰せのごとく、収容者の方からの申し立てによりまして新潟県の弁護士会の方から人権調査、そういうものについて調査をいたしたいというお申し入れも実は口頭でございました。それからほかの弁護士さん、東京で御開業中の弁護士さんですが、この本人はかつて過激派として爆破事件を起こしました際の弁護士さん、この方からも面接の希望がございました。
 ところで、こういう事件が起きました場合に私どもは組織内でまず徹底的な原因追求をいたします。そこで、実はこの問題につきまして衆議院で私に御質問がございました際にも、すぐ外部の第三者等を入れて、例えば弁護士会の調査等をまって原因を徹底的に究明したらどうか、所内のいわゆる勤務体制、処遇の問題等が原因になってポックリ病が続いているということがあってはゆゆしい問題であるからと、こういう御質問をちょうだいしたのでありまするが、その際私があえて申し上げたのは、現在病理学的な原因を十分追求中でありますから、それが済むまではちょっと第三者が急に来られて御調査になるといっても核心をついた調査ができないだろうから、しばらくお待ちいただきたいという趣旨のことを御答弁申し上げたわけであります。
 そこで結果的に申し上げますると、最終の結果わかりましたのは昨年の十一月でございました。それをまた御答弁その他の関係で衆参で申し上げたこともございます。その結果、医学的見地から見ても、病理学、組織的な検査から見ても、これはいわゆる壮年男子突然死症候群、いわゆるポックリ病であるということが解明できた次第であります。
 今の仰せのお話というのは、実はその間に起きた出来事でありまして、収容されておるAという人はもちろん舎房を異にしておりまするし、ポックリ病自身の目撃者でもございませんし、もちろんみずからポックリ病で罹患したという立場でもございませんが、その風評を所内で聞きつけまして外部の弁護士さんにそういうことの連絡の発信をいたしました。これを大々的な闘争として新潟刑務所に対する対監獄闘争としてぜひ実施してほしい、こういう実は申し入れがあったわけであります。
 私どもといたしますれば、施設の維持管理あるいは規律秩序の維持から見まして、こういうポックリ病が続いて、所内に入っております被収容者が非常に動揺するという時期に、こういった外部の圧力、まあ圧力という言い方は大変失礼でございますが、外部のいろいろな方々の調査も含めて、この問題を政治的に大げさに所内という問題について対外的にいわゆる対監獄闘争を展開されるというのでは非常に困るということがございましたので、当初の段階におきましては、これらについて直接人権擁護の関係から、自分の審判事件として申告されるなら別でありまするが、それ以外で一般的な目的で来られるものについては面会は控えてもらいたいということから、信書の発受あるいは面会について制限した、この事実は確かにございました。
 この関係は今どうなっているかと申し上げますると、その後、昨年の九月段階でございますが、そろそろ病理学検査がはっきり出てくる直前になりまして、本人みずから自分の方の審判事件という形で新潟弁護士会に人権擁護救済の申し立てを正式にいたしました。それと同時に、民事訴訟を起こしたいということでありましたので、そのための訴訟依頼の弁護人であればこれはお会わせしないわけにいかぬということで、この際に面会を許可いたしました。その後引き続き訴訟準備等のために現在面会が行われております。それからその関係の発信も全部認めております。
 今委員御指摘のような事情というのは、その間においてそういうことがあっては困るという私どもの所内の規律秩序維持あるいは管理運営上の問題点から、このままほっておきますると、本人がいわゆる一般被収容者に対しまして、例えば雑居にあったとするなら雑居の同房者、工場に出役するとすれば工場の出役者間に対監獄闘争の呼びかけをなされては非常に困るというような観点から、私どもでは昨年の八月二十日に、昼夜独居拘禁処遇といいまして、いわば一般の収容者から隔離する収容処遇に切りかえたわけでございまして、これは私どもといたしましてはまことにやむを得ざる仕儀でこのような処遇が行われたと、こういう経緯であるということでございます。
#159
○中山千夏君 きょうは法案に直接関係が結びつきが遠いし、それから時間もありませんので詳しいことには入りませんけれども、今のお話を伺いますと、私が承知している話とは大分ずれがあるわけなんですね。
 それはいわゆる事件が起きて、そのころの刑務所内での医療体制などについてもお話にそごがある。それはどちらが本当かというようなことは私は判断する立場じゃないんで、それは別のことなんですが、私が常々思いますのは、こういう問題、何か事実関係にしてもそうですが、御答弁いただきますと、どうも被収容者の側の意見、話、申し立て、そういうものを勘案したなと思われるような答弁というのは聞いたことがないんですね。大抵の場合、刑務所側のお話をそのまましてくださる。それはもちろんそういうお立場ですし、それから信頼関係で仕事をしていらっしゃるのだから当然のこととは思いますけれども、国側というのは大変力が強いものですから、だからなかなか囚人というのは物も言いにくいだろうし、しかしもう一方別の観点から考えてみますと、立派な方々が行政に当たっておられても、やっぱり人間ですから間違いがあったり、それから考え違いがあったりということはあると思うんです。それを一番身近で見られるのは収容されている人たちだと思うんですね。ですから、そういう人たちの意見というものはやっぱり度量を広く、なるべく盛んに言ってもらって、そしてそれも十分勘案して、それから第三者である弁護士会のような方たち、そういう方たちも困ることもおありでしょうけれども、そういう方たちの意見というのも大変大切だろうと思うんです。
 だから、上に立つ方にお願いしたいんですけれども、ただそれを収容されている人の言うことだから信用できないというようなことではなくて、やはり十分に意見を言ってもらってそれを聞いて、それからこれからなお行政を高めていく肥やしにぜひ使ってもらいたいというのが私の要望なんです。いかがでしょうか。
#160
○政府委員(石山陽君) 委員の仰せは、その点におきましては全く私も異存ございません。
 ただ、えてして密室の中の監獄行政であるので何が行われているかという意味で、ある意味で社会の方々いろいろ御関心もおありになりましょうし、またそういうものに対する唯一の連絡方法であります接見交通権の運用としての信書あるいは面会、こういう機会に、まあこういうことを言うのは大変失礼なのでございますが、えてして被収容者はそれなりにいろいろ不満ございましょう。日本の場合はそんな立派な施設に入れて、うんといい食事をさせてやられるというほど財政的に余裕がございませんから。ただ、そういうものが外へ伝わりますとき、どうしても、えてして誇張されるというような現状があります。その誇張をまことにそのままに受け取られまして、これが監獄の実態である、行政であるということになりますると、不当に私どもとしましても苦労している職員たちの士気を損なう。この辺がありますので、私の答弁の基調は多少御理解を願いたい。私どもは私どもなりに苦労があるんだという点を強調せざるを得ないわけであります。
 しかしながら、社会の御批判は御批判、これは謙虚に受けとめる気持ちは私ども決してないわけではございませんので、そういう点につきまして、ちゃんとした手続を踏まれました外部に対する訴えでありまするとか、あるいは訴訟、こういったものはいつでも接見交通権を阻害したこともございませんし、その結果、例えば裁判あるいは国民運動に対する御批判として受けとめなければいかぬものは受けとめたいというふうに考えておりますので、そのような御懸念のないように今後とも努める所存でおります。
#161
○中山千夏君 ぜひそうしてください。でも、国というものは割と確固として強いですから、少々わいわい言ったって揺るぐようなものじゃないですから、その辺職員の方の士気という問題は確かにあると思います。その士気とか、職員の方たちがむしろ士気を持って、度量を広くして、余裕を持って収容者に当たっていただけた方が私もいいだろうと思うんです。だから、それはそれとして、またいろいろ工夫していただきたいと思いますが、その件はこれで結構です。どうもありがとうございました。
 それで、法案の方の問題についてちょっとお伺いをしたいんですけれども、まず弁護人の方の職務、つまりこの法案が適用される場合の職務の範囲なんですけれども、これ先ほどからの御審議の中で大分わかってきたんですが、先ほどのお話ですと、職務遂行と事件の因果関係、これが認められれば弁護士さんの場合は被害の場所は問わないということでしたね。そうしますと、例えば具体的な話になるのですが、弁護士さんがその事件について裁判の支度をする、裁判の準備をするというのでお家で書類をつくったりしていらした、そうすると、そこへあらわれて、そして被害を加えられたという場合にはどうなるのですか。
#162
○政府委員(筧榮一君) 自宅であるかどうかは場所的には関係ないわけでございますが、要はやってきて害を加えた人間がなぜ害を加えたかというと、その弁護人が、何といいますか、前の法廷でこういうことをやっておった、だからけしからぬと言って、それを理由にして害を加えたという場合になるわけでございます。その場合には別に訴訟に関する書類を見ていなくてもいいわけであろうかと思います。
#163
○中山千夏君 今度、証人、参考人の方なんですけれども、証人や参考人として出頭しようとした。その出頭するために、例えば隣に自分の子供を留守の間預けていくために出たとか、それから、あるいは留守を頼みに行ったとか、出頭しようということのために何かをする。直接ではないけれども何かをするということはあると思うんですね。
そのときに隣に子供を預けに行く途中に被害を受けた。つまりその出頭をすることについての何事かを行って、出頭するということがなければそんなことをすることはなかったんだけれども出頭しなければならないためにあることをした、そのことの最中に被害を受けたという場合はだめなんでしょうか。
#164
○政府委員(筧榮一君) 出頭しようとしたことによって害を受けたかどうかという判断につきましては、先ほど寺田委員等の御質問でいろいろ論議があったわけでございますが、家にいたときはだめで外へ出ればいいか、あるいはその外へ出たのが裁判所へ真っすぐ向かっていたのか、あるいは隣へ子供を預けに行くという場合、それはもう具体的ケースで判断されるべきことだろうと思います。やはり出頭しようとする行為がそこで被告人の行動として認められていれば、今のように出頭するために子供を預けるというのも、その出頭しようとしたという意思のあらわれと見られる場合もあろうかと思います。そういう場合であれば本件の対象になり得る場合があるかと思います。
#165
○中山千夏君 それから第六条のことなんですが、これは給付の範囲、金額、支給の方法なんかについて第六条で「政令で定める。」としていますね。この政令で定めるについては、またこれが警察官の職務に協力援助した者の災害給付の法律の関係の事項を参酌するというふうになっていますね。この警察官の職務に協力援助した者の云々法の方は、さらに国家公務員災害補償法のそういう関係の「規定を参しゃくして政令で定める。」、こういうことになっていますね。警察官の職務の方のもとは法律で定められてあるんですが、この方になりますと法律をもとに参酌して定めた政令をもとに、また政令で定めるという形になっていますね。これ非常に活用されるというものではないにしても、国民の権利に関するものですから、きちんと法律内でこの事項を定めるとか、それからせめて大もとの方を参酌するとかというような形ならまだわかるんですが、どうしてこれ法律の中できちんと定めるというふうになっていないんでしょうか。
#166
○政府委員(筧榮一君) 政令で定める一番基本的な事柄は給付の基礎額の算定でございます。これは結局必要に応じ毎年、あるいはときに一年あくかもしれませんが、次々に改正して、いわば増額をして現在に至っておるわけでございます。そういうふうに時々刻々変わるという事柄が中心的内容になりますので、法律に書いておいて一々また法律改正というのではなく、いわば何といいますか、機械的に定められている事柄でありますので、これは政令で定めるというところへ落とした、まあ落としたというと語弊がございますが、政令段階の方でいいのではないか。ただし、どういう場合に給付をしどういう場合に制限するというような基本的な事柄は、これはあくまでも法律で書くべき事柄であると思いますし、現に法律に書いてあるところであると思っております。
#167
○中山千夏君 素人目で見ますと、何か孫引きみたいな感じがするので、どうも何かちょっと軽く扱ってあるような気がしないでもないんですけれども、そういうわけではないんですか。それから、法律扱うときにもこんな孫引きみたいになっていたら、なれた方はいいかもしれないけれども、法律としてある場合にもややこしいなという感じがするんです。
#168
○政府委員(筧榮一君) その辺は法律技術的な問題であろうかと思います。特にこれを軽んずるとかということではございませんで、やはり今の給付基礎額につきましても金額はこの法律の政令に明記されるわけでございますから、その結果は明らかになるという意味で、法律には書いてございませんが、重要な事柄で政令で明記してありますので、特にこれを軽視したというようには考えておりません。
#169
○中山千夏君 さっきもちょっと職務の範囲と給付の場合で、そのお話を聞いたんですけれども、どうも証人、参考人の場合にはなかなか範囲が厳格でして、そこらあたりも非常に件数が少ないということの原因にもなっているのではないだろうかという気もするんですが、それに比べると弁護人の方は職務柄被害を受けた場所とか給付の要件なんかにしても割合納得できる範囲が証人や参考人に比べれば与えられているというふうに私は思うんですね。それはやっぱり同じ法律の同じ条文に並んでいると、すごくアンバランスだけれども、これアンバランスなのが普通であって、実は国選といっても弁護人というのは非常に受動的な証人や参考人とは全然立場が違うわけだから当然だろう、むしろそれを同じ法律の中に、同じ条文の中に入れてしまうのがすごくおかしい。国会なんかでよく聞く言葉で言うと、この法律と国選弁護人というものがなじまないというんですか、そういうなじまない感じがすごくするわけなんですね。この法律の改正の趣旨自体、つまり国選弁護人の職務の遂行を円滑にするということはとても大切なことだと思うんです。だけれども、先ほどからそういうお話も出ていますけれども、やっぱりこれは全然性質が違うものなんだから、別に法律をつくるとか、せめて違う章とか項とか、技術的なことわかりませんけれども、そういうふうに分けるべきものだったんじゃなかろうかという気がするんですね。
 それで、先ほどの御答弁を聞いておりますと、刑事司法に対する協力者という点で弁護人とそれから証人あるいは参考人は同一であるから、区別する理由がないから同じ法律につくったんだというお話だったんですけれども、確かに国から見ればそうだと思うんです。だけれども、国民というような立場から見ますと、やっぱり証人や参考人と、それから国選であっても弁護人というのはこれ全然性格が違うもので、これを一緒くたにされちゃうのはちょっと困るなという感じがするんですね。やっぱり弁護人というのは国民の権利を守るところで、どんな場面でもやっぱり普通のものとは一線を画したところにいてもらわないと困る。
 だから、逆に言うと弁護士会の方たちがこれを納得されたというところあたりが私はすごく何で納得なすったのかなと不思議なところでもあるわけなんですけれども、こういうやり方をしてしまいますと、具体的にはあらわれないかもしれないけれども、弁護士という職業というか立場、それの持っている独立性だとか自主性だとか積極性だとか、そういうものをこの法律で何か消してしまうような感じがするんです。その辺のことで、例えば給付の金額とか、そういうことでではなくて、弁護士というものの立場という問題から三者会議なんかの中で単独立法にしようというような話のときに御議論にはならなかったのでしょうか。
#170
○政府委員(筧榮一君) まず、この法律で証人、参考人とそれから国選弁護人について狭いあるいは広いということで差があるという御指摘でございますが、証人、参考人は出頭または供述ということでございますし、国選弁護人は国選弁護人としての職務ということで、それぞれそれを原因として、それと因果関係をもって害を加えられたということで、事柄が違いますから、具体的な発生した場合の解釈はそれぞれ違うかもしれませんけれども、基本的には同じふうに扱って別に差別があるというふうには考えておりません。
 それから性質が違うということでございますが、今、中山委員御指摘のように、刑事司法に対して協力という点で共通でございます。そして弁護人の場合でも特に国選ということは国の方からお願いをし、正当な理由がなければ辞任できないという形での協力、証人は出頭、供述を理由なく拒めばいろいろ措置があるわけでございます。参考人についてはございませんけれども、いずれも刑事司法に対する協力を国から特に求められているということで、その円滑な運用を図りたいという趣旨では全くといいますか同じであるということがこの法律の中へ国選弁護人を入れたという理由でございまして、もちろん弁護人というもの、国選弁護人に限らず弁護人というものの職業の社会的立場とか重要性とか、あるいは自主独立でなければならぬという点についてはもちろんそのとおり認めるにやぶさかではございませんけれども、その活動の中で国選弁護人という立場に立って事を行う、それに対する補償、それを確保するために補償をするという意味では証人、参考人と同じような性質を持つものではないか、その両者の差違については運用の中でできる限りの配慮が当然なされるであろうというふうに考えております。
 三者協議の中で弁護士の独立性、自主性等を消すのではないかという議論があったかどうかということでございますが、特にそういう形での議論はございませんが、先ほど来申し上げておりますように、日弁連の主張では、やはり弁護士の性格にかんがみ単独の立法で補償の範囲、対象等も証人被害とは別にもう少し広げて規定するのが望ましいという強い主張は最後までなされておったところでございます。
#171
○中山千夏君 ありがとうございました。
#172
○委員長(大川清幸君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#173
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。
    ─────────────
#174
○委員長(大川清幸君) 次に、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。嶋崎法務大臣。
#175
○国務大臣(嶋崎均君) 電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、最近における登記事務の処理の状況にかんがみ、電子情報処理組織の導入によるその処理の円滑化を図るための措置等につき必要な事項を定めようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。
 第一に、法務大臣が指定する登記所においては、登記簿に記載されている事項を電子情報処理組織によって登記ファイルに記録し、何人でも登記ファイルに記録されている事項を証明した書面の交付を請求することができることとするとともに、その書面は、他の法令の規定の適用については登記簿の謄本または抄本とみなすものとすることとしております。
 第二に、国は、電子情報処理組織を用いて登記を行う制度その他の登記事務を迅速かつ適正に処理する体制の確立に必要な施策を講じなければならないものとすることとしております。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げる次第でございます。
#176
○委員長(大川清幸君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
 次回は来たる十六日火曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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