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1984/04/03 第102回国会 参議院 参議院会議録情報 第102回国会 地方行政委員会 第10号
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1984/04/03 第102回国会 参議院

参議院会議録情報 第102回国会 地方行政委員会 第10号

#1
第102回国会 地方行政委員会 第10号
昭和六十年四月三日(水曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二日
    辞任         補欠選任
     稲村 稔夫君     山田  譲君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         金丸 三郎君
    理 事
                岩上 二郎君
                松浦  功君
                上野 雄文君
                三治 重信君
    委 員
                井上  孝君
               大河原太一郎君
                加藤 武徳君
                上條 勝久君
                古賀雷四郎君
                出口 廣光君
                吉川 芳男君
                佐藤 三吾君
                山田  譲君
                中野  明君
                峯山 昭範君
                神谷信之助君
   国務大臣
       自 治 大 臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    古屋  亨君
   政府委員
       警察庁長官官房
       長        鈴木 良一君
       警察庁長官官房
       会計課長     立花 昌雄君
       警察庁刑事局長  金澤 昭雄君
       警察庁刑事局保
       安部長      中山 好雄君
       警察庁警備局長  柴田 善憲君
       自治大臣官房長  津田  正君
       自治大臣官房審
       議官       石山  努君
       自治大臣官房審
       議官       井上 孝男君
       自治大臣官房審
       議官       吉住 俊彦君
       自治大臣官房会
       計課長      大島  満君
       自治省行政局長  大林 勝臣君
       自治省行政局公
       務員部長     中島 忠能君
       自治省財政局長  花岡 圭三君
       自治省税務局長  矢野浩一郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        高池 忠和君
   説明員
       国土庁地方振興
       局山村豪雪地帯
       振興課長     三上 惣平君
       厚生省保健医療
       局国立療養所課
       長        佐々木輝幸君
       水産庁振興部長  鷲野  宏君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○昭和六十年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和六十年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、昭和六十年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について
 (総理府所管(警察庁)、自治省所管及び公営企業金融公庫)
    ─────────────
#2
○委員長(金丸三郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 四月二日、稲村総夫君が委員を辞任され、その補欠として山田譲君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(金丸三郎君) 昭和六十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち警察庁、自治省所管及び公営企業金融公庫を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○山田譲君 私は、初めはやや抽象的な話をお聞きしまして、それから最後に具体的な最近の事例について自治省あるいは警察庁あるいは厚生省、国土庁というところの意見をただしてみたい、かように考えております。
 まず最初に、自治省にお伺いしたいのですが、憲法に言っております地方自治の本旨、よく言っているわけですが、この本旨とは一体何なのかということについてお伺いしたいと思います。これは重要な事項ですから、大臣にひとつお伺いできればありがたいと思います。
#5
○国務大臣(古屋亨君) 地方自治の本旨を自治省としてはどのようなとらえ方をしているかという先生の御質問と思いますが、憲法九十二条に規定しております地方自治の本旨ということにつきましては、地方公共団体が自主性、自律性というものを十分発揮できますように地方自治の制度を定め、運営することであると理解しております。戦後の新しい地方自治制度の発足以来四十年近くを経まして、関係者の御尽力、国民の御理解と御協力によりまして、我が国の地方自治はおおむね定着しつつあると考えておりますが、なお国の地方公共団体に対します権力的な関与あるいは地方公共団体の組織等にかかわる必置規制というようなものの現状については改善の要があると考えております。したがいまして、これらの改善を含め、今後とも地方自治の理念に十分配意して一層充実に努めたいと考えております。
#6
○山田譲君 地方自治についてのお考え、大臣から今お聞きしたわけでありますが、それをもとにして、やや抽象的な話ですけれども、もう少し地方自治についていろいろな考え方を聞いていきたいというふうに思うわけであります。
 今大臣のお言葉、言葉じりつかまえるわけじゃありませんが、地方公共団体のというふうなお言葉をいただいたわけですけれども、そうすると憲法が考える地方自治というのは地方公共団体だけが対象なのかどうかという問題でございますが、この点いかがですか。
#7
○政府委員(大林勝臣君) 地方自治あるいは地方分権という言葉が昔から使われておるわけでありますけれども、これはやはり沿革的、歴史的にも国と地方公共団体との関係というものを頭に置いて言われておるわけであります。もちろん地方公共団体の中にいろんな団体もございます。あるいはいろんな地域団体もあるわけでありますけれども、あくまで地方自治というのは住民を代表して仕事をする公的な団体、つまり都道府県あるいは市町村と国との関係に着目いたしまして使われておる言葉でございます。
#8
○山田譲君 そうしますと、あくまでもそれは地方公共団体とかその他の団体ということが地方自治の主体になり得るのであって、例えば部落というふうなもの、そういうものはいかがですか。
#9
○政府委員(大林勝臣君) 部落というものは、現在のところは制度的な位置づけというものはございません。したがいまして、地方公共団体の中でどういう民主的な運営をするかという点に着目をして地方自治という言葉が使われておるわけではございません。
#10
○山田譲君 私は、必ずしも地方公共団体とかそういう組織がなければ地方自治にならないということではなくて、一つの部落的なものがあってそこが一つにまとまっている、そしてそこでもっていろいろな起こった事柄をまずその部落の人たちが解決をするあるいは要求していくということも、当然これは地方自治の一つであるというふうに考えてよろしいのじゃないかと思うのですけれども、それはどうですか。
#11
○政府委員(大林勝臣君) 歴史的、発生的に先生のおっしゃるとおりであります。地方公共団体というのが昔からあったわけではございません。自然発生的はやっぱりできたわけでありますから、もともとはそういった小さな単位から住民の調整、協力、そういったもので仕事をしてきたのだろうと思います。そういう意味、つまり歴史的な意味におきましてはそういう御指摘も当たるかと思いますけれども、現在、法律、制度として使っております用語といたしましては、先ほど申し上げましたような制度的な公共団体というものを頭に置いて使っておると理解しております。
#12
○山田譲君 制度的と言うけれども、今歴史的というふうなことも言われましたが、何も歴史的なものじゃなくて、現在もやはりかつての部落的なものが脈々として、いまだに自分たちの部落は自分たちでやっていこうじゃないかというふうな気持ちでもってみんなやっているのじゃないかと思うんです。そういうものもやはり憲法で言うところの地方自治というふうに考えていいのじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
#13
○政府委員(大林勝臣君) 憲法で言う地方自治というのは、憲法九十二条で「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて」、こういう規定をいたしておりまして、あくまで憲法も地方公共団体というのを頭に置いております。
#14
○山田譲君 その次に、これはちょっと観念的な話で申しわけないのですけれども、国と地方との関係、地方公共団体でも構いませんが、地方自治の本旨ということと国の政治といいますか、国のいろんな制度、仕組みとのかかわり合いについてどういうふうにお考えでしょうか。
#15
○政府委員(大林勝臣君) 地方自治の本旨と申しますのは憲法で新しくできた言葉でございますが、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、できるだけ地方公共団体の自主性、自律性を尊重する反面、逆の言葉で言いますと、国から不当な干渉を受けない、これが本来の地方自治のありようだという思想が地方自治の本旨だと言われておるわけであります。そういう立場から申しました場合には、現在の国と地方公共団体との関係を考えました場合に、できるだけ住民の身近な事務は住民の身近な団体で扱わせるというのがまた地方自治の本旨に即するゆえんであろうという考え方のもとに、事務の配分が少し国に偏っておるのではないか、こういう反省が従来からございました。また、地方公共団体の仕事について一つ一つ細かな規制、関与、必置規制、こういったものが法律で定められておって、地方公共団体の自主性、自律性がそういう面でも阻害されておるという反省がまた一面ございます。こういった問題が現在地方の改革問題として大きく取り上げられておるところであります。
#16
○山田譲君 今局長が不当に干渉を受けないということを言われて、まことにそのとおりだと思うのだけれども、どうも現実的にいろいろ見てみますと、国、具体的には自治省ということが中心になろうかと思いますが、その地方自治に対する干渉、介入が少し余計にあり過ぎるのじゃないかと、こういうことを憂えるわけですが、その点は心配ありませんか。
#17
○政府委員(大林勝臣君) 御指摘のように、非常に仕事が多様化する、住民の需要というものが複雑化する、そういった時代の流れに応じましていろんな法律が出てまいります。その法律ができますたびに、やはりどうしても国の立場といたしましては、全国的な統一性でありますとか画一性というものが重視されがちであります。ところが、こういったものを余り重視いたしますと、どうしても国の地方公共団体に対する関与というものが強化されてくる。そうすると、それぞれの地方の実情に即した多様な行政、住民の意思に基づく行政というのが制約をされてくる。これが地方自治の本旨から見て非常にぐあいが悪いということから、現在いろいろ反省の上に立って論議が行われておるところであります。
#18
○山田譲君 今局長の言われたとおりじゃないかと思います。実は私も戦後の自治庁に採用になった男でありますけれども、自治庁を選んだ理由は、昔の内務省なんかと違って、そういう今おっしゃったようなことからもわかるように、自治庁というところは地方の自治を守り抜いてくれる役所であるというふうな私も希望を持って入ったわけであります。ところが、実際に県の課長なんかやってみますと、どうも自治庁は必要以上に、自分が出た役所ではあるけれども、必要以上に県に介入し過ぎるのじゃないかというふうなことを感じたことが何回もあったわけであります。
 いろいろ話したいことがありますけれども、その話はそのくらいにしておいて、それでは今度は、最近臨調がいろいろ言っておりますし答申も出しているわけでありますけれども、臨調の地方自治に対する考え方はどうなのか。これはどういうふうに理解しておられますか。
#19
○政府委員(大林勝臣君) 臨調も地方自治に関しましては、一昨年の七月でございましたか、いわゆる第三次答申におきまして、るる考え方が述べられております。変化に対する対応の一つの大きな一環といたしまして地方分権の強化ということを冒頭に述べ、そういうことをやっていくためには現在の機関委任事務、これがややもいたしますと安易に委任をされがちであるから、これを大いに反省すべきである。ただ、時間が足らないから新しい審議会でやってもらうということで、現在行革審でその問題が取り扱われておるわけであります。と同時に、先ほど申し上げました国の関与なりあるいは必置規制なり、こういったものについても地方団体の自主性、自律性が発揮できるように見直しをすべきだと、こういう考え方で一貫しておったと理解しております。
#20
○山田譲君 臨調のいろいろ書いたものを見ても、私はどうも今の機関委任の事務についてなんかはかなり詳しくいろいろ言っていますけれども、基本的に地方自治の本旨についての議論というふうなものが余りないように思うんです。とりわけこれは都道府県の問題ですが、臨調を読んでみますと、特に市町村、市町村と言っていますけれども、都道府県のことは余り言っていない。そうすると、臨調の考え方からして都道府県の自治というものはどういうふうに考えておられるかどうか。そこは自治省はどうお考えですか。
#21
○政府委員(大林勝臣君) 昔から地方分権をめぐります論議の中では、一つはやっぱりできるだけ市町村に対する事務移譲ということがシャウプ勧告以来今日まで重点的に言われてまいりました。だから、都道府県に対して事務移譲が必要がないということではございませんで、一般論として住民に身近かな事務は住民に身近かな団体におろすべきだということを前提にしながらも、なおかつウエートをつけまして市町村により多くと、こういう考え方でございます。もちろん臨調におきましても余り都道府県のことは言っておりませんけれども、特にやっぱり機関委任事務ないし関与の整理の問題につきましては相当程度都道府県についての頭があったと思います。
 御案内のように、機関委任事務の量から申しますと、市町村に委任されておる事務よりもはるかに都道府県の方におりておる量の方が多いわけであります。そこで、現在いろいろ論議が行われておるわけでありますけれども、非常に機関委任事務論議というのは難しゅうございます。機関委任事務は大いに活用すべしという論議が片一方ございます。大いにこれを整理すべしという議論が片一方ございます。それぞれにそれぞれの理由があるわけでありますけれども、今後そういった論議が六月までに、できるだけ地方の自主性を尊重する方向で煮詰まっていただくように願っておるところであります。
#22
○山田譲君 その機関委任の問題ですけれども、私はよくわからないのだけれども、盛んに機関委任事務を県の事務にしてしまえ、市町村の事務にしてしまえということはよく言われるけれども、現在機関委任事務は、県の機関に対しては別表三によって決まっておるわけですけれども、これをなくすということは、全部なくすとかなくさないとかいうことは別として、質の問題として機関委任事務をなくすということは、国の事務なんだから国が勝手にやれということなのか、それとも県にその仕事を一切任せろと、こういうふうなことなのか、一体これはどうなんでしょうか。
#23
○政府委員(大林勝臣君) 私どもは両面から議論をしていただきたいというふうに行革審の方には申し上げております。
 一つは、量的に余りにも機関委任事務が安易に委任され過ぎてきたという歴史を踏まえまして、まずその整理を大いにやっていただきたいということと、それから機関委任事務というものを全くなくするということにつきましては、私どももそこまでは考えておりません。例えば国の選挙を考えてみました場合にも、これはやはり機関委任という形でやりませんととてもできませんでしょう。あるいは国の統計を地方団体の機関に委任してやる以外にまたやる方法もございませんでしょう。そういうふうに、どうしてもやはり機関委任事務として残すものはこれはあるだろう。あるけれども、それが現在は量的に多過ぎるから、この整理をひとつ考えていただきたいということと、それから機関委任事務について一番現在批判の的になっておりますのは、やはり議会の関与ができないとかあるいは監査委員が物が言えないとか、そういうシステムになっておりますのを、できれば何とかやはり住民の意思が機関委任事務の執行についても及ぶように議会なり監査委員の権限を機関委任事務についても拡大するようにと、質と量の両面から見直しをお願いしておるところであります。
#24
○山田譲君 そのことで私がよくわからないのは、法律形式的に機関委任になっておる、あるいは国の事務になっている、あるいは都道府県の事務に移すということは、それはあると思いますけれども、具体的に事務そのものはだれがやるかということなんです。つまり、都道府県に任せてしまえば事務がなくなるわけじゃなくて、事務そのものをそっくり都道府県にやってしまえという話ですから、そうすると事務そのものは減らないのじゃないか。そうすると、国の事務が今までは機関委任という形でもって法律形式的にやっていたものがたまたまそうでなくなったけれども、事務そのものは残って都道府県がやるような格好になったのじゃ、これは本当の意味での行政整理、行政改革ということになるかどうかの問題なんです。この点はどうでしょうか。
#25
○政府委員(大林勝臣君) ですから、機関委任事務の問題につきましては、一つの問題としては、今御指摘がありましたように事務の整理問題というのが関連をしてまいります。と申しますのは、これは機関委任事務だけではなくて、団体自体の事務につきましても同じことが言えるのでありますけれども、もう古くなって、ほとんど用をなさないのにまだ法律制度として残っておるような事務、こういうものが残っておるのはおかしいということで、やはりそういう現在の状況に合わないような仕事は整理する必要がある。これは機関委任事務であろうが団体委任事務であろうが同じであります。
 そこで問題は、機関委任事務を団体の事務にいたしましても事務量というものは変わりません。これは変わりません。現在でも機関委任事務は県なり市町村の職員がやっておるのでありますから事務量は変わりませんが、問題は、機関委任事務とすることによりまして国の指揮監督権、こういったものが全面的に及んでまいりますと同時に、先ほど申し上げましたように、議会を通じて住民の意見というものが言えない、あるいは監査委員が監査ができない、こういった制約があるということが機関委任事務のあり方についての一番大きな問題点でありまして、御指摘のように、事務量というものが、事務の整理は別といたしまして、残る必要な事務についてはそれが機関委任事務になろうが団体の事務になろうが、事務がふえるとか減るとかいうことは関係ございません。
#26
○山田譲君 行政改革なり財政再建という問題はやっぱり行政の簡素化あるいは財政の再建のためにということで、いろいろな節約をする、こういう話だと思うけれども、今局長おっしゃるように、要らなくなった事務はやめるというのはこれは当たり前の話で、私は委任事務に何も限ったことではないと思うのだけれども、委任事務を委任事務でなくしたからといって、今言われたように事務そのものが残るとする、特に機関委任事務をやめて都道府県の事務にしてしまえば、本来今まで知事が一人でやったことが、議会に諮って条例で決めなきゃならないとか監査委員のいろいろな請求ができるようになるとか、かえってその点では事務は複雑になるということも場合によっては考えられないでもないのだけれども、その点はどうですか。
#27
○政府委員(大林勝臣君) 機関委任事務が団体の事務になりました場合には、従来一つの仕事をやります場合に規則で決めておったものを条例で決めなければいかぬ、そういう手間暇がふえるということは御指摘のとおりでありますけれども、行政改革と申しますのは、事務量の整理という観点のほかに、やはり何と申しますか、変化に対する対応という観点から住民に身近な事務は住民に身近な団体でやらせた方が効果的であり、なおかつ能率的である、こういう観点もございます。
 そこで、やはり国の事務をできるだけ地方の方におろした方がその仕事のやり方として効果的であり、住民の意思に沿う、これが一つの変化に対する対応の一番の解決策ではないかという考え方が、また別の面で臨調の考え方の中にあったわけであります。
#28
○山田譲君 住民の身近なものはもう住民に任せるという考え方は、私は非常にいいと思うんです。ただ、そういうことをすれば、これは当然のことだけれども、住民の意思というものはそれぞれみんなその住民によって違うわけですから、例えば群馬県と栃木県と見た場合に、群馬県の住民はこう考えたけれども栃木県の住民はこう考えると、その差は当然あるというふうに考えざるを得ないし、それでいいのだということだと思うんです。
 そうすると、今まで国がある程度統一的にやっていた事務が当該都道府県の住民の意思によってということになると、栃木県と群馬県に差が出てくる。その差はいいというふうに考えられるか、好ましくないというふうに考えられるか、どちらですか。
#29
○政府委員(大林勝臣君) それは、恐らく仕事の質、物によりけりであろうと思います。仕事によりましては、群馬県ではこういう仕事の仕方をする、栃木県ではこういう仕事の仕方をするというやはり多様性があってまたしかるべき面があろうと思います。ただ、物によりましては、またできるだけ全国的に基準を決めて平均的にやった方がいいという仕事もございましょう。そういった場合に、国の事務を地方におろしてしまった場合に地方団体に勝手気ままにやられては大変国の政策として困るというような場合におきましては、国が一つの基準的なものを法律で決める、その基準に従って地方団体が仕事を行う、しかしその仕事自体は国から地方団体におりておるのだ。つまり、事務の移譲は行いますけれども、事務移譲の物によりましては、やはり全国的な基準をつくるべきものは法律で全国的な基準をつくるべきだという考え方がまた同時にございます。私どもも、そういう面ではこれは当然のことであろうと考えておるわけであります。
#30
○山田譲君 この辺いろいろ議論したいのですけれども、時間もありませんからやめますけれども、一つだけ具体的な問題をお伺いしたいのはいわゆる県なり市の職員の給与を決めるということです。これは条例で決めるようになっている。ですから、これは当然普通に考えれば、当該住民の意思に基づいて職員の給与は決めていく、こういうふうに考えざるを得ないのだけれども、それは間違いないですか。
#31
○政府委員(大林勝臣君) 給与問題は、もちろんその地方団体の条例で決めるシステムになっております。したがいまして、議会でいろいろ意見を出していただいて決まるということになるわけでありますけれども、給与につきましても全国的な一つの基準というものが地方公務員法の中に規定をされております。国の給与あるいはその地域の民間の給与、そういったものに準拠して決めるという一つの大宗的なものが決められておるわけでありまして、そういう意味から、確かに地方団体自体でお決めになる質のものではありますけれども、一つの基準というものは法律で規定をいたしておるわけであります。
#32
○山田譲君 だから、いろんな事務によって違いはあると思うけれども、少なくとも給与を決めるということについては、基本的には団体が自由に住民意思に基づいて決められる。しかし、大まかな大枠として、そうはいうものの、やはり公務員ですから国の公務員とそう差があってはならないと同時に、やっぱり当該都道府県の賃金水準ともそう差があってはならないという、この二つの考えが地方公務員法には載っている。ですから、その点では国家公務員と若干違いがあるのじゃないか。国家公務員の場合は法律で決めますけれども、その水準は、あくまでも人事院があって、人事院が国全体の賃金水準を見てこれとの比較でもって五%以上の差が出れば勧告をしてやるとか、そういうシステムになっているけれども、そこのところは都道府県と違うのじゃないかと思うのですけれども、その点はどうですか。
#33
○政府委員(中島忠能君) 今先生がお話しになられましたように、国家公務員の場合には人事院が民間給与を基準にして勧告する制度になっております。したがいまして、民間従事者の給与というものが基準になっているということでございますが、ただいま行政局長からお答え申し上げましたように、地方公務員の場合には、国家公務員、地域の民間事業従事者の給与あるいは他の地方公共団体の給与あるいは生計費というような要素が入っておりますので、制度の仕組みとしても若干そこは差異があるというふうに考えざるを得ないわけでございます。
 ただ、給与というのは公務員の勤務条件の中でも非常に基本的なものでございますので、国家公務員であろうが地方公務員であろうがやはり公務員であるという共通性によりまして、そこにはやはり基準として同一でなければならないという考え方があろうかと思いますけれども、今の法律の規定のように、若干の地域の民間企業の給与とか他の地方公共団体の給与というものも考慮する余地があろうかと思いますけれども、基準はやはり国家公務員の給与というものに考えざるを得ないというふうに思います。
#34
○山田譲君 今部長の言われたのはちょっと言い過ぎたと思うんです。基準はあくまでも国家公務員法なり地方公務員法に決まっているのが基準であって、その基準どおりにやることが当然であって、それ以上に自治省としてこうあるべきだというふうなことを言うのはおかしいと思うんです。だから、基準としてはあくまでも地方の場合は地方の水準に合わせ、それと同時に大枠ではやっぱり国の方にも合わせなさいというところまでは言っているけれども、それ以上に何か自治省が制約を加えるというふうな考え方を持つこと自体が私は非常におかしいと思うのです。しかも、各都道府県には人事委員会というものがあるわけです。その人事委員会が群馬県なら群馬県の水準を調べて、それで勧告をする、こういうことになっていて、国の場合は人事院があって国全体を見て勧告をする。その勧告が出た結果に違いがあるのは、これは当たり前の話だと思うのだけれども、その差は認めようとしないのですか。
#35
○政府委員(中島忠能君) 人事委員会というのは地方公務員法に基づきまして存在する公正中立な機関でございますので、それの勧告というのは原則としてやはり尊重していかなければならないというふうに考えます。しかし、その勧告が出る前のそれぞれの団体の地方公務員の給与の実態というのはそれぞれ異なっておりますので、その異なった地方公務員の給与の実態というものをよく見きわめながら当該地方公共団体において給与の適正化とかあるいはまた給与水準というものの適正化というものを図っていかなければならないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
#36
○山田譲君 そうすると、給与の差を見きわめるのはだれかということですけれども、それはあくまでも当該住民が決めるべき事柄であって、国がそれを見きわめて、こっちは高過ぎるから低くしろとか、こっちは低過ぎるか高くしろとか、そういう権限は少なくとも今の制度上はないはずだと思うのだけれども、部長のおっしゃったのは何かそれ以上のものがあるようなことを言われるのだけれども、その点はどうですか。
#37
○政府委員(中島忠能君) 基本は先生がおっしゃいますように、それぞれの地方公共団体に議会があり、納税者がおるわけでございますから、それぞれの地方公共団体の給与の実態というのをそれぞれ正確に地方議会に御説明いただく、あるいは住民によく公表していただく、その中から議論が出てきてそれぞれの団体の給与というものが決まるというのが非常に望ましい姿だと思いますし、私たちも基本的にはそういう立場に立っております。ただ、現在の給与水準というものをよく見た場合に、あるいはまた給与の制度、運用というものをよく見た場合に、それぞれいろんな方から御批判が出ている分野があるのもこれまた否定できません。したがいまして、そういうものにつきましては、先ほど行政局長がお話し申し上げましたように、公務員法の原則というものを踏まえながら、私たちの方でこういう給与の制度とか運用というのは公務員法の趣旨に照らしておかしいですよということを助言し、勧告していくというのもまた法律に基づく仕事でございますので、御理解いただきたいと思います。
#38
○山田譲君 今、法律に基づく権限とおっしゃったけれども、そんなものはあるのかないのか、私はないと思うんです。そのために県には人事委員会ができ、人事委員会が一生懸命やったので、それをあくまでもあなたの考えは県の住民の意思を何かこう認めないというか、何かどうせ任せておけば間違ったことやるのじゃないかというふうな、そういう気持ちをやっぱり自治省はお持ちなんじゃないかと思うんです。あるいは人事委員会がそんなものをやったって大したことない、人事委員会なんというものは知れたもので、やっぱり院の方が偉いのだというふうな、そういう地方不信感みたいなものが自治省にあるのじゃないかと思われて仕方ないのだけれども、その点はどうですか。
#39
○政府委員(中島忠能君) 非常に先生御心配いただいておるわけでございますけれども、私たち基本的には地方団体のおやりになることを尊重し、信頼していくという立場で今まで仕事をしてきておりますし、これからもそういう基本的なスタンスに立って仕事をしていかなければならないというふうに考えております。ただ、私たちが現在それぞれの地方団体の給与の制度とか運用についてお話し申し上げるというか、御指導申し上げておりますのは、制度、運用の中にもうどう考えてもおかしなものがある、違法なものもございますし不適当なものもございます。そういうものについては御指摘申し上げていかなければ、やはり私たちの責務が法律上果たせないという考え方でございますので、先生が御心配になられるような点というのは私たちとしても十分心がけて、給与の指導というか、地方団体に対する給与の接触というものに当たっていかなければならないというふうに考えております。
#40
○山田譲君 この問題もっともっとやりたいのだけども、ほかに仕事があるからこの辺でやめたいと思うけれども、いずれにしても今おっしゃったように指導するということを言われましたけれども、機関委任事務かなんかだったら指導ということもわかるけれども、団体の固有事務であれば、それは指導なんということじゃなくて、これはあくまでも都道府県がやればいいことなんですから、そのこと自体が間違っているというなら、それは都道府県の連中が、連中と言っちゃ悪いけれども、住民が判断すべき事柄であって、自治省ひとりの考えでもっておまえのところは不当だとかなんとかということを、しかも条例で決まったことに対して言うというのは県議会の軽視にもなるし、住民の自治を信用しないと言われてもしようがないと思うんです。その点はひとつこれからも私も折があればいろいろ聞いていきたいところでありますけれども、この辺でやめます。
 ところで、もとへ戻りますが、地方自治でもって地方住民がやればいいのだとはいうものの、実際問題としてはやっぱり社会的、経済的あるいは自然的な立地条件からして、どうしてもその村は自分たちだけでやっていけないというふうな場合もあるのじゃないかと思うんです。住民であると同時に日本の国民の一人なんですから、そういう場合に自治省どう考えますか。
#41
○政府委員(大林勝臣君) 国から地方にどういう事務を移譲して、地方の自主性にゆだねて仕事をやっていくかという問題に関連をしまして、今おっしゃいましたような市町村の能力あるいは規模の問題が出てまいると思います。もちろん地方に事務を移譲しますためには、それに応ずるやっぱり財源措置が一方で必要でありますと同時に、今後過疎過密問題がどう進展するかわかりませんが、将来、老齢人口が非常にふえるあるいは情報化社会が大変な変化をするというようなことを考えます場合には、果たして遠い二十一世紀におきまして地方団体がそれぞれ十分に住民の需要を充足するような仕事ができるかどうか、一つの区域の問題として今から勉強してみる必要があると私どもは認識をしております。現在、市町村の合併の特例法が先般当委員会の御可決を得て本会議で成立をいたしましたけれども、さらに地方団体におきましても、今後将来のことを考えて、自主的な合併の機運が醸成されるに応じまして合併が行われるということは望ましいことであろうと、私どもはこう考えておるところであります。
#42
○山田譲君 合併の問題についてはいろいろ私も議論はあるけれども、これはきょうの本題ではありません。いずれにしても、今過疎と言われたように、あるいは山村僻地の部落、こういうところは幾らその当該住民が頑張ってももうどうしようもないというところが確かに僕はあると思う。そういうところは、やはり地方自治とはいいながら、今度は逆に国が国としての立場から面倒見ていかなきゃならない、こういうことは当然だと思うんです。その点間違いありませんな。
#43
○政府委員(大林勝臣君) そういったところにつきましては国は適切な援助をしなければならないことは当然であります。ただ、問題は援助の仕方でありまして、結局その援助がいろんな地方自治を阻害するような干渉になってまいりますと、これはまた困るわけでありまして、そのあたりが非常に難しい問題であろうと思います。
#44
○山田譲君 それは干渉をしたりそういう邪魔したりするというような形での国の援助は困ると思うけれども、例えば過疎振興法であるとか山村振興法、ついこれも十日くらい前に農水委員会で可決された山村振興法というような法律を見ましても、そういう国の姿勢をはっきり出したものだと思うんです。
 ところで、国土庁にお伺いしたいのだけれども、そういう山村僻地でもって住民が幾ら努力しても日本国民として当然受けられるべきことがどうも受けられない、十分じゃないという、そういう山村僻地をいろんな施策を講じて助けてやって、それで一般の都会の人並みにできるだけ持っていってあげるように努力する、そういうことは山村振興法では考えているわけでしょう。それはどうですか。
#45
○説明員(三上惣平君) お答え申し上げます。
 山村振興法につきましては、御案内のとおり昭和四十年に制定されまして、五十年の改正、それから先般ちょうど三月末に延長になりまして今日に至っているわけでございますけれども、この間におきまして、山村地域の産業基盤や生活環境などの地域格差の是正を図ることと並行しまして、いろんな施策を推進していただいております。こういうことで、山村におきましてはそれなりに大きな成果を上げてきたと私は考えております。しかしながら、山村の現状でございますけれども、依然として他の地域との格差が存在しておりますし、また若い人を中心といたします人口の流出が依然として続いているのが現状であります。そういうことでございますけれども、山村地域といいますのは国土の保全とか水資源の涵養とか自然環境の保全とか極めて重要な役割を担っているということで、私どもはこれらの役割の高度な発揮のために国民的な要請がますます高まってきていると、こう認識しておりまして、こういう観点から、国土庁といたしましても今後関係各省庁の御協力を得まして、また先般の山村振興法の改正をなされた趣旨を踏まえまして、一層山村の振興のために努力していく必要がある、こう考えております。
#46
○山田譲君 山村僻地でもって無医村であるというふうなところがまだ日本にはかなりあるわけだけれども、そういうところについてはどうですか。今、山村振興法の趣旨にのっとって、厚生省、どうお考えですか。
#47
○説明員(佐々木輝幸君) 厚生省といたしましては、山村僻地等の医療の確保につきましては僻地医療対策等の推進によりその確保を図っていくべく努力をしているところでございます。
#48
○山田譲君 ここら辺で具体的な問題に入りたいと思うのだけれども、今山村振興法の精神あるいはそれに基づく無医村対策というふうなものについて課長言われたとおりだと僕は思うんです。地方自治というものはあるけれども、やっぱりそれでも足りない場合には国ができるだけの努力をしてほかの地域と同じようなことを講じてやる。ところが、それにもかかわらず行政改革に名をかりて、そういう山村僻地のそれをやめてしまえば無医村になるというふうなところの、具体的に言えば群馬県の吾妻町の坂上地区というところのことだけれども、五千人くらい人口があるわけです。だけれども、完全に榛名山と赤城山に囲まれた山村僻地もいいところというふうなところなんですが、そこに療養所があって、これを行政改革だから財政再建だからということでやめてしまうということになった。そうすると、本当にもう離島みたいなところだけれども、やめればそれは全く無医村になってしまうのですが、そういうところに対して、今の課長の話と逆に、それでもなおかつそこをやめる、無医村になっても構わないという考え方なのかどうか、そこら辺どうですか。
#49
○説明員(佐々木輝幸君) ただいま先生のお話しになりましたのは群馬県にある国立療養所長寿園のことだと思いますが、長寿園はもともと結核療養所でございましたが、現在、老人の慢性疾患等の医療を主として担当しております。立地条件に恵まれないこと等がございまして、国立療養所の役割としての新たな診療機能の確保が難しいことがございますことから、未整備の木造施設として現在に至っているわけでございます。国の財政事情がより厳しくなってきている現在、同じ県内の西群馬病院と統合いたしまして、結核、肺がん、脳卒中、重症心身障害等の特別な領域の高度専門的な医療機関として、より広域的に医療の向上に役立つように充実強化しようという計画でございます。
 長寿園のあります吾妻町は、先生も御承知と思いますが、日赤病院その他の医療機関もございますが、長寿園の地元の地域は、先生のおっしゃいましたように、長寿園のほかに医療機関がございませんので、この後、医療の対策といたしまして、診療所の設置を図るべく県、町と検討を行っているところでございます。
#50
○山田譲君 診療所のことは少なくとも今の予算でははっきりわかりませんけれども、要するに予算上は十二月いっぱいですかやって、後はもうやめる、無医村になるかもしれない、こういう予算にはなっているわけです。だから、診療所のことは私言いませんよ、予算に何もないわけだから。
 今同じ群馬県内と言ったけれども、それはあなた群馬を端から端まで歩いてごらんなさい。そう簡単に歩けるものじゃないんだ。同じ県の中だからといって、そうたやすく考えられては困るんで、実際問題としてその西群馬病院に行くのに坂上の人たちがどのくらいかかるかということも、あなたは実際に行ったことあるかないか知りませんが、これは私はしょっちゅう歩いているからよくわかるけれども、そう簡単なものじゃないんですよ。そんなところだったら山村僻地なんて私さっきから言ってないのであって、つまりバスからいっても、吾妻町という町の一つの部落だけれども、その町の役場に行くだけだって、それはもう計算したものがちゃんとあるけれども、大体短く見積もっても六時間くらいかかるわけです。しかも、そこへバスを乗りかえて寒い中行かなきゃいけない。そういうところで、しかも非常にへんぴなところですから、そのバスだってそのうちやめさせられるような運命が待ち受けているわけです。
 あるいは汽車にしても地方交通線で赤字だからというわけで、廃止されないにしても料金がべらぼうに高くなる。こういうふうなところでありますから、同じ県内のほかのところへお金やって、そこが設備がいいのだからそっちへ行きなさいと言ったって、中にいる人はみんな病人なんだから、そう簡単に歩いていけるものじゃない。それで、車で行けばいいじゃないかと言ったって、車はみんな若い人が勤めに使ってしまうのだから、おじいさん、おばあさんというふうな者はバスを利用するしかないわけであります。金からいったって、やっぱり二千円くらいかかる。そうしますと、そこの人たちというものに言わせれば、国の財政再建か行政改革か知らないけれども、それはそれが成功すれば、あるいは中曽根大臣なり竹下大臣の手柄になるかもしれないですよ。だけど、そこの坂上の人たちにとってみれば、恐らく五十年くらい前の本当にへんぴな時代に逆戻りするということでしかないわけです。そういうことを一体厚生省は考えていらっしゃるかどうか、そこら辺はっきり言ってください。
#51
○説明員(佐々木輝幸君) 長寿園がもし統合がなされました場合に坂上地区は無医地区になるということになりますので、この場合の一時的な医療の確保を図るためには、診療所を設置すべく現在協議を重ねているわけでございます。
 また、ある地域の全般的な医療の確保のためには、やはりどうしても各種の医療機関の連携が必要でございますので、県の地域医療計画の検討状況等も考慮しながら、医療の確保が図れるように私どもの立場からも対応を努力してまいりたいというふうに考えます。
#52
○山田譲君 診療所なんか無理してつくらないで、現在療養所が立派にあるわけですよ。まあ余り立派でないけれども、立派でなかったら立派にするようにするのがむしろ仕事であって、それを何のためにやめるか。現在既に七十人くらいが入院しているわけですよ。毎日の外来患者だって多いときは四十九人か、少ないときでも十人近くあるわけです。そういうところを何のためにやめるかというまず問題。むしろ今よりもちゃんと整備しなければいけないはずなのに、それをやめて後は診療所にしますとか言ったって、診療所は十九ベッドですか、しかもあれは国がやるわけじゃないでしょう。診療所なんというのは、必ず公共団体か何かほかの施設がやるのであって、国が直接やるわけじゃないでしょう、どうですか。
#53
○説明員(佐々木輝幸君) 国立療養所は特殊な療養を要する者に対する医療を行う機関という役割がございます。長寿園は元来結核療養所でございましたが、結核の減少に伴いまして、現在老人の方々を中心に医療を行っておりますが、そういう国立療養所の特殊な役割を十分に果たしていくためには、現在の長寿園の立地条件あるいは小規模であることその他を勘案いたしますと、新しい診療機能を確保するのが非常に困難である、こういう理由から西群馬病院と統合いたしまして、より充実した医療の提供を図れるようにいたしたい、こういう考えでございます。
#54
○山田譲君 この療養所は結核の療養所として昭和十四年にできたところですが、今御承知のとおり結核患者なんか非常に少なくなってきている。だから、一般の成人病の人たちとかあるいはその他の人たちがみんな入っていて、療養所とは名ばかりで、実際はもう普通の病院と同じような役割を果たしているわけです。しかも、十四年にそれをつくるときには、結核の療養所ですから、そんなものをつくるのをどこの部落も嫌がった。だけども、坂上地区としては、やっぱりそれは我々も協力しようじゃないか、結核療養所でもいいからつくってくださいということでできている。そういういきさつがあるわけです。いわば国の都合でつくるというものに対して坂上地区の人はそれに協力をして、そしてつくってくださいということでつくった代物です。
 その後病気の内容も変わってきて、今では一般病院と同じような役割を果たして、坂上地区の人がどのくらいこの療養所を頼りにしているかわかりはしない。現に七十人いる。診療所と言うけれども、診養所は多くても十九人しか入れないし、あるいはまた設置主体も国ではないというふうなこともあるので、それは国の責任としてはあくまでも現在の療養所の現状を考えて、むしろできることなら一般病院くらいにしてやる、設備が悪いというのなら設備をきちんとして、ただでさえ恵まれないその坂上地区の人に積極的にそういった国の援助の手を差し伸べるというのが、さっき言った山村振興法じゃないけれども、それの精神じゃないか。
 しかも、あなたもさっき言ったように、無医村地区に対してはどしどし診療所なり何なりをつくっていくのだというようなことをさっき言われているわけで、この前の山村振興法の審議のときにもそういうことを課長はおっしゃっているわけですよ。そういうことからいうと、全然逆なことを今やろうとしている。しかもそれは国の都合で、財政再建だとか財政赤字なんということは坂上地区にとっては問題ないですよ。それは財政赤字が解消されたからといって坂上地区の人が便利になるわけじゃないんで、逆にその人たちを犠牲にしておいて、そうしてやろうという財政再建や行政改革はけしからぬと私は思うんです。それをあなたに言ってもしようがないから、療養所のことだけに限定して言った場合であってもそうじゃないかと思うのだけれども、その点どうですか。
#55
○説明員(佐々木輝幸君) 国立療養所につきましては、先ほど申し上げましたように結核、重症心身障害、そういった慢性疾患の特別な医療を中心としてやるような役割が与えられております。僻地医療も厚生省として国の非常に重要な対策として推進しておりますが、例えば群馬県におきましては国立沼田病院を僻地医療のための中核病院ということにいたしましてその確保に協力いたしているところでございます。それぞれ国立医療機関の中でもそういう役割を分担いたしましてそれぞれの医療の向上に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#56
○山田譲君 同じようなことを言って、しつこくて申しわけないけれども、沼田なんて今言いましたけれども、坂上から沼田に行くなんというのは一日仕事どころか、下手すると二日くらいになりますよ。しかも、行くのは大体成人病のような人たち、御老人が多いわけです。あるいはそうでなくてもみんな病人です。その人があのへんぴなところへ山越え野越えして、それで高い交通費を払って行かなきゃならない、そういう犠牲を強いてまでやろうとしている行政改革の一環としての療養所を整備するという方針そのものが私はおかしいと思うんです。まあしかし、実態を見ればそれでもちゃんと十分やっていけるというところも実際あるでしょう。しかし、ここの場合はどう見ても十分やっていけるという土地じゃないわけです。だから、そういう点を厚生省、もう一遍考える気持ちはないのか。療養所の役割が何だかんだなんということはもうわかったけれども、その役割どおりになっていないで、本当にさっき言ったように一般の病院と同じようにやって、みんなそこの地域の人が非常に頼りにしているところですから、そういう実態に着目して、むしろ今の療養所を整備していくというのがなければおかしいんじゃないかと思うけれども、どうですか。
#57
○説明員(佐々木輝幸君) 国立療養所は、先ほどから申し上げているような慢性疾患等の医療の向上を図るために、全体的には整備をしていくつもりで努力しております。長寿園につきましては、これも申し上げている理由からやはり統合を進める方向になっているところでございます。坂上地区の地元の医療につきましては県、町等とよく協議しながら、診療所の設置等によってできるだけ医療の確保を図るようにしてまいりたいというふうに考えております。
#58
○山田譲君 どうも納得できません。最初から言っているように、やっぱり住民のことは住民がやる、住民の意思というものを尊重していろんな行政、それは地方自治でもあるいは国の政治でも構わないけれども、いずれにしても当該住民の意思というふうなものをよくよく聞いてやって、それでそこの実態に即応して、住民の言うことが本当に無理のない話である、ぜいたくなことを言っているのじゃないということをよく見きわめてから物を言ってもらいたい、やってもらいたいと思うんです。そこの坂上地区の人たちなんというものは、本当に血の出るような叫びでもって、この療養所なんかやめないでほしい、あれがどこか行ってしまえば私たちはどうなるかわからないと。事人命に関する問題です。だから、近くにあるからバスに乗って行けばいいじゃないかとか、そういうことじゃこの山村僻地の人のために国は十分な援助の手を差し伸べているというふうにはどうしてもとれないわけです。
 この問題これでやめますけれども、ひとつ厚生省よく考えていただいて、そう安易に療養所をやめて、そうして西群馬病院に統合すれば十分機能を果たせるとか、そういうことじゃなくて、やはり現在ある療養所がもしぼろだというならもっともっとしっかりしたものにしてやって、五千人近くいる、そうして本当に陸の孤島のような、そういう山に挟まれて将来下手をするとバスもなくなるかもしれないというようなところの人たちの医療というものをもっとこれは真剣に考えてもらわないと困るわけです。だから、診療所をつくればいいのだなんという安易な考えじゃなくて、本当にそういう点から考えていって病養所の問題に当たっていただきたいと、私はこういうふうに特に強く厚生省に要望しておきます。またいずれこの問題では質問したいと思っておりますが、きょうはこのくらいでやめておきます。
 次は、もう時間も来ましたから余り長くはやりませんが、警察の問題でちょっと苦言を呈しておきたい、こういうふうに思うわけです。
 これは私個人が体験したことですから間違いないのだけれども、実は私のうちは前橋にあります。前橋の町の中にあるが、庭があって、こっちに裏木戸があり、こっちには表門があって、どっらも閉めればだれも入れないということになっているわけです。ところが、私ども留守がちなものだから余計そうかもしれないけれども、だれかが夜な夜な入ってくる、どうもその形跡があるわけです。たばこを捨ててあったり、あるいは中にはジュースなんか飲んで、池にほうり込んでいったりする。そのうちに、街灯があって明るいのは都合が悪いのでしょうか、街灯をぶっ壊したりするやつが出てきている。それで堂々と中から今度はかんぬきをあけて外へ出ていって、朝帰ってみるとちゃんと門があいているというふうな、そういうやつがここ二、三年来、毎日じゃありませんけれども、時々来るわけです。警察にお願いしましたら、警察もこれは大変だというわけで何日か張り込んでくれたんです。ところが、警察が張り込んでいるときには絶対来ないんです、どういうわけか知らないけれども。警察がいなくなると途端に来るのだけれども、どうしても捕まらない。
   〔委員長退席、理事岩上二郎君着席〕
そこで困ったなと思っているときに、たまたま私のうちのすぐそばに飲み屋があります。飲み屋といっても本当の屋台に毛が生えたようなところだけれども、そこのママが私が仲よくして行ったり来たりしておるのですけれども、ある晩、その人はいつも帰るのが遅いから一時過ぎでしょうか、そうしたら中で変なやつがいるというわけです。私ども察するに、私のちょうど隣がラブホテルになっているんです。どうもラブホテルをのぞいたり眺めたり聞いたりというふうなことで来ているみたいなんだけれども、一生懸命のぞいている最中のところをママが近所の交番に、三分くらいで行けるところだけれども、そこへ電話をしてくれた。それで、そのママはうちへ帰ったわけです。そうしたら、その交番からすぐ跳んできて、二人でもってそいつを捕まえてくれた。
 そこまではいいのだけれども、ところがその後がいけないのは、その教えてくれたママに何らのあいさつをしないわけです。ママとしてはそれは大したことじゃないとは言うものの、夜中に電話をするということは、これはやっぱり親切な話で、それがあるから二人に一人が捕まったわけです。それで、二、三日たったが何にもあいさつしないと言うものですから、私が警察署に行って、余りじゃないか、やっぱりそういうことがあったらちゃんとゆうべはありがとうございましたと、あるいは感謝状なんか出さなくてもいいから、言葉でもいいから、警察官が行って感謝の意を表するくらい当たり前の話じゃないかと僕は言ったんです。そうしたら、その警察の人もそのとおりであるからということで、遅まきながらその警察官が行って感謝の意を表した。そのときに、私そこへ居合わしたわけじゃないけれども、来たかと後で聞いたら、来ましたけれども、何かしらぬがちょっと外から戸をあげて、やあこの間はどうもということでさっさと帰っていってしまったと言うんです。そんな失礼千万な話は僕はないと思う。まあそれはしようがない、やったというから、それはそれでいいでしょう。
 ところが、つい十日くらい前にまたまた入ってきて、また同じママが夜中の二時ころか見つけて、これまた交番にすぐやってくれたわけです。交番ではまたすぐ来てその男を捕まえた。別な男です。そうしたら、あと二、三日して私が帰っていってそのママに会ったら、この間また来ましたから連絡しておきましたと、こういう話なんです。じゃ、連絡した後どうなったか知っていますかと言ったら、いや何もあいさつがないから、私はどうなったか知りませんと言うんです。これはまた太い話だと私は思いましたから、とにかく警察署へ行って、けしからぬじゃないかと。協力してくれた人に対して、ちゃんと、この間はどうもありがとうございましたと言って、本気でもってあいさつするぐらい当たり前の話で、そういう住民の協力がなければ犯罪なんというものは捕まりっこないというふうに思うんですよ。だから、警察というのはそういう教育をしているのかと思って、人の世話になったところにあいさつしなくてもいいというふうなそういう教育でもしているんですか、まずそれを教えてください。
#59
○政府委員(中山好雄君) 警察にとりまして国民の協力が不可欠なことはもう申すまでもないことでございます。警察が国民から寄せられた情報などに基づいて犯人を逮捕した場合あるいは犯人の逮捕に協力していただいた場合などには担当の警察官がお礼を申す、あるいは事犯の対応に応じてその協力された方のところに幹部が出向いてお礼を申し上げる、あるいは感謝状をお渡しして謝意を表する、メダルをお渡しする、いろんな対応で感謝の意を表する、それとともに今後も御協力をいただけるようにお願いする、そういう指導をしているところでございます。そういったことにつきましては、御承知のように警察学校にまず入って初任教養を受けます。それから何年かたって、同じ警察学校での現任教養がある、そういった集合教育の場でも教官から教育しておりますし、それから配属された職場におきましても幹部の機会教養ということで、時宜に適した形で国民の協力を得るための警察のあり方について教育をしているところでございます。
 御指摘の点、もし御指摘のようなことがあったとすればまことに遺憾なことでございますが、忙しさに取り紛れてついおろそかになるという場合もあり得ることではあろうと思います。しかし、そういうことがあってはやはり国民の協力というのは得られないことでございます。したがいまして、今後とも十分にこういった点について指導、教養に努めてまいりたい、こういうふうに思います。
#60
○山田譲君 それは、あんな感謝状やメダルなんかどうでもいいから、とにかく、ゆうべ教えてくれてすぐ行って捕まえたのだから、まずその次の日にでもいいからそのママのところに行って、ゆうべは本当にありがとうございましたぐらいのことを言うのは当たり前の話、これはもう教育とかなんとかという問題もさることながら、人間の常識の問題です。だから、それは普通の社会だってだれか世話になればお礼を言うのは当たり前でしょう。それを何かまだ一回だけなら私は公開の席でこんなことをあなたに言いたくはないけれども、しかもその前の段階に警察まで行って、言っているわけですよ。それを全然またその次のこともやってないとなると、むしろなるべくお礼を言うなという教育を警察はしているのじゃないかというふうにしか思えないのだけれども、どうですかそこは。はっきり言ってくださいよ。
#61
○政府委員(中山好雄君) おっしゃるような教育をしているわけではございません。繰り返しになりますが、国民の協力を得るということは何といっても警察の仕事にとって大事なわけであります。そのために、警察としてはどういう態度であるべきなのかというのも重点として教育しているわけでございますが、たまたま御指摘のようなことがあったとすれば、その点改善するように十分指導してまいりたいと思います。
#62
○山田譲君 時間だからこれ以上言わないけれども、あったとすればという言い方は非常に気に入らない。あったから僕が言っているのであって、ないことを僕がでっち上げてここで言うわけないでしょう。だから、あったとすればなんという言い方は非常にしゃくにさわるのだけれども、それはそれとして、とにかく常識以前の問題だと私は思うのだけれども、そこら辺は教育で直るのか直らないか知りません。ただ、くれぐれも私は注意しておきますけれども、個人の警察官を、おまえけしからぬじゃないかというふうなことを、これからだれか探して文句を言うというふうなことはやめていただきたいと思うんです。私はそんな問題じゃなくて、警察官の良識というか、そういう姿勢がおかしいし、そういうことに対する警察そのものの教育がやっぱりできてないのじゃないか。いろんな教育をしておられると思うけれども、一番人間として大事なことをやっぱり警察官にもよくよく教え込んでもらわないと困るということを特に御注意を申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
#63
○上野雄文君 私は、六十年度は地方財政何とか均衡がとれて、国の変な措置がなければ、久しぶりに収支均衡のとれたいい状態が生まれてきたなと、こう言えることになるのだろうと思うのであります。大臣からも何度もこの場で、これからはますます厳しくなりますよという話を聞かされているわけでありますが、それでもなお地方財政富裕論が永田町かいわいでは横行しているというふうに見ざるを得ないような気がするわけなんです。きょうは角度を変えてというより、各論といいますか、個々の地方自治体が担っている二、三の分野についてお尋ねをしてみたいと思うんです。
 その第一番目に、自治体病院事業、このことを取り上げてみたいと思うのですけれども、最初に自治体病院の担うべき任務、役割といいますか、自治体病院の存在の意義、そういったものについてひとつ自治省側のお考えを述べていただきたい。
#64
○政府委員(井上孝男君) 全国に公立の病院が約九百七十ほどございます。これらの病院におきましてはそれぞれの地域における医療需要にこたえまして一般的な医療を行っておりますが、そのほかに高度特殊医療等を行いまして地域の医療水準の向上にも貢献しておるところでございます。そしてまた、山間僻地、離島あるいは病院としての不採算地区、これらの地域におきましては民間の医療機関の進出が期待できませんので、これらにおきまして一般的な地域医療を果たすというような大変大きな役割を担っておると考えております。
 以上でございます。
#65
○上野雄文君 お話にありましたけれども、救急医療の分野なんというのは最近自治体に負わされている大切な任務ではないかというふうに我々見ているわけですけれども、ちょっと利用状況を見て、皆さんの仲間が書いた分析なんでありますけれども、患者の利用状況は五十八年度の決算で一億五千八百七十六万人、五十七年度に比べて五百五十九万三千人もふえているというのです。この役割というのは、私は大変な役割を果たしているというふうに思うのでありますが、ついこの間出された地方財政白書や、それから自治省の担当者が述べておられるこの決算の分析、それも見せてもらったわけでありますが、あらましその中身についてお話しをしていただけましょうか。
#66
○政府委員(井上孝男君) 自治体病院の数、これが全国の病院に占めますウエートは約一〇%程度でございます。そしてまた、自治体病院が持っております病床数が全国の病院の病床数に占めます割合がおよそ一六%程度でございまして、いずれも施設として大きなウエートを占めておるのではないかと思っております。
 それから、利用者につきましては、先ほど先生がおっしゃいましたような数字が決算の調査でも出ておるところでございます。
 しかしながら、自治体病院の経営状況につきましては、五十八年度の決算によりますと、患者数の増加等によりまして前年度に比べますと若干好転はいたしておりますけれども、経常損益は引き続き赤字を出しておりまして、五十七年度の四百三億から若干減少いたしまして三百八十五億円程度へとなっておりますけれども、赤字を出しました事業数は全体の約半数程度ということでございます。このほか、過去に発生させました累積欠損金、これらは全体で約三千五百億程度ございまして、極めて厳しい経営状況にあるわけでございます。
 以上でございます。
#67
○上野雄文君 お話しのように、累積欠損金三千五百二十六億、対前年比三百八十九億円の増、加えて不良債務が七百九十一億五千万弱、対前年三十七億増、経営全体を見ると大分悪くなってきているというふうに言えると思うのですけれども、問題はその経過だと思うのであります。年間一兆五千二百億円余を稼いでいるわけです。これは国民総医療費十四兆円から見ると一割を超えているという、それだけの役割を自治体病院が果たしているわけですけれども、この努力というものを自治省の方として、数字の上ずっと分析されて、どんなふうに見ておられるのでしょうか。
#68
○政府委員(井上孝男君) 御承知のとおり、昭和三十年代におきましては病院経営もそれほど苦しい状況ではございませんでした。しかし、四十年代に入りまして高度成長時代、自治体病院の財政は大変悪化いたしたわけでございます。その後、五十年度に入りましても石油ショックの後遺症が続いてまいりましたけれども、第二次石油ショックが終わりました昭和五十五年度ごろからはかなり安定をしてまいっております。しかし、全体といたしましては赤字基調で推移をしてまいっておるということでございます。
 しかし、ごく最近は、赤字を出しながらもその金額自体は微減の状況が見えてきたというような状況でございまして、私どもといたしましては、今後、自治体病院における経営改善努力の一層の推進を必要といたしておると思いますし、そのほかに、私どもといたしまして所要の措置、適切な措置を講じてまいりたいと考えております。
#69
○上野雄文君 自治体病院経営の手引というようなものも出されているのだという話も聞かされておりますけれども、一番の問題は一体どこにあるというふうにお考えでしょうか。
#70
○政府委員(井上孝男君) やはり公立病院として一定水準以上の医療を実施していくということでございますと、それぞれ施設あるいは医療器械を備え、あるいは必要な看護体制をしいてまいる必要があるわけでございます。このようなレベルの医療を実施いたします一方、その医療に対する対価といたしましては社会保険診療報酬があるわけでございまして、この診療報酬体系が必ずしも自治体病院の医療の実態には合っておらないという面がございます。この点は逐次改善が図られておるところでございますけれども、今後とも厚生省を中心とした関係部局の御努力をお願いいたしたいと考えております。
 しかし、一方では病院自体の経営改善努力、例えば民間委託がなじみますものにつきましては積極的に民間委託を実施していくとか、あるいは職員配置の適正化を図るとか、その他もろもろの経営改善努力、これが必要であろうかと思っております。さらに、国の方といたしましては、自治体病院ができるだけ健全な経営が行われますように所要の国庫補助あるいは起債措置あるいは交付税措置、こういうものが必要であろうと考えております。
#71
○上野雄文君 自治体病院独自の今言われたような経営努力というものについて、それが必要だということについては、手法はいずれにしても、それなりにお話としてはわかるような気がするわけですけれども、そのことについて五十八年度、あなた方の方ではどういうふうな評価をされておられますか。
#72
○政府委員(井上孝男君) 五十八年度も特に従来と比べまして新しいことが行われたというようには考えておりませんで、基本的には先ほど申し上げましたような多方面からの措置あるいは努力、こういうものが実施されてまいっておるという感じでおります。
#73
○上野雄文君 これは私が聞いた、言うならばうわさとしておきましょうか。最近、医療そのものがお金もうけの対象になってきているということが言われているわけですけれども、個人の開業医よりもそういう人たちが集まって大きな病院を地域の中にどんどんつくっていく。自治体病院は地域の全体の要望に従った地域の医療を守るという、そういう立場で物事を考えていくわけですけれども、これは民間の場合ですと、こいつは金になるといったらそこに集中的な取り組みをすることができるというような弾力性があるわけです。そういうものにかなり影響を受けているというような話を聞いておりますけれども、自治省の方ではそういうことなんかについてはどうとらえておられますか。
#74
○政府委員(井上孝男君) ただいまお話のような事例も近年若干出てきておるようなお話を聞いております。さらに、地域の医師会が設立いたします医師会立病院、こういうものもかなりふえてきておるという状況にあると思っております。したがいまして、これらの民間の医療機関の整備が進展いたしますと、当然地域の自治体病院の経営にも影響が出てまいるわけでございます。
 私どもといたしましては、自治体病院のみで地域医療全体を賄うという必要はないと思っておるわけでございまして、我が国の医療体制がやはり開業医を中心とする体制でございますので、そういう民間の医療機関から供給できない分野、そういう分野について必要な役割を果たしていくべきであろうと考えております。
#75
○上野雄文君 先ほど申し上げた決算からの「病院事業の課題と対策」というのを読ませていただいたわけでありますけれども、自治体病院は先ほど冒頭述べられたように不採算地区を担当せざるを得ないという宿命を持っているわけです。こういう自治体病院であるだけに大変な悩みというものを内部的に抱えて経営せざるを得ないという、そこに自治体病院の宿命とも言うべきものがあるのではないか、こういうふうに思うんです。内部努力はそれなりに一生懸命やって、それでも足りない場合に一般会計に依存をするという形をとらざるを得ないのだろうと思うんです。
 問題は、このような状況にある自治体病院の経営についてどういうふうな対応策を立てていらっしゃるのか、それをひとつお聞かせいただきたいと思うんです。
#76
○政府委員(井上孝男君) 先ほど申し上げましたように、昭和四十年代におきまして経営がかなり悪化いたしました。その際に自治省としてとりました対策がございます。それは、昭和四十九年度から過去に累積いたしております不良債務を棚上げにいたしますための公立病院特例債の発行というような措置を講じております。こういう措置を通じましてその時点における経営健全化を図ったわけでございますし、さらに昭和五十四年度から病院事業の経営健全化措置、新経営健全化措置と私ども呼んでおりますけれども、これらの措置を講じております。いずれも病院自体におきます経営の改善合理化計画、こういうものを策定していただきまして、これを確実に実行するということを前提といたしまして、過去に生じております不良債務につきましては、その解消のために必要な資金を一般会計から繰り入れる、その一般会計からの繰入金に対しましては所要の交付税措置を講ずるというふうなことをやりまして再建を図ってきておるわけでございます。
 昭和五十八年度の決算から、これらの措置がどのような効果を持っておったかということを一応評価してみますと、おおむね所要の効果を上げてまいったのではなかろうかと思っております。しかし、これらの措置の対象とならなかった病院あるいはその後新しく経営が悪化してきておるような病院につきましては、今後一段と経営改善努力をしていただく必要があろうかと思います。
 現在のところ新たないろんな措置を考えておるわけではございませんけれども、地方公営企業法には準用再建制度という制度も持っておるわけでございますし、これらの制度の活用を含めまして、できるだけ自主的な経営改善努力をしていただきたいと思っております。自治省といたしましては、所要の財政措置、これの充実につきましては引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
#77
○上野雄文君 さらに、経営環境の整備ということの中で、さっき審議官が触れられた社会保険診療報酬の適正化という問題がありますが、もう一つ医師等医療従事者の確保、こういう点について触れられているわけです。一般的には医大のない県はなくなったわけです。そして、お医者さんも年間五千から六千、どんどんふえ続けていく。そういう状況が生まれてきて、通常考えれば医者不足などということ、あるいはまたそれ以外の医療従事者の不足なんということは考えられないことなんだろう、こういうふうに思うのでありますが、この最後の部分で、これは自治省の中でのまとまった意見だと受けとめてはおりません。これを書いた方の個人的な意見であるかもしれませんが、しかしそれにしてみても、自治医科大学というものが存在をしているわけです。私、議員として出てきたばかりのときに地方行政委員会で、自治医科大学の問題について質問をしたい、こう言ったら、それは文部省所管だからうちの方じゃないよ、だから余りうちの方に質問されても困るんだと、こういう話をされたことがあるのです。しかし、現実には栃木県を通じて自治省のお役人さんがたくさん行っていらっしゃって事務局の中で仕事をされておられるわけですから、手とり足とり一切合財のことが自治省の中にわかるようになっていると思うんです。当時の山本自治大臣も、どうぞうちの方に遠慮なしにいろんなことをおっしゃってくださいというお話がございました。
 そこで、ついこの間、あるいは皆さんのところへも配られたと思うのですが、「自治医大はどこへ行く」という、こういう冊子が私のところにも、ある日ぽんと送ってこられたものですから、自治医大というとうちの県にあるものですから、これはどうしてもさっと見ざるを得ませんから中を見ましたが、まあそれはそれなりに問題点を指摘しているというふうに私は思うんです。ここで自治医科大学の活用を含めて、自治体病院の今後の経営の健全化もひっくるめて地域の医療を守るという面で大きな役割を果たしていかなければいけないのだと、こういうことになっておりますけれども、こういうようなものが出てくるというところに一つ問題がありはせぬかというふうな感じを私も持つわけですけれども、こういったものについて自治省の中で議論されてみたことがおありになるのでしょうか。
#78
○政府委員(井上孝男君) ただいま御指摘の図書は、私もある国会議員の先生からいただいたことがございます。市販はされておらないようでございます。その図書がどういう意図をもって発行されたものかどうか存じませんけれども、いろいろまじめな御提言もいただいておるわけでございます。結局、その書物の趣旨は、昭和四十年代から文部省がいろいろ努力をしてまいられました一県一医大の配置がほぼ終わった段階におきましては、僻地の医師を育てるための自治医科大学は存在の意義がなくなったのではないかという批判であろうかと思います。
 しかし、私どもといたしましては、昭和五十八年度で全国の人口十万人当たりの医師が百五十人を超えたということでございまして、かつての目標が既に達成されたわけでございます。したがいまして、今後は医師過剰時代を迎えようとしていると言われておりますけれども、国全体としての医師数の増加が必ずしも僻地あるいは離島におきます医師の確保につながっておらないわけでございます。都市と僻地等におきます医師数のアンバランスは今後とも続くものと思われますので、専ら僻地医療の振興に従事する医師の養成、これを目的といたします自治医科大学の存在意義というものは引き続き続くものと思われますし、大変大きなものがあるというように存じております。
#79
○上野雄文君 この本の末尾の方に卒業生の一覧がずうっと載っておりまして、どこの病院に何のたれがしが行っている、何回卒業というのまで全部書いてあるんです。このことは、まだまだ卒業生も五十八、五十九、ことし入れてまたここに加えられた数だけが出ていくわけですけれども、それにしてみても、まだ七、八、九期までですか、まだ十年を経過しないわけですから、これからが本来の役割を果たしていく、そういうことになるのだろうというふうに思いますから、これをこのまま受けとめて、ここから論評するということはまだまだ差し控えていかなきゃいけないなと、こう思うのですが、ただこの帯封は気になりますね。今一生懸命自治体病院が赤字を出しながら大変な苦労をしているのに、慶応大学の加藤何がしという先生の推薦の言葉で、「へき地医療を目的に設立された自治医大が現在、その目的を果たしていないとすれば、」、ここは逃げがあるのだと思うんですが、「重大な問題である。」と指摘して、「行革の一環として医療費抑制が当面の緊急事となっている今日、」と、こういう文言が入ってこの本を推薦しているわけです。
 私は、医療費抑制という問題とこの経営の問題と、先ほどの報酬体系の問題や何かも全部メスを入れてもらわなきゃならない、こういう提起がある中でこういうことを言われているのは非常に残念だと思うし、自治省としても何か相反するもの――もっとも自治省は片一方で地方行革大綱で旗振ってますから、自分でもいろいろと矛盾をお感じになるのではないかと思いますけれども、こんなことが出ていること。将来こんなばかなことがないようにしてもらいたいし、自治体病院も立派に国民医療を守る役割を果たしてもらいたいものだと、こういうふうに思っているわけです。
 そこで、きのう中野委員からも国立病院の自治体移管の問題が出ました。今もまた山田先生から群馬の国立療養所の廃止の問題などが出てまいりまして、自治体が自分のところの病院だけでこんなに苦労しているわけです。さらにその上、国立病院なんか赤字だから押しつけるのでありまして、赤字でなければ当然自前でやっていくことになるのだと思うんです。それから、この間出された三百床以下のものということになると、これはなかなか大変なことになりかねない。自分のところの面倒も見切れないのに人の方までその上さらに乗っけられては大変だということに、これはだれしも思うことだろうと思うのですが、大臣、こういう現状認識の上で、自分の方をよくしなきゃいけないことがあるのにそんなにまでおっかぶされては大変だと思うので、このことについてきのう御答弁がありましたから多くをお述べいただかなくも、また御自身も地元でお父さんの代からの病院の問題で大変御苦労されているという話も聞かされているわけでありますけれども、やはりここでまたひとつ決意をお聞かせいただきたいと思うんです。
#80
○国務大臣(古屋亨君) 私は、国立病院とか療養所の再編成に当たりましては国とかあるいは地方団体を通じまして行政の簡素効率化を図るという行政改革の基本理念に沿って進めるべきでありまして、単に国の財政負担の軽減を図るために地方団体に経営を移譲するということはないようにしなきゃならぬと考えております。
 厚生省は、意見書に基づきまして、国立病院・療養所の再編成、合理化の基本指針を定めまして、きのう申し上げましたように、ことしの暮れにはリストアップをされるというような作業に入ると聞いておりますが、国立病院とか療養所の再編成自体といたしましては厚生省の所管事項であるわけでございますが、一部施設を仮に地方団体に経営譲渡するような問題が出てくる場合には、つまり移譲の対象かリストアップされるという段階で十分厚生省と協議をしてまいらなきゃならぬと思っておりますが、なお基本指針の中でも、国立病院の再編成に際しては関係地方団体の長あるいはその他地元の関係者と協議し、統廃合後の地域医療の確保、経営移譲後の施設の経営安定に十分配意するものとするというように言われておりますので、これらの事項についても十分な対応措置がとられますよう自治省の立場からも努力していきたいと考えておりまして、私も先ほど先生がお話しになりましたように地元にそういう病院を持っており、国立療養所はほとんど私のうちの土地を私の亡父が寄附した広い地域でありまして、これがどうなるかということは私も非常に関心を持っておりまして、地元でもいろいろの陳情を受けております。
 まだ厚生省とは具体的に話しておりませんが、これは私も一般的問題と同時に個別的問題について厚生大臣にいろいろ申し上げようと思っておりますが、結論は、ただ金、国の財政負担の軽減を図るため地方団体に移譲するということは私はおもしろくない、間違っておると考えておりまして、リストアップされます場合には、具体にどうするかというものにつきましては自治省としても重大な関心を持っており、また地域医療の確保のためにはいろいろ厚生省に申し上げなきゃならぬと考えております。
#81
○上野雄文君 わかりました。自治大臣でございますから、ひとつ日本的な規模でお取り組みを、地元のこともあるでしょうけれども、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思うんです。
 次は、水道事業についてやはり病院問題と同じような立場でお尋ねをしていきたいと、こう思うのであります。
 水道の普及率が九〇・九%、給水を受けている人たちが一億一千万に近い、もはやこういう数字になってきておりまして、水なしでは人間生きていけないわけでありますから、そしてまた水道事業がそこまで広がってきているということで、全体ひっくるめて見ると黒字かもしれませんが、大変赤字を出しているところがあるんです。こういうことで、やはり同じように担当の方が書かれたものを読ませていただきますと、経営の両極分化が進んでいるという指摘をされておりますが、概括的にどういうふうに我々見たらいいのか、現状をちょっと教えていただきたいと思うんです。
#82
○政府委員(井上孝男君) 水道事業の全体としての経営状況を御報告いたしますと、ただいまお話がございましたように、全体としてはここ四、五年黒字基調で推移してきております。しかし、中には赤字を生じている事業もございます。この原因でございますが、やはり過大な水需要の見込みに基づきます先行投資負担、これが大変大きくなってきております。そしてまた、適正な料金改定が必要な時期に実施されておらないというような事業が赤字を出しておるというような傾向が見られます。
 したがいまして、これらの赤字事業にありましては、今後建設投資の実施に当たりましては水需要の動向を的確に把握しまして、投資規模の適正化、整備進度の調整、こういうものが安定成長経済に入りました現時点では極めて必要であると思っております。そしてまた、コストはなるべく抑制すべきでありますけれども、その適正に算定いたしますコストが上がりました場合には適時適切な料金改定を行う必要がある、そういうことによりまして収入の確保を図っていく必要があると考えております。さらには、職員給与費を初め動力費、薬品費等維持管理的な経費が、普及率が非常に上がりましたいわば維持管理の段階におきましては大変大きな要素でございますので、これらの経費の節減にも努めてまいる必要があると思っております。
#83
○上野雄文君 これも形としては病院経営なんかと同じように、累積欠損金が五百二事業で千三百八十七億、対前年比九十億上積み、それから不良債務が八十一事業で二百四十七億、対前年比で八十九億ほど減ったと、こういう結果を見せられているわけでありますが、これも病院経営なんかと同じような対応策をお考えなんですか。
#84
○政府委員(井上孝男君) さらにこの決算状況のお話をさせていただきますと、昭和五十六年度以降純損益ベースでは、全体といたしまして五十六年度は四百八十七億の黒字、五十七年度は六百五億の黒字、五十八年度は七百八十五億円の黒字ということでございます。このような状況でございますので、事業全体といたしましては病院事業のようないろんな措置をとる必要はないのではなかろうかと思っております。
 ただ、水道事業は大変設備投資企業でございまして、しかもその料金算定がおおよそ現時点では三年程度を中心にして料金改定が行われております。そうなりますと、初年度は黒字を出しまして、次年度は大体収支とんとん、三年目は赤字を出すということで、四年目に料金改定に入るというような実態に基本的にございますので、水道事業が出しております赤字につきましては、ごく一部極めてコストの高い僻地等の水道につきましては問題がございます。このために自治省といたしましては既に高料金対策というものを実施いたしてきておりますけれども、それ以外の地域におきましての赤字というものは、やはり事業自体の収入確保努力によりまして赤字の解消は図っていくべきものと考えております。
#85
○上野雄文君 同じ先ほど申し上げた報告の中で「おわりに」という部分があるわけです。これが一つの対応の指針になるのではないのかと思うのですけれども、それにいたしましても、企業債の元利償還金が増加してきて料金収入の三八・二%にも達してきているというのは大変な状態だということが言われております。
 私は、病院の問題も上水道の問題についてもきょうは意見を申し上げるのは差し控えていきたいと思うのであります。自治省側の一応の対応策というものをお聞きをしておくことにとどめたいと思っておりますが、ちょうど去年だと思うんですが、佐藤三吾委員が水道料金の格差問題を取り上げて、この場で議論しております。せいぜい二倍か三倍ぐらいまでだったらお互いに辛抱できるけれども、十七倍も差があるというのは一体どうなんだと。料金改定ばかり押しつけるということ、つまり住民負担によって先行投資というのは、言葉は聞こえがいいのですけれども、事業やりたくてどんどん進めていったところがどうも思うようにいかなかったという見込み違いの問題もこれはあるわけです。それが全部住民にかかっていくというのは少しひど過ぎやしませんかということも言えるのではないかと私は思っておりますけれども、そういう点について、さらに自治省側の御努力も要請をしておきたいとも思っております。
 さらに工業用水道事業についてもお尋ねをしてみたいと思うんです。これは同じような形態でいっていると思うのでありますが、いろんな問題点があります。ここでの特徴というのは上水道事業よりももっと際立って先行投資の問題があります。この全体の分析についてちょっとお聞かせをいただければと思います。
#86
○政府委員(井上孝男君) ただいまお触れになりました工業用水道事業における先行投資の問題でございますが、五十八年度の決算から見ますと、契約水量が千七百万程度ございますけれども、全体の施設能力に対します施設の利用率はおよそ五〇%程度でございます。このために工業用水道は主としてこの先行投資による経営悪化に苦しんでおるわけでございます。そこで、これらに対しましては自治省としても一定の経営健全化措置を持っておりますけれども、これを適用して健全化を図っている団体は少のうございます。結局、企業への売水量を速やかに高めてまいるということ、そうしてコストに見合う料金設定が極力行われるべきであるということ、それから資金繰り資金の確保に悩んでおりますが、これにつきましては昭和六十年度から未売水の施設部分に係ります企業債の利子につきまして新しく起債の対象にするというような措置をとっておりまして、不十分ではございますけれども、工業用水道事業につきましても健全化が図られるようにいろんな努力をしておるところでございます。
#87
○上野雄文君 未売水が多い、これはつまり企業が来ないということに原因して、これは自治省の方が幾らわあわあ言ってみてもなかなか難しいと思うのですが、ただ問題は、適正な料金といってみても通産の方からの補助金の関係で頭を押さえつけられておって上げ切れぬという問題にぶつかるわけです。私の県なんかでも、川治ダムができたときは七百六十億ぐらいのお金をかけてダムをつくって新たに生み出された水がわずか十一トン、トン当たり何と七十何億、八十億近い金がかかっているわけです。これを売るということになれば、当然もうこっち側で負担も出血覚悟ということになるわけでして、また補助金をもらうものですから、売る単価も頭打ちを食わされるというので大変な苦しみが残るわけでありますけれども、こういうふうな御時世だと、後発県であればあるほど痛い目に遭うという状況なものですから、それなりにひとつしかるべき手を打っていただきたいものだというふうに思います。
 それから、もうそろそろ終わりにいたしたいと思っておりますが、こういう個々に見ていきますと、地方財政豊かだ、こう言われながらも個々の団体では大変な問題を抱えております。きょう取り上げたのは病院と上水道、それから工業用水事業だけでありますけれども、これは大体押しなべて各県に及んでいることだろうと思うんです。こういうような状況であるだけに、ひとつ自治大臣、簡単に地方財政富裕論に負けないように頑張っていただかなきゃ困るというふうに思っておりますので、もう重ねて御意見をお伺いをいたしませんが、ひとつしっかりやっていただきたいと思うのであります。
 あと少し変わったことも聞いてみたいと思ったのでありますが、また後に回しまして、本日のところは以上にいたしたいと思います。
#88
○神谷信之助君 それじゃ最初に、三月の十三日から十四日にかけてソ連の漁船が塩釜港に寄港いたしましたが、この問題について聞きたいと思うんです。
 日ソ漁業協定の最終段階で塩釜港を寄港地にするという、これは頭越しで決められたということで地元の方でもいろんな意見がありましたが、しかし問題は、現地の市長さんもそれから市民の皆さんも、塩釜港は北洋漁業の基地でもありますから、本当は心から歓迎をしたいところだけれども、これを引き受けると、前の小名浜港の経験があって、右翼団体が跳梁して市民が大変な迷惑を受けるということが大体反対が中心の意見だったわけです。そこで、先般参議院の農水委員会でも我が党の下田議員の方から三つの点を特に要望したわけです。一つは、政府の責任を持った対処、これによって漁民はもちろん市民に迷惑をかけないようにすること。第二は、右翼の跳梁を規制をして市民に不安を抱かせない、あるいはソ連の乗組員に不快感を与えないようにすること。三つは、政府の方針に基づいて寄港を受け入れるわけですから、それによって生ずる自治体負担、これは国が責任を持つようにと、この三つの点を申し入れたと思います。
 ところが、この間の寄港に当たりまして、三月の十二、十三、十四日の三日間だけで右翼団体百三十三団体八百三十人、二百四台の車が市内を跳梁し市民に多大な迷惑をかけました。そのために、三月十二日の塩釜市会は午前十時から開会したけれども、騒音のために市議会は途中で閉会せざるを得ない、そういう事態が起こっていますし、市内の交通渋滞、騒音による被害、商店街もいつもより人出が少なくて客足が減るという状態が起こりましたし、何よりもソ連の漁船が停泊をした埠頭のごく小部分に行動が制限をされるという事態になったわけです。
 この点についてまず農水省の方へお伺いしたいのだけれども、水産庁長官がソ連側との交渉のところで、寄港地における行動制限というもののあり得ることを相手側に了解を得ているというのだけれども、行動制限というのは一般的に市内で買い物もできるという状態が少なくとも保障される行動制限であって、この間のように取次店が出店を出して手みやげ物を販売をするというような非常に限られた、そういう状態ではなかった、そういうことを意図していたのではなかったと思うのですけれども、こういう点について、あの事態についての農水省の見解、これをまず聞きたいと思います。
#89
○説明員(鷲野宏君) お答え申し上げます。
 ソ連漁船の寄港の問題でございますが、昨年の小名浜における経験にかんがみまして、本年につきましても当然一部団体の抗議行動が展開されることが予想されましたので、三月からソ連漁船入港に備えまして、あらかじめ関係各省、さらに宮城県庁とも十分連絡をとって協議検討をした末、今回のような措置をとるということになった次第でございます。この点につきましては、本年のモスクワにおける日ソ漁業委員会の席上でも日本側の代表から、寄港を認めるとしても、一部団体の抗議行動が行われて、ソ連漁船の乗組員の安全確保のためやむを得ない必要な措置をとることがあるということを説明をいたしました。それからまた、交渉が妥結いたしましたときにこの寄港に関する日本側代表の口頭表明というのがございますが、その表明の中におきましても、乗組員の行動範囲については塩釜市のさらに限定された指定区域となるのだということを明らかにしているところでございます。
 農林水産省といたしましては、ソ連漁船のできるだけ円滑な寄港が行われることが望ましいと考えておりますが、現在の状況は諸般の事情を考慮いたしますと、ソ連漁船の乗組員の安全確保を図るための必要最小限の措置ということでやむを得ないというように考えておる次第でございます。
#90
○神谷信之助君 この問題でひとつ警察の方の対処についてお伺いしたいと思うのですが、公務執行妨害罪や道交法違反なんかで若干の逮捕をされているのですけれども、現実に起こっている事態というのは、先ほども言いましたが、市会も開会できないような状態です。それから、入港日の十三日には、船が着いた、ちょっと入り江になっていますけれども、その向かい側が魚市場ですが、魚市場のところまで車が十五台ですか、流れて入ってきています。ですから、朝十時から午後二時半まで魚市場で、東京、大阪などの魚の大消費地の卸会社との電話の取引が不可能な状態が発生をしておるという状況もあります。それで、地元新聞、それから朝日、毎日、読売なんかの記事も全部見ましたけれども、町の声として入っているのは、子供たちは授業に身が入らない、商店街の方は商売上がったりだ、そして市民の意見としては、警備が手ぬるい、もう少し静かにできぬものかという状況です。
 今申し上げましたような状況を見ると、まさにこれは威力業務妨害にも当たるようなそういう集団示威行為でもあります。車両デモが市内中心に三十七団体百八十六人、四十台で行ったりしていますから、こういった問題についてもっと毅然とした態度で、こういう妨害行為といいますか、まさに無警察状態のような事態を引き起こすということ、これが取り締まれないのかどうか、この点についてお聞きしたい。
#91
○政府委員(柴田善憲君) 塩釜寄港に対します右翼の取り締まりの問題でございますが、警察におきましては、塩釜寄港が報じられまして以来、右翼の活動が現地で重なっておりますので、既に延べ一万人近い警察官を出しまして厳重な警備を行ってきておるところでございます。最盛時には一日千五百人もの警察部隊を現地へ投入して警備、取り締まりに当たっておりますが、その結果これまでに公務執行妨害罪等々で二十件二十三人の右翼を検挙いたしておるところでございます。
 ただいま御指摘がございました議会中断という件に関しましては、実は右翼の方から塩釜市長に対しまして、寄港反対なら懸垂幕を下げるなど態度で示せというようなことがありまして、これがちょうど当日が回答期限日ということでその回答に追われて、あるいは議長が塩釜警察署に出向きまして右翼の騒音取り締まり等の申し入れを行った等の事情がございまして市議会が一時中断したことがあったというように聞いております。
 また、魚市場への右翼車両の侵入の問題につきましては、当日右翼車両が、管理者側が黙認と申しますか容認のような形で、中へ入りまして宣伝をやったことはあるようでございます。ただ、聞いておりますところでは、魚の取引はずっと継続されておりまして、この右翼の車両の騒音による取引の中断というようなことはなかったというように魚市場の当局の方からは私ども伺っておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、問題はやはり騒音の問題でございます。騒音の問題につきましては、これも毎回申し上げておるわけでございますが、現行法を、軽犯罪法その他をいろいろ活用いたしまして取り締まりをいたしておるわけでございますけれども、法の適用その他でなかなかやはり難しい点があるのも事実でございます。しかし、私どもといたしましては現行法を何とか一生懸命適用いたしまして、騒音の問題等につきましても右翼対策に万全を期していきたい、このように考えているところでございます。
#92
○神谷信之助君 魚市場の方の話が出ましたけれども、これは地元新聞で「魚市場電話聞こえず取引マヒ」という報道が大見出しでありますけれども、私ども地元の市会議員が直接魚市場の皆さんからそういう状況を訴えられています。だから、警察ではもう済んだことやからということになるのでしょうけれども、私は、警察が事前に会社の方に話をして、そしてもう部外者は入れないようにする。してもらいたいということを魚市場の会社の方が言うたら、警官はそこに入ってきて規制することもできるので、あれはすぐ前でわあわあやられたらもうまさに直接妨害行為ができる条件のところですから、やっぱりそういった点を考える。
 それでは、今度は自治大臣であり国家公安委員長である両方の立場の古屋さんにお聞きしたいんですけれども、やっぱりこれは外交問題にもなる重要な問題だと私は思うんです。日本の権威にもかかわる問題でもある。実は今度、次は四月の七日、八日にまた来るわけです。同じような事態が繰り返されるということになると、これは事は重大だというように思います。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、先ほど指摘をしたような事態ですと、これは単なる公務執行妨害罪だけじゃなしに、その他威力業務妨害罪にならないかというようにさえ思いますので、こういった点についての対処と、身体の安全を保障できないからということで船から降りてわずかのところしか行けない、散歩もできない、町も見ることができない、買い物を商業街に行ってやることもできないじゃ、こんなぶざまな姿はない、この辺についてひとつ国家公安委員長としても検討してもらって、次回にはそういうことにならないようにしてもらいたいということが一つ。
 それからもう一つは、こうやって宮城県なり塩釜市が特別の財政負担が要るわけですから、これについての自治体に対する新たなそういう特別の財政負担をかけないという点について努力をしてもらいたいと思うのですけれども、その点についての見解を聞きたい。
#93
○国務大臣(古屋亨君) 塩釜におけるこういうソ連漁船が参りましたときの右翼の問題については私も重大な関心を持ちまして、警察当局には十分これに対処するように事前に指示をしておったところでございます。
 地域の指定の問題は、これは恐らく水産庁としての話でお決めになったのではないかと私は思うのでございますが、ただ、あらゆる法令を活用いたしまして警察としては市民の安全を確保する、またソ連の方も来られたのでありますから、こういう人に無用の刺激を与えるような右翼の行動というのは、何といいますか、おもしろくないことは当然でございまして、そういうような点につきましても、前回の経験を十分頭に置きまして、今お話のあった点につきましては警察当局に十分指示してまいりたいと思います。
 費用につきましては財政局長から一応お答えいたします。
#94
○政府委員(花岡圭三君) ソ連漁船の寄港による警備等の経費につきましては、これがもともと日ソ漁業交渉の結果に伴うものでございまして、地方団体の負担が生ずることがないよう国において、本来は基本的に国費による財源措置を講じていただきたいと私どもは考えておるところでございます。
 ただ、現実にこの地方負担が生じました場合には、特別交付税の配分に当たりましてもこれを考慮せざるを得ないということにもなりますので、前回小名浜の場合には所要額を基礎といたしまして特別交付税の配分をしたところでございます。
#95
○神谷信之助君 それでは、もうすぐ来ますから、万遺憾のないようにしてもらいたいということでこの問題を終わります。農水省、結構です。
 次の問題に移りますが、これは免田事件、財田川事件、松山事件等々、再審による無罪の確定、それが相次いでいるわけですけれども、その原因について、いわゆる代用監獄、すなわち留置場に勾留中の自白の強要がその主要なものだというように思うんです。いずれにしても三十年間の長い間獄中で冤罪によって閉じ込められる、あるいは少なくとも真犯人と断定できない人を閉じ込めておる、地獄の責め苦を味わわせるというようなことは、これはあってはならないことだというふうに思うんです。
 そこで、まずこの点について重大な責任を持つのは捜査に直接当たる警察だと思います。したがって、警察としてこのことをどのように考え、あるいはどのような反省をなさり、今後どのような対処をなさろうとするのか、まずこの点についてお答えいただきたいと思います。
#96
○政府委員(金澤昭雄君) ただいまお話しのように、昨年以来いろいろと無罪判決がなされております。私ども捜査を担当いたしますところといたしましては、無罪判決で示されました内容につきまして、これは謙虚に反省すべき点は反省し、受けとめる点は受けとめまして、全国の捜査担当者に対しまして教養を徹底するように全国にいろいろと指示、通達をしておるところでございます。
 基本的に考えますと、捜査は真相を究明していくわけでございますが、その中でこの取り調べというのは非常に重要な捜査の手法でもありますし、これは刑事訴訟法においても認められておる我々の重要な捜査の手法でございますので、これは自信を持って取り調べは当たるということが必要だと思います。しかし、そこの取り調べにおいて得られます自供、自白、これに信用性、任意性がなければこれまた大きな問題でございますので、我々が第一線の方に指導しておりますのは、その取り調べに当たって任意性、信用性の確保、特に得られました供述の裏づけ捜査、これを徹底をするように、いささかでも供述の信用性、任意性を疑われることのないように、そういうことを指示をしておるわけでございます。
#97
○神谷信之助君 おととしになりますが、一九八三年の五月の衆議院の法務委員会で我が党の林議員が当時の秦野法務大臣にこの問題で聞いたら、秦野法務大臣は、この事件が発生をした時期を考えると、大体戦後の混乱期で、正直言って警察の捜査なんか多少は荒っぽかった、そういう事実もあったのだ、だから、世の中が荒れておったその中の捜査だから、私は今の時期とは大分違うような感じがするというようにおっしゃています。しかし、現実はどうかというと、やっぱり最近の事件も、自白の信用性、任意性が問われて無罪になったというものが出ています。
 例えば五十七年一月二十八日の最高裁の第一小法廷、これは鹿児島夫婦殺人事件で船迫清被告です。一、二審が懲役十二年、これを最高裁で破棄をして福岡高裁に差し戻しになっています。したがって、現在これは福岡高裁で審理中でありますけれども、この最高裁の判決文の中身を見ますと、唯一の直接証拠である被告人の捜査段階における自白及びこれを裏づけるべき重要な客観的証拠についてその証拠価値をめぐる幾多の疑問があり、これを解明せずに一、二審において取り調べられた証拠のみによって被告人を有罪と認めることはまだ許されないということですから、これは自白の信用性、これが問題になっているということだと思うんです。
 それから、五十七年の同じく三月十六日、最高裁の第三小法廷でやりました大森勧銀事件、近田才典さんというのですか、これが一審有罪で二審無罪であったのを不服とする上告を最高裁が棄却して無罪が確定しています。あるいはつい最近、ことしの三月二十日ですが、例の日通旭川事件、これは横領事件の方は有罪になりましたが、殺人は無罪になって、二日でしたか、地検の方が上告を断念した、それで無罪が確定をしたというようになっています。
 だから、今局長が自白の任意性、信用性の確保に努力するように指導しているとおっしゃるのだけれども、しかしこういう事件を見ますと、最近の事件を見ましても、今でもやっぱり自白尊重の捜査方法自身に問題があるのじゃないかということを思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
#98
○政府委員(金澤昭雄君) 今お話がありましたいろいろな事件につきましては、確かに判決でいろいろと指摘をされておるわけでございます。私どもの方も、この捜査をやっております段階では、そういったいろいろな問題が起きないようにという配慮をしながら捜査をやっておったというふうに現在でも考えておりますが、しかし判決でいろいろと指摘をされておりますので、その点は真摯に受けとめておるわけでございます。
 しかし、自白偏重というお話でございますが、やはり被疑者がこれは事件の真相を一番よく知っているという観点で取り調べを行うわけでございますので、取り調べに当たりましてはやはり真実の追求ということで自白を求めるということに主眼があるのは、これは状況からいって当然のことだと思います。
 しかし、先ほども言いましたように、そこで得られる自白に信用性、任意性がなければそれは全然問題になりませんので、そういうような意味で、自白の任意性、信用性、これに十分に力を入れて取り調べを行う、こういうことで現在も指導しておりますし、自白の偏重にわたらない、そういうことに陥らないということで、これを主眼として指導しておるわけでございます。
#99
○神谷信之助君 その皆さんの指導されているのは、一生懸命ここできっとそういうようにおっしゃるのだが、現場はそうなってないところに問題がある。そうでしょう。
 今言いました大森勧銀事件の控訴審の判決があります。これを見ると、これは別件逮捕で長期にわたって勾留をされているわけですけれども、十二月二十一日に本件の勧銀事件で起訴されるまで警視庁の留置場に勾留をされたその期間の大半を、別件勾留だけが継続している間もほとんど連日午前九時前後から午後十時ないし十一時ごろまで、ときには翌午前一時ごろまで勧銀事件について少なからぬ人数の捜査官の取り調べを受けていたものである。こうして被告に対する勧銀事件の取り調べが苛烈であったことは推測するにかたくない。特に、別件が起訴された十一月六日以降においてもなお代用監獄が勾留場所となっている限り、被告人が勧銀事件について捜査官が満足する自白をするまでは右の取り調べ状態が際限なく継続する状況にあったと認めざるを得ない。このことは、勧銀事件について釈放された十二月六日以降においてなお一層明らかであるというように出てますよ。
 だから、長期に警視庁の留置場で勾留をし、別件逮捕でやって、そして今度は自白を強要していく、この勧銀事件についての自白を求めていく。だから、捜査官の満足するような供述をしない限りそういう取り調べが続くという状態なんです。それで虚偽の供述というものが生まれてきたということを判示をしています。
 それから、さらにその判決文を見ますと、捜査全般について、問題は当初から被告人が真犯人であると思い込み、捜査上いちずに自白を期待したのではなかったか。意外にも被告人の強硬な否認に遭い、これを突破して自供に追い込むに急な余り、冷静で科学的な捜査への徹底を欠いたうらみがなかったであろうか。自白偏重の姿勢に終始したことは甚だ遺憾であるという指摘もしています。
 だから、これは日本の警察の中でも最も強力な捜査能力を待つ、また経験を持つ警視庁でさえこういう状態が起こっているわけです。だから、警察庁のおひざもとの警視庁でも、今局長がおっしゃるような、そういう指示が現実には守られていない、こういうことが明らかになったというように思うのですが、いかがでしょうか。
#100
○政府委員(金澤昭雄君) 大森勧銀事件につきましては、これは別件で逮捕ということで今お話がございましたが、勧銀事件が発生しましたのは四十五年の十月でございます。この被疑者につきましては、同じ四十五年の十月二十七日、これは窃盗罪で逮捕をいたしまして、その後、窃盗と銃刀法、火取法違反でこれは起訴になっております。これは判決の方でも実刑判決がなされておりますので、そういうような意味では、別件逮捕をして強盗殺人の方で取り調べを行ったというふうには、じかにそういうふうに考えていないわけでございます。やはりこれは別件というお話でございますけれども、実刑の判決があるほどの大きな犯罪であったというふうに考えております。この強盗殺人事件の調べといたしましては、銃刀法、火取法、窃盗、これで起訴になりました後、十一月の十四日に強盗殺人で被疑者を逮捕いたしまして、それ以来調べを続けて十二月の二十一日に起訴になったと、こういう状況でございます。
 それともう一つ、長時間の取り調べということのお話がございましたが、確かに本件につきましては長時間取り調べ室に在室をしているという事実はございます。ただ、取り調べと申しますのは最初から最後まで取り調べがぶっ続けて行われるということではなくて、その途中で当然食事なり休憩なりという時間を挟みまして取り調べが行われるわけでございます。それとあわせて、先ほどから申しておりますように、任意性の確保ということに配慮いたしておりますので、そういった配慮をしながらの長時間にわたる取り調べであるという点を御理解をいただきたいと思います。この事件につきましては大体そういうようなことの経緯がある、こういうことでございます。
#101
○神谷信之助君 時間が余りありませんから細かく聞きませんが、捜査の基本は、「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない。」と、これは犯罪捜査規範の九十九条にありますね。それから、百六十五条だったか、夜間の取り調べはできるだけ避けなきゃいかぬという規定もあるでしょう。ところが、夜間もよくやっているわけです。
 私自身も留置場は十日間入っていた経験があるものだから現認しています。市役所の収賄罪の容疑でおった人が私が入ったときもおりましたけれども、出ていくときもおりました。勾留延長を受けていましたけれども、連日朝九時前後に出ていって、夜は帰ってくるのは十時、十一時、遅いときは一時ですよ。しくしく泣きますから寝ていても起きざるを得ない。夜もこっちは九時になったら消灯になって寝ていますからね。そういうのが連日続いています。だから、あなた方の犯罪捜査規範に書いてあるようなことは守られていない。ここに書かれているようなことは、今局長がおっしゃるように教育されているんでしょう、事実。局長は教育しているつもりかもしらぬけれども、実際下は教育していない。現実に私も現認しているので、この大森事件の記録をずっと見てみますとあり得ることやと。あるいは秘密の暴露の問題もそうです。だから、これも証拠が明らかに崩れているんです。事前に、自白をする前に事実を知りながら、自白して初めて真実がわかったようなそういう証拠の提出をして、そして裁判官の判断を誤らせる。だから、真実の追求じゃないんだ。そこに私は問題があると思う。
 そういうことがなぜ行われるのかという点ですが、これはやっぱり今日の代用監獄制自身に問題があると思うんです。捜査をする者が管理をするところに二十四時間監視の状態に置くわけですから。ここのところは直ちに、財政上の理由もありますから、拘置所をうんとふやすわけにもいかぬでしょう。しかし私は、これはもう早くやらなきゃならぬというふうに思うんです。
 明治四十一年に監獄法ができたときに、その当時の衆議院の記録を見ますと、提案をされている政府委員自身が、留置場に勾留することについて、よくない、したがってできるだけ早くそういう事態をなくすようにしたいという答弁もしている記録があります。したがって、そういう点からいいましても、拘置所にかわって、言ってみれば被疑者を警察が預かっているのですから、警察法やそれから警察官職務執行法や今の犯罪捜査規範を見ますと、人権の擁護、人権をちゃんと尊重せにゃいかぬということをずっと言っていますけれども、実際にはそうじゃない。
 片一方では、小岩署の問題が衆議院でも問題になりましたけれども、暴力団の元組長には特別のサービスをする、こういうことをやっているでしょう。写真を撮ってやったりしたことが認められている。長時間の接見を許したことも認めている。私が留置場へ入った五条署でも暴力団が白タクの違反で入っていました、恐喝で前科八犯とかね。これはもう特別な扱いですよ、看守さんは。ほかの窃盗前科四犯とかいましたけれども、そういう人たちとは取り扱いが全然違う。だから、そういう暴力団やら力の強い者には弱い。それで、自白をする連中というのは今おっしゃったように窃盗もあったり、横領、旭川の事件もありますね、横領があったりする。あるいは前科もあるというような人、弱いあるいは弱みを持っている人、こういうのが大体自白を強要されやすくなるし、迎合する、そういう性格の人も自白が強要されやすい。そういうことになってくる。
 だから、現在二十四時間管理のもとで被疑者の身分を預かりながらやっているのですから、二重にも三重にも人権の尊重というものを重視をしなきゃいかぬし、自白に偏重するのじゃなしに、物的証拠を集めて、本人が否認をしようが物的証拠で真犯人であるという断定ができるような、そういう捜査をやるべきなんだ。私はそう思うので、この点についてもう一遍見解を聞いておきたいと思います。
#102
○政府委員(金澤昭雄君) 捜査のあり方についてお答えをいたしますが、今お話しのありましたように、私どもの方も自白偏重ということではなしに、物的な証拠を集めまして、その物的な証拠の裏づけによって事件を固めていく、こういうことで現在指導しておりますし、今後もそういうことでやっていきたいと思います。ただ、事件の内容によりましては物的証拠が非常に乏しいということで事件をまとめるのに非常に難しい事件がございますけれども、できるだけ今の物から人へという捜査の原則を十分に徹底して今後の捜査をやっていきたいというふうに考えております。
#103
○政府委員(鈴木良一君) 代用監獄問題につきまして私の方からお答えいたしますが、明治四十一年に監獄法が制定された当時のお話がございましたけれども、これは決していわゆる代用監獄制度がよくない制度だということで出発したわけではないというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。現在のいわゆる代用監獄制度というのは、やはり良好な治安状態というものを維持していくために迅速適正な捜査を進めなければならない、そういうためには不可欠の制度であるというふうに考えております。同時に、これは被疑者の人権尊重の上からも合理的なものだというふうに考えておるわけでございます。
 それは、勾留期間が日本の場合は比較的短期間になっておりまして、外国の制度に見られますように四カ月だとか半年だとか、あるいは重罪になりますとやや無期限に勾留期間が認められているような制度ではなくて、日本は原則は十日、延長して二十日という極めて短い期間で勾留期間を済ませるということになっておるわけでございまして、そのためにその大変短い期間の中で真相を究明し、かつ被疑者の生い立ちから動機、原因、そういうものあるいは証拠関係というものを解明していくというためには、どうしてもやはり現在の制度はなくてはならないというふうに理解をしておるわけでございます。
 身柄を二十四時間拘束しているではないか、監視しているではないかというお話でございますけれども、現在、五十五年から私どもの方は捜査とそれからこういう留置管理を行う部門とを分離いたしまして、従来刑事局にありました部門が私どもの官房の方に移っておるわけでございます。そういうことで、決して留置管理の制度が捜査の便宜を図るというようなことであってはならないという形で進めてきておるわけでございまして、今後ともそういう形で適正な留置管理に努めてまいりたいと思います。
 お話しの中では、警察はそういうふうに一応は分けておっても、上へ行けば、例えば署長の段階へ行けば同じではないかというふうなお話であろうかと思いますけれども、私ども管理に当たる者は、捜査の適正化という問題、それから人権の保障ということはやはり第一義的に考えていかなきゃならない問題であるというふうに考えておりまして、御存じのとおり、一つ不適正な事案があれば、これはその事案だけの問題でなくて、やはり警察全体の信用を傷つけることになるわけでございます。そういう意味で、私ども管理者といたしましては、何といいましても今申しました人権の問題あるいは捜査の適正化の問題、そういう形からの留置管理の適正というものに最大限の配慮をしていくというのが私どもの立場でございまして、決して捜査の便宜のためにそういうふうなものを利用していくのだというようなことは毛頭ないというふうに申し上げておきたいと思います。
#104
○神谷信之助君 そうおっしゃると幾つかの事例も挙げなきゃいかぬと思うのです。例えば去年の九月に起こった熊本県矢部町の主婦殺しの事件、これは無実の夫に逮捕状を請求して、逮捕状はとったけれども、それは執行しないうちに真犯人が出てきて無実だったことがわかってあわや冤罪は免れた。その事件ですが、この人は間違った証言があった上、奥さんがおらぬようになったということについての捜索願を出さなかったということで疑いをかけられて任意捜査をやられています。二十三、二十五、二十八、二十九、さらに十月に入っても任意調べをする。そして、お通夜の晩にうそ発見器にかけられている、連続七時間もうそ発見器にかけられている。頭髪、体毛、指紋などをやられて、結局耐え切れなくなって、十月三日、お前が犯人なら自白しろという追及になって、結局ありもしないでっち上げをみずから言って、そして供述したということですよ。
 だから、任意捜査任意捜査とおっしゃるけれども、実際にやられていることは、こういうように見込み捜査をやり、そして任意捜査の段階でさえ自白を強制をする。これが留置場に入れられて二十四時間なにされて一体どうなるか。拘置所に入れて必要なときに呼び出して必要な捜査をすればいい。そうすれば、指の間に鉛筆を挟んでぐっと締めたり、できるだけ痕跡が残らないような陰湿な拷問は、帰ってくればすぐ気がつくでしょう。しかし、警察の中の取り調べ室でやられておるんです。留置場に入ったって、留置場の看守はそんなものは見て見ぬふりしますよ。自分から言わない限り、熱がありそうだとも言うはずはない。私と一緒に逮捕された十人の中の一番若い人は、まさに風邪引いているから体温計ではかってくれ、医者に診せてくれと言ったって診せなかった。そして、その人だけは夜十一時まで連日やっています。我々はさっぱり調べませんけれどもね。形式的に警察の聴取一回、検事聴取一回で終わりますから。だから、これは弱い、若い、そういう人は自白強要する。留置場のその事実を言えといったって、これは警察官は証言に立たないですよ。
 だから、あなたが何ぼ言われようと、現実に事実は代用監獄が自白を強制し、虚偽の供述を生んでいるという事例は否定できない。それは、たくさんの事件ありますから、その中のあるいは少数かもしれない。しかし、九十九人の犯人を逃がしても一人の冤罪者を出してはいかぬですよ。その立場に立って捜査をやらなければいかぬ。確かにグリコ・森永の事件でも世論は厳しいですが、それに耐えかねて無理な捜査をしたり、予断と偏見に基づく捜査をしたりしたら、これはまさに警察の権威はなくなると同時に、もう法秩序を乱すことになる。そういう事実が現にあるから、そしてその温床が代用監獄、これが一つの重要な要件になっているということは事実だということを申し上げておきたい。
 最後に、国家公安委員長、お聞きのように、私は科学的、合理的物証に基づく地道な捜査というもの、これは困難だけれども、やっぱりそれを続ける以外に本当の真実の追及はできない。だから、そういう意味で、今申し上げましたように捜査に当たっての人権じゅうりんなんか特にあってはならないことなんですから、そういったことの事実が明らかになってくるのは極めて遺憾だと思うのですが、国家公安委員長の決意を最後にお聞きをしたい。
#105
○国務大臣(古屋亨君) いろんな事件をお挙げになりまして、捜査における人権尊重の問題、代用脱獄の問題等について御意見を伺ったところでございます。やはり捜査はあくまでも科学的捜査といいますか、人権尊重の立場を中心にして捜査というものは行われるべきものであると考えておるのでありまして、私は、今お話しになりましたように、やっぱり人間でありますから、一人の疑われるようなそういう行為についても、納得ある世間も信頼する捜査ということが科学的捜査の基本であると思いまして、今後警察に対しましても一層そういう点を十分に頭に置いていくように指導してまいりたいと思っています。
 ただ、代用監獄につきましてはちょっと先生と意見が違っておるのでございまして、私は冤罪を生む原因になっているというような御意見については納得できませんが、代用監獄制度というものにつきましても、今回は法案の提案をいろいろな理由で見合わしたのでありますが、将来そういう問題を出す場合におきましては、よくこういう制度の運用、あるべき姿というものを考えて進めてまいりたいと思っております。
#106
○三治重信君 予算委員会で税のことを大体お聞きしたのですが、その中でまだちょっと十分お伺いできなかった問題と関連してひとつまとめておきたいと思っておるわけなんです。
 今国会で総理が税制改正のことを言い、そうして戦後のシャウプ勧告からずっとひずみが出てきた、それに対して改正する必要がある、こういうことから税制改正論議が非常に盛んになったわけなんですが、しかしこれはまだ論議をする段階で、政府が実施するとかしないとかいうことはまだ言っていないわけなんですが、それにしても一つの方向とすれば、結果として直間比率の改善、いわゆる所得祝や法人税がやはり他の租税と比べると、どうしてもここに現実の問題として負担が多い、それを間接税で補完をしながら税の負担の公平を図る、これが税制改正の結果としての大きな目標ではないか。また、それを暗黙に認めているから野党も非常に論議に花を咲かしていることだと思うのですが、その中で結局中央の税制改正と地方の税制の問題が余り論議されていないわけなんです。
 そうすると、もしもこの直間比率の改善ということ、今現在で直接税の比率が七割を超して、もうじきに八割にもなろうとしている、だから直間比率を変えたいと。アメリカだけが直接税の比率が非常に高い、しかしこれは連邦政府の税金が非常に高いけれども、地方税になってくると全然違って、むしろアメリカでも間接税が主力をなしている。だから、アメリカの税制でも国、地方、州全体を合わすというと、私もそこまで計数的には知らないけれども、直間比率は、地方、中央を合わすと日本が一番高いのじゃないかと思う。だから、やはり総理が言う税制改正というのはそこに焦点があると思うんです。
 そうすると、大型間接税に移る、直接税を減らしてそっちへ移るとなると、その減る分の同じ三二%の地方交付税が減ってくることになると思うわけです。そういうことに対処して自治省の方の税制改正、殊に大型間接税はEC型付加価値税ということに焦点が合ってくると、そういうようなEC型間接税というものを持ってくる場合に、所得税、法人税のマイナスで地方交付税がたくさん減るわけなんですから、もしもそういうふうになった場合にはそれの穴埋めをどういう税金で補おうとするか。単にそれは、それなら所得税、法人税等の交付税に対する三二%の負担割合をもっと上げてくれ、こういう一点張りでやるのか。どうせ税制改正やるならば、じゃ地方はひとつそういう中央の税体系から影響を受けない独立の地方税を探していこうという考え方でいくのか。
 直接税を減らしていく、いい悪いは別にして直間比率を直していく、こういうことになってくると所得税、法人税がぐっと減る。減った分の三二%は交付税が減るのだけれども、それの穴埋めとしてどういう地方税の税制改正を考えていくかということについて基本方針をお伺いしたいと思います。
#107
○政府委員(矢野浩一郎君) 予算委員会におきましても、あるいはお尋ねであったかと思いますが、国、地方を通ずる現行の税制を抜本的に検討することが必要な時期に来ておることは、これは税制調査会でも指摘をされておるところでございます。その際には、税制調査会で述べておりますいわゆるこの課税ベースの広い間接税問題も含めまして、御指摘のような直間比率の問題を含めた直接税、間接税のあり方といったようなことも、これも重要な検討課題になろうかと考えております。しかし、その方向づけあるいは具体的な内容につきましては、これは政府としてたびたびお答え申し上げておりますように、現段階ではまだ白紙でございまして、したがって御指摘のようなケースを含めて国税と地方税を、あるいは地方財源をどういうぐあいに配分をするか、あるいはそれに伴って地方税制度をどうするかというようなことについての公の議論をするような段階にはまだないわけでございます。
 なお、税制の抜本的検討に当たりましては、今後の社会経済情勢の推移に対応いたしまして、いやしくも地方団体の自主性、自律性が損なわれることのないよう適切は対応できるように地方税財源の充実確保に、もとより最大の努力を払う所存でございます。
#108
○三治重信君 予算委員会と同じ答弁なんですが、結局このEC型付加価値税については議論をされているのだから、そういうことに伴っての地方財源の不足対策というものについて自治省も研究しているのだろうけれども、それは公にまだ言えない、こういうことかと思うのですが、それとひとつ並行して自民党の税調も秋までに、これは来年度の問題が先になってそこまでいかぬかもしれぬけれども、自民党の税調なんかでも、全体を見て地方税の財源の論議を並行的に進める対策をやっていかぬと、後でしりぬぐいをかけられる。こういうことは地方団体にも非常な不安をもたらす。こういうことになろうと思うので、ひとつ特に注意しながら税制改正の方向をやっていくとともに、事務当局とすれば、外へは発表されなくても、そういうものに対する相当腹を固めた対策を研究しておかれた方がいいと思うんです。もちろんそういうことだろうと思うんです。
 そこでお聞きするわけなんですが、ヨーロッパの現に行われているEC型付加価値税、それと地方税との関係で、全部これは国税でやっているのか。欧州の方は日本から見ると、国税と地方税との関係の比率だと、地方税は非常に割合が少ないように僕は承知しているのですが、地方税の独立というか、主にEC型付加価値税をやっているヨーロッパでは、地方税はどういう税源で運用をしているのか。その点ひとつ御説明願いたいと思います。
#109
○政府委員(矢野浩一郎君) ヨーロッパ諸国における国税と地方税の関係につきましては、我が国の場合と、その基礎になります行政事務の配分の仕組みあるいはその配分の量と申しますか、割合、そういったものなども異なっておりますし、またそれぞれの歴史的な事情もございますので、必ずしも単純に比較をするわけにはまいりませんが、ただいまお示しになりましたような付加価値税、EC諸国において行っております付加価値税をめぐる国と地方との税源配分につきまして、私ども乏しい知識でございますが、幾つか承知しておりますのは、例えばフランスにおきましては、付加価値税は国税として賦課徴収をされまして、その一定割合、大体一六%強ぐらいでございますが、その一定割合が経常総合交付金という名で地方に交付をされておるという例があるわけでございます。
 また、もう一つの例としては西ドイツでございますが、西ドイツにおきましては、これは御承知のように西ドイツという国は連邦国家でございまして、大変州の権限の強いところでございますが、西ドイツにおきましては、この付加価値税は連邦と州の共有税という性格をとっております。賦課徴収は、これは連邦ではなくて、州が賦課徴収をいたしまして、毎年連邦と州の交渉によりまして、大体その収入の六割から七割が連邦に配分をされる、国に配分をされるということでございます。さらに、西ドイツの場合には州間の財政調整制度がございまして、付加価値税の収入の一・五%を限度にいたしまして州の間の財政調整のための財源に用いる、財政力の弱い州に対しまして一般財政収入の補てんをするという形で交付されておる例があるわけでございます。
 付加価値税をめぐるヨーロッパ諸国における国と地方との配分問題につきましてお答えを申し上げた次第でございます。
#110
○三治重信君 そうすると、日本の所得税や法人税の交付税と同じような格好の配分を結局やっている、こういうことでしょうね。だから、多分非常に付加価値税でぼんと税金を取る、しかも一貫して全部包括的に取るとなると、地方で独立にまたさらに税金を取り上げるというより、そこから中央と地方との税金の分け前の問題が出てくるだろうと思うのですが、間接税はどっちかというと日本は自動車でも、見たら七つも八つも税金をかけているけれども、結局付加税みたいな格好ではなくて独立的な課税にしているんです。だから、ここでそういう意味において日本もそういうふうにやる場合にどちらでいくかということについてよく研究する必要があろうかと思うんです。
 もう一つ、アメリカは、州では日本みたいな物品税は取らぬで全部小売段階の売上税、小売売上税をやっている、こういうことなんですが、アメリカの州、地方は、私が新聞で見た限りにおいては連邦政府はえらい赤字だけれども、州、市町村は総体として黒字である。総体としての決算はえらい黒字の決算をずっとやっている。その大きな原因は、アメリカでは小売売上税を地方が取ってやっているから、いわゆるパーセンテージを上げ下げすればすぐ幾らでも取れる、こういうこと。この合衆国の小売売上税というものの評価というものを自治省はどういうふうに考えておられますか。
#111
○政府委員(矢野浩一郎君) 先生御指摘のように、アメリカにおきましては小売売上税、セールスタックスと呼ばれる小売売上税が非常に幅広に課税をされ、税収入の大きな部分を占めておるわけでございます。小売売上税は大体州が中心でございまして、これは州によって若干異なると思いますが、現在四十五の州が課税をしておるようでございます。地方団体、州の中にある地方団体も一部課税をしておる例があるようでございますが、主力はやはり州でございまして、州の税収入の三割から四割ぐらいを大体占めておるというぐあいに私ども聞いております。
 逆に地方団体の場合は、いわゆるプロパティータックスと呼ばれる我が国の固定資産税に相当するものがむしろ主力でございまして、一部そういった売上税といったような消費税もある、こういったような仕組みになっておるようでございますが、御指摘の小売売上税、これはアメリカにおける今日までの社会経済の情勢、歴史、国民性、こういったものともちろん深くかかわり合っておるわけでございまして、これを直ちに日本の場合と比較して、日本の立場からどう評価するかということは、実はなかなか難しいことでございますけれども、一般的に小売売上税の特徴といたしましては、これは最終消費支出段階で課税をするわけでございますから、まさに幅広に最終消費支出に応じた課税ができるということであります。
 それから、課税の範囲とか課税標準が簡明であるということ。こういったことが長所として挙げられようと思いますが、ただ一方、短所と申しますか、問題点といたしましては、数多い中小零細企業者に課税の、何と申しますか、インパクトが集中をする。一定の税収を確保しようと思いますと、こういった小売売上税はそれに見合った税率を最終段階だけで設定しなければならないわけでございますので、どうしてもこの最終段階に多いと見られる零細中小企業者に大変集中するというような点に欠点があると言われておるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、その国その国の事情によるかと思いますので、一般的な評価ということはそういうようなことであろうかと存ずるところでございます。
#112
○三治重信君 小売売上税は、それは確かに今おっしゃるように、いわゆる納税義務者が非常に多くなるということです。ところが、実際の納税義務者というのは、今ちょっとした勤労者でも所得税を納めている。ところが、ちょっとしたそれよりかいい格好している店や、それから相当な生産をやっている農家というものが税金を全然納めてないというところに非常に問題があろうということなんです。だから、そういう意味において、売上税というものをやっていくということは、アメリカは州でやっているというけれども、やるなら、私は地方でいくと県、市町村なりでやった場合に、ECの付加価値税よりかは非常に日本で僕は受け入れやすいと思う。
 どうもECの付加価値税というと売上高に対して全部ぽっと各段階にかかってくるから、これは相当何といいますか、単に税金を払うということ以上に自分たちの商売の中身が全部わかってしまう。いわゆるサラリーマンの月給のように、商売人も生産者も中間段階も、全部が結局サラリーマンの給与のようにわかってしまう。これに対する抵抗が非常に強い。それは、そういうようなECの付加価値税でかかってくると、そういう国のようにある程度所得税が低くてこちらの方が主力で払えば、それで所得の課税の公平というものがなっていくから、そういう意味においてEC型付加価値税的なものをやれれば、今の申告納税制度よりか、より正確な所得が確保できるだろうと思うのですが、これについてはやはり日本の徴税の何というんですか、納税思想というものが非常に発達をしていないというんですか、そういうことから非常に障害があるような気がする。
 例えば付加価値税だというと、一つの会社が全国に十も二十も支店を持っているとすると、そういうものを一括して全部やらんならぬけれども、小売だというと各店ごとで、またかつ地域ごとで課税されていくから、全体の売り上げなり何なりというものについての利益なりそういうものについてのつかまれ方が払う方としては十分でないだろうということです。それから、やはり払う方にしてみると、県、市という地方公共団体がやるというと国の税金とは別だという考え方がある。そうすると、そこはそれに応じての対応の仕方でできるということで、全部それをEC型の付加価値税でやられるというと国、地方を全部統一的にやられる。
 これはサラリーマンはやられているわけだから当然いいわけなんだけれども、そこが結局申告所得なり何なりというものが、本当に申告所得者が税金に対して給与の所得者のように源泉徴収ができる体制ならばいいのだけれども、その源泉徴収ができるような体制にEC型付加価値税というものはしようという格好になるのじゃないかと思うのですが、そういうことについての抵抗というものが非常に強くなるというふうに思うので、小売売上税もやはり間接税としては、EC付加価値税にいく前段としても僕はひとつ検討の余地があるのじゃないか、こういうふうに思っております。
 いずれにしても僕は、納税思想というもので、我々給与所得者は何も納税思想が強いから税金を納めているわけじゃなくて、天引きされているから納めているので、これを申告所得にしたらばどれだけ申告するかわからぬ。ここに日本人の性格的な弱点があるんですね、申告所得というものについて。それでも所得税、法人税は国税の八割になんなんとする。だから非常にアンバランスがある。アンバランスを直していくというと、結局納税思想というものがうまくいかなければ源泉徴収と同じような手段、方策でやっていくことが必要だと、そういう意味からいくというと、EC付加価値税というのは非常にそういうことを強制的にやらすということで、初めはトラブルが多いかもしれぬけれども、やれば給与所得者との負担の公平ということについては非常にうまくいく。ただ、それをいわゆる国民が納得するかしないかという問題、結局そこの納税思想の差が問題で、理屈はいかによくても、抵抗の問題だと思うんです。
 学者はもうみんなEC付加価値税は理想的だと、こう言っているわけです。理想としてはそのとおりいいんだけれども、これは現実に税金を納める者が非常な抵抗をする。こういう非常に抵抗するということは、そこに脱税をするということになってくるわけなんで、そうすると税務行政が非常にうまくいかない。そういう徴収事務の関係を考えてやらぬと、僕は間接税そのものが非常にうまくいかない問題があると思う。今の物品税みたいに、主に大企業の生産物で、庫出税的な大企業中心にやって、これは日本の非常な高度成長の結果、物品税というものがもう物品税じゃないじゃないか、これは庫出税じゃないかと、こう言われるもとだと思うんです。
 本来の物品税からいけば、生活から離れたぜいたくな品物に税金かけていくというが、ぜいたくだと思われるようなものなら、中小企業のまた工芸製品なんかをみんな対象にしなくちゃならぬけれども、それは中小企業対策からいって、とてもじゃないが物品税としてはふさわしくないということでどんどんやめてきた。これは非常に税金そのものから見れば、税理論から見ればおかしいのだけれども、実際の徴収体系からいくというと、物品税がぜいたく品に対して課するのだという理論はもう空論になってきた。国民の必需品でも、大量生産をして、しかも大企業がつくって税金が取れやすいところからぽっと取る。ここに我々も一般の者も非常な不満がある。税のいわゆる筋が通らない。取れるところから取ろうと、こういうことであるところに今の物品税が理屈に合わぬが、どうも大企業で余計生産しているところからぽっと取って、大衆消費の品物にぽんとかけていく、そうすると庫出税だからぽっと税金が取れる。
 間接税というのはどっちかといえば徴収費がかかるものだったものが、今物品税が一番徴税費がかからぬでごそっと入る。しかし、これはどうも税体系からいくと非常におかしい。物品税という名のもとに個別にかけるということにおいて、負担の公平というものが非常にゆがめられた、いわゆる税金を取らんがためだけの物品税という、そういう意味において物品税が広がるということは、間接税だからますます何といいますか、負担の不公正化をもたらすような、偏在をもたらすような物品税になってしまって、税の改革からいくというと、日本の今のやっているような物品税からいくというとこれは邪道な間接税だと、こう思わざるを得ないわけなんです。
 そこで一つ問題は、何と申しますか、一つお願いをしておきたいのは、所得税、法人税のことをもう少し議論しようと思ったが、ほかのところで時間とってしまってだめだったけれども、一年前の所得を対象にして課税するのをやめて、当該年度でやって、そして全部源泉徴収義務者に、もう計算の事務が非常にコンピューター化してきたわけなんだから、計算の基礎だけきちんと与えて、付加税的にして、徴収義務者が計算をして、当該年度の地方税をみんなが払えるようにこれはぜひひとつ今度の税制改正までにやり方を考えてやってもらいたい。そうしないと、定年でやめた明くる年になって、年金生活者になってから税金がやめる前の高い所得に対してかかる。それから、東京に住んでいた者が大阪へ行ったら東京の市民税がかかってくる。これはどうしても取る方としては計算の基礎が確かにして非常にやりいいかもしれぬけれども、納める者にしてみれば実は不便千万この上もないことだ。
 それから、地方税は国税の一六%とかなんとかいうけれども、実際月給から差っ引かれるときを見ると、税金が二〇%も二二、三%も取られるような格好になっているわけです。盆、暮れのボーナスは取られぬが、しかし月給から差っ引かれるときには二〇%も二五%も地方税が取られるような気になってくる。これだってもう非常に高い感覚を受けるわけだ。そういうものをなくすために、事務が非常にコンピューター化してきたのだから、全部国税の方のを基礎にして何%ということでぽんとかけられて、年末調整が全部国税も地方税も同時にやられるようにぜひ考えてもらいたい。これについて答弁をしていただければこれで終わりましょう。
#113
○政府委員(矢野浩一郎君) 予算委員会以来、たびたびの御指摘をいただいておるところでございます。先生のおっしゃられる御趣旨は、納税者の立場、それから課税側の事務の簡素化、この両者を踏まえていろいろもっと合理化ができないのかと、その一つの方法としてたびたび御指摘になっておられることは私もよく理解をしておるところでございます。例えば住民税を現年課税化する、あるいは国税の付加税化するといったようなことにつきましては、確かにそれなりの一方ではメリットは出てこようかと思いますが、しかしこれも予算委員会で大臣からもお答え申し上げたと思いますけれども、やはり現在の地方税の基幹をなしておりますところのこれらの税目について戦後明確にシャウプ勧告によりまして独立税といたしましたゆえんは、やはり憲法に定める地方自治の本旨というものに即応して定められたものであるというぐあいに考えておりまして、そのあたりが私どもやはり地方自治の一番本質に触れてくる問題であるということで、いつも御承知のような答弁を申し上げておるところでございます。そこにやはり一つの問題があろうかと思うわけでございます。
 例えば所得税の付加税化ということになりますと、現在所得税と地方税は税率構造が大きく違うわけでございまして、所得税は、昭和六十年度からは最低が一〇・五%、最高七〇%、地方税は、市町村民税でありますと最低二・五%から最高一四%、県民税は二%と四%の二段階だけということでございますので、付加税化ということになりますと、そういう税率構造も結果的に率は違っても同じような比率になってくる。そういたしますと、それはやはり比較的所得の低い層の多い、財政力の弱い団体に非常に大きな影響を与えるというようなこともあるわけでございまして、そういった点から、御趣旨の点は理解できるところでございますけれども、先ほど申しましたような本質的な問題がやはりあるということではなかろうかと思います。
 なお、おっしゃられますような納税者の便宜あるいは課税事務をできるだけ国税、地方税協力して簡素化していくという点につきましては、私どもも日ごろから努めておるところでございまして、例えば住民税と所得税は、所得の計算の基礎、これは同じものを用いておるわけでございます。したがいまして、所得税の申告をいたします場合には住民税の申告も要らないということにしておりますし、それから最近、特に昭和五十八年分からは全国の各市町村におきまして、大体還付申請が中心でございますけれども、所得税の申告書を市町村の役場、市役所や町役場でも受け付ける、こういうことにいたしております。
 私ども調べてみますと、五十八年以降最近の実態を調べてみますと、抽出的な調査でございますけれども、その市町村の住民の所得税の申告の五〇%以上を市役所で受け付けている、こういう団体が相当数ございます。それ以外の方が税務署の方に申告に行かれた、こういった点は、国税職員と地方税職員合わせて約十数万おるわけでございますけれども、所得税の申告が昭和三十年代末に比べますと、今日では約七倍近くに非常に大きく所得税の申告がふえたと言われておりまして、これは国税の方でも大変なことだと思います。そういう観点から、地方税の側でもこれを受け付けるということにいたしまして、課税事務のできるだけの簡素化、それと納税者側の便宜と、双方を果たし得るような努力をいろいろ重ねておるところでございます。そういった点もひとつ御理解を賜りまして、なお私どももそういった点には引き続き努力をしてまいりたいと存ずる次第でございます。
#114
○理事(岩上二郎君) これをもって昭和六十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち警察庁、自治省所管及び公営企業金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#115
○理事(岩上二郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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