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1984/05/30 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第14号
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1984/05/30 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 法務委員会 第14号

#1
第102回国会 法務委員会 第14号
昭和六十年五月三十日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十八日
    辞任         補欠選任
     近藤 忠孝君     宮本 顕治君
 五月二十九日
    辞任         補欠選任
     河本嘉久蔵君     吉村 真事君
     徳永 正利君     岡野  裕君
     宮本 顕治君     山中 郁子君
 五月三十日
    辞任         補欠選任
     石本  茂君     柳川 覺治君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         大川 清幸君
    理 事
                海江田鶴造君
                小島 静馬君
                寺田 熊雄君
                飯田 忠雄君
    委 員
                岡野  裕君
                土屋 義彦君
                名尾 良孝君
                秦野  章君
                柳川 覺治君
                吉村 真事君
                小山 一平君
                橋本  敦君
                山中 郁子君
                柳澤 錬造君
                中山 千夏君
   国務大臣
       法 務 大 臣  嶋崎  均君
   政府委員
       内閣法制局第一
       部長       前田 正道君
       法務大臣官房長  岡村 泰孝君
       法務省民事局長  枇杷田泰助君
       法務省刑事局長  筧  榮一君
       法務省矯正局長  石山  陽君
       法務省訟務局長  藤井 俊彦君
       法務省人権擁護
       局長       野崎 幸雄君
       法務省入国管理
       局長       小林 俊二君
       公安調査庁次長  田村 達美君
       外務大臣官房審
       議官       有馬 龍夫君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   小野 幹雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥村 俊光君
   説明員
       警察庁刑事局捜
       査第二課長    上野 浩靖君
       厚生省保健医療
       局精神保健課長  小林 秀資君
       建設省建設経済
       局調整課長    嵩  聰久君
       自治省行政局振
       興課長      小川善次郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (平沢死刑囚に対する人身保護請求裁判に関する件)
 (外国人登録法の指紋押捺制度に関する件)
 (靖国神社参拝に関する件)
 (精神衛生行政に関する件)
 (公安調査庁のスパイ強要に関する件)
 (ロッキード事件の法理論に関する件)
 (死刑の執行猶予制度に関する件)
 (田中ロッキード裁判の控訴趣意書とP3―P3C問題に関する件)
 (山口組抗争事件に関する件)
 (刑務所在監者の処遇問題に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月二十八日、近藤忠孝君が委員を辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。
 また、昨五月二十九日、宮本顕治君、河本嘉久蔵君及び徳永正利君が委員を辞任され、その補欠として山中郁子君、吉村真事君及び岡野裕君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(大川清幸君) 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○寺田熊雄君 改正法案の第十八条を見ますと、「この法律の施行に関し司法書士の試験、資格の認定、登録及び業務執行並びに協会の設立及び業務執行について必要な事項は、法務省令で定める。」という規定がありますが、これは法務省としてはどういう内容の省令を予定しておられるのか、ちょっと御説明していただきたいと思います。
#5
○政府委員(枇杷田泰助君) 司法書士法第十八条の改正部分は「協会の設立及び業務執行について」というのを加えた点にございます。この関係につきましては、まず協会の設立に関しましては、設立について法務大臣が許可をするしないということをする場合の連合会の意見を聴取するというふうなことを定めるかどうかというのが一つの問題だと思います。それからもう一つは、設立の許可申請の手続について若干の規定が要るのではないかという問題意識を持っております。それから業務執行の関係につきましては、この協会は司法書士と同じような仕事をするという内容を持っておりますので、事件処理関係についての帳簿を備えつけて、そして必要事項を記録しておくという、そういうことを決める必要があるのじゃないかということを考えている次第でございます。
#6
○寺田熊雄君 ただ、これは協会の問題だけじゃなくて、司法書士の試験、資格認定、登録、業務執行と、この規定もありますね。これはどうですか。
#7
○政府委員(枇杷田泰助君) その点は現行法で定まっておるところでございますので、現在の司法書士法施行規則でこのような事項が二十数カ条でしたか三十条ほどでもろもろ決められておるわけでございまして、その点につきましては、今度の登録移譲の関係につきまして現在と状況が変わってまいりますので、したがいまして法務局長、地方局長が登録を行っておるということを前提とする規定は全部外す。それから、連合会が登録をすることに伴いまして、今度は法務局と司法書士会との間の逆の連絡というものが必要になってまいります。そういうようなことを改めて規定し直すという必要が生じてこようかと思っております。
#8
○寺田熊雄君 司法書士、土地家屋調査士両法や、公認会計士、税理士、弁護士等それぞれの根拠法を見ていつも感ずるのですが、職分も違いますし、多少歴史的な経緯や、あるいは社会的な地位、業務の重要度等それぞれ違いますから、根拠法が違うことは無理もないのだけれども、弁護士法によりますと、日本弁護士連合会は各地の弁護士会と弁護士を会員としていますね。公認会計士は公認会計士だけで公認会計士協会をつくるということになっています。そのほかのものは大体会を会員とする連合会という構成になっていますね。これは民事局長としてはどういう理由に基づくか、あなたの理解なさっておられる点をちょっと聞かしてくださいますか。
#9
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御指摘ございましたように、弁護士の連合会はその構成員は弁護士とそれから各単位会でございます。公認会計士は公認会計士協会がつくられておりまして、その構成員は公認会計士とそれから監査法人、そしてほかの会の単位会に当たるようなところには支部が設けられておるというふうな形だと思います。それから税理士とか司法書士、土地家屋調査士は、連合会は単位会が構成員ということになっておるわけでございまして、これが司法書士、調査士というものが直接連合会の会員にならないというのはどういうわけかという御質問かと思いますけれども、これはむしろ沿革的にそうなったと言うほかはないのではないかと思います。
 司法書士の場合には大正時代に、多分そうだと思いますが、単位会ができまして、それが昭和の初期にその会をまとめる連合会というのができたようでございます。そういう経過から、この司法書士法ができる際にもそのような形をそのまま受け継いで連合会の構成員は会ということで発足したように承知いたしております。土地家屋調査士の方は、司法書士の方がそういう形でできますので、それに倣ったということで同じように連合会の構成員は各会だということにしてあるというふうに思います。
 これはどちらのやり方もそれは可能だと思いますけれども、弁護士連合会のように連合会の中に個々の弁護士とそれから各単位会とがいわば同じレベルでの構成員というのもちょっと不自然な感じもいたします。そのかわり連合会が直接個々の弁護士に対して指導、連絡していくという面では連合会の協力性というのも出てくるというメリットもあろうかと思います。どちらの方法をとるか、それはいろいろな沿革だとか、それから何と申しましょうか、業界の扱っている仕事にもよるのだろうと思いますけれども、どちらでなければいけないとかいうふうなことはないので、最初に申し上げましたように全く沿革的な事柄だろうと思っております。
 また、司法書士会、土地家屋調査士会におきまして、弁護士会と同じように個々の司法書士、調査士を連合会の直接の構成員にするということがないために不都合があるかという点で考えますと、それはどうもそういう点は余りないように考えております。
#10
○寺田熊雄君 なお、前回ちょっと質問の中に出たつもりですけれども、司法書士会連合会等が大臣の命令に対しては当然従わなければいけないということは、これは議論の余地はありませんね。ただその場合、大臣の命令に対して不服な場合に不服申し立ての方法というのは一切ないことになりますか。
#11
○政府委員(枇杷田泰助君) 登録事務に関しまして大臣の命令を聞く、例えば登録の拒否をした場合に拒否をされた者が法務大臣のところに不服審査の申し立てをする、そこで法務大臣の方がその登録は受理すべきだということで命令をした場合に、それに従わないということはまずないと思います。ただ、それについて連合会の方がかえって法務大臣の命令が不満であるという場合もあるのかもしれませんが、その場合は連合会としては不服の申し立てというのはこの法律では予定しておらないわけでございます。その限りにおきましては上級庁と下級庁とのそういう関係にある、いわばそういうふうな状態を擬制して構成されておりますので、下級庁から上級庁の方に不服を申し立てるということは一般の行政庁でもないと同じように、その不服の道は設けられておりません。
#12
○寺田熊雄君 これは衆議院でも議論になったところでありますが、協会の理事は定款で禁止されない限りは民法五十三条によって協会を代表する資格を持つことは明らかであります。したがって、協会の定款で禁止せられない限りは協会の本来業務である登記関係の業務を理事がその理事たる資格において行うことができるということにならざるを得ないと思うんですね。その場合、その理事が司法書士たる資格を持っておらないと、これは司法書士だけにこの登記関係業務をさせようとする法の趣旨とそぐわない結果を生ずる、そういうことになりますね。法律的にはやむを得ないという結論になるんでしょう。
#13
○政府委員(枇杷田泰助君) 民法の法人関係の規定によりますと、理事は各自業務執行権を持っておりますから、したがいまして協会の仕事である司法書士がすべき事件処理をすることができるということに、民法の方からはそうなりますけれども、その点をただいま御指摘のありましたような問題を解決するために、十七条の七の第二項という規定を設けておるわけであります。これは理事のことを直接規定しておるわけではございませんけれども、「協会は、その業務に係る第二条第一項各号に掲げる事務を、司法書士会に入会している司法書士でない者に取り扱わせてはならない。」ということを規定といたしておりますので、したがいまして、業務執行権を持っている理事であっても司法書士会に入会している司法書士でない場合には、その者に事件処理を取り扱わせてはいけないということになるわけでございます。この規定は、そこも一緒に読み込むというつもりで書いておるわけでございまして、「取り扱わせてはならない。」といういわば事実行為で抑えているというところから、ただいま御指摘のあったような案件につきましても、当該理事が司法書士でない場合には事件処理は自分ではできないということになるわけでございます。
#14
○寺田熊雄君 この第二項の規定というのは、内部規律の関係規定にとどまるか、外部をも拘束するのであるかという点、ちょっと私規定の体裁からは疑問がないわけではないので、そこでお尋ねをしたわけですけれども、衆議院では局長は何か違った結論を答弁しておられるような印象を受けますが、法律的には理事がその職務執行としてやることは不可能かという形で問われますと、それは理論的には可能である、ただし実際にやる理事は司法書士あるいは調査士でなければならないということになろうかと思いますと、何か法律的なものと実際になろうかと思うというのと少しニュアンスはあるけれども、何かあなたの御答弁を読むとどうも今おっしゃったようにはとれない節もある。それであえてお尋ねしたんです。
#15
○政府委員(枇杷田泰助君) 衆議院の法務委員会におきまして同様の問題について答弁申し上げた際に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、法人法の面から見た場合には業務執行権があるのだからそれはできるという形にはなるということを申し上げまして、そしてちょっと申し上げ方があいまいでございましたので、その答弁に引き続いて、先ほど御説明申し上げましたように、十七条の七の第二項の規定で業法の分野から見ればそういうものもいけないということで、十七条の七の二項の規定で禁止をするという措置をとっておりますということをつけ加えて申しまして、ちょっとその際、私もうまく御答弁できなかったので、お読みいただいておわかりにくいかと思うのでありますけれども、少し先のところでその関係を補完した答弁をいたしておると思います。結論的には、先ほど申しましたように、業務執行権を持っております理事であっても司法書士の資格がない者はやはりいけない、取り扱わすことはできないということになろうかと思っております。
#16
○寺田熊雄君 しかし、先ほどの答弁なさったの
はちょうど衆議院のことしの四月十九日の会議録で、最終の会議録なものだからちょっと疑問はないわけではないんで、局長がそういうふうにこの十七条の七の第二項が生きてくる、したがって民法の法人法の規定もこれが修正しているというふうにおっしゃれば、この解釈が恐らく生きてくるから疑問の余地はないと思うんで、それははっきりさしていただければそれでもよろしいが。
 そうすると、非司法書士たる理事は、こういう登記業務関係の事務に関しては法務局に対して協会を代表する資格を持たないというふうに理解すべきですね。登記申請とか、そういう公共嘱託の申請とかというようなこと、嘱託を扱う事務とかいうことで協会が法務局にその手続をとることは不可能だというふう解釈していいですね。
#17
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりだと思います。具体的に申し上げますと、協会が発注官庁の代理人となって登記嘱託書を提出するという場合には何々協会理事何々という名前でやるわけでございますが、そういう名義人にはなり得ないというふうに思います。
#18
○寺田熊雄君 協会ができまして公共嘱託登記をすべて担っていくということは、この法改正の趣旨に大変沿っておると考えるのでありますが、それじゃ、今まで公共嘱託登記を受任してきた個人たる司法書士はどうなるかという問題が当然生じますね。もちろんそれは個人たる司法書士も従来どおり公共嘱託登記を受任し得るということは理の当然ですね。これはそのとおりですか。
#19
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございまして、従来どおり個人として官庁等から事件を受けるということは当然できると思っております。
#20
○寺田熊雄君 ただ、その場合、定款によって社員たる司法書士はある意味で協会と競業関係に立ちますね。定款によって、社員たる司法書士が個人として公共嘱託登記を受任することがあっては困るからそれを定款で禁止するということができるかどうかという一つの問題がありますが、私はできないのじゃないかというふうに思うんだけれども、これは局長の御意見は。
#21
○政府委員(枇杷田泰助君) ぎりぎり法律議論として、そういうような定款の規定を定めた場合に違法で無効かどうかということになりますと、これはちょっと議論があろうかと思いますけれども、私も結論的には寺田委員おっしゃったとおりに一応考えております。これはこの協会は営利法人ではございませんので、競業関係に立って自分の方の利益が少なくなるとかどうとかというふうな商法で考えているような保護法益は余り持っていない団体でございます。
 それからもう一つ、この協会というのは、だれかが社員に加わろうと思ったら正当な理由がなければ拒否できないという仕組みになっておりまして、なるべく会員がみんな入って、みんなで協会を盛り立てていくべきだという、そういうことでこの法律はできているわけです。ところが、個人として仕事をしているものが結局加入できないということになってしまう、もし社員である者が個人で受けたら出なければいかぬということになりますと、先ほど御指摘の個人で受けるということを事実的に制限してしまうということにもなるわけでございますので、そのようなことはこの公共嘱託協会制度を設けるという趣旨からするとおかしいのではないかという気がいたしますので、少なくともそのような競業避止義務を定款で決めることは極めて妥当を欠く、少なくともそうは言えるのじゃないかと思います。
#22
○寺田熊雄君 協会設立の際の原始定款についてはあなた方が設立の許可をなさるわけだから、相当詳細に目を通される。これは当然のことですが、今言ったような、仮に多数者が定款を変更して少数者である個人たる司法書士の競業を禁止するような規定を定款に設けたとすると、これは当然あなた方に対する認可事項というか、あなた方が監督権を行使して、これはどうも望ましくないよというように指導をなさること、これは当然それが可能なんでしょうね。
#23
○政府委員(枇杷田泰助君) 原始定款におきましても、それから定款変更の場合におきましても、私どもはその内容を検討する立場にございますので、ただいま申し上げたような観点からそういう場合には対処する、なお連合会側の方の意見も当然聞くということで処理することになると思います。
#24
○寺田熊雄君 法律的な問題にとどまるけれども、協会から司法書士としての業務の委託を受ける社員、これは委託者である公共機関から見ると協会が代理人、協会から業務を委託された司法書士は復代理人、そういうことになりますね。
#25
○政府委員(枇杷田泰助君) 協会が発注官庁から委託をされる内容に要するに嘱託の代理まで含めた委託をする場合がありますし、また書類の作成だけ委託を受けるという場合もあると思います。その両方の形態の場合に、さらに今度は個々の司法書士の方にその仕事を委託するわけでございますけれども、代理権を付与されている場合に、それをまた個々の司法書士に代理権をまた与えるという形になれば、これはおっしゃるとおり復代理でございます。そうでない書類作成の場合には、要するに再委任が行くというような形になろうかと思います。
#26
○寺田熊雄君 それから、協会から公共嘱託登記業務の委託を受ける司法書士、それが協会から受ける対価たる金の性質はどういうふうに理解しておられますか。
#27
○政府委員(枇杷田泰助君) この契約は契約が二つ成立する関係にあるとまず考えております。発注官庁と協会の間に委託契約がある、そこで報酬が定められる。それから今度は協会から個々の司法書士との間に委託契約がある、そこでまた報酬が決められるということになるわけでございまして、したがいまして、個々の司法書士から見る報酬請求権というのは協会に対してのみあるという関係に立つことになろうかと思います。
#28
○寺田熊雄君 これはそうすると、協会に対して持つ金銭的な請求権というのは、要するに業務処理に対する報酬というだけのことで、それ以外の何物でもないと考えていいんですか。
#29
○政府委員(枇杷田泰助君) 性質的には公共事業などとは関係のない普通の一般国民の方が司法書士の事務所に来て委託される、そういう関係ですね。その一般の国民からもらう報酬と同じ性質のものだというふうに考えます。
#30
○寺田熊雄君 これが利益の配分かどうかという点に関連を持つからあえてお尋ねしたわけだけれども、そういう要素はこの協会設立の趣旨から全くないんだ、つまり協会が公益法人である性格上、利益の配分としての性格は一〇〇%持たない、そういうふうに理解しておられるわけですね。
#31
○政府委員(枇杷田泰助君) 営利法人的な意味での利益の配分というのは、これはない。この協会ができます場合に、社員は相当数の社員が加入することに多分なると思います。その社員が全部が一年間の間に具体的な協会の事件を処理するということはなくて、大きな会におきましては社員のままで事件は何もしないという社員がかなり出てくるのじゃないかと思います。そういう場合にはその社員には何にも行かないわけです。法人の利益配分の理論でいきますと、実際上の仕事をするかしないかにかかわらず社員なら社員として配当があるはずでございますけれども、そういうふうな関係には全く立たない。そういう意味では利益の配分ではない、個々の事件処理をしたことの対価として協会から報酬をもらうという関係だけであるというふうに考えるわけでございます。
#32
○寺田熊雄君 設立される協会の数について衆議院で大変長々しい質問、答弁が繰り返されておるわけでありますが、これは局長が答弁しておられるように、法律的には複数たり得る、しかし運用の原則として各府県一個とする、複数の設立の許可申請があったときは連合会の意見を最大限に尊重して決めますと。局長の答弁の趣旨を一言にして言いますと、そういうことになるんでしょう。
#33
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでござい
ます。
#34
○寺田熊雄君 衆議院における参考人意見、これを相当興味を持って見たわけであります。参議院の方は恐らく会議録ができておらないのじゃないかと思うので、余り勉強することができなかったが、衆議院の参考人意見を見ますというと、これは俣野参考人の意見で、本来発想は一県一つというのできておる、その点は変わりはない、ただ目を翻すと二つの問題がある、一つは独占禁止法サイドの考え方である、つまり一県一個という独占形態であってよいのかどうかという問題が出てくる、それからもう一つの問題は広い地域を持っておる県等においては二つということもあり得るのではないか、それは単に地理的な広さに限らず、公共事業のプロジェクト自体が縦貫道路であるとか、いろいろな具体的な様相を呈したプロジェクトの締めくくりとしての嘱託登記ということが想定できるわけであるので、そういった場合には合理的迅速な体制を整える必要も発注者のニーズにこたえるために必要ではないか、こういった点からも複数という基本であってよいのではないか、あとはその地域地域において司法書士会の指導等によってみんながよく話し合って、一つで十分だというところは一つでやっていくというふうにしてまいりたいと、こういう意見を述べておる。なかなかよく勉強しておられるわけで、この参考人の意見というのは局長が持っておられる意見と一致するわけでしょう。
#35
○政府委員(枇杷田泰助君) 原則的には同じ考え方だと思います。俣野会長とその点について十分に意見交換をしたことはございませんけれども、多分同じ考え方だろうと思います。
 少しあれでございますけれども、一つでなければいけないといいましょうか、一つの方が相当だということは、一つの会の中で二つ以上の協会ができますと、その協会同士がいわば競り合って、そのことが会の中にいわば分裂が生じはしないだろうかというような危惧を述べられる方があります。それからもう一つは、小さな会で二つも協会ができますと、財政とか、経営規模が小さいためにいずれも協会として十分な活動ができない。損害賠償、その他の関係についても出てくるかもしれませんけれども、要するに信頼性のある強固な協会ということに育っていかないことになっては困るというような面が一つであるのが相当だということになるのだろうと思います。
 そういう面から考えまして、また逆に非常に会員数の多い会だとか、地域が非常に広いところだとかというのは、かえってまた一つにしてしまいますと動きがつかないというふうなことが出てこないとも限らないということがあるわけでございまして、そして先ほど申し上げましたような弊害の面については、これはもともと会員が社員になって協会をつくる、設立の申請手続をする場合にも、要するに会員が集まってやるわけでございますから、したがって会の中で自律的に自主的にやれば、そんな弊害があるような形での複数会というものはつくることはないんじゃないか。仮にそういうことが分派的な何かがあってきた場合には、それは連合会とよく相談をして、そういう不合理につくろうとする場合はチェックしようと。
 ただ、本当に合理的に二つあった方が動きやすい、発注官庁側としてもその方が頼みやすいというふうな状況が生ずるかもしれない。そういうことが全く予想されないわけでもないのに法律で一つに縛ってしまうというのは、これはおかしいじゃないかというふうな考え方があるわけです。そういう面で法律では一つだということに縛りをかけませんでしたけれども、自主的、自律的な会の運用の問題と、それから私どもと連合会との意見調整という、そういうことを残しながら、法律の上では複数も可能だという形にしておくことが全く現実に合っておるという結論でこのような形にいたしておるわけであります。
#36
○国務大臣(嶋崎均君) 本日の審議と余り関係のないことでございますが、場所が法務委員会でありますので、とりあえず御連絡をいたしておきたいと思います。
 平沢の人身保護請求につきまして、本日十時に東京地方裁判所が判断をいたしまして、まだ詳細な内容等は承知はしておりませんが、すべての請求は不適当である、拘置されている限り死刑の時効は進行しないというような趣旨で、詳細はまだ書類を取りに行っているというような状況であるようですが、答えから言いますとそういう判断になっておるようでございます。
#37
○寺田熊雄君 今の点は、また一般調査案件でいろいろお尋ねすることにします。
 先ほどの協会の数の問題で、地域が極めて広いところという問題があるわけですね。北海道の場合、例えば地方裁判所も北海道の場合は複数存在する。そういう広大な地域を考えますと多少頭をひねる面も出てきますが、これは局長としてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。これは司法書士会に聞いてみればよかったんだけれども、司法書士会もあそこは一つなのか。そういう点、おわかりになっていたらちょっと御説明を願いたい。
#38
○政府委員(枇杷田泰助君) 北海道には札幌に法務局、それから函館、旭川、釧路に地方法務局がございます。地方裁判所と同じでございますが、四つ局がございますので、司法書士会、調査士会もそれに対応して四つずつございます。したがいまして、今度のこの法律で申しますと、その法務局、地方法務局に対応して協会が一つずつつくられるというような形になろうかと思いますので四つできるわけでございますが、今度は逆に、広さの面では四つ分かれていればいいわけですけれども、発注官庁の方が、北海道庁というのが札幌にあるわけでございまして、ここがいろいろな公共事業の中心で動いております。そういうことからしますと、逆に何か北海道全体のものの発注関係を折衝したりする窓口は一つの方がいいじゃないかというふうな問題が逆にあろうかと思いますが、そこら辺は北海道全体の四つの協会が話し合って、いろいろなことで事実上一つの窓口をつくるというような工夫は多分されていくのではなかろうかと思います。
#39
○寺田熊雄君 なお、司法書士の補助者の問題がときどき議論の対象になります。これは衆議院の会議録を拝見いたしますと、局長の答弁は、一定の人数についての枠を各単位会との間で決めることになっております、一律に法務局長が制限をするというような点は改められているというような御答弁になっておるわけでありますが、この問題は今後設立される協会についてはどういう方針で臨まれますか。
#40
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御指摘ございましたように、司法書士の補助者につきましては、従前は一人一人について法務局長、地方法務局長が認可をするということになっておりましたけれども、それを最近改めまして、規則の二十条というところで、その人数だけを法務局と各単位会との相談で決めて、その枠の中の人数である限りは各司法書士が自由に補助者を置いてその結果だけ届ければいいということになっておるわけです。ところが協会につきましては、これは協会自体が司法書士、調査士ではございませんので、協会それ自体に補助者という概念は直接には持ち込めないと思います。具体的に補助者に当たるようなものといえば職員かと思いますけれども、この間から御説明申し上げておりますように、実際上の司法書士あるいは調査士の業務に当たるような仕事は、また再委任契約で個々の司法書士、調査士にやらせるわけでございますから、したがって、司法書士業務、調査士業務に当たる事務を協会自体でやる、そのための補助者というものは必要がないのじゃないか。
 ですから、むしろ庶務的な仕事を処理する職員が何人か置かれるということになるだけだろうと思います。そして、そういうような職員が置かれた場合に、それが理事の業務執行権の発動だということでやるという場合に使われるという可能性も理論的にはあるわけでございますけれども、そういうふうなことで使うというふうな場合には、これは各会員が協会の内部のことですから目を光
らしておると思いますし、また、会の方からも適切な助言でそういうふうなことをやらせない。よほどの理由がなければやらないというふうな指導を多分するだろうと思います。
 そういうことでございますので、協会の補助者という概念はありませんし、また実質上補助者としての行動をするようなものが出てくることは少ないと思いますし、あったにしても、それは会なり協会内部でのチェックで、無制限に使われるということはないということは処理できるだろうと思いますので、私どもはこの点については特別の規制を加えるというふうな考えは持っておりません。
#41
○寺田熊雄君 司法書士、土地家屋調査士に対しては土地管轄も定めがない。したがって今後設立される協会についても同様と考えていいわけでしょうね。この点をちょっと。
#42
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。個々の司法書士、調査士と同じように、協会についても設立の単位は決めておりますけれども、土地管轄はございませんから隣の県の仕事を引き受けても別に違法ではないということになります。
#43
○寺田熊雄君 なお、従来ありました嘱託登記委員会には解散を命ずることになりますか。あるいは自然に自主的に解散するのを待つということになりますか。
#44
○政府委員(枇杷田泰助君) これは私どもが命ずるとか命じないとかというふうな関係にもともと立っておりませんで、事実上できている人格なき社団と申しましょうか、そういう集まりでございますが、この協会ができますと、いわばこの協会の母体である委員会は、これは当然なくなるべき性質のものでございます。したがいまして、両連合会でも協会ができるにつれて公共嘱託委員会というものは自然消滅させるというつもりで考えておられますが、ただ、従前から受けている公共嘱託の事件があるわけです。その事件が処理の途中であるという場合の処理方法で、協会が設立される日までに受注している事件があります。それがまだ事件が終わっていないという場合には残務処理といいますか経過的な問題は残りますので、そういう関係をきれいにやるようにして、そして事実上その委員会というものは解散といいましょうか、消滅といいましょうか、そういうふうなことに連合会、各単位会の指導でやっていくというふうに聞いております。私もそうすべきじゃないかと思っておるわけであります。
#45
○寺田熊雄君 これは最後にお尋ねをすることになりますが、不動産登記法の十七条の図面の作成ですね。これは従来からも衆参両院の附帯決議でその整備の促進がしばしばうたわれておる。今回も私ども附帯決議事項としたいと考えておるわけでありますが、これについてはよほど局長も、また大臣におかれても相当なやはり決意と工夫とをもって対処していただかなければいけないと思うんですが、どちらからでも結構ですが、大臣と局長とのこれについての決意を伺いたいと思います。
#46
○政府委員(枇杷田泰助君) 法務局等も登記事務に関しまして従来からいろいろなたくさんの問題を抱えておりますけれども、そのうちで十七条の地図が整備されていないということは、これは実質的な意味で制度として重要な欠陥であるというふうに私ども考えております。したがいまして、この十七条の地図の整備については力を入れてやらなければならないと思っておりますが、現在その十七条の地図の整備の主力は国土調査法による地籍調査の結果を送っていただいて、それで整備をしていくということでございます。
 この地籍調査も国土庁の方でかなり力を入れてやっていただいておりますけれども、かなりまだ年数がかかる。それからまた国土調査の対象地域が実質的には農山村地域というのが主力でございます。登記所の方で実際に急いで必要とするというのは都市及びその周辺地区、開発されていく地区でございます。そういうふうな地区につきましては早く地図を整備いたしませんと地主層が変わってしまう、地質が大変更を来すというふうなことでございます。そういうふうなところの地図の整備を早くしなければならないということで、私ども焦るような気持ちを持っておるわけでございます。
 この点につきましては法務局の方で独自につくるということも考えなければいけないと思って、ごくわずかずつでもやっておりますけれども、御承知のとおり現在の法務局ではそのような大がかりな事業に取り組むべき人的あるいは予算的な余裕がございません。したがいまして、今後おかげさまで登記の特別会計制度が創設される、また一方、事務の抜本的な改善としてのコンピューター化が進められるということに伴いまして、法務局に力がついてまいりましたならば、法務局みずからの力でもその十七条の地図の整備の方に力を将来向けていくべきであろうというふうに考えておりますが、何にいたしましても国土庁の地籍調査について今後とも強力に推進していただくことを期待するとともに、私ども自身でも力をつけて一刻も早く十七条の地図を整備するということにこれからは懸命の努力を続けていかなければいけないという考え方でおります。
#47
○国務大臣(嶋崎均君) ただいま民事局長から説明をしたとおりでございます。
 我々も今度のコンピューター化等の施策によりまして、その人員をどういうように処理をするのかというようなことも、さきの法務委員会で御質問がありまして、その際にもそういう趣旨のことを述べておきましたのですけれども、今後とも地籍調査の進捗につきまして工夫を重ね、国土庁にも大いに協力をしてもらうことが第一でありますけれども、我が方としてもそういう余裕ができましたら、その充実に振り向けるような気持ちでぜひ対処をしていきたいというふうに思っておる次第でございます。
#48
○寺田熊雄君 ちょっと今落としましたが、その問題で土地家屋調査士の活用という点はどうなりますか。
#49
○政府委員(枇杷田泰助君) 先ほどもちょっと触れましたように、法務局では現在極めて小規模でございますけれども、十七条の地図づくりをやっております。この際は土地家屋調査士会の全面的な協力を得まして、そして、いわば法務局と土地家屋調査士会とが一体となって一筆一筆の筆界確認をした上で、測量関係は調査士の方にやっていただいて図面も作製していただくという形で行っておるわけでございます。したがいまして、今後の十七条地図を法務局が主体となってつくるという場合には現在より以上また調査士会の御協力を得て、むしろ一体となってやっていくべき、そういうものだというふうに考えております。
#50
○寺田熊雄君 ちょっと時間が余りましたので、大臣に、先ほど大臣が御親切に私どもに報告してくださった問題の確認をしますが、結局平沢貞通氏の人身保護法上の請求が東京地裁で却下されたということをおっしゃったわけですね。
#51
○国務大臣(嶋崎均君) 詳細は私自身も見ておりませんけれども、平沢に係る人身保護請求事件の裁判結果として、速報としてここに入っておるところによりますと、本日の十時に、決定の主文といたしましては、第一に「本件各請求をいずれも棄却する。」、二番目に「手続費用は請求者らの負担とする。」ということになっておりまして、決定理由の骨子といたしましては、御承知のように、法務大臣、検事総長、宮城刑務所長及び仙台拘置支所長に出ておりますのですけれども、に対するところの「人身保護請求は、拘束者の地位にないものに対する請求であって不適法であり、棄却すべきものである。」という趣旨でございます。それから二番目に、「八王子医療刑務所長に対する請求については、死刑の確定裁判を受けた者がその執行を前提として拘置されている場合は、死刑の時効は進行せず、従ってそのような状態で三十年を経過したとしても時効は完成しない。」というのが決定理由の骨子として報告をされたものになっておる次第でございます。
#52
○寺田熊雄君 ありがとうございました。終わり
ます。
#53
○橋本敦君 それでは法案に返りまして、前回に続いて質問させていただきます。
 きょう私は十九条、いずれも両士会に関係をいたします十九条に関連をして質問したいと思うのでありますが、まず司法書士法の十九条を読みますと「司法書士会に入会している司法書士でない者は、第二条に規定する業務を行つてはならない。ただし他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」、こういう規定がございます。調査士法の方を見ますと、同じ十九条の規定がありますけれども、非調査士等の取り締まりとして「調査士会に入会している調査士でない者は、」同じように「第二条に規定する土地又は家屋に関する調査、測量、これらを必要とする申請手続又はこれに係る審査請求の手続をすることを業とすることができない。」、原則はこういうふうに決まっているわけです。司法書士法の場合は「ただし他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」というのが入っておりまして、これは調査士法の方には入ってないのですが、この違いはどこにあるんでしょうか。
#54
○政府委員(枇杷田泰助君) これは特段の理由があるというふうには考えませんで、土地家屋調査士法も他の法律で特段の定めをして、この場合には調査士法の十九条の規定を適用しないというふうに規定をされればそれは当然生きるわけでございますので、実質的には全く変わりがない。ただ、それを明文の上で書いたか書かないかというだけの違いだろうと思います。
#55
○橋本敦君 そうすると、実質的な大きな違いはないという御趣旨ですが、そうすると両法の整合性からいって書いておいてもよかったのではないかという意見もまたあるんですが、いかがですか。
#56
○政府委員(枇杷田泰助君) それは書いておいてもいいわけでございますけれども、この司法書士法ができた当時、土地家屋調査士の業務とダブるような関係にあるようなものがその際にはなかったということが特に規定としてうたわなかったことだろうと思います。
#57
○橋本敦君 現時点では書いておいてもいいわけですか。
#58
○政府委員(枇杷田泰助君) 現時点でもそう明記をしなければならないという、まあ協会に問題があるような業法があるとは考えませんけれども、はっきり書けばそれは書いた方が明確といえば明確だと思います。
#59
○橋本敦君 司法書士法の十九条の関係で、それでは「ただし他の法律に別段の定めがある場合」というこの「場合」は現時点ではどういう法律でどういう定めがあるということですか。
#60
○政府委員(枇杷田泰助君) 例えば弁護士法などがそうだと思います。
#61
○橋本敦君 それについては調査士法の十九条で、弁護士の場合は「この限りでない。」と書いているわけですね。ですから、どっちからいっても同じなんで、両方の整合性をこの際はっきりしてもよかったのではないかと一つ気がついたので申し上げたということです。
 そこで、私がきょうこの問題でお聞きするのは、そういう条文の整合性はその程度でいいんですが、この十九条は職域の確保と職務の公正を社会的に保障する上で厳格に私は守られねばならない大事な規定だ、こう思っております。したがって、この十九条第一項違反については両士法とも罰則をもって厳しく規律しておるわけです。実際にこの十九条一項違反で刑罰に処せられたというような事例は多いんでしょうか、ごくまれなんでしょうか。
#62
○政府委員(枇杷田泰助君) 皆無ではございませんけれども、まれのように承知しております。
#63
○橋本敦君 この問題で私は一つ解釈としてはっきりしておきたいと思いますのは、日本土地家屋調査士会連合会の会長から昭和五十七年六月二十二日付で民事局長に伺いが出されまして、その内容は「測量士等が業として他人の依頼を受けて、不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査・測量をすること及び地積測量図等を作製することは、土地家屋調査士法第十九条第一項本文の規定に該当するものと解しますが、」いかがですかという照会がなされまして、五十七年九月二十七日に民事局長の回答で、法務省民三第六、〇一〇号ですが、「照会のあった標記の件については、貴見のとおりと考えます。」という回答がなされていますが、これは現時点でも変わりございませんか。
#64
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいま御指摘のとおりの回答を民事局長が出しておりますし、現在でもその考え方には変更はございません。
#65
○橋本敦君 この点で私は、前にも国会で議論になったんですが、補償コンサルタント、これを業とする企業のあり方が問題になるのではないかという危惧を抱いておりますので、この点の疑義をただしていきたいと、こう思うわけであります。
 この補償コンサルタントというのは、どういうことで社団法人日本補償コンサルタント協会の設立を認め、またどういうものとしてこれを扱っておるのか、どういう業を内容とするものを補償コンサルタントというように見ておるのか。建設省お越しだと思いますので、ちょっとその点御説明いただきたいと思います。
#66
○説明員(嵩聰久君) お答えいたします。
 補償コンサルタント協会は昭和五十二年七月十一日に設立認可しております。そして、この当協会は用地補償業務の増大等に伴いまして用地補償業務の発注量が非常にふえてきているということで、その業務内容もまた複雑多様化してきておるわけでありますが、そういう用地補償業務の一翼を担う補償コンサルタントの健全な発展を図るという観点から設立されたものであります。したがいまして、その業務内容を見ましても、研修であるとか講習会の開催というのが第一に掲げられているわけであります。そして、もとより公共事業は建設省だけが所管しているわけではありませんけれども、用地補償業務について補償コンサルタントに業務を発注している企業者が数多くある中で、建設省が一番多いというようなこともございまして、関係省庁とも相談の上、建設大臣の認可法人として設立したわけであります。
#67
○橋本敦君 その点に関連をして、建設省はこの補償コンサルタントの登録規程を設け、登録制度を公証的におつくりになってきたようですが、これの趣旨はどういうところにございますか。
#68
○説明員(嵩聰久君) 補償コンサルタントの登録規程というのは昨年設けて十月一日から施行しておりますけれども、この補償コンサルタント登録規程というのは建設大臣告示でありますから、建設省の立場でといいますか、建設省の用地補償業務を円滑に遂行するためにという立場で設けられたものであります。端的に言いますれば、建設省所管事業につきまして企業者が何らかの形で用地補償業務について委託に出すという場合に、どういう業者が適正な補償業務を遂行できるかという発注者としての立場の目安にするというようなことが一番大きな目的かと思います。
#69
○橋本敦君 現在これに登録されている会社は、この社団法人の補償コンサルタント協会に全部入会している会社ですか。
#70
○説明員(嵩聰久君) 正確な数字は今持ち合わせておりませんけれども、協会員以外でも相当数登録されております。
#71
○橋本敦君 そうしますと、協会に入ってなくても補償コンサルタント業務を扱う者で登録を適当と認めた者は入れる、こういう建前になっているわけですね。
#72
○説明員(嵩聰久君) そのとおりであります。
#73
○橋本敦君 そこで、この補償コンサルタント登録規程、これは建設省がおつくりになっているのだが、その第二条を見ますと「補償コンサルタントのうち、別表に掲げる登録部門に係る補償業務を行う者は、この規程の定めるところにより、建設省に備える補償コンサルタント登録簿に登録を受けることができる。」と、こうなっておりまして、この別表に掲げる登録部門、これを見ますと、一つは土地調査部門というのがございまして、土
地の権利者の氏名、住所、土地の所在、地番、地目、面積、権利の種類、内容の調査並びに土地境界確認等の業務というのがあるわけです。この業務は、これは実は土地家屋調査士法が十九条で土地家屋調査士の資格を有する者の専業と定めているその業務と競合している部分が入っているのではないでしょうか。
#74
○説明員(嵩聰久君) この土地調査部門の業務内容、今先生がおっしゃったとおりでありますけれども、ここで言っている例えば「土地の権利者の氏名及び住所」というのは、登記簿で確定できる範囲とか、そういうことでございまして、いわば土地家屋調査士法なりあるいはほかの測量法とかいろいろな法律があるかもしれませんけれども、そういうもの以外のものと我々は理解しております。
#75
○橋本敦君 そこのところが一つは問題になってくるので、それ以外だというように建設省は理解しておられますけれども、実際にこの登録を受けた会社あるいは社団法人の補償コンサルタント協会に入っている会社、それが今おっしゃったような範囲にとどまっているかどうかということになりますと、これは具体的事実に即してよく検討しなくてはならぬ問題があると思うんですね。
 例えば、ここに社団法人日本補償コンサルタント協会の会員名簿というのが関東地区ということであるわけですが、これでこの協会に入っている正会員のそれぞれの業務を見ますと、登記事務はもちろん、土地家屋の調査ということを会社の特色もしくは業務としてはっきりうたい上げているのがこれでは随分たくさん見受けられるわけです。そういうことで、今度は民事局長にお伺いすることになりますが、こういうコンサルタント補償を業とする会社が、それぞれその業務内容として、会社の特色もしくは業務として登記事務を含めあるいは土地家屋、こういったことの調査、そういうことを公然とこの名簿にも書いているこういう状況で、十九条を厳格に適用する立場から見れば問題があるのではないかとまず私は直観をしたんですが、いかがでしょうか。
#76
○政府委員(枇杷田泰助君) 補償コンサルタントというのが具体的にどういう仕事をするのかということが私どもよくわかりませんけれども、具体的に司法書士法あるいは土地家屋調査士法の十九条に違反するような業務を取り扱ったとすれば、それは業法に違反することは当然でございます。
#77
○橋本敦君 例えばこの七十一ページを見ますと、これは社名は株式会社のある測量会社ですが、これでコンサルタント補償業務をやりますと。その業務以外にもいろいろ業務をやりますが、その中には公然と「各種登記事務全般」と、こう書いているし、会社の特色の業務として「土地測量設計、権利調査、登記事務全般、」、こういうふうに書いているんですね。だから業としてやっていることを公然と言っているわけです。またここで宣伝もしているわけですね。だから、こういうことになりますと、これは協会に入っている会員でない法人がまさに第二条に規定する業務をやることを公然と掲げているということでありますから、実際にやっている業務については厳重に調べなければならぬという疑いがあるわけであります。
 そこで、建設省はこの十九条と違う範囲のものだと、さっき私が指摘した測量関係の登録部門の内容はそうだとおっしゃいますが、果たして登録されている会社が登録されて建設省がおっしゃった範囲の業務にとどまっているのか。今私が指摘したような日常業務として十九条一項に禁止されていると見られる可能性のある業務をやっているということが現にあるのに、断定的に言えるかどうか。これはひとつそれぞれ厳密に調べていただきませんと、建設省が登録を受けつけて社会的にこの会社を公証してやるというような状況の中で、実は十九条があいまいになっていったら建設省も責任あるわけですから、今後のこの登録の問題について、つまり補償コンサルタントの登録を受理するという関係については十九条との関係の業務を会社としてやってはならぬことははっきりしているんですから、その点は厳格に見きわめていくような指導をされたいと思うのですが、いかがですか。
#78
○説明員(嵩聰久君) この補償コンサルタントの登録規定によりまして登録を受け付ける場合には一定の実務経験というものを必要といたします。それで、その場合にこの登録規定に基づく土地調査部門の業務、これがその実務経験現在七年ということになっておりますが、七年を超えているということが必要なわけでありまして、単に土地家屋調査士の経験が七年以上というのではこれは足りないと思っております。ですから、そういう観点から、登録を受け付ける場合にはその辺のチェックは十分にしていきたいと思っております。
#79
○橋本敦君 民事局長に今度は別の面からお伺いをしたいわけですが、法人として登記あるいは調査業務を十九条の関係でなし得るのは、先ほどお話があった特別に法で定められた場合に限る。これは十九条の解釈で当然ですね。調査士法でその規定はないけれども、解釈上当然だということになります。今度できる協会はこの法で言う特別の法の定める場合に該当するということは明白ですか。
#80
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。
#81
○橋本敦君 したがって、こういう補償コンサルタントを業とする会社が、ただし書きで言う法の規定に該当するということは一切ないということも、これまた明白ですね。
#82
○政府委員(枇杷田泰助君) そのとおりでございます。
#83
○橋本敦君 そこで、この補償コンサルタント業務について重ねて突っ込んで伺いますが、この正会員の名簿を見ますと今指摘したような登記事務あるいは土地家屋の調査を業とすると公然と書いている。今度は業務執行者を表記しているのですが、その中に有資格者として司法書士の方あるいは土地家屋調査士の方、こういうのをこの会社は業務執行者として入れているわけです。
 そこで民事局長に伺いますが、会社として登記事務あるいは土地家屋の調査をやることは十九条違反になってできないのだが、その会社が業務執行者ということで一人か二人の有資格者を入れておるという体裁をとっておれば、その会社が業としてそういう仕事を委託を受けてやることは、これは違法性が阻却されてしまうのでしょうか。
#84
○政府委員(枇杷田泰助君) 仮に具体的な事件処理を有資格者がやったからといいましても、その法人自体の業務としてやる以上は、これは法人は違法な行為をするということになると思います。
#85
○橋本敦君 十九条を厳格に解釈するなら、局長のおっしゃった解釈は正しいと私も思うんです。
 そこで、この補償コンサルタントの多くの会社がそういう実態を持っているので、違法な業務をやる疑いがあるということが明らかになりましたから、これに対する今後の指導、規制というのを私は政府としては強めてもらわなくてはならぬ。ところが、この補償コンサルタント会社に対する関係で言えば、これは法務大臣が所管しているわけでも何でもありませんし、この補償コンサルタントの社団法人の協会の関係で言えば、その認可は建設大臣がお持ちでございますから、法務大臣は直接お持ちでないという、こういう厄介なことがある。
 そこで法務大臣にお願いしたいことは、国会でこういう論議がなされ、十九条の厳格な遵守という点からいって、建設省も相協力して、補償コンサルタント会社が違法な状況にならないように適切な指導等について、建設大臣にも法務大臣の立場からひとつお申し入れをしていただいて協議をお願いしなくてはならぬなと私は思って質問したわけですが、いかがでしょうか。
#86
○国務大臣(嶋崎均君) この問題については事務的にも建設省と連絡をしているやに聞いておりますけれども、今後その処理が適正に行われるように十分注意をして運営していかなければならないというふうに思っております。
#87
○橋本敦君 重ねてその点について、今度協会が
設立をされまして、公共登記の嘱託等があるいは調査等が協会にということが今度の法案で一つの大きな目玉でありますから、これを育てていくという意味から言いましても、補償コンサルタントの業務が十九条違反の疑いがあるまま広がって、そして公共の事業の関係で公の嘱託登記が依然としてこっちへ来ないというようなことになってはいけませんので、今おっしゃった協議は一層各関係省庁へのこの問題について周知徹底方の中の一つとしてもぜひお願いしたいと、こう思うわけであります。
 この十九条に関連をしてひとつ民事局長のお考えを聞いておきたいと思うんですが、司法書士の皆さんなりあるいは土地家屋調査士の皆さんがそれぞれの職務の十九条の具体的な実践として、社会的にも職域の適正な確保をおやりになる自主的な運動というのは、私は当然尊重すべきだと思うんですが、そういう意味でここに一つ、これは昭和五十六年四月二十四日ですが、東京土地家屋調査士会の大田支部と東京都大田区が協定書を結びまして、区の業務の発注につきましては、土地家屋調査士業務については大田支部の会員に発注する業務委託、これは原則として大田支部が責任を持って会員を大田区に推薦をする、それに対して大田区の方が業務を発注するという、そういうようにして相互に指導監督に共同の責任を持って当たりましょうと、こういう協定を結んでいるわけですね。
 これは公共事業の登記を今度は協会にと、こうなりますから、今度は協会が主体になってこれをやればよろしいわけですが、今後司法書士会なりあるいは土地家屋調査士会なりが、その協会が設立された場合に、協会として公の団体に対してこういう協議を進めて一定の合意に達して、業務の円滑な運営を公共嘱託登記について一層広めていくというようにするのもいいことではないかと思ってこの協定を見ておるんですが、局長のお考えはいかがでしょうか。
#88
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまの協定は具体的には私存じませんでしたけれども、協会ができた後はそのような形のものが官公署と協会の間にできるということが望ましい、この法律をつくった趣旨に沿うことではあろうというふうに考えます。したがいまして、発注官庁側の方に協会側がいろいろとその協会ができた趣旨、内容等について説明をし、理解を求めるという努力をしなければならぬと思いますし、また会の方も従来から、ただいまの大田区の例で引かれましたように、発注官公署等の方との連絡を持っておる場合がかなりありますから、会の方も側面的にそういう面について協力をしていくというふうな体制がとられるべきものだと思います。
#89
○橋本敦君 わかりました。終わります。
#90
○柳澤錬造君 今回のこの法改正によって公共嘱託登記協会というのができるわけであります。できる以上は司法書士会の方とこの協会の方がうまくいかなければいけないと思うんです。だからそういう観点から二、三の点をお聞きしてまいるわけですが、第一には、今もお話出ているんですけれども、十七条の七と十九条に「司法書士会に入会している司法書士でない者」、こういう表現が出てくる。司法書士会というのは司法書士の資格を持った人が入るところだと思うんですけれども、そこのところはどうしてこういう表現が使われるんですか。
#91
○政府委員(枇杷田泰助君) 御指摘のように、この表現はちょっと読みにくい点があろうかと思います。読み方によりましては司法書士会には司法書士でない者も入会しているということを前提にしたような書き方だというふうに読まれる方もあろうかと思うのでありますけれども、これは一昨日の委員会でも御説明いたしましたように、司法書士の中に司法書士会に入会している者と入会していない者とがある。その中で司法書士会に入会している司法書士、それを取り上げまして、それでない者という意味で書かれているわけでございます。
 非常に読みにくいといえば読みにくいのでありますが、現行の十九条でそのような表現を使っておりますので、新しくつくりました十七条の七の二項でも同じような表現を使ったわけでございますが、要するにこの十九条で申しますと、司法書士でない者は司法書士業務をやってはいけない、そして司法書士であっても司法書士会に入会していない者は業務をやってはいけないという内容でございます。ちょっと表現として、ただいま申しましたような、そういう観点を適切に短く表現をするという言葉がなかなか見当たらないという結果がこういうことになっておりますが、おっしゃるとおり、読み方によっては非常に奇妙な表現だということは、これは御指摘のとおりかと思います。
    ─────────────
#92
○委員長(大川清幸君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、石本茂君が委員を辞任され、その補欠として柳川覺治君が選任されました。
    ─────────────
#93
○柳澤錬造君 そういうふうにわかっていただけたらよろしいので、あえて私もこれ直せとは言わぬけれども、この次法改正やられるときには、やっぱりだれが読んでも理解ができるようなそういう文章にしていただきたいと思います。
 それから次には、この十七条の九ですが、「司法書士会は、所属の司法書士が社員である協会に対し、その業務の執行に関し、必要な助言をすることができる。」、これちょっと仮定の話になるが、こういう場合にこういうことをやって、そうして協会の運営をうまくやるようなことを考えているんだという、どういうケースのことを考えてこの文章を入れたのかということをお聞きしたいんです。
#94
○政府委員(枇杷田泰助君) これはいろいろなケースがあり得ると思いますが、一番大きく作用してまいりますのは報酬の関係だろうと思います。先ほども寺田委員の御質問にお答えしたところでありますけれども、発注官庁から協会が仕事を受けます。受けるときに、そのいわば対価、報酬を決めるわけでございますが、と同時に今度はその受けた仕事を個々の司法書士、調査士にまた再委任で仕事を分配いたします。そのときにまた個々の司法書士、調査士に対して報酬をどうするかということを決めるわけです。その個々の司法書士が受ける報酬は、これは原則的には会則で決めていることになるんですけれども、会則ではこういう場合にはちょっと一律に決められませんものですから、会長の承認を受けて決めてよろしいと、こうなっているわけです。そういう実質的な内容のものでございます。
 したがいまして、その個々の会員に対してどういうふうな報酬を払うかということと、それが決まりませんと今度は発注官庁に対してどういう金額で受けるかということが出てこないというふうな、そういう実際上の連動があるわけです。したがいまして、報酬を決める場合に会の方とよく連絡をとって、そしてまあこの辺ぐらいならほかの会員、個人として受けている者もありますから、そういう者とのバランスその他からいってどうだろうかというふうな意味での助言は会は積極的にしなければならないし、協会の方でも会の方の意見を聞いて動かなければ実際上動けないということがあると思います。そのほかに、ほかの分野につきましても助言を受けるということはいろいろ想定されるわけでございますが、ただいま申し上げました報酬関係が一番重要なことになろうかと思います。
#95
○柳澤錬造君 わかりました。
 それと似たような関係で、この法律の改正によって協会ができる。それを関係の方面に周知徹底させると思うんです。それを法務省がおやりになるかどこがおやりになるかわからないんですが、法務省なりそのおやりになるところが、こういう協会ができましたといってそのPRも当然やらなければいけないけれども、その協会のPRばかりやっちゃって、それで、今まででも司法書士個人そのものが公共嘱託のそういうものを扱ってきて
いたケースがあったわけだから、そういうものを否定するものではないんですよというふうな、そういうことも含めて、何というんですか、周知徹底をさしていただきたいが、いかがなものですか。
#96
○政府委員(枇杷田泰助君) この協会をつくるということにいたしましたのは、個人でやっているのが不適当だから法人化をするという意味ではないわけでございます。むしろ司法書士、調査士という専門家を実質上通らないで公共事業関係の登記嘱託をするということに問題があるというところにこの法改正の主眼点があるわけでございます。したがいまして、おっしゃるとおり、個人がやってもいいんだというふうなことは、これは当然の前提でございますので、そのことは発注官庁側の方にも誤解を招かないようにしなければならないだろうと思います。そういうことは、各発注官庁等と協会が接する際にもそのことは協会の方も十分に説明をすべきだと思いますし、また会の方も、先ほど橋本委員の御質問にもありましたように、かなり発注官庁と現在でも交渉があるわけでございます。そういうところへの周知徹底にもそのことは十分に含んだそういう態度で臨むべきだということは当然必要かと思っております。
#97
○柳澤錬造君 ありがとうございました。
 それで、あわせて、一昨日のときも官公署の公共嘱託登記で金額の大きいものなんかについては数人なり数十人で受託団をつくってやってきたというケースがありましたという御答弁がありました。それで、その形は個人受注の形や共同受注の形やいろいろあったけれどもという御答弁があったんですが、したがって、協会をつくった、できるならばそれは局長答弁なさっているように、みんながここへ入ってください、それでこの協会でうまくいくようにという、そういう形でその協会に入ってやるのもよろしい、それからまた個人でもって言うならば合同事務所みたいなものをつくって、そしてまとまってそういうことをやっていくこともよろしい、いろいろの方法についてできるだけやりやすいようなことを考えているんだというふうなことをこれからもお考えもいただきたいし、そういうことの道も開いていただきたいと思うんですが、その点いかがですか。
#98
○政府委員(枇杷田泰助君) 個人的に受注するやり方についてはいろいろな形態があろうと思います。先ほど来申し上げておりますように、この法改正の趣旨は今司法書士、調査士の手を経ないでやっているその事件をなるべく専門家の手を経てやるようにということがねらいでございますので、おっしゃるとおり、いろいろな形態でやるということもこれは違法ではございません。一番実際に合ったようなやり方でやるということは、これは現在どおり許されてしかるべきだと思っております。
#99
○柳澤錬造君 ぜひそのことも考えていただいて、みんながやりやすいように考えていただきたいということをお願いをしておきます。
 最後に、これはこの資料を私見ていて、司法書士、土地家屋調査士の登録した人や、それから登録の取り消された方というのが過去十年間ずっとあるわけなんですが、この十年間トータルしてみますと、司法書士の方では登録された方が六千百十五名おるわけなんです。同じ間に取り消された方が四千二百十名、登録の六八・九%が数字の上でいくと取り消されている。それから土地家屋調査士の方になりますと、この十年間に登録された方が六千八百九十九名、取り消しされた人が六千百七十五名、八九・五%。
 それで、御年配になって例えば亡くなったとか、それからそういう年配でもって仕事がしたくなくなるからもう私はやめますわというふうな格好での取り消しはわかるわけですけれども、そうでなくて、言うならば司法書士なり土地家屋調査士なりの本来の果たすべき任務を果たさないで、何というんですか、組織なんかで言えば除名されるとか、いろいろそういう処分の意味でもって取り消しというふうなのがこの中にどの程度いるのかということがおわかりなら御説明いただきたいんです。
#100
○政府委員(枇杷田泰助君) ただいまお示しの数字で新規登録にかなり近い数字の登録の取り消しが行われておりますのは、お話しございましたように、これは死亡とか廃業とかということによるものが大部分でございます。そして、その登録の取り消しのうち何か非違行為がありまして有罪判決を受けて、そして欠格事由が生じたということで取り消された者は、この十年間で、たまたま同じ数字でございますが、司法書士についても土地家屋調査士についても二十六名ずつでございます。そのほか、有罪判決ではございませんけれども懲戒処分で取り消されたというのは、これはちょっとごく最近の数字しかございませんけれども、司法書士が五十七年、五十八年、五十九年いずれも二名ずつ、調査士が五十八年に一名、五十九年に二名と、過去三年間ではそうなっております。なお、今の懲戒処分の場合には、五十八年と五十九年に一名ずつは兼業者が非違行為を起こして両方の取り消しを受けているということになっております。
#101
○柳澤錬造君 数の上からいけば、不正行為といいましょうか、そういうことでの取り消しというのは私それほど多い数ではないと思います。だから、そういう点であればそう心配したことはないと思うんですけれども、ともかく一昨日も言いましたように、司法書士の方は試験を受けた人の二%しか合格をしてない。それから調査士の方になっても三%ぐらいしか合格してない。いろいろ試験があるけれども、これほど厳しい試験というのは私ないと思うんです。だから、それだけこの司法書士なり土地家屋調査士なりの権威が高いというか、そういう高い質を要求しているんだと言えばそういうことになると思うんです。
 同時に今申し上げたように、今度合格して登録している数と消えていく数が余り変わらない。もう司法書士なり土地家屋調査士なりというものは、大体数が今の日本の現状からいって、そんなにふえてもみんなが仕事がなくなっちゃう、今程度のところがもう飽和点だと言えば話は別ですね。しかしながら、これもこの間の資料を正確にきょうももらいましたけれども、十年前と比べてもかなり件数はふえている。
 ですから、そういう点に立ちまして、ここでもって今すぐこれどうしてくれとはお答えは求めませんけれども、この試験のあり方とか、そういう登録するについてのそういう物の考え方というものを何らかの機会のときにもう一回やはり検討して、どういう方法がいいのかということをお考えいただきたいということ、これは要望だけ申し上げておきますが、いかがですか。
#102
○政府委員(枇杷田泰助君) 司法書士会、調査士会におきましても、この制度を支えていく人たちをどのように選抜していくか、それからまた実際上の需要に対してどういうふうにこたえていくべきかという観点から、試験のやり方等については常時検討を加えていかなければならないと思います。ただいま御指摘のような視点でこれからもそういう点については十分な配慮をしながら試験制度その他を運用してまいりたいと思います。
#103
○委員長(大川清幸君) ほかに発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#104
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#105
○委員長(大川清幸君) 挙手総員、全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、寺田君から発言を求められておりますので、これを許します。寺田君。
#106
○寺田熊雄君 私は、ただいま可決されました司
法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合の各派及び各派に属しない議員中山千夏君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について努力すべきである。
 一 日本司法書士会連合会及び日本土地家屋調査士会連合会の運営については、その自主性を高めるよう引き続き検討すること。
 二 司法書士及び土地家屋調査士の業務の専門性にかんがみ、その資質・能力の向上を図るため、両連合会及び各単位会の行う研修に協力すること。
 三 公共嘱託登記司法書士協会及び同土地家屋調査士協会の設立許可に関しては、両連合会の意見を尊重して行うこと。
 四 公共嘱託登記の協会制度がその目的を達成するよう関係諸機関にその趣旨の周知徹底を図ること。
  五 不動産登記法第十七条の地図については、更にその整備を図ること。
  右決議する。
 以上でございます。
#107
○委員長(大川清幸君) ただいま寺田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#108
○委員長(大川清幸君) 挙手総員、全会一致と認めます。よって、寺田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、嶋崎法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。嶋崎法務大臣。
#109
○国務大臣(嶋崎均君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
#110
○委員長(大川清幸君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#111
○委員長(大川清幸君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
   午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時三十九分休憩
     ─────・─────
   午後一時三分開会
#112
○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#113
○寺田熊雄君 午前中に大臣から御報告のありました平沢貞通に係る人身保護請求事件が東京地裁で棄却された件であります。今いろいろと承りますと、一遍の趣旨は、死刑執行のために拘置せられている以上は判決確定後三十年たっても時効は完成しないということにあるようであります。この決定に対してまず大臣の御所感を伺いたいと思います。
#114
○国務大臣(嶋崎均君) 東京地方裁判所は平沢死刑囚の解放をめぐる人身保護請求事件につきまして、請求者らの主張をすべて排斥し、死刑の確定判決によって拘置されている以上、刑の時効は進行しないとの明確な判断を示し、本件請求を棄却する決定を下したのであります。この点につきましては、かねてから平沢問題について時効をどういうぐあいに考えるかというようなことについて私もたびたび委員会等でも質問を受けてお答えをしておったところでございまして、そういう趣旨が認められたというふうに判断をしておるわけでございます。そういう意味で、機会あるごとに我々が説明をしてきた趣旨が正当なものであるということを裁判所の方で是認された点につきまして、我々自身から見まして非常に意義のある決定であるというふうに思っておる次第でございます。
#115
○寺田熊雄君 この問題が国民の注意を引きましたゆえんのものは、結局刑事訴訟法四百七十五条の第一項が「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」、第二項は「前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。」という規定がありますが、その規定が全く空文に帰しているというところに原因があるのではないかと思うのであります。この規定は刑事訴訟法の改正時に占領軍が、死刑の言い渡しを受け、その判決が確定した者を長くそのままに置いておくことは残酷である、いつ執行されるかという恐怖にさいなまれる者をいつまでも置くことは大変残忍なことだ、だから早期に執行すべしというアドバイスなり要請がありましてそういう規定が生まれたようであります。これはアメリカの国民の意識と日本の国民の意識の多少そこに食い違いがあることを感ずるのでありますけれども、もとはと言えばやはりこの規定が守られなかったというところに原因が潜んでおるようであります。
 もちろん、ただし書きがありまして、再審請求なり恩赦の請求があればその間は執行を停止できるという規定がありますので、多少それに便乗した傾きはないではないのでありますけれども、しかしやはりこの規定が無視されたことは間違いないのでありますが、この点については大臣はどういうお考えでしょう。
#116
○国務大臣(嶋崎均君) 死刑が一度執行されればなかなか回復しがたい重大な結果を招くことは御承知のとおりでございます。たとえ死刑の判決が確定した後でありましても、刑の執行命令権者としての立場から、確定記録等を十二分に精査いたしまして慎重に死刑の執行の是非を決定すべきことは当然のことであろうというふうに思っております。その点は今度の判決の中でもそういう点に触れておるところがあるわけでございまして、そういう意味で今後とも十二分にその死刑執行の是非を判断していく場合に、裁判記録等というようなものを十分検討して判断をしていかなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
 特に、御承知のように平沢の場合につきましては、過去十六回の再審が行われておる、今十七回目の再審が行われておるというような状況であるわけでございまして、その結論が出るまでの間執行を差し控えるというような考え方で過去推移をしてきたものであろうというふうに思っております。また一方、御承知のように恩赦も今四回、五回目が出ておるというような状況でありますので、そういう点を踏まえて判断をしなければならないというふうに思っております。
 いずれにしましても法務大臣としましては死刑の確定判決が出ておるという事実、その事実は十分尊重をしてやらなければならないことはもちろんであります。そういうような観点からこの死刑問題ということを私自身としても深刻に考えておるわけでございまして、過去もそういう再審なりあるいは恩赦というような事実があったというようなこともあって今日に至っておるというふうに思っておる次第でございます。
#117
○寺田熊雄君 この問題は私は住法務大臣のときにもお尋ねをしたんですが、大臣は死刑の執行命令に判を押されますかとお尋ねしたときに、記録をよく読んでその結果判断せざるを得ませんというお答えがありました。大臣としてはどういうふうにお考えでしょう。
 それからまた、この刑事訴訟法の規定には四百七十九条に「死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るとき」、あるいは「女子が懐胎しているとき」、これは死刑の執行を停止するという規定がありますね。平沢氏の場合は御承知のように満九十三歳を迎えたようでありますが、老齢のときには刑の執行を停止するというような規定はもち
ろんありませんけれども、九十三歳の高齢ということ、それから判決の言い渡し後三十年たって、事件に対する社会感情の変遷であるとか融和があるかどうか、そういう点も考慮なさいますか。
#118
○国務大臣(嶋崎均君) 御承知のように、法務省の仕事を考えますと、犯罪事件があった場合に、その調査から立件、さらには裁判の運営にいろいろな意味で協力をし、助力をしていく。さらにその判決があった場合には、その判決に従いまして刑を確実に執行していく。そういう中で、できるだけ更生が図られるような人たちにはその更生を図っていくというような一連の仕事が私はあるのだろうというふうに思っております。
 事、死刑の問題につきましても、多くの裁判過程の中で慎重な論議が重ねられて死刑の判決が出ておるわけでございますから、それを受けて適正に執行するというのは私は法務大臣の仕事として当然な仕事であるというふうに思っておるわけでございます。ただ、この判決が出ましてからもいろいろな再審その他というような問題がありまして、その推移等を慎重に考えて、そして死刑の執行というものを判断していかなければならぬし、そういう意味で裁判記録の内容等につきましても十二分に精査をさせていただいて判断をしていかなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
 また、世上一般もこの死刑問題についていろいろな論議があることは私は承知をしておりますけれども、日本の場合においては、やはり死刑というものについてそれを存置すべきだという意見が大多数でございますし、そして範囲その他の問題については、その範囲を少し縮小すべきであるとかいうような議論はもちろんありますけれども、しかし死刑自体はどこまでも残していかなければならぬというような議論も多いようであります。私はそういうような基本的な考え方でこの問題を考えていきたいと思っております。
 ただ、今御指摘のようになりまして、この三十年という日月、そして、そういう中でいろいろな判断があって今日までまいりましたと思うのですが、最近、私は非常に残念だと思うんですが、この問題に冤罪事件じゃないかというような報道等が行われ、それをめぐっていろいろな論議があることもまた承知をしているんです。しかし何しろ過去十六回にわたる少なくとも再審の中では、これはもう平沢が犯人であるということが決定して今日まできておるというような経過もあるわけでございます。したがいまして、この問題についてはやはり我々の何というか、こういう問題の取り扱い方の難しさというのがあると思いますが、十二分に理解をされていないというところがこの問題をいよいよ深刻な状態に持ってきた一つの理由であるというふうにも考えておるわけでございまして、これからそういう問題の処理については法務省としてもやはりきちっとした考え方で対処していかなければならぬと思います。
 それからもう一つの問題、なるほど九十三歳にもおなりになっておられる今日でございます。八王子の医療刑務所に移したということもいろいろな背景がありまして、たまたまこの人身保護請求が出ましたということとあわせて、そういう移送というか、八王子の刑務所に入っていただいたというような経緯もあるわけでございます。しかし、私たちはそのことによって平沢問題をどう処理するかということについて、例えば心神喪失の状態にあるからどうだとかいうような問題は全くありませんし、本当に高齢に達したということで異常なときにどう対応できるかということを基本に置きまして、それにたまたま今度の人身保護請求の問題があって、東京におられたらぜひ審尋をしたいというようなお気持ちもあったということがプラスになりまして、そういうことを考えたというような次第でございます。
 いずれにしましても、そういうような状況でございますので、なお十七回、四回、五回の恩赦というような事態がありまして、今度の人身保護請求の問題は、これ時効問題を中心にして議論をされておるわけでございます。これらの結論をよく見ながら判断をさしていただきたいというふうに思っておる次第でございます。
#119
○寺田熊雄君 今大臣のお答えの中にありました八王子医療刑務所に平沢を移監したという問題ですが、これは満九十三歳の老齢だという、その平沢の健康を重く見ての措置でしょうか。今大臣がおっしゃった裁判所が平沢を審尋したいという意向があるやに聞いたことも多少配慮したということのようでしょうか。
 それと、もしそういう本人の健康をおもんぱかっての措置だということになりますと、やはり今後も平沢氏を八王子医療刑務所にとめ置く、そこで拘置するということになるのでしょうか。その点お考えをお尋ねしたい。
#120
○国務大臣(嶋崎均君) 八王子の医療刑務所に移監したことの理由でございますけれども、何しろ高齢でございますから、今、自身、新聞等で報道されているように、非常に健全な物の考え方をとっておられる御老人ですから、老齢に伴うところの体の衰えというのはもちろんあるわけでございますが、そういう中では割合しゃきっとした状態に立っておられるということは事実でありますけれども、しかし一たび何かぐあいが悪い事態が起きた場合に、宮城刑務所仙台拘置支所の中でそれが対処できるかということになりますと、なかなか難しい状態にあるというふうに私は判断をしておるわけでございまして、そういう意味でなるべくそういう異常な事態が起きた場合のこともぜひ念頭に置いておかなければならぬ。というのは、実は着任以来たびたびこの問題は質問を受けておりまして、そういうことの経過の中で考えておったことであるわけでございます。
 そういう場合に、何の原因もなしにそこから八王子の医療刑務所に移すということになりますと、仙台の拘置支所から医療刑務所に移されたこと、そのこと自体がまたいろいろな変わった判断を生む可能性もあるし、またいろいろな意味での御議論の種になるかもしれない。そういうことを実は我々自身また非常に心配をしておりまして、そういうときにたまたま人身保護請求の問題が出てまいりまして、そういうことと合致をして処理するならば、報道等はともかくとして、割合余り異常な判断も出ないときに移せるのではないかというようなことを並行的に考えて、八王子の医療刑務所に移したというのが現実であるわけでございます。
#121
○寺田熊雄君 よくわかりました。今後も、やはりそうしますと相当これはもう八王子医療刑務所に拘置するという御判断ですね。
#122
○国務大臣(嶋崎均君) その点につきましては、本日の裁判がありまして、聞くところによると最高裁に特別抗告をされたというような状態が現に続いておるわけでございまして、当面の問題は、そういう状況の中で推移するであろうということは当然のことだと思うんですけれども、それから先、どういうぐあいに判断をするかということでございますが、今まで申し上げた事情でおわかりいただけると思いますけれども、そういう九十三歳にも達せられた人に対してどうするかということが基本的に我々考えた問題点でありますから、やはり医療刑務所に当面ずっといていただくということになるのだろうというふうに思っております。
#123
○寺田熊雄君 最後に、恩赦の出願なり申し出が今あるやに聞いておりますが、これに対してはどういう措置をとっておられますか。
#124
○政府委員(筧榮一君) 御承知のように、現在第四回目と第五回目の恩赦が出願されておるわけでございます。中央更生保護審査会で現在審議が続けられておりますので、その推移を見守っておるというのが私どもの立場でございます。
#125
○寺田熊雄君 それでは、今の平沢問題はこれで質問を終えます。
 次は、指紋押捺問題についてお尋ねをしたいと思うんですが、指紋押捺問題ではいろいろ新聞関係で報道がなされまして、外務省はこの指紋押捺制度の改正に積極的であるかのようなふうにうかがわれる。警察庁は絶対反対の趣旨をこの委員会
でもおっしゃっておられる。法務省はどちらかというと消極的であるけれども、しかしそこに多少の配慮をするかのごときニュアンスが感ぜられる。そういうふうな感じを受けるのですが、まず外務省にお伺いしたいんです。韓国外務省の実務者との会談で、韓国は強く制度の根本的解決を求めたというふうに報道せられておりますが、そのとおりでしょうか。
#126
○政府委員(有馬龍夫君) 二十三日の両国のアジア局長の間での非公式の意見交換におきましては、韓国側が先般の指紋押捺の運用改善措置について、これは十分なものではないと思っている、そして早急にこのようなこと、指紋押捺を行うというようなことはやめてほしいという要請がございました。
#127
○寺田熊雄君 法務省が主務官庁でいらっしゃるので、法務省としてはこの指紋押捺制度を廃止するということはもう全然考えていらっしゃらないわけでしょう。ところが外務大臣の方は、何か今回の、つまり指紋押捺の方法についての方針で満足しているというわけではないというような趣旨のことをおっしゃっているような報道がありますね。それはどういうことを意味するのか。つまり指紋押捺を原始登録のときの一回きりにするようなことも考慮しているという趣旨なのか。その辺のところ、ちょっと法務省と外務省にお気持ちを伺いたいと思うんですが。
#128
○国務大臣(嶋崎均君) 指紋問題も、外国人の皆さん方の国内におけるところの地位なり、あるいは待遇問題につきましては、いろいろな意味でその制度をどういうぐあいにするかというのは今後慎重に考えていかなければならぬ問題であろうと思いますが、とりわけ、こういう問題を考えていく場合に、国内的な事情だけじゃなしに、やはり国際的な点についても十分配慮をして考えていかなければならぬことは私当然必要なことだというふうに思っておるわけでございます。
 しかし、御承知のように、前々も御答弁申し上げたかと思いますが、この外国人登録法の改正、これは昭和五十七年に行われたわけでございます。そのときに、ある意味で幾つかの緩和措置か改善措置というのですか、講じたことは事実であるわけでございます。非常に残念なことには、その直後からどうも指紋問題というのが論議になって今日に来ておる。非常に私も残念なことだというふうに思っておるんですけれども、そういうことに絡みましていろいろな御議論があるということ、そしてまた既に御承知のとおり、昨年の九月に在日の韓国人の皆さん方の地位あるいは待遇の問題につきまして、今後引き続き改善に努力をするというような、何というか、言葉が入っておる経過もあったわけでございます。そういうことで、やっぱりこの制度というものは何とか解決していかなければいかぬというふうに思い、また国会の中でも制度的あるいは運用的な面で改善を検討していきたいというつもりでおるということを御答弁申し上げておったわけでございます。
 ところが、御承知のように、この問題はいろいろ各省庁間での協議事項もあります。また、いろいろな意味での総合的な検討を行った結果、なかなか制度的な改正というのは難しいなというような事態になりました。しかし御承知のように、この七月一日から大量切りかえの時期を迎えるわけでございます。何か工夫がないものかというようなことで、いろいろ研究した結果、今月十四日の閣議で決定いたしましたように、今までの回転指紋のやり方を平面指紋に直す。それから世界どこの国もやっていないけれども、特殊の紙を使いまして、そして色をつけないで、特殊な薬品をちょっとつけていただいて、上へやっていただければうまく指紋がとれる。そういう意味で心理的な負担というものを非常に緩和するというような措置を講ずる。加えて、この制度をめぐりまして地方自治団体あたりからもいろいろな御議論もありますから、何しろこの七月一日から実施ですから、ぎりぎりそういうときの運用の基本方針というものをあわせて出さなければならぬということで、今度の改正を行ったわけでございます。
 その改正を行ったときには、御承知のとおり、十四日の閣議に少なくとも政令の改正につきましては審議を経なければならぬわけでございますし、また、審議の過程の中で、ここまでたどってきた経過を御説明申し上げて、閣議で一致した結論として、こういう方向でやろうということで整理をつけていただいたわけでございまして、いろいろな御議論が外に出ているようでございますけれども、私はその点についてはもう閣内全く一致した考え方であるというふうに思っておるわけでございます。
 それからもう一つは、これは非常に残念なことでございますが、前に冒頭に申し上げましたように、今後制度的、運用的な面で改善を加えましょうというようなことを発言したことが、実は例えば川崎の例にありますように、人道的な理由というのが一つついております。これは私は何というか一指の、しかももう平面指紋に直るわけでございますから、その人道的理由というのも人それぞれの御解釈はあるかと思いますが、我々はそういうことに余りかかわった問題じゃない、本当に外国人登録法の運用上必要なことであるというふうに判断をしておりますが、そういうことが一つの理由。
 それからもう一つは、どうも制度の改善をやるようだから指紋はやらぬでもよろしいというような御判断をされておるわけでございます。私はやっぱりそういうことでは非常に困るので、やはり今度の切りかえはこういう体制できちっとやっていく、そういうことによって少なくとも市区町村になりますからもう三千五百近い皆さん方にいろいろ御協力をしてやっていただかなければならぬわけでございますから、そういう意味合いもありまして通達とあわせて処理をしたというのが実態であるわけでございます。
 この方針については、そういう経過もありますので、当面この制度をいじるとか、あるいは運用改善をそれ以上に何か緩和をするというようなことは考えていないというのが実情でございます。
#129
○寺田熊雄君 今大臣のお答えの中にありました自治体が刑事訴訟法の告発義務の履行を拒む、これは訓示規定でありますので制裁をもって強行を迫るという趣旨の規定ではないようでありますが、それからまた、最近は局長通達を守らない、指紋押捺拒否者にも外登証を交付するという自治体が出てきたというので、私は自治体が果たして完全に局長通達に従うだろうかということを考えて、きっとこれは従わない自治体も出てくるよと思っておりましたら、果たせるかなもう既にそれが出てきた。これをやっぱりどうするのかということなのですが、これを私は是が非でも従わせるということは現行法上は不可能ではないだろうかと考えておるのであります。
 これは地方自治法によりまして機関として国家の機関から委任を受けてやる業務でありますので、地方自治法の百四十六条、国の機関としての長に対する職務執行命令、この規定によって法務大臣の命令の実施を強制し得るかどうかという問題に帰着するわけであります。ところが、法令の解釈によりますが、私の感覚ではちょっと無理じゃないかと思うんだけれども、きょうは自治省にも来てもらっておるし、それから入管局長も来ておられるので、そういう自治体に対してどう対応するか、法務大臣の命令なり入管局長の通達を完全に実施させる方途はあるのかどうか。その点ちょっとお伺いしたいんですが。
#130
○説明員(小川善次郎君) お答え申し上げます。
 先ほどお話ございましたように、外国人登録法に基づく事務は法務省の所管でございまして、国の機関委任事務として市町村長が処理しているというものでございます。したがいまして、当該事務についての市町村長に対する指導につきましても本法の所管でございます法務大臣の権限に属するという性質のものでございます。自治省といたしましては、しかしながら自治体におきまして混乱が生じるというような事態にならないように法務省において適切な措置がとられることを期待いたしておりますし、法務省にもお願いしている現
状でございます。
#131
○政府委員(小林俊二君) 先生御指摘の通達に関する一部市区町村の反応につきましては、けさ新聞報道で承知したばかりでございますが、既に関係の市区町村から釈明の連絡があったということも聞いております。まだ通達が到達したばかりで、その具体的なやり方について協議を要する面があるというようなことであったようでありまして、方針としてこの通達を無視するとか従わないとかいったようなことではないという説明があったというふうに聞いております。いずれにいたしましても今後の対応ぶりといたしましては、事実を確認するということがまずございます。それとともに、その背後にある意図あるいは物の考え方を確認するということもございます。したがいまして、これに対応するに当たっても慎重な措置あるいは対応ぶりをもって処するつもりでございます。
 しかしながら今のお尋ねは、その通達内容について市区町村がこれに従わない場合に地方自治法に基づく国の監督権が及ぶかどうかという一般論であろうと思いますので、一般論といたしましては、今先生が言及された外国人登録事務そのものの取り扱いにかかわる部分につきましては地方自治法に基づく国の監督権が及ぶものと私どもは解釈いたしております。その点におきまして告発の問題とはかなり趣を異にするというふうに考えております。何となれば告発そのものは機関委任事務の一部であるということは非常に言いにくい状況でございますので、ということは刑事訴訟法に基づく公務員の一般的な義務であるということに基づく事象でございますので、その点にかなりの差があるということでございます。
 いずれにいたしましても地方自治の原理は憲法上の基本原則でございますので、地方自治体の事務に直接介入するということにつきましては、強制的な監督権を発動するということにつきましては十分な慎重さが要求されることは当然でございます。したがって、直ちに強制措置に移行するということはあり得ないことだろうと思います。その前にとるべき措置はいろいろあるというように考えておりますけれども、究極的な可能性といたしましては、先生の御質問に対するお答えは肯定的であるべきものと考えております。
#132
○寺田熊雄君 局長のおっしゃるように、告発義務はこれは機関委任事務であるかないかということを別として、刑事訴訟法学者は一致してこれは訓示規定だということを言っておりますので、訓示規定であるのにそんな制裁を加えるというようなことは法の予期しないところであると考えますので、これは局長のおっしゃるように別物に見るべきだと思うんです。
 それから、それ以外の指紋押捺しない場合の措置としていろいろのことを局長通達でおっしゃっていますね。これは守らないということになると、今局長は地方自治法の百四十六条の規定の適用があるとおっしゃったが、この点ちょっと多少私ども疑問があるので、法制局としてはどういうふうにお考えでしょうか。
#133
○政府委員(前田正道君) 御指摘の通達に関連してということでございませんで、あくまで一般的な問題としてお答えさしていただきたいと存じます。
 御指摘の地方自治法百四十六条は国の機関としての長に対します職務執行命令に関する規定でございます。そういたしました場合に、問題になっております告発義務というものは機関委任事務そのものには含まれないというふうに理解しておりますので、私どもといたしましては告発の履行につきまして地方自治法百四十六条に基づきます職務執行命令を発することはできないのではないかと、消極に考えております。
#134
○寺田熊雄君 私もそれは同感なんですが、告発義務じゃなくて、今度は入管局長が指紋押捺拒否者に対しては即時に登録証明書を交付するな、これに対しては三回にわたって説得の機会を与えて、その説得に三カ月間応じない場合には指紋押捺拒否という印を登録証に押捺して交付するというような、一片の趣旨はそういうことなんですが、そういうような通達を出していらっしゃる。入管局長そうですね。それを守らない。それで、もうすぐに登録証を交付してしまう。指紋押捺拒否という印も押さないというふうに通達を守らない自治体が出た場合に、この地方自治法の百四十六条の規定の適用があるかどうかということをお尋ねするわけです。入管局長は適用になると、こう肯定的におっしゃるが、あなたは御専門でいらっしゃるので、お伺いしたいと思います。
#135
○政府委員(前田正道君) ただいまの御指摘の問題は、地方自治法の百四十六条の問題の前に、同法の百五十条の問題かと存じます。地方自治法の百五十条は、御承知のように長の処理いたします国の事務に対します主務大臣の指揮監督権を定めている規定でございます。したがいまして、この機関委任事務についての指揮監督権の内容をなすものであります限りにおきましてはそのような指導はできるだろうと。ただ、今通達に関連してのお尋ねでございますが、通達の中身をよく存じませんので的確なお答えはいたしかねますけれども、その指導のあり方として合理的なものであるかどうかということに帰着することになろうかと存じます。
#136
○寺田熊雄君 だけれども、この百五十条は、都道府県にあっては主務大臣、市町村にあっては都道府県知事と主務大臣双方の指揮監督を受けるということで、指揮監督をするということはもちろん国家委任事務である以上当然でありますが、さて、その指揮監督したところを守らなかった場合に、これを強制する方法があるかどうかの問題なんです。
 これは御承知のように百四十六条では、府県知事にあっては主務大臣が高等裁判所に対して当該事項を行うべきことを命ずる裁判を請求する。高等裁判所が命じた場合に、なおかつそれを実施しないと、実施しないことの確認の裁判をさらに求める。そうして、なおかつ実施しない場合には総理大臣が罷免権を行使する。その市町村にあっては都道府県知事が内閣総理大臣と同様の罷免権を発動するということになる。その規定なんですね。それがまさに適法であるかどうかということをお尋ねしたんですが、もし御準備がなければ、それは次回でも結構なんですが。
#137
○政府委員(前田正道君) 当該問題が国の機関委任事務に関します限りにおきましては、御指摘のように、地方自治法の仕組みといたしましては百四十六条等の職務執行命令がかぶっていくということになると思います。
#138
○寺田熊雄君 これはどうも私も入管局長のおっしゃったように、しかく明確に法律論で、局長は事実上そういうことをやるということは希有のことであるとおっしゃったのか、そう考えられないとおっしゃいましたが、法理論として局長は肯定なさいましたね。私はそう肯定し得るかどうかについて多少の疑義を持っておりますけれども、きょうは法律問題はこの程度にしておきます。
 ただ、一つだけお尋ねしたいのは、一回限りの押捺ということにせよという議論があります。これは局長の制度改革論の場合、大臣は先ほど前回指紋押捺方法を変更したこと以外には今考えておらないとおっしゃいましたね。じゃ、その一回限りにするということも局長の構想の中にはないわけですか、あるんですか。
#139
○政府委員(小林俊二君) 一回限りにするということに伴ういろいろな問題点がまたあるわけでございます。その問題点につきましても今日までいろいろ検討はされてまいりました。
 例えば一回限りにいたしますと切りかえ交付された登録証明書には指紋がなくなってしまう。したがって時日の経過とともに交付されておる登録証明書のほとんどに指紋がないという状況が生ずるわけでございます。そのことから生ずる問題点というものもございます。それからまた、切りかえ交付のために出頭した人間が、既にその者として登録されておる人物と同一であるか否かということにつきまして、そこで指紋を押させないわけでございますから指紋をもって確認することができ
ないということにもなるわけでございます。そういった問題点について今日まで検討を行ってきた結果、法改正は行うことはしないという結論に達したわけでございます。
 したがいまして、現在そのような構想があるかとお尋ねでございますれば、そういう構想は現在のところないというふうにお答えする以外ないと思います。
#140
○寺田熊雄君 それじゃ、指紋の問題はこれで終えます。
 次に、靖国の問題をお尋ねしたいんですが、これは現在藤波官房長官の私的諮問機関である閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会、これが昨年の八月に発足して今報告書の起草を急いでおられるようでありますが、これがそもそもこういう問題を生じたのは、一昨年七月に総理が違憲でないという法的根拠を打ち出してほしいということを党に要望したことが発端であるというふうに報ぜられておるわけであります。そして自民党の靖国神社問題小委員会は公式参拝を合憲とする見解を昨年四月に正式に決定したということであります。事ほどさように、しきりに従来の総理大臣以下閣僚の公式参拝は違憲ではないかという疑いを否定し得ないという従来の内閣の見解、これは法制局によってサポートせられておるわけでありましたが、その見解が揺らぐのではないかという懸念を私どもは抱いておる。
 しかし憲法二十条の三項、宗教法人法の二条、靖国神社規則の三条等を子細に観察して検討してみますというと、これはもう明らかに戦争に殉ぜられた人々を祭神としてお祭りしておる。そしてそれについて「神道の祭祀を行なひ、」「祭神の遺族その他の崇敬者を教化育成」して「神社の目的を達成する」というような靖国神社規則に基づいて行われておる儀式である。そういうものを宗教の儀式でないと宗教を超えたもののように言うこと自体が非常におかしなことで、いわんや憲法の規定の解釈を政治的な事情から曲げていくというようなことは許すべきでないと私は考えるのでありますが、法制局としては従来の法制局の見解を法の番人としてしっかりと守っていかれる決意なのか。その点いかがですか。
#141
○政府委員(前田正道君) 閣僚の靖国神社公式参拝の問題につきましては、ただいま御指摘のように、国民の間にもいろいろ議論のあるところでございますし、また現在ではいわゆる靖国問題懇談会で種々御議論をいただいておるところでございます。当局といたしましてもこういった意見や議論に耳を傾けながら、この問題につきましてさらに勉強を続けてまいりたいと思いますが、現在考えておりますところは、先ほどお示しの二つの政府統一見解がございまして、これは現在も変更されておりませんし、私どもも現段階においてはこのような考え方に立っております。
#142
○寺田熊雄君 そうしますと、今までの政府見解というのは閣僚等の公式参拝についてはなお違憲の疑いを否定し切れない、違憲の疑いを持っておるということ、今そのことを部長はおっしゃったわけでしょう。
#143
○政府委員(前田正道君) 昭和五十五年十一月十七日にお示しをいたしました政府統一見解は、国務大臣の靖国神社公式参拝は「このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。」、こう示しているわけでございまして、この考え方は現在でも維持しております。
#144
○寺田熊雄君 法務大臣もやはり従来の政府の公式見解を正しいとお考えでしょうね。
#145
○国務大臣(嶋崎均君) 基本的にはそう考えておる次第でございます。
#146
○寺田熊雄君 じゃ、その問題はもう終わります。
 次に、宇都宮病院の石川文之進被告人に対する判決がことしの三月二十六日にありました。この判決書を読んでみますと、確かに私どもとしましてはただただ驚くほかはないわけで、判決の認定した事実によりますと、無許可の病棟をつくる、無資格者を採用する、しかもこれはやむを得ずしたのではなくして、利益を上げるために給与の低い無資格者を積極的に採用した。そうしてその法定充足率に至っては五十八年の十一月には三八・七%に達した。有資格者は六十三名、無資格者五十九名、そして法定数に必要な不足者がなおかつ四十一名あるというようなことの事実もあったようであります。しかも被告人の月収は五百万円、被告人と家族に一億数千万円の役員報酬を支払っていたというようなことも判決にうたわれておるわけであります。
 そして、この中に精神医療施設の適正規模はせいぜい三百床程度であるというようなこともうたわれておる。ところが、この宇都宮病院は一千床にも達しておったというのであります。そういうようなことからもう乱脈をきわめ、百五十名の入院患者を院内業務に使役しておった。ごくスズメの涙ほどの報酬でそういうことをしておった。また患者に患者を診察させる。そして患者が患者を診るというのはおかしいという抗議をしますと、そしてその院長の命令を拒否いたしますと、拒否すれば退院させないと言って強制しておった。それから、患者に自己の打つゴルフボールを拾わせるような私的なことにも使っておった。死体解剖を無資格者にさせる。そうした一連の不正事項に対して証拠の隠滅をはかる。ただただこれは驚嘆のほかはないのでありますが、こういうものを長く放置しておったということの厚生省のやはり責任というものは私は大きいと考えておるわけです。
 その後、府県にいろいろ通牒を発していらっしゃるように、その後の御努力は私も認めざるを得ないと思いますが、それまでの監督行政といいますか、これは極めてやはり責任を感じていただかなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。――これは局長に出るように言ったんだけれども、局長は出ないのか。
#147
○説明員(小林秀資君) 保健医療局長は、この委員会と並行する社労委員会で原爆法の審議をやっておりまして、局長はそちらに出ておりますので、私、精神保健課長がかわって御説明したいと思いますが、いかがでございましょうか。
#148
○寺田熊雄君 では、しようがないですが。
#149
○説明員(小林秀資君) 宇都宮病院事件を踏まえまして、これまでの精神衛生行政の責任はないのかというおただしでございますけれども、我々としては今回こういう事件が起きたことは大変残念なことである、このように考えておる次第でございます。それをもちまして昨年の六月に三局長通知を出しまして、今都道府県に指導の徹底を図っておるところでございます。
#150
○寺田熊雄君 残念だというような弁明だけでこれは済ませ得る問題じゃないですよ。
 あなた方がもうちょっと人権問題について真剣にならないと国際的な批判を浴びざるを得ないわけで、既に今回障害者インターナショナル、DPIという略称で呼ばれている人権委員長のジム・ドナルド氏が来ておるでしょう。「日本政府は患者の人権を守る立場に立っていないように見える。」という調査結果を国連人権小委員会に提出するというように言われておる。このドナルド氏は厚生省の精神衛生行政に対して「政府は病院の現場で人権を守りながらやっていると言うが、個人の自由が制限されているのに患者の訴えを聞く病院から独立した審査機関もない。日本政府は人権を守るという立場に立っていないように見える。医師が患者の病状を悪くするといって弁護士にも会わせようとしない。国際的に見て驚くべきことだ。」というようなことも言っておられるわけです。なお、アメリカのNGOの国際人権連盟が日本の精神障害者の取り扱いや精神衛生行政が世界人権宣言や国際人権規約に違反していると国連人権小委員会に告発したこともありますね。
 一体こういうふうな国際的批判を受けるということは、ただに厚生省の医療行政担当の方々の恥辱であるばかりじゃないんです。日本人全体が弱い者を守らない、この人権というものに対しては無感覚だというふうな誤解を受けざるを得ないでしょう。これはあなた方の責任だ。日本人の恥辱を招くような行政であってはいかぬわけで、残念
だというような簡単なことで済ますことじゃない。もっとあなた真剣にならなければいかぬ。どうですか。
#151
○説明員(小林秀資君) 厚生省としても真剣に反省をいたしております。二度とこういうことのないように最善の努力をしたいと思っております。
#152
○寺田熊雄君 それから、ただ都道府県を叱装レ撻するだけでなくして、こういう外国の機関の批判も十分あなた方は受けとめていただかなければいけないけれども、きょう、あなた方のおっしゃる都道府県知事に対する通牒ですか、これいただいて、これは大変結構だと思う。結構だと思うけれども、外国の人が言うように、病院から独立した審査機関というようなものがもしあれば、これは随分人権を守るのに役立つのではないかと考える。これはどうです。こういうことをやるようなお気持ちはないんですか。
#153
○説明員(小林秀資君) 今、先生のおただしはDPIのジム・ドナルドさんが御指摘になった点だと思いますけれども、私どものところとしては、今のところ第三機関の設置というようなことについてまで検討いたしておりません。現行法を適正に運用することによって患者の人権は、どの程度までかちょっとそこまではっきり申せませんけれども、相当今よりも改善できると私は思っております。そして、精神衛生法第三十八条に患者の行動制限に関する条文がございますけれども、そこにつきまして各病院における対応がいろいろばらばらでございます。そういうことから、厚生省では今入院患者の扱いにつきましてガイドラインの検討をいたしております。特に重点は通信、面会、それから作業療法、そういうところに問題を当てましてそのガイドラインの作成を現在やっているところでございます。
#154
○寺田熊雄君 あなたの言われた通信、面会、それがもう極めて大事である。要するに患者が不当な取り扱いを受けたときにそれをやめさせるとか、それに対して抗議をするとか、そういう手だてが今ないわけですね。それがもし弁護士に連絡できる、友人に連絡できるということになれば、これは大変そのことが防げるわけで、何よりもその通信連絡の方法を確保するということをまず守らせるようにしてほしい。これはそういうことをひとつ約束してもらえますか。
#155
○説明員(小林秀資君) 通信、面会の自由に関しましても、精神病患者さんを取り扱っていらっしゃる先生方でいろいろな事例がございます。例えば電話をフリーにいたします。そういたしますと、患者さんがその電話を使って、例えば警察署なり消防署なり、いろいろなところに電話をかけることも可能になってまいります。したがいまして、完全な自由ということまでについて、精神障害者を扱っていらっしゃる先生方の御意見を聞いてみないと、そこまで完全自由化ということについては今の段階ではお答えできませんけれども、現在の一部の病院に見られるような過度の制限、そういうことの行われないように、そして患者がその人権が守れるような形での通信、面会の自由の拡大について最善の努力をしてみたいと考えております。
#156
○寺田熊雄君 人権擁護局長もこれをやはり自己の管轄内の仕事だというふうに受けとめて、こういう国際的な批判を招くようなことがないように側面から努力していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
#157
○政府委員(野崎幸雄君) 精神病患者として病院に収容されておられます方々は、みずからの判断能力にも十分なところがないということもありまして、不当に待遇をされても、なかなかそれを訴えるすべを知らない、またすべを持たないというような場合が多うございます。もし仮にそのような状態にかこつけて不当な待遇が病院でなされるとすれば、それがゆゆしき人権侵犯であることは明らかであります。宇都宮病院の事件が発生しまして以来、私どもはその事件の推移をずっと見守ってまいったわけでございますが、ただいま厚生省の方からもいろいろ御答弁がございましたように、三局長通達が出され、その治療等については相当の改善がなされておるというふうに承知をいたしております。また、その行為の中で目に余る者につきましては既に刑事裁判手続がとられまして、院長については先ほど先生から御指摘ありましたように有罪の判決もあっておるわけであります。
 このような事態が起きましたことについては、先生が今御指摘になられました体制といいますか、メカニックといいますかにも問題があるというふうな指摘もございますけれども、まず何よりもその制度がうまく運用されていなかったということに第一の原因があることは明らかであるのでありまして、私どももまず所管官庁におきましてそれが的確、適正に運用されていくよう、よく監視を続けていきたい。また、先日、国際機関の方々も私どものところに参られまして、いろいろお話しもいたしました。もしこれらの点につきまして今後研究をして、しかるべき適正な手段として何か改善措置を考えることができますれば、また所管の官庁にそれを申し上げることも考えていきたい、かように考えておるところでございます。
#158
○寺田熊雄君 その問題はこれで終えますから、よく局長にあなたから言っておいてください。
 次は公安調査庁の活動の問題でありますが、これは社会新報の記事ですが、ことしの四月二十六日、労働者、市民三百人を乗せた「日本海・アジア平和の船」というのがソ連、北朝鮮、中国へ友好の旅をした。そのときに法務省九州公安調査局調査第二部第二課上席調査官玉利幸一郎という人が久留米市に住む一女性にさまざまな調査を強制したという事実が報道されておりますが、こういう上席調査官なる人物がおることは間違いないでしょうか。まずそれから伺います。
#159
○政府委員(田村達美君) ただいまお尋ねの上席調査官が九州公安調査局に勤務していることは間違いございません。
#160
○寺田熊雄君 その玉利調査官がこの平和の船に参加した女性に対して調査を求めたのは、北朝鮮の実情を調べて報告してほしい、社会主義の国はいいところしか見せないけれども、北朝鮮には貧しいところがいっぱいあるはずだから、特にそういうところを注意して見てきてほしい、これは法務省の依頼であり、日本政府の依頼と受けとめてもらっていい、この件では警察も動いておると言って、この女性を怖がらしたというのであります。この女性はこの依頼を断ったようでありますが、こういう調査を依頼したことがあるんですか。
#161
○政府委員(田村達美君) 事実関係の点でございますが、ただいま先生から御紹介いただきました記事の内容で、私どもの調査の結果とかなり違っている点がございます。
 例えば調査を強要したというような趣旨の記事になっておりますけれども、そういう強要した事実はないという報告を受けております。それから接触の事実についても記事の記載ございますが、三回ぐらいの接触のようになっておりますけれども、私どもの報告を受けた結果でございますと五月十三日の一回だけ電話をしたと。一回電話をしただけということで、かなり事実関係が違っておりますので、結論と申しまして、私どもはこの当該調査官が当該女性に働きかけましていろいろ調査依頼を、調べるように強要したというふうには考えていない次第でございます。
#162
○寺田熊雄君 これはやはり玉利調査官が言ったように公の職務行為ですか。
#163
○政府委員(田村達美君) これは職務行為でございます。
#164
○寺田熊雄君 強制したかどうかという点は、調査官の方では強制はないと思っておられるかもしれぬが、受ける方は強制されたというふうに受けておるわけで、あなた方が強制したということを自認することはちょっとないだろうということは私も思うんだけれども、そういうふうな感じを国民に与えることも好ましいことではないし、なお、公安調査庁はこういうような外国国民の生活状況まで調査する権限というのはあるんですか。
#165
○政府委員(田村達美君) 先生の御承知のとおり
と思いますが、公安調査庁は破壊活動防止法に規定しております破壊的団体、この調査をしております。この破壊的団体の調査の過程におきまして、この団体の例えば外国からの働きかけであるとか、その外国の内外の動向の調査をするとかという関係で、外国の事情の調査をする場合もございます。ただ特定の国を調査するというのではございませんので、当庁が分担しております破壊的団体の調査の過程で、その関連する外国の事情を調査する場合がございます。
#166
○寺田熊雄君 果たしてそういうことが今の官制上許されるかどうかという点は多分に疑問があるけれども、きょうは時間ももう過ぎておるからという注意もあるし、これでもう質問をやめておきますが、やはりあなた方、調査とか警察の警備とかいうことになると、それ自体が、もう暴力団が国民に対して、ただ暴力団の親分が出てくるだけで国民はもう恐怖感を覚えると同じように、事柄は全く違うけれども、警察とか公安調査庁というようなことになると国民は大変それだけで恐怖感を覚えるわけですから、いやしくもその強制にわたると言われることがないように、国民はそういうふうな感じを受けておるわけですから、そういうことがないように厳に注意していただきたい。いかがですか。
#167
○政府委員(田村達美君) 法律に基づきまして適正な調査を行うように心がけておる次第でございます。
#168
○秦野章君 最初に一つ、一般的な問題として、控訴審の裁判では被告人が出頭しなくても結審ができるのかどうか。その仕組み、どういうような構造になっているか、それをちょっと最初に教えてくれませんか。
#169
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 控訴審におきましては被告人には一応出頭の義務がないということになっておりますので、被告人が出頭しないということであれば、それはそれで構わないということでございます。
#170
○秦野章君 結審できるわけだ。
#171
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) さようでございます。
#172
○秦野章君 ロッキード事件の問題で、目下事件が係属中の事件だから、おのずから答弁には限界があることは私も承知しておりますけれども、しかし考えてみれば、このロッキード事件が始まって間もなく、国会は真相究明の決議をした。その結果というだけではないけれども、とにかく真相究明の決議をして、アメリカにも真相究明のための要請をした。そうしてそのような状況の中で検察、裁判が動いてきたことはこれは当然のことなんだけれども、この国会の立場で、私は実は途中法務大臣もやらしてもらったのだけれども、なかなかこのロッキード事件の問題を発言すると何か心を傷つけられるようなところがあるんだよね、動機を一方的に断定されたりして。
 大変、私は委員会で七回か八回質問していますけれども、言論の自由というものが果たしてあるのであろうかと思うようなときもあったわけですけれども、世の中も、これ時間というものはおもしろいもので、時間の効果というのか、少なくとも顕在的には幾らか静かになったような感じがいたします。同時に田中元首相が病気になって、ちょっと政治活動は簡単にできないでしょう。そういうような状況もあって大変静かになったということで、そういう状況の中でありますので、私は改めてこの事件の中にある問題点、私は当初何回かの質問の中で指摘したことは今でも間違いないと私自身は思っているわけだ。
 しかし、その後追加的な問題もあるし、基本的に考えなきゃならぬ問題もありますので、そういった経過を踏まえながらしばらくこの法務委員会に入れてもらって、大変御迷惑かと思いますが、同僚の皆さんの御協力を得てひとつ質問をさしていただきたい、また意見を述べさしていただきたい。そして私も今期で参議院をやめますから、来年六月までの間に私自身の所見を記録にとどめておいてもらうことも意味のないことではない、こう私自身は考えておるわけであります。そういうことで、できるだけひとつ答えてもらうべきものはもらいたい。
 基本的に司法に対する国会の発言なり国会の国政調査権の限界という問題については、私は国会は国権の最高機関で主権在民ということを考えれば国権の最高機関というのは単なる美称じゃないか。やはり行政権、司法権に対して注視していかなければならぬ、そしてまた判例についても適当な批判を加えるということは、これは当然のことだという考え方なんです。別に学問的に独立権能説とかいろいろありますけれども、そういうことに当たるか当たらぬかはともかくとして、例えば学者で言うならば佐々木惣一博士とか、あるいは関西なら田畑先生とか、いろいろそういう立場の先生方と私はほとんど考え方が同じでございますので、司法権の具体的事件の内容に向かって指示するみたいなばかげたことはございませんけれども、やっぱり批判のないところには真の独立はない。独善と独立は違う、あくまでも謙虚に批判を受ける、そして聞くべきは聞き聞かざるべきは聞かない、それが司法権の独立だと、そういう独立を堅持するということにとっては私は非常に御苦労があろうかと思うのです。
 アメリカの有名なホームズ判事ですね。これは世界的に有名な最高裁判所の判事で、十九世紀の半ばに生まれて二十世紀の初めのころまで活躍をされた。州の最高裁の長官もやったし、それから連邦裁判所の裁判官として有名な、みずから哲学者とも称しておられるような非常に有名な人でございますが、ハーバード大学で教鞭をとられましたが、この人が二十世紀の初めのころだったと思いますけれども、判決の中の言葉の中に、大事件は悪法をつくるという言葉があるんですよ。私は自分でも少し商売をやった、まあ商売というか、似たような仕事をやってきたから大事件は教訓を生むということまではよくわかる。しかし、大事件は悪法を生む、こう言い放っているんですね。
 私はこのホームズ判事のこの言葉を見たときに非常にこれは示唆に富んだものであって、その理由というのか、ホームズ判事の言っている言葉を見ても、要するに大きな事件も難しい事件も悪法をつくるもとになる。なぜかというと、大事件が大事件と言われるのに、それが将来の法を形成する上で本当に重要だからではなくて、感情に訴え判断を曲げるような当面の圧倒的な利害という何らかの偶然がそうさせるからである、こういう当面の利害が一種の水圧をかけてきて、そのため以前は明白であったことが疑問視されるようになったり、その水圧にかかるというと定説となっている法原則までが通らなくなるものであると、こういうふうにホームズ判事は言っておるわけです。こういうすぐれた裁判官の言葉というものが私はロッキード事件で非常に貴重な教訓になっているという感じがしますが、これは具体的にはこれから何回かの質問で明らかにしていきたいと思います。
 なおまた、ある学者は不完全な法治主義は法のない国よりもこわいということも言っています。私は日本の法治国家、法の支配というものが完全か完全でないかということについては人によっていろいろな意見があるかと思いますけれども、完全などというものは永遠にないわけでございます。完全なんというものは永遠にないだろう。しかし、かなりの努力はしてでき上がってはおると思うけれども、それにしましても日本の憲法あるいは憲法に基づく法律というものの中で私が一番感じますことは、草々の間に憲法ができたということもあって、社会生活の面にわたる諸原則はかなり見事に入っている。平等とか自由とか、そういった原則ですね、民主主義の原則。
 しかし、国家の機能という問題についてはどうであろうかということを考えますと、例えばこれは法務省でも警察でも非常に関心があるのだけれども、ハイジャックということになると、これはもう法律がないわけです。超法規というやつです。憲法、法律をぶっ飛ばして総理大臣がやっちゃう。国会がやるのでも裁判所がやるのでもない。総理大臣が大権限を行使する。これは昔明治
憲法には非常大権というのがありましたけれども、私はこれも相当のものだと思うんだけれども、これは裁判所や検察庁が歯ぎしりしても超法規というようなことで総理官邸でもって決まっちまうわけですな。
 それから戦争か平和かという問題、これは何かどこかの国が攻め込んで来た、緊急に自衛隊を出動させるということがあるんだけれども、これは自衛隊法によって総理大臣の権限なんです。国会で後で承認すればいいということになっているから、これもすごい。私は戦争か平和かを決めるような権限も総理大臣は持っているというふうに見なきゃならぬ。大変なことだと思うんですね。あるいはまた、これは憲法の欠陥といえば欠陥でしょうけれども、衆議院を解散した、そうすると参議院が緊急集会でもって、そこで審議することになるわけだけれども、衆議院が解散をして、それで緊急集会の間に何か事があって総理大臣がいなくなっちゃった、死んじゃったといったら参議院の緊急集会する者はいないんですよ。つまり国家の最も大事な権力を握っているところの人間の地位を承継する順序が書いてない。例えばアメリカ憲法なら大統領がだめなら副大統領、副大統領がいなくなれば下院議長、下院議長がだめなら国務長官と承継順位がある。日本は何にもない。そういうようなこともある。
 その他、今ちょっと思い出せませんが、かなり言うならば、誤解してもらっちゃ困るのだけれども、私は古いナショナリズムを回復するようなばかな考え持っていませんよ。しかし我々はどこの国でも国家なくして生きられない。どこでも国家というものは必要だし、国家は大事にしなきゃならぬ、国家を守っていかなきゃならぬということですが、国家の機関、立法、行政、司法、この機関がまともに動くということになっていないような問題が規定の上である。
 そういうことを私なぜ言うかというと、やっぱり国家機関の埋める地位というものは大変大事なものだ。今申し上げた総理大臣の地位というものを考えてみると、これは同じ公務員でもちょっと違うんじゃないだろうか。国家の枢要なポストだから、まあこれ汚職をやったら刑法百九十七条か何かで公務員で汚職した者は懲役何年と、この一カ条でくくられている公務員の中へ、そういう重大な総理大臣も、それから役場の一吏員も同じように扱われているんだよね。それは多分社会生活の上で法のもとに人は平等だという平等論の見地のみしかそこに入ってきてないからだろうと私は思う。法の前に平等だというのは結構なことだ。法の前に平等だというのは結構なことなんだが、やっぱり総理大臣というような地位というものが非常に重くて、あるいは国家の威信とか、国家の名誉とか、国家の政治を動かしているトップなんだと。今天皇は象徴でございますから、実際的には総理大臣が動かしているということになるというと、そこにその地位をある程度保護するというか、そういう面があってしかるべきじゃないのか。
 アメリカの憲法で、もし大統領が疑わしい場合にはまず弾劾ですね。そして弾劾をした上で刑事手続があるということになるわけですよ。それから大体民主主義の憲法でフランスにしてもイタリーにしても、大統領、これは日本の総理大臣は大統領じゃありませんけれども、サミットなんか見たって政治のトップであることは間違いない。フランスでもイタリーでも大統領がその職務中の問題については国家反逆罪以外は訴追せずと憲法に書いてある。だから、弾劾は必要だけれども訴追せずと書いてある。すごいもんだなと私は思ったよ。しかし考えてみれば政治は相当争いの世界ですから、争いの世界で謀略もある。このごろでは世界の国家間の謀略だって私は大変あると思うんですよ。ロッキード事件が謀略があったかなかったかわかりませんけれども、いずれにしても、そういうジャングルのおきてが支配する国際間においては、そういう観点からも国家の重要機関というものは軽々にやっぱり役場の一吏員と同じように扱っちゃいかぬという常識があってしかるべきだと、そう思うんです。
 そういう意味において、これはあえて言うならば、田中元首相をロッキード事件でもっていきなり外為法逮捕でやるなどということは、正直言って非常識きわまるんだよね。こんなことはあっていいものじゃないんだ。調べる必要があることは、だれでもあっていいんですよ。疑わしきは調べにゃいかぬから。その方法としてはやっぱり任意捜査という方法もあるではないかとか、要するに常識の問題というか、この点でちょっとリーガルマインドということがこのごろ盛んに言われる。特に戦後この問題が非常に言われるが、リーガルマインドと常識とはどこが違うかということを一遍最高裁の局長答えてくれぬかな。
#173
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 非常に難しい問題でございますが、この常識という言葉でございますが、これも必ずしも一義的ではないと思いますが、辞書など引いてみますと、一般普通人が持ち、また持っているべき標準知力とか知識とか、こういうようなことが書いてあるわけでございますけれども、これは全国民一般の常識といって考える場合もありましょうし、あるいはまた、各専門分野において、例えば政治経済でありましたら政治の中での常識、あるいは法律家の間の常識、あるいは経済専門家の常識というようなことで、いろいろな常識の中身というものはいろいろあるのではなかろうかと考えるわけでございまして、リーガルマインドということになりますと、これは法律家の間における常識と申しますか良識と申しますか、何かそういうものではなかろうか、かように考えるわけでございますが、果たして私、お答えできる能力があるとも思いませんので、お答えになっているかどうかわかりませんが、一応そのように考えております。
#174
○秦野章君 私は、参考までに、民法の星野先生と、それから東大の松尾教授と、それから芦部教授あたりのリーガルマインドに関する定義みたいなものをよく見てみるんだよね。いろいろ書いてあるんだけれども、やっぱり単なる常識とは違うんだよね。やっぱりあえて言うならば、私は私流に言うたら、プロの常識というかな。そしてプロの常識だから、国際比較法的な見地もよく頭に置いておかなければいけない。今、島国じゃないんだから、政治もグローバルな政治になっているんだし、比較法律家のプロはやっぱり比較法学的な見地まで考えておかにゃいかぬし、あえてリーガルマインドということになれば、客観的な常識でやっぱり事実を尊重せにゃいかぬ。自己の感情を抑制しなければいかぬ。論理操作に際して飛躍を起こしちゃいけない。自己の主張を相手の批判にさらす勇気がなければだめだ。
 そういうようなことが一つ一つ拾っていけば言えると思うんですけれども、これは具体的にこの事件に当てはめていろいろまた考えて言える問題がありますけれども、言うならば法秩序の維持と国民の人権とのある種のバランスと言ってもいいかもしれませんが、デュープロセスですね。適正な手続。人を縛ったり裁判をやったりするという場合の手続、目的じゃなくて、手続、手段。このデュープロセスというものの中にもやっぱりすぐれてリーガルマインドというものが大切になってくるんだろうと思うんだよね。こういう教育を最高裁、小野君、これはあんた、全国の裁判所を司法行政で教育せにゃいかぬだよ。だから、リーガルマインドという問題については、もっとしっかりしたやっぱり観念を持って、裁判官が通俗に流されないようなことをしっかりさせなければいかぬというような感じを持つんですよね。
 人の学説をここで読み上げてもしようがないから、やめますけれども、そういう常識を超えた常識、あるいはプロの常識というものから考えて、裁判官というものはどういう人生観、どういう哲学、どういう考えでいなければいかぬということは、これは正直言って裁判官にだれも指揮する者はいないわけだ。裁判官自身は独立だから、自分で勉強していかなければいかぬ。そういうようなことを考えると、非常に大事な問題だと思うんだけれども、ここで顕著な例を一つ申し上げるの
は、例の最高裁長官をやった岡原、藤林、この二人の最高裁長官をやった者がいろんなことをあのロッキード事件の判決後言っているんだよ。あんた、これ知っていますか。見ていますか。
#175
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 幾つか出ておるのは承知しております。
#176
○秦野章君 幾つか出ているのを承知しているあなたの問題の中で、あなた自身はどういう感想を持っているか。
#177
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 退官された最高裁判所長官が発言されたということで、その発言内容が新聞あるいはその他雑誌などにも報道されているということは承知しておりますが、それがそのとおりの内容であったかどうかということは必ずしもつまびらかにはしていないところでございます。ただ、既に退官された方がその所感を述べられるということがありましても、これは申し上げるまでもなく一私人としての立場で発言されるものでございまして、その発言された事柄につきまして私どもとしてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
#178
○秦野章君 いや、手ぬるい答弁だな。
 裁判官は弁明せずということをよく言うわな。これは当たり前のことだ。裁判官が弁明し始めたら反論が出てきて、判決の安定なんていうものはあるわけない。しかし、とにかくこの二人の裁判官、最高裁長官をやった人はロッキード事件にかかわっているんだよ。それはわかっているでしょう。宣明書という司法行政を決定するときに参加した裁判官なんだ。この二人の裁判官が言っていることを、あんた、大体見ているに間違いないわな。こんな重要なこと見てないわけない。見てなきゃ、これ読み上げてもいいけれども、どでかいことを言っているんだよ。こういうことはやめた人が言っていることだから、余り関係ねえやみたいなことを言うけれども、とんでもない話だと私は思う。それはかつて最高裁長官は雑音に耳をかすなとかいろいろ裁判の公正を保つために発言をされた歴史がありますけれども、それがいいとか悪いとかという問題はともかくとして、裁判批判というものをあんまりむちゃくちゃにやられちゃ困るというのがあんたらの立場だろう。
 きょうも私は今テレビで平沢問題について、おまえどう思うかと言うので、おれはこの問題は厄介だから出たくないけれども、どうしてもしゃべれと言うから二つばかりしゃべってきたんだ。それで裁判所の態度はやむを得ぬだろう、こう言ったんだけれども、いろんな批判が起きる。余りむちゃくちゃな批判が来て困りますというのは、あんたの下の人の意見だよ。余りとんでもない批判が来て困ると言っておるのはあんたのところの、それが率直な意見じゃなかろうかと思うんだよな。
 裁判官弁明せずというのは現職中のことであると同時に、やめた後でもそういうモラルというものがなかったら、最高裁長官が例えば第一審は一〇〇%ひっくり返ることはないなんて言っているんだよ。一審で決まったようなことを言っているんだ。そのほかいろいろ言うならば、七年もかかって岡田判決をやったんだから、審理を十分尽くしておるし、五億円授受の事実認定、職務権限についての解釈も完璧だ、高裁、最高裁で覆ることは法律家のだれが見ても一〇〇%あり得ない、これは岡原さんの朝日新聞のトップの記事だ。法律家が他の雑音にとらわれず判断した結果は尊重してもらいたい、一審判決を軽く考えるのはやめてほしい、このことは裁判の威信の問題だ、これは藤林さんが毎日に大きく出た記事なんだよね。そのほか今回の田中元首相の居座りは司法権軽視の姿勢だ、首相経験者として絶対に許されない、田中元首相は直ちに政界を引退すべきだ、辞職しないなら国会は議員辞職勧告決議案を議決して退陣を迫るべきだなんて余計なことをこれ言うんだよな。五十八年十月二十一日、これは岡原さん。
 これは政治家なら言ったっていいんだよ。現に野党の人たちなんかは盛んに言っているんだけれども、こういうことを言いたいのなら選挙にでも出て、政治家になって言うのなら話は別だけれども、最高裁長官という輝かしい日本の良識の代表で、裁判を最も公平にやらなければいかぬという地位にあった人が、やめたのは藤林さんが五十二年で、岡原さん五十四年だよね。そういう人がこうやって、あっちこっちでしゃべったり書いたりしているんだが、これに対してこういうことを言っているということは、いわば本音が出たということだと僕は見ていいと思うんだ、本音が出たと。これは宣明書の問題は後でやりますから、なんだけれども、宣明書の議決には関与しているんだということははっきりしている。そういう人がああいうことを言っているということは、ほかの裁判官もそう思っていたんじゃないのか。これは司法の政治化ですよ。小野君、司法の政治化じゃないか。こういうようなことを放置してどうして司法権の独立があるのか。
 それから、岡原さんのような人が、これは文章になって出ているが、月刊人間という雑誌の五十九年の三、四月合併号に載っているんだけれども、これ見れば「我々司法部は」と、やめてからも言っているんだよ。あなたもその仲間かもしらぬけれども、「我々司法部は」と、こう言って、今の発言全部そういうことを言っている。これは活字が書き過ぎるということもあるから、私は全部これ真意だと決めつけることは僣越のそしりも免れないが、しかし、これがとにかく世間に出ているんだから、非常に影響が大きいと思うので、ひとつこれは委員長にお願いして一遍これは本当の真意をこの委員会で証人に出てもらって聞かしてもらう。それでないと、司法権の独立というものは立法府においても守っていかなければならぬ問題なんですよ、正直に言って立法府においても。いわんや裁判所当局はなおさらのことだ。こういう言論の真意を明確にするということは国会の私は責任だと思う。国会というものは、私も国会の今一員だから、国会はやっぱりそういう責務がある。我々がつくった憲法や法律が本当に公正に守られているかどうかということをフォローするという責務が国会議員にあるわけであります。
 ただ、残念なことにロッキード事件になると、そういう側の発言は余り許されない環境なんだよ。私は幾らか静かになったからきょう言うんだけれども、もうひどくたたかれちゃうんだ。しかし筋は筋だと思うんだ。国会というものは憲法改正の発議権まで持っているんですから、だから国会がつくった憲法や法律をどう守られているかをフォローしていくかということは国会の任務だ。その任務を持った国会議員がそういう言論に目をつぶるわけにはいかない。司法権の独立は国会も大事にしなければならぬ問題だ、こう思うんです。
 どうだね。あんた方も司法部の側なんだけれども、この二人の裁判官について今私が言ったことについて、あんた、どう思いますか。
#179
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) まず、裁判官は弁明せずという法諺でございますけれども、これは裁判官にとっては判決がすべてである、判決には認定した事実あるいは根拠となった証拠、これの適用、こういうものをすべて判決に書き尽くすのだ、あとはもう裁判については裁判官は弁明したり弁解したり一切しないのだ、こういうことで一般に理解されているというふうに考えるわけでございまして、あるいは私の理解が至らないのかもしれませんけれども、これは裁判について言われていることであろう、したがいまして、元裁判官でありましても裁判官であったということだけで、自分の行った裁判以外の事柄についてある場合に意見を表明するということは、それはあり得ることではないかというふうに考えるわけでございます。
 あと、その中身がいいかどうかということになりますと、それは私どもの方の論評するところではございませんが、例えば司法行政の面につきましても、これはあるいは公務員の守秘義務というようなことで公にしてはならないというようなことはあろうかと思いますけれども、司法行政そのものにつきまして守秘義務に入らない事柄については、それはこの裁判官弁明せずという法諺の範
囲内ではないのじゃないか、一応はそう考えるわけでございます。あとは結局はそれ以外の事柄についていろいろ述べられることが元裁判官の職にあった者として、そのモラルと申しますか、あるいはその良識でどうであろうかということになるのではなかろうか。
 ただいまこれは宣明書の関係でロッキード事件に関与しているとおっしゃいました。ある意味では関与したのかもしれませんけれども、裁判には全く関与してないわけでございます。裁判の中身ということについては全然触れてない。要するにアメリカから嘱託尋問調書を取るために、ファーガソン決定があって、その条件を満足させるという司法行政ということで行われたのが宣明書でございますので、それだけの関与であるということで、ロッキード裁判そのものに何ら関与してない。あとは元裁判官であった者が自分の担当しないほかの事件についてコメントすることが許されるのか許されないのかということになろうかと思いますが、それもいろいろな程度といいますか、そういうものはあるかもしれませんけれども、それについて特にそれが直ちにそのことについて意見を述べたらいけないとかどうとかという問題ではないのではなかろうかと、こういうふうに考えております。
#180
○秦野章君 確かにあんたの言うように、形式的な裁判に関与はしてない。しかし司法行政で宣明書を取り寄せた行為というものは、裁判と全く関係がないかといえば全く関係ないことはないわけだ。だから、そういう意味で、これは率直に答えてもらいたいが、例えば朝日新聞の中で、岡田判決は七年もかかって審理を十分尽くしており、請託、五億円の授受の事実認定、職務権限についての解釈も完璧、高裁、最高裁で覆ることは法律家のだれが見ても一〇〇%あり得ないというこの言葉は、あんた、何でもないと思っているの。関係ないとあくまでも突っ張る、突っ張れるか。これがあんたのように全く関係ないのなら新聞があんなにでかくトップで書くわけないじゃないか。そんな非常識な答弁だめだよ。もう一遍。
#181
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 私が申し上げたのは、ただいまの発言の内容がいいとか悪いとか申し上げたことではございませんで、発言の内容そのものはコメントは差し控えさせていただくと、こういうふうに申し上げているわけでございます。
#182
○秦野章君 発言の内容を聞いているんだよ。発言の内容は答えられないとあんた言うのは非常に無責任だよな。今はそれは確かに裁判官じゃないよ。裁判官じゃなくたって、あんたら一緒に最高裁におって、こういうものをつくるときの仲間じゃないか。これは常識で考えてみなさいよ。どう考えたって、こんなことは言い過ぎに決まっているじゃないか。これは甚だ我々は迷惑でございますと、こう言わなきゃ、あんた正直じゃないよ、正直言って。判決が下って、下る前に一〇〇%有罪間違いないとかなんとかというようなことが、そんなものは内容は我々は知ったことじゃないというようなことくらい官僚的答弁はないわ。そういうような態度を日本の裁判官がとっている限り、いい裁判はできないとわしは思うな。あんた方最高裁におって司法行政の見地で教養の責任があるでしょう。人事を握り、影響は大きいですよ。最高裁の長官をやった者は人事を握っているんだ。しかも人事を握り教育の責任がある。そういう人たちがこういうことを言っているのが、内容のことは我々関係ないんだとよくぞ言えるな。
 なお、こういった発言の後、半年たった五十九年の四月二十七日に小佐野控訴審の判決が下ったんだ。おもしろいのは、その判決の要旨。判決要旨というのがこのごろ判決の全文の前に出るわけだが、この要旨の中で「被告人のロッキード事件における役割は、」――これは小佐野だろうな。「被告人のロッキード事件における役割は、当初の報道ではいかにも重要らしく伝えられたが、結果的にはわき役的なものにすぎなかったと認められること等の情状を考慮すれば、被告人に対し実刑を科するのは酷に失し、刑の執行を猶予するのが相当」だと、こうして刑も一年から十カ月になっているわけだよね。つまり報道を見ていたら、もっと大きな悪いのかと思ったら、やってみたらそうでもなかった、幾らか刑をまけようというのがこの判決要旨の中にあるんだけれども、報道というものはやっぱり裁判官に影響するんだよ。この判決要旨についてはそういうふうに私は読めるんだけれども、あなたはどう思うかね。これ、読み方や。内容のいい悪いは言わぬでいいわ。
#183
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 証拠関係がどういう証拠が出てどうなっているのかということ、私どもわかりませんので、それについて何とも申し上げるわけにいきませんので、あるいは証拠関係の中に何かそれに類するものがあったのかどうか、要するにそこに書いてあるそれをそのまま読む以外にどういう意図で書かれたのか、あるいは何も証拠がなくて書かれたのか、その辺のことは私どもとしてはお答えいたしかねる次第でございます。
#184
○秦野章君 裁判所が出した判決要旨の中にあるんだから、それであえて聞いてみたんだよね。そしたら何のことやらわけのわからぬことを答弁しているけれども、要するに判決の中でやっぱり報道が影響するんだということは正直に言っているわけだ。また、私はある程度そういうことは世論に耳を全然傾けないで裁判はやっていけないだろう、しかし傾き過ぎてもいけない。そこが大変難しいところなんだよな。だから、最高裁長官が大新聞の記事の上でいろんなことを言うものが何にも影響ない、あの人はやめた人でなどとしらを切っていたんじゃ、これは話にならぬな。影響があるおそれがあるから、ああいう言葉は慎んでもらいたいんだと、どうしてこれ言えないんだ。
 確かに裁判は関係してないよ。その宣明書に関係しているから特に言っているんだけれども、じゃ、私は一歩譲って宣明書を抜きにしてもいいわ。何にもロッキード事件に関係なかったとしてもいいよ。そういう場合でも、ついこの間やめた最高裁の長官がこの重大なロッキード事件について政治的発言をばんばんやるということが果たして司法権の独立というものを維持することにプラスになるのかマイナスになるのか、関係ないのか、そこだけ答えてくれ。
#185
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 最高裁元長官に限らず、裁判官につきましていろいろ具体的事件について論評されるということにつきましては、私先ほど申し上げましたとおり、それぞれ良識に従っておやりいただくことが至当であろうと思うわけでございます。ただ、それが司法権の独立というような問題になりますと、これはもうおやめになった方はおやめになった方で、あくまでも一私人でございまして、それが最高裁判所長官としての訓示でも何でもないわけでございまして、それによって裁判が影響される、あるいは裁判官がそれによって何らかの制約を受けるというようなことは全くないわけでございます。
#186
○秦野章君 まあ相当のものだな、あんたのその態度もな。それほど人間とは立派なものかな。神じゃありませんよ。どんな人間でも矛盾に満ちた感情とか心情を持っているものなのよ。それじゃ、そんなことを言っていたら誤判なんか起きるわけはないじゃないか。やっぱりそこらは謙虚に裁判官も人間なんだ、間違いもあり得るんで何とか間違いがないように一生懸命やっているというのが私どもの立場でございます、最高裁長官があんなばかなことを言ったんじゃ我々は甚だ迷惑だと、こう率直にどうして言えないんだろうね。いや、あきれ返ったな、この日本の裁判は。
 これは我々がここで議論したことは速記録になるんだけれども、これはあなた方部内では黙殺かね。それとも速記録というものは裁判官に読ませるのかね。これは私だけの問題じゃないけれども、それはどうなっているか、国会というものに対する認識は。
#187
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 事務総局内では回覧して読んでおりますが、裁判官には、これは一カ所に、図書館に備えつけて随時お読みいただくということで特に回覧はしていないよう
でございます。
#188
○秦野章君 裁判に関する国会の論議は、なるべくやっぱり教養資料として、よきにつけあしきにつけ見せた方がいいんじゃないか。それを採用するしないは裁判官の独立だから裁判官の自由だよ。材料は豊かにあった方がいいんじゃないの。赤旗でも何でもいいよ。とにかく材料は豊かにあることが豊かな社会における選択の自由ということで、司法権の独立の裁判官がそれを選んで判断をするという、そういう発想でないと、これはちょっとおかしいと思うんだが、いま一遍そこら辺のところを答弁してくれぬかな。あんた、やっぱり教養の責任者でもあるんでしょう。違うのか。
#189
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 国会の議事録となりますと、これは所管は総務局でございますが、帰りましてからよく話しておきます。
#190
○秦野章君 総務局になったら、もうあんたの責任じゃないわな。ないけれども、中でひとつよく話して、おれの意見だけ言っているんじゃないんだよ。どんな意見でも国会というものはばかにしちゃだめだよ。日本はやっぱり立法、行政、司法という憲法の配列を尊重せにゃいかぬ。日本は司法国家と言われますよね、アメリカとイギリスと日本は。体系的にはヨーロッパの大陸が行政国家で、我々は司法国家という概念を持ってきたけれども、しかし、そうは言ってもいろいろ行政というのは幅が広がって、二十世紀以後ものすごく行政の幅が広がって、裁判一つ見ても行政裁判が非常にたくさんにぎやかになってきたことは当然で、これは非常に問題になっていますわな。あるいは昔のように行政裁判所があった方がいいんじゃないかなんという意見もあるくらいなんだ。だから、やっぱり国会でやるようなことについては勉強をしてもらわぬといけないんで、これは総務局長ですか、よく言っておいてもらいたいよ。
 それから、大体日本の裁判は余り無罪なんかなくて、ほとんど有罪で、一審が有罪なら大方有罪なんだと、この二人のだんなはこう言っているわけだ。だけれども、それではまずいんだよな。やはり真昼の暗黒の例を私は言うんじゃないけど、まだ最高裁があるといったような気持ちはやっぱり国民に持たしておかなきゃいかぬのですよ。そこで、それといま一つは、一審有罪になったら二審も三審も大方有罪だという、まあそれは泥棒や強盗なんかじゃそういうの多いんだけれども、例えば戦後の昭和電工事件とか造船疑獄とかといういろいろ政治的事件、これでは正直言ってかなり無罪が出ているんだよな。これは頼んでおいたのがあるかね。ちょっと言ってくれぬか。
#191
○政府委員(筧榮一君) 戦後たくさん事件がございます。主なものとして昭電事件と炭管事件と造船事件、この三つにつきましてとりあえず調査したところでございます。
 昭電事件についてまず申し上げますと、被告人は三十七名でございますが、そのうち無罪が十一名となっております。これは一審、二審を通じまして最終的に確定した無罪でございます。それから炭管事件、これが被告人が十二名でございますが、そのうち無罪は五名でございます。それから造船事件、被告人が三十三人でございますが、無罪は八名となっております。
#192
○秦野章君 要するに、政治的事件のようなものになると、かなり無罪も出る。私も経験から、多少失敗したような例も若干ないとは言えないんだけれども、それは仕方がないといえば仕方がないんだけれども、こういう岡原さんあたりが言うような一審有罪のものは大方ひっくり返ることがないというようなことをどう考えたって言うべきじゃないですよ。また、普通の犯罪と事実も違うんだよね。それから千葉県のチフス事件というのがあったな。あれはあんた、一審が無罪で二審、三審有罪というのもあるんだよ。だからさまざまだよということなんだよね。割合日本はしかし有罪率が高いということは言えると思うんだけれども、余りにもこれ決めつけ過ぎているということだな。
 それで、私は、ホームズ判事の言葉、大事件は悪法をつくるという言葉というのは、比較的大事件というのはやっぱりエキサイトする、そういう事件について過誤を犯しやすい。これは人間の本質的な弱点というものはだれでもあるんだよ。判事と検事だけは神様みたいに立派だというわけにはいかないんだよ。しかも文明社会が進んでマスコミというようなものが巨大な力を持ってくるというと、そういう影響が非常に大きいということになろうかと思うんです。
 そういう意味においてロッキード事件についても今度は具体的にいろいろ問題点が出てくるわけですけれども、私がさっき比較法学的な見地を言った。これは比較法学的な見地を言ったのは、これは主として今度は法務省の方のあれになるけれども、やっぱり適正手続、デュープロセスというものを守っていくときの一つの思想というのか、考え方というものの中で、やっぱりリーガルマインドの中に入ってくると思うんだけれども、このリーガルマインドに入ってきたときに、さっき申し上げたような比較法学的な見地というものがやはり頭に、リーガルマインドの中に当然私は入ってくると思うんだよな。
 実は、私も比較法学というのは昔の人間だから余り勉強してない。我々が高等試験通るときなんか、民法はフランス法で何かがドイツ法だなんてその淵源の説明や勉強はしたけれども、現代のある空間で見て比較法学、アメリカの例えば免責法は今どうなっているか、憲法の規定でヨーロッパはどうなっているかというような比較的な法学は余りやってないんだけれども、そういう点は教養の上で非常に大事だと思うんだけれども、法務省あたりそういう点はどうだろうか。例えばさっき言ったように、憲法でもやっぱり随分違うんだよね。日本国憲法というのは人権とか、平等とかという問題はフランス革命、大陸法からも入っているし、アメリカの独立宣言みたいなものも入っていますけれども、いずれにしても横の関係の体制がよくわかってないとリーガルマインドを充足したことにならないと、こう思うんだが、そういう方面の努力というのか、検察官の心構え、努力なり勉強なりというものはどの程度のものだろうか。
#193
○政府委員(筧榮一君) リーガルマインドという言葉はいろいろ難しい一概に言いにくい言葉であろうかと思いますが、私流に考えれば、法律を適用するに当たって適正に正しい適用判断ができる、その人の判断力といいますか、そういう考え方を、正しい法律の適用ができる考え方を常に養っておくということが必要であろうかと思っております。
 今の比較法学的なお尋ねでございますが、昔と違いましてと言うと語弊がございますが、特に最近いろいろな外国の法制等についての関心も非常に高まっております。また犯罪その他についても国際化といいますか、そういう部面が次第に多くなってきておりますので、そういう観点からも諸外国の法制を常々研究しておくということの必要性は強調されているところでございます。法務省、例えば検事をとってみましても、ここ数年来外国へ留学あるいは視察、出張するという数は次第に多くなってきております。また、行った者だけが知識を修めるのではなくて、留学なり長期出張した者については帰って報告書を出させまして、例えばアメリカにおける何法の研究とか、あるいは大陸における証拠法の関係とかというテーマによって研究をさせまして、その研究報告をまとめて部内の定期刊行物に掲載し、全国の検察官にそれを勉強するようにという機会を与えるというような方法で、御指摘の比較法学的と申しますか、諸外国の法制についての研究も常々怠らないように努力をいたしておるところでございます。
#194
○秦野章君 私もわずかな経験ではあったけれども、今おっしゃったようなことはやっているわな。ただ一つ感ずることは、刑法、刑事訴訟法をやっている人が、どういうものか意外と憲法と行政法をやってないんだよ。これは司法試験に行政法が必須科目でないということもあろうかとも思うんだけれども、普通の、例えば今度のロッキード事件でもそうだけれども、総理大臣の職務権限
なんかは憲法とか行政法を十分に勉強しなければ、簡単な旧来の刑法の解釈と判例法でいくということには正直言って私は大変不安を感ずる。だから憲法と行政法、しかもそれを比較法学的な研究までの成果を取り入れて考えてみる。あるいは日本国憲法内の国家論の欠落みたいなことまで感ずるんだけれども、しかし法が欠落したらできるだけ解釈で、まあ解釈でも今限度があるけれども、解釈でそういう含みを持たせるような、そういうことがやっぱりリーガルマインドという範疇の中に入ってくるんじゃなかろうかというふうに思うんですがね。
 時間も来てしまいましたから、きょうはこの程度にして、この次にお願いをしたいと思います。
#195
○飯田忠雄君 最近数年間にわたりまして、死刑が確定した人について再審が行われ無罪となる、こういう事件が起こりました。しかも無罪となるに当たりましては長年の死刑執行猶予の果てであるということであります。
 例えば本日、平沢につきまして裁判所の御判断が下ったわけですが、監獄に拘置中は時効は完成しない、こういう決定の内容のものであるということをお伺いしたわけですが、刑法の解釈につきまして、どうも憲法の精神によってないのじゃないか、こう思われるわけであります。憲法の十三条は、これはすべての国家公務員が守らねばならぬものでございますが、政治を行う上におきまして公共の福祉に反しない限り人権尊重という問題については最大の考慮を払わねばならぬ、こうなっております。そういう観点からまいりますと、刑法解釈というものは受刑者に有利に解釈するのが当たり前ではないかと、こう思われるわけでございます。
 そこで、この三十年間という長い期間が平沢についてはあるわけでございます。この三十年という期間は刑法では死刑の時効の期間に該当するわけでございますが、なぜ刑法が三十年という期間を死刑の時効にしたかと、こういう問題を考えてみますと、やはり三十年という長い期間がその行った犯罪を風化させていくからではないか、事実上風化させておるので時効にするということにしたのではないかというふうに考えられるわけです。逃亡しておって三十年たった、その三十年の重みというものと、死刑を執行されないで監獄の中におった三十年という期間の重みというものは事実上は同じものなんであるわけなんです。監獄の中におるから外で逃げ回った者よりも一般社会に対する考え方が決して監獄におる方が風化しないといったような、そういうものではなかろうと思われるわけであります。
 今日の刑法というものは、もうこれは申し上げなくてもわかりますが、刑法の明文では明らかに死刑の執行というものは絞首して行う、そして監獄に拘置するのはこれは執行に至るまでの間の手段である、そういうふうになっております。この明文を解釈するに当たりまして、なぜ受刑者に不利な方向へ解釈しなければならぬのかという点に非常に疑問が生ずるわけでございますが、こういう点につきましてどのような御見解をお持ちでしょうか、お答えをお願いします。
#196
○政府委員(筧榮一君) 時効の点に関しましては、かねがね申し上げておりますとおり、国家刑罰期間拘置されない状態が続いた場合に時効ということが起こるわけでございます。その実質的理由としてもいろいろ言われておりますが、今飯田委員御指摘の三十年で風化するというようなこともございましょうけれども、そのほかにやはり死刑であれば三十年、その他であれば一定期間内に形成される社会的な秩序といいますか事実関係、そういうものを尊重するということが時効制度の本質であると言われております。そういう意味から三十年で風化したということだけでもって時効が完成するのだという趣旨には、時効制度の本質はそういうものではないというふうに考えておるところでございます。
 また、憲法の要請から刑法の解釈については受刑者の有利に解釈すべきであるというお考えでございますけれども、どちらの有利にということではなくて、やはり法の本質といいますか、目的といいますか、その趣旨から解釈されるべきものである。そうしますれば、結果的にはあるいは飯田委員、これは受刑者に不利であるという御判断になるかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたような結論にならざるを得ないというふうに考えております。
#197
○飯田忠雄君 自由刑につきましては拘置するということが刑の執行そのものでありますが、死刑につきましては拘置するということは刑の執行そのものではないということは以前にも御答弁をいただいたところでありまして、それに間違いなかろうと思いますが、そうなりますと、大変不思議なことは刑の執行を受けないでおった場所、その場所によって取り扱いが違う。刑の執行を受けないで、受けない理由が逃げ回るという行為と、おとなしくしておるという行為、その行為の差によって処遇が違うということになりますと、これは明らかに身分によるところの差別と考えられるわけですね。憲法の十四条に反しませんか。
#198
○政府委員(筧榮一君) まず場所が違うという点でございますが、拘置所の中に拘置されている場所と、例えば逃亡して逃げている場合の場所と違うことは間違いございませんが、その場所の違いということではなくて、死刑を言い渡されてその執行を受けるべき者として死刑を言い渡した確定裁判の執行として拘置所に拘置されている者と、いわばその拘束を受けないで日本じゅう、どこかに逃げているといいますか、生活をしている者という違い、その性質の差異が問題であろうかと思います。場所の違いというよりはどういう立場であるかということであろうと思いますし、そうなると今度は身分上の差ということの御質問でございますが、憲法で言う身分というものは、ここで言う今御指摘のような場合とは違うのではないかというふうに考えております。
#199
○飯田忠雄君 きょうはもう憲法論はやりませんが、執行猶予という問題について考えてみたいと思いますので御質問申し上げますが、刑法の二十七条では執行猶予の効力が書いてございまして、ある一定の期間過ぎますと「言渡ハ其効力ヲ失フ」、こうなっております。執行猶予の宣言があった場合にはそういうことだと、こういうわけですね。現在、今まで再審無罪の判決がありました人を調べてみますと、大変長い年月の間刑の執行が事実上なされていない。刑の執行が事実上なされていないということは刑の停止ではないわけです。刑の停止ではなくて、明らかに刑の事実上の執行猶予であるわけです。
 そこで、執行猶予を宣言した場合には、ある一定の時間がたてば言い渡しの効力がなくなる。宣言しないで事実上の執行猶予をした場合は、たとえどれだけたとうとも、それは執行猶予の効力については関係がないのだと、こういうお考えのように思いますけれども、犯罪の性質、大きさによりまして執行猶予の期間というものは決まっておるわけです。死刑の場合、事実上執行猶予がなされてきておりますが、この期間を、例えば三十年という期間を考えた場合に、逃亡して逃げておっても三十年たてば罪が問われない、時効にかかってしまう。そういう三十年というものを、宣言はしないけれども事実上執行猶予をしてきたということになると、宣言なしの執行猶予ですが、この事実上の執行猶予期間というものが三十年に該当する場合に、やはりこの期間の重みというものは何らか法の取り扱い上考慮すべきものではないか、このように考えられますが、この点について法務省の御見解、できれば最高裁の御見解も承りたいと思います。
#200
○政府委員(筧榮一君) 刑の執行猶予の制度は、御承知のように、刑事政策的見地から一定期間刑の執行を猶予し、その猶予期間が過ぎた場合には言い渡しが効力を失うということを法律上認めた制度でございます。それなりに刑事政策上の目的を有し、かつ実際にも犯人の更生といいますか防犯といいますか、そういう見地から有効な結果をもたらしているというふうに考えております。
 死刑が確定いたしましてから拘置して三十年間
なら三十年間執行をしないということは、それとはまた別で、事実上執行をしない、それには再々申し上げておりますように、その記録の調査でありますとか、あるいは再審とか恩赦出願でありますとか、諸般の状況を考慮して執行を見合わせていたということにとどまるものでありまして、それが二十年あるいは三十年に及んだとしても時効という点、本件では当たりませんけれども、執行されないという状態が続いた場合に起こる問題としては時効の問題が生ずるという以外には特段の問題は生じないし、また生じさせる必要もないものというふうに考えております。
#201
○飯田忠雄君 最高裁の方は、こういう問題はちょっと御答弁しにくかろうと思うから遠慮しますが、執行猶予というものの実態、事実関係をよく頭に置いて考えていただきたいわけです。執行猶予ということは刑の執行をある一定期間行わないでおくということでございまして、その一定期間の間、無事に悪いことをしなければ罪を問わない、言い渡しは効力を失う、こういう規定でございますが、どんな理由があろうとも三十年間あるいはそれに近い年数死刑を執行しないで猶予してきたというこの事実、長年の間猶予したという事実は、これは国民社会に対する関係で死刑の時効を認めたと同じ効果を持っておるのではないか、このように考えられるわけでございます。
 そこで、現在はたまたま執行猶予制度として、執行猶予という名前がない制度でやっておりますので疑問が生ずるかと思いますが、これは現実には刑事訴訟法の四百七十五条ただし書きによりまして、上訴権の回復の場合とか、再審の請求の場合とか、非常上告の場合とか、あるいは恩赦の出願もしくは申し出があった場合とか、共同被告人の判決が確定するまでの間の場合とか、こういう場合には死刑の執行命令を出す期間である六カ月以内という期間に含めないんだと、こういう条文を設けることによって事実上の死刑の執行猶予制度をつくっておる、こう考えられるわけでございます。なるほど死刑の執行猶予だという言い方はしていない。しかし事実上は死刑の執行を猶予しておる。ただ、原因が刑事訴訟法の四百七十五条のただし書きの適用ということに持っていっておるだけのことでございまして、それは法律の立法の仕方の問題です。そういう立法の仕方で執行猶予を決めておるということであると考えられるわけでございます。
 そこで、きょうはこういう問題につきまして事実関係を少しくお尋ねをいたしたいと思いますが、我が国の憲法が制定され施行されましてから今日まで、死刑の執行がなされていっておるわけでございますが、その記録について二、三お伺いをいたします。法務大臣の死刑執行命令権が法定の六カ月以内に行われた、それは確定判決があってから何件の判決について行われたのでありますか、お伺いいたします。
#202
○政府委員(筧榮一君) 死刑の確定者が確定後どれぐらいの期間で執行をされたか、特に六カ月以内といういわば短期間と申しますかに執行されたのがどれぐらいあるかというお尋ねでございますが、事柄の性質上、未執行の死刑囚、その他死刑囚の関係者あるいは被害者等の関係者等の心情に与える影響等を考えますと、その内容につきましてはお答えは差し控えたいと考えております。
#203
○飯田忠雄君 これは内容の問題じゃなくて件数ですが、何件ぐらい法務大臣が死刑執行命令を出されたかということなんですが。
#204
○政府委員(筧榮一君) どれぐらいの期間に執行される、極めて短い間に執行される者も六カ月以内も相当数ある、あるいは極めて少ない、いずれにいたしましても未執行の死刑囚その他関係者の心情に与える影響を考えますと、その数についてもお答えは差し控えさしていただきたいと思います。
#205
○飯田忠雄君 これは私は影響はないと思いますが、死刑の判決が確定をいたしまして、法務大臣が死刑の執行命令を六カ月以内にお出しになった件数の問題ですから、それは公表をはばかる問題でしょうか。
#206
○政府委員(筧榮一君) ただいま申し上げましたように、確定されてから二つの場合があろうかと思いますが、相当大多数は極めて短期間に執行されておるという結果が出るか、あるいは相当長期間で短期間のものは少ないということかは別といたしまして、いずれにいたしましても現在未執行の死刑囚の心情に与える影響等を考えますと、その数字についてはお答えを差し控えたいということでございます。
#207
○飯田忠雄君 それでは次の問題に入りますが、刑事訴訟法四百七十五条ただし書きが適用されて刑の執行が猶予されたのは何件ぐらいございますか。これも、ただし書きの書いてある項目別にもしわかればお知らせ願いたいと思います。例えば上訴権回復の場合は何件、再審の請求の場合は何件、非常上告の場合は何件、恩赦の出願もしくは申し出があった場合は何件、共同被告人の判決が確定するまでの場合は何件かと、こういう問題で、これは統計とっておいでになりませんか。
#208
○政府委員(筧榮一君) 今のただし書きの事由があったから執行が猶予されたという前提ではなく、今申し上げますのは、一定の期間内のものにつきましてこれこれの事由に該当した者が何人いるかという点で御説明をさしていただきたいと思います。
 これは統計ではなくて調べた結果でございますが、区間を区切りませんとなかなか調査が難しゅうございますので、昭和四十年一月一日から五十九年十二月末まで二十年間でございます。この二十年間に死刑の判決が確定し、かつその間に刑が執行されたものでございます。ですから前に確定してこの間に執行されたもの、あるいはこの間に確定してその後執行されたといいますか、この間には執行されなかったものは含みませんが、この二十年間に確定し、かつ執行した合計が九十三名でございます。その九十三名について調査いたしましたところ、そのうち再審請求を行ったことがある者は十四名、請求回数は延べ五十回になります。それから恩赦出願を行ったことのある者が十三名、出願回数が延べ十六回。いずれも一人で数回する場合があるわけでございます。それから、共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間があった者が四名でございまして、上訴権回復請求を行った者、非常上告の行われた者はございません。
#209
○飯田忠雄君 それでは、期間に算入しないという事由として今幾つかの項目がございましたが、その事由がないために棄却あるいは却下されたものは何件ございましょうか。
#210
○政府委員(筧榮一君) その数はちょっと調べておりません。
#211
○飯田忠雄君 それでは、死刑の判決が確定いたしました後に、右の刑事訴訟法の四百七十五条のただし書きの事由での申し立てをしないで刑に服したのがございますか。
#212
○政府委員(筧榮一君) 今の九十三名につきまして、再審請求を行った者十四名と恩赦出願を行った者十三名、合わせてこれが二十七名になるわけでございますが、恩赦出願を行った十三名のうち二名は再審請求も行っておりますので、それを引きますと二十五名が再審ないし恩赦の請求を行ったわけでございます。共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間があった者四名、これも別にいたしますと、今の九十三名から二十五名を引いた者が再審あるいは恩赦の出願をしていないということになるわけでございます。
#213
○飯田忠雄君 それでは、死刑の判決が確定をいたしました審級についてお尋ねをいたしますが、第一審で死刑の判決が確定した件数、第二審で確定した件数、第三審で確定した件数、これもし統計とっておいででしたらお教えを願いたいと思います。
#214
○政府委員(筧榮一君) また同じ期間になりますが、昭和四十年から五十九年までの二十年間で死刑判決が確定したものが百二十名ございます。そのうち一審で確定いたしましたものが八名、それから控訴審で確定いたしましたものが十三名、それから上告審で確定いたしましたものが九十九
名、合計百二十名でございます。
#215
○飯田忠雄君 殺人事件に限って御質問申し上げますが、殺人事件におきまして再審がなされました事例と、その請求理由があると思いますが、その請求理由別の件数、それから無罪判決が無罪の根拠とした理由、こういうものについてお尋ねをするわけです。まず、再審請求理由別の件数ですが、死刑判決に対するものはどうなっておりますでしょうか。
#216
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 殺人事件でございますが、これは強姦致死を含めての数でございます。それから強盗殺人がございますが、この両方の再審請求についてまず申し上げますと、これは昭和三十五年から五十九年までのものでございます。これをまず死刑判決についてでございますが、殺人事件の死刑判決に対して再審請求のあったものは四十七件でございます。
 この理由別でございますが、これは一人がいろいろな理由を述べている場合がありますので必ずしもこの四十七件に一致しないわけでございますが、法の四百三十五条の一号に当たるものが三件、それから二号のものが七件、それから六号が三十二件、七号が二件、それから強盗殺人事件の死刑判決に対するものは六十八件でございまして、うち四百三十五条の一号が八件、二号が八件、三号が二件、六号が四十七件、七号が五件、それから四百三十六条一項一号というのが三件というふうになっております。
#217
○飯田忠雄君 それでは、再審請求理由別の件数についてですが、無期判決に対しましてはどのようになっておりましょうか。
#218
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) まず殺人事件でございますが、これは先ほどと同じ強姦致死を含むというものでございますが、全部で八件ございまして、四百三十五条の一号が二件、二号が一件、三号が一件、六号が六件、こういうふうになっております。それから強盗殺人事件に対するものは全部で十九件ございまして、法の四百三十五条一号のものが五件、二号が二件、六号が十二件、七号が六件、以上のようになっております。
#219
○飯田忠雄君 そうしますと、ほとんどの事件がやはり再審請求をしておるでしょうか。初めからあきらめてしまって再審請求しなかった者よりも再審請求をする者の方がずっと多いということでございましょうか。その点いかがですか。
#220
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 私の方で先ほど法務省の刑事局長が申されましたいわゆる確定した者との関係ということで調べておりませんので、ちょっとそこのところはわかりかねるわけでございます。
#221
○飯田忠雄君 これ法務省ではわかりませんか。
#222
○政府委員(筧榮一君) 今調査しておりませんので、調べればわかることは間違いございませんが、今手元にはその資料がございませんので。
#223
○飯田忠雄君 実はこれは法務省にも私教えてくださるように前もってお願いをしておいた件なんですが、できていなければ、またこの次にお尋ねをいたすことにいたします。
 それでは、無罪となった事件ですが、無罪となった事件の無罪理由別の件数についてお願いいたします。
#224
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 無罪となったものを申し上げます前に、有期懲役で再審の請求があったものもあるわけでございます。それで、死刑判決がありましたものについて再審開始決定があったものがまず三件、それから無期につきまして開始決定があったものが三件、それから有期懲役のものでは三件あるようでございます。
 その無罪になった理由でございますが、これは昭和二十七年から現在までに無罪となったものでございますけれども、まず殺人事件が一件、強盗殺人事件が五件、それから強姦致死殺人というのが一件、殺人未遂事件が一件の計八件でございます。このうち、要するに犯罪の証明がない、刑訴法の三百三十六条後段でございますけれども、これがすべてである、こういうことになっております。
#225
○飯田忠雄君 殺人事件におきまして再審がなされて無罪となった件数ただいま承りましたが、この無罪となった事件の無罪理由は刑事訴訟法の四百三十五条の再審理由に掲げておるところと一致するでしょうか。それとも全然また別のものでございましょうか。
#226
○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) この四百三十五条にはいろいろなものが掲げてあるわけでございます。例えば新たに証拠を発見したというようなこともあるわけでございますし、あるいはほかのものが確定裁判でどうなるかというようないろいろな理由があるわけでございます。結局はそういうことからその証拠を見直した結果、犯罪の証明がない、こういうことになるわけでございまして、直ちに四百三十五条のそれがどうということには結論的にはならないわけでございまして、結局はそれが影響して、三百三十六条の犯罪の証明がない、これに帰する、こういうことになっているわけでございます。
#227
○飯田忠雄君 そこでお尋ねを申しますが、こういう殺人事件が再審となりまして無罪となるということになりますと、無罪となる理由がやはりあるはずでございますが、その無罪となった理由、これは事実に関するものと思いますが、そういうものが、そういう事実の取り調べが一審から三審までの間でうまく調査ができなかった原因というものがあるのではないかと思いますが、これは恐らく制度上の問題であろうと思われます。この点につきましてどのようにお考えでしょうか。
#228
○政府委員(筧榮一君) 今の無罪理由でございますが、最高裁からお答えありましたように、一言で言えば犯罪の証明がないということになるのであろうかと思います。それのさらに詳細な理由ということになりますと、個々の事件によって異なりますので、一概にお答えすることは難しいかと思います。ただ、私どもとしましては最近起こりました再審無罪事件、免田事件等の再審無罪事件を契機に、今御指摘のように、確定判決に至るまでの審理の過程でもう少し調べるべき点があったのではないか、あるいは捜査、公判維持等にどういう点に問題があったかということを現在それぞれの事件の記録等をもとにして検討を続けているところでございます。
 まだ結論めいたものは出ておるわけではございませんが、申し上げたいことは、一つはこれらいずれの事件につきましても、最初の確定いたしました事件の第一審から、あるいは捜査の段階から、検察官としては事案の真相解明に全力を尽くしたはずでございますし、その後裁判官も各審級を通じまして十分な実質的な審理を行われ、被告人側、弁護人側の主張も十分聞いた上で審理を重ねて有罪判決を言い渡されたということでございます。それが時がたちましてから再審において無罪判決になるという場合、現時点で言えますことは新たな証拠の発見等によって原判決において有罪の証拠となった証拠、例えば自白あるいは鑑定の信用性等に影響が生じて、その結果無罪となるというものが多いようでございます。
 そういうことから考えますと、結果的に見た場合には証拠の評価という点において確定審における判断と再審における判断が違ってくる。ある意味では確定審における証拠の評価に問題があったのではないかというふうに推測されるわけでございます。
#229
○飯田忠雄君 実はこの問題は刑事訴訟制度の全般に関連する問題だと思いますが、例えば捜査官だって一生懸命に力いっぱいやっているし、検察官もそうだし、裁判官もそうなんで、そのときの与えられた状況下で力いっぱいやっておるはずであります。だから、どういうものをどのように与えるかが私は問題だと思うんです。裁判官に間違った証拠物件を提出して、そして裁判をするときにその間違ったものがいかにも本物のように思われるということであれば、裁判官はこれをチェックする機能を発揮することができないわけです。また捜査官にいたしましても現在のような刑事訴訟法上の捜査の制度で果たして死刑事件のような重大な犯罪を十分捜査できるだろうかと疑わざるを得ないわけです。不十分な時間しか与えな
いで捜査をやらせて、その上そうした捜査官が見込み捜査せざるを得なくなるから見込み捜査をし、きつく調べるということも起こってくる。これは時間が足らない捜査の方法において無理があるということを考えざるを得ないわけです。
 死刑事件とそれから死刑以外の犯罪については私は明確に区別すべきではないか。憲法上の根拠もやはり憲法の十三条に基づいて生命に関する問題については特別の配慮を必要とするのではないかと、こう考えるわけですが、何か外国の制度をひとつ調べられて、御参考になって、もっと落ちついて本当に真実を発見できる捜査体制がとられ得るようにするということについて御研究になるおつもりがあるのか。あるいはそんなことはもう一切考えないとお考えなのか。この点いかがですか。
#230
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、再審で無罪になるというような事件につきまして、その原因を現在研究といいますか検討中でございます。制度上の問題があったのか、あるいは捜査のやり方あるいは公判維持のやり方にどこか問題があったのかという点がまだ明らかではございません。
 ただ、今先生御指摘の捜査の時間が足らない、したがって死刑事件と他の事件とで差を設けて落ちついて十分な捜査をできるようにすべきであるという御趣旨もなるほどという面もあるかと思いますけれども、やはり現在の刑事訴訟法におきまして、基本的人権等の関係から捜査あるいは強制捜査の期間に制限を設けているということも、それなりのやはり憲法上の要請があろうかと思います。もちろん諸外国におきましてはそれぞれ千差万別でございまして、予審制度をとっているところもございましょうし、あるいは捜査時の強制捜査の期間というものが各国によって違うわけでございます。そういう点は十分今まで検討してまいったつもりではございますけれども、先ほど申し上げました再審無罪事件等の検討を通じまして広く各方面の観点から問題点を検討してまいりたいと思っております。
#231
○飯田忠雄君 例えば第一審の裁判が行われまして判決が出た段階で、もう一度その第一審の判決が有罪とした理由を、法務省ならば例えば例を挙げますと人権擁護局といったようなところで綿密に御調査をなさって、そしてその結果に基づいてこれを第一審裁判に対する訂正の資料として第二審に与えられる、そういうような制度はできないものか、こう思うんですが、いかがですか。
#232
○政府委員(筧榮一君) 現在の司法制度と申しますか憲法上の制度は、やはり裁判所の三審制と申しますか、裁判所の審査を繰り返して慎重に司法判断を下すということになっていようかと思います。法務省の関係あるいはその他の行政機関等が裁判の途中でこれに介入といいますか関与するということは、ちょっと問題があるのではないかというふうに考えております。
#233
○飯田忠雄君 第一審の判決がありまして、その判決をそのままにしておいて控訴するということになりますと、その基礎は第一審の事実関係が基礎になってしまいますね。それでは控訴審では事実の価値判断だけに制約されてきがちなんですね。控訴審でもう一度事実関係を調べるといいましても、事実関係の取り調べというのは第一審で取り調べた範囲内をもう一度評価し直すということになってしまうのではないか。それで、それでは第二審が正確な事件の間違いない判断を下すことは難しいので、少なくとも死刑事件に関しては人命に関する問題ですから特別の規定を設けるのが憲法の要請だと私は考えるわけです。
 それで、控訴をいたしました場合に、どちらが控訴したにしても第一審が有罪とした理由をもう一度綿密に証拠物の点検から始めて検討するということをやる必要があるのではないか。それは裁判所に求めても裁判所には資料がないのですからできない。一番資料を多く持っているのは検察庁ではないかと思いますよ。だから検察庁で、つまり体面にとらわれないで事実関係を調査して、これを第二審に提供するという、法務省の中にそういう作業のできる機関が必要ではないか。そういうことをやると裁判制度上どういう不都合な事態が生じますか。こういうことをお尋ねするわけですが、いかがですか。
#234
○政府委員(筧榮一君) 先ほども申し上げましたように、現在の憲法下の法制上、裁判所、司法権が独自に判断をされるわけでございます。控訴審が事実判断をするのに不十分だという御指摘でございますが、控訴審におきましても必要があれば一審と同様といいますか同じように証人を調べ、証拠物を調べ、またあるいは新たな証拠も出てきて事実審理が行われるわけでございます。また、検察官の方としても、一番資料を持っているかどうかは別といたしまして、また、もちろん第一審において必要な資料は提出するわけでございますけれども、控訴審におきましてもやはり事実の確定、真実の発見という見地から裁判所に協力をして立証活動をするわけでございますから、その過程が一審、二審、三審と行って確定するという現在の制度で十分であろうというふうに考えております。
#235
○飯田忠雄君 現在の制度で十分だとお考えになっているということですが、それならば、今日のような再審無罪ということは起こり得ないはずだと私は思いますが、再審無罪が生ずるのは結局犯罪の捜査にやはり問題があるのではないか。犯罪の捜査を急ぎ過ぎて短時間でやろうとするから問題が解決しないので、むしろ第一審の裁判が行われる間でも別に身柄を拘束しないでも捜査はできるのですから、いろいろの観点から提出した資料は、これは無罪になるものではないかといったような点からもよく検討を加える捜査、シロからの捜査、クロからの捜査が第一審の審理中においても行われ、それが適宜法廷に提出されるということになるような、そういう制度をつくりますと現在の司法制度からいって大変困ることになるのか、あるいはそういう制度ができればできたでうまくいくのかどうか。これは法務省とか裁判所の方の実務を御担当の方の御意見を聞かないとわかりませんから、だから、お尋ねをするわけです。こういう点につきまして検察庁は困るかどうか、あるいは裁判所は困るかどうかについてお尋ねをいたします。
#236
○政府委員(筧榮一君) 今御指摘の点でございますが、先ほど御指摘になりましたように、検察庁は別に体面にとらわれるというようなことは全くないわけでございまして、第一審中でもシロの捜査もすべきであるという御指摘でございますが、もちろん起訴前の捜査の段階ではクロの捜査と並行してシロの捜査を行う、そしてクロになった場合に起訴をするというのが捜査の常道であろうかと思います。また、起訴いたしました後におきましても、仮にシロの資料といいますか、疑わせる事実が違うのではないかというような資料なり疑いが生じますれば、当然法益の代表者である検察官としては事実の確定、真実の追求のためにその捜査を徹底して、これを公判廷に顕出をして裁判所の判断を仰ぐということになるわけでございますので、ただいま先生の御指摘の御心配の点は、現行法で検察官が十分に捜査を尽くし公訴維持に万全を期するということで十分ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
#237
○飯田忠雄君 実は私が疑問に思うておりますのは、万全を尽くして検察官が仕事をなさり捜査官も仕事をなさり、裁判官も仕事をなさってきたにもかかわらず、死刑事件が長年の間の事実上の執行猶予をして検討をしてきた結果、非常な不便を忍んで弁護団の方において新しい事実を発見される、こういうことになっておる点なんです。こういう新しい事実の発見というものは恐らく国の力でもっと早く行えば発見できたのではないかと思われるわけですね。それが発見できなくて弁護団の非常な弱い力でもう長年かかってこれをやり遂げて再審に持っていくというのはいかにもこれはおかしいではないか、こう思われるわけですね。
 三審制のもとで再審無罪が出るなんということは本来考えられないことであるわけです。三審制のもとで再審無罪が出るということは恐らくどこ
かに重大な欠陥が制度上ある。その重大な欠陥を発見してそのところを穴埋めして制度改正をしない限りこういう問題は解決できないのではないかと思われるわけです。再審無罪と簡単に申しますけれども、無罪になった人の長年の獄舎における苦労、それからそれが真実に無罪であれば本当に大変なことだと思います。
 それからもう一つは、こういうことを申し上げることは非常に言いにくいことですが、ここに日弁連の新聞がございます。昭和六十年四月一日の新聞です。この中で免田事件について「免田事件―それは禁句です」、八代支部では禁句になっておると、こういうふうに書かれております。それで、「免田栄氏は、八代支部を中心とした地元熊本では、全く人気がなかった。日弁連と熊本県弁護士会主催の「拘禁二法案に反対する集会」でも、会員の中から、この集会に免田栄氏が出席するのが適当かどうかは疑問だとする意見も出たという。」と、はっきりこう書いてあるわけですが、こういうことになりますのは、免田さんが本当は無罪かもしれぬけれども、しかしこれについては国民の多くの者が事実上、腹の中では疑っているということなんです。
 これではいかにも気の毒だと私は考えるわけですが、もしこれが疑いが本当だということになると、なおさらこれはまたおかしなことになる。そうしたことが起こってくるのは裁判の過程の中でどこかに大きな欠陥があるからではないか。その欠陥を御研究になっておるかどうかと、こういうことをお尋ねをいたしたわけでございます。大変お答えにくい問題であろうと思いますので、きょうはこのぐらいにしておきますが、実は私の質問、これ大分まだ半分以上終わりませんので、この次のときにまたお伺いをすることになると思います。
 それで、一つだけ法務大臣に、大臣の死刑の執行命令は判決が確定の日から六カ月以内にしなければならぬと、こう法律に書いてあるわけなんですが、普通の犯罪ですともっと早いのですね。六カ月も待たないで刑の執行をやってしまうわけなんですが、法律には刑の執行期間が普通の犯罪では書いてないんです。ですから確定すればもうすぐでもおやりになるということになるはずなんですが、死刑についてだけは法務大臣の執行命令によらねばならぬ。しかもそれは法務大臣は六カ月以内に執行命令を出しなさいと。執行命令が出たらすぐやるわけですね。そういうことになっておりますが、その六カ月以内にしなければならぬという、その意味はどこにあるとお考えでしょうか。
#238
○政府委員(筧榮一君) まず私からお答え申し上げます。
 六カ月という規定が設けられましたのは御存じの今の新刑訴法でございまして、旧法にはそういう規定はなかったわけでございます。その趣旨といたしましては、死刑は他の刑罰と異なりまして一度執行されれば回復は不可能になるというようなことで、特に慎重を期した執行を行わなければならないということで、死刑に関してのみは「法務大臣の命令による。」というふうに定められておるわけでございますが、他方、死刑が確定するような事案は凶悪かつ極めて重大な事犯を犯したものでございまして、裁判所がその情状あるいは事実認定について慎重な審理を尽くした上で言い渡されるわけでございます。そういう慎重な審理を尽くした上で極刑やむを得ずということで言い渡される死刑の判決、それが確定しました以上は、その執行を漫然と放置するようなことは許されないというような見地から、いわば確定判決を尊重するというような考えから法務大臣が執行命令を出す時期の一応の目途を明らかにするという趣旨で六カ月という規定が設けられたというふうに考えております。
#239
○国務大臣(嶋崎均君) 今刑事局長から御説明があったことでございますけれども、六カ月の期間を計算するというのは、御承知のように計算に入れないような期間もあるわけでございます。そういう中で、死刑は執行されるともう取り返しのつかない事案であるわけでございますから、十二分に内容を審査して処理をしなければならぬということは当然であろうというふうに思っておるわけでございます。そこで、我々としましてもそういう事態というものを十分踏まえまして判決の内容というものを十分に精査をさしていただく。それから先ほど来いろいろ話が出ておりますように、再審なり恩赦なりというような、そういう手続というものがやはり事前に十分行われる、そういうことの中で事柄を判断していかなければいかぬというふうに思っておるわけでございます。
 ただ、今回の中にもいろいろ書いてありますけれども、非常に長い間、三十年というような事実があるわけでございますが、それはそれなりにいろいろな経過があってそういうことが出てきたわけでございますが、やはり基本的には何回にも及ぶところの再審の問題もあり恩赦の問題もあり、またこの問題をめぐってのいろいろな、何というのですか、冤罪事件ではないかというような報道もあったというような事柄も重なってそういうことになっておるのだろうと思うのでございます。しかし、また逆に言えば十六回にも及ぶ再審の結果はクロであったという現実もあるわけでございますし、我々としましても今後その取り扱いにつきましてはやはり十二分に再審あるいは恩赦の状態というものを見て判断をしていかなければいかぬというふうに思います。
 六カ月という期間がどういう意味を持っていたかということは、私もよくわかりませんけれども、この種の事案を見ましても、ある意味では判断をする余裕のある期間が設定をされておるのではないかというふうに思っておりますが、あるいは判断違いであるかもしれません、全体的に十分検討したことはありませんから。
#240
○飯田忠雄君 私の質問はこれで終わります。あと次回にぜひ時間をいただいてこの問題について御検討をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。終わります。
#241
○橋本敦君 それじゃ、きょう私は、いよいよロッキード公判の控訴審が開始をされるという状況が目に見えてまいりましたので、国会でもこの事件の真相解明は両院の決議として国民に対する責務としてもはっきりうたってきたところでございますし、この真相究明をさらに徹底させるという立場から質問をしていきたいと思うわけであります。
 新聞でも報道されておりますように、田中被告側の控訴趣意書がいよいよ昨日提出されたわけでございますが、これを受けて検察官の今後の対応はどうなっていくか、控訴審の手続の今後の進行ぐあい、それはどうなっていくか、検察の立場でまずこの点を明らかにしていただきたいと思います。
#242
○政府委員(筧榮一君) 丸紅ルートの田中、榎本両被告人につきまして、昨日の午後、被告人、弁護人側から控訴趣意書の提出があったわけでございます。極めて膨大なもののようでございまして、私どももまだその内容を承知していないわけでございます。検察当局におきましてもこれから鋭意その内容を検討いたしまして、できるだけ早い機会に答弁書を作成、提出する、そして審理の促進、早期裁判という点に努力を重ねるものと考えております。
 なお、今後の予定につきましては、まだ何分これから答弁書作成に入るわけでございますので、確たることは私どもの立場から申し上げる段階ではございません。
#243
○橋本敦君 その点はわかりましたが、そこで、大体答弁書の提出というのがいつごろというような見当で作業を進められることになりますか。その見当がついておればお知らせいただきたいのであります。
#244
○政府委員(筧榮一君) 何分昨日出て、まだその内容を検察の担当者もこれから読むわけでございます。主要な点で一審以来問題になっております点につきましてはかねがね準備といいますか、いろいろな資料等もあるわけでございますので、そこらの兼ね合いからいつごろということにつきま
して申し上げることになるわけですけれども、その点につきましてもいつごろということまでは今日の段階ではちょっと私から申し上げられないと思っております。
#245
○橋本敦君 大体常識的にざっくばらんに言って、大きな事件でありますけれども、大体夏の終わりごろには答弁書の作成のめどをつけて、秋の初めには裁判所に提出するというような進行ぐあいで進むのではないかという向きもありますが、いかがですか。
#246
○政府委員(筧榮一君) そのような見方も十分あり得るかと思います。ただ、それでは確実かとおっしゃられればちょっと難しいかと思います。
#247
○橋本敦君 控訴審が始まるわけですが、基本的には検察官は一審で公訴事実の立証に全力を挙げられ、しかも法の建前からいっても証拠は一審で全力を挙げて出すべきものは全部出し尽くして、真相究明に検察官の法益の立場で全力を挙げなくてはならぬというのが法の立場でありますから、基本的には原審における検察官の全力を挙げての立証は一応尽くされているというように私どもは一面においては見ているわけです。しかしながら控訴審ということになりますと、どの範囲で事実調べが行われるか、あるいは行われないか、これは控訴審の動向にかかって、裁判所の判断にもかかってくることでありますが、依然としてやっぱり事実の認定の問題というのは重要性を失わないと思うんですね。
 そこで、まずこの点について伺いたいと思うのですが、検察官は一審判決について控訴をなさらなかった。その控訴をなさらなかったのは、量刑に大変な不満があるときも控訴をなさるし、事実の認定に不満があるときも控訴をするということもあり得るわけですが、本件で控訴をなさらなかったというのは基本的に言って一審判決をどう見られたからですか。
#248
○政府委員(筧榮一君) 現に控訴をいたしておりませんその理由といたしましては、やはり第一審判決の事実認定並びに量刑についておおむね主張が入れられた、不服を申し立てる余地はないという判断であろうかと思います。
#249
○橋本敦君 したがって、一審で田中側が五億円を受け取っていなかった、あるいは榎本のアリバイを主張した、いろいろなプロセスはあったけれども、検察官の立証の結果、一審の事実認定がなされて、その事実認定はおおむね検察官の主張に沿う、そういう内容の認定が証拠によってなされておるということを評価されておるということになるわけですね。
 今度の控訴趣意書で、新聞の報道でも要旨が出ておりますけれども、基本的には田中側は一審判決の事実誤認に一つは非常に力を入れて、事実誤認の主張をしておる。その主張の中身はこれから御検討になるわけですが、今お話があったように一審判決の事実認定、田中側に請託があり、請託を受け、そして五億円を渡されたという基本的な事実関係については、一審で立証し認定されたこの点については、これは控訴審においても揺らぐことがないという確信は訴訟当事者として検察側はお持ちなのではないかと思いますが、その点はどうですか。
#250
○政府委員(筧榮一君) 一審に引き続き、公訴維持に万全を期するものと考えております。
#251
○橋本敦君 そこで、私は今度の問題に関連をして一つ気になりますことは、そういうように公訴の維持に万全を期して検察官は確信を持っておられるということでありますが、田中側がこの控訴趣意書で指摘をしている面についてやっぱりこれは検討を必要とするという、そういう問題を一つは指摘したいのであります。
 それは田中側が今度のことに関連をして、あの五億円は田中は受け取っていないという事実誤認だけではなくて、仮に受け取っておっても、その趣旨がトライスターの成功報酬という趣旨ではない、こういうことを言ってきているわけですね。その趣旨を新聞の要旨で見てみますと、端的に言えば、あの五億円の授受というのはトライスターの成功報酬だ、こう考えるといろいろ矛盾するところがあるんだと。その一つは、ロッキードの日本における販売代理店としての丸紅の販売行為の中にはトライスターだけではない、他の機種の売り込みも当然入っていた。つまりP3Cその他の飛行機も入っていた。しかも重要なことは、この第一回の支払いがなされた四十八年当時においては何が主要な問題かといえば、実はトライスターの売り込みはもう決着がついていたのであって、クラッター日記その他から見ても、四十八年八月当時、金が支払い始められたころの状況としては、まさにすべて児玉、小佐野、その会合やロ社と丸紅の打ち合わせ等を見ても、P3C問題に関する打ち合わせ、対潜哨戒機問題に関する打ち合わせ、これが重点だから、だからこういう客観的事実から見て、あの五億円という趣旨はこれはトライスターということではないという主張をしている向きがあるんですね。
 この点について検察官はどういう立場を一審以来とってこられましたか。
#252
○政府委員(筧榮一君) P3Cの選定問題につきましては、御承知のように本件のロッキード事件の捜査が始まった当時から国民の関心を集めた社会問題ともなっておりましたし、捜査当局におきましてもそれを念頭に置きましてトライスターの購入と並行いたしましてP3Cの選定問題ということも捜査の対象にしていたわけでございます。具体的には、コーチャン、クラッター等の嘱託尋問の内容にもそれに関することがございますし、また国内におきましても関係の防衛庁等の関係者の取り調べもいたしております。そういう点でP3Cの疑惑につきましても捜査を行いましたが、その結果、P3Cの選定問題に関しましては犯罪の容疑が認められないということで御承知のような起訴になったわけでございまして、そのことは現在でもその事情においては変わりはないと考えております。
#253
○橋本敦君 そこが私どもは基本的に大きな問題だというようにかねがね指摘をしてきたわけであります。捜査の当初においては検察官も今御指摘のように、犯罪の容疑の対象となる事実関係としてはトライスターの売り込みだけではなくてP3Cも入っているという想定のもとに捜査は開始をされておったという事実は、これは今お話しのように私もそのとおりである事実は裁判記録にもあらわれていると思うんですね。
 例えば児玉、太刀川、小佐野併合公判でコーチャンの嘱託尋問調書が採用されましたが、その決定理由書の中に、七六年五月二十二日付のコーチャンに対する嘱託尋問請求書で検察官がどの問題について尋問を請求しているかということが明らかになっておりますが、それを読んでみますと、ロッキードのL一〇一一、つまりトライスター「及び対潜しょう戒機P3Cの販売代理権を有する丸紅株式会社の」「桧山、大久保、伊藤」あるいは全日空側は「前記若狭」、こういう名前が出て、こういうような関係者の中で「L一〇一一を購入しこれを運航することに関し種々便宜な取扱いをしてもらいたい旨、あるいは日本国政府がP3Cを選定、購入するよう取り計らってもらいたい旨の請託を受け、これに関する謝礼の趣旨で供与されることを知りながら、昭和四七年一〇月ころから同四九年中ころまでの間数回にわたり多額の金員を収受した」という事実関係、これについて尋問請求するという趣旨が記載されています。
 だから、このことから見ても対潜哨戒機も含めて捜査の対象と当初はなっていたことが、今刑事局長おっしゃったように、記録の中でも明らかになっていることは事実であります。ところが、これが今おっしゃるように、捜査の結果疑惑がなかったというようにそう簡単に言ってしまうような状況であったかどうか。この点が私はいまだに大きな問題として一つは指摘をしていかなくてはならぬ問題だと思っているのであります。
 例えば、今局長もおっしゃいましたけれども、コーチャン氏の嘱託尋問調書、この中でどういうようになっているかといいますと、コーチャンは「大久保氏は、L―一〇一一のキャンペーンの関係で、貴方が主に会ってる人でしたか。」、こうい
う問いに対して「はい。」と答え、その次に「日本でのP―3Cについてはどうですか。」という問いに対して、これも「はい。」と答え、「貴方は、彼と販売戦略を話し合いましたか。」という問いに対して、これも「はい。」とはっきり答弁をしているわけですね。
 しかも、コーチャンは問題の五億円の支払い、これを行ったときについて聞かれたその嘱託尋問の中で、「五億円をもし払わなかったら、ロッキードはこれから日本で商売ができなくなりますよ。」、こういうことを丸紅側の意向として伝えられたそのときに、「これ以上の製品を何も売れなくなる」、こういうことで「この支払いをし或いはしない為に影響を当時受けるものの販売としてどんな製品を貴方は考えていたのですか。」という問いに対して、はっきりと「そうですね。それは我々が日本で販売しようとしていた全ての将来の物に適用されますから、一〇一一」、つまりトライスターと「P3Cを含んでいますし、」云々と、こうはっきり答えているわけですね。ですから、こういう嘱託尋問調書のその点から見ても、ロッキードが日本への売り込みがまさにトライスターだけではなくて、それが決着ついた後なおさらP3C重点に移行していったし、まさにその時期にあの支払いがなされたという客観的状況が、これは証拠によって明白だということができるわけですね。
 そこで局長にもう一度お伺いしますけれども、このP3Cに関してあの五億円は全く関係がなかったと言い切れるのか。コーチャン証言では、今お話ししたように、あの五億円の支払い、それはP3Cを売り込みたいし、そのために必要な金だという趣旨で払ったという意味が一部出ているわけですが、本当にあの五億円は対潜哨戒機とまるで関係ないと断言できるのか。
 さらにもう一つ。この対潜哨戒機の売り込みに関連をして、御存じのように児玉との間には秘密コンサルタント契約が結ばれて、その修正契約を見ますと、対潜哨戒機の売り込みに成功すれば驚くなかれ二十五億円の報酬も支払うという、こういうことも出ている状況でありますから、全然対潜哨戒機の売り込み工作資金として一切金が動かなかったと言えるような状況なのか。とてもそういう状況とは考えられない。民間機の売り込みでもこれだけ金使ったんですからということも想像するにかたくない一部の客観的資料があるわけですが、その辺はどうお考えですか。
#254
○政府委員(筧榮一君) 御指摘の二点でございますけれども、先ほど橋本委員御指摘のように、控訴趣意書の中にこのP3Cの問題も相当部分記述があるようでございます。そういうことで、これから検察官の方で答弁書を作成し、いつからになりますか、控訴審の審理の中でもP3Cをめぐるいわば被告人側の主張、それに対する検察官側の反論がなされるわけでございますので、今御指摘の点についてどういう証拠でどういうふうに判断するかというような点については現段階ではお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
#255
○橋本敦君 一審判決の言っている部分について、それでは刑事局長にちょっと伺っておきたいと思うんですが、一審判決の私が指摘する部分、コピーしておりますので、ちょっと局長ごらんいただきたいと思います。(資料を手渡す)
 一審判決は、コーチャン証言の信用性を判断したくだりにおきまして、被告人桧山の弁護人の主張について一定の判断をしております。このときの桧山の弁護人の主張は、コーチャンはアメリカにおけるSECの証言その他いろいろ調査を受けたその際に、その五億円をトライスターと結びつけて構成する、そのことによってチャーチ委員会やSECでの証言でP3C、この問題を裏に隠すということに実は成功したんだというような主張をしておるらしいのですが、まあそういうこととして、この五億円というのは趣旨が違うと言っていたようであります。
 それに対して裁判所はどう言っているかといいますと、その次の傍線を引っ張ったくだりが裁判所の判断ですが、あの五億円はP3Cと関係があるんだと裁判所みずから言っているわけですね。「却って、コーチャンは、本件証言においてP3Cにも言及し、とくに五億円支払を催促されたときのことについて述べる中で、右支払を履行しない場合に影響を受けるものとしてP3Cの日本における販売を挙げ、本件五億円支払とP3Cの関係が全くないわけではないことを自分から供述しているのである。」ということで、裁判所はこれを肯定しているわけですね。ただ、弁護人が言うように、そうだからといってあの五億円まるでトライスターと関係がないというように言うようなことに使うのは、これは「憶測の域を出ない」と言って排斥したと、弁護人の主張を排斥したというように私は解釈しているんですが、このくだりから見ますと裁判所自身もあの五億円についてP3Cと全く関係ないと言い切れないというように読み取っておられる向きに当然これは解釈できるのではないかと思うんですが、裁判所のこの判断をどう受けとめていらっしゃいますか。
#256
○政府委員(筧榮一君) 先ほども申し上げましたように、このP3Cの問題、今後の控訴審でまた一つの問題になろうかと思います。その点で、この一審判決に対してどう考えているかという点についても、現段階ではお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
#257
○橋本敦君 このP3C問題の基本的な構図ということになりますと、私は今までの経過で参議院のロッキード特別委員会等でも逐次明らかになった事実も踏まえて考えますと、裁判及び国会での論議を通じて非常に筋書きははっきりしていると思うんですね。
 最初、昭和四十四年、四十五年ころから政府は川崎重工と調査研究の委託契約を結んでいる。国の予算でその開発費もつけまして国産化の方向を目指しておったことは、これはもう客観的事実であります。ところが、その国産化方針が、これが、田中内閣が成立したのが四十七年七月七日でありますけれども、その四十七年の十月九日、田中元総理が主宰する国防会議で突如として次期対潜哨戒機の問題の国産化が白紙還元をされる、こういう事態になるわけであります。そして、これを受けて十月十一日、記者会見で田中元総理は次期対潜哨戒機は輸入にウエートを置いて検討すると、こういうことになりまして、国産化方針が白紙に還元される。しかも総理の意向としては輸入にウエートを置いて検討するという方向に大きく変わって、言ってみればロッキードの対日売り込み工作に道を開いていく、そういう契機がここから出てくるわけであります。
 これを受けて四十八年、あの金の第一回の支払いがなされた八月まさにその十日に、金の支払い第一回がなされたのが八月十日、一億円ですが、くしくもその日に国防会議において専門家会議が設けられて、次期対潜哨戒機の検討がこの専門家会議にゆだねられる。そして、それを受けて翌年になって専門家会議は当面外国機の輸入もやむを得ないという答申を出して、そして五十年三月十七日には国防会議参事官会議で輸入の場合はP3Cを輸入するという方向が決定されるという方向に動いた。そして今やロッキードのP3Cの我が国の採用はアメリカ以外の国では最も多い機数を備えるという方向まで来ているわけであります。
 そこで、こういう重要な経過に絡んでいるわけでありますから、当然ロッキード疑獄の大きな中心的な問題としてこのP3C問題があったのは、これは検察官も先ほどおっしゃったとおり捜査として当然のことであります。ところが、これが実は軍用機に絡む重大な疑獄として矮小化されてトライスターだけにされたのではないか、本当はP3Cにも絡んで金が動いたという大きな疑獄ではないかという疑いが依然として消えないのであります。
 検察官は控訴審の対応でこれからP3C問題がまた重大な問題になってくるから今すぐには答弁できないと、こうおっしゃるわけですが、控訴審の段階で弁護側の主張でP3C問題が新たに浮上し、そして弁護側はそのためにこの五億円の金あるいはP3Cで金が動いたという事実は弁護側が
新たに立証もすると言っておりますから、裁判所の事実調べがなされるという判断の中では弁護側からP3C問題の資料が出てくるかもわからない。そうなってきますと、このP3C問題について基本的に真相を全面的に解明しなければならぬという、そういう責任も検察官に負わされてくると私は見ているんですが、そういう場合にこれまでの捜査で検察官がつかまれたP3Cに関するすべての資料を新たに立証段階で全面的に明らかにして真相をP3Cも含めて改めて全面的に明白にしていくという努力をなさる必要があると思うんですが、その点はいかがですか。
#258
○政府委員(筧榮一君) P3Cをめぐりまして弁護人側がどのような主張をするか、控訴趣意書でその一端はわかるわけでございますけれども、あるいはどういう資料をさらに出してき、主張をどういうふうに展開していくかということは今後の推移を見なければわからないわけでございます。検察官としては、その弁護側の主張に応じて検察官の主張を立証するために証拠を提出するなりその他万全の対応をするものと考えております。
#259
○橋本敦君 その対応の中で検察官の主張を立証するためにとおっしゃった、それは結構です。しかし、その検察官の主張はP3C問題には犯罪の疑惑はなかったという答えがございましたが、犯罪の疑惑は一切なかったという結論だけが先にあるのではなくて、P3Cの導入選定経過をめぐってロッキードの対日売り込み工作が丸紅を通じ政界にどのようになされたか、なされなかったか、問題の真相の全面的な解明をやっていくという姿勢で、真相を明らかにするという姿勢で対処をしてもらいたいというのが私の主張なんです。
 検察官の主張を主張として貫くために、P3Cは関係ないんだという主張なら、それを貫くために、それだけにとどまるというんじゃなくて、弁護側の立証とも対応することにもなりますけれども、法益の立場という検察官の立場においてロッキードの徹底解明というそういう国民的課題の一つのやっぱり重要な場としてのこの公判においても全面的に真相を明らかにするという立場で対処をしてほしいと言っているんですが、その点はどうなんですか。
#260
○政府委員(筧榮一君) 公判廷での弁護人側の主張、立証に対応して万全を期する、先ほど申し上げましたとおりでございまして、まだこれからの推移を見なければどういう事態になるかわかりませんので、現段階でどういう立場でどういう方針でいくということまではちょっと申し上げる段階ではないかと思います。
#261
○橋本敦君 いずれにしても、P3C問題も含めて弁護人側の主張や立証に対応して検察官も対応していくということですから、P3C問題の解明ということが何らかの形でさらに前進をする可能性なきとしないという意味で私は控訴審を一つは注目したいと思っておるわけであります。
 ここで端的に検察官に伺いますが、この第一番の判決の中でも、先ほど局長も指摘をされたように、嘱託尋問調書におけるコーチャン証言あるいはその他の資料でP3C関係について丸紅が代理店契約を結んでいた事実、児玉とコンサルタント契約をやっていた事実、それから小佐野もこれに介入をしておった事実、こういう事実はこれはもう言うまでもなく明らかである。そして、これに絡んで児玉に対して、あるいはだれに対してとは私言いませんけれども、トライスターとは別に工作資金が動いたというその事実自体は、犯罪の成否は別として、工作資金が動いたというその事実自体は、これは証拠によって全部か一部かはわからぬにしろつかんでおられるのではないか。全く工作資金が対潜哨戒機関係では動いていない、ゼロだ、そういうことではこれはあり得ないということは、私ははっきりその程度のことは一審の状況から見て言えるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
#262
○政府委員(筧榮一君) 先ほど申し上げましたように、このP3Cをめぐる問題につきましても捜査を遂げまして、結局、結論として犯罪の容疑は認められなかったという結論に達したわけでございまして、その間どういう証拠でどういう事実が認定され、ただ結局犯罪の容疑までには至らなかったという詳細については答弁を差し控えさしていただきたいと思います。
#263
○橋本敦君 犯罪に至らなかったという理由が何であったかおっしゃいませんが、それは金が動いていないから犯罪の容疑に至らなかったということか。動いたけれども職務権限その他で犯罪の嫌疑に至らなかったという趣旨か。いろいろ含んでいるでしょう。その点は幾らお聞きしてもおっしゃらないと思うんですが、要するに一切金が動いていないという意味において犯罪の嫌疑が一切なかった、そう単純には言えないということは、これははっきりしているんじゃないですか。
#264
○政府委員(筧榮一君) その捜査結果の内容についてはお答えを差し控えさしていただきたいと思います。
#265
○橋本敦君 国会の審査の努力にもっと協力をしてほしいと思うんですが、明確に否定をされないということで、それはそれとしておきましょう。
 そこで局長、私は一つ重大な疑問を持たざるを得ない問題があるんです。それはもう局長もあるいは皆さんも御存じかと思うんですけれども、実はこのロッキード事件の公判に、当時東京地検特捜部の検事であった松尾邦弘さんが被告人伊藤の関係で証人に出頭されました。出頭されたのが第百五回公判で五十五年七月九日であります。そのときの弁護人とのやりとりを見てみますと、弁護人が「百一回公判で、伊藤さんが”桧山社長からトライスター以外の航空機について、大事なときになって相談された”と証言していますが、これはどんな航空機ですか」と、こう聞きますと、証人の松尾検事は「伊藤さんはおっしゃっていましたねえ」、「機種は」と、こう聞かれて、「(ちょっといいよどんで)P3Cです」と、こう松尾検事が証言をされている。
 このことで桧山社長と伊藤との間でP3C売り込みの相談があった事実は検事も知っておるということがよくわかりますが、弁護人が「なぜそれを調書に取らなかったのですか」と、こう聞いたときに、松尾検事は「まあ事件の後ですから」、こう言っているんですね。それで弁護人が「しかし、桧山さんから相談を受けたといってますが、丸紅としては相談する必要のないことなんでしょ」というように疑問を呈してさらに突っ込んで聞きますと、松尾検事は「相談を受けたといっておりました」と、こう重ねて言って、「では、なぜP3Cの話を調書に取らなかったのですか。重要とは思わなかったのですか」、こう聞かれて今度は「まあ、それ以上詳しい話でもなかったので:::」、つまり対潜哨戒機売り込みの相談を受けたということだけで「それ以上詳しい話でもなかったので:::」、こう答えられている。
 これは私おかしいと思うんです。局長がおっしゃったように、検察官は捜査の端緒においてはこの疑獄はトライスターだけじゃなくて対潜哨戒機も含めての疑獄に発展する可能性があるということで捜査を進められた、その中で対潜哨戒機について社長と話をしたんだと、こういうことを言っているのに、それは余り詳しい話じゃなかったので調書にとらなかったというこういう姿勢は、これは意識的に捜査を軽く見る、あるいは避けたとしか言いようがないのではないかという疑問であります。
 だから、弁護士の方がさらに不思議に思って、抽象的でその話に具体性がなかったんですかと、こう追及しますと、その次が大事なんですが、「それもありますが、P3Cなので、ひとつ問題になろうかとも思いまして」、弁護人は「はあ、そうですか」、こう言って質問を打ち切ったようでありますが、対潜哨戒機だから調書をとったら問題になろうかと思いましてという松尾検事の証言というのは、これは私はまことに意味深長ではないか、こう思うわけであります。これは東京新聞の「ロッキード法廷全記録」で拝見をしているところであります。
 そこで一つ聞きたいのですが、田中逮捕がなされたのが七六年七月二十七日でありました。この
伊藤が逮捕されたのが七月二日であります。起訴されたのが七月二十三日であります。だから田中逮捕に向かって検察官はいよいよ最終的な捜査の山を上り詰めようとしておる、まさに伊藤の逮捕はその前段階で非常に大事でありました。そのときに対潜哨戒機問題で伊藤がしゃべり始めたのにそれを詳しく聞かないという態度をとったのは、捜査の方針として対潜哨戒機はやらない、トライスターで立件をするという、そういうような構想があったからではないか。まさに松尾検事が「事件の後ですから」というようなことを言っている意味、これはよく意味わかりませんけれども、これは「P3Cなので、」調書をとったら「ひとつ問題になろうかとも思いまして」、このように言っている意味、これは正確にわかりませんけれども、まさに田中逮捕に向けて検察官が最終的な被疑事実の固めの方針はもう決めた後なので、つまりP3Cはやらないと決めた後なのでこういうことになったのではないかという重大なP3C隠しの疑惑を私は持たざるを得ないんです。
 検察首脳会議は、その直前の七月六日に最終的に田中逮捕のための首脳会議が行われたと後で新聞は報道しておるわけですが、このとき既にその捜査方針に基づいてトライスターでいくということが決められたというような見方も一部にはあるわけですが、私はこの松尾検事の証言から見て検察官の方は捜査の方針としてP3Cには力を入れないということをやったのではないかという疑惑を捨てがたいのですが、この松尾さんがなぜ調書をとらなかったのか。局長、どうこの証言を受け取っていらっしゃいますか。
#266
○政府委員(筧榮一君) 調書にとらなかったといいますのは、やはりその伊藤の供述が漠としておって詳細な話ではないということで、調書にとるまでには値しないという判断で調書にとらなかったというふうに承知しております。我々やはり調書にとる場合には、価値があるといいますか、事実等に関して供述している場合にとるわけでございまして、漠とした雑談的な中で出てきた言葉、それを残すということは必要ございませんし、どうしても調書にとるならばまたそれをもう少し具体的にした上でとるというのが一般的な捜査の常道であろうかと思います。そういう趣旨で松尾君も調書にとらなかったというふうに考えております。
#267
○橋本敦君 申しわけありませんが、素直に検察官の態度として今の局長の答弁を受け取れないですね。漠としてと言っていますけれども、まさにこれは伊藤あるいは桧山といえば代理店丸紅の首脳ですから、そこでP3C売り込みの相談をしたんだと言ったら、それはいつどこでだれからの話でどういう内容か漠とした話じゃなくて、真相を究明するためにもっと突っ込んで質問をなさってもいい。そういうために捜査の端緒としてP3Cも疑惑として入っていたはずではないか。それをこの程度で抑えられるというところに軍用機疑獄隠しと私は言葉で言っていますが、そういう疑惑を生ずる一つの重大な事実があるんではないかという疑いが払拭できないんですよ。
 もう一つ検察官に伺いますが、その田中にお金が支払われたのが第一回、四十八年の八月、これは明らかです。ところがトライスターの採用が決定されたのはその前の年の四十七年十月三十日です。全日空は十月三十日に決めておる。これはもう客観的にはっきりしておる。そこで児玉に対しては約十億円の報酬はその後すぐに支払われた。それから田中にはどうかといいますと、なかなか支払われないから年を越して田中の方がたまりかねて、例の金はどうなっていますかというようなことを言ったという証拠も一審では出されているのでしょう。田中は否定していますが、そういう証拠が出されている。それでトライスターが決まってから田中に対してなぜこれだけ五億円の支払いがおくれたのか。これはまさに田中側弁護団が五億円をめぐる矛盾の一つだと指摘しておる状況というのは、本当にこれは確かに矛盾の一つではないでしょうか。この点についてなぜこんなにおくれたのか。原判決の判断とも関連をして検察官はどう解すべきだと思っておられますか。
#268
○政府委員(筧榮一君) その点もこれからの控訴審の審理で明らかになることかと思います。
#269
○橋本敦君 なぜこんなにおくれたかということは、コーチャンにしてみたら五億円の金を払うのにP3Cの方は四十八年八月段階ではまだ決着の段階にまでなかなか行っていない、田中総理の意向で輸入の方向へウエートを置いてというのは前の年に出たが、それが政府の政策方針で輸入という方向、P3C採用という方向に決定的に動いていない、だからそれをはつきり定めた上で支払えばよいのだ、こう思っていたのではないか。だからコーチャンの嘱託尋問調書にあるように、これを支払わなかったら商売ができなくなるよ、こう言われて、ああ大変だ、P3Cもできなくなるのか、それは大変だというので払ったということと結びつけていきますと、まさにP3Cとの関連が無視できないという状況があり得るのではないか。
 そういう意味で今度は控訴審になっての対応だとおっしゃいますけれども、この矛盾は、この五億円は対潜哨戒機導入をも含めた趣旨だと解するならば、つまりP3Cでも五億円という金を中心に金が動いたんだという、そういう経過として見れば矛盾がなくなるわけですが、むしろ逆に対潜哨戒機問題をおろしてしまったというこの事件の捜査と検察官の立件の一つの弱点、これを田中側がそこにつけ込んで、控訴審ではそういうこともあるから五億円の趣旨はトライスターだけとは限らぬじゃないかということで言ってきているようにも思えてならぬのですが、そういうことに対してもきちんとP3Cを含めて全面解明をやって真相を明らかにすることが最も私は正しい回答であるし、控訴審に対しての検察官のとるべき態度ではないか。
 そういう意味で、P3C問題についてはこれから局長がおっしゃるように控訴審で重要な課題になりますけれども、全面的に真相を徹底的に究明するべき筋合いがまだまだ残されているということを強く要求して、また国会においても当委員会でしかるべき小佐野賢治その他必要な関係者の証人喚問を含めて、真相を徹底的に究明していく。その努力を私どもいたしますけれども、そういった国会の調査権に可能な限り誠実に協力をされることを期待して、きょうのところは質問はこれで終わっておきたいと思います。
#270
○柳澤錬造君 きょうは時間が余りないですから、三月に取り上げた暴力団事件のその続きをお尋ねしてまいります。
 山口組の竹中組長が射殺をされて以来、山口組と一和会の抗争というものがずっと続いているわけで、私が心配するのは、一般の住宅街でもって撃ち合ったり、競輪場でやられたり、街中の喫茶店でピストルが撃たれたということが起きているわけなんです。三月にお尋ねしたときは、三月二十二日現在で千五百七十二名を逮捕しました、けん銃を八十三丁押収いたしましたという答弁をいただいたんです。それで、今日の時点でこの事件が起きてからどれだけの事件が発生しているのか、それから検挙した人数がどれぐらいになるのかということをまずお聞きいたします。
#271
○説明員(上野浩靖君) お答え申し上げます。
 本年一月二十六日の夜に、御承知のとおり大阪府下で発生いたしました山口組組長ら射殺事件に端を発しました山口組と一和会の対立抗争事件でございますが、現在までに二府十三県におきまして傘下組員によります抗争事件が百四件発生しておりまして、このうち九十一件につきましてはけん銃発砲を伴うものでございます。現在までのこの百四件の対立抗争に対します検挙状況でございますが、そのうち四十六件を検挙いたしておりまして被疑者百二十五名を逮捕いたしますとともに、けん銃五十九丁を押収しているところでございます。また、未検挙事件のうち二件につきましては被疑者を割り出しまして指名手配をしているところでございます。
 なお、御参考までに申し上げますが、一月二十六日以降、全国警察におきまして山口組と一和会に対します取り締まりの強化を図っているところ
でございますが、これまでに両組織の構成員三千百十五名を逮捕いたしまして、けん銃、これは先ほどの対立抗争のものを含めまして百八十五丁押収するなど、ある程度の成果を上げているところでございまして、今後とも両組織に対します強力な取り締まりを推進していこうと考えておるところでございます。
#272
○柳澤錬造君 相当御努力をなさっているということは、その数字の上からもわかるわけですけれども、事件が起きた後、二月一日に大阪においてこの暴力団関係の三十二都道府県の暴力担当課長会議を開きまして、そこで、第一には警戒活動の徹底によって市民の安全の確保を図る、二つとしては両団体の構成員の大量検挙とけん銃の摘発をする、それから三つとしては山口組及び一和会の幹部の検挙を目標としての頂上作戦を展開するということをお決めになって指示しているわけですね。今のお話で、現在の段階というのはその最終的な頂上作戦を展開するというところまでいっているのかいないのか、どの辺におられるんですか。それから、その頂上作戦まで徹底しておやりになるというお気持ちはお持ちなのかどうか。その辺はいかがですか。
#273
○説明員(上野浩靖君) ただいま御指摘のことにつきましては、もう発生直後からその方向でやっておるところでございまして、ただいま申しましたように、組員の大量検挙等に基づきます両団体の鎮静化を図っていこうということでやっておるところでございまして、頂上作戦を目指すのは当然でございまして、今まで組長等五名ほど検挙いたしておりますし、そのほか資金源犯罪を中心といたしまして検挙活動を展開しているところでございまして、今後ともそういう方向で両団体に対しまして厳重な警戒と取り締まりを続けていくというふうに考えておるところでございます。
#274
○柳澤錬造君 私が心配するのは、依然として事件が起きるでしょう。だから警察の皆さんが相当努力をなさっているんですから、そういう点からいくと、今お話のようにもう三千名からも検挙しているというわけですから相当効果があらわれていいと思うんだけれども、依然としてつい二、三日前また発生しているわけなんで、これは大臣の方もお聞きいただいて一番最後にお答えをいただきたいと思うんだけれども、二度とこういう事件が起きてはいけないんだということだと思うんです。それで、警察としたって暴力団に何も決して甘いことをしているわけではないんですから、そういう点からいくならば、今のお話のように二府十三県にわたって百四件も発生しているということなんです。やっぱり住民というか市民の不安を取り除く、それでやっぱり治安の維持を確保する。何だかんだ言ったって世界の中でも優秀な警察だと言われているんですから、警察の権威と名誉にかけてでももう二度とああいうふうなことをやらせぬといって、そういう不退転の決意をもってお取り組みをいただきたいと思うんですけれども、警察庁の方のお考えと、それからあと最後に大臣の方の御見解をお聞きして終わります。
#275
○説明員(上野浩靖君) 私どもも何とか早く鎮静化をさせなければいけないということで努力をしているところでございます。ただ、御承知のとおり本件抗争につきましてはもともと山口組組長承継をめぐる分裂に起因しているものでございまして、それだけに両組織間の確執、対立の根が非常に深いということ。それから、両組織が全国に勢力を有する大規模な暴力団でございますところから、他団体も現在のところ静観する動きが一般的でございまして、通常の抗争に見られるような仲裁に入るような組織もないというふうなことの理由等から考えまして、残念でございますけれども、まだ抗争は続くものと見ざるを得ないというふうに考えているわけでございます。
 しかしながら、一般の方々にも御迷惑をかけ、あるいは不安感を与えるということで、そういうことが今後発生してはならずということで、現在のところ現場におきます警戒活動を十分にやるということで、関係府県日夜これについて腐心しているところでございます。また、先ほど申しましたように、事件検挙の面から、両団体に対して打撃を与えるということで資金源犯罪を中心にやっているところでございますし、また、暴力団そのものを社会から排除するというようなことで、暴力排除という観点から関係団体あるいは市民の方々の御支援をいただきまして、現在、例えば公営競技場からの暴力団の排除等を初めといたしまして、暴力団をいわゆる社会の生活の面から排除する。特に各地域、職域におきます暴排活動に支えられたそういう運動を展開しようということで、関係の行政官庁あるいは団体と協力いたしまして、これを強力に推進しているという状況でございます。
 いずれにいたしましても、早期に両団体に打撃を与え、これを鎮静化すべく今後とも努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
#276
○柳澤錬造君 言葉じりをとらえて言うわけじゃないけれども、余りにも山口組、一和会が大きいものだから、ほかの暴力団の団体も仲介に入ってやってくれるのも今いないしとおっしゃるけれども、暴力団同士にそんなものの仲介に入って何とかおさめるようなことなんて期待をしてもらっては困るんですよ。やっぱり警察がきちんとしてくれないと。これは三月のときも言ったように、暴力団のトータルは減ったかわからぬけれども、広域暴力団の連中というのはふえているわけでしょう、悪質な方が。だから、その辺がどういうものか。警察の皆さん、成田の第二期工事の問題も私見ておってそう思うんだけれども、何かああいう暴力ざたの連中が動くと割合に手をこまねいて始末をしないでいるわけなんです。そういう点でやっぱり一般市民から、何といいますか、警察が不信を買ったらこれはもう取り返しがつきませんから、そういう点で、もう絶対に撲滅すると言って、それだけの決意を披瀝してやっていただかなければなりませんし、そういう点で大臣の方から締めくくりのお答えをいただきたいと思うんです。
#277
○国務大臣(嶋崎均君) 暴力団関係の問題については、多くの場合、第一義的には警察当局によって捜査、検挙が行われているというのが実態でありますけれども、警察当局としても従来から、この種の犯罪についてはかねてから厳重な態度を持ってこれに臨まなければならぬというふうに思って今日まで参っておるわけでございます。特に最近問題になっている山口組と一和会の抗争事件というのを考えてみますと、これが単に両組の間だけの問題じゃなしに、一般住民が利用する公道上であるとか、あるいは喫茶店で事柄が起こるとかというようなことでございまして、市民の生活の安定に非常に大きく支障を来しているというのが私は現実ではないか、そういう意味でぜひとも鎮圧を図っていかなければならぬというふうに思っております。
 そういう意味で、私たちの方としましても警察当局と十分連絡をとってやらなければならぬわけでございますけれども、何分、やはり当初申し上げましたように、第一義的にはもう警察当局の皆さん方にぜひ御尽力を願っていきたいというふうに思っておるわけでございますが、しかし、この種の事案の処理につきましては、今後やっぱりできるだけ厳重な処分を我々もやり、また犯人の早期検挙やあるいは厳正な科刑の実現を期するようなつもりで対処をしていかなければいけないというふうに思っておるわけでございます。今後とも警察関係と十分連絡をとって努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
#278
○中山千夏君 新潟刑務所の医療体制、管理問題、それからもろもろ処遇について、きょうは少しまとめてお伺いしたいと思います。おととしにもうなりますけれども、新潟の刑務所で相次いで収容者の方が亡くなるという事件がありましてから、新潟の刑務所について私もいろいろ研究をしましたり考えるところがあったりしまして、何度かお話を伺って意見も申し上げてきております。その続きといいますか、まとめといいますか、きょうは少しじっくり、時間のないときもございましたので、落ちこぼれたあたりをまとめてみたいと思っているわけです。
 それで、一番最初にこの問題をこの場でお話ししたのが五十九年の七月二十六日になっているんですけれども、そのときに石山局長が御答弁の中で「矯正施設という一つの閉鎖社会でありまするけれども、その中の被収容者が罪の償いをするという目的ではありますけれども、それらの人々の健康を殊さらに損なうとか、十分な医療手段が講ぜられないまま放置してもよろしいとか、そういう考え方は私どもの組織にはないということをぜひ信じていただきたい」という発言をしておられまして、これありがたいことだと思うんですが、この中の「被収容者が罪の償いをするという目的」、これも当然あるんでしょうけれども、もう一つ重要な目的として被収容者が社会復帰の準備をするということがあると思うんですね。
 そうしますと、社会復帰の準備がきちんとできて出ていかないと再犯率というのも減らなくてぐあいが悪い。その社会復帰の準備としての場ということを考えますと、医療というものも、できれば入ってきたときよりもなお健康になって、あるいは少なくとも入ってきたときと同じくらいには健康な体で送り出してあげないと、とにかく外で生きていくには体が資本ですから、社会復帰はおぼつかないわけですね。そういう面でも医療というのは非常に刑務所の中で重大なものだと私は思うんですが、こういう認識はお持ちでいらっしゃるでしょうか。
#279
○政府委員(石山陽君) 今、中山委員仰せのように、刑務所の内部におきます受刑者の処遇の一つの目的の中に社会復帰ということの理想を十分達成するために十分な改過改善の方向に向かって収容者の教育をし、またその意欲を燃やして社会に復帰させる、これが重要な行刑の目的であることはまさにおっしゃるとおりであります。ただ、この前私が申し上げた今お読み上げいただいている議事録で、私がちょっと言葉たらずのようにお聞き取りになられるかもしれませんが、医療問題についてたまたま御質問ございましたので、私どもの医療体制が民間の大病院のような形で十二分な措置ができるかどうかということになりますると、やはり罪の償いを受けているという立場であるので、それはそれなりにという趣旨を申し上げたわけでありまするが、だからといって何もしないでもいいということではない。今の施設、人員、予算の中でできるだけ努力をしたい、こういうつもりで申し上げたので、言葉足らずにお受け取りいただけたかもしれません。
 それから、次の問題でございまするけれども、確かに施設内に収容しました者が外へ出るときに、できれば健康な心と体を持って出ていかなければならぬということは仰せのとおりでございまして、手前みそを申し上げまするが、私どもの施設へ入ってきますと、大体平均収容期間が懲役刑の場合一年八カ月ぐらいになりますが、出ていきますときには大体丸々と太って出ていくというのが普通でございます。もちろん中で不十分ではありまするけれども、それなりの医療施設等ありますので、御存じのとおり覚せい剤で身も心もぼろぼろになって青白い顔をして入ってきた者が、すっかり日焼けして元気になって出ていく、こういう姿を見ておりますと、この上とも医療体制も含めて十分やっていきたいというのが我々の念願でございます。
#280
○中山千夏君 それは大変幸福な例で、覚せい剤で入ってきた方はもちろん治って出ていかれるだろう、覚せい剤なんか飲めないんですから、そう思います。ただ、やはりそうでない例も時々耳にしますし、それからこの間の事件、相次いでお亡くなりになった事件に関連して、その当時の新潟刑務所の医療体制がどうだったのかということを若干最初のときにもお尋ねしたんですね。それと報道がやっぱり刑務所に聞きまして、それを報道しておりました。
 それからもう一つは、中に入っている人たちの意見というのも私集めまして、ちょっと聞いてみたんですね。そうすると、やはり少しずれがあるようなんですよ。お医者さんが新潟大学の医学部に委嘱して内科医がお二人、昼夜交代でいらっしゃる、それから、ある新聞によっては看護婦さんとお医者さんが各二人いるというようなのがあるんですけれども、これはいずれも中の人に聞いてみると、お医者さんは一人しか見たことがないとか、それから大学の若いお医者さんが一人で、診察は三時半か四時ごろに終わってしまうとかというような声も聞いております。それから、診察などについてもちょっと違っているところがある。でも、それはたまたま一人のお医者さんにしか会わなかったというようなこともあるかもしれませんし、刑期の違いによって印象も違うかもしれません。ただ、定期健診がその当時行われていたかどうかということで、新聞だと一つの新聞が入所時と年一回行っていた、それからもう一つの新聞が年一回胸部エックス線写真など、それからもう一つの新聞は入所時にレントゲン検査や間診をして年に一回定期健診をしていた、こうなっているんですね。
 これはまだ石山さんからはお伺いしていないんですが、この当時の定期健診というのはどうなっておりましたでしょうか。
#281
○政府委員(石山陽君) 今委員仰せのように、大体一般的な基準で申しますると入所時にとりあえずの健康診断と申しましょうか、一応やりまして、一年に一遍は大体管区の指導によりまして定期健診をするというのがうちの原則でございます。それで、例えて申しますればレントゲン車を持っておる大きい施設から付近の施設に対し共助を含めまして、つまり巡回させるわけでございます。それを大体計画に一年間組みまして、例えば関東一円の施設をレントゲン車を持っておる大きな施設のレントゲン車が巡回していくという形で、一年に少なくとも一回は定期健診、すなわちレントゲン検査等も行い得るようにするというのが私どものやり方でございます。
#282
○中山千夏君 これは当時やっぱり入っていた人に聞きますと、受けていないという方、それからわりと長い刑期でいらっしゃる方に聞きますと、これは少しはっきりしているんですが、八三年の十月ごろに実施された。内容はちょっとわかりません。それから以後はずっとなくて、そして八五年の七月ですか、事件のあった年の七月ごろに、事件があったからというのであったけれども、そのときには確かに全員のレントゲン写真をとったけれども、その前は一年間一切定期健診めいたものはなかったということなんですね。どうもその辺のところが新潟刑務所、各刑務所によって違うのでしょうが、私の受けた印象では、中の方たちの話ではやっぱり医療について、そんなにそれは大病院並みというわけにはいかないとおっしゃるのは、まことにそのとおりだろうと思うんですけれども、年一回の定期健診ぐらいはきちんとあった方がいいんじゃないかと私は思うんです。それがどうもきちんと行われていない節が私の調べではあります。だから、その辺のところは確かに確実に毎年新潟の刑務所ではやっているというふうに御報告なり何なり受けておられますか。
#283
○政府委員(石山陽君) 先ほどちょっとこれを今のお答えの前に申し上げておかなければいけなかったのでありまするが、このポックリ病問題が起きましたのは、おととしとおっしゃいましたが、実は去年でございます。それで、今調査の結果を御説明いただきましたわけでございますけれども、八三年の十月と申しますとおととしの十月になります。それで、年一回の順番でやりますると、大体年に一遍同じころにやる建前でございましたが、そうしますると、昨年やはり同じ十月ごろにあってよかったわけでありますが、この事態が続きましたので、私どもこれを重視しまして、臨時に繰り上げてやりくりをいたしまして七月ごろにそれを実施した、こういうふうにお考えいただければよろしいのじゃないかと思います。
#284
○中山千夏君 毎年必ずやっているんですか、定期健診というのは。
#285
○政府委員(石山陽君) 私の就任前のことまで今ちょっと報告を受けてまいりませんでしたけれども、一年に一遍というのは管区あるいは局の指導方針と全く一致しておりますので、大体一年に一
遍は漏れなく回っておるというふうに、私は最近の実情から申しますと間違いないと思っております。
#286
○中山千夏君 それからもう一つ、これは細かい問題になるんですが、夜新潟刑務所で部屋に入っていますね。そのとき何か緊急事態が起きたという場合に看守さんを呼びますね。その呼ぶ方法というのはどういうふうになっておりますか。
#287
○政府委員(石山陽君) 施設の設備の新しさ古さによって多少違いまするけれども、多くの場合は扉の上部に木製のシグナルのようなものがありまして、これを報知機と申しております。これを中から操作いたしますると、てこのように棒が横に出てくる。それを廊下の端で見ていましても、あ、報知機が出ておるので何か用事があるなという形で職員がその場に駆けつける。これが通常のやり方だということでございます。
#288
○中山千夏君 その呼び方というか、被収容者の方から看守さんなり管理者側に何かを言うときの手段というのがもう一つ弱いという気が私はしたんです。それというのは、お亡くなりになった方の四人のうちのお一人が独居でいらっしゃいましたね。その方だけやはり亡くなってから見つかったんでしたね。あの中に入ってみたらもう死亡していたということでしたね。ほかの方は、結局一緒の房にいる方が一生懸命、本来は声を出してはいけないんだけれども、禁を破って大声を出して、それで看守さんがやっと来てくれた。だから少なくとも病院へ運んだりということは、お亡くなりになったにせよ、できているんですね。
 そうすると、ただ木の板を倒して、そしてそれを看守さんが見てくれるまで黙って待っている。これも私が聞いたことなんですが、声を出すということはいけないということになっているので、よほどのことがないとみんな声は出したがらないから、静かに板を倒す。そうしているうちに間に合わなくなったり、あるいは苦しみながら独居の方が板を倒そうとしたときにそこに届かなかったりということもあると思うんです。だから、ここの部分は、私相当医療という面から見ても、改良の余地があるんじゃないかと思ったんですが、いかがですか。
#289
○政府委員(石山陽君) 私どもは、職員で施設内を昼間または夜間、いわゆる巡回によって収容者の動静を見るという勤務についておりますけれども、この場合昼夜間で多少の時間の間隔の差はございまするけれども、大体十五分から少なくとも三十分以内には一遍必ず各房を点検して歩く。これが普通のやり方でございます。それ以外に呼び出す方法としまして、いわゆる意思表示の補助手段としての先ほど申しました報知機の装置があるわけでありまするが、これが例えば民間の寝たきり老人を収容しておりますような病院で、まくら元にベルがあって、そのボタンさえ押せばすぐ詰所でベルが鳴り、駆けつけられる、いわばナースステーションに集中通報装置がある、こういう格好ならば一番よろしいわけでございますけれども、御存じのように多くの人々が集団生活をしております。
 例えば、夜間で詰所と申しましても看守の詰めておりますところで大きなベルが鳴りますると、すぐ目ざとい人が目を覚ましてしまって、かえってまたいろいろ苦情が出るというようなこともありますので、報知の方法につきましては、今後順次改善する余地は十分あると思いますけれども、音でなくて何か光の点滅みたいな方法はないか、これも一方法でございましょう。ただ、そうしますと担当看守がほかを回っているときにはランプの点滅だけではわからぬ場合がある。こういった方法について将来どういうふうに扱ったらいいかというのはこれは処遇上の技法の改善の問題、設備の改変の問題として今後とも研究してまいりたいと思っておるわけでございます。
 ただ、今回の事例にかんがみて申し上げますると、ポックリ病という、ああいう不幸な事態になりますると、本当に一声うんと言っただけで失神状態になってしまうという形でございましたので、恐らく報知機を押す、つまり倒すという暇がなかった。これは仰せのとおりだろうと思いますけれども、こういう急に来る一種の心臓麻痺のような状態がありますときに、物理的設備を整えてどれだけうまくいくかということもございますので、何かもう少しうまく被収容者の動静をキャッチする方法はないか。それもかねて委員の御指摘のございまするように、プライバシーを損うような方法でなくてできるといいわけでありますが、そういう点も含めて、今後の改善の課題としてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
#290
○中山千夏君 ぜひそうしていただきたいと思います。雑居で同室者がいらした場合にはやはりお亡くなりになるよりは前に何か手当てをできているわけですよ。ところが、一人でいらした方の場合には朝起床時に死亡しているのを看守さんが見つけたという状態なわけですから、同じ病気であったにしても雑居の方ではしばらく苦しんで、みんながどうしようどうしようというときには、ともかくその人が苦しんでいることが見取れたわけですからね。そうすれば、そのときに応急のことをすれば、この間は御不幸にも亡くなったけれども助かるということもあると思いますから、ぜひその辺は真剣に考えていただきたいと思います。
 それから、これはある例を挙げて話さなければならないと思うのですが、例えば新潟刑務所で腰痛を起こすとしますね。それを訴えます。診察が来て訴えます。そうすると、これはうそじゃなくて本当に痛いのであろうという判断をされるとします。そうすると、どの程度の加療が行われるというふうに承知していらっしゃいますか。
#291
○政府委員(石山陽君) 一応仮定の問題としてお答えいたしますが、そういう形で腰痛の状態がひどいという本人からの訴えがあった場合ですね。そうしますると、定期的に各舎房ごとにいわゆる医師に見てもらう日が決まっておりますので、その日に診察願を出させまして、本人を医務室へ連れてまいります。そこで問診、触診その他必要な措置をやりまして、投薬あるいはレントゲン検査、こういった必要があると認められるような状態でありますれば、医師の指示によってそれなりの処遇をするわけでございます。
 ただ、外部にあらわれない症状というのは実は私ども医療としては非常に悩みの種でございまして、委員もよくこの事情は御理解いただけると思いまするが、懲役というのは悲しいもので、定役に服さなければなりませんが、その定役を嫌がって不定愁訴のような形で、いわばサボる手段としていろいろな症状を訴えるという癖がないわけではございません。それと同時に、本当に痛くてつらいという立場の者ももちろんあり得るわけでございますから、これらをお医者さんが十分に診察時に見分けて適切に仕分けていくというのは、これはなかなか刑務所に勤める医師の難しい仕事の面であります。そしてまた、民間でございますれば保険が使えますので、こういう言い方をするとお医者さんに失礼でございまするけれども、投薬もどんどん自由に行えるでありましょう。しかし刑務所に入っております被収容者には保険はききません。国の予算の範囲内で医療をやっておるわけでございますので、冒頭に申し上げましたように、過保護的な治療をするわけにはまいりませんが、その中で本当に処置すべきものについて正しい適切な措置をするというために刑務所在勤の医師たちは苦労しておる、こういう現状でございます。ただ、一般原則としては今申し上げたようなやり方で診療が進められるというふうに御理解いただければ幸いでございます。
#292
○中山千夏君 確かにそうなんですが、これは今までのお話の中でも出てきまして、仮にAさんと呼びましょうと言ってお話しをしてきた方なんですが、この方は、御承知だと思いますけれども、七月下旬から八月にかけて二十五日間、診察の結果病舎にお入りになった。これが腰痛だったんですね。
 その前に、新潟刑務所というところは非常に皆さんが働きに出たがるというところで有名な刑務所だというのは御存じでしょうか。残業も申し出
が非常に多いんだそうです、もし残業なんかがあったときは。といいますのは、お部屋に帰っても退屈というか、することがないというか、余りお部屋にいてきちんとしているよりは一生懸命何かつくっていた方がいいというので、そういう意味では非常に働きたいという方が多いところだというふうに聞いております。
 それから、そのAさんの場合なんですが、二十五日間病舎に入っていたんですけれども、その前に、八四年の十二月中にやはり非常に痛くなったので二回くらい休養を申し出たんですけれども、それは必要がないということで休養はさせてもらえなかった。今度八五年の一月下旬になりまして、やはり非常に腰痛がひどいので診察を受けましたらば、土曜の午後とそれから免業日の日中、これだけ寝るということを許可されたんですね。それをやっていたわけです。ところが、悪化するんだそうですね。私も本式のそういうものにはかかったことがありませんけれども、腰が痛いなんていうのは、ただ寝ていてもよくなるというものでもないし、非常に厄介な疾患だと思うんです。で、また診察を受けましたら、今度は触診の際に背骨の真ん中辺に痛みを覚えたというんですね。それで、それじゃ数日間病舎預かりにしましょうという処分になりまして、二月十五日に病舎に入りました。
 それからどういう加療がされたのかといいますと、さっきもおっしゃった投薬ですね。これはポンタールという薬で、私ちょっと薬屋の娘だったものですから少しは知っているんですが、痛みどめなんですね。痛みどめというのは御存じのとおり痛いのをしびれさせて感じさせなくするというだけのことで、治るということではないわけですね。そのほかには寝ているという以外に手がない。それで、まあ寝ていた。そうすると、二月十八日になったら、温湿布の薬を考えようかというふうにお医者さんがおっしゃったんで、それは自費で購入しようという手続をとったんだそうです。それから今度二月の二十一日になりまして、また診察があって、そしてポンタールが効かない、それから温湿布はどうなったんでしょうか、まだ購入できないというようなお話をお医者さんとしまして、触診をしたら、またちょっと痛かったので、お医者さんは、じゃまたしばらく預かりを続けましょうというふうな診断をなすったというような経過なんですが、これを見ていますと、まあぜいたく言うなとも言えないほどの、実際腰が痛くなって、そのことをほうっておいたために車いすになっちゃったというような例もあるわけですから、やっぱり何か治るような手を何とか打たないと仕方がないと思うんですね。
 ところが、普通に見ると、我々の常識からしますと、これは治るような手は打っていないという、しかも、それでいつまでたっても治らないということを訴えまして、それから、ただ寝ていると、どうも腰のことばかり考えちゃうから気晴らしに本を読みたいんだがどうだろうとお医者さんに言いましたらば、お医者さんがそれは自分は決められないということで、区長さんですか、上の方が決めることであるというお話で、その本の話は区長さんに聞くということになったんだそうですね。そうして、やっぱり本を読むというのは無理なんじゃないかというような判断がそこで係の看守の方からあったんだそうです。そうしましたら、その二十分後ぐらいに今度は区長さんの方から指示が来まして、寝ていてもよくならないようだったら、もう休養というか病舎預かりはやめて働きに出なさいという指示が今度あったんですね。それで、確かに寝ていてもよくはならないわけです。ところが働きに出てよくなるかといえば、やっぱり工場で三十分も立って作業をしていたらまたひどく痛くなっちゃったというんですね。こういうことの繰り返しではやっぱり治らないだろうと私なんかは思うんです。
 こういう加療のあり方、薬といってもそこに備えつけてあるのは痛みどめか胃の薬ぐらいしかないというような状態で、本当に何か病気になったときに治るのだろうかと非常に私は心配に思うんですね。そこで、もし腰からぼろぼろになって、満期になって出ていったときに体が悪くて働けないというようなことになったら、本当にこれは悲惨だと思うんですね。その辺は、こういう加療のあり方というのは予算内ででももう少し考えられないものでしょうか。
#293
○政府委員(石山陽君) まず先に、新潟刑務所の受刑者、非常によく働くというお褒めをいただきましてありがとうございました。と申しますのは、これは大分前にA級受刑者からB級に切りかえました。その際には非常に衆情が荒れまして、いわば工場就業拒否が続発して、新潟は一番問題刑務所でありましたのですが、歴代の所長がいろいろと衆情の安定に努めました結果、最近作業成績もそれなりに上がってきた、その時点が御評価いただけたのだろうと思っております。
 それから、先ほど来お話のございますいわゆるAさん、きょうまた同じような意味で一致しているという前提で申し上げまするが、そのAなる人につきましては実は腰痛の訴えはございます。この方はほかに歯科の治療もずっと継続的に受けておられますが、昨年の十二月段階で非常に腰痛をかねがね主張されておりましたので、診察の際に念のためレントゲンを撮ってみようということでレントゲン撮影をいたしております。すると、その結果では別に腰椎のずれとかヘルニア症状とか、こういった医学的に要手術あるいは即外部病院に入院というような、それほどひどい症状は認められなかったわけでありますが、一応腰痛の訴えはございましたので、先ほど委員の仰せのようにポンタール等のいわゆる鎮痛剤、これを投薬しておったわけであります。それから、ただいま仰せのように、何回か病舎預かり、あるいは病舎入室という形で作業を免除しておりましたが、三月になりましてからは、いわゆる先ほどお話の腰痛に対しまする温湿布でございまするが、これを始めましたところ、大分ぐあいがよくなっておるということを聞いております。
 それから、現在工場に出ておるかという前提でお話しでございましたけれども、これは昨年の八月以来、昼夜間厳正独居という処置を受けておりますので、工場には出役させておりません。したがいまして、自分の房の中で紙細工の軽作業を行わせております。そういう形で房内作業に従事しているというのが現実でございます。
#294
○中山千夏君 それから、ちょっと次の問題に移りたいと思うんですが、これも昭和六十年四月十一日の議事録からなんですが、今のAさんが独居拘禁という処遇を受けたということについてお尋ねをしたときのお答えの中で、その病死があったという風評を、死人が出たという風評をAさんが所内で聞きつけて、外部の弁護士さんにそういうことの連絡の発信をしたと。それに続けて「これを大々的な闘争として新潟刑務所に対する対監獄闘争としてぜひ実施してほしい、こういう実は申し入れがあったわけであります。」と、こういうふうにお答えになっていらっしゃいます。それから「こういうポックリ病が続いて、所内に入っております被収容者が非常に動揺するという時期に、」、ちょっと略しまして、「この問題を政治的に大げさに所内という問題について対外的にいわゆる対監獄闘争を展開されるというのでは非常に困るということがございましたので、」と、こういうふうに理由を御説明していらっしゃるんですね。
 この最初の段階、「これを大々的な闘争として新潟刑務所に対する対監獄闘争としてぜひ実施してほしい、」、こういう申し入れは、いつ、どこで、どういう方法でだれに対して行われたのでしょうか。
#295
○政府委員(石山陽君) いわゆる部外の人と人との間の接見交通、これが面会の形であれ文書の形であれ、これは国会の場ではございまするけれども、個人のプライバシーに関しますものですから、具体的にどういう表現でどうだということは御答弁差し控えさせていただきたいわけでありまするが、本人の親族あるいはこの人が、私の推測に誤りなくんば、かつて過激派関係のグループに属しておりまして、一審の裁判を受けておりまし
たときの弁護士さんあるいは新潟弁護士会、こういうようなところに対しましていろいろ発信をされた文書の中で、ぜひ皆さんの手でこれをよく調べてもらいたい、問題にしてもらいたい、こういった趣旨の表現があったことは事実でございます。
#296
○中山千夏君 それでは、この間の御答弁はこれは間違いですね。「大々的な闘争として新潟刑務所に対する対監獄闘争としてぜひ実施してほしい、こういう実は申し入れがあったわけであります。」とお答えになっているわけです。そういう文言でだれかに対して申し出があったのでなければ、こういうお答えはちょっとおかしいと思います。
#297
○政府委員(石山陽君) でございますので、先ほど申しましたように、内容具体的には申し上げませんが、親族やあるいは関係弁護士さん、こういう方々に対しましての本人の発信その他の中で、そういった表現に受け取られても仕方がないような内容の通信があったということでございます。
#298
○中山千夏君 これはいかに親愛なる石山局長といえどもちょっと私は納得しかねます。譲れないところがあります。というのは、この日に、やっぱり同じ日に石山局長は少しお説教なさいまして、私はこれはしかと受けとめたんですけれども、いろいろ獄内の人には不満があるだろう、そういうものが外へ伝わるときにどうしてもえてして誇張される、だからそれをそのまま受け取らないようにした方がよいというような、その辺のところは考えた方がよろしいというようなことをおっしゃったわけです。ところが、まさに今のお話聞きますと、こういう対監獄闘争というような言葉は、私全部この人が外へ出した発信を調べましたけれども、一切ないんですね。それから、と受け取られても仕方のないような文言があったのでしたら、その、と受け取られても仕方がないような発信をしたというふうにおっしゃらなくちゃ、国会に対してやっぱり不正確な答えをしたということに私はなってしまうと思います。ですから、ぜひこの闘争を申し入れたというような文言、ここのところは訂正していただきたいんですね。
 それから、私が読みました限りでは、この時期はちょうどあの死亡事件がありましてから内部で全然囚人たちに対して明らかな説明がなされてないわけですね。そして局長もおっしゃったとおりに風評だけが死んだ人と同じ房にいた人やなんかから来ている。そうすると、同じそこの刑務所にいる人が不安になるのは当たり前だと私は思うんです、原因がわからなくて、どうも死んだらしい死んだらしいという話が起こりましたら。その不安に駆られて真相を究明してほしい、ぜひこれは何か医療に問題があるというふうに自分は思うから、そこのところを調査してほしいということを最初にも言っていますし、それから、後に申し立てを行うわけですけれども、新潟県の人権擁護委員会に対して行うんですけれども、一貫してこの人の言っていることは、対監獄闘争にこれを利用してくれとか、対監獄闘争したいとか、そういうこと、それから私の解釈でいえば、それに受け取れることは一切ないですよ。それから、もし監獄の中でそのほかの人にそういうことを言っているところを管理者が見つけたら、それは当然懲罰なり何なりになるでしょうし、そういう事実もないわけですね。
 とすると、この全体の事件の中で監獄に対して闘争をしようとしているという言葉が私の調べた限りで出てくるのは一回だけありまして、それはこのAさんが何とか調べてほしいというふうに弁護士さんと連絡がやっととれたわけですね。その弁護士さんが新潟刑務所に面会に行かれた際に、その応対に出てきた刑務所側の方が、ああ、あれはただこれをきっかけにして闘争しようとしているだけですよとその人がおっしゃった。刑務所側の人がおっしゃったんですよ。
 それを含めて考えますと、どうしたって先にある先入観があって、当人は自分の身が危険だ、生命が危ない、それを何とかしてほしい、幾ら当局に言っても当局は説明もしてくれない、だったら外のだれかにと思うのはこれは人間の常だと思うんですね。石山さんがもしお疑いでしたら、これは石山さんの方が手に入ると思いますけれども、当人が出した手紙ですとか、そういうものは私全部見せて差し上げても結構ですよ。こんなことを石山さんがおっしゃる根拠になるような事件は一切ないですよ。それはやっぱりそれを監獄闘争しようという申し出をしたというような断定的な言い方で御答弁なさると、これはちょっと幾ら私でも譲歩しかねるんです。だから、これは取り消していただきたいと思います。
#299
○政府委員(石山陽君) 答弁は少し舌足らずだというのでおしかりを受けてしまいましたけれども、今委員仰せのお話を聞いておってちょっと思うことがあるのでございます。これは本人のところへ来る文書あるいは本人が外へ出します文書でございますが、現在の監獄法では書類について検閲をいたしております。したがいまして、外部に出す手紙で不穏当な箇所がありました場合は私の方で検閲の際に削除されましたり、指導して書き改めて出してもらう、こういう形がありますので、中山委員の御指摘の資料の中にはそれは薄いかもしれませんが、私どもが持っております関係では、出されざる手紙の中にいろいろあるということも含めてこの間も申し上げたつもりなので、その点ひとつ御賢察いただきたいと思います。
#300
○中山千夏君 それも理解できません。なぜかというと、手紙を出さない、つまりそこで検閲なり何なりなさるということは、それで既に保安上の目的でなさるわけでしょう、管理上の目的で。私が読めない部分は外のだれにも読めないわけですよ。そしたらその塗りつぶしをなすっただけで十分じゃないですか。それをまた、こいつはそういうことを心の中に思っておるから、実際にはもし塗りつぶしをなすったとしても、私はそれはないと思うのは、この方は石山さんもよく御存じのようにかなり賢い方ですからね。何が塗りつぶされるかなんということはもう三年半もやっていればよく御存じなわけですよ。ですから、そんなことお書きになるわけはないし、私はそんな箇所はなかったと思いますよ、あったら見せていただきたいと思いますが。
 でも、塗りつぶしたとすれば、それはなかったことと同じじゃないですか。塗りつぶした、切り取ったというのは、つまりなかったことにするためになさるわけでしょう。すると、それが、呼びかけがなかったらそんな結果は出ないわけですから。しかも監獄の中でもしそのような呼びかけをするところを看守さんがごらんになれば、それは当然何らかの処分がされるわけですから、その上にまた隔離処分をするというのは私はとっても変だと思います。これは納得できませんね。
 それからもう一つ。これはもう時間がなくなってしまいました。きょうたくさん時間いただいたのに、本当にこれやっていると切りがないんですが、私が調べた限りでは外への人権擁護の申し立てに対して新潟刑務所は大変妨害をしている節があります。ですから、そこをもう一度よくお調べになって、次の機会に、私の方もよく調べておきますから、またきちんとお話し合いをしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
#301
○委員長(大川清幸君) 本日の調査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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